◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう22◇◆◇◆

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1
ここは一条ゆかり先生の「有閑倶楽部」が好きな人のためのスレッドです。
 前スレ http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/

お約束
 ■sage推奨 〜メール欄に半角文字で「sage」と入力〜
 ■妄想意欲に水を差すような発言は控えましょう
*作品への感想は大歓迎です。作家さんたちの原動力になり、スレも華やぎます。

関連サイト、お約束詳細などは>>2-10の辺りにありますので、ご覧ください。
特に初心者さんは熟読のこと!
2:04/07/26 21:53
◆関連スレ・関連サイト

「まゆこ」 http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/21-n
 意見交換や議論をする時に使うスレ。テンプレ相談などはこちらで。

「有閑倶楽部 妄想同好会」 http://houka5.com/yuukan/
 ここで出た話が、ネタ別にまとまっているところ。過去スレのログもあり。
 *本スレで「嵐さんのところ」などと言う時はココを指す(管理人が嵐さん)

「妄想同好会BBS」 http://jbbs.shitaraba.com/movie/1322/
 上記サイトの専用BBS。本スレに作品をUPしにくい時のUP用のスレあり。
 *本スレで「したらば」と言う時はココを指す

「有閑倶楽部アンケート スレッド」
 http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=1322&KEY=1077556851
 上記BBS内のスレッド。ゲストブック代わりにドゾー。
     
「■ □ ■ 妄想同好会 絵板 ■ □ ■」
 http://www8.oekakibbs.com/bbs/loveyuukan/oekakibbs.cgi
 上記サイトの専用絵板。イラストなどがUP可能。
3:04/07/26 21:53
◆関連スレ・関連サイト

「まゆこ」 http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/21-n
 意見交換や議論をする時に使うスレ。テンプレ相談などはこちらで。

「有閑倶楽部 妄想同好会」 http://houka5.com/yuukan/
 ここで出た話が、ネタ別にまとまっているところ。過去スレのログもあり。
 *本スレで「嵐さんのところ」などと言う時はココを指す(管理人が嵐さん)

「妄想同好会BBS」 http://jbbs.shitaraba.com/movie/1322/
 上記サイトの専用BBS。本スレに作品をUPしにくい時のUP用のスレあり。
 *本スレで「したらば」と言う時はココを指す

「有閑倶楽部アンケート スレッド」
 http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=1322&KEY=1077556851
 上記BBS内のスレッド。ゲストブック代わりにドゾー。
     
「■ □ ■ 妄想同好会 絵板 ■ □ ■」
 http://www8.oekakibbs.com/bbs/loveyuukan/oekakibbs.cgi
 上記サイトの専用絵板。イラストなどがUP可能。
4:04/07/26 21:54
◆作品UPについてのお約束詳細(よく読んだ上で参加のこと!)

<原作者及び出版元とは全く関係ありません>

・初めから判っている場合は、初回UP時に長編/短編の区分を書いてください。

・名前欄には「題名」「通しNo.」「カップリング(ネタばれになる場合を除く)」を。

・性的内容を含むものは「18禁」又は「R」と明記してください。

・連載物は、2回目以降、最初のレスに「>○○(全て半角文字)」という形で
 前作へのリンクを貼ってください。

・リレー小説で次の人に連載をバトンタッチしたい場合は、その旨明記を。

・作品UPする時は、直前に更新ボタンを押して、他の作品がUP中でないか
 確かめましょう。重なってしまった場合は、先の書き込みを優先で。

・作品の大量UPは大歓迎です!
5:04/07/26 21:55
◆その他のお約束詳細

・萌えないカップリング話やキャラ話であっても、 妄想意欲に水を差す発言は
 控えましょう。議論もNG(必要な議論なら、早めに「まゆこスレ」へ誘導)。

・作家さんが他の作品の感想を書く時は、名無しの人たちも参加しやすいように、
 なるべく名無し(作家であることが分からないような書き方)でお願いします。

・あとは常識的マナーの範囲で、萌え話・小ネタ発表・雑談など自由です。

・950を踏んだ人は新スレを立ててください。
 ただし、その前に容量が500KBを越えると投稿できなくなるため、
 この場合は450KBを越えたあたりから準備をし、485KB位で新スレを。
 他スレの迷惑にならないよう、新スレの1は10行以内でお願いします。
6:04/07/26 21:55
◆初心者さんへ

○2ちゃんねるには独特のルール・用語があるので、予習してください。
 「2ちゃんねる用語解説」http://www.skipup.com/~niwatori/yougo/

○もっと詳しく知りたい時
 「2典Plus」http://www.media-k.co.jp/jiten/
 「2ちゃんねるガイド」http://www.2ch.net/guide/faq.html

○荒らし・煽りについて
・「レスせずスルー」が鉄則です。指差し確認(*)も無しでお願いします。
 *「△△はアオラーだからスルーしましょう」などの確認レスをつけること

・荒らし・アオラーは常に誰かの反応を待っています。
 反撃は最も喜びますので、やらないようにしてください。
 また、放置されると、煽りや自作自演でレスを誘い出す可能性があります。
 これらに乗せられてレスしたら、「その時点であなたの負け」です。

・どうしてもスルーできそうにない時は、このスレでコソーリ呟きましょう。
 「■才殳げまιょぅ■タロ無し草@灘民【3】」(通称:ちゃぶ台スレ)
 http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1032266474/l50
 (注)有閑スレのことだとバレないように呟いてください。このスレで他人の
    レスに絡んだり、このスレのログを他スレに転載することは厳禁です。

○誘い受けについて
・有閑スレでは、同情をひくことを期待しているように見えるレスのことを
 誘い受けレスとして嫌う傾向にありますので、ご注意を。
 語源など http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/172
7:04/07/26 21:57
◆「SSスレッドのガイドライン」の有閑スレバージョン

<作家さんと読者の良い関係を築く為の、読者サイドの鉄則>
・作家さんが現れたら、まずはとりあえず誉める。どこが良かったとかの
 感想も付け加えてみよう。
・上手くいけば作家さんは次回も気分良くウプ、住人も作品が読めて双方ハッピー。
・それを見て自分も、と思う新米作家さんが現れたら、スレ繁栄の良循環。
・投稿がしばらく途絶えた時は、妄想雑談などをして気長に保守。
・住民同士の争いは作家さんの意欲を減退させるので、マターリを大切に。

<これから作家(職人)になろうと思う人達へ>
・まずは過去ログをチェック、現行スレを一通り読んでおくのは基本中の基本。
・最低限、スレ冒頭の「作品UPについてのお約束詳細」は押さえておこう。
・下手に慣れ合いを求めず、ある程度のネタを用意してからウプしてみよう。
・感想レスが無いと継続意欲が沸かないかもしれないが、宣伝や構って臭を
 嫌う人も多いのであくまでも控え目に。
・作家なら作品で勝負。言い訳や言い逃れを書く暇があれば、自分の腕を磨こう。
・扇りはあまり気にしない。ただし自分の振る舞いに無頓着になるのは厳禁。
 レスする時は一語一句まで気を配ろう。
・あくまでも謙虚に。叩かれ難いし、叩かれた時の擁護も多くなる。
・煽られても、興奮してレスしたり自演したりwする前に、お茶でも飲んで頭を
 冷やしてスレを読み返してみよう。
 扇りだと思っていたのが、実は粗く書かれた感想だったりするかもしれない。
・そして自分の過ちだと思ったら、素直に謝ろう。それで何を損する事がある?
 目指すのは神職人・神スレであって、議論厨・糞スレでは無いのだろう?
8名無し草:04/07/26 21:59
新スレ立てました。
テンプレなのに二重投稿になって本当にすみません(汗)

こちらをSS投稿と感想、
旧スレを雑談に使って消費したらどうでしょうか。
9名無し草:04/07/26 22:01
乙カレー
10名無し草:04/07/26 22:05
>1
どんまい!
ありがとう。
11名無し草:04/07/26 22:06
スレ立てありがd。
12名無し草:04/07/26 22:17
>1
乙です!
13名無し草:04/07/26 22:56
>>1
お疲れ様でしたー。
14秋の手触り[121]:04/07/26 23:06
http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/644の続き

 パーティーは酣を過ぎ、終盤に向かおうとしていた。
 ゲームのために浮ついていた人々の熱も少しずつ醒めていき、それぞれ穏やか
な歓談のひとときを過ごしている。
 魅録は、壇上の裾の方へ早足で向かった。そこには清四郎が一足早く佇んで
いたが、他のメンバーはまだ集まっていない。
 魅録は少し強張っている頬を自覚しながらも、なんとか自然に見えるように気を
つけながら清四郎に声をかけた。
「悠理たちはまだか?」
「そのようですね。そろそろ閉会の時間も近づいてますが」
 清四郎の眼差しの先、悠理と豊作が恰幅のいい紳士と談笑している。
 今井昇一との一件のあと、悠理は清四郎と別れ、豊作に伴われて色々な人間に
挨拶をしてまわっている。海千山千を相手に腹芸が苦手な豊作は大変そうだが、
悠理の無邪気さがうまく緩衝材となっているようだ。
 ふたりしてしばらく、悠理と豊作の様子を見ていたが、ふと清四郎は不審そう
に呟いた。
 「ちょっと悠理の様子がおかしいと思いませんか」
 どことなく元気がないように見えるんですよね。
 遠目に悠理たちの方を見ながらそんなことを言う清四郎に、魅録は内心で
憤りを抑えることが出来なかった。
 むろん、気づかぬことは清四郎の罪ではない。
 清四郎は清四郎で、精一杯の恋をし、失恋したばかりなのである。他の人間
のことなど目に入らなくてもおかしくないのだ。
 それでも。
「そうか? 俺にはいつもと同じように見えるけど」
 それでも俺ぐらいはお前を恨めしく思ってもいいはずだ。当の悠理自身がお前
を責めないのだから。
15秋の手触り[122]:04/07/26 23:07
 しばらくして、豊作と悠理も魅録たちの方へやってきた。
「あー疲れたー」
「お疲れさん」
 今回の役目は、悠理には荷が重かっただろう。それでも、今回の作戦の中核を
成す「今井昇一との婚約疑惑」をパーティーの参加者たちに深めさせるためには、
悠理自身が表舞台に立つ必要があった。
 今井グループに対しては剣菱との同盟をちらつかせて足止めを、新会長の座を
狙う社内の者には、悠理の新しい夫もまた敵になりうることを見せ付けて牽制を。
 二重のペテンに、人々が騙されてくれるかどうか――はて。
「実際、悠理はよくやってくれたよ」
 会話に入ってきたのは豊作である。彼自身も少し疲れた様子で豊作はネクタイ
を緩めている。
「豊作さん。今日はどうでしたか」
 彼は微笑んだ。
「僕の方こそ君に今すぐ聞きたいぐらいだよ。まあ、それは後にしておいた方が良さ
そうだけどね」
 今回の影の殊勲章は豊作でもある。
 このパーティー自身は剣菱夫妻の多大な協力があってはじめて実現したもので
あるが、あくまで彼らの「協力」は「協力」に過ぎない。
 そのため、一切合財の調整は豊作がしたのだ。もちろん手伝えるものなら魅録も
手伝ったのだが、所詮部外者にすぎない人間が行うには無理がある。大掛かりな
セッティング全てを豊作と秘書の金井が徹夜で行ったのだ。疲れもする。
 悠理の方といえば、目の前にご馳走がありながら、満足に口にできなかった
鬱憤を晴らすように、てんこ盛りになった皿をがつがつと平らげていた。清四郎は
そんな彼女に呆れた眼差しを遣って、「もうちょっと食べ方を控えるか、人に見え
ないところでやってください」と注意する。
16秋の手触り[123]:04/07/26 23:09
 確かに黒いドレスの美女(に化けた悠理)が、大食いチャンピオンも真っ青な
勢いで食事を平らげていれば、誰でも何事かと思うだろう。
「お前はいーだろっ。あのあと一人でご飯食べられたんだからっ。それに比べて、
あたいは変な男から開放されたかと主たら、今度は兄ちゃんに連れまわされて、
ずっとオヤジたちに愛想笑いしてたんだぞっ」
 確かに清四郎は、あの今井昇一から悠理を救ったのち、ひとりでのんびり食事
を食べることが出来たのだが。
「悠理は、ここに来る前にたんまり食べてきたんでしょう」
「あんなの、今井の馬鹿息子を殴りつけたときに全部消費しちゃったよ」
「燃費の悪い身体ですねぇ。どうです、一回うちの病院で検査受けてみれば?」
「絶対やだかんな。お前の言う通りにしたら、何されるか」
「いやあ、一度悠理のブラックホールの胃を調べたいと思ってたんですよね」
 いつまでも続く彼女たちの遣り取りに、豊作が微笑ましくてならないという表情
を浮かべ、言った。
「相変わらず元気だな悠理は――」
 いつもは家族の破天荒さに振り回されている彼でも、やはり家族は愛しいもの
なのだ。
「どうしたんだい、魅録君。何か問題でも」
 無意識に硬い表情をしていたらしい。豊作が心配げな眼差しを遣してきた。
「いや、なんでもありません」
 深く考えるな。
 深く考えると――嫌な方向に思いが至ってしまう。
 魅録はまだじゃれ続ける清四郎と悠理を見た。一片の曇りもなく、笑ってしまえる
悠理を――見た。
 
17秋の手触り[124]:04/07/26 23:10
 ちょうど良い頃合いとなり、豊作と万作がそれぞれ挨拶をして、パーティーは閉幕
となった
 それぞれ出席した役員たちとは言葉を交わしているが、それとは関係なく、最後の
挨拶をしに豊作と万作の周りには男たちが群れをなしたので、魅録たちは少し
離れたところをからそれを見る。
「あ、やっぱり――」
 ふとその様子を見ながら、魅録は呟いていた。
 現在、豊作は剣菱精機の常務・高砂と話をしている。その表情が、いつもの豊作
と比べて若干堅い。
 一昨日、剣菱精機の専務室ではじめて高砂と会話する豊作を見たときも同じよう
な感想を抱いた。そのときは部下である高砂の方が随分年上であり、その分会長
の息子というだけで専務になりおおせた自覚のある豊作が謙虚に振舞っているの
だと思っていた。だが、その後、別の役員たちと会話しているときの豊作を見ている
と、ここまで堅くはなかっているようには見受けられない。
 相手が役員だから、ではなく、相手が高砂だからこその、この態度なのだ。
 では、それは何故だろう。
(常務の高砂さんは、専務派のはずだ――)
 秘書の金井からも、豊作自身からもそう聞いている。また豊作と高砂が会話して
いるところを見ても、若輩者の豊作に対して侮った態度をとらず、常に立てて接し
ていることが分かる。
 心強い味方に見える――ただし外側からは。
(本当は違うのか?)
 それとも、会社では利害は一致しているけれど、性格的に合わないのだろいうか。
 魅録はいろいろ思いを馳せたが、こればっかりは豊作自身に問わなければ分か
らない。
 無駄に頭を使うことをやめて、魅録は思考を切り替えた。
18秋の手触り[125]:04/07/26 23:11
 あいかわらず豊作との挨拶を待つ人の数は多い。終わるのをここでじっと待って
も仕方ないので、魅録たちは豊作をとりあえず会場に残し、予めとっておいたホテル
の一室に場所を移した。
 まだ合流できていない他のメンバーにそのことをメールで告げると、悠理はパウダー
ルームで不快な化粧を落とし、持ってきておいた身軽な服に着替える。
 魅録も同じように着替えると、盛大な伸びをして寝台に転がった。
 昨晩は徹夜だったのだ。そして今夜もそうなる予定なのだ。今のうちに休憩を
しておかなければ。
 清四郎は着替えを持ってきてなかったので、上着をハンガーにかけて長椅子で
足を伸ばす程度であったものの、それでも随分リラックスした様子である。
 先に清四郎の方から今日の戦果を聞いておこうかと思いはじめたところ、ちょうど
玄関のノッカーが叩かれた。
「ちょっと待ってくれ」
 覗き窓を覗くと可憐の姿。
「ただいま――あ〜楽しかったぁ。いい男にも声かけられたし」
 可憐はどうやらパーティーを思う存分楽しんできたらしい。満面の笑みを浮かべて、
うきうきと部屋に入ってきた。
 続いて帰ってきたのは美童。、次に豊作、最後に野梨子。
 ――と、八代儀一。

 
 !?


「やあ、また会ったね」
 にこにこ笑いながら、迷惑げな野梨子の後ろに立つ八代に、魅録と悠理は思わず
手にしていたグラスを落とした。

                       ツヅク
19名無し草:04/07/26 23:17
>秋の手触り
新スレを覗いてみたら、さっそくのuP、嬉しいです。
個人的には悠理スキーなので、切ないながらも、
ドキドキ楽しませていただいてます。
野梨子と八代は?と思っていたら、さっそく登場!
八代……う〜ん、気になります。次はどうなるんだろう…。
20名無し草:04/07/26 23:35
>秋の手触り
事件の核心に迫ると共に、悠理の心にも迫っちゃった魅録が何とも・・・・
作者さん、お上手ですね。

豊作さんも素敵なので、読んでてとても楽しいです。
次回は八代氏ご活躍?清四郎の反応もどうなるんだろう?
もしかして魅録の見せ場が減るのか?
等々予想を立てるのも楽しみです。
21名無し草:04/07/26 23:43
>秋の手触り
会話分を挟んだ心理描写の巧みさ、私も毎回感嘆しながらお話読んでます。
八代の登場によってまた各々の心に波紋が広がりそうですね。
個人的にはやっぱり、清四郎のいっぱいいっぱいに拍車がかかりそうだなーと。
次の展開が待ち遠しいような、何が起こるのか恐いような、そんな気持ちで続き待ってます。
前スレ753さんの
>菊正宗一家の日常が読みたいです。
にイマジネーションを刺激されてコネタなど。
ちなみに、元のリクとは全く別物になってしまいましたが。
短編です


菊正宗和子の朝はうんと濃いブラックではじまる。
朝の静寂を雑多に乱すニュースキャスターの声をBGMに、経済新聞を広げて眠気が醒めるのを待つ。
そしてつらつらと、近頃思わしくない病態の担当患者のことを考えた。
深夜にドクターコールがなかったということは、夜は何もなかったということだろう。

台所から包丁で何かを切る音がする。
この家で一番早起きの母が朝食を作っているのだ。
「あの父」の嫁をやることが出来ているのだから、母は大した人だとは思うが、
自分にはとても真似できそうにない。
本当は病院の近くのマンションを借りて一人暮らしをしたいところだが、
家事全般をこなす自身のない自分には遠い夢だ。
「はい、どうぞ」
目の前に出された味噌汁とごはんに、和子はにっこりと笑った。
「母さん、父さんなんかやめて、私の嫁にこない?」
「何馬鹿なこと言ってるの」
母は優しく笑った。
「わたし、尽くしてくれる人じゃなくちゃ、とても結婚なんてできないわ。
それに、結婚しても第一線でバリバリやれなくちゃ」
剣菱豊作の朝は、甘ったるいミルクティーではじまる。
「……僕はコーヒーがいいんだけど」
「奥様にお目覚めの飲み物はミルクティーにするようにと言いつけられましたので」
メイドの言葉に脱力した豊作は、目を閉じてその飲み物を一気飲みする。
ロココ調の白いレースに縁取られたベッドカバー、重厚にして優美な天蓋つきの寝台。
目覚めるたびに憂鬱になるベッドルームから目を逸らし、
ついでに母親の準備してくれた仮装のようなスーツからも目を逸らし、
逃げるようにダイニングルームへ足を運んだ。

朝っぱらから豪華に飾り付けられた朝食の席につくのは自分だけで、
両親はおかしな「自分の趣味」に朝から耽り、妹は夢の中。
貴重な貴重な豊作の安寧の時間である。
剣菱の会長夫妻には相応しくない彼らの「趣味」も、近頃はこの時間を持てるのなら
反対すまいと誓う豊作である。
だが、「朝の掃除」を終えて、メイドの格好から有閑マダムの衣装に着替えた母親が
にっこり笑って彼の前に姿を現した。
「おはよう豊作。今日はあなたにいい話があるのよ」
「……おはようございます」
いい話とはなんだ、と戦々恐々した豊作に、彼女はにっこり笑って宣言した。
「お見合いなさい」
「またですか」
呆れ声でそう言った途端、母親の笑顔になんともいえぬ凄みが加わった。
「ええそうよ。子の幸せを思う母親の提案に文句はないわね?」
「今度はどんな人ですか。レースの似合う外国の美少女ですか、それとも」
「その件はあきらめました。なんといっても剣菱を支えられる強い嫁でないとね」
つまり、母がふたりも増えるのか。
諦めの溜息をついた豊作に、母は煌びやかに微笑んで言った。
「清四郎君のお姉さんの和子さんよ」
「は?」
で。

「もう結婚式ですか……」

もう豊作自身の抗いなど意味をなさず、気がつけば一ヶ月の時間が流れて
もう結婚式である。
通常のカップルでも結婚の準備には時間がかかるというもの、剣菱という大企業を
継ぐ豊作の婚姻となれば通常なら一年はかかるというのが普通なのに、
このスピードは尋常ではない。
いやいや問題はそこではなく。
今回の結婚で豊作の意見は一度も聞かれることはなかった。
なんといっても、相手の女性が母親とタッグを組んで、あれよあれよという間に
すべてを推し進めてしまったのだ。
「ううう」
政略結婚させられる深窓の令嬢のように、涙を飲む豊作であった。

「なーに泣いてるの」
ふと振り向くと、すでにウエディングドレスを着用した新婦の姿が。
確かに確かに美しくはあるのだが。
「……まだ新婦は新郎に姿を見せてはいけない時間じゃないのですか」
「馬鹿馬鹿しい」
シンプルのドレスを意外なほどすっきりと着こなした和子が、腕を組んで笑った。
柄が悪い。
「こんないい女に貰われるんだもの。感謝して頂戴」
「感謝してって」
「それに、私たち、いい共犯者になれると思うのよね」
和子はそう言うと、呆然としてる豊作の唇を奪った。

「これでも、ちょっとあなたのことは好きなのよ」
ふふふと笑う彼女は十分に幸せそうで、豊作はこれ以上なんとも言うことは出来なかった。

お粗末さまでした。
25名無し草:04/07/27 22:35
>豊作×和子
>「これでも、ちょっとあなたのことは好きなのよ」
和子さんらしい。どこがどんな風にちょっと好きなのか小一時間語ってくださいw
26名無し草:04/07/27 22:44
恐怖の母親になれているので、女性に寛容なところ?
お坊ちゃん育ちで優しいだろうし<ちょっと好きなところ
27名無し草:04/07/27 23:42
>豊作×和子
このカプ大好き、です。
豊作無視で和子と話を進める百合子さん、最強!!
悠理と清四郎の呆然とする様を思い浮かべ、萌え。
でも、とりあえず豊作は毎朝ブラックコーヒーを飲めるように
なりそうだし、それなりに幸せってことで。

28名無し草:04/07/27 23:49
子供はやっぱり和子さんに似るんだろうな。
あるいは剣菱夫妻から隔世遺伝するか(笑)
すんごい濃い一家だ。
29名無し草:04/07/27 23:49
私も何気にこのカプ好きです。
豊作さん、原作のフクタマ誘拐事件の時はアレだたけど、
奇人変人の中の唯一の凡人ぶりがいい。
どんな結婚生活送るのか続きも読んでみたいなぁ。とさりげにリク。
30名無し草:04/07/28 00:19
『鬼闇』うPします。
http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/638の続きです
オカルト方向へ進んでいきたいと思っていますので、苦手な方はスルーして下さい。

31鬼闇(10):04/07/28 00:20
義正に案内され、皆は居間へと入り、進められるがまま座布団に座った。
「いっただきまーす!」
座ると同時に、早速置かれた菓子へと手を伸ばしたのは悠理だ。
「おばちゃん、このお菓子、うまーい!」
「喜んでもらえて嬉しいわ。」
志津子は、皆に冷たい麦茶を配りながら微笑んだ。

「こんな大きな屋敷に、お二人でお住まいってことはないですよね?」
清四郎は居間から見える長い渡り廊下や広い庭、離れ等を眺めながら聞いてみた。
「ええ、奥の部屋に私の母の菊江がおります。なにぶん高齢なもので、後でご挨拶させます
から。」
「そんな、気を遣わないで下さい。」
「そうよ、おじさま。」
魅録も可憐も慌てて口を挟んだ。
「いやいや、貴方達のような若い方のエネルギーを、うちの母にも分けて欲しいのですわ。食事の
頃には来ますので、その時に紹介させて頂きますね。」
「ええ、喜んで。」
義正の決して押し付けがましくない言葉に、野梨子は笑みを返した。
「あとは母の面倒を見てもらっている道子の四人で暮らしています。通いのお手伝いさんとか庭師
さんもいますが。」
義正の話に、美童は一番気になっていたことを聞いてみた。
「お嬢さんは一緒に住んでないんですか?」
「娘の美津子は東京の大学院で勉強していますし、息子も同じ東京で所帯を持っています。孫も
いますが側にいれば甘やかしてしまいますけど、離れていれば可愛い孫の良い面だけを見ていら
れる。それが丁度良い距離ですわ。」
義正はハッハッハと笑って答えたのだが、美童はというと、がっくりと肩を落としていた。
32鬼闇(11):04/07/28 00:21
「では、このお家はどなたが継がれるんですの?」
千年という伝統を笑い飛ばした義正ならばなんと答えるのだろうか?
野梨子自身も胸の片隅に抱えている家のことを思い、思わず口にしていた。
そんな思いに気が付いたのか、義正は穏やかな表情で語り始めた。
「息子達がここに住みたいといえば住めばいいし、東京の方が良かったらそれでもいいと思ってい
ます。彼らには彼らの人生がありますから。」

白鹿家以上に長い歴史のある家である。
その家を絶やしても構わないと言い切った正義に、野梨子は驚きを隠せなかった。
「人間、誰でもいつかは死ぬ。歴史なんてものは後から生まれたものがどう考えるかであって、
大切なのは、その人がいかに満足のいく道を辿ったかということですよ。それが人生というもの
ですからねぇ。家なんてものに縛られることはないんですよ。」
その言葉は野梨子の胸に静かに染み込んだ。
「佐渡に来ることを楽しみにしている、父の気持ちが解るような気がしますわ。」
野梨子はにっこりと微笑んだ。

「先ほど近所の方々が、大きな荷物を抱えて奥へと入って行くのが見えたんですが、何かあるん
ですか?」
先ほど悠理と目にした光景を思い出し、魅録は義正に聞いてみた。
「ああ、我が家には能舞台がありましてな、今夜、舞台があるんですわ。人が集まりますので、ちょ
ーっと賑やかになってしまいますが、お許しください。」
義正の答えは清四郎と野梨子にとって、とても魅力的なものだった。
「夜ということは薪能ですか?」
「私も拝見させて頂いて構いません?」
「あたしも見てみたい!能って見たことないし、なかなか見る機会もないもの。今日が良いチャンス
なんだわ、きっと。」
「僕も見たこと無いなぁ。ガールフレンドのママ達はとても幻想的で素敵だって言ってたから、一度
は見てみたいかも。」
以外にも可憐と美童までもが賛同した。
33鬼闇(12):04/07/28 00:23
「ああ、そんなことでしたら一向に構いませんよ。近所からもたくさん集まって来られますし。」
義正は、若い四人が日本の伝統芸能に興味をもっていることを、素直に喜んでいるようだ。
そんな中、黙々と菓子を口に放り込んでいた悠理が顔を上げた。
「あたい、寝ちまうかも。」
「俺もちょっと自信ないな。」
悠理と魅録の言葉に他の面々は苦笑いを浮かべていたが、義正は変わらずニコニコと微笑んで
いた。
「良く眠れる事請け合いですわ。」

「それにしても凄いよなぁ、家に舞台があるなんてさ。それだけ能が盛んってことだよなぁ。」
悠理同様、能には興味はないものの、魅録はこの家のスケールの大きさに驚いていた。
「室町時代に世阿弥が佐渡に流されたことも原因の一つですが、江戸時代、初代佐渡奉行の大久
保長安が能楽師出身だったことが大きな影響を与えたようですね。」
「同じ新潟県でも佐渡島と新潟市では文化も違うと言いますもの。中でも能は古くから庶民の生活
にも浸透していたそうで、島の中だけでも三十三箇所もの能舞台があるそうですし、幻想的な薪能
も数多く見ることが出来ますのよ。」
清四郎も野梨子も佐渡の歴史を事前に勉強してきたので、語り始めたら止まらない。
「お二人共良く御存知ですなぁ。私なんかよりよっぽど詳しい!」
「いやですわ、おじさま。大学でお教えしている方が何をおっしゃいますの。」
野梨子は訳知り顔で話していた自分を恥じていた。

「へぇー、そんなに盛んなら、能を見たい時には佐渡に来ればいいんだね。」
美童が感心したように呟いた。
「能もそうですが、人形芝居も盛んなんですよね?」
清四郎が義正に向けた質問に、悠理が再び手を止めた。
「人形芝居って、ひょっこりひょうたん島みたいなヤツ?」
「おまえなぁー。」
「あたしだって、そうじゃないことぐらい解るわよ!」
悠理の言葉に魅録と可憐が呆れたように口を開いた。
34鬼闇(13):04/07/28 00:25
馬鹿にされて面白くない悠理は、ふくれっ面で又菓子を掴んだ。
そんな悠理に義正は微笑みながら、優しく教えてあげた。
「そうそう、ドン・ガバチョの替わりに日本人形の大きいのを動かしておるのさ。」
義正の言葉に悠理はなるほど!と手を打ち、冷ややかな眼差しで自分を見ている清四郎に向かっ
て声を上げた。
「おっちゃんみたいに教えてくれれば、あたいだって解るのに!」
「それは、義道さんは教えるのが専門だからです。僕に同じものを求めることが間違いというもの
ですよ。」
清四郎は義正の教育者としての丁寧さや根気良さに尊敬の念を抱いたものの、自身の懐の狭さ
を感じたのか、少し顔を赤らめながら答えた。

「佐渡の伝統芸能で、説経人形・文弥人形・のろま人形は国の重要無形民族文化財に指定されて
いるんだよ。つまりは正月や盆の行事みたいに大事に残していきなさい、ということだね。」
義正は悠理にも解り易いように丁寧に話した。
「その説経とか、文弥人形とかって何なんだ?のろま位ならあたいでも知ってるぞ。とろいってこと
だろ?」
皆は空を見上げ、美童などは十字を切っている。
そんな悠理の答えにも義正は決して笑わず、話を続けた。
「そうだね、悠理君の言うように『のろま』は遅いとかそういう意味もある。しかし、佐渡でいう『のろ
ま』はのろま人形のことなんだよ。」
「のろま人形?」
悠理は首を傾げながら考えてみたが、全くを持ってわからない。
「んー、そうだね、悠理君には少し難しいから実際に見せてあげよう。」
悠理が真剣に考え込んでいるのを見て、義正が言った。

「わーっ、あたしも見てみたいわぁ。」
「僕も!」
「おじさま、見せるってどうやって…」
「人形をお持ちなんですか?」
35鬼闇(14):04/07/28 00:26
可憐と美童は単純に喜んでいるが、野梨子や清四郎の心底驚いた顔を見て、義正は嬉しそうな
顔をしていた。
どうやら優秀な人間や、頭でっかちの人々を驚かせることに喜びを感じているらしい。
「家だけは古いからねぇ。」
そう言って義正は皆を蔵へと連れて行った。

一旦母屋を出て、義正は皆を蔵へと先導していった。
魅録は脇に停めていた自分の車を目にし、断りを入れていなかったことを思い出した。
「あっ、脇に車を止めさせてもらいましたけど、いいですか?」
「ああ、空いてるところに停めてもらって構わないよ。ただ、門の真ん中だけは困るな。人が通れな
くなってしまうからね。」
笑いながら義正が鍵を開け、皆を中に招き入れた。
「この家の蔵は三棟並んで建っているが、この真中の蔵には私の商売道具が入っているんだ。
佐渡の歴史の蔵書や古い道具などが置いてあるのさ。」
義正は棚にあった長持ちの一つを開けた。
「確か、この中に…」
中から丁寧に布が掛けられ、しまわれていた人形を一体取り出した。
「素朴なお人形ですわね。」
野梨子が人形を受け取り、まじまじと眺めていた。
「これが説経人形だよ。…で、こっちが文弥人形。」
布を払い、もう一体の人形を取り出し、可憐へ手渡した。
「さっきと同じように見えるけど?」
可憐は野梨子の持っている人形と顔を見比べてみたが、違いが全く解らない。
「さっきの説経人形に比べ、文弥人形は首が左右に動くんだよ。」
義正は可憐から再び人形を手にすると、中の仕掛けを動かして見せた。
「ほらね。」
なるほど、さっきの人形は動かなかったが、文弥人形は首が左右に動くように出来ている。
「文弥人形は説経人形が元になっていてね、説経人形遣いが文弥語りを合わせて作り出したもの
が文弥人形と呼ばれるものなんだ。それに、通常文弥人形は三人で一体を操るのだが、佐渡で
は一人で一体を操るから、世界的にも貴重な文化遺産って言われているんだ。」
36鬼闇(15):04/07/28 00:27
義正がもう一体、人形を見せてくれた。
他の人形と同じように、布で包まれていてものを丁寧に開く。
そこに現れた人形は、先ほどの日本人形のような美しいものとは異なり、間の抜けた愛嬌のある
人形だった。
「味のある顔っていうか…」
「変な顔。」
魅録と悠理が率直な感想を述べたのは、のろま人形だった。
「これがのろま人形。これは説経人形の幕間に演じられた狂言なんだよ。間抜けで正直者の主人
公・木之助、人のよい下の隠居、男好きのお花、貪欲でずる賢い仏師の四人で構成されておっ
てな、言葉は全て佐渡の方言で語られる。話や演目が変わっても最後はすべて木之助の放尿で
終わり、観客はそれを見て大笑いするのさ。少し品はないがね。」
「へぇー、面白そうだなぁ。」
「あたい、それなら見てみたいかも。」
能には興味を示さなかった魅録と悠理だったが、のろま人形は違ったらしい。
「やーね、ホント、下品なんだから。」
可憐が苦々しく呟いた。

美童がふと、棚に置いてあった木彫りの像を見つけた。
どうやらこの人物は武士のようだが、誰だったろうかと真剣に考え込んでいた。
「どうしたんです?美童。」
清四郎が、像とにらめっこしている美童に声を掛けた。
「清四郎、この像の人、知ってる?」
清四郎もしばらくその像を眺めていたが、教科書や今まで読んできた数多くの本の中でも見た
記憶がない。
「…見覚えがありませんね。」
清四郎でも解らないものは、当然自分にも解るはずが無い。
美童は義正に聞いてみることにした。
「おじさん、この像の人は誰ですか?」
「ああ、それは佐々の先祖で、佐々義房という人物だよ。昔、京の都で鬼を退治したと言われてい
るんだ。」
37鬼闇(16):04/07/28 00:29
「ええっ?鬼ですか?」
義正の言葉に美童は驚き、まじまじと像を眺めた。
清四郎はというと、佐々の先祖の像と聞いて安堵の溜息を漏らしていた。
どうりで見たことがない訳である。
「平安の頃、羅生門には鬼が出たといいますし、酒呑童子の話等は有名ですよ。」
「先祖代々語り継がれて来た話なんだが、その割には資料が残っていないんだよ。蔵の書は一通
り目を通してみたんだがねぇ。」
義正は残念そうに呟いた。

「お疲れでしょうから、早速お部屋へご案内しますわ。」
志津子が母屋へと戻ってきた六人を促し、部屋へと案内した。
皆には十畳の和室を二間あてがわれ、男女別に部屋を使用することにした。
といっても、襖を隔てた隣同士である。
今は襖を開けて、いつもどおり六人でくつろいでいた。
まだ夕食には早い時間だったので、清四郎は義正から借りた地図を開いてみた。
「それにしても面白い造りの町ですねぇ。東西南北四つの神社に囲まれて、その中心にも神社が
あるんですからねぇ。」
「これだけ神社が多いのも珍しいですわよね。」
清四郎も野梨子も地図を眺めながら言った。
「お寺が多いのは解りますけど、神社が多いっていうのは何かありそうで、嫌な気分にさせられま
すね。」
「清四郎がそんなこと言うなんて珍しいんじゃない?」
「言われてみれば確かにそうだよね。こんなに小さな集落なのにさ。」
清四郎の言葉に可憐と美童も不思議そうに口を開いた。
小さな山々に囲まれ、一辺が三キロにも満たない所である。
そこに5つも神社がある所は、他にはないだろう。

「でも、綺麗に碁盤の目に整備されていますわね。京都を模して造られたのかしら?」
「そういえば、佐渡にも清水寺や長谷寺に似ている寺があるよな。」
地図に目を落としたままの野梨子に、魅録も続いた。
38鬼闇(17):04/07/28 00:30
「呼び名は違いますけどね。やはり京からの流刑者が多かったので、京都を懐かしんで建てられ
たのだと思いますよ。」
清四郎は二人に向かって言った。

「なぁ、明日はどうすんだよ?」
それまで志津子から貰った菓子を黙々と食べていた悠理が、皆の話を遮った。
菓子もなくなり、どうやら明日の遊びについて何をするのか話をしたくてたまらなかったようだ。
可憐も声を張り上げた。
「あたし、泳ぎたい!さっき見た海、とっても綺麗だったもの。」
「そうですね、二ツ亀には海水浴場がありますし、花々の美しい遊歩道もありますから、泳げない
野梨子も堪能できますよ。」
清四郎の話にからかうような響きを感じ取った野梨子が、聞き捨てなら無いとばかりに青筋を立て
て言い返す。
「あら、私には海に入るなってことですの?」
「おや、僕はそんなことを言いましたか?」
「言っているのも同じですわ!」
そんな二人のやり取りに魅録が呆れ顔で呟いた。
「まーた、始まったよ。」
「勝手にやらせておけば?」
「あたいは知らないからな。」
可憐と悠理もとばっちりを受けたくないのか、止める気は全く無い。
放っておいたら何時までもやり続ける二人だ。
「清四郎も野梨子もいい加減にしなよ。せっかくの旅行なのに。」
誰かが諌めなければ、と思ったのか美童が口を挟んだ。
「はいはい、解りました。とりあえず今日はゆっくりと休ませてもらって、明日から思う存分、海を
堪能させてもらいましょう。」
幼馴染が絶対折れないことを知っている清四郎は、さっさと白旗を揚げた。

                  【つづく】
39名無し草:04/07/28 15:34
>豊作×和子
甘ったるいミルクティーに朝から大笑いしましたw
ほんとにすごい甘いの飲まされてそうで・・

>鬼闇
原作の絵が動き出したようでうれしいよ〜
コマごとの皆の顔がイメージしやすい書き方、グッジョブです!
40名無し草:04/07/29 20:55
>豊作×和子
すごく面白かったです。和子さんならやりそうです、この展開。
>「それに、私たち、いい共犯者になれると思うのよね」
是非結婚後の共犯者っぷりを読ませてくださいまし〜!>作者様
41名無し草:04/07/30 00:45
『鬼闇』うPします。
オカルト方向に進んでいきたいと思っていますので、苦手な方はスルーして下さい。
>38の続きです。
42鬼闇(18):04/07/30 00:47
翌日、皆は早速行動を開始した。
清四郎、魅録、悠理の三人は早朝から海岸で磯釣りを楽しんでいた。
一方の美童、可憐、野梨子は大野亀まで続く遊歩道を散策し、自然を満喫していた。
六月にはキバナカンゾウが鮮やかな黄色い花を付け、まるで絨毯を敷き詰めた様に美しくなる大
野亀だが、七月の今はレンゲツツジとカワラナデシコのピンクがポツリポツリと咲いている程度だ。
しかし、日本三大巨岩の一つであり、160mの一枚岩で出来た大野亀は日本一美しいと言われ
ている。
その頂上から眺める紺碧の海はとても美しいもので、いくら眺めていても見飽きる事は無かった。

三人は、遊歩道の途中にある賽の河原にも立ち寄ってみた。
洞窟の中に作られた本尊の祭壇の下には、大きな波が打ち寄せては轟音とともに砕け、白い飛
沫を振りまいていた。
本尊の足元から岩場にかけて、白い小さなお地蔵様が無数に置かれており、風雨にさらされたそ
の表情は心なしか翳りを帯び、掌を合わせている。
周りには無数の石が積まれ、沢山のおもちゃや風車がカラカラと音を立てて回っていた。

「悠理は来なくて正解よね。」
「ええ、又何が起きるかわかりませんものね。」
「どうして石が積んであるのかな?」
帰り道、美童は野梨子に聞いてみた。
「子を亡くした親がその冥福を祈って積み上げますのよ。親より先に亡くなってしまった子は賽の
河原、つまり三途の川を渡ることが出来ませんの。ですから、三途の川の川原で孤独に石を積む
亡き我が子を慰めるために、歌を歌いながら小石を積むのですわ。」
「どうして渡れないの?」
可憐も不思議に思ったらしい。
「親よりも先に死ぬ事が一番の親不孝と申しますでしょ?それと同じですわ。幼い、十歳にも満た
ない子供が父、母、兄弟を思って川原で傷つきながらも石を積みますの。それを地獄の鬼が壊し
てはまた積み、また壊されてはまた積むという、癒される事のない大罪なんだそうです。」
自然と三人は無口になり、思い空気がどんよりと辺りを覆っていた。
43鬼闇(19):04/07/30 00:48
「…出来ればもう来たくないわね。美童、ちゃんとお参りしておいた方がいいんじゃない?」
重くなってしまった空気を払おうと可憐が軽口を叩いたのfだが、美童は本気で怒っていた。
「何て事言うんだよ!僕がそんなことするわけないじゃないか!それに、そういう可憐こそヤバイ
んじゃないの?」
この美童のセリフに可憐が反撃する。
「何いってんのよ!あんたじゃあるまいし。ちょっとしたジョークなのに、本気で怒るところをみると
心当たりでもあるんじゃない?」
「可憐!」
野梨子は睨み合っている二人を眺めながら、軽く溜息を吐いた。
「どっちもどっちですわ。」

佐々の家へ戻った三人を悠理が玄関で待ち構えていた。
「遅いぞ、お前ら!」
「だって、美童が!」
「だって、可憐が!」
可憐と美童は、まだ根に持っているようでそっぽを向いている。
「どうしたんですか?二人とも。」
二人の声を聞きつけて来た清四郎が、野梨子に聞いた。
「ちょっとした口ゲンカですわ。それよりも、そちらは大漁でしたの?」
清四郎の後ろから、魅録が興奮した声と共に現れた。
「ああ、任せてくれよ。アイナメとウミタナゴがわんさか釣れてさ。面白いのなんのって。」
「あたいだって釣ったんだじょ!早速今日のお昼は、あたいたちが釣った魚で刺身祭りだーい!」
悠理は心底嬉しそうに万歳をしていた。

「昼食の準備が出来ましたよー!」
台所の方から志津子の声が聞こえてきた。
「はーい!」
悠理が元気良く返事をして駆けて行った。
「ほら、可憐も美童も行きますわよ。」
まだそっぽを向いている二人に声を掛けながら、野梨子も家の中に入って行った。
44鬼闇(20):04/07/30 00:49
「早く行かないと悠理に全部食べられてしまいますよ。」
「そうそう、あいつならやりかねないよな。」
清四郎と魅録も中へと消え、残った可憐と美童はそっぽを向いたまま台所へ向かった。

釣れたての美味しい魚に大満足した後は、二ツ亀から続く美しい海で海水浴を楽しんだ。
「やめてよ、美童ったら!」
さっきまでのケンカはどこへやら、可憐と美童は二人楽しそうに水を掛け合っている。
「きゃーっ!悠理ったら、やめてくださいな!」
悠理はプカプカとクラゲの様に漂っていた野梨子の浮き輪を掴み、引っ張り回しては悲鳴を上げさ
せていた。
「おい、悠理、少しは手加減してやれよ。」
野梨子の響き渡る悲鳴に、魅録が同情気味に言った。
しかし、悠理にしてみれば野梨子を楽しませようとしているだけであり、野梨子の足が届かない所
に恐怖を感じるという心理が解らないのである。
「ただ浮いているだけじゃ、つまんないだろ?」
再び、浮き輪をグイグイ引っ張って泳ぎ始めた。
「よ、余計なお世話ですわ!きゃーっ!」
「野梨子も気の毒に…」
そんな二人を眺めながら、清四郎がポツリと呟いた。

海を充分満喫し、佐々の家に近づいて行くと、どこからともなく太鼓の音が聞こえて来た。
「何だ?」
「お祭りでもあるんですかね?」
魅録も清四郎も、太鼓の音に耳を凝らした。
「でも、お祭りにしては激しい音ですわ。」
確かに太鼓の音は叩くというより、打ち鳴らすような力強い音である。
「お祭りだったらいいな。あたい、夜店とかだーい好き!」
「そんなことぐらい、聞かなくてもわかるよ。」
「ホント、お金持ちのお嬢様なのに。いつ夜店の味を覚えたのかしらねぇ。」
悠理の期待に満ちた満面の笑みに、美童と可憐が呆れながら言った。
45鬼闇(21):04/07/30 00:51
「父ちゃんも好きなんだよ。」
「ああ、おじさま、お祭りとか盆踊りとか好きそうよね。」
可憐は悠理の答えに妙に納得していた。
「櫓の上で、腕まくりして太鼓叩いてそうだよな。」
「似合いますな。」
清四郎と魅録も腕組みをして、うんうんと頷き合っていた。

「ただいまー!お腹空いちゃったよー!」
悠理が元気よく家の中に入って行った。
「お帰りなさい。もう少しでご飯ですから、もうちょっと待ってね。」
志津子が笑いながら迎えてくれた。
「お祭りでもあるんですか?」
清四郎は居間へと入ると、新聞を読んでいた義正に声を掛けた。
清四郎に続き、他のメンバーも居間へ入ってくるのを目にした義正が、新聞を畳んで面を上げた。
「ああ、今年は『鬼封じ』から丁度千年目に当たる年なので、明日、千年祭を行うんですよ。」
「鬼封じ?」
魅録と美童が顔を見合わせる。
「ええ、昨日我が家の先祖佐々義忠が鬼を退治したと言いましたが、その義忠がこの町を造りなさ
ったと言われてましてね。義忠の功績を称え、『鬼封じ』と呼ばれる祭りを行うのです。昔からの慣
わしですよ。」
野梨子も可憐もその奇妙な祭りを興味深げに聞いていたのだが、悠理が待ってられないとばかり
に口を挟んだ。

「そんなことはどーでもいいけどさ、祭ってことは夜店とかいっぱい出るのか?」
悠理が期待に満ちた眼差しで義正を見つめた。
「勿論、この家の近くにある刀守神社の周辺には、たくさんの夜店が出るよ。」
「やったーっ!」
悠理は諸手を上げて喜んでいる。
そんな悠理を呆れ顔で見ていた五人に義正が言った。
「今、鬼太鼓をやっていますから、見て来られてはいかがですか?」
46鬼闇(22):04/07/30 00:52
六人は表へ出ると、神社の前の広場へと向かった。
十分も歩かないうちに鳥居が現れ、やがて社が見えてきた。
辺りには太鼓の音が古のリズムを刻み、青と金色の何かがチラチラと目に飛び込んでくる。
既に境内には人垣が出来ており、六人は空いている場所を見つけて中を覗き込んだ。
そこには、頭に手ぬぐいを巻き付け、和太鼓を打ち鳴らし続ける年配の男性と、青い衣装と鬼の
面を付けた人物が、右手で刀を持ちながら金色の髪を振り乱して舞っていた。
しばらくして、赤い衣装の鬼も黒髪を振り乱して踊りに加わった。
太鼓の力強い躍動と、鬼の激しい情熱の舞。
あたかもそこには本物の鬼が舞っているかのように見えた。


夕食の席には祖母の菊江も加わった。
義道は、祭りの準備の為の寄り合いがあると言って出かけていた。
「昨日は悪かったの。ちぃっと体調が悪かったもんだから。」
「もう良ろしいんですの?」
野梨子が尋ねると、菊江は心配いらないというように明るく答えた。
「ああ、昨日今日といっぺー休んだから大丈夫さ。私は菊江、よろしゅうな。」
「あたい、悠理。よろしくな、ばっちゃん!」
久方ぶりに賑わった食卓に、菊江も心底嬉しそうだ。
皆はテーブルいっぱいに出された日本海の恵み溢れる夕食に大満足し、食後に志津子が出してく
れたお茶を飲みながら談笑を続けていた。
又、賑やかな食卓に上機嫌の菊江はことさら饒舌で、皆が話に聞き入っていた。

「皆は何故この島が佐渡島って言われるか知っとるか?」
「さぁ?」
「何で?」
可憐と美童が顔を見合わせた。
「昔から日本人は神様を大事にしてきた。八百万の神と言うてな、草花は勿論、田んぼや川、沼、
そして物にも神様はいるという考えじゃ。中でも日本人が一番大事にしていたのが、田んぼの神
様『さの神様』じゃ。だからの、神様に関係するものにはみんな『さ』がつくのじゃよ。」
47鬼闇(23):04/07/30 00:53
菊江の話に清四郎が頷きながら、後を続けた。
「例えば、『さくら』ですが、『くら』は神様がおわす座、という意味で、『さくら』とは田の神様がいると
ころという意味なんですよ。そして、その神様にささげ物をする時、地べたに直接置くのは良くない
ということで、のせた器を『さら』、備えた飲み物が『さけ』又は『ささ』とも言いますね。神棚に必ず
付き物の『榊』というようになったんですね。」
「そう、だからこの島の佐渡島は、神様が渡った島ということになるのさ。」
ふぇっふぇっふぇと菊江が笑った。

「とても勉強になりましたわ。」
菊江の話に聞き入っていた野梨子は感動の面持ちで口を開いた。
「そう考えると面白いもんだな。」
「へぇー、日本って何にでも神様がいるんだ。」
「じゃ、昔からお花見とかやっていたのね。」
「お花見ならあたいも大好き!」
皆がそれぞれに感想を述べ合い、話はより一層盛り上がっていく。
そんな賑やかな六人を、菊江は優しい眼差しで見つめていた。
「そうか、そうか。そういう行事はたんとやらんとな。佐渡には伝統文化がたーんと残っておる。人
形芝居、能、鬼太鼓もそうじゃな。」
「人形なら昨日おっちゃんに見せてもらったじょ!」
「薪能も昨日拝見しましたわ。」
悠理と野梨子が、昨日見せてもらった人形や能を思い浮かべながら言った。

「鬼太鼓って、さっき見たヤツ?」
魅録の言葉に、菊江はより詳しく説明してやった。
「そう、ここ佐渡にしかない伝統芸能でな。鬼の格好した踊り手と太鼓を打ち鳴らす人とが奉納す
る舞でな、厄病息災、魔除けとして奉納するのさ。ただ、どうして鬼の格好をするのかはわからん
がの。」
48鬼闇(24):04/07/30 00:54
「昨日も言ったとおり、鬼は平安の昔から京の都に出没したとか、羅生門に現れたとか言われてい
ます。」
「外国人も知らない時代は鬼と呼ばれた事もありましたわ。」
清四郎と野梨子の話を聞きながら、ふと可憐が頭に過ぎったことを口にした。
「この町の名前と関係あるのかしら?」
「どうして?」
美童は不思議そうに可憐へ聞き返した。
「鬼来里なんて、鬼が来る里ってことでしょ?」
「ああ、そう言われてみるとそうですね。」
清四郎も、可憐の言葉になるほどと感心していた。
菊江はお茶を一口すすり、再び話を続けた。
「この鬼来里には昔からの言い伝えがあるのさ。『千年の時を経て鬼が現れし時、4つの御霊と2
つの鏡にて鬼を封じよ。さすれば御霊刀身に宿り、再びこの世に光溢れん』。佐々義忠が亡くなる
間際に残した言葉と言われておる。わしもこの町の年寄り達もこの言い伝えを代々孫子に伝承し
てきた。しかし時代が変わり、千年もの年月が経った今は本当かどうかもわからんけどな。」

「ま、今の時代に鬼って言われてもなぁ。」
「そうだよ、信じろって言うほうが無理なんじゃない?」
魅録と美童が笑いながら言った。
そんな二人に苦笑しながらも、菊江は生きてきた年数を感じさせるような重い口調で言った。
「そうかもしれんがのう、昔から今まで伝わって来た言葉だからこそ、蔑ろにしてはいかんとも思う
のだがな。」
「伝説をバカにしちゃいけません。伝説ということは、全てが事実ではないにしろ、起源となる史実
や根拠がなければ伝説にはなりませんからね。」
清四郎が真面目な顔で答えた。

                  【つづく】
49名無し草:04/07/31 04:32
>鬼闇
作者様の深い知識にいつも感心させられっぱなしです。
これからの展開が楽しみです。
50名無し草:04/07/31 12:58
>鬼闇
じっくりと読ませていただきました。
「さくら」=「さ(神)」+「くら」などの話、すごく面白かったです。
千年の時を経て、伝説の鬼が蘇るのでしょうか。続き楽しみにしています。
http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/559の続きです

 いつもの内装のおかしなヘリは使用中のため、一同は剣菱グループのどこかの子会社の名前が書いてあるヘリで出発した。
現在、美童が管理人から届いた長い長いFAXを読みあげているのにそろって耳を傾けている。
FAXには島の設備や備品、マニュアル等の在り処、注意事項をはじめ、管理棟のあらゆる電子錠の暗証番号などがこと細かく記されていた。

 ヘリの中は乗客用の座席は二列しかなく、前列にはおやつをむさぼる悠理、FAXを覗き込む美童と可憐。魅録はすました顔の野梨子と表情の読めない清四郎に挟まれている。

「電気は管理棟周辺のみ常時供給しています。ログハウス方面には管理棟にございます配電盤の入力電源をONにすることにより通電します。うへえ、図入りで操作法が書いてあるよ。魅録、わかる?」
なるべく後ろを見ないようにしながら美童が話を振る。

「必要ありませんよ」 間髪を入れずぴしゃりと清四郎が言った。
「ああ、そうだな」 魅録が同意すると、美童は肩をすくめて先を続けた。

「井戸水は定期的に水質検査を行っており飲用に問題ありませんが、水は貴重なので節水に努めて下さい。
当島自慢の温泉は管理棟そばに露天風呂にしつらえてあります。私どもは『玉の肌湯』と呼んでおります」
「うっわあ、すっごく楽しみ」
「あんなに嫌がっていたのに現金だな」
「考えようによってはさ、ダイエットできて、温泉で磨いてきれいになれるよ」
はしゃぐ前列とは対称的に沈黙が後列を支配している。


「見えましたわ」 ふいに野梨子が口を開いた。
海のまん中にぽっかり浮かぶ緑豊かな島。
海岸沿いの少し開けたところに立派な管理棟と露天風呂らしき屋根、作業小屋か倉庫らしい建物。それらからちょっと離れた木立の影にログハウスらしき屋根がいくつか見えた。
数分後、ヘリは管理棟近くに着陸した。

「わーい、一番乗りぃ!!」 元気よく悠理がヘリから飛び出す。それに続く笑顔の美童。
「着いたわね」
「着きましたわね」 可憐と野梨子は不安げにあたりを見回す。
魅録と清四郎は無言でヘリから荷物を降ろしだした。
その時。

「えっ!? ウサギ???」  「ガァャー」
驚く声を遮るようにして耳障りな鳴き声があたりに響き渡った。

一同が目にしたのは...。我が物顔で闊歩する孔雀と、ぴょんぴょん跳ねるウサギの群れだった。

--------------
2レスになってしまい、すみません。
思いつきで無人島には野生化した孔雀(凶暴)とウサギ(人懐っこいけどすばしっこい)が生息しているという設定にしました。
どなたか続きよろしくお願いします。

53名無し草:04/08/01 16:52
無人島リレーなどが始まったところに申し訳ありませんが、
有閑キャッツを再開させます。
まずは嵐さんのところで過去ログを読んであらすじを
まとめてみました。(長いです)
嵐さん、いつもお疲れ様です。

********

巷を騒がせる怪盗がいた。往年のコミックからキャッツアイと呼ばれる彼女たち。
盗むものの一貫性もつかませず、謎めいた文言の予告状を出し、警察を翻弄していた。
スペイン王家に伝わるアレキサンドライトのネックレス。
七色の宝石を持つ王冠、プロミネンスクラウン。
これらを彼女たちは警察と対峙しながら見事に盗み出していた。

キャッツアイは美しき三姉妹。
太陽のネックレスを持つ長女可憐は宝石商に引き取られ。
月のイヤリングを持つ次女野梨子は茶道家元の家に引き取られ。
星の指輪を持つ三女悠理は財閥会長に引き取られていた。
彼女たちはVIPの子供が集う聖プレジデント学園に勤務し、情報収集の場としていた。

彼女たちを追う対策チーム専属の刑事も三人。
武道の達人で三人組の頭脳でもある清四郎(医者の息子)。
機械マニアで大型バイクを駆るピンク頭の魅録。
女性受けする甘いマスクで情報収集担当の美童。
表向き財閥会長令嬢である悠理は、時宗の仲介で互いの正体を知らぬまま清四郎と見合いをし、惹かれあう。
キスを交わし、結婚を前提とした付き合いを約束する。
その直後、悠理は清四郎がキャッツ担当チームの刑事だと知ってしまう。

また、可憐はアレキサンドライトを手に入れるために潜入したパーティーで魅録と惹かれあう。
美童は野梨子に惹かれ、可憐と野梨子にいいように情報を聞き出されてしまう。

三姉妹は父の遺した死のメッセージにたどり着くため、自分たちがばらばらに養女に出され守られた理由を知るため、父の散逸したコレクションを集めているのだった。
(母親が生きているのかはまだ謎。)
また、彼女たちが予告状を出して目立たねばならない理由はまだ不明である。(本家流なら生きている母親や真の敵へのメッセージ?)

番外編の百合子の回想によると、三姉妹の実の父は彼女の従兄。他界している。彼は一つの失敗から没落したという。
そして三姉妹がそれぞれ養女に引き取られることは彼の遺志に反したことだったようである。
まだ彼女は悠理たちに詳細は話していないのか、彼女が知っているだけは話したのかは不明。とりあえず三姉妹は詳しいことはまだ知らない。

可憐はアレキサンドライトとプロミネンスクラウン、三姉妹の宝石から、皆既日食が起こるその年の6月5日に何かがあることにうっすら気づく。
そして次なるキャッツの獲物は死の呪いがかけられているとされる絵画「三姉妹」。
オールドミスの三姉妹が住む豪邸・一乗寺邸の奥深くに所蔵されていると言われる絵画だ。
一乗寺家は謎が多く、変人が多く、当主の歴代の妻たちは死もしくは発狂という形でしか屋敷を出られなかった。
三姉妹の長女紅子と次女鈴蘭はそっくりな老女。三女琴子は決して姿を見せない(幽霊?人形が好きらしい)。
一乗寺邸は罠まみれであり、死臭が漂っている。二階の北側、琴子の部屋には決して入らないように使用人たちは厳命されている。
好奇心に負けた使用人たちはいずこへかと消えていた。

そこへ三人娘は潜入。可憐と野梨子はメイドとして、悠理はコック見習い(偽名・剣持悠介)として。
そしてやはりそこで変装した姿で悠理は清四郎と再会、野梨子と可憐も清四郎と悠理の関係を知る。

変装した姿で美童に会った野梨子は、琴子の姿を見て心惹かれる美童の好奇心を利用して彼が琴子の部屋に忍び込むように誘導する。
彼に額にキスされ良心が痛む野梨子。
また、可憐も同様に魅録と遭遇。琴子の部屋の警護を警察にさせてそこの鍵を開けさせようとする。
魅録は変装中の彼女に可憐の面影を見る。

夜中、屋敷中の者に睡眠薬を飲ませ、行動を開始する三人。
野梨子は鍵が閉まったままのはずの琴子の部屋に向かう開かずの扉が開いていることに気づく。
彼女の目の前でそこへ入っていったのは琴子に魅入られてしまった美童。

一方、琴子専用の配膳エレベーターに乗って潜入する悠理(本当は鍵を盗むことになっていた)。
皆が眠り込んでいることに呆れ、やはり開かずの間に潜入する清四郎と魅録。
エレベーターから飛び出してきた悠理を見て、清四郎はそれが彼女ではないかと気づく。
だがすぐに停電。確信を得られぬまま彼女は琴子の部屋へと飛び込んで鍵を閉める。
魅録は清四郎が少年の後姿に悠理と見合い相手の名前を呼ぶのを聞いていた。
ドアを開けようと躍起になる清四郎をどけて、蝶番を銃で撃つ。

可憐は野梨子からの連絡で開かずの間に美童を追って潜入すると聞いていたが、あまりに遅いことと悠理と連絡が取れないことから自分も行動を始める。
一方野梨子は美童に引き続き琴子に捕われ、人形にされていた。

琴子の霊の気配に怯え、走り出した悠理は人形だらけの部屋の中で、野梨子と美童の人形を目撃する。
背後から琴子に襲われそうになる悠理。その時、ドアの蝶番が銃で吹き飛ばされた。

*********

三姉妹編が未完結のため少し詳しく追ってみました。
4レスも使ってしまいましたが、続けて本編書きます。
本編は2レスです。短くてすいません。
57有閑キャッツアイ:04/08/01 17:02
http://houka5.com/yuukan/thre/t19-1.htmlの350までの続き

(銃声?!)
可憐は階段の途中でその音を聞いた。
嫌な予感が胸をざわめく。
連絡が取れない妹たち。正体不明の琴子。開かずの間。不気味な噂。

いや、あの音は日本の警察官が使用するニューナンブマグナムの音だ。
野梨子は運動音痴とはいえ、へまをするとは考えにくい。
悠理がへまをした?
いや、しかしいくらなんでも発砲沙汰とは尋常じゃない。

可憐は階段を一気に駆け上がった。
(野梨子!悠理!無事でいて!)

 ************

悠理は背後の気配がすっと消えるのを感じた。
え?と彼女はドアのほうを見た。
白い影がドアの前にゆらめいていた。その横顔は冷たい無表情の少女だった。
いつの間にあそこまで・・・いや、あそこにいるのは・・・

「お人形さんがたくさん。嬉しいわ。」
空気は震えていない。その声は頭の中に直接入ってきた。
「でもみんなちょっと乱暴ね。おねんねの時間よ。」
彼女のか細い手がすうっと目の前の二人の男へと伸ばされる。
彼らは突如目の前に現れた少女に魂を吸い取られたように動けなくなっていた。
58有閑キャッツアイ:04/08/01 17:04
(この屋敷にこんな少女がいるとは?)
魅録は呆然としている。
(さっきまでこんな気配は感じなかったのに!)
清四郎もいささか混乱している。
白い手が魅録の額を撫でる。
彼はそのまま目を閉じると、その場に崩れ落ちた。
「魅録!」
清四郎は背筋が冷えるのを感じた。
冷や汗が顎を伝うが、なぜか指一本とて動かせなかった。これでは金縛りだ。

この部屋は?この少女は?
さっきここへ入っていった愛しい女性は?!

彼の頭は必死に事態を把握しようとしていた。
しかし体が動かないという恐怖は彼に焦りを生んでおり、考えはまとまらなかった。
自分が恐怖しているという事実にまた彼は愕然とした。

その時、彼が求めてやまない、その女性の声が聞こえてきた。
「やめろ!清四郎に手を出すな!」

清四郎はその声で覚醒した。
体が動いた。
目の前の白い影に逆に手を伸ばした。
しかし、その手は何も掠めず、むなしく空を切っただけだった。少女の姿は消えていた。

「悠理!無事か?!」
清四郎は冷や汗をぬぐうこともせず躊躇なく寝室の奥へと足を進めた。

              つづく・・・
5953−58:04/08/01 17:21
以上、ものすご〜く久しぶりに続けてみました。
でも話が大して動いてなくてすいません。
しかも事件が苦手なのでこれがマックスです。
本家キャッツが好きなので自分が書くと引きずられてしまう。

野梨子が引き取られた家についての記述は実はまだありませんでした。
勝手に書いちゃいました。(おい)
あと、可憐が保健医、野梨子が国語教師、悠理が体育教師です。

どなたか続きを・・・(他力本願)
60十三夜月:04/08/01 18:45
前スレの雑談に触発されました。
30分くらいでぱっと短編書いてみました。
情緒障害推奨派妄想型のお話です。

****************

「あの、菊正宗先輩、有閑倶楽部の皆様と召し上がってください。」
女子生徒が差し出したのは恐らく手作りのクッキー。
生徒会長・菊正宗清四郎はにっこりと営業用のスマイルを彼女とその友人へ返した。
「ありがとう。悠理が喜びますよ。」
すると、彼女の後ろにいる友人が言った。
「いえ、この子が上げたいのは・・・」
「やだ!言わないで!」
泣きそうな顔で友人を制してから、彼女は真っ赤な顔で僕の顔を見上げた。
「ごめんなさい、迷惑ですよね。だから倶楽部の皆様にって・・・」

ああ、そうですか。
と清四郎には合点が行った。

目の前の少女は可憐と同じくらいの身長。
野梨子のように黒々とした髪を腰まで伸ばしている。流れ落ちる滝のようだ。
色白の肌を今は真っ赤にさせている。
一般的に言えば彼女は美人の部類に入るのだろう。

「倶楽部の連中へと言うなら断りませんよ。ありがとう。」
彼女たちは彼がそれを受け取ってくれたことに純粋に感激したらしく、きゃあきゃあと騒ぎながら去っていった。
だが、彼がその言葉にこめた意味は別にあった。

───僕宛のプレゼントだったら断っていましたよ。
61十三夜月2:04/08/01 18:46
「なんだよ、これって清四郎宛だったんじゃないの?」
と美童は辛うじて悠理が皆にも分けてくれたクッキーをかじりながら言った。
放課後の部室。いつものごとく閑人6人組が集っていた。
「僕個人にと言うなら丁重にお断りしていましたよ。」
「もったいない話。」
美童が肩をすくめた。
「気がないのに受け取ったりしないところは誠実でいいんじゃないの?それが外面だけだったにしても。」
可憐は紅茶をサーブしながら言う。
「どっちにしろ食いもんくれる子は皆いい子だ。」
クッキーの半分以上を独り占めして悠理はにこにこしながら言った。

「なあ、野梨子はあいつが女と付き合ってる姿って見たことないんだよな?」
「ええ。そんなそぶりは見たことありませんわ。もちろん私の目の届かないところもたくさんありますけれど。」
魅録と野梨子がひそひそと話している声が聞こえてくる。
清四郎は内心で舌打ちした。この方面の追求はされたくない。
「清四郎って男にもてるけどゲイじゃないよね。でも女にも興味があるようには見えない。」
いつの間にやら美童も二人の会話に参入しているようである。
聞こえてますよ。
「あんたたちの年で女のカラダに興味がないってどうよ。」
可憐が言う。
「知るかよ。」
魅録の顔は真っ赤だ。自分に話を振るな、と言いたげである。
「医学的興味は充分ありそうですわよ。殿方の体との違いを冷静に調べてみそうじゃありません?」
「言えてる。」
野梨子の言葉に美童と可憐がそろって笑い出した。
62十三夜月3:04/08/01 18:48
すると、今までその話題も全く耳に入らない風情でクッキーをかじっていた悠理が急に顔を上げた。
清四郎と目が合う。
そこに漂うのは、ある意味共犯者のもの。
色めいたものとは程遠い冷たい分析がひらめきあう。

そうだ。僕と悠理は同類だ。それを彼女も気づいている。
この場にいる友人たちにはきっと僕たちのことを理解できないだろう。
幼馴染ですら、彼のことを理解できていないのだ。

もちろん僕らは対極にいる。生物学的性別が逆であることしかり。
彼女は単純で遊び好きの怠け者で、僕は学究心旺盛な人間だ。
彼女は本能と感情で動く。僕はほとんどの行動のもとは理性による分析だ。
彼女は友人たちを深く愛している。僕も友人たちを大事にしているが、その感情はどこか冷静だ。
彼女はそれどころか世界中を愛している。僕の愛情は自分をめぐる人たちへと限局され、それもかなりドライである。

そんな彼女との唯一の共通点、それは・・・

「これじゃ足りない。清四郎、食わないなら分けてよ。」
彼女は清四郎の取り分に手を伸ばした。
「はいはい。虫歯には気をつけるんですよ。」
クッキーが乗せられた紙ナプキンを彼女のほうへと寄せようとして、その指と僕の指とが触れ合った。
だが、それは物理的な接触でしかない。
僕たち二人にとってはそれだけでしかありえない。
63十三夜月4:04/08/01 18:49
「本当に悠理は食欲だけだな。お前ももう少し色気づいてもいい頃だろ。」
呆れたように言う魅録に悠理は舌を出して見せた。
「そんなん気持ち悪い。あたいはそんなん一生必要ねえよ。」
「あらあ、わかんないわよ。あんたの言ってたあんたより強い男が現れて恋に落ちるんじゃないの?」
からかうように言う可憐は絶対に気づかない。
一生という悠理の言葉が真実なんだと、きっと永遠に気づかない。

悠理は知っている。清四郎も同じなのだと知っている。

「そういう種類の人間もいるんですよ、可憐。」
清四郎は言いながら立ち上がった。
「は?そういう種類?」
問い返す可憐に応えず、彼は鞄を取った。
「じゃあ、帰ります。今日はSF研の会合がありますので。」

最後にもう一度悠理と視線が合うと、彼は少し微笑んで見せた。
悠理も片眉を上げて応えた。

清四郎が外に出ると、暗くなり始めた東の空にまだ満月まで2日ほど残した月が輝いていた。
どこか欠けた月は彼自身だった。そして悠理だった。
完全に見えるようで、どこか欠けている月。
いつか満ちるように見る人は思う。
だが、彼らと月とでは大きく異なる点がある。
彼と悠理は欠けたものが満ちることはないのだ。
64十三夜月5:04/08/01 18:55
悠理とは同類であるがゆえに分かり合える。
同類であるがゆえに二人がこれ以上近づくことはありえなかった。
彼女との結婚話が持ち上がった時、彼女とならうまくやっていけると錯覚した。
同じものを欠落しているのだから面倒もなかろうと思った。
だが、それは錯覚だった。
彼女との共通点はただその一点に過ぎないのだと忘れていた彼の失敗だった。

彼らが持たざるもの、それには無粋な名前がついている。

その名を、“性的欲求”と言った。

彼はいつか満ちる月をそれ以上見つめることはしなかった。
ただ、足を自分のいるべき場所へと無造作に動かした。

***************
終わりです。
悠理まで巻き込んでしまいました・・・
悠理総受け推奨のかた、申し訳ありません。
65名無し草:04/08/01 19:04
も、萌える……っ
死ぬほど萌えてますこういう清四郎。
乙!
66名無し草:04/08/01 20:34
>十三夜月
いいですね。こういう清四郎と悠理の関係も。
普通の人間(恋などを経験済みの)である他の4人とは
どうやってもわかり合えない、ある意味共犯めいた…。
なるほど…と、読ませていただきました。

>キャッツ
再開待ってました〜〜。
嬉しいです、今後も続きますように!!

