桜が舞う、暖かな季節。
新しい出会いや恋、そして友情に笑い、悲しみ。
すべてが始まり、終わるかもしれない季節。
季節といっしょに何かがやって来る、そんな気がする―――。
ToHeart2のSS専用スレです。
新人作家もどしどし募集中。
※SS投入は割り込み防止の為、出来るだけメモ帳等に書いてから一括投入。
※名前欄には作家名か作品名、もしくは通し番号、また投入が一旦終わるときは分かるように。
※書き込む前にはリロードを。
※割り込まれても泣かない。
※容量が480kを越えたあたりで次スレ立てを。
前スレ
ToHeart2 SS専用スレ 9
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1127666603/l50
3 :
1:2005/11/05(土) 02:38:46 ID:ACdge/ut0
テンプレは我楽多さんとこのものをそのまま引用しました。
乙
3おつです。
お言葉に甘えてさっそくSS投下させてもらいます。
その日の夕方。
来栖川エレクトロニクスHM開発課には2人の来客があった。
1人は眠たいわけでもないのに眠たそうな顔をしている、二十歳くらいの青年。
もう1人は緑色の髪をした、子供のようなメイドロボ。
「あ、ああの、その、主任さん、お、お久しぶりですっ」
「ども」
出迎えたのは十数人の研究員と、飄々とした面構えの、主任と呼ばれた中年研究員。
「いや、よく来たね。来てくれて嬉しいよ。立ち話もなんだし、適当に座って座って。コ
ーヒーでいいかな?」
青年があいているイスに適当に腰掛けると、隣のメイドロボがチラッ、チラッと青年の
ことを見る。
「ああ、行ってこいよ。お前にはほんの昨日のことでも、向こうにしてみれば数年ぶりな
んだ。積もる話だって沢山あるだろ」
「は、はいっ。ありがとうございます」
勢いよくお辞儀をすると、彼女はこらえきれないようにかけていく。
その先には2人が入ってきてからずっと、こちらを遠巻きにし続けていた研究員たち。
彼女がその人の輪の中に入ったとたん歓声があがって、髪も服もクシャクシャにされて
しまう。けれどその中にいる彼女はとても嬉しそうだ。
「あいつ、やっぱり愛されてたんだな」
「当然さ、あの子は大切な、我々の娘だからね」
ぽつりとつぶやいた青年の独り言に、彼の目の前に座る中年の研究員が答える。
まさか聞かれているとは思っていなかったのだろう。青年は照れくさそうに頬をかくと、
研究員へ向き直った。
「ありがとうございました。あいつとまた、会わせてくれて」
深々と研究員に頭を下げる青年。
「電源を入れたとき、何も返してくれないあいつを見て、もう二度とあいつと会えないっ
て、もうあいつの笑顔を見れないんだと思って、けど」
2人の視線の先には、依然として研究員たちに囲まれている少女がいる。
女性の研究員の中には泣き出す人までいて、もらい泣きでもしたのか彼女までベソをか
いて、大粒の涙をぽろぽろ流していた。
「お礼を言うのはこっちだよ。安心して娘を任せられる嫁ぎ先が見つかったんだからね」
差し出されたハンカチではなをかむメイドロボ。
周囲から嫌味でない笑い声が上がって、それにつられて彼女も笑顔をみせるがまた、こ
らえきれないように顔をくしゃくしゃにして泣き出してしまう。
2人がコーヒーの紙コップを片手に、そんな彼女の様子を眺めていた時だった。
「主任、来客中申し訳ありません。外線3番にお電話です」
「私に?」
「はい。姫百合さんからです。恐らくイルファの件についてではないかと」
口だけで笑みを浮かべながら、中年の研究員は電話を取ろうとする。
「あー、お邪魔ならそろそろ帰るけど」
「いや、そう長いことはかからないよ。私にも少しは娘と話させてくれ。それにこれは・・・・・・うん、そうだね。君たちがいれば、きっと興味深い話を聞かせてもらえるだろうからね」
青年がどういう意味なのかを聞こうとしたときには、中年の研究員は既に受話器をとっ
ていた。
「もしもし、珊瑚君? ああ、イルファがどうか・・・・・・そうかい、4人で一緒に。い
やいや、それは君たちが頑張ったからだよ。われわれがやったことはそのための準備を手伝っただけさ」
「貴明君と言うのかい、彼の名前は。そうかい、彼のおかげでね」
「瑠璃君がイルファの代わりに涙を? そうか、イルファがそんなことをね」
研究員は、視線を少女へと向ける。
「ああ、すまないね。うん、お嫁に行った娘がきてくれているのさ」
「ああ、そうだよ。もちろんだとも。珊瑚君や瑠璃君も、イルファと良い家族になれる
さ」
「ミルファとシルファを? それはいいね。うん、2人にとってはいい経験になるだろう」
「ほう、その貴明君が。胸を大きくしろと暴れられた時はどうしたことかと思ったけれど、
それが理由かい」
「ああ、任せてもらっていいよ。珊瑚君の家族になるのだからね。調整は万全に行ってお
くさ」
「ああ、それじゃあ」
受話器を置くと、満足げに顎を撫で回す。
「いや、すまなかったね。いま進行中のプロジェクトのことで連絡があってね。いやー、
これで今日も徹夜で調整になりそうだよ」
「そんなに忙しいんだったら、あいつにはまた今度にでも会いに来させるけど」
研究員はいやいやと手をふって、立ち上がろうとする青年を留まらせる。
口元には、先ほどからかわらない笑みを浮かべて。
青年に向き直る。
「ところで・・・・・・君はメイドロボに心があったほうがいいと思うかい?」
研究員の言う言葉に怪訝そうな表情をする青年。
けれどすぐに迷い無く答える。
「何度聞かれても、答えを代えるつもりはないぜ。それに、心がなければあんな嬉しそう
なあいつを見ることなんて出来なかっただろうしな」
青年がメイドロボのことを見つめると、彼女もそれに気が付いたようだ。
慌てて近寄ろうとする彼女を、身振りでなんでもないと青年が伝えると、またもとの話
の輪の中に戻っていった。
「だって、そっちの方が楽しいだろ」
研究員は青年に対して一つだけ頷く。
「それじゃあ、心はあるのに、涙を流せないメイドロボがいたとしたら。どうだい?」
「涙を?」
「ああ、そうさ。そのメイドロボは、いくら悲しくても涙を流すことができないのさ」
腕を組んで考え込む青年。
「そりゃ、苦しいだろうな」
一瞬だけ少女を見てから、答えを出した。
「ほう、それはどうして」
「だってそうだろ。いくら悲しくても涙を流せないんじゃ、いつか心が壊れてしまうぜ」
「そうかい?」
続けて聞いてくる研究員に、青年は腕を組んで考え込んでしまう。
何か思うところがあったのだろう。
どうやって言ったら良いか、思い悩んでいる顔だ。
「ああ、でも・・・・・・そのメイドロボの代わりに、涙を流してくれる奴がいるんなら。
心が苦しくなるようなこともなくなるだろうな。俺も、あいつが泣いたり笑ったりしてく
れるおかげで、ずいぶんと助かってる」
流石に少し気取りすぎたと思ったのか、照れて頭を下げる青年。
「・・・・・・いや、ありがとう。とても参考になったよ」
「いるのか? 涙を流せない奴が」
「ああ。けれどね、もう大丈夫さ。あの子たちならきっと良い、お互いを思いやれる家族
になれるさ。ちょうどあの娘と、君のようにね」
研究員は満足そうにコーヒーをすする。
「主任、申し訳ありません、そろそろお時間が」
と、恐縮した面持ちで若い研究員が耳打ちをしてきた。
時計を見て二言三言やりあうと、研究員は青年の方を向きなおした。
「いや、すまないね。長々と時間をとらせてしまって」
手に持っていた紙コップを机に置くと、中年研究員は立ち上がった。
「俺は別に良いけど、オッサンこそあいつと話をしなくて良いのか?」
彼は動きを止めると、ほんの少しだけ、顔に残念そうなものを浮かべる。
「しかたがない、また次の機会にするさ。近いうちにまた、来てくれるとうれしいね」
そして研究員と、メイドロボたちが作る輪の中へと入っていく。
中年研究員が声をかけると、彼女はとたんに慌てて、ぺこぺこと頭を下げ始める。どう
も彼と全然話をできなかったことを謝っているようだ。
いくつか声を掛け合うと、その研究員たちの輪も、後ろ髪を引かれながら離れていった。
「それじゃあ、ありがとうございました。お邪魔しました」
「また、また来ます。今日はもう一度、皆さんにお会いできてわたし、わたし本当に嬉し
くて本当に、ありがとう、ございましうっ、うっ、うっ・・・・・・
こらえきれず、メイドロボの少女はまた泣き始めてしまった。
最後まで賑やかだった二人の来客を送り出し、研究所はまた、いつものような喧騒が戻
ってくる。
「さて、それじゃあ急いで、ミルファとシルファの調整をやってしまおうか。新しくでき
る、お互いを思いやれる家族のためにもね」
終
これはToHeart2のSSです。
新しくスレを立ててくれた3のひと、ありがとうございました。
>>14 To Heart2のSSというより、限りなくTo HeartのSSのような^^;
何にせよ、久しぶりに浩之の話を読めました。 乙です。
>>3 スレ立て、乙!
>>1 乙
,===,====、
__ _.||___|_____||_ ,ィヽ__ r 、
.. ´ ヽ /||___|^ l⌒ '´ヽ
i ィリハヽヾヾiッ, || |口| |ハ ヽヽ!,!
.. |从゚ヮ ゚リ)玖. || |口| |−゚〈l|)リ
. ./(^(^ .//||...|| |口| |c )i| |
*⌒⌒*、. // .||...|| |口| ||し |l
.. | 〈(リノ)) i! i// ||...|| |口| || )' 新スレです
....... W|l、ヮ゚ |i)!W/ .... ||...|| |口| || 楽しく使ってね
/(^(^ // .... .||...|| |口| || 仲良く使ってね
"" :::'' |/ |/ '' " ::: ⌒ :: ⌒⌒⌒ :: "" `
:: ,, ::::: ,, ; ̄ ̄ ̄ "、 :::: " ,, , ::: " :: " :::: "
>>1 スレ立て乙です。
>>14 素直な気持ちを言わせてもらおう。
感動した!
>>14 GJ!!
そういえば「キミはロボットに・・・」っていうセリフでてきたのって、1番最初のアニメだけだっけ?
>18
ゲーム本編で出てるはず。
どこをどう走ってきたのかも覚えていない。
気づけばあたしはそこにいた。
一度はあきらめたはずなのに。
もう気にしないって決めたはずなのに。
浮かんでくるのはあいつの笑顔。
あきらめられるはずがない。
気にしないなんてことができるはずがない。
あいつを忘れることなんか絶対にできっこない。
…だから。おじいちゃんからお見合いの話が出た時、あたしは
心の底から嫌だと思った。
もう話ができなくなるのは嫌。
顔を合わせることさえできなくなるのは嫌。
一緒にいられなくなるのは、絶対に嫌だ。
――たかあきが、好きだから。
どうあがいたって消すことなんかできやしない。
桜が舞い散る風景も、二人して買った大きなアイスも。
たかあきが取ってきてくれたあのぬいぐるみも。
全部が、あいつとの想い出。
――やっぱり、終わっちゃうのは嫌だよ…
あたしの分身の人形をポケットから取り出して見つめる。
こんな時でもにこにこ笑っちゃって。あたしはこんなにも泣きそうだっていうのに。
あんたの相方も同じようににこにこしてるんでしょうね。
あいつのカバンの中か、もしくは制服のポケットの中で。
ねえ、たかあき。
あんたはあんなになったあたしにも優しかったよね。
無口で、無表情で、無愛想なあたしにも。
あんなことがあっても…まだあたしを気にかけてくれてるんだよね。
本当はそれが嬉しかったんだ。
自分から断ち切ろうとしたくせに…未練がましいと思う?
あはは、ばかだよね。ほんと…ばか。
夜空を見上げる。
日はとっくに沈んじゃって、丸い月が浮かんでいた。
伝説、か…今でもあたしは信じてるんだろうか?
おじいちゃんのホラかも知れないじゃない。
たかあきも真に受けて乗っちゃってさ。えへへ、あたしもだけど。
ここでガラス越しにお互いの相方にキスさせたっけ。
だけど、ホントは。人形同士じゃなくて。
あたしはきっと、きっと…
…あいつは、来るだろうか。
あたしはきっとあんたが手を差し出しても素直に帰ろうとはしない。
あたしは素直になれないから、きっと思ってることの逆ばっかり言うんだ。
だけど、それでもあたしの手をぎゅっと握って離さないでいてくれるなら。
あたしは、もう一度やり直したい。
また一緒に桜を見たいし、水族館にも行きたい。
ううん、なんでもいい。あたしを許してくれるんだったら。一緒にいてくれるなら。
だから、たかあき。どうかもう一度、この場所に来てほしい。
夕日は沈んでしまったけど。あなたが来るまで、あたしはずっとここにいるから。
まだ遅くなんかないから。
屋上にいたあたしを見つけ出したあの日のように。ここにうずくまっているあたしを
見つけ出して、闇の中から引っ張り出してほしい。
あたしに、最後のチャンスをください。
あなたの前で素直になれる、最後のチャンスを。
由真SSです。モノローグ風に。
郁乃で書くことが多かったので新鮮ではあったんですが
出来は…orz
>>24 GJ
由真はなんか使い所難しいキャラだよね。
由真の一人称は新鮮だ。
「――説明してもらいましょうか」
腕を組み、仁王立ちで俺を見下ろすタマ姉の声には、一片の容赦もない。
返答次第では命すら奪うと、怒りに燃える瞳が宣告していた。
恐怖のあまり腰を抜かした俺は尻餅をついていて、タマ姉を足元から見上げる
格好になっている。タマ姉は制服姿なので、短いスカートであることを考えると
いささか際どいアングルなのだが――
「どこを見ているの、タカ坊」
そんなところを眺めている余裕があるはずもなく、俺は冷や汗を浮かべながら
タマ姉の手元を凝視していた。
視線の先には、飾り気のない黒い財布がある。
タマ姉本人のものではなく、俺のものだ。
「もう一度訊くわ」
タマ姉は組んでいた腕をほどいて、財布を持っているのと逆の手を俺の眼前に
差し出して、
「これはどういうこと?」
差し出されたタマ姉の手には、一枚の紙が握られている。
よく見てみればそれは紙ではなくて。
光沢のある表面には何かが印刷されていて。
そして、
俺はそれに見覚えがあった。
ごくり、と喉を鳴らして唾を呑み込む。
「ど、どういうことって言われても、」
「……いい、タカ坊? 言い訳をするたびに一つずつ罪が増えるのよ? 今のが
一つ目」
あれもカウントに入るのか。
「い、言い訳もなにも、俺はやましいことなんて、一つも」
「五つまでは見逃してあげる。それを超えたら、……どうなるか分かっているわ
よね? ……二つ」
お気に召さない答えもカウント対象らしい。そんな理不尽な。
「答えにくいなら質問を変えましょう。……これは、どちら様?」
氷点下だった声音が、絶対零度に近づいていく。
恐ろしい。
恐怖で泣きそうになったのは、記憶にある限りでは初めてだ。幼少時に体験し
ていたら、トラウマになっていたかもしれない。いや、現在でもそれは変わらな
いかもしれないけど。
タマ姉が差し出したのは、一枚の写真付きシール――いわゆるプリクラだった。
プリクラには俺と、外にはねたショートヘアが印象的な女の子が顔を突き合わせ
て写っている。
見るからに「どんな顔をして写ればいいのか分からない」という顔をしている俺。
その隣で「しょうがないから付き合ってあげるわよ」と言いたげな複雑な表情
をしている女の子。
「と、十波、由真、ってヤツだよ」
「クラスメイト?」
「い、いや、隣の、クラスだけど」
三つ。
「……仲はいいの?」
「そ、……それほどでも、ないんじゃないかな……?」
四つ。
「二人とも楽しそうね」
「そっ、」
それのどこが楽しそうに見えるというのか、むしろこっちが教えて欲しい。件
のプリクラは、どう贔屓目に見ても呆けて写っているようにしか見えない。これ
に比べたら、お化け屋敷に無理矢理引きずり込まれるこのみの方が楽しそうに見
える。
経緯を簡潔に説明する。
昨日、例の如く由真のヤツに勝負を挑まれた俺は、学校の帰りにゲーセンで熱
い戦いを繰り広げたのだ。パズルゲームに格ゲー、音ゲー、エアホッケーと、財
布にダメージを与える虚しい戦いは続く。
そして激戦の末、辛くも勝利を収めたまではよかったのだが、
『ま、また負けた……』
『むぅ〜、これで勝ったと思わないでよね……』
『……だけどまあ、ぼんくらのたかあきにしては頑張ったじゃない』
『ほ、褒美に、コレ一緒にやってあげるから感謝しなさい』
ワケの分からない理屈をまくしたてられた挙句、あれよあれよという間にゲー
センの一角に連れ込まれたのである。
ワケの分からないうちに写真をとられ、ワケの分からないまま半分を押し付け
られて、それを財布に入れっぱなしにしておいたら、タマ姉に見つかった。
あまりの迂闊さに、自分自身の馬鹿さ加減を呪うことしかできない。
「と、とにかく! ホントに、絶対、タマ姉が誤解してるようなことはないから!」
「……ふうん。タカ坊は、私が何を誤解してるっていうのかしら?」
やぶ蛇である。
もはやカウントを声に出して数える必要はない。
タマ姉のカウントが順調に積み重なっているのは明らかで、たとえ心の声は聞
こえなくとも、こめかみに浮かぶ青筋の数を数えるのは簡単なのだ。
「どうなの? 私が何をどう誤解しているのか、言ってみなさい」
タマ姉が。
俺と由真の関係を。
友人以上のものであると。
誤解している。
そんなこと言えるはずがなかった。
しかも相手にはプリクラという確固たる証拠がある。
無実を証明するためには、こちらがそれに対する反証を突きつけなければなら
ない。それができない以上、俺にできるのはガクガクと震えながら刑の執行を待
つことだけだ。が、
「私もやるわ」
「――――は?」
間抜けな息が漏れる。
「もう、なんて顔してるの」
呆気に取られて口を開け放ったままの俺の頭の上に、
「私もタカ坊と一緒にコレを撮るって言ったの。すぐに出かけるから支度なさい」
ぽん、と財布を乗っけたタマ姉は、躊躇いなくとんでもないことを口にした。
だけど、俺の記憶が確かならば、
――タマ姉って、ゲーセン嫌いじゃなかったっけ――?
そういうわけで、ショッピングモールにやってきた。
どでんと構えられたビルは、三階まですべてゲームセンターになっていて、こ
のあたりでは最大規模のアミューズメントパークだ。四階にはボーリング場もあ
ったりして、他にやることがないときに「とりあえず行っとくか」的なノリが許
される場所でもある。まあ、学生にとっての気楽な憩いの場の一つと言って間違
いないとは思うのだが、
「ここ、ね」
建物を見上げるタマ姉の表情は真剣そのもので、戦場に赴く武将のような雰囲
気を身にまとっていた。
タマ姉は私服に着替えている。つい先ほど、「ゲームセンターに制服で行くの
は不良よ」などと聞きようによっては冗談みたいなことをのたまっていた。そん
な一つ一つの言葉を聞くに、本当にタマ姉にとってはゲーセンが異世界なんだな
あ、なんて思ったりして。
「……なんだか楽しそうね」
「い、いや、そんなことないって」
「ま、いいわ。行くわよ、タカ坊」
威勢のいい態度とは裏腹に、タマ姉の表情は晴れない。どことなく上の空とい
うか、ふくれっ面をしているというか、率直に言えば不安げに見える。だが、こ
んなときでも弱味を見せようとしないのがタマ姉であり、
「ほら、もたもたしないの」
こんな風に強がってこちらの手を引いてみせるのが、俺の一番大切な人なのだ。
タマ姉と正式に付き合い始めたのが、ひと月ほど前の話。すっかり風邪も治っ
て絶好調のタマ姉の勢いは留まるところを知らない。
恋人と姉弟と幼馴染を足して、割らずにそのままにしたような関係は相変わら
ず続いている。もっとも、それぞれの割合は時と場合によって目まぐるしく変わ
り、今みたいに姉として振る舞ったかと思えば、
「た、タマ姉、くっつきすぎ」
「べつにいいじゃない」
こうして急にべったりと甘えてきたりするので、振り回される俺は困るやら恥
ずかしいやら。タマ姉曰く、「十年分も溜めてたんだから、それくらい付き合い
なさい」ということらしい。こういうのも決して嫌ではないが、人目をはばから
ないのにも限度がある。
「ふふ、青くなったり赤くなったり忙しいわね」
自分がそうさせているくせに、そんなことを言うタマ姉。それでも、その様子
があまりにも嬉しそうだから、これでもいいかな、なんて思ってしまう。バレバ
レなのは分かっているが、できるだけ顔の赤味を見られないよう顔を背けた。
「と、とりあえず、目的地はそこだから」
指差した先には、プリクラが所狭しと並んでいる。
「――え”」
腕を絡ませたまま、タマ姉が固まる。
無理もない。
賑やかなゲーセンの飾り付けの中にあって、ひと際きらびやかな一角。昔なが
らの『ゲームセンター』を想像していたであろうタマ姉の驚きはよく分かる。あ
あいう陰鬱なイメージとは真逆というか、むしろかえってタチが悪いというか。
「……これ、なの?」
首肯してから改めて見てみると、女子学生があちこちで黄色い声をあげていた。
「……最近、これがメインのゲーセンも増えててさ。ここも、この階はほとんど
プリクラの筐体しか置いてないんだよ」
だから女性比率が異常に高いわけで、俺にとってはまさに鬼門と言える。「男
性のみのお立ち入りはご遠慮ください」という注意書きが居辛さを増していた。
とっとと用事を済ませて、とっとと帰りたい。それはきっと、隣で固まってい
るタマ姉も同じはずだから、とりあえず手近なのを選んでしまおう。
「あれにしよう」
「……え、ええ」
タマ姉を先導し、ビニールの覆いの中に潜り込む。
耳のすぐ傍で、ほう、というため息が聞こえ、
「……こんな風になってるのね」
タマ姉は、初めて見る覆いの内側を、興味津々といった様子で眺め回す。根が
好奇心旺盛なタマ姉のことだ。未知のものへの不安は、きっかけさえあればあっ
という間に飛び越えてしまうのだろう。
「これをどうするとシールになるのかしら」
「えっと、まず好きなフレームを選ぶんだ」
すべての原因になった財布から硬貨を取り出し、投入口に入れる。
目の前の画面が切り替わり、
「タマ姉、どれにする?」
「私が選んでもいいの?」
そう言いながらも、既にタマ姉の目は画面に釘付けになっていた。このときば
かりは立場が逆転して、まるで自分が年上になったような感覚を覚える。きらき
らと瞳を輝かすタマ姉の表情が、思い出の中にある映像と重なる。
遠い日の記憶。
長いこと気付かなかった初恋の人の横顔。
それを、これから先も、ずっと眺め続けていたいと思った。
「――――タカ坊?」
「どおぅわあぁぁ!?」
狭い覆いの中いっぱいいっぱいまで飛び退く。
焦った。
タマ姉に見惚れていた。
だが、
「ど、どうしたの。急に大声を出して」
「な……、なんでもない、なんでもない、から」
そんな恥ずかしい台詞は言えない。それを聞いたタマ姉がどんな顔をするのか
少しだけ興味はあったが、まだまだそこまで俺の精神は成熟していないのだ。
「決めたわ」
これ、とタマ姉が指差したのは、下側の真ん中でデフォルメされた黒猫が不敵
な笑みを浮かべているフレームだった。不吉に見えなくもないが、これほどタマ
姉らしいチョイスは他にないかもしれない。
パネルを操作して、希望のフレームを選択する。画面には選んだフレームがそ
のまま表示され、両側から黒猫を挟みこむような形で俺たちが映っている。
「画面に出てるのが、そのままシールになるから」
本当は、ここにペンで色々と書き込んだりできるのだが、あまりややこしいこ
とをしても仕方がないので、シンプルに写真だけ撮ることにしよう。
「撮影ボタンを押すと秒読みが始まって、すぐにできるから」
「了解。タカ坊、準備はいい?」
元より整えるような髪ではないし、画面を見る限りではおかしなところも見当
たらない。襟が乱れていたのをさっと整えて、
「うん。いつでもいいよ」
「……押すわよ」
ほんの半瞬だけ指先を揺らし、タマ姉が撮影ボタンに触れる。
『――それじゃあ撮影しまーす』
機械の音声がスピーカーから聞こえてきて、カウントダウンが始まる。
『さん』
ちょっとだけ緊張する。
由真と撮る前は、確かこのみに付き合わされたんだっけ。
それもかなり前の話だ。
『にい』
それほど慣れていない人間にとって、このカウントダウンはやたらと長い儀式
のように感じる。証明写真を撮るときに、必死でまばたきをしないよう気合を入
れるのと同じだと思う。
『いち』
きた。
「タカ坊」
「え?」
名を呼ばれると同時、肩を掴まれ引き寄せられた。
そして、
「んっ!?」
フラッシュがたかれる。
――って、え?
気付くと、唇に柔らかいものが押し付けられていた。
なにがなんだか分からない。俺の前髪と、タマ姉の前髪が触れ合っている。
「――――」
理解が追いつくまでの数秒間、俺は完全に停止していた。
全身に感覚が行き渡っていないような、ふわふわと浮いているような。
それなのに、唇だけが、やたらと熱くて、
「――ごちそうさま」
硬直を解いたのは、タマ姉のそんな台詞。
「あ、え、う、あ」
「どうしたの? タカ坊?」
言語障害に陥った俺に、タマ姉が意地の悪い笑みを向けた。吊り上げられた赤
い唇から覗く、赤い赤い舌。その舌がちろちろと唇を舐める様子を、呆然と見つ
めている。
「うん。なかなかいい出来」
動かすのもままならない首をギチギチと動かす。満足そうに頷くタマ姉の視線
を追った先には、
見間違えようもない衝撃映像が、大きな画面に映し出されていた。
「……あら、こんなに早く出来上がるのね」
機械の声が何事かを喋り、吐き出されたシールをタマ姉が手に取る。
タマ姉は、そのシールと、目の前の映像と、固まったままの俺を見比べて、
「――浮気防止のお守りよ? ね。タ・カ・坊」
一枚だけ剥がしたシールを、そんな言葉と共に、俺の額に貼り付けた。
まあ、なんていうか、その。
今日一日を振り返ってみれば分かるように。
浮気しようなんていう気が起こるはずはないのは、言うまでもないのである。
−了−
というわけで、タマ姉SSを投下させて頂きました。
連投規制がキツイですね……。
失礼な言い方かもしらんが、
写真を撮る瞬間にタマ姉がキスをするのを他のSSで見た事がある。
まぁベタっちゃあベタだが
この程度のネタでさえ、ぱくり疑惑ですか。
>39
いや、そういう事じゃなくて、他のSSにあったよというのを言いたかっただけなんだ。
気分悪くしたんならスマソ
>他のSSにあったよというのを言いたかっただけなんだ
こういう発言自体が言外にぱくり疑惑を匂わせてるようなものだ。
まあ落ち着こう。作家は何人もいるんだから
似る部分が出るのは当たり前(言うまでもないが)
また荒れるのは避けたい…
>>37 タマ姉SS乙でした。
浮気防止としちゃ最強かも知れんw
テンプレに「荒れそうな話題はスルーで。いちいち噛み付かない。」っての入れて欲しかったな。
38はともかく、39から41は明らかに無意味。放っとけばそれで終わったのに。まあ俺も大概だが。
>>44 スマンw
虹と河野家マーダー?
虹の続き読みたいよ…。・゚・(ノд`)・゚・。
「タカ君…、一緒に死んでくれる?先に行くね…。」
とか言って即リスカ。
虚ろな眼で笑い続ける黒このみの夢を見た。
激萌えだな。
最近「このみ=黒」という式が脳内で定着しつつある
俺がいます。違う、違うんだああorz
>「このみ=黒」
違うに決まってるだろ。何言ってやがる。
「このみ=M性奴」
>>「このみ=黒」
おまえは何言ってるんだ?
黒=このみだろ?
このみの下着って黒だったのか!
どっか行け
いいツンデレ発見
河野家期待!
河野家はきっと今日だ!と期待してみる
>>37 久しぶりに、タマ姉SS読んだ気がする。 乙!
で、そろそろ、河野家喜多ーーー!!!と叫びたい頃合いですね。
まだぁ〜?
57 :
名無しさんだよもん:2005/11/07(月) 13:01:52 ID:vfvpW5XU0
>>56 おい!!!!!111
一瞬期待しちゃっただろうがぁぁ!!!!!!!111111111111
そうか。FSM氏の作品だったか >穴穴
長編が全く来ないな。早く続き読みたいorz
久しぶりのミステリ研。今回は河野家メンバーズとの合同企画とのことで、るーこ、姫百合姉妹、
優季が参加することになった。
俺たちはお宝探しに裏山の神社へ。社殿の中で花梨が見つけたのは高枝切りバサミだった。多分
神社の備品だと思うのだが、花梨はこれが曰く付きのモノかも知れないと言う。じゃあどんな曰くが
あるのかという俺の問いに、優季、花梨、珊瑚ちゃんがそれぞれ考えついた話を語るのだけれど、
はっきり言ってどれもムチャクチャなものばかり。やっぱどう考えたってただの備品だよ。
「ほな、ウチこっちやから」
裏山を下りて夜道の途中、珊瑚ちゃんは自分の家の方向を指さした。今頃イルファさんが夕食を
作って珊瑚ちゃんの帰りを待っているはずだから、今日はさすがに俺の家に連れて行くわけにはいか
ない。とは言え、ここから家までの道を彼女一人で歩かせるのは危険だ。ここは俺が珊瑚ちゃんを
家まで送るべきだろう。
う、でもそうなると、瑠璃ちゃんやるーこたちはどうしようか? 例え4人連れとは言えこっちも
女の子だけだし、でもこれだけの人数なら危険度も少ないかな。ああでもやっぱり……
「それなら貴明さん、みんなで珊瑚ちゃんをお家まで送りましょうよ」
まるで俺の悩みを見抜いたかのごとく、優季がそう提案してくれた。成る程、確かにそれが一番だ。
「あ、でもそれやと……」
「うう……」
珊瑚ちゃんが瑠璃ちゃんを困った目で見、瑠璃ちゃんが表情を暗くする。ああ、二人は今ケンカ中
だから、瑠璃ちゃんを家に入れるワケにはいかないと言うことか。
「ほ、ほなウチ先に帰ってるから……」
そう言って俺の家へと歩こうとする瑠璃ちゃんの手を掴んで俺は、
「だったら、マンションの入り口までってことで、な?」
「貴明……。そ、それでええ、さんちゃん?」
「うん、そうやね。それならお願いしてもええかな?」
嬉しそうに両手をポンと合わせる珊瑚ちゃん。それを見て瑠璃ちゃんも笑顔になった。
「うん、いいよ。さ、行こうか」
暗い夜道も、みんなでお喋りしながら歩けば怖くはないし、長い道のりもあっという間である。
珊瑚ちゃんたちが住むマンションが見えてきた。
「うわーっ! 珊瑚ちゃんたちのマンションって凄いねー!」
花梨が驚きの声をあげる。まあ確かに普段の珊瑚ちゃんたちと、あのゴージャスなマンションは
イメージが結びつかないよな。俺も最初はびっくりしたし。
「珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんって、凄いご家庭なんですね」
「家庭って言うか、さんちゃんが凄いんや。何せ来栖川エレクトロニクス、次世代アンドロイドの
基本設計者やからな。このマンションかて、さんちゃんのために来栖川が用意してくれたんや」
まるで自分のことのように自慢げに語る瑠璃ちゃん。やっぱケンカしてても瑠璃ちゃんにとって
珊瑚ちゃんは自慢の姉なんだな。
などと言ってる間にマンションの入り口前に到着。するとそこには……
「お帰りなさいませ珊瑚さ……、る、瑠璃様?」
「イルファ……」
「いっちゃん、ただいま〜」
イルファさんは多分、珊瑚ちゃんが帰ってくるのをずっとここで待っていたんだろう。だけど瑠璃
ちゃんが一緒に来るだなんて想像もしていなかったに違いない。イルファさんは瑠璃ちゃんを見て、
明らかに動揺している。一方の瑠璃ちゃんは、ばつが悪そうに顔を背ける。
「今日はミステリ研究会に珊瑚ちゃんも参加してもらってね、帰りが遅くなっちゃったんだ。ゴメン
ねイルファさん、待たせちゃったみたいで」
「……え? い、いえ貴明さん謝らないでください。そうですか、ミステリー研究会ですか」
あ、イルファさんそれNGワード。
「『ミステリー』じゃなくて『ミステリ』だよイルファちゃん! 語尾は延ばさないの!」
「は、はい申し訳ございません花梨様! 直ちに言語データベースを修正します」
すかさず入る花梨のツッコミ。にしても、何故花梨はここまでこだわるのか未だに解らん。
「とにかくそう言ったワケで、遅くなったからみんなで家まで送ろうってことになってね」
「それで皆さんお揃いで。わざわざありがとうございました」
俺たちに頭を下げるイルファさん。まるで珊瑚ちゃんのお母さんのようだ。
「じゃあそういうことで、俺たちはそろそろ帰るよ。いい、瑠璃ちゃん?」
「え? あ、う、うん……」
暗い表情で肯く瑠璃ちゃん。やはりこれ以上この場にいるのは、今の瑠璃ちゃんにとっては苦痛
なのだろう。
「うん、ほな瑠璃ちゃん、貴明、るーこ、優季、また明日な〜」
「ああ、また明日」
他のみんなも別れの挨拶をして、珊瑚ちゃんとイルファさんが見送る中、俺たちはマンションを
後にする。だけど瑠璃ちゃんはマンションの敷地を出たところで立ち止まり、そして振り返って、
「――イルファ!」
「瑠璃様?」
「イルファ……、その……、さ、さんちゃんのこと、よろしくな……」
「瑠璃様……。
はい、お任せ下さい。瑠璃様がお留守の間は、この私が責任を持って珊瑚様のお世話を致します」
微笑むイルファさん。更に、
「それから私、珊瑚様に喜んでいただけるよう、お料理、頑張ってますから。
もしかしたら瑠璃様が帰ってこられたとき、私の作るお料理の方がおいしいってことになってる
かもしれませんよ」
「な!? い、言うたなぁイルファ!
人がちょっと頭下げたからって調子に乗るなぁ! 絶対負けへんもんーっ!!」
多分、以前瑠璃ちゃんが珊瑚ちゃんに「イルファの作るまずい飯」と言ったのが引っかかっていた
んだろうな。イルファさんが瑠璃ちゃんを挑発してるよ。
「さっさと帰るで貴明!」
大股でノシノシと歩く瑠璃ちゃん。思わず笑いそうになったが、蹴られないために必死で堪える俺
だった。
「ただいまー」
我が家に到着。腹減った。晩ご飯もう出来てるかな?
居間に行くと、タマ姉、このみ、由真が並んでソファーに座っている。だけど様子が普通じゃない。
このみは何故か暗く沈んでおり、両脇のタマ姉、由真が困った顔。どうしたんだ?
「ただいま」
もう一度言ってみる。
「あ、お帰り。どう、何か収穫はあった?」
タマ姉が俺たちに気付き、今日の部活について聞いてきた。
「うんにゃ、何にも。見つけたのはただの高枝切りバサミだけ」
「ただの高枝切りバサミとはまだ決めつけらんないよたかちゃん。あの高枝切りバサミについて、
明日から徹底的に情報集めだよ!」
か、花梨、まだ調べるつもりかよ……。
「ところで、どうかしたのタマ姉? このみ、落ち込んでるみたいだけど」
「うん、それがね……」
「河野家メンバーズのことを喋っちゃった?」
「う、うん……」
肯くこのみ。
「中学時代の友達に喋っちゃったんだってさ。もう、いきなり規則違反だなんて……」
困り顔でこのみを見る由真。このみは済まなさそうに身を縮める。
中学時代の友達? ま、まさか……
「こ、このみ、中学時代の友達って、もしかして、あの二人?」
「うん、ちゃるとよっち……」
うわ、よりにもよってあの二人かよ。俺あの二人苦手なんだよなぁ。
「メンバーズのことってまさか、私たちが同居していることまで喋っちゃったの、このみちゃん?」
花梨の質問にこのみはしばし無言。そして小さく肯いた。
「同居のことまで、ですか……、さすがに問題かも知れませんね」
優季も眉をひそめる。
「な、なぁこのみ、そもそも何で喋っちゃったんだよ?」
「う、うん……。
あのね、二人と一緒にヤックで話してたら、いつの間にか話題がタカくんのことになって、そし
たらよっちが『センパイとはその後どうなってるのか正直に吐け』って詰め寄ってきて、わたし、別
に何もないって答えたら、『何モタモタしてんのこのみ! 自分の方から積極的にいかないとダメ
だよ! 家も近いんだし、思い切って夜這いくらいすれ!』なんて言いだして、だからわたし、つい
言っちゃったの、『タカくんの家にはタマお姉ちゃんたちがいるからそんなこと出来ない』って。
そしたら、その後はそっち関係の質問責めにあって……」
タヌキっ子の方は口が達者だから、多分言葉巧みな誘導尋問で根ほり葉ほり白状させられたんだ
ろうな。昔からこのみはウソつくのが苦手だし、仕方がないと言えばそれまでだけど……。
だが俺は、むしろその後の方が気になる。あの二人がこんな話を聞いて、黙っているだろうか?
「それであの二人、このみの話を聞いて何て?」
「それがね……」
※ここからは回想でお送りします。
「ほほう、これは由々しき事態ですなぁ、山田さん」
「……まったくだな、吉岡さん」
「センパイの家に6人の女の子が同居中。しかも全員センパイに気があるようだ、と」
「……まさにハーレム」
「更に恋のライバルとして、センパイの同じクラスの委員長、それから同居中のコの双子の姉もいる、
と。何かあたしらが知らない内に、センパイってば凄いことになってたんだね。
総勢8人の恋敵かぁ。こりゃこのみも大変だねぇ」
「……バトルロワイヤル」
「そんな無謀な戦いに挑まなければならない親友のために、あたしたちが出来ることって何だろうね、
山田さん?」
「……まずは、敵を知ること」
「確かにその通りだね。今のところあたしらが知っているのは、その内一人があのBKBさんだって
ことくらいだからね」
「BKB?」
「バン、キュ、ボンの略。あの反則お姉さんのこと」
「……姉御のことか」
「あのお姉さんのことだってまだよく知らないし、他の7人についてもしっかり調べないと、対策の
講じようがないっしょ。ここはやはり……」
「……うん」
「え? え? よっち、何するつもりなの?」
「やはり、実際この目で確かめないと始まらないね。
と言うワケでこのみ、明日の放課後、センパイの家に遊びに行くからよろしく伝えておいてね☆」
「え、ええ〜っ!?」
※回想を終了します。
「な、なに〜っ!? あ、あの二人が来るって、そう言ったのか!?」
「う、うん……」
「うええ、マジかよ……」
「ご、ごめんねタカくん。わたしがちゃんと断らなかったから……」
このみが目に涙を溜めて俺に謝っている。
「ま、まぁこうなったら仕方がないな。そこまでバレてるならどうしようもないし、まぁせいぜい
覚悟しておくさ。だから泣くな、このみ」
このみの頭をポンと軽く叩く。
「うん……タカくん」
「ところで、確認したいことがあるのだが」
「何だ、るーこ?」
「うーこのの規則違反だが、もう罰は与えたのか?」
罰? ああ、アイアンクローの刑か。
「いいえ、まだよ」
「ならば速やかに執行すべきだ。そうだろう、うータマ?」
自らも”るー”の掟を遵守しているるーこらしい指摘だ。
「ま、まぁそれはそうね。それじゃ……」
「ちょ、ちょっと待ってタマ姉! まさかマジでこのみにアイアンクローを食らわす気かよ!?」
「るーこちゃんの言うとおり、規則違反は誰であれ罰しないとね。大丈夫よタカ坊、ちゃんと……」「まさか、手加減するつもりはないだろうな、うータマ?」
るーこの目が鋭く光る。
「もし手加減するつもりなら、それは罰しないのも同じこと。ならば今度はうータマが罰せられるぞ。
そうだろう、うーゆま」
「ま、まぁ、そうなるね」
「ん? その場合誰がタマ姉にアイアンクローをするんだ? まさかタマ姉が自分で自分にアイアン
クローなんてことないよな?」
「そんなマヌケなことするわけないじゃない。環さんが規則違反した場合の罰則もちゃんとあるわよ、
ホラここ」
由真は例の規則書を取り出し、一点を指さす。そこにはこう書いてあった。
向坂環メンバーが規則違反をした場合、その時点から24時間、
河野貴明メンバーとの一切の会話及び接触を禁ず。
「い、イヤぁぁぁぁぁ!! それだけはイヤ!!」
その一文を読んだ途端、タマ姉が半狂乱に陥った!
「た、タマ姉!?」
「タカ坊と話せないなんて! タカ坊に触れないなんて! そんな、そんなの私耐えられないわ!!
私にとっては死の宣告と同じ、いいえ、それ以上の苦しみよ!!」
「環さん……、こんな無情な罰を考えたあたしを憎んでくれても構いません。
でも、規則を重んじてこその河野家メンバーズなんです。そのためには、規則に違反した者が自責
の念を抱く程の重い罰が必要なんです。解ってください、環さん!」
何故か半泣きでタマ姉に訴えかける由真。
「……ええ、確かに由真の言うとおりね。ごめんなさい取り乱しちゃって。私らしくもない。
そういうワケだから、このみ、悪いけど本気でやるから、覚悟しなさい」
タマ姉の目つきが変わった。あれは間違いなく本気の目だ。
「う、うう、タマお姉ちゃん……」
怯えるこのみが後ずさる。しかしタマ姉は冷酷にもじりじりと詰め寄る。
や、ヤバイ。このままだとこのみの命に関わるかもしれない……、何とかならないか、考えろ、
考えろ俺……………………。
ふと、俺は由真が持ってる規則書を見る。…………あ、そ、そうか!
「ちょっと待ったぁ!!」
「何よたかあき?」
「規則書にはアイアンクローをいつやるかなんて記載は無いぞ、つまり今でなくてもいいはずだ!」
「ま、まあ確かにそうだけど……」
「だったら、一日、そう一日待ってくれ! 構わないだろ、一日くらい延ばしたって!?」
「まあ、ね……」
「構わないだろ、るーこ?」
「確かに、掟の中に時期に関する記載が無い以上は仕方がないな」
「でも一日延ばすのに何の意味があるの? もしかして何か企んでるワケ?」
由真が疑わしげに俺を睨む。
「い、いや別に……。このみにも覚悟を決める時間が必要かなと思っただけで……」
勿論ウソ。企んでることはある。
一日後、つまり明日は、あの二人が我が家にやってくる。そして俺の読み通りなら、きっと何とか
なる。うまくいってくれよ。
つづく。
どうもです。第31話です。
12話のあとがきでは「よっちちゃるは登場させない」と書いたにも関わらず、
「あたしたちを河野家に出さないなんて、そんなのないっしょ!!」
「……出せ」
と訴える、作者の脳内妄想よっちちゃるに負けてしまいました。<(´・ω・`)
あんたってやつぁ〜
GJだぜ・・・・
おぉ、河野家キテタ――(゚∀゚)――!!
ついにタマ姉が絡んできた…待ってました!
ついでに由真がやってたギャルゲーのラストも気になる!これは俺だけか!
ブラウニッシュといくのんSSも期待〜
予想外に書き込みが少ないな。
31話にして全く収集を見せない河野家。
恐らくどたばたしたまま完結する予感がしてきましたが
(もしくは全員のEND書くとかね)
続き楽しみにしています。全員のEND書いてもらいたいなぁ…w
>>69 あいも変わらずGJでアリマス。
…ぶっちゃけアニメやら連載マンガやらの商業展開モノなんぞより
ダンチで面白ですわw次回を楽しみに待っておりますよ!
>>69 河野家喜多ーーー!!!
しかし、タマ姉の罰則が^^;;
いっそ、女のメンバー全員に対して
「24時間、 河野貴明メンバーとの一切の会話及び接触を禁ず。」
でも良かったんじゃないのか^^;
由真や瑠璃ちゃんは「そんなん平気やもん」とか言いそうだけど
何やかんやで順守しそうだし。
なんか、河野家を読んでると、フリーのノベルソフトか何かを使って
抜き出した画像と音楽もつけて、To Heart2外伝としてプレーしてみたい
衝動に狩られますなw
キャラの音声はしょうがないけど、その辺は脳内補完ということで。
では、また来週を楽しみにしてます。
ご負担でしたら、お休みになってもOKですので、無理のない程度にお願いします^^;
>>69 GJ!
>>74 >なんか、河野家を読んでると、フリーのノベルソフトか何かを使って
>抜き出した画像と音楽もつけて、To Heart2外伝としてプレーしてみたい
>衝動に狩られますなw
>キャラの音声はしょうがないけど、その辺は脳内補完ということで。
いいなそれ!おもしろそう!
作ってよ
>>85
77 :
74:2005/11/08(火) 08:44:49 ID:Pk6Z2uuW0
>>76 なるほど、そんなツールが既にあるんですね。
できれば、委員ちょすきすきーの仕様で実現できると嬉しいけど
xmlファイルとかに直接対応してくれないかな。
>>75 未来アンカーですか。 漏れも期待
>>85
78 :
名無しさんだよもん:2005/11/08(火) 17:36:08 ID:sDJSuGOl0
>>69 河野家は後何話くらいで終わるんですかそうですか100話ですか頑張ってください
きっと渡る世間並みに長くなる富田
>69
もう ちびっとだけ つづくんじゃ
ぐっじょぶ
>>81 乙〜
貴方はかの故人、超先生の後を継げるかもしれない
>>81 文章が荒れてるとか荒れてないとかはいい。
ただ面白くて、気がついたら読み終わってた。激しくGJ!
前の話でケチャップとかなんとか予想していた奴がいたが…
ゴメンナサイ、その通りでした…orz
>>81 すげぇすげぇ
読んでいるうちに貴方の世界に引きずり込まれた。素直にもっと読みたい。
>>84 はっはっは!見たか!
瑠璃は生えてないんだ!
男なら黙ってメテオストライク!
本当に誤爆か?w
お〜い、誰かタカ坊の行方を知らんか?
タカ坊は主役から降ろされました
おーい、誰かタカ棒の行方を知らんか〜?
>>96 遅くなったけど、乙です!
いくのんSSもっと読みたい!!期待してますー
携帯からSS投下しようと思ったんだけど、改行の規制とかよく判らないんでサイトに上げますね。今作成中、近日うp
ウホッ警報ーウホッ警報ー
>>96 自分を奮い立たせてるんですか。がんばてください。
双子SSキボン
>>99 内容はともかく、携帯でそこまで書いたガッツに敬服せざるを得ない
続きを読んでみたいのでガンバレ
……凄い自慰を目撃してしまった気分だw
頑張れ99!
よっちSSキボンヌ
由真SSキボン
イルファ×瑠璃なSS希望
>>103-105 最近職人さん少なげなんで自分でガンガr(ry
でも由真SSは考えてみるわ。
>106
考えるな。
感じろ。
世間一般で言うところの『長文オヌヌー』の事と思われる。
そろそろ河野家まだー
ネタはあるんだが文章力が無い。
自分の脳内だけで楽しんでます。
>>111 原作○○ 漫画◇◇
といったマンガがあるわけだ。後は分かるな?
つまり、ここのSSを漫画化すればいいわけだな!
ミステリ研活動で遅くなったので、俺たちは珊瑚ちゃんをマンションまで送った。マンションの
入り口ではイルファさんが待っており、鉢合わせした瑠璃ちゃんとイルファさんはやはり気まずそう。
だけど瑠璃ちゃんは帰り際、イルファさんに珊瑚ちゃんを頼むと頭を下げた。
家に帰ってみると、このみ、タマ姉、由真の様子がおかしい。話を聞くと、このみが河野家メン
バーズのことを口外してしまったとのこと。しかも相手はあの二人組で、連中、「このみの手助けを
するため」とか言って、明日俺の家に来ると勝手に決めたそうだ。勘弁してくれと思った俺だったが、
規則違反の罰としてアイアンクローを食らうことになったこのみを救うのに利用できると考えつき、
刑の執行を明日まで待ってもらうことにした。さて、うまくいくかどうか。
夜中。ソファーに横になり、ウトウトしてきたとき、
「たかあき、起きてる?」
やってきたのは由真だった。
「んー、どうした?」
「ちょっと話したいって思って。いい?」
そう聞いておきながら、俺が答えるよりも先にソファーの近くに座る由真。
「まあいいけど、さ」
そう答え、むくりと身を起こし、由真を見る。
花梨やるーこのときも思ったんだけど、こうして暗い中で見るパジャマ姿の女の子って、何か普段
とは違う……その、色気みたいなものを感じるんだよなぁ。
「で、話って?」
そんな内心を悟られまいと平静を装い、由真に尋ねる。
「たかあきさ、さっきこのみちゃんのことかばったよね。どうして?」
「どうしてってそりゃ、タマ姉のアイアンクローなんかマトモに食らったら、このみ死ぬだろ?」
「いくらるーこに煽られたからって、あの環さんが本気の力でこのみちゃんを痛めつけると思う?
せいぜい半泣きするくらいで抑えるに決まってるじゃない。
あたし、たかあきって、このみちゃんに過保護だと思う」
「い、いや別にそんなことないって……」
「あるよ、そんなこと。例えばあたしが同じ立場に陥ったら、たかあき、助けてくれる?
とてもそうは思えないな。せいぜい両手を合わせて拝んでくれる程度でしょ」
う、確かにその通りかもしれない。俺って由真の言うとおり、このみに過保護なのかな?
「やっぱりたかあきにとってこのみちゃんって、『まじフル』の萌子ちゃんなんだね」
まじフル? ……ああ、例のギャルゲー『まじかるハートフルデイズ』の略か。
「それ、どういう意味だよ?」
「要はたかあきってさ、お兄ちゃん的立場でこのみちゃんを守ってあげたいって思ってるんだよね。
でもそれって裏を返せば、このみちゃんを『自分の妹』として独占したいと考えてるってことじゃ
ないの? 自分の妹だから恋人にはしない。だけど、他の男にも取られたくない。一生自分の妹と
して側に置きたい。そんな風に思ってるんじゃないの?」
「なんだよそれ? まるで俺がこのみを自分のモノだって思ってるみたいじゃないか」
「自覚無いかもしれないけど、その通りだと思うよ。普段のあんたを見てるとさ。
たかあき、このみちゃんに彼氏が出来るトコって想像したことある? ある日突然このみちゃんが、
『この人が私の好きな人だよタカくん』って、自分の知らない男を連れてきたら、どうする?」
このみに彼氏、か。確かに今まで想像したことなんてないな。
考えてみようか。由真が言うように、ある日このみが知らない男と腕を組んで現れて、その男と
つきあっていると告白する。その時俺は……
「……わからん。想像できない」
「想像できない、か。まあ無理もないよね。何たってこのみちゃんはたかあき一筋だから」
「俺一筋って、それじゃまるで……」
「まさか気付いてないとでも言うつもり? このみちゃんがあんたのこと好きだって」
……
……
……
……それは、俺にとっては衝撃的な言葉のはず、なのに、不思議と驚きもしなくて……
多分俺、薄々気付いていたんだろうな、このみの気持ち。
「……なんとなく、そうかもとは思ってた」
「でも、自分の勘違いかも知れない。それとも、あくまで『お兄ちゃん』として好かれている。大方
こんな風に考えてたんでしょ、たかあき?」
……うっ、今日の由真はなんか冴えてるな。
多分由真の言うとおりだと俺も思う。俺はきっと、このみとの今の関係が一番いい、それ以上でも、
それ以下でもダメだと思っているんだろう。
「……残酷だよね、たかあきって」
「え?」
「そうやって、このみちゃんの想いをのらりくらりとかわして、ぬるま湯みたいな関係を保ち続け
ようとする。
ううん、このみちゃんだけじゃない。環さん、愛佳、るーこ、花梨、珊瑚ちゃんに瑠璃ちゃん、
優季の気持ちも……」
「ちょ、ちょっと待て、このみと優季はともかく他のみんなは……」
「たかあき、この間愛佳を名前で呼んだとき、愛佳、嫌がった? 恥ずかしがってたけど、喜んでた
じゃない。どうしてだかそのくらい解りなさいよ、バカ!」
……そう、なんだろうか。愛佳が俺のこと……?
「他のみんなだって、端から見てたら解るわよ。解ってないのはあんただけ。
そもそも、例えどんな事情にせよ、好きでもない男の家に住みたがるコなんていると思う!?
ほんっと、鈍感なんだから……」
「……じゃあ、お前はどうなんだよ?」
「……え?」
「好きでもない男の家に住んでるのか、お前?」
それは、散々言われた由真への仕返しのつもりだった。何か言い返したいと、由真の言葉を逆手に
とっただけのこと。どうせ由真のことだから、「あたしは特別だから」とか何とか言うに決まってる。
なのに……
「……」
お、おい、どうした由真? 何故そこで黙る?
「……」
な、何とか言えよ由真。
「……」
「……ゆ、由真?」
思わず呼びかけてみる。すると由真は突然くるっと俺に背を向け、何を思ったのかいきなり俺の足
の間にぐいぐいと割って入ってきて、ソファーに背をもたれた。その結果由真の後頭部は、俺の股の
間という微妙な位置にある。そして、
「……揉んで」
……え、い、今、何て言ったの由真さん?
「……お願い、揉んで」
も、揉めって言ったよなこいつ? こ、この展開で揉めと言うことは、つ、つまり、それが答え
だってこと? ゆ、由真は俺に、その、そう言うことを求めているってことなのか……?
「ホラ、さっさと揉んでってば」
お、おい、そんなさらっと言える言葉かよそれって? ど、どうする俺? 揉むべきか、揉まざる
べきか?
……ううむ、据え膳食わぬは男の恥とも言うし、ここは言うとおりに……
「で、では、その、し、失礼します……」
俺は緊張で震える両手を、そっと由真の胸へと……
「どこ触ろうとしてんのよ!?」
バキッ!!
「ぐあっ!?」
由真の裏拳が俺の顔にヒットした!
「おかしな勘違いしないでよ! 肩を揉んでって言ったの肩を!
今日は夕食作ったりしたから疲れて肩が凝ってるの。ほんっとスケベなんだから……」
か、肩でしたか。な、なぁんだ……。
もみもみもみ。
「ああ〜、気持ちいい〜☆ たかあきって結構肩揉み上手なんだね。これからは毎晩してもらおう
かな〜」
「へいへい、お褒めに与り光栄で」
どうやら俺の肩揉みは由真のお気に召したらしい。声から上機嫌さが伺える。
「……ねぇ、たかあき」
「ん〜?」
「たかあきさ、あたしたちと一緒に暮らすようになって、何か変わった?」
「うーん、どうだろうなぁ?
食器洗いは前よりうまくなったような気がするし、あと掃除のコツなんかもタマ姉に教わったり
して……」
「そういうことじゃなくて、精神的に変わったかって聞いてるの。どう?」
「精神的に、か。どうなんだろうなぁ? うーん……、自分じゃよく解らないよ」
「あたしはね、自分がちょっとだけ変わった気がするんだ。
環さんや他のみんなと一緒に暮らしていく内に、みんなから色んなことを教わって、それが自分を
ちょっとだけ変えてくれた、そんな気がするの。
でもまだホントにちょっとだけ。……あたしまだ逃げてるから」
「逃げてる?」
「うん、逃げてるの。
与えてくれた道を歩くのがイヤになって、でも他の道が見つからなくて、だからあたし、逃げちゃ
ったの。何もかも投げ出して」
由真が言ってるのってもしかして、家出についてだろうか?
「そうやって逃げて、これからどうしようって考えたら、真っ先に思いついたのが何故かたかあき
だったんだ。
迷惑だってことは解ってた。でも、どうしようもなかったの。
もしかしたら、半分ヤケになってたのかも。たかあきだって男なんだから、一緒に暮らすってこと
がどんなことか想像つくし。でも、そうなってもいいかな、なんて思っちゃって……。
そしたら、環さんや他のみんなが次々たかあきの家にやってくるじゃない。ビックリしたし、正直、
たかあきのこと見損なった。あたしが頼ろうとしたのは、こんな女たらしのスケベ男なんかじゃない、
あたしの宿敵、あたしの倒すべき相手、あたしの……たかあきだって思ってたから……」
「由真……」
「でも、今はこれでいいんだって思ってる。たかあきの家で、たかあきやみんなと一緒に暮らして、
あたし、ちょっとずつ変わっていってる気がするから。
でもね……」
由真が、肩を揉む俺の手にそっと触れる。
「まだ……、ダメみたいなんだ。あたし、まだ逃げたままだから。
もう少し、このままでいいよね、たかあき? あたし、ここにいてもいいよね?」
「……ああ、いいよ。好きなだけいろよ」
「うん……。ありがとう、たかあき」
不意に由真はすっと立ち上がり、
「うん、肩が軽くなった。ありがとね、たかあき」
「そっか、よかったな」
「しっかし、たかあきにこんな特技があったとは知らなかったわ。
こりゃちょっと、みすみす愛佳や優季に取られるのは惜しい気がしてきたかも」
「え、何が?」
「何でもない。じゃあおやすみ、たかあき」
明るい声でそう言い残し、由真は出ていった。
……いたいだけここにいればいいよ由真。それでお前が立ち直れるなら、さ。
翌朝、朝食の席上。
「そう言えば、さ」
焼きたてのトーストにイチゴジャムを塗りながら由真が俺に尋ねる。
「今日家に来るこのみちゃんの友達って、やっぱたかあきに気があるの?」
「ぶはっ!!」
思わず飲んでたコーヒーを吹き出してしまった。
「そ、そうなんですか貴明さん!?」
目玉焼きを刺したフォークをガチャンと落とす優季。
「げほっげほっ……、そ、そんなワケないだろ! あの二人はあくまでこのみの友達であって俺とは
何の関係もない!」
「でも面識はあるんだよね? どうなのこのみちゃん、その辺り?」
花梨が、何故か朝食をたかりに来たこのみを見る。このみは目玉焼きをはさんだトーストを持ち
ながら(ちなみにこの食べ方は俺も大好きだ)、
「うーん、ちゃるもよっちもタカくんのことキライじゃないと思うよ。一緒に話とかしてると、よく
タカくんのこと聞いてくるし」
「ふーん、そうなんだ。あの二人がタカ坊のことを、ねぇ」
タマ姉の刺すような眼差しが俺を捉える。
「い、いやタマ姉、あの二人のことだから、聞いてくるって言ったってどうせ、俺とこのみがどう
こうってな話ばかりだよきっと」
「そうでもないよ。ちゃるにはタカくんが何ラーメンが好きか聞かれたし、よっちにはタカくんが
ブリーフ派かトランクス派のどちらかって聞かれたよ」
「ら、ラーメンはともかく何故パンツ? って言うかこのみ、その質問にはなんて答えた?」
「うん、タカくんはトランクス派で、TV通販で見た高級シルクトランクスに興味津々と……」
「な、何故それをーーー!?」
「ふぅん、男物の下着にもシルクってあるんや、始めて知ったわ」
トーストにブルーベリージャムを塗りながら瑠璃ちゃんが関心する。
「そうならそうと言ってくれたら買ってあげるわよ。明日にでも買いに行きましょう、タカ坊」
「それは面白そうだな、るーも同行するぞ。うーに似合う下着、るーが見繕ってやる」
「あ、それなら花梨も一緒に行くー! UFO柄のパンツ、あるといいなぁ〜」
「い、いらない! 今はいらないから……!」
冗談じゃない、男一人に女がよってたかってパンツの見繕いなんて、端から見たら何と思われる
か知れたもんじゃない!
