アスカの日記 5冊目

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
新月 スレ日

いつの間にかアタシの日記も5冊目。
皆と過ごす楽しい日々を、また綴っていこうと思う。

前スレ
アスカの日記 4冊目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1111761234/
過去スレ
アスカの日記 3冊目
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1099490887/
アスカの日記 2冊目
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1095076952/
アスカの日記
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1055620117/
2名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/29(金) 19:58:03 ID:???
関連スレ
【LAS】アスカの日記 8冊目【LAS】
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1146989124/
綾波レイの日記 3冊目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1155143378/
碇シンジの日記 2冊目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1123423924/
葛城ミサトの日記 2冊目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1137160023/
霧島マナの日記
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1131333238/
渚カヲルの日記
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1119309531/

ダミー氏の保管庫
http://www.geocities.jp/dummyasuka/index.htm
3名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/29(金) 19:58:51 ID:???
>>1俺乙
4名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/29(金) 20:01:43 ID:???
職人さんまち
5名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/30(土) 00:33:19 ID:???
otsu
6名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/30(土) 06:13:00 ID:???
即死回避
7名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/30(土) 13:22:07 ID:???
おつ
8名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/30(土) 19:38:41 ID:???
のんびり投下待ち
9名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/01(日) 03:10:21 ID:???
職人さんお待ちしております
10名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/01(日) 09:39:36 ID:???
10!
11名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/01(日) 23:58:16 ID:???
稲荷町
12前スレ960:2006/10/03(火) 03:34:19 ID:???
某月某日弐
kissを持ち掛けたのはアタシの方だ。暇つぶしだった。
鼻をつまんでkissしてやると、ヤツめ舌まで入れてきやがった。
アタシのfirst kissは、壮絶な歯と歯のぶつかり合いだったのに。
おかげで、アタシががとろけそうになった。
kissの後、ヤツはアタシを抱きしめて、こう言った。
「・・・ボクだって男なんだよ・・・これ以上は・・・ガマンできなくなるよ・・・」
アタシの耳元でボソボソとささやく。
華奢な体のどこにこんな力があるのか、強い力で。
加持さんがミサトを連れて帰ってくるまで。

たまには暇つぶしも悪くないと思った。
おやすみなさい。

(原文:独語 訳960)

>1 スレ立てお疲れさまです。早速使わせていただきました。
13名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/03(火) 09:21:59 ID:???
おつ
14名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/04(水) 08:09:25 ID:???
がんがれ
15名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/06(金) 01:37:16 ID:???
職人まち
16前スレ960:2006/10/06(金) 04:20:43 ID:???
某月某日参
同居人は物静かなヤツだ。
リビングに居ても、目を瞑り、SDATで音楽を聴いて独りの世界に入っていることが多い。
以前、何となくその憂いを含んだ横顔が気になり、何を聴いているのか聞いたことがある。
「…無伴奏チェロ組曲第1番ト長調…」
このアタシが、わざわざ聞いてやってるのに、
こっちも向かず、ボソッと無愛想な答えが返ってきた。迷惑そうに。
その時はビンタで勘弁してやった。我ながら寛大になったと思う。

∴続けて良いですか>all
17名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/06(金) 21:20:56 ID:???
オッテュ
18名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/07(土) 04:57:33 ID:???
おつ
19前スレ960:2006/10/07(土) 06:04:39 ID:???
某月某日参の壱
今日も、いつもの様にリビングで何かを聴いていた。
ただ、表情が妙だった。嬉しそうに、微笑を浮かべて。
手にはCD、…なんで今さらCD?なのだろうと思った。
前の無愛想な返事を思い出し、一瞬、躊躇したが興味のほうが上回った。
ヤツの後ろにそっと廻り、手に持つCDを奪った。

「へぇー、シンジこんなのも聴くんだー」
でも、CDのジャケットを見た瞬間、アタシは引いてしまった。
「あ、あんた・・・オタぁ?」
セカンドインパクト前の遺物、20年近く前のアニメのサントラ。
「こんなもん聴いて、嬉しいの?」
ヤツは、慌てた様にアタシの手からCDをひったくると、ボソボソと弁明し始めた。

∴>17、>18 「ボクはここに居ていいんだ!ありがとう。」な気持ちです。
∴読み返すと、日記になってないような気がします。すみません。精進します。
20名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/08(日) 16:33:18 ID:???
某月某日参の弐
ヤツの弁明はこうだった。
「ネットで曲を探していた」
「『Fly me to the moon』という曲があった」
「気に入ったので、検索するとスタンダードで、いろんな人が歌っていることを知った」
「何気に『ASUKA』と入れたら、ASUKAが歌っているバージョンがあった」
「どうしても聴きたくて、探しまくって手に入れた、高かった」

何気にって・・・どういうことよ。
どうしても聴きたくてって、どういうことよ?
確かに、ASUKA Bossa Techno TV.Size Version、とあった。
どきっと、心拍数がちょっと上がった。
21名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/09(月) 04:49:47 ID:???
某月某日参の参
「じゃあ、聴いてみてよ」
ヤツからヘッドホンの左半分を受け取り、聴いた。

「・・・アタシ、こんなに甘ったるい声してないわよ、もっと低いし」
それだけを言うのが、精一杯だった。
これって・・・この歌詞って・・・何を言いたいのよ・・・アンタは・・・。
「いや、そっくりだよ、本当に。あ、自分の声って自分では低く聞こえるんだって、
だからじゃない?」
邪気の無い瞳で、さらりと答えられた。
会話がぷつり、と途絶え、ヘッドホンからの歌声だけが聴こえていた。

沈黙を破ったのはヤツの方だった。
「じゃあ、アスカ、歌ってみてよ」
更に心拍数が上がる。
アイツ、歌詞のイミを知ってて言ってる?
アタシに、これを歌ってってことは・・・?。
22名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/09(月) 04:50:41 ID:???
某月某日参の四
つい、おだってやった。今は反省している。
リビングの電気を消し、カーテンを開け放ち、満月の光の下でワタシは歌った。
「Fly me to the moon and let me…」
最後のフレーズは、ヤツにしなだれかかり、首に手を廻して耳元で囁いた。
・・・言ってしまった。

ぱちぱちと一人分の拍手。
「アスカ、歌うまいね。やっぱりCDとそっくりだよ」
その後、
「英語得意でしょ?これ、何て言っているの?」

もう、何度、期待を裏切られたか。
わかっていたけど、この鈍感男!
「・・・自分で訳せ!!!」
とりあえず、暴力に訴えた。
あんなバカもう知らない。
寝る。
23名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/09(月) 04:51:27 ID:???
その参の五
追記
翌朝、目を真っ赤に腫らしたヤツが起きてきた。
どうやら、徹夜してたらしい。
アタシの顔を見るやいなや、目をそらして俯いた。
何も言わないってことは、どっちなの?

