「結婚しよう、野梨子。……いや、結婚してほしい、ずっと、一緒にいてほしい」
俺は尚も前を向いたまま、しどろもどろになりながら野梨子に言った。
俺の心臓は、緊張のあまり動悸がこれ以上ないくらいに速くなっている。
恐らく頭に必要以上に血が上って、顔が赤くなっているに違いない。
とてもじゃないが、この状態で運転し続けると事故でも起こしてしまいそうだった。
と、その時、巨大交差点で赤信号に捕まった。
スクランブルの横断歩道なので、普通よりも待ち時間が長くなる。
俺はギアをニュートラルに戻してサイドブレーキを引いた。
ブレーキを引ききった時、俺の左手に野梨子がそっと触れてきた。
これが、野梨子なりの答えなのだろうか。
俺は前が動きそうにないのを確認し、野梨子の方を振り向いた。
野梨子も俺を見ていた。
俺達はどちらからともなく近づいていき、触れるだけのキスを交わした。
【続く】