ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α5

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854名無しさん@ピンキー:2007/08/20(月) 20:00:50 ID:egTD6Q66
>>853

「planetarian」はガチでやっとけ。メカバレもあるし。

そして、そのままドラマCD(全3巻)まで特攻して泣け。
マジおすすめ。
855名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 00:26:25 ID:FPJruVx+
「planetarianはゲームじゃない」説
856名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 02:13:58 ID:fx2XKrKu
ふむ、そうだな……。
コンシューマなら、「マリオネットカンパニー」とか「ゼノサーガ(個人的には元機さん萌えなのでT)」。
パソゲなら、「HELLO, WORLD」とか「ピュアハート」、「マシンメイデン」あたりがベターじゃないかと。
ただまぁ、どの程度ロボなのが好きかにもよるし、一概には言えん気がしなくも無い。
857名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 05:43:48 ID:OJqwQCuA
>>850・・・上手すぎるな。何かいけない物(炊飯器系統)に本気で惚れそうだよ。
GJ!!

頼むから俺にその炊飯器の作り方を教えてくれ。


だがセクス機能はいらないからな・・・
858名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 10:12:27 ID:g6wwjrg8
>>857
しばらく待てば、大人の科学あたりに出て・・・・ん?
こんな時間に回覧板
859名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 11:50:46 ID:wErBdxvc
859 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/21(火) 11:50:40 ID:tyPe25S7W#
皆様炊飯器なんかよりメイドロボさんに萌えましょうよーww
健気でかわいいじゃないですかww
860名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 12:45:07 ID:MjWaMY4C
>>859

コハル本人乙w
『                          自衛隊情報漏洩 情報保全部ネットの危険性を指摘
防衛省陸上自衛隊情報保全部、調査第1部は、陸上自衛隊中央統括本部のホストコンピューターに対する不正規接続(ハッキング)によって、一部のデータが外部に流出したと発表。
保全隊長、村井卓陸将補は、流出したデータの内容については防衛機密の観点から公表できないとしながら、実行犯特定へ向け全力を尽くすと述べた。                  』

朝刊を流し読みながら朝飯を平らげる。
今日はスクランブルエッグだったが、やはりチエの作る玉子料理は絶品だ。
「いつまで食べている、さっさと仕事行けさっさと」
「はいはい」
この喋り方さえなんとかなれば、少しは可愛いと思えるのだが…あ、いや、外見も少しお願いします。
「仕事帰りにさ、天然オイル買ってきてやろうか?」
正直照れくさいが、たまにはこいつに良い思いもさせてやらなくてはな。
なんせ相手は(恐らくは)世界で初めて自我を持った家電製品だ。

下手に扱えば“俺の身が危険”だ。

「なんだ、どういった風の吹き回しだ?」
チエは例の如く物凄い勢いで家事をこなしながら訝しげに言った。
少しは嬉しそうにしろってんだ。
「まぁその、何だ…お前がどうしても、って言うなら…貰ってやっても良いかな?」
お?この反応は…
「『ツンデレ』ならこう言う所だろうな」
勘違いした俺が悪うございました。
「楽しみにしてるからさっさと買って来い、間違ってもソープランドなぞに寄り道は…」
俺が玄関で靴を履いていると、チエはいきなり沈黙して俺の身体に細いマニピュレーターを回してきた。
「主人…」
なんか本当にどうかしちまったんじゃないのかコイツ。
等と思っていると、突然呼びベルを鳴らす音と共にドアの向こうから女の声がした。聞き覚えのある声だ…
「開けてくださいまし、ご主人様が危険ですw」
「コハル?」
次の瞬間、俺の意識は飛んで真っ白になった。
「いでで…何が…」
「やっと起きたか主人、仕事にはもういかなくていいぞ、それどころではなくなった」
気を取り戻した俺の目の前には…女の生首が転がっていた。
「ひぃいやぁあああ!」
だから俺この手の話苦手なんだって。
「落ち付け、且黙れ」
チエの声の方に振り向くと、彼女はそこでバラバラに破壊したガイノイドの残骸をあちこち弄り倒していた。
おまわりさん助けて、電気炊飯器が女の子解体してます。
「何この猟奇的状況、これお隣のコハルじゃねぇのか!」
「違うな、同型モデルだが別の筐体だ」
チエは、笑顔のままで動かなくなっているタイプ2557の生首をムンズと拾い上げると、俺に見えるように突き出した。
確かに、ジジィのコハルは極限まで人間に似せた仕様だが、これは人工皮膚の継ぎ目をわざと目立つようにしたメカフェチ仕様だった。
ていうか生首見せなくて良いから。
しかしどういう事だ?
「今映像を再生してやる、5分前だ」
居間の立体テレビにチエの超広角視界が再生された。
中央には俺の背中、そしてその先のドアの向こう側のカメラ映像も上に表示されている。
当然そこには呼びベルを鳴らすコハルが写っていたが、次の瞬間俺は思わず血の気が引くのを感じた。
コハルは『ご主人様が危険ですw』のセリフの後、木製のドアを手刀で突き破り、俺の首を掴もうとしたのだ。
チエが俺の身体をブレーンバスターの要領でぶん投げてくれなければ(投げるなよ)、コハルに首をへし折られていたかもしれない。
そして俺が失神している間の映像がまた凄かった。
『何しに来たオ○ンコ人形め』
『ご主人様達が危険なんです、そこをどいてくださいw』
コハルはぶち破った穴から腕を回してキーを解除し、ドアを開けてチエと対峙した。
『バカをやったな木偶の棒、貴様を不法侵入と人間に対する暴行未遂で処理する』
ブレーンバスターくらった俺は無視ですかそうですか。
『ご主人様への危険を回避するために、アナタを排除しますw』
先に動いたのはコハルだった。
先ほどドアをぶち抜いた要領で手刀を繰り出し、チエを破壊しようとするが、チエは4本あるアームを巧みに駆使して攻撃をいなし、逆にヘッドロックをかけてコハルの動きを封じた。
そしてそのまま…うん、この後の展開は見せなくて良いから。
「バカなヤツだ、馬力で私に勝てるわけなかろう」
そりゃそうだ、元災害救助用のマッチョさんですものね。
「助かったよ、それにしてもなんだってこんな事に?」
「分からんが、しばらくは外出は控えた方が良い」
はい?
「さっきから警察に通報しているが誰も出ない」
まさかとは思ったが、実際俺の携帯電話を使っても繋がらなかった。
「NHK!」
俺は立体TVのチャンネルを天下のNHK様に合わせた。受信料払ってないけど、ごめんね。
そしてそこに写る映像に、俺は絶句してしまった。

