【妖怪】人間以外の女の子とのお話20【幽霊】

このエントリーをはてなブックマークに追加
 だが、ルラーンは引き受けず、渡された金も宝飾品も返却した。
 ルラーンは笑って、応えた。
「決まってます。私のポリシーに反するからですよ」
「ポリシー?」
「ええ、プライドと言い換えてくれても構いません」
 少女は、くすり、くすりと笑い。
「なら、私とさせてあげますから、請けてください」
 こともなげに言った。
 その言葉に、ルラ―ンの表情が曇る。
「……そういうことでは、ありません」
 男のそうした反応すら愛でる様に、少女は微笑む/妖艶に/猥らに口端からくすり、くすりとこぼし落とし。からかう。
「貴方、私のこと気になってるんでしょう?」
「誰がそんなこと言いました?」
 首を竦めて、ルラーンはとぼけた。
「言わなくても分かるわ。だって――」
「成熟した女性の魅力に逆らい、こうして少女姿の貴方を招きいれたから――ですか?」
 妖艶な少女の笑みが、消える。
「……何時から、気付いていたの」
 苦い表情のまま、ルラーンは答えた。
「最初から――と、言いたいところですが、確信したのは、今さっき、貴方が訪れたからです」
「――え?」
「ジオライドさんが私に提案した段階で、薄っすらとは気付いていたのですが。確信を持てたのは、貴方の姿をんぽおかげですよ」
 言われて、少女は自らの姿を見た。
 今少女が着ているのは、薄い寝巻きのみ。薄すぎて、肌が見えるほど。
「これが?」
「ええ、それです。貴女は、この家に来てから、おそらくこの少女の性格をよく知ろうともしなかった。だから判断ミスを犯した。
貴女が憑いている少女――ミナキ・ジオライドさんは、少女らしく恥じらいのある方なんです。見知らぬ男に素肌を見られれば、動転して、見た男を殺しかねない程にね。
そう昼間着ていた、膝丈のスカートですら。膝が見られるのが恥ずかしいといった様子で、必死で手で隠していたというのに。
確かに、男とするためにきたとはいえ。局部が見えるような、そんな足の開き方はしません」
 言われて、少女は気付いたようだが。
「でも、興奮したでしょ。この娘、まだ処女よ。十四にもなったのに、毛も生えそろってないし――それどころか、男と手を繋いだこともない」
 にまっと笑って、受け流した。
 その表情は、ミナキでも昼間のメイドでもない――
「それが素ですか、名を失いし流児」
 怪異としての貌。
 そうこの家に取り憑いた流児は、ルラーンの目の前に居る。

***
 気付いた――というには、お粗末な話だ。
 全てが逆算、結果から弾き出された結論に過ぎない。
 そう
『成熟した女性の魅力に逆らい、こうして少女姿の貴方を招きいれたから――ですか?』
 という言葉すら、確信を持って言ったものではなかった。
 そう、彼女が否定しなかったからこそ、確信したのだ。
 今、ミナキの中に流児がいると。
 ならば、流児は何故、ミナキの中に居るのか?
 その答は、ジオライドの提案がヒントとなる。
『貴方は調査を完了し、無事退魔してくれました。ですから、役所の方へ、結果報告はお願いします』
 ルラーンはあの段階でも、なにもしていなかった。
 昼にミナキに話したのは、事前情報から得た推測を基にした言葉に過ぎない。あの段階ではルラーンはメイドに流児が入っていることすら知らなかった。
 そう、実際。
 この家では、そういうもてなしが普通なのだと。
 事前情報で妻と娘が倒れていることを聞いていたから、その場に娘がいないことへ疑問はなかった。
 そうでないと気付けたのは。
『一つ、お聞きしたいのですが。以前から、こうして食事の際にはこうしたことをなさっていたのですか?』
 という問いを、ジオライドがはぐらかしたからだ。
 もし違うのなら、違うと言えばいいし。
 もし、以前からなら、困惑するなりなんなり、反応はあるはずだ。
 しかし、ジオライドはどちらの反応も見せず。何も言われていないかのように沈黙し、はぐらかした。
 子供でも解る――裏に何かある、と。
 問うたのは、なんとなくに過ぎない。
 ミナキの言葉端から滲む性格や、うぶさから、ああしたことが日常的に行われていないと思ったからに過ぎない。
 夕食時、父親がメイドにフェラチオさせているような家庭で、あんな子へ育つわけがない。
 故に、流児によって、妻や娘二人が倒れた以後からかとも思ったが、そうでもなかった。
 なんとなく、聞いたことに過ぎないが、確信に至る証拠の一つである。
 ならば、普段していないようなもてなしを、わざわざする理由とは何か?
 娘が客人を気絶させただけで、高価な贈り物をする理由とは何か?
 一年は暮せるだけの金を渡してきた理由は、何か?
 それは全て――賄賂、である。ルラーンを懐柔するための、だ。
 メイドの肉体ではルラーンは靡かず、しかし、昼間ルラーンはミナキへは優しく接していた。――だから、ミナキ。
 しかし、一エクソシストに過ぎない、ルラーンを懐柔する理由とは?
 それは、直ぐに、想像が出来た。
 この家に憑いた怪異/流児は、処女の魂が変容したもの。
 そして、流児はその発生理由から男の肉体を求める。強く。
 そう、
「貴女――いえ、貴方たちの目的は、共に居ること、ですね?」
 ルラーンは、静かな声で、そう訊いた。
 ミナキに取り憑いている流児は、こくりと、首を傾けた。
「そうよ」
「やはりですか」
 ルラーンは、深く、ため息を吐き、疲れた様子で言った。
「そういうことでしたら、最初から言ってくだされば協力しましたよ」
「なら、なんで、素直に従わなかったの? 貴方が直ぐに頷いてくれてれば、こんなややこしいことにはならなかったのに」
 ルラーンは、再度ため息を吐いた。
「それは、謝ります。ですが、こういうのもなんですが。
私は勘が鈍い方なんです。真正面から言って下さらなければ分かりません。――ですから、理由を教えてください」
「理由なら――」
「私をここへ呼んだ理由じゃありません。何故、ジオライドさんが、高い金を払って貴女を護ろうとしているかについて、です」
 そう言って、ルラーンは意地悪く笑った。
 その顔を見て、流児は唇を尖らせた。
「……分かって、言ってない?」
 ルラーンはまるで知らないといった顔をして。
「さっぱりです」
 と応えた。流児の唇が更に尖る。
 流児は暫くの間、ルラーンのことを睨めつけた後。
「愛しているからよ……あの人のこと」
「そうですか」
 ルラーンは満足気に笑った。
「それならいいですよ、僭越ながらこの私も協力させていただきます――と、そういえば、あの身体は」
「あれは、死体安置所から貰ってきたの。持ち主は、もう生きたくないって言ってたから、丁度いいと思って」
「なるほど。世知辛い話です」
 死因は分からないが、生きることに絶望したメイドの身体の持ち主/少女のことを思って、ルラーンは冥福を祈った。
 流児は、立ち上がると。
「じゃあ、明日、あの人に、言ってね。協力するって」
「はいはい、分かりましたから。いい加減、ミナキさんを部屋に返してあげてください」
「うん」
 流児は幼子のように頷いた。
 ルラーンは少女の背を見送って、それからベッドに潜り込んだ。
 久しぶりにいい夢が見られそうだと想いながら――

