【バカね】久寿川ささらスレ その3【本当にバカ】

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678久寿川ささら―Snowman―
オーバーブッキング。
大理石の上を歩く靴音がやけに高く響く、高校生なんかには場違いなホテルのロビーで、確かに聞こえたその言葉を、俺は呆けたように呟いた。
今夜、ささらと泊まるはずだった部屋には、既に見も知らぬ先約人がチェックインしているとの事だった。
そんな馬鹿な。
思いつく限りの英単語を総動員して訴えた俺の不平を、ホテルマンは上品な微笑で受け流すと、お帰りはあちらで。この時間帯ならばまだ取れるホテルはありますよ、などと告げた。
クリスマスイブのニューヨークで空いているホテル? 悪い冗談のようにしか聞こえなかった。
半年近く前から下準備を重ねてきたのに。
ささらと二人で決めた、二人だけのホテルだったはずなのに。
足取りも重く、玄関へと足を向ける。暖房の効いたロビーを一歩離れると、もうそこには真冬の風が吹き荒れていた。
679久寿川ささら―Snowman―:2005/12/14(水) 00:26:12 ID:CBJBLHLE0
予想通りと言うか、何と言うか。
教授の話はこの特別な日でも相変わらずいつ終わるとも知れなかった。
既に講義室の大半の生徒がノートを放り出し、苛立たしげに髪をかきむしったり、隣りの友人と不平を言い合ったりしている。
勤勉なアメリカの大学生、とは言っても、彼らだって今日ぐらいはさっさと講義を終わらせて街へ繰り出したいのだ。
そんな彼らの様子を微笑ましく思いながら、しかしささらもまた、何かに背中を小突かれているかのようなそわそわした気持ちを抑えるのに必死だった。
もう、あの人はアメリカに着いているだろうか。
もう、マンハッタンにいるだろうか。
二人っきりでお泊りするホテルで、マフラーやコートを放り出して、今か今かと待ちくたびれてはいないだろうか。
一介の聴講生に過ぎない自分自身は、教授の目を気にせず堂々と教室を出て行っても良いのだが。
ふと、そんな魔が差して、彼女は苦笑いを浮かべた。
さっき、お母さんに言ったはずじゃない。
私だってがんばらなきゃって。
それに、今夜は、ずっと二人っきりなんだから。