追記その2
また例によって、嬉しそうにSDATを聴いていたので、ヘッドホンを片方奪ってやった。
持っていたCDのジャケットが、アタシ似の可愛い女の子だったので油断していた。
アタシ(に似た声)ではなく、ファースト(に似た)の声が『I Love You』と囁いていた。
SDATごと握りつぶした。
以上。

24名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/09(月) 07:20:51 ID:???
スーパーGJ
25名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/09(月) 14:44:06 ID:???
オッテュ
26名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/09(月) 19:07:28 ID:???
オッテュ
27名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/10(火) 07:40:07 ID:???
28960:2006/10/11(水) 20:03:40 ID:???
某月某日四の壱

太った・・・2キロも太った・・・2、2キロも太った・・・。
何度、体重計に乗り直しても、数字は非情なままだった。
『**.*kg』
頭と体を巻いているバスタオルが重いわけないし・・・これって・・・。
急にめまいがした。このアタシの美しいボディに2キロもお肉が・・・あぁ・・・。

「太った・・・2キロ・・・太った・・・」独りごちっていたらしい。
「どうしたの?」
いつの間にか、同居人がSDATのカタログを持ってアタシの後ろにいた。
そして、肩越しに体重計の数字を見て、こう言った。
「だって、この間、使徒受け止めたじゃない。その時、アスカが『エネルギーは質量と光速の二乗に比例する』って言ってたでしょ?
アスカの元気ハツラツ!のエネルギーがそこから来てるなら、いいんじゃない?」

そうかな・・・そうなのかな・・・アタシこれでいいのかな・・・。
一瞬、納得しそうになった。
が、次の瞬間、アタシの明晰な頭脳は、現在の状況をはっきり認識した。
「・・・んな訳ないでしょ!大体なんでアンタがここに居るのよ!エッチスケベ変態ゾウリムシ!」
同居人は、アタシの連続往復ビンタを受けつつ、言い訳していた。
どうやら、脱衣所でいつまでもぶつぶつ言っているアタシを心配して来たらしい。
そこのところはちょっと嬉しかった。でも、体重を見たのは許さない。
29960:2006/10/11(水) 20:24:51 ID:???
某月某日四の弐

とにかく、2キロ増の原因究明に努める。
「・・・牛乳ラッパ飲み?、スイカバー?、とんこつラーメン?、ハンバーグ・・・ハンバーグ?」
色々と考えた。そして、その時、天から啓示が舞い降りてきた。
「!!!!!!」
ドイツにいた時は全然問題なかった。日本に来てからだ。
・・・同居人の作るごはんが美味しいからだ!
昨日だって、美味しくて、ついついご飯をおかわりさせられたし!
同居人に対し、責任の所在を問いつめる。
「『おかわり!』って言ったのアスカでしょ?ミサトさんの分まで食べちゃうんだから。
あれから大変だったんだよ」と真面目な顔で正論を言われた。

確かにそのとおりです。はい。
ココロはそう思った。けど、ここで素直に引けるアタシではない。
アイツの頬を思いっきりつねりながら、責任を取って次の休日にダイエットに付き合う約束をさせた。
ふふん。何着ていこうかな。
30960:2006/10/11(水) 20:25:44 ID:???
某月某日四の参

「・・・ねえ、アスカ。今日はダイエットするって言ってたよね?」
アタシの格好を見るや否や、同居人が言った。
「そう。ダイエットよ。歩くのだって立派なダイエットなんだから」
お気に入りのノースリーブの白いワンピース。日焼け対策の麦わら帽子。細身のサンダル。
我ながら、すごい言い訳だと思う。でも、いいじゃない。
ぶつぶつ言ってる同居人を引っ張り、街へと繰り出した。

さんざんデパートの売り場を巡り、試着に付き合わせた。
陽も傾き始めたころ、「ちょっ、ちょっと休もうよ」と同居人がのたまった。
アタシも、丁度休みたいと思っていたところだったので、素直に賛成した。
「美味しいパフェの店知ってるの!行こう!」
この時、頭の中は既にパフェ一色だった。

「パフェ食べたい!」「ダイエットは?」「でも食べたいの!」「ダイエット・・・は?」
幾度かの応酬の後、同居人にパフェをおごらせることに成功した。
31960:2006/10/11(水) 20:26:31 ID:???
某月某日四の四

注文したパフェを待ってる間、窓の外にふと見つけた。
「ちょっと待ってて」
パフェ来たら溶けちゃうよ、と言う同居人を置き去りにして、アタシは猛ダッシュで喫茶店を出た。
使徒を受け止めた時よりも速く。

たぶん、タイムを計っていたら、誰もが驚いただろう。
息を切らせて、喫茶店に戻る。こんなに走ったのは久しぶり。
子犬のように待っている同居人の前で、パフェは溶けかかっていた。

「はい、これ。これでパフェの借りはなしね!逆に貸しね!」
同居人に紙袋を渡す。ヤツは最初、何かわからなかったらしい。
「・・・え、これ・・・?」
がさごそラッピングを開けて、新製品のSDATとわかった瞬間、とても嬉しそうな笑顔になった。
この笑顔が見たかった。ただ、それだけ。

アタシはパフェを貪っていた。
「でも、貸しって・・・それじゃ、パフェを何回おごらなきゃならないの?」
「アタシの一生分よ」「・・・アスカの一生分!?」「そう、アタシの一生分」
アタシの想いをアタシなりに言葉にしたつもりだった。
頬が熱くなるのがわかる。パフェ冷たくておいしい。
32960:2006/10/11(水) 20:27:21 ID:???
某月某日四の五

つい、勢いで言ってしまった。今は反省している。
一生で何回パフェ食べるんだろ、と目の前で真剣に計算している同居人を見て、
アタシの言ったことのイミが通じてないことがわかった。
このうるとら鈍感にぶちんが!
溶けたパフェをアイツの頭にかぶせて、アタシは店を飛び出した。

夕焼けに染まった帰り道。
喫茶店に置き去ってきたはずの同居人が、息を切らせてアタシに追いついた。
「・・・ゴメン。・・・ありがとう」
ゴメンって、どういうこと?ねえ、どういうこと?ダメってこと?
ありがとうって?どういうイミ?ねえ?
一瞬、目の前が真っ暗になった。アタシはその場で凍りついた。
33960:2006/10/11(水) 20:28:08 ID:???
某月某日四の六

でも、凍り付いたアタシはすぐ解凍された。
「アスカに一生、パフェおごるから、ね」
・・・涙腺が勝手に緩んだ。周囲の目がアタシ達に集まるのがわかる。
同居人は最初、おろおろしていたが、挙げ句にアタシの手を握って走りだした。

家に着いた時には、二人とも汗だくだった。
「やっと、ダイエットらしくなったね」息を切らせながら、笑顔で同居人に言う。
「いや、まだわかんないよ」同居人も笑顔で返してくれる。

しかし、体重計の数字は、やはり非情だった。
「増えてる・・・」
やっぱり、パフェかな?一生おごってもらえるのに、もったいないな・・・。
でも、体重が増えた分、幸せも増えたような気がする。
今日は良い日だった。おやすみなさい。

(原文:独語 訳:960)
34名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/11(水) 21:16:42 ID:???
オッテュ
35名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/11(水) 22:52:34 ID:???

アスカ、かあいいよ、アスカ
36名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/12(木) 03:37:36 ID:???
とんこつラーメンとハンバーグとはネタが細かいなw
37名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/12(木) 07:31:30 ID:???
38名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/12(木) 21:08:55 ID:???
Great job!
2015年未だにSDATってのもいいよw
39名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/13(金) 13:10:03 ID:???
おつ
40960:2006/10/13(金) 20:08:51 ID:???
某月某日五

普段から植物繊維を取らなかったのが、そもそも間違いだった。
そして、リツコを頼ったことが極めつけの間違いだった。

トイレから出られない。
もう、かれこれ**時間。
この日記もここで書いている。
下剤を自分で買うことも、同居人に頼むのも考えたけど、
うら若きオトメとしてはどちらも非常に恥ずかしい。
選んだ最終手段がリツコだった。
「あの、リツコ・・・」ごにょごにょと耳元で囁く。
「3日!それは大変ね」
「丁度良いわ。後輩の勤めている会社から試供品が来てたから・・・」
そう言って渡された錠剤の瓶。

何が、某有名製薬会社新製品の試供品よ!効き過ぎだわ!
同居人がさっきから催促のノックをしている。
「アスカぁ!早く!」
アンタは公園のトイレにでも行きなさい!