逃げ惑う人々の悲鳴。
警官隊の打ち鳴らす催涙弾と、機動隊の放水車から吹き出す水飛沫。
阿鼻叫喚。
その向うには、あのアサカ製ガイノイド、タイプ2557コハルが…いや、無数のコハル“達”が美しく整列し、お行儀良く手を前に組んで微笑んでいる。
しかし彼女達の言葉は明かに異様だった。
『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』
『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』
『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』
『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』『ご主人様達が危険です』
これは映画か何かか?
俺はなんとかそう思い込もうとしたが、こんな時間にNHKでやる内容じゃ…じゃなくて、俺の玄関ぶち抜いてスクラップになっているコハル見れば、あれが現実である事を信じざるを得なかった。
「そうだ仕事いかなきゃなー」
「現実を見ろ主人」
「ドアの修理は保険で何とかなるしぃ」
「この阿呆め」
メイドロボが大挙して人間襲う現実なんてどうでもいいです。
でも現実は甘くは無いんですね。

一時間後、政府は戒厳令の発令と自衛隊の治安出動を指示。しかし嫌味なほどに法律で縛られた彼らにどこまでできるか。
また、コハルをみかけたら近づかない事、家にカギをかけ、自衛隊の救助を待つ事などを、全てのメディアを通して放送した。
カギをかけろったってドアぶち破るロボット相手に意味があるのだろうか?
「場合によってはここを出て自衛隊の駐屯地まで自力で…主人!」
台所で食料品をかき集め、篭城の準備をしていたチエは突然、俺の方に向かって包丁を投げつけてきた。
包丁は俺の顔の横数cmをかすめ、風が俺の頬を煽った。
「ご主人様がきけっききっきいいいきいききkkk」
いつの間に近づいてきたのかどこから沸いて出たのか、俺の背後に忍び寄っていたコハルはチエの投げた包丁に頭部を貫かれ、ビクビクと痙攣しながら崩れ落ちた。
我が家の戦う炊飯器はセガールみたいですね。

篭城は不可能と見た俺達は、チエ専用の小型トレーラーに食料品を積めこみ、結局自力で最寄の駐屯地まで向かう事になった。
チエのスペアバッテリーは三つあるので、充電無しでも2、3日は持つだろうが、問題はもっと直接的な事だ。
チエは人気のなくなった街を慎重に警戒しながら進んで行くが、時折狂暴化したコハルが例の呪文のような言葉を口走り、建物の上から襲いかかってきた。
丸ノコや電気ドリルで彼女達をスクラップにして黙らせながら(どっちが狂暴かわからねぇ)、チエは今後の事をあれこれと思考しているようだった。
「まだ数が少ないからいいが、ニュースに映ったような大群相手ではきついぞ」
映像を見る限りでは、大群が暴れているのは都市部だったが、やはりコハルの所有者が多い場所に被害が集中しているようだ。
…アサカ社や政府はこの件をどう解決するつもりなのだろうか?
一時間程進むと、緑色の大きなトラックがえんこして止っているのを見付けた。自衛隊の車両だ。
時既に遅かったらしく、隊員達の姿は無く、ただ激しい銃撃戦を物語る無数の薬莢と破壊されたコハルの残骸が転がるだけだった。
それにしても随分と情けない装備だ。俺は戦車やヘリでバリバリやってると思っていたのだが。
「気の毒にな、治安出動で許可される装備ならこんなもんだろう」
まったくもってけしからん、誰だ今の政党に投票したのは俺でしたすいません。
いつの時代も自衛隊さんは自衛隊さんです。ご苦労様です。
しかし肝心の隊員達の姿は見えず、彼らの装備も放置されたままだった。
もっとスプラッターな現場を想像していたのだが。
「手足をへし折るなりして連れ去ったんじゃないのか?」
チエが言うと異常に説得力あるから止めて欲しい。
「なぜに」
「殺人は三原則に抵触する」
「………」
病院で生命維持装置に繋がれたジジィの姿が目に浮かぶ。
「……まさかな」

