FFの恋する小説スレPart2

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1名前が無い@ただの名無しのようだ
文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎!
皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン
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 ※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。
 ※sage推奨。
 ※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。マターリいきましょう。
 ※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。
 ※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。
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前スレ FFの恋する小説スレ
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/150

初代スレ FFカップルのエロ小説が読みたい
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1048776793/l50
*廃スレ利用のため、中身は非エロ

>>2-10のどこかに詳細、及び関連スレッド
2投稿時のご注意など:03/08/13 21:49 ID:LLObPZt5
【お約束】
 ※18禁なシーンに突入したら、エロパロ板に書いてここからリンクを貼るようにしてください。
  その際、向こうに書いた部分は概略を書くなりして見なくても話はわかるようにお願いします。
【推奨】
 ※長篇を書かれる方は、「>>?-?から続きます。」の1文を冒頭に添えた方が読みやすいです。
 ※カップリング・どのシリーズかを冒頭に添えてくれると尚有り難いかも。

 初心者の館別館 http://m-ragon.cool.ne.jp/2ch/FFDQ/yakata/

◇書き手さん向け【以下は千一夜サイト内のコンテンツ】
 FFDQ板の官能小説の取扱い http://yotsuba.saiin.net/~1001ya/kijun.html#kannou
 記述の一般的な決まり http://yotsuba.saiin.net/~1001ya/guideline.htm
◇関連保管サイト
 FF・DQ千一夜 http://www3.to/ffdqss
◇関連スレ
 FF・DQ千一夜物語 第413夜
 http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1048322547/l50
◇21禁板
 ★FINAL FANTASY 壱〜壱拾&拾壱エロパロ小説スレ
 ttp://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1048756173/1
 FF・DQかっこいい男キャラコンテスト第6幕
 ttp://www2.bbspink.com/test/read.cgi/801/1042383689/1-2

 どうしても議論や研鑽したい方は http://book.2ch.net/bun/
 挿し絵をうpしたい方はこちらへどうぞ http://ponta.s19.xrea.com/

◇専用ブラウザー http://www.monazilla.org/
◇トリップ http://www.2ch-trip.com/
3関連スレ:03/08/13 21:49 ID:LLObPZt5
◇カップリングスレ
 【絶対】ガラフ×ファリスに萌えるスレ【皆無】
 http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1029940763/l50
 エッジ×リディアを応援するスレpart5.5
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 【マジかよ‥】FF都市伝説【怖〜〜】
 http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1051088516/l50
 泣くぞ すぐ泣くぞ 絶対泣くぞ ほ〜ら泣くぞ 5
 http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1059064131/l50
 FF学園その12〜血の十二限〜
 http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1056293409/l50
4名前が無い@ただの名無しのようだ:03/08/13 21:53 ID:LLObPZt5
と、言うわけで前スレのテンプレ案から一部加筆修正してますがスマソ。
見切り発車過ぎたでしょうか?


今後もこのスレの賑わいを祈念しつつカキコ。
5雫夜 ◆sizukTVGK. :03/08/13 22:06 ID:w7+u9YhY
>>1さん、モツカレ〜!!
修正dクスです。

前スレ、容量怖くて感想カキコできませんでした…スマソ。
6白 ◆SIRO/4.i8M :03/08/13 22:22 ID:bRETeRu5
1さん、雫夜さん乙華麗様でした!
新スレおめでとうございます。
7雫夜 ◆sizukTVGK. :03/08/13 22:44 ID:w7+u9YhY
では前スレで書けなかった感想をば。

>>ドリルさん
まずはゴメソ…盾持ってるの、ロックだと思ってました。その意識があって前の感想レスは、見当違いなこと書いてます。
盾をエドガーに『持ってきた』のがロックでつね…オオオー オオオー。
で、リルムは? 動揺してどこかに行ってしまったとか?
エドガーとリルムだけのシーンがありそうな予感が…。
>ルールー話
リクエスト頂いたので書かせて頂こうかと思います。×ワッカでもいいでつか?
アーリュのEDネタは実は作っていたので、またしてもドリルさんに驚いてしまったり。

>>鈴さん
>いつもの場所、いつもの時間。 いつもと違うのは、二人の距離。僕はユウナちゃんと少しだけ離れて座っていた。
テンポのいい文章ですごく好きな一文。だけど切ない…少しの距離っていうのが。
この距離が縮まるときが、バリャたんがアルベド族の血が混じったユウナんをまるごと受け止めるときなんでしょうね。
それにしてもバリャたんママ、エボン僧とは…予想外で驚き。
前スレの私宛感想レス、ありがdでした。深く読んで下さっていて、嬉しいです。
新スレでもバラユウと共に、パブロ×シモーヌにも期待していますので…てか、書いてホスィ。
8新スレお祝い:03/08/13 22:53 ID:6seeWTkz
旅の目的地、ザナルカンドは目と鼻の先だった。
霊峰ガガゼトを抜け、降りてきたのは荒れ果てたハイウェイの残骸と瓦礫の山。
黄昏の彼方に炎は燃え尽き、今はただ、蛍火のようにちらちらと瞬く幻光虫のみが辺りを彩っている。
ここでいったん休もうと初めに言い出したのは誰だったか、
旅人達は小さな焚き火を取り囲むようにして座り込んでいた。

言葉を発する者は誰もいない。
まるで、喋ることで無情にも流れていく時間を意識することを恐れるかのようだった。
喋らずとも、心は繋がっているのだとその場にいた誰もが思った。
想いはたった一つだった。

ふと、一人の青年が立ち上がった。
今生の別れを惜しむかのような、その場の雰囲気に嫌気がさしたのかもしれない。
彼はゆっくりと歩き出し、愛しい娘の肩口へと手をやった。
この世界で出会った、誰よりも愛しい娘。
彼女を守り、戦って、ここまで来た。
娘はその手をまるで慈しむかのように頬ずりした。

青年は、仲間達の座る場所から少し離れた、小高い丘の上に立った。
遙か遠くに、世界の果てが見えた。
彼は何か言いかけて口を噤み、また意を決したように唇を開いた。

……最初かもしれないだろ、だから早く伝えておきたいんだ……

「   新スレ、おめでとう!!   」
9鈴 ◆BELLSBdFOI :03/08/13 22:58 ID:6seeWTkz
…とか書いてるうちに初レスを逃してしまったわけですが(w
気を取りなおして…

1さん、スレ立て乙カレーでした。ありがとうございます。
同じく今後のこのスレの賑わいをお祈りしつつ…
あれ?初心者の館別館へのリンクはずしたんですか?
アレは人大杉や爆撃の際に大変重要なんですが。

何はともあれ1さん乙。
11姐 ◆ane/8MtRLQ :03/08/14 09:45 ID:AM82ZSln
>>10
>>2にリンクあると思いますが?違うのかな・・・。

1さん、乙です。
とりあえず保全のために書きかけの物を貼るだけ貼ってしまうテスト。
シュウの出てくる話です。
12Fire(仮):03/08/14 09:46 ID:AM82ZSln
戦場は予想外の展開の繰り返しだった。
「どういう事なのよ全く!」
シュウは苛立ちを隠しきれないでぼやいた。
「どうやら私達が一番『ハズレ』引いたみたいね」
サラは予備のマガジン二つをテープで止めながらシュウに応えた。
現在彼女達がいるのはビルの最上階だった。
「サラ、それやると装填口に負荷がかかるよ」
ベルナールがおそるおそるサラに声をかけた。
「平気。常時やってるわけじゃないしこのマガジン、強化軽量プラスチックだから」
サラはベルナールの方さえ見ずに言った。
「私の武器の心配より、自分の武器の心配したら?」
サラの言葉にベルナールは困ったようにシュウを見た。
「やっぱり、怒ってる?」
「怒っているというより」
シュウは槍の切っ先をハンカチで磨きながら言った。
「減点はすごいだろうなと思ってるけど」
「やっぱり……」
ベルナールは落ち込んだようにため息をついた。
「ともかく。対策を練らないとね」
シュウは落ち込まれた所で何の足しにもならないと判断して意見を求めた。
「どう、陥落(お)とす?」
13Fire(仮):03/08/14 09:47 ID:AM82ZSln
現在の状況を整理すると以下の通りになる。
ガーデンに依頼があったのは32時間前。
クライアントはガルバディア大陸東部のウィルバーン自治州にある地方都市ウィルディア市長。
自治区とは名前だけで年々ガルバディアのデリング政権からの干渉が強まっていた。
現在の市長は穏健派として知られていたがその気弱さゆえ、デリング政権に迎合しているとの反発が高まり、
自治州の特殊部隊の一部が反政府テロを起こしたのだ。
州幹部がガルバディア軍およびガルバディアガーデンに混乱の制圧を依頼したものの、官僚体質の上層部の対応は
曖昧でまるきり埒があかない状態だった。
そのため市長の独断でバラムガーデンのSeeDへと依頼が持ち込まれた。
SeeD実地試験の課題としてシュウ・ツォイユエを班長とするC班はテロリストの占拠したビルの奪還作業の補助を命じられた。
今回テロリストが占拠したのは市内中央にある電力会社の地方本社ビルだった。
そのビルは市内全体の電力配信を制御しており、オール電化システム導入のモデル地区でもあるウィルディア市の心臓と
言って良いビルで当然、ターゲットの本体はそこにいると思われた。
しかし特殊部隊から脱走した人数と占拠ビルにいると思われるテロリストの数が合わない事が判明した。
SeeD部隊は重点的にそのビルの制圧に配置され候補生に割り当てられたのはテロリストがテロ決行前に拠点としていたと
思われる雑居ビルの調査と制圧だった。
拠点自体が試験開始時には突き止められておらず、候補生達が候補の建物を当たり、それがわかった時点で
テロに関係した人間を割り出すように指令が与えられていた。
シュウ、サラ、ベルナールの三人は指定されたビルに侵入し、活動の痕跡を調査していた。
遺留品に通信機器でもあればそこから作戦指揮のための連絡記録を割り出せる。
「SeeDが本丸を陥落させる前に私達に証拠集めさせるなんて余裕よねえ」
サラがビルの内部を調査しながらこぼした。
「サラ。余計な発言していると発言記録に残るよ。残留部隊もいるかもしれないし」
シュウの注意にサラは首をすくめて沈黙した。
14Fire(仮):03/08/14 09:48 ID:AM82ZSln
「これ、なんだろう?」
ベルナールがビルの一室で奇妙な物を発見した。
シュウとサラが壁に付いているらしい『これ』と言われた物を見るために傍に寄った。
そして二人は同時に声を上げた。
「バカ!」
シュウとサラは同時に手を伸ばした。
二人の手が「call off」というボタンに届く数秒前にけたたましい音が響いた。
「え?」
戸惑うベルナールにサラが声を荒げた。
「体温感知式センサーよ!防犯システムの!」
シュウは即座にプロテスをかけた。
サラと、慌てたベルナールがそれに続いた。
「どっちから?」
シュウの声に目を閉じていたサラが告げた。
「上から、よ」
「ラッキー」
シュウはほっとしたように槍を構えた。
サラはサブマシンガンのマガジンを抜いた。
「何するの?」
「ホットロードに変えとくわ。特殊部隊だとプロテスくらいは使うかもしれないから」
サラは炸薬量を標準量よりも多く装填して爆発力を大きくした弾に装填し直した。
ベルナールはチタン製のトンファーを構えた。
「行くわよ」
シュウの言葉に二人は従った。
その言葉とほぼ同時に、戦闘服を着た男が3人現れた。
「なんだ、お前らは」
銃口を向けられた瞬間にシュウが壁を蹴って宙を飛んだ。
男達がそれに気を取られた隙にサラが魔法を放った。
白い靄が男達を包んだ。二人がスリプルによって倒れた。
15Fire(仮):03/08/14 15:43 ID:KodGLkOV
「レジストしたぞ!」
ベルナールが残った男に向かって駆け出すと同時に、男達を飛び越えて背後に回ったシュウが後頭部に回し蹴りを食らわせた。
「どう?」
シュウの問いにベルナールが答えた。
「テロリストに確定だな」
男達の首にはテロリストメンバーが付けている逆五芒星のマークの入ったドッグタグがかかっていた。
「じゃあ、民間人として扱わなくていいわね」
3人は手早く男達の手を縛った。
「これっておかしいんじゃない?」
サラが言った。
「テロ行為の最中なのに、なんでこんな所にまだ実行部隊みたいなのがいるの?」
普通ならこういう場合、残留しているのは戦闘能力に劣る人材のはずだった。
しかしこの男達は臨戦体勢時のように完全武装をしている。腕もそう悪くない。
「考えられるのは」
ベルナールが勿体つけたように言った。
「本体がミスした時のフォロー、または占拠したメンバーを救出するための別部隊」
テロで篭城した場合テロリストが生存できる可能性は相当に低い。
「向こうも特殊部隊ならバカじゃないだろうし」
「バカじゃないから、来たわよ」
シュウがベルナールの所見を遮った。
「私がとりあえず散らすわ」
サラが銃を構えた。
廊下の影からテロリストが来た瞬間にサラは引き金を引いた。
16Fire(仮):03/08/14 15:43 ID:KodGLkOV
「うわっ!」
発砲音の直後、叫び声と共にテロリストは倒れた。
「シュウ、ベルナール、潰して!殺してないから!」
サラは見事に相手の足だけに銃弾を当てていた。
相手もさすがにプロだけあって、倒れながらも銃口をこちらに向けて引き金を引いた。
シュウとベルナールはその間を掻い潜って飛び、相手の頭を殴って気絶させた。
「極力殺さないようにするのって、殺すより難しいと思うんだけどな……」
ベルナールは男達の手から武器を奪うと即座に叩き壊した。
SeeD候補生はなるべく対象を殺さないよう指令を受けている。
「間違って民間人殺すよりはマシでしょ?」
「サラ、さっきの警報、どう思う?」
シュウはサラに意見を求めた。
「そうね」
サラは少し考え込んだ。
「やっぱりここ、『当たり』なのかもね。あれ、ビルの標準装備じゃなくて急ぎで取り付けたやつだと思うから」
「だよね?ザッパ仕事もいいところだったもんね、見た目無視で」
「……どういう事だ?」
ベルナールが尋ねる。
「セキュリティ会社が付けたような警報装置なら見た目をもっと目立たなくしてるでしょ?メーカー品じゃない手作りで、
しかもセンサー部品むき出しなんてありえないわ。そんなもんわざわざ付けてるって事はここ、なんかあるよ」
「そうか……俺、メーカーの正規品しか見た事なかったから……」
ベルナールは自分の過失に落ち込んだようだった。
「帰ったら、ちゃんとおさらいしなさいよ」
シュウはやれやれ、というようにベルナールに言った。
「どうしよう、本部に連絡する?」
サラがシュウにたずねた。
17Fire(仮):03/08/14 15:44 ID:KodGLkOV
「後一時間は無理。無線封鎖してるから」
シュウはふう、とため息をついた。
十数年前から続いている電波障害のため、地球上の無線通信システムは現在ではほとんど使用できない。
ごく近距離なら軍用の特殊無線での通信は可能だが、電波障害の度合いは時間帯によって変化する。
それはほぼ月の周期と一致し、この地区では2時間ほど前から極端に強い電波障害が始まっている。
そのため、その時間帯に無線を使用すると確実に混線をきたす。
今本部と連絡を取ろうとしようものなら敵に傍受される可能性の方が高かった。
「有線連絡……って言っても、エマージェンシーコールとみなされた時点で試験放棄、だよね」
サラがため息をついた。
「決を取るわ。安全を優先して連絡するか、続行するか」
「私は続行希望」
「俺も」
シュウは二人を見てにやりと笑った。
「同意見ね。このビル、制圧するわよ」
「それにしても、次が来ないな」
ベルナールがつぶやいた時だった。
「下から、来るわ」
サラが階段のある方を見た。
「増援?」
ベルナールが期待に目を輝かせる。
「残念だけど」
シュウが首を振った。
「違うみたい」
階下から上がって来たのは敵側の増援だった。
18Fire(仮):03/08/14 15:44 ID:KodGLkOV
底に鉄鋲の仕込まれた特殊部隊員の靴が立てる独特の音でわかる。
「こういう時は下から追い立てるのがセオリーなんだけど」
サラがやれやれ、という風に首を傾げた。
「セオリー通りにいかないのが実戦てもんでしょ」
「違いない」
「とりあえず、敵に逃げられないように玄関のシャッターを閉めて、敵をおびき寄せながら最上階に後退。
屋上まで到達したら、交代でG.F.を使用して敵の兵力を削ぐ。いいわね」
ビルの中央管理室は最上階だった。
「私が囮になるから、管理システムのハックお願い」
シュウは二人に告げると階段の方へ向かった。
G.F.はなるべくなら使いたくなかった。
閉鎖空間でのG.F.の使役は下手をすると建造物の崩壊を引き起こす。
平常時ならG.F.の力を制御するのはさほど難しくなかったが乱戦になったらそうも言っていられない。
しかも召喚中に攻撃を受ければダメージはG.F.が受ける事になる。
本当に止むを得ない場合にG.F.を盾にする事もないわけではないが、召喚不可能なまでにダメージを負ったG.F.は
特殊な機材を使用しないと二度と使い物にならない。
「冗談じゃないわ」
シュウは独り言を呟くと手槍を握りなおした。
そしてわざと敵の目に付くように動いた。
慎重に距離を測って敵をおびき寄せる。
屋内にいる敵はとにかくどこかに潜むような余裕を与えないようかき回すに限る。
シュウは敵の銃弾を掻い潜って再び最上階を目指した。
19Fire(仮):03/08/14 15:51 ID:KodGLkOV
そして最上階に辿り着いた時、シュウは驚きに叫び声を上げた。
「どういう事よ、これ!」
屋上に出るはずの通路には頑丈な防火シャッターが下りていた。
「ベルナールがコンソール操作を間違えたのよ」
ベルナールがばつの悪そうな顔をしている横で、サラが忌々しげにキーを叩いていた。
次いでシュウの背後で再びシャッターの下りる音がした。
「とりあえず、敵は1階とこの下の階の間に閉じ込めたけど、私達も出るに出れないわ。
このシャッター、安全のために解除パスないと開かないのよ」
それが現状だった。


「陥落させる、というよりむしろ私達が陥落させられないように、という気もするわ」
サラがふうっとため息をついた。
「問題はこのビルの確保方法よね」
サラの問いにシュウは頷いた。
「こんなにまでしてこのビルを守る理由がわからないんじゃ、ビル破壊して逃げるわけにもいかないしね」
「あの……」
部屋の隅にいたベルナールが怯えたように手を挙げた。
「何?」
「もしかして、アレのせいじゃないかな」
シュウは軽く警戒しながらベルナールの指した場所にある物を見た。
「……何?」
「プラスチック爆弾。たぶん、セムテックス使ってると思うから大きさからしてあれ一個でこのビル丸ごと吹っ飛ぶと思う」
「あんた、ケロっとした顔してすごい事言うわね」
シュウは軽く驚きながらベルナールを見た。
20Fire(仮):03/08/14 15:52 ID:KodGLkOV
「別にケロっとしてるわけじゃ……」
ベルナールが抗議した。
シュウはこの班の編成の意味を今更ながらに理解した。
白兵戦に強いシュウを班長に置き、魔法・機械の扱いに長けたサラと博識なベルナール。
攻守のバランスはそう悪くないのかもしれない。
ただ、ベルナールはプレッシャーに弱いようだった。
授業では好成績のはずなのにミスが多すぎた。
だからこそシュウとサラより一つ年上なのに班長になれなかったのだろう。
「時限式?」
シュウの問いにベルナールは首を振った。
「いや。タイマーかリモコンのどっちかを付ける前の段階だ。まだ沈黙してる」
「分解可能?」
「可能……と今の僕が言っても説得力ないね。今はこのまま触らずに置いておく方がベストだ。いじらなきゃどうって事ない」
「安心したわ」
失敗を取り返そうとハイリスクな賭けに出ようとしたら殴っていたかもしれない。
シュウはそういう意味合いでベルナールに笑って見せた。
「じゃあ、作戦立て直しましょう」
三人は敵がドアを破壊を完遂するまでに相談をまとめた。
「行くわよ」
向こう側から今にも叩き壊されそうなシャッターの前でシュウは二人に告げた。
さすがに向こうも素人ではないために機材を持っていたらしく、シャッターはバーナーでくり貫かれる所だった。
「ベルナール、お願い」
シュウの言葉にベルナールは目を閉じた。
ベルナールの周りに、淡い若葉色の靄が生じた。
次いでその中から敏捷そうな体を持つ、若い男の影が現れた。
男は手にした杖のような物を振りかざした。
瞬時に三人は自分の体の内に特別な力が宿ったのがわかった。
21Fire(仮):03/08/14 15:53 ID:KodGLkOV
「普通のヘイストなんかよりはかなり長く持つ……でも、油断しないで」
ベルナールの言葉にシュウは片目を閉じて見せた。
「ありがと」
ベルナールの使役するG.F.の「メリクリウス」は使役者とそれが選んだ者に対して一時的に身体能力を
上げる能力を持っていた。
サラが再び自分にプロテスを張り直した。
シャッターが焼き切られ、隙間が出来た。
「じゃ、お願い」
シュウの言葉にサラが頷いた。
こじ開けられたシャッターから兵士が乱入してきた。
やはりプロテスを張り、飛び込むと同時にわずかな遮蔽物に身を隠そうとしていた。
しかし、元は早撃ちの名手として知られ、しかも身体能力を上げられたサラには格好の獲物だった。
サラの銃で第一陣の殆どは倒れた。
それを越えて飛び込んで来た相手はベルナールが仕留めた。
ベルナールは落ち着きさえしていればなまじの兵隊など及びも付かない戦闘力を持っている。
シュウはベルナールが訓練通りの動きで戦っているのを確認し、安心した。
「じゃ、私も行って来るね」
シュウはまるでこれから遊びに出かける様な気軽さで手を振った。
二人に爆弾を守る事をまかせてシュウは倒れた男達を踏んずけながら敗れたシャッターの向こうに飛び出した。
シャッターの向こうは階段だった。
突然飛び込んで来た少女に男達は一瞬あっけに取られた。
「なんだ?女!?」
「バカ言え、まだガキじゃねえか」
その言葉にシュウはむっとした顔を作った。
「失礼ね」
その言葉が男達の耳に届いた時には、既にシュウは彼らの視界から消えていた。
シュウは槍を投げると階段の手すりに手を突く様に飛び、体を大きくスイングさせて反動で手近にいた男の延髄に蹴りを入れた。
22姐 ◆ane/8MtRLQ :03/08/14 16:02 ID:KodGLkOV
とりあえずここまでで21KBになったみたいです。
即落ち逃れる条件の容量がわからないのですが…。
まあ、この話なら万一スレが死んでもいいかなと思いつつ
保全用に書き込みしてみました。
ただ、これは少し前に冗談で書いたストックの中から引っ張り出してきたので
続きの投稿がいつになるかわかりませんが(汗 (FF8の執筆に関しては長期休暇中なので)
一応スニフの恋人と話は繋がっております。
 
いてうか、帰省してる姉ちゃんの子の目を盗んで投稿するのは厳しいっす・・・。
(今も別の部屋から私を呼んでます…・・・)

今スレも沢山の作品と読者さんのカキコに恵まれたスレになりますよう祈願してます。
すんません。前スレリンク間違ってる事に今気付きました
前スレ475で訂正されていたURL見落としてた…激しく鬱。

正しくは
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/l50

ほんとにスマンカッタ....。_| ̄|○
24鈴 ◆BELLSBdFOI :03/08/14 23:02 ID:bNkx7j8N
即死判定の基準を調べてかれこれ小1時間ほどぐぐってるんですが、どこにも正確な数字が…
30レスだとか20KBだとか、まちまちです。
で、そんなことしてるよりもSSの続きをうpした方が早いんじゃないかとさっき気付きました。

>>ドリルさん
周りに余計な心配をかけたくないというエドガーの考え方が、逆に周りの人をイラつかせる原因になってしまって…。
ガイシュツかもしれないんですが、ドリルさんのエドガーは考え方も生き様もすごく「国王」らしくて(゚Д゚)ウママーです。
こういう王様の国は栄えるんだろうなぁ…
FF10-2は色々気になる点も多々ありますが、その辺は見 な か っ た こ と に し ま し ょ う。
老師は素晴らしい名言を遺して下さいました。

…メイチェンが萌えを語り…始めたらきっと引きまつ。

>>雫夜さん
をを、次はワカルルですか。がんがってください!!
バリャたんからはなんとなく育ちの良い家出少年スメルが漂ってる気がします。
ゲバルト棒(みたいなモノ)まで持ち出すし…もまいさんは学生運動家かと。
さぞ家中エボン一色だったんだろうなぁと、まあ深く考えずに一家総寺院勤めです。
パブロとシモーヌは…もっと原作の雰囲気を出せるように、修行し直したいです。
いっそ全編シリアスで補完とか(w

ああそうそう、こんなスレドゾー↓
http://aa.2ch.net/test/read.cgi/mona/1053877582/194-224

>>姐さん
…な、なんだか普通にFF8をプレイしてみたくなってきたんですが…マジデカオウカナ
ドラマ化された映像を見ているみたいで楽しいです。
ベルナールとメルクリウスに萌えました。ツボです。激しく(´Д`*)ハァハァ
冗談なんて勿体無い。続きお待ちしてます。期待sage
25Mit deinen blauem Augen (30):03/08/14 23:09 ID:bNkx7j8N
前回は前スレの504です

 夕暮れの雷平原。僕は二度目にアルベド族を見た。
厚い黒雲に覆われた平原には昼夜の区別はなかったに等しいけれど、とにかく夕方だった。
誰からともなく休息しよう、という声があがり、避雷塔の下で一晩を過ごすになった時だ。
同行する僧兵が、剣を振り上げるたびに魔物の身体から幻光虫が舞い上がる。
大地に突き刺さるような、白い閃光。
闇の中で二つの光がひっきりなしに煌めくその光景は綺麗だったけれど、
幼い僕は雷の音が怖くて母さんに抱きかかえられたままずっと泣いていた。
そんな折、僕は丘の向こうにぼんやりとした明かりが灯っているのを見つけた。
僕は泣きやんで、「あそこへ行きたい」と言った。
避雷塔の下にいれば雷が当たることはないから安全だとはいえ、
この耳をつんざくような音と青白い光からは逃れられない。
だから、こんな所で夜を過ごすよりあの建物の中で休みたかった。
けれどそれを聞いた大人達の反応は冷淡そのものだった。
「あれはアルベドの店だ」
「奴らの店で休んだりしたら、エボンの罰が下る」
口々にそう言う大人達によって、僕のささやかな願いは却下された。
ごつごつした岩の上に、申し訳程度に敷かれた布の上に横になったまま、
僕はあの建物の中で眠る自分を夢見ていた。
暖かなベッドと真っ白なシーツ。ううん、ベッドの上でなくてもいい。屋根のある所で眠れるのなら。
大人達がアルベド族を忌み嫌う理由が、僕には理解出来なかった。
26Mit deinen blauem Augen (31):03/08/14 23:09 ID:bNkx7j8N

 だけど、僕だって決してアルベド族が好きだったわけじゃない。
「嫌い」とは言わないまでも少なくとも「苦手」だったし、
ユウナちゃんがアルベド族のハーフだということとアルベド族を好きになることはやはり別の事のように思えた。
それならば、アルベド族だからといってユウナちゃんを嫌いになる理由だって、どこにもないのだけれど。
……滴り落ちる雫のように、ぽつり、ぽつりとユウナちゃんは語り出す。
「うん、私の母さんは、アルベド族……」
父さんがアルベドのホームにエボンの教えを広めに行った時に出会ったんだって。
私を産んですぐに、乗ってた船が「シン」に襲われて……
だから、顔も、覚えてないの。
「自分を産んでくれた母さんのことなのに、全然思い出せないの」
ユウナちゃんの言葉は、遠い、さざ波のようで、僕はその言葉に揺られながら全く別のことを考えていた。
湧き水のように溢れ出す、彼女の悲しみ。
けれども、僕はその時自分の記憶を辿ることに頭がいっぱいで、その悲しみに耳を貸そうとさえ、しなかった。
27雫夜 ◆sizukTVGK. :03/08/14 23:22 ID:XRc3ej6Q
私も30レス超えれば安全としか聞いたことないです>>即落ちしない基準

>>23=1さん
改めて乙でした。
うぅ前スレ475は私…元々はコピペ時に気付かなかった私が悪いのです。スマソ。

>>白さん
続き待ってます。

>>鈴さん
またしても生うpに遭遇した模様。
オープニング改、誰だろうと思っていたら鈴さんだったのでビクーリ。
オチにワロタ。

>>姐さん
これって8開始の前のエピソードですね。サイコーでつ。
しかもシュウが素敵。サラが出てきてたんで、スニフに関連してるのはすぐに分かりました。
続きはまったりと待ってますので。

では私も保守を兼ねてちょっと投下。
次スレでも10とか言ってましたが、今回は…ウソツキニナチマッタ。
28作者:03/08/14 23:31 ID:pfcS3hxL
新スレおめ!!早速(;´д`)ハァハァ汁。
29fragile【1】(仮):03/08/14 23:36 ID:XRc3ej6Q
「お帰り、サ・ジェ!!」
 濃い茶色の髪を肩で短く切り揃えた少女が、村に帰る途中のクリスタルキャラ
バンの一行に気付いて、近づいてくる。
 サ・ジェと呼ばれたセルキーの少年は、彼女の姿を認め、驚き混じりに呟いた。
「エルヴィラ?」
「ふふ、一年ぶりだね」
 エルヴィラは屈託なく笑う。
「これが『ミルラの雫』? いつもとおんなじで、フツーの水みたい」
 サ・ジェの脇に立っていたリルティのディオが抱えている『クリスタルケージ』に気
付いて、エルヴィラは指先で触れようとした。
「ちょっと、触んないでよっ!!」
 ディオは素早く彼女の指を跳ね除ける。
「キャラバンに加わんないで、一年中村で遊びほうけてるアンタに触られたら、ディ
オたちが苦労して取ってきたせっかくの雫がダメになるわ。」
 エルヴィラが一瞬悲しそうな表情をしたのが、サ・ジェには分かった。
「あのねぇディオ、フランは普通の人よりも特に瘴気に弱いから、キャラバンでの旅
ができないんだよ」
 サ・ジェの幼なじみでやはりセルキーの少女ロナ・リィが見かねてとりなしても、デ
ィオの怒りは収まらない。
「ふぅぅぅん、ディオには、アンタが村長の孫だから、トクベツ扱いされてるようにしか
見えないけどぉ」
「ディオ!!」
 サ・ジェの声に、ディオは驚いて黙ったがすぐに、ホントのことだもん、とぼそぼそと言い返した。
30雫夜 ◆sizukTVGK. :03/08/14 23:42 ID:XRc3ej6Q
ということでFFCCネタです。
あ、カプは セルキーうるふへっど=~クラヴァット(?)・しょーと=@になります。
ちなみにリルティはぶらんど=B
…クロニクル、ハマってます(w

あ、これで30?
即落ち回避でつかね。

31雫夜 ◆sizukTVGK. :03/08/14 23:44 ID:XRc3ej6Q
>>29
フラン→エルヴィラ
…スマソ。
32R@no-name ◆Vlst9Z/R.A :03/08/15 00:39 ID:CoPIkImu
新スレ乙です多!

ちょっとは何か支援せねばと昔の一太郎ファイルから目ぼしい書きかけを
サルベージしてみたのですが、
内容が 全 然 恋 し て ま せ ん _| ̄|○ミンナスマネェ・・・

>鈴殿
ユウナん的白ニャンコを双葉板で(σ゚Д゚)σゲッツしたので
疲れ目回復にドゾー
ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1060875044.jpg
33あぼーん:あぼーん
あぼーん
34雫夜 ◆sizukTVGK. :03/08/15 23:08 ID:zEXZjJ3Q
ドリルさん、今日も来ていない?

>>鈴さん
素敵スレの紹介ドモ。思い切りワロタ。早速お気に入り登録したでつw >>MFT
バリャたん自身は、根っからの差別意識があるわけではないと知り安心。
スマソ…バリャたんではないですが、私もユウナんの母さん話以上に、バリャたんの記憶が気になってます。
35fragile【2】(仮):03/08/15 23:10 ID:zEXZjJ3Q
 >>29の続きです。

 ディオに注意しようとしたサ・ジェを制して、エルヴィラが微笑む。
「別にあなたたちに嫌われてたって構わないわ」
 わたしには、サ・ジェだけがいればいい――この微かな呟きに、エルヴィラを
見ていたロナ・リィの表情が強張った。
 ディオには聞こえなかったらしく、怪訝な顔でロナ・リィを見上げている。
「エルヴィラ、そんな風に――」
 戸惑っているサ・ジェの言葉を遮り、エルヴィラは言った。 
「だって本当のことだもの――だからいいの。それよりサ・ジェ、今夜、いつもの
ところで待ってるから」
 絶対来てね、とサ・ジェの返事を確認せずにっこり笑って、エルヴィラは踵を
返し自宅の方へ走って行った。待てよ、というサ・ジェの声にも振り向かない。
 そんな二人の様子をロナ・リィの陰に隠れて見ていたディオが、不満げな声を
漏らした。
「なぁにが『いつものところで待ってるから』よぉ。ホント、ムカつくったら。サ・ジェ
も振り回されっぱなしじゃない…ロナ・リィは悔しくないわけ?」
「え? あ、あたし?」
 突然話題を振られ、彼女は困ったようにリルティの少女を見下ろす。ディオは
こくりと頷いた。
「だってロナ・リィはサ・ジェを…おぁっ、むぐぅ、ひおっほ!! なひ、ふんのおお!!」
「それは君が言うことではない」
 喚くディオの口を塞いで抱え上げたのは、一行からかなり遅れて歩いていた
ユークのアンヴァーハーセンだ。
 ディオが暴れて取り落とした『クリスタルケージ』を、地面にぶつかる前に、彼は
片手で器用に掴んでそっと下ろした。
36雫夜 ◆sizukTVGK. :03/08/15 23:13 ID:zEXZjJ3Q
女セルキーはうるふれっぐ=A男ユークはあろまへっど≠フイメージですw
37ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/08/17 01:49 ID:oHNNe6ba
遅ればせながら新スレおめ! 皆様乙ですた。

>>8
新スレ祝いワロタ。途中までの描写を読んでいる時は脳内であのピアノ曲が流れて
いたのに…(w。

>>12-22
面白い! んでもって槍使いシュウ先輩の勇姿に(;´д`)ハァハァ
主人公3名の経緯と置かれている状況が丁寧に説明されていて、しかも彼らの
潜入作戦遂行中の描写が文字だけなのに手に取る様に分かる…凄いです。
説明文が説明文というよりその雰囲気に溶け込んでいる様で、読んでいても
全然飽きないから(・∀・)イイ!
というか、個人的にこういう話(潜入とか陥落とかビル制圧とか……)好きなんでつ。(w
是が非でも続きのうpをキボンヌ…!! してみるテスト。

>>24-26
分厚い雲に覆われた平原の中で、遠くに見つけた旅行公司の灯り。なんだか幼い
彼の心そのものを暗に表している様に読めたり読めなかったり。(はい、考えすぎですねw)
彼にしてみれば理不尽な大人達の反応。アルベドという存在に対する興味と敬遠する行動。
…さざ波のような彼女の言葉に揺れる彼の描写が(゚д゚)ウマーです。
 ※「国王と個人の間で揺れるエドガー」って言うのが萌(燃)えな事もありますが、
  純粋に書いていて楽しいです、こういう人の葛藤、みたいなもの(ネタ?w)って。
38ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/08/17 01:51 ID:oHNNe6ba
>>6>>28
声を大に……この状況ならフォントを大にして言わせてホスィー事があるんでつが。
  続  き  を  待  っ  て  ま  す  !

>>32
これまた同じく、新  作  待  っ  て  ま  す  !
(´-`).。oO(ソレヲイッチャ……モレ、モウコノスレニコレネェYO…w)
それにしても、カワイイなぁ……(*´д`)

>>29>>35
その存在がもの凄く気になって仕方がないFFCC……な話でつね。全く予備知識が
ないままで読んでいると、タイトルから察するに壊れそうな物が二つあるのでしょうか?
(というか、邪推しすぎレスしすぎですね。反省)
それにしても漏れのリクエスト2つに応えていただけるんでつか!?(;´д`)ハァハァ期待sage!!


ところで、前スレって埋め立てするんでしょうか?
どっちに投下しようか迷いつつ、うp途中のエドリルから一旦横道に逸れてマニアックな6ネタ
(短編)を投下させて下さい…。
39Echo-心ない天使の微笑-1:03/08/17 01:57 ID:oHNNe6ba

 彼――いや彼女なのか――の声を聞いたのは一度きりかも知れない。
 特にこれといって特徴はなく、強いて言えばごく普通の、ありふれた成人男子
の声だと聞こえた……ような気がする。
 正直、あまりよく覚えている者はいなかった。

「俺は、ゴゴ。ずっとものまねをして生きてきた」

 奇怪な洞窟の奥深く、辿り着いた先に待っていたのは奇妙な格好をした一人の
『ものまね士』だった。

「お前達は、久しぶりの来客だ」

 彼が住むのそこは、来る者を拒むように様々な仕掛けの施された洞窟なのだか
ら、自分たちが久しぶりの来客であるのも無理はない。
 何者なのか? そう尋ねようとする仲間達の問いかけを避けるように、彼は一方的に
話を進めた。

「そうだ。お前達のものまねをしてやろう。お前達は今なにをしているんだ?」

 そんなことを聞かれても、到底一言では語り尽くせない。その場にいた四者四
様――仲間とはいえ、それぞれ抱えている物や目指す場所は違うのだから――の理由がある。
 皆、互いに顔を見合わせて何と答えればいいのか回答に窮していたところへ、
納得したようなゴゴの言葉。

「そうか。世界を救おうとしているのか」

 何と抽象的で的を射た言葉だろう、と仲間達が感心している最中。

「では、俺も世界を救うというものまねをしてみるとしよう」

 こうして、ゴゴが仲間としてファルコンへ招かれた。
40Echo-心ない天使の微笑-2:03/08/17 02:05 ID:oHNNe6ba

 まるで抑揚のないしゃべり方。
 奇妙な服で覆われた彼の表情を伺い知ることはできない。
 全てが謎に包まれ――ファルコンへ来ても、決して自らを語ろうとしない――
前触れもなく突然現れたゴゴに、船で待っていた仲間達も最初こそ戸惑いを覚え
ていたものの、彼の能力――ものまね――を垣間見たとき、その認識を改めさせ
られることとなる。



「なかなか大した腕だよな」
 盗賊の小手と腕輪を借りて、相手の懐に潜り込むと華麗な“技”を披露する。
自分の身動きをマネたゴゴの流れるような動作に、ロックは感心する。
「……とても初めてとは思えない、見事な扱いだね」
 パーティーの中ではエドガーにしか扱うことのできない機械も、ゴゴは一度見
ただけで見事に操ってみせた。
「まさか、魔封剣まで真似られるなんて……凄いわ」
 帝国ひろしと言えど、相手の魔法を封じる事のできる魔封剣を使用できたのは
セリスだけだったし、見ただけで真似できるような容易い事ではないはずなのに、
いとも簡単にゴゴはそれを使って見せた。
「……拙者、正直申し上げて複雑な心境でござるよ」
「俺もだなー。覚えるのけっこう苦労したんだぜ?」
 掛け替えのない家族との死別を経て、カイエンが苦心の末極めた必殺剣。
 兄弟子との死闘、更に師ダンカンとの再会を経て極めたマッシュの必殺技。
 とにかくゴゴは、仲間達一人一人が持っている特技を「一度見ただけで」寸分
違わぬ動きで真似できる能力を有していたのだ。これには誰もが驚かされた。
41白 ◆SIRO/4.i8M :03/08/18 21:57 ID:vHelpCiH
お久しぶりです。。。
某スレでドタバタ遊び過ぎて、こちらに来れなくなってた
アフォ白であります。(;´Д⊂)アウチ…

1さん
改めてありがとうございますです。感謝です。

雫夜さん
連載終了お疲れ様でした。哀しくて暖かい余韻が沁み入りましたです。
FFCC元気で可愛いですね!がんがってくださいませ。

鈴さん
お祝い文、最後に爆笑しました!素敵過ぎますー。
透明感のある深い文章が、カコ良いであります!切なくもうっとり。

姐さん
計器類の画面が浮かびそうな文体が凄いです。尊敬の(*´Д`)ハァハァ
シュウさんに激しく萌えました!

作者さん
(*´Д`)ハァハァ/lア/lア/ヽァ/ヽァ

R@no-nameさん
恋してなくても、激しく読みたいであります。
てかオイラのも恋してな(以下略)<コ:彡ドウゾです!

ドリルさん
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
謎のものまねしさんが、どう動かれるのか楽しみです!
42(´ _ `*マターリ旅(仮)番外編:03/08/18 21:59 ID:vHelpCiH
■今迄の粗筋■
神羅屋敷温室に、ラベルが付いている。
『グリーンハーブ』
地下書庫からセフィロスが、研究員のファイルを取り出した。
『今日わ、ほうじょuせんせえ之、魔晄照射お…かゆい、うま』
「バ○オじゃん!ヒィー(((゚Д゚)))ガタガタ」
イン&ヤン(゚∀。)が鉢に水やりしてますた。

一応前話は
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/426-429
になりますです。

カプ(?)は、クラウドがデートした4人です。
43【王子と乞食】(1):03/08/18 22:01 ID:vHelpCiH
 昔々、小さな修道院に、金髪ツンツン頭の男の子が住んでいました。
王子さまに少し似ていたので、子供は
『ルーファウス坊々』とか『王子さま』と呼ばれてました。

 ちいさな『王子さま』は一度も、頭を撫でてもらったり
遊んでもらった記憶がありません。

 ある日。お坊さん達が、しかめっつらしい顔で話込んでいました。
「ルーファウス王子が、帝王に即位なされたうひょ」
「ほひー?同じ顔の…ツンツン頭の命が危ないのか?」
「僧院から一生出ないなら、問題は無いっス」
『王子さま』は
僧院の陰で、木にしがみつき、シャウトしますた。
「クソ坊主の河童ハゲ━━━━(`Д´)━━━━!!!!」
えー。禿はさておき。誰にも抱きつけなかったからです。

 その日以来、幼い『王子さま』の様子が変です。
「俺は帝王だ!」と叫び続け、盗んだバイクで走り出し
壁にグラフティーアートし、畑の蕪を引っこ抜き、髪を脱色し
修道院長に叱られますた。それでも。
彼はますます怒鳴りました。小さな体で、「俺は帝王だ!」と。

 やがてそれは、本物の幼き帝王、ルーファウスの耳に届きました。
ツォン枢機卿が問いかけます。
「如何致しますか?」
幼くも、帝王は恐ろしい人でした。
反逆する者達を、猛将にヌッ殺させていたのです。
半熟…もとい、将軍の中でも、
特に冷酷なセフィロス公爵が、修道院へ遣わされました。
44【王子と乞食】(2):03/08/18 22:03 ID:vHelpCiH
 其処からは、電光石火の早業です。
騎士団が、必死で引き止める修道士達にストップを掛け
自称『王子さま』を簀巻きにして馬車に押し込み
レッツゴー塔に幽閉だ!とか、そんな勢いです。

 重厚にして豪奢な館の中。
目隠しを外された、小学校低学年の
自称『王子さま』は(((゚Д゚)))ガタガタしてますた。
銀髪の公爵が、かしづきます。
「ようこそ。クラウド陛下。
 此処は、貴方の城。
 私は────貴方を守護する者です」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!(AA省略)………………へ?」

 優しい帝王は。気の毒な自称『王子さま』に
城の一つを与え、彼を王様として扱うよう、部下に命じたのです。

 お城には、陽気な黒髪の騎士が居ました。
幼いクラウドは、修道院で出来なかった事をしました。
つまり、チャンバラや喧嘩やおいかけっこやかくれんぼです。
毎日、遊びました。友達も出来ました。

 近所の、可愛いさよちゃん。。。もといティファちゃんや
綺麗なお姉さんの、弥生さん。。。じゃなくてエアリスさんも
たまにからかって『半熟王子さま』とか呼んだりもしました。
元気な盗賊のユフィちゃんや
「暴力昼食(あばらんち)」の首領、バレットおじさんにも
(*´Д`)ハァハァしてる、節操無しな『王子さま』でしたが。
45【王子と乞食】(3):03/08/18 22:05 ID:vHelpCiH
 剣豪、セフィロス公爵は良い先生でした。
魔法や科学に造詣が深く、
歴史絵巻そのものが其処に居ました。

 クラウドは、公爵を『先生』と呼ぶようになりました。
「俺、先生と違って何にも知らない…ショボーン(´・ω・`)」
「これから覚えれば良いのです。
 焦らずとも…否、このままでも良いのですよ」

 公爵が問いかけます。
「陛下。この國を良くする為にはどうしたら?」
「え?えっと…泥棒しない。喧嘩しない。道にゴミを捨てない…」
「何故窃盗が?」
「働けなくて、いや、働いてもパンが買えないから」
「それは、どうして?」
燭台の灯が、ふわりと窓辺に広がります。

 上天気のある日。
公国の竜騎士達は演習です。
飛竜と共に空に向かい、颯爽と陣型を組みます。
切り合い、またほどけ
何万もの剣舞が、蒼穹に旋回するのです。
槍の穂先がきらめき、剣が金属音を鳴り渡らせます。
人が死ぬ事はありません。
見学する貴婦人方に、ザックスが精悍な笑顔を見せます。

 ふと。
ドラゴンライダーの一人が、過って飛竜に斬り付けました。
飛竜はもがきながら落下し、観客席に激突寸前。
そして、その先には。
46【王子と乞食】(4):03/08/18 22:07 ID:vHelpCiH
 桔梗屋、さよちゃんっ!…じゃなかった。
クラウドの、お友達がいました。
大好きな初恋の人4人(バレット含)がピンチです。
走っても間に合いません。
咄嗟にクラウドは壁を蹴りつけ、空中で呪文を唱えました。
「────ブリザド!」
ほんの一瞬ですが、飛竜の動きが止まりました。

 すかさずザックスがストップをかけ、
飛竜は、宙に浮いたまま止まりました。
観客からザックスへ、歓声が揚がります。

 クラウドは、と言えば。
擦り剥いた膝がジンジンします。
「うぁっ!」
洒落にならん程痛くて、動けそうにありません。⊂⌒~⊃。Д。)⊃
其処に、マントの武人が近付きます。
「…お怪我はありませぬか?お手柄ですよ、王子」
先生が飛んで来た様です。
 
 ひょい、と公はクラウドを、愛馬?レッドセフィロスに乗せました。
レッドセフィロスの羽根はふかふかで、ホッとします。
「…先生…」
「どうしました?」
10才にもならないクラウドが嗚咽を堪え、身を震わせます。
「すいません。ごめんなさい。。。
 俺、嘘つきました。
 本当は、王子様でも何でもないんです…。
 ただの、捨て子らしいんです。
 だけど、顔は帝王に似ていたから、だから…」
47【王子と乞食】(5):03/08/18 22:09 ID:vHelpCiH
 公爵の寒色の瞳が、幼い自称『王子さま』を捕らえます。
どこまでも冷ややかで、表情の読めない眼。
白銀の鎧から、手甲が突き出され
くしゃくしゃと、クラウドのツンツン頭を撫でました。
「良く頑張ったな」
鼻水やら何やら、『王子さま』は大泣きです。

「ここに、居て…いいんですか?」
「お前が望むのなら。ずっと」

 こうして。クラウドは魔法使いの弟子になりました。
ちゃっかりと王の兄弟を養子に迎え、皇帝城の一つを管理下に置き
上機嫌な銀髪公爵の、政治的な目論みはさておき。
当面、小学校低学年のクラウドが
塔に幽閉されたり、鉄仮面を被せられたり、
暗殺される心配は無さそうです。

 ツォンさんが、ルーファウス帝に聞きました。
「あの法令の発布を、なさるのですか?」
「…僕は、庶民の生活を知りたかった。
 それが叶わぬのなら、賢君にあらず。
 普通の暮らしを知っている、彼の意見は貴重だ。そうだろう?」
クラウドが一所懸命考えた法令が、本当に発布されました。

「お!クラウド、無事だったか!」
「クラウド!ありがとう!」
バレットおじさんが、ユフィが、ザックスが、
仲間達が飛びついて来ました。
おとうさんもおかあさんも居ないけど。此処がクラウドの家だったのです。
48白 ◆SIRO/4.i8M :03/08/18 22:13 ID:vHelpCiH
次はいつもの「興味ないね(´ _ `*」になりますです。多分…。
■次号予告■
 涼しく穏やかな昼下がり。プール後の生徒達が、微睡んでいます。
「…パラメキア皇帝が叫んだのが、かの有名な(゚Д゚)ウボァーと…」
突如。3年A組の、魔王先生が乱入しますた。
「ジェノバはリユニオンするものだ…
 ここで問1。
 ジェノバは何年前に星に来た?」
「あんだぁ、てめえ。やんのかクルァ!」
「先生!授業して下さい!∩´Д`)」
次回「1年F組!勇者先生」「FF9はコカ・コー(ry」の2本です。
>>43
>盗んだバイクで走り出し
激しくワラタ

>「…パラメキア皇帝が叫んだのが、かの有名な(゚Д゚)ウボァーと…」
この先生は誰なんでつか(今書いてるネタにからむので気になって仕方ない)
50作者@放置プレイ:03/08/19 02:30 ID:irAcHrPW
キタ━━━━━━━━━( ・ ∀ ・ )━━━━━( ´∀`)━━━━アァァン(;´д`)ハァハァハァハァハァァァ(; ゚Д゚)ウッ!!
よかったねクラウド。
でも暴力昼食ってどんな食いもんなんでしょう先生。
51白 ◆SIRO/4.i8M :03/08/19 21:57 ID:U2k97P81
49さん
笑って頂けてシアワセです。
先生は1年F組!勇者先生(FF7クラウド)ですが、
勇者先生の続編は無いので
どうぞ御遠慮なく、ガンガンいっちゃってくださいませ。
49さんの御作品が、とても読みたいであります。
FF2のリチャードさんや元騎士団長さん (*´Д`)/lァ/lァ

作者@放置プレイさん
放置プレイでありますか?!(*TдT*)=3=3 ハァッハァッ
とても無理は言えませぬが、作者さんの愛のある美麗文を
お慕い残暑申し上げます。。。シクシク
「暴力昼食」はきっと、この世の何処かのセブンスヘ○ンにあります。
作者さんのヴィンセントさんに、作ってもらいたいであります。
■今迄の粗筋■
漫才したりとか (*´Д`)/lァ/lァしたりとかしながら、
アバランチ、ツオン、ザックス、エアリス、セフィロス。
全員生存のまま、最終武器回収まで来てますです。

前話は>>42-48になりますです。
カプはギャグの為不明です。。。。
53【飛空艇が見ている…】(1):03/08/19 22:00 ID:U2k97P81
────幻想を作りだしたのは…お前だ。────

 太陽の海岸。石英の粒子が、海藍波に舞い上がる。
微睡む素肌に、冷たい結晶が触れた。
「きゃあっ…!」
「びっくりした?ティファ」
満面の笑みを浮かべ、ユフィが大量のマテリアを抱えている。
「どうしたの?それ」
「そこのマテリア屋から盗…じゃなくて。
 イルカが、アタシに教えてくれたんだー。
 近くに、ライフストリームの噴き出し口があるって!」

「一緒に行こうよ、ね?」
エアリスが嬉し気に、ユフィとティファの手を引く。
まろやかな、女性陣の肢体。
薄い水着に覆われ、甘く優美な曲線を描く。
椰子の根元で、男性陣が(*´Д`)ハァハァ覗いていたが、それは兎も角。

「あ、ちょっと、待って?」
ふと。エアリスがティファの黒髪を梳く。
黒絹の光沢が零れ、透き通ったうなじが日に晒される。
「泳ぐなら、この方が良いよ」
ティファの長い髪がまとめられ、可愛らしいシニヨンになっていた。
「ありがと、エアリス」
ティファの頬が嬉し気に上気した。
「あー!ティファいいなあ。アタシにもやってやって!」
賑やかな海岸に、穏やかな潮風が吹き抜ける。

 水面に泡が昇ってゆく。
海嶺に、幾筋もの光の柱が揺らめき、魚達が乱舞する。
古い、遺跡。石柱が水に沈み、貝に似た家々が魚礁となっている。
エアリスの瞳が、家々に釘付けになる。
54【飛空艇が見ている…】(2):03/08/19 22:03 ID:U2k97P81
 その中央に。
沸き起り広がりゆく、淡い緑の光。
魔晄の泉が、そこにあった。

 玉砂利を敷くように、色とりどりの結晶が珠を結び
皆、内に小さな光を点す。
魔晄の泉は、海中に、鏡の如き鮮やかな水面を作りあげている。
そのほとりに珊瑚が森を作り、遺跡群が静かに眠る。

 クラウドは宿で、静かに潮騒を聞いていた。
そこに、大量のマテリアが降って来たから堪らない。
「Σ(゚Д゚;)うわ!なんだこれ?!」
「えへへ、驚いた?」
ひょい、と女性陣が顔を覗かせる。
「今日はクラウド誕生日じゃん。だからさ」
「皆で、採って来たの」
「ポーキーとか、とぼけた魔法しか、使えないみたいだけどねっ!」
きょとん、としたクラウドが、微かに苦笑いする。

 楽しかった、思い出。
海も潮騒も以前と変わらない。けれど。
「…どこ行っちゃったの?エアリス」
太陽の海岸に、ティファが独り佇む。
優しく、温雅な友達。彼女は失踪したままだった。
もし、セフィロスが云ったように。
エアリスが助かった事。それが幻想だとしたら。
ふと、ユフィの手がティファの肩に触れた。
「泣かないで捜そうよ、ティファ」

 うすくれないの夕暮が、二人の女友達を染めあげる。
55白 ◆SIRO/4.i8M :03/08/19 22:04 ID:U2k97P81
■次号予告■
荒野の砂塵が、長髪のガンマンをけぶらせる。
「────行くぞ…」
「うひょ!いつでも来い!」
魔晄銃を構える我らがパルマ−。
あまりにもアレ(以下略)なので、
ヴィンセントにはハンデとして、銀玉鉄砲が装備されている。
銃声。そして、敗者の倒れる乾いた音。
ダメージ9999。
銀玉鉄砲が「投げ」られ、パルマ−の額にコブを作っていた…。
次回は「美麗なる狙撃手パルマ−」「ダイエット!」の2本です。
56作者@携帯からI'll be back(シュワ:03/08/21 01:47 ID:AVDp7vqI
>51
瓶kがSeven酢Hevenでエプロンして料理なんかしてたら(以下略)萌え(略)もうだめぽ(ry

あの超書きかけ放置プレイの聖域の墓標サザンクロスなんですが、家のPCがヌッ壊れ
まして、うpできまへん。今携帯からコソーリ覗いてるんですが…。携帯うp…考えては
いるんですが、禿しい指テクとパケ死を考えると、怖くてヤパーリ放置プレイて゛す。
57ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/08/21 22:45 ID:hKnT4U+9
>>【王子と乞食】【飛空艇が見ている…】
> ティファの長い髪がまとめられ、可愛らしいシニヨンになっていた。
ティファのうなj……も、萌え! ティファその髪型でおながいしまつ。
バルマウフラといいティナといいキスティスといい、やっぱりうなj…(違)。

オヤジ臭い感想でスマソ。

とぼけた魔法しか使えないマテリア、なんか暖かみがあって(・∀・)イイ!ですね。
戦いの記憶、ではなく平和の記憶が込められたマテリアって感じで。うん。

>>56
…ご、ご愁傷様です。PC壊れ(+バックアップ取っていなかった)時のことを
思い出すと、今でも(((゚Д゚)))。これで呪いの音楽がついて
「お気の毒ですがあなたの冒険の書(C:)は(以下略」
「お気の毒ですがあなたの冒険の書(D:)は(以下略」
…想像しただけでトラウマになりそうでつ。

症状が軽い事を信じ、カムバックを待ちながらsage。
58Echo-心ない天使の微笑-3:03/08/21 22:49 ID:hKnT4U+9
(前話は>>39-40です。カプ…敢えて、無理やり言うなら…ゴゴリル(!?))

-------------------------------------------------------------

 無論、コピーがオリジナルには叶う筈はない。けれども彼の能力は単なる「も
のまね」の域を超えている。
 ……本音を言えば、それぞれが苦労して体得した技をいとも簡単に真似される
と、少ーし複雑な気分にはなったが。



 倒すべき敵を目前にした彼女が虚空に筆を走らせる時、小さく囁くそれは“秘
密の呪文”だと言う。
 対象物の心までをも鮮明に描き出し、その絵に心を宿らせる『ピクトマンサー』
リルムの特殊能力は、ゴゴのそれと通じるものがあった。
 けれど決定的に違う点がある――それが術者の心の在処なのだ――と。彼女は
後に語っている。
「ねーねー。どうして人のマネばっかすんの?」
 歯に衣着せぬ物言いで、リルムは単刀直入に尋ねる。
「…………」
 それでもゴゴが答える事はない。そうと分かっていてもやっぱり気になって仕
方ないのか、諦めずにもう一度聞いてみた。
 ところが。
「ねーったら! 人が質問してるんだから何か言えないの?」
「ねーったら! 人が質問してるんだから何か言えないの?」
 結果はこの有様、オウム返しで終了である。
 普通、こんな風にからかわれたら怒りたくもなるのだが、相手は『ものまね士』
というだけあって、オウム返しも芸術の域に達していた。

「なんか、アタシが二人いるみたいだ」

 そんな感想を呟きながら、リルムの挑戦は呆気なく幕を閉じたのだった。
59Echo-心ない天使の微笑-4:03/08/21 23:01 ID:hKnT4U+9


「ねね。ゲームやろ、ゲーム!」
 ブラックジャックよりスピードを追求した設計になっている飛空艇ファルコン
に、賭博場はない。
 それでもセッツァーの私物を拝借して、カードゲームをやろうと仲間達に持ち
かけるのはリルムだった。彼女の呼び掛けに応えて、仲間達はホールのテーブル
に集まり団らんの一時を過ごす――作戦会議とは呼ぶような緊迫感はないものの、
彼らが次の行動に迷った時は、こんな風にして気分転換をしたりするのだ。

「……また私が勝ってしまうが、それでも良いのかい?」
 早々と勝利宣言をするエドガーは、国王という職業柄かこの手の駆け引きには
めっぽう強い。レディファーストを常とする彼だが、勝負となると話は別で言う
通りの負け知らずである。
「このゲーム、面白いわよね」
 無表情、という訳ではないがティナの表情は読みとりにくい。実は賭事の才能
があるのでは? と思わせる程で、エドガーと並びこのゲームで負けた事は一度もない。
「けっ。今日こそ一番最初にあがってやる!!」
 リベンジに燃えるロックは、どうも顔に出やすいので手の内が見え見えらしく、
連戦連敗――とは言い過ぎかも知れないが、一番最初にあがった試しがない。
「エドガーやティナには負けそうだけど、ロックには勝たなくちゃ、ね」
 いたずらっぽく笑って見せるセリス。元常勝将軍の異名を持つ彼女だが、カー
ドゲームではそうもいかない。
「ふん。ガキの相手はつまらんが、暇だから付き合ってやる」
 賭博師セッツァー――は、どうやらババ抜きには向いていないらしく、戦歴は
ロックと似たり寄ったりである。
「ガウもやる! うーガウ!!」
「はいはい。じゃあ俺とペアな」
 何度やっても未だにルールを理解していないガウはマッシュとペアを組んで参加する。
(……いいかガウ。手札を相手に見えるようにして引かせちゃダメだからな)
 こっそりと耳打ちするマッシュのアドバイス、果たして今日は活かされるのだろうか?
60ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/08/21 23:06 ID:hKnT4U+9
>>58
×コピーがオリジナルには叶う
○コピーがオリジナルに叶う
>>59
×作戦会議とは呼ぶような緊迫感はないものの
○作戦会議と呼ぶような緊迫感はないものの

「は」を入れ過ぎますた・゚・(ノД`)・゚・スレ汚しスマソ
61雫夜 ◆sizukTVGK. :03/08/23 00:42 ID:uln7uhy3
FFCC未クリアだというのに、GCが半壊状態に…・゚・(ノД`)・゚・モウダメポ
リセットさんごめんなさい(板違

>>ドリルさん
今回のお話はコメディタッチな感じがするです>違ってたらスマソですが。
ゴゴは、私のプレイ時のパーティメンバーにはいなかったので、とても新鮮。
ティナが不思議ちゃんなのにも萌え。私的な彼女のイメージは、今回ドリルさんが書かれている通りでした。

>>白さん
待ってました!!
王子と乞食>かけっこに(*´Д`)ハァハァ・・・理由は板違いなので伏せますw
イキューさんネタにもワラタ。
飛空艇が見ている…>シリアスなヨカーン。続きが楽しみです。

>>作者さん
ヴィンセント(;´Д`)ハァハァしつつマターリ待ってます>聖域の墓標サザンクロス
パケ死…かつて私はしたことがあるのでw、携帯うpはお勧めできない。



62fragile【3】:03/08/23 00:49 ID:uln7uhy3
>>35の続きです。
主人公とかその幼なじみとか…種族設定間違えた気がしてますが、FFCCプレイ中の方、スマソ。

「…すまない。新しい武器の材料を考えていたせいで、いつのまにか歩みが
皆よりも遅れてしまったようだ」
 錬金術師の後継ぎである彼は、無口だが色々な知識に長けていて、一行
の知恵袋的存在だ。
 暴れるディオを下ろすと、彼女はアンヴァーハーセンに向かって、べ〜っと
舌を出し、またロナ・リィの後ろに隠れてしまった。アンヴのバカっ、と背後か
ら詰る声が聞こえてくる。
 それに構わずアンヴァーハーセンは、少し離れた場所に立っているサ・ジェ
に近づいた。
「エルヴィラ、か…彼女がここまで来たのか?」
 驚きつつ訊いたアンヴァーハーセンに、サ・ジェは頷く。
「元気そうで良かったよ。今年は瘴気がいつもより濃くなっている気がしてたから」
「あぁ、確かに。ケージの近くにいても、空気が多少汚れているのは感じていた」
「ディオからすれば、エルヴィラは遊んでるようにしか見えないんだろうけど…
クリスタルの近くに居れば、普段通りに暮らせるから」
 去年、初めての旅から帰ってすぐに、エルヴィラが微量の瘴気に襲われ倒
れたことを思い出し、サ・ジェは呟く。
 そんな彼を励ますように、アンヴァーハーセンはそっと肩を叩いた。
「今年も無事に雫は手に入れたから――大丈夫だろう」
「だといいけど」
 力なく呟くサ・ジェの肩をもう一度軽く叩いて、アンヴァーハーセンは先へと促した。
63fragile【4】:03/08/23 00:50 ID:uln7uhy3
 毎年クリスタルキャラバンが『ミルラの雫』を持ち帰ると、それを祝う祭りが夜を
徹して開かれる。
 クリスタルに向かい、キャラバン一同が村長とともに祈りを捧げ、翌朝まで絶や
さないかがり火の周りで村人たちが踊るのが常だった。
 村人たちが口々にねぎらう声に応えながら、サ・ジェは辺りを見回す。
(エルヴィラは、来てないか…)
 村長も孫娘の扱いに手を焼いているのか、彼女の不在を特に気にも留めていな
いようだ。
 『いつもの場所』に向かうべく、踊りの列から外れたサ・ジェにロナ・リィが追いか
けてきた。
「行くの?」
「あぁ、ちょっと出てくる。オレのことは気にしなくていいから、みんなで楽しんでてくれ」
 じゃあ、と背を向けた彼に、ためらいがちにロナ・リィが声を掛けた。
「あ、あのね、サ・ジェ」
「何?」
 訊かなくても分かっていた。
 言いにくそうに、ロナ・リィが口を開く。
「エルヴィラのことなんだけど…これ以上関わるの、やめた方がいいよ」
「……」
 冷たい視線を向けたサ・ジェに怯まず、ロナ・リィは続けた。
「あのコの身体が弱いのは、あたしも分かってる。けどね、瘴気にやられて頭もおかしく
なってるって、村のみんなが――」
「ロナ・リィまで、そんなことを言うとは思わなかった」
 怒鳴ったわけではない。けれど隠せない怒りは、ロナ・リィに伝わったらしい。セルキー
の少女は悲しそうに俯いた。
 ふたりが立っていた物陰からガサッという音がしたのはそのときだった。
 ディオかと思い、そこを覗いて見るが、既に何の姿もなかった。
 ため息を吐いてロナ・リィに向き直る。
「とにかく、オレのことは放っといてくれ」
 今度こそ振り返らずに歩き出す。
 背中越しに、サ・ジェ…、とロナ・リィが涙混じりに呟くのが聞こえた。
64雫夜 ◆sizukTVGK. :03/08/23 01:18 ID:uln7uhy3
>>63
×踊りの列から外れたサ・ジェに
○踊りの列から外れたサ・ジェを
・・・『に』と『を』、間違えました。
なんでこんな良スレがこんな奥深くにw
66ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/08/24 01:15 ID:x0E957LK
>>61-63
個人的にアンヴァーハーセンが(・∀・)イイ!味出してますね。皆年齢的には一緒なの
かも知れませんが、大人っぽい彼の雰囲気がまた素敵です(*´д`)
『ミルラの雫』はクリスタルの一部って言う解釈でいいのでしょうか?(スマソ、あまり
FFCC関連の情報を見ていないもので…)瘴気から保護する役目がある…とか?