「ぱ、パンツのお話はともかくとして、どうなんですかこのみちゃん? そのお二人も貴明さんの
ことが好きなんですか?」
「うーん、タカくんが好きかどうかは解らないけど、よっちはよくカレシが欲しいって言ってる。
でも二人が通ってる学校って女子校だから、出会う場がないんだって」
「男日照りな女子校生活を早くも嘆いているワケだ……。こりゃちょっと危険かも」
「危険? 由真ちゃんどうして?」
「花梨、人が食べてるものがおいしそうに見えるってことあるよね? それと同じよ。
ただでさえ男っ気のない学校生活に嫌気がさしてる自分たちの目の前に、たかあきと同じ高校で
幸せそうなこのみちゃんがいるんだよ。羨ましいって思うでしょ?
その羨ましいって気持ちがいつしか、たかあきへの歪んだ愛情へと変化して……」
「おいおい由真、想像働かせすぎだよソレ……」
まるで二人がストーカーかのような物言い。よくまぁ知らない相手をそこまで貶せるもんだ。
「まぁあの二人がタカ坊のことをどう思っていようと、少なくとも河野家メンバーズのことを口外
しないよう釘を刺しておく必要はあるわね。今日来たらキチンと言っておきましょう、タカ坊」
確かにタマ姉の言うとおりだ。特にタヌキっ子の方はいかにも口が軽そうだからな。
「このみちゃんのお友達が、ですか?」
校門の前、いつものように待っていてくれた愛佳たちにも、俺は今日のことを話した。
「そういうことになっちゃってさ。
あ、そうだ。よかったら愛佳たちと珊瑚ちゃんも、帰り、俺の家に寄っていかないか?
一緒に昼飯食べようよ」
今日は土曜日なので弁当はナシ。昼飯はあの二人が来る前に家で済ませることになっている。
「そうですね、今日は特に予定もありませんから皆さんさえ良ければ。いいわよね、郁乃?」
「う、うん……」
「ウチもおっけーやで〜☆」
「チビ助の中学時代の友達か。なぁなぁそのコたちって可愛いか? 俺も行く、絶対行くからな!」
あれ? 雄二はあの二人に会ったことなかったっけ? まぁ会えば解るか。
つづく。
どうもです。第32話です。
ちゃるよっち登場! のハズが、何故か由真中心の話になってしまいました。
>123
HS!
>>123 河野家喜多ーーー!!!
なんか、だんだんと緊張感が高まってきたような予感。
やっぱ由真の塗ってるイチゴジャムは、ペンキみたいな感じなんだろうか?w
何にせよ、次回も期待!
あと、
>>121「瑠璃ちゃんが関心する。」->「感心する」ですね^^;
委員ちょすきすきーを使って、SSが読めないかとTH2DATA.001を
バイナリエディタでつらつら眺めてましたが、スクリプトの形式が
良くわからん。
やっぱ、解析のスキルがないとダメだな orz
>>126 テキスト抽出ツールがあるぜ
ぐぐれば見つかるはずだ
あいかわらず河野家GJ!
河野家GJ!
由真スキーとしては最高の回でした!
>>127 スレ違いだから、簡潔にすませるが
テキスト抽出ツールがあっても、その他の背景・音楽・エフェクトは
バイナリデータとして埋まってるから、意味がないのでは?
ついでに、テキストだけならバイナリエディタで覗けば、普通に見える。
そこで
>>76ですよ、と寂れたスレから出張してみる。
>>130 テキストを確認するのにいちいちバイナリエディタを使うのは効率が悪すぎる
<あたしが頼ろうとしたのは、こんな女たらしのスケベ男なんかじゃない、
<あたしの宿敵、あたしの倒すべき相手、あたしの……たかあきだって思ってたから……
不覚にも由真の台詞に萌えてしまった…ありがとう河野家の人。
次回も楽しみに待っております。
>>132 テキストを確認するのが目的ではなく、自分でデータを書き換えて
SSをデータに埋め込むのが目的だからな。
>>131 厳密にはDNMLの話題でもないが、大丈夫かな?
なんかあのスレは葉モノには敷居が高い。
>>134 かつてTH2をDNMLで動かす試みを実現させた香具師がいたんだが、
面白いぐらいに盛り上がらなかった過去がある。
導入があまりに大変なのが要因っぽいが…このスレの住人ならそれを乗り越えてくれそうな仄かな期待。
>>135 ああ、それなら知ってる。
が、さすがにスレ違いの話題を続けるのは心苦しいので、そっちのスレに行くよ。
画像とBGMぶっこ抜いて吉里吉里かなにかで組めばそれっぽいのも作れそうだが、
合法的にやるにはDNMLが手っ取り早いよね。
まあ、でも原作で立ち絵のないキャラはどうしようもないからなぁ
323絵っぽいミルファの立ち絵描ける人居ないかのぉ。
リトライDNML版が見たいよ。
委員ちょすきすきーってなんだ?
まずググれ。話はそれからだ。
過疎ってんな……
新作マダーチンチン
クズSSが氾濫するよりは過疎ってるほうが数千京倍まし
To Heart2 FDに影響を与える位の神作品が読みたい………
>>142 ちなみに漏れはこんな夢をみた。
夜、家にいると春夏さんから電話が。しかしパニクっていて何を言っているかわからないんだわ。
仕方がないから柚原宅へ行く漏れ。
呼び鈴を鳴らすと春夏さんがすぐに出て来て、しかも抱きついてくる。
漏「どうしたんでつか?」
とか冷静に話しかけるけど、胸とかが当たってるからボソキしまくり。
どうやら、ゴキブリが出たらしいが旦那さんは出張、このみタソは友達の家に泊まりに行っているらしい。
台所に行った漏れは、近くのスリッパでゴキブリを殺して春夏さんのとこに。
漏「もう大丈夫。頃してきますたよ。」
安心する春夏さん。
でもそこでつい口が滑ってしまう。
漏「でも一匹みたら十匹は居るっていうらしいでつよ?」
その言葉を聞いて真っ青になる春夏さん。
で、「今夜は泊まって行きなさい!」って言われ、柚原宅になかば監禁される漏れ。
あとは眠れずにワインを飲みベロベロに酔った春夏さんと18禁シナリオに。
春夏さんはゴキで悲鳴あげたりしない。
見つけたらスリッパで一撃。
むしろ素手で…!
>>145 「おかあさーん、ゴキブリがいるよー」
「任せなさい、このみ! ぬんっ!」
掛け声が響いた瞬間、春夏は拳を振り下ろした。
勢いよく地面に叩きつけられた拳は爆撃にも似た音を立て、敵を一撃で消滅させていた。
「−−クズが」
「早く私もお母さんみたいに素手でゴキブリ潰せるようになるよ」
「色を知る年頃かッ!!」
>>147 こんなかんじか?
「このみ猫欲しいっていってたわね・・・」
「居た・・・!とりゃっ!!」
「しまった!!!殺してしまったわ!!!」
この時初めて生け捕りの難しさを知ったという
坊「猫欲しいって、ゲンジ丸はどうするんだよ」
このみ「とりあえず赤犬じゃないから美味しくないよね」
坊「食う気か」
春夏「あ、タカくん。今日このみをお願いできるかしら?」
坊「あ、はい、いいですよ」
春夏「悪いわね。あ、ご飯は作っておいたから、このみ、持って行ってね」
このみ「はーい」
今日のメニュー:
肉のお刺身(馬刺し?)
肉じゃが
カルパッチョ
坊「この刺身、なんか脂っこいな」
このみ「そうだね。何のお肉だろう?」
坊「そういや、ゲンジ丸に飯やらなくていいのか?」
このみ「あ、そうだね、それじゃ食べないで待っててねー」
坊「分かったからさっさとやって来い」
このみ「げ、ゲンジ丸が…ゲンジ丸が…」
坊「…」
このみ「よく寝てた」
坊「一瞬便所で思いっきり吐いてから弔おうと思っちまったじゃないですかえぇコラ」
ちょっと面白かったw
実物のGを見たことがないかた、ネタがよく分からん
いいよな道民は。
大変な季節になるけども。
154 :
名無しさんだよもん:2005/11/19(土) 15:12:01 ID:1JDp4XcpO
アイヌが迫害を受けていた時期は辛かったよ。
…って若い子にはわからんわな。
155 :
名無しさんだよもん:2005/11/19(土) 18:29:35 ID:OQ3nyraD0
シャクシャイン様はよくやったよな
156 :
ゆーた:2005/11/20(日) 03:18:34 ID:g7upTRMm0
〜epilogue〜
学校や堤防の桜並木が鮮やかな緑色に色づき、春の暖かい木漏れ日と、
時より通り過ぎる心地よいそよ風は、街ゆく人の心を穏やかにし、街全
体を優しい雰囲気で包み込む。
俺とそれを取り巻くいつもの面々は、この春の穏やかな気候に和んで
いる者もいれば、一方では気分良く鼻歌を口ずさんでいる者もいる。そ
のまた一方で未だ覚めやらぬ眠気を引きずっている野郎もいる。という
具合に、とにかく順調に(?)終着駅となる学校までの距離を確実に縮
めていた。新たに加わった二人の仲間とともに――
〜To Heart 2 Side Story〜
−ありがとう−
・1・
「ああ〜、眠ぃ〜!!こんな夢の世界に舞い戻っちまうような天気でも
、学校は、俺たちを待ってるっていうのかぁ〜?なあ、貴明?」
両腕を真上に突き上げ、背伸びしながら大きなあくびをすると、雄二は
ヨボヨボになった目を擦りながら不満気に言った。
「知るかよ、そんなこと」
雄二の愚問を適当に流しながらも、俺は考えていた。
確かにこんな天気の日や、雨の日なんかは、学校も仕事も休みにすれば
いいと思ったこともある。だが、今は違う。真横には愛佳が、そして、
俺が押している車椅子に乗るのは、俺たちの高校に通うことになった愛
佳の妹である郁乃だ。さらに、俺と小牧姉妹を取り巻くように歩いてい
る、いつもの幼馴染の面々(雄二、タマ姉、このみ)がいる。合わせて
六人、以前より二人仲間が増えただけなのだが、随分と賑やかになった
ような気がするのは気のせいだろうか?
でも、それだけで俺は、これから始まってゆくであろう新しい何かに胸
を躍らされずにはいられなかった。
157 :
ゆーた:2005/11/20(日) 03:21:59 ID:g7upTRMm0
〜To Heart2 Side Story〜
−ありがとう−
・2・
「郁乃。どうだ学校生活は。もう慣れたか?」
まだ学校に通い始めてから間がない、寝ぼけ眼の郁乃に尋ねてみる。
「うん。問題ない。でも、まだ長い時間授業聞いてるのは、ちょっと疲れるけ
ど……」
そう言ってすぐに、ハッとする郁乃。何か言ってはいけない事を言ってしま
ったかのように、口を開けたまま体を硬直させた。そして、姉の愛佳の顔を恐
る恐る見上げる。
すると、案の定愛佳は、心配そうな顔をしたまま郁乃の顔を覗き込み、言い
聞かせるように言ったのだった。
「郁乃、あんまり無理しちゃだめだよ。つらい時は我慢しないですぐに先生に
言わなきゃだめだからね」
「分かってるって。もう〜お姉ちゃんのその言葉、いい加減に聞き飽きたわよ
。私も、もう子供じゃないんだから、自己管理ぐらいはできるわよ―」
つんと顔をそっぽ向けて精一杯の抵抗をみせる郁乃。だが、その言葉には刺
々しさが感じられない。むしろこの二人の場合、お互いの素性を知っている俺
にとっては、何とも微笑ましい光景にしか見えなかった。
それにしても、相変わらず愛佳は、郁乃の事が心配で堪らないらしい。それ
もそのはず、郁乃は通学に必要な体力を維持出来るようになったとはいえ、通
い始めて間がない郁乃にとって、学校での生活は、体にかなりの負担を与えて
いる。俺たちにとってごく普通の学校生活も、郁乃の体にとっては過酷なのか
もしれない。しかし、学校に足を向ける郁乃の表情はどことなく穏やかで、す
っきりしている。最早、学校通学への強い想いは、肉体的苦痛を感じさせない
ものになっているのだろう。
158 :
ゆーた:2005/11/20(日) 03:24:58 ID:g7upTRMm0
〜To Heart2 Side Story〜
−ありがとう−
・3・
と、そんなことを考えていた俺の顔を見て、ニヤニヤしていた雄二がふざけ
て言う。
「いや〜、つらいねぇ〜モテる男は。正に両手に花!!俺には眩しすぎてまと
もに見ちゃいられねぇよ。よっ、色男!!」
訳の分からないまるで中年のオヤジが言い放つが如くはやし立てられた俺た
ちは、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。そうゆうことを改めて指摘され
ると、恋人同士とはいえ、俺も愛佳も急にお互いを意識してしまい、まともに
見合うことも出来なくなる。
確かにそういったところの度胸はまだまだだと思う。
「それぐらいにしておきなさい、雄二。みっともないわよ、いくら自分がモテ
ないからって―」
しばらく俺たちの会話に口を挟まなかったタマ姉が、呆れたようにため息を
吐きながら言う。
「なんだよ姉貴。姉貴こそ、もうちょっと女らしく『お淑やか』になった方が
いいんじゃねえのか?このままだと、きっとどんな男にだってみんな逃げら
れちまうぞ。もう勘弁してくださいい!!ってな」
言ってしまった……。場の空気が明らかに変わった。なにやらタマ姉の方か
らヒシヒシと殺気が伝わってきているのが分かる。
159 :
ゆーた:2005/11/20(日) 03:28:06 ID:g7upTRMm0
〜To Heart2 Side Story〜
−ありがとう−
・4・
「雄〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜二―――――――――!!!!!!」
次の瞬間、雄二の体が宙に浮いたかと思うと、断末魔の叫び声が五月
の空に響き亘った。
「あーだだだだだだだだだだ!!!本当に割れちまう〜〜〜〜!!!!
ストップ!!ストッ〜〜〜〜〜〜プ!!!!!」...『ドサッ!』
いつものように、タマ姉の鉄拳制裁を受ける雄二。
全く雄二は、絶対こうなる事分かってて言ってるよな。救われない奴
だよ、お前は。
合掌。
「「「ははははは……」」」
いつものように、このみがそれを見て苦笑する。小牧姉妹も後に続く。
今日から、その様子を見て苦笑する女友達が二人ばかり増えたようだ。
一日が始まる。
俺だけじゃない、ここにいる恋人と幼馴染と病弱な少女(?)の一日が。
俺たちの新たなる学校生活が、今、始まろうとしていた。
−続く−
鬼age('д')
途中送信しちまった。
まあとりあえず、
sageるのと名前欄にタイトルと投稿数を入れるのと
コテを名乗るのをやめてから書き込もうな。
ついでに改行もちゃんとしような。
162 :
ゆーた:2005/11/20(日) 04:03:57 ID:g7upTRMm0
いきなり東鳩2のSS書き込んですみません。(m。_。)m
ご挨拶が遅れました。私はゆーたと申します。どうぞこれからもよろし
くお願いいたします。(´・ω・`)ノ
さて、この東鳩2のSSですが、これは愛佳エンディングのその後を書
いたものです。出来れば、このSSを読んでの、 感想やアドバイスなど
を頂けたら光栄です。ではまた。(´・ω・`)ノシ
163 :
名無しさんだよもん:2005/11/20(日) 04:20:16 ID:g7upTRMm0
了解しました。すみません。m(_ _)mこれからは、言われた通りに投稿していきます。
ところで、質問なのですが、一列あたり何文字まで入力可能なのでしょうか?それと’sa
ga’ると’コテ’の意味を教えて頂けないでしょうか。
了解しました。アドバイスありがとうございます。
度々すいません。上記の作品「ありがとう」は、・1・〜・4・までが「ありがとう第一話」
になります。お詫びして、訂正いたします。
「これがイタリア」
「いえ、ラーメン」
――――――これが2人の出会いだった。
>ゆーた
sageもろくにできない上に話もありきたりでクソつまらんから
もう書き込まないでくれるか?オナニー作家は十分間に合ってるんで。
>>168 だから読みたくねえ奴は読むなって言ってんだろうが
みんながみんなお前と同じ考えだと思ってんじゃねえよ
>>168 お前みたいな奴がいるから過疎るんだよ。消えてくれ
>>168 1行目は別にいいけど、2行目はいらんな。
>168
池沼
2ちゃんTOPページの説明読まずに書き込んでるのかい。
それは問題外だろ。評価以前の問題。
168の言い方は確かにアレだけどさ、
本心ではお前らも同じこと思ってんだろ?
物書き殺すに刃物はいらぬ、上手い上手いと褒めりゃいい
一人としてGJすら言わないあたり、お前ら正直者すぎるぞw
確かに設定はありきたりだけど
これから先の話がどうなるかわからないじゃん。
しかもまだ第一話しか書いてないのにそりゃないでしょ。
なりふり構わず消えろとか言う奴が消えろ。不愉快だし常識が足らん。
って消えろって言ってる奴は1人か。
とりあえずSSマダー?
ワロユータスww
容量がもったいないから長文オヌヌーは控えてください
―昼休み
俺たちは、いつものように屋上にいた。目の前に並ぶ豪華な手作り弁当を囲うようにし
て座り、その味に舌鼓を打ちながら取り留めの無い会話を交わす。暖かい陽が照らし、澄
み切った青空の下で食事をするのは、また格別で、まるで花見を楽しんでいるかのようで
もある。その輪の中で、皆の話を聞きながら微笑む愛佳がいた。
「ところで委員ちょ。この弁当は、ひょっとして委員ちょの手作りなのか?」
雄二が、愛佳とその横に並んでいる小さな可愛らしい郁乃の弁当箱を見ながら、妙に
嬉しそうに尋ねた。
「まあ、その、一応……そう、です、けど……」
少し躊躇しながらも、正直に答える愛佳。愛佳の頬が少しばかり赤らんだ。それをは
っきりと言えないところは、愛佳らしいといったところか。
「やっぱりそうか!!俺の目に狂いはなかった!そうじゃないかと思ってたんだよ!」
お前は、委員長の何なんだ?と口を滑らしそうになったが、それを寸前でなんとか留
める。全く、雄二の調子の良さには困ったものだ。その調子の良さが、いつも仇となっ
て返ってくるというのに……
「えーっ!そうなんだー。すごいよー小牧先輩。タマお姉ちゃんとか、うちのお母さん
が作ったお弁当と全然変わらないように見えるよ」
「そうね。随分と手が込んでいるように見えるけど、朝は、相当早いんじゃない?」
このみやタマ姉も興味津々のようだ。
いつの間にか、愛佳の手作り弁当に皆の視線が集まっている。
「いや、そんなことないですよぅ〜。向坂さんの方が全然上手ですし、私なんかよりずっ
と早起きしていらっしゃるんじゃないですか?結構ボリュームもありますし」
両手を胸のやや前方でぶんぶんと振り、精一杯否定する愛佳。
「私の場合は、前にいた学校が、料理から洗濯、裁縫、掃除などの家事全般、さらに、礼
儀作法や護身術に至るまで、女性として最低限の教養を結構厳しくしつけられてきたか
ら、ある意味これくらい出来て当然と言えば当然なの。朝も毎日10kmのランニング
をしているし、それから、雄二やタカ坊の分もあるでしょう?だから、自然と朝は早く
なるのよ」
「そ、そうなんですか!?そ、それは、す、すごいですね……」
タマ姉の話を聞いて、目を丸くする愛佳。
確かに、今時こんな『大和撫子養成』的な学校が存在する事自体、信じられない。
そして、さらに信じられない事に、ついこの前までタマ姉はそこに通っていたのだ。
あのタマ姉が……だ。
「委員ちょ!!勘違いしてもらっちゃ困るぜ。なんせ姉貴ときたら……『ぐぇっ!!』」
タマ姉は、今から雄二が発言する内容が読めたのだろうか?目にも留まらぬ速さで雄
二のこめかみを鷲づかみにして、ギリギリと締め上げた。
「お姉、さ、ま、まだ、わたくし、何も、言って、おりません、の、に、……」
「「「ははははは……」」」
乾いた笑い声が、屋上全体に寂しく響いた。
「でも、お二人は本当に仲がよろしいのですね。向坂君は、お姉さんにとっても可愛がっ
てもらっているみたいだし」
愛佳は、不敵の笑みを浮かべながら、いたずらっぽく言う。
最近では愛佳も、時折こんなお茶目心をみんなの前で見せるようになった。
こういった姿を見せる時というのは、以前は、あの書庫の中だけであって、ひとたびあの
秘密基地から一歩足を踏み出せば、元の遠慮の塊である愛佳に戻ってしまっていた。
でも、今はこうやってみんなとの会話を無邪気に楽しんでいる愛佳がいる。
書庫の中で俺だけに見せていた姿であっただけに、少し残念な気がしないでも無い。
でもそれは、愛佳がここにいる仲間に対して心を開き始めたという事だ。
そういった愛佳の心の変化は、ここにいる仲間だけじゃない、あの季節外れの桜をこの
街に舞い躍らせた、愛佳を支え、応援する多くの人々によってもたらされたのかもしれな
い。
昼休みも中ごろ、皆が食べ終わって少し経ったぐらいだろうか。俺たちは少し早いが、
その場をお開きにする。これは自然と習慣づけられていた。
というのも、郁乃の病気の特性上、長時間の屋外行動が制限されているからである。
もちろんそれは、ここに集う者たちがそのことをよく理解した上での郁乃に対するちょ
っとした気遣いであった。
しかし、今日は何かがいつもと違っていた。
どうゆう訳かタマ姉を初めとする幼馴染軍団は、一緒に行こうとしていた俺と愛佳を振
り払うように、そそくさとその場を後にする。
「じゃあな。お二人さん。ご・ゆ・っ・く・り」
「じゃあねー。タカくん、小牧先輩」
「それじゃあ、二人共。また明日ね」
「‥‥‥‥」
そして、ようやく俺と愛佳は、雄二たちの目論見を理解して、お互いに顔を赤くする。
俺は雄二たちの計らいに、ただ呆然と立ち尽くすしか無かった。
全く、やってくれる……。
「え、あ、み、みんな行っちゃうんですか?わ、私も行きます。待ってくださいよぅ〜」
一方、愛佳はあたふたしながら、その場から去ろうとしていた雄二たちに付いていこ
うとしたが、今回は意外な人物によって、それは阻止されることになった。
「はぁ〜。もう〜お姉ちゃんは全然分かってないんだから――」
郁乃は愛佳に背を向けたままそう言うと、肩を大きく上下させて深く溜め息を吐いた。
程なく、雄二の足が止まる。止まったと言うよりも、むしろ、郁乃によって止められたと
言った方が正しいだろう。やがて郁乃は、車椅子の片方の車輪を押さえつけて固定し、も
う片方の車輪を、反動をつけながら力強く回し始めた。そして、180度車椅子を回転さ
せて愛佳と向き合うと、右手を前に出し『止まれ』の構えをとると同時にこう言い放った。
「ストップ!」
愛佳のあらゆる動きは、郁乃が放ったその一言で、一瞬にして失われてしまった。
目を大きく見開いたまま、郁乃の突拍子も無い行動に唖然としている愛佳。
「いい!せっかくこうやってみんなが二人のために気を遣ってあげてるんだから、素直
に従うの―!」
「でも―」
心配そうな面持ちで郁乃を見つめる愛佳。
「私はいいの。これからタマお姉さんたちと教室でトランプするから。そうですよね、み
なさん?」
揃ってうんうんと頷く幼馴染軍団。しかし、この男はそれだけで終わらなかった。
「そうそう。でも――、俺的には二人の様子をこっそり観察したいとこ……ぐはっ!!」
タマ姉の鋭い蹴りが、雄二のケツに叩き込まれた。雄二はその場でうずくまる。
「お、俺は、姉貴のサンドバッグじゃねぇっての!少しは加減してくれよ……」
蚊のような声で主張するも、タマ姉は聞く耳を持たない。
「さて……まだそういうことを言うのかしら……」
ただならぬ殺気が既に雄二の方に向けられている。それをいち早く悟った雄二は、
「も、もちろん行きます!行かせてもらいますとも!さあ、行こうか郁乃ちゃん!」
「はい。雄二さん」
にこやかに応える郁乃。この二人はこの二人で意外と馬が合うようだ。色んな意味で
……。背中が凍るような寒気に襲われた。この悪寒はいったい何なんだろうか?
そんな事を考えているうちに、いつの間にか雄二は、郁乃の車椅子のハンドグリップ
をしっかりと握り、押し下げてぐるりと方向転換すると、そのまま階段口の方へ向かって、
彼女を気遣いながらゆっくりと歩き出していた。
呆れ顔のタマ姉とこちらに向かって大きく手を振りながら、このみも後に続く。
去り際、若干郁乃の俺に対する、まるで由真を思わせる恨めしそうな表情と、愛佳のど
こか心配そうで落ち着かない態度は、少し気にはなったが、雄二たちが屋上から姿を消し
てしばらくも経たないうちに、愛佳の表情にいつもの優しい笑みが戻ってくる。
「気遣われちゃいましたね。私たち……」
「そうだな」
二人きりにされて、お互いに顔を合わせた。見ると予想通りというか、火照った顔が目
の前にあった。きっと自分もそんな顔をしているのだろう、頬が熱い。
俺たちはもと居た場所から少し離れた、屋上の階段口から一番遠いベンチに二人並んで
腰掛ける。
ただ以前と違うのは、お互いにベンチの端と端に離れ離れに座るようなことは無くなり、
ほとんど密着して座っているということだ。屋上に他の生徒がほとんどいないからかもし
れない。それでも俺は、今、愛佳との実質的な距離が今の俺たちの心の距離だと信じてい
る。それは、愛佳にとっても――。
俺と愛佳は、しばらくこの屋上という展望台から、ただ限りなく透き通った青空を眺め
ていた。
それからどれくらい経っただろう。気が付けば、屋上には静けさが漂っていた。
それに気づいたかどうかは分からないが、愛佳はゆっくりと身体を傾け、俺の肩に頭を預
けるように寄りかかる。まだ甘えることに慣れていない愛佳は、身を強張らせてじっとし
ている。顔だけではなく、首筋まで赤く染めながら。
そんな長い沈黙を破ったのは、俺の何気ない一言だった。
「なぁ、愛佳?」
「ん、何?」
「今更言うのもなんだけどさ……、さっき、郁乃についてかなくて……良かったの?」
「………」
愛佳は顔を隠すように、うつむいた。
確かに今この雰囲気で、その疑問を彼女にぶつけるべきではないと自分でも分かっては
いた。でも愛佳が郁乃との別れ際に見せたあの心配そうで、どこか落ち着かない様子を見
た時、直感的に愛佳がまた自分の心に嘘を吐いているのではないかと思ってしまった。余
計なお世話だったかもしれない。
しかし、もう愛佳には自分の感情を心の中に閉じ込めて、苦しんでほしくなかった。自
分に嘘を吐いて生きてほしくなかった。ただ、自分に素直になってほしかった。
ただ――それだけだった。
「ごめん……」
愛佳は俺との時間を選んでくれて、こうして隣にいてくれてるのに、俺は――
心は愛佳への罪悪感で満たされていく……。でも、愛佳はすかさず――
「ううん。いいの……。郁乃が心配じゃないっていったら、嘘になるけど………
私は、やっぱり、たかあき君と、一緒に、いたいから……。それに、たかあきくんは、
私の事心配して言ってくれたんだよね……。私は、何より、それが、嬉しい……」
愛佳は、今にも溢れんばかりの涙を目に溜めながら、俺を見つめて優しく微笑んだ。
「愛佳……」
愛佳の繊細で華奢な体を優しく両腕で包み込む。
もう愛佳が自分の心を見失わないように。
そして、自分自身に優しくなれるように願いながら。
五月のやわらかい陽の光が屋上にいる二人を見守るように照らしている。
俺たち二人は、その暖かさに身を委ねながらも、お互いの温もりを確かめ合った。
時を忘れるくらい、ずっと……
−続く−
続けて「ありがとう」の第二話を貼らせて頂きました。
自身初のSS作品という事もあって、まだまだ未熟で、作品の質自体は良いもの
とは言えないかもしれません。もし機会があって、この作品を読んで頂けた方々
には、TH2の世界観や、各キャラクターの個性だけでも感じ取って頂けたら幸
いです。
>>190 sageは半角文字で打ってくれ。そうしないと効果が無いから。
×sage
○sage
訂正があります。
「ありがとう 第3話(2/10)」→「ありがとう 第2話(2/10)」
お詫びして訂正いたします。
あと、sageの件、助言ありがとうございました。
駅前の鳩に餌をやって、家路につくY0LXkw/WOと
その鳩の糞を黙々と掃除する
>>192
そして駅前の主を自認するホームレスの
>>194 >>193 初めてにしてはGJ。スレに貼る形式のSSだと、一回一回の話を
もう少しコンパクトにまとめた方がいいかも。
>>168 >オナニー作家
この言葉を聞いて思わずU-1スレを思い出す漏れはダメダメか?
>>193 いい感じだぜよ。
>>195の言う通り、投入した2レス分を一つに纏めれるくらいはいけるから。
まぁ、どの道、容量オーバーでスレ移行は避けられないだろうが。
>>193 2chブラウザ使ってみれば?
sageを自動で入れてくれるし、書きこみ前にプレビュー出来るぞ。
由真SSって案外少ないんだな…
あとで投下しようかな…
なるほど……。それは便利そうですね。
早速確認してみます。
>>199 由真スキーなんで是非投下してほしい。
由真メインのSSってイマイチ少ないよね。
河野家まだぁ〜?…っと。
お預かりしていた鍵を取り出して扉を開ける。
家人が留守の家の中に入ると、別にゴミが散乱しているわけではないけれど、なんとな
く散らかった雰囲気のリビング。
「もう、先週お掃除したばかりなのに。男性の方というのは、皆さんこうなのでしょうか」
溜息を一つ付くと、さっそくベランダの窓を開けてお掃除を開始する。
ロボットの私でも感じられるような清々しい風が、少し埃っぽいリビングの空気を洗っ
ていってくれました。
収納をあけて掃除機と、雑巾を取り出して。洗面所のお掃除はこの間やりましたから、今
日は二階を重点的にやることにしましょう。
いくつか転がっているインスタント食品の容器をゴミ袋に一緒に入れて。
「あら? ゴミ袋、これで最後ですね。後で買い足しておかないと」
お買い物リストにゴミ袋追加っと。
冷蔵庫に掛かっているホワイトボードに、『ゴミ袋』の文字。
リビング、廊下を中心に掃除機掛けをした後は水周りのお掃除。
朝食の物でしょうか。シンクに溜まっているお皿やお茶碗を片付けて、一階のお掃除は完
了。
そのまま掃除機を持って二階へ。
貴明さんのご両親の寝室へ入ることはできませんので、それ以外のお部屋と、あと、貴明
さんのお部屋をお掃除しなくては。
勝手の知る足取りで貴明さんのお部屋の扉をくぐると、そこにはベッドの上に脱ぎ捨てて
あるお洋服が。
「洗濯物はかごの中に入れてくださいって、いつも言っているのに」
ブツブツと文句を言いながら洗濯物を拾っていくと、上着の下に隠れていたのは貴明の下
着が。
パンツが。
呆然と、両手で貴明のパンツを広げて。見つめること数分。
「ひゃっ、わ、私ったら何を。そ、そんな、違いますからね。私は貴明さんのお洋服を洗お
うとしているだけで、べ、別にそんな変なことなんて想像していませんから!」
誰も聞いていない言い訳をすると、まるで誤魔化すように、慌てて洗いもの全てを一階の
洗面所まで持って行って、洗濯機のボタンをスイッチオン。
洗濯機の動く落ち着いた音を聞いていると、ようやくモーターの回転も収まってきてくれ
ました。
気を取り直して、お二階のお掃除の続きをやってしまいませんと。
今度は恐る恐る、貴明さんのお部屋に入って。できるだけさっきのことがCPUに浮かんで
こないように、雑念を振り払って、先ずはお布団干しから。
いいお天気ですし、お昼まで干しておけばきっと、ふかふかのお布団が出来上がることで
しょう。
続いて掃除機掛けを・・・・・・あら?
ベッドの下、手を入れてみると、女性の方のあられもない姿の載った写真集が奥のほうか
ら。
表紙がメイドの格好をなさった女性と言うことは、これを購入なさったのは貴明さんでは
なく。
ご友人の雄二さんがお持ちになった物のようですね。
それに・・・・・・
パラパラとページをめくって。
「大したことありませんね。これなら私のほうが・・・・・・」
なぜか上機嫌に、他の古雑誌と一緒に紐で括ってしまう。
洗濯物の乾燥が終わったことを確認すると、アイロンをかけ、服は畳んでタンスの中へ。
見渡せば、家の中も朝やって来た時の乱雑さはすっかりなりを潜めてしまっていた。
「ふう」
と、一息つくと、時計が掃除を始めてから、ちょうど2時間経過していたことを教えてく
れた。
「そろそろ貴明さんも帰ってくるお時間になりますし。お昼ごはんは何をおつくりしましょ
うか」
冷蔵庫を開けてみても、予想通り、食材らしい食材は入ってはおらず。
奥のほうに魚の干物が一枚、入っていますけど。以前こちらを焼いてお出ししようとした
ら、必死になって止められましたっけ。
たしか・・・・・・くさや、とおっしゃっていたでしょうか。
その時、貴明自身が処分したはずなのに、なぜかまた冷蔵庫の中に入っているくさやの干
物。
「他にはお料理に使えそうなものもありませんし」
手にお財布と、掃除をしながら書いた買い物リストを持って。
お昼の献立は。商店街のスーパー、今日はお魚の特売日でしたっけ。貴明さん、焼き魚と
煮物だと、どちらがお好きでしょう?
「あら、イルファさん、こんにちは。今日もタカくんの家?」
「奥様、こんにちは。いつもお世話になっています」
お家から出たところで、家の前のお掃除をなさっていた柚原様に声をかけられました。
手に箒をお持ちになった柚原様。
貴明の家で手伝いを始めたころ、家事のコツや買い物のイロハなど。主婦としての心構え
をイルファはいろいろと、春夏に教えてもらったことがある。
「はい、お掃除も終わりましたので。貴明さんの昼食の準備に、商店街のスーパーへ行こう
かと」
「もう、イルファさん、春夏でいいっていつもいってるじゃない。『奥様』なんて言われて
もこっちが恥ずかしいわよ」
そういって春夏は朗らかに笑う。
そうおっしゃられても、柚原様はいままで、いろいろ家事のことを教えていただいたり、
何かとお世話になっている方ですし。尊敬する方を呼び捨てだなんて、そんな、できません。
「でもタカくんも果報者ね。こんなできた人にお世話してもらえるんだから。うちのこのみ
にも、もうちょっとイルファさんのような、女っぽいところがあればよかったんだけど」
箒を片手に、頬に手をあてて溜息。
「いえ、私なんてまだ奥様に比べれば至らない点ばかりで。それに・・・・・・味覚音痴も
まだなおっていませんし」
ああっ、笑われてしまいました。
落ち込むイルファと、明るく笑い声を上げる春夏。
イルファがつぶやくように言った最後のセリフも、春夏にはしっかり聞こえていたらしい。
「そんなに落ち込むこと無いわよ。タカくんだってイルファさんのこと信頼しているから、
こうやって家のことを任せているんだし。男の留守を預かるなんて主婦の一番大切なお仕事
よ」
「そ、そんな、私のようなメイドロボが主婦だなんて。今だって週に何度か、お世話をしに
来させていただいているだけですし」
それとも本当に、毎日お世話させていただけるようお願いしてみようかしら。
貴明さんが、瑠璃様たちとご一緒に住んでくだされば、全て解決しますのに・・・・・・
イルファのこの前向きな心持が、春夏には好ましく映るようだ。
「あれ? イルファさん? 今日、イルファさんが来る日だっけ?」
玄関先で話し込んでいるうちに、影が射した。
「お帰りなさいませ、貴明さん。学校、もう終わったのですか?」
「あ、うん、ただいまイルファさん。今日は土曜日だからね・・・・・・今日、来るって言
ってたっけ?」
手にはカップラーメンの入ったビニール袋。
「はい、言いました。貴明さんがそうやってインスタントのお料理ばかりおめしあがりにな
るものですから。少し来る回数を増やさせていただくと、先週しっかり」
貴明は慌てて手に持つ袋を体の後ろへ。
やっぱり毎日お世話させていただく方がよろしいようですね。
「ちょっとタカくん。わたしへの挨拶はないの? そりゃ、イルファさんしか目に入らない
って言うタカくんの気持ちもわかるけど、お隣さんを無視するなんて。ご近所付き合いは大
切よ?」
あ、貴明さん、大慌てでごまかしていらっしゃいます。
「それじゃあ貴明さん。すぐにお昼をおつくりできるよう、材料を買ってまいりますので。
その手にお持ちになっている物を片付けて、おとなしく待っていてくださいね」
「あ・・・・・・うん。いつもありがとう」
素直にうなずく貴明に、イルファは笑顔をかえす。
「それと手はちゃんと洗わなくてはいけませんよ。このごろ風邪が流行っているそうですし。あと、制服、洗ってしまいますので洗面所に置いておいてくださいね。洗濯物は全てタンスの中にしまっておきましたから」
あとは、何かお伝えすることはあったでしょうか。
「ちょっとタカくん。今のうちからイルファさんの尻に敷かれていたんじゃ、ダンナさんと
してはあとが大変よ」
不意の春夏の、からかいの含んだ発言に。
貴明は大きく慌てふためいて。
イルファもモーターの回転を、真っ赤な顔をして上げる。
「ちょ、ちょっと春夏さんダンナさんって!」
「あら、今だってもう、似たようなものでしょ?」
貴明では勝てそうにない。
「わ、私お買い物行ってまいりますね。貴明さんお魚を似た物と焼いた物どちらがよろしい
ですか」
「や、焼いたほう。うん、焼いたのがいい!!」
奥様、何てことをおっしゃるんですか。
でも・・・・・・
「あ、イルファさん」
「いってらっしゃい」
「はい、行ってまいりますね」
まだ熱のあがったままのボディで、イルファは買い物籠をもってスーパーへと走っていく。
買い物籠の中にはお財布と。
貴明の家でお世話をすると決めた日。貴明から貰った家の鍵が。
終
イルファさんが好きなんです。
あと、地の文、特に三人称が苦手なんです。
なのでいつも通りです。
>ありがとう作者へ
文章に口語体使うのは好まれた手法ではないのでなおした方がいいかと
2話(4/10) そうゆう→そういう (1話にもあったあたり癖だと思うけど)
――、……の多用も見受けられる
それに、ところどころ使い方間違えている。
「いい!せっかくこうやってみんなが二人のために気を遣ってあげてるんだから、素直
に従うの―!」
や
「はぁ〜。もう〜お姉ちゃんは全然分かってないんだから――」
郁乃は愛佳
など一マス空けの使い方が間違ってる部分が多々ある
そういうところを意識して書いてみたらどうだろうか
>私ができること作者へ
イルファ視点の文章でいこうとするなら統一した方がいいと思う
ところどころイルファ視点ではない、状況表現のためだけの文章になっているところがある
苦手だから使わないという考えではなくて、持ち味を生かす方向で考えてみると良いんじゃないかな
>>212 GJ!!
細かい部分は確かに気になるけど話的に面白かった。
貴明が1番なイルファさんモエス。
ひっほう
あんなに叩かれてもすぐにSSを投下するユータたん…。
凄まじいまでの胆力よ。
ベジータ風に言うなら『バカの世界チャンピオン』だお…。
それはもしかして誉め言葉なのか
河野家まだ〜(゚∀゚)
LANDMINEsキョロ━(゚∀゚≡゚∀゚)━キョロ━マダ━?
河野家というメサイアをこのスレに……
由真に言われなくたって、このみが俺に好意を抱いていることは薄々気付いていたけど、由真は
他のみんなも全員俺を好きだと言い、それに気付かない俺をバカだの鈍感だのと責める。ムカついた
俺は思わず、じゃあお前はどうなんだと言い返すのだが、由真はそれに答えず、何故か肩揉みしろと
要求してきた。
肩揉みの最中由真は、今の生活の中で自分が変わり始めていること、けれど自分がまだ逃げている
ことを俺に告白する。そんな由真に俺は「いたいだけこの家にいたらいい」と言えるだけだった。
夜が明けて、昼過ぎにはあの二人が家に来る。だからと言うわけではないけど俺は、愛佳、郁乃、
珊瑚ちゃんを昼飯に誘った。そしてこのみの女友達と聞いた雄二も来ることに。こうして、河野家
メンバーズ全員であの二人を待ち受けることになったワケで……。
家に帰り、みんなで昼飯を食べて少し経った頃。
ピンポーン。
き、来たな。呼び鈴を押してるのは間違いなくあの二人だろう。俺は出迎えようとソファーから
立ち上がる。
「あ、タカくんわたしも」
そう言ってこのみもついてきた。
廊下に出て玄関へと向かうと、まだ扉を開けてもいないのに二人の声が聞こえてきた。
「ねえちゃる、センパイの家、本当にここで合ってるよね?」
「……多分」
「多分ってなにさ多分って!? もう呼び鈴押しちゃったんだよ、間違ってたらどうすんのよ?」
「……今なら間に合う」
「逃げる気かい!? この歳でピンポンダッシュってありえないっしょ!
いい? もし違う人が出てきたら、あんたも一緒に謝るんだよ」
「……済みませんでした、押したのはこのタヌキです」
「あたしに責任押しつける気かい!? 呼び鈴押したのは確かにあたしだけど、この家だって言った
のはあんたでしょうが!?」
「このみのくれた地図通り。大丈夫」
「でもこの地図、『えき』と『このみのうち』と『タカくんのうち』に線が引いてあるだけ……。
あんたよくコレで解るねぇ? 確かにこのみの家のすぐ隣だし、表札も『河野』だから間違いない
だろうけど……。ああもうセンパイ、早くドア開けてくれないかな〜?」
相変わらずの漫才コンビだな。放っておいたらいつまでもドアの前で喋ってそうだ。
これ以上は近所迷惑になりかねないので、俺は玄関のドアを開け、
「や、やあ、久しぶり」
「ちゃる、よっち、いらっしゃい」
「あ、センパイお久しぶりッス! このみももう来てたんだ」
「……お久しぶりです」
「とりあえず入ってよ、さあ」
「それじゃセンパイ、お邪魔しまッス!」
「……お邪魔します」
俺は二人を、みんながいる居間へと案内した。
「うわ〜っ! こんなに大勢!」
「……圧巻」
まあ確かに、これだけの人数が揃っていれば驚くのも無理ないよな。
「二人ともこのみから話を聞いてるだろうけど、まあこれがいわゆる河野家メンバーズなわけで」
「あ、はい……。これが全員このみのライバル……」
「何か言った?」
「あ、いや何でもないッス。
あ、あたし、吉岡チエっていいます。どうぞよろしくッス!」
「……山田ミチルです」
二人が一緒に頭を下げる。
「そんなにかしこまらなくてもいいわよ。私のこと、覚えてる?」
タマ姉が優しく二人に話しかける。
「も、勿論ッス向坂先輩!」
「向坂先輩、お久しぶりです」
「私のことは環でいいわよ。そんなところに立ってないで、こっちにいらっしゃい」
「は、はい!」
「……失礼します」
二人をソファーに座らせ、全員が自己紹介した。
「……その、何というか、かなり個性的な面々ッスね」
「ま、まぁな」
「何よ、あたしらが変人の集まりだとでも言いたいワケ?」
朝から二人を警戒していた由真が早速噛みつく。
「あ、い、いやそういうワケでは……」
「よしなよ由真ちゃん。チエちゃん悪気があって言ったわけじゃないんだし。
ところでチエちゃん、UFOとかUMAとかに興味ある? 今ならミステリ研特別会員として」
「ないッス」
即答であった。
「吉岡さんたちの制服可愛いですね。西音寺女学院でしたっけ?」
いじける花梨を押しのけ、優季がよっちに話しかける。
「あ、はい寺女ッス。制服はいいんスけどウチって女子校だから……」
「女子校! 女の園! いいねぇいいねぇ!
百合の花咲く乙女の世界! 上級生と下級生が姉妹契約しちゃったりしてるのか!?
なぁなぁ、やっぱチエちゃんやミチルちゃんにも『お姉様』がいたりするのか!?」
「い、いやウチはそういうのは……」
「妄想も大概にしろ雄二。タマ姉からも言ってやって……」
「……お姉様……」
タマ姉の表情に陰りが。何かイヤなことでも思い出したのだろうか?
「あれ、そう言えば山田さんは?」
ふと気がつくと、よっちの隣にいたはずのちゃるがいない。
「貴明、あそこ」
瑠璃ちゃんが指さす先には、正座して向かい合うるーこ、珊瑚ちゃん、ちゃるの姿が。
「るー」
不意に、るーこがいつもの「るー」のポーズ。
「るー☆」
それに応えるかのように、同じく両手を挙げる珊瑚ちゃん。
「……」
その様子をじっと見つめるちゃる。そして、
「……るー」
彼女もまた、るーこたちと同じポーズをとった。
「るー」
「るーるー☆」
「……るーるるー」
「るー、るー」
「るー☆」
「るーるー」
何をやっているのでしょうかあの三人は?
ハタから見てると両手を挙げて「るー」と言ってるだけ。しかし彼女たちの間では、それで意思の
疎通が出来ているような……?
「「「るー」」」
「るー」が見事にハモり、満足げな表情の三人。ワケ解らん。
「よかった、あの三人仲良しになったみたいですね」
「解るのかよ愛佳!?」
そんな感じで気がつくと、二人ともみんなとすっかりうち解けた様子。
愛佳と優季が淹れてくれた紅茶と、ちゃるとよっちが持ってきてくれたクッキーで三時のおやつと
なった。
「あ、このクッキーおいしい!」
「でっしょこのみ。学校の近くに最近出来た専門店でさ、寺女じゃ今ちょっとしたブームになってる
んだ。学校帰りに買うのは当たり前、中には授業中にこっそりつまみ食いする子までいたり……」
「こっそりつまみ食い、ねぇ」
「な、なんであたしを見るのたかあきくん!?」
ちなみに愛佳の前には既に全種類のクッキーが置かれている。
「お姉ちゃん食い意地張りすぎ。一個ずつ取って食べればいいじゃない」
赤面しながら文句を言う郁乃。
「だ、だって、おいしいから全部食べてみたいじゃないのよ〜!」
「その気持ちは解らなくもないんだけど、ねぇ……。
にしても、お嬢様学校でも買い食いなんてするんだ。寺女って校則に厳しいんじゃないの?」
さっきの警戒心はどこへやら。由真がよっちに尋ねる。
「寺女って確かに女子校ッスけど、由真さんが考えてるみたいなガチガチのお嬢様学校なんかじゃ
ないッスよ。あたしみたいな庶民の子だって普通に通ってるし、今時買い食い程度、誰でも平気で
やってるッス。先生に見られたって、せいぜい『買い食いするなー、早く帰れー』って言われる程度
ッスよ。
あ、いわゆるお嬢様もいるにはいるんスけど、みんながみんなおしとやかじゃないッスよ。中には
『マジむかつくー』とか『あいつ超うぜえ、死ね』なんて、あたしらが聞いてもドン引きするような
言葉を平気で使うお嬢様もいるッス」
「な、何か聞いてると落ち込む……」
よっちの語る真実が、雄二の中のお嬢様像を無惨に打ち砕いたらしい。傷心の雄二はまたもOTL
の姿勢になった。
クッキーがあらかた食べ尽くされた頃。
「さて、と」
不意に、よっちがソファーから立ち上がる。
「センパイ、お願いがあるんスけど、いいッスか?」
「お願い?」
「はい、ちょっと家の中を見せてもらいたいなーって」
「家の中? ……まぁ、別に構わないけど。先に言っとくけど、面白いモノなんか特にないぞ」
「それじゃあいいッスね。ちゃる、行くよ」
「ん」
ちゃるも立ち上がり、二人は居間を出ていった。
何か気になるな……。俺は二人についていくことにした。
「こっちかな、と」
二人が入ったのは洗面所。こんな場所に何の用があるんだ?
後について入ってみると、二人は何かを物色している模様。
「何してるんだ二人とも?」
「ふむふむ、洗濯物は男女分けずに洗っているようだね」
「……柄物や色物はキチンと分けられてる」
洗濯かごの中にある衣類を調べている二人。よっちが俺のトランクスを手にして、っておいおい!
「な、何するんだよ!?」
俺はトランクスをよっちから引ったくる。
「そんな恥ずかしがらなくたっていいじゃないッスかセンパイ。環さんや由真さんたちには平気で
洗わせてるんでしょ? いいご身分ッスね、うひひひっ☆」
「そのいやらしい笑い方は何だよ!? た、タマ姉が、一緒に洗わないと水や洗剤が勿体ないって
言うから、その、仕方なく……」
「でも、説き伏せるまでは結構大変だったのよ」
「うわ! タマ姉ついてきてたのかよ!?」
いつの間にやら俺の後ろにいるタマ姉たち。
「た、たかあきくんの、ぱ、ぱんつ……」
俺の持つトランクスを見て赤面する愛佳。慌てて俺はトランクスを洗濯かごに戻した。
「大変って、何がッスか?」
「最初はタカ坊、私たちに洗濯物渡すの凄く嫌がってね。自分で洗うの一点張りで。
私は普段から雄二のも洗ってるから全然気にならないのに、タカ坊ったら変に意識しちゃって」
「そ、そりゃタマ姉はそうかもしれないけど、最初は由真だって一緒に洗うの嫌がってただろ」
「ま、まぁそりゃあ、ね……」
「うーゆまにうーかり、それにうーるりもだったな。たかが男物の下着に汚いだの恥ずかしいだの
大騒ぎして、みっともなかったぞ」
「だ、だって花梨、男物の下着なんて洗濯したことなかったから……」
「う、ウチ今かてホンマは、貴明の下着なんか触りたないもん……」
「るーこさんは平気だったんスか?」
「当然だ。服は着れば汚れるのは必定、それに男女の違いなどない」
「……論理的」
「まぁこんな感じで、散々苦労の末、こうして一緒に洗えるようになったのよ」
タマ姉が肩をすくめる。
「そ、そんな風に言いますけど、最初は環さんだって……」
「最初? 何かあったの由真ちゃん?」
「花梨が来る前の話なんだけどね、環さんがたかあきに洗濯物を出せって言ったらたかあきが嫌がっ
たの。そしたら環さん……」
「……え? あ! ちょっと由真、それは内緒にしてって……!」
思い出したタマ姉が慌てて由真を止めようとするが、
「うん、それでそれで?」
と、興味津々のよっちや花梨に阻まれてしまった。そして由真の話が続く。
「そしたら環さん、何を思ったのかいきなり真っ赤になっちゃって、こんなこと言い出したの」
「や、やめて由真、言わないでー!!」
『そ、そういうことだったのね。なら、その、は、恥じる気持ちは解らなくもないわ。
私たちのこと意識して、そ、そういう夢を見ちゃって……。
で、でもねタカ坊、落ち込んじゃダメよ。健全な男の子なら当たり前のことなんだから。それにね、
私はタカ坊のお姉ちゃんなのよ、汚れた下着だってタカ坊のなら平気、キレイに洗ってあげるから。
だから気にしないで、お姉ちゃんに預けて、ね?』
よくもまあ一字一句キチンと覚えていたもんだ。声色までタマ姉に似せて、由真がタマ姉の発言を
暴露してしまった。
その言葉の意味を理解した者はみんな赤面して顔を背ける。しかし理解できなかった者は、
「今の話ってどういう意味なん? ウチちっともわからんかった〜」
「え? え? どういうこと? タカくんまさか、おねしょでもしちゃったの?」
理解できなかった者――珊瑚ちゃんとこのみは、純粋に疑問を口にした。そしてそれがタマ姉に
追い打ちをかけることになる。
「二人とも解らなかった? 保健体育の授業で教わったでしょ、男の子の身体の仕組み。
環さんは、たかあきが洗濯物を出さない理由を勘違いしちゃったのよ。つまり環さんはたかあきが
夢せ……むがが」
「や……やめなさいって、い、言ってるでしょ……!!」
よっちたちのブロックを強引に引き剥がし、由真が最後の一字を口にする前に、タマ姉はその口を
アイアンクローで塞いだ。
「ふ、ふひはへんへひは、ははひはん……」
その鬼のような形相に恐れを抱いた由真は、塞がれた口で何か言う。多分謝罪の言葉だろう。
それを聞いて由真を解放するタマ姉。しかし今度は雄二が堪えきれずに噴き出し、
「ぷ、ぶはっ!!
ぎゃはははははは!! あ、姉貴ってばそんな恥ずかしい勘違いしたのかよ!?
た、貴明のヤツが夢せ」
「お黙りっ!!」
バキッ!!
タマ姉の鉄拳が雄二の顔面にヒットし、雄二は悲鳴をあげる間もなく地に伏した。
つづく。
どうもです。第33話です。
ちゃるよっち登場! しかし今度は一話で収めきれず……、次回もよろしくです。(´・ω・`)>
余談ですが最近、アニマックスで放送中の「空手バカ一代」にはまっております。
実況板に参加しつつ、主人公の生き様に毎回爆笑じゃなくて感動。
「俺はな、近々熊と戦うつもりだ」
という主人公の名台詞を、ついSSでパクリたくなる衝動に耐える今日この頃です。
>>231 河野家喜多ーーー!
しかし、この二人はのっけから飛ばしてくれますなw
それにしても、ちゃるの「るー」といい、タマ姉の勘違いといい
本当にありそうなエピソードで恐い^^;
ところで、熊と戦うのは誰になるのでしょうか?w
1.貴明
2.タマ姉
3.由真
4.るーこ
5.雄二
>河野家作者さん
いつも読ませてもらってます。GJ。もうこれ以上の賞賛はないでしょう。
>これから投稿しようとしている人へ。
河野家〜も最初からGJ評価だったわけじゃない。赤ん坊がいきなり歩けないように、君たちもすぐには認めてもらえない。
だからダメモトで一度投稿してみるといい。誰なりかはGJと言ってくれるかもしれないし、完全に無視されることもあるけど。
>見る人へ
割り切りましょう。本職の小説家などではなく、所詮みんなただのアマです。それを読んで評価するあなたもアマです。
もし批評のプロなどと自認しているアホがいたら、今すぐその自信を捨てましょう。それだけ。
以上、1スレ目からずっと成長を見守ってきた古参兵でした。これより夜勤に逝ってまいります。 ノシ
やけに高い目線からの意見だな。
237 :
232:2005/11/22(火) 00:01:32 ID:cT3GtHSU0
あ、いかん。 書き間違えました。
(誤)ちゃるの「るー」
(正)ちゃるの「……るー」
>>232 1.貴明 でクマ吉(ぬいぐるみミルファ)と戦う
というSS希望ー
>>231 GJであります。
よっちとちゃるのキャラ立てが原作と遜色無いのが凄い。
私がここにスレを投下するには、まだまだ勉強・経験不足だったようです。
もう少し腕を磨いてから出直してきます。(『ありがとう』の作者)
駄文ながらも読んで頂いた方々、アドバイスを頂いた方々、
本当にありがとうございました。m(_ _)m
>>240 あそこまで書いておいて、それはないだろう
未熟だっていいじゃんか
私ができることの9に誤字
似た物→煮た物
>>234 お前は何だ。編集長か。
古参ならなんでも許されるのかこのスレは。
>>234の勘違いバカはほっとくとして、
別に批難されても投下する自由が妨げられる理由には
ならないのだから、ここで投下して腕を上げればいい。
花京院「だが断わる!!」
ここって作者同士とか、作者と読者が小競り合いするんじゃなくて
読者同士の諍いが圧倒的に多い(つーかそれだけ)のがおもしろいなw
あれだけハイペースで書いてたBrownish Stormの中の人も全然書かなくなっちまったしな。
作品上がらないでこんなぐだぐだやってんなら、このスレ終わってもいいや。
SS専用スレなんだろ?
ハーレムウザイ
河野家にようこそのどこが面白いわけ?
248はツンデレ
>249
あぁ、全くだな!
虹まだあああああああああああああああああああああああああああ
>>252 作者サイトで更新されとったよ。
何やら規制に巻き込まれた?らしいが
や、前スレに最終話が貼られてるから。
オチついてないけどな
>245
ああ、プチトマトやるよ。
虹、河野家、ブラウニッシュ、ジャンクション
マダー?
河野家イラネ
職人さんのモチベーションを低下させ続けた結果がこれなわけだ・・・
要らないなら専ブラのNGワードに登録すればいいじゃない
258はツンデレなんよ。
>>264 おつ!!
