2 :
名無しより愛をこめて:03/12/27 13:18 ID:+vQ75wLQ
2げっと
【前スレの作品案内・1】
---------------------------------------
>xx-xx(レス番号)
タイトル:ベースになってる世界/説明
ベース世界≪TV=TV版・SP=SP版・EF=映画版・SC=ソンコレ版・??=舞台が不明・他世界≫
---------------------------------------
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1031794396/ >19-22
ベノの走馬灯:EF/ベノスネーカーの回想
>24-26
無題:EF/リュウガ戦の真司の感情
>28
北岡偏エピロローグ:EF/北岡の最後の思考
>29-32
がんばれオムロン:EF/アギトの尾室とG5部隊
>34-35,>38
おまるじゃない!:EF/美穂とブランウイング
>41
無題:EF/真司、トロマヴィルに行く
>44-45
無題:EF/「リターナー」ミヤモト
>48-51
欠けているもの:EF/リュウガvs真司
>53-54
無題:EF/48-51の続き
>58
アマゾンの不思議な下駄:EF/沙奈子おばさんとケーキ
>65-69
夜の翼:EF/ダークウイング…恵里
>84-90
王蛇誕生:EF/浅倉が王蛇になるまで
【前スレの作品案内・2】
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1031794396/ >110-118
(SP)シザース誕生:SP/須藤がシザースになるまで
>123
無題:??/ガイと王蛇でコント
>132-141
最後の願い:EF/美穂とノワールウイング
>155
浅倉が最後のライダーだった場合の最終回:??/コント
>160
Warrior's Vision:SC/ソングコレクションのライアの歌補完
>172
北岡が最後のライダーだった場合の最終回:??/コント
>175,>177-179,>209,>211-214,>226-232,>237-243
出会い:TV/蓮と優衣の出会い編
>185-197
オマエハ…マチガ…:TV/仲村の回想
>217-222
無題:EF/モンスター戦に助太刀する本郷猛
>252,>256,>258-261,>264-265,>267,>280-284
Swan Song:TV/美穂とファムとライア
>294
秋山蓮のお見舞い日記:TV/蓮と花束
>306,>308-310,>313,>318-322,>324
砕けた鏡:TV/北岡の最後の回想
>337-343
欠けていたもの:EF/リュウガの回想
【前スレの作品案内・3】
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1031794396/ >347-348
雪を見ず:TV/令子と島田とめぐみ
>372-376
消えた紋章:TV/由良の回想
>412-416
妙なノリ:??/榊原の戦い
>421
冬の夜:TV/神崎と蓮の会話
>431-440,>445-449,>628-629
きみのため〜誰も知らないオルタナティブ02の物語:TV/斉藤雄一のオルタ02
帰還:TV/神崎士郎と彼を巡る人々の回想
>452-455
帰還 (物語の始まり)
>460-461,>463-470
帰還 モンスターに襲われた後、優衣の前に横たわる江島教授の回想
>476-481
帰還 ミラーワールドで、東條に運ばれて行く香川教授の回想
>488-490,>498-499,>503,>506-507,>511,>516-520
帰還番外編/湖
>523-526
帰還 花鶏を追い出され、街の中を歩いている大久保と令子の会話
>528-529,>533-535
帰還 401号室の実験当日/2002年4月
>541-544
帰還 2003年1月19日
>550-560
帰還 エピローグ
【前スレの作品案内・4】
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1031794396/ >587,593,595-600,605-612,622-624,634-639,645-649,653-665
訪問者:TV+555/北岡達の知られざる戦い、龍騎世界とファイズ世界の束の間の邂逅
>672-673
邪神の唄:??/神埼の為の詩
>697-698,703-704,706-707,711-717,720-721
Evergreen:TV+α/終わった筈のライダーバトルが再び甦る…
今から紹介する作品は、前スレで連載されていた「Evergreen」です。
「Evergreen」連載中に、前スレが書きこみ限界近くになり、
このまま連載が2スレに分散してしまうのは惜しいと思われましたので
こちらにまとめて再掲させていただきました。
697 :Evergreen (1) :03/12/19 02:13 ID:BoMcdKPc
何故だろう。
きれいに飾り付けられたクリスマスツリーを見ると、
急に切なくなるのは。
金色のイルミネーションに浮びあがる夕方の街でも
ひときわ目立つ、色とりどりの星やボールを
いっぱいにつけた巨大なモミの木。
その前を足早に通りすぎながら、目のあたりを
ジャケットの袖でぐいとこすった。
まったくどうかしてるよな。
ツリーや飾りを見ると、ひとりでに涙が出てくるなんて。
何の理由も思い当たらないのに・・・
おかげで編集長からさんざんからかわれる羽目になった。
定時後、OREジャーナル総出で、令子さんが知り合いから
もらったという白いツリーを飾り付けていた時のことだ。
「真司、おまえまさか、ツリー見て泣いてんの?
そおかそぉか、今年もついに彼女ができなかったんだっけなお前。
よし、イブは俺がとことん付き合ってやるから心配すんな!」
「ち、違いますってば!そりゃ彼女がいないのは事実ですけど・・・」
「い〜ってことよ!おい島田にめぐみ、イブはおまえらも付き合え」
「なんですかそれ!」
「えーなんであたしが?!」
数の少ない天使のオーナメントをどこに付けるかで
もめていた島田さんとめぐみさんが、憤然として向き直る。
「呑むんなら人数は多い方がいいに決まってるだろ。
どうせおまえらだって今年も男できなかったんだろうし・・・」
その後の惨劇に巻き込まれる前に、事務所を抜け出した。
698 :Evergreen (2) :03/12/19 02:17 ID:BoMcdKPc
定時後に何の予定があるわけでもなく、
あとはアパートに帰るだけのはずだった。
だけど、なぜか真っ直ぐ帰る気にはなれなかった。
仕方なしにスクーターを降りて、にぎわう街に踏み出してみる。
とたんに後悔した。今の時期にふさわしく、
どっちを向こうがクリスマス一色だったからだ。
街灯や街路樹に絡みついた色とりどりの電飾、
ビルの上でぼうっと光る巨大なサンタの風船、そして・・・
有名デパートの入り口にそびえ立つクリスマスツリー。
やばい。また涙が出てきた。
涙と一緒に決まって浮んでくる、
映画の一箇所を切り取ったみたいなイメージと一緒に。
ツリーを手際よく飾り付けていく女の子。
枝先のワイヤーを直したりしてる姿は、とても楽しそうだ。
俺に気付いて見上げた顔も、明るく笑ってる。
だけど、もうひとつ吊るそうとオーナメントを取り、
ツリーの上の方に伸ばした手からは・・・
細かい粒子のようなものが立ち昇っている。
俺の表情に気付くと、女の子はことさら明るくこう言う。
「私、大丈夫だから。ほんとに」
そしてその言葉を聞くたびに俺は、
何ともいえずやり切れない気持ちになる−−
イメージの中の女の子と自分がどんな関係にあるのかも、
何故その女の子の手から粒子が立ち昇っているのかも、
そして何故やり切れない気持ちになるのかも、まったく分からない。
ただクリスマスツリーを見るたびに同じイメージが浮び、涙が流れる。
本当にどうしちゃったんだろう、俺・・・
703 :Evergreen (3) :03/12/21 01:45 ID:blk/HE/T
うつむき加減で光の街を歩き続ける俺の耳に、
ある音が入り込んできた。
なんだ、この嫌な響きは?
耳を細い針で貫かれるような・・・
立ち止まって周囲を見まわしたが、雑踏の中に
同じような反応をみせている人間はいない。
”どこを見ている。俺はここだ”
だしぬけに、今度は顔のすぐ横で嘲るような声がした。
「!」
ぎょっとして顔を上げ、右を見る。
ポインセチアで飾られたショーウィンドウに
映り込んだ男が、こっちを見返してにやりと笑った。
”そう。お前だよ、俺は”
そう言って、窓に映った俺は青いジャケットの片側を探った。
黒い板のようなものを取り出し、俺の前にかざしてみせる。
”感謝するよ。お前が力を与えてくれたおかげで、
またそっちへ出ていける・・・今度こそ勝ち残るためにな”
言葉と同時に、紋様のようなものが板の中央に浮びあがってきた。
耳を刺すような音が耐え難いまでに高まってくる。
そして。
闇に映えるイルミネーションのひとつひとつを震わせ、
凄まじい咆哮が響き渡った。
ウィンドウの表面から突然現れ、ビルの間の空めざして
駆け上がった巨大な黒龍の咆哮が。
目の前で起こったことを受け入れられず、両手で頭を抱えて
ウィンドウの前から逃げ出した俺の絶叫をかき消しながら。
704 :Evergreen (4) :03/12/21 01:51 ID:blk/HE/T
”どうした、俺はお前を助けにきたんだぞ?
不甲斐ないお前自身の代わりにな・・・”
嘲るような声が追ってくる。自分自身の声が。
黒い龍の咆哮、それに耳を刺す音と一緒になって。
”お前に取りついた悲しみを鎮める方法はひとつだけ−−
この俺、つまりお前自身があの娘に新しい命を与え、
この新しい世界に甦らせてやることだけだ。
お前があの娘を思い出して涙を流しさえすれば、
その悲しみがすべてのライダーと契約モンスターを
次々と覚醒させる−−最後にお前が龍騎として覚醒するまで。
その時こそ、俺はお前と完全に一体化して
最強のライダーとなり、他のライダーどもと闘って倒し、
神崎優衣に新しい命を与えることができるのだ。
神崎士郎がかつて望んだように。
この世界でのあいつは、幼い妹を見捨てて
自分が生き残ることを選んだ、ただの薄汚れた
男でしかないがな・・・
そうだ。お前の悲しみは、お前がそれを
味わい尽くした時にやっと消滅するというわけさ。
俺とドラグブラッカーがこうして覚醒した今、
それもそう遠いことではない。
だからもっともっと涙を流すがいい−−
そして目覚めるがいい、一刻も早くな!
706 :Evergreen (5) :03/12/21 23:00 ID:2svNLYZz
「雄一か。
悪いが、今日は行けなくなった。
お前も家から出ない方がいい−−
いや、絶対に出るな。ああ、そういうことだ。
コンクールが近いんだったな。手にケガなんかするなよ。
そうか、ならいい。じゃあな」
携帯をジャケットの内側にしまうと、
先ほどまで小さな店を開いていた路上を後にして、
青年は夜の街を歩きだした。
本当ならあと1時間ほど占い客を待ってから店を畳み、
親友と待ち合わせた場所へ出かけるはずだった。
だが事情が変わった。不吉な方向へ。
少し前に、あの耳を刺すような音を聞いてしまった時から。
砕けたガラス。中身をぶちまけてひっくり返った生ゴミのバケツ。
血まみれの身体を丸めて唸っている三下、チンピラ、
そして凶悪そうな若者たち。
普段は他人から被害を受けるより与える側に回る方が
多いたぐいの人間たちなのがせめてもの救いだった−−
男の通った後に累々と転がっているのが。
「畜生・・・浅倉の野郎、なんだって急に暴れだしやがったんだ」
「イライラしてる時に近づきさえしなけりゃいいんだが・・・
そのイライラが今日はえらく急にきやがったらしいからな。くそ、いてぇ」
「まさかあいつ、ついに粉に手を出したんじゃあ・・・
「何だこの音は、俺をイラつかせるなあっ!」って喚いてるのが
聞こえたんだけどよ、あいつが鉄パイプ持ってこっち来る時に。
幻聴ってやばいんじゃね?」
707 :Evergreen (6) :03/12/21 23:05 ID:2svNLYZz
イルミネーションの華やかな方角を指して歩き続けながら
思いに沈む、占い師の青年。
あの音は自分にだけ聞こえたのだろうか。
聞こえた瞬間はっとして目の前の往来を見渡したが、
おかしな音を聞きつけたような素振りを見せる通行人はなかった。
それでも音は消えるどころか、次第に大きくなってきた。
自分の中で急速に広がりはじめたヴィジョンと共に・・・
降りしきる雪の中、突然黒い影に襲われて地面に倒れる雄一。
「手塚・・・ 手塚・・・ 手塚っ!」
何故か倒れている自分を抱えて、必死に名前を呼び続ける若者。
2つのヴィジョンが完全に像を結んだ瞬間、青年には分かった。
それぞれの意味ではなく、自分が今からしなくてはならないことが。
ひとつは雄一が、今夜絶対に街へ出ないようにすること。
そしてもうひとつは・・・
自分の名を呼んでいた若者に会うこと。
彼に会わなければ、何か取り返しのつかないことが起こる。
自分だけでなく彼自身にも、そしてこの世界全体にさえも。
そんな気がした。
友の能力を知る雄一は理由を聞きもせずに
予定の変更を承諾し、外出しないことを約束した。
問題は若者の方だ。いったいどこにいるのだろう。
それに何となく、初めて見る顔ではないような気がする。
だとしたらいつ、どこで会ったのか−−
711 :Evergreen (7) :03/12/25 03:58 ID:767o+Aqp
黒い龍と共に生じた異様な音は片時も止むことなく、
イルミネーションに輝く都会全体に広がっていった。
音が聞こえたのは、限られたわずかな人間たちだけだったが・・・
都心の一流ホテル最上階。
壁一面を使ったガラス窓の前に立ち、
うつろな表情で豪奢な夜景を眺めているスーツ姿の青年。
何もかもがつまらなかった。自分を見下す人間ばかりの
学校も、自分に無関心な人間ばかりの家の中も。
もちろん、父親が主催するこのパーティ会場も。
ここには「芝浦の御曹司」という自分の肩書きに
媚びへつらう人間しかいない。
だがその耳を刺すような音が聞こえた瞬間、
倦怠感を押しのけて奇妙な「記憶」が浮かんできた。
ずっと昔の俺は、こんなじゃなかったはずだ。
少なくとも、鋼の鎧を着けて闘っている時は・・・
そう思った時、今度は野獣の吼えるような声が聞こえた。
すぐ目の前のガラスの中から。
驚いて目を凝らすと、役員やその取巻き連中の群がる
テーブルの映り込みの向こうに、獣とも人とも
つかない姿が見えてきた。
低く下げた鼻面に載った巨大な角。鉤爪のついた両手。
とてつもなく頑丈そうな金属質の皮膚・・・
「面白くなってきたじゃん」
年の割に幼い顔に、やっと笑みが浮んだ。
たちの悪いいたずらを思いついた時のように。
712 :Evergreen (8) :03/12/25 04:02 ID:767o+Aqp
「先生!しっかりしてください!」
瀟洒な自宅兼オフィスで突然目まいに襲われて
倒れた弁護士に向かって、秘書の男が懸命に呼びかける。
「ああ、大丈夫だからゴロちゃん・・・でもやっぱり、
検査さぼらない方がよかったかな?」
つとめて呑気そうに答えたものの、北岡は不安に苛まれていた。
最近、立ちくらみの回数が増えたような気はしてたんだが。
もしかしてかなりやばいのかな、俺・・・
でも、まだ死にたくないな。せっかくイブは約束取りつけたんだし。
死ぬ?冗談じゃない、なんでこの俺が死ななきゃならないのよ。
どんなことをしたって生き延びてやるさ。
それにしても、さっきからキンキン鳴ってるこの音は何だ?
ゴロちゃんには聞こえてないみたいだけど・・・
二人とも気づかなかった。執務机の背後にある大窓に、
長い角を持つ巨大な影がぼんやりと浮んでいることに。
街灯もまばらな暗い道を、とぼとぼと歩く青年。
大学からの帰りだった。
抑えつけた怒りと不満が、心の底で泡立っている。
田宮君も西本君も小川さんも、全然わかってない。
香川先生だって「東條君の言い分も分かります」とか
言ってたけど、結局はみんなの言うことしか
聞いてないじゃないか。きっと、僕を丸め込もうとしてるんだ。
そうとしか思えない・・・
713 :Evergreen (9) :03/12/25 04:06 ID:767o+Aqp
でも、一番腹が立つのは仲村君だよ。
わざわざ先生に、僕の失敗を告げ口するような真似を
したんだから。その上、僕が抗議の意味で黙って
仲村君の顔を見たら「逆恨みはよせ!」なんて
すごんで見せたりした。本当に、嫌な奴。
いっそ、みんな、死んでしまえばいいのに。
怒りと屈辱感の虜になった青年には聞こえなかった。
自分の周りに響き渡る、甲高く不快な音が。
そして、今しがた通りすぎた街灯の脇に付いている
カーブミラーに映った獣人が、両手に生えた巨大な爪を
誇示しながら凄まじい吼え声をあげるのが。
夜の公園。街灯に照らされた池の水に、
冬の木立が映り込んでいる。
冷たいベンチに腰掛け、1時間近くもじっとしたままだった
娘が膝の上のバッグを開け、畳んだ便箋を取り出した。
何度も読んだためか、折り目の部分から破れかかっている。
「美穂へ。
そろそろ、父さんと母さんのところへ行かなければなりません。
でもあなたを1人で残していくのが一番心残りです。
なるべく早くいい人を見つけて、新しい家族をつくりなさい。
そうすれば、ひとりぼっちじゃなくなるでしょ?
お姉ちゃんだって、美穂と、美穂の血を受け継いだ
子供たちの中でずっと生きていけるから」
714 :Evergreen (10) :03/12/25 04:09 ID:767o+Aqp
お姉ちゃん。どうして何も言ってくれなかったの?
父さんと母さんがいなくなった時から、辛いことや
悲しいことは何もあたしに言わないで、いつも無理して。
病気になったことまで、入院する直前まであたしには
隠してて、その挙句に突然逝ってしまうなんて・・・
こんなに短い遺言だけ枕元に残して。
それに家族を作るなんて無理だよ。
あたし、男なんて信じられない。
お姉ちゃんだって、いっぱいだまされたじゃない。
あたしにはお姉ちゃんがいればいい。
だからお願い、生き返ってきて・・・
そう思ったとたん、目の前の池の水が盛り上がった。
翼の下に首を入れて眠っていたカモたちが、
驚いてけたたましく鳴きながら飛び立つ。
ベンチから立とうとして立てないまま、
娘はただ呆けたように見つめていた。
池の中から飛沫を上げて現れた何かが、
夜空ヘ向かって一直線に飛んでいくのを。
「この池・・・白鳥なんて、いなかったよね?」
怯えたような呟きに答えたのは、まだ波立っている水の面と
周囲の木立に響き渡る、耳を刺すような音だけだった。
715 :Evergreen (11) :03/12/25 04:12 ID:767o+Aqp
確かに俺は清廉潔白な地方公務員とはいえない。
それは認める。だがだからと言って、
このまま一生ゆすられ続けるつもりはない。
一度報酬額を上げてやると、加賀はほどなく
次の上乗せを要求してきた。
「寝言はよせ」と言ってやったら、野郎、
下卑た笑いを浮かべて眼鏡を直しながら
こうほざいたものだ。
「須藤さん。あたしのお願いを聞いてくれないと
後悔することになりますよ?」
後悔? どういうことだ。
「あたしが今あんたとやってる仕事の裏には、
ある組織の幹部が絡んでる。名前を聞けば
あんただって一発で分かる大物だ。そうそう、
小竹署のお偉いさんとも仲がいいんだとよ」
なんだと・・・?
「あんたが値上げを渋ったり、この仕事から
手を引こうなんて思ったら、その大物と
小竹署のお偉いさん、つまりあんたの上司が
黙っちゃいないってことさ。刑事の職を失うくらいなら
まだいいが、でかい重りを脚にくくりつけられて
東京湾に沈んだりしたかないだろ?まだ若いんだしな」
やつらみんな、最初からグルだったのだ。
そして俺は知らないうちに上司に嵌められ、利用され、
一生を闇に塗り込められつつあるというわけだった。
716 :Evergreen (12) :03/12/26 01:24 ID:MOMmbcha
塗り込められる?ふざけるな。
俺が、あいつらを殺して塗り込めてやる。
加賀の小汚い古道具屋の壁にでも・・・
暗くなったというのに灯りもつけず、
外回り用の黒いコートを羽織ったまま
冷たい怒りに身体を震わせる男の周囲で、
異様な音が響き始めていた。
そしてアパートのベランダに通じるガラス窓には、
いつのまにか何かが映り込んでいた。
夕陽のような金色をした巨大なハサミを振り上げて
威嚇するような仕草を見せる、カニに似た怪物だった。
都内を見下ろす高層ビルのワンフロアを使った
豪勢な部屋に、たった一人で座る男。
憤怒と苦悶に歪んだ表情は、少し前に丁重な礼を
述べて出ていった男とその部下達のせいだった。
この高見沢グループを買収だと?
テレビで派手なCMを垂れ流すだけで、海のものとも
山のものともつかない新興企業のくせに・・・
しかもトップ自ら乗り込んでくるとはどういう了見だ。
「いい度胸だな、え、社長さんよ?おととい来やがれ!」
俺の嘲笑と恫喝にも顔色ひとつ変えず、胸の悪くなるような
愛想笑いと皮肉で応じたのはあいつが初めてだった。
「社長同士会った方が話は早い。そう思ったまでですよ。
それに、高見沢の総帥はとても気さくなお人柄だ−−
そのように聞いていましたのでね。どうやら噂は本当だったらしい」
717 :Evergreen (13) :03/12/26 01:31 ID:MOMmbcha
答える代わりに俺は指を鳴らした。
間髪いれず、隣室から6名の黒服がなだれ込んでくる。
「おととい来やがれっていってんだよ、青二才。
社長だろうがなんだろうが知ったこっちゃねえ、
これ以上居座るなら痛い目に会うぜ」
わざとらしくため息をつくと、奴は部下達の方を向いた。
「仕方がない、見せて差し上げなさい」
上司の言葉と同時に、二人の屈強な男の身体が変化し始めた。
灰色で、ゴテゴテと飾りのついた姿に。
やたらでかい武者人形のようにも見える。
次の瞬間その頭から白い触手のようなものが飛び出し、
黒服どもの口や鼻に入りこんだ。
気がつくと絨緞の上に灰の山が6つできていた。
俺の耳に、青二才の声が聞こえてくる。
「返答の期限は1週間です。考える必要もないでしょうが・・・
では、これで失礼いたします。お忙しいところ私のような
若輩者のために時間を割いていただき、感謝しております」
警察はおろか、カネもヤクザも閣僚も役に立たない。
相手は化け物の支配する企業だ。
畜生、力さえあれば。
化け物に対抗できるような力が、俺にも・・・
いつのまにか、部屋中に不気味な音が響き始めていた。
机の上で頭を抱えて歯を食いしばる男の真上で、
豪華なシャンデリアがきらめいている。
男の背後の広い窓に映ったもうひとつのシャンデリアには、
長く巻いた尾と奇怪な形の脚を持つ緑色の怪物が張りついていた。
720 :Evergreen (14) :03/12/26 21:45 ID:WGsxSkEs
やれやれ。入ってくる車にも出てくる車にも、
金だけは腐るほど持ってそうな連中ばかりが乗ってる。
腐りかけてる分くらい、寒空の下で一生懸命他人様に
奉仕してる俺みたいな人間に回してくれよ・・・
夜になってさらに冷え込んできた駐車場の片隅で、
靴跡のついた万札を制服のポケットから取り出して
丁寧に皺を伸ばすと、バイトの青年はため息をついた。
「いくらヨイショしたって、今日はまだこれだけか。ちぇ」
だが、ついさっき誘導したイタリア車から出てきた
男女に気付くやいなや、青年の表情と声の調子は
素晴らしい速さで切り換わった。
「いってらっしゃいませーー!!」
自分の挨拶を完全に無視し、軽口を叩き合いながら
目の前を通り過ぎていく男女を見つめる青年の眼に、
一瞬暗く危険な影が差す。
が、2人の姿が消えるとすぐ大げさに息を吐き出した。
嫌な気分を吹き飛ばそうとするかのように。
「あーあ。いいなぁ〜」
そして、ことさら大きな声で独りごとを言いはじめる。
「親父にたてついたりするんじゃなかったかなあ。
見合い話ってのも、親父にタンカきった手前引っ込みが
つかなくなって結局蹴っちゃったし。
写真で見る限りじゃ、きれいな子だったのにな・・・ん?」
ふと何かを感じてあたりを見まわす。
「風の唸りか・・・しかしクリスマス前からこの調子じゃ、
イブはさらに腐れカップルで充満するんだろうなあ。
仮病使って休もうっと」
721 :Evergreen (15) :03/12/26 22:02 ID:WGsxSkEs
だが青年が聞いたのは風の唸りなどではなかった。
駐車場全体から、というより駐車場内の車全体から
湧き出し、低い天井に反響している甲高い音だった。
気配を感じながら青年が認識できなかったものがまだある。
視線を外したとたん、周りにあるすべての車の窓やボディや
ミラーにずらりと並んで映った、無数の怪物たちだ。
色も体の大きさもまちまちだったが、二本足で立ち、
頭部に太く長い角があるという点では共通していた。
「優衣・・・・・・許してくれ・・・!」
いくら耳をふさいでも無駄だった。
刺すように甲高い音は、その男の内側から聞こえてきたからだ。
遠い昔男が妹を捨てた時、一緒に捨てたはるか彼方の国で、
しかも一握りの人間にしか聞こえていないはずなのに・・・
黒い髪に両手の指を食い込ませてのたうちまわる男を、
冷ややかに見下ろしている者がいた。
壁に掛けられた横長の油彩画を保護するガラスの表面から。
身体の左右に巨大な金色の翼を広げて仁王立ちになった、
いかめしい黄金のマスクをつけた男のように見えた。
そして。
「何故だ、優衣・・・何故またこの音が聞こえる」
都心に近い住宅街にある小さな喫茶店のカウンターに座る、
漆黒のレザーコートを着た若い男が蒼白な顔でつぶやく。
目の前に置かれた少年と少女の写真の表面に映り込んで
はばたく、コウモリに似た怪物を見つめながら。
>1
スレ立て乙彼さまでした。
>作者さん
めちゃくちゃ面白いです!