 ――しかし、夜はまだ終わっていなかった。


 流児の少女は浮かれた足取りで、ミナキの部屋へと歩く。
 ――良かった、これでパパと一緒にいられる。
 そう、流児の少女の正体は、数年前に死んだジオライド議員の娘の一人だったものだ。
 死んだ後、流児となって、少女は世界を彷徨い。ようやく、自宅を見つけた時には、あんなに小さかったミナキが、可愛らしい少女へと成長していた。
 ともあれ、家に帰れたことを喜んだ少女を次に待っていたのは、孤独だった。
 流児の身体では、この世界にいる者へ話しかけることはできない。
 だが、少女は努力し、懸命に方法を探し――
 ある日。
 寝ている母親に乗り移れた。
 意識が霞むほどの、烈しい感情が浮かんだが。これで誰かと話せると想うと、嬉しくてしかたなかった。
 だから、そこへ父親が来たことは、少女を更に喜ばせた。
 生前、少女は父親のことが好きだった。
 何か話そうと想ったが、何故か声が出なかった。――それが、処女と非処女の相違による、拒否反応であることを、少女は知らない。
 父親は烈しく少女/母親を抱いた。
 嬉しくて、涙が出そうだった。
 父親は犬のように、少女/母親の身体を隅々まで舐め、胸を揉み、尻に噛み付き、陰部にキスをした。
 それは、少女の知らないことだった。
 父親は母親/少女/娘の膣に挿入した。気持ちよかった。
 こんな気持ちよさ、生まれて初めてだった。
 なにより、父親からの深い愛情を感じた。
 気もち良すぎて、母親の身体から抜け落ちてしまった。
 その日から少女は、代わる代わる姉たちやメイドの肉体を借りて、父親を愛した。
 だが、いつも喋れず。いつも、直ぐに抜け落ちてしまうのが難点だった。
 母親やメイドたちが、その度に倒れることを、少女は知らなかった。
 ある日、新人のメイドが入ってきた。
 少女は喜んでメイドの身体に入り、あることに気付いた。
「おかえりなさい」
 そう、喋ることができたのだ。
 帰ってきた父親に玄関でフェラをし、食事に父親の精液をかけてもらい、繋がったままお風呂に入った。夜は三回もして、繋がったまま寝たが、抜け落ちることはなかった。
 少女はいってらっしゃいのセックスをして、父親を仕事に送り出すと、疲れて一旦身体から出た。
 新人メイドは、自分が何故か裸で玄関にいることに驚き。
 自分の首に首輪、身体には無数のキスマーク、身体中からアンモニアの臭い、確かめると――

 ――新人メイドの鳴き声を、少女は不快に想い、どうしたのだろうと見てみると。
 新人メイドは、綺麗だった髪をむしりながら、肌を爪で引き裂き、何度も頭を床に叩きつけていた。
 錯乱していた。
 少女は、このままでは新人メイドが死んでしまうと思い、新人メイドに乗り移ろうとして――弾かれた
 理由が分からなかった。
 なに一つ思い至らなかった。
 ――いや。
 もしかして、と少女は考えた。
 昨日の夜のことを思い出して、理解した。
 そういえば、昨日、最初に挿入れて貰ったときに、変なモノがあった。
 いつにない違和感。
 母親たちと、この新人メイドの相違。
 それを理解する程度には、少女は大人だった。
 そうか、この子は処女だったのだ。
 少女が屋敷から去っていくのを見ながら、少女は思った。悪いことをした――それ以上に、これからはこんな失敗をしないようにしようと。
 父親は、新人が無断で家から消えていることに、深く悲しんだが。なにより今日の夜、する相手がいないことを悲しんだ。
 その日、父親は寝たまま起きない妻や娘を襲ったが、満足できなかった。
 母親たちを看病させるため/セックスするために、ミナキを学校の寮から呼び戻した。
 少女は父親を満足させるためにはどうしたらいいか、考えに考え。
 今更ながら、あることに気付いた
 した後にいちいち抜け出てしまうのは、身体に二つの魂があるからで、魂が抜けた身体なら――
 少女は考えるや、死体安置所を彷徨い、巡り合った。
 最適な肉体を。
 その身体は日にちが経過しても、抜け落ちず。綺麗で。生きていたなら丁度、同い年で。
 平和的に譲り受けて、家に帰り。父親に言った。
「ただいま」
 父親はきょとんとした。
「わたしだよ」
 少女は自らの名前を言った。
 父親は目を丸くし、少女はこれまでの事情を、全て父親に話した。
「そうか、大変だったな」
 そう言って、強く抱きしめてくれた。
 その日、夕御飯のデザートに、父親は娘へ熱く濃い精液を与えた。
 その日、ずっと繋がったまま、眠った。何度も、何度も、父親は娘が生き返ったことを悦んだ。
 翌日、母親が目覚め、父のことを叱った。
 少女は父が怒られているのに我慢ならず、母に乗り移ると、父と仲直りさせた後、気絶させた。
 起きて、父親を怒るものが出てくるたびに、少女は同じことをした。
 何人かのメイドは、支払う額によっては、考えてもいいと言い出し。父はそれを許した。
 料理を作れぬ少女としては、料理がかりが必要だったから、許可した。
 少女と父親は、時折メイドたちも交えて、交わった。
 少女は末っ子のミナキにも、この楽しさを教えてやろうと思ったが、今の身体の持ち主だった少女の末路を思い出して、辞めた。
 ある日、いつになっても目覚めない母親たちに、ミナキが言った。
「この家、何かに憑かれてるのかなぁ。――いえ、冗談よ」
 その言葉に、少女はあることを思い出した。生前のことだ。
 家に夢魔が憑いた時に、父親が連れてきた男たちのことを。
 彼らは退魔部隊と名乗っていた。
 彼らの仕事は、怪異を滅ぼすこと、彼らはそれへ容赦はしない。
 少女が心配になって父親にいうと、父親も同じことを母親たちを預けている病院の医者から言われたようで
「なんとかしないとなぁ」
 と言った。
 悩んでいる父のおしっこは濃くて、美味しかった。
 それから直ぐに、父親は少女へ言った。
「良いことを思いついた。退魔士いきてもらえばいいんだ」
 父の言葉に、少女は首をかしげた。それでは駄目じゃないの、と。
 しかし。
「お前はまだ子供だから分からないだろうが、金を積めばいくらでも協力してくれるものはいるんだよ」
 そういって、エクソシストの中でも、実力がなさそうで、使命感がなさそうで、お金がなさそうな者を選んだ。
「一度、エクソシストが入って。退魔をしたという書類をあげれば、数年は眼くらまし出来る」
 あのひょろひょろしながら、父親よりもナニの大きいエクソシストを思って、少女は笑った。
 セックスが嫌いなんて変わっているが、良い人だ、と。
 少女はミナキのベッドに寝転がると、ミナキから出ようとして――
「え?」


