【響鬼】鬼ストーリー 弐之巻【SS】

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1名無しより愛をこめて
「仮面ライダー響鬼」から発想を得た小説を発表するスレです。
舞台は古今東西。オリジナル鬼を絡めてもOKです。

【前スレ】
【響鬼】鬼ストーリー(仮)【SS】
http://tv9.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1164788155/

【まとめサイト】
http://olap.s54.xrea.com/hero_ss/index.html
http://www.geocities.jp/reef_sabaki/

【用語集】
http://www.iiyama-catv.ne.jp/〜walachia/index.html
※用語集へはTOPの「響鬼」でたどり着けます

次スレは、950レスか容量470KBを越えた場合に、
有志の方がスレ立ての意思表明をしてから立ててください。

過去スレ、関連スレは>>2以降。
2名無しより愛をこめて:2007/02/07(水) 00:00:24 ID:msaEl9fP0
【過去スレ】
1. 裁鬼さんが主人公のストーリーを作るスレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1131944389/l50(DAT落ち)
2. 裁鬼さんが主人公のストーリーを作るスレ その2
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1138029584/l50(DAT落ち)
3. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1139970054/l50(DAT落ち)
4. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ 弐乃巻
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1142902175/l50(DAT落ち)
5. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ 参乃巻
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1146814533/l50(DAT落ち)
6. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ 肆乃巻
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1150894135/l50(DAT落ち)
7. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ 伍乃巻
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1158760703/l50(DAT落ち)
8. 響鬼SS総合スレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1162869388/l50(DAT落ち)

【関連スレ】
--仮面ライダー鋭鬼・支援スレ--
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1124581664/l50(DAT落ち)
弾鬼が主人公のストーリーを作るスレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1133844639/l50(DAT落ち)
3名無しより愛をこめて:2007/02/07(水) 00:07:32 ID:TyzITfiS0
用語集Wikiへのリンクは?
4凱鬼メイン作者 ◆Gs3iav2u7. :2007/02/07(水) 16:53:33 ID:wjHvF4/B0
乙です。
5:2007/02/08(木) 00:23:39 ID:I3IBniyQ0
Σ(゚Д゚;アラ? 用語集別冊のことをすっかり忘れてたワ。
それ以前に、本家の方のアドレスがオカシクなってるワ。これでどうかしら。

【用語集】
http://www.iiyama-catv.ne.jp/〜walachia/index.html
※用語集へはTOPの「響鬼」でたどり着けます
http://www23.atwiki.jp/hibikiyougoshu/
※別冊(Wiki)

別冊管理人サン、前スレ613へのレスポンスはまだかしら。
6:2007/02/08(木) 00:30:17 ID:I3IBniyQ0
やっぱりチルダが全角になっちゃう・・・orz
えい、も一回。

【用語集】
http://www.iiyama-catv.ne.jp/〜walachia/index.html
※用語集へはTOPの「響鬼」でたどり着けます
7:2007/02/08(木) 00:35:24 ID:I3IBniyQ0
テスト専用スレッドでは上手くいったんですケド・・・(´・ω・`)
あきらめますた。スレ汚し失礼。
8名無しより愛をこめて:2007/02/08(木) 00:36:50 ID:uC5EkTzl0
ほいよ〜。>>1さん応援。

【用語集】
http://www.iiyama-catv.ne.jp/~walachia/index.html
※用語集へはTOPの「響鬼」でたどり着けます


9:2007/02/08(木) 00:42:17 ID:I3IBniyQ0
>>8
ありがとうございました。
10名無しより愛をこめて:2007/02/08(木) 18:13:09 ID:7YuPN49F0
Wikiですが、2/8付でトップページが更新されてますが、
作品名列挙のあたりは前のままですか?
私のパソコンのブラウザのキャッシュが古いのでしょうか?
人名の注釈、「※まだオフィシャルのものしか収録していません」が、
無くなっているのは確認しました。

>これは響鬼スレ用語集の別冊です。
>用語集サイトさんが掲載しきれない作品(たとえば――皇城の守護鬼、風舞鬼、凱鬼メイン、見習いメイン、中四国支部鬼譚、等々)を補完します。
>裁鬼、裁鬼最終章、鋭鬼、弾鬼、剛鬼、高鬼、ZANKI、DA年中行事、桐矢京介については用語集サイトさんをご覧下さい。

私も前スレ613(このスレ>1)と同意見で、↑二行目の作品名列挙はいらないと思います。
新規の作品もこれから増えて行くと思いますし、増えて欲しいですし。
三行目の方は、用語集さんが書かれると宣言されているので、そのままでいいと思います。


613 名前:552 投稿日:2007/02/02(金) 21:42:00 ID:6UHsMKHR0
>>553

別冊管理人さん、早速のご対応ありがとうございました。

たびたびですみませんが、更に二点ほどおねがいがあります。

・トップページの「用語集サイトさんが掲載しきれない作品、つまり〜」とありますが、
 いま列挙されている作品だけではなく、本家用語集であつかっていない他の作品の
 用語を追加することもあると思いますので、「〜掲載しきれない作品を補完します」
 でよいと思うのですが、どうでしょうか?

・『人名』の注釈に「※まだオフィシャルのものしか収録していません」とありますが、
 すでに『皇城の守護鬼』について追加されていますので、この文言はなくてもよいと
 思うのですが、どうでしょうか?

かさねがさねお手数をおかけしますが、よろしくおねがいいたします。
11名無しより愛をこめて:2007/02/08(木) 20:11:51 ID:ZJFpivQH0
別にあってもいいじゃん
それ以外は扱わないと書いてあるわけじゃないんだし
むしろ、無くして欲しい理由を知りたい
12名無しより愛をこめて:2007/02/08(木) 20:17:54 ID:SYNocc8e0
差分見たら、微妙に変わってたケドね。>>10のブラウザのキャッシュは大丈夫ヨン。
でも結局前スレ613のオネガイは伝わってナイので、管理人さん更に編集ヨロ。
二行目の作品名列挙、取ってくださいネ。

( ゚∀゚)o彡゜オネガイ!オネガイ!

・・・>>11はナニ怒ってんの?
1310:2007/02/08(木) 21:06:09 ID:7YuPN49F0
>11
作品名列挙を外した方が良いと思ったのは、
「等々」にあたる作者さんに対して、失礼な表示だと感じ続けていたためです。
閲覧者としても、投稿作品をアップしている個人サイトや、やまとめサイト上で、
こうした表記で差別するのは、いい印象を受けません。
今後作品が増えていって、キャラや用語も増えて行くと思いますが、
その方達は全て「等々」にあたるのでしょうか?
全ての作品を網羅されるのでしたら、全ての作品に平等であって欲しいと思って書き込みました。

名前が挙げられた作者さんと、挙げられない作者さんをワザワザ作らずとも、
「用語集サイトさんが掲載しきれない作品」のみで、説明が可能です。
逆に列挙しなければならない理由を聞かせて頂きたいです。
14名無しより愛をこめて:2007/02/08(木) 21:11:08 ID:ZJFpivQH0
そんなことは、今「等々」で括られてる作品の用語が掲載されてから初めて考えればいいだろ・・・
そんなことでグダグダ揉めてないでまずは用語集をまともに機能させようや
15名無しより愛をこめて:2007/02/08(木) 21:35:43 ID:SYNocc8e0
ID:ZJFpivQH0
16名無しより愛をこめて:2007/02/09(金) 23:29:27 ID:jOZx2Eu80
( ^ω^)>>14キメェ
17名無しより愛をこめて:2007/02/10(土) 01:47:27 ID:p/Dn9i0s0
用語集のトップから作品名がなくならなきゃ気が済まない御仁が一人だけいらっしゃるようですね。
見なくていいですよあなたは。用語集を。
18名無しより愛をこめて:2007/02/10(土) 02:42:27 ID:DG10he2x0
( ^ω^)いちいちageなくてもいいお
19裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/10(土) 10:55:25 ID:8h4i0JKXO
――瞬過終闘 「四 弾鬼 《喪う道(ひかり)》」

身体が、動かない。痺れとも痛みとも言えぬ灼熱が、弾鬼の全身を内から攻め続けていた。
謎の『影』に完敗した後、崖から転落した弾鬼は運良く激流から浮かび上がり、太古から堆積し続ける砂利が築いた浅瀬に辿り着いていた。
「‥‥ち、きしょ‥‥う‥‥」
仰向けのまま大の字となり、呟くのがやっとだった。あまりに不意の、あまりに悪意に満ちた『影』達の攻撃は、あきらかに弾鬼達を殺そうとしていた。
開く事も出来ぬ右手の音撃棒『那智黒』は柄の部分から先が砕けており、感覚がないまま流れ続ける血が蒼い腕と黒い身体に赤い筋を残しながら流れていく。
「‥‥ねぇ、ぞ‥‥ みと、め、ねぇ‥‥ ぞ‥‥!」
次第に傾いていく太陽は不屈の魂に気も止めず、ただ、雲間からその鬼を照らすだけだった。

臨時休業の紙も気にせずたちばなの戸を開けたのは、黒いスーツを着て眼鏡を掛けた、40半ばほどの見知らぬ男だった。
男に続き、下腹部をわざと見せる為の小さな上着にミニスカート、派手なブーツのいかにも今風といった若い女、赤いライダースーツに、ゴーグルを開けたヘルメットで顔を隠す男が店に入ってきた。
「やあ皆さん。御集まりのところを失礼‥‥」
低くそう言ったスーツの中年は、無言の店主達を気にせず近くの椅子を引き寄せて腰掛け、女は鼻歌を唄いながらテーブルに置かれていたメニューを手にする。
ヘルメットの男が戸を閉めた。
スーツの中年は上背があるが細身で、鬼達とは正反対の身体に色の白い顔を乗せていた。細い目で、眼鏡越しに勢地郎達の顔を順に眺め、足を組んだ。
「そちらが立花さん、ですね。私はこういう者でして‥‥」
懐から取り出された名刺を、取り敢えず受け取る勢地郎。普段は温厚な甘味処の親父である彼の『仮面』は、この緊急事態に外されていた。
「‥‥『防衛省』? この甘味処に一体、何の御用でしょう?」
手にした名刺から対面する顔へ視線を上げた勢地郎に、男は淡々と答えた。
「下っ端職員ですがね。今日は少し話があるんです‥‥」
男は両手の指を交互に絡めて膝の上に置くと、微かに唇の端を持ち上げた。
「『鬼』の、方々にね」
若い女とヘルメットの男も、冷たい笑顔を見せた。
20裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/10(土) 11:07:49 ID:8h4i0JKXO
弾鬼にとって幸運な事が、二つあった。
謎の弾丸は紙一重で急所を避けており、血は止まらないが自力で立ち上がれるまでに回復した。
歩き始めるが逃亡者としての速さは皆無で、武器も無く、このまま『影』や黒い集団に発見されてしまえば、次はない。そんな弾鬼の前に、敵より早くゴウキが現われた。
「おい、しっかりしろ弾鬼!」
「なんで‥‥ゴ、ウキさんが‥‥?」
弾鬼に肩を貸しながらその傷に驚き、それでもゴウキは力強く言った。
「おやっさん直々の御指名を受けてな。敵の事は聞いた。ショウキも無事だ!」
弾鬼にとって、否、弾鬼とゴウキにとって不幸な事が、一つあった。
「目標発見!」
黒い戦闘集団が川沿いの林から次々と現われ、右手のガトリングガンを構えながら二人を取り囲んだ。

「‥‥貴方がイブキさん。そちらの奥がバンキさんですね」
たちばなに初めて訪れたはずの防衛省職員は、イブキとバンキの顔を確認すると、立ち上がった。
「‥‥話って、何ですか? 今はそんな――」
「『鬼』を辞めて頂きたい!!」
不審な言動に苛立ったイブキに向かい、男は初めて大きな声を出した。
「‥‥と、いう話です」
静かな口調に戻してそう加え、中年の男は背を向けてヘルメットの男に軽く手を挙げた。開かれた戸の先、たちばなの店舗前には、いつの間に停車したのか黒い高級車が待機していた。
「‥‥ここから先は、我々の車でお話しましょう」
店から出ようとする男に、沈黙していたバンキが言った。
「待ちなさい」
振り向く男の前に立ち、バンキは続ける。
「我々は確かに『鬼』です。だが貴方達は、貴方お一人が身分を証しただけだ。簡単に信用出来なければ、『鬼』を辞しろと謂われる理由も聞いていない」
「‥‥僕達は一人で戦っている訳じゃないんです。説明はここで、今居る全員にお願いします」
イブキの言葉に笑みを崩さぬまま頷くと、自称防衛省職員の男は表に出て車を帰らせ、また店内に戻って腕時計を見た。
「‥‥2時12分。奥でテレビでも観ながら、ゆっくりと話しましょう。国営放送は如何です? 面白いものが観れるはずですよ‥‥」
居間に座る男がテレビの電源を入れた途端、スピーカーからの絶叫が店内に響き渡った。

続く
21高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/02/10(土) 22:31:48 ID:2nMy+XCc0
短編の予定だったのに、
登場キャラの濃さ故か、取り上げた怪談の内容故か長編になってしまった東京編。
今回は、名前だけは以前出てきたカザムキさんの描写に挑戦しております。
幾つかの石ノ森作品のキャラが混じっていますが、わざとですので気にしないで下さい。
それではどうぞ。

あと余談ですけど、近日所用で北陸の方に出掛けるので、
良いネタが拾えたらそれを基に北陸支部ネタを一本書けないかなぁ…とか思っています。
東京、台東区浅草。
地元の住人や観光客達が、奇異の目である人物を見ている。カメラを持った外国人観光客が一斉に写真を撮り始めた。
人々の輪の中心では。
全身鳩にたかられた男が、平然と鳩に餌を与え続けていた。餌をやる度に鳩が集まり、その分鳩密度が増していく。
川口浩が居たら真っ先に捕まえに来そうなこの鳩男の傍へ、白いスカーフを首に巻いてギターケースを担ぎ、テンガロンハットを被ったウェスタンルックの男が歩み寄ってきた。
「こんな所で油を売っていたのか、ザンキ」
「あ、カザムキさん」
一斉に鳩が飛び立った。

仲見世通りで買ってきた揚げ饅頭を頬張りながら、近くのベンチに腰掛けたザンキとカザムキがこれからの任務について話し合っている。
「……油を売っていたとは言ったが、別に揚げ物を食べたかったわけじゃないぞ」
「でも美味しいでしょ、揚げまん」
そう言いながら実に美味そうに揚げ饅頭を食べるザンキ。
と、そこへ。
「見つけたぞ、この野郎!」
汚い言葉を吐きながら、派手な茶髪に耳ピアスをした体格の良い男が二人の座っている方へと駆け寄ってきた。
「あ!四国支部の……」
「四国支部?お前さんが昨日まで遊びに行っていた、あの?」
そう。駆け寄ってきたのはキリサキだった。
「よう!観光か?」
「馬鹿野郎!てめえを一発ぶん殴りに来たんだ!これを見やがれ!」
そう言ってあの時ザンキから渡された紙片を取り出すキリサキ。思いっきり握り締めたのであろう、皺くちゃになったその紙には「これを見たら三日以内に死ね」と書かれてあった。
「どういう了見だ?こんな文句書きやがってよ。返答次第じゃ只じゃあ済まねえ……」
だが、そんなキリサキに対してザンキは平然と。
「渡す時、また俺達が会えるように祈りを込めて書いたって言ったろ?予想通り怒ったお前が俺に会いに来て、言った通りになったじゃないか。尤も、こんなに早く来るなんて予想外だったがな」
この言葉に思いっきり肩透かしを喰らってしまうキリサキ。
「な、何だと……?」
「お前、いつの飛行機で来たんだ?朝一か?」
「昨日、お前が帰って直ぐだ。席を取れたのが最終便で、こっちに着いた後空港で夜を明かして、その後関東支部に行って……」
迷惑な人だ、とカザムキが呟く。
「支部長に俺の居場所を聞いてきたのか?支部長、何か言ってなかったか?」
「いや別に。ただ、俺にお前の居場所を教えてくれた後、大量に薬を飲んでいたが……」
「あ〜あ、また支部長の胃の調子が悪くなったんだ。お前のせいだぞ」
自分の事を棚に上げて、責めるような口調でザンキが言う。
「何だと!?元はと言えばてめえが妙な文を書くからこうなったんじゃねえか!やっぱり一発殴らせろ!」
そう言って拳を握り締めながらザンキに近付くキリサキを、カザムキが止めた。
「まあ待て。折角だ、君にも我々の手伝いをしてもらおう。どうせこいつを殴った後、暇だろう?」
「何!?」
突然の事に狼狽えるキリサキ。有無を言わせぬ威圧感がカザムキにはある。
「報酬はこの男を一発殴れる権利。悪くないだろ?」
「おい、ちょっと待てって!」
抗議を始めたザンキを無視して交渉を続けるカザムキ。キリサキもその条件を呑み協力を約束した。
「……では自己紹介をさせてもらおう。俺はカザムキ。関東支部所属の弦使いだ」
「俺はキリサキ。あんたと同じ弦使いだが、着のみ着のままで来たから鬼弦以外は持ってきてねえ。だから役に立てるかは分からねえぞ」
「なあに、君はこの男の面倒を見ていてくれるだけで良いさ」
そう言うとカザムキはザンキの肩をぽんと叩いた。
それを見てキリサキは、四国に続いてここでもザンキの面倒を見なければならない事に対し苛立ちを覚えていた。だが約束してしまった以上仕方がない。
渋々頷くキリサキ、そしてザンキに対し、カザムキは今回の任務についての説明を始めた。
「本所七不思議というのを知っているか?」
「知ってるぜ。有名だからな。確か……置行堀(おいてけぼり)や狸囃子の事だろ?」
キリサキが答える。
「そう。置行堀、送り拍子木、送り提灯、燈無蕎麦(あかりなしそば)、足洗邸(あしあらいやしき)、片葉の葦、狸囃子。基本的にこの七つがそうだとされている」
何でも、ここ数年のイレギュラーの発生や稀種の増加に伴って、この本所七不思議の化け物達までもが動き出したらしいという報告が地元の「歩」から寄せられたのだと言う。
「数が数だからな、俺と今日手が空いているこのザンキの二人で行く事になった。尤も、三人目の登場という嬉しい誤算もあったが」
そう言うとカザムキは地図をザンキに渡した。
「場所は隣の墨田区だ。印が付いているのが出現予想ポイント。何か質問は?」
「今から行くのか?」
ザンキの問いにカザムキは首を横に振った。
「残念ながら連中は深夜にしか現れない。だからそれまでは自由時間だ。キリサキとか言ったな。良かったら下町の案内をさせてもらうぜ」
キリサキに向かってカザムキがにっこりと微笑みながら告げた。
墨田区、丑三つ時。
カザムキ、ザンキ、キリサキの三人は深夜の街を闊歩していた。ザンキは頬を痛そうに押さえている。前払いとしてキリサキに殴られたのだ。
「あのな、出撃前に本気で殴ってどうする?これが元で俺が魔化魍にやられちゃったら、どう責任を取ってくれるんだよ?」
「とりあえず骨は拾ってやらぁ」
ザンキの愚痴に対し、素っ気無くそう言い返すキリサキ。
「いいか。街中で、しかも時間が時間だから目立つ行動は慎むように。これ以上支部長の胃を悪くするわけにはいかないからな」
ザンキを見ながらカザムキが告げる。
「先ずは狸囃子から退治に行く。御大層な名前が付いているが、ようはムジナだな。太鼓はちゃんと持っているか?」
「大丈夫だぜ」
そう言いながら音撃棒・落雷を得意気に掲げてみせるザンキ。キリサキにも練習用の音撃鼓と音撃棒が貸し出されている。四国の時と逆の立場だ。
「では行こう」
カザムキに従って、ザンキとキリサキは狸囃子の出現予想地点へと向かっていった。
深夜の街を進んでいく三人。たまにザンキとキリサキが口喧嘩を始めるが、その都度カザムキに窘められている。
街燈の光に照らし出される影が、やけに不気味に感じられる。昼間と夜とで、街はこんなにも顔を変えるものなのか。街中での魔化魍戦には不慣れなキリサキはそんな事を考えていた。
と。
カチ、カチという乾いた音が聞こえてきた。そして前方に薄っすらと灯りが燈る。
闇の中、丸く切り取られた光の空間の中に、黒帷子姿の童子と白帷子姿の姫が現れた。童子は手に拍子木を、姫は提灯を持っている。
童子が拍子木をカチッと鳴らした。
「向こうから出てくるとはな……」
カザムキが肩に背負ったギターケースを下ろしながら言う。これが送り拍子木と送り提灯だ。
「あれが?何かの魔化魍の童子と姫じゃねえのか?」
「多分そうなんだろうが、未だに真相は明かされていない。……気を付けろ」
キリサキの問いにカザムキが答える。
だが、襲い掛かってくるかと思いきや、童子と姫はそのまますぅーっと滑るように遠ざかっていった。
「おい逃げたぞ。追うか?」
「全員で行く事も無い。あの二体は俺に任せて、君達は予定通り狸囃子を」
それだけ言うと二体の後を追って駆けていくカザムキ。後にはザンキとキリサキだけが残された。
「……やられた。こいつの面倒を全部押し付けられた」
「あれ、どう見たって罠だぜ。何処かに誘き出そうという意図が見え見えだったもん。大丈夫かなぁカザムキさん」
そう言いつつも口調からは全く心配しているように見えない。余程カザムキという鬼が実力者なのか、それとも……。
そこまで考えてキリサキは思考を止めた。とりあえず今は与えられた任務をこなすだけだ。既に報酬は前払いで貰っているし。
「おい、さっさと狸狩りに行くぞ。連中との戦いは慣れているから、俺の指示に従ってもらうぜ」
ムジナは四国支部恒例の「太鼓祭り」で何度も交戦経験がある。しかも隠神刑部狸の血を引く、四国特有の強力なやつとだ。
「やけに張り切ってるなぁ。いつもこうなのか?」
「うるせえ!さっさと付いてきやがれ!」
ほんの先月、件の「太鼓祭り」を終えたばかりのキリサキは、まさか関東に来てまでムジナ退治をする羽目になるとは夢にも思っていなかった。
つまり――ただ苛ついているだけである。
「その前にさ、何か夜食でも食べない?俺、腹が減っちゃってさ……」
大袈裟に腹を押さえながらザンキが言う。
「んな事言ったってなぁ……」
当然ながらこの時代に二十四時間営業の店はそんなに多くない。我が儘を言うザンキを無理矢理引っ張っていくキリサキ。
すると、目の前に屋台の蕎麦屋があるのが見えた。
「おおっ!これぞ神の思し召しと言うやつだ!屋台があるぞ!」
「おい、ちょっと待て。あの屋台、何かおかしいぞ」
キリサキの言う通り、その屋台は何処かが奇妙だった。ちゃんと屋台には灯りが燈っているし、暖簾だって掲げられてある。しかし何かがおかしい。
だが腹を空かせたザンキは、キリサキの忠告を無視して一目散に屋台へと駆けていった。
「大将、ジャパニーズヌードル一人前ね!」
暖簾を潜るや否やそう告げるザンキ。だが。
「ありゃ?ちょっと来てくれ。誰も居ないぞ」
そう。キリサキがおかしいと思ったのは人の気配が全く感じられなかったからだ。しかし蕎麦を茹でる大鍋からは熱い湯気が上がっている。
「えっと……セルフサービスの屋台かな?」
「んな訳ねえだろが。ここで蕎麦を作ってた奴はどうした?まさか魔化魍に……」
と、その時。突然灯りがちかちかと点滅を始めた。
「あ、そうか。きっと新しい蛍光灯を買いに行って留守なんだ」
「馬鹿かてめえは!こんな時間に何処の電気屋が開いてるってんだ!それに見ろ!」
キリサキが指差す。そう、この屋台の灯りは古めかしい置行灯だけなのだ。
「あ、これ知ってる!確かサムライの時代に使われてたって照明だろ?でもさ、何で風も無いのに炎が揺れてんだ?」
「……おい。確か七不思議の中に蕎麦がどうのとか言う名前が無かったか?」
厭な予感がしつつキリサキがザンキに尋ねる。
「おお、そういえばあったな!ええと確か……」
暫し考え込んだ後、ザンキが嬉しそうに言った。
「そうだ、思い出した!燈無蕎麦だ!と言う事は俺達は今その蕎麦屋に居るかもしれないという事かっ!」
ふっ、と灯りが消えた。
「あっ!消えた!真っ暗だ!」
「馬鹿、落ち着け!落ち着いて敵の襲撃に備えろ!」
「敵!?く、来るか!」
突然訪れた闇に冷静さを失ったザンキは、キリサキの「敵」という言葉に反応して変身鬼弦を鳴らした。
落雷を受け、屋台が炎上する。その炎の中から斬鬼と、少し髪の毛が焦げたキリサキが現れた。
「おお、明るくなった!さあ魔化魍は何処だ?」
「待てコラ!俺の髪、どうしてくれるんだ!ちりちりになっちまって……ドリフのコントか!あ?」
「なあに、かえって男前になったぜ?」
見え見えの嘘に最早怒る気も失せるキリサキ。
「……で、燈無蕎麦ってのは結局何だったんだ?」
「分からん。まあ人に危害は加えないようだし、退治したって事で良いんじゃね?」
「そんなアバウトな……」
斬鬼はこんな事を言っているが、実際の怪談に登場する燈無蕎麦は人に祟る事があるので御注意下さい。
「それより俺は腹が減ったぞ!もういい!近くの川で魚を捕まえて食べる!」
「ちょっと待て!公害問題が騒がれているこの時期に、都会を流れる川の魚を獲って食うだと?本気か?」
しかしさっき同様キリサキの言葉には耳を傾ける事無く、斬鬼は地図を頼りに近くを流れる川へと向かって行った。
「あいつ鬼の姿のままで行きやがった!くそっ!」
慌てて後を追い掛けるキリサキ。こんな事になるのなら一時の感情に任せて東京になんか来るんじゃなかった、そう後悔してやまないキリサキであった。
キリサキが追いついた時には、斬鬼は既に荷物を川縁に置いて魚を獲っていた。
「あのな、今何時だと思ってるんだ?もう魚だって夢の中だぜ?」
「よく見ろよ、ほら!」
そう言うと斬鬼は、音撃弦・烈雷に何匹かの魚を突き刺して掲げてみせた。
「馬鹿みたいに魚が獲れるぜ!お前も来いよ」
「てめえ音撃弦を銛代わりに使ってんじゃ……ん?」
ふとキリサキの頭の中に、置行堀の話が浮かんできた。
「んな訳ねえよな……」
そう呟きながら預かっていた地図を眺めるキリサキ。置行堀の出現予想地点は錦糸町の近辺だった筈だ。
だがしかし、本来置行堀が出現したとされる錦糸堀という水路は、現在では開発されて無くなっていると聞いている。という事は。
(水辺……魚……また厭な予感がしてきたぜ)
その辺にしておけ、と言いかけたその時。
「ぬおっ!」
突然斬鬼の足が水中から引っ張られた。続いて不気味な声が周囲に響く。
「置いてけ〜」「置いてけ〜」
キリサキが自らの変身鬼弦を弾いた。濃霧に包まれたキリサキの姿が鬼へと変わる。
「霧咲鬼参上っと。さて、何処だぁ……?」
いつでも戦えるよう構えを取って周囲を見回す霧咲鬼。先程の声の主、すなわち童子と姫を探しているのだ。
「おーい、俺を助けてくれないのかぁ!?」
いつの間にかかなり深い所にまで引き摺り込まれていた斬鬼が、霧咲鬼に助けを求めてくる。
「馬鹿かてめえは!自分の属性を忘れたのか!?」
「あ、そうか」
水中に向かって放電する斬鬼。眩い光が真夜中の川面を照らす。
自分の足首を掴んでいた手が離れたのを確認し、その場から泳いで逃げる斬鬼。一方、川縁では既に霧咲鬼が置行堀の童子と姫を相手に大立ち回りを繰り広げていた。
鬼法術・霧隠で童子と姫の視覚を奪い、一方的に攻撃を決めていく霧咲鬼。殴る、蹴る、頭突きに目潰しとやりたい放題だ。
と、斬鬼の背後の水面から何かが飛び出した。猫だ。猫の姿をした魔化魍が跳びかかってきたのだ。魔化魍に組み付かれる斬鬼。
「猫だぁ?猫が水嫌いってのは万国共通なんだぞ!それなのに川から出てきやがって!」
斬鬼の右肩に猫の魔化魍――置行堀が噛み付いてきた。その瞬間電撃を流し撃退する斬鬼。
「悪戯好きなにゃんこにはお仕置きだ!」
音撃震・雷轟を装着して刃を展開した「烈雷」を置行堀に突き立てると、間髪入れず音撃斬をお見舞いする。
「音撃斬!お腹と背中がくっつくぞ!」
腹を空かせた時の斬鬼はいつもより二割増しで強い。哀れ、物凄ぉく久々に湧いた置行堀は、こんな巫山戯た名前の音撃の前に敗れ去った。
「やべっ、先端に魚を刺したまま音撃を決めちゃった。勿体ねえ……」
見ると、霧咲鬼の方も片が付いたようである。どうやらこの男、素手喧嘩も得意らしく、貸し出された音撃棒は一度も使っていないようだ。
「さてと……狸を追っていたら図らずも七不思議のうちの二つを解決しちまった訳だ」
新しい服に着替えた(キリサキは昼間のうちに浅草界隈で購入しておいた)二人は、会話をしながら狸囃子の出現予想地点へと向かっていた。
「……燈無蕎麦に関しては微妙なところだが、とりあえず当初の予定通り狸囃子を退治したらここへ向かおう」
そう言って地図を指し示すキリサキ。そこは足洗邸の出現予想地点だった。
そこへ、キリサキがよく使っている緊急連絡用の隼型式王子が戻ってきた。キリサキの掌中に舞い落ちた式王子に何か文字が書き込まれている。

『足洗邸で落ち合おう キリサキ、ザンキ』
『了解した カザムキ』

「どうやら無事カザムキさんを見つけて連絡が取れたみたいだな」
式王子を懐に仕舞いながらキリサキが言う。
「けどさ、鳥って鳥目だろ?こんな真夜中によくカザムキさんを見つけられたよな」
感心したようにそう告げるザンキ。
「当たり前だぜ。こいつは陰陽道いざなぎ流自慢の式王子だ。式神なんかと一緒にするんじゃねえ」
ザンキの疑問に対する回答にはなっていないようだが、質問したザンキの方もそれ以上は何も言わなかった。
それからも二人は高知での続きと言わんばかりにロックについて熱く語りながら目的地を目指していた訳だが。
「……しかし気になる。こんな街中にムジナなんて居るのか?」
キリサキが至極真っ当な疑問を口にした。
「だから『七不思議』なんだろ?まあこの回答には納得がいかないようだから俺が分かり易い喩え話をしてやる」
そう言うとザンキは自分の財布の中から一枚の写真を取り出した。近くの街燈の下に移動して見てみると、赤毛でショートヘアの美少女が写っていた。
「モニカ。俺のガールフレンドだ。口癖は『さよなら&グッドラック』」
「それは別れ言葉じゃないのか?」
キリサキの言を無視して話を続けるザンキ。
「あれは彼女と海に行った時の事だ。俺は彼女の運転する車の助手席に乗り、雨上がりの道を走っていた」
「いや、こういう場合男が運転しねえか?それとも伊太利亜ではそれが普通なのか?」
遠い目をしながらザンキは語り続ける。
「車中ではビーチ・ボーイズが流れていたっけ。俺は幸せだった。ずっとこのまま走り続けていたいと思った」
「成る程、好きな人と一緒ならそう思うわな」
「並走するハーレーの後部座席に乗った姉ちゃんが物凄い巨乳でな……」
「おい、ちょっと待てやコラ!デート中だろ?彼女が運転している時に自分は別の女の乳見てたのか?」
と言うか何が言いたいのか全く分からない。とりあえずキリサキは黙って続きを聞く事にした。
「その時、彼女は掛けていた青いサングラスを外すと俺の方に向いてこう言ったんだ」
「いや、注意しろよ。脇見運転は危ないだろが。ただでさえバイクと並走してるってのによ」
どうしても突っ込みを入れてしまう。そうさせる何かがザンキにはある。
「今日はお父っつあんもおっ母さんもお出掛け二人きりなの……と」
「何でそこだけ訛る?お父さんとお母さんでいいだろ」
ザンキに突っ込みを入れても仕方がないのではあろうが。
「だから今日は海辺でたっぷりイイコトをしましょ……そう彼女は微笑を浮かべながら俺に囁いたんだ。嗚呼……」
「ほうほう、それで?」
「海辺で俺達はさっそくイイコト――ゴミ拾いを始めた」
「いや、確かに良い事だけどさ!つーか彼女は何?役所の清掃課の人?」
「作業を終えた後、彼女はこう言ったんだ。この言葉は以降の俺の戦い方に大きな影響を与えた。何度この言葉によって窮地を脱したか……」
話し始めた時、ザンキは確か「喩え話」と言った筈だ。しかしどう聞いても「喩え話」ではない。明らかに脱線している。
(まあいいか。俺も話の続きが気になってきたし……)
キリサキが話の先を促したその時、ぽんぽこぽんという聞き覚えのある音が聞こえてきた。ムジナの腹鼓だ。どうやらいつの間にか目的地に着いていたらしい。
「話は後だ。行くぜ!」
続きが気になってしょうがないキリサキを置いて、ザンキは鬼弦を鳴らしながら音のする方向へと駆けていった。
「そりゃあ!音撃打!え〜と……もうネタ切れ!」
斬鬼の音撃打が最後の一体を仕留めた。彼は音撃打を決める度にいちいち即興で考えた技の名前を叫んでいたのだが、とうとうネタ切れになったようだ。
「ふぅ……。おーい、そっちはどうだぁ?」
「終わったぜ。親も倒した」
音撃棒をくるくると回しながら霧咲鬼が答える。毎回三メートル前後の大きさのものが出てくる四国と違い、他地域の親ムジナは等身大のため退治し易い。
「いやぁ、今回の戦いもモニカの言葉に救われたぜ。サンクス、モニカ」
顔の変身を解除したザンキは、そう言うと財布の中から再び写真を取り出してキスしようとする。
「そういやさっきの話の続きだけどよ……」
「あっ!」
突然ザンキが驚きの声を上げた。そして霧咲鬼に向かって申し訳なさそうに告げる。
「すまん、これはトリッシュの写真だった。モニカは黒髪なんだ」
呆れてものも言えない霧咲鬼であった。

地図に示されていた足洗邸の場所へとやって来たザンキとキリサキ。当然人に目撃された時の事を考えて、また新しい服に身を包んでいる。
「まあ、どうせまた変身してオシャカになるんだけどね」
「誰に対する説明だ、そりゃ?」
本当にザンキの言っている事は理解出来ない。
さて、件の足洗邸であるが、確かに地図の場所には大きな、そして老朽化の激しい武家屋敷が立っていた。その今にも朽ち果てそうな門の前にカザムキが立っている。
「あ、カザムキさ〜ん」
カザムキに向かって手を振るザンキ。そんな彼に向かってキリサキが耳打ちする。
「なあ、さっきのモニカちゃんか?彼女が言ったっていう言葉、一体何だったのかそろそろ教えてくれよ」
「分かった分かった。今回の任務が終わったら教えてやるよ。カザムキさ〜ん、送り拍子木と送り提灯ってのはどうなった〜?」
「勿論退治してきたさ。そっちはどうだった?」
狸囃子以外に燈無蕎麦、置行堀を退治してきた旨を伝えるザンキ。
「となると残るは二つか。先ず足洗邸を解決した後、片葉の葦に向かおう」
「その必要は無いよ」
突然の声に驚く三人。見ると、屋敷の屋根の上に童子と姫が立っているのが見える。
「あれが足洗邸の童子と姫?」
「いや、足洗邸は稀種扱いだった筈。童子と姫がいる筈が無い」
とするとあれは片葉の葦の童子と姫だろうか。
「しかし妙だな。片葉の葦の出現予想ポイントは蔵前橋の近くだった筈。何故ここに?」
カザムキが不思議そうに呟く中、童子と姫は屋根に開いた大きな穴の中へと飛び込んでいってしまった。
「なあ、罠の臭いがぷんぷんするんだが……」
明らかに屋敷の中へ入るように仕向けている。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、というやつだ。行くぞ」
率先して門を潜っていくカザムキ。その後を渋々といった感じでザンキが、続いてキリサキが入っていく。
キリサキが入り終えると同時に、門が音を立てて閉まった。そして彼等の眼前には、敷地一面にびっしりと生えた片葉の葦の姿があった。
「足の踏み場も無いとはよく言ったものだな……」
カザムキとザンキが自らの音撃弦を使って片葉の葦を薙ぎ払い、道を作っていく。
片葉の葦は、文字通り葉っぱが片側にしか付いていない葦の事だ。但し、日野巌著「植物怪異伝説新考」という本で片葉の葦発生のメカニズムは科学的に解明されている。
だが、それはあくまでも「植物としての片葉の葦」についてであり、「魔化魍としての片葉の葦」は……。
突然、薙ぎ払われた片葉の葦が三人に向かって飛んできた。しかも葉っぱが鋭利な刃物のように変化している。
「何だこりゃ!」
「ただの植物じゃあ無いと思ったが、こんな風に仕掛けてくるとは!」
それぞれ音撃弦と音撃棒を振るい、飛んでくる片葉の葦を払いながら前へと進み続ける三人。
「走るぞ!屋敷に入るんだ!」
カザムキの号令と共に、一斉に駆け出した。そして屋敷の中に入り込む。どうやら片葉の葦は建物の中までは入ってくる事は出来ないようだ。
屋敷の中は灯り一つ燈っていない。ところどころ破れた屋根から月明かりが差し込んでいる程度だ。
一歩踏み出す毎に床板がぎいぎいと音を立てる。今にも底が抜けてしまいそうな不安を覚える。
「童子と姫は何処だ?それに足洗邸も……」
蜘蛛の巣を払い、黴の臭いに気分を悪くさせながらも、三人は広い屋敷内を探索して回った。余程上手く隠れているのだろう、気配は全く感じられない。
「うおっ!」
ザンキが床に開いていた大穴に落ちそうになって悲鳴を上げる。慌てて手を貸してやるキリサキ。
「足元には気を付けろ」
先行していたカザムキが振り返ってザンキに言う。
「そう言えば足洗邸ってどんな魔化魍なんだ?俺は詳しく知らないんだが」
キリサキがカザムキに尋ねた。
「足洗邸と言うのはな、天井裏から『足を洗え』という声と共に巨大な毛むくじゃらの足が降りてきて、家人が洗ってやるまで暴れ続けるという魔化魍だ」
「迷惑なやつ」
自分の事を棚に上げてザンキが言う。
「見ろ。屋根も床も、至る所穴だらけだろう?おそらく足洗邸が開けた穴だ。大型魔化魍だからな、とりあえず弦で……」
刹那。
巨大な足が天井から降ってきてカザムキを踏み潰した。あまりの出来事に目を点にして呆然と眺めるザンキとキリサキ。
長いような短いような、沈黙の時が流れた。
静寂を破るかのように、既に戦闘形態へと化した童子と姫が現れる。
「……はっ!お、おい!俺達も変身するぞ!」
「いや、あのカザムキって人の事を心配しなくてもいいのか……?」
変身鬼弦を鳴らし、本日三度目の変身をしようとするザンキ。
「待て!電撃で家が燃えたらどうすんだ!先ずは俺が……」
変身するとザンキを抱えて屋根に開いた大穴から屋根の上へと跳び出す霧咲鬼。そこで改めてザンキも鬼弦を鳴らし変身する。
「で、足洗邸は何処だ?」
辺りを見回して霧咲鬼が呟く。あれ程の巨体が一瞬にして消え去るとは思えない。
屋根の上に怪童子と妖姫が上がってきた。交戦状態に入る二組。
「どうりゃああああ!」
妖姫の顔面を鷲掴みにして、全力で屋根に叩きつける霧咲鬼。瓦が砕け散り、派手な音を立てて屋根を突き破ると屋敷内へと消えていく二人。
大量の埃が舞い上がる中、月明かりに照らされながら霧咲鬼と妖姫が戦いを続ける。
と、そこへ轟音を立てて足洗邸が攻撃を仕掛けてきた。間一髪でそれを避ける霧咲鬼。
「またか!一体何処に隠れてやがるんだ!」
霧咲鬼の隙を衝いて妖姫が襲い掛かってきた。そこへ屋根の穴から斬鬼が飛び降りてきた。間髪入れず妖姫を殴り飛ばす斬鬼。
「わりぃ、助かったぜ。で、童子は?」
「すまん、逃げられた。って、あぶなァーい!上から襲って来るッ!」
キリサキの真上から足洗邸の大きな足が降ってきた。前転して攻撃を避ける霧咲鬼。
「くそっ!室内じゃ不利だぜ!」
その時、何処からともなく哀愁漂うギターの旋律が聞こえてきた。
「な、何だ?何処だ、何処に居る!」
きょろきょろと周囲を見回し、音の出所を探す霧咲鬼と妖姫。
「居たぞ、あそこだ!」
妖姫が指差す先には大穴が――その穴の向こう、屋根の上には月を背負ってギターを奏でる異形の戦士の姿があった。
「ははははははは!」
突然、異形が笑い出した。続いて名乗りを上げる。
「ズバッと参上、ズバッと解決。人呼んでさすらいのヒーロー!風向鬼!」
そう。屋根の上で恰好付けている男は、先程足洗邸に踏み潰されたまま消息不明になっていた風向鬼その人だった。
「いよっ!待ってました!」
拍手をしながら斬鬼が風向鬼へと声を掛ける。
「……いつもああなのか?」
「そう。ある意味うちの支部の名物だな。ちなみにあの人、太鼓と管も使えるんだけど、その都度名乗りが違うんだぜ」
明らかに斬鬼は説明したがっている。
「……教えてくれや」
「管の時あの人は『悪のある所必ず現れ、悪が行われる所必ず行く!正義の戦士、風向鬼!』になるんだ」
「太鼓は?」
「知らん。まだあの人が太鼓を使っている所は見た事が無い」
その時、斬鬼が取り逃がした怪童子が、屋根の上の風向鬼に向かって襲い掛かるのが見えた。
「おい、危ないぞ!」
霧咲鬼が叫ぶ。
「分かっているさ。まあ見てな」
容易く怪童子の攻撃を躱すと、的確に打撃を決めていく風向鬼。そして。
「といやっ!」
掛け声と共に上空高く跳躍すると、怪童子目掛けて急降下する風向鬼。その足先に風が収束していく。
「鬼闘術・疾風脚!」
風を纏った強烈な蹴りが、怪童子の頭部を吹っ飛ばした。爆発し、塵と化す怪童子。
決めポーズを取った風向鬼は更に。
「でぇぇい!」
装備帯から鞭を取り出すと、屋根に開いた穴目掛けて勢いよく振るった。
鞭は、穴越しに彼の戦いを見ていた霧咲鬼の脇を通り抜け、再度霧咲鬼を踏み潰そうとしていた足洗邸に絡みつき動きを止めた。
「おおっ!危ねえ……。助かったぜ風向鬼さん」
「礼には及ばんよ。それより今がチャンスだ!」
鞭を力一杯引っ張りながら風向鬼が告げる。その言葉に、斬鬼が刃を展開した「烈雷」を手に飛び掛かっていった。
針のように鋭い足洗邸の剛毛を薙ぎ払うと、刃を突き立てて音撃斬の体勢に入る斬鬼。
「音撃斬!雷神招来!」
今回はちゃんと正式名称を口にするザンキ。ハードロックの音色が鳴り響く。純和風の建築には実に不釣合いだ。
「おお!滾るねぇ!ホンット良い音を出しやがるぜ!」
感心しながら賛辞を送る霧咲鬼の背後に、妖姫が迫る。だが。
「馬鹿が。そう何度も背後を取られてたまるかよ」
霧咲鬼の裏拳が妖姫の顔面に減り込んだ。更に強烈な回し蹴りを相手の側頭部に叩き込む。
「どうした?かかって来いよ、コラ」
拳をバキボキと鳴らしながら妖姫に歩み寄り、容赦無く攻撃を続ける霧咲鬼。
足洗邸と妖姫が爆発四散したのはほぼ同時だった。
「おっしゃあ、良い仕事したぜ!」
顔の変身を解除したザンキがにこやかに笑いながら、同じく顔の変身を解除したキリサキの傍に近寄ってくる。
「見ろよ、朝日がディ・モールト綺麗だ。まるで俺達の勝利を祝福しているかのようだぜ」
そう言って昇る朝日を指差すザンキ。朝焼けに包まれて街が動き出している。
「うん?……って、ちょっと待て!よく見ろ!」
「え?何が?……おや、何か変だな」
「変に決まってるだろうが!屋敷が消えちまってるじゃねえか!」
屋敷が跡形も無く消えてしまっているのだ。自分達だけを残して。
「お前、テレポートなんてイカした能力持ってたのか?」
「俺はフーディーニか!そんな訳ねえだろうが、常識的に考えて!」
では何故屋敷は忽然と消えてしまったのだろうか。そこへ、やはり顔の変身を解除したカザムキがやって来る。
「おそらくこいつは、あの童子と姫が作り出した幻――言うなれば『屋敷幽霊』だったんだろうな」
「屋敷幽霊?幽霊屋敷じゃなく?」
「そう。屋敷そのものが幽霊みたいなものだったんだ。そうでなければ、あんな怪しげな屋敷が長い間放置されている筈がない」
成る程、屋敷に辿り着いた時はそんな事を考える余裕も無かったが、冷静に考えると確かにおかしい。
「じゃあ燈無蕎麦も同じ様なもんだったのかなぁ。燃えちゃったけど」
おそらくザンキの言う通りだろう。
「でもよ、俺は何か納得が出来ねえな。他の魔化魍と比べて存在意義も行動目的も何一つ分からねえ」
海や川、山野で凶暴な魔化魍を相手に日夜戦っているキリサキにしてみれば、今回の本所七不思議の魔化魍は全くもって理解に苦しむ存在だ。
しかしそれに対しカザムキはたった一言。
「だから『七不思議』なんじゃないか」
笑いながらそう告げると、さっさと帰り支度を始めてしまった。結局はその一言に尽きるようだ。不本意ながらもその説明で納得する事にしたキリサキ。ザンキは最初から深く考えていない。
「そうだ、忘れる前に言っとくぜ。さっきのモニカちゃんの話、ちゃんと続きを話してもらうからな」
約束だったろ、とザンキに詰め寄るキリサキ。
「心配すんなって。ちゃんと話してやるからさぁ。ちょっとこれ持ってて」
そう言って「烈雷」をキリサキに手渡すと、ザンキはまたしても財布の中から一枚の写真を取り出した。
「これこれ。この写真の女性がモニカ。それでな、モニカが……」
「待て。確か黒髪だと言ったよな。この写真の女、ブロンドじゃねえか」
確かに、写真にはロングヘアーの金髪美女が写っている。
「OH〜!すまん、それはデイジーの写真だった。あれ?モニカの写真は何処だ?」
あれでもない、これでもないと言いながら財布から大量の写真を取り出すザンキ。どうやったらそんなに大量の写真が財布に収まると言うのか。
「おい……。てめえどんだけ彼女が居るんだよ」
「全世界の保有している核弾頭の数より多い!」
そうきっぱりと告げると、尚もモニカの写真を探し始めるザンキ。
こりゃ時間が掛かるな……。そう呟くとキリサキはカザムキ同様、さっさと帰り支度を始めるのだった。
その日のうちにキリサキは四国へと帰る事になった。四国支部はいつもぎりぎりの人数で切り盛りしているため、これ以上穴を開ける訳にはいかない。席が取れたのは実に幸運だった。
空港へはザンキが見送りに来ていた。
「今度は俺が見送られる側になっちまったな……」
支部長以下、支部の仲間達のために買い込んだ土産を手に、キリサキが言う。
「じゃあな。今度は正式に休みを取ってから来いよ。一緒に新宿や六本木にでも遊びに行こうぜ」
「そうだな」
あの時同様、互いの拳を突き出して軽く当てあう。そろそろ行かなければならない。
「ところで、だ。いい加減モニカちゃんの話の続きを教えやがれ。気になって仕方がねえ」
「分かってるって。……ほら」
そう言って二つ折りにした紙片を渡すザンキ。
「長い話になりそうだからな、それに書いておいた。ついでにモニカの写真も入れておいたぜ」
「良いのかよ、貰っちまって?」
「心配すんなって。ネガが残ってるから幾らでも焼き増し出来る」
機内で写真を見て散々羨ましがってくれ。そう言ってザンキは嬉しそうに笑った。
機内で、キリサキはザンキから渡された紙片に書かれていた文章を読み、怒りに震えていた。
紙片にはでかでかとこう書かれていた。
『長々と与太話に付き合ってくれてサンクス、キリサキ』と。
あの勿体ぶった話は全部その場限りの嘘だったのだ。こうなるとあの女性達の写真も怪しい。誰かを担ぐために予め仕込んでおいたものかもしれない。
(やられた……。紙片が出てきた時点で疑うべきだった)
これでは先日と同じではないか!ザンキに対する怒りがどんどん大きくなっていく。隣の座席に座っているサラリーマン風の男が、不審そうにキリサキを見ている。
と、何かがキリサキの手から落ちた。写真だ。
(モニカの写真とか言ってたが……話が与太だった以上、女の写真な訳無いよな)
また腹が立つであろう事を承知で、キリサキは写真を見た。
それは、昨日カザムキに下町を案内してもらっていた時に撮られたと思しき、キリサキの写ったポラロイド写真だった。
(何だこりゃ?いつの間に……)
その写真の隅には、マジックでこう書かれてあった。

『また来いよ 約束だぞ ザンキ』

「……へっ」
大事そうに写真を仕舞うキリサキ。ザンキに対する怒りも消え失せた。
四国支部一の問題児は、大空の上で関東支部一の問題児との再会の日を楽しみにするのであった。 了

番外編イメージソング
モニカ
作詞 三浦徳子  作曲 NOBODY  編曲 大村雅朗  歌 吉川晃司

真夜中のスコール Backミラーふいにのぞけば
赤い電話Boxの中から 君とあいつ出て来た Sea Side Avenue
Oh! Thanks,Thanks,Thanks,Thanks モニカ Thanks,Thanks,Thanks 八月のSad Song
ムム…忘れないさ ムム…今年の夏
ムム…この街さえダイヤモンドにきらめいた
何もかもが君のせいさ Oh!モニカ
43名無しより愛をこめて:2007/02/10(土) 23:44:26 ID:RCkgZCjq0
70年代の話のイメージソングが80年代ってのも先取り大好きな先代に合っている気がしてWW
44皇城の〜の中の人 ◆M4hWSo7coo :2007/02/12(月) 17:43:48 ID:W6I+LiEB0
思うところ在りまして、前スレ>>448以降を以下のように修正させていただきます。
申し訳有りませんが宜しくお願いいたします。

>>447より

 それ以上何も言わせまいとするかのように長を呼ばわる。ハバキと肇はいつの間にか二
人の後ろに席を移し、モニターに食い入っていた。しゃくった顎で指した画像は、清海の
倉庫街を映し出している。範囲指定をしてやりマウスをクリックすると無人の埠頭がモニ
タに大写しとなった。

「見事にいないね…」

 無表情。事実だけを淡々と。
 高みからの映像に人影は皆無であった。倉庫街とはいえコンビニや食堂などの店舗もあ
る。通常百人からの人間が働いているはず。
 
「失態どころの騒ぎではない」

 ハバキが吐き捨てた。蒼白である。
 ハバキだけではない。皆が同じ思いだった。街中で、しかも本拠のほんの眼と鼻の先で、
大量の一般人が魔化魍に食われてしまった可能性が極めて高い。失態での一言片付くよう
な問題ではなかった。

「彼奴らこのエリアのどこに潜伏している?人ひとり消えれば連絡も途絶える。誰かが不
審に思うはずだ。歩からの報告はなにか」

 淡々と問う。

「取り立てて変わったことは…まてよ……昨晩から豊海の倉庫と電話が通じないとヤマト
の人間が云っていた気がするな。回線が切断しているらしい」

 同じような口調でヒラメキが返えした。この場合のヤマトとはヤマト運輸を指す。
 渦巻く感情を押し殺すも御所守としての勤め。迷ったり嘆いている間にも被害は増え続
けているかもしれないのだ。後悔するならば魔化魍の殲滅を完了してからにすればいい。
そういうことなのだろう。
46裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/12(月) 19:45:08 ID:P1G3uSb0O
――瞬過終闘 「五 剛鬼 《抗う信念(つばさ)》」

幾分回復したとはいえ、弾鬼は未だ戦えはしない。ゴウキは変身音叉『音鋼』を展開して左の握り拳に打ちつけた。
「‥‥飛ぶぞ!」
蒼い炎に包まれるゴウキは弾鬼を抱えて跳躍し、二人が立っていた空間には弾丸が飛び交っていた。黒い集団は瞬時に銃口を持ち上げ、青空を背にした蒼い炎目がけて再び構えた。
変身完了と同時に、剛鬼は空中から更に上空へと弾鬼を放り投げ、自身は両手に構えた音撃棒『金剛』で銃弾を防ぎながら着地。
敵は20数体、剛鬼の前後左右に5、6人が小隊を組んで方位している。
腰を屈めて再び跳躍、と見せて集団の視界を一瞬混乱させた隙に、装備帯から鷲型ディスクアニマル『浅葱鷲』を取り外し、前方の敵へ手裏剣のように投げつけた。
浅葱鷲は2体の肩と首筋を切り裂くと動物形態へ変形して急旋回、残る3体の急所を狙い急降下攻撃を繰り返す。
剛鬼は最も寄り固まっていた左の集団へ走り出すと、両手の金剛をブーメランの様に投げ放ち、空手となった拳に鬼爪を伸ばした。
微かに首を回すと、前方に配置していた3人は浅葱鷲に苦戦している。個々の能力は高くなく、警戒しなければならないのは謎の弾丸だけのようだった。

「これは‥‥」
たちばなの居間にあるテレビの画面は、動かないカメラで『二人』とざわめき続ける政治家達を映し続けていた。
「‥‥視聴率50%は確実でしょう。日本人の半数以上が証人になりますよ‥‥ 歴史が変わる瞬間のね」
勢地郎は目を疑った。『彼等』は決して姿を見せない。『彼等』は、誰もが知らずにいる存在のはずだった。
しかし現に『二人』は、国会襲撃という最も大胆且つ確実な術で、その存在を露見させ、『何か』を始めようとしている。
そして、テレビを利用するという事を知っており、更にその中継が途絶えずにいる事を知っていたこの男もまた、その『何か』の一部を任されているに違いない。
居間では男だけが座っており、イブキ達は立ったまま画面を注視し続けている。
勢地郎は右手に持ったままの名刺に再び視線を傾け、男の名前を確認した。
『日高 博昭』
やはり勢地郎が知らぬ名だったが、隣に立っていたみどりだけが、名刺を見た後直ぐ様、男―― 日高博昭の顔に目をやった。
47裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/12(月) 19:49:40 ID:P1G3uSb0O
「さて、もう宜しいでしょう」
イブキとバンキに振り向くと、日高はテレビを消し、立ち上がった。
「政府がどれだけ鈍重でも、今夜には発表されます。『鬼』や『魔化魍』、『猛士』の事がね‥‥」

剛鬼は鬼爪と金剛の連続攻撃で集団を倒すと再び跳躍し、弾鬼を抱えて残り人数を確認した。
「12人か‥‥」
瞬く間に仲間を倒され、黒い集団の中には後退りする者もいた。剛鬼は弾鬼を降ろすと、片手に纏めていた金剛を構え直す。
「逃げるなよ。こっちは可愛い後輩がやられてるんだ」
静かな威圧感にたじろぎ、集団の一番前に立つ一人が、ガトリングガンから手を離した。
「‥‥逃走理由・該当‥‥無」
振り向く戦闘員達は、その声に左右へ飛び退く。拓かれた敵陣の先には、黒いレザースーツに巨躯を包み、短髪の下に日本人離れした彫りの深い無表情を備えた男が立っていた。
剛鬼は武器を構え直した。15年間の戦闘経験は、この相手が危険極まりないと警鐘を止めない。
「‥‥目標発見。新目標・剛田剛、コードネーム:剛鬼」
剛鬼と対峙する男は、感情を見せぬ声で呟くと、灰色の風を纏った。

「‥‥どういう事だ? あなたは何を知っていて、何を始めるつもりだ!?」
テレビの音が消えた居間の静寂をイブキの叫びが破り捨てた。激高するイブキの肩に手を置きと日高の前に立ち、バンキは眼鏡を直して静かに言った。
「‥‥落ち着くんだ」
イブキは肩に乗っているバンキの手に一瞬力が入り、自分を退かせた事に気付いた。
「イブキ君、この人が知っているのは、『鬼』に関わる全てだろう。‥‥恐らく貴方は、『猛士』の協力者、或いは協力者だった方だ」
日高は頷くと、説明を続けようとするバンキを無言で促す。
「我々『鬼』の武器、『猛士』の情報。そして『魔化魍』の驚異‥‥ それらを総括・整理し、一種の戦闘組織である『猛士』に直結する政府機関は防衛省以外にない」
乾いた拍手を打ち、日高はバンキに一歩近づく。そして笑みを消さぬ口元から変わらぬ調子で声を発した。
「流石は関東一、いや鬼の中で一番聡明なバンキ君。君達の『裏』であり、世間の『表』に位置するのが私だ。益々、君に『鬼』を辞めて頂きたくなったよ‥‥」
日高は、間を置き、冷たく言った。
「‥‥殺すのは、惜しいからね」

続く
48名無しより愛をこめて:2007/02/12(月) 23:21:41 ID:V70NLN/U0
ヒビキ兄登場?
だとしたら裏設定の拾いかたがオミゴト
(写真集「魂」記載の「ヒビキには一般人として暮らす兄がいる」という設定)
49見習いメインストーリー:2007/02/13(火) 22:04:28 ID:N561KWHw0
前回は前スレ>>670から

見習いメインストーリー 最終章「血」

三十七之巻「舞戻る鴉」

 一年を予定していた純友と大洋の見習い研修期間も、残すところあと三か月となった。
 十一月に入り、今月の学科研修のテーマは「魔化魍」になった。
 日曜日、「たちばな」地下の研究室で、今日も二人の少年を前にして滝澤みどりの講義が続く。
「魔化魍を育てる『童子』と『姫』の存在はもう知ってると思うけど、彼らは皆同じ顔をして
います。それから、これも共通して言えることだけど、童子は女性の声、姫は男性の声をして
います。ただ、育てる魔化魍の種別によって、変身後の姿に様々な特徴があります」
 ホワイトボードに写真を張っていき、みどりは説明を続けた。
「いま見てもらってるのが、変身後の『怪童子』と『妖姫』なんだけど」
 みどりは、複数の怪童子と妖姫の写真を指して言った。
「ね。それぞれ外見が違うでしょ? バケガニの怪童子と妖姫だと腕も蟹みたいだったりとか──
見た目の他にも、ヤマアラシの童子と姫は口から針を飛ばしたりとか、育てる魔化魍と関連のある
能力を持っているのね」

 これまでは、学科研修が終わると、展示室に移動して音叉や音撃武器を使った実技研修を行って
いたが、今日の二人の実技研修は、続けて机上で行われた。
 純友と大洋の前に、それぞれノートパソコンが準備され、二人はみどりの指示に従って操作し、
ディスプレイ上に「魔化魍予測システム」という画面を表示させた。
「うわ、おれこういうの苦手……」
 大洋が顔をしかめて言った。
「ぼくは、こういうの得意かも」
 毎回実技研修では苦労が絶えなかったので、キーボード操作だけで済みそうな内容だとわかり、
純友はほっとして言った。
50見習いメインストーリー:2007/02/13(火) 22:05:52 ID:N561KWHw0
 みどりは、ホワイトボードに気温、湿度、天候などの気象データを書いてから言った。
「二人とも、これを入力してみて」
 純友たちが気象データを入力していき、最後に「予測開始」のボタンをクリックすると、
純友のパソコンのディスプレイには、出現が予測される魔化魍の種別が表示された。
一方、大洋の前のディスプレイ上には、警告音と共にエラーメッセージが表示されていた。
「うわ。なんだよこれ」
 また大洋が顔をしかめて言った。純友はエラーメッセージの出たディスプレイを覗き込み、
大洋が誤入力した箇所を指摘していった。みどりは、その様子を見て笑って言った。
「なんだかいつもと逆だね〜」
「ケータイなら打ち慣れてるんスけどね……パソコンとかあんま使わねえし」
 大洋は頭をかきながら苦い顔で言った。

 その日の研修が終わると、みどりは純友に銀色のディスクを一枚差し出した。
「はい、どうぞ」
「え……?」
 純友は、パーツの継ぎ目が描くディスク表面の模様を見て言った。
「みどりさん、これ──」
「うん、消炭鴉。先月の件で、君が持ってないとこのディスクは『あいつら』に反応しないって
わかったから……ちゃんと本部の許可を得て、やっぱり君が持っていてもいいってことになったの」
「ホ……ホントですか!?」
 純友は顔を輝かせて言った。嬉しさのあまり、純友の目からみるみる涙が溢れ出してきた。
 大洋が、その様子を見てぼそっと言った。
51見習いメインストーリー:2007/02/13(火) 22:07:10 ID:N561KWHw0
「オマエって……悲しくても嬉しくても結局泣くのな」
 その言葉も耳に入らず、純友はディスクに紐を通して首にかけ、嬉しそうな顔をした。
「──ただし、そのディスクに何か反応があったら、すぐ関東支部に連絡を入れること」
 みどりは、紐に通したディスクを、嬉し涙を浮かべて見ている純友に言った。
「絶対、危険な真似はしちゃダメよ。いい?」
「はい!……はい!」
 ただただ、愛着の深いディスクアニマルが自分の手元に戻ってきたことがうれしくて、
純友はみどりの注意に対して何度も返事をした。

 その日の「たちばな」からの帰り道、純友は大洋に言った。
「──このディスクは、先月に群馬で見た、あの橘さんに似たクグツにも反応したんだ。
これがあれば、あのクグツを見つけられるかも」
「なんだよオマエ、さっきはみどりさんが危ない事するなって言ったらスッゲー返事してたのに」
「ああ……あの時は、とにかく凄い嬉しくて──だって、消炭鴉が戻ってきたんだよ!」
 純友は懐から紐にかけたディスクを取り出して、嬉しくてたまらない様子で言った。
「あー……わかったわかった」
 純友は、大洋にそう言われて少し落ち着いてから、真面目な顔になって言った。
「もちろん、あの白クグツ以外に近づくつもりはないよ。だけど……あのクグツだけは……
あれは、橘さんかもしれないんだ」
「多美ちゃん……やっぱ多美ちゃんなのか? その白クグツ」
「なんとかして、確かめたいんだけど……」
 純友は、手にしたディスクアニマルに視線を落として言った。
52見習いメインストーリー:2007/02/13(火) 22:08:32 ID:N561KWHw0
 しかし、ディスクが反応することもなく、時間は過ぎていった。
 何週かみどりの魔化魍に関する講義が続いたが、その間、消炭鴉はまったく変化を見せなかった。
 魔化魍の種別、発生条件等の学科研修と、パソコンを用いた魔化魍出現の予測システムの操作
実習を終え、純友と大洋は「たちばな」を後にした。
 その帰り道。
「わッ!」
 道端で、大洋と並んで歩く純友が情けない悲鳴を上げた。「たちばな」を出ていくらも経たない
うちに、純友の懐にあるディスクが震動し始めていた。
「オマエいい加減慣れろよ。──うわ、マズい」
 大洋は純友を路地裏に引っ張り込んだ。角を曲がってこちらに向ってくる、立花勢地郎の姿が
遠くに見えたためだった。
「おやっさんがこっちに来てる」
 大洋が声をひそめて言う。純友も小声になって言った。
「とりあえず、ぼくたちだけでディスクの引っ張る方向に行ってみよう。で、行った先にいるのが
あの白クグツだったら、なんとかして橘さんかどうか確認するんだ。それ以外のやつがいたら、
関東支部に報告しよう」
「オウ」
 勢地郎が通り過ぎるのを待ち、二人は路地裏から出た。純友は首から下げているディスクが
ひとりでに動く方向に向けて歩き出した。その先に遠く、勢地郎の背中が見え、大洋は言った。
「なんか、おやっさんを尾行してるみたいじゃね?」
「ていうか、事務局長もぼくたちと同じ場所に向っているみたいだ……」
 二人はディスクが示す方向へと進んでいった。不思議と、勢地郎が向う先とそれは一致していた。

三十七之巻「舞戻る鴉」了
53見習いメインストーリー:2007/02/13(火) 22:09:42 ID:N561KWHw0
次回予告

『知っていますね? オロチを』
「ぼくたちが黒クグツに会った時のこと覚えてる? あの時に聞いた声と同じだ」
『あの時も、群馬の時も、その式神がクグツの居場所を突き止めていたというわけか』
「ふざけんな。コイツだけが、多美ちゃんを見つける手掛りなんだ。オマエらに渡せるか」

見習いメインストーリー 三十八之巻「纏う黒衣」
>>45より

 葛島は戦慄した。理屈では分かっているがそれで納得のいく状況ではない。これが御所
守の任務なのか。針の穴ほどの綻びが想像を絶する被害を生み出す。この一団は、これま
でどのような惨状を経験してきたのか。

「シブキ、史郎。B武装。二分以内に上がって来い。肇、NTTに裏を取れ」

 インターホン越しに呼ばわれば、返事の代わりに何かをひっくり返す音が聞え、続いて
慌しい足音。
 肇は無言でハバキのデスクへ歩み寄り、NTT銀座局の短縮回線を叩いた。二秒ほどで
会話が始まる。葛嶋は己の端末に向き直り報告記録の検索を始めている。御所守の切り替
えの早さに戦慄を覚えながらも対応してきつつあった。
 ヒラメキが埋立地区における、NTTの埋設ケーブルの回線図と地下水路図を呼び出し
モニタの画像と重ねあわせた。隅田川の川底の更に下を太い下水管が通り、それに沿うよ
うにインフラの集合パイプが走る。川を渡るとそれは網に眼のように分岐し、各家庭やオ
フィス、公衆電話へと伸びてゆく。
 昨夜戦ったのが八丁堀地下。豊海町に潜伏しているとなると、地上での目撃報告の無い
ことからすれば有楽町線から大江戸線を経由して埋立地に入ったことになる。
 普通なら有楽町を抜けて皇城へ侵入するルートを取るのだが、その裏をかいてきている。
 狡猾であった。
 勝どき駅へ到達する前にどこかのダクトから下水に移り、埠頭へを抜けた確立が高い。
もっとも、仮に逃走に地上ルートを取ったとしても、ショウケラはその存在を消し去るこ
とが出来る能力を持っているため、一般人の「歩」に発見できた可能性は限りなくゼロに
近かったはずだ。地上に放っていた音式の探索網に引っかからなかったとしても不思議で
はない。
「爬虫類型(ショウケラ)の育成環境からいって、冷凍倉庫内に潜伏していることはまず
ありえまい。」
「そりゃまぁそうですが…地下は捜索済みですぜ?痕跡は無かった」
「我々はすでに裏を繋(かか)れている。見落としがあったか、調べ方が足らんのだ。そ
れに相手はショウケラだ」
「御衣……だったらあとは『豊海−芝浦トンネル』の現場ですか。それも考えにくいので
は?あらゆる意味で人が多すぎです」
「巡回路と繋がっていないのはこのエリアでは唯一そこだけだ。可能性は高い」
「当たりかも知れません。たった今第三管区・仁藤三等海尉から入ったメールです。
その現場は先週から休工になっているそうです」

 ハバキとヒラメキの会話に葛島が割り込んだ。
 あの莫迦野郎、と髭面が頭を抱える。

「御所守はこれより非常シフトに入る。全員出陣準備」

 鬼の形相のハバキがいた。
56皇城の〜 ◆COP3Lfy.8w :2007/02/13(火) 23:12:13 ID:mQYvJz4z0
トリップ変更します。

間が空いてしまって恐縮ですが、上記のように加筆修正いたしました。
後半物々しさが表現できていれば幸いです。

皇城でした
57名無しより愛をこめて:2007/02/15(木) 07:35:57 ID:rJCN0e8s0
用語集ってどうなったん?
58名無しより愛をこめて:2007/02/15(木) 12:21:53 ID:3eEGZCTk0
皇城様

つまらない突っ込みになるかもしれませんが、>55の「御衣」は文脈からすると、「御意」と書くのがアリかと思うのですが…。
如何でしょうか?
ひょっとすると、特別な意味でこちらをご使用なのか、とも思ったのですが。
59裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/15(木) 21:08:14 ID:Wj4rcsXtO
――瞬過終闘 『六 察鬼 《覆される世界(たたかい)》』

剛鬼と対峙する『影』。その身体は澱みなき純白をしており、胴体と足首、両肩に漆黒の装甲を身につけていた。
右肩に装備されている大砲は装甲の大きく反り返る突起に支えられ固定されている。
頭部には三本の鋭き角、ゴーグル状の眼と思われる左側、クリアーレッドのスコープは、常に何らかの情報を受信し、光の文字となって記され続けていた。
剛鬼は巨漢だが、白い『影』はそれより一回りも大きい。音撃棒を持つ手が震える。自分の中を恐怖が通り過ぎ、また戻ってくる。
「‥‥突っ込むか」
そう呟くと、剛鬼は爪先に力を込めて砂利を蹴る。自分を上回る巨躯ならば、力勝負は明らかに不利。僅かに勝れるであろう速さで撹乱しながら、攻撃のチャンスを待つ事にした。
『影』は直立不動だったが、剛鬼が動くと右手を大砲のグリップまで挙げた。威力は途方も無いだろうが、照準合わせ・発射・反動の動作全てもまた計り知れない。
「ぅおらぁっ!」
剛鬼の振りかぶった剛力が、『影』の左からその頭部に炸裂する、その瞬間――
剛鬼の身体が弾き飛ばされ、起き上がる胴体は三発の弾痕から血を流していた。
「‥‥音撃管‥‥!?」
『影』の右手には、音撃管と同形状の銃が握られていた。それは取り外された、大砲のグリップ部分だった。
「‥‥対鬼音撃管『破戒』、発射・3、命中・3‥‥」
起き上がった剛鬼に向けられた破戒は、更に三回銃声を生み出した。

たちばなの店内まで戻った日高は、待たせてあった女と男を促して戸を開けた。
「もう一度だけ‥‥ 我々は『君達』を殺したくはない。今日は時間がないんで失礼させて頂くよ」
イブキは店を出ようとする日高の後頭部を睨みつけながら、低い声で言った。彼が握り締める拳の震えに気づいたバンキは、口を挟まずイブキの言葉に任せた。
「それは警告か? ‥‥それとも、脅しか?」
60裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/15(木) 21:09:39 ID:Wj4rcsXtO
日高は背を向けたままで答える。
「両方さ。我々は『君達』の能力を買っている。些細な感情で無駄にしたくない。それに抵抗したとしても、闘鬼親子や勝鬼、弾鬼の二の舞だ」
日高は振り返り、勢地郎に笑みのままで更なる警告を続けた。
「昔の戦力には頼らない方が良いですよ。元剛鬼の家族が悲しむのも時間の問題だ。我々は『鬼』の全てを知っている‥‥ 失念されぬよう、ご注意を‥‥」
店から出ていった三人を、ただ一人みどりが追った。通りの先に停めてあった高級車に乗り込もうとする日高は彼女に気づき、閉めかけたドアの隙間から立ち上がった。
「‥‥貴方の事、『あの人』は知ってるの?」
弾ませた息に混じりながら放たれたみどりの問いに答えた日高は、作り笑いをしていなかった。
「‥‥さてね。実は私も『奴』の所在を掴めないでいる。どこかで死んでいるか、浮浪者にでもなったか‥‥」
みどり自身もまた、『彼』の消息を3年前から知らない。
「元々仲が良かった兄弟じゃない。私自身は『奴』に『ただの公務員』としか言ってない。向こうも『オリエンテーション』と『人助け』としか職業を教えなかった。馬鹿な男だ」
日高達を乗せた車が見えなくなると、みどりは晴れた空を仰いで呟いた。
「帰ってきて‥‥ヒビキ君‥‥」

勝ち目は、無い。
六ヶ所から血を流す身体は、特殊弾の影響で力を失い、『影』は大砲の下部に音撃管らしき銃をセットして構える。
剛鬼の強さに圧倒された黒い戦闘集団もまた、ガトリングガンを構え直して剛鬼を扇状に取り囲みつつあった。
「目標・反撃確率‥‥13%、攻撃回避確率‥‥7%。 ‥‥対鬼音撃砲『戒滅』、発射準備・完了」
『影』が構えた大砲・戒滅から、巨大な衝撃波が剛鬼に発射された時――
「うおおおおっ!!」
弾鬼が重傷の身体を懸命に奮い立たせ、『影』に背からしがみついた。砲身が傾き、衝撃波は剛鬼の右に構えていた集団2人を直撃した。
61裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/15(木) 21:13:11 ID:Wj4rcsXtO
「弾鬼!!」
「剛鬼さん! やっちまえ!!」
立ち上がった剛鬼は音撃鼓『金剛』を『影』の腹部に投げ放ち、剛力を振りかぶった。
「音撃打! 『剛腕無双』の型!!」
幾度となく魔化魍達を葬ってきた必殺技が、『影』の腹部で展開された金剛に叩き込まれた。
「‥‥」
一瞬の静寂。
そして無数の銃声が弾鬼を無傷の『影』から引き剥がし、金剛は砂利の上に落ちた。弾鬼は血塗れとなり倒れ自らの血の海で沈黙し、剛鬼は至近距離から『影』の大砲を浴びた。
「‥‥装甲破損率・2%、対音撃用防御音波・正常稼働‥‥ 目標・弾鬼、心音・‥‥停止‥‥」
崩れ落ちる剛鬼は、両手を伸ばしながら俯せに倒れた。辛うじて顔を上げると、視界には破壊された剛力のグリップを握る、ボロボロの両手があった。
「‥‥目標・剛鬼、反撃確率・0%、心音・微弱‥‥」
「‥‥まだだ‥‥」
不屈の魂は壊れた身体を突き動かし、装備帯の背から金色の小型音撃弦『釈迦』を抜き取らせた。
「『鬼』を‥‥舐めるな!!」
起き上がりと同時に、釈迦を横薙ぎに振る剛鬼。
「‥‥対鬼音撃射・『冥凶始遂』・準備」
『影』は大砲を肩から降ろし、獣の顔を模した巨大な音撃鳴とマウスピースを取りつけ、獣の口を剛鬼に向けた。
「‥‥発射」
砕かれる釈迦を見、『影』の声を聞き、全身の痛みに悶え、広がる血の味に口を歪め、ガトリングガンの硝煙を嗅ぎながら、
音撃形態となった大砲から発せられた謎の音波の中に、剛鬼は静かに消えていった――

続く
62裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/15(木) 21:22:21 ID:Wj4rcsXtO
【今日の裁鬼さん】
「石割! 待ってくれ!」
「いいえ! あなたにはもう愛想が尽きました! 実家に帰らせて頂きます!!」
「待ってくれ‥‥ お前がいないと‥‥ 誰が‥‥ 誰が‥‥」
「‥‥裁鬼さん‥‥‥‥」
「誰が‥‥ 俺を病院に連れていってくれるんだ!?」
「‥‥」
○石割 【三行半】 裁鬼●

今日の裁鬼さん 第4回 終わり

【訂正】
剛鬼の音撃棒は『剛力』です。S.I.C.ムックのバカヤロー。
63名無しより愛をこめて:2007/02/15(木) 22:41:58 ID:xAjlEnIrO
裁鬼新作読もうとしたらNHK教育で江戸文化妖怪やってるw
豆腐小僧可愛い!
妖怪が男を化かす花魁を恐がる件は上手いなぁ
64見習いメインストーリー:2007/02/16(金) 01:17:32 ID:ZYUfvIQ30
前回は>>49から

三十八之巻「纏う黒衣」

 何かに導かれるように、勢地郎は静寂につつまれた街外れにやってきた。そして、廃工場前の
薄暗いトンネルに入ると、反対側の出口付近にいる和装の男女に気づいて足を止めた。
 ──その様子を、純友と大洋はトンネルの入り口付近から窺っていた。
「あいつら──」
 純友は、ひそめた声で大洋に言った。
「群馬で白クグツを見つけた時に、白クグツをつかまえに来たやつらだ」
 大洋は、彼らの「顔」だけは見覚えがあった。
「おれには、あいつらが童子と姫に見えるぜ。カッコは違うけど、まったく同じツラだ」
「あいつらと事務局長が会っているだなんて……どうして」
 幸いにも、トンネルの中に響く勢地郎と男女の声は、純友たちのところまで聴こえてきた。
「君たちか、私をここに呼んだのは」
 勢地郎が言うと、男は人ならぬ響きを帯びた声で──童子とは違い、性別通りの声で──答えた。
『コダマの森は前兆に過ぎない。……オロチが現れる。その時が近づいている』
『知っていますね? オロチを』
 こちらも、姫とは違い性別通りの声で話す女の問いに、勢地郎は頷いたようだった。
『ならば鬼を集めろ。さもなくば──』
 言い淀んでから、決然と男は言った。
『すべてが滅ぶ』
 陰からその様子を窺っていた純友は、小声で大洋に言った。
「思い出した。群馬で出くわした時も、どこかで聞いた声だと思っていたんだけど──大洋。
半年前、ぼくたちが黒クグツに会った時のこと覚えてる? あの時に聞いた声と同じだ」
「あの時も、こんなトンネルの中だったな。……ん? あの黒いヤツ、喋ってたっけ?」
65見習いメインストーリー:2007/02/16(金) 01:19:37 ID:ZYUfvIQ30
「うん……頭の中に直接響くような声だった」
 二人が話しているところに、男の鋭い声が飛んだ。
『──誰だ、そこに隠れているのはッ! 出て来い!!』
 同時に、二人の所まで光が──男の掌から発された破壊光線が迫ってきた。
 純友たちのすぐそばのトンネルの壁が派手な音を立てて爆発した。
 勢地郎が振り返り、破壊光線によって巨大な穴が穿たれた壁のそばにいる二人を発見した。
「君たち……!」
 仕方なく純友と大洋はトンネルの入り口に姿を現した。
「すみません、事務局長」
 純友はおどおどしながら言った。
「ぼ、ぼくたち、探している人がいまして、それで、その……」
「すぐにここから立ち去りなさい」
 純友の言葉は聞かず、鋭い声で勢地郎は言った。
『おまえは……群馬で鬼と一緒にいた子供だな』
 大洋の横で足をがくがくさせている純友を見て、男が言った。その視線が、純友の胸元に下がり、
激しく震えている銀色の円盤を認めて言った。
『思い出したぞ。半年前、クグツが鬼の弟子を始末しようとした時にもおまえが──いや、
その音式神がその場にいたな』
「ど、どどどどど、どうしてそれを……?」
 純友は泣きそうになりながらかろうじて言い返した。それには答えず、男は言った。
『あの時も、群馬の時も、その式神がクグツの居場所を突き止めていたというわけか。
……目障りな。そいつを渡してもらおう』
66見習いメインストーリー:2007/02/16(金) 01:21:51 ID:ZYUfvIQ30
 男が進み出ると、大洋が前に出て純友を庇い立った。
「ふざけんな。コイツだけが、多美ちゃんを見つける手掛りなんだ。オマエらに渡せるか」
 足を止めた男が、すいと指を差し向けた。途端に大洋は全身が重くなり、がくりと膝を落とした。
「た、た、た、大洋?」
 鍛えている者ほど、彼らの発する邪気の影響を受け易いとは、聞いていたが。
「チクショウ、なんでおれだけ──」
 地面に手をつき、額に汗をにじませながら大洋は言った。
 鍛えていない純友が影響を受けていないのはわかる。だが──
(昔『飛車』をやっていたおやっさんが、なんで平気なんだ……?)
 勢地郎は、まったく邪気の影響を感じぬかのように、純友たちと男女の間に立っていた。
「おやっさん──?」
 その後ろ姿を不審そうに見上げて、大洋は言った。
 大洋に差し向けていた手を降ろした男が、突然けたたましく笑い出した。
『なんだ、そうか。そういうことか……!』
 おかしくてたまらない、という様子で男は純友を見て言った。
『あの時、クグツを通して見ていた時は、単に鍛え足りない者が邪気に無反応なだけだと思っていたが』
 クックックッ、と笑いを押し殺しながら、男は空中に何かの文字を書いた。可視化された光る文字が、
男の手がかざされると純友を目がけて飛来した。
『──目覚めよ!』
 純友の額に、光る文字が張り付いた。途端に頭の芯から熱いものが込み上げ、純友は思わず額を抑えた。
「うッ……わァ──」
 純友の全身が光り始め、薄暗かったトンネルの中が目も眩む光に包まれた。そして──
67見習いメインストーリー:2007/02/16(金) 01:23:36 ID:ZYUfvIQ30
 光が徐々に消え去っていき、大洋はまぶしさに閉じていた目を、ゆっくりと開いた。
「純友──」
 大丈夫か、と声をかけようとした先に、純友の姿はなかった。
 先程まで純友が居たその同じ場所に、黒装束の異様な存在が立っていた。
「まさか……!!」
 大洋の疑念を確信に変えたのは、勢地郎の緊迫した声だった。
「純友君!」
 勢地郎が声をかけたその人物は、純友と大洋が半年前に遭遇した、あの黒クグツと同じ姿をしていた。
「な──何言ってんだ、おやっさん! ソイツが──そのクグツが純友だと!?」
 純友よりもやや背が高く、全身を黒装束で包み、黒い帽子とフードの間から目元のみを覗かせたその姿。
『わかったか』
 笑いながら、男は這いつくばる大洋に言った。
『今この場にいるのは、おまえを除きすべて我らが血族──スサ・タチバナの血族だ』
「スサ・タチバナ──だと──?」
 かつてみどりに聞いた、「凄・橘」のことを思い出した。字こそ違うが、純友と勢地郎の名字は
確かにそれと一致する。
『スサ、タチバナ姓を持つ者や、その流れを汲む家系の中に、時おり我らの血を色濃く受け継ぐ者
がいる。そこの立花勢地郎もその一人だ。我らの邪気の影響を受けていないのが、その証拠だ』
「たちばな──橘──」
 大洋は、多美の名字もまた「タチバナ」であることに思い当たり、そして──力を振り絞って
立ち上がり、怒りに満ちた声で叫んだ。
「テメエら──テメエらが、こうやって多美ちゃんを白クグツに変えたのか!」

三十八之巻「纏う黒衣」了
68見習いメインストーリー:2007/02/16(金) 01:24:55 ID:ZYUfvIQ30
次回予告

「純友っ、純友!──返事をしやがれ、バカヤロウ!」
『あの音式神には、我らに恨みを持つ者の魂が宿っている』
『いいか、そいつは決してお前の味方なわけではないぞ』
「『たちばな』の皆に説明をするのは、本部に行ってウラを取ってからだ」

見習いメインストーリー 三十九之巻「仇なす式神」
69名無しより愛をこめて:2007/02/17(土) 03:49:28 ID:wSHyvDMEO
謎の男=勢地郎(笑)
そーいやあったなそんなネタ
70名無しより愛をこめて:2007/02/17(土) 17:15:14 ID:T+dGlGEoO
(´;ω;)
鬼さん達しんじゃうの?