>>65
1.実はSSスレを装った地下組織(リターナー)です。(w
2.わりと良い位置にいると思います。
3.仕様です。
67Echo-心ない天使の微笑-5:03/08/24 01:22 ID:x0E957LK
(前話は>>58-59です。…とてもマニアックなお笑いネタに走りました。ゴゴファン…
もとい6ファンの方…のみならず、スマソ)
-------------------------------------------------------------------

 そんなこんなでゲームは幕を開けた。
「……なぁ。お前今ババ持ってるだろ?」
 覆面から僅かに覗くシャドウの瞳を真っ直ぐに捉えながら、ロックは問う。
「俺は、何も教えてやれん。答えは自分で見つけるものだ」
 ――それは分かるがシャドウよ、そのセリフをババ抜き如きで使うのはどうか
と思うぞ?
 誰かが内心でそんなことを思った――その真偽はさておいて、意を決したよう
にロックはカードをめくった。
「ぬおっ!?」
 結果は、語るまでもないだろう。

 さて、ロックの手に渡ったジョーカーはセリスの手を経てこの二人の元へやって来た。
(いいか、ガウ。相手にカードを見せたらダメだからな)
 マッシュによる再三のアドバイスを理解したのか、ガウはおぼつかない手つき
ながらもカードを広げていた。
「……罠……でござるか?」
 示された三枚のカードの中で、真ん中のカードだけが引いてくれと言わんばか
りに飛び出ている――怪しい。どう見ても怪しすぎる。
 というわけで、カイエンは一番右側のカードを選び取った。
 途端。
「ひっかかった! ひっかかった!」
「こら、ガウ! それじゃ誰がババを持ってるかがバレちゃうだろ!?」
「まあ、まあ…落ち着くでござるよ」
 なんというか……とても分かり易い人達である。
68Echo-心ない天使の微笑-6:03/08/24 01:24 ID:x0E957LK

 更に分かり易い翁がここにも。
「ストラゴスさん?」
 にっこりと微笑むエドガーの、しかしその剣呑な視線に晒されるのは最年長者の
青魔導士。
「いや、知らぬ。知らん。知らん……ワシゃな〜んも知らんゾイ!」
「……そうですか。ジョーカーをお持ちですね?」
 ぴたりと言葉が止んで、二人の間に訪れる沈黙。
 静かに抜き取られたカードの行方に場の皆が注目するものの、最終的にエドガー
がジョーカーを引いたのかは定かではない。

 次にエドガーと向かうのはティナ。二人の一見すると穏やかな遣り取りは、
だがパーティー中で最も先の展開が読めないものだった。
「……私はまだ、ジョーカーというカードを知らない」
「しかし、ゲームの最初からジョーカーを持った人間など一人しかいないんだ」
 ――そう言えば、こんなセリフを出会った頃口にしていたかも知れない。と、
気付く人間は誰もいないだろう。
「でも……私は、今知りたい」
「それじゃあ、カードを引くと良い。自ずと答えは見えてくるものさ」
 ――側から見てると真面目にアホです、この二人。

 さて。
 各地で様々な遣り取りが繰り広げられたこのカードゲームもいよいよ終盤を迎
えようとしていた。最後まで残っていたのはロック、リルムと――ゴゴである。
「遂に来たね!」
「おうよ! 絶対に負けねーからな」
「…………」
 最下位をかけた三人の白熱した争いは、見る者を圧倒した。
69鈴 ◆BELLSBdFOI :03/08/24 02:36 ID:7pMv5uK1
何があったのか勢いでシューレン書いてしまいました。
二人の世界デムパが発信されておりますので読まれる方は各自生暖かい視線をご用意ください。

>>零夜さん
FFCC、まだ世界観がいまいち掴めてないんですが、
何だか雫夜さんのお話からするとほのぼのとしたゲームみたいで気になります。
好意のある女の子二人…果たして主人公の動向は?
エルヴィラは愛らしくてロナ・リィはいじらしいです。どっちも萌え…

>>作者さん
携帯は何にあんなに金がかかるのだろうとPCユーザーなら思ってしまうくらいの通信料なので、
まだネットカフェその他の方が無難なのではないかと思います。
禿しい指テクもさることながら、打ち終わると指が痛くなったりもしますし。

>>R@no-nameさん
ありがとうございます〜
も、萌えました。猫はやっぱり可愛いです。イヤサレル…
恋してなくてもSS投下しませんか?
70鈴 ◆BELLSBdFOI :03/08/24 02:37 ID:7pMv5uK1

>>ドリルさん
お笑いネタ、かなり笑わせていただきました。
いいなぁババ抜き。マゼテホシイ(w
シャドウとエドガーがイイ味出してました。
ゴゴリルとはいかなるものなのか!?次回を期待しつつマターリと待ちます。

>>白さん
王子と乞食はちっちゃなクラウド王子に(*´Д`)ハァハァです
ルーファウスが何気にイイ人なのも。も、もしこれから変貌するとしましても。
飛空挺の話もなんだかほのぼのとしつつも立ち上る切なさが良かったです。
白さんの文章って色遣いがすごく綺麗だなーと思って毎回読んでます。
イイ子だ…ティファには強く生きてホスィ。

>>65
多分奥深いところは静かで涼しいからです(w
71Lacrimosa(涙の日):03/08/24 02:41 ID:7pMv5uK1
FF10-2シューイン×レン
シューイン側の視点になります。


変わらないのは君と迎える明日。
そして俺の側にいる君の存在。
たとえ何があっても君だけは俺から離しはしないから。
一緒にいたいんだ。
誰よりも君が好きなんだ。
君さえいてくれれば俺は幸せなんだ。

キスしてしばらく見つめ合う。
そんな一瞬が好きだった。
でも彼女は最近俺の目を見ない。
「レン?」
そんなに俺のキスが嫌だった?
なんてことは怖くて聞けないけど。
「何?」
「んー、なんか、ぼーっとしてるなって思って。ごめん、気のせい」
俺はへらへらと愛想笑いを返した。
72Lacrimosa(涙の日):03/08/24 02:48 ID:7pMv5uK1

彼女は以前からこんな風に遠い目をすることがたまにあった。
歌詞を考える時とか。どうしてもそっちに意識が行ってしまうらしい。
それも不意に浮かんでくるらしくて場所も時も選ばない。
デートの時とかにふっと自分の世界にこもられるのは困るけれど俺は彼女にベタ惚れだからそういう細かいことは気にしないようにしている。
「そんなこと言ってるシューインこそ、最近ちょっと人の話聞いて無くない?
 あ……ひょっとして私の他に女でも出来たかな?ブリッツのエースも可愛いファンが多くて大変だね」
肘で突っつかれた。ひどいな。もしかして俺のこと信用してないの?
俺はレンと付き合いだしてから他の女の子に声なんて一回もかけたことないのに。
……かけられたことなら何回かあるけど。
「はぁ?ひどいよレン。俺はレンをこんなに愛してるのにさ」
思い切り悲しげな調子を付けて彼女の肩を抱いたら彼女はくすぐったそうに笑った。いい感じだ。
「嘘ばっか」
「ホントにホント。っていうか、あー、なんでうまく伝わらないかな。レンの言葉はばっちり俺に伝わるのにさ」
彼女はさすが作詞も自分でやってるだけあって言葉の使い方とかが上手い。と思う。
正直そういう難しいことはよく分からないけど。
まあ俺の知らない言葉もよく使うし。
「シューイン、あのさ」
「ん?」
「なんでもない……早く、帰ろ」
そう言って彼女は俺の手に指を絡めてきた。
俺今すごく幸せだ……じゃなくって。
「そんなこと言われたら気になるって」
「そのうち、言うよ」
彼女は足早に歩き始めてしまった。
慌てて隣にくっつく俺。二人で並んで歩く明け方の道。
生きててよかったと思う瞬間。
73Lacrimosa(涙の日):03/08/24 02:49 ID:7pMv5uK1


海が見たいと言うから北の海にやって来た。
少しずつ遠くの空が明るくなっていくロマンチックな雰囲気。
今ならずっと言えなかった言葉も言えそうだ。
雰囲気に流されて俺は口を開く。
「実はさ……言いたいことがあるんだ、レン」
「……うん」
俺はここぞとばかりぎゅっと彼女を抱きしめた。
柔らかな彼女の身体。今は俺だけの歌姫。
これからずっと俺のために歌ってほしいんだ。
呼吸を整える。心臓がドキドキ言ってる。だけど頭は意外に落ち着いてる。
試合前の静かな興奮みたいな感じかな。
彼女はきっと頷いてくれる。それだけは間違いない。
「俺、今度の試合が最終なんだ。まあ戦争とかいろいろあるからさ。けど、その試合が終わったら……」
俺は大きく息を吸った。

「結婚しよう」

「俺たちずっと一緒にいようよ、レン……」
「シューイン……」
俺の腕の中で彼女が小さく身じろぎした。
俺は何も言わずに彼女をより強く抱きしめた。
空の向こうに朝日が昇る。明日が来る。
君さえ側にいてくれれば幸せなんだ。
だから君と迎える明日は今日よりももっと幸せな気がした。

 
74Lacrimosa(涙の日):03/08/24 02:51 ID:7pMv5uK1
そしてこちらがレン側です。


さようなら、大好きな人。
私はもうすぐ死んでしまう。
あなたともっと一緒にいたかった。
でもそれは儚い望み。
あなたに伝えたい言葉はみんな置いていくから。
だからあなたを置いてゆく私を許して。

キスをした直後の一瞬の沈黙が怖い。
まるで彼の真っ直ぐな目が無意識に私を責めているかのような後ろめたさを感じてしまう。
「レン?」
声を掛けられてはっとした。引きつったような笑顔で無理矢理笑う。
「何?」
「んー、なんか、ぼーっとしてるなって思って。ごめん、気のせい」
そう言って屈託無く笑う彼。彼の笑顔を見ていると嘘をひた隠しにした私の胸が痛む。
75Lacrimosa(涙の日):03/08/24 02:52 ID:7pMv5uK1
「そんなこと言ってるシューインこそ、最近ちょっと人の話聞いて無くない?
 あ……ひょっとして私の他に女でも出来たかな?ブリッツのエースも可愛いファンが多くて大変だね」
今のところ彼は私しか見えていなくて大げさだけど私がいないと生きていけないと思ってる。
だから他の女なんているわけない。
けれど話をごまかすにはこういう話に持っていくのが一番いい。
「はぁ?ひどいよレン。俺はレンをこんなに愛してるのにさ」
ぎゅっと肩を抱かれて私は思わず笑い声をあげた。
「嘘ばっか」
「ホントにホント。っていうか、あー、なんでうまく伝わらないかな。レンの言葉はばっちり俺に伝わるのにさ」
ううん、伝わってる。痛いくらいに。
飾り気のない剥き出しの彼の言葉に私はいつだって強く惹かれている。
口には決して出さないけれど私は彼が思ってる以上にずっと彼のことが好き。大好き。
でも鈍感な彼はそのことにちっとも気付いていない。
早く言わなければ言うチャンスを一生無くしてしまう。だけどいざ言おうと思うと恥ずかしくて言えない。
素直になれないのは私。
「シューイン、あのさ」
「ん?」
「なんでもない……早く、帰ろ」
指先を絡めて歩くザナルカンドのハイウェイ。
この時間が永遠に続けばいい。
「そんなこと言われたら気になるって」
「そのうち、言うよ」
あなたを悲しませる一言を告げなくてすむから。
76Lacrimosa(涙の日):03/08/24 02:53 ID:7pMv5uK1
夜が明け始める時刻。
私たちは二人きりで海を見つめている。
澄んだ深い藍色。
「実はさ……言いたいことがあるんだ、レン」
「……うん」
彼が私を後ろから抱きしめる。
優しい温もりに包まれて私はそっと彼に身体を預ける。
『私、も』
唇だけでそっと呟く。
音のない世界。
波の音さえ聞こえない。
聞こえるのは彼の鼓動と私の鼓動だけ。
「俺、今度の試合が最終なんだ。まあ戦争とかいろいろあるからさ。けど、その試合が終わったら……」
密着した胸から伝わる彼の鼓動が早くなる。
今、顔真っ赤でしょ?
だけど、ごめんね。
願いは叶えられそうにないよ。

「結婚しよう」

「俺たちずっと一緒にいようよ、レン……」
「シューイン……」
そうすることができたらどんなに幸せなんだろう。
でも私にはもう時間がない。早く言わなければ。言わなければ。
……さよならを。
振り返ろうとした私を抱きしめる腕に力がこもる。
私は彼に抱かれながら遠くに燃える太陽を見つめていた。
眩しい光は私の目にそして心に染み込んでいった。

END
77HANABI:03/08/25 02:21 ID:QP2FPr2w
す、素敵です!!
あ、他所のスレでお目汚しな詩をちょこちょこ書いてるものです!!
《Lacrimosa(涙の日》とっても素敵でした!!尊敬です!!
HP等はお持ちではないのですか?持っていらっしゃるのなら、是非おじゃまさせて下さい!
78鈴 ◆BELLSBdFOI :03/08/25 21:31 ID:Z6fhIphH
蛇足ですがレンは売れっ子アイドルだったので今まで召喚士なのに召集令状が来なかった…
という設定で書きました。
本文に入れたかったけれど入れると雰囲気壊しそうで無理でした。クヤシー

>>HANABIさん
お褒めの言葉ありがとうございます。
あまりのデムパラヴラヴバカッポーな話に、引かれるのではないかと思いつつもうpした甲斐がありました。
残念ながら、自分はサイト持ちではないです。
このスレでちょこちょこ書かせて頂いてるだけなので…とにかくスマソ。
79ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/08/26 00:05 ID:krNsTUpj
>>Lacrimosa(涙の日)
い……(・∀・)イイ! 同じセリフ(事実)を使って、両視点から見るって言う描き方が好きな
漏れにはまさに目から鱗、な作品ですた。引かれる? むしろ轢…もとい惹かれますた。
鈴さんの書く文章ってリズム感と詩文的な情緒があって(゚д゚)ウマーだと思います。好きだ〜!
(´-`).。oO(ホントにFF10-2買おうかなとか思ってしまう…ううっ)
ところで、Mit deinen blauem Augenや今回の作品のタイトルって、フランス語とかですか?
(何気なく気になっていたりw)


感想書き逃げにて失礼。
少々スレ違いかと思いますが、一応タイトルに「FF」が冠されているし…という事で
GB版初代聖剣伝説のオープニング部分のSSをうpさせて頂きます。

暗い上に捏造設定てんこもりの内容ですので、そういうのが嫌いだという方は
スルーよろしくお願いします。
81暗い聖剣SS:03/08/26 01:45 ID:7M1UPMwM
外の世界の清涼さからはおよそ想像も出来ないだろう、暗く錆びた闇がその空間に広がっている。
空気取りも兼ねた明かり取りの小さな穴から差し込むわずかばかりの光は
還って淀んだ陰を際立たせていっそう闇を暗く沈めている。
汚水が染み込んだ石壁には苔とカビが張付き、地下独特の嫌な臭気と不快な湿り気とが絡まりあい
ただでさえ腐っているような空気をなおいっそう醜悪なものへとしている。
そんな所に人が存在しているなど露とも思わぬ人間は、10分も呼吸が持たないだろうし
ましてやそこをねぐらにしているなんて正気の沙汰とは思えまい。
それが可能だとしたら、人としての何かが麻痺しているに違いない。
きっと、彼等はそんな風に思うだろう。そして、それはいささか間違っていない。
少なくとも嗅覚が麻痺しているのは事実だ。が、当然ながら、麻痺しているのは鼻だけではない。
鼻が麻痺するだけで済まされる世界ではないのだから。

こんな、血の腐臭にまみれた場所で正気でいられる人間などいやしない。
何かを麻痺させなければ生きていけない…否。
「生きる」という気力こそ、まっ先に麻痺してしまうような──。
82暗い聖剣SS:03/08/26 01:46 ID:7M1UPMwM
ベッドと呼ぶには余りにお粗末な(もし物に心があるならば、自分をそのように呼ぶなと
恥じ入るだろうし、他の、ベッドの役割を全うしている者は自分達と一緒にするなと憤慨するだろう)
固い板張りの上に、男が1人横たわっている。その傍らには、沈痛な面持ちの男が祈るような
膝立ちの姿勢で横たわる男の手を握りしめている。

男は傷だらけだった。鍛え上げられた肉体には無数の傷跡が浮かび、その上をつけられたばかりの新しい傷が
無惨にも刻まれている。殴打されたか、青あざがついた顔は変型して、腫上がったまぶたは右目の視界を完全に塞いでいた。
あらぬ方向に曲がった左腕に当てられた添え木も、充分に役割を果たしてるとは思えなくて
もはや滑稽でしかない。
手当てらしい手当てをできない身にあって、施されているものはすべて無駄だろう。
だけど、そうせずにはいられなかったのだ。
消え行く命を目の当たりにして、ただ何もせずにいられるほど彼は心が強くなかった。
83暗い聖剣SS:03/08/26 01:48 ID:7M1UPMwM
剣闘士と言えば聞こえはいいが、結局は最下層の奴隷でしかない。
与えられるものは全て最低、それもギリギリのものだけだ。
それすらも惜しい、とさえ思っているかも知れない。奴隷は人として扱われない。
様々な益を生み出す家畜の方が価値があり、水を溜める事ができる瓶の方がよほど有能であると
そんな考え方だから、奴隷の怪我を積極的に治療するはずもなく、瀕死の重傷だったらなおさら
治す手間をかけるなんてこの上なく愚かしい行為でしかない。
死んだら、また新しく仕入れてくればいい。その方が手間も時間もかからず合理的だ。
それでもごく稀に、見かねたのだろう、手を差し伸べる物好きがいたりするが、そんな変わり者は得てして長生きしない。

死ぬな、と心の奥で小さく呟く。
もう何度めだろうか。口にするのも憚られるその祈りが届かないのがわかっているのに。
今まで同じような、たくさんの死に様を見てきた。
目の前の男はどうやっても助からない。死相がはっきりと出ている。この傷は助からない。
期待すること、明日を望むこと。それが、この地下の牢獄に落とされた時に捨て去る最初のものだった。
もう、自分にできる事は何一つない。
本当はこうして看取っていることも辛くて、今すぐにでもこの場から逃げ出してしまいたかった。
それが出来ずにいるのは、無力感から足が萎えてしまったからか、それとも
何も出来ない自分にできるたった一つの事を手放したくないという、単なるエゴなのか
あるいは、逃げたところで現実が変わるはずもないとただ自嘲しているだけなのか。


続きます…
聖剣キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
禿しく楽しみにしています。
相変わらずこのスレの品揃え凄いな
86姐 ◆ane/8MtRLQ :03/08/26 21:37 ID:1Rur+QE7
>>85
どういう意味ですごいのかと詳しく教えて?説明希望w

すみません、すっかり8を放置プレイしています。
実は質問なんですが、前スレで言っていたFF2シリーズ
ここでも需要はあるんでしょうか?
ピンク鯖かここに一作投下しようかどうか迷い中(まだ書いてないけど)です。
前スレで希望されていた方がおられましたが
プレイ人口より未プレイ人口多いみたいですし。

8はなんとか10月くらいには再開したいとは思ってます。
お待ちの方いたらスマソ。
87マリア萌:03/08/27 00:56 ID:2GnQ3pXe
>>86
前に推薦してみた某カプ同盟を久々に覗いてみた。
ら。

…━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━…ッ!!!!
↑※感無量故閑話休題

それだけでも嬉しいです。
でもうpばかりは、このスレにいらっしゃる方々の意思を尊重すべきだと思います。
…読みたい者はここにおりますがw
88作者@残暑見舞い:03/08/28 00:11 ID:yx0QdTRL
おしさしぶりで短篇物ドゾー( ゚Д゚)ノ
カプは瓶k×宝条ハカソ
誰もいない筈の午前0時、神羅屋敷。
そこは、重い空気漂う暗い地下室だった。
沢山の思い出達が、寂しい懐かしさに変わってしまうような…誰もがそんな気持ち
になってしまう、そんな場所で。
悲劇の物語は、始まった。
その地下室の静寂を破り、カビ臭い扉が重い音を立てて開いた。
扉から続く暗く冷たい廊下を、イン・ヤンと名付けられた奇妙な実験サンプルがう
ろついている。
歩いて来る人影は、白衣に身を包んだ一人の男。その姿は闇に紛れ、ただ輪郭だけ
が浮き彫りになるだけで、顔まではっきりとは判らない。
ただ、男の丸い眼鏡のレンズだけが、暗い野望の様に不気味に光っていた。
男は更に廊下を奥へと進み、次の扉を開けた。
そこは散らかった書斎…いや、秘密の研究室のようだ。
その部屋には先客の男がいた。
だがその様子が異常だった。
床に倒れて身を震わせ、苦しげにもがいている。
想像を絶する苦痛に死に物狂いで耐えているようで、時折体の中の何かに抵抗する
ように、しきりに体をかきむしっている。
そして眼鏡の男は満足そうに『彼』を見下ろすと、不気味な笑いを口端に含み、勝
ち誇った声で話し掛けた。
「…調子はどうだね?ヴァレンタイン君」
苦しむ男が顔を上げた時、その端正な顔がいきなり噴き出したような殺気を帯びた。
「ほ…宝条…ッ!!貴様、私にッ…何を、した…ッ!!」
その表情は殺気と恨みに満ち溢れ、宝条と呼んだ男を真っ直ぐに睨む。
宝条は腕を組み、眼鏡を中指で押し上げると、レンズの向こうの瞳を妖しく細めた。
「ふむ…強い拒絶反応か…。
 やはりヒューマンタイプのデスギガスを1stリミットに埋めた方が良かったか?
 ああしかしそれは君の…。……。」
後に宝条が続けた言葉は、意味不明で何を言っているのか判らなかった。
だが、埋めた、と奴は言っていた。それは何かを体内に入れたということか。
真相を問い質さねばならない。
だが声はおろか、奴の顔が霞んだ視界でよく見えない。
ヴィンセントは体を蝕む何者かに身を切り裂かれるような痛みと苦痛を与えられ、
既に息をすることも困難になった体は、視覚さえも閉じようとしていた。
「何か…入れたな…私の体中に、『何か』を!!」
搾り出すようにして出た声、しかし宝条は腕を組んでいた右の拳を口元に当てがう
と、うつむき気味にクククク…と小刻みに笑う。
人を小馬鹿にしたような笑いに怒りが込み上がる。
「答えろォッ!!」
ヴィンセントは苦しみを吐き出して叫び、のたうち返った。
「答える必要はない。手術の経過は順調だ。
 君は自分の体に起こる奇跡を、まもなく理解する」
宝条は無言でヴィンセントに近づくと、無抵抗な彼の服を乱暴に剥ぎ取り、幻想的
な十字架の入墨が彫られた右肩を露出させた。
その彫り物は、彼が初めて人を殺した時に罪の意識に耐え切れず入れたものだった。
よってそれは彼の利き腕に彫られている。人を殺めた後、ヴィンセントは死者の冥
福を祈って右肩を触る癖があった。
その十字架めがけて、宝条はメスで深く切りつけた。
それにはヴィンセントは声も出さず、体を一瞬だけピクっとさせただけであった。
体を蝕む痛みに比べたら、ささいなものだったのかもしれない。
肉の裂け目からは、すぐに彼の瞳の色のような鮮血が溢れ流れた。
ただその後、驚異的な早さで傷が塞がり出すと、彼は切られた右肩を庇(カバ)って
声を張り上げて叫んだ。
「ぐああーッ!!!」
「おめでとう、よくやったぞヴァレンタイン君!!
 最も醜く美しい、最強の戦士の誕生だ!!
 そして君は、永遠の若い肉体をも手に入れたのだよ!!
 クァーックァックァッ!!」
宝条が何かほざいている。
奴の言っている意味が、判らない。
ただ、自分はもう人間でないような自覚はあった。
ヴィンセントは薄れ行く意識の中で、ただ、これが悪い夢であってほしい、と
切に願った。


ヴィンセント〜The Nightmare's Outside〜 終
93作者@逝くべし:03/08/28 00:29 ID:s2voltG4
以上です、先生方。ちなみにこれは瓶kスレに上げようとしてたヤシです。
それより書きカケの放置プレイをなんとか汁>自分。
94namae ◆Vlst9Z/R.A :03/08/28 00:37 ID:eSz7bJyj
ヌギバとパインが交換スフィアを五分以内に一人二往復させると、
ヒュージな乙女「純情パイン」となるのだ!

「 臨・兵・闘・者・のむ・うつ・禅!」
「ユウナん、それ別の漫画だよ〜」
「じゃあ、ええっと……たりく・また!(60度)」
「!!!」
キマソの*がキュッ!!!っとなりますた。

一方その頃ルブラン一味によるグアドサラムおいも王国化計画
がついに実行に移されようtおs……(雑音砂嵐)

        ガバッ
    ∧R∧!   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__ ( ;゚Д゚)__< ……夢!?
|  〃( つ つ   | \_______
|\ ⌒⌒⌒⌒⌒⌒\
|  \           \
\  |⌒⌒⌒⌒⌒⌒|
  \ |________.|

というわけで半端なネタ投下してみたり

作者殿>
大変グッジョブ&ゴチになりますた
ところで検体と執刀医ってカプのうちになるんですかどうでしょうか(謎)
95R@no-name ◆Vlst9Z/R.A :03/08/28 00:46 ID:eSz7bJyj
ああん投稿ミス( ´∀`)σ)´Д`)
正解>カプのうちになるんでしょうかどうでしょうか
96暗い聖剣SS:03/08/28 00:50 ID:3WgTxkQu
>81-83続き


(お前はこの男の親友だったな)

……一つだけ。
さっきから同じ言葉が頭に響く。ずっとそれを考え続けて時折、唾を飲み込んだ。
だけど、傷付いた親友の姿に目を落とす度にためらい、定まらない心が揺れては沈む。

(どうせ、助からん。親友のお前が楽にしてやるのが思いやりってもんだろ?)
そう、一つだけできる事がある。
このまま命が消えるその時まで、堪え難い苦痛を長引かせる事は残酷だろう。
あの男──ボロボロになった親友を闘技場から文字どおり引きずってきた兵士──の言った事は正しい。
今の自分は情けのかけ方を間違っている。そう言い聞かせても、やはり決心がつかない。
湿気て倦んだ空気の中で、時間だけが気怠げにのろのろと動いていた。

「無念…だ…」
固く閉じられていた目をかすかに開き、男は苦し気にうめいた。
「ウィリー…しっかりしろ」
こんな時にかける言葉ではないとわかっている。わかっているが
他にどんな言葉をかければいいのだ。何か言葉をかけずにいられないが
適切な言葉がみつからず、そんな自分に苛立った。
「……シャドウナイト!」
ギリ、と唇を噛み、光が消えかけている瞳には押さえられない憎しみの炎が浮かぶ。
その名前を耳にした自分もまた、胸を灼け付く怒りに身体が震えた。
97暗い聖剣SS:03/08/28 00:52 ID:3WgTxkQu

グランス公国の王、シャドウナイト。
漆黒の鎧とマントを纏い、あたかも「恐怖」というものをそのまま象ったかのでは
ないかと思わせるほど、非道で悪らつな男だった。
自らの欲望の為には親を手にかける事も厭わず、そうして王位についてから
彼の暴虐が始まった。自国内のみならず、近隣諸国へと支配の手を進め
圧倒的な戦力をもって瞬く間に征服していった。
急襲に反撃すら出来なかった国もあれば、抵抗した為に、徹底的に略奪された上
跡形もなく滅ぼされてしまった国もあった。
惨状を目の当たりにして、この頃は進んで支配下に入る国も出てくる有り様だ。

シャドウナイトの機嫌を伺い、息を潜める日々の中で、彼を抹殺せんとする
動きは至極当然の流れだった。
故郷を滅ぼされた者、義憤で立ち上がった者、金で雇われた者。
しかし、剣客としても名を馳せるシャドウナイトを討ち取る事は容易でなく
逆に返り打ちにあい、または捕らえられた後、シャドウナイトを楽しませるための
剣闘士という屈辱を味わされる結果となった。そんな奴隷の噂は瞬く間に広がり
シャドウナイトの冷酷さを改めて思い知らされた人々は、さらなる恐怖と絶望に
嘆き、悲しみ、やがて諦めに打ひしがれた頃には、とうに逆らう気力も尽きてしまった。
誰もシャドウナイトを止められないのだと。
98暗い聖剣SS:03/08/28 00:53 ID:3WgTxkQu

強く光った瞳が不意に翳り、次の瞬間、ウィリーの身体が大きく跳ね上がった。
「ウィリー!」
大量の血を吐き出して激しく咳き込み、力なく宙を掻く手を慌てて握りしめた。
近い。死がもうそこまで迫っている。
「死ぬな、ウィリー」
酷な事を言っている。奴隷剣士として過酷な戦いを絶え抜き、そして今も瀕死の身体で
激痛を堪えなければならない、拷問のような状態でこれ以上どう耐えろというのか。
それでも、願わずにはいられない。

「ボガー…ド。…バが危惧して、た…通り、マ、マナの樹が…」
「ウィリー?」
ボガード?…初めて聞く名だ。そんな名前の奴隷はいなかったはずだ。
朦朧とさまようウィリーの目は、すでに見えていない。自分ではない誰かに向かって
ウィリーは話し掛けている。
ぜぇぜぇと息も絶え絶えに、なおもウィリーは言葉を続ける。
声を出す事すらもう相当辛いだろうに、必死に命をつなぎ止め、残された力に縋るその姿は
あまりに痛々しい。だからと言ってそれをとどめることはできようもなかった。
これほどまでに伝えたい事とはいったい何なのだ。そしてそれを、そんなにしてまで伝えたい相手とは。
「…アスが、あの子を探している。頼む!ジェ…マの……っき……が…」
そこで言葉が途切れ、しばらく息を詰めて耳を傾けていたけど
ウィリーの遺志を知る事はついぞ、叶わなかった。

続きます。
99作者@マターリ:03/08/28 01:33 ID:XvdkaUWK
>R@殿
このカプが恋なnかSたらもう豆ポ(ry
設定はルクレっつぁんのホコラでのニブル回想シーンで、瓶kが博士に開きにされた後、
瓶「(; ゚Д゚)うわあああー」
となった後博士が様子見に来たとゆう設定です。
100白 ◆SIRO/4.i8M :03/08/28 17:16 ID:aTILtodq
お久しぶりです。皆様、火星は見ましたか?

>作者さん
無茶言ってすいませんでしたー!○| ̄|_
ソムリエエプロンのヴィンさん、素敵すぎまつ。
鮮血を噴き出し、塞がりゆく十字架の刺青…かかか格好良いー!
強気なヴィンセントさんと鬼畜宝条せんせいに
ハァハァハァハァハァハァハァハァ ア、アハァ… ヤヴァイ萌えが止まりません。
回想シーンの一部なのですか?
全体を読める日を、鼻血を押さえつつお待ち申し上げます。

>ドリルさん
すごく楽し気で好きです!
ゴゴの鸚鵡返しキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
ござるの小父さんも、皆さんしあわせそうでしみじみホロリ。
最下位争い爆笑しますた!

>雫夜さん
GCの回復を祈りまつ(;´Д⊂)
モテモテなサ・ジェ君とエルヴィラタソが清楚で可愛いです。
お祭りの中、言いにくい事を必死に訴える
ロナ・リィが複雑で切ないです。。。
板違い…この世のどこかにある憧れのパラダイスですね。
逝ってみたいですが色香が(以下板違いにつきry)
101白 ◆SIRO/4.i8M :03/08/28 17:16 ID:aTILtodq
>65さん
深く( ´∀`)マターリ潜行しておりますです。

>鈴さん
最後の文章が……。。・゚・(ノД`)・゚・。
幸せ一杯なのに、物凄く哀しいです…。
台詞回しが自然で、滑らかな文章に萌えますた。
シュ−イン側とレンタソ側の描写、どちらも素薔薇しいです。
サインください。

>HANABIさん
SSはお書かきになりませぬか?拝読したいでありまつ。

>聖剣SSさん
重厚で金属質な文章に激しくドキドキしました。
鋭く怒りに燃える描写が、何ともカコ良いです!
逆境の剣闘士さんを応援したくなります。
聖剣はFF外伝でしたね。続編期待しておりまつ。ペコリ

>84さん
ご一緒に、聖剣キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!でありまつ!
102白 ◆SIRO/4.i8M :03/08/28 17:18 ID:aTILtodq
>85さん
品揃えの凄い所に、オイラは阿呆な物を…Σ(゚Д゚;)
シリアスからマターリまで、皆様のFFな萌えをお持ちしております。

>姐さん
FF2ですか!l \ァl \ァ
ウボァー(゚Д゚)こうていは勿論、
良い男良い女揃いで、めちゃくちゃ萌えますです。
姐さんの書かれる、緻密で華麗な8も勿論大好きです。

>マリア萌さん
某カプ同盟…(;´Д`)ハァハァ
オイラも読みたいでありますです。

>R@no-nameさん
せんせい!笑いが止まりません!
ジャソプのアレ、哲学系ギャグが、震えが来る程大好きでした。
グアドサラムおいも王国には、
ヘ−ガス3姉妹(半熟英雄)が登場しまつか?
■今迄の粗筋■
火花が地上に降り注ぎ、花火がゴンドラを覆う。
「綺麗だな…」
そう呟くクラウドの横に
ムッキーとディオとバレットとデブモ−グリがぎゅう詰めでした。
地上では、半纏に捻り鉢巻のシドが
花火の操作に駆け回っています。

カプは…うーんシドシエラでしょうか。
前話は>>52-55になりますです。
104【飛空艇が見ている…】(3):03/08/28 17:31 ID:aTILtodq
 探検隊が、深き古の森にさまよう。
水の響き。羽虫の囁き。湧水が、巌の表面を撫でてゆく。
「隊長!空から蛇が降ってきました!」
「食虫花に齧られたよ−ヽ(`Д´)ノウワァァァァン」
マテリア成長3倍と謳われた幻の剣を求め、パーティは大童。
「クラウド−!うしろうしろー!」
「金盥でも落ちるのか!?」
巨大モンスター、オチュ−がパーティの横にいますた。

 主人公が戻った所で作戦会議。
葉っぱに顔をつけた、煮ても焼いても食えないリルフサックが
円陣に混ざって話を聞いてます。
冒険者達が脊髄反射で斬りつけ、スカスカ躱されますた。
「(;´Д`)…とりあえず。次行こう、次」

 不意に。柔らかな触手が、クラウドの足首を捕らえた。
ぼ び ょ り ょ こ ょ び よ よ 〜 ん
訳の分らない音がして、彼は樹冠へ消えて行く。
「クラウド!」
ザックスが飛び出す。
「ついでにテュポーンのマテリア回収してくれ!」
「行って来るけど興味ないね!」
グッ!とクラウド、親指を立ててOKサインです。

 微かに光る洞窟に。紅の刃が眠っていた。
「お前は、ずっと此処で待っていたのか?」
クラウドが、その剣を静かに抱く。
「で、何故剣が宝箱に?」
「突っ込むなよー(ノД`)シクシク」
ふと。ケット・シーが呟いた。
「勇者です。きっと。誰かに引き継いで貰いたかったんちゃいますか?」
105【飛空艇が見ている…】(4):03/08/28 17:36 ID:aTILtodq
 上昇気流に乗って、コンドルが天空を目指す。
チョコボファームに戻ると、クリンが飛び出して来た。
幼いクリンの腕の中で。小さな、小さな雛が、震えながら鳴いた。
「産まれたよ!この牝チョコボに、何て名前つける?」
「シエラ!」
艇長が眼を丸くしますた。
「親とカップリングさせて、トウホウフハイに勝つ!」
「鬼畜か━━━━━━(゚Д゚;)━━━━━━ ??」
ふと、クラウドの背後にモップが。
牧場で、シドが大乱闘しますた。

 上空にアルテマウエポンが浮かび、
砂漠でルビーウエポンがゆらゆらしてる、平和な昼下がり。
「つったく。やってらんねぇぜ!」
紅茶の芳香が、笑うシエラの指に吸い寄せられる。
彼女がシドの顔を、覗き込んだ。
「艇長。艇長は、帰って来ますよね?」
「ここにいるじゃねぇか」
空色の眼に、シエラの、花色をした瞳が映る。
「宇宙までは、お供出来ましたが。
 ここから先、私、何も出来ないです」
そう云って俯き、カップを握る。
唇を噛み締めながら。
「お願いです。無事に…っ、帰って来てくださ…」
不意に。
椅子の倒れる音が響く。
そのひとの身体が、扉に押し付けられた。
シドに、きつく、全身を抱きすくめられて。
────柔らかく。
シエラの吐息が、艇長の耳に触れ、溶ける。
106白 ◆SIRO/4.i8M :03/08/28 17:37 ID:aTILtodq
挿し絵自炊しますた。。。⊂⌒⊃´Д`)⊃シクシク
ttp://sylphys.ddo.jp/upld2nd/game/img-box/img20030827221404.jpg

■次号予告■
逃亡するアルテマウエポソ!
なかなか入手できない最終リミット!
ビンタをかます正体不明!
イラネーヨなへたれチョコボを寄越す、カームの爺!
次回「勇者は辛いよ」「デスペナルティ強化計画」の2本です。
雫夜さん、FFCCの続きマダー?
108聖剣SS:03/08/29 11:54 ID:0FxV2kS0
>96-98続き

背後の気配に気付いても、振り返る気分も起きない。
「……こんな時になんだけど、さ。…仕事だよ」
仕事、か。
返事をするのも億劫で、何とか身を引き起こして立ち上がる。
途端に体のあちこちが軋んで、こんなに強張るほどウィリーを看取っていたのかと思うと
何だか可笑しいやら半ば呆れるやらで、思わずこみ上げた笑いは、渋く喉を詰まらせた。

知らせに来た女戦士が寝台に目を落し、息を飲んだ。
「死んだんだ…」
呆然と立ち尽くす女の横を言葉もなく通り過ぎ、扉のない部屋を出ようとした間際
「みんな、死ぬんだ……」
ぽつりと、抑揚のない声が聞こえた。
「アマンダ」
肩ごしに見えた背中はこれまでに見た事がないほどちっぽけで
いつもの気の強さはかけらも見当たらない。
「大丈夫だって…ウィリーを見てたらいつかここを出て、弟にあえる日が来るって信じてた」
重みに耐えかねた雫がぱたり、と足元の影に吸い込まれて消えていった。
109聖剣SS:03/08/29 11:55 ID:0FxV2kS0

ひと月で奴隷が総入れ替えになる事も珍しくない中で
自分を含めここにいる3人は古参に入る部類で、中でもウィリーは異質だった。
暗闇の中で彼はけして明るさを失わずにいた。
連日の戦いにも、勝ち抜くだけでなく無傷で帰ってくる日もあった。
そんな姿を見ているとなんだか、このやるせない日々も実はたいして
苦しいものでもなんでもなく、ただ落された衝撃から立ち直れてないだけで
悲観的に捕らえ過ぎなんじゃないだろうかと、そう考えたら
折れかけていた心にほんの些細ではあるが、余裕が生まれた。
彼がいたからこそ、自分達は今日まで生き抜いて来れたと言える。

「最後に一目、弟に会いたかった……」
一筋、また一筋と涙がこぼれ、かすかな嗚咽を漏らすアマンダを見てるうちに
ひどく冷たい声が口を突いた。
「諦めるのか。そんな簡単に」
振り向いたアマンダと、この時初めて視線があわさった。驚きで見開いた目には
困惑と怒りがないまぜになった色が浮かんで、青白い顔をより一層際立たせている。
何故そんな事を言われるのかわからない、と混乱した頭を振払い
噛み締めるように、言葉の意味を反芻する。
沈んだ空気はにわかに一変して、部屋は険悪な雰囲気に包まれた。


続く
110聖剣SS:03/08/30 15:33 ID:bqybbPwB
>108-109続き

「その程度の安い気持ちだったのかって言ってるんだよ」
カッと頬が朱に染まるやいなや、渾身の力を込めた平手をくり出す。
よくわかる反応だと苦笑いをかみ殺しながら、躱した右手をなんなく捕らえた。
忌々しいとばかりに手を振りほどいたアマンダは、ひと睨みで石化するメデューサも
かくやとばかりに烈しい眼差しで対面する男を刺し貫く。
相変わらずアマンダの瞳からは涙があふれていて、怒りの所為か
さっきより頬を伝うしずくが若干増えているように見える。
うらやましい、と思った。
彼女はいつもこうだ。感情に素直で、逆らわない。
自分はといえば、かけがえのない無二の友を失ったというのに一滴の涙も出てきやしない。
自身への嫌悪が、嫉妬と羨望という歪んだ形に変えてアマンダの涙へ向けられた。

なんという、身勝手な八つ当たり。

それを自覚しながら、なおも抑えられない自分に愛想が尽く。
「ウィリーだって駄目だったじゃないか!これ以上、何を望めって言うの!」
「それで諦めて泣いて、大人しく死んでいくのか?そんなの、まっぴらだ」
フン、とアマンダは侮蔑の笑みを浮かべる。
111聖剣SS:03/08/30 16:56 ID:rkeQ1OYC
「そう、大した覚悟だね。何年、何十年、ここに居座る気?天寿を全うできたら
 あんたは伝説の存在になるわね」
「それこそごめんだな。こんな所にもう未練はない」
アマンダは瞬いた。その顔から次第に表情が消えていく。
「──あんた、まさか…。ウォーレンの戯れ言を信じるって言うの?」

『闘技場のモンスター入場ゲートは外に直接通じている』
何を馬鹿な、と笑う者やそれを知ったとこでどうする、と呆れる者。
無駄な知識だと一笑に付された中で、充分あり得る話だと頷いた男がいた。
ウィリーだった。そして自分も同じ意見だった。
奴隷の対戦相手であるモンスターの大半は、大型の凶暴な肉食獣で
そういった魔物はまず飼い馴らせない。そもそも気性の荒い魔物を建物の中に
繋ぐ事自体無茶な話で、かと言って大人しく檻に閉じ込められているような
魔物では、かえって最高のショウを望むシャドウナイトの不興を買ってしまうだろう。
毎日生け捕りしてくる兵士どもや魔導師連中も気の毒なこったと
同情しつつ、いい気味だと笑い飛ばした日も既に懐かしい。
(今思えば、その役目も別の奴隷達に割り振られていたかも知れないが)
112聖剣SS:03/08/30 16:59 ID:rkeQ1OYC

「馬鹿な考えはよすんだ。無理だ」
「やってみなくちゃわからない」
引きとどめるように腕に縋り付いてきたアマンダを無造作に押し退ける。
「あんた、死に急ぐ気かい?」
「遅かれ早かれ、ここにいたらウィリーの後を追う羽目になる。
 それなら、いっその事賭けてみる」
脱走した奴隷がいなかったわけではないが、イルージア山脈の中腹にそびえる
グランス城は深い森と急峻な崖に囲まれていて、攻め込む事もさることながら
逃げ出す事もまた容易ではなかった。野垂れ死んだり、あるいは牢獄に連れ戻されるのは
まだいい方で、そうでなかった奴隷がどういう末路を辿ったのか想像するのも恐ろしい。
「やめて……お願い。死んでしまう…!」
「暗闇の中で果てるより、太陽の下で死ぬ方を選ぶ」
何を言っても止められないと悟ったか、項垂れたまま、壁に寄り掛かった。
ややあって仰ぎ見た静かな目が、ひどく印象的だった。
「──何を、賭ける?」
迷わず、己の胸を指し示す。
もはや失うものは何一つない。
「ウィリーが繋いでくれた命だからウィリーに返さなければならない。
 全部は無理でも、そうする義務がある」
「正気じゃないね…」
「ここで生きて来た事は何一つ無駄にしたくない。だからアマンダ……君も
 捨てないでほしい。どんな手段を使ってでも」
返事はなかった。代わりに突き出された拳を、小突くように軽く合わせる。
言葉もなく交わした約束が果たされる保証など、どこにもありやしない。
だけどそれで充分だと思った。──思うしか、なかった。

続く
113名前が無い@ただの名無しのようだ:03/08/31 15:43 ID:w0DDZRcu
レナ×バッツ
ティナ×ロック
の小説読みたい。
>聖剣SS
燃える(* ´∀`)
熱い!イイ!
聖剣はやっぱり熱くなくちゃw
116ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/09/03 00:49 ID:7YnPSOem
レベルage作業はツライ。

>>聖剣SS
(・∀・)イイ! チョット暗い雰囲気が漂っているけど、そこから沸いてくる力強さみたいなのが
たまりません。>>110のアマンダの怒りが込められ溢れ出た涙の描写なんか燃えます。
……これって確かマナの樹が出てくる奴でしたっけ? 未プレイなのに何故か蛙(?)に
なる友人のエピソードがあるという事だけは強く印象に残ってるんですが。(ゲーム違い?)

>>86
FF2も見てみたいですが個人的にはシュウ先輩のSeeD実地試験編の続きを激しく
切実にキボンヌ…(*´д`)シテミルテスト

>>マリア萌え
マリア、良いですよね。一度も画面に姿を現すことはないけれど、元帝国将軍に似ている
という噂の美貌を見てみたかったです。(違)
または、父親と戦わざるを得ない状況下で、操縦者である彼女を守るべく自律行動を始め
るプログラムに戸惑う姿には涙を誘われました(もっと違)
横レスなうえにネタでスマソ。
117ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/09/03 00:51 ID:7YnPSOem
>>88-92
この短い文章の中によくぞこの雰囲気を込めたな〜という感じがします。
宝条博士のマッドサイエンティストっぷりが相変わらず(;´д`)ハァハァ…もとい、悪役っぷりが
見事です。
作者さんの描くヴィンセントって、儚げでカコイイなぁ……(漏れのプレイ時の印象とは
まるで正反対で印象変わったり。w)

>>94
ドレスに巫女さんの格好があったら是非装備させてみたいとか思った漏れは…
…聞く前に逝ってきます(w。(あいかわらず、新作を心待ちにしつつsageてみる)

>>103-106
シドシエラキタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━(  ゚)━━(  )━━( *)━━(゚ *)━━(∀゚* )━━(*゚∀゚*)━━━ !!!
(;´д`)ハァハァ
健気なシエラタン、艇長を待つと心に決めつつも、信じていても心配になってしまう
そんな微妙な女心が(・∀・)イイ! その気持ちを黙って受け止めてやる艇長も(・∀・)イイ!
あんたぁ立派な男児だねぇ!
そして絵が自炊できる事実に驚きますた。(w

>>113
ティナ×ロックに激しく興味があります。ど、どういう感じなんでしょう…?

スマソ、休みの日にでもゴゴリル完結うpします。。。。
118姐 ◆ane/8MtRLQ :03/09/04 19:43 ID:qr/0KwrF
爆撃も治まったらしいので久し振りに投稿など。
要望もありましたので途中で止めてたシュウの試験の続きです。

リハビリ?として書きましたがやっぱり8の話の勘が戻ってないです。
前の部分は>>12-21です
119Fire(仮):03/09/04 19:44 ID:qr/0KwrF
蹴飛ばされた男が別の男を巻き込んで階段を転げ落ちた。
シュウは手すりから手を離した。
体が宙に投げ出される。
「レビテト」
シュウがかすかに呟いた。
言葉に出す必要はないが時として詠唱は意識を集中するより早く体が反応して魔力を放つ。
シュウの体が軽くなる。
そのまま階段の吹きぬけを3フロア分落下しながらさっき投げ出した槍を受け止め、もう一方の手で手すりを掴んだ。
ふわり、と風に舞う花びらのようにシュウは再び階段に着地した。
着地点を狙って攻撃を受ける。
シュウはにやり、と唇の端を上げると槍で相手の腕を叩きのめす。
次の瞬間にはまたシュウは空中にいた。
壁を蹴る。
その反動でまた高く舞い上がる。
腰を中心にくるり、と足を上げる。
まるで見えない鉄棒で逆上がりするように回ると、シュウは敵の一人の頭の上に着地した。
男が倒れる前に次の攻撃を避ける。
1階に降りるまでに一人でも多く潰しておきたかった。
「責任者はどこよ……」
シュウは舌打ちしながら敵に回し蹴りを叩きこんだ。
来るのは雑魚ばかりだった。
そろそろ倒した敵の数が分隊二つ(ここでは1分隊8名)になった辺りで明らかに格が違う相手が現れた。
「やっと来た……」
シュウは少しも怯む事なく槍を構えた。
「SeeD……学生の傭兵部隊だな」
戦場に不相応な年若い、しかも強い娘を前にしてその男は言った。
120Fire(仮):03/09/04 19:45 ID:qr/0KwrF
シュウは答えなかった。
「後五年もすればいい女になれたろうに」
男はショートソードを両手持ちで構えた。
この世界で上級兵士の接近戦では拳銃は役に立たなかった。
大抵そういう人間は何らかの方法でプロテスを装備して弾丸の威力を殺す技術を持っているからだ。
実際この男とシュウもプロテスを張っていた。
力技でプロテスの防護を破るとしたら明らかにシュウが不利だった。
ショートソードが迷いなくシュウの上に振り下ろされる。
今までの兵士はシュウの素早さと、そしてなにより少女である事に惑わされてまともに戦えなかった。
この男は違った。
シュウは間一髪でそれを避けると男の手を蹴った。
殺さずに、目的を聞き出したかった。
しかしそれはあっさりガードされた。
G.F.を召喚するべきかどうかシュウは迷った。
しかしこの状態では建物に被害を出さないで召喚できる余裕がなかった。
ショートソードを槍で受けて続けているうちに腕が疲れてきた。
早く勝負をつけないと、やられる。
それは初めて感じた焦りだった。
シュウは左手に意識を集中した。
それはほんの一瞬だった。
相手の斬撃をぎりぎりにかわし、シュウの手から雷撃が放たれ、相手の頭上に雷が落ちた。
命を絶つほどではない、しかし十分に相手の隙を作れた。
シュウの手から繰り出された槍が相手の体に刺さった。
「答えなさい」
シュウは冷然と言った。
121Fire(仮):03/09/04 19:48 ID:qr/0KwrF
「このビルでのあんた達の目的は何」
男は槍を体から抜こうとした。
「答えれば抜いてあげるわ」
男がわずかに口を開きかけた時だった。
銃弾がシュウの目前の男の背に浴びせられた。
その内数発が体を突き抜け、シュウの体を傷つけた。
「な、に……?」
幸いそれは肩をかすっただけだった。
いくら秘密を守秘するためとはいえ、仲間をこうも簡単に殺すなんて。
シュウは軽い衝撃を受けて、撃った男を見た。
男は無表情に銃を構えたまま、今度はシュウを狙おうとした。
とっさに、すぐそばの廊下へと駆け込んだ。
男達が追ってくる。
シュウは再度壁を蹴って飛んだ。
幸いまだレビテトは効いていた。
壁から飛ぶ前に一人の頭をボールのように蹴って宙に逃れる。
落ちながら追って来た男達の一人の頭を蹴って再び宙に戻ると槍でも二人斬った。
同時に足で一人蹴る。
頭から先に落ちそうになってとっさに槍を床に突き、それを支点して足を背に向けて折った倒立姿勢から
伸び上がりながら最後にもう一人。
シュウが再び床に足を付けるまでに6人の男が倒れた。
さすがに息が乱れた。
シュウは倒れた男を見て違和感を覚えた。
なんとなくユニフォームのサイズが合っていない感じがしたのだ。
ドッグタグをひっくり返してそれは確信に変わった。
「そういう事なの……」
シュウは再び今来た道を駆け上がった。
122Fire(仮):03/09/04 21:08 ID:qr/0KwrF
「撤退するわよ!!」
息を切らせながら叫んだシュウにサラとベルナールは驚いた。
「何があったの?」
サラがシュウの肩の傷に気付いてケアルをかけた。
「私達が戦っているのはたぶん『テロリスト』じゃないのよ」
シュウがはぁはぁと息をつく。
「どういう事だ?」
ベルナールがシュウの言葉に倒して縛り上げた兵隊を見た。
シュウは倒れている男のドックタグを引っ張った。
「生年月日が合わないの。テロリストは特殊部隊の人間よね。それなら
あまり若かかったり年を取っていてはおかしいでしょ?」
特殊な任務を実行するのにはある程度の経験と体の俊敏さが必要だった。
「大抵20代半ばから30代までよね。下で倒した男はどう見ても30代後半なのに、タグだと25歳なの」
タグは戦闘時において血液型や、時として身元の判別に使われる。
普通は就寝時も外さないし、他人の者と間違える事はありえない。
「よく見て。たぶん、特殊部隊の別動部隊が他の人間とすり変わったんだと思うのよ」
ベルナールが意識を失った男を数人確認して回った。
「とてもじゃないけれど普通ならこんな風に確認できるようなはずないから、そこまではこだわらなかったんでしょうね。
「そうか、それでわかった」
ベルナールが納得したように呟いた。
「何が?」
「爆弾の意味さ。ここが爆破されたら堂々と乗り込んで来れる人間がいる」
サラの問いにベルナールは苦い笑みを浮かべた。
123Fire(仮):03/09/04 21:19 ID:aBoxjqWC
「この場所の近くに、ガルバディア大使館があったはずだ。そんな所で州兵による爆破テロがあってみなよ。
ウィルディア市だけじゃなくウィルバーン自治州全体がガルバディアに対して反意があるとみなして
武力行使できるいい口実じゃないか」
そういう事であればガルバディア軍やガルバディア・ガーデンの対応が曖昧なのも頷ける。
後で問題になれば自治を認めている地区に軍隊を派遣するのはどうかと審議していたとでも言い逃れできる。
「そういう時だけは遠慮がちなのね」
サラが呆れたように呟いた。
「とにかく、これ以上は私達が首を突っ込むのはまずいわ」
シュウが本部に有線連絡するため、受話器を取り上げた。
その時だった。
普通の通話とは明らかに異なる発信音がした。
「え?」
シュウが戸惑った瞬間、ベルナールが反応した。
「シュウ、どいて!!」
電話の据えられたコンソールのカバーをベルナールが叩き割るように開いた。
「やられた……!!」
ベルナールは額を手で覆った。
「小型爆弾だ」
シュウは一瞬頭が真っ白になった。
その隙にベルナールは爆弾を調べ始めた。
124Fire(仮):03/09/04 21:20 ID:aBoxjqWC
「なるほど。本命のセットが間に合わなかった時はこいつで誘爆させるって事か」
「構造的にはどう、ばらせる?」
シュウは自分の迂闊さを呪った。
「電池はリチウムじゃないし、サーモセンサーのない単純な奴だから液体窒素があれば……」
当然、そんな物はなかった。
「二人とも、冷気魔法持ってる?」
サラが思いついたように言った。
「ブリザラなら」
「僕も」
「悪いけど、こっちに頂戴」
サラが言うが早いかドローのために意識を集中した。
G.F.をジャンクションする事によって身につけられる一種のエナジー・ドレイン能力だ。
二人は頷いて精神領域を解放する。
サラは二人から冷気エネルギーを受け取るとしばらく意識を集中していた。
やがてサラの手から、かなり強い冷気が噴出した。
手から放たれた冷気は爆弾を完全に凍らせた。
こうしてしまえば電池が低温によって科学反応起が鈍り、爆回路を作動させる事が出来なくなる。
「今のうちにばらして」
サラの言葉にベルナールは軽く口笛を吹くとポケットから手袋と簡易ツールを出して解体にかかった。
「終わり」
ベルナールが雷管を引き抜いてようやくその場に安堵が訪れた。
125Fire(仮):03/09/04 21:25 ID:CCxG97rq
「でも、気付いて良かったよ。遠隔操作も出来るタイプだったからうかうかしてたら帰り際に大爆発だったかも」
ベルナールがシュウを慰めるように言った。
「ありがと」
シュウは軽くため息をついた。
「それにしても、この事件、どうやって落とし前つけるのかしら」
サラが呟く。
会話記録を取られている事はそろそろ忘れかけていた。
「さあね。『SeeDは何故と問うなかれ』だもの」
シュウは立ち上がった。
「撤退します」
その言葉に二人は敬礼で応えた。

三人が撤退を決めてすぐ、ガーデン本隊からの応援部隊が来た。
本隊もシュウ達と同じく異変に気付き、クライアントとの迅速な審議の結果秘密に収束させるべく隠蔽工作にかかった。
テロリスト自体は対話のためにビルを占拠しただけでまだ誰一人殺してはいなかった。
シュウ達がいたビルの一室に、人数が合わなかった『テロリスト』のメンバーが重傷を負った状態で監禁されているのが
見つかった。本隊とは別に行動して合流前に攻撃を受けたらしい。
爆破工作しようとしていたメンバーは傭兵で、決して雇い主が誰か、口を割らなかった。
むしろ、州当局はそこまで尋問しなかったというのが正しい。
シュウに知らされたのは、シュウの目の前で撃ち殺された男が『テロリスト』の情報をどこかにリークした人物で、
今回の騒動の首謀者の部下だったという事だけだった。
126Fire(仮):03/09/04 21:26 ID:AYpOFfiR
「結局なんだったのかしら」
サラは学食から買ったコーヒーを片手にシュウに言った。
事件が事件だっただけに事後処理が大変で、いつもならすぐに発表される試験結果がまだ出ていなかった。
「状況から推測すると自治州がガに干渉受けてるのにしびれ切らしたお馬鹿が騒ぎ起こしたはいいけど、
首謀者の下の万年bQがガ軍に情報リークしてたって事でしょ?出なきゃ、間に合わせとはいえ偽装用に
傭兵の人数分特殊部隊の衣装なんか用意できないって」
シュウの中では今回の事件は完全にガルバディアの干渉があったという事になっている。
あのビルにいた『テロリスト』は実際の人数より沢山いたのだ。
そうでもないと説明がつかない。
SeeDは依頼に対して質問はできないし、しない。
「でも、私達まだSeeDじゃないもんね」
サラがくすっと笑った。
「シュウって案外へ理屈多いよね」
「そういえばサラ、なんであの時ブリザガ使えたの?」
SeeD候補生で上級魔法を使える、というより入手している生徒は少ない。
確かサラも試験直前は使えなかったはずだ。
「ああ、あれ」
サラは笑った。
「私、今回の試験で『C−8』を割り当てられてたの」
そのコードネームで呼ばれているのは氷の女王の姿をした冷気属性のG.F.だった。
取り扱いが難しいとされ、以前使用していたSeeDがガーデンを去って以来固定で使用している者がいない。
「あのG.F.、冷気魔法のエネルギーを集めて上級魔法に精製する能力があるらしいの。
あれのお陰で助かったんだけど、測定結果として相性は今イチだったからもう外されたけれどね」
127Fire(仮):03/09/04 21:51 ID:AYpOFfiR
「そうなんだあ」
シュウは感心したように言った。
二人は並んで2階のエレベーター前に移動した。
「ところでベルナール、何してんの?そろそろ呼び出しかかるのに」
「図書室。どうせ今回はダメだろうから、おさらいするって」
防犯センサーの事を未だに気に病んでいるらしい。
「そんな事言ったら私だって危ないのにねえ」
「シュウ・ツォイユエ」
突然呼ばれてシュウは振り返った。
教官が自分を呼んでいる。
合格したらしい。
「サラ・ワトソン」
サラが次いで呼ばれた。
その後呼ばれた中にはやはりベルナールの名前はなかった。

ベルナールはその後結局、補欠合格の形で欠員の補充としてSeeDになる事ができた。
「で、なんで未だに図書館通いが続いてるわけ?」
任務の合間を縫って後輩の指導をする立場なので教えるための下準備としては不自然ではないかも
しれないが、むしろ現場の最新情報など、ネットで収集した方が効率がいいはずだった。
久々に顔を合わせたシュウの問いにサラは意味あり気に笑った。
「本が目当てじゃなくて、図書委員が目当てなのよ。ほら、三つ編みのあの子」
「ああ、なるほどね……」
シュウは大して急ぎもしない本をこまめにリクエストしているベルナールを思い浮かべて苦笑いをした。
「あの子、どうもゼルに気があるっぽいんだよね」
シュウの言葉にサラが手で口元を覆って笑った。
「だよね。気付いてないのはゼル本人とベルナールくらいだよね」
「後、三つ編みちゃんも周囲にばれてるとは気付いてない感じなのも笑える」
二人の女性SeeDは顔を見合わせてくすくすと笑った。
128Fire(仮):03/09/04 22:07 ID:AYpOFfiR

「緊急会議を始めます」
今月の担当の言葉で私語はぴたりと止んだ。
「深夜に緊急召集しましたのでおわかりかと存知ますが、1時間前にSeeD派遣依頼がありました。
クライアントはドール公国議会。55時間ほど前からガルバディア軍の攻撃を受けています。
依頼内容は戦闘支援及び首都のキープ。尚、今回の任務は同時にSeeD実地試験も行う事を決定しました」
シュウの顔が引き締まる。
今回の試験には親しい後輩が何人も参加する。
「つきましては候補生の統括補佐を一名、正SeeDより選出したいと思います」
「私がやります」
シュウは迷わず手を挙げた。
時として普通の任務より危険なその役目をシュウはあえて引き受けた。
「あなたってつくづく後輩思いよね」
直ちにドールに向かう事になったサラは退室しながらシュウに言った。
シュウがそれに首を振った。
「ただ単に早く決めてもう一回寝たいだけよ」
シュウの横顔をサラはちらりと見た。
「素直じゃないんだから」
サラの呟きはシュウには届かなかった。

数十時間後、『伝説のSeeD』が誕生するとは、その時は誰も知らなかった。
その『運命の子供たち』は最後の安らかな眠りの中にいた。
「始まりの朝」がもう間もなく訪れようとしていた。
129姐 ◆ane/8MtRLQ :03/09/04 22:10 ID:AYpOFfiR
とりあえずここで完結です。
たらたらと連投して申し訳ない。
なんかテンションが低い展開になってしまいました。
やっぱり8の話は思いつきで書いてはいけないと痛感しました。
「不明なエラー」という奴が出たので回線切って繋ぎ直しまくりなのでID変わりまくってます(涙
130ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/09/05 18:02 ID:ZgXOL+x1
削除人さん依頼者さん、どうもありがd

>>118-129
カコ(・∀・)イイ!シュウ先輩が拝見できてとても満足です!
言われている通り、スニフの恋人で描かれてるシュウ先輩に繋がるんですね。(゚д゚)ウマー
緊迫するビルの中、3人が連携して任務を遂行していくという描写は、わくわくしながら
読み進められました。
ゲーム開始直後の実地試験やバラムガーデン攻防戦時に見られた(ような)、8のこういう
雰囲気、好きだなー。と思いました。


…ゴゴリル完結うpります。なんか最初はギャグ書こうとしていたのに、結末は「?」な
ものになってしまった事をまずはお詫びします。
131Echo-心ない天使の微笑-7:03/09/05 18:06 ID:ZgXOL+x1
(前話は>>67-68です。公式設定が「謎」という事を良いことに、ゴゴがオカシイ事になってます
…スマソ。)

-------------------------------------------------------------------------
 それも元はといえば。
「今日のゲームでビリになった奴が甲板掃除な」
 そんな事を言いだした某賭博師のお陰だった。

 あれから数十分後。
「……なんだよ、もうっ!」
 夕日に染まる甲板の上に映る、少女の長い影。
 結果的にゲームをやろうと持ちかけたリルムが、途中であがったセッツァーの
軽はずみな提案のせいで甲板掃除をやるハメになっていた。
「ま、人生こんなモンよね」
 悔し紛れに呟いてみても、掃除が終わるわけでもないし――そんな風に思い至
って、リルムは一つ溜息を吐いて箒を持ち直すと掃除を続けた。
 しばらく黙々と作業を続けていたが、射し込むオレンジ色の陽が眩しくて背を
向けたリルムの目に映った光景に、掃く手を止めてそれを見つめる。
 甲板の上に長く伸びる影。箒を持ったその姿は、まだ幼い頃に母親が話してく
れたおとぎ話に出てくる魔法使いの姿を連想させる。
(魔法使い――おとぎ話の世界だったのにね)
 成り行きとは言え、今は自分たちが魔法使いになっている。そして、おとぎ話
のようにハッピーエンドにはならなかった事を思うと、僅かに苦笑を浮かべた。
 リルムの育ったサマサの村は元々魔導士の末裔達が隠れ住む小さな村だった。
だから魔法は他の地域より身近なものだったし、日常的にケアルやファイアなど
も使っていたから決して、魔法使いはおとぎ話の中だけの存在ではなかった。
 けれど、リルムの思い描いていた「魔法使い」は違う。
 箒を持って空を飛んで、空の鳥たちと話したり、森の木のてっぺんから景色を
眺めたり――そんなのどかな姿を想像していたのに。
132Echo-心ない天使の微笑-8:03/09/05 18:09 ID:ZgXOL+x1

 現実は違った。

 荒廃した世界の中で
 怯えた人々の表情を背に
 立ちはだかる魔物を倒す。

 仲間達がいてくれるとはいえ、幼い少女にそれはあまりにも酷い現実で。
 夢を打ち砕くには十分過ぎた。

 現実に絶望した訳じゃない、けれどやりきれない思いが込み上げてくる。
 だから思い出と、自分の影から目を逸らそうとして顔を上げた先に、リルムと
同じく箒を持って立つ彼の姿を見つけた。
「……なにやってんの?」
「おまえのモノマネ」
 相変わらず抑揚のない声の返事が返ってくる。答えを聞くまでもなくそんなの
は見れば分かる。だがリルムが聞きたかったのはそうじゃない。
 ――どうしてわざわざ、アタシのものまねを?
「甲板掃除なんて、やる必要ないじゃん」
「終わりたいから」
 ゴゴの声は抑揚のない、けれど、どこか寂しげな響きを帯びている様で。
「え?」
 ――何を?
 思いがけず聞いた言葉に、問い返す声がいつもより僅かに大きくなった。
 箒を握り、甲板を掃く手を止めないで――まるでそのリズムに合わせるように、
ゴゴが口ずさんだ小さな言葉は。
「歌?」
 どこかで聞いたような、懐かしい旋律に乗せて紡がれる言葉。
 けれど、ずっと同じ旋律を繰り返すばかりで、一向に先へ進まない。
「この歌、何の歌だっけ?」
133Echo-心ない天使の微笑-9:03/09/05 18:12 ID:ZgXOL+x1
 ――今し方、目を逸らしたばかりの記憶を辿る。
 おとぎ話に出てきた? それとももっと幼かった頃に聞いた子守歌?
 どこかで聞いた、それだけはハッキリ分かるのに。
 どこで聞いたのかを思い出せない。
「この歌が終わりまで歌えたら、やっと帰れる気がするんだ。だから」
 ――だからモノマネを続ける。
 彼はそう言った。

 『ものまね士』
 彼は自らの心を捨て、ただひたすら他人のものまねをする事を戦いの術としていた。

 だけど、今目の前にいるものまね士は。
「違うんだね」
 彼は心を捨てた訳じゃない。
 ゴゴがファルコンへ来ようと決めたのも、彼自身の意思によるものだった。
 どこへ帰ろうとしているのかは分からない。だけど、彼がものまねをし続ける
理由だってちゃんとある。
「思い出せると良いね」
「おまえたちといると、思い出せる様な気がする」
 抑揚のない口調、隠された表情。――だけど今、リルムには。
「そっか!」
 ゴゴが笑っているように見える。
 まるで、汚れのない天使のような笑顔だと。

 今はまだ残響のように繰り返すだけのあの歌が、
 いつか終わりまで歌える日が来ると信じて。

 地平線から半分だけ顔を出した柔らかな陽光に照らされながら、二人はその歌
を口ずさんでいた。


                            Echo - 心ない天使の微笑 -<終>
134R@no-name ◆Vlst9Z/R.A :03/09/10 01:48 ID:4GeNGw4Y
復帰祝いホゼーン

    旦 旦 旦 旦 旦 ホット麦茶ドゾー              na  サッ na  サッ
 旦     旦 旦 旦 旦 旦 旦 旦  ズドドドドドドドド ヽ(゚∀゚)ノΞヽ(゚∀゚)ノ
    ヽR)ノ  旦 旦 旦 旦 旦 旦            へ  ) Ξ  (  へ 
 旦⌒(゚д゚)ノ  旦 旦 旦 旦 旦 旦 旦 ドドドド      >   Ξ <
    /. ( ヽ 旦 旦 旦 旦 旦   ドドドドド ドドド
 旦     旦 旦 旦 旦
     旦 旦 旦旦 ドドドド
135白 ◆SIRO/4.i8M :03/09/11 23:44 ID:osR6FQBd
感想で (*´Д`)/lァ/lァするべく、こっそりカキコ。

聖剣SSさん
前向きなウィリーの死、重いです。
それでも、熱く力強い目をしているであろう奴隷達が
桁外れに渋くて格好良いです!
「外へ」
読んでる方も、応援せずには居られませんです。

113さん
か、書いてくざさいー!