***

 ルラーンが寝ている客間へ、ミナキ――少女が飛び込んできた。
「助けてっ」
 少女はルラーンに叩き起こして言った。
「出れなくなっちゃったっ!」

 ルラーンは少女から事情を説明されるや、間抜けな顔をして
「そうでしたね」
 と呟いた。
 ルラーン自身が言っていたことである。
 流児を、処女の肉体から引き剥がすには、憑かれている処女を処女でなくすこと。
 つまり、
「貴女がそこから出るには、ミナキさんの身体で誰かとしなければなりません。
いえ、処女膜を破ればいいだけのことですから、モノでもいいのですが」
 ということである。
 ルラーンは
「ミナキさんに恋人は?」
「居ないと思う」
「じゃあ、片思いでもいいです」
「知らないよっ、そんなのっ」
 せめて、幸せな解決法をとも思ったが、そうもいかない現実に頭を抱えた。
 そんなルラーンへ、少女は
「いいからさ、さっさと突っ込んでよ」
 と言った。
 ルラ―ンは顔を上げ、硬直した。
 少女はベッドの上で四つんばいになると、尻を突き出し、片手でミナキの花弁を開くと。
「早くしてよ」
 ルラーンに迫った。
 ルラーンは
「そんなっ、私にしろとっ? 駄目ですよ。駄目駄目駄目」
 拒絶した。
「なに、遠慮してるのよ。いいから早く」
「なんで私が」
「ミナキに、起きたら膣に物が突っ込まれてるなんて悪夢見せる気」
「それなら、私だって同じです。起きていきなりレイプされてたら、泣きますよ。――そうだ、ならジオライドさんを呼んで……」
「駄目。それは駄目」
「何故ですか」
 少女ははっきりと不快そうな顔で答えた。
「だって、パパ、たまーにミナキも混ぜようとか言ってくるんだもん。私よりミナキが気に入られたらどうするのよ。嫌よ、そんなの」
「そんなこと言ってる場合ですか」
「それはあんたもよっ。こんな場合なのに、なにかっこつけてんの。ミナキのこととか考えなさいよ」
「それは――」
 反論しようとして――ルラーンは言葉を喪失した。
 昼間、十数分にも満たない時間とはいえ、聡明さをみせたあの少女の顔を思い出して。ルラーンは言うべき言葉を奪われた。
 怪異に身体を乗っ取られるかもしれないと、知っただけで恐怖した、まだ幼い少女の横顔を。
 助けたくないわけではない、助けたい。
 故に
「私にはできません」
 ルラーンは答えた。
「だからっ――」
 怒る少女の言葉を遮って、ルラーンは言った。
「私は、吸血鬼なんです」
「――いいかげ……は?」
 悲しげな表情で、ルラーンは繰り返した。
「私は吸血鬼なんです。それも、私の牙は陰茎にあるんです」
 少女は、手を離し、振り返った。
「は? そんなのさっきなかったよ」
「女性の膣に入れば、本能的に突出し、私の意志と関係なく、相手を眷族へ変えてしまうんです」
 吸血鬼は呻くように言った。
「私が、ミナキさんの膣へ陰茎を挿入するということは。ミナキさんを吸血鬼へ変容させるということなのです。
そして、退魔部隊の方々にとって、吸血鬼は最重要敵対目標なんです。そんな危険を冒せと――」
 ルラーンの唇が塞がれた。ミナキ/少女の唇によって。
 触れ合っただけに過ぎない。それでも、ルラーンの言葉は停まった。
「犯せっていってるの」
「……で、ですが」
 少女はルラーンの手を掴むと、ルラーンの指を、強引に割れ目へ押し込んだ。
 引きちぎられるんじゃないかという、処女の締め付けに、ルラーンは顔を歪める。
 反論する暇すら与えず、少女は言った。
「あんたがぐじゅぐじゅ言って、パパの申し出に頷かなかったから、私はミナキの身体に入ったの。あんたのせいなのよ、コレは」
「そんな……横暴な」
 少女は目を見開き、口端を釣り上げ哄った。
「知ったこっちゃないわよ。いいから、とっとと突っ込みなさいよ。どうせ、もう大きくしてるんでしょ」
 そういって、素早い動きでルラーンのズボンの前を開け、引き出す。
「なんで萎えてんの? 使えない」
 言うや、少女はルラーンの下腹部へ顔を寄せ。
「や、やめてください――っ!」
 噛み付いた。少女の犬歯で、ルラーンの陰茎に噛み付き、歯でごりごりと擦り上げる。
 そこには、メイドの姿で居た頃の、労りなどなく。
「とっとと勃起させなさいよ」
 という、意思しかなかった。
 ルラーンは抵抗しようとして――
 街へ繰り出しては、無理矢理若い娘を眷族へと変えてきた、父や兄たちの姿を思い出して。
 ――できなかった。
 ルラーンの血とは、つまり暴力の上に刻まれてきた血。ルラーンは、父に眷族に変えられ孕まされた人間を母に持つ。
 母はルラーンを愛してくれた、寵愛してくれた、女を教えてくれた。
 だが、ルラーンが人外の力を発揮し始めると――ルラーンを憎んだ。自らをレイプしたものの息子として、憎悪した。
 ルラーンが自らを不死と知ったのは、母親に刺された晩のこと。
 ルラーンに跨った母親は、ルラーンを幾度も刺し/刺し/刺し/刺し/刺し、その度に苦しむルラーンを見て笑った。
 歓喜と悦楽――復讐と憎悪のもと。
 母は今でも、ルラーンの生家に幽閉されている。
 それと、同じ人生を、この少女に歩ませるのか?
 いや、ここでしなければこの少女は、一生このまま。意識を幽閉されたままになる。それでもいいのか?
 ルラーンは迷い、後悔し、自分を軽蔑しながら――
 少女を押し倒した。
 せめて、自らの手で決断したい。
 少女の歯によって、血まみれにされた陰茎を持ち上げ、笑う少女の膣口に押し込んだ。
 前戯もなく、濡れてもいない膣へ、ただ押し込む。
 先ほどまで強気でいた、少女の流児は、顔色を変え断末魔のような悲鳴をあげた。
「いたいいたいいたい、いたいよっ。いや、やあっ! うぎぃっ! いたいぃぃ――」
 今、口腔にある食用の牙で噛み付き、吸い出せば。自らの血の一部とすることで、この流児の少女を滅ぼすこともできたが。
 ルラーンはそんなことはしなかった。
 ただ、痛みに苦しむ少女を強く強く抱きしめて、流児がミナキの身体から出て行くのを待った。
 そして、永劫と隣合わせの僅かな時間が経過した後。
 流児は少女の身体から消えうせた。最後に
「ありがと」
 と悲鳴をあげて。
 ルラーンは自らの陰茎の先端から牙がはえ、少女の子宮へと伸びていくのが分かった。
 今、引き抜けば。少女の子宮から膣から引き裂いてしまうのが分かっていたから、抜くことはできなかった。
 どくん、どくんと、少女の中へ自らの血を注ぎ込んでいくのが分かる。
「……ん? なに、これ……?」
 少女が眼を覚ました。口元には、既に、ルラーンの口にあるのと同じ、長い犬歯が生えていた。食用の牙が。
 少女はまどろむ思考と視界の中、ルラーンを捉え。
「――え?」
 と上擦った声を出した。
「エクソシストさん? なんで私の寝室へ? というか、そこを――っ!?」
 そして、少女は気付いた。
 自らの膣に、ルラーンの陰茎が突き刺さっていることを。
 長い/長い/長い――悲鳴。
 ルラーンは、後悔した。やはり、すべきではなかった、と。