毎週龍騎を見てた頃のワクワク感を思い出しました。
蓮だけが覚えている、って事は最終回ラストシーン後の世界
…という解釈でいいのかな?
続きを楽しみにしています、マイペースで頑張って下さい。
乙!
Evergreen面白い!
誰が生き残るのか予想するのも楽しみだ。
>>1さん
ありがとうございます!!&ご挨拶が遅くなってすみません
新スレを立てていただいただけでも嬉しいのに、Evergreenを再掲載してもらったり、
前スレの目次を更新して掲載してもらったりという色々なご配慮に、
何とお礼を申し上げていいかわかりません。本当にお疲れ様でした・・・
前スレに引き続き、Evergreenの完成までがんばりますので
どうぞよろしくお願いします>all
他の方々のSSも楽しみにしています。
脱色した髪を振り乱し、蛇皮を使った派手な
ジャケットを羽織って街を歩いていく男。
ぎらつく眼は常に前方の空を見上げている。
青い燐光をまとってビルの谷間を飛んでいく、
黒い龍を追いながら・・・
少し前のことだ。
突然響き出した得体の知れない音が引き起こす
耐えがたいほどの苛立ちを解消すべく、裏街で
行き会う人間を片端から鉄パイプで殴っていると、
音に混じって冷たい笑い声が聞こえてきた。
振り向くと、すぐ後ろのビルの窓に人影が映っている。
自分ではなく、長い茶髪の男だった。
明るい青のジャケットを着ている。
そいつがまた自分に向かって笑った。嘲るように。
「久しぶりだな・・・といっても、お前は間もなく
倒されることになるが。今度こそ俺の蹴りを受けてな。
俺の上には黒い龍がいる。俺と戦いたければそれを追って来い」
それだけ言うと、男の姿は消えた。
挑発された−−それだけ分かれば十分だった。
鏡に自分以外の人間が映って口をきいたことにも、
「久しぶり」「今度」という言葉が何を意味するかにも、
何の興味もなかった。
顔を上げて夜空を見渡すと、長い胴をくねらせながら
ビルの間を飛んでいく龍が目に入った。
「本当に久しぶりだな・・・こんなにイライラするのは」
低い声でつぶやくと、浅倉は歩き出した。
龍の下にいるはずの男を叩きのめすために。
26に載せようと思ってうっかりしてました、
いただいたレスへのお返事です。
>>24 ありがとうございます、がんばります。
「毎週のワクワク感」が少しでも再現できたのでしたら、
こんなに嬉しいことはありません。(「TVで新しいエピソードを見てワクワクできないのが
淋しい」というのも、自分が龍騎SSを書く理由のひとつになっていると思うので)
>蓮だけが覚えている、って事は最終回ラストシーン後の世界
はい、ラストシーンと同じ年のクリスマス間近ということにしてあります。
>>25 ありがとうございます、また楽しんでもらえるようにがんばります。
>誰が生き残るのか予想するのも楽しみだ。
生き残り予想ですか・・・うーむどうなるでしょう・・・
「暮れのせいか、変な奴が多いよね」
「ほんと、何かと思っちゃった」
街の中心部で買物をした帰りらしく、
いくつも紙袋を下げて話しながら歩く二人の女。
その二人とすれ違った占い師の青年が、
何を感じたのか急に立ち止まる。
「怖かったね、あの蛇柄のやつ」
「あれもだけどさ、その前に見かけた
青い服の子も変だったよ。「来るな!」とか
喚いてたじゃん、誰も追いかけてないのに」
後ろを歩いていく女たちの言葉を聞きながら、
青年の眼が細まった。
自分が探している若者との間の距離が
せばまってきている−−そんな気がしたからだ。
やや足を速めて再び歩き出す。
あの耳を刺すような音が、また大きくなってきている。
しばらくして予感は現実になった。
急な下り坂になった人気のない道を降りていると、
前方からよろよろとやってくる人影が見えた。
着ているジャケットの色は青。ずっと両手で耳を
ふさいでいるらしく、茶色の長い髪はくしゃくしゃだった。
そして、何かつぶやいている。
聞こえなくても内容の想像はついた。
今、彼の背後の夜空から突然降りて来て
その前に回り込んできたものを見れば。
「来るなあ!」
そう叫ぶと若者は、耳をふさいだまま倒れ込んだ。
「おい。大丈夫か」
誰かの声が降ってくる。
「安心しろ、あの怪物はもう消えた」
倒れた若者が道路から顔を上げると、赤いジャケットを
着た上からコートを羽織った青年が見下ろしていた。
「立てるか?」
一瞬とまどったがすぐにうなずき、
青年の差し出した手につかまって起き上がる若者。
急いで空を見上げ、それから後ろを見たが、
確かに黒い龍はいなかった。
あの耳を刺すような音はまだ続いていたが。
そんな若者の様子を見ていた青年が言った。
「あんた−−今日の運勢は最悪だな」
若者が驚いたように青年の顔を見直す。
苦笑いして、青年が言葉を続ける。
「もっとも、俺の運勢も似たようなものだが。
俺の占いは当たる」
不安と恐怖の色ばかりが濃かった若者の顔に、
やっと少しずつ笑みが浮かんできた。
「今ので思い出したよ・・・
あんたには前にも一度、占ってもらったことがある。
確かに最悪だったな、あの時も」
青年もわずかに微笑んでうなずく。
今の状況とは反対に、同じ若者が倒れた自分を抱えて
名前を呼んでいるヴィジョンを思い出しながら。
「ああ。今年の初めだった。
俺も今あんたの顔を近くで見て、やっと思い出した。
どうやら奇縁があるらしいな、あんたとは」
31 :
30:03/12/30 01:38 ID:8Y6Sun7O
失礼しました、30のタイトルは「Evergreen (18)」です。
ずっと黒い龍に追われ続けていたからなのか、
まだ人心地のつかないらしい若者に向かって
占い師が言葉を続ける。
「よかったら話してくれないか?
今、あんたを悩ませているものについて・・・
少しは力になれるかもしれない」
それからこう付け加えた。
「名前を言ってなかったな。手塚海之だ」
若者が力なく笑った。自嘲的にも見える表情で。
「俺、城戸真司・・・でも話したって無駄だと思う、
せっかくだけど。頭がおかしいと思われるか、
嘘をついてるって思われるのがオチだろうな。
今の俺に必要なのは占い師じゃなくて
精神科の医者なんだよ、きっと」
言ってから、何かを思い出したようにまばたきする。
「さっき言ったよな、”あの怪物はもう消えた”って。
あんたには見えたのか、あの黒い龍が・・・
もしかしたらこの音も聞こえてるのか?」
予想もしなかった答えが返ってきた。
「ああ、見えた。それにこの音のせいだ、
俺があんたを探し始めたのは」
「・・・・・・探す?」
「この音が聞こえ始めて間もなく、不思議な映像が
目の前に浮かんだ。あんたが倒れている俺を抱えて
名前を呼び続けている−−そんな光景だった」
「そんな馬鹿な・・・今聞くまではあんたの名前なんて
知らなかったし、前に1回会っただけじゃないか!」
返ってきたのは、さらに予想外の答えだった。
「1回だけではないのかもしれないな」
なんだよ。どういうことだよ。
1年近く前に街で声をかけてきて、頼みもしないのに
俺の運勢を告げた時も面食らったけど、
今度は俺を探していただの、名前を呼ばれていただの。
おまけに、会ったのが1回だけじゃないって・・・?
相手の疑念と苛立ちを読み取ったように、手塚がまた口を開く。
穏やかな笑みを浮かべているが、眼の表情は真剣だった。
「聞かせてくれないか。あの龍に追われることになった
いきさつや、この音が聞こえ始めた時のことを・・・
そうすれば、あんたを救う道が見つかるかもしれない。
あんたが俺の幻視に出てきた理由もな」
真司の顔から、次第に不安と疑いが消えていく。
「・・・なんだかよくわからないけどさ、
確かに俺たち、不思議な縁があるみたいだな。
それにあの龍が見えて、音が聞こえるあんたに
占ってもらえば、本当に何か見つかるかもしれない。
どっちみち俺には全然分からないんだしな、
どうしたらこの状態から抜け出せるのか」
哀しそうな笑みを見せたのも束の間、
すぐに決然とした表情で手塚を見上げる。
「こっちからお願いするよ。何もかも話すから、
これからどうすればいいのか教えてくれ!」
真司がすべてを話し終わると、沈黙が落ちた。
坂を降り切ったところにある街灯の蒼白い光が、
坂の途中に立つ二人を微かに照らしている。
今、もうひとつの明かりがそこへ加わった。
手塚が無言のまま、マッチを取り出して火をつけたのだ。
眼を半ば閉じ、一切の表情を消した青年の顔が、
闇にゆらめく光の輪の中に浮かびあがる。
炎を見据えながらその顔が語り始めた。
「お前に取りついているのは、あの龍と音だけじゃない。
凄まじく危険な何かを呼び出してしまったようだな、
お前の悲しみは・・・いや、お前自身がその凄まじく
危険な何かになって、この世界を崩壊に導こうとしている」
この上なく不吉な託宣を受けた真司の脳裏に再び、
鏡の中にいた自分の邪悪な笑顔が浮かんでくる。
そして、クリスマスツリーの前にいる娘のイメージも。
「俺が世界を崩壊させるって・・・どういう意味だよ!」
顔を向けず、表情も動かさずに答える手塚。
「分からない、俺にも。だがこれだけは言える−−
お前が今の悲しみを持ち続ける限り、
もう1人のお前は何度でも現れる。
しかもお前のイメージに現れる娘が一番望まないのは、
お前がその子のために悲しむことだ」
俺の悲しみが世界を滅ぼすことになる?
しかもあの女の子は俺が悲しむことを望んでいない?
だったらどうして、あの子を見るたびに涙が流れるんだよ。
それにもう1人の俺が言った。俺の悲しみが何かを覚醒させて・・・
よく覚えてないけど、その結果あの子に新しい命を
与えることができれば、俺の悲しみもなくなるって。
つまりこういうことになるのか。
「俺の悲しみを望まない女の子の命が俺の悲しみで甦り、
その結果世界が崩壊して、俺の悲しみも消える」
何なんだよそれ!
真司が再び恐慌状態に陥りかけた時。
風もないのにマッチの炎が消え、手塚の表情に緊張が走った。
「もうひとり、俺たちと奇縁のある奴が近づいてくる・・・
あいつにも俺たちと同じものが見え、聞こえているようだ。
−−すべてはあの日から始まっていたのかもしれないな。
俺たちと、それに今やってくる男が初めて会った時から。
いや。俺と、あの男と、それに俺の知らない人間たちが
あの日お前と会った時から・・・違う、もっと前だ・・・
俺たちすべての縁が始まったのは・・・」
「待ってくれよ、もう何言ってるのかさっぱり分かんねえよ!」
狼狽する真司にかまわず、憑かれたように言葉を続ける手塚。
「あの日のことを思い出せ。
俺やあの男と会ってから、お前が何をしたかを・・・
そうすれば、お前の悲しみを鎮める道が開ける。
そして世界を救う道も。
俺がお前に示してやれるのはこれだけだ。分かったら、
急いでここから離れろ−−あの男に追いつかれる前に」
「あの男って・・・」
言いかけた真司が、手塚の指差す方を見た。
誰かがこちらに向かって坂を登ってくる。街灯を背にして、
黒々としたシルエットにしか見えない誰かが。
両手を身体の脇にだらんと下げ、決して急がずに。
そして、真司は気付いた。
「あいつ・・・確かバイクを倒した・・・」
「早く行け!」
今までの冷静さをかなぐり捨てたような形相で叫び、
手塚が真司を押しやった。坂の上の闇に向かって。
36 :
35:04/01/05 00:28 ID:XX0A59Nq
明けましておめでとうございます。Evergreenの続きをupしました。
現実は正月なのに、話の中ではまだクリスマスにもなっていません(鬱)
読んで下さった方、いたらありがとうございます。
他の方のSSも、upよろしくお願いします。
続きキター!(AA略)
映像が頭に浮かぶような描写が素晴らしいです。
この先の展開がすごく楽しみ。
もっとちゃんとした感想を述べたいんだけどうまく言葉にできないです、
ごめんなさい。
オルタナ02の作者さんも復活してくれないかなー。
38 :
名無しより愛をこめて:04/01/07 23:53 ID:0sz+Qfp4
>>36 アケマシテオメデトウ!!!!!!
今年もよろしく〜
さがりすぎだからあげます
後ろを気にかけながらも真司が坂を駆け上がり始めた時。
海の向こうでは、内側から響く音に悩まされ続ける男が
子供の頃のある出来事を思い出していた。
あれはこの国に来てまもない頃だ。
妹が死に、両親も逮捕されて肉親を失った甥を心配した
養父母は、何とか俺を元気づけようとしてくれた。
頂上の平らな岩山や赤い奇岩で有名な、砂漠の中にある
観光地へ連れて行ってくれたのもそのためだ。
そこで、先住民のシャーマンに声をかけられた。
「お前は、この世界の前のすべての世界でポワカだった・・・
しかも並外れた力を持つポワカだった」
振り向いた俺の顔を見るなり、そいつはそう言った。
部族の仮面をつけ、たくさんの鳥の羽で
全身を飾ったその男に少し気圧されながらも、
年に見合った生意気さを発揮して俺は言い返した。
「ポワカ?何だよそれ・・・それに、この世界より
前の世界なんてあるわけないだろ!」
仮面の男の答えは、ショックなものだった。
「ポワカとは他者の生命を犠牲にして生きるもの−−
悪い魔法使いのことだ。お前の妹もポワカだった」
俺が、悪い・・・魔法使い?優衣もだと?
「なんだよおまえ、変なことばかり言うなよ!!」
なぜ自分に妹がいたことが分かるのか。
それさえ疑問に思わず、怒りに駆られて叫んだ。
今まで必死に抑えつけていた悲しみと後悔が、
涙と一緒に噴き出してくるのを感じながら。
「お前と妹がポワカになったのは、やむを得ない
ことだったのだ・・・生きるためにな」
涙を流して睨みつける俺をなだめるように
そう言うと、さらにシャーマンは続けた。
「お前たちが魂のない動物を描いて虚像の世界に
放し続けたのは、守ってくれるものを必要としたからだ。
魂のない動物は魂を得るために人を食らう。
それを知りながらお前が、自分の命と引き換えに
虚像の動物たちを人の世に放ったのは・・・
そして生贄として選んだ人間たちに虚像の動物の力を与えて
互いに争わせ、勝ち残った者の魂を取り上げようとしたのは・・・
妹に最も強い魂を与えて生き返らせるためだ。
それを責める資格のある者は、この地上にはいない」
優衣を救ってやれなかった。目の前で優衣が
衰弱していくのを、ただ見ていることしかできなかった。
そして今、優衣を遠い国の冷たい墓の中に残したまま
自分だけがここで幸せになろうとしている−−
ずっと心に巣食っていた罪の意識が今また身体の中で
暴れ出すのにまかせ、俺は半ば泣きながら言った。
「じゃあ・・・じゃあ、もし俺がこの世でもポワカになれば、
その力で優衣を生き返らせることができるのかよ?
どうやったらなれるのか教えてくれよ・・・頼むから!」
答えたシャーマンの口調は、優しくもあり厳しくもあった。
「ばかなことを言うものではない。
この世界でのお前が普通の人間になれたのは、
お前の妹が前の世界、そしてそのまた前の世界から
ずっと、それを強く望んでいたからなのだぞ・・・
お前の妹はポワカとして生き延びることを望まなかった。
だがそれ以上に、自分のためにお前がポワカとなって
他人の魂を食らい続けることを望まなかったのだ。
本当に妹を救いたいと思うのなら、この世界で
人間として立派に生きることだ。だが−−」
少しためらった後、呪術師がまた口を開く。
「気をつけるがよい。おまえが前の世界に残した
ポワカとしての力は、あまりにも強すぎた。
誰かお前同様に、お前の妹を救えなかったことを
悔やむ者の力を利用して、この世での復活を
遂げないともかぎらない。お前の妹や、
お前自身の意志さえも無視してな・・・」
あとで養父母から聞いたが、あの観光地の近くには
古い先住民の村があり、予言の力を持つと言われる
部族がずっと昔から住んでいるとのことだった。
そしてその部族の神話によれば、今自分たちの住む
世界以前にもたくさんの世界が神によって創造され、
滅びていったのだという・・・
そういえば今、目の前の壁に掛かった油彩画を覆う
ガラスに映り込んでこちらをじっと見つめている男の
仮面は、あの時のシャーマンの仮面に似ていなくもない。
金色で、表面に細く切れ込みの入ったあの仮面に・・・
だとしたら、こいつはあの時のシャーマンなのか?
前の世界に俺が残してきたというポワカの力が
どこかで復活しようとしている、そう警告に来たのか?
いや、それとも−−
こいつこそ、ポワカだった俺の力そのものなのか?
手塚だっけ、お前も早く逃げろよ・・・
初めて会った時も乱暴だったからさ、その男。
占ってくれてありがとう。言うとおりにしてみるよ。
だけど、あの日−−
学生風の男の自転車と出会い頭にぶつかって、
それを見ていた手塚に運勢最悪って言われて、
あの男にバイクを倒されて、
それからどうしたんだっけ、俺・・・
暗い住宅街をあてもなくさまよいながら、
懸命に思い出そうとする真司。
確か、ひと休みできる場所を探したんだ。
コーヒーでも飲んで・・・
「コーヒーはない」
そうだ。そう言われたんだった。
やっと見つけて入った喫茶店で。
待てよ。思い出した。
そのちょっと前に、すごく嫌な奴に会ったんだ・・・!
店の前で目が合った瞬間、そのまま恨みでも
あるみたいに俺を睨み据えながら迫ってきた。
そして押し黙ったまま、俺があいつを避けて
通ろうとするたびに行く手をさえぎってきた・・・
そこまで真司が思い出した時。
「やっと思い出したか、奴のことを?」
いきなり後ろからそう話しかけられた。
自分自身の声で。
振り向くこともできず凍りついた真司に向かって、
さらに自分の声が続ける。
「ふん、手塚海之か。
ライダーとしての奴を倒すことなど造作も無いが、
人間としてのあいつはどうも苦手でな。
あいつの持っている、邪気を払う力が鬱陶しい。
お前がこの世界まで引きずってきた悲しみと未練を
力の源にしている、言ってみれば怨霊みたいな
ものだからな、俺は・・・
まあいい。どうせ奴は王蛇に倒されることになる。
じきにモンスターどもが完全に復活するからな・・・
今はまだ、前の世界でライダーだった人間だけに
見える幻影にしか過ぎないが。
王蛇以外のライダー達も、すでに目覚めつつある。
あとはお前が目覚めて俺と一体化しさえすればいい
−−まずは、ナイトを血祭りにあげるためにな!」
「・・・ナイト?」
相変わらず闇の中に立ち尽くしたままの真司に、
再び嘲笑まじりの声が答える。
「お前が今思い出した、あいつのことさ。
自分の恋人のために優衣を犠牲にした男だ・・・
自分を信頼しきっていた優衣を。
そろそろお前にも完全な記憶が必要だな。
少し早いが、また俺を受け入れてもらうぞ−−
今度は分離するなよ」
十数秒後。道路脇に設置されたカーブミラーが、
遠ざかっていく真司の後ろ姿を映していた。
そう遠くない所にあるはずの、小さな喫茶店に向かう姿を。
44 :
43:04/01/11 03:16 ID:kFiB3yot
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>37 こちらこそ、レスが遅くなって申し訳ありません・・・
37さんの感想をいただけてすごく嬉しいです。
最後まで楽しんでいただけるように、またがんばります。
本当に、オルタナ02の世界もまた見たいですね。
よろしくお願いします>作者さん
>>38 遅れてしまってすみませんが、おめでとうございます。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いしますm(__)m
ageてくださってありがとうございました。
(補足)
>>39-
>>41に出てきた「ポワカ」という言葉の元ネタは
「ポワカッツィ(POWAQQATSI)」という映画です。
去年この映画を見てタイトルの意味(=他者の生命を犠牲にして
繁栄する世界)を知り、「龍騎ワールドのことみたいだ」と
思ってしまったので今回取り上げて見ました・・・
映画の内容自体には、龍騎やこのSSとの共通点はありませんが
下記が日本での公式サイトです。
ttp://www.conversation.co.jp/koyaanisqatsi/ 「ポワカ」の意味が”悪い魔法使い(negative sorcerer)”
であるという記述は、下記を参考にしました。
ttp://www.qatsi.org/
>>44様
ちょっと遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
すごくドキドキするラストシーンですね。
次回、花鶏でいったい何が起こるのか?