文が凄く上手くなってて驚いた、これが短編を書いた効能ってことなんだろうかw
ただ最近TH2を再プレイしたせいか、全体的にキャラクターのずれが引っかかったなあ
読んでて気持ち悪かったんだが、まあ俺個人の好みなんで気にしないで欲しい
続き頑張ってください
>>264 キタ――(゚∀゚)――!!
引越しとうp乙ですー。
俺はこれくらいの違いなら全然気にならないですねぇ
個人的にもっとタマ姉との絡み希望。
>>264 乙です!次回はミルファとの甘甘を期待してます
乙。
職人のヤル気を低下〜〜ってよりも
ただ単にネタがなくなってきた気がするなあ。
大抵のシチュは誰かが書いてるだろうし。
XRATEDが出れば、少しは状況が変わるだろう
と思いたい
XRATEDではイルファとのエチーもあるしな
>>264 ……タイガーショート?
「ト」の前に「ッ」を入れたほうが……
>271
そういうスカタンな茶々はメールを送ると良いと思います。
>>274 GJ!素直な由真テラモエス(*´Д')ハアハア
>>274 心からGJと言いたい!
由真と貴明のやり取りも自然で良いです。
ついにあの二人が家に来た。
河野家メンバーズのみんなと互いに自己紹介を済ませ、三時のおやつをみんなで食べたりしてる
うちに、二人はすっかりみんなとうち解けてしまった。
だけど二人の目的はあくまで敵情視察。二人は俺に家の中を見せて欲しいと頼んできた。気になる
ので一緒について行くと、二人がまず入ったのは洗面所。洗濯かごの衣類が男女分けされていない
のを見て、「環さんたちに下着を洗わせてるなんて、いいご身分ッスね」と冷やかすよっちだが、
俺にはとてもそんな風には考えられないんだよなぁ。正直、今でも抵抗あるし。でもだからと言って
洗濯物を出さないと、タマ姉におかしな誤解をされてしまうし……。
「へぇ〜っ、ここがセンパイのお部屋ッスか〜」
二人が次に入ったのは俺の部屋。
よっちは物珍しそうにあちこち見て回り、
「なんか、男の人の部屋にしてはやけにキチンと片づいてるッスね。センパイってば結構キレイ好き
なんスか?」
「以前はもっと散らかってたんだけど、今はこの部屋、由真と優季が使ってるからな」
「はー、そうなんスか」
よっちが由真と優季を見る。
「ま、まぁね。正直男臭くてイヤなんだけど、他に空いてる部屋無いんだよね……」
「貴明さんのご厚意でお部屋をお借りしている以上、掃除くらいはちゃんとしておかないと貴明さん
に申し訳が立ちませんから」
「成る程、お二人がマメに掃除してるんスね。
……ん、掃除? ……はっ! と、言うことは!?」
慌ててよっちは、何故かベッドの下を覗き見る。なんだ?
「……や、やはり無い。
男の部屋のお約束、ベッドの下のHな本が無くなってる!」
「い、イヤそもそも俺、そんなところにHな本なんて……」
「ありましたよ。Hな本」
優季が不機嫌そうに俺を睨む。
「え?」
「女の子の水着姿がいーっぱい写ってる写真集、ありましたよ」
「ああアレね。掃除中にあたしが見つけて、中身読んで怒った優季が古雑誌と一緒に捨てちゃった
ヤツ。確か緒方理奈の写真集だったよね」
緒方理奈の写真集? それって確か……
だが俺が気付くよりも先に、雄二の顔色が変わる。
「げぇっ!? な、なあ由真、それってまさか、タイトルが『All of charm』っての
じゃないよな!?」
「うん、確かそんなタイトルだったけど?」
「そ、それを捨てちまったのか優季ちゃん!?」
「はい捨てました。資源ゴミの日に」
「な、なんてこった……」
雄二が力無く崩れ落ちる。
「緒方理奈初の水着姿が満載の、ファン必須の写真集! しかもあれは初版で、本人直筆のサイン
入りの超レアものだったのに! それを、それを捨てちまったなんて……ああ……」
「あ、あれって雄二さんのものだったんですか!? ご、ご免なさい、そうとは知らず、つい私……。
あの、私、弁償します。同じものを買って返しますから」
「……そりゃ無理だ。初版のサイン入りなんて本屋じゃ絶対手に入らないし、ネットオークション
じゃとんでもない値段で取引されてるんだぜ。優季ちゃんの財布の中身じゃとても買えやしねぇよ。
そういや、アレを手に入れるのしんどかったなぁ。冬の寒空の下を徹夜で並んで、限定300人の
サイン&握手会にギリギリ間に合って。そういえばあの時の理奈ちゃんの手、暖かかったなぁ……」
うわ、そんな写真集を貸してくれたのか雄二のヤツ。俺ってばロクに見もしてなかったけど。
「そ、そんな大切な本だったなんて、私、なんてお詫びしたらいいか……」
優季の顔が青ざめる。
「……いや、どんな詫びの言葉をもらったからって、俺の理奈ちゃんは戻って来ねぇんだ。
……そうだな、それだけ済まないと思っているなら、一つ頼まれちゃくれないか?
ああ、カンタンなことだよ。写真集の理奈ちゃんと同じ水着、同じポーズで写真を撮らせてくれる
だけでいいんだ。大丈夫、水着なら俺が持ってるし、ポーズもキチンと覚えているから。
じゃあちょっと水着とデジカメ持ってくるから待っててぐがあ!?」
ぎりぎりぎり。
「優季の弱みにつけ込んでいやらしい写真を撮ろうなんて、下衆にも程があるわよ雄二。
大体何であんたが女物の水着なんて持ってるのよ。最早変態の領域ね。
いい機会だから帰ってあんたの部屋を徹底的に調べましょうか。怪しいものは見つけ次第処分する
からね。行くわよ、雄二」
「あだだだだそりゃねぇよ姉貴って言うかもう離して割れる割れる!!」
タマ姉は雄二の頭をアイアンクローで捕らえたまま、部屋を出ていった。
……この場合、あんな場所に置いていた俺にも責任あるかもな。雄二よ、スマン。
そう思いながら二人の去ったドアの方に両手を合わせていると、
ピッ。
PCの起動音。見るとちゃるが俺のPCの電源を入れていた。
「こ、こら勝手に人のPCを……」
「……調査の一環」
調査の一環、ねぇ。……まぁ見られて困るようなものは特に無いし、別にいいかな。
しかし、PCのOS起動が完了したとき、俺は我が目を疑った。
「な、なんだこりゃあ!?」
俺が壁紙にしてたのは、壁紙専門サイトで手に入れた、外国の海辺の町の風景だったはず。
なのに今、画面には何故か、パジャマ姿ですやすや眠っている瑠璃ちゃんと珊瑚ちゃんが壁紙と
して表示されている!?
「な! ……な、な……」
画面を見た瑠璃ちゃんの顔がたちまち赤くなる。
「……盗撮?」
「ち、違う! こんな写真撮った覚えはない! な、何でこんな写真が壁紙に……?
こ、こんなことするのって言ったら……」
「貴明、それらぶりーやろ〜。眠ってる瑠璃ちゃんがむちゃくちゃ可愛かったから、貴明に見せたろ
思うてウチが撮ったんや〜☆」
「やっぱり珊瑚ちゃんの仕業かよ!?」
「瑠璃ちゃん起こさんよう撮るのはなかなか難易度高めのミッションやった。
三脚立てて、デジカメの角度調整して、連続撮影やとフラッシュで瑠璃ちゃん起きちゃうから一発
勝負や。でもええ出来栄えやろ? あ、勿論隣のウチは寝たフリなんやけどな〜☆
それから〜」
珊瑚ちゃんはマウスを操作して、画面上のフォルダの一つにカーソルを合わせる。フォルダには
「瑠璃ちゃんコレクション」と書いてある。
「このフォルダの中にも瑠璃ちゃんの写真いっぱいあるんやで〜。
例えばこれ、ホラー映画見て怖がる瑠璃ちゃん〜」
珊瑚ちゃんがフォルダを開き、中の画像ファイルの一つをダブルクリックすると、画面には珊瑚
ちゃんにしがみついて怯えている瑠璃ちゃんの姿が。写真の位置からして、TVの上にデジカメを
隠し置いて撮ったのだろう。
「次は、靴下はく途中の瑠璃ちゃん〜」
制服姿の瑠璃ちゃんが、いつものニーソックスをはく途中の写真。うーん、別にパンツとかが見え
てるワケじゃないんだけど、靴下はく途中の女の子って何かHっぽいかも。
「次はもっと凄いで〜。お風呂上がりの瑠璃ちゃん〜」
今度は、風呂場からバスタオル一枚だけの瑠璃ちゃんが
「み、見るなぁーーーっ!!」
バキッ!!
る、瑠璃ちゃんの見事な回し蹴りが俺の顔に直撃……。
「え、ホントにいいんスか?」
夕方。雄二と一緒に戻ってきたタマ姉は、二人を夕食に誘った。
(ちなみに雄二はかなりヘコんでいる。どうやら相当数の品物を没収されたらしい)
「ええ、あまり大したものは出せないけど、よかったら食べていって」
「あ、はい! 是非!」
「……ご馳走になります」
二人が揃って頭を下げる。
「じゃあ、夕食はわたしとタマお姉ちゃんで作ろうよ?」
「ええ、じゃあ今日は私がアシスタントね」
そう言うと二人は早速キッチンへ向かった。
「このみが晩ご飯かぁ。そう言えば初めてだよね、このみの手料理食べるのって」
「……楽しみ」
キッチンでエプロンを着るこのみを、期待に満ちた眼差しで見守る二人。
そうだ、晩ご飯、愛佳たちも一緒にどうかな? そう思った俺だったが、
「あの、たかあきくん。あたしたちそろそろ帰りますね」
「あ、ほなウチも」
おや残念。まあどっちも家で待ってる家族がいるから、無理には誘えないか。
瑠璃ちゃんは珊瑚ちゃんを寂しげに見つめるが、引き留めようとはしなかった。
「じゃあ送っていこうか」
「あ、今日は大丈夫ですよ。ホラ、まだ外も明るいし。
珊瑚ちゃんと一緒にお話しでもしながら帰ります。ね、珊瑚ちゃん」
「せやね〜。郁乃とも一緒でウチ嬉しい〜」
「ちょ、ちょっと珊瑚、抱きつかないでってば……」
珊瑚ちゃんの抱きつき攻撃に赤面する郁乃。
「愛佳ちゃん郁乃ちゃん珊瑚ちゃんって、明日は空いてる?」
花梨がそう尋ねる。
「ええ、特に予定はありませんよ。郁乃もね?」
「ま、まぁね」
「ウチもヒマヒマやで〜」
「じゃあ明日も遊びにおいでよ。みんなでDVD鑑賞会なんてどうかな?」
花梨がDVD鑑賞会、ねぇ。やっぱUFOが出てくる映画かな?
「面白そうですね。ええ、それじゃ明日もお邪魔しちゃいます」
「勝手に決めないでよお姉ちゃん。あたしはまだ……」
「じゃあ郁乃はお家でお留守番?」
「う、うう……、べ、別にイヤとは言ってないわよ」
むくれる郁乃を見てクスクス笑う愛佳。珍しいな、愛佳が郁乃をからかうなんて。
「ウチも勿論参加するで〜。ウチのイチ押しDVD持ってくるな〜☆」
「さ、さんちゃんまたホラー見せる気や〜!」
まだ見てもいない内から、怖がって俺の後ろに隠れる瑠璃ちゃん。まぁ珊瑚ちゃんイチ押しだから、
間違いなくホラーだろうな。
愛佳たちが帰り、俺は残りのみんなと居間でTVを見ている。何げに窓の外を見ると、すっかり夜
になっていた。
そう言えば、こんな時間まで引き留めた以上、あの二人を家まで送らないとな。一応その事を二人
に話しておこうか。
「あのさ、もう夜になっちゃったから、帰るとき、家まで送るよ」
するとよっちが、
「あ、それなら大丈夫ッス。あたしたち今晩、このみの家に泊まることになってますから」
「へぇ、そうだったんだ。
……ん? じゃあ夕食もこのみの家で食べるはずだったんじゃないのか?」
「あー、それはですねぇ」
よっちはばつの悪そうな顔で、
「実はこのみから『夕食はきっとタカくんの家で食べられるから』って聞いてたもんで……」
「……予定通り」
成る程。で、そう言った以上は自分が夕食を作ろう、と。このみも真面目だね。
「みんなー、ご飯出来たよー!」
このみとタマ姉がそれぞれ、居間とキッチンのテーブルに料理を並べる。
キッチンのテーブルにはタマ姉、由真、花梨、るーこ、雄二が着き、居間にはこのみ、よっち、
ちゃる、優季、俺が着いた。
さて今日のおかずは……、お、ハンバーグの上にスライスチーズが乗ってる。チーズがとろけて
うまそうだな。
「今日のメインティッシュは、このみ特製チーズハンバーグです! それじゃあみんな、温かいうち
に食べちゃってね!」
「いただきます!」
さて、では早速ハンバーグから。熱々のハンバーグを一口分箸で切り分け、口に運ぶ。――うん、
うまい! ハンバーグとチーズはやっぱ合うねぇ。
「このみってばこんなおいしいハンバーグ作れたんだね、あたしびっくりだよ!」
「うん、おいしい。このみはいいお嫁さんになれる」
「そ、そうかな、えへ〜」
二人に誉められ、照れるこのみ。
「ああ、ホントにうまいよこのみ。これもやっぱ春夏さんから教わったのか?」
「うん、ハンバーグの作り方はお母さんからだけど、チーズを乗せるのはわたしのアイデアなんだ。
って言っても、チーズハンバーグなんて珍しくもないけどね」
「ハンバーグの焼き加減も丁度良いし、とろけたチーズが実に合っている。ますます腕を上げたよう
だな、うーこの。
ところでうーこの、このようなうまい料理を食わせてもらって何だが、うータマからはまだ例の罰
を受けていないのだろう?」
「う、うん……」
やっぱるーこは忘れてなかったか。よし、じゃあ作戦開始だ。
「そのことなんだけど、みんな、ちょっといいかな?」
「なんだ、うー?」
「考えたんだけどさ、二人にここまで河野家メンバーズのことを知られた以上、ただ二人に口止め
を頼んでも確実性がないと思うんだ」
「え!? い、イヤセンパイ、あたしら別に言いふらそうだなんて……」
「いや、ね、そこでなんだけど」
俺は一回コホンと咳払いし、そして、
「いっそのこと、この二人にも河野家メンバーズに加入してもらうってのはどうかな?
この二人を加入させるのに特に問題はないはずだし、むしろ加入させて、メンバーズの一員として
規則を守ってもらう方が効果的だと思うんだ」
「え!? せ、センパイ、いいんスか、あたしらが入っても!?」
「ああ、俺は大歓迎。みんなはどうかな?」
「私は構わないわよタカ坊。二人ともいい子だし。ね、由真?」
「あ、あたしですか? ええ、別に構いませんけど……」
他のみんなも肯く。
「と言うワケなんだけど、どうかな、二人とも?」
「え、ええ! 入れてくれるなら勿論って言うか、よろしくお願いするッス!!」
「……ふつつか者ですが」
「じゃあ決まりだね。
と言うわけで、この二人は河野家メンバーズの一員です。なので」
「うーこのの規則第三項違反は事実上消滅する、と言いたいのだろう? 最初からそのつもりで罰を
遅らせるよう頼んだということか。とんだ策士だな、うーは」
「全く、たかあきはホント、このみちゃんに甘いんだから」
るーこと由真はそう愚痴るが、二人とも笑顔だった。
「タカくん……、このみのために、ありがとね……ぐすっ」
「おいおいこのみ、こんなことで泣くなって。まあ今度からは気を付けろよ。
あ、二人も今後、メンバーズのことは絶対に……」
「口外するな、ですよね。勿論ッスセンパイ! この吉岡チエ、絶対に喋ったりしません!」
「……山田ミチル、この命に誓って」
何か大げさすぎる気がするが、まあ信じられるだろう。これにて一件落着、なんてな。
つづく。
どうもです。第34話です。
かくしてちゃるよっち、河野家メンバーズ入りとなりました。
お疲れ。
貴明も考えたな。次回も期待してる。
>>287 乙です!リアルタイムでアップ中だったからちょっと
待ってましたw
個人的にはここだけでの公開がもったいないくらい
良い出来だと思う(SSの書庫はあるけどね)。
>>287 お疲れです〜。
何も報いのない雄二…ヒデエw
>>287 GJ、お疲れっす!
いつも読ませてもらってますが、面白いです(*´∀`)
ちゃるとよっちのコンビはかなり好きなんで、出してくれて良かったですww
次回も期待してますね〜
293 :
名無しさんだよもん:2005/11/29(火) 14:17:03 ID:gjgs8KcN0
HREztrjyudtykyulofythyserjt6juuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu
>>287 遅くなったけど、河野家喜多ーーー!!!
だいたい予想通りだったけど、この分だとイルファさんの
河野家メンバーズ入りも近そうですね。 楽しみw
295 :
sage:2005/11/30(水) 06:40:36 ID:Bq54EB6h0
>>287 ミルファ&シルファマダー? と聞きたい所ですけど、
河野家は一応原作の設定に則ってるから無理でしょうね。
(´・ω・)ショボボン
296 :
295:2005/11/30(水) 06:42:33 ID:Bq54EB6h0
ミスって上げちゃったorz
ゴメソ
ミルファとしてではなくクマ吉としてなら出てくるかもな。
かもりん誕生日おめでとう
XRATED発売直前 我慢できませんでしたSS
<<<はじまり>>>
このみが俺をホールドしている。
薄衣ごしのささやかなふくらみと、ふたつのしこりが。
かぐわしい動物性の香りが。
俺の深いところにある澱をかき混ぜ、あわ立てる。
子猫みたいに身じろぎするこのみ。小さくてやわらかくて、薄い肩の骨がぴくぴく動いてる。
負けそうだ、雄々このみお前なんという嗚呼
だめだだめだと騒ぐ俺天使をこのみ悪魔が無慈悲に殲滅。実に一方的戦況。
「タカくぅん…」艶に浸かった声を俺の胸板に押し付けるこのみ。
まずい、このままじゃ俺、このみを…!!
かたん。
障子が少し動く音。
ここは向坂家の一室で、障子の隙間に見えたのは当然、この家の長女だ。
「タマ姉ー!助けてタマ姉、このみが悪い子になったぁ」
「あらま」
「タカくぅん、このみを見てよぉ」
「タマ姉ぇ、このみが俺を誘惑するー」
タマ姉がまともに助けてくれるなんて思わなかったがこのみを諭してくれるぐらいは期待した。
でもタマ姉はいつものように俺の、俺たちの考えなんか知ったこっちゃなかった。
にっこり微笑んだかと思うと、俺の背中から、ふわっと、俺とこのみに手を回すタマ姉。
このみとは少し違うフレグランス。でもやっぱり動物性の香り。とても気持ちがいい、獣の匂いだ!
ふにゅっと、人間の肉体だとは信じられないくらいやわらかいものが!ふたつも!俺の背中に!
「このみ、もう我慢できないの?」
このみ泣きそう。俺も泣きそう。
「タマお姉ちゃん、ごめんなさい。でもわたしタカくん」
「いいわ。でも、三人でね」
三人って!
「タマ姉、このみ、やめンムむ…」
このみが俺の口を塞いだ。薄いその唇で。
のみならず小さな舌を入れてきた!!
このみは俺の口をぺろぺろとなめる。子犬みたいにくれくれをする。
後ろからはタマ姉の手が、パジャマごしに俺の体をまさぐっている。少しずつ下の方に向かって…
これは夢か。
俺は今日タマ姉に呼び出され、このみと勇二と夏休みの課題を即刻終わらせるべくスパルタ合宿に入った。
この日夏休み初日。「夏休み全部を気兼ねなく遊び倒すため」タマ姉の命令は是も非もなく。
過酷な昼の間、俺はタマ姉とこのみが俺を狙っていることなんて忘れかけていた。
この前タマ姉にも唇を奪われたがその後、二人ともおとなしくしていたため、油断していた。
今日が決行だったとは! 俺の頭の片隅です巻きにされてぶら下がっている哀れな勇二の姿が、すぐ吹っ飛んでいった。
俺、このみ、タマ姉。三人。みんなパジャマで、しどけない。
既に俺の家庭棒ドメスティックスティックは言い訳できない状態に。
そんな汚いものをかわいいこのみに触れさせるわけにはいかない、俺は情けなく腰を引いてこのみから逃げ回る。
しかし俺のおなかの辺りをさすっていたタマ姉ハンドが不意にジャンプ、パジャマの上からそれをガッシと掴んだ!
「うあッ!」
情けない声を上げたのは俺。
飛び上がるような快感が奔って、きっとそのビクッはこのみにもタマ姉にも伝わってしまったはず。
「わっ…」
思いのほか、上ずった声を上げたのはタマ姉。その手がちょっと震えてる。ちょっとの震えでも、はっきりわかる。俺のエレクトヴァージンはきっと淡雪のようなかすかな刺激さえも100万倍に増幅されて感じるに違いなかったからだ。
俺の本体を掴んだタマ姉はもう逃がさんとばかりにぐいっと前に回った。俺自身は布にこすれてちょっと痛くて、無闇に気持ちよかった。
ドサッ
後ろに倒れこんだ俺の眼前に、上気した、意外と困ったような、整ったお姉さんの顔と、目をまん丸にした必死な、かわいい妹の顔が迫ってきた。
完全に組み敷かれた様相。
逃げられない。
俺が観念したと思って余裕が出てきたのか、タマ姉とこのみは俺をもてあそび始めた。
「うわわ…カチカチだ」
「あ…何か出てきた」
たぷん
「たッ、タマ姉!それふぁ」
「あーっ、タマお姉ちゃんずるいよー」
「フフン、これだけは私の特権ね」
「だっ、ダメだってば!!」
……お願い……
……仕方ないわね……
「それじゃいくね…」
うすく瞳を開いたこのみは俺の瞳の中のこのみと頷きあった。腰を落としていく。
「このみ、やめ…」
そそり立つ、脈打つ熱い棒をこのみは股間の芯に触れさせたかと思うと、そのままゆっくり、でも勢いをとめずに、秘壺に飲み込ませていく。
勢いをとめずに…。
ぶちぶちぶちぃ〜。
「うわ、うわ、このみッ!」
このみの表情はかわらない、眉一つ動かさない。痛いはず、それだけのキツさと肉を引き裂く感覚。
でもこのみは痛がるどころか瞳に嬉しささえ浮かべて、ぺたんと、広げた股間の肌肉が俺のペニスのふもとにぴったりくっついて止まるまでそのまま腰を落としきってしまった。
このみの奥の、膣の奥にある丸いものを、俺の棒が突き上げ、膣が少し伸びるような、そんな感覚。
痛くないのか?
目がチカチカするような甘い快感よりも、このみの体を案ずる気持ちが勝った。
「えへへ〜」
そのときこのみの目じりに涙が盛り上がるのを俺は見逃さなかった。
タマ姉は、このみと俺の股間を見て、一瞬顔色を変えた。
きっと出血しているのだ。
「こっ、このみっ、大丈夫か」「大丈夫?このみ」
「…ッ大丈夫でありますよ〜」
その瞳から、ぽろんと、大きなしずくがこぼれた。
嬉しい、嬉しい、このみ嬉しい。嬉しがってる。
ズキッ、ズキッと脈打つ痛みと、このみの嬉し嬉し嬉し嬉しが、つながったところから伝わってきて俺は。
このみが。可愛すぎて。何かを突き抜けて
「あ、ああああ!タカくん、痛い、痛いよ!?」
このみを下から突き上げずにはおれない俺。
上に逃げようとするこのみの薄い尻をぐっと掴んで、肉棒に膣をこすり付ける。
「ごめッ、このみッ、我慢できないッ」
「タッ、タカくぅん、お願いぃ、ゆ、ゆっくり…」
体が言うことをきかない。静まれ俺の体ッ、このみをこれ以上痛めつけるなッ
だが俺の分身はこのみのやわ肉の摩擦を求めてやまない。ええいッこの馬鹿○○○がッ!
助けてくれたのはタマ姉だった。
ぱっと視界が暗くなって、俺の口がタマ姉の香りでいっぱいになる。
意識が半分、下半身から上半身に持って行かれた。
やっと腰の動きが止まった。
とくん、とくんという脈動を感じる。
下の棒にも、上の口にも。
目を閉じて、俺の口の中をやわやわと侵食するタマ姉のキス
息を整えるたびにやわやわと締めてくるこのみの幼い膣
そのとき体じゅうに痺れるような性感が駆け抜けた。「ンぐッ…」
っどくどくどくどくどくどくっ
「うあああん…」
このみがびくびくっとなった。イッたんじゃない。
俺のペニスから吹き出るおびただしい精液を受けて、一つのセックスの終わりが、このみの体に刻まれたのだ。
ちゅぽんと、タマ姉が口を離す。
「…落ち着いた?」
無言で見つめ返す俺。
このみは俺の腹に手をついて、はぁ、はぁと息を荒げている。
どくっ…どくっ…
目の前の光の渦がおさまってもまだ、俺のからだから快感の余韻が抜けきらない。
このみは、そーっと、俺のペニスを抜いていく。
ずるん
抜けた瞬間、俺とこのみを最後の震えが駆けた。
このみの膣から、白赤のまじった金魚のような粘液がたれ落ちる。
「タカくん、気持ちよかった?」
このみがなみだ目で言った。
「ああ…」
「でも…ごめんなさい。いっしょにいけなくて…」
「…ごめんな。このみ」
「このみ、それは贅沢ってものよ?」
タマ姉が言った。ちょっとふくれッ面。
「タカ坊の童貞はこのみにあげちゃったけど、最初にタカ棒でイクのは、ワタシよ」
不敵な、いつもの、傍若無人なタマ姉だ。
さあ。
「タカ坊?私の処女膜破っちゃって、それでも私が良くなってイクまで、イっちゃダメよ?」
俺は背筋も凍るような恐怖を感じた。
だが俺のバイオレンスジャックは、俺の気も知らずに、再び硬くなっていった。
さあ。
<<<おわり>>>
改行ちゃんとしてなくてスマン
わざとつけた改行と区別つけるのがめんどくさかった。今は反省している。
ひさびさに来たなー。いいぞー。
続きをたのむ。
貴明がヘタレだと脇が輝くなぁ
>>309 月刊って言われると待てる気がしてくる
本当におもしろい。次を心待ちにしてます
春は終わらないマダー?
315 :
名無しさんだよもん:2005/12/03(土) 15:28:51 ID:PwE6mmaF0
ヌフー、エロを
久々に……
河野家(・∀・*)マダー?
珊ちゃんのらぶらぶSSください。
瑠璃ちゃんは居なくてもいいです。
_
'´, ヽ
(~)(ノノノヽ)
_ ヽ(#゚ ー゚ノ
'´, ヽ ⊂ !不と) ∧_∧
(~)(ノノノヽ) く/_|〉つ) ゚∀゚) <317
ヽ(!゚ ヮ゚ノ <いじめてええで し' .i つ つ
⊂)不iつ ,ノ ,, /
く/_|〉 .・.し'' し'
し'フ .____
>G3QBCN1u6k
乙〜。2回戦!2回戦!(*´Д`)=3
>>309 月刊でも良いジャマイカ。
今回も面白かったので今後も期待。
>>318 いじめあかんで〜、とさんちゃんのキャラソン聴きながら
言ってみる。
>318
ちんこアタックかましているかのよう見えた
俺の部屋、ベッドの下をよっちが調べたのがきっかけで、俺が雄二から借りた緒方理奈の超レア物
写真集を優季が捨ててしまったことが発覚する。だからって雄二、優季の弱みにつけ込んで代わりに
水着写真を撮らせろなんて言うから、タマ姉の怒りを買って『お宝』の一切を没収される始末。
ちゃるが俺のPCを起動させると、壁紙が何故か姫百合姉妹の寝姿に変わっていた。珊瑚ちゃんの
仕業だ。おまけに珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんコレクションなる盗撮写真を俺に見せようとするから、
いつものパターンで瑠璃ちゃんの怒りの矛先は俺へと向かうんだよなぁ。
夕食時。二人に河野家メンバーズの存在を口外したこのみをアイアンクローから救うため俺は、
二人の河野家メンバーズ加入を提案する。反対者は誰もおらず、二人がメンバーズの一員となった
ことで、このみの規則違反は事実上消滅した。うまくいってよかったよかった。
……
……クス……クス
……
「……めだって、起きちゃ……」
「……いから、このみも……」
……
んー、誰かの……話し声が……聞こえる……ような……
……
「……ほら、ヨダレ。センパイってば赤ちゃんみたい」
……
ん? 確かに聞こえたな?
……
つんつん。
「ち、ちゃる、そんなことしたらタカくん……」
あ、今、頬を……つつかれた……?
……
「……センパイの頬は、やっぱりいい感触」
つんつん。
またつつかれた。間違いなくつつかれた。うん、俺の近くに誰かがいる。
まだ眠い目を開けてみる。すると、
「あ、センパイ起きちゃった」
「……残念」
うわっ! め、目の前にちゃるとよっちが!!
「な、何してんだよお前ら!?」
「おはようッスセンパイ! あ、名前で呼ばなきゃいけないんだっけ。
それじゃ改めて、貴明センパイおはようッス!」
「……おはようございます、貴明センパイ」
「あ、お、おはよう……。
って、な、なんでこんな朝っぱらからここに……?」
「こんな朝っぱらって貴明センパイ、もう8時過ぎッスよ。
とっくに朝ごはんの仕度も出来てるのに、貴明センパイってば全然起きないし。
でもおかげで、貴明センパイの可愛い寝顔を見ることが出来てちょーラッキーッス☆」
「……至福の感触」
つんつん。
「こ、こら、つつかないでくれよ」
未だ俺の頬をつつき続けるちゃるの指をどかす。
「……貴明センパイ、つれない」
そ、そんな未練がましい目で見られても……
「お、おはようタカくん」
あ、このみもいる。まぁこの二人がいるんだから一緒にいるのは当たり前か。
「タカ坊、起きたの?」
キッチンの方からタマ姉の声。
「うん、おはよう」
「おはようじゃないわよお寝坊さん。もうみんなとっくに起きてるわよ。
タカ坊も顔を洗って、朝ご飯食べちゃいなさい」
見ると、由真、るーこ、花梨、瑠璃ちゃん、優季が既にキッチンのテーブルにいた。みんなは目覚
めた俺を見て、それぞれ朝の挨拶を口にする。みんな日曜の朝だってのに早起きだな。
「んじゃ、っと」
立ち上がって、洗面所へ行こうとした俺だったが、よっちの妙な視線が目に入った。
「な、なんだよ」
よっちはニヤニヤ笑い、
「いやー、なんか環さんって、貴明センパイのお母さんみたいッスね」
すると由真が、
「でしょ、やっぱそう見えるよね。たかあきったら図体は一人前のクセに中身は子供だからね〜。
ホント手が掛かるんだから。ねぇ環さん」
「手の掛かる子ならここにもいるわよ」
タマ姉は由真の頭をコツンと軽く叩く。
「あ、あたしもですかぁ!?」
「ええそうよ。他のみんなも手の掛かる子ばかり。
何だかタカ坊の家に来てから私、一気に20くらい歳をとった気分だわ」
わざとらしくため息をつくタマ姉。子供扱いされたみんなは、それぞれ不服はあるが相手がタマ姉
では言い返す言葉が見つからないと言った様子。
「そう言えばあなたたち、朝ご飯はもう食べたの?」
タマ姉がこのみたちに尋ねる。
「うん、もう食べたよタマお姉ちゃん」
「久しぶりに春夏さんのご飯をゴチになりましたんで、お腹いっぱいッス!」
「それじゃあお茶でも入れましょうか?」
「あ、こっちでTVでも見てますんでお気遣い無く」
よっちはTVのリモコンを手にとり、電源を入れてチャンネルを変える。TVに映ったのは……、
これって特撮ヒーローものじゃないか。女の子でもこんなの見るんだ。
「やっぱ日曜朝はコレ見ないと始まらないよねー!
いけー! そこだー! あ、後ろ後ろ! よし! 今だ、太鼓でやっつけろー!!」
「……次のこみパは特撮モノを要チェック」
……よっちはともかく、ちゃるのTVへ向ける眼差しがやけに熱っぽいのは何故でしょう?
朝食を食べ終え、それからしばらくして、
ピンポーン。
多分、愛佳たちか珊瑚ちゃんだな。俺は廊下に出て、玄関のドアを開けた。
「おはようございます、たかあきくん」
「……おはよ」
「貴明、おはようさん〜☆」
愛佳、郁乃、珊瑚ちゃんが三人一緒にやって来た。
「おはよう。三人一緒に来たんだ」
「ええ、いつも分かれる場所で待ち合わせたんです」
「そうや〜、ウチらすっかり仲良しさん〜」
「だ、だから、いちいちあたしに抱きつかないでってば!」
「ま、まあとにかく上がって」
「さて、一名を除き全員揃いましたので、DVD鑑賞会を始めたいと思います。はい、拍手〜」
ぱちぱちぱち。まばらな拍手の音。
ちなみに花梨が言う「一名」とは雄二のことだ。花梨は昨日、雄二も誘ったのだが、
『んなもんにつきあってられっか! こうなったら明日は絶対いい女ゲットしてやる!』
緒方理奈の写真集を失っただけでなく自宅の『お宝』まで全てタマ姉に没収された雄二は、その
怒りをナンパへの情熱に変えたらしい。ある意味前向きな男である。
「じゃあまずは花梨ちゃんオススメのこれ!」
花梨がみんなの前に出したDVDのパッケージ。そのタイトルは……
「お、『宇宙大戦争』か。見たかったんだよなコレ」
「でしょ。ミステリ研会員のたかちゃんのためにと思って、奮発して買っちゃったんよ!」
「どんなお話なんですか?」
優季が俺に尋ねる。
「まあ簡単に言えば、宇宙人が地球侵略するって話」
「ほう、それは面白そうだな。”うー”がいわゆる”宇宙人”をどうイメージしているのか、参考に
なりそうだぞ」
るーこはるーこなりにこの映画に興味を示した様子。
「た、タカくん、これって怖い映画?」
「いや、怖い映画じゃないと思うけど……」
「ほ、ホンマやろな貴明!?」
何故か俺の背中に隠れている瑠璃ちゃん。いつもなら珊瑚ちゃんに……ああそうか、こと怖い映画
に関しては、瑠璃ちゃんにとって珊瑚ちゃんは天敵に等しいからな。
「郁乃、はい」
「うん」
愛佳がバッグから出したのはサングラス? 郁乃はそれをつける。
「愛佳、それって?」
「偏光サングラスです。目の負担が軽くなるんですよ」
そっか。郁乃はTVやPCの画面を見るのが苦手だったっけ。
「つまんなかったら外して寝るから」
郁乃はそう言うが、果たしてこの映画で寝られるかな?
「じゃ、そろそろ始めるね。再生開始っと!」
見終わった。さて、みんなの反応は?
「貴明のアホーっ!! 宇宙人めっちゃ怖いやん! 人いっぱい殺されたやん!」
終始俺の背中できゃーきゃー悲鳴を上げていた瑠璃ちゃんである。
「怖いというか、冷酷な宇宙人だったわね。いきなり地球にやってきたかと思えば、問答無用で次々
人間を殺していくんだから。あんな宇宙人がもし本当にいたら、少なくとも友人には決してなれそう
にもないわね」
タマ姉は怖がることなく、宇宙人の蛮行を冷静に見ていた様子。
さて、宇宙人と言えばるーこだが……、おや、何やら難しい顔をしている。
「どうだった、るーこ?」
「……うー、これが、”うー”の持つ”宇宙人”のイメージなのか?
醜い外見、高度な技術を持ちながら知性の欠片も見あたらない、ただ野蛮で愚かなだけの生物……。
このような生物が”うー”を侵略しに来ると考えているのか、”うー”たちは?」
どうやら、この映画における宇宙人の描写にるーこは相当ショックを受けたらしい。
「ま、まぁこれはあくまで架空のお語だから……」
「るーこがたまたま知らないだけで、こういう宇宙人だっているかも知れないでしょ?」
花梨の反論に対し、るーこは、
「攻撃的な生物の情報は多々あるが、少なくともこのような野蛮かつ愚かな生物が高度な技術を駆使
し、他の星を侵略したなどという記録は無いぞ。高度な技術は高い知性によって成り立ち、高い知性
を有する生物は、無闇に他者を傷つけないものだ。
しかもこの生物は、自分たちが侵略しようとする星の事前調査すらしていないのだぞ。あの末路は
愚かの極みとしか言いようがない」
「確かにるーこの言うとおり、マヌケな宇宙人だよね。戦車とかミサイルとかでもビクともしない
UFOに乗っているクセに、おたふくかぜに弱いなんて笑っちゃうわよね」
由真の言うとおり、この宇宙人はおたふくかぜに弱かったのだ。娘を連れてひたすら逃げる主人公
が遂に宇宙人に追いつめられ、宇宙人が主人公から娘を取り上げたとき、その宇宙人は突然苦しみ
だして死んでしまう。実はその時、娘はおたふくかぜを患っていたのだ。
「どうだった郁乃、面白かった?」
「全然。面白くも何ともなかった。有名な監督が撮った映画らしいけど、大したことないわね」
姉の質問にクールに答える郁乃だが、少なくとも寝てはいなかったようだ。
「映像は凄かったけど、内容はイマイチっしょ。ちゃるはどう思う?」
「……同感」
「うう……、なんか不評だよ……」
周囲の悪評に落ち込む花梨。
「あ、で、でもホラ、必死で娘を守り抜こうとする主人公は素敵でしたよ。頼りがいのあるお父さん
って感じでしたよね。そういうお父さんっていいですよね。憧れちゃいます」
必死に花梨をフォローする優季。でも何となく、それだけでもないような……?
「ほな、次はウチのイチ押しや〜」
珊瑚ちゃんが取り出したDVD。彼女のことだから間違いなくホラーだと思っていたのだが……
「『マーズ・ストライク!』、これってホラーじゃないよね?」
「花梨はUFOモノで来る思たから、ウチもそっち系にしてみたんや〜。
でもこっちはコメディやから、みんな楽しく見られるで〜☆」
「ほ、ホンマなん、さんちゃん?」
俺の背中から離れようとしない瑠璃ちゃん。きっと今まで散々騙されてきたんだろうなぁ。
「ホンマやで瑠璃ちゃん。ほな再生〜」
見終わった。さて、みんなの反応は?
「貴明のアホーっ!! 火星人めっちゃ怖いやん! 人いっぱい殺されたやん!」
あの瑠璃ちゃん、怒る相手が違うと思うけど……?
「コメディと言うよりブラックユーモアって感じだったわね。出てくる火星人は子供の頃に読んだ本
に出てくるようなタコ型生物で、それが光線銃で人間を殺したり、捕らえた人間を改造したりするん
だけれど、どこかユーモラスで憎めない感じなのよね。お世辞にも品はないけど嫌いじゃないわ」
タマ姉には概ね好評だった様子。
「あー面白かった! 火星人もウケたけど、人間もおバカな人ばかりで笑えたわ。
特にあの科学者! 火星人に首から下をタコに変えられたのに、最後まで『我々は解り合えるハズ
だ! 話し合おうじゃないか火星の友人たちよ!』だもんね! おバカ過ぎて最高!
でもあの科学者役の俳優って確か、スパイ映画の主役やってる人だよね。よくあんなおバカ映画に
出演したわよね。監督に何か弱みでも握られてたのかな?
とにかく面白かったよ珊瑚ちゃん、笑える映画をありがとう!」
由真、バカ受け。
「タカくん、火星人をやっつけたあの『う゛ぃ〜〜〜』って変な音は何なの?」
「ああ、アレはホーメイって言って、ロシアやモンゴルに伝わる、独特の歌だよ」
火星人の弱点はホーメイだった。火星人に追われた主人公はモンゴル人の友人宅に逃げ込むのだが、
そこにも火星人がやって来る。死を覚悟した友人が今生の別れにとホーメイを歌った途端、火星人は
頭(らしき箇所)を抱えて苦しみ、死んでしまったのだ。
「ホーメイが弱点って、ふざけた設定だね。まあそこがこの映画の面白いところだけど」
「……うん、こういう映画、キライじゃない」
よっちとちゃるにも好評だった模様。さて火星人と言えば、花梨とるーこは果たして……。
「……な、なんなんよこの映画、宇宙人を何だと思ってるんよ?」
あ、あれ? 花梨、もしかして怒ってる?
「あのさ花梨、これはあくまでコメディであって……」
「そうやって何でも笑いにすればいいと思うのが間違いなんよ! たかちゃん、これはミステリに
対する明らかな侮辱だよ!!」
よく解らないがこの映画は、花梨の逆鱗に触れてしまったようだ。
怒りまくる花梨をなだめつつ、俺はるーこの方を見る。ん? るーこが耳を塞いで震えているぞ?
「おいるーこ、どうした?」
るーこに近寄り、肩を叩いてみる。るーこは真っ青な顔で俺を見て、
「……う、うー、あの恐ろしい音はもう止んだのか?」
……あの恐ろしい音? それってホーメイのことか?
もしかしてるーこもホーメイが苦手? 宇宙人は本当にホーメイが苦手なのか?
「どうだった郁乃、面白かった?」
「……べ、別に。面白くも何とも……ぷぷっ」
「郁乃、どうして顔を伏せて震えてるの? もしかして郁乃、笑うのを堪えているの?
ねぇ郁乃、どの辺りが郁乃の笑いのツボだったの? お姉ちゃんに教えて?」
「……お、お姉ちゃん、お願いだから勘弁……」
つづく。
どうもです。第35話です。
DVD鑑賞ネタは以前、「苦手なものを克服しよう」で一度やっているのですが、河野家の面子なら
どうなるのかと考え、また書いてみました。
それから、34話に致命的な間違いがあるのに気付きました。
9ページ目のるーこの台詞「規則第三項違反」、正しくは「規則第二項違反」でした。
一度書き込むと修正できないのが2chの恐ろしいところです。
気を付けて何度も読み返してるつもりだったのですが、駄目だなぁ……orz
>>330 乙
どっかのフリーのスペースに、今までの分をまとめてうpしてくれたら嬉しいかも
SS保管所も最近は更新されていないみたいだし
もちろん、無理強いはしませんが
>>330 リアルで読ませていただきましたw
乙ですw
よっちは白倉井上響鬼がお好き?
>>330 河野家喜多ーーー!!!
最後の郁乃の反応と、それに対する愛佳の容赦ないツッコミが
かなりツボでしたw
それにしても、るーこは^^;
>>330 乙かれ!!
なんか久しぶりに映画観たくなってきたw
>>330 毎回お疲れサマです!
毎週投稿するのは大変でしょうけど…今後も楽しみにしております。
>>330 河野家嫌いだったけど、最近投稿少ないから読んでみたら
結構面白かったorz
>>337 別にorzとなる必要はないんじゃないか。
素直に楽しめば桶。
完全に週刊連載と化してるので、作者の負担だけが心配だが^^;
339 :
投下します:2005/12/09(金) 00:29:34 ID:6xjYD5be0
発売日記念にSS投下!
・・・といってもたまたまさっき完成しただけですが(-ωー)
設定は、愛佳ルート途中のタカアキとこのみ ということで。
最初は真っ黒にしようと思いましたが、
以前黒いままで終わるSSを書いたので、今度は違う方向で・・・。
*途中でこのみ視点からタカアキ視点に変わります。
〜このみSide〜
最近、タカくんが一緒に帰ってくれない。
今までは毎日放課後に待ち合わせて帰ってたのに。
私が一緒に帰ろうって言っても、
『ごめん、用事があるから』って。
タカくん、このみのこと嫌いになっちゃたのかな・・・?
ううん、そんなはず無いよね。
このみはタカくんのこと大好きだし、
タカくんもこのみのこと好きなはずだもん。
きっとどうしても断れない大切な用事があるんだよ。
それなら仕方ないよね。
このみのせいでタカくんが先生に怒られたりしたら嫌だもん。
・・・そうだ!
今日の放課後、タカくんのことを手伝ってあげよう!
何かクラスの係の仕事なのかな?
このみが手伝えば早く終わるし、そうすればまた一緒に帰れるよね。
・・・。
ここがタカくんのクラスだよね。
あっ、ユウくんがいる。
「ユウくーん!」
「おう、このみじゃねえか。何してんだ?」
「タカくんいる?」
「タカアキなら帰りのホームルームが終わってすぐに
どっか行っちまったぞ。最近いつもそうだなー」
「そっかー。どこに行ったか分からないの?」
「うーん・・・。もしかしたらオンナかもな。ウシシ」
「もう!変な冗談言わないでよ!ユウくんのバカッ」
ほんとユウくんってああいう所があるから嫌い。
タカくんがこのみ以外の女の子に会いに行くわけないよ。
・・・タカくんどこに行っちゃったんだろう?
「タカくんの行きそうな所と言えばー・・・、あっ!」
今タカくんの声が聞こえた!
近くにタカくんがいる!
「ここは・・・図書室?」
タカくんは図書室に入ったのかな?
こっちの方から声がしたと思うんだけど・・・。
図書室は初めてだから緊張するな〜。
図書室ってけっこう広いんだね〜。
タカくんはどこだろう。
「・・・あっ!タカく・・・ん?」
タカくんがいた。
だけど、このみの知らない女の子と喋ってる・・・。
「誰かに呼ばれたような・・・って、このみじゃないか。
どした?本でも借りに来たのか?」
「あ・・・、うん・・・」
タカくんと喋ってた人がこっちを見てる。
「河野君の知り合い?」
「うん。前に妹みたいな幼なじみがいるって話したよな?」
「あ、この子がそうなんだね」
またこのみのことを見てる。
「・・・・・」
「このみ?本を借りに来たんじゃなかったのか?」
「このみちゃん。本の場所が分からなかったら、
タイトルを言ってもらえれば私も探すの手伝うよ」
「ほ、本の場所は、大丈夫です・・・。
タカくんはここで何をしているの・・・?」
「ああ。俺は本の整理を手伝ってるんだ。
小牧だけじゃ大変だからな」
「こまき・・・?」
「あ、そうか。このみは初めて会うんだったよなそういや。
えーと、こちらにいらっしゃるのがクラス委員長の小牧さんでございます」
「もー、何それー。私そんなに偉くないってばぁー。
私は小牧愛佳です。よろしくね、このみちゃん」
「柚原このみです・・・」
「なんか元気ないな。具合悪いのか?」
「ううん、平気だよ・・・。タカくんは毎日ここに来てるの?」
「最近はそうだな。一緒に帰れなくてごめんな」
「そう・・・なんだ。それじゃあ・・・もう帰るね・・・」
「あっ。おい、このみ!本借りに来たんじゃ・・・あー、行っちまった。
どうしたんだ?このみのヤツ」
「元気無さそうだったから、本当は具合が悪かったのかも・・・」
「やっぱそうだったのかな」
・
・
・
・
「あら、このみ。お帰りなさい。
お腹空いてるならすぐ夕飯にできるわよ?」
「いらない」
「え?ちょっと、どうしたのこのみ?」
“トットットットットット・・・バタンッ”
「このみったらどうしたのかしら・・・」
どうして・・・。
あんな奴と・・・。
このみよりもあんな奴と・・・。
ううん、タカくんはこのみのことを裏切るはず無い・・・。
きっとアイツはこのみからタカくんを盗ろうとしているんだ・・・。
だからタカくんを騙して、このみと一緒に帰らせないようにしているんだ・・・。
絶対にタカくんは渡さない・・・。
タカくんはこのみのモノ・・・。
タカくんはこのみのモノ・・・!
・
・
・
・
〜タカアキSide〜
朝、俺はいつものように
このみを家まで迎えに行く。
「このみったら昨日から具合が悪いみたいなの。
夕飯もほとんど食べなかったし。
あの子、元気だけが取り柄なのにどうしたのかしら。
熱とかは無いみたいだけど、念のため今日は休ませるわね」
「そうですか、分かりました。じゃあいってきます」
「ごめんね。いってらっしゃい、がんばってくるのよ」
このみが調子悪いなんて珍しいな。
学校が終わったら見舞いに行ってやるか。
・
・
・
ふう、愛佳の手伝いをしてたらすっかり遅くなっちまったな。
“ピンポーン”
「あら、どうしたの?」
「こんばんは、ちょっとこのみのお見舞いに。このみまだ具合悪いんですか?」
「もうだいぶ元気になったみたい。
よかったら上がっていきなさい、その方がこのみも喜ぶわ」
「はい、じゃあお邪魔しまーす」
「このみー!愛しのタカくんがお見舞いに来てくれたわよー!」
「ちょ、ちょっと何言ってんですか春夏さん!?」
いつもならすぐに階段を下りてくるこのみだが、反応が無い。
「・・・。あれ、このみ寝てるのかしら?ちょっと部屋に行って見てきてくれる?」
「あ、はい」
「変なことしちゃダメよ」
「しないですってば・・・」
“トントン”
「おーい、このみー、入るぞー」
いちおうノックをしてから部屋のドアを開ける。
「お、なんだ起きてるじゃないか。もう大丈夫なのか?」
「・・・・・」
このみはベッドの上に座ったまま、何も無い空中の一点を見つめていた。
「おい、生きてるかー?」
「・・・・・」
俺の言葉に反応せず、視線も動かさないこのみ。
部屋に差し込んだ夕日に照らし出されているその光景は、
異様な雰囲気とも呼べるものだった。
「このみ、まだ調子悪いのか・・・?」
「・・・遅かったね、タカくん」
このみがやっと口を開く。
だが相変わらず一点を見つめたままだ。
「ん?ああ、図書室の手伝いに行ってたからな」
「やっぱり・・・。
このみが学校休めば、すぐにこのみに会いに来てくれると思ったのに」
「うん?意味がよく分からないぞ?」
「ねえ、タカくん・・・」
「なんだ?」
「タカくんはこのみのこと好きだよね・・・?」
「え?・・・うん、そりゃ長い付き合いだし、兄妹みたいなもんだし、好きだよ」
「・・・。じゃあ、あの図書室で一緒にいた人のことはどう思ってるの・・・?」
「ん、小牧のことか?どうって言われてもなぁ」
「好きなの?」
「うーん、好きか嫌いかで言えば好きだろうな。つってもただの友達みたいなも」
俺が最後まで言い終わる直前、
急にこのみが立ち上がり俺のことを睨みつけた。
「ど、どした?」
「出てって・・・」
「え?」
「早く出てって!」
このみはそう言うと近くにあったぬいぐるみを俺に投げつけた。
「うお!ちょっと、このみ!?」
「出てって!!」
何がなんだか分からないまま部屋を出る俺。
とりあえず春夏さんに助けを求めよう・・・。
「というわけで、よく分からないんですが追い出されました」
「このみ、どうしちゃったのかしら・・・。
とりあえず今日は帰りなさい。私がなんとかしておくから」
「はい、よろしくお願いします・・・」
その夜。
“プルルルルルルルル”
電話が鳴る。
「はい、河野ですが」
「・・・もしもし。タカくん?」
電話の向こうから、今にも消え入りそうな
このみの声が聞こえてきた。
「このみか。・・・その、さっきはゴメンな。
俺、何かヘンなこと言っちゃったかな?」
「ううん・・・。いいの。
悪いのはこのみだから・・・。ごめんね、あんなことして・・・」
・・・良かった。いつものこのみだ。
きっとさっきは虫の居所でも悪かったんだろう。
「いや気にすんなって。わざわざ謝るために電話してきたのか?」
「・・・あのね、今からタカくんの家に行ってもいいかな?」
「今から?」
時計に目をやる。もう9時だ。
「別にいいけど、何か用事でもあんのか?」
「うん・・・。じゃあ今から行くね」
「おう」
こんな時間から何の用だろう?
まあ明日は休みだし、夜更かししても問題は無いだろう。
ほどなくして玄関のチャイムが鳴る。
「おじゃましまーす」
「お邪魔されまーす」
風呂上がりなのか、このみの髪は湿っている。
「ちゃんと春夏さんに断ってきたのか?」
「うん」
とりあえずリビングのソファーに座りテレビをつける。
「あ、そういや冷蔵庫にヨーグルトが入ってたな。食うか?」
「うん。あ、私が持ってくるよ」
「おう、サンキュ」
このみがヨーグルトを取りに台所へ向かう。
「タカくん」
「なんだ?・・・・・!!?」
台所から戻って来たこのみが手にしていたのは、
ヨーグルトではなく・・・包丁だった。
「な、なんでそんなもん持ってんだ・・・?」
「台所から取ってきたからだよ」
平然と言い放つこのみ。
「いやそういう意味じゃなくて・・・。ハハハ、何か新しい冗談か?」
「冗談なんかじゃないよ」
さっきまでのこのみとは違う。
こっちを見ているようで、どこか焦点が定まっていない瞳。
「・・・・・」
「ねえ、タカくん」
「な、なんだ?」
「タカくんは騙されてるんだよ」
「騙されてる?」
このみは小さく笑みを浮かべた。
「あの女がタカくんのことを、このみから引き離そうとしているんだよ」
「あの女・・・?」
誰のことだ・・・?
「だからね、もうアイツがタカくんに手出しできないようにしてやるの」
「ちょっと待て、アイツって誰のことだ?」
その瞬間このみの表情が変わる。
「・・・図書室の女だよ」
図書室・・・?愛佳のことか!?
「こ、小牧がなにかしたのか?」
さらにこのみの表情が憎しみに満ちていく。
「このみからタカくんを盗った・・・。
タカくんはこのみだけのモノなのに・・・!」
“ビリッ!”
このみが包丁でソファーを切りつける。
「おわっ!落ち着けこのみ!」
「盗った!タカくんを盗った!!」
“ビリッ!ビリッ!!”
狂ったようにソファーを切りつける。
「こ、このみ・・・」
「はぁはぁ、でもタカくんは悪くないんだよ。
全部アイツのせいだから、タカくんは気にしなくていいんだよ」
「・・・・・」
な、なにが起こっているんだ・・・。声が出ない・・・。
「このみね、いいこと考えたんだ!」
「いい・・・こと?」
「うん。アイツからタカくんを守るために」
このみは包丁を構える。
「それに、これからはタカくんとずっと一緒にいられるよ!
誰からも邪魔されないし。時間も気にしないでいいし」
このみが俺に近づく。
ま、まさか・・・。
「このみもすぐに行くからね・・・」
“フォン!”
包丁が俺を襲う。
「うわっ」
く・・・。
とっさに腕でガードした。
このみの力が弱いからか、それとも服の上からだからか、
少し切れたくらいで済んだみたいだ。
「ダメだよ、じっとしてないと・・・」
このみが再び包丁を俺に向ける。
「そのままにしててね」
「・・・くっそ!」
多少の傷を負うのは覚悟でこのみに跳びかかる。
「きゃっ!」
このみの手首をつかみ、持っている包丁を叩き落とす。
そしてそのままこのみをソファーに押し倒す。
「離してっ!このみとタカくんはずっと一緒になるの!」
暴れるこのみを押さえつける。
「落ち着くんだ!このみ!」
どうすればいいんだ俺は・・・?
・・・もう諦めたのか、このみはおとなしくなり
シクシクと泣き出してしまった。
「このみ・・・」
そのまま時間が流れていく。
「・・・な、なんか騒いでたらノドが渇いたな!飲み物取ってくるよ」
俺は床に落ちていた包丁を拾って、台所に戻しに行った。
ジュースとコップを持ってこのみの所に戻る。
「ほら、このみも飲むか?」
俺はいつものように、まるで何もなかったかのように
このみに話しかける。
「・・・うん」
このみは涙を両手で拭い、コップを受け取る。
「なあ、明日休みだし、今日は泊まっていけよ。
春夏さんには俺が電話しとくから」
「うん・・・」
「そうだ、明日どっか遊びに行くか?
どこでも連れてってやるぞ」
「うん・・・」
「どしたんだよ、元気ないな。
いつもはもっと喜ぶだろー?」
「・・・ごめんね。タカくん、ごめんね・・・」
「・・・・・」
俺はこのみを抱き寄せた。
「心配しなくても俺とこのみはずっと一緒だよ、これからもな・・・」
「タカ・・・くん・・・」
・
・
・
・
翌朝。
「タカくん遅いよー!」
「悪い悪い、寝すぎちまった」
このみは俺より早く起きて、朝食を作ってくれていた。
「んじゃ、いっただっきまーす!」
「いただまーす」
うーん、やっぱりこのみの作るメシはうまいなぁ。
「ねえねえ、タカくん。今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「そーだなー。水族館でも行ってみるか?」
「ホントに!?やたー!このみ水族館初めてだよー」
「あ・・・、金あったっけ・・・」
「えー何それータカくん」
「確か入場料が1000円とかで、んで電車代が・・・」
「もちろんおごってくれるんだよね!」
「え?何のことかなーアハハハ」
「それはヒドイでありますよ!」
「わかったわかった、タマ姉に預けてるお金を下ろしてくっから」
「お昼ご飯はレストランがいいなー」
「ちょ、それいくらになるんだよ!?」
「えへへー。フルーツパフェも注文しちゃおっかなー」
「うおー勘弁してくれー」
おしまい。
353 :
あとがき:2005/12/09(金) 00:47:27 ID:6xjYD5be0
レスによって長かったり短かったりですいません。
PC版の発売で、ここのスレがよりいっそう盛り上がることを祈ってます。
思えば初代スレの1番目も黒このみSSだったな。
ところでミルシルの正式キャラデザ公開されたわけだが。
ミルファSS書きの皆様、御愁傷様です。
書き直し頑張って下さいねー。(^^)ノ~~
これだけ書き手が減っても作家叩きに余念のない357を見てると
勃起する
わーい、リトライの人の新作予告キター
ミルファSSはまだ十年戦える!
