スレのことはスレ内で完結すべきであって、他のスレに持ち込むべきではないと思います。
わざわざ他のスレのことに触れて、向こうからの注意を引き寄せる(あるいはこちらから覗きに
いく人を増やす)必要はないと思います。
被害を受けてないのに被害者意識で他スレに対して批判的、敵対的になるのはやめませんか。
スレそれぞれに楽しみ方を見出して住人が付くんですから、お互いに尊重したいです。
批評したい人がそういうスレで行なうなら、止めようが無いでしょう。
あと、批評=嵐ではないと思います。
さっきはあげてしまってすみませんでした。
別にどう言われても気にする必要はないんじゃない?
スレは公のものだから批評されるのはしょうがないけど、
これって音楽とか特撮と一緒で一つの価値観で結論付けられるものじゃないでしょ。
なに言われようが、俺は単に好きだから見るだけだ。
だから職人さんは気にしないで欲しいな。
ほっときなよ。
それより最近、皇城SSさん見ないな…。
久しぶりに新作が読みたい。
426 :
用語集サイト:2006/05/01(月) 17:37:49 ID:dJBQQZEu0
>>418 リンクは用語集ページへ直接ではなく、できればトップページにお願いします。
なんだか横入りみたいな感じがして好きではないんです。
(『響鬼→鬼ストーリー用語集』という感じで誘導すればわかりやすいかと)
さーて、次はどの鬼さんを餌食にしようかな?
用語集サイトさんGJ!!
贅沢言うと出演作品とかあるといいかも。
428 :
風舞鬼SS作者:2006/05/01(月) 22:36:08 ID:q4RWl9Qi0
用語集サイトさま、お疲れ様です。
まとめサイトさま、何だか急かしたみたいですいません。
今度からは気長に待つとします。
あ〜〜なんだかそろそろ470KBに達しちゃいそうですな。
429 :
風舞鬼外伝「超える絆」:2006/05/01(月) 23:16:41 ID:q4RWl9Qi0
風舞鬼外伝「超える絆」第二幕
林間学校当日。
清成は集合時刻より7分ほど早く、学校のシンボルでもある「鬼天狗の大桜」の前に着いた。
なんでもこの鬼天狗桜は、樹齢1000年もある霊木で、清成の通う学校はこの桜を中心とし、江戸時代に「寺子屋」として設立されたらしい。
清成は未だ時間があると見て、普段はなかなか触れることすら許されない鬼天狗桜に触れようと、周りに気をつけながらゆっくりと桜に手を伸ばした。
手が温かい木の幹に触れた。桜は予想に反して柔らかかった。その時――――足元に何かがやってきた。視線を足元に落とすと、なにやら緑色の小さな物体が騒いでいた。
――何だコレ?
おもむろにヒョイと拾ってみた。硬い。どうやら機械のようだ。その機械はゴリラのような造形をしており、変な鳴き声を発し、さらには小柄なくせに異常に力が強い。
――最新式のロボットか?
「ホントに・・・困った奴だ。」声のした方向に目を向けると、30代かと思われる、なかなか顔つきの整った青年がこちらを向いている。青年は右手の指をパチッと鳴らした。
すると、さっきまで清成の手の中で騒いでいたゴリラがたちまち円盤型になり、青年の手のひらに舞い戻った。
「・・・それ、何ですか?」清成は初対面にも関わらず、聞いて見た。
430 :
風舞鬼外伝「超える絆」:2006/05/01(月) 23:18:13 ID:q4RWl9Qi0
「ん?これは・・・盗撮機・・・かな?」
――うわ・・・変人じゃないの?・・・でも、あれ可愛いなぁ・・・
清成がそう思った瞬間、青年の腰からさっきのゴリラがピョンと出てきた。
「あ・・・!またコイツ勝手に出やがって・・・」ゴリラは清成の身体をよじ登って、肩にちょこんと座った。
――え?ちょ・・・なに?
「君、気に入られたねぇ〜。あ・・・良かったら、そいつあげよっか?」青年は満面の笑顔で清成に問いかけた。
「あ・・ハイ!下さい!!」清成はこの可愛い将来も運命を共にする相棒を、「ダイゴロー」と名づけた。
清成に「ダイゴロー」を与えた青年は、今回の林間学校で3日間行動を共にする特別案内人だった。
風舞鬼外伝「超える絆」第二幕 終
431 :
DA年中行事:2006/05/03(水) 17:03:51 ID:rSxPy1AW0
おお、470kbまであと少しだ・・・・でも30kbあればなんとかなるかな・・・・
(キュイィィィィン)よ・・・・予告ッ!(モアッモアッ)
DA(ディスクアニマル)はオンシキガミとして、鬼といくつかの約束を交わしている。人を護る事、鬼を護る事、魔化魍を追う事、鬼の命令無く人を傷つけぬ事、そして
――――鬼を知らぬ人間に姿を見せぬ事。
(見つかっちゃったよなぁ・・・・・・・なんか囲まれちゃってるし・・・・・・)
「NASAなんじゃねぇ?」
「ごめんね、みんな・・・・・痛かったよね・・・・すぐみどりさんに直してもらうからね・・・・・」
遠くに今時珍しい鯉のぼりが、歌の通り家族揃って五月の風に腹をたっぷりと膨らませ、悠然と泳いでいる姿が見える。
まとめサイトさんに「乙!乙!」と手を合わせ、用語集サイトさんを早速利用させてもらい、風舞鬼SSさんの「ダイゴロー」に萌え萌えしながら全力で妄想中!
明日・明後日投下予定・・・・なんだけど、残り容量を見計らいながら投下します。
先に次スレ立てておいた方がよくない?