トイレから、携帯でリツコにメールした。帰ってきた返事はこうだった。
「渡すの間違えたみたい。ごめんなさいね。それ、試供品じゃなくて試作品だったわ。・・・ネコ用の」

なんでもいいから、早くトイレから脱出したい。
以上。

(原文:独語 訳:960)
41名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/14(土) 14:40:07 ID:???
おつ
42960:2006/10/14(土) 20:22:25 ID:???
某月某日六の壱

温泉、気持ち良かった。日本に来て2番目に良かったことだと思った。
帰り道、ズタボロになったアタシの弐号機と同居人の初号機を見て、思い出した。
飛び込んで来てくれて嬉しかったこと。素直にお礼を言えなかったこと。
同居人の行動は命令無視の独断専行だったらしい。
本部で司令直々のお話があると聞かされてから、いつも以上に小さくなって凹んでる。
シンジ、ありがとう。アンタがいなきゃ、この日記も書けなかった。
抱きしめたい気持ちを、言葉と一緒にぐっとこらえる。
これは、アタシのキャラじゃない。プライドが許さない。
でも、司令の呼び出しには、一緒に行ってあげるから。
43960:2006/10/14(土) 20:23:11 ID:???
某月某日六の弐

今日、通販で頼んだ材料がようやく来たので、ヨーグルトポムポムを試作してみた。
材料、分量、混練、温度、時間、全てレシピ通りにやった。
・・・はずなのに、似ても似つかぬモノが出来た。
なんでだろう。むぅ。これでは時間に間に合わない。
自分には料理の才能が無いことを痛感し、即座に作戦を変更した。

リビングで、うとうとしていた同居人をたたき起こす。
「これ、食べたい」アタシはレシピを渡した。
「・・・これ、『ネコでも作れる世界一のかんたんレシピ』って書いてあるよ」
眠そうに目をこすりながらレシピを見て、同居人が答える。
じゃあ、アタシはネコ以下か!
でも、ここで殴ったら全てが水の泡。殴りたい気持ちをぐっとこらえた。
「だって、食べたいんだもん!!!・・・ねぇ」
必殺の『両手を組んで上目遣いでお願いポーズ』で迫ってやった。
同居人は、やれやれといった表情で、むっくりと起きあがりキッチンへ向かう。
アタシは、ぺろんと舌を出して、てとてととその背中に付いていった。
44960:2006/10/14(土) 20:23:57 ID:???
某月某日六の参

「・・・アスカ・・・」キッチンの惨状と試作品を見て、絶句された。
そして、買い込んだ材料の量を見て、更に絶句された。
「・・・一体、何個作るの?」「んー。100個くらいかな」「100個!?」
驚いた奴の顔を見て、アタシはこう言い放った。
「アタシの大切なヒトにあげるんだから、これくらい無いとダメなの!」
「そのヒト、人間なの?」「さっき、自分が食べたいようなこと、言ってなかった?」
訝しげな瞳。これが嫉妬だったら嬉しいのに。
「むぅ・・・。いいから、さっさと作りなさいよ!」
同居人はしぶしぶと作り始めた。
アタシはひたすらリンゴの皮むき、皮むき、皮むき。

いつの間にか、同居人とリンゴの皮を切らないでどれだけ長くむけるか競争になっていた。
「アタシのほうが長い!新記録!」「いや、ボクのほうが勝ったね!」
なんだか、目的と手段が入れ替わっていた。楽しかった。
45960:2006/10/14(土) 20:24:43 ID:???
某月某日六の四

結局、最後の1枚が焼き上がった時には、午前2時をとうに過ぎていた。やばい。
「後片付けは明日やろ。・・・じゃあ、アスカ、おやすみ・・・」
アタシは、部屋へフェイドアウトしかかった同居人の首根っこを掴んだ。
「出かけるわよ」「え?こんな時間に?どこに?」

ぎりぎり間に合った。
本部技術開発部休憩室。午前3時の休憩時間。でも、全く昼間と変わらない風景。
いつ使徒が来るかわからない。修理は1分1秒でも早く。これがこのセクションの日常だ。
アタシたちが、エヴァを壊さなければ、普通の一日を過ごせるはずなのに。
タバコの煙とざわめきの中、多くの人がつかの間の休息を楽しんでいた。

アタシは大きく息を吸ってから、大声で言った。
「技術開発部のみなさぁーん!」
一瞬、皆の間にシンとした空気が流れる。視線がアタシと隣にいる同居人に集まる。
「わ・た・し、セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーと、このサードチルドレン 碇シンジが皆さんに差し入れに来ました!」
「いつも、エヴァを壊して、こんな時間まで修理してもらってごめんなさい!そのお詫びのしるしに、二人で作って来ました!」
皆のざわめきが戻る。

「えー。今回の戦いは・・・」アタシはコトの経緯を、講談師のごとく語り始めた。
46960:2006/10/14(土) 20:26:23 ID:???
某月某日六の五

皆、もぐもぐしながら静かに聞いていた。
「・・・そこであわや、弐号機と惣流・アスカ・ラングレーはマグマの中へ落ちる寸前!さあ、運命も尽きたか!
と思ったその時!この!碇シンジ操る初号機がD型装備も無しに勇猛果敢にもマグマに飛び込み、
見事、弐号機をがっちと掴み、そして弐号機と惣流・アスカ・ラングレーは救われたのでした!」
「それで、エヴァをあんなにしてしまいました。ごめんなさい!」
横でほけっとしている同居人の後頭部を掴み、無理矢理おじぎをさせ、一緒にアタシも深々とおじぎをした。
拍手、拍手、拍手の嵐だった。作業再開のチャイムが鳴るまで、それは続いた。

「坊主、よくやったな!」「助かって良かったな!」「うまかったよ。ありがとう」
ケージに向かう作業員たちが、次々と同居人とアタシに声を掛けてくれる。握手を求められる。
自分で仕掛けたことだけど、ちょっと照れくさかった。
最後の一人が、同居人と握手しながら、こう言っていた。
「俺らと家族を守ってくれてるんだから、謝ることは無いよ。逆にこっちがお礼を言いたいくらいだ。
いくらでも壊してくれ。その時は、俺たちが直してやるからな」
47960:2006/10/14(土) 20:27:12 ID:???
某月某日六の六

「知らなかった・・・。ボクのためにこんなに人が働いていることを・・・」
同居人の目が潤んでいた。
「・・・そして、みんなボクのことを褒めてくれた」
「ありがとう。アスカ・・・」
そんなこと言わないでよ。アタシにまでうるうるが感染するじゃない。

そうよ。アンタのおかげで救われてる人がたくさんいるんだから。
もっともっと、自分に自信を持っていいんだから。
本当はそう言ってやりたかった。でも、いつものフレーズしか出なかった。
ごめん、シンジ。

「でも、さっき『二人で』って言ってたよね」
「そうよ、発案者はアタシ、作業も共同、どう見ても二人で、でしょ?」
なんだか腑に落ちない顔をしている同居人。
ホントはアタシ一人でやって、アンタのやったことみんなに知らせようと思ってたんだけどね。
でも、それじゃタダのいい人になっちゃう。結果オーライでしょ?

「さ、次行くわよ、次」「次・・・って?」
48960:2006/10/14(土) 20:28:43 ID:???
某月某日六の七

「どうしたの?二人ともこんな時間に?」
丁度、保護者と話していたリツコは、驚いた表情でアタシ達を見た。
「明日学校でしょう?こんな時間まで夜遊びしてたらダメじゃない!」とミサト。
アタシが理由を説明しようとした次の瞬間、同居人が先に話し始めた。

「・・・で、これ、アスカが考えたことなんです。本当に、みんな、喜んでくれてました」
リツコとミサトは、呆れた表情でアタシ達を見ていた。

怒られるかと思ってた。
「これで現場の士気も上がるなら、良いことなんじゃないの?」ミサトを見つつ、さらりとリツコ。
「ま、今回は特別に許す!・・・で、それ、なんとかポムポム?」とミサト。しかし、目線が鋭い。
その先にはシンジの持つ最後の一つ。
「あ、それ、リツコのために作って来たんだけど・・・」アタシの言うことなんか聞いちゃいなかった。
もらって良いでしょ?の返事も待たずに奪い取り、素早く切り分けて一切れをあっという間に平らげる。さすが作戦部長。
「これで、ビールがあれば最高かも!」・・・前言撤回、悪食女め。
49960:2006/10/14(土) 20:29:40 ID:???
某月某日六の八

とりあえず、学校には遅刻せずに済んだ。
さすがに眠い。眠い授業がさらに眠い。
同居人を見ると、すでに眠っている。
なんとなく嬉しそうな表情は気のせいかな?
アタシも・・・おやすみなさい。

追記
リツコが、発令所のみんなにおすそ分けをしたのは誤算だった。
もちろん司令、副司令にも。
おかげで中枢機能が一時マヒする事態となったらしい。
携帯にメールが来た。リツコからだった。
「やったわね・・・」
ウチのトイレも保護者に占拠されている。
まさか、こんなことになるとは思ってなかった。今は反省している。

追記その2
ケージの中で、アタシの弐号機が、超ピカピカになっていた。
初号機も超ピカピカだ。零号機がくすんで見えるくらいに。
整備している人と目が合った。誇らしげに拳を突き出し、親指をあげてくれた。
もちろん、アタシも同じように親指をあげて返した。GJ!