はっきし言ってダメダメ。
特にオチが最悪。
朝起きたら、居間でこのみが首を吊って死んでいたら少しは違ったのに残念だ。
何故か窓が開いていて、棒が近付くと風に揺られてこのみの体がこっちを向く。
憤怒の顔をしたこのみ…。この世の全てを怨み逝った事が伺える。
さらにこのみの手が紙を握っているのに気付き、取ろうとするが死後硬直でとれないからこのみの指を一本ずつ折っていく棒。
苦労して取り出した紙には愛佳への恨み妬み等の呪いの詞(ことば)、一番下にこのみ、タカ君のあいあい傘が血で書かれていた…。
とかなら良かったのにな。
>>360 コアな方を対象にしているわけではありませんので、すいません。
ありがちですが、タカアキの優しさに触れて正気になったというお話です。
そうだな。
XRATEDの話題に飽きた頃、またおいで
>>360
XRATEDといえば、ミルファとシルファの公式設定が出てたな。
ポニテじゃなかったけど、
何となくBrownish Storm の中の人の所にあったイラスト結構イメージ近いかも。
で、Brownish Storm の中の人が沈黙しちゃってるんだけど生きてる?
新作マダー?
>>366 催促するわりにHPの方は見てないんだな? タイミングよく更新されてるぞ。
自演?w
とりあえずまーりゃん先輩の出番を待つ。
>>368 お前なにか忘 れ て な い か ?
さーりゃん先輩を忘 れ る な
だいぶ間があいてしまいまし。
タイミング的にPC版が出た直後だったりして時期ハズレかなという不安もありますが
この時期を逃すとまたいつになるかわからなるかもしれないので思い切って投稿させていただきます。
内容なんか余裕で忘れてしまうくらい久々になってしまったので
わかりにくくてもうしわけないですが、軽いあらすじを先に書かせていただきます。
瑠璃とイルファのいざこざが解決してから約一ヶ月、姫百合家に引っ越してくるよう熱烈なラブコールを受け続ける貴明。
だんだんと激化していく引越し要請に困惑し、貴明は雄二と偶然出会った愛佳・由真に相談を持ちかける。
だが雄二を経由して環の耳に話が入ってしまい、屋上に呼び出される貴明。
恐々と屋上に赴くも、貴明の予想とは裏腹に意外にも環は静かに貴明の話を聞くと、自ら珊瑚たちと話すと言ってくれる。
恐れていた事態の一つを無事回避できたことに安堵しつつ、放課後に待ち合わせをし、姫百合家へと向かったのだが……。
「それにしてもほんと人間そっくりなのね」
本当にメイドロボなの?とタマ姉はさっきから何度目になるかわからない質問をまた繰り返す。
機械がこの上なく苦手というタマ姉からすれば、これほどまでに精巧なイルファさんが人間にしか思えないのも無理からぬことだ。
「すごいのねぇ、珊瑚ちゃんって」
「すっかり慣れちゃって実感薄れてたけどね」
珊瑚ちゃんは普段はほんわかぽやぽやしてるし、イルファさんなんかまるきり人間みたいなせいで忘れがちだが、
彼女たちはロボット工学の最先端を行く才女と、その技術の粋を集めて作られた最新鋭のメイドロボなんだよな。
タマ姉のリアクションを見て、改めて珊瑚ちゃんのすごさと言うものを実感した。
「あの……そんなに見られると恥ずかしいです」
「あ、ごめんなさい。つい」
よほど珍しく映るのか、タマ姉はずっとイルファさんをあちらこちらから見て回っている。
なんにせよ、ひとまずはイルファさんが珊瑚ちゃんに作られたメイドロボであることを納得してもらえたようで安心だ。
「ねぇ、あなたほんとにロボット?」
「はい、HMX−17aイルファです、環様」
……まだ微妙に納得しきってなかったみたいだ。
気持ちはわからないでもない。
今となっては懐かしい話だが、俺も初めてイルファさんと会った時は同じように実は人間なんじゃないかと疑ったものだ。
「でもこれじゃあなおさら認めるわけにはいかないわね」
「認める……ですか?」
「イルファさん、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんも呼んでくださるかしら。今日はそのことでお話しに来たんです」
にっこりと、タマ姉はいよいよ本題に入ろうとしていた。
「話はタカ坊から聞きました。タカ坊をここに引っ越させるという話が上がってるんですってね」
姫百合家大一回家族会議を開いた時と同じようにみんなでダイニングのテーブルを囲む。
この前と違うことと言えばタマ姉が参加してるというか議長席に座っていることだ。
……なんで人んちでこんな偉そうにしてるんだろうこの人。
「そやー。貴明ひとりじゃいつか死んでまうもん」
「そうです。ここは私がメイドロボの誇りにかけてしっかりと貴明さんのお世話をしなくてはなりませんっ」
意気揚々と握りこぶしを作るイルファさんの言葉には一変の迷いもない。
そうか、俺ってそんなに生活能力なさそうに見えるのか……。
薄々自覚はしていたが改めて指摘されたようで軽くショック。
「そうね、私も常々タカ坊の一人暮らしの生活に対しては不安を募らせていました」
「タマ姉まで……」
「以前私がチェックしたら、掃除は手抜き、洗濯物は溜まってる、食事はインスタントや買って来たものがほとんど。これじゃあ
おじ様やおば様が心配されるのもわかるわ」
「うっ」
的確に欠点をついてこられてはぐうの音も出ない。
現に家事労働については返す返すタマ姉に注意されていたにもかかわらず結局サボり気味になってしまい、
食事に至ってはここ最近は完全に瑠璃ちゃんやイルファさんに依存している始末。
……うーん、見事に自活できてない。
「心当たりがあるみたいね」
「恥ずかしいことに心当たりしかありません」
がっくりと肩を落とし、敗北宣言。
「だからタカ坊、あなたうちに来なさい」
「へ?」
「はい?」
「んなっ?」
突然にして突飛な発言に異口同音に驚きの声があがる。
いや、ちょっと待てよ。
今のはいったいどういう話の流れでそうなったんだ? 俺の理解が追いついていないだけか?
だが少し視線をずらしてみれば、同じように驚いた顔をしたイルファさんと瑠璃ちゃんがそこにいる。
よし、オーケー、意味がわかってないのは俺だけじゃないみたいだ。
唯一珊瑚ちゃんだけがいつものぽけぽけの笑顔のまま首を傾けている。
自分がマイノリティでないことに安堵すると、今度はタマ姉の唐突の申し出の真意を計るべく脳細胞をフル回転させる。
「何をそんなに驚いてるの?」
「いや、だって……。なんでまたいきなり俺がタマ姉の家に行くって話になったのかなぁと」
イルファさんと瑠璃ちゃんもうんうんと頷いて俺と同意見だと意思表示をしている。
「別にいきなりじゃないわよ。前にも一度、ウチで寝泊りなさいと言ったはずよ。あの時は結局タカ坊が嫌がって
そのままになっちゃったけど、こうなったらいい機会だわ」
「そ、そうだったっけ?」
「なぁに、タカ坊ったら、忘れちゃったの?」
忘れていたかどうかと問われれば確かに今の今まで忘れていたのかもしれないが、いまの一言でこれでもかというくらい鮮明に記憶が蘇った。
むしろあえて忘れていたような気さえする。
確かに以前、あれは新学期が始まってまだ間もない頃だったと思うが、屋上で昼飯を食べてるときにタマ姉は俺の一人暮らしを
慮って自分の家に来いと言ってきたことがあった。
その時は何とかやり過ごし、それからしばらくの間はその話題には触れぬよう触れられぬよう気を配っていたのだが……。
「私はおじ様とおば様にもタカ坊をよろしくって任されてるんだし、珊瑚ちゃんたちのお世話になるよりもよほど常識的じゃない?」
「まぁ、そうだけど……」
世間的にもタマ姉の意見は正当なもので、だからこそどう反論したらいいのかまったく思い浮かばない。
「そんな貴明さんっ。貴明さんは瑠璃様と珊瑚様と私を捨てて環様の元へと行ってしまわれるのですか?
あの時誓った私たちの愛はその場限りの偽りだったのですか!?」
「ちょ、ちょっとイルファさんやめましょうよそういう誤解を招きそうな言い方は」
鋭利になっていくタマ姉の視線を背中に感じながら、なんとかイルファさんを押しとどめようとする。
ひぃぃ、タマ姉の指がゴキゴキと鳴ってらっしゃる。
イルファさん、これ明らかに狙って言ってるよな。
「だっ、だいたいタマ姉もタマ姉だよ。最初から言ってるように、俺は今のままで大丈夫なんだから、
タマ姉の家にも珊瑚ちゃんの家にも行くつもりはないよ」
「何言ってるのよ。タカ坊が一人じゃ心配だって言うのは、この場全員の一致した意見なのよ」
「うっ、でもっ」
タマ姉の言うとおりだった。
つい今しがた俺の生活態度を窘められたばかりだったのだ。
「タカ坊がうちに来れば、今のだらけきった生活を改めさせることが出来るし、珊瑚ちゃんたちも心配なくなるでしょ。円満解決じゃない」
「そ、それは……」
言い返せない。
タマ姉の理論に隙はなく、反撃の糸口さえもつかめない。
おかしい、なんでこうなったんだ?
確かタマ姉は珊瑚ちゃんたちを説得するために今日ここに来たんじゃなかったのか?
ちらりとタマ姉を見やると……。
「ふふ……」
「!?」
そこには怪しい笑みが浮かんでいた。
その笑顔に、嫌な予感が頭をよぎる。
まさか……タマ姉は最初からこのつもりだったのでは……。
昔からタマ姉がああやって笑うときには、必ず何か企みごとをしているのだ。
少年時代から積み重なってきた俺の記憶が警鐘を鳴らす。
もしかすると俺は既にタマ姉の罠に飛び込んでしまっているのかもしれない。
「なーなー」
そこに、ずっと黙っていた珊瑚ちゃんがついに口を開いた。
「貴明。うちにきぃへんの?」
どうやら話の流をいま一つ飲み込んでいなかったようだ。
やっぱりこの子大物だよ。
「ええ、タカ坊は私が責任を持って面倒見ることになったわ」
「なったわって、勝手に決めないでくれよタマ姉!」
まだ俺は納得していないのだ。
さすがに今回はいつものようのタマ姉の独断だけで決定事項にされるわけにはいかない。
このみ風に言えば「徹底抗戦をする所存であります」だ。
「なぁに? タカ坊は珊瑚ちゃんたちの家になら来られて、私の家には来られないって言うの?」
口調こそ穏やかだが、その声はひどく険のあるものだった。
ああ、そうだよ、タマ姉は昔から『だれだれはいいのにわたしはダメ』みたいな状況に機嫌を損ねる人だったんだ。
「別にそんなつもりわけじゃないよ。そもそも珊瑚ちゃんたちの家に来る件だって断るつもりだったって言ってるじゃないか」
「えぇ? そんな……貴明さんは最初から私たちを捨てるおつもりだったんですか!?」
「なにぃ!? こらぁ貴明っ、さんちゃん捨てるなんてええ度胸や。この鬼ー」
「いっちゃん、瑠璃ちゃん、大丈夫や。貴明はそんなことせぇへんよ。だってうちららぶらぶやもん」
「まっ、待った待った! ごめんタマ姉、少しだけ時間を……。三人とも、ちょっと」
タマ姉の纏う空気がさらに険しくなるのを感じ、慌てて姫百合ファミリーに部屋の隅に招集をかける。
「三人とも、少し黙ってて欲しいんだ。特に……」
先ほどから問題発言を連発するメイドロボをジト目で睨む。
「貴明さん、そんな熱い視線を送られては照れてしまいます」
俺の真意をまったく意に介さず頬を染めるイルファさん。
いろんな意味で強い人だった。
「ちがうっ。釘をさしてるんです! このままじゃ俺は向坂家に強制移住させられてしまう。瀬戸際も瀬戸際、崖っぷちギリギリなんだ。
あらん限りの力を絞って徹底的に抵抗をしないと、ほんとにタマ姉に連行されちゃうんだよ」
やる。あの人なら絶対にやる。
こうと決めたなら俺の意思などお構いなしに実行に移す、あのお姉さまはそういう人だ。
なればこそ、話が固まってしまう前になんとかしてこの案件をぶち壊さなくてはならない。
「タマねーちゃんも貴明とらぶらぶなん?」
「そういう話じゃなくて」
「貴明ぃー、さんちゃんというものがありながらー!」
「だから違うってば」
というか瑠璃ちゃんは俺にどうしろというんだ。
「とにかく」
普段の俺からは考えられない強い語調で話を仕切りなおす。
それだけ必死ということだ。
「しばらくは黙ってて欲しいんだ。俺はなんとしてもこの危機を乗り切らなければならない」
それだけ言うと、俺は再び戦場(テーブル)に戻り、タマ姉と向き直る。
珊瑚ちゃんたちもすぐ自分たちの席へと着くが、俺の頼みをわかってくれたらしく、おとなしくしてくれている。
「もういいのかしら?」
「うん、とりあえずは」
よし。
気合を入れ、反論開始。
「タマ姉、それでさっきの話なんだけど、雄二は嫌がるんじゃないかな。ほら、やっぱり自分の家に他人が上がりこむなんて……ねぇ?」
とにかく切れるカードは切っておく。
今の俺は親友だろうとなんだろうと使えるものはなんでもダシに使う
「大丈夫よ。あの子には私のすることに文句なんか言わせないから」
たおやかに微笑みながらはっきりと断言する。
雄二、お前ほんとにあの家で権限ないんだな……。
ふがいない親友のために反論はわずか十秒で撃沈した。
「それに安心なさい。タカ坊が来るって聞けば雄二ならきっと喜ぶわ」
「そっ、そんなことは」
…………。
どうしよう、ないって言い切れない。
いや、むしろ……。
『ハハハ、たかあきー、姉貴の相手は任せたぜー』
にこやかに手を振りながら遠くへ走り去っていく雄二のビジョンが頭の中に浮かぶ。
すごくムカついた。
しかも妙にリアリティがある。
まずいぞ、ものすごいありえそうだ。
「決まりね」
つい口を噤んでしまったのだが、あいにくと相手は見逃してくれるような甘い人ではない。
タマ姉はすかさずポンと手を打つと、そのまま話を纏めようとする。
「でっ、でも」
「タカ坊、往生際が悪いわよ」
「なー」
ふと、珊瑚ちゃんがぽんぽんと俺の肩を叩いてくる。
その様子から察するに何か言いたいことがあるようだ。
もはや俺に逆転は不可能なこの現状、普通なら、一か八かで珊瑚ちゃんの一言に賭けようとも思うところだったろう。
だが、このとき俺は本能的に悟っていた。
珊瑚ちゃんに続きを言わせてはならない、と。
すごく良くないことを言いそうな予感がした。
直感に従い、慌てて珊瑚ちゃんの発言を止めようとするが、もう止まらない。
無常にもその言葉は世に解き放たれてしまったのだ。
「ほんなら、タマねーちゃんもうちに来ればええんとちゃう?」
グッドアイデアだと信じて疑わないような満面の笑顔を浮かべた珊瑚ちゃんを見つめながら、俺は心の中でがっくりと膝をついた。
378 :
↑の中身:2005/12/10(土) 18:01:54 ID:AbyLrOhy0
PC版も出たことで、修正や加筆箇所によっては矛盾が生じてしまうかも、と
少しばかり不安もありますが、そのときはPS2版準拠だしと開き直って生きていこうと思います。
でも18禁シーンが追加されちゃったりすると、瑠璃の付かず離れずみたいな距離感は
ありえなくなっちゃうんでしょうか。
そのあたり、懸念してます。
>>378 えらく待った気がしたけどGJ!
次も楽しみです。
>>378 瑠璃はHの後もツンデレなので大丈夫ですよ。
Hで気分が盛り上がるとデレデレになりますけど。
>>378 春の人GJ。続き期待してます。
それにしても、TH2Xプレイしてるが、ささらルートはすごいな。
貴明のヘタレさ加減が数段レベルアップしてるぞ。
失望する代わりに雄二の株あがりまくりんぐな今日この頃w
鳴海孝之、伊藤誠に次ぐへたれ主人公の座を確立できるか?>貴明
たぶん、前作の「ポジティブな天才」藤田浩之との違いを際立たせる為に
貴明はああなったんだろうが、シナリオ全般に爽快感や達成感が欠けすぎるん
だよね。
まぁなんだ・・・・ささらSSキボン
>>383 鏡を見てみれ。
ブッちぎりのへたれが映っているはずだよ。
m9(^Д^)プギャー
ささらってクーデレじゃなかったのか……?
伊藤誠のヘタレっぷりには勝てないよ
誠はしっかり手を出しまくってからヘタレるからな
>>390 一説では孝之を遥かに凌駕すると言われてる奴だからな
>>389 デレな描写はたくさんあったけど
クールな描写はちょっとしかなかった。
個人的にはだめっ娘
俺さ、思ったんだけど…
ささら編ってイリヤの空、UFOのなt…
いやなんでもない。
丁度やってる、今ミステリ研ツブしに行ってるトコ。
キャラ的には最高なんだが、シナリオが微妙だったな
これはたま姉にもいえるけど
マジでタカ坊ヘタレすぎ。
るーこのときは文字通り倒れるまで奮闘し、由真のときはガラスぶち破ったりしたのに
この落差はいったいなんなんだ。
同級生以外だと別人になります
るーこは電波が妙に合っちゃったから
401 :
名無しさんだよもん:2005/12/12(月) 19:40:04 ID:HnyhYZis0
>>399 おいおい、ヘタレじゃないと他のキャラの見せ場が無くなるぞ
しかしアレだな……。
やっぱりイルファさんはエロファさんだったな。
さて、そろそろ今週の河野家がupされる頃だろうか?ワクワクテカテカ
よっしゃまーりゃん先輩乱入を希望しておくぞ>河野家
あの人なら理由付けなしになんとなくそこにいても多分オーケーだろw
>>404 そwれwだw
河野家始まって以来の期待を寄せているぞ俺はw河野家がんがれ!www
wktk
日曜日だからとゆっくり寝ていると、ちゃるとよっちのオモチャにされてしまった。まったく、
男の寝顔なんてそんなに面白いもんかねぇ?
愛佳、郁乃、珊瑚ちゃんが家に来て、DVD鑑賞会開始。一本目は花梨オススメの『宇宙大戦争』
だったが、周囲の評価はイマイチ。特にるーこは、劇中の宇宙人のデタラメっぷりに呆れかえった。
二本目は珊瑚ちゃんの『マーズ・ストライク!』。コメディ路線のこちらは概ね好評だったが、
今度は花梨がそのふざけた内容に大激怒。そしてるーこは、劇中の火星人と同じようにホーメイの
音に怯える。宇宙人は本当にホーメイに弱いのか?
DVD鑑賞会が終わり、少し遅めの昼食を食べた後。
「たかあき」
ソファーでまったりお茶を飲んでいた俺に、由真が話しかけてくる。
「見せたいものがあるから、今すぐあたしたちの部屋に来て。
あ、このみちゃんも一緒に」
見せたいものって何だ? あと細かいことだがあたしたちの部屋って、あそこは俺の部屋なのだが。
まあいいや、他にすることがあるわけでもないし。
由真に連れられ、俺とこのみ、それからこのみについてきたちゃるとよっちが部屋で見たものは、
『あたし、あたしお兄ちゃんが好き!!』
はぁ、またこのギャルゲーかよ……。画面にはいつか見た、萌子ちゃんの告白シーン。
「はー、コレが噂に聞くギャルゲーってヤツッスか。貴明センパイってばこんなのやる趣味があった
とは知らなかったッス」
「……今秋TVアニメ化決定。貴明センパイ、そっちも要チェック」
「あー、一応言っておくけど、コレ雄二が勝手に置いていったものだから。それを見つけた由真が
面白がってやってるだけ」
「ま、表向きはそうなってるけどね」
「表向きって……、雄二のものだってのは由真だって知ってるだろうが。
まさか俺が雄二にウソを頼んだとでも疑ってるんじゃないだろうな?」
「そんなのどうでもいいわよ。それより画面に注目して」
「このシーンなら前にも見たぞ。またバッドエンドじゃないのか?」
そうぼやく俺。しかし、
『……ああ、知ってたよ萌子』
あれ? 主人公の台詞が前と違うぞ?
『萌子の気持ちは、ずっと前から知ってた。でも俺、萌子との関係が変わるのが怖くて、答えるの
をずっとためらってた。ごめんな、萌子。
でも俺わかったんだ。大事なのは萌子と俺の関係がどうとかじゃなくて、萌子にいつも一緒にいて
欲しい、それだけなんだって。そしてその理由は……、萌子、俺もお前が好きだから。妹としてでは
なく、一人の女の子として』
『お兄ちゃん……、いいの? 本当に萌子でいいの?』
『萌子でいいんじゃない、萌子でなきゃ駄目なんだ』
『お兄ちゃん!』
画面は、二人が抱き合い、キスするシーンに。そのシーンがゆっくりとホワイトアウトして、エン
ディング曲が流れ、スタッフの名前が次々とスクロール表示される。
そしてエンディング曲が終わった後、画面には、ウエディングドレス姿の萌子ちゃんが。
『お兄ちゃん……、萌子今、とっても幸せだよ』
『萌子、いい加減そのお兄ちゃんって呼び方やめろよ。もう俺たち、兄妹じゃないんだからさ』
『ううん、萌子にとってお兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。
これからもずっと、萌子だけのお兄ちゃん……
まじかるハートフルデイズ fin』
「や、やった……、遂にあたしはやり遂げた、萌子ちゃんハッピーエンド!!
雄二の助言通り他のヒロインの好感度も上げて、幼なじみのひかりちゃんとのバーサスイベント!
何となくひかりちゃんといい雰囲気になっていたところに、萌子ちゃんが『萌子からお兄ちゃんを
取らないで!!』と乱入! まさに修羅場だったね。
でも思えば、ひかりちゃんもいいコだったな〜。萌子ちゃんの気持ちと、主人公の本当の気持ちに
気付いて、『貴明ちゃん、自分の気持ちにウソついちゃ駄目だよ。貴明ちゃんホントは、萌ちゃんが
好きなんでしょ。だったらあたしじゃなくて、萌ちゃんのそばにいてあげなきゃ』なんて泣かせる
台詞で自ら身を引くんだもの。次はひかりちゃんルートでいこうかな〜☆」
「……あのさ由真、盛り上がってるトコ邪魔して悪いが、要はこれを俺たちに見せたかったと?」
「そうよ。どうたかあき、このみちゃん、この二人の幸せな結末を見て、感想は?」
「いや、どうって言われてもなぁ……。俺自身がゲームやってたわけじゃないから、オチだけ見せ
られても……」
「ねぇ由真さん、この二人って確か義理の兄妹だよね。義理の兄妹って結婚できるの?」
「え? そ、それは……」
このみの質問に言葉を詰まらせる由真。しかしその回答は、
「……日本の法律上、義理の兄妹は結婚可能」
「へ? ちょっとキツネ、あんたなんでそんなコト知ってんの?」
「……常識」
涼しい顔でそう答えるちゃる。常識なのか、俺も知らなかったよ。
「そっか、なら義理の妹って実はすごいおいしいポジションかも。好きな人の一番近い場所にいつも
いられるし、その気になれば親の目を盗んであんなことやこんなことだって……、止めには結婚も
OKだもんね。ねぇこのみ、いっそのこと貴明センパイの義理の妹になっちゃえば?」
いきなりとんでもないことを言いだすよっち。
「はぁ……、あのなよっち、義理の妹なんてそんな簡単になれるものじゃないだろ。
普通養子縁組って、子供のいない夫婦が知り合いの子供を譲り受けたりとか、両親を亡くした子供
を引き取ったりとか、とにかくそれなりの理由があってすることだろ。そんなポジションがどうとか
なんておかしな理由で……」
「……わたし、相談してみる」
「こ、このみ?」
「タカくんの家の子になっていいか、お父さんとお母さんに相談してみる!」
「お、おいこのみ!」
俺が静止するよりも早く、このみは部屋を飛び出していった。
「あ、待ってよこのみ〜!」
慌てて後を追うよっちとちゃる。……後に残ったのは俺と由真の二人だけ。
「……行っちゃったね」
「ああ、そうだな。でも多分、すぐに戻ってくると思う」
それから約10分後。
「ふぇ〜ん!」
玄関には、頭を押さえて戻ってきたこのみ。勿論二人も一緒。
「で、どうだったんだ、このみ?」
結果は分かりきっているが、一応聞いてみる。
「お母さんにはゲンコツで頭殴られた。お父さんには泣きつかれた」
『馬鹿なこと言ってんじゃないの!! 姑息な手に頼らず、正々堂々勝負しなさい!!』
『まだ早過ぎるよこのみ! せめて後5年、いや3年でいいから、うちの子でいておくれ!』
春夏さんとおじさんの台詞をよっちとちゃるが代弁する。春夏さんの反応は予想通りだし、おじ
さんにとっては養子も嫁入りと大差ないものな。いきなりそんな話されたら、そりゃ慌てもするさ。
「おじさん泣かしちゃいかんだろ。よって義理の妹はナシな。そもそも今だってお前は……」
『俺の妹みたいなものだ』そう言いかけ、止める。その代わり俺はこのみの頭を軽くなでて、
「痛かったか?」
「タカくん……、う、うん、痛かった。……でも、もう痛くないかも」
「そっか」
ま、今はこんなもんだろ。自分でもよく解らないが、そう思った。
夕方になり、ふと窓の外を見ると、今まで晴れていた空が一面雲で覆われている。
「もしかして一雨来るかな?」
「ええ、予報だと夜になってから大雨になるそうです。一応傘は持ってきたんですけど」
バッグの中から折り畳み傘を出してみせる愛佳。
「ウチはコレ持ってきた〜」
珊瑚ちゃんが出したのはピンク色の可愛らしいレインコート。珊瑚ちゃんに似合いそう。
「あっちゃ〜、あたし傘持ってこなかった」
「……不覚」
よっちとちゃるが困り顔。
「二人とも、男物でよければうちの傘を持って帰りなよ」
「ホントッスか貴明センパイ? ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
「夜になってから大雨だそうだから、愛佳たちはそろそろ帰った方がいいな」
「そうですね、そうします。郁乃、いいよね?」
「うん」
「ほな、ウチも帰るな、瑠璃ちゃん」
「うん、さんちゃん、また明日、学校でな」
引き留める素振りさえ見せず、笑顔で答える瑠璃ちゃん。
「このみも今日はもう家に帰りな」
「え、どうしてタカくん? わたしならちょっとくらい雨に濡れたって……」
「さっきのことでおじさんに余計な心配させただろ。罪滅ぼしに春夏さんの夕食作りを手伝ってやれ。
このみがおかずの一品でも作ったら、おじさんきっと喜ぶぞ」
「……うん、タカくんの言うとおりだね。そうする」
夜になって夕食の途中、愛佳の言うとおり雨が降ってきた。
相当な大降りのようで、ザーッという雨音が家の中にも聞こえてくる。
「うわー、いきなり来たね!」
驚いた花梨が席を立ち、窓に駆け寄って外を見る。
「大粒の雨だよ! 凄い凄い!」
「明日の朝には止んでくれるといいんですけど……」
優季も心配そうに窓の方を見る。
「さっき見た天気予報だと今夜いっぱい降るそうよ。雷も落ちるかもって」
「か、雷!?」
タマ姉が雷と言った途端、瑠璃ちゃんの顔が青ざめる。
「どうしたの瑠璃ちゃん、もしかして雷が苦手とか?」
「ち、ちゃう、せやけど……、昼間見た映画……」
「映画?」
少し考え、思い出した。
花梨の『宇宙大戦争』の中で、宇宙人がUFOから地上に降りるシーンがあったのだが、その際
宇宙人は雷のような光と共に地上にやって来たのだ。あの宇宙人を怖がっていた瑠璃ちゃんはそれを
思いだしたのだろう。
「大丈夫だよ瑠璃ちゃん。あんなの所詮フィクションなんだからさ」
「うーの言うとおりだ、怯えるなうーるり。あのような愚かな生物が”うー”を侵略しに来るなど
断じてあり得ない」
「む、だからそれはるーこが知らないだけで……」
るーこの言葉に花梨がまた噛みつこうとする。
「ああもういいから花梨、戻ってご飯食べなよ。これ以上余計なこと言って瑠璃ちゃんを怖がらせ
ないでくれ」
「むむむ……、納得いかないけど、まあ、たかちゃんがそう言うなら……」
ぼやきながらも花梨は俺の言うとおり、席に戻ってご飯をまた食べ始めてくれた。
就寝時。ソファーに横になったとき、
ピカッ!
窓の外から一瞬光が。少し経って、ゴロゴロゴロ……という音。
お、雷だ。やっぱ予報通り来たか。
ピカッ!
ドォーン!!
うわ、凄い音! 近くに落ちたのか?
いつまで続くのかな、この雷。こんな調子じゃ寝られないかも。まいったな、明日は学校なのに。
ガチャッ!
ん、ドアが開く音が聞こえた? って足音がこっちに、
「貴明ぃ!」
「え!? る、瑠璃ちゃん?」
慌てて起きてみると、パジャマ姿の瑠璃ちゃんが。暗くて表情はよく解らないが、さっきの俺を
呼ぶ声は悲鳴に近かった。
「どうしたんだ瑠璃ちゃん?」
「た、貴明……」
ピカッ!
「きゃああああああ!!!」
また窓の外が光った瞬間、瑠璃ちゃんはいきなり俺に抱きついてきた!
「ちょ、ちょっと瑠璃ちゃん!?」
「う、宇宙人……」
宇宙人? ……ああそうか、やっぱ昼間の映画を思い出したのか。
それから、どのくらいの時間が経ったか。雷も雨音も聞こえなくなり、居間に静寂が戻った。
「瑠璃ちゃん、もう大丈夫だよ。雷、止んだみたいだ」
雷が鳴っていた間、ずっと俺にしがみついたままだった瑠璃ちゃんをゆっくりと離す。
「うう……ひっく……」
瑠璃ちゃんはまだ泣きやんでいない。
「大丈夫だから、ね」
瑠璃ちゃんの頭をなでると、
「うぅ〜、こ、子供扱いすなぁ……、貴明のアホぉ……」
はは、まだ悪態をつく元気は残ってたのか。
「とりあえずさ、部屋に戻ろうか。……そういえば同じ部屋のタマ姉は?」
「環……、いくら呼んでも揺すっても起きてくれへんかった……」
雷の音にも、瑠璃ちゃんが呼んでも起きなかった? ……なんか変だな。
まあタマ姉のことはいいや。瑠璃ちゃんを部屋に連れて行こう。
「じゃあ行こうか瑠璃ちゃん」
「貴明……」
「ん、何?」
「力抜けて歩けない……」
瑠璃ちゃんをおんぶして二階に上がる。
部屋に入ると、タマ姉は確かに眠っている様子。大した猛者ぶりだ。
タマ姉を起こさないようそっと歩いて、瑠璃ちゃんをベッドに下ろす。
「じゃあ瑠璃ちゃん、お休み」
そう言って部屋を去ろうとした俺だったが、
きゅっ。
服の裾を引っぱられた。振り返ってみると、瑠璃ちゃんが頼りない目で俺を見ている。
「……」
瑠璃ちゃんは何も言わない。だけど俺には、瑠璃ちゃんが俺に何を訴えているか直ぐに解った。
ホント恐がりだなぁ。そのクセ素直じゃないんだから。まあ、そこが瑠璃ちゃんの可愛いトコなん
だけどね。
多分ここで俺が何か言うと、瑠璃ちゃんはきっと意地を張ってしまう。なら、何も言わずにやる
べきことをやればいい。俺は服の裾を掴んでいる瑠璃ちゃんの指を出来るだけ優しく離し、部屋の
押し入れから一枚の毛布を引っ張り出した。まあ、これを敷き布団の代わりにすれば床でも寝られる
だろう。俺は毛布を瑠璃ちゃんとタマ姉のベッドの間に敷いて、そこにゴロンと横になった。
「なんか、居間に戻るのもかったるいから、このままココで寝るよ」
「貴明……、そ、その……、Hぃことしたら承知せぇへんからな……」
「うん、肝に銘じておく。じゃ、お休み」
「お、お休み……」
あーあ、これ由真に見つかったらまた殴られるかな。ま、仕方がないか。
つづく。
どうもです。第36話です。
祝 XRATED発売!!∩( ・ω・)∩
だけど、今のところ全然やってない……。俺も早くささら嬢に会いたいなぁ。
まーりゃん先輩ってささら嬢関係のキャラかな? とりあえずクリアしてから考えてみます。
>>331 HPを作っての公開は、完結してから手がけようかな、などと考えております。
その際は勿論、加筆修正の上で。
「じゃあいつ完結するんだよ」と聞かれると、正直、答えられないのですが……(^^;
417 :
403:2005/12/12(月) 20:51:11 ID:eFC+RHsQ0
>>416 期待通り、河野家喜多ーーー!!!
そして、由真、萌子ちゃんエンドおめ!w
思えば、長い道のりだったな^^;
そして、まーりゃん先輩乱入を期待しつつ来週を待て。
ちなみに、漏れもXRATEDは入手済みだが未プレーですw
>>416 相変わらずクオリティテラタカス
ゲームでのヘタレっぷりが嘘のようですな
いやしかし読んでて飽きることがないなコレw
>>416 GJ!そして期待してます、ささら嬢とか
まーりゃん先輩とか
まーりゃん先輩とか
まーりゃん先輩とか!
GJ!
正直俺もささらよりまーりゃん先輩が好きだな
タマ姉の上を行く傍若無人さがグッドなんで河野家乱入楽しみにしてますw
河野家キ、キターーーー!!
そして…完結。
おめでとう由真。・゚・(つД`)・゚・。
お前クリアに何話かかってるんだとw
なんか嬉しいのでまぎらわしい感想にしておきますね
ジャンクションと虹が待ち遠しい…
連カキすみません。
虹3日前にサイトのほうで上がってましたね。すみません。期待してます。すみません。
前スレで言ったサイトのみで更新を続けるってこういう意味だったんですね。
14話wktkして待ってます。これからも頑張ってください!
河野家終わったらこのスレやばいな。
ジャンプでハンターとワンピースとネウロ終わるようなもん。
>>420 マジでタマ姉言い負かしたからなw
あれには驚いたぜ。
タマ姉は舌戦が弱いのかな。
>>423 なんでそのポジションにネウロが入るんだよwww
そこはムヒョだろ?
>>426 ごめw狙ってやったwww
もてサーガにしとこう
>>423 休載しがちなハンター入れるのもどうかと思うぞwww
ただ実際、河野家を最盛期のジャンプ漫画と同じくらいに楽しみにしている俺がいる。
現在のジャンプ3大漫画はワンピ、ナルト、BLEACHに決まってるだろうが
厨房くさい三つだなwwwwwwwwwwwww
ジャンプ自体厨雑誌じゃまいかwwwwwwwwwwww
雑談はこの辺にしておきましょう。
というわけで、生徒会にようこそ に期待
新しいレスから読んでいたら、河野家が最終回だと勘違いしましたw
いや…ほんと、最終回じゃなくて良かった。
>>416 お疲れサマです!
いつ最終回か分からないということは、まだ暫くは続くのですね。良かった良かった
>>432 ぶっちゃけ雑談してないとSSくるまで持たんw
以前は1日2個くらい来てたんだがなあ。
436 :
名無しさんだよもん:2005/12/13(火) 22:31:14 ID:Gomo0kSx0
最近TH2やり始めていいんちょと双子クリアした
いいんちょSS書いてみるかなー
うむ、雑談無かったら過疎りまくるだろここ…
>>416 乙ね、本当に乙だわ。
今のこのスレはアンタのSSでもっている気がするw
>>417 最初読んで一瞬、河野家が終わるんかとオモタw
愛佳クリアした。PS2版やって以来久々だが
愛佳エロいよ愛佳(*´Д`)貴明ケダモノだよ貴明w
そして
>>436に俄然期待。
由真は最後に回すつもりだが、萌え死ねる?>クリア済みの人
440 :
MANA HEART 第一話 (1/3):2005/12/13(火) 23:49:01 ID:Gomo0kSx0
「おじゃましまーす……」
「ど、どうぞ……」
心臓の音が五月蝿い、鼓動が早くなっているのがわかる。
もしかしたら挙動不審になってやしないか冷や汗を垂らしながら来客をリビングへ通す。
それにしても郁乃ちゃんが余計なことを言うから、余計に緊張するじゃないか……
俺は胸に手を当て、深呼吸しながら昨日の会話を思い出した。
441 :
MANA HEART 第一話 (2/3):2005/12/13(火) 23:49:31 ID:Gomo0kSx0
俺と愛佳が付き合い始め、妹の郁乃ちゃんが元気に学校へ通い始めて暫く経った。
今では車椅子も降りた郁乃ちゃんも含め3人で、昼休みは中庭に集まることが多かった。もちろん今日も例外なくこうして中庭で愛佳が作ってくれた弁当を食べているわけだ。
他愛もない会話を交わす俺たち。しかし、その穏やかな空気は郁乃ちゃんの一言によってブチ壊されてしまった。
「そういえば、二人とももうえっちしたの?」
ブッ!!
思いっきりパックの烏龍茶を噴出す。ゲホゲホと咳を何度か繰り返してから、やっと声を発する。
「い、いきなり何を言い出すんだお前は……」
愛佳は口を手で押さえ、真っ赤な顔であわあわと郁乃と俺を交互に見ている。
「そりゃあだって、大事な姉が処女消失しちゃったのかとか気になるし」
次々問題だらけの単語を口にする郁乃ちゃんを無視して、辺りを見渡す。幸い寒くなってきた中庭で昼食を取る変わり者は俺たちだけらしい。
どうしたものかと額に手を当てため息をつきながら俯くと、今度は愛佳が素晴らしい問題発言をしてくれた。
「えっと……その、うん……」
「本当に!?何時!?何所で!?初めての感想は!?」
矢次に愛佳へ質問する郁乃ちゃん。ああ、なんか俺頭痛くなってきた……
俺が止めに入る前に、耳まで真っ赤にしながら律儀に答える愛佳。良くもまぁそんなことを妹に語れるもんだ、しかも隣に俺が居るのに。
「お、おい……愛佳、恥ずかしいからそれくらいに……」
「へぇー……誰も居ない図書室でだなんて、二人ともマニアッいてっ!」
「た、たかあきくん……」
茶化す郁乃ちゃんの頭に、軽くゲンコツをお見舞いする。
それでも郁乃ちゃんは食い下がらない。頭をさすりながら軽く俺を睨んだ後、にやっと口を吊り上げて話題を続けようとする。
「でもさー、普通は彼氏の家とかでじゃないの?
ほら、貴明って一人暮らしだから丁度いいしさ」
「うー……だってぇ……」
半泣きになる愛佳。いい加減この辺にさせておくか……
「別にいいじゃないか、郁乃ちゃんは関係ないだろ」
「そ、そうだよぉ……別にあたしとたかあきくんがどこでえっちしたっていいじゃない……」
いや、そういう問題じゃないって愛佳さん。
俺と愛佳が付き合い始め、妹の郁乃ちゃんが元気に学校へ通い始めて暫く経った。
今では車椅子も降りた郁乃ちゃんも含め3人で、昼休みは中庭に集まることが多かった。もちろん今日も例外なくこうして中庭で愛佳が作ってくれた弁当を食べているわけだ。
他愛もない会話を交わす俺たち。しかし、その穏やかな空気は郁乃ちゃんの一言によってブチ壊されてしまった。
「そういえば、二人とももうえっちしたの?」
ブッ!!
思いっきりパックの烏龍茶を噴出す。ゲホゲホと咳を何度か繰り返してから、やっと声を発する。
「い、いきなり何を言い出すんだお前は……」
愛佳は口を手で押さえ、真っ赤な顔であわあわと郁乃と俺を交互に見ている。
「そりゃあだって、大事な姉が処女消失しちゃったのかとか気になるし」
次々問題だらけの単語を口にする郁乃ちゃんを無視して、辺りを見渡す。幸い寒くなってきた中庭で昼食を取る変わり者は俺たちだけらしい。
どうしたものかと額に手を当てため息をつきながら俯くと、今度は愛佳が素晴らしい問題発言をしてくれた。
「えっと……その、うん……」
「本当に!?何時!?何所で!?初めての感想は!?」
矢次に愛佳へ質問する郁乃ちゃん。ああ、なんか俺頭痛くなってきた……
俺が止めに入る前に、耳まで真っ赤にしながら律儀に答える愛佳。良くもまぁそんなことを妹に語れるもんだ、しかも隣に俺が居るのに。
「お、おい……愛佳、恥ずかしいからそれくらいに……」
「へぇー……誰も居ない図書室でだなんて、二人ともマニアッいてっ!」
「た、たかあきくん……」
茶化す郁乃ちゃんの頭に、軽くゲンコツをお見舞いする。
それでも郁乃ちゃんは食い下がらない。頭をさすりながら軽く俺を睨んだ後、にやっと口を吊り上げて話題を続けようとする。
「でもさー、普通は彼氏の家とかでじゃないの?
ほら、貴明って一人暮らしだから丁度いいしさ」
「うー……だってぇ……」
半泣きになる愛佳。いい加減この辺にさせておくか……
「別にいいじゃないか、郁乃ちゃんは関係ないだろ」
「そ、そうだよぉ……別にあたしとたかあきくんがどこでえっちしたっていいじゃない……」
いや、そういう問題じゃないって愛佳さん。
その後もなんだかんだと誤魔化して、やっと落ち着いたころにふと愛佳が呟いた。
「……そういえば、たかあきくんのおうちに行ったことってないよね?」
「……そうだっけ?」
はて、と考えてみるがそういえばそんな気がする。
まぁ郁乃ちゃんの手術が終わってからも学校へ通いだしても、付きっ切りだったしな……
「じゃあ明日は祝日で休みだし、行ってくればいいじゃん」
「えっ……?」
愛佳がちょっとびっくりしてから、すぐに小動物のような愛らしい瞳で俺を見上げてきた。郁乃ちゃんはにやにやと薄笑いを浮かべて俺を見てるし。
くそ、これで断ったら俺がワルモノみたいじゃないか……
なんとなく郁乃ちゃんの陰謀らしきモノを感じながら、俺はため息をついて答える。
「……ああ、愛佳の都合がいいんだったら来いよ。
何にもなくて詰まらないかもしれないけどな」
「ほんと……?いいのたかあきくん……?」
にぱっと笑って喜んでくれる。ああ幸せだ……と実感する瞬間だ。
思わず抱きしめそうになったが、流石に郁乃ちゃんの前でする度胸はないので俺の中のケダモノを抑えつつ頷く。
「おう、それくらいで喜んで貰えるなら」
「じゃ、じゃあ郁乃も一緒に……」
興奮を抑えながら、ちらっと郁乃ちゃんを伺う愛佳。
「あたしはパス。
どうせお邪魔だろうし、貴明のことだからあたしも混ぜて姉妹丼〜なんてやりかねないしね」
「……変な期待をするな、そんなこと万が一があってもしねぇよ」
……そういうわけで、愛佳は俺の家に遊びに来ることになった。
期待と不安が入り混じる複雑な心境の中、また愛佳とあんなことやこんなことを……と考えると全く眠れない俺であった。
・・・1回目はまたもやsage忘れ、2回目は2連続書き込みなんてしてしまった
すいませんです、不注意でorz
とりあえずいいんちょSSです、日付変わってからか明日の夕方にでもまた2話書きます
郁乃ちゃんがすきすきーなのでそっちメインとか、他のキャラクリアしたらそっちのSSも書いてみたいなぁ
時間というのは不思議なものだ。
それはいついかなる時も同じ間隔で流れているはずなのに、あたし達は
早く感じたり遅く感じたりする。
例えば楽しく遊んでいたりすれば早く流れるように感じるし、逆に
授業中は時間が経つのがすごく遅く感じる時がある。特に昼休みの後の
午後の授業は。
時間というものは非情である。
気がつけば何も知らせることなくとっくに過ぎ去ってしまっているもので、
まったく薄情というか何と言うか。
――と、なんだか小難しいことを心の中で喋っているわけだけど、
要は何が言いたいのかって言うと。
「…寝過ごした」
パチリと目を覚ました直後につかんだ目覚まし時計の針は、無常にも
アラーム時刻の30分後を指していた。それすなわち、寝坊したということ。
ちなみにアラームを止めた記憶もない。かけておいたのは間違いないので
無意識に止めたんだろう。
「や、やばっ!どうしよどうしよ」
慌てながらパジャマのボタンに手をかけるも、まだ着替えを用意して
いないことに気づいて、タンスから急いで引っ張り出す。
えーと、これとこれと…ああ、これはちょっと色合いが悪いなあ。
それじゃこっち…んー、やっぱりこっちがいいや。
「8時38分…走ってたら間に合わないわよね」
待ち合わせは9時。
本来は歩いていくつもりだったけど、やむをえない。こうなったら
リーサルウェポンを持ち出すのみ。
ガララ…
「休みの日に悪いわね」
車庫から愛車のMTBを引っ張り出す。
毎日家と学校との往復に使っていて、使用歴も長い。これのおかげで
何度遅刻を免れたことか。
ただ、使用歴に比例して少しずつガタが出始めていた。
「…あちゃー、さすがにサビがきてるわね」
チェーンのあちこちの部分に細かいサビが浮き出ている。
サビ取りスプレーでもかけて整備したいところだけど、あいにくと
そんな余裕はなかった。
「待ち合わせしてるから、ちょっと頑張ってよね」
ロックを外すと、ペダルに足をかけた。
もう時間はない。ここから飛ばして間に合うかどうかギリギリのところだ。
さっきキッチンのオーブンで焼いてきたトーストを咥える。
何も食べないよりはマシだろう。途中でお腹が鳴るのを聞かれるのはさすがに
恥ずかしかったから。
「はむ…ふぇーのっ」
ペダルにかけた右足をぐっと踏み出す。
待ち合わせの場所に向けて、あたしを乗せた愛車は加速度を増した。
「…遅いな、由真のやつ」
待ち合わせした時間になったが、由真はまだ来ていない。
一応家に電話してみたが誰も出なかったので、おそらく家を出ては
いるのだろうけど。
「た、たっ…たかあき〜!」
「!?」
由真の叫ぶ声が聞こえたのでそちらを向くと、MTBに乗った由真が
こちらに向かって暴走していた。そして右手にはなぜか食べかけのトースト。
…な、何やってるんだよお前?
「どいてどいて!止まらないい〜!!」
「…はい!?」
避けようと思ったが、由真が突進する先には壁がある。
まともにぶつかれば大怪我するかも知れなかった。そんなのを見捨てる
わけにはいかないが、勢いのつきすぎたMTBを止めるのは至難の業だ。
「――え?ちょ…ちょっと、避けなさいよ!」
「いいから!こっち来い!!」
由真のMTBが俺とすれ違うタイミングを計る。
あと7メートル、6メートル…
「由真、ハンドルを放せ!」
由真がぱっとハンドルを放す。俺は次の瞬間、目の前に来た由真の
身体をつかんで抱き寄せた。
そのまま俺は由真を抱きかかえた格好で地面に倒れる。
ガシャーン!!
制御を失ったMTBは勢いを保ったまままっすぐ壁に激突して、ようやく
暴走を停止した。
「いてて…大丈夫か?」
「う、うん…」
由真が無事なことを確認してから地面に倒れたMTBを見る。
あーあ、前輪がメチャクチャだ…こりゃ修理しないと乗れないな。
「ふえ…」
「お、おい?」
「ふえーん…怖かったよお〜」
俺にぎゅっとしがみつきながら泣き出す由真。
こいつはたまに幼児退行したように泣くことがあるな。それほど
怖かったんだろうけど…
「よしよし。もう大丈夫だって」
「ぐすっ…うん」
「それにしても、一体何事なんだよ」
「飛ばしてたら途中でチェーンが切れちゃって…ブレーキも利かなくて。
しかもそこが下り坂だったから止めようもなかったのよ」
整備不良、というよりは長年愛用しているせいであちこち痛んでいたのも
あったんだろう。
言い換えれば、由真はそれほどこのMTBに愛着を持っていたということだ。
「落ち着いたらとりあえずそのトースト食え」
「へ?あ、忘れてた」
照れ笑いしながら由真は食べかけのトーストにぱくっとかじりつく。
寝坊したんだろうなあ…トースト食べながらMTBをこいできたほどだから。
「まったく、急がなくたって待っててやるから」
「う…だってさ」
「少し待たされたくらいで怒ってたらお前の彼氏はやってられないだろ」
もう何度待ちぼうけさせられたか、もはや覚えてない。
おかげで俺の忍耐力はかなり上がった気がする。素直に喜べることじゃ
ないんだけど。
「それにしても転校生じゃないんだから、トースト咥えて激突とかは
勘弁してほしいんだけど」
「そこから始まる恋愛だってあるでしょ」
暴走したMTBと激突して始まる恋物語なんかぜひとも勘弁願いたい。
こっちの身が持たん。
「さて、先にMTBの修理に行くぞ」
「え?でも…」
「お前の相棒が大怪我してるのに放っておけるか」
そう言いながら倒れたMTBを起こす。
ま、何とか押していくことはできるかな。
「…ごめん」
「謝らなくていいから」
「それじゃ…ありがと」
「――おう」
しおらしくお礼なんか言われるとすごく照れくさい。
「どうせならコイツ直してからサイクリングにでも行くか」
「あ、いいわね。でもたかあきの自転車ってMTBじゃないでしょ?」
「そこは根性でカバーすればいい」
「さっすが〜。それじゃあたしは最速ギアでも大丈夫ね」
「いや、そんなことは言ってない」
前輪の壊れたMTBを押しながら、俺達はゆっくりと歩く。
朝からトラブルに巻き込まれはしたが、俺と由真の間にトラブルが
起きるなんて日常茶飯事。
だから今はそのトラブルさえも楽しもうとしている自分がいた。
ふと、二人で空を見上げる。
――ああ、今日もいい天気だ。
由真SSです。
エピローグのMTBネタから思いついて即興で書き上げました。
>>444 乙!
XRATED準拠の愛佳アフターですな。
郁乃がこっそり後をつけてくる→その後3うわなにをするー
お二方共エピローグものGJ
452 :
417:2005/12/14(水) 01:58:50 ID:KpdLwmnN0
>>444 >>450 おお、急に2つのSSがupされとる。
お二方、乙です!
>>439 終わったのは、河野家じゃなく、由真の萌子ちゃんルートです。
来週からは、幼なじみのひかりちゃんルートに入りますw
ttp://ikn.nobody.jp/ikuno01.html ふと思い立っていいんちょSSを書いてみたのですが、書いてるうちにいろいろと詰め込みすぎて
異様に長くなってしまったので、投下するとレスを消費してしまうだろうと
急遽鯖を借りてアップすることにしました。
だいぶ長くなってしまいましたが、もしよろしければお読みください。
書いてる間に郁乃SSになっちゃったのはないしょ。
いっぱい来たな。
PCの前で寝落ちしてた俺が来ましたよ。あかん、風邪ひいたか…
>>453 あんたの文才に惚れた。イイヨイイヨー(*´Д`)
朝からいいもの読ませてもらいました。
456 :
440-444:2005/12/14(水) 07:03:55 ID:8Dkq72BO0
おはようごぜーます
本日はお昼ごろから予定が空くので続きを書こうと思います
>>450 期待しても3(以下略)なんてありませんっ
……そ、そのうち書くかも。
ところでこのスレに投下させて頂きましたが、自HPがあるならなるべくそちらに投稿してアドレス乗っけた方がいいのでしょうか
その方が良いならそうしようと思うのですが
郁乃ちゃんだと!?
ちゃん付けはゴマちゃんだけで充分だ!!
458 :
名無しさんだよもん:2005/12/14(水) 08:08:31 ID:6o1Ck/V00
460 :
名無しさんだよもん:2005/12/14(水) 13:43:59 ID:emV7rqag0
dokugokan saiaku utuninaru
siawasena sugatanohouga mitai
tuuka 6P kibon
>>453 素晴らしい! GJ!
貴方様の書かれる話は、いつも読んでて顔がにやにやしてしまう。
作品やキャラへの愛着が伝わってくるし、ホントに最高です。
筆力も高く申し分なし。一人だけレベルが違う世界に住んでる印象w
他の話を楽しみにしてます。頑張ってください!
ささらSSってもうUPしていいもんなんですかね?
まだ書いてる途中ですけど
アイス屋のまーりゃんさーりゃんバージョンマダー?
お、落ち着け貴明……ここは男らしく、落ち着いて客人を迎えるべきだろう?
そうだ、まずは深呼吸だ……息を吸って……吐いて……
そんなことをしてる間に、愛佳は物珍しそうにきょろきょろとリビングを見渡している。
よし……大丈夫だ……昨日寝る前にイメージトレーニングした通りに……
「と、とりあえず座りなよ。
えっと……紅茶でいいかな?」
「あ……う、うん……」
なるべく自然な動作を心がけて、キッチンに入る。
落ち着いたつもりなのだが、何故か一つ一つの動作が焦って早く動こうとしている自分が情けなくなってきた……
くそ、普段通りにすればいいんだ……そうだ、それくらい出来るだろう。
愛佳には見えないように、しゃがみ今度パンッと両の頬を叩く。よし、今度こそ大丈夫だ。
「……お待たせ」
トレイにポットとカップを二つ、そして昨日買ってきたクッキーを乗せて運ぶ。
あ、なんだかさっきより緊張が解れたかも……とか思える辺り、俺はかなり単純なのかもしれない。
「あ、あ、あり、がとう……」
ぎこちない笑みを浮かべる愛佳、向こうも相当緊張している様だ。
けど、そんな姿が可愛くてつい笑みを浮かべてしまう。
「不思議だよな……普段は普通に会話出来るのに、こうして特別なことがあるとお互い緊張してぎこちなくなる……」
「そう、だね……どうしてだろう、すごくどきどきしてる……」
ぽつりと呟いたあと、ふいに眼が合った。
愛佳が眼を逸らすその前に、いつもそうしてるように微笑んだ。そう、それが当たり前であるかのように。
一度は眼を逸らそうとした愛佳も、俺を見つめて優しく微笑んでくれた。
それは図書室でお互いぎこちなく過ごして居た頃より、俺たちが成長した証のようにも思えた。
その後は二人、夕日が射すまで飽きることなくいろんなことを話した。
最近は郁乃ちゃんも一緒に居ることが多く、二人で過ごす時間が短いのもあったからだろうか。話題は途切れることがなかった。
特に愛佳は、珍しく愚痴なんかも呟いた。学校でのこと、郁乃ちゃんの聞き分けが悪いこと、先生や先輩に対する文句など……
だが楽しい時間が過ぎるのは早い。ふと愛佳は壁の時計を見た後、少し驚いて残念そうに呟いた。
「そろそろ、かな……」
「あ……もうこんな時間か。
家まで送っていくよ、すぐに片付けるからちょっと待ってて」
トレイを持ち上げ、キッチンへ持って行く。
するとふと愛佳が思い出したかのように、
「そうだ……その間、たかあきくんのお部屋見せてもらっていいかな?」
と言い出した。
俺は迂闊にも承諾し、2階の俺の部屋の場所を教えてしまう。嬉々としてリビングを出て行く愛佳。
朝方、興奮し過ぎないようにとお世話になった、男のバイブル-性書-を机の上に放り出したままなのに気がつくのはそれから3分ほど経った後だった。
「……っ!?」
いかん、これは不味い。一気に血の気が失せていくのがわかる。
俺は急いで2階へ駆け上がった。愛佳が何も騒がなかったのが気にかかるが、とにかく今は急いで部屋に……!
「ま、愛佳!」
勢い良く扉を開き部屋に飛び込む。
愛佳は……居た、部屋の中央でこっちに背中を向けて座り込んでる。
「……あの、愛佳さん……?」
恐る恐る背中から様子を伺う。しかし時既に遅く、一番最悪の事態となっていた。
座り込んだ愛佳の足元には、開かれた男のバイブル。ぷるぷると肩を震わせ耳まで真っ赤にした愛佳はそれを食い入るように見つめる。
やばい、実にやばい。なんと弁解すればいいのか、思考をフル回転させる。
「あ、えっと、その……それはその……」
「た、たか、あきくんは……こ、ういうのが、好き……なんだ……」
声を震わせながら蚊の鳴くような声で喋る愛佳。
汗がどばっと噴出すのを感じながら、本を取り上げ後ろに隠す。
「は、はははは……」
「……」
口元を両手で押さえ、今にも泣きそうな瞳で俺を見上げる愛佳。不謹慎にもすごく可愛いと思ってしまう。
どうしようかと考えていると、不意に愛佳が声を上げた。
「た……」
「……た?」
「たかあきくんのばかーっ!」
「うおわっ!?」
いきなり飛びついてくる愛佳。踏みとどまれず後ろのベットに押し倒された。
それでもなお離れず、ぽかぽかと俺の胸を泣きながらぽかぽかと殴ってくる。
「ばかばか!たかあきくんのうわきもの!」
「ちょ、いてっ!落ち着いて愛佳!痛いって!」
愛佳が落ち着いたのは、それから30分も後になるのであった……
「おーい貴明、昨日はどうだったんだ?」
朝のホームルーム前、机にぐったりともたれていると雄二がにやにやと笑いながら俺のところへやってきた。
「……どういう意味だよ」
「隠したって無駄だぜ。
昨日委員ちょがお前の家に入っていくのを俺はこの目でしっかりと見たんだからな!」
わざわざご丁寧に大声で叫んでくれやがる雄二。
一瞬にしてクラスの眼は俺と愛佳に集められる。
既に俺と愛佳が付き合ってるのは周知の事実なので、愛佳には悪いがさっさと家に来たことを認めた方が余計な混乱を招かずに済むだろう。
「……あのな、それがどうかしやがりましたか。
家に来て少し話とかしただけだ。なぁ愛佳?」
立ち上がり雄二を黒板まで追い詰め、ちらりと愛佳の方を見ると、すぐに真っ赤になりながら思いっきり縦に首を振る。
「ほらな、ただ話をしただけだ。変な誤解をしないで欲しいなぁゆーじ君?」
「だ、だが男と女が同じ屋根の下、二人っきりになって何もないなんてことはぐぇぇえぇギブギブギブギブ!」
襟首を掴み、首を絞めていた手をぱっと話やる。床にへたり込むとゲホゲホと雄二は苦しそうに咳をした。
これでもう変なことは言い出さないだろう。クラスメイトたちも一度はざわついたものの、何もないとわかるとすぐに興味を失ったようだ。
はぁ、とため息を席に戻ろうとすると、トンデモない一言が教室に響いた。
「でも、お姉ちゃん昨日の夜帰ってこなかったよね?