>無人島 その2
こっちも好きです。可憐と野梨子が命懸けでバトルとかするとこ見たい!
夜な夜な語り合う魅録と清四郎も…!
67名無し草:04/08/01 21:13
Deep Riverうpします。
5レスお借りします。
68Deep River(43):04/08/01 21:15
ttp://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/624

動き出したか――

来客者が触れることもしなかったカップをテーブルの反対側から眺めながら、
清四郎は煙草を燻らせていた。
久しく稼動しなかった歯車は錆び付き、その働きを失ったはずだった。
しかし慟哭にも似た轟音を響かせながら動き出してしまった今、
その勢いを止めることは出来ない。
そう仕向けたのは自分であったはずなのに、この息苦しさはなんだろうか。
いつか必ず此の時が来る。その来たるべき日のために感情は捨て去ったつもりでいた。
しかし襲い来る感情の波は、それを遥かに越えるものだった。
『……聞かないほうが、知らないほうがいいこともあるんだよ……』
いつか、あの人に言われた台詞だった。
『それでも、僕は知りたいんです』
あの日の清四郎は、そう告げた。
自分は全てを有りの儘に受け入れることが出来る、そう思っていた。
知らないほうが良い現実などないと、事実を受け入れた上でも
自分は真っ直ぐ歩いて行けると、そう信じていた。
なんと傲慢だったのだろうか、と清四郎は自嘲した。

恐らく今頃、悠理は魅録に事の顛末を話しているに違いない。
だとすれば、勘の良い魅録のことだ、過去へ続く細い糸を見つけてしまうだろう。
彼がその糸を手繰り寄せたとき――剣菱万作は、どうするのだろうか。

清四郎は思惟の淵から浮かび上がると、煙草を揉み消し、
冷めてしまった珈琲を一気に飲み干した。
69Deep River(44):04/08/01 21:17
重い足取りで自室への道程を歩いていた悠理の肩に、ぽんと手が置かれた。
振り返ると、魅録が微笑みながら立っている。
悠理も自然に微笑み返しながら、横に並んで一緒に部屋へと向かった。
「昨日、ごめん。可憐の家に行っててさ」
「おばさんに聞いたよ。俺も急に来たからな、仕方がねえよ。
それより、このクソ熱いのにまた出掛けてたんだろ? 何処に行ってたんだ?」
悠理の足が止まる。それにつられて、魅録も歩みを止めた。
「悠理?」
「うん……言わないでおこうと思ったんだけど……」
何時になく不安そうな表情を見せる悠理に魅録は胸騒ぎを覚え、
その顔を覗きこんで訊ねる。
「どうした?」
「……清四郎に、会ってきたんだ」
魅録の表情が一変して、厳しいものとなった。
「どうして、あいつの居場所が分かったんだ?」
詰め寄るようにして問いかける魅録の胸を両手で押し止めながら、悠理は俯いた。
「黙ってて、ごめん。探偵を雇ってたんだ。さっき……連絡があって。
住処が見つかったって言うから、いてもたってもいられなくて」
「どうしてそんな危険なことをするんだ? 敵陣に独りで乗り込むなんて――」
言い募る魅録を見上げ、悠理はきっぱりと言った。
「清四郎は、敵じゃないよ。友達だろ?」
「悠理……」
「あいつ……苦しんでた。上手く言えないんだけど。
きっと、こんなことすんのには、なんか理由があるんだよ。そうに決まってる」
眦を微かに紅くしながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ悠理を前に、
魅録は自らの言葉を恥じた。
70Deep River(45):04/08/01 21:18
「それに――気になることを言ってたんだ」
「気になること?」
問い返す魅録を見上げながら、悠理が頷く。
「うん。怨むなら父ちゃんを怨め、って」
「万作おじさんを?」
魅録にとって、意外な人物の名前だった。
一連の清四郎の行動は、悠理でも魅録でもなく、万作への報復だというのか。
「そう。なあ魅録、どういうことなのかな? 
清四郎がこんなことすんのも、全部父ちゃんの所為なのかな?」
魅録は悠理を見詰めたまま、ふうっと息を吐いた。
「……多分……な」
そしてそれは、悠理にとって辛い事実に違いない。
父親の所為で、友人を一人、失ったことに他ならないのだから。
「あたい、父ちゃんに聞いてみるよ」
言い終わらぬうちに駆け出そうとする悠理の二の腕を捕まえ、魅録は諭すように告げる。
「やめておけ。慎重にいこう」
「でも……」
「俺に少し、時間をくれないか。清四郎が万作おじさんの名前を出したのには
きっと何か理由がある。単なる陽動作戦ではないだろう」
魅録は悠理をじっと見詰め、静かな声音で訊ねた。
「覚悟は、出来てるんだな?」
「覚悟?」
「清四郎の過去に、おじさんが関わっているのは間違いない。
ひょっとすると――いや確実に、お前が眼を覆いたくなるような形で、だ。
それでも、知りたいんだな?」
悠理は魅録の言葉に、大きく一つ頷いた。
71Deep River(46):04/08/01 21:19
万作と清四郎の過去に、直接何かがあったとは考えにくい。
余りにも年齢が離れすぎている。
寧ろ、実父であるという白鹿清州との関係を探るほうが妥当だ。
過去を紐解く鍵は、恐らく其処にあるのだろう。
魅録は剣菱邸の書斎に籠もり、先ずは万作の経歴を調べ始めた。
万作の年齢から清四郎の年齢を差し引くと、凡そ今の魅録ぐらいの年齢だ。
だとすれば……
魅録は万作の大学時代の卒業名簿を手に取った。
経営学部に万作の名が記載されている。
同じ頁を指で辿りながら清州の名を探すが、見当たらない。
学部が別なのか。
法学部から順に再度調べなおすが、やはり其の名はない。
見当違いか……
名簿を閉じようとした刹那、見慣れた名前が魅録の視界に飛び込んできた。
『菊正宗修平』
医学部の卒業者名簿に、そう書かれている。
「どういうことだ?」
思わず口に出して問いかけるが、答えを返す者など居るはずもない。
清四郎の実父は清州。
清四郎が報復しようとしているのは万作。
この二人に何らかの繋がりがあることは間違いないだろう。
そこに、第三の人物――清四郎の育ての父である修平の存在が絡んでいるとなると――
魅録は名簿を本棚に戻し、立ち上がった。
直接この三人に訊くには、まだ時期尚早だろう。
ならば――あの人に訊くしかあるまい。
72Deep River(47):04/08/01 21:21
久しく訪ねることのなかった友人宅の前に立ち、魅録は襟を正した。
以前は余り感じなかったが、疎遠になってしまった今となっては敷居がとても高い。
昔は撚れたTシャツでも平気で訪れていたものだが――
荘厳と呼ぶに相応しい門構えの前で、魅録は暫し懐古の念に浸った。
僅かに震える指でインタフォンを押し、返答が来るのを待つ。
『はい』
「松竹梅です」
『まあ、魅録さん? ちょっとお待ちになってね』
自分の爪先を眺めながら、何と彼女に尋ねればよいのかと自問していると、
目の前の門が開き、友人に良く似た風貌の母が顔を覗かせた。
「お久しぶりね」
「ご無沙汰しています」
「ごめんなさいね、野梨子は美童君に誘われて、今外出しているの」
「いえ、今日は……」
思いつめたような眸で自分を見下ろす魅録の視線に内心たじろぎながら、
野梨子の母は首を傾げた。
「今日は、おばさんにお聞きしたいことがあって、伺ったんです」
「……私に、ですの?」
「はい。……清四郎の出生に纏わることを伺いたいんです」
見る間に、野梨子の母の顔色が蒼くなった。
「私は、なにも……」
「ご存知ない、ということはないでしょう? 自身の出生の秘密は貴女から教えられた
と、清四郎から聞いているんですよ」
野梨子の母は項垂れたまま、額に浮き出た汗を拭った。
蝉の声が一際大きく響く。
魅録の背中を、つうっと汗が伝った。
「……お入りくださいな。此処でお話出来るようなことでは、ありませんし」
「お邪魔します」
言って、敷地内に一歩、踏み込んだ。

<続きます>
73名無し草:04/08/01 21:39
>無人島リレー
また始まりましたね! ユニークな動物たちがいるみたいで楽しそう?

>有閑キャッツ
まとめ乙です!
清四郎が悠理を確認したのは間違いなさそうですね。
今後二人の関係がどう変わるか……

>十三夜月
ちょっと変わった風味のお話でドキドキしました。
清四郎の欠けた部分は本当に埋まることはないのかなあ。

>DEEP RIVER
お待ちしてました! 人間関係めちゃめちゃ捩れてますね!
一体清四郎の出生にはどんな秘密があるのか、めちゃくちゃ気になります。
続きお待ちしております。
74名無し草:04/08/02 10:17
どうも。有閑キャッツ再開させたもんです。
早くミッションを終わらせたいので、少し設定を付け加えながら
お話を単純化させてみました。
たぶんものすごく先が見え見えな展開になったと思われます。
次から4レスいただきます。
75有閑キャッツアイ:04/08/02 10:18
>58の続き

───暗い!

部屋の奥へと足を進める清四郎は、まずそう思った。
そこに彼女の気配があるのに、その姿が皆目見えない。

一方、悠理は野梨子特製の暗視スコープで清四郎の姿をはっきり捉えていた。
とりあえず彼はあのわけのわからない霊のようなものにやられはしなかったらしい。よかった、と思う。
だがすぐに彼女のスコープの下の目が冷たくなった。
状況はかなり悪い。彼は刑事。捕まるわけには行かない。
以前に自分と互角に戦ったのは彼だ、と悠理は確信していた。
彼の発する気が、あの時のあの男と同じだったのだ。

更に、ここに長居するわけにも行くまい。
『三姉妹』を盗むと言う目的。
得体の知れない事態に陥った野梨子の救出。
そしてこの部屋のどこかからいまだ自分たちを見ている、あの化け物。

どうにか状況を打破しなければ!

悠理は清四郎の手が戸口近くの壁を探る様子をじっと見ていた。
恐らく照明のスイッチを探しているのだろう。
だがそこには彼が目指すものは存在しなかった。
「ちっ」
彼は我知らず舌打ちしていた。
たとえそこにスイッチがあったとしても、先ほど急に消えた照明はまだ復旧していないかもしれない。
76有閑キャッツアイ:04/08/02 10:19
あの彼が焦っている。
悠理はそれを見て取った。
あたいのために?

ずきん、と胸が痛んだ。
あたいは無事だと告げたかった。
だけどそれはできない。

お前を気に入ったから、お前が好きだから、あたいはキャッツだと明かすわけにはいかない。
不思議だ。見合いの席で会っただけの男なのに。
こんなにも惹かれているあたいがいる。

「彼が好きなの?」
悠理はまたしても背筋が凍りつくのを感じた。
すぐ背後にいる!

清四郎は彼女の気配が変わったことに気づいた。これまで以上の緊張が伝わってくる。
「悠理?悠理じゃないんですか?」
悠理は声が出なかった。畜生!こんな時に動けないなんて。
(清四郎にはこいつの声が聞こえてないのか?!)
「そう。彼には聞こえてないから平気よ。そのまま心の中で私にお話して、お人形さん。」
(あたいはお人形さんなんかじゃない!)
悠理は冷や汗を流しながら彼女に抗議した。
少女がくすり、と笑っている気配がした。
「大丈夫よ。彼もあれ以上はここに入って来れない。」
悠理が彼の方を見やると、清四郎も足が床に吸い付いたようになって唖然としている。
またも金縛りになってしまったので驚いたのだろう。
77有閑キャッツアイ:04/08/02 10:19
だが一つ問題が後回しになったと言っても悠理は安心するわけには行かない。
(お前は何者だ?この人形たちはなんなんだ?)
よかった。あたいは冷静だ。
焦燥は失敗を生む、それはいつも野梨子から厳しく言われていることだ。
すぐに取り乱すのはあたいの悪い癖だと思う。
(野梨子に何をした?)
「あら、このお人形さん、あなたのお姉さんなの?」
話しかけた以上のことを返され、悠理は固まる。
「私の可愛いお人形さんよ。ここにいればもう何も嘆くことはない。苦しむことも飢えることもないの。こんなに美しいお顔にそんなもの必要ないでしょう?」
悠理の目の前に姿を現した彼女はやはり美しかった。ころころと鈴が転がるように笑う。
「だから、あなたたちもこれ以上苦しまないようにしてあげるわ。お姉さんと、恋人と一緒なら寂しくないでしょう?」
「・・・っかやろ・・・」
「あら、声が出せるの?」
少女が目を見開く。自分の金縛りを先ほどの黒髪の男に続いて二人も解く人間が現れるとは。
今は男は素直に金縛りに縛られてくれている。
彼女の目には彼らに鎖をかける使役鬼の姿がはっきり見える。彼女だけに従う式神どもだ。
しかし悠理が身を震わせるたびに掌ほどの大きさの小鬼たちはぱらぱらと彼女の体から振り落とされていった。
「ざけんな!あたいらは人形じゃねえ!」

ぱ・・・ん
生ける人間には見えぬ鎖が砕けちった。

その瞬間、悠理の指輪が光る。
少女の中に、指輪の光とともに映像が流れ込んできた。
78有閑キャッツアイ:04/08/02 10:20
何不自由なく育てられた財閥の令嬢。だが彼女はいつもどこかに喪失感を抱えていた。
誰だ?あたいを呼ぶのは、誰?
二人の女性が彼女の手を取る。
「ねえちゃん。」と彼女は微笑んだ。
彼女たちは3つの天体に守られている。
太陽、月、星。

3美神!少女の胸に雷にも似たひらめきが去来した。

映像はまだ続く。

星を身にまとう女性が出会った。
彼は敵。
だけれど、惹かれずにいられない。
出会いは偶然?それとも必然?
姉たちの顔が浮かぶ。
捕まるわけにはいかない!
こんなところで捕まるわけにはいかない!

ねえちゃん!清四郎!

圧倒的な叫び。
それは生ける人間にとっては刹那だった。
2億6千万分の1秒の刹那。

少女は知った。
目の前の女性は自分と同じ。
二人の姉と、許されぬ仲の恋人を持つ・・・

                つづく
7974-78:04/08/02 10:29
なんか一人で勝手に話を進めててごめんなさい。
次回、待望の絵画「三姉妹」と可憐登場の予定・・・

野梨子と美童は戻ることが出来るのか?
気絶している魅録は果たして出番があるのか!?(ひでえ)
清四郎と悠理はどうなってしまうのか?

とりあえず可憐姐さんと幽霊さんの活躍に期待。
そういや紅子と鈴蘭がまったく出てきてない・・・
80名無し草:04/08/02 16:00
>十三夜月
Aセクですか…。納得できます。
切ないですね。大好き、こういうの。
>Deep River
待ってました!緻密に動きを追う文章と
底に眠る謎にドキドキしつつ、こんなに複雑に
絡み合うお話を書ける作者さまにただただ脱帽です。
>キャッツ
続き乙です!はらはらします…
81名無し草:04/08/02 16:37
>79
乙です。
でも、次も79タンが書くの?w
リレーじゃなかったっけ・・・
82名無し草:04/08/02 17:17
いんでね?
最近全然進んでなかったから、続き読めてうれしいし。
8379:04/08/02 17:32
>81
すんまそん。一気に事件をたたんじまわないと
再びこのまま膠着しそうなんで。
次回をできるだけ早くうpして次の方へ
バトンタッチします。


>キャッツ再開に感想くださった方々
ありがとうございます。私も一読者でした。
これからも頑張ります。
次回うp後は通常の名無しに戻ります。
84有閑キャッツアイ:04/08/02 21:18
>78の続き

すう────

涙が流れる。
その頬を濡らす。

悠理は思わず目の前の少女に見とれた。
白い肌、黒い髪、赤い唇。
女である自分が見とれてしまうほどだなんて。

そのとき清四郎は、何か白い光がぼんやりと暗闇に浮かぶのが見えた。
生きた人間の気配がするのとは別の方向。

───あれは?

悠理のほうは、変装中に手にするわけにもいかないので巾着袋に入れて首から提げていた指輪が、温かくなるのを感じた。
さっきこいつ光ったか?
動くようになった手でそれに服の上から触れてみた。
確かに温かい。

───とうちゃん?

どういうことかと思いつつ首を回した彼女の目に、清四郎も目にしている淡い光が見えてきた。
壁にかけられた平らな何かだった。かけられた布から光が零れている。

涙を流していた少女は悠理の視線に気づくと、にっこり笑ってそれを指差した。
そして、消えた。
85有閑キャッツアイ:04/08/02 21:19
あれはまさか・・・
悠理はそれに近づき、布に手をかけた。
その瞬間、淡い光がぼんやりと彼女を照らし出した。

太陽と、月と、星とが淡く光っていた。
3人の女神が悠然と微笑んでいた。
一人は太陽を頭上に捧げもち。
一人は月に口付けをし。
いま一人は星々のベールを暗闇へ向かって広げていた。

『三姉妹』だ。見つけた。
悠理はにっこりと微笑んだ。

清四郎には彼女の後姿と、煌く髪の輝きしか見えなかった。
暗闇の中に、それだけしか見えなかった。

彼女が額縁に手をかけるのが見えた。

いかん!盗まれる!
清四郎はふうっと深く息を吸い込んだ。
「フム!」
彼が気を込めると金縛りの鎖が吹き飛んだ。
その瞬間、部屋を覆っていた光が消えうせたので、彼には驚いて振り返った彼女の顔が見えなかった。
86有閑キャッツアイ:04/08/02 21:21
やばい!

悠理は瞬時に今せねばならないことを思い描いた。
一つ、清四郎から顔を見られないようにして逃げること。
一つ、野梨子をともかく救出すること。
一つ、三姉妹を盗むこと。

いかん、一度には無理だ。

一方で清四郎も逡巡していた。
目の前にいるのは紛れもなくキャッツだ。絵を盗ませるわけにはいかない。
しかし彼女は悠理かもしれない。彼の大事なあの人。

「一つ取引をしませんか?」
清四郎は低い声で言った。じり、と一歩彼女に近づく。
「その絵を盗まないと約束するなら、今回は見逃す、そういうことではいけませんか?」
また一歩近づく。もちろん相手からの返答はない。
「こちらも捜査官の大半が眠ってるんです。さすがにあなたたちにまでは手が回らない。」
それなら近づくなよ!と悠理は咄嗟に再び彼と肉弾戦を交えることを覚悟した。

「そんな取引必要ないわ。『三姉妹』も、妹たちもいただくわよ。」
背後から突然聞こえた声に清四郎は慌てて振り返ろうとしたができなかった。
麻酔薬をたっぷり仕込んだ吹き矢が彼のうなじに命中したのだった。
彼はその場に力なく崩れ落ちた。
87有閑キャッツアイ:04/08/02 21:25
「ねえちゃん!」
「遅くなってごめんね、悠理。」

意識を失った清四郎の背後から現れたのは、暗視スコープを装着し、やはり野梨子特製の吹き矢を手にした可憐だった。

「この部屋の主の経緯は老姉妹から催眠術で聞きだしたわ。詳しい話は後よ。」
「『三姉妹』は見つけたよ!でもねえちゃん、野梨子が!」
悠理が野梨子にとびつく。美童はその勢いで床に突き落とされてしまう。
「大丈夫よ。『三姉妹』をそこからはずして屋敷の外に持ち出せば琴子の力は消えるはずだから。」
情けないほどに顔を歪めた悠理は野梨子の胸に耳を当てて、ひどく遅いが規則正しく打つ鼓動が聞こえることを確認した。

可憐はつかつかと寝室に潜入すると、『三姉妹』に再び布をかけ、壁から取り外した。
すると、壁にハンドルのようなものが現れた。
彼女が無表情にそれを回すと、ベッドの頭側の壁が唸りを立ててスライドし、さらに続き部屋が現れた。

そこにはぼろぼろになった白いワンピースを着た白骨死体が鎮座していた。
長い黒い髪がその傍にうねって散らばっていた。いくらかはまだその頭に辛うじてしがみついていた。

「ひっ。」
「これが琴子よ。恋人との仲を反対され、父親の手でここに閉じ込められて餓死した哀れな少女。」

だから、彼女の“お人形たち”はみんな、つがいなの。
叶えられなかった彼女の恋を彼女はお人形に託したのよ。
彼女の姉たちは、妹の夢を守ってやっていたの。

「さ。あんたは野梨子をお願いね。あたしは『三姉妹』を運ぶから。」

可憐はかわいい末の妹に、ウインクを投げた。

           〜『三姉妹』みごといただきました。
88名無し草:04/08/02 21:28
************
というわけで強引にミッション完了しました。
足りないところの補完をお願いします。

琴子、死霊じゃなくて老婆の生霊でもよかったかと
思いつつ。
89名無し草:04/08/02 23:17
>キャッツ

素晴らしい!
自分も続きを書きたいと思いつつ、どうにも手が出ませんでした。

>いかん、一度には無理だ。
妙に冷静な悠理に笑いました。
で、颯爽と登場した可憐に惚れそうです。

まだ清四郎にとって、キャッツ=悠理とはなりきっていないけれど、
次回への伏線となりそうですね。
美童と魅録の活躍がなくて残念だったけど、これも今後に期待v
90名無し草:04/08/03 00:00
『鬼闇』うPします。
>>48の続きです。
オカルト方向へ進んで行きたいと思いますので、苦手な方はスルーして下さい。
毎回大量で申し訳ないですが、今回も大量うPですみません。
91鬼闇(25):04/08/03 00:02
三日目、祭りの日の朝はどんよりとした厚い雲で覆われ、雷鳴が轟く嫌な天気だった。
朝食を終えた六人は、あてがわれた部屋で今日の計画を立てていたのだが、微妙な天候を恨め
しそうに眺めていた。
「おかしいですわね、天気予報では晴れと言ってましたのに。」
野梨子はさっき見ていたTVを思い出しながら言った。
「あんまり当てにならないもんだな。」
魅録も空を眺めながら呟く。
「雨が降ったら、せっかくの祭りもだいなしじゃん。」
悠理は、雨が降りませんように…と、天に向かってお祈りを始めた。
――と、その時。
ズンッ!
地面から突き上げる様な大きな揺れを感じた。

「うわっ!」
「な、何だよ!」
悠理と魅録の叫び声とほぼ同時に、今度はグラグラッと左右に大きく揺れ始めた。
「キャーッ、地震よ、地震!」
「早く、安全な場所に避難しませんと!」
可憐と野梨子が叫んだものの、何処に避難すればいいのかわからない。
「安全なとこってどこだよぉ!」
美童の叫びが皆の気持ちを代弁していた。
「ともかく、大きな道具から離れて!」
清四郎の声と同時に、突然壁の方から箱がバラバラと落ちてきた。
「いてっ、いててっ!だーっ!」
何個か悠理の身体に当たったらしく、一人声を上げている。
やがて揺れが収まり、静けさが蘇ってきた。
一分にも満たない時間だったが、やけに長く感じた。
92鬼闇(26):04/08/03 00:03
「みなさん、怪我はありませんでしたか?」
義正が部屋へとやって来た。
「大丈夫ですわ。」
そう野梨子が答えた時、一人異を唱えたものがいた。
「大丈夫じゃないやい。痛かったじょー。」
悠理がしきりに頭をなでていた。
「どれ、悠理、ちょっと見せてください。」
清四郎が悠理の髪を掻き分け、傷が無いか確かめた。
「大丈夫、こぶにはなっているようですが、傷は負っていません。」
「そうかい、安心したよ。こっちも怪我人はいないのだが、なにしろ部屋の散らかり方がひどくて
ねぇ。」
義正は皆の無事を確認して安堵した様子だったが、これから家の中を片付けなければならない
手間を考え、一息ついた顔に翳りを帯びていた。
「僕達も手伝います。」
「そうですわ、こんなにお世話になっていますもの。それぐらい私たちにも手伝わせて下さい。」
清四郎と野梨子の言葉に、義正は有り難いような、申し訳ないような表情を見せた。
「有難うございます。とても助かります。私は母の所へ様子を見に行きますので。」
深々と頭を下げる義正に、可憐と美童が何でもないという風にサラリと答えた。
「気にしないで、おじさま。」
「そうそう、僕達、これくらいしか出来ないしね。」
義正は二人の暖かい言葉に微笑みを返し、菊江の元へ向かった。

佐々の大きな屋敷には部屋の数が多い。
そこで六人は、手分けして部屋を片付けることにした。
「あたしと野梨子でキッチンを手伝ってくるわ。そこが一番大変だと思うの。」
可憐の言葉に野梨子も頷き、早速台所へと向かって行った。
「僕は奥の座敷を見て来るね。」
「じゃ、俺は外を見てくるよ。」
美童と魅録も、それぞれの持ち場へと消えて行った。
93鬼闇(27):04/08/03 00:04
「あたいは何をすればいいんだ?」
清四郎は悠理に何をさせようか悩んだ。
この全くお嬢様らしくない悠理ではあるが、日本でも有数の財閥の娘であり、お嬢様であることに
変わりは無く、小さな頃から掃除は全てメイドがやっているに違いない。
おまけに、元々器用とは言えない悠理に、片付けろと言っても、果たして出来るのだろうか?
しばらく悩んだ後、結局悠理には今自分達が居るこの部屋を片付けさせることにした。
自分達にあてがわれた部屋である。
もし、乱雑のままであれば、全部終わってから片付ければ良いだけの話だ。
おまけに部屋に転がっているのは、いくつかの箱と巻物である。
恐らく掛け軸か何かだろうが、蔵にしまっていない所を見ると、そう高価な物でもないだろうと清四
郎は判断した。
「僕は居間や仏間を片付けますから、悠理はこの部屋をお願いします。いいですか、掛け軸か何
かだと思われますので、絶対に破かないように気を付けて下さい。解りましたか?」
「あたいだってそれぐらい出来るわい!」
悠理は嫌みたっぷりの清四郎にムカついて、つい叫んではみたものの、上手に片付ける自信は
あまりない。
「そうですか、それは何よりです。では、お願いしますよ。もし破ったら、弁償ですからね。お金で済
めばの話ですが。」
清四郎はそう脅かすと、部屋を出ていった。

「ちぇっ、いっつも一言余計なんだよな、清四郎は!」
プンプンむくれながらも、悠理は早速部屋を片付けることにした。
手始めに、自分の頭に降ってきた細長い箱を手に取ってみる。
「こんなのが当たりゃ痛いに決まってるよな。つーか、これがあたいじゃなくて野梨子だったら、
大怪我だったぞ。」
それは相当に古い桐の箱だった。
また、箱から少し離れた所にその蓋らしきものを見つけた。
蓋の表に書かれた達筆な文字は薄れ、何とかいてあるのかさえ解らない。
いや、ハッキリ書いてあっても悠理に読めたかどうかは疑問であるのだが。
先程の落下の衝撃で縛ってあった紐が切れたらしく、切れ端が下に落ちていた。
94鬼闇(28):04/08/03 00:05
「えーっと、中味、中味はと…、あった!」
1メートル程先に転がっていた巻物を見つけ、何気に広げてみる。
「何だ?」
それは奇妙な巻物だった。
見るからに鬼と思わしき姿に向かって、武士が刀を突き出している絵が描かれていた。
「何だこりゃ?桃太郎の話かぁ?つまんねーの。」
悠理はくるくると巻いて箱に入れ、蓋を閉じようとしたのだが、紐が途中で切れている為、蓋をのせ
ただけでやめた。

「これ、どっから落ちてきたんだ?」
地震に気を取られていた為、どこから落ちてきたのか全く解らない。
ふと壁を見ていると、一画に黒い空間が出来ていた。
そこには小さな戸袋が口をポッカリと開いていた。
地震の振動で開いてしまった戸袋は、壁と同じ色で出来ており、よく見ないと解らない。
悠理はそこへ落ちた巻物などをかき集め、押し込んだ後に扉を閉めようとした。
「この扉、取っ手も何もないじゃん。」
それでも何とか扉を閉め、口を開けていた戸袋が、あっという間に姿を消した。
「へんな棚だよな。閉めたら今度開けられないじゃんかよ。ま、片付けばいいんだよな。」
悠理はそう呟いた後、居間へと向かった。

居間には義正が戻っていて、清四郎と一緒に居間を片付けていた。
「終ったじょ。」
「有難う、悠理君。ここも、もうすぐ終るよ。」
義正がそういい終らないうちに、美童、魅録が戻ってきた。
「こっちも片付いたよ。」
「外も異常なかったしな。」
やがて、可憐と野梨子も戻り、全員が居間に揃った。
「これで全部終わりました。皆さん、有難うございました。今、冷たいお茶を持ってきますから。」
義正は礼を述べると、志津子のいる台所へと向かった。
95鬼闇(29):04/08/03 00:06
ふと、TVを見ていた美童が口を開いた。
「ねぇ、今の地震、全然ニュースになってないよ?」
「いくら遅くても、もう色々流れてもいい頃よねぇ。」
「海岸端ですのに、津波さえありませんのね。」
美童、可憐、野梨子の言葉に清四郎も首をひねっていた。
「そう言われてみれば…。おかしいですね。」
――まさか、ここだけの地震ってわけでもないでしょうに。

「お待たせしました、どうぞ。」
義正が、冷たい麦茶を持った志津子を伴って部屋へ入って来た。
「可憐さんも、野梨子さんも有難う。とても助かりましたわ。それと、悠理ちゃんも皆さんもご苦労様
でした。」
志津子はお茶と共に、冷えた水羊羹を差し出した。
「やったーい!あたい、水羊羹大好き!!」
悠理はいつものごとく、万歳をして喜びを全身で表している。
「水羊羹じゃなくても、口に入るものは何でも好きなくせに。」
可憐がポツリと呟いた。

「おっちゃん、ばっちゃんはどうだった?」
悠理が珍しく気の利いたセリフを口にしたたものの、目はしっかりと甘い物が苦手な男性陣の水羊
羹を狙っていた。
自分の分はというと、とっくに平らげてしまっている。
「ええ、大丈夫なことは大丈夫なんですが…。」
「どうかしたんですか?」
義正の歯切れの悪い言葉に、魅録が問い掛けた。
その隙に、悠理が隣にいる魅録の皿へと手を伸ばした。
魅録は呆れつつも皿ごと悠理にやり、悠理は嬉々として水羊羹にかぶりついた。
「外は危ないと言っても、どうしても祠まで行くと言い張るんですよ。」
義正にしては珍しく、溜息を漏らしていた。
96鬼闇(30):04/08/03 00:07
「祠ですか?」
悠理以外の五人が顔を見合わせた。
「ええ、家から北東に向かって五分程歩いたところに、小さな祠があるんです。」
「僕達も一緒に行っても構いませんか?」
義正の話に、興味を持った清四郎が訊いてみた。
神社が五つもある上に祠まで存在すると聞いては、一体何が祀られているのか見てみたい気が
したのだ。
野梨子や魅録の顔を見てみると、どうやら自分と同じ思いらしく、目が輝いている。
三人が行くとなれば残りの三名も付いて来るだろうし、嫌なら家に残っていれば良い事だ。
清四郎はにっこりと笑みを浮かべた。
「その方が母も喜ぶでしょう。有難うございます。」
義道は頭を下げた。
そんな微かな緊張感など全く気にしない悠理は、魅録の分も食べ終わり、次に清四郎の水羊羹を
狙って手を出した。
ピシッ!
悠理は手を叩かれ、慌てて引っ込めた。
「お前、甘いもの好きじゃないだろ?なんだよ、ケチ!」
「自分の分どころか魅録の分も食べたのでしょう?水羊羹は僕も好きなんです。」
菊江のことで安心したのか、二人のやりとりを見て、義正はハッハッハと声を出して笑った。


「あーあ、この祠、支柱にヒビが入っとる。」
祠の前では男性が二人、屈み込んで中を調査していた。
二人共同じ作業着を着ており、どうやら町の青年団の衆が、地震による建物の損傷を調査してい
るらしい。
「とりあえず、この柱をなんとかせにゃいかんから、この鏡を移さんとな。鈴木、お前、この鏡を箱
に入れろ。回収したら神社にでも置いてもらう事にしようや。」
「はい、佐藤さん。」
年長の佐藤が鈴木と呼ばれた若い男に向かって指示をしていた。
97鬼闇(31):04/08/03 00:08
「いかん!この祠の鏡を動かしてはならん!」
突然割って入ってきた声に、二人が揃って振り向いた。
その声の持ち主は菊江だった。
道子と倶楽部の面々に連れ添われ、祠の様子を見にきていた。
今日は『鬼封じ』から千年目に当たる。
菊江は今朝から妙な胸騒ぎを感じていた。
おまけに先ほどの地震である。
何か不気味な気配を感じられずにはいられなかったのだ。
「ばあ様!すみません、うちのばあ様がどうしても祠を見に行かねばならんと言って。」
青年団の衆に睨まれてしまったら、これから先、面倒なことになってしまう。
道子は何とか菊江を静めようと必死だった。

「佐々先生のとこのばあさまでねえか。ばあさま、どうして動かしちゃいかんのかね?」
佐藤が菊江に向かって凄んだ。
「昔から言い伝わったものじゃ。鏡、特にこの北東の祠の鏡は動かしてはならぬと。」
「そんなこと言ったってよ、移さないと仕事になんねぇがな。おまけに、そんなこと言ったって今の時
代の言葉じゃないわな。」
佐藤が苦笑いしながら答えた。
菊江の言葉を、まるっきり信用していないらしい。
そんな最中、清四郎も菊江のただならぬ様子を感じ、口を挟んだ。
「やめておいた方がいいんじゃありませんか?お年寄りの話を蔑ろにして、良い結果になった話を
聞いた事がありません。」
佐藤は渋い表情を浮かべていたが、菊江の言葉を真に受けるわけにはいかなかった。
「あんたの言いたいこともわかっちょるが、ほれ見てみなせ。ここが割れておるのがわかるだろ?」
清四郎が佐藤の指差した場所を覗き込んだ。
確かに祠の支柱に大きなヒビが入っている。
「ええ、確かに。」
「放っとくと、ここからどんどん傷んでいく。わしらは何も鏡を盗むわけでもねぇ。祠をきちんと直して
おきたいだけだ。」
鈴木も同じようにコックリと頷いた。
98鬼闇(32):04/08/03 00:09
「兎に角、鏡を動かさんと、修理も何も出来ないからな。」
佐藤は再び鏡に手を掛けようとした。
「いかんと言うとる!」
「僕もおばあさんの言うとおり、動かさない方がいいと思いますが。」
菊江と清四郎の言葉に二人はしばらく考え込んでいたものの、年寄りと、どう見ても島の者でない
若者達をやり過ごすことにした。
「はいはい、わかりました。」
佐藤は鈴木に向かって小声で耳打ちをした。
「とりあえず、このばあさん達が帰ったら動かすことにしよう。」
「そうですね。」
佐藤と鈴木は愛想笑いを浮かべた。
「じゃ、このまま修理しますから、安心してください。」
「そうじゃ。」
菊江は安心したように、皆を連れて家へと戻って行った。

「よし、帰ったな。じゃ、始めるぞ。」
「はい、佐藤さん。」
鈴木が箱を引き寄せ、蓋を開けた。
「こんな古ぼけた鏡なんぞに、何があるって言うんだ?多少の歴史的価値はあるかも知れんが。」
そう言って佐藤が箱に収め、近くの刀守神社に行こうと十歩も歩いた時――。
突然眩いほどの閃光と共に、耳を塞ぎたくなるほど凄まじい轟音が響いた。
ドーン!!
振り向くと祠に雷が直撃し、その姿は跡形も無く飛び散っていた。

「危なかったなぁ。ばあさまの言うとおりにしなくて良かったよ。祠は作り替えんといかんな。」
「そうですね。」
つい先ほどまで祠が建っていた場所を見つめ、二人は同時に大きく息を吐き、踵を返そうとした。
ふと、目の端に何かが揺らめいたような気がした。
目を凝らして見ると、黒い煙のようなものが、すぅーっと一筋立ち上った。
その煙は消えることなく、ゆらゆらと上っては広がっていく。
99鬼闇(33):04/08/03 00:10
「な、何だ?何か燃えたのか?」
佐藤はただ煙を見つめ、鈴木も口を開けたままボーッと眺めている。
二人の足は、まるで地中から押さえ込まれたかのように一歩も動けぬまま、ただ昇り続ける煙を
見ていた。
その間にも煙はどんどん広がり続け、見る見るうちに空を、そして町全体を覆い尽くそうとして
いく。
煙、いや、もう闇と言った方がいいかも知れない。
やがて、町全体が闇に覆われた。

「さ、佐藤さん…。」
鈴木の声は泣き声に近いものだった。
何かが現れる。
そんな恐怖に二人は怯えていた。
「これと、ばあさまが言っていたことは関係ないさ、きっとな…」
「そ、そうですよね、僕達が悪いわけじゃないですよね…」
「だから、さっさとずらかるぞ。」
二人はすくんで動かない足を、無理やり前へと進ませようとした。

キラリ。
鈴木は闇から金色に光る何かを見つけた。
「佐藤さん、アレ…」
そう声をあげようとした時だった。
突然巨大な腕が伸びてきて、二人は身体をもの凄い力で掴まれた。
「ぎゃっ!」
「うわっ!」
鏡の入った箱だけが、ゴトッという音を立てて地面に落ちた。
もがくことも声を出すことも出来ない程強い力で、体を拘束されていた。
二人は空中へと持ち上げられ、闇の中へと引き込まれた。
100鬼闇(34):04/08/03 00:12
「う、嘘だろ…」
鈴木は目を見開いたまま、閉じる事も視線を逸らすことも出来なかった。
そこで鈴木が見たものは。
頭部には鋭い二本の角、金色に光った目、そして耳まで裂けた口からは涎がダラダラと流れおち
ている。
――鬼だ。
それは正に鬼としか言いようがなかった。
「…あ…あ…」
鈴木は段々と鬼の口が近づいて来るのを感じた。
そして、耳に聞こえたのは、脳に直接響いてくるような重く掠れた声。
――人間を食うのは千年ぶりだな…
「ギャーッ!」
人間の断末魔の叫びが、町全体に響き渡った。

                    【つづく】
101名無し草:04/08/03 07:18
>有閑キャッツ
とりあえず終わらせてくれてありがとう!
私もずっと続きが気になってたのでスッキリしました。
あのとっちらかった話をよくまとめたなぁと感心しました。
萌えどころもあり、楽しませていただきました。

さぁ心機一転、次のミッションはみんなで頑張りましょう!

>鬼闇
実は今までスルーしてたんですが、ちょっと読んでみたら面白くて・・・。
一気に最初から読み返してしまいました。
いや〜食わず嫌いはダメですね。
これからは楽しみに待ってます!
102名無し草:04/08/03 16:34
>Deep river
続きが気になります。いったい過去に何が?!

>鬼闇
オカルトの王道ですね。うまい。

>有閑キャッツ
個人的には気絶したままの魅録が気になってたり。
突入する可憐に踏まれてたら笑える。
103名無し草:04/08/04 12:03
>鬼闇
今後の展開楽しみにしています。
104名無し草:04/08/05 11:25
<魅×野>の短編うpします。
苦手な方はスルーしてください。
春。
私は聖プレジデント学園の高等部へと進学した。
新しくて、まだ硬い制服に袖を通すと新入生の出来上がりだ。
中学生とは明らかに違うほんのり大人の雰囲気を漂わせた高校の生徒たちの中へ入っていく。

高等部は中等部の学び舎のすぐ隣だ。
登校する場所は半月前とほとんど変わらない。
しかし、私はひどく緊張していた。

私の胸はもう痛いほどに、
―――そう、痛いほどに。
鳴り続けている。朝から、昨夜から、いや、もっとずっと前から。
なぜなら、今日からあの人が聖プレジデントにやってくるから。

いつものように清四郎と待ち合わせて学校へ向かう。
相変わらず余裕たっぷりの笑顔の清四郎は新入生とは思えないくらい大人びて見える。

清四郎と他愛ない話をしながら、だが頭の中はもうあの人のことでいっぱいだ。
学校で彼と顔を合わせたら何と言おう。

「おはよう。久しぶりですわね」
「今日から聖プレジデントの学生ですわね」
「その制服似合ってますわよ」

いろいろな言葉を思い浮かべるものの、いざとなったらきっと、うまく言葉が見つからないような気がした。
きっと黙って立ち尽くしてしまうだろう。
気がつかないうちに、じっと顔を見つめてしまいそうな気がする。
毎夜毎夜、夢に見ていたその顔を。
正門の前で可憐と合流した。
いつもより気合の入った髪の可憐はほんとうに薄くだが化粧をしていて、とても綺麗だった。
どことなく彼女もそわそわして見える。

背後で女子生徒の大きな悲鳴が聞こえたので、振向かずとも誰が来たのかわかった。
「早くしろよーーっ! トロいな、お前!」
「と、トロいって君ねえ。君が無理矢理引きずってきたんだろ?」
「何言ってんだよ! 美童が女子生徒に囲まれて大変そうだったから救出してやったんだろ?」
「ほっといてよ。僕囲まれるの大好きなんだから……」
朝から悠理と美童が喧嘩している。微笑ましい光景に可憐と清四郎が笑う。
私は上の空であいそ笑いをした。
もうすぐ校舎が近い。

その時、あの人の声がした。

「おーーっす。おはよう!」
「魅録!!」

子犬のようにぴょんぴょん跳ねながら悠理が魅録に突進していった。
「こいつう、来たなー」
「来たぜーー」
ふざけて軽く殴り合っていた魅録がふと視線を私に向けた。
目が合うと、にこっと笑う。

心臓が大きく跳ねて音を立てた。
案の定、舌が上顎に貼り付いて声が出ない。

「今日からよろしくな」
「あ……」

何か言わなければと思った私の目の前に、すっと見慣れたウェーブが現れた。
「こちらこそよろしくね、魅録。何でもわからないことがあったら『私』に聞いてね」
「サンキュー」
「クラス発表してるわよ、行こ」
可憐の腕がするっと魅録の腕に回されるのを私は呆然と眺めていた。
強引な彼女に引きずられながら魅録はこちらを振向いて、後でな、というジェスチャーをする。
私の横で美童がため息をついた。
「なんだ、そういうこと。せっかくスウェーデンから来たのにがっかりだな」

すっかり萎んでしまった気持ちをずるずる引きずりながら、クラス発表の場に向かう。
壁に貼り出された紙の前にたむろした生徒達をかきわけ、自分の名前を探す。
私のクラスに清四郎の名前は無かった。可憐、悠理、そして美童の名も。
ふぅーっとため息をつきかけた私の目が何かを捕らえた。

  松竹梅魅録

「よお。同じクラスだな、野梨子。よろしくな」

目の前にあの人、松竹梅魅録がいた。
鮮やかなピンク色の髪が揺れる。
「あ……、こ、こちらこそよろしく……」
差し出された彼の手を恐る恐る握って、握手した。

突然、その手にぐっと力が入ったかと思うと、彼に引き寄せられた。
えっと思う間もなく、私の体が彼にぶつかる。
私の背後を頭上に机を担ぎ上げた男子生徒の一群が通った。
「はい、どいてどいて。危ないよー」

ほんの一瞬だが夢にまで見たあの人に抱きしめられて、目がくらむような思いがした。
背中に回された手が温かい。
「大丈夫か? 行こうぜ、クラス」
魅録が私の手を握って群衆から抜け出した。
目の片隅に私に視線をくれる清四郎が映った。

私を引っ張り出すためにつないだのかと思った手は、そのまま離されることなく、
魅録に手をとられながら私は歩いた。
無理矢理手を振りほどくこともできず、かといって積極的に握ることなどもっとできず
なるべく力を入れないようにした手をとられながら、私は歩いた。

魅録は片手をポケットに突っ込んで、あちこち面白そうに眺めながら歩いている。

さっき私を引き寄せた手が、背中に回された腕が、私と手をつなぐ仕草が
あまりにも手慣れていて少し私は癇に障った。

そんなふうに他の女の子と一緒にしないでください。

心の中で呟いたが、もちろん口にできるはずもなく。
そして心臓は相変わらず激しく踊り、
私は魅録に手をとられ、
魅録は平気な顔をして歩いている。

息を吸った。
そして一息に吐いた。

私の、私たちの高校生活の始まりだった。





おわり
109名無し草:04/08/05 13:36
>言葉にできない(以下略)
初々しくって可愛いですね。
可憐は野梨子の様子に気づいててわざと腕を組んだのかな?
110名無し草:04/08/05 17:01
>言葉に
高等部入学の頃って、今まであまり無かったから、
新鮮で面白かったです。
野梨子と魅録はどうなっていくんでしょう?
続きも読んでみたいです。
111名無し草:04/08/05 21:41
>言葉
わーい、魅×野待ってました。原作の二人の出会いの場面が
大好きなので、こういうのすごく萌えます。
続き、思いついたら是非うpして下さい!
112名無し草:04/08/06 02:03
清四郎×雅央(悠理のそっくりさん)の短編をUpします。
同性カプで、少々18禁的表現を含みます。
苦手な方はスルーして下さいますよう、お願いします。
5レスです。
113Fake―1:04/08/06 02:03

いつもの部屋で、僕はあの人を待っている。
801号室。
彼がこの部屋を選んだ理由を、僕は知っている。
だけど―――気付かないふりをする。


待ちくたびれてソファで転寝してしまった僕の前髪を、やさしい指が梳き上げた。
「…遅くなって、すみませんでしたね」
その手を取って、そっと頬に押し当てた。
清四郎さんは優しい瞳で笑い、キスをしてくれた。
それから、軽々と僕を抱き上げた。


シャワーに打たれながら、僕達はいつものように愛し合う。
だけど、唇が熱い。
いつもよりさらに激しく、彼は僕を貪り、食い尽くそうとする。

だって―――今日は彼女の、誕生日。

114Fake―2:04/08/06 02:04

僕がアメリカでの生活に疲れて日本に戻ったのは、1年と少し前だった。
秀明と別れた僕は、新しい恋人と暮らす彼を見ていられなかったんだ。

いろいろと世話になった剣菱夫人と迷惑をかけた悠理さんに、まず挨拶に行った。
彼女の気のいい仲間達は、同性愛者である僕を決して色眼鏡で見ようとはせず、
励ましてくれた。
夏休みに入ったばかりの彼らから遊びに行こうと誘われ、僕はその好意に甘えた。

「なー、魅録!!次、あれ乗ろーよ」
「あぁ!?もう勘弁してくれよ、悠理〜」
遊園地ではしゃぐカップルを見送る彼の、視線の意味に気付いたのは僕だけだ。
「あーあ、彼氏ができてもちっとも変わらないよな、悠理って」
「魅録が気の毒ですわ」
「いいのよ、あれで幸せなんだもの。ねえ、清四郎」
「そのようですな」
そう言って、清四郎さんはにこにこと微笑んでいた。
幼なじみである野梨子さんも、恋多き女である可憐さんも、そして、美童さんでさえ
彼の想いを見抜いてはいなかった。
彼らは、あまりにも近くにいすぎたんだ。

「ねえ、辛くないの?」そっと隣に立って僕は問う。
「…もう、慣れました」表情ひとつ変えず、彼は答えた。

115Fake―3:04/08/06 02:05

それまでは、仲間の誕生日は皆で祝う習慣だったらしい。
だけど、その日、清四郎さんはひとりぼっちだった。
悠理さんが20歳を迎える瞬間、彼女に「おめでとう」を言う役は、ただ一人の男が
射止めてしまったから。
そうして、幸せな恋人達は二人きりでバカンスへと旅立って行った。

ひどく酔っていた彼を見つけ出し、ホテルに誘ったのは僕の方だ。

「申し訳ないんですが、男性には興味がないんですよ」
そう笑いながらも、その人は僕を無理に振りほどこうとはしなかった。

派手なネオンを見つけて飛び込むと、彼は部屋のパネルを愛おしげに指で撫でた。
801という光る数字に、小さく「誕生日おめでとう、悠理」と呟く。

116Fake―4:04/08/06 02:07

彼は僕の瞳を覗き込み、躊躇いがちに頬に触れた。
唇に、自嘲気味な笑みが浮かぶ。
「どうして…こんなに似てるんです…?」
答えずに微笑み返すと、彼は唇を噛んだ。
「顔も、髪も、指まで…瓜二つなのに…なぜ、悠理じゃないんだ」

「手術したんだ。性転換も…だから、僕を悠理さんだと思っていいよ」
言いながら、震える指先を胸へと誘導すると、息を飲む音が伝わってきた。
「――なぁ、清四郎。抱いてよ」

彼女の声音を真似ると、その人の表情が悲しく歪んだ。

117Fake―5:04/08/06 02:08

何度その腕に抱かれても、いくら逢瀬を重ねても、僕達は恋人同士には
なれはしない。この想いが、成就することは、ない。
僕は愛されてはいない。ただ、必要とされているだけだ。


頬に落ちる熱い雫が汗ではないことを、僕は知っている。
喘ぐように、愛しいひとの名を呼ぶ切ない声を、僕は今日も聞いている。


「愛してる」と彼は言う。僕の中の彼女に。

僕は知っている。僕は、彼女の代用品だと。

彼は知っている。僕の想いを。僕が、彼女ではないことを。
彼女が決して手に入らないことを知るのと同じように。


それでも、僕らが離れることはないだろう。
いつか―――彼が一人で立てる日が来るまでは。


<終>
118名無し草:04/08/06 02:08
以上です。お目汚し失礼いたしました。
*悠理の誕生日がわからないので、
都合上、夏生まれの設定にしました。
119名無し草:04/08/06 07:33
>Fake
ヤオイは嫌いだけど、このお話は抵抗なく読めました。
ふたりの心情に説得力があるからかな。
雅夫君の切なさと
悠理を思うあまり退廃的な道に迷い込んでしまう清四郎がいい。

相手が野梨子でも可憐でもそうだけど清四郎は恋情の激しさゆえに、
ちょっと歪んだり病んでいる役回りが合う  ・・・ような気がするw
120名無し草:04/08/06 16:47
>Fake

私もヤオイは抵抗あるけど
このお話はいいと思った。
たぶん下地が悠理←清四郎だからなんじゃないかな。
自分の性を売り物にしてた雅夫君だからこその
切なさみたいなものがよく出てたと思う。
121名無し草:04/08/06 19:23
>Fake
最初801号室に爆笑したんだけど
雅夫が悠理の声を真似するあたりで泣きました。

泣こうが笑おうが萌えてる自分がおかしかったよ。
122名無し草:04/08/06 19:26
>121
に言われるまで気づかなかった801号室。
ずいぶんデカいラブホだな、とw
123名無し草:04/08/06 20:47
>Fake
はじめコメディかと(801号室だしw)思って読んでましたが切なくなりました。
私もヤオイは苦手な方ですが、するりと読めました。
大人っぽくて良かったです。
>122
その着眼点が受けるよw
124名無し草:04/08/06 21:23
>801号室。
>彼がこの部屋を選んだ理由を、僕は知っている。
>だけど―――気付かないふりをする。

彼がこの部屋を選んだ理由……やおい……
125名無し草:04/08/06 22:01
>Fake
凄く良かった。だけど、これだけ言わせて。
MMMとMTFは全く違うものだよ。
126名無し草:04/08/06 22:20
なに? MMMとMTFって?? 
127名無し草:04/08/06 22:46
>126
MMM:男性の身体で、男性の心を持ち、男性を愛する人。
MTF:身体は男性で、心は女性の人(だから一般に男性を愛する)。
128名無し草:04/08/06 23:03
>125,127様
Fake作者です。ご指摘ごもっともです。
個人的に、清四郎はゲイではないと信じているので、
完全な男同士というのは抵抗があり、手術をしたという設定にしました。
投稿した後に読み返して、やはりちょっとおかしかったかな…
と思っていました(雅夫に『僕』って言わせてるし)。
すみませんです。読み流してやって下さい。

801については、誕生日を真夏にしたかっただけで、
あまり深く考えていませんでした。
いろんな視点で笑っていただけて光栄(?)です…。
重ね重ね、失礼いたしました。
129名無し草:04/08/06 23:09
なんでこれにMMMやらMTFが関係あるのかわからない。
愛しい悠理にそっくりな男(たまたま同性愛者)と・・・って話でしょ。
わざわざ「これだけは言わせて」なんて主張、ここでどんな意味があるんだ?
130名無し草:04/08/06 23:12
いや、だからマチャオが手術したってのが問題なんでそ。
もう終わってる話なのに129がわざわざ蒸し返すことナシ
131名無し草:04/08/06 23:20
>129
(´_ゝ`)プッ
132125:04/08/06 23:30
うわ、なんか険悪だ?スマソ
>作者タン
わざわざありがd意図よくわかりました。
>129
確かに言い方悪かったかも。
でも「これだけは」じゃなくて「これだけ」
だから。そんなに主張したつもりはないのよ。
気を害したならごめん。
133名無し草:04/08/08 15:13
雅央といえば、雅央と関係のあった市会議員と悠理の話が読んでみたいなぁ
134名無し草:04/08/08 20:17
>133
白鹿流のお弟子さん達にも大人気な彼だねwイイカモ
135<暴走愛>:04/08/08 23:50
暴走愛うpします。
昼ドラ泥沼系なので、苦手な方はスルーお願いします。
清×可です。
>>http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/552

花篭を手に小さなガラス戸を押して中に入ると、すでに狭い店内は客で埋め尽くされていた。
可憐のジュエリーデザイン教室での先輩で、この店のうら若きオーナー・立花が
客の対応にてんてこ舞いをしている。

「おめでとうございます、先輩。盛況じゃないですか、大成功ですね」
「ありがとう。最初は物珍しいのもあるからね。来月以降が勝負よ」
立花は慣れない化粧をした顔で微笑むと、肩をすくめてみせた。
可憐と立花が語らっていると、
ガラスケースを初老の男性と共に覗き込んでいた女性がオーナーに声をかけた。
「このデザインのブレスレットが欲しいのだけれど……」
艶々としたセミロングの黒髪が誰かに似ている。
何気なくその女性客の顔を見た可憐はあっと声を出す。
「和子さん!」

菊正宗和子は可憐の姿を認めると、驚いた顔をした。
「可憐ちゃん。驚いたわ」
「私の先輩が始めたお店なんです。素敵でしょ?」
談笑しながら、可憐は和子の連れらしい初老の男性に軽く会釈した。
和子は笑顔を崩さないものの、どことなくそわそわした様子だ。

可憐達に遠慮していた立花が商品の説明を始めた。
「申し訳ありません、こちらのデザインはブレスレットはございません。
 ご注文いただけましたら、お作りいたします。少々お日にちはいただきますけれど」
少々動揺した様子の和子は立花に作り笑顔を見せる。
「ああ、それならやめとくわ。あまりこっちに来ることないから、取りに来るのも面倒だし」
「もし良かったら私がお家までお届けしましょうか、和子さん。久しぶりにおじ様達にもご挨拶したいし」
可憐の申し出に和子は顔を上げた。
紙のように白い彼女の顔に可憐ははっとする。
強張った顔で和子はしどろもどろで言い訳をした。
「ありがとう……相変わらず優しいのね、可憐ちゃん。でも、せっかくだけど、
 私もう、あの家には住んでないの。私だけじゃないわ。父も、母も……もちろん清四郎も。
 誰もいないの、あの家には。だから、そう。ブレスレットはいらないわ。
 とても素敵なデザインだけど、ありがとう。ごめんなさい」

そう言い残すと、和子はそそくさと連れの男の腕に手を回し、店を出て行った。


剣菱家の応接間で悠理は興味津々に指輪やネックレスを手に取った。
「へえー。可愛いデザインだな。いいよ、母ちゃん好きそうだし、それ全部もらっとくわ」
「毎度ありがとうございます」

可憐は微笑むとケースの蓋を閉じた。
さすが剣菱悠理。可憐が持ち込んだ先輩の店のジュエリー、全てお買い上げである。
先輩が泣いて喜ぶわ。
努力家でかつ才能も持った立花の喜ぶ顔が目に浮かび、可憐は嬉しくなった。
商売が終わると、さっそく可憐は和子の話を切り出した。

「へ。和子ねーちゃんも、菊正宗のおじちゃんも、おばちゃんも家にいないって?」
「うん。なんかワケありっぽいのよ。どう思う?」
「どう思うって……旅行じゃねーの。家族揃ってパリとか」
「そうじゃなくて……」
「おい、悠理。ちょっと話があるんだ……ああ、失礼」
突然、ノックも無しに応接間の扉が開くと、神経質そうな顔をした剣菱豊作が顔を出した。
可憐は座ったまま少しだけ会釈をするが、豊作は構わず悠理に話し出した。
「今夜、銀座にオープンする剣菱大劇場に行ってくれ。七時からだ。遅れるな」
「何言ってるんだよ、突然! 今夜はダチの結婚式の二次会があるから無理だよ」
「二次会はキャンセルだな」
「無茶言うなよ!」
「文句言うな。普段好き勝手してるんだから少し位都合つけろ。わかったな、七時だぞ」
悠理の抗議の声にも耳を貸さず、豊作は言いたいことだけ言うと可憐に挨拶もせず
さっさと出て行った。

ぶすっとした顔で悠理はソファーに横になる。
可憐は豊作の行動に呆れ果てた。
確かに悠理は毎日遊び呆けているかもしれないが、それにしても本人の予定も聞かずに
あんまりではないか。
そう言うと悠理はため息をついて頷いた。
「しょうがないよ。昔っから兄ちゃんはああいう奴なんだ」

どうしても和子の言葉が気になった可憐は、野梨子を訪ねることにした。
自分の部屋で花を生けていた野梨子は可憐の話を聞き終わった後も、しばらく黙って花を整えている。
可憐もしばらく花鋏の音に耳を傾ける。

高校を卒業して以来、女三人で遊ぶことはあっても、こうやって野梨子と面と向かって話すのは
初めてだということに思い当たる。
清四郎のことが自ずと彼女らにそうさせていたのかもしれない。
野梨子が聖プレジデントに進学を決めたことや、
そして清四郎がそれにも関わらず京都の大学を受験して合格し、
かの地へ移り住んだことからも清四郎と野梨子は別離したらしかった。
らしい、というのは可憐は一度として本人たちに確かめはしなかったからである。

清四郎が京都へ出立するその日、可憐は何のかんのと口実を使って見送りにも行かなかった。
美童の話によれば、清四郎が新幹線に乗り込むまで野梨子は唇を引き結んでじっと耐えていたが、
最後に清四郎が野梨子に「野梨子も体に気をつけて」と言った瞬間、涙が止まらなくなり
ハンカチで顔を押さえ嗚咽しながら彼が乗った列車を見送ったそうだ。

彼らの婚約の話はどうなったのだろう。
結納も結局しなかったようだ。清四郎と野梨子、どちらから婚約解消を言い出したのか。
ただ知っているのは、卒業ダンスパーティーの2,3日後、
清四郎が目の周りに誰かに殴られたような黒い痣を作って学校に出てきたことだ。
しかし、その痣の真相を知るものは誰もいなかった。
いや野梨子は知っていたかもしれない。

可憐は、と言えば何も知らなかった。
 そんなの。初めから私は清四郎のこと何も知らないわ。

彼女が知っていることと言えば、彼の唇、彼の体温、彼の指使い、彼の汗の匂い。
ただ肉の感覚のみを知って、彼の心は測ることさえ叶わない。
そう考えて可憐は苦笑した。
そう、私は何も知らない、清四郎のことを。今までも、そしてたぶんこれからもずっと。
いつの間にか鋏の音が止んでいた。
花を活け終わり、可憐に向き直った野梨子がきちんと居住まいを正して話し出した。

「―――いつかお話しする日が来ると思ってましたわ、可憐。ずっと清四郎に口止めされていたんですけど、
 やっぱりいつかは分かってしまいますものね」
可憐は野梨子の様子を訝しく思う。
「……清四郎が口止め? 何の話なの?」
野梨子は黙って立ち上がると、可憐を誘って庭へ出た。
とっぷりと暮れた白鹿家の庭は暗く、ところどころにある常夜灯がほんの少しの灯りを提供している。
日が暮れて尚、熱い空気が可憐と野梨子を取り巻いていた。
敷石を踏みながら野梨子の後に続いて庭を歩くと、菊正宗邸が見えてきた。
大きな家には夜になっても灯り一つ灯っていない。

「和子さんがお話しされたことは本当ですわ。今あの家には誰もいないんですの。
 おじさまもおばさまも、和子さんも」
「野梨子……。どういうこと? 一体、何があったの?」

可憐は急に背筋に寒いものが走るのを感じた。
なぜだか無性に怖かった。
知りたくない。

野梨子は真直ぐ可憐を見上げ、苦しそうに顔を歪めた。
「可憐……。お願い。もう限界ですわ、彼―――。どうか、清四郎を助けてあげてくださいな」
「清四郎を、助ける……?」
「お願い、清四郎を助けて……。私では駄目なの……」
可憐の腕の中に野梨子が飛び込んできた。
思わず彼女を抱きかかえた可憐の目に一つの灯りが新たに飛び込んできた。

今、野梨子が誰もいないと言ったばかりの菊正宗邸の一室に、灯りが灯った。


続く
141名無し草:04/08/09 00:13
>暴走愛
続きが気になって、ずっと待ってました!
わけありの和子、バラバラになってしまった菊正宗ファミリー…
そして、その部屋に戻ったのは、やはり彼なのでしょうか。
やっと豊作も絡んできましたね。
またまた続きが気になってしまいます…
142名無し草:04/08/09 23:40
『鬼闇』うPします。
>>100の続きです。
オカルト方向進む上、グロテスクな表現も含まれますので、
苦手な方はスルーして下さい。
143鬼闇(35):04/08/09 23:43
「何だ?」
悠理の問いかけに野梨子が答えた。
「人の声…みたいでしたわね。」
「何の声だよぉ。」
「耳から離れないんだけど…」
可憐と美童の顔色は既に青ざめている。

佐々の家に着いた菊江は部屋へと戻り、有閑倶楽部の面々は義正のいる居間にいた。
青年団の衆が祠の鏡を移動させようとしたこと、それを菊江が止め、家に戻ってきたことを清四郎
が義正に話していた。
「変な考えを起こさなければいいのだが。」
そう義正が呟いた矢先の雷鳴と絶叫だった。

その声と同時に、魅録は既に立ち上がっていた。
「清四郎、行くぜ。」
「みんなは中に入っていて下さい。僕達で行きます。」
「気を付けておくれよ。」
心配げな義正の言葉に二人は頷くと、外へと飛び出した。

「おい、まだ十時過ぎだよなぁ。」
信じられないという表情で、魅録が腕時計を見る。
針は十時八分を指していた。
勿論夜の十時ではない。
「ええ、普通なら燦々と太陽が照り付けている時間ですよ。」
そこに太陽の日差しは全く無かった。
空は夜と見間違う位に闇で覆い尽くされていた。
144鬼闇(36):04/08/09 23:44
「だったら何故こんなに暗いんだ?それに、さっきの…」
――何かが聞こえる。
「しっ、魅録、黙って。」
清四郎は音に集中した。
魅録も聞き耳を立てる。
初めは幻聴だと思った。
否。
間違いなく耳に入ってくる音。
ムシャ、グシャ、ボリッ。
まるで、肉食動物が獲物を貪っているような音だ。
清四郎の背筋に冷たいものが走った。
「おい、何の音だよ…」
魅録の声も心なしか弱気になっていた。

ピト、ピト、ピト…。
雨が降ってきた。
外に立っていた二人に当たった。
心なしか、当たる雨が暖かい。
「清四郎!お前、怪我してるのか?」
「魅録、あなたこそ…。」
二人は自分の身体を見た。
そこには点々と赤く染まっている自分の洋服。
ピト、ピト、ピト…。
雨は当たり続ける。
清四郎は自分の腕を見た。
当たる雨が赤かった。
ねっとりした赤い雨。
「違う、魅録。これは雨じゃない、血です!」
「なっ!」
二人は血の雨をよける為に軒先へと廻り、しばらく茫然と立ち尽くしていた。
145鬼闇(37):04/08/09 23:45
二人は空を見上げていた。
やがて雨が止んだと思ったら、何かがバラバラと降ってきた。
「…今度は何だよ。」
どうみても空から降るにしては少し大きな何かが、あちこちへと降っている。
ドン!
二人の側にも、その内の一つが落ちて来た。
ゴクリという息を呑む音だけが辺りに響く。
声もなく黙ったまま、二人はそれを見つめた。
人間の手だった。
手首から先は無く、グシャグシャになった断面は、まるで獣か何かに噛み砕かれたようだ。
ドン!
再び音がした。
振り向きたくなかった。
しかし、自然と身体が音をたてた方へと向いていった。
そこにあったものは――人間の首だった。
まるでマネキンの首が転がっているようだったが、マネキンではない。
本物の首である。
その顔には見覚えがあった。
つい先ほど、祠の前にいた二人の内の一人である。
その首の断面は、手首と同じようにグシャグシャになっていた。
あちこちからは悲鳴が聞こえ、町には人影さえ見えなくなっていた。
二人は何かを探るように、再び闇を見つめた。
146鬼闇(38):04/08/09 23:46
「どうしたの?二人とも血だらけじゃない!」
可憐が二人の様子に声を上げた。
魅録のTシャツと清四郎のポロシャツは、まるで赤い水玉のように点々と血が付着していた。
「みんな、よく聞いて下さい。絶対に外へ出てはいけません。」
清四郎の何時になく真剣な表情に、皆の顔が強張った。

「なんだよ、何があったんだよ!」
悠理がたまらないとばかりに声を高くして叫んだ。
何があったか知りたいという好奇心が多少あるものの、それ以上に得たいの知れない恐怖が
悠理を、皆を覆っていた。
清四郎は皆の顔を一通り見渡すと、静かに口を開いた。
「さっき祠の前で合った人達が、何者かに惨殺されました。」

「殺された?」
今まで何度も殺人事件や、人が死ぬ場面にも不本意ながら何度か遇ったことがある。
それでも先の菊江の言葉と、それを嘲った二人が死んだ事に何かしらの恐怖を感じ取っていた。
あの絶叫がまだ可憐の耳について離れない。
「じゃ、さっきの悲鳴は彼らだっていうの?」
「恐らく彼らでしょう。しかし…」
清四郎にしては歯切れの悪いセリフに、悠理は嫌な予感がした。
「しかし?」
「恐らく、人間の仕業でないことだけは確かです。」
「人間の仕業じゃないとしたら、誰の仕業よ?」
可憐がもっともな質問を投げかけるものの、答えられるものは誰一人としていなかった。
「また悠理関係?」
心霊関係が苦手な美童が、悠理にちろっと視線を投げかけながら聞いた。
147鬼闇(39):04/08/09 23:47
「あたいは何も感じないじょ。」
悠理の言葉に頷きながら、清四郎はもっと信じられない言葉を口にした。
「これは心霊とは全く別物だと思います。幽霊は人を食い殺したりはしませんから。」
「食い殺す?」
悠理は冗談とばかりに笑い飛ばそうとしたが、上手く出来なかった。
「ええ、彼らは食い殺されました。あの絶叫の後、外に出た僕達が浴びたのは血の雨でした。この
格好を見れば一目瞭然だと思いますが。」
清四郎の淡々とした口調が余計に恐怖を感じさせた。

「…でも、それだけじゃ食い殺されたという事にはなりませんでしょう?」
野梨子が強張った表情のまま口を開いたが、清四郎の答えが一層回りの空気を重くした。
「外には首や手が転がっています。それはまるで猛獣にでも噛み千切られたような断面でした。」
「げ、それじゃオカルトかスプラッタじゃんか!」
悠理も信じられないというように声を上げた。

「ああ、外は正にそのとおりだよ。」
今まで黙って聞いていた魅録は、あの惨状が忘れられないのか、重い口調で答えた。
可憐や美童、悠理の顔からは血の気が引いている。
元々色白の野梨子の顔は真っ青で、血の気すら感じられない。
「信じられないのは僕達も同じですが、とりあえず、あの人達を止めようとした菊江おばあさんに話
を聞いてみましょう
清四郎の言葉に、皆が沈黙を保ったまま頷いた。

                 【つづく】
148名無し草:04/08/10 17:26
>鬼闇
ついに血が降りましたねー。
六人は鬼とどうやって戦おうというのでしょう。
せめて東京にいたら魅録手製の戦闘グッズとか、
剣菱百合子所有のダイナマイトとかありそうですがw
続きお待ちしてます。
149名無し草:04/08/10 21:28
暴走愛、お待ちしてました!!
またまた波乱の予感ですね…菊正宗家に、清四郎に
一体何があったのか。
可憐に縋るしかない野梨子が哀れだ(つД`)
150名無し草:04/08/11 15:21
「横恋慕」をUpさせていただきます。
内容は魅録、悠理、清四郎の三角関係で、暗い展開です。
苦手な方はスルーして下さるようお願いします。
前スレ>472の続きです
息を乱していた悠理は、一瞬足を止めた後、橋の上からひらりと石畳に跳び降りた。
右手に何かを握り締め、左手にハイヒールをぶら下げている。
「悠理・・・?トイレに行ったんじゃ・・・」
驚きを隠せない清四郎の前で、悠理は口元で無理矢理笑おうとした。

中座したまま戻らない彼女を心配し、少し前に魅録が部屋を覗きに行った。
それを知っていた清四郎は後方へと視線をやったが、彼が出てくる気配はまだない。

「そんな格好で・・・裸足で、一体どう・・・」
「出てくのが見えたから・・・だってさ、こんなもん履いて走れないじゃん」
悠理は靴を放り投げると、自分を凝視する視線を躱すように目を伏せ、呆然とする男の胸元
に右手を突き付けた。
「・・・これ、やるよ」
慌てて受け止めた清四郎は、それがワインのボトルであることを漸く知る。
うっすらと埃をかぶったラベルを親指で拭い、彼は眉を上げた。
「悠理・・・これは・・・・・・」
「ソムリエに探させたんだ、一番おいしいやつ。卒業祝いに・・・」

それは15年前、二人が出会った年のワインだった。


押し黙ってしまった男を、悠理は不安げな表情で見上げる。
清四郎はじっと手元を見つめており、落ち着かない悠理は掌をドレスの腿の辺りにこすり
つけ、そのまま俯いた。
152横恋慕(70):04/08/11 15:23
どのくらい経ったのだろう。
清四郎は、ふと口元に薄い笑みを浮かべた。
「ありがとう、悠理。・・・友情の証、ですか?」
もう、すっかりいつもの落ち着きを取り戻している。
一瞬彼を見上げた悠理は、何か言いたげな表情を浮かべた後、下唇を噛む。
そして、そのまま流すように顔を横へと向けた。
「・・・お前、偉そうに言ってただろ。その年はワインの当たり年だ、って」
そっぽを向いたまま言った悠理の横顔を、清四郎はまじまじと見つめた。

何かの折りに自分が口にしたであろう蘊蓄を悠理が覚えていたことに、彼は驚いた。
だが、『おや、悠理にしては物覚えがいいですね』という軽い皮肉が口を突いて出そうに
なり、清四郎は小さく首を振った。
そんな軽口を叩けるほどには、自分達の関係は修復していないのだ、と。

「ありがとう」
清四郎はもう一度呟いた。
「あんなことを言ってしまった僕を、赦してくれるんですか・・・」
「・・・赦すとか・・・そんなんじゃなくて・・・だって・・・・・・」
頑なに顔を横へと向けたまま、悠理は答えた。くしゃりとその手がドレスを掴む。
「友人でいてくれるんですね。これからも、ずっと」
その言葉に、剥き出しの白い肩がビクッと震えた。

「ありがとう。じゃあ、遠慮なくいただいて行きます」
ワインを目の高さに掲げ、清四郎は笑顔で別れを告げた。


「清四郎!」

そのまま背を向けようとした彼を、震える声が呼び止めた。
153横恋慕(71):04/08/11 15:23
逡巡を見せながら、清四郎はゆるゆると振り返った。
そこには、真紅のドレスをくちゃくちゃに握り締めた女が、じっと俯いて立っていた。
エントランスの眩い照明が逆光になって、その表情を窺い知ることは出来ない。

「あの・・・あの・・・・・・」
悠理は何かを言おうとして、大きくかぶりを振った。
息をする度に、その胸が苦しそうに上下する。

「まだ、僕に何か?」
優しいが、どこかよそよそしい声で清四郎は言った。
後方へと視線を送り、二人きりでいるところを誰かに目撃されていないか確認する。
悠理の肩がまた一瞬跳ね、それから意を決したように頷いた。

「あの・・・あの時、さ。あたいと・・・本気で結婚する気だったのか?」

強い視線で、悠理は清四郎を見上げた。


二人の距離は1m。
隔てるものは、何もなかった。
154横恋慕(72):04/08/11 15:25
「いいえ」
数秒間、元婚約者を見つめ返していた男は、決然とそう言った。

「僕は・・・剣菱で腕を振るうチャンスを与えられて目が眩んだだけです。でも、それによって
あなたの経歴をひどく傷つけてしまったことは謝ります」
「・・・経歴・・・・・・?」
悠理の瞳を、失望の光がよぎった。
「だってそうでしょう?男はともかく、女性にとって、破談は大きなデメリットですからね」
「でも別に・・・あたいら、何もしてないし・・・」

清四郎は口を引き結び、それから大きく息を吐き出した。
どう言おうかと、考えを巡らせながら口を開く。

「・・・名目だけの婚約だったと言っても、世間はそうは思わないんです。特に・・・僕達
の場合はあんなに大々的に婚約発表をしましたし・・・」
「だけど・・・」
まだ何かを言おうとする悠理を、清四郎は右手で制した。
「でも、安心しましたよ。あなたには魅録がいる。そうでしょう?」
「魅録・・・?」
悠理は、思い出そうとでもするかのするように、恋人である男の名を反芻しながら
瞳を伏せた。握り締めた両の拳が、血の気を失って真っ白になっている。
155横恋慕(73):04/08/11 15:26
清四郎は頷き、微笑みを浮かべた。
「もう、中に戻って下さい。風邪をひいたら卒業式に出られなくなりますよ?」
俯いたまま佇んでいる悠理に、じゃあ、と声をかけ、彼は再び背を向けた。


「なあ、清四郎」
背中に向かって悠理が呟くと、振り向かないまま、清四郎は足を止めた。
「・・・こういうカッコしてれば、あたいだって一応・・・女に見えるだろ」
だが、彼は振り返らない。
「ねえ・・・・・・何か・・・言ってよ」

「・・・・・・悠理」
低い声に、悠理は身を竦ませた。
広い背中を見つめ、続く言葉を待つ。彼が、振り返るのを待つ。

「魅録と、とてもお似合いですよ。どうか幸せに・・・」
背中越しに言い、彼はそのまま歩き出した。


待って。
もう一度、赤く彩られた唇が動く。

だが、その声は彼に届かない。
後ろ姿はそのまま遠ざかって行った。二度と、振り返ることなく。



[続く]
156名無し草:04/08/11 17:54
>横恋慕
お待ちしてました。
切ないです。うおおおおおおん
悠理くんも清四郎君も素直になっちゃってください。
続きお待ちしてます。
157名無し草:04/08/11 21:35
>横恋慕
清四郎のアホーッ!