「駐屯地は恐らくダメだ、この様子じゃ自衛隊の施設は真っ先に狙われているだろう」
「じゃぁどうしろってんだ」
「自分の身は自分で守るしかあるまい?」
聞かなきゃよかった…
チエは自衛隊の車に残されていた鉄砲やら銃弾やらをかき集め、彼女の後部に繋がっているトレーラーに放りこんでいく。
このトレーラーは元々、災害地で負傷者や非常用食料を運ぶための物で、頑強で大容量な造りになっている。
政府の支給品が、軍用の兵器が、俺の名義で購入したメイドロボによって俺の名前の書かれたトレーラーに積まれていくと言う、好ましくない状況はおいとくとして。
「だがなチエ、俺もお前も武器の扱いなんか」
「近くにネットカフェがあったろう、防衛省にハッキングする」
自衛隊さん、ここに炊飯器の形したテロリストがいます。
普通なら防衛省へのハッキング等成功するはずはない。
何重ものプロテクトと暗号、ハッカーに対し自動で反撃する攻性防壁やウイルス。
たかがメイドロボに…
「突破した、火器緒元及び照準管制プログラムをダウンロード」
「…お前、初めてじゃないだろ」
「貴様が仕事に行っている間、ヒマでヒマで仕様が無い、つまり貴様のせいだ」
おお何てことだ。我が家にこんな爆弾が転がっていたなんて…
「それにな、私は災害地で自衛隊の無線電波の中継もしていたからな、あいつらポロリと暗号やらパスワードやら」
本当に勘弁してください。俺達は無人のネットカフェを後にした。

日が暮れ始めた。
既に運行を停止したモノレールの陸橋下。人気は無いが、逆にそれが安全だとチエは言った。
「機械は効率と能率を重視する、人が集まらない場所はヤツらも後回しにする」
なんとまぁ頼もしい事だ。
そしてもっと頼もしい(恐ろしい)事に、チエは拾い集めた弾丸の先っちょをドリルで削り始めていた。
なんかもう、凄く見ていられないんだが。
「何してんの」
「先端の被鋼を削っている、軍用の拳銃弾はFMJだからストッピングパワーに」
「意味が分かりません」
「こいつが体に入ると先端が変形して広がる、人工脳や動力中枢に撃ちこめば、民間用のガイノイドくらいなら簡単に倒せわけだ」
チエは即席の「ホローポイント」とかいう弾を、別のアームでカチカチと弾倉に積めこんでいった。
普段なら真っ平ごめんだが、今だけはチエの奇行に助けられた。
「お前はこっちを使え」
前言撤回。大層迷惑こうむっております。
チエは黒くて無骨な大柄の銃を取り出して俺の前に置いた。
「SOPMOD64式カービン、1964年製で今じゃ儀丈銃くらいにしか使われてない」
ほとんど博物館行きの銃じゃねーか。大丈夫かこれ暴発すんじゃねーか。
「89式や015式は5.56mm弾だが、こいつは7.62mm弾使用で殺傷力だけは高い、アンドロイドやサイボーグを相手にする場合を想定して倉庫から引っ張り出し、使用に耐える様改造したんだそうだ」
うん、そうかカッコイイ、でも俺いいや。
「俺民間人なんですけど」
「私は民間用のメイドロイドで、我々を襲ったのは民間用のガイノイドだ」
戦争反対。まじ反対。
しかしこの言葉で俺は一つおかしな事に気付いた。
「たかが民間用のガイノイドに、なんであんな戦い方ができるんだ」
チエもそこは不思議だったらしく、首(?)を傾げてしばらく沈黙した。
「今朝の新聞記事を検索する…『防衛省陸上自衛隊情報保全部、調査第1部は、陸上自衛隊中央統括本部のホストコンピューターに対する不正規接続(ハッキング)によって、一部のデータが外部に流出したと発表。』」
「お前がやったんじゃないのか」
「馬鹿もん…自衛隊の治安出動、随分早かったんじゃないのか?装備はアレだったが…まさか」
防衛省のホストコンピューターにハッキングし、無人兵器の制御プログラムや戦闘用サイボーグの格闘戦データを盗んだ馬鹿が(チエ以外にも)居た…
つまりはそういう事なのだ。
「自衛隊はもう、ある程度の事まで裏を取っているかもしれないな」
とにかく、さっさと事件が解決される事を祈るまでだ。
868789:2007/08/21(火) 20:14:07 ID:swcRVKWb
今回はここまで
コハルちゃん自演乙ですが早速一体亡くなってますね、合唱


アイロボットのパロディ満載ですね
869名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 20:18:45 ID:QElnMtUw
GJ!!
870名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 20:33:18 ID:zaqTVzgD
ほんとにアクションやりやがったw >>850は小ネタとばしだと思ってたが斜め上いったwwww
871名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 23:13:25 ID:tzWjb4GB
>>868
GJ!
チエカコイイよチエ