どこからかファーストが近づいてきて、いつもの口調でこう言った。
「抜け駆け、ずるい。仲間はずれ、ダメ」
どこで聞いてきたんだろ?仕方ない、今度はファーストも誘ってやろう。
アタシって優しい。
以上。

(原文:独語 訳:960)
50名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/14(土) 22:25:28 ID:???
おいおい、漏れを萌え死なす気ですか
職人さんトンクス。
51名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/14(土) 23:26:32 ID:???
オッテュ&オッテュ
52名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/15(日) 12:00:38 ID:???
53名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/15(日) 21:37:32 ID:???
ポムポムって何だか、とてもかわいらしいな。
54名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 07:29:16 ID:???
おつ
55名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 00:44:04 ID:???
gj
56960:2006/10/18(水) 19:53:51 ID:???
某月某日七の壱

「アスカ、今はエヴァのパイロットだけど、将来は何になりたいの?」
ヒカリとの他愛の無い会話から、それは始まった。
夕焼けに染まる、いつもの公園のベンチ。
「んー。何かなー。この、類い希な美貌と天才的頭脳を両立させる職業って。正直、まだ、そこまで考えてないわ」
「私は、お嫁さんがいいな」恋する乙女の顔をしてヒカリが言う。
「アスカみたいに何かに秀でてる訳でもないし、かといってなりたいコトも無いのよね」
「小さくても良いから、暖かい家庭を作りたいな。優しいダンナさまと可愛い子供と」
「そして、私は暖かい食事を作って待ってるの。みんなを」
ふーん。そんなものなのかな。
家庭ってものには、とんと縁のない生活だったので、アタシにはそんな憧れは無かった。
おやつに買った串団子にかぶりつきながら、夕日を見ていた。

「あのね、アスカには言っておきたいんだけど」「何?」もぐもぐ。
「移り気だと思われるけど、アスカには正直に言うわね。ワタシ、碇くんが気になるの・・・」
「・・・えっ?」耳が変になったのかと思った。
「・・・ちょおぉっと待ってよ!鈴原はどうしたのよ!?」
「鈴原のことは、もういいの。なんか疲れちゃった」

頭の中がパニックっていた。心臓がばくばく言ってる。

「でも、もしアスカが碇くんのこと・・・」
「んなわけないでしょ!あんな唐変木、何とも想ってないわよ!」脊髄反射で即答してしまった。やば。
「良かった・・・。アスカ、碇くんのことが好きなんじゃないかって思ってたから」

「いいな。これから碇くんと一つ屋根の下。羨ましいけどアスカならいいや。じゃ、また明日ね」
「ん。バイバイ」表面は平静を装ったまま、ヒカリと別れた。
でも、彼女の告白を聞いてから、ずっと足は地面から浮いていたような気がする。
57960:2006/10/18(水) 19:54:55 ID:???
某月某日七の壱(日記調)

今日は非常にショックな出来事があった。
ヒカリが朝からそわそわして、アタシに何か話をしたいようなそぶりを見せていたので、
帰り道に公園に誘った。
前の鈴原の時みたいに。夕日に染まる街を見下ろしながら。
今回も、鈴原の話かと思いきや、最初に切り出したのは『将来のこと』だった。
アタシは「この美貌と才能を生かせる職業をと思ってるけど、まだ良く考えていない」と答えた。
ヒカリは、お嫁さんだそうな。
「アタシの様に特に秀でている訳でもないし、かと言ってなりたい職業もないから」って。
小さくても暖かい家庭、優しいダンナ様と可愛い子供のために暖かい食事を作りたいんだそうな。
家庭って、アタシは正直良くわからない。そんなに良いものなんだろうか。
ここまでは特に問題無かった。

次に、ヒカリが話した内容がショックだった。
自分が移り気なことを認めつつ、同居人のことが気になると。
これをアタシに伝えたかったらしい。
鈴原のことを問いつめると、前にあれだけのろけられたのに、
「鈴原のことはいいの・・・もう、疲れちゃった」さらりと言われた。
やっぱり、理想と現実のギャップが激しかったらしい。恋は盲目とはよく言ったものだ。
で、アタシの想い人を取ることになるんじゃないかって心配だったらしい。
いつも、このネタでからかわれてるアタシは、ここで、脊髄反射的に否定してしまった。

別れ際、ヒカリはアタシと同居人との屋根一つの生活を羨み、アタシだったら許せるみたいなことを言って別れた。
58960:2006/10/18(水) 19:59:37 ID:???
>50 >51 >52 >53 >54 >55
ありがとうございます。素直に嬉しいです。

>56と>57、どちらで進めましょうか?>all
59名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 20:54:53 ID:???
オッテュ
60名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 22:05:29 ID:???
いつもGJな作品拝見させてもらってます
やっぱスレタイがアスカの日記なので57で進めて欲しいと思う
日記は書くのが難しいががんばってけれ
61名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/19(木) 00:15:08 ID:???
>>58
これは興味ある話題。
物語りを押し進めるには>>56みたいな形式がいいんだけど、
「日記」からはかけ離れてしまうもんね。

思うに本物の日記はその日の出来事を時系列を追って書き進めるものではなく、
ただ結論を書き留めるものなので、起承転結もなければ、伏線もない。
従って、エンタテイメントとして成立しにくい。

もし、本物の日記だったら、
「ヒカリはシンジに気があるらしい」という結論が先に来るはず。
そして、「ショックだ」という感想を述べて終わり。
ヒカリが朝からそわそわとか、夕日に染まる街といった、
人物ないし情景の描写が日記文に現れることは殆どない。
でも、それじゃ面白くないので苦心した末の文体が>>57なんだよね。

結局、何が言いたいかというと、
書きやすいように書いたらいいんじゃないか、と。
俺も他スレで>>56みたいな文体で日記書いてて、「でも、これ日記じゃないよな……」と、
自問自答してたところなんで、つい熱くなったw
62名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/19(木) 22:29:41 ID:???
>>61
朝は寒くてもお前は熱いぜw
>56みたいな形式で進めてもいいがそうすとスレタイと離れてるっていちゃもんつけて来るやつがいるんだよね
日記形式でお願いしたいがやりやすいほうで良いよ。無理しないでくれ、
63960:2006/10/20(金) 05:16:57 ID:???
>59 >60 >61 >62 ありがとうございます。
>61のとおり、日記調は正直、苦心しました。
先に>56を書き、それを>57へ反映させるのですが、どうしてもムリが出ますね。
とりあえず、今回は両方書き上げてからまとめて上げますね。 
64名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/20(金) 11:55:09 ID:???
65名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/21(土) 12:36:51 ID:???
gj
66名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 09:20:21 ID:???
おつ
67960:2006/10/22(日) 11:45:45 ID:???
960です。
出来ました。連続投下します。
68960:2006/10/22(日) 11:46:32 ID:???
>>57続き

某月某日七の弐(日記調)

アタシには関係の無い話なのに、アタシは何故か悩んでいる。
悩む理由を考えたが、良くわからない。
胸が痛む。
病気かも。明日、リツコに診てもらおう。
とりあえず寝る。おやすみなさい。
69960:2006/10/22(日) 11:47:18 ID:???
某月某日七の参(日記調)