 しかし、事態は、予想外の方向へと転がった。



 血だらけの陰茎をぶらさげたルラーンは、血塗れの膣を拭くミナキへ、説明した。
 せめて、家族を憎まないようにと。
 だが――
「つまり、なんですか? その流児の小娘が好き放題やりたいがために、貴方は呼ばれて。私も処女を喪失した、と?」
「ええ、そうなんです。流児の子は君のお父様を愛していたからこそ、幾つもの無茶を冒してしまった。
しかし、私は彼女のことを責める気にはなれません」
 というと、キツク睨まれた。
「……ええ、と。ほら、愛って大事なものじゃないですか…………多分、いえ、きっと」
「他人を犠牲にする愛を愛と呼びたくありません」
「いえ、でも、それだけ想いが強かった、というか」
「知ったこっちゃないですわ、そんなこと」
 ミナキは怒っていた。かなり。
 ルラーンは、せめて怒りの方向性を変えようとして。
「でも、貴女に痛い思いをさせたのは私です。ですから、怒るのなら、私を――」
「だって、それは仕方のないことじゃない。貴方が入れてくれてなければ、私は一生その寄生虫娘に身体乗っ取られたまま」
 そう言って、少女は大げさに身震いしてみせた。
「いえ、貴女のお父上に入れてもらうという方法があります」
 と言う言葉は、永劫にこの世に顕現することはなかった。
 なぜなら、ゴーゴンが如き眼光で睨みつけられ、ルラーンは硬直し、そんな言葉など忘れてしまったからである。
 ミナキは、しかし、喚き散らして多少は気が済んだのか。
「まったく」
 といい、息を吐いた。
 これからどうすればいいのだろうか? 吸血鬼の眷族になんかなって。いやそれ以前に、この家にいたら、寄生虫娘に身体を奪われるんじゃないか?
 色々考えながら、あることに行き着いた。
 ルラーンの血まみれの陰茎を、ふむと見つめながらミナキは思った。
 そうだ、責任を取らせればいい。
 にまっと、犬歯が唇を割った。
「来なさい」
 ぶしつけにルラーンを呼び寄せる。
 ルラーンはひょろひょろとした長身を、縮めながら近づいてきた。
「な、なんでしょうか?」
 声も震えている。
 ミナキは、更に楽しそうに笑った。まるで、獲物を見つけた吸血鬼さながらに。
「汚れているから、拭いてさしあげます」
 そういって、ルラーンを目の前に座らせると、陰茎を持ち上げた。
 ずっしりとした重量感に、ミナキはこれが私の中に入っていたのかと驚きながら、ハンカチで血を拭い始めた。
 恐縮するルラーンを見ることなく、言った。
「貴方には、責任をとってもらいます」
 緊張からか、陰茎が震えた。ミナキは笑いそうになるのを堪えながら、言う。
「私は貴方の眷族になった、そうですね?」
「え、ええ。そうです」
 ミナキは頷いた。
「ならば、一族の長として、眷族の者の面倒を見る責任が在るはずです」
「……ええ、ありますが。貴女が何故それを? 吸血鬼に知りあいでも?」
 間抜けなことをいうルラーンに呆れながら、ミナキは
「貴方が言った言葉です。『流児だけでなく、ほぼ全ての怪異が、人間を源流としています』――と、つまり、それは吸血鬼も同じと言うことでしょう? ならば、私が識る人間のルールを吸血鬼が持っていてもおかしくはありません」
「……なるほど」
 心底関心した風に、ルラーンは頷いた。
「ですから、貴方には面倒を見る責任が在ります」
「あ、はい…………ええと、どうすれば」
 ミナキは迷わず答えた。
「これからは貴方の傍から離れません、私は貴方に付いて往きます」
「はあ…………――ええっ!!?」
 ルラーンは驚いた。どうにも予想外の展開に弱いたちである。
「そ、そんなの駄目です」
「何故ですか? 突っ込んでおきながら、責任逃れをすると?」
「そんなはしたない言葉を――いえ、ですから。私たち吸血鬼というのは、得てして人間からはよく思われていません。
私ですら、一度、火にくべられて。厭きるまでキャンプファイヤーの種にされましたし。
中には串刺しにされた方もいます――まあ、風通しが良くなったと笑っていましたが――とにかく、駄目ですよ。
吸血鬼の私についてくるなんて。眷族ならばまだ、市井で暮らす手段はあります。お金持ちなら尚さ――」
 そういって、喚き散らす、ルラーンへミナキは勢いよく顔を近づけ。