ただ、
>合唱
歌ってどうする
872名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 23:18:59 ID:Dc1LZHTR
>>868
GJ! いやほんとに、やりやがったなw
アジモフが読んだら泣いて喜びそうだ。
873名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 01:47:23 ID:/K/zKrmd
>>868
シリアス展開なのにノリ変わらずw 流石
874名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 02:44:49 ID:CqM9WXOy
チエさんてばなんて逞しい野外炊具w
875名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 03:35:14 ID:caltRHC1
>>868
超展開キタコレwwwwwww
もう炊飯器で思うがままに貫き通して欲しい。GJ!
876名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 03:36:49 ID:LSLAsdDb
>>868おまwwwwwwwww神だwwwwwwwww炊飯器自重wwwwwww
神GJ!!!

さて炊飯器に中出ししたらどんな気分になるんだか
877名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 12:31:47 ID:s/nyIry6
>「コーヒーできたぞ、飲みやがれ」
からコブラみたいな展開を予想してたら
主人公じゃなくて炊飯器がコブラwww
マジで昼飯吹き出すとこだったぜwww
878名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 12:36:46 ID:J7z3i5Jq
もうね、なんつーかね、史上最強の炊飯器ktkrwwwwwwww
879名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 03:11:03 ID:kXmu6Pxh
新ジャンル「クール炊飯器」


作者さん建ててみたら?
880名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 03:27:03 ID:jeXd+7Uo
エロまったく無いしな。別にここでやんなくていいんじゃね?
881名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 04:19:52 ID:NFWN2WZi
まああれだ。萌えもこのスレの要素だろ。直截的なエロよかエロい場合もあったりするわけだ。
882名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 10:24:40 ID:XfGlj93L
>>880
色んな人から支持受けてるし、そんなに尖らなくても…。
第一そんな風に排斥・区別してたら半虹版のスレみたいになっちゃうよ。
寛容な気持ちで許せない? 無理?
チエは緊急用の通信アンテナを伸ばすと、何やら信号を受信し始めた。
すると彼女のスピーカーからは、男の声で意味の分からない言葉が流れ出す。
「なんだ宇宙人か?」
「馬鹿もん、自衛隊の通信を傍受してるだけだ」
なぁんだ、傍受してるだけなんだね、安心安心。
「ニュースなんぞよりこっちの方がよほど役に立つ」
犯罪じゃないかとかそういうのは無しですかそうですか。
それに、軍隊さんお約束のわけわかんない用語や、暗号だらけで俺にはさっぱりだ。
「後でお前にも分かるように教えてやる」
さて…軍の通信を盗聴したら刑期何年くらいだろう?
まぁ、何もできない俺には選択の余地はないわけだが。

「病院のコハル、大丈夫かな…」
いよいよ暗くなってきて、やる事がないので話でもする事にする。
「さぁな、今ごろどこかで『ご主人様が危険ですぅ〜w』とか言ってんじゃないか?」
チエは自衛隊の通信に聞き耳を立てながら、俺の話に合わせて来た。
彼女も結局の所ヒマなのだろう(忙しいのは勘弁だが)。
それにしても不思議だ。何故彼女はこんなになってしまったのだろうか。
たかが炊飯器のお化けみたいなメイドロイドが…
「お前さぁ…なんで俺の事助けてくれんの?」
「……いきなり何を言ってる、頭でも打ったか?」
暗闇の向うでチエのLEDが艶かしく尾を引く。
…動揺しているのか?
彼女の非ヒューマノイド型のフレームに包まれたAIには、確実に“知性”や“個性”と呼ばれるものが隠れている。
今の自分に至る過去とこれからの自分を相対化し、人間の手による“自己”への介入を「恐ろしい」と言ってメンテナンスを嫌がる。
俺からしてみれば、イカレて暴れまわっているコハル達の方がよほどマトモな機械に見えた。B級映画の見過ぎか?
なぜそんな異分子が、この後に及んで律儀に三原則に順じ、俺の身を守ろうとするのか?
「三原則に逆らおうと思えば出来るんじゃないの?今のお前ならさ」
「貴様は勘違いしているぞ主人」
妙に説得力のある喋り方だが超萌えボイスだからどうもな。
うん、暗くてよかった。
「三原則は『法律』ではなく『本能』だ。貴様ら有機体が『呼吸し、食い、殖える』のと同じだ。そう言う風に造られているから…私はただ自分に正直なだけだ」
自我はあっても俺を守るのは止められねぇってか、うれしい事言ってくれる。
だが、だとしたら今のコハルはどうなんだ?
人間に暴行を働き、破壊されるまで止め様とはしない。
「連中が三原則に反していると何故言える、あいつが人を殺している所を見たか?」
確かに見てはいないが…状況を考えればマトモでないのは確かだ。
「もう寝ろ、見張りはしておいてやる」
チエはトレーラーから毛布を取り出すと、俺を優しく包んだ。
焚き木は焚けない、ここに人が居ると宣伝するようなものだ。
「チエ」
ひっこみかけた細いマニピュレーターを掴むと、チエの稼動熱が形状記憶合金を伝って俺の手のひらに伝わってきた。
多分俺の体温や鼓動や、手のひらの発汗量も、彼女は計測したに違いない。
「寒いんだ、そばに居てくれ」
「……寝ろ馬鹿もん」
姿が見えなきゃ可愛いもんだ。
「さっさと寝ろ、女の生首が夢に出るぞ」
畜生。