朝、同居人と顔を合わせたくなかったので、独りで学校へ行った。
登校はいつも一緒だったからか、奇妙な感じがした。

昨日の晩御飯と今朝の朝食をぶっちぎったので、育ちざかりのアタシにはきつかった。
だから、まさかお弁当を作って来てくれてるとは思わなかった。
お弁当を受け取る時、またいつもの調子でやってしまった。
ホントは嬉しかった。すまなかった、シンジ。

でも、そのお弁当はヒカリのお弁当と交換された。
ヒカリのお弁当、おいしかった。でも、何か物足りない気がする。
ヒカリは幸せそうだった。
70960:2006/10/22(日) 11:48:17 ID:???
某月某日七の四(日記調)

ここ数日、ヒカリとアタシのお弁当を交換していたが、
過程の無駄を省くため、同居人にお弁当を直接ヒカリに手渡すよう命じた。
照れながらお弁当を取り替えっこする二人を見て、ふと、寂しくなったのは事実だ。

定期診断の結果は異常無し、だった。
食欲不振と胸の痛みを訴えたのだが、データ上は健康そのものだった。
ただ、リツコが意味ありげな笑みを浮かべていたのは気になる。
もしかして、重病なのだろうか?
なんだか急に不安になってきた。
とりあえず、早めに寝ることにする。おやすみなさい。
71960:2006/10/22(日) 11:49:13 ID:???
某月某日七の五(日記調)

結局はヒカリと2バカの悪巧みだった。
アタシを追い込んで、楽しんでたらしい。
別にアタシは何の問題も無かったけど、さすがに駒扱いされるのは許し難い。
3バカには鉄槌を、ヒカリにはくすぐりの刑を科した。
ヒカリに睨まれたが、アタシは悪くない・・・はず。
でも、後で謝っておこう。

晩ご飯はアタシの好きなものばかりだった。
同居人は一応、悪かったとは思っているらしい。

胸の痛みもいつの間にか消えた。
世の中全て事も無し。おやすみなさい。
72960:2006/10/22(日) 11:50:00 ID:???
>>56続き
某月某日七の弐

マンションに着き、誰にも会わぬよう速攻で自分の部屋に入り、
制服のままベッドに俯せに倒れ込む。
悩む・・・。
胸が締め付けられる。痛い。
・・・大体、何をアタシは悩んでいるんだ?関係ないじゃん。

アタシの頭の片隅で、アタシ達がひそひそと話し始める。
複数の黒いモノリス。表面には紅い発光文字で『ASUKA 0* SOUND ONLY』

「早速議題に入るけど、主題は友情を取るか、恋を取るか、ね?」
へっ?恋?一体誰が?誰に?
「シナリオの大幅な修正を余儀なくされるわね・・・」
シナリオって?何?一体?
「でも、あのヒカリがねー。ちょっと意外かも」
確かにそれは言える。
「アイツ、今も昔も家庭に恵まれてないから、ひょっとしてころっと行ったりして」
そうかもしれないわね・・・って、どこに行くって!?
「前振りが『お嫁さん』だけに余計に、ね」
・・・おーい。どうしろってーの。

胸の痛みは定期診断で診てもらおう。
アタシ達の会話を遠くに聞きながら、いつの間にか眠っていた。
73960:2006/10/22(日) 11:50:46 ID:???
某月某日七の参

何となく、同居人と顔を合わせたくなかったので、今日は早めに独りで学校へ行った。
当然、朝食も抜き。昨晩から何も食べていない。おなかすいた。
机に突っ伏して、空腹に耐える。うぅ・・・。
ひさびさに購買の焼そばパンか。あれ、イマイチなのよね・・・。
そんなことを考えながら身を起こすと、目の前に同居人が居た。アタシのお弁当箱を持って。
晩御飯と朝食を連絡なしに食べなかったのに、お弁当を作って来てくれるなんて。
嬉しかった。

「・・・いつからいたのよ!?レディの寝姿をじっと見てるなんて悪趣味よ!」
「い、いや、起こしちゃまずいかな、と思って。これ、お弁当ね」
ぽふっと、お弁当を手渡される。怯えつつ、にこやかに。
「昨日の夜から食べてないんでしょ?具合悪いかと思って、消化の良いものにしておいたから。あ、食べきれなかったら残してもいいから」
丁度、チャイムが鳴る。お弁当をアタシに渡し、同居人はそそくさと自席へ戻っていった。
後ろから視線を感じる。振り向くと、ヒカリが何かを含みつつ微笑みを浮かべていた。

昼休み。いつもの屋上。さて、おべんとおべんと。メシだメシ。
「アスカ・・・」
先に座ったヒカリが話しかけてきた。陽を背にしたアタシの落とす影の中から。
「ん?」「それ、碇くんが作ったお弁当でしょう?」「うん」
「私、作ったおべんとと交換しない?・・・食べてみたいの、その・・・」

多分、アタシの表情は見られなかったと思う。
無言で、彼女の差し出すお弁当箱とアタシのお弁当箱を交換した。

ヒカリのお弁当はおいしかった。さすが主婦。
同居人と遜色ない、いや、それ以上の出来だった。
でも・・・おなかは満たされたけど、なんだか物足りない気がした。
74960:2006/10/22(日) 11:51:40 ID:???
某月某日七の四

ヒカリとのお弁当交換は、しばらく続いた。
毎夜のアタシ達の会談も堂々巡りを繰り返す。
晩ご飯もロクに食べられない。
こんな時は同居人をいたぶって、憂さ晴らしをするのが一番だけど、
親友の想い人じゃ、さすがのアタシもちょっと・・・ね。
いい加減、どうでも良くなってきた。

「アンタ、アタシの弁当、もう作らなくていいから」
へっ?という表情をして、同居人がアタシを見る。
「そのかわり、ヒカリのお弁当作りなさい!」
「なんで、委員長の?いつも自分でお弁当作って来てるじゃない」
「何でもいいから、アンタはアタシの言うとおりにすればいいの!」
「わかったよ・・・いつも勝手なんだから。少しはこっちのこ・・・」
「なんか文句ある?」「い、いや・・・その・・・別に」

昼休み。同居人が照れながらヒカリにお弁当を手渡すのを見て、
季節外れの、独りぼっちトンボの気持ちになった。なんで?

定期診断の結果は異常なし。
リツコに胸の痛みの原因を聞くが「そうね・・・。そう」と言ったきり、答えてくれなかった。
返ってきたのは、意味深な笑みだけ。
ああやって、リツコが笑む時は、ロクなことが無い。もしかして不治の病とか?
薄幸の美少女とはよく言ったものだ。アタシって幸薄い人生だったわ。
なんてことを考えつつ、布団に丸まった。おやすみ。
75960:2006/10/22(日) 11:52:27 ID:???
某月某日七の五

やばっ。学校にIDカード忘れた。
シンクロテストに遅れたら、何言われるかわかったもんじゃない。
気付いて良かった。大ダッシュで学校へ引き返す。

息を整えつつ、教室に向かう。
まだ、誰かが残っているのか、人の声が聞こえる。

「ねぇ、もうそろそろ止めようよ・・・大人しいアスカなんて気味悪いよ」同居人だ。
「さすがに、ここまで追い込むとやっぱり、な」メガネだ。
「でも、シナリオどおりだし、もう一息と思うんだけどな」ヒカリだ。
「・・・そや。ここで思いきりやらにゃあかん」鈴原だ。
何故か、3バカとヒカリが一緒にいる。
入り口で息を潜め、聞き耳を立てる。

「でも、ワシが弁当こそこそ食べるんもええ加減にしたいわ」
「アスカのためよ!スズハラちょっとはガマンしなさい!」
あれ?
「なんで、アスカの気持ちがボクのためになるの?・・・確かに最近は殴られなくなったけど」
あれれ?
「・・・アスカがいっつも怒ってるのもムリないわね・・・。碇くん、超ニブすぎ」
はあ?