恋愛音痴らしい彼らしい話です。
うう、清四郎がもうちょっと素直になること祈ってます。
158名無し草:04/08/12 00:25
>横恋慕
清四郎諦めきり過ぎ!!
まさかこのままこの場面終わるのか?殺生だ・・・。って気分です。
ともかく二人が通じ合えるのを祈ってます。がんばれ悠理。
『サヨナラの代わりに』をうpします。
>http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/504の続きです

「ちょっと、待ってくださいな」
あと少しで魅録の実家というところで、私は緊張のあまり息があがって立ち止まって
しまった。
「おい、野梨子、何そんなに堅くなってんだよ。俺の親がどういう親かって、よーく
 知ってるだろ?」 
前方から聞こえてくる声は、私とは対照的にリラックスした暢気なものだった。
もちろん魅録の両親に会うのは初めてじゃないし、千秋さんはいわゆる『お姑さん』と
いうステレオタイプから大いに外れるひとであることもわかっている。
けれど、だからと言って以前と同じ気楽さで会うわけにはいかない。
曲がりなりにも、“夫の両親”になるのだ。
下手に知ってる分、やりにくいと思わずにはいられないのが本音だった。
「野梨子、お前は頑張んなくていいの。男が頑張るのがウチの伝統だからさ」
壁に寄りかかって息を整えている私に、魅録が冗談とも本気ともつかない口調で言った。
ふと、頭の中に、おじさまの一生懸命な姿が浮かんでくる。
おじさまはいつも一途で、千秋さんだけを見ている。
私も、魅録に私だけを見てもらいたい。
でも、実際に魅録がおじさまと同じようになったらどうだろうと想像してみると、急に
肩の力が抜け、おかしくなって笑わずにはいられなくなってきた。
「そう、そんな感じだ。……じゃあ、行こうか」
魅録は私の緊張が解れたのを見て、手を差し伸べてくれた。
私は素直にその手を取り、魅録の隣を歩き始める。
尚も笑いを抑えられない私に魅録が不思議そうな顔をするので、私はさっきの自分の
想像を魅録に伝えてみた。
「……悪いが、俺はあそこまでは頑張れねえな」
私達は、魅録の実家の客間に通された。
魅録は気楽にいけばいいと言い続けていたが、客間に通されるところをみると、やっぱり
着物くらい着た方がよかったかしらという気になってきた。
「野梨子ちゃん、お待たせ」
魅録の両親が入ってきたのは、私達が通されてから10分近くたってからだった。
おじさまはチャコールグレーの、恐らくはちゃんとしたテーラーで仕立てたに違いない
スーツ姿で、千秋さんはダナキャランのノースリーブのロングドレスにジャケットを
羽織っていた。
二人は私達の真向かいに座った。
早速、千秋さんは煙草に火をつけて優雅に美味しそうに吸い始めた。
その落ち着きぶりは隣のおじさまのそわそわしている様子と対照的で、いかにも
らしくて私は微笑まずにはいられなかった。
「親父、千秋さん、俺、野梨子と結婚しますから」
魅録がはっきりと言い切ったのは、千秋さんが1本目の煙草を半ば吸い終えて灰皿に
押しつぶした時だった。
「野梨子ちゃん、ほんとに、こんなヤツでいいのかな」
「そうよ、考え直すなら今よ」
親父もお袋も何を言い出すかと思えば、俺を無視して、間髪入れず矢継ぎ早に野梨子の
気持ちを確認した。
ふたりとも、意外なほど真剣な表情で野梨子を見ている。
俺は完全に蚊帳の外に置かれてしまったが、親父とお袋が何を思ってそんなことを
聞いているのかはすぐにわかった。
ただひとり、見られている野梨子だけは、状況が飲み込めないのかきょとんとしていた。
「何言ってんだよ、ふたりとも。野梨子が俺でいいって言ってくれたからここに
連れて来てんじゃねえか」
「あんたは口出さないの。あたしも時宗ちゃんも、野梨子ちゃんに訊いてるんだから」
俺の言葉を、お袋はぴしゃりと遮る。
おれは仕方なく口を噤み、横を向いて野梨子を見た。
固まっていたその表情が、ようやく変化する。
野梨子は、まず俺に向かってニコリと微笑んでくれた。
それからわずかに両手をきゅっと丸め、照れ隠しか心もち俯いて口を開いた。
「おじさま、千秋さん。……実は私の方から、結婚してくださいと申しましたの」
聞いてる俺が気持ちよくなってくるほど、野梨子ははっきりと言ってくれた。
だがそれを聞いたふたりは耳にした言葉が信じられないのか、親父は目を丸くして
その場に固まり、お袋は急に煙草を取り出して震える手で何度もライターを擦っていた。

【続く】
162名無し草:04/08/13 13:19
>サヨナラの代わりに
ほのぼのカップルが、とうとうご両親にご挨拶ですか。
時宗ちゃんほど頑張れないって魅録は言うけれど、きっと時宗ちゃん以上に頑張っちゃうんでしょうね。
いいなぁ、野梨子。
163<暴走愛>:04/08/13 15:19
暴走愛うpします。
昼ドラ泥沼系なので苦手な方はスルーお願いします。
>>140
菊正宗修平は何の味もしないウィスキーを惰性で喉に流し込んだ。
狭い部屋の中ですることもなく、ウロウロと歩き回り、やがて最後に窓辺に辿り着く。
夜の街に高速を行きかう車の光が忙しく行きかっていた。
 見慣れてしまったな、この景色も。

頭を愛娘の姿がよぎった。
風の噂に子供ができたと聞いた。何月に出産予定だったか。もうだいぶ腹が出ているだろうか。
ベッドサイドの机に置いた写真を手に取る。
まだ若い妻と幼い子供たちに囲まれた自分が、
首から紙製のメダルをぶらさげて照れ笑いを浮かべている。
和子が小学校四年、清四郎が小学校一年生の時の父の日に、二人から贈られたプレゼントだ。

夫婦喧嘩もあった、親子喧嘩もした。
でも多少のすれ違いは時間が解決してくれると信じていた、
それが家族の絆だと思っていたから。

修平はウィスキーをあおった。

まだ信じられない。
こんなにもあっけなく自分の家族が崩壊してしまうとは。
目に入れても痛くないほど可愛がっていた子供達が、自分を見切って出て行くとは。
そして、妻が、どんなに自分が忙しくて構ってやれなくても、
わかっていてくれてると思った妻までも、自分の前から消えてしまった。
お願いだ。
誰か俺の目を覚まさせてくれ。俺の肩を叩き、笑い飛ばしてくれ。
なに寝ぼけたことを言ってるんだ、と。
悪い夢でも見たのか、と。

酒が効いて感覚が鈍くなった指で写真の子供達の顔をなぞる。
「和子……。清四郎……」
五十をとうに過ぎた男の目尻から水滴が落ち、幼い和子と清四郎の顔を濡らした。
清四郎が隣家の野梨子との結婚をやめると言い出した時、
おろおろする妻を尻目に、修平は比較的冷静にその報告を受け止めた。
野梨子と二人で話し合って決めたことだと言う。
それならば何も親が口出しすべきことではない。
もともと清州が持ちかけてきた時から、修平はこの縁談に無理があるのを薄々感じていた。
野梨子の痩せっぷりも、清州の追い詰められたような雰囲気も、そして息子のどこか諦観したような様子が
修平の心に疑問の種を蒔いていた。

隣家の娘のことは、小さい時から可愛がっており、昔はそれこそ清四郎の嫁にと願っていたので
二人の縁談が壊れたのは残念といえば残念だ。
しかし、結婚してからすれ違いに気づくよりは傷が浅くて良かった、と言うべきなのだろう。
だがこの件について清州がどう思っているのか、なるべく早く隣家を訪問しなきゃなるまい、
と時計を見ながら考える。今日はもう遅い。

「じゃあ、これで京都へ行く理由も無くなったというわけだな」
何気ない修平の言葉に清四郎は静かにこう答えた。
「いいえ。やっぱり僕は京都へ行こうと思います」

農学部を受験するという清四郎を修平が思わず笑うと、それまで淡々と喋っていた清四郎がわずかに表情を変えた。
「そんなにおかしいですか。僕が農学部を受験する事が」
息子の言葉に潜んだ怒気にも修平は苦笑することしかできない。

「農学部へ行ってどうするんだ、お前は」
「まだはっきりとは決めたわけではありませんが、果樹の研究をしたいと思っています」
「ほう。それで大学を出たらどうするんだ」
「院へ行きます」
「その後はどうするんだ」
「まだ考えていません。これから考えます」
ヒゲをいじっていた修平はため息をついた。
「清四郎、いろいろ興味があっていいことだが、器用貧乏になるぞ。
 悪いことはいわん。医学部を受けなさい」
「いいえ」
黙って二人のやりとりを聞いていた和子が清四郎を見つめた。
修平の妻は困って夫と息子の顔を交互に見ている。

「どうしてだ。お前、医学は好きだろ?」
「嫌いではありません。むしろ医療の道へ進むつもりでおりました」
「それならなぜ農学部なんだ」
「……思うところがありまして」
修平が問い詰めても、清四郎はのらりくらりとかわすばかりで本心を言おうとはしない。
イライラした修平がつい「いいから、医学部にしとけ!」と言い放つと、
冷ややかな言葉が返ってくる。
「それは命令ですか」

思いもかけない息子の台詞に修平も清四郎の妻も言葉を失った。
さすがに妻が清四郎をたしなめる。
「清四郎! お父様に向かって何てことを言うんですか。謝りなさい」
そこへ修平が妻の言葉を遮る。
「いや、いい。どういう意味だ、清四郎。今まで俺たちがお前にああしろ、こうしろと口うるさく命令してきたか。
 俺たちはお前たち子供を自由にやらせてきたつもりだが」
「そうですね。あらかじめ用意した庭の中で自由にね」
「……なんだと」
自分の耳を疑った修平は我が息子の顔をじっと見た。
清四郎は父の目を見ようともせずに淡々と喋る。
「今まで自由に好きなことをやらせてもらってると思っていました。それは感謝しています。
 しかし、それはあくまでも父さんや母さんが作った環境の中で、の話です。
 僕は自分が……」

清四郎は最後まで喋り終わらない内に、修平に殴り飛ばされた。
悲鳴をあげて清四郎の母が息子をかばい、和子が修平の前に立つ。
「ちょっと! まだ清四郎が喋ってるのに何してんのよ! ちゃんと最後まで聞きなさいよ!」
「最後まで聞く必要ない。清四郎。お前がそんなに性根の腐った奴だとは思ってなかったぞ。
 今まで多趣味で通してきたのは伊達だったのか。自分の将来が決められなくてふらふらしてる奴に
 親を批判する資格など無い!」
息子が口に手を当てて、出血を確かめている。
修平は息も荒く息子に怒鳴った。
「殴りたかったら殴れ。言いたいことがあったらちゃんと言え! 俺はそういうふうにお前たちを
 育ててきたつもりだ。親のせいで自分のやりたいことができなかったとは言わせないぞ」
清四郎は皮肉っぽく笑った。
「そんなことは言ってません」
「立て、清四郎! 殴りかかってこい! 負けはせんぞ!」
息子を挑発する夫に妻がすがりつく。
「あなた、やめてください。清四郎は和尚様のところへ通ってるんですよ」
「そうよ、やめてよ。もっと冷静になってよ二人とも」
「ワシは冷静だ!」
「どこがよ!」

唇の端に滲む血を手の甲で拭うと、清四郎は立ち上がった。
「親に本気出すほど馬鹿じゃありませんよ」
「お前は和尚のところで一体何を習ってきたんだ! 和尚のところでは相手の倒し方は教えても
 親への礼や他人への思いやりは教えないのか。だとしたらお前を通わせたのは間違いだった」

振向いた清四郎の目が一瞬光って見えた。
と、思う間もなく、物凄い勢いで何かが修平の顔に飛んできた。
清四郎以外の全員が息を飲み、全身を硬直させた。

目を見開いた父の顔の1センチ手前で息子の拳が停まっていた。
眼鏡がずれた修平は情けなくも、清四郎の前で尻餅をついた。
清四郎は静かに父に宣言した。
「和尚を馬鹿にしたら、例え親父でも許しません」
夫にすがってすすり泣く母に頭を下げた。
「すみませんでした」

部屋から出て行こうとする息子に向かって振向きもせず母が叫んだ。
「あなた、お父様に向かって何てことを……! 出て行きなさい、清四郎。出て行きなさい!!」

一瞬足を止めて清四郎は答えた。
「はい。そうします」

続く 
169<暴走愛>:04/08/13 15:31
前回>139で「清四郎が目の周りに誰かに殴られた……」とありますが、
今回「頬を殴られた」ことにしてあります。
「目の周り」を飛ばして読んでください。
すみません。
170名無し草:04/08/13 22:38
「横恋慕」をまた少しUpさせていただきます。
>155の続きです
卒業式を無事に終え、僕は漸く部室に辿り着いた。

答辞を読み上げている間、どうも悠理の様子がおかしくて気になったのだが、隣にいる魅録が
彼女を支えていたから、できるだけ視線をそちらにやらないように気を付けていた。
魅録がついている。僕が心配することなど、何もない。そう言い聞かせながら。

「いやぁ、さすがだね、菊正宗君。いい答辞だったよ」
笑顔で歩み寄って来た校長や、ミセスエールと挨拶を交わす間も、僕はいつの間にかあいつの
姿を探していた。
そのくせ、下級生に握手を請われれば、ついにこやかな笑顔を作ってしまう自分に苦笑する。
見回せば、僕と同様に愛想笑いを浮かべる野梨子がいる。
抱えきれないほどの花束を両手に、派手に愛嬌を振りまく可憐もいる。
美童に至っては、記念写真をねだる女生徒に囲まれ、ちょっとしたハーレム状態だ。
だが・・・あいつはどこにもいない。魅録も、いない。

やっと人の波を抜け出し、保健室を覗くが閉まっている。
僕はそのまま部室へと足を向けた。


扉を開けた瞬間、唇に指を当てる仕草をする野梨子と目が合った。
どうやら、彼女も早々にファンの追求を躱すことに成功したようだ。
音を立てないように後ろ手にドアを閉め、様子を窺うが、他には誰も見当たらない。
「仮眠室で、悠理が寝てますの」
声をひそめ、彼女は心配そうに言った。
172横恋慕(75):04/08/13 22:41
野梨子によれば、先日のパーティーで、悠理はどうやら広間へ戻らなかったらしい。
魅録が彼女を見つけた時、すっかり冷え切った身体で、裏庭のベンチに座り込んでいたそうだ。
「あの、馬鹿」
思わず舌打ちをすると、野梨子は「ええ、本当に。せっかく、6人で記念写真を撮る予定でした
のに・・・」とため息をついた。
「かなり熱があるようで・・・とりあえず魅録が薬を買いに出たところですわ」
薬箱はもう持ち帰ってしまったし、保健医も不在だと知っての上だろう。
「私、剣菱のおば様達に知らせて来ますわ。魅録が戻るまでここにいて下さる?清四郎」
野梨子の声に、僕は快く頷いて見せた。

魅録はまだ戻らない。


入るべきでない、と頭では判っていた。
だが、一人取り残された僕は、吸い寄せられるようにその扉の前に立っていた。
ちょっと・・・様子を見るだけだ。
自分に言い訳をしながら、ノブに手をかけた。


薄陽の射し込む狭い部屋の奥で、その影はベッドに横たわっていた。


・・・いつだったか、こんなことがあった。

173横恋慕(76):04/08/13 22:41
寝る間も惜しんで経営ゲームに夢中になっていた僕は、剣菱にいる間も婚約者と顔を合わせる
ことは殆どなかった。忙しさにかまけて、結局指輪のことさえ失念していた。
ある日の午後、ネクタイがどうしても気に入らないので取り替えようと、会議の前に自分の部屋
に戻った。そこで、なぜかソファから、見覚えのある茶色い髪が飛び出しているのを見つけた。
僕が課したレディ教育から、彼女がすぐに抜け出そうとするらしいことは、五代から聞かされて
いたから、大方またサボっているのだろう、と見当がついた。
なるほど、ここには彼らも探しには来ないだろうし、こんな時間に部屋の主が戻ってくるなど、
夢にも思わなかったに違いない。どこで鍵を仕入れたのかは知らないが、こいつにしてはよく
考えたものだ。
が、ちょっとした悪戯心が首をもたげ、耳元で怒鳴りつけてやろうと足音をひそめて近付いた
僕は、その場で動けなくなった。

似合わないドレスを着て眠りこける悠理の足下には、ハイヒールが乱暴に脱ぎ捨てられていた。
ダンスのレッスン中に転んだのだろうか。はだけた裾からのぞく脛に、青い痣があるのが見えた。
言い様のない罪悪感を感じ、乱れた前髪に指を伸ばす。
遊び疲れた子供のようにあどけない表情を浮かべ、婚約者は安らかな寝息を立てていた。

柔らかな髪を梳き上げるうちに、不意に自覚した。
この人と一生を共に過ごすのだ、と。それを望んだのは・・・僕自身なのだ、と。

不思議な感慨と、名も知らぬ衝動が僕の内に沸き上がった。
その想いの持つ名を知らぬまま、気付いた時には唇を重ねていた。
・・・互いのぬくもりを確かめる程度の、幼い口づけだったけれど。

そっと離れると、結局ネクタイを取り替えることもなく部屋を後にした。
彼女のスケジュールを少し見直すべきだろうと考えながら。
だが、結局実行に移す機会はなかった。その二日後、僕達の縁談は白紙に戻ったからだ。

返す、と指輪を突き出す悠理に、捨ててくれと言い残し、僕は剣菱を去った。
174横恋慕(77):04/08/13 22:42
熱のせいか、いつもより火照った頬が目についた。

なぜ・・・戻らなかった?魅録の元へ。
胸の内で問いながら、汗ばんだ額へ手を伸ばそうとして躊躇い、戻す。
それは、名ばかりとはいえ、婚約者だった人。だがあの時とは状況が違う。今は親友の恋人だ。
邪な気持ちで触れることなど、許されようはずもない。

左手に光る小さな指輪は、その人を、他の男へと繋ぐ哀しい印。


とうに諦めたはずだった。
僕にはもう関係のない人だ、と。幾度もそう自分に言い聞かせてきたはずだった。
魅録に寄り添う姿を目にしても、もう胸は痛まないと思っていた。
この人の笑顔を、幸せを、それだけを望むことに決めたはずだった。


―あたいと・・・本気で結婚する気だったのか?―

探るような瞳に気取られないように、僕は上手に嘘をついたはずだった。
戻れない道だと、知っていたから。
あの甘酸っぱい感情が、衝動が、恋という名を持つと知ったのが・・・遅すぎた。


僕達を縛るのは、友情という名の枷。
僕達を繋ぐのは、友情という名の絆。

175横恋慕(78):04/08/13 22:43
触れては、ならない。もう一度頭の中でくり返す。
判っているはずなのに、体は勝手に近付こうとする。


息を殺し、そっと覗き込む。
夢でも見ているのだろうか。長い睫毛が小さく揺れている。
僅かに開かれた唇から、時折苦しそうな息が洩れる。

熱い吐息を感じ、瞳を閉じた。


ほんの一瞬だけ僕のものになる、柔らかな感触。
その懐かしさに、ひどく胸が痛んだ。



そうして。
あの時と同じように、僕はまた背を向けた。



[続く]
176名無し草:04/08/13 23:12
>横恋慕
きたきたきた〜〜〜〜!!
清四郎の切なさに胸が痛みます。
悠理の目が覚めていたら・・・さあどうなる?
早く二人にはお互いの気持ちに気づいて欲しいです。
その上でじっくり考えて結論を出してくれ。

自分的にはどちらともくっつかない悠理を妄想。
177名無し草:04/08/13 23:46
>横恋慕
2回とも悠理の目が覚めてたってことになったら、清四郎どうするんでしょう。
魅録は薄々ながらも悠理の気持ちに気づいていそうだし、肝心の二人が何とかしなければ!
178名無し草:04/08/14 12:49
>横恋慕
はっ。寝てる間に唇を・・・それも2回。
真@様か!?あんたは。清四郎さんよ。
179名無し草:04/08/14 23:24
真@様って?

と書いて気がついた。紫の薔薇の人ね。
180名無し草:04/08/15 09:27
>横恋慕
ねてるときにチュー盗むのが清四郎らしくて萌えです
ストーリーも気になるが毎回切ない系の萌えがもりこまれてて嬉しい

>紫の薔薇
寝ぼけ頭で読んだんで紫の衝撃の人かとおもたよ(パンツのヤツね)
あれも続きが気になるな。
181名無し草:04/08/15 12:39
>180
>(パンツのヤツね)
激藁! 続きは過去ログ確認すると<次回、『くいこんで痛いの』をお送りします>って
なってるけど、違ってても全然いいんで、書いて欲しいな…
182<暴走愛>:04/08/15 23:47
暴走愛うpします。
清×可、野×修平です。
>>168
居間にはストラヴィンスキーの『春の祭典』が流れていた。
可憐がそっと部屋の中に入ると、ドアに背を向けて置いてあるソファに深々と身を沈めた人物が
闖入者に向かって話し出した。

「オヤジの古いレコードが、地下の音楽室に置き去りでかわいそうでしたのでね」

三年ぶりに聞く声だった。
変わらない、落ち着いた良く通る声。明瞭な発音。
三年も経ったのにどうして変わらないの。
変わっててよ。
少しでも変わっててくれたら、こんなに胸が揺さぶられずにすむのに。

乾いた唇を引き締めると、可憐は閉めたドアに背をもたせ、腕を胸の前で組んだ。

ソファの人物は相手の沈黙にも構わず喋り続けている。
入ってきた人物の想像がついているのだろうか。
大方、野梨子と思っているのに違いない。

「だいぶ片付けましたよ。オヤジの奴、お袋が出て行ってからすぐに手伝いの人を辞めさせたらしい。
 もうあっちこっちひどい有様でね。人間の住む場所じゃありませんでしたよ。
 もっともそのおかげで妙な感傷に浸る暇がなくて助かりましたがね。
 一日ゴミと洗濯物と格闘ですよ。まいった」

大きな伸びをすると立ち上がり、振向いた。

可憐は、男の瞳が見開かれるのをじっと見守った。
そしてその中に確かに困惑の色を見つけた。けして喜び、ではなく。

二人は何年かぶりで対峙した。
感動の余り抱き合うのでも、うれし涙で頬を濡らすでもなく
ただ互いの顔を凝視し、目の前の人物の出方を見守った。
ホテルの部屋の扉がノックされている。
己の部屋がノックされていることに漸く気がついた修平はのっそり立ち上がり、ドアに近づく。
部屋に入ってきたのは野梨子だった。
修平は酔った頭を振り絞って、笑顔を取り繕うと慌てて彼女を招き入れた。
急いで酒を片付ける。
野梨子は困ったように微笑むと四角い風呂敷包みを差し出した。
「これ、母から言付かって参りましたの。お口に合うかわかりませんけど召し上がってください」
修平は頭をかきながら包みを受け取ると、自分の息子と同い年の娘に向かい深々と頭を下げた。
「いつもありがとう。もう気を遣わないでくださいってお母さんにお伝えください」

再び困ったような顔を見せる野梨子に、修平はベッドに腰掛けるように即すとコーヒーを入れ始めた。
その隙に野梨子はぐるっと室内を見回す。
ツインルームのベッドにはロマンティックなピンクの花柄のベッドカバーがかかっている。
もっさりとした修平に似つかわしい部屋とは言えなかった。
片方のベッドはきちんとベッドメイクされた時のままで、もう片方は真ん中に皺が寄っていた。
さっきまで寝転がっていたのだろう。
野梨子は皺くちゃになった修平のワイシャツの背中を見ながら、そう考える。

妻と子に見放され、この人は一体、毎日何を考えてこの部屋で過ごしているのだろう。
病院院長という仕事がら寝に帰るだけのものかもしれないが。
顔色が悪いが食事はきちんと摂っているのか。
修平の背中に視線をやりながらそんなことを考えていた野梨子は
目の前に湯気の出たコーヒーが差し出され、ハッとした。

「インスタントでおいしくないけど」
「いえ……いただきます。すみません、お休みのところお邪魔して」
「いや、いいんだよ。こうやって、仕事以外で人と向かい合ってコーヒー飲むなんて久しぶりだから嬉しいよ」

清四郎はまるで修平とは似てないと思っていたのに、修平の微笑んだ顔はどこか清四郎のそれに似ている。
不思議ですわね、と一人ごちながら野梨子はコーヒーを口にした。

続く
185名無し草:04/08/16 00:40
>暴走愛
前回、あまりに唐突に清四郎が父親に楯突いたので、少々面くらいましたが
これから謎が明らかにされていくのでしょうか。
しかし、修×野…かなりやばいムードですね。ホテルだし。
だいぶ前に、彼女に目を奪われていた修平のエピソードがありましたね。
伏線が生かされるのかと思うと、展開が楽しみなような、恐いような…。
186名無し草:04/08/16 13:38
清×野をうPします!!
少々野梨子がかわいそうだと思います・・・。
苦手なかたはスルーしてください。
187名無し草:04/08/16 14:14
>186
まだ?
188名無し草:04/08/16 14:14







                           まだ?

189名無し草:04/08/16 14:15
>186
野梨子かわいそう・・・
190188:04/08/16 14:15
187さんとケコーンしてしまったw
すんません清×野スキーなんで待ちきれなくて・・・。
191名無し草:04/08/16 14:16
>>186

泣きました。
野梨子が少々かわいそうだね。
192188:04/08/16 14:25
189タンと191タンは早売りゲッターさんですか?
私は田舎者なのでまだ発売されてないらしく、いまだ読めませぬw

冗談はさておき早く読みたいです、186さん、お願いします。
『さくらぁ・・さくらぁ・・やよいのそらは・・みわたすかぎり・・・』

一面の桜がわっと舞った。
やっと暖かくなってきた4月。やわらかい風が自分を囲むように吹いている気がする。

・・・風が、僕の耳に甘い彼女の声を運んできた。
「私・・・清四郎のことが好きですの・・・。」
凛とした強い瞳で彼女は言った。
何にも汚されてない純粋な瞳・・・僕はこの瞳がたまらなく好きだ。
「・・・野梨子・・・。」

桜の花びらが、彼女にまとわりつくように舞い、彼女の美しさを一層引き立てていた。
僕は、まっすぐ野梨子を見つめる。
野梨子のこの気持ちは、前々から知っていた。
ーーーーーそれが本当の恋ではないということも・・・。
「野梨子・・きみは僕を愛してはいない・・。」
「あら、なんでそんなこと清四郎にわかるんですの?」
「・・・・僕にはわかるんですよ・・。」
そうだ。野梨子は僕を男として見ていない。明らかに他の男子と接し方がちがう。
美童や魅録が手を触れるとすぐに赤くなるくせに、『足をひねった』といい、
僕が手当するために足をふれても照れずに、普通の表情であった。
「とにかく・・僕はあなたを一人の女として見ることができないのです。
 大切な幼なじみ、友達とでしか・・・」
この言葉にうそはなかった。

ーーーーぶわぁっーーーーー
風がさっきより強く吹いている。
「・・・つまり・・清四郎は、私を愛してはいないのですね?」
ーーまたあのときの表情・・不安の色も悲しみの色も、野梨子の顔にはない。
ただ、普通の、人形のような顔。

「そうです野梨子。僕はあなたを愛せません。」
僕は、はっきりと野梨子の目を見て言った。
そのほうが野梨子のために・・・そして自分のためになると思ったから。
野梨子はにっこり笑っていた。
「わかりましたわ清四郎。あなたの本心が聞けてよかったですわ。じゃぁ、また明日学校で。」
たたっと帰っていく。野梨子は傷ついてはいない様子だった。
『これでいいんですよね・・これで・・』

ーーーーーーさくらが泣いてるような気がしたーーーーーーー

「・・・で、野梨子どうだったの?」
「見事にふられましたわよ。『一人の女として見れない』って言われましたわ。」
「絶対くっつくと思ったのに・・あの保護者め、まーだ野梨子を自分の妹として思っての?
 野梨子だってもう18歳よ!恋人の4〜5人はいてもいい年頃よ!!」
可憐は一生懸命力説しているが、悠里は心配しているのか野梨子の様子をじ〜っと
ながめている。
「・・・・・野梨子・・・ショック受けてないのか・・・・?」
「大丈夫ですわよ悠里、心配しないでくださいな。ただ恋愛の対象にはなれないだけで、
 友達終わりというわけではありませんから。私はこれからも清四郎とおしゃべり
 できればそれでいいですわ。」
野梨子がにっこりと笑い、それが辛そうに可憐と悠里には見えた。
「まっ、あたいがいつでも相談にのってやるよ!!」
「あら―悠里にするんだったらあたしにしたほうが、何倍もためになるわぁ。」
「ありがとう・・・・可憐・・・・悠里・・・。」
ほんとうにこの2人と友達になれてよかったと、野梨子は思った。
野梨子の気持ちが、ほんのりと暖かくなった。
清四郎は自分のベッドに横になっていた。
あの日からどうも眠れない・・・・桜に囲まれている野梨子・・・あの瞳がどうしても
忘れられず、この言葉が耳に残る。『清四郎は私を愛してはいないのですね・・・・』
「このままじゃだめだ・・・。」
頭がいっぱいで、どうにかなりそうだった。
野梨子が男に惚れることが出来ないのは、お前が傍にいるからだと、よくいわれる。
――――そうだ・・・・自分が傍にいるから野梨子が自由になれない。
野梨子から離れれば・・・・。清四郎はある決心をした。


〜♪〜♪〜♪〜野梨子の携帯の着メロが鳴った。
「う〜ん・・・だれですの・・こんな時間に・・・!!・・清四郎。」
野梨子の携帯の画面には『菊正宗清四郎』の文字。
期待と不安の入り混じった気持ちで電話にでる。
「・・・・・なんですの清四郎?こんな夜中に。」
「・・・・・野梨子・・・・・。」
なんだか清四郎の声がとても懐かしく聞こえてしまうのはナゼだろう。
顔が少し、熱くなった。
『やっぱり・・・私、まだ清四郎が好きなんですわ・・・』
「明日から・・・一緒に学校に行くのやめましょう。」
一瞬、清四郎が何語を話しているのか分からなかった。
「なっ・・・ナゼですの!!私・・なにか・・。」
「あと、学校では必要最低限のことしか話さないでください。いいですね?」
「まって!!・・・せいし・・・。」

――――――つーつーつーつー――――

無理やり電話がきられた。『清四郎の気が変わったのかもしれない』と、期待を
抱いたのもつかの間。いきなり現実に戻されたような気がする。
「こんなことなら・・・告白なんてするんじゃありませんでしたわ・・・。」

畳には、丸いシミができていた・・・・・・・。

――――翌日――――
『ねぇ、みましたか?菊正宗様と白鹿様!!』
『ええ!!いつもは一緒に登校してきますのに。しかも、廊下ですれ違ってもあいさつも
 お話もされませんのよ。喧嘩でもしたのでしょうかね?』
『どっちにしろ、私たちにはチャンスですわ!』
2人のことは、すでに校内中にひろまっている。
『白鹿さん!!菊正宗くんとは付き合ってないんですね?』
『白鹿さぁ〜ん!一緒にお話してくださぁ〜い!!』
野梨子の教室の前には、たくさんの男子。
しかし野梨子はそっぽむいている。

そして放課後―――――――
生徒会室には、有閑倶楽部のメンバーがそろっていた。
みんなすごい形相で清四郎をにらんでいる。もちろんそこに野梨子はいない。
「ど―ゆ―ことだよ清四郎!!」
「なにがですか?」
怒りが限界に達し、悠里は清四郎につかみかかっている。しかし、清四郎は、表情ひとつ崩さない。
「野梨子が辛いときにさらに追い討ちかけるようなことしやがって・・・。
 なんで野梨子を避けるんだよ!!ふられても、『清四郎と話せるだけでいい』っつて
 たんだぞ!・・・・・それを、お前は・・・・」
魅録と美童は野梨子が告白したことを知らなかったが、今はそれどころではない。
「こうしたほうが、彼女のためになるんです。」
「ざけんじゃね―よ!!ためになるとかならないじゃなくて、野梨子は悲しんでんだ!!」
「そうですか?いたって普通でしたよ。」
「この・・・・・・・」

―――――パーーーーン!!―――

気持ちのいい音が室内中に響き渡る。可憐が清四郎を平手打ちした。
「ひえっっっ・・・・・」悠里は腰を抜かしている。
「野梨子の表情の変化もわからないような奴には何をいっても無駄よ。いくわよ悠里!!」
「清四郎・・・・・・」
可憐がまじめな顔をしていった。
「後で後悔しても遅いんだからね・・・・・・。」
つぎはR−15?というか微妙にエロいシーンがあります。
苦手な方はスルーしてください。
―――夜・・・・野梨子は桜でも見に行こうと思って、外に出た。
まだ春だというのに、暑いくらいの夜だった。
『清四郎と一日話さなかっただけで、こんなに辛いなんて・・・』
暗い暗い夜道を一人寂しく歩く。これからもこんな毎日が続くと思うと、涙が出てくる。
『明日も今日のような日になるのでしょうね・・・・』

―――きずくとかなり歩いていたらしく、清四郎に告白したときの場所についた。
『あぁ・・・ここで告白なんかしなければ・・・・』
風がサラサラ吹き、野梨子の髪をなびかせる。
「――ねぇ、キミ。こんなところでなにしてんのぉ?」
野梨子は、ビクッとした。そこにはニヤニヤしている三人の男が蛍光灯の下で妖しく光っている。
「もしかして家出?だったら俺たちがイイとこ連れてってあげるよ。」
一人の男に手首をつかまれる。
「いっ・・・いやっ・・・!離してくださいな!!」
「あばれんじゃね――よ!!」
残りの2人の男によって服を切られた。
200名無し草:04/08/16 19:34
おわり?
続くんなら続くって書けやゴルァ!w

しかしいつかの夏の迷宮を思い出すなあw
ご本人じゃないよね?
201名無し草:04/08/16 19:46
ホントに迷宮を思い出す文才の無さだな。
マジで箱チャンですか?
せめてしっかり書き上げてからupしろっての。
時間があきすぎ!
202名無し草:04/08/16 20:00
200、201エラいね、ちゃんと読んでんだー。
あたしゃ1レスでギブアップだよ。
203名無し草:04/08/16 20:05
正直な感想なんだけど。
メンバーの言動も199の展開も、幼稚というか安易というか・・・orz
高校生に見えない有閑倶楽部の大人っぽさを殺さないでくれ。
204名無し草:04/08/16 21:38
>>186

悪いけど、作品の出来以前の問題な気がする。
まず、お約束をきちんと読もう。すべてはそれから。
他の作家さんがどのようにしてるか見るのも一つの方法だと思うよ。
それを理解するまで、作品アップは控えて欲しい。
あなたのような厨にスレ荒らされたくないし。
205名無し草:04/08/16 22:28
あら、まだやってたのねこの人
あたしゃNGワードでアボーンだよw
206名無し草:04/08/16 23:31
>205
姐さん教えてください。誰と一緒なのよ〜?!
207名無し草:04/08/17 00:02
>>199
きずく→きづく(気付く)
だよ。
このあたりのミスでも書き手の国語力がわかる。
208名無し草:04/08/17 00:40
『鬼闇』うPします。
>>147の続きです。
オカルト&一部グロテスクな表現がありますので、苦手な方はスルーして下さい。
209鬼闇(40):04/08/17 00:41
「千年の鬼を起こしてしもうたな…。」
清四郎の話を聞き、菊江は大きく息を吐いた。
「鬼…ですか。」
「…本当にいたんだな。」
清四郎、魅録の二人は菊江の言葉が信じられなかったが、人の仕業でないこの猟奇的な事態が、
鬼の仕業であるならば理解できると思った。
「鬼って豆まきとかの?」
「今の時代に鬼って言われても…」
「信じられないよぉ。」
悠理、可憐、美童に至っては、ほとんど信じていない。
それでも二人が血にまみれて帰ってきたことを考えれば、信じるしかないとも思う。
「…でも、現実ですのね。」
野梨子がポツリと呟いた。
清四郎と魅録は嘘をついていない。

「わしが聞いた話によると、この町は佐々の先祖が造ったと言われておる。」
再び菊江が口を開いた。
「確か、京から流されたと聞いていますが。」
清四郎の言葉に菊江が頷いた。
「そのとおりじゃ。どうして流されたのかもわからんし、先祖が何をしたかも解らん。ただ、昔から
佐々の者によって伝わっていったのが、北東の祠の鏡だけは封を解くなかれ、ということじゃ。」
菊江が皆の顔を見渡した。
「『千年の時を経て鬼が現れし時、四つの御霊と二つの鏡にて鬼を封じよ。さすれば御霊刀身に
宿り、再びこの世に光溢れん』 あの祠にあった鏡は、その二つの鏡のうちの一つじゃ。」
皆も菊江の重い口調に、ゴクリと息を飲み込んだ。
「確か義正さんが、今年は千年目に当たると言っていましたね。」
「ああ、そうじゃ。もしかしたら、先祖の義忠は鬼の復活を予言していたのかも知れんな。だとした
ら、それさえ無視してしまった人間の、なんと愚かなことよ。」
清四郎の問いに答えながらも、菊江の目には光るものが浮かんでいた。
210鬼闇(41):04/08/17 00:42
「…あの地震が全ての始まりでしたのね。」
野梨子が大きく息を吐いた。
「そして、あの二人が封印を開いちまったわけだ。」
魅録はあの二人を思い出していた。
愚かにも封印を解いてしまった二人を呪いたくもなるのだが、既に二人は大きな代償を支払って
いる。
自分達の命だ。

「豆でやっつけられないかなぁ。」
「じゃなかったら、カラーボールが命中すると、ンガガガガーッって鳴くとかさぁ。」
美童と悠理が重い雰囲気に耐えられなくなったのか、軽口をたたいたものの、周りからは冷たい
視線だけがビシビシと突き刺さった。
「…ったく、二人共こんな時に、よくそんな冗談が言えるわね。ばか!」
可憐を始め、皆の視線が痛い。
「すいましぇーん。」
二人は身を小さくしながら、素直に謝った。

「清四郎、どうしましたの?」
野梨子は何やらブツブツと呟いている清四郎に声をかけた。
「あの言い伝えのことを考えていたんですよ。『千年の時を経て鬼が現れし時』、これは正に今の
事態を指しています。そして、『四つの御霊と二つの鏡にて鬼を封じよ』ということは、何かしら鬼を
封じる手立てがあるということです。」
何か、何かある筈だ。
鬼を倒す手段が。
それに先祖の佐々義忠は、どの様にして鬼を退治したのだろうか?
清四郎は菊江や義正から聞いた言い伝えについて、真剣に考えていた。
「それが四つの御霊と二つの鏡ってことか。」
清四郎の言葉を受けて、魅録も頭を巡らせた。
「鏡は例の祠の鏡ですわね?二つというは他にもありますの?」
野梨子の問いに答えたのは、菊江の部屋に入って来た義正だった。
211鬼闇(42):04/08/17 00:43
「ええ、南東の祠は無事です。君達が母と一緒に北東の祠へ行っている間に、念のため私が確か
めて来ました。」
義正の口調はとても重いものだった。
鬼が出現し、人々が襲われているのである。
外に出ることもままならないこの状況を考えると、鬼来里には未来さえないのかと思ってしまう。
いや、鬼来里だけではない。
このまま鬼が人々を襲い続ければ、いずれは新たな場所へと移動するであろう。
そうなれば、日本は、人類は…。
考えたくもない未来を思い、沈む義正の気持ちが表情と口調に表れていた。

「『千年の時を経て鬼が現れし時、四つの御霊と二つの鏡にて鬼を封じよ。さすれば御霊刀身に
宿り、再びこの世に光溢れん』 昔から伝わって来たとはいえ、まさか本当に起きるとは…。みな
さん、せっかく来て下さったのにこんな事になってしまって、何とお詫びをすれば良いやら…」
皆に向かって頭を下げようとする義正を、可憐の言葉が遮った。
「おじさまが謝ることじゃないわ!」
「そうですよ、誰もこんな事を予想出来るわけありません。」
「有難う。みなさんにそう言って頂けると嬉しいですよ。」
清四郎の言葉にも、義正は力なく微笑むだけだった。

「義正、お前がそんな顔をしていたら皆が不安に思う。しゃんとしろ。」
不意に発せられた菊江の叱責に、義正がはっと顔を上げた。
「…そうでしたな、嘆いてばかりの自分が恥ずかしい。我町のことなのに、みなさんが真剣に考え
て下さっている。有難いね、母さん。」
「おっちゃんみたいな偉い先生でも怒られるんだ。」
悠理が面白そうにケラケラ笑った。
「こら、悠理!」
清四郎が諌めようとするのを、義正が笑いながらとめた。
「いや、悠理君の言うとおりさ。私も母にかかっては、いつまでも鼻たれ小僧なんだよ。」
「ああ、そのとおりじゃ。」
緊張が続く中、一瞬垣間見せた皆の笑顔だった。
212鬼闇(43):04/08/17 00:44
「では、続きに取り掛かるとしましょう。この『さすれば御霊刀身に宿り』という下りですが、四つ
の御霊の力が刀身に宿ると考えて良いと思いますので、刀身、つまり刀が必要になるわけです。
ただ、それも並の刀ではないでしょう。例えば三種の神器の一つである『草薙の剣』のようにね。」
「じゃ、『再びこの世に光溢れん』は、鏡と御霊と力が宿った刀で鬼を退治すれば、再び平和な
世界が訪れる、ということじゃない?」
「おおー、美童、あったまいー!」
悠理に誉められて美童も嬉しそうに、フフンと笑った。
「簡単に言ってくれますよ。御霊と刀のありかも解らないというのに。」
そんな二人に呆れつつ、清四郎が溜息混じりに言った。

「ねぇ、清四郎。昨日地図を見て、神社が東西南北と中央にあるって言ってましたわね?」
不意に野梨子が口を開いた。
「東西南北に四つ、中央に一つ。何か意味があるのではないかしら?」
出現した鬼に気を取られ、すっかり忘れていた。
初めて地図を見たときに感じた、嫌な感じ。
今までも、そういった「引っかかり」が事件解決には必要だったことを、清四郎は思い出していた。
自分の第六感を信じてみることにした。
「神社の名前は何というのですか?」

「北は玄武神社、東は青龍神社、南の朱雀神社、西が白虎神社、そうして中央の大きな神社が
刀守神社です。」
義正の答えに魅録が割って入った。
「ちょっと待ってくれ。刀守ってことは、刀がそこにあるんじゃないか?」
おお、と義正も目を輝かせながら頷いた。
「その通りですよ。刀守神社には刀を、他の四つの神社はそれぞれ宝玉を御神体として祭って
あります。」
「じゃ、御霊ってば、その宝玉のことなんじゃない?」
「どうやらそのようですね。」
清四郎が可憐に向かって大きく頷いた。
213鬼闇(44):04/08/17 00:45
「やったーっ!!」
悠理、美童、可憐は飛び上がらんばかりに、キャッキャと喜んでいた。
それに対して、野梨子と魅録の顔は険しいままだ。
「かといって、それをどうするかは解りませんものね。」
「そうなんだよなぁ。」

「あとは何か聞いたり伝わったりしたものは?」
二人同様、難しい表情のまま清四郎が義正に尋ねた。
「残念ながら、ありません。」
義正の答えに、菊江が口を挟んだ。
「あとは、昔の書物が残っているかどうかじゃな。」
「蔵ですね?」
「ええ、大抵のものは蔵にしまってあります。」
清四郎は義正に向かって頷くと、皆に向かって言った。
「みんな、行きますよ。」

皆が立ち上がろうとしたところを、魅録が制した。
「待てよ、いくらすぐ隣だからといっても、外へ出るのは危険だ。」
「問題は蔵へ行くまでの間ですね。例えわずかとはいっても、いつ襲われるかもわかりません。
さっきの僕達は幸運としか言い様がありませんでした。」
清四郎が両腕を組みなおす。
鬼に襲われずに外へ出る方法。
幸運に頼るしか方法がないのだろうか?
「うーん。」
再び皆が頭を悩ませていた。

そんな思考を義正の言葉が遮った。
「そういえば…。」
義正が何やら思いついた様子で立ち上がり、台所へと向かって行った。
皆も何事かと、義正の後を付いて行く。
214鬼闇(45):04/08/17 00:47
「確か、ここだったはず。」
そう言って、納戸の引き戸を開け、中へ潜り込んだ。
「ああ、ここだ、ここ。」
暗闇から義正の声だけが聞こえてきた。

「何があるんですか?」
魅録が問い掛けてみた。
「戦時中に作られた隠し通路さ。」
切羽詰った状況の中にもかかわらず、義正の声は少し弾んでいた。
義正の人を驚かせることに喜びを感じる性格が、再び表れたに違いない。
「へぇー、どこに繋がっているの?」
美童の問いに義正は頭をひょいと出し、質問で返した。
「どこだと思う?」
にこにこと笑顔が浮かぶ義正に、可憐も声を上げた。
「まさか、蔵の中とか?」
「当たり。」
以外でもあり、又、至極当然でもある答えに、今度こそ皆は喜びの声を上げた。
「やったー!」

「くっ…。だめだ、わたしの力では開かないよ。」
五十年以上も昔に作られ、以降全く使われることの無かった扉である。
直ぐに開く方が驚きだろう。
「代わります。」
清四郎はそう言って義正と代わり、呼吸を整えた。
「ふむっ!」
清四郎の気合と共にガタンと扉が開いた。
「いやー、さすが武道の達人だねぇ。」
義正が拍手と共に、驚きと賞賛の混じった声で称えた。
215鬼闇(46):04/08/17 00:47
「あたい、こういうの大好き!一番乗りだじょー!」
直ぐ後ろにいた悠理が清四郎の脇をすり抜け、一歩足を踏み入れた。
「うわっぷ!うげーっ!」
悠理の悲鳴に、魅録が声を掛けた。
「どうした?」
「く、蜘蛛の巣が…。」
戻ってきた悠理の頭と顔面には、蜘蛛の巣がベッタリと張り付いていた。
「なにしろ、60年ぶりだからねぇ。」

「おっちゃん、箒かなんか貸してよ。蜘蛛の巣を払いながら行くからさ。」
悠理が頭や顔に付いた蜘蛛の巣を、手で払いながら言った。
「箒ならこの納戸の中にあるよ。お、あった、あった。」
義正が納戸の隅に掛けてあった箒を悠理に渡した。
「ありがと、おっちゃん。」
悠理が箒を片手に笑顔を見せ、礼を言った。
どうやら先頭を誰にも譲るつもりはないらしい。
「じゃ、そうと決まれば、行くぜ。」
魅録は自分の後ろにいた三人に声をかけた。
その三人はというと…。
「あたし、こういうところはちょっと…。」
「僕も遠慮したい。」
「…私も、茶の間でおとなしくしていますわ。」
可憐、美童、野梨子の三人は一歩後ろへと引いた。

「何言ってんだよ!可憐や美童はともかく、調べ物に関して野梨子は戦力になるんだから来なきゃ
ダメだろ!」
普段から、ここ一番の強さを見せる野梨子である。
その野梨子が後ろへ引いたのを見て、悠理は声を上げた。
216鬼闇(47):04/08/17 00:51
「だって、蜘蛛は苦手なんですもの。他にもムカデとかいそうですし…。」
野梨子は後ろめたさがあるのか、今までよりも声がトーンダウンしている。
しかし、悠理は容赦がなかった。
「蛇の時は逃げなかったじゃないか!」
「誰だって苦手なものはありますでしょ!私、蜘蛛やムカデみたいに足が沢山あるのってダメなん
です!」
どうやら生理的に受け付けないらしく、野梨子が身震いしながら叫んだ。
「悠理だって長くてにょろにょろしたものはダメって言ってたじゃありませんの。」
「あれは、お前のおかげで克服したじょ!」
アドベンチャークイズでの出来事を思い出したらしく、悠理はジロリと野梨子を睨んだ。
「そ、そうでしたわね…。」
明らかに形勢が不利だと悟った野梨子は、大きな溜息を吐いた。

野梨子がきつい皮肉で悠理をやり込めるのは常日頃のパターンであり、逆というのは滅多にない。皆も高みの見物をしていたいのは山々なのだが、急がなければならない今は別だ。
「別に野梨子に先行けって言っているわけじゃないからさ。可憐も美童も俺達が先に行くから、
その後をついて来いよ。」
普段ならやさしい魅録も、どうやら許してくれそうにない。
「そうです。事は急ぎますので、人手が多いに越したことはありません。野梨子、このまま悠理に
言わせておいて平気なんですか?」
さすが幼馴染、プライドが高く、負けず嫌いの野梨子の痛いところを突いてきた。
「…解りました。仕方ありませんわね、美童、可憐?」
「気持ち悪いとか、そんなこと言ってられないってことだろ?」
「そうね。ここで踏ん張らなきゃ、女がすたるってもんだわ!」
美童と可憐は、自分に言聞かせるように声を張り上げた。

                  【つづく】
217名無し草:04/08/17 09:52
鬼が襲ってくるという一大事の前に、
蜘蛛やムカデが嫌いだから行きたくないと揉める様子が
らしくって面白いです。
これから鬼へ戦いを挑むのでしょうが
一波乱ありそうですね、期待してます。
218名無し草:04/08/17 18:51
>鬼闇
このお話は6人がまんべんなく登場するのが嬉しいです。
可憐が鬼になった時は、悠理はビビりまくってましたが、
今回はずいぶんと積極的ですね。
鬼退治は清四郎と魅録が中心でしょうが、
彼女が壁に押し込んだ巻物が鍵を握りそうですし、
野梨子ともども、今後の活躍が楽しみです。暴れて欲しい!
219名無し草:04/08/18 22:09
突然ごめんだけど、
女子バレーのキューバの監督がコルバ将軍に禿似だったw
220名無し草:04/08/19 00:05
む。コルバ将軍、見そびれた…
オリンピック盛り上がってますよね。
しかし、清四郎って柔道も強いんだろうか。
なんとなく少林寺拳法とか空手のイメージだけど…
剣道も似合いそうですな。
真剣白刃取りできるくらいだし。

221名無し草:04/08/19 15:43
>220
>真剣白羽取り
あそこから「人殺し!」までのシーン超好き。
『有閑』らしいスピード感がイイ!!
222三日月:04/08/19 16:18
十三夜月の作者です。
今度は美→野のストイックな短編ができました。
5レスいただきます。
223三日月1(美→野):04/08/19 16:19
本当に会いたいのは、逢いたいのは彼女だけ。
だけど僕は今日もひと時の虚偽の時間を、その場だけの女と過ごす。


「まあ、美童、またデートですの?」
美童はその声に驚いて振り向いた。いまここにいるはずのない少女の声。
まっすぐな黒髪を肩口で切りそろえ、淡いピンクのワンピースを着ている。ふわり、と裾が広がっている。
かっちりとした制服では彼女の凛としたところが立ちすぎて、彼には恐れ多い心地さえするのだが、目の前にいる彼女の姿は慕わしさのほうが先に立つ。
美童は彼女の笑顔に引き込まれそうな自分を押し隠し、曖昧に微笑んだ。
「ああ、今から二人目の子との待ち合わせに移動するところ。」
己の軽薄さを表に出し、彼女の軽蔑をわざと買う。
それは彼が彼女と出会ってから繰り返されている業。
「そうですの。お急ぎでした?私、呼び止めてしまって・・・」
「いいよ。もう少し時間はあるから。野梨子は?」
それでも彼女との時間が愛しい。この時間が過ぎてしまうのが惜しい。
「私は母さまと一緒に白鹿流関係のお付き合いですわ。このままお店で待ち合わせですの。」
白鹿流の次代家元として彼女は母親とともに行動することが多い。
母親は別に一人娘に跡を継ぐことを強制はしていないが、彼女自身がそれを望んだ。
親戚連中に結婚のことをうるさく言われるのがうっとうしいんですけれどね、と彼女は苦笑していた。
今もこの近くにある料亭に向かって歩いているところ。行った先に待ち構えているのは見合い写真を懐に携えたおばさまなのだろう。
224三日月2(美→野):04/08/19 16:21
彼女はそれを思い、ふうっとため息をついた。
「気が進まない相手なんだ?」
と美童が同情したように言う。
「あら、ま、私ったら。」
ため息に気づかれて野梨子は肩をすくめた。
「あはは。僕相手に取り繕うことないよ。」
美童が優しく言うので、
「そうですわね。」
と野梨子もくすり、と笑った。

ふと沈黙が流れる。

「美童?」
と言われてはっとした。
いつの間にか彼女の黒い瞳に引き込まれていた自分に気づく。
そこに自分が映っていることにたまらなく狂おしくなる自分がいた。
まるで宇宙の深淵を覗き込むがごとく彼女の黒い瞳の奥を探る自分がいた。

そこにいるのは彼女にとってはただの友人の僕なのに。

「ああ、いや。ちょっと疲れてた、かな。そろそろ行かなくちゃ。」
首をかしげる彼女に何気なさを装って言う。
金糸の髪がさらり、と揺れる。
今の彼の様子は疲労感が漂うように見えないこともないだろう。
実際、疲れているのだから。
225三日月3(美→野):04/08/19 16:22
「まあ、お疲れでもデートが優先ですの?美童らしいですわね。」
心配そうな色を浮かべつつもころころと笑う野梨子は美童のことを友人だとしか思っていないだろう。
苦々しさに顔を歪ませないように、彼はかなりの努力を要していた。

だが、彼女は見ていた。
美童の手が、きゅっと密かに握り締められるのを。
彼は彼女には見えていないと思っているのか。
それとも彼自身、自分のそんな些細な仕草に気づいていないのか。

彼女は見なかったことにした。
あえて彼が何も言わないのなら、問うことはしない。

「それでは私も失礼しますわ。女性の心を玩ぶのもほどほどになさいませね。」

ちくん、と棘が刺さった。

二人の心に。

でも二人とも、相手に刺さった棘には気づかなかった。
気づかない振りをした。
友でいつづけるために、そのままいつもの笑顔を交わした。
傷を、隠した。
友人でいつづけることが、今は最善である。
226三日月4(美→野):04/08/19 16:23
去って行く彼女の背中を見る。
まだ幼い後姿。
今のままの彼女に、男女の情念を教え込むのは酷としか思えなかった。
今のままの彼では、彼女に想いを告げたとて、暗い情念を押し付けることしか出来ぬだろう。
それは、酷だ。

だから、彼は想いを飲み込み、友人でいつづけるという枷を自らに科した。

背中に彼の視線を感じる。
熱く切なく狂おしい。
今のままの彼に、振り向くことは恐怖だった。
今のままの彼女では、彼の想いを受け入れたとて、友愛と嫉妬以上の感情を持てぬだろう。
それが、怖い。

だから、彼女は想いを飲み込み、友人でいつづける卑怯に甘んじた。
227三日月5(美→野):04/08/19 16:24
ようやく視線が外れる気配がしたので彼女は振り返る。
雑踏の中でもひときわ目立つ長身の彼の金髪は、月の色だと思った。

彼女の後姿へと背を向け空を振り仰いだ彼の目に、西の空に傾く月が見える。
ほとんど沈みかけるその月は、三日月。
いつか満ちてゆく月。

いつか、この想いも月のごとく満ちる日が来るのだろうか?

大人になれば、この想いは成就するのだろうか?
それとも、太陽の光のごとき友情のみが肥え太り、この影のごとき想いは光に塗りつぶされて消えてしまうのだろうか?

どちらでも、よい。

彼は偽りの仮面をつけると、雑踏の中に歩き出した。
黒髪の少女が向ける視線にも気づかずに、後ろも振り返らずに。
228三日月:04/08/19 16:26
以上です。お粗末さまでした。

と>227に書くつもりだったのについ送信してしまいました。
レス消費しちゃってすいません・・・
229名無し草 :04/08/20 21:20
おお。ひさしぶりの美×野♪
このカップリング好きです。
>「まあ、お疲れでもデートが優先ですの?美童らしいですわね。」

これ、野梨子が言いそうな台詞ですね〜。
230名無し草:04/08/21 01:21
>三日月
美×野好きなんですが、226のそれぞれの心情が
まさに自分のこのカプの萌えポイントで感動しました。
>どちらでも、よい。
踏み込まないところも凄く美童らしかった。
また美×野お待ちしてまーす。
231名無し草:04/08/22 23:09
>220のコルバ将軍から何日もスレがストップだったので
(´・ω・`)ショボーン な気持ちを書き込もうとして確認せよの指示をもらいました。
新作嬉しい!三日月今から読みまーす(・∀・)
232名無し草:04/08/23 00:22
『サヨナラの代わりに』をうpします。
>161の続きです。
魅録の実家で夕食までいただいて、私達はマンションへと戻っていった。
魅録は明日からまたいつも通り仕事で私もいつも通り白鹿のことがあったから、マンションの
入り口を入ったところでそれぞれ階段とエレベーターで別れようとしていた。
「なあ野梨子、これからどうしてくか?」
私がエレベーターのボタンを押そうとした時、魅録が急に訊いてきた。
エレベーターは1階にあったから、ボタンを押せばすぐに扉が開いて乗り込める状態だった。
だが私はボタンを押す手を止め、魅録を見上げる。
「これからって?」
すると魅録は何故かプイと横を向き、少し間をおいてからポツリポツリと話し始めた。
「だから、えーっと、……例えば、籍入れるとか、一緒に住むとこ探すとか、式みたいなの
した方がいいのか、その、いろいろとあるだろう?」
魅録はそこで、もうこれ以上言わせるなと言わんばかりに黙ってしまった。
よく見ると、その顔が心もち赤いような気がする。
私は、私なりに具体的なことについて考えてはいたけれど、おじさまや千秋さんに会うまでは
それを口に出してはいけないと思っていた。
だから、魅録がそこまでちゃんと考えてくれていたことが純粋に嬉しかった。
ただ、ひとつだけきちんとしておきたいことがある。
本当はそんなことに拘らなくてもいいのかもしれないけど、私の気持ちがそれを許さない。
怖気づいてしまう前に、魅録の腕を取って自分の方へ僅かに引っ張ってみた。
「魅録、今日でなくてもいいんですけど、ひとつ考えておいて欲しいことがありますの」
―あの、清四郎と悠理には、きちんと言っておいた方がいいと思ってますの―
別れ際の野梨子の言葉が、俺の頭の中をぐるぐる駆け巡っていた。
俺は思いも寄らなかったことを聞かされて、少なからず動揺した。
何せ、悠理とは別れて以来会ってないし、清四郎ともあの時以降会ってない。
それでも、お袋は今も悠理の母親と付き合いがあるみたいだから悠理の連絡先は何とか
聞きだせるだろうし、美童を通せば清四郎とも連絡は取れるだろう。
だが物事の本質は、連絡が取れるとか取れないとかじゃない。
俺に、悠理と清四郎に平気な顔をして会う自信がないだけだ。
試しに、何度かそれを頭の中でそれをシュミレーションしてみた。
が、やっぱり言葉をうまく繋げなくて気まずい雰囲気になり、その場を立ち去りたい衝動に
駆られるところで止まってしまう。
俺はベッドの上に寝っ転がり、何の変哲もない天井をぼんやりと眺めた。
「どうすっかなあ……」
考えがまとまらない。
正直、気持ちの8割方は野梨子に諦めてくれと言う方向に傾いている。
俺は、あいつ等に会うのは、俺達それぞれが平気な顔をして会えるようになってからでも
十分だと思ってる。
多分他人はそれを『怖気づく』と言うのだろうが、治りかけた傷口をあえて刺激して
悪化させる必要はないだろう。
けど、残りの2割は、野梨子と同じであいつ等に声をかけてみたい気がする。
俺は、あいつ等に声をかけることでくぎりというか何というかそういったものをつけて、
もっとずっと楽になりたいと思ってる。
それに、実際に会ってみれば、今までぐだぐだ考えていたのが馬鹿らしくなってくるかもしれない。
俺はゆっくりと目を閉じて両腕を真横に広げる。
時計の規則正しい秒針の音を聞きながら、考えを巡らせる。
どのくらい時間がたったのかわからなくなったころ、俺は心を決めてサイドテーブルに手を
伸ばし、携帯を手に取った。
待てど暮らせど出る気配はない。
俺はいい加減諦める気になって電源を切ろうとした時、ようやく眠たげな声でお袋が電話に出てきた。
お袋が悠理の番号だけ打ったメールを返してきたのは、電話してから3日後の夕方だった。
最初履歴の中にお袋を見つけた時、俺は真面目に親父に何かあったのかと心配したが、
ほどなく自分がしたことを思い出した。
お袋にしては返事が早い、というか早過ぎる。
普段は全く母親らしくないくせに、何というか、ここって時にだけ気を回してくる。
俺はしばらくの間液晶に視線を落とし、それから一旦メールを閉じて野梨子に電話をかけた。
野梨子はすぐに電話に出てくれ、取り留めのない会話が始まる。
俺はなかなか本題を切り出せず、だが地下鉄の入り口はもうすぐそこまで迫っていた。
「……お袋から、悠理の電話番号を聞き出した。かけてみようかと思ってる」
言い終わった後、電話ごしながらも微妙に野梨子の様子が変わったのが伝わってきた。
俺はとんでもない間違いをしたのか。
野梨子からの言葉を待ちながら、俺の不安は徐々に大きくなっていく。
ついにその不安に耐えられなくなってとにかく何でもいいから話し掛けようとした時、
受話器から堰を切ったように野梨子の言葉が流れてきた。
「私、あなたにあんなことを言っておきながら、実は全然自信がありませんでしたの。
でも、これで私も乗り越えることができますわ。もう大丈夫ですわ。ええ、大丈夫……」

【続く】
236名無し草:04/08/23 09:20
>サヨナラの代わりに
クライマックスが続いてますね。
過去を乗り越えたい二人の心情が切ないです。
あとは魅録は悠理の子供のことをどう野梨子に説明するのか。
気になるところです。
237名無し草:04/08/26 02:25
お盆休みが終わったせいか、オリンピックのせいか、
最近、作品降臨が少なめですね。
さびしいので「愛の手紙代筆くん」で遊んでみました。
意味不明だけど笑えるかな?ちょっとビミョーかな…(苦笑)


顔面蒼白がお似合いの清四郎様へ

あなたのハートにかかと落とししたい悠理です。
清四郎様はまるで吹けば飛ぶシマウマのように愛らしい・・・
あなたを思うとトラウマになるほど過労死しそうです。
清四郎様のためなら、10年でも20年でも針に糸を通しつつ
追い越し車線を逆走できます。
「悠理さんの寝顔って足払いみたいですね」
と無邪気に笑う清四郎様の横顔が忘れられません。

悠理より

PS.へたの横好き
238名無し草:04/08/26 09:10
カキコが止まってるのは夏休みも終盤に差し掛かり
お子さんの宿題の手伝いに借り出されてるからかと思ってました。

無人島リレー。進まないまま夏が終わりそう。
鬼闇、横恋慕、サヨナラの代わりに、憂鬱な雨の午後に、
続きお待ちしてます。
239有明の月(可→魅):04/08/26 13:08
短編UPします。可→魅です。
*****************

空気がひやり、とよそよそしい。
あたしは頭をすっきりさせたくて、歩いてた。
今回の男はあたしから振ってやった。ちょっと頼りなくて情けない奴だってわかったからさ。
ちょっとタチの悪いチンピラに絡まれてあたしを置いて逃げていこうとした。
ちょうどそこに、喧嘩がご飯の次に大好きという暴れん坊の友人が通りかかったからあたしは難を逃れた。
その場で男に引導を渡して、あたしはその中性的で並の男よりも当てになる女友達と飲み明かした。

歩道を歩くあたしの斜め後ろでバイクのエンジン音が聞こえる。止まったみたいだ。
聞き覚えのある音。この排気音には聞き覚えがある。
でもあたしは振り返らない。気づいてない振りで振り返らない。

「可憐?朝帰りか?」

時計が指すのは午前3時。朝帰りというよりはまだ未明の午前様という時間だと思うけど?

その馴染んだ声に初めて気づいた振りであたしは振り返った。
「あんたこそ、魅録。」

自分の髪が顔にかかる。左手でそれを退けると、夜目に鮮やかなピンク色の頭をした目つきの鋭い男がそこにいた。
メットを脱いで手に持っている。

見慣れた黒い車体の450ccバイク。魅録は750cc以上の大きなバイクに乗りそうなイメージがあったが、日本の狭い道ではあんまり大きいと小回りが利かないんだ、とその排気量のバイクを愛用していた。
もちろんそのくらいとは言っても、いいエンジンを積んだレーシング仕様のもの。更に彼の手で法に引っかかるか引っかからないかというぎりぎりの改造も加えてあった。
だから、その音は独特だ。

青いライダージャケットを着ているが、下は普通にジーンズを穿いている。
その男臭さにあたしは目を奪われる。
240有明の月(可→魅)2:04/08/26 13:09
「デートだったろ?昨夜。それで朝帰りか?」
そう訊く彼の表情はいつもと変わらないようにしか見えない。うっすらと笑みにも似た口元。
その気持ちはあたしには見えない。いつものこと、と思っているのか?

あたしが処女だなんて気づいてるのは美童くらいよね。
清四郎もわかってるかな。あいつは何でもお見通しに見える。

でも目の前のこの男は絶対にそうは思ってない。
そしてそのことにこの男は関心がない。
あたしに友人として以上の感情なんか持ち得てない。

「振ったわよ。あんな情けない男。悠理のほうがよっぽど男らしいわ。」

あたしがつん、とそっぽを向いてそう言ったら、彼は苦笑した。
「そりゃあなあ。悠理以上に男らしい男なんかそうそういないだろ。」

清四郎という幼馴染を持ったために男の判断基準が高すぎる野梨子の不幸をあたしたちは笑う。
だけどさらに悠理という存在がそれに拍車をかけている。あたしにも、野梨子にも、と魅録は笑った。
悠理に本気で恋している聖プレジデントの女子学生も一人や二人じゃないのだ。

でもね、あんたも、美童も、清四郎も、皆レベル高すぎよ?客観的に見て。

あたしは思うけど口には出さなかった。
口に出す必要がないことだもの。
あんたはそんなことどうでもいいんでしょう?

「で?魅録はこんな時間に何しに行くところだったの?」
それとも誰かと会って帰るところだった?
「急に夜明けが見たくなってさ。そうだ、可憐も一緒に行かねえ?明日は休みだしさ。」
魅録は後部座席をぽん、とグローブをはめたままの手で叩いた。
スカートではなくパンツスタイルをしていたあたしには、それを断る理由はなかった。
241有明の月(可→魅)3:04/08/26 13:11
「ねえ。他の友達と行くつもりだったんじゃないの?」
おあつらえ向きに魅録のバイクにはサブのメットが積んであったのであたしはそれをかぶっていた。
見覚えのある紫のメット。
以前、このシートに跨っていた悠理がかぶってたのを覚えてる。
「んあ?ああ、失恋した奴がいるってから、そいつを誘おうと思ってた。」

そか。じゃあ悠理じゃないんだね。乗せる予定だったのは。
あの子はまだ恋を知らないから。
そしてあんたもあいつのことを男友達のようにしか思ってないから。

「ねえ、その人、放ってあたしを誘ってよかったの?」

でも魅録はそのあたしの呟きが聞こえなかったのか、
「飛ばすぜ。」
とだけ言って、グリップを回した。



波音だけが響いていた。
シーズンオフの未明の海岸はひどく静かだった。

ちょっと肌寒さを感じたあたしに魅録は自分のジャケットを脱ごうとしたが、あたしはそれを断った。
9月。まだ昼間は時折30度を超すような時節だ。別にそこまで寒くはない。
それに彼のジャケットを羽織る勇気はまだ持ち合わせてない。

波間に太陽が昇らないかと見つめているあたしだったが、魅録の呟きに振り返った。
「有明の月だな。」
真後ろ。西の空には少しだけ傾いた下弦の月が白々しく浮かんでいた。
242有明の月(可→魅)4:04/08/26 13:12
ぼんやりとそれを見上げたあたしのほうを、いつの間にか彼がじっと見つめていた。
なに?なにを見てるの?