と小4の甥っ子が泣いておりました


71名無しより愛をこめて:2007/02/17(土) 20:16:32 ID:ZGG0UPG0O
↑これほど熱心な読者が居たのか(ノ_・。)
72名無しより愛をこめて:2007/02/17(土) 22:19:44 ID:mOrbRIAG0
小4の子供に、2ch見せるのは如何なものかと思った…
73名無しより愛をこめて:2007/02/18(日) 00:08:59 ID:xWOGwaEbO
いやいや
語ってあげてます

響鬼には続きがあるんだよと

難しい漢字読めないしww

74裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/19(月) 19:59:09 ID:H27Ap/XYO
――瞬過終闘 『七 謎の男女 《行き着く終幕(はじまり)》』

「‥‥分かった、ありがとう」
夕方。たちばなにショウキの飛車・志村から掛かってきた電話は、イブキに弾鬼と剛鬼が『影』に斃された事を知らせた。
ショウキは集中治療室から暫く出られないと言う志村に、猛士本部から医療班が向かったと安心させ、ゆっくり休むように伝えるとイブキは受話器を置いた。
「‥‥」
テレビを点けると、どの放送局も国会に乱入した『二人』の正体や、殺された大臣、気絶し醜態を晒した総理への無駄な批評と意見を延々と流し続けていた。
「‥‥」
勢地郎は無言のまま茶を啜り、息子の疾風と共に知人の法事から帰宅したイブキの妻・和泉香須実も、聞かされた話に言葉が出ない。
たちばながある通りは昔ながらの町並みを、オレンジの陽光と瑠璃色の影に彩られ、その中で6歳になったばかりの和泉疾風はボールを蹴っていた。
「あれ‥‥?」
車の通行が稀なこの通りに、たちばなの店先で停車したタクシーはこの少年の瞳に珍しい事と映った。
後部座席から降りた乗客の母子は、運転手にエンジンを止めさせて店に入ろうとした。次第に増していく夕闇の中、疾風はその顔を見て声を出した。
「明衣姉ちゃん!」
振り向いた剛田明衣―― 剛鬼の娘は、久々に会った幼馴染みに笑顔を見せた。疾風より4歳年上の彼女は、母親と二三、言葉を交わした後で駆け寄ってきた。
「よっ! 元気だね少年!!」
腕を身体から直角に伸ばし、相手に甲を向けた左の握り拳を肘から持ち上げるポーズは、父親・ゴウキのものだった。
「姉ちゃんも、おてんばだね!」
イブキの得意ポーズで挨拶を返す疾風の頭を軽く叩き笑う娘を見た後、剛鬼の妻・五月は安堵の表情を見せる。
覚悟を何度重ねようとも、目の当りにする瞬間の現実は、耐えきれない重さで降り掛かってくる。
五月は、勢地郎からの電話を受けてから纏い続けた覚悟に真顔で向き合い、最後の覚悟を羽織って戸を開けた。
75裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/19(月) 20:00:50 ID:H27Ap/XYO
洋館。古びた洋館。
付近の住民も通り過ぎる人々も、その場所にそれ以外の認識を持たない。
不気味・怪しい・幽霊屋敷といった言葉を付け加えるヒトは、『陰』への感覚が優れてはいるが決してそれ以上を知る由はない。
錆びた門は開けられ庭に停まっている高級車の中には運転手が睡眠薬を飲んで深い眠りに逃げていた。
埃の積もる廊下には、新しい足跡が幾つも、奥の一室へと続いており、他の部屋はまるで存在していないように無視されていた。
「‥‥今晩は、御『二人』さん」
扉の向こうは実験室だった。床にはフラスコやビーカーの破片が綿埃に絡まれ、カーテンのない窓から差し込む月光に煌めいている。
日高博昭は比較的丈夫な椅子に座り、小さなビーカーを灰皿に葉巻を吹かして目の前の暗闇に呟いた。
彼の後ろには、たちばなに日高と共に現れた若い男女と、黒い戦闘集団を率いていた大男が佇んでいた。
「こんばんは‥‥ ああ、月が綺麗だね。刄の様に冷たそうだ」
「本当に‥‥ 私は一度、あの下弦に突き刺されてみたいのです」
瞬きをする暇もなく、『二人』は日高の前に立っていた。だが日高は驚かず、灰を落とした葉巻を口にしながら笑顔を見せた。
「いや、『アンタ達』に昼夜の概念が有ったとはね。こちらはただの『ヒト』で悪いが、今日の成果はご存じ‥‥ だろう?」
葉巻の火種だけが、闇の中で一度輝きを増し、すぐ灰に隠される。
「うん。まあ良いんじゃない。鬼が4つ死んだし、『ヒト』もさっき鬼のコトを知らせたし」
「‥‥我が子達、上出来ですよ。サッキ、よく頑張りました。ハイキ、ちゃんと言う事を聞きましたね」
大男は無言で頷く。若い女は首を傾けて無邪気な顔を見せた。
「それにクジキ、もう少し待ちましょうね。この『ヒト』が、今回の『遊戯』の『王』ですから」
「‥‥ああ。暴れるだけなのは好きじゃない」
若い男は、唇を夜空に輝く三日月の様に歪めた。
76裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/19(月) 20:04:35 ID:H27Ap/XYO
「‥‥と、言う事で。引き続きこの三人は俺が使わせて貰う。出来るだけアンタ達を満足させられる終幕を造る為にな」
「‥‥うん。今の所は面白いよ。ボク達はアレだけで良かったかな?」
日高は葉巻を揉み消すと頷き、『二人』に細長い金属ケースを取り出した。
「アレで充分だ。アンタ達を知る老人共は恐怖に眠れなくなり、官僚と呼ばれるマリオネットを通して非難の矛先を国家から『鬼』に向けた」
『二人』はケースを持つと暫く眺め、先端を指先で溶かすと中から葉巻を取り出し、カットされた先を指で摘むと火種が出来た。
「70年前から『傍観者』だったこの国もこの国の人間も、一夜で『当事者』になった。俺がやろうとする事の半分は、『傍観者』のままでいたい国民が責任転嫁にやってくれるだろう」
『二人』は口にした葉巻を一息で根元まで灰にすると、煙を出さぬままその残骸を床に落とした。小さな火花が転がった。
「‥‥つまんない」
それだけ言うと、『謎の男女』は消えた。だがそれは見えなくなっただけかも知れない。『二人』は存在し、存在しないもの。何処にでも現れ、何処にも居ない。
「『猛士』の連中も解っちゃいない‥‥ 物事の始まりは複雑に見えて単純だ。どれだけ枝を飛び移っても、どれだけ根を伝っても、答えには辿り着けない」
日高は目の前の暗闇へではなく、後ろの三人に向けてもいない言葉を、笑いながら続けた。
「どんな事柄にも、公になった枝葉と隠された根毛がある‥‥ だが真実、始まりは一つの幹でしかない。何世紀も続いた『鬼』の戦いが、『奴等』の『暇潰し』だったように――」

その夜。
政府は国民に対して、今まで守秘し続けていた『猛士』、『鬼』、『魔化魍』の事実と存在を、一気に公開した。

続く
77裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/19(月) 20:12:10 ID:H27Ap/XYO
【今日の裁鬼さん】
裁鬼「おっ! 今日は調子が良いぜ!!」
石割「やった! もう少しで久々に魔化魍倒せそうですよ!!」
裁鬼「よ〜しっ! いくぜ! 俺の必殺技・パート63!!」
石割「‥‥(いつもの閻魔裁きだろ、早くしろよ)」
(裁鬼心の声)『フルチャージ!』
裁鬼「あーっ! 極楽投げ捨てちまった!」
ヤマアラシ「ンモーッ!!」
裁鬼「うわー」
石割「‥‥(;TдT)」
○ヤマアラシ 【ポイ捨て禁止】 裁鬼●
今日の裁鬼さん 第5回 終わり つづく
78見習いメインストーリー:2007/02/20(火) 12:31:26 ID:Ek7ryN5c0
前回は>>64から

三十九之巻「仇なす式神」

 薄暗いトンネルの入り口に立つ黒装束の男は、唯一覗くその目元も黒い帽子の陰に隠れ、
その心中はまったく読めなかった。
「純友……」
 大洋は、おそるおそる声をかけた。しかし男は無言のままで、果たして言葉を発する事ができるか
どうかもわからない。
「純友っ、純友!──返事をしやがれ、バカヤロウ!」
 勢地郎は、やり切れぬ思いで目を閉じた。和装の男女はその様子を見て冷たく笑っていた。
そして──
『な、な、なに?』
 その場に、戸惑った声がした。誰もが、それが何者の発したものか判らず、動きを止めた。
「純友……?」
 黒クグツが、人ならぬ響きを帯びてはいるが、確かに純友の声で大洋に答えた。
『なんかその──おデコに張り付いて、すごい熱くなって──死ぬかと思ったぁぁぁ〜』
「おい、おまえ、そのカッコ! 気付いてないのか?」
 大洋に言われて、純友は自分の顔を覆うフードや、身を包む黒い装束に気付いて言った。
『ななななな、なにコレ!?』
『ばかな、なぜ──』
 男の目に、黒装束の純友の胸元から発される「気」が光となって映った。
『また、あの音式神か』
 女が男の横に進み出て言った。
『あの音式神には、我らに恨みを持つ者の魂が宿っている。我らの血族に対する敵意に満ちている』
『なに?』
79見習いメインストーリー:2007/02/20(火) 12:33:25 ID:Ek7ryN5c0
 純友は腕を上げたり足を上げたりして、自分の姿をよく確認してから言った。
『え? これってあの、黒クグツの──』
「オマエの今のカッコ、黒クグツになってんだよ!」
『え? なんで? なんで?』
「おれが知るか!」
 二人が言い合っているところに、男が口を挟んだ。
『我らが血族の者よ』
 大洋と、黒装束の純友は男に向き直った。
『その音式神は、我らに恨みを抱いている。──いいか、そいつは決してお前の味方なわけではないぞ』
 純友は、今まで何度も自分を救ってくれた消炭鴉に対して意外な事を言われ、当惑した。
『え……?』
 女は、純友の黒装束の下にあるディスクアニマルを指して言った。
『その音式神は我らが血族に仇なす者。そしてお前も、その血族であること。それを忘れるな』
 彼らは背を向けて、その場を立ち去っていった。

 黒装束を取り払うと、その下からは、純友の元の姿が現れた。
 勢地郎は、厳しい顔で純友に言った。
「純友くん。今後、決してそのディスクを手放さないように。そのディスクが、君の心が彼らに操ら
れるのを防いでいたんだと思う。──私もかつて、心を鍛える前は、そういったものが必要だった」
「事務局長……?」
「それ以前に、君たちだけで彼らに近づいてはいけない。──前にも言ったと思うが」
 橘多美を見つける目的以外では近付くつもりもなかったが、それは言えなかった。
80見習いメインストーリー:2007/02/20(火) 12:34:45 ID:Ek7ryN5c0
「大洋君、きみ──さきほど、あいつらに対して『タビちゃん』とか『白グツ』とか言っていたけど、
あれは一体──」
 大洋は一瞬怯んだが、すぐに言った。
「な、なんでもないっス。あいつらを驚かせようと、ちょっとハッタリかましただけっス。
それより、さっきあいつらと話していた、『コダマの森』とか『オロチ』とかって一体なんなんスか」
 その言葉を聞いて、勢地郎は顔色を変えた。
「君たち」
 勢地郎は、二人に向けて言った。
「今日、君たちが彼らに近づいたことは不問とする。その代り、今日のことは誰にも言わないでほしい」
「え……?」
 大洋は勢地郎に確かめた。
「誰にもって……『たちばな』の人にも?」
「ああ。今はまだその時じゃない。私は、彼らの言葉だけを信用するわけにはいかない。
『たちばな』の皆に説明をするのは、本部に行ってウラを取ってからだ」
 その言葉通り、勢地郎は吉野の本部に出張し、月末まで「たちばな」に戻ることはなかった。

 勢地郎が関東から離れている間、天美あきらがイブキの弟子を辞めることとなった。そして、
入れ替わりに安達明日夢と桐矢京介がヒビキの弟子となった。
「桐矢くんって……ああ、一度将棋部に来た、あの──」
 日曜の研修の合間の休み時間、みどりにそのことを聞いて、純友は、将棋部の見学に来て
五面打ちで全勝して去っていった、あの明日夢の友人を思い出した。
 休憩が終わり、実技研修として、今日も二人は「魔化魍予測システム」の操作練習を行った。
81見習いメインストーリー:2007/02/20(火) 12:36:35 ID:Ek7ryN5c0
「これがねえ……最近の不規則な魔化魍の出現パターンに全然対応できなくて」
 みどりは額に手を当てて困った表情で言った。
「今月上旬に発生した『コダマの森』っていう現象があって──事務局長が本部で見つけた古文書に
よると、これって不規則に魔化魍が大量発生する現象の前兆らしいのね。その現象のことを『オロチ』
って言うんだけど──まあ、すべては伝承にすぎないから、しばらくは様子見かな」
 だが、純友と大洋は、それが単なる伝承ではないことを知っていた。先日の「凄・橘」たちの
言っていたことが本当だとすれば、「オロチ」は確実に始まっている。そして、彼らは言っていた。
「鬼を集めなければ、すべてが滅ぶ」と──

「天美さんは、家族を魔化魍に殺された憎しみを消すことができずに、悩んでいたらしい。消せなければ、
『憎む戦い』は出来ても『護る戦い』はできないから。──それで、悩んだ末に鬼になることを辞めたって」
 研修の帰り道、純友は大洋に言った。
「ぼくたちも、橘さんが生きてるってことがわからなければ、そうなっていたかもね」
「生きてんだよな、多美ちゃん。ただ、あいつらに姿を変えられただけで──白クグツの姿の下には、
おれらが知ってる多美ちゃんがいるんだよな」
 希望に満ちた声で大洋は言った。
「うん。橘さんは……生きてる。生きてるんだ」
 自らに言い聞かせるように、純友は言った。
「あいつらは、橘さんを殺そうとしている。ぼくらが、あいつらより先に橘さんを見つけて、
なんとか元の橘さんに戻さないと。──ぼくらの手で」
 そう言って、純友は懐にあるディスクアニマル・消炭鴉に手を触れた。「凄・橘」の言葉によれば、
消炭鴉は純友の味方ではない、ということだが──今の彼らには、橘多美への手掛りはこれしかなかった。

三十九之巻「仇なす式神」了
82見習いメインストーリー:2007/02/20(火) 12:38:07 ID:Ek7ryN5c0
次回予告

「あいつら、自分たちが生み出した命も、それ以外の命も何とも思っていないみたいだから」
「……ぼくには、あいつらと同じ血が流れている。ぼくのこと、怖くない?」
「なんか、鬼の見習いとして修行をしていた頃のことを思い出すっス」
「こんにちは。トドロキの見舞いに来てくれたのか」

見習いメインストーリー 四十之巻「挫けぬ雷」
83凱鬼メイン作者 ◆Gs3iav2u7. :2007/02/20(火) 22:56:58 ID:cqWLVr1N0
まとめサイトの方からのスレへのリンクに、なんらかのエラーが起きているみたいですが・・・。
そのせいで、まとめの方の管理人さんの更新が遅れてるんじゃないでしょうか・・・?
84名無しより愛をこめて:2007/02/20(火) 23:37:25 ID:vlr5KqaB0
>凱鬼さん
まとめサイトのリンク、板引越し前のSSスレのURLですね。
板引越しに気付かずに、スレ落ちしてるのと思われてそうです。

凱鬼さんがまとめサイトの掲示板に書きこみをされてるので、
そのうち気付かれるかと。
85名無しより愛をこめて:2007/02/21(水) 00:14:37 ID:DRqhq48T0
まとめサイト、今年になってから更新がナイみたいなので、
取りあえず今年以降の分が見れるように簡易版のまとめを作りマシタよ。

ttp://hwm7.gyao.ne.jp/lica/hero_ss/

本物のまとめサイトみたいに、ケータイから過去ログ見れるようにトカは
デキナイんデスけど、本物が再開するまではコレで我慢してクダサイませ。
86凱鬼メイン作者 ◆Gs3iav2u7. :2007/02/21(水) 21:24:44 ID:Yex9J1Yo0
>>85
仕事早いですね・・・w
乙です。
87見習いメインストーリー:2007/02/24(土) 10:02:31 ID:eUNuNdIR0
前回は>>78から

四十之巻「挫けぬ雷」

 平日でも、部活のない日、純友はみどりの助手として「たちばな」地下の研究室を訪れていた。
帰宅した後は、以前に大洋から受け取った壊れた鬼弦や、神戸で白クグツに破壊された白練大猿の
ディスクアニマルの修復を進めていた。
 一方、大洋は、時おり姿を現す陰陽環の男の指導を受けつつ、己の体を鍛える日々が続いていた。
 そして、十二月──今月の猛士の研修テーマは「傀儡」だった。
「先月の魔化魍についての講義でもちょっと話したけど、魔化魍には巨大タイプと等身大タイプが
あります。で、黒いクグツが生み出すのが巨大タイプ、白いクグツが生み出すのが等身大タイプ」
 ホワイトボードに書き記しながら、みどりは講義を続けた。
「等身大タイプが『夏の魔化魍』と呼ばれていることは、先月の講義でも言ったと思うけど──
だから、白いクグツも夏の目撃例が多いのね」
「みどりさん」
 大洋と机を並べて座る純友が、手を挙げて質問した。
「夏が終わると、白いクグツはどうなっちゃうんですか?」
「う〜ん……そこが、謎なのよね〜。そもそも、どうやって生み出されているのかもわからないし。
たぶんなんだけど、あいつらが勝手につくって──勝手に消しているんだと思う」
「消す……?」
「今年に限って言えば、『スーパータイプ』を使って、黒いクグツも含めて全国にいるクグツを
消しているみたいなんだけど──今までも、白いクグツに限っては同じだと思う。あいつら、
自分たちが生み出した命も、それ以外の命も何とも思っていないみたいだから」
 純友は、下を向いて黙った。大洋は、その隣で腕を組んで座っていた。
88見習いメインストーリー:2007/02/24(土) 10:04:08 ID:eUNuNdIR0
 その日の「たちばな」からの帰り道。
「大洋。あいつらは、命を何とも思っていない。……ぼくには、あいつらと同じ血が流れている。
ぼくのこと、怖くない?」
 純友の問いかけに、大洋はふっと笑って応えた。
「怖い?──おれが、おまえを? なワケねえじゃん。ひ弱で、軟弱で、泣き虫なオマエを、
誰が怖がるかよ」
「そ、そこまで言う……」
 涙目になった純友の肩をどやしつけて大洋は言った。
「ほら、やっぱり泣き虫じゃねえか。──あのな、多美ちゃんにもあいつらの血が流れてんだぞ。
おれとしちゃ、なんか自分だけ仲間はずれになった気分だよ」
 季節もすっかり冬になり、寒さに首をすくめながら大洋は言った。
「あいつらは確かに、命を弄ぶサイテーなヤツらだろうけどよ、オマエは違うだろ。おれと一緒に、
ダンキさんから、命の大切さについて教わったはずだ」
 今年の春、現場研修を通して、ダンキに殴られ、怒鳴られ、命の大切さについて教わったことが、
今となっては懐かしい。あの頃はまだ、猛士の仕事とは、単純に化け物退治の事だと思っていた。
しかし、その背後に居る存在を知り──自分や多美も、その血族だということを知ってしまった。
「そうだったね」
 純友は、遠い目をして頷いた。

 十二月の実技研修は、統合報告システムの操作だった。
「今は、鬼さんによって書式もばらばらだし、始末書や通報届けみたいに紙ベースのルーチンも
残っているんだけど、いずれはぜんぶ、統合システムで一本化する計画があります」
89見習いメインストーリー:2007/02/24(土) 10:06:00 ID:eUNuNdIR0
 ノートパソコンから、ネットワークを通じて接続した統合報告システムの画面を操作する純友
と大洋を前にして、みどりは業務報告の操作実習を二人に指示した。
 純友たちが報告データを入力していき、最後に「登録」のボタンをクリックすると、
純友のパソコンのディスプレイには「登録完了」のメッセージが表示された。一方、大洋の前の
ディスプレイ上には、例によって警告音と共にエラーメッセージが表示された。
「うわ。またかよオイ」
 純友は、サーバ上のデータの中に、ザンキの業務報告が混じっていることに気付いた。
「あの、みどりさん? ザンキさんって、先々月の群馬での活動以降、医療部門から変身を
止められているって聞いていましたけど……」
 みどりは、重い口調になって言った。
「それが実は、先月末に魔化魍との戦いでトドロキ君が重傷を負って、ザンキさんが無理を押して
その代りをつとめているの。魔化魍の無差別発生が続いているこの状況だから、ザンキさん、
鬼としての活動に復帰するって言ってくれて」
「トドロキさん……大丈夫なんですか」
 純友は、何度か会ったことのある、一本気そうな体育会系の青年のことを思い出した。
「命に別状は無いわ。でも──」
 一瞬躊躇したが、みどりは意を決して言った。
「はっきり言うわ。鬼としては、再起不能だって」
 鬼には、外傷を瞬時に治癒する力が備わっている。しかし、内部器官の損傷や、病気に関しては
通常の人間と変わらない。トドロキが受けた傷は、巨大魔化魍に全身を踏みつけられた事による、
神経の損傷だった。猛士の医療部門の診断によると、鬼としての復帰は絶望的だった。
90見習いメインストーリー:2007/02/24(土) 10:07:30 ID:eUNuNdIR0
 その日の研修が終わってから、純友と大洋は「たちばな」のきびだんごを持って、トドロキの
入院している病院に見舞いに行った。
「ありがとうっス!」
 病室で横になっていたトドロキは、二人が来るなり元気良く半身を起こし、紙袋を受け取り言った。
神経の損傷のため半身不随と聞いていたが、トドロキの意外な回復具合に純友たちは目をまるくした。
 まだ、額や寝間着の下に巻かれた包帯が痛々しかったが、その表情は活き活きとしていた。
「あの……その、こう言ってはなんですけど──お元気そうで何よりです」
 純友は、遠慮がちに言った。トドロキは、早速きびだんごを頬張りながら笑顔で言った。
「いや、まだまともに歩けないんスけどね、なんか最近ちょっとずつ回復してきてるって言うか」
 一〇歳近くも年下の少年たちに、トドロキはくだけた敬語で話し続けた。
「ザンキさんがリハビリに付き合ってくれてるし。……なんか、鬼の見習いとして修行をしていた
頃のことを思い出すっス」

 あまり長居しないように気を遣い、純友たちは病室を後にした。
「以外と元気そうだったな、トドロキさん」
 病院の出口に向かいながら、大洋は言った。
「うん。よかったね」
 その時、病院のガラスの自動ドアが開き、その向こうから淡く青白い光に包まれた人影が入ってきた
──と純友の目には見えた。大洋は、ごく普通にその人影に対して「あ、ザンキさん」と声をかけた。
「こんにちは。トドロキの見舞いに来てくれたのか」
 以前と変わらぬ、野性的な風貌でありながら折り目正しい、ザンキの佇まいだったが──
純友には、その全身がわずかに青白く輝いて見えた。

四十之巻「挫けぬ雷」了
91見習いメインストーリー:2007/02/24(土) 10:08:36 ID:eUNuNdIR0
次回予告

『そう怖がるな。お前もこちら側に属する者だ』
『来ますか? こちら側に』
「バカっ、絶対受け取んな純友」
「……『出来損ない』?……『不良品』?」

見習いメインストーリー 四十一之巻「誘(いざな)う闇」
92高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/02/24(土) 16:48:13 ID:V4tABkHR0
毎回暴走気味な内容の北陸支部編ですが、今回は無駄に長いです。
本当はもっと70年代の特撮テイストをバリバリ出す予定だったんですけど結局無理でした。
俺もまだまだです。

あとパロディの一環として、ガ板で有名な某ネタを入れたのですが、
直訳すると訳わからなくなるので技名は新たにそれっぽいのを創作しました。
それでは、よろしくお付き合い下さい。
93仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 16:49:53 ID:V4tABkHR0
197×年、如月。北陸地方。
「どけどけ!邪魔すんな!」
人通りの多い道を、二人の男が疾走していた。一人は追う側、もう一人は追われる側として。
追われる側は血相を変えて、道行く人に次々とぶつかりながら走り続けている。追う側は、罵声を上げながらも軽やかな身のこなしで人々の間をすり抜けていく。
追う側――黒革のジャケットに黒革の手袋、どうした訳かジャングルブーツを履いた男は、近くに落ちてあった空き缶を拾うと、追われる側の男に向かって投げつけた。
空き缶は鈍い音を立てて相手の頭部に直撃した。男が頭を抑えて道に蹲る。
その脇へ追う側の男がやって来て、追われていた男の襟首を掴んで引き上げた。そしてドスの効いた声でこう告げる。
「借金返せえ!」
あまりの気迫に気圧されながらも、男が反論した。
「な、何で保証人じゃなくて俺の方へ来るんだよ!」
「お前、騙して保証人にさせたんだろ?そしてさっさと逃げた。俺はな、そういう手合が大っ嫌いなんだ」
掴んだ手に力が入る。
「苦労したぜぇ、お前の所在を掴むのによぉ……。さあ、利子付けてとっとと返してもらおうか!」
口角泡を飛ばしながら捲くし立てる。その迫力に相手は涙目だ。
「わ、分かったよ!返すよ!だ、だから勘弁してくれよぉ!」
「口約束だけじゃ信用出来ねえ。ちょっと事務所まで来いや。あと、お前が騙した保証人にもちゃんと謝ってもらうからな」
「騙される方が悪……」
鉄拳が男に炸裂した。
「このブーツの踵には鉄板を仕込んである。顎を踏み砕いてやろうか?勿論保険に入ってもらったうえでな」
「やり過ぎだぞ!この債鬼め!」
「債鬼だと?」
じろりと睨み付けられ、男が黙る。
「債鬼じゃねえ。俺は……サッキだ」
94仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 16:52:19 ID:V4tABkHR0
北陸支部に所属する「飛車」の葛木弥子は、大量に買い込んだチョコレートを持って、支部の表の顔である「鬼小島商事」のビルディングへと入っていった。
この時期バレンタインデーが近い。だから弥子がチョコを買った時、店員は何気無く「バレンタインデーですね?」と彼女に尋ねている。しかし。
「ええ、そうですね。でもこれは全部私が食べるんで」
その場に居た弥子を除く全員が固まった。それ程大量に買い込んでいるのだ。
(へへへ……。ホットミルクでも淹れてゆっくり食べちゃおっと)
疲れた時は甘い物を接種するのが一番だ。
毎日のようにドクハキに弄られている弥子は、それに耐えうる肉体を作るべくそれなりに鍛えているため、その分カロリーを消費しており太らない。
大体少しでも太ろうものなら、「銀」の代田政影が開発した怪しげな「痩せ薬」の実験台にされる事は明白だ。嫌でも自己管理せざるを得ない。
二階に上がりドアを開ける。カラカラカラ、と乾いたベルの音が鳴り響いた。
「うわっ!」
ドアを開けた途端、物凄い量の煙草の煙が外へと流れていった。咳き込みながら、弥子は理解する。あの男が今事務所に来ているのだ。
ソファには案の定あの男――サッキが紙巻煙草を吹かしながら腰掛けていた。何かの書類に目を通している最中のようだ。机の上の灰皿には、大量の吸い殻が入ってある。
「ごほごほ……。サッキさぁん、換気扇を回して下さいっていつも言ってるじゃないですかぁ……」
その声にサッキが振り向く。相変わらずやさぐれた目をしている。サッキは弥子を一瞥すると、何も言わずに再び書類へと目を落とした。
95仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 16:53:58 ID:V4tABkHR0
「無視しないで下さいよぉ……」
文句を言いながら弥子が換気扇を回しに向かう。その作業を終えると、弥子はホットミルクを淹れてサッキの向かいのソファに腰掛けた。
「何かあったんですか?」
「……借金の回収」
サッキはやる気の無さそうにそう答えると、カップを手に取ってホットミルクを飲んだ。
「あ、それ私の!もう、サッキさんって普段はテンション低いんだから……」
「仕事と戦い以外で無駄な体力は使いたくないんでな」
今のこの姿を見て、誰がこの男が北陸支部一荒々しい鬼だと信じるだろうか。
サッキ。北陸支部所属の弦使い。表の仕事は主に荒事担当で、年中熱血しているトツゲキとはよく組んで表の仕事をしている。
以前弥子はサッキに何故鬼になったのか尋ねた事がある。その時もサッキは物凄く低いテンションで呟くようにこう答えた。
「そりゃお前、年中狩りが出来るからよ」
しかし「金」の直江なぎさは、それとは別にちゃんとした理由があるらしい旨を弥子に語ってくれた事がある。
ただ、なぎさはそれ以上何も話してはくれなかったし、故に今は、彼の「年中狩りが出来るから」という理由を鵜呑みにしておくしかない。
と、一人の女性がドアを開けて入ってきた。客ではない。やはり北陸支部所属の管使い、メッキだ。
「うん?煙草臭い……。サッキ、あなたまた換気扇回さずに吸ってたでしょ」
そう言いながら弥子の横に腰掛けるメッキ。
そういえば弥子は以前、メッキにもそれとなく鬼になった理由や、昔公安に居たらしいという噂の真相を尋ねてみた事がある。しかしメッキは微笑を浮かべながら。
「弥子、あなた『いい女』の条件って知ってる?少しばかりの秘密を持つ事よ」
そうはぐらかされてしまった。
勤労婦人福祉法があるとは言え、まだ男女雇用機会均等法も制定されていないこの時代、もし噂が本当だとしたらきっと人には言えない苦労を沢山してきた事だろう。過去を語りたくない気持ちも分かる。
(余所がどうかは知らないけど、うちの支部って秘密を持った人が多いんだよな……)
そんな事を考える弥子。
96仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 16:56:05 ID:V4tABkHR0
「禁煙する気は無いの?」
メッキの問いに、やはりやる気無さそうにサッキが答える。
「……煙草吸うとね、血管が細く締まるんですよ」
「それが?」
「その分、怪我した時出血が少なくて済むんでね。仕事柄止める訳にはいきませんや」
本当だろうか?弥子にはよく分からない。メッキもそれ以上追及する事は無かった。
「で、あなたがここに居るという事は、仕事を終えてきたって事?確か借金作って逃亡した男を追ってたわよね」
「あっ、それ私の……」
弥子のチョコを横取りして食べながらメッキが話題を変えた。
「捕まえてきましたよ。身柄はうちに取立てを依頼してきた相手に既に引き渡してあります」
煙草を揉み消しながらサッキが答えた。
沈黙が室内を包んだ。サッキもメッキも、自分から積極的に話を振ってくるタイプの人間ではない。場の空気に弥子が居た堪れなくなったその時。
カラカラカラ、と来客を告げるベルの音と共にドアが開けられた。
客だ。何か思い詰めた表情の男性が立っている。
「あ、い、いらっしゃいませ!」
すぐさま立ち上がり、客を室内へと通す弥子。サッキも書類を手に席を外した。対応はメッキがやるようだ。
二十代後半ぐらいのその男性は、羽織っていたコートを受け取ろうとする弥子に「お構いなく」と告げると、メッキの向かいのソファに座り「お久し振りです」と言った。
「久し振りね、戸草」
どうやらメッキの知り合いのようである。と言う事は。
「警察の人ですかね?でもいつも来る人とは違うし……ひょっとして噂の公安の人?」
小声でサッキに話し掛ける弥子。
戸草と呼ばれた男は、ソファに腰掛けたまま何をするでもなく、ただじっと俯いたままだった。
(余程言い難い事情があるみたいね……)
経験上、そう確信するメッキ。
暫しの沈黙の後、戸草は意を決したかのように話し出した。
「……今から話す事は全て俺個人の依頼です。警察とは何も関係ありません」
そう前置きをすると、戸草は本題を話し始めた。
97仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 16:57:53 ID:V4tABkHR0
「『オモヒデ教』という新興宗教団体を御存知ですか?」
「知っているわ。仕事柄、あなた達と同等か、あるいはそれ以上の情報は常に入ってきているから」
「オモヒデ教」とは、ここ数年信州・北陸地方を中心にアンダーグラウンドな活動を行っている団体だ。
「連中は表立って活動をしていないため中々尻尾を掴む事が出来ませんが、犯罪に関与している事は間違い無いんです」
弥子がお茶を淹れて戻ってきた。客人の前に出すと、後ろに下がってサッキと一緒に話に耳を傾ける。
「連中が活動を始めて以来、失踪事件が相次いで発生しているという事は?」
「それも知っているわ」
猛士北陸支部もここ数年の失踪事件について調査をした事がある。だが、魔化魍絡みの事件では無いと判断されたため、今は全て警察に任せているが。
「単刀直入に言います。『オモヒデ教』は人を拉致して何か善からぬ事をしているらしい」
無言のまま話を聞くメッキ。それについては調査の過程で薄々気付いていた。
「警察はさっき話した通り、確固たる証拠が無い手前動く事が出来ない。けどあの連中が関与している事は間違い無いんだ!だから俺は……」
「落ち着きなさい。……全く、変わらないわね。以前にも同じ注意をした筈よ」
メッキのその一言に落ち着きを取り戻し、「すいません」と告げる戸草。
「で、私達に何をしてもらいたいの?教団による犯罪の証拠を掴む事かしら?」
「……タレコミがあったんです。連中は富山の平村という所に集まって、何か善からぬ事をするつもりだ、と」
戸草の口から「平村」という単語が出た瞬間、メッキとサッキの表情が微かに変わった。
98仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 16:58:53 ID:V4tABkHR0
平村は、隣接する上平村、利賀村と合わせて五箇山と呼ばれる地域だ。合掌造りと呼ばれる特徴的な形をした茅葺屋根の建物で有名である。
地理的条件から、1960年代に起こった急激な開発の波に呑み込まれず、前述の合掌造り集落が失われる事無く残る事となった。
その結果、1970年には文化財保護法により史跡として認定され、更に二十五年後の1995年には世界遺産として登録される事となる。
「勿論そんな不確かな情報で警察が動く事は出来ません。ですから……」
「私達に行ってくれ、と言うのね。こんな事、私達以外にやってくれそうな人材は見当たらないから……」
「申し訳ありません、先輩」
そう言うと戸草は頭を下げた。
「良いわ、引き受けてあげる。あなたと私の仲だし、依頼料も安くしとくわ」
「本当ですか!?あ、有難う御座います!」
その後、戸草はありったけの情報をメッキに渡すと、何度も何度もお礼の言葉を述べながら鬼小島商事を後にしようとした。そんな彼を呼び止めるメッキ。
「御土産よ。バレンタインも近いしね」
そう言うと弥子が買ってきたチョコを一つ、戸草に向かって放った。
99仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:00:35 ID:V4tABkHR0
戸草が帰った後、メッキはサッキ、弥子と共に今回の依頼の件について話し合い始めた。
「五箇山かよ……。偶然の一言で片付けられますかね?」
サッキがぼやく。実はつい先日、五箇山界隈で魔化魍と思しき存在を目撃したという情報が現地の「歩」から寄せられていた。
いつもは「金」のなぎさが「歩」の蒐集した情報を基に魔化魍の出現予測を行っているのだが、五箇山には魔化魍発生の兆候は見られず、そのため気になっていた所だったのだ。
「何かが起ころうとしている。あるいはもう起きている……。あんまり悠長にはしていられないわね」
そう言うと、ここに居る者以外の鬼が今現在何処に居るかを弥子に確認するよう指示するメッキ。
「えっと……非番のコイキさん以外は皆さん表の仕事か魔化魍退治、そのどちらかに就いていますね」
手帳を見ながら弥子が答える。
「コイキ以外の太鼓使いは?」
「センメンキさんはソゲキさんと一緒に東尋坊に、レイキさんは金沢大学に出撃中です」
「レイキさんはカク秘なのか」
サッキが言う「カク秘」とは、官庁で用いられる秘密事項の等級を表している。扱いの軽い順に取扱注意、秘、マル秘、極秘、カク秘となっている。
他はどうか分からないが、猛士北陸支部では任務の優先度、機密度に応じてこの等級が用いられる事がある。ではレイキのそれは何故「カク秘」なのか。
100仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:04:18 ID:V4tABkHR0
金沢大学の敷地内には手つかずの森林が残っており、狸等の野生動物が生息している。
当然、悪い気が滞れば魔化魍が湧く。場所が市内のため、発生の兆候が見られたら最優先で鬼が送り込まれる事になっている。そういった迅速な対応のお蔭で、ここでの犠牲者は未だ存在しない。
余談だが大学は後に郊外へと移転し、2001年からは公園として市民の憩いの場となっている。
「場所的にはどっちもどっちか……」
「でもレイキさんは今日中に戻ってくる予定になってますけど」
弥子がそう補足を入れる。
「だったら私とサッキとレイキさんの三人で五箇山に向かう事になりそうね。弥子、あなたは私達のサポートをお願い」
「え!?いいんですか?」
弥子はドクハキ専属のサポーターである。勝手に他の鬼のサポートを行って大丈夫なのだろうか。だがメッキはその事に関してはそれ以上何も言わなかった。
「相手が何者なのか分からない以上、ソゲキの長距離狙撃能力やチョウキの小回りの利く式神も必要になるかもしれないけれど、無理は言えないわね……」
だからとりあえず太鼓、管、弦の三人で向かうつもりのようだ。
「時間が惜しいわ。弥子、今すぐ戸草が持ってきた情報の裏付けと宿泊先の確保を。私は支部長となぎささんに連絡を取るわ」
「俺は……奥で少し寝るか」
各々が動き出し、事務所内は急に慌しくなった。
101仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:05:28 ID:V4tABkHR0
やはり北陸地方の、とある商店街を二人の美女を侍らせながら歩く男が一人。
猛士北陸支部所属、コイキだ。今日はごく普通の服装をしているが、その代わり大きな羽飾りを頭に付けており、やはり目立つ事このうえない。
「コイキさん!これ、プレゼント!事務所の皆で食べて!」
顔馴染みの八百屋が、新鮮な野菜を幾つか袋に詰めてコイキに渡した。
「おう、有難う!今度改めて買い物に来るぜ!」
八百屋の主人に礼を述べると、美女達と共に散歩を続けるコイキ。右側の女性がコイキに猫撫で声で話し掛けた。
「ねえ〜コイキさん。うちのお店、今度はいつ来てくれるのぉ?」
「あん、抜け駆けは駄目よぉ。ねえコイキさん、ママも寂しがってたわよぉ」
左側の女性も負けじと話し掛けてくる。
「分かってるって。今週中にはチャコちゃんのお店、来週中にはミーコちゃんのお店に顔出すからさぁ」
「きゃあ!コイキさん大好き!」
「ついでにボトルもう一本入れてくれたら、もっと大好き!」
「わははは!惚れた腫れたは当座のうちってな。本気で俺に惚れるんじゃないぞ!」
と、気を良くするコイキの前に一人の男が現れた。明らかに堅気の者では無い事が、その風貌からも纏っている雰囲気からも良く分かる。
「探したよ、コイキさん」
静かにそう告げる男に、コイキが言い返す。
「まさかあんたと夜の盛り場以外で会うなんてね。どうした、黒田さん?」
黒田と呼ばれた男は、変わらぬ口調でコイキにこう告げた。
「仕事の依頼だ。悪いが急を要する。デートの途中悪いが、今すぐ俺と一緒に来てくれ……」
102仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:09:04 ID:V4tABkHR0
翌日の午後には全ての準備を終えて、四人は一路五箇山へと向かっていった。
弥子が運転する4WDの車中は沈黙に満たされていた。自分から喋る事は滅多に無いメッキ、サッキに加え、支部一の無口であるレイキが乗っているのだ。無理も無い。
このままでは精神的に不味いと判断した弥子は、とりあえず適当な話題を振ってみた。
「私、実は五箇山って始めてなんです。資料は何回か目にした事はありますけど。どんな所なんですか?」
弥子のこの問いにメッキが答えてくれた。
「世界有数の豪雪地帯よ。この時期だと、とんでもなく積もっているでしょうね」
「へ、へぇ〜。他には何か無いんですか?」
「元々は平家の落ち武者によって造られた隠れ里だったと言われているわ。あと、その立地条件から江戸時代には罪人の流刑地だったの」
所謂陸の孤島と言うやつである。
「あとは『こきりこ節』だな。毎年九月には祭りが行われている」
これはレイキの言。彼は完全に無口と言う訳ではない。ただ、言霊を操る者として誰よりも言葉の重みを知っているからこそ、必要以上に喋らないのだ。
103仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:10:43 ID:V4tABkHR0
「そう言えば五箇山って白川郷と隣接してるんだよな……。中部に応援を頼まなくても良いんですか?」
煙草を吹かしながらサッキが誰に向かってという訳でもなく呟いた。
白川郷。岐阜県大野郡白川村と荘川村の呼称であり、五箇山とは隣接している。ここにも合掌造り集落が存在し、故に1995年にはこの白川郷と五箇山がセットで世界遺産に登録されている。
余談だがこの白川郷は、2002年に同人ゲーム「ひぐらしのなく頃に」の舞台のモデルとなり、一部で爆発的な知名度を誇っている。
閑話休題。サッキは五箇山が岐阜県との県境にあるので、万が一の場合に備えて中部支部に応援を頼んでおいた方が良くないかと言っているのだ。
「その件に関しては心配要らないわ。なぎささんが中部の方に連絡を入れておいてくれたみたい。近くに出撃中の鬼がサポートに来てくれるみたいよ」
「そうですか……。しかし魔化魍と邪教徒の集団とは、嫌な組み合わせだな」
そうぼやくサッキに向かって弥子が尋ねた。
「そう言えばサッキさん、昨日からずっと邪教徒って言葉を使ってますけど、この国にそんな邪教なんてものがあるんですか?」
「それに関してはお前、俺よりレイキさん辺りの方が詳しいだろうぜ」
そう言ってレイキの方を見やるサッキ。それに対しレイキは。
「……説明しても良いが、少し長くなるぞ」
「あ、長くなるんだ。でもまあ良いや。お願いします」
目的地まではまだまだ遠い。時間潰しにはもってこいだ。そんな事を考えながらレイキの話に耳を傾ける弥子。
104仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:13:43 ID:V4tABkHR0
「真言立川流と言うものがある。密教の一派なのだが、これは邪神である茶枳尼天を信仰している」
茶枳尼天とは印度神話におけるダーキニー、即ち人食い鬼の事である。この女神は性欲を司る存在でもあった。
「仏教において禁止されている性行為を奨励し、髑髏を本尊として崇めていた。所謂『淫祠邪教』というやつだ」
「そんなのがあったんですか?ひょっとして今もある?」
「徳川時代には弾圧を受けて滅びている。……まあ彼等には彼等の教義があり、それに則っていただけなのだがね」
「他にもそんな怪しげな宗教ってあるんですか?例えば、今回みたいに明らかに犯罪だって分かるようなの……」
その言葉に、一瞬嫌そうな表情を浮かべるも、話を続けるレイキ。
「……勿論ある。蠱毒と言う呪術があるのだが……」
「あ、それ知ってます。確か毒虫や毒蛇なんかを殺し合いさせて……」
「そう。最後に生き残った一匹を使って強力な呪いを用いるというものだ。……これを人間を用いて行ったカルト教団が存在するという噂を耳にした事がある」
その目的は、教団の本尊をその人間の即身仏を使って作る為だったようだ。
「世に怨みを抱いて死んだ者から放たれる邪気程恐ろしいものは無い。君もイツマデのように邪気から湧く魔化魍の事は知っているだろう?」
「何かやばいものが湧いちゃったんですか……?」
偶然の一致と片付ける事も出来るだろうが……。そう言いながらレイキはこう続けた。
「その本尊が移動した先々で大災害が起こっている。大正三年の桜島噴火に始まり、大正十二年の関東大震災までの十年間で八件だ」
「ぜ、全部その教団の本尊が移動した先で起こったんですか?本当に?」
俄かには信じられない話である。
105仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:15:07 ID:V4tABkHR0
「関東大震災の当日、その教団の教祖は本尊の前でこの国に呪いをかけながら自害をしたと聞く。『日本滅ブベシ』という血文字を残してな……」
その話を聞いて、弥子の背筋に冷たいものが走った。もし、その「オモヒデ教」と言うのがそれと同じくらいやばい団体だったら、メッキ達はまだしも自分はどうなるのだろうか。
「ちゃんと集中して運転しなさい」
「あ、すみません!」
話に聞き入って、ついうっかり対向車線にはみ出てしまっていた。慌てて元の車線内に戻る弥子。
「で、その本尊の即身仏と言うのは今何処に……」
「何処かの寺に封印されているらしい。噂ではその教団の残党が奪回を目論んで暗躍しているようだが……」
噂であってほしいと心の底から願う弥子。
それっきり車中はまた沈黙に支配されてしまった。
(こ、これはある意味ドクハキさんと一緒の時よりも辛い……)
弥子の受難は続くのであった。
106仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:16:35 ID:V4tABkHR0
日暮れ前には五箇山に着く事が出来た。
「とりあえず日暮れまで集落内で情報収集、その後宿で一旦落ち合いましょう」
そう言うや否や、メッキとレイキはさっさと集落内に入っていってしまった。
「私は先に民宿へ行って荷物を置いてきます。サッキさんはどうします?……サッキさん?」
「……火気厳禁」
立て札に書かれた注意書きを読んで、吸おうと思い取り出した煙草をジャケットに仕舞い込むサッキ。
集落内では合掌造りの延焼を防ぐため、防火対策が徹底されているのだ。
「不味いな……。以前ブローカーから購入した噛み煙草を持ってくればよかった……」
血管がどうのとか言うのはただの言い訳で、単にニコチン中毒なだけではないのかと弥子は思う。
集落内では、積雪による通行の妨げを防ぐために農業用水が絶えず道に放水されていた。水はそのまま水路へと流れ込み、循環して使われているようだ。無駄が無い。
荷物を持った弥子と、とりあえず一緒に付いてきたサッキは、一件の合掌造り家屋の前へとやって来た。ここが任務終了までの拠点となる宿だ。
「うわぁ〜、何か凄いですねぇ!」
「ん、そうだな……」
二人の間の温度差が激しい。まだ過剰なまでの反応を返してくれるドクハキの方がやり易いと心から実感する弥子であった。
玄関を開け、挨拶をする弥子。現れた家の主人から今夜の食事や風呂、寝る場所について説明を受けると、オエと呼ばれる広間へと通された。
「うわぁ〜」
広間の真ん中には囲炉裏があり、天井からは自在鉤に掛けられた茶釜が下がっていた。
「見て下さいよサッキさん!私、囲炉裏なんて初めて見ました!」
「俺達は田舎の方へ鍛えに行くと頻繁に目にしてるけどな。……やっと煙草が吸える」
そう言うと囲炉裏の前に腰を下ろして煙草を吹かし始めるサッキ。どうやらそのために弥子に付いてきたらしい。
「おお、暖かい。また糞寒い外に出て行くなんて嫌になっちまうな……」
囲炉裏の火にあたりながらサッキがぼやく。
「だからメッキさんもレイキさんも先に聞き込みに行ったんでしょ?ほらほら、サッキさんも一服したらさっさと行って下さいよ」
「分かったよ。そうだな、俺は……少し山の方へ行ってみるか」
ふぅーっと煙を吐き出すサッキ。煙は見事な輪っかを作って、ぷかぷかと浮かんでいった。
107仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:18:25 ID:V4tABkHR0
夕闇の中、国道を一台の外車が走っていた。スモークシールドを貼った、如何にもな雰囲気の車だ。
後部座席には、コイキと黒田が座っていた。
「本当かよ、組員を拉致られたっての……」
信じられないといった感じでコイキが聞き返す。
「本当だ。うちの若いのが数名、現場を目撃している」
そのうちの一人がこいつだ、と運転している男を顎で示す黒田。
黒田のコイキへの依頼、それは彼が話す件と関係があった。
数日前、組員の一人が怪しげな連中に拉致されたのだと言う。
「初めは何処ぞの組が仕掛けてきたのかと思ったんだが……」
その連中が乗っていた車には「オモヒデ教」と所属組織名が堂々と書かれていたのだそうだ。
「そんな組は聞いた事が無かったんでな。あの手この手で調べてみたら、怪しげな宗教団体だそうじゃないか」
「……なあ、何でわざわざ車体にそんな目立つように団体名を書いておくんだ?」
「俺が知るかよ。若い連中全員がそう書いてあったって言ってるんだ」
これは明らかに誘拐事件である。だが、世間体を考えて警察には届けなかったと言う。
「だってそうだろ?抗争でも何でもないのにやくざが組員を拉致られるなんて、うちの看板に泥を塗るだけじゃ済まねえ」
それはそうだろう。
108仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:20:15 ID:V4tABkHR0
「……話が読めないんだが。俺への依頼ってのは一体何なんだ?今から何処へ向かおうって言うんだ?……まさか」
「その教団の連中が五箇山に集まっているという情報を得たんでな。今からお礼参りに行く。あんたには助っ人を頼みたい」
「じゃあまさか後ろのトラックは……!」
慌てて後ろを振り向くコイキ。彼等の乗った車のぴったり後ろを、何台かのトラックが走っている。
「荷台にはうちの血の気の多い連中が乗っている。あと武器だな。やくざに喧嘩売ったんだ。それがどういう事かきっちり教えてやらないとな……」
黒田が静かにそう言った。
「何故俺を助っ人に……?」
「誤魔化すなよ。あんた、常人離れした身体能力を持っているじゃないか。絶対役に立つと踏んだんだ。あと事後処理な。あんたん所の事務所、警察にも顔が利くんだろ?」
明らかに後者の方が主目的のようだ。話した以上、出入りにも参加しろと言う事か。
「心配するなよ。報酬はきっちり支払う。あんたの事務所にも、あんた個人にも……」
血気盛んな人達を乗せた車は、一路五箇山を目指して快調に飛ばしていた。
109仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:23:44 ID:V4tABkHR0
「うわぁ〜、これ可愛い!」
土産物屋で、弥子は「さるぼぼ」と呼ばれる小さな人形を手にしていた。
「それは『さるぼぼ』と言って、方言で猿の赤ちゃんという意味なんだよ」
土産物屋のおばちゃんが、笑顔で弥子に説明する。
「これってここの郷土人形なんですか?」
「う〜ん、余所はどうか知らないけど、私のお母さんやお婆ちゃんの頃から手作業で作っておったんでな……」
「へえ〜」
説明を受けながら、赤い体に「五箇山」と書かれた腹掛けを着けた人形をまじまじと眺める。見れば見る程愛らしい。
実際には「さるぼぼ」は飛騨地方の各地で作られ、主にお守りとして販売されている。腹掛けの文字は地域によって違うようだ。
「じゃあこれください!あと事務所の皆に何か食べるものを買っていかなきゃ。あ、あと友達にも……」
色々と買い込んで土産物屋を出た時には、もう日はすっかり沈み、辺りは闇に包まれていた。
夜の集落は昼間と顔を変える。僅かな光量の街灯と星明かり、そしてそれを受けて淡く光る雪のみが足元を照らす。あとは全て闇である。原始の暗闇だ。魔化魍が湧いても何ら不思議ではない。
民宿へと急ぐ弥子。土産物屋との距離はそんなに離れていないのだが、闇が彼女の不安を掻き立て足早にさせる。
(いつもはあれかな、ドクハキさんが居るという安心感があるから夜の山でも大丈夫なのかな……)
そんな事を考える弥子。
110仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:26:05 ID:V4tABkHR0
と、夜の闇の中から何者かが現れて彼女の肩を掴んだ。驚いて声を上げる弥子。それに対し、影が静かに答える。
「どうやら驚かせてしまったようだな。すまない」
影が光の中へと入ってくる。弥子の目に映ったのは、見慣れたレイキの顔だった。
「あ、レイキさん!こ、こちらこそすいませんでした。大声出しちゃって……」
そこへもう一人やって来る者があった。メッキだ。その場で情報交換を始める二人。どうやらこの五箇山集落内において有効な情報は何も得られなかったようだ。
「明日は人形山(ひとがたやま)の方へ行きましょう。……ところでサッキは?」
「サッキさんなら山の方へ行くって言ってましたけど……」
「全く……」
本業においてサッキが団体行動を無視するのはいつもの事だ。コイキやチョウキも基本的に単独行動を好む。結果、支部内では「チームプレーよりスタンドプレーによる結果のチームワーク」という風潮が生まれていた。
「探しに行きましょう。全員揃っていないと、夕食の件で民宿の人達に迷惑を掛ける事になる」
「えーと確か……登山道を通って展望スポットの方へ行くとか言ってました」
「じゃああっちね」
そう言うとメッキは、集落の入り口の方へと向かって歩いていった。
111仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:27:11 ID:V4tABkHR0
日が沈んだ後の雪山を登っていく三人。メッキとレイキは慣れているのか容易く登っていくのだが、弥子は小さな懐中電灯の灯りを頼りに危なっかしく彼等の後を付いていっている。
途中、展望スポットがあるため、そこまでは観光客によって踏み固められた道を通っていけば良い。そこから先は、深雪の積もった道無き道を進んで行く事になる。
「こ、ここから先は私、遠慮しておきます」
「あなた一人で無事下山出来るかしら?付いてきた方が身の為だと思うわよ」
「……それもそうですね。行きます」
山肌に沿って曲がりくねった道は、右側は岩肌を露出させており、所々に木々が生えている。左側は急斜面だ。
「うわわわ!こ、怖い……」
通行出来るスペースは場所によっては狭くなっており、万が一足を踏み外した場合は山から転げ落ちてしまう。況してや今は夜である。弥子が怖がるのも無理はない。
「しっかりしなさい」
メッキの檄が飛ぶ。
何分間歩いただろうか。足元に注意を配る事に必死で、弥子は一度も時計を見ていなかった。
と、前方を歩く二人の足が止まった。何事だろうか。まさか、魔化魍!?
だが、その予想は外れだった。サッキが居たのだ。静かに、じっと急斜面の方を見ている。
「サッキ!どうした?」
メッキの声にサッキが振り向く。そして遠く向こうの山を指差しながらこう答えた。
「ほんの一瞬だけど、明かりが灯ったのが見えたんですよ。怪しくないですか?」
112仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:30:03 ID:V4tABkHR0
民宿の広間で車座になって食事を取る一同。幸い、この日は弥子達四人以外の宿泊客は誰も居なかった。
「あ、これ美味しい!」
独活を初めとする、近隣で採れた山菜を用いた料理に舌鼓を打つ弥子。他にも、囲炉裏の火で焼いた岩魚や鯉の洗い等も出ている。
「……どうやら人形山に何かがありそうね」
「明日は朝一で向かいますか?」
食べる事に夢中の弥子を除き、明日の事について打ち合わせを行う三人。結局、明日の朝早くに山へと向かう事になった。
「魔化魍以外にも、教団の信者とのいざこざが起きる可能性も充分あるわ。その時は……」
「任せて下さい。……腕が鳴るぜ」
柄の悪い笑みを浮かべながら、サッキが告げる。やる気満々のようだ。
「……ところでレイキさん、ちゃんと食べてます?またここの家の人に心配されますぜ」
サッキの問いに、レイキはご飯をおかわりする事で答えてみせた。彼は宿の主人に、ひょっとして寒さで体調を崩したのではないかと心配されているのだ。
「普段からこんな顔色です――って、もうちょっと言い方もあるでしょうに」
笑いながら煙草に火を点けるサッキ。
「どうする?少し早いけれど、酒宴と行くかしら?」
そう言って土産物屋で購入した地酒をメッキが袋から出した。
時を知らせる放送が集落内に流れる。丁度午後八時になったようだ。
「良いですね。おい弥子、お前はどうする?」
弥子はと言うと、食事を終え、持ってきていたチョコを別腹と称して食べていた。
その後、四人で酒宴が行われた。ここの地酒は実に飲み易い。
酒宴は翌日の事を考慮し、比較的早くにお開きとなった。風呂に入り、翌日の準備を整え、あんかの入れられた布団で眠りに就く四人。
静かだ。雪が全ての音を吸収してしまったかのように、夜の村は静寂に支配されている。
――決戦は明日だ。
113仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:31:52 ID:V4tABkHR0
雪国の朝もまた、違った顔を我々に見せる。シャーベット状に凍った雪が朝日を受けてきらきらと結晶を輝かせている。
どさり、と音を立てて近くの合掌造りの屋根から雪が滑り落ちた。
「う〜、寒い〜!」
防寒着姿の弥子が実に寒そうに言う。
「雪が降っていない分ましだと思いなさい。昨日も言った通り、ここは世界有数の豪雪地帯なんだから」
車に乗り込み、大急ぎで暖房を入れる弥子。鬼の三人とは違い、せいぜい人並みの鍛え方しかしていない弥子には厳しいものがある。
(ドクハキさんが居たら、間違いなく雪の中に埋められただろうなぁ……)
嬉々として自分を雪中に埋めるドクハキの姿が、ありありと脳裏に浮かんでくる。
一方、人形山近くの旅館に泊まっていた、やくざの皆さん(含むコイキ)も朝を迎えていた。
「野郎ども!これはうちの組の面子だけじゃなく、日本中のやくざの面子が掛かってるんだ!気合い入れて行けよ!」
黒田の号令に、一同が声を上げる。それを傍からにやにやしながら見ているコイキ。
「いやぁ、朝っぱらから面白いもん見せてくれるじゃない」
「俺達は本気だ。あんたも腹括ってもらうぜ、コイキさん」
「心配するなよ。言っちゃなんだが俺はあんた達以上に修羅場を潜ってきているからさ」
睨みつけてくる黒田に向かって、相変わらず飄々とした態度でそう答えるコイキ。だがその目は既に、鬼として戦いに赴く前のそれと化していた。
目的の地、人形山へと役者は揃いつつある。
114仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:33:05 ID:V4tABkHR0
ざく、ざく、と雪を踏みしめる音を響かせながら山道を行くメッキ、サッキ、弥子、レイキ。
(え〜と、何で私まで一緒になって登ってるんだろ……)
サポーターである彼女は、車中で待機というのが普通ではないのだろうか?明らかに自分が同行すれば三人の足を引っ張るだけだろうに。
それとも……。
(最悪な場合、私を囮にしようとしている!?ドクハキさんみたいに!?)
少なくとも、仕事に関しては必要以上にドライなメッキならばやりかねない。いつもの事だ、と覚悟を決める弥子。
と、三人の鬼が急に歩みを止めた。お蔭で弥子は、すぐ前を歩いていたサッキの背中にぶつかってしまう。
「ど、どうしたんですか?」
「静かに……」
耳を澄ませるメッキ。
「……銃声が聞こえた。それに……」
「硝煙と……血の臭いだぜ」
鼻をひくつかせながらサッキが言う。どうやら山中で何かが起きているらしい。
「走るわよ!」
そう言うと雪の山道を駆け出すメッキとサッキ。
「え?え?」
「おぶっていこう。掴まれ」
困惑する弥子を背負うと、レイキもまた、細い体躯には似つかわしくない身体能力で雪道を駆けていった。
115仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:36:01 ID:V4tABkHR0
黒田一馬は、優秀だった。
彼が所属する闘栄組は新興勢力ではあるが、独自のルートを使って大陸との闇取引を行い勢力を拡大しつつある新進気鋭の組織だ。
彼は若くして組の若衆頭となり、手腕を振るってきた。武闘派で、抗争の際にはいの一番に飛び出し相手の命を取った。血気盛んな若い衆の気持ちを誰よりも理解し、故に厚く慕われていた。
誰もが次期跡目は確実だと思っていた。事実、組長からの信頼も厚かった。
そんな彼に今回与えられた任務は、組の若い者を拉致るという大胆不敵な行動を取った宗教団体に落とし前をつけさせる事だった。
正直、楽な仕事だと思っていた。所詮相手は一般人だからだ。それでも念の為、武装した血の気の多い連中を大量に連れ、万屋にも助っ人を頼んだ。完璧な筈だった。
だが、今黒田の眼前で繰り広げられているのは。
「兄貴ぃぃ!ぎゃああああ!」
虐殺だった。若い衆が次々と死んでいく。鮮血が雪を紅く染めた。
黒田の顔のすぐ横を、中国製のトカレフのコピーを握ったままの若い衆の腕が飛んでいった。
地獄だった。今まで見てきたどんな抗争よりも酷かった。それはそうだろう。今黒田達の相手をしているのは人では無いのだから。
「ば、化け物めぇ!」
若衆頭補佐が、トカレフをぶっ放した。だが、次の瞬間彼の頭が強烈な一撃を受けて吹っ飛んだ。
「てめえ、この怪物は一体何なんだぁ!」
トカレフを構えながら黒田が叫ぶ。その銃口の先には、眼鏡を掛けた髭もじゃの中年男性が立っていた。
自らオモヒデ教々祖・江川狂天と名乗ったその男は、人を不快にさせる笑みを浮かべたまま、黒田を挑発した。
「撃ちたければ撃ってみなさい」
「この野郎!」
弾倉に込められたありったけの弾丸を江川目掛けて発砲する。だが、弾丸は江川に届く前に、間に割り込んできた怪物に全弾命中した。
116仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:37:46 ID:V4tABkHR0
「ふっふっふ……。抵抗さえしなければ君達も我々の仲間になれたであろうに……」
「巫山戯るな!」
怪物が一歩一歩黒田に近付いてくる。実に醜悪な怪物だ。人型ではあるのだが、人と虫が混ざったような外見をしている。特にそれは顔面に顕著であり、一層醜悪さに拍車を掛けている。
(吐き気がしやがる!)
弾切れになったトカレフを捨て、ダンビラを鞘から抜き名乗りを上げる黒田。
「闘栄組若衆頭、黒田一馬!男の面子に賭けてここは退かん!」
だがその時。
「あ……に、き……」
「何?」
怪物が人の言葉を喋った。怪訝に思い、その半人半虫の顔をじっと見つめる黒田。
何処かで見た記憶がある。よく見るとその目には涙が浮かんでいた。
「あに……きぃ」
「お、お前、まさか!?」
それは間違いなく拉致られた組の若い者だった。あまりの出来事に思考が止まり、構えていたダンビラを下ろしてしまう。
嘗ての舎弟だった怪物が、黒田の間合いに入った。鉤爪状の腕を振り上げる怪物。そこへ。
間一髪のタイミングで飛び込んできたコイキが、黒田を抱えて跳躍した。振り下ろされた怪物の腕が空を切る。
「コ、コイキさん!あんた今まで何やってたんだ!?他の奴らはどうした!?」
「あんたが予想している通りさ。皆仲良く旅立ったぜ」
「畜生!……お、俺は初めてだぜ。この世界に入って、ここまで何もかもずたずたにされたのはよ!」
木々の間を抜け、雪上を飛ぶように駆けて行くコイキ。と、眼前に複数の影が現れた。教団の人間かと身構えたその時、影の一人が口を開いた。
「コイキさんじゃないですか!?どうしてここに!?」
見慣れた北陸支部の面々だった。
117仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:44:20 ID:V4tABkHR0
「大丈夫ですか?……うわっ!こ、小指がありませんよ!」
「……それは元からだ」
黒田を弥子に任せると、コイキとメッキ達はそれぞれこの地にやって来た経緯と今までの出来事について話し合った。
「事務所を通さずに仕事を受けるとはな。減給だぞ」
きつい口調でコイキにそう告げるメッキ。
「しかし、その怪物ってのは一体何なんだ?何故変身して戦わない?」
「一斉に聞くなって。最初の質問に関しては俺も分からん。あっちに教祖様がおられるから直接聞けばいいさ。で、後の質問に関してはあれが答えだ」
そう言ってコイキが天を指差す。そこには、一羽の大きな鳥がくるくると弧を描いていた。
「あれは護法童子か」
護法童子とは式神の一種であり、本来はその名の通り少年の姿で現れる。実際には仏法を守護し、使役者の法力が正しい事を証明する存在なのだが。
「変身出来ないんですよ。ほら」
そう言いながら音叉を指で弾き、額に掲げてみるコイキ。確かに何も起こらない。慌てて各々自分の変身道具を鳴らしてみるが結果は同じだった。
「成る程、護法童子の法力が結界を貼っているのか……」
レイキが渋面を作りながら呟く。
メッキは試しに自分の持つ式神を打ってみようとしたが、変身鬼笛を吹いても何も起こらなかった。
「変身も駄目、式神も駄目か。その怪物って言うのは素手で何とかなりそうなのか?」
「無理だね。どのみち清めるには音撃が必要だし、一旦山を下りて変身してから出直すしか……」
サッキの問いにコイキがそう答えた時、数体の怪物が現れた。
118仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:46:44 ID:V4tABkHR0
「あれは……サンシチュウか!?何故こんな所に……」
「サンシチュウ?何です、それは?」
「寄生タイプの魔化魍だ」
そう答えるレイキ。
人間に寄生する種類の魔化魍は、オンブオバケやダリが挙げられる。しかしそれらが外部に取り憑くのに対し、サンシチュウは文字通り宿主と一体化してしまう。
「一体化するとどうなるんです?」
変身は出来ないものの、音撃弦・降魔を構えながらサッキが尋ねる。「降魔」は真っ黒で左右非対称なボディに幾何学模様のペイントが施されたギター型音撃弦だ。
「見ての通りの姿に変わる。……ああなってしまうともう助けるのは不可能だ。楽にしてやるしかない」
「ちっ」
更にサッキは、ふくらはぎに隠しておいたコンバットナイフを抜いて、逆手に構えた。二刀流のつもりのようだ。
レイキもまた、音撃鈴・涅槃を取り出した。敵の護法童子が居る中で使えるかは分からないが、言霊で戦うつもりのようだ。
同じくメッキも二丁拳銃型の音撃管・薄雲&若紫を腰のホルスターから抜いた。
「弥子、あなたはその人を連れて山を下りなさい!出来るわね!」
「は、はい!」
メッキに言われるがままに、黒田に肩を貸して山を下りていく弥子。
「なあ、あんたら……本当は何者なんだ?コイキさんの身のこなしと言い、さっきのあんたらの反応の素早さと言い……。堅気の者じゃない事は分かるが……」
「え〜と、それはその……企業秘密です!」
それ以上黒田は詮索をしてこなかった。本能的にやばい臭いを感じ取ったらしい。
「コイキ!あの二人が無事に下山出来るまで付いていって!」
「了解」
コイキもまた、弥子達の後を追っていった。
119仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:51:23 ID:V4tABkHR0
襲い掛かってくるサンシチュウの群れを、「降魔」とコンバットナイフを巧みに操って捌いていくサッキ。
「でえりゃああ!」
さっきまでとは打って変わったハイテンションで、サンシチュウの頭部に「降魔」を振り下ろす。どうやら完全に戦闘状態へと切り替わったようだ。
一方メッキは全方位に気を配ると同時に、両腕を縦横に動かし、向かってくるサンシチュウ目掛けて確実に圧縮空気弾を命中させていた。
左右から同時にサンシチュウが跳びかかってきた。それを開脚して躱し、零距離から発砲して吹っ飛ばすメッキ。
更に雪を蹴り上げて目潰しを行うと、接近してグリップ部で頭部を乱打し始めた。
「頭部を狙え!こいつらは半分人だ。殺す事は出来ないが、戦意を奪う事は出来る!」
「言われなくても!」
サンシチュウの眼球にコンバットナイフを突き立てながら、サッキが答える。返り血が彼の顔を染めた。
そしてレイキは。
「たまみがく為生まれし事を思え 辛く悲しき淵に立つ時――」
りん、と涼やかな音色を響かせながら言霊を唱えていた。彼の周りに居たサンシチュウが苦しそうに耳を塞いでいる。効果はあったようだ。
「どうする、メッキさん。数が多いぜ」
「待て……」
互いに背中を合わせながら話し合う二人。と、メッキが何かに気付き、サンシチュウの数を数え始めた。
「……教団絡みで失踪したと思われる人の数と、ほぼ一致するわ」
「何だって!?じゃあサンシチュウに寄生されたのは信者じゃなく……」
「行方不明になっていた人達……。くっ!」
二丁を水平に構え、向かってくるサンシチュウの頭部を撃ち抜く。血を流しながら吹っ飛んでいくサンシチュウ。しかし死んだわけではない。
「音撃さえ使えれば……」
空を飛びまわる護法童子を、忌々しげに睨み付けるメッキ。
刹那。
一筋の光が護法童子を貫いた。炎上し、そのまま燃え尽きる護法童子。
そして空には、両肩から大きな羽を生やした一人の鬼が、音撃棒を構えて浮かんでいた。
120仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:52:37 ID:V4tABkHR0
「あれは……中部支部の唐鋤鬼!」
そう。彼こそ中部支部最強の太鼓使い、唐鋤鬼だ。
飛鳥時代に作られた「玉虫厨子」には、肩から羽を生やした鬼の姿が描かれている。また、八大天狗の一角に鬼である前鬼が数えられている事からも、原始の鬼は空が飛べたと考えられる。
唐鋤鬼は、現在残る数少ない天翔ける力を持った鬼なのだ。
「中部からのサポートってのは、あんたの事だったのか!」
「星の動きを読んだら、悪い卦が出たのでな。懸念していた矢先にこれだ」
サッキの呼び掛けに淡々と答える唐鋤鬼。
「応援というのは唐鋤鬼、あなただけなの?」
「部下を一人連れてきている」
その頃、山を下りていた弥子達の前に、怪しげな風体の男達が現れていた。おそらく教団の信者達だろう。
だが、今は全員雪の上に倒れて呻き声を上げている。そして立ち尽くす弥子と黒田の眼前には、一人の鬼が立っていた。
隈取が色違いである事以外は、関西支部所属の怒鬼と瓜二つの外見をした鬼――中部支部所属の影鬼だ。
「あんた中部の鬼か」
話し掛けるコイキに無言で頷くと、彼等がやって来た方向を静かに指し示す影鬼。
「俺に仲間達の所へ戻れって事か?分かった。じゃあこの二人を頼むな」
今度会った時に改めて礼をするぜ、と一言告げるとコイキは再び雪の積もった山道を登っていった。
「おい、この新しい怪物は何だ!?あんたらの仲間か!?」
「御免なさい!これ以上詳しい事は何も言えないんです!」
当然ながら納得出来ない表情の黒田を連れて、影鬼に先導されるまま弥子は山を下っていった。
121仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 17:59:37 ID:V4tABkHR0
「護法童子の結界が解けた!変身出来るぞ!」
コンバットナイフを正面のサンシチュウに投げつけ、「降魔」を地面に突き立てると変身鬼弦を鳴らすサッキ。
メッキも片方の管をホルスターに戻すと、変身鬼笛を吹き鳴らした。レイキも言霊を唱えつつ、変身音叉を取り出して近くの木に打ちつける。
闇。光。氷。三人の体がそれぞれの属性に包まれ、変わっていく。そして。
気合いと共に殺鬼、滅鬼、霊鬼が纏っていたものを払い、その姿を現した。
更に上空に待機していた唐鋤鬼が降下してきた。四人の鬼を取り囲むようにサンシチュウが近付いてくる。
「殺鬼、君は知らないだろうがこのサンシチュウは進化する魔化魍だ」
「進化だ!?」
「サンシチュウが人に寄生する真の目的は、その為の養分の供給と進化するまでの時間稼ぎ。進化を終えると宿主の体を破って出てくる」
霊鬼と滅鬼が、それぞれ殺鬼に説明する。
サンシチュウ(三尸虫)とは人の体内に巣食い、宿主の悪行を閻魔大王に密告する存在とされている。そのため昔の人々は、サンシチュウが活発に活動する庚申の日には寝ずの番をして見張っていた。
「サンシチュウが進化を終えて現れる魔化魍。その名は――」
ショウケラ。
庚申の日に眠ってしまった者は、このショウケラがもたらす災厄によって寿命を縮められてしまうという言い伝えがある。
122仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 18:00:38 ID:V4tABkHR0
「幸いこいつらには未だ進化の兆候が無い!潰すぞ!」
「おう!」
「降魔」を構えて飛び出す殺鬼を、「薄雲」と「若紫」を乱射しながら滅鬼が援護する。
「我が光の強さ、思い知れ!」
両手に握った音撃棒・星烈を掲げる唐鋤鬼。両の鬼石が明滅し、光の粒が周囲に弾け飛んだ。
「鬼棒術・天狗(あまつきつね)!」
流星のように大地へと光の粒が降り注ぐ。サンシチュウは光にその身を焼かれるが、見方である鬼達には掠りもしない。
その隙に殺鬼が音撃震・白刃を装備した「降魔」をサンシチュウに突き刺した。
滅鬼も鬼石の斉射を終えると、装備帯から専用の小さな音撃鳴を取り外そうとする。
どのみち吹けるのは二丁のうちの片方だけなのだが、彼女の装備帯には音撃鳴が二つ並んで装備されている。
「桐壺」と「光」のうち、「光」の方を取り外す滅鬼。彼女なりの拘りがあるらしく、「薄雲」には「桐壺」、「若紫」には「光」を常に組み合わせている。
そして霊鬼もまた、近くのサンシチュウに接近すると音撃鼓・幽玄を貼り付けた。
「太鼓以外でも良いんだよな!?」
「そう!さあ、決めるわよ!」
雪山に太鼓の、管の、弦の音色が響いた。
123仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 18:01:38 ID:V4tABkHR0
突然現れた四人の鬼の姿を見て、江川が驚きの声を上げる。だが、すぐに冷静さを取り戻すと四人に向かって告げた。
「誰だね、君達は?」
「サンシチュウも全部倒したし、護法童子も破ったわ。観念する事ね」
銃口を向けながら滅鬼が告げる。
「おい答えろ!何でこんな事をしやがった!」
「血の気が多いな、君は。良いだろう、教えてあげよう」
そう言うと江川は本当に説明を始めた。
「確保しなくていいのかよ?」
「今はね。各人、周囲の警戒を怠るな」
滅鬼がそう告げる。元々余所の支部の人間である唐鋤鬼は勿論、年上の霊鬼もその言葉に従った。きっとまだ何かある。
「そもそも我が教団は……」
色々とどうでもいい事を織り交ぜながら江川の説明は続く。まあ要約すると、何か卵みたいなものが蔵から見つかったので調べてみたらサンシチュウの卵だったという事らしい。
しかもこの虫は人間に寄生してその姿を怪物に変えてしまうようだ。だったらこの虫を使って新人類を作り、自分がその支配者になろう。――そう思ったらしい。
「御虫様の御利益によって、我が教団は次第に勢力を拡大していく事が出来た」
「いや、御利益なんて無いだろ。あんなのに」
「信心すれば鰯の頭も何とやら、だ。黙って聞いてやれ」
茶々を入れる殺鬼を霊鬼が黙らせた。江川は変わらぬ口調で話を続ける。
そして、究極の本尊を拵えるべく、拉致してきた屈強な若者達にサンシチュウを寄生させて、この山で最後の一匹になるまで殺し合いをさせるつもりだったらしい。
「蠱毒の法をやろうとしていたのか……」
昨日、車中で弥子に話した事が現実にこの場で行われようとしていた事に驚きを隠せない霊鬼。
「まさかやくざや君達のような者までやって来るとは思わなかったが……」
「所詮あなた達は一介の宗教団体。警察ややくざが掴めるぐらいの証拠は幾らでも残っていたという事よ」
「おい、てめえ本当に人間か!?こんな馬鹿みたいな事を平気でするなんて……」
殺鬼を虫けらでも見るかのような目で見下しながら、江川が答える。
「思考停止、浅学の極み」
「何だと!?」
「誰にも私の崇高な目的は理解出来ないのだよ」
「完全に自分の世界に入っているわね……」
「どす黒い悪とは、ああいう者を言うのだな」
滅鬼と唐鋤鬼が、それぞれ呆れたように呟く。
124仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 18:05:02 ID:V4tABkHR0
「この山を儀式の場に選んだ理由は?」
霊鬼が尋ねる。
「ある人物に教わったのだ。護法童子もその人物から借りたものだ」
「ある人物だと?」
「確か眼鏡を掛けた和服の……うん?あれ、顔が思い出せない……」
暫し考え続ける江川。だが思い出すのを諦めたらしく、急に話題を変えてきた。
「……まあ良い。君達の力を認めてあげよう。どうだ、我が教団に来ないか?幹部待遇を約束しよう」
「巫山戯るな!誰が行くか!」
「そうか、仕方ない……」
そう言って江川が右手を翳すと、その背後から五匹の魔化魍が現れた。等身大のサンシチュウとは異なり、こちらは三メートル前後はあろうかと言う巨体だ。
「既に進化を終えたやつが居たのか!」
青黒い色をした、獣と爬虫類を掛け合わせたような体。耳まで裂けた口。肩から腕にかけてびっしりと鱗があり、両手の鉤爪は猛禽類のそれのように鋭く尖っている。
ショウケラだ。
五匹のショウケラが一斉に吼えた。そして江川の命ずるままに鬼達を襲ってくる。
「おい、何であのおっさんは教われないんだ!?」
「腕だ!奴の腕を見ろ!」
江川の右腕には、鬼の顔を模した腕輪が嵌められてあった。
「おそらくあれは御鬼輪(ぎょきりん)。嘗て、役小角が前鬼、後鬼をあれで操ったと言われている」
「だったら鬼しか操れないんじゃないのか?」
「ショウケラは鬼門信仰と密接な関係を持っている――つまり魔化魍の中でも比較的鬼に近しい存在なのよ」
霊鬼と滅鬼が交互に説明する。
と、雪の下から醜悪な姿をした虫が複数体飛び出してきた。サンシチュウの幼体だ。
「気を付けろ。こいつらはほんの小さな傷口からでも強引に体内へと入ってくるぞ」
跳びかかってくるサンシチュウを「星烈」で打ち落としながら唐鋤鬼が告げる。
125仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 18:06:42 ID:V4tABkHR0
動きの素早いサンシチュウを相手に翻弄される一同。滅鬼の銃撃は悉く躱され、霊鬼も言霊を唱える隙が無い。
「畜生!この虫けら共を全滅させて、あのおっさんをぎゃふんと言わせてやる!」
「降魔」を振るいサンシチュウを叩き落とす殺鬼の上から、一匹のショウケラが襲い掛かってきた。その鉤爪が殺鬼を捉えようとした瞬間。
「どけどけぇ!」
威勢の良い掛け声と共に、ショウケラに跳び蹴りを決めて吹っ飛ばす影が一つ。宙返りをして着地すると、江川の方に向かって雄々しく名乗りを上げた。
「咲いて暴れて大傾奇!天下御免!小粋鬼参上!」
小粋鬼だ。歌舞伎役者のように見得を切る小粋鬼。
「小粋鬼!弥子達はどうした?」
「それなら心配無用、中部の鬼に任せてきた」
突然の小粋鬼の登場に、江川やショウケラの動きが止まる。その隙を衝いて、さっきまで技を使う時期を見計らっていた霊鬼が動いた。
「鬼法術・氷結魂!」
声が響いた瞬間、サンシチュウとショウケラの周囲を冷気が包み、凍り付かせた。
この技は一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させるというもので、確実に相手は死ぬ(魔化魍は除く)。
一瞬のうちにショウケラ達を中に封じ込めた氷柱が目の前に現れ、驚きを隠せない江川。
動けなくなったショウケラに、それぞれの音撃武器を構えた五人が攻撃を仕掛けた。
鳴り響く清めの音。氷柱と共に爆発四散し果てるショウケラ。
126仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 18:08:33 ID:V4tABkHR0
「よし、これででかいのは仕留めた!」
「サンシチュウは人に寄生していない状態なら、通常の技でも倒せるわ」
「何だ、それならそうと早く言えよ」
そう文句を言うと、左手をサンシチュウに向けて掲げる殺鬼。
「俺は今機嫌が悪いんだ。大技を使わねえと気が治まらねえ!」
左掌に闇が凝縮されていく。
「我が左手に宿れ!鬼法術・冥王之像!」
放たれた重力の塊が、サンシチュウの入った氷柱を触れた瞬間圧縮し、粉々に粉砕し、塵一つ残さず消滅させた。一種の擬似ブラックホールとでも言おうか。
あまりの出来事に、大きく口を開けた無様な格好のまま殺鬼を凝視する江川。
「どうだおっさん、ぎゃふんと……言いや……がれ……」
途端に意識を失い、全身の変身を解除して雪の上に倒れ込むサッキ。
「馬鹿が。自分の残り体力を計算せず大技を使うからこうなるのだ」
「そこまでよ、唐鋤鬼。これ以上うちの者の悪口は言わせないわ。幾ら本当の事でもね」
滅鬼が唐鋤鬼にそう告げる中、小粋鬼がサッキの傍に駆け寄って肩を担いだ。
「ところで、教祖様はどちらかしら?」
そこには、既に江川の姿は無かった。