114 -115さん
一緒に叫んでいいですか?(・∀・)イイ!!

ドリルさん
綺麗な景色にうっとりです。ゴゴの内側にある、深い気持ち。
明るくて楽しくて、趣きのあるお話(゚д゚)ウマーでありますです。
なにやらぁゃιぃ素敵画像ハケ−ンしますた。
ttp://sylphys.ddo.jp/upld2nd/game/img-box/img20030911234135.png

姐さん
冷静沈着なシュウさん(´д`*)ハァハァ。
戦闘描写に燃えますた。
ガルバディアの陰謀が…!完結乙でした!
でも続きが気になるです。。。 IDFFおめでとうございます。

R@no-nameさん
お茶ありがとうです。 頂きまつ!
某所でも頑張ってらっしゃって感謝です。○| ̄|_イツモオセワニナリマス
136作者:03/09/12 02:03 ID:KUjIYrgZ
(つ´д`)つ旦
さて、茶でも飲んでママーリとしますか。
保守カキコ
138ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/09/13 23:13 ID:ZenHwrmr
削除人さん依頼者さん再びありがd。マターリが一番。
これで今度来るときに茶菓子と縁側を持って来たら完璧…(縁側は無理ぽ?)

>>134
某染n(ryみたいでワロタ+カワイイAAだなぁ…(*´д`)。

>>135
いつもどうもありがd。ちなみに貼られていたURLの中にあった「天野風サザエさん」
も中々どうして…ぁゃιぃ素敵画像ですた。(w
コンドルフォートも終わったということは、いよいよ物議を醸すあのイベントでつか!?
(*´д`)デスペナルティキョウカ……ハァハァ(違)。

>>136
マターリしつつサザンクロスの続きもm(ry。


よーし、漏れも保守カキコ兼ねて懲りずに前スレのエドリル(っぽい)話うpするぞー!
(´-`).。oO(いつか14名+ケフカ全員分のSSが書けたらいいなと思いつつ、いつもエドリル…ってか6ネタばっかでスマソ)
139The Executor−亡失都市編11:03/09/13 23:37 ID:ZenHwrmr
(前話はhttp://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/506-507です
タイトルが変わってますがキニシナイ。カプはエドリルの筈なのに二人があまり出て来なく
てもキニシナ…いで下さい、おながいします)
------------------------------------------------------------------
(簡単な経緯っていうか粗筋)
飛行中のファルコン甲板上で繰り広げられたロックとエドガーの痴話喧嘩(痴話なのか?)
にツッコミを入れたリルムは現在行方不明。意識不明だったエドガーは周囲の懸命の治療に
より回復、セッツァーから事情聴取を受けています。ということで(w
------------------------------------------------------------------

「そうだったの……。だから二人ともあんなに真剣に」
 セリスがようやく納得したように頷くと、すかさずセッツァーが横やりを入れる。
「エドガーはもっともらしいこと言ってるが、多分コイツらの事だ。半分は本気で
暴れようとしてたんじゃないのか?」
 言いながら、セッツァーはロックの方を見て笑う。この指摘もあながち的外れで
はないので、ロックとしては反論することができずにいた。
 そこへセリスが決定打を浴びせる。
「その顔からすると、図星みたいね」
 気まずそうにセリスから視線を外し、ロックは助けを求めるような表情でエドガー
の方を見やった。その様はまるで、イタズラが露見した子どものようである。
 相変わらず、何を考えているのか読めない友人の表情が反応することはなかったが。
「すまないがセリス、少し頼まれてくれないかな……」
 溜息を吐くセリスにエドガーは申し訳なさそうに告げると、そっと耳打ちした。
ロックに助け船を出そうという意図ではなかったが、結果的にロックは救われたと
内心胸を撫で下ろしていた。
「え? ……分かったわ」
 一方、エドガーから何事か頼まれたらしいセリスは、ほんの少し怪訝な表情を
浮かべたものの、一つ頷いて部屋を後にした。
140The Executor−亡失都市編12:03/09/13 23:46 ID:ZenHwrmr


「で、結局のところお前の確かめたかった事は分かったのか?」
 セッツァーの問いに対して、エドガーは首を横に振る。
「……とりあえず、物理・魔法攻撃どちらに対しての耐性もそれほど期待はでき
そうにないな。ロックの窃盗行為を考えても、回避面もあまり望めないだろう」
「せ……窃盗って」
 確かにその通りだが、もう少し言い方があるだろう? と自称『トレジャーハ
ンター』は思うのだった。
「なあ、武器防具に関する話だったらカイエンあたりが詳しいんじゃないか?」
 以前、カイエンが骨董武器収集を趣味としていると言う話をどこかで聞いたの
を思い出してセッツァーが提案した。
「そうだよな! 呪いなんて類の話、機械オタクのエドガーには到底向いてないんだよ」
「……マシーナリーと言え、マシーナリーと」
 言われてみればエドガーとカイエンでは、お互い得意とする分野は真逆だと気付く。
「それじゃあ、カイエンのとこで聞いてみるとすっか!」
 そう言ってロックは部屋の外へ出て行った。
「…………」
 その様子を見ながらゆっくりと腰を上げ、エドガーも扉の方へ向けて歩き出す。
 扉を開け部屋を出る直前、セッツァーの方を振り返って告げた。
「部屋まで借りてすまなかったな。ありがとう」
 律儀に礼を述べるエドガーを見やりながら、椅子に座ったままのセッツァーは
冗談半分に返す。
「気にするな。……ま、飛空艇を故障させるようなマネしたら、弁償してもらうまでだ」
「そうだな」
 そう言って再び扉に向かうエドガーの背に、セッツァーの声が届く。

「お前が王なんて勿体ない。俺としちゃ機関士として雇いたいぐらいなんだがな。
……その時は、いつでも歓迎するぜ?」
141鈴 ◆BELLSBdFOI :03/09/14 22:22 ID:ZF/EPTEq
マターリお茶を飲みながら感想を語り尽くしたいところなのですが、余裕無くてスマソ。
どうやら投下燃料切れでガス欠みたいです。
早く続きを書かなければ…

>>ドリルさん
ラクリモーサはラテン語らしいです。
シューインの使う技(というと語弊がありますが)の一つ。
Mit deinen blauem Augenはドイツ語です。
ぐぐってみると元ネタが分かるかもしれません。

生マリア(オペラ歌手)ハケーンしました。
某帝国将軍と激似らしいので激しく(*´Д`)ハァハァ
ttp://images-jp.amazon.com/images/P/B00005NDCY.09.LZZZZZZZ.jpg
ttp://music.goo.ne.jp/artist/ARTLISD26023.html

>>R@no-nameさん
純情パインタン、片目だけ(ヌギバが)詰まってそうな所がなんとも…
触覚怪人モアシーとかと戦うんでしょうか(((゚Д゚)))ガクガクブルブル


小説の感想はまた後ほど…
142姐 ◆ane/8MtRLQ :03/09/14 23:08 ID:GNJrlzkw
ラクリモサは「涙の日」という意味でモーツァルトの
レクイエムの中の曲のタイトルです。
この曲書いてる途中に死んだらしいですね。
余談ですがレクイエムの第2曲のタイトルが
「キリエ」で非常にビクーリしますた。
(サイト連載のオリキャラ・金髪美少女)

原稿書けずにうろうろしてます。スマソ。
>>姐さん
レクイエム(というかミサ曲)って言うのはいわばキリスト教におけるお経みたいなもので、
歌詞とか題名とかはほとんど決まってるんですよ〜。
だからモーツァルトのレクイエムに限らず他の人のかいたレクイエムにも
大体「キリエ」はあります。

もしご存知だったら偉そうにすみません。
規制中らしいので念のため保守。。。
145雫夜 ◆sizukTVGK. :03/09/17 22:23 ID:rt7Ryt2f
テイルズ、DOD落ちしてますた。

>>107さん
レスありがとうございます。禿げしく遅レスですが…。
FFCCですが、7話くらいまで書き上がってるんですが、
展開に迷い中でいつうpできるか、というところです。
お待たせしてスマソ。

>>聖剣SSの作者さん
文章がすごく好みです。…の使い方、参考にさせて下さい。
聖剣やったことないんですが、気になるなぁ。

>>作者さん
宝条のアレっぷりが怖いほどに萌え。
イッちゃったひとって何だか好きです。

>>鈴さん
シューイン萌えなので今回のSS嬉しかったです。
レンにはまだ逢ってないんですが、どんなムスメさんかちょっと分かりました。



146雫夜 ◆sizukTVGK. :03/09/17 22:24 ID:rt7Ryt2f
>>白さん
原因はGCではなくTVでした。遅レスですが火星見ました…遅すぎw
心配してくださってありがとうございます。
シドシエラマンセーでつ。ラヴですね!!
とても気になるところで終わっていたので続きが楽しみです。

>>ドリルさん
乙でしたー。>ゴゴリル
んで今、せつねーYO!!と思いつつ、読み返しています。
途中まではコメディな感じがしていたのですが、ラストはものすごくドリルさんらしいですね。
>彼は心を捨てた訳じゃない。
じーん。

>>姐さん
シュウSS良かったです。ますますシュウ先輩ハァハァ。
FF2のうpも楽しみにしてますので…あの、ミンウ出ますかw

以前ドリルさんにリクエスト頂きましたルールー話。
今回1話だけうpってみます。
ドリルさん、思っていたものと違っていたらスマソ…オオオー オオオー。
147SLOW ―― 一緒に歩きたい ―― 1:03/09/17 22:33 ID:rt7Ryt2f
 ユウナが吹く指笛の滑らかな音が、今日もビサイドの浜辺に響き渡る。
 少し離れた浜辺から彼女を見守っていたルールーとワッカの二人は、
彼女の叫びにも似た音色に耳を傾けていた。
「上手く、なったよなぁ」
「…そうね」
 ユウナに指笛を教えた少年は二年前、彼女の手によってもたらされた
ナギ節と入れ替わるように、スピラから消えてしまった。彼はどこかで生
きていると願うユウナは、指笛が彼を呼び戻すと信じて、毎日浜辺で吹き続けている。
(大切なひとを失う悲しみは、経験しなければ分からない)
 悲しみが大きすぎると、逆に涙は枯れてしまって、泣くことなどできな
いのだ。彼が――チャップが死んだことを信じられなかったあの頃の自
分がそうだった、とルールーは思う。
(でも私はもう一度、安らげる場所を見つけたけれど――)
 隣に座るワッカを、そっと見上げた。
 幼なじみで、今は世界中の誰よりも大切なひと。これから先も、ずっと一緒にいたい――そう強く願う。
 指笛の音が一段と高くなった。悲しげにも聴こえる、その音色。
 今のユウナは、かつてのルールーに重なる。
148姐 ◆ane/8MtRLQ :03/09/20 00:02 ID:rfQ6H49s
>>143
モーツァルトのしか知らなかったです。
お経……なるほど。勉強になりました。

久し振りに投稿しようとしたら規制で書き込みできなかったために
やる気がしゅるしゅると失せて
中途半端なとこでストップしてますので続きの投稿時期が
また伸びそうな予感……。お待ちいただいてる方、スマソ。
そして再度投稿しようとすると規制になったりして(泣
149ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/09/21 22:04 ID:QFrD4plD
>>141
生マリア……い、(・∀・)イイ! カコ(・∀・)イイ!
これで書きかけのロクセリ(を、装ったロクマリw)が書けそうな悪寒がします……ありがd!
Mit deinen blauem Augen、ドイツ語なんですね。今度ぐぐってみます。
ドイツ語なんてバームクーヘンぐらいしか知らなかったもので…(某少年並の発想だな。w)
 それと、チョットレスが長くなりますが……。
 鈴さんのお話の続き、とても楽しみに拝見している一人ですが、どうか焦らずマターリと。
 漏れらは燃料切れガス欠状態で動かないと思っている時期でも、実は充電中で
 その期間を過ぎると思った以上に萌えが溢れ出てくるモンです……(そうなると、
 ある意味病気ですか? …そうですか)
どうかご自愛のほどを。

>>142-143
なんかためになるレスです。レクイエムといわれて真っ先に思いつくのはシーモアの
オーバードライブ……(´・ω・`)。モーツァルトなんて知りませんですた。(ダメじゃん)

>>145-147
ロナ・リィの呟きと、エルヴィラを追って彼女の前を去ってしまったザ・ジェの行く末が
気になりつつ……ルールー話キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
漏れの考えるルールー話の展開方法と違った切り口っぽいので激しく楽しみでっす!
にしても、浜辺で指笛を懸命に吹き続けるユウナの後ろ姿は涙を誘います……。


余談ですが、トーナメントが面白くてたまりません。(w
150The Executor−亡失都市編13:03/09/21 22:10 ID:QFrD4plD
(前話は139-140です)


 『王』という地位を勿体ないと吐き捨てる彼の口調は、本気とも冗談とも取れ
ぬ微妙な物だった。それを受けてエドガーは笑い返す。
「ははは。男に口説かれる趣味はないが……そいつは嬉しいな」
 返した言葉の半分は――実現性がないと知った上での――本心だった。
「悪い話じゃないだろう?」
「それも良いかもな」
 そう言ってエドガーは静かに扉を閉め、部屋を後にした。
 室内に残ったセッツァーは最後までその姿を見届けた後、やや呆れたような
溜息と共に独り言を吐いた。
「まったく、慰め甲斐のない男だな」
 ――もっとも、俺が考えてる事なんぞ見抜かれているんだろうがな。
 セッツァーが発したあの言葉は、勿論本意から出た物だった。ただそのうち半
分は現状のエドガーに対する彼なりの心遣いだったらしい。具体的に何がどう、
と説明は出来ないが、エドガーの表情に見えない影を感じた事は確かだった。
 自分とは同い年だが、背負っている物の大きさが違う――別にそれを不憫に思
う訳ではない。ただ、たまには息抜きしろよ、と言いたかっただけなのかも知れない。
 結局どれほど考えても、セッツァー自身にさえはっきりした事は分からず終い
だったのだが。
「…………」
 迷走を続ける思考から気を逸らせようと、机上に広げられたカードから一枚を
引いた。――クラブのK――出た目を見て思わず舌打ちする。
「つまらん」
 そう言って引いたカードを投げ放つ。主の手を離れたカードは扉めがけて一直
線に飛んでいった後、力を失い床に舞い落ちたのだった。
151The Executor−亡失都市編14:03/09/21 22:29 ID:QFrD4plD


「……リルム?」
 部屋を出たセリスは再び飛空艇の甲板に立っていた。風を受けながら、座り込
んでいるリルムの元へ近寄ると、無造作に放置されたままのロッドを拾い上る。
「わたし……やっぱり足手まといなのかな?」
 セリスの呼び掛けに答えたのか、それにしては独り言の様に小さな声で漏らし
た言葉は――「子どもは足手まといだからな」――サマサの村で彼らと初めて出
会ったあの日、マッシュの発したそれが脳裏を過ぎったから。
「リルム……」
 彼女の声に、ロッドを拾おうとしたセリスの手が止まる。
 涙こそ流していない物の、いつもの口達者で元気な姿はすっかり影を潜めていた。
小さく掠れた声で呟くリルムの姿は、見ているだけで痛々しい。
「そんな事ないわ。私、リルムに沢山助けてもらったもの……ううん。リルムだけじゃない、みんなに助けられてばかりね」
「セリス?」
 顔を上げるリルムの横に腰を下ろすと、セリスは視線を前に向けたままで続ける。
「世界が崩壊して、みんなと離ればなれになってしまった後……心の底から思っ
たわ。『私は、みんなに支えられてここまで来たんだ』って」
 その視線の先には、あの島で見たのと同じ海と空がどこまでも広がっている。
「…………」
 セリスは拾い上げたロッドを置いて、リルムの方を向くとこう言った。
「……確かに、リルムには力がないかも知れない。剣を扱える訳でもなければ、
機械を使える訳でもない。もちろん、人の物を盗むなんて事もできないわね」
 そう言って少し笑うセリスを、リルムはじっと見つめていた。
「だけど、それは私達だって同じ。リルムの様に絵を描き出せる訳じゃない。それに何より――」
 ――私達が手に持つ武器も、戦う術も違うけれど。
 言葉の先を続けようとして、セリス自身改めて実感する。
「なによりも、みんなの存在そのものが大きな支えなの。……そんな事ぐらい、言わなくたって分かってるわよね?」

 『だから、泣かないで。』

 エドガーに託された伝言は、結局口に出す事はしなかった。
152ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/09/21 22:44 ID:QFrD4plD
ところで、「託す」(託するの五段変化)の使い方が唐突に分からなくなりますた。。。

>>151「エドガーに託された伝言」って事は、セリスがエドガーに伝言したって意味に
なるんでしょうか?
本当は「エドガーから託された伝言」が正しい…か。
でも、「〜された」って受け身だからそれでも伝わる?


つくづく、日本語って難しい。(漏れがアフォなだけとも言う)
というか、こんな事でレス消費してスマソ。。。
「に」だとどっちの意味にもとれますね
「から」のほうが、関係性がはっきりしていると思います

伝言ってなんだろうワクワク
「エドガーから託された言葉は、結局口に出さなかった」
「結局、エドガーから託された言葉を口に出すことはなかった」
「結局、エドガーからの伝言をを口に出すことはなかった」

…良くわからんw
「エドガーに託された伝言は、結局口に出す事はしなかった」
だと、言い回しがややくどい印象を受けたけど、
だからと言ってどーしたらいいのかわからんヘタレですまん。
ああ、「に」と「から」だったら、「から」じゃないかな。
SSスレッドのガイドライン
http://that.2ch.net/test/read.cgi/gline/1064130342/l50

宣伝・雑談大歓迎。
>エドガーに託された伝言は、結局口に出す事はしなかった。

「託された伝言は」「出す事は」と重なるのも引っかかるよーな。
「託された伝言を」(セリスが口に)「出す事はしなかった」あるいは
「託された伝言は」「出される事は(が?)なかった」かな、と思うのだけど。
なんかこのスレ、雰囲気いいよな
159白 ◆SIRO/4.i8M :03/09/25 20:47 ID:e5+9ZVDN
作者さん
VII総合スレ等で『VIIタークスサイドDVD』の噂がありますね。
ヴィンセントさん登場場面で、宴会したいです。(*´Д`)ハァハァ

137さん 144さん
保守感謝いたしますです。○| ̄|_

ドリルさん
ドリルさんの王様は、優しそうでむちゃくちゃカコいいです!

鈴さん
生マリアさんが美人!触覚怪人モアシー、熱く激しく読みたいです。

姐さん
同じタイトルの、違う曲捜しも楽しいですね。

雫夜さん
ルールーさんが切ない…(ノД`)シクシク つ、続きを…ドキドキ

153さん
一緒にワクワクしていいですか?

154さん 155さん 157さん
職人さま御降臨なのでしょうか?
皆様のこだわりの御作品を、是非拝見キボンヌです。(*´д`*)ハァハァ

156さん
良スレですね。様々なSSスレの皆様を応援したいです。

158さん
ありがとうございます。 文章で遊んだり
( ´∀`)マターリとボケたり萌えたりしておりまつ。
■いままでのあらすじ■
ミッドガル島で、きかんしゃクラウドは今日も元気一杯。
駅長さんやルーファウス神羅卿が生暖かく見守っています。
「やあGOどん…じゃなかった、ザックス」
「新しい仲間に、グシャラボラスが来るらしいぜー」
「き、興味ないね!」
どうでも良いのですが。全列車、里予 木寸 彦頁 です。

前話は>>103-106になりますです。
カプは、レノイリーナ…のような気がするです。
161【飛空艇が見ている…】(5):03/09/25 20:53 ID:e5+9ZVDN
 魔神の、黒き巨躯。
アルテマウエポンが、飛空艇の尾翼をむしり取った。
炎が、輸送機を覆い尽くす。
「燃料捨てろ!」
「右ターボジェットエンジン停止。着水します!」
乗務員が次々とボートに飛び乗った。
実験体達を乗せたまま、輸送船が狂瀾に沈んでゆく。

 海溝の静寂。魚達がゆらぎ、発光する。
「全員脱出したようですね」
艇内で、イリーナはネクタイを直し、上着を羽織る。
「あとは、機密機器回収だけですか?先輩」
彼女の髪を梳き、額のグラスを直す。
ふと、レノはロッドを構えた。
「────ゲストが来たようだな、と」
薄明の中、柔らかな金髪が振り動く。
銃を抜く音。海棲モンスターと、サンプルの蠢く音。
「イリーナ。お前は郷里に帰れ」
「え?」
タークスのエース。その腕の中で、デジョンの闇が広がってゆく。
「ま、待って下さい。レノ先輩ッ!」
かすれた声で、彼が囁く。
「…生きて又会おうな、と」
クラウド達が、梯子を降りる音がする。
ルードが向き直った。
「到着したらしい」
「今度こそ、殺すぞ、と」
162【飛空艇が見ている…】(6):03/09/25 20:57 ID:e5+9ZVDN
 石造りの堅牢な街並。
大柄な女性が、泣きじゃくるイリーナに駆け寄った。
幼い彼女を、慈しみ育てた人の居る街で。

 黒髪のソルジャーが、きょとんとしている。
「(・◇・)あっれぇ?レノじゃん!」
「どうしてお前らは緊張感が無いんだ?と。_| ̄|○|||」
「気にするな…。ともかく、機密武器は渡さない」
ルードの魔晄珠が、ぬめらかに光る。
ネオタークス光線が、ソルジャーの首を掠めた。
「ふっ。ならば、メテオ!」
       な、なんだってー!!(AA省略)
「興味は無いが、止めろセフィロス!メテオレイン!」
ズガガガガガガガガガガガガドドドドドドドドドドドドドドド
「クラウドもやってどーすんだ!しょーがないな。コメッt…」
いーかげんにしなさい。と、ソルジャー達にハリセンが飛ぶ。
取り敢えず、飛空艇内はズタボロに。
「み、水漏れてるよぉ」
その刹那。
べしっ!と音を立て、正体不明3がひらべったい身で、穴を塞いだ。
「今の隙に修繕すっぞー!」
「まあ、なんだ。帰るか?と」
「…………」
今回のヒーローは、正体不明3の様です。

 鍛え上げられた武器達が、騒ぎに耳をすませている。
水浸しの艇内で冥王のマテリアが、笑った。
163白 ◆SIRO/4.i8M :03/09/25 20:58 ID:e5+9ZVDN
■次号予告■
波へぇ  :宝条博士
ウネ   :ルクレツィアママン
マ○ヲ  :ヴィンセント
力ツヲ  :ザックス
ワ力メ  :英雄
夕ラ   :クラウド
夕マ   :イン&ヤン
ア○ゴさん:某色黒賢(以下自主規制)
次回「宝条さん」「地下研究室のハートフルコメディ」の2本です。
なっ、懐かしい…正体不明!!
しかも、3!!

覚えているのといえば骸骨のアレ位な漏れ
165鈴 ◆BELLSBdFOI :03/09/25 23:54 ID:AwwbzF5a
いつもの続きではなくてちょこちょこと短編を書いてみました。
FF6のちょっとマニアックなお話です。

>>聖剣SSさん
情景・感情の描写がすごく精密に書き込まれていて素晴らしいです。
続きもマターリお待ちしてます。

>>作者さん
宝条の歪みやヴィンセントの苦痛が滲み出るようで…(ノД`)
最後のフェードアウトが切なくてすごく好きです。

>>R@no-nameさん
今度こそ麦茶いただきます。
また面白いネタ浮かんだら書きこんでください。

>>白さん
鬼畜プレイでトウホウフハイに勝つ…ああ、なんだか身に覚えがあるような…:y=-( ゚д゚)・∵;; ターン
白さんのSSでいつも脳内プレイバックして2倍楽しませていただいてます。
166鈴 ◆BELLSBdFOI :03/09/25 23:55 ID:AwwbzF5a

>>ドリルさん
暖かい励ましのお言葉ありがとうございます…(つд`)
正直なところ、現在エネルギーも書く時間も不足していてへたってるんですが、がんがります。
ゴゴ話、本編とはまた違った感じのゴゴが見れて良かったです。エドリル続編に期待sageでつ。

>>姐さん
補完&貴重な情報ありがとうございます。
レクイエムって小曲集だったんですね…ディエス・イレもハケーンしました。
姐さんのFF8話、独立した話として普通に(・∀・)イイ!と思いますよ。スニフお待ちしてます。

>>雫夜さん
今回はルールー話ですね。ワッカとのあれこれがどう補完されるのか気になります。
FFCC同様マターリほんわかとした気分に浸らせて頂いてまつ。
167女神の石(ある老貴婦人の話):03/09/25 23:57 ID:AwwbzF5a
いつの頃でしたか……
ジドールの街の片隅、古ぼけた骨董屋の片隅で、この石を見付けたのでございます。
骨董屋の若主人は、これがなかなかに商売に長けた青年で、わたくしがその石を手に取ったのを見るや、
声高にその石にまつわる逸話や入手先などを事細かに並べ立ててきたものです。
しかしながらわたくしは、そのような話など全くと言っていい程に耳とどめてはおりませんでした。
石のあまりの美しさに囚われてしまっていたのです。
黄金・紅玉・青玉などとは比べものになどなりません。
敢えて申し上げるとするならば、そう、どのような色にも染まらずに、つんと澄まして照り返す水晶でしょうか。
わたくしはあの無色透明な気高い石が、いっとうお気に入りなのでございます。
けれどその石は水晶のようでありながら、水晶とも違いました。
光にかざせば七色に輝きを放ち、覗き込めばそこには女神の姿が見えるのです。
あたかも、楽園でまどろむ女神が、言葉無く横たわるかのような光景が映るのです。
それを見た刹那、わたくしは幼い頃にばあやに聞いた御伽話、鏡に閉じこめられた姫君の話などを思い出したものでした。
女神に魅入られてしまったのでしょうか。
わたくしは、瞬く間にその石を自分のものにしてしまいたい衝動に駆られてしまったのです。
若主人の提示したお値段は、いままでにわたくしが身につけたどんなアクセサリーよりも高価でした。
けれどわたくしは、迷うことなく言い値でそれを支払ったのです。
女神の宿る不思議な石。
残念なことに石は大きすぎて、指輪にも、首飾りにも、ブローチにも作りかえることは出来そうにありませんでした。
削れば或いは不可能ではなかったのですが、この美しい石に傷を付けることなど以ての外でございます。
お屋敷に戻ると、わたくしは早速、この石に見合う美しい水晶の小箱を作らせました。
水晶の小箱の中に、天鵞絨を重ね、優しく石をくるむ瞬間の恍惚。
それはわたくしにとって何物にも代え難いものでありました。
168女神の石(ある老貴婦人の話):03/09/25 23:58 ID:AwwbzF5a
わたくしは石のことを、生涯誰にも話したことはありません。
サロンでも、お屋敷でも、他の宝石の話に言い及ぶことはあれど、女神の宿る石の話は一度も言い出すことはしませんでした。
あの石の美しさは、石を見た者にしか分からないのです。
けれどわたくしは、石をわたくし以外の他人に見せるなど御免でした。
それに、秘密にしておく事への密かな楽しみも少なからずあったのです。
どのような美しい宝石を見せられても、あの石に比べれば、ただの硝子玉にしか映りません。
石は私の宝であり命であり、第二の心臓でした。

ですから、こうやって、石を手放すことになる日が来るとは思ってもみなかったのです。

貴族として、ジドールの街が建てられた頃から続いてきたわたくしの家系も、ついにわたくしの代で途絶えることとなってしまいました。
本当は、わたくしの二代前から、先祖代々受け継がれてきた財産も食い潰し、
じり貧の状態ながらもなんとかごまかしながらやりくりしてきたのです。
けれど、それももう限界です。
幸いなことにわたくしには跡継ぎもなく、近しい親族もおりません。
ですから、遺された家族に伝えるべきものなど何も必要ないのです。
生活苦に家財道具の類も売り払ってしまいました。お屋敷も売りに出されています。
わたくしの手元にあるのはこの石だけになってしまいました。
今、わたくしは貧民街の一角の貧しい貸家の一室に横たわっています。
いずれ、死神がわたくしの部屋のドアをノックするでしょう。
そのこと自体は仕方のないことなのです。
けれども、そうした暁には、あの忌まわしい借金取り達が土足で上がり込んできて、
わたくしの命とも言えるこの石を見つけだすにもそう時間は掛からないはずです。
石はわたくしから永遠に引き離され、競売にかけられ、また別のお金持ちの所へ渡っていくのでしょう。
わたくしにはそれを止める手だてはありません。
叶うことならば石をお墓まで持っていきたいけれども、もはやそのような我が侭が通るべくもありません。
ただ、わたくしの命が尽きるまで、この石を抱いて眠るより他はないのです。
女神の宿る美しい石。
わたくしはこの石に焦がれておりました。
強く、強く、この石に恋い焦がれていたのです。
>>160
ん〜…ちょっと引っかかったんだけど、良い?

>154さん 155さん 157さん
>職人さま御降臨なのでしょうか?

「職人」て何?「職人」じゃなきゃ、コメントできないわけじゃないよね?

>皆様のこだわりの御作品を、是非拝見キボンヌです。(*´д`*)ハァハァ

そーゆーえらそうなこだわり抜かすお偉いあなた方は、じゃあ
一体どの程度のものを書いてんだよクルァ、的ニュアンスを感じてしまう。

まあ、多分「そんな意図はなかった」のだと思うけど。

上記の文章が、真綿にくるんだ皮肉なのだとしたら、求められて
色々アドバイスした人たちに対して失礼なのでは?
小さいことかも知れないけれど、そう言う反応を繰り返していると、
マンセー意見ばかりで批判意見が出しにくいスレになりかねないと思う。
>>1にある、名無しの感想歓迎、読んで下さる「あなた」がいるから、の言葉が
上っ面だけじゃないんだよね?
>169
言いたいことはなんとなく分かるがまぁもちけつ。

書き手である(「職人」)はもちろん、SS(文章)ってのは読み手にもある種の覚悟ってか、下準備が必要なモンだろ?
音楽や映像みたいに、無条件に吸収できるメディアじゃない。
だからこそ、読み手の声(レス)が貴重な物だと分かってる。
>1の文の裏にはそういう意味も含まれてるんだと思われ。

…言うまでもなかったらスマソ
>>169
いやここ、議論するスレじゃないから。>>2嫁。(ニガワラ
SS読みに来たんじゃないならスレ違いだね。
172ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/09/29 00:14 ID:ODrYjZJ4
 「結構です」 に、代表されるような(?)あいまいな日本語文化が大好きです。

>>153-157
沢山のアドバイス、心の底から感謝です! 一度ハマると中々抜け出せず困っていたので
助かりました…。
やっぱり「〜から」の方が関係性がハッキリしてますよね…。
> 「託された伝言を」(セリスが口に)「出す事はしなかった」
(・∀・)ソレダ!!
「エドガーから託された伝言を、結局口に出す事はなかった。」
…それでも長い? か(w
語感として短く、スッキリまとめようとすると、どうも言葉足らずになってしまうし
かといってそれを補おうとすると冗長になってしまうし……んー、この辺は要修行でしょうか。

>>158
そんなスレで作品をうpらせて貰える事が嬉しいです。

>>160-163
イリーナを消し去……もとい、非難させるレノ先輩がカコ(・∀・)イイ!でつ。
そんなタークスを越えて活躍する正体不明3に(;´д`)ハァハァ(!)
そう言えば正体不明って1,2っていたんでしたっけ?? すっかり記憶が抜け落ちてます…。
DVD……今のクオリティで正体不明3の姿を拝見できるとリメイクの方に期待していたのに…(違)

>>167-168
FF6ネタ、タキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
しかも、ラクシュミって綺麗な幻獣……幻獣最萌えトーナメントあったら間違いなく彼女(?)に(以下略。
魔石……とても興味深い観点のSSでつ(オーディンならありそうでしたが)。
ちなみにこの先、あの絵に辿り着くまでにはまだ過程があるんですよね?(違ったらスマソ)。
ラクシュミの妖美に憑かれた人々の物語なのでしょうか?期待sageさせて頂きまっす!
173鈴 ◆BELLSBdFOI :03/09/29 00:30 ID:c50WLwE9

言葉というものは、言い方も千差万別ですし、捉え方もまたそれぞれかと思います。
白さんは、あるいは「文章にたしなみのある方なら、ぜひあなたも一度投稿を!」
的なニュアンスでレスしたのかもしれないですよ。自分のはあくまでも推測なのですが。
差し出がましくてスマソ。

しかし今スレは前スレよりも名無しさんがたくさん書きこんでくださってウレスィです。

…と、これだけでは何なので。

 |
 | /⌒ヽ
 |/ ´_ゝ`) すいません、ちょっと投稿させてもらいますよ…
 |    /
 | /| |
 |/ | |    サッ
 |  U 三□

174ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/09/29 00:34 ID:ODrYjZJ4
スマソ、非難って何だよ自分……避難です。イリーナさんごめんなさい。(違)

>>169-171
> マンセー意見ばかりで批判意見が出しにくいスレになりかねないと思う。
この部分は重要だと漏れも思っていたりするんですね。仰ることはごもっともだと
思いますし、同意です。
賛否両論あってこそ、新たな発想のキッカケになるので。
ただ、「真綿にくるんだ皮肉」というのは少し曲解し過ぎの様な気がしますが……。

>>170にあるとおり、ネット上で文章というのは最も“手軽な”創作形態の一つですよね。
(生み出すまでの苦労という面では同じかと思いますが)
MIDIやFLASH、絵なんかよりデータ容量も、制作時に必要とするツールも少なくて済む。
その分、書き手・読み手に(解釈などを)依存する部分が大きいのも事実だと思います。
>>1の文面には、そう言う意図が込められているものだと思っているのですが。

言葉尻“だけ”を追いかけて議論するのはスレ違いだと思いますが…どう言っていいものか
ニュアンスが難しいですね。

個人的解釈で長レスしてしまってすんません。
175Mit deinen blauem Augen (32):03/09/29 01:02 ID:c50WLwE9
ドリルさんキテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
重ならないように気を使ってくださってるんでしょうか…心配かけてスマソです。すぐうpしますので…
6の幻獣はグラフィックが綺麗だし綺麗どころが多い(w のでいいなーと思っていたらうっかり萌えてしまいました。
これから続けようか他の幻獣を短編で書いていくかは決め兼ねているんですが、
ネタの赴くままにやってみようかと思います。微妙なネタなんですが。

FF10-2?バラライとユウナの子供時代。
前回は>>25-26

 三度目は、ルカの陸側の玄関口、ミヘン街道へと続く小高い丘だった。
隊からはぐれ、一人で街道をさまよっていた、そんな時。
「ぐるるるる……」
異様な気配にもっと早く気付けば良かった。
唸り声に振り返ってみれば、そこには狼型のモンスターが肩を怒らせて僕を見つめていた。
モンスターは、悲鳴をあげる暇さえ僕に与えてはくれなかった。
狼型モンスターは素早く、跳躍力もある。
頭をかばって咄嗟に伏せたのが功を奏した。飛びかかってきたモンスターは、僕の頭上をすり抜けていった。
その隙に逃げれば良かった。けれど悲しいかな、そんな一瞬の判断なんて出来るはずもなく。
今度こそ殺される、そう思った瞬間だった。
「ワズハミ!!」
(アブナイ!!)
声と共に放たれた轟音。
顔を上げた時にはもう、モンスターは幻光虫へと還っていた。
聞き慣れない言葉と強力な古代の武器。アルベド族だ。
アルベド族の使う「銃」の話なら僕も聞いたことがあった。
だから、今目の前でモンスターを倒した光が「銃」によるものだとすぐに分かった。
その銃を片手に握ったアルベド族が、モンスターを撃ち殺した後に僕の方へと向かってきた。
長い金色の髪。体格からすると女。独特の衣装を纏っている。
彼女は、座り込んだ僕の前までやって来ると空いている方の手を差し出して、言った。
「ガミギョフズ?テダマ……」
(ダイジョウブ?ケガハ……)
176Mit deinen blauem Augen (33):03/09/29 01:04 ID:c50WLwE9

「……バラライ、さん?」
小さな声に、僕ははっと我に返った。
「元気、ないね」
ユウナちゃんが僕の方を心配そうに見ている。
「ごめんなさい。アルベドの話なんて、聞きたくないよね」
「ううん、そんなこと、ないよ」
僕はあわてて首を振った。
けれど本当は、聞いていたくなかったんだ。
というより、聞いていたらユウナちゃんのことをアルベドとしてしか見れなくなりそうで、怖かった。
「あの……アルベドのこと、きらい?」
「……そんなこと、ない」
曖昧に首を振った。
心の中で反芻する。
アルベドのこと、嫌い?
分からない、分からない、分からない……
じゃあ、ユウナちゃんのことは?
アルベド族の、ユウナちゃんは?

僕には意味の分からないその言葉は、僕に向けられていた。
瞳の奥のアルベド女性の顔がぐにゃりと歪む。
その時の僕にとっては、モンスターのそれこそ何倍も、アルベド族が怖かった。
呪われているだとか、仲良くしてはいけないとか、そういったことを昔から刷り込まれていたし、
何より銃の恐ろしさを見せつけられた直後だった。
差し出された手を振り払い、僕は彼女のいる方向とは反対の方へと逃げた。
息が切れるまで。
一度も振り返らなかった。
177Mit deinen blauem Augen (34):03/09/29 01:08 ID:c50WLwE9

「顔色、悪いよ……?」

ユウナちゃんは僕の頬に手を伸ばした。

そして、僕は……

178Mit deinen blauem Augen (35):03/09/29 01:09 ID:c50WLwE9

 ユウナちゃんが、大きな目に悲しげな色を浮かべて、僕の方をじっと見つめている。
差し出された、震える手。
右手に広がるじわりとした痛みに、僕は何が起こったのかを理解した。
彼女の手を、振り払った。
かつて僕の命を救ってくれたアルベド族の女性にしたように。
「……ごめっ」
我に返ると、反射的に僕は謝った。だけど謝った所でもう遅すぎるのだと思った。
アルベド族だから?ユウナちゃんの目はそう言っていた。
「ごめ……ん」
頬を生暖かいものが伝っていく感触。
反対に、ユウナちゃんは泣かなかった。悲しい目、曇った表情でじっと僕を見つめているだけだった。
「ごめん」
居たたまれなさと息苦しさを同時に感じて、僕はその場から逃げるように立ち去った。
もう、どんな言葉もユウナちゃんには届かないような気がした。
二人の間には埋めようもない距離がある。
その距離の遠さに、目眩がするようだった。

 アルベド族は教えを守らない、罪深いのだと教えられてきた。
だけど、ユウナちゃんの小さな手を振り払った時に感じた、あの罪悪感。
僕の方が余程罪深いと思った。
そして、気付いてしまった。
僕はユウナちゃんのことが好きだった。
そのことに気付くのが遅すぎた。
もう彼女には会えない。
どんな表情で彼女の前に現れればいい?
彼女は僕を許してくれる?
僕のしたことは、どれだけ彼女を傷つけた?

 止まらない涙。消えない喪失感。
僕は、爪が食い込むほど強く右手を握りしめた。
さざなみの音が、遠ざかる。
179鈴 ◆BELLSBdFOI :03/09/29 01:15 ID:c50WLwE9
今回はここまでです。

SSうpしにいらっしゃったのでしたら、間空けてしまってごめんなさいドリルさん…
30分も経ってる……_| ̄|○ |||
聖ベベル宮から私は飛べると呟きつつ紐なしバンジージャンプやってきます。
180The Executor−亡失都市編15:03/09/29 02:01 ID:ODrYjZJ4
(前話は>>150-151です。多分エドリル…だったら良いな。)
-----------------------------------------------

「セリスって優しいんだね。……慰めてくれてありがと」
 悪意のないリルムの笑顔を見ながら、少し意地悪そうに微笑んでセリスは言う。
「あら? 私ならいつでも似顔絵のモデルになる自信はあるわ。試してみる?」
「…………」
 無言になるリルムに、さらに続ける。
「慰めでかける言葉じゃないわ、本心よ。……もう少し素直になると可愛いんだ
けどなー」
「どーせ可愛くないですよーだっ!」
 その一言で、セリスは確信した。
「焦らなくても大丈夫よ、リルム。あなた強いわ――この私と互角に戦えるんだから」
「“元”将軍さんでしょ?」
 ことさら元を強調するリルムの額に指を当てながら、少しわざとらしい口調で返す。
「ホントに可愛くないわねー」
「それで十分! ……そうだね、ありがと」
 勢い良く立ち上がったリルムは、ロッドを手に取って階段の方へ走りだした。
「セリスー、今度モデルにしてあげるからー!」
 笑顔で手を振っている姿は、すっかり元のリルムだった。階段を駆け下りてい
く背中を見ながら安堵の溜息をつくと、セリスも立ち上がる。
(……エドガーの言った通りね)
 サマサの村での小さな出来事――リルムが密かに気にかけていたこと――を、
エドガーは予見していたのだ。それを口にした本人に悪意はない事も承知の上で。
この辺りはさすが、女性への礼を重んじる姿勢を公言しているだけある。
(……本当に、べんりな特技よね……)
 いつぞやのマッシュと全く同じ感想を抱きながら、セリスは安堵の笑みを浮かべるのだった。
181The Executor−亡失都市編16:03/09/29 02:13 ID:ODrYjZJ4



「“呪い”でござるか?」
 部屋を出た後二人は、機関室にいたカイエンの元を訪れていた。ロックはここ
へ至る経緯を説明し、エドガーは持っていた盾をカイエンに示してみるも、心当
たりはないと言う。
「……そっか。カイエンでも分かんないとなると難しいなー」
 両手を頭の後ろで組みながら、ロックはいよいよ困った表情になる。その隣で
はカイエンが真剣な眼差しで盾と向き合っていた。
「それにしてもこの盾、ずいぶん古い物のようでござるが……」
「出所や前の持ち主の話は、ほとんど聞いてないんだ」
「古いもの故、多少の傷みは否めませぬが……かなりの品とお見受けいたす」
「そうなのか? オレには分かんないけど、装備したエドガーの話だとあんまり……」
 そう言えば、装備していてもエドガーには混乱と言った症状は無かった事に気
付き、ロックは途中で言葉を切った。
「もしかして! 装備する人によって効果が違ったりするのか?」
 我ながら明暗が閃いた、と言わんばかりの勢いだったのだが、カイエンは冷静に
それを否定した。
「そのような話を聞いた事はないでござる。人によって扱える武器や防具が違う
事はあっても、使用者によって何某かが変化すると言うことは通常あり得ませぬ」
「だよなぁ」
 万策尽きたと言わんばかりに両手をあげ、ロックは天井を見上げた。
「……しかしながら」
 あくまでも個人的な実感として。と前置きした上でカイエンは語った。
「拙者達にとって装備品……特に“刀”は思い入れが強い物でござる」
「愛着、と言うことですか?」
 二人の遣り取りを見ていたエドガーが口を開く。
182The Executor−亡失都市編17:03/09/29 02:17 ID:ODrYjZJ4
 その言葉に、カイエンは頷きながら答えた。
「それ以上に、“身の一部”と言う感覚でござるな。敵を斬るのは刃ではなく、
己の念でござる。長年携えてきた武器ならば尚更のこと」

 武器が人を殺めるのではない。
 人が人を殺めるのだ。
 己の携えるそれらの道具に“心”が宿り、
 いつしかそれは、己の一部となる。

 あの再会の日――心に刻んだその言葉を思い出す。
 慈しむように、カイエンは脇に携えていた正宗にそっと触れたのだった。
183ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/09/29 02:35 ID:ODrYjZJ4
>>175-179
他者への恐れ、好意を寄せる事への恐れでもあるのか? などとまた違った方向で
読んでしまいながら、
アルベドという種族、ユウナという個人。そしてその間で揺れるバラライが(・∀・)イイ!
味出してます……(*´д`)。特に、取り返しの付かないことをしてしまったという彼の
喪失感が痛々しいまでに伝わってくる文章で・゚・(ノД`)・゚・ツヅキキニナルヨー

FF6幻獣(魔石)話、ネタの赴くままでもいいので、こちらもお待ちしてますYO!!
そう言えばシヴァとイフリートは魔導研究所でうち捨てられてから二人っきりで
最期の時を待っていたんだよなぁ……そう考えると、幻獣も各々にドラマが(以下長いので割愛w)


こちらこそ、お気遣いさせてスマソですた。レスの間隔が長すぎた事も原因ですし…
それじゃあ漏れは、孤島の崖から世界はお終いなのねと呟きながら飛ん(ry
184雫夜 ◆sizukTVGK. :03/09/30 00:27 ID:vVfV8iFI
>>ドリルさん
>150の彼らは腐女子の私には萌えですた。やっぱ、やっぱセツって(以下自主規制)…オガーザーン…。
今更ですが、私的には「エドガー『から』託された〜」の方がしっくりきました。
次第にエドガーがエロガーじゃなくなっていく今回の投下分。
そしてロクセリ…待ってますから…

>>白さん
イリーナ好きです。えぇ。
ですが >>105の続きが気になって気になって気に(ry
うp待ってますです。
キソハ2でも7シドが再登場するんでしょうかね。

>>鈴さん
バリャたんの続き待ってましたYO!!
>悲しい目、曇った表情でじっと僕を見つめているだけだった。
お気に入りの一文です。あえて複雑な心境、と言ってしまわないところに、鈴さんの表現力の素晴らしさを
感じるというか。
そして『女神の石』…元ネタを忘れ去っている私を許してくらはい。ドリルさんのレスでFF6だったのか、と思ったり。
ですが『ライオネルの小唄』同様、不思議な物語として読ませて頂きました。
185雫夜 ◆sizukTVGK. :03/09/30 00:31 ID:vVfV8iFI
『言葉』に関して。

私の言いたいことはどちらかというと鈴さんに近いです。
白さんはこのスレのスレタイがアレな頃から、支えてこられた中のお一人ですし、今までの色々なレスから考えられるように、
新たな書き手さんが現れることを望まれていた方ですから。
だから今回もそういう意味で言ったんじゃないかな、と思います>職人さま御降臨
最近>>156で紹介されていたスレに行ってみたんですが、他板では意見が出ると結構荒れるところもあるようで。
ですがこちらのスレではその意見を元に皆が考えて、スレを良くして行こうとしているように感じられて、私はなんて良いスレに常駐
させてもらっているんだろうという気持ちを再確認しました。
特に>>170さんのラスト>名無しの感想歓迎、読んで下さる「あなた」がいるから、の言葉が上っ面だけじゃないんだよね?
このスレは書き手、読み手、みんなのスレだ、と、良い意味で喝を入れて下さっているように思います。
…まとまりがないですが、このままうpります。スマソ。

186SLOW ―― 一緒に歩きたい ―― 2:03/09/30 00:39 ID:vVfV8iFI
前話は>>147で、カプはワッカとルールー。友情出演wでユウナん。
※時間的には10エンタ付属の『永遠のナギ節』の少し前です。ゲーム内容に忠実を目指していますが、今後一部創作が入るかもしれないことを
  おことわりしておきます。

 靴を履いていない足元に寄せてくる波しぶきは、柔らかくて少し冷たい。
 話したいことがある――そう言って浜辺にワッカを呼び出したのはルールーだ。けれど今日の
彼はどことなく淋しげに見える。
 何かあったの、と尋ねれば、少しためらいがちにワッカが口を開いた。
「昨日の夜、チャップが夢に出てきてさ。異界で会ったときと全然変わってなかったよ、アイツ」
「何か言ってた?」
 二年前なら名前を出すだけでもためらったのに、今では普通に彼について話すことができる。
「いや…何か言おうとしてるのは分かるんだけどな。肝心の声が聞こえないんだ」
「そう」
 ワッカは、砂浜に落としていた視線をルールーに向けた。
「多分アイツは…いや、何でもない」
 言葉を濁した彼は、海を見やる。
 何か隠し事があるとき、相手の顔を見ないで話すのはワッカの癖だ。
(チャップのこと…)
187SLOW ―― 一緒に歩きたい ―― 3:03/09/30 00:41 ID:vVfV8iFI
 早くに亡くした両親に代わって、ワッカは弟のチャップを育ててきた。
 そんなチャップが兄と恋人だったルールーの対を押し切り、討伐隊に入ったのは三年前。
しかし彼はジョゼ海岸防衛作戦で、現れた『シン』に押しつぶされ――死んでしまったと、除隊した
誰かから聞いた。
 それが原因で一時期冷えていた二人の間が元に戻れたのは、ユウナのガードとして旅をしていた
あの日々のおかげだ。
「チャップが死んだことは、ワッカのせいじゃない。彼は自分の意志で村を出たんだから」
「あぁ。ルーがそう言ってくれて、気持ちが助けられた」
「いいえ…助けられているのは多分、私の方」
 ワッカは弟の決意を止めることができなかった自分を責めていた。彼が弟の死を受け入れられず、
千年前の世界から現れた少年を『チャップ』のように思っていたことさえ気付いていたのに。
(彼だけが弱かったのではない。私も弱かったのに)
 自分の弱さを認めたくなくて、ワッカに冷たく当たっていた自分。でも彼は笑って受け止めてくれていて。
 そんな優しい幼なじみだった彼は形を変えて、今もずっとルールーの隣にいる。
(…ワッカで良かった)
 ルールーは少し膨らみ始めたお腹に手を当てた。最近覚えたばかりの仕草だ。
188白 ◆SIRO/4.i8M :03/09/30 21:19 ID:TpMy8Xet
皆様の書き込みに深く感謝致しますです。。。○| ̄|_アリガトウデス

164さん
ムーバーとカエルと<コ:彡以外は
ヲイラも覚えてませんです。。。(;´Д⊂)
ファンキーな骸骨が1で、お花が2、
平ベったいのが3の模様です、隊長!

169さん
単純に「皆さん文章がお好きなんだな」とオモタですよ。
なので「よ、宜しければストーリーも」とお願いしていた次第です。
発言に責任が伴う事は、書き手さんも読み手さんも一緒です。
その点はご了承願いたいです。

>読んで下さる「あなた」がいるからです
この姐さんの名文に、こう続けても良かったでしょうか?
>書いて下さる「あなた」に来て欲しいです
と。どちらが欠けても、寂しいです。。。ショボーン(´・ω・`)

和みやマターリが様々な板で大切にされるのは、それが知恵だからです。

へたれのオイラが云うのも激しくアレですが
研鑽や琢磨は、他者に押し付けられてする事では無く
ドリルさんのように『自分自身で望んで行う事』に意義があります。
そして、それに応えられた皆さんは、素敵でした。
どうか169さんも、マターリなさって下さいませ。
189白 ◆SIRO/4.i8M :03/09/30 21:21 ID:TpMy8Xet
ドリルさん
タイトルすげく…カコ良いです!
いつも様々なエピソードが忌憚なく入っていて
凄いなーとオモテます。うっとり。。。
た、盾怖いですー!ヒィー(((゚Д゚)))ガタガタ
正宗にまつわるカイエンの逸話が楽しみでありまつ。
ドリルさんのリルムタン可愛過ぎまつ。ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ

鈴さん
読み易くて流麗な、鈴さんの文体に萌えますた。
ちっちゃいバラライの悔悟が、辛いけど愛しいです。
ゆがんだ教えの中で一所懸命なのですね。
ユウナタンも悲しいだろうと思うと、胸が痛みつつ
つ、続きを…(*´Д`)ハァハァ/lア/lア/ヽァ/ヽァ

雫夜さん
夢に出るのは大切な人の幽霊と云いますが
切ない。。。お腹の赤ちゃんと幸せになって欲しいであります。
雫夜さんの人物描写は、優しくて綺麗で大好きです。
血が通っている感じがしますです。
お言葉に甘え、>>105続編はこの世のどこかにうpするかもです。
KH2、シドが気になりますが、アーロソっぽい背中の人も
気になって仕方ありません。
■いままでのあらすじ■
今か昔か未来か解りませんが、「キョウミナイネ(´-`*」が口癖の
便利屋で運び屋で迷子のネコ捜し屋さんがいました。
女装からメテオまで引き受けてくれる模様です。
怪傑豆腐仮面との死闘や、アント地下帝国の崩壊をくぐり抜け
「if」なので、死んだ人や倒した人もパーティに巻き込んだまま
気が付いたら大空洞突入前です。

カプは宝ルク瓶と、クラティらしき物と、シドシエラっぽい何かです。
前話は>>159-163になりますです。
191【飛空艇が見ている…】(7):03/09/30 21:31 ID:TpMy8Xet
 静謐な湖面に、音楽がたゆたう。
音は波打ち、震え、水面に波紋を描く。
老いる事無き科学者、ルクレツィアが謳っているのだ。
幾重にも紡がれた子守歌を。
湖水の底は深く、細い洞窟から海へと続く。
ふと、彼女が呟いた。
「ヴィンセント」
囚われの身か、はた世捨て人か。
ルクレツィアの言葉に、ヴィンセントの足が止まった。
「あっ、インタナ版では『セフィロス』に変わっちゃう台詞だ!」
「良かったなぁ、ヴィンセントよう!」
パーティメンバーが祠で喚いた。
耳迄赤く染めつつ、赤き狙撃手が近付く。
「ヴィンセント、これを」
彼女が差し出した三方金に皮表紙の本。そして、重き銃身。
「これは…!」
 
 突如。宝条お父さんが天井から降って来ますた。
「クァックァックァッ!
 我々の三年寝太郎プロジェクトはこれで完成する!!」
「Σハッ!!とうさん?!」
「三年て。桁一つ違うじゃん」
「何すか?そのプロジェクト」
宝条博士、何だか魔晄キャノン以来若返ったまんまです。
「正義の味方を作成するのは
 古来、悪の組織と決まって居るではないか!」
ヴィンセント、ちょっと唖然としています。
192【飛空艇が見ている…】(8):03/09/30 21:34 ID:TpMy8Xet
陶然とした瞳で、猛然と天然な天才博士が云いますた。
「────これで定年迄思い残す事はないだろう。
 あとは不肖の息子が、孫でも連れて来てくれれば」
世界最大級にグレた息子さん(30)が首を振りますた。

 帰り際に、ルクレツィアお母さんが
190cmのロン毛大男二人の元へ、駆け寄って来ました。
「これからずっと、貴男達を元に戻す研究をするわ。
 だから…
 それまでどうか、星を守る正義の味方でいてください」
そっと、息子の手に触れる。
「貴方に会うのは、赤ちゃんの時以来ね」
セフィロスの口が微かに開いて、また閉じる。
ヴィンセントは踵を廻らせ、束の間、彼女に微笑んだ。


 さて。突き抜けるような上天気の空に。
今日も今日とてアルテマウエポンが暴れ
エメラルドウエポンが泳ぎ、
ルビーちゃんが砂浴び中です。
「アレ、どうしようか」
「アルテマはともかく、他は大空洞でLv上げるしか
 倒す方法は無さそうでんなぁ」
「いざ逝かん大空洞だ!
 俺達の乗った列車は、途中下車できないぜ!」
大空洞には激しく何か憑いてるっぽい悪寒がします。
「興味無いって云いたいー(TДT;」
おっちゃんに囲まれて、クラウド、ちょっと涙目です。
193【飛空艇が見ている…】(9):03/09/30 21:36 ID:TpMy8Xet
「…いずれにせよ」
ケット・シーがゆっくりと語る。
「神羅は………終わりました」
作戦会議室を見回しながら、クラウドが問いかける。
「皆、会いたい人は居るか?出来ればその人達に会ってくれ。
 闘う理由。それを、確かめて欲しいんだ」
艇長が吐き捨てる。
「誰も戻らねぇかも知れないぜ。どうせ死んじまう、ってよう」
「戻らなくても。
 大切な人に会えなくなるよりは、良いよ」

 黄昏の荒野に、飛空艇が繋留されたまま浮かぶ。
飛空艇がガス飛行船のようです。
3頭身のクラウドが、これまたSD状態のティファの声を聞く。
「…月が見てるね」
「飛空艇も覗いてるな」
飛空艇内でカメラを構えるパーティメンバーが、ビクッ!としますた。

 一方、その頃艇長は。
「シエラ、頼む!今生の別れに、一度メイド服着てくれぃ!」
濃厚なラード茶と共に却下されました。
「艇長は大好きですが、それはちょっと…」
「チクショウ!だったら、憧れの『海岸で駆けくら』も、
 下駄箱の手紙も、手編みのセーターも無しか!」
シエラが包みを解き、シドに当てました。
「一応手編みですけど…腹巻です。風邪ひかないでくださいね」
「シエラ…!。゚(゚´Д`゚)゚。」
194【飛空艇が見ている…】(10):03/09/30 21:40 ID:TpMy8Xet
 ティファの大きな瞳が潤む。
「こんなに、捜したのに。エアリスに、会いたい…」
「俺は、会えると信じてるよ」
優しい黒髪がクラウドの指をすり抜け、重なった指先が熱を放つ。
言葉も無く。虫達の恋の歌が、風に震える。

 一方、その頃飛空艇では。
「むぅ〜。チューもしねぇなあ」
「バレットって、出歯亀?」
双眼鏡片手に、ユフィが呆れ顔です。
艇長も、撮影機材抱えてスタンバイしますた。

 一方、その頃祠では。
彼女が、玲瓏たる瞳で、月光に浮かぶヴィンセントを見つめた。
「教えてくれ。なぜ、宝条を選んだ?」
「ヴィンセント、貴方は高潔な人よ。
 私は。科学の悦楽を選んでしまった。
 人を何処迄も強化する、その誘惑に負けたのよ」
月は炯々と反射光を放ち、光は大地に吸い込まれる。
「実験を続ける限り、貴方と居られたから。
 …本当に、ごめんなさい」
「君の傍に居られるなら…それでも構わない」
狙撃手の静かな声。彼女の睫が、ヴィンセントの頬を撫でる。
「もう、こんな酷い事はしないわ」
不意に、ルクレツィアが叫んだ。
「ごはんよー」
ちゃぶ台で、宝条博士一家とヴィンとイン&ヤンがお鍋囲んでます。
195白 ◆SIRO/4.i8M :03/09/30 21:42 ID:TpMy8Xet
【大空洞の怪人!】に興味なく続きます。。。

■次号予告■
乾いた風が、電線に虎落笛を鳴り渡らせる。
グロテスク紋様を刻む学舎。
名を、世紀末救世主村立神羅保育園と云う。
「は〜い皆集まって。来年FFVIIAC出る、ね?」
ツンツン頭の園児が挙手する。
「先生!ACのセフィロスに触覚が無いです」
その時。栄光の神たる貞子、もとい英雄の声がした。
「ガラッ≡⊂(´_ゝ` ) < 話は全部聞かせて貰った!」
「きょ、興味ないね…!(´Д`;)ノシ 」
次回「リアルクラウドに中の人が!」「DVDハァハァ 」の2本です。
196鈴 ◆BELLSBdFOI :03/10/01 23:26 ID:FWtXq9F/
>>ドリルさん
セリスとリルムのやりとりもさることながら、今回のカイエンはツボでした。
年長者の雰囲気と言うか、人間的な深みが書き出されていて良かったです。
セリスとリルムには純粋に萌 え ま し た。
二人が一緒に話してるところを想像すると姉妹みたいでカワエエ…

うち捨てられたシヴァとイフリート、かなり(゚д゚)ウマーな予感…
ネタ提供ありがとうございます。メモしておこう。

>>雫夜さん
ワッカとルールー、二人の労わり合う雰囲気にお互いに気心の知れた感じが出ていて、
心の深いところで繋がった夫婦のようで良い感じでした。
チャップの夢やら二人の語らいやら、これからどうなっていくのか楽しみです。
…友情出演のユウナたんもお待ちしております。(w

>>白さん
素直に照れてるヴィンセントに(*´Д`)ハァハァ
KHの艇長の腹巻は実はシエラさんの手作りだったんですね!と勝手に納得しつつ、
オヤジキャラたちにオヤジらしい味があって良かったです今回。
飛空挺に見られているクラティもごちそうさまでつ。

DVDどうなるんでしょうかね…。面白いといいです。映像にはもう、色々突っ込まないので…(w
197Mit deinen blauem Augen (36):03/10/01 23:30 ID:FWtXq9F/
FF10-2 ユウナとバラライ10年前で。
前回は>>175-178です。


 毎日が空に浮かぶ雲のようにゆっくりと流れていく。
あの日以来、僕はユウナちゃんに会っていなかった。
会って謝らなくちゃという気持ちと、何を今更という気持ちが僕の中でせめぎ合い、僕を途惑わせる。
僕は、することもなくただ漫然と、ベベル宮の窓から毎日のように空を眺めていた。
彼女に会えない日々が、こんなにも無味乾燥とした、退屈で代わり映えのしないものだなんて知らなかった。
ベベル宮の窓からはグレートブリッジが一本の細い線のように見えたけれど、
そこを通る人々も、ましてやユウナちゃんも見ることは出来ない。
それでも僕は時折気が付くとあの橋を見つめていた。
ユウナちゃんを、探していた。
彼女は今日も、帰らない父を待ち続けているのだろうか。

不意に、風が鳴った。
誰かの叫び声のように、高く、鋭く。
続いて、強い衝撃波が僕を襲った。
街中から悲鳴が上がる。誰もが同じものを見て、同じように叫んでいた。
痛みを堪えて顔を上げた僕の視線の先。
そこには、「シン」がいた。
198Mit deinen blauem Augen (37):03/10/01 23:33 ID:FWtXq9F/

 おびただしい数の幻光虫が啼いている。
空を翔る悪夢は、今、ベベルの街の真上を過ぎていく。
その禍々しい巨体の表面にコケラをざわつかせながら。
僕の視線のちょうど先を。
「シン」をこれだけ間近で見たのは初めてだった。
全身が総毛立つような感覚に襲われて、僕は後ずさった。
ベベルはエボンに守られているから、決して「シン」に襲われることはないなんて真っ赤な嘘だ。
じゃあ、目の前にいる「あれ」は何なんだ?
階下で、廊下の向こうで誰かが叫んでいる。
一人でいる事に急に不安を覚えた僕は、その方向へ走り出そうとして立ち止まり、もう一度窓の方を振り返った。
そこにいたはずの「シン」の姿が、もう見えなくなっていた。
ただ、「シン」にやられたのだろうか、守護獣エフレイエが、傷だらけでゆらゆらと浮かんでいるだけだった。
恐る恐る窓の外を覗いてみると、遙か北の方に向かって幻光虫の光が僅かに尾を引いているのが見える。
まるでエボンの民を嘲笑うかのように「シン」はベベルの上空を、ただ、通り過ぎていった。
北へ。
何かに突き動かされるように過ぎていった「シン」。
北。最果ての地、ザナルカンドの方向へ。
「ユウナ……ちゃん!!」
僕はその時、何が何でももう一度彼女に会わなければいけない、と思った。
だって、僕の予感が正しければ、「シン」が目指すその先には……
199ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/10/02 15:54 ID:7FfVvwWB
「好きこそ物の上手なれ」って言葉が好きなんですよ、ええ。現実は下手の横好きでもナー。(w

>>184-187
>  ルールーは少し膨らみ始めたお腹に手を当てた。最近覚えたばかりの仕草だ。
……ウホ、いいルールー!(*´д`)
本編中ではアーロンと並んで、彼らを導く指標の様な役目を担っている人物として
描かれていたルールーの、女性らしさっていうか人間らしさって言うか、あたたかみ
がこの一行から滲み出てて(・∀・)イイ! こういうルールーも(*´д`)イイネ…
この辺の遣り取り見ていると、ブリッツボールの控え室での二人と重なりますた>雰囲気
(´-`).。oO(期待に添うようなロクセリ物ではないかも知れませんが、いつかうpらせて下せぇ…)

>>188-195
手編みの腹巻きを夜なべして(?)作ってあげてるシエラの姿を想像して萌えますた!
> 「シエラ…!。゚(゚´Д`゚)゚。」
           ↑ここら辺に込められたシドの感情と、この顔文字の奥深さを同時に
感じつつ、シドシエラはやっぱり(・∀・)イイ!ね、と。そして改めて>>105の続きが気になる
と言ってみるテスト。(書いてくれるんですよね! アルテマウェポンを追うが如く、どこ
まででも続きを探しに逝かせて頂く所存であります!!……ストーカーカヨw)
……セフィロスの触覚がない事に違和感を感じていたのは漏れだけじゃないんですね…ホッ。

>>196-198
先日のレスの中にもありましたが、鈴さんの風景描写ってもの凄く上手いですよね。
同じ風景でも、その視点で見た風景(その人の心を通して見た風景)の描き方が(゚д゚)ウマー。
>  毎日が空に浮かぶ雲のようにゆっくりと流れていく。
ただ「ゆっくりと」っていう事ではなく、そこにベベル(と、そこに立つ少年から見た)光景を
うまーく書けてるし、しかも冗長になってない。素敵すぎまつ。
半ば「シン」に背中を押して貰ったバラライ君の行方が気になるところです。
(´-`).。oO(ついでに、「仲間を見捨てて」(本人談)一人隠れ済んでいた幻獣ラムウの
       話も、奥が深そうですよね…)
200The Executor−亡失都市編18:03/10/02 16:08 ID:7FfVvwWB
(前話は>>180-182です。えーっと…今回の投下分は…女3人の和やかな一日って事でw)
-----------------------------------------------------------------------