「男に腕枕されてああいうのを見上げてるのが、お前にはぴったりだな。」

馬鹿。本当にあんたって馬鹿。
どうせその言葉は、女友達の分析でしかないんでしょう?
あんた自身の感情なんか、一片もはさまってないんでしょう?

「そうね。それもロマンチックね。」

ふふ、と笑う。
本当に笑うしかない。

こいつにはあたしは女ではない。
女友達であって、女ではない。
あたしはこいつの母親に似すぎているらしい。

だから、女に見えないらしい。

性格はこんなに違うのに。
愛されるのが当たり前の彼女とはこんなにも違うのに。
生まれたときからお嬢様として愛されてきた彼女とはこんなにも違うのに。

あたしは父親を失ったただのちっぽけな女の子にしか過ぎないのに。
243有明の月(可→魅)5:04/08/26 13:14
だから、あたしは魅録の目ではなく、月を見上げて言った。
「でも。今はあんたとここにいるわ。あんたとあの月を見てるわ。」

あんたがどんな顔をしてるかなんて見れない。
見ることはできない。
そんな勇気はまだ持ち合わせてない。

そしたらがしがしと頭を掻き毟る音が聞こえた。
たぶんこいつは苦笑している。困ったように苦笑している。

だから、あたしは月から目が離せない。

あの月はあんたとしか見たくない、なんて言えない。
あんたがあたしを女と認識してくれるまで、恋の遍歴をやめられない。
早くあたしを見つけてよ。ちっぽけなあたしを見つけてよ。
ただ、あんたに見つけてほしいだけなのよ。

いつか一緒に、夜明けのあの月を─────

******************
おしまいです。お粗末さまでした。
244名無し草:04/08/26 22:21
ブラボー!
有明の月よかったです。
可憐の気持ちが伝わらないのが切ないですね。
また期待してます。
245名無し草:04/08/27 15:05
有明の月、タイトルの綺麗な月が想像できる描写と、可憐の
伝わらないもどかしい思いが手に取るように分かってドキドキ
しました。可憐は意外と切ない恋が似合いますね。
相手が魅録というのがまたイイ(・∀・)!!
私も次回作、期待させていただきます。
246名無し草:04/08/28 13:07
>有明の月
素敵でした。夜明けの海辺、って良いですよね。
悠理がうまく絡んでいるのがいいなぁと思いました。GJです。
247名無し草:04/08/28 15:31
>有明の月

悠理が言った「失恋した友人」って、可憐のことだったんじゃないのかな。
ほんとうは魅録も可憐のこと、好きなんじゃないの〜って思っちゃいました。
続編でもあると嬉しいな。ぜひハッピーエンドで…

248nanasisou:04/08/29 13:34
>有明の月
めっちゃ素敵でした。読み終わったあと、ほわ〜ってなりました。

で、素敵可憐話の後にこんなこと書くのもアレですが、
最近有閑読み直して思ったんだけど、ティコが出てくる回の
万作ランドでの悠理がまるいグラサンかけてるのって、
悠理が魅録から、うばってかけてたりしたらすごい萌え〜♪
249名無し草:04/08/29 16:00
>248さん
名前の所は無記入でよいので、E-mail欄に半角でsageと入れてね。
このスレはsage進行ですからね!
250名無し草:04/08/29 18:49
>248

ってゆうかスレの流れ(雰囲気)読めよ…w
251名無し草:04/08/30 01:08
>248
sageのやり方も知らず、妄想意欲に水を差すカップリング話を
平気で書くところをみると、初心者なんでしょうね。
次のレスを書く前に>>1-7を読み直し、>>6のサイトで2chについて
学んで来てください。
あなたのレスのせいで、このスレが荒れるのは困りますから。
252名無し草:04/08/30 01:30
>249さん
親切にありがとうございます。すみませんでした。


確かに流れ読んでないです。ごめんなさい。
でも、どういうことが水をさしてしまうとか
よくわかんないんです。
もうちょっとやさしく注意していただけると、
初心者も書き込みやすいです。
生意気なこといって、すみませんでした。
これからは、気をつけます。
どうもすみませんでした。
253名無し草:04/08/30 01:31
>>248
半年ROMれ、話はそれからだ
ちゃんと今までの流れを読んでればここがかなり規律に煩い部類に入るスレだということが分かるはず

とりあえず、帰れ!!
254名無し草:04/08/30 02:37
あーあ、またスレを荒らす初心者厨が湧いたのか。夏だなー

>252
>でも、どういうことが水をさしてしまうとか
>よくわかんないんです。
わかんない うちは かきこむのを やめましょうね。

>もうちょっとやさしく注意していただけると、
>初心者も書き込みやすいです。
ここは しょしんしゃを かんげい しない ばしょです。
しょしんしゃで あることを りゆうに じゅうにんに
なにかを のぞむのは のうない だけに してください。
255名無し草:04/08/30 10:23
248さんは作品への感想と萌え話をレス分ければよかったんじゃないかな。
ここは特定のカップリングを、
無理矢理別のカップリングに捻じ曲げることを嫌うから。

まあ匿名掲示板なんで、これに懲りずに…w
256名無し草:04/08/30 11:11
したらばで過去ログ斜め読みでもしたらわかると思うけど、
有閑はカプ論争で何度か荒れた過去があるからこういう反応が出るんだ。
楽しく妄想するためには、スレの歴史も知っておこう。
257名無し草:04/08/30 12:56
ということで(どういうことだか)、連載も滞りがちな今日この頃、
メイン以外のキャラで新カプ妄想なんてどうですか?
瑠璃子×賀茂泉みたいに斬新なSSが投下されるかもしれないしw

個人的には澤ノ井理事長×白雪緑の不倫(もしくは後妻)とか
アリなんじゃないかと・・・
一ノ蔵さんにも誰かいい人を見つけてあげたい。
258名無し草:04/08/30 14:07
白雪緑は悲しい過去を持つ美少女戦士なので
不倫じゃなく幸せにしてあげて〜w
259名無し草:04/08/30 23:04
専用ブラウザ使ってて、板が移転したの知らずに
10日も書き込みないんだと思ってた(ニガ

薄幸な白雪さんには玉の輿でマーテル王子などどうかな。
玉の輿なのに誘拐されてたから可憐全然からまなかったしw
260名無し草:04/08/30 23:21
>259
マーテル王子イイ!
上品で物腰も柔らかそうだし、優しそう。
白雪姫を幸せにしてあげてほしいよ、ママン。
261名無し草:04/08/30 23:22
>マーテル王子
彼は超美形なのに、スカみたいな役だったね。外見的にはプリスカと似合いそうv
(でも、そうするとモルさんが…)
あ、モルさんと東村寺の師範代はどうでしょう?…彼女の方が強いから無理か。

さらにカプを妄想しようと虎の巻を持ち出し、ふとスパの回の桂花の娘を思い出す。
ドメイヌが逮捕されて、整形できなかったんだよね〜、気の毒に。
で。その後どこかで美しく変身したのを知らず、美童が口説いちゃうとかw
「私、あなた見たことあるね」なんて…ちょっと面白いかも。
262名無し草:04/08/31 00:11
『鬼闇』うPします。
>>216の続きです。
オカルト方向に進んでいる上、一部グロテスクな表現もありますので、
苦手な方はスルーして下さい。
またまた、大量うPですみません。
263鬼闇(48):04/08/31 00:13
「ないなぁ。」
「見事に見当たりませんね。」
魅録と清四郎は、山積みになっている古書や棚の蔵書を目で追い、時折パラパラと捲りながら
呟いた。
「私も蔵の書物は何度も目を通しましたが、鬼に関する書物は見たことがないですなぁ。」
義正は、悠理や可憐と一緒に長持ちの中を調べていた。
といっても、本を手にしても何が書いてあるか解らない二人は、義正の指示を仰ぎながら棚から
荷を下ろしたり片付けたりという役目だ。
一方、野梨子はというと、棚から取り出した巻物を広げては巻き取るという作業を、ひたすら繰り
返していた。
「これも違いますわね。」
ふぅと息を吐きながら、広げていた巻物を丁寧かつ迅速に巻き取っていく。
「千年前の出来事を記したものでしょう?残っていましたら、奇跡に近いですわ。」
野梨子が巻物を紐で結びながら、軽く溜息を吐いた。

「いいかげん飽きちゃったよぉ。」
「あたしも。」
義正の手伝い以外することのない悠理と可憐が、もうたまらんというように声を上げたのだが、
清四郎の冷たい視線に、ブルッと身体を震わせた。
「人の命がかかっているというのに、よくそんな事が言えますね。」
二人がそっと周りを見渡すと、野梨子、魅録、そして何時もなら仲間のはずの美童までが自分
達をじっと見つめていた。
「まあまあ、悠理君や可憐君だって悪気があったわけじゃないんだから。」
義正がその場を取り成すように口を挟んだ。
「そうだよ、おっちゃんの言う通りだい!ただ、ちょっと言ってみただけだい…」
語尾がごにょごにょと小さくなってしまったのは、流石に悠理も悪いと思ったのだろう。
「…悪かったわよ。」
可憐も皆の剣幕が恐ろしかったのか、素直に謝った。
再び皆が作業へと没頭し、沈黙が続いた。
264鬼闇(49):04/08/31 00:14
ゴトッ!
「あーっ!」
大きな落下音と共に、棚を調べていた美童が声を張り上げた。
「どうしたの?美童」
「見つけたのか?」
義正の指示も無く、暇を持て余していた可憐と悠理が美童へ駆け寄った。
清四郎、魅録、野梨子の三人も手を止め、美童を見ている。
その美童はというと、顔面蒼白で固まっていた。

「おじさん、ごめんなさい…」
「どうしたのかね?」
義正が何事かと美童へと近づいていった。
「御先祖様の像を落としちゃいました…」
美童は泣きそうな顔で、落とした像を抱えていた。
「ああ、何だ、そんなことか。」
その言葉を聞いていた清四郎、魅録、野梨子の三人は、再び蔵書の山や書棚に目を戻した。

「いいんですか?御先祖様の大事な像なのに。」
義正の拍子抜けするような答えに、美童は目を丸くして驚いていた。
そんな美童に、義正は肩をポンと叩いてハッハッハと笑い飛ばした。
「なーに、形ある物いつかは壊れる、ですよ。」
「本当にすみませんでした。」
「いやいや、気にすることはない。」
そう言って像を受け取った時、何やら白いものが義正の目をかすめた。
「おや?」
「どうしたんですか?」
美童が恐る恐る声をかけたのだが、義正は像をひっくり返して木の繋ぎ目を覗き込んでいた。
「いや、像の合わせ目から何やら紙切れのような物が…。後で調べて見ましょう。それよりも千年
前の資料を見つける方が先です。」
265鬼闇(50):04/08/31 00:16
「そういえば、あたい達ってどんなものを探してるんだ?」
自分も本気で探そうと思ったのか、悠理が口を開いたものの、あまりといえばあまりの質問に、
皆の肩ががっくりと下がった。
「あのなぁ、俺達は鬼に関する書物を探してるって、さっき言っただろ!」
いくら探しても目的の物が見つからない苛立ちもあり、魅録が珍しく声を張り上げた。

その時、ざわざわと悠理の野生の血が騒いだ。
――待てよ?鬼って、どっかで見たぞ?
「んー、どっかで鬼の絵が書いてあるものを見たような、見ないような…」
全員の手が一斉に止まり、悠理へと詰め寄った。
「どこですの!」
「どこだよ!」
「悠理、思い出すのよ!」
「悠理、頑張って!」
皆は悠理に思い出してもらおうと、必死だった。
うんうんと悩んでいる悠理に、清四郎も珍しくエールを送った。
「悠理、頑張って思い出して下さい。そうでないと、僕たちは何時までたってもこの町から出られま
せんよ。」
「何で?」
清四郎の真剣な表情に、思わず悠理も問い返したものの、帰ってきた言葉はあまり良いものでは
なかった。
「出る前に、確実に鬼にやられます。」

悠理がポン!と右の拳を左の掌に打ち付け、声を上げた。
「思い出した!地震があった時、部屋の上の戸から巻き物が落ちてきて、あたい、それを片付け
たんだ!んで、そいつを広げてみたら、鬼の絵が書いてあったぞ!」
「悠理エライ!」
「よく頑張りましたわね。」
美童と野梨子に誉められ、悠理は嬉しそうに、エヘヘっと少し照れながら頭を掻いた。
266鬼闇(51):04/08/31 00:17
「私は蔵の方だとばかり思っていましたが、まさか家の中にあるとは…」
義正もただ驚きの声を上げていたが、在り処が解った今、皆は蔵の中もそのままに、早速部屋へ
と戻って行った。

「ここ!」
悠理が指差した所は、一見何もないように見えた。
「何?どこにあるのよ?」
「あたいも解らなかったんだけど、地震の時に開いたみたいなんだ。ただ、取っ手も何もないから
開けるのが大変かも。」
確かに悠理の言うとおり、壁を良く見ると妙な溝がある。
「これじゃ、解らないわよねぇ。」
可憐も壁を見上げながら呟いた。
魅録が掌を押し付けて開けようと試みるが、戸はピクリとも動かない。
「だめだ。どうする?バールか何かでこじ開けるか?」
清四郎は義正へと首を巡らせた。
「義正さん、壊してしまっても構いませんか?」
「ああ、構わんよ。今はそんな事を言っている場合でもないからね。」
清四郎は右の掌を壁に当て、静かに呼吸を整えると気を集中させた。
「ふむっ!」
気合と共に、一気に力と気を放出させた。
ビシッ!
戸袋の扉だけが、パラパラと音をたてて崩れた。
「台所の扉といい、この戸袋といい、凄いねぇ。」
義正が微笑みながら拍手していた。

かつて扉と呼ばれたものを片付け、清四郎は早速戸袋の中を覗き込んだ。
「悠理、これは片付けたのではなく、押し込んだだけでしょう?」
「いいじゃないかよ!それよりも早く見てみろって!」
悠理がじれったそうに叫んだ。
267鬼闇(52):04/08/31 00:18
清四郎が箱を取り出し、次々と手渡しで他のメンバーや義正へと渡していく。
そんな中、一つだけ紐で縛られておらず、蓋が載せてあるものがあった。
蓋の文字を読んで見る。
――佐々義忠平安封鬼之書
「…あった、これだ!」
清四郎の上げた声には、喜びと力がこもっていた。

早速、清四郎が箱から巻物を取り出した。
細く長い指が紐を解き、コロコロと転がして部屋いっぱいに広げた。
皆も巻物を覗き込む。
そこには確かに平安の鬼の絵が描かれていた。
「私が読みましょう。」
義正が声を上げた。


平安時代、京の都に鬼が出た。
魔は表鬼門から入り込み、裏鬼門へとこの世を通って抜けていく。
都に現れたものは闇。
鬼は闇を身にまとい、地上の人間を襲った。
闇の中、絶叫が響き渡り、肉を貪り食う咀嚼音と共に雨が降った。
それは、ぬるりとして生暖かい、真っ赤な血の雨だ。
その後、バラバラと降ってきたものは、手や足や頭。
鬼の食事の残骸であった。
268鬼闇(53):04/08/31 00:19
都が恐怖に打ち震える中、京でも武道の誉れの高い佐々義忠が鬼退治に名乗りを挙げた。
ある夜、自分の枕元に龍神が現れ、義忠にこう命じたという。
京の都に存在する玉を四つ集めよ。
一つは自分の持つ水晶の玉。
一つは白虎の持つ柘榴の玉。
一つは朱雀の持つ翡翠の玉。
一つは玄武の持つ瑪瑙の玉。
この四つの玉を東西南北の位置に置き、二つの鏡で鬼門を封じよ。
そして中央に立ち、四つの光を受けて鬼を討つのだ。
四つの玉はお前の味方をし、力を与える。
鬼を討つのだと。

鬼を討つ方法。
まずは鬼の動きを封じる。
それは青龍神社の水晶の玉。
次に鬼の力を封じる。
それは白虎神社の柘榴の玉。
そして鬼の妖力を封じる。
それは朱雀神社の翡翠の玉。
最後に鬼の防御を破る。
それは玄武神社の瑪瑙の玉。
四つの玉が揃えし時、闇が払われ弱き魔はその光に消えゆく。

鬼を討つ。
それは伯耆安綱が鍛えし刀、『闘鬼丸』。
当時の天下五剣の一つといわれ、酒呑童子を倒したことで名高い『童子切安綱』を作成した刀工
である。
その刀のみ鬼を倒す力を持っている。
龍神はそう告げると、姿を消した。
269鬼闇(54):04/08/31 00:21
朝、義忠が起きると、枕元には水晶の玉があった。
伯耆安綱に以前から注文していた刀が出来上がったとの報告があり、刀の名は『闘鬼丸』だと
告げられた。
それはまるで神の啓示のごとく見事に鍛えられた刀は、一切の曇りもなかった。

義忠は四人の供を連れ、玉を探し出した。
白虎の玉は、『白石虎之助』の家の床の間に。
朱雀の玉は、道具屋『朱雀』の物置の長持ちの中に。
玄武の玉は、『玄武洞』という洞窟の中に宝として崇められていた。
三日後、四つの玉全てが義忠の元に揃っていた。

義忠は、まず鏡で鬼門を封じた。
これで表鬼門から新たな鬼が入る事も無く、京で暴れている鬼も裏鬼門から逃れることも出来
ない。
供はそれぞれの玉を持ち、北に玄武、東に青龍、南に朱雀、西に白虎の玉を掲げ、義忠は
闘鬼丸を片手に中央へと立った。
「人間なんぞに何が出来る。」
闇が義忠に襲い掛かろうとした。

玉が光った。
その光が鬼の力を奪っていく。
動きが、力が、妖力が、防御が奪われた。
そして鬼を隠していた闇が払われた。

玉の光が闘鬼丸を包み込み、義忠は姿を現した鬼に向かって切りかかった。
「いやーっ!」
ズパッ。
銀色の閃光が走った。
270鬼闇(55):04/08/31 00:22
今まで何人もの男達が名のある武人達が鬼に挑んだが、傷一つ負わせることなく反対にやられ
ていった。
そんな鬼の身体に闘鬼丸が食い込み、振り払われたのである。
「ば、ばかな…」
ズシンッ。
鬼が真っ二つになって、ゆっくりと倒れた。

そして京に再び平和が訪れた。
その後、長い間鬼は現れることなく、やがて京の町も鬼の事を忘れていった。
当時義忠は英雄となったが、晩年は権力争いに巻き込まれ、佐渡島へと流された。
義忠はその佐渡島に京に似た町を作り、大切に保管していた四つの玉と二つの鏡を収めるべく、
神社と祠を造った。
四つの玉は四つの社に祭られた。
北は玄武神社、南は朱雀神社、東に青龍神社、西に白虎神社である。
東西南北の交わる中央にも社が造られ、闘鬼丸が収められた。
それが刀守神社である。
そして、北東と南東にはそれぞれ小さな祠が建てられ、表鬼門と裏鬼門を封じる古い鏡が収め
られた。
こうして佐渡のこの地に、全てが封印されたのである。
最後に佐々義忠がこの世を去る時、彼が口にした言葉が記されていた。

私を追って、鬼が復活する日が来るだろう。
しかし、その時に私はこの世にいない。
鬼が復活するその時まで、この言葉を代々受け継ぎ、残すが良い。

――千年の時を経て鬼が現れし時、四つの御霊と二つの鏡にて鬼を封じよ。さすれば御霊刀身
に宿り、再びこの世に光溢れん。――
271鬼闇(56):04/08/31 00:24
「そして千年の時を経て、今日を迎えたということですな。」
義正が読み終え、ふぅーっと長い息を吐いた。
「あの二人が表鬼門を開いちまったって訳だ。」
「ええ、裏鬼門が閉じている為、鬼や魔には逃れる場所がありません。倒すしかないでしょうし、
表鬼門を封じない限り、こちらの世界に入り続けるってことですね。」
魅録と清四郎が視線を合わせた。
そして二人は、悠理、美童、可憐、野梨子へと視線を移した。
皆も黙ったまま視線を合わせると、軽く頷いた。
鬼を倒す方法は見つかった。
こうなったら、もう自分達で鬼をやるしかない。
覚悟は決まった。

「問題は、どうやって神社まで行くかということです。」
「そうだよなぁ。」
清四郎と魅録が再び頭を悩ませていた。
「青龍神社の水晶の玉を使えばいいんじゃありません?鬼の動きを封じると言われてますので
しょう?」
野梨子の答えにも、美童が異を唱えた。
「でも、その青龍神社へ行くまではどうするのさ?」
「うーっ、またそれかよ。」
悠理がじれったそうに口を開き、可憐もそれに続いた。
「流石に神社まで繋がっている地下道なんてないわよね。」
「今回ばかりはありませんね。」
義正も残念そうに溜息を吐いた。
「私はちょっと、この像を調べてみます。」
蔵から持ってきた像を抱え、義正は書斎へと戻って行った。
「さて、どうしたものでしょうかねぇ。」
清四郎の溜息同様、皆もこの大きな問題に再び頭を悩ませていた。

             【つづく】
272名無し草:04/08/31 00:27
>鬼闇
内容も緻密で、(最近の)原作よりよっぽど面白い…
彼らの反撃が楽しみです。暴れてくれるのでしょうね〜!
273名無し草:04/08/31 20:39
「横恋慕」をUpします。
>175の続きです。少し時間が経っています。

歓声が風に乗って流れて来ると、窓を開けた姿勢で可憐はため息をついた。
「まったく。どこにいても派手よね、あの男は・・・」
彼女の隣から覗きながら、野梨子は口に手を当ててくすっと笑う。

―爽やかな風が吹き抜ける、初夏の聖プレジデント大学―
二人の視線の先には、自慢の金髪を掻き上げながら、黄色い声を上げる女子大生数人を従え
て中庭を闊歩する美童の姿がある。
「美童には、あれだけが生き甲斐なんですもの」
「実らぬ恋に身を焦がしてるのかと思って、同情したあたしがバカだったわ」
げんなりとした表情で、可憐は窓を閉めた。
笑いながら窓辺を離れると、野梨子はお茶を淹れるため、給湯室へ向かう。

そこは一般教養キャンパス内にある、有閑倶楽部の新しい部室である。
とはいえ、選択授業がバラバラな彼らが全員揃ったことはまだない。
特に、医学部へ進学した清四郎が顔を出したのは、ほんの数回。彼もまだ一般教養の単位を
取得中のはずなのに、なぜかオペの見学に潜り込んだり、贔屓にしてくれる教授陣の研究を手
伝うのに忙しいらしく、高校時代までは毎日登下校を共にしていた野梨子でさえ、彼とはしばら
く会っていない。

「ねえ野梨子、今年の夏はどこに行くぅ?」
まだ連休が終わったばかりだというのに、雑誌のリゾート特集を見て可憐ははしゃぎ声を上げた。
少し淋しそうに、野梨子は隣に腰を下ろし、湯呑みを両手で持った。
「魅録が言ってましたわ。悠理と二人でクルージングするつもりだ、って。これからは・・・全員で
一緒に出かけるのは無理かもしれませんわね」
その声を受け、可憐はゆっくり雑誌を閉じた。
「・・・それもそうね。ママとエヴィアンでゆっくりしようかしら・・・」
275横恋慕(80):04/08/31 20:40
もう一度、窓の外へと目をやった可憐は、噂のカップルの姿を捉えた。
「あいつら、うまくいってるのかしら・・・」
振り返った野梨子は、相変わらずピンク色の髪をした友人と、その恋人を目にして頷いた。
彼らは仲睦まじく寄り添い、生協の方へと足を向けている。
「ええ。私にはそう見えますけど・・・」
「それにしたって、ちょっと変わりすぎだと思わない?悠理」


実際のところ、悠理は変わった。誰の目にも明らかなほどに。

服装は相変わらず珍妙だし、少年のような体型ではあったが、なぜか匂い立つような色気を
醸し出すようになった彼女は、広い大学内でもすっかり注目の的となっている。
・・・それも、男子学生の、である。
特に、幼い頃から彼女を知る内部進学組などは、驚異の眼差しで悠理を、そして彼女の恋人
である魅録を、遠巻きに眺める日々であった。

一人、窓辺の席に座り、もの憂げな瞳を外へと投げかける悠理に、男達は見蕩れた。
魅録の姿を認めると、蜘蛛の子を散らすように逃げ出したが。

彼女に般教のクラスを訊ねられ、至近距離で振り返った男子は、後々友人に熱く語った。
「なんつーか・・・吸い込まれそうな瞳っていうのかな。剣菱さんがあんなに色っぽいとは思わ
なかった・・・。『サンキュ』って、僕の目を見て言ったんだ。サンキュって・・・・・・」
彼は、すっかり夢見心地だったらしい。

彼らは口々に言った。
「松竹梅君って、すごいよな。あの剣菱さんを変えるなんてねぇ・・・」
「そうだよね。あの万年劣等生で、僕らよりもずっと男らしかった剣菱さんが・・・」
「う〜ん・・・女はわからん」
276横恋慕(81):04/08/31 20:41
魅録と見つめ合う時、悠理はふわりと微笑むようになった。
以前のような子供っぽさは影を潜め、その眼差しは、確かに女のそれであった。
遠巻きにしているファンが蕩けてしまうほど、甘く、愛らしい笑顔。

だが、その中に一抹の淋しさを、不安を、感じ取っているのは可憐だけのようだった。
悠理の笑顔は、魅力は、本来ああいうものではなかったはずだ。
まさか・・・作り笑い?
それとも、本当にあの子は大人になったのだろうか。さなぎが蝶になるように、いきなり大人に
なってしまったのだろうか。あの子を変えたのは、本当に・・・魅録なのだろうか。
何だろう、このひっかかる感じは。
この違和感に、魅録は気付いているのだろうか。美童は・・・?

高校卒業前に感じた胸騒ぎを、美童には一蹴されたけれど。
「僕に任せて」なんて言いながら、彼は女の子達とのデートに明け暮れる日々だ。


「確かに・・・変わりましたわよね。悠理は」
野梨子がそう頷いた時、いきなりドアが開き、金髪男が乱入してきた。

二人は顔を見合わせた。
そんな彼らに構わず、美童は携帯と喧嘩しながら、ずかずかと部室を横切った。
奥のソファに身を沈ませ、何やら可憐には理解不能な言語で捲し立てている。
ちらりと視線を送る可憐に、野梨子は耳打ちした。
「フランス語ですわ。お相手はどうも、例の人妻みたいですわよ・・・」
激しいジェスチャーを交えながらの会話の途中で、彼は天を仰いで額を覆った。
そして、いきなり通話を終了し、それを床に放り投げた。
277横恋慕(82):04/08/31 20:42
ちょっと決まり悪そう顔で、美童は髪を掻き上げ、ごめんと謝った。
目の前の二人の女友達が、怯えた表情をしていたからだ。
「ちょっとイラついちゃってさ。野梨子には、全部ばれちゃったかな」
足元に飛んで来た携帯を拾い上げ、野梨子は微笑みながらテーブルの上に置いた。
「・・・ミモザさん、アメリカへ?」
興味津々で、可憐は耳をそば立てている。
「さあね、どうするんだろ。勝手にしろよって言っちゃったけど」
美童は自嘲気味な笑みを唇に浮かべ、立ち上がった。
「旦那がフランスの大使館員なんだ。この春から、一足先に赴任しているんだけど・・・。先月
までは離婚して日本に残るって言ってたくせに、今さら迷い出したみたいだよ」
あーあ、と美童は嘆息し、二人の前の椅子を引いて腰掛けた。
「ほんとは美童に引き止めて欲しいんじゃないの?もう少しちゃんと話し合った方がいいわよ」
ロマンチストの可憐が口を挟むと、彼はちょっと眉を上げて微笑んだ。
「大丈夫。引き際は心得てるつもりだから」

野梨子はなぜか妙に感心した面持ちで頷いた。
「さすがですわ。恋愛の達人は言うことが違いますわね」
そう言いながら、彼のためのお茶を淹れに立ち上がった。
278横恋慕(83):04/08/31 20:43
「・・・恋愛と言えば・・・・・・」
二人になると、可憐は金髪男にずずっと顔を近付けた。
「あいつらのこと、どうなってんのよ、美童!?」
「あいつらって?」
「悠理よ、悠理と魅録のこと。僕に任せてって言ったじゃない!」
「ああ・・・」
す、と彼の瞳が翳った。
だが、長い睫毛に遮られ、可憐にはそれを知ることは出来なかった。
美童は腕を伸ばし、携帯を掴む。

「もう少し・・・時間くれよ可憐。思ったよりこじれちゃったんだ」
「こじれたって、どーゆーこと?」
食い下がる可憐に構わず、美童は腕時計を見て立ち上がった。
「あ、お茶はいいや。デートの時間だから行くね〜」
お盆を持って近付いてくる野梨子に、ひらひらと手を振ってウインクする。

バタンとドアが閉じられ、取り残された女二人はまた顔を見合わせた。



[続く]
279名無し草:04/08/31 21:52
>横恋慕
全てを知っていそうな美童。
一体何時動くんだろうと思っていたら、これからなのですね。
儚げな美人の悠理もいいけれど、やっぱり元気に笑う悠理が可愛いですね。
280名無し草:04/09/01 08:56
>横恋慕
初夏までの間に何があったんでしょう?
とても気になりますね。
続きをろくろっ首になってお待ちしております。
281名無し草:04/09/01 10:48
妄想スレの作者タソ達は美童をカッコよく書いてくれて嬉しい。
御大も本来はああいう美童を書きたかったのかも、と思ったw
なぜか違う方向へ逝ったけど>美童
282新月:04/09/01 12:29
「有明の月」続編で魅×可です。
実は先日書き忘れていたのですが、これは「十三夜月」「三日月」
ともリンクした話です。
今回ベースは魅×可ですが、美→野、清&悠平行線も絡んでいます。

では次レスより始まります。
283新月(魅×可)1:04/09/01 12:31
「やっぱり・・・気づいてないよな。」
と不意に悠理が言ったので、清四郎は目線を彼女へと向けた。
「主語が抜けてましたよ。」
と言いながらも、清四郎には彼女が言いたいことがわかった気がした。

悠理の視線の先には、いつもと変わらぬ表情で新しい玉の輿候補にナンパされたと野梨子相手にはしゃぐ可憐がいた。
今日は髪を2本のお下げに編んでいる。
いつもながらナンパしてくるような軽い男が相手でしまいには満足できなくなるのがわかっているのに、なぜ彼女は喜んでいるのだろう?
あいつはモテるのだけが生きがいだなんて茶化してたこともあったが、そういうのとも違う気がする。

やっぱり気づいてないからだろうな。

「なんで惚れた相手に惚れられてて気づかないのかね?」
悠理がその声がする方向を見ると、美童が苦笑してこっちを見ていた。
そういうところが可愛いといえば可愛い。そんなことを言ってられるのも今のうちだけだろうが。
可憐の場合は相手に想いを気づかれたとて、なんら障害はない。むしろ両想いなのだから。

相手に気づかせてはならぬ恋。
そんなものもこの世にあるというのに。

「美童。ため息が出てますよ。」
気づかぬうちに吐息が漏れていたらしい。平然と骨董雑誌をめくる黒髪の男が憎らしい。
この男は僕の想いも全部お見通しなのだろうか?
お見通しで、その上で自分の優勢を誇示しているのだろうか?
「こないだせっかくチャンス作ってやったのにな。魅録はやっぱマヌケだな。」
悠理が頬杖をついたまま呟く。呆れたような口調だ。
美童は彼女のこともちらと見る。
こいつは?恋ではないのか?
284新月(魅×可)2:04/09/01 12:32
いまここにはいない男。
ピンク頭の思われ人。

可憐は彼のことを想っている。
彼に止めて欲しくて無防備に拍車がかかる。
本当は彼からも想われていることに気づきもせず。

放課後の生徒会室には彼らの思惑が交錯する。

「チャンスって?」
美童が悠理の顔をじっと観察しながら言う。
「ん?朝帰りの可憐を迎えに行かせた。海まで連れてったくせにあいつ結局何もできないでやんの。」
悠理はくっと喉を鳴らして笑った。
美童に観察されているなんて気づいているのかいないのか。
だが、彼はその顔に予想していたものを欠片も見つけることが出来なかった。
清四郎は何も言わない。何も言わずに雑誌から目も離さない。

そこに急にドアが開く音がした。
「よお。」
とだけ言って魅録のピンク頭が、この古めかしい雰囲気の部屋の中に華やかさを齎した。
「遅かったですね。」
清四郎がやっと雑誌から目を離して振り返った。
「ああ、いくらなんでも煙草くさすぎるって保健医に捕まってた。」
魅録は苦笑した。
「それは大変でしたわね。待ってて。いまコーヒーを淹れますわ。」
可憐と話していたはずの野梨子が話を切り上げて給湯室へと向かった。
魅録が椅子に座る。
可憐もその斜め前に座る。

一瞬の沈黙が流れた。
285新月(魅×可)3:04/09/01 12:33
「なんか楽しそうに話してたな。何の話だったんだ?」
魅録がぼそっと可憐に話しかけた。
可憐はぴくり、と眉を動かしてから微笑んだ。
「ふふふ。よく聞いてくれたわね。今度こそ確実に玉の輿に乗れそうなのよ。」

誰も表情を変えない。
可憐が話を続けるのを誰も止めない。
ただ、野梨子が新しく淹れるコーヒーの香だけが空間を満たしていった。

「さ、どうぞ。熱いですから気をつけてくださいな。」
と、野梨子が全員にコーヒーを配る。
「ありがと。」
美童は新しいカップを受け取りながらにっこりと野梨子に微笑んだ。
ふと視線を感じてそちらを見ると、今度は悠理がこちらをじっと見ていた。
「なに?悠理。」
「別になんでもない。」
悠理は口端を上げてカップを手に取った。
「悠理。皆には皆のペースがあるんですよ。」
不意に清四郎の声が聞こえた。
悠理はコーヒーを一口飲んでから応えた。
「ん。わかってる。」

美童にはそんな二人の会話はちんぷんかんぷんだった。
結局こいつらのこの雰囲気はなんなんだろう?
この倶楽部の中でも全くの対極にいるようなこの二人が一番分かり合ってるように見えるのは。
でもデキてるとかじゃないよな・・・まさかな。

だってこの二人は全然別の方向を見ている・・・
286新月(魅×可)4:04/09/01 12:35
「いつか夜明けの月を彼と一緒に見るかもしれない。」
どういう話の流れだろう。可憐がそう言うのが聞こえて、美童は思考を中断させた。
野梨子と悠理が息を呑むのがわかった。
だが、可憐が何気ない顔で表情をじっと伺っているのは魅録。
その魅録は表情も顔色も変えない。ただ曖昧に微笑むだけ。
「今日は晴れてるな。月が綺麗かもしれんな。」
ふと顔を窓のほうへと背けて、そんなとんちんかんなことを言った。
本当にじれったい男だ、と美童はため息をつく。
一緒に見た月を思い出させようとしているのだろうか?と悠理は思った。なぜあの時にあいつは気持ちを告げなかったのか。
「今日は新月ですわ。」
全員の古いカップを流しの水に浸してから自分の席に戻った野梨子が言った。

月が太陽と一緒に動き、その姿を見せぬ夜。朔の日。
人工の灯りが発達していなかった時代には真の闇が人々を包んだ夜。
何も見えぬ、闇の夜。

「そうか。」
と魅録は呟いた。
気の利かぬことを言った、とバツの悪そうな顔をしていた。
悠理の顔も曇る。清四郎の方をちらと盗み見た。
彼女が清四郎に助けを求めるときの瞳だ、と美童には知れた。
清四郎はその悠理の視線に気づいたのか気づかなかったのか新聞を折りたたみながら言った。
「今が一番暗いということは、これから日に日に満ちていくということですよ。」
287新月(魅×可)5:04/09/01 12:36
今は手探りで何も見えない気持ちがしているだろう。
先が見えぬ不安に怯えてもいるだろう。
だけど、明けない夜はなく。
月は規則正しく満ち欠けを繰り返す。

いつか月が満ちるように、想いが満ちるときが来るだろう。

「いいこと言うじゃん、清四郎。」
美童は俯き加減で己の長い髪を指で梳いた。その頬に張り付くのは自嘲に近い微笑み。
本当にこいつは手厳しい。
こいつは魅録と可憐の気持ちだけじゃない、僕の気持ちにも気づいているんだろう。
悠理と二人だけで判りあいやがって。

その直後、ぱん、と乾いた音がしたので、皆が何事かと音がしたほうを見た。
魅録が自分で自分の頬をはたいて気合を入れた音らしかった。
「よし!可憐。今日は送るぞ。」
がた、と音を立てて立ち上がった。その目元がうっすら赤い。
その迫力にたじろいだのか、可憐は目を見開いて、
「はい!」
と元気よく返事した。鳩が豆鉄砲食らったような顔だ。
悠理と野梨子がぱあっと日が差すような微笑を交し合った。悠理なんかよし、と小さくガッツポーズを作っている。
なんだ、魅録に惚れてたわけじゃなかったのか、と美童はぼんやり考えた。
288新月(魅×可)6:04/09/01 12:37
「どうやら美童は余計な邪推をしすぎるようですね。」
魅録が可憐を連れ去り、野梨子もミセス・エールと個人的に約束があるからと去り、美童も今宵のひと時の虚構の相手のもとへと去っていった。
生徒会室には清四郎と悠理の二人になっていた。
鞄を持って立ち上がろうとする悠理に、清四郎はそう言ったのだった。
「じゃすい?」
「あいつは悠理が魅録に恋をしていて、僕は野梨子と想いあっていると勘違いしているようです。」
悠理はそれを聞いてますますきょとん、とした顔になった。
「どっちもありえねえ。」
野梨子の気持ちに気づいてないなんて本当にバカだな、あの男は。
悠理は野梨子自身すら気づいていない彼女の気持ちを思い、そっと同情した。
「本当に、浮気調査員向きと言いつつ、仲間のことには疎い男ですよ。」

同じものを持たずに生まれた二人は苦笑を交し合った。

喩えて言うならまだまだ彼らは月の赤ん坊。
これから満ちてゆく月。
満ちてはまた欠け、再生を繰り返す。

悠理は仲間の幸福をそっと願うと、生徒会室を後にした。
289新月:04/09/01 12:41
終わりです。
本当は「有明の月」で終わるつもりが蛇足失礼しました。
これで一連の月語りは終わるはずです。(微妙)
290新月:04/09/01 12:44
あ、4レス目、間違い発見。
清四郎は「新聞を折りたたみながら」じゃなくて
「雑誌を閉じながら」言ったことにしてください。
291名無し草:04/09/02 00:16
>新月
仲間を思う悠理が、すごくよかったです。
292名無し草:04/09/03 15:00
『鬼闇』うPします。
>>271の続きです。
オカルト&一部グロテスクな表現がありますので、
苦手な方はスルーして下さい。
今回もまたまた大量うPですみません。
293鬼闇(57):04/09/03 15:02
「どうやら、この像が解決してくれそうですよ。」
義正が部屋に入って来て、皆の目の前に像を置いた。
佐々家の先祖、佐々義忠の像である。
その像が綺麗に真っ二つに別れていた。
「中からこんなものが出てきました。」
義正が差し出したのは、なにやら書き記された紙と数枚のお札だった。
「先ほど美童君が落とした際、見えていた紙のようなものがこれでした。このお札は鬼退治に行っ
た義忠は勿論、供の者にも持たせて鬼から自身の姿を隠したと記されております。」
義正が書付を手に持ち、読み上げた。
「鬼の道封ずる時、表と裏、鏡用いてこのマントラを唱えよ。さすれば魔の道千年の時を塞ぐ物
なり。又、この札を持ちマントラを唱えし者、鬼の目から姿を隠すものなり。」
義正の説明によると、鏡を用いて書付に記されているマントラを唱えれば、鬼門を封じることが
出来、一緒に入っていたお札を持ってマントラを唱えれば、鬼の目から自分達の姿を隠すことが
出来るとのことだ。

「その言葉を信じるしかありませんわね。」
野梨子が真剣な表情で義正を見つめた。
「これで神社まで行けるな。」
「お札も丁度六枚、僕達だけで動くしかなさそうですね。」
魅録と清四郎が目を合わせ、大きく頷いた。

不意に義正が皆の前で土下座をし、声を上げた。
「外から来た貴方達をこんな事に巻き込んでしまって大変申し訳なく思っていますし、お願いする
のも筋違いな事は充分に承知しております。しかし、この町にいる者は老人と女子供がほとんど。
無理は重々承知の上、この町を救って頂けませんか?」
そう言って深々と頭を下げる正義に、清四郎は姿勢を正して答えた。
「義正さん、頭を上げてください。僕達は既に闘う覚悟を決めています。」
「おうよ!あたいたち、もう、やる気満々なんだ!」
悠理は任せなさい、とばかりに胸をこぶしでバン!と叩いた。
294鬼闇(58):04/09/03 15:04
「そうですよ。俺らに任せて下さい。」
「今までだって何度も危ない目に会いましたのよ。」
魅録も野梨子も微笑を浮かべている。
「そうよね。その『何度も』が、『しょっちゅう』になるだけの話よ。」
「鬼をやっつけるなんて、こんな凄い事をしたら歴史に名前が残るよ。」
可憐も美童も珍しくやる気満々だ。
「そうだ!有閑倶楽部は桃太郎になるんだ!行くぞ!犬、猿、雉!」
既に悠理は自分が桃太郎になるつもりで叫んでいる。
「ちょっと!誰が犬、猿、雉なのよ!」
悠理一人勝手に盛り上がられてはたまらないというように、可憐が口を挟んだ。
そんな二人に、清四郎がにこにこしながら配役を発表した。
「桃太郎が僕で犬が魅録、猿が悠理で雉が美童ってとこじゃないですか?」

「雉だったら別にいいかな。雉のオスって綺麗なんだよね。」
美童は意外と満足そうに、名前が上がらなかった可憐は恐る恐る問い掛けた。
「あたし達は?」
「桃太郎のお爺さんとお婆さんですわ。」
動物ではたまらないと思ったのか、野梨子がすぐさま答えを探し出した。
「良かったぁ、人間で。」
可憐が安心したように、ほぅと息を吐いた。

そんな中、異を唱えたのが魅録と悠理だ。
「俺達はお供か!」
「魅録なんか犬だからまだいいじゃないかよ!あたいなんかサルだぞ!」
そんな二人に、野梨子がにっこりと微笑みながら言った。
「でも、ピッタリですわよ。」
「野梨子!」
魅録と悠理が同時に声を揃えた。
295鬼闇(59):04/09/03 15:05
「鬼退治の方法ですが、まずは青龍神社の水晶の玉で鬼の動きを封じるのが一番だと思われ
ます。水晶の玉を掲げねばなりません。それを…」
清四郎が野梨子へと視線を投げかけ、野梨子も頷きながら受け止めた。
「私がやりますわ。」
「野梨子、お前大丈夫か?」
悠理が野梨子を心配そうに覗きこんだ。
並みの運動神経さえ持ち合わせていない野梨子である。
そんな悠理に野梨子も笑顔を見せた。
「ええ。どうせ六人が動かなければならないんですのよ?私が一番最初に動けば、後がスムーズ
になりますもの。清四郎の考えは間違っていませんわ。」
「それが一番いい考えかもな。あちこち動き回る必要もないし。」
魅録も二人に同意し、野梨子は皆に向かって微笑んだ。
「任せて下さいな。」

「次にやる事は表鬼門を封じることです。」
「ああ。鬼門を封じなければ、倒しても倒しても次々と現れるかもしれないぜ。」
清四郎と魅録の話に、美童が割って入った。
「でも、肝心の鏡はどこのあるの?」
「そうよねぇ。あの二人に聞きたくても、聞けないし…」
二人の断末魔の叫びを思い出したのか、可憐がぶるっと身体を振るわせた。
「襲われた二人は、鏡をそう遠くに移す間もなく殺されたと思います。僕たちがいる間は鏡を動かし
ませんでしたし、家に着いて間もない頃にあの絶叫でしたからね。」
「やめろよ、思い出したくもない。」
悠理までもがぶるっと身体を振るわせた。
「では、祠の近くでそのままになっている可能性が大きいですわね。」
青い顔をしながらも野梨子が鏡の話に引き戻し、それに魅録が力強く答えた。
「兎に角、何としてでも鏡を見つけないとな。」
296鬼闇(60):04/09/03 15:07
「次に封じるのが力です。白虎神社の石榴の玉、これは…」
清四郎が可憐に視線を投げかけた。
「次はあたしよね。」
可憐が軽くウィンクして答えた。
「OK、任せて!」

「次が妖力。朱雀神社の翡翠の玉ですが、これは…」
清四郎が意外にも悠理の方へ視線を向けた。
「へっ?あたい?美童じゃないの?」
悠理も早々に出番がくるとは思ってもいなかったようだ。
「美童の得意なものを知っていますか?」
こんな時に…と思いながらも、悠理は清四郎の質問に真面目に答えていた。
「んーと、女受けするものだよなぁ。テニスに乗馬、スキー、それから…他にあったっけ?」
悠理は美童を振り仰いだ。
「忘れちゃ困るな。フェンシングもだよ。」
美童がにっこりしながら答え、それを見ていた清四郎が悠理へと視線を戻した。
「今回は悠理の馴れているケンカではありません。武器が必要になります。そうなると、扱い馴れ
ている美童に残ってもらう方が賢明なんですよ。」

「鬼が相手じゃケンカしても勝てないしな。わかった。」
悠理は納得したものの、自分の出番を取られたようで少し寂しいような気がした。
「それよりも、途中で落っことすなよ。」
そんな悠理を元気付けようとしてなのか、魅録が茶茶を入れた。
「ばーか。あたいがそこまでアホだと思ってんのかよ?」
「そうじゃないことを祈りますよ。」
一言余計な清四郎を、悠理は思いっきり睨んだ。
「ムカつく奴!」
297鬼闇(61):04/09/03 15:08
「そして、防御を破る玄武神社の瑪瑙の玉ですが…」
清四郎は再び美童へと視線を移した。
「やっと僕の出番だよね。」
美童も軽くウィンクして答えた。

「では、最後に刀守神社から『闘鬼丸』を持ち出して…」
清四郎が言いかけたことを、途中で魅録が引き継いだ。
「鬼を倒すのはリーダーであるお前の役だぜ。俺たち全員の、この町の未来がかかっているんだ。
ヘマするなよ。」
魅録がニヤッと不敵な笑みを浮かべた。
「そんなにプレッシャーをかけないで下さい。」
そう言う清四郎の顔には、何が何でも成功させるという気負いと自信が表れていた。

「では、そろそろ準備にとりかかりましょう。」
義道は一人一人にお札を渡した。
「オン キリキ バザラン クーヤク サンダラ ナウマン ソワカ。」
そして又、一人ずつマントラを唱えた後で印を結んだ。
すると、なにか優しい気のようなものが自分達を包み込んだような気がした。
気のせいとと言われればそれまでなのだが。

少し席を外した義正が戻って来た。
「これを持って行ってください。」
義正が手にしていた日本刀を魅録に渡した。
「鬼以外のものも入り込んでいるかも知れません。武器が必要でしょう。」
魅録は刀を受け取ると、ずっしりとした重さを腕に感じていた。
武器を手にした事で、闘争心が徐々に沸き起こってくる。
「『闘鬼丸』は佐々義忠が刀守神社に奉納しましたが、奉納後義忠が晩年持ち歩いていたと言わ
れている古備前・長船兼光が鍛えし刀です。例え刀が使えないとしても、日本刀は魔よけになり
ますから役に立つでしょう。」
298鬼闇(62):04/09/03 15:09
「何から何まで有難うございます。」
礼を言う清四郎に、義正は重く沈んだ声で答えた。
「いや、礼をいうのはこちらです。私はこんなことでしか役に立たない。おまけに、若い君たちを
鬼に立ち向かわせようとしている…」
そう言って再び頭を下げようとする義正に、悠理が笑いながら言った。
「おっちゃん、米つきバッタみたいだからやめなって。それに、あたい達が勝手に行くって言って
んだからさ。」
口は悪いが義正を思いやっての悠理の言葉に、自然と皆の口元にも笑みが浮かんだ。
「正義さんは僕達にはとても心強い味方ですよ。」
「…解りました。お気を付けて…。皆さんが無事に帰ってくるのを待っています。」
清四郎の言葉に、久しぶりに義正の顔が穏やかさを取り戻していた。
「おじさま、安心なさって下さいな。不可能を可能にする、それが有閑倶楽部ですわ。」
「ほう、それは凄い!」
野梨子の言葉に、元気を取り戻した義正が目を大きくして驚いてみせた。
「ちっ、野梨子にとられちまった。」
「ホント、いっつも美味しいところだけ取っちゃうんだから。」
「ずるいよぉ、僕だって言いたかったのに!」
そう言って悔しがる魅録と可憐、美童に、皆の笑い声が部屋一杯に広がった。
戦いに出る前の、穏やかな一時だった。


野梨子が玄関の引戸を開けた。
昨日までは太鼓や笛の祭囃子で賑わっていたのが嘘のように静まり返っている。
いつもなら挨拶を交わす声、子供の泣き声、犬の吼える声や鶏の鳴き声など、静かと思える時
でさえ、何らか音を感じることが出来た。
しかし今は風の音すら感じることが出来ない。
本当に人が住んでいる町なのだろうか?
人の気配さえ感じられぬ、そんな静けさが町を覆っていた。
相変わらず闇が町を覆い尽くし、時折闇の中からキラリと光っている。
鬼が地上を、辺りを探っていた。
299鬼闇(63):04/09/03 15:11
「駄目よ!昌彦、出ちゃ駄目!」
そんな母親の静止も聞かずに、子供が玄関を飛び出した。
「全然危なくないよーだ!」
そう言って大通りを駆け出した。
「昌彦―っ!!」
母親が玄関から子供を呼び戻していた。
しかし、その叫びも子供には届かない。
母親はキッと空を睨むと、子供の後を追った。
鬼の目が光った。

「危ない!」
間に合わないことは解っていた。
人よりも運痴な自分には無理だと言う事も。
それでも目の前の子供に手を出さずにはいられない。
一歩前へと踏み出そうとしたところを、後ろにいた清四郎に引き戻された。
清四郎が静かに首を左右に振った。
「だめです、野梨子。」
「でも!」
「いくら見えないといっても、今はまだ僕たちにはどうすることも出来ない。」
清四郎が答えるのと、ほぼ同時だった。
天から大木が落ちてくるかのように、太く毛むくじゃらの腕が二本、あっという間に二人を掴んだ。
「おかあさーん!」
「昌彦!」
鬼は子供を右手に母親を左手に捕えると、闇の中へと消えていった。
「ぎゃーっ!!」
絶叫が再び町を覆った。
300鬼闇(64):04/09/03 15:13
何もすることが出来なかった。
野梨子はただ空を見上げていた。
ボリッ、ボリッ、クチュッ。
初めて聞く、鬼の人間を食らう音。
耳を塞いでも、二人の絶叫とおぞましい音が頭の中に響いていた。

ポツポツポツ…。
「また降ってきたな…」
深紅の雨が屋根を、地面を濡らすのを見つめ、魅録が誰に言うわけでもなくポツリと呟いた。
「これで最後です。」
時折光る鬼の目を清四郎は見ていた。
「あたいも許さないからな。」
悠理も闇をキッと睨んでいたが、その瞳からは幾筋もの涙が流れていた。
暖かい血の雨が降るのをただ見つめていた。

ドンッ!コロコロ…
不意に子供の頭が目の前に落ちて転がった。
いつもなら悲鳴を上げてもおかしくないのだが、皆は黙ったまま頭が止まるのを目で追っていた。
やっと止まったその顔には恐怖と絶望が刻み込まれていた。
その瞳は大きく見開き、頬には涙の跡があった。
「こんなのって…」
「ひどすぎるよ!」
可憐も美童も子供の顔を見つめ、涙を流していた。
「…参りましょう。」
野梨子の怒りを含んだ声に、皆は厳しい表情を浮かべたまま大きく頷いた。

                   【つづく】
301名無し草:04/09/03 17:08
>鬼闇
あううう。きついです。そう来ましたか。orz
何もできずに見ていた皆の心情に一体化してしまいました。

ちなみにマントラ読みながら、
「お、ちゃんとマントラだ。」
と思ってしまったマニアな自分がむなしい・・・
やはりお詳しいのですね。
302名無し草:04/09/03 21:39
>鬼闇
緻密な設定もさることながら、
原作の絵が浮かぶような6人の描写に心躍らせながら読みました。

>清四郎がにこにこしながら配役を発表した。
私の脳内では、蛇様の話でやくざを回し蹴りする悠理を見て
「う〜ん、いつもながらあざやかな」
とにこにこしてる彼に変換されてました。あの笑顔、好きなんです!

最後にまた鬼が登場して、背筋が寒くなりましたが…。
次回以降の彼らの活躍を楽しみにしてます。
303名無し草:04/09/04 16:31
>鬼闇
まるで原作の初期のころを読んでるみたい!
鬼との戦いでは美童が活躍しそうでうれしいです。
オールキャラで美童のカッコイイところが見れる機会は少ないし。
304名無し草:04/09/05 19:16
>鬼闇
すごいです。これこのまま映画にしたいくらい。
6人がそれぞれ「らしく」ってメチャカコ(・∀・)イイ!!
ラストはガクブルでしたが、続きが待ち遠しいです。
305名無し草:04/09/06 22:54
したらばの方ですが、『憂鬱な雨の午後に』の続きをずっと待ってます!!
作者さん、まだいらしたらよろしく〜
306名無し草:04/09/10 18:52:05
ちょっと質問。魅→清の話は読んだ事あるんですが、
清→魅ってありますか?こっちの方がある意味ありえそうに思ったり。
307名無し草:04/09/11 00:21:23
短編で誰か書いていたような・・・>清→魅
308名無し草:04/09/11 07:21:20
あー
ミロクとつきあいたい・・・
「これは・・・どういう冗談だ?」
 清四郎の下で魅録がうめいた。ここは魅録の部屋。二人で飲んでいたはずが、気が付けばこのざまである。
「冗談なんかでこんなことしませんよ。」
「お前は悠理と・・・!」
 すると清四郎はくすっと笑った。
「気づかないとはあなたらしい。僕たちは何もしてませんよ。彼女も僕があなたを想っていると知っていますから。」
「な・・・!」
「あなたが悠理を想っているから、だけど悠理は僕を想ってるから、僕はあなたの目を僕に向けるために彼女を利用させてもらいました。」
 彼女とてバカではない。僕の魂胆に気づかないバカではない。
「でも彼女も案外したたかですよ。僕を誘惑しようと彼女なりに頑張ってます。」
 体の下で男がぴくり、と反応する。清四郎は魅録がこちらの話に乗ってきたのを感じてにやり、と笑った。
「僕もね、心はともかく、体はそれにいつか反応してしまうかもしれない。」
「心もなくあいつを抱くって?」
「そう。僕があいつを抱きながら想うのはあなたのことだ。」
 ぎりっと魅録が唇をかみ締める。殺気をはらむ。
 しかし清四郎に抑え付けられて情けないことに体が動かせないのだった。薬でも盛られたか・・・
「んなこと、許さんぞ・・・!」
「交換条件は簡単なことですよ。魅録。わかってるでしょう?」
 魅録が黙り込む。こくり、と唾を飲み込む音が聞こえた。
「俺も、想うのはお前のことじゃない。悠理のことだ。それでもいいと?」
 ゆっくり吐き出された言葉に、清四郎は鳥肌が立つのを感じた。
 罠に、堕ちたな・・・
「ええ。心は自由ですから。ご随意に。」
 そしてゆっくりと、唇を近づけた。

*******************
以上、ブラックな清→魅小ネタでした。
清四郎ってどうしてもこういうキャラです。ごめんよ、清四郎。
310名無し草:04/09/11 18:09:49
あのさ、801もんだったらそう明記しておいてよ。
それにこのネタ投下したのは309を発表したかったからなの、ミエミエw
311309:04/09/11 18:44:09
>310
一応306-308とは別人でしたが、すいません、
表記には今後気をつけます。
モロな描写はなかったし、自分ではギャグのつもりでしたので。
312名無し草:04/09/11 19:07:56
>311
悪いけど、全然ギャグに思えなかった。
ただでさえ同性カプは苦手な人も多いんだから、もっと配慮をしてほしい。
313306:04/09/11 19:58:55
すみません、同好会から飛べるサイトで発見した話だったので
ついこちらに書いてしまいました。気分を害された方、
307以降にレスされて巻き込んでしまった方ごめんなさい。
314名無し草:04/09/11 20:25:15
309の名前欄に(清→魅)とあるのは必要十分な明記でかつ配慮だと思いました。
同性カプを苦手とする方が、(清→魅)からどんな内容を想像して敢えて309を
読むのか、わからないのですが…
315名無し草:04/09/11 20:47:05
前置きしなかったのはアレだと思うケド、カプ表記見れば分かるしそんな怒んなくてもさ…
316名無し草:04/09/11 21:12:22
ギャグのつもりでも性的内容を意識して書いたなら18禁とかRとか付けたほうが親切かな。一応決まりごとだしね。
317316:04/09/11 21:15:19
スミマセン、サゲマス…
318名無し草:04/09/11 23:11:45
マジレス&長文スミマセン。

私も>314さんとほぼ同じ様に思いながら、読ませていただきました。
<罠に堕とす、罠に堕ちる
306-308(?)からの流れや普段の男女カプ表記の仕方を思えば、どんな内容かは何となく
わかると思われますし、カプ表記等については前に一度、議論になりましたし(まゆこスレ参照)

というわけで(?)、感想を。
私はブラックな話などに抵抗が無い方なので、するっと読みましたw
こういう毛色の変わった小ネタもイイですね。
短い中に、こっちまで鳥肌が立つような緊張感や雰囲気が感じられて、
面白かったし、こういう感じ、好きです。ありがとうございました。
319名無し草:04/09/12 00:45:43
他の4人の前では大人ぶってるけど
2人きりの時は、普通の男子高生みたいに
好きな子の話をしたり、じゃれあったりしててほしい。
320名無し草:04/09/12 01:08:45
とりあえずたまには野×清とか可×美とかを
読んでみたいと言ってみるテスト。
(女性×男性のほうがはまるカプ)
321名無し草:04/09/12 01:58:56
>316
同意。
カプ表記は、801であることを含めて309の名前欄で充分だけど、
性的内容が関係してることへの注意書きは欲しかったな。>309
行為そのものの、モロな描写は無いにしてもね。

男女カプと違って、801カプは苦手な人もいる。
プラトニックならまだしも、性的内容を含むとなると、苦手とする
人の割合が更に増えるから。
私も前者は大丈夫だけど、後者は駄目。
322名無し草:04/09/12 12:25:45
この程度の描写で18禁とかRって必要なもんなの?
18禁は避けたい人も居れば、18禁を好んで読む人も居るかもよ。イナイカ…(´Д`;)
801であることは明記してる。
18禁表記はかえって看板に偽りアリにはならないか?
まー自分的には表記・内容共にどっちでも構わないんだけど
これくらいで目くじら立てるのがワケ・ワカ・ラン。
323322:04/09/12 12:29:22
あ、でも唐突に始めるのはいかがなものかと。
1レス挨拶程度があればまた違ったかもなーとは思う。
324名無し草:04/09/12 14:39:04
>322 801であることは明記してる。
どこに?してないから不快に思う人がいるんじゃないのか、と思った。
325名無し草:04/09/12 15:02:19
>324
レスのタイトル見ればわかるじゃん?
326名無し草:04/09/12 15:06:48
清→魅って書いてる時点で801でしょ。
それにあの程度だったら18禁とかRっていうもんじゃないと思うけど。
327309:04/09/12 15:08:50
私のカキコへの配慮が足りず重ね重ね申し訳ありませんでした。
801を甘く見ていたわけではないつもりでしたが
認識不足だったようです。
もともと801書きではないので私個人はもうその手の話を
お目にかけることはないと思いますが、
今後は一層の配慮を持ってカキコするようにします。
328名無し草:04/09/12 17:21:53
>321です。

>322
まゆこの方にレスを書いたよ。

>327
引っ張ってしまってごめん。


↓では、何事も無かったかのように、次の話ドゾー↓
329名無し草:04/09/12 19:49:09
では、いきなり血液型の話題を振ってみようかな。
(明らかにされてない人たちの)
野梨子は両親ともAとか、パパがOくらいでしっくりきそう。
可憐ママはAっぽい。だけど、清四郎の家族って何なんだろう。
彼がABである以上、どちらもOではあり得ないわけで…
キャラ的には豪快そうに見えるパパがAOで、ママが意外にBO、
和子がOだったりすると面白そう。
…こんな話題、興味ある方いたらよろしくですw
330名無し草:04/09/12 19:50:52
無人島リレーが全く進まないまま9月も半ば。
ちょっと悲しいけど、自分は書けない…
野梨子、可憐ペアの行方が気になっておりました。

いま一番の楽しみは「鬼闇」の続きと「横恋慕」の続き。
手薬煉ひいてお待ちしております。
(↑いま変換キー押して初めて「てぐすね」ってこう書くと知った)
331329:04/09/12 19:51:41
すみません。
五行目の「どちらも」は両親のことです。って、わかりますね…
332名無し草:04/09/12 19:54:13
>329
私は清四郎パパがBOでママがAOで和子さんもAOって感じです。
外科医ってB型が多いし。
清四郎と悠理の縁談を聞いて涙を流して「うんと言うのよ!」
と叫んだ和子さんはA型くさい・・・
333名無し草:04/09/12 20:10:28
>332

外科医って、B型が多いんですか?知らなかった。
会社の社長と政治家はO型がダントツで多いらしいですけど。

和子さんは確かに堅実というか、現実的かも。
きっと彼等が破談になった時に、かなり騒いだに違いないし。
「友達に合わせる顔がないじゃない!弟が剣菱の婿に入るって
さんざん自慢しちゃったのにぃ!!」とかなんとか。
334名無し草:04/09/12 21:47:42
>330
無人島リレー始めた者です.
文章の上手い下手かかわらず、続けてくれる方
大歓迎です。みんなで楽しくいきましょう。
短くても長くても、どんな展開でもアリです。
335名無し草:04/09/12 23:04:32
>333
あ、確かにそうかもですね。万作さん、O型だし<会社の社長
そういえば千秋さんは何型かなぁ。
魅録と時宗さんがA型だから、どの可能性もあるのかな。
個人的には、BかOのような気もするんですけど、意外とAだったりして。
336名無し草:04/09/13 01:22:09
>335
御大(たしかA)がかなり感情移入しているところからしてAかなと予測。
血液型の本とかの絵に描いたような「B」に見えるから、逆に。

それにしても、私が一番気になる人は五代。
真面目そうな彼はやはりAなんだろうか…?
五代って奥さんとか子供とか孫とかいるのかなあ。
シークレットエピソードでは甥の話しか出てこなかったよね。
337名無し草:04/09/13 12:28:35
軽めの告白シリーズを勝手に作ってみました。

清四郎君の場合
清→野(スキー場で)
   「私のことなんか気になさらずに、美童達と一緒に
    行ってくださいな」
   「野梨子といる方が好きなんです」
清→可(生徒会室で)
   「幽霊だったりホモだったり、どーしてアタシって男運がないのかしら」
   「そんなことないですよ.次は僕ですから」
清→悠(生徒会室で)
   「なんであん時OKしたんだよ」
   「いくら僕でも、愛がなかったら婚約なんてしませんよ」

皆さんの素敵な脳内妄想あったら教えてほしいです。
338名無し草:04/09/13 13:16:01
>>337

> 「そんなことないですよ.次は僕ですから」

これツボだなw
339名無し草:04/09/13 18:21:16
>337
どのシリーズでも平静 or にっこり笑いつつ、さらっと口にする
清四郎の姿が浮かんできて、めちゃめちゃ萌えました!乙です!

>338
同じくですw

他の男の子たち、女の子→男の子シリーズなんていうのも
良いですね。ああ、妄想が…。
340名無し草:04/09/13 19:19:37
>337
グッジョブ!私も特に可憐編が好きだな〜。
あと、魅録からの告白もぜひ見てみたい。
美童の場合は…軽い告白じゃ流されて気付いてもらえなそう。
341名無し草:04/09/14 01:45:49
私も書いてみた。美童編

美→野(学校で)

「美童ったら、彼女が沢山いらっしゃるのね」
「彼女達は恋人なんかじゃないよ。僕の本命はたったひとりなんだ」
「まぁ、それはどなたかしらね?」
「目の前にいるよ」

美→悠(生徒会室で)

「ああ、腹減ったなぁ」
「おやつでもあげようか」
「おお、さんきゅ」
「僕でよかったら、悠理のおやつにしてくれない?」
「・・・この女ったらし」

美→可(生徒会室で)

「ねえ、可憐。美味しい店見つけたんだけど今夜どう?」
「オッケー。後でみんなにメールしとくわ」
「いや、僕は・・・」
「他に何かあるの?」
「どうしてもみんなで行くって言うなら、
今夜の君のデザートは僕ってことにしない?」

ありきたりでスマソ
342名無し草:04/09/14 02:02:11
魅録編

魅→野(生徒会室で)

「魅録、帰らないんですの?」
「あぁ、ちょっとな」
「・・・静かですわね」
「野梨子、あのさ・・・」
「本当にどうしたんですの?魅録に限って
テストで赤点はないでしょうし」
「一緒に帰らないか?家まで送ってやるよ」


魅→悠(魅録の部屋)

「なんか面白いことないかな。退屈だじょ」
「俺は別に退屈してないんだけどな」
「????」
「それとも、退屈しないようにしてほしいか?」
「いったいどうしたんだ?」
「・・・やっぱりいいや。お前とちゃんと
向き合えるようになるまでとっとくよ」
(一人前の男として・・・な)

魅録→可憐

「そうか、あんたも一応玉の輿だったわね」
「お前、男の基準はそれだけなのか?」
「他にもあるわよ。優しくて、ハンサムで、男らしくて・・・」
「俺が教えてやろうか?新しい男の基準」
「何よ」
「付き合いの長い男友達ってやつかな?」
343名無し草:04/09/14 02:02:52
予告し忘れてしまった・・・逝ってきます。
344名無し草:04/09/14 09:19:45
みんなすげーよ、グッジョブ!

…魅録が玉の輿って、私も忘れてたよw
思えば清四郎も美童も玉の輿だね。もっと視野を狭めろよ、可憐w
345337:04/09/14 10:29:37
美童も魅録もらしくて萌え萌えでした。
悠里編も考えてみました。

悠→美(映画館で)
「あっ、悠里スカートなんて珍しいね。
 さっきからあいつら待ってんだけど、まだ来ないんだ」
「…あのさぁ。今日誘ったの美童だけなんだ」

悠→魅(学校で)
「チチが結婚したって何で俺に黙ってたんだよ」
「…だって、魅録が辛いとあたいはもっと辛いんだ」

悠→清(学校で)
「えっ、何ですか。聞こえませんよ」
「…だからさぁ。剣菱なんて継がなくてもいいからさぁ…」
「…。そのかわり今度は同室にしてくださいよ」
346名無し草:04/09/14 12:55:24
>345
ストレートな悠理がかわいい!!
美童も魅録もクラッときちゃいそうですよね。
こんなこと言われたら。

最後・・・どうしても一言返しちゃうのが、清四郎らしくていいっす。
347名無し草:04/09/14 14:35:04
上の美童・魅録編を書いたものです。
野梨子編を考えて見まつた。

野→魅(学校で)

「魅録、週末はどうされるんですの?」
「ちょっと、約束があるんだ」
「また、ツーリングですの?」
「まぁな」
「それでは、来週の週末は私と約束して下さいませんか?」

野→清(清四郎の部屋で)

「今度は何を読んでらっしゃるの?」
「いや、何でもないですよ」
「何で隠すんですの?」
「隠してませんよ」
「恋愛攻略法・・・どなたと恋愛なさるおつもり?」
「まぁ、知識のひとつとしてね」
「それならわたくしとしません?」

野→美(生徒会室で)

「メールって、覚えるのが大変でしたわ」
「野梨子ってば機械音痴だもんね」
「美童は違いますの?」
「僕もどちらかと言えばそうか。恋愛経験なら
誰にも負けないんだけどな」
「その恋愛経験を、わたくしにも教えて下さらない?」
348名無し草:04/09/14 17:20:51
大胆な野梨子って萌えますね。清四郎の読んでる本も笑える。
私も野梨子編考えてみました。

野→美(生徒会室)
「僕、てっきり野梨子は清四郎のことを…」
「清四郎はただの友達ですわ。だって一緒にいて
 こんなにドキドキする事ありませんもの」

野→魅
「珍しいな。野梨子がバイクに乗せて欲しいなんて」
「こうしてると魅録にくっついていられますもの」

野→清(学校の帰り道)
「えっ、来週お見合い!」
「叔母様がどうしてもって、うるさいんですの。どうしたらいいかと」
「で、何で僕に聞くんですか?」
「清四郎の意見を聞きたいだけですわ」
「…そんなに言わせたいんですか。僕だって心の準備が…」
「もう待てませんわ」
「わかりました。…野梨子、愛してます。僕と付き合ってください」
「来週のお見合い、お断りしますわ」

349名無し草:04/09/14 19:52:59
魅→野マジ萌えぇw胸かきむしりました。

野→っていうのはみんな、原作の野梨子の強さに
恋愛を絡めた感じで、妄想するとき甘々野梨子しか
思いつかない自分には逆に新鮮で面白い!
350名無し草:04/09/15 08:28:44
>339を書いた者です。自分の呟きが本当になるなんて!
素敵なお話がたくさん読めて、すっごく嬉しいです。乙です!