雪山を必死で逃げ続ける江川。最早教祖としての威厳は欠片も無かった。
「何処へ行くのかしら?」
突然滅鬼の声が響いた。驚いて周囲を見回す江川。だが彼女の姿は何処にも見当たらない。
と、突然江川の目の前に滅鬼が現れた。さっきまで影も形も無かったのに、文字通り突然現れたのである。
鬼法術・迷彩。光の屈折を利用して姿を消すという滅鬼の得意技だ。これを使って江川の正面に回りこんだのである。
「うわわあ!」
さっきまでの尊大な態度は何処へやら、腰を抜かして無様に這い蹲る江川の傍に霊鬼が歩み寄った。
「く、来るな化け物共!わ、私の理想が、夢が……」
「あんな化け物を使役していた者に言われたくはない」
そう言うと江川の右腕から御鬼輪を奪い取る霊鬼。そして江川の耳元でこう囁いた。
「あなたはやり過ぎた。罰としてこれから私が愉しい呪いを掛けてあげよう……」
「う……うわあああああ!」
りん、と鈴の音が鳴り響いた。
127仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 18:10:30 ID:V4tABkHR0
半ば廃人のようになった江川の身柄をカラスキ、カゲキに預けると、メッキ達は弥子と黒田を連れて近くの温泉へと向かった。とりあえず疲れを癒したかったのだ。
露天風呂からは、遠くに聳える雪山が一望出来た。今日の天気が晴れで良かったとつくづく思うコイキ。一時気を失っていたサッキも今は回復して湯に浸かっている。
風呂は命の洗濯とはよく言ったものだ。……心の洗濯だっけ?まあどっちでもいいや。
「……俺も仁義の世界に生きる人間だ。あんた達が何なのか、あの怪物は何なのか、これ以上詮索はしない」
「そうしてくれると助かる」
黒田の対面で湯に浸かっているレイキがそう告げる。
「だが一つだけ教えてくれ。あのイカレた教祖は、あの怪物を使って何をしようとしていたんだ?」
何と説明したものか悩むレイキをよそに、サッキがこう答えた。
「知らねえな。あんな奴の考えていた事なんて知りたくもねえ……」
「……そうだな。兄ちゃん、あんたの言う通りだ。俺も気にするのはよそう」
少し熱く感じてきたので、近くの雪を湯の中に入れる。
「ところで黒田さん、報酬ははずんでくれよな。あの山での後始末も、あんたの組へのフォローも、事後処理は何もかもうちがやるんだからさ」
コイキに言われ、黒田が笑いながら答える。
「当然さ。命を拾ってもらったんだ。言い値で払うよ」
「お、やったね。こりゃ俺達へのボーナスも見込めるかな?」
「メッキさんが言ってたろ?あんたは事務所を通さず勝手に仕事をしてたんだから減給だって」
意地悪そうにサッキが告げる。
「やれやれ……宵越しの金すら持てないとは、こいつは厳しいねぇ」
わざと芝居がかった言い方をするコイキに、笑いが起こる。一方、壁一枚隔てたすぐ隣にある女湯では。
128仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 18:12:03 ID:V4tABkHR0
「向こう、何だか楽しそうですね」
そう呟く弥子は、ひょっとしたら帰りはコイキと一緒なのではないかと考え、一人で喜んでいた。これであの嫌な空気ともお別れだ。
だが、そんな弥子の心中を見透かしたかのようにメッキが告げる。
「コイキはあの黒田と言う男と一緒に先に帰るみたいね。山での戦いで死んだ運転手の代わりに車を運転していくそうよ」
「あ、そうですか……」
その一言に、ちょっとした欝になる弥子。ただでさえ、スタイルの良いメッキと入浴しているため、そうスタイルの良い方じゃない自分の体にコンプレックスを抱いてしまっている。
と言うか、北陸支部で働くようになってメッキと二人きりで風呂に入るなんて初めての事だった。
「……ところで、思ったより早く解決出来たんですけど、宿の方はどうします?」
民宿にはもう一泊する予定になっていた。
「私としては報告のため早く戻りたいんだけど、もう一日ゆっくりしていっても良いんじゃないかと私の魂が囁いてるわ……」
メッキの口から意外な言葉が出てきた。驚く弥子を尻目に、湯船から上がるメッキ。
「先に行くわ。あなたはもう少し浸かって日頃の疲れを癒してきなさい」
冷たい人物かと思いきや、意外と優しい。誰かさんとは大違いだ。そんな事を考えながら弥子はメッキを見送るのだった。
129仮面ライダー高鬼番外編「命の洗濯」:2007/02/24(土) 18:13:46 ID:V4tABkHR0
「儂が鬼小島商事社長、鬼小島平八である!」
帰ってきた弥子達を、いつもの支部長の名乗りが迎える。これを聞く事で、今回の任務も無事に終わり、帰ってくる事が出来たんだなぁと実感する弥子。
だが、弥子を待っていたのはもう一人居た。彼女がサポーターを勤めるドクハキだ。
「あ……ド、ドクハキさん」
どうやら彼も表の仕事を終えて事務所に戻ってきたところらしい。勝手にメッキ達と一緒に出撃した事を怒っているのだろうか。
「あ、あのですね、私……」
「お帰りなさいレイキさん達。実は私、表の仕事が終わった後、依頼主の御厚意で和倉温泉の方に一泊してきましてね」
「わ、和倉温泉?」
和倉温泉とは、石川県にある高級温泉街の事だ。
「これ、御土産です。温泉卵」
そう言ってパックに入った温泉卵をレイキ達に手渡ししていくドクハキ。
「あ、あのドクハキさん。私には……?」
「勿論用意していますよ。温泉卵よりよっぽど良いものをね。目を閉じてあーんしなさい」
言われるがままに目を閉じて、口を大きく開ける弥子。
「もう少し上を向いて。……そうそう、その位置です。良いですか、そのままですよ」
そう言うとドクハキは大きなポリタンクを取り出した。何かが大量に入っている。そして、中に入った液体を弥子の口の中に大量に注ぎ込んだ。
「!ぐぼっ!がぼげぼ……!」
「ふはははは!どうですか、温泉のお湯の味は!街中に薄めた源泉があって、飲めるようになっているんですよ!それとここにあったチョコ貰いました。どうせあなたのでしょ?」
「あ〜、それって一回に飲む量が決められてなかったか?」
またしてもテンションの低い状態に戻ったサッキが突っ込みを入れる。
「あとそれ、昔飲んだ事があるけど凄く不味かった。弥子は凄いな、浴びるように飲んでるじゃねえか……」
「がぼうっ(違う)!がぶべべぇ(助けて)!」
室内に響き渡るドクハキの悪魔のような笑い声。そろそろ止めようと支部長が席を立つ。
(全く……。まあこれが北陸支部の色だから仕方がないな)
支部長に助け出され、人工呼吸を受ける弥子を見ながらメッキはそう思うのであった。 了
130名無しより愛をこめて:2007/02/25(日) 23:54:49 ID:A+WB616c0
ここでこの話題振るのもアレだけど他に書けるところがないから・・・
中四国さん、SS書くのやめちゃったのかなあ
ちょくちょくサイト見てるんだけど全然更新されないんだよなあ
131名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 01:40:00 ID:qUvVvUhT0
>>130
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1169736066/l50
こっちならテンプレにURL張ってあるよ。
ていうかこれ以上その話題続けたら怒るよ。
132名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 02:44:54 ID:UhVhqqfJ0
>>130
こっから出ていったのは正解だったと思うし、戻ってきてくれるなとも思うが
SSじたいはふつーに楽しみだから困るよな・・・
133名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 03:29:48 ID:oS7jQ8Z/O
更新は待ちどおしいのは事実だがあえてここで書くことでもねえだろが
その話を出すことで荒れるのがわかんねえか池沼どもが
134名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 11:46:08 ID:Obt0mp8W0
まあ、空気嫁。だよね。
創作の内容以前に、一連の騒ぎでの雪風の人間性にはうんざり。
名前見るのももう嫌って人間の気持ちも判って欲しいわ。
本人がもうここと関わり絶つって言ってるし、
ここで語りかけるのもどうかと思うけど。
135名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 12:46:54 ID:Rk2Zjf4o0
はいはいこの話題は終了。

裁鬼SSを最初から読み直すのが最近の楽しみになっている。
ここの原点だけに何回読んでも面白いわ。
136名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 16:17:03 ID:UhVhqqfJ0
>>134
なんだよーそれならNG指定しときゃいいじゃんかよー
語るのは自由だろボケ
137名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 17:58:51 ID:Obt0mp8W0
貴様にボケ呼ばわりされる筋合いねぇよ。
出ていった奴の事でグジグジ言ってるのはスレ違いだ。
138名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 20:56:54 ID:S7035ipJO
>>136
語るのは自由かも知れないが、この議論でスレ消費し
他のSS読めなかったことを忘れちゃいけない!
139名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 21:30:59 ID:f8mqpiOr0
この辺で見習い投下
140名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 22:19:11 ID:UhVhqqfJ0
>>138
そんなもん中四国の話題を出すたびに過剰反応するやつが悪いんとちゃうの
嫌いなのはお前の自由だからいちいち噛み付くなって話だよ
141名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 22:57:38 ID:S7035ipJO
過剰反応するのが悪いに決まってるが読みたきゃヤシのサイトに行けば済む。
まあ俺も釣られてる感があるけどな
142名無しより愛をこめて:2007/02/26(月) 23:58:26 ID:+Ygmt9fG0
>>135
そんな簡単に、切り替えるのはムリみたいだけどね。

まとめサイト行って自分も裁鬼SS見てきた。最初の頃は、結構ほのぼのしてたのね。
あの頃は三点リーダ(…)使ってたけど、今はすっかり二点リーダ(‥)使いになってるわね。
143名無しより愛をこめて:2007/02/27(火) 00:10:12 ID:LPcoQnka0
>>141
だからヤシのサイトの話をここでしちゃいけない法はねえだろって話なんだよ

いい加減やめるかこの話・・・
144名無しより愛をこめて:2007/02/27(火) 02:11:34 ID:odlv+Mew0
>143
じゃあやめれ。
いちいち蒸し返して雰囲気悪くして面白いか?
ほんとにうざいよ。
145名無しより愛をこめて:2007/02/27(火) 09:10:46 ID:RmDD7KonO
蒸し返してんのはどっちだよ
「サイトの更新楽しみだね」って話題に対して「顔も見たくない」なんて返しをして無駄に荒らしてんのはそっちだ
嫌いな奴は嫌い、好きな奴は好きでいいじゃねえか
嫌な話題をスルーもできんのか
146見習いメインストーリー:2007/02/27(火) 14:47:31 ID:7WeUMWWZ0
前回は>>87から

四十一之巻「誘(いざな)う闇」

 純友はトドロキの病室の前まで引き返して、そっと戸を開けて中の様子を窺った。
それについてきた大洋が、小声で言った。
「何やってんだよ」
 純友は口の前に人差し指を立てて大洋を制した。純友の目には、ベッドで安らかな寝息をたてて
眠るトドロキの体中に、青白い光がゆっくりと流れ込んでいるように見えた。その光は──椅子に
座りトドロキを見守る、ザンキの全身から発されていた。
「トドロキさんの負担になるから、あんまし長いこと居ないようにしろって『たちばな』で言われたろ」
 大洋の腕力にひきずられるようにして、ひ弱な純友の体はいともたやすく病室の前から引き離されて
いった。
「──青白い光?」
 病院の外の駐車場で、純友は自分の見たザンキとトドロキの様子について大洋に説明したが、
それは純友だけに見えていたものだった。
「そんなもん、おれには見えなかったぜ」
 その時、純友の懐にある消炭鴉のディスクが震動し、純友は「っわ!」と悲鳴を上げた。
「わかった。ディスクが震えてんだろう? なんかもうオマエのリアクションだけでわかるように
なってきた」
 大洋は鋭い目で周囲を見回し言った。──病院の巨大な建物の陰に、和装の男女「凄・橘」が
忽然と姿を現していた。着流しの男と、着物の女が悠然と佇んでこちらを見ていた。
「今日は、あいつらの方からやって来たって感じだな」
 そう言うと、大洋は純友を従えて和装の男女に向かって歩き出した。
 純友たちが建物の陰まで来ると、男女は大洋に向けて言った。
『今日は、我らの血族に用があってやってきた。お前には用はないぞ、下がってろ』
147見習いメインストーリー:2007/02/27(火) 14:49:00 ID:7WeUMWWZ0
『また、我らの邪気にあてられて倒れることになりますよ?』
「ふざけんな! おまえらの前でコイツを一人にできるか」
 大洋は男女を凶悪に睨みつけて言った。純友はその隣で脚をがくがくさせていた。
『そう怖がるな。お前もこちら側に属する者だ』
 男は純友の震える脚を見て、笑って言った。
『来ますか? こちら側に』
 女は艶然と、ぞっとするような微笑みを見せた。
『──先月、クグツの姿に変身したことで、お前にもそれなりに影響が出ているようだな。
あの鬼から、青白い光が出ているのが見えたんだろう?』
 問われると、純友は無言で息を詰めて男を見返し、おずおずと尋ねた。
「ザンキさんの体から出た光が、トドロキさんに流れ込んでいたけど──あ、あれは、一体何を?」
『おそらく、我々の側で言うところの、分活(ぶんかつ)の術だ。傷付いた仲間に自分の生命力を分け
与えているんだろう。たしか鬼どもは、そういう──分活の術とか、体帰(ていき)の術といった、
命を左右する呪術は封印していたと思っていたがな』
『あなたにも、使えるはずです。我らの血族なのですから』
 女が純友に言った。
『こちら側に来れば、もっと詳しく教えて差し上げますよ』
「け、け、け、結構です」
 純友は丁重に断った。
『で、今日の本題だが』
 男は、複数の計測器状の器具がついた金色の杖を出して言った。
『これをお前に渡しに来た』
148見習いメインストーリー:2007/02/27(火) 14:50:46 ID:7WeUMWWZ0
「え……?」
「バカっ、絶対受け取んな純友」
 大洋が純友を小突いて言った。
「こいつらは、多美ちゃんを殺そうとしているヤツらなんだぞ」
『あの、出来損ないのクグツのことか』
 男は小馬鹿にしたように笑って言った。
『もうあんな不良品はいらん。事態はもう、あんなゴミ屑に構っていられないところまで来ている』
 その時──
「──黙れぇッ!!」
 純友が叫んだ。
「……『出来損ない』?……『不良品』?」
 怒りに震えた声で純友は言った。足の震えは、いつの間にか止まっていた。
「橘さんを……人の命を……一体なんだと思っているんだああぁッ!!」
 大洋は、その純友の剣幕を、あっけに取られて見ていた。ほぼ一年、共に猛士の見習いとして研修
を受けてきたが、ここまで大きな声を出したことは──大洋が覚えている限り、一度しかなかった。
(──大洋ッ!!)
 多美が行方不明となった記事を貼った、あの「全国失踪者リストファイル」を見て大洋を呼んだ、
あの時以来だった。
「行こう、大洋」
 彼らに背を向けて、純友は歩き出した。大洋もその後を追って歩き出した。
 不気味に笑いながらその純友たちを見送る和装の男の横顔を、和装の女は無言で見ていた。
149見習いメインストーリー:2007/02/27(火) 14:52:21 ID:7WeUMWWZ0
 それから間もなくして、再び鬼になることは不可能、と言われていたトドロキが奇跡の復活を遂げた。
 猛士の面々にしてみれば、それは「奇跡」だったが、純友と大洋だけは知っていた。
あの日、「凄・橘」が言っていた「分活の術」、それがトドロキを鬼として復活させたのだと。
 そして──時を同じくして、ザンキが戦死した。
 都内の葬儀場でザンキの弔いが行われ、猛士関係者も喪服で式に参列した。
 純友、大洋、明日夢、京介、あきらも、城南高校の制服姿でそれに出席した。
 焼香が終わると大洋は、式場の外で黒いスーツを着て立っていたダンキを見つけて、声をかけた。
その隣には、純友たちがかつて関東の鬼の履歴ファイルで見たことのある、ショウキの姿もあった。
大洋が頭を下げると、二人の鬼は大洋に向けてそれぞれ独特のポーズを取って挨拶をした。
「ダンキさん、おれ──その、ダンキさんのあの日の言葉、思い出しました」
(俺たちが、何の犠牲も払わずにこれまでやって来れたと思うのか)
(そしてこれから先、何の危険も無いとでも思っているのか)
 殴り飛ばされた痛みと共にあの日の言葉が思い出され、今それが身にしみていた。
「こういうことなんスね。……鬼であるってことは」
「大洋」
 ダンキは大洋に言った。
「猛士であるってことは、こんなこともすぐそばで起きるってことなんだぜ。そして鬼になれば──
自分自身がそうなる可能性もグンと上がる。そうなったら、親も兄弟もダチも泣くぜ。特に、『銀』
見習いのあいつは……」
 大洋は、遠くで明日夢たちと話している純友を振り返った。
「まあ、結論を出すのはお前自身だ。よく考えな」
 最後の月に尊い犠牲を払い、猛士関東支部のその年は暮れていった。

四十一之巻「誘う闇」了
150見習いメインストーリー:2007/02/27(火) 14:53:49 ID:7WeUMWWZ0
次回予告

「究極の選民思想」
「あの、その……今日は、お一人ですか。あ、あ、あ、あの杖なら、いりません」
『あの白クグツについて、ひとつ教えに来ました』
「いつだ! それはいつだ!!」

見習いメインストーリー 四十二之巻「清める碑(いしぶみ)」
151名無しより愛をこめて:2007/02/27(火) 20:49:31 ID:38GTP1h50
現時点じゃ、件の話題はNGってことだろ。
暗黙のルールってヤツだよ。
152名無しより愛をこめて:2007/02/27(火) 20:52:19 ID:LPcoQnka0
>>151
NGになる理由が無い
嫌な奴がスルーしろって話
153名無しより愛をこめて:2007/02/27(火) 22:05:30 ID:0Z1l9ia2O
NG理由としてスレ容量や投下し辛い雰囲気になるわな。
見習いさんの様に負けずに投下してくれる作家さんばかりじゃないから。
154名無しより愛をこめて:2007/02/27(火) 22:20:50 ID:tWkfNURj0
だとすれば、十分NGになり得るな。
155名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 00:02:49 ID:TAvfiE850
こちらは、オレ響鬼、こうであって欲しかった響鬼を書いて投稿してもいいところなんでしょうか?
設定も自分流で変えて、キャラの性格や言葉使いなんかもちょっと変えて。
156名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 00:34:09 ID:nSo3jWMa0
投下するのは自由かと・・・。
157名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 01:39:28 ID:VdVZBhmvO
自分流でいけ!
158155:2007/02/28(水) 06:51:43 ID:UwYyqZci0
では近日投稿か、ブログにでも書いて貼ります。
159名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 08:15:38 ID:7oZKUCSf0
>>153-154
どんだけ自己中なんだよw
苛立ちを通り越してむしろ笑っちまったよ
雑談で容量食っちゃ駄目って理由がわかんねえし、雰囲気が悪くなるのはお前らが噛み付くからだっつーの

「中四国サイト最近更新されないねえ」
「俺もじつは楽しみにしてるんだけどなー」

この会話の一体どこが雰囲気を悪くするのか教えてもらおうじゃないかw

中四国嫌いの奴はお前ら以外にもいっぱいいるだろうけど皆スルーしてんだぜ?
お前らもいい加減スルーくらい覚えろよw
160名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 10:20:52 ID:U5ZwdVMBO
>>159
だったらお前もスルーしろや!
自分で出来てないことを、他人に言うなっての!
161名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 12:07:50 ID:FNKc1ta8O
自己中かも知れないな。
この話題が沈静化したからと戻ってくれた裁鬼さんや
アンチ自演を忘れてくれた皇城さんの作品読みたいだけだがな!
ヤシのは行けば読めるじゃねえか?
それかリンク外された本人の腹いせか?
162名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 12:35:54 ID:0S1S62AH0
>>159
過去に中四国に気分を害されたからその名前はもう見たくない、
思い出したくないと思う人間もいる。実際、奴に関する議論で無駄にスレを消費した。
だから雰囲気は悪くなるし、今奴の話題を出せばまた議論が起こりかねない。
もし今回も容量食ってしまったら、他の作家にとっても投稿し辛い状態になりかねない。
そんなことも分からずにスルーしろとか言ってんのか?
163名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 13:05:44 ID:SsZL7yToO
>>162
ふざけてんなよ
こっちはお前みたいな奴をこそもう見たくないんだよ
普通に語らせてくれよ
164名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 15:04:22 ID:FNKc1ta8O
中四国を語る事で来なくなった作者さんが居る。
彼達に気持ち良く投下して欲しいから
遠慮して下さい。
165名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 15:41:21 ID:7oZKUCSf0
>>164
中四国の話をすることと作者が来なくなることに何の因果関係も無いだろw
来ようが来るまいが作者の勝手
つーかいい加減黙ってくれないかな?
166名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 15:44:47 ID:FNKc1ta8O
過去ログぐらい読んでくれ
167名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 15:58:34 ID:FNKc1ta8O
てか雪風本人がこっちには構うな!縁を切ってくれって言った筈。
どうしても話したいなら中四国スレでも建てたら?
168名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 16:08:05 ID:7oZKUCSf0
>>167
雪風を構ってるんじゃねーよ
中四国SSやサイトについてここで会話するのは自然なことだろw

てかお前もういいよ
一生スルーしててくれ
169名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 16:27:47 ID:FNKc1ta8O
お前に俺が目障りなように
俺にはお前が目障りなだけww
170名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 16:39:04 ID:ji9RTYn70
中四国SSや雪風日和と、このスレは形式的に関わりは無くなったはず。
雪風の話題出したら、一触即発でスレが荒れることくらい予測がつくだろ。
このスレの不特定多数のヤツは、雪風に関する不毛な言い争いで無駄にスレを消費したり、
挙句は厭な空気になって、二次災害的な事態に陥るのが嫌なんだよ。
171名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 16:41:37 ID:ybRH9zFtO
で、どのレスが雪風邪本人なの?
172名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 16:44:43 ID:SsZL7yToO
>>170
まとめにも用語wikiにもまだあるが…
だいたい一触即発で荒らしてんのはそっちだろうが
話すこと自体は何も問題じゃないの、お前らが自粛さえすればいいだけ
173名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 17:09:50 ID:FNKc1ta8O
朝から呼応して荒らしてる俺が言うのも何だが、
もう既に中四国の文字だけで嫌悪感示すヤシも居る。
NG指定すら腹立たしいんだなこれが
174名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 18:37:42 ID:ji9RTYn70
>>172
お前一人が自重して黙ってれば、丸く収まる事なんだよ。
てか、一触即発の意味すらよく理解できていないようだね。
175名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 18:46:07 ID:7oZKUCSf0
>>174
最初に喧嘩売るのはいつもそっちだけどなw

「中四国がどうたらこうたら」 ← @ここまでは普通の会話
「オイ!中四国の話なんかしてんじゃねーよ!」 ← A喧嘩売る
「なんだとテメー! 自由だろうがよ!」 ←B買う

Aが無ければBも起こらない
当たり前の話w
176名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 18:58:08 ID:FNKc1ta8O
中四国の話しを嫌がる者が居るのを承知で火種まくヤシが何言うやら。
177名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 19:10:27 ID:U/c5fQqqO
雪風の話題が出る

雪風は人格はアレでもSS自体は(このスレの中では)高レベルな方

もしも雪風が帰ってくるようなことになれば自作の存在が霞み、投下する作者が少数であるが故に与えられていたお情けの賞賛が獲られなくなる

自身の居場所が無くなる事を恐れ、空気の読めない他の作者がスレを荒らす

……こうじゃないのか?
正直雪風自体はもうこのスレ自体見てないだろうに、住人同士で何を争ってるんだろうな。
178名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 19:11:47 ID:aqbdCtTJ0
本人乙
179名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 19:23:58 ID:7oZKUCSf0
>>176
嫌なものはスルーするのが2の常識でありマナーでありモラルだろ何言ってんだ
そのためにNGって機能があるんだろうがw
どう考えてもスルーできずに噛み付く奴が悪い

>>177
ありえねえ
どう見ても今暴れてんのは雪風騒動をいまだに引きずってる馬鹿どもだろw
大体作者がそんなことする意味もねーしな
雪風が居た頃だってべつに他の作品が霞んだりしてなかっただろうが
180名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 19:45:34 ID:X5KH3+Zs0
>>どう見ても今暴れてんのは雪風騒動をいまだに引きずってる馬鹿どもだろw

暴れてんのはお前。雪風の話がここでは荒れる原因になるのは過去スレからも
明らか。なのにお前が全然理解出来てないだけ。
181名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 20:10:10 ID:7oZKUCSf0
中四国のことを語ろうとしただけで暴れ扱いなのかよw
ちげーよ。普通に語ってるだけなのにそれが中四国の話題だってだけで噛み付いてくる馬鹿が悪いんだろが
どう考えても荒らしはそいつら
182名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 20:16:42 ID:ji9RTYn70
>>181
じゃあ、その荒らしを活性化させたのは誰だよ。空気読もうぜ。
183名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 20:34:02 ID:7oZKUCSf0
>>182
ばっかじゃねーの?
中四国の話をすること自体はそもそも何も悪かねーんだよ
かつてここで連載されてた作品の話をここでして一体何が悪いw
荒らしが勝手に活性化してるだけだろ
痴漢を防ぐために女性は出歩くなっていうのかよw
184名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 20:43:51 ID:ji9RTYn70
こんなんじゃ話にさえならん。
みんな無視したほうがスレのためだぜ。
185裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/28(水) 20:46:34 ID:RUjs538NO
――瞬過終闘 「八 安達明日夢 《壊される日常(へいわ)》」

マンションのドアノブに手を掛けた時から、安達明日夢はこれから先数分の未来を予測できた。
「お帰りなさい!」
クラッカーの破裂音、宙に浮いてふわりと落ちる紙の筋、妻の笑顔。テーブルには豪華な夕食とシャンパン。
「ただいま!」
変わらない初々しい笑顔で抱き合う二人。明日夢の手を離れて床に倒れる鞄。明日夢は予測の通り、妻を抱き抱えてくるりと回った。
二人が家族となり、初めての結婚記念日。昨年は多くの友人や『知人』に祝福されたが、今夜は二人きりで祝う、大切な一時。急患もなく、明日夢は定時に帰宅できた。
明日夢は今、自分達の幸せと共に、他人の生命を守っている。
さして大きくない市立病院だが、先輩達に可愛がられ、政権戦争にも巻き込まれる事なく、自身の技術を磨ける環境を有り難く思っていた。
「‥‥一年、だね」
照れ合いながらグラスを交わす明日夢と、妻の安達―― 旧姓・持田、ひとみ。
「うん‥‥ 一年、だね」
寄り添ってから。二人で暮らし始めてから。明日夢の母が笑いながら年寄りは邪魔だと屋久島に帰ってから‥‥
この365日に起きた幾つもの些細だが確かな出来事が、気泡となりグラスの内で水面に浮かんで消えては水底から生まれ続ける。
「義母さんから、『おめでとう』って電話が有ったよ」
「うん。後で掛けるよ。」

この辺りも明日夢の予測通りだった。あとは食後にビールを1缶飲んでニュースを見ながら、その後は風呂に入り‥‥

【報道特別番組】

どのチャンネルも、同じ内容だった。この国の首相が冷や汗をハンカチで拭きながら、主要な放送局、新聞社、ネット会社を呼べるだけ呼び、異例の会見を開いていた。
186裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/28(水) 20:48:51 ID:RUjs538NO
「――そもそも『鬼』、というモノは‥‥」
『鬼』‥‥?
それは10年以上前。
まだ何も知らなかった明日夢が屋久島の樹海で出逢った『鬼』。
紫掛かった黒真珠の様な体で二本角の顔から火を吹いた、猛々しく雄々しい、あの『鬼』の事に他ならなかった。
『鬼』、『魔化魍』、『音撃』、『太鼓』、『管』、『弦』、『童子・姫』、『歩』、『ディスクアニマル』、『飛車』、『クグツ』、『謎の男女』、『吉野』、そして『猛士』‥‥
明日夢が今日一日繰り返し考えていた『幸せ』が、左手のビールが床に落ちると同時に、突然、崩れ落ちた。

運転手を起こし洋館を出た日高博昭は、車内のテレビに映る総理の顔を見ると数人に電話を掛けたが、いずれも二三言交わしただけに終わった。
「これから何が起こるか、解るか‥‥ クジキ?」
後部座席、日高の隣で組んだ手を枕に目を瞑っていた若いライダースーツの男は、薄く開けた瞳に流れ去っていく夜景を映しながら答えた。
「‥‥関係ないな。アンタが俺達をどう使おうが、『鬼』を殺せるのならそれだけで良い‥‥」
助手席に乗っていたハイキが窓を半分降ろすと、吹き込んできた風が彼女の長い茶髪を泳がせた。
「な〜にがおっきるかな〜♪ な〜にがおっきるかな〜♪」
歌うリズムに合わせて首を左右に傾ける仕草は、幼児の様だった。だがその瞳は妖しく輝き、口元や谷間を強調する上着に覆われた肢体は、恐ろしく艶やかに見える。
日高が乗る車の前には、2,400tの大型バイクに乗るサッキが、黒いヘルメットの中で全ての放送局、ニュースページを瞬時に統括し、リアルタイムでデータとして記憶・更新し続けていた。
「20:56‥‥ 研究所・到着」
二台は東京湾上に開発された政府の特別区域に入り、一つの門を過ぎた。
海上に建設が決まり、施工から早2年。その施設の『外観』はほぼ完成していたが、内部の完成には更に後1年を要する‥‥ と、『発表』された研究所。
日高が内部に入りエレベーターの最下層ボタンを2回押すと、正方形をした棺桶の扉の先には誰にも知られてはならない光景が広がった。
187裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/28(水) 20:50:22 ID:RUjs538NO
幾度も重ねられた人体実験の残骸とその用具。細菌の感染を防ぐ為白いラバーとガスマスクで顔を隠す研究員。そして壁に掛けられているのは、様々な『音撃』武器‥‥
『随分遅かったな』
素顔を殺していないその男は、日高にではなくクジキ達に笑顔を見せた。
「さあ皆、ベッドへ寝ろ。『時間』だ」
クジキ達を促し、小暮耕之助は、赤い液体の入った試験管を何本も取り出した。

午後9時。呆然とテレビを観続けていた明日夢に、ひとみが受話器を差し出した。
「今晩は‥‥ テレビは観たかな? 明日夢君」
「‥‥イブキ、さん‥‥‥‥」
「‥‥今回の事は僕達もまだ、把握しきれてないんだ‥‥ だけど、もう『鬼』が何人も、殺された」
明日夢の脳裏に浮かぶ鬼達の笑顔。誰が、何の為に殺されたのか‥‥
「今から、たちばなに来てくれるかな。 さっきデンキと、イチゲキさんが到着したんだ‥‥」
「はい‥‥ あの」
「うん? 何かな」
「‥‥ひとみも、連れていっていいですか?」
「うん。今回の事は、おやっさんの話じゃ『鬼』を知ってる人間にも影響してきそうだから」
「判りました。すぐ伺います」
明日夢はひとみに事情を話すと、母が勤めていたタクシー会社に車の手配を済ませて外に出た。
霧雨を伝う街の灯りが夜空を照らして明るい。耐えずクラクションが鳴り響く道路を見下ろすと、遠くの大型モニターがニュースを映し続けていた。
「‥‥ヒビキさん‥‥‥‥」
ヒビキが、明日夢達の前から姿を消して、1年が過ぎた――

続く
188名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 20:51:03 ID:FNKc1ta8O
スマン、ヤシのスルーすればとかの発言にカチンときてる!
荒らしまでしてでもヤシを排除したい。
189名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 20:54:37 ID:nSo3jWMa0
気持ちはわかるが、やめておけ。
挑発してスレ荒らしたいだけのヤシに惑わされるこたぁない。
無駄なスレ消費で投下が止まるのをオレは危惧する。
190名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 20:56:54 ID:ji9RTYn70
ID:7oZKUCSf0は、荒らしなんだなと>>189でやっと理解した
191名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 20:58:20 ID:FNKc1ta8O
>>189
判った、退くよ!
裁鬼作者さん流れ乱してゴメン。
192名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 21:15:50 ID:7oZKUCSf0
ようやくスルーする気になったか
それじゃ今後も嫌な話題にいちいち噛み付かずスルーし続けろよ
193名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 21:35:08 ID:ji9RTYn70
なぁ・・・何ヶ月か前に、DA短編作者ってのが冬に一本投下するとか言ってたけどさ。
どうなったんだ?作者の都合で投下は見合わせか?それとも忘れてる?もう春一番が吹いてるってのに・・・。
仮題がモロに季節冬だったから、今更投下されても雰囲気が楽しめんがな・・・。
194名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 22:08:33 ID:nSo3jWMa0
投下がないって事は、DA作者さんに何らかの事情があるって事だと思う。
まぁ、まったりと待とうや。読むときは心中冬設定で読むことにして。
195名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 22:50:03 ID:X5KH3+Zs0
さっきから見てるんだけどさ、一体何の理由で対立してるわけ?
一応理解できたのが、雪風ってやつがこのスレで嫌われてて、
一方その雪風の支持者がいるってことくらいなんだけど。
……これであってるよね?
雪風が何者なのかわからないんだけど。どんな奴なの?簡単に教えてくれたら
うれしい。
196名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 23:02:45 ID:nSo3jWMa0
>>195
スレの頭にある過去ログの2つ前ぐらいから読めば概ねわかる。
わからなければ、「雪風日和」でググれ。
その話するだけでまたスレ荒れ起こす確率が高いので、説明は勘弁してくれ。
197名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 23:11:15 ID:UwYyqZci0
読みたいような、関りたくないような。このまま場の空気を読まずに勝手に投稿してた方が楽だけど、至らない私は良かれと思って地雷踏んでしまい、一斉にここに上がってる雪風だ中四国だと同じ扱いにされるかもしれない。
と明日夢くんみたいに考えてしまいますわ。
198名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 23:18:27 ID:ji9RTYn70
知らないほうがいいこともあるよ、少年。(〆∀<)
199名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 23:18:53 ID:nSo3jWMa0
>>197
案ずるな。彼の問題はSS如何の問題ではない。
自分流で行け!
200180 :2007/02/28(水) 23:44:11 ID:X5KH3+Zs0
スマン、195の投稿は俺の弟が勝手に書き込んだものだ。
どうやらそこらの馴れ合い的な掲示板と同じような感覚で書き込んだらしい。
変な質問で混乱させてスマン。
201名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 23:46:40 ID:7oZKUCSf0
自演失敗か?見苦しいな

おっと、スルースルーw
202180 :2007/02/28(水) 23:53:29 ID:X5KH3+Zs0
まあ、>>201のような荒らしはスルーの方向で。ここのスレがこれ以上荒らされるのは
ゴメンだしな。

裁鬼SS、切迫してきたな。小暮さん…。何で…?
203名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 23:57:17 ID:nSo3jWMa0
皇城SSはまだだろうか・・・
204名無しより愛をこめて:2007/02/28(水) 23:58:09 ID:SsZL7yToO
必死だな
弟とか何年前の言い訳だよ
まあこれで誰の目にもはっきりしたな
このスレにとって荒らしなのはお前
二度と発言するな
205名無しより愛をこめて:2007/03/01(木) 00:07:56 ID:2xkfsoIE0
>>204
はいはい、荒らしとしてせいぜいがんばってください。
お前ごときに発言を制限される筋合いは全くないので。
206名無しより愛をこめて:2007/03/01(木) 00:14:29 ID:SNkCODnu0
誰が荒らしとかどうでもいいよ・・・。
207名無しより愛をこめて:2007/03/01(木) 06:21:08 ID:pM8TN+eW0
kiuytrewq
208名無しより愛をこめて:2007/03/01(木) 10:42:32 ID:ajqvp1LIO
なんかこう、読めば読むほどに不安になるけどそれが楽しみな感じだ、瞬過終闘
高鬼は安定してるから安心して読める
鋭鬼はくしくも電王に同名キャラが出たハナが気になる
209名無しより愛をこめて:2007/03/01(木) 11:09:27 ID:fDVApHB10
>>208
そうだね。
高鬼ってもう2年ぐらい連載してんじゃないの?
単発モノだから伏線とかの楽しみは無いけど、サクッと読める感があるね。
ジャンプならこち亀的なポジションに近いかも(糞化する前の)
いや、モーニングのクッキングパパの方がポジションは近いか。
210名無しより愛をこめて:2007/03/01(木) 12:32:35 ID:BHHXCRc00
裁鬼SSも楽しいが高鬼もかなり好きだ。甲乙つけがたいって言うんかな?
そんな感じ。
211名無しより愛をこめて:2007/03/01(木) 14:19:33 ID:fDVApHB10
勝手な印象で申し訳ないんだけど、高鬼って良い意味で昭和の特撮の雰囲気があるんだよね。
毎回鬼が活躍して終わりって感じで、悪く云えばおもしろみは無いんだけど、なんか落ち着くんだよな。
裁鬼はその逆で平成の特撮って感じかな。ヒーローモノにしたいといったスタンスではなくて、
変身できる人たちが主人公なだけの話ってイメージ。もしかしたら作者は龍騎とか555の方が好きなのかも。
両作者も響鬼は好きなんだろうけど、もっと好きな作品があるのかもね。
そういった意味では見習いさんのSSは一番、響鬼らしい作品なんだと思う。
長文スマン
212見習いメインストーリー:2007/03/02(金) 23:26:27 ID:Gr+10TT60
前回は>>146から

四十二之巻「清める碑(いしぶみ)」

 年が変わり、新年一月。純友と大洋の受ける猛士の研修も、残すところあとひと月となり、
その最後のテーマは──
 みどりは、ホワイトボードに「凄・橘」と書き記した。
「前にもいちど話したけど、彼らこそが、クグツを操って彼らの好きなように魔化魍を生み出す、
自然界の法則・均衡を乱す存在よ」
 大洋と並び机に着く純友が、みどりに質問した。
「彼らは、何が目的なんですか?」
「う〜ん、それを一口で言うのはちょっと難しいんだけどね」
 と言いながらも、みどりの答えはいつも簡潔だった。
「究極の選民思想」
 ホワイトボードにも同じことを書いてみどりは言った。
「彼らは、彼らと同じ顔の存在をいくつも作りだしています。君たちが遭遇した『凄・橘』も、
同じ顔の彼らに作り出された存在かもしれないし──その作り出した彼らも、また誰かに作り
出された存在かもしれないし──まあようするに、彼らは彼らの血族だけでこの世に蔓延りたい、
彼ら以外は認めない──それが彼らの行動原理の一つなの」
 みどりは、「『凄・橘』に関する通報綴」と表紙にあるスクラップブックを取り出した。
「だから、同じ顔と同じ姿をしていても、実際は何組もの『彼ら』が存在するんだけど、
ここ近年の通報届けにある情報を総合すると、彼らは常に『彼らと似た存在を作り出し』、
また『彼ら以外の人間を排除するために様々な生物を作り出している』、こんなところかな」
「ぼくには──」
 純友が、視線を下に落としたまま言った。
「彼らは、命をオモチャにしているとしか思えません」
213見習いメインストーリー:2007/03/02(金) 23:28:01 ID:Gr+10TT60
 休憩を挟んだ後の今月の実技研修は、先月、先々月と同様、ノートパソコンを使用したものだった。
 純友と大洋が前にするディスプレイには「T・D・B」と表示されていた。
「『猛士データバンク』の略で『T・D・B』ね。主に魔化魍のデータをまとめたもので、魔化魍の特徴
とか、出現場所、攻略方法なんかがまとめられています。──じゃ、私の言うとおりに操作してみて」
 ホワイトボードに書かれた、魔化魍の特徴と思われる幾つかのキーワードを入れていき「検索」と
書かれたボタンを押すと、純友の前のディスプレイには、何件かの魔化魍のデータの候補が出た。
一方、大洋の前にあるディスプレイには、「清めの碑(いしぶみ)」と書かれたデータが一件だけ出ていた。
「もうおれ、この手の研修イヤ。魔化魍のデータ探してんのに、出てきたデータが魔化魍じゃねえし」
 肩を落として大洋は言った。
 みどりが大洋の前のパソコンのディスプレイを覗き込んで言った。
「へぇ〜、最新情報だね〜。ちょっと見せて」
 みどりがパソコンを操作してそのデータを選択すると、地面に埋まった直径四、五メートルはある、
円い石盤の画像が表示された。画像の他、所在地や表面の拡大図など、様々な情報が画面内に並んでいた。
碑には純友たちが見たことも無い文字が彫り込まれており、その意味は現在本部で解析中、とあった。

 その週の半ば。学校の昼休み、純友は、懐にあるディスクがいつもより静かに震動しているのを
感じて大洋に声をかけた。
「ようやく慣れたか。いつもだったら、授業中でも街中でも『っわ!』とか言ってたけど」
「うん、慣れもあると思うけど……なんだか今日は震動少な目な感じで……でも、妙だ。
今日はディスクが『上』に向かって跳ねている」
「上ぇ?」
 しばらく考えていた純友は立ち上がり、教室を出た。それを追ってきて大洋が言った。
214見習いメインストーリー:2007/03/02(金) 23:29:51 ID:Gr+10TT60
「なんだ? フケるんなら付き合うぜ」
「いや──上ってことは──」
 純友は階段を上がり、屋上への扉を開けた。──そこに、冬の昼の日差しを避けるように傘をさした、
着物姿の女、「橘」が待っていた。
「あの、その……今日は、お一人ですか。あ、あ、あ、あの杖なら、いりません」
『今日の用件はそのことではありません』
「なんだよ、こんなとこまでよぉ」
 文句を言う大洋を制して、純友はびくびくしながら訊いた。
「ど、ど、どのようなご用件でしょうか」
『あの白クグツについて、ひとつ教えに来ました。おまえたちは、あれを探しているのでしょう』
「……」
『去年の赤城山での件でわかったことですが、私たちが操作できなかったクグツには、魔化魍の群れる場所に
集る習性があるようです。あのときあそこに居たクグツたちは、別に示し合わせて集ったわけではありません。
魔化魍の瘴気にひかれて集まったクグツたちが、それぞれに魔化魍を産み出すことによって更に瘴気を増幅し、
遠くにいるクグツにまで影響をおよぼしたものと考えられます。従って──』
 息を詰め話を聞く純友たちに、女は言った。
『あの白クグツも、オロチを鎮める清めの儀に現れることが予想されます』
「オロチを鎮める──」
「──清めの儀……?」
 純友と大洋は、女の言葉を繰り返した。
『我々とても、オロチが続いてこの世が滅びてしまっては困ります。だから、立花勢地郎にオロチの
ことを教え、またそれを鎮める方法についても伝えたのです』
215見習いメインストーリー:2007/03/02(金) 23:31:15 ID:Gr+10TT60
「オロチを鎮める方法を、伝えただと──?」
 大洋は女の言葉を聞き咎めて言った。それについては、猛士関東支部でもまだ答えは見つかっていない
はずだった。
『清めの碑に、すべてが書かれています。じきに、鬼どももあの碑文を解読することと思いますが……
一人の鬼が、清めの碑を太鼓で叩き、大地を清めることによってオロチは治まります。その最中、多数の
魔化魍がその地に集結することになります。──すなわち、あなたたちの探す白クグツもそこに現れます』
「多美ちゃんが……そこに──」
 大洋は女に訊いた。
「いつだ! それはいつだ!!」
『それは、鬼たち次第です』
 そう言ったきり、女は黙った。無言で日傘を持ち佇む女に、純友は訊いた。
「あの……どうして、ぼくたちにそれを?」
 女は無表情に純友を見返し、やがて言った。
『先日、あなたは言いましたね。命をなんだと思っているのか、と』
 トドロキの見舞に行った病院の外で会ったあの日、確かに純友はそう叫んでいた。
(……『出来損ない』?……『不良品』?)
(橘さんを……人の命を……一体なんだと思っているんだああぁッ!!)
『あの人の言葉と私の言葉がすべて同じとは、思ってほしくなかった。私とて、命を蔑ろにしているわけ
ではありません。あの白クグツの命を救いたいのなら、そうしてください。──まだ、間に合いますから』
「……。『まだ』?」
 純友が聞き返すと、女はその意味を答えた。
『あの白クグツには、もうずいぶん餌を与えていない。このまま時が経てば、この世から消滅しますよ』

四十二之巻「清める碑(いしぶみ)」了
216見習いメインストーリー:2007/03/02(金) 23:33:07 ID:Gr+10TT60
次回予告

『どうしたの? 純友君。いつもと、なんだか声が違うよ』
「──この一年、本当にお世話になりました。ぼく、みどりさんの弟子になれて幸せでした」
「またそれを持って来たのか」
『おまえたちが勝つには、これが必要なはずだ』

見習いメインストーリー 四十三之巻「伝える感謝」
217まとめサイト(簡易版):2007/03/03(土) 00:17:06 ID:AryaxFYu0
まとめサイトさん。見ていらしたら、コメントください。

前スレが落ちるカナって時に、このままだと来たばかりのヒトが
前スレ見れないナって思って簡易版のまとめサイトを立ち上げて、アト、ケータイの
ヒトにも取りあえずSS読めるように、SS毎のページを作ってみましたケド、、、
最近、思うんデスよね。このまま今のスレのSS収録まで始めちゃってイイものかと。

まとめサイトさんが、何らかの理由があってまとめを続けられないのであれば、
ワタシが今後のまとめを続けてもイイカナって思うんですケド、
今は、まとめサイトさんがどんな状況にあるのか全然ワカリマセンので。
再開されるんであれば、ワタシががんばるコトもナイカナって思ってマス。
218名無しより愛をこめて:2007/03/03(土) 11:52:01 ID:zLUl2QIv0
たぶん、まとめの管理人はこのスレが立ってることすら知らないと思うぞ。
219仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:28:43 ID:Pfjg9xSV0
唐鋤星。
オリオン座の和名。おうし座の東にある冬の星座。中央に三つ星が並んでいるのが目印。大きく、明るい星が多く、特に有名な星座のうちの一つである。

