FFの恋する小説スレ

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150家族の肖像18


 その声を聞いてもエドガーからの返答はなかった。
 かわりに、部屋中に散らばった紙片を全て集めた束をそっとテーブルに戻すと、
横に置かれた椅子に腰掛け、改めて手にしたいくつかの絵を眺めた。
 不意にぽつりと、聞こえるか聞こえないか分からない様な小さな呟きを漏らす。
「彼は……生きてるんだ」
 エドガーの言葉にリルムは弾かれたように顔を上げ、続く言葉に期待を込めた視線を向ける。
「この中に」
 視線を紙に落としたままエドガーは告げた――それは瓦礫の塔で描かれた、最後のシャドウの姿。
「……絵じゃん」
 裏切られた期待に、落胆の色を隠さずリルムが呟く。
「そう。だけどこの中でシャドウは生き続けている――リルムの思いが込められ
たこの絵の中で、いつまでも」
 そして彼と旅路を共にし、この絵を目にした自分たちの中にも。
「あたしが望んでたのは……そんなんじゃ……ないもん」
 込み上げてくる気持ちを押し殺そうとして、よけいに声が震える。
 膝の上に乗せた両手の拳をぎゅっと握りしめ、揺れる視界の中でリルムは天井を見上げた。
「リルム」
「なん……で? あ……たし達……が」
 ――一緒に帰ろうって、約束したワケじゃないけどさ。
「……残して……いっ」
 ――だって、悲しいじゃん。
 思うことはたくさんある。心が痛い。
 それが言葉にならない。溢れてくるのは涙ばかりで。
 ――やっぱりダメだ。今は……。
「ゴメン……出てってよ」
 ――こんな姿、誰にも見られたくないから。
 嗚咽を堪えてようやく紡がれたその言葉に、エドガーは苦笑する。
「……すまなかったね」
 いつもの口調で言うと、彼は席を立った。