433 :
風舞鬼SS作者 :2006/05/04(木) 17:25:22 ID:cUsARI9i0
そうですね。
んじゃ、僕の方から先にスレ立てしときます。
434 :
DA年中行事:2006/05/04(木) 18:34:05 ID:tYRsUbCb0
申し訳ないッス>スレ立て
自分で立てようかと思っていたんですが、ホスト規制でスレを立てられないので・・・・
何卒宜しくお願いします。
新しくスレが立つなら、安心してこちらで残りの容量を埋められます・・・・
と、言うわけで、今夜投下します。
435 :
風舞鬼SS作者:2006/05/04(木) 20:36:41 ID:cUsARI9i0
なんかアレです・・・
自分もホスト規制っぽいですね。
でも今はGWで別のPC使ってるんで、
帰ってきてからまたチャレンジします。
多分間に合うかと。
436 :
DA年中行事:2006/05/04(木) 23:27:54 ID:tYRsUbCb0
GW真っ只中、スレの容量も残り僅かなのに、スレの皆さんのご好意に甘えて
投下します。
本日はその前編です。またしても長いハナシになりますが、お付き合い下さい。
後編は、もしかすると新スレになるのか・・・読みにくくて申し訳ないです。
そのルリオオカミは、窮地に立たされていた。
前方からも、後方からも、相手は手に手に獲物を持って、輪を狭めて来る。
「逃がすなよ・・・・・」
「わかってる・・・・・」
困った。完全に囲まれ、退路を断たれた。相手は複数。しかも、全員子供だ。
「ねぇ、こいつ噛まない?噛まない?」
「わかんねぇよ、そんなの」
なるほど、この子供達は、自分を恐れているのか。だからみんな竹箒やらちりとりやらを武器に見立てて武装しているのか。
オンシキガミは人を護る為に鬼に使役されているので、命令されない限り、人を傷つける事はできない。相手が子供なら尚の事だ。
ルリオオカミは、致し方なく子供たちに向かって、体勢を低くして唸り声をあげてみた。
途端に、一番年下らしい子供が「ひゃあっ!」と悲鳴をあげる。
「ねぇ、今唸ったよ!ボクの方見て唸ったよ!」泣きそうな顔で、隣にいる年嵩の子供の袖を引く。
「黙ってろよ、ジョウ!いっつもビビってるからシッコじょーって呼ばれんだぞ」
「シッコじょーって言うな!」
不名誉な渾名を言われて、ジョウは本格的に泣きそうになっている。
だが、泣きたいのはルリオオカミも同じだ。
DA(ディスクアニマル)はオンシキガミとして、鬼といくつかの約束を交わしている。人を護る事、鬼を護る事、魔化魍を追う事、鬼の命令無く人を傷つけぬ事、そして
――――鬼を知らぬ人間に姿を見せぬ事
(見つかっちゃったよなぁ・・・・・・・なんか囲まれちゃってるし・・・・・・)
ここで、無理に退路を拓いて万が一この子供たちに怪我をさせてしまったら。かと言って、ここでこの子供たちの虜囚となり、自分の存在が、ひいては鬼や猛士の存在が白日の下に曝されたら・・・・・
(まずいよなぁ。かなり、まずい事になるよなぁ)
DAはDAなりに、気を使っているのである。
そして、運の無いルリオオカミが頭を悩ませている間にも、包囲の輪はじりじりと狭まっていた。
五月に入ってまだ一週間も経っていないが、雲一つ無く晴れ上がると陽射しが暑い。
陽射しに照らされた木々の若い緑が、油に濡れたようにギラギラと輝く。
濃く立ち昇る緑の香りには振り向きもせず、ルリオオカミの一群は獲物が残した匂いを追う。ただ、まっすぐに。彼等に獣のカラダが残っていたら、鼻面に皺を寄せ、手負いの獲物が残した匂いに興奮し、激しく吠えたてながら追尾していただろう。
しかし、彼等は機械のカラダに獣の魂を込めた、オンシキガミ。鬼を導き、文字通り風を切って疾走する。
追い詰めろ、追い詰めろ、追い詰めろ!
一緒に駆ける鬼も、速度を緩めない。鍛えた足は、人の倍以上のスピードで、道の無い林の中を駆ける。
獲物の背中が、木々の間から垣間見える。
追跡者たちは、速度をあげた。そしてとうとう、一匹のルリオオカミが、鋭い牙で獲物の踵に喰らい付く。
魔化魍を止めろ!地面に釘付けろ!
踵に喰らい付いたルリオオカミは、己の顎が砕けるほどの力を込めて、獲物の前進を阻む。次の一匹が跳躍し、魔物の腱をギリギリと音を立てて噛む。さらにもう一匹も。ルリオオカミたちは、巨大な魔化魍の足を止めようと牙を剥く。
「ギィィィッ!」
魔化魍は耳障りな悲鳴を上げ、足首や踵にぶら下がるルリオオカミたちを振り払い、踏みつけ、蹴り上げる。何匹かのルリオオカミが、衝撃に耐えられず破片になった。しかし、足を砕かれ、胴を半分に割られても、オオカミたちは何度でも立ち上がる。牙を剥く。跳躍する。
殺セ殺セ殺セ、魔化魍ヲ仕留メロ・・・・魔化・・・魔・・・・・・・
意識が薄れ、焦点のぼやけたルリオオカミのセンサーが、音撃管の発射音を捉える。もう目の役割を果たすカメラが破壊されて姿を捉える事は出来なくなったが、確かに見えるようだ。
抜けるような青空を背景に、返り血で白く汚れた紫の鬼が雄々しく音撃管を構えた姿が。魔物の身体には打ち込まれた鬼石が赤々と輝き、吹き鳴らされる清めの音を待っている。
・・・・サァ、今ダ・・・・人ニ仇ナス・・・・魔化魍ヲ・・・・・清メ・・・・・・・・・
音撃射、暴風一気!!
