FFの恋する小説スレ

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506英雄譚(仮題)9
(前話は>>493-494です)

「……ありゃ?」
 リルムの言ったとおり、この時エドガーは明らかに油断していた。それは彼女
自身の能力を侮っていたのではなく、一国を担う王としての理想論――魔物や
他国に脅かされることのない平和な世という――が決定的な敗因となった。
「……ご、ごめん」
 一方リルムとしては、まさかエドガーにこれ程のダメージを与えるとは夢にも
思っておらず、この状況に困惑の表情を浮かべていた。
「とにかくエドガーを中へ!」
 回復をさせようにも道具と魔法の揃わない甲板では始まらない。気絶している
エドガーの両脇を、セリスとロックが抱えて歩きだす。
 リルムは床に転がったロッドを拾うこともせず、ただ呆然とその光景を眺めて
いたのだった。


507英雄譚(仮題)10:03/08/11 19:52 ID:DT0M6gfn
「ぶわっははは! それにしても無様だなエドガー」
 意識を取り戻したエドガーを最初に迎えたのは、セッツァーの高笑いだった。
 気を失っていたエドガーを、セリス達は普段セッツァーのいる個室へと運び回
復処置を施していたのだ。
「……はは、全くセッツァーの言うとおりだ」
 そう苦笑するエドガーの表情は曇っていた。それを察してセッツァーは真剣な
口調になって対する。
「エドガー。リルムの魔力が高いって事ぐらい、お前なら把握していた筈だろう?
なぜマトモに魔法を喰らったりしたんだ?」
 それ以前に、航行中の飛空艇の甲板でリルムがエドガーに向けて魔法を放つと
言う状況が、セッツァーにはどうにも理解できない。
「……すまないセッツァー。じつは発端はオレが……」
 ロックが間に入って弁明しようとするのを制し、エドガーは詳細を話し始めた。
「いや、元々は俺がロックに“実験”の協力を申し込んだ事が発端なんだ。ロッ
クはそれに応じてくれた。……どちらにせよ原因は俺にある」
 そう言って頭を下げるエドガーの言葉に、今度はロックが顔をしかめながら問う。
「なっ、何だよ“実験”って?!」
「ああ……この盾の特性を知りたかったんだ。どの種類の攻撃に対してどれ位の
耐性があるのか。そして言われている様な“呪い”と言う症状があるのかどうか」
「どうして最初っからそれを言わないんだよ!」
 ――その秘密主義だけはどうにかしろ。
 そう尋ねるロックの声に怒気が含まれている事を、その場にいた3名全員が
感じていた。
「お前が言っただろう? 不可解な症状が現れるのは『戦闘中だけ』だって。
なら、それがどうしてなのか。実際のところどうなのか。更に言えばこの盾が、
リスクに見合った性能を持っているのかどうか、詳しく知りたかったかったんだ」
 より実戦時に近い状況で、盾の変化や能力値の正確な情報が欲しかった、と言う訳だ。