シナリオ・・・?
「!」全てが繋がった。
76960:2006/10/22(日) 11:53:34 ID:???
某月某日七の六

つい、カッとなってやった。今は反省している。

やられた。アタシとしたことが、やられた。
3バカは瞬殺した。残るは・・・。
「ひぃーかぁーりぃー・・・」
「あ、あのねアスカ。こ、これはね、アスカの気持ちをはっきりさせてあげ・・・」
おっと、ヒカリ。それ以上は、親友のあなたもアタシも触れちゃいけない部分よ。
黙らせるのに、ヒカリを失禁寸前までくすぐり倒す。
ヒカリが涙目でこっちを睨んでいる。ごめん、やりすぎた。

帰り道、久々に同居人と一緒になる。
アタシが一歩ぶん先を歩く。同居人がついてくる。
「ボクは止めようって言ってたのに・・・なんで?」
「うるさい!じゃあ、なんでアタシに言わないのよ!」とりあえず、殴る。
「だって、アスカすぐ殴るじゃない。グーで」
「うるさい!うるさい!うるさい!」もう一回、とりあえず、殴る。
道行く人の視線が厳しい。逆DVよ、という声が聞こえる。
さすがに恥ずかしい。足早にその場を立ち去る。

晩ご飯はアタシの好物ばかりだった。これで許されると思っているの?
・・・でも、食べ終えた後は、許してもいいかなって思った。満腹だと平和だ。

いつの間にか、胸の痛みも消えていた。
なんだったのだろう。ま、いっか。
とりあえず寝る。おやすみなさい。

(原文:独語 訳:960)
77960:2006/10/22(日) 11:54:26 ID:???
すみません。長々と書いてしまいました。>>all
今回、同時進行で書いたせいでしょうか、日記調は維持出来ませんでした。
あえて日記に徹したら、台詞が一切出てこなくなりました。
改良の余地大ですね。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
78名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 19:17:25 ID:???
オッテュ
79名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 19:47:30 ID:???
80名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/24(火) 00:48:56 ID:???
81名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/25(水) 04:38:42 ID:???
スレッド情報局から宅急便です。
つ●
82名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/25(水) 22:14:35 ID:???
先に日記調を見て、次にモノローグ風小説を見るのも新鮮でつね。
GJ! 乙でした。

>あえて日記に徹したら、台詞が一切出てこなくなりました。
いや、日記って普通そうだし。w)
83名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/26(木) 01:09:02 ID:???

84名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/27(金) 00:19:08 ID:???
おつ
85名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/28(土) 02:26:53 ID:???
GJ
86名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/30(月) 16:06:46 ID:???
gj
87名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/01(水) 04:30:11 ID:???
(・∀・)ほしゅ
88960:2006/11/01(水) 21:06:59 ID:???
ありがとうございます。>all
日記じゃなかったので,別スレに違うのを書いてました。
前段はこちらです。
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1140426670/296-310
89960:2006/11/01(水) 21:07:45 ID:???

はい,とマネージャから日記帳を手渡される。日記帳?
日記を付ける習慣は無いんですが,え,仕事ですか?
とどのつまり,アタシ本人の日記ではなく,
劇中の『惣流・アスカ・ラングレー』の日記を書けって。いうコトらしい。
あのー。普通,そういうヤツって,駆け出しのライターとかが書くんじゃないんですか?
マネージャ曰く,『映画が売れて,しかも出演者本人が書いた日記であれば,
相乗効果で売れて売れて印税生活も夢じゃない!』そうな。
はぁ。そんなもんですかねぇ。
と,いうコトで日記を付けることになった。
タダでさえ,実生活と劇中がごっちゃになりかかっているのに,日記なんか付けられるんだろうか。
ちょっと不安。
90960:2006/11/01(水) 21:08:41 ID:???

今日,マネージャからノートPCをもらった。わーい,Let's Noteだ。11時間駆動だ。
なんでまた,モバイルなの?
『楽屋でも日記が付けられるように』とのお言葉。

でも,日記帳ありますよ。書いてないけど。
ひょっとして,ブログですか?で,それを本にまとめるんですか?
ブログ女王になんてなったらどうしよう・・・。
テレビで見た,夢のような芸能人生活が,現実に・・・?
一瞬見えた幸せの絶頂はここまでだった。

え,違う?
カントクが,『人気をあおるため,某匿名巨大掲示板へ日記を定期的にこっそりUPしろ』だって。
確かに,劇場版公開まで結構時間はありますけど・・・タダ働きですよね?コレ?
アタシ,ギャラだけじゃなく,印税生活もぜひ体験してみたいのですが。
え,契約事項に書いてあるって?そんなバカな。

あった。

・・・あのー。カントク。アタシの印税生活は一体何処にいったのでしょうか?

あ,忘れるところだった。CMCMっと。
『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!

・・・コレでいいですか。カントク?
91名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/03(金) 02:09:17 ID:???
乙です
アスカさん含む出演者の皆さん
良い映画期待してます……
92名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/03(金) 02:21:03 ID:???
おつ
93960:2006/11/03(金) 22:07:17 ID:???

今日,ケータイくらいの大きさのモノリスを渡された。
これを常に身につけておくように,とのコト。何?これ?
あまりにも役のイメージとかけ離れると困るので,一言一句チェックするそうな。
なんでもアタシのこれは,劇中のアスカ禁止用語に触れると警報が鳴るらしい。

早速やってみた。
「碇さん」「ぴー」TVでおなじみの警報音が鳴る。
「碇くん」「ぴー」
「シンジくん」「ぴー」
「・・・シンジ」「・・・」
「・・・バカシンジ」「・・・」なるほど,科学万能の時代だわ。

碇さんも同じものを渡された。
「惣流さん」「ぴー」
「アスカさん」「ぴー」
「・・・アスカ」「・・・」

お互い,名前で呼ぶのも呼ばれるのも初めて。
二人で顔を見合わせて,ちょっと照れた。頬があったかくなる。
何だか碇さんとの距離が縮まったみたいで,ちょっと嬉しい。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
・・・ってこれ,撮影日記じゃん。カントク,ごめんなさい。
94960:2006/11/03(金) 22:08:38 ID:???

綾波さんもモノリスをもらっていた。
「シーンジっ!」「ぴー」
「シンジくん」「ぴー」
「碇くん」「ぴー」
「えーっ,なんでぇー?」ちょっと驚く,綾波さん。
「あぁ,綾波さん。普段の声だと明るすぎるんじゃない?」と碇さん。
「そっか」綾波さんは納得したよう。

ぼそっと平坦なレイの声で,呼んでみる。
「碇君・・・」
「・・・」
警報が鳴らない。このモノリスくん,微妙に絶妙かも。よしよし。

綾波さん,悔しそうに今度はアタシの名前で試している。
「アスカ」「ぴー」
「惣流さん」「ぴー」
「セカンドチルドレン」「・・・」
「赤毛サル」「・・・」 
ちょっと待ってよ。何よ,その赤毛サルって。
しかも,綾波コードには引っかからんのかい。きぃっ!
95960:2006/11/03(金) 22:09:25 ID:???

悔しいので,逆襲してみた。
「レイ」「・・・」
「ファースト」「・・・」
「人形」「・・・」
「優等生」「・・・」
「司令のひいき」「・・・」
逆襲になってないじゃん。もっと悔しくなった。きぃっ!