「なるほど!」
 光明を見出したようにエドガーは手を叩いた。その突然の動作に驚いた表情を
向けるロック。
「どうしたんだよ?」
「あくまでも憶測に過ぎないが……。恐らくこの“盾の呪い”は、使用者が使い
こなす事で解けるんじゃないかと思って」
 “呪い”というのは一種のたとえ話で、それだけ盾にクセがある事の象徴なの
ではないか。というのがエドガーの導き出した結論だった。
「ずっと使い続けて慣れろ。って事か?」
 エドガーの推論にはどうも引っかかる部分があったが、それ以外に妥当な説が
思い当たらない。半信半疑のままロックは――なかば投げやりという胸中で――
一応の納得を示した。
「それじゃあエドガー、悪いけど盾はお前が預かっておいてくれないか? どう
もオレとは相性が悪いらしい」
 また、戦闘中に混乱しては困るからとロックは苦笑する。
「構わないさ」
 再びカイエンから盾を引き受け、『血塗られた盾』の処遇は一応の結論をみた
のだった。


「それにしても、この盾の持ち主とやらはどのような武人だったのでござろうか」
 エドガーの手に渡った盾を見ながら、ぽつりと呟いたカイエンの問いに答えら
れる者は、この世界のどこにもいない。
 けれど。
 この盾の持ち主が遺した想いを、こうして彼らは引き継ぐ事になったのだった。


 『呪い』から盾が解放されるまでには、まだ遠く。
 彼らがその真意を知るのは、先の話になりそうだ。
201The Executor−亡失都市編19:03/10/02 16:11 ID:7FfVvwWB



 あれから数日後。飛空艇ファルコンの一室には三人の姿があった。
 彼女たちが持ち出したトランプの絵札が一枚足りない事に気付いたのは、ゲームも
佳境に入った頃だった。
「ちょっと変じゃない……?」
「そうね」
「とにかく続けてみようよ!」
 首を傾げながらも、三人は最後までゲームを続けた。するとその疑念は確信を
得た謎に変わった。
「抜けているのは……クラブのK」
「でも、どうしてその一枚だけ?」
「これじゃ遊べないじゃん!」
 元々このトランプはセッツァーの部屋からリルムとセリスが拝借して来た物だ
った。飛空艇の中で暇を持て余していたティナも加えて、三人は簡単な数並べを
して過ごしていた。
 現在、飛空艇はフィガロ城のある砂漠付近に停泊していた。砂漠には着地でき
ない為、城へ赴いた仲間達は暫く戻らない。残っていた男衆も近くの村へ物資調
達に出ていってしまい、船内に残っていたのは彼女たち三名だった。
「大体ジジイまで買い出しにって、何してるんだか…」
「仕方ないわ。飛空艇の中ばかりじゃつまらないでしょうし」
 満面の笑みをたたえながら「コーリンゲンへ行ってくる!」と出ていったロックの
姿が目に浮かび、セリスが苦笑した。そこへ更にリルムは嘆きをこぼす。
「一応最年長なんだから、もう少し落ち着いたらどうなんだよ……ジジイめ」
「……元気な証拠。何よりそれが嬉しい事……」
 向けられたティナの言葉と穏やかな笑顔に、リルムの口をついて出たのはこん
な台詞だった。
202The Executor−亡失都市編20:03/10/02 16:14 ID:7FfVvwWB
「なんだかティナ、おばあちゃんみたい」
 再会したティナは優しさと落ち着いた雰囲気に包まれていた。傍にいると安心
できる――モブリズで子ども達から「ママ」と慕われていた事を考えると、「お
ばあちゃん」は少しおかしい気もするが――リルムにはそう思えた。
「あら、それじゃあ私も“おばあちゃん”なの?」
 自分も同い年であることを主張するセリスに、今度は笑いながら答える。
「んー、セリスはどっちかって言うと……ねえちゃん。かな?」
 まるで別の意味を含んだような口振りだった。事実、リルムの中では別の意味
を含んでいたし、エドガーやセッツァーあたりはとうの昔に感じていた事だろう。
「何よ、もう」
 そう言ってふてくされたように横を向くセリスの姿が、二人の笑いを誘った。
自分の姿を見て笑っている二人を見るうちに、なぜだかセリスの表情も和らいで
しまう。
 そこに流れるのは、和やかな日常だった。

203The Executor−亡失都市編21:03/10/02 16:17 ID:7FfVvwWB

 足りないカードを探しに、三人はセッツァーの部屋を訪れた。
「……あら、こんな所に放りっぱなしだったのね」
 床と扉の隙間に入り込んでいたカードを拾い上げて、セリスは溜息を吐くよう
に呟いた。
「まったく、散らかしっぱなしなんて子どもみたいなヤツだなぁ」
 そんな台詞を当たり前のように吐き捨てるリルムを見て、ティナは柔らかな笑
みをたたえる。
 が、セリスの手にあるカードを見て僅かに首を傾けると、静かに言葉を発した。
「……クラブのK……どうしてかしら?」
「え?」
 その声にセリスが振り向くと、ティナはこう告げた。
「そのカード、このドアに向かって投げられたのね」
 言われて手元に視線を戻すと、カードの隅に一箇所だけできた不自然な折れ目
があった。
「虫の居所が悪かったんじゃない?」
 リルムの予想はあながち間違ってはいなかったが、セッツァーの本意を見抜く
までには至らなかった。
「……何事もなければいいけど……」
「ティナ?」
 ほんの少しだけ、胸の中に不安を感じたのだった。


 フィガロ城に向かった仲間達は、まだ戻らない。
204ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/10/02 16:20 ID:7FfVvwWB
あらら、やっぱり「〜が」の使い方がオカシイよとツッコミたくなるところが。。。

>>203
>  フィガロ城に向かった仲間達は、まだ戻らない。

この一行はなかった事にしといて下さい。すんません。(w
訂正レススマソ。
やっぱりこのスレはいいなあ。
書いておられるSSだけでなく、人柄の伝わるような
皆さんのやりとりとか大好きです。
がんがれー。読者はたまにしか姿が見えないかもしれませんが
確実にいますので。
珍しいぐらいの良スレだな。
エロに傾倒してないのに話の内容や描かれ方から受ける印象も、
書いてる本人さんのレス自体から受ける印象もいいし。

‥‥平均年齢高いのかな?(w

ってな訳でFF4とかキボンヌしてみるtest
207鈴 ◆BELLSBdFOI :03/10/05 02:37 ID:1eQoJJJH
そろそろ圧縮の予感。
保守も兼ねて続きうpしますね。
量が少なくてスマソ。

>>ドリルさん
マターリとした会話の中に、さりげなくこの先への伏線が貼られているようで続きが気になります。
モブリズの二人に子供が生まれたら、ティナママはおばあちゃんになるのかな…とか、
皆の抱くセリスのイメージ=姐御なのかな…とか。
作品ごとに、きちんと各キャラにドラマがあって、深いなぁといつも感動させられていますよ。
「日常」な表現の巧みさも(゚д゚)ウマー

ゾゾの街は嘘・大げさ・紛らわしいに満ち溢れた犯罪都市ぽいので、
そんなところで細々と住んでいるラムウの話は大変魅力的です、と。

>>205さん
ありがとうございます(*´∀`*)
スレで書かせて頂いている一人として嬉しいです。
ここに来て良かったよママン…

>>206さん
平均年齢は統計を取ってみないことには分かりません…気になりますね。(マジレススマソw
FF4はあの愛憎劇っぷりが好きだったのですが、内容が激しくdでしまっていて…
か、カイン×ローザどなたかキボンヌといってm(ry
208Mit deinen blauem Augen (38):03/10/05 02:40 ID:1eQoJJJH
前回は>>197-198


 聖ベベル宮の頂上から、滝のように流れ落ちる水を追いかけて、螺旋の階段を駆け下りた。
寺院の入り口には、北へ向かう「シン」を見たのだろうか、既にナギ節を祈る人々が詰めかけていた。
口々に、束の間の平和を願う、声。
スピラに生きる人々の心の叫び。
だけどそれは、どこか非現実的な、つかみ所のない声のように聞こえた。
だって、誰も。
誰も、自分たちの夢を叶えてくれる召喚士の名前を、知らない。

 大通りもやはり人混みによって埋め尽くされていた。
誰かが歌い始めた祈りの歌が、次第に街全体を包んでいく。
ベベルの人々の心は、今、確かに一つになっていた。
そんな、歌いながら寺院へと向かう人々の流れに逆らって、僕はグレートブリッジを目指す。
「ユウナ……ちゃんっ」
人混みをかき分けて進む僕は、揉みくちゃにされ、突き飛ばされ、つまずいた。
だけど、立ち止まることはなかった。
この願いと希望の叫びに、ともすればかき消されてしまいそうな小さな声で、きっとユウナちゃんは泣いている。
誰一人として、彼女の涙に気付かない。
僕が側にいてあげなくちゃいけないんだ。
その為なら、地面に叩きつけられる痛みだろうと何だろうと、耐えられる。
そう、思ったから。
209Mit deinen blauem Augen (39):03/10/05 21:00 ID:ACc47TWe

 グレートブリッジに程近い、人影もまばらになった通りで、ユウナちゃんを見つけた。
俯いたまま息を切らして走るユウナちゃんを。
「ユウナちゃん」
彼女の名前を呼んだ。
彼女はピクリと反応したけれど、顔を上げようとはしなかった。
そのまま走り抜けようとする彼女を追いかける。
「ごめん……僕に、言っていいことじゃないかもしれないけど」
何が言いたいのかを、考えている時間なんて無かった。
言葉だけがただ口をついて出る。
頭では混乱している割に、僕の口調は落ち着いていた。
「……一人で、泣かないで……」
僕は多分、これだけを伝えたかった。
一瞬。
その一瞬、僕はユウナちゃんの手を掴んだ。
そして、振り返ったユウナちゃんと、目が合った。
少し腫れた赤い目、そしてその瞳には、溢れてしまいそうなほど溜まった、透明な涙。
苦しみと、悲しみと、ほんのちょっとの後悔が彼女の目に浮かんでいる。
僕は、息を呑んだ。
胸が詰まってしまって、それ以上何も言えそうになかった。
慰めてあげたい。だけどどう言うべきなのか全然分からない。
頭が真っ白になって何も考えられない。
そんな僕の前で、ユウナちゃんは嫌々をするように首を振った。
瞳から、涙が一滴こぼれ落ちる。
210Mit deinen blauem Augen (40):03/10/05 21:02 ID:ACc47TWe

 手の中に残っていた温もりが失われてようやく、彼女の柔らかな手のひらが、
僕の手の中からするりと抜けて、離れていってしまったことに気付いた。
視界には、もうユウナちゃんの姿はなかった。
しばらくの間、僕は凍り付いたようにその場から動くことが出来なかった。
景色は色を失って、人々の歌声ももはや僕には届かなかい。
色褪せた世界を、僕はぼんやりと見つめていた。
彼女は今更僕を許してはくれないだろう。分かっていたことだった。
最初に拒んだのは僕だった。
だから、こうなって当たり前なんだ。
分かっている。
分かっているけど、苦しい。
苦しくて、息が出来なくなってしまいそうだ。
僕は手のひらに視線を落とした。
彼女を拒絶した手。そして拒絶された手。
暖かな手のひら。
だけど、指先は、とても冷たい。
211鈴 ◆BELLSBdFOI :03/10/05 21:34 ID:ACc47TWe
>>210
手の中に残っていた温もりが失われて、僕はようやく、彼女の柔らかな手のひらが
僕の手の中からするりと抜けて離れていってしまったことに気が付いた。

修正スマソ。
句点の打ち方無茶苦茶でした。:y=-( ゚д゚)・∵;; ターン
規制中ですか?
念のため保守カキコ
213雫夜 ◆sizukTVGK. :03/10/09 00:23 ID:v0NenZig
別板の話を書き続けていました…。

>>白さん
私の人物描写についての温かなレス、どもでした。もうだめぽ状態だったので嬉しかったです。
KH2のアーロソっぽい人の情報もありがとうございます。もし登場なら、シドと二人でキャラの平均年齢上げそうですがw
それからあの、えーと…21禁の板も行ける年齢なのでw、どこまでも>>105の続きを追いかけていく所存です。
以下、艇長へのレスです。
撮影機材はシエラさんとの時にも是非。

>>鈴さん
クライマックス!!な気がしてます。
ここに現れた『シン』は、ジ(ryなんですかね…だとしたら、もうすぐユウナんとバリャたんの二人は…ヽ(`Д´)ノウワァァン
40話(>>210)を読んでいて気付いたんですが、文末にいくに従って一行の文字数が減っていってるんですね。
何だか切なくなりますた。

>>ドリルさん
カードの数字の伏線が思わぬところで出てニヤリとしました。
私もティナ同様嫌な予感はしてますが、王様の悪運は強そうなので大丈夫だと思ったり。
まぁそんな私が気になることと言えば、折れたカードに込められたセツの気持ちです…(*´Д`)ハァハァ(違
214雫夜 ◆sizukTVGK. :03/10/09 00:35 ID:v0NenZig
保守乙です>>212さん

>>205さん
嬉しいレス、ありがとうございます。
頑張りますです。

>>206さん
続いての嬉しいレス、ありがとうございます。
FF4ですか…私もカインで是非(相手は誰でも)、と思っていたら、鈴さんがリクエストされているw

では続きうpります。
215SLOW ―― 一緒に歩きたい ―― 4:03/10/09 00:40 ID:v0NenZig
>>186-187の続きです。ワカルル+ユウナん(いずれ)。


「もしかしてチャップは、私たちのことを祝福してくれているのかもしれないね」
 だから還ってきたのだろうか。私たちのところに――最後はあえて言葉にはせずに。
 それで、ワッカ――しかしルールーを遮るように、彼が小さく呟いた。
「祝福っていうか、アイツ…おれがルーを幸せにしてないって怒ってんのかもな」
「え?」
 驚いて訊き返すルールーを見ずに、ワッカは続けた。
「何でルーがおれを選んだんだろうって思うんだ。ルーは優秀な黒魔道士でキレイで…それに比べて、おれには金も
ブリッツの才能も大して無いし、顔だっていいわけでもねぇ」
「……」
「ルーだったら、ユウナに来てた見合い話の、えーっと、新エボン党の議長の息子だったか? ああいう金も学も身分
もある奴の方が釣り合ってて、お前も幸せになれるんじゃねぇかって…思う」
 最後は絞り出すように低く呟いて、やっとワッカはルールーを見た。
「……」
 何も言えなかった、というより、怒りを通り越して何も考えられなかった、という方が近いのかもしれない。
 二人とも同じ気持ちだと思っていたのに、それを否定するようなワッカの言葉。湧き上がるものは涙ではなくて、怒り
とやるせなさが混じった複雑な感情。
 気がつけば、浜辺は波の音も微かに聴こえる位に静かだった。指笛をやめたらしいユウナが、何故かこちらを窺って
いる。二人の間の空気が変わったことに気がついたのだろうか。
 ルールーは感情の浮かばない顔でワッカを一瞥すると、ゆらりと立ち上がった。
「帰る」
「え? おい、ちょっと待てって」
 慌てた彼がルールーの肩先に伸ばした腕を、ルールーは強引に振り払う。小さな島だ。明日には村中で噂になってい
るかもしれない、と頭の隅でちらりと思ったが、ワッカへの怒りの方が理性に勝った。
216SLOW ―― 一緒に歩きたい ―― 5:03/10/09 00:43 ID:v0NenZig
と思ってたら、ユウナん出せました(・∀・)

「あんたがそこまで無神経だったとはね」
 本当にあきれた、と歩きながら肩を竦める。なおも言い募ろうとするワッカをかわして、帰るからと
桟橋に立っていたユウナに告げた。
 ルールーの背後で戸惑っている様子のワッカを見て、訝しげにユウナが問いかける。
「ルールー…あのこと、ワッカさんに伝えたの?」
「まだ話していないわ」
「早く言った方がいいと思うよ」
 小声で喋る二人の背後で、ワッカがわざとらしいくしゃみをする。
「あ〜、あのなぁ」
「まだあの妄想に続きがあるわけ? 私にはもうあんたと話すことなんてないわよ」
「ルー…」
 うなだれる彼を振り返ることもせずに、ルールーは言い放つ。とりつくしまもない彼女の様子から、
ワッカを不憫に思ったのか、ユウナが強引に二人の腕を取って繋いだ。
「二人とも、もう少し落ち着いて話した方がいいよ――特にルールー」
 彼女は、少し咎めるような視線をルールーに向ける。
「感情的になると良い判断ができないって、旅をしていたときに教えてくれたのは、ルールーだよ」
「――ユウナ。それは今回のことには当てはまらないの」
 ううん、とユウナが首を振る。
「そんなことないよ。とにかく二人ともちゃんと話してね。わたしはもう少し桟橋にいるから」
 ユウナに促され、ワッカはルールーの腕を引いて、浜辺へ戻る。しぶしぶながらルールーも従った。
「…ちゃんと話したら、思いは必ず伝わるよ」
 しかし二人を見送るユウナの呟きは、彼らには届かない。
217R@no-name ◆Vlst9Z/R.A :03/10/10 02:59 ID:8TuYbCxA
【業務連絡】

姐サマが投稿規制に巻き込まれてしまい、スレへのアクセスが出来ない状態に
なってしまいました
そのため「スニフの恋人」の連載は当分再開不可能とのことです
詳しくは姐サマの自HPをご覧ください

ttp://ane2ch.hp.infoseek.co.jp/index.html  
218ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/10/10 23:28 ID:Xx6Q0J6+
規制、思いっきり引っかかりましたが…(´・ω・`)。もしや姐さんと同じ経路でここへ来て
いるのでしょうか……? 規制解除される事を強く望みます。(こうなるともはや「2ちゃん」
でない様な気もしてきますが……って板違い閑話休題)

>>205
嬉しい書き込みありがd。ボケ、ツッコミ、一発ネタ大歓迎のスレなので、思いついたら
是非おながいします。何気ないレスに含まれる言葉やフレーズから、誰かの萌え(妄想?)に
火がつく事もあるので。(…危険ですか、そうですか。でもここは萌えゲージの溜まった者勝ち
って事でひとつ)

>>206
エロに傾倒、むしろ色んな形の「恋」(だけじゃないですが)があって、舞台となるシリーズ
も違って、そんな多面性がこのスレの良い部分でもあるのかな? って思ったり。
一方で、エロに傾倒できない漏れは個人的に悔しいですが。(w
ちなみに漏れはFF4以前は未プレイですが、リディアとセシルには興味があるので誰かにk(略。
平均年齢は…どうなんでしょうね? FF7登場人物ぐらいの年齢が大勢を占めているものと予想。
219ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/10/10 23:30 ID:Xx6Q0J6+
>>207-211
>  手の中に残っていた温もりが失われてようやく、
(・∀・)イイ! そうか、そのテがあったか…! と正直思いますた。
直前までの描写では細かなユウナの表情まで(恐らく彼の視点で語られているので)見えて
いた筈のバラライが、彼女が去ったことに気付いたのは視覚ではなく「温もり」であった事。
切ない、切ないんだけれども……(・∀・)イィヨォ〜!
なんか、こういう読み返し甲斐のある描写文は本当に憧れますね…。

>>213-216
今回、二人の仲を取りなすユウナんに萌えてみたりして……(*´д`)健気だ…なんて健気なおなごや…。
読み返してみるとルールーの「当てはまらない」って発言、結構深い気がします。
言葉がまとまらないのであれですが、感情論であってそうでない、複雑な色が含まれてる、
そして表面に出すといつの間にかそれが素っ気ないものになっている……ルールー好きな漏れのツボを
(゚д゚)ウマーく刺激してくれる描写が(・∀・)イイ!
加えてルールーを思うがあまり、空回りして無神経に転じたワッカの思いやりもあたたかくて(・∀・)イイ!
(´-`).。oO(実はセツダリもコソーリ含んでたりします>カード……もちろんセツエドでも可w)



規制を喰らって一番いたかったのは投票出来ないことだったりして(´・ω・`)
220The Executor−亡失都市編22:03/10/10 23:35 ID:Xx6Q0J6+
(前話は>>200-203です。……この話、実はエドリルを装った「国王の葛藤」がテーマです。恋じゃなくてゴメソ)
-------------------------------------------------------------------------------------

 フィガロ城。
 城内を歩いていたエドガーの足がふいに止まる。
「どうしたんだい?」
 後ろを歩いていたマッシュが横まで来ると、兄の顔を見て尋ねた。
「……今、誰かに呼ばれた様な……」
「え? 俺には聞こえなかったけど」
 あたりを注意深く見回して、マッシュは自分たち以外に誰もいないことを確認
した後でそう言った。確かに彼ら以外に人の姿は見あたらなかったし、この中で
誰もエドガーの名を呼んだ者もいなかった。
「すまない、空耳だったのだろう」
「でも、警戒しとくに越したことは無いな」
 フィガロ城はサウスフィガロへ向けて潜航中だったが、途中で妙な地層に行く
手を阻まれた為に一旦進行を停止させた。その上でエドガー達は原因調査のため
に地下へ降りた。
 地下牢まで辿り着いた四人の前に現れたのは、巨大な地底空洞。どうやら潜航
を阻んでいたのはこの地層のようである。彼らは現在、その空洞内へと足を踏み
入れていたのだった。
「ロックを連れて来たら、目を輝かせて喜んだだろうな」
 偶然の末、遭遇した人跡未踏の地底洞窟――トレジャーハンターでなくても、
冒険心をくすぐるこの場所に、残念ながらロックの姿はなかった。
「やっぱり日頃の行いに問題があったんだろ?」
「人の物盗んでばっかりだからなー」
 などと冗談を言いながら、四人は歩を進める。
「出口だ!」
 幾度かモンスターとの戦闘を経て暫く歩き続けると、やがてマッシュの指さす
方向に開けた空間が現れた。
「……これは……」
221The Executor−亡失都市編23:03/10/10 23:44 ID:Xx6Q0J6+
 彼らを出迎えたのは廃墟だった。誰にも存在を知られる事のないまま、永い時間
地底の奥深くで眠り続けていた――忘れ去られた千年前の『魔大戦』の惨劇をとどめた
ままの――巨大な城。
「…………」
 その有様に故郷の風景が重ねて見えてしまい、カイエンは言葉を失う。
「『信じた道を進むのみ』、だろ?」
 爽やかなほどのマッシュの笑顔に我に返る。カイエンは再び携えていた刀を握ると
深く頷いた。
「そうでござるな」
 こうして四人はさらに城の奥へと足を進めた。


「にしても遅っいな〜」
 停泊中の飛空艇ファルコン号の甲板に立って、フィガロ城のあった方角を見つ
めながらロックが呟く。
 雲一つない星空の下には、見渡す限り延々と続く砂の海。そこに巨大な城の影が
無くなっている事から、サウスフィガロ方面へ潜航中なのだろうとはすぐに察しが付く。
それに、飛空艇と比べれば移動速度は格段に落ちると言う事も。
 それでも、じっとしていられないのは彼の性分だろう。
「ヒマなのは分かるけど、少しは落ち着いたら?」
 背後から聞こえてくる声に振り向くと、相変わらずの口振りはリルムだった。
「お前なー、一応オレ年上だぞ?」
「落ち着きないけどね」
「うるせー! 子どもは早く寝てなさいってんだ」
 どうもロックの言う事は説得力に欠ける。15の年の差を感じさせない舌戦は、
どうやら今回もリルムが主導権を握っているようだった。
「あー、セリスに相手にしてもらえなくて拗ねてるんでしょ?」
 さらにだめ押しである。
「ちっ……違うわい!」
 と言いながらもロックは所在なげに上空へ目を転じた。どうやら図星だったようだが、
リルムにはそれ以上追及する気はないらしく、笑顔を浮かべたままで手摺に寄りかかって
空を見上げた。
222The Executor−亡失都市編24:03/10/10 23:55 ID:Xx6Q0J6+
「そう言うお前こそ、こんな夜遅くに何しに来たんだよ? カゼひくぞ」
 砂漠周辺の気候のせいか、この辺りは夜の冷え込みが厳しかった。ロックは部屋へ
帰るように促すが、リルムは甲板の手すりに身を乗り出して、広がる砂漠の一点だけを
じっと見つめる。
「……そう言えば色男。あの盾、持っていったままだよね」
 ふと漏らした彼女の言葉に、ロックはあの日ここで起きた出来事を思い出した。
「もしかして、お前まだ気にしてたのか?」
 リルムの不意打ちサンダラを食らって気を失ったエドガーの姿には笑えたが、
当の本人は少なからず負い目を感じていた様だった。
「ち、ちょっとね……」
 そう言って真っ直ぐに向けられた視線を一瞬、足元に落とす。その動作をロックは
横目で見ながら――そんな気まずそうな返答からも、リルムの心境は想像に難くない。
「大丈夫だろ。エドガー念のためにリボン付けていくって言ってたし。……それに
油断してたアイツが悪いんだから、気にすることないって」
「きっ、気にしてるワケじゃないってば!」
 照れ隠しなのか否定する言葉に力が入る。そんなリルムの姿を見て、口は悪い
が案外と素直だなとロックは内心で微笑ましく思うのだった。
「ほれ、早いとこ中に戻んな。本当にカゼひくぞ?」
 そう言って再びリルムを部屋の方へと促す。実のところ、彼自身少し肌寒かっただけ
なのだが。



---------------------------------------------------------------------------
ここで敢えて、「ロクリル」とか言ってみる。(w
きあーーー!!!!
楽しみぃ〜〜!!神様頑張ってください!!
続き間ってマツ(・∀・)
224ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/10/12 02:03 ID:sDB870zr
規制解除と休暇が重なりますた。連投気味になりますが、ご容赦下さい。

>>223
「神」といえば、三闘神の話も書いてみたいなーとふと思ったり。(心底6ネタしか
思いつかない自分の脳に呆れつつ…)

モグティナとか、ケフカとティナ(←カップルではないのですが)とか、ロクセリマリとか、
実はマドリーヌ(?)って(・∀・)イイ!ネタになりそうn(略
はい、なんていうか…病気ですね。(w
225The Executor−亡失都市編25:03/10/12 02:09 ID:sDB870zr
(前話は>>220-222です。一応ロクリルではありませんが、ロクリルもいいなーなんて。w)
----------------------------------------------------------------------



 どういう訳か城の中はあたたかかった。城内の探索のために彼らが休みなく動いている
せいであまり寒さを感じないだけなのかも知れないが、真相は定かではない。
「どうした?」
 兄の問いに答えたのは、真剣な表情の弟・マッシュである。
「なぁ、なんかさっきから寒気がするんだけど……」
 そう言って辺りを見回す。彼の動作につられるように、カイエンも不穏な言葉を口にした。
「拙者も同じでござる。……もしかすると、何某かが潜んでおるやも知れませぬ」
 何せ千年間――死者もまともに弔われないまま――放置された場所である。化け物が
出てきても不思議ではなかった。
「ああ。気をつけよう」
 言った矢先である。
「おい、こりゃ何だ?」
 セッツァーの声に振り返ると、彼は返答を待たずに絨毯の下に隠されたスイッチを押し
ていた。
 途端に、機械の発するような重低音と共に振動が城内に響く。音のする方向に
歩みを進め辿り着いた部屋は。
「……女王の間」
 中へ入ってセッツァーが本棚の方へ歩み寄る。
 収められていた書物の多くは千年という途方もない時の流れの中にその形を埋めて
いるにも関わらず、鄭重な表紙に守られしっかりと原形をとどめた一冊の本に手を伸ばした。
 中を開き見れば、この城の――かつては栄華を極めたであろうこの国の――記録が、
ごく主観的に書かれてある。
 どうやら『女王の日記』のようだ。
「これは……?」
226The Executor−亡失都市編26:03/10/12 02:17 ID:sDB870zr
 何の気無しにページをめくり、本の最後の方に見つけた小さな記述が、彼らの目を引いた。

  あの気高い心をお持ちの方を想うこの心…
  誰も咎めはできぬはず。
  この戦いが終わったとき
  必ず
  この思いを打ち明けよう。

 女王が密かに抱いていた、幻獣・オーディンへの思いがつづられたこの日記を、
千年の時を超えて自分たちが目にしている。
 そして、そのオーディンは魔石となって今、彼らの手の中にある。

「……出よう」

 しばらくして、絞り出すような声でエドガーが切り出した。
「兄貴?」
「エドガー殿?」
 明らかに何か思い詰めている表情だ。ためらいがちに声をかけるマッシュとカイエン
だったが、対照的に強い口調でセッツァーはそれを阻んだ。
「……待てよ、コレを放っておく気か?」
 更に下へと続く階段を指さしながら。
「…………」
 その声にエドガーは黙って振り向き、示された下り階段の先を見つめた。
 ――薄闇の中に潜む何かの気配。うなり声がかすかに響いた。
「まさか!」
「八竜!?」

  この強すぎる力を、八匹の竜に封印する。その名はジハード…
  八匹の竜を倒す時、再び力は甦らん
227The Executor−亡失都市編27:03/10/12 02:18 ID:sDB870zr
 ――古文書の記述によれば、それは古の怪物。
「いると分かって見過ごす訳にはいかないぜ、兄貴!」
 ――人の手に余るほどの巨大な力。誰とも分からぬ者により封じられた力。
「参りましょう!」
 ――しかしそれが甦ってしまった……。
「エドガー!」
 ――迷っている暇はない、か。
 こうして、四人は古の怪物・八竜ブルードラゴンと対峙することとなった。
228雫夜 ◆sizukTVGK. :03/10/12 19:43 ID:gGlFej6e
今日は感想をば。

>>白さん
良かったです>>105の続き
感想はそちらに残してきましたので、宜しければ読んでやってくだちい。
(*´Д`)ノ ハァハァハァハァ…萌えが止まりません、先生!!

>>ドリルさん
私は恋だと思っているので安心してください(違
カード>セツダリでしたか…でもセツエドでも良いとのこと、お気遣い感謝しますです。
ドリルさんの某所でのお話を読んで以来、すっかり彼らに萌えですよ…。
ロクリルの二人は、じゃれてる感じでほのぼの萌え。
>彼自身少し肌寒かっただけなのだが。
この一文で彼らはあくまでもロク『と』リルなことを確信したりw
リルムの口調は誰に対しても同じようで、実はエドガーに対してだけ、含みがありますよね。ヤッパスキダカラ??
ロックとの会話を読んでしみじみそう思いますた。素晴らしいです、ドリルさん。


では私もワカルルの続き書いてきます。
229ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/10/12 23:45 ID:ZHPYjVUw
某所のお話を読んで、いつかエロが書きたい…改めてそう思った今日この頃です。

>>228
実はあの記述、気遣いと言うのではなく、単純に自分の中のセッツァー像が
“勝てる見込みのない賭にあえて勝負を挑むヤシ”というのがありまして…。それは「自棄」
とはまた違う意味で。
その印象でいくとセツダリなんです。敵わない女への、叶わぬ想い。自由を気取り孤独の中を
飛び続けている様に見せながら、実はずっと追いかけ続けてる存在、つまりは束縛。それが
ダリルという過去だったり。
で、ダリルをはさんだ先にエドガーがいる、と。某所の結末(2)に託した思いにはそう言う意味が。
(ここでスレ違いなネタバレしてスマソ)

そう言う意味で、6にはダリルやレイチェル、ミナやマドリーヌという、漏れ個人的には萌えな
ヤシらが沢山いるのです。。。って、語りすぎてすまそ。(そして暗にリクエストしてみるテスト)
230The Executor−亡失都市編28:03/10/13 00:01 ID:pKtQnQtH
(前話は>>225-227です。現在位置は古代城・女王の間)
---------------------------------------------



 幸いにもここには必殺剣のカイエン、必殺技のマッシュの二人が揃っている。
攻撃力に関しては申し分なしのメンバーだったが、魔法に関しては攻撃・防御
両面において一抹の不安があった。
(回復が間に合えば大丈夫だな……)
 必然的にエドガーとセッツァーは回復役に徹する。相手は八竜だけあって、中
途半端に戦略を立てればこちらがやられる。幸いにして敵一体に対してこちらは
四人で戦えるのだ、長期戦は覚悟していたが確実に倒せる自信はあった。
「……ケアルラ!」
 八竜に対し二人は着実に攻撃を重ね、敵の疲弊も目に見えてきた。セッツァー
が念のためにと数度目の全体回復魔法を唱える。
(いけるな)
 全員が勝利を確信していた。
「手応えはある! あと二発もかませば……!」
 そう言ってマッシュが必殺技の構えにった時、それは起きた。
「……!!」
 エドガーは突如、自分の身に起きた変化に狼狽した。視界が徐々に薄暗くなり、
意識が遠のく。
「兄貴!?」
 薄れゆく意識の中、弟の声が幾重にも耳に響く。
「これは……!?」
 死の宣告、あるいは当該魔法を受けた記憶はない。しかし、横で静かに倒れる
エドガーの姿に、三人は一瞬何が起きたのか理解できずに戸惑いの表情を浮かべた。
231The Executor−亡失都市編29:03/10/13 00:03 ID:pKtQnQtH
「……マッシュ! 撃て!!」
 こうなれば回復よりも敵を倒した方が早いととっさに判断したセッツァーは、
回復を捨て、総攻撃をかける事を決意した。
「えっ!?」
「マッシュ殿!」
 カイエンの声に背を押され、躊躇いを捨ててマッシュは拳を繰り出す。続けざ
まに斬撃がドラゴンを襲い、上空からは爆撃が降る。
 三人は己の持てる全ての力でドラゴンに向かったのだった。


 一方で『血塗られた盾』の呪いは、一人の男にだけ悪夢をもたらそうとしていた……。


しゅまん!!神降臨中悪いが自分もss書いた!!
載せていい?それとも終ってから載せた方がいい??
てか生存確認してもいい??
1!(・∀・)ノ
>>232-233
まずは冷静に周りを見る事から覚えた方がいい と言ってみるテスツ








まさかこのスレで釣られたか?
>>234
ゴメン書いたはいいけど載せてもいいかどうか迷ってて
誰も来ないから困ってたんだ…。逝ってきまツ…。
たぶん書き込んだ時間帯が悪いと言いたかったんじゃないかと‥
うpしてから逝きなされ。
>>236そうか。…そうかもなぁ…。スマンカッタ。
>>237ワカタ。お許し出たのでうpしまツ。
239クラエア小話1-その後、教会で-:03/10/13 20:52 ID:nkz8Pka2
錆びれた、古くて重たい扉。昼間なのに薄暗いその場所。
――忘れもしない、彼女との思い出の場所。
ギィ…、と音を立てて扉が開く。そこは教会だ。いや、かつて教会だったところ、というべきか。辺りは荒れ果て、クモの巣を張り、埃をかぶって静まり返っている。
そしてその部屋の一箇所だけ、神に許されたかのような場がある。
教会の屋根が崩れたそこからは太陽の光が降り注ぎ、光の帯を作ってその場所を照らした。――錆びれた教会に静かに息づく、小さな小さな花畑。
荒廃した教会の中で光降り注ぐそこだけが、聖域のような気がした。
おそらく、生きていれば、今も彼女はその聖域にいたのだろう。
白い肌。胡桃色の髪。天使のような笑顔。――エアリス。
そう、彼女はいつも笑っていた。どんなに辛い時でも、無邪気にその笑顔をふりまいていた。
「エアリス……」
君はもう、いない。
240クラエア小話2-その後、教会で-:03/10/13 21:07 ID:nkz8Pka2
最後の戦いは終った。
あの日――、大空洞内部の星の体内でセフィロスを倒し、俺たちはホーリーを発動させた。解き放たれた究極の白魔法は見事メテオを完全に打ち破り、俺たち――この星の全てが助かったんだ。
かつての仲間たちは、今それぞれの地でめいめいに暮らしている。皆生き残って、新しい人生を歩んでいる。俺も、――やっぱり、人と接するのは苦手だけど――それなりに生活している。
――エアリス。君は?君は今、何処で何をしているんだ?
分かっている。セフィロスを倒しても、ホーリーを発動させても、この星を救っても、君が、…君が帰ってこないことくらい、分かっているつもりだった。
でも心のどこかで思っていたんだ。君が守りたいと思っていたこの星を俺たちが救ったら、君は帰ってくるんじゃないか、って。何処からかひょっこり現れて、あの笑顔を見せてくるんじゃないか…って。
『ありがとう、クラウド……』
そう言ってくれるんじゃないかって。
やっぱり君は帰ってこなかったんだけどね。
今までこの教会に来なかったのは、…怖かったんだ。だって君は、ここにもいない。
君がここにいないなんて、俺にとってはあり得ないから。――君が本当にいないことを、認めるのが怖かった。
そして今日ここに来たのは、そんな自分自身にケリをつけるため。
最後の戦いの前にここに立ち寄った時、一瞬だけ見たんだ。あの花畑で、君が俺と会ったときのように花の手入れをしていたのを。
だから君が本当にここにいなかったら、君はもう、どこにもいない。
君が何処にもいないのなら、俺はもう二度と、君の影を追わない――。
全部あきらめて、君の事は忘れる。
そのために、ここに来たんだ――。
241ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/10/13 23:39 ID:51S279Yx
>>232-237
おまいら素敵です。(w

>>239-240
> そしてその部屋の一箇所だけ、神に許されたかのような場がある。
無機質なプレートに光を奪われたスラム街の中にあって、けれどもどこか
神秘的な雰囲気が出ていて(・∀・)イイ!です。
エアリスの生存を信じたい気持ちと、それに縛られ続ける自分から脱却しようとする
クラウドの心の葛藤が(゚д゚)ウマーです。期待sage。
  ついでに、>>1にある通りこのスレはATMシステム採用のスレなので、萌えの赴くまま
  どんどん書き込んでいくっていうのがコンセプトみたいです。(…だよな?)


ところで、スレの流れとは直接関係ないが聞いてくれ>>1よ。
今日、会社の書類作ろうとしてMO開いたら、中のデータがdjんだ。1バイトも残らず全部。
もうね、アフォかとバカかt(略。

 ……あまりのショックに、思わずこんな作品を書いてしまったんで投稿。連載中断してスマソ

時間軸は前後しますが、マイ脳内エドリル完結編です。(砂漠の王と風の覇者・後日談
みたいなノリだと思って頂ければ幸いかと)
話の内容が微妙(決してエロではないと思うw)なので、苦手な方はタイトルをNGワード
として設定して下さい→MONOCHROME - 心の陰翳

内容的にも文法的にも、恐らくツッコミ所満載ですが……遠慮なく突っ込んで下さい。
242MONOCHROME - 心の陰翳1:03/10/13 23:45 ID:51S279Yx
 黒魔導士を彷彿とさせる黒衣を身にまとい、真っ黒なキャンバスと向き合う。
 彼女が絵と向き合ってから何時間、何日、……何週間が経っただろうか?
『アタシにはもう、描けないよ……』
 口には出さず心の中で幾度も繰り返す、言葉。
 部屋の隅にあるテーブルに置かれたパレットの絵の具はからからに乾いて、
ろくに手入れもせず放置されたままの筆は、もはや使い物にはならないだろう。
 以前の彼女なら、考えられない光景だった。
「……エドガー……」
 掠れた声でその名を呟く――ケフカを倒した『14英雄』の一人であり、彼女に
とって最愛の人で、城のかつての主――今は亡き先代フィガロ国王、エドガー・
ロニ・フィガロ。

 彼が崩御して半月が過ぎようとしていた。

 リルムが身にまとっている黒衣は、国王の葬儀で身につけていた喪服。
 偉大なるフィガロ国王を弔うために、そしてエドガー個人の死を悼むために、
各地から彼を慕う人々が訪れ、旅を共にした仲間達も集まってくれた。
 そんな彼らを出迎えるのは、后となったリルムの役目だ。
「すっかり大人になっちまったな」
 身も心も成長した彼女の姿を見て、ロックはそんな風に笑っていた。
 彼の言うとおり、リルムもすっかり大人になった。
 それもそのはず。あれから既に、10年の月日が流れているのだ。
「惚れちゃった?」
「まさか!」
「黒い服ってね、女性の魅力を引き出してくれるのよ。だから今日のセリスも、
いつもよりずっとキレイでしょ?」
 意地悪く微笑むリルムの表情には、確かに大人の魅力を感じる。
 民達の前ではもちろん、ロック達の前ですら彼女は涙を見せなかった。愛する
人を失っても、涙どころか悲しい表情一つ見せないリルムを「強かったんだね」
と言ったセリスに。
「失うのは、慣れてるから」
 そんな風に言って、笑った。
243MONOCHROME - 心の陰翳2:03/10/13 23:52 ID:51S279Yx
 かつて打倒ケフカの名の下に集い、戦った14人の仲間達。
 シャドウを失ったあの日から、彼らはそれぞれの人生を歩み始めた。
 しかし、その全員が集まる日はもう二度と来ない……。

 覚悟は、していた。
 あの夜から――。

                    ***

「お疲れさま」
 いつものように公務を終え、私室に戻ってきたエドガーを労うように、彼女は
カップに注いだ紅茶を手渡す。
 こんな風にして過ごす様になってから数年が経つ。飽きることなく夜ごと繰り
返される光景。
「ありがとう」
 そう言って受け取ったカップを口に運び、穏やかな笑顔を向けるエドガーは、
すっかりくつろいだ表情だった。
「俺も、一緒に飲もうと思ってね。こんな物を持ってきたんだ」
 そう言って懐から取り出したのは見慣れないワインボトル。
「今日、謁見に来た者が持ってきてくれた物なんだ。なんでもナルシェ地方に伝
わる美酒だとか」
 グラスを取りに席を立とうとしたリルムを制する様に、エドガーはにっこりと
微笑みかける。静かにボトルをテーブルに置くと、そのまま部屋の奥にある棚から
グラスを二つ持ち出して来た。
 静寂に包まれたフィガロ城の一室で、二人だけの時間がゆっくりと流れる。
 国のこと、城のこと、時には仲間達の事……そんな風に二人は色々な話をして
いくつもの夜を共に過ごして来た。
244MONOCHROME - 心の陰翳3:03/10/14 00:01 ID:HQlBvfuX
 婚儀は行ったけれども、二人はまるで仲間のような兄妹のような、時には――。

 齢の近い親子のような。

 年の差があるとはいえ、その形は間違っているのかも知れない。
 だけどリルムはこんな関係が続く事を望んでいた。もちろんエドガーが好きだ。
けれど、出会った当時はまだ幼かったせいもあり、心のどこかで恐れていたのか
も知れない――愛する、という事と、付随するその行為を。
 そして、表には出さない彼女の意を汲んだエドガーは、黙ってその願いを叶え
続けていた。
 あの日、待つと決めたから。そして。

 父王の二の舞を演じまいという強い想いが、どこかにあったのかも知れない。

 それぞれ相手が抱く気持ちを察しながら、それでもお互い直接口に出すことを
しなかったのは――。

245MONOCHROME - 心の陰翳4:03/10/15 00:52 ID:2lqh9whK

 ナルシェの美酒を挟んで、二人の話は弾む。。
 程良く酒が回ったせいもあり、エドガーは不意にこんな事を言った。
「それにしても、リルムとこんな風に過ごすようになるなんて、最初は思いもし
なかったよ」
 帝国の罠から間一髪で逃れ、途中で立ち寄ったサマサの村――初めてリルム達
と出会った頃を思い起こす――スケッチブックを片手に抱えた少女は口達者で、
妙にませているというのが第一印象だっただろうか。
「今さらな〜に言ってんだか」
 会った直後の娘に年齢を聞くなんて、失礼にも程があるわよ。とリルムは悪態
をついた。
「弟はアタシの事ガキ扱いするし、ホント兄妹揃って失礼な奴らだと思ったわよ」
「いやぁ。あまりにも美しかったからつい、ね」
 相変わらず悪びれた様子もなく、エドガーは軽口を叩く。
 失礼のお返しと言わんばかりに旅の間、混乱したリルムの魔法を何度喰らった
ことか。と、ある洞窟で遭遇した悲劇的な昔話を持ち出してみた。
「うるっさいなー! 誰だってそんな時があるじゃない!!」
 そうそう、混乱したロックに自分の持ち物を盗まれた事もあった。と、思い出
したようにリルムが笑う。
「ウーマロに投げられた時は、流石に焦ったけどね」
「……あれはビックリするわよ……」
 ちなみに、ウーマロは混乱していたわけではない。
 帝国の圧制を打ち破るべく立ち上がり、成り行きで幻獣を追う事に。そして辿
り着いたサマサの村で二人が出会ってから、長かった旅の話に花が咲いた。
 そして。
246MONOCHROME - 心の陰翳5:03/10/15 00:55 ID:2lqh9whK
「シャドウの事は……」
「今は、言わないで」
 年月が経った今でも、どうしても拭えない。
 なぜか、リルムの心に強く残っているのだ。
 共に戻れなかった事への後悔――それだけではない、強い思い。
 二人の間に訪れた、沈黙。
「ご、ごめんね。……そろそろ寝よっか」
 ようやく、自分の言葉がエドガーを拒むものだと気付いてリルムは急ぐように
席を立つ。話に水を差してしまったようで、なんだか気まずい。
 そんなリルムの様子を眺めていたエドガーは、手にしたグラスをテーブルに置
くと、同じようにして席を立った。

「大切な人を失う痛みは、俺も分かっているつもりなんだけどな……」

 その際にぽつり、とエドガーが呟いたその声に、リルムは思わず顔を向けた。
 真っ直ぐにリルムを見つめる蒼い瞳にぶつかる。
「リルム。いつも俺の事を支えてくれるのは嬉しい、本当に感謝しているんだ」
 エドガーの告白から数年後、リルムはこの城へ来てくれた。
 まるであの日のと同じように、揺らぐことのないその意志を湛えた、けれども
優しい瞳。
 真っ直ぐに見つめられると、いつも何も言えなくなってしまう。
247MONOCHROME - 心の陰翳6:03/10/15 01:05 ID:2lqh9whK
「……王妃として色々苦労をかけている事も分かっている。だからこそ、言って
欲しいんだ。つらい時はつらい、と。俺達は……その」
 家族、なのだし。
 最後まで続かなかった言葉。
 僅かにエドガーの視線が逸らされる。
 そして。
「……どっちよ……」
 絞り出すような声で、リルムが反旗を翻す。
「いっつも本音を隠してるのはどっちよ!! この城で起きた騒動の時だって
そう!」
 ケフカを倒してからちょうど一年後に起きた、忘れ得ぬフィガロ政変騒動。
 陥落したフィガロ城と人質となった国王奪還のため、リルムとセッツァー、
そして弟マッシュによる懸命の救出劇。
「どれだけ周りが心配しても、いっつも平気そうに笑っててさ! ……アタシは……」
 一瞬、後に続く句を口にすることを躊躇うようにリルムの声が途切れた。
「……え、エドガーが好きだから、一緒にいるって決めたのに」
 けれど、勢いに任せたように大声でその言葉を放ってしまった。
 それから先は、堰を切ったように次々と心の中にしまってあった気持ちが
溢れ出てきた。
248MONOCHROME - 心の陰翳7:03/10/15 01:09 ID:2lqh9whK
「どーせ田舎者で子どもな私には、国王サマの苦労なんて分かんないわよ!
だけどね、受け止めてやる事ぐらい出来るわよ! ……守ってやるって、約束し
たじゃん」
 月が綺麗なあの夜。崩れかけた城の塔の前で。
 ――……エドガーは、忘れちゃったかも知れないけど。
 今まで怒りと勢いに任せたリルムの声は、やがて落ち着きと憂いを含むそれに
変わる。
「信じてくれても……いいから。私、エドガーのこと受け止められるから。守っ
てやるから」
 守る、なんて言っておきながら絵以外でエドガーに勝るものなんて持ってない。
そんな自分が言う言葉に、信憑性はないんだろうか?
 ――頼りないかな? やっぱり。
 口にしてしまった言葉を、今さら取り消す事なんてできない。
 だけど、本音だった。
 これ以上、黙っていられなかったから。
「……やっぱりまだ、子どもだね」
 頭にやった手で自分の髪を握りしめながら、俯き加減で照れたように笑う。
 あるいは嘲笑、だったかも知れない。
「リルム……」
 そんなリルムを包み込むように、エドガーは優しく抱き寄せる。
 彼の温もりと優しさに、これまで幾度もこんな風にして慰められた。
 その腕の中で、溢れてくる涙は何だろう?
「心配してくれて、ありがとう」
 今宵、二度目になるその言葉を呟きながら、彼女の固く握られた拳を包み込む。
 彼の温もりに、身を委ねながら――得られるのは心地の良い安堵感。
 けれど、この日はいつもと違った。
249MONOCHROME - 心の陰翳8:03/10/16 12:36 ID:FML+FtN1
>>245:兄妹揃って→兄弟(マッシュ…)
     リルムが笑う→リルムも
>>248:あるいは嘲笑→自嘲         …訂正スマソ。
-------------------------------------------

「受け止めて、くれるかい?」

 低く響くエドガーの口調に、リルムが顔を上げる。
 至近距離にあるのは、見慣れた愛おしい人の顔。
 だけど、いつもとは違う雰囲気を帯びて――優しさ中に、儚さと鋭さを秘めた
――瞳。蒼穹のように澄んだその奥にあるのは、熱砂の如き熱さを伴った、感情。

 それは。
「え、エドガー?」
 彼が。
「……リルム。俺は……」
 男だという証明。
「君を愛している」
「!?」

 初めてではないはずの口づけを交わす。
 初めてではないはずなのに、いつもとは違う。
 優しく、深く、あたたかな。
 それが、これまで押し殺していた彼の思いだと気付くまでに時間はかからなかった。
 そうと分かっていても。
250MONOCHROME - 心の陰翳9:03/10/16 12:51 ID:FML+FtN1
 リルムは彼の唇から逃れるように顔だけを背け、やっとの思いで声をあげる。
「エ、ドガー……!?」
 先刻、受け止める。と言ったばかりなのに矛盾している自分の行動。
 エドガーが好きなのに、いつも先へ進めないのは自分が拒んでいるせいだ。
 そして、彼はそれを知っている。だから無理に求めることはしなかった。
 いつもならば。
 ――なのに、今日はどうして?
「……怖がらないで欲しい」
 ――このお酒のせい?
 身体を引き離そうと突っ張った腕を捕まれ、逆に身動きを封じられる。
「……、い……や」
 怯えを含んだ小さな呟き。
「リルム。俺の瞳を見て」
 囁くエドガーの声も、見つめるその瞳も、触れあう肌も――何もかもが熱を帯
びているようで。
 ……恐かった。


 シーツの海に投げ出された頃には、二人とも着ていたローブはほとんどはだけ
てその意味を成していなかった。
 触れ合う肌、絡み合う視線。その全てが熱を帯び、やがてそれは身も心も侵し
ていく。
「っ、……や……めて」
 優しく丁寧で、執拗なまでの愛撫を受けながらようやく発した抵抗の声も、今
となっては嬌声でしかなく。
 そんな自分の声に羞恥の情をかき立てられ、追い詰められる。
「……リルム……」
 愛している。
 愛されている。
 言葉から、表情から、触れている全てから。エドガーの想いが伝わってくる様
で。嬉しかった。
 だけど、やっぱり恐い。
251MONOCHROME - 心の陰翳10:03/10/16 12:53 ID:FML+FtN1

 その感情に、溺れていく自分が。
 快楽という園に、堕ちていく自分が。
 ――なにより、見失うことが恐かった。

 けれどもう、止めることは出来ない。
 止められるだけの理性が残されていない。
「……ん……っ」
 リルムに見える景色は徐々に色を失い、やがて意識が白一色に支配されていく。
無駄な抵抗だとは薄々分かっていながらも、漏れ出そうになる声をかみ殺し、身
に寄せる快楽の波に必死に耐える。
 それでも、エドガーの名を呼ばないのは最後の抵抗だった。
「な……んで……?」
 そう言って、彼女の頬に流れた一筋の涙を唇で拭う。リルムの抵抗と問いかけ
に答えるようにして、エドガーは低く落ち着きのある声で愛の句を囁く。
「君を、愛している」



 これが、最初にして最後の契りとなった。


252MONOCHROME - 心の陰翳11:03/10/16 12:57 ID:FML+FtN1
 待つと言ってくれた――そんなエドガーが見せた、昨夜の情火が信じられなかった。
 なぜ?
 その問いには答えてくれなかった事も、リルムの不信感を煽る。
「……なんだよ」
 やはり分からない。
 愛されている事を証明してくれたのは嬉しかった。でも。
 心の中に広がるこの不安は何だろう?

 それが、危険を知らせる最後のシグナルだった事に気付いた時には、既に手遅
れだった。



 あの夜から一週間後、公務中にエドガーが倒れたのは突然である。
 誰も予期していないその事態を、けれど一人だけ事前に知る者がいた――エド
ガー本人である。
 私室に駆けつけたリルムを出迎えたのは、力無く横たわる彼の姿。
「……エドガー!!」
 引きちぎらんという勢いで天幕を除けて、改めて対面したエドガーの表情は、
予想に反して笑顔だった。
 ――また、その笑顔。
「ちょっと、大丈夫なの!?」
「すまない。リルム……」
253MONOCHROME - 心の陰翳12:03/10/16 13:02 ID:FML+FtN1
 謝りながら彼女の頬に触れた手に、あの夜の様な熱はなかった。
「君に無理強いするつもりはなかったんだ……でも、結果的に嘘をついてしまっ
たね。待つと約束したのに……」
 ――エドガーは覚えていてくれた。
 それだけで嬉しくて、涙が込み上げてくる。
 どうしていつも、こんな風に涙が溢れて来るんだろう?
「いいよ、もう……。アタシだって……約束したし……」
 ――それに、嬉しかったから。
「ねえ、エドガー約束して。ずっと……」
 ――これから先、ずっと傍にいて欲しい。
 一緒にいて欲しい。
 もう、拒んだりはしないから。
「だから……お願い」

 けれど、エドガーが首を縦に振る事はなかったのだ。

「守れない約束は、しないんだ」

 そう言ってまた微笑む。
 ――どうして笑うの?
 ねぇ。
 答えて……答えてよ!!
「『大切な人を失う痛み』が分かってるなら、置いていかないでよ! ずっと……ずっと一緒にいてよ……」
 この時になってようやく、初めてリルムからエドガーを求めたのだ。
 横たわるエドガーの肩を抱く。
 そんなリルムを優しく包み込んでくれる、エドガーの腕。
 やっぱり、エドガーの胸の中で――泣いた。
254MONOCHROME - 心の陰翳13:03/10/16 13:04 ID:FML+FtN1
「……だけど、リルムは今まで一度も、俺の名前を呼んでくれなかったね。それ
だけが……心残り、だよ」

 生まれ変わったらまた会おう。
 そんな風に最期まで、エドガーは彼らしい態度でリルムに接したのだった。

                    ***

「失うのは、慣れてるから」
 そう言ってセリスに向けた笑顔は、まるでエドガーの真似だった。
 ――笑っていないと、自分が壊れてしまう――そんな気がしたから。

 今は真っ黒に塗りつぶされたキャンバスに、元々描かれていたのは……。
255MONOCHROME - 心の陰翳14:03/10/16 13:13 ID:FML+FtN1

「……ロニ……」

 好きだよ。
 これからも、ずっと。

 エドガーの前では一度も口にしなかった、彼の隠し名。
 ごく一部の親族と、親しい者しか知ることのないその名前を、リルムは以前か
ら知っていた。
 10年前、皆と旅を続けていたあの頃から。
 ――エドガーは、ずっと待っていてくれたんだ――そのことに、今更になって
ようやく気付く。

「……っ」

 声が出ない。
 視界が歪み、景色の輪郭が溶け合い一つになる。
 止めどなく溢れ出す涙を拭いもせず、ただキャンバスの前に立ち尽くす。
 今は、誰も受け止めてくれる人はいなかった。
 ならば、ただひたすらに枯れるまで涙を流し続けよう。

 リルムは一人、部屋の中で声を立てずに――泣いた。
せつな杉だYO!(つД`)
257雫夜 ◆sizukTVGK. :03/10/18 04:10 ID:Dansx3aR
ワカルルうpると言ってたのに、ドリルさんのような事態が私のパソでも起こってしまいますた。
…完結まであと3行のワカルルSSと番外編、全消え i||i_| ̄|○i||i
気分転換で別話うpってみます。

>>239-240
クラエアキタ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*!!! 好  き  なんです。
ED後も人と接するのがヤパーリ苦手なクラウドに萌え。
教会内部の描写にも萌えです。射してくる光はとても暖かそう。
あの…イカナイデ、ネ…続きを是非。

>>ドリルさん
チチチチ、チギリ…(*´Д`)
エドガーがリルムの気持ちを考えてそれを待ってたという、超プラトニックぶりに萌えです。
エロくないです。とても綺麗な情事でしたよ。書いといてなんですが、『情事』より『契り』の方が何かいいかも。
そういえばドリルさんのこういうお話、読むの初めてです。
いつか書きたいと言うエロ、ものすごく楽しみにしてます。
258微熱:03/10/18 04:22 ID:Dansx3aR
一応前スレhttp://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/489の番外的続編ですが、読んでなくてもオケと思われます。
アー ← リュ 視点。

■side Rikku

 白い息を吐きながら、真っ赤に凍えた指先を擦り合わせる。むき出しのリュックの肩で解ける雪はじわりと冷たくて。
 いつもと同じように自分の隣に立つ隻眼の男を、彼女は恨めしげに見上げる。
「寒〜い。何で今更マカラーニャなワケ? ここでなくたっていいじゃん。キーリカの森とかさ〜」
 しかしアーロンは冷たく一蹴した。
「雪が降らない土地というなら、雷平原でも俺は一向に構わんがな」
 もう一度行ってみるか? と平原の方角を振り向く。即座にぶんぶんと頭を振るリュックを、彼は皮肉げに見やった。
「いっ、いいよ、ここで。移動する時間ももったいないし」
「…戦っている内に寒さなど忘れる。第一、特訓したいと言い出したのはお前の方だと思っていたが?」
 図星だった。急にバツが悪くなって唇を尖らせる。
「そうだけどっ!! でも今日はキマリと――」
 本当はユウナレスカ戦の傷が癒えたキマリと特訓しようと考えていたのだ。でも待ち合わせていた飛空艇のタラップに現れたのは、なぜかアーロンだった。
(こないだは大失敗したから、今度はおっちゃんのいないところで特訓して、次のボス戦でいいとこ見せようって思ってたのに)
 本人が来たら意味無いじゃん――頭はぐるぐると言い訳めいたことを考えているけれど、やっぱり嬉しかったのも事実で。
(デート、みたいだなぁ)
 アーロンが知ったら怒るかもしれない。
 少し前に自分の気持ちを自覚してからというもの、彼と二人きりになるのが少しだけ怖くて、だけど嬉しくてドキドキして。
259微熱:03/10/18 04:24 ID:Dansx3aR
「そんなにキマリと来たかったのか?」
「あ、ううん。キマリも用事があったんだろうし。あたしが無理に誘っただけだから、いいんだ」
 尋ねるアーロンの声が面白くなさそうに聞こえたのは、気のせいだろうか。
(まさかおっちゃんが『拗ねる』なんてこと、ないよね)
 妬いてくれてるかもしれない、なんて調子のいいことを考えた自分を、内心で笑う。
「それにしてもホントに寒いね。いつもここに来るときって、防寒対策バッチリなんだよ、あたし」
 寺院へ巡礼する人が少ない時期を狙って、アニキやダチ、そしてたまにホームに遊びに来て
いた幼馴染みのギップルと一緒に、マカラーニャでモービルに乗るのが楽しかった。
 そういえばギップルにはしばらく会っていない。アルベドだから討伐隊には参加できないだろう
が、別の道で『シン』を倒す方法を探したい――最後に遊んだとき、彼はそう言っていたけれど。
どこにいるのかなぁ、と半ばデート気分でアーロンに話しかける。
 しかし彼はいつも以上に皮肉めいた調子で、たった一言。
「どこかで生きていると良いがな」
「ちょっと、そんな絶望的な言い方ないじゃん!! ひっど〜い」
 声を上げるリュックを無表情に一瞥し、アーロンは低く告げた。
「それよりリュック、気付いているのか? 指先を見てみろ」
「指? あっ…血が出てる」
 左手の薬指の先があかぎれて、うっすら血が滲んでいる。寒さのあまり気が付かなかったらし
い。今も痛みは感じなかった。
「指先の感覚、麻痺しちゃってるよ〜。動かない」
「全くお前は世話の焼ける――見せてみろ」
 言うなり彼はリュックの左手首を掴み、そのまま指先を口に含んだ。
260微熱:03/10/18 04:34 ID:Dansx3aR
「ちょっと、おっちゃん…っ」
 とまどうリュックには構わず、アーロンは舌先で傷口に触れた。
温かくて柔らかなそれが傷口から熱を送り込んで、凍えていたリュックの身体に体温を戻していく。
 身体を屈めた彼の首筋が、リュックの目の前にあった。
いつもは襟で隠れていて、こんな位置でなければ見ることのできない首筋にはしる細かな傷痕に気付いて、ふと嬉しくなる。
(すき…)
 雷平原で自覚したアーロンへの想い。彼にとって、自分はただの足手纏いなガード見習いの一人に過ぎない。
 けれどアーロンはぎりぎりのところでいつも優しくて。
落ち着かなくて、だけど他の誰といるよりも安心できる感情――彼に出逢うまでは知らなかった。
「血は止まったぞ」
 銜えていた指先を離して、アーロンが告げた。
咄嗟に指先を右手で覆ったリュックは小さく呟く。
「う、うん。ありがと」
「どうした? 顔が赤いが…。熱でも出たのか」
 額に触れようとする彼の指先を払いのけた。今触れられたら間違いなく、自分の想いに気付かれてしまう。この
時期に自分に対してそんな感情を持たれるのは迷惑で、ガードをやめろと言われるかもしれない。
だから照れ隠しとそんな気持ちを悟られないように、リュックはぽつりと呟いた。
「アーロンの、むっつりスケベ」
「…何」
「怒った? だっておっちゃん、この前からヘンだよ」
 雷平原でのことを揶揄うように言ったつもりなのに、なぜかアーロンは押し黙ってしまう。もちろんリュックには、
その沈黙が何を告げているのかは分からなかったが。

二人のこれからを暗示しているかのような空は、やはり晴れそうにない。
(旅が終わるまで――もう少し、このままでいさせて)
 降る雪に、リュックはそう願った。

〜side R continues to End side A.〜
アーリュキタ─wwヘ√レvv~(゚∀゚)─wwヘ√レvv~─ !!
262鈴 ◆BELLSBdFOI :03/10/20 22:21 ID:rSUQFyzH
アン○ルセンの童話集を読み返してみて、童話って奥が深いなぁとしみじみ思ってみたり…

>>ドリルさん
結婚後エドリルキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!
切ない展開にも二人の何気ない会話にもその夜にも萌えでした。
親譲りのロr(ryなエドやミドルネームの話が出てきていてニヤーリとしました。次回が楽しみです。
…データ、ご愁傷様です。MOは油断してると消えるのでバックアップ必須です。

>>雫夜さん
ワカルル…(´・ω・`)ショボーンとしつつ、熱いアーリュにくらくらですた。
マカラーニャの雪が解けない事を祈ります(w
ところで、指をくわえるアーロンは天然でしょうか何でしょうかチョト悩みました。
雫夜さんも、データご愁傷様です…がんがってください。マターリ待ってます。

>>239-240
どこか寂しげなクラウドの独白が(・∀・)イイ!!
エアリスの影を追いつつも、強く生きてる彼が好きです。
また続きうpしていってください。ここはSSうpはいつでもオケですよ。

>>白さん
某所の続き読ませていただきました。
情景描写の使い方が激しく(゚д゚)ウマーでした。じ、自分もいつか頑張ろう…
ED後は達者で暮らせよ二人とも。
263沈んだ王国(ある王女の恋の話):03/10/20 22:24 ID:rSUQFyzH

 大きな月が、砂の丘を照らしていました。
砂はまるで黄金の粒のように輝き、時折、風がやさしくその表面を撫でていきました。

 一面の砂の海の中心には、若き国王が統べる砂の王国がありました。
機械文明を花開かせ、今が盛りの繁栄を見せる王国。
けれど、海よりも深いその砂の底には、もう一つ王国があったのです。
かつて魔法の力によって栄え、その力によって滅ぼされた、忘れられた都です。

 砂が都を覆い尽くしてしまってから、千年の歳月が過ぎました。
城下町だったものは時とともに風化し、砂に紛れ、今では王城だけがかろうじて砂の中でその形をたもっておりました。
その城も、ひび割れた壁には容赦なく砂が入り込み、大理石の柱は崩れ落ちて、かつての栄光は見る影もありません。
今では誰一人として訪れる者もなく、一匹の竜だけがひっそりと住まう古代の城。
生き残った人々は、世界を焼き尽くした大戦の記憶とともに、砂に沈みゆく城のことを忘れていきました。
それでも、彼らは王国落城の日にまつわる悲しい物語だけは忘れなかったのです。

 王国を守り最後まで戦い抜いた幻獣と、幻獣に恋した王女の物語。

 遙か昔、まだ幻獣と人間とが共に暮らしていた時代。
芸術を愛する国王と聡明な王妃、そして美しい王女が城に住んでおりました。
平和な世であれば、民思いの王の元で王国は芸術の都としてひときわ栄えていたでしょう。
しかし無慈悲な運命は、彼らを魔大戦という大きな時代のうねりの中に放り込んでしまいました。

264沈んだ王国(ある王女の恋の話):03/10/20 22:28 ID:rSUQFyzH

 魔大戦が始まって2年。
王国にも徐々に戦渦は広まり始めていました。
もとより王は戦の才能などからきしなく、国王直属の8つの騎士団と1つの幻獣騎士団は、
時が経つごとにひどく消耗していきます。
城は傷つき倒れた兵士たちや幻獣たちで埋まりました。
侍女を始め、王妃・王女に至るまで、女たちは甲斐甲斐しく彼らの治療にあたりました。
女たちの努力にもかかわらず、死者が城を埋めてゆきます。
どうすることも出来ずに、彼女たちは王国のために戦った勇士たちを城の中庭に葬りました。
夜ごと日ごとに多くの命が失われる中、一つだけ生まれたものがありました。
輝くばかりのブロンドの、美しい王女の恋でした。

 けれどそれは許されぬ恋でした。
王女が恋をした相手は、人間ではありませんでした。
幻獣騎士団の筆頭、高貴なる騎士オーディン。
何百年も昔から、王国を守護し続ける幻獣の一人でした。