どこで何をしてたのかなぁ……あたし心配だったんだよ?」
ばっと振り返ると、いつの間にか教壇にニヤニヤと笑う郁乃ちゃんが立っていた。
静まり返る教室。一気に耳まで真っ赤になる俺と愛佳。そして子悪魔の笑みを浮かべる郁乃ちゃん。
30秒ほど全員が凍りついた後、俺は男子全員にタコ殴りにされ、愛佳は質問攻めに遭うという大惨事が起こる。
いつの間にか噂は隣のクラスまで伝わり、ホームルームが始まるまで地獄のような時間を過ごすこととなった。
飢えた狼どもに揉みくちゃにされ意識が薄れ掛ける中、俺は郁乃ちゃんをただ怨む事しか出来なかった。
468 :
マナハの人:2005/12/14(水) 18:21:49 ID:8Dkq72BO0
ということで、MANA HEART 第二話です。
とりあえずご愁傷様、これからも貴明くんの受難は続きますのでお楽しみに!
XRATED効果で新しい書き手が増えたな
ええことよ
いくのんヒドスwww
本編追加台詞の素直いくのんもいいがやっぱり小悪魔いくのんだよな。
郁乃の策略(?)でクラスの男子全員の怒りを買った貴明。
しかし、郁乃の陰謀はこれで終わりではなかった……
@愛佳が熱で倒れた!?両親が田舎に帰省中で、家に郁乃しか居ない小牧家に救世主が!その名は……
MANA HEART : 風邪引キ少女ハ浮気ノ夢ヲ見ル?
A冬休みを利用して愛佳と楽しい温泉旅行。ところが郁乃と雄二もついてきて……!?
MANA HEART : 私と貴方と温泉と。
B突然雨が降り出した土曜日、家でゆっくり過ごす貴明への来訪者は雨でずぶ濡れの郁乃!?
MANA HEART : 家無き郁乃
……と、3つほど続きを考えてみました。
ご要望の多いストーリーを続きとして書くかもしれません也。
MANA HEART : 家無き郁乃
を激しく希望。
次回予告て
初めてかどうかは知らんが、珍しい試みだな。
MANA HEART : 私と貴方と温泉と。
切実にたのむ
全部書けばいいじゃん
>>473 全部…と言いたいところだけど、Aに投票
Bで、ぜひ姉妹丼をお願いします。
マジでお願いします。
驚く程に叩きがいないな。
叩く必要…あるのか?
>>450 見る側としては、こんな日常も良いって思ってしまいますね。
由真なら、ぶつかって盛大にパンツ見せるのも日常っぽいw
>>453 良い仕事してますねー
文章の長さとか、全然気になりませんでした。
愛佳や郁乃が好きなら、間違いなく萌え転がりますw
>>459 ほろ苦いねw
助さん格さん、小屋閉めてヤリなさいww
>>473 お約束な展開に期待して2番の、私と貴方と温泉と。でお願いします
最近、長編ものくらいしか続き物がなかったので期待してます。
>>459作者です。
>>460 たぶん、
>>459の事だと思いますが
私も書き終えた後はブルーでした。
ミルファSS書きの巨匠達の新作で癒されたいなーとか。
>>483 まったくです(ぉ
初恋の相手を姉にかっさらわれる。
あの三人、あの後猿のようにやりまくってるイメージが。
>>484 その勢いでじゃんじゃん双子+メイドロボを書いてくだせい
―貴明視点―
「楽しみだなぁ」
俺は今、アメリカ・ニューヨークに向かう飛行機に乗っている。
言うまでも無く、ささらに会うためだ。
バイトを頑張ったおかげで向こうでの滞在期間もかなり多めに取れたし、
プレゼントも自分の納得のいくものが用意できた。
ささらと付き合い始めてから、初めてのクリスマス。
期待に胸を膨らませながら、俺はしばし眠りにつくことにした。
「これがニューヨーク…」
あまりの喧騒にたじろぐ。さすがは世界有数の都市、騒音も半端じゃない。
幸いささらの家は郊外にあるとのことなので、こんな騒がしさは無いだろう。
「ささらびっくりするかなぁ」
ささらのことを考えると、自然に顔がほころぶ。何せ、半年以上会っていない。
電話や手紙のやり取りよくしていたが、やはりそれだけでは寂しい。
ここ最近は『いつこっちに来れるの?』という質問を毎日のように受けていた。
ま、いつ行くかは教えてないんだけどね。びっくりさせたかったし。
「ささらのくれた地図だとこの辺だけど…」
英語の勉強は念入りにしてきたが、流暢に話せるわけではないのであまり人を
頼ることは出来ない。
地図に悪戦苦闘していると、見慣れた後姿を発見した。
「あれはささら…!?」手をあげて声をかけようとするが、それが果たされることは無い。
「男…?」
腕を組んで親しげにしている男。ささらも男も笑顔で何か話している。
それを見て、『何で!?』と思う自分と、『ああ、やっぱり』と思う自分が居た。
「……きっと、寂しかったんだろうな」
心の奥底では否定していたが、予感はあったのだ。
あれだけ寂しがりやのささらだ。
仕事であまり構ってくれない母親に、今まで以上に寂しさを感じたのかもしれない。
そうすると、必然的に誰か親しい友人・恋人を求めるようになる。
そんなときに、俺は傍に居てやることができなかった。
半年という時間は、ささらの心が俺から離れてしまうのには
十分すぎる長さだったのだろう。
「はは…俺、馬鹿みたいだ」
もうささらの心は俺に向かっていないのに、のこのここんなところに来て。
一人で会えることを楽しみにして。本当に、ただの馬鹿だった。
ささらの『いつこっちに来れるの?』という言葉が、人に嫌われるのを嫌うささらの、
ただの嘘だったということにも気付かずに。
もしかすると、俺にはっきり別れを告げるために、
早く来てほしいと言っていたのかもしれない。
ささらは、そういう時凄く真面目だから、直接俺に言おうとしていたのかもしれない。
「…プレゼントだけ置いて帰るか」
この期に及んで情けないことだが、俺はささらから別れを告げられるのが怖かった。
ささら自身から、別れの言葉を聞くのは辛すぎる。
せめて、自分からこのことを切り出して、
『ごめんね、気付かなくて』と言って去るのが最上だろう。そう思えた。
幸いなことに、ささらが向かった先はささらの家とは別な方向だったので、
ささらの家にプレゼントを置いてきてしまえる。
家には誰か居るようだったが、恐らくささらのお母さんだろう。
ピンポーン
「はいはーい…あら、河野くん…だったかしら?」
「お久しぶりです」
「いらっしゃい。遠いところ良く来てくれたわね。
ささらも来るのを楽しみにしてたのよ。
今ささらは出てるけど、もうじき帰ってくると思うわ。上がって待ってて」
「いえ、いいんです。それより、ささらにこれを渡して置いてください」
「あ、ちょっと、河野くん!?」
後ろから呼ぶおばさんの声を無視して、俺は走った。
こんな状態で、ささらと会える訳が無い。それに、今日は12月22日だ。
俺のメッセージを見れば、ささらは気兼ねなくあの男とクリスマスを過ごせる。
俺一人が犠牲になれば、ささらに苦しい思いをさせなくてすむんだ。
そう自分に言い聞かせて走った。
「はぁ…はぁ…」
がむしゃらに走っていると、公園が見えたので中で一息つく。
「雪…か」
まるで、俺の心の中みたいだ。
「くっ…ふっ……」
涙が零れる。ささらに、もう二度と会えない。
ささらに会えば、ささらは俺のことを思いやってしまう。
今ある幸福を、台無しにしてしまうかもしれない。
ささらは、優しい…残酷なまでに。
俺はささらのことを好きだし、愛している。これは代わりようの無い事実だ。
でも、俺のエゴをささらに押し付けるわけにはいかない。
ささらが幸せなら、それを壊すようなことは出来ない。
―このまま、雪に埋もれて死んでしまおうか。
なんてことも思うが、それも出来ない。
あのメッセージを見たささらが、俺が死んだことを知ったら、きっと自分のせいにしてしまう。
それに、このみやタマ姉、雄二たちが悲しむ。ささらのことで散々迷惑かけておいて、
ささらに振られたから死んだではあまりに情けない。
「今日中に帰るのは無理そうだし…明日の飛行機で帰ろう」
予約していたホテルに向かう。どこに泊まるかも教えていないから、
ささらが来ることも無いだろう。
「さよなら…ささら」
そう呟いて、その場を後にした。
―ささら視点―
「〜♪」
思わず鼻歌が漏れる。ここ数日は、毎日が長くてしょうがない。
早く時間が過ぎてくれればいいのに。そうすれば、
「早く貴明さんに会える…」
半年以上会えないのは本当に辛かったけど、その分再会の日が楽しみ。
大学は日本の大学を受けるから、次は2ヶ月もたたずに会える。
「本当に、楽しみ……」
今日は貴明さんのクリスマスプレゼントを作り終えた。
教えてくれた人も凄くいい人だったし、ここのところ良いことばかり続いている。
「これで、パパトママが仲直りしてくれたらなぁ…」
と思ってしまうのは、少し贅沢すぎるかもしれない。
でも、ここのところ二人が電話しているのを見たりするし、近い将来現実になるかもしれない。
「〜♪」
ご機嫌なまま家に着く。貴明さん、早く来ないかなぁ。
「ただいま」
「お帰り、ささら。河野くんがいらしてたんだけど…」
「貴明さんが!?」
「ええ。でも、これをささらに渡してくれって頼んだら走って出て行っちゃって…
何かあったのかしら?また来ると思うんだけど」
「…?」
貴明さんが直ぐに帰ってしまうなんて、何か用事でもあったのだろうか。
「とりあえず、早く中入って温まりなさい。外は寒かったでしょう?」
「うん。雪も降ってきたし」
中に入って貴明さんがママに渡した物を受け取る。
開けると、中にはイヤリングが入っていた。メッセージカード付きの。
『ささら、メリークリスマス。本当は直接会って渡したかったけど、
それが出来なくてごめん。これが、俺からの最後のプレゼント。
いらないって言うなら捨ててくれても構わない。ただ、俺があげたかっただけだから。
あの人と仲良くね。そして…さよなら』
一瞬で血の気が引く。あの人…まさか!?あの人と私が付き合ってるって誤解したの!?
「ママ、貴明さんがどこ行ったか知らない!?」
「し、知らないわ。ささら、どうしたの?そんなに慌てて」
「〜〜っ!」
上着を羽織って外に出る。あれを見てたって事は、貴明さんはまだ近くに居るはず!
探せば、まだ間に合うかもしれない…!
ブラウザとか使ってないので改行とかが変になってたらすみません。
あと2が2連続になっちゃってますが、3の間違いです。
ささらシナリオ終わったとき真っ先に思いついたのがこれでした(汗
貴明のへたれっぷりが炸裂すると思いますので、(既にしてるかも)
それが嫌な方は読まないほうがいいかもしれないです。
何か気付いた点があったらご指摘お願いします。
まだ終わりじゃないよね?
GJ!!!!!!!
続き期待してます
>>493 さすがにこれで終わりにはしません。ただ、長編になるほど長引かせもしないと思います。
>>494 ありがとうございます。頑張って続き書きます
>>495 いや、奴がいかにヘタレといえども、さすがにこれで終わりじゃねーだろーなと思ってw
続きがんばって〜。
つ [某さく〜しゃ様]
>「――大切な人のところに、行きたいです」
良くある手法なんですけどね、こういう「語り」から始めるのは。
それでも貴方のお話でそれが印象的なのは「文章のリズム」なのかな?
最後の一文での「落とし」も含めて。
直情爆弾娘の言動はとても微笑ましく。
でも「いままで」よりも心持ちストレート…というか微妙に「堅い」と感じるのは
気のせいではなくわざとでしょうか。
今の彼女の「感情」はまだ「メイドロボ以上・イルファ未満」なのかな…と。
これからどのような展開を見せていただけるのか、楽しみにしています。
………郁乃のほうの決着も(w
>>492 乙!
貴明がヘタレないことを祈ってますw
ヘタレはいつまでたってもヘタレだな('A`)
だがGJ!続きを楽しみにまってます!
>>492 個人的にはちょっとヘタレすぎのような…w
ヘタレてる部分に関しては原作準拠なので問題ないんだが、ささらEDまでの展開を経た後で
更にこのSSみたいな展開が待ってるとは思えないなあ。
それこそ、ささらルートでゲンナリした流れを再び繰り返してるだけのような。
悪い意味で、原作の繰り返しにしかなってなくて、これだとSSで書く意味をあまり感じないなー。
もうちょっと別の方向からのアプローチが見たかった気がする。
>>484 とてもとても良かったです。こういうの好き、大好き
―ささら視点―
自分が知る限りの場所を、走って回る。貴明さんが行きそうなところ、
寒さをしのげる場所、ひとりになれる場所を探す。
『さよなら』
手紙のあの言葉が脳裏によぎる。貴明さんは、
人を傷つけまいとするあまり厳しく自分を殺す癖がある。
その辺で倒れて、冷たくなっている貴明さんを想像してしまう。
「〜〜っ!」
想像するだけで、身が凍る思いがした。早く、早く誤解を解かないと…!
こういう誤解は、すぐに解かないと後でもつれてしまう。
貴明さんと付き合う前に、嫌というほど思い知ったことだ。
それに、貴明さんの周りには魅力的な女性が多い。環さんや、このみちゃん。
あの人たちは、貴明さんに好意を持っていた。
今回のことで傷ついた貴明さんの気持ちが、二人に向かってしまわないとも限らない。
―嫌だ、いやだ、イヤダ
貴明さんを失ったら、私は前の私に戻ってしまう。
人を信じられない、人と交わることの出来ない私に。
そんなのは絶対にいやだ。
だから、走った。自分が、どこを走っているのかも分からないぐらいに。
とぼとぼと家に帰る。知っているところ全てを回ったが、貴明さんは見つからなかった。
「ささら!?…!すっかり冷え切ってるじゃない!
早く入って温まりなさい!」
「ママ…貴明さん、見つからない、見つからないよぉ…」
涙が零れる。貴明さんの泊まっている場所も分からないし、
いつ発つのかも分からない。
早く見つけないと、会う機会を永遠に失ってしまう。
「…とりあえず今日は休みなさい。明日、また探しましょう、ね?」
「ダメ!早く見つけないと…貴明さんに会えなくなっちゃう!」
「分かった。分かったから早く温まりなさい。
風邪引いたら、元も子もないわよ。ママも探すの手伝うから」
「貴明さん…貴明さん…」
ママの胸の中で、私はいつまでも泣いていた…
私が落ち着いて温かくなってから、ママは切り出した。
「とりあえず、河野くんが泊まっている場所を割り出すことね。
きっと、ささらをびっくりさせるつもりで教えなかったんだと思うの。
だから、日本のお友達なら知ってるかもしれないわ」
「…環さんなら!
環さんは貴明さんが一番信頼している人だ。
こちらに来るとなれば、泊まる場所から連絡先まで教えているに違いない。
「電話してくる!」
こっちが夜の12時だから、向こうは朝の8時ぐらい。お願い、家に居て…!
『はい、向坂ですが』
「環さん!?」
『ささら?久しぶりじゃない、どうしたの急に?
あ、そっか。たか坊がそっち行ってたんだっけ?どうだった、久々の再会は?』
「環さん、貴明さんの宿泊場所か連絡先知らない!?」
『宿泊場所か連絡先…?ちょっと待って、今調べるから……
あったあった、えっとね、○○ホテルってとこよ。場所は詳しく知らないけど』
「ありがとう!」
『ちょ、ちょっとどうしたの!?』
環さんの言葉には答えず電話を切る。後で説明すれば、きっと分かってもらえるから。
「ママ、○○ホテルだって!」
「○○ホテルね。すぐ探すわ」
お願い、貴明さん、そこに居て…!
―貴明視点―
「後7時間ぐらいで始発が出るな…」
予約は取ってないからキャンセル待ちになる。この時期は帰省ラッシュで
どこに向かう飛行機も混んでるから、今日中に帰れるとは限らない。
予約してたホテルは空港から遠いので、
キャンセルして空港近くのビジネスホテルに泊まったのは我ながら英断だった。
「こんなときだけ、細かいことに頭回るんだよな…」
このホテルに泊まったもう一つの理由は、万が一にもささらに会わないようにするためだった。
タマ姉には何かあったときのために宿泊先も連絡先も教えてある。
ささらがタマ姉から聞き出して、そこに向かう心配があった。
「ほんと、こんなときだけ頭回るんだから…」
情けない。自分が振られるのが嫌、嫌われるのが嫌ってときだけ妙に頭が回る。
その点では、俺もささらもあまり変わりないのかもしれない。
「ほんと…どうしようかな」
俺は頭の切り替えがとことん苦手だ。吹っ切るなんて、いつの話になるのやら。
雄二なら、気付かれないように振舞ったり出来るのだろう。
俺には、到底出来そうになかった。
「でも、いい加減人に心配かけたくないよな…」
俺の様子が変だと分かれば、雄二、このみ、タマ姉あたりは
ここぞとばかりに理由を探ってくるだろう。
全部話してしまってもいいが、それは自分の中で決着がついてからだ。
そうでないと、また余計な心配をかけることになる。
幸い、今は冬休みだ。冬休み中ずっとニューヨークに居ると皆には言ってあるので、
電気を消してずっと家に篭ってれば問題ない。
そこで明るく『ささらとは別れたよ』と言えば問題解決だ。
俺が気にしていないふりをすれば、皆は突っ込んでこないだろう。
もっとも、タマ姉やこのみをごまかせる演技力が俺にあるかは疑問だけど。
「くっ…」
油断すると、すぐに涙が出てくる。こんなことでどうする俺。
ささらに振られたから人生終わったわけじゃない。
人生に出会いと別れは付き物じゃないか。
そう何度言い聞かせても、何の解決にもならなかった。
「ただ…何にも気付かなかった自分が情けないだけだ」
空港が開くまでまだ時間がある。無理やりにでも睡眠を取ろう…
―ささら視点―
「そうですか…はい、分かりました」
「どうだった!?」
「それがね…夜11時ごろにキャンセルの電話があったんだって」
「そんな…」
これで、唯一の希望も断たれてしまった。
この広いニューヨークで、一人の東洋人を探すなんて、
砂漠でコンタクトレンズを探すようなものだ。見つかるわけが無い。
「貴明さん…」
「ささら、諦めちゃだめよ。何か、何か方法を考えるから」
ママは必死で何か考えてるけど、きっともうだめ。
二股をかけられたと思ったら、貴明さんは絶対私に会ってくれない。
私が、人を傷つけるのが嫌いって知っているから。
別れを告げるのは、人を傷つけることだから。
私が、別れを告げたりするのを何よりも嫌うって知ってるから。
きっと、自然消滅みたいな形にするつもりなんだろう。
私からの連絡に、何も答えないで。もう貴明さんの優しい目が、私に向くことは無い…
そう考えると、あれだけ流した涙がまたこぼれてきた。
―怖い、こわい、コワイ。
今ほど何かを失うのを怖がったことは無いかもしれない。ママとパパが離婚したときより、怖い。
貴明さんに会えなくなったら、きっと私は壊れる。
「…ねぇ、ささら。河野くんはいつごろニューヨークを発つと思う?」
「…え?うーん…多分、今日中に発つと思う」
そう。私と会う確率を、少しでも減らそうとするだろう。それが、貴明さんという人だ。
「なら、ニューヨークの空港でキャンセル待ちしてる人を探せばいいのよ。
予定だと、1月6日までこっちに居ることになってるから、今日のチケットは持ってないはずよ!」
「そっか!ママ、すぐ空港に行こう!」
「あわてすぎ。今行ったってまだ開いてないわよ。
開く時間になったら起こしてあげるから、それまで寝てなさい」
「でも…」
「いいから寝てなさい。そんな酷い顔で、河野くんに会うつもり?」
鏡を見ると、私は本当に酷い顔をしていた。
泣きはらしたせいで目は真っ赤に充血しているし、顔もくしゃくしゃだ。
「分かった…」
絶対に、貴明さんを見つけてみせる…
私は、結局貴明さんに頼りっぱなしだった。最後の決断も、貴明さんにまかせっきりだった。
貴明さんの優しさを、特別なものじゃないと勝手に思い違いし、振られることが怖くて告白も出来なかった。
皆は貴明さんが悪いって言ってたけど、本当は私が一番悪いんだ。
私が振られることを恐れないで告白していれば、何も問題は無かった。貴明さんは受け入れてくれたはず。
今度は、私が勇気を出す番。貴明さん、待ってて…!
2話です。なんだか思ったより長くなりそうでちょっと焦っております。
>>498 これからもへたれまくりますw 勘弁してください。
>>499 続き頑張って書きますのでよろしく!へたれはいつまでたってもへたれという点には同意ですw
>>500 私の中でささらシナリオの貴明=メモオフ2の伊波健なんですよね。(知らなかったらすみません)
へたれは一回乗り切ったぐらいじゃ直らない!というコンセプトで書いてますのでw
今回はささら中心に動かしてます。XRATEDでは貴明が中心に動きましたが、
この作品ではささらの成長、ということでささらを中心に動かしてます。
そのコンセプトなので、貴明のへたれっぷりはXRATEDより酷いかもしれません。
批評などありましたら、是非お願いします。
>>509 GJ!続きが気になって仕方ないw
俺の頭の中で貴明は某孝之と被るんだが、それは酷く言いすぎだろうか
貴明が引き立て役だと割り切って見ればいいかもしれない
なぁ、昔のスレにあった図書委員長が愛佳を陵辱してるSSってどうなったんだ?
途中から消えてるのだが
>>513 はい、もうしわけありません、続き書こうとした矢先に身内での不幸が続いて書けなかったんです(泣)。
手控えは私のHDDの中で眠っているのですが。現在執筆中のタマ姉とタカ棒のクリスマスの夜の話が完成
したらその後必死こいて続き書く予定です。こんなこと抜かすと千鶴さんに笑われてしまうでしょうけど
来年1月中には完成させたいです(既に一応のプロットはできてます。あとはそれを肉付けしていくだけで)。
うちで何回も言ってることですがどうか生暖かく見守ってくだせえ。これから年末にかけて忙しくなるので
スムースに執筆できる保証はありませんが、それでも何とか力の及ぶ限りは書いていくつもりです。
515 :
名無しさんだよもん:2005/12/16(金) 21:25:41 ID:YiQLxJVd0
>>509 すげーよ、まじで。続きも頑張ってくれぇぇ
お邪魔します。
SSを一つアップしました。
ttp://ikn.nobody.jp/k01.html ちょっと長ったらしいかもしれませんが、お読みいただければ幸いです。
お聞きしておきたいのですが、投下ではなく自分のところでアップする場合は
こうしてアドを貼っつけにきたるするのはよした方がいいのでしょうか。
もしかしてまずいようでしたらすみません。
以後気をつけますのでどうかご容赦を。
それでは失礼します
>>520 激しくGJ
クマ吉の行動可愛すぎ(*´∀`)ムハー
ここはあくまでSSを投稿する場だからURLでの投稿も問題ないですよ。
というか他の人で同じように投稿している人も居ますし。
>>520 GJ!!!!!!!!!!
続きマダー
>>504 日本、ニューヨーク間の時差は14時間だから
ニューヨークが0時なら日本は14時だと思うんだけど・・・?
あれ、俺なんか勘違いしてる?
526 :
マナハの人:2005/12/17(土) 11:00:57 ID:heOWvlOK0
温泉のお話が一番要求多いのかな?
土日書けるかわかりませんが、時間を見つけて書いたら投稿しますー
>>520 すごくイイ。
勝手にPS2版だと思ってみる。
X-RATEDだとろくな展開が浮かばないしw
ささらスレに貼られてたSSが良かったな。
>>523 ごめんなさい、時差とか知らないんで適当です。
後、空港の始発便の時間とかも結構適当です。その辺は目をつぶってください
時差は調べればわかるはずだ。
デスクトップの時計を弄るだけで簡単に理解できる。
どうでもいいんじゃね
文才のない折れにゃ読めるだけでありがてぇよ
532 :
名無しさんだよもん:2005/12/17(土) 22:59:11 ID:0FxhL1gu0
まあ続きをまとうじゃないか
>>520 GJ!!
すっごく面白かった。
文体の流れ方が滑らかで本編との剥離も感じないで読めたので楽しかったよ。
「姫百合の咲く頃に」も印象に残ったSSだったので、新作が読めて嬉しいです。
ありがとう。
>>520 や、とても面白かったです。
クマ吉に、いろいろと不用意な行為をしたり、あまつさえ一緒にお風呂にまで入ってしま
った貴明のその後を考えると、文章を読みながら頬がにやけてしまいました。
ラストの引き方も上手でしたし、タイトルのイニシャルの使い方も、お話を更に気分よく
させてくれました。
こんな気持ちよく読めたSSを、また読ませて貰いたいと思っています。
これからも頑張ってください。
>>529 話がいいだけに細かい点が気になるので、敢えて苦言を。
急に○○とか出てくると戸惑う。
ホテルの名前とか固有名詞は、架空でもいいから付けた方がいい。
飛行機の時間も、ネットで検索すればある程度見当はつく。
NYだと24時間動いているターミナルもある。
こういう裏付けがあるとないとでは話の説得力が全然違ってくるので
書く前に下調べ頑張って欲しい。
カーテンからもれてくる朝の光、それと体にかかる重たさで目が覚めた。
まだ少しぼぅっとする頭で、その心地の良い重量感を確かめる。
右側には、俺の腕を枕にして抱き合っている珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんが。
左側には、俺の体に寄り添うイルファさんが。
3人とも、昨日の晩愛し合った時と変わらない、裸のままの姿で可愛らしい寝息を立て
ている。
そんな3人の様子に、俺は、なんだかとても満ち足りたような気持ちになった。
あの晩、お風呂場ではじめて、イルファさんや、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんと一つになれ
た夜からずっと。俺は珊瑚ちゃんの家に泊まりこんで、毎晩3人とエッチし続けた。
我ながら凄いことをしているなぁ、なんて苦笑しそうになるけど。
毎晩珊瑚ちゃんの体を抱きしめるたびに。
一回、瑠璃ちゃんと唇を合わせるたびに。
イルファさんと一つになる回数が増えれば増えるほど、3人のことが愛おしくなってい
ったのがわかった。
多分、3人も俺と同じ気持ちでいてくれたんじゃないかな。
・・・・・・わ、若さに身を任せて暴走していた、っていう面が無いわけじゃないって
ことは、否定しないけど。
3人を起こさないように、そっとベッドから起き上がる。
ベッドの上や、部屋のあちこちに散乱した服をかき集めて──何でエッチしている最中
は裸でも気にならないのに、普段普通にしているときに裸だとこんなに恥ずかしいんだろ
う・・・・・・いや、エッチの最中でも、恥ずかしい物は恥ずかしいか。
特に瑠璃ちゃんなんか、見られると耳まで真っ赤にして恥ずかしがってくれるし。
なんだかとても幸せな気分に浸りながら、冷蔵庫のドアを開けてミネラルウォーターの
ボトルを開ける。
昨日あれだけ汗をかいたものだから、起きたときから喉が渇いて仕様が無い。冷たい液
体を喉に流し込んで、ようやく意識もはっきりとしてきてくれた。
3人とも、未だに起きる様子は全く無い。
空調がきいているから風邪を引く心配(イルファさんの場合は故障の心配になるのだろ
うか?)は無いけれど、美少女3人が無防備な寝姿を、しかも裸で晒しているというのは。
確かにちょっと、落ち着かない・・・・・・
特にイルファさんが「・・・う、ん」って寝返りをうったり、瑠璃ちゃんが「アっ、ん
っ・・・」なんて寝言を言った日には、朝だって言うのにとてもイケナイ気分になってし
まいそうで・・・・・・
落ち着け落ち着け、落ち着けよ河野貴明。
一体お前は何を考えている?
いくら3人がぐっすり眠っているからって、その隙にイタズラしようなんて微塵も考え
ちゃいけないんだからな?
わかったか? わかったな? よし、上出来だ。
なら次はテレビでもつけて、気を紛らわせるんだ。
大慌てでボリュームの絞ったテレビのスイッチを入れると、時報に続いてお馴染みの朝
のニュース番組が始まるところだった。
映し出される、爽やかな朝の青空をバックにした駅前の様子。
天気もいいし、今日は4人でどこかに遊びに行くのもいいかな。折角のゴールデンウィ
ークなのに、どこにも出かけないんじゃ勿体無い、なんて考えながら、テレビを見続ける。
でもサラリーマンの人も大変だよなぁ。折角のゴールデンウィークだって言うのに、こ
んな朝早くから出勤しなきゃならないんだから。
そこまで考えて、なんとなく違和感を感じてしまう。
なんだか、とても、思い出さなきゃ行けないことを忘れてしまっているような・・・・
・・
テレビの中では、相変わらずのニュースキャスターの挨拶が『おはようございます。5
月、6日、朝のニュースをお伝えします』
「あああーーーーーーーーーーー!!」
慌てて3人の眠るベッドに戻る。
「さ、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん、起きて、起きてー!!」
ガクガクと珊瑚ちゃんの体をゆすると、ようやく少しだけ目を開けてくれた。
「んー、貴明、朝からあまえんぼさんやなぁ。そんなに寂しがらんでも、今日もいーっぱ
い、ラブラブしような」
「無理、だって今日5月6日、連休終わり、今日からがっこーーーー!!」
「が、学校ぅぅっ!?」
瑠璃ちゃんが跳ね起きた。
「あ、あかんやん、急いで支度せんと・・・・・・あ」
「え・・・・・?」
瑠璃ちゃんは、慌てて何も着ていない体を隠そうとする。
続いてパンチが飛んできた。やっぱり恥ずかしいらしい。
「ヘンタイ、ヘンタイ、ヘンタイーっ!」
「うわっ、ちょっと、瑠璃ちゃん、それどころじゃないってば」
真っ赤な顔でこっちを睨んでいるけど、とりあえず俺に照れ隠しをしている場合ではな
いってことはわかってもらえたようだ。
「瑠璃様、貴明さん。お食事のご用意は私がいたしますので。皆さんは先にシャワーを浴
びて来てください」
と、こちらはいつの間に行ってきたんだろう。シャワーを浴びて服に着替えたイルファ
さんがキッチンへと駆けていく。
確かに昨日エッチしたまま寝たものだから、体中汗やいろんな物でベタベタして気持ち
悪い。
瑠璃ちゃんも一足先に、まだ半分眠っている珊瑚ちゃんを連れてバスルームに向かって
いる。俺も急いで後を追うけど・・・・・・今度は蹴飛ばされた。
お風呂なんてもう何回も一緒に入って、一緒にエッチしているのに。やっぱり恥ずかし
いらしい。女心は複雑だ。
2人を待ってシャワーを浴びた後、バスルームの前にはなぜか俺の制服が用意されてい
た。
イルファさんに聞くと、この間俺の家によった時、下着や着替えなんかと一緒に持って
きてくれていたそうだ。
確かにゴールデンウィーク中、珊瑚ちゃんの家にずっと泊まるっていうことになったん
で、イルファさんに手伝ってもらって荷物を一通り家まで取りに行ったけど。
なんで制服まで持ってきたんだろ? まあ、おかげで助かったからいいけど。あ、アイ
ロンまでかけてある。
洗い立ての制服に着替えて、イルファさんが作ってくれたトーストとサラダの簡単な朝
食を大急ぎで咀嚼する。
珊瑚ちゃんもようやく目が覚めてくれたようで、こちらも瑠璃ちゃんともどもトースト
を慌てて口に入れていた。
「そ、それじゃあ行ってきます」
玄関を出ようとすると、イルファさんに呼び止められた。
「あ、何か忘れ物でもしてた?」
「はい、大切な物をお忘れですよ」
さて、何だろう? カバン(これもイルファさんが持ってきてくれていたらしい)ももっ
たし、ちり紙やハンカチもポケットの中に入っているし。
「ちゅー」
「ちゅう?」
「はい、いってきますのちゅーをお忘れです」
ああ、そりゃ確かに大切な物を忘れるところだった。学校に行くんだから、その前には
ちゃんとちゅーをしてから出て行かないと。
ん? なにかがおかしいような・・・・・・まあ、いいか。
イルファさんとたっぷり一分は掛けていってきますのちゅーをした後、珊瑚ちゃんと瑠
璃ちゃんも同じく行ってきますのちゅーをする。
うん、これでよし。
「じゃ、今度こそ行ってくるね」
「はい、貴明さんも瑠璃様も珊瑚様も、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
3人とも、大急ぎで道路を走っていく。珊瑚ちゃんは大分辛そうだったけど、瑠璃ちゃ
んに手を引かれて何とか付いていく。
むしろ問題だったのは俺の方で、どうも足腰に力が入らない。気を抜くと腰が抜けそう
になってしまう。
俺、そんなに体力無かったかな。
それでも何とか、時間までにいつもの坂の下まで到着することができた。
既にこのみたちは到着してたみたいで、坂の入り口の所で俺たちのことを待っていてく
れた。
「お、おはよう。ごめん、待たせた。ちょっと寝坊しちゃって・・・・・・あれ?」
俺たち、と言うよりも俺を見る3人の様子が普通じゃない。
特にタマ姉の目が尋常じゃない。お、俺、なんか変なところでもあるのか? 例えて言
うのなら、今までのが初々しいカップルをからかうような目だとしたら、今のはまるで子
供の給食費までお酒に代えてしまうようなダメオヤジを見るような視線だ。
「タカくん」
「あ、このみ、おはよう。悪かったな、待たせちゃって」
「うん、おはよー。それでね、タカくん、ちょっとだけ、聞きたいことがあるんだけど」
このみまでなんだか歯切れが悪い。
俺、本当になにかしただろうか。
「ゴールデンウィーク中、タカくんどこに行ってたの? お母さんからは家を空けるって
連絡があった、って聞いたけど。昨日もずっと家にいなかったし」
ゴールデンウィーク中? そりゃ、珊瑚ちゃんの家で・・・・・・あ。
「あんなー、貴明ならずっとうちの家で一緒にいたでー☆」
ささささ珊瑚ちゃん、シーッ、シーッ!
「ふーん。そのこと、もう少し詳しく聞かせてもらえないかしら」
「うん、貴明とうち、ゴールデンウィーク中ずーっと、ラブラブしとったー☆」
「わーっ! わーっ! なんでもない、なんでもないから!!」
必死に誤魔化そうとするけど、今度は逆に珊瑚ちゃんの表情が曇ってしまう。
「貴明、やっぱりうちらとするの嫌だったん?」
「そんなことは無いよ。俺は珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんのことが大好きだったから、一緒に
なったんだから。そのことは珊瑚ちゃんが、一番よく知っているはずだろ?」
でもね、天下の往来で大声で言うようなことでもないと思うんだ。
みんなもそう思うでしょ、ねえ?
「タカ坊、ちょっと」
お、お姉様、そのこめかみをぴくぴくとさせながら手招きをするのはなぜなのでしょう
か?
そ、そうだ。瑠璃ちゃん、こういうピンチの時はいつも瑠璃ちゃんの助けが!?
「・・・・・う、うちも、貴明のこと、嫌いやなかったから、だから・・・・・・」
なんでそこで顔を赤くしてうつむいていますか!?
「タ〜カ〜ぼ〜お〜?」
い、いや、タマ姉、これには深いわけがあったでして、けしてやましい気持ちで珊瑚ち
ゃんたちとエッチしたんじゃなかとですよ?
「問答、むよっ」
タマ姉の平手が振り下ろされようと言うまさにその瞬間だった。
「貴明さーん」
「い、イルファさん!?」
俺のことを呼ぶ声に、振り上げられたては寸前の所で動きを止めてくれる。
「や、やっと追いつきました」
ギロチンの刃が落とされる寸前の俺を救ってくれたのは、手に風呂敷包みを持ったイル
ファさんだった。
「いっちゃん、そんなに急いでどうしたん?」
「はい、こちらをお渡しするのを忘れてしまって」
そう言ってイルファさんが渡してくれたのは。
「これ、お弁当?」
「はい。時間が無かったのであまりちゃんとしたものは作れませんでしたが。どうぞ3人
でお昼に召し上がってください」
「わー、いっちゃん、ありがとな」
「ありがと」
たったあれだけの時間に重箱でお弁当を作るだなんて。やっぱりイルファさんはさすが
だな。珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんも、大喜びでお礼を言っている。
「ありがとう、イルファさん」
「なあ、貴明。こちらの女性はどなただ?」
と、横から雄二が聞いてきた。
こいつはこいつで、さっきから挙動が不審だ。
「貴明さんのご友人の方ですか?」
そんな雄二の様子に気付きもしないイルファさんは、丁寧にお辞儀を返す。
「申し訳ございません、紹介が遅れました。私、“イルファ”と申します。正式名称、HM
X−17a。そちらにいらっしゃいます珊瑚様のプライベートロボット、だったのですが」
「「「が?」」」
「今では、その、貴明さんの、恋人といっていただけましたら」
「恋!?」
「人!?」
この姉弟、こういうときは息ぴったりだな。
「あ、いますぐにそう呼んでいただかなくても、将来的にそうなりたいというだけですし。
あっ、でもお互い、はじめてを捧げあってしまいましたし、何の差支えも・・・・・・
い、イルファさん、クネクネしながらそう言うことを公衆の面前で言わないでください。
あと、照れて声を小さくするのならもっと小さな声で!
「で、でもタカくん。イルファさんと恋人になっちゃったら、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんはど
うなるの?」
「だからな、うちと瑠璃ちゃんと、いっちゃんと貴明、4人みんなでラブラブやー☆」
珊瑚ちゃーん、あなた、今、俺の死刑執行所にサインをしたということをわかっています
か?
「タカ坊」
「は、はイッッ!!」
もう、じたばたするのはやめます。
ここでタマ姉の手にかかって果てることが、珊瑚ちゃんたちへの想いの証明となるのなら。
俺は甘んじてこの身を差し出します。
「このっ、女性の敵がぁっ!!」
まず最初に、視界が暗くなったと思ったら、次に来たのはこめかみへの激痛。
そして足の裏から地面の感触が消えて。
「われ、われっ、われるあいだだだだだぁあ゛―――――――」
雄二のやつ、こんなの毎日喰らっててよく死なないなぁ。
「ギブ、タマ姉ギブギブ、あ゛、われる゛―――」
頭蓋骨が割れそうなタマ姉のアイアンクローを受けて。
まあ、それでも、珊瑚ちゃんや、瑠璃ちゃんや、イルファさんと一緒にいられるのなら、
これくらい安いものかな。
「あ゛――――――!!」
終
姫百合姉妹スレに触発されて書きました。
ゆえに、このSSを面白かったと感じてくださる方がいるのなら、その半分は姫百合姉妹
スレの同士諸兄のおかげと言えるでしょう。
ありがとうございました。
趣味が合わんと言う人がいれば、ま、そりゃこっちの筆力の問題だわな。
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
続きマダー
>>551 GJすぎる……
もっと萌え殺して下さい。
もういっちょ双子物頼む!
イルファさんって眠るのか?
後、タマ姉は貴明が本気なら認めると思うが。
ささらシナリオ終盤の暴走も協力してたし。
>>554 マルチも眠るんだし、イルファだって眠るかも
>>554 4Pなんて不純なものを、あのタマ姉が認めると思うか?
その辺の考えは固いぞ、タマ姉は。
タマ姉「3人以上でなんて不良のすることよ」
このみ「そんなことないよー。わたしもよくするよ?」
古風な考え方してるからな。
タマ姉的に複数人と。ってのはアウトだろう
三年峠の理屈で説得できないかねえ
>>551 同士ではないけど、面白いものは面白い。
GJ!
時代は4P!
さらにミルファとシルファで6P!
―貴明視点―
「こういう悪運はいいんだよな、俺」
なんと始発便のキャンセルが取れてしまった。そのとき、安堵よりも落胆を感じた
自分が居たのは、紛れも無い事実だ。
―どっかで期待してたんだよな。『あれは誤解だ!』って言いに来るささらを。
その期待を裏切られるのが怖いから、絶対会わないような状況を自分で作っている。
そうすれば、もしかしたら来ていたのかもしれない、という淡い希望を持てるから。
そんな淡い希望ぐらい、抱いてたっていいよな?もう、二度と会えないんだから。
『デトロイト空港発、成田空港行きNW12便にご搭乗の方はAー65ゲートにお越しください。
繰り返します…』
ぼーっとしていると、すぐにゲートに入る時間が来てしまった。
自分で会えない状況を作っておきながら、ささらが来てくれなかったことに
落胆している自分が居る。本当、虫がいい。
「これで、初めての海外旅行はおしまいか」
これで、おしまい。帰って1週間か2週間落ち込むだけ落ち込めば、新たな日々が始まる。
きっと俺の心の割合の大部分を、ささらが占めている。その穴がふさがるのには、
長い時間がかかるだろう。でも、ささらが幸せなら…それに越したことは無い。
俺は、ささらの隣に立てるような器の男じゃない。
それは、ささらも感じていたことだと思う。雄二は『ささらが誰を選ぶかが問題で、
器なんかどうでもいい』というようなことを言っていたが、今の俺は選ばれても居ない。
ささらの隣に居る理由は完全に失ってしまった。
「なんだかんだと理由つけて、振られたのごまかそうとしてるんだよなぁ…」
情けないったら無いが、これ以上の選択があっただろうか?
もしあのときささらに詰め寄ったとして、何を得られた?
ささらを傷つけ、俺も傷つき、ささらの彼氏には嫌な思いをさせただろう。
不味くいけば、ささらは彼氏と別れるはめになったかもしれない。
「これが正しい選択なんだ…絶対に」
そう信じなければ、やってやれない。自分の思いを殺してまで、
ささらの幸せを願ったのだ。
これが間違っていると言われたら、俺は何も信じられない。
「さよなら、ささら…」
そう呟いてゲートに向かう。ささらと、永遠に別れるために。
―ささら視点―
「ママ、この時間で始発に間に合うの?」
「出発時間には間に合うけど…それだと搭乗した後だから意味無いわね。
こんなに道が混むなんて思わなかったわ」
渋滞に巻き込まれて全然進まない車の中で、もし始発にキャンセルが出ていたらと考える。
―弱気になったら駄目。
こういうとき、人は悪いほうに物事を考える。負の方向に物事を考えると、それが実現しやすくなる。
『負けたくない』と思うと、負けるほうに意識がいってしまうためだ。
『勝ちたい』と思わなければいけない。
だから私は『貴明さんに会える』と考えなければいけないのだ。
たとえ、虚勢であったとしても。なんとしても、貴明さんに会わなくてはいけないから。
貴明さんは、私のために夏休みのほとんどをバイトに費やしてまで、ここに来てくれた。
その貴明さんを、このまま帰すわけには行かない。そんなの、あんまり酷い。
もし私が同じことをされたら。
環さんやこのみちゃんと腕を組んで楽しそうにする貴明さんを見たとしたら。
私なら傷つくどころかこの命を絶っていたかもしれない。
でも、貴明さんはそれをしない。命を絶ったら、私が傷つくことを知っているから。
でも、きっと凄く傷ついてる。心に、深い傷を負ったと思う。
こういう傷は、なかなか治らないでじくじくした痛みをいつまでも心に残す。
治るときは、その傷以上の幸せを得たとき。つまり、私以外の彼女が出来たときだ。
「〜〜っ!ママ、まだ!?」
「もうちょっと、もうちょっとで着くわ」
「…ママ、ここでいい!ここから走る!」
「え?ちょっとささら!?」
返事を待たずに車から飛び出す。渋滞していたから、車にはねられる様な事は無い。
空港に向かって一直線に走り出す。今度は、絶対に間違わない。
「待ってて、貴明さん。私、貴明さんのことまだ好きだから…!」
祈るような気持ちで走り続ける。貴明さんと、初めてのクリスマスを過ごすために。
―貴明視点―
ゲートに入ってからも、一時間ぐらい待つ時間がある。
なるべく早くこの場を去りたい俺にとって、この一時間は何よりも長く感じられた。
「まだ十分しか経ってないのか…」
時計を何度も確認するが、良くて五分、悪いと三分おきぐらいに時計を見ている。
―ああ、もう!
どうせ何もすることはないし、コーヒーでも飲んで落ち着こう。
自動販売機でコーヒーを買って、さっきまで座っていたベンチに戻る。
―早く一時間経たないかな。
来たときは正反対の理由で、時間が経つのが遅い。
来たときは、ささらと会うのが楽しみだった。だから、時間が経つのが遅かった。
今は、ささらから早く逃げたいから。ささらが俺を探し出して、会うのが怖いから。
「逃げる…か」
ささらのことを想うなら、しっかり別れを告げられるのが本当だろう。
それを、なんだかんだと言い訳して逃げてきてしまった。
―今からでも間に合う。しっかり別れたほうがいいんじゃないのか。
俺の中の二つの意見。ささらと会ってちゃんと別れるべきだという意見と、
自分が傷つきたくないから逃げろという意見。どちらが正しいかなんて、考えるまでも無い。
だが、人間がいつも正しい選択をするとは限らない。自分の弱さ、周りの状況、自分の思い。
さまざまなものが絡み合って、正しくない選択をすることだってある。
今の俺が、まさにそうだ。自分の弱さ、ささらの気持ち。
この二つを考えると、どうしても自然消滅のほうがいい選択に思える。
ささらは、俺を傷つけるのを嫌って嘘を言うだろう。
その嘘に、きっと俺は騙された振りをしてしまう。そうすれば、皆今以上に不幸になる。
「もっと悪い男なら良かった…」
それなら、ささらに会ったときに全ては終わっていた。
俺が悪い男なら、あの場でささらを問い詰め、別れを告げただろう。
そうすれば、こんな気持ちにならなくても済んだのに。
―あれも俺の弱さ…か
あの時話しかけなかったのは、自分の想像通りだったら怖いからだ。
もしかして、俺の勘違いかもしれない…そう思いたかったのだ。
―結局、何にも変わってないんだな。
ささらと出会い、いろんなことを経験した。あの経験、三週間の逃亡は、俺を成長させてくれたと信じていた。
だが、蓋を開けてみれば所詮この程度。人間なんて、そうそう変われるもんじゃないと思い知らされただけだった。
「ささらとの日々も、全部無駄だってことか…」
あれだけ色々なことを経験して、自らの肥やしに出来なかった。
それは、紛れも無い事実だ。信じたくないという気持ちはあるが、
事実という壁は俺の前に大きく立ちふさがっていた。
「もう搭乗時間か…」
搭乗時間になったことを告げるアナウンスが流れる。
俺は、何も考えないまま飛行機に向かった。
名無しっていうのもあれなので題名つけました。
今回はあんまり大きい動きも無く、ある意味あんまり盛り上がらない部分です。
貴明も似たようなことグダグダ言ってますしw でも、同じようなことでうだうだ
やるのがヘタレの真髄だと思ってますので、見逃してください。
次の話では、結構大きな動きがあるはずです。ですが、まだ終わりまでは遠いです。
是非完結までお付き合いください。
>>感想を下さった方へ
続きを楽しみにしている方が思っていたより多くて、とても嬉しいです。苦言を〜というような
書き込みもありましたが、これからも苦言よろしくお願いします。
人からの批評というのは本当に役立ちますので。
というわけで今回はデトロイト空港という固有名詞を乗っけてみました。
何か間違った点やお気づきの点がございましたら、是非是非指摘してください。
>>569 GJ!!
XRATEDまだやってないが確かにこれは腹立つヘタレだなw
GJ!原作どおり成長してないヘタレ虫がうまく表現されておりますな
ナイスヘタレだ!
俺もこんなやつかもしれない
>>569 乙。そして(´∀`)b グッジョブ!!
ここまで誉められるヘタレもなかなかない(笑
みんな誉めてないと思うw
つ
http://bcproject.h.fc2.com/letshope.html 慌てん坊のサンタクロースからクリスマスプレゼント(と言ってしまっていいのか分からんが)置いておきます。
今回タカ棒にはヘタレなりに勇気出して男を演じてもらおう…と思って書いてたらえちシーンでちょっとベッド
ヤクザ入ってしまいますた(苦笑)。いえ私ゃまだXRATED買ってすらいませんけども。拙いながらも楽しんで
いただけると有難いです。さて次は尻切れトンボのあれだな。ええと資料のエロ漫画はどこだ…(ごそごそ)。
―ささら視点―
「はぁ…はぁ…」
走る。ひたすら走る。車ではすぐそこだが、走るとかなりの距離がある。
―急がなくては。
気ばかり焦る。もし貴明さんが始発便に乗っているとしたら、もうゲートに入っているだろう。
―お願い、間に合って!
貴明さんが始発便に乗っているとは限らないし、もし乗っていても、まだなんとか間に合う。
貴明さんの性格からしてデトロイト空港以外使わないだろうから、
空港が間違っているということも無い。
デトロイト空港は新しく、全ての看板に日本語表記を伴っている。
貴明さんなら、人に物を尋ねたりするのを嫌うから、この空港で間違いない。
「ふふっ…」
苦しいはずなのに、焦っているはずなのに、貴明さんのことを考えるとついつい笑みがこぼれてしまう。
慣れない場所で、右往左往する貴明さん。想像したら、なんだか可愛かった。
―こんな風に、笑いあいたい。
一瞬和んでしまったが、貴明さんのことを想って笑えるのも、今だけかもしれない。
そうならないために、必死で走らなくては。
「はっ…はっ……」
空港に着く。休暇をこっちで過ごそうと思っている人や、
海外で過ごそうと思っている人で空港はごった返している。
「とりあえず、放送かけてもらわないと…」
空港内のあちこちにある地図を見ながら、コールセンターを探す。
思ったより奥だったところにあったので、ここに来るまでずいぶんな時間がかかってしまった。
「すいません、放送をお願いしたいんですが」
「はい、どのようなご用件でしょうか?」
「日本から来た、河野貴明さんを呼んでほしいんです」
「河野貴明さんですね、分かりました。お客様のお名前は?」
「久寿川ささらです」
何やら作業をしてから、放送に入る。
『お客様の、お呼び出しをいたします。日本よりお越しの河野貴明様、
河野貴明様。久寿川ささら様がお待ちです。Aー30ゲートまでお越しください。
繰り返しお呼び出しいたします…』
―貴明視点―
『河野貴明様、久寿川ささら様がお待ちです。A−30ゲートまでお越しください』
「ささら…?」
本当に来た…俺に別れを告げるためだけに?
それとも…
「誤解を解きに来た…のか?」
どちらとも取れる。問題は、ささらがここに来ているということだけだ。
会うのか、会わないのか。それは、俺の一存で決めることだ。
ささらは、俺に会いたがっている。会いたい理由が、誤解を解くものであれ、
別れを告げるものであれ。
―会わないとすれば、それが俺のエゴ…になるのか。
会いたくない。いや、会いたい。二律背反、アンチノミー。
テーゼとアンチテーゼ。全く違う二つの意見。
喧嘩した人と、会って決着をつけるか先延ばしにするか。
誤解を、早く解くか遅く解くか。どちらが正しいかなんて、三歳児でも分かる。
「でも…今となっては、どちらにせよ、会うわけにはいかない…か」
もし全てが俺の勘違いで、その誤解を解きに来たなら、どの面さげてささらに会えばいいのだ。
ささらにあわせる顔なんて、持っているはずが無い。
それに、もし勘違いでも何でもなく、別れを告げに来たのだとしたら…
「っ!」
身震いする。今更ながら、自分の臆病さには呆れる。
ささらと別れるのが…怖い。今、はっきりと別れを告げられるのは、どうしようもなく怖い。
時間を経て、自然消滅という形にしてしまいたい。
―でも、もし俺の勘違いだったら…
良い方に考えようとするが、その考えをすぐに打ち消す。
臆病な人間は、最高の場合より最悪の場合を考えて行動する。
期待して、それが裏切られるのが怖いからだ。俺も、無意識の内に悪い方を考えてしまった。
「やっぱり、会わないほうがいいか…」
女性はささらだけではない。ここでささらと別れたって、いつか彼女が出来るときは来る。
それなら、会えばいいじゃないか…とも思うが、やはり会えない。
ここで別れを告げられたら、俺達のあの日々が意味の無いものなんだ、
とささら本人の口から言われたら。俺は、これから先生きていく自信が無い。
「ごめん、ささら…」
時間ぎりぎりまで考えた末、俺は飛行機に搭乗した。これで、もう後戻りは出来ない。
―ささら視点―
「放送はしたのですが…お見えになりませんね」
「……」
しばらく待ったが、貴明さんは来ない。もし空港が間違っていて、既に日本へ向かっていたら。
もし、どこかで倒れていたら。もし、私のことが嫌いになっていたら…
「〜〜っ!」
あまりの心の痛みに胸を押さえる。貴明さんに嫌われることを想像しただけで、
胸が張り裂けそうに痛い。
「あの…よろしければ今搭乗が終わった成田空港行きの便を調べましょうか?」
「…お願いします」
私の様子を見かねたのか、横に居た係員がそういってどこかに電話をかけた。
ポシェットから鏡を取り出して、自分の顔を見てみる。
―ひどい顔。
目の赤さや隈などは無いが、見るからに『私辛そうです』という表情をしている。
私のことを良く思わない人から何か言われたとき、私はいつもこんな顔をしていたのだろうか。
これでは、心配してくださいといわんばかりだ。
「でも…この顔があったから、私は貴明さんと出会えた」
自分のこんな顔は出来れば見られたくないが、貴明さんには何十回、
何百回と見られてしまっている。今更飾ったところでどうにもならない。
飾らない自分を見てもらえる…そんな相手がいるのはとても幸せなことだ。
私は、ママやパパにすらそれを見せられなかった。
ふと係員を見ると、どうやら確認が終わったらしい。私のほうを向いてこういった。
支援砲撃
「お客様、河野貴明さんですが、今搭乗が完了した成田行きの飛行機に乗っているようです。
放送は聞こえたと思いますが、放送をかけた時間にはゲートに入っていますから、
こちらに来れなかったのだと思いますが…」
「〜〜っ!!あ、ありがとうございました」
そこまで言って駆け出す。さすがに、この場で泣き喚くわけには行かない。
せめて、化粧室に…
「ささら!?」
「…ママ!!」
駆け出した私に、近寄ってくるママ。その胸にすがって、私は思い切り泣いた。
貴明さんが放送を聞いていたなら、絶対に私に会いに来てくれたはずだ。
貴明さんは、そういう人だから。でも、会いに来てくれなかった。それが示すのは、唯一つの事実。
―貴明さんに…嫌われた。
その事実だけが、私の胸を突き刺す。ママが居なければ、この場で崩れ落ちてしまっただろう。
ママが居てくれたおかげで、崩れずに済んだ。でも、私は自分の心が再び閉ざされていくのを感じた。
―いっしょに居たあの日々は、全部無駄だったの?
無駄ではないと言いたいが、今はっきりと言われてしまった。貴明さん自身に。
これで…もう終わり。私は、また人を信じることは出来なくなる…
40分ぐらいオーバーしましたが、一日に2個UP。第4話UPです。
年の瀬で何かと忙しいので、書ける内に沢山書きます。
>>570〜573
感想、お褒めの言葉ありがとうございます。貴明のヘタレた部分というのは、誰もが
持っている弱い面だと思います。あのタマ姉ですら、今の関係を壊すのは怖いという
気持ちが前面に出ていますから。だから、自分だったらどうするかなぁと考えて書くと
結構上手く書けるような気がしますw 572さんのような気持ちは私にもありますしw
今回はキーとなる展開をいくつか出しました。貴明の決断、ささらの想い。
短く終わらせようと思えば次回で終わらせることも出来ますが、XRATED本編で見せた
貴明のへたれっぷりはこの程度では終わりません。タマ姉、このみを巻き込んで
もう一波乱、二波乱あります。多分、内容ばればれだと思いますがw
では、この辺で
忘れてた(汗
>>582 支援砲撃ありがとうございます。手早く上げたつもりでしたが4分もかかってましたね…(汗
最後の後付のようなものはUPしてから書いているので結構遅いの自覚してたんですが…
次回からもう少し早くUPできるように頑張ります
>>585 いや、乙っす。タカ坊はヘタレですね、うん。
タカ坊の不快さが良く出ていますねw
いくつか感想を言って頂いた方にレスつけられてなかったので。
>>500さん
おっしゃる通りですが、書きたかった感じの話はささらスレで書かれてしまいましたし(苦笑
511さんの言うように、貴明はささらの成長を見せる引き立て役として見ていただければ幸いです。
XRATED本編では、結局貴明が動きました。相当紆余曲折ありましたが。
今回はささらにそれをさせたいな、と。無論、XRATEDの焼き増しでなく私独自のものが
出せればそれに越したことは無いのですが。この話の流れだと、
貴明に格好いいシーンを当てるのは、多分無理だと思いますし(死
>>520 テラGJ!!
クマボディの時のミルファシナリオがあったら正にこの通りでは、
と思うような一つ一つのエピソードの入れ方が最高にいい仕事。
この仕事っぷりでガツンガツン描いて下さいませ。楽しみにしてますから。
書庫が久々に更新されました
管理人氏 乙
お! 本当だ。
書庫管理人さま、本当に乙!
さて、今日は月曜か。ワクワクテカテカ
もう更新しないかと思ってたが・・・・・・・
書庫管理人氏 乙
>>592 月曜なんかあったか?
>>593 河野家にようこそ の大体の更新日かと思いますが。
ここんとこは毎週月曜に更新してましたし
>>585 乙です。
今、俺の中のムカツク主人公リストが更新されました。
ここまでくるとヘタレ通り越してアホですね、タカ棒。w
>二律背反、アンチノミー。テーゼとアンチテーゼ。全く違う二つの意見。
そんなこと考える前に会いにいけよとオモタ。
ヘタレNo.1の伊藤誠だったら考える前に行動してるぞ
より泥沼な方向へな(笑
そして泥沼になってから考え始める
>>584 乙ね…本当に乙だわ。
>>597 No.1はぶっちぎりで孝之だと信じてやまない俺ダルシム
599 :
592:2005/12/19(月) 20:15:04 ID:RAdgVE2v0
祝、萌子ちゃんハッピーエンド達成。やったね由真、ぱちぱちぱち(やる気のない拍手)
萌子ちゃんをきっかけに、ちゃるによって義理の兄妹は結婚出来ると知ったこのみは、俺の義理の
妹になろうと決心する。まぁそんなの春夏さんが許すはずもないけどね。おまけにおじさん泣かすし。
夜になると大雨。寝る頃には雷まで鳴って、その雷で昼間見た映画を思い出した瑠璃ちゃんは、
怖がって俺の所に飛び込んできた。雷が止んだ後、瑠璃ちゃんを部屋に戻してあげた俺だったが、
瑠璃ちゃんの無言の訴えに負け、由真の鉄拳制裁を覚悟の上で瑠璃ちゃんのそばで寝ることにした。
毛布に横になって、どのくらい時間が経ったか。
「貴明」
そろそろウトウトしかけていたとき、瑠璃ちゃんの呼ぶ声で目が覚めた。
「なに、瑠璃ちゃん?」
「……」
瑠璃ちゃんは何も答えない。ベッドの下からじゃ顔も見えない。瑠璃ちゃんは一体、何を言いあぐ
ねているんだろう?