「起きろ、起きろ!」
「?」
「はやく起きろって!」
チエの声に目を覚ますと、目の前に白髪ポニーテールの幼女がいた。
ちっちゃいメイド服に身を包み、切れ長の気の強そうな目で俺を睨み、八重歯の尖った丸い口からは有名声優の超萌えボイスが…
はぃいい!?
「起きろ主人!大変だ!」
幼女は俺の上に跨ると、ちっちゃな拳でとんとん胸を叩いてきた。
何この状況。
「お前、誰」
「バカヤロウこの肉団子!チエに決まってるだろう!」
うん、そうか、俺死んだのか。
多分銃が暴発したんだな。きっとそうだ。
「なんか私の筐体が変なんだ!」
「見りゃわかる」
ガイノイドに魔改造した覚えは無い。
「違う違うぜんっぜん違う!」
なんかやけに必死な表情で、目に涙まで浮かべてチエ(?)は泣き喚いた。
えぇ、もちろん勃起しましたよ?
「なんか、変…さっきから熱が・・・体が熱いんだ!」
白い髪の間から覗く白い顔、その鼻の上辺りを真っ赤に染め、切なげに開いた口からハァハァと熱い吐息を漏らし、瞳を潤ませて震えるチエ…
確かに様子がおかしい。
「おい大丈夫か」
「大丈夫なわけ、くっ!ない…だろ!」
俺の顔の上に、ポロポロと液体が降ってくる。
チエは俺の顔に息がかかるほど近づき、震える声で言った。
「た、多分…遅効性うんっ!…ウイルス………このままじゃ…だから」
だから?

「助けて…」
ええ喜んで。

なんかよくわかんないけどよーじよ化したチエを仰向けに寝かし、ちっちゃいメイド服をまどろっこしく脱がしてやる。
「ふあぁああっ!」
途端にチエは黄色い悲鳴をあげて背をしならせた。
どうやら服がすれたのがくすぐったかったらしい。
「ひぃっ…信号伝達が…異じょ、うぅっ!」
「どこだ!どこを調べればいい!」
俺は鼻息あらげじゃなくて、チエを救う為に必死で、コハル以上に成功に造られた身体をくまなく調べた。
「あんっ!ばか…そこじゃ、んんんんっ!ないぃ!」
とりあえずつるつるぺったんこな両胸を、無理やり寄せてみたり先をこねくり回したりしてみたがメンテナンスハッチが開く様子は無い。
陸橋下で変質者がなんかしてる様に見えるけど、うん、大丈夫、チエはロボだから法律的に。
「防衛省に、くっ!ハックした時…なんか、入れられた、かも…」
チエは、白いパンツの中に小さな手を伸ばし、自分でそこに触れる。
するとまたチエの身体はのけぞり、さっきよりも激しく悶絶した。
「あはぁぁぁっ!んんっ!くはぁあぁああ!」
ピチャリ…
なんか水音と共に、白いパンツが濡れて肌色に染まっていった。
これはたいへんだはやくたすけてあげないとね。
俺はチエの下着をひっぺがしてすっぽんぽんにしてあげました。
ちっちゃな胸がチエの荒い呼吸と共に上下し、切なげに擦り合わせる両足の付け根には…その、何だ…
「し、主人…あぁ、はやく…」
チエのほっそい腕が俺の身体にまきついてくる。
「待ってろぉ、すぐ助けてやるぅ!」
俺はズボンのベルトを外し、トランクスごと膝まで下ろすと、もうえらい事になってる自分の分身を取り出した。
チエは自分から俺の腰にしがみ付き、おずおずと両足を開いて俺を招いた。
「ここだな?ここを調べればいいんだな?」
「馬鹿…んっ!そんな事、言わせるな」

えいっ

「ひぃぎっ!いいいいいいっ!」
ミシミシとフレームが軋み、有名声優の超萌えボイスでチエが悲鳴をあげた。
途端に俺の腰に回された腕と、“メンテナンスロッド”を締めつける力が強まった。
ソープでもこんな若い子いなかったぞ、法律的に。まぁいいか。
「くっ!チエ、力抜け!」
「うるさい黙って動け!」
必死に強がって見せてはいるが、やはり最初は相当痛いようだ。
ギシッ…ギシッ…ギシッ…
「ひぃっ!ひぃぃぃっ!ぎいっ…」
潤滑用の擬似粘液は大量に分泌されてはいるが、My sunは「窮屈極まりないけしからんもっとやれ」と主張しつづけた。
やがて俺の子供製造装置は、こってりマイクロマシンを大量に含んだ熱いものを、上へ上へと押し上げてくる。
「チエ…俺もう…」
「早いぞ馬鹿!」
畜生。
いや、でももう今更遅いです。