空の青と木々の緑が美しいコントラストを描く山奥で、清めの音が響く。カラダの八十パーセント以上を損傷したルリオオカミは満足して、いつもより深い眠りに、堕ちた。
五月の大型連休。人間たちは、黄金週間と呼ぶらしい。寝て過ごす者、旅に出る者、長い物語を読む者、普段は別れて暮らす家族と共に過ごす者・・・・・・普段と変わらぬ生活を送る者も少なくは無いようだが。
魔化魍を追い、鬼にプログラムされた座標ポイントに向かう途中だったルリオオカミは、人気の無い学校の校庭を突っ切ろう、と思ったのだ。いつもなら、こんなに開けている場所を通り抜ける危険は冒さない。
だが、センサーが拾った魔化魍の痕跡は近いものだったし、急がねばならなかったのだ。
今日が、この建物を使用する人間にとって休日である事など、オンシキガミのルリオオカミにはわからない。さらに、飼育係なんていうものがあって、数人の児童が中庭で飼われているウサギの世話をしに登校していた、なんて事は、わかるはずもない。
もう一つ言えば、休日に登校するという日常には無いカリキュラムに興奮した子供が、中庭に落ちていたボールで遊び始める事など、なんで予測できるだろう。
付け加えれば、リーダー格のシゲっちが蹴ったボールが、勢い余って校庭を疾走していたルリオオカミにクリーンヒットする事など、誰が予想できただろう。
(でも、多分怒られるよなぁ・・・・・・)
白くてフサフサした物静かな動物たちの小屋に閉じ込められて、ルリオオカミは頭を抱えた。
子供たちは、材木と金網でできたウサギ小屋の前から動こうとしない。まばたきすら忘れて、じっと精巧な青い動物を見つめている。
「リモコンで動いてんのかなぁ?」
「でもさぁ、アンテナとか無いよね」
「内臓式なんだよ、きっと」
「あんまりロボっぽい動きじゃないじゃん」
「NASAなんじゃねぇ?」
「なんだよ『NASAなんじゃねぇ?』って。シンゴNASAの意味知ってんのかよ」
「じゃあ、ケンちゃんは知ってんの?」
「ったりめぇじゃん、アメリカのなんかだよ」
他の子供たちが、ケンちゃんの答えを聞いて、そうだそうだ、さぁすがケンちゃん!と頷く。・・・・・・ルリオオカミは、頭を抱えて座り込みたいような気分だった。
管の鬼が得意としないヤマビコを清めた勝鬼は、大きく息をつくと顔の変身を解除した。「ふう。やっぱり弾鬼君を呼ぶべきだったかなぁ」
童子・姫、そして彼等に育てられた魔化魍を一人で倒した勝鬼だったが、表情は晴れない。
その理由は、予想以上に時間がかかった事。そして、そのせいで共に魔化魍を追った小さな仲間の数を、随分減らしてしまった事。
勝鬼は、足元に散らばった仲間の破片を、丁寧に拾って回った。「ごめんね、みんな・・・・・痛かったよね・・・・すぐみどりさんに直してもらうからね・・・・・」
ショウキに呼び出しがかかったのは、昨夜の事である。
「ヤマビコかイッタンモメンの、どっちが出るかはわかんないんだね?」
「申し訳ありませぬ、ショウキさん〜」電話の向こうで、日菜佳はひたすら恐縮していた。「例年通りの気温ならヤマビコなのですが、何しろ今年は山沿いが大雪で、気温が上がらなかったのですよぉ〜」
そんな事は、日菜佳の責任ではない。彼女はTDB(猛士データベース)と近辺の『歩』の情報、そして今年の気温や降雪データから、兆候のある魔化魍を割り出し、さらに最悪の状況まで予想した上で、ショウキに連絡をとったのだ。
「太鼓の誰かとコンビを組んで頂くのがベストなのですが・・・・・」
ヒビキはまったくの逆方向でツチグモを追跡しているし、エイキは休暇で北海道の愛しい愛しいフブキの元に行ってしまったし(ああ羨ましい!)、ダンキは・・・・・・・・ダンキは。
「大丈夫大丈夫。ダンキ君の助けが必要になったら、僕から連絡するから」
イッタンモメンが出る可能性が有るなら、自分が行った方が良いだろう。ヤマビコが出たとしても、自分一人で何とかする。何とかできる、と思ったのだ。いつまでもダンキに頼ってばかりもいられない。
「そうですかぁ?では申し訳有りませんが、宜しくお願い致しますぅ。あ、でも、決して無理はなさいませんように」
「うん、大丈夫だよ、ありがとう」ショウキは日菜佳の気遣いが嬉しかった。「そうだ、日菜佳ちゃん、婚約おめでとう!」
日菜佳は恋愛対象やそういう類のものではなかったが、それでも、トドロキとの結婚が決まった、と聞かされると不思議なものだが少し寂しかった。妹がいたら、多分こんなふうに感じるのかもしれない。
「ねえ、ホントに先生呼んで来なくていいの?」
ピンクのゴム紐で、キチンと髪を結った女の子が、至極真っ当な事を言った。おお、それがいい。そうしてくれ、是非。みんなでパッと先生を呼んでくる間に、オレはスタコラ逃げるから。ルリオオカミは祈ってみる。
「バカ、大人なんて呼んで来たら、持って行かれるに決まってんだろ」
シゲっちが、あっさりと却下した。だが、その却下の仕方に問題があった。
「バカって言わないでよ、大バカ!」
反論したくなる気持ちはわかるが、論点はそこじゃない。先生を呼びに行くでもなんでもいいから、オレに逃亡のチャンスをくれ。
「おっかね〜、オトコオンナが怒った」
「オトコオンナ、マジ凶暴!」
ケンちゃんとシンゴが囃し始める。しかし、女の子は「バカは相手にしてられない」とばかりに、冷静にシゲっちに意見する。
「私たちのものじゃないんだから、持ち主が探してるはずよ。このままこんなところに隠しておいたら、私たち泥棒って事になるじゃないの、大バカ」
女の子って、賢いもんだなぁ、とルリオオカミは思う。後ろで囃したり、泥棒という言葉に反応して半ベソになっている男の子とは、随分精神的な発育に違いがある。さすがだ。
などと感心しているルリオオカミは、ふいに背後から生温かい息を感じて飛び上がる。好奇心旺盛なウサギが、匂いを嗅ぎに来たのだ。反射的にルリオオカミは、吠え声を上げた。
とたんに小屋の中のウサギたちがパニックに襲われる。彼らは本能的に、この小さな機械の中の魂の匂いを、嗅ぎ取ったのかも知れない。
ウサギたちの恐怖心が、それを見守っていた子供たちにも伝染する。
「うわっ、こいつ吠えた」
「凶暴なんじゃね?」
「ウサギと同じ小屋の中に入れておくとマズイって」