>341-342 347-348
帰ってきて下さって、ありがとうです。
どのお話も美童・魅録「らしく」って(・∀・) イイ!!
でも美童……「おやつ」だけでいいのかw?
どの魅録も格好いいけど、特に魅→悠に激萌え!!悶えまくりました。

>野梨子編
相手によって微妙に違う、野梨子の踏み込み方がいいですね。
清四郎の場合では、読んでた本のタイトルで思わず深読みして
しまった私…。
351名無し草:04/09/15 08:38:25
>345
>346
同じくです。ストレートな中に、戸惑ってるところを感じさせる悠理が可愛い!
清四郎の最後の一言は、かなりツボにきましたv

>348
凛とした野梨子が素敵ですね。野→魅の素直な言葉も可愛い。
清四郎編での二人のやり取りも楽しかったです。
「もう待てませんわ」…これいいなぁ。

大量&長文レス、申し訳ありませんでした(汗)>皆様
352名無し草:04/09/15 08:49:03
>350-351です。度々すみません。

>350のレス番、間違ってます。× 347-348 → ○ 347 でした。
ごめんなさい、私が逝ってきます……。
353名無し草:04/09/15 11:00:52
>>345さんの悠→魅が非常に萌えーでキュン。
仲間愛と恋心のブレンド具合が絶妙ですね。悠理らしい。

私は野梨子って女性陣中最強だと思うので、
>>348さんの清四郎が尻に敷かれてるのがツボでした。
354名無し草:04/09/16 00:13:00
『鬼闇』うpします。
>>300の続きです。
オカルト&一部グロテスクな表現がありますので、
苦手な方はスルーして下さい。
355鬼闇(65):04/09/16 00:14:57
一行は、まず青龍神社へと向かった。
相変わらず空は闇に覆われてはいるものの、先の親子のように鬼が襲ってくる気配は無い。
「あの書付けどおり、私達が見えていないのね。」
可憐が闇を見つめながら、安堵の溜息を漏らした。
「信用してないわけじゃないけどな。」
「目に見えない力って本当にあるんだね。」
魅録や美童同様皆も不安を隠せないのか、しーんと静まり返った中、自然と足は青龍神社へと
急いだ。

六人はひたすら神社を目指して歩いていたが、悠理の視線だけは、魅録の右手にある刀へと
向けられていた。
「なぁ、魅録って刀使えるのか?」
悠理が頭を傾げながら口にした質問に、可憐と美童も続いた。
「あっ、あたしも聞きたいと思っていたの。だって、そんな話を一度もしたことがなかったじゃない。」
「そうだよね。清四郎なら解るけどさ、前に真剣白刃取りしたことあるって聞いてたし。魅録はメカ
専門だと思ってたんだけど、違うの?」
三人の言葉に、魅録はニヤッと不敵な笑みを浮かべた。
「家に日本刀があるの知ってるだろ?たまに親父が振り回してるのを見て、俺も真似してやった
ことあんだよ。最初のうちは切れなかったけどさ、今じゃ庭の松の木なんかバッサリだぜ。」
「うわっ、そんなことしてるの?」
美童が信じられないというように声を上げ、可憐や野梨子などは目をむいて驚いている。
「フミさんは親父がやったって思っているけどな。でも役に立ってるだろ?」
そんな三人に、魅録は悪戯小僧のような笑みを返した。

「時宗のおじさまも気の毒ですわね。」
野梨子は呆れ顔で呟いたのだが、一人声を張り上げたのが悠理だ。
「魅録、今度あたいにもやらせろ!」
目をキラキラと輝かせながら叫ぶ悠理に、今度は魅録が呆れながら答えた。
「ばーか、お前も一応女なんだから、やめとけって。素手でも充分強いのに、武器まで持ったら
それこそ嫁の貰い手がねえぞ。」
356鬼闇(66):04/09/16 00:16:15
「ふんだ、ケチ!」
といたんに悠理の頬がぷぅーっと膨らんだ。
「悠理、それはケチじゃなくて、親切ってもんでしょ。」
「そうですわよ。これ以上…」
むくれる悠理をなだめようとしていた可憐と野梨子の口がピタリと止まった。
「ぎゃーっ!」
再び、遠くの方から人間の絶叫が響いて来た。
又誰かが襲われたらしい。
「バカな事言ってないで、急ぎますよ。」
「わかってらい!」
清四郎の厳しい表情に、悠理も膨らました頬をキュッと引き締めた。
自然と歩調も小走りとなり、やがて赤い鳥居が皆の目に飛び込んできた。


御神体を借りる以上、断っておいた方がいいだろうという事で、皆は社務所へと向かった。
「ごめんください。」
野梨子の声を聞き、白衣白袴姿の神主と思しき初老の男性が現れた。
「お前さんたちは無事だったのか?」
その顔には、信じられないという思いが表れていた。
六人はコクリと頷き、清四郎が一歩前に出て口を開いた。
「僕達は佐々義正さんの所にお世話になっている者です。これから鬼を討ちに行きますので、こち
らの神社の水晶の玉を借りに来ました。あれが無いと封じることは出来ません。」
しかし、神主は清四郎の話を最後まで聞くことなく、無言のまま踵を返した。

そんな神主の態度に、珍しく清四郎が声を荒げた。
「待ってください!あれがないと、このままでは次々と町の人が殺されてしまいます!」
それでも神主の足は止まることなく、社殿の奥へと消えて行った。
「じっちゃん、待てよ!」
「話を聞いて下さい!」
諦めきれないとばかりに、悠理と美童が声を張り上げたが、返ってきたのは静寂だけだった。
357鬼闇(67):04/09/16 00:17:33
六人はただ、呆然とその場に立ちすくんでいた。
肝心の玉が無くては、闇に鬼が潜んだままだ。
そのまま立ち向かうのは無謀、いや、無駄死にというものである。

「…やはり、信じてはもらえませんのね。」
そんな静寂の中、野梨子が溜息交じりに口を開いた。
「御神体だもん。簡単には貸せないのよ、きっと。」
可憐を始め、皆がほとんど諦めかけていた頃、不意にひたひたとこちらに向かってくる足音に顔を
上げた。
先ほど奥に消えた神主が、水晶の玉を大事そうに抱えていた。

「早くこれを。」
そう言って差し出された玉を、野梨子がそっと受け取った。
「有難うございます!」
六人の顔に喜びの笑みが広がった。
これで、あの鬼の動きを止めることが出来る。
あの親子の敵を討つことが出来るのだ。

「佐々の先生から全て聞いたよ。この町の為に動いてくれるなんて、有り難いこっちゃ。」
最初の硬い表情が消え、優しい笑みが神主の顔いっぱいに広がった。
「他の神社にも私が連絡しておく。正直言って、お前さん方が来なかったら、私達神社の守主がや
らねばと思っていた。しかし、私達は高齢で動くことすらままならん。差違える覚悟でおったわい。」
かっかっかと笑いながら話す神主には、覚悟を決めた潔さが表れていた。
「それと、この神社に伝わる鐘じゃ。この音は魔を縛ると言われている。役に立ててくれ。」
神主は袂から美しく彫刻を施された銀色の鐘を取り出し、脇にいた悠理へと渡した。
悠理は礼を言うのも忘れ、その何とも言えぬ美しい鐘に見入っている。
そんな悠理に代わりに清四郎が礼を言った。
「有難うございます。」
「いや、礼を言うのはこっちじゃ。」
神主が皆に向かって深々と頭を下げた。
358鬼闇(68):04/09/16 00:18:47
「では野梨子、お願いしますよ。」
玉を落とさないように慎重に歩いている野梨子に、清四郎がポンと軽く肩を叩いた。
清四郎なりの幼馴染を気遣うエールである。
「解りましたわ。」
そんな彼に笑顔で答え、野梨子は神社の鳥居の下に立った。
闇をキッと見据え、水晶の玉を天に向かって翳した。
玉がぼうっと淡く光った。

「うぉぉぉーっ!」
鬼の唸り声である。
鬼は必死で抗った。
身体の自由がなんらかの意思で奪われようとしていた。
嫌な予感がした。
千年前、同じような目にあった。
人間よりも優れていたはずの能力が、じわじわと奪われていった。
現に、今も闇の中から手足を自由に伸ばす事が出来なくなっていた。
人を襲えなくなってしまったのである。
しかし、千年後の今、佐々義忠がいるはずもない。
――来るならば来い。返り討ちにしてくれようぞ…
鬼は邪悪な笑みを浮かべていた。


「では、鬼門を封じに行きましょう。」
清四郎の声を聞きつけ、珍しく野梨子が大きな声で叫んだ。
「みんなも気を付けて!」
ここまでは何事もなくスムーズに来れたものの、これから先も同じとは限らない。
野梨子は心配気に皆を見つめていた。
そんな野梨子に五人は手を振って答え、青龍神社を後にした。
359鬼闇(69):04/09/16 00:20:40
祠に向かうと、地震と落雷で壊れた建物は跡形も無くなっていた。
鬼門を封じるためにも、鏡を探さなくてはいけない。
「みんな、鏡を…」
清四郎がそう言いかけた時、祠のあった場所から一筋の闇が立ち昇っていた。
その闇から何かが出てこようと蠢いている。
やがて、手が、頭が、そして全身が出て来て、その姿を現した。
一瞬、人間かと見紛う姿ではあるのだが、決定的な違いがあった。
前頭部に生えている角だ。
背丈は野梨子ほどでしかなく、闇の中から突き出た腕と比べると、ずいぶんと小さいに違いない。
小鬼、そう呼べば良いのだろうか。
ギィーッ!
まるでガラスに爪を立てたような耳障りな声に、自然と鳥肌が立っていた。
よく見ると肌は土気色で、手には鋭い鉤爪を備え、耳元まで裂けた口からはダラダラと涎を垂れ
流していた。
赤い瞳の視線の先には、間違いなく自分達がいる。
あの闇の中の鬼と同じ、人間を狙っていた。

「…ねぇ、見えないんじゃなかったの?」
可憐が次々と現れる小鬼を凝視しながら言った。
視線を外そうと思っても外せない。
自分でも気付かぬうちに、身体が、声が震えていた。
「おっちゃん、こんなのがいるって何にも言ってなかったぞ。」
「そうだよ!サギじゃないか!!」
悠理も美童も鬼を凝視したままだ。
可憐同様、得たいの知れない恐怖が二人を襲っていた。

「闇の中の鬼には見えないようですが、それ以外の物には見えているみたいですね。」
清四郎の落ち着き払った声を聞き、三人の身体の震えが収まっていくのを感じた。
「きっと、御先祖様が書き忘れたんだぜ。」
刀を握っている魅録の腕にも自然と力が入る。
360鬼闇(70):04/09/16 00:22:13
「みんな、鏡を探すんです!魅録、刀を抜いて!」
再び清四郎の力強い声が響いた。
――ひとりじゃない、みんながいる。
可憐は顔を上げた。
「あたしと美童で探すわ!みんなは鬼を引き付けておいて!」

シュッ。
魅録が鞘から刀を引き抜いた。
手入れの行き届いた刃がキラリと光った。
「ああ、任せろよ。鏡は頼んだぜ。」
魅録は中段に構えると、鬼を睨みつけて大きく息を吐いた。
「いくぜ!はぁーっ!!」
魅録は鬼の中へ向かって行った。

「ないよぉ。」
「何処に置いたのかしら?」
美童と可憐は目を皿にして探していたが、鏡は見つからない。
「そんなに遠くには動かしていないだろうって、清四郎も言っていたわよね。」
落ちていた物を引っくり返しても、叢を掻き分けて見ても、目的の物を探し出せないでいた。
「あっちかな?」
可憐がそう言って、闘っている魅録達の方を見た。

「ねぇ、ちょっとヤバくない?」
確実に魅録が仕留めているものの、何せ数は圧倒的に鬼が勝っていた。
おまけに刀を持っているのは魅録ただ一人。
斬っても斬っても新たな鬼が現れ、増える一方の敵に対し、明らかに形勢は不利だった。
「うん。」
不利だとわかっていても、可憐も美童もただ見ているだけしか出来ない。
行っても足手まといになるだけだ。
どうにもならないじれったさが、二人を襲っていた。
361鬼闇(71):04/09/16 00:24:22
「…ねぇ、そういえば神主さんから鐘を預かったわよね?魔を縛るっていう…」
ふと、可憐が思い出したように口を開いた。
「あれは、悠理が受け取って…」
二人は顔を見合わせた。
「悠理!!」

悠理は鬼から器用に逃げ回っていた。
スピードなら清四郎にも負けない、雲海和尚直伝の技である。
「やーい、トロイ奴!」
悠理が小馬鹿にしたその時、油断が生じた。
鬼が悠理の手を払った。
「あっ!」
持っていた鐘が地面に転がった。
拾おうと試みるも、鬼がそうさせてはくれない。
どんどん、鐘から離されてしまった。

「悠理、鐘は」
不意に可憐の声が耳に入り、鬼を避けながら悠理は大声で叫んだ。
「落とした!その辺に落ちている!」
「もう!美童も探して!見つけたら直ぐ鳴らす!!」
「どうして?」
不思議そうな顔をする美童にイラつきながらも、可憐は大声で言った。
「神主さんの言う事を聞いていなかったの?魔を縛るって言ってたじゃない!」
「そっか!」
二人は悠理の近辺に視線を移し、目を凝らした。
すると、逃げ回っている悠理の三メートルほど後ろに、銀色に光る鐘を見つけた。
「あった!」
美童が叫ぶのと同時に、可憐が鐘に飛びついた。
362鬼闇(72):04/09/16 00:25:43
バシュッ!
魅録が力任せに鬼の肩から腰の辺りまで斜めに切り付けた。
振りかぶったせいか刀自身の重みも加わり、綺麗に二つに分かれた。
「やったぜ…」
安堵の息をつこうとしたその時、切り倒された身体を押し除けながら新たな鬼が次々と現れ、魅録
に襲いかかった。
鬼の鋭い爪が前後左右から魅録に迫ってくる。
気が付いたときには既に囲まれていた。
――ヤラれる!
魅録は思わず目を瞑った。

チリーン、チリーン。
鐘の音が辺りに響いた。
魅録がいくら待っても鬼は襲ってこない。
目を開けてみると、鬼は手を振りかぶったまま静止していた。
チリーン、チリーン。
再び鐘の音が響いてきた。
魅録は鐘の音のする方向へと首を廻らせた。
可憐だ。
可憐が青龍神社で渡された鐘を鳴らしていた。
「サンキュ、可憐。助かったぜ!」
「どういたしまして。」
可憐はにっこりと微笑んだ。
魅録は一呼吸おいて、刀を頭上まで持ち上げると一気に振り下ろした。
ズシュッ!
骨の断つ手ごたえを感じながら、次々と刀を振り回す。
最後の一体を袈裟懸けに切りつけ、鬼の身体が左右にゆっくりと倒れた。
刀を振って血を払い、カチッと音を立てて鞘に収めた。
「終わったぜ。」
魅録が誇らしげに呟いた。
363鬼闇(73):04/09/16 00:27:33
「あったよ!鏡!」
可憐が鐘を鳴らしている間に、鏡を探していた美童が箱を抱えていた。
青年団の名前の入った箱を下ろして蓋を開けると、中には見覚えのある鏡と台座が入っていた。

チリーン、チリーン。
再び魔が進入して来ないように可憐が鐘を鳴らし続け、清四郎は祠が存在していた処、つまり、
闇の生じる場所に台座と鏡を置いた。
「オン キリキ バザラン クーヤク サンダラ ナウマン ソワカ。」
マンラを唱え、印を結ぶ。
不意に鏡が目を覆うくらい強烈な光を放ったかと思うと、あっという間に元の古めかしい鏡へと
戻っていた。
ただ、ほんの少しだけ、鏡のまわりの空気が澄んだような気がした。

「これで新たな鬼が出ることもありませんね。」
可憐は鐘を鳴らすのを止め、清四郎もふぅーと大きく息を吐いた。
「でも、雑魚共がウロウロしているかもしれないぜ。用心に越したことは無い。」
そんな険しい顔のままの魅録に、清四郎は口元に笑みを浮かべた。
「その時は、魅録、頼みますよ。」
その答が嬉しかったのか、親友の表情が少し和らいだ。

「では、白虎神社に参りましょう。」
清四郎は次なる目的地に向かう為、皆に声を掛けた。
「次は石榴の玉、私の出番ね。」
可憐は任せてよ!とばかりに極上の笑みを浮かべた。
清四郎も一瞬可憐に笑みを返したものの、再び闇の中に強い視線を向けていた。
「ええ、鬼の力を封じます。」
可憐、悠理、魅録、美童の四人が大きく頷いた。

             【つづく】
364名無し草:04/09/16 15:24:30
>鬼闇
いつも面白いです。刀を振るう魅録がかっこいい。
続き楽しみです。
365<暴走愛>:04/09/16 15:48:32
暴走愛うpします。
清×可です。一部Rありです。
>>184

目の前の友人をまじまじと見つめ続けていた清四郎は、やがて天井を見上げてから大きく息を吐く。
彼の唇が苦笑するように歪み、喉の奥からクッという笑い声に近いものが漏れるのを
可憐も又、目の前の友人の顔をじっと見つめながら、聞いた。

ドアに寄りかかり大きく腕組みをすると可憐は挑むように言葉を発した。
「何よ、ご挨拶じゃない? 三年ぶりの再会よ。もう少し喜んでくれてもいいんじゃないの」
可憐の言葉をよそに、清四郎は右手を唇に当て何か考え込んでいる。
何か言いたそうに可憐に目を向け、左手を可憐の方に差し出し、何か喋りかけた。
と思うと、再び如何にもおかしいといった表情が彼の顔に浮かび、差し出した手を腰に当て
クックッとうつむいて笑っている。

どうしたんだろう、清四郎は。
何を言いたいんだろう。
自分ひとり取り残された気分で可憐は面白くなかった。

笑い続ける清四郎を視線の片隅にとどめながら、居心地悪そうに室内をゆっくりと歩いた。
ふと触れた窓枠はきれいに拭かれ、埃が取り除かれていた。

小さく笑い続ける清四郎にいい加減腹が立つ。
「ちょっと清四郎。なにか言うことあるんじゃないの」
可憐のむすっとした顔に気づいた清四郎は、すみませんというように片手をあげたものの
まだ可笑しくてたまらない顔をしている。
それでも可憐に向って右手を出した。

「久しぶりですね」

何よ、今さらと思いつつも、可憐も釣られて右手を出す。
清四郎と手が触れるか触れないかの瞬間、可憐の体は引っ張られてよろめいた。
「ああ、この髪だ」

懐かしい声が頭上から降ってくる。
柔らかく、それでいてよく通るその声。
甘い痛みが可憐を貫いた。
どれ程この声が聞きたいと思ったことか。
どれ程この腕に抱かれたいと思ったことか。

だが清四郎を押し戻すと可憐はきっと彼を見上げた。
「何よ、いきなり。連絡一つ寄越さないで」

清四郎は片眉を上げて困ったように微笑んでいる。
「電話してもいつも留守電で、メール送っても手紙書いても返事来ないし」
体の中に積もり積もった恨みが込み上げてきて、可憐はたまらなくなった。
「……何でよ。なんで連絡くれないの? なんで会いに来てくれないの?
 ずっと待ってたのよ。わかる? あたしがどんな思いであんたを待ってたか」
「……可憐」
清四郎の言葉を遮るように可憐は吼えた。
「嫌いになったんなら言ってよ。もう会いたくないなら言って。
 ずっと放ったらかしにするなんて、酷いわよ。残酷よ。馬鹿!!」

しばらく二人は黙っていた。
部屋に流れていた音楽が止まり、清四郎はレコードをプレーヤーから取り出す。
薄い半透明の袋に入れたレコードをそっとジャケットにしまった。
「相変わらず激しいですね、可憐は」
「……悪かったわね」
ふいに清四郎は可憐に向き直った。
早足で彼女に近づき、その両肩を掴むと、素早く彼女の唇に自分の唇を重ねた。
彼の唇が離れると、可憐はじっと清四郎の瞳を覗き込んだ。
清四郎もじっと見つめ返す。
どちらからともなくきつく抱きしめあう。
「忘れようとしてたんでしょ、あたしのこと」
「……はい」
清四郎は可憐の髪に顔を埋めながら呟く。
可憐も又、清四郎の胸に顔を埋めた。
「……どうして?」
「……」
「野梨子のこと?」
「……はい。いや、それだけじゃないんです。少し……自分自身を見つめ直してみようと思って。」
「……そう」

清四郎は言葉を捜しているようだった。やっと搾り出すように言葉を紡ぐ。
「僕はどういう人間で」
「うん」
「何が好きで」
「うん」
「誰が好きで」
「うん」
「どこへ行こうとしているのか」
「うん……で?」
「……はい」
「それで? わかったの?」
ふと清四郎は可憐を自分から引き離すと悲しい顔で彼女を見た。
何か、彼の中には可憐に説明したいことが山のように積み重なっているように思えた。
だが彼は説明することを諦め、ただこう言った。

「……はい。一つだけ」
「何がわかった?」
彼女の瞳がきらりと光る。
窓の外から夜が室内へ侵入してきた。その闇共を従えて可憐は女王のように艶やかに光っている。
何か抗えない力に引きずられるように清四郎は彼女に屈服する。
「僕は、あなたを忘れられない」

美しい睫毛を上げて可憐は清四郎を見た。
清四郎の手が伸びてきて、彼女の頬に触れる。
頬を撫ぜた指が彼女の唇に触れて愛おしそうになぞった。

「僕の部屋へ行きませんか?」
可憐の唇が笑った。
「どうして?」
清四郎は困ったように彼女の唇を見つめる。
「……駄目ですか?」
「駄目。……って言ったらやめるの?」
「……いや」

次の瞬間、可憐の体はふわりと持ち上がった。


暗闇に目が慣れると、見覚えのある本棚や机が見えてきた。
清四郎の肩越しに見える本棚に飾ったキティの貯金箱は、清四郎の誕生日に倶楽部の皆で
ふざけてプレゼントしたものだ。
あの頃は彼とこんな関係になるなんて考えても見なかったのに。

可憐に口づけを繰り返す清四郎は、ややもすると性急になりそうな自分を必死で抑えているようだった。
白いタンクトップの背中についたファスナーを降ろされて、可憐はふいに怖れを感じた。
そう口に出すと、清四郎が聞き返す。
「怖いですか?」
「だって……久しぶりだから」
「……僕もですよ」
清四郎は可憐のブラジャーから彼女の豊かな乳房を取り出すと愛撫し始めた。
ほんのり色づいた部分を甘く噛んで優しく吸っては、舌で味わう。
可憐が小さな声を漏らしたのを聞いて、清四郎はねだった。
「全部脱がせていいですか」
潤んだ瞳をした可憐は怒ったように口を尖らせた。
「そういうこと、聞かないで。恥かしいから」
「……はい」

彼女の気持ちが変わらないうちにとでも思ったのか、清四郎は慌てたように可憐のスカートに手をかけた。
スカートを脱がし、下着を取ろうとしたが、その手が彼女の足の間に触れると
清四郎は可憐の耳元に唇を寄せ、囁いた。
「感じてますか。僕の指が濡れた」
「……そういうこと言わないで」
「嘘じゃないですよ。ほら」
「もう嫌。やめてったら」
清四郎を睨んだ可憐の頬が見る間に赤くなってくる。
彼は可憐の足の間に潜り込むと、最後の布地を剥がしにかかった。
「透明な糸を引いてる」
「ちょっと……もうやだ、じっと見ないで」
「だんだん見えてきた。閉じないで、よく見せてくださいよ。久しぶりなんだから」
「馬鹿!」
可憐がぴたりと足を閉じてしまったので、清四郎は笑うと、下着を膝の上までしか降ろさずに
両方の足首を持って、上に持ち上げてしまった。
驚いた可憐が抗議すると、清四郎はしれっと見せてくれないからですよ、と言った。

彼女が観念して力を抜くと、清四郎は下着を取り去りそっと彼女の足を割った。
両方の親指を使って茂みを掻き分け、隠された宝石にゆっくりと舌を這わせる。
吐息と共に可憐の体が揺れた。
字を書くように更に舌を這わせ続けると、耐え切れず可憐が喘ぎ声を漏らし、首を振り、
手を伸ばして清四郎の髪をぐちゃぐちゃにした。
清四郎は震える宝石を眼を閉じて味わっていたが、可憐の声が切なくなったのを感じて彼女の足の間から這い出して来た。
可憐はすでにとろんとした表情をしていた。
清四郎が「入ってもいいですか?」と囁くと夢見心地で「だから聞かないで」と呟いた。
しかし、実際彼が入っていくと、可憐は目をぱっちりと見開いて体を起こした。
「どうしました?」
可憐は困ったように首を振った。
「どうしよう」
清四郎は濡れた彼女の唇に口づける。
「うん?」
軽く揺らし始めた彼の腕を可憐はぎゅっと掴んだ。
「ああ。どうしよう」
そんな可憐の耳元に清四郎は囁く。
「行きますよ」


これまでに味わったことのない程の感覚が可憐を貫いた。
吹き飛ばされそうに強烈な風に可憐は手を伸ばし暴れた。
そうでもしないとぼろぼろと崩れてしまいそうだった。
唇。胸。手。腰。脚。
清四郎と接続された体のあちこちの部分が震え呻っていた。
気づくと、より深く清四郎と繋がった部分が早くも限界を迎えそうになっている。
彼にそれを伝え、少し緩めるように願うと、逆に彼はより激しく腰を使い、
あろうことか指まで使って、限界を早めようとした。
抗議するより早く、可憐の体を頂点のうねりが襲った。
唇から漏れる悲鳴が泣き声に変わり、体が跳ね回り、胸が張り詰め、
支えを求めて可憐は清四郎をむちゃくちゃに抱きしめた。
そして体の奥深いところが強く強く清四郎自身を締め付けている。
清四郎はじっと耐えているようだった。
やがて可憐から第一のうねりが去ると清四郎は微笑んで可憐にキスした。
可憐も照れたように笑う。
が、再び清四郎が腰を使い出したので、可憐もまた再び泣き声を上げ許しを願った。
今度は少し獰猛な目をした清四郎は可憐の願いも聞かず動き続ける。
可憐は彼の動きについていくだけで精一杯のようだった。
泣かせよう、もっと泣かせようとして清四郎は指や唇を使い続ける。
そして可憐の奥まで突きこんで来た。

飢えた男が甘露を貪り喰うように、清四郎は可憐を貪っていた。
少し体勢を起こして、彼女の膝を胸の上で折る。
清四郎が突くと、彼女自身の脚がバネのように彼を押しやって、それでより深い
摩擦が起き、清四郎は喜んだ。
可憐が泣いている。いや喜んでいる。涙を浮かべた艶やかな瞳は淫らに清四郎を誘っている。
彼女と瞳を合わせるだけで、たちまち清四郎も限界を迎える。
最後の力を振り絞って、彼女の中に腰を進めた。
可憐がまた泣き声を上げた。


続く
373<暴走愛>:04/09/16 15:55:28
すみません。

>370 名前:<暴走愛>第3章(32)
はRです。
久しぶりなので間違えました。逝ってきます…
374名無し草:04/09/17 00:40:57
>鬼闇
こんな切羽詰まった状況なのに、ちょっと緊張感が欠けてるあたりが
彼ららしくていいです。
そう言えば、この6人って死体や化物に免疫があるんだよね。
昔の有閑を思い出します。続きが楽しみです。
>暴走愛
きゃ〜!!久しぶりのR。可憐になりたいと思うのは私だけでしょうか。
375名無し草:04/09/17 00:54:36
>鬼闇
こわいけどサクサクと小気味いい感じに進んでますね。
これから波乱もあるのかな。ドキドキしつつ楽しみにしてます。

>暴走愛
ひそかにお待ちしてました。
エロ表記は最初にあったので、別にびっくりはしませんでしたよ?
でも、結局元サヤに収まった二人が、また修羅場へ向かうのかと思うと、
もう既に胸が苦しいです…。
菊正宗家に起きた不幸と、修平と二人でホテルにいるはずの野梨子が気になります。
376名無し草:04/09/17 13:30:58
自分の好きなカップリングですみません。プチ告白です。

可→美(生徒会室で)

「あっ可憐、戸棚にケーキがあるよ」
「いらないわ。今ダイエット中なのよ」
「ちょっとくらい食べてもいいんじゃない?そんなに痩せてんのに」
「気を抜けないのよ。…あんたを落とすまでわね」

野→清(海の中、水深1.4m付近)

「きゃっ!!!」
「大丈夫ですか野梨子。この辺は急に深くなってますから気をつけてください」

「野梨子…。そんなにしがみ付かなくても大丈夫ですよ。もう足がつくはずです」
「…もう少し…もう少し、このままでいてくださいな」

悠→魅(生徒会室で)

「なっ、なんだよ急に人の顔覗き込んで…」
「ねぇ…。キスしてもいーい?」
377名無し草:04/09/17 17:30:12
ごめん・・・悠理がまた憑依されたかと思いました。
野→清が原作でもありえそうな感じでイイっすね。
378名無し草:04/09/17 19:43:18
>暴走愛
乙です。切ないお話ですが萌えどころ多くって鼻血モンでした。
毎日毎日心待ちにしております。

>374タソ
私も可憐になって恋に狂った清四郎に抱かれてみたいでつよ(w
379名無し草:04/09/18 06:13:59
>暴走愛
私もずっとお待ちしてましたので、ご降臨、うれしいです!
素敵すぎて上手く言えませんが、読んでいる最中から
読んだ後も、ほわーっとした気分に酔わせて頂きました。
先を思うと辛いけど、続きを心待ちにしております。

>374さん >378さん
私も可憐になって、清四郎にあんな情熱的な告白をされたいですー。
それでもって清四郎にあんな風に…(ry (w
380名無し草:04/09/18 22:34:28
>暴走愛
相変わらず美しい文章と繊細な描写にうっとり。
そして皆さんが言われているように、私も可憐になって
みたいわ。後の展開を考えると切ないけど、あの瞬間の
可憐は禿羨まスィw

>376タン
自分、可憐姐さん萌えなもんで、可憐らしいハキハキした
告白に(・∀・)ニヤニヤしちゃいました。
381名無し草:04/09/19 00:13:25
シリアス続きの中、すんごく下らない話をうPします。
カポーは清×悠、バカ夫婦の上お色気ネタもありますので、
嫌いな方はスルーして下さい。
短編で、11レスお借りします。
382愛と苦悩の狭間に(1):04/09/19 00:15:02
新婚生活も、はや三日目。
ルンタッタとスキップしたくなる気持ちを押さえながら、僕は我が家へと帰宅した。
コホンと一つ咳をして、玄関のドアのノブを回す。
「ただいま」
僕は愛する妻の顔を思い浮かべ、極上の笑みを湛えた。

「おっ帰りぃ――っ!!」
ドンッ!!
妻が僕の元へ飛び込んできた。
ウッ!!
一瞬息が止まる。
『巨人の星』のダイリーグボール3号のように、どこから飛んでくるか分からない妻を、僕は伴宙太
のごとく、キャッチャーミットの替わりに、胸で受け止めた。

星君、いや間違えた。
妻よ、悠理よ。
出来るならば、頭から突っ込んでくるのではなく、唇から飛び込んで欲しい。
そうしたら僕も、君の柔らかく、さくらんぼのように可愛い唇を僕の唇で受け止めるのに。
星飛馬と伴宙太ではなく、オスカルとアンドレの様に美しく迎えようではないか!

「清四郎?」
僕は不思議そうに見上げる悠理の声で、はっと我に返った。
いかん、いかん。
どうやら僕は地球のはるか彼方、バヌアツのエロマンガ島まで飛んでしまったらしい。

僕の微笑みに感化されたのか、悠理も満面の笑みを浮かべる。
「ねぇねぇ、ご飯にする?それともお風呂にする?それとも…」
悠理の目がキラキラと輝いた。
「寝る?」
僕は人差し指と親指でコメカミを押さえた。
383愛と苦悩の狭間に(2):04/09/19 00:20:09
「悠理、ドリフのコントじゃないんですから……って言ってるそばからシャツを引っ張り出すんじゃ
ない!」
僕はじっと悠理の顔を見つめた。

ああ、悠理にあんなことやこんなことを教えた僕が悪いのか。
恋人時代、欲求のまま突き進んでしまったツケが今、回りに回って360度、一回りして還って来た
のだろうか?
付き合い始めの頃は恥ずかしがって、しょっちゅう僕に蹴りを入れていたのに…
こんなにも性に対して奔放になるなんて、誰が想像出来ただろう。
でも………少しだけ、ほんの少しだけ嬉しい……かも。

「おい、清四郎ってば!」
悠理に呼ばれ、僕ははっと顔を上げた。
どうやら僕の心はバリ島のキン○マーニまで旅をしていたらしい。

そんな僕を不思議そうに見上げ、悠理はトンッと僕の右肩を押して向きを変えると、背中を押した。
「わかった。じゃ、やり直しね」
仕方なく僕は外に出て、またコホンと咳を一つしてから玄関のノブを回した。

「ただいま」
再び笑顔を浮かべている僕に、悠理がつつつーっと寄って来て速攻で聞いてきた。
「お帰り、清四郎!寝る?」
ゴン!!
気が付いたら僕は、悠理の脳天にかかと落しを決めていた。
「っだ――っ!!」
悠理が脳天を両手で押さえ、転げまわっている。
「だ、大丈夫ですか?悠理」
僕は自分がしたであろう非道なし仕打ちに青ざめ、オロオロしながらも悠理をそっと抱き起こした。
「う、うん、何とか生きてる…」
どうやら怪我はないらしい。
384愛と苦悩の狭間に(3):04/09/19 00:21:35
いつもの悠理の声に安堵し、僕はほっと胸を撫で下ろした。
新婚そうそう殺人はよくない。


何事も無かったかのように平静を装い、玄関からリビングへと場所を移した。
「今日は忙しくて昼食を食べる暇もありませんでしたから、先に食事にしましょう」
そう言い終わらないうちに腹の虫がグーっと鳴り、僕が相当腹が減っていることを察知したのか、
悠理がよろけながらも立ち上がり、にぱっと笑った。
「うん、わかった!じゃ、これからスイッチを入れるから、ちょっと待って」

まるで天使のようなその笑顔は、僕にとって何よりも代えがたいものだ。
僕は感動で声が震えそうになるのを、誤魔化すように言葉を続けた。
「レンジのスイッチですか?悠理もご飯を温めてくれるようになったんですね…」
我ながら自分のセリフに再び感動し、僕は目頭が熱くなるのを感じて、天を仰いだ。

――感動した!

いかん、いかん。
これでは、まるでどっかの国の首相である。

僕はブルブルと頭を振り、再び笑顔で悠理を見つめた。
悠理も満面の笑顔で答える。
「ううん、清四郎に炊き立てのご飯を食べてもらおうかと思って、炊飯器のスィッチを押したの!」
悠理はどうだ!とばかりに腰に手を当て、えっへん!と背中を反らせた。

僕の顎がガックーンと膝まで下がった。
「…炊飯器ですか?」
「そう、炊飯器」
どうやら間違いではないらしい。
僕は一歩、又一歩と悠理へと近づいて行った。
385愛と苦悩の狭間に(4):04/09/19 00:22:52
「あっ、清四郎、く、苦しい…ギブッ!ギブだってば!!」
悠理が僕の腕を叩いている。
我に返ると、僕は両手で悠理の首を締めていた。
「はっ、僕とした事が!悠理、大丈夫ですか?」
「う、うん、ちょっと苦しかっただけ」
そう言いながら悠理の喉はヒューヒュー鳴っている。

「すみませんでした、つい、悠理の華奢な首が鶏のように感じられて…」
そう言って謝罪する僕を、悠理が悲しそうに見つめていた。
「あたいを絞めようとしたの?くぇーっ、て?」
僕は罪の意識に打ち震えた。
「とんでもない!悠理は僕に美味しいご飯を食べさせようとしただけなのに…。なんて僕は心の
狭い男なんだ!」
どっと滝のように涙が流れ、僕は反省ザルの様にがっくりと肩を落とした。

そんな浅はかな僕にも、悠理はまるで太陽のように明るい笑顔を浮かべた。
「だから、ご飯が炊けるまでの間に、ねっ!」
カチャカチャ。
悠理が僕のズボンに手をかけ、ベルトを外しにかかった。
「悠理…」
僕は大きな溜息をついた。
「なぁに?」
ジーッ。
既にジッパーまで下げられ、僕はパンツに進入しようとしていた右手を掴まえた。

「…最初からそれが目的だな?」
こめかみがピクピクと痙攣している。
「えっ、何が?」
悠理は首をすくめ、クゥンクゥンと子犬のように僕の足元にスリスリしている。
そんな悠理を無視して僕は続けた。
386愛と苦悩の狭間に(5):04/09/19 00:24:01
「わざとご飯を炊いておかなかったと言っているんだ!」
「そんなことないやい!」
どうやら甘甘攻撃でも通じないと思ったらしく、悠理は両目に涙をいっぱい溜めて僕を見上げた。
「ぐすっ、清四郎が帰って来るまでにゴハンを炊こうとしたんだけど、洗剤が切れちゃって…」
僕は今にも泣き出しそうな悠理に、そっと手を差し出した。
「悠理・…」

可愛い悠理。
僕の為に、ごはんを用意しようとしていたんじゃないか。
それなのに、僕は目くじらを立てて…
うん、洗剤が切れていたのなら仕方ない。
ん?
待てよ?

「ちょっと待ったぁ!!」
僕は声を張り上げ、悠理の目の前で掌を目一杯広げた。
「何?ねるとんごっこ?」
悠理が小首を傾げる。
「違う!一つ質問がある。どうして米を研ぐのに洗剤が必要なんだ?」
「えーっ、物を洗う時は洗剤がいるだろ?服だって、食器だって、車だって洗う時は洗剤使うじゃん」
悠理の顔は至って真剣、僕はがっくりと肩を落とした。
「今までも洗剤で洗って……いたんだな」
「うん!」
悠理は元気いっぱい答えた。

どうりで薬くさい味がすると思った。
僕の為に、悠理が香水か化粧水でも使い始めたのかと思っていた自分が空しい…
悠理の言うことも、確かに間違ってはいない、確かに。
あながち、理屈が通っているだけに、こういう場合はどう答えればよいのだろうか?
そして僕は途方に暮れ……って、どこかにそんなような歌がありましたねぇ。
387愛と苦悩の狭間に(6):04/09/19 00:25:19
そんな僕の思いを悠理の一言が打ち破った。
「……なぁ、清四郎。NOVAに入りたいのか?」
僕は目を閉じ、ロダンの傑作『考える人』と同じポーズを取っていた。

「確かに、悠理の手料理が食べたいと言ったのは僕だし、慣れない悠理が本を広げて努力して
いたのも知っています」
「うん、あたい、頑張ったよ。魚も三枚におろせたし!」
再び悠理が、エッヘン!と胸を反らせた。
そんな悠理とは裏腹に、僕の気持ちはズーンと沈んでいった。
あの、魚をおろしている姿をみた衝撃は、今でも忘れられない。
「そうでした。魚を三匹ぶった切って、おろし金でおろしましたよね、まるで大根のように」

ゴォリ、ゴォリ…
あの、なんともいえない恐ろしい音と、二度と使えない下ろし金。
にたっと笑いながら魚を掴み、ゴォリ、ゴォリ…
「いやーっ!!」
僕はムンクの叫びのように、頬に手を添え、叫んでいたあの日。
二度と思い出したくない過去だ。

「魚をおろすのに、あんなに力がいるとは思わなかったよ。主婦って力もちなんだなぁ」
そんな僕の思いに悠理は気が付くはずも無く、ケタケタと笑いながら言った。
突然、僕はムラムラと怒りが湧き起こり、ビシッと悠理を指差した。
「それは悠理、お前だけだ!」

僕はほぅと息を吐くと鞄をソファに置き、その上に上着を置いて、ネクタイを緩めた。
「もういい、風呂に入る…」
悠理は、またまたにぱっと笑って答えた。
「解った。今から準備するから、ちょっと待って」
ゴン!
僕は華麗な右ストレートを決めていた。
388愛と苦悩の狭間に(7):04/09/19 00:26:40
「ひどいよぅ!グーで殴るなんて!!」
悠理は左の頬を抑えながら涙声で訴えた。
「いまどき保温の出来ない五右衛門風呂じゃあるまいし、どうしてお湯を張っておかない!それで、
お風呂にするぅ?なんて、片腹痛いわ!!」
僕の拳は、いや、拳といわず全身がブルブルと振るえていた。

「だって……そのままお湯を張ったら、久美子が死んじゃうよぉ!」
パシッ!
僕は『アタックナンバーワン』の鮎原こずえのように、素晴らしくスナップの効いたアタックを決めて
いた。
「ひどいよぅ!パーで叩くなんて!」
悠理は今度、左の頬を抑えながら訴えた。
「お前がグーで殴るなと言ったからだ。今度は何を入れた?えっ?久美子っていうのは何だ!」
僕の剣幕にひるむ事もなく、あっさりと言ってのけた。
「亀」

僕はバタバタとリビングを駆け出し、バタンとバスルームのドアを開けた。
恐る恐るバスタブを覗くと、亀が水面から首を出し、ハローと挨拶していた。
僕は矢吹ジョウの最後のシーンように、全身の力がガックリと抜け、膝から崩れ落ちた。
「立て、立つんだ、じょぉ――!!」
僕の傍らには、丹下段平に扮した悠理が僕に向かって叫んでいた。

ヨロヨロと立ち上がり、力を取り戻した僕は、悠理の前で仁王立ちしていた。
「僕に亀と一緒に風呂へ入れと?水風呂で、しかも踝までの水位でか!」
僕は右手にキュッとボクシング・グローブをはめ、見事なまでのアッパーを決めていた。
悠理がアゴを抑え、怒鳴っていた。
「顔はやめて!あたし、女優なんだから!」
ヒュ――ッ、空しい風がリビングを吹き抜けた。
389愛と苦悩の狭間に(8):04/09/19 00:27:51
新婚生活を送って早三日。
『あなた、お背中流しましょうか?』
『いや、僕が洗ってあげるよ、悠理』
『一緒だなんて恥ずかしいわ。もう、す・け・べ!』
『悠理が僕を助平にさせるんですよ』
そんな会話を夢見ていただけなのに…

「おーい、清四郎―っ!帰ってこいよぉーっ!!」
またまた中央アフリカのチ○コ川に佇んでいた僕を、グイと悠理が現実の世界に引き戻した。

こんなはずではなかったのに。
僕はただ、普通にゴハンが食べたかっただけなのに。
僕はただ、普通に風呂に入りたかっただけなのに。
そう望むことが、罪なのだろうか。

じーっと悠理の顔を見つめていたら、ホロリと一筋の涙が流れてしまった。
悠理は黙ってコクンと頷くと、慰めるようにポンポンと背中を叩いた。

「…何故亀を連れてきた?」
僕の低い声にも、悠理はどうだ!と言わんばかりに明るく答えた。
「亀が道路の脇にいたから、可哀想だと思って連れて帰ってきたの」
僕は更に質問を続けた。
「近くに沼や池は無かったのか?」
一瞬考え込んでから、ポンと悠理が拳を掌に打ちつけた。
「そういえば、近くに大きな沼のある公園があったっけ」
390愛と苦悩の狭間に(9):04/09/19 00:28:56
「悠理、それは世間一般では、亀が移動していると言うのでは?」
僕のこめかみが、ピクピクと海老のように踊りまくっている。
「えーでも、久美子は首を引っ込めて怖がっていたよ?」
悠理は小首を傾げながら、ぷぅと頬を膨らました。
「それはお前が手を出したからだ!そう、お前を怖がっていたんだよ!お前は、亀が散歩していた
のを誘拐したにすぎん!」


「久美子、ゴメンな…」
僕の言葉を受けて相当ショックだったのか、悠理はしょんぼりと肩を落としている。
少し、キツク言い過ぎたかも知れない…
早くも僕の胸の中は後悔の二文字が、ぐるぐると駆け巡っていた。

「じゃ、そうと決まったら、久美子を沼へ返しに行きますよ」
僕は出来る限り優しく悠理に声をかけた。
「……はーい」
「そんな悲しい顔をしないで」
まだ、しょんぼりしている悠理の肩をそっと抱いた。
悠理が腕の中で、涙をいいっぱい溜めた目で僕を見上げた。
「だって、せっかく仲良くなったのに。昼間、清四郎を待っているのがあたいと久美子の二人になる
から、寂しくないって思ったのに…」
「悠理…」
僕は悠理をぎゅっと抱き締めた。

悠理は涙を拭き、チンと鼻をかみ、ティッシュをポンと投げた。
「久美子を仲間の所に返しに行くよ」
「すまなかった、寂しい思いをさせて」
僕もつられてチンと鼻をかみ、ティッシュをポンと投げた。
悠理が僕を見上げ、その潤んだ瞳には僕しか映っていない。
「清四郎…」
「悠理…」
勿論、僕の瞳にも悠理しか映っていない。
そう、僕は悠理を愛している。
例え洗剤で洗ったごはんを食べさせられようが。
例え亀と一緒に風呂へ入ろうが。
悠理なしの生活は考えられないのだ。

僕は悠理をそっと抱き寄せ、二人での愛の世界へと飛び立った。
世界中の恋人達が集う、オランダのスケベニンゲンへと……


「今晩は」
そう声を掛けてきたのは、隣に住む田中さんの奥さんだ。
「今晩は」
田中さんの視線の先は、悠理が両手で掴んでいるものだった。
暗くてよく見えないのか、微笑を浮かべながら興味津々で聞いてきた。
「今日は何を返しに行くの?」

田中さんの奥さんは悪い人ではないのだが、噂話が三度の飯よりも好きという人だ。
僕は別の話題を振る為に、口を開いた。
「ところで、今日…」
「亀の久美子だよ」
悠理があっさりと明日のネタを提供した。
僕はコホンと咳をした。

「おとといは柴犬の一郎で、ぷっ…。昨日は三毛猫のよしこ、ぷぷっ…。今日は亀の久美子ちゃ
ん?だんな様も大変ねぇ、ぷぷぷっ…」
そう言いながらも、田中さんは必死で笑いをこらえている。
僕はもう、半ばやけくそで答えた。
「いえ、悠理が寂しがりやなだけですよ。それでは、失礼します」
僕は悠理の背中をポンと押して、さっさとその場から離れた。

「ほんとにあの二人、黙っていると美男美女の素敵な御夫婦なのにねぇ」
田中さんの奥さんはそう呟いて、家の中へと入っていった。
今ごろご主人にでも、ペラペラと一部始終を聞かせているに違いない。

僕達は顔を見合わせた。
「ごめんな、あたいのせいで清四郎までバカだと思われてる」
「何を言ってるんですか、今更」
僕は悠理の頭をコン!と叩いた。
思い切り愛情を込めて。


「バイバイ、久美子」
悠理は亀を池のほとりに置いた。
やがて、スッポリと甲羅の中に隠していた頭を伸ばし、久美子は池の中へと戻って行った。
そんな姿を見守っていた悠理は、月夜の光を浴びて、まるでこの世のものでないように美しく、
憂いを帯びていた。
黙っていれば美しいその横顔を、僕はじっと見つめた。
「清四郎、何見てるんだ?」
「いえ、悠理がとても美しくて…」
「……ありがと」
しおらしく小さな声で呟く悠理が可愛くて、僕は悠理の顎を持ち上げて唇を重ねた。
悠理もそっと目を閉じる。
世界はもう二人だけのものだった。
満月の光輝く夜だった。

        【おわり】
393名無し草:04/09/19 00:37:56
>「愛と苦悩の狭間に」

ワロタ・・・ははは、久美子・・・!!
久美子って、久美子って・・・(笑死中)
394名無し草:04/09/19 00:39:21
>愛と苦悩の挟間に
リア遭がうれしいのでサクッとレスしちゃおう。
おバカ夫婦ですねー。清×悠大好きなんですけど、
ほんとにこの二人って、ちょっと気を抜くとこうなりそう…。
ラストが意外と爽やかでしたね。
家に戻れば炊きたてのごはんが待ってるけど、清四郎は結局悠理を食うのかな(笑)
395名無し草:04/09/19 00:41:52
PCの調子が悪く、うPするのに時間がかかってしまい、カキコするつもり
だった方がいらっしゃったら、お待たせしてすみませんでした。
又、しょーもない話でお目汚しスマソ。
396名無し草:04/09/19 00:48:34
ワロタ。悠理ならやりかねんw

>394
洗剤まみれのごはんだけどねw
397名無し草:04/09/19 01:06:41
>愛と苦悩の狭間に

>新婚生活を送って早三日。
>『あなた、お背中流しましょうか?』
>『いや、僕が洗ってあげるよ、悠理』
>『一緒だなんて恥ずかしいわ。もう、す・け・べ!』
>『悠理が僕を助平にさせるんですよ』
>そんな会話を夢見ていただけなのに…

むっつりスケベ、本領発揮ですな(笑)。
398名無し草:04/09/19 02:04:12
可×清 の続きも早く見たい
399名無し草:04/09/19 07:54:07
>愛と苦悩の狭間に

星君…オスカルとアンドレ…バヌアツの(以下自粛w)、
――感動した!…魚の三枚おろし…久美子………(以下続く)。

朝からPCの前で、思いっきり爆笑させて頂きました!!
でも、何だか可愛い夫婦ですねw
かと思えば、最後はしっとり、ロマンチックなオチでしめてくれて、
作者様のセンスと力量に、ただただ脱帽です。

よろしければ、続編などをぜひぜひキボン。
400名無し草:04/09/19 10:18:59
>愛と苦悩の狭間に
いいタイトルですね。朝から笑わせてもらいました。
清四郎って完璧な優等生キャラなのに
「変態」「おバカ」という言葉が一番しっくりくるのはなぜ…。
401名無し草:04/09/19 13:08:08
いやー私も笑わせて頂きました。
でも、悠理の「ごめんな、あたいのせいで〜」とコツン!じゃなくてコン!と叩く清四郎にほのほの。
>>400
ですねー。これ悠理ならまじでやらかしてそうだから、他の男二人との
カプでも想像してみたんだけど、こんな間抜けな図は清四郎が一番ハマりました。
402名無し草:04/09/19 18:44:03
『サヨナラの代わりに』をうpします。
>235の続きです。
403サヨナラの代わりに (77):04/09/19 18:46:29
「もしもし、魅録だけど。……今いいか?」
俺の声は、緊張のあまり上ずっていた。
煙草を1本吸ってリラックスしたつもりだったのに、ニコチンは全く効いちゃいない。
気を張り詰めとかないと電話を落っことしてしまいそうだ。
やっぱアルコールも入れとけばよかったかなとか考えていると、受話器から懐かしい声が
聞こえてきた。
「うん。大丈夫だよ」
悠理の声は、5年前とほとんど変わらない。
あえて言うならほんの少しだけ柔らかくなったような気がするが、気のせいかもしれない。
とにかく拒絶されなくてよかった。
よく耳を澄ましてみたが、他の物音がほとんど聞こえない。
まあ、時間も時間だからすでに寝てて当たり前だし、それなら、話はしやすい。
頭の中で2度3度どう切り出そうか迷ったが、出てきた言葉はそのまんまだった。
「……俺、も一回、結婚することにした」
「おめでとう」
悠理は間髪入れずにそう言ってくれた。
受話器の向こう側の、おざなりじゃない、ちゃんと喜んでくれてる顔が浮かんでくる。
何かヘンな感じがしなくもなかったが、パズルの中の嵌めることができずにいた部分が
埋まったのがわかった。
勢いづいた俺は、ずっと昔の約束を破るための言い訳がましいことを口にしていた。
「……俺、これはお前に許可もらっとかなきゃと思ってさ。で、俺は、お前とのことも、
その、野梨子に話そうと思っている。……お前の子供のことも含めて……」
「のりこって?」
急に聞こえた混じり気のない声音に、俺は口篭る。
『のりこ』って言われたって、誰だかわかるはずないか。
俺と悠理はこうもかけ離れてしまっているのに、俺は『のりこ』といえばそれが『野梨子』を
指すとわかってくれて当然だと思っていたらしい。
自分で気付いてなかった自分の愚かさに、ただ呆れてしまう。
俺は腹の底から笑いたくなってきたが、まずは悠理に答えを返すことにした。
「…白鹿……野梨子だ」
404サヨナラの代わりに (78):04/09/19 18:48:36
「いいよ、魅録。……野梨子に、ヘンな誤解されると困るもんな」
悠理がポツンと呟いたのは、俺が再婚相手を『野梨子』だと告げてから少し間がたって
からだった。
俺としては悠理がノーと言えば、野梨子に話すのは止めるつもりだった。
隠し事と触れるべきでない事は、違う。
恐らく、清四郎と野梨子の間にも、似たようなことはあると思う。
それを知りたくないと言えば嘘になるが、俺は野梨子が話さない限り聞かない。
多分、野梨子もそうだろう。
今、悠理の頭の中では、野梨子にこっぴどく詰問されてしどろもどろになっている俺の姿が
浮かんでるんだろうが。
「……そう意味じゃないんだ。…その、もしよければなんだけど、内輪だけのにお前も来て
欲しいんだ。もちろん、子供も一緒にさ。野梨子も、清四郎に来て欲しいと言ってるし。
それから、ああ、もちろん美童と可憐も呼ぶしさ。……まだ具体的にどうってわけじゃない
けど、そんなたいしたことじゃないから、気軽に考えといてくれればいいから」
俺はそこで言葉を切って一息入れた。
うんうんと相槌を打っていた悠理の声が聞こえない。
俺は何か困らせることでも言ったかと思い、呼びかけてみた。
「悠理?」
「ああ、魅録、ちゃんと聞いてるよ。うん、またちゃんと決まったら連絡くれよ。明日
早いだろ? ごめん、あたい、子供持ってから眠くなるのが早くってさ」
確かに、悠理の声はどこか上の空だ。
明日悠理が寝坊したら、俺は悠理の娘に恨まれる。
ここが潮時だ。
「じゃあ、またな」
俺は一言言って電源を切り、携帯をソファの上に静かに置いた。
405サヨナラの代わりに (79):04/09/19 18:50:09
「清四郎、今、よろしくて?」
魅録の言葉に背中を押されるようにして、私は平静を装って清四郎に電話した。
声は多分不自然ではないはずだけど、受話器を持つ手は震えている。
テーブルに無造作に置かれた真四角な紙が、視界から出て行かない。
母さまに渡された、清四郎の電話番号が書かれた紙。
私が魅録を連れて行った日、居間で父さまと魅録が酌み交わす間に、母さまは私を台所に
呼んで『もし必要であれば』とだけ言ってそれを私の右手にそっと握らせたのだ。
ずっとハンドバッグの奥底に入れっぱなしにしていたそれは、中に入れていた他のものに
よってところどころ擦り切れていた。
「ええ、大丈夫ですよ」
本当に久しぶりの、落ち着いた静かな声。
それは確かに少しよそよそしいのに、淋しいという気が起こらない。
昔の私なら絶対に、ああでもないこうでもないと思いを巡らせただろうに。
別れてからの4年の間に、私が親離れならぬ、清四郎離れしたということだろう。
不意に、身体が軽くなる。
受話器を持った瞬間から何と切り出そうかと迷っていたのに、急に奔流のごとく喉元を
駆け上ってきた言葉はシンプルすぎるほどシンプルなものだった。
「……私、再婚することにしました」
「おめでとう」
清四郎は、間髪入れずにそう言ってくれた。
思わず、目頭が熱くなる。
別れを告げられた時でさえ泣かなかったのに、今は溢れてくる涙を止められない。
と同時に私の中から新たな力が湧いてきて、私を勇気付けてくれる。
もう、大丈夫。
私は受話器を握り締める手をそのままに、瞳をそっと閉じて見えない相手に微笑みかけた。
それから少し深めに息を吸い込んで、ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「……で、これは魅録とも話してるんですけど、私、内輪だけの披露宴に、清四郎にも
来ていただきたいと思ってますの……」
406サヨナラの代わりに (80):04/09/19 18:52:02
「みろくって?」
一瞬間を置いて聞こえてきた清四郎の言葉に、私は唖然としてしまった。
清四郎は魅録を忘れてしまったとでも言うのだろうか。
まさか、そんなことはありえない。
かつて彼らはあんなに一緒にいたのに、『魅録』という名前はこんなにも珍しいのに。
例えこの数年付き合いがなかったとしても、そんなことは理由にならない。
『みろく』が『魅録』でなくなるなんて、清四郎に何があったのだろうか。
私は動揺を気取られないように、わざとさらりと流してみた。
「魅録って、魅録ですわ、清四郎」
だが、清四郎から何も返ってこない。
私はどう言葉を続けていいのやらわからない。
もしかして、ふたりの間に私が知らない何かがあるのだろうか。
それとも、そんなことは私の杞憂にすぎないのだろうか。
考えても考えても堂々巡りで答えが出ない。
ぎこちない沈黙が続く。
「でも、折角のおめでたいことに僕が出て行くのは、何だか場違いな気がするんですが」
ようやく聞こえてきた清四郎の声で、私は我に返った。
言っていることは、いかにも清四郎らしい。
けれど、世の中には別れても適度な距離を保って付き合っている元夫婦もいる。
しかも私達は夫婦であった以上に友人でもあり、幼馴染でもあった。
それを全て否定したくない。
「でも、清四郎は私にとっては大事な幼馴染ですし、魅録も悠理に声を掛けてますし……。
…その、私は清四郎に、魅録は悠理に、それぞれ祝福してもらいたいと思ってますの。
……それは、私達の我儘なのかもしれません。でも、出来ましたら来ていただきたいんですの」
所々詰まりながらも、何とか言い終えた。
今一度受話器をしっかり握り締め、清四郎の言葉を待つ。
再びのぎこちない沈黙に私がしびれを切らしそうになった頃、静かな、しかしどこか
上の空の清四郎の声が耳に入ってきた。
「……わかりました。詳しいことが決まったら、また連絡ください……」
407サヨナラの代わりに:04/09/19 18:54:19
【続く】が入らなさそうだったので、ここで入れます。
408名無し草:04/09/19 18:58:34
>サヨナラのかわりに
まだ続くと思って期待してたら「続く」が入った(涙)。

降臨、お待ちしてました。最初の清×悠話とつながりましたね。
電話の向こうの二人の心の揺れが伝わってきて、ドキドキしました。
また最初から読み直そうかな、と思います。
彼らとの再会など、すごく気になります。
409名無し草:04/09/19 20:10:41
>サヨナラ
お待ちしておりました。毎回心待ちにしております。
悠理の子供の話を聞いた野梨子の反応気になります。
二人は清×悠の関係に気付くのかとか…。
次回も楽しみです。
410名無し草:04/09/19 20:59:55
>サヨナラ
待っていました。清×悠のお話とリンクされると特に感慨深いです。
野梨子の決別と変わった自分に涙する場面がとても心に残ります。
清と悠が止まっていた間確実に歩んでた二人がいいですね。
続きも楽しみですが、清×悠のあの後も読んでみたくなりました。
411名無し草:04/09/19 21:17:23
>サヨナラのかわりに
なんの進展もしなかった清×悠だったのに、こちらは着実に、深い愛を築いた魅×野。
なにやら感慨深いものがあります。
これから美童と可憐もでて、また別の視点から語られるのかと思うと楽しみです。
>52の続きです。
--------------

人も荷物もすべて降ろし終わると轟音を立ててヘリコプターは飛び去って行った。

あたりが静かになるとウサギはすぐさま近寄ってくる。
「エサが貰えると思ってるのね」
「ごめんなさいね。食べ物はありませんのよ」
「ビスケットならあるぞ」と悠理は背負っていたリュックを漁り、しわくちゃの袋を取り出した。
中からひとつかみ取ると残りを袋ごと可憐に投げ、自分も食べながらウサギにあげ出す。

「人間のお菓子って良くないんじゃありません?」
「へーきだよ。アケミとサユリもいつもそれ食ってるもん。・・・あれっ!?意外とすばしっこいな」
悠理はウサギをだっこしようとして逃げられ、すぐさま鬼ごっこをはじめる。
「相変わらず元気だなあ」美童は悠理の後ろ姿を感心して見送る。
可憐と野梨子もそれぞれビスケットを手に取り、無人島の一角はにわかに動物ふれあいコーナーと化した。

「ったく。あいつら何のためにこの島に来たのかわかっているんですかね。食料はあとで没収だな」
「風紀委員じゃあるまいし、固いこと言うなよ」

「なんであんなにいっぱいいるのかなあ」美童が戻ってきて聞く。
「食用もしくはペットとして連れて来られて、天敵がいないものだから増えた、という所ですかね。
・・・・・もう待ってるのも馬鹿らしいので先に行きましょうか」と清四郎が言った、その時。


「きゃあ、ちょ、ちょっと、やめてよ」
男三人は可憐の悲鳴に振り向く。

一羽の孔雀が可憐の髪を引っ張っている。立ち上がりながら手で払って逃げようとするも、
そこに二羽目が猛然とタックル。転びかけて手がおろそかになったところを一羽目がすかさず袋を奪い取る。
強奪に成功すると、二羽の孔雀はすたこら逃げて行った。

「ひえぇぇ、壮絶」
「うーん、見事な連係プレー」
「案外かしこいんだな」

しゃがんでのんびりウサギにエサをあげていた野梨子は野梨子で、手の中のビスケットを狙う孔雀とにらみ合っている。
「早く逃げなさいよ」
「そ、そう言われましても」
目をそらすことも逃げることも出来ずにいるうちに、孔雀が飛びかかってきた。
「きゃあっ」
慌ててビスケットを放り出して逃げ出すものの、孔雀は野梨子を追い回すことに目的を変更したらしい。
必死で逃げ回る野梨子に可憐は
「こっちに連れてこないでよ!!」と頭を抱えたまま叫ぶ。

「おい、お前!!いいかげんにしないと羽根全部引き抜くぞ!!」
悲鳴を聞きつけ戻ってきた悠理が野梨子を追い回していた孔雀を片手でむんずと捕まえる。
だが、孔雀も負けてはいない。暴れに暴れて悠理の顎に蹴りを決め、逃げ出す。
「やったな!!逃がすか!!」
追いかけるもタッチの差で孔雀は飛び立ち、頭上の木の枝に止まった。
悔しがる悠理が木の幹を蹴りつけても、平然と見下ろしている。

地面に落ちたビスケットを齧るウサギ達に囲まれ、可憐と野梨子は放心したまま地面に座り込んでいた。

「あ〜、面白すぎ。写真でも撮っておけばよかったな」笑い過ぎで出た涙を拭いながら魅録が言った。
「そんなに笑っちゃ失礼ですよ」という清四郎もニヤニヤしている。
「大丈夫?」二人よりも幾分同情的な美童が手を貸し、可憐と野梨子はようやく立ち上がった。

「あんな目にあってるんだから、助けてくれてもいいじゃないのぉ」
「笑って見ているだなんてあんまりですわ」
「孔雀相手じゃ助ける気にもならん」
「これに懲りたら今後は不用意に近付かないようにすることですね」

「言っとくけど孔雀にやられるなんてお前らぐらいなもんだよ。そんなんでこれから三日間、大丈夫か」
魅録の言葉にムッとした女性陣が言い返す前に清四郎が言った。
「ほら、悠理も戻ってきましたし、さっさと管理棟に行ってログハウスの鍵を取ってきましょう」
促され、各チームずつ並んで歩き出す。

(女チーム)
「 絶 対 、あいつらあたし達をバカにしているわよ。今に見てなさい」小声だが決意のこもった声で可憐が言った。
「ええ、私達にも意地があるということを見せてやりましょ」女性二人はがしっと手を組み合わせた。

(中性チーム)
「なんだか僕、この島でやっていく自信ないよ」
「今から何言ってんだよ。気合いを入れろ、気合い!!」背中を叩く音が響き渡る。
「痛いよ、悠理。そんなに力任せに叩かないで」

(男チーム)
「何はともあれ、やる気が出たのは結構」
「さて、どうなりますことやら」

--------------
どなたか続きよろしくお願いします。

415名無し草:04/09/20 21:58:10
>無人島リレー
乙です!
孔雀に攻撃されまくる女子に萌えましたw
うまい具合にやる気を出しましたね。
だけど、鳥って結構獰猛だから恐かっただろな・・・。
またどなたかが続けて下さることを楽しみにしてます。
416すべて彼女のため:04/09/21 18:02:44
短編UPします。

野×清SMです。
さらに根底の人間関係は清→悠←野です。
R描写はありませんが、エロいです。

SM、および悠←野、エロ匂わしが許容できない方は
スルーしてやってくださいませ。
元タイトルは「この疵もこの痛みすら彼女のためだから」
でしたが、長すぎたので省略。
次より3レスいただきます。
 ぴちょん、と水滴が一滴垂れた。
 石造りの地下室。こんな部屋がこの学園の地下に隠されているなんて、知らなかった。
 きっと理事長すら知らないはずだ。
 いつもは鍵が閉まっているドアの一つをウエーブヘアーの女友達が硬い顔をして開けて入るように促したとき、彼はこの部屋の空気を敏感に感じ取ったに違いない。
 ここに流れる臭いに気づいたに違いない。

 だが、彼は甘んじてその階段を下りた。

 後ろでドアが閉められ、地下室から漏れてくるほの暗い灯りだけを頼りに彼は下りていった。
 そこで彼を待っていたのは、黒い皮製の衣装をつけた彼の幼馴染だった。黒い髪と黒い瞳。すらりとかなり丈の短いその衣装から伸びた脚は網タイツに包まれ、その網目に覗く白い肌がなまめかしかった。
「なかなか扇情的な格好ですね。」
 彼は少し口をゆがめて言う。
 今からここで行われる儀式がなんなのか、正確に理解しているのだ。
「ええ。お仕置きならこういう衣装でするものなのですって。」
 おおかた、あの金髪男あたりの入れ知恵だろう。
 ご丁寧に頭にも黒いレースの飾りをつけた彼女の姿はゴスロリ調のボンテージスタイル。
 紅を塗らずとも赤い唇が白い肌に浮き上がって見えた。
 彼女の表情は真剣そのものだ。
「なぜご自分がお仕置きされるのかわかってるのでしょう?清四郎。」
「ええ。わかってますよ。」
 男は静かに目を閉じた。
 ぴしり、と背中に熱が走る。
 か弱く身体能力も大して高くない彼女なので、黒革の短い鞭を使用する。長い鞭を使うなど彼女自身が傷つく可能性が高い。

 男は体を固定されていた。
 着ていたシャツはすでにぼろぼろになり、用を果たさなかった。逞しい胸筋が覗いている。
 首と両足首に鉄の輪を嵌められ、それらはすべて互いに鉄の棒で繋がっていた。その三点が固定される道具なのだった。
 棒の途中に少しの空間があり、そこに手首も拘束される。中世の拷問道具である。
 男の頭には豚の頭を模った鉄の面が被せられている。これがまたかなり重く、首につけられた輪がその重みで肩に食い込んだ。
 石畳の床面に黒い蝶ネクタイが無様に落ちていた。

 ぴしり、とまた背中に熱が走った。

 はなからその回数を数える気もない。数える資格などありはしない。

「どうですの?体が動かないままに痛めつけられる気分は。」
「・・・最悪ですね。」

 だが面の中の彼の表情は存外穏やかなのだろうと彼女は思う。
 彼女は眉根をそっと寄せて微笑した。ここに他の人間がいたら、その彼女の悲しすぎる表情に息を呑んだことであろう。

「そうでしょうね。でも悠理はもっと痛かったんですのよ?」

 男は一瞬の逡巡もなく、その言葉に答えた。

「もちろん、わかってますよ。」

 だから、こうしているのですよ。
 あなたのお仕置きを受け入れたのですよ。
 大事な大事な私たちのあの娘をこの男はひどく傷つけた。
 大事な大事なあの娘の代わりに、この少女は男を打つ。
 大事な大事なあの娘のために、この男は少女に打たれる。

 男は面で覆われていた。
 だから、自分を打つのは大事な大事なあの娘だと思えた。
 自分が傷つけたあの娘だと思えた。

「あう・・・悠理・・・」
と男は囁いてびくり、と体を震わせた。実際は固定されていたせいで小さな動きではあったけれど。

 少女はその男の声に、男の劣情を嗅ぎ取った。
 こうして自分に鞭打たれながら、男が心に描いているのは、私たちの大事な大事なあの娘だった。
 男の想像の中で、彼女はもう一度穢された。

「まだ、まだですわ。これで終わりだなんてつまりませんわよ。清四郎。」

 少女は鞭を下ろして、男の鎖骨をそっとなぞった。
 口元に微笑にも似た表情が浮かぶ。

「私たちの悠理を傷つけたのに、これだけで終わるなんて思わないでくださいましね。」

 ええ。わかってますよ。
 この疵もこの痛みすら彼女のためだと、わかっています。

 ぴちょん、と水滴が一滴垂れた。
420すべて彼女のため:04/09/21 18:06:49
終わりです。
お目汚し大変失礼いたしました。
スルーしてくださった方もありがとうございます。
421名無し草:04/09/21 22:07:38
>無人島リレー2
続きが読めてうれしいです。
助けてくれない清四郎と魅録ってなんか新鮮。
頑張れ女の子チーム!
>すべて彼女のため
清四郎に縛られる野梨子を想像してたんだけど、逆だったんですね〜。

この頃、どんなシリアスなお話を読んでも、
アフリカの河原で佇んでる清四郎君の姿が頭から離れなくて、困っています。
422名無し草:04/09/22 00:31:54
>すべて彼女のため
だいぶ前に奴隷清四郎のネタに萌えたけど、
本当に読めるとは思わなんだ…しかも女王様が野梨子でびっくり。
清四郎、悠理に何をしちゃったんだろと、めちゃくちゃ気になりました。
ショートフィルムのような独特の世界、堪能させていただきました。

>421
>アフリカの河原で佇んでる清四郎君
やめて…せっかく耽美に浸ってたのに、思い出すだけで腹がよじれてしまうっ!
423名無し草:04/09/22 20:46:50
可×清うpしてくださーい
424名無し草:04/09/22 21:54:37
可×清イラネ。
425名無し草:04/09/22 22:02:20
あげんなヴォ家
426書きながらうpしてみる:04/09/22 23:19:28
ちょっとお遊び。

問題を解くことに没頭していた野梨子はふと頭を上げた。
校舎はいつの間にかシンとしている。
耳を澄ますと遠く体育館からかすかに歓声が聞こえてきた。
どうやら体育館で行われているバスケットボールの試合を見るために
放課後残っていた生徒のほとんどは出払ってしまったらしい。

野梨子は何も気に止めずに黙々と問題集をこなしている
清四郎を振り返った。

教室には二人だけだった。
427書きながらうpしてみる:04/09/22 23:26:43
清四郎は左手で頬杖をつき、右手によく削られたHBの鉛筆を持っている。
少し眉に皺が寄っているのは、難しい問題があったのだろう。
しかし二、三分で解を思いついたらしく、たいして表情も変えずに
すらすらと答えを書いた。


ごめんなさい。静かなので適当に書いてますが、
連載の人来たら、割り込んできてください。こっちはひっこめます。
428書きながらうpしてみる:04/09/22 23:33:45
そこで野梨子の視線に気がついたようだった。
真面目な顔を崩さずに
「もう終わりにしますか」
と問いかけてくる。

黙って窓の外を見ると、ようやくわずかに聞こえる歓声に気がついたらしく
「ああ」
と言って席を立ち、窓辺に歩いて行った。

野梨子も何となく彼について立ち上がると、窓辺に向う。

誰もいない校庭にはまだきつい陽射しが残っている。
額を汗が伝わって落ちるのに気づき、野梨子はハンカチで汗を拭った。

隣の幼馴染を見上げると、腕を組んだまま窓枠に寄りかかり、
体育館に視線を向けている。

何気なく彼の横顔を見つめていると、ふと彼がこちらを向いた。
なぜか一瞬顔をそらすのが遅れ、じっと二人で見つめ合ってしまい
野梨子は困って下を向いた。
429書きながらうpしてみる:04/09/22 23:40:00
清四郎が何か言った。

野梨子がぱっと顔を上げると、彼はあわてて口ごもり横を向く。
「何か言いました?」
と野梨子が聞いても、笑って誤魔化すばかりだ。

気づまりな時間が過ぎていった。

野梨子は妙な息苦しさを覚えた。

居心地が悪くて嫌な感じだ。

この閉塞感を打破しようと、野梨子はらしくなく、首を傾げ、黒髪をさっと後ろへ払った。

一瞬の内に清四郎の視線が己の首筋に注がれたことを感じ、
野梨子は硬直した。
胸の中で何かの鼓動が激しくなってきた。
430書きながらうpしてみる:04/09/22 23:46:23
コツンコツンと音がする。

鉛筆が窓枠を叩いていた。
清四郎が手に握ったままの鉛筆を一点を軸にして、シーソーのように
両端を交互に上下させて窓枠を叩いている。

彼も相当気づまりなのだろう。
それでもここを動かないのは、
何か、立ち去りがたく感じているのか。

指が震え、規則正しく打っていた鉛筆の打音が乱れた。
それをきっかけにしたように、清四郎は窓枠を打つのをやめ
鉛筆を握り締める。

視線は窓の外に向いている。


少ししてから、ゆっくりと清四郎の顔が動いた。
相変わらず少しも表情を変えることない。
そしてじっと野梨子の唇に視線を注ぐ。
431書きながらうpしてみる:04/09/22 23:52:17
野梨子もじっと清四郎を見返した。
よほど困った顔をしていたのか、清四郎はくっと笑った。
野梨子もほっとして、くすりと笑う。

だが次の瞬間、またもや息苦しい時間がやってくる。

野梨子は清四郎がふっと鉛筆を持ち、自分に向けるのに驚いた。

そのまま彼は鉛筆で空中に何か書いている。
どうやら野梨子をデッサンしているつもりらしい。
野梨子の輪郭を鉛筆で空に描いていく。

多少ともふざけた清四郎の態度に息をついた野梨子は
微笑んで立っている。

ふと鉛筆の動きが止まった。
432書きながらうpしてみる:04/09/23 00:02:31
尖った硬い先端が、野梨子の制服からわずかに覗いた肩に触れた。
ちくりという触感に野梨子は思わず身をすくめた。
笑って幼馴染の顔を見ると、真面目な顔をしている。

黒い鉛筆の頭が真っ白な野梨子の肌をところどころ引っかかりながら
道をつけていった。
左の肩から右の肩へと渡った後、喉をつたい、唇へ渡る。
小さな赤い唇の上に黒鉛を乗せられた野梨子は上目で清四郎を見た。

清四郎の目をじっと見ながら、野梨子はそろっと赤い小さな舌を出し
鉛筆の先を舌の上に乗せた。
そのままゆっくりとわずかに舌を震わせる。

鉛筆の木の部分までも唾液で濡れた。

清四郎は鉛筆を目の前に持ってきて見つめると、
再び野梨子に視線を戻した。
433書きながらうpしてみる:04/09/23 00:10:02
制服の上衣がたくしあげられていった。
野梨子は目を見開き、肩を上下させている。
怯えているのに、頬はうっすらと赤い。


上衣の下から現れたのは、彼女の胸を覆う白い木綿のブラジャーだった。
それは健気にも、ささやかな女らしさを懸命に男の手から守ろうとしているように見える。

左の胸の上に小さな黒子が見える。

衣の下にある野梨子の肌はより一層白かった。

清四郎は思いついてブラジャーの右のふくらみと左のふくらみをつなぐ
部分に斜めに鉛筆を挟んでみた。

野梨子は眉をひそめ、うつむいた。

挟んだものの、いい位置におさまらないので、もう一度別の場所に差し直す。
今度は左側のブラジャーの下を通すことにした。
434R:04/09/23 00:15:36
敏感な部分をかすったらしい。
野梨子が「あっ」と小さな声を上げた。
ブラジャーの下に鉛筆が挟まっている。
ブラジャーがまるで鉛筆を留めるためのクリップか何かのようだ。

首をひねっていた清四郎はペンケースからプラスティックの定規を
取り出した。
彼女の頬に当ててみる。
ひんやりした感触に野梨子はぴくりとする。

定規を右のブラジャーの下に挟み込む。
うまいこと挟めた。

野梨子はなんだか妙なことになっていて、怒ったように唇を尖らせている。

清四郎が野梨子を抱き上げると机の上に乗せ、
スカートをたくし上げ出した。
435名無し草:04/09/23 00:16:07
>426-
いいんだけど、せめてカプは書いて欲しかったです。
あとR傾向入るなら入ると書いてけろ。
436名無し草:04/09/23 00:17:19
>426
お約束くらい読んでくれ。
437435:04/09/23 00:17:22
あ、ごめん。Rは書いてくれてた。
438名無し草:04/09/23 00:18:12
面白い試みだとは思うけど、そろそろ止めておいたら?
書きたいんだったら書き溜めてから書くとか。
いくらスレが閑散としてるからといっても、もう小一時間になるよ。
439438:04/09/23 00:19:57
書き溜めてから書く、じゃなくて書き溜めてからうpですね。
すいません。
440猛スピードでR:04/09/23 00:24:23
スカートをぎゅっと握り締めた野梨子は嫌々と首を振った。
清四郎は彼女の耳に唇を寄せ、なだめるようにして
スカートをめくりあげていく。

なかなか彼女が許さないので、
後ろでにペンケースを探ると何か取り出した。
白い消しゴムだ。

清四郎がさっとスカートの中に手を入れると
野梨子が「きゃあ」と言った。
大きく目を開け、顔を細かく震わせている。
小さい声でいや、いや、と呟いている。
そのうち、はっああと言う。
潤んだ瞳で清四郎を見る。

力が抜けた隙に清四郎がスカートをめくりあげた。
白いパンティの股の部分が小さく、こんもりふくれている。
パンティの横から指を差し入れると、清四郎は濡れた小さな物体を
取り出した。
それからパンティの布地の下に再び、鉛筆だのボールペンだのを
差し入れ、渡す。

野梨子はとても信じられないという顔をして
横を向いていた。

おわり
441名無し草:04/09/23 00:25:19
ごめんなさい。スレ汚しでした。あと清×野でした。
おわりです。
442名無し草:04/09/23 02:42:53
変態清四郎の話なら、最初にそう書いといてよ
うっかり読んじゃって気持ち悪いったら
443名無し草:04/09/23 03:24:50
書きながらってのやめようよ
すごい迷惑
444名無し草:04/09/23 04:12:46
キモいなんか汚い野はデリケートそうだし
445名無し草:04/09/23 08:48:10
激しく遅レスだが、軽めの告白シリーズ、私も考えてみた。可憐→編です。

可→美(生徒会室で)
 「あれ、可憐。その口紅、新しい色だね」
 「そうよ、よくわかったわね。……ああ、そっか。誰か彼女がつけてるんでしょ」
 「……まぁね。でも、可憐にはもっとよく似合ってる」
 「そう?」
 「うん、今日は特に奇麗だよ」
 「……ありがと。本当、調子いいんだから。……でもまぁいいわ」
 「?」
 「そのセリフ、いつかあたしだけに言わせてみせるから」

可→清(生徒会室で)
 「ねえ、清四郎、こんなのがあるんだけど、どう?」
 「どれ。……(有名画家)の個展ですか。いいですね。
 可憐がこういうのに興味があるとは知りませんでしたよ」
 「あら、あたしこういうの結構好きよ。で。チケット二枚あるんだけど、今度の日曜日、一緒に行かない?」
 「……野梨子も好きだから、誘うと喜ぶと思いますよ」
 「あたしは、あんたと行きたいのよ」

可→魅(学校で)
 「最近、静かだな」
 「何が?」
 「お前の周りだよ。取り巻き連中とかいないし、彼氏からの
 電話もないみたいだし。なんかあったのか?」
 「……そういうのやめたのよ。本命が見つかったから」
 「へえ。相当本気なんだな」
 「そうよ。そのくらいしないとわかんないんじゃない?こういうことには、いかにも鈍そうなヤツだから」
 「……どんなヤツなんだよ?」
 「女と遊んでるより、男と遊んでる方が楽しい、男友達」

もし既出のネタがあったりしたら、ひたすらスミマセン。
446名無し草:04/09/23 09:01:39
445です。うpしてみたらちっとも「軽め」じゃない………………。

申し訳ない、逝ってきます……。
447名無し草:04/09/23 20:56:31
思いついたので、魅×悠の小ネタをうpします。
Rはありませんが、甘々なので苦手な方はスルーお願いします。

―赤ちゃんが、できたんだ―

明日は公休という真夜中、俺と悠理はキングサイズのベッドの上で寝転がりながら、ソレの
前段階ともいうべくとにかくお互いを触ったりキスしたりしながらいちゃついていた。
もちろん、いちゃつくだけいちゃついたらいくところまでいってしまうのがお約束で、
俺としてはもうそろそろ本腰入れようかなとか思ってたから、耳元で囁かれた悠理の台詞に
いい意味で驚いて思わず真顔で悠理を見つめてしまった。

―早すぎたかな?―

少し不安げな表情の悠理に、俺はそんなことないと言って抱き寄せた。
確かに結婚してからはまだ3ヶ月ほどしかたってないが、俺達の付き合いはもう…6年、
いや7年になろうとしてる。
結婚までに長くかかったのは俺達がまだ学生だったからで、出来ちゃった結婚だけは嫌だと
言っていた悠理に合わせて俺は結婚前まではものすごく気を使っていた。
…悠理はもしかして、当分はふたりの生活を楽しみたかったのか?