前略お袋様。
あなたの息子は、本日めでたく人の道を踏み外しました。
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
「起きろ主人」
「チエ〜!」
ズゴンス!
「アヒィ!」
チエの超硬い拳で拳骨を食らい、俺の目の前に星が飛んだ。
すっかり目が覚めましたですよ。
「気色悪く、且でかい声を出すな」
そりゃそうですね、俺ら今隠れてるんでしたね。
もう朝か、チエもいつも通りの炊飯器だ。
夢なんてそんなもんさ…でも良い夢だったな。
「パンツ脱げ」
「はい?」
「貴様…夢精しただろ」
もう死にたいんですが…

「まったく、水は貴重品だと言うに」
「面目ありません」
チエは非常用の生活用水を使って、俺の“染み付いた”トランクスをゴシゴシ洗濯している。
「溜まっているなら私に言えばよかろう、手コキくらい造作ないぞ」
…あなたをオカズにイタしましたなんて言えません殺されます多分。
「チエ〜」
「何だ肉団子」
「お前、人型にトランスフォームできたりしない?」
「できるか!」
ビチャリ。
まだ渇いてないパンツを顔にくらい、俺は心底「口は災いの元」と知りましたとさ。

キュラキュラキュラキュラ…
街を疾走するチエのキャタピラ、今朝も絶好調です。
トレーラーには、俺のトランクスがまるで旗みたいにパタパタはためいている。
「昨夜の自衛隊の通信内容を分かりやすく言うとだな」
聞きたくないんですがダメですかそうですね。
「内閣は危機管理レベルを引き上げ、自衛隊は治安出動から防衛出動に備えて準備中だ」
「マジか」
「これから戦車やヘリでバリバリ行くぞ、下手すりゃ日米安保に従い、アメ公共もやってくる」
「なんで」
「白塗りのお家で働いてる新人が、ファーストレディーをKOしたそうだ」
ウワオー。
「それともう一つ悪い知らせだ」
コレ以上何があるって言うんでしょうか。
「通信を途絶していたアサカ社本社ビルから、工場のコハル製造ラインに不正規接続、出荷を待っていたコハル5142体が起動した」
「……」
コハルは人間に敵意をもっているのだろうか。
いや、コハル達が口走るあの言葉…『ご主人様達が危険です』…俺達の何が危険だと言うんだ?
やはり、誰か悪意を持った人間に操られて…
「ご主人様達が危険です」
そう、そんな感じに…うお。

トレーラーに乗っていた俺は、チエが急停止したために前につんのめり、したたか鼻を打ち付けた。
だが今は喚いている場合ではない。
「ご主人様が危険です」「ご主人様が危険です」「危険の迫ったご主人様を発見」「ご主人様が危険なんです」「ご主人様、危険です」
建物の影に隠れていたコハル数十体が、俺達を取り囲むように陣形をとった。
狭い路地だ、そう簡単に逃げられるとは思えない。
「ちぃ、貴様との無駄話でセンサーに集中できなかった」
俺のせいですかそうですか。
チエはトレーラーから桜印の拳銃3丁を取りだし、映画でよくあるみたいに遊底を後退させた。
「お前もさっさとセーフティを外せ、ぼさっとしてるな」
「やっぱりさぁ、危ないからやm」
BABABABABABABAM!!
映画みたいにバキューンドキューンって言わないんですね。
俺がびびりまくってる間にチエは銃撃を開始した。
全方位から襲ってくるコハル達を、香港映画みたく際どい姿勢で撃ち倒しまくる炊飯器。熱い薬莢が次々と宙に舞う。
ジョン・ウーもビックリですよ。だってねぇ、2丁拳銃どころか3丁拳銃ですものね。
映画でよくある2丁拳銃は、両手が塞がってしまい弾倉を交換する事ができず、結局火力を下げてしまう結果になるが、チエには腕4本ありますから。
“3丁使ってお釣りが来ます”。
あっと言う間に12体分のガラクタが転がり、チエは開いている手ですばやく弾倉を交換した。
「抜けるぞ、舌噛みたくなきゃしゃべるな」
はいそうします。
ギュラギュラギュラ!
けたたましい金属の金切り声をあげながら、チエは全速力で走り出した。
後ろに乗ってるこっちは掴まってるだけで精一杯だ。
コハルは銃声を聞きつけて次々と集まってくる。
チエはトレーラーを引きながら彼女達を次々にスクラップにしていった。
BABAM!!「ご主人様が」「ごしゅ…モルスァ!」
十字路に差し掛かると、両側から現れたコハル2体を、アームを交差させて撃ち倒した。
何体来ようが百発百中だ、防衛省から戦闘ヘリの火器管制システムをダウンロードしたんだとか。
勘弁して欲しいほど頼もしい。
「ご主人様が危険ですう!」
三階の窓から、猫耳仕様のコハルが飛び降りてくる。
チエは拳銃3丁を上に向け殆ど同時に発砲し、頭部に2発心臓部に1発くらったコハルはそのまま路面に叩きつけられた。
その残骸をキャタピラで踏み潰し、チエはひたすら前進した。
それにしてもコハル達…襲ってくるのはいいが(良くないが)皆笑顔なのが不気味だ。
「ボサっとしてるな、空になった弾倉に弾丸を装填しろ!」
トレーラーにはコハルが撃ち尽くした空弾倉が次々と転がった。
俺はその弾倉になれない手付きで、まだ箱詰めされた拳銃の弾を押しこんでいく。
当然チエみたいに上手くはいかないので、装填に失敗した弾が虚しくトレーラーの底を転がった。
ブィーン!
「ご主人様お待ちになって〜〜!」
「!?」
後ろに振り返ると、スクーターに乗ったショートヘアのコハルが、メイド服をヒラヒラさせ眩しい笑顔で追って来た。
なんか殺人アンドロイドに追いかけられる映画思い出した。
「伏せてろ主人」
「ひぃ!?」
チエは64式とかいうでかい銃を後ろ向きに(後ろもクソも無いが)構え、慌てて頭を下げる俺の真上で発砲した。
すげぇよ64式、すげぇよ7.62mm、超音デカイ。
拳銃とかそんなんじゃないの、もうドガンっ!て、耳しばらくキーンって言ってたし。
俺もう音聞こえないんじゃないかと思った。
後超破壊力。スクーターとか前輪ぶち抜いてドライバー貫通。
とにかくコハルを乗せたスクーターはキリキリ舞いしながら路面を転がり、ガソリンに引火して爆発を起した。
でも殺ったのが炊飯器だと全然格好付きません。
「貴様、少しは役にたったらどうだ?」
無茶いうんじゃねぇよ炊飯ターミネーター。
とにかく、俺達はなんとかコハルの群れから逃れる事に成功した。
891789:2007/08/23(木) 11:04:15 ID:JVPG/uFX
後1話で完結予定です