「ウサギ食べられたりしない?食べられたりしない?」
「ロボがウサギ食うわけねぇじゃん、シッコじょー」
「シッコじょーって言うな!」
喧々囂々となる子供たち。「あーもう!わかった!」シゲっちが、ウサギ小屋の簡素な鍵を外す。ルリオオカミは、この機会を待っていた。
ベースまで戻った勝鬼は、着替えを済ませ、『たちばな』に連絡を入れる。電話に出た香須実に、童子・姫、そしてヤマビコが出た事、それらを清めた事を告げる。
「専門外だったのに、お疲れ様です」
「いやいや、なんのなんの。うーん、でも、ルリたちが随分やられちゃって・・・・」
言いながらショウキは、ボックスの中のルリオオカミの数を数える。ちゃんとディスクに戻っているものが、四匹。あとは破損が酷い。だが、それにしても・・・・・・
「あれ?」
「どうかしましたか、ショウキさん」
「ああ、あのね、ルリが一匹足りないみたい・・・・・」
「戻ってきてないんですか?」
「うん・・・・おかしいな、もうみんな戻ってきてる時間なのに」
「じゃあ、地元の『歩』の人に、回収をお願いしておきましょうか」
「いや、僕が回収してから戻ります」
「でも、お疲れじゃないですか?」
香須実の言うとおり、今の戦闘で紙の様に疲れている。だが、戻ってきていないオンシキガミが気にかかる。ショウキは香須実に自分が回収に行く事を重ねて告げ、電話を切った。
マップを調べると行方不明のルリオオカミを放った座標は、すぐにわかった。手早くベースを片付け、念の為腰に装備しているアカネを起動させ、ショウキは専用車のハンドルを握る。
「野良ルリオオカミじゃ、可哀想だもんね」
ショウキは、そういう鬼なのだ。
三方を鉄筋三階建ての校舎に囲まれた中庭に、子供たちのわぁっと言う声が反響する。
シゲっちが掛け金式の鍵を外した瞬間、ルリオオカミは並外れた跳躍力で金網の扉を押し開け、尻餅をついたシゲっちの体を易々と跳び越えて脱出を図ったのだ。
青い機械仕掛けの獣と、恐慌に陥って小屋の外に飛び出したウサギの両方を追うはめになった子供たちが、甲高い声を上げる。
あまりの興奮にシゲっちは尻餅をついた痛みも忘れてゲラゲラと笑い出し、全速力でルリオオカミを追いかけるケンちゃんとシンゴにもその笑いがうつる。
一方、笑い転げる三人とは、正反対の二人がいる。ジョウは逃げ出したウサギのすばしこさに泣きそうだし、オトコオンナと揶揄されたマコは、ウサギを追いながら最悪の状況にイライラしている。
一方ルリオオカミは必死だ。無節操な記念植樹の植え込みや、無計画な花壇、ドロドロした緑色の藻に覆われた池、誰だか判らないブロンズ像などに行く手を阻まれる。
下手な所に逃げ込めば、子供が転んで怪我をするかもしれないし、かと言って易々と二度目の捕獲を許すわけにもいかない。
そしてもう一つ、困った事が起きていた。
(いかんッ!・・・・・たっ、楽しいッ!・・・・・・・)
ルリオオカミ自身が、子供たちに追われているこの状況を、だんだん楽しみ始めていたのである。追いかけっこと子供の笑い声に、酔ったようだ。ルリオオカミの性能からすれば、この小学生たちを振り切り、中庭を抜けてグランドの外に出る事など容易い。
だが、いつの間にかルリオオカミは、自分を捕まえようとする子供の手を待っている。ギリギリまで逃げずに、さっと差し出される手をかわして、ひょいと逃げる。追っ手が遅れれば、つい上肢を低くし、後肢を高く上げて相手が来るのを待ち構えてしまう。
イヌ科の動物がする、典型的な『遊びの誘い』のポーズだ。
(ああもう!何やってんだよ、オレはよう!)
と、ルリオオカミのセンサーに、嫌な反応があった。
ドクン・・・・・・
おかしな心音。ルリオオカミは思わず急停止し、ボウフラだって湧くのに勇気が要りそうな池を覗き込む。
・・・・・・・・・・・・ドクン
まだ遠いが、人間を捕食する唯一の、あの禍々しい生き物の気配がする。中庭には、五人の子供・・・・・と、数羽のウサギ。
彼等を護れるのは、自分しかいない。
444 :
DA年中行事:2006/05/04(木) 23:59:41 ID:tYRsUbCb0
・・・・と、言ったところで、残りは明日。後半に続きます。
DA年中行事さん!待っておりました〜!!
瑠璃狼がカワイイ〜〜!!
(いかんッ!・・・・・たっ、楽しいッ!・・・・・・・)
これにノックアウトされました。
今回のゲストは勝鬼さんですね!
「ごめんね、みんな・・・・・痛かったよね・・・・すぐみどりさんに直してもらうからね・・・・・」
このセリフがとても優しく響きました。
それにしても、弾鬼さんは何をしてるんでしょうね?(笑)
風舞鬼SSさん
本編も、番外編も、ミニ裁鬼さんも楽しみにしております!!
用語集サイト様
公開おめでとうございます。やはり、以前からご利用させて頂いているサイトでした。
今回も、早速利用させて頂いています。有難うございます。
さて、自分の弾鬼SSですが投下準備は出来ているのですが、現スレの容量が心配です。
新スレも立ててみようと挑んだのですが、何故かのホスト規制・・・・orz
他力本願で申し訳ないですが、新スレの設立と同時に投稿したいと思いつつ、予告なんぞ投げ込んでゆきます。
七之巻 ―予告―
「実は・・・・決めた事があるんです・・・・今から言う事・・聞いてくれます?」
「・・・だよなぁ・・・安藤の事と俺等の入院・・・そして今度は鬼に成れなくなったなんて言えないよ。なんか・・最近迷惑ばっかかけてるよ俺・・はぁ〜・・・・」
「そういや・・・よ、お前さんの昔の話・・・聞いた事が無いんだが・・・良かったら聞かせてくれないか?何、ムリにとは言わんが」
「今日〜も美味しく飲ッめるのは!あ、段田大輔のおッかげです!!ソレ!イッキ!イッキ!イッキ!」
「全く。こんな展開とは・・・・・メブキめ。追い込みに失敗したな・・・・」
『縄張りに邪魔したな。断鬼・・・推して参った。覚悟して臨め・・・・』
七之巻『呼び戻る音』
いつも読ませていただいてる者ですが、少しでも恩返ししたく
新スレ立てられるようでしたら、やってみます。
次スレは
裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ【参乃巻】
でいいですか?