それから1、2分くらい経って、瑠璃ちゃんは小さな声で、
「……貴明は、どうしてそうなん?」
「え?」
どうしてそうなんだって聞かれても、なぁ? なんて答えたらいいのやら。
「どうしてって、何が?」
「だから……、何でそんな……、ウチに……、ええと……、
その、や、優しく、してくれるん……?」
途切れ途切れで、一生懸命に言葉を絞り出したような瑠璃ちゃんの問いかけ。俺は少しの間考えて、
「俺って、瑠璃ちゃんに優しい?」
「え?」
質問に質問で返すのは反則だし、そんな質問をされるとは思っていなかったようで、瑠璃ちゃんは
黙ってしまう。でも俺は聞いてみたかった。瑠璃ちゃんの口から、その答えを聞きたかった。
そのまましばらく、長い沈黙。そして、
「……初めて会うたとき、ウチ貴明のこと、敵や思うた。さんちゃん守らなあかん思うた。
せやからウチ、貴明にいっぱいイジワルした。貴明がウチらの目の前からいなくなればええ思た。
でも貴明、ちっとも懲りへん。それどころか、どんどんウチらに近づいてくる。
そうしている内に今度はイルファや。勝手に家に入って、勝手にさんちゃんのご飯作って……
さんちゃんのことはウチが守る。せやからさんちゃんのそばにはウチだけおればええ。そう思うて
今まで生きてきた、それなのに……」
ぐすっと鼻をすする音。瑠璃ちゃんはまた泣いてるんだろうか?
「さんちゃんに裏切られた思うて死のうとしたウチを、貴明は助けてくれて、家に住まわせてくれた。
あんなにイジワルしたのに、あんなに邪魔者扱いしたのに……、何でなん?」
「瑠璃ちゃんが俺の家に住むことになったのは、あの時俺が余計なことを言ったからだろ?」
「ううん、ちゃうよ。貴明間違ってない。
あの時のさんちゃんの気持ち、今のウチならなんとなく分かるんや。さんちゃんはウチと仲直りが
したかったのに、あの時のウチは、必死でさんちゃんのご機嫌取りしようとしてた。もしあのまま
さんちゃんがウチを許してくれて、一緒に家に帰ってたら、ウチアホやからきっと『こうすれば
さんちゃんは喜んでくれる』って思い込んで、さんちゃんの言う『何でも言いなりのロボット』に
なってた思う。貴明はそれに気付くきっかけを作ってくれたんや。
だからウチ、やっぱり貴明、優しい思うよ。……こんなウチなのに、優しいよ。
なぁ、どうして貴明、ウチに優しくしてくれるの?」
「そっか、俺は優しい、か……」
少し考え、俺は思いきって爆弾発言をしてみることにした。
「ねぇ瑠璃ちゃん、ココだけの話なんだけどさ、実は俺、童貞なんだ」
「……え?」
何のことだか分からないと言った感じの瑠璃ちゃんの声。だがその数秒後、
「ど! ど! どどど!
どーてーって、貴明何言いだすねん!? このヘンタイ!」
案の定、瑠璃ちゃんはビックリしてベッドから身を乗り出し、俺に怒鳴った。
「いやマジなんだわコレが。我ながら恥ずかしいんだけどさ。
今まで肉体関係はおろか、女の子と付き合ったことも無いんだ。キスだって珊瑚ちゃんとのアレが
俺のファーストキスだったし」
「そ、そんなこと言うたらウチかて……」
「そんなだからさ、俺、女の子とどう接したらいいか、全然分からないんだよ。
おまけに俺は臆病者で、相手が怒ったり悲しんだりするのが凄くイヤなんだ。
そんな俺が、女の子に出来ることって何だと思う?」
「優しく、する……?」
「なるべく親切に、そしてなるべく深入りしない。
困っている女の子を助ける程度のことはするけど、その女の子と深くは関わらない。深く関われば、
楽しいことだけじゃなく、苦しいこととか悲しいこととか腹立たしいことなんかを味わわなくちゃ
ならなくなる。そしてその時、きっと俺はうまく立ち回れないから。
まあ信条って程しっかりしたものじゃないけど、俺はそんな気持ちで女の子と接してきたんだ」
「このみや環は?」
「このみは古くからの付き合いで、俺にとっては妹みたいなものだったからな。気心が知れている
から迷うことも少ないし。タマ姉も何年かブランクこそあったけど、俺にとっては姉さんみたいな
ものだってのに変わりはなかったし。言うなれば二人とも、俺にとっては怖くない相手なんだ。
まあ、とにかくそんな感じで今までやってきたんだよ。今年の春はやたら女の子と知り合う出来事
が多かったけど、やっぱり俺は『親切かつ深入りせず』でやっていたと思う」
「でも、今はちゃう……」
「……だよなぁ。みんなが俺の家にやって来てから、気がついたら俺、みんなとの距離がやたらと
近くなっちゃってるんだから。自分でもビックリしてるよ。でもやっぱ俺、駄目なんだよなぁ」
思わずハァとため息が漏れる。
「なんで?」
「瑠璃ちゃんは俺が優しいって言ってくれたけど、それで俺、今凄いホッとしてるんだよね。何て
言うか、瑠璃ちゃんがそういう風に俺を見てくれていて、安心したって感じかな。
もう何日もみんなと一緒に暮らしてるのに、いつもおっかなびっくりなんだよ。今まで女の子とは
距離を置いてばかりだったから、未だに付き合い方が分かってないんだ。呆れるだろ?」
「……そんなん、分からなくて当たり前やん」
やや呆れた口調の瑠璃ちゃん。
「ウチかてさんちゃんの全部分かってるワケやない。直接さんちゃんから聞かな分からんこと沢山
あるもん。晩ご飯何食べたいとか、どの服着たいとか、タダでさえさんちゃん気まぐれやのに……。
それに、そもそも全部分かってたら……ケンカなんかせぇへんもん」
「瑠璃ちゃん……」
「せやけど、さっき貴明、ウチが何も言わなかったのに、部屋に残ってくれた。ウチがして欲しい
こと、してくれた……。せやからウチ、貴明、優しい思うよ……」
普段の瑠璃ちゃんからはなかなか出てこない、素直な言葉。それだけにその言葉は心地よく、俺の
胸を暖かくしてくれる。だから俺も、素直な言葉を。
「ありがとう、瑠璃ちゃん」
「な、なんで貴明がありがとう言うんや? 感謝してるのウチの方やのに?」
「俺も瑠璃ちゃんに感謝してるんだ。瑠璃ちゃんのお陰で、少しは自信が持てそうだからさ」
「そ、そうなん……。
あ! で、でもだからって調子に乗ったら……」
「分かってる。自信過剰にならないよう気を付けるよ」
「そ、それでええんや。貴明にしてはしゅしょーな心掛けやな」
台詞はいつものツンツンな感じだけど、瑠璃ちゃんは嬉しそうに笑顔を浮かべてくれた。
俺はさっき、みんなとの距離が近くなったと言ったが、とりわけ今は瑠璃ちゃんとの距離がより
近づいたと感じられた。
俺との会話で安心したのか、その後瑠璃ちゃんは程なく眠りについた。瑠璃ちゃんの規則正しい
寝息が、かすかに聞こえてくる。
さて、女の子の寝息に耳を澄ますのはやめて、俺もそろそろ寝なくちゃ。そう思っていると、
「タカ坊」
反対側のベッドから、とっくに寝入っていたはずのタマ姉の声。
「タマ姉……、もしかして、またタヌキ寝入りしてたのか?」
「ううん、今起きたところよ。瑠璃ちゃんとタカ坊のラブラブトークなんか、全然これっぽっちも
耳に入らなかったわ」
ウソだ、絶対聞いてたよこの人は。
「瑠璃ちゃんが呼んでも揺すっても起きなかったって言ってたけど、さてはタマ姉、起きてたな。
自分が起きなければ俺の所に行くだろうと思って、タヌキ寝入りを決め込んだんだろ」
「さぁ、何のことかしら?
瑠璃ちゃんが私を起こそうとしたの? 余程雷が怖かったのね、悪いことしたわ」
「タマ姉、俺、雷とは一言も言ってないけど?」
「あ……」
「やっぱり……。
何のつもりか知らないけどさ、雷を怖がってる瑠璃ちゃんを放っておくなんて、ちょっと人が悪
すぎやしないか?」
マジでムカついたので少々語気が荒くなる。
「ま、まぁ確かに可哀想とは思ったけど、こういうのは私よりもタカ坊が適任だと思ったのよ。
実際タカ坊、瑠璃ちゃんを安心させたしね」
ちょっとは反省してるのか、済まなさそうに言い訳するタマ姉。
「全てタマ姉の計算内ってことか。大したもんだねタマ姉は」
「あら、計算外のこともあるわよ?」
「何が?」
「タカ坊がここにいること。てっきり私、瑠璃ちゃんはタカ坊と一緒にソファーで寝ると思っていた
もの」
「な!? そ、そんなことするワケないだろ!」
「大声出さない。瑠璃ちゃん起きちゃうでしょ」
タマ姉にたしなめられ、俺は慌てて身を起こし、瑠璃ちゃんの方を見る。
「ぅぅん……」
寝返りをうつ瑠璃ちゃん。どうやら起きてはいないようだ。やれやれ。
「で、何?」
改めてタマ姉の方に振り返る。タマ姉は横になったまま、俺を見ている。
「何って?」
「話したいことがあるから話しかけてきたんだろ? 今の感じだと、瑠璃ちゃんを安心させた俺を
誉めてでもくれるのか?」
「そんなに尖らないでよ。話しにくくなるじゃない。
確かに誉めてあげようと思ったんだけど……、やっぱりやーめた」
「なんで?」
「だって、タカ坊優しすぎなんだもの。ちょっと妬けるわ。
あーあ、私も『雷こわーい!』って、タカ坊の所に飛び込めばよかったかな」
「何言ってんだよタマ姉。子供の頃、雷を見てはしゃいでたのはどこの誰だよ。
おまけに俺のこと、『タカ坊知ってる? 雷様は子供のおへそが大好きなのよ。ほーらご覧、雷様
がタカ坊のおへそを狙って、もうすぐ家にやってくるわよ〜!』って散々脅かしたクセに。
俺がどれだけ泣こうがお構いなしだったよな。危うくトラウマになるところだったよ」
「ま、まぁそんなこともあったかもね……。お、男だったら過去のことでいちいち愚痴らないの!」
「大声出すなよー。瑠璃ちゃん起きるだろー」
イヤミっぽく棒読みで注意。
「う……」
タマ姉は俺から目をそらし、シーツを口の辺りまでずり上げる。そして、
「タカ坊のイジワル。タカ坊は私のことなんか嫌いなのね。
ええきっとそうよ。タカ坊は年上の私なんかより、年下で可愛らしくて、思わず守ってあげたく
なっちゃうようなタイプが好きなのよね。このみとか瑠璃ちゃんとか。
タカ坊はシスコンなのね。妹属性なのね。『お兄ちゃん』って呼ばれたいのね」
タマ姉まで何だよ……。今日はやけに『お兄ちゃん』がついて回る日だな。
「そんなことないって。確かにこのみも瑠璃ちゃんも放っておけないって気持ちはあるけど、だから
ってタマ姉が嫌いってワケじゃ……」
「じゃあ、好き?」
「え?」
タマ姉はシーツで口を隠したままこっちを向いて、
「タカ坊、私のこと、好き?」
げ、た、タマ姉、その質問は反則だろ……。
「い、いや、それはその……」
「嫌いなんだ。やっぱり妹なんだ」
「ああだからそうじゃなくて、何て言うか、その……」
「タカ坊から見たら私なんて、背も高いし、胸も大きいし、力は強いし頭もいいし、可愛いと言う
より美しいって感じだし、全然心の琴線に触れないってことなのね」
あの、何げにタマ姉、自慢してませんか?
「いいですよーだ。どうせ私はせいぜいみんなのお母さん役がお似合いのおばさんキャラよ。ご飯
作ったり掃除したり洗濯したり出来の悪い子を叱りつけたりしていればいいだけなんだわ。
こうして私の青春は誰の理解を得ることもなく、ただ浪費されていくのね。ううっ……」
芝居がかってはいるものの、幾分本音も混じっているように聞こえなくもないタマ姉の恨み節。
はぁ、やれやれだよ全く……。
「そんなこと無いって。タマ姉は美人でスタイルもよくて頭もいいし家事全般プロフェッショナル。
お嫁さんにしたいランキング第一位確定だよ」
腕力に触れない辺りが俺の優しさと理解してもらいたい。
「……それって、誰のランキング?」
「……男性全般」
「その中にタカ坊は含まれてる?」
「……まあ、多分」
俺がそう答えると、不意にタマ姉は起きあがって俺の頭を抱え、
ぎゅ〜〜〜っ!!
「ぐぐぐ、ぐるじぃ……」
ひ、久しぶりの、タマ姉のハグ攻撃……。む、胸の谷間に顔を押しつけられて、息が出来ない……。
「んも〜、タカ坊ったらやっぱりタマお姉ちゃん好き好きなのね。
他のコの面倒見て嫉妬させようだなんて、タカ坊ったらホント、イジワルなんだから☆」
ぎゅ〜〜〜〜〜〜っ!!!
「た、タマ姉ギブ……」
途切れそうな意識のなか、必死でタマ姉の腕をタップする。
「あ、いけない」
気付いてくれたタマ姉は、ようやく俺を解放してくれた。く、苦しかった……。
「はぁ、はぁ……、た、タマ姉少しは手加減してくれよ……」
「ゴメンね。久しぶりだったからつい……」
満足そうに微笑むタマ姉。ったく。ま、いいか。
タマ姉の相手でもう疲れた。そう思って毛布に寝転がった時。
え? 今、一瞬だけど、瑠璃ちゃんの視線を感じた……?
慌てて起きて瑠璃ちゃんの方を見るが、瑠璃ちゃんはすやすや眠っている様子。俺の気のせいか?
……
…………なんか……重い……。
眠い目を開けてみる。部屋は少し明るく、どうやら朝になったようだ。
で、何故か感じる、柔らかな重さと温かさ。……俺は天井から、自分の身体に視線を下ろす。
…………あの、タマ姉と瑠璃ちゃん、何で俺の上で寝てるの?
あと、あまり認めたくないんだけど、制服姿の由真が仁王立ちしているのが見えたような……。
この部屋で寝た時点で由真に殴られるのは覚悟してたけど、これは……殺されるかも。
「あ、あ〜、あのな由真」
「チェストォォォォォォォォォォ!!!」
それは、熊をも一撃で仕留めるであろう見事な跳び蹴り、ってパンツ見え
バキッ!!
つづく。
どうもです。第37話です。
XRATED、さーりゃん先輩ことささら嬢クリアしました。
な に こ の カ ワ イ イ 先 輩 ?
事前情報だとかなり厳しい女性なのかなと思っていたのですが……、
すっげえカワイイ! そしてエロい! 萌えた! 萌えました!
さーりゃん先輩最高ォォォォ!!
あとまーりゃん先輩、アンタ面白すぎだよ(w
とまあ、断然気に入ってしまったこの二人なのですが、河野家登場については……
正直出したい気持ちはあるのですが、だからと言っておかしな出し方をして台無しにしたくは
ありませんし……、少し考えさせてください。m(_ _)m
>>609 河野家キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
GJです。そして是非まーりゃん先輩を出してください。
さーりゃんよりまーりゃんが見たいですw
GJ!
>>592,594
あぁそういえばそうだったな
完全に忘れてた
>>609 乙
忘れていてことに心から謝罪する
すまん
613 :
名無しさんだよもん:2005/12/19(月) 21:20:07 ID:p58U567v0
>>609 GJGJGJ!!
確かに出し方が難しいかも。
でも期待してもいいでつか?
まーりゃん先輩なら、XRATED通り会ったことはあるけどその後何もなかったことにして
「女の子を何人も家に連れ込んでる不埒者を調査しに来たぞ!」
とかいってうやむやの間に河野家ファミリーになるで済むけど…さーりゃんは難しいかも。
河野ファミリーの噂を聞いて潜入調査。もしくは監視の為にタカ棒の家に張り込み
生徒会長権限を存分に行使してくだされ
え〜、流れをぶった切ってすいませんが業務連絡〜
我楽多様が管理されていた過去ログ・リンク・テンプレを、書庫に引き取りました。
http://th2ss.hp.infoseek.co.jp/log.html#log リンクに掲載してほしい!という方は、このスレかまたはメールで連絡をくださいませ。
>>591-593 今更続ける理由もありませんが、引継ぎもないまま放置するわけにもいかないかな、というところです。
エロOKで熱心な誰かが代わりになるサイトを立ち上げてくれたりしたら嬉しいのですが。
私が管理する限りは、XRATED関連に全く追従できないのは明白ですから…
>>617 書庫管理人さんにはいつもお世話になってます。
自分でサイト持ってないものですから、過去スレのSSを掲載してくださる書庫さん
はとてもありがたい存在です。
管理など大変だとは思われますが、よろしければこれからもお願いできれば、とは
思っています。
勝手なお願いではありますが、どうか宜しくお願いします。
「タマ姉はあいかわらずだな」
底力を見せろって言われたって、俺にそんな物があるのかどうかだってわからない。
「その時が来たら、できるだけ考えることにするよ」
ったく、いつもタマ姉は言いたいことを言ってくれるよな。
俺は苦笑すると、タマ姉の言葉を聞き流すことにした。
なんだか残念そうなタマ姉の表情だけが、すこしだけ気になったけど。
4月。新しい季節を迎えて、俺の周囲も少しだけ、いや、大分賑やかになった。
このみが俺と同じ場所に通うようになったし、そこには去年までいなかった、タマ姉ま
で一緒にいる。
これから一年、大変だけど、楽しい生活を送れるんじゃないかって言う期待もわいてく
る。
けれど、じゃあ、それが終わった後、俺は一体どうなってしまうんだろう?
雄二あたりに言わせて見れば、「不安で退屈な日常を吹き飛ばす秘訣、それはな、ギャ
ルとメイドとメイドロボだ」なんて答えが返ってきそうだけど。
そう言うのは、なにかが違う気がする。
それに、あいつが出会いたがっているようなドラマチックな出来事なんて、そうそう起
きるわけが無い。
そうそう普段の生活で起きるはずが無いから、みんな映画や小説をみるんだし。
・・・・・・と、さっきまで思っていたんだけど。
「く、クマ?」
目の前を、クマのぬいぐるみがテッテッテッテッと一人で歩いていく。
ちなみにここは放課後の、人気の無い学校の廊下で、周囲には俺以外の人間はいない。
当然、そのクマのぬいぐるみを動かしているような人影だって、ない。
「ドラマチックといえば、ドラマチックかもしれないけど・・・・・・」
無人の校舎をひとりで歩くクマのぬいぐるみじゃ、ホラードラマだよなぁ。
これじゃ、雄二と言うよりも笹森さんの領域だ。
そのクマのコミカルな歩き方(走り方?)のおかげで、恐怖心はさっぱり湧いてこない
けど。
それでも異様な光景であることは間違いはなくて、廊下の向こうに歩いて行くクマのぬ
いぐるみを呆然と目で追っていると。
「あっ」
転んだ。
しかも起き上がることができないのか、廊下に倒れたままジタバタともがいている。
たとえそれが未確認ぬいぐるみ物体の類だとしても、ああも派手に慌てている様子を目
の前にして無視を決め込んだんじゃ後味が悪い。近寄って、立たせてやる。
「あ、なんだ。これ、ロボットのおもちゃじゃないか」
立たせるのに持ち上げたんでわかったけど、このクマ、ただのぬいぐるみじゃなくてク
マのロボット、トイロボットなんだ。それならひとりで歩いていたのも頷ける。なんで学
校にそんな物があるのかは知らないけど。
そのクマのロボットは、最初俺につかまれてビックリしていたようだったけど、俺が廊
下に立たせてやったことがわかるとペコリとお辞儀をした。
いや、このごろのおもちゃは良くできてる。さっきの歩き方もそうだけど、動作の一つ
一つがとても滑らかで、人間くさい。メイドロボっていうのも、これくらいスムーズに動
くんだろうか。
「いや、そんなお礼を言われるようなことじゃないって。困っているやつを助けるのは当
然だろ?」
あんまり自然にお辞儀をしてくるものだから、ついつられてそんなことを言ってしまっ
た。いや、本当に言いたくなるくらい人間っぽい仕草なんだって。
するとそのクマのぬいぐるみは、照れてしまったのか後ろを向いてしまう。
本当に良くできてるなぁ。
と、ついムラムラと知的好奇心が湧いてきてしまった。一体どういう構造をしていれば、
こんな人間くさい動きが可能になるんだろう。やっぱりプログラムなんだろうか。
もう一度持ち上げると、俺の手の中で“クマ吉(仮名)”が今度はバタバタと暴れだす。
おお、こんな動きまで可能だとは。やるな、クマ吉。
別にクマ吉が凄いんじゃなくて、このクマのロボットを作ったやつが凄いんだろうけど、
なんとなく感心してしまう。
ぱっと見はただのクマのぬいぐるみだけど、やっぱりどこかにスイッチがあったりする
んだろうか。定番はやっぱりお腹のあたりか? ボディの前面をあちこち押してみたり摘
んでみたりするけど、それっぽい物は見つからない。
と思ったけど、あれ、なんだかクマ吉の動きが緩慢になってきたな。やっぱり何かスイ
ッチでも押しちゃったのかな。
そう思って頭や、背中を眺め回して、最後に足を掴んでひっくり返そうとした。
だけど・・・・・・
「え?」
いままでぐったりとした様子だったクマ吉が急に動き出して、ひょいっと俺の腕に抱き
つくような格好をしたかと思うと、指先に激痛が走った。
「いったぁーっ!?」
もう後は声にならない。ただただ、その激痛にパニック状態に陥って、ブンブンと腕を
振り回すしかできない。
必死に振りほどこうとするんだけど、クマ吉はよほどしっかりとしがみついているのか
ちょっとやそっと腕を振ったくらいじゃびくともしてくれない。
「あー、こんなとこにおった〜」
と、一人でパニックを起こしている俺の後ろから、ずいぶんと場違いっぽいような、女
の子の声が聞こえてきた。クマ吉のヤツもその声に気が付いたのか、ようやく俺の指から
口を離してくれる。
「みっちゃん、乱暴はあかんていつも言われてるやろ。一体なにしてたん?」
クマ吉に齧られていた指先を、あわてて自分の口にくわえる。血が出てなきゃいいけど、
って言うくらい痛かった。
そんな俺の様子に、怒ったように後ろを振り向くクマ吉。トテトテとその女の子の足元
に走り寄っていってしまう。
「あ、そのクマのロボット、君の?」
クマ吉を抱きかかえる女の子に、思わず聞いてしまった。いや、別に何をどうしようと
いうつもりは無いけれど、ちょっとだけ、この子の家ではどういったロボットの教育をし
ているのだか問いただしたくなってしまう。
「ロボットって、みっちゃんのこと?」
そう言って、きょとんとした表情をかえしてくる女の子。
う、ま、まずい。よく見ればこの子、ずいぶんと可愛らしい顔をしている。今までは齧
られた指が痛くて気付いていなかったけど、いつの間にか、女の子にこんなに近寄って、
やばい、顔が熱くなってきた。
「みっちゃんはロボットやない。うちの友達や〜☆」
「と、友達?」
そしてバンザーイをする女の子。その隙に距離をとると、少しだけ落ち着いた。
しかし、クマのロボットを、友達? まあ、ボールが友達だったり、愛と勇気だけが友
達のヤツもいるくらいだから、クマのロボットが友達でもおかしくはないだろうけど。
「でもにいちゃん、一体みっちゃんに何したん? みっちゃんはちょっとだけ短気やけど、
訳もないのにイジメする子ちゃうよ」
え、何をしたと聞かれても、俺、何かしたっけ?
俺がしたことといえばクマ吉(みっちゃん?)を眺めてたくらいだし。そのことで女の
子が怒るって言うのならわかるけど、この子の言い方だと、まるでそのみっちゃんが怒っ
ているようだし。
身振り手振りを使って何かを説明しようとしているクマ吉を、女の子はフンフンと頷き
ながら聞いている。
いや、やっぱり良くできてるなー。
そしてクマ吉の動きが止まり、説明を聞き終えると、女の子は俺に向かい合ってぺチン
と、俺のほっぺたを叩く。
「え、えっ?」
軽く触れられただけで、痛くはないけれど、女の子にムーっと睨まれた俺は大混乱だ。
もしかして俺、この子に怒られてる!?
「にいちゃん、女の子のお股のぞくなんてカッコわるいで。そんなん、ヘンタイさんのす
ることや」
「えええーっ!?」
いつ!? どこで!? 誰の!?
急に突きつけられた言葉に気が動転していると、女の子は被害者をひょいと持ち上げて、
俺の鼻先に突きつけた。
「にいちゃん、ごめんなさいは?」
「え?」
俺の目の前では、クマ吉が腕を組んで俺のことを見つめている。いや、このクマ吉から
漂う雰囲気は、もしかして凄く睨んでる?
「お、女の子って・・・・・・」
まさか
「クマ吉、女の子だったのーっ!?」
すると、俺の叫びでまた“乙女心”が傷ついたのか、クマ吉(クマ子?)がジタバタと
女の子の手の中で暴れだす。
でも、女の子だっていうのなら、あのポーズはまずかったよなぁ。ひっくり返して、股の
あいだを覗いちゃったんだから・・・・・・
「それにみっちゃん、にいちゃんにはおっぱいまで触られたー言うてる」
たしかに、スイッチ探そうとしてあちこち触っちゃったからなぁ。
今ならクマ吉が腕を組んでいるんじゃなくて、胸を隠そうとしているのがわかる。
「にいちゃん、ごめんなさい。きちんと謝ったって」
「あ、えっと・・・・・・」
もうここまではっきりと言われたんじゃ、言い訳なんていう気にもならない。
表情は変わらないけど、クマ吉が今、プログラムなんかじゃなくて、本気で怒っている。
そのことをわからないはずがない。
だから・・・・・・
「ご、ごめん、クマき、じゃなくて。えと、みっちゃん?」
クマ吉に対して、素直に頭を下げる。
ぬいぐるみに謝るなんて、はたから見ればこっけいでしかなかったけど、でもそうしない
と、絶対に後悔することになると思った。
「気が付かなかったからって、女の子にいろいろとひどいことして、傷つけちゃって。本当
に、ごめん」
そしてもう一度、一生懸命に頭を下げる。下げて許してもらえるようなことじゃないけど、
俺じゃ、そうやってお詫びをすることくらいしかできないから。
すると、クマ吉はポンポンと下げた俺の頭を叩いた。
視線だけを上げてみると、今度はクマ吉のほうが大慌てで腕を振っていた。
まるで「こっちが恥ずかしい」って言っているみたいに。
俺が頭を上げると、恥ずかしがって横を向いてしまう。それでも視線だけは時々俺のこと
をみてくれて。
なんとなく、だけど、これって「許してやる」ってことなのかな。
俺が「ありがとう」っていって頭を下げると、また慌てた様子で腕を振ってくれた。
その後、クマ吉は女の子に連れられて帰っていってしまった。
聞けば、本当はコンピューター室にいたはずなのに、退屈して校舎の中を歩き回っていた
らしい。
そのことで女の子に叱られるクマ吉をからかってやると、俺の頭の上に上って、そこで暴
れだした。
これは、あれだな、照れ隠しってやつだ。やっぱりクマ吉、女の子なんだな。
ひどいことをしちゃって、でも仲直りをすることができて。最後、女の子に抱かれていっ
てしまう時も、廊下の角を曲がるまで、最後まで女の子の肩の向こうから手を振ってくれた。
俺も負けじと、クマ吉の姿が見えなくなるまで手を振ってやる。
クマ吉と女の子、2人がいなくなってまた人気のなくなった放課後の廊下。
でも気分は、不思議と良くて。さっきまでのモヤモヤした気持ちが全部なくなってくれて
いた。
多分、きっと、こんな出会いが待っていてくれるんだと思う。
「こういうのもきっと、ドラマチックな出会い、っていうんだろうな」
それは感想や予感なんかじゃなくて、間違いのない確信。
終
オレミルファルート、みたいな?
>630
続くよね?
てゆーか続けてくださいorz
そろそろ河野家に進展が欲しいなあ。
ヘタレタカ坊も見ていてアレだが、近頃の河野家の貴明は
究極の八方美人みたいな感じで違う意味でもにょってきた。
>>609 少し遅くなったけど、河野家喜多ーーー!!!
そうか、熊を倒すのは由真だったんですねw
さーりゃん先輩については、、、まだ1stプレーが
3月上旬で止まっている自分がいます orz
>>617 書庫管理人さん乙!
忙しくてリアルで読めない時に、とても重宝してますので
できれば続けていただきたいですが、無理のない程度でお願いします。
木から葉もすっかり落ち、朝は起きるのも辛くなってきている。
嫌な期末試験も終え、明日は終業式。
無論終業式を終えてからあるイベントとしたらクリスマス、そしてお正月。
クラスの中でもクリスマスを楽しみにしている人、それなんだ?食えるのか?と言った
感じでまったく興味のなさそうな人と二極化しているような感じだ。
俺はと言えばそんなの考えるほど余裕が無いわけで…。
そして終業式前の最後の授業も終え、何時も通りに帰り支度をしていると
「るー☆」
と、明るい声が教室に響き渡った。
その聞き覚えがある声の先へ視線を移すと珊瑚ちゃんが元気一杯に両手を挙げて俺に向かって
挨拶をしてきていた。珊瑚ちゃんの後ろには瑠璃ちゃんも居る。二人とも色違いの
ダッフルコートを着ていて帰る準備は万端らしい。
急いで使いもしない教科書をバッグに入れてコートを羽織って二人の所へと向かった。
「お待たせ」
「ほないこかー☆」
イルファさんが来てからの一件以来、珊瑚ちゃんはともかくとして瑠璃ちゃんも一緒に
教室に来ては色々と俺を困らせてくれるようになった。
前までは珊瑚ちゃんだけを対処しておけば問題は無かったのだけれど、今は珊瑚ちゃんの
お願いを渋ったり断ったりすると瑠璃ちゃんが
「さんちゃんのお願い断るなー!!」
とか
「貴明がさんちゃんの事嫌いになったー!」
とか教室で叫ぶもんだから無碍に断ることすら出来やしない。
最初はそれに対してクラスメイトが茶化したり冷やかしたりというのもあったがみんな
それも飽きたのか騒ぐことも無くなってきた。
それでも色々と裏では言われているらしく、どうやら俺はクラスメイトから
「1年生の双子の美少女を手玉に取る憎き男」
といった全然嬉しくない称号をもらってしまったらしい。
ちなみにこの情報をくれたのは雄二。その事を知ってクラスを見渡すと俺の方を凝視してきて
居る奴が何人か居たのが今でも忘れられない。
はぁ…
「どうしたん?貴明〜」
3人仲良く下校をしてきて居る途中、俺が白く吐き出した溜息の理由を瑠璃ちゃんが
何時もの無垢な笑顔のまま聞いてきた。
「いや、何でもないよ」
「あー、分かったー☆」
珊瑚ちゃんは何かを理解したらしく、何時もの様に両手を挙げた。
「昨日は瑠璃ちゃんがいっちゃんの攻撃ではよぉダウンしたから貴明不満なんやろー☆」
「うぇ!?」
「さ! さんちゃんー!?」
あまりの突拍子の無い発言に俺と瑠璃ちゃんが驚きの声を上げてしまった。
あの春の瑠璃ちゃん、珊瑚ちゃん、そしてイルファさんとの間でのいざこざが解決して
からと言うもの俺たちはほぼ毎日…というかしなかった日を数えた方が早い位のペースで
そういった行為に耽っている。
結局俺は親に相談をして(と言うよりも瑠璃ちゃん、珊瑚ちゃんの事を話したらしっかり
面倒を見てやれと言われたので相談とは言えないかもしれないが。…というか明らかに勘違いをしていたんだけど)、
夏休みの間にこっちへ引っ越したのだ。
そして夏を過ぎた辺りにミルファ、秋になった頃にシルファも珊瑚ちゃんの家にやってきた
事もあり、俺の負担は最初の時に比べて倍近くに増えている。
それをイルファさん達も分かっているのか夕飯が明らかに滋養強壮の高そうな物だったり
する事が実に多い。
この前なんかどこで手に入れてきたのかスッポン鍋だったし…。
あの時のミルファの目の輝きと夜の激しさは忘れることが出来ない。そこで俺は初めて
人間ってのはセックスのし過ぎでダウンする事を知ったし。
「いや、昨日の事とかそういった訳じゃなくてね。そう、期末の結果があんまり
良くなかったからさ」
珊瑚ちゃんの飛びすぎた発言から何とか話題を変えようと適当に話を逸らす。
「なんや、それなら瑠璃ちゃんも一緒やんなー☆」
「だってうちはさんちゃんと違ってアホやもん…」
「そんな事言ったら俺だって珊瑚ちゃんと比べたらバカだし」
ロボット工学なんて高度な知識を持っている珊瑚ちゃんに高校の授業はつまらないらしく、
テスト勉強なんかもしないで余裕でトップクラスの点数を取っているらしい。
それに引き換え俺は今までは平均点以下だったり以上だったりといった結果だったのだが
最近は家では勉強をする時間すら存在しない。
そう言った訳で学校で授業をしっかり受けるようにはしていたのだが…
「二人とも赤点ギリギリやなぁ〜」
「そう思うんだったら是非試験前にはお休みを頂きたいんですが」
「うちはえぇけどみっちゃんがまず嫌がる思うよー?」
う、確かに。珊瑚ちゃんの一言に納得してしまった。
ミルファの事だからそんな提案をしただけでも暴れかねない。この前だってミルファに
おねだりされたのだがあまりの疲労につい断ってしまったら大変な事に。
部屋にあるものを手当たり次第俺に投げつけてきたのだ。
まさか枕を投げつけられて気を失うとは思ってもいなかった。
「うーん…ま、まぁ今度のテストは大分先だし…」
「問題先延ばしにしててもえぇ事あらへんで〜」
図星。
「まぁ、貴明はすけべぇやから結局断りきれんやろ」
更に図星。
「そ、そうでございますね…」
そうだよな、結局俺ってばあの5人に言い寄られると断れないんだよなぁ。
尤も、1対5で言い寄られて断れる男が居るのならば俺は会ってご教示を受け賜りたい。
「ただい…」
「貴明っ☆」
「ぐえぇっ!?」
帰って早々にミルファから熱い抱擁を受ける…というよりもベアハッグを食らっていると
表現したほうが正しいかもしれない。瑠璃ちゃんと珊瑚ちゃんは最早見慣れているのか特に
何かのリアクションも取らなくなってきた。
「ミ、ミルファ…もう勘弁して…」
「だーめ☆」
「みっちゃん、そのまましとったら貴明死んでまうよ?」
「ちぇっ…はーい」
珊瑚ちゃんの一言によって何とか解放されるもその時点で俺はボロボロになっていた。
「貴明大丈夫〜?」
「気にするならお願いだから抱きつかないで…」
「何よー。ちょっと強すぎただけでしょ〜」
その強さのせいで俺は三途の川を再三渡りかけているわけなんですけど。
ミルファは頬をプクーっと膨らませて不満を表現してきた。
その丸く膨らんだ頬の中に不満がずいぶんと溜まっていそうな感じがする。
「まぁ…その、抱きつくのは良いけどさ…」
この一言がまずかった。
「なんだぁ〜♪ 貴明ってば恥ずかしがりなんだからぁ〜♪」
「え? あ、ミ、ミルファさん!?」
「〜♪」
何を勘違いしたのか俺がすべてを言い終わる前に俺のコートを持ってミルファは俺の
部屋へと行ってしまった。
「あーぁ、貴明アホやなぁ。ミルファは勘違いしやすいこと忘れとったん?」
「だって全部言う前にさぁ…」
「うちは知らんよ。まぁせいぜい死なんようにな」
瑠璃ちゃんは呆れた様な…というか呆れた顔でそう言うと部屋へと行ってしまった。
「貴明さん、大丈夫ですか?」
「えぇ、何とか」
「もぅ…ミルファは加減を知らな過ぎます」
この家の中では常識ある人であるイルファさんが俺を心配してくれた。
「こういうのは加減をしないとダメですよね?」
「そ、そうですね」
ちゅっ
「貴明さんは優しくされるのがお好きですものね☆」
唇に感じる暖かく、柔らかい感覚。
幾ら何十回としたからといって慣れるわけではない唇の感覚。
いきなりの不意打ちで俺の思考回路はショート寸前になってしまった
「あら、一回だけじゃご不満でしたか?なら…」
再度感じる唇の感覚はすぐには消えず柔らかさをじっくりと感じる。
イルファさんの手は俺が逃げないようにとしっかりと肩を掴んでいた。
「たかあk…ちょっと姉さん!!」
後ろからミルファの声がしてきた。どうやら俺の部屋にコートをかけて戻ってきたら
こんな光景だったので怒ってるみたいだ。まぁミルファからしてみれば怒るのも当然か。
「あら、もう来ちゃいましたか。もっとしてたかったのに残念です」
「残念じゃないわよ! あたしが目を離した隙に何してるのよ!」
「わかりません? ちゅーですよ☆」
イルファさんが俺にぎゅっと抱きついて俺の後ろに居るミルファに見せ付けるような
体勢になると、ミルファの中で何かがキレたみたいだった。
恐らくは堪忍袋の尾だと思うけど。
「貴明から離れて! 今まで我慢してたけど、もー我慢できないわ!
ここで決着つけようじゃないの!!」
「あら、姉に対して挑むつもりなんですか?」
「あたしの貴明を奪うつもりなら姉だとて容赦はしないんだから!」
「ふぅ…わかりました」
な、何だか嫌な展開になってきたな。
二人の間の空間が何やら歪んだ様な印象さえ受ける。
ここは逃げよう、うん。ヘタレとかじゃないぞ。服も着替えたいしね。
そんな言い訳を自分にしながら俺は部屋へと向かう。
途中、廊下でシルファがおさげを揺らしながら俺の所へとやってきた。
「貴明…姉さん達は?」
「あぁ、喧嘩してるから近寄らないほうが良いと思うよ」
そうシルファに言って部屋に入ると閉めたはずのドアが開いた。
無論あけたのはシルファであった。
「どうした?」
「姉さん達が居ないなら、今はシルファと遊んでくれる?」
「あぁ、構わないけど…」
積極的なミルファ、策士家なイルファさんと違ってシルファは引っ込み思案なのか
珊瑚ちゃんにはお願いする事は多いのだが俺に何かのお願いをしてくると言うことが少ない。
俺としてはシルファにお願いされるのは悪い気はしないので問題はまったく無かったから、
そのシルファのお願いも普通に受け入れた。
と、そこまでは問題なかったのだがシルファはドアを閉めると首元のリボンを解き始めた。
「シルファ?な、何してるのかな!?」
「だって…エッチする時は脱がないと…それとも貴明は服を着てするのが好き?」
シルファはきょとんとしてリボンを解く手を止めた。
どうやらシルファは俺と『セックスをする=遊ぶ』といった公式が出来ているらしい。
誰だ…こんな事シルファに教えたのは…
「貴明?どうしたの?」
俺がミルファの言動に対して悩んでいると何時の間にかシルファが俺の目の前まで来ていた。
「ほら、シルファ。エッチは昨日しただろ?」
「ダメ。シルファもっとしたい」
ミルファは俺に抱きついてくることが多いから少しは慣れたが、シルファとはそういった
スキンシップをとっては居ない分こういった時になるとどうすれば良いか分からなく
なってしまう。
迫ってくるシルファから少しずつ逃げるように後退していくうちにベッドへと座り込む
格好になってしまう。その俺の脚の上に跨ぐ様にしてシルファが乗っかってきた。
「ほら…貴明のおっきくなってるよ」
「シルファ…」
俺がミルファの行動に流されそうになって居る所で部屋に救いの音がした。
ガチャ
俺の部屋のドアを開ける音。ドアを開けたのは珊瑚ちゃんであった。
「…あ、しっちゃんずるいでー」
「さ、珊瑚ちゃんたすけ…」
俺が珊瑚ちゃんに救難信号を出す前に珊瑚ちゃんがみんなに出撃命令を下してしまう。
これでさっき鳴ったドアの音は救いの音から破滅の音となってしまった。
「瑠璃ちゃーん、貴明今日はこんな時間からエッチしてくれるみたいやでー☆」
「珊瑚ちゃん!?」
「ちょっと! 貴明何してんのよ! シルファも!」
珊瑚ちゃんの声に反応して喧嘩してたはずのミルファが飛んでやってきた。
これは不味い…。
「あ、ミルファ…これは、その」
何とかミルファを宥めようとしている所にシルファの追い討ちが入る。
「今日は貴明はシルファとするの」
「〜〜〜〜〜!!!」
声にならない怒りなのだろうか。握りこぶしを作っており、何時導火線に火が付いても
おかしくない。そんな状況になっているのが嫌でも分かった。
何とかミルファを宥めたい所だがシルファが抱きついてきてしまっていてこれじゃあ
何を言っても神経を逆撫でさせるだけのような気がするし……。
俺が苦悩している中、他の3人は気にすることもなく楽しそうなのがよく分かった。
「今日は、はよからみんなでラブラブやなぁ〜☆」
「貴明も大変やな…」
「あら、先程瑠璃様嬉しそうでしたけど同情なさるんですか?」
「イ、イルファ! 余計な事言わんでえぇ!」
なんて事を言ってるんだから。
「ほら…貴明、脱いで。それとも脱がして欲しい?」
「ちょ、ちょっとシルファさん!?」
イルファさんみたいな言動をするあたり姉妹機なんだなと思ってしまうのだが今は
そんな事を考えている暇は無い。こうしている間にもシルファによってどんどん服を
脱がせられてるのだから。ただでさえ着替え途中だったわけだからあっという間に
俺は服を全部脱がされてしまった。
「わーい☆ 準備万端やー☆」
「シルファ! 抜け駆けしないの!!」
「勘弁してくれー!!」
6人(?)で過ごす冬休み。
俺の体が持つんだろうか……裸になった5人の少女が目の前に居ると言う現実離れした
光景を諦めながら見つめ、俺はこれから酷使されるであろう自分の体に対して謝りたく
なってしまった。
646 :
中の人:2005/12/20(火) 21:35:14 ID:xEj7tZ5L0
XRATEDでささらに魂を奪われかけました。
けどミルファのイラストで何とか現世に留まってます。
イルファさんがエロファさんだったから貴明も大変だなぁとか思いながら書いてみました。
けど何か変だ_| ̄|○
Brownish〜は色々と悩みつつ書いてるので公開は先延ばしっぽいです。
というかBrownishの題名おかしくなっちゃったし…
ミルファ(というかクマ吉)SS(*'Д`)イイヨーイイヨー
>>646 ささらに魂を奪われたままささらSSお願いします。
私の書いたような暗いのじゃなくて明るいやつでw
>>636 個人的にオリキャラはどうでもいいんだが、面白くないを通り越して原作キャラが不快になってきたな。
あなたの話を読んでると、キャラを不快に描かないと物語に起伏をつけられねーの?と思ってしまう。
あと、上のささらSSで、ある程度のリアリティは必要みたいな話が出てたけど、ジャンクションはそれを
意識しすぎててキツイ。
もう少し、リアリティを出すために書くべき情報と書かなくていい情報を取捨選択するといいんじゃない?
最近SS投下ペース上がったな。良い感じだ。
ありがとう、作者の皆様。
おまいら、可哀想だからDNMLの方も盛り上げてやれ。
>>648.649
それならお前らが書け!!
それができないなら消えろ。
文句言うならお前が書けとか言い出すやつ
ところでXRATED新キャラのアイス屋マダー?
元より季節ネタ・一発ネタSSとお断りが入ってるものに無粋は承知の上で。
お話はサクッと楽しく読ませていただきました。
イルファさんが はっちゃけ てるのはもう定説ですが、今回は特に物凄く…
面白いからいいといえばいいんですケド。
でも…いつも「道化回し」の役割ばかりで「可哀相」とも思ってしまう
今日この頃でもあったりはします。
ミルファがいつもおいしいところ(役回り)を振られてるのは ミルファすきすきすきー
としては とてもとても嬉しいんですが…
しかし今回のお話はかなり勢いで書かれた感じが ありありと拝見できまして……
誤字脱字はともかく、ちょっとツッコミ失礼。
・両手で顔を覆い、うなだれる××××の身体にしがみついた。
※両手が塞がっててどうやって?
・顎で促した先では、雄二が
・玄関に放置されたままの雄二
※ドッペル君でつか(笑) <幽体離脱でも可
・再補足を
※捕捉
・照らし合わせて変わっているいうのは
※変わっている「と」いうのは ?
・懸命だと判断した。
※賢明
>>654 SS作家が、書く気をなくすようなことを言うなってことだ。
XRATEDで増えたと言っても、まだまだ少数だからな。
それと、文句を言うなと言ってるわけじゃない。
>>656 雄二ドッペル疑惑の件。
その時点では雄二・瑠璃・シルファは玄関から上がったって表記ないし
雄二を蹴倒して瑠璃とシルファだけ室内へ、って脳内補完すれば辻褄合わせできるよw
または雄二も上がったものの蹴られて再び玄関まで吹っ飛んだとか
…苦しいか。
> それならお前らが書け!!
> それができないなら消えろ。
ようするに、↑を意訳すると文句言ってもいいってことか?
まぁまぁ、マターリ行こうぜ?
批判も文句も大事。だけどするなら建設的にな。
俺は636嫌いじゃないけどなぁ。生々しいっていうのはあるが。
このあとでハッピーな展開があると期待して読んでるぞ。
完結することによって評価の変わるものも、世の中たくさんあるしな。
他人の感想に感想言うの止めようや。
>>652みたいなのが一番見てて痛い。
読み手は書き手の全自動マンセーマシンじゃねえのよ?
ご無沙汰しております。
と、まさかこちらに伺う前に感想が頂けるとは思いませんでした(笑)
事後になりましたが、
http://fsm-hmx-12.hp.infoseek.co.jp/th2_ss_f.html クリスマスということで時期に合わせたSSを書きましたので、
よろしければまた読んで頂けますとありがたいです(=゚ω゚)ノ
>>656さん、
>>658さん
感想と指摘、どうもありがとうございます。
指摘箇所に関しましては、完全にこちらのミスでしたので、修正いたしました。
展開に矛盾が出るミスは致命的でしたorz
ご指摘くださって、重ね重ねありがとうございました。
>>520さん
サイトにあるSS、すべて拝読させて頂いてます。
高い文章力はもちろんですが、TH2らしさやキャラクターの魅力ををまったく損なわないどころか、
プラスアルファを上乗せしてしまう表現力が本当に素晴らしいと思います。
『わたしも海に〜』からファンでした。
今後、どのような作品を書かれるのかは分かりませんが楽しみです('-'*)
>>660,661
スマン
ジャンクション結構好きだから熱くなってしまった。
この先に多少の不安はあるが・・・・・・・・・
>>659 そうだな、あんまりきつくなりすぎなきゃいいと思う。
>>652は言い過ぎたと自分でも思ってる。
気分を害したなら悪かった。
「よっ、おはよーさん」
朝、いつもの場所で雄二とタマ姉に合流する。
「お前、最近なんだかご機嫌じゃねえか。なんかあったのか?」
ご機嫌といわれても、ピンとこない。俺、そんなに浮かれてるように見えるか?
「ん〜、浮かれてるっていうより、なんだか凄く楽しそうだよ。でも、タカくん、このご
ろちょっとだけ元気がなかったから、安心したかな」
むっ。元気がなかったって、そっちの方が問題だな。
そう言われれば、なんだかいろんなことで悩んだり、確かに少し落ち込んでいたかもし
れない。
「で、その元気のなかったタカくんがこんなにも楽しそうにしてるのはどうしてかなぁー? 女か? 女だな? 女ができたんだなこの裏切りもブベラっ!」
あっ、す、すまん。
いきなり目の前に現れるものだから、ついうっかり殴ってしまった。
「雄二の馬鹿はほおって置くとしても、タカ坊が元気になった理由は私も気になるわね。
このあいだ、ちょっとだけ言い過ぎちゃったかもって思っていたし」
んー、元気になった理由か、心当たりがない訳じゃないけど。
でもそうなると、あれも女の子のおかげってことになるんだろうか。
「えーっ、タカくん、本当に彼女ができたの!?」
「いや、そうじゃないって。ただ、この間会った女の子のロボットのおかげで、くよくよ
していた気持ちが吹き飛んだと言うか」
・・・・・・なんだ雄二その「何も言うな、俺には全部わかってるぜ」みたいな顔は。
って、手を肩に置くな!
「うんうん、そうか同志よ、お前もとうとうメイドロボの魅力を理解ぐぼわぁっ!!」
すまん。あまりにうっとうしい笑顔だったものだから、ついうっかり殴ってしまった。
「タカ坊、まさかあなたまで、そんな・・・・・・」
「だから違うって。ロボットはロボットでも、俺が会ったのはクマ! クマのぬいぐるみ
のロボット!! そのパーソナリティが女性だっただけ。最近の技術は凄くてさ、おもち
ゃだからって馬鹿にできないね。しぐさの一つ一つが妙に人間くさいヤツでさ、おかげで
いい気分転換になったよ」
はーはー・・・・・・ここまで言えばわかってもらえるだろう。
「なーんだ。せっかくタカ坊にも春が来たのかと思ったのに」
「でもタカくんらしくて可愛いと思うよ」
まったく、人の事をおもちゃにしてからかって。
・・・・・・なんだよ雄二。
「獣相手はどうかと思うぞ」
とりあえずもう一発殴っておいた。これでよし。
昼休み、俺は首尾よく手に入れることのできたサンドイッチとコーヒー牛乳を持って屋
上へと階段を上がっていく。
雄二のやつも誘ったのだが「俺は、乳酸菌を取らなきゃならないんだ」とか訳のわから
ないことを言ってどこかへ行ってしまった。今更健康志向ってわけでもないだろうに。
他の奴らはまだ売店にでもいるのか、屋上へ行こうとしている人間は周囲に俺一人。
いや、目の前に、見覚えのある後姿が“ひとつ”。
クマのぬいぐるみ型ロボットのクマ吉が、階段を一生懸命に上ろうとしていた。
クマ吉も頑張って階段を上ろうとしているんだろうけど、いかんせん身長が足りてない。
一段上るのにも、足をバタつかせて必死な様子だ。
「よ、クマ吉。こんなところで何してるんだ?」
もうちょっと眺めていても良かったんだけど、あんまり一生懸命にやっているものだか
ら、ついつい声をかけてしまった。
クマ吉の方はよほど必死だったんだろう。声をかけるまで俺のことに気付いてなかった
みたいで、バツが悪そうにしゃがみ込んでしまった。
やっぱり人間くさいやつだなぁ。
「お前、屋上にでも行きたかったのか?」
その場にうずくまったままのクマ吉を持ち上げてそう聞いてみると、クマ吉はどうも、
俺の手に持っているサンドイッチが気になる様子だ。
「なんだ、お前、ロボットのくせにサンドイッチが食べたいのか」
ブンブンと首を振って否定するクマ吉。
「え、違うって? なに、俺が? 屋上で? ああ、うん、そう。天気もいいし、これか
ら屋上に行って昼飯にしようかって。どうだ、クマ吉も一緒に食べるか?」
今度は縦に首を振るクマ吉。
俺の手をふりほどくと、腕の上を走っていって頭の上に座り込んでしまった。
「お、おいおい」
どうにかして頭の上から下ろそうとするけど、クマ吉のやつ、よほど俺の頭の上が気に
入ったのかテコでも動こうとしない。
まあ、いいか、運ぶ手間が省けるし。ちょっと、頭が重たいけど。
「ところでお前、なんであんなところにいたんだ? 屋上に何か用でもあったのか?」
さっき気になったことをもう一度聞いてみるけど、クマ吉はなぜか答えようとしてくれ
ない。なんとなく、クマ吉のやつ照れてる様な気がするんだけど、なんでだ?
「でも駄目だろ」
何で? といった風に俺の頭の上で首をかしげるクマ吉。
「勝手に校舎の中をうろついたりして。またあの女の子に怒られたって知らないんだから
な。それでなくてもお前はおもちゃみたいなんだから、誰かに拾われて持っていかれても
仕方がないぞ」
俺は純粋にクマ吉のことを心配して言ってやったのに、クマ吉にはいたくお気に召さな
かったようだ。頭の上で暴れたり、髪の毛を引っ張ったりと体を使って抗議を始める。
「いてっ、やめ、やめろって、危ないから、いて、やめろって、あ───
タダでさえ階段の不安定な足元にもってきて、頭の上でクマ吉が大暴れするものだから、
気が付いた時には階段を踏み外して視線が斜めに傾いてしまっていた。
や、やばっ──
クマ吉も突然の出来事に体が動いていない。俺の頭にしがみついたまま硬直して、この
ままじゃ床に叩きつけられてしまう!
とっさに腕を頭の上に伸ばすと、どうしていいかわかってないクマ吉を抱きかかえて
「っつうーっ・・・・・・」
ドタン ドスンと音を立てて、階段を滑り落ちる。
それでもなんとか、クマ吉を抱く腕を放さずにすんだ。
そのことだけを確認して目を開くと、目の前一杯に広がるクマ吉の顔。あんまり慌てて
抱きしめたものだから、クマ吉に顔面をヘッドバッドされるような形になってしまったよ
うだ。鼻が痛いけど、まあこれくらいならいいか。
「クマ吉、大丈夫か?」
とりあえずパッと見、クマ吉に壊れたようなところはどこにもない。それでもロボット。
精密機械の塊だろうし、念のために聞いてみたんだけど。
「クマ吉?」
クマ吉はなかなか動き出そうとしない。まさか壊してしまったのか!? と心配してい
ると、ようやく、のろのろと手足が動き出した。
ああ、多分これは、ブレーカーが落ちたんだな。想定外のショックを受けた時、搭載さ
れたAIに被害が及ばないように強制的に電源がoffになったんだ。
案の定、すぐにクマ吉は行きよい良く動き始めた。いや、ちょっと動きが激しすぎるか
もしれない。
おれの腕の中から逃げ出すと、今度は腹の上で暴れだして、と思ったら急に立ちすくん
で見たり、とにかく落ち着きがない。
やっぱり壊れちゃったんだろうかと最初は思ってみていたんだけど、もしかして、これ、
人間が混乱して、慌ててるときの様子にそっくりだ。
とうとう俺の腹の上からも飛び出すと、一目散に階段の下まで駆けていってしまった。
途中、一度だけ振り向いてお辞儀をしたのがあいつらしい。たぶん、助けてくれたことへ
のお礼のつもりなんだろ。
「お、おい!?」
慌てて呼び止めるけど、その時にはもうクマ吉の姿はどこにもなかった。
と、口を開こうとするとなぜか唇に痛みが走る。クマ吉にヘッドバッドされた時、鼻だ
けじゃなくて唇もぶつけていたらしい。
よろよろと俺は、倒れていた体を起こす。
「あ、サンドイッチぺしゃんこになってる・・・・・・」
「河野君、頭に何かついてるよ?」
放課後、帰ろうとカバンにノートを詰めていた俺に、委員長が声をかけてきた。
なんだろうと思って頭に手をやってみると、なんだかフサフサした感触の物が。
「なんだ、これ?」
茶色い、毛玉のような物体。埃の固まりにしては大きすぎるし。
「河野君、どうしたの、それ?」
どうしたのと聞かれても、それは俺のほうが聞いてみたい。
「ぬいぐるみの、どこかの部品みたいだけど」
ぬいぐるみと聞いてピンと来た。これ、多分クマ吉の尻尾だ。さっき転んだ時に、取れ
ちゃったに違いない。
尻尾がなくなってることがわかったら、クマ吉のやつきっと大慌てしていることだろう。
委員長にお礼を言うと、どうせ暇だし、クマ吉のところまでこの尻尾を届けてやること
にした。
確か・・・・・・コンピューター室って言ってたっけ。
「失礼します・・・・・・」
おそるおそるといった風に、コンピューター室の扉をくぐる。
いや、別に悪いことをしてるわけじゃないけど、普段馴染みのない教室と言うのは、入
るのにも少し気後れを感じてしまう。
「誰や? さんちゃんならおらんで」
シンとした教室から、女の子の声がする。
あ、この間、クマ吉を抱いて行った子だ。
「えっと、この間クマ吉にお世話になった者だけど、クマき──みっちゃん、いる?」
そういえばクマ吉、本名はみっちゃん、って言うんだっけ? いつの間にか俺の中では
クマ吉で定着してしまってるけど、本当はクマ吉だって女の子なんだから、クマ吉はおか
しいんだよな。
女の子は俺に向かって怪訝そうな視線を返している・・・・・・なんだかこの女の子、
この間とは雰囲気が違うような気が。
「みっちゃん?」
「そ、そう。クマのロボットで、友達の」
女の子の表情が、更に険しい物になる。
え、俺なんか変なこと言ったか? 友達って、この子自身が言ってたんだよな。
そろそろ女の子の視線に俺が耐え切れなくなってきたころ、女の子のいる机の上から何
かがピョンと飛び出して、教室の奥に走っていくのが見えた。
あ、あれは、クマ吉!?