沙奈子さんファンの私としては、とても楽しみです。
毎回ドキドキワクワクしながら読ませてもらってます。
真司くん逃げてー!と叫びたくなりました(w
「普通の人間」としての士郎もなんだか新鮮で興味深いですね。
これからどうなるのか本当に楽しみです。頑張って下さいませ。
47 :
44:04/01/16 21:28 ID:wOwfbM5D
Evergreen作者です。
読んでくださっている方々、いつもありがとうございます。
(お詫び)
土日に用事が入ったため、すみませんが次の分のupは来週にさせてください。
感想下さった方々も申し訳ありません。話の続きと一緒にお返事もupします…
48 :
うま:04/01/19 03:08 ID:apR91ECh
>>47 また戻ってきてくれるって、僕は信じてます。
真横から見たガラス板のように、深い緑色の世界。
その底に小柄な娘がたったひとりで佇んでいた。
たったひとりというのは正確ではないかもしれない。
娘の背後には巨大なエイが浮かんでいたし、
足元には大蛇がうずくまっていたから。
あたしは、十分幸せだった。
お兄ちゃんが描いてくれたモンスター達がいるし、
ときどき上へ昇っていって、みんなが平和に暮らしている
今の世界をのぞいて見るのが楽しみだった。
そうやってずっとこのコアミラーの底で過ごしてきた。
向こうの世界で生きていれば、もうすぐ21歳になる今まで。
なのに。
見上げる娘の顔のおもてを、はるか上にある現実世界との
境目から射してくる銀色の光が移ろってゆく。
「優衣ちゃん・・・ごめん・・・
俺、優衣ちゃんを助けられなかった・・・」
ここで暮らすようになってからずっと、
真司くんのその悲痛な声は聞こえていた。
「許してくれ・・・優衣・・・」
そう嘆き続けるお兄ちゃんの声といっしょに。
私を救えなかった。
二人ともずっとそう思って苦しみ続けている。
たとえ無意識のうちにでも・・・
お願い。もう私のために苦しまないで。
何度ここからそう叫んだか分からない。
でも、二人の悲しみは強すぎた。
お兄ちゃんはもう、鏡の力を使えない。
だからライダーバトルを仕掛けることもできない。
でもお兄ちゃんが前の世界に残した力が、
真司くんの悲しみと結びついてしまった。
クリスマス、そして私の21歳の誕生日が近づくにつれて、
真司くんの哀しい声はどんどん大きくなっていった。
そしてついに、コアミラーの底を破ってあの黒い龍が現れた。
真司くんの悲しみに呼び覚まされて。
同時に、今まであたしのそばにいてくれたモンスターたちも
次々と姿を消しはじめた・・・かつての主人たちの元へ行くために。
なんて皮肉なんだろう。
今までの世界で命をかけて戦いを止めようとしてくれた真司くんと、
私の願いをきいて戦いのない世界を一緒に作ってくれた
お兄ちゃんの悲しみが、戦いを再開させてしまうなんて。
やっと、誰も私のせいで死なない世界ができたと思ったのに。
それが、私への悲しみ故に崩れていくのを見ているしかないなんて・・・
涙にかすんだ優衣の視界の隅で、何かが動いた。
「ベノスネーカー・・・?そんな、エビルダイバーまで!」
今まで優衣を護るように付き従っていた紫の蛇と
紅いエイが、突然空中に飛び上がったのだ。
現実世界を目指して滑るように飛んでいく2匹を声もなく
見つめる優衣の眼に、もう1匹のモンスターが映った。
赤い龍だ。銀色の空の下を悠々と旋回している−−
呼ばれるのを待っているかのように。
ずっと追ってきた黒い龍が突然消えても、
浅倉は立ち止まらなかった。
最後に龍の見えた位置の真下を目指して、
獣じみた前かがみの姿勢で歩き続ける。
急な坂を登りかけた時だった。
「黒い龍を追っているのか?」
いきなり前方から声をかけられた。
坂の途中に赤いジャケットを着た青年が立って、
自分を見下ろしている。
背後の街灯の明かりで顔を確かめるまでもなく、
鏡の中から挑発してきた男でないことはすぐ分かった。
何故あの化け物のことを知っている。
何故俺があいつを追っていると知っている。
普通ならするはずの質問を、浅倉はあっさり省いた。
「知ってるなら教えろ、奴の居場所を・・・!」
正気とは思えない台詞が返ってきた。
「断る」
だが浅倉は殴りかかろうとはしなかった。
華奢なくせに生意気な相手を一瞬睨みつけ、
ふんと笑っただけで、また坂を登りはじめる。
「お前に用はない。あいつを叩きのめす」
その蛇柄の背中に向かって、
青年がさらに信じられない台詞を投げつけた。
「怖いのか、俺が?」
浅倉の動きが止まった。
むこうを向いたまま、はじけるように笑い出す。
「俺に遊んでほしいってわけか?いいぜ−−
あいつほどは面白くなさそうだが」
言葉が終らないうちに、蛇柄が闇に軌跡を描いて流れた。
浅倉の右拳を追って。
だが文字どおり目にも留まらぬ速さで放たれた拳は、
相手の頬骨には命中しなかった。浅倉の狙いが
狂ったからでも、速さが足りなかったからでもない。
青年の見切りと動きが正確だったからだ。
「面白くないのはお前の方だ・・・
もっとましな遊び方があるだろう?」
空振りした苛立ちが爆発する前の絶妙なタイミングで、
浅倉の顔の前に青年が何かを突き出した。
三角形の生物のような紋章が付いた、紅い板だった。
坂を登ってくる男のシルエットを見た瞬間、手塚には分かった。
自分が見たもうひとつのヴィジョン−−雄一に襲いかかる
黒い影の正体が、その男だということが。
それがきっかけだった。彼の、過去と未来を見通す
天性の力が最大限に働き始めたのは。
膨大な量の記憶が洪水のように押し寄せてきた。
自分が前の世界やその前の世界で何者だったのか。
城戸真司や、目の前の男・・・浅倉威とどんな関係にあったのか。
そしてそれらの記憶と、今までに起こったこと、そして真司から
聞いた話を突き合わせることで、次のことも想像がついた。
自分が前の世界で死んだ後、何が起こったのか。
この世界で何が起ころうとしていて、自分が何をすべきなのか。
前の世界で俺が占ったとき、神崎優衣の未来には
何も見えなかった・・・あの時点で気づくべきだったのだ。
彼女がすでに死んでいたということに。
そして、神崎士郎の目的が妹の復活だったということにも。
城戸が繰り返し見るという幻は、前の世界での記憶だろう。
出てくる娘は神崎優衣以外に考えられない。
そして彼女の体から粒子が立ち昇っていたということは、
2つのことを示している。
ひとつは俺が死んだ後の冬、神崎優衣の体に異変が起こったこと。
彼女があのまま存在できる期間はそう長くなかったのだろう。
もうひとつは、彼女が普通の世界にいる状態が、
普通の人間がミラーワールドにいる状態と同じだったということだ。
つまり神崎優衣は、ミラーワールドで仮の命を与えられた者だったのだ。
おそらくは、俺が前の世界で突きとめた神崎邸での事故の際に。
だとすれば神崎士郎が考えることはひとつ−−
妹にできるだけ早く本当の人間の命を与えること。それ以外にはない。
自分を必死に探す妹を置いて、そしてたぶん自分自身の
本来の命さえ捨ててミラーワールドに渡ったのも、そのためだろう。
そしてもちろん、ライダーバトルを仕掛けたのも。
願いを叶えるという甘言で俺たちを操り、戦わせた挙句、
最後に残った者の命を妹に与えるつもりだったに違いない。
元々持っていた命が何らかの理由で失われたのならば、
他人の命を奪うほかはないからだ・・・仮の命が尽きる前に。
だからこそ神崎にとっては、城戸や俺や雄一のような存在が
何よりも邪魔だったというわけだ。妹の命の期限が
刻々と迫っているというのに、戦いを止めようとする者たちが。
だが城戸や秋山と出会い、仮面ライダーライアとして戦い、
そして死んだという俺の記憶はひとつだけではない。
つまり、ライダーバトルは1回だけではなかった。
俺たちが前に生き、死んだ世界もまた、1つだけではないはずだ。
なのに今の世界では俺も城戸も、ずっと普通の人間として
生きてこられた。他の元ライダー達も同じだろう。何故だ?
結局、神崎士郎の目論見がすべて失敗に終ったからに違いない。
おそらくは神崎優衣自身の願いによって。
優しいが、意志の強い娘だった。兄の真の目的を知ったとすれば
止めようとしたはずだ。自分の命が終ると知っても。
だから、彼女はこの世界にはもう存在しないのだろう。
自分の命と引き換えに俺達の命を救った娘は・・・
そして、城戸。
ライダー同士の殺し合いを止めさせたい。
だが神崎優衣の命を救うにはライダーバトルが必要だ。
あいつは前の世界で、ずっとその矛盾について
悩み続けたのだろう。彼女の運命を知った時から。
平和になった今の世界でも、彼女を救えなかったことを
無意識に悔やみ、悲しみ続けるほど。
戦いを望まない自分と、彼女の復活のために
ライダーバトルを望む自分とに自我が分裂するほど。
そしてついに、そのもうひとりの自分に力を与えてしまうほどまでに。
黒い龍や他のモンスターをミラーワールドから呼び出し、
終ったはずのライダーバトルを再開させるだけの力を・・・
そうだ。ライダーバトルは始まっている。
あの音が響き出した時から。
ならば今回も、俺のすべきことはひとつだ。
城戸と一緒にライダーバトルを止めなければ。もう一度。
そしてこの世界を守らなければ。
雄一も幸せになろうとしている、この世界を。
城戸・・・俺の占いは当たる。この世界を救う道は必ず開ける。
だからあの日のことを思い出せ。
そして戦ってくれ、もうひとりのお前と。
今度こそ、ライダーバトルのない世界を取り戻すために。
それこそお前や俺、そして神崎優衣が、いくつもの世界を生きながら
ずっと望んできたことなのだから・・・
浅倉が追っているのは黒い龍と、
城戸に取り憑いたもうひとりの城戸だろう。
今、あの男を城戸に追いつかせるわけにはいかない。
浅倉を俺に引きつけておく方法は−−ひとつだけだ。
「怖いのか、俺が?」
また挑発の台詞を吐くと、ジャケットの左側に手を入れる。
やはりあった。前の世界で馴染んだ、四角い板の感触が。
飛んできた浅倉の拳を避けると、それを突き出した。
「面白くないのはお前の方だ・・・
もっといい遊び方があるだろう?」
カードデッキをひと目見るなり、浅倉がまた笑い出した。
無邪気といっていいほど、純粋に楽しそうな笑い声だった。
「お前もなかなか面白いな」
まだ笑いながら自分も腰ポケットを探り、紫の板をつかみ出す。
まるで、前からそこにあるのを知っていたかのように。
56 :
55:04/01/24 04:15 ID:ExZkJv2d
遅くなってすみません。Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
(いただいたレスへのお返事です)
>>45 ありがとうございます。こちらこそ1月も
残り少なくなるまで遅れてしまって、申し訳ありません。
それに今回はまだ花鶏に着きませんでしたし・・・
なるべく早く私も行って沙奈子さんに会いたいと
思っていますので、もう少しお待ちください(汗)
>>46 ありがとうございます。読んでいる間楽しんで
もらえた上に、士郎の書き方に少しでも新鮮味が
あったのならすごく嬉しいです。帰還でも訪問者でも
士郎兄さんはいっぱい出てきたので、どう変化を
つけようか迷っていました・・・
>>48 age&待っててくださって、ありがとうございます。
ファイズギアはもう少し預かっててください(w
ライア、王蛇とのリターンマッチか…燃える展開になってきました
つーかすごいっす、ここまで見事に龍騎の続編を書くとは…
続き激しく待ってます
をを、続きだ続きだ!!
楽しみにしとります。
60 :
名無しより愛をこめて:04/01/28 01:52 ID:slXmIGRR
今晩は。今週は下がり方が早いようなので、age&先にお返事させてください。
>>57 ありがとうございます。ライア&王蛇リターンマッチは
私自身も楽しみです。実を言うと今週は別件に手を出してしまい、
まだ続きに着手していないのですが、もちろんこちらもがんばります。
>>58 お知らせをありがとうございます。2つとも落ちたとは残念・・・
ブレード祭りはすごいですね。今度の日曜はどうなるでしょう。
龍騎とはまた違ったカードバトルがとても楽しみです。
(ファイズ最終回も泣けました。たっくんはどうなるんだろう)
>>59 ありがとうございます。57さんの所で書いたように、今週は
別件を今までやっていたので続きをまだ書いていないのですが、
浅倉と手塚の因縁バトルの方も早く書きたいと思っています。
浅倉と手塚の因縁バトルが始まるんですね。
全てを思い出した手塚の気持ちを思うとなんだか切ないです。
前スレの方のも読んで来ました。
いつもとちょっと違った感じのお話でこれもまた続きが楽しみです。
(向こうは容量がアレなのでこっちに書きました)
Evergreenも初夏の廃屋も続きを楽しみに待っています。
坂の脇に止められたバイクの脇に歩み寄り、
二人の男が同時にカードデッキをかざす。
手塚は右のミラーへ。
浅倉は左のミラーへ。
「変身!」
この世界では二度と響くはずのなかった声が響く。
シルバーリングの嵌った右指先を伸ばす手塚。
稲妻のような形と速さで右腕を宙に走らせる浅倉。
次の瞬間、世界が反転した。
坂の途中の景色も止めてあるバイクも変わらない。
ただ、バイクのナンバープレートの数字だけが
すべて左右逆になっている。
どこからか奇妙に虚ろな音が響いてくる。風鳴りだ。
それが突然断ち切られた。2つの声に。
「ソードベント」
「うぉあああっ!」
宙を飛んできた金色の剣を受け取るやいなや
大きく振りかぶり、浅倉がだっと駆け出す。
いや。仮面ライダー王蛇が。
坂の上方に立つ、仮面ライダーライアに向かって。
「そうだ、この感じをずっと探していたんだ俺は・・・!」
恍惚とした呟きを、剣に当たる風の唸りが掻き消した。
目の前でベノサーベルが金色の弧を描いた刹那、
ライアが飛びすさる。片手をカードデッキに伸ばしながら。
「コピーベント」
空を切った後すぐに振り下ろされた王蛇の二撃目が、
今度は強烈な金属音とともに弾き返された。
同時に咲いて散った火花を浴びながら、ライアが
手にしたばかりの剣を構える。相手と寸分違わぬ武器を。
「ふん」
嘲るように唸ると、王蛇がベノサーベルの切先を
真っ直ぐ上に向けて握り直す。
一瞬、ライアには分からなかった。
王蛇が左腕を武器ごと捻じるように動かし、
下から思い切り自分の右脇腹に斬りつけたことが。
それほど、剣を目の前に構えて静止した状態から
攻撃に移るまでの王蛇の動きは速かった。
速いだけではない。
圧倒的な重量を込めた斬撃をまともに食らった
ライアの身体が大きくよろめく。
間髪いれず、王蛇の左手首が今度は水平に流れた。
相手の側頭部を太い刀身で薙ぎ払いながら。
火花が再び凶々しく闇に散る。
それでもなお踏みこたえようとするライダーの鳩尾に
王蛇の膝蹴りが続けざまに炸裂した。
「うぐ・・・」
たまらず今度こそ崩れ落ちたライアに向かって、
紫の右脚から渾身の蹴りが放たれる。
意識を失った赤紫の身体は、あっという間に
急な坂を転げ落ちていった。
力の抜けた腕からこぼれ落ちた剣とともに。
ミラーワールドに響く音が、再び風鳴りだけになる。
「お前が仕掛けてきたんだろう・・・
もっと真面目に遊べよ」
左手に持ったベノサーベルの先で首の横を
軽く叩きながら、悠然と坂を降りていく王蛇。
坂の尽きるところまで来て落下を止め、
そのまま身動きひとつせず横たわったままの
ライアの身体を、街灯の冷たい光が照らしている。
「動かないやつにとどめを差してもつまらん。
もう少し遊んでからにしろよ、おい!」
すぐそばまで近づいてもぴくりとも動かない相手に
苛立ってきたのか、声を荒げてそう言うと
うつ伏せになった相手の肩を蹴り飛ばそうとする。
その瞬間。
「アドベント」
転がり落ちる時にカードを引き抜いていたライアが
跳ね起き、バイザーにそれを装填した。
意表を突かれた王蛇が剣を振り上げるよりも速く。
坂の両側にそびえる石垣の間の空から、
エビルダイバーが凄まじい速さで降下してきた。
「!」
さすがに転倒こそしなかったものの、辛うじて
モンスターの体当たりを避わした王蛇がよろめく。
その隙もライアは逃さなかった。
すぐに別のカードがバイザーの中に消える。
「スイングベント」
再び、今度は坂の上からエイが向かってきた。
傾斜した路面すれすれを猛スピードで飛びながら。
紅い棘のついた輪の束がライアの手に渡ったと
思う間もなく、空気の鋭く鳴る音がした。
「うお・・・貴様あっ!」
苦悶の混じった王蛇の怒号が響き渡る。
ライアの手から放たれた紅い細身の鞭が、
両腕の上から紫の身体にびしりと巻きついたのだ。
高圧電流の青い火花を飛ばしながら。
殺す必要はない。しばらく締め上げて戦意を
喪失させ、そのままハイドベノンに持ち込んで
奴のカードデッキを破壊しよう。
あとは、現実世界へ引きずり出しておけばいい・・・
そんな風に思いながらもライアには分かっていた。
自分が王蛇に勝つことはないと。
次の瞬間、その予感は現実になった。
「うおあああああ!」
鞭に捕らわれながらも仁王立ちになって
高圧電流に耐えていた紫のライダーが咆哮し、
両肘を力いっぱい左右に押し上げた。
苦痛をすべて力と、そして怒りに変えたかのように。
引きちぎられバラバラになったエビルウィップを
身体の周りに振り落としながら、王蛇が腰の
カードデッキとバイザーに手を伸ばす。
「ファイナルベント」
背後から持ち上がった巨大な鎌首の前で、
ライダーが地を蹴って跳躍した。
空中で後ろ向きに一回転すると同時に、
ベノスネーカーがかっと口を開く。
怒り狂っているとも狂喜しているとも
つかぬ叫びをあげながら、
王蛇が紫の弾丸となって激突した。
逃げようともせず自分を見上げるライアに。
今度も俺は、運命を変えることができたのだろうか。
奇妙に静かな気持ちでライアはそう考えていた。
胸に激烈な蹴りを次々と受け、意識を飛ばされかけながらも。
再び倒れ伏した赤紫のライダーの身体を、
王蛇が今度こそ忌々しげに蹴りつける。
「やっぱりお前は面白くないな・・・」
その時。かすかに咆哮らしきものが聞こえてきた。
斜めにスリットの入った顔を上げ、王蛇が夜空を見渡す。
あの黒い龍だった。青い燐光に包まれて、
かなり遠くの家並みの上を飛んでいく。
「・・・次はあいつだ」
表情を持たないはずの仮面が、にたりと笑ったように見えた。
数秒後。
蛇皮ジャケットの男が、再び坂道を登っていった。
暗い迷路のような住宅街の奥を目指して。
残っていたわずかな力を振り絞り、バイクのミラーから
現実世界に出た途端に変身が解けた。
いや。腰のカードデッキが砕け散るのが先だった。
寒い。今夜は雪でも降るのか・・・
頭を坂の上側にして冷たい路面に倒れたまま、
ぼんやりとそんなことを思う。ひどく疲れていた。
もう、ずっとここに横たわっていたかった。
だがその時、不穏な気配が首の後ろを灼いた。
億劫さと戦いながら頭を上げ、坂の下を見る。
蒼い街灯の光を背負った、いくつもの人影が見えた。
皆、こちらへ登ってくる。
その正体に気づくのに時間はかからなかった。
全員が板のようなものを手にしていたから。
"そうだよ。復活したライダーたちさ"
頭の上で、悪意に満ちた声がした。
「お前・・・城戸に取りついた奴か」
"相変わらず察しの早い奴だな。だがこの世界でも
思い知るがいい−−お前に予言の力はあっても、
予言されたことを止める力はないということを"
「ふざけるな・・・」
"教えてやろうか?前の世界での戦いを制したのは
秋山蓮だ。お前が戦いを思い止まらせようとあれほど
世話を焼いたのになあ。それに城戸真司−−
つまり俺も、結局はお前の予言した死の運命から
逃れることはできなかった。お前が運命を変えようとして
やったことは、すべて徒労に終ったというわけだ。
だが今度こそは俺が勝者になる。神崎優衣を救うために"
やはり、目的はそれか。
「・・・あの娘がそんなことを望むはずがない。
お前が勝ったところで何も変わりはしないだろう」
"だったらどうだというんだ?優衣が命を受け取る気に
なるまで戦いを続けるまでさ−−今まで通りに"
「やめろ!」
"今度も優衣が命を受け取らなかった場合の掃除屋どもも、
もう呼び出したしな"
掃除屋・・・?