1976年、長月八日。京都鞍馬山。
「共鳴させる!手伝え!」
「は、はい!」
前鬼と化した高鬼の声に、威吹鬼が「火焔太鼓」を貼り付ける。
「行くぞ!合わせろ!」
「はい!」
この日、永い眠りから目覚めた鞍馬山僧正坊は、古の力を借りた鬼達の前に敗れ去った。後に「鞍馬山の変」として記録される事件だ。
だが、一連の戦いで関西支部は大打撃を受け、結果中部支部と中国支部から補充要員が来る事になった。
急遽新たなシフトが編成され、兵庫県全域を中国支部の鬼が、滋賀県や和歌山県等を中部支部の鬼が担当し、本来の担当者達がその他の地域の穴埋めに行く事となった。
猛士総本部、研究室。
戦いの後、医務室の厄介になっていたコウキも復帰し、いつものように開発局長の南雲あかねと雑談を行っていた。
「中部支部からですか?」
「そう。もうすぐ着く筈なんだけど……」
この日、中部支部から三人の鬼が訪れる事になっていた。
「カラスキ……。大会議の席で何度か見掛けた事があります。そうか、あの人が……」
中部最強の太鼓使いであり、備中高松の名家の血を引き、鬼の中でも珍しい飛行能力を持つ。そういった理由で、他の支部の者にもその名は轟いている。
「他にも二人ほど連れてくるみたいよ」
と、机上の電話が鳴った。あかねが受話器を取り、二言三言話すと。
「どうやら関西支部の方に到着したみたいよ。荷物を置き次第、こちらに来るって」
そうコウキに告げた。
通話を終えると、一つ提案をするあかね。
「とりあえず表に出て待ってようか」
「そうですね」
その後暫くして、カラスキ以下三名が総本部前へとやって来た。
220仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:29:50 ID:Pfjg9xSV0
「ようこそ、猛士総本部へ。私が開発局長の南雲あかねです」
「開発局長自らのお出迎え、感謝します。私が中部支部所属の太鼓使い、カラスキです」
鉄面皮という表現がぴったりだろう。眉一つ動かさず挨拶を述べるカラスキ。
その後ろには、サングラスを掛けた女性と、緊張しているのかやけにそわそわしている若い男性が控えていた。
「紹介します。私の部下で、同じく太鼓使いのカゲキ。そしてこっちが弦使いのリュウキです」
「あ、は、初めまして!僕、リュウキと言います!」
「そんなに緊張する事はなかろう。もっと肩の力を抜きたまえ」
コウキにそう言われて若い男性――リュウキはますます体を硬くしてしまった。一方、サングラスの女性――カゲキは無言で会釈をするだけだった。
「このリュウキは鬼になってまだ日が浅い。ですが、彼の希望もあって敢えてこちらに連れてきました。どうかよろしくお願いします。……ほら」
「あっ!よろしくお願いします!」
カラスキに促され、仰々しく頭を下げるリュウキ。その姿を見て、あかねが微笑を見せる。
「ふふ、初々しいわね。よろしく、リュウキくん」
「よ、よろしくお願いしますっ!」
その後、室内へと移り今後についての打ち合わせを行った。
「……以上です。何か質問は?」
「いえ、ありません!」
リュウキが元気良く答える。
「う〜ん、さっきコウキくんも言ってたけど、もう少し力を抜いた方が良いよ」
「も、申し訳ありません!」
鉄面皮を崩し、やれやれといった表情を見せるカラスキ。どうやら向こうでも苦労をしているようだ。
「……一つよろしいでしょうか?」
今まで沈黙を守っていたカゲキが、初めて口を開いた。
「こちらに所属しているドキと言う鬼は今どちらに?」
「ドキなら確かにうちの支部の者だが……」
先日の僧正坊の件で、相方のセイキと一緒に病院送りになった旨を告げるコウキ。
「その病院の場所は?」
どうやら会いに行くつもりのようだ。コウキが病院まで送っていくと告げると、カゲキは静かに頭を下げ、感謝の意を述べた。
「お前の場合、あれぐらいで丁度良い。見習え」
きつい口調でリュウキにそう告げるカラスキ。「すいません、すいません」と頭を下げ続けるリュウキ。また個性的な者が増えたなとコウキは内心呟いた。
221仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:31:52 ID:Pfjg9xSV0
コウキとカゲキは、鞍馬山の件で負傷した関西支部の者が全員入院している病院を訪れていた。セイキとドキは仲良く同じ部屋に入院している。
「入るぞ」
そう告げて中に入るコウキ。暇そうに本を読んでいたセイキが、突然の来客に驚きの表情を見せる。
「コウキさん!?どうしたんですか?そっちの女性は?」
「ドキは……寝ているのか?」
挨拶もそこそこにドキの事を尋ねる。コウキの言う通り、ドキはベッドの上で目を閉じて横になっていた。
「寝てませんよ。ああ見えて起きてます。イメージトレーニングの最中らしいですよ」
相変わらずストイックな男だ。カゲキを連れてドキのベッドの傍に近寄る。
「ドキ、君に客だ」
「……久し振りだな、カゲキ」
そう呟くとドキが目を開けた。どうやらコウキ達の気配をとっくに感じ取っていたらしい。
「この間の大会議以来ね」
そう言いながらカゲキは、今までずっと掛けていたサングラスを外した。その両目は、片方が蒼色、もう片方が薄茶色の瞳をしていた。
「君は……虹彩異色症なのか」
虹彩異色症はオッドアイとも呼ばれ、両の瞳乃至片方の瞳の虹彩の色が異なる症状を指す。古くは邪眼として洋の東西を問わず忌み嫌われていた。
(右目を失っているドキと虹彩異色症のカゲキか……)
妙な共通点を発見するも、未だにこの二人の関係が分からない。セイキにそれとなく目で尋ねてみたが、彼も首を横に振るのみだった。
222仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:34:07 ID:Pfjg9xSV0
その間にもドキとカゲキの会話は続く。
「腕が落ちたな」
今の状態を皮肉られるも、ドキは何も言い返さない。
「どうやら次に手合わせをする時は、私の勝利は確定のようだな」
「……今までの勝率は俺の方が上だ」
「……怪我を治してから言え」
それだけ告げると、さっさと踵を返してしまうカゲキ。ドキも再び目を閉じた。
「もういいのかね?」
「ええ」
セイキに養生するよう告げると、コウキはカゲキと共に病室を後にした。
帰り道、コウキはカゲキから二人の関係について聞き出す事が出来た。彼女の話によると、二人は共に長野の戸隠山で戸隠流忍術を学んだ同門なのだと言う。
その後二人は中部と関西、別々の土地で鬼として戦うようになったが、過日の約定に従い再会する度に手合わせをしているのだと言う。
「確かさっきの話だと、ドキの方が勝率は良いようだな」
「あいつは私と別れた後も、柳生の里で新陰流を学び、甲賀の里でも忍術を磨いている。致し方ないだろう……」
そう。滅多に使わないがドキは弦も扱う事が出来る。その太刀筋はかなりのものだとコウキは聞いていた。隻眼というハンデを補うため、彼も彼なりに必死なのだろう。
「だが君も、そんな彼に何回かは勝っているのだろう?」
「……それでも実力は奴の方が上だ。私は越えたい……あいつを……。そのために連日過酷な修行を繰り返してきたと言うのに……」
どうやら今回もドキと手合わせをするつもりだったようだ。
その後、何を話すでもなく二人は総本部へと戻っていった。
223仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:36:49 ID:Pfjg9xSV0
数日間は、僧正坊と共に湧いたテングの残党の討伐で京都、大阪、奈良界隈を行き来していた。そんな中、久し振りに他の魔化魍の出現が予測された。
「夏の魔化魍ですか?もう九月だと言うのに?」
少し時期が違うように思う。
「お馴染みのイレギュラーって奴よ。……ただ気を付けて。別の魔化魍が一緒に湧いている可能性もあるって報告も受けているの」
「心配は無用ですよ。……出撃は私だけではないでしょう?他には誰が?」
イブキかイッキ辺りかと思ったが、あかねの口から告げられた名前は、あの日中部支部からやって来た三人の名だった。
「折角だから中部最強の腕前を見てきなさい」
そう言うと火打ち石を取り出して打ち鳴らすあかね。
「行ってきます」
コウキもまた、いつものポーズを決めると研究室を後にした。
224仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:38:10 ID:Pfjg9xSV0
三重県。関西と中部の中間に位置するこの県は、名古屋と大阪両方の影響を色濃く受けており、担当も時には関西支部、時には中部支部とかなりアバウトになっている。
コウキ達四人は、その伊賀地方の山中で魔化魍の探索を行っていた。
二日目の晩、動きがあった。式神が何かを発見したのだ。
「よし、行こう。……カラスキさん?」
いつもの音撃武器一式を入れたバッグを担ぎ、これから出発しようとしていたコウキは、静かに空の星を眺めているカラスキの姿に気付いた。
「彼は何をやっているのかね?」
「ああ、あれは星読みと言って……まあ占いみたいなものですね。これがよく当たるんですよ」
リュウキがそう説明する。彼の日課なのだそうだ。
と、一筋の光が夜空を流れた。流星だ。
「……あまり良い卦ではないな。仕方がない」
そう呟くとカラスキは「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」と真言を唱えながら九字を切りだした。俗に破邪の法と呼ばれるものである。
「カラスキさん、何か不味い事でも?」
恐る恐るリュウキが尋ねるが、カラスキはその問いには答えず、式神に先導させるとさっさと歩いていってしまった。
「無愛想だな……」
「ああいう人なんです。気にしないで下さい。根は優しい人なんですから!」
フォローを入れるリュウキ。見ると、既にカゲキも立ち去った後のようだった。コウキとリュウキも二人の後を追っていった。
225仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:39:55 ID:Pfjg9xSV0
1582年六月二日。この日、京都本能寺において織田信長は家臣の明智光秀によって討たれた。
当日堺の地に滞在していた徳川家康は、服部半蔵の助けを借りて伊賀山中を突破し、自国へと戻る事に成功している。
世に言う「伊賀越え」である。
その伊賀の山中を、軽快な身のこなしで駆け抜ける影が二つ。一つは大地を滑るように走り、もう一つは木々の間を飛ぶように駆け抜けていく。
既に変身を終えた中部支部の唐鋤鬼と影鬼だ。二人とも夜の山道を息一つ切らさず、灯りも持たずに駆けていく。
と、彼等を先導していた式神が空中で旋回を初め、追いついてきた唐鋤鬼の手に静かに舞い降りた。どうやら目標に近付いたらしい。
目の前に小さな灯りが燈った。二人の傍へと近付いてきている。
灯りは、魔化魍の目だった。星明りを受けて、大きな一つ目が爛々と光っていたのだ。
「コダマネズミか……」
そこには、一つ目の大きな鼠が一匹居た。「大きな」と言っても小学生くらいの大きさである。夏の魔化魍だ。
コダマネズミとは、主に秋田県に出没する魔化魍だ。これが現れるのは山の神の警告であるとして、猟師達からは恐れられている。
猛士の間でも厄介な魔化魍として認識されており、これとの戦いで負傷した鬼も少なくない。
先手を取るべく、唐鋤鬼が動いた。音撃棒・星烈を掲げ、鬼棒術・天狗(あまつきつね)を放つ。複数の光の矢が、眼前のコダマネズミの体を焼いた。
すかさず接近し、音撃鼓・星霜を貼り付けようとする。だが。
突然コダマネズミの体が大きく膨らみだしたのだ。まるで急激に空気を入れられた風船のように。
(間に合うか!?)
「星霜」がコダマネズミの体に触れようとした瞬間。
轟音と共に大爆発が起きた。爆風が周囲の木々を揺らす。
その爆音と煙は、遅れて現場へと向かっていたコウキとリュウキにも確認する事が出来た。
「何だ、あの爆発は!?」
「まさかカラスキさん達が……?否、あの人はうちの支部最強の鬼なんだ。やられる筈が……」
「何をぼうっとしている!行くぞ!」
コウキに一喝され、リュウキは爆発地点へと駆けていった。
226仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:44:01 ID:Pfjg9xSV0
爆心地は爆発の衝撃によって抉られ、大きな穴が開いていた。その周囲には爆風で吹き飛ばされた土砂と、コダマネズミの肉片が散らばっていた。そして。
「危なかった……」
上空には、両肩から大きな翼を生やした唐鋤鬼が、羽を羽ばたかせながら浮かんでいた。爆発の瞬間、空へと緊急避難していたのだ。
だが、無傷という訳にはいかなかった。爆発に巻き込まれ、多少のダメージを負っている。
「空を飛ぶ鬼か……」
地上に妖姫が現れた。童子の姿は見えない。夜空に浮かぶ唐鋤鬼の姿を、じっと見上げている。
そこへ、何かが音を立てて飛んできた。それは妖姫の両足の甲を串刺しにし、地面へと縫い付けた。飛苦無だ。忍者が使用する投擲武器である。
相手は唐鋤鬼一人だけだと思い油断していた妖姫は、突然の攻撃に狼狽してしまう。
「何処に居るか気になるか?ならば明かりを用意してやろう」
そう告げ、掌を翳す唐鋤鬼。掌の中心に光の塊が出来上がった。
「鬼法術・蓑火!」
その光の塊を掴み、野球のピッチャーの要領で投げつける唐鋤鬼。光の塊は空中で弾けると、周囲の木々に付着し、辺り一面を明るく照らし出した。
突然の強い光に目を覆い隠す妖姫。その影の中から、鬼法術・影隠れを使った影鬼が飛び出してくる。
「喰らえっ!」
動けない妖姫の首を、印度で使われる投擲武器のチャクラムに酷似した「輪(りん)」という武器で刎ねる影鬼。
妖姫の体は、切断面から激しく血を噴き出していたが、暫くすると崩れ落ち塵と化した。
輪を装備帯に戻す影鬼。後年の鬼がディスクアニマルを装備する要領で腰に付けている。上空から「星烈」を構えた状態で唐鋤鬼が降りてきた。
「……これからが始まりだ。油断するな」
二人は互いに背中を合わせ、音撃棒を握ったまま周囲を警戒し続けた。と、眩い光の中でコダマネズミの破片がもぞもぞと動き出したではないか。
破片は徐々に形を整え、肥大し、一つ一つが新たなコダマネズミへと変わっていった。
コダマネズミは自爆する事で破片を撒き散らし、そこから半ば無限に増殖を繰り返すという魔化魍なのだ。手練れの鬼でも持て余す理由がこれである。
227仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:45:23 ID:Pfjg9xSV0
コダマネズミの群れに囲まれる唐鋤鬼と影鬼。ネズミ達がじりじりと輪を狭めてくる。
普通、コダマネズミを相手にする場合は氷や闇の技で動きを止めてから始末するしかない。それ以外の鬼だと長期戦を覚悟しなければならない。
「先制攻撃を掛ける。その後、近くの個体から順に撃破していく」
「ならば私が……」
影鬼の周囲を、幾つかの淡い光が飛び回りはじめた。
「行け、鬼法術・蛍火!」
前後左右に分散して飛んでいった光は地面に当たると同時に炸裂し、コダマネズミの群れの視覚を奪った。
影隠れは闇属性の、蛍火は光属性の技だ。そう、彼女はアカツキ同様二つの属性を持っている。光と闇、相反する二つの力だ。
だが光の方が僅かに強く、故に闇属性の使い手に見られる重力操作系の技を彼女は使えない。つまり前述のような足止めは出来ないという事だ。
目を眩ませた隙に接近し、音撃鼓を貼り付けて音撃打を決めていく。相手は小さいため長々と音撃を続ける必要は無い。一匹終えたらすぐに隣の個体を攻撃する。その繰り返しだ。
そのうちの一匹が膨らみはじめた。音撃を途中で切り上げ、優先して膨らみだした個体を清めていく二人。そうしなければ数が益々増えてしまう。
だが、そんな彼等の奮闘も空しく、一匹のコダマネズミが周囲の個体を巻き込んで爆発してしまった。周囲に数匹分の破片が飛び散る。
「くっ!」
もう少ししたらその破片の一つ一つが新たなコダマネズミになってしまう。とりあえずコダマネズミへの音撃を続ける二人。
そこへ、コウキとリュウキが漸く追いついてきた。
228仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:46:31 ID:Pfjg9xSV0
「遅くなってすまない!」
「……どうせ道に迷っていたのだろう」
「すいません!すいません!」
唐鋤鬼にそう言われ、土下座をして謝るリュウキ。慣れない土地故に道に迷って、コウキにも迷惑を掛けてしまった。
「コダマネズミか!また厄介なのが……」
「そ、それって鼠算式にどんどん増えるっていうあの!?」
「全く……。あかねさんはそんな事一言も言っていなかったが……」
この当時の魔化魍に関して言えば、予測システムは殆ど当てにならない。
変身するコウキとリュウキ。まずコウキが音叉を鳴らし、炎を纏って変身した。更に間髪入れず、「紅」へと二段変身を遂げる。
次にリュウキが鬼弦を鳴らした。刹那、大地が隆起し、彼の体を包み込む。そして土塊を砕いて、中から変身を終えた隆鬼がその姿を現す。
「君、太鼓は持ってきているのか?」
「はい、勿論!」
高鬼紅に尋ねられ、彼同様手に提げて持ってきていたスポーツバッグを掲げてみせる隆鬼。
それを確認すると、疾風鋼の鬼の異名通り、猛スピードで移動して音撃棒・大明神を敵の群れに叩き込んでいく高鬼紅。一瞬にして複数の個体が炎に包まれ爆発四散した。
「す、凄い……。よし、俺も!」
一方隆鬼は、スポーツバッグの中から龍の顔を模した籠手を取り出して両手に嵌めていた。まだ新米で防御面に劣る彼のために用意された物だ。
そして見習いの頃から使っていた練習用音撃鼓と音撃棒を手にすると、コダマネズミの群れへと飛び込んでいく。
四人の鬼と魔化魍の群れとの戦いが始まった。
229仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:50:26 ID:Pfjg9xSV0
四人(しかも一人は対夏の魔化魍用強化形態に変身している)掛かりという事もあってか、コダマネズミの数はだんだん減ってきていた。
今のペースを守れば、これ以上増やす事無く全ての個体を清める事が出来る。誰もがそう思っていた。だが、そのペースが乱される事となった。
今まで鳴りを潜めていた怪童子が突然飛び出してきて、唐鋤鬼にしがみ付いたのだ。しかも近くに居たコダマネズミが膨張を始める。
「貴様、離せ!」
必死で振り解こうとするが、怪童子は一向に組み付いた手を離そうとしない。その間にもコダマネズミの体はみるみるうちに膨らんでいく。そして。
轟音と共に大爆発が起きた。怪童子諸共爆発の光の中へと唐鋤鬼の姿が消えていく。
「唐鋤鬼さぁぁぁん!」
隆鬼の絶叫が周囲に響く。と、爆煙の向こうから声が返ってきた。
「……心配するな。死んではいない」
「か、唐鋤鬼さん……」
だが、煙の向こうから現れた彼の姿は……。
「唐鋤鬼さん、腕が……!」
唐鋤鬼の右腕は根本から吹き飛び、大量の血が流れていた。
「唐鋤鬼さん、無事か!?」
コダマネズミを清め続けていた高鬼紅が慌てて駆け寄るも、その無残な姿に絶句してしまう。
彼の吹き飛んだ右腕と「星霜」、そして折れた「星烈」の破片は、あちらこちらに散らばっていた。
「ぐふっ!」
吐血する唐鋤鬼。どうやら内臓にも深刻なダメージを負っているようだ。一刻も早く魔化魍退治を終えて引き上げなければならない。
230仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:52:47 ID:Pfjg9xSV0
だが、先程爆発したコダマネズミの破片が動き始めた。高鬼達の脳裏を絶望という単語が横切ったその時。
「すまないが、誰か肩を貸してくれないか?動けるだけの力が残っていないのだ……」
弱々しい声で唐鋤鬼が他の三人に呼び掛けた。影鬼が彼の傍に近寄り、肩を貸す。その後唐鋤鬼は影鬼に何か耳打ちすると、丁度自分の右腕の対角線上に連れて行ってもらった。
そこで影鬼の手を借り、音叉を鳴らして式神を飛ばす唐鋤鬼。式神は唐鋤鬼の正面に向かって飛んでいくと、ある場所で空中旋回を始めた。
「唐鋤鬼さん、あなた……」
どうやら影鬼は唐鋤鬼がこれからやろうとしている事に気付いたようだ。そして高鬼紅と隆鬼に。なるべくコダマネズミの群れを一箇所に集めるよう指示する。
そして。
「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤 急急如律令」
唐鋤鬼が詠唱を終えると同時に、唐鋤鬼、式神、彼の千切れた右腕、「星霜」、「星烈」の破片を光の線が結び、五芒星を形作った。セーマン、即ち晴明桔梗だ。
高鬼紅達によって五芒星の中心に集められていたコダマネズミの群れの動きが、金縛りに遭ったかのように止まった。魔化魍のみに作用する強力な結界が張られたのだ。
「……今だ、やれ」
片手で印を結びながら、唐鋤鬼が三人に告げる。
コダマネズミの群れが全て清められるのは時間の問題だった。
231仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:54:06 ID:Pfjg9xSV0
全てのコダマネズミを退治し終えた隆鬼が、唐鋤鬼の傍に近寄る。
「唐鋤鬼さん!」
「ふっ……この私を狙ったのが逆に運の尽きだった訳だ」
不敵な笑みを浮かべながらそう呟く唐鋤鬼。
「でも腕が……」
「心配無用だ。預けてあった護符を……」
そう言われ、慌ててバッグの中からありったけの護符を持ってくる隆鬼。
「……影鬼、私の腕を持ってきてくれ」
影鬼が拾ってきた右腕を受け取ると、傷口にぴったり合わせる唐鋤鬼。更にその上に護符を貼るよう命じる。それが終わると再び呪文を唱え始めた。
「……これで大丈夫だ。元より少し短くなるが、明日には右腕は治る」
「さ、流石は最強の陰陽師だ!凄いです!」
涙声でそう告げる隆鬼。変身しているから分からないが、多分彼は今泣いている。
平安時代、渡辺綱に片腕を斬られた羅生門の鬼は、数日後腕を取り戻して再び繋げたと言う。生命力の強い鬼なら、これぐらいの芸当は可能と言う事だ。
「じゃあ戻りましょう!」
「待て。あかねさんは夏の奴以外も湧いている可能性があると言っていた。もう少しここに残って調査を続けよう」
帰ろうとする隆鬼を、そう告げて高鬼が制する。
「……どうやら向こうから来たみたい」
影鬼が静かに告げた。しかし蓑火に照らされた周囲をどれだけ見回しても、魔化魍の姿は見当たらない。
(そうか、彼女はドキと同門。彼と同じで気配を読む力に長けていても不思議ではない)
「大明神」を構え、周囲を警戒する高鬼。体力を消耗する「紅」はとっくに解除されている。
と、木々を薙ぎ倒しながら、巨大な何かがこちらへと向かってくる音が聞こえてきた。
「来るぞ!下がれ!」
高鬼達の眼前に、鼬の姿をした三匹の巨大魔化魍が現れた。
232仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:56:35 ID:Pfjg9xSV0
「これって……カマイタチじゃないですか!よりによって……」
カマイタチ。伝承では三匹一組で人間を襲うとされ、まず一匹目が人を転ばし、二匹目が鎌で切り付け、三匹目が血止めの薬を塗るとされる。
後年、関東に出現した改造型は、この三匹を繋ぎ合わせて機械や呪具と融合させたものだと思われる。
その背に乗っていた童子と姫が降りてきて、戦闘形態へと変身した。
「巨大魔化魍三匹に童子と姫か。厄介だな……」
高鬼が呟く。手負いの唐鋤鬼は戦力として見込めないため、三人でこれらを相手にしなければならない。
と、影鬼が一歩前に出て技を使った。
「鬼法術・影分身!」
蓑火に照らされて出来た影鬼の影が五つに分かれ。その中から全身真っ黒な影鬼の分身が現れる。
「その技は……。そうか、君も使えて当然だよな」
嘗てドキが戦闘中に使用していたのを思い出す高鬼。童子と姫程度ならば、五体もいれば充分渡り合える事はその時に見て知っていた。
真ん中のカマイタチが吼えた。その咆哮によって真空波が発生し、木々を薙ぎ倒す。間一髪で避ける高鬼達。
「唐鋤鬼さんは下がって!」
「すまない……」
悔しそうに右腕を押さえながら、唐鋤鬼が後方へと下がる。それと同時に、三匹のカマイタチが残った三人目掛けて一斉に突っ込んできた。
「一人一匹だ!良いな!」
「大明神」を構え、跳躍して突撃を躱しながら高鬼が二人に告げる。
233仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 00:58:46 ID:Pfjg9xSV0
「いいっ!何で僕だけ……!」
隆鬼に襲い掛かったのはさっき吼えたカマイタチだ。大きく鋭い爪を持った、先程の説明における切り付け担当の、最も気性が荒い個体である。
「このっ!」
バッグの傍に近寄ると、太鼓道具一式を戻し、使い慣れた音撃弦を取り出す隆鬼。ボディに昇り龍が彫られた音撃弦・伏竜だ。
再びカマイタチが吼えた。今度は真空波をまともに受けてしまい、隆鬼の体が吹き飛ぶ。
「ぐあああ!」
全身をずたずたに切り裂かれ、血を流す隆鬼。幸い、籠手と「伏竜」で急所を防御したため致命傷には至っていない。
気を失いそうな程の痛みを感じながらも、「伏竜」で体を支えながら立ち上がる。他の二人もまた、戦闘中であるため援護は期待出来ない。彼一人で仕留めなければならない。
(やれるのか、僕に……?)
そんな事を考えている間に、カマイタチが疾風の如き速さで接近し、爪を振り下ろしてきた。回避するも完全には避けきれず、爪が肩の肉を抉っていった。
「あああ!」
肩を抑えながら悲鳴を上げる隆鬼。何とか出血を抑えようとするが、その隙を与えぬかのようにカマイタチの爪が再び襲い掛かってきた。
間一髪で避けるも、まだまだ新米の隆鬼はこの強敵を相手に半ば戦意を喪失していた。
(僕は……死ぬのか?嫌だ。そんなのは嫌だ!)
鬼として生きる道を選んだ時から覚悟は出来ていた筈なのに、そのような考えが脳裏を過ぎる。
と、顔の変身を解除して今まで静観していたカラスキが隆鬼に向かって叫んだ。
「隆鬼!死を恐れるな!恐怖を受け入れろ!そして受け入れた上で乗り越えるんだ!それが出来れば勝利は約束される!」
「そ、そんな事言われても……!」
振り下ろされた爪の一撃が地面を抉った。天に向かって雄叫びを上げるカマイタチ。その巨体を「伏竜」を構えながら見上げる隆鬼。
234仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 01:00:33 ID:Pfjg9xSV0
(死を恐れるな……?)
思い出してみる、カラスキの戦い方を。彼は爆発に巻き込まれ片腕を失っても泣き言一つ言わず、逆にそれをチャンスへと変えた。
そんな事が僕に出来るのか?そう思う。
だが考えている場合では無かった。新たな一撃が隆鬼目掛けて振り下ろされようとしていた。また避けるか?否。
「死中に活ありだ、隆鬼!」
カラスキが叫ぶのとほぼ同時に、隆鬼は爪の一撃を避けるのではなくあえて突っ込んでいった。考えるよりも先に体が動いたと言った方が正しいだろう。
結果、攻撃を躱すと同時に必殺の間合いへと入る事が出来た。
「そうだ。それで良い……」
見守るカラスキ。隆鬼は「伏竜」を使ってカマイタチの前脚を攻撃していく。
だが、真下に向かってカマイタチが一声吼えた。再び真空波の洗礼を受けた隆鬼を容赦なく爪が襲う。
爪の一撃は隆鬼の左籠手に当たり、激しく火花が散った。それでも怯まず攻撃を続ける隆鬼。
「尻込みしてたら勝てない!僕だって鬼なんだ!人を守る鬼なんだっ!」
刹那、横薙ぎの爪の一撃が隆鬼の右脚を深く切り裂いた。彼の脚は骨さえも断たれ、皮一枚で繋がっているという状態だ。
235仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 01:01:40 ID:Pfjg9xSV0
「うわあああああ!」
絶叫と共に攻撃を続ける隆鬼。しかし第二撃が隆鬼の体を弾き飛ばし、衝撃でとうとう右脚が真っ二つに千切れてしまう。
「まだまだぁぁ!」
「伏竜」を杖代わりにして立ち上がると、片脚だけで思いっきり跳躍しカマイタチの背に飛び乗った。
一方、高鬼と影鬼もカマイタチに取り付き、それぞれの音撃鼓を貼り付け終えていた。
「行くぞ!音撃打・炎舞灰燼!」
高鬼が音撃打を叩き込む。影鬼もまた、自身の音撃打をカマイタチに叩き込んでいた。
爆発。更に影鬼の分身達も怪童子と妖姫を倒し終え、そのまま消滅していた。
「よし!残るは……」
隆鬼の方を振り向く高鬼。見ると彼は角が欠け、各部分の装甲が砕け、しかも片脚という満身創痍の状態でカマイタチの背に乗っていた。
振り落とそうと暴れるカマイタチ。その背に深々と「伏竜」を突き立てる隆鬼。そして装備帯の音撃震・逆鱗を「伏竜」に装着して音撃斬の体勢に入ろうとする。
「カマイタチの動きを止めるぞ!破っ!」
鬼棒術・小右衛門火と鬼法術・蛍火を同時に放ち、カマイタチの動きを止める。そして。
「音撃斬・臥龍天昇(がりゅうてんしょう)!わああああ!」
掻き鳴らされる清めの音。苦しみ悶えるカマイタチ。隆鬼の全身の傷口から大量の血が噴き出すも、演奏が止む事は無かった。
236仮面ライダー高鬼「折れぬ覚悟」:2007/03/05(月) 01:03:33 ID:Pfjg9xSV0
リュウキが意識を取り戻した時、彼はベッドの上で横になっていた。全身には包帯が巻かれている。ここは総本部の医務室だ。
「ああ、漸く目が覚めたようだね」
ここの医務室を預かっているモチヅキが声を掛けてくる。
「僕は……?」
「伊賀山中での戦いで負傷して、そのまま運び込まれてきたんだよ」
自分がこうしてここに居ると言う事は、カマイタチは無事退治出来たという事だろうか。正直彼は音撃斬を決めた辺りからの記憶が欠落していた。
よく見ると切断された筈の脚がくっついていた。あの時のカラスキ同様、護符がべったりと貼り付けられている。
「カラスキくんだっけ?彼の使う術は本当に凄いな。一晩で君の脚が元通りにくっついちゃうんだから。引退したら是非ここの医務室で働いてもらいたいね」
そう言うとモチヅキは内線を使って誰かにリュウキが意識を取り戻した旨を伝え始めた。それから暫くしてコウキ、カラスキ、カゲキの三人が医務室に入ってきた。
「カラスキさん。僕……」
「ふん。出来の悪い部下の面倒を見るのは、上司である私の役目だからな」
礼を言おうとするリュウキの言葉を、そう言ってカラスキが遮る。彼の右腕も後遺症は全く見られず、いつも通りに動いていた。
「まあ、そう言うカラスキさんも君の意識が戻る少し前までここのお世話になっていたのだがな」
そう告げるコウキ。やはり内臓の方に深手を負っていたため、戻ってきてからずっとリュウキの隣で眠っていたのだ。それでも自然に治癒するのだから恐ろしい。
「すいませんコウキさん。応援に来た筈が、こんな迷惑掛けちゃって……」
「馬鹿者!何を謝る事がある!君はたった一人で強豪魔化魍を倒したのだぞ。もっと自信を持ちたまえ!」
「は、はい!痛っ!」
大声を出したため傷口が開いてしまったようだ。慌ててモチヅキが彼の体の包帯を外しにかかる。
「全く、この男は……」
いつも通りのリュウキの姿を見て、カラスキがぼやく。
その後、彼等は関西支部の鬼がほぼ全員復帰するまで、出向要員として関西の地で戦い続けたのであった。 了
237名無しより愛をこめて:2007/03/05(月) 21:11:50 ID:ly8/Ishv0
職人がSS書き込んでも「乙」の一言も無いのかこのスレは・・・
238名無しより愛をこめて:2007/03/05(月) 21:32:20 ID:aEuyDXHW0
高鬼SSはゆるりと読むのがセオリーだ。
239見習いメインストーリー:2007/03/06(火) 00:25:52 ID:spMiT/qP0
前回は>>212から

四十三之巻「伝える感謝」

 和装の女「橘」が単身で純友と大洋の前に現れたその日の放課後、二人は女の話したことに
ついて相談し──このことを、猛士関東支部には報告しない事にした。
「おれたちが、多美ちゃん助けたいって言っても、どっからその話持ってきたんだって聞かれたら、
答えらんねえよ。白クグツとして、倒されちまうかもしれねえし」
 腕組みをして、放課後の教室で大洋は言った。
「それに、あいつらから聞いた話だって言ったら、よけい信用してくれねぇだろうな」
「事務局長だけは、わかってくれるかもしれないけど……吉野の本部は、難しいかもね」
 立花勢地郎は、過日「凄・橘」に告げられた「鬼を集めろ」という警告を、既に清めの碑の件に
絡めて本部に伝えているとのことであったが、いまだに本部からの良い返事はもらえていない。

 山中の河原で、和装の男女と、鎧装束の童子・姫が互いの破壊光線をぶつけて戦っていた。
 和装の男女の光線の威力に押し負け、童子と姫は衝撃で砂利の上になぎ倒された。
 逃げ出した童子たちを追おうとした女を制して、男は言った。
『いいよ、放っておけ。どうせ奴らは死ぬ。──僕が餌を与えなければね』
『まさか彼らが自我に目覚めるとはね。……かわいそうに』
 男は、女を振り返り言った。
『どうした? この間からおかしいぞ、おまえ。あんな失敗作を哀れんだり、あの子供たちに
白クグツのことを伝えに行ったり……。弱い者を憐れむような感情は、我々には必要ない』
 女はわずかに口をひき結んだだけでずっと黙っていたが、やがて無表情のまま言った。
『──いいの? 彼らが機能停止して、どこかに転がってその姿を晒ことになっても』
『それについては考えがある』
 男は冷酷に笑って言った。
240見習いメインストーリー:2007/03/06(火) 00:27:44 ID:spMiT/qP0
 吉野の本部から関東支部に、清めの碑に記されていた碑文の解読結果が届いた。
 その結果は、純友たちが和装の女から聞いていたものと同じ内容だった。
 純友に、みどりからそのことについて電話で連絡があり、それと同時に当日の説明を受けた。
『──というわけで、明日は何が起こるかわからないんだけど、とりあえず研修はいつも通りにやるね。
清めの儀には相当な危険が伴うから、戦闘要員以外は近付かない、というのが今回の方針なの』
「はい……」
 電話の向こうに虚ろにそう言った純友の視線の先には、純友が独力でできる限りの修復を試みた、
津村努に手渡された鬼弦と、白練大猿のディスクがあった。

 そして──オロチ鎮めの清めの儀の当日、純友と大洋の姿が、清めの大地にほど近い山地にあった。
「ごめんね、大洋。その程度しか用意できなくて」
 大洋の左手には、純友が有り合わせのものを使って修復した鬼弦が装着されていた。また、
ベルトからは一部が欠けた銀色のディスクが下げられていた。
 大洋が鬼弦を弾くと、ディスクが展開し、片腕の無い猿型のディスクアニマル・白練大猿の姿になった。
「バッチリじゃねえか。──それに、これもあるしな」
 大洋は右手に嵌めた陰陽環の表を撫で、空中に指で何かの文様を描いた。光る文様が燃え上がり、
鳥型の火炎となって彼らの周辺を飛び回った。──その陰陽環は、大洋がこの地に向かう途中、
炎の鳥の姿をした式神が大洋の元に運んで来たものだった。
「あの、陰陽環のオッサンが、気を効かせてくれたのか必要なくなったのか知らねえけど、
式神を使っておれンとこまで持ってきてくれたみてえだ」
 この半年、週に一、二回ではあったが、陰陽環の無断借用を黙っておくことと引き換えに、
あの男には随分と世話になった。
241見習いメインストーリー:2007/03/06(火) 00:29:26 ID:spMiT/qP0
「結局、最後まで名前は教えてくれなかったけどな。でも、本当にいろいろなことを教わったぜ」
「──ぼくは、君が鍛えている間、みどりさんに『銀』のことをいろいろと教わったよ」
 純友は、大洋の元に戻って来た白練大猿のディスクと、その腕に装着した鬼弦を見て言った。
「そのおかげで、その鬼弦も、ディスクアニマルも直すことができたんだと思う」
 携帯電話を取り出すと、純友は「たちばな」に電話を入れた。電話が繋がると、日菜佳が出て言った。
『ああ、純友くん。どうしたんですか? こんなに朝早く』
 それに対し純友は、静かな、落ち着いた声で応えた。
「すみません。──みどりさんに、取り次いで頂けますか」
 ややあって、みどりが電話に出ると、純友は言った。
「すみません、みどりさん。今日はそちらには行けません。大洋もです」
 大洋は、腕組みをして純友に背を向け立っていた。
『どうしたの? 純友君。いつもと、なんだか声が違うよ』
 電話の向こうで、不安そうな声でみどりは言った。
「──この一年、本当にお世話になりました。ぼく、みどりさんの弟子になれて幸せでした」
『純友くん……? 大洋くんも一緒って、まさか、また馬鹿なことを考えていない!? お友達のこと
は不幸だったと思うけど、でも、だからといってそれを理由に──憎しみを理由に戦っちゃだめよ!』
「大丈夫です」
 静かに──みどりが、確実に最後まで言い切るのを待って、純友は答えた。
「ぼくたちは、人を護るために戦います。今日はそのために、『ここ』に来ました」
 純友は携帯電話の通話を終えると、電源を切った。
 その時、純友が首から下げたディスクの震動が始まったため、緊張した声で大洋に告げた。
「ディスクの反応が始まった。橘さんが、近くに来ているのかもしれない」
242見習いメインストーリー:2007/03/06(火) 00:32:09 ID:spMiT/qP0
 大洋は背後から邪気を感じて振り向き──いつの間にか彼らの後方にいた、和装の男「凄」の姿に
気付いた。男の手には、黒クグツの持つ黄金の杖が握られていた。
「またそれを持って来たのか」
『そんな装備で大丈夫なのかと思ってな』
 男は、ディスクアニマル二枚と陰陽環、鬼弦だけしか持っていない純友たちを見て笑いながら言った。
『童子と姫に、もうあの白クグツは気にするな、オロチを鎮めるために鬼を護れ──そう命じたが、
あの木偶人形どもは、生意気にも自我を持ち始めて我らに楯突き、我らの元を去った。
 おそらく今日もこの地に来て、白クグツを殺しにかかり、そして鬼とその仲間も殺しにかかるだろう』
 大洋は、赤城山で遭遇した、掌から強力な破壊光線を放つ童子と姫を思い出した。
『おまえたちが勝つには、これが必要なはずだ』
 男は片手に持った黄金の杖を純友に向けてぐっと突き出した。
『我が血族の者よ、あいつらと戦う時にはこの杖を額にかざすのだ。そうすれば、おまえは黒装束の
姿となり、呪術を使いこなせるようになる。さあ──受け取れ』
 それをしばらく無言で見ていた純友は、やがて男に向けて進み出た。
「純友ォ!」
 大洋の叫びも気にせず、純友は男から、計測器状の器具が複数ついた金の杖を受け取った。
「……自分が弱いのは、わかっている。でも、これをあなたの希望通りに使うのは、本当に最後の最後だ」
 ベルトに黄金の杖を差し込む純友を見て、男はニヤリと笑った。
『さあ、行け。僕にはこれ以上清めの地に近付くことはできない。僕の邪気で、鬼どもを弱らせる
わけにもいかないからな』
 山道を進んで行く純友たちを見送りながら、男はそっと言った。
『失敗作どもめ……互いに、潰し合え』

四十三之巻「伝える感謝」了
243見習いメインストーリー:2007/03/06(火) 00:33:39 ID:spMiT/qP0
次回予告

「純友、おまえ──ソレ、『使う』気じゃねえだろうな」
「消炭鴉のディスクを身につけている限り、あの姿になっても僕は僕だから」
「たぶん多美ちゃんは、もう近くだ」
「──とにかく君は、邪気の影響を受けないように離れて!」

見習いメインストーリー 四十四之巻「討てぬ一撃」
244名無しより愛をこめて:2007/03/06(火) 01:58:12 ID:4y4432dP0
高鬼作者様、見習い作者様、乙です。
明日は裁鬼作者様登場でしょうか。
245裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/03/06(火) 21:07:53 ID:2yC/M7boO
瞬過終闘―― 《九 ハイキ 巻き戻せぬ時(かがやき)》

朝日がその国に昇るまで、やけに遅く感じられた。
『鬼』に関する全てを曝け出した政府へ殺到する国民の意見や非難と共に、朝刊はまるで号外のように人々の間を飛び交い、ニュースサイトの八割が麻痺していた。
次々と人手を巡る紙面には、昨晩公開された猛士の詳細とその支部の住所、全国98人の『鬼』達の本名と所属が記され、それに並び自然災害と偽装された事件や魔化魍の犠牲者達の名もいくつか記載されていた。
「何でこんな事を隠していた!?」
中年のサラリーマンが、新聞を片手に唾を飛ばす。
「私、運がよかったのよ。でも、今までみたいに気軽に山へ行けなくなっちゃったわね」
ハイキングが趣味の主婦が、テレビに呟く。
「『鬼』は外だよな」
ネットに溢れる匿名意見。
それでも、この国の大半の人々は、それまでと変わらぬ朝を向かえ、いつも通りの生活を始めた。
「ああ、『鬼』。コワいっスね。でも関係ないですよ。山なんか行かないし、そんな知り合いもいねぇスから」
街頭インタビューに答えた無気力な若者の声は、その理由を代弁していた。

たちばなからマンションに戻ると明日夢は出勤の支度をし、ひとみは朝食を作った。
闘鬼親子、弾鬼、剛鬼が殺された知らせを耳にした時、確かに思考が氷結した。
その時のイブキやイチゲキ達が何を話していたのか覚えていなかったが、次第に溶解していった心は、明日夢本人が悲しい程自然な言動を行なえている。

‥‥それは、明日夢が『大人』になったからか。

それは違った。明日夢はそんな『大人』の傍にいなかった筈だった。だがしかし、本当に『鬼』を表に出すと、イブキ達が言う悪事になるのか、明日夢は疑う。
確かに、死人が出ている。確かに、剛鬼の娘の寝顔から、彼女の将来に悲痛の思いを差し込み、顔をしかめた。
246裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/03/06(火) 21:10:08 ID:2yC/M7boO
「‥‥いってきます」
なのに、心が『鬼』を助けようと出来ない。自分に何が出来るんだと、諦めと無力が絡み合うだけだった。
毎日と同様のリズムを繰り返そうとする自分自身を、情けなく思い、応援したくもあった。

「おはよう。よく眠れたかい?」
小暮は、目を擦る『愛娘』に笑顔を向けた。
研究所の奥にある3つの、寝台とは思えぬ様々な機械が取り付けられているベッドの上で、ハイキは背伸びと欠伸をした。
「おはよー。あのね、イヌさんとネコさんが、ケンカしてるユメをみたの」
「そうかい、それはいけないね」
「うん。だからアタシが、『ケンカしちゃダメだよ』っていってあげたの。それからミンナであそんだんだよ」
「うん、うん。 ‥‥ハイキは、良い子だね。さあ、シャワーを浴びてきなさい。今日は外で、好きに遊んでいいから」
ハイキは昨晩の衣服のまま、ベッドから跳ね上がると満面の笑みを見せてシャワー室に入って行った。
「‥‥出来損ないでも、夢を見るのか」
実験用具が整理されているガラス台に背を預けながら、日高が訊いた。
「‥‥当たり前だ! あの子は『人間』だからな‥‥」
小暮から投げつけられた怒りを苦笑で躱すと、日高はサッキのベッドに進み、備え付けられていたコードの束を引き抜いた。
「起きろ。『お嬢さん』のお守り、いや‥‥ 子守りだ」
微かな電子音が止むと、サッキはその巨躯を起き上がらせ、日高に了解と言い、立ち上がった。
「‥‥コイツも、夢を見るのか?」
唇を歪ませる日高の問いに、小暮は苦い顔のまま背を向けた。

午前10時。首都は正常に機能し続け、人々は今日も生きている時間をそれぞれのリズムに磨り潰していた。
「帰りなさい」
明日夢は今、駅へ向かって歩いている。仕事場が、勤めていた病院の院長が、『銀』だと知らなかった。
政府により発表された『猛士』の一員として氏名を公開された院長は、報道陣を前に9時から会見を行うと言い、明日夢にそう残して背を向けた。
「‥‥病院が‥‥ 『猛士』の‥‥」
247裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/03/06(火) 21:12:26 ID:2yC/M7boO
呆然とし、なんとか足を動かし続ける明日夢の中で、知らされたくない『事実』が可能性の枠を超えようとしていた。自分の力を否定され、自分の道すら決められていたのでは‥‥
「あ、ふうせ〜ん!」
ぼんやりと目を上げると、空を仰ぐ母子に続き、ビルの間をふわりと上っていく赤い風船が見えた。
「‥‥」
風船は既に10メートルは上がり、とても明日夢には届かない。その時、曇った空が切れ、一筋の青空が風船を掴んだように見えた。
「はい、ふうせん♪」
「‥‥ありがとう!」
いつの間にか風船は幼い女の子の手に戻り、明日夢が青空と見間違えた『影』が、その頭を撫でていた。
「おねぇちゃん! バイバーイ!」
「バイバ〜イ!」
手を振り、へへへと笑って振り向いたその女性は、明日夢がいつか失くした笑顔のまま、明日夢と擦れ違った。
「あまり派手な事をするな‥‥」
「え〜っ? さっきの、イケないコト?」
「ああ‥‥」
振り向いた明日夢は、女性と話している男と目が合った。咄嗟に視線をずらしたが、男は言葉を発する事なく歩み寄り、明日夢の肩に手を置いた。
「あの‥‥ なにか?」
小さな声でそう尋ねた明日夢に、痩せた眼鏡の男は、薄い唇を開いた。
「‥‥君でいい。 来てもらおうか、安達、明日夢君‥‥」
次の瞬間、声を聞かなかったもう一人の男が明日夢の前に立ち、その後の明日夢の記憶は、暗闇だけだった。

続く
248裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/03/06(火) 21:19:44 ID:2yC/M7boO
【今日の裁鬼さん】

おやっさん「‥‥やっぱり、もう無理だねぇ」
石割「残念ですが、これも仕方ありません」
裁鬼「(物陰から)‥‥」
おやっさん「そうだね‥‥ これ以上コキ使っても、痛んで壊れるだけだからねぇ」
石割「はい。ですから、まだ動ける内に手を打ちましょう」
裁鬼「(物陰から)‥‥」
おやっさん「じゃあ、石割君。頼んだよ」
裁鬼「(物陰から)‥‥(黙って立ち去る。目に涙)」
石割「はい。じゃあ、修理しときますね。この掃除機」

掃除機○ 【勘違い】 ●裁鬼

今日の裁鬼さん 第6回 おわり 続く
249名無しより愛をこめて:2007/03/08(木) 17:12:04 ID:1wHXcjxx0
用語集Wikiって結局どうなったん?
あのまま凍結?
飛沫鬼が追加されたときにはwktkしたもんだが結局それっきり尻切れトンボか
250名無しより愛をこめて:2007/03/09(金) 00:42:55 ID:yinf2CAi0
>>249
管理人がなんかもうやる気無い感じだしなー
トップページ以外なら俺らで編集できるから色々追加してみるか
251見習いメインストーリー:2007/03/09(金) 01:05:24 ID:oCCM6qtA0
前回は>>239から

四十四之巻「討てぬ一撃」

 しばらく山道を進んだ純友たちは、平坦な土地に出た。
「あそこに見える岩場の向こうが、たぶん清めの地だと思う」
 自宅のプリンタで出力したこの周辺の地図と、かつて猛士データバンクで見た清めの碑の場所を
照らし合わせながら、純友は大洋に言った。
 和装の男から離れ、震動が収まっていた純友の懐にあるディスクが、再び震動を始めた。
「大洋。今度こそ、橘さんかもしれない」
 二人は周囲に注意を払いながら、荒れ果てた平野を進み続けた。
「純友、おまえ──ソレ、『使う』気じゃねえだろうな」
 大洋は、隣を歩く純友のベルトから下がる、黄金の杖を指して言った。
「心配することないよ。消炭鴉のディスクを身につけている限り、あの姿になっても僕は僕だから」
 荒涼とした平地を歩き進みながら、純友は言った。
「とにかく、『スーパータイプ』に出会う前に橘さんを見つけたら、すぐここを離れよう」
 しばらく歩き続けた時、大洋が突然足を止めた。
「ど、どうしたの? 大洋」
「おまえにはわかんないだろうけどよ、邪気を感じる。たぶん多美ちゃんは、もう近くだ」
 再び足を進めた二人は、風がわずかに砂塵を巻き上げる平原の彼方に、白い人影を認めた。
 その姿がこちらにふらふらと近付いてくると、それが白装束姿の人物であるとかわかった。
「た……多美ちゃん!」
「橘さん!」
 二人が声をかけるが、白クグツは何も答えなかった。
 純友たちが駆け寄ると、白クグツは足を止めた。白い頭巾と黒いフードの隙間に覗く、彼女の
黒目がちな目が二人を捉え──その目が妖しく真紅に輝いた。
252見習いメインストーリー:2007/03/09(金) 01:07:20 ID:oCCM6qtA0
 白クグツはやにわに銀色の杖を持つ右手を横に伸ばし、左手を二人に差し向けて目に見えぬ邪気の
塊を放った。直撃を受け、大洋はその場になぎ倒されたが、「凄」の血族であるからか、それとも
鍛えが足りないためか、純友には何の影響もなかった。
「お願いだ橘さん、正気に戻って……!」
 純友の叫びは、彼女には届かなかった。常人離れした早さで殺到してきた白クグツは、銀色の杖を
振りかぶり、純友を力任せに殴りつけた。
「うぐぁッ!」
 うつ伏せに倒れていた大洋の横に、純友があお向けに倒れ込む。
 杖で打ち付けられた胸の痛みに純友が苦しんでいると、隣から低く声がした。
「なにやってんだよ、バカヤロウ……」
「た、大洋……大丈夫?」
「お前こそ。立てるか?」
「うん」
 冬の空を背に、純友たちを見下ろし銀色の杖を振り上げる白クグツの姿があった。
「危ねえッ!」
 大洋は伏せた姿勢のまま純友を突き飛ばし、自分も地面の上を転がりながらその場から逃れた。
 そこに銀色の杖が激しく打ち付けられ、先刻まで二人がいた地面に亀裂が走った。
「純友ッ! どうすんだッ!」
「まず、あの杖を奪うことを考えよう!──とにかく君は、邪気の影響を受けないように離れて!」
 白クグツを挟んで、純友が大洋に叫び返した。
 立ち上がると純友は、金色の杖をベルトから引き抜いた。素早く走り込んできた白クグツが
振り下ろしてきた杖を、純友は両手で持った金色の杖で受け止めたが、勢いで背後に吹っ飛ばされた。
253見習いメインストーリー:2007/03/09(金) 01:08:43 ID:oCCM6qtA0
辛くも倒れずに地面に着地したが、両腕がしびれてしばらく動かせそうになかった。
「だ……駄目だ。耐久力は同じでも、持ってる人間の力が違いすぎる……!」
 そこに、炎の鳥の式神が飛来し、白クグツを急襲した。白クグツは、それを常人離れした速い動き
でかわしたが──時間差で襲いかかった白練大猿のディスクが、白クグツの手から杖を奪い取った。
 遠くに、左腕の鬼弦を弾いてディスクアニマルを送り出した、大洋の姿があった。
 炎の式神は上空で旋回を続け、片腕の白練大猿は杖を持って大洋のところまで戻っていった。
 純友は大洋に向けて頷き、金色の杖を構えて白クグツに突進した。
「う……わぁぁぁぁーッ!」
 叫びつつ、振りかぶった杖を白クグツに向けて力の限り叩き込んだ──かのように、遠くにいる
大洋には見えた。しかし、実際には金色の杖は、白クグツの眼前で止められていた。
「──ごめん大洋」
 純友は、背を向けたまま大洋に言った。
「ぼくには、できないよ。橘さんを殴るなんて、ぼくには……」
「バ、バカ……」
 バカヤロウ、と叫ぼうとしたが、大洋はそれ以上言えなかった。自分でも、あの状況で白クグツを
攻撃できたかどうか。大洋には今の純友の気持ちが痛いほど良くわかった。
 白クグツの両腕が伸び、純友の首につかみかかった。
「ぐっ……」
 息が詰まり、純友の杖をつかんでいた手がだらりと下がった。そのまま地面に押し倒され、女とは
思えぬ怪力で純友の首が締め上げられていった。
「純友ォ!」
 叫ぶと、大洋は右腕に巻いた陰陽環の表面を指先で撫でた。
254見習いメインストーリー:2007/03/09(金) 01:10:40 ID:oCCM6qtA0
 炎の式神が白クグツ目がけて急降下すると、彼女は片腕だけを離し、手の平を上に差し向けた。
喉を締める力が半減し、純友は激しく咳き込んだ。
「逃げろ、純友!」
 大洋の声が、とても遠くに感じた。意識が朦朧として、起き上がろうとしても体が動かない。
 白クグツは炎の式神に向けた手の平から、空気を渦巻かせて衝撃波を放った。式神は直撃を受け、
空気の歪みに握りつぶされていった。
「ああ、くそッ!」
 銀色の杖を手に、大洋は駆け出した。白練大猿がその前を行き、純友たちに向かっていく。
 上に向けられていた白クグツの手は続いて大洋たちに向き、邪気の力に大洋の足取りが鈍くなる。
白練大猿は横倒しに倒れた。大洋はその場に膝を崩しながら叫んだ。
「チク……ショウ! 多美ちゃん! 純友……!」
 白クグツは、大洋とディスクアニマルに向ける手は下ろさず、片腕で純友の首を締め付け続けた。
「橘……さん……」
 あお向けに倒れた純友の視界には、青い空を背景に、片腕を伸ばして自分の首を絞め続ける白装束の
多美の姿があった。その目は赤く燃え上がり純友を見ていた。腕の力は容赦なく純友を苦しめ続けた。
やがて意識が遠のき、視界は暗くなっていった。
 ──突如、激しい光と爆発が巻き起こった。
 純友の喉から白クグツの手が離れ、姿が視界から消えた。再び咳き込みつつ、ゆっくりと体を起こすと、
白クグツが純友からやや離れた地面に倒れ伏していた。白装束のところどころには焦げ跡があり、
そこからは幾筋か煙が立ち上っていた。
 純友が首をめぐらすと、遠くに、腕を差し向け破壊光線を発し終えた、鎧装束の男女の姿があった。
「『スーパータイプ』……!」

四十四之巻「討てぬ一撃」了
255見習いメインストーリー:2007/03/09(金) 01:12:53 ID:oCCM6qtA0
次回予告

『殺すよ。鬼の仲間も。それが我らの──生きる答だッ!』
「させるもんか、そんな事……!」
「寝てんじゃねー! 白練大猿!」
『鬼にもなれないひ弱なガキが! よくもやってくれたな!』

見習いメインストーリー 四十五之巻「巻き起る風」
256名無しより愛をこめて:2007/03/10(土) 01:25:16 ID:g97zidTb0
まとめサイトも用語集サイトもボランティアでやってることだから、
更新止まっちゃっても仕方ないと思うよ。

用語集Wiki、管理人以外はトップページを更新できないから、
どんなに追加があっても「その他」は「※まだできてません」のままになると思うし、
もうそっとしておいてあげようよ。
まとめサイトみたいにそのうち後継者(?)が現れるっしょ。
257見習いメインストーリー:2007/03/12(月) 01:02:26 ID:/9VNQ3mE0
前回は>>251から

四十五之巻「巻き起る風」

 共に烏帽子を被った鎧装束の男女は、鋭い表情で、地面から身を起こす白クグツを見据えていた。
 荒涼とした平野に、各辺が十数メートル程ある三角形の頂点に位置するように、純友と白クグツ、
大洋と白練大猿、「スーパータイプ」の童子と姫の姿があった。
『殺すよ。人員整理だ』
 童子が言うと、姫も言った。
『殺すよ。鬼の仲間も。それが我らの──生きる答だッ!』
 姫の差し向けた掌から、禍々しく輝く破壊光線がほとばしった。その先にはまだ身を起こしている
途中の白クグツの姿があった。
「危ないッ!」
 反射的に純友は白クグツを庇い、共に地面に倒れた。その先数メートルの地面に破壊光線が衝突し、
地面を大きくえぐった。
「橘さん……大丈夫?」
 純友に覆いかぶさられるような格好になった白クグツが、赤い瞳を純友に向け、無言で激しく純友を
突き飛ばした。
 大洋は鬼弦を弾き、横倒しになっていた白練大猿に音を聞かせた。猿型のディスクアニマルは
起き上がると、大洋と共に童子と姫に向かっていった。
 放たれる破壊光線を、常人離れした速さで右に左にかわし続け、大洋は童子たちとの距離を縮めていった。
『こいつ……!』
 童子が破壊光線を放つ手を止め、目をみはり言った。姫も、大洋の成長に気付き言った。
『以前と速さが違う……!』
「鍛えてんだよ!」
 叫ぶと、一気に距離を詰めた大洋は、手にした銀色の杖を童子に叩き付けた。
258見習いメインストーリー:2007/03/12(月) 01:03:46 ID:/9VNQ3mE0
 童子は顔の前で両腕を交差させてその間で大洋の打撃を受け止めた。その腕が強力な力に押しやられ、
童子は全身を数センチ下に沈めさせられた。
 横から大洋を襲撃しようとした姫の顔に、片腕の白練大猿が飛びかかり、姫はそれを引き剥がそうと
もがいた。
『力も以前とは違う。……ふははははは!』
 突然童子は毒々しく笑い出した。
『ようやく鬼になったようだな、貴様!──決めたぞ! 我らは、貴様も倒す! クグツも倒す!
それが我らの生きる答だ!』
『あいつらの言うことなど聞かぬ。我々は、我らの意志で動く! はははははは!』
 顔から引き剥がした白練大猿を遠くに放り投げ、姫も笑いながら言った。
『おまえはその鬼を殺れ!』
 大洋の銀の杖の攻撃を受け止め続ける童子にそう言うと、姫は遠くに倒れる白クグツに掌を差し向けた。
『わたしは、あのクグツを──』
 その言葉が途切れる。
 ──密かに背後に回っていた純友が、鋭い眼差しを向け、黄金の杖の先端を姫の上腕に突き刺していた。
「させるもんか、そんな事……!」
 腕から杖を引き抜き逃れると、姫はもう一方の手で傷口を塞ぎつつ、純友に向き直り蹴りを繰り出した。
 かわしきれず、蹴り飛ばされて純友は吹き飛んだ。大洋は童子の方を向いたまま後ろに飛び退り、
倒れている純友の側まで行った。
「おいッ! 大丈夫か!」
「な、なんとかね……」
 脇腹を庇って立ち上がりながら、純友は言った。
259見習いメインストーリー:2007/03/12(月) 01:05:43 ID:/9VNQ3mE0
「大洋」
 童子と姫に聞こえぬように、小声で純友は言った。
「あいつらの最大の武器は、手から出る破壊光線だ。──腕を駄目にして、それを出させないようにするんだ」
「オウ」
『──何をこそこそやっている!』
 数メートル離れて何やらごそごそとしている純友たちに向け、童子は叫んだ。
『鬼にもなれないひ弱なガキが! よくもやってくれたな!』
 掌を純友たちに向けた童子に、素早い動きで背後に回り込んだ白クグツが組み付いた。
 先程純友の首を締め付けた恐るべき腕力をもってして、両腕で童子の首を締め上げる。
「今だ、行くぞ純友!」
 大洋が叫び、二人は姫と童子に向かっていった。
 姫が、童子に組み付く白クグツを引き離そうとするのを見て、大洋は走りながら鬼弦を弾いて叫んだ。
「寝てんじゃねー! 白練大猿!」
 再び起き上がった片腕の猿型のディスクアニマルが、姫に襲いかかる。
『小癪な!』
 姫は、傷付いた腕を庇っていた手をそこから離し、白練大猿を捕まえると渾身の力で握り潰した。
銀色に戻り、力を失って白練大猿は地面に落ちていった。
 その時にはもう、大洋は飛び上がって銀色の杖を振り上げていた。
『ばかめ! 空中では身をかわせまい!』
 ディスクアニマルを砕いた手を上に向け、姫は残虐な笑いと共に言った。
 その時、炎の鳥型の式神が姫の顔に飛びかかった。
 ──その式神は、大洋から受け取った陰陽環を腕に巻いた純友が送り出したものだった。
260見習いメインストーリー:2007/03/12(月) 01:07:22 ID:/9VNQ3mE0
「知ってるよ、そんなこたァ!」
 姫の首筋に、大洋が落下速度と全体重をかけて叩き付けた白銀の杖が深く食い込み、姫は前のめりになって
その場に倒れた。すかさず大洋はその背に飛び乗り、無事だった方の姫の腕を足で踏みつけ、杖を突き刺した。
 姫は大洋の足の下で獣のような悲鳴を上げた。
 同じく野獣の咆哮を上げ、童子が首に取り付いていた白クグツを無茶苦茶な動きで振り放し、大洋の顔面に
渾身の力を込めた拳を叩き込んだ。血飛沫を上げながら、銀の杖を手放して大洋は背後に吹き飛ばされた。
『許さん!!』
 童子は後ろを振り向くと、白クグツを蹴り付け、空中を十数メートルも吹き飛ばした。
 更に童子はその手を白クグツに差し向け、掌に破壊光線を発射する直前の輝きをため始めた。
 鼻と口から流血した大洋が、半身を起こして叫んだ。
「多美ちゃーん!」
 その時すでに、そこに走り込んでいた純友が、童子の方を向き白クグツを庇い立った。
『貴様ごときにどうにかできると思っているのか! 死ね!』
 童子の手から発された特大の破壊光線が、一直線に純友目がけて突き進んだ。
「純友ォォォォーッ!!」
 さらに絶叫する大洋。破壊光線の光に飲み込まれる純友。その後ろに伏したままの白クグツ。
 轟音が、光が、衝撃が、純友たちのいた場所を揺るがし、広範囲に爆発した。
 純友の身につけていた陰陽環が、ぼろぼろになって大洋の足元まで飛んで来た。
「……純……友……」
 燃え盛る炎を前にして、大洋は茫然と立ち尽くした。
 その時、純友たちがいた場所を覆い尽くす爆炎が、不意にその中から巻き起こった風に吹き飛ばされ──
 そこに、全身を黒装束で固めた人物が、黄金の杖を握り前に突き出して立っていた。

四十五之巻「巻き起る風」了
261見習いメインストーリー:2007/03/12(月) 01:09:19 ID:/9VNQ3mE0
次回予告

『橘さんを護るためなら……ぼくは、どんなことでもする』
『よくもやってくれたな!』
「な……なんでもねえよ、いいから多美ちゃんを頼む!」
(おまえの命はまだ──半分残っている)

見習いメインストーリー 四十六之巻「流れ込む光」
262名無しより愛をこめて:2007/03/12(月) 01:19:31 ID:nype+7xD0
見習い作者さま、乙です。
いよいよ物語も佳境のようで・・・。
頑張って!
263高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/03/13(火) 00:14:22 ID:KSMNVfxt0
本編書くのに時間が掛かっているので、その場しのぎの小ネタを一本

「城之崎さん」

2006年頃、四国支部
若い鬼「いやぁ、ローゼンメイデンって面白いなあ……」
城之崎支部長(以下城)「ローゼンメイデン?アイアン・メイデンなら知ってるけどな」
若い鬼「あ、支部長。これですよ、これ」(そう言いながらマンガを見せる)
城「この衣装は……MALICE MIZERか?ほら、Mana様がこんな衣装で……」
若い鬼「違いますって。かの麻生大臣も読んでいると言う……」
城「まあ小泉の純ちゃんもXが好きだって公言してたしな」
若い鬼「バンドから離れて下さいよ。アニメ化もしているんですからね」
城「XもRusty Nailのプロモがアニメだったな。懐かしいな、あれはYOSHIKIがビームを……」
若い鬼「だからバンドから離れて下さいって。……丁度今手元にDVDがあるんで見てみますか?」(再生)
城(主題歌を聞きながら)「やっぱMALICE MIZER系だな。ほら、Gacktが居た頃の楽曲でさ……」
若い鬼「まあ確かに似てますよ。でも……」
城「歌ってやるよ『月下の夜想曲』。何かに導〜かれ〜森の中を……」
若い鬼「いい加減にしろや、オッサン!」

コンペキ(と言うかその歳でビジュアル系バンドの話題がぽんぽん出てくるあなたって絶対マイノリティーよ……)


…うん、書かなきゃ良かったかもね。ローゼンも某所のネタ絵でしか見た事ないし。
だが私はあ(ry
264まとめサイト(簡易版):2007/03/13(火) 00:45:03 ID:AH6nx8Li0
『皇城の守護鬼』の用語集作ってみたの。ヽ(゚∀゚ )ノ ミテミテー

ttp://hwm7.gyao.ne.jp/lica/hero_ss/glossary/index.html

用語集サイトさんのあのフォーマットで『皇城〜』のも見たいナって思ってて、
でもナンかそれはムリそうなので、、、自分で作っちゃいマシタ。
時間できたら、最初のスレから見ていって、単発モノとかも拾っていきたいデス。
265名無しより愛をこめて:2007/03/13(火) 01:53:19 ID:hi1HTsnj0
>>264
wikiへのリンクは?
266まとめサイト(簡易版):2007/03/13(火) 02:19:48 ID:AH6nx8Li0
>265
用語集サイトさんを補完するつもりナノデ、wikiへのリンクは作らナイですよ。ヽ(゚∀゚ )ノ
まとめサイトの方も、その1(ttp://olap.s54.xrea.com/hero_ss/)の方を補完するつもりナノデ、
その2(ttp://www.geocities.jp/reef_sabaki/)の方のリンクはナイですし。
・・・まとめサイトさん、もう引退しちゃったんでしょうか?
267名無しより愛をこめて:2007/03/13(火) 16:40:40 ID:hi1HTsnj0
バラバラってのもアレだし全部リンクで繋げようぜ
まあwikiの管理人がどこいっちゃったかわかんないから繋がらないけど
268名無しより愛をこめて:2007/03/13(火) 17:42:40 ID:b8boVb2V0
( ^ω^)
269翠星石を愛する用語集サイト:2007/03/14(水) 00:08:17 ID:oBb54BZ70
>>263
うは、角や王の口からローゼンメイデンだとかマリスミゼルだとかの単語が聞けるとは
アリプロは嫌いじゃないんですが、どうにもヴォーカルがワンパターンで……
一期のOPは月下の夜想曲がまんま合うと思いました
と、そんなロックマニアの城之崎支部長にはDir en greyを推したい!
城之崎さん、tetsu在籍時のマリスもご存知なのでしょうか……?

まとめサイト(簡易版)さんが頑張っていらっしゃるので、いい加減俺も用語集を追記します
(メインでやってる用語集のタネがようやく尽きかけてきたとも言う)
270裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/03/14(水) 21:11:49 ID:WiL2DHuIO
瞬過終闘―― 《十 デンキ 群がる仇(いぞく)》

「‥‥どうしようか?」
「‥‥と、言われましてもね」
太陽が昇っても、たちばなの地下から『鬼』は出られずにいた。イチゲキとイブキは、それでも苦笑しながら頭を掻く余裕を見せる。
「ま、何とかなる‥‥ か」
勢地郎から外出を禁じられた鬼達は、家族を山寺等に避難させながら、次なる事態に備えていた。
「‥‥何とかする、でしょう。このまま『向こう』の出方を待っていても、ジリ貧です」
腕を組むバンキが珍しく不機嫌に発言する。昨日出会った日高の不敵な態度が、この異常事態に連鎖爆発を予感させていた。
「今回に限って言えば、相手は人間です。それも、かなり破壊的な‥‥」
「‥‥それは解ってるつもりだよ。ただ、僕達は『鬼』だ。相手が『人間』だからこそ‥‥」
イチゲキに合わせるイブキが、敢えて言葉を繋いだ。
「戦えない。 ‥‥と言うよりも、この事件が始まった瞬間から僕達『鬼』は‥‥」
頷くバンキは、階段に近付きながら眼鏡を直した。
「‥‥それはまだ、決まってない。 ‥‥戦ってないから、『負け』てはいない‥‥」
「‥‥マダ、負けテない! そーです! ミナサンもボクも、負けテないッス!」
やっと自分が話せる間を見つけたデンキの声に、鬼達は笑った。

気絶したままの明日夢を横に、日高は車の後部座席で目を閉じていた。サッキのバイクが横を走り、ハイキは遊びを中断されて膨れている。
「‥‥着きましたよ」
運転手の声と停止した車で目を開ける日高は、サッキに明日夢を担がせ、再び研究所のある地下に潜った。
「‥‥起きていたのか」
日高達を待っていたクジキは、外出の準備を済ませて待ちわびていた。
「‥‥そろそろ、ヤりたいからな。‥‥秩父の山にヤマアラシの反応が有った。『鬼』達も出てくるだろう」
日高の視線を受けた小暮は、壁のモニターを見るように促すだけだった。
関東周辺のマップには、人工衛星にキャッチさせた魔化魍から発せられる生体電波の点が、リアルタイムで居場所を知らせている。
「あ! アタシもいきた〜い!」
「‥‥いいぜ、来いよ」
佇む小暮に、二人を止める権利はなかった。
271裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/03/14(水) 21:13:19 ID:WiL2DHuIO
「‥‥魔化魍、ですか」
勢地郎の話では、ヤマアラシではないかと言う。頭脳としてバンキを残し、イチゲキとデンキは雷神に乗り込んだ。


童子と姫を背に乗せながら悠然と木々を薙ぎ倒し、ヤマアラシは人里を目指していた。しかし二体、否二人の瞳には何の動きも感じられない。
何故生まれたのか。何故この子を育てたのか。何故これから人を襲うのか。
それは全て決められていた。
クグツが死に絶えた後も、洋館の男女によって日本各地に撒かれた、魔化魍の『種』。洋館の男女が5年前に倒されてからも、地中に埋め込まれた『種』は、不定期に童子達を産み続けていた。
永遠に果てる事のない、『プログラム』に等しい『本能』と共に――

山を下りて3時間。登山客や地元の老人を食らい成体となったヤマアラシに、無数の銃弾が撃ち込まれた。
童子と姫は倒れる子から飛び降り、武者童子、鎧姫に変化する。この戦力も、この身体も、何の為にあるのか。
迷いを許さず、ヤマアラシは黒い集団が放つ銃弾の一斉射撃に倒され、土くれや枯葉に爆散した。
「‥‥止めろ」
集団と武者童子達の間に歩み出たクジキの声に、集団達は小型ガトリングガンを下ろす。銃口から立ち上る硝煙が風に消され、クジキは無言のまま、腰から変身音叉を手にした。
「‥‥鬼か」
武者童子の女声に何も言わず、クジキは唇を歪めて展開した音叉を額にかざす。
集団を一息に飛び越え、赤い炎に包まれるクジキの隣に着地したハイキもまた、好奇心を露にした笑顔に空色の落雷を受けた。
「‥‥お前達は手出しするな。どの道一瞬で終わる」
変身を終えたクジキは、胸と肩に装甲を持ちながらも、赤い身体に5本の角を持つ、『鬼』そのものだった。
変身を完了したハイキと共に歩き出すクジキへ、武者童子は矛を、鎧姫は剣を振りかぶって走りだす。
次の瞬間。
自分達の存在意義すら知らされぬまま破片となった二体の中で、クジキとハイキは既に別の方向を向いていた。
「‥‥やっと、お出ましか」
「う〜、なんかムズムズする〜! アタシもっとタタカいたいよぉ〜!」
「心配するな。二人来た」
雷神から降りたイチゲキとデンキを見つめるのは、数十の双眼‥‥
272裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/03/14(水) 21:16:10 ID:WiL2DHuIO
黒い集団はそれぞれ、ヘルメットを脱ぎ捨てた。そこから現われたのは、紛れもない、ただの人間達だった。
「‥‥‥‥」
「‥‥イチゲキサン、魔化魍は?」
「‥‥どうやら一足遅かったらしい。ヤツ等が倒したようだ」
「倒しタ!? あの人タチ、鬼なんですか!?」
「‥‥いや。気をつけろ。『敵』だ」
イチゲキはデンキに解りやすく、初めて見る鬼達を警戒させた。デンキはその言葉に烈雷の後継武器・音撃真弦『烈電』を構え、イチゲキも装備帯の背から音撃双弦『烈光』を取り出した。
「‥‥『鬼』だ!」
その声は、クジキでもハイキでもなく、ましてイチゲキやデンキでもなかった。
これから戦場となる筈の舞台で、既に背景となりつつあった黒い集団の一人が、イチゲキ達に向けた声だった。
「アイツ達が鬼だ!」 「そうだ、ヤツ等を許すな!」 「クジキさん、殺して下さい! ヤツ等を!!」 「そうだ! 殺せ!」 「殺せ!!」 「殺せ!!」
人間達の声は揃い、山々に谺する。イチゲキとデンキはその圧倒的な欲望に怯みかけそうになった。
「殺せ!!」 「殺せ!!」 「殺せ!!」 「殺せ!!」 「殺せ!!」 「殺せ!!」 
クジキが手を上げると、咄嗟に人間達は声を飲み込む。先程見知らされたその力は、既に人間達を圧していた。
「‥‥と、言う事だ。随分恨み買ってるな、『鬼』のお二人さんよ」
「‥‥俺達はただ、魔化魍を倒しに来ただけだ。『人間』と戦うつもりはない」
あくまでも『鬼』として立つイチゲキの言葉を、クジキは鼻で笑った。
「‥‥アンタ、何年『鬼』をやってる? ‥‥何年、『その世界』にいる?」
イチゲキは静かに答えた。
「‥‥鬼になったのは10年前だ。『猛士』を知ってからは‥‥20年近いな」
クジキは頷いたまま頭を下に向け、微かに身体を震わせ始めた。
「フフ‥‥フハハッ! ハーッハッ!! やっぱりお前達は馬鹿な『偽善者』だな! 20年も気づかなかったのか!? 自分達の『罪』に!?」
「アハハハハッ! ‥‥ね〜ぇ? クジキ? ナニがそんなにオカシいの!?」
ハイキの言葉を無視したクジキは、自分の背後を親指で差しながら言った。
「‥‥コイツ達は、その『罪』の犠牲者だ。コイツ達は『鬼』抹殺に志願した、魔化魍に喰われ殺された人間の家族達だよ」

続く
273見習いメインストーリー:2007/03/15(木) 00:11:42 ID:AB9VquZc0
前回は>>257から

四十六之巻「流れ込む光」

 爆炎と塵芥を吹き飛ばす風に黒い装束の裾をなびかせ、その人物は、童子と対峙していた。
 黒い帽子とフードの間の隙間にのぞく目も、帽子の陰にその表情を隠していた。
 鼻から下を流血で染めた大洋は、その人物に声を掛けた。
「す……純友……!」
 黒装束の人物の陰になっていた目元が光り、人ならぬ響きを帯びた声が言った。
『橘さんを護るためなら……ぼくは、どんなことでもする。──最後の手段だったけどね』
 背後の足下に倒れている白クグツを振り返り、黒クグツ姿の純友はその側にうずくまった。
 白クグツは、赤い瞳を開いたまま、一切の動きを停止していた。
『まずい』
 和装の女──タチバナの言葉を思い出した。
(あの白クグツには、もうずいぶん餌を与えていない。このまま時が経てば、この世から消滅しますよ)
 また、和装の男──スサは、純友が黒クグツの姿に変われば、呪術が使いこなせると言っていた。
 黒装束の純友の手が自然と動き、白クグツの胸にかざされた。黒クグツの姿に変身した瞬間に、
自らの中で何が変わったのかは明確にはわからないが、自分が多美を救うために何をすれば良いか、
誰に聞かずともわかっていた。この姿になるということは、ある意味、スサとの何かのゲートを通ずる
危険な状態であると解ってきたが──もう、ここから引き返すつもりもなかった。
『分活の術──これで助かるよ、橘さん』
 かつて、ザンキがトドロキに対して行っていた事と同様の術を、自分が行っているのがわかった。
 自らの体から放出された光が、白クグツの体に流れ込んでいくのが純友の目には見えた。
 ──そして同時に、白クグツの体から黒い邪気が吸い出され──それは、純友の胸元に流れ込んでいた。
 大洋にはその光や邪気を見ることはできなかったが、純友が多美を救おうとしていることはわかった。
『させるか!』
274見習いメインストーリー:2007/03/15(木) 00:12:56 ID:AB9VquZc0
 純友たちに再度破壊光線を放とうとした童子の背後で、大洋は銀色の杖を拾い上げると、その鋭い
先端で童子の上腕を刺し貫いた。
「そりゃ、こっちの台詞だ……!」
『う、ぬ……!』
 痛みに耐え、童子は無理矢理振り向いた。白銀の杖が、童子の腕に刺さったまま大洋の手を離れる。
『よくもやってくれたな!』
 童子の手が輝き、至近距離から破壊光線が大洋に放たれた。咄嗟に躱した大洋だったが、脇腹を何ミリ
か削り取られ、鼻と口からに続きそこからも流血した。痛みに倒れ、大洋は思わず絶えかねて声が出た。
「うわああぁぁぁぁぁーッ!」
 悲鳴を聞いて、黒装束の純友は顔を上げた。
『た……大洋!』
 地面に倒れたまま、大洋は言った。
「な……なんでもねえよ、いいから、多美ちゃんを頼む!」
『なんでもないってことはないだろ、そんなに血が出てるのに!』
 腕に刺さった杖を、痛みに耐えながら引き抜くと、童子は、腕の傷をもう一方の手で庇いながら、
地面に転がっている大洋を力任せに蹴りつけた。
「なんでも……ねえって……言ってんだろ、うぐァ!」
 顔を蹴りつけられ、大洋の語尾が崩れた。
『や、やめろ……』
 立ち上がりかかる黒装束の純友を、大洋の声が制した。
「とに……かく、お……まえは、多美ちゃんを救え!……その……前に、こっちに来てみろ、うがッ!
……おまえ、絶交だぞ、バ──バカヤロウ……!」
275見習いメインストーリー:2007/03/15(木) 00:14:22 ID:AB9VquZc0
 涙をこらえ、黒装束の純友は多美への分活の術を続けた。分活の術とは、自らの命を二分の一単位で
他者に渡すものである──という認識が、スサの意識と回廊が繋がった純友の意識に流れ込んで来た。
 やがて、規定の量が多美に注ぎ込まれたらしく、自然と純友の体から流れる光の放出が止まった。
 純友は大洋のことを気にしつつ、心配げな表情で多美を見守った。
 赤かった瞳は元の黒目がちな彼女の目に戻り、今までずっと動きを止めていたその視線が、純友を捉えて
驚きに見開かれた。純友が彼女の口元を覆っていたフードを取り外すと、かすかな声が彼女の喉から流れ出た。
「──須佐──くん……?」
 その声は、黒クグツと化した純友のように、奇妙な響きを帯びたものではなく、多美そのままの声だった。
『橘さん……久し振りに会えたのに、ごめんね。──すぐ、大洋のところに行かなくちゃならないんだ』
「田島くんも──いるの?」
 多美は、周囲にゆっくりと視線を巡らせたが、遠くに、何かを蹴りつけている、烏帽子を被った鎧装束の
男が一人いるだけで、あとは誰も立つ者もいない、荒れ果てた大地が続くのみだった。
 黒装束の純友は立ち上がり、黒い服を翻して多美のそばを離れた。
 童子と大洋のところに駆けつけた純友が目にしたのは、全身くまなく蹴りつけられて、顔も体も流血と
泥で汚れきった、満身創痍の大洋の姿だった。常人離れした威力の童子の脚力は、大洋の体をなかば地面
に埋もれさせるほどたった。──もうとっくに意識は途絶えているらしく、大洋は、更に童子に蹴りを
入れられても、衝撃に任せて体を揺らすだけで、まったく動かなくなっていた。
『貴様ああああァァァァーッ!』
 叫んだ黒装束の純友が、握った杖を突き出して童子に向けた。先程、破壊光線から自分と多美を護った
時と同様に風が巻き起こり、童子の体が宙高く舞った。数十メートルの高所で突如その力から解放された
童子は、口から悲鳴を迸らせながら急降下し、大地に激突して、土煙の中で動かなくなった。
『大洋ッ!』
276見習いメインストーリー:2007/03/15(木) 00:16:00 ID:AB9VquZc0
 地面に埋もれていた大洋を引き上げ、傍の地面に寝かせて名前を呼んだが、まったく返事がなかった。
純友は、最悪の事態を想像して蒼白になった。
『大洋……ッ!──お願いだ、目を開けてよ! 死ぬな、死んだら絶交だぞ大洋!』
 耳元で泣き叫んでも、大洋はピクリとも反応しなかった。
(『分活の術』だ──)
 その時、どこからか、聞いた事のない、低い男の声が聞こえてきた。
(おまえの命はまだ──半分残っている)
 その声は、頭の中に直接響いてくる声だったが──それは、自らの懐から何者かが喋っている様にも感じた。
黒装束の胸元を覗き込むと、銀色のディスクが鈍く光を帯びていた。
『消炭鴉、おまえか?』
 多美に自分の命を半分わけたため、確かに純友には残り半分の命が残っている。
 だが、それを更に他人に渡せば──
『その半分を渡したら、ぼく──死ぬの?』
(死ぬ……かもしれない。それをするかどうかは──お前次第だ……)
 ふいに、自分が初めて黒クグツと化した時に、スサが去り際に言っていた言葉が思い出された。
(その音式神は我らが血族に仇なす者。そしてお前も、その血族であること。それを忘れるな)
 消炭鴉が今まで純友たちに様々な手助けをしてきたのは、ただ「凄・橘」の血族に恨みを持つからであり
──そして純友もその血族であり──このディスクアニマルに宿る魂は、決して純友の味方ではないという。
 そうかもしれない。違うかもしれない。だが、純友の心は既に決まっていた。
『消炭鴉……おまえは、もしかしたら憎しみのために戦っているのかもしれないね。でも──ぼくも、
大洋も違うんだよ。ぼくらは──人を護るために戦っているんだ。……だから、そのためならぼくは……』
 黒装束の純友の体から立ち上る光が、傷だらけの大洋の体に流れ込んでいった。