「お、おい、どこ行くんだよ」
クマ吉を追って教室の隅まで走っていく。クマ吉はバケツに頭から突っ込んで必死に隠
れようとしている。どうも俺と顔を会わせるのが恥ずかしいらしい。
まったく、階段のことなんか全然気にしてないのに。多分、俺にかばってもらった物だ
から会わせる顔がないってところなんだろう。
見れば、やっぱりクマ吉のお尻からは尻尾がなくなっている。
「あんた、なにやっとんの」
まじまじとクマ吉のことを観察していると、後ろから女の子に声をかけられた。
なにって、えっと、いや、それは、その
「クマ吉の、尻尾を届けに・・・・・・」
そう言って、ポケットの中からさっきの毛玉を取る。
「そうやなくて、あんた、ぬいぐるみの尻見て何しとんのかって聞いとんのや」
その言葉に、顔が一気に熱くなる。
いや、別に俺はクマ吉のお尻を眺めていたんじゃなくて、尻尾がちゃんとあるかどうか
確認するためにクマ吉を観察していたわけで、結局お尻を見てたのには変わりないじゃん
とかそんなやましい気持ちでは決してなくて、そもそもぬいぐるみのお尻に興奮するほど
俺は人生に絶望しては。
「って、あ、いたっー!?」
尻尾を持つ手を、クマ吉にひっかかれた。その隙にクマ吉は、自分の尻尾を取り返すと
俺のことを睨んでくる。
・・・・・・う、うぅっ、居心地が悪い。
「いや、だからな、俺は変なつもりでお前のことを見てたんじゃなくてだな」
ビーズの目が俺を睨みつけてくる。ビーズの癖に、その迫力はタマ姉並みだ。
「・・・・・・ご、ごめん。ちょっと、調子に乗りすぎたかもしれない」
結局最後にはその迫力に呑まれて頭を下げてしまう。
俺、クマ吉には謝ってばかりだな。
そんな俺の様子に満足したのか、クマ吉は大きく頷くと尻尾を女の子に渡した。身振り
手振をして伝えようとしていることはと言うと、どうも女の子に取れた尻尾を直して欲し
いということらしい。
女の子は溜息を一つつくと、カバンの中からソーイングセットを取り出してクマ吉の修
理にかかる。
俺はといえば、その修理の様子をじっと眺めていて、またクマ吉に睨まれた。
「ご、ごめん!!」
どうも尻尾の修理と言うのは、見られていて恥ずかしい物らしい。それが人間の女の子
にすれば何に当たるのかはわからないけれど、なんにせよ、乙女心は複雑だ。
後ろを振り向いてクマ吉の尻尾が直るのを待つ。
ちょっと見ただけだけど、女の子の針さばきは中々の物で、これならすぐに修理も終わ
るだろう。
この間あった時の印象だと、もうちょっとトロっとした雰囲気で、こういった細かい針
仕事なんかは苦手っぽかったけど。人は見かけによらない物だなぁ。
「あんた、アホとちゃうの」
「えっ?」
そんな風に感心したりしていると、女の子が突然、溜息をつくように口を開いてきた。
「だってそうやろ? こんなおもちゃ相手に、まるで人間相手みたいに謝ったり慌てたり
して。傍から見てたらホンマにアホみたいに見えるで」
うーん、いや、まあ確かにぬいぐるみ相手にこんな本気になって反応してるなんて、お
かしなことなんだろうけど。
「そりゃやっぱり、クマ吉と一緒にいられると楽しいからじゃないかな」
「楽しい?」
女の子は俺に聞き返してくるけど、針を動かす指を止めてる様子はない。
「うん、そう、楽しい。そいつ、嬉しいことされれば喜ぶし、いやなことされれば怒り出
すし、そんなの当たり前なことなんだけど、でもクマ吉、そんな当たり前なことまでいち
いち一生懸命で、一緒にいるだけでこっちまで楽しくなってくる」
「そんなん、ロボットなんだから当然やん。そう言う風にプログラムされてんやもん」
「んー、確かにプログラムなのかもしれないけど、それでも俺がクマ吉と一緒にいられて
楽しい、って気持ちになることまでプログラムされてるわけじゃないし。それにさ、ただ
プログラム通りに動くだけの機械だったら、俺が元気になることもなかっただろうし」
女の子の手は止まらない。
朝、雄二たちに聞かれた時。多分俺は、きっとこう答えたかったんだと思う。
「この間キミに会った時さ、俺、本当はちょっとだけ落ち込んでたんだ。でもクマ吉に会っ
て、そいつの一生懸命を分けてもらえたおかげで、こうやって元気を出すことができた。
クマ吉が本当にプログラムだけのロボットだったら、そんなことできなかったと思う。だ
からきっと、クマ吉には心があるんだと思うんだ。だから楽しいし、ちゃんとした心のあ
る人間と同じように、俺はクマ吉と接してるんだと思う」
「ふーん・・・・・・できたで」
ようやくクマ吉を修理する女の子の手が止まった。
俺が振り向くとクマ吉は、女の子の手から飛び出して俺の体をよじ登っていく。
「お、おい」
よほど俺の頭の上が気に入ったのか、一番上まで上るとそこに座り込んでしまった。
あ、こいつ、俺がこいつのこと褒めたもんだから照れてるな。
その後、30分くらいクマ吉の相手をして遊んでいたんだけど。女の子が帰るというの
でコンピューター室を閉めることになった。
どうやら女の子は誰かのことを待っていたらしいんだけど、とうとう待ちきれなくなっ
て直接迎えに行くことにしたらしい。
曰く「またどっかで寝てるかもしれん」とのことだ。なにやらこの子はこの子で大変そ
うだ。
クマ吉は名残惜しそうに自分の家──隣の準備室(見せては貰えなかった。女の子の部
屋を覗くなんてヘンタイのすることだそうだ)に帰っていった。
夕日を浴びるクマ吉の顔は寂しそうだったけど、また来るからというと、嬉しそうにし
て手を振ってくれた。
コンピューター室の鍵を女の子が閉めて、そこで女の子とも別れる。
また来てもいいかと聞くと「好きにしたらええ」っていう答えが返ってきた。それじゃ
お言葉に甘えさせてもらって、またクマ吉に会いに来てみようと思う。
夕暮れ時の校舎を、一人で家に帰る。
明日も晴れそうだ。
終
>>631.632.634
続いたね。また続くかも知れない。
次はこう、もうちょっと、話を、まとめて。
というかさ、ミルファといえば胸だと思うんだ。3センチアップ。
683 :
631:2005/12/21(水) 07:10:14 ID:uNGF7PsJO
乙、そしてGJ。まだまだ続くよね?
>>646 読んでて思ったんだがタカ坊ってイルファ似対して敬語は使ってないと思ったが…
まぁなんにせよGJ!
>>681 乙!なんだが、どうしても
>>520のと被って見えてしまうのが惜しいな。
ちょうど同じ時期に同じネタになってしまってるせいで二番煎じ感が拭えない。
珍しいネタだったせいで余計そう見えただけかもしれんが。
気を悪くしたらスマソ。次も期待してる。
688 :
名無しさんだよもん:2005/12/21(水) 20:07:54 ID:q16XTKw/0
―ささら視点―
「……」
「ささら、まだ諦めるには早いわよ。河野くんが貴方を嫌いって言ったわけじゃないでしょ?
ちゃんと聞いてみなきゃ」
それは怖くて出来ない。貴明さんが私を嫌いと言うことは、まず無いと思う。
だからこそ…怖い。それが嘘であっても、私は騙されてしまうから。騙されたら、余計に傷は深くなる。
「……」
「だんまり…ね。じゃあ聞くけど、河野くんは男の子と歩いてるささらを見ただけで、
ささらを嫌いになるほど軽い人なの?そんな軽い人と、ささらは付き合ってたのかしら」
「違う!貴明さんはそんな人じゃない!」
一緒にいたのは短い期間だったけど、心の繋がりはパパやママよりも深い。
貴明さんのことは世界で一番信用できるし、貴明さんだってそれは同じはず。
あんな些細なことで、私を嫌いになるはずが無い!
「そう…じゃあ、それが答えなんじゃないの?」
「えっ……?」
「前、ささらと河野くんが付き合うときの話を教えてくれたわね?」
「う、うん」
「そのとき思ったの。河野くんとささらって似てるなぁって」
「私と貴明さんが似てる?」
どこが似ているのだろう。自分のことしか考えていない私と違って、
貴明さんは他者を第一に考えている。私と似ているところなんて全然無い。
「ささらには分からないでしょうね。本当は自分で考えてほしいけど、
今回は時間が無いから教えてあげる。ささらと河野くんが似ているのはね、
人に嫌われるのを過度に恐れてるところよ」
「人に嫌われるのを恐れる…貴明さんが?」
「そう。ささらは人に嫌われるが嫌で人と付き合わなかった。
河野くんは、人に嫌われたくないから、人に優しい。
それぞれ取った行動は別だけど、根本にあるものは同じだと思うの」
「貴明さんも、人に嫌われるのが怖い…?」
「当たり前じゃない。人間、誰だって人に嫌われるのは怖いわよ。
ささらの場合、ちょっと極端だったけどね。
でも、河野くんも相当人に嫌われるのを怖がってるわね。
何かトラウマがあるんじゃないかしら?それを解いてあげられるのは、ささら。貴方だけよ」
「で、でも…」
貴明さんに会う方法は失ってしまった。2月ごろに受験のため日本に戻るが、
そのころにはこのみちゃんや環さんが貴明さんの彼女になっているかもしれない。
迷っている私に、ママは一枚のチケットを差し出す。
「これは…日本行きのチケット!何で!?」
「ささらのことは河野くんに任せて、日本に行こうと思ってたのよ。お父さんと、久しぶりに話し合おうと思ってね」
「ママ…いいの?」
「お父さんには電話で説明するわ。娘の非常事態なのに、私とお父さんが会ってる場合じゃないでしょ?」
「ママ…ありがとう」
「前は河野くんが頑張ってくれたんでしょ?今度は、ささらが頑張る番よ。
年上として、しっかりやってきなさい!」
「うん!」
ママに勇気付けられて、私は日本に行く準備を始めた。もう、迷わない。
貴明さんを、この手に取り戻すために。
―貴明視点―
「はぁ…」
悲しみは何とか収まってきたものの、今度は虚しさが募ってきた。
あの時、ささらに会っていたほうが良かったんじゃないのか。
あれは、誤解を解きに来たのかもしれないじゃないか。誤解を解きに来ていたのなら、
俺が帰ったことで問題がいっそうややこしくなったのではないか。
どといろんなことを考えてしまう。全てが俺の勘違いだったら、
と思うと、どんどん憂鬱になってくる。
「こんな気持ちで新年迎えるのか…」
とぼとぼと家に向かって歩く。行きはあれだけ軽く感じた荷物が、
今では鉛のように重い。気分が変わるだけで、こんなにも感じ方が違うのには驚いた。
「あら、タカくん?」
「ぅげ、は、春夏さん?」
「どうしたの、こんなところで。年末年始は彼女のところに行くって言ってたわよね?」
「…お願いします、帰ってきたことはこのみやタマ姉に言わないでください。
事情は、今度必ず話しますから、今話すのは勘弁してください」
「??タカくんがそこまで言うなら別にいいけど…」
今このみやタマ姉に知られるのはまずい。俺自身どうしたらいいか分かってないのに、
タマ姉やこのみに無駄な心配をかけさせるわけにはいかない。
「ありがとうございます…じゃあ、これで」
「ええ、良いお年を」
「良いお年を」
良いお年…か。明らかに今まで最悪の年越しだ。
「本当に間が悪いよな…俺」
あの二人が一緒にいるところを見なければ、年末年始はいい気分で迎えられたのに。
ささらに振られたとしても、今みたいにもやもやした気分のままってことはない。
どっちつかず、中途半端。この状況を招いたのは、全て俺の責任だ。
「学校始まるまで2週間…か。毎日落ち込むだけ落ち込めば、新学期には道化られるかな」
浮気されたことも知らずにアメリカまで行った馬鹿な男。
格好のお笑いの種だ。これを笑い話に出来るぐらい、2週間で立ち直らなければならない。
「その場しのぎで笑って、鏡の前で泣いて…か」
どこかで聞いたフレーズを口ずさみ、まさに今の俺だなぁと実感する。
俺はその場を取り繕うために、大事なことを色々捨てた。
その結果自分が傷ついただけでなく、雄二もタマ姉もささらも傷つけてしまった。
本当、どうにもならない馬鹿野郎だ。
「今更考えたってしょうがない。帰って寝よう…」
自分の今までしてきたことを後悔しながら、家に向かう。罰してくれるものが無い分、余計に惨めで辛かった。
書けば書くほど貴明のへたれっぷりが上がってる気がします。
今回はささらの決断、へたれ度が上がっていく貴明と両者対称的になっています。
一方は良い方に、一方は悪いほうに。貴明のへたれっぷりはこれからも様々な人を巻き込みますw
このみと環は今回出すつもりだったのですが、予定は繰り上がりましたw
このままだとこのみは出ないような気も…環はこの作品のキーポイントを握っているので確実に出ますが。
最後ぐらい貴明に花を持たせてあげようかなぁと思う今日この頃。
>>696 乙です。タカ坊のささらシナリオでのヘタレっぷりに磨きが掛かっていますな。
あんだけの事をしておいて今更このザマじゃ、タマ姉に潰されるかも(w
>>696 GJ!!!
凄まじいほどに貴明がヘタレだな〜
環が作品のキーになるって事は、慰めるか叱るかどっちかなパターンになりそうな気がするが、
個人的には、こんなヘタレな貴明はアイアンクロー食らって、そのまま沈んでいてほしいと思う自分がいる。
>>696 GJ!乙です〜
相変わらずタカ坊ヘタれてますなぁw
失礼します。
またSSを書きましたので、もしよろしければお読みください。
ttp://ikn.nobody.jp/sse.html 書きなれない、というか初書きキャラだったりするのでおかしな点などあればご指摘ください。
前回、前々回レスを下さった方々、どうもありがとうございました。
かなり多くの方からお褒めの言葉いただいてしまって舞い上がってしまってます。
またこれからもお読みいただけると嬉しいです。
それでは。
「で、たかあきー、その後、何か進展はあったのかぁ?」
坂の途中、そろそろ校門が見えてきそうなところで、雄二がいきなり聞いてきた。
しかも顔にはいやらしいくらいの笑顔を貼り付けて。
「進展って、何のことだ?」
「またまたー、とぼけちゃってこのー。この間言ってた、クマのロボットのことだよー」
「あのな、ロボット相手に進展も何もあるわけがないだろ」
いや、仲良くなったといえば、仲良くなれたのか?
でも雄二が期待してるようなことは何もないので、この際黙っておく。
「うん、ロボット相手にはそうだろうなー。でもよー、その持ち主とはどうなのかなー?」
持ち主?
「お前がー、放課後のコンピューター室で、女の子と2人っきりでいたのを見たやつがい
るんだー。ロボットとかなんとか言っちゃって、本当はその子と会うのが目的だったんじ
ゃないのかー? 隠すことないだろ、照れちゃってさー」
あ、あぶなっ!?
雄二のやつ、本気で殴ってきやがった。め、目が笑ってないぞこいつ。
「危なくお前に騙されるところだったぜ・・・・・・ロボットをデコイに使って女の子を
独り占めするなんて。どこでそんな高度な戦術を身に着けやがった!? 紅茶好きの宇宙
提督に弟子入りしたとか言うんじゃないだろうなっ!!」
い、意味わからないし!
「あぶな、って、やめろって。そりゃ全部お前の妄想だっ! コンピューター室に行った
のはクマ吉に会うためだし、2人っきりじゃなくてそこにはクマ吉もいた。そもそも俺、
その子の名前だって知らないんだぞ」
「ようやく認めたなこの恋愛独占企業家め。しかも両手に花だったって言うのかよ!」
だ、だめだ、こいつ聞く耳持ってない。
早く、早く校舎の中へ。後は衆人監視の中で暴挙に及ぶほど、こいつの常識が磨耗して
いないことを祈るしか。
本気の殺意を目に秘めた雄二を置いて、慌てて坂を駆け上がる。よし、校門さえくぐれ
ば何とか逃げ切れ──
「わぷっっ!?」
突然目の前に何かが覆いかぶさった。
慌てて振りほどこうとするけど、俺の顔に張り付いた何かは、がっちりと俺の頭をホー
ルドしている。
なに、何!? これはもしかしてエイリアン? それとも石仮面!? 俺、吸血鬼になっ
ちゃうの!?
けれど顔に当たる感触は、ゴミや生物にしてはいやに毛むくじゃらで、落ち着いて暴れ
るのをやめるとホールドする力も弱くなってきた。
ゆっくりと顔に手をあてて、覆いかぶさっている何かを引き剥がしてみると。
「・・・・・・クマ吉」
俺の手に掴まれて、クマ吉は「おはよう」とでも言いたげに片手をあげる。
「・・・・・・おはよう、クマ吉。で、何でお前は急に、俺の頭に抱きついてきたりする
んだ?」
クマ吉は照れて答えようとしない。俺に首根っこを掴まれたまま、空中に“の”の字を
書き始める。
多分俺が来るまで、ずっと校門の上で待ってたんだろうな。跳びかかるタイミングを計
りながら。
えーっと、なに、頭の上にお団子二つ? あ、コンピューター室にいた女の子か、に?
お願いしたら? 朝から自分を動かしてくれるよう、頼んでくれた?
「で、朝からずっと俺のことを待っててくれたわけだ・・・・・・ありがとよ」
俺は脱力しながらそう言うと、クマ吉は嬉しそうに胸を張る。
ま、その気持ちだけは嬉しいかな。
その後クマ吉は、腕を伝っていつものお気に入りの場所。俺の頭の上に。
「天誅ーっ!!」
や、やばい雄二のこと忘れてた。
「クマ吉、走るぞ、振り落とされるなよ」
・・・・・・クラス中から突き刺さる視線が痛い。
原因はわかっている。俺の頭の上にいるクマ吉のせいだ。誰も彼もが気にしながら、俺
に何も声をかけてこないのは、どう声を掛けるべきなのか量りかねているからだろう。
実際、俺も隣の席のやつの頭にクマのぬいぐるみが置いてあった場合、まずは正気を疑
うところからはじめるね。そいつと自分、両方の。
でもさ、仕方ないじゃん。クマ吉のやつどう説得しても頭の上から降りてくれようとし
ないんだから。
今も俺の頭の上で、ちょっと前はやった溶けたパンダみたいなポーズで寝そべっている。
ガラガラと教室の扉が開く音。
ああっ、とうとう先生来ちゃったよ。
先生はまず、クラス中に漂う緊張感に眉をひそめ、続いてその緊張の中心に俺が居るこ
とを確認し、そしてギョっと目を剥いた。
で、できることならこの場から逃げ出したいっ。
先生も周りのクラスメイトと同じように、俺になんと声を掛けるべきなのか悩んでいる
様子だった。
けれどそこは年の功。できるだけ言葉を選びながら、クラスみんなの疑問を代弁する。
「あー、河野。お前の、頭の上のクマ、それは何か。新しいファッションか?」
俺が何か悪いことをしましたか。頭の上にクマを乗せているのは、ここまで居たたまれ
ない仕打ちを受けるようなことなんですか。
空気になりたい。
俺もなんと答えればいいものやら悩んでしまう。正直に言おうか「このクマのぬいぐる
み、俺に懐いちゃって。頭の上から離れようとしないんですよ。困ったやつですあははは
はは」。
黄色い救急車一直線だ。
永遠に続くかと思われたこの緊張。それを破ってくれたのは教室の扉をノックする音だっ
た。
「あの、先生、ちょっと」
扉の外で、先生どうしがなにやら話ごとをはじめる。時折、俺のことをちらちらと振り
向いて、また話を続けた。
俺は(たとえ数分間だけでも)問題を先送りできたことに対して安堵の溜息を吐いた。
くそっ、クマ吉のやつ、こっちの苦労も知らないでのんきに寝そべりがって。
とうとう話も終わったらしい。けれど教卓のところに戻ってきた先生は一言
「河野、お前一体なにをしたんだ?」
とだけ言うと、まるで何も無かったかのように授業を始めてしまった。
え、俺、なんかした? こっちが教えてもらいたいくらいですよ・・・・・・
チャイムが鳴って、ようやく午前中の授業が終わってくれた。真綿で首を絞められるよ
うな気分だった、とだけ言っておく。
精神的に疲労の極地にあるような俺と違って、クマ吉は終始ごきげんな様子だった。
のろのろとイスから立ち上がり、食堂へと向かおうとする。
途中、雄二の目が「大変だな」といっているのがわかった。笑いをこらえながら。
くそっ、人事だと思って。
しかしそうなると、学食で暢気に食べるという選択はやめておいた方が良さそうだ。教
室だけでもこうなのに、学食でまでこんな視線にさらされながら食が進むほど、俺の神経
は太くない。
「クマ吉は、何か食べたい物あるか?」
クマ吉はふるふると首を横に振る。
ま、そうだよな、と俺は苦笑しながら、一応、聞くのが礼儀ってやつだろ。
売店に到着すると、そこはもう黒山の人だかりで埋まっていた。
いつもならチャイムと同時にダッシュしなければ行けないところを、ゆっくりと歩いて
きたんだから当然だ。
諦めて、売れ残りのパンでも買うか。
そう思って壁の隅に寄ろうとすると。
「ん? どうしたクマ吉。え? お前がパンを買ってきてくれるって?」
クマ吉は、任せろとでも言いたげに胸を張った。
でもなぁ・・・・・・
売店の前に群がる人の波は、俺でも突入するのにためらいを覚えてしまうような物だ。
そこに小さいクマ吉が入っていっても、踏まれて怪我をするのがオチじゃないだろうか。
けれどクマ吉のやつは、あくまで自信満々で。
「・・・・・・じゃ、お願いしようかな。けど、危なくなったり無理だと思ったら、すぐ
に引き返すんだぞ。お前が怪我したんじゃもともこもないんだから」
承知したという風にうなずくクマ吉。
俺がお金を渡すとクマ吉は、俺の頭の上から売店の前の人だかりに向かって
「おおっ!?」
クマ吉はパンを買おうとする人たちの頭から頭へとジャンプしながら、売店へ近づいて
いく。その姿はさながら、船から船へと飛び移る義経の八艘跳び!
あっというまに売店の窓口までたどり着いて見えなくなってしまった。
凄い、凄いぞクマ吉。
次クマ吉が人の頭の上に出てきた時には、手にパンの袋を持っていた。
そして再び、人の頭の上を飛び跳ねて俺のところに戻ってこようとする。
けど持っているパンの重たさでバランスを崩して──
「クマ吉っ!!」
「そんなに気にするなって」
クマ吉を頭の上に載せて、屋上へと階段を登っていく。
売店の前でバランスを崩したクマ吉をみたとたん、俺は人ごみの中に体を向けていた。
必死になって周りの人間を掻き分けて、クマ吉が落っこちたあたりにたどり着いてみる
と、クマ吉のやつ、自分がもみくちゃにされてひどいことになってるのに、買ったパンだ
けは放そうとしてなかった。
「ちょっとだけ形が悪くなったけど、味は変わらないし」
ただその時に、パンが潰れてしまったことがクマ吉には許せないらしい。
「それに、お前が一生懸命守ってくれたパンなんだから。ありがとよ、クマ吉、今度は失
敗しないように頼むな」
そう言うと、少しだけ元気を出してくれた。
うん、落ち込んでるクマ吉っていうのは、どうにも落ち着かない。やっぱりクマ吉は、
賑やかでいてくれたほうが良いとおもう。
「ああ、失敗しても、またさっきみたいに助けて、え? 大丈夫だって? 強がるなって。
それに一応俺も男なんだから、女の子のクマ吉を助けてやるのが当然だろ」
たとえクマでも、一応は女の子には違いないし。とは言わないでおく。
そんな風に頭の上のクマ吉と話をしながら歩いていて、階段の角を曲がった時だった。
「んぷっ?」
曲がったところで、何か柔らかい物に顔を挟まれた。
感触は、マシュマロというか、ふかしたての肉まんと言うか・・・・・・まさか、こ
れ・・・・・・
「あらタカ坊。なーに、お姉ちゃんのことが恋しくなっちゃった?」
「た、たたたた、タマ姉!?」
慌てて飛び退くと、目の前ではタマ姉が満面の笑みを浮かべて立っている。
じゃ、じゃあ今の感触、もしかして・・・・・・もしかしなくても。
「でもタカ坊、ちゃんと前を向いて歩かなきゃだめよ。ぶつかったのが私だったからよかっ
たけど、他の人間だったらチカンあつかいよ」
タマ姉はどこまでもにこやかだけど、俺の心境はまるで蛇に睨まれたカエルだ。
いくらクマ吉と話すことに気を取られていたからって。よりにもよってタマ姉の、しか
も胸のところにぶつかるなんて・・・・・・俺、一体どうなっちゃうんだろう。
「ん、ああ、クマ吉、どうした」
クマ吉が俺の髪の毛を引っ張って何かを聞いてくる。
どうも、目の前の女が誰かと、そう言いたいらしい。
「えっと、この人は向坂環。俺の幼馴染で、姉みたいな人」
内心の動揺をどうにか悟られないよう、できるだけ平静を装ってクマ吉に紹介するけど。
うっ、やっぱり隠し切れなかっただろうか。クマ吉のやつ、黙り込んじゃったよ。
「あら、タカ坊。その頭の上の。それが前言ってたクマのロボット?」
「ああ。直接会うのは初めてだっけ? こいつはクマ吉。本当はみっちゃんって言う名前
らしいんだけど、クマ吉って呼んでる。ほらクマ吉、挨拶は」
でもクマ吉は黙り込んだまま、頭の上で動こうとしない。
おかしいな、人見知りするようなやつには思えないんだけど。
「はじめまして、クマ吉さん。タカ坊にも紹介してもらったけど、私の名前は向坂環。み
んなにはタマ姉や、タマおねーちゃんって呼んでもらっているわ。よろしくね」
タマ姉が挨拶をしても、クマ吉はじっとしたままだ。声は聞こえてるみたいなのに、お
かしいな。
「クマ吉?」
「ところでタカ坊、お昼はもうとったの?」
心配になってもう一度呼んでみたけど、クマ吉が何かを言う前に、タマ姉が声を掛けて
きてしまった。
「いや、これから。天気もいいし、屋上で食べようかと思って」
「そう? それはちょうどよかったわ。朝、ちょっとお弁当を作りすぎちゃって、タカ坊、
よかったら一緒に食べない」
「うーん、タマ姉のお弁当は食べてみたいんだけど、もう今日のお昼御飯買っちゃったし」
そう言って、さっきクマ吉が買ってきてくれたパンを見せる。
「またパン? 毎日そんなものばっかり食べていたんじゃ、体壊しちゃうわよ。それにそ
のパン、形が崩れてボロボロじゃない。折角のお昼御飯なんだから、そんな物食べないで
一緒しましょ。このみたちももう待っているわよ」
強引に俺を引っ張っていこうとするタマ姉。その心遣いは嬉しいんだけど、今日はもう、
クマ吉との先約があるから。
そう断ろうとした時だった。
今まで黙って俺の頭の上にいたクマ吉が、急に飛び降りると走ってどこかへいってしま
う。まるで逃げ出すみたいに。
「お、おいクマ吉、待てよっ! タマ姉、ごめん。お弁当はまた今度」
あっけにとられているタマ姉を置いて、俺はクマ吉を追いかける。
あいつ、体は小さいくせに足だけは速い。ちょっと気を抜くとすぐにおいていかれそう
だ。正直、昼飯を食べていない体にはきつい。
昼休みの人気で賑わう廊下を、必死になってクマ吉と追いかけっこを繰り広げる。
俺、一体なんでこんなことしてるんだろう。
酸素が足りなくなった頭で、朦朧としながらそんなことを考える。心臓もパンク寸前だ
と抗議の声をあげる。
クマ吉が何でいきなり走り出したのかはしらないけど、放っておけばいいじゃないか。
あいつが突然な行動にでるなんて、いつものことだろ。
「でも・・・・・・追いかけ、なきゃ」
だって、逃げ出す前にちょっとだけ振り向いたクマ吉。
「あいつ、きっと泣いてた・・・・・・」
廊下を走りぬけ、階段を飛び降りていく。頑張ったおかげか、少しずつクマ吉との差も
縮まってきた。
あと、3歩──
「クマ吉っ!!」
俺の叫び声に、逃げるクマ吉の体が一瞬だけ固まってしまう。全力で走っている途中に
いきなり足を止めるものだから、バランスを崩して、正面には壁が。
間に合えっ!!
ヘッドスライディングの要領で転びそうになっているクマ吉を捕まえた。
けど思いっきり飛びついたせいで勢いがとまらない。俺はクマ吉を抱きしめて、そのま
まゴロゴロと廊下を転がり、壁に激突してようやくとまることができた。
「あ、いててててて・・・・・・クマ吉!?」
慌ててクマ吉を抱き上げると、観念したのか、クマ吉はもう逃げ出そうとはしなかった。
「よかった・・・・・・おい、クマ吉、大丈夫か? どこか故障してな、あいてっ、痛い、
やめろって、痛いからクマ吉」
代わりに、俺の手からすり抜けるとポカポカとぬいぐるみの腕で俺のことを叩いてくる。
見た目はぬいぐるみでも中身はロボットなものだから、結構痛い。
「なんだ、お前、俺のことを心配してくれてるのか?」
そう言うと、今度は後ろを向いてしまう。
素直じゃないな、クマ吉は。
「ありがとう。それと、ごめんな、心配掛けて、それに・・・・・・クマ吉の気持ちを傷
つけちゃって」
涙を流していなくても、多分今もクマ吉、泣いてるんだとわかった。
それが悲しくて泣いているのか、それとも俺のことを心配して泣いてくれているのか、
俺にはそこまではわからないけれど。
「お昼はクマ吉と一緒に食べるって、先に約束してたのにな。タマ姉にはちゃんと断れば
よかったのに」
クマ吉は後ろを向いたままだけど、フルフルと首を振ってくれた。
「ちょっと遅れちゃったけど、御飯にしよう。早く屋上に行こうよ」
ようやくクマ吉が俺のほうを振り向いてくれた。おずおずとした動作だったけど、クマ
吉がもう一度俺のことを見てくれて、俺は嬉しくなる。
良かった、涙も止まってくれたみたいだ。
「え、こっちこそごめん、だって。お詫びがしたい? いいっていいって、そんなことし
てくれなくても」
けれどクマ吉は納得してくれない。
どうしてもお詫びがしたいと言い張る物だから、俺も根負けしてクマ吉のお礼を受け取
ることにした。
「えっ? こっちを向け?」
クマ吉は俺の右肩に乗ってあれこれと指示を出してくる。
こいつ、何する気だ?
言われた通りにクマ吉のほうを向く。
と、目の前にクマ吉の顔が──
ふさっ・・・・・・
唇に広がる、ちくちくとした生地の感触。
え、これ、まさか・・・・・・
俺の唇から顔を離したクマ吉は、なんだかとても満足そうだ。
「く、クマ吉・・・・・・」
クマ吉は答えてくれない。
えっと・・・・・・え、今のってま、まさか、キス!?
混乱して頭がうまく働いてくれない。
「これが・・・・・・お礼?」
ようやく小さく頷いてくれた。恥ずかしそうに。
なんだかいろんな言葉が一気に溢れてきて、それを全部口に出して叫びだしそうになって
・・・・・・けど、やめた。
おそるおそるこっちを見ているクマ吉の様子を見てしまうと、なんだかそんな言葉が全
部、どうでもいい物になってしまった。
まあ、いいか。一人くらい、ファーストキスがぬいぐるみな男がいたって。
それでもなんとか声を絞り出して、これだけは言っておかなきゃ。
「ありがう、クマ吉、嬉しいよ」
クマ吉の表情が一気に明るくなった、ような気がした。
その後俺たちは、最初の予定通り屋上に行って一緒にパンを食べた。
けれどクマ吉は、屋上にいる間中ずっと何かを考えているようだった。何度か話しかけ
ても、全部上の空でまともに会話?ができない。
「なあ、クマ吉。本当にどうしちゃったんだ? え、タマ姉? タマ姉がどうかしたのか」
クマ吉は必死に胸を突き出そうと頑張っている。
「鳩胸? え、違う? 胸。タマ姉。ばいーん? えっと、俺は、タマ姉みたいな、胸が、
バイーンが、好き? って、何言ってるんだよ!?」
そ、そりゃ好きか嫌いかって聞かれたら、俺だって男だし・・・・・・嫌いじゃないと
は答えるけど。
クマ吉はまるで「まかせろ」とでも言いたげに胸を張る。
これも、クマ吉のお礼のつもりなんだろうか。
「あー、うん、嬉しい嬉しい。期待しないで待ってるよ」
苦笑しながら、そう言って、2人で屋上をあとにする。
午後からの授業。クラスからの視線は、ちょっとだけ、気にならなくなっていた。
終
まとまんなかった。
書けば書くほど、レス数が伸びるこのSS。
でも安心してくれ、ネタが尽きたから。
いつか続けるかも知れないけどラストシーン書くのに。
リアルタイムで読んだ。
すげぇイイ!!
某ワンパターンでマンネリ化している某氏に代わって頑張ってください!
いや〜面白いですね。これからも頑張って下さい
>>721 そういう事言うなよ
確かに飽きた感じもしないでもないけど貴重なミルファ分なんだからよお。
読書も大変だな
ご機嫌とりしたり、叩いたり
適当にGJとか言ってりゃいいかと思ってたよ。
書く方としちゃ、やはり何かしら感想は欲しいものだよ。
このジャンルじゃないけど、実際にSS書いてそう思ったわ。
(やはり同人誌でも、感想をもらえると嬉しい)
でも…その感想を待つ間が怖い…
>>696 自分もヘタレを意識しているが…
そんな私でも、「おいっ!」って突っ込みたくなりますねw乙です。
>>700 バカップルと自覚しなくなった瞬間に、本当のバカップルになりますw
何気ない日常的シーンが好きなので楽しませてもらった。
>>720 クマ吉が実に愛くるしい。
ラストシーンが思いついたら、是非お願いしたい
XRATEDやっていて気付いたんだが
たまにSSでイルファに味覚がないとか味を感じないとか判らないとあるが
イルファにはちゃんと味覚があるよな
珊瑚の味覚を元にしているから味音痴なだけで
>727
>イルファにはちゃんと味覚がある
YES
>珊瑚の味覚を元にしているから味音痴なだけ
NO
>「それに私の味覚センサーは珊瑚様を基準に設定されています。そこから外れないように
>味付けをすれば、とりあえず問題は発生しません」
>「なるほど」
> 珊瑚ちゃんは瑠璃ちゃんほど鋭敏じゃないにしろ、ちゃんとした舌を持ってると思う。
>それを基準にしていれば、間違いはないというわけか。
>
>
> でも、逆に言えば、そこから外れたものは作れない。いや、わからないのかもしれない。
729 :
翌朝(前編):2005/12/22(木) 15:03:21 ID:1YhIyEwK0
トントントントン
小気味良い包丁の音で目を覚ました
まだ昨日の疲れが抜け切れてないのか、半分以上寝ぼけながらダイニングの方に降りていった
「あ、貴明さん。おはようございます」
朝食の準備の手を止めてイルファさんが挨拶をしてくる
「おはようイルファさん。なんか手伝えることある?」
イルファさんはちょっと考えるような仕草をすると
「そうですね、もうそろそろ珊瑚様と瑠璃様を起こしてきてもらえますか」
「はい了解」
瑠璃ちゃんはともかく珊瑚ちゃんはすぐに起きれるのかなと思いつつ二人が寝てるロフトの方に声を掛ける
「珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんもうすぐ朝食の準備が出来るってさ」
暫くすると瑠璃ちゃんが顔を出してきた
「瑠璃ちゃんおはよ・・・う」
瑠璃ちゃんの姿を見て全速力で後ろを向く
「あ〜、さんちゃん起こすの時間かかるかもってイルファに伝えとい・・・・・・ふえ?」
と言いかけたところで瑠璃ちゃんも自分の格好に気付いたようだ
「あほー、こっち見るなーすけべー」
そう昨日はみんなあのまま寝てしまったのだ
「あ、ごめん瑠璃ちゃん大丈夫もう見てないから」
もちろんそんなことで収まるはずも無く
「ヘンタイ、ヘンタイ、ヘンターイ」
瑠璃ちゃんは絶叫しながら枕やらなにやらこちら投げつけてくる
ちょ・・・・・・それ目覚ましどけ
730 :
翌朝(中編):2005/12/22(木) 15:04:09 ID:1YhIyEwK0
・
・
・
・
・
・
「あ、起きた」
気が付くとに珊瑚ちゃんが心配そうにこちらを覗き込みながら
「やっぱ一緒に住も。貴明一人にしたら心配やわ」
今ここに住んだらそれこそ生命の危機ですいろんな意味で
「・・・」
瑠璃ちゃんは瑠璃ちゃんで離れた位置からなにやらこちらに訴えかけてきてる
「珊瑚様、瑠璃様、貴明さん朝食の準備が出来ました」
とイルファさんの声がする
「さ、朝ご飯が出来たっていうし早くイルファさんのとこに行こう」
これは天の助けとばかりに二人をダイニングの方に促していくとそこにはどう見ても朝食には思えない程の豪華な食事がテーブルの上に所狭しと鎮座していた
「イ、イルファさん?これは一体何でせうか?」
イルファさんはさも当然のように
「皆さん昨日はあれだけ体力を消耗したのですからスタミナの付くものをメインにご用意いたしました。特に貴明さんにはもっと体力を付けて貰わないとこちらとしても困ります」
え〜っと何がどう困るのだろうか
うわ〜よく見ると色々精力の付きそうなものが一杯並んでいますね
昨日の今日で一体どこから仕入れてきたんだろう
と状況についていけない頭は他人事のように思考を巡らしていく
瑠璃ちゃんを見ると、どうやら昨日のことを思い出してしまったようで真っ赤にになって俯いている
多分俺もそうなんだろうな
731 :
翌朝(後編):2005/12/22(木) 15:05:08 ID:1YhIyEwK0
珊瑚ちゃんはというと無邪気な笑顔で
「貴明、今夜も気持ちようなろうな」
思いっきりテーブルに突っ伏しそうになった
「したないん?」
た、確かに俺もしたいかしたくないかと言ったら前者ですよ男の子ですから。でもね?でもね?朝からする会話じゃないと思いませんか?
「そ、そんなことより早くご飯食べようか冷めたら勿体無いよ」
どうにか話を逸らそうとするが
「そんな事ちゃうで大切なことやん」
と食い下がってくる
やばいやばいやばいこのままだと流されて取り返しの着かないことを口走ってしまいそうだ
藁をも掴む思いで視線を泳がせるとイルファさんと目が合う
「貴明さん。珊瑚様のこういうことはそろそろ慣れて貰わないと精神的に参ってしまいますよ」
お言葉ですが既にグロッキーです半分諦め気味に
「わかったよ珊瑚ちゃん」
「やたー今日も貴明とラブラブや〜」
「よかったですね〜珊瑚様」
「瑠璃ちゃんも貴明にラブラブして貰おうな」
「ふぇ!?」
急に話しを振られて気の抜けた返事をしてしまう瑠璃ちゃん
「そんなんせぇへんもん!貴明のことなんて好きちゃうもん」
「もぅ瑠璃ちゃんは意地っ張り屋さんなんやから」
「瑠璃様昨日の様に素直になっていいのですよ。あ〜昨日のことを思い返すだけでもうかわい過ぎてかわい過ぎて・・・」
「あ〜う〜」
「こんなんなったのもみんな貴明のせいや貴明のすけべーがさんちゃんとイルファにも伝染ったに決まってる」
「え?俺のせい?ぐえぇ」
振り向いた先には瑠璃ちゃんの必殺シュートがあった
俺は本日2度目の夢の中へ堕ちていった
こんな生活していたら俺は死んでしまうかもしれない
でも不思議とここから逃げようと思う気も無い
となると早く順応して俺自身が強くなるしかないのか
はぁ〜頑張らなきゃな色々と
732 :
翌朝あとがき:2005/12/22(木) 15:11:27 ID:1YhIyEwK0
双子終了後脳内に落ちてきた妄想の垂れ流しです
人に読ませる文章これが初なので読み辛い部分が多々あるでしょうがご容赦を
あとオチについては正直言いますとどうにも思いつかなかったので瑠璃ちゃんの蹴り〆で強引に終わらせてしまいましたorz
GJ!!!!!!!!
続きマダー
正直双子アフターはお腹いっぱい。
同じようなハーレム話しか書けんのかw
発想力に乏しいなw
SSラッシュだがクマ吉、ささらの両SSが抜きんでていると言うのが正直な感想。
双子アフターは最初は面白かったがこうも類似SSが沢山出るとお腹(゚∀゚)イッパイ!!
お腹いっぱいなら読み飛ばせばいいじゃない
もっと他のキャラのSSも書いて欲しいって言ってるんだよ、きっと。
そこで雄二と玲於奈SSなぞ書いてみたりしているわけだが、
我ながらチョイスが微妙すぎる気がする。
>>743 けど双子アフターはハーレムしか書けん気もするけどな。
まぁ、みっちゃんやしっちゃんメインで書けば変わるだろうけど。
数日繋げなかった間にすごいことになってるw
>>700 二人の素晴らしいバカップルぶりに乾杯w
今後も色々書いていって欲しいなあ。
>>720 ミルファが「ミルファ」じゃなくて「クマ吉」として
描かれていたのが新鮮だった。GJ!
>>732 GJですよー。昨夜双子シナリオクリアしたばかり
だから余計に面白かった。
俺もそろそろ活動再開せねば…
彼女と話すことが無くなって、もうどれくらい経つだろう。
最後に話したのを覚えているのはバアさんの葬式の時だった。
「たかが分家筋の人間が――」
「――いくら刀自のご遺言だとは言え」
「それならいっそ――」
祖母の遺影の前に並ぶ大人たち。
どいつもこいつも神妙な顔をしているが、誰一人としてバアさんの死を悲しんでいない。
バアさんの死よりも何か気にかかることでもあったのだろう。
大人たちの話はよくわからなかったけれど、大人たちの言葉で彼女が傷ついているのはわかった。
『オマエ、何泣いてんだよ』
あの時の俺は、女の子に対してどう接していいのかわかってないただのバカガキだったから、
こんな言い方しかできなくて。
『ひっく、ひっく……』
泣いている彼女には何の効果もないのは当然だった。
『バアちゃんが死んで悲しいのか?』
俺の言葉にこくりと頷く彼女。
『――様は悲しくないの?』
――様。俺が本家の人間だからって、へらへら笑って機嫌とろうとする大人たちが使う嫌な呼び方だ。
だいたい俺は同い年の女の子に様付けで呼ばれて嬉しがるほど倒錯しちゃいなかった。
だからつい、俺はまたつっぱって言い返してしまう。
『悲しくねーよ』
それが気に障ったってわけでもないんだろうけど。不機嫌さが顕れていた俺の言葉にびくりと震え、彼女は再び泣き出す。
あーもう!しょうがねえ!
『ほら! 立てよ!』
『あっ……』
しゃがみこんで泣いている彼女の手をとって、強引に引き起こす。
ポケットからくしゃくしゃになったハンカチを取り出す。
姉貴に無理やり持たされたもので、その時は正直言って鬱陶しかったけれど、
こうして彼女の涙を拭けることは素直に感謝できた。
ハンカチで彼女の涙を拭きながら、その言葉を思い出す。
『死ぬ前にバアちゃんが言ってんだよ、「自分が死んでも泣いちゃダメだ」って。
俺たちに泣かれてるとバアちゃん気になって天国にいけないんだってさ』
『――』
俺の言葉に彼女は息を呑む。
『そんで「泣くぐらいなら笑ってくれ」って言ってさ、
俺たちが笑っててくれたらバアちゃんも笑って天国にいけるんだってよ。
だから、オマエも泣くなよな!』
『――うん』
『――っ!』
そういって、涙を抑えて笑った彼女の笑顔は眩しくて、
思えばあの時初めて、俺は女の子というものを意識したんだと思う。
「こらぁああ! 雄二! 早く起きなさい!」
寝覚めは最悪。今日の目覚ましは姉貴の怒鳴り声だった。
「あー……姉貴、おはよ」
「おはよ、じゃないわよ! あんた何時まで寝てるつもりなの!
今日から新学期なんだから早く顔洗って準備しなさい!」
なーんか妙な夢を見てたような気がする。
この感じは昔の思い出、それもあまり思い出したくない類の過去だ。
さて、どの思い出だ?
ハサミもって姉貴に追い回されたやつか、それとも登った木の上から蹴り落とされたやつか。
うーん、思い出せないということはやっぱり思い出したくない過去なのか?
そういうのは大抵姉貴がらみだから、痛い思い出しかない。
ガシッ!
そうそう、例えばこうして頭を掴まれて、
ギリリリリリ!
万力のような力を込められて――って、オイ!
「あだだだだだだ! 割れる割れる割れる!」
「あんたが何時までも目覚まさないからでしょうが! いいから早く顔洗ってきなさい!」
っと、今のショックでなんか思い出せたような気がする。そうだ、バアさんの葬式のとき話だったか。
「へいへい――あ、そうだ姉貴。バアさんの葬式のときにさ――」
「? おばあ様のお葬式がどうかしたの?」
「――あー、いや、なんでもねえ」
やっぱやめた。思い出せないことは無理に思い出さないほうがいい。
もし本当に姉貴がらみの思い出だったら薮をつついて熊をだすことになりかねん。
さてと、今日もせいぜいがんばりますかね。
「ふぁあ〜〜〜」
「雄二、往来の真ん中で大口開けてあくびしない! みっともないでしょう」
そうは言われても、この春の陽気だ。
姉貴みたいに面の皮突っ張ってない俺はどうしても目元が眠気で緩んでくる。
川沿いの土手を姉貴と並んで、幼馴染の二人と待ち合わせした場所まで歩く。
姉貴と連れ添って歩くのなんて何年ぶりだろう。
ウチの学園特有の、目にも鮮やかなピンクの制服。
こういう可愛い系の制服は似合わないと思ったが、
それでもなんなく着こなしてみせているのは我が姉ながら流石というところだ。
ホントならば、隣の女子校――西音寺女学院の制服を着ているはずだったのに。
何をトチ狂ったかこの姉貴はウチの学園に来るとか言い出した。
……いや、ホント言うとなんとなくわかってたんだけどな。
わざわざ帰ってきた姉貴が“アイツ”と離れた寺女に行くわけないってのは。
たまには双子の片方だけのとか見てみたいかも
「遅いわよ、タカ坊」
おっと。いつの間にか待ち合わせ場所まで来ていたのか、
土手の階段の下にいる二人にアイツに姉貴が声をかける。
そこにいるのは我が幼馴染二号、柚原このみだ。
今年からウチの学園に入学するピッカピカの一年生。姉貴同様真新しいピンクの制服に身を包んでいる。
こっちは姉貴と違って「服に着られている」感が否めなくもない。この辺がオコチャマの限界という奴だろう。
そしてその隣には、鞄を取り落とし目の前の光景が信じられないという表情をしている幼馴染一号、河野貴明がいた。
あの顔にタイトルをつけるなら『慟哭』だな。
「な、なんで……」
わかる、わかるぞ同志よ、思う様絶望しろ。そして諦めろ。
貴明の心境など知ってか知らずか、姉貴はのん気に
「どうしたの、タカ坊。さては、このタマお姉ちゃんに見惚れてたな」
なんてのたまいやがったので、弟の義務としてツッコミを入れてやった。
「そりゃネェよ」 バシッ!
言うが早いか数倍の強さで「突っ込み」が帰ってきやがった。
迷わず弟の鼻筋に裏拳をぶち込む姉、なんなんだろうね?こいつは。
そして当の貴明はというと、相変わらず状況が飲み込めてないようだ。
悪いな、貴明。ある意味おまえのせいなんだから我慢してくれや。
え、これで終わりなの?
うわぁ……続きが気になるナリ……
スマン、続くって入れればよかったな。
どんくらいで終わるかわかんないけどもうちょい続く。
748では1つの話として切れてないってことだろう
えっと、SSできたんで貼ろうと思ってたんだが、続くのならもうちょっと待ってた
方がいいか?
5/5だから終わりじゃないの('A`)
じゃ、貼り付けるぜ。
今割り付けしてるからちょっと待っててくれ。
他に貼るひといたらお先にどうぞ。
「お邪魔します・・・・・・」
恐る恐るコンピューター室の扉をくぐる。
いつ、どの方向からクマ吉に襲撃されてもいいように警戒は怠らない。右を見て、左を
見てとみせかけて上かっ!
・・・・・・てっきり扉を開けたとたん飛びついてくるかと思ったのに、いつまでたっ
てもクマ吉の体が降ってくることはない。油断させて後で襲い掛かる作戦だろうか。
放課後、俺は約束通りクマ吉に会いにコンピューター室にやってきた。
クマ吉にはキスまでされて、正直顔をあわせるのは少し気恥ずかしいものもあるけど。
でも約束は約束だ。それに、少しくらい恥ずかしいことなんか気にならないくらい、クマ
吉に会うことが楽しみになっている。
「だれ〜? 瑠璃ちゃん?」
そんなわけで、コンピューター室の入り口のところでキョロキョロとしていると中から
声を掛けられた。
「ん? にいちゃん誰〜?」
イスから立ち上がったのは、頭にお団子を二つ作った女の子。
この間、クマ吉の尻尾を直してくれた子だ。そうか、クマ吉の持ち主なんだから、いて
当然だよな。
「えっと、クマ吉のやつ、いる?」
「クマ吉?」
あ、クマ吉じゃなくて。
「みっちゃん。みっちゃん、今いる?」
「みっちゃん? あ、にいちゃん、この間みっちゃんのお股のぞいてたひとやー」
な、なんでよりにもよってそっちで覚えていますか!? もっと他に覚え方あるでしょ、
クマ吉に尻尾返しに来たとか、クマ吉のお尻見てた・・・・・・こっちはあんまり変わら
ないな。
「んー、悪いけど、みっちゃん、もうここにはおらんねん」
いない!? 何で!?
「にいちゃんが会ったみっちゃん、あれ、本当のみっちゃんやないねん」
そう言って女の子は、机の上に置いてあったクマのぬいぐるみを持ち上げる。
あ、クマ吉・・・・・・
けどそのクマ吉は、いつもみたいに元気に動き出すこともないし、俺に向かっていろい
ろと話しかけてくれることもない。第一、そのクマ吉からはあれだけしっかりと伝わって
きた、クマ吉の心を感じることができなかった。
本当に、ただのクマのぬいぐるみだ。
「これ、みっちゃんの仮ボディだったんや。本物のみっちゃんは研究所におって、そこか
ら無線使ってこのぬいぐるみ動かしてた」
じゃ、じゃあ、クマ吉は。
「うん。記憶も思いでも、もうここには入っとらんよ。だから、みっちゃんここには居ら
んねん」
「そ、そんな。だってあいつ、そんな、いなくなるなんて一言も言って・・・・・・
「本当はもうちょっとだけ、この体使うはずやったんだけど。みっちゃん、なんでかわか
らんけど急に、いやがり始めて」
目の前が真っ暗になったような気がした。
嫌がった? この間のこと、そんなにショックだったのか? 俺にさようならも言わな
いで居なくなってしまうくらい。
せっかく仲直りできて、これから、これからまたお前と一緒にいられると思ったばかり
なのに。
「なあ、にいちゃん、みっちゃんの友だちだったん?」
呆然と立ち尽くしてしまっている俺の顔を、女の子が見上げている。
「友だち?」
「そう、友だち。にいちゃん、みっちゃんの友だちやったから、だからみっちゃんに会え
んようになって、そんなに悲しそうにしてるん?」
友だち・・・・・・うん、クマ吉とはほんの何回かしか会ってないけど。
「うん、友だち。大親友だった」
一緒に昼ご飯を食べたり、階段を転げ落ちてみたり。キスまでしちゃったんだ。ただの
友だち以上の友だちだったよ。
「ふーん。なあ、にいちゃん、ちょっと待っとってくれる?」
女の子はそう言うと、俺の返答も待たないでコンピューター室を出て行ってしまった。
一人だけ取り残された俺は、他にすることもなくて、クマ吉だったぬいぐるみを抱き上
げて眺めてみる。
「なあ、クマ吉。何でお前、いきなりいなくなっちゃったんだよ。俺のこと嫌いになった
ならそれでも構わないけど、でも最後にさよならくらい言わせてくれたっていいじゃない
か」
返事が返ってこないのはわかっていても、どうしてもそう聞いてしまう。
「俺、もう本当にお前に会えないのか?」
どうしても我慢ができなくて、そう呟いた。初めて会ったときのように、クマ吉の体を
持ち上げる。
その時だった。
「えっ?」
今までただのぬいぐるみだったクマ吉が、急にもぞりと動いた。
まるで人間の瞳の焦点が合うように、俺の顔を見て。
「いってぇーっ!」
カブリと俺の指を噛んだ。
慌てて指を振ると、口を離しひらりと机の上に跳び移るクマ吉。
「なっ、なっ!?」
どうも机の上から俺のことを睨みつけるクマ吉は、大変ご立腹のご様子だ。
「え、俺がまたエッチなことをした? 股を、覗いてた?」
そういえば、さっきの構図はクマ吉の股を見ていたように見えなくもない。
「ご、誤解だってクマ吉。俺がそんなことをするはずないだろ!」
あ、こいつ全く信用してない。そりゃ、前科があるのは認めるけど、だからって問答無
用で疑うこともないだろ。
腰に手をあて、俺に怒るクマ吉。
それは、本当に、いつもの俺の知っているクマ吉で。
「クマ吉・・・・・・」
気が付いた時には、クマ吉のことを抱き上げていた。
「本当にお前、クマ吉なんだな? もうここには居ないって、記憶も、思いでも居なくなっ
たって聞いて、俺、もうお前に会えなくなったのかと思って」
最初は暴れていたクマ吉だったけど、だんだんと黙って話を聞いてくれるようになった。
「ばかやろう、いなくなるんだったら、最後にお別れぐらい言わせてくれよ」
もう最後には、俺は泣きながら喋ってたと思う。でもその時は、それが恥ずかしいなん
て全く感じていなかった。
俺がそこまで言うと、クマ吉は俺の手の中から、右の肩に乗り移っていく。そして、ま
るで俺の頭を撫でるように抱きしめてくれた。
「え、ごめん、だって? ばか、そう言うことじゃ、え? お別れじゃない? ほんの
ちょっとだけ、会えなくなるだけ? クマ吉っ!?」
慌ててクマ吉の方を向こうとするけど、クマ吉にそれを止められた。
「ああ、待ってる、待ってるよ。うん、また一緒に、昼御飯食べようぜ。またパン買って、
屋上で、一緒に」
クマ吉の体が、俺の頭から離れる。
ようやくクマ吉のことを見ることができた。
俺の肩の上に座るクマ吉は、じっと、俺のことを見つめている。
「じゃ、ほんの少しだけの、お別れだな。え、浮気するなって? しないってば」
クマ吉の顔が、だんだんと近づいてきた。
人間の唇とは、全く違う感触。
でも間違いなくこれは、俺とクマ吉のキスだった。
クマ吉とお別れして、何日かがたった。
クマ吉はすぐ戻ってくるって言っていたけど、あれ以来まったく音沙汰がない。何度か
コンピューター室に行って、あの女の子に聞いてみようと思ったこともあったけど。
クマ吉がすぐ戻ってくるって言っていたんだ。それくらい、しっかりと待っていてやろ
うと思う。
「けど、早くお前に会いたいよ」
つい、そう呟いてしまう。
しかしいくらなんでもボーっとし過ぎていたようだ。向かいを歩いている人に気が付か
ないで、うっかりと腕をぶつけてしまった。
「あっ」
気が付いた時には、向こうの人が持っていた買い物籠は地面に落ちてしまっていた。既
に買い物帰りだったんだろう。けっこう重そうな音がした。
「す、すいません、考え事しちゃってて」
慌てて頭を下げたところでようやく気が付いた。向こうの女の人、いや、正しくは人じゃ
ない。耳に付いた奇妙な器具、一見、コスプレにも見える近未来的な服装。メイドロボだ。
「本当にすいませんでした。あの、怪我、なかったですか」
しかしたとえ相手がメイドロボでも、今のはボケっとしていたこっちが悪い。落ちた買
い物籠を拾うと、うわ、タマゴとか、割れちゃってるよ。
「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした。あ、タマゴのことはお気になさらないでく
ださい、ぶつかってしまったのはこちらも不注意でしたし」
「でも、悪いのはこっちです。だから弁償させてください」
「ですがそんなことまでしていただいたら、申し訳がありません。弁償なんてなさらなく
ても結構ですから」
「だったら、せめてその荷物持たせてもらえませんか。どちらにしてももう一回買いなお
さなきゃいけないと思うし」
だったらせめて、と思っておれがそう言うと、メイドロボの彼女は面をくらってしまっ
たようだ。
「けれど、私メイドロボですよ? メイドロボが人間の方にお手伝いいただいたのでは」
「いえ、男が女の子を助けるのは当然ですから」
少し前に、どこかで似たようなことを言った気がする。それに、ちょっと言い方がキザ
だったか。
目の前のメイドロボの女の人は、俺の言ったことに少し顔を赤くしてしまう。
う、他に、もっとマシな言い方をしたほうが良かったか。でも助けなきゃと思ったのは
本当だし。
けれど彼女は優しく微笑んで。
「それでは、申し訳ありませんがお願いしてよろしいでしょうか。実はこの後、他に買い
物をしなければならなくて困っていたところだったんです」
その後スーパーに引き返してタマゴを買いなおす。そしてドラッグストアによると、今
日は特売日だったらしい。ティッシュと、細々とした雑貨を買って店から出た。重たくは
ないけど、確かに一人でこれだけの荷物を持つのは大変だ。
もう大丈夫だという彼女を、せっかくだからといって荷物を持って歩く俺。
最初は申し訳無さそうにしていたけれど、俺の決意が固いとわかってくれたのか笑顔で
頷いてくれた。
いや、メイドロボってもうちょっと固いイメージを持ってたけど、この人を見てると全
然そんな気がしない。ほとんど人間と一緒だ。耳飾さえなければ、メイドロボだって言う
ことのほうが信じられなくなる。
そこで、なんでか、やっぱりロボットらしくなかったロボット・・・・・・クマ吉のこ
とを思い出してしまった。
「何か、お悩みのことでもあるのですか?」
商店街からでて、彼女の家に向かう途中。彼女が不意にそんなことを聞いてきた。
「悩み、ですか?」
「はい。先ほどから度々、思い悩んだような表情をなさっていましたから。あ、余計なこ
とでしたら、申し訳ありませんでした。ただ、気になったものですから」
そんな、はじめて会ったメイドロボにまでわかるほど、今の俺は落ち込んでいたらしい。
こんなことじゃ、本当にクマ吉に会えたときに笑われてしまう。そう思うと口元に苦笑
が浮かんできてしまった。
「えっと、そんなたいした悩みじゃないんですけど・・・・・・実は、約束してまして」
「約束、ですか?」
「はい。ロボットの女の子と。あ、ロボットって言っても、あなたみたいなメイドロボじゃ
なくって、本当にただのおもちゃのロボットなんですけど。そいつと、この間約束したん
です、また会おうって。・・・・・・ほんのちょっとだけ、会えないのを我慢してればい
いのはわかってるんですけど、それでも、やっぱり、早く、会いたいな」
最後の言葉は、ほとんど彼女に聞かせるというより、自分に言っているみたいだった。
それを聞いていた彼女は、メイドロボにこんな優しい表情ができるのかってくらい、優
しい笑顔を浮かべてくれた。
「そのロボットの女の子は、本当に幸せ者ですね。あなたにこんなにも想われているんで
すから」
駅前に着くと、彼女はもうここでいいと俺の持っていた荷物を受け取った。
本当は最後まで手伝うつもりだったんだけど「はじめて会った女性の家にいきなり訪ね
るのは、マナー違反ですよ」と言われてしまっては従わざるをえない。
お礼を言って立ち去っていく彼女に、俺も話を聞いてくれたお礼を言って、駅前を後に
する。クマ吉と、また会えることを楽しみに待ちながら。
ピンポーン
休日の朝、俺がリビングでごろごろしているとインターホンが鳴った。
ピンポーン
「はいはい、今行きまーす」
宅配便か何かかな。
そう思って玄関の覗き穴から外を覗いてみると・・・・・・
慌てて扉を開ける。
まず目に飛び込んできたのは、あいつらしい明るい、赤い色の髪。
それと
「く、クマ吉か?」
声が震える。
嬉し涙で目が霞む。
目の前のこいつは、クマのぬいぐるみだった時と同じように、一生懸命、元気な目でし
で俺のことを見てくれている。
そして、俺の思っていた通りの笑顔を浮かべて
「ただいま──
終
終わりーっ。もう続かない。
読んでくださった方、本当にありがとうございました。
うおおおお、リアルタイムだ。
GJ!!無理強いはしないけど貴方のSSをもっと読んでみたいぞ!