テンプレ参考に、用語集のとこだけ変えます。
>446
よろしくな。シュッ
448 :
446:2006/05/05(金) 14:46:53 ID:8RmfyBX00
ホスト規制でした。誰か願います…
新スレが立ちました。
裁鬼さん達が主人公のストーリーを作るスレ 参乃巻
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1146814533/l50 スレタイが長すぎて規制にあったので【】の部分は無くしました。
>>446さんすいませんでした。
また私事ではありますが最近いろいろと忙しくなりSSに回せる時間が
少なくなってしまったためしばらくロム専になりたいと思っています。
剛鬼のストーリーに関しては一応先まで大体の展開は決まっているので
しばらくして落ち着いたらまた再開しようと考えています。
ワガママ病ですいません。
最後に、裁鬼職人さんZANKIの人さん今まで本当におつかれ様でした。
鋭鬼職人さん、高鬼職人さん、虹鬼職人さん、風舞鬼職人さん、
弾鬼職人さん、DA年中行事さん、皇城職人さん、竜宮さん
これからは一読者としてですが、職人さんたちの作品の投下を楽しみに待ってます。
これからも頑張ってください。
近く投下されるであろうDA年中行事さんと弾鬼職人さんの作品にワクテカしつつ、
いつまた書き手として皆さんの前に現われることが出来るかは分かりませんが、皆さんさようなら。
そしていままで小生の拙い駄文を読んでいただいて本当にありがとうございました。
451 :
高鬼SS作者:2006/05/05(金) 19:51:49 ID:ezPiaX0F0
>剛鬼SSの中の人
スレ立て乙です。そして今までお疲れ様です。
いずれ来たる再開の日を心からお待ちしております。
用語集サイト様も公開開始された事ですので、いい機会だから二つほど訂正を…。
「気高い歌」より
「音撃斬・豪火絢爛!」→「音撃斬・豪火剣乱!」
そのまま変換して出しちゃったという…。
コウキが弦でトドメを刺す機会が以降全く無かったので訂正のタイミングが掴めませんでした。
「霧裂く鬼」より
犬神刑部→隠神刑部
やっぱりそのまま変換して出しちゃったもので。
同じく狸の話だった「響き交わす鼓」の時点で気付いていればよかったのですが…。
どうもすいませんでした。
452 :
竜宮:2006/05/05(金) 20:26:47 ID:1bVO0oQk0
剛鬼SS様お疲れ様です。ありがとうございました。
少し休まれて、また続きを描いていってください。
再開後の成長やソウキさん達との人間関係が楽しみです。
年中行事さん、DAも可愛いですが、後編でも鬼達が大活躍しそうですね。
こちらは6月までに小話一つ投下できたらいいな、程度です。
453 :
DA年中行事:2006/05/05(金) 21:20:33 ID:D6leh2zU0
まずは、スレ立てに果敢に挑戦して下さった風舞鬼SSさん、
>>446さんに感謝を。
ありがとうございました。オレもホスト規制でした。うう。
そして、スレ立てて下さった剛鬼SSさん、本当にありがとうございました。
一旦お休みされるとか。鋭気を養って、また新作を読める時が来る事を、楽しみに
角を長くしてお待ちしています。
安心して、こちらに後編を投下できます。では、後ほど。
前編は
>>437から
「いやぁ、悪いね!」
そう言いながら、まったく悪びれた様子も無く、尾賀はショウキのクルマに乗り込んだ。
行方不明のルリオオカミを追って、自分が放った座標ポイントに向かう途中、緩やかな下りの坂道に差し掛かったところで、ショウキはこの地域の『歩』で、小学校の教師をしている尾賀の後姿を見つけ、声をかけたのだ。
「助かった助かった!実はすでに遅刻しててさぁ。どうしようかと思っていたのよ!」尾賀は、教師らしい太い声で教師らしからぬ事を堂々と言って笑う。
「まいったわ。昨夜ついつい夜中まで録画しておいた昼ドラ見ててさ。目が覚めたらこの時間だもの。びっくりだよ」
「でも尾賀さん、今日は祝日でしょう。学校もお休みなんじゃないですか?」
遠くに今時珍しい鯉のぼりが、歌の通り家族揃って五月の風に腹をたっぷりと膨らませ、悠然と泳いでいる姿が見える。
「小学校にはさ、飼育係ってのがあるのよ。動物の世話に休日は無いの。教育にもね。鬼も教師も魔化魍も、休日関係ないでしょ」
そう言うと、尾賀はガハハ、と豪快に笑う。彼女は、トウキの先輩のはずだ。以前、忘年会で例によって誰よりも食べて飲んで上機嫌だったトウキが、「これっぽっち、尾賀先輩の半分もいってねぇ」と言っていた事を思い出す。
体重は大柄なトウキの半分ほどに見えるが、胃袋と肝臓の許容量は彼以上のものなのだろう。
自分にとって日菜佳が妹のような存在である事と同じように、トウキにとって尾賀は姉のような存在なのだろうか。
「カーッ、まいったなぁ!昼ドラつまみに飲み過ぎたよ!酒臭かったらゴメンね、ショウキ君!」
・・・・・・・・兄かもしれない。
「で、ショウキ君はどうしたの?あのおもしろい喋り方する女の子から電話はもらっていたんだけど、出たの?魔化魍」
色々と突っ込みや修正を入れたかったが、とりあえずショウキは、ヤマアラシを倒した事、探索に出したルリオオカミが一匹戻ってきていない事などを手短かに説明した。
一通りその説明を聞いて、尾賀はルリオオカミを放った座標ポイントを尋ね、ショウキの答えを聞くとふむふむと頷く。
「もしかするとショウキ君のオンシキガミは、ウチの小学校のあたりにいるかもね」
ルリオオカミはグランド目指して走る。子供たちを、なるべくあの中庭から引き離したい。
「あっ!中庭から出るぞ、アイツ!」
「追っかけろ!」
シンゴとケンちゃんが、自分の後をすぐに追いかけてグランドに出てきた。その二人に少し遅れて、シゲっちが中庭から出ようとすると、紅一点のマコちゃんが、鋭く彼を呼び止めた。
「シゲっち、ウサギ捕まえるの手伝ってよね!アンタのせいなんだから!」
うん、正論。鍵を開けたのはシゲっち。ウサギを逃がした責任はあるよね。でも今は逃げて!いいから、そこから逃げて!