 オーディンが三度目の出陣で深手を負って以来、王女は付きっきりで彼の手当てをしていました。
毎日毎日、その小さな手で、彼に包帯を巻いたり薬を塗ったりしていました。
そうしているうちに気付いたのです。
自分の心の奥底にある小さな萌芽に。
その想いは、誰にも明かすことのできない、王女だけの秘密でした。
王女は、彼女の宝物の一つである飾り付きの日記帳に、毎夜その秘めたる恋を綴りました。
時には涙が頬を伝って日記帳を濡らしました。
戦が終わった時に、必ずこの想いを打ち明けよう。
そう心に決めることで、王女は自らの心を慰めておりました。
265沈んだ王国(ある王女の恋の話):03/10/20 22:31 ID:rSUQFyzH

(人間は、死してその魂が転生し、新たな命を授かるもの。
 幻獣は、死してその魂を魔石に留めるもの。
 魂の行き先が違う限り、あの方とは相容れないのかしら。
 オーディン様、それでも私は……)

 戦況は悪くなる一方でした。
6つの騎士団が全滅、2つは半壊、幻獣騎士団ももはやオーディンを除いて皆魔石と化してしまいました。
城は包囲され、敵兵が雪崩れ込んでくるのをもはや防ぐことの出来る者は残ってはいませんでした。
「お待ち下さい!その傷で戦うなど無茶です!」
「しかし王女、これは王の命なのです。今我が戦わねば、王のお命も、貴女のお命も危ない」
戦いに赴こうとする彼の手を取り、引き留めようとする王女を、オーディンは優しく諫めました。
王女は長い睫毛を震わせてうなずくと、絞り出すような声で答えました。
「……どうか、お気を付けて……」

「王女様、どうか、こちらに!」
オーディンの出ていった扉の前で立ち尽くす王女に、数人の侍女が手招きしました。
「隠し部屋に……。あなた様だけでも、どうか生き残りなさいますよう」
「王女様は王国の最期の希望なのです」
侍女に手を引かれ、王女はようやく顔を上げました。
(私、だけでも……?)
王国も愛する人も全て失ってしまったら、自分に何が残るのだろう。
いっそ最期まであの方のお側にいたかった。
王女は小さく首を振りました。
それは、あの方の望みではない。
大広間では既に戦いが始まっていました。
266沈んだ王国(ある王女の恋の話):03/10/20 22:33 ID:rSUQFyzH

 足音が遠くから響いてくるのを、王女は隠し部屋でじっと身を屈めたまま聞いていました。
「きゃあっ!」
「お助け下さいっ!」
侍女たちが叫ぶ声に、王女は思わず立ち上がりました。
何かの燃えるような、ごおおという音が続いて聞こえてきました。
王女の白い頬は、血の気が引いてますます青ざめてゆきました。
「お父様……お母様……」
肩を小刻みに震わせる王女の目の前に、一人の魔導師が現れました。
オーディンを石化させたあの魔導師でした。
「最後の王位継承者……恨みはないが、お命頂戴する。最後に言い残すことはないか」
王女は背筋を伸ばし、毅然とした表情を魔導師に向けました。
せめて最後まで一国の王女に相応しい態度でありたいと思ったのです。
「一つだけ、お聞きかせください。オーディン様はどうなさいました?」
「我が秘術によってその身体は石と化し、魂は封じ込めた」
魔石ではなく、石に。
それならば、まだ望みがあるかもしれない。
王女は口元を小さく綻ばせました。
「では私も同じようにして最期を迎えとうございます」
「魂がなければお前は生まれ変わることも出来ないが」
「構いません……本望です。あの方と一緒であるのなら」
王女は、一瞬だけ魔導師が笑ったように思いました。
「よかろう。せめてもの慈悲だ」
魔導師が呪文を唱え始め、王女は静かに目を閉じました。

(ああ、私はあの方と同じ存在になれるのね。輪廻の楔を断ち切って、あの方と永久にここで眠り続けることが出来るのね)

 石となる寸前、王女は泣いているようでした。
267ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/10/21 12:15 ID:P1zMtBFb
消失したMOのデータ復旧が思うように進みません…。モーヤダ

>>256
個人的に死亡ネタは好きじゃないんですが、でも“最期の契り”ってのに萌えてみたかった
もんで…ええ、ストレスで病んでます。ゴメンナサイ....。

>>257-260
な、なんと(AA略。
なんだろう、なぜかこういうエローじゃないシーンに限りないエロス(?)を感じるんですが…。
そして、照れ隠しと悔し紛れをない交ぜにしたようなリュックの「むっつりスケベ」発言に和み(w
最後三行がもの凄く切ない…(んだけど、アーリュ視点EDを読みたい…(*´д`)。)
データ消失、本当にご愁傷様です。……しっかーし! 我が萌えは永久に不滅です!(by N嶋監督風)
とか言ってみる。(w
FFCCもワカルルも、マターリ待ってます。待たせていただきます。

>>262-266
……FF6本編中、“魔石オーディンをライディーンにパワーアップさせた石像の涙”のイベントが
(゚д゚)ウマーく補完されていて(・∀・)イイ! FF6好きな漏れにとっては、話に整合性がありながらも、
萌をふんだんに含んだその構成に萌え燃えです。
そう言えば、幻獣オーディンに恋したのは「女王」ではなく「王女」でしたか…ずっと前者だと
勘違いしてますた。(w
童話(作家失念)が実は大人向けのお話だったという話を聞いてとても興味がある今日この頃。
268MONOCHROME - 心の陰翳15:03/10/21 12:21 ID:P1zMtBFb
(前話は>>242-255です)
-------------------------------------------------------------------


 エドガーは後の世にまで知られる賢王となった。
 彼がそれだけの名を残すには、もちろん理由があった。
 人々に語られた、四つの理由。
 一つは武人としての功績。この時代の人々の誰もが知り、魔大戦から続く三闘
神の呪縛を断ち切る為に戦った――後世にまで語り継がれる伝説の『14英雄』の
一人として世界を救った事。
 二つ目は文人としての功績。軍拡の道を突き進んだ帝国の暴走を止め、フィガ
ロを守り抜いた事――巧みな外交術を駆使したその様は、まさに賢王の名に相応
しい。
 三つ目は技術者――マシーナリー――としての功績。フィガロ建国の頃より、
代々受け継がれて来た移動要塞フィガロ城の基幹となる設備の改良はもちろん、
その後の世界で飛空艇の量産に繋がる基礎理論を残した人物のうちの一人に名を
連ねている。

 けれど、それは遠い未来の話。
 今、ここに遺された彼らにとって、そんなことはどうでも良かった。


269MONOCHROME - 心の陰翳16:03/10/21 12:24 ID:P1zMtBFb
「……入るよ?」
 扉を叩いても返事がないので、彼はそう断ると部屋の扉を開いた。
「…………」
 絵の前にただ佇むリルムの姿に、言葉が出ない。
 何と声をかければ良いんだろう?
 兄貴なら、こんな時なんて言う?
 部屋を訪れたは良いが、ただいたずらに時が流れるばかりだった。
「あ……、ごめんねマッシュ」
 彼の存在に気付いてようやく振り向いたリルムは、笑っていた。
「こっちこそ、急にごめんな」
 自分に気を遣っているのだろう。と、マッシュは申し訳なく思う。本来ならば
それは彼の役目なのに。
「あはは。二人して謝ってどうするんだろうね」
 冗談めかした口調で話すリルムの笑顔には、けれど明かな疲労の色が見て取れる。
「……どうしたの?」
「え? いや、……」
 彼女の様子を目の当たりにして、ここへ来た本当の目的など口に出せなかった。
「継承問題、でしょ?」
 代わってその言葉を口にしたリルムに、戸惑いと驚きの表情を向けるマッシュ。
 その様子に、一応これでも后という立場に数年間いたんだからね! と、先程
と同じく少し戯けた口調で返す。
「そうだよな!」
「そうなのよ!」
 口にしながら互いの顔を見て、笑った。

 亡き国王の后と実弟。人が人ならここで後継者争いに発展するところだが、幸い
二人はそんな器でもないし、両者が『14英雄』であった事も手伝って周囲からの
信頼も厚い。
 かといってエドガーのような執政を行うのは無理だ。と、二人は自認している。
 そこで困ったのは大臣達だ。この国の運営をどうすれば良いのか? 国王崩御
から何度となく開かれた議事は結局まとまらず、日ばかりが過ぎていく。
270MONOCHROME - 心の陰翳17:03/10/21 12:28 ID:P1zMtBFb
「……俺、フィガロを捨てる訳にはいかない」
 兄貴がそうしたように、今度は俺がフィガロを支える番なんだ。
 だけど。
「正直言って、自信ないよ」
 照れたように笑う。
「…………」
 ――エドガーを失って、ツライのは自分だけじゃない。
 リルムは改めて、マッシュの顔を見つめた――自信がない、その言葉は国を背
負うという覚悟の裏返し――似ているようで似ていない兄弟なのだな、そんな風に思う。

「アタシも……捨てる訳にはいかないんだ」
 マッシュの覚悟を目の当たりにして、彼女も思いを決めた――真っ黒に塗りつ
ぶされたキャンバスと向き合い、決意を口にする。
「もう一度、絵を描きたい」
 自由に――思いのままに筆を走らせたい。
 いつから描かなくなってしまっただろう? ずっと机の上に放り出されたまま
の絵筆を手にしながら、口に出せぬ思いを視線に託す。
 ――好きだから。
「絵の事はよく分からないけど、そんな真っ黒のキャンバスに?」
 不思議そうに尋ねるマッシュに、リルムは昔のような屈託のない笑顔を向けてこう言った。
「このキャンバスでなきゃダメなの……ううん。このキャンバスだから描きたいの」
「そっか」
 いつか、兄が自分を送り出してくれたように。
「だけど、気が向いたらいつでも帰って来いよ?」
「ありがと」

 王亡き今。
 弟は国を、妻は自由を……選んだ。

 彼らにとってそれは短い別れ、やがて訪れる再会への誓いに過ぎなかった。
 それから更に5年の歳月を経て、三人がこの国の共同統治者として国政に携わり、
歴史上稀に見る平和な時代がやって来る事を、この時の二人は知る由もない。
271MONOCHROME - 心の陰翳18:03/10/21 12:33 ID:EiklgzZx

                    ***

 エドガーが賢王として後の世に名を馳せ、慕われた四つ目の理由――それは。
 彼が愛に生き、最期までそれを貫いた人物だからである。

 今、ここに遺された彼らがその意味を知るのは、それから間もなくの事である。


 自由を求め、秩序を重んじ、そして愛に生きたエドガーの遺志を受け継いだ新たな
命が、やがて彼女と、この国に新たな道を示す。

 平和という名のキャンバスに描き出される人々の群像――人が人であるが故に
受け継がれて行く過ちと、絆が織りなす物語。
 14英雄が一人であり、巨匠リルム・アローニィの遺した遺作――かつては
真っ黒に塗りつぶされていたそのキャンバスに描かれた絵の名。


 それが、心の陰翳。




                           ――MONOCHROME - 心の陰翳<終>――
実はこれが「オチ」。(w
--------------------------------------------------------------------

 マシアス・レネー・フィガロはコルツ山で修行を積んだモンク僧である。

「禁欲生活が長かったからな……これも修行の賜って事」

 そうして師から受け継いだ奥義・夢幻闘舞は、兄であり14英雄の一人である賢王と
双璧を成すように、武闘家マシアスの逸話として後世にまで語り継がれる事となる。

「……兄弟揃って禁欲生活が長かったんだな」

 まるで揶揄するように言葉を吐いたのは、久々にフィガロ城を訪れたロックである。
ここに至る経緯の一部始終を誰から聞いたかは知らないが、そんな風に言われては
反論しようにも術がない。

「でもさ、エドガーって戦闘中の攻撃でミスった事ないもんな」

 そう、彼にしか扱えなかった機械を使っての攻撃でミスする事はほとんどなかった。
機械の性質上、回転鋸を除いて攻撃ミスする確率は0%。

「ああ、そう言うことか!」

 ロックは思いついたとばかりに大げさに手を叩く。
 修行僧でもない、ましてや国王という地位にあったエドガーが何年にも渡る禁欲生活を
経て得たアビリティ。それが――。
 言葉の先を口にしようとしたロックに、絵筆を向けたリルムの視線は短刀よりも鋭い。

「それ以上言ったら、似顔絵描くわよ?」

 エドガー・ロニ・フィガロ。彼は愛に生き、愛を貫いた賢王である。
                                                  <終>
273小話:03/10/21 18:18 ID:snWALP4K
>>ドリルさん 乙華麗でーす!素敵なお話でした!切ないけど、それがいいカンジ。
最後のロックたちの会話…(w ナイスです!

続きうpが遅くなってすんませーん。地道にうpしてきま〜す。
274クラエア小話3-その後、教会で-:03/10/21 18:38 ID:snWALP4K
辺りは静寂を保っている。伍番街スラムのはずれにある教会だ、人など滅多に来ないのだろう。
割れたステンドグラスが陽の光で虹色の輝きを地面に映し出している。壊れたオルガンに積った
埃が、ダイヤモンドダストのようにキラキラと踊っていた。
――浄化された空間。
みしみしと軋む木の床を歩きながら、俺はエアリスの死んだ瞬間を思い出していた。
忘らるる都の水の祭壇で、静かに祈りをささげていたエアリス。突如襲い掛かる刃。セフィロスの
笑い声。地の匂い。…悪夢。
悪夢だと思いたかった。そうだ、…夢なら良かったのに。
俺は君を助ける事が出来なかった。いや、むしろキミを殺そうとすら、してしまった。なのに、それ
なのに――。君はにっこり笑って、悲鳴すらあげずに静かに目を閉じた。こんな俺に、最後まで
笑いかけてくれたんだ……。
忘れもしない、死にゆく君の姿。どんどん下がってゆく体温。流れ出る大量の血液。死んでしまっ
た君を抱いた時に感じた、氷のような君の体。硬くなって、動かなくなってしまった君…。
初めて、死を感じたんだ。怖かった。『死』が。そしてこのまま君を失う事も、たまらなく怖かった。
――花畑にたどり着く。空を見上げて大きく咲き誇ったそれは、エアリス――君の姿にそっくりだ。
でも、……君は、いない。
辺りに人の気配はない。やっぱり君は…いない。
しゃがみ込んで、花畑から一本だけ花を摘む。小さくて黄色い、愛らしい花。
『お花、どう?1ギルなの――』
出あった頃の君。そういって優しく、俺に微笑んでくれた……。
「エアリス……」
やっぱり、君はもう――…。
――その時だった。
「クラウド」
背後から声をかけられる。少し高めの、優しい声。…俺はこの声を知っている。
急いで振り向くと、そこには一人の女が立っていた。赤いリボン。魔晄の瞳。優しい笑顔――。
「クラウド!」
以前見たときと寸分たがわぬ姿で、エアリスはそこに立っていた。
275クラエア小話4-その後、教会で-:03/10/21 18:48 ID:snWALP4K
「エアリス……」
「クラウド、ひさしぶりね!」
にっこりと、彼女が笑う。俺が捜し求めていた彼女の笑顔――…。
「エアリス…」
やっぱり、ここにいたんだな、と胸中で付け加える。名前しか、呼べない。目頭が熱くなるのが分る。
「やっときてくれたのね。ずっと、あなたを待っていたの」
言いながら彼女はゆっくりと歩いてきて、俺の隣にしゃがみこんだ。花と同じ、匂いを感じる。
「お礼が言いたかったのよ。私のお願い、クラウドがちゃんと叶えてくれたから、ね」
優しく俺を見つめる。緑色の瞳が、太陽の光をきらきらと反射させている。
「――ありがとう、クラウド」
形のいい唇を両端にきゅっとあげて、彼女は柔らかく微笑んだ。つられて俺も、自然と笑みがこぼれ
る。それだけでもう、胸がいっぱいだった。
「君がいたから、俺たちはこの星を救えた。だから、別に礼なんか言われるほどの事でもない」
素直に言葉が出ない自分をもどかしく思う。でもエアリスは、そんな俺の事を全て解っているかのよう
に、再び微笑んだ。彼女が笑うたび、俺は嬉しくなった。
エアリス、君がここにいる――…。
276クラエア小話5-その後、教会で-:03/10/21 19:00 ID:snWALP4K
「エアリス、帰ろう」
微笑む彼女に、俺は言った。
「もう全部終ったんだ。帰ろう、エアリス。みんな君にあったらすごく喜ぶよ。世界を見に行こう。
俺たちが守ったこの世界を。シドのハイウィンドに乗って、さ」
そう。俺たちが守った世界。その後どうなっているのかエアリスと一緒に見てみたい。
しかし俺のそんな言葉に、エアリスは少し寂しげな微笑を返してきた。
「クラウド。すごくうれしいけど…、私はあなたと一緒に行く事は出来ないの…」
それまで弾んでいた俺の心が一気に冷える。冷たい感覚が、俺の全身を駆け巡るのを感じた。
「私は…、死んでしまったから…」
頭を鈍器で殴られたような衝撃。…彼女は死んでしまったのだ。やはり。
あの日の感覚が再び蘇る。冷たいからだ。動かない。青白い顔の、もう二度と目を覚まさない
エアリス――…。
「やはり、君はもういないのか…?」
すがるように言った俺を、彼女は一瞬きょとんと見返し、そうして再びいつものように笑った。
「私は、ここにいるわよ?」
わけが分らない、といった顔をしたのであろう俺を見て、エアリスはくすくすと苦笑した。
そして立ち上がり、しばらく教会を何か探しているかのように歩き回る。何をしているのだろう
と俺が小首をかしげてエアリスをみていると、彼女は突如俺のほうを振り向いた。そして、
思いついたように提案する。
「一緒に、世界を見てみましょう!私達が救ったこの世界を、ね!」
…俺は更に首をかしげた。
277ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/10/23 23:44 ID:/NyDm7Hc
ボールを投げて、狙った的の中心に当てるのって難しいです。投手のコントロールって
凄いですね。球が手を離れた瞬間から、ミットに収まるまでちゃんと計算された軌道を
通ってる。……野球の話ではなく、SSを通してキャラクターを描き出す時の話なんですが。


>>273-276
この先に一体どんなトリックが用意されているのか? 目の前で最期を看取っただけに、
一層の期待と不安が…。(プレーヤー・読者視点でも)
作中でも神秘的…どちらかというとミステリアスな雰囲気を漂わせていたエアリスの姿が
再現されているようで(・∀・)イイ!ですね。ちょっとアレかも知れませんが、刺殺の光景を
回想するシーンも、生々しくて彼が受けた衝撃の大きさが伝わってきます。。。・゚・(ノД`)・゚・


と、言うわけで某企画で支援として出そうと書いてみたティナSS……の、ハズが
いつの間にかケフカ視点SSになっちまったよ。という物です。またも別話でスマソ。
278愛の始まり、世界の終わり1:03/10/23 23:50 ID:/NyDm7Hc
 他の誰よりも早く、そして自信に満ち溢れた声で彼女はその問いかけに答えた。
「愛する心!」
 それこそが彼女にとって戦う理由――即ち、目の前にそびえる瓦礫の山頂に立つ
男と、完全に決別した瞬間であった。



 生まれながらにして高い魔導の力を有していた彼女は、個人としてではなく、
兵器としての存在価値を見出され、それ故に帝国からの庇護と徹底的な思想統制
を受け続けて来た。
 そこに、ティナ・ブランフォードという個性は存在し得ない。
 一見すると脆く、儚げに見えるその少女が生きる意味。それが殺戮だったのだ。
 帝国兵時代のティナはまるでそれを示すように、躊躇いなくその「作業」をこなした。
 誰にも彼女を止める事は出来なかった。
 そして、彼女自身にすら。

 ナルシェで『操りの輪』の呪縛から解放されたあの時、はじめて彼女は人としての
生を享受した。
 喜び、悲しみ、怒り――そして、迷い。
 生きるという行為に付随するそれらの感情を知ったのは、それから間もなくのこと。
「私は、愛という感情を知らない」
 手に入れた自由は、一方で彼女を苦しめた。
 それでも。いや、だからこそ――彼女は自信を持ってその言葉を口に出せたのだ。


 ティナにとってかつての仲間であったケフカの前、だからこそ。

279愛の始まり、世界の終わり2:03/10/23 23:55 ID:/NyDm7Hc
「みんな壊れてしまえ。全てはいずれ壊れ行く……」
 ケフカの言葉。狂気の中に隠された本当の叫びを、彼女は知っている。
「でも、人はまた新しいものを創り出すこともできる!」
 ――お願い、届いて。
 願いとは裏腹に、ティナの叫びは彼の心には届かない。
「それさえもいずれは滅ぶ。なぜ滅ぶと分かり切っているのに、また作る?」
 ――全部、消エルンダ。
「死ぬと分かっていて、なぜ生きようとする? 死ねば全てが無に帰すのに」
 ――何モカモ、全部。
 ケフカの心に残された僅かの理性が悲鳴を上げる――トメテクレ――。
 その心の声が聞こえた訳じゃない。けれど、それでもティナは声を張り上げ
――全身全霊をもって――答えた。
「大切なのは……」

 かつて軍事国家ガストラ帝国の栄華を支えた二人の魔導士が対峙する。
 力を得たが故に、その中で悩み苦しんだ彼らが歩んだ道は同じだった。
 けれど――
 辿り着いた場所は、それぞれ全く別だったのだ。

「大切なのは結果じゃない。今、何のために生きているのか……何を創り出す事
ができたのか……守るべきものは何なのか……」
280愛の始まり、世界の終わり3:03/10/24 00:04 ID:jSCIGqoW

                    ***

「大切なのは結果だよ」
 皇帝ガストラからの命を受け、この施設で働き始めたのはいつからだったか。
 覇気と狂気が無機質な建物を満たすそこは、魔導研究所――『魔導士ケフカ』
の生まれた場所であり、将軍セリスの育った場所――帝国のアキレス腱とも言う
べき施設だった。
 広大な施設にあって、中でも特に厳重な警戒態勢が敷かれていたこの研究棟で
は、魔導アーマーなどの強力な魔導兵器の開発と研究が行われていた。
 研究の中心人物となっていたのは、魔導研究の第一人者であり、帝国内で今や
その名を知らぬ者はいないという程の権威シド・デル・ノルテ・マルケズ博士。
 未知の物への探求心と、それを実現するだけの頭脳を持ち合わせた天才シドが
いたからこそ、魔導についてここまで解明され、その力を自由に操ることで平和が
保たれている。
 あくまでもその平和は“帝国にとって”ではあったが。
 しかし研究者シドにとって、世界情勢などどうでも良かった。とにかく目の前にある
謎を解く為に――金や権力に対する執着は全く無かったが――研究に向ける純粋な
思いは、時に恐ろしいほど貪欲な一面を覗かせる。
281小話:03/10/25 14:20 ID:W5qYl2jR
続きいかさしていただきま〜す!
282クラエア小話6-その後、教会で-:03/10/25 14:40 ID:W5qYl2jR
「それって、どういう……」
言いかけたその時。エアリスが大きくまばたきをして、いきなり俺たちの世界が一瞬暗転する。
そして明るくなった時に現れたそこは――ミッドガルだった。
「!!?」
いや、ミッドガルに来ているわけじゃない。教会全体にミッドガルが映し出されているような――…、
コスモキャニオンの天文台のような、といったところか。花畑だけは、相変わらずそこに存在している。
はじめに空から見下ろしているようなミッドガル全体が四方八方に大きく広がり、次に壱番街から順に
景色がゆっくりとスクロールされてゆく。上下感覚がなくなったような気がして、俺は少しだけ体を強張らせた。
「ずいぶんさびれてしまったのね…。人も、もういないのかしら…」
そりゃあ、そうだ。宝条を止めに最後にここに来たとき、辺りは既に大荒れしていた。ハイデッカーと
スカーレットの兵器の出現で街は激しく破壊され、ウェポンの襲来でそれは壮絶さを増した。
大体神羅が壊滅した時点で、人がここに住む理由はなくなってしまっていたのだ。
「不思議ね…。私、ミッドガル、好きじゃなかった。暗くて汚くて、空気が澱んでて…。でも、今こうや
ってミッドガルをみていると、なんだかすごく寂しい気持ちになるの…。…クラウドは?」
「俺も…、そうだな。物悲しい感じがするよ…」
魔晄の力で世界を我が物にしようとしていた神羅カンパニーの結末。愚かな人間たちの遺跡。
なにもない、たださびれた景色……。
「でも私達ここで出会ったのよね。ミッドガルのお陰で、私達こうやって知り合うことができたんだわ」
流れる景色の中で、エアリスが無邪気に笑う。俺もそうだな、と返事をした。
かつて頂点まで登りつめようとした、栄華を極めようとした機械仕掛けの都市。その中で繰り広げられ
た、さまざまな思い。戦い。人々の交わり…。それだけでもう、十分なのだろう。胸にしまうには十分
すぎる歴史だ、そう思った。
283クラエア小話7-その後、教会で-:03/10/25 14:55 ID:W5qYl2jR
それから二人でいろいろなところを見て回った。ミスリルマイン、ジュノン、コスタ・デル
・ソルにゴンガガ村。
ウータイのユフィは相変わらずマテリアハントに勤しんでいるようだ。忍者の修行も
同時並行らしい。シドはロケット村で、かつて彼と同じようにロケットの研究をしていた女、
シエラと仲良くやっているようだ。ヴィンセントはニブルヘイムにいた。神羅屋敷のあの
棺桶で、相変わらず終わらない時を過ごしている。バレットは娘のマリンと北コレルに腰
を落ち着け、ナナキは一人で旅に出ているようだった。ケット・シーは…中身の男をちら
とみかけた。
「クラウド、ティファは?彼女はどうしたの?」
ふいにエアリスが疑問の声を上げる。俺はそれにゆっくりと答えた。
「彼女は…、姿は見えなかったけれど、北コレルにいるんだ。俺とティファはもう戻るとこ
ろがなくて、それでティファはなにがしたいのかを考えつくまで、とりあえずバレットの所
で彼の北コレルの復旧計画を手伝う、みたいな事を言っていた…」
「そう…。で、あなたは何処に住んでいるの?」
「俺はまだどこかに落ち着いたわけじゃないんだ。…コスタ・デル・ソルに一応別荘は持っ
ているんだが…。とりあえず目的もなく宿を転々としていたりするよ」
もう一度、そう、と言ってエアリスが俺の顔をじっと見つめる。俺はその視線からなんとなく
目を逸らした。なんだか、全てを見透かされているような気がした。
284クラエア小話8-その後、教会で-:03/10/25 15:14 ID:W5qYl2jR
「クラウド」
名前を呼ばれて、ぎくりとする。なんだか悪い事をしでかした子供のような気分だ。
「ティファ、きっとあなたが来てくれるの待ってると思うの」
――解ってる。おそらく彼女は期待しているのだろう。俺がコレルに迎えに来ることを。
ティファ。どんなに辛いときもそばにいてくれた。いつも俺を待っていてくれた。自分の
弱さを隠して、いつも俺を受け止めてくれた、少し気弱だけど優しい彼女の笑顔。だけ
ど――…。
俺の胸の中にあるのは別の女(ひと)の笑顔だ。花のように無邪気に笑う――エアリス、
君の笑顔。どんなに忘れようとしても忘れられない、甘い呪いのようなそれ。
なあ、エアリス。君じゃダメなのか?俺は君がいい――。もうずっと前から、俺はそう
思い続けているのに…。
「私に遠慮する事ないのよ?」
「違う。そんなんじゃ、ない」
的外れな彼女の言葉に気を悪くして、少しぶっきらぼうにそう答えると、エアリスはきまり
が悪そうにスカートを忙しなくはたいた。
「…ごめん。そうだよね、クラウドが決める事だもん。でもね、別に無理やり押しつけようと
してるわけじゃないの。ただ、ティファの気持ちも解って欲しかったのよ」
その言葉に俺の心はちりちりと痛んだ。ここまでティファを気遣う彼女に腹が立った。
彼女は、実は俺を想ってくれてはいないのだろうか…。
「エアリス、俺は君が好きなんだ。……遠慮とか、そういうのではなくて。ただ、エアリスが
好きなんだ」
思わずきっぱりと言い切ってしまい、恥ずかしくなって下を向く。そのままこっそりエアリス
を盗み見ると、彼女は泣きそうなくらい嬉しそうに笑っていた。
「クラウド…。うれしい…」
そしてそのまま続ける。
「私もクラウドのこと、大好きよ。今だって、大好き。でもね、私は死んでしまったから…」
沈黙が辺りを支配する。何も言えなくてふと景色を見やると、皮肉にもそこは初めて二人で
デートをしたゴールドソーサーだった。

285クラエア小話9-その後、教会で-:03/10/25 15:32 ID:W5qYl2jR
「初めてデートした場所だね!楽しかったなぁ…。私、男の人とまともにデート
するの初めてだったんだよ!」
気を取り直したように彼女がしゃべる。初めてのデート…。死んでしまった彼女
にとって、それは同時に最後のデートでもあったんだ。もっといろいろ楽しませ
てやればよかったと、後悔で胸がいっぱいになる。
突然辺りが暗くなった。気がつくと辺り一面、星空の海だ。床にも星が瞬き、なん
だか浮遊しているような感じがする。
「素敵ね。みんな生きてる。よかった…。この星はこれからもずっと生き続けるわ
…」
遠くを見るような目でそう呟く彼女を、俺はたまらなく愛しいと思った。
と、ふいに頭にわいた疑問を彼女に投げる。
「エアリス。死んでしまったなら君はどうしてここにいるんだ?君はもう、生きてい
るわけじゃないんだろ?」
彼女は俺に向き直り答えた。
「うん、そうなんだけど、今日はトクベツ。さっきも言ったけど、どうしてもクラウドに
お礼が言いたかったから…ね」
「じゃあもう会えないのか?」
「…うん…。しばらくは、会えないかな…」
そう言って困ったように彼女が笑う。俺は正直、それからどうしたらいいのか解らな
くなって、そうなのか、と生返事をした後途方に暮れてしまった。
「クラウド、ライフストリームにいきましょ!」
言うが早いか、再び彼女の瞬きで辺りの景色があっという間に変わる。今度は
一面に淡いライトグリーンの輝き。…ライフストリームだ。
この中で、ティファは見つけてくれた。意識に埋もれていた、本当の俺を…。
念のため保守ります
287雫夜 ◆sizukTVGK. :03/10/31 23:15 ID:SQYoSWHv
スレ違いですが、DQ5のリメイクに狂喜乱舞…。
データ消えの件で温かいレスを頂き、ありがとうございました>>鈴さん、ドリルさん

>>鈴さん
いつもながら素晴らしい文章と構成力に脱帽です。
前スレで鈴さんが書かれていたライオネルの小唄系なお話で、元ネタを忘れている私でも
しんみりと読めました。
生まれ変わるよりも、その魂のまま同じ場所で永遠に一緒にいる…究極の恋愛だなと思います。
アーロンのことですが、自分の何気ない行為がどんなにリュックを煽っているかは気づいていない
と思われるので、おそらく天然かと。読み込んで下さってドモです。

>>ドリルさん
その後データ復旧はいかがですか?
そしてエドリルSS完結乙でした。マッシュって愛称だったんですね。シラナカッタ。
「回転鋸」ではない「彼にしか扱えなかった機械」って、もしかして…(*´Д`)ハァハァ
思わず深読みしましたw スマソ。
新作はこれから読みます。ティナケフカですね(・∀・)!!期待してます。
アーリュ視点ED>>私で良ければ、書かせて頂きますです。

>>282-285
ティファのことは仲間以上の好意があるけれども、あくまで恋愛感情を持っているのはエアリス
というところが萌えです。クラエアの醍醐味だなぁ。
ティファの方が長く一緒にいるのに、それでもエアリスがいいというクラウドが(・∀・)イイ!!
次はライフストリームかぁ…楽しみにしてます。
288微熱 〜いつか果たす約束〜:03/10/31 23:21 ID:SQYoSWHv
アー → リュ になるはずが…(((;゚Д゚)))ガクガクブルブル。あるキャラクターの名前を捏造してますので注意。

■side Auron 

 ブリッツスタジアムの熱気は、かつて共に旅をした男を思い出させる。
 だからザナルカンドに居た頃ですら、ティーダが出るブリッツの試合を見に行ったことはなかった。
 ルカのスタジアムに集う人の多さに閉口しつつ、アーロンは半ば睨みつけるように行き交う人々を眺めていた。
(どこをうろついているんだ、あの娘は――全く世話の焼ける)
 初めてエボンカップの準決勝まで勝ち進んだビサイド・オーラカと、前回の覇者ルカ・ゴワーズの優勝決定戦開始はもう間もなくである。
だが見に行きたいと一番喚いていたはずのリュックが、ジュースを買ってくると言ったまま未だ戻ってこない。しかたなく他の仲間たちを
先にスタジアムに入らせ、自分は彼女をロビーで待つことにした。
壁に寄りかかるようにして立つ隻眼の男を、スタジアムの係員が胡乱げに見やる。
ひたすら無視を決め込んでいたそのときだった。
「アーロン?」
 女性の細い声が彼を呼んだ。
 目だけで声がした方を見れば、やっぱり、と小さく漏らす女性がいる。亜麻色の髪のそのひとには見覚えがあった。
「…フィリア、か」
「ええ。アーロン、十年ぶりかしら。戻ってきていると、人づてに聞いてはいたけれど――」
 訝しげに問うアーロンに微笑むと、フィリアは彼の隣に並んだ。
自分より六つ年下の彼女は、今二十九歳になるはずである。しかし十年前とほとんど変わらず、彼女の身長は今もアーロンの肩にも届
かないほど小柄だ。フィリアを一生守っていこう――そう思った時期もあった。
十年前、召喚士ブラスカの旅にガードとして同行したこと――それは良くも悪くも、彼の現在(いま)を形作っている。
「…あのこと、あなたはまだ怒っているのかしら?」
「さあ、忘れたな」
「そう…。私は何度も後悔したわ。どうしてあの日、ずっとあなたを待っているって言えなかったのかしら、って」
 髪と同じ色の瞳がアーロンを見上げる。だが彼の顔からは何の感情も読み取ることができない。フィリアは哀しげに瞳を伏せた。
289雫夜 ◆sizukTVGK. :03/10/31 23:32 ID:SQYoSWHv
一文長すぎなので、この投下分から訂正します。

「父に頼んで、お見合いという形を取って強引に結婚すれば、あなたは断ることもできないし危険な
旅にだって出ないはず――そう思ったの。今思えば、子どもっぽい駆け引きだった」
「……」
「あなたが誰よりも強い意志を持っている人だってこと、分かっていたはずなのに…。必ず帰ってくる
と言ったあなたを信じられなくて、詰って…私は、馬鹿ね」
 そう言ってフィリアは、哀しみとも嘲りとも取れない曖昧な笑みを浮かべた。
肩が小さく震えているのがアーロンにも分かる。十年前ならばそんな彼女を抱き寄せることのできた
腕は、しかし今の自分にはない。もうあの頃に戻ることはできないのだ。
 だから、ごめんなさい、と小さく呟く彼女に、告げる。
「誰かとの約束を背負うには、あの頃の俺はまだ若過ぎた。だから待てないと言われたことを、今では
良かったと思っている」
 熱意だけでどうにかなると信じていたあの頃の自分。確かにそれも大切で、実はそれだけではないと
いうことを、二人の友との旅の終わりに知った。
「ありがとう…」
 フィリアがぽつりと言ったその言葉は、十年前に結べなかった約束に対してではないことを、アーロン
は気付いていた。
290微熱 〜いつか果たす約束〜:03/10/31 23:33 ID:SQYoSWHv
 ロビーまで届いていたスタジアム内部のざわめきが、一瞬静まり返る。アーロンは天井に据え付け
られたモニターへ目を向けた。場内にブリッツオフのホイッスルが鳴り響く。早々にティーダがボール
を奪い、相手ゴールに向かう様が映し出された。
 ボールを抱え水中を駆けるティーダの姿は、かつての彼の父親を思い起こさせる。
(アーロン、あいつを…ティーダを頼むな)
 それが彼の父親――ジェクトと交わした約束だった。

 モニターから目を離さないアーロンに、フィリアが訊いた。
「熱心に見ているようだけれど、あの金髪の男の子はあなたの知り合いなの?」
「ああ、十年前共に旅をした…親友の息子だ」
「やっぱり…あなたの彼を見る目が優しいもの。だから分かったわ。あの子のお父様もルカにいらっ
しゃるの?」
「いや…」
 言葉を濁した彼の様子から、触れてはいけないのだと悟ったらしい。
 心得たようにフィリアは頷く。
「そう…だからあなたが、あの子を見守っているのね。それはそのお友達との約束かしら」
「……」
 アーロンの沈黙をどう受け止めたのか。
 やはり彼女は、そう、とだけ頷いた。
291微熱 〜いつか果たす約束〜:03/11/02 02:54 ID:48umyePJ
 ママぁっ、と叫ぶ声に振り返れば、小さな男の子がこちらに向かって手を振っていた。
 もう始まってるよお、と喚く彼にフィリアも軽く手を振り返した後、アーロンに向き直る。
「息子なの。今日はあの子がどうしてもエボンカップ決勝を見たがるから、仕方なくルカ
へ来たのだけれど…あなたともう一度話ができて良かった」
「ああ、俺も」
 フィリアが微笑んだ。
「――お友達との約束が果されることを、祈っているわ」
 悲しみではない、彼女の心からの笑みに、アーロンも表情を和らげる。
「…ありがとう」
 頷くと彼女は息子の元へ駆け寄って行く。アーロンを一度振り返り、軽くお辞儀をした後、
息子に手を引かれるようにして、スタジアム内に入って行った。
 ロビーのモニターは、今日の初ゴールを決めたティーダを映している。
「約束、か…。ティーダを連れて、早くお前が待つ場所へ辿り着けると良いが…」
 ザナルカンドに現れた『シン』の、そしてひとりの父親であるジェクトの願い。
 自分が今背負っている約束の重さ、それを果すということの意味を、改めて思い知らされた。
292微熱 〜いつか果たす約束〜:03/11/02 02:55 ID:48umyePJ
 人がまばらになったロビーをおもむろに見渡し、ある一点に目を留める。
「――リュック。俺は早く戻るように言ったはずだが」
「あ、バレてた?」
 アーロンが立つ場所よりそう遠くない植え込みの影から、リュックが飛び出してきた。
「ずっとそこに居たのか?」
「あ、ううん。今戻ってきたばっか。おっちゃんに怒られるかも〜って思って、そこに隠れてたんだ。
あーっ、勝ってる!! 勝ってるよお!! オーラカってば、やるじゃんっ!!」
 モニターで得点を確認するリュックを残して、アーロンはさっさと歩き出す。
 ちょっと待ってよ、と少し遅れて付いてきた彼女が、小さく呟いた。
「おっちゃんさぁ、もっと明るく喋った方がいいよ」
「…立ち聞きか」
「ごめん。何か声掛けづらくて…でも、アーロンを置いてくのも悪い気がしたし。あ、だけど、内容
はよく聞こえなかったからっ」
「立ち聞きの、もっともらしい言い訳だな」
 皮肉を返されて、リュックが肩を落とす。
 ここで冷たく突き放せない自分に内心苦笑しつつ、言った。
「まぁいい。早くユウナたちのところへ向かうぞ。入り口からは結構歩く場所にある席だからな」
 離れるな、とばかりにリュックの腕を取った。繋いだ手から微かな体温が伝わってくる。
「あのね、あたしは…おっちゃんのこと、待てなくない…からね」
「何のことだ?」
 やはり聞いてたのか、とは言わないまでも、しらじらしく訊き返せば、もう、と焦れた声を上げる。
「あたしはアーロンを待ってるからって言ったの!! おっちゃんにどんな事情があっても、どこかへ
行っちゃってもね、あたしは待ってる…約束だからね」
 握る手に力が込められる。
「ああ…」
 できない、と言えなかったのは、惚れた弱み、という奴か。
(厄介だな…)
 分かっているのに、やはりアーロンから手を振り解くことはできなかった。
293雫夜 ◆sizukTVGK. :03/11/02 03:06 ID:48umyePJ
>>292で『微熱』終了です。下の一文入れ忘れたので、ここに書いておきます。
〜The end of a ”Slight Fever tale”〜
エキサイトの翻訳なので、かなりアレですがw

最後なので、字下げ忘れ以外で気付いた点の訂正を。
>>259の8行目
× モービルに乗るのが楽しかった。
○ モービルに乗るのが楽しみだった。

では今度こそワカルル…うpれたらいいなぁ。

294ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/03 22:01 ID:6iZswDHp
漏れも保守がてら感想書き逃げ。

>>282-285
「今日はトクベツ」、「“しばらくは”会えない」、というエアリスの言葉……ヤパーリ彼女は
ミステリアスな人だなと言う漏れのイメージは強くなる一方です。(w
エアリスの事を想うクラウドの姿と、“死んでしまった”自分が“生き続けている”かつての
仲間達の事を見守っているエアリスの姿が対照的で…そのすれ違い具合が・゚・(ノД`)・゚・
ライフストリームへと誘った彼女の真意とはいかなる物なのか?! 続きまってます。

>>287-293
断った縁談話エピソード、キタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━ !!!!
結ばれることのなかった二人が再会する。互いに大人な会話が(・∀・)イイ! 激しく(・∀・)イイ!
大好きですこういう展開(*´д`)ハァハァ
…と。それでも現在進行形の自らの思いにはまだまだ不器用なアーロンに萌え(゚д゚)
純粋すぎて、逆にその言葉がもの凄く切なく聞こえるリュックの一生懸命さに萌え(゚д゚)
是非。切望しております>アーリュ視点FF10ED話

残業中、ふとした拍子にセツダリネタが浮かんでファイルのデータ復旧作業は進まず…ソレデモカンサハヤッテクル…(;´д`)
保守。

そして小声でセツダリキボンヌと呟いてみる秋の夕暮れ。
保守マリモしつつSSキボンヌ
           、,,,;ミ;;     "''''彡' 
         、、ミ'' , ∧,,,,,∧ ,,, "ミミ
         ミ    ,,;ミ,,゚Д゚`彡     ミミ
       、ミ゙゙                 ミミ
       、ミ       ∪ ∪   ,,   ミミ
       ミ  ,,               ミミ
       ミ     ⊂       つ  ,,ノ ミミ
       ミ                 ミミ
        ミ                ミミ  
        `ミ        彡    ミミ
          彡           ミミ
            ".〃;;,,,,,,,,,   ,,,;;ヾミミ
      .      ..   ""''''''""
297鈴 ◆BELLSBdFOI :03/11/08 00:39 ID:QJjoK7hp
初投下が6月だったわけですが…随分遅くなってしまいました。今回で最終です。
色々と捏造した話ですが、所詮は二次創作、
鈴のFF10&10-2プレイ時にはこんな話があった程度に受け止めてくださると嬉しいです。

>>ドリルさん
エドリル完結乙です…と思ったら、ケフカとティナキタ??キタ??
エドガーとリルムには末永く幸せに暮らして欲しかったりもしたんですが(w、切ない別れも良いかもしれない…
大切なのはその後いかに生きるかなのですね。リルムたん、がんがれよー
お、オチに関してはあえて何も…と(w
古代城の話は、オーディン→ライディーンのイベントの涙を、どうしても悲しみの涙にしたくなかったので書いてみますた。
僭越ながら、地下探検中の王様パーティー支援材料にドゾー。

>>小話さん
そしてクラウドとエアリスの不思議な旅が始まるのですね…(*´Д`)ハァハァハァ
ライフストリームの中では一体誰に会うのかなと密かに楽しみです。
クラウドの願いは、想いは、どうなるのか。期待sageしつつ待ってます。

>>雫夜さん
元婚約者さんの優しげな雰囲気が(・∀・)イイ!です。
気を使って入ってはいかないけど、ちゃんと立ち聞きはしてるリュックもリュックらしいと言うかなんと言うか(w
「待ってる」発言はまだ大人になりきれていないリュックだからこそ言えたんだろうなとしみじみ思います。
ED編…どうなるんだろうとドキドキしながら待ってますよ。
スレ違いですが、FF5のリメイクにタップダンスしてるヤシがここにも…(ry

>>295
全文繋げて読むと短歌になってますね…(゚д゚)ウマー

>>296
某所の保守マリモのAAですか…モコモコしてて可愛いです。
メリアドールのお父さん(の中の人)の親戚ですか?いえ、名前が似てたので…(w
298Mit deinen blauem Augen (41):03/11/08 00:42 ID:QJjoK7hp
前回は>>208-210
10-2バラライとユウナの子供時代の話完結です。


 その日のうちに、ナギ平原からの使いがやってきて、スピラに九十年ぶりのナギ節が訪れたことを告げた。
「シン」を打ち破った召喚士の名前は、ブラスカ。

「……よって、我らが原罪である「シン」を祓い、我々スピラの民に、ナギ節という名の平安をもたらしし大召喚士……
 ブラスカ、に、エボンを代表しての感謝の辞を……そして、スピラに永久の栄光を」
ナギ節到来を祝う記念式典。
マイカ総老師は長々しい言葉の最後をそう締めくくって礼をした。
それまで水を打ったように静かだった民衆は、総老師の礼とともに大歓声をあげた。
総老師は、それを見てベランダの上から満足そうに手を振っていた。
寺院前の広場には、ベベル中の人々が集まっていた。そしておそらくは、ベベルの外からも多くの人が集まっているのだろう。
九十年ぶりのナギ節。ベベルは連日連夜のお祭り騒ぎ。
喜ばない方がどうかしている。ナギ節を起こしたのは四人目、
つまりこの1000年でたったの四回しかナギ節は来ていないのだから。
だけど、僕は素直にナギ節を祝うことが出来なかった。
誰もが期待しなかったナギ節。誰にも祝福されなかった召喚士。
可哀想に、大事な大事なあの子をたった独り残してあの子の父親は旅に出たのに。
半ば追い出すようにあの子の父親を旅立たせて、独りぼっちのあの子を傷つけて、
それでいてそんなことなどすっかり忘れた顔をして喜び合っている人達。
彼らを責めることが正しいことではなかったけれど、行き場のないもやもやとした気持ちが僕の中にはあった。
怒り、そして失望。叫びだしたくなるような衝動を堪えて、僕は広場を離れた。
……これ以上ここには居たくなかった。
299Mit deinen blauem Augen (42):03/11/08 00:45 ID:QJjoK7hp

 街中が、ナギ節を祝って色とりどりに飾り付けられていた。
花々で飾美しくられた街路、大小様々な建物。
通りを歩く人はまばらだったけれど、その顔には喜びが満ちあふれていた。
僕も、ユウナちゃんに出会っていなければ、同じように短いナギ節を心の底から祝い、楽しむことが出来たかもしれない。
けれど、彼女に出会ってしまった、彼女の涙を見てしまった瞬間から、何もかもが歪んで見えた。
押し殺された彼女の痛み、苦しみ、そして誰にも告げることの無かった叫び。
華々しいパレードやお祭り騒ぎの裏で消えていく小さな声。
握りしめた、小さな手のひら。
不意にもう一度だけ、彼女に会いたくなった。
もう一度だけ。もしどれだけ謝っても許してくれないのなら、どうしようもないのだろう。
僕はそれだけのことをしたのだから。
だけど、もう一度だけ会おう。
式典の準備に忙しくて、今までそのことを考える余裕すらなかったことを、僕は今さらながらに後悔した。
唇を噛みしめながら歩調を早めると、遠くに白い壁の家が見えてきた。
白い壁の家は、他のどの家よりも美しく飾り立てられていた。
そして、壁を埋め尽くす程だった落書きは、全て綺麗に洗い流されていた。
壁にこびりついた黒炭の塊のように、彼女の心に負った痛みも自分たちのしたことも、
洗い流してしまえば何も残らないと思っているんだろうか?
洗い流せると思っているんだろうか?
300Mit deinen blauem Augen (43):03/11/08 00:48 ID:QJjoK7hp

 扉の前までやって来ると、僕ははやる気持ちを抑えるために二度深呼吸をして、それから小さく扉をノックした。
返事はない。
聞こえていないんだろうか、何度扉を叩いても誰も出てくる気配がない。
「ユウナちゃん?」
名前を呼んだ。
扉を叩く手に力がこもる。
「ユウナちゃんっ、ユウナちゃん、……ユウナちゃん」
嫌な予感がして、扉を開けた。鍵は掛かっていない。
家の中は、気味が悪いくらいに暗く静かだった。
そして、誰もいなかった。

「ユウナちゃんに会いに来たのかい?」
突然声を掛けられて、僕はびっくりして振り向いた。
そこには、いつかの日にユウナちゃんを「アルベド娘」呼ばわりした中年の女の人が立っていた。
「残念だったねえ。一昨日だったか、若いロンゾがやってきてねぇ、
 ブラスカ様のガードだったアーロンさんの使いだとかでねぇ、あの子を連れていっちまったんだよ。
 あの子、もしベベルに残っていたら、きっとお祭りの主役だったろうに、ほんとに勿体ないねぇ」
止まることを知らないその一方的な語りかけは、果てはユウナちゃんがどれだけ可愛かったかや、
近所に住んでいる自分がユウナちゃんをどれだけ大切にしていたか、という話にまで及び、僕は途中から相づちを打つことをやめた。
嘘、ばっかりだ。
誰もユウナちゃんを大切にしていなかった。
アルベドの母親を持った娘だという理由で、みんな彼女のことを避けていた。
だけど、それは……
それは、僕にも言えることだ。
「本当に感心なくらい健気な子でね、毎日橋の上で父親を待っていたんだよ。いい子だよねぇ」
どこにも、彼女の本当の気持ちを理解している人はいなかった。
「どこに行ったかは、分からないんですか?」
「さあ……そこまではねぇ」
僕は小さくお辞儀をして、その場を離れた。
301Mit deinen blauem Augen (44):03/11/08 00:51 ID:QJjoK7hp

 家への帰り道で、風船をもらった。
深い海を思い起こさせる、青い色の風船。
その青にユウナちゃんの瞳を思い出して、僕の足は自然とグレートブリッジへと向かいだしていた。
波の音、柔らかに吹き抜ける風。
僕があの子と出会った場所。
「ここに、ユウナちゃんが、座ってた……」
巡回する僧兵の姿はなく、そこにいるのは僕一人だけだった。
初めて会った日のこと、ユウナちゃんと二人で色々なことを話したこと……思い出せば出すほど胸が切なくなった。
『……父さん、早く帰ってこないかなぁ……』
海のように深い彼女の目が好きだった。
僕は彼女のことが好きだった。
「……さん、父さん……」
女の子の声。
「ユウナ、ちゃ……?」
ユウナちゃんの声を聞いたような気がして振り返ったけれど、そこにいたのは近くの村からやって来たのだろう見知らぬ親子だった。
二人は手を繋いだまま、楽しそうにグレーとブリッジを渡っていく。
「ねえ、わたしルカに行きたいよ、ブリッツボールが見たいの」
「よしよし、じゃあ今度行こうな。今日はベベルにお参りの日だ」
「約束だからね」
「ああ、約束だとも」
「ぜったい、ぜったいだよー」
父親が娘を抱き上げると、娘は嬉しそうに父親の首につかまった。
幸せそうな親子だった。
ユウナちゃんも、昔はあんな風に楽しそうに笑っていたんだろう。
「あ……」
ふと我に返ると、持っていたはずの風船の糸がなくなっていた。
振り返った時に離してしまったのだろう。
僕は、空へ舞い上がる風船を見つめながら、僕の手をするりと抜けていった、あの時のユウナちゃんの手のひらを思った。
302Mit deinen blauem Augen (45):03/11/08 00:54 ID:QJjoK7hp

 ここにいる間、あの子はどんなに不安だっただろう。
どんなに寂しかっただろう。
どんなに辛かっただろう。
そして、父親の死を悟った瞬間、どんなに悲しんだだろう。
心ない周りの人間の言葉や行動は、どれだけあの子を傷つけたのだろう。
だけど、僕もあの子を傷つけた。
僕の言葉があの子を傷つけた。
あの子はもう二度と微笑みかけてくれないかもしれない。
それでも。
あの時握った小さな手のひらを守りたいという心は、紛れもなく真実だった。
あの子の笑顔を守りたい。
強くなりたい。
強くなって、いつか、「シン」の恐怖から君を守れるように。
君のすぐ側でなくていい、君が僕に気付かなくてもそれでいいから。
この世界のどこかにいる君のことを……

 青い風船は空に溶けていく。
その光景を目に焼き付けながら、僕は手のひらを固く握った。
後には波の音だけが、いつまでも、残されていた。

**********

(ユウナ、ちゃん……)
唇だけで彼女の名前を呼ぶと、バラライは固く閉じられていた両目をゆっくりと開いた。
夜の海は穏やかで、甲板に吹き込む風が心地よい。
船室に付けられた明かりは仄かに、深い藍色の海を映し出している。
アカギ隊の候補生たちを乗せた船は、ビーカネル島からルカの港へと向かっていた。
「なー、何でお前はアカギ隊に入ろうと思った?」
唐突に、隣に座っていたアルベド族の青年……ギップルが口を開いた。
アカギ隊に入隊して、同じ班に配属されて、今まで共に戦ってきた「仲間」。
彼と過ごした数日間は、バラライがこれまで抱いていたアルベド族のイメージを、大きく変えてくれた。
『アルベドだって、大切な人を守りたいって』
引き金になったのは、多少照れくさそうにギップルが言い放ったこの言葉だった。
ヒトも、アルベドも、同じなのだ。
同じように笑い、同じように泣いて、同じスピラで生きている。
そして、同じ理由のために、戦っている。
「アカギ隊に入った理由……か」
バラライはギップルの方を振り返り、悪戯っぽい微笑を浮かべながら言葉を返した。

「……そうだね、ご想像にお任せするよ」

304鈴 ◆BELLSBdFOI :03/11/08 01:08 ID:QJjoK7hp
終了です。
今まで読んでくださった方々、長々お付き合いしてくださってありがとうございました。
書きたい事は全部書ききったと思っているのですが、一つだけ補足しておきます。

…この話は、8歳バラライの視点を借りた、18歳バラライの回想です。

それでは。
ひいいいい、一番下まで落ちてる! ほ、保守!
306ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/09 09:53 ID:hJwcnDFs
本当だ…最下層にありますねー。

>>295
セツダリ好きです。でもダリルの捉え方が難しいです。ご期待に添える物でなかったらスマソですが
いつかうpらせて下せぇ…。それにしても、秋の夜長か早朝か…保守乙です。

>>296
カワ(・∀・)イイ! でも一瞬、(ぱっと見た感じ)ふん転g(略。
…な、殴られる前に逝って来ます。。。

>>297-304
Mit deinen blauem Augen…バラユウ完結乙ですた!
なんか…漏れがFF10プレイして、途中までユウナに抱いていた独善者(?)という疑念を
いい形で払底してくれる作品でした。父を待つユウナ、ユウナを見守るバラライ。ナギ節と
父の犠牲、二人の離別。小さな彼らを取り巻く大きな世界は、けれど彼らのような小さな
物語の集まりで。平和を願い、大切な人を守りたい、それは皆に共通した願いであり。
……そのうえに、FF10ではユウナが父と同じ道を歩み、再び訪れたナギ節の中でバラライは
党首へ。ストーリーレベル2で彼と対峙したばかりなので、彼の
> あの子の笑顔を守りたい。
この一文がもの凄く切なくて。「ヴェグナガン(?)を破壊しようとする者を、排除する事が」
というFF10-2本編中でユウナ一行の前に立ちはだかる彼の心中を思うと、ちぐはぐでなくて、
複雑に場面が入り組んでいるように、あたかも過去にそんなエピソードがあったように
思えるから不思議です。これも構成力の賜かと。
(´-`).。oO(実は鈴さんの作品もFF10-2プレイのキッカケになったんです。二次創作って
       色んな人の色んな見方や解釈があるから、作品がもっと面白くなります。ありがd)
長々スマソ。感想っていうかなんていうか…。また新しい作品に期待しつつsage。

ケフカとティナ話、もう少し煮詰めてから続きうpります…。(なんか納得いかんのよ)
そんなわけで、間のあいてしまった血塗られた盾話です。
307The Executor−亡失都市編30:03/11/09 10:07 ID:hJwcnDFs
前話は>>230-231です。古代城で八竜の一つと対峙、エドガー戦線離脱。
それと、「女王」→「王女」でおながいします。訂正スマソ
-------------------------------------------------------------



 最初に目に飛び込んできたのは、見覚えのある天井だった。
「……私は……」
 フィガロ城自室。
 体を横たえたままで顔を動かしながら周囲の様子を確認する。意識にかかった
霧は未だ完全に晴れていないが、それでもここが住み慣れた城である事は間違いない。
(古代城、女王の間から更に降りた先に……)
 地中深くに埋もれた千年前の都市・古代城へと赴き、そこで八竜ブルードラゴンと
遭遇した。そこまでははっきりと覚えているのだが、その後ここへ至るまでの経緯は
全く覚えていない。どうやって戦い、ここへ戻ってきたのか。そこがすっぽりと記憶から
抜け落ちていた。
(魔石……そうだ魔石だ)
 古代城に眠っていた幻獣オーディン。……それはどうしただろうか?
 そうこう考えを巡らせていた時だった。
「……お目覚めですか、エドガー様」
 声の主は、静かに扉を開き恭しく一礼した大臣である。
「会議の準備はすでに整ってございます。それでは早速……」
「何?」
 おかしい。一時的――ケフカを倒し彼の暴走を止めるまで――に『国王』としての公務は
彼らに委ねていた筈だ。
 ――そうだ、他の仲間達と落ち合わねば。
「マッシュ達は今どこに?」
「…………」
 弟の名を口にした途端、大臣の顔に怯えの色が走った。
308The Executor−亡失都市編31:03/11/09 10:12 ID:hJwcnDFs
「……エドガー様、心中お察し申し上げます。ですが……これは決定です」
 おかしい。
 大臣の言っている事と自分の認識とが全く噛み合わない。エドガーは首を傾げながら
問い返す。
「決定とは何の事だ? マッシュやセッツァー、カイエン達はどこにいる?」
 ――古代城に赴いた他の仲間達の所在を訊いているのだ。
「王、それ以上は口になさらないで下さい。法規に反します」
 怯え――それは明かな恐怖へと変わっていた。大臣の声は僅かに震えている。
一向に内容の掴めない話を続ける大臣に、エドガーの口調には僅かな苛立ちが
見える。
「法規……法規とは何を示した物で、決定とはどこが何を下したのだ?」
「エドガー様、あなたはフィガロの国王です。そのお立場を今一度、どうぞご理
解下さい」
「そんな事は分かっている! 説教をする前に私の質問に対する答えを示せ!」
 どんな事態にあっても、普段はここまで感情的になって詰る事はないのだが。
「どうか落ち着いて下さい」
 冷静に――というよりはどこまでも無機質に応じる大臣の姿に、これ以上付き
合っていられない。エドガーは無言のまま部屋を出ようと扉に手をかけた。

「エドガー様。どうか今までの出来事はお忘れ下さい。それがこの国の為であり、
王ご自身の為でもあるのです……」

 大臣の忠告を拒むようにして、扉は大きな音を立てて閉じられた。
309The Executor−亡失都市編32:03/11/09 10:18 ID:hJwcnDFs


「王、どちらへ?」
 城の出口に向かうまでに、一体何人の兵士から同じ事を問われただろう。一々
取り合っているのも面倒になり、エドガーはひたすら出口を目指して歩を進めた。
 城内にいる誰に問うても、先ほどの大臣と同じ反応をする。一人の兵士に無理
やり居場所を聞き出す事はできたものの、城の中にはいないと言う。ならば、
船へ戻る方が早いだろうと思ったのだ。
 城の門まで辿り着くと、傍のスイッチを押してそれを開ける。重々しい響きと
共に門は開かれ、目に飛び込んできたのは見慣れた黄砂の海だった。
「王、どちらへ?」
 門番を勤めていた兵士に尋ねられた時、エドガーは手短にこう告げた。
「仲間達の船へ戻る」
「船? ……船とは」
「飛空艇ファルコンに戻る」
 ファルコン、と言う名を口にした途端、兵士の表情から笑みが消えた。
「……王!? お待ち下さい王!!」
 一体何がどうしたというのだ? 大臣と言い城内の者達やこの兵士と言い、
なぜ弟や仲間達の名前を出した途端に怯えた様な態度をとるのか。
310名前が無い@ただの名無しのようだ:03/11/09 21:56 ID:qQKNBLEW
一応上げます。
同人女の馴れ合いスレウザー
確かに。
作品は良質なだけに勿体ない。
官スレの時からずっとロムってたが『恋する〜…』辺りから職人同士のやりとりがアレ臭くなってきている。
それが悪い訳ではないんだが何かここで書いた職人さんはまた別の職人さんから名無しの言葉を代弁汁良い
感想もらってたりする訳で、またここには律義な職人さんばっかだから御礼の一言も書いて行く訳で。んで
そんなキャッチボールが続いてく中、そのやりとりに入らなければならないみたいなルール(?)が職人の中
でできてしまった?みたいな印象を感じるんだよね。

まあ職人さんはコテでやってるわけだから人が不愉快になるような書き込みはできないし、漏れは通りすが
りの名無しなんで、漏れが言ってる事は気にしないで下さい。ただ漏れはそう思っただけ。
このスレはこのスレで独特のスタイルが出来てしまっているというのは分かりますが
他所の、特に年齢制限板にまでここの空気をガンガン持ち込むというのはどうかと…
確かにエロパロ板の総合スレはさほどに賑わっている場所ではないかもしれませんが
総合しかもエロというだけあって色んなトコから人が来るわけであって。

ここの皆さんがщ(゚Д゚щ)カモーンと言ってはいても
余所者お断り臭をプンプン出してることは自覚…してますよね?