四十六之巻「流れ込む光」了
277見習いメインストーリー:2007/03/15(木) 00:17:33 ID:AB9VquZc0
次回予告

(少年よ……おまえにはまだ、武器がある)
『答……答を──』
「……これじゃ、いつもと逆だね……。いつもは、それ……ぼくの、役目でしょ」
「うる……せぇ、バ、バカヤロウ。──泣いて、ねぇよ……」

見習いメインストーリー 四十七之巻「目覚める竜巻」
278名無しより愛をこめて:2007/03/15(木) 18:41:34 ID:4Cg5wxE4O
裁鬼作者さん、見習い作者さん乙です。
279名無しより愛をこめて:2007/03/16(金) 01:24:40 ID:7vTAYJOp0
デンキのセリフのところどころにカタカナが入るのは外人だから?
280高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/03/16(金) 19:32:07 ID:QZij9VEk0
「城之崎さん 第二話」

2006年神無月、吉野総本部。支部長会議。
一文字総本部長(以下一)「これより会議を始めたいのですが……何故四国支部だけ代理人なのですか?」
コンペキ(以下紺)「申し訳ありません、申し訳ありません」
一「四国支部長はあの人の友人なので、あまり厳しい事は言えませんが……とりあえず理由を話していただけますか?」
紺「……へ行ってしまいました」
一「え?」
紺「……ロックフェスへ行ってしまいました。『DIOやANTHRAXが来るんだよヒャッホゥ!』とか叫びながら……二日前から……」
一「……えっと、四国支部長は会議と私事とどちらが大事なのでしょうか……」
紺「フェスに決まっています……。申し訳ありません、申し訳ありません!」
一「……」
その他の支部長「……」
一「……え〜、では定刻を少し過ぎましたのでこれより会議を始めたいと思います」
紺「本当に申し訳ありません!主人には後で厳しく言っておきますから……」


城之崎支部長「ぶえ〜くっしゅ!誰か俺の噂でもしてるのか?おっ!次はあっちのステージか!どけどけ餓鬼共!年季が違うんだよ!」

終わり。
281高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/03/16(金) 19:36:00 ID:QZij9VEk0
「城之崎さん 第三話」

2007年如月、四国支部。
若い鬼A(以下A)「支部長が悩み相談をしてくれるそうだ」
若い鬼B(以下B)「へぇ〜、あの支部長が……。じゃあ行ってみるか」
城之崎支部長(以下城)「よしお前ら、話せ」
A「戦いとプライベートの両立について……」
B「音撃弦の扱い方なんですけど……」
若い鬼C「恋愛相談とかって……ありですかね?」
城「ふむふむ、よし分かった」(各人の悩みをメモしながら)
B「あの、それで回答の方は……?」
城「ん?この悩みはな、ローリング・ストーン誌の布袋寅泰の相談コーナーに責任持ってメールしておくから。答えてもらえたらいいよな、HOTEIに」
その場に居た全員「お前が答えるんじゃないのかい!」

終わり。
次回投下予定の本編もこんなノリになるとあらかじめ予告しておきます。
282威吹鬼ストーリー考案中:2007/03/17(土) 12:35:20 ID:IeZ0UKSkO
イブキさんとアキラちゃんをメインにした物語を考案思索中です。
近々発表予定。
283名無しより愛をこめて:2007/03/17(土) 20:22:52 ID:Q4EP+qDiO
高鬼SSさんハードロック好きみたい。
つくづく音激テーマの仮面ライダーで8耐チーム監督の
宮城光さんの同級生を起用しなかったか悔やまれる。
関西メタルの雄アースシェイカーを
284名無しより愛をこめて:2007/03/18(日) 00:01:17 ID:EDdRyYlO0
>>282
イブキさんもあきらちゃんも大好きなので、すごい楽しみだ〜!
弟子時代のお話ですか?
とにかく期待してます。(・∀・)
285見習いメインストーリー:2007/03/18(日) 14:25:03 ID:haSd8ufl0
前回は>>273から

四十七之巻「目覚める竜巻」

 静かになった平原で大洋が意識を取り戻した時、何か違和感があった。
 自分の体を見回し、それが何であるか判った。服の脇腹部分が削られ血でそまっていたが、その下には、
傷ひとつなかった。同様に、顔も血や泥がこびりついているようだったが、どこにも痛みがなかった。
全身を童子に蹴りつけられたはずだったが、そのダメージも、まるでなかった。
 距離を置いて白装束姿の多美が横たわり、そして自分のすぐ近くには、黒装束姿の純友が倒れていた。
「純友……?」
 その時、大洋が今までに聞いた事のない、低い男の声が頭の中に流れ込んできた。
(その者は……『分活の術』を使い、半分を白クグツに……もう半分をおまえに明け渡した)
「なんだと……?」
 大洋にとっては、その声は誰のものでも良かった。ただ、その内容に激しく心が動揺した。
「おれを助けるために──おまえが、命の残り半分を使っちまったっていうのか?」
 大洋は純友の口元を隠すフードを取った。その下から現れた鼻と口は、弱いながらも呼吸をしていた。
「い……生きている! 生きてんじゃねぇか、おまえ……!」
 目の端に涙を浮かべ、笑顔になって大洋は言った。
(命というものは……そうそう物差し通りに計れるものでもない。スサの意識は、命を渡す単位が二分の一
だと伝えてきたが──それも、この展開を予想して掛けた……罠かもしれない。今は……器からすべての
水を流し終えた跡に残る水分のように……命が残っている。だが、それもやがて水滴が蒸発するように──)
『生きてるのなら、これから、殺すよ』
 不意に声がして大洋が顔をあげると、満身創痍の鎧装束の童子が、黒クグツの黄金の杖を手に立っていた。
『殺すよ。その先にきっと──我らの生きる答がある』
 鎧装束の姫が、白クグツの銀の杖を握りしめて言った。 
「殺すだと? 冗談じゃねえ。こいつの命も──こいつにもらったおれの命も、そう簡単に渡せるかよ」
286見習いメインストーリー:2007/03/18(日) 14:26:44 ID:haSd8ufl0
 決死の覚悟で、大洋はゆっくりと立ち上がった。ディスクアニマルも陰陽環も破壊され、二本の杖も
奪われ徒手空拳だったが、多美と純友を「スーパータイプ」の手にかけさせるわけにはいかなかった。
(少年よ……おまえにはまだ、武器がある)
 低い声が、大洋に語りかけた。
(その左腕につけている、それは何だ)
 大洋は、自分の腕に嵌まる鬼弦を見た。
(分活の術を受けて、その者から命を半分もらったおまえには、常人を超える力が宿っている。元々お前
には、半分以上の命が残っていたからだ。今だけならおまえは──その鬼弦を使ってできることがある)
「どこの誰だが知らねえが、ありがとよ」
 大洋は童子たちに向かって駆け出しながら、鬼弦を弾いた。──分活の術を命じたのが、横たわる黒装束
の純友の胸元で鈍く輝くディスクであり、それが自分が会話していた相手であることも、知らぬままに。
「うおおおおぉぉぉぉーッ!」
 鬼弦を装着した左腕を額にかざし、大洋は荒野を走り続けた。その額が熱くなり──鬼面が浮かび上がる。
 大洋の全身を緑色の風が取り囲み、そこに出現した竜巻が童子と姫にぶつかっていった。
 竜巻に弾き飛ばされ、杖を投げ出し別々の方向に吹き飛ばされていく童子と姫。
 彼らの前に──手刀で緑色の風を割って、銀色の体に弦を巻き付け、これも銀色の無貌に緑色の隈取り
を持つ、二本角の鬼が姿を現した。一時的に常人以上の生命力を持った大洋が変身した、鬼の姿だった。
『やっと変身したか、鬼め』
『鬼め』
 立ち上がると、童子と姫は、その二本角の銀色の鬼──大洋変身体に向かっていった。
『ああ、鬼だよ。──おれとあいつ、二人で一人の──鬼だ!』
287見習いメインストーリー:2007/03/18(日) 14:29:32 ID:haSd8ufl0
 大洋変身体の突き出した拳を中心として竜巻が発生し、童子の胸に命中すると、そこを中心に回転
しながら弾き飛ばされ、童子は壊れた人形のように地面の上を二転、三転していった。
 続いて姫に近付くと、大洋変身体は身を屈めて下から突き出した腕で姫の顎を打ち抜いた。
 この一撃も竜巻を伴い、回転しながら姫は宙を吹き飛んだ。
『おれたちを殺すことが、おまえらの生きる答になるとかぬかしてたな。だったら、それからおれたちの
命を護るのがおれの生きる答だ』
『くっ……食事さえ採れていれば、お前ごときに──』
 舌打ちをした童子が、姫を促しその場から逃げ出した。それを大洋変身体は追いかけた。
 童子は、威力が衰えた破壊光線を大洋変身体の足元に放ち、その隙をついて距離を開けた。
 ──やがて姫が、卒塔婆を束ねた柵が立ち並ぶ、枯れ葉で満たされた小道の上で足を止めた。
 その場で膝をついた姫の前に回り込み、童子は自分も腰を落として尋ねた。
『どうした……おい、しっかりしろ』
『答……答を──』
 姫の言葉が止まり、童子は思わず姫の体をかき抱いた。その腕の中で、姫の体の崩壊が始まり、
確かにそこにあった体の感触や重みはなくなっていき──姫のすべては塵芥に帰した。
 そして、今の今まで姫の背中に回していた童子自身の手も、ぼろぼろと粉末状になり崩れ始めていた。
大洋変身体がその場に追いついた時、童子は悲鳴を上げながら全身が粉となって崩壊していく所だった。
 彼らが完全に塵と化すと同時に、大洋変身体の腕にあった鬼弦の、有り合わせのもので修復した部分
に亀裂が入り、腕環が外れ落ちた。同時に、大洋の顔の変身が解けた。
「これがてめえらの『生きる答』かよ」
 枯れ葉のたまった地面から壊れた鬼弦を拾い上げると、大洋はもと来た道を引き返し始めた。
288見習いメインストーリー:2007/03/18(日) 14:31:01 ID:haSd8ufl0
 倒れていた黒装束の純友の上体を抱え起こし、黒い帽子を取ると、大洋は純友に言った。
「あいつら、塵になって消えちまったぜ」
「……そう。良かった。ぼくたち……橘さんを、護れたんだね」
 消え入りそうな声で、それでも純友は笑顔になって言った。
 彼らから十数メートル離れた地面に横たわり、白装束の胸をゆっくりと上下させて眠っている多美
の寝顔を確認して、大洋は頷いた。
「ああ。おまえのおかげだ、純友。──おまえの力があったから、こうしておれは鬼になれたんだ」
「え……? そうなんだ……」
 顔だけ変身解除した状態であるため、純友にも大洋の鬼の体は見えているはずだったが、
純友はゆっくりと上げた手で、大洋の上体に巻き付く弦を手で確かめてから言った。
「ああ……本当だ」
「純友──? おまえまさか、目が──」
「……なんだか……目の前が暗くて。ごめん、気が遠くなってきちゃった……」
「お、おいッ! 待てオメー、何……言ってやがる……」
 ふいに、大洋の声が途切れ途切れになった。純友は、自分の頬に熱いものが何滴か落ちてきたのに
気付いて、わずかに笑いながら、絶え絶えな声で言った。
「あれ? 大洋──泣いてるの? ぼくたち……橘さんを……護れたのに……ハハ……これじゃ、
いつもと逆だね……。いつもは、それ……ぼくの、役目でしょ」
「うる……せぇ、バ、バカヤロウ。──泣いて、ねぇよ……」
 大洋の両目から、大粒の涙が、後から後からこぼれ続けていた。
 気がつくと、遠くの岩場の向こうから、獣の大群の咆哮と銃声、それに剣戟の音が聞こえていた。
 そして空高く、力強い太鼓の音が鳴り響いていた──

四十七之巻「目覚める竜巻」了
289見習いメインストーリー:2007/03/18(日) 14:32:42 ID:haSd8ufl0
次回予告

「一年間、良く頑張ったね」
「大洋くん。今、吉野の本部から連絡があったんだけど──同級生の、橘さんについて」
「お別れの挨拶の時くらい、素直になりなさい」
「じゃあな、純友」

見習いメインストーリー 最終之巻「別離(わかれ)る友」
290名無しより愛をこめて:2007/03/18(日) 20:52:47 ID:rk5EGcD70
見習いさん次回が最終之巻ですか?さみしいですが
どうぞ大洋くんと純友くんに良い未来が開けますように。
291名無しより愛をこめて:2007/03/18(日) 21:12:28 ID:STNLskRKO
見習い作者さん乙です。なんだか熱いものが込み上げてきましたよ。
最終回楽しみにしてます。
292イブキストーリー考案中:2007/03/18(日) 21:28:16 ID:9ON02143O
今はTVシリーズ以前と以降の話にしようかなと考えています。
293名無しより愛をこめて:2007/03/18(日) 21:39:48 ID:vj+IGfLU0
>>292
一応忠告しておくけど・・・。
このスレの職人たちは、世界観を裁鬼メインに統一したものを結構書き上げてるから、
もし自分も世界観を統一しようと思うのであれば、その辺も考えといた方がいいとおもうよ。
294名無しより愛をこめて:2007/03/18(日) 22:46:48 ID:o1vT4JDt0
>>293
設定の統一指定はないんだから、>>292の書く内容をあんまり縛らなくともいいんじゃない?
読む人が「あわねぇな、これ」と思えば枠から外す(別扱いにする)だろうしさ。
295名無しより愛をこめて:2007/03/19(月) 00:09:51 ID:ZmPl/WP/0
まぁ俺が言いたいのは、統一するんだったら「統一する」とでも言ってくれた方が読みやすいから、
統一するか否かどちらかにして意思表明して欲しいってだけ。
296名無しより愛をこめて:2007/03/19(月) 00:18:04 ID:xECArTqI0
>>295
なるほど、理解。
新規の人は投下の際にそう前振りして貰えれば、助かるよね。
>>292はその辺、投下の際に前振ってくれるかな?
297イブキストーリー考案中:2007/03/19(月) 07:37:34 ID:+r9IojWcO
設定をお借りしたりすることもあるとは思いますが、基本的にはオリジナル展開になるかと思います。
298イブキストーリー考案中:2007/03/20(火) 07:13:56 ID:dJTDpaMoO
アキラの両親が魔化魍に殺されたのは、いつなんでしょうか?資料によってアキラが7歳の時というのもあれば14歳の時というのがありますよね。
299名無しより愛をこめて:2007/03/20(火) 21:37:57 ID:e05M0mGP0
>>298
7歳てのは「特写写真集 魂」に載ってる(とWikipediaの響鬼の頁に書いてあった)けど
14歳てのはどの資料?
300名無しより愛をこめて:2007/03/20(火) 22:53:54 ID:5rhqt2/M0
そんなん、物語が始まった時点から数えて、2年以上昔ならいつだっていいんだよ!
劇中で「殺された時の事を忘れだした〜」って言ってたから、およそ14で間違いないんじゃないか?
301見習いメインストーリー:2007/03/21(水) 11:52:04 ID:pkc+2cCS0
前回は>>285から

最終之巻「別離(わかれ)る友」

 一月最後の日曜日──その日、猛士関東支部に所属していた見習い一名に対して、オリエンテーリング
のNPO法人「TAKESHI」の内々定が出た。
「一年間、良く頑張ったね」
 甘味処「たちばな」一階の従業員用休憩室で、猛士事務局長、兼関東支部長の立花勢地郎は、
見習い研修を修了した田島大洋に対して、笑顔で内々定の書類を手渡した。
 深々と頭を下げ、神妙な面持ちで大洋はその書類を受け取った。
「まだ来年の三月までは高校生だからね、その間はしっかり勉強するように」
 これにも、大洋は「はい」と真面目に返事をした。
「じゃあ、内々定の受領は終了、ということで。正式な内定は、時期が来たら、また」
 にこやかに言い、勢地郎は店の仕事に戻っていった。
 ──清めの儀に向けて勢地郎は、「凄・橘」から得た情報に対して、本部での調査を進めて徹底的な
裏付けを取り、オロチ鎮めの清めの儀に鬼を集めることが必要であると、本部を説いていた。
 清めの碑の発見の経緯に「凄・橘」が絡んでいたこともあり、本部の全員を説き伏せて関東に鬼を
集結させることに関しては、ぎりぎりまで約束されていなかったが──ここで、小暮耕之助が動いた。
 彼が、総本部長であるイブキの父を説き伏せ、全国各地から関東への鬼の派遣を実現させ──
関東支部の鬼だけでは多勢に無勢であった清めの儀は、何とか成功に終わることができた。
 その日を境に、魔化魍の大量発生現象はなくなっていた。
 勢地郎が去った後、大洋はガッツポーズで言った。
「よっしゃ! これで受験勉強も就職活動もおれにはカンケーねえ! 来年の三月まで遊びまくりだぜ!」
「──なーに言ってるの、素行が悪いと内々定も取り消しよ」
 勢地郎と入れ替わりに休憩にやってきた香須実が、笑いながら言った。
「ヘッヘッヘッ、わかってますよ」
302見習いメインストーリー:2007/03/21(水) 11:54:36 ID:pkc+2cCS0
 調子良く笑いながら、大洋は書類をしまい込んた。
 そこに、日菜佳が顔を出し言った。
「大洋くん。今、吉野の本部から連絡があったんですけど──同級生の、橘さんについて」
「多美ちゃん、どうなんですか?」
「順調に回復しているそうですよ。この半年間の記憶が無い、という点がやっぱり本人にとっては
きつい点なんですけどねぇ〜。そういうメンタルな面も含めて、経過は順調だそうです。若いと回復力も
違うんですかねぇ」
 橘多美は、猛士に繋がりのある神戸の病院に入院していたが、順調に行けば今春には元の生活に戻れる
見通しだった。但し、出席日数の不足から、学校を変えてもう一度高校二年生をやり直す事になっている。
「……内々定、あいつには出ないんスね……」
 大洋が言うと、休憩室に上がり込んでいた香須実と日菜佳は、黙ってお茶をすすり始めた。
 茶碗から口を話すと、香須実は言った。
「だって、仕方ないじゃない、それは──」
 その時、滝澤みどりが地下から上がってきた。その後ろで、何やら泣き叫んでいる声がした。
「いっしょにおやつ食べよ」
 休憩室に笑顔をのぞかせたみどりの背後から、泣き声が聞こえてきた。
「うわぁぁぁん、なんで、大洋だけ内々定が出て、ぼくには出ないんですかぁぁぁぁ〜」
 みどりに続いて休憩室に須佐純友が泣き顔を出すと、大洋はそれに向けて言った。
「おれとオマエじゃ人間のデキが違うんだよ、バーカ」
「違うでしょ、大洋くん」と、たしなめてから、みどりはなだめるようにして純友に言った。
「吉野の本部の方針なんだから、しょうがないでしょ〜?」
 みどりは、純友を連れて休憩室にあがった。
303見習いメインストーリー:2007/03/21(水) 11:58:49 ID:pkc+2cCS0
「大学に進学する場合は、猛士以外の職業も視野に入れてもらうために、まず学業を最優先とする。
内々定は、進路が決まってから出すって方針になったって説明したよね? だからわかって、純友くん」
「だって、研修終わったのに内々定も無いって、そんなのないですよぉぉぉ、大洋には出てるのに」
「今回の君たちの研修も、いままでにない実験的なもので、そのうえ本部の方針がますます学業優先に
傾いたりとか、あったから──ごめんね、私にとっても想定外なのよ。まあ、おやつ食べようよ」

 あの日を境に、純友と大洋のまわりにもいくつかの変化が起きていた。
 ──時おり大洋を指導していた陰陽環の男は、あれ以来、大洋の前に姿を現さなくなった。
「努くんの知り合いで、関東の鬼さんのお師匠さんていうと、たぶん弦の鬼だから……裁鬼さんの
お師匠さん、先代蛮鬼さん、先々代蛮鬼さん……そのあたりだと思うけど」
 大洋から相談を受けると、みどりはそう言いながら古い鬼の履歴の束を引っ張り出してきて見せた。
「あ! このオッサン……!」
 大洋は、履歴書の中にあの陰陽環の男の顔写真を見つけた。それを覗き込み、みどりは言った。
「それ、何十年も前の写真なんだけど、今も同じ姿でいたってことは……陰陽環の力を借りて若返った
姿だったんじゃないかな。……大洋くんが気づかないだけで、今も見守ってくれているかもしれないよ」
 そう言って、みどりはいらずらっぽく笑った。
 ──また、ディスクアニマル・消炭鴉は、あの日以来、誰にも起動できなくなっていた。
 あの日、純友は意識を失う寸前、(俺も相変わらず子供には甘いな……)という、男の自嘲気味な
声を聞き、また、懐のディスクから自分に対して光が流れ込んでいる光景を見たような気がしていた。
 後日、ふとした事で見た古文書で、その昔、鴉の式神を愛用していた子供好きな鬼がいた事を知った
純友は、もしかしてこの鬼の魂が、最後に自分の命を繋いでくれたのではないかと考えるようになった。
 純友は、動かぬディスクをお守りのように、首にかけた紐に通して持ち続けた。
304見習いメインストーリー:2007/03/21(水) 12:00:28 ID:pkc+2cCS0
 そして、それから一年と数か月が経ち──二〇〇七年三月、純友と大洋は城南高校を卒業した。
 純友は、城南大学への進学が決まっていた。そして大洋は、表向きはNPO法人「TAKESHI」へ
の就職という名目で、猛士関西支部において正式に鬼に弟子入りし、修行を始めることが決まっていた。
 みどりの「お手伝い」の為「たちばな」地下の研究室に来ていた純友の元に、大洋が別れの挨拶に来た。
「……四月からは関西支部で、今度は鬼の『見習い』だ。これで多美ちゃんとも頻繁に会えるぜ」
 得意そうに言う大洋に、純友も負けずに得意そうに返した。
「そんなの一年間だけじゃないか。橘さん、東京の大学を受けるみたいだから、そうしたらぼくが……」
「その頃には、おれと多美ちゃんの間には切っても切れないキズナが出来てると思え」
 大洋は意地悪そうに笑って言った。
「多美ちゃんのことはおれに任せて、とにかくおまえはサイキョーの武器を造れ。おれが使ってやっから」
「二人とも」
 みどりが割って入って言った。
「お別れの挨拶の時くらい、素直になりなさい」
 大洋は、みどりに小声で言った。
「──こんな憎まれ口でも言っとかねえと、コイツきっと、泣いちまうから」
 それを聞いてみどりが微笑むと、大洋の優しさに気づかぬ純友は、その様子を不思議そうに窺い見た。
 ──研究室を去り際に、大洋は二本指を立てた手を敬礼のように構え、顔の前でバッと左右に振り、
津村努のポーズを決めた。純友は、それに応えるように、やはり敬礼のように二本指を立てた手を翻し、
スッと斜め上に動かして小暮のポーズを決めた。──隣で、みどりも笑顔で同じポーズを決めていた。
「じゃあな、純友」
「うん、またね」
 友との別れの言葉を交わし、見習いとして共に過ごした少年たちは、今それぞれの道を歩き始めた。

見習いメインストーリー 完
305見習 ◆7YV.ta6hAI :2007/03/21(水) 12:03:12 ID:pkc+2cCS0
書き込んだ後に出る「書きこみが終わりました。画面を切り替えるまでしばらくお待ち下さい。」
という表示を初めて見て(こんな画面が出るんだ)と、ちょっと感動?してから半年が経ちました。

ですから、長いかたになると、半年もの間お付き合い頂いたことになります。
本当にありがとうございました。読んでくださった皆さんに、深く感謝いたします。
予定通り書き終えることができましたので、また読み専に戻ります。

今度、久しぶりに創作をやっている友達に会うので、ずっとROMだった私が、2ちゃんねるに
書き込むようになった理由を話してみようと思います。「二次創作小説を投稿したかったので」と。
306名無しより愛をこめて:2007/03/21(水) 12:35:20 ID:ZqJFiU7j0
 見習いメインストーリー様お疲れ様でした。すがすがしい終わり方でした。
なんだか自分の日常でこの二人ともすれ違っていそうな存在感がありました。

 イブキストーリー考案中様もオリジナル展開がんばってください。
いろいろあった分この師弟コンビは話にすると面白いと思います。
307名無しより愛をこめて:2007/03/21(水) 12:47:26 ID:i7UjQOWx0
見習いさんお疲れ様でした!
二人の少年の物語と、そして更新頻度にただただ感服するばかりでした。
308名無しより愛をこめて:2007/03/21(水) 14:21:52 ID:gtEJLbCaO
見習いさん、お疲れさまでした。半年間、ありがとね。
見習いの男の子二人が、いろいろな出来事にぶつかって
泣いたり笑ったりしながら成長していくさまが、なんだか
いじらしかったりくすぐったかったり。


楽しませてもらいました。
乙!GJ!
309名無しより愛をこめて:2007/03/21(水) 15:12:14 ID:n0QK+5jZO
(`;ω;)
見習いさん お疲れさまでした

そしてありがとう
310名無しより愛をこめて:2007/03/21(水) 18:08:42 ID:WWlIPSyvO
泣き虫純友や直進大洋との再会は無いッスか?
(ノ_・。)

純友作成の音激武器を「扱いにくいぜ!」とか憎まれ口叩き
それをモニター転送する飛車の多美ちゃん。
本部でそれを受け取り「…相変わらずだな。」とか呟く純友とか。
妄想広がってます。

しかもこの時期で「卒業」たぁ…
スサ=スサノオで本来の相方が姉の天照大神=太陽=大洋って事?
311名無しより愛をこめて:2007/03/21(水) 19:30:48 ID:v5LSGqXM0
見習い作者様、連載お疲れ様でした。

奇しくも全48話とは本編としっかり合わせていたかな?と思いました。
最終エピソードは、涙なくして読めませんでした。
連載当初はどうなるか、と思いましたが、しっかり響鬼ワールドに根付いたと思います。
ありがとうございました〆
312名無しより愛をこめて:2007/03/21(水) 20:31:46 ID:WWlIPSyvO
俺は>>311とは違いシュッ〆は送らない!

…こんな熱い奴ら裁鬼さんの一撃鬼以来だぜ!

最初はバロム1とか中学生日記みたく友情と成長しか見えなかった。

ところがどうよ?

…あぁ、この感情移入説明出来ねぇorz
313名無しより愛をこめて:2007/03/21(水) 21:00:21 ID:3/eDYEP00
俺まだ全体の半分くらいまでしか読んでないが、みんなの反応みるとスゲーよさそうな感じだな。
急いで読んでくる
314310=312:2007/03/21(水) 23:28:47 ID:WWlIPSyvO
>>311スマソ!
あえて反論めいた事書いてるが本意ではない。
見習いSSがハマって、お前と語ってみたかったんだ!
格闘技の距離感ジャブだ!勘弁してくれ。
315311:2007/03/22(木) 00:34:45 ID:pAGo7Wdm0
>>314
気にするな! 君の本意はっ、>>312の文脈から読み取れているっ!

〆でしめてしまいたくない君の思いは受け取った。
俺は読み専に戻ると言った作者さんの言葉を鑑みて使ったに過ぎない。
まだ浸りたい人の気持ちを考えず〆をしてしまい、申し訳なく思う。
スマソ。
316名無しより愛をこめて:2007/03/22(木) 01:11:03 ID:h9eBWM7d0
おいおい、オマエラーw
〆に特定の意味はねーだろーwww
フリースタイル、自分流で使えばいーんだよーん(〆>∀・)シュッ
317高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/03/22(木) 03:45:47 ID:XVUBfFjK0
時間かかった割に深い意味は無いSSを一本。
はい、先代の出てくる番外編です。

>見習いさん
この場を借りて言わせていただきます。連載お疲れ様でした。
半年間、純友と大洋の成長を毎回楽しみに追っかけさせていただきました。

では、最終回の余韻ぶち壊し覚悟で投下させていただきます。
こちらの方もよろしくお付き合い下さい。
318仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 03:48:22 ID:XVUBfFjK0
ある年の冬。
その日、関西支部のコウキはいつも通り総本部の研究室で珈琲を飲みながら機械いじりを行っていた。
最先端の技術を研究する場には不釣合いな、旧式のストーブが室内を必死に暖めている。
実に長閑で幸せなひと時だった。
と、そこへ開発局長の南雲あかねがやって来た。珈琲に合いそうなお菓子を手にしている。
「今度は何を作っているのかしら?」
コウキの傍に近寄って彼の手元を覗き込む。
「いやぁ、お恥ずかしい。これはですね……」
説明を始めるコウキ。散々喋って彼の気分が良くなった所で、漸くあかねが本題に入った。
「お客さんよ。……ザンキくん」
「よお!久し振りじゃん」
コウキが思考するよりも早く、にこやかな笑顔を見せながらザンキが室内へと入ってきた。
319仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 03:49:56 ID:XVUBfFjK0
「何をしにきた?」
コウキの問いには答えず、ただにこにこ笑っているだけのザンキ。
「……と言うか、その女性は誰だ?」
コウキもあかねもさっきからずっと気になっていたのだが、ザンキの横には背のそんなに高くない少女が、彼同様にこにこしながらちょこんと座っていた。
「お前達どういう関係だ?」
少女の首には首輪が付けられていた。最早この時点で尋常な関係では無い。
「実はな、今日ここへ来たのは他ならぬこいつのためなんだ」
そう言ってザンキは少女の肩を抱いた。少女もザンキに笑顔のまま頭を預ける。
「だから誰なんだ、その娘は」
「俺のペットだ」
場が凍りついた。
「貴様、とうとう犯罪に走ったか!」
「ザンキくんお願い、自首して!」
コウキとあかねが一斉に大声を出した。それに対し、五月蝿そうに耳を押さえるザンキと少女。
「落ち着けって。こいつは人間じゃない。タヌキだ」
「何!?」
漸くザンキが説明を始めた。
秋頃に多摩方面へと出撃したザンキは、そこで一匹の魔化魍ムジナと出会った。腹を空かせて衰弱していたムジナは、餌を求めて人里までやって来ていたのだ。
で。
「退治するのも忍びなかったんでな、拾って帰ったんだ」
当然ながら支部内は騒然となったと言う。まず支部長がとうとう心労で倒れた。最初は渋い顔を見せたテンキ、シュキら古参の面々も、最終的には諦めて何も言わなくなったそうだ。
「この娘がムジナねぇ……」
そう言って少女の顔をまじまじと見つめるコウキ。言われてみれば、タヌキ系の愛嬌のある顔をしている。
320仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 03:51:34 ID:XVUBfFjK0
「猛士の記録では佐渡島の団三郎狸とその眷属が人に化けていたらしいんだけど……」
あかねもまた、そう言うと少女の顔を覗き込んだ。実際に人に化けた魔化魍を見るのは初めてらしい。
「大山で戦った伯耆坊も子どもの姿に化けていましたよ」
そう補足するとコウキはザンキに対して質問をした。
「名前は?」
「こいつの名前か?『咲』だ」
「咲か。お前にしては普通の名前を付けたではないか」
お褒めの言葉を頂いて調子に乗ったザンキは、名前の由来について語りだした。
「前に金曜ロードショーで『ぽんぽこ』やった時にさ、実況板でタヌキの事を『プリキュアSS』の主役の名前で呼んでる奴がいてな。それで……」
「前言撤回!巫山戯るな!」
まあザンキがメタな台詞を言うのはいつもの事なので置いておくとして。
「さあ咲、お前も挨拶をしなさい」
ザンキに促されて、今までにこにこ笑っているだけだった咲が漸く喋った。
「咲ちゃんポンポコ!よろしくお願いしますポンポコ!」
元気一杯で挨拶をする咲。が。
「あかねさん、私は生まれて初めて女を本気で殴りたいと思いましたよ……」
「姫との戦いは本気じゃなかったの?」
あかねのツッコミを華麗にスルーして、説教を始めるコウキ。
321仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 03:54:08 ID:XVUBfFjK0
「自分の名前を一人称にするな!ちゃんまで付けおって。大体何で語尾にポンポコと付ける?それはオノマトペだろうが!」
「コウキくん落ち着いて。相手は女の子よ?」
「でもムジナでしょうが!」
口角泡を飛ばしながらコウキが言う。あかねも負けじと口調を荒らげた。
その後、二人の口論が落ち着いたのを見計らって咲が一言。
「まあこの喋り方が気に食わないと言うのであれば、普通に喋る事も出来ますがね」
絶句するコウキ。初めてザンキと出会った時にも全く同じ台詞を言われた気がする。
「ペットは飼い主に似るというのは本当だったのだな……」
思わず頭を抱えてしまうコウキ。
「……で、この娘のために来たとはどういう事なのかね?」
コウキに尋ねられてザンキが語りだした。
「実はな、こいつ元々は関西の出身で、小さい頃誤って長距離トラックの荷台に乗ってそのまま関東までやって来たらしいんだ」
「……本当か?」
「そんな事で嘘吐いてどうするよ。本当なんだって。でな、だんだん故郷の年老いた親の事が心配になってきて、漸く帰る決心をしたんだそうだ。泣かせる話じゃないか」
ハンカチを取り出してわざとらしく目頭を押さえるザンキ。咲も一緒になって目頭を押さえた。いちいち癇に障る動作をする二人組である。

the end of JASRAC おふくろさん evolution turbo type 耳毛(挿入歌)
作詞 川内康範ではなく森進一  作曲 猪俣公章  歌 森進一
322仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:11:29 ID:XVUBfFjK0
「ならばさっさと連れて行ってやるのだな」
「ところがどっこい、こいつ、自分が昔住んでいた山の正確な位置を覚えていないんだそうだ。まあ幼かった訳だし、仕方ない事ではあるかもしれん」
つまりここへやって来たのは、山の場所を特定するためと言う事だろうか。
「う〜ん、じゃあとりあえず覚えている事を全部話してもらえないかしら?」
あかねに言われて、咲とザンキが交互に説明を始めた。が、二人とも兎に角説明の要領が悪く、全くもって場所を特定する事が出来ない。と言うか……。
「何故二人掛かりで説明する!ザンキ、明らかにお前が話をややこしくしているではないか!喋るな!」
「可愛いペットのために何かしてやろうという俺の親心が分からないのか!?」
すると、今まで必死で話の内容を整理しようとしていたあかねが。
「……ちょっと待って。応援を呼んでくるわ」
そう言うと立ち上がり、出て行ってしまった。
数分後、あかねと一緒に仏頂面をした陰気な男がやって来た。司書の京極だ。
「……何かね。いつまでも図書室を空けておく訳にはいかないのだが……」
「どうせいつも人なんて殆ど来ないじゃない。それより座って座って」
かなり失礼な事を口にしながら、あかねが座るように促す。やれやれと呟きながら京極はザンキの向かいに腰掛けた。
323仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:12:36 ID:XVUBfFjK0
「あんた初めて見る顔だな。俺はザンキ。あんたは?」
「君がザンキくんか。噂はかねがね聞いているよ。僕は京極と言う、ただの司書ですよ。ああ、怖がらなくても大丈夫だから」
そう言って脅えた目を向ける咲を宥める。そんな京極にコウキが今までの事情を話した。
「成る程。じゃあとりあえずもう一度僕に説明してもらいましょうか。何か分かるかもしれない」
その言葉通り、京極は咲の話を聞き、的確に質問を行って要点を聞きだし、彼女が昔住んでいた山が何処なのかを割り出してしまった。
「やっぱり京極くんに頼んで正解だったわ。じゃあ早速地元の『歩』に連絡を取って案内を……」
「それは僕の方からやっておきましょう。さてと、じゃあ僕はこれで……」
そう告げた京極は音も無く立ち上がると、さっさと退室してしまった。
その晩、ザンキと咲は無理を言って関西支部の空き部屋を一つ貸してもらい、そこに宿泊した。
「あの旅館、ペット持ち込みは禁止ですよね……」
「彼女の事は人間として通したみたい。従業員の中には昔鬼だった人も居るから、感付いている人も中には居るでしょうけどね」
関東からやって来た同業者が、この娘は人間だと言い張っている以上どうする事も出来ない。翌日に対し、言い知れぬ不安を抱えたままコウキは朝を迎えた。
324仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:14:01 ID:XVUBfFjK0
翌日の朝早く、ザンキ達は咲の故郷の山へと向かって行った。
ただここで予想外の出来事が二つ。天気予報が見事に外れ、雪が降った事。そしてもう一つが、都合で地元の「歩」が誰も案内に来てくれないという事だ。
雪山にはコウキ、ザンキ、咲、そして何故かイブキと勢地郎の姿もあった。
「……何故僕達二人もここに居るのでしょう?」
イブキが誰にともなく呟いた。
「僕達はただ関西支部に用事があっただけで……」
「この男に理不尽は付き物だ。まあ野良犬にでも噛まれたと思って諦めたまえ」
「そんな言葉で納得出来る筈ないでしょう。大体、何ですかあの恰好は……」
そう言うとイブキはザンキの方へ視線を向けた。今回の騒動を持ち込んだ張本人は、青いスキーウェアに板を担ぎ、明らかに遊ぶ気満々だった。
「あの咲と言う子を親に会わせるのが目的なんでしょう?」
イブキの疑問も尤もだ。とりあえずコウキはザンキに声を掛けてみた。
「おい、山にはもう着いたんだ。早く彼女を年老いた親に会わせてやらないといけないのではないかね?それなのにお前はそんな遊ぶ恰好で……」
「いいじゃん、スキーしようぜ!なあ咲」
「故郷の山の空気、懐かしい〜」
二人(厳密には一人と一匹)共聞く耳持たずである。
「しかしその娘の親に……」
「だって親なんか居ないもんな、なあ咲」
「うん!」
元気一杯で答える咲を見て、コウキの表情が引き攣った。
325仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:15:03 ID:XVUBfFjK0
「親が居ないだと?だが昨日、故郷の年老いた親の事が心配になってとか言っていなかったか?」
「私、親は居ないけど故郷が恋しくなっていたのは本当なの」
「それでだ。とりあえず里帰りをしようという事になったんだが、昨日言った通りこいつは故郷の場所を覚えていなくてな」
「……嘘を吐く必要性は何処にある?」
怒りを押し殺しながらコウキが尋ねる。一方、イブキと勢地郎は累が自分達に及ばないよう、その場から大きく遠ざかった。
「だってさ、お涙頂戴モノにした方が面白いだろ?テレビだって無理矢理泣かせる場面を演出と言い張って挿入する御時世だぜ?」
「巫 山 戯 る な !」
怒号が山中に響き渡った。更に音撃棒・大明神を握り締めて一歩一歩ザンキ達の傍へと近寄っていく。
「警策などと生温い事は言わん!これで性根を叩きなおしてやる!そこのタヌキ!貴様はこの場で祓い清めてやる!」
「お、落ち着いて下さいコウキさん!」
傍観者に徹しようとしていたイブキと勢地郎が、慌てて止めに入る。
「あの人怖い〜」
「おお、よしよし。大丈夫だ。さあ、怖いおじさんからは離れてスキーを楽しもう」
そう言うとザンキは、咲の手を引いてさっさと何処かへ行ってしまった。
「止めるなお前達!大体ここはお前達も一緒になって怒る所ではないのか!?」
「そりゃそうですが……ねえ?」
困り顔のままイブキは勢地郎の顔を見た。勢地郎もまた、同じ様に困った顔をイブキに見せると静かに首を振るだけだった。
326仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:16:46 ID:XVUBfFjK0
「イヤッホォォォ!」
コウキ達の下を離れ、スキーを満喫するザンキと咲。
「凄い凄い!」
急斜面を颯爽と滑り下りるザンキを見て、彼から借りた赤い手袋を嵌めて雪だるまを作っていた咲が拍手を送る。
「……でも二人っきりじゃ淋しいね」
「あのコウキの馬鹿が怒りっぽいのがいけないんだ。まあそのうち追ってくるだろう」
「じゃあその時は雪合戦しよ!」
「おうよ!そのためにあの二人も無理矢理連れてきたんだからな!本当はあかねさんにも来てもらいたかったんだが……」
話が弾む。初めて出会ってから何度も会話はしているが、ここまで色々と喋ったのは初めてだった。
雪はとっくに止み、雲間から光が差してきていた。かと言って、この積もった雪がすぐに溶けて消え去る事は無いだろう。

カントリーロード(挿入歌)
作詞 鈴木麻実子、宮崎駿  編曲 野見祐二  歌 初代プリキュアの黒い方

一人ぼっち恐れずに 生きようと夢見てた
さみしさ押し込めて 強い自分を守っていこう
カントリーロード この道 ずっとゆけば
あの街に続いてる気がする
カントリーロード
327仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:41:08 ID:XVUBfFjK0
と、轟音が響いた。何事かと思い二人が音のする方を見ると、一台のダンプカーが大量のゴミをぶち撒けている真っ最中だった。
「何だありゃ……」
見ると、作業着姿の男も何人か確認する事が出来た。
「やだ、止めてよ!私の故郷を汚さないでよ!」
そう叫んで飛び出そうとする咲の肩を、ザンキが掴んだ。
「待て待て。お前一人で何が出来る?」
「変身して大暴れ」
「……うん、お前一人でも結構出来るな。よし、大暴れといこうか」
そう言うと何処か嬉しそうに手首に巻いた変身鬼弦に手を掛けるザンキ。
「あ、一緒にやる?」
「当然!こんな面白そうな事をお前だけにやらせてなるものかよ」
正義の味方にあるまじき台詞を吐きながら笑顔を見せるザンキ。それを見て咲もとびっきりの笑顔を返した。

「何処いっちゃったんでしょうね……」
コウキ達三人は、勝手に何処かへ行ってしまったザンキと咲を探して山中を彷徨っていた。
「不味いな、何か問題でも起こしてなければ良いのだが……」
そんなコウキのささやかな願いを踏み躙るかのように、派手な爆発音が遠くから聞こえてきた。
慌てて音のした方へと駆けていく三人。現場に着いた彼等が目撃したのは、炎上するブルドーザーやダンプと、プレハブ小屋の屋根で雄叫びを上げる斬鬼と咲の姿であった。
328仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:42:12 ID:XVUBfFjK0
「……どうやらどこぞの企業が、産業廃棄物の不法投棄をこの山で行っていたようだな」
小屋の中に残された書類を目にしながらコウキが呟く。
「じゃあここに居た連中は……」
ロッカーの中にあった作業着を勝手に拝借したザンキの問いに。
「それを承知の上で作業をしていた業者の人間だろう」
「しかし問題ですよ。鬼が魔化魍と一緒に善良な市民を襲撃するだなんて……」
血相を変えながらそう呟くイブキの首を、ザンキが掴む。
「何だと!?俺も咲も誰一人怪我なんかさせちゃいないぞ!」
「く……苦しい……」
「大体あいつらがやっていた事は違法行為なんだろ!?俺達はそれを止めただけだぜ!」
「やり方というものがあるだろうが!それといい加減イブキの首から手を離せ!」
コウキの一喝を受けて、イブキを解放するザンキ。咳き込むイブキを慌てて勢地郎が介抱してやる。
「……全く、鬼の姿で出て行った挙句建設機械を破壊するとは、言い逃れは出来んぞ」
「う、うむ……」
テンションが下がり事の重大さが分かってきたのか、途端にザンキが弱気な声を出した。その姿を心配そうに見つめる咲。
「最悪な場合、査問会をすっ飛ばして即鬼祓いだぞ」
「げええ!それは困る!困るが……」
どうしようもないという事が自分でも分かっているのだろう。
「しかしコウキさん、事が事だけに我々も何らかの処罰の対象になるのでは?」
心配そうに勢地郎が尋ねる。何とも言えず、コウキは黙り込んでしまった。
329仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:43:53 ID:XVUBfFjK0
と、咲がコウキに向かって発言した。
「一つ方法があります。私を殺して下さい!」
「……それは君が全ての罪を被った上で死ぬという事かね?」
「はい!」
あくまで毅然とした態度でそう告げる咲。
「事はそう簡単にいかんよ」
「でも……」
「咲、お前……」
無言で咲の顔を見つめるコウキ。咲もまた、目を逸らす事無くじっとコウキの目を見つめ続けた。
沈黙の後、コウキがぼそりと呟いた。
「……まあ我々が口裏を合わせれば隠蔽する事も難しくはあるまい」
「も、揉み消すつもりですか!?」
らしくないコウキの発言に、勢地郎が驚きの声を上げる。
「どうせ今日の出来事など、この男が私の下から去り次第忘れてしまうのだしな」
「あ、それに関しては自覚があったんですね」
「そのためにはイブキ、宗家の者であるお前の協力が不可欠だ」
「まあ出来るだけの事はやりますが……しかし今日の出来事をこの後確実に忘れてしまえるコウキさんと違って僕達は……」
そんなイブキの背をばしばしと叩きながらザンキが一言。
「深く考えるな!どうせこれは番外編だ。以前作者が劇中で触れた京都編の話がなかなか纏まらないためのその場凌ぎの話だ」
「貴様!いい加減そのメタな台詞は止めんか!」
プレハブ小屋を飛び出し、追いかけっこを始めるコウキとザンキ。
「やれやれ、結局最後はこうなるのか……」
「イブキくん、ちょっと……」
「うん?」
勢地郎に言われてイブキが振り返る。そこでは咲が、ザンキの後ろ姿を眺めながら目に大粒の涙を浮かべていた。
「泣くんだ、魔化魍も……」
その声に咲が振り向いた。
「当然!でも私は泣くより笑う方が好きっ!」
笑顔を見せる咲。その頬を一滴の涙が滑り落ちていった。
330仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:45:20 ID:XVUBfFjK0
帰り際、咲はこの山に残る旨をザンキ達に伝えた。
また先程の連中が山を汚しに来るかもしれない。その時山を守る誰かが居なくちゃいけない。だから自分が残るのだと咲は笑顔で告げた。
ザンキがどのような表情をするかコウキは半ば楽しみにしていたのだが、彼はいつもの飄々とした笑顔のまま咲に別れの言葉を言うと首輪を外してやった。
「その手袋は餞別な」
そう言って咲が嵌めていた赤い手袋を指差すザンキ。それに対し咲は「有難う!」と元気良く答えた。
「……本来なら感動的な場面の筈なのに、全く悲しい気持ちにならないのは何故だろう」
「ザンキさんとタヌキの娘だからじゃないですか?」
コウキの疑問に、イブキが実に的確な答えを返す。
「いつかまた遊びに来てね!約束だからね!」
「おう!お前もちゃんと山を守れよ」
こうして、一行は山を後にした。彼等の姿が見えなくなるまで、咲はずっと笑顔のままで手を振り続けていた。

こだぬきポンポ(イメージソング)
作詞 鈴木悦夫  作詞 大山高輝  編曲 乾祐樹  歌 下條アトム

ポンポコ村の こだぬきポンポ
ポンポコ駅で 今日も待つよ
今年も冬が ポンポコ ポンポコ やってきた
チラチラ雪が ふりだした
赤いてぶくろ ぬれました
ポンポコあの子は まだこない
331仮面ライダー高鬼番外編「笑顔と涙」:2007/03/22(木) 04:53:59 ID:XVUBfFjK0
時代は流れ、2005年。
その日、小暮耕之助は山を登っていた。まだ自分が現役だった頃、仲間達と一緒に登り一騒動起こした山へと。
ゴミ一つ落ちていない綺麗な山だ。マナーの悪いハイカーがどんなにゴミを捨てても、必ず綺麗に掃除されているとして、地元の住民からは以前から不思議がられていた。
小暮は、とある場所に出ると口笛を鳴らした。これが彼女との間で決めた合図だ。
暫くすると、一人の少女が小暮の前にやって来た。咲だ。あの頃と何ら変わらぬ姿をしている。
「変わらないな」
「所詮これは仮の姿だから。コウキさんは老けたね」
ずけずけとものを言う咲に対し、苦笑してみせる小暮。
「今日は何の用事?」
「……ザンキの事だ」
その名を聞いて、咲の表情がみるみるうちに明るくなった。
「ザンキさん!?ザンキさんも来てるの?」
だが、その言葉に対し小暮は黙ったままだった。
「あいつは死んだ。十一年も前に、だ」
すまなかった!と小暮は頭を下げた。その姿を呆然と咲が見つめている。
「正直に言おう。先日関東に行くまで私はあの男の存在をすっかり忘れていた。だが夢枕に何百ものあいつが五十六回も現れたお蔭で、あいつに関する殆どの記憶を思い出す事が出来た」
咲は黙って話を聞いている。
「私の記憶が再び風化しないうちに、この事を君に伝えに来た。色々と悩んだのだが、やはり君には話しておくべきだと思ってな……」
そう言うと小暮は再び頭を下げた。相手が魔化魍だという事は関係無い。誠心誠意報告が遅れた事に対する謝罪の意を示した。
咲は何も言わなかった。小暮が頭を上げて彼女の顔を見ると、両目から一筋の涙が零れ落ちていた。
「ザンキさん……また遊びに来てって言ったのに……う……」
嗚咽を漏らし、顔を両手で押さえる咲。その手には、あの日ザンキが餞別にと渡した赤い手袋が嵌められていた。すっかりぼろぼろになった赤い手袋が。
一頻り泣いた後、咲は精一杯の笑顔を小暮に見せると言った。
「私、ザンキさんの事忘れない!コウキさんがザンキさんの事を忘れちゃっても、私が覚えておくよ。だから……だから……」
そこまで言うと、咲は再び涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら泣き出した。小暮は、彼女が再び泣き止むまでずっと傍に立ち続けていた。 了
332高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/03/22(木) 05:05:53 ID:XVUBfFjK0
小ネタ(時代がどうとかそういうツッコミは無用)
「レッツゴー陰陽師」

カラスキ(以下唐)「……」
サカズキ(以下盃)「……」
『新・豪血寺一族−煩悩解放−フルコーラス版』
唐「巫山戯るな!私に踊れと言うのか!?ご丁寧に衣装まで用意しやがって!」
盃「……」
唐「おい、そこの飲んだくれ!何を『やってみてもいいかな』なんて顔をしている!私は絶対に嫌だぞ!反吐が出るわ!」
(そんな彼等を物陰から見つめる者達が)
ヤミツキ「駄目だな、やっぱあと三人居ないと踊ってくれないのかな?」
コイキ「女が必要だな。紅一点の存在は男のやる気に係わるもんな」
ツマビキ「と言うか、あの堅物そうなカラスキさんがやるとでも思ったんですか?」
ソゲキ「あ〜あ、完全に怒っていますよ、カラスキさん……」
唐「これを用意した奴は誰だ!出てこい!成敗してくれる!」

終わり。
333名無しより愛をこめて:2007/03/22(木) 16:31:38 ID:EB60tHWvO
見習いSS作者さん、感動をありがとうございます!
裁鬼さんに惹かれ、駄文を投下しましたが恥ずかしいです。
それでもまとめ氏は加えてくれて…
高鬼SS作者さんのザネッティも勝手に流用したのに…

おっと、見習いさんにはも一つ感謝したいのは
自分は文章苦手で「あの騒動」を打開するには投下と考えてました。
自分には恋鬼設定に乗っかるしかスキル有りませんでした。
あなたの投下が本来の流れに戻したと自分は思います!

創作される友人に久々逢われるとか?
私達に感動させたあなたの「鬼」を伝えて下さい。


野獣【NOKEMONO】とかふざけたモノをかつて書いた者
334裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/03/23(金) 22:57:35 ID:2gQp+PCaO
【今日の裁鬼作者・愚痴】

駄目だ‥‥ 知ってるヒトは知ってると思うが、思いつきで始めた立体企画がメンドくさいの何のって。
挿し絵描けないから携帯カメラの写真で我慢して下さい。
しかしなぁ‥‥ 何で裁鬼・修羅とか装甲一撃鬼とか出したんだろう。教えて2年前の俺。
クジキハイキサッキも作ってるのが駄目なのか。20日に1日しか自由時間がないのが駄目なのか。とりあえず近所のジャスコでマジョーラ・アンドロメダ買い占めてるのは誰だ。

まあ、明日にでも管の鬼を2体公開予定。来週ぐらいに勢揃いさせるつもり。

‥‥以上、産みの苦しみでした。
335名無しより愛をこめて:2007/03/25(日) 14:42:31 ID:qQKA4NlEO
保守
336裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/03/26(月) 19:55:16 ID:bNqK816ZO
とりあえず完成。

ttp://o.pic.to/6dtbk

今パソ使えないんで携帯でゴメン。下が闘鬼&勝鬼(TVスーツver.)、上は予告。向こうにはまた改めてうpします。
337名無しより愛をこめて:2007/03/27(火) 17:41:45 ID:c81B3Lub0
http://www23.atwiki.jp/hibikiyougoshu/pages/4.html
見習いメインの登場人物3人の名前だけ追加してみた、記事は気が向いたらor誰か頼む。

ウィキの管理人さん最近出てこないけどどうしたんだろう
338名無しより愛をこめて:2007/03/29(木) 00:47:04 ID:9q6yxqfm0
ウィキの管理人さんは、きっとここで色々言われているのを知って、出てくる気力を無くしちゃったんだよ・・・。
http://www.37vote.net/etc/1164641309/
もう忘れてあげようよ。用語集サイトが二つもあるから、ウィキは無くても大丈夫だよ。\(^o^)/
339イブキストーリー考案中:2007/03/29(木) 00:58:46 ID:g+vx67IUO
ウィキペディアで設定を調べたり、DVDを1話から見直しています。
色々と構想がまとまってきています。
340名無しより愛をこめて:2007/03/29(木) 00:59:20 ID:12fWI3rC0
まだそこが生きてることに驚き
341名無しより愛をこめて:2007/03/29(木) 01:00:10 ID:12fWI3rC0
>>338のことね

俺は一切その名前見たくもないんだが、まだしつこく続けてる奴がいるのか
飽きないな
342名無しより愛をこめて:2007/03/29(木) 13:21:43 ID:TPLqkUrz0
飽きないっつーか、時々こうして釣りが出てくるから
鬱憤晴らしに愚痴りに言ってるんじゃん?
専スレ落ちたし、こっちで蒸し返されるよかよっぽどいいと思う。
まあ矛盾するが、Wikiや投票で蒸し返されたついでに突っ込むが。
343名無しより愛をこめて:2007/03/29(木) 18:47:15 ID:BlK8z+W00
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/auction/s52616471
ちゃんとかたずけろよ!
つらの皮の厚い恥知らずども
344名無しより愛をこめて:2007/03/30(金) 01:05:07 ID:jGVjrLDd0
Wiki管理人だけど久々にWikiが更新されてたみたいだから来てみた
>>338の所にある「都合の悪い意見をスルー」ってのがさっぱりよくわからんが
(作品名列挙は、無いよりあった方がわかりやすいと思って書いたもの。
無くさなきゃいけない理由が理解できないから、現状維持で俺としてはFA
その他もろもろの扱いにしてくくるのが失礼だというのはわかるが
その作品の用語が新たに追加されたらそのとき名前を挙げればいいだけの話だと思っている)
何が都合の悪い意見なのか知らんしどこがスルーなのかもさっぱりわからんが
どうしても気になるならトップページを誰でも編集できるようにしたから
勝手に書き換えてくれたらいい
べつにこのWiki使わずに放置してもぶっちゃけ俺はかまわないし
(作ったからには使ってほしいのが本音だけど他に新たな用語集もできたようだし)
それとも誰か俺の代わりに管理人やりたきゃそれでもいいし
雑文ですまんね
345名無しより愛をこめて:2007/03/30(金) 01:59:39 ID:KGf5Z0dRO
現状では、盛り上げたきゃ管理人さん自身が積極的に更新していかなきゃ無理だと思うんだぜ
みんなイマイチ乗り気じゃないのは見てわかるだろ
346名無しより愛をこめて:2007/03/30(金) 09:53:55 ID:c7WromV4O
今更だがカブトの料理レシピは
ZANKIさんのグッチ&レミさんを参考にした気がするw

テンキさん役は脳内でミッキーカーチス以外、出来るのは
ギタリストでもある植木等さんかなと思ってたが…残念だ
347名無しより愛をこめて:2007/03/30(金) 10:30:31 ID:r/NkKVQA0
>>346
ZANKIのレシピを試したけど、おいしかったよ。
個人的には高鬼に出てきた娼婦風パスタが気になる。
348名無しより愛をこめて:2007/03/30(金) 12:54:22 ID:c7WromV4O
作者さんの投下待ちで不毛な議論より
レシピ投下で場つなぎしないか?
特撮板だからZANKI外伝の形式で
349名無しより愛をこめて:2007/03/30(金) 23:48:40 ID:0+QnRY/z0
>>344
前スレをあらためて読み返してみて思ったんだけど、Wikiを作るコトについて
『今は思いとどまったほうがいいと思う』『しばらく待ったほうがいい』
という言葉は賢明だったんじゃないかな。

ココのように荒れて→治まってを繰り返すSSスレの用語集を、
Wikiみたいに誰でも編集できる環境で作るのには無理がある。
編集合戦になる可能性とか考えると、誰も編集する気がおこらないだろうし。
もちろん、用語集Wikiが作られる前は、それも推測に過ぎなかった。
でも、実際作ってみて三ヶ月たって、Wikiで用語集を作っても
ぜんぜん捗らないってことの証明になったんじゃないかな。

『誰でも編集ができる』ってコトは、『誰が編集しているかわからない』と等価だから、
よほど平和なスレじゃないとそれはマズい。
誰かが責任を持って編集できる個人サイトじゃないと、作成は捗らないと思う。

……というワケで、ひとまず用語集Wikiは閉じるコトをオススメする。
まだ、用語集Wikiが何ひとつ危害を受けていない今のうちに。
平和になって、今の二つの用語集サイトでも手一杯になった時こそが出番だと思う。
名無しの代弁者ではなく、用語集Wikiの管理人さんのご意見を聞かせてほしい。
350名無しより愛をこめて:2007/03/31(土) 00:34:54 ID:WBoL+etp0
釣りでも自演でもなくて、中四国支部の用語集を作りたいんだが。
鬼が多く出てきて武器や技の名前も細かく付いてるから、設定をまとめた場所がほしい。
Wikiで他の作品の用語が充実してきたときに、やろうと思っていたんだが、
他の作品の用語が全然ない中で中四国支部の用語だけ追加されたりしたら
自演だとか何だとかで絶対荒れるから、何もしてない。

>>349の言うことがもっともだし、Wikiはこのまま立ち消えになるのか?
用語集作りたい人間は勝手に個人サイト立ち上げろって流れになりそうだな。
>>264がそうしたみたいに。
351名無しより愛をこめて:2007/03/31(土) 00:48:38 ID:6gDjsoDb0
>>350
>自演だとか何だとかで絶対荒れるから、何もしてない。
賢明な判断だと思う。
しかし、スレと縁を切った作者さんの話をここでするのは賢明ではないと思う。
あの作者さんのサイトに行って、掲示板で相談してみたらどうかな。

個人サイト立ち上げなくても、全頁管理者のみ編集可なWikiでもいいと思うぞ。
352名無しより愛をこめて:2007/03/31(土) 01:07:04 ID:WBoL+etp0
>全頁管理者のみ編集可なWiki
盲点だった。
その線で考えてみようか。
とりあえず今度サイトの掲示板に行ってみることにするよ。

そしてうっかりsage忘れていた、スマソ
353名無しより愛をこめて:2007/04/01(日) 20:41:20 ID:6WDXgEz80
今テレビつけたら大食いの番組をやってて、初めてギャル曽根を見たんだけど、結構カワイイw
(前々スレであった「俺の考えた鬼」でイメージキャラになってたコ)

で、もう一人ギャル系のフードファイターで池田って人が出場してるんだけど、
とろろ食べてるとき左手首に梵字が見えた・・・((((゚Д゚;))))
オシャレで貼ってるタトゥーシールなんだろうけど、一瞬返魂の術?とか思ってしまいましたワ。
354名無しより愛をこめて:2007/04/01(日) 20:58:18 ID:qqIPNT7y0
用語集wikiの話だけど、解説のフォーマットはかなり秀逸な気がするぞ
鬼も魔化魍も詳細がわかりやすい書き方をしているし
書き方のフォーマットががっちり決まってるから誰でも書きやすいと思う
言っちゃなんだけど本家用語集より絶対wikiの方がいい
できることならあの用語集wikiを使って色々網羅してほしいし、
>>350が中四国の用語集を独自に作るとしてもフォーマットを踏襲してほしいのだ

俺は何もする気はないがw
355名無しより愛をこめて:2007/04/01(日) 21:42:32 ID:ZL7R5M7b0
>>354
本家用語集の中の人の苦労を鑑みるに、少し言い過ぎじゃないのか?
wikiがいいと言う主張はいいとしても、本家を引き合いに出すことはないんじゃないの?
356名無しより愛をこめて:2007/04/01(日) 21:46:24 ID:qqIPNT7y0
ごめん、言葉が悪かった。

本家用語集より「解説のフォーマットという面では」絶対wikiのほうが「俺の好みで言うと」いい

と補完してくれ
357名無しより愛をこめて:2007/04/01(日) 22:48:02 ID:RURwhHfT0
wikiの解説フォーマットがよくできてるなってのは俺も思ってるよ


鬼の解説

○○○。本名、○○○。○○歳。猛士○○支部に所属する○○の鬼で、○○の音撃戦士。
(キャラクターの簡単な説明)
変身道具は「○○○」。変身するときは〜〜。
使用する音撃武器は「○○○」。
必殺音撃は「○○○」。
属性は○○。(その他、身につけている技の簡単な説明)
(サポーターや弟子などの説明)
(乗り物の説明)


魔化魍の解説

(姿の説明)(特徴の説明)(人間を捕食する方法の説明)
(怪童子と妖姫の説明)
○○に現れたものは誰々の○○○によって倒された。


結果的にあのwikiそのものはもう使わないとしても、他所で踏襲できるならしたらいいと思う
(wiki管理人が作り上げた解説フォーマットだろうから、許可はいるだろうが)
358名無しより愛をこめて:2007/04/01(日) 22:49:14 ID:3VsajaMd0
>>353
腹いっぱいになる=胃が一度死ぬ。という事で返魂の術で再生したんじゃないか?
しかし、ジローラモもギャル曽根も、ここでネタになってるとは夢にも思わないだろうなw
359名無しより愛をこめて:2007/04/01(日) 23:17:35 ID:x8yoCospO
新しく作るのが前提になってるみたいだけど、今あるwikiを使うのはなんでダメなん?
中四国のを書きたきゃ書けばいいんでは?
中四国嫌いな人とwiki嫌いな人はだいたい重複してるから特に問題ないんじゃないかな。
自演だって騒ぎ立てる奴は、今書こうと、他作品のが充実してから書こうと、いずれにせよ騒ぐと思う。
360名無しより愛をこめて:2007/04/02(月) 00:24:48 ID:bDNTMTBx0
>>359
悪いけど、彼の作品の用語集については、彼のサイトの掲示板でやってくれないかな。
ただ、そこで「SSスレの用語集wikiを使ってあなたの作品の用語集を作りたいんだけど」
という話をしたら、彼としてもいい気はしないと思う。自分が縁を切ったスレの話が出たら。
それを考えると新しく作るのが無難でしょうね。

>今書こうと、他作品のが充実してから書こうと、いずれにせよ騒ぐと思う。
その通り。だからこそ、今あるwikiは使わずに、新しく作ったほうがいい。
今あるwikiは、このスレの用語集として位置づけられて各所からリンクが貼られているから、
スレと縁を切った作者さんの用語が登録されるのを良しとしない人もいるだろうしね。

スレと関係なく彼の作品単独の用語集wikiを作る分には、誰も文句は言わないでしょう。
まあ、これ以上はここで話すべきことではないと思うので、もう勘弁してくだせえ。
361名無しより愛をこめて:2007/04/02(月) 00:39:05 ID:gRru5ESi0
確か本人は、このスレ内で自分の作品をどう扱うかは好きにしてくれって言ってた気がするが。
べつにこっちの用語集に入れたからって嫌な顔はされないだろ。
こう言っちゃなんだが、彼はギリギリまでこのスレに居続けたがってたわけだし。
縁を切ったとはいうが、作品をここに投下しにくることは二度とないって意味だろ?
362名無しより愛をこめて:2007/04/02(月) 09:45:35 ID:v9AMLhJV0
今、レシピ投下したらまずいか?
ザンキとトドロキで豚バラスタミナ焼きを紹介したいんだが。
363名無しより愛をこめて:2007/04/02(月) 13:22:44 ID:EJCDi2xqO
>>362
遠慮はいらないと思うよ!
364名無しより愛をこめて:2007/04/02(月) 20:22:52 ID:ZUJLBCEM0
……そろそろ用語集wikiの管理人さん、>>345>>349への答も含めて、
今後どうするかレスしておいたほうがいいと思うよ。
じゃないとまた投稿スレで『都合の悪い意見はスルー』なんて不名誉なコトを言われちゃうし。
このままだと、また何か月もロクに更新されない、
なんていうお寒いコトになっちゃうと思うんで、どうにかしたほうがいいと思うよ。

それから、管理人さんが彼本人、という根拠の無い決めつけまで言われていたから、
真実と違っていたら『違う』ってちゃんと言っておくべきだと思うよ。
365用語集Wiki”管理”人:2007/04/02(月) 22:41:56 ID:3tFjEu/e0
チラホラとしか出てこれなくてすまんね
とりあえず俺の見解をまとめてレス。

>>345が言うように皆乗り気じゃないから俺が更新しなきゃならないのは勿論わかっているが
あまり時間が取れないのと、実を言うとWikiを立ち上げた頃ほどの気力がもう残ってない
いや、それは単に俺がダラけてるだけなんだが。
だが>>350のように用語集を作る熱意のある人間がいるならフォローはしたいと思う
Wikiの解説のフォーマット(そんな大層なもんじゃないがw)は喜んで提供するし、
もしあのWikiそのものを使うのなら、俺もいくらか執筆の手助けをしなきゃなと思っている

>>349の言うことも十分理解しているが、
もしWikiがスレのために少しでも役立つ可能性があるなら消さずに残しておきたい
Wikiのせいでスレが荒れるなんてことになったらWikiも消して俺も名無しに戻るが。
「誰が編集しているかわからない」という問題については、もしそれがやばいのならば
ログインユーザだけが編集できる設定にして有志を募るという方法もある

中四国については俺は>>361と同じように解釈しているから、
スレの用語集に中四国が含まれることには特に問題はないと思っている
(自演だとかで騒がれる可能性を除けばの話だが)
だからこそTOPの作品名列挙にも中四国を入れている。
(前にも書いたがTOPも編集できるようにしたので作品名列挙が要らなければ消してくれ)

最後に>>364
勿論俺が彼本人というのは全くの間違いだ。
俺は元々はただの名無しの読者に過ぎない。

あいかわらず雑文ですまん
366名無しより愛をこめて:2007/04/02(月) 22:58:03 ID:gRru5ESi0
中四国作者が絶縁を宣言したときの文面拾ってきた。
>結局、俺はSSスレと、それにまつわる一切合切から手を引くことにした。
>まとめサイトや用語集の中で、俺の作品をどう扱うかは、このスレのみんなで決めてくれ。
普通に解釈すりゃ、外したければ外せばいいし入れたければ入れればいいって言ってるんだよなコレ?
そして、中四国の用語集を作るならとりあえず作者に相談するのが先決だという流れだが、
「SSスレとそれにまつわる一切合切」だから、このスレの用語集への記述を作者自らが提供してくれる可能性は低そうだ。
やるなら勝手にやってくれ、と言われるか、
それならこっちで作ります、となって、サイトのコンテンツの一つとして作者自らが作るか、そのどちらかになるだろう。

一番懸念されるのは、誰も中四国のサイトに行かず、かといってwikiで積極的に作る者もおらず、
そのまま中四国用語集の話はうやむやになって消えてしまうという場合w
367用語集Wiki”管理”人:2007/04/02(月) 23:06:01 ID:3tFjEu/e0
>>366
もし、今のWikiにそのまま中四国の用語を加えるという話の流れになったときは
その管理人として俺が代表で中四国のサイトの掲示板に行ってもいいが。
368名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 04:51:14 ID:DBD+1reuO
流れブッたぎって申し訳ないけど、「い」で始まる良い鬼の名前ってないかな?
何個か挙げてくれると非常に助かるんだが‥。
369名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 07:35:40 ID:/Pt/2KezO
棘鬼=イバラキ
指宿鬼=イブスキ
猪鬼=イノキ
370名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 08:55:00 ID:98snXwscO
頂鬼"イタダキ"
樹鬼"イツキ"

既に登場してたらすまん
371名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 09:32:17 ID:Owc4Q+Ks0
粋鬼  イキ
行過鬼 イキスギ
石動鬼 イスルギ
挿入鬼 インサートキー
372名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 09:36:34 ID:JgX7mDFC0
凱鬼メインより、
厳鬼・・・イツキ
厳島神社からとってんのかな・・・?
373名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 13:10:47 ID:EBmJTWoHO
イツキは中四国にいるね

イワキ、イクキ、イサギ、なんてどうだろ
374名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 20:37:57 ID:lZpADKeC0
イサキ   壱岐鬼
インキ   陰気
イシガキ 石垣鬼
イッキ   一鬼
イワキ   厳鬼 岩鬼
イシキ   石鬼 意思鬼
375368:2007/04/04(水) 22:35:44 ID:DBD+1reuO
皆さん色々なネーミングありがとうございますm(__)m
個人的に良い響きに感じたイスルギ、イブスキ、イツキを参考にさせて頂きます。
ありがとうございました〜。
376名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 22:56:21 ID:UW/jC1LV0
>>375
もしこのスレに作品を投下するつもりなのなら、イツキはかぶるから避けたほうがいいと思うよ
377名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 23:09:23 ID:JgX7mDFC0
たしかにイツキは結構被ってるよね。
自分で出した設定なら問題ないだろうけど、
スレでわざわざ慕った情報の中から取るってのは、パクリとか言われるかもよ・・・。
378名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 23:12:17 ID:UW/jC1LV0
でもこれだけ多く作品が出てれば、かぶらない、かつクオリティ高い名前を考え出すのは難しいよなあ
響鬼の設定はオリジナルを作りやすい一方、かぶりやすいという一面もあるな
379名無しより愛をこめて:2007/04/04(水) 23:20:35 ID:mmEgfPtn0
かぶること自体はいいけど、読んでてイメージがごっちゃになるのはあるな
たとえば中四国のコウキのシーン読んでても木暮さんしか頭に浮かばないw
380名無しより愛をこめて:2007/04/05(木) 00:38:28 ID:LSxd2LZm0
流れを元に戻してすまないが、ひとまず中四国サイトの掲示板に書き込んでみた。
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/7713/
381名無しより愛をこめて:2007/04/05(木) 09:30:20 ID:PSR6ihHr0
俺は同じ名前がいてもいいと思う。東の響鬼と西の響鬼みたいな感じはおもしろいし、
「お前もコウキって言うのか?」みたいなのもアリだと思う。

さすがに「俺の考えた名前だ!」って松本○士ばりに因縁つけるやつもいないと思う。
382イブキストーリー考案中:2007/04/05(木) 18:56:44 ID:n6lOy512O
イブキさんの兄って、何人なんでしょうか?
資料によっては長兄、次兄ともに鬼で、次兄が魔化魍との戦いで戦死していると書いてあります。
383名無しより愛をこめて:2007/04/05(木) 19:54:15 ID:h2OqnKoR0
長兄、次兄と続いているんだから、2人以上いればいいんじゃね?
道を外れて仮面かぶった兄貴がもう1人いるとかしてても、別におかしくないじゃん。
384高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/05(木) 20:58:50 ID:WSqdas860
1978年、長月。京都。
とある牛舎で、それは産まれた。
それは、まさに異形と呼ぶに相応しい生き物であった。否、生き物ではあるのだが、ただの生き物ではない。
ごく普通の牡牛と牝牛の間から産まれたにも拘らず、それは牛とは大きく異なる外見をしていたのだから。
人面だったのである。
そして人面の牛は、驚いて集まった人々の眼前で、嗄れた声で人語を語った。
「これより数日の後、京都市内を大きな災厄が襲うであろう……」
クダン(件)。西日本を中心に多くの目撃例がある魔化魍である。
予知能力を持ち、嘗ては天保の大飢饉や第二次世界大戦の終結を予言したとされる。
クダンは、この忌まわしい予言を残すと血を吐き斃れた。恐怖のあまり顔面蒼白となった人々を残して。
クダンが現れ予言を残したという話は、すぐさま猛士総本部の耳にも届いた。そしてこれが、数日間に及ぶ京都動乱の幕開けとなったのである――。