ルリオオカミは取って返し、八羽目のウサギを小屋に入れたばかりのマコちゃんの元へと急ぐ。
「あと一匹・・・・え?何?」マコちゃんは足元で吠え声を上げている青い獣に気がつく。「なんなの?なんで私に吠えるのよ」
だからね、別にマコちゃんの事がどうこうじゃなくてさ、早く逃げて欲しいの!早く早く!!ルリオオカミは口のきけない自分が歯がゆい。次にカラダを替える時は、是非話す機能を付けて欲しいと思う。
そんな未来の話は置いておくことにして、今はこの子供たちを逃がさなければならない。ルリオオカミは、マコちゃんに向かって牙を剥く。少し気が強そうだけれど、色白の可愛い顔立ちが強張っていくのを、悲しい気持ちで見上げる。
「コラ!お前吠えんなよ!」
振り返ると、竹箒を構えたシゲっちがいた。さっきまで、あんなに楽しく追いかけっこができたのに・・・・・ルリオオカミは尻尾を下げてしまいそうになる気持ちをこらえて、マコちゃんを庇うシゲっちにも吠え立てる。
「やめろって!」とうとうシゲっちが、ルリオオカミ目掛けて竹箒を振り下ろした。
(ゴメン、シゲっち!)
ルリオオカミは振り下ろされる竹箒の柄を、ジャンプして噛み折った。
バキン!
想像以上に大きな音がして、遠巻きに見ていた最年少のジョウが怯えて泣き出した。
「マコ、ジョウ連れて逃げろ」
「でも・・・・・」
「いいから、オレがコイツの気を惹いておくから、早く!」
マコちゃんは一つ頷くと、泣いているジョウの元へ向かう。ジョウは、ルリオオカミから見て池の向こう、グランドから一番遠い所にいる。ルリオオカミはマコちゃんを追い越し、池を回りこんでジョウの近くへと急ぐ。
「怖いよぉ・・・・怖いよぉ・・・・」泣きじゃくるジョウに、ルリオオカミは狂ったように吠え立てた。その間にも、不吉な心音は近付いてくる。
「ジョウ、いつまでも泣いてないの!」ようやくたどり着いたマコちゃんは、厳しい顔でそう言うと、ジョウの手をとってグランドを目指して走り出した。
(もう、二度と遊んでもらえないな)
二人を吠えながら追いかけるルリオオカミのすぐ脇に、折れた竹箒がドン、と落ちてきた。
「弱い者いじめすんな!」
(シゲっち・・・・・・)
心底気落ちして、ルリオオカミは折れた竹箒と、本気で怒った顔をしているシゲっちを見比べる。クゥン、と鼻を鳴らしそうになる。切なかった。
しかし、その感情は、してはいけない油断を呼んだ。
ゴボォォォォォォォッ!
ありえない、いや、あってはいけない音。脆いコンクリートがガラガラと派手に砕け、一瞬の後に池の濁った水が中庭に溢れ出し、ルリオオカミがこの世で唯一憎み、許せぬ魔物が現れる。
イッタンモメンだ。
童子・姫はいない。そのせいか、身体は幼体としても小さめだ。
「ピィィィィィィィィィィィィッ!!」
しかし、邪悪な翼を羽ばたかせ、動く物を貪欲に探すその姿は、紛れも無く魔物のそれだ。
ウォォォン!!
ルリオオカミは精一杯跳び上がって、吠え立てる。少しでも魔物の注意をこちらにひきつけ、子供たちを逃がさなければ。たとえ、小さな自分一匹しかいなくとも、彼等を護らなければならない。
鬼と、そう約束したから。
それが自分の、使命だから。
『魔化魍から、人を護れ』
ああ、護るとも!
ぬるりとした魚類の身体をくねらせながら、鳥類の翼で羽ばたく魔物が、ちらりとこちらを見る。
イッタンモメンは一度高く上昇すると、風を伴って急降下する。その先には、一羽のウサギ。マコちゃんにもジョウにも捕まらず逃げていた無害な生き物に、魔物は狙いをつけた。
「だめーっ!」
息を飲んだまま動けなかった子供たちの中で、ただ一人叫び声を上げたのは、さっきまで怯えて泣いていたジョウだ。大好物である人間の、しかも子供の声を聞いて、イッタンモメンは空中で角度を変える。
ルリオオカミは、イッタンモメンの身体が低空を泳ぎ始めた瞬間を見逃さず、地面を蹴る。
魔化魍を止めろ!地面に釘付けろ!
狙いは過たず、ルリオオカミの牙はイッタンモメンの翼の付け根に喰らい付く。
「ピギィィ!!」突然の痛みに、魔物は叫び声を上げ、バランスをくずした。その隙をついて、シゲっちがマコちゃんとジョウをグランドに連れ出す。
ルリオオカミは逃げる子供たちの後姿を見送って、ますます顎の力を強める。せめてこの翼を喰い千切る事ができれば・・・・・しかし、魔物と一匹のオンシキガミとでは、身体の大きさが圧倒的に違う。
イッタンモメンは邪魔な小虫を振り払うように、翼を激しく動かし、さらに鉄筋の校舎にぶつける。
何枚かのガラスがサッシごと粉々に砕け、ルリオオカミもその衝撃で後肢を一本もぎとられた。ここで振り落とされては、二度とこの空を飛ぶ魔物に向かってジャンプできないだろう。
(諦めるもんかッ!)
ギリギリと音を立てて腱を噛むと、イッタンモメンは一層激しく翼をコンクリートに打ちつける。もうルリオオカミのカラダの半分以上が、瑠璃色の輝きを失っている。
キュイィィィィィィィン!