その臭いがダメな俺は、ここのスレそのものをスルーするようになりましたが、
他板でもやられるとチョット、ということでまぁ一言。
314ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/10 04:30 ID:lYWy4K/3
>>312
恐らく、官能小説スレとは別の経緯でこのスレの今があるので、ここは独特なのかも
知れません。(漏れは官能スレ時代を知らないので…)
> そのやりとりに入らなければならないみたいなルール(?)が職人の中
> でできてしまった?みたいな印象を感じるんだよね。
これはどうなんだろう? 漏れは作品、レスによらず毎回感想があれば書いてる訳ですが…。
もしその行為が、他の人に感想レスを強制させる物なのであれば、一度考え直した
方がいいのかも知れない、とは思ってた。
でも、それは個人の自由の範疇だと漏れは思いたい。あくまでも、個人的にですが。

>>313
それは正直スマンカッタとしか言い様がありません。他板には他板の、そしてスレ毎に
あるローカルルール……空気を嫁。そう仰るお気持ちは。
しかし、他板SSの感想をこのスレに持ち込むのも…正直どうかと思ったので、向こうで
思ったこと、書きたいこと、を書いたんだが…。(その行為は余所の方には確かにアレな
印象を受けるのかも知れませんね。)この場を借りてお詫びします。
> 余所者お断り臭をプンプン出してることは自覚…してますよね?
それは正直、ないです。(受け取り方は人それぞれですからね)
ただ、初代の頃と違ってネタ振りより感想に偏ったレスになっているかな? という
自覚はあります。そう言う事でしょうか? だとしたら…気を付けます。
(´-`).。oO(ここが作品単位でのスレでないという性質上。ネタ振りは他スレ以上に重要かな、と思う)


異なる物と触れる事によって新たな物が生まれる。その過程が記録されていても
いいんじゃないか?
という、「掲示板はデータベースとは別物」だという概念に則って書いてる訳ですが。
312-313の様に、意見としてのレスがあることは漏れの意識にも働きかけてくれるので
自分の持った感想、思いを表明する事にデメリットは感じません(……ここが議論スレ
でない事を差し引いても)。
漏れの考えは以上です。無用なレスでしたらスマソ。
315The Executor−亡失都市編33:03/11/10 04:48 ID:lYWy4K/3
(前話は>>307-309。引き続き、目立ってませんが『血塗られた盾』のネタです)
--------------------------------------------------------------


 飛空艇ファルコン。
 セッツァーの友人・ダリルの残した遺産である。ケフカを倒すため、大地より
甦ったこの翼に仲間達は集う。城を出たエドガーは迷わず一直線にここを目指した。
 いつも通り。
「……遅くなってすまないな」
 飛空艇に戻った彼を一番最初に出迎えたのはセリスである。
「エドガー!? あなたどうして……」
「?」
 “どうして?”と、何故問われるのか理解できなかった。
「……え、エドガー?!」
 その後会う仲間達の反応にも、普段とは別の明らかな違和感を感じる。城の人
間達と同じように。
 ――一体、何がどうなっていると言うのだ?
「兄貴!」
 そこへ弟の声が届く。何故かこの時、エドガーは心の底から安堵したのだった。
「マッシュ。先に戻っていたんだな」
「…………」
「城の様子がどうもおかしい。私が目覚めるまでに何かあったのか?」
「…………」
「マッシュ?」
 やはりおかしい。
 思い詰めた様な弟の表情を見やりながら、エドガーは静かに話す。そこに意を
決して顔を上げ、低い声でマッシュは逆に問うのだった。
316The Executor−亡失都市編34:03/11/10 04:54 ID:lYWy4K/3
「兄貴、国はどうした?」
「国?」
「フィガロは……どうしたんだ」
 辛うじて聞き取れる程の小さな声は、震えていた。怯えだったのか怒りだった
のか、それは分からない。
「どういうことだ? すまない。質問の意味が分からな……」
「フィガロを置いて、どうしてここへ戻って来たかって聞いてるんだよ!!」
 沈黙。
 この時、兄には弟が何を言っているか理解できなかったのだ。
「エドガーよ、これはお前が決めた事だろう?」
 マッシュの心情を察したかのように、セッツァーは一つの書簡をもって現れた。
短く告げると、無造作にそれをエドガーめがけて放る。
 手にした書簡は国の発行した公式の文書――しかもフィガロの物である。思い
当たる節がなく、何がとそれを開き見ると、中に記されていたのは驚愕の事実だった。

「フィガロの奴らは……いや、恐らく世界中の人間が同じように思っているんだろうが。
戦う事も、それに巻き込まれることにも疲れたんだと。……俺達はある程度……いや、
十分すぎるほど力を持っている。だから攻めることが出来るんだ。だが他の奴ら――
普通の生活してる多くの奴らは違う」
 セッツァーは淡々と語る。しかしどこか憂いを含んだ声で。
 そこに含まれる憂いの意味は、ファルコンに集う誰もが知っていた。
「けれど、その力無い多くの者達が悪いと言うわけではござらん。彼らから見れば
拙者たちも――」
「ケフカと同じく疎まれる存在。そう言うことだ」

 力を持った彼らもまた、忌むべき破壊者。つまりはケフカと同罪。
「少なくとも私は」

感想レスは名無しでつけます。絶対に。

「こう」なりたくはないから。

大切なスレを護りたいから。

方法は人それぞれだと思うけど。
「大切な」スレだと思うなら書く人への文句ばっかじゃなく
ネタも一緒にふってやった方が効率的だろうと思うが‥
言葉だけの厨か煽りか?
俺のレスも含めて、作品やネタじゃなく人の動きに対してだけ
とやかく言ってる場面が多いからな2ちゃんは
それでも投稿するのは作り手の自由だからなにも言えないが


スレが「こう」なった原因の全てが書き手にあるってのは
いくら名無しでもわがままが過ぎると思うがな


て言いながらネタふれないヘタレでゴメソ
作り手の気持ちは分かるから一応。
319ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/11 00:25 ID:1o8Q3EKr

ここに何を求めに来るのか。「小説スレ」であるというこのスレに。
固定ハンドルでのレスはあくまでその“おまけ”であって、
文体や構成、元となる作品の解釈で言われるなら分かるが…
なぜ作品ではなく、その“おまけ”にここまで拘るのか。

「読まれてない」あるいは「読まれるような魅力のない文字」だった。

……これが結論か。

それでも漏れはFF6が好きで、文章を書く事が好きで。
FF6をプレイして思う事がある、それを文に託すのみ。
だから今のところ「投稿する自由」はあると思ってる。

それだけです。
320The Executor−亡失都市編35:03/11/11 00:33 ID:1o8Q3EKr
(前話は>>315-316です。そして>>316の最終行を、この一行目に訂正です。スマソ)
-------------------------------------------------------------------

 力を持った彼らもまた、忌むべき破壊者。つまりはケフカと同罪なのだと。

 違う。
 そう反論しようとしたが、声には出せなかった。
「……エドガー、今ならまだ間に合う。城へ帰れ」
 書簡の中に書かれた言葉はこうだった。

  我々フィガロ国民は、世界から争いが無くなる事を強く望んでいる。
  故に、一切の武力行使を禁じ
  また、防衛手段としての兵器使用・保持・開発を行わない事をここに誓う。

 それは紛れもなく国王・エドガー=フィガロの名において出された公式文書。
「…………」
 この文面が意味している事は、ある程度予想がつく。しかし、それが現実の物
となるならば、フィガロは。
「エドガー、もうじき飛空艇は離陸する。降りるなら今しかない」
 セッツァーの声にも反応出来ない。身体も思考も停止した機械のように機能しな
かった。エドガーの耳には、彼の言葉ではなく声だけが虚しく届いたのだった。

有刺鉄線が張り巡らされているような書き込みにくさです(しつこい)
なんというか、小説以外の事書く人がいるとななしが書き込みにくいとか
ループ何回目なんだって感じですね。
はっきり言うと、「読んで下さる」っていうコピー考えた事を現時点では激しく後悔しています。
別に小説書く事がえらいわけじゃないですが、必要以上にへり下る必要も
ないわけで。「職人」だろうが「コテハン」だろうが「ななし」だろうが所詮ただの
匿名掲示板ユーザーなわけです。立場は対等なのになんだって
ああだこうだと言われなきゃなんないのかと書く気も失せて来ました。

読みたい人は読めばいいし、書きたければ書けばいいだけの事なんですが
「コテハンの書き込みのせいで書き込みにくい」って言うのは
言い換えれば「お前らは小説だけ書いていればいい」って言ってるのと同じです。
そんなつもりはないとか、馴れ合いがウザいとか、御意見は多々あるでしょうが
私は逆に読者(っていう言い方も何ですが)からの小説以外の「要望」が
自分にあてられたものではなくても)出てくる度、正直うんざりです。

322The Executor−亡失都市編36:03/11/11 00:48 ID:1o8Q3EKr

 やがて飛空艇は小さく振動し始め、中の者達に離陸の時が近い事を告げる。
「本当に良いのか? お前は……」
 あとに何かを続けようとしたセッツァーの言葉を遮るように頭を横に振ると、
エドガーは無言のまま離陸を促した。
「そうか」
 短く言って、セッツァーは操縦桿を掴んだ。小刻みに身体に伝わってきた振動は
一瞬にして静まる。引き替えに身体に僅かの圧力がかかり、飛空艇は浮上した。
「エドガー、見納めだ」
 そう言って左に急旋回したあと、セッツァーは叫んだ。
「フィガロ城は砂の中へ沈む。……もう二度と、地上に姿を現す事は無いだろう」
 ――民達の望んだ“平和”の形。
「そうすることでしか、守れなかったんだろうな」
 ――王だけを、地上に残して。
 それは、闇に閉ざされた平和。
 眼下に広がる黄砂の海にさざ波が立つ。轟音を轟かせ流れる風と砂の中へ、
エドガーはようやく絞り出すように言葉を吐き出した。

「それでも」
 前方に見えたフィガロ城は、王の見守る目の前で静かにその姿を砂中へ沈めていく。
「それでも私は」
 飛空艇が城の上空へさしかかった時、その姿は完全に没したのだった。エドガーは
髪を束ねていたリボンの一つを紐解いて、ざわめき立つ砂の海に向かった。

「それでも私は、フィガロを愛している」

 告別の辞と共に、青いリボンは砂の海へと呑み込まれていった。


323姐 ◆ane/8MtRLQ :03/11/11 01:00 ID:LgMgT/DP
名前入れ損ねました↑>>321は私です。
私は他の方の作品にレスつけるのは苦手だし
これからもあまり書かないとは思いますが、
この話題が出て来るたびになんとなく胃が痛くなります。
書き手の中にも書き込みにくいと思っている人間もいるんです。

>>318さんの意見にあるようにネタふりとかでの要望や、
以前あったみたいな投稿のフォーマットの意見なんかは
小説書く人と読む人でお互いこのスレを良くして行ってたと思うのですが。
一応、公共?の場で投稿する以上はあまり他人を不快にする文章は
書きたくなくて(というより叩かれたくないっていうのが本音ですね)
今までこの手の話題で意見はあまり書かないようにしてましたが
書き手のせいでスレを悪くしている、という風に読めるレスが
幾度もループする状態ではもう書けません。

連載はスレッドを変えるか、いずれ何らかの方法で書きます。
長い間、お世話になりました。
324姐 ◆ane/8MtRLQ :03/11/11 01:05 ID:LgMgT/DP
喧嘩を売るような文章になってしまいましたが、
ロムのみ方でも、読んでくれた人には感謝しています。
(上記とちょっと矛盾してますが)

最後に不愉快な長文を書き込み、読んで
嫌な気分になった方、申し訳ありませんでした。
しばらくこのスレはロムに戻って、もし今後また書き込みする機会が
来てお会いできる日が来るか、もう書き込みはしないのかどうか
わかりませんがありがとうございました。

最後にドリルさん、割り込みしてごめんなさい。

325鈴 ◆BELLSBdFOI :03/11/11 03:12 ID:VsUZzgWm
どんなに美味しい料理でも、厨房で料理人の話を聞きながら食べるより、客席で静かに食べたいということでしょうか。
読み手側の気持ちも、なんとなく分かるんです。
ただ、どちら側も妥協し合うことは必要かと。

まず、前スレからの雰囲気云々に関しては、私にも責任の一端があると思います。
今まで私のレスを見て、不快に感じた方がいらっしゃったら申し訳ありません。
全スレでは確かに痛かったと自分でも反省しています。

読み手さんは、同人的な雰囲気が嫌なのであればスルーをお願いします。
「この雰囲気の中で投稿されている作品を見に来るのが嫌」なのであれば、
所詮その程度のものしか作れなかったんだと諦めます。

他のスレッドにここの雰囲気を持ちこまないという決まりは必要かと思いますが、
書き手さんは、馴れ合いウザーと言われても気にしないくらいの耐性を持った方がいいと思います。
2chで馴れ合い・全レスはほぼ例外無く痛がられたり荒されたりしますから。
そもそも万人に愛されるスレなんて無いんです。「こういうスレなんです」で済ませられないでしょうか。


…都合で年明けまで来れません。
せめて最後にネタ貼りして行こうかと思ったんですが、止めておきます。
あの話を書いたあとでこんな事になるとは思いませんでした。

>>ドリルさん
最後まで深く読みこんでくださってありがとうございます。
10-2プレイ始められましたか。少しでもきっかけになれて嬉しいです。
次回は…まだ考えていないんですが、また10になりそうですね。
ドリルさんのお話の続きが暫く読めないのは心苦しいんですが(しかもいいところで終わってるし…)
戻ってきた時を楽しみにしています。

たくさん嬉しいお言葉頂いたのに、なにも返せなくて心苦しい。
また、お会いしましょう。
326雫夜 ◆sizukTVGK. :03/11/11 20:13 ID:ppYjn/gP
間に合わなかったi||i_| ̄|○i||i…鈴さん、乙言えなくてスマソ…。でも感想貼っておきます。

>>鈴さん
乙でした。10と10-2の序章のようなお話、月並みな言葉で申し訳ないですが、本当に素晴らしいです。
過去を振り返っているんだろうな、というのは何となく感じていたのですが、アカギ隊入隊後のバリャ18歳
とは思いませんでした。しかもギポーが(・∀・)イイ!!仕事している…。アカギスフィア1のヌギバを、特に「アル
ベドだから…」と言っていたギポーをしみじみ思い出します。
また10-2のお話(ギポーとか)お願いします、とコソーリ、リクしてみる。

>>ドリルさん
『血塗られた盾』がもたらした悪夢の結果がここに…。公式文書の中身が禿げしく気になるです。あとドリルさんが書かれるエドガーといえばリルムなんですが、船にいるんですよね? 女子がセリスしか見当たらなくて(´・ω・`)ショボンヌ。
ティナケフカもいつもと違う文章構成(時系列というより、場面同士でつながっている感じ)でとても楽しみです。

実は昨日うpろうとしていた感想だったり。色々考えていて遅くなってしまいました。
327雫夜 ◆sizukTVGK. :03/11/11 21:50 ID:+1DoOHBE
今回の件(今までにも何回かありましたが)、既に色々な方が意見を書かれているようなので、
私は最小限に留めて書かせて頂きます。
私はSSを書くのが好きで、同じ位読むのも好きです。
感想は私自身もらえて嬉しいですし、読み手である自分にとっては逆に読んだよ、と伝えたい気
持ちの表れでもあります。
そのやりとりが馴れ合いに見えるとか同人的雰囲気を醸し出していて嫌だというなら、ウザーとか
わざわざレスせずにスルーして下さい。

姐さん、どこかでスニフの続き読めるのを楽しみにしていますので。
発端は>>311の煽りと、煽りをスルーしなかった>>312
騒ぎを起こしたのはこの2人なのに、なぜ職人が叩かれるんだ?

>>313
成人板の苦情があるなら成人板でやれ。
感想ならまだしも苦情をここに持ち込むなよ。
荒れてるのが成人板の空気だと思ってるとしたら、それこそ勘違い。
本当におまいは成人なのか逆に聞きたくなってくる。


他のスレで言われていたが、ここの職人さんたちはエロに頼らずプロ並み。
だから作品が叩けない。
SSスレのトリップは騙り防止でコテじゃない。
小説への感想なんだから本質的に雑談でもない。
職人さんが気の毒すぎるよ・・・。
作品を連載して感想もくれるなんて、メチャクチャいい人達じゃないか。
「馴れ合いウザ」キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
いや煽りとかじゃなくて、一種の風物詩と化しているように思えるんだが。
廃スレ利用の頃から見てるけど、季節の変わり目になるとこの話題が出てきてないか?
(煽ってる奴の文面は毎回ほぼ同じだし)

「感想レス鬱陶しい」ってロムラーは、SSだけを読めばよろし。
それ以外はスルーしる。ここは2ちゃんだ。
職人さんもいちいち煽りに反応せんでよろし。
そんな事してる暇があるんなら、俺のキボンヌに応えてくれ。ギルファリとか。
まったくそのとおり・・・

(スレを保守する必要があるし、>>310氏はまったく悪くないのは
言うまでもないけど)何故>>311のような煽りレスがついたかと言えば、
単にスレを上げたからなんだよね。
上げると目立つ、目立つと丁度いい鬱憤晴らしの場とばかりに煽られる。
それだけなので、気にする必要はないですよ。

331ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/12 22:19 ID:3ySQRbfy
短期規制は解除されただろうか…。

今回の一件では319で書いている通りの事をふと思ったもんで……
なんて言うんだろう? 多少は疲れたなって感が否めなかった訳で。
しかし、312-313は意見として受け取る価値はある物と思いレスした次第です。






ついでに。普段、2chではどんなレス見ても感情的にはならんが
>>317はよく分からないけど頭に来た。なので漏れなりに反撃してみたい思う。
その手段はもちろん、「 F F 6 ネ タ の S S で 」 だ が な。(w
332ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/12 22:32 ID:3ySQRbfy
あ、規制解除されてますた。

>>321,323-324
うんざりさせるような展開にしてる一因か、または主要因だとしたらスマソ。
基本スタンスは「書きたいヤシが書く。読みたいヤシが読む」だから、気負いする事もないと思います
(SSも感想レスも同じく)。…そうはいっても、流れがそうなっている所では、そんなことも言って
られませんよね。そのお気持ちは分かります。でも、基本はあくまで前述の通りで、だから
“いつでも終われるし、いつでも始められる。”
……個人的には、また姐さんの作品と出会える事を楽しみにしてます。

>>325
鈴さんのお陰で実は良い長編ネタができたので……相変わらずFF6ネタですが。(w
お互いの新作うpって再会できる日を楽しみにしてます。(・∀・)

漏れはFF10〜10-2にかけてのシェリンダ(ジェリンダ?)キボンヌ。伝道師(?)から
ジャーナリスト(?)へ転身した彼女の心中を、あの台詞の詳細を描いてホスィー。

>>326-327
ティナとケフカ話の場面展開は、それを意図して作ってみたので感じ取って頂けて
もの凄くウレスィーです。それにしても、場面展開が大杉な自分の文章って、忙しなく感じるこの頃。
……ワカルルマダー?(AA略。

>>328-330
需要と供給があってこそ成り立つ物だと考えます。ネタとかネタとかネタとか…。
(あとは上述の通りです。)
そして、便乗で漏れはクルルネタキボンヌ。ガラフの愛孫家っぷりとか描いてホスィー。
あと、カコ(・∀・)イイ!ガラフSSもキボンヌ。
(´-`).。oO(っていうか、いつになったらギルガメッシュとクルルが出てくるんだ……
      まだ先かなのか? FF5)


FFと、書くことが好きだから仕方ないか。ってな訳でひとつ。
333The Executor−亡失都市編37:03/11/12 22:40 ID:3ySQRbfy
(前話は>>320>>322です。)
----------------------------------


 拳に全神経を集中させ、壁に向かってその一撃を放つ。そこを中心に、空間全体に
広がっていく波紋が――それは表現しがたい神秘性を持った光景の様に――目に映る。
「マッシュ殿」
 その光景の中心に立つ男の名を呼んだのはカイエンだった。
 不意に名を呼ばれて、マッシュは振り返る。
「……その様な表情をされると、拙者も何と申して良いやら……」
 振り向いた彼の表情に笑顔はなかった。その原因はもちろん、未だ目覚めぬ兄の様子に
ある事は察するまでもない。
「兄貴は?」
「容態は安定しているとの事。ただ、まだ目覚めてはいないそうでござるが」
「そっか」
 古代城探索中に遭遇した八竜・ブルードラゴンとの戦闘には勝利したものの、突然倒れた
エドガーの治療の為、フィガロ城は地底内に留まっていた。
 セッツァーの提案により、エドガーに施したのは簡単な治療だけだった。多少時間が
かかっても、本人の自然回復を待とうと言う。
「でも何でわざわざ……?」
 今回、フィガロ城地下に眠るという古代城探索に珍しくセッツァーが同行したいと申し出た
事も含めて、マッシュは不思議に思っていた。
 大抵の場合、セッツァーは飛空艇に残っている事が多いのだが。
 
「恐らく原因は、あの“盾”でござる」
334The Executor−亡失都市編38:03/11/12 22:49 ID:3ySQRbfy
 盾――ロックから引き受けた『血塗られた盾』――エドガーはあれからずっと
装備し続けている。
「盾の呪い……兄貴の身に起きているのはそれのせいだって事か?」
 すると、カイエンの背後から別の声がマッシュの問いに答えた。
「そうだ。と言っても、本人に問題がありそうだがな」
「セッツァー殿! ……それで、原因は分かり申したか?」
 期待を込めた声でカイエンが尋ねるが、セッツァーは首を横に振る。
「いや。あの盾に関する資料はこの城の図書室にも無かった……ただ、あいつ自身が
言っていた事もあながち的はずれな見解じゃなさそうだ」
「……?」
 マッシュにはいまいち話が理解できない。
「そうでござるか……」
 すっかり取り残されたマッシュは、横で納得したように頷くカイエンに向かって尋ねる。
「どういう事なんだ?」
「拙者と同じように、エドガー殿にも“迷い”があるのでござろう」
「ってことは、兄貴もアレクソウルに!?」
 ドマ城での出来事を思い起こしてマッシュは声を上げたが、苦笑しながらそれを否定して、
カイエンは話を続けた。
「確信は持てないでござるが、恐らくこの盾の前の持ち主の思念……残留思念が、
エドガー殿の心に同調した……逆かも知れませぬが、そう言う事ではなかろうかと」
 二人の方へ歩み寄るセッツァーが付け加える様に口をはさむ。
「俺がエドガーに最低限の治療しかしてやらなかったのは、あいつ自身に時間を
与えてやるためだった訳さ。身体的な面の回復はできても精神的な面は……魔導
の力じゃムリだからな」
335小話:03/11/13 10:57 ID:A+RHWcxP
久し振りに来たらなんか…(w
自分はここあんまりこれないし、新参者で雰囲気も飲み込めてない香具師だけど(生存確認したしw)
ここはこれでいいんじゃないかな?と思ってます。
自分のSSの感想とか書いてあると勉強になるし、誉められるとうれしいし。
まあマターリいきましょうぜ(・∀・)
久し振りに続き投下します。感想くれた人は本当にありがとうです。前の話は>>239-240 >>274-275 >>282-285
…すんません早く終らせます。


「あらゆる魂の安息の場、ライフストリーム。クラウド、私ここにいるの」
ふわふわと鬼火のような青白いそれが、気泡のように上へと湧き上がってゆく。
エアリスとの距離を、やけに遠いと感じた。
「君がここにいるのなら、俺もここに行きたい」
「クラウド…」
「出来るんだろ、エアリス。俺も一緒に連れて行ってくれ」
「だめよ…。クラウド…。そんなこと、私には出来ない…」
「俺には、俺には君のいない世界なんか必要ないんだ…!」
思わず声を荒げてしまう。エアリスがびくりと肩を揺らせた。
「君がいたから、俺はこの世界を好きになれた…。君が守って欲しいと願ったから、俺はこの星を守ったんだ…!!
なのに君はいない…。君のいない世界なんか俺には必要ない…!!…必要ないんだ…!!」
そこまで一気に言い切って、俺はがくりと膝をついた。肩で息をしているのがわかる。
胸が痛い。体も重い。この世界の全ての絶望も希望も、教えてくれたのはエアリスだったんだ…。
「クラウド…。そんなことないわ。あなたはこれから、この星できっと素晴らしいたくさんのものに出会える。あなたには
それが必要よ。そして、世界中にあなたを必要とする人もたくさんいるはず。クラウドは…生きなくちゃダメだよ」
言いながらエアリスはしゃがみ込んだ俺の頭を優しく撫でた。
「じゃあ君は生きる必要がなかったってことなのか?そういうことではないだろう?違うだろ、エアリス?」
「もう…。無茶言わないの」
彼女は子供をあやすようにそう言って、俺の額をピンと弾いた。

                             
「ねえ、クラウド…。私このライフストリームの中で、ここに来た生命がまた新しい生命に生まれ変わっていく
ことのお手伝いをしていたの。それがセトラの民の、私の役割。
みんな死んでしまったけど、消えてしまったわけじゃない。新たな命の始まり…。
とても素晴らしくて、とてもきれいなんだよ」
穏やかにエアリスがささやく。
「この星の永遠の生命のサイクル…。クラウド。私だってそう。死んでしまったけれど、いなくなったわけじゃない
の。そうね、普通の人には確かに私は見えなくなってしまったけど、私はいるの。この星と共に、ね。
いずれ私も新しい生命になってまたこの世界に生きれるわ。そしたら私達、きっとまた会える――…」
けなげに微笑むエアリスに俺は胸がいっぱいになった。
とめどなく溢れる、後悔と懺悔の気持ち――……。
「すまない…!エアリス…!!」
俺の口から堰を切ったように言葉が溢れ出した。
「俺は…俺はセフィロスを止められなかった!!ただ見ているだけだった…。俺は、あんなに君の近くにいたのに…。
君に手が届く距離にいたのに…!!…今でもはっきりと覚えているんだ…。君が刺された瞬間、流れる血…。
アイツの、…セフィロスの笑い声!!…そしてその前に、君を殺そうとした、俺…」
「クラウド…」
「そもそも君が死ぬ事なんてなかったんだ。君はこんなにもこの星を愛していたのに。誰よりも優しくて、誰よりも
強かった…。死ぬのは君のほうじゃない!むしろ君を殺そうとした俺だ…!!
すまないエアリス…!君は俺をあんなに助けてくれたのに、俺は結局君を守れなかった…。本当に…」
どうしようもない罪悪感。後悔。そんな感情が俺の中をどす黒く這いずり回る。
俺は弱い。こんなことは彼女に言うべきではないと分っていた。俺には懺悔をする事など許されちゃいないんだ。
それでもこぼれてしまった自分の弱さ。…本当に情けなくて、自己嫌悪が胸を突く。
その時、ふいに背中に彼女の手がまわるのを感じた。細い細い、彼女の腕。
エアリスは、包み込むように俺を抱きしめてくれた。

「クラウド、そんなふうに自分を責めないで?私、後悔なんてしてないよ。みんなに会えて、あなたに会えて。
…私、すごく幸せだったの」
エアリスの和らいだ声が俺の体にじかに響いた。彼女の静かな心音で、俺はだんだん落ち着きを取り戻す。
エアリスが自分の胸の中にいるのがうれしくて、俺はその細い体を強く抱きしめた。
――あたたかい。冷たくて硬くない、穏やかな熱を持った彼女のあたたかい身体。それがたまらなく愛しくて、
もう二度と離したくなくて、いっそう強く抱きしめる。
耳元でエアリスの声が聞こえる。
「私ね、見つけたの。私の約束の地…。この星全てが、私の約束の地なの。ねえクラウド。星の泣き声はもう
聞こえない。空に浮く雲、草にふく風、花に降る雨…。生きてるんだよ。みんなのおかげで、星は生きてる…。
それにね、クラウド。木も鳥も、川も人間も…、みんな繋がってる。同じ円環の中で。それがすごくうれしいの。
私たち、一人じゃないわ…」
「エアリス…」
そっと、彼女を見つめる。淡い緑色の光に照らされる、女神のようなエアリス。
「あなたも一人じゃない。忘れないで。私たちは繋がっているの。一緒に行く事は出来ないけど、私の心はいつも
あなたと共にあるわ。だから…生きて。私が愛するこの世界を、クラウド、あなたにも愛してもらいたい…」
そして彼女はにっこりと笑った。あたたかい、陽だまりのようないつもの優しい笑顔で。
俺も笑った。エアリスの笑顔と言葉が、俺の胸のつかえを溶かしてくれたような気がした。
彼女の髪の毛を指で掻き揚げる。すると彼女はくすぐったそうに笑った。そんなしぐさがいっそう愛しくて、俺は
再び彼女を引き寄せて、強く強く抱きしめた。

と、ふいに彼女の身体の感覚を失ってしまい、俺はそれに驚いて自分の腕の中を見た。
すると、そこにいるエアリスの身体が少しづつ透けてきていたのだ…。彼女を通して自分の身体が見える。
「エアリス!?」
「そろそろお別れみたい…」
困ったように笑って、首を横に傾ける彼女。その笑顔さえも、今にも掻き消えてしまいそうだ。
引き止めたくてどこかを掴もうとしても掴めない。エアリスが、消えてしまう――…!!
「ちょっと…、待ってくれエアリス!!」
「クラウド…」
彼女の手が、俺の頬をつ、と撫でる。その感覚を、俺はもう感じることが出来なかった。
彼女の身体からライフストリームの輝きがあふれ出す。明るい緑色の光の中にたたずむ姿はとても神々しくて、
彼女が同じ人間だとは思えないほどに美しかった。その彼女の口が、ゆっくりと言葉をつむぎ出す。
「私のこと、忘れないで。胸の中にしまって、時々思い出して…」
何も出来ない自分に腹が立つ。焦る。このまま永遠に彼女を失ってしまいそうな気がして、怖くて怖くてどうしよう
もなかった。ただ無我夢中で彼女のどこかに触れられないかと手を動かす。
こんな時、俺はどうすればいいんだ…!?
そんな俺も思いも空しく、彼女の身体はいっそう光を増し、そして――消えた。
彼女が立っていたところで光が弾け飛び、そして彼女はいなくなってしまったのだ。
(さよなら、クラウド…)
どこからなのだろう、エアリスのその声が俺の耳に届いた。
小さな光が辺りを飛び交い、やがてそれも上へと昇って消えてゆく。
もう本当に、彼女はどこにもいない――……。
いなくなった彼女の喪失感にただただ呆然と立ち尽くしていると、突然辺りが暗くなり、俺は一人闇の中に放り出された。
身体がぐるぐると回り、どこかに落ちていくような落下感を覚える。
一体どこにいくのだろう?でも、そんなことは今の俺にはどうでも良かった。
「エアリス…!!」
ただそれだけを、俺は叫び続けていた。
気がつくと、俺は教会の花畑に倒れこんでいた。降り注ぐ日の光がまぶしくて、思わず片手で顔を覆う。
上半身だけ起こして辺りを見回す。…誰もいない。最初に来た時と、なんら変わりない寂れた教会。
――夢、だったのか……?
立ち上がろうとして、ふと自分が何かを握っている事に気づく。強張った左手をおそるおそる開いてみると
――…。そこには、赤いリボンと白マテリアがあった。
「エアリス…」
それにぽたぽたと涙が落ちる。俺が、泣いている――…。
再び花畑に倒れこんで、両腕を瞼の上で交差させて、リボンとマテリアを握り締めたまま俺は泣いた。
抱きしめた彼女のぬくもりを思い出し、それが更に俺の涙腺を緩める。
“――私のこと、忘れないで。胸にしまって、時々思い出して――”
脳裏に思い出されるエアリスの言葉。彼女から俺への、最後の願い――…。
エアリス。俺は君を忘れない。絶対に。だけどもう二度と、君の影を追わない。
涙はしばらく止まりそうにない。でもそれでいい。今はここで、泣きたいだけ泣いてしまえばいいんだ、そう思った。
穏やかな日差し。寂れた教会にひっそりと咲く花。エアリスの笑顔…。
「…さよなら…。エアリス…」
震える声で、かみ締めながらそうつぶやく。そして胸中に思う。
――また、会おう。

そう、俺たちは繋がっているのだから。





おしまい。
341ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/14 00:35 ID:Ba2PGfNy
>>336-340
クラエア小話完結乙ですた!
実はもう少し、仕掛けがあるのかと思っていたのですが、逆に凄くまとまりが良くなって
いて(・∀・)イイ!
悔やんでも、謝ってもどうしようもないと分かっていながら口にせずにはいられない、
消えゆく彼女の姿を必死で留めようと足掻く、そんな人の弱さ。そしてそれだけ大切な
人を目の前で失ったというクラウドの喪失感・失望感の描写が……残酷なほど(゚д゚)ウマー、
それでいて最後のまとめ方をみて、やられたなーって感じです。次作にも期待。


それと一応、誤解の無いように明記しておきますが、331の下三行は7割ぐらい比喩です。
文面通りに受け取って、不快な思いをされた方いたらスマソ。
342The Executor−亡失都市編39:03/11/14 00:41 ID:Ba2PGfNy
(前話は>>333-334。現在位置は現実世界のフィガロ城)
------------------------------------------------

 ――眠り続ける兄貴は、どんな悪夢を見ているのだろう?
 “悪夢”? そうじゃないよな。
 これは……現実なんだ。みんな、現実の中で……生きてるんだ。

 兄貴は、俺の代わりに何もかもを背負って――。

「…………」
 居たたまれない表情になるマッシュの心情を察して、カイエンが優しく声をかける。
「マッシュ殿、こればかりは自身の手で乗り越えなければならない事でござる」
「俺、結局支えになってやれなかったんだな……」
「……マッシュ殿」
 国を背負う事を決めた兄を自分が支えよう、そんな純粋なマッシュの思いを
仲間の誰もが知っていた。だから、落胆する彼の気持ちは痛いほど伝わってくる。
殊更、同じように国王を支えようと懸命だったカイエンには。
 肩を落とすマッシュの背を叩き、セッツァーはわざとらしく笑ってみせた。
「お前らホントに似たもの同士だな。エドガーも多分そんな風に思ってたんだろうよ」
 ――フィガロの国と、お前と。守りたい物だらけだったんじゃねぇか?
「セッツァー……」
 さらにセッツァーは皮肉めいた口調で続ける。
「唯一似てないとするなら、お前より兄の方が相当欲張りって事ぐらいだろうな。
だから無様な格好をさらすハメになるんだって」
「…………」
「あいつはフィガロを重荷だと思ってる訳じゃない。イカサマコインなんか使って演出する
ぐらいだ、俺に似て相当の格好つけ野郎だ」
 そんな事をさらりと言い捨てるあたり、さすがセッツァーである。
「しかも相当の女好きってとこまで俺にそっくり……いや、それは置いても気配りのできる男だ」
343The Executor−亡失都市編40:03/11/14 00:48 ID:Ba2PGfNy
 それが自分との一番の違いだと、セッツァーは一笑した。
「この間セリスに耳打ちしてた事も、よくよく聞いたら大した記憶力と観察力だよな」
 どうやら先日の飛空艇での一件を言っているらしい。
「お前、リルムと初めて会った時のこと覚えてるか?」
「初めて……サマサの村?」
「そう。なんて言ったか覚えてるか?」
「え? 俺何か……」
「『子どもは足手まといになるからな』だとよ」
 幻獣を追い、三闘神の像とそこに刻まれた『警告』に従い、暴走した幻獣達を
止めるべく立ち上がった青魔導士ストラゴス。彼について来ようとしたリルムへ
向けて、マッシュが放った言葉だった。
「……もちろん俺も覚えちゃいねえが、そう言っていたらしいぜ。大体あの時は
帝国側の罠にはめられるところを命からがら脱出してきたばっかりだってのによ。
……まったく、大した余裕だぜ」
「しかしセッツァー殿、それはリルム殿の身を案じて出た言葉……」
 カイエンの言葉に頷きながら、先を続ける。
「もちろんエドガーはそれを知ってたさ。その上、リルムがその事を密かに気に
かけていた事も察していたんだろうな。だからあの日、迎えをセリスに頼んだんだろうよ」
 言いながら溜息を吐くと、セッツァーは二人に背を向けて歩き出した。
「セッツァー?」
 扉を開け部屋を出ようとする彼を呼び止めたのはマッシュだった。
「……かといって、今の俺達には余裕がない。戻るぞ」
 そう言って、不適に微笑んでみせる。
「セッツァー殿!」
 カイエンの制止を無視し、今度こそセッツァーは部屋を後にした。
344The Executor−亡失都市編41:03/11/14 23:19 ID:MNfdQ6oy



 最初に目に飛び込んできたのは、見覚えのある天井だった。
「……私は……」
 フィガロ城自室。
 体を横たえたままで顔を動かしながら周囲の様子を確認する。意識にかかった
霧は未だ晴れていないが、それでもここが住み慣れた城である事は間違いない。
(フィガロ城……なぜ……?)
 自分はあの時、飛空艇から砂に沈みゆくフィガロの城を見たはず……それなのに
なぜ、今フィガロ城に自分がいるのだろうか?
「……兄貴! 具合どうだ?」
 すぐ横にマッシュの姿があった。目覚めた兄を心から嬉しそうにのぞき込んでいる。
「……マッシュ? ここは、フィガロなのか……?」
「え? フィガロ城の兄貴の部屋さ」
 マッシュは目を覚ました兄に、これまでの経緯を話して聞かせた。八竜との戦
闘中に倒れたエドガーを城まで連れ帰って治療をしたが、今まで昏睡状態だった事。
持ち帰った魔石ライディーンを見せながら、石化した王女と、その涙のもたらした出来事も。
「……そうか、夢だったのか……」
 弟の話を聞きながら、エドガーは心から安堵したように言葉を漏らした。
「何か、悪い夢でも見てたのか?」
「……ああ、そんなところだ」
 そう言ってベッドから起きあがると、早速エドガーは部屋を出ようとする。
「色々心配させてしまって済まないな。……これ以上、皆を待たせる訳にはいかない。戻ろうか」
 ……と、言って扉を開けようとするが開かない。
「?」
「……セッツァーの言った通りだな」
 兄の体調が回復するのを待つ間に、セッツァーは飛空艇に戻ろうとしていた事
を告げると、エドガーは苦笑する。
「成る程。それにしてもセッツァーのやつ、随分気の利くことをするんだな」
「だろ?」
 二人は顔を見合わせながら笑った。
345The Executor−亡失都市編42:03/11/14 23:31 ID:MNfdQ6oy


 同じ頃。地下の機関室にいたのは当のセッツァーとカイエンだった。
「……それにしてもセッツァー殿の推察力には感服いたすでござる」
「そう言うタイプには見えないって事か?」
 心から感心するカイエンに対して、まるでおちょくる様にセッツァーが問う。
「い、いや決して……」
 すると、あまりにも質問者の期待通りに困った表情をされたので、それが可笑しくて
堪らない。込み上げる笑いを抑えきれないと言った顔を向けながら、セッツァーは口を開く。
「まぁ俺自身、今回は自分でも気持ち悪いぐらいだけどな」
 そう言って一笑すると、一転して真面目な表情をカイエンに向けた。

「……実はな、カードなんだよ」

「カード……でござるか?」
 突然なにを言い出すかと思えば、カードとは。
 半ば拍子抜けしたようにカイエンは言葉を繰り返した。
「そう。クラブのKが出たんだ。それでな」
「クラブのK……とは何でござるか?」
 カードの知識など一切ないカイエンは、興味津々と言った表情を向けていた。
「占い……って訳じゃないんだけどな。言うなればギャンブラーの勘、ってヤツかもな」
 自分でも何を訳の分からない事を口にしているのかと思う。けれど、今回の事は
確かにカードが教えてくれた、そんな気がしてならないのだ。
 『クラブのK』――大地、そしてその王者――セッツァーにとっては賭博の道具でしかなかった
カードが、それぞれに持つ意味を教えてくれたのは、今は亡き旧友だったことを思い出していた。
346The Executor−亡失都市編43:03/11/14 23:35 ID:MNfdQ6oy

「そろそろ到着しますよ」
 機関士が二人に告げる。
 やがて城全体に僅かな振動が伝わり、城が浮上し始めた事を中にいる全員に知らせた。
「帰ってきたぜ」
「長らく陽の光を見ていない気がするでござるな」
 そう言った二人の表情は、自然と綻んでいた。


 フィガロ城が浮上する。
 広大な青空と黄砂の海、そして灼熱の太陽が輝く大地――中俣血の元――への帰還。

 ――あの悪夢は、現実ではない。


 しかし。
 彼らが旅路の果てに見るものは、光か、闇への入り口か。
 この盾と共に歩む道の、終着点はまだ見えない。

      ――The Executorー亡失都市編<終>――
347The Executor−亡失都市編43[訂正]:03/11/14 23:43 ID:MNfdQ6oy
 フィガロ城が浮上する。
 広大な青空と黄砂の海、そして灼熱の太陽が輝く大地――中俣血の元――への帰還。

              ↓

 フィガロ城が浮上する。
 広大な青空と黄砂の海、そして灼熱の太陽が輝く大地――仲間達の待つ場所――への帰還。
348ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/16 00:43 ID:QvutGFTK
禍転じて福……2ch風に言えば煽りを転じてネタと成す。という精神で臨んでます。
一応それだけはお伝えしておこうかと思いまして。



そんなわけでセツダリです。キボンヌして下さった方がいたので、一応需要は皆無じゃない
かな? と思い投下してみる次第です。

実生活と、いつ再開されるか分からない規制との都合上、うpれる時にうpしとるので
FF6ネタの連投っぽい状態になって申し訳ありません。でも6ネタです。(w
349蒼穹の彼方へ(仮)1:03/11/16 00:46 ID:QvutGFTK
『今、考えていることの逆が正解。――だけど、それは大きなミステイク。
 ……って言っても、バカなアンタに分かるしらねえ?』

 口癖のようにヤツはいつもそう言いながら、決してその意味を語ろうとは
しなかった。
 年月が過ぎ、俺がようやくその意味に気付いた時。
 そいつはもう、地上にはいなかった。

「大きなミステイク。か」

 今俺が考えている事の逆が正解で、それには大きな過誤が伴っている。
 ――悔しいが、お前の言ったとおりになっちまったな。

「ダリル……」

 そう吐き捨てて見上げれば、眩しいほどに輝く青空が広がっていた。
 彼女のいなくなった地上とは反対に、空は、まるであの頃と同じ様に――風の
覇者となった――銀髪の青年を見下ろしていた。
350蒼穹の彼方へ(仮)2:03/11/16 01:01 ID:QvutGFTK
                    ***

 貴族街ジドール――と、言ってもこの街の全員が貴族という訳じゃない――の
路地裏にある安酒場は、その日も賑わいを見せていた。
 華やかな表通りとは一線を画し、文字通り街の裏の顔を覗かせる小汚い路地の
一角に、その店はあった。
 賭博と酒を覚えた俺がこの街を訪れ、この路地裏の酒場に入り浸るようになって
から、さほど経っていない頃だった。
「ここはガキが来る場所じゃないよ。さっさとお家に帰んな」
 カウンターで一人飲んでいた俺に、初対面にもかかわらず女は開口一番そんな
暴言を浴びせる。
 ――しゃくに障る女だと思った。
「……ガキ? 襲われてぇのかこの女」
 あの当時は俺も血気盛んな年頃で、売られたケンカは残らず買って歩いてたも
んだ――お陰で、今でも体中にその名残が残っているが――不機嫌を隠しもせず、
ストレートに言葉と態度に現していた。
 真っ向からぶつかる視線、お互いに退く気は全くない。
 見知らぬ客同士が起こすいざこざ。だがそんなのは、この酒場では日常茶飯事
の出来事で、店にいた他の客達は慣れた物だと気に留める様子もなかった。
「ふん。押し倒せるモンならそうしてみなよ。到底、アンタじゃ相手にならない
だろうけどね」
 そう言って女は笑った。
 ――まるでその瞳は、俺を見下ろすように。
 後から考えればこの時、現にそいつは見下していたんだろうと思うが、その時の
俺が知る由もなく。敵意――というよりは不快感を――露わに、女を睨み付けた。
351雫夜 ◆sizukTVGK. :03/11/17 21:51 ID:jWskGbjA
小話さんもドリルさんも完結乙でした。
スイマセンマダヨンデマセン_| ̄|○
感想は後日に。
セツダリ一人称に萌えですよ>>ドリルさん

千一夜サイトで食事風景を描写したSSを読んで、漏れもこういうの書きてー!!と
思うままに書いたSSをうpります。
勢いで書いたモノです。料理など捏造あり。ただひたすら食事風景を書きたかったので。


 クイナ=クウェンにとって、『食べる』ことは生きがいであることと同時に、『おいしいものを食べる』という、
人生における目標でもある。
 ジタンたちの旅に同行している理由のひとつがそれだ。
 だから食べるときは常に真剣だった。いつも、何を食べるのでも、誰がいても。
「クイナ、お肉の味はどうかしら?」
 ダガーに尋ねられ、クイナはク族特有の長い舌で綺麗に平らげた皿を舐め取る仕草をする。
「美味しかったアルよ。聞いていた噂以上の味アルね〜」
 今夜、一行はダガーの招きでアレクサンドリア城を訪れていた。
ブルメシア王室付きだったシェフが、自国の崩壊後から世話になっているアレクサンドリアのために久々
に腕を振るうと連絡を受けたためだ。
 メインはブルメシア名物の『鴨の香味焼き』。ブルメシア産の鴨を十種類の香味野菜で味付けし、三時間
かけて焼き上げる鴨肉料理である。世界でもこの料理を作ることのできる料理人は数人しかおらず、ブルメ
シアも滅ぼされた今、食べられる機会は以前よりも減った。それほどに珍しい料理なのだ。
(でも今夜の料理以上に美味しいものを、ワタシは食べたことがあるような気がする)
 それが何なのかがもう少しで気付けそうなのに、と今のクイナはもどかしい気持ちだった。

宿屋に泊まるのと同じくらい野宿を重ねている彼らは、焚き火を囲んで騒ぎながら食事を摂ることも多い。
だが今夜は城でナイフやフォークを使う食事である。慣れないマナーに緊張しているのか、彼らの口数はい
つもより少なかった。
 そんな中、難なくそれらを使いこなし優雅に鴨肉を口へ運んでいたのは、やはりブルメシア出身のフライヤである。
「以前城下で食したときと味に何ら変わらぬ。ブルメシアの心は今もまだ生きておるのじゃな」
 隣に座るジタンが、さすがブルメシアのシェフだよなぁ、と頷く。
 今夜の彼はかろうじてテーブルに足を乗せてはいないものの、しかしよろしいとはいえない作法で
肉を喰いちぎっていた。
「そういや前にリンドブルムの飲み屋でこれを出されたことがあったけど、それがとんでもない食材を
使っててさ――っておいちょっと待てエーコ!! それはオレの皿だぜ。今持っていった肉を返せよ」
「あーら、何のことかしら? エーコは自分のお皿から取ったのよ」
 何故かエーコは口元を空いた皿で隠している。一瞬だが何かを飲み込むような音も聞こえた。
「嘘だ。オレの皿からだったぞ。見たんだからな!!」
 いつになくジタンの表情が真剣なのは、モノが『鴨の香味焼き』だからだろうか。静かだった食卓が、
にわかにざわめき始めた。
 しかしエーコは悪びれもせず、しゃあしゃあと言ってのける。
「ひどいわジタン!! エーコのように純情可憐なレディが、人の食べ物をぶんどる、なんて浅ましい
こと、するはずないじゃない!!」
「でもエーコしか考えられないんだ。見ろ。お前の方にオレの皿が少し動いてる」
「違うって言ってるでしょう!? ほらビビも何とか言いなさいよ。あんたが正直に言わないから、エーコ
が怒られるんじゃないの。あのねジタン…本当に食べたのはビビよ」
「ええっ!? ボク?」
 自分の取り分である鴨肉をやっと食べ終えたビビが、突然呼ばれた自分の名前に顔を上げる。
「そうよ。エーコはちゃぁんと見てたんだから。ほら早くジタンに謝っちゃいなさい」
「本当か? ビビ」
 二人の刺すような視線にたじろいで、ビビは俯く。頭のとんがり帽子が目元までずり落ちた。
「ボ、ボク…気付かないで食べちゃったのかな。ごめんね、ジタン」
「あれはオレが最後に味わって食べようと思って残しておいた鴨肉だったんだ…それなのに、それなの
に…っ」
「ごめんなさいっ」
 怒りの矛先がビビに移ったのを確認して、エーコはそ知らぬ顔でデザートを食べ始めた。
彼女がニンマリとした笑みを浮かべていた理由が、木苺のアイスのおいしさだけではない
ことを、誰も指摘しない。
「ジタン、見苦しいぞ。食べ物ごときで仲間を責めるとは」
 打ちひしがれているジタンに、心底申し訳なさそうな顔をするビビに目配せして、スタイナー
が口を開いた。ビビと彼とは魔法剣で組んでいる仲だ。相方の窮地に黙ってはいられなかっ
たのだろう。だが、ジタンには見向きもされなかった。
「オッサンは黙っててくれよ。これはオレとビビとの問題なんだ」
「むむっ!! 年若い彼らに詰め寄ることが問題解決になるとは言えないのである!!」
 ついには騎士道精神に火を点けられたスタイナーも加わり、『ジタンの鴨肉はどこへ消え
た?』事件は解決から大きく外れた方向へ、一層の盛り上がりを見せはじめた。

「…今宵は静かな晩餐を楽しめると思っておったのに」
 騒ぎ立てる彼らを見やりながら、これではいつもと変わらぬな、とフライヤがため息を吐く。
「え、と…わたしは少しくらいうるさい方がいい、かな」
 フライヤの視線を気にしつつ、ダガーが言った。
「わたしね、『食事中は喋らない』のがマナーだって教えられてきたから、お母様ともお食事
中にお話したことはなかったの。どんなにおいしいお料理を頂いても、その感想すら口にし
てはいけなくて――でも旅を続けていくうちに、みんなと一緒に騒ぎながら食べるのが、ど
んなお料理よりも一番おいしいって分かったのよ」
「いちばんおいしいものが、『みんなと食べること』アルか? 食べ物じゃないアルか?」
 熱心に問うクイナに、しかしダガーはいたずらっぽく笑うだけだ。
「それをわたしに訊いてはだめよ。 だってクイナはその答えを見つけるために、わたした
ちと旅をしているんでしょう?」
「そうアルが…」
 自分が今日の料理を『今まででいちばんおいしい』と思えなかった理由も、これに関係
しているのではないだろうか。物ではない食べ物? 世界でいちばんおいしいものが、物
ではないなんて――。
 肩を落とすクイナを、フライヤがカラカラと笑う。
「全く…おぬしには敵わぬな」
355雫夜 ◆sizukTVGK. :03/11/17 22:27 ID:jWskGbjA
ひとつ気付いてしまったので訂正。

《1》
× 以前城下で食したときと味 に 何ら変わらぬ。
○ 以前城下で食したときと味 は 何ら変わらぬ。

駄文ですが、あと1レス続きます…。
FF9小説、キターーーーー
自分料理は全然素人なんだが、鴨を3時間も焼いたらカチカチになってしまいそうですが
どーなんでしょう。
もしかして蒸し焼きか?トロ火でじっくり火を通すのか?
でも、皮がぱりっとしていないと美味しくなさそうだし…。なーんて、難しい調理法だからこそ
世界で数人しかできないわけですなw
それと、食事風景描写だけじゃなくて、ちょっとは味付け(料理そのものを味わう官能描写)があると
自分的にはより「美味しい」かな。わがままな要求でスンマソ。
359ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/20 10:47 ID:q4SGs1Eh
下拵えに時間がかかる物が大多数なんだろうなぁ…。
ついでに北京ダックは見てるだけで手が疲れそうだし、塩竃焼きはそれを作って満足
してそう……。すると、やっぱり食べる方がいいや。と、結論が出ますた。(w

>>352-354
某ジェノムや某国王がそのタイトルの主人公なら、恐らく口説き文句に転用されていた
であろうと考えつつ、食事風景がもの凄い(・∀・)イイ!
エーコの罠に引っかかって巻き添えを食らったビビとジタンの遣り取りと、そこに油を
注ぐスタイナーや、冷ややかな視線を浴びせつつ共に過ごすフライヤ姐さんステキ過ぎ。(w
そんなどたばた劇もさることながら…。
「食べる」という行為を分かつというのは、相手への信頼や親しさの現れだと聞いた
事がありますが、そう考えてこの話を読むと、彼らの絆っていうのが裏のテーマかな?
などとも読めたり。
キャラクター各々の個性の描き方がヤパーリ上手いと思います。……フライヤタン(*´д`)

そうか、三大欲求の一つを成す「食」も官能になr……(略。
360蒼穹の彼方へ(仮)3:03/11/20 10:53 ID:q4SGs1Eh
(前話は>>349-350。セツダリの出会い〜別れを描きたい…つもり)
----------------------------------------------------
「なんなら、試してみるかい?」
 今度こそ女は俺を見下ろして――しかし全く色気も感じない誘い方に――思わ
ず冷笑を返す。
「ガキ一人もその気にさせられない様な魅力のない女と、何を試せ、だと?」
 俺の言葉を聞いて、女は愉快だと言わんばかりに腹を抱えて笑った。
「なかなか笑わせてくれるじゃない! あのねぇ、男が女を抱くのは色気がある
からじゃないんだよ。……そうだね」
 一度そこで言葉を切って、女は何かを考えていたようだった。
 カウンターに置かれた俺のグラスを取ると、さも当たり前のようにそれを口に
して中の酒を一気に飲み干した。その後勢い良くグラスを置くと、口元に笑み
を浮かべながら訊いた。
「アンタここにいるって事は博徒かい?」
「……世間ではそう言われるらしいが」
 別に、やることがないからやってるだけだ。そんな風に心の中で呟いていたが、
それがこの女に聞こえている筈はなかった。
 それでも、女は不適に笑っていた。

「じゃあ、私とサシで勝負して――勝ったら教えてやるよ。さっきの言葉の意味」

 ――こういう物言いは嫌いじゃない。
 もちろん、二つ返事で俺はその申し出を受けて立った。
361蒼穹の彼方へ(仮)4:03/11/20 10:57 ID:q4SGs1Eh

「で、俺の掛け金は?」
「金なんか要らないね」
 女はきっぱりと言い捨てる。
「じゃあ、俺は何を賭ける?」
 その問いに、女は薄く笑った後でこういった。
「そんな物、決まってるだろ? ……命さ」
「……また随分と高いチップだな」
 この女、面白くてたまらない。何を考えているのか――今まで見てきた人間達
にはないコイツの思考に触れる事がたまらなく新鮮だと感じた――もっと先を知りたい。
そう思うと、俺の顔にも自然と笑みが浮かんだ。
 すると、隣で俺達の遣り取りの一部始終を聞いていたらしい客が忠告するように小声で告げる。
「兄ちゃん、悪いことは言わねえ。やめておきな」
「別にこの女が欲しいって訳じゃないが、負ける気はないぜ?」
 何故か分からないが、その時の俺は自信に満ちていた。
「ふーん、覚悟は出来てるみたいだね。……ついて来な」
 女はそう言って、酒場の扉を開けて出て行った。
 後に続こうと躊躇いなく席を立つ俺に、隣にいた客が尚も話しかけてくる。
「兄ちゃん、命が惜しくはないのかい?」
 俺はその声に応じるように一度だけ振り返って。

「今が楽しければそれで良い。……楽しくなければ生きてる価値はないからな」

 夢中になれる物が無かった俺が、唯一没頭できたもの。
 ――賭博――
 それで命を落とすなら、そう言う生き方も良いだろう。
 失う物など、何もなかった。
362[訂正]:03/11/20 11:01 ID:q4SGs1Eh
>>361一行目
×掛け金
○賭け金

商人なセッツァーも、それはそれで良いかも知れませんが…。
>商人なセッツァー

……ト○ネコの服を着たセッツァーが……


;y=ー ( ゚д゚)・∵.
364ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/21 23:57 ID:e401bc/6
> ……ト○ネコの服を着たセッツァーが……
今日も「破邪の剣」を売りに来てくれる客をひたすら待っていた。
そんなある日……

え? リレー小説になりませんか? なりませんかそうですか。(w

ちなみに漏れ的には
1.ピサロが変装してパーティーに潜入しているのだと勘違いされ、ライアンに背後から斬られる。
2.鉄の金庫が重すぎてどうしても歩けず、冒険はピサロに会わずに3章でED。
3.マーニャとカジノで豪遊した揚げ句、ジョーカーデスvsひいてはいけないカードの全面(滅)対決が実現。
4.気球よりラーミアに乗りたいと勇者に小一時間詰め寄った結果、ガーデンブルグ城で人質として一生牢屋にぶち込まれる。
5.うまのふんとまずい魚では、どちらが価値のあるものなのかをトルネコと議論する。
6.バニッシュ→デスで経験値0なのと、ボス戦でひたすらザラキを使うのはどちらが効率的かを議論する。

そんな展開をキボンヌ。(長いネタでスマソ)
365蒼穹の彼方へ(仮)5:03/11/22 00:04 ID:ZLtwxJHI
(前話は>>360-361です。とりあえずセツダリ)
--------------------------------------------



 俺は女の後をついて暫く歩いた。やがて賑わう街を抜けると、ひたすら広がる
漆黒と、延々と続く草原ばかりで景色に変化はなくなった。
「おい、どこまで行く気だ?」
 その言葉に女が返答する事はなかった。ただ、振り返りもせず指を立てるだけで。
 指し示された先には――限りなく広がる、星空。
「お前……頭オカシイのか?」
「知らない女の後をのこのこついてくるアンタよりは全然マトモさ」
 そう言ったかと思えば突然、女の足がぴたりと止まる。そこには小高い丘がある
だけで、他には何も見あたらない草原のただ中。
 俺が口を開こうとした刹那、女は勢い良く振り向くと言い放った。
「ルールは二つ!
 降りかかる火の粉は自分で払う。
 先にここへ戻って来た方が勝ち。
 ……良いね?」
 ここまで来ても、俺には何の事やらさっぱり分からなかった。その様子を察し
たのか、大げさに一つ溜息をついて言葉を続けた。
「頭の悪そうなアンタに教えてやるよ。アタシらはこれから空を飛ぶ、飛空艇を
使ってね」
 飛空艇――噂には聞いたことがあるが、実際に見たことはない。
366蒼穹の彼方へ(仮)6:03/11/22 00:06 ID:ZLtwxJHI

 この世界の『空』は、文字通り俺達の手の届かない高さにあった。

「飛空艇? そんな物がどこにあるんだ?」
 恐らく、こう言われて俺と同じ問いを投げかけないヤツはいなかっただろう。
 この世界に飛空艇は殆ど残存しない。その理由は、飛空艇技術が未発達な事に
よる絶対数の少なさ。そしてそれ以上に『帝国空軍』――インペリアル・エアフォース
――の存在が大きな枷となっていた。
 帝国の支配は地上だけに留まらず、今や上空にまで及んでいるのだ。
 かつて飛空艇で空を駆けた多くの者達は反逆者、あるいは領空侵犯と言う名目
の下、ことごとく帝国空軍によって撃墜された。
 帝国の支配という平和の中で、奪われていった翼。

 こうして、俺達は『空』への手段を断たれていた。
 それが誰もが知る歴史であり、直面している現実の姿だった。
367戴天の碑7  ◆Lv.1/MrrYw :03/11/24 20:46 ID:0mV/wBkS
>>365-366から続くセツダリ話。タイトル「蒼穹の彼方へ(仮)」から改めました)
----------------------------------------------------------------

「だからここへ案内してやったんじゃないか」
 言いながら、慣れた仕草で隠されたスイッチを押すと、小高い丘全体が音を立てて
動き出し、やがて俺達の前に大きな口を開いた。
「……これは……」
「まぁ、私の秘密基地ってところね。詳しい説明は歩きながらするわ。行くよ」
 女に先導されながら、奥へと進む。
 いくつも仕掛けの施されたその場所は、恐らく何らかの遺跡か、要塞跡なのだ
ろうが、俺としてはそんな事などどうでも良かった。
 それよりも知りたかったのは、今目の前にいるこの女の考えていること。
「あんた……どうしてそんな危険を冒してまで飛ぼうとする? 誰か会いたい奴でも
いるのか? 空の上に」
 生に執着していない人間の陥りやすい捨て身というヤツか、または自棄になっ
ているのだろうと思っていた。
 だが、そんな俺の陳腐な予想を覆す答えが返ってくる。

「雲を抜け、世界で一番星空に近づくこと。それがアタシの夢さ」
 ――何者にも束縛されず、自由に大地と空の間を駆け抜ける――風の様に。

 その言葉を聞いて、俺は思わず立ち止まった。
 ――鳥ではなく、風になりたい、と――こんなおかしな考え方、普通の人間の
する発想じゃない。
 もっとも。いつ狙われるとも知れない危険な空へ好んで身を放っているのだ。
そこに普通を求めるのが間違いなのだろうが、それにしても。
368戴天の碑8:03/11/24 21:09 ID:0mV/wBkS
「お前、本当に頭がイカレてるだろ?」
 口をついて出た俺の本音も意に介す気配はなく、女は笑う。やがてその波が
退いてから。
「……気が変わった。今回は特別だ、乗んな」
 そう言って、昇降階段の扉を開けた。
 さびた鉄扉の重たい音が響き渡り、その先に広がる光景に息を呑んだ。
「飛空……艇?」
 止まっていた足が、何かに引き寄せられるように前へと動き出す。
「そう、これが飛空艇。今じゃ世界に二艇しかないみたいだけど……ゴタクは後で
いいから。早く乗りな」
 促されるまま、甲板に足を踏み入れる。
 それ自体古びてはいるが、よく手入れが行き届いていることは掃除された甲板
を見れば一目で分かる。
 そうするうちに、耳障りな機械音が聞こえてくる。同時に身体に伝わって来る
小刻みな振動は、慣れない感覚というせいもあって気色が悪かった。
「さあ、よーっく見てな!」
 そんなのは一向にお構いなしといった表情で舵を取り、女は叫んだ。
 瞬間、ぐらりと大きく傾いたような格好になるが、船はすぐさま元の体勢に戻る。
「下手クソ!」
 片膝をつき、同時に左手で掴んだ手摺で身体を支えながら、前方に立つ女の背に
罵倒を浴びる。
 だが直後、俺の視線はそのまま固定された。
今まで「ちょっと馴れ合いっぽいな」と思いながら見てたけど、
こうやって感想レスが途絶えてるのを見ると、それはそれで寂しい。
馴れ合いだろうがウザがられようが、このまま寂れてしまうには惜しいスレだと思う。
煽りを気にしてスレの空気が悪い方に変わるなら、
煽られてる方がまだマシじゃないのか?

キツイ書き方に見えたらゴメン。職人さん達を責めてるつもりはないです。
煽った奴の言いなりになってるような雰囲気が嫌なんで、つい。

ということで。
擦れてる女・ダリルに萌え。かっこええのう。
んー、煽りに聞こえたらスマソだが、感想書きたい作品があったら書き込むべく
待ち構えている名無しもいるぞー。

>戴天の碑
キャラは上手く書けていると思う。イキイキとしている。
ただ、ちょっと言葉の選び方とか文体が不器用と言うか、こなれていないと言うか
ぎこちないような気がする。
一生懸命工夫しているのは伝わってくるのだけど、敢えて言うなら工夫しすぎ
(ゴメン)かな。

>前方に立つ女の背に罵倒を浴びる。
これは、罵倒を浴びせる、かな?

素人の適当な感想なので、じゃあ偉そうなお前が書け、とかは勘弁してくださいw
371雫夜 ◆sizukTVGK. :03/11/25 22:13 ID:ypeKihkW
相変わらずの遅レスっぷり…うぅ_| ̄|○

>>ドリルさん
>>342-346
某所のお話に同様、セッツァーが非常にかっこよくて萌え。最後はエドガーに代わって
お話を締めくくってましたし。←この辺にドリルさんのセッツァーへのこだわりを感じました。
ところで某所のお話は保管依頼されないんでしょうか?エドガーはもちろんセッツアーという人物が
あちらでも深く書かれていて、このお話だけではなくセツ一人称がより楽しめると思うのですが。
実は私も先程読み返してました。セツ一人称はこれから読みます。そしてまた感想が遅くてな
りそうでスマソ…。そしてワカルル…待ってて下さい。

>>小話さん
二人が出会った教会の花畑でのED…(・∀・)イイ!!
>クラウド。木も鳥も、川も人間も…、みんな繋がってる。同じ円環の中で。
>私たちは繋がっているの。
これらの言葉がEDの伏線になっていて、エアリスは完全に消えてしまったわけでは
ない、と思えました。再会への希望というか…。全て繋がっているこの世界を愛する
ことが、彼女との再会に繋がる、という、哀しみの終わりと新たな始まりを感じる素晴
らしいお話でした。

>>356-358
FF9話でございます。レス頂きましてありがとうです。そして捏造鴨肉料理wの調理法を
フォローして下さったことにも感謝です。実はコレ書いた日に食べたのが煮る方の鴨鍋
でした、と裏話。
そうですね…食事描写にこだわるあまり、肝心の味について描写がほとんどありません
でしたね。クイナ話そのものに補足することも考えましたが、EDは決まっていましたので、
この話はこのまま終わらせます。がっ!! 続きでサラマンダー話を書いてますので、
そこで味描写をできたらと思います。
サラマンダー期待sage
>>352-354の続きにして完結編。クイナによる美食への飽くなき挑戦がここに…なんて言ってみるw
 
 ジタンたちの方から聞こえてくる声も、みんなにデザートが行き渡る頃には、怒声から笑い声に
変わっていた。先ほどの『事件』も、結局エーコが犯人だったということで落ち着いたらしい。詫び
ているつもりなのか、ジタンが自分のアイスをビビに分けてやっている。スタイナーはデザートを
断り、給仕に何かを頼んでいた。当のエーコはいつのまにか食卓から姿を消していた――どうや
ら逃げたようだ。
 クイナはといえば、デザートを睨みながら『物ではない食べ物』について延々と考え込んでいた。
しかし考えれば考えるほど、答えは出ない。
「――目に見える物だけが全てとは限らない」
 低く呟く声に振り向けば、焔色の髪をした人影が目に映る。
「サラマンダー!! いつ戻ってきたアルか?」
 馴れ合いは御免だ、と言って、彼はアレクサンドリアに着いた早々、晩餐会には参加せず城下町
へ出ていたのだ。しかしサラマンダーはクイナの問いには答えず、ただ謎めいた言葉を漏らすだけだった。
「案外、俺とお前の探しているものは同じかもしれん」
「何!? ぜひ教えて欲しいアル」
 先ほどダガーに諭されたことを忘れて彼に詰め寄ったが、あっさりかわされる。勢い余ったクイナ
は、そのまま壁に衝突した。
「ううっ…痛いアルよ〜!!」
 仰向けにすっ転んだクイナに手を貸そうとはせず、鼻で笑って、サラマンダーは食堂を出て行く。
「助けてアル〜!! みんな〜!!」
 自力で起き上がれず、もがくクイナの叫びは、しかし広い食卓には響かなかった。

転がったまま、額にできた大きなたんこぶを撫でつつ、クイナは呻く。 
「クエール師匠…食を極める道は、とても険しいアル」

〜END〜
374雫夜 ◆sizukTVGK. :03/11/25 22:37 ID:ypeKihkW
重大なミスをハケーン。以下の文を『しかし、広い食卓には響かなかった。』の後に入れて読んで頂けますか。

>代わって部屋に充満するリンドブルム産ピクルスの匂い――スタイナーの好物は、しかし部屋から彼とクイナ以外の者を追い出してしまった。
>当然食するのに夢中なスタイナーにクイナの声が届くはずもなく…。

>>372
期待レス、ドモ。
375ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/26 00:58 ID:SVWAi1Bn
>>369
擦れてる女に萌えて頂けて光栄です。……本編中の数少ないダリルの台詞から
持てる妄想を全てつぎ込んで捏造した節があるので、違和感があるかなとドキドキしつつ
投下しますた。…ヨカタ(;´д`)
それと、声に出してくれるというのは非常に嬉しい事です。『煽り騙りもスレの華』とは
2chに来てよくよく思っている事ですので(w、当方それに関してはあまり気にしてません。

>>370
ご意見を頂けて感謝です!! もうね、慣れない一人称でイパーイイパーイな漏れの心中を
見事に言い当てておられます。(w 一人称ってどうしても「〜と思った」「〜だった」と
単調な流れに陥りやすい(しかも過去回想という事もある)ので、そこから脱しようと
試行錯誤しとりますた……。
それが、かえって文脈の前後で矛盾した表現や冗長になっていたりするんですよね
……ヤパーリ一人称って難しい。精進してみます。

>>373
食事風景と、そこに展開される人間模様が自然です、本当に自然なのが(゚д゚)ウマー!
もの凄く変な言い方なのですが「今日、晩飯をみんなと食った」っていうぐらい、あり
きたりな日常の光景なのに、その中に色んな要素が詰め込まれてるのが凄い、と。
目で楽しみ、舌で味わう。食の真髄は、実は生き方そのものなんじゃないか? そ
んな風に読むのは意図を外れ過ぎてますかね…。
(´-`).。oO(と、ところで保管依頼とは…?)