"さてと、いつまでもお前に付き合っている暇はない。
お前はすでに敗者だからな・・・早く他の奴らも
追いつかせて、戦いを進めなければ"
邪悪な声が消えるのと入れ替わりに、何人もの足が
横を通り過ぎていく音と振動が伝わってきた。
必死で上半身を起こし、そいつらに向かって叫ぶ。
「行くな・・・また殺し合って、虚しく死んでいくつもりか!」
分かってはいたが、誰も止まりはしなかった。
若者たちも、娘も、壮年の男たちも。
思いつめたような表情で前を向いたまま、
坂の上の闇に沈む住宅街目指して進んでゆく。
そして、最後の1人が坂の向こうに消えた時。
坂の下に再び気配を感じた。
よみがえったライダーたちよりもずっと不穏な気配を。
振り向くと、幽霊のように生白いモンスターたちの群れが
ぞろぞろと坂を登ってくるのが見えた。奇妙な鳴き声と
滑稽な姿勢が、かえって不気味さを強調している。
「あれが掃除屋・・・なのか・・・・・・」
俺の意識は、そこで途切れた。
70 :
69:04/02/02 23:59 ID:jKpjjS6+
Evergreenの続きをupしました。お待たせしました・・・
前スレの方にも少し書きましたが、日曜にupしようとしたところ
アク禁の巻き添えに会い、今晩になるまで書き込みができませんでした。
>>61 ご配慮&前スレの分も読んでくださって、ありがとうございます。
自分で「浅倉と手塚の因縁バトル」と書いた後に思ったのですが・・・
よく考えると「因縁」をつけているのは手塚ですね(汗)
初夏の廃屋の方はかなり短時間で書きましたが、スレ保守の際に
少しでも楽しんでもらえるようなものになったらいいなーと思っています。
>>62 両方とも読んでくださって嬉しいです、ありがとうございます。
初夏の廃屋は完成しているため、少し間隔は空きますが
定期的にupできますので、よかったらまた読んでください。
Evergreenもどうにか筋が固まりそうなので、がんばります。
手塚… 。・゚・(ノД`)・゚・。
なるほど、彼らは掃除屋だったのか、と妙に納得してしまいました。
続きが本当に楽しみです。「初夏の廃屋」共々頑張って下さい。
72 :
70:04/02/07 03:08 ID:Eyad76uB
こんばんは。
週末にまたアク禁に巻き込まれるといけないので、Evergreenの続きを
ひとつupします。(日曜日に書き込みが問題なくできれば、もういくつか
upできると思います)
初夏の廃屋の続きも、前スレにupします。
>>71 読んでくださってありがとうございます。折角のリターンマッチでしたが…
結局最後はあまり本編と変わりませんでしたね(鬱)
シアゴーストの存在意義については、実は超全集最終巻にある解釈とは
全然違う(とupした後に気付いてまた鬱に)のですが、「終りかけた世界に
群がって処理する生物」のようなイメージがあったので掃除屋にしてみました。
「なにもこんな寒い夜に臨時の会合なんか
開かなくたってねえ、塚本さんも・・・
じゃ、悪いけど後頼んだわ蓮ちゃん」
そう言い残して経営者が出かけてから
閉店後の後片付けをひとりで済ませ、
帰り支度をして店のドアに向かった時だった。
あの音が響き始めたのは。
花鶏で働くようになって1年近くがたつ。
つまり、この世界で城戸に会ってから1年近くということだ。
あの時、何とかして声をかけたいと思いながら、
何も言わずにあいつを凝視することしかできなかった。
他にどうすることができたろう。店の前で偶然、
行きずりの他人として会っただけの俺に。
少なくとも城戸にとって、俺は得体の知れない
不愉快な男でしかなかったはずだ。
そして今も、あいつの記憶にある俺はそうに違いない。
いや。1年前にたまたま出くわした嫌な奴など、
覚えているかどうかさえあやしいものだ。
それでももう一度、何とかしてあいつに会いたかった。
あの後、経営者が店先に出したバイト募集の広告に
いち早く応募したのも、この店に常駐していれば
あいつがまた来た時に会うことができると思ったからだ。
もちろん、この店との断ち難い縁を感じたからというのもある。
だからそれまでやっていた、多少危険だが実入りのいい
仕事を辞めることにも躊躇はなかった。
そうだ。あいつは必ずまた花鶏に来る。
かつて皆と一緒に暮らした場所に・・・優衣と、
優衣の叔母と、俺と、手塚と。
たとえ前の世界の記憶がなくても、いずれは−−
やはり記憶のなかった俺が、あいつと同じ日に
ここへ辿り着いた時のように、優衣に導かれて。
あの日。
街中にバイクを置いて仕事先に向かおうとした俺に、
とんでもない奴が絡んできた。
「邪魔だ!」
どこからともなく現れたかと思うと、そう言いながら
バイクを蹴り倒した蛇柄ジャケットの男だ。
「貴様・・・」
また恵里が悲しむと思いながらも即座に拳を固め、
相手の顔に叩きつけた。たいていの奴はこの一発で沈む。
少々無神経な奴でも、二発目で確実にのびる。
ところがそいつの無神経さは人並み以上どころではなかった。
三発目を繰り出そうとした瞬間、鳩尾に衝撃が走る。
蛇柄に膝蹴りを決められたと分かる前に、また一発。
胃液にむせかえりながらも何とか相手を蹴り放し、
さっさとバイクを起こして逃走を開始した。
喧嘩は嫌いじゃないが、相手は人間だけでいい。
「おい!もっと遊んでいけよ!」
後ろから奴がそう喚き散らすのを聞いて、げんなりした。
要するにあいつは暇と腕力を持て余していたのだ。
相手にした俺が阿呆だった。これで骨を折ったり、
顔を腫れ上がらせて帰ったりすれば、今度こそ恵里が
愛想を尽かさないとも限らない。それは願い下げだ・・・
なりふり構わずバイクを走らせ、街はずれまで来た。
今日はもう街に戻らない方がいいだろう。
携帯を取り出して休みの連絡を仕事先に入れたものの、
急に暇ができたので何をすればよいのかわからない。
そうだ。今まで行ったことのない場所でも少し
見てこようか・・・そう思い立ち、ちょうど右前方に
見えてきた上り坂の方へ進んだ。
住宅街を黒いバイクで流す黒ずくめの男は、
住民にとってかなりうさんくさい存在だったかもしれない。
それでも俺は、一度入り込んだその閑静な家並みの間を
走り続けた−−今思えば、優衣に導かれながら。
「TEA 花鶏」
ほんの小さな看板なのに、バイクの上からそれに
気づいたのも、優衣が教えてくれたからだろう。
そして・・・壁という壁を枯れたツタに覆われ、庭木や
草花の茂みと洋風の鉄柵に囲まれた、小さな建物。
それを目にしたとたん、無意識にバイクを急停止させていた。
記憶の奔流が襲ってきた。
この店の前で誰と会い、誰と語り、誰につかみかかったのか。
店の中で誰と暮らし、誰と口論し、誰を元気づけたのか。
この店の経営者とその血縁者たちが何者であり、
自分とどんな関係にあったのか−−そして、
前の世界で自分が何のために生き、戦い、死んだのか。
すべてを思い出すと同時にバイクを降り、
店の入り口に向かって駆け出していた。
見覚えのあるガラス張りのドアを乱暴に開け、
見覚えのあるカウンターの隅に駆け寄る。
だが、そこに飾られた写真は記憶にないものだった。
神崎士郎と優衣でなく、並んで微笑む少年と少女の写真は。
「いらっしゃいませ・・・」
顔を上げると、口元に笑み、目元に不審そうな表情を
浮かべた神崎沙奈子がカウンターの向こうに立っていた。
俺と違って、彼女の方に俺を覚えている様子はない。
一瞬迷った後、俺も一見の客らしく振舞うことにした。
軽く頭を下げてからカウンターの前に腰掛け、
置いてあったメニューを見る。これにも見覚えがあった。
「アイリッシュブレンド」
店主がカウンターの奥に消えた後、
他に客のいない静かな店内に座っていると、
涙がとめどなくあふれてきた。
さっき、写真を見たときに分かった。
この世界に花鶏はあっても、優衣はいないということが。
そしてこの世界で俺と恵里がごく普通に−−つまり
この上なく幸せに暮らしてこられたのは、
優衣のおかげなのだということが。
城戸の死によって最後のライダーとなった俺は、
オーディンとの最終決戦で死んだ。
だがその前にオーディンの方が消滅した。
最後の戦いで生まれた「新しい命」を
優衣に与えず、俺が恵里に与えるままにして。
「実体のない俺の代わりだ・・・それでも、
お前がオーディンを倒すことは不可能だろう」
神崎士郎はそう言った。
ならばどうして奴は−−神崎の分身は消えたのか。
答えはひとつしかない。
優衣が新しい命を受け取らなかったからだ。
どんなに兄が望んでも、優衣はライダーたちの命を
犠牲にして生き延びることを最後まで拒んだのだろう。
そうしなければ自分が消えると分かっていながら。
そして俺や城戸や、おそらく他の元ライダーたちも
普通の人間として生きている今の世界があるのは・・・
俺たちの目の前で消えながら優衣が叫んだ、
あの言葉があったからに違いない。
「もう一度絵を描けたら・・・モンスターなんかがいる
世界じゃなくて・・・みんなが幸せに笑ってる絵を・・・」
優衣が消え、城戸が消え、神崎士郎が消え、
俺が消えた後、世界は生まれ変わったのだろう。
優衣が望んだ通りの姿になって。
なのに、その優衣だけがいないのだ。
幼くして理不尽に命を奪われ、仮の命を
与えられてなお苦しみ続けたあいつにこそ、
この世界で幸せに笑う権利があるはずではないのか。
だが優衣自身、自分のために俺がこんな風に悲しみ、
悔やみ続けることなど望んではいないだろう。
でなければあいつが新しい命を拒んだことも、新しい世界を
実現させたことも、すべて無駄だったということになってしまう。
優衣がくれたこの世界で、恵里と一緒に生きていく。
俺が優衣のためにできることは、たぶんそれ以外にはない。
同時にそれが、何よりも優衣を喜ばせることになるのだろう・・・
カチャリという音に我に返ると、白い縄目模様の
カップと皿が目の前に置かれるところだった。
小さなティーポットを持った店主が、じっとこっちを見ている。
「そんなにこの写真が気に入りました?涙が出るほど」
「・・・」
俺の返事を待たず、言葉を続けた。
「あたしの甥と、姪なんです。姪の方は小さいうちに
いなくなっちまったけど・・・親のせいで。甥はその後
アメリカの親戚に引き取られたきり、ずっと音信不通でね。
できれば一度会いたいもんですよ」
香りと一緒に様々な思い出が立ち昇ってくる紅茶を
ニ杯飲むと、やっと涙は止まった。
会計を済ませてドアに向かう時、レジの向こうから
神崎沙奈子が俺の背中を見つめているのを感じた。
薄幸な甥と姪の話を知る前から写真を見て
涙を流していた客にますます不審の念を抱いたのか、
彼女の「間違いはない」勘の為なのかはわからなかったが。
そして、外へ出たとたんに城戸と鉢合わせた。
そう、あの日。
俺と城戸を同じ時間に花鶏まで連れて来て
会わせるようにしたのは、優衣に違いない。
それなら何故、城戸の記憶は戻らなかったのだろう。
俺があの時偶然を装って城戸の行く手を何度か
ふさいだのは、あいつがなかなか俺の正体に
気づく様子を見せなかったからだ。
もっとよく俺の顔を見れば、こいつだって
前の世界でのことを思い出すに違いない。
俺が花鶏を見て記憶を取り戻したように。
そう思ったのだ−−結局無駄だったが。
何故だ、優衣?どうして俺の記憶だけを戻したんだ・・・
1年間、城戸が来るのをここで待ちながら
心の中で何度そう問いかけたかわからない。
今夜、仕事を終えて帰宅しようと店のドアに
向かった時も、考えていたのはやはりそのことだった。
だがガラス張りのドアを開ける前に足が止まった。
突然、あの音が店中に響き始めたからだ。
前の世界で聞き慣れた不吉な音が。
反射的にカウンターの隅へ走り寄り、
幼い優衣と神崎士郎の写真を見る。
「何故だ、優衣・・・何故またこの音が聞こえる。
・・・・・・それに何故ダークウイングが!」
光沢のある写真の表面で、今にもこちらへ
出てきそうにはばたいているのが見えた−−
やはり前の世界で見慣れたコウモリのモンスターが。
どれくらい時間がたった後だったろう。
入り口のドアがバタンと開き、凍てつくような
夜風が店の中に吹き込んできたのは。
忘れるはずもない声と一緒に。
「また会えたな・・・」
俺が今まで待ち続けていた男の声だ。
城戸。やっと来たのか?
とうとう、俺や優衣のことを思い出したのか?
だが、声に含まれた嘲るような響きで分かった。
こいつは城戸であって城戸でない。
そして俺は、前にもこいつに会ったことがある。
まさに今ここにいる場所で。
今の世界でも、前の世界でもない時に。
「俺はもはや鏡の中の幻ではない!
俺は存在する−−最強のライダーとして」
俺の目の前で城戸に乗り移ったこいつは
あの時そう叫んだ後、名乗ったのだ。
「ミラーワールドからのライダー、リュウガ」と。
何故お前がこの世界にいる。
何故、再び城戸に取りついた?
あの時と同じようにただ呆然と相手を見つめる
俺に向かって、リュウガがまた口を開いた。
俺の考えを読んだかのように。
「決まっているだろう−−ライダーバトルのためさ。
今度こそ俺と最後まで戦え、仮面ライダーナイト!」
81 :
80:04/02/09 01:27 ID:FZ3fGPHM
Evergreenの続きをupしました。(今回は無事に済みました)
読んでくださった方々、ありがとうございます。
(補)
前スレでEvergreenが帰還や訪問者より長くならないだろうと
書いたのですが…結局どちらより長くなってしまいそうです。スマソ
>81
乙です。
いよいよ物語も佳境に入ってきましたね。
起こりえないはずの戦いがまたも勃発する中で、
各々のライダー達がどう動くのか、とても楽しみにしています。
いつも素晴らしいお話を読ませて下さってありがとうございます。
今後の展開が凄く楽しみな反面、本編を見ていた時と同じく
この物語が終わってしまうのが凄く寂しいです。
なのでいくらでも長くしちゃって下さい(w
初夏〜の方もあと2回ですね。
こちらも楽しみにしているのでがんがって下さいませ。
84 :
名無しより愛をこめて:04/02/13 20:25 ID:AcaPtvM0
定期保守
「ライダーバトルは−−終った」
それだけ言い返すのが精一杯だった。
「終っただと? ふざけるな!!」
城戸の顔をした奴が答える。
ぞっとするほど冷たい怒りを込めて。
「お前はすでに前の世界で願いを叶えた・・・
俺と優衣の命を犠牲にしてな!
だから今度はお前の命を犠牲にしろ。
他のライダー達もすべて目覚めた。じきにここへ集結する。
分かったか?優衣に新しい命を与えるまで戦いは続くんだ!」
優衣に新しい命を与えるまで、か。
分かったよ、城戸。
何故お前がまたこいつに取りつかれたのか。
そして1年前花鶏に来た時、お前が何故
俺のように記憶を取り戻さなかったのかが。
「俺の中に来い・・・戦いに勝てば、まだ優衣を
救うことができるんだぞ!」
息絶えた優衣を前にして、城戸に分離された時も
こいつはそう言った。
戦いに勝って優衣を救いたい−−
戦いを止めたいという願いと相反する、
もうひとつの城戸の願い。
こいつはそれにつけ込んだのだ。
俺のライダーとしての記憶は、いくつもある。
薄れる意識の中で恵里の指にリングを嵌めた記憶。
城戸に看取られて死んだ記憶。
城戸と共にモンスターの大群に向かっていった記憶・・・
優衣が新しい命を拒むたびに神崎士郎が世界を
作り直し、戦いを繰り返したからに違いない。
それでも戦いはついに終った。前の世界が終わると同時に。
神崎が妹の願いを受け入れて、新しい命を
与えようとするのを止めたからだろう。
だがその優衣に今度こそ必ず戦いを止めさせようと
決心させたのは、城戸、お前の姿だったのかもしれない。
優衣を助けるにはライダーバトルが必要だ。
だがライダー同士の殺し合いは絶対に止めたい。
どこまでも相反する二つの願いの間で苦しみ、涙を流し、
それでもお前は戦いを止めることをあきらめなかった。
俺の目の前で息絶える瞬間まで。
本当はお前こそがライダーバトルの勝利者であり、俺と恵里に
再び幸せな人生を与えてくれた当人なのかもしれない。
俺が恵里に命を与えた世界は終ったが、その後に
お前と優衣が望んだ通りの世界が実現したのだから。
だがこの世界でもお前はずっと持ちつづけていた。
優衣を救えなかった悲しみと後悔を。そうだろう?
それが鎮まるまでお前の記憶を封印しておこうというのが、
優衣のはからいだったに違いない。
なのに鎮まるどころか、お前の悲しみと後悔は
この世界に再び戦いの種子を芽吹かせてしまった。
もうひとりのお前、リュウガという種子を・・・
「さあ、早くカードデッキを出せナイト!」
立ち尽くす蓮に向かってリュウガが叫ぶと同時に、
入り口のドアガラスから巨大な黒い頭が現れた。
続いて鉤爪の生えた脚と、幾つもの節に分かれた胴体も。
あっという間に狭い店内を占拠した黒い龍の尾の先が、
テーブルの上に逆さに置いてあった椅子を何脚か
はね飛ばす。そのひとつが天井の照明に当たった。
ガラスの砕ける音と共に、店内が真っ暗になる。
闇の中で、蓮の左の頬に笑みが浮かんだ。
限りなく悲しい笑みが。
「お前はすでに前の世界で願いを叶えた・・・
俺と優衣の命を犠牲にしてな!」
こいつの言ったとおりかもしれないな。
俺が勝ち残ったライダーとしてオーディンと
戦うことができたのは、城戸が死んだからだ。
手を下していなくても、あいつの死が俺にとって
有利に働いたという事実には何の変わりもない。
そして・・・俺が新しい命を恵里に与えた瞬間、
優衣は確かに俺の犠牲になったのだ。
俺を信頼し、恵里を支え続け、
兄の目的を知ってからは自ら仮の命を絶ってまで
俺たちを救おうとした優衣は。
いくらあいつが新しい命を拒んだからといって、
やはりその事実に変わりはない。
もしもこいつが今の世界で本当に優衣を生き返らせることが
できるのなら−−そして城戸の悲しみが鎮まるのなら、
それもいいのではないか。
恵里がこの世界で生きている。
俺にはそれだけで十分だ。
「ずいぶんはっきりした奴だな、同じ顔の誰かと違って・・・
俺の命か。欲しいならくれてやる。
カードデッキなぞ出す必要もないだろう」
「黙れ!」
愚弄でもされたかのようにリュウガが激昂する。
「戦わない命になど二束三文の価値もない。
仮面ライダーナイトになって俺と戦え!」
「くだらんな。お前のライダーとしての力は、俺よりも
相当高いはずだ。どうせ俺が負けるのなら同じことだろう」
俺は二度とライダーにはならない。
前の世界で俺がライダーとして戦う度に、
城戸や優衣はどれだけの苦しみを味わったろう。
「ふん」
不意に、リュウガの口元が暗い笑いに歪む。
「ひとつだけだったな、お前の闘う理由は。
ならば今それを作ってやる」
言葉と同時に、店内を塞いでいた龍の巨躯が忽然と消えた。
一瞬とまどった後、蓮の顔色が変わる。
「貴様・・・まさか!」
89 :
88:04/02/16 01:52 ID:NLWBAQ/y
Evergreenの続きをupします。
>>82 読んでくださってありがとうございます。
ここまでお付き合いくださってすごく嬉しいです・・・
各ライダーの動かし方は、今ドツボ状態で悩んでいます(鬱)が、
少しでも面白いものにできるようがんばりますね。
>>83 こちらこそ、長い話も初夏の方もいつも読んでくださって
ありがとうございます。そう言っていただけるなんて
とても嬉しいです。終ったときに寂しいと思ってもらえるような
話にまで、何とか持っていければいいのですが・・・
>>84 保守してくださって、ありがとうございます。
このスレはじめて見たんだけど…いや、面白いわ。
続き、楽しみに待ってます。
Evergreenも初夏も、いつも楽しみにしています。
続きに期待。
92 :
名無しより愛をこめて:04/02/21 15:58 ID:FSRNBjls
/ : : .\ `''、゙ミ;;ー、.゙j、
/ : : :: ! l゙ `''、'ヽ\
/ : .:゙'''ー.\.ヽ、 l ゙lヽヽ
l゙ _,,,.. ..,,`' |ヽ\、 ,〉. l .∨i、
! : i,゙;;" .../ .`'''''.ミ`ヽ ,/,i''./ .! )
l !|、: :::.!.゙ミミ_,ミミi,,,__`'-ミン",;'`;、/
l, l,.‐.,''!、゙ミ二====≒=====7
ヽ ヽ;....;ヽ =二========7
|'-,_:\;;;:;'.) ゙゙゙'゙二¬‐ '7 .,,、
!,,,_ .`'''リ;;:/ヽ 'ミ;;..!r‐ 二ソ lr‐'" \
i'゙(、;:;゙|<;;;;;;;;;;;;\ `'┘ .ノ、 `''、 ヽ
_, / ̄ ̄\::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ̄ヽ_.`'、 ヽ
./´゙''、 ̄'''''''''''、,i-‐ニ,゙//;;;;;;;;;;;;;;;;;;\:::::::::::::::::::::::::::::/;;;;;;;;;;ヽヽ_: .ヽ l
l .,iー、.\. ゙ヘ、//;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\:::::::::::::::::::::/;;;;;;;;;;;;;;;;| |i..,゙゙゙'/, l
! |‐ `ti.\ | |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\::::::::::::::/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| |!: ヽ | ! .|
! l. :;:_..と, 、'-, ヽヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;\`\_|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;//l,: : | | | .l
.l_,,二,;;广;;!.入,...\ ヽヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;|---\V_V,,;;;;;;;;;;;;;;;;//ヾl、 | | |│
/ ,,---.!..l゙゙l'.....;'゙゙'i,;:\ ヽヽ;;;;;;;;;;;;;);;,. .,;;(;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/::: l.:ヽ` .!.l /
/ /゛ / ." .l、..;;;;;;.l、..ヽ. ヽヽ;;;;;;;|;;,.... .,;;;|;;;;;;;;;;;;;/;:::;:;:;:;:.l,;:`''゙ l /
同時刻、清明院大学401号室。
「みんな、もう帰れよ。これは俺がやるから」
黙々と床に散らばった壊れ物の片づけを始めた
長身の青年が、仏頂面で呟く。
「あれ、さっきまで”馬鹿馬鹿しい、あいつが
壊したんだからあいつに片付けさせればいいんだ”
とか言ってたの誰だっけ?」
「うるさい、とっとと帰れ田宮!」
「お前こそ早く帰った方がいいんじゃないのか。
彼女と約束があったんだろ」
「・・・・・・」
「大丈夫かよ、連絡くらい入れてきたらどうだ?」
「みんな帰れっていってるだろう!!」
青年の剣幕に黙り込む香川研究室の一同。
「ねえ、仲村君。もしかして東條君のこと気にしてる?」
ややあって、柔らかい女の声が聞いた。
「そんなんじゃない」
「だったらどうして」
「小川さん・・・!」
仲村の癇癪がまた爆発するのを恐れた西本が
目で止めるのもかまわず、恵里が言葉を続ける。
「・・・東條君の失敗の後始末を進んでしているの?」
少し間を置いて返ってきたのは、怒鳴り声ではなかった。
「東條と組んでいた俺にも、失敗の責任はある。それに、
あいつも良かれと思ってしたことだ−−だからって
自分の責任を一切認めようとしないのは腹が立つけどな」
「ふーん、そうなんだ」
なぜか楽しそうに言うと恵里は身を翻した。すぐに、部屋の
隅の掃除用具入れから箒と塵取りを持って戻ってくる。
「小川さん、どうしたんだろ・・・」
仲村の当惑などにお構いなく嬉々として掃除を手伝い始めた
恵里を見ながら、西本が田宮に向かって不思議そうに言う。
「さあな。でも仲村と、小川さんの付き合ってる男って
なんとなくタイプが似てる気がするから、そのせいじゃないのか」
「小川さんの彼?どういうことだよ」
「お前も見たことあるだろ、時々小川さんを迎えにここの下まで
バイクで来るから。あの黒一色で固めた奴だよ。
江島研究室にいる俺の知り合いが小川さんの親友でさ、
その女が小川さんから聞いた話によると、無愛想で
喧嘩っ早くて情に厚くて・・・まあ、ひとことで言うと
古いタイプの極道みたいな奴なんだと」
「極道、ってそれ、小川さんが自分で言ったのか?」
「らしいよ」
「ひえ。それじゃ小川さんは極道の姐さんタイプかよ?
女って見かけによらないもんだな」
「まだ帰っていなかったんですか、君たち?」
「あ、先生!」
驚く一同の見守る中、入り口の両開きの扉を閉めると
仲村と恵里のそばまで歩いてくる香川教授。
「皆で片づけていてくれたのですか。ご苦労でしたね。
・・・東條君も、あの頑なさをいい方向に生かせれば
失敗を糧にして成長できるのですが。頑固さは粘り強さと
表裏一体ですから。いや、きっと彼ならそうなれるはずだ。
君もそう思うのでしょう、仲村君?」
「知りませんよ、あんな勝手な奴のことなんか」
ガラスの破片を拾いながら、顔も上げずに仲村が答える。
「東條君と組んだ人は今まで何人かいましたが、
これだけ長く続いたのは君が初めてですよ・・・」
普段は厳しい教授の表情に、穏やかな笑みが浮かんだ。
誰も気づかなかった。401号室の窓の外から、
いや窓そのものから、血のように暗い赤に輝く二つの眼が
室内をじっと見つめていることに。正確には室内の小川恵里を。
そして、赤い眼の周囲に夜闇よりもさらに黒い影が
広がり始めていることに・・・
幾重にも渦巻き重なる、龍の胴体が。
「貴様!恵里に何をする気だ!」
「お前次第だな」
血相を変えて詰め寄る蓮に向かってリュウガが笑う。
「カードデッキを出せ。もう一度あの女を眠らせたくなければ」
「・・・・・・!」
怒りと焦燥に、蓮の蒼白い顔が歪む。
「さあ、どうする?」
リュウガが容赦なく促す。
それに応じるかのように、蓮の右腕が少しずつ
動き始めた。レザーコートのポケットに向かって。
にやりと笑うリュウガ。
「そうだ、それでいい・・・さて、今度こそお前の番だ」
後半分の台詞は、自分の内側に向けられたものだった。
「目覚めてナイトと戦え、そうすればお前の悲しみも終りだ。
龍騎、俺の力となれ!」
そしてジャケットから黒いカードデッキを取り出す。
「変身!」
だが次の瞬間もリュウガの姿は変わらなかった。
「なぜだ・・・なぜ覚醒しない龍騎!」
狼狽を隠そうともしないリュウガを茫然と見つめる
蓮の後ろの暗がりで、微かに何かが光る。
店内に飾られたクリスマスツリーのオーナメントだった。
96 :
95:04/02/23 02:20 ID:ZgBpYKG1
Evergreenの続きをupします。読んでくださった方々、ありがとうございます。
恵里も含めて、今回の清明院大学の人々の描写は
前スレ185-197の「オマエハ…マチガ…」や、
>>58にある「ドラマ仮面ライダーじゃない龍騎!」スレ
(58さんのコメントのおかげで救い出して保存できました)の
272-337「君のためにも泣くかも」、それに同スレ508-517の
「kahuna utu…世は全て事も無し」に出てくる精緻な会話や
心理描写等にすごく影響を受けています。この3つを
読まなかったら、今回のパートも無かったかもしれません。
自分が今まで書いた龍騎SSに出た香川チームの面々は
本編同様にどうも暗いイメージを帯びていますが、Evergreenの
今回のパートではそういう風にしたくありませんでした・・・が、
そうなると、どうしても「君のためにも泣くかも」に出てきた
仲村君と東條君の友情しか浮かんできませんでした。
ありがとうございました>作者様・・・そして、もしも
お気に触る点がありましたら、申し訳ありません。
※言うまでもありませんが、この3つの話ともすごく好きです。
>>90 読んでくださってありがとうございます、
続けた甲斐があったようで嬉しいです。
またそう思っていただけるようにがんばります。
>>91 いつも読んでくださって、ありがとうございます。
初夏はあと1回ですが、最後まで楽しんでもらえる
話になったらいいなと思っております・・・
97 :
名無しより愛をこめて:04/02/23 11:09 ID:FRe9pLaE
さがりすぎだぞー
401号室キター!!