―よかった。かーちゃんとかそういうの抜きにして、あたいは子供欲しかったんだ―

暗闇の中でも、悠理が恥ずかしそうに照れているのがわかる。
俺の胸に顔を埋め、自分から抱きついてくる悠理の髪にキスをする。
“幸せ”という言葉が浮かんできて、俺は悠理に出会えて結婚できたことに改めて感謝する。
剣菱では、会長の娘婿として頭のてっぺんからつま先まで見られて気の抜けない日々が続くが、
悠理の前では俺は俺でいられる。
448名無し草:04/09/23 20:58:06
―魅録、どっちがいい?―

照れが収まったのか、悠理は俺の胸から顔を上げて俺をじっと見つめる。
一足先に出来ちゃった結婚した美童はあれだけ女の子を欲しがっていたにも関わらず、
生まれてきた男の子をこれでもかというくらいベタ可愛がりしてる。
…いやいや、俺はどっちがいいんだろう?
悠理は、どっちがいいんだろう?

―魅録、魅録ってば!―

答えない俺に痺れを切らしてか、悠理は俺の胸を拳で軽く2、3度叩いてきた。
悠理の横顔は少し膨れっ面になっているが、怒ってる訳じゃない。
そもそも、どっちかじゃなきゃダメだなんて、そんなことありえない。
だから俺はちょっと身体をずらして悠理の耳朶を甘噛みし、できれば両方欲しいなと囁いた。

―ごめん、魅録、それは無理だ。…和子さんが、ここにはひとりしかいないって―

終わり

読んでくださった方、ありがとうございました。
449名無し草:04/09/23 22:06:26
>魅×悠ネタ
さくっと短くまとまっていて、気持ち良く読めました。
ずっと変わらず仲睦まじい二人の姿が目に浮かびましたv

それと…全く別件ですが、特に続きが気になってる連載にこそっとリクします。
ぐっと秋めいてきたので、「秋の手触り」が読みたいです!
「病院坂」もめちゃくちゃ読みたい。
「可憐さんにはかなわない」の、目が点になるような展開も恋しい。
作者様方、お待ちしております…。
もちろん他の連載の続きも楽しみにしてますよ!
(すみません、お願いするばっかりで)
450名無し草:04/09/23 23:34:17
>可憐→編
この後彼らがどんな反応をしたのか気になってしまいます。
特に清四郎。すぐ返事しなきゃいけない状況だし…。

>魅×悠 小ネタ
子供をベタ可愛がりする美童パパに萌えました。
451名無し草:04/09/24 15:40:28
>魅×悠 小ネタ
こういう雰囲気のお話、大好きです。
文章から伝わってくる、魅録の優しさ(思い)と二人の関係に、
私まで幸せを分けてもらったようでした。
甘くて、幸せなんだけど、泣けてきそうな感じの、胸にじーんとくる読後感で。
素敵なお話を、本当にありがとうございました>作者様

ちなみに、美童の相手は誰なんだろう、とも思ったり。
452名無し草:04/09/25 02:13:18
可→魅のショート良かったっす!!
Rもみたいっす
453名無し草:04/09/26 12:20:06
「檻」が読みたいです。
454名無し草:04/09/27 12:43:51
Deep River お待ちしています。
455名無し草:04/09/27 15:22:35
何だか願望妄想スレになってきちゃったなあw
456名無し草:04/09/27 17:04:59
需要があるかは不明ですが、有閑キャッツ、
三姉妹編のその後が気になりました。
ということで書いてみます。

緊迫の清×悠ってことで。
クローゼットの扉を開ける。
今日は何を着ていこうか?

悠理は、等身大の鏡に映った自分の顔を見た。
ふふ。なんて顔してるんだ、あたい。

その顔はひどく緊張していた。
あの気配に敏感な男に緊張していることを気づかせてはいけないのに。
隠し通さなければならないのに。

*****************

「琴子は、とても可哀想な方でしたの。」
野梨子が大きな目に涙を溜めていた。
あの三姉妹の屋敷から抜け出してから丸一日眠り続けた。
そして、溢れる涙とともに目を覚ました。

眠っている間中、琴子の人生を夢で追っていたのだという。

逢いたい。あの人に逢いたい。
ひもじい。お腹がすいた。
お腹がすいた。
お腹がすいた。
・・・逢いたい!

琴子の心は、ただそれだけで占められていたという。
最後には指の一本すら動かせず。
涙を流す自由もなく。
ゆっくりと、命が体から零れていった。
結局、あの屋敷の人形の中で助かったのは一番最後に人形に加えられた野梨子と美童だけだったようだ。
他の人々は、深い眠りに陥っている間に、それと知ることもなく、餓死していた。
せめて飢えを感じていなかったことを祈りたい。

可憐は『三姉妹』を見つめながら祈った。

*****************

そして、あれから半月が経った日曜日。
事件の後始末も済み、時間が出来たから、というので清四郎は悠理にデートしようと連絡してきていた。
なんとなくあの時の事情を察している可憐は止めた。
「もっと落ち着くまで家の用事だとか、学校行事だとか言ってごまかしなさい。」

確かに、冷静でない状態で彼に会うのは危うい。
彼は彼女の正体に気づきかけている。疑念を抱いている。

だけど。逢いたいんだ。

悠理は唇をかみ締めると、ファンデーションの蓋を開けた。
頬に一塗り。二塗り。
鼻筋にきゅっと一塗り。
化粧水を霧吹きで一吹き。
パールローズの口紅を紅筆で唇に。
カーラーを睫毛にあてて。
ピンクのシャドウを瞼にのばす。
最後に同じ系統のピンクのチークを頬に落とす。
いつもはほとんど化粧になど気を遣っていない。
可憐や野梨子や、母親がうるさいから、極めて薄く塗っているだけ。

だけど、今日は。
可愛いピンクに染まったあたいを見せなくちゃいけない。

赤みをおびたオレンジの、ワンピースに袖を通した。

***************

日曜日の駅前は人でごったがえしていた。
雑踏より頭半分ほどとびだした長身の黒髪の男はすぐに見つかった。

いや、向こうから見つけられた。

だってこんなに離れているのに、いきなり目が合ったもの。
目が合って、そして。

彼は微笑んだ。


             つづく(あとよろしく)
あ、>87より続きでした。
入れ忘れ失礼。
461名無し草:04/09/27 21:11:48
>有閑キャッツ
清×悠のその後、気になってました。うれしいです。
どなたかに続けていただけることを望みます。
462名無し草:04/09/29 23:07:36
『鬼闇』うpします。
>>363の続きです。
オカルト&一部グロテスクな表現がありますので、
苦手な方はスルーして下さい。
463鬼闇(74):04/09/29 23:09:11
白虎神社へ向かう途中、小鬼2、3匹と遭遇したが、可憐の持っている鐘の力と魅録の刀によって
あっという間に倒していった。
「2、3匹ならチョロイもんだな。」
刀に付いた血を払いながらニヤリと笑う魅録に、意地の悪い笑みを浮かべて可憐が突っ込んだ。
「あら、余裕かましちゃって。さっき助かったのだって、この鐘のおかげじゃない。」
魅録は聞こえないふりをして鞘に刀を収めていたのだが、可憐の次に聞こえて来た美童のセリフ
に、こめかみがピクリと動いた。
「可憐てば、せっかく魅録が気持ちよくなってんだから、黙ってればいいのに。いつも美味しい所を
清四郎に持っていかれてばかりなんだからさ、たまに気持ち良くなったってバチは当らないって。」
可憐はピクピクと動き続けるこめかみに魅録の怒りを感じ取り、ポツリと呟いた。
「どっちが酷いのよ。」
やがて一向は、白虎神社へと足を踏み入れた。


「ごめんください。」
可憐が社務所の戸を開けて声をかけると、白衣赤袴の神主が現れた。
既にこちらへも義正より連絡が入っているらしく、右手にはワインカラーに光る美しい玉を抱えて
いた。
「ああ、君達がそうかな?」
白髪を綺麗に撫で付けた神主は、笑みを湛えながら問いかけた。
「うん、桃太郎だよ。」
神主の質問に、悠理も元気良く答えた。
「なるほど、鬼退治じゃからな。では、頼みましたぞ。」
神主が石榴の玉を差し、可憐が美しさに目を奪われながらも丁寧に受け取った。
「有難うございます。」
可憐の言葉に首を振り、神主は深々と頭を下げた。
「礼はこっちが言わんとな。この町のことなのに、よそ者のお前さんらにお願いしてしもうて。
せめてもの恩返しじゃ。わしが出来ることは何でもしよう。それでじゃ、ちょっと待って下され。」
そう告げると神主は席を外し、奥へと消えて行った。
464鬼闇(75):04/09/29 23:11:48
急ぎたいのはやまやまなのだが、神主の言葉を無視するわけにもいかない。
しばらくして、神主が片手に剣を手にして戻ってきた。
「これを持って行きなさい。」
神主が差し出した剣は、中央の長い刀身には美しい鳳凰が彫り込まれ、左右には十センチ程の
小さな刀の飾りが二つ付いている、いわゆる三鈷剣だ。
皆の視線が、その珍しい刀に注がれた。

「何これ?面白い形の刀だよね。」
美童が三鈷剣を受け取ると、まじまじと刀を見つめた。
「これは白虎神社の宝じゃよ。三鈷剣といって古代インドの武器なんだが、信仰の為に造られた物
で不動明王の剣を表しておる。日本刀に彫刻を施したものだから使えるじゃろ。」
神主の説明を聞きながらも、皆は剣の美しさにうっとりと見入っていた。
「本物の刀とは珍しいですね。信仰色の強い三鈷剣は、日本では装飾品としての役目の方が強い
ので、木製のものがほとんどですから。」
そんな清四郎の感嘆の言葉も耳に入らない程、掘り込まれた鳳凰の美しさに皆が見惚れていた。

「かっくいーじゃん。あたいにも触らせて。」
再び目をキラキラと輝かせて刀を見つめている悠理に、魅録が釘を刺した。
「だから、お前はやめとけって、さっきから言ってるだろうが!」
一人盛り上がったところに冷水を浴びせられたような気分になり、悠理の頬がまたまたぷぅーっと
膨れた。
「いーじゃんか、減るもんじゃあるまいし!さっきからダメダメって。何だよ、自分達ばっか!」
「おまえなぁ、ガキみたいなこと言うなよ。」
「そうよ、悠理の為に言っているんじゃない!」
「うるさい、うるさい、うるさーい!!」
魅録と可憐の制止も火に油を注ぐ結果となり、困り果てた二人は清四郎へと視線を移した。
すると、一瞬にして相手を凍らせるほどの冷たい眼差しで悠理を見据え、清四郎はゆっくりと口を
開いた。
「せっかくの忠告も無駄というものですね。それに、仮に悠理に渡したとして、触るだけで済むとは
思えません。振り回して僕達に危害を及ぼすのが関の山でしょう。違いますか?」
465鬼闇(76):04/09/29 23:13:10
清四郎の本気の視線に、悠理の野生のカンがとてつもない危険を察知した。
「……わかったよ。」
渋々了承したものの、悠理の心の中は闘志がメラメラと燃えていた。
――ちっきしょう!あたいだってやろうと思えば出来るわい!美童だってホントに使いこなせるか
どうかも解らないじゃんか。あたいの方が運動神経だって良いんだからな!
悠理は、パンパンと拍手を打った。
悠理の唐突な行動に、魅録、可憐、清四郎が、何事かと目を瞬いた。
そんな三人には目もくれず、悠理は必死で祈った。
――神様、どうか美童が刀を使えませんように。

美童が皆から離れ、右手に剣を持って構えた。
「意外と軽いんだね。持ち手もフェンシングのそれに似てるし。諸刃なら、振り下ろしても振り上げてもキズを負わすことが出来るから、僕、これなら使えるかも。」
掌で感触を味わっていた美童が、剣でヒュンヒュンと空を切った。
これがもし主演の映画なら、世界中の若い女性を虜にするのであろう美童の美しい剣技だ。
普段は倶楽部内でもお間抜けな役柄の多い美童の凛々しい姿に、可憐も少々見とれてしまい、
悠理などは目が点になっていた。
一瞬にして神様への願いが叶わなかったことを知り、悠理は美童をキッと睨んだ。
――くぅーっ!美童のヤツ、今に見てろ!あたいが出来るってことを証明してやる!
悠理の鋭い視線に気付いた美童は、訳がわからないというように肩をすくめた。
「がんばってよ、色男!」
そんな二人に全く気付いていない可憐の声援に、美童は笑顔で答えた。
「僕もたまには頼りになるってとこを見せなくっちゃね。」
美童は皮の鞘にスッと剣を収めた。

神主は玄関の前に立ち、五人が後にするのを見送った。
「気をつけてな。」
「ええ、任せて下さい。」
美童は剣を目の前に掲げ、笑みを浮かべた。
466鬼闇(77):04/09/29 23:14:31
清四郎を先頭に、五人は境内を突っ切って鳥居の下に立った。
「可憐、頼みましたよ。」
清四郎の言葉に可憐は胸を掌でポンと軽く叩いた。
「任せて!」
可憐は鐘を悠理に渡し、一歩前に立つと、石榴の玉を掲げた。
玉がぼうっと淡く光った。

「うぉぉぉーっ」
再び鬼の唸り声が町を覆った。
次第に力が押さえ込まれるのを感じたのか、うめく声は止まない。
――やはりな。誰かが我を封じようとしているのは確かだ。姿を見せた時が最後だと思え。
鬼は抗うのを止め、しばらく静観することにした。
――我を倒す者がいるとは思えぬ。
鬼の動きと力が封じ込まれたが、鬼は不敵な笑みを浮かべたまま闇に身を潜めていた。

「では、次に鬼の妖力を封じます。朱雀神社へと参りましょう。」
清四郎の言葉に清四郎、悠理、魅録、美童の四人が頷き、歩き出した。
「あんたたちも、気をつけてよ!」
可憐が四人の背中にエールを送り、彼らも答えるように手を振りながら白虎神社を後にした。


チリン、チリン、チリン、チリン。
――あーあ、つまんねーの。
悠理はむくれながらも、ブンブン鐘を鳴らし続けている。
そんな悠理の心情も知らず、剣を持ってご機嫌の美童が口を出した。
「悠理、鳴らし過ぎっていうか、もう少し情緒というものを味わおうよ。」
「おまえなぁ、鬼と戦ってるんだぞ。いつ対面すっかもわかんない時に情緒だなんだって言って
られるかよ!」
悠理は刀を触らせてもらえない不満を、美童に当り散らしていた。
467鬼闇(78):04/09/29 23:15:57
――ちっ、お前は剣で暴れられるかもしんないけど、あたいなんて鐘を鳴らすだけなんだからな。
悠理はこの役割りが至ってお気に召さないらしい。
「でもさ、さっき可憐はチリーン、チリーンって感じで鳴らしていたじゃない。ああいう感じの方が
絵になるって言うか、この雰囲気には合っていると思うんだけどなぁ。」
恋愛に関しては人一倍敏感な美童も、悠理の闘争心には全く気付かずに話し続ける。
我慢の限界が近づいていた。

「じゃ、お前がやれよ。」
悠理は大いにむくれ、鐘をぐいと美童に押し付けようとした。
しかし、美童は受け取ろうとせず、これまたぐいっと三鈷剣を悠理の目の前へ突き出した。
「僕がやってもいいけど、悠理はこの刀使えるの?」
悠理はぐっと答えに詰まり、しばらく美童と睨み合った。
フンと鼻で笑った美童に、とうとう悠理の我慢の限界を超えた。
「あたいだってやろうと思えば、これぐらい使えるわい!」
悠理も美童も言い争う事に夢中になり、鐘を鳴らすことを忘れていた。
「ギィーッ!」
気が付いたときには、既に囲まれていた。

周りには小鬼がわらわらと四人を囲むようにして立っていた。
その数七、八体だろうか。
その中の一匹が攻撃をしかけてきた。
「悠理!早く鐘を!」
清四郎が叫んだ。
「そ、そうだ。」
悠理が鐘を鳴らそうとしたが、小鬼はそれを許さなかった。
右手を高々と振り上げ、鋭い爪を悠理の顔面に向けて振り下ろした。
間一髪、悠理は天性の反射神経を発揮し、鐘でその腕をガシッと抑えた。
しかし、鐘で抑えていては鐘の力はあてに出来ない。
「ギィーッ!」
小鬼が一斉に襲い掛かって来た。
468鬼闇(79):04/09/29 23:17:14
魅録は刀を振り回し、次々と鬼を切り倒しているものの、何も武器の無い清四郎は拳で戦うしか
ない。
人間相手なら無敵なのだが、小鬼にはさほどダメージがあるわけではないと察した清四郎は、
体力を消耗することを極力避け、上手に小鬼をかわしていた。

このときとばかりに、美童は剣を鞘から引き抜いた。
その間にも小鬼の腕が振り下ろされ、なんとかギリギリで避けたものの、美童の頬には一筋の
赤い傷が走った。
「はぁ!」
キズを負わせた小鬼を振り向きざまに薙ぎ払い、悠理を押さえつけている小鬼に向かって切り
かかった。
美童の掛け声と共に、剣先が小鬼の胸に付き刺さる。
ズブッ!
剣を引き抜くと同時に鬼の血が噴出し、ゆっくりと後ろに倒れた。

「悠理、早く鐘を!」
美童の声と殆ど同時に、自由になった悠理が鐘を鳴らした。
チリン、チリン、チリン。
あっという間に小鬼は動かなくなった。
その間、魅録と美童で小鬼を全て切り倒した。
魅録も美童も血だらけである。
多少、鉤爪によって負った傷もあるが、ほとんどが鬼の返り血だ。
魅録がTシャツを脱ぐと、手や刀についた血をそれで拭った。
「美童も拭けよ。終ったらその辺に捨てて構わないからさ。」
「サンキュ。でもさ、いくら鬼とはいえ肉を切る感触は嫌だなぁ。」
「ああ、気持ちのいいもんじゃねぇ。」
魅録と美童が顔をしかめながら刀の血を拭い、鞘に収めていた。
469鬼闇(80):04/09/29 23:18:40
何気なく耳に入った二人の会話に、悠理ははっと気が付いた。
――もしかしたら、こいつら、あたいに殺させないためにダメって言っていたのか?
いくら小鬼とはいえ、相手は目の前で動き、血を流している。
例え自分が刀を持ったとしても、果たして斬ることが出来ただろうか。
――そういえば可憐も言ってたよな、あたいの為だって… 仕方ない、今回はあたいの負けだ。
悠理の顔に笑顔が戻り、そっと美童に近づいた。
「なぁ、美童。」
「ん?」
悠理は少し顔を赤くし、俯いたまま礼を言った。
「サンキュ、助かったよ。」
「どういたしまして。」
そんな悠理の気持ちを察したのか、美童は極上の笑みを浮かべていた。

「それにしても、美童もやりますねぇ。」
清四郎がパンパンと拍手をしながら美童の躍を称えた。
「フェンシングは得意だって言っただろ?」
軽くウインクして答えた美童への賞賛は、まるで素直なものではなかった。
「なるほど、女性受けする事ばかりでも、たまには役に立つもんですねぇ。」
「もっと素直になれば?僕の出番を取られたって。」
美童が茶目っ気たっぷりに答えた。

そんな美童の活躍を誉めたり、けなしたりしながら歩いていると、あっという間に朱雀神社に到着
した。
社務所の玄関をくぐると、白衣に浅葱色の袴をはいた神主が四人を迎えてくれた。
「君たちだね?鬼を退治してくれるのは。」
「ええ。」
四人が頷くと、右手に抱えていた翡翠の玉をそっと悠理に渡した。
「使ってくだされ。」
「ありがとう、おっちゃん。」
悠理も落とさないように、やや緊張しながらも慎重に受け取った。
470鬼闇(81):04/09/29 23:20:32
「有難うございました。」
四人は揃って礼を言うと、社務所を後にした。
清四郎は視線を感じ、ふと後ろを振り向くと、神主が自分達に向かって深々と頭を下げていた。
「魅録。」
「ん?」
「責任重大ですね。」
何事かと魅録も後ろを振り返り、まだ頭を下げている神主の姿を目にした。
「そうだな。でもお前、結構楽しんでるだろ?」
「そういう魅録こそ、日本刀を実践で使えて楽しんでいるんじゃないですか?人間相手では、絶対
出来ませんからね。」
二人は視線を合わせて、ニッと笑った。
そんな二人の会話を聞いていた美童が、恐る恐る悠理へと視線を移した。
しかし、悠理は手にしていた翡翠の玉に見入っていたのか、二人の会話が耳に入らなかったら
しく、じっと玉を見つめている。
美童はほっと胸を撫で下ろした。

四人は鳥居の下で立ち止まり、悠理はきゅっと口元を引き締めた。
「悠理。」
清四郎の一声で、悠理が一歩前へ出た。
「わかってらい!あたいだって野梨子や可憐に負けてらんないからな!」
悠理は高々と翡翠の玉を翳した。
玉がぼうっと淡く光った。

「鬼のうめき声が聞こえないね。」
「反応がないと、かえって不気味だな。」
美童と魅録が闇を見つめながら呟いた。
「とにかく、次の玄武神社へと参りましょう。」
玉を翳している悠理から視線を外し、清四郎は二人を促すと朱雀神社を後にした。

            【つづく】
471名無し草:04/09/30 00:24:09
>鬼闇
お待ちしておりました。
何やら神話をモチーフにしたRPGの世界に紛れ込んだ気分です。
小さなトラブルを起こしつつも、子鬼めらを倒していく悠理達、GJ!です。
472名無し草:04/09/30 11:15:14
野梨子って、もしかして絵が上手いのかなーと思ったので
小ネタを一つ。

いつもと同じ帰り道。
「おや、珍しいですね。スケッチブックですか」
「ええ、美術部にも籍をおいてますの。と言っても学園祭の前に何枚か描く
 程度ですけど」
「美術部のやつらに頼まれたんですね。野梨子の絵はその辺のプロより
 上手いですからね。で、今年は何を出すんですか」
「倶楽部の仲間のデッサンですわ。他の4人はもう描き終わりましたのよ」
「えっ、みんなモデルをやったんですか?」
「ええ、悠里なんてじっとしていられなくて大変でしたわ。
 清四郎もモデルになっていただけます?今日何も無ければ後で伺いますわ」
「モデルですか?何だったら、脱いでもかまいませんよ」
「まあ、本当ですの?清四郎なら無駄な脂肪もついてませんし、いいモデルに
 なりますわ」
(うっ、野梨子にこの手の冗談は通じないみたいですね…)
「三角筋から大胸筋のラインがいいかしら…。後姿も捨てがたいですわ…
(まあ野梨子が描きたいと言うのもわかりますよ。
 僕みたいに鍛えぬかれた体の持ち主は、めったにいませんからね)
 …それから腹直筋…腰筋、中殿筋の辺りも…」
(んっ、今確か中殿筋って、…いったいどこまで脱がせるつもりなんだ…。
 学園祭に4人の顔と僕のヌードが…。それはちょっとマズイぞ)
「あの、野梨子…」
「準備ができたらすぐ伺いますわ。ではまた後で」
「・・………」
 
       お  わ  り


473名無し草:04/09/30 11:46:40
>鬼闇
戦闘シーンが充実してて思わず471さんと同じくRPGという単語が浮かんでしまいました。
この六人が主役のゲームが出たら買うな自分・・・。美童のフェンシング場面が素敵ですね。
474名無し草:04/10/01 10:01:01
>鬼闇
スピード感溢れる、アクションシーンの描写がGJです!
彼等の動き一つ一つが、目に浮かぶようでした。
間に差し挟まれる悠理たちのエピソードや心の動きも、彼等らしくて
本当に、初期の原作みたい。
そして、刀を振るうシーンといい、悠理に対する心配りといい、
美童、いい男ですねー。

>清&野 小ネタ
短い中で、めちゃくちゃ楽しませていただきました。
清四郎の、ちょっとナル入ってるモノローグと、
>学園祭に4人の顔と僕のヌードが…。
展示されてる場面を想像したら、わっ、笑いが………。

これを自縄自縛っていうんだろうかw>清四郎
475名無し草:04/10/01 18:58:47
じじょうじばく、でいいの?>読み方
知らなかったなあ〜w
476名無し草:04/10/01 21:35:48
自縄自縛【じじょうじばく】

元々は、著名なマゾヒストであるジョージ・バクジーを表す言葉だったが、
転じて独創的なマゾヒスト全般を指す。
ジョージは、当時既にあった自分を自分で縛るというプレイに、
ロープを自分でつくるという要素を加え、大流行させた。
日本文化に傾倒していた彼は、日本の藁を取り寄せてペインティングして使用した。
彼のなった縄は芸術性も高く、現在では愛好家垂涎の的。
また彼は自らの名を、漢字を当てて「縄自・縛自」と名乗っていたが、
それがもじられて使われるうち、自縄自縛の方が一般的になった。

                 ――民明書房刊「SM用語集」より抜粋
477名無し草:04/10/01 21:55:39
民明書房はすごいなぁ
478名無し草:04/10/01 22:08:34
そんな用語集もあったんでつね
479名無し草:04/10/01 22:15:22
ところでそれご自分の本ですか?
480名無し草:04/10/01 22:20:23
図書館で借りるのも本屋で立ち読みも恥ずかしいなあ。
かといって買うときにゃそれこそとてつもない勇気が必要だ罠w
481名無し草:04/10/01 22:22:36
>476
いまとってもドイツのローテンブルグに行きたくなってる私。
その辞典もあるなら探してみたいです。
ジュンク堂にあるかしら?

ローテンブルグについて知りたい方は、
「ローテンブルグ 中世 博物館」でぐぐってみよう。
482名無し草:04/10/01 23:04:00
自業自得【じごうじとく】

元々は、著名なうっかり屋であるゴージ・トクジーを表す言葉だったが、

……以下略。
483名無し草:04/10/01 23:21:27
完全に話が地すべりしているため軌道修正。
(変態風味が似合う清四郎の呪い?)

今頃の季節って可憐さんが「はあ、恋がしたい」
と呟いてそうですよね。
寒くなるにつれて本気の恋がしたくなる、と御大の
別の漫画で言ってる女子大生がいました。

以下小ネタ。

可憐「はあ・・・恋がしたい・・・」
美童「あれ?とっくに恋してるんだと思ってた。」
可憐「・・・誰によ?」
美童「いや、別にそうじゃないならいいや。」
にっこり笑う美童にハテナマークだらけの可憐さんでした。
484名無し草:04/10/02 00:09:42
なんか原作にもありそうで、ちょっと意味深なシーンだね。
世界の恋人美童は、表に出てないとこで可憐や野梨子にリップサービスしてそうだ。
(悠理にしてる図はちょっと浮かばない・・
485名無し草:04/10/02 00:27:47
美童カワイイです。
483さんを参考にさせていただきます。

可「はあ・・・恋がしたい・・・」
清「えっ、とっくに恋してると思ってましたよ」
可「・・・誰によ?」
清「・・・・・・いや、別にいいんです。忘れてください」


数日後。
可「清四郎が三日も休むなんてめずらしいわね」
野「部屋から出て来ませんの。こんな清四郎はじめてですわ」
可「いったい何があったのかしら・・・」

ゴメン清四郎。こんなキャラにしちゃって。
486名無し草:04/10/02 00:34:24
>>485
部屋で膝抱えてる清四郎の姿が浮かんだよ。
487名無し草:04/10/02 20:00:10
清四郎って変態もこーゆーのも似合うよね。( ゚Д゚)ウマーなヤシだ。
488名無し草:04/10/02 21:02:25
可ネタって想像しやすいしあり得そうでイイ。
489名無し草:04/10/04 18:27:41
なんか話がストップしてるので小ネタ便乗。

問題:以下の例文を読んで答えなさい。
可憐「はあ・・・恋がしたい・・・」
魅録「んあ?とっくに恋してたんじゃねえのか?」
可憐「・・・誰によ?」
魅録「・・・誰かに。」

その際の魅録の心中はどれか選べ。
1.(がーん、違ったのか・・・)と落ち込む。
2.(美童の勘もあてにならねえじゃん。自意識過剰め。)と笑う。
3.(清四郎・・・哀れな奴・・・)と遠い目をする。

番外:(やっぱあいつに惚れてるわけじゃなかったか。)と胸をなでおろす。
490名無し草:04/10/04 19:57:53
いきなり番外ですみません。

可憐「・・・誰によ?」
魅録「・・・俺に決まってるだろ」
可憐「気づいてたの?」
魅録「・・・なあ、海にでも行くか?あいつらに内緒でさ」

放課後ってことにしてください。
491名無し草:04/10/05 16:12:15
490の続きを書いて!
>>489 2番かな・・・・・・・・・・ぁ
492名無し草:04/10/05 22:17:16
>>489 1番で!

昨日カラオケ行ったら、清四郎が「昴」熱唱する
妄想がぁぁぁぁー
たすけて・・・。

493名無し草:04/10/07 00:27:13
魅は一途でHウマーなカンジが・・!
494名無し草:04/10/07 00:30:33
清はウマいのかなぁ?
495名無し草:04/10/08 11:56:54
美童・野梨子のどつき漫才でもお一つ。
ベタギャグイヤンな方はするーで。

有閑倶楽部ファンの皆様、こんにちは!「ラブラブ・クッキング」のお時間です。
今日は美童 グランマニエさんと白鹿 野梨子さんで「蓮根と牛蒡のきんぴら」
を作っていただきます。では、お二人様、どうぞ!

「こんにちは。美童 グランマニエです。日本料理は得意じゃないけど、こう見えても
 結構料理は上手なんだよ。期待しててね!」
「白鹿 野梨子です。今日は皆様においしい家庭の味をお教えいたしますわ」

ではまず、材料の下ごしらえから。
「牛蒡は包丁で皮をこそげ落としていくよ」
「蓮根は包丁で薄く皮を剥きますわ」

「……美童……?」
「なぁに?野梨子」
「どうして、私のブラウスのボタンを外そうとしてるんですの?」
「だって、皮を剥くから」
ビシィッ!(左頬平手打ち)
496名無し草:04/10/08 11:57:54
美童さん、左の頬、どうかされましたか。
「ううん!じゃ、次は切ってアク抜きだね」
「ええ。牛蒡はささがきに。蓮根は薄切りにして酢水につけますの」

「……美童…?」
「なぁに?野梨子」
「どうしてお風呂に入ってるんですの?」
「アク抜きは人間で言うなら垢落とし。さ、野梨子も脱いで入って」
ビシィッ!(右頬平手打ち)

美童さん、心なしか右の頬も赤いですが。
「……ううん。じゃ、次は水気を切って炒めていこう」
「ええ。フライパンにサラダ油とごま油を引いて、暖めますわ」

「……美童………?」
「なぁに?野梨子」
「どうして布団に半裸で入ってますの?」
「お布団が冷たいから、暖めなくちゃ。さぁ、野梨子……」
ビシビシビシビシィッ!(両頬連打)
497名無し草:04/10/08 11:59:40
美童さん、なんか腫れてますけど。
「…………放っておいてよ。えっと次は……」
「鷹の爪を少々、酒、砂糖、醤油、みりんで味を染み込ませるんですわ!」
じゅわーん。じゅじゅーん。
美味しそうな匂いがしてきましたねぇ。
「さ、出来上がりですわ」
「うわぁ、美味しそうだね、野梨子。じゃあ早速味見だね!」
「……美童……?」
「なぁに?野梨子」
「何故、顔を近づけますの?」
「野梨子の唇の味見を」
ビシビシビシビシビシィッ!(再び両頬連打)

美童さん、凄いありさまですね。では「ラブラブ・セクハラ・クッキング」
今日はこの辺でお別れしたいと思います。
「全然ラブラブじゃないじゃないかぁッ!」
「当たり前ですわ!来週は『清四郎・悠理のラブラブ・ファイティング・クッキング』
 さ来週は『魅録・可憐のラブラブ・シャイなあンちくしょう・クッキング』を
 お送りいたします。お楽しみに」

では皆様、ごきげんよう!また来週!
おしまい
寒かった方、すいません。
498名無し草:04/10/08 12:29:51
>ラブラブ・セクハラ・クッキング

ワロタw

実はなにげに
『魅録・可憐のラブラブ・シャイなあンちくしょう・クッキング』
が気になる・・・
499名無し草:04/10/08 16:43:51
楽しみ楽しみ!!可モーン!!
500名無し草:04/10/08 18:58:01
私もほかのもキボンヌw
来週の『清四郎・悠理のラブラブ・ファイティング・クッキング』 は
流血必至ですな。
501名無し草:04/10/08 19:55:36
すごく寒かったw
でも嫌いじゃないなあ。
502名無し草:04/10/08 21:04:29
禿しくドロ沼な可−魅(+野清の四角でもw)がみたいなぁ。。。
503名無し草:04/10/08 21:17:39
来週と言わず、明日にでも。
504名無し草:04/10/10 22:43:32
「可⇔魅で *清→可 野→魅* の泥沼面白そう。
野と清が暴走。。コワッ
505名無し草:04/10/11 12:32:34
「横恋慕」をUPさせていただきます。長引きましたがあと数回の予定です。
ラストまで、できるだけ間を開けずにUPします。よろしくお願いします。
>274の続き。今日は3レスいただきます。
506横恋慕(84)魅×悠×清:04/10/11 12:33:19
梅雨の晴れ間では当然のこととはいえ、ひどく蒸し暑い一日だった。
夕刻、部室のドアを開けた可憐は「あら、珍しい」と声を上げた。
彼女の予期しない顔が、そこにあったのだ。
「失敬な。そんな化け物を見るような目をしないで下さいよ」
久々に顔を合わせたその男は苦笑した。

彼の椅子の背には、羽織ってきたらしい白衣が無雑作に掛けてあった。
「僕だってたまには顔くらい出しますよ」
平然とそう言う横顔に、薄い膜のような陰が浮き上がる。
随分、やつれているようだ。
「痩せたわね、清四郎。・・・何か悩みでもあるの?」
可憐がそう口を開いた時、野梨子が給湯室の奥から姿を現した。
ちゃんと可憐の分の珈琲も用意しながら。
「研究で徹夜続きなのですって。体力を過信して、倒れても知りませんわよ、清四郎」
涼しい声で代わりに問いに答え、ついでに幼なじみを嗜める。

また苦い笑いを浮かべた清四郎は礼を述べ、カップを受け取る。
「・・・目下、研究に夢中でしてね。先週からずっと、研究室に泊まり込んでます」
「たまにはちゃんと家に帰って寝なきゃ駄目よ!」
「往復の時間が勿体ないでしょう」
可憐は、その考えに絶句した。
507横恋慕(85):04/10/11 12:34:06
気を取り直して夏休みの話題を振ると、彼は小さく肩を竦めた。
「前半は研究と論文書きで、後半は親父の学会ツアーに同行の予定です」
「・・・相変わらず色気のない男ねぇ。婚期逃しても知らないわよ」
これみよがしに可憐は嘆息した。

「あら、清四郎が一人前になる頃には、いくらでもいいお話が舞い込みますわよ、きっと」
にこやかに幼なじみをフォローした野梨子に、可憐はドンとテーブルを叩いた。
「甘い!男だって、ボーッとしてたらすぐ年を取るのよ!?大体ねぇ、せっかくの学生生活を、勉強だ
の、研究だのに捧げ尽くすなんて悲劇だわ!」
「でも・・・恋愛や結婚が人生の全てじゃありませんし・・・」
「何言ってんのよ、野梨子。全てよ、全て!人生は長いけど、青春は短いのよ!?夏休みには魅録
達みたいに恋人とクルージングでもするのが、健全な大学生の姿よ!!」
「んまあ、結局あの二人が羨ましいんですのね、可憐」
「そうじゃなくて・・・美童みたいに出遅れて、泣きを見てもいいの?野梨子」
「まあ失礼な!私は不倫なんかしませんわよ!!」
女二人は、清四郎そっちのけで、ああでもない、こうでもないと議論を始めた。

清四郎は薄い笑みを浮かべた。
白衣を取り、腕を通しながらカップを持って立ち上がる。
「ごちそうさま。そろそろ研究室に戻りますよ」
「あ・・・いいわよ、そんなのあたしが片付けるから」
そのまま給湯室へ向かった清四郎を追い、可憐が慌てて立ち上がった。
508横恋慕(86):04/10/11 12:34:54
「このくらい、自分でやりますよ」
清四郎はカップを頭の上に持ち上げ、可憐の手が空を切る。
二人はもつれ合いながら、給湯室へと姿を消した。

久々に目にした、他愛のないじゃれ合いに微笑む野梨子の前で、再び入り口のドアが開いた。
「あら、魅録」


野梨子の声に、給湯室でカップを握りしめたまま、清四郎の動きが止まった。
その横顔を、可憐は不可解そうに見上げる。

「悠理は?」と続けて問う声に、彼は答えた。
「・・・具合悪いっつって、帰ったよ」
珍しくも、その声音は随分と不機嫌に聞こえる。

椅子を引く音がした。魅録が腰掛けたようだ。


理由は判らないながらも、可憐は息を潜めた。隣の男と同じように。
そうしなければならないような気がした。

彼女の中の疑問が、解けようとしていた。



[続く]
509名無し草:04/10/11 12:37:50
「横恋慕」は>278の続きでした。
すみません。
510名無し草:04/10/11 15:27:37
>横恋慕
お待ちしておりました。あと数回ですね。
よだれたらして待ってます。
で、今回。めちゃめちゃ清四郎の心情が辛いです。
前回、美童が言ってたことも気になりますし。

どう転んでも全員が幸せになれる結末は
ありえなさそうですが、
少なくとも悠理の本当の笑顔だけは戻って欲しいと
そう願わずにいられません。
511名無し草:04/10/11 20:52:40
>横恋慕
清四郎も魅録も切ない。
清四郎のもう後一歩踏み込む勇気が欲しいです。
そうすれば悠理が笑ってくれそうです。
でもそうすると、魅録がずたずたになっちゃうんでしょうか。
むずかしい。
512名無し草:04/10/12 00:15:01
>横恋慕
ずっと待ってました!
野梨子と可憐の、まさに「足して2で割ればちょうどいい」ところが
出ている議論が、妙にツボでした。
清四郎も悠理も辛いけど、最初から考えてみたら、魅録がある意味一番切ないし、
今までも、今も、そしてこれからもっと苦しむんだろうか、と思えて仕方のない私。
続きを読むのが辛いような…でも読みたい。そんな気持ちです。

あと数回ですか…。寂しいです。でも。
>ラストまで、できるだけ間を開けずにUPします。
嬉しくも頼もしいお言葉! よろしくお願いします!
513名無し草:04/10/14 15:50:13
ネーターまだかい?
身も凍るどつき漫才です。今回は清四郎・悠理です。
凍死したくない方はするー願います。

有閑倶楽部ファンの皆様、こんにちは!「ラブラブ・クッキング」のお時間です。
今日は菊正宗 清四郎さんと剣菱 悠理さんで「若鶏のから揚げ」を作って
いただきます。では、お二人様、どうぞ!

「こんにちは。菊正宗 清四郎です。作るからにはプロ顔負けの料理にしますよ」
「えっと、剣菱 悠理です!たくさん食べます!」
剣菱さん、しょっぱなから作る気無いですね。

「バカは放っておいて先に進みます。まずは、鶏もも肉の用意!」
「ああっ!アケミ!サユリ!いつの間にこんな姿にぃぃ!」
ドカッ!(ミドルキック)
「違うだろう!自分の家のペットと混同するな!」
「痛いじゃないかあ!清四郎のばかっ!こうしてやるっ」
ごきッ(アッパー掌底)

あっあっ菊正宗さん、血が出てますけど。
「平気です。こいつに構ってると進まないのでちゃっちゃと行きましょう。
皆さんメモの用意はいいですか?行きますよ。
鶏もも肉は一口大に切り酒砂糖塩胡椒大蒜生姜醤油で味付けした後よく
揉みこんで30分放置します放置と言っても放置プレイではありません放置
したものがこちらになりますそして更に揉みこみ片栗粉を混ぜまずは160
度に油を熱し鶏肉を入れ更に180度……なんですか!司会者!!」

お願いですから句読点を入れてください!しかも3倍早送りみたいでとても
ついていけません。
「これ位手早く出来なくてどうするんです?」
いや、あの、もう少しお手柔らかにお願いできませんかねぇ。
「そうだそうだ!いっつも清四郎はそうやって一人よがりなんだよ!」
「(ピクッ)……なんですと?料理も作れないくせに、僕に意見する気ですか」

あっいけません!菊正宗さんの目が「スッ」と細くなりました!
これは「本気で怒ったよ清ちゃんは」モードです!

あああッジャブ!ジャブです!
剣菱、華麗な右ストレート!決まったぁぁぁ!
おおっと菊正宗、こちらも猛反撃!
出るか、出るか逆エビ固め!出た??????????!炸裂???!
どっこい剣菱負けていない!体制逆転さすがは剣菱!
ここキッチンスタジアムでは壮絶な闘いが繰り広げられています!
さぁ、勝者はどっちだ!
「……あ」
「……ん?」
「……焦げ臭い…」
「ああっから揚げが!忘れていた!くっ!僕としたことが…不覚…!」
あれ?やめちゃうんですか?
「あー……これはもう食べられませんね。諦めましょう」
「ええ!?あたし平気だよ!食べる!」
「駄目ですよ。体に悪いですから」
「だって……だって清四郎が作ったんだもん!食べるよ!」
「ゆ……悠理……っ(じーん)わかりました。始めから作り直しましょう!」
い、いや、菊正宗さん、時間もありませんから。
「鶏もも肉の用意!」
「ああっ!アケミ!サユリ!いつの間にこんな姿にぃぃ!」
ドカッ!(ミドルキック)
 
以下略

……無限ループに突入してしまいました。
「ラブラブ・ファイティング・クッキング」今日はこの辺でお別れしたいと思います。
菊正宗さん、予告は……あ、無理。今忙しい、と。
はい、来週は『魅録・可憐のラブラブ・シャイなあンちくしょう・クッキング』
をお送りします。お楽しみに。
では皆様、ごきげんよう!また来週!……ってあるのか?来週!

おしまい
うっかり読んで凍死寸前の方、「正直、すまんかった」です。

517名無し草:04/10/14 17:33:57
ラブラブ書いた者です。あーやってしもうたぁ(泣)
2レス目のラスト「出た????炸裂???!」は変換ミスです。
本当に初心者ミスでごめんなさい!
ただでさえバカネタなのに・・。スレ汚しもいいとこです。
修行し直しに逝って来ます。申し訳ありませんでした。
518名無し草:04/10/14 17:43:54
>ラブラブクッキング
大好きです。この寒さがたまりませんな。(清四郎口調)
予想通りというか、さすがこの二人です。
そして何よりこの二人の『危険な関係』にぞくぞくしますわ。
火にかけた油の傍で暴れないように(そういう意味かい!)。

来週の「シャイなあんちくしょうクッキング」を
楽しみにしております。
519名無し草:04/10/14 17:58:46
>ラブラブクッキング
清四郎の句読点無し説明ワロタ
面白かったです。
シャイなあんちくしょうも待ってます。
520名無し草:04/10/14 19:42:25
>483-492の可憐ネタでバリエーション。

可憐「はあ・・・恋がしたい・・・」
悠理「あれ?もうしてると思ってたぞ。」
可憐「・・・誰によ。」
悠理「んーん。いーんだ。あいつじゃなきゃ。」
にんまり笑う悠理さん。
可憐「(・・・あいつって誰?!)」
フリーズする可憐さんなのでした。
521名無し草:04/10/14 22:45:58
>ラブラブ・クッキング
密かに(?)お待ちしておりました!
前回もでしたが、今回も(・∀・)イイ!こういうノリ、死ぬ程好きですw

>放置と言っても〜
さり気なく入ってるこの一言、「本気で怒ったよ清ちゃんは」モードの
清四郎、アケミとサユリに激笑。
また来週!の「シャイなあんちくしょう〜」も楽しみにしてます。

>可憐ネタでバリエーション
アイデアが斬新ですね!にんまり笑う小悪魔悠理さんに萌え。
あいつって誰?!と私も小一時間(ry
522名無し草:04/10/14 23:10:34
以前うpさせていただきました「カモルリネタ」
(>>http://houka5.com/yuukan/short/love1/s21-447.html
の流れを汲んだ話をうpさせてください。
可憐メインでプラス悠理の短編です。7レス使います。
岡山から帰ってきて五日目。
昼休み、弁当を食べていた悠理が思い出したように口を開いた。
「可憐、なんかさー、母ちゃんがうちに寄ってほしいって言ってたんだけど」
「もしかして……」
その言葉に可憐はガタンと席を立ち、悠理の肩をつかんだ。
「悠理、おばさま、なにか言ってなかった?」
「な、なにも言ってな……く、苦しいよぉ〜、可憐」
ぶんぶんと揺すられ呼吸困難に陥ったらしく悠理があえぐ。
ようやく可憐から開放された彼女は目じりに涙を浮かべていた。
魅録がその気の毒な女友達の背中をさすってやっている。
だが、その光景は可憐の目には入らなかった。
(きっと……今日こそ)
――白ヘビ様のご利益が出たにちがいない。
剣菱家ともなれば世界的な資産家との親交は深い。
『実は、会ってほしい人がいるのよ。可憐ちゃんを紹介してくれってうるさくって』
なーんて、言われたりして。
耳に響きわたる剣菱夫人の幻の声に可憐は微笑を浮かべた。
だがしかし、そういったことが今まで無かったこと自体がおかしいのだ。
前々から思っている。
生来の美貌に運が味方すれば、玉の輿は夢じゃない!
「今日の可憐、迫力がありますわ」
「お札を持って高笑いしてるよ……」
中庭から戻ってきた野梨子と美童はひそひそと言葉を交し合った。


 *   *   *
 
 
放課後、剣菱邸。
悠理は自室の長椅子に寝転んでいた。
「ところで、なんで清四郎がいるんだよ? ヒマなのか?」
「僕は豊作さんに用事がありましてね。部屋を訪ねたんですがまだ戻ってきてないようで」
テーブルを挟み椅子に腰を下ろしていた清四郎は、心外だとばかりに顔をしかめた。
そしてヒマ呼ばわりされたのが気に食わなかったのか、腕組みをし悠理を見据えた。
「テストが終わってすぐに学校をサボるなんて聞いてませんでしたよ」
「な、なんでいちいちお前に断らなきゃいけないんだよ?」
なにやら不穏な空気に彼の顔を見れば、眉の間に縦皺が何本か刻まれている。
「追試になるかならないかの瀬戸際だったというのに……」
体を引く悠理に、清四郎の冷ややかな視線が注がれる。。
「な、なんでそんな目で見るんだよ?」
「……全くいい度胸をしているとしか思えませんな」
「いいじゃんかっ! 追試にならなかったんだから!」
悠理は叫ぶが、そのくらいで彼の小言は収まるはずもない。
「まったく、誰が追試をまぬがれるために苦労したと思ってるんですかね」
清四郎はぶつぶつと言い続けている。悠理は部屋の中を眺め回した。
どうにかして彼の気を逸らす方法はないものだろうか?

悠理の差し出したものに清四郎は眉をひそめた。
「なんですか、これ?」
「お前、こーゆーの好きだろ」
ふふん、と悠理は鼻を鳴らした。
清四郎は訝しげな表情を浮かべながらも、悠理の差し出した白い袋を開ける。
中から小さなお守りが姿を現した。
『せっかく来たんだから、あんたもひとつくらい買いなさいよ』
彼女が力説していた効果は忘れたが、いかにも年寄りうけしそうなグッズは彼にこそふさわしい。
「わざわざ、お前のために買ってきてやったんだからな」
恩着せがましい悠理の言葉に、清四郎は狐につままれた表情を浮かべていた。


 *   *   *


 一方、室内プールの一角。
「あら、可憐ちゃん」
白いデッキチェアに身を横たえた剣菱夫人は可憐に微笑みかけた。
紫色のバスローブ。その下から覗く水着は、黒の地にピンク色のバラ模様のワンピースタイプだ。
毒々しさに一瞬足を止めた可憐だったが、気を取り直し夫人の前に進み出た。
「あのねえ、実は手紙を預かってるのよ」
可憐は心臓の高鳴りを覚えながら手紙を受け取る。
剣菱夫人の怪しい目つきが見守る中、逸る心を抑え、その手紙の封を切った。

 ああ可憐、愛しい人。
 どうか僕の元に戻ってきてください。
 死ぬのも生きるのもいっしょのふたりだと言ってくれたあなたの言葉。
 今でも耳に焼きついています。
 僕は、あなたのいない人生には耐えられない。 
 愛しています。可憐。
 キール王国へあなたが来てくれるのを待っています。
  
日本語で書かれた文章の最後には、見慣れぬ文字でなにやら名前らしきものがサインしてあった。
「カサル王子、覚えてるわよね?
可憐ちゃんのことが忘れられないらしくて……。
もう一度、考えて直してあげられないかしら?」
(……そんなこと言われても)
期待が裏切られたショックと共に、可憐の脳裏にあの時の屈辱が蘇る。
(だーれーが、あのスケコマシ王子の元に行く気になるっつうのよ!)
歯をぎりりとかみ締めると、剣菱夫人は「まあ、可憐ちゃんたら」とコロコロと笑い声をあげた。
と、そこへ大声が飛んできた。
「なんでこんなところにいるんですか!」

プールサイドで男がひとり、ぽたぽたと全身からしずくを滴らせ、何故か激昂していた。
(……これ、誰よ?)
可憐は目を細めた。
冷静に考えて、剣菱夫人にこんなもの言いをする男はひとりしか思い当たらない。
しかし、可憐の良く知る彼の姿と目の前の男ではまるでちがいすぎる。
細身ながらもほどよく筋肉のついた体は、精悍とすら言ってよいだろう。まさか――そんなことは。
じっと見つめるが、ぴったりとした水泳キャップをかぶり目元にはゴーグルをしたその顔は判別がつかなかった。
「夕方、父さんとパーティーに出席する予定じゃなかったんですか? 急がないと間に合いませんよ」
(今……父さんって)
「うるさいわねえ」
「ちょっと聞いてるんですか!」
彼はずんずんと近づきながら、ゴーグルを外し、キャップを力任せに取り去った。
剣菱夫人は物憂げに彼の方を見る。
「あなたが代わりに行ってちょうだいな。豊作」

可憐の手から、手紙がはらりと落ちた。
「なにを無茶苦茶なことを言ってるんです!」「でもねぇ、気が向かないのよ」
剣菱親子の争いをよそに、手紙は風に乗り、彼の足元へと飛んでいった。
すねに張り付くその感触に、豊作が眉をひそめる。
可憐が腰をかがめ手を伸ばすのと、彼がそれを手にしたのはほぼ同時だった。
「あっ、ごめんなさい」
「これは……?」
手紙は情けない姿になっていた。字が読めないほどではないが、所々インクが滲んでしまっている。
「すまないね……」
さらに、どうやら彼は手紙の中身を見てしまったらしく、
「大事な手紙だったんだろう?」
濡れそぼった手紙を手に、気の毒そうな目を可憐にむけた。
だがもちろん、そんなことがあるはずもない。
「いーえ、とんでもない!!」
可憐は彼の心配を払拭するべく、きっぱりと答え、微笑さえ浮かべてみせた。
「そう、それなら、良かった」
豊作はそんな可憐に安心し、深く息をつく……はずもなく、
「え――――?」
みるみるうちに彼の表情はこわばっていった。可憐はハッとして口元に手を当てる。
「い……いえ、本当にお気になさらないで。元々あたしが落としたのが悪いんですから……」
消え入りそうな声で弁解し、――そして彼の顔を見上げた。
上目遣いで、なおかつその瞳をキラキラと輝かせながら。

そう、海の向こうのアラブのどっかの王子との恋なんて、なにかの間違いだったのだ。
可憐は心の中で手をあわせた。
白ヘビ様、ありがとう……!
メガネをとったらイイオトコだとか……
脱いだら実はとってもイイカラダだとか……
そんなお約束な展開って現実にあるんだわ………!!
 
「母さん、とにかく急いでください!」
悲鳴にも似た豊作の声がこだまする。
ヒステリックなその響きを可憐はうっとりと味わっていた。


 *   *   *


「とにかくスゴイ効き目なのよ!」
朝、顔を合わせるなり、可憐は野梨子の手を取り大声をあげた。
そのまま昨日の一部始終をまくしたてると、満面の笑みで去っていく。
事情がわからず首をかしげる清四郎に野梨子が説明を始めた。
「それで――玉の輿のためにわざわざ岡山まで行ったんですか」
清四郎は呆れ混じりにため息をついた。
「ええ、でも本当に効くかどうかは知りませんけれど」
幼馴染は楽しげにクスクスと笑っている、だが気のせいだろうか、妙に嬉しそうでもある。
不審を覚え彼女を見れば、手に持った鞄になにやら大切そうに手を重ねていた。
「野梨子。それは?」
「あ……」
ポッと野梨子は頬を染めた。ずれた手の間から小さな布の袋のようなものが覗く。
「……もしかして、その神社のですか?」
「ジンクスがあるそうなんですの」
野梨子は恥ずかしそうに、だが嬉しそうな顔つきで説明を始めた。
「美童がおっしゃってたんですけど……
このお守りを……愛する人に贈ると、ふたりは幸せになれるそうなんですの」
そう言うと野梨子はお守りの表面を大事そうに指先でなぞった。
(…………?)
ふと引っかかるものを感じて、清四郎はそのお守りを凝視した。
「どうかしましたの?」
「いえ、なんでもありません」
だが、野梨子が彼女の教室へと姿を消すと、清四郎はすぐに鞄に手をかけた。
昨日友人から贈られた品はたしか入れっぱなしのままだ。
気のせいかもしれないが――。
鞄を覗き込んだ彼の目は、ついにソレをとらえた。

沢山の生徒が清四郎の側を通り過ぎていった。
「菊正宗君、顔色が真っ青ですわ。どこが具合が悪いのかしら?」
「え……? 随分と怖い顔をしてるよ。怒ってるんじゃないかな」
「というよりなんだか深刻そうだな。なにかトラブルでもあったんじゃないかい?」
「そうなの? でも、今度は真っ赤になっていらっしゃるわ」
廊下の真ん中で百面相を繰り広げる生徒会長を、生徒達は物珍しげに見ていたという。


 おしまい
530名無し草:04/10/14 23:30:48
>work like a charm……?
かっこいい豊作に激萌え!
あの可憐さんに迫られたら陥落するでしょうね、彼は。
そして、勘違いからさらにもう一つの恋が始まるのかな?(希望的観測)
カモルリも大好きだったので、続きが読めて嬉しいです。
さらに後日談もお待ちしてます!(次は魅録も出してあげてねv)

>ラブラブクッキング
さ、寒っ!!と、大笑いしました。…アケミサユリのはずないだろ!!
来週の「あンちくしょう」に期待度が高まっちゃいました。
シャイな彼に迫るのは、もしや裸エプロンとか…?
531名無し草:04/10/15 22:52:42
>work like a charm……?
カモルリネタの、ほのぼのと優しい世界も大好きですが、今回の
パワフルでコミカルな感じも、また違った感じで面白かったです。
そういえば原作見ても、豊作さんのルックスって、百合子さん似っぽいですよね。

>消え入りそうな声で弁解し、――そして彼の顔を見上げた。
>上目遣いで、なおかつその瞳をキラキラと輝かせながら。

このあたりの可憐が、妙に彼女らしくてイイw
清四郎の百面相と生徒達の反応も楽しかったです。
続き、楽しみに待っています。
532名無し草:04/10/16 15:54:05
ところでお守りのタイトルってどう訳すの?
533名無し草:04/10/16 17:36:39
>work like a charm……?