 頭突きした。

「痛ったぁぁーー」
「な、なにするんですか、突然」
 ミナキは半泣きになりながら、ルラーンを睨みつけ。
「動くな」
「え、はい――」
 両頬を掴み、固定して、キスした。
 触れるだけ、触れているだけなのに長い、長いキスから解放されて、ルラーンは思わず訊いていた。
「なんですか、突然」
 ミナキはぺろっと舌を出し。
「キスして口を塞ごうと思ったんだけど、上手くいかないものね」
 その言葉に、あるシーンを重ねて、ルラーンはふと気付く。
「昔映画で見たんだけど」
「……ミナキさん。私の勘違いかもしれませんが、もしや貴女、四姉妹の末っ子ですか?」
 ミナキは頷いた。不思議そうに。
「なんで知っているんですか?」
 ルラーンは言おうかと考え――忘れることにした。
 そんなルラーンへ、ミナキはもう一度キスをした。真っ赤な顔で。
「今は、大切なお話の最中です。集中なさい」
「あ、――すみません」
 ミナキはこほんと咳をすると。
「貴方の眷族となった今、ここに居るのも、貴方に付いていくのも、私の危険は同じでしょう? 
なら、家族へ危険が及ばないよう、ここにいなほうがいい。ですから、私は、何が在っても、貴方に付いていきます。
仕方なかったとしても、私を眷族――怪異へ変化させたのは貴方です。責任をとってください」
 そう言って、天使のような微笑/是が非を許さぬ脅迫的笑みで、ルラーンを圧倒した。
 ルラーンは、小さく
「敵わないな」
 と呟き、笑った。
「連れていってくださるのね」
「貴女が望むのなら」
 恭しく頭を下げ、ルラーンは言った。
 そうして、二人は顔を見合わせて笑った。唇から、長い犬歯がこぼれ、光る。

***

「では、詳しいことは明日話しましょう」
 陰茎についた血を拭い、仕舞うと立ち去ろうとするルラーンを、ミナキは呼び止めていた。
「え、あの。……行かれるのですか?」
 ルラーンは扉へと歩みながら、ルラーンは言った。軽やかな声で。
「夜更かしは女性の敵ですからね」
「…………はあ」
「それではまた明日」
 そういって、ルラーンは部屋を出た。……与えられた客間から。
「ん? ――あ」
 格好つけて立ち去ってみたものの、よくよく考えてみれば、この部屋を出たらどこへ行けばいいのだろう?
 ミナキの代わりに彼女の部屋へ――有り得ない。女性の寝室に、無断で踏み込むなどと。というか、それ以前に場所を知らない。
 食堂の場所も覚えていないし、玄関の場所も分からない。
 ルラーンは、今更ながらに、自分の無能さを呪った。二回も行ったのに、何故食堂の場所くらい覚えられないのだろうか?
 ――いや、今更だ。
 廊下で寝ていても怪しまれるし、真実を知った今退魔の仕事と偽ることもできない。
 手詰まりだ。
 ……いや、手は、ある。
 最初から存在していた、そう、少し恥をかけばいいだけなのだから。
 硬質な素材で造られた、今出たばかりの毒々しい紫色の扉を振り返る。
「あの」
 扉越しにミナキの声が聞こえた。
「まだ、そこに立っているんでしょう?」
「……よく分かりましたね」
「それが……」
 ミナキは僅かに言い淀み。
「なにか、……その、口では上手く言えないんですが、分かる――いえ、その、知っている? ……というより。まるで、貴方がそこにいるのを、『解る』みたいなんです」
「解る?」
「ええ……すみません、変なこと言って」
 苦笑するかのような声。自らの混乱を打ち消すように。ルラーンに理解されるか不安で、それでも、理解してもらいたいというように。
「でも、自分のことみたいに、貴方のことが解るんです。なんで部屋出たんだろうとか、ああ格好悪いなぁとか、そんなことを考えてるのが、解るんです」
 ルラーンの記憶に、鮮烈なフラッシュが焚かれるように、記憶――そのシルエットが浮び上がり――思い出す。


『あの人は、妾のことなど、一度も考えてはくれなかった。……でも、お前は違う……
ルラーン、妾の息子、妾の愛しき雛。お前は妾のことだけ考えてくれる、妾のことだけ想ってくれる』
『なんで母様は、ぼくの考えていることが解るのですか?』
『フフフ、濃くてあまぁい血を、妾の膣へたっぷり、注いでくれただろう? ……お前は、妾のことだけ考えていればいい』