仮面ライダー高鬼「動乱する京都 序章 件の予言」
385高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/05(木) 21:00:49 ID:WSqdas860
仮面ライダー高鬼「動乱する京都 第一章 聖鬼・怒鬼」


長月十四日木曜、京都府福知山。
国道9号線と162号線の交わる区間のすぐ近く。ここ、栗尾峠で激しい死闘を繰り広げている者達がいた。
異形のもの同士の対決。片方は「鬼」と呼ばれる正義の音撃戦士。もう片方は悪しき怪物の育ての親。
妖姫が相対する鬼、怒鬼へと襲い掛かった。その攻撃を、怒鬼は得物の七節棍を用いて巧みに捌いていく。
一瞬の隙を衝いて七節棍が妖姫の足を払った。そこへ追い討ちを掛ける怒鬼。
棍の先端が妖姫の喉を突き刺す。悲鳴を上げ、転げ回る妖姫。棍を地面に突き立てると、怒鬼は妖姫に向けて掌を翳した。
その途端、地面に黒い渦が巻き、その中へ妖姫の体が引きずり込まれていく。
鬼法術・根堅州國(ねのかたすくに)。大型魔化魍相手には足止めとして用いる技だが、姫や童子相手には決定打となる。
妖姫の体が、完全に土中へと消え去った。その直後、地面の中で激しい爆発が起こり、土煙が噴き上がった。
戦いを終えた怒鬼は、もう一人の鬼が戦っている場所へと向かっていった。
386高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/05(木) 21:01:55 ID:WSqdas860
怪童子を相手に戦いを繰り広げる聖鬼。彼が手にする音撃弦・黄金響が怪童子の攻撃を受けて弾き飛ばされた。
だが、聖鬼はその事を全く意に介さずただ一言。
「お前、俺から『黄金響』を取り上げただけで勝てるとでも思ったか?」
そう言うや否や、いきなり四股を踏み始める聖鬼。更に仕切りを行うと、物凄い速さで怪童子の懐へと飛び込んでいった。
「相撲好きは伊達じゃねえぞ。こちとら毎年夏にはカッパと相撲を取ってるぐらいなんだ」
低く構えた姿勢で怪童子の胸に自らの頭を差し込み、肘を取ってそのまま捻り倒す聖鬼。相撲の四十八手の中でも特に珍しいとされる技、頭捻り(ずぶねり)だ。
倒れた怪童子の首を喉輪で掴んで引き上げると、強烈な張り手を二、三度叩き込んだ。そして拳を握り。
「鬼闘術・蓑火拳!」
眩い光に包まれた拳を、怪童子の顔面に叩き込んだ。渾身の力で叩き込まれた拳は怪童子の顔面を砕き、数メートルの彼方へと吹き飛ばした。
爆発。
「ま、最後は相撲技じゃなかったけど気にすんな」
塵芥と化した怪童子に向かって手をぱんぱんと叩きながら聖鬼が告げる。これで残るは魔化魍のみだ。
と、けたたましい鳴き声が響いた。
「出たな」
慌てて「黄金響」の傍に駆け寄り、これを拾い上げると、聖鬼は声の聞こえてきた方に向かって構えた。
彼の目の前に現れたのは、実に大きな鶏の姿をした魔化魍だった。
この魔化魍の名前はバサン。四国ではバサバサとも呼ばれ、主に深山の竹薮に住んでいるとされる。
雄叫びを上げながら聖鬼が斬りかかっていった。だが、「黄金響」の刃はバサンの全身を覆う鋼鉄の強度を誇る羽毛に弾かれてしまう。
387高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/05(木) 21:02:55 ID:WSqdas860
バサンが再び鳴いた。そして大きな二枚の翼を羽ばたかせて突風を起こす。
「うおおっ!」
吹き飛ばされた聖鬼の体が、断崖の下へと落ちていく。
と、宙を横切る影が一つ。その影に向かって聖鬼が叫んだ。
「怒鬼ぃぃぃ!」
影、即ち怒鬼が七節棍を聖鬼に向けて伸ばした。聖鬼の腕に棍が絡みつく。それを引っ張る怒鬼。
聖鬼の体は無事崖の上に引き上げられた。
「ふう……。助かったぞ、怒鬼」
「礼は後だ。来るぞ」
バサンが口から炎を吹き出した。二人の鬼は、それぞれ左右へと跳躍してこれを躱す。
左右から聖鬼と怒鬼がそれぞれ鬼法術・蓑火と闇飛礫を放った。光がバサンの視界を奪い、闇が尾羽を侵食していく。
バサンは堪らず、空へ逃げようとその大きな羽を羽ばたかせた。幾度も羽ばたかせるうちに、その巨体が宙へと浮き上がる。
「この野郎、鶏の分際で空を飛ぶんじゃねえ!」
思いっきり投げつけた「黄金響」がバサンの片目を貫いた。悲鳴を上げ、バサンが落ちてくる。そこへ接近し、音撃鼓・血風を貼り付ける怒鬼。
「やれぇ、怒鬼ぃぃぃ!」
怒鬼の音撃打がバサンの巨体に叩き込まれた。
388高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/05(木) 21:05:20 ID:WSqdas860
爆発したバサンの羽根が舞い散る中、聖鬼と怒鬼は顔の変身を解除する事なく周囲を警戒し続けていた。
「感じているよな、当然」
聖鬼の問いに怒鬼が無言で頷く。二人は変身して童子、姫と戦う前から邪悪な気配をずっと感じていた。その気配は弱まるどころか、ますます強くなってきている。
「見事なものだな」
ふいに背後から声が聞こえた。慌てて二人が振り返ると、そこには和装の男性が立っていた。出現したのか、始めからそこに居たのか。
「いつの間に……!」
「ここで最後なんだ。邪魔はしないでもらおう……」
そう言うと男は二人に向けて掌を翳した。瞬間、二人の体は目に見えない力に弾き飛ばされ、木へ磔にされた。
「ぐ……!」
「心配するな、命まで奪うつもりは無い」
現れた時と同じで、男は音も無く消えるようにその場から立ち去っていった。二人の鬼を残して。
389高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/05(木) 21:06:48 ID:WSqdas860
数分なのか数時間なのか分からない。時間の感覚が狂う程の時が経過した後、二人の体は漸く動けるようになった。
「何だったんだ、今のは……」
「分からない。だが、あの男の言っていた事が気になる……」
ここで最後なんだ――。
「確かに気になるな。何の事だ?」
「一度関西支部へ戻ろう。我々がバサン退治のために山に篭ってから三日経つ。その間に何か起きたのかもしれん」
「ああ、じゃあ早速まつの所へ……」
二人がサポーターの待機している場所へ戻ろうとしたその時、邪悪な気配が再び迫ってきた。先程の男のように強大ではない。だが数が多い。
「夏の魔化魍だと?」
彼等の前に現れたのはムジナの群れだった。牙を剥き出し、威嚇行動を取っている。
「おい、ムジナが湧く予兆なんてあったか!?」
「知らん。ここはやるしかないだろう……」
相手は夏の魔化魍。当然ながら太鼓使いの怒鬼一人で対処する事になる。
「俺が切り込む。お前は援護に徹してくれ」
聖鬼にそう告げると、怒鬼は音撃棒・無明を手にムジナの群れへと向かっていった。
390高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/05(木) 21:08:09 ID:WSqdas860
全てのムジナを倒し、満身創痍となった二人がまつの下へと戻ってきたのは、それから数時間も後の事だった。
「な、何があったんですか!?」
セイキに支えられ、息も絶え絶えのドキを見てまつが叫ぶ。
まつに今までの出来事を全て語って聞かせるセイキ。
「ムジナが突然現れたのも妙だが、それ以上に奴等、いつもより凶暴だった。何だったんだ、ありゃ……」
それを聞いて何かをまつが思い出した。
「……そう言えばコウキさんとイブキさん、時期外れの夏の魔化魍を追っていましたよね」
確かに、コウキ達が夏の魔化魍退治のために出撃するという話をセイキは聞いていた。そう言えばこの二人も場所は京都だったか……。
「あと京都と言えばニシキさんとイッキさんも市内に魔化魍が発生したとかで出撃していましたよね」
ニシキ達の場合は、セイキ達より二日早く出撃している。
「とりあえず戻ろう。ドキもこのままじゃ不味いしな」
「じゃあ私、すぐに撤収の準備をします。セイキさんはドキさんを連れて先に車へ向かって下さい」
その後、三人は関西支部へと戻っていった。


第二章へ続く
391オレ響鬼を作りました:2007/04/06(金) 21:40:51 ID:oY7HKp1K0
『仮面ライダー真・響鬼SPIRT』
をこの度紹介致します。
http://blog.livedoor.jp/basshar/?blog_id=2131082

一旦このSSで投稿しようと1年ほど練ってたんですが、SSの領分を越えてると判断したので、ブログで掲載する事としました。


真、とついてますが、「これこそ本当の響鬼」なんて本気で思ってません。
ただそういうインパクトをあたえるタイトルがいいと思い切ってみました。

響鬼という世界とストーリーに対して「こうあってほしかった」「こうすればよかったんじゃないか」という私の想いを形にしました。
あくまでオレ響鬼なので、いきなり設定やキャラの人格が変わってて拒絶反応する方もいると思われます。
ですからオレ設定を挙げて、その上で読まれるかどうかの判断をつけていただきたいと思います。

・魔化魑はこの世でただ一対だけ存在する童子と姫の子として生まれる。
・魔化魑、童子、姫、鬼は普通の人間に見えず、また人工物を透過する。つまり魔化魑の被害は普通の人間に分からない。
・魔化魑は人間を皮膚からのめり込ませるように摂取する。口からの捕食もあるが、それは生物としての名残。
・魔化魑同士集まると絶えず喰い合っている。
・猛士は魔化魑に親を食われた者たちで構成されている。
・ヒビキは明日夢と出会う前に桐矢を弟子にしている。
・桐矢とあきらは婚約している。婚約せざる得ない事情がある。
・ザンキ−トドロキ師弟はヒビキ−明日夢師弟と大きく被ると思ったので、人格をかなり変えている。ザンキは猛士に反感を持ち偽悪趣味。トドロキはより単純な性格に。
・明日夢はヒビキ以外の人からその性分を理解されていない。

等です。
これでおもしろいと思われた方、是非一読してください。
392名無しより愛をこめて:2007/04/06(金) 22:11:11 ID:sAxZ2Nag0
>>391
×魔化魑(まかち?)
○魔化魍
393名無しより愛をこめて:2007/04/06(金) 22:22:17 ID:PKSbLRDW0
>>391
もしかして>>155か?
1年も練っていたっていうのがすげえwww
394名無しより愛をこめて:2007/04/09(月) 00:06:19 ID:tP9B+y0t0
高鬼への反応が全くないのがなんとも・・・・
395名無しより愛をこめて:2007/04/09(月) 00:10:21 ID:oiSGyUZg0
>>394
ごめん、心の中で面白いと思っていた
396名無しより愛をこめて:2007/04/09(月) 13:30:53 ID:Sz0NqPIvO
高鬼さん
長編っすね
楽しみです!!
397高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/09(月) 21:18:21 ID:rWq7QikW0
前回は>>384-390

仮面ライダー高鬼「動乱する京都 第二章 高鬼・威吹鬼」


長月十一日月曜。
「クダン……ですか?」
「そう。これが報告書よ。読んでみる?」
そう言うと南雲あかねはコウキに書類を手渡した。
猛士総本部、研究室。コウキはここで、これから出撃する京都に数日前クダンが現れた事を初めて知らされた。
「クダンと言えば、滅多に出てこない事で有名な稀種魔化魍ですよね」
「そして出る時は必ず大きな災厄が前後して訪れる事でも有名な、ね」
書類に目を通しながらコウキが唸り声を上げる。
「一体何なんでしょうね、この大きな災厄というのは……」
「さあ……。クダンは少し前に流行ったノストラダムスの予言書みたいに捻くれてないから、額面通りに受け取れば良い筈だけど……」
「それにしたって漠然とし過ぎでしょう」
そこへイブキとサポーターの立花勢地郎がやって来た。
「コウキさん、僕達はいつでも行けますが」
「ああ、私もすぐに準備をする。先に駐車場まで行っていてくれたまえ」
二人が退室した後、音撃武器を納めた愛用のバッグを手に取るコウキに向かってあかねが尋ねた。
「カシャだっけ?」
「はい、天ヶ瀬ダムの界隈に出たらしいので私とイブキが向かう事になったのです」
「と言う事は宇治の方に行くんだ。宇治茶のお土産を頼んでもいいかな?」
そう言うあかねに対し、コウキは笑顔でいつもの決めポーズを取ると研究室を後にした。
398高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/09(月) 21:19:35 ID:rWq7QikW0
道中、コウキはイブキ達とここ数日の京都について話し合った。
「クダンが出ていたんですか。ううん……」
研究室でのコウキ同様、イブキが腕を組んで唸り声を上げる。
「災厄……。それってここ数日の京都での異常発生と何か関係があるのでしょうか……」
そう。クダンが現れたとされる日と前後して、京都では魔化魍の異常発生が報告されている。二日前にはイッキとニシキが京都市内へ出撃していた。
「聞いた話だとセイキさんとドキさんもこれから出撃のようですよ。山陰道の方へ行くそうです」
「彼等も京都なのか……」
クダンの予言は100%当たると伝えられている。今までは半信半疑だったコウキだが、こうなると信じざるを得ない。
「……そう言えばニシキさん達、出撃してから今日まで全く連絡が無いそうです。山奥ならまだしも、市内に出撃していると言うのに……」
確かにおかしな話である。
「……あの二人の事だ。きっと何食わぬ顔で帰ってくるに決まっている」
イブキに対してと言うよりは、自分自身に言い聞かすかのようにコウキが呟いた。
そこへ勢地郎が人数分の飲み物を買ってやって来た。
「お待たせ。はい、イブキくん。コウキさんもどうぞ」
「有難う」
「よし、飲んだらすぐ出発だ。イブキ、足を引っ張るなよ」
そう言うとコウキはイブキの肩を思いっきり叩いた。
399高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/09(月) 21:20:58 ID:rWq7QikW0
京都府宇治、天ヶ瀬ダム。
現場へ到着した三人の前に、燃えるように真っ赤な体毛を持った猫の魔化魍が現れた。カシャだ。
黒雲の中から現れた巨大な猫の手が葬列を襲い、死体を奪っていったという伝承が残っている通り、カシャとは猫の魔化魍である。
後年、関東に現れた改造型が狐に酷似した外見をしていたのは、過度な改造によって外見が変化したか、狐火の能力が一緒に付加されていたかのどちらかと思われる。
カシャは三人の姿を認めると、牙を剥き唸り声を上げた。
バイクから降りたコウキとイブキが、それぞれの道具を鳴らしながらカシャ目掛けて走っていく。
まず高鬼の鉄拳がカシャに炸裂した。続けて蹴りを側頭部に叩き込む。
逃げようとするカシャの背後に威吹鬼が回りこんだ。そして手にした音撃棒・山背風で攻撃を仕掛けていく。
「シャアアアアアア!」
高く吼えると、カシャは鬼達を遥かに上回る跳躍力でその場から離脱してしまった。
「追うぞ、急げ!」
高鬼達の追跡が始まった。
400高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/09(月) 21:22:09 ID:rWq7QikW0
宇治川に沿ってバイクを走らせる高鬼と威吹鬼。威吹鬼の背には勢地郎が必死にしがみついている。
カシャは飛ぶような速さで彼等の前方を疾走していた。
「逃がさん!」
高鬼はバイクの上で立ち上がると、両手に持った音撃棒・大明神から鬼棒術・小右衛門火を放った。炎の雨が降り注ぎ、カシャの足を止める。
その隙に威吹鬼と勢地郎の乗ったバイクが加速し、カシャに体当たりを仕掛けた。
「よし!」
バイクを停め、「大明神」片手に高鬼が駆け寄る。だがカシャは往生際悪く、煙幕を吐いて姿を隠そうとした。
「させるか!」
威吹鬼が巻き起こした風が、煙幕を払った。そこへ高鬼が音撃鼓・紅蓮を貼り付ける。そして。
「音撃打・炎舞灰燼!」
カシャの胴体に貼られた「紅蓮」に激しく「大明神」を叩き込む。爆発。
爆煙の中から、「大明神」をくるくる回しながら高鬼が出てきた。
「お疲れ様です」
勢地郎が二人に声を掛けるも、高鬼はどこか腑に落ちない様子だ。
「どうかしましたか?」
「おかしくないかね?あの一匹だけしか出てこないというのは……」
「確かに……。それにあのカシャ、積極的にこちらと戦おうとはしていませんでした」
手負いだったのではないかと高鬼は考える。ではカシャは何と戦ったのかという話になるのだが。
「……もう少しこちらに滞在して様子を見よう」
「そうですね」
一行はとりあえず宿泊先へと向かう事にした。
401高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/09(月) 21:23:28 ID:rWq7QikW0
長月十三日水曜。
京都滞在中、コウキとイブキは矢継ぎ早に本部から送られてくる任務をこなしていた。
前述の通り京都では魔化魍の異常発生が続き、関西支部の鬼の大半が京都に出撃していた。彼等は帰還する間もなく、戦いを続けていたのだ。
そんな中、コウキは先日のカシャの件について一つの仮説を立てた。
手負いだったのは他の魔化魍と縄張り争いをしたからではないか、と。
本来魔化魍の生息域が被る事はない。従って今回の件は、自然界のバランスが崩れている事を意味する。
コウキの脳裏に、いつも突発的な実験を繰り返す一組の男女の姿が浮かんだ。おそらく今回も連中の仕業だろう。
コウキが宿に戻ってきた時、既に部屋にはイブキと勢地郎が戻ってきていた。勢地郎はイブキの肩を揉んでやっている。
「ただいま」
「あ、コウキさん。お疲れ様です」
バッグを放って椅子の上にどっかりと腰を下ろすコウキ。この二日だけで、二人合わせて十回近く出撃している。
「いつまで続くのだろうな……」
誰にともなくコウキがぼそりと呟く。
「しかしコウキさん。何故こんなにも一箇所に集中して発生しているのでしょう?」
イブキが尋ねるも、コウキに分かる筈もない。
確かに、魔化魍はどうしたわけか巨椋池界隈を中心に大量発生している。だから現在宇治に滞在しているこの二人が出撃しているのだ。
ふとコウキは三年前の夏の日の事を思い出した。四十もの大型魔化魍が一度に現れて大暴れをしたあの日。
後の調べで、あれは古の封印が解かれた事が原因だと判明した。もし今回の件も何かの封印が解かれた事が原因だとしたら……。
「巨椋池……。何かあったか?」
司書の京極に電話して聞いてみよう。そう考えたコウキは、あかねへの定時連絡も兼ねて電話へと向かっていった。
402高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/09(月) 21:24:40 ID:rWq7QikW0
「コウキくん大丈夫?声にも疲れが表れているみたいよ」
電話口であかねは、心配そうにそう尋ねた。
「私もイブキも大丈夫です」
「そう。それなら良いんだけど……。じゃあ新しい任務を伝えるわね」
「任務ですか?」
これ以上何があると言うのだ?
「イッキくん達が消息を絶ってから丸三日が経過したの。それであなた達に捜索に行ってもらいたいんだけど……」
「こちらはどうするのです?まだまだ魔化魍が湧いていますよ?」
それに対しあかねは、支部の他の鬼を送る手筈がついている旨を伝えた。
「彼等は確か京都市内に出撃していましたよね」
「そう。イッキくん達は鴨川に起きた異変を調査しに行ったの」
最後の連絡の際、これから比叡山へ向かうと言っていたとあかねは語った。
「比叡山!?何でまた……」
「ごめんね、詳しくは聞いていないの。何せ夜中で眠たかったから……」
京都市は今コウキ達が滞在している宇治市のすぐ隣だ。行こうと思えば今すぐにでも行ける。
「分かりました。すぐにイブキ達にも伝えて、彼等の捜索へと向かいます」
「イッキくん達の事、お願いね。私も京極くんに聞いておくから」
その後、準備を整えたコウキ達は、宿を引き払うと一路京都市内へと向かった。
403高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/09(月) 21:26:24 ID:rWq7QikW0
京都市北東部。
日がすっかり暮れた頃、三人は比叡山へとやって来た。古より山岳信仰が続く地だ。
バイクで入れない所まで来ると、三人は式神を打って捜索を始めた。その後暫くして、一枚の式神が何かを見つけたらしく舞い戻ってきた。
式神に案内されるまま、山中を分け入っていく三人。コウキが「大明神」の鬼石に炎を点し、周囲を照らす。
と、三人の目の前に一軒の和風建築が現れた。
「こんな登山ルートから大きく外れた場所に、何故このような建物が……」
周囲を警戒しつつ近付いていく。建物の周りには何の気配も感じられなかった。
「……行ってみよう」
万が一の時のため勢地郎を残し、コウキを先頭に二人が中へと入っていく。
一見廃墟のように見えるが、中には人の手が入れられた形跡があった。埃一つ落ちていない。
一歩一歩慎重に進んでいく。と、とある部屋の前で何かの気配を感じた。イブキに目で合図を送ると、二人同時に障子を開けて中に踏み込む。
室内には明かり一つ無かった。「大明神」の炎で室内を照らすとそこには……。
「あっ!」


第三章へ続く
404名無しより愛をこめて:2007/04/09(月) 21:45:34 ID:45nZZDGz0
高鬼SS作者様、乙です。
長期になりそうですが、連載頑張ってください。
405名無しより愛をこめて:2007/04/10(火) 18:36:46 ID:ox2S2WWbO
このスレの悪いところは息の長いスレだから職人さんが投下してくれるのが一種当たり前になってて、
読んで楽しむけど「乙彼」の一言も書くのが(俺も含め)面倒になってることじゃないかな
一言でも乙の一文字でもいいから職人さんにフィードバックするように心がけようよ

つーことで高鬼さん乙!
なんだかいつもと違う感じで先が楽しみです
裁鬼さんも待ってます!
弾鬼さん、鋭鬼さん、DA年中行事さんも音撃待・正座wktkの型ァ!
406名無しより愛をこめて:2007/04/10(火) 22:45:15 ID:rO8/ISzE0
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +

『音撃待・正座wktkの型』
407名無しより愛をこめて:2007/04/10(火) 22:50:37 ID:tzSrB2+i0
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚ つ/つ/
 と__)__) +

『正座wktkの型(段階T)』
408名無しより愛をこめて:2007/04/10(火) 23:05:18 ID:7SLZPh3CO
前に誰かが「なれあいじゃ作者さんの為にならない。
批判しなきゃ成長ない。」とカキコ
それに引きずられてた気がする。
でも良かったなら伝えてもいいんだよな?
409名無しより愛をこめて:2007/04/10(火) 23:39:30 ID:La2jNKV+0
>>408
>でも良かったなら伝えてもいいんだよな?
もちろん良いと思うよ。でも、「反応が無い」というのも一つの反応というか
感想だと思う。

・・・・という事で、ゴメンよ高鬼SSさん。面白いんだけど、良い意味で安定
している作品なので、ここのところちゃんとコメント書かなかったよ。
続きをwktkしながら待ってます!
410名無しより愛をこめて:2007/04/11(水) 00:29:50 ID:EqHtROvY0
>>408
なれあい云々と「乙」を書く書かないはまた別の話じゃない?
急に乙乙言うのも職人さんに失礼だと思うし、自然体で行けばいいと思うけど。
批判でも評価でも「乙」だけでも、読んでますって判ればいいんじゃないのかな。
411名無しより愛をこめて:2007/04/13(金) 01:34:02 ID:tP5BJE1g0
   ∧∧
  (´ ・ω・)   明日は投下があるといいな…。
  _| ⊃/(___
/ └-(____/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


  <⌒/ヽ-、___ もやすみ。
/<_/____/
412裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/13(金) 19:56:28 ID:PsyK9tX4O
瞬過終闘―― 『十一 クジキ 《散り積もる生命(ひと)》』

「‥‥家族?」
イチゲキは、彼を取り囲む黒い集団達を見回した。一人一人の眼が憎悪と怨念をイチゲキとデンキに向け、殺せ殺せと低い声で繰り返していた。
イチゲキは正面の鬼らしき戦士―― クジキに視線を戻し、クジキはそれを待っていたかのように話し始めた。
「例えば‥‥ 魔化魍が成体になるまで、十の人間を食らうとする。年間に現れる魔化魍の数、去年は325‥‥ ナニが言いたいのか、解るよなオッサン」
イチゲキは困惑を見せず、左手首の変身鬼弦『音戒』を弾き鳴らそうと構えた。デンキも『音現』に指を掛けて臨戦態勢をとる。
「‥‥」
「それを何十年‥‥ 何百年続けてきたんだ‥‥?」
「‥‥命を守る。 戦う理由は‥‥ ただ、それだけだ」
イチゲキと同時にデンキも鬼弦を弾き、二人は炎と雷を身に纏った。
「わ〜っ! ヘンシンだー!! ねえクジキ? ハイキもう、たたかっていいの?」
「‥‥ああ。好きにしな。」
「わ〜い!!」
水色の髪を翻し両腕のスリットから薄い刃を伸ばすと、ハイキは変身中のイチゲキへ飛びかかった。
413裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/13(金) 19:58:17 ID:PsyK9tX4O
メタリックスカイブルーの閃光は炎を掻き消した一撃鬼の防御動作をすり抜けて右肩を貫く。左の刃を引き抜いたハイキは飛び散る血に顔を濡らしながら、今度は一撃鬼の左腕を狙った。
「くっ!」
両腕の烈光を振り払う様に右から左へ斬撃の壁を作ると同時に炎の気を練り上げ、一撃鬼は攻撃に移った。
「うっわぁ〜っ! スゴいスゴい! オジサン、もういっかいやって!!」
無邪気さとは不似合いな俊敏な動きでハイキは炎の斬撃を避けた。しかしその動き自体が有り得ぬレベルであり、現に一撃鬼は放った炎の内側にハイキの顔を見ていた。
「ねえねぇ! もういっかいミせてよぉ〜!」
一撃鬼は驚きながらも後ろに跳んで距離をとり、構えを改めて腰の音撃震『陽光』をかき鳴らした。
「‥‥」

変身を終えた電鬼は、灰色の身体に緑色の角と、師である轟鬼とは真逆のカラーリングだった。
が、真っ直ぐ突き進む生き様と豪快な戦い方を継承しており、鬼となった動機も魔化魍から轟鬼に 助けられたからと、異邦人ながらも周囲は10年前のトドロキを見ているようだった。
「‥‥珍しいな、外人の鬼か。 まあ外人でも連れてこなければ、鬼の成り手なんかいないしな」
414裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/13(金) 20:01:14 ID:PsyK9tX4O
電鬼は無言で烈電を振りかざし、灼熱色のクジキへと突進した。真白い烈電の袈裟掛けは空を切り、クジキは雨雲を背に空中からキックで急降下した。
「ワウッ!?」
炸裂と同時に電鬼を地面に叩き付け、クジキはその背を更に踏みつけ、否、踏み潰した。
電鬼の絶叫に振り向いた一撃鬼は、次の攻撃を待つハイキから視線を逸らした。
「電鬼!」
叫ぶ一撃鬼の身体に稲妻が走る。それは2分待ちぼうけたハイキの斬撃だった。血が舞い上がり、一撃鬼の四肢に幾つもの傷が肉を開いていた。
「つまんなーい! もうヤダよ〜♪」
ハイキは両腕の刃を濡らす一撃鬼の血を振り飛ばすと、その青白い腹に自分を映した。
「‥‥そうだな。終わりにするか」
クジキは足下で痙攣していた電鬼を蹴り飛ばすと装備帯の背から音撃棒を取り出した。
それは両の持ち手こそ銀と茶色で一撃鬼達が見慣れているものだったが、左の柄は緑で鬼石は青、右は黄色の柄に赤い鬼石だった。
「おい、ハイキ。もう終わりにしていいぞ」
415裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/13(金) 20:03:00 ID:PsyK9tX4O
音撃棒を構えたクジキは、背中から大小幾つもの音撃鼓を取り出して空中の電鬼に投げつけた。
「うん♪ オジサン、バイバーイ!」
ダメージに崩れた一撃鬼は、身体を何かに支えられた気がした。しかしそれはハイキの空色の髪で、数メートルも伸びていたそれは一撃鬼の手足に巻き付き、動きを封じていた。
「え〜っと‥‥ たいきおんげきざん、『びじんはくめー』!!」

一撃鬼の意識は、そこで途切れた。

『‥‥何も知らないヤツが、一番幸福で一番不幸だな』
『ねぇ〜‥‥ しんじゃったの? ねえ〜?』
『戦闘データ、モニター完了しました』
『関係ねぇよ、そんなモン。行くぞ』
『クジキさん、コイツにトドメを!』
『‥‥必要ねぇよ。ソイツがアイツと同じなら、これから始まる生き地獄にヤられるだけだ』
『みんな〜♪ かえろーよ〜!』
『‥‥誰も守れない弱さに、苦しみながらな‥‥』

意識を取り戻した身体には土砂降りの雨が叩きつけられていた。陽を失った山の空気から今が夕刻だと分かり、イチゲキは素顔を起こした。
完敗を越えた敗北の中、イチゲキは第一に電鬼を探した。
416裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/13(金) 20:05:49 ID:PsyK9tX4O
あの鬼に似た戦士達とは戦闘力が違いすぎたが、それでも逃げ延びているか、イチゲキのように命を取られずに済んでいるかもしれない。爪先に何かが当たった。
『‥‥――』
岩と見間違った泥まみれの肉塊に突き刺さされていた烈電が、稲妻のような衝撃をイチゲキの思考に叩きつけた。

研究所の第2エレベーターを偽装した資材置き場の前で、日高は帰ってきたクジキに歩み寄ると呟いた。
「‥‥『準備』は済んだ。漸くお前達の出番だ」
土砂降りの中、サッキのバイクを駆っていたクジキとハイキはずぶ濡れだった。
「後の詳しい話は、下で小暮に聞け」
「‥‥アンタはどうする。まさか一緒に来るんじゃないだろうな」
資材置き場の入り口の闇がヘッドライトに裂かれ、到着した車に日高は歩き出した。
「‥‥俺はもう一度『説得』に行く。その後は腐った老獪達の目覚まし時計を鳴り響かせてやるさ」

地下に潜った二人を迎えた小暮は、用意していた真白いバスタオルでハイキの髪を拭いてやり、クジキが無造作に放り投げた音撃棒と音撃鼓の束を拾った。
「‥‥調子は、どうだ?」
417裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/13(金) 20:07:54 ID:PsyK9tX4O
謝罪とも怯えとも見える弱々しい表情で、小暮はクジキに訪ねた。当のクジキは振り向きもせず、シャワー室へ向かいながら投げやりに答える。
「‥‥良すぎて戸惑うな。その太鼓は強度を上げておけ。鬼一人を花火にしただけで砕けるようじゃ、無い方がマシだ」
「ああ、解った」
頭を拭かれていたハイキはクジキがいなくなると、上機嫌に跳ねた。
「あのね、あのね! きょうハイキ、はじめてオニのオジサンとあったんだよ!」
小暮は優しく微笑みながら頷いた。
「オジサンがね、ボーッ!ってヒをだしたの。ちゃんとあたらなかったよ! ちゃんと、おとうさんがおしえてくれたのつかったよ!」
「ああ、大丈夫だったかい? 恐くなかったかい?」
小暮の言葉に、少し下を向いてむ〜っ、と考えた ハイキは、満面の笑みを見せた。
「たのしかった!!」
小暮はその純粋な笑顔に、泣き出したくなる胸の傷みを堪えながら、悲しげな作り笑顔で頷いた。

失った生命との思い出、それを取り戻せない事実。信じてきた力の無意味さと、正義の仮面に隠し続けた、あまりにも情けない真実‥‥

この日、イチゲキは失踪し、小暮は今日も寝室で泣いた。

続く
418名無しより愛をこめて:2007/04/13(金) 21:36:04 ID:rJJ1WZDb0
裁鬼作者さま、投下お待ちしてました。
次回もよろしくお願いします。
419名無しより愛をこめて:2007/04/14(土) 07:23:29 ID:AtWR/3mh0
乙!
420皇城の〜中の人 ◆COP3Lfy.8w :2007/04/14(土) 21:39:48 ID:L1CGm4OM0
 裁鬼職人様に対抗して…というわけではありませんが…。

http://olap.s54.xrea.com/cgi/pal/imgdir/46.jpg

 パラレルで、両親を失わずそのまま父の後を継ぎ鬼になったあきらという設定で製作してもらったS.I.C.です。
 コードネームはまんま「暁鬼」。
 暁の空をイメージした体色です。
 襷といいますか、ベストだけは私が半田をよじって製作いたしました。
 プロポーションはグラビア等を参考にしましたので、バストがかなり大きめに造ってあります。
 素体は女鬼の小柄さを出すために鋭鬼を使用。頭部と音撃鳴が息吹鬼のものを使用してい
ます。
腰の前垂れは本物の皮製。
 朱鬼のようにスカートでは興ざめだと思い、逆に何もなしでは恥ずかしかろうとSPAUNの戦闘
天使アンジェラからアイディアをいただいてこのような姿になりました。

 写真が下手で申し訳ありません。
421名無しより愛をこめて:2007/04/14(土) 22:28:41 ID:AtWR/3mh0
>>420
なんか物凄く惜しい感じがする・・・。
首が長いからか・・・ボディ色の明度が高すぎるような気も・・・。
422裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/15(日) 00:07:42 ID:28YOWGslO
ttp://e.pic.to/b8thf

装甲一撃鬼完成。こんな感じ。
一撃鬼が何故装甲声刃使えるのかは作者にも不明。その内あっちに修羅と纏めてうpします。
423高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/15(日) 18:55:07 ID:Cg0EUnfV0
前回は>>397-403

仮面ライダー高鬼「動乱する京都 第三章 壱鬼・西鬼」


長月九日土曜、京都駅。
この日、イッキはニシキと共に鴨川周辺に現れたとされる魔化魍の調査に赴く事になっていた。
ニシキとサポーターの石川昭一は関西支部に寄ってからこちらへ来るため、とりあえず駅前で待ち合わせをしていたのだが……。
「遅いなぁ。間違って八条口の方に行ってるんじゃ……」
彼は今烏丸口に立っている。待ち合わせ場所はこの烏丸口だと念を押したのに……。
と、自分の名前を呼ぶ大きな声が響いた。その大声に駅の利用者達が一斉に振り向く。
声の主は案の定石川だった。イッキの姿を確認すると、嬉しそうに手を振ってくる。後ろにはニシキの姿もあった。
「ははは……」
乾いた笑いと共にイッキが小さく手を振り返す。これから先が急に不安になってくるイッキであった。
424高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/15(日) 18:57:06 ID:Cg0EUnfV0
三人は鴨川に沿って塩小路橋から順に七条、正面、五条と当たっていく手筈になっていた。イッキが二人を連れて橋へ向かおうとすると。
「それなんだけど、一つずつ当たっていくのって面倒だろ?だからさ……」
どうやら石川には何か考えがあるらしい。
と、十人ぐらいの異様な団体がこちらへと向かってきているのが見えた。
「おお、思ったよりも早かったな!」
兎に角異様な団体である。何が異様かと言うと、個々人の風体だ。鳶職やガテン系の人間も居れば、背広姿のサラリーマンや私服の者も居る。そして全員が和気藹々と談笑しながら歩いてくるのだ。
何の集まりなのか全くもって分からない。イッキが目をぱちくりさせながら様子を窺っていると、先頭を歩いていた男が急に大声を上げた。
「石川兄貴!お待たせしました!」
「おう、早くこっちに来い!」
石川がそう言うや否や、団体が一斉にこちらへと走り寄ってきた。そして。
「石川兄貴、ちぃーっス!」
全員が一斉に体を九十度曲げてお辞儀をした。それを満足そうに眺める石川。呆気に取られるイッキを見て、ニシキがにやにや笑っている。
「あの、この人達は一体……」
イッキの問いに石川が答える。
「おう、こいつらは俺が昔所属していたチームの仲間だ」
「チーム……」
集まった面々に石川が労いの言葉を掛ける。ニシキも面識があるらしく、同じように言葉を掛けていた。
「兄貴!頼まれていた情報、仕入れてきました!」
「よっしゃ、一人ずつ順番に報告してくれ」
メモ帳とペンを手に、石川が告げる。どうやらこの人達は何かの情報を持ってきたらしい。
実際、彼等が持ってきたのは、最近の鴨川流域で起きた様々な事件や噂に関する情報だった。
「成る程、こうしてみると三条と四条の間が噂の出所みたいだな。助かったよ、有難うな」
「兄貴にそう言ってもらえただけで俺達満足です!」
そう言って再び男達が石川に向かってお辞儀をする。
「どうやら俺達が行くべき場所は決まったみたいやな」
笑顔でイッキにそう告げるニシキ。
「はあ」
何となく居心地の悪さを感じるイッキであった。
425高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/15(日) 18:59:38 ID:Cg0EUnfV0
その後、一行は三条大橋へと辿り着いた。川岸では沢山のカップルがいちゃついている。週末、鴨川沿いには多くのカップルが集まるのだ。
「うっわ、俺ああいうのを見ると無性に腹が立ってくるんだよな」
カップル達を見て、石川が本気で嫌そうにそう呟く。そんな石川を尻目に、イッキはニシキに先程の男達について尋ねていた。
「あの人達と石川さんは一体どういう関係なんですか?」
「ああ、さっきの連中?あれはな、石川が学生時代に所属していた野球チームのチームメイト。俺も何回か会った事あるけど、実に気の良い連中だよ」
「あ、チームってそういう事だったんですね」
てっきり夜中に爆音撒き散らして暴走するチームかと思っていた。石川のバイク趣味を考えれば、自然とそっち方面に思考は行ってしまうのでイッキを責める事は出来ない。
「どうする?力ずくで追い払ってこようか?」
「阿呆か!とりあえず一度引き上げて、夜中にでも出直して調査や!」
「げええ、夜中にかよ!面倒くせぇ!捜査の手間省くためにわざわざ昔のダチに招集掛けて情報集めさせたってのによ!」
子どものように駄々を捏ねる石川をニシキが宥める。甘い雰囲気をぶち壊されたカップルの集団が、イッキ達の方を睨み付けてきた。
駅で感じた不安が現実のものとなった事を実感したイッキは、諦めを感じて溜息を一つ吐いた。
426高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/15(日) 19:01:52 ID:Cg0EUnfV0
長月十日日曜、三条大橋。
時刻は午前二時を過ぎたところ。草木も眠る丑三つ時というやつである。
イッキ達三人は、川岸で式神を打って調査を行っていた。
「出てこねぇな」
大きく欠伸をしながら石川がぼやく。
場所は市内。それだけに魔化魍が出現した場合は目立たないよう迅速に退治をしなければならない。
「すぐに魔化魍が出てくる程世の中は甘くないですよ」
イッキが石川に缶珈琲を手渡そうとしたその時、川の中を何者かが歩いてくるのが見えた。
全身ずぶ濡れの男女だ。女の方がこちらへ向かって笑い掛けてきた。思わず笑い返してしまうニシキと石川。
「何をやっているんですか!あれはおそらくヌレオンナの童子と姫です!」
変身音叉を取り出しながらイッキが叫ぶ。
童子と姫は、みるみるうちに怪童子、妖姫の姿へと変貌すると、跳躍して襲い掛かってきた。
怪童子はイッキに襲い掛かったが、変身の際に生じた落雷を受けて川へと弾き飛ばされる。ばしゃんと大きな音が闇の中に響いた。
一方、妖姫はニシキと石川へと襲い掛かった。
「うおっ!」
避けたもののバランスを崩し、石川が川へと落ちた。水音が派手に上がる。
変身鬼弦を鳴らすニシキ。暴風が吹き荒れ、それによって妖姫の体が川へと飛んでいく。三度目の水音が上がった。
「放電して感電させてやる!」
「待て!石川が一緒に落ちた!」
電撃を川に流そうとする壱鬼を慌てて西鬼が止める。
「うおお、やべぇ!こっち来んな!」
慌てて川岸へと這い上がる石川。その眼前に再度跳躍した妖姫が降り立った。
「やらせるかって!」
妖姫の背中に体当たりを仕掛ける西鬼。揉み合いながら二人は川へと転落してしまった。
「電撃は使えないか。くっ」
得意の電気攻撃を使えない壱鬼の足を掴み、怪童子が川へと引きずり込んだ。
浅い川の中央で、二組の異形が水音を立てながら激しく戦いを繰り広げる。それを川岸で見守る石川。
427高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/15(日) 19:03:21 ID:Cg0EUnfV0
と、長く大きな影が川を泳いで彼等の下へ音も無く近付いてきた。最初にその気配に気付いたのは壱鬼だった。
「何だ、何か来る!これは……」
水中から現れたのは、巨大な蛇の魔化魍だった。鎌首をもたげ、ちろちろと舌を出している。
「ヌレオンナ……」
濡れ女。「画図百鬼夜行」では蛇の姿で描かれているが、伝承ではずぶ濡れの女の姿だと言われている。
また、地方によってはウシオニと一緒に出てくるとされている。どちらもそれぞれの魔化魍の姫を指していると思われる。
ヌレオンナがその大顎を開けて壱鬼を飲み込まんと襲い掛かった。間一髪でこれを回避すると、壱鬼は音撃棒・霹靂を手にし、間合いを取る。
壱鬼がヌレオンナと戦い始めた結果、西鬼一人で怪童子と妖姫を相手にする事となってしまった。両者の攻撃を巧みに躱していく西鬼。
「西鬼くん、受け取れえ!」
石川が西鬼の音撃弦・剣心を彼の方へ向かって力一杯投げた。
「よっしゃあ、任せろ!」
目の前の怪童子の肩を踏み台にして跳躍した西鬼が、これを空中で見事に受け止める。そして着水と同時に怪童子の胴体を横一文字に斬った。
更にダッシュして妖姫の胴を擦れ違い様に斬り捨てる。「剣心」を構えた西鬼の背後で、怪人達の体は塵となり崩れ去った。
428高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/15(日) 19:05:05 ID:Cg0EUnfV0
鴨川を滑るように進みながらヌレオンナが襲い掛かってくる。上手く避けたつもりが尻尾の一撃を受け、壱鬼の体が橋脚へと叩きつけられた。
続いてヌレオンナがその長い体を使って壱鬼を絞め殺そうとしてきた。ヌレオンナの体の長さは俗に三町(約327メートル)あると言われるが、この個体はそこまで大きくない。
体勢を立て直していた最中の壱鬼の体に、ヌレオンナが容赦無く巻きつき締め上げてくる。
「ぐあ……あ……」
骨も砕けんばかりの締め付けに壱鬼が呻き声を上げる。その時。
「おーい、壱鬼ぃ!俺の事は気にせず電撃を使え!」
川岸から西鬼が呼び掛けた。その姿を確認し、朦朧とする意識の中で電撃を放つ。
川面が、迸る電撃の蒼い光によって染められた。溜まらず壱鬼の体を離し、逃走を図るヌレオンナ。
「逃がすわけにはいかない……」
跳躍し、ヌレオンナの背に飛び乗った壱鬼は、音撃鼓・万雷を貼り付けた。そして音撃打・電光石火を叩き込む。
従来の全身でぶつかっていくタイプとは違い、ハワイ沖で戦った時と同じ、一般的な音撃打の型だ。
壱鬼を背に乗せたまま、ヌレオンナはなんと高野橋の辺りまで逃げ続け、そこで漸く爆砕された。魔化魍の体は塵となり、川の流れの中へと消えていった。
「ふう……」
川岸へと上がり、顔の変身を解除して倒れ込むイッキ。締め付けられたせいで全身が酷く痛む。暫くは動けそうにない。
とりあえずイッキは、このまま西鬼達が追いつくまで待つ事にした。月が綺麗に輝いていた。
429高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/15(日) 19:07:03 ID:Cg0EUnfV0
その後、合流を果たしたイッキ達は、そのまま高野橋の近くで今回の件について話し合った。
「市内のど真ん中を流れる川に魔化魍が湧くのって、よくある事なの?」
「そんな事はありません。僕も京都方面を担当になってから長いですが、こんなの初めてです」
着替えを終えたイッキが、ニシキの疑問を即座に否定した。
平安時代から魑魅魍魎が巣食う京の都は、風水思想に基づいた強力な結界が張られてあり、その結果市内に大型魔化魍が出る事は殆ど皆無であった。
「結界の力が弱まる時期には湧きますが、ちゃんとした予兆が見られますし、だから対策を立てて早めに退治する事が出来ます」
従って今回のように突発的に発生する事は、絶対に有り得ないと言う。
そこまで言って、イッキが顔を顰めた。
「どうした?」
「いえ、実はその結界なんですが、四ヶ所のうちの一つがこの鴨川にあるんですよね……」
「じゃあその結界に何か異変が起きたと?」
「その可能性もあります」
互いに顔を見合わせるニシキと石川。
「……調べてみる必要があるかもしれません。これから延暦寺へ向かいましょう」
「延暦寺と言うと比叡山か?何でまた」
比叡山は京都と滋賀を跨いでいるため、滋賀方面担当のニシキ達にとっても縁のある場所だ。
「あそこは京都における鬼門の位置にあります。京都市内を覆う結界の影響が最も強く現れる場所です」
それに――とイッキは続けた。
「この鴨川は賀茂大橋の所で分流しています。それなのにヌレオンナはわざわざ比叡山方面に進んでいった。……僕の考え過ぎかもしれませんが」
430高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/15(日) 19:08:23 ID:Cg0EUnfV0
「よっしゃ!じゃあ俺、今から公衆電話探して比叡山に行く旨を伝えてくるわ」
そう言うと石川はその場からさっさと立ち去っていってしまった。
「え?あの、良いんですか?」
「構わんって。善は急げ、考えるよりまずは行動せよ。怪しいと思った事は納得行くまで調査しなきゃ、寝覚めが悪くなるで」
そう言うとニシキはイッキの背中をばしばし叩いた。
「ぐああ!いったああ!」
「あ、すまん!全身痛めてたんやったな!」
その後、連絡を終えた石川が戻ってきた。
「とりあえず確実に連絡が取れる人にと思って、研究室のあかねさんに電話しておいたわ」
「起きてたのか?」
まだ夜明け前である。
「いや、寝てたみたい。まあ大丈夫だろ。これで心置きなく比叡山へ行けるな」
「あの……今すぐ行くつもりはないから朝まで待てば良かったのでは?僕も少し休んでおきたいし……」
「え、そうなの?参ったな、あかねさんに悪い事した。ま、いっか」
そう言うと悪びれも無く笑い始める石川。
「あの、時間が時間ですので大声で笑わないで下さい。おまわりさん来ちゃいますよ」
自分には休まる時間が無いと改めて実感するイッキであった。
431高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/15(日) 19:09:58 ID:Cg0EUnfV0
イッキの回復を待って、一行は比叡山へと向かった。時間は既に黄昏時を過ぎていた。思ったよりイッキの受けたダメージは深刻だったのである。
「大丈夫か?」
山道を進むイッキを気遣い、ニシキが声を掛ける。
山を登りだしてから暫くして、彼等は式神を打っていた。しかし未だに一枚も戻ってきていない。
と、斥候を買って出ていた石川が二人の下に戻ってきた。
「おい、向こうに怪しい建物があるぜ!」
石川に案内されて辿り着いた先には、一軒の和風建築が静かに聳え立っていた。
「妙だな。こんな登山ルートから大きく離れた場所に……」
よく見ると、玄関に先程放っておいた式神達が何枚も落ちていた。只ならぬ事態を察知し、慎重に建物へと近付いていく。
「……行きましょう」
意を決して、イッキを先頭に中へと入っていく。何故か石川も一緒になって中へ入っていった。好奇心に駆られたらしい。
とある部屋の前でイッキとニシキが魔化魍のものと思しき気配を感じ取った。しかも複数。だが、一つ一つの気配はあまりにも弱く、小さい。
障子を開けて中へと踏み込む三人。しかしそこには。
「何だ?何も居ないぞ……」
そう広くない室内には、魔化魍の影も形も無かった。
「気を付けて!まだ気配は消えてな……」
「うわあああ!」
突然石川が悲鳴を上げた。慌てて振り向くとそこには。
「な!?これは……」
そこには、大量の蛾が舞っていた。石川が蛾の群れに顔面を覆われ、苦しそうに呻いている。
蛾は次第にその数を増していき、とうとう部屋一杯にまでなった。
身動きを封じられたイッキは、舞い散る燐粉の中、次第に意識を失っていった。


第四章へ続く
432名無しより愛をこめて:2007/04/15(日) 22:38:14 ID:Q2X7QvA10
高鬼作者様、乙です。
433名無しより愛をこめて:2007/04/16(月) 12:40:35 ID:DOGA6OChO
高鬼さん乙です!
最近投下される作品が少なくて、淋しいなぁ
434名無しより愛をこめて:2007/04/16(月) 18:18:11 ID:hJQF9HQwO
鋭鬼作者さんは吹雪鬼さんに処刑されてしまったのかな……?

高鬼さんは関西支部オールスター大乱闘が待ち遠しいです
いったい何が出るのか楽しみ
瞬過終闘、小暮さんの裏切りはいったい何故?
犠牲者云々はもとより覚悟してたんじゃないかと思いますが……
435名無しより愛をこめて:2007/04/16(月) 22:57:49 ID:6x8N6Kg80
豚バラマダ?
436裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/17(火) 22:46:34 ID:gDhVhL25O
>>343
まあそう嘆くな。回数と中身でカバーするつもりで戻ってきたんだ。
でも裁鬼メインストーリーと今の瞬過終闘を比べられても困る。アレは放映中だったとか前期後期だとか混乱してた時にスルッと滑り込んだ異物みたいなモンだから。
当時の俺が引き出しフルオープンで脚本書いたらどうなるかって、最初からクライマックスのつもりで書いてたモン。カタチとしては電王と似てるかもしれない。

>>344
その覚悟云々が『瞬過終闘』のテーマ。ある意味で。響鬼でしか出来ない、突っ込んだ話を今回やりたかったから。次の回からそこら辺詰めてくんで期待して欲しい。
でもこう一言意見くれると展開見直せたりするから有り難い。戻ってきて良かったよ。お絵描き掲示板も宜しくな。
437裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/18(水) 21:27:32 ID:3gBOsoJ/O
瞬過終闘―― 『十二 バンキ 《逆らう血(ながれ)》』

明け方に止んだ雨に濡れていたアスファルトは太陽の下で漆黒に輝き、雑踏に踏まれ続けていた。
絶えず各々の目指す職場や学校、暇つぶしの溜まり場へ背中を押されていく人の海原で、足を停めたバンキは映画館の前にいた。
バンキも何度かこの古い建物の前を通り過ぎた事が何度かあったが錆びの目立つ看板や公開されている作品のポスターに視線を向けた程度で、そこを映画館以上のものとしなかった。
今目の前に立っても数十年前に作られたであろう老いた建造物は公開終了から3週間が過ぎた洋画のポスター等を膝元に、バンキを見下ろしているだけだった。
茶色くくすんだガラスの 扉を開けて中に入り閉める。外の雑音が殆ど聞こえず空気は古く古本の匂いがした。
2つしかないシアターの左側が、昨晩の電話で知らされた場所だった。
当然バンキ以外の人間はロビーに居らず、右側のシアター中央席にこの娯楽場の主が頭部を失ったまま座りモノクロ映画を鑑賞している事をバンキは知らずに終わる。
しかしそれはどうでも良い事だった。
438裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/18(水) 21:31:32 ID:3gBOsoJ/O
バンキは薄暗いシアターに入る。闇は何の危険性もなく聴覚が発達している鬼の耳でも上映されているサイレントムービーのフィルムが回転する音に混じり心音が一つ聞こえるだけだった。
客のないシアターにも関わらず日高博昭は立ち見をしていた。バンキは黙ってその隣に歩み寄り、上映されていたチャップリンの『黄金狂時代』を見続けた。
「‥‥此処に何をした?」
昨晩受話器を置いてからバンキはこの男に敬語を用いないと決めていた。
「良い映画を観るなら、それなりの雰囲気は必要だろう」
日高の隣に立つ『二人』にバンキは驚きながらも平静を保とうとする。
『二人』は光の無い眼にモノクロを写したまま微動だにせず、何を思っているのか何も考えていないのかバンキには解らなかった。
「ほんの30年ほど、この建物の砂時計を逆さにしただけだよ。この映画はビデオで一度観たことがあるんだが、君はどうだい?」
「チャップリンは観たことが無かった。娯楽を楽しむ時間を『鬼』に生きてきたからね」
チャップリンはチラつく映像の中でパンを使ったタップダンスを披露していた。
439裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/18(水) 21:33:55 ID:3gBOsoJ/O
「それは俺も一緒さ。君が鬼になる前から俺は音撃武器開発の予算を扱っていたんだ。 ‥‥それを知ったのはほんの5年前だったがね」
バンキは滲み出てくる汗を堪えて言葉を発する。謎の男女はそんなバンキを気にも留めずつまらなさそうに日高を見た。
「‥‥5年でアンタは、この二人と手を組めたのか‥‥」
「手を組む? この二人はただの観客だ。まぁ色々と力を貸して貰ったが、それは見物料みたいなものさ」
「‥‥その『見せ物』に、何故俺が必要なんだ」
「一番理解出来るからだよ。俺の考えを、君がね」
日高は傾く山小屋の場面に唇を和らげて漏れたような笑い声を発した。バンキにもそれは予想内の応えだった。
「バランス、金に集まる無知な者達‥‥ 皮肉や風刺は観る者それぞれが考える事だが、『アンタ達』の目にこの喜劇王はどう映っている?」
謎の男女は声を揃えて呟いた。
「何もないよ。チャップリン、死ぬ時に何も考えていなかったよ。みんな何も考えないんだ。死ぬ時には」
「‥‥どうだ、君達の『敵』は?」
「‥‥底が知れないな。だがそれでも、俺は人間を守り続ける。死ぬまでな」
日高は映像が終わるまで黙っていた。バンキは日高と手を組み鬼達を内部から崩す事を拒否した。
440裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/18(水) 21:37:09 ID:3gBOsoJ/O
「じゃあ、死んで貰おうか‥‥」
バンキの心臓を氷の刃が貫いた。謎の男女がゆっくりとこちらに身体を向け‥‥ そのまま、消えた。
「フフ‥‥ ハハハハッ! 冗談だよ。やはり君を殺すのは惜しい」
日高は膝を折れ手摺りで身体を支えるバンキの肩を叩いて出口に向かった。
「‥‥俺は、『鬼』として生きる。お前の野望の為に、死んで良い命など無いんだ‥‥ 誰もが必要な命なんだ。どんな命でも守り抜いて‥‥ あの人達に、追いつくんだ」
バンキに睨まれた日高は冷たい視線を返した。
「‥‥嘘をつけ!」
語気を荒げる日高はバンキに唾を飛ばして続けた。
「お前達鬼はな、生命を軽く見過ぎなんだよ!! 魔化魍に喰われた犠牲者は浮かばれず、その家族は事故だの災害だのと真実を知らされず『仕方ない』と刷り込まれ続けてきたんだ!!」
バンキは黙って聞いていた。反論を練る余裕もない程心身の回復は遅い。
「お前達に殺された命を『仕事』と割り切る資格も権利もないんだよ!! 死んで良い命など無いだぁ!? 誰もが必要な命だぁ!? 嘘をつけこの偽善者が!!」
日高はバンキを殴った。
441裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/18(水) 21:39:04 ID:3gBOsoJ/O
「確かに、幾らでも代わりの人間は居るさ! どれだけ死んでもお前達は魔化魍を倒せばいいさ!! だがなぁ! 『鬼』の命一つで割り切れる程、魔化魍に殺された命は軽くないんだよ!!」
バンキは痒みに似た右頬の痛みを感じながら身体を起こし、足を止めている日高を通り過ぎて出口に向かった。
「‥‥その答えは、俺には解らない。 ただ、アンタにとって大事な命を『鬼』が救えなかった事は‥‥ アンタ自身が、防げなかったのか?」
「‥‥」
「悪いが、諦めの悪さは親父譲りでね。それと、その答えを知っていそうな『鬼』なら、二人居る‥‥ サバキさんと、ヒビキさんなら‥‥」
バンキが出ていった後、日高は暫く佇んでいたが携帯を取り出し、低い声で呟いた。
「始めろ」

猛士北海道支部、中部支部、九州支部がクジキ達の襲撃で全滅するのは、この1時間後だった。
続く
442名無しより愛をこめて:2007/04/18(水) 21:41:57 ID:qRXADFoU0
裁鬼作者さん激しく乙です!!


それにしても最近、用語集関連の話題が出ないねえ
443裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/18(水) 21:49:59 ID:3gBOsoJ/O
【今日の裁鬼さん】

裁鬼「‥‥引退、しよっかな」
石割「ホントですか!?」
ヒビキ「ええ〜っ!?」
イブキ「お疲れ様でした」
トドロキ「俺、裁鬼さんの分まで頑張るっス!」
ダンキ「裁鬼さん! 最期はパーッといこうよ!」
ショウキ「あ、店予約しなきゃ!」
エイキ「パーッとパーティーしようぜ!」
フブキ「そうそう、身体も休めて」
バンキ「心を落ち着けて」
ゴウキ「温泉行ったり」
トウキ「盆栽いじったり」
裁鬼「‥‥‥‥」
カレンダー 4月1日

○エイプリルフール 【日頃の行い】 裁鬼 ●

今日の裁鬼さん 第7回 終わり つづく
444名無しより愛をこめて:2007/04/19(木) 00:05:17 ID:IctLoGcM0
裁鬼作者様、乙です。

「あの人」の目覚めもあるのでしょうか。
ずっと眠っていられるほうが、ひょっとしたら幸せなのかもしれませんが。
445名無しより愛をこめて:2007/04/19(木) 10:10:51 ID:TQaIOqRlO
ダンキさんひどっ!
最期はパーッとって、サバキさんに死ねと?

しかし博昭のおっさんはなんか逆恨みにしか思えないなぁ
しっかりした理由はあるんだろうけど、生半可な理由だったら防衛省に乗り込んで殴る
446名無しより愛をこめて:2007/04/19(木) 16:17:42 ID:WZihf8Dj0
感性の問題だろうか・・・
ぶっちゃけあんまりおもしろくない
447名無しより愛をこめて:2007/04/19(木) 18:40:16 ID:/+gKdGSIO
なんだろう…ふと思ったんだけど、今回までに死んだ鬼と今回壊滅した支部のほとんどが、他のSS作者さん達が主役・舞台として選択したキャラ・支部だってのが引っ掛かるなぁ…。

448名無しより愛をこめて:2007/04/19(木) 18:52:05 ID:N9icbKu9O
響鬼とかバトロワとか特定のSSスレは有るのに、ライダー全般見たいなの無いな……ヒーローサーガ2ch版見たいな。

言って見ただけですよ。
449名無しより愛をこめて:2007/04/19(木) 19:35:27 ID:IctLoGcM0
>>447
SSのプロローグで総本部まで沈黙させてるんだから、他支部が壊滅するのは自明の理だと思うけどね。
おそらく関東支部だって残らないんじゃないかと思うよ。
なんせ、コンセプトは『人類・魔化魍VS鬼』って前に言っていた様な気がするし。
東京も廃墟になっていたしね。
そう引っかかることもないんじゃないかと。

>>448
ヒーローサーガってなるとライダーだけじゃなくって東映の他のものとかピープロとかも入っちゃうけど、いいの?
450名無しより愛をこめて:2007/04/20(金) 11:10:54 ID:7jlpHzNg0
>>447
俺もそう思った。中四国の時とか豆腐スレとか見てると、なにか含みがあるような…
451名無しより愛をこめて:2007/04/20(金) 22:54:35 ID:EIYMr71W0
452戻る川作者:2007/04/22(日) 02:37:20 ID:JFdKEGjC0
久しぶりに書いて見ました。

今回は散文ですが、以前裁鬼メインで触れられていた京介の闇堕ちを自分流に綴ってみました。
続きは書くかまだ決めていませんが、暇つぶしにどうぞ。
453志を〜作者:2007/04/22(日) 02:39:41 ID:JFdKEGjC0
志を継ぐ者と業を継ぐ者(序)

志を継ぐ者と業を継ぐ者。
長く「鬼」を務めた漢(おとこ)は二人の少年にそれぞれ伝えるべきものを決め、伝えた。
心優しき少年には自分の『人』としての志を。
純粋すぎるほどの信念を持った少年には『鬼』としての業を。
あるときは含蓄のある言葉として。またあるときは自らの戦う姿で。
少年たちは僅かではあったがゆっくりと、しかし確実に男の傍で成長していった。
鬼の名はヒビキ−響鬼−。人としての名は「日高仁志」という。
454志を〜作者:2007/04/22(日) 02:44:23 ID:JFdKEGjC0
その日、ヒビキは弟子の一人である桐矢京介を修行に出した。
自分の傍での修行はその多くを終了し、他の鬼の下でより多くの業を習得させるためだった。
ヒビキは猛士関東支部の中でも古参の鬼であると共に魔化魍退治の主力武器である太鼓、弦、管の三種を扱える全国でも数少ない鬼の一人だが、それでも太鼓が専門のヒビキとそれ専任として鍛えた鬼とでは実力の差が開く。
そこで、ヒビキは弦や管専任の鬼の下で京介により高度な業を習得させるべく修行を課すことにしたのだった。
しかし、同じ支部の管や弦の鬼達では遠慮や甘えも出よう。
そこでかつて在籍した関西支部に連絡を取り、研修名目で京介の面倒を見てもらうよう依頼した。
関東支部長であり総本部事務局長でもある立花勢逸郎と関西支部長、総本部の三者間の調整により京介の修行は程なく認可され、約半年間、関西支部への短期移籍と言う形で京介は関西へ向かうことになった。
「行ってきます」ヒビキと同じような、それでいて少し違うポーズをとって京介は意気揚々と甘味処たちばなを後にした。
「しっかりやれよ」暖かい眼差しと共にいつものポーズで見送るヒビキ。
しかし、その半年後、京介はたちばなへは戻らなかった。
否、正確には関東には戻っていた。しかし全く違う形で。
455志を〜作者:2007/04/22(日) 02:47:03 ID:JFdKEGjC0
関西での修行も終盤に差し掛かった京介はこの日、先輩の弦の鬼に随行しバケガニの清めに向かった。
山間のある集落に入ったとき、京介と鬼は噎せ返るような血の臭いを嗅いだ。
集落はそっくり壊滅し、血の海と化していた。
無残に荒らされた所業はバケガニの仕業ではなかった。
呆然とする彼らの前に現れたのは、カラカサだった。
カラカサは文字通り傘のような形状をした魔化魍で、その傘の高速回転で飛行することが出来る。傘の内部にある無数の管で人を襲い、食らう。本来は空中戦に対応する管の鬼でないと倒せない厄介な代物だ。
一時撤退し、管の鬼で出直す方法もあっただろうが、不幸にも二人にその選択肢は見えなかった。
456志を〜作者:2007/04/22(日) 02:48:46 ID:JFdKEGjC0
あと少し時間があれば。
もう少し自分たちが来るのが早ければ。
自分たちにもっと力があったならば。
京介たちは言い知れぬ罪悪感と無力感、そして魔化魍への怒りに冷静さを失った。
よくも人を殺したな。
よくも人を食ったな。
よくも、よくも、よくも…。
魔化魍め、許さぬぞ。
憎しや、憎し…。
不幸なことに、この日京介を連れた鬼もまた若かった。
言葉を言い換えれば、心の『鍛え』が足りなかったのかもしれない。
それ故、彼らは気づかなかった。
このカラカサの食い荒らし方には巧妙な罠が張られていたことを。
鬼の血、それも人の血に眠る純血の鬼の血を得るためのものだと言うことを。
457志を〜作者:2007/04/22(日) 02:51:05 ID:JFdKEGjC0
カラカサの背に乗る男女の姿を彼らは見ていない。
季節感のあまりない夏物の和装に身を包む見た目には品のよさそうな男女は、この計画のために関東で下調べをしていた。
影響下に置きやすい凄や橘の血の者以上の能力を持つであろう鬼の血。
それも過去より連綿と伝わる鬼の血は人の中に眠ろうとも一度目覚めれば尋常ならぬ力を放つ。
奇しくもその血を探す男女が発見したのは桐矢京介だった。
桐矢家は実は明治の頃までは一族の中から鬼を輩出する家だった。
桐矢家のルーツは遥か戦国以前まで遡るが、始祖は鬼神の如き強さを誇る武将で多くの妖魅を退治したとも伝えられていた。
しかし、明治以後鬼を輩出することはなく、昭和二十年の東京大空襲によって全財産を焼かれ焼け出されことと、伝承を知る京介の曽祖父を失ったことで鬼に関する桐矢家の記録はその一切を失ってしまうこととなる。
その後、祖父が復員して桐谷家は再興されたが、戦前とは全く異なるものであり、その家に育った京介の父は消防士となって殉職した。
京介がヒビキの姿に父を重ねたのとは別に、眠っていた純血の鬼の血が響鬼の姿に反応したことを京介は知らない。
しかし、この男女はどういう手立てかはわからないが京介の血の秘密を知り得て、この未熟な子鬼の血を利用することを思いついた。
育ちきってしまわなければ、引き込みようはある。
そこで、親鬼と離れる時期を待った。
男女の読みは当たり、親鬼と離れた子鬼は旅に出、若い鬼と罠に掛かりにやって来た。
若い鬼は要らない。人が模した鬼などに興味は無い。
せいぜい苦しませて殺してやろう。その方があの小鬼も自分の無力さがわかるだろう。
わが子らに飲ませる血は純潔の血でなくてはならぬ。
しかも、生きていなくては。
458志を〜作者:2007/04/22(日) 02:52:50 ID:JFdKEGjC0
ダンキとショウキが経験した鬼面の肥大化。
今回の状況はその状況に酷似していた。
荒らされた集落。失われた無数の命。守れなかった失望、怒り、悲しみ、そして憎しみ。
もしかすると男女はその時のことを思い出し、今回の作戦として使ったのかもしれない。
そして、その状況に京介たちはあまりにも素直に反応してしまった。
我を失って変身した二人のその面(おもて)には大きくなりすぎた鬼面が浮き上がっていた。
制御の利かない力の暴走。
そこには清めの音も、音撃の為の型も戦い方も何も無かった。
それ故に消耗した弦の鬼はやがて力尽き、カラカサの陰から放たれる男女の力を防ぐことが出来ず全身を裏返され爆死した。
それを目の当たりにした京介変身体。
「うあああああああああああああああ!」
怒りとも悲しみとも憎しみとも取れる非情なる叫びが全身を包みこむ。
「…力が欲しいか?」そこに聞こえる女の声。
459志を〜作者:2007/04/22(日) 02:54:42 ID:JFdKEGjC0
「…?」一瞬時が止まったかのような錯覚を覚えた京介。
「…力が欲しいか、と聞いたのだ」次は男の声だった。
京介は辺りを見回すが誰もいない。
「我らはお前の味方」
「可哀想な鬼よ、力足らずと自らを悔いているのであろう」
「力があれば誰も傷つけずに済むと自らを責めているのであろう」
「…誰だ、お前たちは」錯乱の一歩手前であった京介には男女の声が『あの者たち』と結びつかない。
「誰でも構わないとは思わないか?我らはお前の味方だと言っている」
「力を与えようと言っているのだ」
「欲しいのだろう、誰をも超える力を」
「力を求める鬼よ、我らにその身を委ねれば良い」
一瞬、京介は力を欲した。誰をも越えるであろう力を。その瞬間に京介の目の前は真っ白になった。
「…光が…拡がっていく…」
或る者は言う。命は闇の中に瞬く光だと。
では、この広がる光はいったい何だったのだろう。
夢か、幻か。
一つ解ることは、この日一人の純血の鬼が闇に堕ちた、と言う事実である。

猛士関西支部所属「と金」桐矢京介、−行方不明−。
460名無しより愛をこめて:2007/04/22(日) 03:10:37 ID:b2zv1EFB0
>>452-459
・勢逸郎→勢地郎
・続編希望
・おかえり。
461高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:29:45 ID:QZxC/mJW0
前回は>>423-431