精悍な豊作さん…想像するだけでドキドキです♪
可憐がんばれ!
清四郎×悠理のこれからも気になります。

続きを楽しみにしてます。
534名無し草:04/10/16 18:08:38
>>532へマジレス。

ものの見事に功を奏す。万事うまくいく。(英辞郎より)
535名無し草:04/10/17 19:49:15
「横恋慕」をUpします。
>508の続き。4レスいただきます。
536横恋慕(87)魅×悠×清:04/10/17 19:50:19
魅録の様子が少しおかしいことに、野梨子は気付いた。
そして、給湯室から一切の物音が消失したことにも。

「どうかしたんですの?・・・顔色が冴えませんわよ、魅録」
テーブルに両肘を付き、彼は無言のまま首の後ろを揉んでいる。
心配そうな視線に気付き、魅録は口を開いた。ちょっと口の端を歪め、自嘲気味に言う。
「・・・どうかしちまったんだろうな。ずっと寝てねえし、正直・・・参ってる」
彼がこんな表情をする原因は、野梨子には一つしか心当たりはなかった。
「悠理と・・・喧嘩でも?」
「・・・・・・・・・そんなんじゃねーよ」
吐き捨てた後、魅録は目の前の女をじっと見つめた。

「なあ、野梨子。悠理のことなんだが、卒業式の日・・・何かなかったか?」
野梨子は瞬きをし、首を傾げた。
「悠理が熱を出した時でしょう?私がおば様達を連れて行った時には、もう魅録は戻っていた
じゃありませんの」
その日、剣菱夫妻と共に野梨子が部室に戻った時に、ちょうど可憐と美童が合流した。
そして悠理に解熱剤を飲ませていた魅録が、そのまま迎えの車まで運んだはずだ。
結局、全員での記念写真を撮る暇さえないまま、散り散りになった。清四郎の姿はそこにな
かったけれど、魅録とバトンタッチしたものだと野梨子は思い込んでいた。
「俺が薬買ってったらさ、悠理・・・泣いてたんだ。一人で・・・」
言いながら、魅録は組み合わせた自分の手に額を押し付けた。

え?という表情を浮かべ、野梨子はちらりと視線を奥へ投げた。
つまり、寝込んでいる悠理を一人にして、清四郎がその場を去ったのだと知ったからだ。
・・・およそ、彼らしくない行動だ。その存在を押し隠している今の状況も。
ここで清四郎の名を出すことはまずいのだろう。彼女はそう判断した。

「泣いてたって・・・私が様子を見た時は、よく眠ってましたわ。何か言ってませんでしたの?」
軽く誘導する野梨子に、魅録はその日のことをぽつぽつと話し出した。
537横恋慕(88):04/10/17 19:51:13
そっと仮眠室のドアを開けた魅録は、一瞬立ち竦んだ。
眠っているはずの悠理が、ベッドの上で膝を抱え、顔を埋めていたからだ。
「悠理、苦しいのか?」
苦しくて、目が覚めちまったんだろうかと思い、やさしく声をかけると、悠理は顔を上げずに
首を小さく振った。大丈夫だよ、と言ったように聞こえる。
「薬買って来たぜ。飲めよ」
手前に浅く腰かけ、水を差し出しながら頭を撫でると、ビクッと体を揺らした。
ようやく上げた顔を見て、魅録は動揺した。
「・・・悠理・・・お前、なんで泣いてんだよ」
「別に。なんでも・・・・・・ないんだ」
「卒業すんのが、そんなに悲しいのか?」
かぶりを振りながら、悠理は大きく息をついた。
「じゃあ、悲しい夢でも見たのか」
今度はじっと黙ったままだ。それは、つまり肯定の合図なのだろうか。
「何がそんなに悲しかったんだよ、ん?」
「・・・わかんない。ただ・・・同じ夢を見たんだ、ずっと前に。・・・・・・そう、思ってた」
悠理は両手で顔を覆った。
「全部、夢だったらよかったのにな・・・その方がずっと・・・」
途切れ途切れの言葉の中、指の間から涙が零れ落ちた。
「・・・なんでだよ・・・ずるい・・・ずるいよ・・・・・・っ・・・」
熱で朦朧としているせいだろうか。
その呟きの意味するところが、魅録にはわからなかった。
悠理はひそやかに嗚咽し始めた。
何も出来ないでいる魅録の前で、悠理はただ泣き続けた。

何だよ、ちっとも大丈夫なんかじゃねぇだろ。
そう言って抱きしめたかったが、魅録には出来なかった。
538横恋慕(89):04/10/17 19:52:01
やっと泣き止んだ恋人にキスをしようとすると、悠理はぐいと毛布を引っ張り上げた。
風邪が、うつるから、と。


「熱のせいで、妙なこと口走ってるんだと思ってたんだ。その時は・・・」
魅録は言い、拳をテーブルに打ち付けた。その肩が震えている。
「けど、あれからずっと、あいつ・・・変なんだ。夢を見たからだなんて、とても思えねーよ。なあ、
野梨子、あんた何か知らないのか!?」
「さあ・・・。変って・・・どういう風に、ですの?」
詰め寄られ、野梨子は掠れ声を出した。

「悠理は、あれから・・・いつも遠くを見てる。見つめ合っても、俺を見てねぇんだよ」
「そんな・・・すごく仲よさそうに見えましてよ?」
「仲良さそう・・・ね。キスひとつさせてもらえねーのに、か」
少し青ざめながらもどうにかフォローをしようとした野梨子に、魅録はクッと喉を鳴らして笑った。
「風邪がまだ治ってないからって・・・あれ以来、ずっとだ。もう三か月だぜ、信じろってのか?」


ゴトン。

部屋の奥で鈍い音が響き、反射的に魅録が鋭い視線を投げた。
539横恋慕(90):04/10/17 19:52:43
「・・・一人じゃなかったのか、野梨子?」
「え?あ、あの・・・・・・・」
野梨子がしどろもどろで口を開いた時、照れくさそうに頭を掻きながら、可憐が顔を出した。
「ごっめーん。なんか、深刻ムードだったから、出ていきそびれちゃって・・・」
チッ、と小さく舌打ちし、魅録は立ち上がった。
「可憐か・・・。こっちこそ、いきなり来て妙なこと言っちまって悪かったな。気にしないでくれよ」
我に返って照れくさくなったらしい。髪を掻きながら戸口に向かった。

「ねえ、どこ行くの?魅録」
慌てて呼び止める可憐に背を向けたまま、彼は軽く右手を振った。
「うじうじしてても仕方ないから、悠理と話してくるわ。今日のも・・・仮病かもしれねーし」


ドアが閉じ、数秒が経過した。

亡霊のような足取りで姿を現した白衣の男を、腕組みをした二人の女が出迎えた。



[続く]

540名無し草:04/10/17 22:07:02
>横恋慕
悠理はもう自分の気持ちに嘘がつけないんですね。
清四郎からのキスを大事にしている悠理が可愛い。
そして魅録ももう解ってしまっているような。
切ないです。
が、悠理と清四郎には幸せになって欲しい。
541名無し草:04/10/17 22:28:40
>横恋慕
うわあああん。やっぱり悠理は起きてたんですね?
切なさに涙がちょちょぎれます。
清四郎、気づけ、悠理の想いに。
540さんと同感です。悠理がいじらしすぎます。

魅録がそしてすごく可哀想ですよね。
ああ、でも彼は文句なくこのお話が終わった後で
いい男になっているはずです。
そう期待しております。
542名無し草:04/10/18 01:28:09
可Rネタマダーーーーーー
543名無し草:04/10/18 13:10:09
最近、ローカルヒーローというものが流行っているらしい。
戦隊ヒーローなどをパロディしたもの。

じゃあ、有閑で考えた。

清四郎=レッド:まあ普通にリーダーだし
魅録=ブルー:サブリーダーってこの色が多い。赤を時にひがむ。
美童=ブラック:最低な女たらしだった番組ありませんでしたっけ?
悠理=イエロー:誰が何と言おうと食欲魔人はイエローだろう
可憐=ピンク:意外と夢見る少女な可憐さん。必殺技は色仕掛け。
野梨子=紫:和風にしっとりと。必殺技は開き直り。

戦隊モノがアメリカにわたると女性の割合が増えて
人種もいろいろ混ざるように配慮されるらしい。
544名無し草:04/10/18 15:49:41
マッチ。売りの少女
ttp://moepic.dip.jp/gazo/netaren/src/1097931832670.jpg

>543
野梨子紫イイ・・・!
545名無し草:04/10/18 18:01:45
>>543 必殺技は開き直り
ワラタw
546名無し草:04/10/18 18:44:54
>戦隊
男四人、失礼、男三人+イエローの必殺技も考えてみた。
清四郎@レッド:必殺技は一服盛る。敵に下剤や睡眠薬を。
魅録@ブルー:必殺技は早抜き。いいの。普通の拳銃で。
美童@ブラック:必殺技は絶叫。大声でびびらすのだ。
悠理@イエロー:とにかく跳び蹴り

リーダーが一番せこい方法なところがミソです。
ブラックは対女性限定で色仕掛けも出来ます。
547名無し草:04/10/18 19:22:07
>546
リーダーの必殺技、そのせこさが清四郎らしい。
ブラックの絶叫もイイ!
548名無し草:04/10/18 20:54:04
>>546
レッドの一服盛るに禿げワロタ。
なんつーちまちました戦隊モノw
549名無し草:04/10/19 10:21:32
>戦隊シリーズ(?)
>543
皆の色とキャラ(役割)が合っててイイ!GJです!
コメントも、実にツボですた。(ブルーとイエローとブラックが特にw)
食欲魔人はイエロー…懐かしいなぁw

>546
レッドのせこさと、ブラックの女性限定技に泣けるほど爆笑!
マジでSS化キボンw
550名無し草:04/10/19 14:20:07
>534
へっぽこなほど亀でごめん。532です。
訳教えてくれてありがとう。慣用句のようなものだったのね。
workで1回切ってたから??な日本語になってたw
551名無し草:04/10/19 18:29:06
和子さんも聖プレジデントだったのかなぁ。
きっと、みんなの憧れの生徒会長だったに違いない。
552閑人戦隊:04/10/19 19:38:03
543=546です。ちょっとだけこの6人の日常を書いてみました。
切れ味いまいちのだらだらギャグです。
5レスいただきます。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@

ここはとある学園の生徒会室。またの名を有閑倶楽部と申します。
彼ら6人はごく普通(?)の高校生という姿を隠れ蓑に、地球の平和を乱す輩を相手に戦うチームだったのでした。

「だからさ、そろそろ僕たち、チーム名を決めたほうがいいと思うんだ。」
と姿は金髪で天使のように美しいが、中身は腹黒、女性殺しの美童@ブラックが言いました。
「そうですわね。毎回毎回『普段は高校生の姿をしているらしい謎のヒーロー戦隊の皆さん(仮名)』と悪役さんたちに呼ばせるのも悪いですわ。」
ずずっと緑茶をすすりながらこれまたお人形のように愛らしい美少女、野梨子@紫が同意しました。
「それ以前にその仮名だと俺たちの正体が敵のみならず、一般の皆さんにまでばれちまうだろうが。」
冷静にサブリーダー、煙草も酒もやりたい放題、敵よりも裏世界にまで詳しい魅録@ブルー(でも頭はピンク)が言う。
「そうねえ、そんな仮名じゃ情緒もへったくれもないわねえ。」
と今日もお肌に美容ローラーを転がすことに余念がない可憐@ピンクも同意しました。
「それよりも僕はどうして野梨子だけ色の名前が日本名なのかが気になるんですが・・・」
妙に真剣な声でリーダーである清四郎@レッドが言いました。
「野梨子がレインボーやラメってイメージか?」
おやつの煎餅をかじりながら食欲魔人、悠理@イエローが応えました。
「・・・ラメって色の名前?」
可憐@ピンクがツッコみます。
「私、紫で結構ですわ。」
静かに野梨子@紫が言います。
「それ以前にレインボーも単色じゃないだろう。」
魅録@ブルーが悠理@イエローにミニハリセンですかぽーんとツッコミをいれました。
553閑人戦隊:04/10/19 19:39:19
「で。話を戻そうか。」
こほん、と美童@ブラックが咳払いをする。
「チーム名ですか・・・」
自分が話をそらした張本人であることを棚に上げて、清四郎@レッドが話を引き取りました。
「よし。では皆のアイデアを出してもらおうか。書記の可憐@ピンク、書き留めて。」
「わかったわ、清四郎@レッド」
と、可憐@ピンクがチョークを手に移動式黒板の前に立ちます。
「はーい!『悠理と五人の手下たち』!」
と悠理@イエローが勇んで手を上げました。
「却下。」
全員が完全にユニゾンして言いました。間髪も入っていなかったあたりさすがのチームワークですね。
ちなみに可憐@ピンクは手を動かしもしませんでした。
「別に有閑倶楽部のままでもよろしいかと思いますけど?」
この名前に愛着のある野梨子@紫が提案します。
「いやいや、それだと僕たちが正義の味方だと明かして回ってるようなものじゃないですか。隠密行動にもいろいろ支障が出てきますよ。」
「そうだね。そしたら僕も可憐@ピンクも行動しにくくなるよ。」
色仕掛けの隠密行動。それが彼らの役割です。正体がばれてはやはり動きにくいのです。
「一番困るのは清四郎@レッドだろ?敵を薬の実験台にする趣味が・・・」
頬杖をついて図星を指そうとした魅録@ブルーの頭が突然がくんと沈みました。
「なんだ?急に寝るなよ、魅録@ブルー。」
と悠理@イエローが呆れたようにピンクの頭をつんつんとつつきます。
しかし他のメンバーは知っています。清四郎@レッドがテーブルの下で彼の足に即効性の麻酔針を刺したことを。
554閑人戦隊:04/10/19 19:40:31
「では魅録@ブルーは議決権を放棄したということで話を続けようか。」
清四郎@レッドがにこやかにテーブルに肘を突き、組んだ指に顎を乗せて優雅に話を促しました。
「そんじゃあねえ、『悠理と5人の盗賊』!」
「『アリババと40人の盗賊』かい!しかも正義の味方が盗賊を名乗ってどうする!」
清四郎@レッドが悠理@イエローの額に裏拳を叩き込みます。
しかしさすが悠理@イエローはそれをすんででよけてかすらせるだけにとどめました。野生動物並みです。
清四郎@レッドはちっと舌打ちして悠理@イエローを横目で睨みました。
「ねえねえ、『愛の戦士・有閑エンジェル』ってのはどう?」
にこにこと子供のような微笑を浮かべて美童@ブラックが言います。
「何よそれ?あんたもうちょっと日本語の勉強しなおしたほうがいいわよ。」
心底嫌そうな顔で可憐@ピンクが却下します。
「・・・『荒野の6人』。」
ぼそっとした声がしました。
「この日本のどこに荒野がありますの?それにそれを言うなら元ネタの『6人の閑人』がよろしいですわよ。清四郎@レッド。」
そうです。かの有名な西部劇は、日本のK沢監督の作品をモチーフに・・・ってそれは『侍』でしょう?それに7人ですよ、どっちも。
「どっちもやあよ。何考えてるのよ、皆。」
「じゃあ、可憐@ピンクにはいいアイデアが?」
言われて彼女はふふん、と鼻を高くします。
「ええ。とっておきの名前がね。」
「もったいぶらずに教えてくださいな。」
可憐@ピンクは自分の名と同じピンクのチョークを握ると黒板に書きながら読み上げました。
「『有閑戦隊・シックスハーツ』!」
文字の周りにはハートマークなどが可愛らしく飛び回っています。
「それって『有閑エンジェル』と大差ないんじゃ・・・」
美童@ブラックがもごもごと言いました。
555閑人戦隊:04/10/19 19:41:42
それからも喧々諤々の議論は続きましたが、中々意見はまとまりませんでした。
「ふう、このまま話していても埒が明きませんな。」
清四郎@レッドがじと目で一同を見回しながら言いました。
いい加減、みんなも疲れていました。
「よし!皆の考える名前をくっつけるってのはどーだ?」
一人元気な悠理@イエローが挙手して発言します。そうです、彼女は礼儀正しいよい子なのです。
ただお行儀が悪くて頭が悪くて趣味が悪くて手癖が悪いだけなのです。
「くっつける?」
野梨子@紫がきょとんとします。
「野梨子@紫は『6人の閑人』。
 可憐@ピンクは『有閑戦隊・シックスハーツ』。
 美童@ブラックは『愛の戦士・有閑エンジェル』。
 清四郎@レッドは『荒野の6人』。
 そしてあたいは『○学忍者隊・レインボーマン』。」
「ちょっと待て。お前のアイデアは初耳だぞ?」
と美童@ブラックが眉をしかめます。
「虹は普通7色でしょうが。そしてどこの世界に黒が混ざった虹がある!」
清四郎@レッドも聞きとがめました。
その時、生徒会室のドアが開きました。
ひょっこり顔をのぞかせたのは学園の理事長であり、彼ら6人に出動指令を与えるミセス・エール@ホワイト(キ○ンディ・キャ○ディのファン)でした。
「話は聞かせてもらいましたよ。」
にっこりミセス・エール@ホワイトは微笑みました。
556閑人戦隊:04/10/19 19:43:43
「結局オレが眠ってる間に決まっちまったのかよ。」
魅録@ブルーがぶうたれてます。
「まあまあ。あたいのも清四郎@レッドのも混ぜてもらえなかったんだし。」
悠理@イエローが中華まんをかじりながら魅録@ブルーの背中を叩いてなぐさめています。
「何気なくはずされましたよね。」
清四郎@レッドがじろっと残る3人を睨みました。
「あら。でもミセス・エール@ホワイトの決定に異存はないのでしょ?」
野梨子@紫がにっこり微笑みました。
「そうそう。あたしのアイデアから二つも単語が採用されるってことはミセス・エール@ホワイトとあたしって感性が似てるのね。」
可憐@ピンクが誇らしげに言います。
「それになんとなくしっくりきすぎて他の名前が考えらんなくなっちゃったしね。」
美童@ブラックが苦笑しました。

部屋には大きくその名前が書かれた垂れ幕がぶら下げられています。

 命名:閑人戦隊・有閑シックス

妙に納まりのいい名前に、誰も異を唱えることができなかったのでしたとさ。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

以上です。お粗末さまでした。
557名無し草:04/10/19 20:27:13
>閑人戦隊
>魅録@ブルー(でも頭はピンク)にワロタ。
558名無し草:04/10/20 00:00:34
>549です。
>543=546 ――ええっ!!???
まさか本当に、しかもこんなすぐ読めるとは思わなかった。
いやはや。素晴らしいお仕事っぷりに、ひたすら脱帽です。
御降臨、本当に有難うございました!

映画ネタなど、妙に細かいところが、私的には最高にツボですた。
読んでる間中、クスクス笑いが止まらなかったですw
全員のやる事なす事が楽しくてイイけど、特に清四郎@レッドがナイスすぎる…。
こうなったら続編も、熱烈キボンしますw

>野梨子だけ色の名前が日本名
…そういえばそうだw
559名無し草:04/10/20 08:32:28
野梨子だけ日本名・・・
でもパープルだったらピンクやブラックよりも
妖しげな役目を持ちそうだ罠w
560名無し草:04/10/20 10:15:58
面白かったです。
いちいち@レッドとかついてんのがワロタ
戦い編もきぼん。
561作戦会議:04/10/20 13:43:05
小ネタ便乗。くだらなくてすみません。

作 戦 1

「魅録@ブルーと美童@ブラックと悠里@イエローと可憐@ピンクは
 手分けして、哲郎の居場所を突き止めるんだ」
「了解!!!!」
「野梨子@紫はナース姿で、高千穂病院で待機です」
「了解ですわ」

作 戦 2

「魅録@ブルーと美童@ブラックと悠里@イエローと可憐@ピンクは
 ホテル内で情報収集にあたってくれ」
「了解!!!!」
「野梨子@紫はパーティー会場で、バニー姿で待機です」
「りょ、了解ですわ」

作 戦 3

「魅録@ブルーと美童@ブラックと悠里@イエローと可憐@ピンクは
 モルダビアを尾行!」
「了解!!!!」
「野梨子@紫は僕の部屋で、裸エプロンで待機です」
「そ、そんな・・・」
「おいっ、ちょっと待てよ。なんで野梨子@紫がそんな事する必要があ・・・」
「変な奴だなぁ。魅録@ブルーってば、また眠っちゃったじょ」
「いいですか。この作戦は、何としてでも決行します!」

                            おわり
 
562名無し草:04/10/20 16:39:04
>作戦会議
清四郎@レッド・・・
もはや正義のためじゃなく
自分のためか。ワロタよ〜!

563名無し草:04/10/20 20:01:55
一連の閑人戦隊ネタ、面白いです。
なんで清四郎って、こんな姑息なキャラがぴったりなんだろう…
もはや、原作を読み返してもそういう人に見えてしまう(涙)
(でもそこがすきだけど)

>作戦会議
三段オチ、お見事。
564名無し草:04/10/20 20:24:34
面白ネタの後に恐縮ですが、短編をうpさせていただきます。
清×悠がバカップル(主に清四郎が)で、妄想が爆裂してます。(しかもエロ方向)
苦手な方はどうかスルーしてやって下さい。5レスです。
565衝撃の告白(1)清×悠:04/10/20 20:25:28

その日、僕は上機嫌で彼女が待つ公園へと向かっていた。
否、その表現は的確ではないだろう。いつだって待たされるのは僕の方じゃないか。

わかってはいたけれど、約束の17分前に階段を3段とばしで駆け上がる。
遅刻の場合はペナルティーを課すのが、僕達の間の約束だ(勝手に僕が決めた)から、
僕は決して遅刻などしないのだ。
おそらく今日も、彼女に“おしおき”をせねばなるまい。誠に遺憾なことだが。
「遅刻ですよ、悠理」余裕の表情でそう言う僕を、上目づかいにじとっと見上げる悠理の
姿を思い浮かべるだけで、僕の身体は火照り始めた。
そう。
「ごめんなさい、もう許して!」はベッドの上で言わせてやるのだ。
そうだな、今日は…100回ほどで許してやるか。

今日は、前回から数えて3日ぶりのデートである。
だが、悠理を屋敷に送り届けてからずっと、ノンストップで次のデートでは“あんなこと”
や“こんなこと”をしようと妄想していた僕が階段を上りきる一歩手前、予期していな
かったことが起きた。

「清四郎!!!」
僕が腰掛けて待つはずのベンチから、なんと悠理がブンブンと手を振っていた。

566衝撃の告白(2)清×悠:04/10/20 20:26:37

落胆の表情を見せるわけにはいかない。今日は“おしおき”が出来ないだけで、別に僕ら
の愛の営みを阻むものなど、何もないのだから。そう、そう思わねば…。
「…珍しく、今日はずいぶん早いですね」
若干落ち込んでいる僕に気付きさえしないように、瞳を輝かせた悠理は立ち上がり、両手
の指を組み合わせて叫んだ。
「やったぞ!清四郎!!あたい、すっごい嬉しくて…お前にも早く知らせたかったからさ!」
悠理の瞳は、古い少女漫画(注・10年以上前に盗み読みした姉貴の蔵書)に出てくる
王子様より、キラキラと煌めいていた。
これは、かなり、よほど、甚だしく“すごいこと”が起きたに違いない。
「いったい、何があったんです?」と問う間もなく、悠理は衝撃的な言葉を僕に告げた。

「赤ちゃんだよ!赤ちゃんが出来たんだ!!!」

ひしっと抱きついてくる恋人をどうにか受け止めたものの、僕は思わずそのまま倒れて
しまいそうになった。


 う、ウソだーーーーーーーーーーっ

まだ、高校生だぞ!?

いや、確かに一度は婚約までした(しかも破談になった)仲だが、改めて交際を申し込ん
で、承諾もそこそこに無理矢理押し倒してから、まだ…たったの3か月じゃないか!?
これから二人っきりであんなことやこんなことや、今のところ悠理に断固拒否されている
@@プレイとか、@@@ごっことか、やりたいことをこっそりリストアップまでしていたのに…

567衝撃の告白(3)清×悠:04/10/20 20:27:31

青ざめる僕に気付き、悠理は瞳にうるうると涙を浮かべた。
「なんで…喜んでくれないんだよ、清四郎?」
「え!?い、いや、その…突然のことに驚いて…」
そう。驚いただけだ。嬉しくないわけじゃない。断じて…。
落ち着け、落ち着くんだ、自分。


だが、僕の完璧な計画が、ガラガラと音を立てて崩れていく。

悠理の二十歳の誕生日にプロポーズ、大学卒業と同時に結婚、最初の子供は男の子。
(誰が何と言っても、自分の息子には姉貴なんてものは持たせまい)
もちろん、できちゃった結婚など愚の骨頂と信じる僕は、誰からも文句なく祝福され、
羨望の的となる人生を目指し、細心の注意を払ってきたはずだ。
それなのに…どうしてこんなことに?

だが、そんなことよりもヤバいのは姉貴だ。あいつに知れたら何と言われるか…。
つい先日も、恋人から妊娠を告げられて狼狽えていた男友達を引き合いに出され、
「あんたも気をつけなさいよ〜」の台詞に「僕がそんなヘマをするとでも?」と自信満々に
答えたばかりじゃないか!!!―――うわぁ、みっともない!


しかし…心当たりがあるとすれば、あの祭りの晩か。
はだけた浴衣から覗く悠理の柔肌に、つい理性がふっ飛び、神社の境内で…。

…計算すれば、ちょうど妊娠に気付く頃かもしれないな。

568衝撃の告白(4)清×悠:04/10/20 20:28:06

頭を高速回転させすぎたせいか、口の中がカラカラに乾いている。
嫌な汗をこっそり拭いながら、僕はできるだけにこやかに問いかけた。
「ところで、いつ…気付いたんです?」
「今朝だよ!かーちゃんが、妊娠してるって言ったんだ。間違いないわ!って」

頭を鈍器で殴られたような気がした。

お、おばさん(いや、今日からお義母さんと呼ばねばならないのか?)に、先に気付かれ
てしまうとは……。不覚…!
可及的速やかに、ご挨拶に伺わねば。
あの人の機嫌を損ねるなど…恐ろしすぎて、想像するのさえ嫌だ。
悠理のおなかが目立ち始めないうちに、婚約発表と結納と結婚式と披露宴と…

「名前、考えなくちゃな。なあ、清四郎も一緒に考えてよぉ」
悠理はごろにゃん、と僕の首に抱きついて、甘えた声を出した。


ああ。なんてかわいいんだぁ……っ!!

ぎゅっとその細い身体を抱きしめながら、僕は自分の身勝手を恥じた。
僕の子を宿したことを、こんなに喜んでくれているのに・・・何が計画だ。
姉貴がなんだ。おばさん(改め、お義母さん)がなんだ。
周囲にどんな目で見られようが、どんな罵声を浴びようが、そんなもの、糞くらえだ。
生まれる子が女だって男だって構うものか。僕らの、愛の結晶なのだ!

しばらくは無茶は出来ないだろうが、悠理のバケモノ並の体力を考慮すれば、安定期
に入ればきっとまた“あんなこと”も“こんなこと”も不可能ではないし…。
…ここは素直に喜ぼうじゃないか。

569衝撃の告白(5)清×悠:04/10/20 20:30:13

予定よりだいぶ早まってしまったが、僕はありったけの思いを込めてプロポーズすること
に決めた。――残念なことに、指輪も花束も用意していないけれど。
「…愛してます。悠理」
「ん?いきなりどーしたんだよぉ、清四郎」
抱く腕に力を込め、耳元に囁くと、悠理はくすぐったそうに身をよじる。
「結婚しましょう。今、すぐにでも」

しばし沈黙が流れた後、ぐいーーっと胸を押し返された。
僕を見上げる悠理は、不思議な生き物を見るような目をしている。

「はァ?なんでそんな急に…」

はァ?はないでしょう、悠理。そこは「うん」と答えるべき…
「まだいーよぉ」って、そんな悠長な…

「だって、子供が出来たんでしょう?」
「うん」
優しく諭すと、やっと悠理は頷いた。わかったか。わかったならいいんだ。
「だから…僕と……」
「だから、今夜は盛大にタマとフクの結婚式するんだ。お前も来るだろ?清四郎」


思わずその場にしゃがみ込んだ僕を、悠理はうんしょ、と言いながら引っぱり上げた。
「魅録達も7時に来るってさ。だから早くぅ……エッチする時間なくなっちゃうぞっ♪」



…僕にはもう、そんな元気はなかった。


オワリ
570名無し草:04/10/20 20:32:19
「衝撃の告白」は以上で終わりです。ありがちなオチ、失礼しました。
初登場のカプ、多満自慢×富久娘でした。
カプ表記した方がよかったでしょうか(いや、まさか…ねぇ)。
勝手に彼らをめおとにしてすみません。本当は兄弟かもしれませんね。
571名無し草:04/10/20 21:14:14
>閑人戦隊
>衝撃の告白
どちらもむっつり清四郎の本領発揮ですな。
どうしてこんなに姑息なのが似合うんだろう。
笑わしてもらいました。

清×野と清×悠は、清四郎がむっつりなのが想像しやすいけど、
可憐相手だとどうも想像できない…
572名無し草:04/10/20 21:24:19
おばかすぎて腹がよじれた。
すごい好きだ、この清四郎。
573名無し草:04/10/20 22:14:12
>衝撃の告白
おっ…面白すぎる……苦しい。(←笑いすぎで)

正に妄想爆裂。“あんなこと”や“こんなこと”に拘りまくる清四郎……
如何にも彼らしい、(でもおばかな)語り口調に大爆笑。
清×悠だけでなく、意外なカプにも楽しませていただきました。

>563 >571
私も言わずにはいられない。どうして清四郎って、こんなに(以下略)(涙)
でも、ここへ来るようになってから、それも好きになってしまったw
574名無し草:04/10/20 23:36:54
>清四郎がこういうキャラが似合う理由
やっぱり原作のPart1でいきなり催淫剤盛るわ、
Part2でも化粧してる姿を可憐に想像されてるわ、
Part3ではえげつない手でダンス大会優勝させるわ。
(下剤に花粉に希硫酸)

あれで清四郎の方向は決まっていたと言っても
いいでしょう。
白鳥のおまるも下剤を捨てることで逃げるし。

うん。せこい。

>571
可憐相手だとなんか途端に渋くなりますよね。
なぜだ・・・
575名無し草:04/10/21 06:55:39
>衝撃の告白
がんばれ清四郎!早く立ちなおらないと…



           …えっちする時間なくなっちゃうぞっ♪(←バカウケ)
576名無し草:04/10/21 09:04:56
>571、>574
可憐だけは普通なので、清四郎の変態プレイに、引いてしまいそうだ。
野梨子と悠里は、男を知らないので、清四郎にとって格好の餌食に・・・
お久しぶりです。「可憐さんにかなわない」うpします。
半年も放置していてスミマセン。
>>http://houka5.com/yuukan/long/l-39-5.html

可憐の叫びが収まると、野梨子がコホと咳払いをした。
三人で示し合わせたように同時にベッドに腰をかける。
「お二人に伺いたいことがあるんですの……その、先ほどの……行き着く先の……
 つまり、男女が愛を確かめ合う行為と申しますか
 愛を深め合う行為と申しますか、年頃の男女が着衣無しで行う儀式と申しますか
 睦みあうと申しますか、最終的には子どもを作るための行為と申しますか」
延々と続きそうな野梨子の言葉を可憐が遮った。
「わかった、何が言いたいのか大体わかったから。それで? エッチがどうしたの?」

赤い赤い。完熟トマトでもここまでは赤くない、と思うほど、野梨子は顔を赤くして
消え入りそうな声で言った。
「かなり痛いんですのよね。きっと?」

しどろもどろに発せられた野梨子の質問に、思わず可憐と悠理は顔を見合わせた。
「ま、まあねぇ」
「そ、そうだなあ」

ほうっとため息をついて黙り込む野梨子につられ、二人は黙り込む。
やがて、おかっぱ頭を振りながら野梨子はしみじみこう言った。
「そうですわよね、体内に異物が侵入してくるんですものね。さぞかし痛いでしょうね」
「異物……。まあ、でも一瞬のことだし。ねぇ、悠理」
振返った可憐は悠理が怪訝な顔をしているのに気がついた。
「一瞬……?」
慌てて口を押さえた可憐に気づかず、野梨子は呟いた。
「殿方もさぞ痛いでしょうねえ」
今度は可憐と悠理が野梨子の顔をのぞきこんだ。
「殿方が痛い?」
野梨子は再び真っ赤になりながら、説明した。
「え、ですから、こう殿方のあの部分は柔らかいですわよね。それをこう、あの女性に挿入しようとして、
 手で支えて、こう押すのは結構あちらも痛いんじゃないかと……」
悠理が果敢にも説明を試みた。
「うーん、何て言ったらいいのかなあ。その必要はないんだよ。なんか……そういう時にはちゃんと……
 あれは『成る』から」
「はあ、『なる』……そうなんですか。たくさん?」
「たくさん? 何が」
「ですから、ナニが」
「どんなふうに」

野梨子が黙ってメモ帳に書いた絵を悠理と可憐で覗き込む。
男性らしき人物の足の間から、たくさんの実が生っていた。
ごいんと音がして、野梨子が頭を押さえた。

「痛い! 何するんですか、悠理! グーで殴りましたわね!」
「普通に考えて、こんなふうにならないだろ? アホか、野梨子」
「可憐! 悠理にアホって言われましたわ。悠理にアホって言われましたわ。悠理にアホって言われましたわ」
「ああ、よしよし。アホにアホって言われたらショックよね」
「うるさいな。アホはアホだろ。可憐、ちゃんと説明してやれよ」

間。

(ここから音声のみでお送りしております)

可憐が恐る恐るペンを取った。
「え、えーと、これが頭で」
「頭はいい」
「これが……耳」
「耳は描かなくてもかまいませんわ」
「これが……髪の毛」
「だから頭はいいって言ってるだろ。もっと下描けよ、下! 大体なんでドレッドヘアなんだよ。
 誰だよコイツ」
「某都立高校生・A君(18)」
「……」
「これが……イヤリング」
「可憐!」
「おばあちゃんの形見なの。それでこれが鼻ピアス。これは先週事故死した先輩の形見」
「関係ないだろ。てか、形見の鼻ピアス、つけんな! か れ ん 〜!!」
「何よ、悠理」
「○ンコ描いて、○ンコ」
「あ、急に電波の調子が……」
「○・ン・コ」
「きゃー。ひわいー。ゆうりったら。『ま』? 『ま』?」
「『ま』……話の流れから言って『ち』だろう、普通。ていうか『ま』だったら描くのか!?」
「描けないわ! もう私には漫画が描けない! 才能が無いのよ!」

間。

「きゃー。悠理。流血はいけませんわ、流血は」
「ひぃぃ。親にも殴られたことない顔を殴ったわねぇ」
「お前らなんか、お前らなんか、こうしてやる、こうしてやる」
「わかった! 描けばいいんでしょ、描けば!」
「……なんで三角錐(すい)なんだよ」
「ちょ、ちょっと待って間違えた」
「……ドリルみたいですわ、可憐」
「ねえ?」
「……」
「これは、たしかに痛そうですわね。悠理?」
「……これじゃあな」
「ねえ?」
「血も出ますわよね。悠理?」
「……これだったら出るだろな」
「ねえ……?」

(映像が入りました。)

急に悠理が立ち上がった。自分のリュックをごそごそやっている。
「ちなみにぃ、これがアレだとすると」
ベッドに座った野梨子の腹の上に当てる。
「これが全部入るんだよ」

野梨子、そして可憐は悠理が取り出した物体をまじまじと見つめた。
それは悠理の非常食、黄色くて甘い、しなり具合も程よい果実だった。

耳を押さえて野梨子が悲鳴を上げた。
「嘘ですわ!」
可憐が悠理をたしなめた。
「そうよ、悠理。なにも極端な例を持ち出さなくてもいいじゃない。野梨子が怖がるだけよ」
「極端じゃないだろ。普通だろ?」
間。

「普通って何よ普通って何よ普通って何よ普通って何よ」

可憐が捲し立てるので、悠理は耳を塞いだ。
「わぁーーーったよ、うるさいうるさいうるさい」
「誰と比べてんのよ誰と比べてんのよ悠理! あんた魅録以外の見たことあるの!?」
「無いよ! 悪かったな!!」
「じゃあ普通だってわからないじゃない。魅録のが特別に……ぶっ」

間。

可憐は沈黙した。
野梨子はさっきから押し黙ったままだ。
悠理が口を開いた。

「可憐、ずっと聞きたかったことがあるんだ。可憐は魅録とつきあっている時って、してた?」
思いがけない質問に可憐の顔が引きつる。
「えっ、何よ突然!?」
「聞きたいんだ」
「……」
「教えて可憐。魅録と寝てた?」

真直ぐな悠理の視線に可憐は困って野梨子を見る。野梨子も可憐を見つめ返した。
可憐はため息をついた。

「いいわ……教えてあげる。魅録とは寝てない」
猫のような悠理の目が細くなった。
「なんで?」
「なんでって……。結婚まで守りたかったから。おかしい?」
「魅録に求められなかった?」
ベッドの上で胡坐をかき、眉をしかめた可憐は髪をぐしゃぐしゃと掻き毟った。
「そりゃ……、つきあってた頃は当然求められたわよ。でも」
「駄目って?」
「そう。それで大喧嘩。でも最初のうちは、『お前のこと大切だから、お前の気持ち大事にしたい』
 って我慢してたみたい。でも、そのうち、好きだったらなぜできない?って言い出して
 四回大喧嘩して、三回は仲直りしたけど、四回目に別れたの」

悠理の顔が青ざめていくのを、野梨子は不思議そうに見守っている。
「セックスが原因で別れたんだ」
「それだけじゃないけど……。でも、そうね。一番大きな理由かな」
「お前のこと大切だから、か……」

可憐は悠理の顔を見て驚いた。
悠理の顔がくしゃくしゃに歪み、目からボロボロと涙が零れ落ちている。
「……チクショー」

踵を返すと悠理は大股で部屋を出て行った。


以上です。
続きます
毎回毎回下ネタ満載ですみません。
585名無し草:04/10/21 22:15:52
>可憐さん
待ってた〜〜〜(涙)このどーしよーもない下ネタトーク!
同じ単語を連呼する夢見る乙女な野梨子と可憐と、
なぜか一人だけ大人な悠理のかけあいが…たまらん。
ドレッドヘアのA君、見たいよーー。
だけど…魅録と悠理は大丈夫かなぁ。
586名無し草:04/10/21 22:47:50
私も待ってました!毎回笑わせて頂いてますw
そろそろうまくまとまるのかと思っていたら
もうひと波乱ありそうですね。次回も楽しみにしてます。
587名無し草:04/10/21 23:08:44
>可憐さん
私もずっと待ってました!!変わらないテンションが嬉しい!
今回も、思い切り笑わせて頂きましたw
完熟トマトより真っ赤になってる野梨子の純情さが、すごくカワイイ。

>(ここから音声のみでお送りしております)
      ↓
>(映像が入りました。)

このノリが、もう最高に好きですw
続きを楽しみにしてます。
588名無し草:04/10/21 23:27:09
お待ちしていました。可憐さん。

チクショウっていう悠理の嫉妬が切ないです。
じゃぁ、自分のことは大事じゃないのかよっていう複雑な気持ちが
この一言に詰まってますよね。早く魅録と仲直り出来ますように。
589名無し草:04/10/22 13:58:37
可憐さん、戦隊、衝撃の告白!
ここ数日笑いっぱなしですよー
作家様、ネーター様、皆様GJ!
590名無し草:04/10/22 20:17:25
可ネタ続き見たいよろ♪
可憐って二人っきりになると結構純情で可愛いんだよね、なんか
591名無し草:04/10/23 00:42:06
誰と二人っきりなら?1.魅録2.清四郎3.美童>ミロクかにゃ?
592名無し草:04/10/24 21:35:27
可憐に食われる清四郎が見たい。
593名無し草:04/10/24 22:45:24
ミロっちにヤラれちゃう可憐がみたひ。
594名無し草:04/10/27 22:13:54
作家の皆様、続き待ってます。
595名無し草:04/10/27 23:42:06
昔りぼんでやってた「お父さんは心配性」を有閑キャストで。

佐々木光太郎  清四郎
佐々木典子   野梨子
北野      魅録

野梨子を溺愛するあまり、
ついつい魅録を何度でも殺しちゃう清四郎が見たいわ・・
596名無し草:04/10/27 23:59:56
あーみんなら「こいつら100%伝説」でしょう。

極丸=清四郎(変態ぶりがぴったり)
危脳丸=美童(ナルぶりがぴったり)
満丸=悠理(幼さがぴったり)
ターミイ=モルダビア(どっちもモデルがゴルゴ)
姫=野梨子(コメントのしようがない)
和尚=雲海和尚(まんまやん)

可憐は極丸と危脳丸に惚れるお蝶夫人みたいな姉妹の片方。
魅録は常識人なのであーみん世界には難しいです。
597名無し草:04/10/28 18:04:04
お姐さまがた。

エースをねらえを有閑メンバーでやるとしたら
どんなキャストになると思われますか?

自分で考えてみたのですが思い浮かびません。
598名無し草:04/10/28 18:24:53
別にムリして考えなくてもいいんじゃない?
有閑は有閑なんだし。
599名無し草:04/10/28 19:23:18
有閑を読んでいると、どうしても可憐の声が
のび太クンの声になってしまう。
野梨子は仲間由紀恵の声かなぁ。
600名無し草:04/10/28 22:28:07
そっかな?可憐はブルマ
ノリコは桔梗
悠理はゴクウ
ってなかんじw
601名無し草:04/10/28 23:03:11
>>599
ああ、のび太の声の人分かる。ドロンジョ様の声って言ったほうが想像しやすいね。
小山茉美もおすすめ。二人とも外人女性の吹き替えとかでいつもセクシーだから可憐向き。
>>600
ゴクウの声は男の子を中年女性(というかおばあさん)が演じてるんだから、
いくら何でも悠理にはひどいだろ。野沢さんは今はほぼ少年か老婆ナレーションしか出来ないし。
ポケモンの主人公(&主題歌)も出来て、ビバヒル高校白書のケリ−も出来る松本梨花なら多分合いそう。

602599:04/10/28 23:22:51
サトシ(ポケモン)ってケリーだったんだ。
悠里に合ってるね。悠里、歌もセミプロだって自分で言ってたし・・・。
603名無し草:04/10/29 00:20:39
どうでもいいが作家さんネタはありませんか〜♪うふっふ〜♪
604名無し草:04/10/29 00:27:36
「横恋慕」をUpします。
>539の続き。今回は7レスです。
605横恋慕(91)魅×悠×清:04/10/29 00:28:07
白衣の裾を翻しながら、一人の男が大学の正門を後にした。
…その顔は鑞で拵えたように蒼白であった。
この学園に彼の顔を知らぬ者はない。が、尋常ならざる雰囲気に、大丈夫ですか、と声をかけ
ることさえ憚られ、行き交う学生達は彼を訝しげな視線で追うばかりである。

その時、すぅっと吸い付くように車が横付けされた。
音もなく開いた窓から見上げる金髪男へと、彼は黙って視線を落とした。
「そんな格好でどこ行く気だよ?ゾンビ君」
軽い口調で言いながら、車上の男はちょっと首を傾けて、乗れよ、と合図する。

二人を乗せた車は、ゆっくりと滑り出した。
美童がスイッチを押すと、運転席と後部座席の間に仕切りが上がって行く。
運転手も心得たもので、表情一つ変えずに車を走らせている。
厳しい表情で白衣を抱え込んでいる清四郎に、美童は口笛でも吹かんばかりに語りかけた。
「驚いたよぉ、可憐と野梨子が電話の向こうで絶叫しててさ。二人一緒に喋るもんだから、何を
言ってるか、なかなかわかんなかったんだけど・・・。どうやら、『清四郎が逃げたから捕まえて
くれ』ってことだったらしい」
笑おうとして顔を強ばらせる結果になっている清四郎に、美童は極上のスマイルを投げかける。
「卒業式のおおよその顛末は野梨子が話してくれたよ。で、一体何があったのかな〜?」
清四郎は両手で顔を覆い、大きく息を吐いた。
「・・・自分でも、どうしてあんなことをしたのか・・・どうしたらいいのか、わからないんです」
「あんなことって?」
「眠っていると思い込んでいたんです。あいつが、気付いていたなんて・・・」
何をしたんだよ?ともう一度やさしく問う美童に、絞り出すような声が答える。
「キスを・・・」
清四郎はゆるゆると顔を上げ、遠くを見つめた。
「悠理に、キスをしました」
606横恋慕(92):04/10/29 00:29:05
美童は頭の後ろで指を組み、前を向いたままため息をついた。
「なるほどね・・・ま、そんなとこだろうと思ったよ」
「軽蔑して構いませんよ。僕のしたことは・・・最低です」
清四郎も彼を見ないままかぶりを振る。
「つまり、『下らない感情』とやらに振り回されちゃった、ってわけ?」
美童がニヤリと笑うと、清四郎はただ唇を噛んだ。

「・・・じゃあ、悠理がずっと前に見た夢、ってのにも当然心あたりがあるわけだ?」
ちらっと視線を送る美童の目に映ったのは、苦悩の表情を浮かべる清四郎。
黙って頷くと、催眠術にかかったようにぽつりぽつりと話し出した。
「今のあいつには魅録がいることもわかっていながら、自分の感情を抑えることができなくて、
同じ誤ちをくり返してしまいました。僕は・・・どうしてあいつの嫌がる事ばかり・・・・・・」

「嫌がるって・・・ちょっと待てよ。悠理が泣いたのは、そういう理由じゃ・・・」
慌てて遮ろうとする美童の言葉は耳に入らない様子で、清四郎は震える声で喋り続ける。
「僕のせいで、魅録との仲まで壊すことになったら・・・もう、友人でいることさえ許されない。
僕は、僕はどうしたらいいんだ」
清四郎は両膝に肘をつくと、頭を抱え込んだ。
呆然として、美童は苦しそうに上下するその肩を見つめた。
「・・・ずっと、どうやってあいつと向き合えばいいのかわからなくて・・・。僕はあいつを守れない
のに。傷付けてしまうだけなのに・・・それなのに、触れたくて・・・・・・どうしたらいいのかわから
ないなんて・・・なぜ、こんな・・・」
迸る感情をコントロールできなくなり、清四郎は膝に拳を打ち付けた。
美童はくすり、と笑い、その肩を軽く叩いた。
607横恋慕(93):04/10/29 00:30:00
「なあ、清四郎。覚えてるだろ?スイスのスパに潜り込んだ時、僕と悠理が同室だったの」
子供に語りかけるような口調の美童を、清四郎は空ろな瞳で見上げた。
いきなり何を話し出したのかと、少々不可解そうな表情を浮かべている。
「あいつときたら、バスローブいっちょでウロウロするわ、そのまま僕のベッドに座り込んで酒は
飲むわ、やりたい放題でさァ。さすがに落ち着かなくて困ったよ」
ひと通り思い出し笑いをしたあと、彼は小さく咳払いをした。
「お前さんとの婚約騒動の時は、同室なの?って可憐に訊かれただけでゆでダコみたいになっ
てたくせにさ。ほんと、僕のことを男だなんて全然思ってないなんて、失礼しちゃうよ」
美童が何を言い出すのか探ろうとしながら、清四郎はただ黙っている。
「・・・実はあの時、悠理からいろいろ聞き出したんだ」
再び目を上げた時、美童の青い瞳はひどく真面目な光を湛えていた。

「お前、どうして悠理にプロポーズしてやらなかったんだよ」
清四郎の瞳を真直ぐに見据え、彼はそう言った。



悠理と清四郎の婚約会見を、仲間である美童達は間近に見ていた。
記者の質問をはぐらかし、プロポーズの言葉を答えなかった清四郎を見て、あいつらしいなぁ、
と皆で笑っていた。相手を煙に巻いてしまうことなんか朝飯前なんだ、と。
その頃は魅録でさえ彼女へ恋心は抱いてはいなかったし、仏頂面をしていたのは野梨子くらい
のものだった。だから、彼らにとっては格好の暇つぶしであり、楽しい思い出の一つだった。

その日、珍しく悠理と二人きりで過ごす時間が長かったものだから、ふとその時のことを思い
出し、美童は右手をマイクにして記者と同じ質問をぶつけた。
もちろん、もう時効だと思った上での、軽い冗談のつもりだった。
「プロポーズのセリフ教えてくださいよ〜」
608横恋慕(94):04/10/29 00:30:39
その瞬間、予想だにしなかったことが起きた。
彼のベッドの上で酔ってはしゃいでいた悠理が、ぴたりと動きを止めたのだ。

「・・・プロポーズなんか、されてない」
意外な反応に狼狽えつつ、美童はつい笑ってしまった。
柄にもなく、悠理が照れているのかと思ったから。
「またまたぁ。とぼけないで、答えて下さいよ、お嬢様〜?」
だが、強ばった顔で、悠理はかぶりを振った。
「あいつからは何も言われなかった。とーちゃんとかーちゃんから、あいつがうちの婿に入る事に
決まった、って聞いただけだ」
「嘘だろ?形式を重んじる清四郎が、お前に何も言わなかったのか?一言も?」
口をギュッと一文字に結んだまま、悠理はまた頭を横に振る。
「・・・エンゲージリングは?」
畳み掛けると、悠理は悲しげに顔を歪ませた。
そっか、それも貰っていないんだな、と美童が納得しかけた時だった。
「・・・・・・覚えてない」
あり得ない返事だった。
何か言いたげで、言えないでいる悠理に、そっと誘導尋問を始める。
「覚えてないって・・・ああ、そうか、わかった。悠理は記憶力が悪いから、本当はプロポーズの
言葉も忘れちゃったんだろ?」
「そんなこと忘れるはずないだろ!?言われてないってば!絶対」
「じゃあ、指輪は・・・貰ったんだね?」
うっと言葉を飲み込んだ悠理の目に、みるみるうちに涙がせり上がってくるのが見えた。
609横恋慕(95):04/10/29 00:31:24
その顛末を聞かされた清四郎は、観念したようにため息をつくと、指輪を渡した時の状況を
淡々と語った。
「それで、言いそびれてしまって・・・だから・・・」
「ふぁーーーーー・・・・・・最っ低〜」
清四郎が淡々と説明するのを聞いて、美童は呆れたように首を振った。
「そりゃ、悠理が意地になるのも無理ないよ。いつもは強引なくせに、どうしてそんな肝心な時
だけ、そーゆー間抜けな事するかなァ・・・」
そして、いきなり思いがけない強さで友人の左手を取った。

目を白黒させている清四郎の薬指に指輪をはめるふりをしながら、美童は彼のいつもの声音を
真似る。
『これは、精一杯の僕の気持ちです。僕と・・・結婚してくれますね?』
至近距離でじっと目を覗き込み、微笑みを浮かべる。
『二人で幸せになろう、悠理』
そのまま手を持ち上げ、キスの真似をした。
役を演じきった美童は、されるがままで呆然とする清四郎の手をパッと放し、ウィンクを投げた。
「いつもの調子で、このくらい自信満々にやるべきだったね」
「僕は・・・そういう事には慣れていなくて・・・」
ぼんやりと自分を見る友人の胸ぐらを、美童はがっしと掴んだ。
そして、焦点が合わないほど顔を近付け、彼は胸に思いきり空気を吸い込んだ。

「この大馬鹿野郎!!誰だってプロポーズなんか一回勝負に決まってんだろ!本当に悠理と
結婚する覚悟を決めたんだったら、きちんと言ってやらなきゃいけなかったんだ!結婚ってのは、
女の子にとって・・・ものすっごく大事なことなんだぞ!?」
610横恋慕(96):04/10/29 00:32:10
普段は頼りない男から、ひと息に罵倒され、清四郎は絶句するしかなかった。
一方、美童は満足そうに微笑むと、また前を向いた。

「・・・和子さんから聞いたよ。親父さん達に婿入りを反対された時に、『僕は本気です』って啖呵
切ったらしいじゃないか」
呆然としたままの男の横で、一旦言葉を区切り、肩を竦めた。
「こないだ豊作さんにも確認した。例の婚約指輪、自分の貯金はたいて買ったんだろ?どうせ
婿入りするんだし、経費で落とすように勧めたのに、これだけは自分で買うって・・・なのに、
悠理がそれを知らないみたいだから、ずっと気になってた、って言ってたよ?」
「・・・・・・別に・・・そんなことはどっちだっていいでしょう。僕が納得したかっただけで、悠理に
渡す物が変わるわけじゃ・・・」
漸く、清四郎が不服そうな声を絞り出した。
その瞬間、美童は奇声を発し、見事な金髪をぐしゃぐしゃと掻き乱した。
「だああああ〜〜〜〜!なんでここまで言ってもわかんないんだよぉ!誰か、この頭でっかちの
バカをどうにかしてくれーーーーっ!!」

あまりの絶叫に思わず運転手もブレーキを踏みかけたが、一瞬後にはまた何事もなかった
かのように平然とした様子に戻り、運転に専念した。

はーーー、と長い息を吐き出した後、美童は呟いた。
「どんなに想っていたって、口にしなきゃ伝わるわけがないじゃないか。特に、悠理みたいな
ガキには・・・さ」

清四郎は口を開きかけて躊躇い、その瞳が自信なさげに揺らいだ。
何かを見つけようとするように。
611横恋慕(97):04/10/29 00:33:20
「・・・悠理が、僕の言葉を・・・そんな言葉を望んでいたと・・・?」
美童は返事の代わりにちょっと唇を尖らせ、櫛を取り出して自慢の髪を直し始めた。
「僕を嫌っていたんじゃ・・・嘘だ、あいつはずっと魅録を・・・」
ゆるゆると清四郎が首を左右に振ると、美童はポケットに手を突っ込み、肩を竦めた。
「・・・悠理は恋愛ってものも、自分の本当の想いもまるで理解してなかったし・・・。お前とは
違ってストレートに物を言うだろ?魅録ってさ。あんないい男に強引に迫られたら、普通の女
の子はまあ、なびいちゃっても仕方ないさ」
「美童、何を言い出すんです。悠理は・・・あいつは、普通の女の子なんかじゃ・・・」
笑い飛ばそうとして、清四郎はどこか上ずった声を出した。

「・・・女の子だよ」
前方を見据えながら、静かな声で美童は言った。
「ただの、恋する女の子だよ。清四郎、お前は一体あいつの何を見てたんだ?」

軽く張りつめた声音に気付き、清四郎は目を細めた。
その横顔は、いつもちゃらちゃらと軽薄な空気をまとっている男と同一人物とは思えなかった。


しばし沈黙が流れる。
その沈黙の意味するところを、清四郎は考えていた。そして、はっと瞠目した。

「美童・・・まさか、悠理のことを・・・?」
探るように呟くと、友人は口元に小さな笑みを浮かべた。



[続く]
612名無し草:04/10/29 12:25:43
>横恋慕
鼻血噴きそうです・・・(なにゆえ?)
び、美童が悠理をって・・・清四郎の勘違いですよ、ね?
しかし美童はそういう形で悠理の気持ちを知っていたのですね。
なんとも切なくなりました。

いつもわれわれに素敵な萌えをありがとうございます。
切ない話スキーとしましてはツボど真ん中です。
613名無し草:04/10/29 20:05:44
続き楽しみ〜♪ ワクワクしながら待ってます!
614名無し草:04/10/29 20:25:43
横恋慕、面白くなった!
ビドーがかっちょええっ!続き待ってます。

…ところで、新潟の地震で作家さんたち&ここの住人がた
大丈夫でしたか?
私は関東ですがあの時かなり揺れた地域だったので心配しとります。
615名無し草:04/10/29 21:59:13
>横恋慕
美童、凄く格好良い!
なんていい男なんだろう。
それに比べて清四郎は・・・。
てっきり、前回で悠理の気持ちを察したのかと思っていたら、全く見当違いな事を考えていたとは。
続きが楽しみです。
616名無し草:04/10/31 17:29:28
かれんtoみろっきが見たひ。。。。。
617名無し草:04/10/31 23:46:41
清×野 純愛モノをお願いします。
618名無し草:04/11/01 00:22:56
美×可、清×可×美で微Rみたいです
619名無し草:04/11/01 15:35:11
切ないのも素敵だけど、ラブラブで幸せバカップルな清×悠(ギャグ可)も
読みたいな。バレそでバレないのも面白いし。
620名無し草:04/11/01 17:00:19
どうでもいいけど清×悠ってなぜか皆に隠そうと頑張る
イメージがありますよね。照れ屋だから?
他のカプではあんまり隠そうと頑張って隠すイメージは
ないのですが・・・言う必要がないから黙ってるくらいで。

特にオープンになりがちなのは清×野、魅×野。
あれ?どっちも野梨子だ。
621名無し草:04/11/01 17:40:56
恥ずかしいのかな?そこがまだまだ「りぼん」カップルでヨシw
他のカポーは「コーラス」くらいまでは大人になってそうだね。
622名無し草:04/11/01 21:35:27
カプ話じゃなくてもいいから、むっつりな清四郎が見たい。

でも、考えてみるとチェリー設定の魅録も、意外とむっつりスケベタイプだったりして。
クラスメイトの女の子と爽やかに会話しつつ、実は悶々、妄想爆裂・・・なんてw
623名無し草:04/11/02 00:10:52
しかしチト落ちすぎでわ・・?
624名無し草:04/11/02 08:54:59
>623
書き込みがある限りは大丈夫>dat落ち
下がりすぎてもあげようとする住人じゃないしねw
絶対零度どつき漫才です。今回は魅録・可憐です。
お下品嫌いな方、凍死したくない方はするー願います。

有閑倶楽部ファンの皆様、こんにちは!「ラブラブ・クッキング」のお時間です。
今日は松竹梅 魅録さんと黄桜 可憐さんで「桃のコンポート」を作って
いただきます。では、お二人様、どうぞ!

「松竹梅 魅録です。男の手料理は得意だけど、デザート系はちょっとな。
ま、頑張るよ」
「黄桜 可憐です。ちょっとぉ、もう少し凝った料理にしない?簡単すぎ。
桃は季節外れだし。 あたしが料理上手なの知ってるでしょ?」
なんか制作サイドが「頼んます頼んます」って泣くものですから。すみません。
「仕方ないわねぇ……あら、魅録ってば。エプロン姿似合うじゃない」
「えっ……そ、そうか?いいから作ろうぜ」
「そうね、じゃ、まず桃を湯むきしまぁす。こうすると皮が剥けやすいの」
「おぅ、冷水にとったぞ。皮を剥けばいいんだな。」
「ああん!魅録、だめぇっ。そんなに強く…。そっとよ……そっと…。
優しく……撫でるように……」
「えっっ!!あ……ああ、桃な!桃!!」
松竹梅さん?顔赤いですけど、どうしました?
「何でもねーよ!剥いたぜ可憐!!」
「ありがと。じゃ、食べやすい大きさに切って」
「簡単だな。これでいいか?」
「……あっああぁ……んっ固くて……きつぅい……っ」
「なななななな何がっっ!?」
「ワインの栓。抜いて?」
「な!?ワイン!?ワインな!そうか!ワインかぁ!あっははははぁ!」
松竹梅さん?鼻血……お約束、ですか?
「うるせーよ!(ハァハァ)」
「どうしちゃったのよ、魅録ったら。ほらティッシュ。こっち向いて?」
「あ……ああ。悪いな、可憐。暑くてのぼせたらしい」(つっぺ中)
「ほーんとここ暑いわよねぇ。ちょっと脱ぐわ」
「ぬっ!?」
「キャミソールになっちゃうけど、いいわよね。エプロンつけるし」
「ぬぉぉぉぉぉーーー!」
あっ松竹梅さんっ!どこ行くんですか、松竹梅さぁぁぁん!

あ……松竹梅さん、隅っこで後ろ向いて屈んじゃいました。大丈夫ですかぁ?
「だ……っ大丈夫。ちょっと、ちょっと待ってくれ……」
「どうしたのよ?具合悪いの?魅録。そっち行こうか?」
「来るな!来るなぁぁぁああ!」
……黄桜さん、いろいろ、いろいろあるんですよ。そっとしておいてあげて下さい。
「変なのぉ。水着姿だって見てるくせに。ほんっとウブよねぇ」
わかってんじゃないですか!気の毒に……松竹梅さん……ホロリ。
「じゃ、先進むわね。グラニュー糖とワインを小鍋に煮立てて、桃を入れて
 煮ていきます。5分くらいでいいの。レモン汁を加え、粗熱を取ります」
「悪い。戻った」
「ん、じゃ、桃を取り出して、シロップを煮詰めてくれる?」
「わかった。これでいいのか?」
「はい、後は冷やすだけよ」

冷蔵庫で冷やしたものがこれですね。んー美味しそうです。
「お皿に桃とシロップを盛って、ミントで飾って出来上がり。
今日はアイスクリームも乗せるわね」
「へぇ。甘いもんは苦手だけど美味そうだな。綺麗だし」
ああ、なんか料理番組みたいですねぇ。
「料理番組なんだよ!違うのか!」

「魅録、早く食べないとアイスが溶けちゃうわよ」
「あ、ああ。いただきます」
「あたしのことも早く食べてね。溶けるわよ」
「………はい?え?……」
「わかったの?」
「………は…はい」
「じゃ、あたし達これで失礼しまーす。司会者、あとよろしくね」
「いっいやっ可憐!俺まだ心の準備がっ…!頼む!待ってくれ!まだ怖いの!って
可憐!かーれーんーっ!!」

ああー。松竹梅さん連れていかれちゃいましたね。若いって素晴らしいですね。
それでは皆様、「ラブラブ・シャイなあンちくしょう・クッキング」は
ここでお別れです。今まで本当に有難うございました。
来週からは『野梨子の部屋』をお送り致します。嘘です。ではさようなら!

おしまい
感想下さった方、読んで下さった方、有難うございました。
寒いの書いたら風邪引きました・・・・天罰。
629名無し草:04/11/02 11:28:25
>ラブラブクッキング
お疲れ様でした。毎回抱腹絶倒させていただきました。
美味しく可憐をいただくのではなく、可憐に美味しくいた
だかれる魅録くんなのでした。かわいいなあ。
『野梨子の部屋』。なんか違う番組を想像しそうです。

実は今日は朝からずっと某3分間のお料理番組のテーマ曲が
頭の中を回っていたのですが、お昼休みに来てみたら・・・
己の霊感にびっくりです。
630名無し草:04/11/02 14:05:40
>まだ怖いの!

(爆)
631名無し草:04/11/02 16:51:52
>ラブラブ・クッキング
お待ちしてました♪  本当に、若いっていいですねぇ(司会者風に)
可憐の魅力全開!なところと、うろたえまくる魅録の可愛さが
すごい好き。ふたりのやりとり、特に魅録の

>まだ心の準備が〜

に、私も思いっきり笑かしてもらいましたw
何気にレシピが、女の子のイメージに合ってるところも(・∀・)イイ!!
どうも有難うございました!(それと御身体、お大事に・・・・・)
632名無し草:04/11/02 17:02:19
>>ラブラブ
笑いました
まだ怖いのって魅禄…w
633名無し草:04/11/02 18:53:19
「可×魅 はじめての・・・」R
が見たいです。もちろん可憐攻めで。
634名無し草:04/11/02 22:08:04
>>ラブラブGJ!ミロク可愛い〜〜
んでそのあとどーなったの?って言いたくなったw

清×可×魅×のシリアスRどなたかうpしてください
635名無し草:04/11/04 00:30:43
*魅⇔可←清*のサイコ的ラブ系きぼん
636閑人戦隊:04/11/04 11:20:54
ちょっと寒い小ネタ集。
題して「変身していないときに悪人と遭遇したら」。
(変身するのか、というツッコミはさておき。)


1.可憐@ピンクの場合。
悪役0号「おい、何を探ってやがる、このアマ。」
可憐@ピンク「やあだあ、そんな怖い顔、し・な・い・の。」
悪役0号「・・・騙されんぞ・・・俺は・・・」
可憐@ピンク「疑われちゃうなんて、かなしいわあ・・・(上目遣い、首元から鎖骨がちらり)」
ぶぶーーーーー

あの・・・裏で清四郎@レッドと魅録@ブルーが倒れてますが・・・


2.魅録@ブルーの場合。
悪役1号「おい、あそこに綺麗なお嬢様が・・・」
悪役2号「清楚なお嬢様だよな。和服がそそるぜ。」
悪役1号&2号「よし、早速ナンパに・・・」
ずきゅーーーーん!(銃弾一発で二人倒れる)

セリフくらい言って倒してくださいよ。


3.野梨子@紫の場合。
悪役3号「ねえちゃん、可愛いじゃん。俺と飲まない?」
野梨子@紫「おほほほほほ、まあ、嫌ですわ。」
茶碗を忍ばせた振袖をぶんと振って撃チン。

ええ。ぶつけた場所が場所ですから。茶釜じゃなくてよかったね。
637閑人戦隊:04/11/04 11:22:46
4.美童@ブラックの場合。
悪役4号「よお、色男さんよ。この女、俺のなんだよな。」
美童@ブラック「ブ男が何言ってんだよ。彼女、迷惑してるじゃない。」
悪役4号「なんやと!?こら!!」(と殴ろうとする)
美童@ブラック「ぎゃあああああ!助けて!悠理@イエロー!清四郎@レッド!」

通りすがりに助けるのを迷う魅録@ブルーでした。


5.悠理@イエローの場合。
悪役5号「やいやい。ねえちゃん、金出しな・・・」
悠理@イエロー「やだ。(バキ!)」
キック一発。

これぞ本当の秒殺。手抜きではありません。


6.清四郎@レッドの場合。
悪役6号「こないだの模試で全国トップだった奴だな!殴らせろ!」
清四郎@レッド「・・・ニイイチンスラ・・・」
悪役6号「あ?」
清四郎@レッド「お前はもう、死んでいる。を北京語で言ったんですよ。」
悪役6号「な、何を・・・う・・・!」

トイレに駆け込む悪役6号クンに幸あれ。というかいつの間に下剤を?



以上です。
野梨子と悠理は一撃必殺。清四郎と野梨子はどちらもシモ。
この3人の共通性を描いてみました。
638名無し草:04/11/04 20:56:15
>戦隊
たしかに寒い・・・。けど、それなりに笑いました。

真っ先に悠理@イエローを頼る美童と、多分無視したであろう魅録。
(だって彼は呼ばれてないしね)
そして、いつの間にか下剤を一服盛ってる清四郎に。
639名無し草:04/11/04 22:18:28
>閑人戦隊
美童@ブラックの場合が、私的には一番ツボでした。
助けるのを迷う、魅録@ブルーが好きw
各ネタ毎の、さりげないツッコミも楽しかったです。
それにしても野梨子………(笑

ところで、戦隊もの=変身は欠かせないかと思われ。
そうなるとコスチュームは…聖プレジデントの制服型とか?
(…自分で書いててかなり寒い………鬱だ…)
640名無し草:04/11/04 23:51:23
ジャージで決まりでしょう。6色の。
って、そういえば体育のシーンって、出てきたことがないような…
641名無し草:04/11/05 01:01:42
可憐微Rまってるよ。神の作家さま
642名無し草:04/11/05 01:26:08
可憐、可憐、って、いいかげんウザイな。
1行リク何度もやられると萎える。
黙って待とうよ。
643名無し草:04/11/05 04:53:43
自分も思ってた。多分毎回同じ人。
644名無し草:04/11/05 16:46:18
まあまあ、マターリと待ちましょ。
645名無し草:04/11/06 00:49:03
待てねえっちゃ!!!
646名無し草:04/11/06 11:46:35
「この程度の我慢ができないとは、まだまだ修行が足りませんな」
「あらぁ、女を待たせるなんて最低よぉ」
「そうですわよね。それに、こんなに出番がなくては体がなまってしまいますわ」
「体がなまるって野梨子は元々…って、あたいをそんなに睨むなあっ!」
「――いいじゃん、俺ら御大にも、ずっと放って置かれてるんだし。もう慣れっこだろ……」
「魅録ってば、ヤンキー座りのまま拗ねるのはやめなよ…ほらちゃんと立って」
647名無し草:04/11/06 16:56:46
↑何?
648名無し草:04/11/06 22:51:35
ワラタw
649名無し草:04/11/06 22:59:16
6人の顔が目に見えるような会話。GJでつ>646
いじける魅録とそれを慰める美童が特にかわいいw
650名無し草:04/11/07 19:25:05
かなり落ちてますね。ホシュ代わりに願望。
連載の続き、お待ちしてます…
651名無し草:04/11/08 00:33:43
悲しいが廃れてきたな、しかし。
652名無し草:04/11/08 15:28:04
保守
653名無し草:04/11/08 19:20:09
行楽シーズンできっと皆さん忙しいのことよ

連載の作家さま&ネーターの皆様、お待ちしてますー
(自分でネタふれなくってゴメソ)
654名無し草:04/11/08 22:12:50
わわ、最後から5スレ目まで落ちてる。
ハラハラ…

ネタなくてスマソ
655名無し草:04/11/08 23:21:53
>650 >654
板内でのスレの順位が下なのは、全く心配しなくていいんだよ。
書き込みのあるスレはdat落ちしないシステムだから(dat落ちの
基準は順位ではなく、最終書き込みの日時)。
板内で下の方にスレがあると、荒らしが来ないから、むしろ好都合。
656名無し草:04/11/08 23:54:51
『鬼闇』うpします。
>>470の続きです。
オカルト&一部グロテスクな表現がありますので、
苦手な方はスルーして下さい。
657鬼闇(82):04/11/08 23:56:38
チリーン、チリーン、チリーン。
清四郎が鐘を持ち、一定の間隔で鳴らし続けている。
「うん、やっぱりこの方が雰囲気あるよね。」
のん気に語る美童に、魅録が溜息と共に口を挟んだ。
「お前なぁ、事の重大さが解ってるのかよ?」
「だからこそ、少し余裕を持たせたほうが良いんだって。」
美童にしては珍しく真っ当な意見だ。
「そうですね。」
うっすらと笑みを浮かべながら頷く清四郎に、魅録がチラリと視線を投げかけた。
「お前さんは余裕がありすぎるんだよ。」
「そんな風に見えますか?」
「ああ、見えるね。」
隣で視線を送り続ける魅録に、清四郎は涼しい顔で答えた。
「それは修行の賜物です。」

「それにしても、あの鬼はこの町から離れないよねぇ?他の所へ行っても良さそうなのにさ。どうし
てなんだろ?」
美童の疑問に、清四郎が闇を見つめながらゆっくりと口を開いた。
「他に移られたら、それはそれで困るんですけどね。多分結界が張ってあるからでしょう。」
「結界?この町に?」
美童は魅録と顔を見合わせた。
「ええ、この町そのものが結界になっているんですよ。この町に来たばかりの時、僕が地図を見て
言ったでしょう?どうしてこんなに神社が多いのかって。」
「そういえばそんな事言ってたな?」
魅録の言葉に、美童も首を縦に振った。
「僕達が行って来た神社、そしてこれから向かう神社が結界を張っているんです。」
清四郎は落ちていた枝で地面にひし形を描き、上から順に頂点を枝で示しながら説明を始めた。
「北の玄武、南の朱雀、東の青龍、西の白虎。それぞれに社を置き、見えない結界を造り出して
この町を覆っています。佐々義忠が千年後に現れるであろう鬼を仕留める為に造ったのでしょう。
鬼がこの町を出るには、社を壊さないと無理だと思いますよ。」
658鬼闇(83):04/11/08 23:58:09
なるほど、というように腕を組んで聞き入っていた二人だったが、美童がふと頭に浮かんだ素朴な
疑問を口にした。
「どうして壊さなかったのかな?」
流石に清四郎もこればかりは何とも答え様がなかった。
「鬼よりも僕達の行動の方が早かったとしか言い様がありませんね。久しぶりに出たこの世界に長
居しすぎたんじゃないですか?」

「もう力も妖力も封じちゃったから無理だしね。」
ほっと安堵の吐息を漏らしながら、美童が微笑んだ。
「あとは、お前さんにかかっているって訳だ。」
魅録もニヤリと笑うと、清四郎の肩をポンと叩いた。
「そういうことになりますね。荷が重いですよ。」
肩をすくめる清四郎に魅録が追い討ちをかける。
「そうだな、人類の未来がかかっているからな。」
「あまりプレッシャーをかけないで下さい。」
清四郎は大きく息を吐くと、再び鐘を鳴らした。
チリーン、チリーン、チリーン。
辺りには鐘の音だけが静かに響いていた。


玄武神社でも既に神主が三人を待っていた。
「有難い、有難いこっちゃ。宜しく頼んます。」
両手で瑪瑙の玉を抱えながら、神主は何度も頭を下げた。
「僕の出番だよね?」
一歩前に出た美童に、清四郎と魅録が頷いた。
「すみません、これ朱雀神社の神主さんからお借りしたものですが、お預けしてもいいですか?」
美童から三鈷剣を受け取った神主の顔には、驚きの表情が浮かんでいた。
「このお宝を朱雀が貸したって?」
「ええ、小鬼を切ってしまったので、血で汚れてしまいましたけど。」
申し訳なさそうに美童が付け加える。
659鬼闇(84):04/11/08 23:59:24
「ほーっ、あいつがのう。いつもピカピカに磨き上げて、大事にしまっていたのになぁ。」
受け取った刀を眺めながら呟いた神主の言葉に、美童の顔から血の気がさっと引いた。
いくらTシャツで拭いたとはいえ血の跡はそう簡単に消えるはずもなく、刀身には流線形に、柄の
部分には所々赤い血が滲んでいた。
「えっ、ほ、本当ですか?思いっきり血の跡が付いちゃいましたけど…」
美童の顔色が変わったのを見て取った神主が、安心させるようにかっかっかと笑った。
「いや、あいつが貸すといったんだ、構わんさ。鬼を切ったことでまた伝説も増えるじゃろ。」
「良かったー、弁償しろって言われたらどうしようかと思った。」
美童もへへへっと一緒に笑った。

「ところで、手を洗わせてもらっていいですか?返り血で汚れたまま玉に触るのも申し訳なくって。」
神主は改めて美童を始め、魅録、清四郎の全身を眺めた。
清四郎には一滴の血の跡さえ付着していなかったが、上半身裸の魅録は顔や腕に薄っすらと血
を拭った跡が、美童に至っては、白いシャツが所々赤いペンキをかけたように染みになっていて、
戦いの凄まじさを物語っていた。
「おお、そうじゃな。祥子、祥子!」
神主の呼びかけの後、少ししてから若い巫女が現れた。
「何でしょう?おじいさま。」
それは緋色の袴姿のよく似合う、艶やかな黒髪を垂らした美しい娘だった。
三人の男を目にして、頬がほんのりと赤く染まっている。
そんな彼女を一目見て素早く反応した人物が一人、そう、美童である。
自慢の金髪を掻き揚げながら、美童は満面の笑みを湛えた。
「はじめまして、僕、美童グランマニエ。スエーデン大使の息子です。」

「美童、自分の姿を良く見てからアピールするんですな。」
清四郎の冷たい言葉に我に返った美童は、恐ろしいものを見るような視線を送っている彼女と
目が合った。
美童は清四郎の言うとおり、改めて自分の姿を見下ろした。
正に血だらけといった表現がぴったりだ。
たった今、神主に血を拭うものを頼んだばかりであることを、美女を前に忘れてしまっていた。
660鬼闇(85):04/11/09 00:00:27
「ごめんね、怖がらせて。」
美童は残念そうに呟いた。
「祥子、この人たちにタオルを濡らして持ってきてくれ。」
「はい、ただいま。」
神主の言葉に、祥子と呼ばれた娘はパタパタと奥へ掛けていった。

「美しい巫女さんですね。」
巫女の衣装を身に付けているせいだろうか?
神聖な雰囲気を漂わせている祥子に、美女など見慣れたはずの清四郎でさえ、その美しさには
目を奪われずにいられなかった。
「ああ、祥子か?自慢の孫娘でな。しかし…」
そう言って溜息を吐く神主の顔は、孫娘を心配する祖父の顔だった。
「どうかされたんですか?」
「巫女にはさせたくなかったんだがな。」
渋い顔をして呟く神主に、清四郎は人づてに聞いた事のある都心の神社の現状を話した。
「若い女性には多いみたいですよ。あの衣装を着てみたいという理由から、バイト希望の女性も
多いと聞きますし。」
「都会ではそうじゃろうが、この玄武神社は歴史を尊ぶ神社でな、巫女は代々神に一生を捧げる
んじゃ。神主としては有り難いことじゃが、祖父としてはなぁ…。複雑な心境じゃよ。」
神主は再び大きな溜息を吐いたが、清四郎は驚きを隠せなかった。

この時代に巫女として一生を捧げるなんて、時代錯誤もいいところだ。
――いや、それがこの鬼来里なのだろう。
千年という長い間、里を守り、時代を守った人々の思いや祈り。
その古からの流れを守りきれなかった今、再び鬼を呼び起こしてしまったのかもしれない。