空中に、キラリと鮮やかな茜色が翻った。アカネタカ・・・・なのか?破片になりつつあるオンシキガミは、仲間の声を頼もしい思いで聞く。勝鬼が近い。その確信が、ルリオオカミに力を与えてくれる。
(勝鬼・・・・ゴメン・・・・オレ、みんなに見つかっちゃった・・・・子供たち・・・・みんな怯えてる・・・・・・・・)
ルリオオカミは、わずかな風を感じた。鬼の発する清い音が聞こえる。視覚はもう、機能していなかった。聴覚も途絶えがちだ。衝撃も感じない。
ただ、優しい温もりを感じていた。
(ゴメン・・・・・・)
「ごめんな」
誰かが泣いている。低く、慟哭の声を漏らしている。濃く立ち込める、血の匂い。優しかった柔らかな温もりが、今は冷たく血を流している。
「この犬がやりやがったんだ!」
「なんて事だ・・・・猟犬が・・・・・・」
「子供の喉笛を食い千切るなんて・・・・」
何故?何故?何故?どうしてみんなオレを打つの?何故オレの坊ちゃんは血を流して動かないの?
「狂犬だ!」
「狂犬だ!」
「皆、そこを退け!俺が撃つ!」
冷たい銃口がこちらを向いている。オレのご主人が、オレを狙っている。嘘だろう?だってその銃は、獲物を狙う時だけに使うんだろう?オレの仕事はご主人に獲物の居場所を教える事だもの。ご主人がオレを撃つのかい?
ドン!
―――――静寂。
『気の毒に。あらぬ疑いを受けて、口の利けぬお前は命を取られたのか』
あんた、誰だい?なぁ、オレの坊ちゃんはどうなったんだい?
『あの子は魔化魍に声を食われたのだ。だが、誰もその現場を見ていなかったから、側にいたお前に疑いがかかったのだろう』
声を食われたって?なぁ、わかんねぇよ。坊ちゃんに会いたい、オレは上手に坊ちゃんの投げた棒を拾って来たんだ。坊ちゃんはどこだい?
『俺と一緒に来るか?坊ちゃんの敵を討ちたいか?』
あんたと一緒に行けば、坊ちゃんとまた会えるのかい?坊ちゃんとまた遊べるのかい?
『もう誰の事も坊ちゃんのような目に遭わせたくなかったら、俺と一緒においで。どのみちお前は、坊ちゃんのいる天国には行けないよ』
何故?何故?何故?
『だってお前は、坊ちゃんを護れなかったんだもの』
「おっ、起動した」
清い笛の音の余韻を心地よく感じながら、ルリオオカミは長い眠りから覚めた。調子を確かめるように、頭やカラダをブルブルと震わせるのは、魂が持っている思い出のせいだろうか。
あれから一週間ほど経った日曜日の夕方、『たちばな』の店の奥の和室。ショウキがにこにこと笑っている。ルリオオカミは訳もなく嬉しくて、ショウキの差し出した手を下からくぐって、鼻の先でつんつんと突いてみせる。
「何ですかこれ?頭を撫でろって事ですかねぇ?」日菜佳が不思議そうにルリオオカミを見ている。
「なんだかオオカミって言うより、犬っぽいわねぇ」破損したDAの最後の一匹を修理し終えたみどりが、お茶を飲みながら嬉しそうに言う。
「え?他のルリはしないの?俺のだけ?」
「うん。ここまで懐こいコは、ショウキ君のだけよ。やっぱりDAって持ち主に似るのかなあ?」
そういうもんですかねぇ、不思議ですねぇ、と続けながら、ルリオオカミの頭を撫でる日菜佳の左手には、婚約指輪が控えめに輝いていた。
「こんにちわー!」店の方で大きな声がする。尾賀だ。「あの、ほら、青いシキガミ、直ったぁ?!」
他に客がいないからいいものの、相変わらず周りをヒヤヒヤさせる発言だ。和室の三人は、思わずお茶を噴き出しそうになりながら店に急ぐ。
「おお!ショウキ君!丁度良かったよ!」尾賀はショウキの腕を力強く叩く。やはりこの人は、姉さんと言うより、兄さんだ。
「いや、あの、尾賀さん、どうなさったんですか?」
「今日は日曜日だよ、ショウキ君!学校は休みだ!」
「え?教育に休日は無いんじゃなかったんですか?」
「先生だってたまには昼酒呑みたい日があるさ!オンとオフ、仕事と休養、メリとハリだよ、ショウキ君!!」一週間前とは全く違う事をはきはきと答えると、尾賀はガハハと笑った。
とりあえず突っ込みは後回しにして、面食らっている日菜佳とみどりに、尾賀を紹介する。日菜佳とは連絡を取り合っている尾賀だが、メールや電話ばかりで面識は無かったらしい。
女たちはすぐに打ち解け、お茶や団子を真ん中に置いて、和やかに話し始める。
尾賀によると、小ぶりのイッタンモメンが壊した校舎のガラスなどの被害は、中庭の地下に溜まった微量な天然ガスが、何かの原因で爆発した、という事になったらしい。
自治体の杜撰な学校管理や、責任問題などについて、保護者と学校と議会は大揉めに揉めている、との事だ。そりゃ無理もないわな、とショウキは思う。
だが、そのうち校舎が直されたりして日常を取り戻していくうちに、皆の興味も薄れていくだろう。誰も直接的な被害には、遭わなかったのだから。
「生徒さんたちの様子は如何ですかぁ?怖い目に遭ったから、随分ショックを受けたんじゃないですかねぇ」
「いや、私も気になってさ、五人に直接聞いてみたんだよ。ところが、あの子たち魔化魍も鬼の勝鬼君も清めも見たはずなのに、何にも言わないんだよね」
「確か、一番小さい子は一年生でしたよね?強いショックで、記憶を封じ込めたって事は無いのかしら?」
「それはないみたいだな」そう言うと尾賀は、小さな紙袋を出した。「ねぇ、これ、ショウキ君に渡したかったんだ」ショウキが開けてみると、何やら細かいものがばらばらと出てきた。
「わぁ、可愛い!」みどりと日菜佳はそれらの品々を手にとって、歓声を上げる。「これ、みんな手作りみたいですけど・・・・」
「そう。飼育係五名による手作り。今朝ウサギの世話が終わった後に、みんなから頼まれてさ。渡して欲しいって」
「え?俺に?うわぁ、嬉しいなぁ・・・・・」
「あっ、違うんだよ。ゴメンねショウキ君。あんたの、オンシキガミに渡してくれってさ。なんだっけ、あの犬みたいなの」
「ルリオオカミ?」