>>771 GJ!!!!
でもあのヘタレたかあきがミルファを一発でわかるのに違和感がある・・・・・・・
>>771 GJ!面白かった!
強いて望むなら、再会した貴明とミルファの会話が少し見たかったな。
―ささら視点―
「懐かしい…」
私の一番の思い出が詰まった、この町。こうして見ても、ほとんど何も変わっていない。
たった半年ぐらいしか離れていないのに、酷く懐かしく思えた。
「とりあえず…環さんの家に行こうかな」
すぐに貴明さんに会ってもいいけど、それは得策とは言えない。
私が来たと知れば、貴明さんは居留守を使う可能性が高い。環さんなら
貴明さんの家のスペアキーも持ってるはずだし、相談するには持って来いだ。
「うん、決まり。荷物だけパパに預けて環さんの家に行こう」
「ここでいいのかな?」
パパとの再会の挨拶もそこそこに、私は環さんの家に送ってもらった。
「うん、大丈夫。また後でね、パパ」
貴明さんを、絶対に取り戻すために。そのためには、
環さんの協力がどうしてもいる。環さんが私に協力してくれないとも思えないし、
貴明さんも環さんの言うことには従うだろうし。
「……」
―なら、何で貴明さんは環さんを選ばなかったんだろうか。
暗いことを考えかけて、頭を振る。今更それを考えたって仕方が無い。
「…よし!」
ピンポーン
『はい、どちら様ですか?』
「久寿川ささらと言います。環さんはご在宅でしょうか?」
『はい、少々お待ちください…』
ドタドタドタ!
「ささら!?」
「環さん、お久しぶり」
「ええ、お久しぶり…じゃなくて、急にどうしたの?あ、とりあえず上がって。中でゆっくり話を聞くわ」
「ありがとう…お邪魔します」
中に通された私は、今回の事の顛末を環さんに全て教えた。全てを、包み隠さずに。
最初はふんふんとうなずいていた環さんだったが、次第にその表情はしかめっ面に変わり、
最後のほうは完全に不機嫌な顔になっていた。
「それで、貴明さんと仲直りしようと思って、ここまで来たの。環さん、協力して?」
「ええ、もちろん協力はするけど…ちょっとここで待ってもらって良いかしら?
急用を思い出しちゃって」
「もちろん構わないわ。私のことは気にしないで大丈夫」
「ありがとう、すぐ終わらせてくるからね」
環さんはせかせかと出て行った。そんなに急ぎの用事なのだろうか…?
―環視点―
「タカ坊の馬鹿…!」
雄二だったら明日の日を拝めないようにしてやるところよ!全く、何考えてるのかしら…
あれだけ色々なことを経験して、ちょっと男らしい面構えになってきたかなー
と思ってたら全然ダメじゃないの!引きずってでもささらのところに連れて行くんだから!
ピンポーン
…反応無し、居留守使う気ね。
「タカ坊!!扉けり壊されたくなかったら居留守なんて止めてとっとと出てきなさい!」
これだけ言えば出てくるわよね…30秒ぐらい待ってあげるわ。
「…とりあえず入って。近所迷惑になるから」
「分かったわ。言い訳ぐらいは聞いてあげましょう」
タカ坊の表情は、これまで見たことないぐらいに疲弊しきっていた。
まるで、この世の終わりみたいな顔。真面目に考えすぎた結果、最悪な方向に向かっちゃったわけね。
いつものタカ坊のパターン。
「話はささらから全部聞いたわ。で、どうするつもりなの?」
「随分いきなりだね…」
「あんまり言い訳は聞きたくないけど、一応聞いてあげましょうか」
タカ坊はありのままを全て話してくれた。ささらの話と比べても、嘘を言っているようには思えない
うん、単純にタカ坊が悪い。
「ふーん…で、タカ坊、覚悟は出来てるわね?」
「うん…」
タカ坊には悪いけど、これはきつめのお仕置きが必要ね…!
―貴明視点―
スパーン!
「…っ」
ただのビンタなのに、椅子から吹っ飛んで後ろの壁にぶつかった。
さすがタマ姉、半端じゃない威力だ。でも、あんまり痛くないのはどうしてだろう。
―心が、罰を欲しているからだよ。
心の中で、そんな呟きが聞こえた。そう、俺はささらを傷つけた罰を欲していのだ。
心の深いところで。それが、タマ姉のビンタによって少し報われた気がしたのだろう。
一人でそんなことを考えていると、タマ姉が俺の手を掴んだ。
「さ、私と行きましょう」
「…どこに?」
「私の家。ささらが来てるから、会わせてあげる。なんて言って謝るのかぐらいは、自分で考えること」
「え…」
ささらが来ている…?今タマ姉についていったら、ささらに会ってしまう…?
俺があれこれ悩んでいる間に、タマ姉は俺の手を引っ張ってどんどん進んでしまう。
―今、ささらに会えるのか?会って何を言うんだ?ごめんなさいと謝るのか?
嫌だ、ささらには会いたくない。いや、会えない。会うことは出来ない!
「いやだ!」
タマ姉の手を思いっきり振りほどく。タマ姉は少し驚いた顔をした後、すぐに厳しい表情を作った。
「まだ逃げる気なの?」
「女の子に、自分の意見ぶつけるのは怖いんだよ…優しくする以外の、
女の子との付き合い方なんて知らない。今回のことも、
ささらを傷つけるのが嫌だからこうしたんだ。今会えば、ささらを傷つける。だから、行かない」
「何馬鹿なこ…」
―環視点―
そういいかけて、私は口をつぐんだ。気付いてしまったのだ。気付きたくない、事実に。
―タカ坊の中で、まだ私の告白を断ったことがくすぶってる…
私は、タカ坊があれしたい、これしたいと主張したのを見たことが無い。
それは、昔から変わらないことだ。大抵私かこのみが何かしたいと言い、タカ坊はそれにくっ付いてくるだけ。
タカ坊は、自分を主張することを恐れてる。
というよりも、自分を主張する方法を知らないのかもしれない。私もこのみも、
無論雄二も中々にわがままだ。そんな中で、タカ坊は自分を主張することが出来なかったのかもしれない。
タカ坊が私のすることを嫌がったのは、ただ一回だけ。
―私の告白を、断ったとき…
もしかすると、タカ坊はその時に自分の意見を外に出すのを止めたのかもしれない。
タカ坊は、恐ろしいまでに中立で物事を見る。全てのことを、客観的に。
思えば、私やこのみ、雄二の誰かが喧嘩したとき、タカ坊はいつも仲裁役になっていた。
ささらの話だって、タカ坊のように誤解したって何ら不思議じゃない。
その後のタカ坊の行動も、全てささらを傷つけないためのものだ。
―タカ坊には、自分が無い…
私が、タカ坊の自分を奪ってしまった。自分の意見を言う機会を、私が奪ってしまったのだ。
その私が、ささらに会わせるという理由でタカ坊を引っ張って行けるのか。
答えは、否。全てとは言わないが、タカ坊をこういう人間にしたのは、大部分が私のせいだ。
自分でこういう人間にしておいて、その人間がやったことが気に食わないから連れて行く?
私は、横暴な人間だが、そこまで非人間的じゃない。
「分かったわ…タカ坊がそういうなら、そうしなさい」
そういい残してタカ坊の家を去る。ごめん、ささら。私は、協力できない…
というわけで第六話です。いかがだったでしょうか。
>>697>>698 見事にタマ姉に潰されませんでしたが、どうでしょうか。タマ姉ルートを見る限り、
貴明がヘタレな原因の大部分はタマ姉にあると思うので、こんな展開にしてみました。
私の話では、タマ姉もかなりヘタレになっています。タマ姉ルートをやった後だと、
タマ姉もただのヘタレにしか見えないのでこういう話展開になっていますが、どうでしょうか。
やっぱりタマ姉っぽくないですね、うじうじ悩んでるのは。
ですが、本編のタマ姉もこんな感じに見えたのでどうかご容赦ください。
タマ姉のせいでヘタレになった貴明の行動は?タマ姉の協力が得られなくなったささらはどうするのか。
貴明がヘタレな原因は自分にあると気付いたタマ姉は如何に?
…タマ姉だけ投げっぱなしで終わりそうな予感が今からしてますが。
ささらと貴明については、どちらにつけ綺麗さっぱり終わらせるつもりです。
>>782 GJ!!!
確かに、パーフェクト超人くさい環も、こと恋愛に関しては確かにヘタレですしね。
とっても納得です。
とりあえず、ささらには幸せになってほしい自分がいる。
続き期待してます。
784 :
中の人:2005/12/23(金) 01:34:53 ID:/1YMu4Pv0
天然なのか気付かないフリしてるのか知らんが
この流れで書き込める根性は素晴らしいと思う。
>>782 GJ!
タマ姉の繊細っぷりが見事に描かれててイイ!
しかしそこでこのみの出番ですよ。タマ姉かタカ坊に喝を!
GJ。一つだけ気になるのは、わざわざ〜視点と書いている点。
状況描写でやってくれ。
>>784 GJ!!!
俺は、次のにも期待してるぜ。
なんかものすごいSSラッシュやね
>>790 まだ導入部だから何とも言いにくいけど、面白くなりそう。タカ坊副会長就任までは読みたい。
関係無いけど、背景の芋虫っぽいやつがキモイ
!と?は全角にしたほうがいいと思う。
?!は基本的には、!?がよろしいかと。
背景が既に替わったことにGJ! というか気を遣わせたならすまなかった。
さーりゃんの異常な可愛さに期待。
794 :
790:2005/12/23(金) 03:59:37 ID:2AdN2Mfs0
>> 791
背景直しましたw
>> 792
すいません、全角嫌いなんです。?! は !? の方がいいというご指摘はその通り
だと思いまして修正しました。
>>795 まあ確かに。決まり文句かき集めたに過ぎんね
凄い流れだな・・・
確かに凄い。
これはつまり職人から俺たちへの
ク リ ス マ ス プ レ ゼ ン ト
なんだよ!
480KBで書き込めなくなるんだったっけ?
>>801 dクス!
そんなにいけたのか〜
それじゃあもう少しいけるな。
今日はあんまこないな〜
職人達からのクリスマスプレゼントは終わったのか?
>790
続きが楽しみ。頑張って
家の風呂が壊れて棒の家の風呂を借りに来た春夏さん。
ちなみにこのみは狐の家に泊まり。旦那は出張。
 ̄\/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<○√ さぁ、私の
‖ 欲望を
<< 満たしてみろ
806 :
790:2005/12/24(土) 12:35:45 ID:gmsw5EM40
>>806 まーりゃんはっちゃけすぎw
地方妖怪が出てくるとわなw
>>806 GJ!まーりゃん先輩それっぽいし。
で、ささらんもっとしゃべってくれー
809 :
図書委員長:2005/12/24(土) 17:42:45 ID:bkH2I62Y0
やあ (´・ω・`)
ようこそ、僕たちの書庫へ。
この紅茶は愛佳君からのサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「やっと」なんだ。済まない。
作者の身の上にもいろいろあったことだしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
今回も続けていけるのか作者は不安がってるし。
でも、あの一連のSSを見たとき、君たちは、きっと言葉では言い表せない
「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
僕を月島拓也君ばりのヒールに仕立てて、愛佳君がファンからの嫌われ者の僕に
いいように陵辱される話も一つはあってもいいんじゃないか。そう思ってあの話が
作られたんだ。あらすじ…は長くなるのでとりあえず↓を読んでくれ。
http://th2ss.hp.infoseek.co.jp/12.html じゃあ、続けてみようか。
貴明と環にはこのまま欲望に流されるままに激しくまぐわってもらおうと思ったのである。
だが彼は、
「待てよ…このまま二人につながってもらうのも面白くない。その前に…これはどうかな」
愛佳から貴明を引き離し、環を屈服させるためにはそれだけでは不十分だと思い直して
刹那に閃いた別の手段を用いることにした。彼は環を後ろから抱きすくめると制服のボタン
を外し、スカートをめくって下着の中に手を入れて敏感な部分を触った。
「あっ、触らないで…私、感じちゃ…ひっ、ひゃうう、ああ」
嫌いな男に胸や秘部を触られて環は激しい嫌悪感に苛まれていたが、それよりも普段以上
に敏感になっている性感帯を刺激されて体を思うように動かせない。
「お、 お ま え と い う や つ は…タ マ 姉 を 放 せ !」
同じように一物が立って、体が焼けるように熱くなっていた貴明は力を振り絞って立ち上
がり、図書委員長を攻撃しようとした。
「河野君、僕が憎いのかい?でもそれはお門違いだな。今の君の立場はもう愛佳君の恋人じゃ
ない。振られた惨めな奴さ。でもそれじゃかわいそうだから、ずっと君のことを想っていた
向坂さんとくっつけてあげようと思ったのに。そんな僕を攻撃するなら…」
「あ、そこだめ、ひいいっ」
環は図書委員長の指にクリトリスを痛いほどつままれた。
「むしろ君たちは僕には感謝してもらわないと。ねえ向坂さん」
「ち、違うわ。私は……ひゃうっ」
環が何か言いかけたが、今度は乳首をブラジャー越しに抓られ
て遮られた。確かに自分は幼いころからずっと貴明のことが好きだった。でも既に一度はできかかって
いた貴明と愛佳との恋人としての絆を無理矢理壊されてまで結ばれるのは環としても望むところではな
かった。これまで貴明と愛佳がそうしてきたようにデートしたり、一緒にお弁当を食べたり、共同作業
をしたりして愛情を育んで結ばれたかったのに。九条院から帰って来たら貴明には愛佳がいたから、自
分は潔く身を引いて気持ちの整理を付け、これからは姉として二人を暖かく見守っていこうと思ってい
たのに。
「あっ、やめて、もう触らないで。あなたなんかに……」
「ふん、僕よりもタカ坊君にされるほうがいいのかい。でもそうはしてあげないよ……向坂さんのほうからお願いするまではね。『タカ坊とさせてください』って」
「い、いいかげんにして…ああっ、そんな、入れない、で…あああっ」
図書委員長の指が環の入り口に入ってきた。しかも一度に人差し指と中指の二本も。そのまま中の濡れ具合を確かめるようにクチュックチュッとかき回される。空いた手はブラジャーをずり上げて、おっぱいを鷲掴みにして弄んでいる。
「くふうっ、あっ、あん、ああっ、あ…」
「ほら、もうタカ坊君に代わってもらったらどうかな?」
図書委員長が環に囁く。環が彼に触られることを嫌がっていることなど先刻承知であるかのように。
「(こんな奴に屈するなんて、私のプライドが許さないわ。でもこのまま犯されるのも嫌よ…私はどうすればいいの?)」
屈辱と恥辱のジレンマの中で苦しむ環。そんな中で悪魔のような男に体を弄ばれる不快な気持ちが風船のように環の心の中で膨れ上がり、それがパンと破裂したように環は叫んだ。
「あ……あなたは最低よ!小牧さんをタカ坊から横取りした上に私まで汚い手でこんな目に遭わせて!許さない。私は絶対にあなたを許さないわ!」
そこで図書委員長の環の体をまさぐる手が止まり、環は開放された。まだ薬のもたらす体の火照りで思うように立てず、その場にへたり込んだ環。そして図書委員長は一言言った。
「言いたいことはそれだけかな?」
「………………………」
彼の問いかけに環は失意体前屈の姿勢で俯いたまま黙って答えなかったが、やがて涙をポロポロこぼし、蚊の鳴くような声でポツリと言った。
「………た……………タカ坊と…させてください」
図書委員長は黙って満足そうに頷くと、もう一度貴明の手を取ってズルズルと環の前に
引き寄せた。
「ほらタカ坊君、指名がかかったよ。向坂さんの期待に応えてあげなよ…おや」
彼は貴明の下半身に目をやった。貴明はもうパンツの中で一物が爆発しそうなほど張り
詰めていたのが窮屈で、一物をパンツから出していたのだった。
「こんなに大きくして、よっぽど待ちきれなかったみたいだね。いいだろう」
図書委員長は環を赤ちゃんにおしっこさせる格好で環を抱き抱え、入り口に貴明の亀頭
を宛がった。
ズブブブブッ
「ひあああああっ」
激しくいきり立つ肉棒にいきなり体を貫かれて悲鳴を上げる環。だがそれも一瞬のこと
で、やがてざわざわと膣の中から快感が込み上げてきた。
「あはっ、タカ坊のがお腹の奥に当たるよぉ(凄い、気持ち良くて何も考えられない…)」
環の頭の中は真っ白になり、ヒイヒイ喘ぎながらただ貴明の肉棒で膣の中をぐちゃぐちゃ
にされる快感しか感じていなかった。それは貴明も同じで、
「うぐぐ、タマ姉、凄く締め付けて……ああ…」
彼もまた環の膣壁の感触に酔って何も考えられないでいた。目の前でプルプル揺れる環の
おっぱいに貴明の手が伸びた。
「あっ、タカ坊やめて。おっぱい触らないで。んあっ、あっ、あああっ」
「で、でも…タマ姉のおっぱい柔かくて…凄い敏感だし…」
貴明も環も意識がぶっ飛んだまま激しく腰を振りたてている。
「………………」
そんな場面を彼らの傍らで見ていた愛佳がそっと図書委員長の側に寄ってきて、制服の袖を掴
んで哀願するような目で彼を見た。
「ん、どうしたんだい愛佳君。黙ってちゃ分からないから言ってごらん」
愛佳はしばらく口篭もって、小さいけど図書委員長の耳にははっきり聞こえる声で言った。
「先輩…あたし、我慢できないんです。先輩のおちんちん…愛佳のおまんこに入れてください」
「いいよ。じゃあまずは勃たせてもらおうか」
図書委員長はパイプ椅子に腰掛けて、ズボンから一物を取り出した。
「はい…これから先輩のおちんちんにご奉仕させていただきます」
愛佳はそう言って図書委員長の一物にキスして、フェラチオを開始した。
さすがの図書委員長も連投規制には勝てないらしい。
バタバタ……
突然窓の外で足音が聞こえた。何事かと思って後ろを振り向いた図書委員長の目に
入ったのは、愛佳と同い年ほどのショートカットの少女の後ろ姿だった。彼女は職員
室のほうに向かって慌しく駆けていく。スカートがめくれて、チラリと紺色のブルマ
が見えた。
「(まずいな…これは誰かに見られたか)」
図書委員長は苦い顔をして思案に暮れた挙句、胸のポケットから携帯を取り出し、
メールを打った。
「(本当は愛佳君や向坂さんが僕の言うことを聞き分けなかった時に彼らに動いても
らうつもりだったけど…まあ彼らなら何とかしてくれるだろう。嬉々として)」
ちょうどそれと同じ頃、図書室で当番のためにカウンターに座っていた図書委員の
携帯電話がポケットの中でブルブルと震えた。「ごめん、ちょっと出てくるよ」と彼
はもう一人の当番に目配せして廊下に出て、携帯のディスプレイを見た。
「おや、委員長からメールか。小牧とかいう女子を調教してるところを誰かに見られ
たって?なら先公にチクられる前にやっちまわないとな。相手は女子だから遠慮しな
いでいいとも書いてあるし…ふん、ショートカットの2年生?そいつはたぶん小牧と一
緒にいる、長瀬に違えねえ」
彼は図書室に戻ると、もう一人の当番に言った。
「おい、委員長から連絡だ。小牧をやってる現場を見られたんだと。で、捕まえて口
封じのためにやっちまってくれとのことだ。俺は職員室張り込んでるからお前は生徒
指導室のほう行ってくれ」
「よっしゃ。相手が小牧じゃないのが惜しいがいよいよ俺たちにもチャンスが回って
きたんだ。委員長のために頑張るぜ」
「おう、じゃあ体育倉庫で合流しよう」
彼らは二手に分かれた。彼らは図書委員長の決定には何でも従うことで普段からい
い目を見せてもらっていた、言わば「茶坊主」である。当然今度のことでも書庫の本
の保存には賛成する立場を取り、その見返りに愛佳の陵辱を手伝わせてもらえること
になっていた。主に邪魔者を排除するための要員ということで。
「もし女の子に見つかったらその時は積極的に動いてくれ。やっちゃってもいいから」
図書委員長は彼らにそう言っていた。いよいよそのチャンスが巡ってきたということ
で、茶坊主の図書委員は胸をときめかせつつ、獲物が来るのを待った。果たして獲物は
職員室にやって来た。教師に親友が上級生にひどい目に遭わされているのを密告するために。
816 :
図書委員長:2005/12/24(土) 19:30:55 ID:bkH2I62Y0
やあ (´・ω・`)
とりあえず今回はここまでだ。
愛佳君からのサービスの紅茶、もう一杯飲んで落ち着いて欲しい。
うん、随分グダグダになってしまって済まない。
しばらく保管庫に引きこもってて、ひさしぶりにこっちにうpしたことだし。
作者は続きを書くのと並行して、これまでの話の再編集もしているところなんだ。
年明けぐらいから改訂版を自分の保管庫にうpしていく予定だからそっちのほうもよろしく頼む。
もし君たちがこの話を気に入ったなら応援して欲しいし、至らない点があれば遠慮なく言っ
てほしい。作者はそんなことで怒るような奴じゃないから。
じゃあ、感想を聞こうか。
surprise party
バーボンハウスご苦労さま。
すまん、俺は鬼畜が苦手なんでスルーしちまった('A`)
だけど頑張ってくれ
クリスマス凌辱('A`)
>>816 乙
だが、俺も鬼畜苦手なんでスルーしてしまった。
すまん('A`)
聖夜を盛り下げてくれてありが……と('A`) ?
……とっくに飽きたと思ってNGももう解除ってたのにナとか凌辱SSスレでも立てれとかそもそも巣があんなら報告だけでいいじゃんSSまで投下すんなとか。
ごめんね。読んだ感想じゃなくてごめんね
凌辱大嫌いですまんな作者の人
なんとなくそんな気してたけどここは鬼畜・陵辱が駄目な人多いなw
>>817 爆笑したぞコノヤロウ
ここ最近ずっとほのぼの系が多かったからな
結構ショックが大きいのかも
同感
まあクリスマスSSの方に一つもレスがついてないあたりで察してくれるとありがたいんだがなw
予想どうりに酷評されてるな。 みんな、違うんだよ・・・マジにとるな。
この作品は「鬼畜物」ではなく「鬼畜ギャグ」なんだ!
俺なんか、後半に出てきた図書委員達に大爆笑したよw
なんで、こんな一昔前の不良みたいなのが図書委員やってるんだ?
自分で立候補したのか?とかさw
他にも探せば、緊迫した場面でも「図書委員長!」なんて呼ばれるとか、一杯。
前に「勝手に考えた図書委員長」なんて小ネタやるぐらいの図書委員長ファンの俺は
大満足でした。
これからも笑わせてください!
>>826 ギャグかどうかはともかく、シリアスにはなりようのない内容ってのは言う通りだと思うよ
でもな・・・んなこた関係なく、あちらさんの文章は読む気にならねーんだってw
擁護のつもりかもしれんが、辛い現実を突きつけるだけだからやめてやれw
この流れなら言える!!
黒このみSSマダー?
829 :
突発的に:2005/12/24(土) 21:48:05 ID:csUBmQi50
12/24
クリスマスイヴ。
っていうかイヴってなんだイヴって。クリスマスならわかるさ。キリストの降誕を祝う祭だろ?
その日にお祝い事をするならわかるんだ。
で、なんでイヴなんだ?
前日にやる意味がわからない。世間じゃイヴの方が盛り上がるみたいだし、何故?Why??
ってゆーかキリスト教徒でもないのになんでクリスマスを祝う必要があるんだよ?
…まぁクリスマスイヴに対する不満を一人、心の中で愚痴ってる俺はみっともないわな。
あーあー、そうですよ。共に過ごす相手がいなくて寂しいクリスマスを過ごす予定の向坂雄二とは俺のことですよ。
あん?環??環って誰だよ?…あぁ、姉貴か。
姉貴のやつは九条院のおっかけに連れられていったよ。クリスマスパーティなんだとよ。
俺もついていきたかったんだけどな、あえてアイアンクローを食らおうとは思わないわけよ。わかる?
このみ?
Hey Boy.家族水入らずの幸せぱーちーに乱入するほど俺は常識知らずじゃないわけよ?
そんじゃそこらのナンパ野郎とは違うわけ、OK?
あん?貴明?
アメリカだよ!アメリカ!!
愛しの久寿川先輩に会いにいったんだっつーの!!
今頃しっぽりよろしくやってるだろーよ!
ウェスティンセントフランシスだかいうホテルに泊まるんだとよ!
ったく、なんで俺がわざわざこんなこと言わなきゃなんねーんだよ…
はぁ、泣けてくる…
で、あんたはどーなのよ?
俺みたいに寂しい苦しみマスか?
姉貴みたいに友達とパーティか?
このみみたいに家族とお食事か?
貴明みたいにらぶらぶデートか?
まぁ別にどうでもいいけどよ。
とりあえずここを覗けばおんなじようなヤツがいるんだってことがわかるわけで
同じ時間を共有しているヤツがいる…
それだけでちょっとは寂しさも薄れるよな。多分。
どんな過ごし方をしてるかはわかんねーけど、これだけは言わせてくれな?
Merry X'mas!!
>>816 ごめん、スルーしてしまった。
鬼畜はまぁ大丈夫なんだが図書委員長ってだけで拒否反応が出て。
素直に脇役やっててください。
愛佳(えへっ…。ちょっと早く着いちゃったかな?)
ピンポーン…ピンポーーン…
愛佳(あれ?いないのかな?でも、明かりは付いてるし…。)
ピッピッピ……。トゥルルルル…トゥルルルル………
愛佳(電話にも出ない…?)
ピンポーン…。ピンポー…、ガチャリ…
愛佳「あっ!?ごめんね、早く来ちゃった…って、えっと?たしか…このみ、ちゃんだっけ。たかあき君の幼馴染みの…。」
このみ「小牧、先輩…ですよね。タカ君なら、今日はいませんよ…。急な、用事ができたとか…。先輩に伝えておいてほしいって…。」
愛佳「えっ!?そうなんですか…。わ、わかりました…。」
このみ「先輩が来たことはちゃんと伝えておきます。」
愛佳「…うん。よろしくね、このみちゃん。」
このみ「…はい。あっ、先輩!!」
愛佳「…はいっ?」
このみ「メリークリスマスです。」
愛佳「うん。メリークリスマス。それじゃあ…。」
ギィーー…。バタン…。
?「まっ、愛…佳…」
このみ「…タカ君。
勝手に動いちゃダメだよ…。」
グサッ!
このみ「えへ〜。タカ君、暖かいよ。
ねぇ、もっと…。
ねぇ、もっとぉぉおぉ!!!」
グサッ!グサッ!グサッ!
このみ「ふふっ…。タカ君、真っ赤だよ。このみとお揃いだね!」
貴明「………」
このみ「タカ君…。
メ リ ー ク リ ス マ ス 」
完
スマソ。一回で終わらすつもりが二回になったおorz
黒このみはもういいよ・・・
黒キター('A`)
クリスマスなのにまったく明るくねーよ!ウワァァアン!ヽ( `Д´)ノ
今日はクリスマスイブなんだからもっと明るいテイストの作品を
もしくは萌える作品をプリーズ。
鬼畜だとかそっち系がいけないとは言わないがそればっかりは萎えます。
どう見ても
>>828が元凶です
本当にありがとうございました
「おかしいなー。ちっとも大きくならへん」
「食っちゃ寝食っちゃ寝しとるから、体力無くなるんや。情けなー」
「困りましたね……。まだ3回ずつしかしてませんのに」
「ちょっと姉さん、あたしまだ1回よっ!?」
「ミルファちゃんは毎日朝晩貴明さんと一緒に寝ているでしょう?」
「そ、それとこれとは話が…」
「……私もまだ2回……」
「な…! あたしだけ1回!?」
「なーなー。もう駄目なん?」
「仕方ないなー。このニンニクジュースを飲めば、貴明の体力もファイト一発や!」
「るー☆」
そんなメリークリスマス。
841 :
名無しさんだよもん:2005/12/25(日) 02:29:01 ID:CRt1PkI70
黒このみ好きなので、ありがとうございます。
「たかあきさん、おまたせ」
「うん」
「はいこれたかあきさんの。ジャガバタとウニのダブル」
「お、ささら、よくわかったね。俺が食べたいのがジャガバタとウニだって」
「ふふ、だって、私はたかあきさんの、か、カノジョなのよ。ポッ」
「……」
「……」
「……」
「こ、こっちは私の。ホワイトピーチといちごミルクのダブル」
「お、そっちも美味そうだな」
「でしょ。…えっと、は、はいたかあきさん、あ、あ〜ん」
「え、あ、うん、あーん。−−うん、美味しい」
「うふふ、あ、わ、私もたかあきさんの、食べてみたい…な」
「ああ、い、いいよ」
「あ〜ん。−−うん、おいしい」
「……」
「……」
「……」
「あ、たかあきさん。ほっぺにアイスがついてるわ」
「ん?」
「ほら、ここ。拭いてあげる」
ふきふき。
「ん、ささら、ありがと」
「くすっ…ううん」
「……」
「……」
「……」
「ねえ、たかあきさん、明日は、その、どこに行くの?」
「んーそうだな。ささらはどこに行きたい?」
「うん、えっと……、す、水族館……」
「…ぷ、あはは、ささらはホントに水族館が好きだなあ」
「も、もぉ、……イジワル。
ねぇ、やっぱりたかあきさんが決めてくれる? 私、たかあきさんと一緒ならどこでもいいから」
「……う」
「う?」
「う〜ら〜やましぃ〜な〜♪
こ〜んちくしょ〜〜♪
め、め、めめめ♪
めり〜くりすまぁ〜す♪」
「……ユ、ユウ君?」
「くぅ〜〜〜っ!! あの幸せものめぇ〜〜〜っ!!」
「……ユウ君大丈夫?」
「このみ…今日くらいは言わせてあげましょう」
「タマお姉ちゃん…うん…」
「あの感動的な別れ!そしてクリスマスに再会!! ラブラブしやがって!うらやましすぎるぞ!!!
そうか!これがクリスマスパワーなのか!!クリスマスパワーはなぜアイツだけを味方する!!!」
「あの時!あそこにいたのが俺だったら! 俺ならば!
クリスマスパワーは俺のものだったのかもしれないのに!!
あのアイスは俺のものだったのかもしれないのに!!
あの髪も!あの唇も!!あのおっぱ…あだだだだだだだだだ!!割れる割れるぅぅ!!」
「雄二…ちょっと妄想しすぎっ」
「でも…タカ君たちホントに幸せそうだね」
「そうね…ささらがアメリカに行ってから、タカ坊のあんな顔見たのは久しぶりね…
…ホントささらがうらやましいわ」
「タマお姉ちゃん……」
「あら、このみ。今年のクリスマスは私も幸せよ。
だって、あんな寮に閉じ込められないで、このみと過ごせるんですもの」
「うん!えへ〜☆」
「つつ……あ、そういえば…」
「どうしたのユウ君?」
「何か忘れてないか?」
「何かって何よ?」
「いや、だから、いつもならもっと騒がしいというか、流れに逆らえないっていうか…」
「……」
「……」
「……」
「「「まーりゃん先輩!」」」
「あのまーりゃん先輩が現れないとは……これもクリスマスパワーなのか…」
「何ワケのわからないこと言ってるのよ」
「あ、いた」
「え」
「あそこ!あの看板のカゲに……なんかカメラを持ってるよ?」
「…またあの人は…」
「…やっぱりクリスマスパワーもまーりゃん先輩には勝てなかったか」
「ん〜、カメラ持って何してるのかな?」
「いやまぁ、なんとなく想像つくけどな…」
「そうね…」
「新学期が始まりゃ、その謎は解けるだろうから気にするな。このみ」
「そうなの?
…あ、タカ君たちも気付いたみたい…」
「ああ…遠くから見てると穏やかな時間の流れが慌しくなっていくのが、よく分かる…」
「あ、こっちにも気付いたみたいね」
「タカ君が手を振ってる。タマお姉ちゃん、ユウ君行こうよっ」
「ふふ、なんだか、こうやって生徒会全員が揃うのも久しぶりね」
「クリスマスパワーのおかげだな」
「あーはいはい。そうね。」
駄文失礼しました。
学生以来、ルールに従った半角英数字以外書いたことが無いので…
クリスマスに免じてお許しください。
おそらく、ささらのアイス屋はまだ出てなかったと思うので…
一時帰国したささらっていう設定です。
ホントはささらのアイスを、ナマコとカエルにしようかと思いましたが、さすがにやめました。
30分ほどでサッと書いたので、最後のオチとかヒドイです。はい。
まーりゃん先輩が一言も喋らないのは、私じゃあの人を表現するのはムリだからです。はい。
その他色々ツッコミがあると思いますが、すみません。もうこんなことはしません。
もし宜しければ、どなたかアイス屋ささらVerを書き直してください。
お願いします。
それでは皆さん、良いクリスマスを。
ここまで純愛系やコメディ系以外への拒否感が強い奴ばかりなら、
いっそのこと鬼畜系、ブラック系は投稿禁止にしちまえば?
仮にも21歳以上の大人なんだから、本当なら読みたくなければ
スルーすりゃいいだけの話なんだが。
鬼畜とかブラックでも読みたい奴はいるから
読みたくなければスルーで
851 :
図書委員長:2005/12/25(日) 09:22:11 ID:KSCRU5FS0
やあ (´・ω・`)
ようこそ、僕たちの書庫へ。
例によって愛佳君サービスの紅茶を、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、反応は散々だったね。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、作者は何も言われないでおかしな方向に偏るのを嫌う奴だし、その意味でおか
しい点を指摘してくれたことについては君たちに感謝している。
正直エロを取ったら何も残らない話しか書けないヘタレ作家なりに日々少しずつでも
マシなものを残していきたい。彼はそう思ってるんだ。
さしあたって今後僕の話は彼の巣で続けていくことにしたし、どんな意見であれ忌憚
のない感想は彼は歓迎するからどうか暖かい目で見守ってやって欲しい。
じゃあ、現実と戦っていこうか。
あの時点で
>>828の歪んだ欲望を満たしてやるのは俺しかいないとおもた。反省はしていない。
ジャガバタとウニのダブル…
これってグロじゃねーんですか?(つД`)
854 :
828:2005/12/25(日) 11:01:57 ID:dTrEvH8kO
>>852 わーいわーい
ありがとう^^
このみに逢いたくて逢いたくて逢いたくて逢いたくて仕方無かったんだ^^
しょうがなく黒このみCG見て過ごしてたんだけど、眠くなっちゃって…
やっと逢えた。ボク、うれしいよ!!メリー…クリスマス。
>>アイス屋さん
またアイス屋が見られるとは…GJ!!続編期待してます。
>>846 GJ!
欲を言えばまーりゃん先輩の台詞も欲しかった
書いたのアイス屋じゃないだろ
商店街のあちこちにはクリスマスの飾り付けがされていて、店先には
「クリスマスセール!」とか書かれたのぼりが立っている。
当然、流れてくる音楽はジングルベルとかばかり。
「浮かれてるわねえ」
そう呟きながら店を回る。
まったく、誰も彼もクリスマスクリスマス…クリスマスしか頭にないのかと。
親友の愛佳も、今年は妹の郁乃ちゃんが無事退院して家に戻ってきたから
家族で過ごしたいとか言って謝ってきた。
いや、別に謝らなくたっていいんだけどさ。
「ほんと、浮かれてる」
雑貨店の店先のワゴンに安売りされているクラッカーを手に取る。
浮かれてるわよね…ほんっとに。
『由真は河野くんと一緒に過ごすんでしょ?』
にこにこしながらあたしにそう言った愛佳の顔を思い出す。
にこにこというよりはむしろ「にやにや」だった気がする。
何も答えられないでいると「ごちそうさま〜」とか言って去っていったし。
表情だけで読み取られてしまったようだった。
「〜〜っ」
ああ、そうよ。今年はあいつと過ごす気満々なんだからっ。
浮かれてる?そう、浮かれてる。みんなこんな時だから浮かれている。
けど、多分…今一番浮かれているのはあたしなんじゃないか。
そう思えるほど浮かれていた。
だからさっきの呟きはそれをごまかすためでしかなくて、ちょっと
気を抜くと顔がにやけてつい身もだえしそうなのだ。
そんなことしたら周囲から変な注目を浴びるのは必至なので、何とか
取り繕って抑えているんだけど。
「………」
クラッカーをさらに4〜5個ほど掴み取って店の中に入っていくと、
店員さんの姿を探しながら呼びかけた。
「すみません、これくださ〜い」
ピンポーン。
「タカく〜ん」
呼び鈴と同時にこのみの声が玄関から聞こえてきた。
ドアを開けると、袋を持ったこのみとその後ろにタマ姉も立っていた。
「あら、まだ由真ちゃん来てないの?」
「1時の約束だから、もうすぐ来ると思うけど」
「そう。もし一緒にいるんだったらお邪魔かなと思ったんだけど」
「そ、そんなことないって」
「あら、もしキスとかしている場面に『偶然』来ちゃったら困るでしょ?」
「そんな時に狙って来る気なのか…」
タマ姉としては軽いジャブ程度のつもりなんだろうけど、どうも、その…
未だにそういう攻撃には免疫が弱い。
「ま、いいわ。それより私たちからのおすそわけ」
「おすそわけ?」
「シャンパンと、あと星とかの飾りだよ」
そういえばシャンパンは買っておいたけど飾りつけはしていない。
そこまでしなくていいかなと思っていたから、せいぜい掃除くらいしか
してなかったのだ。
「タカ坊、もしかして何もしてないの?」
「ん、ああ。部屋の片付けだけ」
「ダメダメ。女の子を、しかもクリスマスに家に呼ぼうっていう男が
飾り付けの一つもしてないんじゃ呆れられるわよ」
「タカくん、わかってないよ」
わかってないらしい。
料理は由真が来てから一緒にする予定だったから材料は準備しているけど
手をつけていなかった。
で、後やることっていっても片づけくらいしか思いつかなかったのだ。
「まったく…まだまだ私達がいないとダメみたいね」
「それじゃ飾りつけを始めるであります!」
「ちょ、ま…」
「はいはい、つべこべ言わずにタカ坊も手伝う」
「隊長、作戦開始でありますよ〜」
タマ姉とこのみにずるずる引きずられ、俺は居間の方に連れて行かれた。
「うん、これでよしっと」
「見違えたね〜」
居間は見事なまでにクリスマス仕様に早変わりとあいなった。
いつの間にやら小さいクリスマスツリー(イルミネーション付き)まで
窓際に置かれていたりして。
「さてと、それじゃ後はタカ坊に任せましょう」
「そうだね」
ゴミを片付けると、二人は玄関に向かった。
俺もその後をついていく。
「がんばりなさいね。あとはタカ坊次第よ」
「それじゃね〜」
「ん…ありがと、二人とも」
俺の言葉にこのみとタマ姉はうなずき返すと、「メリークリスマス!」の
言葉を贈って帰っていった。
それから居間に戻り、俺は辺りを一通り見回すと呟いた。
「ありがたいんだけど…片付けが大変そうだな」
我ながらロマンもへったくれもない一言だった。
「ちょっと遅くなっちゃったかな」
買い物袋を提げて、たかあきの家への道を急ぐ。
結局、目に付いたものを色々と買い漁ってしまったので荷物が相当
増えてしまった。
さらに言うと…小遣いがちょっとピンチかも知れない。
「でも、ま…いっか」
一年に一回しかないイベントなんだから、たまには奮発しないと。
買ったものを見ると、奮発する方向がちょっと間違っている気がしなくも
ないんだけど。
「ふう…やっと着いた」
時間は1時を少し過ぎていた。
この後、二人で料理を作って、それからシャンパンで乾杯。
それから…それから。
(な…何を考えてるのよあたしはっ!?)
頭をぶんぶん振って浮かんでしまった変な考えを打ち消す。
でも、顔はまだ真っ赤だと思う。
「深呼吸、深呼吸…」
ちょっと緊張しながら呼び鈴を押す。
少しして、たかあきが廊下を歩いてくる音が聞こえてきた。
「由真。悪いな、ここまで寒かったろ?」
「ん、そうでもないよ」
たかあきのことを考えていたらあまり寒さも感じなかった…とか
言ったらどう反応するだろうか?
言ってみようかと思ったけど、あたしの方が恥ずかしい思いをしそう
だったから言うのはやめた。
「ほら、手が冷えてるぞ」
「あ…」
たかあきの手があたしの冷たい手を包み込む。
あったかい。この寒さで冷えた身体が全身温まるような感覚だった。
「上がろうか。先に暖まってから料理しよう」
「うん」
吐き出した白い息が空に向かって立ち上る。
ふと見上げると、白いものがゆっくりと降り始めていた。
これもお約束といえばお約束過ぎるけど…今日はクリスマス。
こういうお約束なら歓迎したい。
「由真…」
「たかあき――」
「「メリー・クリスマス――」」
>>863 あったけぇ…あったけぇよ…。
GJ!
由真可愛いよ由真(;´∀`)
勢いだけで書いてしまった。今は反省している。
そのせいかタイトルも浮かばなかった。
>>846 GJ!ささらかわいいよささら。
>>865 いやいやいや、GJ!です。
由真、可愛かっただけで十分。
>>865 GJであります。
この二人のクリスマスは楽しそう!
869 :
雄二エンド:2005/12/25(日) 23:45:53 ID:X9rhWFco0
日曜洋画劇場も終わった。
もうすぐクリスマスは去り、明日には商店街の煌びやかなイルミネーションも外されて、
年末へと慌しくなっていくのだろう。
俺の隣には
一緒に、手を繋いでデートをしたり、笑いあったりする女の子ははいない。
―――もしも、
もしもあの時、あの場所でもっと積極的になっていたら、
俺の隣には、誰かがいたかもしれない。
後悔先に立たずとは言ったものだ。
「貴明ー晩飯できたぞー」
今では、私が彼の彼女。彼の名前はもちろん雄二。
なぜなら彼はどう見ても精子です 本当にありがとうございました。
気が付くと珊瑚ちゃんが出かける準備をしていた
「珊瑚ちゃん出かけるの?」
「ごめんな貴明。さっき長瀬のおっちゃんから電話があってん」
「すみません貴明さん私のレポートを来栖川の方々に発表しに行く事になってしまって・・・あ、大丈夫ですよ『今回の』レポートには昨晩のことは伏せておきますから」
あの〜『今回の』ってところがすっごい気になるのですが・・・
「じゃあ瑠璃ちゃんと貴明二人で仲良くお留守番しとってな♪」
そっか珊瑚ちゃんもイルファさんと一緒に研究所の方に行くんだねうんうんそれで俺と瑠璃ちゃんは二人で留守番をして・・・ん?
「「ふ、二人っきり〜!!」」
ついつい瑠璃ちゃんとハモってしまった
「さんちゃんウチもついてく〜すけべーな貴明と二人きりで居たら何されるかわからんもん」
「もう昨日いろいろしたやん。貴明も瑠璃ちゃんらぶらぶ〜なんやからなんも問題ないやんか」
珊瑚ちゃんのストレートな物言いに二の句が告げなくなる
「ちょっと待ってください!」
横からイルファさんの抗議が入ってきた
おぉ流石ですお願いですどうかこの娘の思考を改めさせてください
と思ったら俺の方に向き直り
「いいですか貴明さんあくまで瑠璃様は私のものなんです。ですから私の分もちゃんと残しておいてくださいよ」
「ウチ、イルファのものちゃうぅ〜!」
「え〜と残すってなにを?」
あぁ精神力を削られると分かっていながら思ったことがつい口からこぼれる
すると艶かしく身体をくねらせながら
「そんな恥ずかしいこと言えません」
いやいやいやすみませんもう思う存分言ってますから勘弁してください
「あ、そやおっちゃんとこ行くついでにみっちゃんとしっちゃんも迎えに行こうか」
「そうですね早くミルファたちにも早くこっちの生活に慣れてもらわないとですしそうしますか。あ、珊瑚様急がないとそろそろバスの時間ですよそれでは瑠璃様貴明さん行って参ります」
「そんじゃふたりともお土産楽しみに待っててな〜」
そんなやり取りをしながら珊瑚ちゃんとイルファさんは出かけていった
先に相手を行動不能にしてから自分の思うが侭に振舞って問答無用で進めていく高等話術
イルファさんは意図的にそう進めてた気がするけど珊瑚ちゃんは無自覚でやってた感じがする
兎も角こうして取り残された俺と瑠璃ちゃんは二人で留守番をすることになった
一応翌朝と繋がってたりしますが気にしなくても生きていけます
>>747さんの意見に触発されて懲りずに書き始めました
が、早く珊瑚ちゃんとイルファさんを追い出して瑠璃ちゃんと二人っきりにしたかったはずなのに追い出すのにここまで時間がかかりました二人とも勝手気ままに動き過ぎorz
クリスマス過ぎたのにクリスマスネタで考えるのは果たしてアリなんでしょうか
まだ余韻は残ってますよ。
売れ残ったケーキが安売りされてたり、
外し忘れられた飾りが、少しだけ残ってたり。
うちなんかクリスマス前から餅が飾られているから
クリスマス気分を味わうのはここぐらいしかない
>>874 まだ片方だけではないけどこれから期待してます
>>875 ちょっと遅れたクリスマス。
良いシチュエーションじゃないか?
『ごめん、ささら。本当に申し訳ないけど、今回は協力できない…』
今にも泣き出しそうな顔で、環さんは私にこう言った。
恐らく話してくれないだろうと思いながら一応事情を聞いたら、意外な事にあっさり全部話してくれた。
貴明くんのことをずっと好きだったこと、昔告白して断られたこと、
その告白が、貴明くんを狂わせてしまったこと。全て、包み隠さずに教えてくれた。
『タカ坊には…自分がないの。自分の意見を押し殺して、人を立てる子なの。
お願いささら、タカ坊を救ってあげて。勝手なお願いだっていうのは分かってる。
でも、それは貴方にしか出来ないから…』
そういう環さんの表情は寂しげだった。きっと、今でも貴明さんのことが好きで、
貴明さんのことを自分で救いたいのだろう。しかし、同時にこうも思っているはずだ。
『自分のせいで壊れてしまったものを、自分の手で治すことなんて出来ないし、
そんな資格は自分は持っていない』
と。環さんにも、あんな弱い一面があるなんて。どこまでも強く、
孤独でも自分を貫ける人だと思っていた。いつもの環さんなら、
貴明さんを引っ張ってでも正しい道に修正させるだろう。
恋というものは、あの環さんですら弱くしてしまうらしい。
「でも、困ったわ…」
環さんの協力が望めないとなると、誰の協力を得ればいいのだろう。
私が直接貴明さんの家に行ったとしても、居留守を使われるのが関の山だ。なら、どうすれば。
「…このみちゃん!」
確かこのみちゃんも貴明さんの家のスペアキーを持っていたはず。
それなら、このみちゃんの協力が得られれば、貴明さんに会えなくても、
私の思っていることを伝えることは出来る。
「む〜…」
しかし、彼女である私も持っていないスペアキーを、
このみちゃんや環さんが持っているというのはちょっとおかしいのではないか。
確かに私は今アメリカに住んでいるし、このみちゃんや環さんは
貴明さんのお母さんに後を任された人たちだ。でも…ちょっと嫉妬してしまう。
「いけない、嫉妬してる場合じゃなかった」
私は走り出す。少しでも早く、貴明さんに会いたいから。
上手く仲直りできたら、これまで言えなかったことも全部言おう。
きっと、貴明さんはあわてるだろう。あわてる貴明さんを想像して、ちょっと笑ってしまった。
「というわけなの、このみちゃん、協力してもらえないかしら?」
「むむ〜…タカくんったらまだそんなことを言ってるでありますか」
突然家に来た久寿川先輩から聞いたところによると、タカくんはまだ自分の幸福を見よう
としていないみたい。そういう態度が、逆に久寿川先輩、タマお姉ちゃんを傷つけてると
思うんだけど…タカくんは、それに気付いてないのかな?
「分かりました、全面的に協力するでありますよ!」
「本当!?ありがとう、このみちゃん!」
でも、協力するって、具体的に何すればいいのかな…?
「ぐ、具体的にはどんなことをすればいいのかな?」
「えっと…そうね、貴明さんの様子を見てきてもらえるかしら?
環さんから聞いてはいるんだけど、私のこととかは何も聞いてないみたいだったから」
「了解であります!」
タマお姉ちゃんでも、そんな重大なことを忘れることがあるんだ…このみの責任は重大だね!
「では、さっそく行ってきますね。久寿川先輩はここで待っててください!」
「ええ…頼りにしてるわ、このみちゃん」
すがるような目でこのみを見る久寿川先輩。先輩に頼られるなんて…
ちょっと偉くなったみたいで嬉しいかも。これは、なんとしてもタカくんの
様子を事細かに久寿川先輩に伝えないと!
矢のように家を飛び出すと、すぐタカくんの家に着く。
一応チャイムを鳴らしてみるけど、反応は無い。
「居留守なんて使ってもダメなんだからね!」
鍵を開けようとするが、ドアに鍵はかかってない。もう、タカくんったら無用心なんだから!
家に入ると、真っ直ぐにタカくんの部屋に向かう。
「タカくん、観念するであります!」
「このみ…?今、放っておいて欲しいんだけど」
「そうはいかないであります!久寿川先輩から、何があったか全部聞いたんだからね!」
「…ささら、このみにまで相談に行ったのか」
なんだか呆れた顔をしたタカくん。む〜、何でか分からないけど馬鹿にされた気分だよ。
「と、とにかく!タカくんのその態度が、久寿川先輩もタマお姉ちゃんも傷つけてるんだからね!
タカくんは、そんなのどうでもいい事だって言うの!?」
「…そんなつもりはない」
「じゃあ何で!?久寿川先輩、タカくんと会って話しがしたいって言ってた!
このみ、前も言ったよね?久寿川先輩は、ちゃんと謝って許してくれない人なのかって。
タカくん、違うって言ってた。なら、何で謝らないの!」
いつもより強気なこのみを見て、タカくんは少し怯んだみたいだった。
本当のことを言えば、これぐらいじゃ言い足りない。もっと言いたいことがある。
でも、これ以上言っても逆効果にしかならないと思ったから、これぐらいにしておいた。
「…正しいのは、このみの意見だって分かってる。でも…」
「でも、何?」
「もし、もしささらと別れることになったら?ささらと口喧嘩になったりして、
俺がささらを傷つけるようなことを言ってしまったら?俺は、ささらを傷つけるのが、怖い。
今の俺は、ささらを傷つけるようなことを、平気で言ってしまうかもしれない。
今回だけは、タマ姉の言うこともこのみの言うことも聞けない。たとえ雄二や春夏さんが来ても、ささらには会えないんだ。ごめん…」
「タカくん…」
タカくんにそこまで言われて、無理やり久寿川先輩に会わせるわけにもいかない。
とりあえず、久寿川先輩に今のことを報告しよう。
「そう、貴明さんがそんなことを…」
「そうなんです。タカくん、自分が間違ってるの分かったらすぐ謝る人なんだけど…」
私と貴明さんが似ている、というママの言葉を思い出す。貴明さんは、他人の心の痛みを
自分の物のように受け止めてしまう。きっと、環さんのことで、自分を出すと人を傷つけてしまう
と思ったのだろう。だから、人に優しくて、自分が無い。悪く言えば、
自分に嘘をつき続けて、浅い関係に逃げている。誰からも嫌われたくない、
それが貴明さんの本心なのだろう。
私も、同じ。ただ、私は最初から人と付き合うことを拒絶していた。
付き合った後で、人を傷つけるのは嫌だから。なら、最初から付き合わなければいいと思った。
根本は、私と同じ。とても、寂しがり屋。
「分かった。このみちゃん、貴明さんの家のスペアキー、貸してくれる?」
「え?でも…」
「貴明さんと話をしてくる」
こんなことで諦めたら、一生幸せになんてなれない。貴明さんは、何度も私を救ってくれた。
今度は、私が貴明さんを救う番。
「はい、これです」
「ありがとう」
「あの!…頑張って、ください」
「ええ。必ず、貴明さんを取り戻して見せるわ」
私の顔を見て、このみちゃんは安心したようだった。
今、私は自信ある表情をしているのだろう。貴明さんと会ったときに、
それが保てるように。私は、このみちゃんの部屋を後にした。
7話です。いかがだったでしょうか。
だんだんささらが言ってる事がマンネリ化してますね(汗
最初から強く、ではなく迷って迷って誰かに押されて成長、という形にしたほうが
良かったのかもしれません。
今回は、批評してくださった方の意見を参考に、―○○視点―というものを入れていません。
それでも、誰の視点で見ているのかは、多分分かっていただけたと思います。
ただ、このみの一人称がとてつもなく難しかったです。自分の作風にはあっていないかもw
次回で最終話!と思っていたのですが、何かまとまりきらなさそうなのでもう少し分量が増えそうです。
次回は、貴明最大のヘタレを見せられたらなぁと思っています。
ささらシナリオの幼児退行ばっかりやってたら、ささらの元の話し方が分からなくなってきた…w
888 :
名無しさんだよもん:2005/12/26(月) 13:41:55 ID:tI3d6E4K0
GJ!!
すばらしい。頑張って下さい!
ダレテキタ
>>887 GJ!!!!タカ坊殴りたいよw
それはそうと今日は月曜だよな?
ところでマナハの人はどうなったんかな?
895 :
時事ネタ1:2005/12/26(月) 22:28:17 ID:oggaKViP0
ある日の放課後、貴明は雄二とこのみの三人で駅前を歩いていた。
突然このみがあるビルを指差す。
「あれ?あのホテルってこの前出来たばかりだよね、もう壊しちゃうんだ」
見ると数ヶ月前に建てられたばかりのホテルが、早くも無残な姿を晒していた。
「あぁ・・・ あのホテルな、偽装設計と手抜き工事でかなりヤバいらしい。ちょっとした地震でも倒壊の恐れありだってさ」
「このみはニュースとか新聞を見ていないのか?あちこちで大問題になってるぞ」
さすがにこのみも「ムッ」ときたらしい。
「見てるよ〜」と明らかに不機嫌な答えが返ってきた。
ま、その程度の話題ぐらいは知っていてあたりまえか。
二人で盛り上がっていると、今まで黙っていた雄二が口を開いた。
「笑い事じゃねぇぜ、親父曰くあのホテルのオーナーはウチの親戚なんだ」
「なんでもカリスマとかいう野郎に騙されたらしい。資産の大半が借金の抵当になっているんだとよ」
被害者が親戚とはいえ、かなり腹を立てているようだ。
「それによ・・・・」
声を荒げていた雄二が急に元気なくつぶやいた。見ると顔色が悪い。
「どうした、まさかお前のとこも!」
897 :
時事ネタ2:
「ちげーよ、俺、アレを見ていると・・・」
さらに顔色が悪くして、解体中のホテルを指差す。
巨大な鋏がコンクリートを砕き、鉄筋と鉄骨を器用に切り裂いていた。
「アレの事か」
「そうだ・・・、姉貴のアレだ。本当にコンクリートぐらい握り潰しそうだぜ」
トラウマになっているんだな。
その時、貴明は背筋が凍るような殺気を覚えた。
後ろには閻魔すらビビりそうな顔をしたタマ姉が仁王立ちしていたのだ。
「ゆ・う・じ」
「誰がコンクリートを握り潰すのかしら・・・」
すかさず、お得意のアイアンクローが雄二を襲う。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ・・・ 割れる!割れる!割れる〜ぅ!」
貴明は反射的ににこのみの腕をつかんで走り出した。
「ちょっと!タカくん」
「いいからこい!とにかくあそこにいては危険だ」
「う、うん」
親友を見捨て良心が痛んだが、構って入られなかった。
翌日、学校で雄二の入院が伝えられた。
遊んでいて怪我(頭蓋骨骨折)をしたとの名目である。
貴明は心の中で親友に詫びた。
「雄二、すまねぇ。見舞いには例の食玩を持って行ってやるからな」
アホSS失礼しました