「オマエハ…マチガ…」や「君のためにも泣くかも」で仲村くん好きになった
クチなので、あのイメージでの401メンバーがまた見られて感激です。
初夏の最終話共々続きを楽しみにしています、頑張って下さい。
保全
こいつに身体を乗っ取られた瞬間、思い出した。
俺のイメージに出てくる女の子が誰なのか。
なぜその子を見ると涙が流れるのか。
そして思った。俺を乗っ取った俺の思惑どおりに。
「今度こそ、優衣ちゃんを助けなきゃ・・・!」
だけど今また花鶏に来て、一番大事なことを思い出したんだ。
優衣ちゃんが、最後に何を望んだのかを。
そして俺が、何のために戦っていたのかを。
クリスマスツリーが目に入った瞬間に。
優衣ちゃんは、あのツリーの前に座っていた。
あの日俺が外から帰ってきた時。
「ごめんね。心配させて」
俺と蓮の前で身も世もなく怯えていたのが
嘘のように、明るい笑顔でそう言った。
「私、大丈夫だから。ほんとに」
話す間も飾り付けの手は止めない。
その手からは、また粒子が立ち昇っているというのに・・・
その少し前、401号室で。
「当たり前だろ!」
優衣を助けたいかとの問いにそう答えた俺に、
神崎士郎が言った。
「ならば戦え、最後の1人になるまで。
それが優衣を救うたったひとつの方法だ」
その後、東條からの呼び出しに応じて
戦いに向かう蓮と会って、こう聞かれた。
「お前はどうする?」
俺は叫ぶしかなかった。
「わかんないんだよ!優衣ちゃんを助けたいけど、
そのために他の人間を犠牲にするなんて」
結局、俺はずっと迷い続けた。あの世界で命を落とすまで。
そして・・・この世界に生まれ変わった。
ライダーバトルのない世界に。
俺が死んだ後で優衣ちゃんの願いが通じたんだろう。
俺と蓮の前で消えながら、優衣ちゃんはこう言ってたから。
「もう一度絵を描けたら・・・モンスターなんかがいる
世界じゃなくて・・・みんなが幸せに笑ってる絵を・・・」
あの日、この世界で初めて花鶏に来た時。
前の世界の記憶はなかったけれど、
俺にはきっと分かったんだ。無意識に。
優衣ちゃんがもうここにいないってことが。
そしてこの世界は、優衣ちゃんの命と引き換えに
作られたんだっていうことが・・・
きっと、あの時からだろう。
俺が迷い続けてさえいなければ。
優衣ちゃんのために戦ってさえいれば・・・
俺の無意識の中に、そんな思いが育ちはじめたのは。
だから、もうひとりの俺がまたよみがえってしまったんだろう。
別の世界で、幼い日に優衣ちゃんとの約束を破ったことを
悔やむ俺の気持ちを利用して現れた、あいつが。
だけど、やっぱり優衣ちゃんが人の命を犠牲にして
生き返ることなんて望むはずがない。
それどころか、ライダーバトルのないこの世界こそ
優衣ちゃんの願いそのものじゃないか・・・
「畜生、また俺から離れるつもりか!」
あいつの声が聞こえる。俺の喉から。
「ああ、そうだよ。お前はいらない・・・俺の中に帰れ!」
声にならない声でそう叫ぶと俺は精神を集中させ、
思いきり身体を引き離した。
もうひとりの俺の身体から。
突然もがき苦しみ出したリュウガの身体から、
強烈な白い光がほとばしった。
とっさに目を閉じた蓮の耳に、どさりという音と
呻き声が聞こえてくる。二人分の。
再び目を開け、蓮は見た。
暗闇の中で、二つの同じ姿が床に倒れているのを。
「・・・・・・城戸・・・」
期待と、それを上回る不安に震える声で、
蓮が呼びかける。
「城戸!聞こえているなら返事をしてくれ!」
声に焦燥が混じりかけた時、片方の姿が
ゆっくりと身体を起こし、頭を上げた。
まだ焦点が合っていない眼で自分の前の男を
見つめ、ややあってわずかに唇を動かす。
「・・・・・・蓮」
103 :
102:04/03/01 02:52 ID:vY0lw9Fc
Evergreenの続きをupします。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>97 ageありがとうございます。
>>98 こちらと、初夏も読んでくださってありがとうございます。がんばります。
私も、あの作者様のシリーズで仲村君と東條君が好きになりました。
(仲村君が東條君のアパートに、アジフライ弁当を差し入れに
行くところとかがお気に入りです)
>>99 保全ありがとうございます。
104 :
102:04/03/01 02:53 ID:vY0lw9Fc
すみません、ageておきます
E二/ヽ、 /\二ヨ
\ ' ヽ / 7
ヘ, `、 _ _ _ ,-ァ / /
ヘ, ヽr`>、)´,、,、`ヾ_ハ/ / _
r<>`⌒ヽ,r‐ゝ、 ヽ`ソftト fサト}>/ ,/ /´ `ヽ、
〉!シ/ ,、ヽ ヘ. ヾ(|'TT__TTレ / ,' /ィ } l i }
ン(| {サメハノノ 〉.、ヘ>八_ノl !イ ,イ ハイtVノサメ |ヽ、 Fate/stay night
〈/ノ!|⌒_ 'ソl ノ ハ ,.`f`¬'´ /八 / ハ ヮ ノ,}L!┘ 売上10万本突破
/ヾ、レ`<,、!| ( ノ`{ † }' ) r'、/-、`r ´!、l | お め で と う !
{ ヽ/仆 l } _)/ } / ヾ´ r} Y!/ `n/7 r`ヽ
k, 〈_レL!} l (( `) { l ) } トイ 〉`r!r| ,.' ノ TYPE-MOON OHP
ハ ! ,} l 八 ノ l / /´` >〃〉`1、 }
ttp://www.typemoon.com/ `r!ゝ 、.トイ ! ゛`〈 _」/)) ) l l 〃 | l {
<ハ '、| l //`i 、_ ,.イ´|ハ、 ヽノ´l | | ヾ l
/ ヘ Y ! /〃,| l| l| |! |!ヾ,> | ト| `ー-r‐’
,{ l ヽ. ヽ、l `《__l|_,l| l| |! 」=┘ l`┘└‐-イ
| | `r‐ 〈 r` |  ̄ーf`T´ | l l
| | f¬´1 |`ー ┤ ト― ヘ l l
| | ヽJノ l | | l l l
|_」 | _」 l ! l l l l
|`ーr‐f´ l | l l | l
暫定記念スレはこちら
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1078102189/
「Evergreen」も大詰めに近づいた感じですね。
続きを楽しみに待っています。
>96,>98,>103
ありがとうございます。あれを書いた者です。
1年近くたってもまだあの話を気に入っていると言って頂けて、こちらこそ嬉しく思ってます。
ああ。聞こえてるよ。
ここに来てやっと思い出せた・・・蓮、お前のことも。
今度こそ、また会えたな。本当に。
お前は優衣ちゃんを犠牲にした男なんかじゃない。
いつだってお前は優衣ちゃんを守ってきたんだ。
俺と一緒に。そしていくつもの世界で、俺たちは
一緒に戦ってきた。そうだろ?
「・・・思い出したのか・・・城戸」
極度に押し殺した声で問う蓮に向かい、
闇の向こうから真司が歯を見せて笑った。
「忘れるわけないだろ。お前みたいな嫌な奴のこと」
蓮のこわばりきった表情に光が差そうとした時。
「ばかめ・・・」
床に手をついて身体を起こしたリュウガの
振り乱した髪の陰から、呪詛のような呟きが聞こえた。
「もはやライダーバトルは始まっている。
戦うしかないんだよ、お前たちは。
お前の中に帰れ、だと・・・?
ふざけるな!お前こそ俺の力となって取り込まれろ。
でなければ神崎優衣は二度と生き返れなくなるんだぞ!」
「まだ分からないのか?」
真司が、哀れむようにもうひとりの自分を見つめながら言う。
「優衣ちゃんは、他人の命なんていらないんだよ・・・
今までも、そしてこれからも。何度世界が生まれ変わったって」
108 :
107:04/03/08 00:05 ID:YHUzD1x/
Evergreenの続きをupします。
今回は1コしかできませんでした。申し訳ありません・・・
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>106 いつも読んでくださって、ありがとうございます。
しかしこの期に及んでペースが遅くなっててすみません(汗)
(「kahuna utu」の高見君の台詞もとても好きなので、
時々読み返させてもらってます)
「初夏〜」最後までお疲れ様でした。こちらの続きも楽しみにしています。
マターリと頑張って下さい。
「それが何だ?・・・何度だって俺は戦って、何度だって
世界を作り直してやるさ、優衣に命を与えるまでは」
手塚に言ったのと同じ台詞を吐くやいなや
黒豹のように立ち上がったリュウガが、
再びデッキをかざす。
「変身!」
次の瞬間、真司の身体も床から離れた。
店内の闇よりなお黒々とした身体と、
血の色の吊り上がった眼を持つライダーに
胸座をつかまれて起こされたからだ。
「最後のチャンスをやる。龍騎になって、俺と合体しろ。
嫌だというなら今ここで殺す。さあ、どっちだ?早く決めろ!」
スリットの向こうから爛々と輝く赤い眼を
まじろぎもせず見つめながら、
どこか悲しそうに真司が微笑んだ。
「どうしても戦いたいのか。
それじゃあ、変身してやるよ・・・
だけどそれは、お前に取り込まれるためじゃない。
お前を倒すためだ。もう一度、
そして今度こそ永久に甦ってこないように」
「ほざくな!死ね」
鋼の手が真司の喉にかかろうとした時。
重く長い咆哮が聞こえてきた。
店の窓という窓の中から。
その場の誰もが知る娘の声と一緒に。
「だめ、ドラグレッダー!お前だけは行かないで」
111 :
110:04/03/14 23:51 ID:MC6hPWqm
Evergreenの続きをupしました。
(すみませんが、しばらく1コずつになるかもしれません)
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>109 初夏の廃屋を最後まで読んでくださって、またこちらの方も
いつも読んでくださって、ありがとうございます。
お気遣いもありがとうございます。今回も本当にマターリ展開で
恐縮ですが、最後までがんばります。
113 :
名無しより愛をこめて:04/03/16 09:01 ID:ClRmgJx0
r 、 ,rァ
E二/ヽ、 /\二ヨ
\ ' ヽ / 7
ヘ, `、 _ _ _ ,-ァ / /
ヘ, ヽr`>、)´,、,、`ヾ_ハ/ / _
r<>`⌒ヽ,r‐ゝ、 ヽ`ソftト fサト}>/ ,/ /´ `ヽ、
〉!シ/ ,、ヽ ヘ. ヾ(|'TT__TTレ / ,' /ィ } l i }
ン(| {サメハノノ 〉.、ヘ>八_ノl !イ ,イ ハイtVノサメ |ヽ、 Fate/stay night
〈/ノ!|⌒_ 'ソl ノ ハ ,.`f`¬'´ /八 / ハ ヮ ノ,}L!┘ 売上10万本突破
/ヾ、レ`<,、!| ( ノ`{ † }' ) r'、/-、`r ´!、l | お め で と う !
{ ヽ/仆 l } _)/ } / ヾ´ r} Y!/ `n/7 r`ヽ
k, 〈_レL!} l (( `) { l ) } トイ 〉`r!r| ,.' ノ TYPE-MOON OHP
ハ ! ,} l 八 ノ l / /´` >〃〉`1、 }
ttp://www.typemoon.com/ `r!ゝ 、.トイ ! ゛`〈 _」/)) ) l l 〃 | l {
<ハ '、| l //`i 、_ ,.イ´|ハ、 ヽノ´l | | ヾ l
/ ヘ Y ! /〃,| l| l| |! |!ヾ,> | ト| `ー-r‐’
,{ l ヽ. ヽ、l `《__l|_,l| l| |! 」=┘ l`┘└‐-イ
| | `r‐ 〈 r` |  ̄ーf`T´ | l l
| | f¬´1 |`ー ┤ ト― ヘ l l
| | ヽJノ l | | l l l
|_」 | _」 l ! l l l l
|`ーr‐f´ l | l l | l
祭り会場はここ
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1078247264/
114 :
名無しより愛をこめて:04/03/18 23:40 ID:lxdlB44o
大長編だなーEverGreen。
このまま最低でも1000までがんばってよー
ho
syu
「・・・優衣・・・・・・」
暗い窓の列を見つめ、夢でも見ているように
蓮がその名前を口にした時。
「変身!」
リュウガに胸座を掴まれたままジャケットに
差し込まれた真司の手が、黒い板と共に引き抜かれた。
窓に向かって突き出された龍の紋章が金色に輝く。
「行っちゃだめ!」
コアミラーの空に響き渡る、悲しい叫び。
だがモンスターは螺旋をひとつ描き、垂直に上昇を始めた。
花鶏のドアガラスから再び巨大な龍の頭が現れる。
今度は炎のような色の頭が。
続いて赤い前脚が銀色の爪を振り上げながら、
そして赤い胴体が左右にうねりながら次々と。
窓ガラスを破れそうに震わせる咆哮とともに、
赤い龍が黒いライダーに襲いかかった。
「っ!」
牙の列に弾き飛ばされ、床に転倒するリュウガ。
「心配しなくてもいいよ、優衣ちゃん・・・俺は、
戦いを終らせるために変身したんだから。今度こそ」
守るように自分を取り巻くドラグレッダーの巨躯の
向こうに立ち上がった赤いライダーが、そう呟いた。
仮面ライダー龍騎が。
118 :
117:04/03/22 00:49 ID:6swKpT+c
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>112 読んでくださってありがとうございます。
おかげ様で、やっとバトルが始まるところまできました…
すでにクリスマスどころか桜の時期ですが(鬱)
結末に至るまでの話もだいたい決まったので、
このままご期待に応えられるようにがんばります。
前スレ、ついに落ちてしまいましたね・・・IEのお気に入り経由では
普通に見られたのでしばらく気がつきませんでしたが、
分かったときはやはり少し淋しくなりました。
それにしても、あちらでは最後までたくさん(過ぎる)話を
書かせていただいて、本当にお世話になりました。
他の皆さんのお話もいつも楽しませてもらっていました。
改めてありがとうございます
>>1さん&皆さん
ログの場所も載せてくださってありがとうございます。
>>114 読んでくださってありがとうございます。
まさか60超えるとは思いませんでした…(無計画)
しかしすみませんが、1000はとても無理ぽ(汗)
>>115 保守してくださって、ありがとうございます。
>>116 保守してくださって、ありがとうございます。
119 :
名無しより愛をこめて:04/03/25 01:12 ID:Pk/6b9PW
新作きたわああ。
あーーーーー。龍騎って本当におもしろいんですねえ。
120 :
名無しより愛をこめて:04/03/26 22:58 ID:0MDjNd3V
25歳。Evergreen、マジお勧め。
雨の中、傘を差したまま橋の欄干に寄り添い水面を見つめ無言で立つ娘。
通行人は気にも留めず、その脇を通り過ぎて行く。
その中の一人がふと立ち止まり、娘に声を掛ける。
「ねえ君、誰か待ってるの?こんな所に長く居ると風邪を引くよ?」
娘はぎこちない笑顔を浮かべて会釈すると、すぐに水面に視線を戻す。
「御心配ありがとうございます。お気になさらないで下さいね。
友達が来るまでここでもう少し待っていたいんです。
あの人は…すぐ戻ってきますから」
娘のただならない様子に、無言のままその場を去る人々。
少し遠くへ歩いてからくすくす笑いだす話しかけた男。
─幾ら待っても無駄だと思うな。君の待ってる人は僕が倒したから。
─彼はね。もう君達の手の届かない所、僕の中にいるよ。
─君も白い鳥も。そのまま待ち人の帰りを祈り続けてずっと…。
─ずっとずっと石になるまで。そうやって立っていれば良いかも。
雨は一層酷くなり、娘の悴んだ手に握られた傘を容赦なく強く打ち付ける。
「…用意した方が良いですって言ったのにもう、編集長の馬鹿ー!」
叫びながらハンカチを頭に乗せて娘の脇を走り去る女。
「…なーに、通り雨ならすぐ終わるわな。悪い時はいつまでも続くもんじゃねえし」
毒突きながら一緒に走り去る男。
─そうね。通り雨なら、悪い時はすぐに終わってすぐ元通りになるわね。
─だから待ちましょう。待っていればきっと…。必ず…。
空は曇りのまま。時が固まったように厚い雲が一面を覆う。
…雨はまだ止まない。
122 :
121:04/03/28 00:43 ID:Uvn8urWC
保守 & 雨の中のお嬢さんと文鳥に捧ぐ。
EGの続きが楽しみです。
123 :
名無しより愛をこめて:04/03/28 12:12 ID:pl/Ax3zN
長文ウザイ
「龍騎として俺と戦うというのならそれもよかろう・・・
どのみち俺に倒されて優衣の命になるんだからな。来い」
なおも挑発的な態度を崩さずリュウガが立ち上がり、
吐き棄てるように言うと龍騎に背を向けた。
そのままドアガラスに向かって大股に踏み込んでいく。
同時に蓮がレザーのポケットに手を入れる。
中身をつかんで引き抜こうとしたができなかった。
龍騎の腕が横からその手を押さえたからだ。
「あいつは、もうひとりの俺だ。俺が倒さなければ意味がない。
それに蓮・・・お前にはもう戦わせたくないんだ」
真司の声が言う。
かすかに笑って、蓮は取り出したものを床に放った。
ブルーブラックの板が木の表面に当たって転がる。
「わかった・・・城戸、死ぬなよ」
「ああ!」
力強くそれだけ答えると背を向け、龍騎は足を踏み出した。
リュウガを追って、ドアガラスからミラーワールドへ。
一歩鏡の向こうへ踏み込んだ途端、目を疑った。
吹雪だ。眼の前も見えないほどの。
ライダーの身体さえ薙ぎ倒しそうな勢いの風に乗って、
無数の雪つぶてが叩きつけてくる。
闇を塗り潰す白い嵐を振り仰ぐ龍騎の眼に、
次第に見えてきたのは・・・
林立するビルの群れ、裸の黒い枝を張る街路樹、
大きな幹線道路。そして歩道橋。
花鶏の周囲の住宅街ではなかった。
おそらくリュウガが、花鶏の鏡とミラーワールドの
別の場所をつなげたのだろう。
そして・・・
雪嵐に慣れてきた龍騎の赤い眼は、
さらに衝撃的なものを捉え始めていた。
吹雪の中に散らばって戦う仮面ライダーたちを。
「うおあぁ!」
ベノサーベルを振り上げて突進する王蛇。
その姿に向かってマグナバイザーを撃ち込むゾルダ。
瞬時に弾丸を受けて払った金色の剣から火花が散り、
あっというまに風にさらわれていく。
微塵も容赦のない銃撃を巧みに避けながら
吹雪の中を駆け巡る王蛇が、さも楽しそうに哄笑した。
「ほんとに面白いなあ・・・お前は!」
「どうでもいいけど、そろそろお開きにしない?」
冷ややかに言い、緑のライダーがカードを抜く。
「ストライクベント」
衝撃と轟音が風の唸りと雪片を吹き飛ばした。
だがギガランチャーの標的はすでに消えていた。
雪渦の中に躍り上がった王蛇がデッキに手をのばす。
「アドベント」
積もり始めた雪を撥ね散らして滑ってきた紫の大蛇が、
敵に黄色い毒液を吐きかける。
「おっと」
巨大な砲を放り棄て毒を避けるゾルダに向かい、
地上に降り立った王蛇が雪を蹴散らして再び斬りかかった・・・
盛り上がっている話に横槍入れるようで申し訳ないですけど、
ゾルダのギガランチャーはシュートベントでつ。
128 :
125:04/03/28 23:12 ID:Ttv6hYGn
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方、ありがとうございます。
>>119 読んでくださってありがとうございます。確かに、放送が終って1年以上も
たつのに私が今の話を書いてること自体、龍騎がいかに面白いかの証明ですよね。
>>120 読んでくださってありがとうございます。これはまた懐かしいフレーズですね…w
>>121 新しい龍騎SSキタ--!!乙です、とっても嬉しいです。
保守もありがとうございます。
それにしても、百合絵さ〜ん ・。・゚(つД`)゚・。・
他の方々も橋の上を通りすぎてくれるのが嬉しいですね・・・
129 :
125:04/03/28 23:50 ID:Ttv6hYGn
>>127 今レスを拝見しました。すみません、そうですね・・・>ギガランチャー=シュートベント
ご指摘いただいてよかったです、ありがとうございました。
Evergreenの新作が来ましたね。
バトルが遂に始まってしまいましたが、決断した真司達の行く末が気に掛かります。
>新しい龍騎SSキタ--!!乙です、とっても嬉しいです。
ありがとうございます。あの朝に観た、雨の橋と直後の無音の鳥かごは
今思い出しても・。・゚(つД`)゚・。・になります。
Evergreen降臨待ち
「スピンベント」
巨大なドリルを構えた褐色のライダーが
空中高く跳ね上り、降下しながら地上の敵を狙う。
まず強靭な切れ味を持つ右脚、次に
真横に薙ぎ払った二本のねじれ角が、
鉄灰色のライダーの頭部と幅広い肩を襲った。
「どう?強いでしょ、俺」
倒れたらそう言ってやるつもりだったが、
相手の頑丈さはインペラーの予想を越えていた。
蹴りとドリルの直撃を受けながら雪の上で
よろめきひとつ見せず、ガイはこう答えたのだ。
「なあんだ。弱いじゃんあんた」
嘲笑まじりの言葉と同時にカードが飛び、
肩のバイザーに吸い込まれる。
「ストライクベント」
避ける間もなく、インペラーの右肩から
左脇にかけて重い衝撃と火花が生じた。
そしてすぐに左肩、また右肩と、容赦無く
金色の一本角が振り下ろされていく。
メタルホーンの連打をガゼルスタッブで
何とか受け流しながら飛び下がっていた
インペラーが、再び右脚を振り上げた。
「ファイナルベント」
それまで主人と敵の周囲を跳ね回り、
隙を見ては一体一体バラバラにちょっかいを
出していたガゼルモンスターたちが一瞬で
インペラーの背後に集結し、キイキイ鳴きながら
一斉にガイめがけて襲いかかった。
133 :
132:04/04/04 23:02 ID:NYhMxCY0
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方、ありがとうございます。
>>130 読んでくださってありがとうございます。よく言われることですが、
インペラー編のラストはパリーンが無いというのもあって凄みありましたよね・・・
>>131 保守&読んでくださってありがとうございます。
初めて見たけど面白いな、これ。
龍騎(本編)で雪山バトルが無かったから、それだけでも燃える( ´∀`)≡3
この後タイガvsライアか…と一瞬思ったが既にライア駄目ぽじゃん。
タイガの対戦相手は誰だろ?