「そう、それ!他には何にも言わないんだけどさ。言っちゃダメって事、あの子たちなりに理解してるみたいなんだ。なんか、いじらしいやね・・・・」
ショウキは丸めた紙を広げてみた。五人の子供と、ウサギと、青い犬らしい物が、大胆な構図で描いてある。そして、『ありがとう』の文字。カードはもう少し緻密な絵で、躍動感溢れるルリオオカミと『かっこいい』の文字。
千羽には程遠いが、折鶴を糸で連ねたものもある。ぶら下げてある短冊には『早く良くなってね』のメッセージ入り。
銀紙のメダルはルリオオカミの首に丁度良くかかるように短いヒモがついているし、ビーズでできたピンクのハートは、可愛い水色のリボンで結べるようになっている。
不覚にも、ショウキはちょっと、泣きそうになった。
「いい子たちだろぉぉぉ!泣けてくるほどいい子たちなんだよぉぉぉぉ!」
ウルっときたが、尾賀に先に泣かれてしまい、ショウキはタイミングを逸してしまった。みどりと日菜佳もそうらしい。
と、そこに、ひょっこりとルリオオカミが姿を現した。テーブルに乗って、子供たちからのプレゼントの匂いを嗅いでいる。
「良かったなぁ。これ、全部お前あてなんだよ」ショウキはメダルやリボンをルリオオカミの首にかけてやる。ルリオオカミは、どうだ、似合ってるだろう?とショウキだけでなく、日菜佳やみどりにも見せて歩く。
「あれ?喜んでるみたいですよぅ」
「ホントだ。きっと誰からの贈り物か、このコはちゃんとわかってるのね」
「さすがだ!さすが猛士の叡知!」尾賀は涙を拭うと立ち上がった。「さっ、みんな!呑みに行くよっ!今日は先生気分いいからおごっちゃう!」
「きゃー、ステキですぅ!先生!」
「お供しますぅ、先生!」
「いやちょっと・・・・」ショウキも慌てて立ち上がるが、奥の席にいたせいで、テーブルやら椅子やらがひっかかってすんなりと立ち上がれない。
「ちょっと、呑みにって、まだ昼間だし。ねぇ、日菜佳ちゃんお店どうするの?みどりさんまで、ちょ、ちょっと!」
ガタガタガッタン、と派手な音を立てて、ショウキは椅子と一緒に転ぶ。
「あ痛たた・・・・・」そのショウキの肩に、ルリオオカミがよじ登る。首に、ビーズのハートと銀紙のメダルを誇らしげにぶら下げて。
ルリオオカミは、オンシキガミになる前の記憶を、ひとかけらも覚えていない。思い出せないものは、仕方がないのだ。今、この心優しい鬼と共にいる。それだけで、充分だった。
またいつか、あのシゲっちやマコちゃんたちと、追いかけっこが出来る日が来るだろうか。
もし、その日が来たら、とルリオオカミは夢想する。
(棒っきれをうんと遠くに投げて欲しいな。どんなに遠くに投げたって、オレは上手に取って来て見せるんだけどな)
季節はゆっくりと、初夏にむかっていた。
=完=
463 :
DA年中行事:2006/05/05(金) 22:57:59 ID:D6leh2zU0
ひゃー、497kb。しんがり、もらっちゃいました。みなさん、ごめんなさい。
端午の節句、なので、『ショウキ』さんですよ。
ダンキさんはきっと、休みをとって鍛えに入っていたのかもしれません。
もしくは、千明ちゃんとデートか?どうなんでしょう。
裁鬼メインストーリーが最終回を迎えたり、新しいSS作家さんたちと出会えたり、
用語集サイトを立ち上げて下さった方がいたりと、弐乃巻も楽しくワクテカと過ごせ
ました。
参乃巻でもみなさん、宜しくお願い致します。
Good job!
465 :
DA年中行事:2006/05/06(土) 11:47:42 ID:e+BqzwFu0
オレは絵が描けないので、コピペのAAで。某ネタスレに投下したものなんだけども。
つ【寄り添う獣 巻の三】
;;; :::: ... ::::: ::;;;:::.....
;;;; ,,, 、、 ,i' :;;::.,,: 丶;;:;;:
ヾヾ ゞ ```
ゞゝ;;;ヾ :::,r' ` ` i、;;;ヽ;;; ヾ;;;
i;;;::::′~^ ` ` ;;; ″~ ~
ii;;::iヽ / ` ゞ:,,,:: ヾ 〃::;:
iii;::i ` ` ii;;;;::: :: ` `
iii;;::i ` ` ` iii;;;;::: ::
iiiii;;::i ` ` iii;;;;::: ::
iii.,ii;;:i, (r−リ) ∧ iii;;;;::: :::
iiiii゚i;;:i り*゚∀゚) (ミ轟シ*) ` iiiii;;; :::::
iiiiiii;;::i (つ且) (旦⊂ ) ||iiii;;;;::::
iiiiiii;;::::ヽ;;,,';;"'';;";;""~"`"`;.";;""'"~"`~"'';;,,, /iiiiii;;;;o;;;
iiiiiii;;::;';;" 幸せッス! `;;/i:ii iii;;;;;::::
ご愛読、感謝です!
500KBまであと2KBすれすれ!
このスレのラストは、
年齢的にカレーのような加齢臭の漂う裁鬼さんが
華麗に決めてほしい。
467 :
最後かな?:2006/05/07(日) 09:43:27 ID:Qx7nnjIt0
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/. /// |ヽヽ\ / / 俺はまだ…戦ってるよ…。
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( ミ裁シ) ∧
/ /⌒ ,つ⌒ヽ) // / /
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hh
「音撃斬!閻魔さば…
バキッ
「あ」
俺でラストなら裁鬼さんは不滅
「俺は…もう…ダメだ…」
「裁鬼さんっ!!」
「…石割ぃ…おまえに これを…受け取ってほしい」
「!…これは……」