 ――あの頃は理解できなかった言葉/意味/意図/理解することへの悲しさ。
 あの頃は理解せず、愛されているから、理解されているのだと考えていた――違った。
「今の、誰です……ええっ、お母様? 随分若い……え……というより、なにして……ええええっ!!?」
「そのことは後です」
 驚くミナキの言葉を遮り、ルラーンは言った。
「貴女が今体験しているのは、血の共鳴現象です。
貴女の中に、私の血が流れたことにより、私の記憶や意思が貴女の中へ流れ込んでいるようです」
「え? ……ええ、と」
「つまり、簡単に言えば。私の考えが貴女に筒抜けということです」
「はあ、そうなんですか……すごいんですね」
「……あまり、人の記憶を覗かないでください」
「あっ、すみません」
「いえ。それよりも、入りますね」
「あ、はい…………痛くないのかしら、そんなことされて――うわっ!」
「だからっ、聞こえてますよ」
 ルラーンは声を荒げ、部屋に戻った。
 ミナキは口元に両手をあてがい、扉から少し離れた位置に立っていた。ルラーンが入ってくると、頭二つ高いその顔を見上げた。
 先ほどまで――いや、今も。頭の中で随分なことをしていた男が目の前にいる。
「……まじまじ見ないでください」
「――あ、ごめんなさい。……でも、…ええと…凄いんですね」
 ルラーンは幾つも、言いたいことはあったが――呑み込んだ。
 仕方ないことだ/責任は自分にある/過去は変えようがない――とにかく、自らを言い聞かせ、言い含め。
「分かりましたから、もう部屋に帰りなさい」
 追い払おうとしたが――
「今日はここで寝ます」
 強い意志の篭った瞳で、ルラーンを見上げる。羨望の瞳。輝く、期待に満ちた眼。
 ルラーンは出来るだけ、自分の意思を抑え。
「……駄目です」
「えー、なんで……私が子供だから?」
「そういうことじゃありません。そもそも、する理由がないでしょう」
「えー」
「えー、じゃありません。いいですか、慎みある女性ならば、そんなことを言ってはいけません。ええ、そうですとも。私の眷族になったんですから、これからは私の言うことに従ってください。分かりましたか」
「首輪とか、した方がいいんですか?」
「……誰もそんなことはいってません」
 ルラーンはあからさまにため息を吐いてみせると、仕切りなおすように、こほんと咳をし。
「ですからね。私の頭の中を覗けるのなら分かるでしょう? 私の陰茎には牙が生えているんですよ。とぉっても痛いんです、ですからね。やめたほうがいいですよ、ええ、冗談じゃなく」
 そういうと、ミナキは暫くの間黙った後。
「でも、気持ちいいらしいですよ」
「なんで貴女が――」
 そんなこと分かるんですか。
 言おうとした瞬間、思い出す。自らの上で猥らに乱れ、狂うように淫れる母親/かつての恋人/狂った女/狂わされ/共に狂った愛しき人――我が――
「あのっ」
 ミナキの言葉が、ルラーンの思考を塞き止めた。
「な、なんですか」
 ルラーンは少女の瞳を真正面から見て、後悔した。
 ――似ている。
 最初、この瞳を見た時から感じていた。
 ミナキの瞳は、惨酷なほどに、母に似ている。
「お母様のことが好きなのは分かりましたから。……私のことも、考えてください。私のことだけ、考えてください」
 ――似ている。どうしようもなく。愛しくなるほど、酷似している。
「しましょう。ルラーン、私の父、私の愛しい源流」
 そっと、ミナキがルラーンに身体を寄せた。少女の感触。小さな触れ合い。血がたぎるような、甘やかな香り。母に似た、瞳。
 少女の細い腕が、伸び、ルラーンの太い首に回される。
 ぶらさがるようにしながら、ミナキは父の胸板に額を――耳を押し付けた。
「……聞こえます」
「は、離れてくださいっ」
「とくん、とくん」
 暗い室に、響く、少女の吐息のような呟き。
「とくん。血父様(おとうさま)の心音が聞こえます。とくん、とくん」
 ごくり、と。ルラーンの喉が鳴った。
 ふふっと少女が笑った。
「血父様、緊張してる」
「――しっ、していませんっ」
 直ぐ様反論したが、それは否定にはならない、肯定と受け取られて当然の裏返った声。
 胸板に押し付けられていた顔が上がり、ルラーンの顔を見て、緩やかな下弦の月を描く。母に良く似た娘の瞳が、息子/父を捉え。捕らえる。
 永劫に、離さぬ。
 ――とでもいうように。
 少女の瞳が、母に良く似た瞳が、少しづつ近づいてくる――否、引き寄せられている。強く、強く、母乳を求める赤子のように、ミナキはルラーンの唇を求め、重ねる。
 先ほどとは違う、鮮やかな手並み。上手すぎる動き。
 ルラーンはそれを受け入れ、受け止め、侵され、冒されて、ようやく処女を捨てたばかりの少女に犯される。
「……ん。…あむ……あ………んんっ」
 ミナキの執拗な攻めに、ルラーンは次第に……
「くっ――ンっ……くちゅ……んぅ」
 ミナキの唇を求めるように、動き始める。どうしようもなく、抗い難い行為に押し流される。
 後で後悔する――理解しているのに、止められなくなっていく。
 もうしないと誓った/まだ知り合ったばかり/優柔不断な/こんな少女を襲う気か/脆いプライド/決断を早く/今は/しかし/だが/それでも――
 言葉を/自我を/理性を――欲望が侵犯していく、陵辱され――堕とされる。
 ルラーンは少女の身体を片手で掴み上げると、くるりと反転、ドアへと叩きつける。
「――かはっ」
 少女の背骨に、きしみが唸る。
 眷族は、不死身ではない、だが不老不死ではある。
 誰かを眷族にする力がなく、滅ぼす手段が存在しているというだけで、吸血鬼と差はなく。
 ヒビの入った背骨が、直ぐに快気する。
 それを、理解しているからの、荒々しさ。狂暴さ。喰らうようなキス。貪るようなキス。ミナキが呼吸できなくなるほど、圧倒的な求め。
 ミナキの身体を、片手で扉に押し付ける。
 小さなミナキの身体は、地面に足が着かず。僅かにもがき、もがき、もがくことを諦め。ルラーンの脚に絡みつかせる。
 ルラーンという名の獣は、自らの娘となった少女と口淫(キス)を交わしながら。その大きな手を迅しらせ、少女の下唇に触れた。
 まだ血が滴るそこへ、指を挿入る。
「――ひっ……くうぅぅ」
 少女が歯を食いしばり、父の舌を噛み千切る。
 溢れるような血が、二人の口腔の中を満たしていく中、ルラーンの舌が再生していく。
 次の瞬間には、ルラーンの舌は、完全に再生されていた。
 口唇から溢れた血が、ミナキの寝間に包まれた身体を清めていく。
 暖かな父の血液に、少女は歓喜し、目を蕩けさせた。
 ルラーンは口唇を一旦離すと――血の糸を引かせながら――少女の耳元で囁いた。
「あんまり、お痛はしないでください。これでも痛覚は存在してるんですから」
「……はい、血父様」
「よろしい。では、おしおきをしなければなりませんね」
「――え?」
 母によく似た少女へ/愛しき娘へ与える罰へ、心躍る。
 かつてと逆転した状況に胸が弾む。
 不意に――少女が笑った。
「どうしました?」
 ミナキはくすくすと笑いながら。
「だって、血父様、楽しそうなんですもの」
「……あまり、人の心の中を覗きこまないでください」
「でもぉ」
 言い縋る少女の口を閉ざす為、ルラーンは指をミナキの膣に入れていた指を、更に深く突き刺した。
「――ぅ」
 瞳孔を見開き、声を失う少女に。ルラーンは満足し、揺さ振りあげるようにして、指を動かす。
 ミナキの狭く、きつい肉筒の中を、血塗られた指先が冒す。
 触れたことのなかった場所への、強烈で、強引なまでの刺激にミナキは喘ぎとも呻きともつかない声をあげながら、震え。耐えられなくなって、ルラーンにしがみ付く。
 ルラーンは娘を抱きとめ。
「あまり生意気を言うからです、年長者のいうことには、きちんと従いなさい」
 にやけながら、少女の耳元で囁いた。
「う、うん」
 童女みたいな頷きに、ルラーンは満足し、手の動きを緩め。痛めつけたことを謝罪するように、愛撫する。
 肉の温かさが、次第に増していき。ゆっくりと、だが、確実に、膣内での指の動きがスムーズになっていく。それでも、肉筒は狭く。
「血父様の、お指って……大きいのね」
「そうですか?」
「ええ……め、いっぱい……拡がる感じで、す」
 これから、それ以上に太いものを差し込まなければならない身としては、ミナキを心配してしまうが。
 共感状態にあるミナキは、ルラーンのそんな迷いすら視透して、微笑む。辛そうに。
「血父様、来て、くださいまし」
「……ミナキ」
「その巨きな愛で、私を貫いてください」
 囁く、掠れる声。悲鳴のような嬌声。
「冒して、辱めて、弄って、嬲って、侵して、姦して……犯してください」
 ミナキの弾力のある唇が、ルラーンの耳たぶを挟み、はむ。
 頭と頭を擦り合わせながら、少女は懇願するように謡う。
「私の中を血父様で、いっぱいにして。私の膣を血父様の愛で満たしてぇ」
 ルラーンは、
「ええ」
 力強く、頷いた。
 華奢な身体を更に高く持ち上げ。自らのズボンの前を開き、抜き出す。
 屹立したそれを
「しがみついてくださいね」
「……はい」
 膣口に狙いを定め、指で押し拓き、迷わず、貫くように、挿入する。
「――――っっ!!」
 ミナキの小さな身体を撃ち貫くような痛みに、少女は声を上げることすら出来ず、ただ只管に堪える。
 挿入した、そこから二つに裂けていくのでは、と。錯覚しそうになりながらも、ミナキは荒く呼吸を繰り返し。
「はぁ、はぁ、はぁ……んっ。ふぅ……すご――――」
 ようやく喋れた言葉が、消える。
 子宮に差し込まれた、陰茎から現れた牙が刺し込まれる痛みに、呼吸が止まる。
 ぎゅっと、抱きしめてくるミナキを抱き返しながら。せめて振動がいかないようにと、ルラーンはきつく抱きしめる。
 陰茎の中を血液が流れ、ミナキの中へ注がれていく。
「……くん……どくん……」
 ミナキが、小さく詠う。
 それを聞きながら、ルラーンは吸血鬼の本能が収まるのを待ったが――
「あれ?」
 血液の抽送は停まったし、牙はミナキの肉から外れたが――しかし、牙が突出したまま、戻ってくれない。
 ルラーンは混乱し、下腹部に力を込めたりしてみたが。牙は引っ込もうとしない。
 その上、
「このまま、動かしてくださっても、構いません」
「――え?」
 ミナキは苦しげに呻きながら、それでもルラーンに提案した、紅色の狂気に染まった提案を。
「牙は、あまり……あたらない、場所、みたいですから。そのまま動かしても、問題はないかと」
 ルラーンは常態ならば、その提案には乗らなかっただろう。
 だが、ルラーンもまた、血と蜜と肉の匂いに程よく狂気に染められていた。
「わかりました」
 言いながら、ベッドの方へ歩き、ミナキの身体をベッドに降ろすと。息つく暇なく、腰を動かし始めた。
 ゆっくり――と、するほど、常気は残っていない。そんなもの食い荒らされ、冒涜されたまま、打ち捨てられている。
 そう、母親に、初めて刺されたあの日から。
 ルラーンを正常に、社会に通じる程度に正常にしていたのは。父や兄、血に逆らおうという気概であって、理性などではなかった。
 だが、娘を作って初めて、ルラーンは理解した。
 父や兄たちの行為の理由も、母が自ら城に篭っている理由を。
 そう、そうなのだ。
 狂う少女を見て確信した。
 一人の少女を狂わせた自分の中に在った、黒い感情に気付き、確信した。
 この少女は、自らのモノだ。
 ルラーン・ハウドラゴンの所有物だ。
 その事実に悦びを感じる。
 ミナキとの快感の共有に、血液が咆哮する。
 歓喜/驚喜/狂喜/狂気――抗い難い感情のうねりに身を任せる、その気持ちよさ!
 嗚呼、そうだ。
 抵抗する必要などない/拒絶する理由など元からない――