136 :
名無しより愛をこめて:04/04/09 18:37 ID:b8CE57aR
保全
「うざいんだよね、小モノばっかりのくせに」
冷たい軽蔑を込めて毒づくと、
ガイも再びバイザーにカードを放る。
「コンファインベント」
飛び跳ねながら迫ってくるガゼル共が
たちまち掻き消え、渦巻く雪だけが闇に残される。
そこへ間髪入れず再び声が響く。
「ファイナルベント」
猛風に真っ向から挑むような咆哮と地響きを立て、
闇の向こうから鋼のサイが突進して来る。
「じゃあね」
そう言い放ち、ガイはメタルゲラスの肩に飛び乗った・・・
雪嵐の中で対峙する、二人の白いライダー。
「もしかして君、女の子なんだ。
でも容赦はしないから」
がっしりした身体に青い縞模様のある方が
抑揚のない声で宣言し、デッキからカードを引き抜いた。
「ストライクベント」
鋭い爪に飾られた巨大な両手を掲げると、
相手に向かって吹雪の中を猛然と走り出す。
「それはこっちの台詞だよ!」
華奢な身体に白いマントをまとった方が叫び、
細身の剣を振りかざすと根元にカードを差し込む。
「ソードベント」
飛んできた武器を両手で斜めに構え、正面から
雪つぶてを受けながら敵を目指して走り始める。
異様に長い銀色の爪と金色の刃が、
激しい金属音と火花を立ててぶつかり合った。
138 :
137:04/04/12 00:49 ID:9PdD5zHN
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>134 読んでくださってありがとうございます。雪の場面にしようかと
考えた時はまだ真冬だったのですが、もう桜も散ってしまいました(鬱)
>>135 読んでくださってありがとうございます。実はこんな無謀な組合せでした(汗)
ライアだったらやはりデストクローをコピーベントするでしょうか・・・
>>136 age保守してくださって、ありがとうございます。
おお、続きですか。
こりゃ意外な組み合わせで面白い・・・。
しかし、すると残るはシザースVSベルデ!?
続きに期待しています
141 :
名無しより愛をこめて:04/04/18 02:42 ID:1M2PbZjq
Evergreen作者どの。
age保守を行ってるものです。
いつもご丁寧に感謝の意をいただいてますが、気にしないでやってください。
自分がEvergreenを愛してるからこそ保全しているだけです。
つーかガンガレ
最初の一撃で跳ね飛ばされ、雪に叩きつけられながら
ファムは理解した。ウイングスラッシャーが一瞬で
叩き折られなかったのは幸運に過ぎないことを。
腕から身体全体に響く痺れをこらえ、真上から迫る
デストクローのニ撃目を辛くも避けて宙に跳ぶ。
雪と風をはらんで、雪と同じ色のマントが闇に広がった。
「ガードベント」
目標を見失ったタイガの視界が白い闇と化す。
渦巻く雪に、無数の羽根が加わって周囲を舞い始めたのだ。
「だめだと思うけどな、そんな姑息な手を使っても」
余裕たっぷりに呟くと、カードを引き抜く。
「ファイナルベント」
純白の羽根と雪の渦の向こうに、咆哮する白虎モンスターの
巨大なシルエットが浮かび上がった・・・
「そいやあっ!」
黄緑の手から弾丸のように放たれては戻る小さな球。
それが敵の金色の身体に命中する度、火花が噴き出す。
膝を付き、なすすべもない相手を攻めるのにも飽きたのか、
ベルデがバイオワインダーを手の中に収めた。
飛び跳ねるように敵に向かって駆け出す。蹴りを決めるために。
だが、金と黒のライダーはそれを待っていたのだ。
「ストライクベント」
巨大な二本のハサミを胸の前で交差させたシザースが、
至近距離まで来たベルデに向かって突進した。
そのまま腕を思い切り広げ、交互に相手の顔面に叩きつける。
「畜生!」
強烈な不意討ちを食らいながらも怯まず、ベルデが
カードを引き抜く。だがもう一方の手がカードキャッチャーに
伸びようとした時、シザースピンチがそれを薙ぎ払った。
143 :
142:04/04/18 23:19 ID:/d9rbHmB
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>139 読んでくださってありがとうございます。
はい、お察しの通りの対戦です・・・アクの強い人同士なので
どんな戦いになるか、自分でも気になってます(汗)
>>140 読んでくださってありがとうございます。
>>141 いつもage&保守ありがとうございます。この話にずっと
お付き合いくださってるということが何よりも嬉しいです・・・
終りまで楽しんでいただけるように、がんがって続けます。
この後ってトーナメント方式になるんかな?教授&仲村乱入は?
吹雪の中に大きく火花が咲き、瞬時に消える。
今度こそベルデが大きくよろめいて倒れかけた。
その後ろにすばやく回り込み、今度は左手のバイザーで
敵の上半身をがっきり押さえ込むシザース。
「接近戦に持ち込むに限りますね、
あなたのようなタイプは」
言いながら右手のシザースピンチを構え直し、
相手の細い首めがけて突き出そうとする。
その一方の刃に鋭い衝撃が走った。再び咲いて散る火花。
「!?」
シザースの注意が一瞬逸れる。
その隙を逃さずベルデが思いきり身体を捻じった。
そのまま敵の腕を振り解き、積もりかけた雪に転げ込む。
今まで掌の中に隠され、たった今また放たれて
大鋏に命中したバイオワインダーがその後を追う。
既にカードキャッチャーは引き出されていた。
「クリアーベント」
「・・・どこだ!」
急に消えた相手の姿を求め、虚しく吹雪に向かって
叫ぶシザースの耳に、嘲るような声が聞こえてきた。
「いくら接近戦に持ち込んだって相手が見えなきゃ
どうしようもねえよな、カニさんよ?」
続いて響くもうひとつの声。
「ファイナルベント」
シザースには見えなかった。
自分のすぐ目の前に立つベルデのスリムな姿も。
そして、自分の背後の道路にかかる歩道橋上に
姿を現した、カメレオンに似たモンスターも。
146 :
145:04/04/25 23:35 ID:WfYUmObw
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方ありがとうございます。
>>144 読んでくださって、ありがとうございます。各ライダーの戦いが
どうなるかは・・・もう少しお待ちくださいませ(汗)
>>145 おお、シザースが善戦してる!と思ったのに…
やはりこうなってしまう運命なのかw
ボルキャンサー援護しる!
149 :
名無しより愛をこめて:04/05/02 02:09 ID:vnIfn2Yx
age
150 :
Evergreen(69):04/05/03 13:54 ID:2WjonlUh
何が起こったのか分からなかった。
両肩にいきなり衝撃が走ったかと思うと
あっという間に地上から足が離れ、気がついた時は
空中で身体が回転していた。いや、させられていた。
文字通り目の廻るようなスピードで。
それが突然止まった。
視界上方で渦巻く吹雪の向こうに、
雪の路面がぐんぐん迫ってくる。
初めてシザースは気づいた。
誰かが両脚をがっちりつかんでいることに。
そして、自分が逆さ落としにされようとしていることに。
「死んでたまりますか!」
頭を地上に向け垂直に落下しながらも
迷わず右手をカードデッキに伸ばす。
雪に激突する寸前、声が響いた。
「ファイナルベント」
落ちてくるシザース、そしてベルデの真下に
赤味がかった金色のモンスターが出現する。
主人を受け止めるかのように構えられる、
両腕の巨大なハサミ。だが違った。
ボルキャンサーは主人の身体を敵ごと
思いきり打ち上げ、空中へ投げ返したのだ。
「ぐあっ!」
予想もしなかった方向から攻撃を受けた
ベルデの四肢がシザースから離れる。
そのまま吹雪の中を木の葉のように舞い、
相次いで路上に叩きつけられる2体のライダー。
威力で劣るとはいえ、シザースのファイナルベントは
デスバニッシュの致命的な威力を削いだのだった。
151 :
150:04/05/03 14:08 ID:2WjonlUh
Evergreenの続きをupします。
遅れて失礼しました。
>>147 読んでくださってありがとうございます。
それでも蟹さんのしぶとさに賭けてみましたw
>>148 読んでくださってありがとうございます。
やはりボルタソあってのシザースですね・・・
>>149 保守ありがとうございます。
152 :
名無しより愛をこめて:04/05/04 06:37 ID:QfTCLirA
>>150 いつも楽しませていただいてます。。
シザース起死回生!
シザースアタックでデスバニッシュを相殺するという
発想がl、すごいと思いました。
ファイナルベントを使ってしまった両者の、今後の
戦いが気になりますね。
こうきましたか。
ボルタンを使った逆転劇は、ぎりぎりまで諦めない須藤の執念ぽさが出てて良かったです。
でもこの流れだと、蟹もベルデもまとめてあぼんされそうな悪寒w
続きに期待しています
「やめろ・・・
やめろおおおっ!」
果てしない死闘を続けるライダーたちに向かって
龍騎が絶望的に呼びかける声が、
吹きすさぶ風雪にもぎとられ流されていく。
たとえ吹雪いていなかったとしても、
誰にも届かないという点では同じだったろうが・・・
だが絶望している暇さえもなかった。
「うわっ!」
後ろから右肩に強烈な一太刀を浴びせられ、
もんどりうって頭から雪の中に突っ込む。
突っ込んだ瞬間身体を回転させた。
真上から落ちてくる殺気を感じ取ったのだ。
直後、垂直に突っ込んできた刃が
龍騎のいた位置の雪に深々と食い込む。
鋭く反った黒い刃が。
そのまま雪の上を必死で転がり続ける龍騎。
雪に点々と傷跡をつけながら、リュウガの
ドラグセイバーがそれを追う。
「どうした?・・・いつまでも逃げていないで戦え!
そうでなければさっさとあきらめて神崎優衣の命になれ!」
文字通り殺気に満ちたリュウガの声が降ってくる。
転がりつつ懸命にバイザーに手を伸ばす機会を
窺いながらも、龍騎は奇妙な違和感を覚えていた。
今までの世界でのバトルと、何かが違う・・・
だが、いったい何が?
158 :
157:04/05/10 01:28 ID:pFiVHEfL
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、どうもありがとうございます。
>>152 今年は予定がこれといってなかったのですが、
その割にペースが伸びませんでした(汗)
>>153 同じ相討ちでも飛翔斬には負けてしまったので、
1度くらい引き分けでもいいですよねw
>>154 半ば苦し紛れに考えた結末ですが(汗)、確かに
蟹様の性格には合っているかもしれませんね。
>>155 よかったら、今後のなりゆきも見ていてくださいませ。
>>156 ありがとうございます。また続きがんばりますね。
159 :
139:04/05/10 21:36 ID:wRnO/ed3
おお、続きが来ましたね。
いよいよメインイベントの龍騎VSリュウガですか。
二人のバトルはどんな展開なのか、
そして「この」MW全体に仕掛られているものとは・・・???
クライマックス、楽しみにしています。
160 :
名無しより愛をこめて:04/05/11 00:18 ID:PHJ3Tfuh
やべえ、、、
頭のなかで
♪ぎぃんのかげをまとーうー
って流れてきた!
おわりのないー
たたかいをー
龍の影をまとーう
戦闘も物語もクライマックスに差しかかった感がありますね。
毎回目が離せません。
164 :
名無しより愛をこめて:04/05/16 23:37 ID:RnA3HeJr
おわりのないー
たたかいをー
「ソードベント」
やっと龍騎の手がカードデッキに届く。
またも振り下ろされてきた黒い刃が、
火花もろとも斜めに斬り返された。
刀身に吹きつけてくる雪礫の幕を切り裂きながら、
龍騎のドラグセイバーがリュウガの胸に迫る。
「ガードベント」
龍の爪を持つ黒い盾が赤い刃を撥ね返し、
その勢いでリュウガの身体ごと正面から
龍騎を押しつぶしにかかる。
「ぐ・・・」
再び雪中に倒れ、ぐいぐいと押しつけられる
ドラグシールドの圧力に耐えながら、龍騎は見た。
地面の雪と盾の隙間から。
他のライダーたちに現れ始めている異変を・・・
ウイングシールドの幻惑をものともせず突進してきた
デストワイルダーがファムの首元を掴み、
紙人形のように易々と雪の上に引きずり倒した。
「!!」
ファムが懸命に手をかけて力を込めても、
肩に食い込んだ何本もの鋼の爪は微動だにしない。
獲物を押さえ込んだ白虎モンスターが再び咆哮し、
デストクローを構える主人の元へ走り始めた。
声にならない悲鳴を上げる白いライダーの身体が、
火花の代わりに雪飛沫をあげて地面を滑り出す。
だが両手の巨大な爪を広げて待つタイガの胸に
湧いてきていたのは、自分の力に対する陶酔でも
殺戮の高揚でもなかった。
166 :
165:04/05/17 00:38 ID:fn0f/qyB
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、どうもありがとうございます。
>>159 今回の参考にするためEPFを見直して今更気づいたのですが、
龍騎vsリュウガのドラグセイバー戦って映画にはなかったんですね(汗)
>>160 某ドラマ主題歌の”銀のりゅ〜うのー背にー乗って〜”
を思い出しました。あれもいいですね。
>>161,
>>162 本編でこの歌のイントロが流れて、デッキがベルトに
カシャッと入ると一気に心拍数上がりますよね。
「キタキタキタ‐‐‐!!」という感じで
>>163 壊れた水道状態のポトポト連載になってますが、
それでも楽しんでもらえていたらとても嬉しいです。
>>164 ageありがとうございます。
167 :
名無しより愛をこめて:04/05/17 02:39 ID:U5TtgUoJ
北ー!
板違いの話題ですが、番組が終わって2年がたつのに
夏頃にミラーライダー達の装着変身やS.I.C.が続々と出るようですね。
発表された玩具のラインナップや、玩具へのエールを見ていると
龍騎はいまだに親しまれ、根強いファンの多い作品だったなと実感できました。
EverGreenもそういった龍騎への強い想いの上で生まれた作品だと感じます。
連載をいつも楽しみにしています。
>>168 そうだったんだ!!
やっぱ龍騎は至上最強におもしろいのだ。
>>エバグリ作者
応援してます。がんがってください。
ああ、そうだ。こうやって僕は、
何度もこの爪を突き立ててきたんだっけ。
気に入らない奴にも。心の底から尊敬していた人にも。
英雄になってみんなから好かれたい、ただそれだけを願って。
だけど結局、英雄にはなれなかった・・・そして結局、
誰からも好かれなかったんだ。そうだよ。思い出した。
気を失ったファムの身体がデストワイルダーの
爪から放り上げられ、タイガの目の前に降ってくる。
デストクローが振り上げられ、白い胴に深々と突き刺さった。
タイガの近くまでよたよたと歩いてきたシアゴーストの胴に。
同時に後ろから何か細長いものが襲ってきたのを感じ取り、
空いた方の手を振り向きざまに素早く振り上げる。
数本の白い触手が、がっしりした首の後ろに刺さる寸前に
銀の爪で絡め取られた。そのまま渾身の力を込めて手首を引く。
驚いたように奇妙な鳴き声を立てながら、バランスを崩して
次々と雪に倒れ込むシアゴーストたち。その上に高く跳んで
襲いかかったデストワイルダーの巨爪がぎらりと閃いた。
白い殺戮者と白い犠牲者たちの撥ね散らす雪を浴び、
吹雪にさらされながら、タイガは雪の像のように動かなかった・・・
少し離れた所に落ちたまま動かないファムに気を留める気配もなく。
雪に埋もれかけている身体同様、闇の中に埋もれかけた
ファムの意識の隅で、かすかな明りが灯りつつあった。
思い出した。たったひとりいたんだ・・・
あたしが信じることのできる男が。
でも、なんにもいえないうちに死んじゃったんだ、あたし。
今度こそちゃんと気持ちを伝えたい。そうだよ。今度こそ!
わずかに残った力を両手と両膝に込め、
ファムは雪の中から立ち上がる努力を始めた。
171 :
170:04/05/23 23:14 ID:wsVv9lgD
Evergreenの続きをupします。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>167 はい、今日もきましたw
>>168 恥ずかしながら最近の状況はよく知らないのですが、相変わらず
龍騎関係の新しい玩具出てるんですね・・・ほんとに凄いです。
>>169 ありがとうございます、がんがります!
172 :
名無しより愛をこめて:04/05/26 23:41 ID:gvDyKRxi
わーい、お父さんあげちゃうぞー!
173 :
名無しより愛をこめて:04/05/28 23:04 ID:PLOZVeKc
ハニカミに真司age
174 :
名無しより愛をこめて:04/05/28 23:15 ID:PLOZVeKc
┃ ┃━┓ ┃┃┃
┗┓━ ┃━┓ ┗━━━━━(゚∀゚)━━━━ ┃┃┃
┗┓━ ┗ ┃ ┗┗┗
┗ ┃ ┗┗┗
ちゃんと龍騎の紹介もあってヨシ!!!!!
175 :
名無しより愛をこめて:04/05/28 23:30 ID:4WCAIVrA
お好み焼きデートage
龍騎の身体から急に盾の重みが遠のく。
「くそ・・・勝負は始まったばかりのはずだ、
まだお前たちの出番ではない、のけえっ!」
よろめきつつ起きあがった龍騎の眼に、
二匹のシアゴーストに組みつかれ、首と胴を
締め上げられてもがくリュウガの姿が映った。
黒いドラグセイバーで龍騎にとどめを差そうとした
瞬間、後ろから襲いかかられたらしい。
だが複数による不意討ちとはいえ、やはり
雑魚にやられるようなライダーではなかった。
「ふぅあっ!」
気合と共に二匹の生白いモンスターがリュウガの
身体から弾けとび、前方へ突っ込んでいく。
「うわ!」
とんできたヤゴたちを辛うじてかわしたと思う間もなく、
龍騎の顔面すれすれを再び黒い風が襲った。
「戦え!」
自分と似たマスクを切り裂こうと、狂ったように
ドラグセイバーを振り回しながら向かってくるリュウガに
向かって、龍騎は必死に叫んだ。跳び下がりながら。
「おい、待てよ・・・何かおかしいと思わないか?」
雪の上に倒れたライダー二人の回りに、ぞろぞろと
シデムシのように群がってくるシアゴーストたち。
「ホールドベント」
緑色の方に触手を突き刺そうとしたヤゴモンスターが、
不意に飛んできた丸い物体に顎を撃たれてのけぞる。
「うっとうしい奴らだな・・・まだ死んじゃいねえよ」
素早く立ち上がり、返ってきたバイオワインダーを掌で
受け止めたベルデが、本当に鬱陶しそうに吐き棄てた。
177 :
176:04/05/31 00:00 ID:RbEE8b7n
Evergreenの続きをupします。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>172 保守ありがとうございます。
178 :
名無しより愛をこめて:04/05/31 00:23 ID:zw1pXCiB
ベルデきたー!
>>さくしゃタン
「シデムシ」ってなんですか?
Evergreenの作者です。
読んでくださっている方々、いつもありがとうございます。
週末に用事ができたため、今度の日曜夜に
続きをupできなくなりました。
すみませんが、次の日曜までお待ちください…
>>178 読んでくださってありがとうございます。
実際に見たことはありませんが、シデムシ(死出虫)は腐肉を
餌にする昆虫で、動物の死骸に集団で群がって食い尽くすそうです。
(ネットで検索したら写真も色々でてきました)
シアゴーストはヤゴのモンスターですが、幽霊の様な姿と
集団でわらわらやってくる性質?が、どうしてもシデムシの
イメージとつながってしまうので、比喩に使ってみました。
180 :
名無しより愛をこめて:04/06/05 01:47 ID:LBLZhTio
きにするな、きにするな、
楽しみが1週間のびただけ。
181 :
名無しより愛をこめて:04/06/05 05:19 ID:QVUuED3L
>>179 いやだー! GJ乙 おれの数少ない楽しみが・・・。
↑
耳をふさいでうずくまってる人
また来週〜。
全ての設定をリセットした龍騎の物語書いてもOK?
仮面ライダー龍騎〜烈火仮面騎士伝説〜
登場人物 ライダー編
城戸真司/仮面ライダー龍騎
ネットニュース「OREジャーナル」の見習い記者、烈火龍拳法を習得している。
戦いを止める為、全ての元凶神崎士郎を倒す事を誓う。
秋山蓮/仮面ライダーナイト
喫茶店「花鶏」のウェイター、意識不明の恋人、小川恵里を救う為に戦う。空手2段
北岡秀一/仮面ライダーゾルダ
自称スーパー弁護士、永遠の命を手に入れるために戦う。柔道3段
須藤雅史/仮面ライダーシザース
殺人を犯した刑事、頂点を極める為に戦う。柔道4段、空手1段、剣道初段
手塚海之/仮面ライダーライア
的中率100%の占い師、ライダーの戦いという運命を変えるために戦う。太極拳を会得している。
芝浦淳/仮面ライダーガイ
明林大学の三年生、ゲーム感覚でライダーの戦いに参加した。空手1段。
浅倉威/仮面ライダー王蛇
凶悪犯、自らの破壊欲を満たすために戦う。剣道1段、何人もの相手を大怪我させた。
高見沢逸郎/仮面ライダーベルデ
高見沢グループの社長、今以上の権力を手に入れる為に戦う。鋼鉄製のヨーヨーをいつも所持している。
霧島美穂/仮面ライダーファム
結婚詐欺師、浅倉に殺された姉を救う為に戦う。フェンシングを習得している。
榊原耕一/仮面ライダーリュウガ
中華料理店の店長、真司と同じく烈火龍拳法を習得しており、また目的も同じである。
東條悟/仮面ライダータイガ
清明院大学の一年生、英雄になる為に戦う。少林寺拳法を習得している。
佐野満/仮面ライダーインペラー
フリーター、巨万の富を得る為に戦う。空手初段。
仮面ライダーオーディン
ゲームマスター神崎士郎の執事、神崎士郎と共に神崎邸に住んでいる、紅茶を運んできたり、
ミラーワールド内で神崎を乗せて銀色のリムジンを走らせたりと本当に執事の仕事をしていたりする。
がんがれ! 楽しみにしてるぞ。
みんな格闘技経験者って設定なんだ、ベルデが持ってる鋼鉄製のヨーヨーって
スケ番刑事みたいだな、ブツけられたら痛そうだ。
あと一つ提案なんだけど北岡は柔道3段じゃなくて射撃の名手(オリンピック選手
並みの実力)ってのはどうかな?ゾルダの武器は銃だし。
184 :
1:04/06/06 00:17 ID:NT5wKNzx
うーん…。
こちらは龍騎本編の話と話の補完の意味合いが強い場所ですので、
できましたら、オリジナル色の強いお話は
ライダー専用スレで語って頂けるとありがたいのですが…。
>184
ライダースレは落ちてるよ。
今確認できるライダーが出るSSスレは
ここと、555ストーリー補完スレ、帰ってきた総出演スレ、ヒーローっぽいスレぐらいじゃないかな。
このうち後半の2つは連続モノだから、単品は書き込めないみたいだし。
186 :
名無しより愛をこめて:04/06/06 00:48 ID:iFM9Yt9n
龍騎はここでいいんじゃね?