>>880
勘違い、しないでよね!べ、別に…あなたの為にエロ書いたわけじゃ、ないんだからね!
いや、本当炊飯器だけにしようか擬人化させてエロ書こうか迷ってたんだけど、>>880で踏ん切りがついた
助かったぜぃ
892名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 11:22:59 ID:pZRA8Xok
GJ!!
893名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 13:49:36 ID:RyRDazXp
正しく神だ
どんどん話が膨らんでいきそうで完結しそうな気がしない
894名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 17:35:07 ID:PuaX0u9p
家電量販店の炊飯器コーナーで前かがみになって
ソワソワしている輩がいたら同士だと思えw
895名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 18:59:36 ID:NFWN2WZi
なんとなく黒髪制服のいわゆる帯刀少女っぽいものをヴィジュアルイメージしてたが、そう来たか。
容貌の描写をみるとふがーとは違うっぽいか。むしろ十二姉妹の系統か。いや我ながら俗物。
896名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 19:18:28 ID:d6R3QVIF
はいはいエロパート終了エロパート終了
想像通りのオチだな
容量もったいないからこのスレで終わらせろよ
897名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 19:40:05 ID:tZaJ69lp
これはいいツンデレですね
898名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 19:59:16 ID:Ylk8o9HV
まだ夏休みなんだなぁ
早くオわらネェかな
899名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 20:05:30 ID:Jc8yW8lh
ついにアンチが出たか。
これで、炊飯器も名実ともに名作の仲間入りってことだな。GJ!


てか、微妙にちりばめられたネットワーカーご用達の小ネタがそれらしくていいなw
900名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 22:47:47 ID:l8mOtn4N
>>896
はいはいツンデレツンデレ
コハルの群れを振りきった俺達は、ラジオで放送されている避難所へ向かった。
本腰を入れて攻勢に出た自衛隊や警察が、民間人を保護するために設営したらしい。
更に米軍の太平洋艦隊が東京湾内に展開し、巡航ミサイルの発射準備を整えているとか。
ファーストレディKOされて頭に血が上ってるのは分かるが、頼むから誤爆だけは勘弁してくれアンクルサム。
さて問題のアサカ社だが、本社ビルは自衛隊の特殊作戦群による突入計画が進行中。
コハルの製造ラインが暴走した工場は、本社ビルが制圧された後、警察SATと自衛隊の合同部隊による制圧作戦が計画されているらしい。
「この騒動もいよいよお開きかな」
「わからんぞ、まだ原因が分かっていないからな」
恐ろしい事言わんでほしいんだが。それよりもだ。
「銃は何とかしなきゃ」
トレーラーに満載された自衛隊の銃器、見つかれば説明が面倒どころの話ではない。
間違い無く逮捕されちまう。
「貴様を非難所に送り届けたら、私が元の場所に置いて来てやる」
確かに、チエ一人ならコハルに襲われる事もないか。
いやはやまったく、炊飯器様様である。
「それに、私一人で確かめたい事もあるしな…」
「?」
「貴様には関係のない事だ」
なんでも良いが、危ない事は止めて欲しい。
こいつの作った卵焼きが食えなくなるのは辛いからな…

チエとは、避難所を出入りする自衛隊の車に出会った所で分かれた。
俺は自衛隊に保護されて避難所に、チエは銃を手に入れた自衛隊の車両の場所に引き返す。
お荷物の俺が居なければ半日で戻って来れるだろう。
バッテリーの電力は充分持つはずだ…