『愛しているわ、ルラーン』

 ――母が刺した理由は、そう、憎悪ではない。
 愛していたから、刺したのだ。
 ルラーンは人間ではない、刺されても直ぐに再生できる。
 そう、あれもまた、愛の形だ。
「……愛しています、母様」
 故国の言葉で呟いた、霧と蒸気に包まれたミストの街の言葉で。
 もう、迷いは無かった。
 ルラーンは、産まれて初めて自らに流れる血を肯定した。
 ルラーンは、産まれて初めて自らに流れる血に感謝した。
 眷族といえど、ミナキにも再生能力は備わっている。
 故に
「痛かったら言ってください」
 血の力に感謝した。
「私が興奮しますから」
 その惨酷で凶悪な提案に、ミナキは頬を綻ばせた。
「はい。血父様……愛しています」
 故国の言葉を、ミナキは呟いた。知らなかったはずの、ルラーンの故国の言葉を。
 ルラーンは出来の良い娘に満足し、頭を撫でてやると、腰を動かし始めた。
 先ほどよりも強く
 先ほどよりも烈しく
 先ほどよりも、更に奥へ、奥へ。
 先端から突き出た牙が、ミナキの膣を切りつけ、突き刺し、血まみれにしながら、刺激する。
「――ひっ、ひゃっ…っ……くうっ…」
 痺れるような痛みが/痺れるような快感へ。
 傷つけられ/再生し/傷つけられ/再生し/傷つけられ/再生し/傷つけられ/再生し/傷つけられ
/再生し/傷つけられ/再生し/傷つけられ/再生し――連鎖が、ミナキを悦ばせる。
 人の身ならば、味わうことすらできない快感を、ミナキは一身に与えられる。
 人の身ならば、受け止められない愛を、ミナキは一心に受け止める。
 ルラーンは射血しながらも、腰を振り続ける。ミナキを真っ二つにするように。
 ミナキは逝きかけながらイき、活きながらに逝く。
 死んでしまうかのような攻めに、ミナキは痺れる身体で、父が満足するまでいき続ける。
 声をあげることができない/細かな技巧を使う余裕なんかない/自らの痺れに身を任せるしかない。
 そして、天国と地獄の狭間を彷徨い、ようやく。
「射精しますよ」
 父の言葉に、全身から力を抜いた。
 迸る熱く濃い、貫き抜かれるような、烈しい射精。
 時間にしては短く、僅かな触れ合い、しかし、ミナキは満足し、目蓋を閉じた。
 ――翌日。
 ルラーンは流児のことを脅迫材料として、ミナキを浚っていくことへ、許可を求めた。
 金品は要らず、ただ娘だけさらっていくというルラーンの提案に、ジオライドは渋々了承し、娘を引き渡した。
「準備、出来ました」
 トランクケース一つしか持たず、少女はルラーンの前に現れた。
「おや、それだけでいいんですか」
「はい、これ以上は邪魔になると思って」
「まあそうですね」
 ルラーンはそういうと、怪異に憑かれた屋敷を後にした。
 その背を、ミナキは追った。
「どこへ行くんですか?」
 ミナキの言葉に、ルラーンは暫く考えた後。
「……どこへ行きますか?」
 ミナキに訊いた。
 ミナキはくすりと笑うと、ルラーンの巨きな手を掴み。
「暖かいところがいいです」
 そう答えた。
 
 
 その後のことは誰も、知らない。
551籠城戦 ◆DppZDahiPc :2007/04/02(月) 21:14:34 ID:9TvPyzjy
以上。
後半でいきなりミナキの性格が、随分なことになってたり、愛しちゃってるのは
ルラーンの中にある、母の血と記憶の影響。
――ということを、説明しわすれ(ry

というか、俺、次スレ立ててきたほうがいいんだっけ?
容量的に。
552名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 21:21:04 ID:XfUQJpzC
今492kだし
553名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 21:27:36 ID:9TvPyzjy
まだ、大丈夫なんだね。ならおっけ。
回答ありがと、安心した。
554名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 21:36:31 ID:XfUQJpzC
いや
山姫様の後編控えてるし
そろそろだとは思う
555名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 21:56:39 ID:SkdVAzjs
最大500kbで
450kbだっけか? 以上で放置したら落ちるんだよな。
やっぱり立てた方がいいのか
立ててきていい?
556名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 22:03:21 ID:pUoNKtpL
>>555
おながいします

>>518-551
なまらGJ。
557名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 22:32:00 ID:9TvPyzjy
というわけで立ててきた。
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1175519231/l50

後6kb強は最初に惚れた人外少女のことを語りつつ埋めようか。
558名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 22:33:20 ID:wj589/wL
>551
GJ!!
使い魔なり眷属なりの五感なり記憶なりを主側が取り出すってのはあるけど、
眷属が主人の記憶を読めるのって珍しい気がした。
これってミナキとのことが母親にもバレバレなんだろうか、とか、浮気(?)する度にみんなにバレバレになるんだろうかとか気になるww

是非続きをお願いしたい。
559名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 23:03:46 ID:WZKuT4L/
>>551 GJです!!