187 :
1:04/06/06 01:15 ID:NT5wKNzx
そうですか。もうあのスレは無くなったんですね。
どうしましょうか?新しくライダースレを建てましょうか?
オリジナル寄りのお話はライダースレの方が
より広く読者の皆さんに楽しんでいただけると思うんですが…。
そろそろ週末ですので、Evergreenを楽しみにしています
182はどうなったの?
>190
182らしき人が、188のスレで別な連載を始めたっぽく。
>>191 さんきゅう〜。
あれですか、アナザー龍騎期待してただけに残念。
193 :
名無しより愛をこめて:04/06/13 23:27 ID:3ly/QKLs
Evergreenまだー???????
「おい、蟹!生きてるなら返事しやがれ!」
伝法な呼びかけと共に、ベルデの掌から
再びバイオワインダーが放たれた。
吹雪に逆らって弧を描くと、もう一体のライダーに
群がりかけていたシアゴースト共を一気に薙ぎ倒す。
よろめきながらも雪を払って立ち上がると、先ほどまで
敵だった助け主に向かって憤然と向き直るシザース。
「「失敬な・・・蟹とはなんです」
抗議しながらも、脇からしつこく寄ってきたシアゴーストに
赤金色の巨鋏を振り上げて一撃で殴り倒す。
「けっ。細かいことを気にする前に礼くらい言いやがれ」
毒づいたベルデも、またも寄ってきたヤゴの群れに
再びバイオワインダーと蹴りで応戦する。
あとからあとから輪になって迫ってくるシアゴースト共に
向かい合いながら防戦と攻撃を繰り返すうち、いつのまにか
2人は背中合わせで包囲網の中心に立つ形になっていた。
「おい蟹」
「だから蟹では・・・」
「お前、今までのうちでどの死に方が一番嫌だったよ?」
唐突で、しかも常識からすれば狂っているとしか
思えないベルデの質問に、シザースは戸惑いも見せず答えた。
「そうですねえ・・・自分の契約モンスターに
食われた時でしょうか。生きたままで」
「へえ、そいつは悲惨だったな。ま、そういう俺も
一度も安らかに死んだことなぞないけどよ。
さっきお前にされかかったみたいに、せっかく技を決めた
相手に返り討ちにされたこともあったしな・・・」
「おや、戦意喪失ですか?先ほどボルキャンサーに
打たれた場所が悪かったようですね」
そう皮肉っぽく返すシザースの声音にも、殺意はなかった。
195 :
194:04/06/14 00:03 ID:iGZIzZ0b
Evergreenの続きをupします。どうもお待たせしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>180,
>>181 待っていてくださってとても嬉しいです。
ありがとうございました。
>>182 列火仮面編龍騎、私も読んでみたいです。
モンスターたちも出てくるのでしょうか?
>>184 1さん、お久しぶりです。
Evergreen完結までがんばります。
>>188 スレ立て乙です。あちらのライダー話とデカレン話を
面白く読ませていただきました・・・
これからも続きと、どんなお話が出てくるのかが楽しみです。
>>189,
>>193 1週間待っていただきましたが、今週分をupしました。
いつも読んでくださってありがとうございます。
新作おつかれさまです。
過去の敗北を語り合う蟹刑事と高見沢がいい感じですね。
今までのバトルの失敗(含む断末魔の苦痛)が全て甦ってきたなら、
敗者のみなさんはかなり嫌な気持ちになるでしょうね。
作者タン、おつ!
乙、乙、乙!!
次は過去を思い出してしんみりな浅倉が拝めるのか。
おかえり、作者タン
そろそろ続きが来ますか?
「時間稼ぎのつもりか・・・姑息な奴だ」
龍騎の懸命な呼びかけに冷笑で応じたリュウガが、
ドラグセイバーを雪中に放り捨てる。
そして無言で飛びあがった。何の勢いもつけずに。
そのまま放物線を描きながら落ちていく先は当然龍騎だ。
黒い槍の如く突き出された脚が狙う的も。
だが。
「邪魔だあっ!」
「Gfhweee!」
死の飛び蹴りは空中で吸収された。
脱皮と羽化を終えて飛び立ったばかりのヤゴモンスターに。
運悪く空中でリュウガの前を横切ってしまったらしい。
白く渦巻く闇に鮮やかな爆発炎が湧き、
黒焦げになった胴体と羽根が雪の上に落ちていく。
地上から、茫然とその光景を見つめる龍騎。
その間にも周囲では無数のシアゴーストたちが
次々と雪の上に突っ伏し始めていた。
レイドラグーンとして生まれ変わるために。
あちこちで白い背中が割れつつあり、青い羽根を
震わせる響きも風雪の音に混じり始めている。
「ふうん。思ったよりやるじゃん?」
ヘビープレッシャーを間一髪で避け、再びアドベントカードで
ガゼルたちを周囲に喚び出したインペラーに向かい合ったガイが
小ばかにしたように言う。右手指に挟んだ、こちらも
アドベントのカードをいつでも放れるように構えながら。
だがインペラーの方はそれ以上カードを抜く気配を見せない。
代わりに、予想外の言葉を発してきた。
「ねえ、このへんでやめにしとかない?」
202 :
名無しより愛をこめて:04/06/20 22:52 ID:oepnMR1l
kita-!!!!!
203 :
201:04/06/20 22:52 ID:KGKZmYDG
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>196 ありがとうございます。どちらもしゃべり方に
個性があるので、対話させてみると結構
面白くなるのかもしれませんね・・・
>>197,
>>198,
>>199,
>>200 ありがとうございます、お待たせしました。
よかったら、今後の展開も見ていてくださると嬉しいです。
204 :
201:04/06/20 22:55 ID:KGKZmYDG
>>202 (upしてる間にレスいただきました)
ありがとうございます。
>Evergreen
ろくでもないボンボン同士の対決ですが、
サノマンの一言がこのバトルの本質をあらわしてるようですね。
地球人の自然破壊によるアンバランスからミラーモンスターが出現!
モンスターに対抗すべく1号本郷は2号一文字、V3風見と共にライダー変身装備を開発。
モンスターに襲われた真司は1号ライダーに救われる。
真司は1号から変身装備を受け取り龍騎に変身!
2号とV3はナイト、ゾルダを連れて来た。
今ここに世代を越えたライダー軍団の地球を守る戦いが始まった!
ってストーリーはいかがなもんでしょか。
>>206 >1より
【案内】
・ここは本放送版・13ライダーSP版・映画版を含む 仮面ライダー龍騎 SSスレです。
・劇中・劇終後のエピソードなど、みんなで補完していきましょう。
・載ったSSに不満があれば「自分ならここをもっと面白くしてやるぜ!」の心意気で前向きに。
ここは龍騎の本筋の補完スレだから>188で書くと良いらしいよ。
>>206 昭和・平成ライダーが共演するヒーローショーなんかでありそうな設定ですね。
面白いと思います。
「リタイアする気?じゃそうしてよ、あんただけね」
今度は心底ばかにしたような声で言い、
ガイが右手を上げた。カードを左肩に放つために。
だがその手は凍りついたように止まった。
相手が今度はこう聞いてきたからだ。
「あんた、紫のやつに殺されたことある?」
最後に目に映ったもの−−自分に向かって
真上から突っ込んでくる紫の姿。
メタルゲラスの悲痛な絶叫。
そしてブラックアウト。
罠だよ。俺を油断させるための。
決まってるじゃん。耳を貸すなって!
そう自分に言い聞かせる声をあっさり押しのけ、
最も恐ろしく苦しい記憶がガイの心を瞬時に満たす。
カードを持つ手が、力なく下がった。
「・・・あるの、あんたもあいつに殺されたこと」
傷つき弱った自分の前に現れた、紫の死神。
ふんと笑うと、そいつは悠々とカードを引き抜いた。
そして褐色のデッキは砕かれ、俺は鏡に閉じ込められた。
緩慢で、恐怖と苦痛に満ちた死と一緒に。
「そうそう。じゃ、やっぱりあんたもなんだ?」
妙に慣れなれしい、それでいてあまり嫌味でもない
独特の口調で答え、インペラーがカードを雪の中に捨てる。
今やほとんどすべてのライダーたちが気づいていた。
仮面ライダーとして戦ったいくつもの人生の終りに
訪れた、いくつもの横死の記憶。それが突然、
自分だけでなく「敵」の心のうちにも甦ってきたことに。
210 :
209:04/06/27 23:46 ID:bBvolLiI
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>205 ありがとうございます。お互い紫の誰かには
ひどい目にあってるので、記憶があるならこういう風に
なるかも、と思って書きました・・・
>>206 初代クラスと平成最新クラス(といってももう2つ前ですが)の
競演とは、面白そうですね。士郎兄さんがショッカーに呼ばれて
何かやったりしないかな・・・とか期待してしまいました。
>Evergreen
ライダー達はリュウガが望んだ様には動かなかった訳ですね。
人の心が判っていなかったのが彼の敗因でしょうか?
「何をしている、戦いを続けろ馬鹿ども!!」
レイドラグーンの残骸を八つ当りのように
蹴散らしながら、リュウガが吼え立てる。
声に焦燥が混じり始めていた。やっと気づいたのだ。
自分の周りのライダーたちが戦うのを止めていることに。
吹雪の中に立ち尽くす者。カードを投げ捨てる者。
そしてあろうことか、倒すべき相手と共に
雑魚モンスターと闘っている者・・・
「忘れたのか−−お前たちがあれほど願っていたことを。
戦わなければ願いを叶えることはできないんだぞ!」
「無駄だよ」
赤い眼に殺気を込め、声の主に向かってリュウガが振り向く。
横殴りの雪礫の向こうから、龍騎がじっと見つめていた。
同じように赤い眼には、殺気ではなく哀しみが満ちている。
「思い出したんだよ、みんな−−このまま戦い続ければ
どんなことになるかを」
そうだよ。みんな記憶を取り戻したんだ。
俺や蓮や、それに手塚みたいに。
願いを叶えようとして、不毛な殺し合いと非業の死を
今まで何度も繰り返してきたという記憶を・・・
「誰だって虚しくなるさ、戦いなんか。その果てに
待っているのが悲惨で孤独な死だけだと知っていれば。
どんなに切実な願いを叶えるためでもな・・・
今までの世界でライダーバトルが繰り返されたのは、
みんなが前の世界の記憶を失っていたからなんだ。きっと。
だけど今は違う。理由は分からないけど。
だったら、前のような死に方を繰り返したいなんて誰が
思うもんか・・・お前以外には」
214 :
213:04/07/04 23:51 ID:h/pbkLS3
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>211 読んでくださってありがとうございます。
おっしゃる通り、ライダーたちが前世の記憶のあるまま
戦ったらどうなるか(これは
>>196 さんの書かれた通りに
考えました)が、真司の執念の塊であるリュウガには
想像もつかなかったという解釈でした・・・
物語も着々と終結に向かっているようですね。
(ちょっと淋しい)
ともかく、乙!
Evergreenはいよいよ物語の核心に迫ってきましたね。
続きをとても楽しみにしています。
城戸君…。
あなた、何の為にこの世界を守ろうとして命を落としたの?
この世界は守るだけの価値があったの?
桃井令子は空を見上げ小さく呟いた。
『人殺し』 『死ね』 『化け物』
令子の目の前、荒れて廃墟化した喫茶店の壁には、憎しみの言葉が何百と書き記されている。
刃物で文字が抉られた壁にそっと手を置く令子。
…それでも形が残っているだけ、ましかも。
先に取材した神崎邸は放火で焼け落ち、煤けた瓦礫だけが地面に突立っていて…。
──あの雪の日の後。
怪物による街の破壊と殺戮の後には、
今まで確かだと信じていたものを失った人々が残された。
傷付けられた者、残された者の、行き場の無い怒りは癒される事無く、暗く澱み、増していき
遂にその重さに耐えられなくなった時に暴発した…。
吹き荒れる黒い思いは、誰かを生贄にその熱を鎮めるしかなかった。
人々は、神崎に、優衣に、ライダー達に、その責任を求め
ライダーに関した多くの場所や人が多大な被害を蒙った──。
人が街に与えた無残な傷跡を前に、つい弱音を吐いた自分に喝を入れると
令子は気持ちを引き締め、令子個人から報道記者桃井令子に心を戻し
冷静にカメラを構え始めた。
2003年1月19日。
『この戦いに正義は無い。そこにあるのは純粋な願いだけである。その是非を問える者は…』
中心街で起きた信じ難い出来事の第一報が飛び込んできた時、
OREジャーナル編集長大久保大介は眠さ半分興奮半分で徹夜したまま
城戸真司から告白された「仮面ライダー」の話をまとめあげている最中だった。
大久保から報せを受けた令子はすぐに城戸に連絡を入れたが
幾ら携帯を呼び出しても繋がらないので、使えない後輩の事は諦め
島田奈々子に城戸宛の伝言を託すと浅野めぐみと二人だけで銀座に向った。
現場を一目見た瞬間、今までの軽いお喋りも途絶え呆然となる令子達。
容赦無く砕かれた窓ガラスや、ヒビの入った建物、まだ燃え続ける車…。
あちこちに飛び散る赤い飛沫…。横たわる物言わぬ幾つもの身体…。
爆弾テロでも起きたのかと思わせるその惨状に、令子は言葉を失い、
最初は「すごーい!」を連発していためぐみでさえ
場の持つ深刻さに飲まれたのか、おとなしくデジカメを回し出した。
----------------------------------------
同時刻。浜崎実加は、昼休みに学校の食堂のTVで
遠く東京で起きた大惨事に紛れて小さく報道された「連続殺人犯射殺」のニュースを見た。
浅倉威の名前に顔色を変えた実加に気を使い、級友達は今日は早退するよう彼女に勧めた。
怪物を警戒し寮まで見送ってきた保健の先生に
実加は明るく「大丈夫です」と告げたが、女医はすぐに
この子は快活そうに見せようと精一杯元気良く振舞ってるだけだと気付き、心を痛めた。
凶悪な殺人鬼の死に世間が凱歌をあげたその夜
世界でただ一人、浅倉の為に泣いた少女が居た。
午後遅く、足取り重く令子は編集部に戻った。
一心不乱にキーを打ちながら時折こぼす令子の愚痴から、
約束の場所に北岡秀一が現れなかった事を知った奈々子達が騒ぎ出した。
めぐみと奈々子は訝しがる令子を強引に車に乗せ、大急ぎで北岡の法律事務所に駆け付けたが
時すでに遅く、動かなくなった北岡を前にめぐみは絶叫し、奈々子は床にしゃがんだ。
遺体を前にすすり泣く奈々子と、泣き喚くめぐみを見ながら
令子はまだ事態が飲み込めなかった。
「こうなる事は前から知ってたの」と、涙でくしゃくしゃになった顔で奈々子が告げても、
令子はまだ目の前の姿の意味を受け入れる事が出来なかった。
白いバラを一輪胸に乗せ、ソファーに横たわる北岡。
まるで眠っているように穏やかなその顔を見てるうち、
古いレコードの針飛びの様に途切れ途切れに令子の耳に甦る
北岡の悪戯っぽい誘いかけや、不意に真剣になった時の厳しい口調、
意外に無邪気な笑い声、調子外れな鼻歌、そして…
── I see trees of green, red roses too
── I see them bloom for me and you....
北岡を待つあいだレストランで流れていた「What a wonderful world」の一節。
ゆっくりと浮かんでは消えていくそれらに合わせ、瞳にも映しだされる様々な場面。
北岡さん…。私、あなた自身の事、あなたが心に抱いた思いを、まだ知らない…。
北岡さん…。あなたともっといっぱい話しておけば良かったって、そう思っても…。
北岡さん…。北岡さん…。北岡さん…。
…私はまだあなたの事を何も…。
過ぎ去った幾つもの思い出が、熱い雫に身を変えると
令子の頬をゆっくりと滑り降りていった。
大久保が令子の取材を元に記事を執筆してる最中、警察から城戸真司に関する報せが届き
やっと気分を落ち着かせ化粧を整え直した奈々子のアイラインを再びぐだぐだに崩した。
警察から戻った奈々子もめぐみも令子も、三人共沈み込んで仕事がはかどらなかった。
大久保はとっておきのシャレでみんなを笑わせようと試み、かえって沈黙を呼び込んだ。
不機嫌な顔で、それでも無理に場を明るくするのは止めて淡々と記事を打ち込み出す大久保。
その姿に向って「真司君があんな事になったのに…編集長って冷たい」と呟くめぐみ。
「バ〜カ言ってんじゃないぞぉ?生きてる俺達が動かなきゃ誰が動く?俺達は記者だ。
貴社の記者が帰社して、機関車みたい馬力上げてスクープ書かないでどうするよ?」
「編集長。そのシャレも氷河期」奈々子もトーンが低いまま机に突っ伏して呟き返す。
編集長とめぐみ達とのやり取りを聞いた令子はすっと立ちあがり、取材に行きますと告げた。
「編集長の言う通り記者の努めは報道する事です。ここでぐすったら真司君に申し訳無いわ」
「いいからさ令子。無理すんな。泣きたい時は思いきって泣け。お前が一番涙をこらえて
耐えてるのは判ってるって。それでお前が心を壊したら、真司だって浮かばれねえよ」
泣きたいのは大久保も同じだったが、目頭を押さえる令子の姿に笑いかけると入力を続けた。
----------------------------------------
何が起きているのか、何が起こったのか。人々には見当もつかなかった。
それでも多量に残された現場の映像は、事件以上に世間を震撼させた。
携帯や監視カメラに残された、人々を襲う怪物の姿、何も無い窓から化け物が這い出る様子。
その異形を叩き落し炎で焼き尽くす赤龍と、異形に突進し食らいつく巨大蝙蝠。
ふいに鏡が砕けるような亀裂が身体に走ると塵のように消えて行く全ての怪物達。
常識を覆す怪奇現象を前にして、専門家も宗教家も揃ってお手上げ状態だった。
混乱の中で事件の真相を知るのはOREJの社員だけだった。
報道の使命感に燃えた彼らは寝食を忘れ力を注ぎ、そうして突貫で出たOREJ緊急発売号と共に
仮面ライダーとミラーワールドの物語が人々の前に全貌を顕した。
TVでは何度も、城戸真司のインタビュー映像が流された。
その大元はOREJに掲載された動画で、
大久保がせめて城戸の軌跡を残そうと腕によりをかけた解説を添え
変身の様子と告白とを中心に連載形式に仕上げた記事から、TV局が無断借用した物だった。
異形に変る城戸真司の姿に人々は息を飲み、
淡々と語られるその内容に驚愕し、
そして…多くの人々が、帰らない肉親や友人や愛する者の死を
城戸の言葉から知った。
須藤雅史の…
芝浦淳の…
佐野満の…
仲村創の…
斉藤雄一の…
ポトラッツ教授の…
浅倉の実弟、三原暁の…
試着室や骨董店やその他街中で突然消えた人達の…
須藤逮捕に向かった刑事達の…
生き物好きと評判の大森さんの…
明林大学の学生の…
元会社社長の竹内真理の…
フェリーの乗客や船員達の…
浅倉を護送した警官達の…
帰りを待ち続けた人々は悲しみに沈んだ。
花が大好きで優しかった中村先生の死を知って
ショウコとチサトは何日も泣き続けた。
堀口ゆかりは父の死をはっきりと知らされ唇を噛んだ。
病み上りの母親を心配させまいと、回りにはいつも笑顔を見せていたが
胸が塞いで毎日が辛かった。
ふいに、先生や吾郎ちゃんに会いたくなって法律事務所を訪れてみたものの
緑でいっぱいだった庭は枯れて荒れ果てていて
封印された事務所の扉には「立入禁止」のプレートが打ち付けられていた。
その様子に酷くショックを受けたゆかりは、父の時でも流さなかった涙を初めてこぼした。
----------------------------------------
由良吾郎の行方に付いては何も判らないままだった。
吾郎の父母や兄弟達は、戻らない吾郎の事を思って胸を痛めたが、
たとえ雇用主と凶悪犯の死からおおよそが推定できたとしても
それでも事実が明らかになるまでは吾郎の帰りを待とうと皆で決めた。
----------------------------------------
香川教授の死は確定した。クリスマスも正月も迎える事無く、
ひたすら父の帰りを待って寂しく過ごした香川裕太には残酷な報せだった。
すすり泣く裕太の傍らで、香川典子は静かに夫の死を受け入れた。
----------------------------------------
街は悲しみに覆われた。
事実が判っても、それで何か変る訳ではなかった。
消えてしまった人を待ち続ける辛さに変りは無かった。
そして何が起きたのか明確に判っていても、痛みが和らぐ訳でもなかった。
シアゴーストやレイドラグーンに目の前で知人を奪われたり、
それらに傷付けられた人々もまた同じく悲しみ苦しんだ。
神崎士郎の設定したタイムリミットが過ぎて怪物が一斉に消えたとしても、
鏡の中、闇の奥、そこにまだ怪物が潜んで居るかもしれない恐怖。
肥大する鏡恐怖症や、失踪を怪物のせいにする殺人者、そこここで怪物を見たと言う流言。
鏡の向こうを恐れる気持ちから、瞬く間に人心は荒れだした。
怯える者はミラーモンスターを倒したライダーに救いを求め、
ライダー達を神格化して崇める事で安心を得ようとした。
カードデッキの模造品を御神体にしたり、ライダーを名乗る教祖があちこちに出現した。
夜中に怯えて泣く子供達に、仮面ライダーが怪物から護ってくれると告げて安心させる母親。
だが、母自身はライダーの存在やライダーの正義を心から信じる事が出来なかった。
そして、須藤についての証言や「契約モンスターもまた人間を餌として欲しがる」との言葉に
恐怖を覚える者も少なからず居た。
…それなら、他のライダー達も須藤と同じ様に、
てっとり早く人間を契約モンスターの餌食にしていたのではないか?
一度生まれた疑惑はどす黒く膨らみ、やがて疑惑は噂に、噂が確信に変っていくと
ライダーの名前は一転して、英雄から怪物使いの悪鬼に変貌した。
ライダーに関わった者は糾弾され、残されたライダーの家族や友人は酷く中傷され、
中には身の危険を感じ引越しや隠遁を余儀なくされる者も出た。
「俺があの記事を書いたのは真司の為なのに!何でこんな事になるんだよ、畜生!」
ライダー達の名前は伏せた筈だったが、何時の間にかインタビューの「完全版」が出回った。
元データをハッキングした明林大マトリックスの生残りの仕業と思われたが証拠は無かった。
あんな低スキルの連中にいいようにされてと奈々子は悔しがり、リベンジを試みた。
ライダーの名の下に行われる煽りと暴力、インチキ宗教の横行。
命懸けで城戸が残したかった物と、真逆な結果に大久保は失望した。
城戸真司の誇りとライダー達の詳細な情報と引き換えに大金と名声を得たのと同じだった。
大久保は虚しさを抱え、コメントを避け続けた。
…江島教授と香川教授はどれだけこの惨劇に荷担していたのか?
…神崎士郎と共同で作り上げた怪物について、どれだけの認識があったのか?