そんな清四郎の物思いを破ったのは、美童の悲痛な声だった。
「神に一生を捧げるって、まさか…恋愛や結婚をしないってこと?」
「その通りです。美童には考えられないことでしょうが。」
661鬼闇(86):04/11/09 00:01:28
「あんなに綺麗なのに、何てもったいない!」
美童の心からの叫びだった。

「お待たせしました。」
祥子は絞ったタオルを二本持ってきて、美童と魅録に渡した。
美童は顔や腕、掌を、魅録は上半身全てをタオルで拭った。
「気持ちいいー!」
二人は声を揃えた。
顔を拭いた美童は、いつもの美しい顔を取り戻せたことに喜びを感じていた。

祥子は美童と目が合い、赤くなって目線を逸らしたが、逸らした視線の先には魅録の何も身に付
けていない上半身が目に飛び込み、真っ赤になって俯いた。
魅録はそんな祥子に全く気が付いてない様子で、気持ちよさそうに身体を拭うと、汚れたタオルを
祥子へと返した。
「有難うございました。」
祥子は赤い顔をしたまま赤茶色に染まったタオルを受け取ると、そそくさとその場を離れた。
「どうしたんだ?」
魅録が不思議そうな顔をして神主へと視線を巡らせた。
「お前さんたちのような男前に、あまり会ったことがないんじゃよ。」
「おじいさま!聞こえてます!」
そう叫ぶ祥子の久しぶりに見た娘らしさに神主もかっかっかと声を上げて笑い、喜んでいた。


「気を付けておくれよ。」
見送る神主に礼を述べ、三人はそれぞれ持ち場へと向かった。
清四郎と魅録は刀守神社へ、美童は瑪瑙の玉を手に鳥居の下に立った。
瑪瑙の玉を両手に高々と掲げると、ぼうっと淡く光った。
やはり、鬼の咆哮は聞こえなかった。
662鬼闇(87):04/11/09 00:02:30
――と、その時。
淡く輝いていた玉が突然まばゆい光を放ち始めた。
野梨子の持つ水晶の玉、可憐の持つ石榴の玉、悠理の持つ翡翠の玉、そして美童の持つ瑪瑙
の玉。
その四っつの玉が目が眩むほど輝いたかと思うと、一条の光となって走った。
光は四方から刀守神社の上で集まり、一つとなって町全体を輝かせ、天に向かって走った。

「ギィーッ!」
あちこちから小鬼の悲鳴が聞こえ、次々と姿を消していった。
しばらくして闇の中から一条の光が差し込んだ。
その光は闇を押し返すように、徐々に広がっていく。
やがて覆っていた闇が全て取り払われ、町には青空が広がった。
闇は跡形も無く消えた。

「おお――っ」
家の中に潜んでいた人々が、次々と窓や戸の隙間から顔を覗かせた。
久しぶりの青空に、次々と外へと足を向ける。
眩しいばかりに輝く太陽の光を全身に受け、皆は顔をほころばせた。
「やったぞ!明かりだ、太陽の光だ!!」
「やっほう!」
誰もが喜びの歓声を上げようと空を見上げていた。

キラリ、と何かが光った。
「何だ、あれは?」
一人の男が天に向けて指差した。
始めは黒い豆粒大だったものが、次第に大きさを増していく。
それはみるみるうちに大きくなった。
やがて足が、手が、そして体が見えてきた。
その姿を目にした町の人々の顔が恐怖に歪み、再び家の中へと飛び込んだ。
663鬼闇(88):04/11/09 00:03:39
「お、鬼だ――っ!」
ピシャン!ピシャン!ピシャン!!
あちこちで戸の閉まる音が響いた。

――ズシン!
地響きと砂埃を立てながら、鬼は地面へと着地した。
その身の丈は優に2メートルを超えている。
青白い顔とは対照に両目は赤く血走り、夜叉のごとく吊り上っていた。
鼻はひしゃげ、耳元まで裂けた口からは太く鋭い牙を剥き出しにしている。
そして頭には鬼の証――二本の角。
日の光の中に鬼が初めて正体をさらけ出した。
纏わりついていた闇はもうない。


一瞬玉の光に眩んだ目は残像で周りが見えなくなる程強烈だったが、それでも四人は光の行く末
を見届けていた。
ようやく残像が消え、通常の視力を取り戻した野梨子、可憐、悠理、美童は、自らの手の中にある
玉に目を落とした。
その玉は、ぼぅっと光ったり消えたりを繰り返していた。
「刀守神社ですわね。」
「あの光を目指せってことよね。」
「清四郎、魅録、あたいの出番を残しておけよ!」
「二人の応援に行かなきゃ!」
まるで光に導かれるかのように、四人は玉を抱えたまま刀守神社へと走った。

             【つづく】
664名無し草:04/11/09 02:03:37
以前、>445のコネタを書いた者です。
その時のネタ+一行リクや、前スレの埋め立てリクを元にした
短編を思いついたので、うPさせて頂きます。
カプは魅×可です。苦手な方、合わないと思われた方はスルーお願いします。
「きっ……黄桜さん!」
手入れの行き届いたウェーブのロングヘアを揺らし、彼女が振り向いた。
ふわりと漂う甘い香りと自分に向けられた視線に、彼は微かに頬を赤くし、口ごもる。
陽も傾きかけた聖プレジデント学園の廊下に、二人の影が伸びる。

「あ……あのっ……僕なんかが直接声をかけて、こんなこと言うのは分不相応だってわかってるんですけど……」
傍から見ても判るほど緊張し、さらに赤くなりながら言葉を紡ぐ彼に、可憐は冷静な検分の目を向ける。
金持ち学校のお坊ちゃんらしい、礼儀正しい真面目そうな、それでいて品よく整った容姿。
彼女の高すぎるともいえる理想には適わぬとしても、充分な魅力と条件を備えていると言えるだろう。
でも違う。不思議なくらい醒めた心の中で、可憐は呟く。
(あたしが欲しいのは――)
彼女の脳裏に、ある男の顔が過ぎった。目の前で言葉に詰まっている下級生の純情そうな姿が、
少し彼を思い起こさせたのかもしれない。
「とっ、とにかくこれを受け取ってください!捨てて下さっても構いませんから!」
いきなり差し出された白い封筒。可憐にとっては決して珍しいものではない。
「……わざわざあたしに?」
下駄箱に入れるなど、彼女の手に渡る方法は他にもあるのに。
「どうしても自分で渡したかったんです。返事が欲しいとかじゃなくて、自分の中でけじめをつけたくて――」
生真面目で真摯な言葉に、心が和む。
「……ありがとう。嬉しいわ。後できちんと読ませてもらうわね」
そう言って、可憐が艶やかな笑みを向けると、彼はぎこちなく頭を下げ、急ぎ足で立ち去った。
その姿を目に留めながら、可憐はもう一度軽く微笑むと、自分の手に残された封筒を返す。
「……読んであげるのが礼儀だものね」
ぽつりと呟くと、再び生徒会室へと向かう廊下を歩き出した。
「可憐」
忙しげな足音と共に、肩を軽く叩かれる。
見上げると、美童が隣で意味ありげな笑みを浮かべながら、さらりと背に流した長い黄金色の髪を片手で整えていた。
その顔を見て、可憐は全てを察した。
「見てたの?相変わらず人が悪いわね」
「そっちこそ、取り巻き候補には事欠かないみたいだね」
「失礼ね。そうとは限らないでしょ」
反発と怒りめいたものを潜めた声音。からかうように彼女を見つめていた青い瞳が、真剣な色をおびた。
「……まさか本気とか?」
半信半疑で問う美童に、可憐は捉えどころのない微笑で応える。
「だったらいけない?」
「別に悪いなんて言ってないよ。でも――」
不意に真剣になった美童の言葉を遮るように、可憐は足を速めた。
「待ってよ、可憐。倶楽部だろ?ならそんな急がなくたって……」
確かに生徒会室はすぐそこだ。別に仕事で忙しいわけではない。
今日も暇を持て余した仲間たちが、自分と同じように集まっているのだろう。だから――
扉の前に立ち、少し昂ぶる胸中をなだめるように、軽く息をつく。
そして小さく深呼吸した後、顔を上げ、いつものように颯爽とドアを開けた。
「あら、可憐。美童も一緒でしたの?」
上品な和風の包装紙に包まれた菓子折を手にした野梨子が、屈託のない笑顔で迎えた。
「そうなんだよ。ちょうどその廊下で行き合わせてさ」
含みを持たせた、愉しげな口調で美童が答えた。それを無視し、可憐は尋ねる。
「あら、どうしたのそれ。頂き物か何か?」
「ああ、これ――」
野梨子が困惑顔で説明しようとした時、いつもの席で本を読んでいた清四郎がひきとり、続けた。
「野梨子のおばさんが持ってきたそうですよ。お見合い話と一緒に」
ああ、なるほど。眉を顰め、不機嫌そうな野梨子の顔を見て、可憐は思わず笑い出しそうになった。
「それを僕達に、ってことは、祝い菓子ってところですかね」
「からかわないで下さいな、清四郎。私、結婚する気なんて毛頭ありませんのに。いい迷惑ですわ」
「おや、じゃあ厄払いですか」
くすくす笑う清四郎と、彼を軽く睨む野梨子の間に、可憐はふと、独特の空気を感じ取る。
付き合いの長い二人ならでの親しみ。
そしてそれは、ドアを開けた時点で気が付いていた、窓際の席に座る二人にも共通しているのかもしれない。
片膝を抱えた格好で椅子に座った悠理が、我慢できなくなったのか、あっさり片付けた。
「結婚祝いだろーが厄払いだろーが、なんだっていいだろ。野梨子が食っていいって言ってるんだからさ、
 早く開けようってばぁ」
「お前……たった今、俺の持ってきた菓子、食ったろーが」
その傍らで、悠理のギターのチューニングをしていた魅録が、呆れたように笑った。
そんな二人の無邪気なやり取りに、可憐の胸がちくりと痛む。
「どうでも良くありませんわよ。それなら悠理はいらないということでよろしいのかしら?」
「えーっ!?」
野梨子のからかい半分のお返しと悠理の叫び、魅録達の笑い声を断ち切るが如く、
「じゃあ、あたしお茶入れるわね!野梨子、それ和菓子でしょ?」
可憐はそう言うと、野梨子の返事を待たずに、給湯室へと向かった。
エレキギターの音と、静かな調子で交わされる会話以外音の無かった生徒会室に、
ドラマティックなメロディーが響いた。魅録が手を止め、その方向に目を遣りながら言う。
「可憐。電話だぞ」
可憐は、はっとしたような表情で湯呑を置き、着信音を鳴らし続ける携帯を手にする。
「……もしもし。ああ、あたし……どうして?――え?」
周囲を憚り、低い声で話していた可憐の様子が、微妙な困惑と苛立ちを見せ始めた。
「だから……この間話した通りよ。……そう。だからもう――」
そこで可憐は言葉を切り、怪訝な顔で自分を見つめている5人を見渡す。
「とにかく今日は――ううん。今日もダメなのよ。……ごめんなさい、今ちょっと忙しいから。……それじゃ」
通話停止ボタンを押すと、大きく息を吐き、長い髪を掻き上げた。

こういった会話を交わすのは、これで何度目だろう。半ば投げやりに可憐は思う。
――自分から振るのって、こんなに重苦しい気分になるものだったっけ――
そんな可憐を慮ってか、清四郎と野梨子は口を噤み、読みかけの本を手にする。
美童も素知らぬ顔で携帯を取り出し、メールを打ち始めた。
悠理は、なおも何か言いたそうな目で可憐を見ていたが、魅録が悠理の袖を引き、首を横に振る。
そっとしておいてやれ、という仕草だ。
いかにも彼らしい――気心の知れた男友達としての、優しさと気遣い。
だが、それを目にした途端、可憐の心には嬉しさや安堵以上に、苦く、複雑な感情が込み上げてきた。
(あたしが欲しいのは、そんなんじゃない)
(誰のためにこんな思いしてるのか、少しはわかってよ)
チューニングの手を止め、気がかりそうに自分を見つめる魅録の姿にはあえて気付かないふりをして、
可憐は湯呑に残っていた緑茶を口にした。
「そういえばさぁ、可憐。さっきの彼、結局なんの用だったわけ?」
携帯をポケットに入れた美童が、屈託の無い調子で問いかけた。
可憐は、瞬時考え、
「――え?ああ。別に、たいしたことじゃないわよ」
素っ気なく答えると、彼にだけ伝わるような怒りを込めて、軽く睨みつける。
(わかってるくせに、どういうつもりよ)
美童は余裕で微笑むと、可憐の気持ちには構わず、話を続けた。
「確かにそうだよね。可憐にとっては日常茶飯事だもの。僕もそうだけど」
嬉しそうに言いながら、今日一日で貰ったらしい、女の子からの手紙や差し入れを、机の上に並べ出した。
「おや、直接告白されたんですか。相変わらずもてますね」
「今日は、何通お手紙を頂きましたの?」
何かを感じ取ったらしい清四郎と野梨子も、さり気なく会話に加わってくる。
ちらりと魅録の方を見ると、悠理と何やら熱心に話し込んでいた。今度コピーする曲の話をしているらしい。
半ばどうにでもなれ、という感じで、野梨子に聞き返す。

「あんたこそどうなのよ。いい加減ちゃんと読んであげてるの?じゃなきゃ、あんまり可哀相じゃない」
「私のことは気にしないで下さいな。それに今は、特定の殿方とお付き合いするつもりはありませんもの」
「野梨子は、ずっとそうじゃないか。それも、もったいないと思うけど」
美童が、笑いながら茶々を入れる。
「可憐は、いつもきちんと読んであげてますわよね。それが礼儀だっておっしゃって」
「……そうよ。付き合う付き合わないは、別にしてね」
そう答えながら、ポケットの手紙を取り出し、封を切った。きちんと折りたたまれた数枚の便箋を開くと、
几帳面に整った直筆の文字が並んでいる。
「そうだってさ、野梨子」
話はちゃんと聞いていたらしい悠理が、からかうように言った。
「あら、その気がないなら、最初からはっきり断るのも礼儀だと思いますわよ」
「それはそうだけど、全く相手にしないではねつけるっていうのも――」
野梨子と美童の間で、論議が勃発しそうな空気の中、悠理があっけらかんと尋ねた。
「へえ。じゃあ、可憐もそうなったのか?」
手紙を読み耽っていた可憐は、虚を突かれた顔で悠理を見た。
「あたしが何?」
「その気がないから、男の誘い断りまくってるんだろ。さっきもそうだったじゃん」
生徒会室が、しんと静まり返った。美童と野梨子――清四郎と魅録も、悠理と可憐の様子を見守っている。
「――そういうことだよね。悠理」
美童が、我が意を得たりといった笑顔で答える。清四郎と野梨子も、おぼろげながら察したようだ。
美童の意図にようやく気付き、可憐は狼狽した。
――ばか!誰がそんなお節介焼いてくれなんて頼んだのよ!

「だろ?だから最近、いろんな奴から愚痴とか聞かされて困ってるんだよな、魅録」
「ほお、悠理が事情を察する程、噂になってるんですか」
面白そうな清四郎の声。魅録の反応はない。知る余裕も勇気もない。
これ以上、この場にいたら、何がどうなるかわかったものではない。

「あーもう!!いい加減にしてよっ!人の噂を暇潰しのネタにしないでちょうだい!」
そう叫ぶと可憐は、急いで手紙を封筒に戻し、鞄を手にして立ち上がった。
「あたし、今日は急ぎの用があるから!お先に!」
「おい、可憐――」
魅録が自分の名を呼んだようだったが、可憐は振り向かず、生徒会室を後にした。
さらに陽が落ち、周りの風景が茜色に染まった頃。
正門へと向かう道を、可憐は早足で歩き続けた。頬が熱いのは、息が切れるほどの速さで歩いているせいか、
それとも、自分の気持ちを悟られたかもしれない、という焦りからか。
さすがに苦しくなり、足を止めた時、
「――可憐!」
確かにその声が、可憐の耳に響いた。胸の鼓動が、大きく跳ね上がる。
走ってくる足音が近付き――やがて止まった。
振り向くと、すぐ側に息を切らし、額の汗を手の甲で拭う魅録の姿があった。
「――魅録」
速まる鼓動と、動揺する心を抑えるように、可憐は髪を掻きあげる。
「どうしたのよ。そんなに焦って」
「え……どうって……」
可憐が差し出したハンカチを、戸惑ったように受け取りながら、魅録は言った。
「なんだか無性に追っかけて、聞かなきゃいけないような気がしたんだよな。……美童とかにも、せっつかれたし」
後の方は、ぶっきらぼうに呟く。その言葉と姿に、可憐は苦笑しそうになった。
(ほんと優しくて――でも、どっか鈍いんだから。それにあいつら――お節介もいいところよね)
どちらが言い出した訳でもなく、魅録のバイクが停めてある駐輪場に向かい、ゆっくりと歩きながら魅録が口を開く。
「――最近、静かだな」
「何が?」
「お前の周りだよ。取り巻き連中とかいないし、彼氏からの電話もないみたいだし。なんかあったのか?」
どうやらそれが、聞きたかったことらしい。悠理の言葉からすると、以前から知ってはいたようだ。
無論、理由までは解らなかっただろうが。
「……そういうのやめたのよ。本命が見つかったから」
可憐は、自分でも不思議なくらい、落ち着いた気持ちで答えることができた。
視線を先に向けたまま、魅録がぎこちなく言葉をつなぐ。
「へえ。相当本気なんだな」
「そうよ。そのくらいしないとわかんないんじゃない?こういうことには、いかにも鈍そうな奴だから」
暫し、沈黙が支配する。
「……どんな奴なんだよ?」
切れ長の眼が、真剣な光を帯びて可憐を見つめる。
可憐は足を止め、その目を見返すと、悪戯っぽい笑みを口元に浮かべて言った。
「女と遊んでるより、男と遊んでる方が楽しい、男友達」
そんな可憐を見つめたまま、魅録は眉を寄せて考えていたが――やがてその頬がうっすらと赤く染まった。
「そっ……そうなのかよ」
「そういうこと」
可憐が、もう一度艶然と微笑む。
「あたしじゃ嫌なの?」

「……嫌なわけないだろ」
再び訪れた沈黙の後、軽く引き寄せられた可憐の耳元で、ふてくされたような声が答えた。
これで終わりです。
改行など、読みにくくて申し訳ありません。
読んで下さった方、スルーして下さった方、有難うございました。
674名無し草:04/11/09 02:14:04
度々申し訳ありません。>673、名前欄。消し忘れました…………。
修行し直してきます…………。
675名無し草:04/11/09 08:37:54
なかなか良かったですよ!久々の潤いですた〜
魅録の心情がもう少し表に出してもらえるともっと良かったですけど。
乙!でした、続きみたいです。  
676名無し草:04/11/09 10:38:40
>鬼闇
待ってました!!
今回も読みながらワクワクして面白かったです。
今後どのように展開してゆくのか本当に楽しみです。
続きをお待ちしています。
677& ◆13ngPvBfT. :04/11/09 12:37:51
>鬼闇
上半身裸で顔や腕に血がついている魅録・・・
今更ながら萌えさせていただきました。
思わず女性を口説こうとする美童がらしくて笑いました。

いよいよ鬼退治クライマックス!楽しみにしております。

>UNDER THE ROSE
秘密と言いながら魅録以外にはばればれなあたり、
とてもらしいです。(w
678名無し草:04/11/09 16:20:05
>673 お疲れさまでしたv

昨日変な夢見た。
野梨子と「頭文字D」の高橋兄が婚約してて倶楽部のメンバーが
慌てふためくという夢でした(?)

なんじゃコリャと思いつつよく考えると

清四郎→医者の息子
魅録 →車好き
美童 →美形

それぞれに最強ライバルじゃんとか朝からくだらないこと
考えちゃったよ。

でも私の中の野梨子って倶楽部でマターリお茶してる時とかにいきなり
「わたくし、婚約しましたの」とか言って婚約披露の招待状配ったり
するイメージがある・・
清×野スキーダケドネ

逝ってきます
679名無し草:04/11/10 00:35:37
やっと来たーーーーーーーーーーーーーーーーー!
可憐ネタ!段階踏んでくだせーーーみろっちガンガレ!!
680名無し草:04/11/10 09:04:24
>678
それネタがよくわからない・・・
頭文字Dというのを知らないとダメなんだろーな。
それにしてもみんな、結構他の漫画知ってるなあw
681名無し草:04/11/10 10:54:01
>678
考えてみると高橋兄は倶楽部の男性3人のおいしいところを全て持ってるね。
たしかに最強ライバルかもw
髪型のせいか、高橋弟と魅録も前々からイメージがダブるなあと思ってた。
682名無し草:04/11/11 21:24:47
なんかキモいのが……('A`)
683名無し草:04/11/11 21:51:41
ネタカマン
684名無し草:04/11/13 13:50:12
連載щ(゚д゚щ)カモーン
685名無し草:04/11/13 16:32:18
・・潮時か。
686名無し草:04/11/14 15:42:30
紀宮さま 結婚おめ!
687名無し草:04/11/14 17:04:17
・゚・(つД`)・゚・ さみしい

688名無し草:04/11/14 20:26:55
さーやのファン?負け犬?
689名無し草:04/11/14 22:22:42
ボツネタ・・・。野×清ネタ(嫌いな人ごめんね)です。

悠理と大恋愛、そして破局を迎えた傷心の清四郎は、一人ハーバード留学を決めた。
それから2年、清四郎は一度も日本には帰って来ない。
友人達へのメールも途絶えた。
2年の間に悠理は失恋から立ち直り、新しい恋へと向かっていく。
幸せになった悠理を見て、じっと清四郎への想いを秘めていた野梨子は決意する。
「向こうが帰って来ないなら、私がボストンへ行きますわ」
野梨子、押しかけ女房編。

を書いてみたかったんですが、日本語不自由発覚・・・orz
ほんと作家さんて 神 だと思ったあの日・・。下らんネタスマソ。
690名無し草:04/11/14 22:47:17
『サヨナラの代わりに』をうpします。
>406の続きです。
691サヨナラの代わりに (81):04/11/14 22:50:24
「野梨子、今から俺がする話、とりあえずは黙って聞いてくれるか?」
白鹿流のお弟子さんのひとりが経営するフレンチレストランで食事をしている最中、急に
魅録が改まって私に話し掛けてきた。
「ええ、でも、急になんですの?」
私は動かしていたフォークとナイフを止め、魅録に訊いた。
向かいに座る魅録は少し困った顔をしていて、口を開いたもののどう続けようか
思いあぐねているように見えた。
私の心の中に、不安な気持ちが渦巻き始める。
今までに話していないことで、ものすごく重要なことがあるというのだろうか?
それとも、今までに話したことがあることで、何か重大な変化があるというのだろうか?
とりあえず、結婚に関することを考えてみたけど、結婚式のことも披露宴会場のことも
新居のことも、今から変更してもまだ間に合うから、そんなに改まって思いあぐねることではない。
それに入籍については、私にも両親にも婿を取るという発想がなくて、私が松竹梅の方に
行くことで話は決まっている。
あと、何があるだろうか?
白鹿流のことかしら?
仕事を完全に辞めることは難しいけど、ペースを落とすことはできるし、魅録との生活を
優先させたいので、それは現実問題として今、少しずつ周りと調整している。
やっぱり、何を言おうとしているのかわからない。
私は魅録の顔を穴が開くほどじっと見つめ、急かすまいと自分に言い聞かせて魅録を待った。
魅録は躊躇いを振り切れないのか目線をあちこちに彷徨わせ、かなりの時間がたってから
ようやく口を開いた。
「ああ、今まではちょっと言えなかったんだ。……俺は、関わりはあるんだけど、
俺自身のことでもなくて……」
中途半端なところで一旦言葉を切る。
魅録は煙草を吸おうとしたのか胸ポケットに右手を入れようとした。
が、入れる寸前で止めて、両手をテーブルの上に組んで私の顔を正面から見据えて言った。
「……悠理には、4歳になる娘がいるんだ。で、悠理の娘は俺の子供じゃない」
692サヨナラの代わりに (82):04/11/14 22:52:26
「……いきなりこんな話で、びっくりしたよな。だけど、事実なんだ」
話し終えて、魅録は力ない表情に僅かの笑みを浮かべた。
私はあまりのことに、魅録にかけるべき言葉を見つけられない。
頭の中で、最後に悠理に会った時を思い起こしてみる。
悠理はいつも通り元気で、私達はあちこち歩き回り、最後にカフェに立ち寄った。
そのカフェは雑誌でも取り上げられていた有名なお店で、出すものもその評判に
負けないくらい美味しいものだった。
私はあっさりとケーキセットだけを頼み、悠理はクラブハウスサンドウィッチに
フルーツパフェ、それからケーキセットを頼んでいた。
私はまさかそれが最後になるなんて思いもしなかった。
だからあの結婚式の後で、何も知らなかったとはいえ、私はあまりにも気軽に
悠理の名前を出してしまった。
魅録をひどく傷付けることになるなんて思いもせずに。
「ごめんな、今まで黙ってて。……俺、悠理と別れる時、こういうことが表沙汰に
なるとまずいと思って、剣菱の力をフルに使ってもらって騒がれないようにしたんだ。
今思えば、何でそんなに体面にこだわったんだろうって思うんだけど、そん時は真剣に、
それが俺にとっても悠理にとってもベストだと思ってたんだ……」

【続く】
693名無し草:04/11/15 00:08:44
>サヨナラの代わりに

久々の降臨、うれしい!お待ちしてました〜。
魅録がどこまで知っているのか気になっていたので、
今後の展開がますます待ち遠しい。
694名無し草:04/11/15 22:14:29
>鬼闇
あれだけの出来事の後でも、美女を口説かずにはいられない美童(笑)
男性陣の反応が、それぞれ「らしく」ていいですね。
そして雰囲気一転、いよいよ鬼の登場!続き、楽しみにしてます。

>野×清ネタ
ずっと密かに清四郎を想い続ける→押しかけ女房を決意。
気遣いと、芯の強さを感じさせる野梨子に萌え。
素敵な萌えネタ、有難うございました!出来ればSSで見たい…。

>サヨナラの代わりに
自分にとっては辛すぎる出来事の中、尚且つ悠理を思いやっていて、
そして今、初めて野梨子に打ち明けた魅録の誠実さ、想いの真剣さが
印象的でした。続き、お待ちしています。
695名無し草:04/11/15 22:53:27
みろくとかれんマダ〜〜〜〜?
696名無し草:04/11/15 23:27:43
>サヨナラの代わりに

私もお待ちしてました〜!
694様のおっしゃる通り、魅録の誠実さがいいですね。
早く幸せになって欲しいと思いつつも、波乱が待っている…。
関係ないですけど、クラブハウスサンドとパフェ、ケーキに
ごっくんしましたw
続き、楽しみにお待ちしております。
697名無し草:04/11/16 22:17:21
>サヨナラの代わりに
いまさら魅録と野梨子に何があっても壊れないと思うけど、
それでも悠理や清四郎との事は棘になってる切なさが素敵です。
幸せになるための階段を二人で上っていく魅録と野梨子に幸あれ!って思います。
「可×清 可憐さんにはかなわない」うpします。

可×清、魅×悠です。

いきなりタイトル間違えました。
今回は下ネタございません。
>>583

「だ……………………だー」
言いよどむ清四郎の後頭部を、鬼コーチと化した美童が容赦なくノートではたいた。
「ダーリン! 『ダーリン、そんなに怖がらなくてもいいんですよ』。はい、もう一度」
顔を真っ赤にした清四郎が渾身の力をこめて唇を尖らせた。
「だ、だー……りん」
二人のやりとりをよそに、とっくに飽きてベランダで煙草を吸っていた魅録が不審な顔をして室内に入ってきた。

「おい。聞こえるか、あの音。屋上で何かやってるぜ?」
魅録の言葉に、清四郎も美童も練習を中断して、耳を澄ました。

ウォンと音がした。
マイクのハウリングのようにも聞こえる。
続いてチュイーーンと、ギターのチューニングの音がした。
三人は顔を見合わせた。
「コンサート?」
「この建物の上から聞こえるぜ」
「とにかく中庭へ出てみましょう」

あわてて屋外に飛び出した彼らは、中庭でポカンとした顔で空を見上げる可憐と野梨子を発見した。
「可憐! 野梨子! 一体何の騒ぎですか?」
可憐と野梨子は顔を見合わせた。
「それがねぇ……」
その時、グランマニエ邸の屋上を注視していた魅録が何かを見つけたようだった。
「悠理!?」
「えっ!?」
魅録の横に駆け寄った清四郎と美童がその視線の先に見たものは、一体いつ運び込んだものなのか
白亜のグランマニエ邸の屋上にロックバンドらしき、むさ苦しい男の一団と、その脇にコーラス隊の美女が三人。
中央に派手なメイクを施し、黒皮のタンクトップに同素材の細身のパンツ、同じく長手袋、背中に宝塚のトップが
背負うような孔雀の羽飾りをしょった剣菱悠理の姿だった。
ベースが音を鳴らす。
口に両手を当てて魅録が屋上に向って叫んだ。
「おーーーい、悠理! そこで何やってるんだ!」
憤まんやるかたない表情で美童も怒鳴った。
「そうだよ! ここドームでも武道館でもないんだよ。こんな閑静な住宅街で何する気なんだよ、悠理!!」
「悠理! 何やるつもりか知りませんがおとなしく降りてきてください!」
男三人が口々に叫ぶのを見て、悠理は無表情にマイクを手にした。

『 うーーーーーーーーーーーーーーーーーーるさぁああああああっっいいっ!!! 』

大音量に全員が思わず耳を押さえてたじろいだ。
悠理はマイクを手にしたまま、魅録に向って指を差した。
「お前になぁ、お前ら男なんかにな、あたしの気もちがわかってたまるか!」
「悠理?」
眉をひそめる魅録に向って悠理は怒鳴った。

「いいか、魅録の糞野郎聞け!! あたしの『魂の叫び』だ!」

その声を合図に上半身裸のドラマーが長髪を振り乱して、激しくドラムを叩き出した。
負けじとギターにベース、シンセサイザーも激しく弾き出す。
頭を振って速いリズムをとっていた悠理が歌いだした。
 オーケー 悔しい切ない許せない オーケー 悔しい切ない許せない

 あたしの心踏みにじって オーケー あたしの願いを切り刻んで オーケー

 オーケー 悲しいおかしい馬鹿みたい オーケー 悲しいおかしい馬鹿みたい

 あたしだけなんて言っておいて オーケー あたしが欲しいなんて言っておいて オーケー


地上で可憐がつぶやいた。
「ずいぶんオーケーが多い歌ねぇ」
美童もその横でうなずく。
「……結局ひどいことされたけど、オッケーてこと?」
さらにその横で、野梨子が瞳をキラキラさせていた。
「すばらしいですわ、悠理。だまされても、許す。それが博愛の精神ですわ」
もう一つ横で清四郎が難しい顔をした。
「語彙が少ないのが惜しいところですね」

勝手なことを言って盛り上がる友人たちの輪には加わらずに、魅録はじっと歌い続ける悠理に注目している。
そんな魅録にはかまわず可憐たちは盛り上がっている。

「ねぇ、これってハードロックでしょ?」
「へヴィメタルじゃない?」
「ロックンロールではありませんの?」
「また古いことを……。そもそもロックの精神とはですね」

悠理の歌が続いている。
 騙された騙された騙された騙された だ、騙された騙された騙された……

「長いわねぇ。まだ騙されたって続くの?」
「騙されたんだぁ。でも、だれに?」
「オレオレ詐欺の歌ですかしら」
「即興みたいですから、たんに歌詞を思いつかなくなったんじゃないですか」

 返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ……

「あ、思いついたみたい」
「なんだか聞いてて切ないなぁ」
「今度は取り立てる側ですわね」
「もう少し歌詞にひねりが欲しいところですね。大体悠理の国語力では……」

「悠理!!」

突然、屋上の扉が開いて魅録が現れ、驚いたバンドは演奏をやめた。
誰も気づかぬうちに屋上に上っていた魅録に一同は感嘆の声を上げる。
魅録は階段を駆け上がったらしく、息が切れハアハア言っている。
そんな彼に悠理は冷たい一瞥を投げかけると一言マイクに向って吼えた。

  か え せ あ た し の じゅ ん じょ う

「悠理」
歩み寄る魅録に悠理は怒鳴った。
「あたしのことが好きになったから、可憐とは別れたって言ったくせに。大ウソツキ!
 ほんとは可憐が寝てくれなかったから、可憐とエッチしたかったけど、させてくんなかったから
 あたしのとこに来たんだろ。あたしは、可憐の代わりだったんだろ? 答えろよ!」
「ゆ……」
顔を歪める魅録の耳に切ない曲調のバラードが聞こえた。
再び悠理が今度は小さな声で歌いだす。

 いいさ、あたしは代役。いつも主役(ヒロイン)にはなれない。
 愛を受けるのはあの娘(こ)。あたしがもらえない接吻(くちづけ)。

「歌うのね」
「歌っちゃうんだ」
「歌いますのね」
「歌いますかね、ふつう」

マイクを両手で包み込むようにして切々と歌う悠理に魅録は叫んだ。
「違うんだ、誤解だよ。悠理、聞いてくれ!」
「……魅録」

大またで悠理に歩み寄った魅録はマイクを奪い取った。

 嘘じゃないよ、ベイビー。俺の小さい女の子。
 泣かないで、ダーリン。俺の言葉を聞いて……

悠理の薄茶色の瞳が見開かれた。
「魅録……」
優しく微笑みかけながら魅録は歌い続ける。

 お前が好きだと言ったよ、嘘じゃない。
 お前のためにあいつと別れた、嘘じゃない。
 お前が欲しくて ウー
 抱きしめたくって ウォンウォン

「魅録!!」
魅録の大きな手が悠理の肩を抱き寄せる。
涙でかすれた悠理の声が魅録の声に重なった。
 (男)俺と (女)あたしと
 (女)あたしと (男)俺と
 (男)(女)ふたりで……歌えば……んーんー ほら、見える ステキな明日(みらい)
    ウォウウォー ウォウウォウウォー

二人の声は美しいハーモニーとなり、グランマニエ邸を包んだ。
熱唱する二人の気持ちは一つに溶け合い、その姿はシルエットとなった。
彼らを見つめていた友だちは微笑み合った。

「歌うのね、ふたりで」
「歌っちゃうんだねぇ。ふたりの世界に入っちゃってるねぇ」
「なるほど、明日と書いて『未来』と読みますか……」
感心する清四郎をちらっと見た美童は、野梨子をふりかえった。
「あはは。なんだか、当てられちゃったね、野梨子」

そして美童は野梨子の瞳から零れ落ちる涙を見て、言葉を切った。
野梨子は感動していた。
歌で心が通じ合う悠理と魅録の姿に、心の底から感動していたのだった。
涙を拭こうともせず、野梨子は手を叩いた。

「ブラボー! ブラボー!」

 すばらしいですわ。心が通じあうということが、こんなにすばらしいことだったなんて。
 二人の歌声を聞いていると、ほらこんなに。汚れた私の心がすみずみまでピカピカになっていくようですわ。

真珠のように清い涙を流す野梨子の姿に、美童は心奪われていた。


以上です。
続きます。
706名無し草:04/11/17 07:40:50
>可憐さん
お待ちしてましたーーーーーっ!!!嬉しい!(←魂の叫び)

いきなりコンサート状態と悠理の歌に、思わず朝から大爆笑。
バラード含め、ぜひ曲付きで聴いてみたいw
地上でのメンバーのコメントにもウケました(特に清四郎の冷静な突っ込みに)w

そしてなお且つ、シリアス+萌えも入ってて、今回も楽しませていただきました。
悠理、良かったね。 続き、楽しみにしています。
707名無し草:04/11/17 13:52:56
>可憐さん
>明日と書いて『未来』と読みますか

・・・清四郎よ、君は歌詞が文字で分かるのねw
歌って聞いてる限りはどんな漢字が当てられてるのか分からない
ときがあるよね。

ドラムのモデルは某アルファベット一文字バンドのドラマーかと
思いましたが、いかがなものですか?
>>707
モデルといいますか、確かに思い浮かんだのは○○SHIKI(KONISHIKIではないです)
さんですw
ご明察です。
709名無し草:04/11/18 01:23:00
ああ皆さん年代的に近い人が多いのだと実感。
今の10代はそのバンドを知らないんじゃなかろうか。

実は好きだったんだよなぁ。
有閑倶楽部などの漫画を愛しながら、同時に某バンドを愛してた高校生の自分。
どういう趣味だ。
710:04/11/18 07:44:32
短編をうpさせていただきます。
可→魅です。魅×悠もありますが、悠理は出てきません。
苦手な方はお手数ですが、スルーをお願いいたします。
7レス拝借いたします。
711海(1):04/11/18 07:46:17
秋の海は、中途半端だ。
泳ぐこともできないのに、かといって身を切る程の冷たさでもない。
だから、あんな風になったのかな。
もっと違う形で出逢っていたら、あたしの恋も、実ったのかもしれない――。


「今度の日曜、2人で出かけねーか? みんなにはナイショな」
魅録にそう言われたのは、秋も深まりかけた10月の終わり――。


「いつからうちは、ファッションショーの会場になったのかしら」
開いたドアの背に腕を組んでもたれかかり、ママが立っていた。
「ちょっとママ、踏まないでよ」
ママはしゃがみこんで、足元にあったディオールのキャミソールドレスを指でつまんだ。
「今日のデートは気合が入りまくってるわね。そんなにお金持ちなの?」
「同級生よ、普通の高校生。おうちはお金持ちだけどね。
車好き、パソコン好き、機械いじりが好き――今はバイクに凝ってるみたい。
今日もバイクで来るんじゃないかしら?」
あたしが鏡に向かって服を合わせながら話すと、ママはしかめっ面でドレスをひらひらさせた。
「バイクに乗るのなら、こういう服はマズイんじゃない?」
――あたしは不覚にも、その時初めてそのことに気がついたのだった。
712海(2):04/11/18 07:47:43
「ごめん、待っただろ」
待ち合わせ時間に5分遅れて、魅録はバイクに乗ってきた。
「今来たとこ」
バイクの匂いと、魅録の着ている革ジャンの匂いが混ざって、かすかに鼻をかすめた。
「メシまだだろ? 近くにいい店知ってんだ。行こーぜ、おごるよ」
200mも行かない近くにそのお店はあるらしく、バイクを置いて、あたしたちは歩き始めた。
「何、ジロジロ見て」
魅録があんまりあたしを見るので、照れ臭いのと不思議なのとで少し冷たい言い方をした。
「ん、いや、似合ってるなと思って、その格好。いつものハデハデなのもいいけどさ。そーいうのも似合うよ、お前」
結局あれから時間が無くて、ジーパンにTシャツというラフな格好で来てしまった。
顔も、カジュアルスタイルに濃いメイクは似合わないから、ほとんどノーメイクで。
「いい女はね、何を着ても似合うのよ」
「言ってら」
冗談交じりに笑いあって、軽く腕をからませた。
革ジャンの匂いと、少しだけ、タバコの匂い――。
からませた方の反対の手を、あたしは自分のジーンズのポケットに入れた。金属のひんやりとした感触が、指先に伝わる。
プラチナのペアリング――ママの店のショーウインドゥに飾ってあったそれを見るたびにあたしはいつも魅録と自分を思い描いていた。
渡そうかどうしようか迷っていたその時、からませていた腕が、大きく揺れた。
「あった、あの店だ」
713海(3):04/11/18 07:49:12
「あー、おいしかった!!」
煙にまみれた店内を出ると、あたしは外の空気を思い切り吸い込んだ。
「イタメシとかそーいうとこの方がいいかなとも思ったんだけど。俺、詳しくなくてさ」
会計を終えて出てきた魅録が、すまなさそうにあたしに謝った。あたしたちが行ったお店は、炭火焼肉のお店だった。
「いーわよ、あたし案外こういうお店好きなの。それに、この格好じゃあね」
Tシャツのすそを引っ張ってあたしが笑うと、魅録もつられて笑顔を見せた。
「美味かったんなら、よかったよ」

「ねぇ、これからどこに行く?」
上機嫌なあたしは、鼻歌混じりに魅録にたずねた。
「買い物――付き合ってくんねーかな」
「――買い物? 何買うの」
魅録は真っ赤な顔をして、照れ臭そうに頭をかいた。
「いや、何をあげるかも決まってねーんだけどさ。選ぶの可憐に手伝って欲しいんだ」
あたしはその表情と仕草で、すべてを察した。
「女の子に、あげるのね」
社交的な女って、どうしてこうなんだろう――。
あたしはこういう時、本当に自分が嫌いになる。
失恋が決定したこんな瞬間でも、あたしは反射的に笑っていた。
「悠理?」
「やっぱ可憐には、何もかも見透かされてんな」
「当然よ」
何もかもお見通しな振りをしながら、あたしは嘘をついた。
本当は今の今まで、そんなこと露ほどにも考えなかった。
だけど女友達なんて魅録にはほとんどいない。あたしか悠理か野梨子の誰か。
もちろんあたしではないし、暗黙の了解で清四郎と恋人同士の野梨子のはずもない。
――簡単な消去法だ。

ポケットの中で出番を待っていた指輪は、あたしの手の中で、冷たく泣いていた。
714海(4):04/11/18 07:50:50
「リングがいいんじゃないかしら」
近くにあったジュエリーショップに入って、あたしたちは物色を始めた。
「悠理はアウトドア派だから、ペンダントとかブレスレットだったら落としたり無くしたりするかもしれないし」
女性特有の雰囲気のこういう店に慣れていないのか、魅録は落ち着き無く左右を見渡している。
「予算は?」
「貯金少し下ろしてきたから……10万とちょっとかな」
「10万ね……だったらいっそ、ペアリングにしたら?」
思いもかけないあたしの提案に、魅録は目を丸くさせた。
「ペアリングって……俺も指輪するのかよ? ……男が指輪するのって、結婚した時じゃねーの?」
「そんなことないわよ。普通にファッションとして着ける男の人だって多いわよ」
「そっか……ん〜、ペアリングかぁ……」

結局――女性側のトップにダイヤモンドがついているかいないかの違いだけで
デザインはあたしのポケットに入っているリングと全く同じペアリングを、魅録は選んだ。
715海(5):04/11/18 07:52:26
買い物に付き合ってくれたお礼――そう言って、魅録は誰もいない秋の海へ連れてきてくれた。

「助かったよ、一緒に選んでくれて」
魅録は砂浜の波がかからない場所に座り、あたしは波打ち際で小さく寄せ返る波と、戯れていた。
「この間、あとの3人がいたからそれとなく聞いてみたんだけど、みんな無茶ばっか言うんだぜ」
あたしは砂と波が混ざり合った液体を、すくっては流し、それを意味も無く繰り返していた。
「清四郎は『参考書』、野梨子は女らしくなるために『裁縫道具一式』、美童なんか『部屋いっぱいの薔薇』だぜ、もー訳わかんねーよな」
いつのまにか魅録はあたしの隣に来て、同じように波をもてあそんでいた。
「俺さ、ホントはあんまり『秋の海』って好きじゃないんだ」
「……どうして?」
「何か中途半端だよな、『秋の海』って。夏みたいに泳げるわけじゃないし、かといって冬の海みたいに
足が切れそうなほど冷たいわけでもないし」
――だったら、それはあたしだ。
恋人でもない、だからといって完全な友達にもなりきれない――。
彼方に見えるぼやけた水平線が、あたしのあやふやな位置を表すようで、見ているのがつらくなった。
「俺、可憐と出逢ってよかったよ」
沈みかけた夕日と空が、悲しいくらい――朱く染まっていた。
「ダチはたくさんいるけどさ、可憐みたいな女友達って貴重だよ」
716海(6):04/11/18 07:53:43
「魅録」
あたしはゆっくりと立ち上がって、魅録に微笑んだ。
「今日買った指輪、着けてみて」
「え、今?」
「うん、今」
魅録は革ジャンのポケットから箱を取り出し、リングを指にはめた。
「似合う」
シャープなデザインのプラチナリングは、魅録にとてもよく似合っていた。
「指輪なんかしたことないから、何か緊張するな」
そう言うと、照れ臭そうに笑った。
あたしは自分のシーンズのポケットから、自分の分の指輪だけを取り出し、魅録と同じように、はめた。
「ほら」
魅録はあたしがいきなり指輪を取り出したことと、その指輪が悠理の指輪のデザインに似ていることに、多分驚いていた。
だけど、何も言わずに黙っていた。
「可憐」
あたしは魅録の手を持ち上げて、あたしの手と並べた。
「こうすると、あたしたちのペアリングみたいね」
「可憐――」
「知らない人が見たら、きっと恋人同士だと思うわね」
717海(7):04/11/18 07:54:55
「可憐――ごめんな」
魅録はあたしを、痛いくらい抱きしめた。
「きっと、後悔するから」
「……そうだな」
あたしは魅録の背中に手を回し、彼のシャツを涙で濡らした。
「あたしにしとけばよかったって」
「……そうだな」
恋人には、なれなかった。
でも友達にも、きっと戻れない。
「でも、悠理を好きなのね」
「……ごめん」
生温い波が、足元にからみついては引いていく――。

たぶんあたしは、ずっとこのままだ。

温かい夏の海のような、恋人にはなれない。
冷たい冬の海のような、友達にもなれない。

想いだけ残ったままの、きっと秋の海。
718:04/11/18 07:55:57
以上です。
失礼致しました。
719名無し草:04/11/18 11:14:09
>海

わー!すごくイイ、イイ、イイです!!
可憐の気もちに共感して、いっしょにうれしくなったり
かなしくなったりしてしまいました。
かわいそうな可憐…。
早く幸せ見つけてー。
作者たん、GJ!
720名無し草:04/11/18 15:28:41
カワイソウ、可憐タン・・・
原作でもそうだけどいつも傷つくこと多いよね
イメージ通りの可憐の話があまりない・・
麗しい大人の愛どっぷり可憐タンがみたい
721名無し草:04/11/18 16:33:11
>海
一途で可愛い、けれど切ない可憐が魅力的ですね。
何処か淡々とした、詩のような文章も、読んでいて心地好かったです。
海と指輪が、可憐の気持ちや魅録との関係を見事に表現してて
凄いなぁ、と思いました。
切ない、でも素敵なお話をありがとうございました>作者様

>>707-709
自分も即座に、某バンドのドラマーさんを連想しましたw<某バンド全盛期に、やはり高校生だった自分。
そして、>>708タンの、(KONISHIKIではないです) にワラタw 
年代的に近い人が多いと実感…に同意な雨の午後。

(横レスな上に、話題引っ張ってごめんね)
722名無し草:04/11/19 09:09:12
>>720
そういうのは君が書くのだ!自家生産自家生産。
723名無し草:04/11/19 11:48:45
正直、ギャグにしろシリアスにしろ
可憐はふられてなんぼのキャラだと思う。
どうでもいいのにはモテモテだけど肝心の相手からはアウトオブ眼中。
実はそういう可憐が好きだ。
724名無し草:04/11/19 18:06:22
ふられてなんぼのキャラ >それは人それぞれだけど、私はそうは思わないけど・・。
これ以上はスレ違いなレスになるので書かないけど。

とびきり愛される可憐がいてもいいと思うし、書いてくれる人がいれば
私も見たいですよ!
725名無し草:04/11/20 00:43:52
>708
香具師のバンド、メジャー前はおろか、
2人しかメンバが居なかった時分を知ってる…嗚呼。
そーいや、香具師が自分で雑誌社に送りつけた
半ケツ晒した写真の載ってる本もあったな。

自分の好きなバンドが載ってるから、
その本は今でも持ってる……深くは追求しないでくれ。
726名無し草:04/11/20 01:36:36
いーかげん↑スレ違い
727名無し草:04/11/20 13:33:43
>726
しょーがないよ。あのバンドのヲタは今でもキョーレツだしw
728名無し草:04/11/21 16:43:47
いつの間にかもう初冬なので。
寒さを理由に、それとなくくっつく二人、みたいな
ほのぼのしたお話が読みたくなってしまいました。
こたつで足が触れて・・・とか。
(カプは誰でもOK。女の子同士で戯れ合ってるのもかわいいかも)
どなたかそんなの書いて下さらないかなぁ・・・。

そろそろ、クリスマスネタを振って盛り上がるのもアリかな?
冬はイベントが多いから、SS降臨への期待が高まってしまいますw
729名無し草:04/11/23 00:24:48
450超えてるけど、もう新スレって立てるのかな?
詳しい方いたらよろしく。
730名無し草:04/11/23 03:04:02
>729
詳しいも何も、>5に書いてあるじゃん。
>・950を踏んだ人は新スレを立ててください。
> ただし、その前に容量が500KBを越えると投稿できなくなるため、
> この場合は450KBを越えたあたりから準備をし、485KB位で新スレを。
> 他スレの迷惑にならないよう、新スレの1は10行以内でお願いします。

つうことで、今477KBだから、まゆこスレでテンプレ相談かな?
眠くてたまらないので、昼組の人よろしゅう。
731まゆこスレ701:04/11/26 22:14:59
↓まゆこスレから転載。

<新スレについて>

とりあえず作ってみました<テンプレ

ちゃぶ台スレ、難民・したらば関連のURLを変更しましたが、
おかしな所、またはお約束追加(削除)等、修正が必要な部分が
ありましたら、ご意見・ご指摘下さい。
732まゆこスレ701:04/11/28 16:54:25
ちょっと早いですが、特に意見が出ないようでしたので
新スレ立てました。↓

http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1101627230/

という事でこっちは…どうしましょう。(汗)
733名無し草:04/11/28 17:08:28
スレ立て有難うございました。乙です。
こちらは雑談マターリ消費で、でいいのかな?
734名無し草:04/11/29 01:00:03
清×野の微R読みたいです。
15歳くらいで。思春期の暴走しそうな清四郎をお願いします。
735名無し草:04/11/29 11:33:16
なんだかこの流れだと雑談消費じゃなくて願望消費になりそうだなw
736名無し草:04/11/29 12:07:50
流れブッタ切り?かもしれないけど、ごめんね。
今ここを見て、浮かんだ素朴な疑問なんだけど。
微Rって、どのくらいまでなんだろ?(いや、真面目な話。)
737名無し草:04/11/29 12:50:09
ちょっとくらい、脱いでも、触れてもいいけど
Hの経験としては数えられない程度。
なかった事にしておけるくらい。(っていうのが個人的に好きです。)
738名無し草:04/11/30 10:25:07
本番なし。・・・のことじゃないの?
739名無し草:04/11/30 17:05:38
そのものズバリの描写はないけど
なにやらそれらしい行為と匂わせるのも自分的には微Rかな。


どうでもいいけど新スレの27、懲りないね…
740名無し草:04/11/30 17:27:22
↑の質問した者だけど、レスありがとう。
うーん、確かにそうだよね。変なコトきいてごめん。
ただ、"微"だから、『夕暮まで』レベルだと過激な気がするし(汗
737さんくらいまでが妥当なのかな。(個人的にもそういうのが好きですが。)

因みに734のシチュでそれなら・・・自分的には激しく萌え。
741740:04/11/30 17:35:22
うわ、リロードすればよかった(汗
それも情緒があっていいな>739さん

・・・またか。ここであれだけ怒られたのに・・・。
742名無し草:04/11/30 22:23:42
>739、741さん
せっかく待望の作家さんが降臨した直後のカキコに呆然。
学習しない輩は、完全無視するしかないんでしょうな。
どうせもうこっちは見ないだろうし。
743名無し草:04/11/30 22:24:23
sage忘れた。ごめん・・・
744名無し草:04/11/30 22:33:39
雑談マターリ消費じゃないの?
745名無し草:04/11/30 22:40:14
書込みの雰囲気からして、おそらく最近ここへ来始めた人なんだろうから、
古くからの連載の秋とかは、読んでもいないのかもしれない。
そうだとしても、失礼だなあとは思うけど。
746名無し草:04/12/01 16:13:44
>最近の人
っての自分も分かる。これまでの有閑スレで何度か問われてきた
読者が出来る作者への気遣いみたいなのが欠けてる気がする。(ちと大袈裟かな?
リクするにしても自分なりの小ネタをだすとか、こだわりのあるカプなら
リクする側だって努力しないとなーと。読みたい♪ばっかじゃなくて。
747名無し草:04/12/01 22:41:31
見たいものだけ見る読みたいものだけ読む でいんじゃないの?
2ちゃんなんだから
タダでさえ少人数スレなんだから、新参者歓迎しろよ
バンドヲタはよくってなんでカプリクに文句つけられんのよ!
748名無し草:04/12/01 23:11:19
有閑と関係ないバンドネタでも、叩かれる発言と叩かれない発言があった。
はじめの方の発言は叩かれてなかったけど、
あとの方の「話題引っ張りすぎ」でやたらテンション高いレスは叩かれた。

同じようにカプリクも、叩かれるレスと叩かれないレスがある。
つまりは空気嫁。
749名無し草:04/12/02 00:55:30
悪いけど、あなた勘違いしてる気がする。

>見たいものだけ見る、読みたいものだけ読む。
それはその通りだけど、だからって、スレ全体の話題や流れ、
場の雰囲気を無視していいって事じゃない。
2ch(匿名)だからって、自分の言いたい事や好み(好きカプ)ばかり
むやみやたらに主張していい訳でも、何をしてもいい訳でもない。
少人数で、閑散としているように見えても、現実の社会と同じ。
自分以外の他人が集まって、気を遣い合って、成立してる場所なの。

↑の言い方が抽象的なら、748さんに倣って例を出すけど、
某バンドネタは、うpされたSSの感想から派生した話題であって、
最初の方の発言は、そこからさほど逸れてるものじゃなかった。
叩かれてしまったレスは、SSや有閑(スレ)、それまでのレスとも
関係ない話題で、読む人に違和感を感じさせたから。

カプリクもそれと同じ。
それと、少人数スレだから、新しい人(自分)を歓迎しろっていうのは
ここの人たちを見下すような、とても傲慢な物言いだと思う。

長文な上に、言い方きつくて申し訳ないと思うし、
自分だってそんな偉そうな事言える人間じゃないと思うけど。
要するに、私も748さんに同意>空気嫁

そして長文・場を壊すようなレス、すみませんでした>皆さん
750名無し草:04/12/02 00:58:04
>747さん
カプリクに文句をつけているわけじゃないんじゃないでしょうか。
作品を投稿したことがある立場で、個人的な見解を言わせてもらいますね。
@×@ネタまだー
##と**のえっちよみたいー
とかばかり書かれると、何か投稿しようかと思っていても正直引きます。
もしこのタイミングでうpすると、リクに応えたみたいで
調子づかせてしまうかも、と思うし。
そう考えて様子を見てる作家さん、ほかにもいると思います。
そのせいだけで活気がなくなったわけじゃないでしょうけどね。
751名無し草:04/12/02 01:08:35
>749補足。
ちなみに私は、このスレで>445のネタを書いた者です。
これだけ偉そうな事を書いたのだから、不公平だと思うので
カミングアウトしますけどね。
それと749は、>747さんだけに向けてるようだけど、
以前ここに居た(今も居るかも?)一部の住人さんにも考えて欲しい、
と個人的には思うのですが。
752名無し草:04/12/02 01:21:37
個人ホムペの方がいいね、そっちいくよ
空気嫁?レス付けたい作品とそうじゃない作品がある
いいと思ったらレスするし嫌いと思ったら読まんしつまんなかたっら
わざわざ煽るようなレスしないしね
カプの好みは勝手でしょ?
何かギスギスだね、ここは
好きなカプネタ読みたいってのは好きな椰子は同じ気持ちでしょ
作家さんも自分的に嫌いとか書けねえ!ってリクはスルーすればいいし
753名無し草:04/12/02 01:31:25
>752
捨て台詞残してないでさっさと逝けば?
754名無し草:04/12/02 01:35:32
えーと、馬鹿に何言っても無駄だと思うんだけど。

ここはみんなが気を遣いあって平和な空気でやろうとしてるのね。
好きカプは勿論自由だし、盛り上がってくれて構わない。
自分も読みたいならネタ振るとか協力的な姿勢見せてくれても
いいんじゃない?

貴方みたいなくれくれ姿勢でサイトに行かれても管理人さんが迷惑します。
追いはぎみたいだよ。
755名無し草:04/12/02 05:24:22
おおむね>>752に同意。
とくに、
>何かギスギスだね、ここは
にハゲ同。やたら議論したがるし、あげくに同意してくれない人を馬鹿と決めつけ。
何言っても無駄だなんて嘆きながら、ダラダラと自己主張w
756名無し草:04/12/02 08:05:34
私も>752に同意。
>754の言ってるように、ここが平和だとは全然思えない。
出る杭は打とう、つつけるところはつついてやろうみたいな感じが、まるでヒステリーなオールドミスみたい。
>754みたく人を馬鹿と言える人が、他の人に気を遣って平和な空気を保てるはずがないと思う。
757名無し草:04/12/02 08:40:40
自分もそう思います。ついでにスレ《23》の27のリクしたの自分ですよ。
前の話が悪かったとかじゃなくて、単なる好きじゃないカプだったから
見なかっただけでしたよ。
>>752の方ように平気で頭ごなしに何か言うと「馬鹿」なんて
子供ですね。自分は有閑16から読み始めて前巻はあとから集めました
ここの人たちにとったら「新参者」なんでしょうが、来る気もなくなりますね。
暗い雰囲気だし、書きたいことも書けない。
まぁ、どうせまた「古株の掟」みたいな幼稚な罵声のお返しが
くるんでしょうから、自分ももうきません。
758名無し草:04/12/02 09:54:43
そんなに熱くならなくても・・・。
2ちゃんなんだから。
759748:04/12/02 10:28:07
連載すべてにレスや感想しろって言ってるわけじゃないし、
自分的にスルーする連載があっても当然だと思う。
ただ、あのタイミングであのハイテンションなカプリクの書き込みは
「悪いこと」ではないけど、まわりから「浮いてんなぁ」って感じ。

私は良いとか悪いとか、道徳とかそういうのを言うつもりはない。
たんに常識から言って、空気嫁てなくて、浮いてるレスは周囲を不快にさせる。
ここが2chだというとなおさらのこと。

なんか、みんなヒステリックになってきてるので、
気になって舞い戻ってきてしまった。
今更ですまんね。
760名無し草:04/12/02 10:47:19
なんだか論点がずれてますね。
>754さんの言葉に反論が集中してるようですが、「木を見て森を見ず」って知ってます?
一言に拘って、それに反応して、話をずらしてしまっているあなた方の方が、
私にはずっと子供に見える。
754さんの言葉自体は、確かにあまり良くないけど、そうも言いたくなるような、
そもそもの発端となった方の言動は、「他の人に気を遣って平和な空気を保つ」上でOKなのかな?

では、755-757さんにお聞きしたいのですが、>754さんのそれ以外のレス、
(至って真っ当な意見だと思いますけどね)、それ以前にも出た、他の方の意見についてはどう思われます?
別に誰も、新参者だからいけないとか、だから来るなとは言ってませんが。

ついでに。「出る杭は打とう、つつけるところはつついてやろう」って言葉、
一時期の本スレにそっくりそのまま当てはまりますねw
個人的には、だから暗い雰囲気=感想書きにくくなったんだと思うけど。

話題引っ張ってすみません。いい加減黙っていようと思ったのですが;;
>皆様、>758さん
761760:04/12/02 10:52:31
>748さん
すみません。リロードするべきでした。
ヒステリックなカキコをしてしまってごめんなさい。
ちなみに私は、>749です(汗
762名無し草:04/12/02 13:41:10
私個人は>760-761さんに同意。
もちろん、最初にここにカキコするようになった時には
ものすごく怖かったです。今でも怖いです。
ここの流儀に反したカキコになってないか?とかで。
でもおおむね平和なほうだし、空気は読んで欲しい。
好きな作品にだけレスつけるのはいいですよ。
話題が途切れたりそういう方向に流れたときに一行リク
したって誰も咎めないと思いますよ。大事なのは空気。



というわけで話題を引きずった罪滅ぼしにネタを。
そろそろクリスマス。
クリスマスといえば美童くんの掛け持ちデート(w
彼はこれまで最高で一晩に何人掛け持ちしたのでしょう?
そしてその際、合計何回戦行ったのでしょう?

下品なネタフリごめんなさい。
763762:04/12/02 14:00:36
せっかくネタふったのに間違い発見。
759さんと760さんでしたのよorz
間抜けすぎ。

というわけで自己レス。
私的には最高3人を厳選して、3回戦まで。
最初の子とはプラトニックてことで。
764名無し草:04/12/02 15:55:58
>>760
そーゆうギスギスネチネチチクチクヒステリックに聞かれるから
空気悪いんじゃないの?それに>>754みたいに>他のサイトにいっても
管理人が迷惑です。 ってあんた何様?(笑)
新参者は来るなとは確かに書いてないよね。でもそういうニュアンスに
聞こえる。作家の人だって自己マンで投下してるわけじゃないなら
感想やリク聞きたいはずでしょう、わたしも某所に投下させて貰ったことあるけど
好き嫌いは千差万別。上のほうのレスに>リクにこのタイミングでうpして
調子づかせても・・・とか書いてあった気がするけど、何様?(爆)


765名無し草:04/12/02 16:43:25
>762 
確かに美童なら、昼間からやってそうだ。
10代の男の子って元気なんでしょうねw。

一番新しいところでは、彼らはタヒチでクリスマスだったよね。
プレゼント交換とかしないのかなぁ。
766名無し草:04/12/02 17:40:52
ここは本当に2ちゃんか?スレ自治もいいが、お互いに嵐さんとこから2ちゃん初心者板見て来た方がいいぞ。マジで。
767名無し草:04/12/02 19:40:57
ここは元々妄想を語る所であって、感想を書く所でもカプリクする所でもないぞ。

クリスマスはやっぱり美童&可憐の本領発揮だよな〜
美が何回戦まで行くかも気になるが、可憐の勝負下着も見てみたいw
真っ赤なガーターとか似合いそうだ。

清や野はクリスマスより除夜の鐘が似合ってしまうし、
魅や悠は初日の出ツーリングだろうし。
768名無し草:04/12/02 19:49:54
>765タン

プレゼント交換。
何気なく選んだプレゼントを深読みされたりとか、
本命あてのが別のところにとか、何故か爆弾が紛れ込んだりとか、
面白そう!
769名無し草:04/12/02 20:09:33
女性陣のプレゼント選びに、頭を悩ます清四郎と魅録ってカワイイかも。
悠里にはやっぱり食べ物?
770名無し草:04/12/02 20:22:25
>767
古住人はりクも感想も議論もOKなんでしょ?
心狭き根暗なスレですね。
771名無し草:04/12/02 20:52:29
空気嫁、空気嫁ってなんか呪文のように唱えてる人がいるけど、
それって結局自分の意見と合わない人はレスするなってしか聞こえない。
2ちゃんなんだから・・って、いったいどういう意味で2ちゃんって言ってるの?
みんながおだやか〜なレスばっかりつけるのが2ちゃんって思ってるわけですか?
772名無し草:04/12/02 20:56:31
異論・議論はまゆこスレでお願いできませんか?
773名無し草:04/12/02 23:10:26
初心者さんへ
>>1-7くらいは読んでください。
お願いします。

女性人へのプレゼント
美童はそつなく選びそうだけど、魅録は悩み、清四郎は熟考した挙句外れたもの送りそう。
774名無し草:04/12/02 23:18:35
>768さんのから連想して、プレゼントが一つずつズレてしまったら、
騒動になったりするかな?と妄想。
例えば魅録のプレゼントが、野梨子に渡す筈のものが悠理に、
悠理に渡す筈のものが可憐に、可憐に渡す筈のものが野梨子に
届いてしまった、みたいな感じで。
男性陣へのプレゼントも含めると、更に混乱するかも。

>772
同意。
775名無し草:04/12/02 23:51:59
>772といわれて移動するのは>760一人だけのような希ガス
776名無し草:04/12/02 23:55:55
>774
リレーやったら面白いかも。
だけど今のこの雰囲気だと…無理かな。
777名無し草:04/12/03 00:08:39
>775
私もそうオモタw
778名無し草:04/12/03 00:31:51
リレーするならさ、
ひとり1レス限定、トータル10人(10レス)で完結するべし!
みたいな、絶対完結するような枠組みつくった方が盛り上がらない?
あと絶対に展開の文句は言わない(とくにカプ関係)、
話のドンデン返しも可
どんなに荒唐無稽でも、ご都合主義でも可とか。
779名無し草:04/12/03 01:09:10
>774
骨董の茶碗が悠里。ヒョウ柄の下着が野梨子。肉まん一年分の引換券が可憐とか・・・
魅録と美童は、清四郎に怪しい下着を贈りそう。
780名無し草:04/12/03 01:14:36
>776/777
ソユウ言い方が余計なのw藻前らが空気嫁よ
【馬鹿】に何言っても無駄なんだろうけどw
781名無し草:04/12/03 02:59:30
突然ですが、前スレ21のラストのときに清四郎の樹形図やったものです。
調子にのってこのスレでもやらせてもらいます。

 美童は─┬─野梨子とくっつくよ
     │    ├─異人さんと大和撫子だよ(大正ロマン派)
  │    └─軟派な男とお嬢様だよ(少女漫画派)
      │       ├─美童の浮気相手を撃退するしたたかな野梨子が見たいよ(強い野梨子至上主義)
   │       └─清四郎に拳で殴られて鼻時ブーになってほしいよ(屈折型幼馴染愛好派)
     │
     ├─悠理とくっつくよ
     │      ├─悠理を恋愛に目覚めさせほしいよ(マイフェアレディ派)
     │     │   └─貧乳を育てたり、いろいろ開発してほしいよ(18歳未満お断り派)
     │      ├─百合子さんに気に入られて無理やり結婚だよ(百合子さん最強主義派)
     │     │   └─でも初夜で悠理に惚れるよ(ハーレクイン派)
     │      ├─悠理に押し倒されて、うっかり関係もっちゃったよ(過激派)
     │      └─悠理がもてるなら何でもいいよ(悠理教原理派)
     │          
     ├─可憐とくっつくよ
     │      ├─原作であんだけいい雰囲気だったし(なんとなく派)
     │      ├─似たものカップルの方がうまくいくよ(現実主義派)
     │      ├─失恋した可憐を慰めてゲットするんだよ(棚ぼた派)
     │      └―大人な関係なんだよ(シティ派)
      │           ├─魅惑のボディがたまんない(おっぱい星人派)
     │           ├─セフレだよ(退廃主義)
     │           └─たぶん一夜の過ちからはじまった仲だよ(お約束派)
782ごめんなさいやり直し:04/12/03 03:03:25
突然ですが、前スレ21のラストのときに清四郎の樹形図やったものです。
調子にのってこのスレでもやらせてもらいます。

美童は─┬─野梨子とくっつくよ
     │      ├─異人さんと大和撫子だよ(大正ロマン派)
     │      └―軟派な男とお嬢様だよ(少女漫画派)
      │        ├─美童の浮気相手を撃退するしたたかな野梨子が見たいよ(強い野梨子至上主義)
     │         └─清四郎に拳で殴られて鼻時ブーになってほしいよ(屈折型幼馴染愛好派)
     │
     ├─悠理とくっつくよ
     │      ├─悠理を恋愛に目覚めさせほしいよ(マイフェアレディ派)
     │     │   └─貧乳を育てたり、いろいろ開発してほしいよ(18歳未満お断り派)
     │      ├─百合子さんに気に入られて無理やり結婚だよ(百合子さん最強主義派)
     │     │   └─でも初夜で悠理に惚れるよ(ハーレクイン派)
     │      ├─悠理に押し倒されて、うっかり関係もっちゃったよ(過激派)
     │      └─悠理がもてるなら何でもいいよ(悠理教原理派)
     │          
     ├─可憐とくっつくよ
     │      ├─原作であんだけいい雰囲気だったし(なんとなく派)
     │      ├─似たものカップルの方がうまくいくよ(現実主義派)
     │      ├─失恋した可憐を慰めてゲットするんだよ(棚ぼた派)
     │      └―大人な関係なんだよ(シティ派)
      │           ├─魅惑のボディがたまんない(おっぱい星人派)
     │           ├─セフレだよ(退廃主義)
     │           └─たぶん一夜の過ちからはじまった仲だよ(お約束派)
783ごめんなさいやり直し:04/12/03 03:04:10
     │  
     ├─杏樹とくっつくよ(禁断の愛派)
     │     ├─軽い気持ちでやっちゃったよ(june派)
     │      └─思いを隠すために、お互い節操なく女に手を出しているんだ(妄想派せつない系)
     │      
     ├─魅録とくっつくよ(やらないか派)
     │    
     ├─清四郎とくっつくよ    
     │      ├─見た目が美しけりゃいいよ(同人派耽美系本流)
     │      └─きっと清四郎に弱みを握られてるんだよ(同人派鬼畜主義)
     │  
     ├─誰ともくっつかないよ
     │      ├─女性関係に疲れきったよ(穏健的801派?)
     │      ├─美童(自分)とくっつくよ(ナルシス派)
     │     │    └──世界にはそっくりさんが三人いるらしいから、頑張ってあともう1人探したら?(可哀相になってきたよ派)
     │      └─みんなに振られるんだよ(情け無い美童推進派)
     │      
     └─全員とくっつくよ(つーか雨のパクリだよ派)
           └─てゆーかぶっちゃけカプなんてどうでもいいよ(無頼派)

スレ占拠すまそ。
784名無し草:04/12/03 11:24:59
780必死杉・・・。
785名無し草:04/12/03 12:52:24
騒いでるのひとりだもんね。
がんばって。
786名無し草:04/12/03 14:21:18
>782-783
前回もでしたが、今回もお見事です。
自分は少女漫画派のようですが(少女漫画読みだし)、
強い野梨子至上主義に笑わせてもらいました。

今回もどなたかここから妄想が膨らむと面白いですね。
787名無し草:04/12/03 15:07:22
キモチワルイジャクショウシュウシュウダン
788名無し草:04/12/03 15:13:19
バカみたいおばさん達。
789名無し草:04/12/03 15:41:04
    /\        /\
    /:::::::ヽ____/::::::::ヽ、
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 | .:::::::::: / / tーーー|ヽ     ..::::: ::|r'´  ||--‐r、 ',   自分の死に方は
 | .:::::.  ..: |    |ヽ   .,..ィ'´     l',  '.j '.    自分で選べぇぇぇぇぇぇ
 | :::    | |⊂ニヽ| |  'r '´         ',.r '´ !|  \ 
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790名無し草:04/12/03 15:48:43
やっぱキモイよね780(ゲラ
791名無し草:04/12/03 16:00:43
やっぱキモイよね790
790
790
790
790
792名無し草:04/12/03 16:01:04
    /\        /\
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793名無し草:04/12/03 16:01:56
ババアは逝け(ゲラ
794名無し草:04/12/03 16:02:30
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795名無し草:04/12/03 16:03:52
妄想オナニーババアスレwwwwwwwwwwww
796名無し草:04/12/03 17:16:04
780ホント必死杉・・・見苦しい。
797名無し草:04/12/03 19:07:16
ざんねん!違います 見分けもできねーのかよ(ブ
798名無し草
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  |∵ |   __|__  | < うるせー馬鹿!
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