仮面ライダー高鬼「動乱する京都 第四章 刃鬼・暁鬼」


長月十二日火曜。
京都市北区にある船岡山。ここでは二人の鬼が戦いを繰り広げていた。刃鬼、そして暁鬼である。
コウキとイブキが宇治市で足止めを喰らい、イッキとニシキが消息を絶ったためこの二人が代わりに出撃していたのだ。
暁鬼の圧縮空気弾を全身に受けて、妖姫が木っ端微塵に吹き飛んだ。
そこへ、怪童子を倒し終えた刃鬼が戻ってきた。
「終わった?」
「見ての通りだ」
そう言って顔の変身を解除する。風がアカツキの前髪をなびかせた。
とりあえず童子と姫は倒したが、肝心の魔化魍はまだ発見出来ていない。
「おそらくライジュウだろうな」
雷獣。その名の通り雷と共に天から降ってくるとされる魔化魍だ。
「こんな良い天気にライジュウなんて……ねぇ」
同じく顔の変身を解除したバキが、空を見上げながら呟く。まあイレギュラーの発生はいつもの事なのだが。
「今日のところはこのぐらいにして、一旦戻ろうや」
そう言って立ち去ろうとするバキだったが、ふいに足を止めて真剣な表情になった。
「参ったな〜。向こうから来ちゃったみたいだ」
木立の向こうから、ライジュウがその鼬に似た姿を現した。
462高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:31:19 ID:QZxC/mJW0
「あーあ、そこそこでっかくなってるよ……」
顔を再び鬼のものに変え、刃鬼がぼやく。
同じく顔を鬼へと戻した暁鬼が、音撃管・水晶の銃爪を引き、先制攻撃を仕掛けた。
しかし、ライジュウは信じられない敏捷性を持ってその攻撃を躱すと、暁鬼目掛けて頭から突っ込んできた。
空中へと跳びあがり、身を翻して攻撃を避ける暁鬼。一方、ライジュウの前には刃鬼が立ち塞がった。
正面から受け止める刃鬼。
「ぬぐおおッ……」
刃鬼にしっかりと頭を押さえつけられたライジュウに向けて、暁鬼が鬼石を撃ち込んだ。
響き渡る絶叫。だが至近距離でこの叫びを聞いてもなお、刃鬼はその手を離そうとはしない。更にライジュウは全身から放電するが、それでも刃鬼の腕の力が弱まる事は無かった。
音撃射・雲散霧消の音色が放たれ、撃ち込まれた鬼石が反応する。爆発。
だが、下半身が吹き飛んだにも拘らず、ライジュウはなおも暴れ続け、とうとう鋭い爪で刃鬼の体を切り裂くと空へと飛び上がった。
音撃鳴を外し、再び発砲するもライジュウの上半身はそのまま空の彼方へと消えてしまった。
「ちっ……」
軽く舌打ちすると、暁鬼は刃鬼の方へと向いた。袈裟懸けに斬られた傷から鮮血が流れ落ちている。
「やっちゃったな……」
気合いを入れて傷口を閉める刃鬼。ただ出血の量が激しく、追撃は諦める事となった。
二人は宿を借りている建勲神社へと戻っていった。
463高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:33:27 ID:QZxC/mJW0
その日の晩、バキは言葉に出来ない程嫌な気配を感じて神社の境内へとやって来ていた。
アカツキもまた、只ならぬ気配を感じ、社殿に通じる石段の上で「水晶」を構えている。
と、闇の中から和服姿の女性が姿を現した。こちらを見て哂っている。
「何の用だよ、こんな晩にさ」
バキの問いに答える事無く、女が一歩一歩静かにこちらへと進んでくる。
「それ以上動くな。……この山での異変はお前の仕業か?」
「水晶」の銃口を女に向けながら、アカツキが石段を降りてくる。
「……て言うかさ、京都の各地で魔化魍が頻出しているのも、あんたらの仕業じゃないの?」
バキがそう言いながら女を睨み付けた。しかし歩みを止めた女はただ一言。
「この山には厄介なものが潜んでいます」
「それはあんたの事じゃないの?」
バキが茶々を入れるも、それを無視して女は淡々と話し続ける。
「ここ船岡山では、登山者がよく行方不明になっているでしょう?」
「それは聞いた事があるな。でも魔化魍が関与している可能性は無いから、猛士は動いてない筈だけど……」
「でもそれが魔化魍と同質の存在により引き起こされているとしたら?」
それを聞いて、バキとアカツキが顔を見合わせる。
女が、手にしていた一枚の紙片を差し出した。紙片は見えない力に動かされ、バキの手の中へと飛んでいった。
「地図?」
それはこの山の地図だった。
「印の付けてある所へ行ってみなさい。そこにあなた達の倒すべき敵が居る。労働の代償として、逃げたライジュウは私が何とかしておきましょう」
そう言い残すと、女は来た時と同様闇の中へと消えていった。
静寂が境内を包み込んだ。
464高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:34:58 ID:QZxC/mJW0
長月十三日水曜、早朝。
二人は地図に描かれてあった、誰も知らないような獣道を通って印の地点へと向かっていた。
「何か妙な所へ迷い込んだみたいだね」
いつの間にか彼等は霧の中に迷い込んでいた。それと同時に山の雰囲気ががらっと変わったのを、二人は肌で感じ取っていた。
「異界……か?」
バキもアカツキも、五年前にコウキ、セイキ、ドキ、まつの四人が山中異界へと迷い込んだという話を聞いていた。
「悪い気配は……感じられないな」
そう言いながら霧の中を手探りで進んでいくバキ。地図もコンパスも見る事が出来ないぐらいの濃霧だ。
こんな時、音の反響具合で空間を認識する力を持ったニシキが居たならとバキは思う。彼は数日前から行方不明らしいが大丈夫だろうか。
と、だんだん霧が晴れてきた。そして彼等の眼前に飛び込んできたのは……。
「何だよ、これ……」
そこには、欧羅巴にあるような、小さな古城が立っていた。
465高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:37:22 ID:QZxC/mJW0
城をまじまじと見つめる二人。どうするべきか迷っているバキを横目に、アカツキが行動を起こした。小さな筒を取り出し、高々と掲げる。
「行け、ホッパー!」
ぽんっ!という音と共に、筒の中から何かが飛び出して城の上空へと飛んでいった。
「ひょっとしてクダギツネ?」
「そうです。あいつの名前はホッパー。元々クダは東北地方の飯綱使いが使役するもの。俺にもその心得はありますから」
昨年末に秋田へ帰省した際、何かの手助けになればと渡されたのだと言う。
ホッパーは城の真上をくるくる旋回すると、再びアカツキの下へ戻ってきた。
「……そうか。御苦労だったな。戻れ、ホッパー」
その声を聞いてホッパーが筒の中へと戻る。
「城内には気配が一つ。我々が知る魔化魍やその育て親達と近い気配です」
「分かるの?ぐるぐる回ってただけなのに?」
「飯綱使いはクダを使って天気を予知したりもします。それを応用すればこの程度……」
さも当たり前だと言わんばかりに答えるアカツキ。その態度にバキは内心むっとするも、余計な消耗を避けるためにあえて何も言わないでおく。
「……じゃあ入るか」
「入る!?中に居るのが何者なのか分からないと言うのに!?」
アカツキが驚きの声を上げるも、全く気にも留めずバキは入り口へと向かっていく。
「何が出てこようと叩き潰せばいい。それだけの事だろ?」
「全く……」
渋々と後に続くアカツキ。
そして二人は、策も何も無しに城の中へと入っていった。
466高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:38:55 ID:QZxC/mJW0
城内は薄暗く、湿気と黴の臭いが充満していた。それに当てられてアカツキが咽る。
と、何やら音が聞こえてきた。ギターだ。ギターを掻き鳴らす旋律が聞こえてくる。
慎重に音の出所へと向かっていく二人。その気配を察知したのか、城内に巣食っていた蝙蝠の群れが騒がしく鳴き、飛び回り始めた。
「蝙蝠……。でもノブスマじゃあないみたいだね」
すると、前方の闇の中から何者かの姿が現れた。一風変わった形のギターを手にしている。
「バキさん、あれ……」
「似ているな、音撃弦に」
その人物が手にしていたのは、彼等鬼が使う音撃弦と酷似していた。既に音撃震が嵌められた状態のため、先端から刃が飛び出している。
刃は、前方と左右にそれぞれ一枚ずつ、計三枚が飛び出しており、十文字槍を彷彿とさせた。
「誰だ?」
ギターを持った人物が喋った。声から相手が男性だというのが分かる。
漸く闇に目が慣れた二人は、相手が白人男性だという事に気付き驚いた。このような城に住んでいる以上、それは容易に予想出来た筈なのだが。
「まさか私の隠れ家に入り込んでくる者がいるとは……。お前達、ただの人間ではないな?」
「そう言うあんたはどうなんだよ」
既にバキは戦闘態勢に入っている。
「と言うかさ、あんたあれだろ。ヴァンパイアだろ」
バキがそう言うも、相手の男は眉一つ動かさない。
「ヴァンパイア?西洋の奴か」
「ああ、昔親父から話を聞いた事がある。気を付けろよ」
音叉を取り出し、素早く打ち鳴らして額に掲げるバキ。アカツキも鬼笛を吹き鳴らした。
刃鬼の変身によって生じた大量の熱エネルギーが爆発を引き起こす。古い城故に簡単に壁や床、天井に亀裂が入った。
「逃げたな……」
ヴァンパイアは粉塵に紛れて逃げたらしい。刃鬼は式神を、暁鬼は再びホッパーを放つと城内を捜索し始めた。
467高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:41:47 ID:QZxC/mJW0
「ヴァンパイアってのは皆ああいう姿なんですか?」
捜索の際、暁鬼が刃鬼に尋ねた。
「俺も詳しくは知らない。でも童子や姫と同じで戦闘形態に化けるって聞いたような……」
と、式神が戻ってきた。どうやらヴァンパイアを発見したらしい。
式神に案内されて城の奥へと進んでいく。一歩一歩進む度に邪気が増していく。そして、二人の目の前に大きな鉄扉が現れた。
扉を押し開けて中へと踏み込む二人。そこは……。
「ダンスフロアか……?」
天井から大きなシャンデリアが下がったこのだだっ広い部屋は、明らかに大人数を収容する事を目的として作られたと思われる。
と、死角から十文字槍型のギターを振りかぶってヴァンパイアが襲い掛かってきた。素早い身のこなしでそれを間一髪避ける刃鬼。
暁鬼が「水晶」の圧縮空気弾を発射するも。
「無駄だよ無駄!」
これまた超人的な身体能力で全ての攻撃を回避してみせるヴァンパイア。
「ならば!」
暁鬼が属性である光を放った。閃光が室内を照らし出す。
ヴァンパイアは身を翻し、凄まじい速度で部屋を飛び出していってしまった。
「ははは、やっぱり吸血鬼ってのは光に弱かったのか」
「いや、あれは単に眩しかっただけだと思うよ」
勝ち誇る暁鬼に向かって刃鬼が告げる。
「吸血鬼が日光に弱いって言うのは小説の中だけの話さ。ちゃんと音撃を決めてやらなきゃ……」
それだけ告げると、刃鬼はヴァンパイアの後を追って飛び出していった。
468高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:45:06 ID:QZxC/mJW0
再びヴァンパイアを追い詰めた二人。次にヴァンパイアが逃げ込んでいたのは、奇妙な蝋人形が立ち並ぶ部屋だった。
「何だこりゃ……」
そこに陳列してある蝋人形は、男女ともに苦悶の表情を浮かべていた。
「悪趣味な蝋人形だな……」
「それは蝋人形じゃあない……」
ヴァンパイアの声が響いた。
「……剥製さ。お前達も一緒に並べてやろうか?」
「剥製!?まさかこの山で行方不明になった……」
そこへ、天井からヴァンパイアが暁鬼目掛けて襲い掛かってきた。なんとか回避すると、再度「水晶」を乱射する。
哀れな犠牲者の屍が立ち並ぶこの部屋では、先程のように素早く動く事も出来ず、何発かがヴァンパイアの体に直撃した。だが。
「無傷……?」
確実に命中した筈なのに、その体から血が流れる事は無かった。
再び暁鬼に襲い掛かるヴァンパイア。暁鬼の撃った圧縮空気弾を、ギターを振るって弾きながら向かってくる。弾かれた弾は、幾つかの剥製に命中し粉々に吹き飛ばした。
と、横から刃鬼が突撃を仕掛けた。ギターを振るい、応戦するヴァンパイア。その右腕を刃鬼が掴んだ。
「爆熱掌ッ!」
鬼闘術・爆熱掌により、ヴァンパイアの右腕を掴んだ部分が高熱を帯び、肉を焼く。
「GUAAAAAAAAAA!」
絶叫が響いた。更に刃鬼の尋常ならざる握力が、腕を骨諸共握り潰した。ギターを掴んでいた右腕が、どさりと音を立てて床に落ちた。
悲鳴を上げ続けるヴァンパイアに、刃鬼が静かに尋ねる。
「何で西洋の怪物が京都なんかに居る?答えなよ」
だがヴァンパイアはその質問には答えず、逆に疑問を投げかけてきた。
「……お前達、誰に頼まれて私を退治しに来た?」
「答える義理は無いね」
牙を剥き、ヴァンパイアが刃鬼へと襲い掛かる。
「こいつ、まだやるか!」
「いや、そいつはもう戦えない……」
暁鬼の言う通り、急にヴァンパイアが動きを止め、左腕で頭を押さえながら呻き声を上げだした。
469高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:46:55 ID:QZxC/mJW0
「頭痛がする。は、吐き気もだ!一体何が……」
ヴァンパイアの額から大量の脂汗が流れ落ちた。その姿を見ながら、刃鬼が暁鬼に何が起きたのかを尋ねると。
「今あいつの頭の中にはホッパーが潜り込んでいます」
「ホッパー?あのクダギツネが?」
「さっき半ば自暴自棄のようにこいつを発射してたでしょう?全部作戦だったんですよ」
そう言って手にした「水晶」を掲げてみせる。
「あいつは攻撃をギターで払うのに夢中になって、背後からホッパーが忍び寄るのに気付かなかった。その隙に耳の穴から体内へと潜り込んだんです」
クダギツネは人に憑く魔化魍だ。今頃ヴァンパイアの頭の中で大暴れしている事だろう。
刃鬼は、悶え苦しむヴァンパイアの傍に近寄ると、その体に音撃鼓・無敗を貼り付け、音撃棒・常勝を振りかぶった。巻き添えを喰らわぬよう、ホッパーが耳から飛び出してくる。
重い一撃が炸裂し、轟音が響いた。衝撃でヴァンパイアの体が後方へと吹き飛ぶ。だが、彼はまだ死んではいなかった。
「しぶといね……」
落ちていた相手のギターを拾い上げると、音撃によって半ば体が溶け、煙を上げているヴァンパイアの傍へ再度近づく刃鬼。
「……あんたは危険な化け物だ。生かしておくわけにはいかない」
刃鬼は、両手で握ったギターの刃を、深々とヴァンパイアの左胸に突き刺した。
470高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 16:48:05 ID:QZxC/mJW0
「ぐふっ!」
吐血するヴァンパイア。ここまでやられたと言うのに、まだその眼は光を失っていない。
「ふ、ふふ……。まさか東洋の島国で朽ち果てる事になるとは……。お前、名は何と言う?」
少し考えた後、刃鬼はこう答えた。
「それぐらいなら教えてやる。俺の名は刃鬼。まあ……仮面ライダーみたいなもんだ」
「仮面……ライダー?ふふふ……覚えておくぞ」
そう告げるとヴァンパイアは、自分の胸に刺さったギターの弦に手を掛けた。
「最期の幕は、私自ら引くとしよう……」
ギターを掻き鳴らすヴァンパイア。その体が崩れていく。やはりこのギターは音撃弦と同じものだったようだ。
「……一つ教えてくれよ。何で戦闘形態にならなかったんだ?」
刃鬼の問いに、ヴァンパイアが笑みを浮かべながら答える。
「……あの姿は醜いからね。嫌なんだよ。では私はあの世で、お前達が朽ち果てる時が来るのを楽しみに見物させてもらうよ……」
そう言い残すとヴァンパイアの体は完全に崩れ落ち、灰と化した。
刃鬼は灰の山に突き刺さったままのギターを見てみた。よく見ると何か文字が刻まれてある。おそらくこのギターの名前だろう。
そこには「Epitaph(エピタフ=墓碑銘)」と刻まれてあった。
471高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 17:08:57 ID:QZxC/mJW0
二人が外に出た途端、背後で城が炎上した。紅蓮の炎と黒煙が小さな城をあっという間に呑み込んでいく。
「何で燃えてるんだ……?」
そこへ、あの時の和装の女が現れた。
「この火事はお前の仕業か」
「答えろ。何故俺達に吸血鬼退治を依頼した?」
暁鬼が「水晶」の銃口を向けながらきつい口調で告げる。
「……だんまりか。なら質問を変えよう。どうしてこの国に吸血鬼がいる?」
「それについては答えてあげましょう。あれは遠く英吉利からやって来た吸血鬼。アルカードと名乗っていたようですが本当の名かどうかは分かりません」
「英吉利の吸血鬼が何故この国に?」
「欧羅巴の地にもあなた達と同じ、魔を狩る組織があるのは御存知ですか?」
刃鬼が頷くのを見て、女は話を続ける。
「英吉利には腕利きのヴァンパイアハンターがいます。アルカードは彼等から逃れ、大陸を渡り、終戦のどさくさに紛れてこの国に入り込んだのです」
終戦と言う事は、彼是三十年以上も日本に滞在していた事になる。
アルカードが持っていたギターは、大陸で戦った狼からの戦利品でしょうと女は告げた。
「……もう一ついいか?あのヴァンパイアを殺して、どんなメリットがある?」
刃鬼のその問いに、女は黙して何も語らなかった。暁鬼が銃爪に指を掛けたその時、女が二人を強く睨み付けた。
「ぐっ……!」
その途端、二人の体は金縛りに遭い全く動かなくなった。暁鬼の手から「水晶」が音を立て落ちる。
「邪魔者を退治してくれた事については改めて礼を言います。あの城が邪魔で封印が解けなかったから……」
「封印……だと?」
「……少し話が過ぎたようです。では、私はこれで……」
そう言うと女は刃鬼達を残し、立ち去っていった。二人の体が動くようになったのは、それから暫く後の事だった。
472高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/22(日) 17:11:15 ID:QZxC/mJW0
神社へ戻るべく山を下りていた二人が霧の中を抜けると、既に空では星が瞬いていた。
「夜!?さっきまで日が昇っていたというのに!?」
「異界の中では時間の流れが異なるらしいからね。一体今はいつの夜なんだ……?」
彼等はまだ知らないが、今は十三日の夜。間もなく日付が変わろうかという時刻だ。
と、バキが歩みを止めた。そして変身音叉を取り出す。ただならぬ気配にアカツキも変身鬼笛を取り出した。
彼等は、境界を越えた辺りから邪悪な気配をずっと感じていた。山に登った時には全く感じなかった魔化魍達の気配を……。
まだそんなには成長していないヤマアラシ、ヤマビコ、ヌリカベが彼等の目の前に現れた。
「長い夜になりそうだな……」
二人はそれぞれの道具を鳴らしながら、大型魔化魍へと向かっていった。


第五章へ続く
473名無しより愛をこめて:2007/04/22(日) 17:52:01 ID:b2zv1EFB0
474名無しより愛をこめて:2007/04/22(日) 23:23:03 ID:JFdKEGjC0
高鬼作者様、乙です。
次の出番は誰ですか?
475名無しより愛をこめて:2007/04/23(月) 11:06:11 ID:FPOPjOrcO
もうだめポ(ノ_・。)

ただの音楽ライブ映像が脳内変換される…
ヤクザキックで怪童子蹴散らす音激弦使いやら出てくる
476裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/04/23(月) 22:03:50 ID:e7k+XWsxO
>>447 >>450

残念ながら何もない。
俺がこのスレの作品全部読んでたら幾らでも繋げて纏めてハイ終わり、って出来んこともないけど、今回のはあくまでも裁鬼ストーリーの延長上にある話。
まあ次回の鋭鬼や吹雪鬼、早々に退場してもらった弾鬼、勝鬼のあたりは両作者が少なからず裁鬼ストーリーと繋げてるんで、いくらかキャラ周りを拝借するつもりだけど。
今でもキャラは詰め込み過ぎ。だから弾鬼達を退場させた。瞬過終闘は、最初から釣られて泣けるけど聞いてない! って感じ。そりゃつまらんって人が普通だわ。
クジキ達を使って『鬼』のもう一つの面を書くのも今回の狙い。余裕のある人は長い目で見て。お願い。
477名無しより愛をこめて:2007/04/23(月) 23:59:04 ID:1oIw7X1gO
志を〜さん
続きを是非ともお願いします

高鬼さん
ホッパーが出てくるとは(笑)やっぱりライダーなんですね(笑)

裁鬼さん
自分は完全にはまっております

みなさん尊敬しております
478志を〜作者:2007/04/25(水) 00:48:43 ID:yomtYgJy0
>>460さん、>>477さん、ありがとう。
続き書いてみました。

前スレは>>453->>459

一之巻 通じぬ声

安達明日夢が城南大学の医学部に進んでから半年が過ぎていた。
いつしか季節は夏を過ぎて稔りの秋を迎え、明日夢は少し高くなった背と一回り太くなった腕に上着の買い替えを考えているところだった。
ヒビキと再会してから一年半が経っていたが、明日夢は以前のように頻繁にはたちばなには出入りしていなかった。
それには受験勉強に集中すると言う受験生にとってはごく当たり前の理由もあったのだが、自分に優しくしてくれていた猛士の面々と少し距離をとって、自分の甘さや足りないところを見直そうと言う明日夢なりの考えがあった。
また、一時は兄弟弟子だった桐矢京介とは共通の友人の持田ひとみが謎の男女に攫われた事件の時にある程度の和解が出来たものの、お互いにまだ蟠りの様なものが残っていた。
それが何なのかはわからないが、同門にありながら自分はヒビキの下を離れ、京介は残ったと言う事が明日夢の中で僅かではあったが負い目として残ってしまっていたのかもしれない。
あの時ヒビキと袂を分けたことに後悔はしていない。だが、自分の願いを聞き入れて弟子にしてくれたヒビキと憎まれ口をききながら一緒に汗を流していた京介を結果的に悲しませてしまったであろうことは残念に思っていた。
また、明日夢は知らないことだが、京介も明日夢が厳しい道を捨て安易に違う道に走ったとの疑念を捨てきれずにいたことが少なからず面に出て、それが再会した後の二人の関係にわずかな暗い影を落としていたこともあった。
それでも、偶然ではあったにしろ何度かたちばなで会い、互いの近況を語るうちに少しずつ二人の状況は好転の兆しを見せ始めていた。
そう、この日までは。

479志を〜作者:2007/04/25(水) 00:50:10 ID:yomtYgJy0
明日夢が大学の正門を出ると、持田ひとみが後ろから追いかけてきた。
「今、帰り?」問いかけてくるひとみに、久し振りにたちばなへ行こうかと思って、と返す。
「いいねぇ。私も行く」そう言うひとみの横顔を見ながら、明日夢は嬉しそうに微笑んで、うん、と頷く。辺りから見れば完全にニヤケ顔だ。
「もう秋だから『紅』は終わっちゃったね。今日は何にしようかな」明日夢の視線に気づいているのかいないのか、ひとみは長い髪を風に棚引かせながら明日夢の横を歩く。
そんな二人の後ろの方では、ちっくしょー、いいなぁ、という学生の声にならない心の声が飛んでいた。
明日のミス城南、という声も聞こえてきそうなひとみには、ひそかに親衛隊が結成されたとの噂もある。明日夢はそのことを思い出し、少し首筋が寒くなった。
「どうしたの?」
「いや、なんでも」顔を覗き込んでくるひとみに目を丸くしながら曖昧な笑みを返す。
『まさか、親衛隊に狙われる、なんて言えないよな』
「…腕、また太くなったね」
「そお?」明日夢は今日改めて気づいたことだが、ひとみには結構前からわかっていたようだった。
「…一応、『鍛えてますから』」
くすくす、と笑うひとみを伴って上機嫌でたちばなへと向かった。
480志を〜作者:2007/04/25(水) 00:54:15 ID:yomtYgJy0
夕方近い時間ということもあって、甘味処たちばなの中は学校帰りの学生が多く入り、いつものように混雑していた。
店主である立花勢地郎はカウンター越しに駆け回る二人の娘を見ていたが、不意に鳴った電話に注文かな、と思いながら受話器を取った。
「はい、甘味処たちばなです」
しかし、若干の間を置いて傍目から見えないように後ろを向くような仕草をすると、地下の倉庫へと潜って行った。
勢地郎が潜るのと前後して明日夢とひとみがたちばなに入ってきた。
「おー、明日夢くん。ご無沙汰ですねぇ」そう言って立花家の宝、美人姉妹の妹である日菜佳が出迎えてくれた。
「ひとみちゃんもいらっしゃい」こっちは姉の香須実だ。おきゃんな感じの妹に比べると細面な顔立ちのせいか御淑やかに見えるが、実はじゃじゃ馬で結構怖い、と猛士関東支部の鬼の中でも囁かれている。
「ご無沙汰していました」明日夢はそう言って軽く頭を下げると、今しがた空いた奥の小上がりに上がった。
団子をいくつか注文してお茶を頂く。
「そういえば、天美さん、もう向こうに帰ったんだよね」ひとみがお茶を啜りながら切り出した。
481志を〜作者:2007/04/25(水) 00:55:19 ID:yomtYgJy0
高校の同級生で、かつては関東支部所属の管の鬼であるイブキの弟子だった天美あきらは高校を卒業した後、生まれ故郷の東北の大学へと進学した。
将来は介護関係の道に進むと高校時代に明日夢に言っていたが、出会った当初は魔化魍によって死んだ両親の跡を継ぐべく厳しい面持ちでイブキの下で修行をしていた。
朱鬼の死の一件で復讐の虚しさを知り、魔化魍をただ憎むだけでは真の『鬼』とはなれないことを理解したあきらは、師の危機を助けたいとの一心から『護る心』を発動させ、初めて変身する事が出来た。
その後、あきらはすべてを振り切ったように自らの意思で弟子を辞め、人としての生活に戻ることで新たな自分の生きる道を見つけつつあった。
それが『為に生きる』道なのだろう、と明日夢は思う。
敢えて両親を失った辛い思い出のある故郷から踏み出そうというのも、あきらなりの強い意志の表れなのだろう、と。
「夏休みはこっちで過ごしたらしいけど、結局都合が合わなくて逢えなかったね」ひとみが続ける。
実は明日夢はあきらから密かにメールを貰ってたちばなで会ったのだが、話の内容が猛士関連の話だったので、ひとみにはその話はしていなかった。
「残念だったけど、冬休みもまたこっちに来てくれるらしいから、その時会えると思うよ」
届いた団子を頬張りながら、明日夢はひとみにそう言った。ひとみは、そうだよね、と笑うと明日夢と同じ種類の団子を口に運んだ。
「…桐矢君、元気にしてるかな」不意に京介の名が出た。明日夢は少し身を硬くしたが、何事もなかったように、そうだね、と答えた。
明日夢は京介が半年近く前に修行に出されたことをヒビキから聞いていたが、それは京介の独り立ちが近いことを意味していた。
自分は医者を目指したものの、未だスタートラインにも立っていない。しかし、京介は自分よりも想像以上に前に進んでしまっている。
勿論進む道が違うのだから、その過程で違いがあるのは当たり前のことだ。
頭では分かっていても、明日夢は焦りにも似た感情を持たずにはいられなかった。
482志を〜作者:2007/04/25(水) 00:58:24 ID:yomtYgJy0
「オリエンテーリングの本社研修ってどんなことするんだろう?」
「あまり良く知らないけど、アウトドアのガイドみたいなことじゃないのかな」
「じゃあさ、花の名前とか鳥の名前とか勉強するのかな。あと、キャンプとかでやる火起こしとか」
「どんなやつだっけ」
「木をこするやつ。こう、しゅるしゅるって」言いながらもみ手のように手をこするひとみ。
実際の鬼の修行はそんな悠長なものではない。おそらくは魔化魍を退治しながらの実地訓練だろう。京介の直接の師匠であるヒビキはなかなかさせなかったと聞くが、それでも時折随行していたのを明日夢は知っている。だが、それはひとみのような一般人には関わりのないことだ。
二〇〇五年末からのオロチ事件の時には街中に魔化魍が多く現れたこともあって、一時は怪物騒ぎも起こっていたが、特撮番組のロケハンだろう、というまことしやかな世論誘導のおかげでその噂もじきに沈静化したという経緯がある。
実際、魔化魍が実在するということがはっきりしすぎると、何らかの恐慌が起こるであろうと総本部は判断しているという。
明日夢自身は猛士に首を突っ込んだということもあり、機密保持の為に間接的ではあるが支部長権限による人事で関東支部に籍を置いている形になっていた。
だから、この程度の情報は知っているし、一般人に猛士の情報が漏れることの危険性もある程度は理解していた。
それ故、ひとみの話に答える内容も曖昧になってしまう。
「…それはしないと思うけど…」
「…安達君って桐矢君と仲いいんじゃなかったっけ?」怪訝そうに尋ねられる。
「悪くはない、と思うけど」
「あんまり話さないの?」
「たまに会うだけだし、会ったときにも仕事の話はしないんだよ、あいつ」
「ふ〜ん」
少しの沈黙。
いつしか、客は少なくなっており、僅かな常連だけとなっていた。
483志を〜作者:2007/04/25(水) 01:01:18 ID:yomtYgJy0
「ね、電話してみようよ」
「今?…大丈夫かな」出撃していたら、まず出ないと思われるが。
「今、夕方だから研修とかも今日の分はきっと終わってるよ」悪戯っぽく笑うひとみに思わず顔がほころぶ。
「…そうだね。よし、かけてみよう」そう言うと携帯電話を取り出し、立ち上がる。
「一応エチケットだから外でかけてみるよ。出たら呼ぶから待ってて」出撃中の場合には何か誤魔化しを考えねばならない。明日夢がそう思いながら靴を履いて入り口へ進むと、ガラガラと戸が開いてサングラスをかけた三十代半ばの男が入ってきた。
「お、明日夢じゃないか。久しぶり」サングラスを外して崩した敬礼のようなポーズを決めたのは明日夢の元師匠、ヒビキだった。
「ヒビキさん、しばらくです」
「電話持って何処行くの? あ、もしかして、もっちーにラブコールか?」
後半は小声だが、明日夢の背が少し伸びたこともあってか、ヒビキは明日夢の後ろの方にひとみがいることに気がつかない。
「え、あ、いや、違います。それに持田ならそこにいますけど」明日夢が驚いて戸惑いながらもひとみのいる奥を指差す。
「…おー! もっちー、そこにいたのか」少し顔を赤くしたひとみの様子に気がつく様子もなくヒビキは大仰に声を上げた。
「で、何処行くの?」
「持田が京介の近況を聞きたいって言うんで、電話しようと思いまして」そう言って目配せをする。ヒビキは瞬時に明日夢の言葉の裏を理解すると、そりゃいい、俺も一口乗せてくれ、と言って連れ立って外へ出た。
たちばなの木戸の前で並び立つと、明日夢は京介の携帯の番号を選び出しボタンを押した。
プップップッ、と接続音が暫く鳴った後、呼び出し音に変わるがなかなか繋がらない。
「出撃中でしょうか」
「…かもな」怪訝な顔をしていると、不意に繋がる音がした。
484志を〜作者:2007/04/25(水) 01:03:38 ID:yomtYgJy0
「……」応答がない。明日夢がもしもし、京介か、と数回呼んでも応答しない。
不審に思ったヒビキが電話を替わると聞き慣れない声がした。
「…鬼か」ヒビキの顔が曇る。『奴ら』の声だ。
「誰だ。京介ではないな」念の為に聞いてみる。無論答えないだろうが。
「親鬼よ、お前の大事な子鬼は我らが貰った。最早呼んでも無駄だ」
「…何の真似だ。忠告するが、鬼ごっこのつもりならすぐに止めることだ」
「今度は少し勝手が違うと思うぞ。追われるのはお前達『鬼』の方だからな」
「…何だと」ヒビキの形のいい眉が吊り上る。
「まあいい。お前の子鬼はいい鬼だ。精々大事にさせて貰うとしよう。お前も戻らぬ子のことは諦めて今を大事に生きるのだな」男は含み笑いをすると電話を切った。
「……」ヒビキは電話を握ったまま、怒りに体を震わせていた。
それは、丁度京介が行方不明になってから三日が経過した日の出来事だった。
先刻勢地郎が取った電話もまた、関西支部からの京介失踪の電話だった。

これより約二週間後に猛士関東支部は『任務遂行不能』の状態へと陥ることになる。

二之巻へ続く(予定)
485名無しより愛をこめて:2007/04/25(水) 01:31:15 ID:2D7FFgJU0
志を〜さん、乙!
続きは気になるけど、無理の無いように続けて下さい。
ヒビキさんの部分、細川氏の声で脳内再生、余裕でした。
486名無しより愛をこめて:2007/04/25(水) 01:50:59 ID:CB+6/0Uf0
>>478-484
1コ言わせてもらうと、「…」とか「─」は2コ以上を1セットで使った方がいいかも。
今まで数多くの小説(商用のね)を読んできたけど、よくあるのが2文字分、
手元の早川文庫見たら3文字分なんてのもあったけど。
マンガだと「…」1コってのもよくあるけど、個人的にはその辺に売ってる小説とか参考にしたほうがいいかと。
487志を〜作者:2007/04/25(水) 09:03:05 ID:MoFpqvEH0
ID違いはサブ機からなのでご容赦ください。

>>485さん、ありがとう。
>>486さん、ご指摘感謝。手持ちの文庫開いて見ますわ。
載せてしまった部分は変更効かないので、…の部分は2個イチ(…二つが…一つに相当する「間」)ということで変換お願いします。
488志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/04/25(水) 22:15:36 ID:yomtYgJy0
トリップつけてみました。
投下する際はこれで行きますのでよろしく。
489志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/04/27(金) 19:58:22 ID:/pRbAjXQ0
前スレは>>478-484

二之巻 現れぬ力

携帯電話をヒビキから受け取ると、明日夢は戸を開けて中に入っていった。
ヒビキは少し考え込んでいたようだったが、外の者に真実を気づかれないように表情の強張りを取り去って、明日夢の後に続いた。
奥にいたひとみは下を向いてメールを確認していた。今しがた開いたのだろう。あっ、という顔をして慌てだす。
「あ〜っ、いっけない! お母さんに買い物頼まれてたんだ!」そう言うとばたばたと立ち上がって明日夢に、ごめん、先に帰るね、と詫びた。
明日夢は、別に気にしなくていいよ、と言い、ヒビキは、気をつけて帰れよ、とひとみを送り出した。
二人はひとみがたちばなを出て行くのを見送ると、店の地下にある関東支部の詰所に下りて行った。
地下では勢地郎がパソコンのモニターを見ながら顔を顰めている。視線の先にあるのは猛士全体に繋がるデータベースの一部だった。
画面には『龍鬼』と書かれた鬼の履歴が表示されている。
気配に気づいた勢地郎が、ヒビキかい、と背中越しに声をかけてきた。
「どうしたんですか、おやっさん。龍鬼の履歴なんか見て」ヒビキが訝しげに尋ねる。
「……実は、さっき関西支部から連絡があってね」
「……京介の事ですね」ヒビキの顔が厳しく変わる。
勢地郎は振り返りながら頷いて立ち上がると、ヒビキには視線を合わせずに本棚のほうに進んでいく。何処かしら言い難そうにしている。
「三日前から行方が分からなくなった、と言って来てる」
「…………」
「京介君は関西支部のリュウキ君についてバケガニ退治に出ていたそうだ。しかし、定時連絡もなく、状況確認の電話にも出ないので、今日捜索の手を入れたらしい」
490志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/04/27(金) 20:01:42 ID:/pRbAjXQ0
「で、見つからなかった、と」
勢地郎は頷くと言葉を続けた。
「現場までは比較的近かったから、すぐに範囲は狭められた。で、その範囲の中にある集落があったんだが、そこは既に全滅していたと言うんだ」
「全滅……」明日夢が息を呑む。
「捜索部隊がその近辺で発見した装備の破片や破裂していた遺体の鑑定から、リュウキ君の死亡は確認された。しかし、一緒にいたはずの京介君の行方が知れないと言うことなんだ」ヒビキは目を閉じたまま腕組みをして、考え込むように勢地郎の話を聞いていた。
「ただ、壊れた音撃弦や音撃震は見つかっている。これは京介君に貸与されていた零号装備のものと一致した」
「…………」
「ベースキャンプも捜索したが、特に荒らされた様子もなかったという話だ。ひょっとすると車に乗っているかとも思われたらしいが、その車も発見されている」
「……実は、さっき京介に電話したんです」明日夢が口を開いた。
「なかなか出ないので、切ろうとした時に繋がりました。でも、出たのは京介じゃありませんでした」
「声は『あいつら』のものでした」ヒビキが言葉を継ぐ。電話の内容を勢地郎に伝える。
「…………どんな方法かは分からないが、どうやら京介君は『奴ら』に捕らえられてしまったようだね……」勢地郎の沈痛な声にヒビキが頷く。
――明日夢の心に、衝撃が走った。
491志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/04/27(金) 20:04:12 ID:/pRbAjXQ0
その頃、関東支部の管の鬼、闘鬼は巡回区域の湖の近辺に現れたウブメの清めを終えたところだった。
今週のシフトはトウキ、エイキ、バンキの番だ。
オロチ事件の後の魔化魍の発生率は平年並みへと下降し、関東支部のシフトも特別配置の「イチ・イチ」即ち一週間出動して一週間休養をとる体制から「イチ・サン」つまり三週間の休養が取れる通常体制へと戻っていた。
特別遊撃班だったヒビキも通常配置に戻り、十人の鬼が在籍する関東支部では二・三・二・三の四班体制が取られていた。最近は魔化魍の発生もそれほどではなく、月に数回清めがあるかどうか、と言った状態だった。
闘鬼はウブメが爆裂して塵に還るのを確認してから、音撃管『嵐』に装着された音撃鳴『つむじ』を腰の装備帯に戻した。ゆっくりと息を吸い、ほうっ、と大きな息を吐く。
「思ったより梃子摺ったな」誰に言うでもなく独り言を言うと、元来た方へと戻ろうと背を向ける。
大柄な体ではあるが身軽なこなしで、しかし大胆な足取りで歩き出す。
「……!」闘鬼の体がびくり、としたかと思うと背後の湖から激しい勢いでウブメが出現した。
「おいおい、二匹目かよ」振り向き様に動じる風でもなく飄々と言ってのける。
ウブメは先刻清められたものより一回り小さい印象があった。体色が通常のものと違い、桃色がかった銀色をしている。
小柄なせいなのか、動きが素早い。高空へ舞い上がると闘鬼めがけて殺到してくる。
「遠慮なしか、厳しいな」闘鬼は突進してくるウブメを軽くいなすように右に体を避けると、『嵐』の銃口を再び舞い上がるウブメに向け数発打ち込んだ。
狙い違わず鬼石はウブメに向かう。だが、着弾したはずの鬼石の効果は見られなかった。
「おかしいな、外したか?」すかさず残弾を確認し、さらに数発打ち込む。
だが、やはり効果は見られない。
492志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/04/27(金) 20:05:32 ID:/pRbAjXQ0
ウブメは魔化魍よろしく怪獣のような咆哮を上げると、再び闘鬼に向かってきた。
闘鬼は再びこれを避けようとタイミングを計る。
しかし、予想外の事が起きた。
ウブメが不意に唾液のようなものを吹き付けてきたのだ。
ウブメの攻撃法は肉弾戦のはず。目潰しよろしく唾を吐きかけてくるなど、闘鬼は聞いたことがなかった。
唾液を避けようとして、思わず早く動いてしまう。
その動きのために次の行動を読まれ、ウブメに弾き飛ばされた。図らずも弾き飛ばされた下にはウブメの唾液があった。
「……うぐぅっ!」立ち上がる闘鬼の体についた唾液が強力な溶解液と化す。
闘鬼はすかさず湖に飛び込んだ。酸ならば多量の水で洗い流すしかない。
水の中で激しく動き、溶解液を洗い流す。
ウブメが追ってきた。だが、水の中なのであまりスピードは速くない。闘鬼は浮上すると水面を蹴るように地上へと帰還した。
「痛てぇな」痛みをあまり感じないような言葉だが、被害は甚大だった。
両手の表皮が真皮まで剥がれ、血が流れ続けている。腹の一部や脚もそんな感じだ。見えないが背中や臀部にも落ちたときに溶解液がついたに違いない。
びりびりと痛む全身の傷を塞ぐべく全身に気を込める。
轟鬼ほどではないが、闘鬼もこの『気合』では引けを取らない。
その名前の如き闘志でたちまち傷が塞がる、かに見えた。
刹那、闘鬼の全身から多量の血が噴出した。
「何ぃ!?」闘鬼にはこの状況が飲み込めない。血に隠れて見えないが、闘鬼の全身には梵字の様な多くの文様が僅かな光と共に浮き上がっていた。
『嵐』を落とし、力が抜けるように崩れ落ちる闘鬼。
ウブメはその模様を見届けると、鬼を食らうでもなく、湖の中に姿を消した。
残された闘鬼は全身の変身が解除されていた。その体には先ほどの梵字もなく、また多量にあったはずの溶解液による傷はその鍛え上げた体のどこにも見られなかった。
りーん、と遠くで鈴の音のような音が鳴った。
遠く聞こえる音の向こうには銀色の影が小さく揺らめいていた。

三之巻へ続く
493名無しより愛をこめて:2007/04/27(金) 23:51:17 ID:e2CHyZqT0
投下乙。
>>489
>前スレは>>478-484
「前スレ」だと「前のスレッド(【響鬼】鬼ストーリー(仮)【SS】)」になるのでは。
(前レスとか前回とかのほうが適切だと思うのは俺だけかい?)
494高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:07:46 ID:nfXJL4UE0
前回は>>461-472

仮面ライダー高鬼「動乱する京都 第五章 蘇る鬼神」


「あっ!」
コウキの炎に照らしだされた室内にあったその物体を見て、イブキが驚きの声を上げた。
そこには大きな繭が三つも転がっていたのである。
「何なんでしょうか、これは……」
「迂闊に触るな……と言いたいところだが、近付いてみない事には調べようがないな」
慎重に繭へ近寄ると、コウキは耳を当てて中の音を確認してみた。微かにではあるが、呼吸音のようなものが聞こえる。
「……開けてみよう」
「では僕が……」
鬼笛を吹き鳴らして変身すると、威吹鬼は鬼爪を出して繭へと慎重に突き立てていく。炎で彼の手元を照らしてやるコウキ。
一つの繭が開けられた。その中に入っていたのは……。
「イッキ!?」
中から出てきたのは、消息不明となっていたイッキだった。コウキが彼の頬を叩くと、微かにその目が開いた。
「コウキ……さん?」
「無事か!?しっかりしたまえ!」
「じゃあまさかこっちの二つは……」
威吹鬼が残る二つの繭にも鬼爪を突き立てていく。案の定、それぞれ中からニシキと石川が出てきた。
495高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:08:43 ID:nfXJL4UE0
「何があったのか話せるか?」
外で待機していた勢地郎を呼び、飲み物を飲ませて三人が落ち着くのを待つと、コウキは本題を切り出した。
それに対し、イッキが鴨川でのヌレオンナとの戦いから今に至るまでの経過を掻い摘んで説明する。
「なんや、ずっと夢を見とったわ。オシャレな学生服着て、数人でバンド活動やってる夢……」
「俺も夢見てたぜ。日本各地のキャバクラや風俗行って遊びまくってる夢……」
「相変わらずお二人とも緊迫感が無いですね……」
夢の話を始めるニシキと石川を見て、威吹鬼が苦笑する。
「しかし、その蛾と言うのは何だ?」
考え込むコウキ。と、突然石川が素っ頓狂な声を上げた。
「あ!あ、あ……」
石川が指差す方を見ると、障子一面にびっしりと蛾が張り付いていた。その羽には大きな目玉模様が浮かび上がっている。
「まさか……モクモクレンか!」
蛾の群れが一斉に飛び掛ってきた。
「外へ逃げろ!」
コウキの号令で、室内に居た全員が一目散に屋敷の外へと駆けていく。
「コウキさん、モクモクレンって……?」
「蛾の姿をした稀種魔化魍だ!」
「蛾って……どうやって退治するんです!?」
外へと飛び出す六人。最後に出てきた威吹鬼が慌てて戸を閉めた。
「……あれは全部合わせて一匹の魔化魍だ。清めるには、全部の個体が何かに取り憑いた所を狙うしかない」
「そりゃまた面倒な……」
と、突然建物が激しく震えだした。まるで中で何かが暴れているかのような……。
「出てくるぞ!」
その時、彼等の背後で獣の咆哮が聞こえた。振り向くとそこには一匹のヤマビコが立っていた。
「何てこった……」
ヤマビコの肩に乗っていた童子と姫が飛び降りてきた。着地と同時に戦闘形態へと変身する。その背後には、黒傀儡の姿もあった。
戸を破り、建物の中から無数のモクモクレンが飛び出してきた。そして驚く事に、モクモクレンはヤマビコの全身に纏わりつくと、糸を吐いて巨大な繭を作っていった。
「何が起こるんだ……」
「来るぞ!各人変身しろ!」
コウキの号令にイッキ、ニシキがそれぞれの変身道具へと手を掛ける。
496高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:10:37 ID:nfXJL4UE0
高鬼と壱鬼が怪童子を、威吹鬼と西鬼が妖姫を相手に立ち回りを始めた。
西鬼と妖姫、共に素早さに自信がある者同士、激しい空中戦が繰り広げられた。着地した瞬間を狙って威吹鬼が音撃管・烈風を発射し、足を止める。
その隙を衝いて西鬼の音撃弦・剣心の一振りが、妖姫の胴体を真っ二つに斬り裂いた。
一方、二人掛かりで怪童子をあっさりと倒した高鬼と壱鬼は、ヤマビコとモクモクレンが入った繭の前に立っていた。
「同時に仕掛けるぞ!」
「はい!」
それぞれが音撃棒を構え、鬼棒術・小右衛門火と天火を繭目掛けて放つ。命中。だが、繭には焦げ目一つ付かない。
「堅いですね……」
「もう一度だ!行くぞ!」
二度目の攻撃を仕掛けるも、全く効果は無さそうだ。
と、突然繭に皹が入った。中からヤマビコが姿を現す。ヤマビコは、全身に目が付いた醜悪な姿へと変貌していた。
「うげえ!気持ち悪っ!」
石川が不快感丸出しの声を上げた。
ヤマビコの全身の目が、一斉に高鬼たちの方へと向いた。
「うわっ!今夜夢に出てきそう!」
今度は西鬼が不快感を露わにする。
「ひょっとしてこれは文献にもある『ヒャクメ』と言うものではないのですか?」
壱鬼が高鬼に向かって尋ねる。
「分からん。だが好機だぞ。これでヤマビコとモクモクレンを一度に退治出来る」
497高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:12:38 ID:nfXJL4UE0
ヒャクメと化したヤマビコが、振り上げた拳を高鬼と壱鬼に向かって思いっきり叩き付けた。回避するも、彼等がさっきまで立っていた場所は大きく抉られていた。
「何という怪力!」
壱鬼が持ち前の素早さを生かして背後に回り込もうとする。だが。
「何っ!?」
背後にも付いていた無数の目が、じろりと壱鬼を睨み付けた。そして振り向きざま壱鬼を手で払い飛ばすヒャクメ。
「壱鬼!」
木々を薙ぎ倒しながら、壱鬼の体は吹っ飛んでいく。
次いで高鬼に攻撃を仕掛けようとしたヒャクメに向かって、強風が吹いた。西鬼の鬼法術・高気圧だ。
「よっしゃ!風圧で動きを止めている今のうちに!」
だがヒャクメは一声吼えると、風圧も何のその、大暴れを始めた。
「抑えつけられてないではないか!」
「マジでか!?……こうなったら威吹鬼さん、合体攻撃や!」
「よし!合わせる!」
高気圧を放ち続ける西鬼の右側に立ち、ポーズを決めて精神を集中させる威吹鬼。彼の左掌から凄まじい勢いで衝撃波が放たれた。
二人が巻き起こした風は渦を巻き、ヒャクメの巨体を包み込んで完全にその動きを封じた。
「見たか!これぞ『暴風龍』!」
「今です、高鬼さん!」
威吹鬼の叫びと共に、高鬼が跳び上がる。渦の中心、つまり風の影響の無い部分へ飛び込むと、音撃鼓・紅蓮を貼り付ける。そして。
「音撃打・炎舞灰燼!」
清めの音がヒャクメの全身を駆け巡り、その巨体を大地へと還した。
498高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:13:47 ID:nfXJL4UE0
「お疲れ様です」
「ふう……。まさか二種類の魔化魍が一つになって襲い掛かってくるとは……」
「これもあの連中の実験の成果でしょうか……?」
否定は出来ない。が、そうだと断言するのも早計だろう。
傀儡は既にその姿を眩ましていた。高鬼は壱鬼の方へ向くと。
「……とりあえず壱鬼、さっきの続きだ。君達が比叡山へ向かった理由、それを我々に説明してもらえないか?」
高鬼に言われ、壱鬼が自分の考えを話す。
「結界?それはひょっとして巨椋池にもあるのでは……?」
「そうです。四神相応と言って、京都は東の鴨川、西の山陰道、南の巨椋池、北の船岡山に結界が張られ、更に鬼門に当たる比叡山には延暦寺が建てられているのです」
「高鬼さん……」
威吹鬼が心配そうに尋ねる。セイキとドキが向かった場所は確か山陰道。向こうも大変な事になっていなければいいが……。
「じゃあ高鬼さん、俺と壱鬼と石川は改めて延暦寺へ向かいますけど……皆さんはどうします?」
西鬼に尋ねられて、威吹鬼と勢地郎が顔を見合わせる。
「私達も行こう。今から山を下りるよりは一緒に行った方が良い。そこで電話を借りて本部へ連絡しよう……」
その時、四人の鬼が同時に魔化魍の気配を感じ取った。それぞれが気配のする方へと目をやると、四方から大型魔化魍がやって来るのが見えた。
「オオカマキリにオオムカデにカエングモにオオアリ!?何で急に……」
「どうやら壱鬼、君の悪い予感は当たったようだな」
「宝くじだって当たった事ないのに……」
非戦闘要員の勢地郎と石川を守るように円陣を組みながら、四人の鬼は周囲から迫ってくる魔化魍に向けてそれぞれの得物を向けた。
499高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:15:14 ID:nfXJL4UE0
翌十四日、栗尾峠近辺。
帰り支度を済ませて車に乗り込んだセイキ達は、こちらに向かって一台のバイクが走ってくるのを確認した。
真っ赤に塗られたその改造バイクに、彼等は見覚えがあった。間違いない、アカツキの愛車「陸震」だ。後部座席にはもう一人誰か乗っている。
「アカツキさん?どうしてここに……」
とりあえずセイキとまつは、負傷したドキを後部座席に残したまま車から降りた。
「陸震」を停め、アカツキが降りてくる。その後ろに乗っていた人物、バキも「陸震」から降りた。
「二人とも、一体どうしたんです……?」
「ここの封印は無事か?」
開口一番、アカツキがそう尋ねた。訳が分からないといった顔をしていると続いてバキが。
「実はここに結界を構成する白虎の封印ってのがある筈なんだけど、何か変わった事は無かった?急に魔化魍が大量に湧くようになったとかさ……」
「白虎の封印……?」
バキとアカツキは、セイキ達に説明を始めた。まず自分達が船岡山で体験した出来事を話す。
「吸血鬼ですか……?」
「それはどうでもいいんだよ。で、大型魔化魍を倒した後、本部へ連絡を入れたんだけどさ……」
ここで話は少し前に遡る。
500高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:19:20 ID:nfXJL4UE0
「……という事があったんです」
バキの報告を聞き終えて、電話口の人物、開発局長の南雲あかねは「う〜ん……」と唸り声を上げた。
「何か引っ掛かる事でも?」
「実はね、コウキくんに頼まれて司書の京極くんに話を聞いてきたばっかなんだけど……」
コウキは巨椋池について調べてほしいと頼んできたのだと言う。そしてその事について京極に尋ねると。
「巨椋池には四神相応の結界の一つがあるそうなの」
四神相応とは、風水思想に基づき山、川、道、澤で都市の四方を囲み結界を張る方法である。それぞれの方位には玄武、青龍、白虎、朱雀の四聖獣が対応している。
「コウキくん達が行った巨椋池には朱雀、行方不明になったイッキくん達が行った鴨川には青龍、あなた達が行った船岡山には玄武の結界があるのよ」
ううん、あったと言った方が正しいわね……と訂正するあかね。巨椋池も鴨川も、魔化魍の出現状況を顧みるに、既に封印が解かれているのは間違いないだろう。
「残るは山陰道のみね。ここには今セイキくん達が向かっているんだけど……」
「あの二人はこの事について……知ってるわけないですよね」
「山陰道にある白虎の封印まで解かれたら、鬼門の方角で確実に何かが起こるだろうって京極くんは言っていたわ」
「鬼門?」
「比叡山よ。万が一結界の力が弱まった時のために、鬼門の真上には延暦寺が建てられているんだけど……」
あの男女が関与している以上、それも意味を成さないだろう。
「悪いけど大至急セイキくん達の所へ行ってもらえないかしら?鬼の皆の中で今動けるのはあなた達だけなの」
「了解。でももし既に封印が解かれていたら……?」
「その時は全員で比叡山へ向かって頂戴。そちらへは既にコウキくん達が向かっている筈だから……」
501高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:21:07 ID:nfXJL4UE0
あかねとの遣り取りの一部始終を話すバキ。静かに耳を傾けていたセイキは、彼の話が終わると申し訳なさそうにこう告げた。
「……悪い。それならもう解かれた」
山中で和装の男と出会った事、その後突然ムジナの群れが湧いた事をバキ達に説明する。
「何で急にムジナが湧いたのか分からなかったけどよ、漸く合点がいったぜ。封印が解けた影響だったのか」
「封印が解ける事で邪気が活発になり、魔化魍発生のサイクルが乱れて、その場所に湧く筈の無い個体がイレギュラー的に大量発生するらしいね」
とんでもない話である。
「ですが、封印が解かれる前から魔化魍が京都各地で大量発生していた理由についてはどうなるんです?」
まつの疑問にバキが答える。
「う〜ん、あれじゃないかな。鼠の大群が地震を予知して集団で逃げ出したっていう海外の事例。それと似たようなもんだと思う」
「じゃあ魔化魍達は近日中にこの京都で何かが起きると肌で感じ取っていたと?」
憶測だけどそう考えるのが一番しっくりくるんじゃないかな、とバキが告げる。だが、クダギツネのように天候を予知出来る魔化魍もいるわけだし、この考えも一概に否定出来ない。
502高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:22:47 ID:nfXJL4UE0
「しかし光の聖鬼と闇の怒鬼ともあろう者が、バサン退治に三日もかかるだなんて……。お陰で奴らに封印を解く暇を与えてしまった」
嫌味を言うアカツキに、セイキが食って掛かる。
「うるせえ!あの鳥公、あちこち転々としていやがったんだ。……今思えばやっぱ何か感じ取っていたからなのかもしれねえな」
「で、どうする?俺とアカツキさんはこのまま比叡山へ行ってコウキさん達と合流するつもりだけど……」
そう言ってバキは、4WD車の後部座席で横になっているドキの方へと目をやった。
「ドキを連れて一度戻るわ。その後、俺とまつの二人だけでも比叡山へ向かおう」
「じゃあ俺達はこれで……」
その時、後部座席のドアを開けてドキが降りてきた。
「その必要は無い。俺達も今すぐ比叡山へ向かう」
「てめえ、聞いていたのか!?」
「でもドキさん、体の方は……?」
心配するまつに向かって一言「大丈夫だ」と告げると、ドキはバキとアカツキに向かって再び行く旨を伝えた。
「だってさ。どうする、セイキさん?」
「ちっ、仕方ねえな……。よし、そうと決まればさっさと行こうぜ、比叡山へ!」
五人は一路比叡山へと急いだ。この時点で彼等は知る由も無かった、今から数時間後に何が起きるのかを……。
503高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:23:43 ID:nfXJL4UE0
比叡山延暦寺。
昨夜、大型魔化魍と死闘を終えて寺を訪れたコウキは、真っ先にあかねに連絡を入れていた。
そこでコウキは、バキが電話で聞いたのとほぼ同じ内容の話を聞き、このままイッキ達と比叡山に残り警戒を続ける事になった。
寺の敷地内は実にぴりぴりとした空気が漂っていた。
時計を見る。時刻は午後八時をとっくに回っている。と、コウキの下へイッキがやって来た。
「失礼します」
「イッキか。丁度良かった。君の『霹靂』のメンテナンスは終えてあるぞ」
そう言ってイッキの音撃棒を差し出した。礼を言ってそれを受け取るイッキ。
「しかしコウキさんのバッグ、音撃武器だけではなく工具も入っていたのですね」
「ああ、いつ何があっても大丈夫なようにな」
たとえ工具や材料を常に携帯していても、それを扱えるだけの技術と知識を備えていなければ意味が無い。コウキが研究室に入り浸っているのは伊達ではないと言う事だ。
「応急とは言え、それで充分だろう。何せ私は天才だからな!」
これさえなければなぁとイッキは心中で苦笑してみせた。
「さてと、外の二人と代わろうか」
そう言ってコウキが立ち上がった。外ではイブキ達が見回りを続けている。
と、外から何人かの叫び声が聞こえてきた。顔を見合わせたコウキとイッキは、一目散に外へと飛び出していった。
504高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:25:05 ID:nfXJL4UE0
その少し前、懐中電灯片手に哨戒を続けていたニシキは、浮かない顔をして見回りを続けるイブキを見掛けた。
「どうしたんです、イブキさん?そんな浮かない顔して」
話し掛けると、イブキは憂いに満ちた顔をニシキに向けてこう告げた。
「そりゃあこんな顔もしたくなりますよ。クダンの予言の件もありますからね……」
イブキは、以前コウキから聞いていたクダンの予言についてニシキに語った。初めて聞くその話に、ニシキも驚きを隠せないでいる。
「そう言う訳で、この先何かとんでもない事が起こるのではないかと思うと、不安になってしまって……」
ただでさえ今回の一件は、結界絡みなのだ。以前イブキは、父である一流からこのような話を聞いていた。
東京にも、京都と同じ四神相応を用いた結界が施されており、実は大正時代に封印が解けかけた事があるのだ、と。
その際、大地を巡る気の流れである龍脈が傷付けられ、その結果関東大震災が起きたのだと言われている。この事実は猛士でも宗家関係者しか知らない。それを知っているからこそイブキは不安で仕方が無いのだ。
黙って話を聞いていたニシキだったが、途端に真剣な面持ちになると、イブキに向かってこう告げた。
「イブキさん、あなた、いずれは宗家の者として猛士のトップに立つ身でしょ?それなのにそんな顔してちゃ、あかんやないですか」
「す、すいません……」
「……イブキさん、子どもの頃テレビのヒーローって見た事あります?」
突然の質問に面喰らいながらも、イブキは答えを返す。
「えっと……鉄腕アトムや鉄人28号を見てました」
「ウルトラマンや仮面ライダーやゴレンジャーは?」
「それは見てません。……て言うかそれって最近の作品ですよね?」
俺は見ている!とニシキは大声で宣言した。
「特撮もアニメも全部見ている!ザンボット3の最終回なんて涙が止まらんかったわ!」
何故このような話をするのか理解出来ないイブキ。
505高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:26:25 ID:nfXJL4UE0
「……まあええわ。で、そのテレビの中のヒーローは絶対の危機の時どうした?もうあかん言う時、どうした?思い出してみ」
「え?それは、え〜と……」
「……立ち向かった。それが答えや。深く考えんでええ。俺達も沢山の人を守るために戦えばええ。それだけや」
それだけ言うとニシキはにっこりと笑った。それを見てイブキは、何となく胸のもやもやが晴れたような気がした。
と、突然悲鳴が上がった。寺の者達が声のする方へと駆けていく。次いで轟音が辺りに響いた。
「何が起こったんだ!?」
「とりあえず我々も!」
急ぐ二人の下へコウキとイッキが合流する。
「何があった!?」
「分かりません。でもこの気配、尋常じゃない!」
現場へと駆け付けた四人が見たのは、荒れ狂うノヅチの姿であった。
「ノヅチだと!?中国支部に出向していた時以来だな」
「僕は北海道で戦った事があります。ところで童子と姫は?」
「あれは稀種魔化魍だ。本来童子と姫は居ない。今までがイレギュラーだったんだ」
童子と姫を探すイッキに、コウキがそう告げる。
遠くで勢地郎と石川が寺の人々を避難させている姿を確認すると、四人の鬼はそれぞれの変身道具を鳴らした。
「あまり大きくないな。四人掛かりで一気に倒すぞ!」
高鬼の号令と共にノヅチへと向かっていく。そんな中、威吹鬼だけが不安を感じていた。鬼門の真上に立つこの地に魔化魍が湧いたのだ。それが意味するものは――。
506高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:27:11 ID:nfXJL4UE0
延暦寺から少し離れた場所に、その男女は立っていた。
「ノヅチがやられたみたい」
女が淡々と呟く。それに対し男の方は何も答えず、ただ静かに片手を上げた。まるでそれを合図とするかのように、飛行型の魔化魍が複数体延暦寺上空へと現れた。今頃は童子と姫も現れている筈だ。
鬼が使う音撃管の銃声が聞こえてきた。向こうでの様子は、派遣してある傀儡の目を通して彼等にも伝わっている。
「そろそろかな?」
そう呟くと男は空中に文字を書いた。「怨」という文字だ。文字は、光を放ちながら延暦寺目掛けて飛んでいった。
間もなく、開放された鬼門から大量の邪気が溢れ出す。それと文字の力によって、彼等二人が前もって仕込んでおいた邪悪なるものが蘇るのだ。
止められるものなら止めてみろ。男は胸中でそう呟くのであった。
507高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/04/29(日) 13:29:15 ID:nfXJL4UE0
ノヅチを清め終えて間もなく、延暦寺上空に大量の飛行型魔化魍が現れた。再び周囲から悲鳴が上がる。
「ウブメにイッタンモメン、イツマデにバケガラス、それに……。うわあ、何て数だ!」
「くそっ!」
威吹鬼が上空の魔化魍に向かって圧縮空気弾を放つ。
「鬼石の残り数は……。くっ、僕一人じゃ無理か」
「諦めるな!それでも立ち向かうのがヒーローや!さっき話したやろ!」
西鬼が再び弱気になってきている威吹鬼に檄を飛ばす。
鬼法術・高気圧によって巻き起こした風に乗り、西鬼が空へと飛び上がった。近くに居たイッタンモメンの背に乗り、「剣心」を突き刺す。
一方、高鬼と壱鬼は一緒に現れた童子と姫を相手に大立ち回りを繰り広げていた。だが、隙あらば上空からも魔化魍が襲い掛かってくる。
と、光り輝く何かが寺の上空に飛んできた。どうやら文字のようだ。文字は、まるで隕石のように延暦寺の境内へと落ちると、そのまま地面に吸い込まれていった。そして。
大地が大きく震えた。戦っていた者達の動きが止まる。周囲からは大量の邪気が立ち昇り始めた。
突然、地面の中から巨大な何かが現れた。
「何だ、これは……?」
まるで残り少なくなったチューブ歯磨き粉を搾り出すかのように、頭、肩、胸と徐々にその姿が現れていく。
それは、人に似て人に有らざる姿をした怪物であった。木乃伊化した二つの顔に四本の腕、四本の足を持ち、古めかしい甲冑で武装している。まるで仏教に出てくる阿修羅の出来損ないだ。
その光景を傀儡の視線を介して眺めながら、男が呟く。冷たい笑みを湛えて。
「行け、スクナオニ。忌まわしき記憶と共に……」


最終章へ続く
508名無しより愛をこめて:2007/05/01(火) 00:49:52 ID:ECtupDXN0
>>494-507投下乙です。

>>391のブログ連載が終わってたんで感想を。
ひとことで言うと、アダルト響鬼?

作者さん、『こうあって欲しかった響鬼』って言ってたけど、エログロ描写多数なので、
少なくとも朝昼の時間帯には放送できませんよコレ・・・。
放送とか、コドモ向けとかカンケーなくて、『響鬼』をオトナも楽しむ作品として
とらえた上での『俺響鬼』化なんでしょうけどね。

基本的に、面白かった。猛士が『魔化魍に親を食われた者たちで構成されている』という設定の真の意味、
そこから生まれるキャラたちの関係、このヘンが物語のキモなんじゃないかと思ったけど。

更新頻度も高いし、ダラダラ続けることもなく十話で終わったというのは○。
本編のサブタイが、うまいことオリジナル展開に合わせて付いているのも○。
でも、キャラにヤなヤツが多くて正直気が滅入りました・・・。orz
『ヤなヤツ』って思わせたくて書いてるんだろうから、ある意味ウマいんだけどね。
509裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/05/01(火) 22:25:54 ID:HVrCgyWGO
瞬過終闘―― 『十三 鋭鬼 《猛る声(さけび)》』

午前11時37分、猛士北海道支部。

「何だコイツ達は!?」
混乱の内に構えた音撃管を砕かれた戦士の身体に無数の銃弾が食い込み、清めの音と共に鬼の生体機能を停止させた。
また一人戦士が死に猛士北海道支部長である和泉稲妻は最後の望みとして茜鷹と浅葱鷲のステルス機能を発動、空へ投げ放った。
「おい稲妻さん! とっとと早々に逃走しろ!!」
3年ぶりに変身音叉『穀白』を展開した鋭鬼が稲妻を無理矢理ステップワゴンに乗せて運転席に向かい両手の音撃棒『緑勝』を叩いた。
「‥‥死なないでよ」
「当たり前だ! 早く逃げろ!!」
フブキはアクセルを踏み込み戦場から遠ざかっていく。エスティマを狙おうとした黒い戦闘集団に鬼棒術『歐炎弾』が炸裂し、鋭鬼は緑勝を構え直した。
「テメェら何考えてやがる!? 人間じゃねぇのかよ!?」
510裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/05/01(火) 22:27:32 ID:HVrCgyWGO
他の鬼達は既に息絶えていた。人間達を威嚇した鋭鬼はその亡骸の一つに近寄り、拳を震わせる。鋭鬼の足元には若い鬼が臥していた。
「‥‥コイツは去年、やっと一人立ちしたんだ‥‥ 師匠に死なれても、先輩が身代わりになっても‥‥ 諦めずに、挫けずに頑張ってきたんだよ!!」
叩きつけられるような怒号に怯えを見せる黒い戦闘集団達の中に飛び込んだ鋭鬼は小柄な身体を回転させて炎を纏った鬼石で薙払っていく。
「次はどいつだぁ!?」
怒りに我を忘れた鋭鬼の身体を、真横から赤い塊が吹き飛ばした。
「おいおい、残ってるのは‥‥ えぇと、エイキ‥‥ 何だ引退してるロートルじゃねぇか」
片手に手刀で腹部を貫いたままの鬼の死体を支え、もう一方の手に北海道支部のファイルを持つ変身したクジキが人間達の前に居た。
クジキは鋭鬼を確認するとファイルを持つ手から赤い炎の柱を発し、地面を転がる鋭鬼に放った。
ファイルは忽ち灰になり鋭鬼が間一髪回避した炎は背後の北海道支部を呑み込み焼き尽くさんと晴れた空を赤に染める勢いで燃え盛る。
「トレーナーねぇ‥‥ 鬼を辞めても鬼でありたい、そんな半端な奴もいるんだな」
511裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/05/01(火) 22:28:53 ID:HVrCgyWGO
鋭鬼は立ち上がり、両手の緑勝から歐炎弾を放つ。しかし二つの火の玉はクジキが貫いていた鬼の骸に炸裂し、クジキの姿だけが消えていた。緑の炎に包まれた鬼の身体が崩れ落ちる。
「まあ安心しな。もう鬼を育てる必要もなくなったんだからよ」
背中に右肩から左脇まで焼き付くような痛みが走り、鋭鬼は瞬間的に身を捻って跳躍し、宙に舞った。
鋭鬼の背を縦に斬り、追加攻撃の横薙を避けられたクジキの手刀は、赤い鬼の血を炎の熱気に乾かされて赤黒くなっていく。
鋭鬼は背中の傷も気にせず空中から無数の歐炎弾をクジキに放つが、クジキは一歩も動かず緑の炎を鋭鬼が着地するまで受け続けた。
「‥‥この程度かよ? オロチを鎮めた鬼の力ってのは‥‥」
緑の炎はクジキの肩と胴体の装甲に命中していたがそれはくすぶる様に呆気なく消えた。鋭鬼は膝を折り肩を上下させながらそれでも装備帯から音撃鼓『白緑』を取り外し、クジキに突進する。
「馬鹿、無様にも程が有るだろ」
クジキが装備帯の背に手をやり、音撃棒らしき武器を取り出すとその先端は赤黒い炎を噴き上げた。
512裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/05/01(火) 22:37:00 ID:HVrCgyWGO
火柱の刃が鋭鬼に振り下ろされる。しかし鋭鬼は腰を捻りながらクジキの頭上へ回転しながら飛び上がり、その背後に着地した。
「喰らえ! 音撃打、『必殺必中』!!」
クジキの背に貼り付けた白緑に向け、緑勝を振りかざす。鋭鬼渾身の一撃が炸裂しようとした瞬間、白緑は展開もされずクジキから剥がれ落ちて地面に転がった。
「‥‥何故だ!?」
戸惑う鋭鬼の身体を後ろ回し蹴りで弾き飛ばしたクジキは、首を横に振りながら倒れる鋭鬼に近づいた。
「残念だが、俺は『魔化魍』じゃないんでな‥‥ まあそれ以前に、清めの音を無効化出来る仕掛けを埋め込んであるんだよ、ココにな」
クジキは装甲の右胸に光る赤い鬼石を指差し、鋭鬼の首を掴んで上空に投げ飛ばした。
「そんなに跳ね回りたいなら、ずっと浮かんでいやがれ」
クジキは装甲の背から大小幾つもの音撃鼓に似た円盤を取り出し、鋭鬼に纏めて投げつけた。
円盤は裏のコードを自動的に伸ばして鋭鬼の各部にその先端を突き刺すとクジキの正面に浮かんだまま静止した。クジキは両手に音撃棒を構える。
「‥‥アンタ自身は要らないが、アンタの血だけは貰ってやる‥‥」
513裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/05/01(火) 22:38:20 ID:HVrCgyWGO
「ドコに行くんですか!?」
稲妻の問いに、フブキは6度目の信号無視をしながら答えた。
「東北支部‥‥ そこがダメだったら、一気にたちばなへ行くしかないわ!」
フブキは、この状況は起こり得るものだと解っていた。たがあまりにも早く支部が攻撃され、あまりにも強すぎる敵の戦力は予測の枠を遥かに越えていた。
自分と稲妻だけでは無力に等しい。ならば力を‥‥ この状況を打破出来るだけの力と勝機が揃うまで、今は逃げ続けねばならない。

「おい、ちゃんと回収しとけよ」
クジキが音撃棒を背に戻し、黒い人間達が動き始めた頃には、猛士北海道支部は炎の中に黒い影を崩し、その煙はどこまでも高く上り続けた。
「‥‥関東十一鬼、か。早く出てこい‥‥ 響鬼‥‥!」
続く
514名無しより愛をこめて:2007/05/01(火) 23:42:44 ID:KxK+d/8h0
最後の台詞に燃えた
515名無しより愛をこめて:2007/05/02(水) 10:33:58 ID:+7mJdJ9WO
>>514
心配すんな!裁鬼作者さんなら
遥か遠くの地平線から響鬼さん出してくれるさ!
516志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/02(水) 23:55:30 ID:pozlYfRD0
前回は>>478-484

参之巻 揺れる心

たちばなに闘鬼が病院に運ばれた、との報せが入ったのはその日の夜九時を回った頃のことだった。
闘鬼が戻らないのを不審に思った闘鬼の息子がディスクアニマルを放ち、湖のほとりに倒れている闘鬼を発見して地元のサポーターと共に病院へと運び込んだのだ。
闘鬼は意識を無くした状態で、周囲の呼びかけにも目覚めるなどの反応は全くなかった。
詳細な検査の結果はまだ出ていないが、外傷が無く、呼吸も安定していることから命には別状はないと思われる旨の報告を勢地郎は受け取っていた。
ただ、全身の変身が解除された状態であったと言うのは、修行中の未熟な鬼でもない限り、通常の鬼の行動の範疇では余程の事情なくしてはありえないことだった。
「『奴ら』のことと無関係だといいんだけどねぇ・・・・・・」勢地郎はぽつりとそう言うと、若干の不安を感じながら受話器を取って非番のショウキに連絡を入れ、闘鬼のフォローを依頼した。

翌朝、ショウキはダンキを誘ってトウキの見舞いに向かった。
体育会系のショウキは相変わらずのTシャツ一枚の上半身にピチピチのジーンズ姿だ。胸には『一撃必勝』と筆文字があしらわれている。
「それを言うなら『先手必勝』じゃねぇのかよ」同じ体育会系のダンキは車の助手席でジャージのポケットに手を入れたまま呆れたように言った。運転はショウキがしている。
ダンキには運転免許がない。勿論鬼を務めるほどの身体能力の持ち主だ。決して免許が取れない訳では無いのだが、短気なダンキは自動車学校に通う内に何度も実技や学科の教程に通うのが煩わしくなってしまい、結局取らず仕舞いになっているのだ。
「『一撃必勝』じゃイチゲキのパクリみたいだぜ」
517志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/02(水) 23:58:35 ID:pozlYfRD0
「そんなことないよ、僕らの仕事は一撃一撃が勝負だしね。それに、この前イチゲキ君がこのシャツ見て『カッコいいですね、それ』って言ってくれたんだよ。自筆だって言ったら驚いてたよ」
その言葉にダンキがショウキの胸の辺りに目をやる。太い字でがっちりと書かれた文字だが、よく見てみるとどことなく字が汚い。
「何度も書き直したけど、いい字が書けたからプリント屋さんに持って行ってシャツにして貰ったんだ。ダンキ君も一着どう?実費分でいいよ」
「・・・・・・いや、折角だけど、遠慮しとく」ニコニコするショウキにダンキは丁寧に断った。シャツにある文字は、お世辞にもいい字とはいえない。
『きちんとした字ならまだカッコいいんだろうけど、この文字じゃなぁ・・・・・・。多分、イチゲキの言葉も社交辞令なんだろう』ダンキはショウキには書道のセンスはないだろうと確信した。
車が病院へと到着し、二人はトウキの病室へと歩を進めた。
猛士の関連施設に連なるこの病院では鬼の病室は個室になっている。
通常の人間と違う体を持つ鬼の健康状態は常人とは若干異なる。一般人とは回復の度合いも違うため、大部屋に収容するわけにはいかないのだ。
したがって、それ相応の専任の医師がいるし、看護師もその知識のある人材が用意されていた。
「こんにちはー。トウキさん、いる?」ダンキは飄々と言うと、するり、とドアの隙間から病室に入った。
「お邪魔します」ショウキも逞しい胸板を半開きのドアに閊えさせながら病室に入る。
「・・・・・・」トウキは未だ意識を取り戻していないようだった。
付き添っていたであろう妻と息子は席を外しており、枕元の物置には綺麗な花が飾られていた。
「・・・・・・?」ショウキとダンキはトウキの顔を見ながら不思議な感覚を覚えた。
「・・・・・・鬼の気が出ていないような気がしないか?」
「ダンキ君もそう思う?」
518志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/03(木) 00:00:04 ID:dpHPZQfc0
「まるで素人だ。鍛えてる感じが見えてこない」ダンキは首を傾げた。
『闘鬼』の名の通りトウキが纏う気はかなりのものだ。生身の時は抑えられているが、それでも魔化魍が一際警戒する程の強い気を持っている。
そのトウキの気が全く感じられない。眠っているせいかとも思ったが、鬼の気はもっと根本的なものだ。睡眠くらいでは消えない。本人が意識して限りなく押さえ込めば別だが。
ダンキとショウキはこのトウキの異変が何か途轍の無いものに思えてきた。
二人は眠るトウキに一礼すると、病室を出てたちばなに向かった。

ダンキたちがトウキの異変に気がついた頃、アミキリ出現の報を受けたバンキとエイキは浜へと向かっていた。
「アミキリって成長すると空も飛ぶんだったよな」エイキがバンキに確認する。
「そうですね。以前ヒビキさんが退治した時にも空を飛ばれて往生したと聞きました。完全に飛ばないうちにエイキさんの鬼棒術でアミキリの翅を破るのが上策かと思います」
「OK!俺の鬼ボー術で奴さんをボーボー燃やしてやろうじゃないの」
「今一つ冴えませんね。やっぱりフブキさんがいないと調子出ませんか?」
「・・・・・・それは言わない約束でしょ、バンキちゃん」がっくりと項垂れるエイキを見て、バンキは微笑みながらも少し彼らが羨ましく思えた。
『鬼』と言う命を失う危険と隣り合わせの世界に身を置きつつ、互いに愛情を暖め続けるエイキとフブキ。所在が離れていてもその愛は色褪せることなく、むしろピュアな輝きを放っていると言っても過言ではなかった。
はたして、自分にも何時かそういう人が現れるのだろうか。自分の全てを賭けても惜しくない、フブキ以上のそういう人が・・・・・・。
バンキは切れ長の端正な目をきっ、と細めると自分の複雑な心境を押さえ込むようにアクセルを少し強く踏み込んだ。
それから一時間ほどして現場に到着した二人は、ベースキャンプを手早く張り、ディスクアニマルを三ケースほど展開した。一つのケースにおよそ五十から六十体。百体後半の音式神が地上、水中、空中に放たれる。
519志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/03(木) 00:01:42 ID:dpHPZQfc0
「頼むよ」二人はそれぞれ得意のポーズを決めると式神たちに探索を任せた。
魔化魍の所在が判れば、後は出向いて清める。鬼の仕事としてごくありふれた内容だった。
しかし、敵は予想以上に早く、向こうから現れた。
式神達が感知するよりも早く、アミキリは空から接近していたのだ。
アミキリの背には武装した童子と姫が乗っていた。武者童子と鎧姫だ。
「鬼め」男の声で姫が言う。
「鬼めが」女の声は童子だ。
武者童子と鎧姫の外殻は黒銀に鈍く光っている。まさに鎧だ。
「くっ、間に合わなかった様だな」
「あ〜あ、あんなに大きくなっちゃって」バンキとエイキは対照的な言葉を吐く。だが、エイキの軽さはあくまで表向きだ。
できることなら、アミキリをこんなにまで成長させるのだけは避けたかった。
魔化魍が成長すると言うことはそれだけ人的被害が大きくなることを意味しているからだ。
二人は犠牲になった人々に心の底で詫び、傍にあった音撃武器を足元にそっと置くと、哀悼の意を持ちながら静かに変身した。
黄色の炎と緑の鉱物の中に若い男たちの姿は消え、それを振り払う腕の動きと共に弦の鬼、蛮鬼と太鼓の鬼、鋭鬼の姿がそこに現れた。
燃え立つ闘志を内に秘めて、静かなる鬼と爆ぜる鬼が今、魔化魍に立ち向かう。

蛮鬼と鋭鬼がアミキリに対峙した頃、ダンキとショウキは勢地郎にトウキの異変を話していた。
「気が感じ取れない、か・・・・・・」二人の話を聞いた勢地郎は腕を組んで溜息をついた。
「ほかに何か変わったことはなかったかい?」
「おやっさんから聞いていた通り、外傷らしいものはありませんでした。顔色も悪くなかったですし」
「体調自体は心配ないように見えるんですけどね」
「やっぱり、『鬼の気』の問題か・・・・・・」ショウキとダンキの報告にある鬼の気の著しい減少。いや、ひょっとすると完全に失われたのかもしれない。勢地郎は一抹の不安がさらに大きくなるのを強く感じていた。
「一度、皆を集める必要がありそうだねぇ・・・・・・」
京介の失踪、トウキの昏睡、そして立て続けの魔化魍の出現。
勢地郎の中で離れていた点が密かに繋がりつつあった。しかし、それを明確に繋げる因子は未だ見つかってはいなかった。

四之巻へ続く
520名無しより愛をこめて:2007/05/03(木) 23:41:55 ID:qRfWzHAY0
(゚Д゚≡゚Д゚;)今このスレには俺しかいない?
521名無しより愛をこめて:2007/05/04(金) 08:06:25 ID:vW1l3dgxO
>>520
そのレス、某蝶過疎掲示板でよくやる

日高兄は鬼を皆殺しにして、自然発生する魔化魍はどうする気なんだ?
ああ、そしてついにエイキさんが……
フブキさんを泣かせるような真似しやがって……
522名無しより愛をこめて:2007/05/04(金) 08:19:58 ID:cppEIBCw0
509
 「とっとと早々に逃走しろ!!」
 ごめん、こんなに緊迫したシーンなのに、吹き出したw

 明日夢がどうなったのかも気になって仕方ない…。
523名無しより愛をこめて:2007/05/04(金) 12:55:51 ID:KLM1Qz6p0
    ┌─┐
    │●│
    └─┤
   _   ∩
  ( ゚∀゚)彡
┌─┬⊂彡
│●│ にっぽん!
└─┘   にっぽん!