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
・・・って,アタシ達こんなことやってて,間に合うのかな?
96名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/04(土) 08:00:08 ID:???
オツ
97名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/05(日) 11:35:45 ID:???
98名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/05(日) 18:33:35 ID:???
オッテュ
99名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/07(火) 05:56:48 ID:???
GJ
100960:2006/11/07(火) 22:02:44 ID:???
最近,撮影の待ち時間はマネージャが持ってくるマンガにハマっている。
マンガっていいですねぇ。ニッポンの生み出した文化の極みですよ。

この間,読んだのは・・・二珠最高!クマー最高っっす!
映画化するんなら,二珠役でぜひ出たい。ドローンはイヤよ。

帰国して仕事無かったら,マンガの独語翻訳やれば?とマネージャ。
確かに,結構良いショーバイになりそう。
今のうちにいっぱい読んでおこうっと。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
・・・また,撮影ウラ話になっちゃった。ごめんなさい,カントク。
101960:2006/11/07(火) 22:03:29 ID:???
今日は,初めて私達が攻勢に出た記念すべき日となった。
もちろん,アタシが使徒殲滅の役を担った。
マグマの中に入るのは,さすがに緊張した。
D型装備と言えど,耐熱耐圧装甲が軋む音は気分的に良いものではなかった。

一度は当初予定通り使徒を捕獲したが,急に羽化を始めて電磁柵を破られたため,
殲滅へと作戦は変更された。
使徒も相当硬く,プログナイフでは歯が立たなかったが,
午前中に同居人と話していた熱膨張を思いつき,冷却液パイプを自ら切断し,
使徒の口へ突っ込んでやった。大正解だった。
完全な勝利だったが,最後の最後で弐号機を吊っているパイプが使徒に切断された時は,
さすがのアタシも観念した。
まさか,同居人がB型装備のまま,マグマに飛び込んでくるとは思わなかった。
礼をすべきだったが,アタシのプライドが許さなかった。
本当は,同居人に感謝している。ありがとう。
102960:2006/11/07(火) 22:04:30 ID:???
明日はロケに出るから,早めに準備しておいてね。とマネージャに言われた。
何処に行くのか聞くと,こともなげに「浅間山」と言葉が返ってきた。
浅間山って・・・まさか?
「大丈夫。科学万能の時代だから」
えっ?
マジっすか,マグマダイブ。ジョークですよね?
「温泉もあるし」「保険もばっちりだから」
・・・って,ちょっと待ってよ。アタシの身の上はどうなるのよ。

圧倒的リアリティ・・・ね。
ええ。結局やらされましたよ。マグマダイブ。
嫌がるアタシを無理矢理,弐号機のセットに押し込み,
そのまま,とぷん,とマグマにひたひたまで漬けられました。
ホント,熱かったです。
「OK出るまで,そのままだからね」ってちょっと待ってよ・・・。
ご丁寧に,吊ってるワイヤーを順番にちょんちょんと切断されましたし。
死ぬのはイヤ。死ぬのはイヤ。死ぬのはイヤ。死ぬのはイヤ。死ぬのはイヤ。
半狂乱でした。
こんなに焦ったのは,14年間生きていて初めてですよ。全く。
103960:2006/11/07(火) 22:05:16 ID:???

「素晴らしい」
あのシーン,カントクに褒めていただきましたが,演技じゃなくて素ですから。
・・・って,マグマダイブのシーンにならないじゃないですか。これじゃ。

あれ?温泉寄らないの?
聞いたら,
「小学生も見られる映画にするために,RとかXとか引っかかりそうなシーンは全部削る」
だって。
「あるとは言ったが,入るとは言ってない」
得意の司令ポーズで,カントクがのたまう。
あのー。カントク。確かにそうですけど,撮影しなければいいハナシじゃないですか。
・・・楽しみにしてたのに。ぶぅ。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
104960:2006/11/07(火) 22:06:03 ID:???

設定どおりの,3人での奇妙な共同生活。
ご飯できたよ,と碇さんの声が聞こえる。
わーい。ご飯だご飯だ。
碇さんのご飯はとっても美味しい。
葛城さんも同じくらい料理上手。
アタシは・・・食べられればいい程度の自己流なんで,これ以上訊かないで。
ヒトの作った料理を皆でわいわい食べるのが,
こんなに美味しい,こんなに楽しいこととは思いもしなかった。

「美味しい!」とアタシ。
「惣硫さんの口に合って,嬉しい限りですよ」と碇さん。
「あら,私も美味しいと思ってますよ?」と葛城さん。
「それ,思ってるだけじゃなくて,ちゃんと言ってくださいよ」
暖かくて,笑いの絶えない食卓。
家族,ってこんな感じなのかな。
両親を早くに亡くしたアタシにとっては,
同じ家の中に,自分以外の他の人がいるという感覚がとても新鮮だった。
105960:2006/11/07(火) 22:07:18 ID:???

え?今まで,どうしてたかって?
子役で稼いで生活して,学校はスキップにスキップを重ねて,
この歳で大学院まで出ましたよ。奨学金もらってね。
Dに進めば?って話もあったのですが,
こっちの世界の方が性に合っているようで,やめました。

その間,ずっと独り暮らしでした。
一応,法的な義理の両親はいますが,ちょっと色々ありまして,
今まで一緒に住んだこと無いんです。
・・・あ,同情するなら,カネください。
14歳ってだけで,まっとうな職業に就職出来ないんですから,アタシ。

そのせいなのか元がそうなのか,この歳にしては醒めてるね,って良く言われます。
ホントは,年相応にしたい時もあるんですけどね。人前では絶対に出しませんが。
だからこの間,碇さんの目前で泣いてしまったのは,惣流 アスカ ラングレー,一生の不覚でした。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
・・・なんで,身の上話になったんだ?日記じゃないじゃん。
106960:2006/11/07(火) 22:08:04 ID:???

今日は1日オフ。葛城さんの休肝日でもある。
普段からうるさいモノリスくんには,布団の下で鳴っててもらおう。

「惣流さんって,普段と撮影の時とでは全然違うんだね」
リビングで一緒にお茶を飲みながら,碇さんがアタシに話す。
へっ?そんなに違います?

改めて,自分の格好を見回す。
最近,この生活に慣れてきたせいか,
人前ではコンタクト必須だったのに,いつの間にかここでは眼鏡だし。
化粧もせずすっぴんで,ぱさぱさな髪の毛もゴムで一つにまとめてるだけ。
おまけに,下はジャージで上はTシャツ。

「その格好だったら,惣流さんってわかんない人多いんじゃない?」
「・・・それ,ひょっとして地味ってコトですか?」
「地味と言うか,撮影の時はあんなに華があるヒトなのに,普段は飾らないんだなって」
「ボクは,撮影の時の惣流さんがカッコいいなって思うけど」
・・・って,今はカコワルイってこと?
がーん。ショック。碇さん,そんなこと思ってたなんて。
まじいかも。これって。
107名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/07(火) 22:09:40 ID:???
オッテュ
108960:2006/11/07(火) 22:09:45 ID:???

今日,怖いことを聞いてしまった。
冗談のつもりで,何人目なの?と綾波さんに聞いたのだが,
しばらくの沈黙の後,真面目な顔で「・・・多分二人目だと思うわ」とぼそっと言われた。
「現実と役とのキャラクターがあまりにも違うと,容赦なく即,降板って噂よ」
「あなたがダメでも,代わりは沢山いるのよ」
その台詞が,アタシのショックに追い打ちをかける。

冗談じゃない。
アタシは,これからも独りで生きて行かなきゃならないんだから。
もともと仕事の少ない中,やっと入ってきたこの仕事。
何とかこの役を最後までやらなきゃ,収入が途絶える。
それよりも何よりも,あの2人との共同生活を手放したくない。

アタシは,一大決心をした。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
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109名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/07(火) 23:24:43 ID:???
ずぼらな格好で眼鏡をかけてるアスカを
想像して思わずにやけてしまった訳だが
110名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/08(水) 17:34:01 ID:???
111名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/08(水) 22:56:39 ID:???
>>109

同意。アスカには意外と似合いそうである。

112名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/09(木) 02:55:16 ID:???
投下スレからこっちに移ったのかー。
期待してます。頑張って下さい。
113名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/09(木) 03:06:24 ID:???
馬鹿な事聞くけどさ、【LAS】が付いてるアスカの日記とここのアスカの日記ってどう違うの?
114名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/09(木) 05:58:30 ID:???
あっちはLAS限定、こっちはアスカならおk、ってことじゃないのか
LAS日記はアスカの日記から派生したんじゃなかったっけ
115名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 09:19:50 ID:???
おつ
116960:2006/11/10(金) 19:11:34 ID:???

