「せ……!」
叫ぼうとして可憐は思いとどまった。
人違いに決まってる。
彼は京都にいるのだから、こんなところで見かけるはずがない。
三年も会ってないのだから、ほんの一瞬で見分けられるはずがない。
そうだ。
きっと彼に会いたい気持ちが私の中で渦を巻いて幻影を見たのかもしれない。
胸が動悸している。額を汗が滑り落ちた。
でも、もしかしたら。
タクシーが走り去った後を見つめる。もちろんタクシーは影も形もない。
もし、あれが清四郎だったら、聞きたいことがたくさんある。
なぜ三年も帰って来ないのか。
なぜ手紙の返事を一つも寄越さないのか。
なぜ私に会いに来てくれないのか。
「もう……忘れちゃった?」
呟く可憐の耳に相棒を無くしたピアスがきらりと光る。
続く