『鬼棒術・歐炎弾』
524名無しより愛をこめて:2007/05/04(金) 14:30:53 ID:neJ7mZs2O
昼ドラの「麗しき鬼」ってのが気になって見てしまいました(笑)
525名無しより愛をこめて:2007/05/04(金) 14:37:21 ID:K1gWzydY0
>>524
松田の兄ぃが出てるやつですな。
いかがでしたか?
526名無しより愛をこめて:2007/05/04(金) 19:36:10 ID:neJ7mZs2O
≫525さん
今日しか見てないのでよくわかりません(笑)
レス無駄使いしてすみません m(_ _)m
527525:2007/05/04(金) 20:21:03 ID:G+CfmpKx0
俺も仕事中なので見れんのよ。
ちなみにブログ見たら、兄ぃは中旬頃登場だそうな。早とちりしてスマソ。
528高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/05/05(土) 00:51:47 ID:3xsk8zoA0
前回は>>494-507

仮面ライダー高鬼「動乱する京都 最終章 八鬼、集結」


長月十五日友引、午前零時を少し回ったところ。
突如として比叡山延暦寺地下から現れた巨大な怪物は、直立不動の状態で微動だにせぬままであった。既に数分が経過している。
「破っ!」
鬼棒術・小右衛門火で怪童子と妖姫を同時に撃破した高鬼の横に、音撃棒・霹靂を手にした壱鬼が駆け寄ってきた。
「高鬼さん、あの怪物は……」
立ち尽くす怪物を見上げながら壱鬼が尋ねる。
「おそらくスクナだろう。話には聞いていたが、何という邪気だ……」
スクナオニ(宿儺鬼)、またはリョウメンスクナ(両面宿儺)。飛騨地方に現れたと「日本書紀」に記述の残る怪物だ。
「ど、どういう魔化魍なんです?」
「魔化魍と言うよりは神だ。大和朝廷によりまつろわぬ民として迫害された者達の守護神だ」
仁徳天皇の治世に退治されたが、民を守るために戦い、散ったスクナオニの無念は悠久の時を経ても消え去る事は無かった。あの男女はそれを利用したのだ。
スクナオニは、1600年の時を経て肉体を得、京都の地に蘇った。最早理性の欠片も残ってはいまい。復讐鬼として、この国を滅ぼしきるまで暴れるのみだろう。
突如としてスクナオニが吼えた。その咆哮は風を呼び、山々の木々を激しく揺らした。
目覚めたのだ。そしてゆっくりと動き出す。
「いかん、何としてでも止めるんだ!」
「ですがどうやって!?」
襲い掛かってきた怪童子を投げ飛ばしながら壱鬼が尋ねる。
「あれが山を下りて街に出たらどうなるかぐらい分かるだろうが!何でもいいからやるんだよ!破っ!」
高鬼が放った鬼棒術・小右衛門火は、スクナオニの前に飛び出してきたオオクビに命中した。
次に壱鬼が鬼棒術・天火を放つが、やはり同じように前へと出てきたウブメに当たってしまう。
「守っている……?」
どうやら魔化魍達はスクナオニを守っているらしい。
529高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/05/05(土) 00:53:27 ID:3xsk8zoA0
今度は西鬼が音撃弦・剣心を手にスクナオニ目掛けて斬りかかった。鬼法術・高気圧で自らの体を宙に浮かべた西鬼は、巧みに飛行型魔化魍を避けながら接近していく。
「貰った!」
だが次の瞬間、目にも留まらぬ速さで抜刀したスクナオニが、飛び掛かってきた西鬼を弾き飛ばした。悲鳴を上げながら墜落する西鬼。
「大丈夫ですか!?」
空中の魔化魍へ向けて発砲しながら、威吹鬼が西鬼の傍へと駆け寄ってくる。
「な、何とか……。一歩間違えたら真っ二つやったやろうけどな……」
恐ろしい相手やで……。そう言いながら西鬼は立ち上がると、歩き続けるスクナオニを見上げた。
「クダンの予言は百発百中……。やっぱり京都は……」
「ほらまた弱気になっとる!あのな威吹鬼さん、クダンの予言は百発百中や言うけど……」
「俺達でハズレもある事を証明すれば良い」
突然、西鬼の言葉を継ぐ形で、誰かの声が響いた。
と、二人に襲い掛からんとしていたウブメの怪童子が、音を立てて爆発した。爆煙の中から、彼等もよく知る鬼が姿を現す。
「怒鬼さん!」
そこには、七節棍を手にした怒鬼の姿があった。
「遅くなってすまない」
背後から襲い掛かるウブメの妖姫に棍の一突きをお見舞いしながら、怒鬼がそう告げた。
「おいしいとこ持ってくなぁ……」
「他の皆さんは!?」
威吹鬼の問いに、怒鬼は戦い続ける壱鬼の方を指差した。
上空から襲い掛かってくるバケガラスの怪童子と妖姫に苦戦を強いられる壱鬼。怪童子が壱鬼目掛けて頭から突っ込んでくる。
と、間に割って入る者があった。片手で怪童子を叩き落とすと、壱鬼の方へ向き直り声を掛ける。
「よう、お待たせ」
「刃鬼さん……」
一方、高鬼の前にも音撃弦・黄金響を手にした聖鬼が駆け付けていた。
「遅くなりました!しかし凄い事になってるじゃないですか。ここに来るまでに何回魔化魍と遭遇したか……」
「やはり、まだ沢山湧いているのだな……」
「そっちは今、支部の他の連中が相手をしています!動ける鬼は総動員ですよ!」
「そうか……」
全てが終わったら全員で焼肉でも行くか、と高鬼。いいですね、と聖鬼が相槌を打つ。
530高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/05/05(土) 00:55:52 ID:3xsk8zoA0
「……ところで暁鬼はどうした?刃鬼さんと一緒ではなかったのかね?」
「ああ、あの人ならそこのでかいのを止める手があるからって、山に来てからすぐに俺達と別行動を……」
そう言ってスクナオニを見やる聖鬼。
「ただ、幾許かの時間が必要だとか言ってましたよ」
「つまり我々に時間稼ぎをしろ、と言う事だな」
延暦寺境内で戦いを繰り広げる七人の鬼。童子と姫は一掃出来た。魔化魍の群れも減ってきた。お蔭でスクナオニの足止めも上手くいくようになっている。
だが。
「不味い、このままでは……」
スクナオニが山を下りようとしている。古の怨みが原動力だとしたら、山を下りて真っ先に向かうであろう場所は京都御所。街のど真ん中である。
「高鬼さん、『紅』は使えないんですか!?」
「使えないわけではないが、これには制限時間がある。確実に仕留められると踏んだ上でなければ使う事は出来ん!」
威吹鬼と西鬼が、暴風龍を放ち動きを封じようとするも、力任せに破られてしまう。次に怒鬼と刃鬼が、何とか接近して音撃を叩き込もうとするが、簡単に刀で薙ぎ払われてしまった。
「あいつ、でかい図体の割に速いな」
追撃を避けながら刃鬼が呟く。
再びスクナオニが吼えた。まるで勝利を確信したかのように。
と、スクナオニの歩みが止まった。同じように鬼達も大きな気配を感じ、動きを止めていた。
――何かが近づいてきている。
新手か?音撃棒・大明神を握り直して身構える高鬼。
「こ、高鬼さん!あれ!」
壱鬼が指差す方を見ると、スクナオニと同じくらい大きな蛇がこちらへと向かってきているのが確認出来た。ここまで巨大だと蛇と言うより龍だ。しかも。
「あれは……暁鬼か!?」
大蛇の頭の上には、音撃管・水晶を構えた暁鬼が立っていた。
スクナオニに向けて圧縮空気弾を乱射する暁鬼。更に大蛇も牙を剥き、スクナオニへと襲い掛かる。
531高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/05/05(土) 00:57:58 ID:3xsk8zoA0
「あ、あれはもしや蛇ヶ池の妖怪……」
「何だね、それは?」
信じられないといった感じで、大蛇とスクナオニの戦いを眺め続ける壱鬼に高鬼が尋ねた。
「ここ比叡山に伝わる七不思議の一つです。暁鬼さん、何だってあんなものを……」
東京に本所七不思議が、静岡に遠州七不思議があるように、ここ比叡山にも七不思議は存在する。一文字狸、茄子色の顔をした婆、一つ目小僧、船坂の靄舟、女人禁制の地での乙女の水垢離、六道亡者の踊り、そして蛇ヶ池の妖怪である。
結界を失い鬼門に影響が出ている以上、眠っていた七不思議の化物達も目覚めている可能性が高い。そう踏んだ暁鬼は、毒には毒をもって制するという方法を選んだ。
暁鬼は、目覚めたばかりで本調子ではなかった蛇ヶ池の妖怪の脳にクダギツネを寄生させ、意のままに操っているのだ。
賭けだった。まず予想通り蛇ヶ池の妖怪が目覚めていなかったら、その時点でお終いだ。仮に目覚めていて、クダギツネを潜ませる事が出来たとしても、こんなにも巨大な魔化魍を操れるのかどうか確証が無かった。
だがどうだ。懸念していた事柄は全て杞憂となって消え、今では怖いぐらい暁鬼の考え通りに事が運んでいる。彼は賭けに勝ち、見事化物使いとなったのだ。
「魔化魍退治のために魔化魍をぶつける……。相変わらずとんでもない奴だ」
刀を振るいスクナオニが襲い掛かる。その一撃を受け、血を流しながらも大蛇はスクナオニの胴体へと巻き付き、締め上げた。
「今です!」
蛇の頭上で、暁鬼が声を張り上げる。
「好機到来!壱鬼!」
「はい!」
片足を勢いよく前へと踏み出し、二本の「大明神」を体の横で十字に交差させて構える高鬼。壱鬼も、装備帯に取り付けてあった音撃鼓・万雷を勢いよく回し始めた。
周囲の空間が熱で揺らめき、次いで高鬼の全身が紅蓮の炎に包まれる。一方、壱鬼の体も激しい電撃に包まれていた。
そして。
気合いと共に炎と電撃を払い、全身が鮮やかな紅色に染まった高鬼と、白銀に輝く体躯に紫電を纏わせた壱鬼がその姿を現した。
高鬼紅と壱鬼鳴雷。どちらも対夏の魔化魍用の強化形態だ。
532高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/05/05(土) 00:59:37 ID:3xsk8zoA0
まず高鬼紅が、二つ名の通り疾風の如き速さでスクナオニ目掛けて突進していった。次いで紫の矢と化した壱鬼鳴雷が飛び掛かっていく。
地上と大蛇の頭上からは、威吹鬼と暁鬼がありったけの鬼石をスクナオニの全身に撃ち込んでいた。他の鬼は飛行型魔化魍が彼等の邪魔をしないように攻撃を続けている。
力強い掛け声と共に大地を蹴って、高鬼紅が高く高く跳躍する。
スクナオニが三度目の咆哮を上げた。
「天罰覿面の型!破っ!」
「超電稲妻落としの型ぁぁぁぁ!」
二人の音撃打が同時に炸裂した。更に威吹鬼と暁鬼も音撃射を演奏する。
刹那、爆発が起こり、激しい爆風と轟音が周囲を包んだ。時間帯は深夜だ。間違いなく麓にも響いている事だろう。
爆煙に包まれた境内へ、高鬼紅と壱鬼鳴雷、そして暁鬼が降りてきた。どうやら大蛇も一緒に清められたらしい。暁鬼の手にした筒の中に、彼のクダギツネが入っていく。
「高鬼さん!」
威吹鬼の声が聞こえる。
「よし、残りを片付けるぞ!」
「紅」と「鳴雷」状態の二人にとって、残りの飛行型魔化魍を全て退治するのは難しい事ではなかった。
533高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/05/05(土) 01:01:51 ID:3xsk8zoA0
全てが終わった後の延暦寺は、凄惨たる有様だった。爆風や轟音の影響で屋根は崩れ硝子は砕け散り、境内も魔化魍との戦いであちこち穴だらけになっていた。
「さて、と……」
八人とも、未だ鬼の姿を維持したままだ。これからすぐに他の場所で戦っている支部の仲間達の救援に行かねばならない。
移動の準備が整ったらしく、勢地郎が皆を呼びに来た。
「どうしました、高鬼さん?」
「いや、何か忘れているような……あっ!」
突然大声を上げる高鬼に、その場に居た全員が一斉に振り向く。
そんな彼等を前にして高鬼はただ一言。
「あかねさんに頼まれていた宇治茶を買うのを忘れていた……」

その後、事態が完全に収まるのにかなりの時を要した。破壊された延暦寺の修繕、結界の再構築といった事後処理が残されていたからだ。
特に、結界が再び張られるまで魔化魍は湧き続けるため、延暦寺での戦いに参加した八人を含む全ての鬼は、この一件の後も日夜京都各地を飛び回る事となった。
とは言え、京都の街を襲うと予言された大災厄は、最低限の被害で喰い止める事が出来た。人知れず戦った戦士達の活躍によって。
だが、これは終わりではない。来るべき戦いへの序章に過ぎない。
塵と化したスクナオニの体の一部を傀儡が密かに回収していた事に、関西支部の誰も気付いていなかった。
翌1979年、猛士と男女との間に一先ずの決着が付けられるのだが、それはまた別の話である。 了
534高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/05/05(土) 01:07:26 ID:3xsk8zoA0
と言うわけで。
今までとは趣向を変えて分割して投下してきた長編、長々とお付き合いありがとうございました。
次回からは、ボツにするのも勿体無かったネタの幾つかを、また変わった形式で投下したいな〜と思っております。
535名無しより愛をこめて:2007/05/05(土) 01:37:22 ID:EIGPZMoL0
投下乙です。
次の話は何でしょね?
536名無しより愛をこめて:2007/05/05(土) 01:43:18 ID:fjdYhIeR0
分割して更に読みやすくなったように思う
537名無しより愛をこめて:2007/05/05(土) 15:56:23 ID:rJbIVtsCO
高鬼作者さん乙です!
昭和特撮も好きな者としてはアカツキさん鳥肌です。
赤影やジライヤみたいで嬉しかったw
538名無しより愛をこめて:2007/05/06(日) 00:19:04 ID:Q+TOMQWi0
久々に用語集の話だけど、本家と別冊でもう全作品網羅されてるんだろうか。
中四国は別として。
だったらWikiってもういらないよな?
539名無しより愛をこめて:2007/05/06(日) 05:33:33 ID:SnC/48YR0
>>508
ようやく読んだよ。あまりサクサク読めなかった。
響鬼本作に悪意を感じるのはオレの気のせいでしょうか。
猛士を過疎化が進んだ村社会+宗教結社に仕立ててるように見える。
鍛えて鬼になることが宗教上の教義になっている。
魔化魍に親を食われたあの少女の行く末を解説するだけでも違ったと思うけどね。
ま、オレの響鬼とは違うな。それだけ。
540名無しより愛をこめて:2007/05/06(日) 15:38:34 ID:BLFKUbwjO
>>539
いつのまにやら完結してたのね。

俺は結構楽しめた。
「少年よ」の歌詞からだいぶインスピレーションもらってる感じ。

思春期の少年の成長物語ならコミュニケーション不全とセックスは外せない因子だし、グロ描写も漫画のデビルマンをおもわせて好き。
541名無しより愛をこめて:2007/05/06(日) 22:36:31 ID:a6FHUxIY0
>>538
出来てから5か月近く過ぎたけど、用語の更新は『皇城の守護鬼』の1項目のみ。
アクセス数が1300超えていてこの更新状況というコトは、『観る』のはいいけど
自ら『創る』ことはないっていう住人がほとんど、というコトでしょう。

だから、本家と別冊で網羅していてもいなくてもこの結果は変わらないだろうし、
もう用語集Wikiの必要性って無いと思うんだけどね。何かあると思うヒトいる?
542名無しより愛をこめて:2007/05/06(日) 23:18:55 ID:SnC/48YR0
>>540
ああ、そういえばジンメンだな。あのネタ。
543名無しより愛をこめて:2007/05/06(日) 23:26:53 ID:Q+TOMQWi0
>>541
結局、Wikiを作った人やそれに賛成した人達が期待したほど、このスレにはそういう意欲のある住人は居なかったってことだよな。
544名無しより愛をこめて:2007/05/07(月) 17:24:32 ID:ScfDCBn7O
仮にwikiでやることがあるとすれば中四国の用語集だろうが、それならサイトでやってもらえば済むし
545志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/08(火) 15:40:34 ID:B/MmhioP0
前回は>>516-519

四の巻 集(うごな)えぬ角(つの)

都内の某所には人の目に見えぬ古い洋館があるという都市伝説がある。
明治とも大正ともつかぬ時代の造りとも云われるその館には昔より一組の男女が棲んでおり、夜な夜な忌まわしき魔物を使って人々に恐怖を植え付けているという――。
一部のオカルト好きしか知らないような内容の話だが、実際にその洋館は実在し、其処に棲む男女の見目麗しき容姿の裏に潜む邪悪なる妖気が洋館の結界となり、人々の目からその正体を隠していた。
「……今回は上手くいってるようじゃない」様々な実験機械のような物に埋もれる部屋の中央にあるテーブルの上のフラスコを見つめながら、館の主は長年の伴侶に言った。
フラスコの中にある緑色の液体はクグツとよばれる男女の傀儡が地面に流し込む『あの液体』に似ていた。
「まだ始まったばかりだからね。何とも言えないさ」和装の男はそう言うと、フラスコを手にとってゆっくりと揺らした。液体は少し粘るような動きを見せている。
「取りあえず、『あの子』とは通じているんでしょ?」
「……奴は変り種だからな。こちらからの接触には半分ぐらいしか反応しない。まあ、あまり上手く行かない様なら始末するだけの事だがね」
「代わりはあるの?」
「方法は幾らでもある、ということさ。幸い、僕達には時間もあることだしね」男は唇を歪めて笑うとフラスコの液体に傍にあった試験管の中の赤い液体を注いだ。
液体は煙のように交わると別の色へと変化した。
フラスコの向こうの男女は思惑ありげな笑みを浮かべている。
誰もが嘆息するほど美しい、それでいて邪なる気に満ち満ちている笑みを――。
546志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/08(火) 15:44:33 ID:B/MmhioP0
勢地郎の指示により、たちばなに非番の鬼達が集められたのはダンキとショウキがトウキを見舞った翌日のことだった。
一方、アミキリの退治に向かっていたエイキとバンキとの連絡が前日夜の定時連絡から途絶えた為、猛士関東支部は魔化魍と二人が接触して戦闘状態に入ったものと判断し、フォローを開始していた。
「今月は何だか魔化魍が重なっているみたいっすね」地下の会議室に来ていたトドロキが向かいに座るイブキに話しかけた。
「最近はあまり出撃もなかったんですが」イブキも相槌を打つ。
「お、お二人さん、早いね」そう言って入ってきたのはゴウキだった。
「ゴウキさん、今日はお一人ですか」
「ああ、今日は鬼だけでいいって話だったんでね。カミさんは家で留守番してるよ」ゴウキはイブキの問いかけに柔らかい笑みを浮かべて返すとトドロキの隣の椅子を動かして腰掛けた。
「他の皆はまだのようだね」
「ヒビキさんはさっき明日夢と買出しに行きました。今日は少し長くなるかもしれないから、食材を買ってくる、って言ってたっす」ゴウキの問いにトドロキが返す。
「おやっさんの話しぶりからもそれは何となく感じられたな。……ところでイブキ、トウキさんの話は聞いてるか?」
「はい。まだ意識が戻らないと聞いています。ウブメに遭遇したのは間違いないようですが」
「ショウキがフォローに入る事になって、この後出撃するらしい」
「僕達も準備が必要ですね」イブキが真剣な面持ちで言う。
「……まあ、そういうことになりそうだ」ゴウキはそう言うと腕を組んで目を瞑った。
「トウキさん、どうかしたんっすか?」事情を知らないトドロキがイブキに尋ねた。
イブキは自分が把握していることをトドロキに掻い摘んで話した。
「……トウキさんがやられたっすか……」トドロキが嘆息する 。
「現状ではトウキさんが意識を失った状況が分からないので、必ずしもやられたと決まった訳ではないのですが……。推測する範囲で導かれるのはウブメに何らかの方法で攻撃されたのではないかということです」
「トウキさんほどのキャリアのある人なら油断するという事も有り得ないだろう。新手の奴かもしれん」ゴウキは目を瞑りながらイブキの言葉に重ねた。トドロキも頷き返す。
547志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/08(火) 15:46:41 ID:B/MmhioP0
その時、お疲れ様です、と言ってイチゲキが入ってきた。
「よお、新婚さん。嫁さん元気か?」ゴウキが冷やかす。
「はい、元気にしてます。でも、もう一年近くなりますから『新婚さん』は勘弁して下さい」イチゲキは新婚さん、という言葉に少し頬を赤くしてそう言うとゴウキの隣に座った。
「一年以内ならまだ新婚さんだよ」ゴウキはハハハ、と笑って、サバキさんは最近どうしてる、とイチゲキに尋ねた。
「今週は義母さんと北海道まで旅行に出ています。道東の方を回ると言ってました」
「今時期はあっちも気候がいいからな。フブキとも会えるんだろうか」
「札幌の方にも顔を出すようなことも言ってましたんで、会ってくる積もりなんでしょう」
「エイキが聞いたら悔しがるだろうな。エイキも行きたかった、ってな」
「…………」ゴウキのエイキ張りの駄洒落に凍りつくイチゲキ達。
ゴウキはそんな場の雰囲気に感づくと、ヒビキさん達遅いなぁ、と取り繕った。
その後、ヒビキ達が食材を手に店に戻り、まだ到着していないショウキとダンキを待ってミーティングを始めようということになったが、それから一時間しても二人は店に現れなかった。
勢地郎がショウキの携帯電話やダンキの自宅に連絡を入れたが全く繋がらない。
不審に思った鬼達は手分けして二人の捜索に当たることにし、たちばなを後にした。
548志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/08(火) 15:48:57 ID:B/MmhioP0
遡ること半日以上。
魔化魍アミキリと戦闘状態に入った蛮鬼と鋭鬼は予想以上の苦戦を強いられていた。
二人に襲い掛かるアミキリとその童子と姫は黒銀の体色をしていたが、童子と姫は鎧に身を包んでおり、アミキリはその外骨格が以前のアミキリ以上に、まさに鎧の様に硬かった。
二人は体力の消耗を防ぐために、以前サバキから聞いたセオリーどおり童子と姫の過装甲による時間切れを狙った。が、童子と姫には一向にその気配もなく、事態は三対二の消耗戦の様相を示そうとしていた。
「ええい、きりがない。どうじてくれよう、この童子」
「駄洒落考えてる場合じゃないですよ、鋭鬼さん」蛮鬼は苦戦する鋭鬼にそう言うと、間合いを取って体制を低くした。鬼刀術『抜刀閃』の構えだ。
気を籠めて逆手の音撃弦『刀弦響』に力を注ぐ。『刀弦響』の刃が黄金色に輝き始める。
「グアアアアア!」叫びと共に殺到する鎧姫に向けて駆け寄ると『刀弦響』を振り上げた。
がちっ、と姫の鎧の腰元に刃が噛み込む音がする。蛮鬼は破ぁっ、と気勢を上げるとそのまま姫を逆袈裟に斬り上げた。
「ギャアアア!」叫び声と共に爆裂する鎧姫。
「先ず一つ!」蛮鬼は力強く呟くと、間を置かずアミキリに向かった。
「やるねぇ」鋭鬼は武者童子の斬撃を両手の音撃棒『緑勝』を斜め十字に組んで受け止めると、こっちも負けてられねぇな、と呟いて童子の腹を思い切り蹴り飛ばした。
反動で別れる両者。童子はどうっ、と倒れこみ、鋭鬼は片膝をついて着地した。
「きっちり塵にしてやるから、覚悟しな!」鋭鬼はそう啖呵を切ると『緑勝』の鬼石に気を籠めた。
鋭鬼の気の高まりに反応するように輝く鬼石。
立ち上がり、鋭い斬撃に転じる武者童子を左によけて右手にかわすと脇腹に向けて右腕を振り下ろす。
童子の背中に炸裂する音撃棒。装甲の上からなのでダメージは薄そうだ。
「これじゃ足りねぇよな。……けど!」振り向き様に横に払われる刀をしゃがんでかわし、童子の腹に音撃棒を押し当てる。
「これならどうだ……鬼闘術『華厳(けごん)』!」押し当てた二つの鬼石から放たれた緑の光が鉱石の様に武者童子の鎧の隙間からその体を貫いた。
549志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/08(火) 15:52:25 ID:B/MmhioP0
『華厳』は拳法で言う『発勁』を応用した鋭鬼の鬼闘術だ。体内の気を練って打ち込むため消耗がやや激しいが、武者童子のような外側の硬いタイプには一定の効果がある。
『華厳』によって至近距離から放たれた力が童子を塵に返す。
「外見が相当硬くたって、目の前から打たれりゃそうは跳ね返せねえだろ」鋭鬼は塵になった童子にそう言うと、蛮鬼が戦っているアミキリの方に向き直った。
一方、蛮鬼は鋭いアミキリの鋏と外骨格の硬さに苦戦していた。
アミキリは余裕があるのか、空中戦に転じようとしてはいない。体の硬さを生かしながら、両前足の鋏のリーチを利用して素早い動きで蛮鬼を攻め立てる。
「懐に入り込めないと、音撃が出来ないな」かといって、『刀弦響』の刃でもアミキリの鋏は容易には斬り落とせなかった。
「固い奴を攻めるには、柔らかい所を見つけるのが上策、か」蛮鬼はそう呟くと鋏の間接部に狙いを絞った。しかし、予想以上のスピードに斬撃に転じられない。
「蛮鬼、俺が陽動する。入り込め!」鋭鬼は蛮鬼にそう叫ぶとアミキリの斜め後ろから飛び上がってアミキリの背の上に乗った。すかさず腰の音撃鼓に手をやろうとする。
アミキリは鋭鬼の存在に気づいたのか、滅茶苦茶に動いて鋭鬼を振り落とそうとする。
鋭鬼はふらふらしながらも何とか背に乗って位置を維持しようとした。さながらロデオ状態だ。
蛮鬼も下から牽制しながら何とかアミキリの腹の辺りに入り込み、斬撃を加えた。
「シャギャーッ!」たまらずアミキリは悲鳴を上げ、鋭鬼を振り落とすと背中の翅を展開し始めた。
「逃げる気だな。させるか!」鋭鬼はすぐさま立ち上がると両手に持った『緑勝』に再び気を籠め始めた。
「はぁああああ!」『緑勝』の鬼石に緑の炎が現れる。
「このお化けザリガニめ、これでも喰らえ!鬼棒術『歐炎弾』!」言うや否やアミキリの翅目掛けて炎を放つ。一対の『歐炎弾』は狙い違わずアミキリの翅を焼き、アミキリは更に悲鳴を上げる。
「よっしゃあ!蛮鬼、バンバン斬っちまってくれ!」
「了解です、鋭鬼さん!」蛮鬼はアミキリの足を関節から切り裂いていく。先ほど斬った腹の外骨格の隙間から『刀弦響』を捩じ込み、音撃震『地獄』をセットする。
「音撃斬、『冥府魔道』!」『刀弦響』から放たれる低音の弦の響きが魔化魍に注ぎ込まれた。
やがて、爆発、したかに見えた。
550志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/08(火) 15:54:35 ID:B/MmhioP0
「!?」しかし、爆裂したかに見えたアミキリは二回りほど小さくなっただけで、ダメージがなくなったように復活していた。
「莫迦な!」鋭鬼も思わず我が目を疑った。
「脱皮しやがったのか!?コイツ」
「……いや、鋭鬼さん、コイツは脱皮したんじゃないんです」すぐさま距離をとった蛮鬼が冷静な声で言う。
「おそらく二重装甲でしょう。もしくはもう一匹が最初から中にいたか、です」
「最初から合体してやがったってのか?」
「こちらの攻撃を一旦は受けて、疲労させた後に倒そうという作戦だったのでしょうね」
「ちっ、しぶといザリガニだ。おまけに色まで変わりやがって」鋭鬼が言うようにアミキリの体色は黒銀色から銀色に変わっている。
「あれじゃメカザリガニだ。飾りはないけど、さっきより硬そ」
「あの硬さでは恐らく隙間からでも単体音撃は通じないでしょうから、合同音撃で倒しましょう」
「同時に打ち込むか。ようし、行くぜ!」二人は呼吸を合わせると、アミキリに向かって駆け寄った。
互いに牽制役になりつつアミキリに取り付くと外骨格の隙間に徐々にダメージを加えていく。
アミキリも先程以上に必死で抵抗するが二対一の状況もあって、徐々に戦況は蛮鬼と鋭鬼に傾いていく。
そしてついにアミキリの鋏が蛮鬼に切り落とされ、翅が鋭鬼の炎で完全に焼かれた。
「行くぞ、合同音撃『響天導地』!」鋭鬼がアミキリの背中に音撃鼓『白禄』を貼り付け、蛮鬼が腹に『刀弦響』を差し込む。
一気に打ち鳴らされる音撃の旋律がアミキリの中で激しく鳴動する。
音撃が止んだ刹那、先程以上の爆発が二人を包んだ。
砂煙がやみ、互いの姿を確認すると、二人はゆっくりと息を吐いて顔の変身を解除した。
551志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/08(火) 15:55:49 ID:B/MmhioP0
「……お疲れ様でした」
「……鋭鬼の鋭気がなくなったぜ」そう言って並び立ち、笑顔を交わす鬼二人。
しかし、一瞬にして二人の笑顔が凍りつく。
「……!?」腹部に走る激痛。鋭鬼がふと下を見ると、自分の腹に深々と杓杖のようなものが刺さっている。蛮鬼の腹には手刀が同じように突き出していた。
「莫迦な……何時の間に」蛮鬼も驚きを隠せない。
二人を刺した背後の銀色の影が何事かを呟くと雷の様な光が二人を包む。
全身に梵字のような文様が現れると、突如全身の変身が解除され、二人はそのまま前に倒れこんだ。二人の傷口には『魘』『魑』という文字が見て取れたが、それもすぐに消えた。
「き、貴様……誰……だ」意識を失う前にかろうじて仰向けになったバンキが尋ねたが、影は答えようとはしなかった。
「……鬼……?」暗がりでよくは見えない中、辛うじて月明かりで見えたのは頭上の一対の突起物だった。
昼間ならば、その突起が角であること、また銀色のフードのようなものの中に般若の面体があったことが判断できただろう。
しかし、薄れ行くバンキの意識の中でその影の正体が何であるかを留める事は出来なかった。
バンキとエイキが地元の歩によって発見されて病院に搬送されたのは、関東地区の鬼達がダンキとショウキの捜索に出てから間もなくの事だった。
(五之巻へ続く)
552志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/08(火) 16:11:20 ID:B/MmhioP0
そろそろ次のスレを立てて頂かなければならないかと思います。
できましたら、掲載は続けていきたく思いますので、どなたかスレ建てをお願いいたします。
553志を〜作者 ◆MxwC1THAPo :2007/05/08(火) 16:20:40 ID:B/MmhioP0
すみません、まだ少し余裕がありましたね。
スレ消費して申し訳ありません。
554名無しより愛をこめて:2007/05/08(火) 21:04:37 ID:HLdXoYs5O
志しを〜作者さん乙です。
555:2007/05/09(水) 01:08:49 ID:LDjFyF+K0
1です・・・そろそろ容量が470KBです。次スレのスレタイ/テンプレ案つくってみたとです。


スレタイ案

【響鬼】鬼ストーリー 参之巻【SS】
556:2007/05/09(水) 01:10:33 ID:LDjFyF+K0
テンプレ案1


「仮面ライダー響鬼」から発想を得た小説を発表するスレです。
舞台は古今東西。オリジナル鬼を絡めてもOKです。

【前スレ】
【響鬼】鬼ストーリー(仮)【SS】
http://tv9.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1164788155/

【まとめサイト】
http://olap.s54.xrea.com/hero_ss/index.html
http://www.geocities.jp/reef_sabaki/
http://hwm7.gyao.ne.jp/lica/hero_ss/

【用語集】
http://www.iiyama-catv.ne.jp/〜walachia/index.html
※用語集へはTOPの「響鬼」でたどり着けます
http://hwm7.gyao.ne.jp/lica/hero_ss/glossary/

次スレは、950レスか容量470KBを越えた場合に、
有志の方がスレ立ての意思表明をしてから立ててください。

過去スレ、関連スレは>>2以降。


<注>自分の環境からだと、チルダ(用語集サイトさんのアドレスの「walachia」の前の記号)
   がどうしても全角になってしまうとです。
557:2007/05/09(水) 01:14:42 ID:LDjFyF+K0
1です・・・前スレを間違えたとです。
正しくはコチラ↓

【前スレ】
【響鬼】鬼ストーリー 弐之巻【SS】
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1170773906/
558:2007/05/09(水) 01:18:07 ID:LDjFyF+K0
テンプレ案2


【過去スレ】
1. 裁鬼さんが主人公のストーリーを作るスレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1131944389/l50(DAT落ち)
2. 裁鬼さんが主人公のストーリーを作るスレ その2
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1138029584/l50(DAT落ち)
3. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1139970054/l50(DAT落ち)
4. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ 弐乃巻
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1142902175/l50(DAT落ち)
5. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ 参乃巻
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1146814533/l50(DAT落ち)
6. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ 肆乃巻
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1150894135/l50(DAT落ち)
7. 裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ 伍乃巻
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1158760703/l50(DAT落ち)
8. 響鬼SS総合スレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1162869388/l50(DAT落ち)
9.【響鬼】鬼ストーリー(仮)【SS】
http://tv9.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1164788155/l50

【関連スレ】
--仮面ライダー鋭鬼・支援スレ--
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1124581664/l50(DAT落ち)
弾鬼が主人公のストーリーを作るスレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1133844639/l50(DAT落ち)


またもスレ汚し、申し訳なかとです。470KBを越えましたら、
有志の方が意思表明をしてから、スレ立てをお願いいたします。
559:2007/05/09(水) 01:36:29 ID:LDjFyF+K0
Σ(゚Д゚;も一個マチガイがあったワ。
9.【響鬼】鬼ストーリー(仮)【SS】 もDAT落ちしていたワ。
560名無しより愛をこめて:2007/05/09(水) 07:36:46 ID:1FiKJ9N+0
一応Wikiへのリンクも入れておいたほうがいいと思う。
まだ無くすと決まったわけじゃないし。
561名無しより愛をこめて:2007/05/09(水) 20:07:40 ID:u1qxTS6F0
>>560はそれを言う前に、まず>>541の問いに答えてほしい。
リンクに入れたら、更新しろしろって煽りが続くだけだよ。
>>560自身は、更新するつもりある? どのSSについて更新したい?
562名無しより愛をこめて:2007/05/09(水) 21:53:50 ID:1FiKJ9N+0
仮に更新されなくても、たとえばオフィシャルに登場した鬼の設定を
素早く参照するために使う人だっているかもしれないぞ。
563名無しより愛をこめて:2007/05/09(水) 22:39:26 ID:u1qxTS6F0
早速の回答ありがd。
で、>>562自身は更新するつもりある? どのSSについて更新したい?
それから、どのSSについて更新してほしいの?
564名無しより愛をこめて:2007/05/10(木) 00:38:32 ID:2L7fmP1/0
・・・まあ、更新しろしろっていう煽りが続く事と、ウィキの必要性を秤にかけて考えてほしい。
オフィシャルの設定、用語集サイトさんにあるよ。
つーか、今の状態から更新されなかったら、それはもうSSの用語集じゃないと思うんだが・・・。
565名無しより愛をこめて:2007/05/10(木) 07:34:17 ID:zMbJb9TY0
>>350あたりの話も結局何も進展してないね。
あのWikiを中四国用語集に仕立て直す選択肢もあるが、そんなことするくらいなら
>>544の言うとおり、中四国サイトの1コンテンツとして管理人に作ってもらえばいい。
Wikiを中四国用語集にしてサイトからリンク張ってもらう手もあるな。
566裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/05/10(木) 22:01:00 ID:iED0RyUJO
書き手が用語集に書き込むのはアリなワケ? パソなら誰でもWiKiに書き込めるの? ごめんなさい携帯で。


裁鬼(サバキ)や石割とかテンキ関係とか、好き勝手に俺作品の描写済みや未発表関係なく設定晒しちゃっていいのかな?答えは




聞いとかなくちゃ。顰蹙買いたくないし。
567名無しより愛をこめて:2007/05/10(木) 22:28:32 ID:zMbJb9TY0
>>566
いいんじゃないでしょうか?
PCからなら誰でも編集できるっぽいですよ。
568名無しより愛をこめて:2007/05/10(木) 23:57:58 ID:uLjyUlpy0
>>566
未発表の設定を〜なんてのは、皇城さんもZANKIの人もやっていたことで、
チラ裏みたいなモノだと思うけど。個人的には興味深い。
いつも携帯で書き込んでるみたいだけど、ネカフェでも使ってやるつもり?
569名無しより愛をこめて:2007/05/11(金) 00:06:23 ID:g0798K7x0
鬼ストーリーの事情
570名無しより愛をこめて:2007/05/11(金) 01:29:48 ID:wwzJcr/l0
凱鬼メインの人は、用語集自分で作るからWikiには入れないでって言ってたけど、
作ってんのかな? なんかもうず〜っと投下がないんだけど、人知れず引退?
571凱鬼メイン作者 ◆KxAq6DKEkg :2007/05/11(金) 21:34:29 ID:IcIqAwFF0
>>570
現在、ちまちまと用語をまとめて、ちまちまと作成しているところです。
投下がなかったのは、最近まで仕事や親戚のことで忙しく、なかなか創作活動が出来なかったためです。
先週、ようやく忙しい日々から逃れられたばかりで、投下はもう少し先になると思われます。
572名無しより愛をこめて:2007/05/11(金) 22:13:51 ID:YfVFWf/e0
>>571
律儀なレス乙。トリ違うけど本人だよね?
573名無しより愛をこめて:2007/05/12(土) 16:09:16 ID:PnS2KzLrO
>>571予定を言ってくれると助かるな!
皇城さんの作品投下もしばらく見てないけど、
今後の予定を聞かせてくれると助かります。
574皇城の〜中の人 ◆COP3Lfy.8w :2007/05/12(土) 16:38:08 ID:nhqtUlAn0
ご無沙汰しております。
いろいろとあわただしいのと、筆が載らないのとで製作難航しております。
5回ほど書き直してようやく2割ほど進みました。
まだしばらくかかりそうです。お待ちくださっている方々申し訳ありません。
575名無しより愛をこめて:2007/05/12(土) 17:08:07 ID:PnS2KzLrO
>>574
早速のレスありがとうございます。
投下、待ってますよ!
576名無しより愛をこめて:2007/05/12(土) 22:03:26 ID:HkJWt1bo0
弾鬼とか鋭鬼とか、DA年中行事とかも気になるけどね・・・。
作者さんたちがここを見ているのかどうかさえわかんないし。
あと、まとめサイトさん、何も言わずに突然いなくなっちゃったみたいで寂しい・・・。
決してサイトの運営を継続する義務はないけど、何かひと言あったらなあ、と今でも思う。
577名無しより愛をこめて:2007/05/13(日) 11:06:37 ID:tByimxyl0
 日本!
   ∧_∧  日本!
  ( ・∀・)/ヽ
  ノ つつ ●i
 ⊂、 ノ \ノ
  し′

『鬼棒術・歐炎弾』
578名無しより愛をこめて:2007/05/13(日) 11:41:56 ID:OFWvEK3Q0
次スレたててくるよ
579名無しより愛をこめて:2007/05/13(日) 11:50:22 ID:OFWvEK3Q0
次スレ立ててきたよ

【響鬼】鬼ストーリー 参之巻【SS】
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1179024153/

用語集のリンクについてはよく話し合ってから決めて
580名無しより愛をこめて:2007/05/13(日) 12:01:04 ID:Y0eADd1kO
乙です
581名無しより愛をこめて:2007/05/15(火) 01:31:08 ID:rXdEP++F0
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |  あと30KB  |
 |_________|
    ∧∧ ||
    ( ゚д゚)||
    / づΦ

ここは何に使うんでしょうか?(このまま落としちゃうの?)
582名無しより愛をこめて:2007/05/15(火) 01:36:18 ID:6pYyEtD30
t
583名無しより愛をこめて:2007/05/15(火) 12:44:01 ID:QisoRUrH0
以後はWiki用語集のことについてこちらに出しませう。
SS職人様は次スレに投下をお願いします。
584名無しより愛をこめて:2007/05/15(火) 18:30:37 ID:5iGxVEs70
おや、犯人は響鬼と伊吹鬼と斬鬼ですか。
585名無しより愛をこめて:2007/05/16(水) 23:22:04 ID:vs7m4ZBl0
>>584は何の話かしら?と思いつつも、それは置いといて、用語集Wikiについて。

>>365で、用語集Wikiの管理人さんが
>Wikiのせいでスレが荒れるなんてことになったらWikiも消して俺も名無しに戻るが。
と書いているんだけど、本気で考えてほしいと思う。
俺がひと言こう書いたところで、了解、消します、なんてことにはならないだろうけど。

スレ立て人がテンプレ入りについて住人に判断を求めたりとか、
それを受けて次スレの16みたいにケンカ腰なヒトが出てきたりとか、荒れてますよ。
というか、なにかとリンクを貼れ貼れと言ったり、自分は更新しないのに更新しろと煽ったり、
ウザイことこの上ないっすね。

用語集Wikiを巡ってここの住人同士が対立してる原因て、要は中四国でしょ?
彼を認める住人は用語集Wikiに賛同し、ある住人は彼の作品の用語を登録したいけど、
荒れることを危ぶんで登録しかねている。>>350ね。
またある住人は、他の作品の用語が充実してきたところに(それにまぎれて?)中四国の用語も
登録しようと思っている、と。これも>>350のレスの一部ね。
(この辺が、更新しろ、と言い続ける理由なんでしょうね。>>350を読んで思った)

管理人さん、スレの平和と用語集の必要性をよく考えて、今後をご検討くださいな。
586名無しより愛をこめて:2007/05/16(水) 23:42:38 ID:oEm1GBeM0
いや、ウザイことこの上ないのはお前だから。
自治厨と言われるかもしれないが以下みんなスルーな。
587585:2007/05/17(木) 00:15:18 ID:Q0qL8Zd80
ああ、早速レスが来た。
>>586は、更新しろしろって煽りを見ても、何とも思わないヒトなのね。
>>586自身の意見も言ってくれ。「用語集Wikiの存在は何の問題も無いと思う」
とでも言いたいのかな?
>>365で、管理人さん自身が「>>349の言うことも十分理解しているが」って言ってんのに。
もう一回書いておこうかな。>>586自身の意見も言ってくれ。
588名無しより愛をこめて:2007/05/17(木) 07:58:30 ID:rwx7p7RQ0
なんか知らんけど用語集が目障りで仕方ない人間が一人だけいるみたいなんだよな。
嫌なら見なきゃいいのにな。
589名無しより愛をこめて:2007/05/17(木) 08:30:43 ID:XFtPTQpb0
>>566のように作者さんからWiki編集の声も上がっていて、
チラホラと匿名での編集も見られるようになってる今のタイミングで
Wikiを無くそうとかいう話が出てくること自体が不自然。

ま、>>585はスルーだな。
590名無しより愛をこめて:2007/05/17(木) 12:09:27 ID:/6j7MGmg0
用語集Wikiを無くそうという工作を今まで何度も繰り返してきて、その度に無駄足に終わってるんだから
そろそろ学習すればいいのにw
「見たくない奴は見なきゃいい」がまさに真理で、
やりたいって思ってる人間、実際にやってる人間がいる以上、お前が何を言ってもWikiは消えやしないよ。

つーことで他にならってスルーだな。
591名無しより愛をこめて:2007/05/17(木) 20:26:30 ID:46IxQdxo0
上のレスを読んでみて思ったのだが、Wiki用語集があること自体には何の不都合もないかと思う。
正直言うと、自分では書かないが他人にやたらと更新しろという煽りや本家や別冊の用語集サイトの苦労も省みずにこれがいいからリンクを今すぐ貼れと強硬にいう輩がうざったいだけ。
別にWiki自体をなくせとまで言う必要も無いと思う。
編集によってあまりにも悪くなれば必然的に消える方向になるだろうし、良くなれば、Wiki自体がさらに盛んになるだろうと思う。
希望的観測だが、自由と良識によって編集されるのであれば、Wiki用語集はきっといいものになるだろう。
煽るよりWikiに書き込んで欲しい。俺はそう思う。
592585:2007/05/17(木) 23:48:10 ID:IpDcTNOL0
用語集Wikiがある限り、中四国の影は消えない。
最近用語集Wikiに中四国の用語の追加が始まったけど、
これじゃ、いかにも現在進行形で中四国がスレの一部みたいだ。
中四国とスレとの縁をすっぱり切ってほしい俺にとっては、あれは存在してほしくない物なのよ。
このスレの用語集じゃなくて、中四国の用語集って扱いなら別にいいんだけど。

あれだけスレに迷惑をかけた作者をいまだにスレの一部として扱ってるとは、どんな了簡なのかと。
中四国が好きなら好きで構わないから、そのサイトに読みに行けばいいだけの話なのに、
中四国をこのスレと結びつけたがるのは、なぜなんでしょうね。

中四国のやったことは、許されることじゃないと思う。
数々の顔をそむけたくなるような暴言を吐いている中四国を、
スレに属するものとして考えられるその心情が謎。
もう誰も何も言わないようだけど、まだ一人、中四国を許せずにいる住人がいるということを
ここに書き残しておこうと思う。ヲチスレでの絵師に対するあの暴言、あれはないだろう。
どんな暴言も、不思議と>>590なんかは何とも思わないんだろうけどな。
593名無しより愛をこめて:2007/05/17(木) 23:50:47 ID:rwx7p7RQ0
結局中四国嫌いの煽り屋か・・・
585を見たときからそう思ってたんだがな
594名無しより愛をこめて:2007/05/17(木) 23:57:55 ID:Bon6b5fBO
>>592
いちいち中四国のこと気にしてるのはお前だけってことに気付け。
多くの住人にとって、中四国が用語集に加わろうが加わるまいが「別にどうでもいい」んだよ。わかるか?
595名無しより愛をこめて:2007/05/18(金) 00:18:40 ID:HHlwg7Lr0
>>592
「俺にとっては存在してほしくない」は流石に呆れたな・・・
ボクちゃんの好き嫌いでスレが動くって本気で思ってるわけじゃないよね?w

中四国も、用語集も、それにまつわるレスも、見る見ないは個人の自由だよ。
嫌ならキミが見なきゃいいだけだって、今まで何度言われてきたの?w

どうしても用語集を無視できないならこのスレを見るのをやめてくれないかな?
キミみたいなのが一人でもいると皆にとって迷惑なことこの上ないんだよね。
キミ一人のためにどんだけスレの容量消費してると思ってんの?

まだ皆がマトモに相手してくれてる内に引き下がったほうがいいと思うよ?
しつこく続けてたら「今日のNGワードはID:IpDcTNOL0」とか言われちゃうよ?
596585 1/2:2007/05/19(土) 00:12:37 ID:x1egWLxZ0
・・・日に日に反論レスに品がなくなってくるな。このスレにこんな住人いたのか。
スルースルーと言いながら、何か言い返さないと気が済まない人が多い(?)な。
書き込みなくて落ちる寸前だったところを本音ブチマケに使わせてもらったけど、
他に用途を考えていた人がいたらゴメンヨ。このへんにしとくわ。

『見る見ないは個人の自由』ね。その主張がまかり通っていれば、
いまでも中四国はスレで連載していただろうにね。
実際にスレから叩き出されてるじゃないの。なんでだと思う?
・・・と、いう質問もスルーなんだろうけどね。都合の悪い質問には答えられないでしょ。

自分の都合のいい所だけはスルーせずに刈り取るのにね。繰り返すけど、
中四国とスレとの縁をすっぱり切ってほしい俺にとっては、用語集Wikiは存在してほしくない。
やっちゃいけないことの限度を越えた中四国との縁を切りたいってのは、好き嫌いの問題かい?

あれだけスレに迷惑をかけた中四国をいまだにスレの一部として扱っているのは、どんな了簡なのよ。
用語集Wikiを更新しろ更新しろって煽りをどう思ったのよ。
中四国をこのスレと結びつけたがるのはなぜなのよ。
・・・この手の話に関してはまったくスルーだな。
答が得られるとも思えないが、『都合の悪い意見はスルー』ってところは中四国と同じ精神構造だぞ。
597585 2/2:2007/05/19(土) 00:14:43 ID:x1egWLxZ0
同じ精神構造だとしたら、レスくれてるアンタら(?)は、ヲチスレでの絵師に対する中四国の暴言、
あれと同じ考えを持っていることになるけど。最低の発言だったぞ、上から下まで。

>676 :作者 :2007/01/29(月) 13:08:58 ID:dxbRAhAJ
>善意ですか
>それならそれでこっちも言わしてもらいますがね、
>あなたが描いた絵は、俺が使う以外に何ら使い道がない。
>あの絵が表すキャラは世界中探しても俺の小説のキャラだけだから。
>俺が拾って使わなきゃ、あのとき絵スレに居合わせた人たちのHDに眠るだけ。
>それを俺が使ったことで絵が活きたの。
>善意だよ。
>あなたの絵はクオリティも高かったけど、仮にどんだけヘボい絵でも俺は拾って使う。
>善意でね。
>絵を描いたのは善意だ善意だと言うなら、逆に「作者さん直々にキャラ絵と公認してくれて、
>しかもサイトに載せてくれてありがとう」くらい言うのが常識と違うの?
>俺が知らない間に俺のキャラを描いたんだから。
>無断転載だってそうですよ。
>まず、作者本人の許しを受けずにキャラを描いた(結果的にキャラ絵になった)ことを謝るのが道理でしょ。
>無断転載云々はその次。
598名無しより愛をこめて:2007/05/19(土) 01:18:25 ID:zTc/mz0d0
はいはい中四国中四国( ´―`)
599591:2007/05/19(土) 02:15:34 ID:o9lzq7Rm0
>>585
釣りではないことを信じてレスする。
中四国氏が起こしたことは決して許されることではないし、スレとして完全に縁を切りたいという気持ちは分かる。
中四国氏自身が縁切りを発言しているのだから、結びつける必要もない。
自分は中四国氏の作品は読んでないし、これから読むつもりもない。
しかし、Wiki用語集が必ずしも中四国氏とスレを結びつけるためのファクターだとは思わない。
響鬼という作品をこよなく愛する有志がより楽しい二次作品を作るための一つの場になればいいと思っている。
確かに用語集の中に彼の登場人物が追加されていた。しかし、Wiki自体もまだ動き出して間がないものだ。
そこまで過敏になることもないんじゃないか?

最後に言っておく。俺は彼とは一緒にされたくない。
十羽一絡げみたいな言い方は止めてほしい。
600585:2007/05/19(土) 02:32:05 ID:x1egWLxZ0
>>599
不明確な書き方で悪かった。俺の言う『レスくれてるアンタら(?)』には>>591は入ってない。
>>591は、誰が見ても品が無いレスでもないしニュートラルな意見だと思ったから、あえて区別して書かなかったけど。
まあ要するにゴメンヨ
601名無しより愛をこめて:2007/05/20(日) 08:54:03 ID:uS596RjL0
こういうの読んでると、「中四国のしたことは許されるものではない」という設定だけが
勝手に一人歩きしてる感は否めないな
602名無しより愛をこめて:2007/05/21(月) 18:16:16 ID:Q6X5+GZ60
えーと。まだやってんのか。
こっち見て無かったよ。

住人が次スレに引っ越した後で、誰も居ない場所で擁護レス重ねていてご苦労な事だな。
許されない事をしたってのは、設定じゃない。事実だ。
ただ、殆どの住人が討論に加わらないだけ。
何でか?
中四国がもうここに来ないって言ってるんだから、
SSを楽しみにしている住人同士が揉め事を続ける必要は無いからだ。

争いは終わった。
事実は消えない。
それだけでいいよ。
603名無しより愛をこめて:2007/05/21(月) 18:32:17 ID:Q6X5+GZ60
擁護がなんかぐだぐだ書いてるんで、今までの証拠のログも貼っとく。
新規の人に誤解されるのも業腹だし。
ヲチスレがdat落ちしたり、投票所がサービス終了したから安心して煽ってるんだろうけどな。


(cache) 【無断使用】雪風日和【無断加工】
ttp://megalodon.jp/?url=http://ex21.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/&date=20070204101120

(cache) 絵師です
ttp://megalodon.jp/?url=http://jbbs.livedoor.jp/otaku/7713/storage/1164510945.html&date=20070128214637

(cache) 雪風日和(中四国支部鬼譚作者)による絵の無断使用・加工事件
ttp://megalodon.jp/?url=http://www.37vote.net/etc/1164641309/&date=20070329132040
604名無しより愛をこめて:2007/05/21(月) 18:55:08 ID:cv7nRGyj0
そういう流れだった当時はともかく、今更中四国が許せんだとかどうとか騒ぐ奴なんてお前くらいのもんだ
605585:2007/05/21(月) 22:07:44 ID:IxdjDMAL0
>>604
602は俺じゃないぞ。用語集Wikiでいまだに中四国が「スレの一作品です」みたいな
顔してるのが気にいらないのは、本当に俺一人みたいだけどな。
(だから、わざわざ名前欄に「同じ人です」ってレス番かいてたじゃないの)

それにしても、中四国さんファンの人は「お前だけ」とか「一人だけ」とかいうニュアンスをよく使うな。
606591:2007/05/22(火) 01:14:45 ID:2Z+1a0ec0
なんだか論旨が違う方に向いてきたな。釣りなのか。
中四国問題をWikiに絡めて論じなければ満足しないのか?
俺はWikiに中四国が大きな顔をして入ってきて「この作品はスレの一部です、だからスレにも戻して。リンクも貼って」とかアピールするつもりだというんなら、前言は撤回する。
そして、また擁護を展開すると言うんなら、俺は>>585の側に回る。理由は>>591上の3行だ。読んでないくせに、とかお前一人だけだ、とか言うのは通用しないぞ。
Wiki自体は悪いとは思わんかったが、正直擁護の手段にしか使われんのなら残念だ。擁護張るなら>>603のログをもう一回よく見直してから言ってくれ。
607591:2007/05/22(火) 01:17:58 ID:2Z+1a0ec0
>理由の欄は>>599の間違いだ。すまぬ
608名無しより愛をこめて:2007/05/22(火) 02:05:32 ID:DSCvZ14T0
俺も>605(>585)に一票。
理由といいたい事は、585と同意。

次スレが出来てから初めてこっちで発言するので、
585でも591でも無い事を言っとく。
609名無しより愛をこめて:2007/05/22(火) 07:59:44 ID:wd2D2/6W0
勘違いも甚だしいな。
中四国の所業が許せないってのと、用語集に入れるのはまるっきり別の問題だ。
かつてこのスレで連載されていた作品の一つなんだから用語集に入れるのは当たり前だろう?
作品の価値と作者の所業はまるっきり話の種類が違う。
用語集に中四国の作品を加えることを誰も望んでないならともかく、加えたいと思っている人間がそれなりに居るじゃないか。

今ここで中四国中四国と騒いでいる御仁たちは一体何がお望みなの?
「用語集に加わることで中四国本人が戻ってきて大きな顔をするのが嫌だ」というならともかく、
用語集に中四国の作品が加わることがそもそも嫌だってんならそれはワガママ言い過ぎじゃね?
610608:2007/05/22(火) 08:52:09 ID:DSCvZ14T0
いや、だから雪風自身がスレと縁切ったって言ってるんだから、切ってやればいいじゃないか。
元々スレに投下するっていうよりも、自分のサイトで書いたものを更新報告に来ていただけなんだから。
他のファンサイトの管理人が、自分のサイトの作品が「まとめ」や「用語集」に登録されないからって騒いだりしているか?
してないだろ。
スレに残る事になんでこんなに拘泥するのかがさっぱり判らんよ。
沢山の人を傷つけたり、スレを何本も炎上させたんだから、その辺のケジメは付けていいんじゃね?
雪風が、スレから身を引くって言ったんだから、しつこく用語集やテンプレに名を残せって擁護が頑張るだけ、
本人のケジメの付けようを邪魔してるように見えるんだが。
まあ、擁護や本人じゃなくて、アンチかもしんないけど。

引いた所で、過去を抹消しいだのなんだのと言われているのだから、
これは雪風の身から出た錆なんだが、それに本人が甘んじるのなら償いと見てもいいと思う。

もし本人や本人に近しい人間が、スレへの復讐として騒ぎを起こしているのだとすれば、
心底軽蔑するが、今んとこ証拠も無いのでそれは保留な。
611名無しより愛をこめて:2007/05/22(火) 09:48:22 ID:wfbD5B77O
>609
マジ擁護も疑っていたけど、本人決定だわ。こりゃ。
言葉遣いなどを変えようとしてるけど、言い回しや、必死に主張してる事が同じ。
ぶっちゃけ、本人以外はどうでもいい所な<必死
関連スレが落ちたから、安心して信用回復しようとしてたのに、反対にあってキョドってんだろ。
612名無しより愛をこめて:2007/05/22(火) 10:26:39 ID:eqQDFyZk0
>609
勘違いって言い切る根拠って何よ。
お前が主張するものが全て正義だって言うのか?
そんな訳ないだろ。
>603のログ全部読み直して来いよ。
どれだけ沢山の人間が、言葉を尽くしてあらゆる助言や諫言をしているんだから。
それを無視して主張を続けるんだから、本人乙としか言わざるを得ないな。

何を望んでいるって問う前に、ほんとに>603読んで来い。
スレの住人達が望んでいる事は、既にそこにある。
613名無しより愛をこめて:2007/05/22(火) 12:45:32 ID:0wXEgttYO
用語集やまとめに拘る男
それが雪風
614名無しより愛をこめて:2007/05/22(火) 23:28:15 ID:1sImv2X9O
どーでもいーですね
615名無しより愛をこめて:2007/05/23(水) 00:10:20 ID:DZCebGPo0
>614
新スレへの移動が終わったスレにわざわざ来て「どーでもいーですね」もないと思うんだが。
答えに窮して誤魔化そうとしているように見えるぞ。
擁護=本人と言われても否定の声がないんだが、
スレとの関わりを残すことに必死になる事に対して、行動理由が説明できないからか?
過去ログによると、雪風ならこんな時だんまりを続けるらしいが、今回もそういう事か。
616名無しより愛をこめて:2007/05/23(水) 00:16:09 ID:4b6t3xib0
雪風本人はそれこそ別に「どーでもいい」と思ってそうだがな。
用語集にも、入れたきゃ別に入れてもいーよ、って程度の適当なスタンスだし。
入れろ入れろ、入れるな入れるなと外野同士が騒いでるだけだろ。
ぶっちゃけどーでもいい。
617名無しより愛をこめて:2007/05/23(水) 07:28:16 ID:ZEfyFKkb0
無用の混乱や炎上を避けて発言していないのだと思うが、SS職人陣にも雪風の行為に対して不快を示した人間は多々いたはずだったろう。
そういう人間たちへの配慮は無くてもいいのか?
大体、雪風本人が「正直このスレにはもうかかわりたくない」といって決別宣言をしたんだから加える必要なんか無いだろう。
618名無しより愛をこめて:2007/05/23(水) 10:49:12 ID:G8u510Cd0
どーでもいいなら、入れないに一票。
本人が決別した。
住人の多くが嫌がってる。
用語に加えられている現状既に荒れている。
これで充分だろ。

雪風のやった事が大した事じゃないって言い張るヤツが居るんで、
改めて過去スレと、関係スレをまとめて置くよ。
ほんとはまとめサイトがあれば、何かあるたび引用しなくても済むんだけどね
(逆を言えば、これだけの事をしでかした弗にまとめを作らなかったのは
SSスレの住人の温情ととも言える)。
619名無しより愛をこめて:2007/05/23(水) 10:51:00 ID:G8u510Cd0
●響鬼SS本スレのキャッシュ(雪風によるSSスレ炎上の歴史。↑旧 ↓新)

(cache) sfx - 響鬼SS総合スレ(DAT落ち。ログ完全)
ttp://megalodon.jp/?url=http://p2.chbox.jp/read.php%3fhost%3dtv7.2ch.net%26bbs%3dsfx%26key%3d1162869388%26ls%3dall&date=20070522162955

(cache) 【響鬼】鬼ストーリー(仮)【SS】(にくちゃんねる終了のためログ不完全)
ttp://megalodon.jp/?url=http://p2.chbox.jp/read.php%3fhost%3dtv7.2ch.net%26bbs%3dsfx%26key%3d1164788155%26ls%3dall&date=20070522170736

(cache) 【響鬼】鬼ストーリー 弐之巻【SS】(2007/5/22現在)
ttp://megalodon.jp/?url=http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1170773906/&date=20070522155545

(DAT落ち間近 前スレ) 【響鬼】鬼ストーリー 弐之巻【SS】
ttp://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1170773906/

(現行スレ) 【響鬼】鬼ストーリー 参之巻【SS】
ttp://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1179024153/
620名無しより愛をこめて:2007/05/23(水) 10:53:01 ID:G8u510Cd0
●雪風関連板&資料(上から、雪風専スレ、投票、以下証拠ログ)

(cache) 【無断使用】雪風日和【無断加工】 (にくちゃんねる終了のためログ不完全)
ttp://megalodon.jp/?url=http://ex21.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/&date=20070204101120

(cache) 雪風日和(中四国支部鬼譚作者)による絵の無断使用・加工事件
(2007/03/29の時点のログ。投票チャンネルサービス終了により消滅)
ttp://megalodon.jp/?url=http://www.37vote.net/etc/1164641309/&date=20070329132040

(cache) 好みスレに依頼したという友人が、雪風に送ったというログ
ttp://megalodon.jp/?url=http://www.geocities.jp/hibikigaiden/memo.txt&date=20061129183420

(cache) イラストページ、新旧比較
ttp://ime.nu/megalodon.jp/?url=http://www.geocities.jp/hibikigaiden/illust.html&date=20070110124628
ttp://ime.nu/megalodon.jp/?url=http://www.geocities.jp/hibikigaiden/illust.html&date=20070129103912

(cache) 雪風からSSスレへの絶縁状(サイトのトップページ)
ttp://megalodon.jp/?url=http://www.geocities.jp/hibikigaiden/&date=20070129133804
621名無しより愛をこめて:2007/05/23(水) 10:55:47 ID:G8u510Cd0
622名無しより愛をこめて:2007/05/23(水) 20:46:30 ID:Fggdyrek0
>616
「外野同士」と書いて、それで自演容疑をそらしたつもりか?かなり疑わしいぞ。

俺の予想じゃ、誰が更新しているかわからないことを利用して、
このまま用語集Wikiに雪風の用語が入ったままになるな。
非難する具体的な対象がいないから、用語を追加した擁護は、そ知らぬ顔して黙ってればいいんだから。
で、次々スレが立つ時にテンプレに入っていなかったら、また有無を言わさずリンクを張るんだろう。

本人以外に、そこまでスレとの繋がりを残すことに必死になる理由なんてないから、
そうなるとやっぱり擁護=雪風本人ということになる。これが真実なら、見苦しい。本当に。

614、616が余計なちゃちゃ入れなきゃ、俺もここまでは書かなかったぞ。
623「中四国支部鬼譚」作者:2007/05/23(水) 22:26:47 ID:5cqr08dm0
 本人です。
 用語集wikiに関する流れはずっと静観していたのですが、そろそろ黙っても居られないので。

 まず誤解を解く意味ではっきり言っておきますと、俺自身は、スレとの繋がりを残すことを良しとしていません。
 それでも住人の一部が「中四国支部鬼譚」を用語集に加えたがっているのなら、やめてくれと言うのも悪いので、
 “扱いは自由にしてくれればいい”という反応をしていました。
 その曖昧な態度が住人同士の争いの一因を招いてしまったことは否めません。

 そこで、用語集に「中四国支部鬼譚」を加えても構わないという旨の発言を撤回させてもらいます。
 今後、用語集には「中四国〜」の内容を含めないで下さい。
 (現在既に追加されている項目は削除をお願いします)
 今まで「中四国〜」の用語を編集してくれていた人達には申し訳ありませんが、
 それで住人同士の争いが治まるのならと考えて決めたことです。

 現実問題として「中四国〜」の用語集が欲しいという読者さんは居るようですから、
 凱鬼メインさんの真似ではありませんが、俺の方で用語集を作ってサイトに載せることにします。
 全く作る予定の無かったものなので今日明日というわけには行きませんが。

 それではお目汚し失礼。
624615:2007/05/24(木) 00:14:28 ID:bEVHk7Bm0
結局、擁護の行動理由は謎のままで終了か。
しばらく擁護が出てこない予感がする。
625名無しより愛をこめて:2007/05/24(木) 07:19:38 ID:Rcp4rCmg0
擁護っていう言い方には恣意的なものを感じるな。
彼らは中四国を擁護集に加えたいと思っているだけであって、擁護でも何でもないだろう。

しかし作者からこういうコメントが出た以上、この争いももう終わりだろうな。
俺の予想ではwikiは早晩つぶれるな、凱鬼も自分のとこで擁護集作ったみたいだし、載せる作品がない
626名無しより愛をこめて:2007/05/24(木) 09:06:14 ID:VmbYm6y60
いや、どう見ても擁護だろ。
雪風持ち上げるために、住人達を上から見下げた発言してるし。
仲間(SSスレの住人)に対するものいいじゃない。<いつもの擁護
雪風が出て来る直前になると急になりを潜めるのは不思議だねぇと思うけどな。
本人がようやく載せるなって言ったので、これで終了だな。
やれやれ。やっと完全に引越し出来る。
627名無しより愛をこめて:2007/05/24(木) 10:50:58 ID:d9T305W/0
>625=雪風=擁護=Wiki管理人に見えるのは俺だけか

さりげなくWikiに混じろうとしたものの、住人達からスカンくらったので、
自分が入れないWikiに興味を失って管理を放棄した…という宣言に見える。
628名無しより愛をこめて:2007/05/24(木) 15:19:32 ID:rDahObLv0
とたんにwikiが活気づくとか
629名無しより愛をこめて:2007/05/25(金) 00:55:28 ID:jS9KxnD80
今までのWiki管理人の言動が雪風擁護なのは事実。
前スレ555の発言もそうだし、他にもひとつひとつの言動がそれを物語っている。
「読者の部屋」作成とかね。あの中で雪風のキャラについて触れてるけど、
雪風関係の用語を消した今、あれが最後の砦ってか?
更新しろって煽ってた奴とか、雪風本人と同じ人かどうかはわからんけど。
630名無しより愛をこめて:2007/05/25(金) 01:07:14 ID:r78LBeSj0
あの時点では中四国はスレの作品のひとつだったわけだし・・・
そんなことにまで目くじら立てられるのはアイタタタとしか言いようがないなもう
631名無しより愛をこめて:2007/05/25(金) 11:45:59 ID:DDZJec+P0
>630
中四国って言ってるのは雪風本人。
雪風が絵師を侮蔑したりSSスレを荒らした時点で、
既にスレの仲間とも見なしていませんでしたが?
過去ログにSSが残っているのを見るのも不愉快です。

せっかく経緯が紹介されてるんだからちゃんと読んでくださいね。
>619
>620
>621
自分のやった事が痛すぎて見たくない、見ないんだったら、
もう二度と来ないでください。
632名無しより愛をこめて:2007/05/25(金) 12:49:04 ID:K3+l9G56O
>630
アンタの脳内じゃ、どっかで雪風の作品がスレの一作品である・ないの
線引きがあるみたいだけど、そりゃいつだい?^^
雪風が絶縁宣言をした時かい? だとしたらそりゃまた随分と雪風本位な考え方だね。
雪風マンセーならアイツのサイトに行ってりゃいいのに、わざわざここに
来続けてるっていうことは…本人乙ってことかい。
633名無しより愛をこめて:2007/05/26(土) 00:14:30 ID:5BEaHYjIO
本人来てたのかー。
まあ、すっきりかたついて良かったよ。
次スレへの移行もこれで完了だね。
みんな本当に乙
634名無しより愛をこめて:2007/05/26(土) 01:53:32 ID:+TzFu3sP0
用語集ウィキの管理人さんは、今後どうなさるおつもりですか?
635名無しより愛をこめて:2007/05/29(火) 09:28:49 ID:6HJv6isn0
あげとくから管理人さん返事して
636名無しより愛をこめて:2007/05/29(火) 12:27:54 ID:G3JcqTig0
↑なんだこいつw
637名無しより愛をこめて:2007/05/29(火) 12:42:41 ID:sZFE9GYOO
なんなら代りに>636が返事をしていいぞ
638名無しより愛をこめて:2007/06/05(火) 17:17:40 ID:/8svc0Sf0
ん?まだ残ってるのここ?
639名無しより愛をこめて:2007/06/06(水) 00:55:23 ID:TUYOzi4c0
一週間以上レスなしでも残ってるものなんだな
それにしても管理人からのレスがない
640名無しより愛をこめて:2007/06/06(水) 12:35:48 ID:Ha/V7naV0
そもそも管理人まだここ見てるのかな
雪風本人が書き込む結構前からもう既にいなくなってるし、Wiki自体放棄しちまってる感が否めない
641名無しより愛をこめて
書き込まない=いない
とはならない