血をモチーフにしてこういう語り方もあるのかー!
560名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 23:09:44 ID:bfdrsZ6x
>>551
文中頻繁に出てくるスラッシュが読みづらい。
芸風ならともかく、次回は改善をキボンヌ。


人外少女に惚れた原点か……なんだろう。
三只眼のような気もするし、それ以前かも。
印象深いのはラスト○ンの蜘蛛女とサモナ○2のハサ○か。
あとレ○ェンズのアンナたん。
561名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 23:35:33 ID:wj589/wL
最初に惚れた…マジレスするとシャンブロウかも、あとミンガ処女。
次が吸血鬼カミーラ。
エロエロではスペースバンパイアの女バンパイアことマチルダ・メイww
562名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 23:42:39 ID:wj589/wL
どうでもいいが、>>561 カ−ミラだったなorz
連投スマン

563名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 00:03:43 ID:XbbBJfAN
書きながらに自分でも答えとく。
おそらく最初は、デジモ○テイマ○ズのレナモ○

>>558
「常に頭の中覗かれてるのは嫌なんですが」
「仕様です」

というか、おそらく時間か距離によって、覗けなくなるんだと思う。

>>560
割と仕様。使いこなせてないだけに、芸風とは言えんが。
次があったら気をつける。
 
 
 
というか、新スレに早速、ゲーパロ氏の続きが来てた。
564名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 00:44:36 ID:icQmzg3S
ぬ〜べ〜のゆきめか、GS美神のおキヌちゃんとかかなあ。るろ剣の三条燕も。
こういうタイプのいわゆる「女の子」然としたキャラが好きらしい。
565名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 00:47:53 ID:icQmzg3S
間違った。燕は人間だった。
566名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 00:59:46 ID:FZCRIs9e
>>560
伏せ字にする意味を教えてくれ
567名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 22:11:48 ID:3GeJeand
>>566
その方が格好いいから!!
568名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 14:05:53 ID:mrhdgTWB
マガジンの妖怪のお医者さんが出る漫画の
えんらえんら(漢字が変換出来ないので)が凄まじく可愛かった

煙だから何か理由付けしないと何も出来ないけど
569名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 23:51:20 ID:G+2chtXM
アワーズの『散人左道』に登場したえんらえんらは実体を持てたな。
彼女は結構好きだったな。
570名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 04:25:07 ID:ABFakb7X
>>569
お、こんな所に水上読者がw可愛い顔してイスでペンギン殴打するヒロインが新鮮だった。
「龍と少女と百鬼町」に出てきた精霊の娘さんもけっこう好きだな。
湯上がりにバスタオルだけで登場した時はときめいた。
あとは絶対零度の女王と悪魔の手下A。

氏の作品としては「げこげこ」と百鬼町シリーズが特に好きだ。
571名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 01:53:48 ID:FU7xLTS8
埋めネタPLZ
572名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 13:57:42 ID:r2iXMC7e
>>571
あと3KBなんだからみんなで雑談して、がんばってちゃんと埋めようぜ。
573名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 23:42:25 ID:MtmQCc9v
人外系統の漫画家ではGUMの『足洗い邸の住人たち』が好きだな
猫又からエレメンタル系までより取り見取り
574名無しさん@ピンキー:2007/04/17(火) 13:51:15 ID:EgRHBfOO
すいません。保管庫の『闘技場』の続きはどこデスカ?
もう私続きがキになっテよルもねれナなナナナナナナナナナn
575MISERY:2007/04/17(火) 21:33:35 ID:RQ+mvrpy
ようこうかんかんくるくる」

というお馬鹿な神がいまして、スズキミユキと名乗っていたのは嘘のようです。

しかもこの神、人が寝ている間に
「お前の霊体を犯す」と毎日言っていまして
SEXばっかり要求するかなり馬鹿な神です。


その神様の願いは
「みんながみんなスワッピングでSEXしあって仲良くなりましょう?w」
とほざいているかなり馬鹿な「ようこうかんかんくるくるそうそう」こと
文書菩薩神という私は馬鹿文殊と言っていますが、
まぁ、要はSEX大好きな日本で言う「文殊菩薩こと大黒神、韓国語でいう
「ようかんかんくるくるそうそう」とあえて韓国語で名乗り、、馬鹿文殊と言う神であることを

隠していた気分だそうです。そして、とうとうキレタ私の守護神「妖孤様」が

直接刀にて戒めてました。

やっぱり馬鹿文殊系も要は妄想癖という言葉を掲げて

一人エッチをしまくりなさいと言う(比較的若い文殊系の修行人は言われているそうです。

だけどさぁ〜、結局頭(文殊系責任者みたいなやつ??)
が馬鹿でSEXして霊体犯しまくりましょうなんていってる
馬鹿文殊系の人間の霊界(自分たち的には神界らしい(爆笑))には
考え物だよね。ちなみに私はそんな馬鹿文殊系?人神に毎日?
犯されているらしいよ。


まー30代 女冥利につきますね・・
モテル女は辛いねぇ〜ウッシッシ

ところで妖孤様、かっこよかったなぁ。
幻で姿を見れました。
髪の毛はワンレンで、白い髪に細面の面。目が細くって
衣は、火鼠の衣と言って、人で言う神主さんのような衣装着てました。

刀裁きがカッコいい
黄泉道・妖街道・青街道といった世界で良くご一緒させていただいております。

まぁ、現代用語で言うところのシャーマン、昔で言う「管狐使い・陰陽師」の

MISERYでした。

これ実話なんですよ〜
576名無しさん@ピンキー:2007/04/17(火) 22:31:43 ID:6mYJ0PkM
>>575
日本語でおk
577名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 00:43:52 ID:nlm2vo1m
>>575
理解不能
精神科医の診察を強く勧める
578名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 18:20:46 ID:399VtnRf
>>575
腹が減った まで読んだ
579名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 23:44:43 ID:32TAHc2H
500KBget
580名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 00:12:12 ID:Wc8GRHXo
だが俺がゲト
581名無しさん@ピンキー
まだ