歪んだ疑いは亡くなった教授達も容赦無く黒く染めていき、
根も葉もない噂はじわじわと彼らを悪魔の手先に仕立て上げていった。
大学側も遺族達も、必死の思いで疑惑の打消しに駆け回ったが、
不運な事に、野生化したサイコローグに襲われた者の証言から
香川教授が契約モンスターに人間を餌として与えていた疑惑が浮かび上がった。
証言がニュースで流れた直後、清明院大学は暴徒に襲われ
香川研究室の資料も資材も根こそぎ破壊され持ち去られた。
江島研究室の唯一の生き残りだった女子学生も、
病床から復学間も無い身にも関わらず連日実験の責任を問いただされ誹謗中傷され続け、
追われるように大学を去った。
学校へ行けずに閉じこもる香川裕太の耳に、口汚い野次がひっきりなしに届いた。
投石と罵倒は昼夜を問わず続き、巡回の警官もその大半を止める事が出来なかった。
裕太は「お父さんの似顔絵」を抱きしめて、
(わるいかいぶつからぼくたちを守ってくれたお兄ちゃん、
お母さんを泣かせるわるものがまたきたよ。おねがい。お母さんをはやくたすけにきて)
と、いつか見た龍の姿に祈った。
「それは違いますよ。うちの子が自分の欲の為に
ひとさまを傷付けるような真似をする訳はありませんもの」
気が強そうだが顔立ちの整った年配の婦人が反論する。
「でもですね、奥さん。清明院大学の研究室から発見されたこの資料には、
あなたの息子さんがライダーに変身する姿が残されてるんですよ?
これをどう説明します?」
司会者が下卑た半笑いを浮かべ手の先で示すモニターには、
素早い動作で四角い板をかざし、その身を異形に変える青年の姿が映し出される。
「馬鹿馬鹿しい。それがどうしたって言うんでしょう。
この子が形を変えたからと言って、即、人を傷付けて回ったとでも言いたいんですかね」
「仮面ライダーは自分の欲望を叶える為に、
最後の一人になるまで互いに殺し合ってたそうじゃないですか?だったらねえ…?」
「それに彼ら香川研のメンバーは、目的の為なら殺人をもやむなしとの認識があった、と、
そんな事実を裏付ける証拠もあるそうじゃないか」
モニターは次々と、青年に続いて白衣の男や丸顔の学生が異形に変る様子を映し出し、
そのたび婦人は眉を上げ反論を続けた。
ニュースショーは既にリンチの様相を帯び、ライダー関係者の吊し上げ会に成り果てていた。
ただ、司会者の予想以上にゲストはしぶとく、
笑い者にする為に呼ばれた婦人は毒舌と筋の通った反証で抵抗を続けた。
(…私はこんなに気丈でいられない)
息子の死を知っても打ちひしがれる事なく、
その名誉の為に戦う母親の姿をTV越しに見ながら百合絵は思った。
佐野商事は、新社長の佐野がライダーだった事が知れて苦境に立たされていた。
百合絵の父は寝る間も無く対応に追われげっそりと痩せていき
彼女はそんな父親を見るのに忍びなかった。
── 疫病神。
── はした金の為に女の子を殺そうとした危険人物。
── なんという人選ミスを!あの男を社長として迎えたばかりに我が社は!
満さんを罵る声は世間だけでなくて社内にも溢れてる…。
リモコンの再生ボタンを押す百合絵。もう何度見たか覚えていない。
画面の中、城戸真司が佐野を最期に見た様子を語り出す。
「…刺されて。『逃げろ!』って言って、佐野を逃がしたけど…でも…佐野はそれっきり…。
俺やっぱ、あの時ちゃんと助けてやれば良かったって…。何度も何度も…」
「そんなに後悔するぐらいなら、どうして満さんを見捨てたの?」と城戸に問いたかった。
会社や自宅に押しかけて来た集団に怖い思いをさせられ、社員達のギスギスした態度に困惑し
父親がふと漏らした佐野への愚痴に酷く傷付いた百合絵。
百合絵はあれから何度も訪れた橋にまた足を向けていた。
満さんの呼びかけが聞えた気のするこの橋に居れば、いつかきっと…。
あのライダーのひとは、満さんが襲われた所を見ただけで
そこから先を見ていないから…。
満さんはどこかで傷付いた身体を休めて、騒ぎが収まるのを待って…。
そしていつか帰って来る。
そう信じていたかった。
ほんの僅かな間の出会いだったけど
あの人は、私の運命の人だと思うから…。
橋の上に立つと、怪物から護ってくれた佐野の事や、雨の中で佐野の帰りを待ち続けた事が、
ついさっきの事の様に鮮明に百合絵の心に浮かんできた。
何かも夢だったら…満さんと出会った以外夢だったらどんなに良かったか…。
揺れる水面。
きらりと光る反射の中に、百合絵は佐野の姿を見付けた気がした。
満さんはさっき見た白衣の男の人や学生達と挨拶を交わしていて
丸顔の学生と満さんが楽しそうに笑って話だして…。
私服の満さんは、少し痩せてたように見えて
洗いざらしの貧しい服にスーパーの買い物袋を手に下げ
そして…笑顔だけは変わりなくて…。
満さんは私に気が付くと嬉しそうにニコっと笑って
こちらに向かって手を振って…。
幻は一瞬で消えてしまった。
どこにも無い筈の幸せそうな光景に、どこかで聞いた歌の一節が、ふっと甦る。
”── And I think to myself, what a wonderful world ──”
”…そして私は心に思います。なんと素敵な世界なのでしょう…”
そうね。待ってばかりいても仕方が無いから。
私の方からそちらへ行けば良いんですね?
ここではないどこかに、みんなで幸せに暮らしてる世界があって。
そこには満さんが居て、きっと手を広げて私を迎えてくれるから。
水音。
持ち主の手から離れた傘が、そらに舞った。
城戸君、あなたが守ろうとしたものはなに?
城戸君、この世界は守るだけの価値があったの?
城戸君…。
城戸君?
「馬鹿な真似はよしねえ」
痩せて眼鏡を掛けた人相の悪い中年男が百合絵の手首を掴んだ。
川に落ちた傘が流されて行くのを、ぼうっと見送る百合絵。
「あんた今、つまらん事ばしょっと思ーたんじゃなか?」
「いいえ。川を見ていただけです。みなもが光って綺麗だったから…」
男は眉間に皺を寄せると、百合絵の手を離さず半ば強引に車に押し込むとアクセルを踏んだ。
百合絵はどこへ連れて行かれるのか考えるのも億劫で、もうどうでも良くなっていた。
遠くの町の墓地で、墓に手を合わせる男を黙って見つめる百合絵。
墓石は新しかったが石の表面は傷だらけで、急な力を掛けられた様に少し歪んで立っていた。
百合絵に聞かせるつもりがあるのかないのか判らない調子で男は独り言を始めだした。
「こいつは、怪物に人を食わせるような人間じゃなか。そんな非道な真似するわけなかと」
墓に刻まれた名は、百合絵が繰り返した見た映像の語り手の物だった。
「以前になー、こいつと北岡に命ば救ってもろーた事あるとよ。
ちぃと強情な真似するけん、さんざくらわして脅したすぐ後だったのにな…。
化け物の事なんか誰も信じんから黙っとった。いま酷い言われ様のあいつらだけんど、
根はお人よしの大馬鹿たい。本当に馬鹿で、馬鹿で…」
言葉に詰まった男はハンカチで鼻をかむとそのまま独り言を続けた。
やっと出会った城戸に向って「どうして満さんを助けてくれなかったの?」と、
問いかけようとして言葉を止める百合絵。
決して見捨てたわけじゃないんですね?
あの時悲しそうに辛そうに語っていたのは、偽善ぶった演技とかでなくて
満さんの事も、救えなかった大勢の事も、
心から悲しくて辛い自分の痛みとして受けとめていたからなんですね…。
規制解除必要?
「What a wonderful world」
読ませていただきました。
あのラストに救いをくれて、ありがとうございます。
「Evergreen」も、up待っています。
やべえ、涙が出てきた…
続きはあるのかな?
リュウガは何の反応も見せなかった。
吹雪の向こうから、鈍く赤い光を放つ両眼で
敵を見つめ続けている。それだけだ。
その眼に向かって、なおも語りかける龍騎。
「ライダーたちの記憶が戻った時から、
この戦いの失敗は決まっていたんだ。
わかるだろう。
始まったと思った時にもう終っていたんだよ、
お前のライダーバトルは。
俺や手塚が止めるまでもなくな・・・
もう、あきらめろ。俺の中に戻ってこい。
優衣ちゃんだってきっとそれを望んでる」
「・・・なあ、浅倉」
やっぱり俺、ライダーには向いてないみたい。
最初はやる気満々だけど、そのうち必ず殺し合いが
嫌になってくるんだからさ。今までずっとそうだった。
こいつには悪いが、今度も一足先にリタイアさせてもらうよ。
「俺を倒したければ、倒せばいい・・・
だけどそれで終わりにしろ、な? もう、十分だろう」
そう言うと、マグナバイザーを雪の上に放るゾルダ。
「うおあ!」
一瞬後、衰えを一向に見せない速さと衝撃力で襲ってきた
ベノサーベルに緑の身体が弾き飛ばされ、バイザーの
後を追って雪の上に叩きつけられる。
「どうした・・・起きろよ、おい!」
動かない敵に対して地団駄を踏みかねないほどの
苛立ちを見せる王蛇。その紫の身体から発する戦いへの
渇望は、毛ほども減じる様子を見せていなかった。
234 :
233:04/07/11 23:57 ID:LOAsOIcI
Evergreenの続きをupしました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>215,
>>216,
>>231 読んでくださってありがとうございます。
本当に、皆さんのおかげでここまで来られました・・・
もうしばらく読んでいただければとても嬉しいです。
>>217 -
>>229 (「What a wonderful world」感想)
新作お疲れ様です、とっても嬉しいです。
真司の死を乗り越えて報道に打ち込むOREジャーナルの
面々の姿に泣きそうになりました・・・抑えているだけにみんなの
悲しみがいっそう痛切に伝わってきますね。
ラストは、あの博多弁?のヤクザさんという意表を突くキャラで
びっくりしましたが、この人がまたすごくいい味を出していて
やっぱり涙出そうです。実加ちゃんも言わずもがな・・・
また何かできたらぜひお願いします!
●Evergreen作者さま
お疲れ様です。
もう半年以上の連載になりますでしょうか。毎週何よりも楽しみにしています。
佳境にせまっているようで、嬉しい反面寂しい気もしています。
最後まで頑張って下さい!
●What a wonderful world作者さま
あわわ、大作の登場ですね。続く、ですよね?(希望)
「そして誰もいなくなった」のさらにその後の物語。
当事者が誰一人いない状態での状況証拠のみで語られる彼等の姿は残酷なまでに「悪」であるのですね。
でも自分は、真司が最後に救った少女に希望の光を見ています。
ところで続きがあるのなら、秋山氏の事に少し触れてほしいような・・・。
「私は大滝。あんたの父さんたぁ縁がある者たい。オヤジさん、あんたの様子心配しとった。
あの人あれでもしたたかな古狸ばい。嘆かんとも会社盛り返す手ぇ幾らでも考えてあると。
だからオヤジさん事ぁ心配せんでも良か。それに許婚の事は気の毒だけんど、いつま…」
説教なのか独り言なのか判らない話しは、ぼつぼつと続いた。
意図的なものにせよ偶然にせよ、ここに連れられた事で負の思いの多くが解け消えていた。
家まで送られながら、あの場所に導いて頂いて感謝していますと百合絵は頭を下げた。
----------------------------------------
喫茶店の店長はカラカラ笑った。
「じょ〜おだんじゃ、ないわ!あたしゃこれぐらいで凹んだりしないって。
ピラミッド探検中に砂漠で食料と水が尽きて苔で命を繋いだ時を思や、ど〜って事ないわ」
「ここは落ち着くなー。お茶はうまいし、おば…もといお姉さんは話し上手だし。
良い環境でキーを叩くと構想がスッと浮かんで次のベストセラーも間違い無しってもんよ」
「お世辞言ったって、なんにも出〜やしませんよ〜だ」
「違いねえ。調子に乗りすぎたらお姉さん怖いからなー。踏み台代わりはもう勘弁って」
店の片隅のTVの中、幾人かの男女が年配の婦人と共に手にパネルや書類を持って語りだす。
「でもこの人、俺をでかい蜘蛛の化け物から助けてくれたんですよ」
「この人、私をモンスターから救ってくれて。そして運命は変えられるって言ってくれて…。
私、今こうして居られるのもこの人たちのおかげなんです」
「たまたまでしょう?たまたま通りすがりに餌を捕獲しただけじゃないんですか?」
「ライダーの気紛れを有難がるなんてねー。勝手な思い込みを広めると陰で笑われますよ?」
意地の悪い質問や嫌味な混ぜ返しの前で、自信無く首を傾げ、時々顔を曇らせ、小さく怯え、
それでも命の恩人の為に声を上げる人々の姿を、横目で見ながら牛乳をゆっくり混ぜる店長。
「恵里ちゃん、アッサムミルクとスコーンを4番の席にお願いね」
「はい、沙奈子さん」
原田拓也は、考えていた。
あのカードを使って変身してたら、オレもライダーで有名になれたのかな?
でも、ゆだんして食べられたり、なぐられたり、苦しくてコワい戦いはイヤだな…。
ライダーの悲しみと残酷を目に焼き付け、蝙蝠の兄ちゃんへの憧れもまだ胸に焼き付いたまま
あれからずっと考え続けた。遊んでる時も、悪ふざけやカンニングの最中も、
カードを手にする機会がまたあればライダーになるかどうか、
もしライダーになったらどうするか、もしライダーにならないならどんな理由かを考えた。
幾ら考えても、答らしい物が見えても、その答が本当に正しいか間違ってるか判らなかった。
一人で考えても正解は出ないので、自分で判らない答を探すため苦手だった本も読み始めた。
「拓也君、最近落ち着きが出て積極的に質問もします」と、担任は笑顔で拓也の母に語った。
----------------------------------------
少年は、命を賭けて自分と父とを救ってくれた青年の死の様子と、
その際に「先生…」と呟いてこぼした涙を忘れる事が出来なかった。
何度もTVに映される虎の仮面は、少年にとっては紛れもないヒーローだった。
「…どうやったら英雄になれるのかな?…」
一筋の涙を浮かべて冷たくなっていった青年の呟きを何度も思い返す少年。
ぼくが大人になったら、お兄さんみたいなえいゆうになってみんなをまもるから。
ぼくはお兄さんのなりたかったものになるから。
だから、なかなくていいよ。わらってよ。
----------------------------------------
香川裕太は涙を溜めたまま眠りについていた。
何か楽しい夢でも見たのか少し笑った。「お父さん…」
「…うん…お兄ちゃん、ありがとう。ぼく、がんばるよ…」
「おねえちゃん?なにしてるの?」
「お花を…。大好きな人に供えているの。お墓の代わりにこの樹に。
誰もあの人に花をあげないと思うと寂しいから。
…でもあの人は受け取ってくれたから」
「わたしも、おはなをあげていーい?」
「うん。いいよ」
「はい、あげる。これは、おねえちゃんのおはなー。
これは、おねえちゃんのだいすきなひとのおはなー。
これは、わたしのだいすきなおにいちゃんのおはなー」
「未来ちゃ〜ん!おうちに帰るわよー」
「はーい! おねえちゃん、ばいばーい!」
「ばいばい。またね。 …ありがとう」
花で遊ぶ少女達の会話に微笑みを浮かべ、
シャッターを押し掛けて指を止め首を振る令子。
この子達を「和み」「癒し」とかの安易なテーマで撮っちゃ駄目。
本当の事は見た目では判らない…。
「悲しみから立ち直る少女」とか、「平和を祈る子供たち」とか、
他人である私が、勝手で知ったかぶりな解説で綺麗にまとめてしまって語るのは
おこがましいもの。
傷を与えられた街。傷を与えられた人々。
少しづつ騒ぎは収まり表面は回復しつつある。
だがその奥に深く残る痛み。他者には説明出来ない痛み。自分でも把握出来ない痛み。
その痛みが癒える日はいつ来るのだろうと令子は思った。
少女が去る姿を目で追い、ふと樹を振り返った令子は
懐かしい水色のジャケットをそこに見た気がした。
大きな樹にもたれかかり、
供えられた花を手に取ると楽しそうに眺めるジャケットの青年。
いつのまにか青年は子供達に囲まれている。
子供達は手に持った花を青年の側に置く。
「これは私の大好きな先生のお花」
「これも私の大好きな先生のお花」
「これはわたしが世界で一番大好きな、べんごしの先生とアメをくれたあのひとのお花」
「これはわたしをレストランでたすけてくれた、おにいちゃんのおはな」
「これはわたしのきえたママのためにないてくれた、おにいちゃんのおはな」
「これはオレのカッコいーにーちゃんの花」
「これはぼくのそんけいするお兄さんの花」
「これはぼくのだいすきなお父さんとお兄ちゃんの花」
「これは私の愛するあの人に捧げる花」
「これはわたしにみらいをくれた、おにいちゃんのおはな」
「これは ぼくたちわたしたちに みらいをくれた あの人たちの花」
花に埋もれて青年は笑っている。
どこかで聞いた曲を口笛に乗せる。
── I see trees of green, red roses too
:
:
── And I think to myself, what a wonderful world
── Yes, I think to myself, what a wonderful world....Oh yeah
令子は目を閉じたまま樹を見つめる。
まぶたの裏に映る光景は、幻だと判っている。
…そう。目を開ければそこには何も無い。いつもの風景がそこにあるだけだと判っている。
それでも今は、二度と見る筈の無い笑顔が無心にこぼれる様子を見ていたかった。
青年は調子外れの声で鼻歌に詞を付けて歌う。
── 木の緑や花の赤 君達の目に輝いてる
── 俺には見えるよ 何て素敵な世界だろ
── 青空には白い雲 澄んだ朝と静かな夜
── 俺には見えるよ 何て素敵な世界だろ
── そら高く虹が広がり 道行く人の顔にも映ってる
── みんなが手を取合い 「大好きだ」って言ってる
── 今は泣いてる子供達 君達が大人になる頃
── 俺よりもっともっと 多くを学んでるから
── やがて訪れる素敵な世界
── そうだよ何て素敵な世界なんだろ…本当に素敵だな
強い風に樹がしなり、木の葉や草が舞いあがった途端、声も姿もふいに消える。
令子はそっと目を開け
まわりを見渡した。
城戸君 この世界は守るだけの価値があるよね?
244 :
231:04/07/14 18:34 ID:CRKQM6qz
>>217-229、
>>236-242 >>231では「Evergreen」の作者の方に遠慮してあまり長く書けませんでした。
また、229で終わってしまったと思っていたのですが、続きを読ませていただけて嬉しいです。
「What a wonderful world」は、TV版のようなタイムベントによる救済がなかった、
劇場版のラストにつながる物語と理解して読みました。
当事者の神崎兄妹がいなくなり、消えた人々を取り戻す方法も失われた劇場版こそが、
実は本当のファイナル・エピソードでなかったかとも考えていました。
(TV版ラストは優衣の夢にすぎなくて)
「What a wonderful world」が、劇場版の「その後」に救いを与えてくれたようで、
>>231で「ありがとう」と書いたのは、劇場版に対するもやもやした自分の気持ちも救済されたようで、
それで書きました。
あの時点ではまだお話は途中だったのですね。早とちりでした……。
物語のその後において、愛する人を失った人たちが立ち直っていく予感を示していただけて、
「龍騎」が現実の自分の生活が大変だった時期に心の支えとなった物語なのにあのような終わり方
(タイムベント、もしくは特攻)をされたために何か「つっかい棒」を奪われたような気がしていた、
自分自身の心も救われたような気がします。
what a wonderful worldの作者様
ライダーたちがいなくなった後の残された人たちの気持ちが心に響くお話でした。
>「これは ぼくたちわたしたちに みらいをくれた あの人たちの花」
>花に埋もれて青年は笑っている。
この場面がすごく好きです。
素敵なお話をありがとうございました。
Evergreenの作者様
いつも楽しみに読んでいます。
蟹対社長の掛け合いがらしくていいですねw
これからも頑張ってください。応援してます。
ここを見つけられた事を嬉しく思います。
what a wonderful worldの作者さん
Evergreenの作者さん
良い作品をありがとう
>>245 俺もそのシーンを読んでいたら涙が止まらなくなりました。
平成ライダーが好きで毎年欠かさず見ているものの、ここまで自分の中に
深く重く響き続ける作品って、龍騎だけなんですよね(他はどうしても、その年だけ
楽しんで、後に何も残らない消耗品のようになってしまって…)。
だからこそ余計に、真司達の救った命一つ一つが真司や他のライダーに対して感謝の気持ちを
伝えるシーン、これは本編でも見たかった気がしますが最高に胸を打たれました。
ああ、自分でも何を書いてるのか分からなくなってきたw
作者様、本当にありがとうございます。自分の中での「龍騎」が、また一つ大きな物になりました。
248 :
モラシム ◆AmzUKMGOOc :04/07/18 12:40 ID:Wn8Jda8R
次々と羽化を続け、いまや渦巻く雪に代わって
夜空を埋め尽くさんばかりに飛び交うレイドラグーン達。
幾千の羽の唸りも、風と雪の咆哮を圧しつつある。
だが龍騎の聴覚は捉えた。
吹雪と羽音の織りなす狂騒の間を縫って、
リュウガの哄笑が響いてきたのを。
「馬鹿が・・・まだ世迷い言をぬかすとは。
多少予定が狂ったが、いいだろう。
ライダーなぞ全員揃っている必要はない。
最も強い者が2人。それで十分だ。
1人は俺。あとは・・・あいつさえいればな」
あいつ?まさか−−
何かを思い出しかけた龍騎の背に冷たいものが
走った時、すでにリュウガの姿と声は
レイドラグーンの群れと羽音の渦の中に消えていた。
「畜生、立てよ!おい!」
ついに痺れを切らし、王蛇が脚を振り上げた。
倒れたままのゾルダに蹴りを入れるつもりだ。
だが、闇の向こうから吹雪を切り裂くように飛んできた
何かがそれをさえぎった。
「うぉっ!?」
鋭利な刃物のような気配が迫るのを感じ、雪の上に
転げ込む王蛇。直後、赤い影が身体の上を
かすめ過ぎ、また闇の向こうに消える。
「なんだ・・・?」
吹雪とレイドラグーンの群れの彼方を見透かそうと
顔を上げた王蛇が弾かれたように立ち上り、振り返った。
嘲笑を含んだこんな声が聞こえたからだ。
「おい。俺を忘れたわけじゃないだろうな?」
250 :
249:04/07/19 01:33 ID:R79Ezxmt
Evergreenの続きをupします。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
>>235 毎週待っていてくださって嬉しいです。私も
山登りの下り坂に入ったような気持ちですが、
迷ったり転げ落ちないようにがんばりますね。
>>245 この2人の共演を選んだのは何となくなのですが、
面白いと思っていただけるならとても嬉しいです。
(仮面ライダー占いでも相性いいんですね、
この二人・・・書いた後で見てびっくりしました(ホント))
>>246 そう言っていただけると龍騎の補完話を書いてきて
本当によかったと思えます、ありがとうございます。
最近、what a wonderful worldの作者様も書いてくださる
ようになったのでとても嬉しいです。やはり私だけずっと
書きつづけているのは申し訳ないので・・・
251 :
249:
>>236 -
>>242 What a wonderful worldの作者様
後半があったんですね・・・すみませんでした。
前半がどちらかというと重苦しい雰囲気主体だったので、
この後半で救いが次々に現れるのを目の当たりにして
ものすごく感動しました。
たくましい沙奈子さんや、キャラクター的にも役割的にも
この上なく重要な存在感を出している令子さんもよかったけれど、
> ぼくが大人になったら、お兄さんみたいなえいゆうになってみんなをまもるから。
これを見た時に私は一番泣けました。
本当に、ぜひまた龍騎のお話を持ってきてください!
お願いします・・・