元々漏れ自身が“書きたいから”書いてるので…。初代スレで示した質問に対する
回答が得られない限り、この基本姿勢は崩れないと思います。その辺は平にご容赦&
ご理解を頂ければと思います。(つまりループする前に初代スレをご覧下さいってこった)
376戴天の碑9:03/11/26 01:11 ID:SVWAi1Bn
(前話は>>367-368です。今回は校正の時間取れない都合上うp分短くてスマソ。
そして367のラスト二行目の罵倒を浴びる。→浴びせる。でおながいします。)
----------------------------------------------------------------

 軋むような音を立てて闇に染まっていたそれが開く。現れたのはまたも漆黒と
そこに輝く星空だった。扉が開いたことによってこの地底空間には大量の海水が
流入し、それらは星を囲むように――まるで空から流れ落ちる巨大な滝となって
――夜空で輝く星々の光を反射ながら、幻想的とも言える光景を描き出す。
 飛空艇はゆっくりと、その中を浮上していった。
 その様は、この世ならざる美しさを伴いながら、未だかつて味わったことのな
い感覚をもたらす。
 こうして半ば呆然とする俺をよそに、女は得意げな声をあげた。
「まだまだ甘いよ! これからが本番だ!」
 身体にかかる気圧のバランスが崩れるのが俺にでも分かる。それほど急激に飛
空艇は上昇を続けた。
 俺は何も言えず、ただただ視界全体に広がる景色と、その中を進む女の姿に目
を奪われるばかりだった。
377戴天の碑10:03/11/27 13:55 ID:XpqKSuqr


 ひとしきり上昇が落ち着いた頃には、俺にも余裕ができていた。
 身体に感じる風圧、上昇や下降に伴う微妙なバランスの変化。何より、星空を
間近に、大地を眼下に見下ろすその景観を目の当たりにすれば、日々の喧噪など
吹っ飛ぶというモンだ。
「女、さっきの言葉は取り消す。……悪かったな」
 そんな言葉がすんなり出てくるあたり、他人に謝るという行為にすら、もはや
抵抗を感じなくなっていた様だ。
「ふん。やっと分かった? まぁいいわ」
 振り返らずに言った女の言葉は素っ気ないが、どこかに嬉しさを含んでいると
感じたのは、気のせいではないだろう。
 すると何かに気付いたように女は顔だけを俺の方へ向けて続けた。
「それと、アタシの名はダリル、コイツはファルコン。……呼び方は好きでいい」
 それを聞いて、お互い名前すら名乗っていなかった事に気付く。
「セッツァーだ。セッツァー・ギャッビアーニ」
「舌噛みそうな名前ね」
 そう言って女――ダリルは笑った。
 これまで、俺の名前をそんな風に言う奴はいなかった――と、言うより名乗る
機会自体なかったのだと今更ながらに知る。
「俺が選んだ名じゃないが、……けっこう気に入ってる」
「そう。親に感謝しときな」
 そう言って再びダリルは前方へと視線を戻した。
 慳貪な口調だが、一方でその声は穏やかであたたかく。
「……ああ、そうしておく」
 つられたように漏らした自分の言葉に、俺自身が驚いた。
 ――寂しいと思った事はこれまで一度もなかったが、こうして気に掛けた事も
ない存在――そんな彼らに対して、はじめて抱いた感謝の思い。だったのかも知れない。

 ふと一瞬、肌を通る風に乗せて誰かの声が聞こえた気がする。
 懐かしいようなその声に、耳を傾ける事はなかったが。
378戴天の碑11:03/11/27 14:01 ID:XpqKSuqr
 穏やかな空の旅――だがその平穏を打ち破る者達は確実に距離を縮め、
背後からこの艇(ふね)を目指していた。


 地上に吹く風とは違い、上空に流れる風は肌に痛い。
 ましてや飛空艇に乗っている俺達は、相当のスピードでその中を進んでいるの
だから尚更だ。
 吹き付ける風と、飛空艇のエンジン音が夜空を切り裂く。
「……空もいいだろう?」
 その中でぽつりと呟いたダリルの言葉に、俺は無言で頷き返した。
 舵を取り、前方を見据えたままのダリルから俺の姿は見えなかったはずだろう
に、それでも沈黙を肯定と受け取ったのだろうか。そのまま先を続ける。
「そろそろ丁度良い頃だね。今日は気分がいい、とっておきの場所へ案内して
やるよ」
「とっておきの場所……ってのはどこだ?」
 含みを持ったダリルの言葉に、素直な疑問を投げかける。
 しかし返ってきたのは、不敵ない笑顔と意味深な言葉。

「『世界の始まる場所』さ」

 言い残して再び視線を戻したダリルは、艇の進路を僅かに変えた。
379独り、夜空の下で。(仮) 《1》:03/11/28 23:41 ID:ucmDIFsc
 結局、頼れるのは己の力だけだ。
 物心ついた頃からそう思ってきた。彼が身を置く世界は、自分に力がなければ生き残れなかったから。
 他人の力に頼るなど愚かしい――自分を『殺せなかった』ジタンに、イプセンの古城でそれを証明する
はずだった。

「おい、大丈夫か?」
 傷ついた身体で横たわるサラマンダーに、ジタンが声を掛ける。ずっと復讐すべき仇として追っていた
男だった。しかし彼の青い眼に浮かんでいるのは敵意ではない。それとは全く逆のいたわるような眼差し
が、サラマンダーを落ち着かせなくさせる。
「…何故、俺を…助けた?」
 マダイン・サリで問うたことを、もう一度口にする。途切れがちだが真剣な声音に、今度はジタンもはぐら
かさなかった。なーに言ってんだ、と苦笑はしたけれど。
「お前はもうオレたちの仲間じゃないか。仲間がヤバいときは助け合う――それは当たり前だろ」
「なか、ま…? 俺が、お前の?」
「あぁ」
 ジタンは深く頷き、微笑(わら)った。
そんな簡単に他人を信じられるとはおめでたい奴だ、と嫌味を吐きたかったのに、何故か言葉にならない。
代わりに飛び出したのは、まるで拗ねる子どものような憎まれ口。
「お前は…馬鹿だ」 
380独り、夜空の下で。(仮) 《2》:03/11/28 23:43 ID:ucmDIFsc
 いわゆる『外側の大陸』から、アレクサンドリアに戻ってきたのは先日のこと。
 城のバルコニーにふらりと現れたサラマンダーは、壁にもたれ掛かるようにして腰を下ろした。
今夜はブルメシア王室付きだったシェフの手による鴨肉料理の晩餐会が行われている。辺りに
人の気配はないことを確認すると、懐から酒瓶とメインディッシュの『鴨の香味焼き』を取り出した。
どちらも後片付けに追われていた城の台所からこっそりと持ち出したものだ。
 クイナにもいつからそこにいたのかと驚かれるほど、体術に長けた彼にとって自分の気配を殺
すことは容易で、こうして物を盗み出すときにはとても重宝している。
 深藍色(しんあいしょく)の夜空に架かる月を肴に、サラマンダーは酒をあおった。程よく冷えた
それが、乾いた口中に流れ込む。
 しかし舌が捉えたのは、彼が好むトレノ酒の酸味を抑えたあの味ではなかった。
(――っ!?)
 酒瓶に貼られたラベルを見て、小さく舌打ちする。そのまま怒りにまかせて酒瓶を放った。何故
か瓶は割れることなく、ころころと音を立てて、床を転がる。
(その酒の味…それが今のアンタさ)
 城下町で呑み屋をやっている昔馴染みの女に言われたことを、今更思い返す。
「フン…」
 不機嫌になったのは酒の味のせいだけではなかった。

 城下町の裏通りに面して立つ居酒屋には、客が入ることは少ない。いつも連絡なく訪れるサラマ
ンダーに、主の女は開口一番こう言った。
「腑抜けになったよねぇ、アンタ」
「…何だと」
 身体での付き合いも長い女は、サラマンダーの怒りを含んだ声にも全く動じない。
ほとんど指定席となっているカウンター奥へ腰掛けた彼に、冷やしたトレノ酒を差し出す。かき入れ
時の夕方にもかかわらず、客なんてどうせ来ないから、と言うと、女は自分にもブルメシア冷酒を
用意した。紅く塗った爪先でグラスを傾けながら、くすくす笑う。
381独り、夜空の下で。(仮) 《3》:03/11/28 23:46 ID:ucmDIFsc
「怒った? でもホントのことだよ。前はいつも血に飢えたような目をしててさ、どんなに人を殺しても
殺し足りないってくらいだったのにね。焦燥感っていうのかい…目の前のアンタからはそれがすっか
りなくなってるよ。それにサラマンダー…アンタ今、あのジタンと一緒だっていうじゃないか」
「……」
 何で知っているのかと野暮なことは訊かない。この女も今でこそ城下町で居酒屋を切り盛りしてい
るものの、かつてはサラマンダー同様、凄腕の暗殺者として名を馳せていた。彼と女がいた裏世界は、
どんな情報も流れるのは早いのだ。
「ジタンに濡れ衣を着せられて、絶対に奴を許さないって言ってたアンタがさ…一体どういう風の吹き
回しなんだろうねぇ。もしかして腑抜けになっちまったことと関係があるんじゃないのかい?」
「フン…」
 女の問いを鼻で笑って一蹴すると、サラマンダーはグラスを持ち上げ、中の琥珀色の液体を口に含
んだ。よく冷えたトレノ酒のまろやかな味が口中に広がる。
「俺は奴を殺れなかった」
「じゃあアンタが負けたって訳かい? さぞ見ものだったろうねぇ」
 それで腑抜けになったんだ、と小馬鹿にしたように笑う女に構わず、彼は二杯目の酒をあおる。

 マダイン・サリだった。
敗者となった自分にとどめを刺さないジタンへ、何故殺さないのかとサラマンダーは納得できず詰め
寄った――頼れるのは己の腕のみである彼の世界では、そんな甘い生き方など許されなかったから。
(理由って言われてもなぁ…死なずに生きていることが、そんなに不満なのか?)
(はぐらかすな…訳のわからん状態で生きるより、ケリが付いたほうがマシだ)
 生き残るのは勝者で、敗者は消えるのみ。
 間違いなくそれは俺の本心だった――はずなのに。
382雫夜 ◆sizukTVGK. :03/11/29 01:04 ID:9nEYmSRi
というわけで、サラマンダー話です。クイナ話と繋がっているつもりですが、矛盾点あるかも。
そして今更ですが、捏造(食べ物とか酒とか)と造語(深藍色とか)イパーイなのでご注意を。
次回うp時に完結させますので、しばしお付き合い下さいませ。

>>ドリルさん
セツダリ一気読みしますた。
ダリル(・∀・)イイ!! てかカコイイ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚q(゚∀゚)p゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*!!!
生き生きとした描写で…って、書評サイトみたいな書き方しかできなくてアレですが、ホントにそこに
いそうな感じなんですよ、私には。2話のセッツァーに喧嘩を吹っ掛ける姐さんに萌えならぬ燃えを覚
えました。夜中だというのに、声を出して笑ってしまったYO!! この二人だから、別れもフツーとは
違う形なんだろうな、と思っております。それこそ真っ青に晴れた空が似合いそうな、しめっぽくない
感じで。
あ、保管というのは、千一夜サイトに保管申請されないのか、ということなんです。向こうの板は、保管
希望=自己申請なので。詳しくはあちらのロビースレを。
読む人を選ぶ板だと思うので、あのセツ(エド)話を知らない方もいらっしゃるのではないかと。それでサイ
ト保管されるといいかも、と勝手に思っていました…スレ違いスマソ。
ヤパーリ併せて読むことによって、このお話のセッツァー描写がより深く感じられます、私には。

それとドリルさん…私の話、いつも深く読み込んで下さってありがとです。今回も私が書きたいと思ってい
ることを当てて下さって、とても嬉しかったです。
383とびねずみ ◆Y2NezmymcE :03/11/29 02:15 ID:RNkPhKme
>>382
 細かいことなんですが、誤解(?)が広まるのもアレですし、他スレの保管人だったので
コテ出してみますが。
 
> あ、保管というのは、千一夜サイトに保管申請されないのか、ということなんです。向こうの板は、保管
> 希望=自己申請なので。詳しくはあちらのロビースレを。

 これ、ちょと違います。基本的な保管要請は「他者推薦、もしくは自己申請」です。
つまり、SSを保管して欲しいスレがあったら、千一夜スレにそれを書いてね、というのが
第一で、そういう希望を出すのは誰でも良いことになってます。
(雫夜さんがMOMOさんに保管依頼している場所は、実はイレギュラーな場所なので)
 ただし、保管しないで欲しいという希望は自己申請ですし、保管希望出しても
良いかどうかを先に作者さんに聞かれるのは悪いことじゃあないと思いますが。
全てが希望どおり保管されるとは限らないんで、先に作者さんに聞いて保管されないと
悲しいかも?
 難しいですね。
384とびねずみ ◆Y2NezmymcE :03/11/29 02:40 ID:RNkPhKme
しまった、あっちでの話なのですね。雫夜さん、ごめんなさいm(._.)m
383は無かったことに…… スレ汚し、申し訳ありませんでした。 
385雫夜 ◆sizukTVGK. :03/11/30 03:33 ID:9FUWysWI
もうこんな時間にΣ(゚Д゚;)

>>とびねずみさん
お久しぶりです。
他板の話題を書いた私も私なので…お気になさらないで下さいね。

>次回うp時に完結させますので
そして嘘つきがここにいます。オワンナカッタヨ…i||i_| ̄|○i||i
386独り、夜空の下で。(仮) 《4》:03/11/30 03:35 ID:9FUWysWI
 しばらくの間サラマンダーの様子を黙ってみていた女は、おもむろにカウンターの下から
酒瓶を取り出した。
「この前手に入れたばかりなんだ。これ、呑んでみないかい」
 空になったグラスに注がれたのは、不思議な色の液体だった。虹色というべきだろうか。
これは酒かと問う彼に、女は鷹揚に頷く。
「まぁ呑んでみなって。おかしなものは入っちゃいないからさ」
 促され、ひとくち含んだ。酒にしてはとろりとした感触を舌に感じる。そして異様なほどの
甘さも。
「…おい、これは何だ? 酒じゃないな」
「おや、人聞きが悪いねぇ。これは間違いなく酒だよ」
「果実酒だってこんなに甘くはない…ハメやがって!!」
 しかし女は、さもおかしそうに笑うだけだ。
「そうかい。甘かったかい。この酒はね『クリスタルの涙』って言って、アレクサンドリアの
秘蔵酒なんだよ。売りに来たモーグリの商人が言うには、呑む奴のオーラを味に変える
不思議な酒なんだとさ。アタシも道楽のつもりで買ってみたけど、こうも面白いことになる
とはね」
「ふざけるな」
「酒は呑んだ奴の本性を暴いてくれる。アタシも伊達に呑み屋をやってるわけじゃあない。
それなりに人を見る目も養ったつもりだよ。その酒の味…それが今のアンタさ」
「馬鹿馬鹿しい」
387独り、夜空の下で。(仮) 《5》:03/11/30 03:37 ID:9FUWysWI
 吐き捨てるように言って、グラスを床へ叩きつけた。彼の足元で甲高いを立てて割れる。
そのままカウンターの中を回って、二階へ上がろうとしたところを、女の手に阻まれた。
「今夜は店じまいだよ。帰んな」
「な、っ」
 アレクサンドリアに居る間は、たいていこの女の家で寝泊りしている。拒まれたことなど、
これまで無かった。胡乱げに見やるサラマンダーの視線を避けることなく、女は真っ直ぐ
に見返す。
「アタシが惚れてたのはな『焔色の髪の男』さ。腑抜けになっちまった、ただのサラマン
ダー・コーネルって男じゃあない」
「……」
「そうそう、さっきの酒はアタシなりの餞別さ。だからもう、ここには来るんじゃないよ。こ
の店は――今のアンタの居場所じゃないんだからね」
 女の声音がひどく優しかった。
 押し黙ったままの彼に、ニヤリと笑う。  
「裏で生きてくのが似合わないくらい、優男になったよ。今のアンタ」
 戸口を閉める間際に垣間見た女の顔は、かつて凄腕暗殺者として恐れられた者の
非情なそれではなかった――どことなく哀しみを含んだ、そんな笑みだった。
388ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/11/30 22:23 ID:GLZ0FBL7
>>379-381>>386-387
味覚描写もさることながら、「割れずに床を転がった酒瓶」と「その酒の味」が意味する
ところを読み解かせる様な書き方が……(・∀・)イイ! しかも酒(アルコール)の特性と
「酒の味」の関連がここに来るかという展開に感服しました。(正直ここは、成る程!
そう来たか。という感じですw)
酒場の女(FF9の記憶があいまいなのですが、これはラニですかね?)が『餞別』を送る
描写には惚れ惚れします。戸口を閉め、決別せんと決めたのは、サラマンダーと共に歩んだ
過去だったのかな? とか。それが彼女の表情と声音に現れたのかな? とか。(*´д`)
……いや、勝手に感じた事ですが。

余談ですが『優男』(やさおとこ)の読み方が分からず辞書を引きました。すると
「 気だての良い/優しい/雅/軟弱−な男 」……日本語って凄いなと思います、改めて。(w
コレを踏まえて考えると、彼女の台詞から伺える心情の捉え方も幅が広がるし、(゚д゚)ウマー
  ※某所の保管に関する説明ありがd。休日にでも拝見させて頂きますです。。。

>>383-384
乙です。漏れのような初心者にとっては有り難い解説でつ。(もう結構な期間いる様な
気はしますが…w)ところでFFネタって書かれないんでしょうか?
個人的にはとびねずみさんのFFネタにも期待してみたいんですが。
389戴天の碑12:03/11/30 22:31 ID:GLZ0FBL7
(前話は>>376-378で一応セツダリ。……ところでこれを書くにあたって
1.飛空艇ファルコンの飛行高度。 2.セッツァーの武器『カード』の材質(EDムービー参照)
についてもう少し考察しておく必要があるような気がするんですが…ええい、投下s…)
-------------------------------------------------------------------

 博徒として、相手の心を読み先の行動を予測するというのは常套手段であったし、
それなりの自信もあった。
 けれど、これまで出会ったどんな人間とも違う目の前の女は。
(……読めない奴だな)
 その意味で、ひどく魅力的だと感じていたのは事実だろう――もっとも、女としての
魅力とは全く違うものだったが。
 そんなことを思いながら、手摺に身を預け流れる景色をぼんやりと眺めていた。
「……ん?」
 依然として鬱陶しいぐらいに身を叩きつける風を浴びながら、耳障りな飛空艇の
エンジン音の中に混じる微かな異音を捉えたのは、この時がはじめてだった。
「なんの音だ?」
 俺がそれに気付いた時、ダリルが声をあげた。
「ちっ! どうやら縄張りを荒らしたらしいね……面倒なことになった」
「どういうことだ? ……まさか」 
 そう、そのまさかである。
 背後から迫る異音の正体――帝国空軍(インペリアル・エアフォース)――だ。
 ダリルは忙しなく計器類に視線を走らせながら、横に並ぶレバーを引く。
もちろん、俺にその操作の意味は全く分からない。
「吹っ飛ばされたくなかったらその辺にしっかり掴まってな! 振り切るよ!!」
 ……口よりも行動の方が早かった。
 途端に飛空艇は信じられない勢いで加速をはじめる。身に受ける風圧はこれま
でとは比べ物にならない。押し流される身体をようやく留め、後方に視線をやる。
 しかし、広がるのは紺藍色に染まる空と輝く星空ばかり。
(……どこにいる?!)
 けれど、耳に届く異音は明らかに先程よりもその存在が近いことを告げる。
(目に見えない敵、か)
 まるで他人事のように、この状況を楽しんでいる俺がいた。
390戴天の碑13:03/11/30 22:36 ID:GLZ0FBL7
 視線を前方へと戻せば、煙のように立ち上る灰色の壁が見える。
「おい!?」
「分かってる! ……突っ込むよ!!」
 雲――障害物のない上空において、身を隠すには格好の場所である。
 それはふだん地上から眺める穏やかな姿とは違い、実際に触れればまるで実体
のない存在。
「雲から雨が降ってくる理由……身に沁みて分かるな」
 吹き付ける風に加えて叩きつけるような豪雨を浴び、全身ずぶ濡れといった状
態になりながら、そこで感慨深げに溜息をついた。
「残念ながら、感心してる場合じゃなさそうだけどね」
 ダリルは額にまとわりつく濡れ髪を手で除けながら、依然として前方を見据え
ていた。
 やがて雲を抜け、再び宵闇に浮かぶ星々が艇(ふね)を出迎える。
 ひとまず豪雨からは逃れた事を、密かに安堵した瞬間だった。
「伏せろ!」
 ダリルの叫び声と共に、甲板上に銃弾の雨が降り注いだ。
「なっ!!」
 咄嗟に身を庇おうと屈み込む。手摺から眼下を覗き込めば、帝国空軍の小艇隊
の機影が見えた。
391戴天の碑14:03/11/30 22:39 ID:GLZ0FBL7
「下だ! 下からも来る!」
 甲板から横に見える位置に一機。そして艇の下に二機。視認できるだけでも三
機に囲まれていることになる。
「……悔しいけど、奴らの方が小回りきくのよね」
 ダリルは心底悔しそうに呟く――この飛空艇にはない性能だ、と――今まさに、
命が危険に晒されているというこの状況下で。
「やっぱりお前、頭イカレてるな」
 吐き捨てて、俺は立ち上がった。
「アンタほどじゃないって言ったろ? 黙って伏せてろ。……それとも、
今すぐここで死にたいのか?」
 じゃあ止めないが。と続けたダリルの言葉を遮ったのは、俺の手を離れ風の中
を直進するそれだった。
「……なんだい?!」
 俺が懐から取り出したのは何の変哲もないカード。それを空中めがけて投げ放
ちながら。
「一応、賭博師だからな」
 カードの扱いには慣れているつもりだった。
「そう言う問題か?」
 俺が放ったそのカードは、一直線に敵機目指して飛んでいく。
 そして一瞬の閃光と、後に続く爆発音が辺りを劈いた。
392戴天の碑15:03/11/30 22:42 ID:GLZ0FBL7


 ――今にして思えば、普通のカードが空軍機を破壊できるなんて、『魔力』の
恩恵以外の何物でもないような気がするが、当時はそんなこと気にも留めていな
かった。恐らくこの時ダリルが指摘したのも、そこだったのだろう。
 ――本当に、今更な話だが。


------------------------------------------------------------------
……こじつけにも限度があるか? と、言うわけでこれでも一応セツダリです。(w
ぱっと見ダリルと飲み屋のねーちゃん印象が似てるとオモタけど、
どっちもイイ(・∀・)!!
たくましいヤシ萌だ。


ここらで本命ベアトリクスをキボンしてみる。w


にしても感想書くのって難しいのな(w
ベアトリクスいいね。自分もきぼん。
395雫夜 ◆sizukTVGK. :03/12/02 21:01 ID:X5gFMbDn
ドリルさんのつもりでレスし掛けて、実は見直したらダリルさんになっていた罠w

>>(改めて)ドリルさん
ダリル姐さんカコイイ!! 姐さんは男のあしらい方も上手いですが、艇の扱いもまた(・∀・)イイ!!
そしてセッツアーにも突っ込まれてましたが、どんな状況でもまず艇、みたいなとこも萌え。
カコイイ空賊とは姐さんみたいな人のことを言うのかなと思ったり。
帝国空軍に邪魔されてましたが、空を飛んでる様子、もっと読みたいです。

そして私の話に頂いたレスですが、ドリルさん…私の書きたいことはまさに頂いたレス通りです。
ありがd。
あ、でも『酒場の女』はラニではないです…オリキャラです実は。だから名無し。

>>393-394
感想dくす。
酒場の女に萌えて頂いて嬉しいです。カコイイ大人の女を書いてみたかったので。
でもダリル姐さんには敵わずw

ベアトリクスネタ>>次スレ以降で書かせて頂けたら、と思います。でも読み手にもなりたい。
396独り、夜空の下で。《ラスト》:03/12/02 21:16 ID:X5gFMbDn
>>386-387の続きにして完結編。 サラマンダーが酒を呑みながら、何かを思う話。


 いつの間にか眠っていたらしい。見上げた月の位置がほとんど変わっていないところをみ
ると、うたたね程度のようだったが。
不意に空腹を覚えて、そういえば、とばかりに『鴨の香味焼き』をつまむ。
舌の上で蕩ける位に焼くのが鴨肉の最高の味を引き出すそうで、それ程焼き加減に敏感な
料理なのだと誰かが言っていたのを思い出す。
焼き上がってからかなりの時間が経っていたのにもかかわらず、食んだ鴨肉は硬くなって
いるどころか未だ柔らかいままだった。香ばしい肉汁が口中を満たす――が、サラマンダー
にとっては味わうどころではなく、むしろ生き地獄の始まりだった。
「どこが世界最高の味なんだ」
 無理に飲み込んだせいで、軽くむせる。
 香味野菜による味付けが、彼には辛味が少々きつすぎたらしい。熱くなっている喉を潤すも
のといえば、トレノ酒と間違えて持ち出した『クリスタルの涙』しかない。こうしている間にも口
中は火を噴きそうである。放り投げていた酒瓶を渋々手に取り、口に含んだ。
「…甘い」
 けれどそのとろりとした甘味が、辛味を薄めていく。その様がまるで今の自分のようだと思う。
 イプセンの古城で死にかけて、やっと思い知らされた――ひとりの力に勝るものがあるという
ことを。
しかしその事実を受け容れるには、まだ自分の中に抵抗があった。
(要は認めることが悔しかったんだな。俺は)
 他人を信じることができない世界で、長く生きてきたから。
「腑抜け、か…」
 女に先に気付かれていたことも悔しい。しかし女が突き放してくれなければ、認める気には
なれなかったことも事実だ。
「…フン」
ふてくされて、もう一口『クリスタルの涙』をあおる。
 やはり甘いままのそれは、しかし今度こそサラマンダーの心にまで深く染み渡った。

<<了>>
397雫夜 ◆sizukTVGK. :03/12/02 22:28 ID:+K8ELLDZ
最後なので気付いてしまったミスなど。

《1》
落ち着かせなくさせる。 → 落ちつかなくさせる。

《5》
サラマンダー・『コーネル』 → コーラル 主人公の名字を間違うとは…ヲイ

自分で気付いたのは以上ですが、まだあると思います。スマソ。
そしてつい先程書いてみた10の小ネタSSをうpってみます。
398過ぎたる願い:03/12/02 22:35 ID:+K8ELLDZ
 ブリッツスタジアムでのプレイを称える声や応援する人たちの歓声が、実は君に深く届い
ていないってこと、僕は知ってる。
 今の君に届くのは、十年前に君を置いて行った彼の声だけだろうということも。
 君がよく知っていて、誰よりも憎んでいる男。それでいて誰よりも会いたいと願っている彼。
うっとうしいくらいに注がれた不器用な愛情も、本当は嫌じゃなかった。
 君のココロから生まれる波動が、そう僕らに訴えてくるんだ――切実に、祈るように。
 僕らはそこに目を付けた。君の裡(うち)に眠る渇望が、滅びゆく僕らの夢に何よりも必要
だから。

 君のココロの中のいちばん深いところ。彼との思い出が刻まれたそこに、僕は呼びかける。
 そうすればきっと気付いてくれる。
「――始まるよ。泣かないで」
 僕の声は確実に、君に届かなければならない――全てを終わらせるという僕らの、過ぎた
願いのために。

<<終わり…そして、ここから始まる>>





■バハムートの祈り子視点。
 ここから始まるとか書いてますが、これで終わりです。
399ダリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/12/03 00:49 ID:vS6T5Jja
 * それを装備するなんてとんでもない!
        (微妙に違います)

>>393-394
女将軍カコ(・∀・)イイ!……と、言うわけで禿同。そしてSS期待sage。
ブルメシア(?)での「虫けらめ」 → ショック! → ( ´_ゝ`) なベアトリクスから、
アレクサンドリア防衛戦での変貌ぶりが好きです。
 # 仲間になるとHPが激減している点も含めて(w

>>396
完結乙です。そしてクイナ編との繋がりを少し垣間見た気がしますが気のせいでしょうか?
(うろ覚えな記憶をフル稼働させて)ビビのお父さんが彼らに諭した言葉を思い出します。
そう言えば音楽もそうですが、それ自体とそれを聴く(食す)人の記憶・思いによっても
その姿は大きく変わるものですよね。そう言った意味でも読み甲斐ある話だと思いますた。
ついでに、全てを見通してる「姐御」な酒場の女の大人な雰囲気を堪能させて頂きました。
ヤパーリ感想の締めくくりはこれが良いですかね? 「ごちそうさまでした。」と(w
>>398
「夢に触れられる存在」(祈り子談。…またもうろ覚えスマソ)という事でしょか?
にしても、一人称(゚д゚)ウマー……。


一人称に挑戦するというコンセプトが徐々に崩れつつあるんですが、めげずにセツダリです。
400戴天の碑16:03/12/03 00:54 ID:vS6T5Jja
(前話は>>389-392
---------------------------

「星空だけじゃ飽きて来たんでな。ちょっとしたショーぐらいにはなるだろう?」
 繰り広げられる光景を目にしながら、思ったことをそのまま口にしてみせた。
「……アンタも頭、イカレてるだろ?」
「お前程じゃないがな」
 一瞬の沈黙の後、互いを見あって笑った。
「降りかかる火の粉は自分で払う。そう言う『ルール』だったな?」
「言ってくれるじゃない」
 これで残るは一機。
 再び操縦桿を握ったダリルと共に、前方を注視する。
 そんな俺達を嘲笑うかのように、再び銃撃が始まった。
「しまった!」
「横か!?」
 艇隊は残り一機だと思っていたのが間違っていた。左右両方向からの銃撃を受
けてはじめてそれに気付く。
401戴天の碑17:03/12/03 01:03 ID:vS6T5Jja
「……貴重な燃料を節約したいんでね。協力してくれるかい?」
 予想もしないダリルの言葉に、俺は首を傾げるが、やがてその意味を悟る。
「ああ。やってやるさ」
 どこまでも艇(ふね)の事を考えているこの女は、本当に頭がイカレてると思い
ながら、同時にその気持ちが分かるような気さえする――自分も同類なのだろう
と認識するのは、もっと先の事だったが――。

「それじゃ、行くよ」

 いつしか白みはじめた空を舞台に、ファルコンの短い遁走劇に幕を下ろすべく、
二人の競演が始まる――言葉など交わさず、ダリルの操縦に合わせてセッツァー
は打つべき敵機に照準を定め、素早くカードを投げ放つ――知り合って何時間も
経っていない筈の彼らの息はぴったりと合っていた。
 一方、帝国空軍の小艇隊は既に瓦解し、その機能を果たしてはいない。この広
い空の上で、運悪くファルコンと遭遇してしまった彼らの生き残りは、これ以上
深追いする事を諦めたらしく、まだ闇色の残る空へと飛び去っていく。
「終わったね」
 ファルコンから遠ざかって行く機影を見やりながら、ダリルは警戒態勢を解き
飛空艇を減速させた。
>>398
上手いね。祈り子視点で再構成したFF10として、長編で読んでみたい気もするけど
この長さがちょうどいいのかな。
403[訂正]:03/12/03 01:12 ID:vS6T5Jja
>>401
×知り合って何時間も経っていない筈の彼らの息はぴったりと合っていた。
○知り合って何時間も経っていない筈の、けれど彼らの(後略

× 一方、帝国空軍の小艇隊は既に瓦解し、その機能を果たしてはいない。
○ 一方、帝国空軍の小艇隊は既に瓦解しその機能を果たしてはいない。


いよいよ本格的に文章視点が分からなくなってきました。(w
主に心理描写がメインになる一人称と、
回想という事もあって情景描写をメインにする、セッツァー視点での一人称が
混ざっとります……一人称、使い方が本当に難しいです。
>403
>×知り合って何時間も経っていない筈の彼らの息はぴったりと合っていた。
>○知り合って何時間も経っていない筈の、けれど彼らの(後略

「けれど」を挿入するなら「ぴったりと合っていた」の前の方が良いような気がする。
(自分だったら「しかし」にするかなあ。この辺は感覚でしかないけどw)
→知り合って何時間も経っていない筈の彼らの息は、けれどぴったりと合っていた。
405ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/12/04 00:38 ID:20Q4YI+M
>>404
ご指摘ありがd! …正直な話、未だに結論が出ていないんですが。
(「ぴったりと合っていた」っていう表現がしっくり来ないのです。それもあって…)
でももの凄く参考になります、(370で指摘されている“工夫しすぎ”っていうのは
こう言うことだろうかと思いますた……)


セツダリ、書いてて楽しいんですが……なんか本当に文体が破綻して来てる気が
します。セッツァー一人称、ではなく既に三人称になってる悪寒。
これって、書いてる当人はあまり気にならないんですが、ヤパーリ読みづらい…か。
一応気付いた所は訂正しつつ、時間がある今のうちに投下させて頂きます。
406戴天の碑18:03/12/04 00:48 ID:20Q4YI+M
(前話は>>400-401。)
------------------------------------------------------------------
 唸りをあげていたエンジンはやがて落ち着きを取り戻した。レバーや計器類を
確認し終えたらしいダリルも、ようやく操縦桿から視線を外す。
「……あんた、一体何者だい?」
 そうして俺の方を振り返ると、今更のように呟いた。
「言っただろう? 賭博師(ギャンブラー)だ」
「へーえ。アタシの知らない間に、地上もずいぶん物騒になったもんだね」
 納得いかない、といった声で話すダリルだったが、俺の手に残ったカードを見
て表情は一変する。
「……賭博師にしては、ずいぶんと粋な演出をしてくれるじゃないか」
 俺はその言葉の意味が分からず首を傾げた。
「アンタが手に持ってるカードの意味、知らないのかい?」
「カードはゲームの中でこそ意味を持つモンだろう?」
 問い返した俺に、笑みを浮かべながら答えた。

「カード一枚一枚にも、それぞれ込められた意味があるんだよ。そいつらが出会う
からこそ、ゲームっていう劇があるのさ」

 まぁ、通っている酒場の顔なじみの受け売りだけどね。と続けながら冗談めか
して笑うダリルの姿に、俺はしばし見入っていた。
 道具でしかないそれに意味があるなんて、これまで考えもしなかったことだ。
407戴天の碑19:03/12/04 00:52 ID:20Q4YI+M
「そんな事を気にしてたら、勝負には勝てない」
「勝負に勝とうとしてる間は、勝てないもんさ」
 俺が悔し紛れに反論した言葉さえも、結局ダリルに容易くあしらわれただけで
終わった。
 だがそれこそが、勝負の真理だと言うことをコイツは知っている。
「それで? このカードにはどういう意味があるんだ」
 降参したと言うかわりに、俺が手にしていた最後のカード――ダイヤのQ――
を差し出した。
「ダイヤのクイーンねえ……。ま、『風の女王』ってところかしら?」
 ダリルはそれを受け取ると、言いながら右手で自分を指しながら笑っていた。

408戴天の碑20:03/12/04 23:35 ID:LpxoYHFv

 肌に触れる風は未だ冷気を伴っていたが、空は確実に光の度を増していた。
 あれから暫く飛行を続けた後、ダリルは操縦桿を固定させると手摺の方まで
歩み寄り、俺の隣で大きく深呼吸をした。
 間近で見るダリルの表情はどこまでも生き生きとして、まるで風を全身で感じて
いるように見えた。
「間に合って良かったわ……。さぁ、そろそろだよ」
 安堵したような口調で言って、ダリルははるか前方に広がる景色に目をやる。
 同じようにして眺めやれば、眼下に展がるのは広大な海。そして目の前に延々と
続く空は夜の明けを告げるべく、闇色から徐々にその姿を光に染めていた。
 辺りを見渡しても他には何もない、そこを見つめているダリルに。
「何だ?」
 と問う。
「言っただろう? とっておきの場所に案内してやるって」
「ここが?」
「そう、『世界の始まる場所』さ」
 いまいちこの女の言っていることが分からない。そう思いながらも視線を戻した時、
ダリルの言葉はそのまま現実の光景として俺の目の前に現れた。
 ――空と海の間を切り裂く様に走る一筋の光の帯は、現れてから数瞬で姿を消し、
直後に海面から顔を覗かせたのは金色に輝く太陽。紺藍色に支配されていた
空は輝くオレンジ色に浸食され、それは星々の輝きを呑み込んでいく――夜明け。
 その様は、まさに『世界の始まり』と呼ぶに相応しい光景だった。
 毎日繰り返されている筈の光景、だがそれは、言葉に尽くしがたいほど美しく、
そして何よりも尊いと感じる。
 瞬きをしている僅かの間にも、慌ただしく移り変わる空の姿を見たことなど、
これまで一度もなかった。
 いつも穏やかに晴れ渡った青い空と、その中をゆったりと流れる白い雲――変化の
ない、退屈な表情――ばかりが空だと思っていたから、余計に衝撃的だった。
 世界の広さと己の小ささを、思い知らされた気がする。
409戴天の碑21:03/12/04 23:42 ID:LpxoYHFv

「どうだい、空は最高だろう?」

 ダリルの声で、ようやく現実に呼び戻された。
「ああ。それに『風の女王』とやらにも、勝負を挑みたくなったしな」
 そう言って笑みを向ける。ダリルは相変わらず自信たっぷりな笑顔を浮かべな
がら。
「ふふっ。勝算のない賭けに挑む気かい?」
「勝ったらこの艇(ふね)は頂く。どうだ?」
「そんなにこの艇が気に入ったのかい?」
 ここまで見せつけておきながら、いまさら何をと言いたかったが、それだけ
ではない。
「ついでに、お前もな」
 口をついて出た言葉に俺自身も驚きながら、向かい合っていたダリルの顔から
一瞬、笑顔が消える。
「アタシも気に入ったよ。……そうだね」
 日の出の方角を見やって僅かばかり思案した様子だったが、再び向き合った
ダリルは、心から嬉しそうな笑顔を浮かべながら。
「負ける気はないけど受けて立ってやる。だけど、この艇を渡すわけにはいかない。
それに、アンタに似合いの艇があるんだ。……そいつに会ってみるかい?」
 俺が頷いた事を確認して、ダリルは再び操縦桿を握る。
 こうして俺達は朝日を背にして艇庫――後のダリルの墓――へ帰還した。


 俺にとってこれが、ダリルとファルコン。そしてブラックジャックとの出会いだった。
410[訂正]:03/12/04 23:45 ID:LpxoYHFv
>>409
×自信たっぷりな笑顔を
○自信に満ちた表情を
411戴天の碑22:03/12/06 00:25 ID:SLhU6GjA

***

 ダリルとはじめて飛んだ空で遭遇した帝国空軍とは、その後も何度かニアミス
を起こしている。
 あそこまで派手なやり合いはなかったものの、この空が見えない線で区切られ
ている事に時として憤りを感じながら。それでも、俺とダリルは世界最速を追い
求める仲間として、あるいは好敵手として競り合っていた。
 ダリルと飛ぶ空にいつしか魅入られている自分の姿に気付いたのは、奇しくも、
あの忌まわしい“再会”の日だった。

***

「今度のテスト飛行は危険かも知れない」
 いつになく神妙な面もち――艇(ふね)の事になるといつもそうだったが――
で語るダリルに、俺は思うことを正面からぶつける。
「艇の限界まで挑戦するなんて無茶だ!」
 けれど、ヤツは俺の心配などに耳を貸す様子はなかった。
 ただ。

「私にもしもの事があったら、ファルコンはよろしく」

 そう言ったダリルの言葉に、他に意味があるとは思わなかった。
 ――もし、あの時。ダリルの考えている事を全て見通せていたら――。考えた
ところで仕方ないが、ふと立ち止まった時に浮かんで来る正直な思いだった。
412戴天の碑23:03/12/06 00:29 ID:SLhU6GjA
「バカ言え! ファルコンを頂くのはスピードでお前に勝った時だ!」
 ――それまでは、俺の前から逃さねぇ。

「いつまで後ろにいるつもり? 悔しかったらアタシの前に出てみな! ……そ
れとも、私のお尻がそんなに魅力的なのかしら?」
 そんなダリルの挑発にも、苦笑しか返せなかった。
 いつまで経っても、ヤツを越えられなかった事が悔しかったのは本心だ。だが
同時に、ヤツが俺の前にいるからこそ飛び甲斐があるんだと、どこかで感じてい
た事も確かだったからだ。
「さすがだな」
「これからが本番よ。記録を塗り替えるわ! 雲を抜け、世界で一番近くに星空を
見る女になってやるわ!」
 ヤツの言いぐさは、出会った頃と変わってはいなかった。
 いつでも風の中に身を置き、星を目指し、更なる高みを目指して飛んでいる。
 ダリルを追う俺と、蒼穹の彼方を求め飛び続けるダリル――俺がヤツの前に出る
のは、まだ先の話だと思った。
「日没までに帰れ! いつもの丘で落ち合おう!」
 その日、俺は一足先に艇庫へ帰還した。

 もう二度と戻らない女を、待ち続けることになるとは知らずに。
「魅力的なお尻」キター!

>もう二度と戻らない女
・゚・(ノД`)・゚・
414ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/12/07 08:29 ID:HMs1lXee
>>413
実はこの話、魅力的なダリルのお尻を書きたかっただけというのが本音にあったことは
ご内密におながいします。(w


セツダリ話は今回で一応終わります。
(´-`).。oO(それにしても、どうして残業中に限ってネタが思い浮かぶんだろう…)
と、言うわけでカプネタではない“飛空艇編”が、いつかどこかに続くかも知れません。
415戴天の碑24:03/12/07 08:37 ID:HMs1lXee
(前話は>>406-412。)
--------------------
                    ***

「あの時」
 誰に語る訳でもない。けれど自然に声となって出てくる思いがある。
「ヤツは、記録を塗り替えるつもりだったんだ」
 ――どうして気付かなかった?
 ヤツの言う「記録」を塗り替えるには、飛空艇の性能だけでは到底不可能だ。
 スピードを追求する者にとって、飛空艇の性能と並んでもう一つ重要な要素が
ある。それが航路だ。
 空には、風の助けを借りて一番スピードの出せる領域がある。だがその路の
一部に帝国領が重なっている事を知ったうえで、アイツはそこを突っ切ろうとして
いたのだろう。帝国領領空を飛ぶ事がどれだけ危険な行為かは、俺以上に身を
もって知っていた筈なのに。

『私にもしもの事があったら、ファルコンはよろしく』

 あの丘で、アイツを待っていた。
 俺はヤツの帰還を信じて疑わなかった――疑う余地なんてないだろう?
 だがその時、なぜか脳裏を過ぎったダリルの言葉で……俺はようやく、事態を
飲み込んだ。

 ――もっとも、それを受け入れるまでには随分と時間を要したが。

 あれから1年が経って、俺はようやくファルコンとの再会を果たす。
 地上に堕ちたファルコンの有様に、舌打ちして目を逸らしたくなる衝動を辛う
じて堪えながら、それでも壊れたその艇(ふね)を慎重に扱い、艇庫へ搬送する
作業は傍目で見るより楽ではあった。
 ファルコンに刻み込まれた無数の傷は、恐らく墜落直前に行われた銃撃戦の名
残だろうとは、すぐに察しが付いた。
416戴天の碑25:03/12/07 08:40 ID:HMs1lXee
(どこまでも頭がイカレてやがるぜ)
 操縦桿に触れながら、声には出さず皮肉を言ってやった――星を目指して、星に
なっちまうなんて間抜けにも程がある――そう、苦笑しながら。
 今となっては遺言となってしまったダリルの言葉に従い、俺はファルコンを整備し、
大地の下に眠らせた。

 ――俺がファルコンを頂くのは、スピードでお前に勝った時だ。

 ファルコンのいなくなった空を、俺はブラックジャックと共に駆けた。
 いつかお前に勝つために。
 俺は風の覇者になる。
 ――それでも、お前を超える事はできないかも知れないが。

『勝負に勝とうとしてる間は、勝てないもんさ』

 ――それじゃあ、俺はどうすれば良い?

『今、考えていることの逆が正解。だけどそれは、大きなミステイク』

 ――俺の前に、お前はいない。
 そのお前を超えるには……。

 ――そう言うことか? ダリルよ。

『じゃあ、私とサシで勝負して――勝ったら教えてやるよ。さっきの言葉の意味』

 ――…………。
 誰にも俺の前を行かせやしない。
 絶対に、だ。
417戴天の碑26:03/12/07 08:42 ID:HMs1lXee

 その誓いを、心に刻む。
 そして。

「 と も よ や す ら か に 」

 墓碑に刻んだその言葉は、俺達が空と共に生きた事の証。
 それを後に、戴天の碑と誰かが表したのだという。



 俺が一人でこの場所を訪れたのは、この日以来一度もなかった。



 薄暗い場所から出たせいか、穏やかに晴れ渡った青空が目に眩しかった。
 片方の手で顔を覆いながら、蒼空の彼方を見つめる。
 記憶と、多くの思いを呑み込んだ空の色は、どこまでも深く眩しいほど鮮やかな
輝きを放っていた。
 だが。
 今でもアイツはそこにいて、俺はこの空を飛び続けるだろう。
 世界最速を目指して。

                                       −戴天の碑<終>−
418雫夜 ◆sizukTVGK. :03/12/14 00:05 ID:YzubIZgz
バテンカイトス落ちしてました。

>>ドリルさん
『戴天の碑』完結乙でした。
>雲を抜け、世界で一番近くに星空を見る女になってやるわ!
この台詞、いい意味で頭がイカれてて好きです。
EDも空のように気持ちの良いものでした。多分、ダリル姐が最後まで艇と共に生き、
遂に『世界で一番近くに星空を見る女』になったからだと…私は星空を見た、と解
釈しているんですが。
それと20の夜明け描写…(゚д゚)ウマーです。朝焼けってこんなに綺麗なのかと。
次回はそろそろロクセリ? ティナケフカですかね。マターリ待ってます。

>>402
感想ありがd。
一人称あまり書いたことないので、投下してしばらくは_| ̄|○になってました。

このレスで多分400KB超えたと思うんですが、そろそろ次スレの話し合いになるんでしょうか?
マターリ進行なので、まだいいのかなとも思っているんですが。

保守兼ねて、また小ネタ投下します。オヤジネタ。
419父の背中・1:03/12/14 00:11 ID:YzubIZgz

■side Jecht

 こちらに来る前から、妻や息子よりもブリッツボールを優先していた自分だ。
 最後の決着をつける場所がブリッツスタジアムとは、皮肉なようだけれど、やはり
自分にふさわしいのかもしれないとジェクトは思う。
 人の気配や心情に敏感になったのは、『シン』に変化してからだ。
 入り口に背を向けて立つジェクトは、近づいてくる気配のなかに待ち望んでいた者
たちがいることに気づいて、思わずニヤリとする。
(来たか……)
 召喚士ブラスカのガードとして共に戦った男は、ジェクトとの約束を守って『夢のザ
ナルカンド』へ赴き、代わって息子を見守ってくれた。そして今、『シン』となったジェク
トの願いを受け、この場所へ息子を導いてくれている。年月を経たものの、男の心の
内は、ザナルカンド遺跡で別れる前と少しも変わらない。義に厚く、心根も熱い男だと、
改めて思う。
 そしてその傍らに在るもうひとつの心――反発と思慕が入り混じった複雑なもの。
(お前も変わんねぇなぁ)
 息子の心を認めて苦笑する。
 ブリッツに忙しく家に戻ることがあまりなかった父親に、七歳の息子は涙を堪えた目
で、かあさんがウチでないてるんだぞ。このクソオヤジ!! と罵ったものだった。そ
んないじらしい様子が可愛くて、絶対泣くぞ、ほら泣くぞ、と逆にからかってしまったけ
れど――そう、あれからもう十年だ。
 ブリッツボール中心の生活だったことも、ブラスカの究極召喚の祈り子となったこと
にも後悔はない。ただひとつの心残りは、息子の成長を傍で見てやれなかったこと
――親の愛情をいちばん必要とするときに、傍にいてやれなかったことだ。
420雫夜 ◆sizukTVGK. :03/12/14 00:13 ID:YzubIZgz
あと1レスで終わりますので…。
明日か明後日に完結させます。
421父の背中・2 ラスト:03/12/15 21:18 ID:ZvUV8jix
 嫌われていると思っていた息子の心の中に、自分への思慕を垣間見ることができたのが『シン』に
変化してからとは、何とも皮肉な話だとジェクトは思う。
(だから、お前に見届けて欲しいと思った)
 ブラスカの思いに共鳴して、スピラを守りたいと思ったこと。
 スピラに掛けられた、究極召喚では断ち切ることができない呪縛を自分の代で終わらせようとして
いることを。
 そしてそれを解くのが息子であって欲しいというのは、親友に託した最後の願いだ。
そんなの自分のガラじゃねぇけどよ、と照れ隠しでニヤリと笑う。
(まぁ最後くらいはな、ブリッツバカのダメオヤジでなくて、信念を貫いた父親の姿ってヤツを息子に
見せたいじゃねぇか)

 背後の足音が止んだ。時間か、とジェクトは目を伏せる。
彼らの中のひとりが一歩前へ踏み出す。何か言葉を紡ごうとして、しかしできないままにジェクトの
背をただ見つめていた。それがどんな目をしているのかが伝わってくる。
(絶対泣くぞ、てか…)
 こんな状況でも息子をからかいたい気持ちが浮かんで、ジェクトは苦笑する。
 短く息を吐いた。
「…じゃ、始めっか」
 ブリッツの試合を始めるかのように軽く呟いて、ジェクトはゆっくりと彼らを振り返った。

END
せつない話だ…
ここって全体的に切ない話が多い?







けどイイ(・∀・)!!
423ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/12/19 11:53 ID:7TxEvlJj
酒は呑んでもも飲まれるな。…いや、年末だしな。

>>419>>421
前回の祈り子小ネタ編もそうですが、(FF6で言うところの幻獣も?)
この辺の“脇役だけど物語の鍵を握る人々”辺りを掘り下げた話って
実はけっこう面白いんじゃないかと思ったり。
「自分の子どもに自分を追い越してもらいたい」って、複雑な親心が
よく現れてます。FF10のラスボス戦時はそんなことは全く考えてませ
んでした。(w …でも、カコイイ親父です。

>>422
FF全体的に切ない話が多いからでしょうか?

スレ違いで恐縮ですが、DQ3の町の人の台詞ほど
さり気さと切なさが一気に襲ってくる物はありませんですた。あの
日常に組み込まれる些細で、だけど抉られる様な一種の残酷さを
描いてるのって凄いです、ドット絵+テキスト+町の音楽だけで。
424愛の始まり、世界の終わり4:03/12/19 12:19 ID:7TxEvlJj
(前話は>>278-280。日常とは程遠い世界に暮らす帝国魔導士達の物語。…FF6)
---------------------------------------------------------------------
 けれども、そんなシドでさえ躊躇う一線があった。

 “幻獣からの魔導抽出と、魔導力の人への投与”

 人造魔導士を生み出すための理論はもはや完成している。
 先に行った臨床実験として機械への魔導注入――それは魔導アーマーと言う優秀な
結果を残している。
 残すは、ヒトと魔導の融合――そこから生まれる人造魔導士――それこそ、ガストラ
皇帝が望む物。
 シナリオは既に完成している、あとはそれを実行するのみ。
 けれど学者であるシドの探求心を阻む、たった一つの砦。

 それが、人として生きる者が持つ、良心の呵責。

「シド博士、分かっているはずです。皇帝が何を望んでいるのか……。その為なら、
金に糸目を付けるようなマネはしません」
 魔導研究においての権威、シド博士と対等に渡り合うのは若き日のケフカ。
 冷静な状況分析力を有する彼は、参謀役として皇帝の右腕となり帝国統治を支え
ていた。
 そこに加えて秀麗な容貌――この頃のケフカは、帝国内で羨望の視線を浴びる
程の男だった。

 そんな彼の人生を大きく変えたのは皇帝ガストラではなく、博士シドとの出会いだった。
 しかし、当時のケフカがそのことを知る由もない。
425愛の始まり、世界の終わり5:03/12/19 12:43 ID:7TxEvlJj

「カネなんぞに興味はない。私が求めているのは結果なのだよ、結果」
 苛立ったようなシドの口調に、ケフカは煽るように追い打ちをかける。
「結果だと言いながら、どうして行動しないのですか? 抽出は成功しているの
だから、あとは魔導注入だけでしょう」
 ケフカが言い終わらぬうちに、シドが口を開く。
「これだから素人は……。良いかケフカ、私は最良の結果を出したいのだよ」
 自分より年若の青年を見上げ、睨み付けると憮然とした口調で言い放つ。こういう
口出しが何よりシドの感に障った。
「いい結果を求めているのは皆同じです。皇帝もあなたも。……それに、僕もね」
 しかしそんなシドの視線に怯む事もなく、ケフカは薄く笑って見せた。
 そして、ケフカが次に口にした言葉は闇への誘い。

「もし被験体がいないというのなら、僕が協力しましょう」

 己にない力を欲した男。
 己の探求心に従った男。
 世界を掌中に収めんとした男。
 ……彼らの思惑をどこからか見ていたであろう三人の神の思し召しにより、彼らは
出会い、自らの手で破壊の力を選んだ。

 しかしそれは、世界の終わりに繋がるものではなかった。
 ケフカ自らが望んで得た力が、破壊へと向かった一番の理由――それが、彼女との
出会いだったとしたら……。
426愛の始まり、世界の終わり6:03/12/20 23:53 ID:pzbwTdfd
424[訂正]×先に行った臨床実験として機械への魔導注入
       ○臨床実験として先に行われた機械への魔導注入
--------------------------------------------------------
                    ***

 ケフカの申し出からおよそ半年が経った頃、彼は神の声を聞いたのだと言う。
――今にして思えば、まだ未完成だった幻獣からの魔導注入実験に見られる
副作用の一つ(幻覚症状)だったのかも知れないが――それでもまだ、彼は
人の心を手放してはいなかった。
「……力を感じますねェ。とても強い魔導の力を……シド」
 どこまでも冷たい声でケフカが問う。
「僕に、何か隠してやしませんか?」
 鋭い視線。
 全てを見抜き、そして貫くような。
「この研究所には多くの幻獣がおる。何某かの力を感じて当然だろう?」
 内心びくりとしながらも、シドは努めて平静を装う。一方でケフカの言葉は、
魔導注入実験が成功した事を示しているのだ。目の前の男を見ながら、シドは思
わず満足げな笑みを浮かべた。
「そうですかね……。隠しても無駄ですよ?」
「隠してなどおらんよ」
 全く崩れないシドの姿勢に、それでもケフカは釘を刺すように告げたのだった。
「ご自分の能力をあまり過信し過ぎると、痛い目を見ますよ?」

 彼の忠告は、この先起きるべくして起きた悲劇を暗示するものだった。
427愛の始まり、世界の終わり7:03/12/20 23:59 ID:pzbwTdfd

                    ***

 ――魔大戦。
 全てを焼き尽くしたその戦いが終わったとき、
 世界から「魔法」という力が消え去った。

 しかし、失われたはずの力を、生まれながらにして持っている者がいるという。
 そんな少女の存在を知ったのは、つい先日のこと。
 元々厳重な警備体制の敷かれた魔導研究所の中にあって、この研究棟の最上階は
さらに手厚く保護され、外部からのあらゆる侵入者を拒み、中にいた者が外へ出ること
さえも許してはいなかった。
 殆どの人間には存在さえも知られることのない、この場所を訪れた一人の男がいる
――それがケフカだった。
「ティナ」
 彼は優しい声音で部屋の中にいる彼女の名を口にする。
「……あ。?」
 その呼び声に反応し、少女は気怠そうに顔を上げた。焦点の定まらぬ瞳を向け
唇を動かし何事かを呟くが、言葉にはならなかった。
 彼と彼女の間を隔てる鋼鉄の檻。扉もなければ鍵もない――そんな場所に、少女は
押し込められていた。
「大丈夫?」
「…………」
 返事がない。意識を失いかけた少女の姿を見て込み上げてくる感情に、ケフカ
自身も戸惑っていた。
 ――なぜ、彼女だけがこんな目に遭う?
 心の中で反駁する言葉と共に、記憶は数日前へと遡る。
428愛の始まり、世界の終わり8:03/12/25 12:47 ID:V1D2bBDm



『研究所で事故が起きたとの報告です』
 ケフカの元へ届いた第一報はたったそれだけで。
『つきましては事態を収拾させるべく、各部隊からの派兵を求めるものです』
 魔導研究所からの応援要請――嫌な予感はしたのだが。


 駆けつけた先に広がるのは、常人ならば目を覆いたくなる惨状だった。
 辺りで燻っている炎と、あちこちから上がっている煙の中に転がる夥しい量の
死体。そのほとんどは黒く焼けこげ、原形をとどめていないほど爛れている物も
あった。
 鼻をつく嫌な臭い。――戦場ならまだしも、帝都にあってこの有様は何だ――
ケフカは己の目を疑いながらも、その中を進んでいく。
「何でしょうねェ……。あまりいい気分はしませんよ」
 面白くない、とでも言いたいように。
 ゆっくりと、周囲の様子を注意深く観察しながら歩みを進める。一体何が原因で
このような光景が展開されるに至ったのか。眼前に広がる光景そのものへの嫌悪より、
むしろそうなった経緯が解らない事への苛立ちが、彼の表情を険しくさせていた。
「シドの作ったオモチャの仕業にしては、ずいぶんとデキの良いことで」
 嘲笑しながら、足元に転がった兵器の残骸を蹴り上げた。
「……そうでしょう、シド?」
 この場にシドの姿はない。が、どこからかこの惨状をのぞき見ている事を、まるで彼は
知っているのだと言うように笑った。
 しかし、その声に返答するものはなく。
429愛の始まり、世界の終わり9:03/12/25 12:56 ID:V1D2bBDm
 やがて前方にうずくまっている人影を見出した――この状況にあって、生存者がいるとは――内心で驚きながらも、足は止めない。
 ケフカの視界が、煙の中から完全にその姿を捉える。
「……女?」
 珍しい髪の色をした少女だった。
 細い腕で自身を抱くようにして、その場にうずくまっている――大人でさえ後込み
するこの状況下では無理もないか――躊躇わず、彼女の方へ歩み寄った。
 途端。
「……いやっ!……」
 まだ幼さの残る声が響いた。どうやら近づく自分のことを拒絶しているようだ。
 しかし、そんな声は聞こえていないとばかりに彼女の身に手を伸ばす。
「…………!」
 ふわりと少女の髪が舞い上がった。周囲の空気が瞬間的に熱を帯びたかと思えば、
次の瞬間、迸る炎が伸ばした手に襲いかかる。
 咄嗟に手を引きながら、ケフカは訝しげにその少女を見下ろした。
(……魔導……ということは、この娘も……)
 自分と同じか、あるいは――。
「大丈夫、取って食ったりはしませんよ」
「…………」
 何も言わず、ただケフカを見上げる少女の瞳。
 その目の前に、ケフカは遠慮なく手を差し出す。ほんの一瞬、彼女の肩が震えたのが分かった。
「立てる?」
「…………」
 依然として言葉を発さず、ケフカを見上げている彼女の瞳に怯えの色が見て取れる。
 それは目の前のケフカに向けられたものなのか、それとも自分自身に向けられたものなのかは分からない。
 少女は俯いて、それでもなにかを訴えようと口を動かす。
(…………)
 聞こえない、声。
「どうしました?」
 再び差し出されたケフカの手を拒むように、周囲は炎に包まれる。
「!!」
 魔導を注入された者だからこそ分かる、両者の持つ力の圧倒的な差。
それを見せつけられた気がして、ケフカは僅かに眉を顰めた。
430愛の始まり、世界の終わり10:03/12/25 13:04 ID:V1D2bBDm
「……や……やめて。お願い……!」
 顔を上げ、少女は遂に泣き叫ぶような声をあげる。
 同時に、周囲を駆けめぐる炎の勢いが一気に増した。
(まったく厄介な事になりましたねェ……シド、どうする気ですか?)
 寸前で炎をかわし、ケフカはとっさにシェルを唱える――それでも、急場しのぎ
でしかないが――頭の中を整理するには充分な時間が稼げるだろう。
(魔導アーマーの暴走かと思ったんですが、そうじゃないみたいですね)
 道理で、シドにしてはデキが良すぎると思いましたよ。と、そんな皮肉を呟き
ながら、ケフカは満足げな笑みを浮かべた。
 目の前にいるこの少女が、自身の力を制御する事ができずにこの惨状を作り
出した。欲していた答えを見つけたことで、心底スッキリしたと言わんばかりだ。
「原因さえ分かればあとはカンタンですよ」
 ケフカはまるで子どものように、にっこりと笑うと、躊躇いもせず手にした短剣の
柄を少女に振り下ろした。
「……っ!?」
 短い悲鳴と共に、その場に倒れ込む彼女を支えてやる。
 彼女が気を失った途端、周囲を巡っていた炎は一気に止んだ。

 ――後に語られるティナの『惨殺劇』は、こうして呆気なく幕を下ろしたのだった。
431愛の始まり、世界の終わり11:03/12/27 00:08 ID:z1qEw4Fk


 あれからずっと、彼女はこの檻の中に閉じこめられている。
 ケフカは足繁くここを訪れ、出来る限り彼女に声を掛けてやった。会話が成立
することは殆どなかったが。
「もう少し待ってて下さい、今すぐ外へ出られる様にしますから」
 短い対面を果たした後、まるで反応のないティナに言い残して去っていく。
 ほぼ毎日、それが日課となっていた。


 帝都領内、しかも研究所で起きたこの惨劇は、魔導国家完成を目指すガストラ
帝国の中枢に大きな波紋を呼んだ。
 今や伝承でしかなくなった『魔大戦』の悲劇を、現実に肌身で感じた者達の中
には、自国の魔導政策を危惧する声も当然強くなる。
 将軍レオもその中の一人だった。
「皇帝、よくお考え頂きたい。……先の魔導研究所で起きた出来事も、まだ未熟
な技術を用いた結果、起きたもの。我々の手に余る力を、保持すべきではありま
せん」
 皇帝を前に、レオはそう進言する。
 信義を重んじる根っからの武人だった将軍レオは、皇帝ガストラの『理想』に
理解を示し、これまで付き従ってきた男である。そんな彼の言葉を――心の中で
は冷笑しながら――従順な家臣の申し立てとして耳を傾けていた。
 一通り聞き終えた後、背もたれから僅かばかり身を起こして。
「しかし、物事が成熟するには段階を踏まねばならない。今回の失敗を教訓とす
るならば、その限りではないと思うが? シドならばそれを成せると、儂は信じ
ておる。……それとも、お前はシドの裁量を疑っているのか?」
 と、指摘してやる。
「いえ、そのようなことは……」
432愛の始まり、世界の終わり12:03/12/27 00:10 ID:z1qEw4Fk
 シド博士の魔導研究の成果はレオもよく知っている。それに、この様な言い方
をすればレオは反論できないと言うことを、長い付き合いの皇帝は熟知していた。
 皇帝曰く、レオは人間に対して甘いのが最大の欠点なのだ。
「しかしながら皇帝。今回の魔導研究所の一件に加えて、魔導注入実験を受けた
ケフカの事もあります。……私は」
「ケフカへの魔導注入は成功しておるではないか。現に彼は立派な魔導士として
よく働いてくれておる」
 なおも続くレオの反論を遮り、皇帝は言い切った。
 確かにケフカの魔導士としての成長には目を見張るものがある。が。
「彼は……ケフカは、以前とはなにかが違っている様に感じます」
「魔導士として、目覚めたからだろう?」
「いえ、そのような事ではなく……」
 更に言い募ろうとするレオの言葉は、慌ただしく開けられる扉の音と、無礼な
振る舞いをする彼に、またも遮られてしまう。

「皇帝〜、ボクから提案があるんだけどさ、いいかな?」

 つい今し方、レオが違和感を感じると言ったケフカが、断りもなく部屋に入って
来たのだ。
 しばし呆気にとられたように彼の姿に見入るレオだったが、構わずにケフカは
話を切り出す。
「あのお嬢ちゃんにこれをプレゼントしたいんだよね〜」
 そう言って取り出した冠のような髪飾りを見せる。
「女性に贈り物とは、珍しいことを考えることもあるものだな、ケフカよ」
 揶揄するような口振りだったが、ケフカの手にしている物に皇帝は興味を示した。
「これはボクの特製なのだ! これをあのお嬢ちゃんにつけてあげれば、あんな
不愉快な思いをしないで済むようになるね、間違いなく」
「……それはどういうことだ? ケフカ」
 訊いたのは皇帝ではなくレオだった。
433愛の始まり、世界の終わり13:03/12/27 00:20 ID:z1qEw4Fk
「キミみたいな凡人には分からないだろうけど、この輪をはめさせると、その人間の
思考をコントロールできるんだよね」
「そして、意のままに彼女を操ろうと?」
 明らかに表情を歪めたレオの顔を面白そうに眺めながら、ケフカは頷いた。
「人道的ではないな」
「いーじゃん。いちいち煩いな」
「しかしレオよ。ケフカの話が本当だとするならば、お前の懸念も解決するのでは
ないのか?」
 皇帝の指摘はもっともだった。
「それに、万が一彼女の力が暴走してもボクなら止められる。なんたって同じ
魔導士だからね」
 それでも首を縦に振ろうとしないレオに、とどめを刺すような言葉を放った。
ついにケフカに反論する術を得られず、レオは沈黙した。
「……満場一致。で、いいかな?」
「よかろう。お前の好きなようにしてみるが良い」
「どうも」
 形ばかりの礼だけして、ケフカはさっさと部屋を出ていった。
434愛の始まり、世界の終わり14:03/12/28 00:01 ID:EfFXe3w2


 いつものように、ケフカはその足で彼女の元へ向かう。
 相変わらず厳重な警備と、何重にも施されたセキュリティーシステムをくぐり
抜け、その檻の前まで辿り着いくと立ち止まり、心からの笑顔を浮かべながら声を発した。
「やあ、元気かな?」
 しかしというか、やはりというか。ティナからの反応はない。
 それでも、慣れたものだと言わんばかりに一人話の先を続ける。
「……ここから出られるよ、おめでとう」
「!」
 この言葉に、ゆっくりとした動作でティナは顔を上げた。
「恐いのかい?」
「…………」
「大丈夫、誰もキミの事を傷付けようとは思ってないから」
 そうじゃない、と言うようにティナは首を振る。
 彼女の挙動を横目に見ながら、ケフカは目の前の檻に向けて精神を集中させる
と、数度にわたって魔法を唱えた。
 急激な温度変化で金属疲労を起こしたその檻を、最後は自信の手で破壊すると
強制的に出入り口を創り出し、中へ入る。
 手の甲にできた傷を気にする様子もなく、ケフカはティナの前へ歩み出ると、
少し早口になりながら告げた。

「もうボクにも時間がないんだ。……行こう」

 座り込んでいるティナに向けて手を差し伸べる。
 まだ、理性のあるうちに彼女を救ってやりたかった。
 それは同時に、徐々に意識を浸食し始めていた“彼ら”の存在に気付いた
ケフカにとっての、賭でもあった。
 このまま、彼女が拒むのならば仕方がない。
435愛の始まり、世界の終わり15:03/12/28 00:03 ID:EfFXe3w2
「…………」
 しばしの沈黙。
 ティナは差し出された手を見つめたまま、身動き一つしなかった。
 拒むでもなく、縋るわけでもない。ただ、彼の手を見つめているだけ。
 やがて痺れをきらして、ケフカが口を開く。

「もう二度と、あんな思いはしたくないだろう? ……キミがその力を持ってい
る限り、この国はキミを逃してはくれない。だからせめて――」

 言いながら、無理やりにティナの両腕を掴みあげた。

「キミがツライ思いをしないように、してやるよ」

 抵抗するティナを半ば押し倒すようにして、ケフカは持っていた輪をティナの
頭にはめてやる。
 『操りの輪』――つけた者の思考を完全に抑制し、他者の意のままに操る力を
備えた、世界に唯一の物であった。

「……、……せめて、楽、に」

 消え入るような声で呟きながら、ケフカは瞼を閉じる。
 まるで謝罪するかのように俯いたその動作に、ティナは重い口を開いた。
「あなたも……この力を……?」
 驚いたような表情は、恐らく。
「わたしと、同じ……?」
 初めて出会う人だったから。
 自分を押さえつけている手を見やる。はじめて彼が傷を負っている事を知り、
ティナは自然とそこに触れた。
436愛の始まり、世界の終わり16:03/12/28 00:05 ID:EfFXe3w2
 あたたかな熱と光が溢れてくる。
「…………」
 詠唱など知らないその魔法は、彼女が初めて使う事になった治癒魔法・ケアル。
「……? ああ」
 魔導という力を持つ者が知る、苦しみ。
 自らの内に眠る異質な力に対する、怯え。
「あ、りが……とう」
 それを得た経緯こそ違えど、彼らは互いに同じものを持っていたのだ。

 ケフカが自らの意識を手放し、彼らに体を譲り渡す事になったのは、それから
間もなくしてからだった。

「記憶も感情も、無くしてしまえば大した事はない。それがある為に苦しむぐら
いなら、ない方がいいんだ……。これから先に起きる事は、思い出さなくていい」
 思い出さなくていい。
437愛の始まり、世界の終わり17:03/12/28 00:06 ID:EfFXe3w2

                    ***

「ここは……?」
 彼女が目覚めた場所、そこは炭鉱都市ナルシェの一室だった。
 傍らに立つ老人が、彼女の回復に気付いて近づいてくる。
「ほう、操りの輪が外れたばかりだと言うのに」
 ――あれから、何年の月日が流れていたのだろうか――それは今の彼女の知る
ところではないし、そんなことを考えている余裕もなかった。
「頭が…いたい……」
 これまでに味わったことのない痛みに苛まれ、ベッドの上で半身を起こしてい
るのがやっとだった。
「無理をするな。これは『操りの輪』。これをつけられた者の思考は止まり、人
の意のままに動くようになる」
 老人は、手に持つそれを見せながら言うのだが、全く実感が沸かないし、理解
もできない。
「なにも思い出せない……」
「大丈夫、時間が経てば記憶も戻るはずじゃ」


 ――思い出さなくて良い。


438愛の始まり、世界の終わり18:03/12/28 00:08 ID:EfFXe3w2
「記憶をなくした……俺は……見捨てたりしない……必ず守ってやる!!」
 ナルシェ脱出の手助けをしてくれた彼との出会いから、彼女の旅は始まった。
 記憶を、取り戻す為の旅が。
 それは同時にティナ・ブランフォードが生まれた瞬間でもあった。


 ――記憶があるために苦しむぐらいなら、ない方がいいんだ。


 ロックは、記憶を失くした彼女を守ると言った。
 しかし。
 記憶は人を傷付ける刃にもなり得る事を彼自身、痛いほどよく知っていた。
 だからこそ、ティナの前でそう宣誓したのだろう。


 『操りの輪』が、一方で彼女を守っていた事を知る者は――どこにもいない。
 そして思い出される事のない記憶は、ティナと仲間達の手によって永遠に
封印されたのだった。


 瓦礫の塔、光も届かぬ奥深くに。


                         ――愛の始まり、世界の終わり<終>――
439ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :03/12/28 00:18 ID:EfFXe3w2
 ・         ・   
ケフカ       ガストラ  と、右図の様な話を書いてみたかったんですが…。
               (『操りの輪』=『ティナ』かも知れませんが)
      ○        ケフカとロック、ガストラとレオが全く対称の位置にいる様な…そんな話を。
    操りの輪      最後に。
               「帝国兵50人を3分で皆殺し」(バナン@リターナー本部談)
 ・         ・    エピソードですが、もしかしたら『操りの輪』登場後
レオ        ロック   かも知れません。申し訳ありませんですた。

FF6クリアから丸一年。気が付けばほぼ6ネタばかりを長々と書かせて頂いておりましたが、
お付き合い下さった皆さん、他シリーズの様々な観点からのSSを書いてくれた皆さん、
そして今このレスを読んでいる方、本当にありがd。

良いお年を!
ハハーっ、こちらこそありがとうございましたm(_ _)m
441雫夜 ◆sizukTVGK. :03/12/29 02:24 ID:mA2lB+B8
2週間ぶりになるのか…。

>>ドリルさん
まずはティナケフカ乙でした。でスイマセン、ちょっと叫ばせて下さい。
レオ将軍キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
ロクセリの次に好きなキャラなんです。敵だけど、最後まで自分なりの信念で生きている彼が好きでした。
プレイ中は、後に仲間になると信じていました…ケフカメ。・゚・(ノД`)・゚・。
>人間に対して甘いのが最大の欠点
ガストラさんのおっしゃるとおりで、確かに身を滅ぼす原因であったと思いますが、それがレオらしいというか。諸刃の剣みたいな。
実はレオ将軍ネタきぼん、とドリルさんにいつかリクエストしようと思っていました。今回書いてみるテスト。

さて今回は>>422さんの「せつない」とのレスを受けて、自分的にせつなくないかも、と思った話を投下します。
次スレにしようと思っていたベアトリクスネタ。
442君が誰よりも愛しくて・1:03/12/29 02:27 ID:mA2lB+B8
「――話があると伺いましたが」
「じっ、実は…」
 アレクサンドリアの、いや大陸随一と言われるほどの剣の使い手である女将
軍の前で、スタイナーは言葉を詰まらせていた。
(今日は、暑い)
 アレクサンドリアは春を迎えたばかりで、実はまだ肌寒い。暑さの理由が着
込んでいる鎧のせいだけではないことを、スタイナー自身が一番よく知ってい
た。
 先代の女王から賜った『セイブ・ザ・クイーン』が、ベアトリクスの腰でかちゃり
と音を立てる。柄に触れる指先に苛立ちが見えて、それがまたスタイナーを焦
らせた。
「今日は姫様の護衛でトレノに向かうのだったな。す、すまぬ。すぐに終わる」
「…スタイナー。ガーネット様はもう『陛下』でいらっしゃいます。呼び方を改める
ように、とわたくしが再三注意しているのにもかかわらず、あなたは――」
 ふぅっと呆れたようなため息をひとつ吐いて、それから、とベアトリクスは続けた。
「わたくしたちが城を離れている間は、あなたとあなたが率いるプルート隊にアレ
クサンドリアの治安がかかっています。くれぐれも城内の警備を怠ることのない
ようにお願い致します」
「承知した」
 きびきびと指示を与えるベアトリクスの様子が、スタイナーには眩しい。しかし
仕事熱心な恋人が愛しい一方で、何だか淋しいのも事実だった。
(オッサンたちさ、まだ何も進展してないのか)
 先日イーファの樹から生還し、ガーネットと再会を果たしたジタンは、そう言って
笑った。離れていた時間がスタイナーとベアトリクスのそれよりも長かったのに、
アレクサンドリアに現れたジタンは一瞬でガーネットとの距離を狭めた。
当面の間、我々はガーネット様を補佐していくことで忙しい、と話したスタイナー
に、ジタンは意地の悪い笑みを浮かべて耳打ちした。
(あれだけの美人将軍だからな。そんな悠長なこと言ってる間に、ベアトリクス
――誰かに取られるぜ?)
443君が誰よりも愛しくて・2:03/12/29 02:29 ID:mA2lB+B8
 今日ベアトリクスに告げようと決めたのは、けしてジタンに炊きつけられた
からではない――少なくとも、スタイナーはそう思っている。
色々考えているうちに喉も渇いてきた。無言になったスタイナーに、ベアト
リクスが怪訝そうに声を掛ける。
「スタイナー、大丈夫ですか?」
 仕事中の顔だけれど、心配そうに自分を見る瞳は、間違いなく恋人を気遣
う眼差しだ。だが勤務時間中に全くもって勤務時間外なことを告げたら、ベア
トリクスは怒るだろうか――それとも微笑んでくれるだろうか。
「ベアトリクスっ!!」
 意を決してスタイナーは口を開いた。突然の叫び声にベアトリクスが唖然と
した表情でこちらを見ている。驚かせてすまない、と一言囁いて、スタイナー
は続けた。
「私と、そのぅ…ええと…これから先も、ずっと一緒にいてくれぬか」
「は…?」
「だから私と結婚して欲しいのである!!」
 最後はやけになって叫んだスタイナーは、しまったとばかりにベアトリクスの
顔を見る。女将軍の表情は呆然としたままで、しかし目元には見る間に盛り上
がるものがあった。
「ス、スタイナー…わたくし、は…」
 それは白い頬を伝い、鮮やかな新緑へ色を変えた地面に零れ落ちる。
ベアトリクスが泣いた――怒られる、と身構えていたスタイナーには意外な反
応だった。
 恋人の濡れた瞳が、真っ直ぐに自分を見る。
「あなたはよろしいのですか? わたくしはただ剣を振るうことしかできない女で
す。家事などしたこともないわたくしで、あなたは本当に――」
「そういう君がいいのだ。私は戦う君の姿に惹かれたのだから」
 でも、と言い募るベアトリクスの肩を、スタイナーは腕を伸ばし、少々強引に引
き寄せた。
勤務時間中の姿は自分以上にたくましいのに、腕の中にいる恋人の身体は、
折れそうなくらいほっそりとしている。
「嬉しい」
 髪を撫でるスタイナーに甘えるようにして、ベアトリクスは頬を摺り寄せた。
大陸随一の女将軍の、こんな女性らしい面を見ることができるのは自分だ
けなのだ――その事実がスタイナーをより幸せな気持ちにさせた。
 訊くまでもないと分かっていながらも、返事は、と改めて問うたスタイナーに、
ベアトリクスは小さく頷く。
それはまた、スタイナーにとって新たな幸福を噛み締める瞬間でもあった。

END

(注)スタイナーの自称、ベアトリクスの言葉遣いなど、全てにおいて自信ないです…i||i_| ̄|○i||i スマソ
445名前が無い@ただの名無しのようだ:03/12/29 12:03 ID:dYoSTzYD
447名前が無い@ただの名無しのようだ:04/01/02 15:48 ID:mp0AIaoB
小説書きたいです…凡人が参加しても良いんですか?
448447:04/01/02 15:49 ID:mp0AIaoB
あ、ageてしまった…逝ってきます
ベアトリクスは結婚しないよ。未婚の母の道を選ぶよ。
450じさくじえん:04/01/02 17:26 ID:Yb48qvEE
450ゲット
今年も良い小説が読めます様に。

>>442-444
ベアトリクス、カワイイ!!