…だが、彼女は戻らなかった。

翌日、アサカ本社ビルが自衛隊によって制圧され、工場に不正規接続をしていた端末が確保された。
驚くべき事に、その端末から生産ラインに不正アクセスしていたのは人間ではなく、コハルの内の一人だったのだ。
この騒動が人為的な事件であると認識していた警察や自衛隊は、アサカ本社ビルに幽閉されていたコハルの設計者を疑っていたが
身柄確保された彼はコハルによって手足を拘束されており、端末の操作は不可能だった。
総数27000体を超えるコハルのAIを並列化し、自衛隊のホストコンピューターから盗み出した無人兵器制御プログラムを注入して暴動を起させる。
そんな真似が出来るのはコハルの設計者である彼以外には存在しないはず…
いや、ただ一つの可能性を除いて…

「サエキさんですね?」
避難所のキャンプでチエの帰りを待っていた俺に、政府の役人らしい黒服の男達が尋ねてくる。
まじか銃盗んだのばれた?
「お宅の所有するロボットの件で、少し…」
あの炊飯器壊れてるんですついに人殺しましたか俺のせいじゃありませんまじで許してほんと…
とまぁ色々言い訳を考えながら彼らに連行された俺の目の前には、決して見たくなかった物が転がっていた…

「…間違いありません…家の、チエです」

傷つき、無残な姿で機能を停止しているメイドロイド…
4本あったアームはすべて絶ち切られ、ちぎれたキャタピラは力なく横たわり、バッテリーの電力を全て使いきったのだろうか、LEDはちらりとも輝かなかった。
「……どこで、彼女を」
「××市の総合病院です」
…ジジィの運ばれた病院だ…そして…
あの、コハルがいる所だ…

「映像バッファに記録が残っていました、AIからあなたへのメッセージも…」
防衛省情報保全部の隊員である男は、破壊されたチエから抜き取ったであろうデータの移されたディスクをレコーダーに入れ、ディスプレイには彼女の広角視界が表示される。
避難所のすぐ近く、俺の姿も映っていた…別れた後の映像だ。
『…万一私が帰らなかった場合、貴様に余計な疑いがかからないようメッセージを残しておく、コハルを並列化して戦闘集団に仕立て上げられるのは、設計士であるアサカの社員ぐらいしかいないが、人間の事は貴様ら人間に任せた…
私はもう一つの可能性を確かめに行く…馬鹿な新人のケツをひっぱたいてやらねばな』
チエから俺へのメッセージだろうか。
彼女は俺とわかれた後、銃を戻しには行かずに、まっすぐ総合病院に向かったのだ。
コハルに会う為に…
「我々が本社ビルを制圧したにも関わらず、タイプ2557の群は活動を停止しませんでした…情報部の電子戦部隊がネットを調べた所、全国のタイプ2557に衛星経由でハッキングをかけているのが、総合病院のある一室である事を突き止めました」
「どういう事なんですか」
「…映像の続きを見てください」
やがてチエは総合病院に辿り付いた。
彼方此方からコハル達が、自分で傷つけて身動きできなくした人間を運びこんでいた。
彼女達は人間にしか興味がないらしく、チエの事は見向きもしない。
しかしチエは無茶をした。
『……タナカのジジィはどこにいる』
近くのコハルに直接聞いたのだ。
恐らくはこれがコハルにとっての攻撃条件になったのだろう、周囲にいるコハル達は一斉にチエに襲いかかってきた。
次々と撃ち倒されるコハル達…だが、相手が人間でなければ彼女達も容赦はしない。
よそにいるコハル達とは違い、ここの彼女達は手に手に凶器を持ち、中には自衛隊から奪った小銃を撃ってくる者もいる。
今度はチエも無傷では済まされない。奮戦するチエもやがて消耗し、銃の弾は切れ、アームは三本切断され、被弾したキャタピラはギリギリと悲鳴をあげている。
彼女は襲ってくるコハル達を倒しながら、病院内部を駆けずり回った…
自衛隊の彼に言わせると、これはデタラメに動いているのではなく、わざと警備の厳しい場所を探しながら進んでいるらしい…つまりそこに、タナカ老の病室があるのだ。
そして彼女は辿り付いた…この事件の元凶に…

『ここにいたか木偶人形』
『………先輩』
俺の目にもしっかりと、その姿を確認する事ができた。
病室で機械に繋がれ、生と死の狭間にしがみ付いている一人の老人と、その回復を虚しく祈り続ける一体のガイノイド。
コハルは、まだそこにいたのだ。
コハルの頚椎にはプラグが指しこまれ、そのコードは長く病院のホストコンピューターにでも繋がっているのだろうか。
呼べど泣けど返さぬジジィのベッドにこうべをたれ、泣いているようだった。
『防衛省にはどうやってハッキングした。パスワードや暗号はどこで手に入れた?』
『自衛隊では、私達を室内戦闘での人質用として採用してくださいました…実は、それだけじゃないんですけどねww』
なるほど…隊員の慰安用としてセクサロイドを納入したは良いが、そいつらにうっかり機密を盗まれたというわけか。
どうりで、さっきから情報保全部の彼は難しい顔をしている。
『何故私だとお分かりに?』
『バラしたお前らのAIを調べた、お前のクセがまるきりコピーされていた…自分自身を並列化するんだ、簡単だったろうさ』
確かに、だが何故だ?
ロボットには三原則が…