>>447
聞くまでもなくおkと思われ。…FFシリーズなら

次スレ準備はどうなりまつかい?
452447が新作書いてみますが:04/01/04 17:09 ID:52t+9msc
※最初に言っておくとFF7物だけどACの設定は無視していますので脳内補完して下さいね
「FINAL FANTASY Z ATONEMENT」第1話:生命
セフィロスはクラウド達の手によって倒された。その時同時に、セフィロスの分身たちも世界各地から消えた…はずだった。
「…何故…私だけが生きている…?」ライフストリームの中を漂いながらセフィロスは自問した。といっても、彼はかつて
「本物」が作り出した分身の内の一人だった。「他の分身は皆消えた…何故、私だけが残った…」
あの戦いから1年。クラウドと旅をした仲間達はそれぞれ故郷へと、あるいは自らが居るべき場所へと帰っていった。
クラウドとティファはミッドガルのスラムで7番街の復興に尽力していた。今やほぼ以前の姿を取り戻しつつあるスラムは
以前以上の明るさを感じさせる。「神羅の連中は今どうしてるんだろうな…」何だかよく解らない物の残骸に腰かけ、
クラウド・ストライフが呟いた。金髪に良く映える蒼い瞳は昔より色が薄れた気もする。
セフィロスが―ジェノバが居なくなったから。クラウドはそう解釈していた。
新生「セブンスヘブン」は毎日繁盛している。店員はティファ以外にスラムの住人が数名と何故かクラウドも登録されていた。
今はもう「アバランチ」のアジトでも何でもない、普通の飲み屋であった。
神羅が無くなってテレビもラジオも止まっているため、スラムの住人達にはミッドガルで何か起きてもそれを察知する術が無い。
丁度、ミッドガルのある場所で異変は起きていた。
453FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/04 17:35 ID:52t+9msc
ミッドガル6番街。神羅が居ない今建設中で放置されて不良や犯罪者の溜まり場と化した、もう一つのスラム。
その魔洸炉跡で爆発が起きた。しかし住人は「不良が酔って手榴弾でも投げたんでしょ」といって気にしなかった。
だが、これは事故ではなかった。数日後、自治体の会長を務めるリーブがこっそり現場に行った際、そこであるものを見たのだ。
遥か下方に輝くライフストリームを見つめ、一人の男が何かぶつぶつ言っている。リーブは耳を澄ませた。
「…う言う事か…ククク……は…人…の…復讐を…」ライフストリームの音が大きくて男が何を言っているのか
よく聞こえない。だが、明らかに不審人物だ。「ちょっと、アンタ…そんなところに居たらあぶな…」
次の瞬間、男は居なくなっていた。リーブは目の前の光景にキョトンとしていた。
セフィロスはまだ漂っていた。当ても無く、ただ疑問だけを抱いて。
そんな時、ライフストリームの中に秘められた無数の投影(ヴィジョン)の中にセフィロスはあるものを見つけた。
「これは……宝条?」宝条が研究室で大きなカプセルを見つめ、笑っている。だが、宝条はもう死んだ。これは過去の映像なのだ。
「何を造っている…何の為に…?」その時、澄んだ声が聞こえた。「それは、私が彼に捕まった時に見た物…」
セフィロスは声の聞こえたと思しき方を見た。「お前は…」ライフストリームの中に居るのだ、現実か夢か確かめる術は無かった。
だが今セフィロスの前には、確かにエアリス・ゲインズブールが居た。
454FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/04 17:59 ID:52t+9msc
「…私が…水の祭壇で殺した…古代種か…どうした?一人だけ取り残された私を嘲りに来たのか?」
エアリスはかぶりを振った。「あなたがまだ生きている理由は…失敗作だったからよ」
それを聞いたセフィロスは目を閉じた。「…まぁ、ライフストリームの一部となったお前が言うのなら間違いは無いのだろうな…
しかし、失敗作とはどういう意味だ?」
「なんと言えばいいのか…あなたは、分身の中で唯一人間らしい感情を持って造られた存在。でもセフィロスから見れば
感情なんて邪魔なだけ。」エアリスの言うセフィロスとは「本体」の事だろう。
「セフィロスだって人間の部分がある…異なるいくつもの要素から成り立っているの。だから、セフィロスがいらないと
思った物を捨てるには『分身として切り離し、そのまま封印する』しかなかった。分身はどれも、セフィロスの要素を
一つづつ分離したものだった…あなたは、セフィロスが切り離した『感情』を持ってる」
今ここに居るセフィロスは失敗作、ゆえに本体からのコントロールも切り離されていたと言うのだ。
「…それでも…私には生きる意味も、目的も無い。」エアリスはまた首を横に振った。「あなたは今、世界に何が
起きようとしているのか知らない。この投影を見て」エアリスは一つのヴィジョンを開いた。そこには、今起きている
事が映し出されていた。
鈍い灰色の髪を後ろで束ねた男が、船の上に居る様だった。「彼が、宝条博士が遺した負の遺産…」
455ドリル非装備の名無し@帰省中:04/01/04 23:12 ID:d/HcKqIF
>>442-444
漏れはベアトリクスよりもスタイナーの心中描写が繊細で好きな話ですた。
鎧…そりゃ暑そうですが(w、それより彼の思いの方が熱かった。
不器用に熱い男。そんなスタイナーがカコイイ!!
(以下余談)
人徳者レオ将軍話……実は「ガストラ皇帝につき従う理由」
と、SSよりは考察の色が強い物がPC内に眠っていたり。
個人的に王国・帝国側の方が萌えたり(w

>>452-454
セフィロスに捨てられた「感情」が消えずに生き残ってるって言う設定、
そう言うのなんか好きです。(FF7本編中のセフィロスの行動理由は少し置いて)
続きが楽しみsage
456雫夜 ◆sizukTVGK. :04/01/05 20:59 ID:3JA0DIvi
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
…今日から仕事始めです(´・ω・`)

>>447=452-454
感情を持った人間らしいセフィロス…興味深いですね。
本体(=『負の遺産』?)がこれから何をしようとしているのかも気になります。
タイトル『償い』だし…。
そしてエアリス萌え(*´Д`*)ハァハァ

>>449
確かに結婚より未婚のタイプかも>ベアトリクス

>>451
感想ありがとです。カワイイと言ってもらえて嬉しいです。
次スレ準備…今430kbですね。始めますか。
とりあえずテンプレ案貼ってみます。

>>ドリルさん
帰省中だったんですね。字数制限かつお忙しい中レスありがとです。
コテにワロタ>非装備…すみません_| ̄|○
PCの中から蔵出しキボンヌなレオ話、期待してます。

457雫夜 ◆sizukTVGK. :04/01/05 21:24 ID:3JA0DIvi
文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎!
皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン
=======================================================================
 ※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。
 ※sage推奨。
 ※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。
 ※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。
 ※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。
=======================================================================

前スレ  FFの恋する小説スレPart2
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1060778928/l50

前々スレ FFの恋する小説スレ
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/l50

初代スレ FFカップルのエロ小説が読みたい
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1048776793/l50
*廃スレ利用のため、中身は非エロ

>>2-10のどこかに詳細、及び関連スレッド
458雫夜 ◆sizukTVGK. :04/01/05 21:29 ID:3JA0DIvi
【お約束】
 ※「馴れ合いウゼー」などの煽りは、新スレになる度にあるのでスルーしましょう。
 ※18禁なシーンに突入したら、エロパロ板に書いてここからリンクを貼るようにしてください。
  その際、向こうに書いた部分は概略を書くなりして見なくても話はわかるようにお願いします。
【推奨】
 ※長篇を書かれる方は、「>>?-?から続きます。」の1文を冒頭に添えた方が読みやすいです。
 ※カップリング・どのシリーズかを冒頭に添えてくれると尚有り難いかも。

 初心者の館別館 http://m-ragon.cool.ne.jp/2ch/FFDQ/yakata/

◇書き手さん向け【以下は千一夜サイト内のコンテンツ】
 FFDQ板の官能小説の取扱い http://yotsuba.saiin.net/~1001ya/kijun.html#kannou
 記述の一般的な決まり http://yotsuba.saiin.net/~1001ya/guideline.htm
◇関連保管サイト
 FF・DQ千一夜 http://www3.to/ffdqss
◇関連スレ
 FF・DQ千一夜物語 第413夜
 http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1048322547/l50
◇21禁板
 ★FINAL FANTASY 壱〜壱拾&拾壱エロパロ小説スレ
 ttp://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1048756173/1
 FF・DQかっこいい男キャラコンテスト第6幕
 ttp://www2.bbspink.com/test/read.cgi/801/1042383689/1-2

 どうしても議論や研鑽したい方は http://book.2ch.net/bun/
 挿し絵をうpしたい方はこちらへどうぞ http://ponta.s19.xrea.com/

◇専用ブラウザー http://www.monazilla.org/
◇トリップ http://www.2ch-trip.com/
459雫夜 ◆sizukTVGK. :04/01/05 21:44 ID:3JA0DIvi
テンプレ案貼ってみました。前々スレのアドレスミスった予感…i||i_| ̄|○i||i

関連スレの◇カップリングスレや◇リレー小説スレに詳しくないので、そちらに詳しい方にまとめを
お願いできたらと思います。

案を作るにあたって>>311-332の辺りを読み直し、※己が萌えにかけて〜と【お約束】をちょっと改変
してみました。
ですが、既に多くの方が言われているように「煽りに反応しなければいい」のであって、それをしつこく
書く必要もないのかなと思ってもいますが。

というわけでツッコミきぼんぬ。
460ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :04/01/05 23:30 ID:ySF04S9Y
“狭いながらも落ち着く我が家”を空けていたら、年まで明けた。
……と、いうわけで今年もほぼ6ネタだと思われますが、飽きるまで続けさせて頂こうかと思います。
今年がおまいらにとって良い年になると(・∀・)イイ!……な。

>>457-458(テンプレ案)
テンプレ案なんですが、そんなにしつこく書かなくても良いんじゃないかと思います。
……まぁ、主に反応した張本人が<<漏れ>>なので、発言権はないものと思いますが。(w
【お約束】の一行目は削ってもいいものかと。

ただ、帰省して正月の宴を見て思った事は。

「 踊る阿呆に見る阿呆 」

うん、この精神(ノリ)なんだろうと思う。(この言葉自体は阿波踊りですが。)

「 萌える阿呆に見る阿呆。 」

漏れらは何かに萌えている。アホだと煽られても、これは仕方ない。
だったら萌えた者勝ち。それで(・∀・)イイ!じゃないか。
……良いと思うよ、漏れは。(w

テンプレ案にツッコミ入れられるとしたらこの辺です。あとの関連スレは漏れも詳しくないので
スマソ。
461おまもり1:04/01/05 23:34 ID:ySF04S9Y
と、言うわけで新年早々ヤパーリFF6ネタしかありませんでした。
今年の干支にちなんで(…ませんが。)主役はモグ(の小ネタ)
-------------------------------------------------
 ラムウが教えてくれたのは、人間の言葉。
 ――だから、みんなと出会って旅をする事ができた。
 みんなが教えてくれたのは、戦い抜く強さ。
 ――だから、ケフカのいる場所までたどり着けたんだ。
 ケフカが教えてくれたのは、仲間を失うことの悲しさ。
 ――だから……。



 だから?


 
 ティナの腕の中で、愛くるしい表情をたたえる彼の姿は周囲に笑顔を運ぶ。
「あったかいクポ〜」
 真っ白な毛に覆われた――まるでぬいぐるみのような――彼に羨望の眼差しを
送っていたエドガーがふと漏らす。
「ああ、私もモーグリに生まれてくれば良かった。なぁ? ロック」
「だよな。俺もティナにふかふかされ……、……」
 エドガーとは反帝国の地下活動を通して友人と呼べる仲にあったロックは、彼の
意見に素直に賛同したまでだった。
462おまもり2:04/01/05 23:35 ID:ySF04S9Y
 が、その言葉を途中で呑み込まざるを得なかったのは、背後に迫る生命の危険を
感じていたからである。
 小さな異物感と大きな危機感を背中に感じながら、さらに冷たいセリスの声が
浴びせられる。
「あら、どうしたのロック? 何か言いたかったんじゃないのかしら?」
 先を促す言葉とは裏腹に、彼女の手に握られた短刀はロックの背にあてがわれた
まま動かない。
「まあ、セリス落ち着け。そう考えるのは男としての宿命だ」
 さらりと言ってのけるセッツァーの言葉は、けれど何のフォローにもなっておらず、
結果的にロックを窮地へ追い詰めることになる。
「セッツァー。それは言い過ぎだ」
 窮地に立たされた友人を救うべく、エドガーが間に入る。自分で話を振っておきながら、
後のフォローも忘れないというきめの細かさは、さすが一国の主となるだけの器なのだろう。

「ティナの腕に抱かれたいと思う前に、押し倒すだろう。ロックならば」
「まぁ、その方が手っ取り早いか」

 そんな冗談を交わしながら笑い合う三者に、この直後セリスの裁きが下ったの
は言うまでもない。
 以下は、目の前で繰り広げられる喜劇の傍観者達の声である。
「兄貴たち、相変わらずだなあ……」
「若さじゃのう……羨ましいゾイ」
「セリスってさ、ケフカの『裁きの光』より強いよね」
「押し倒すなんて言語道断。やはり、両者合意のうえで……」
「腹減った! う〜ガウ!!」

 ――本当に彼らが世界を救うのか? 疑問を乗せたまま、今日もファルコンは
空を駆けるのであった。
463FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/06 14:37 ID:4ZtttnjY
どうやら男が乗っているのは、ジュノンからの運搬船の様だった。「この男が…どうかしたのか?」
その時セフィロスは見た。その男の横顔に一瞬光る蒼い瞳を。「ソルジャー…?いや違う、こいつは…こいつは私と同じ物を…」
「彼は宝条博士があなたを…セフィロスを倒す為にセフィロスの細胞から造った生物兵器。完成が間に合わなくて、戦闘可能なまでに
培養が終わったときには神羅は無く、宝条博士も死んでいた。」
「…存在意義を失った者か…だが、この男が何かするとは―」画面が一瞬紅く光った。セフィロスが視線を戻すと、
運搬船が炎上し、見る間に沈んで行く。「…この男は今…一体…何をした…?」
「彼はあなたの対極であり、セフィロスそのものでもある…星が力のバランスを取ろうとしているのよ」
「だが、私には関係の無い事だ。私はこの星を滅ぼそうとした。私が生きていても何も…」
「あなたがソルジャーであった頃の事を思い出してみて―ウータイでの任務から帰る時の…」
もう一つ、別のヴィジョンが現れた。そこには、セフィロスがソルジャーだった頃の映像があった。
セフィロスがウータイに逃げ込んだテロリストの逮捕を命じられ、テロリストを神羅兵に引き渡した後、セフィロスも
町を出ようとした。その時に、セフィロスのファンらしい少女が色紙を持ってサインを求めてきた。
セフィロスは別に子供は嫌いではなかった。それでも彼がサインに応じる事は稀だったが、セフィロスは少女から色紙を受け取ると
さらさらとサインを書いた。「ありがとう!」少女が見せた、無垢で純粋な笑顔。セフィロスは思い出した。
「そうか…あの時、確か私は…」少女はその後こう言った。「あのね、もしもまた、大きな戦いがあったらセフィロスは
私を守ってくれる?」セフィロスはしゃがんで少女に微笑みかけた。「ああ、約束するよ。」
464FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/06 14:57 ID:4ZtttnjY
「あなたは、この子に約束した…戦いがあれば、この子を守ってやると。」エアリスはセフィロスを真っ直ぐ見て言った。
「…守れない約束はするな、と言う事か?だが、その男がこの少女に何の関わりがあると言うんだ?」
「彼は、この子を殺す為にウータイに向かっているのよ」エアリスの眼差しは真剣だ。嘘は言っていない。
「…何の為に?第一この男は何をしようとしている?」
「彼は自分の存在を悩んだ。そして苦しんだ…その苦しみはやがて怒りに、自らを生み出した人間への憎しみに変わっていった…」
自分の存在を悩む―今のセフィロスと同じ事をしながら、違う結論に辿り着いたこの男。
「彼の目的は人間への復讐…この星の全ての人間を滅ぼすまで彼は人を殺し続ける。そして、あの女の子は確実に彼の邪魔になる。
だから彼は邪魔になる者を一人ずつ潰していこうとしている。かつて星の危機を救った者達を。」
あの男はもう結論に辿り着いた。全ての人間に復讐する事。だがセフィロスはまだ迷っている。自分のやるべき事が
解らない―エアリスが、結論を導き出してくれている。「まだあなたに約束を守る気があれば、そして自分がやった事に少しでも
罪の意識があるのなら―あなたは―――」
セフィロスを倒した英雄として、クラウドとその仲間は有名になっていた。
全てを無に還す―そんな意味であの男が自らつけた名は「ゼロ」だった。始まりと終わりの数。
ゼロの向かう先はウータイ。かつての英雄の一人がそこに居た。
彼女の名は、ユフィ・キサラギ。
465FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/06 18:07 ID:4ZtttnjY
いつの間にかセフィロスの近くにはエアリス以外の見覚えのある人物が何人も居た。
タークスのツォンが、ザックスが、そして…宝条が。「…みんな、死んだから…ライフストリームの中に居るのか」
ザックスが顔を曇らせた。「セフィロス、アンタは自分のやった事の重さを背負って生きる事が存在意義だ」
ツォンは腕を組んでいる…様に見えるが、何だかセフィロスの視界はぼやけてきた。
「あの人は生きている。お前の助けになるやも知れん。」
宝条がセフィロスの目の前に来た。「…ソルジャーであったセフィロスが、お前くらい素直ならば…」
それぞれ、一言ずつ言って消えていった。気付けば、エアリスも居ない。
セフィロスはもう迷わなかった。自分が今やるべき事。「星が定めた運命と信じよう…奴を、止める」
ミディールの跡地、ライフストリームが池になっている場所に、水飛沫のような物が上がった。
今セフィロスの左肩には、光り輝く白い翼がある。「本体が片翼だったのは…何かが欠けていたからだ」
片翼の天使は今、両翼の天使となって空を駆けた。目指す先はウータイ。遠き日の約束を守る為に。
「右肩の黒い翼は、心の闇。そして左肩の白い翼は、誰でも心の中に持っている物…」
エッジ×リディアを応援するスレ
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1066659211/
【盗賊】ジタン×ガーネットを応援するスレ【姫】
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1049015065/
クラウド×エアリスでカプばな〜4
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1073390530/
◇リレー小説◇
FFDQバトルロワイアル2ndEdition PART2
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1058665079/
DQFFバトルロワイアル PART6
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1059224923/
泣くぞ すぐ泣くぞ 絶対泣くぞ ほ〜ら泣くぞ 5
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1059064131/
FF学園その12〜血の十二限〜
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1056293409/

あってなかったらスマソ。鯖移転で消えたスレもあるな…
467ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :04/01/07 00:08 ID:UW4a7IKb
>>463-465
セフィロスの助けになってくれるという『あの人』ってのは誰のことなんでしょう?
頭の中で候補はいるのですが……まさかこの展開でチョコボ仙人だったりしたら
仰天です。
ミステリアスなエアリスが話を導いていくという役回りなのはやっぱり(゚д゚)ウマー!

>>466
多謝。
……いつの間にかガラファリスレが落ちてる事を知って(´・ω・`)。
スレたてが480kbぐらいで平気でしょか?

モグ小ネタ、このスレで完結できそうです。
468おまもり3:04/01/07 00:16 ID:UW4a7IKb
(前話は>>461-462。モグティナを装いつつモルル話)
--------------------------------------------



 一夜明けて、炭鉱都市ナルシェ。
 世界崩壊後、街から人々の姿は消え、かわりに魔物が闊歩する荒廃した光景が
広がっていた。
 閉ざされた家々の扉の奥で、それでも故郷を離れず息を潜めて暮らす人々もいるが、
かつての賑わいは見る影も無く。
 深い雪と静寂に包まれた街は、今や生気すらも失いかけていた。
「変わっちまったな」
「そうね……」
 それでも変わらずに降り続ける白い雪は、この街の移ろいを見守り続けている
ようで、それが余計にもの悲しさを増している。
 ロック達一行は、この街のどこかに眠るという伝説の武器を求めて方々を歩き
回っていた。
 ロックに同行したのはティナ、カイエン、そしてモグである。
「それにしても、モグ殿の身につけている『お守り』の効用には驚かされるでござるよ」
「モルルのお手製クポ〜」
 自慢げに胸を張って見せるモグの姿に、三人は笑顔を浮かべた。
「魔物たちに邪魔されずに探索ができるから、本当に便利だよな!」
「モグ殿を想う、モルル殿の御利益でござるな」
 有り難いと言いながら話すロックと、感心して深々と頷くカイエン。
 二人の横で、ティナは柔らかな笑みを浮かべていた。
 不意に、ロックが立ち止まる。
「そう言えば、前から持ってたっけ? そのお守り」
 思い出したように言葉を発した。世界崩壊前――魔大陸上陸前――モグがこの
お守りを手にしている姿を見たことがなかったような気がする。

「……これは……」
469おまもり4:04/01/07 00:20 ID:UW4a7IKb

 言ったきり、立ち止まって俯くと黙り込んでしまう。
 ただでさえ小さなモグの身体が、よけいに小さく見える。
「ごっ、ごめんな……」
 無神経なことを口にしてしまったと謝るロックに、モグは小さく首を振った。
「違うクポ……悪いのは……悪いのはボクなんだ」
 無言のまま、ティナはモグのすぐ横に屈み込むと。
「無理、しなくて良いから」
 優しく声を掛けた。
 そのまま皆、何も言わずその場に留まり、モグの言葉を待った。
 暫くしてから、顔を上げたモグはこんな事を口にする。

「これはずっと前にモルルがくれたお守りだったクポ」

 モーグリ達にとって、帝国の圧制が直接的な影響を及ぼす事は少なかったが、
それでも時折、炭坑に現れる魔物との戦闘で危険な目に遭うことは屡々あった。
 魔物と対峙した時、群のリーダーを務めるモグは前線で仲間達を守るべく戦う。
そんな彼の身を心配したモルルが、ずっと前にモグへ贈った物だという。
 役に立ったことは一度もなかったけど。と、付け加えた後。
「せっかくもらったのに、すぐモルルに返したクポ……」
 詫びるように告げたのだった。
「……そりゃ、あんま感心できないな」
 腕組みしながらロックは言うが、どうも自分にも思い当たる節があるようで、
複雑な表情を浮かべながらモグの話を聞いていた。
470FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/07 11:40 ID:wOKxqmDp
ウータイは大混乱の最中にあった。
町の南側は壊滅状態である。たった一人の男によって。
「出てこないならば…燻り出すまで…」ゼロの右手に黒い光が集束する。暗黒魔法の一つ、シャドウフレアだ。
一瞬で民家が消し飛ぶ。やがて、5強の塔と呼ばれる建物から2人の人影が飛び出してきた。「…来たか…!!」
ユフィ・キサラギとその父・ゴドーである。「これは貴様の仕業か!!」周囲はもはや火の海と化している。
「まっかせてよ、オヤジ!!あんな奴アタシがかる〜くぶっ飛ばしちゃうんだからさっ!!」
「…ユフィ、すぐに逃げろ」ゴドーはゼロから視線を逸らさず言った。「奴の闘気は半端ではない。ここはワシが喰い止める」
「な、な、何言ってんだよ!?2人で戦えばあんな奴…」「見えぬのか!?奴の殺気は…お前に向けられている!!」
ゼロがニヤリと笑った。懐から紫色のマテリアを取り出す。「何だ?全体化か!?」
ゼロが拳を構えた。ゴドーも格闘の体勢に入る。「今のワシでも、お前を逃がすぐらいの時間は稼げる!!さぁ、行け!!」
突然、離れた所からゼロが拳を突き出した。次の瞬間、ゴドーは後ろに吹っ飛ばされ、壁に叩き付けられた。
「ぐ…まさか…遠距離攻撃のマテリアと、拳の衝撃波でこれ程の威力を出すとは…!!」
今度はゼロが左手を空に掲げた。手の先に赤い光が集まっている。「…させんぞ!!5強の塔だけは…」
「ベータ」正面に巨大な熱の直撃を受けたゴドーは、そのまま仰向けに倒れた。
「グフッ…この…ワシが…近付く事も出来ぬとは…!!」ゼロはユフィが消えたほうを見た。遠くにダチャオ像が見える。
「馬鹿な奴だ…自ら逃げ場を失くしたか!!」ゼロはユフィの後を追った。
471FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/07 11:53 ID:wOKxqmDp
「誰でもいい…助けて!!」ユフィはPHSのナンバーに必死に電話を掛けていた。しばらくし、シドと繋がった。
「おう、ユフィか?どうしたぃそんなに慌てて?」「ウータイが変な男に襲われて大変なんだってば!!ハイウインドなら
ここまですぐでしょう!?お願いだよ、助けて!!」
シドは今確かに飛空挺の中にいた。「仕方ねえ、ちいとばかし時間が掛かるから何とかして時間を稼げよ!!」
ユフィは本当に必死だと判断した上でシドは操縦士に指示を出した。「まず、ミッドガル近くに降ろしてくれぃ」
いくらシドでも、一人でウータイを壊滅させる様な奴を相手に出来るか解らない。
シドはまず、応援を要請する事にした。
ユフィはまだ逃げていた。「時間を稼ぐったって…どーすりゃいーんだよ!?」
突然足に激痛が走り、ユフィは倒れた。「あうっ!…な、何だ!?」
ダチャオ像の陰からゼロが歩み出てきた。「思ったよりも時間が掛かった…まあいい」
ユフィが足を見ると、赤い傷が出来ていた。雷系の魔法を受けた時に出来る傷だ。
ゼロが右手をユフィに向けた。あの黒い光がまたゼロの右手に集束していく。
ユフィは逃げる事も出来ない。「う…あ…」光の集束が止まった。「終わりだ」
その刹那、ユフィの目の前で大爆発が起きた。
472FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/07 12:22 ID:wOKxqmDp
「……?」ユフィは目を開けた。自分はまだ生きている。
目の前には、以前見た流れる様に美しい銀髪と、長刀を構えるその持ち主が…
「…セフィロス?」ユフィは呆気に取られていた。以前死んだはずの敵が生きている。しかも、自分を守っている―?
ゼロが顔をしかめた。「やはりな。オーラが消えていなかった。…私の邪魔をするか、セフィロス」
セフィロスは答えない。「お前も、私と似た目的を持つ者だった。どうだ、私に協力しないか?お前が望んだ『神』に
なれるのだぞ…」セフィロスは正宗を構え直した。
「ゼロ…と言ったか。私が何故ここにいるか知っているか?何があろうと絶対に、メテオが落ちてこようが
コロニーが落ちてこようが貴様に協力する気など無いが何か?」
ゼロが歪んだ笑みを浮かべる。「クックック…愚かな事だ、セフィロス…もう少し長生き出来たと言うのに」
セフィロスは左足を引き、下からゼロに斬り付けた。だがゼロは、右手の指2本で正宗を止めた。
「私は元々お前を倒す為に、お前から造られた。つまり、100%間違いなく、圧倒的に私が勝つ。…それくらい解っているだろう?」
ゼロは指で正宗を弾く。すぐにセフィロスは至近距離で右腕を突き出した。「解っていても…戦う理由がある」
「スティグマ」ゼロの胸に紅い光が炸裂する。だがゼロはそれでも笑っている。「ククク…効かんなぁ、セフィロス」
「何故勝てない戦いなどするのか?…腑抜けとなった今のお前だから解るのだろうなぁ?」
473ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :04/01/08 00:10 ID:0JgpSFVp
>>470-472
決して勝算のある戦いではないと知りながらも、何かのため・誰かのために
敢えて危険に身を投じるヤシってカコ(・∀・)イイ! 孤独と迷いの中に(不確実でも)
理由を見出し、戦いに臨むセフィロスの勇姿が、対照的に描かれるゼロの強さと
その裏にある憎悪。両者のぶつかり合いが緊迫感をもって描かれているので、
どんどん先を読みたいと思わせ、続き期待sageと書きたくなります。(w
ところで、読み手として一つ贅沢を言わせていただけるとしたら、もう少し行動
(行動っていうか動きと言えば良いのでしょうか?)描写があってくれると、
彼らの立ち位置が頭の中にイメージしやすくなるので個人的に嬉しいかな、と。

……って、実はこれは自分が書くときにも同じ事が言えるので、他人に言う前に
お前自身のを直せというツッコミもあるでしょうが……、弁明の余地なしです。(w


と、言うわけで個人的には描写練習も兼ねたモグ小ネタ完結編。
474おまもり5:04/01/08 00:22 ID:0JgpSFVp
(前話>>468-469。仲間を失う事の悲しさを知ったモグがその先に見出すものの話)
------------------------------------------------------------------
「ボクよりよっぽどモルルの方が心配だったクポ。あいつ体力もないし……」
 戦いには向いていない。そんなモルルにこそ持っていてもらいたかったのだ。
「すれ違い、か……」
「どこの世でも、相手に伝えたい思いほど、伝わらずに行き違うものでござるな」
 ロックとカイエンは心の底から頷いた。二人とも生きてきた歳月も、置かれた
環境も違ってはいたが――過去にそんなジレンマを抱えた経験があったから。
「相手のことを大切に想うから。……なのに、それを言葉で言うのはとても難し
いわ。言葉では言えない、でも確かにある物」
 ――それが、感情? 「愛」と呼ばれるもの?

『お前はまだ若い。……いずれ分かるようになる。きっと……』

 世界崩壊前。束の間の再会を果たした船上での言葉を思い出しながら――ティナ
の閉じられた瞼の奥に映る彼は、微笑んでいた。


 世界が崩壊して、ボクは必死でナルシェを目指した。
 仲間達が待ってるあの場所へ。
 でも、みんないなくなってしまった……。

475おまもり6:04/01/08 00:24 ID:0JgpSFVp
「……モルルに返したお守りだけが残ってたクポ……」
「みんな死……」
 ロックは言いかけてそこで止めた。この先を続けてしまったら、誰も何も言えないと気付いたから。
 『大丈夫、きっとどこかで生きてるよ』そんな言葉は、慰めにもならない。
「モグ殿……」
 カイエンは彼と同じ痛みを知っている。
 仲間を失う事の悲しさ、故郷を奪われた者の孤独。
 自分だけが残された事実は、言い尽くせぬ喪失感と、己への嫌悪という刃となって突き付けられる。
 それはやがて、一生癒えぬ傷となるのだ。
「…………」
 胸中に去来する様々な思いは、カイエンから言葉を奪った。
 モグの隣に屈み込んだティナの手が、そっとモグの頭に触れる。毛並みに沿っ
て優しく動く手の温もりは、とてもあたたかくて心地が良かった。
 自然と緩むモグの表情の変化を見ながら、ティナは動かす手を休めずに問いかけた。
「……私達じゃ、だめかしら?」
 その言葉に、一瞬驚いて彼女の顔を見上げる。
「寂しいときは、一緒に飲もうや」
「僅かながら、お力添えするでござるよ」
 そこには皆の、柔らかな笑顔があった。
「ありがとうクポ〜」
 共に戦う仲間の尊さ、彼らの気遣いが、とても嬉しかった。
 モグは身につけていたお守りを見つめる。



 だから。



 失ってはじめて、気付く事ができたんだ。
 ボクにとってモルルが大切な存在だったっていうことを。
                                        ――おまもり<終>――
476ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :04/01/08 00:49 ID:0JgpSFVp
ものを書いて、自分の意図することを表現して人に伝えるのってヤパーリ難しいでつ。

>>473に補足させて下さい。
行動というか動き言うか、流れ。そこに至る経緯の描写という事を言いたかったんです。
言葉足らずでスマソ。
緊迫感はもの凄いよく出てると思います。

そして
>>475の訂正
× モグは身につけていたお守りを見つめる。
○ モグは身につけていたお守りを見つめながら、ここには居ないその持ち主の事を思うのだった。
477FF7A書いてる物体 ◆ozOtJW9BFA :04/01/08 18:04 ID:eyxcTVUw
そこに至る経緯ってのは、つまり…セフィロスとゼロがダチャオ像のどこにどういう位置で
戦っているのか…とかですか?動きは苦手でつ(爆死
ところで、そろそろ次スレのことを考えては…500逝きそうでつ
478FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/08 18:34 ID:eyxcTVUw
「そんな弱さなど、解りたくも無いがな」ゼロが腰から剣を抜き放った。紅く輝く刀身。
「これも宝条が作った、お前を倒す為の剣…魔剣・レーヴァテインだ」剣が再び妖しく輝いた。セフィロスの背筋に
寒気が走る。「この剣は…まさか」いつの間にか、日が沈みかけている。ダチャオ像の上に、紅い夕日を背にして立つゼロの
その滲み出る様な殺気がセフィロスにもユフィにも感じられる。
「…自らの弱さを呪って死ぬがいい、セフィロス」ゼロが像の頭部から飛び降りた。紅い刀身が閃く。
剣がぶつかり合う高い金属音。目に見えるほどの衝撃波がダチャオ像の腕を削る。「これ程か…!!」
レーヴァテインは正宗ほどのリーチは無い。だがゼロのスピードによってセフィロスは最適の間合いを取る事が出来ない。
ユフィは祈る様な気持ちで空を見た。「何やってるんだよ、シド…早く何とかして!!」
剣が離れた一瞬の間に、ゼロの右手がセフィロスの目の前に突き出される。「!!」とっさにセフィロスはマバリアを張った。
次の瞬間、ダチャオ像の内一体の右肩が吹き飛んだ。遥か遠く飛んできたハイウインドからでも、その爆発が見えた。
「艦長、何処に降りますか!?」「ダチャオ像でユフィがドンパチやってるみてえだな!!あそこに降ろせぃ!!」
シドの後ろからクラウドとティファが進み出た。シドは2人を呼びに行っていたのだ。
「暗くて、望遠鏡でも良く見えないな…」そう言いながらクラウドは、何故か心臓の鼓動が早まるのを感じた。
セフィロスは崩れ落ちた部分を見下ろした。「マバリアを張っていなければ、今ので終わっていた…」
すぐに爆炎の中から、ゼロが飛び出してくる。「よそ見できるのか、セフィロス?」一瞬の隙。セフィロスは振り返ろうとした―
「翔炎斬!!」レーヴァテインが焔を放った。
>>477
>そろそろ次スレのことを考えては
ちゃんとレス読んでる?
>>457-459
>>466
で案は出ているYO
480位で立てるのではないか
480FINAL FANTASY Z ATONEMENT:04/01/08 19:15 ID:eyxcTVUw
「ぐっ…!!」「炎」マテリアと「属性」の組み合わせだろう。斬撃と炎が同時にセフィロスに叩き込まれた。
「どうだ?お前は自らの力を過信し、マテリアの本当の使い方を忘れていた」セフィロスは胸に酷い火傷を負っていた。
「そして、マテリアの力と自身の力を合わせる事でマテリアの真価が発揮されるのだ!!」ゼロが跳んだ。
「氷烈斬!!」ゼロが剣を振るった所で冷気が結晶を成し、セフィロスの頭上に降り注いだ。「冷気マテリアと属性だ!!」
何とか正宗で全て払い落とす。しかしゼロはもうマテリアを入れ替えている。「くッ…!!次は何だ!?」
ゼロが突きの体勢を取った。「雷神撃!!!」切先から雷が伸びて来る。セフィロスは避けた。いや、掠った。
電光が掠った脇腹に激痛を感じる。ゼロは着地してからは1歩も動いていない。「これが、力の差だ」
セフィロスはダメージが大きく、もうまともに動けない。後ろで見ていたユフィも、倒れたままでは手裏剣も投げられない。
ゼロがセフィロスに剣の切先を向けた。「これこそが、私が造られた本来の意味」剣が光り出す。
「だが、今の目的はその先にある」細く、速い風が刀身を包む。「かつての英雄も遂にお終いと言う訳だな、セフィロス?」
「疾空斬!!」レーヴァテインから憎悪をはらんだ風が、セフィロスに向かって飛んでくる。「ここまでか…?」
終わらなかった。上空から飛んできたミサイルが巻き起こした爆風でゼロの風は掻き消されたのだ。
ユフィが上を見る。「ハアハア…お、遅いよ…」ハイウインドがダチャオ像の上に止まっている。梯子が下りてくる。
「邪魔に入ってくるとは…探す手間が省ける」ゼロはまた笑った。ユフィの近くに降りたクラウドが目にした物は、
深紅の剣を持ってほくそえむゼロと、傷だらけでうずくまるセフィロスの姿だった。
481まあくん@どうやら管­理人:04/01/09 02:44 ID:QZP0Jo1J
ttp://jbbs.shitaraba.com/study/2270/
↑の掲示板から逮捕者が
482R@no-name ◆Vlst9Z/R.A :04/01/09 02:50 ID:uobtnIG4
↑ブラクラですよー( ´∀`)σ)´Д`)

そして遅ればせながら皆様あけおめでたう
483FF7A書いてる物体 ◆ozOtJW9BFA :04/01/09 16:33 ID:FfomCAAu
>>479 …スマソ、逝ってきまつ…
480取りましたが、スレ立てられなかったので…
みんなは重大な事を見落としている… モグが『狂戦士』という事を…
ではお次は480KB(約残り40レス)踏んだ方が立てればいいのかな?
486雫夜 ◆sizukTVGK. :04/01/11 01:29 ID:1eqR4Gnq
ツッコミのあった部分を訂正し、かつ>>466さんの現在ある関連スレを加えたテンプレで新スレ立てました。
>>466さん乙

FFの恋する小説スレPart3
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1073751654/l50
“埋め立て地”……ある程度察してやって下さい。









これ以下そうとう“中途半端”なネタの為、色々覚悟して読むことをお薦めします。
カプネタではありません。
488罪業の名1:04/01/24 23:22 ID:kZCmASeK
FF6・崩壊前の飛空艇(ブラックジャック)入手イベントを掘り下げて妄想してみた話。

------------------------------------------------------------------

「お願いエドガー……」
 懇願するセリスを目の前にして、エドガーはその申し出を拒むことは出来なか
った。求めに応じてそれを手渡す。
「ありがとう」
 自分の手から離れるコインに、僅かだが一瞬ためらったように手が震えた。
 一礼して背を向け、セリスは受け取ったコインで世界一のギャンブラーに勝負
を挑む――四方を海に囲まれた帝国領へ乗り込む為には、彼と飛空艇の協力が不
可欠なのだ――これは、やむを得ず選ばれた最終手段。
 本当は、そんな姑息な真似をしたくはなかった。
 それ以上に、隣にいる弟に10年前の真相を知られたくはなかったのだ……。



『エドガー、どんな事情があっても嘘をつくのは良くないわ。そんな男、最低よ』
 ――初めて恋い焦がれた女性の言葉。
『嘘をついてしまったら、責任を持ってそれを貫け。相手を思うなら尚更だ』
 ――厳格だが、優しい父王。
 そして。

『ウソつきなんて大嫌いだ!』


489罪業の名2:04/01/24 23:28 ID:kZCmASeK
 心の奥にしまわれた大切な思い出と、小さな痛みを抱えながら。エドガーは
セリスの投じたコインの軌跡を目で追った。
 決してセリスが負ける事はないその賭の行方を、ただ黙って見守る。
「……私の勝ちね。約束通り手を貸してもらうわ」
 ――オペラ女優だろうがイカサマろうが、何だってやってやる――元帝国将軍
と言うには若すぎる少女の声に垣間見えたのは気丈さと、覚悟。
 それを目の当たりにして、エドガーは思う。
(私も、腹をくくらなければならないか……)
 それでもまだ、一部の望みを捨てきれずにいた。
 ――願わくば。
「貴重な品だな、これは」
 ――そのコインには触れないで欲しい、と。
 セッツァーはコインを拾い上げて苦笑する。
 ――何も言わず、見過ごしてくれないだろうか?
 声に出せぬ願いに反して、目の前の男は。

「両表のコインなんて初めて見たぜ」

 エドガーが最も恐れていた言葉を、会ったばかりのギャンブラーは
いとも簡単に吐き捨てた。
 それは10年もの間、明かされることのなかった嘘が露見した瞬間。

「そのコインは……!? 兄貴!」

 ウソつきが嫌いだと言われたあの日の出来事が、昨日のことのように甦る。
 内心を貫く痛いほどの罪悪感に、エドガーは顔を上げることができなかった。
490罪業の名3:04/01/24 23:40 ID:kZCmASeK
                    ***

 世界に唯一の飛空艇・ブラックジャック号は空飛ぶカジノである。所有者
セッツァー=ギャッビアーニという男は派手好きで、予告状まで出して舞台公演中に
主演女優を浚おうという破天荒な振る舞いがそれを物語っている。揚げ句に艇(ふね)
と引き替えに女を買おう、などと平然と言ってのける男だ。
 しかし。そんな数々の信じがたい悪行とは対照的に彼の顔立ちは秀麗で、黙って
さえいれば品性を備えた――それこそ美男と形容しても支障のない――容姿をしている。
「で?」
 あからさまに不機嫌を露わにした声でセッツァーは問い返す。
 睨み付ける様な鋭い視線の先には、つい先刻知り合ったばかりの『フィガロ国王』だと
いう青年の姿があった。彼は賭博場の隅の壁に背を預け――何事かを考えているの
だろうか――腕を組み、静かに佇んでいた。
「なんだ?」
 エドガーは何も口に出していない。それでも何故、問い返すような口調を向け
られているのか理解し難い。それに加えて不機嫌を隠さない相手の声には、こちらの
気分まで不愉快にさせられる気がした。
「お前さ、俺に対して敵意もってねーか?」
「べつに」
 エドガーはセッツァーの顔を見ずに答える。――敵意は持っていないが興味も
ない――できれば、あまり深く関わり合いにはなりたくない人物だ、とは思っていたが。
 もちろん、本音を口に出すような事はしなかった。
491罪業の名4:04/01/25 23:25 ID:/okAb/zU
 ここで無用な混乱を招いたとあっては元も子もない。
「ふーん。ま、どうでも良いけど」
 そんな事情を知っているとでも言いたいように、エドガーに向けられた視線と
声音には、どこか含みがあるものに思える。
「…………」
 それにしても、どうでも良いのなら話しかけないで欲しい物だ。と、内心でエドガーは
反論を呈す。
「言いたいことがあるなら口に出せば良いだろう?」
「…………」
 セッツァーの実に的を射た指摘にも、エドガーは一切の反応を示さない。
 これは面白いといった具合に、セッツァーはさらに続ける。
「なんだ? それが国王サマの性分ってか?」
「…………」
 煽るような口調にも反応する事なく、エドガーはただ沈黙を守り続けている。
「ま。アンタぐらいのポーカーフェイスじゃないと、イカサマ仕組むなんてマネ
は到底ムリだろうな。納得したぜ」
「…………」
 その言葉に、冷ややかな視線だけが向けられた。
「何だよ?」
「…………」
 自分に向けられる物言いたげな視線に問うてみるも、相変わらず返答は得られ
なかった。
492罪業の名5:04/01/25 23:29 ID:/okAb/zU

「……言っておくがイカサマとウソは見破られるもんだ。仕組む方はそれを覚悟
でやるモンんだぜ?」

 不敵に笑んでみせるセッツァーに、ようやくエドガーは重たい口を開いた。
「……『イカサマ』? それは心外だね」
 その口から紡がれる言葉はどこまでも冷たく、相手を突き放す。
「イカサマじゃないって言うんなら、何だってんだ? 一般庶民の俺にも分かる
ように説明してもらいたいモンだな、フィガロの国王さんよ」
 冷淡なエドガーの口調に負けず、セッツァーの言いぐさはやけに刺々しい。
「手段、だ」
「奇策ねぇ」
 物は言いようだな。と皮肉るセッツァーから、エドガーは視線を逸らした。
「まぁ良いじゃねぇか。俺はお前らに協力する。お前らは帝国領へ乗り込める。
その為に俺とこの艇(ふね)が必要だった、結果的に望みは叶ったわけだろ?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ問題ない。なのにどうして……」
 そして最初の質問に戻る。
「お前は俺を咎めるような目で見る?」
「……そんなつもりはない。だが、仮に君がそう感じる様な挙動をとっていたの
なら謝ろう。すまなかった」
「……誰も謝れとは言ってない」
「じゃあ何だ?」
 静かな中にも、エドガーの声には僅かばかりの怒気が伺える。
「その理由を聞いている」
「…………」
 しばしの沈黙を経て。
「理由なんて何もないさ」
 言い残して、エドガーは賭博場を後にしようと出口へ向けて歩き出した。
 そんな彼の背中に向けて、セッツァーは言い放つ。
「忘れるな国王サマよ。……協力した礼とやらは必ず頂くからな!」
 返答の代わりに、賭博場の扉が閉じられる音が響いた。
493罪業の名6:04/01/28 01:18 ID:FiB399mL



 どうも気分が悪い。それは初めて乗る飛空艇にも原因があったのかも知れない
が――気を紛らわすため風にでも当たろうと、エドガーはその足で甲板へと赴いた。
 眼下に広がる大地と、手の届きそうな位置にある雲が流れていく様は、初めて
空を飛ぶエドガー達にとっては非日常の光景だった。
 顔にまとわりつく後れ毛を手で押さえながら、目の前の光景に暫し見入っていた。

 ――それはかつて、幼い頃に憧れた大空。
    俺はあの頃、大空を飛ぶことを夢見ていた――

 風に逆らい前進を続ける飛空艇。その身の横を通り過ぎる風と共に、エドガーの
記憶は過去へと遡る。
494罪業の名7:04/01/28 01:23 ID:FiB399mL

                    ***

 機械弄りは好きだが。
「……この城の基幹を成す仕組みが完成したのは……」
 こういう退屈な話はどうも好きになれない。目の前で懇々と語り続ける神官長
の姿を見ながら、そんな風に思った。
(まるで「寝てくれ」って言ってるみたいだな……ばあやの話はいつも……)
 話半分でエドガーは窓外に目を転じた。外には雲一つない青空が広がっている。
その中央では、己の存在を十分すぎるほどに主張している太陽が輝いていた。
(……外、行きたいな)
 半ば軟禁とも言える状況に置かれた少年の目には、窓の外に広がる青空は
いちだんと眩しく見えるものだ。
 はぁ。
 小さく漏れた溜息の音に、神官長は話を止めて視線をおろした。
「エドガー様。ちゃんと聞いておられますか?」
「はい」
 神官長の問いかけに、幼いエドガーは室内に視線を戻すとにっこりと微笑んで
みせる。愛くるしさと社交性をバランス良く兼ね備えたその笑顔に。
「では、続けますよ?」
 敵う者はいなかった。
495 ◆I.gzBQjvh2 :04/01/29 06:23 ID:K+6vZGMB
スラムダンク32巻発売決定キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
ttp://unyuu.yoll.net/dq.html
496 ◆x835gPWO5A :04/01/29 06:30 ID:XYRasS6i
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497鈴 ◆BELLSBdFOI :04/02/02 23:16 ID:oj1mfFph
埋めたて支援。
最初はネタだったはずが何時の間にか続きものになってますた。
リュックファンの方には正直おすすめできない。
498(題名未定):04/02/02 23:18 ID:oj1mfFph
助けなければ良かった。
そうすれば今あいつはここにいなかった。
優しくしなければ良かった。
そうすればあいつのことなんて何も知らなかった。
好きにならなければ良かった。
……今さらそんなこと言っても、遅すぎるけど。

最初は、なんだかワケの分かんない奴だった。
自分は千年前に滅びたはずの街からやって来たんだーって言って聞かなかったし、
寺院のこともスピラのことも、全然分かってなかった。
アルベドのことも、覚えてなかった。
だからかもしれない。あたしたちを「偏見」のこもった目で見なかったから。
好意はそこから始まって、だんだん恋に変わっていった。
傾きかけた寺院からあいつを助け出して、飛空挺の引き上げ作業を(なかば強制的に)手伝ってもらって、
そして、シンに襲われてあいつが消えたあの夜。
あの夜から、何かにつけてあいつの顔がちらちらと浮かんでくるようになった。
その時はまだ、好きとかそういう言葉で表せるような気持ちを抱いていたワケじゃない。
だけど、もう一度会いたい、とは思っていた。
シンに呑み込まれた人が無事に戻ってくる確率なんてほんのわずかだったし、
(一回あいつは呑み込まれて戻って来れたみたいだったけどラッキーなんてそうそう続かないものだよね)
いつか毒気が抜けたら、あいつはアルベドに助けられたことを最悪の体験だと思うかもしれない。
そういうことを考えると、あたしがあいつにもう一度会って楽しく話ができる可能性なんて、
寺院がアルベドと仲直りするぐらいあり得ないものだった。
だけど、あたしは頭のどこかで、もう一度会えることを予感していたのだと思う。
そしてあり得ないほどの偶然の連続を重ねてあいつが再びあたしの目の前に現れた時。
あたしは、運命から偶然から、とりあえずあたしとあいつを引き合わせた全てを恨んだ。
それと自分の「女のカン」を恨んだ。
499(題名未定):04/02/02 23:19 ID:oj1mfFph

そして分かった。
人生なんて、何が起こるか分かんないものだって。
それから、運命も偶然もロクでもないものだって。
けど一番ロクでもないのは、希望を捨てきれずに旅に同行した、あたしだったのかもしれない……
500(題名未定):04/02/02 23:24 ID:oj1mfFph
書き忘れました。
カプはティユウで、ティーダに片思いのリュック。

テーマは女の業やら嫉妬やら…(ゴニョ
501マリスゴールド 3:04/02/04 01:21 ID:Axpha1lj
前回は>>498-499

「あっ!?リュック、リュックだよな!?」

二度目に会ったあいつは、ユウナのガードをやっていた。
ユウナはあたしのイトコで召喚士。おとなしくて、清楚で、可愛い。およめさんにしたいタイプって感じのコ。
で、当時召喚士を助けるためにいろんな活動をしていたアルベドのあたしに課せられた任務は、
ユウナをホームまで連れて行くこと、だった。もちろん手段は問わず。
幻光河で待ち伏せしてユウナを連れて行こうとしたんだけど、そこにあいつが血相を変えて飛び込んできた。
あいつは瞬く間にあたしの乗ってる機械をコテンパンにして、ユウナを助け出しちゃった。
別に、あたしの操縦が悪かったワケじゃないからね。
でもその時のあいつの表情ったら!メチャクチャ真剣で、怖かった。
モンスター相手にへっぴり腰で戦ってた頃とは気迫が違うみたいだった。
ああ、記憶取り戻しちゃったんだね、やっぱりチイもアルベドギライなんだね、ってその時は切なくなったけど、
実はそうじゃなかったんだ。
河原で顔を合わせた時は全然普通だったし、むしろ「顔色悪いよ」なんて心配しちゃってくれたし。
「毒気」は相変わらずみたいだった。
あたしは文句の一つも言いたかったけど、いつもオヤジやアニキにぶつけてる量の十分の一くらいしか言えなかった。
やっぱり再会できて嬉しかったのと、ケガが痛かったのと、それから、ムカついたのと……ちょっぴり、切なかったのかな。
ユウナを取り戻そうと向かってきたあいつのまなざし。ガードが召喚士に向ける……以上のもの。
大事な召喚士を取り戻そうとして向かってきた奴らはいっぱいいたけど、あいつほど強いまなざしをぶつけてきた奴は初めてだった。
なんでかなぁ。ピンときたんだ。
こいつ、絶対ユウナのこと好きだな、って。
自慢じゃないけどあたし、推理力とカンには自信があるんだ。でも、それって必ずしもイイことじゃない。

ユウナのガードになろうと思ったのは、ちょうどその時だ。



502マリスゴールド 4:04/02/04 01:23 ID:Axpha1lj

もちろん、ユウナのことは純粋に守りたいと思ってた。
今まで一度も会ったことはなかったけど、あたしと同じ年頃のイトコだし、こう……なんて言うのかな、
守ってあげたくなるタイプ?だったんだ。
それに想像以上にイイ子だった。
っていうのは一緒に旅を初めてから段々分かったことなんだけどね。
あたしにとってたとえ会ったことのないイトコでも、ユウナの話はオヤジに耳からオクトパスが出てきそうなくらい聞かされてたから、
あたしの中でユウナは家族同然だった。
アルベドは家族を大事にしたいっていう気持ちをすんごく大事にする。
だからほとんど決めてたんだ。だけど決定打はあいつとの再会。
ユウナのことが好きだろうと何だろうと構わない。ただ、一緒にいたかった。一緒に肩を並べて戦いたかった。
っていうのはタテマエで、そこに……もしかしたら、もしこのまま偶然が続いて、
あいつがあたしを好きになってくれたらっていう、都合のイイ想像が存在していたのは確かだった。
そうだ、思い出した。あたしはあいつが好きなのかなって気付いたのも、その時だったんだ。
その時から、あたしは自分の気持ちを巧妙に隠し始めた。
いつも明るく、ニギヤカにしてれば気付かれないだろうって思って。いずれ熱も冷めるだろうって思って。
アーロンにじっーと見つめられた時にはもしかしてフジュンな動機を見抜かれた!?とか考えて一瞬冷や冷やしたけど全然違った。
アルベドのことだって分かってむしろ安心したくらいだ。頭の中がごっちゃになってる時には、ホントに変なことを思いついちゃうみたい。
頭の固そうなオッサンに、そんな芸当とてもできそうにないしね。
ともかく、ユウナも、ユウナのお姉さん役のルールーも、他のガードの仲間も、あたしのメンバー加入を拒まなかった。
むしろ歓迎してくれた。ユウナを守りたいという思いが、より強くなったんだから。
あたしの目的はみんなとはちょっと違って、ユウナを守って旅をやめさせること、だったけど。
そのころは……ユウナを守ることが、あたしにとっての何よりの優先事項だったんだ。
少しずつ燃え始めた火種を、確実に消し止められると思っていたころ。

>>497-502
なんて言うんだろう? ティーダと共に正面きって「ユウナを死なせない方法」を
考えていた……と、言うことはこの二人は“対究極召喚”という見方では共同戦線を
組んでいた訳で、物語はティーダ(あるいはユウナ)視点だったから描かれなかった
もう片方の面が描かれて(゚д゚)ウマー。
……埋め立て地なので、チョット変な事を口走りますが、皆さんなんで一人称が上手い
んですか!?





思っていたよりマトモな作品(“オチが正常”という意味)になりそうだけど、書く手が
止まった罠(w。
504罪業の名8:04/02/06 23:25 ID:+33H8YHY
(前話>>488-494
-------------------------
 フィガロ城の一室で、二人の王子は日々勉強に勤しんでいる。教育係として彼らに
ついていたのは、知識豊富な熟年の神官長だった。
 彼女は再び話を始めようとしたのだが、隣に座っていた今一人の様子に気付いて,
僅かに肩を落としながら声を発した。
「……。マッシュ様。マッシュ様」
 いくら人生経験を積んできた彼女とて、やんちゃ盛りの幼い男子二人には少々
手を焼いている、というのが本音だった。
 兄エドガーは一見まじめに聞いているかと思えば、いつも違う事を考えている
し。弟マッシュはすぐに寝てしまう。
「……? ……。あ!」
 ――大人でさえ退屈だと感じる物だから、仕方ない事かも知れない――とは思
いながらも、そう言うわけにはいかない。
 彼らはこの先、フィガロを背負う事を宿命づけられた子なのだから。
「お願いですから、私のお話をお聞き下さいますよう……」
「ご、ごめんなさい」
 眠い目を必死に瞬かせながら、マッシュは素直に詫びた。
「それではお二人とも、先を続けますがよろしいでしょうか?」
「はい」
「うん」
 こうして、今日もフィガロ城の一室では幼い双子の兄弟がそれぞれ睡魔と戦って
いるのであった。
505罪業の名9


「ねえ」
「なんだい?」
 あの長い話から解放され、二人は回廊を歩いていた。
 フィガロ城が砂中へ沈む時ここは姿を消すのだが、地上に滞在している間は外に
迫り出て、灼熱の太陽と紺色に近い青空と共に、まとわりつくような暑さを満喫できる
のだ。
 その回廊の中程まで来た所で弟は立ち止まり、頭上に広がる空を見上げて
こう言った。
「……おれ、空を飛びたい。『砂の中に潜るお城』より、『空を飛ぶお城』の方が
かっこいいよ絶対!」
「…………」
 真顔で訴える弟の姿には、さすがのエドガーも苦笑を禁じ得なかった。
 この城の潜航技術が完成したのは今からおよそ200年前――ついさっきの神官長
の話ではないが――以来、数えきれぬ技術者達が、熱意と使命感をもってフィガロ
城の改修と機能向上に力を注いだ。
 いわば、この城そのものがフィガロの歴史――過去を生きた者達――の結晶、
なのである。幼くもマシーナリーとしての才に目覚めつつあったエドガーには、
やや皮肉とも受け取れる言葉だった。
 けれど、エドガーが弟に向けて口に出したのは。

「どうして空を飛ぶ城の方がかっこ良いと思うんだ?」

 そんな疑問だった。