※以下,『好評撮影中!』の続きではないです。
※この曲を聴いてからどうしても書きたくなって,
※勢いでやってしまいました。すみません。
117960:2006/11/10(金) 19:12:19 ID:???

「もう,アンタと一緒の生活はごめんだわ。出て行ってやる!」
思い切りよくタンカを切ってやったが,
まさか,本当に出て行く羽目になろうとは思わなかった。
レイのヤツ,土壇場で折れると思っていたのに。
いまさら,こっちから謝るなんて出来ない。引っ込みが付かない。
ダンボールに荷物を詰めながら,うじうじと考えていた。

引っ越し当日。
引っ越し屋さんが,アタシの荷物をどんどん運び出す。
レイは姿すら見せない。当たり前だよね。
青空がまぶしい。雲が高い。
こんなにいい天気なのに,気分はとってもブルー。
頭の中でドナドナがエンドレスで流れてる。

「お客さん,行き先ここでいいんですよね?」
引っ越し屋さんの声で,我に返る。示したメモには,ヒカリの住所。
ヒカリには,数日前に事情を説明した。
その時にアタシの受入を頼んだら「いいよ,いつでも」って快諾してくれた。
本当にありがたい。持つべきものは友人だ。

・・・でも,ひょっとして,ひょっとしたら,いい口実になるかも。
優柔不断なアイツを,振り向かせることが出来るかも。
そうだ。
「あ,そっちじゃなくて,こっちの住所にしてください」
118960:2006/11/10(金) 19:13:05 ID:???

シンジの部屋は久しぶりだ。
いつも整理整頓してあって,とっても気持ちがいい。
さて,引っ越しひっこし。
唖然と立ちつくすアイツを尻目に,アタシの荷物を運び込む。

とりあえず,荷物は全部入った。ダンボールの山だけど。
疲れておなかのすいたアタシは,その隙間でポテチを食べていた。
「アスカ・・・」
「ん・・・?,あ,ポテチ?いる?」とりあえず,しらばっくれてみる。
「そうじゃなくて・・・」
「ワタシ,ニッポンゴ,ワカリマセーン」更にボケてみた。
「アスカっ!」語気が強くなる。ちっ,冗談の通じないヤツ。
「あ,コレね。急に決まったんで。ゴメンね」確信犯だけどね。
一応,コトの顛末は教えた。
119960:2006/11/10(金) 19:13:51 ID:???

「でも,それならウチの前に洞木さんのところとか,あるんじゃない?」
「んー,ぱっと思いついたのがココしかなくって。そうだね,ヒカリの家でも良かったんだ」
わざとらしく,初めて聞いたように手のひらを拳でたたく。
「あのね,ボクだって一応男なんだよ」
「でも,シンジはシンジでしょ?」真っ直ぐにアイツの目を見返してやる。
今までの付き合いから,こうすれば大抵大人しくなることはわかっている。
「・・・」
シンジはYesの返事の代わりに,深いため息をついた。
勝った。
こうして始まった同棲から,半年が過ぎようとした時に,事件は起こった。
120960:2006/11/10(金) 19:16:13 ID:???
きっかけは,1本の電話からだった。
その時,アタシは勝負下着を選ぶのに夢中になっていて,その電話には気付かなかった。
ふと見ると,シンジがやけにあたふたしている。
アタシのものを片っ端からクローゼットに放り込んでいる。
「どうしたの?」
「母さんが来るんだよ・・・父さんも一緒に。で,一晩ここに泊まるって」
「えっ?ユイさん来るの?ゲンドウおじさんも?」
「すっごい久しぶりかも。ちゃんとご挨拶しなきゃ」

Reference from DCT Wonder3 'KUWABARA KUWABARA'
121960:2006/11/10(金) 19:17:32 ID:???
アイツは自分の両手を目の前で合わせ,平謝りしながら言った。
「アスカ,とにかく一晩,どこかに行ってて。このとおりお願いだから!」
なにぃ?
自分の耳を疑った。何よ,それ?
「なんで,このアタシがココに居ちゃダメなのよ!バカシンジ!」
でも,アイツは聞いちゃいなかった。
アタシのお泊まりセットを用意し,素早くカバンに放り込むと,
それをアタシの胸に押しつけた。
そして,アタシの背を押し,玄関でサンダルを履かされると,
挙げ句の果てに家から追い出された。
かしゃん,と鍵とロックがかけられる。

「バカシンジ!!!なんでよ!!!きぃっ!!!」
玄関ドアをサンダルで蹴り続ける。・・・足,痛くなった。
でも,ここまでされるってことは・・・。
多分,これ以上,シンジも頑として譲らないだろう。
だてに付き合いが長いわけではない。

黒ゴムで1つにまとめただけの,ぱさぱさな髪
部屋着のよれたノースリーブのシャツ,そしてホットパンツ。
しかも,ぐりぐり眼鏡ですっぴん。おまけにサンダル。
この格好で,アタシに一体どこへ行けと?
そして,アタシは途方に暮れる。

Reference from DCT Wonder3 'KUWABARA KUWABARA'
122960:2006/11/10(金) 19:19:02 ID:???

「大丈夫よ,アスカ。うちにおいでよ」
電話の向こうのヒカリの頼もしいコトバに,思わずうるうるしてしまった。
さて,どうやって行こうか。歩ける距離じゃないし,電車はパスしたい。
こんな格好で公衆の面前に晒されるのは,オトメゴコロ的には絶対NG。

カバンの中には,アタシの財布がちゃんと入っていた。
でも,中身はそのままだった。タクシー乗れないじゃん,バカシンジ。
なるべく知り合いに会わないよう,こそこそと駅へ向かった。

「ア,アスカ,どうしたのその格好ぉ?」
ヒカリの肩が揺れている。必死に笑いを堪えている。
「それ以上言わないで,ヒカリ」
アタシは,ヒカリを手のひらで制する。
「自分でも,へっぽこだと思ってるんだから」
123960:2006/11/10(金) 19:19:48 ID:???

「さ,今日は飲もっか」一升瓶が目の前に置かれる。
飲みながら,一晩中ぐだぐだとお互いのレンアイを語った。
「そうよねぇ,オトコってそういうところずるいよね」
「でも,ヒカリそういう目に遭ったコト無いでしょ?」
「ま,そりゃそうだけど・・・ね」
「・・・のろけかい?それは?」
最後のほうには『アイとはなんぞや?』なんて,
訳のわからんハナシをしていたような気がする。

目が覚めると,もうお昼をとっくに過ぎていた。
「アスカ,おふろ入っているよ」
さすがヒカリ。お風呂の温度までアタシの好みを憶えてくれているとは。
「着替え,ある?」湯船に鼻までつかるアタシに,ヒカリが声をかけてくる。
「ん,たぶん大丈夫だと思う」
アイツのことだ。多分ブラもショーツもカバンに入ってるはずだ。
あのヘンタイめ。

「アスカ,もう帰っちゃうの?」人差し指をくわえるヒカリ。
「ん・・・一晩って言ってたから。心配すると思うし」
「電話すればいいのに」
「それはダメ,はっきりケリつけなきゃ」
ヒカリに見送られ,洞木家を後にする。
124960:2006/11/10(金) 19:20:47 ID:???

でも,本当は不安だった。押しかけたのはアタシのほうだ。
出て行け,と言われたらどうしよう。
まだ,何もされていないし,してもいないのに。

人間,おなかが空くと不安になる,と何かで読んだことがある。
途中,点心が美味しそうだった。肉まんを2個買う。

いよいよ,ウチの玄関前まで来た。
おなかが空いたので,とりあえず肉まんにかじりつく。うん,んまい!
そして,一回深呼吸をしてから,インターホンを鳴らす。
なかなか,アイツが出ない。ひょっとして,アタシだから?
ポケットの中の合い鍵を探す。このままで終わらせてやるもんか。

Reference from DCT Wonder3 'KUWABARA KUWABARA'
125960:2006/11/10(金) 19:21:37 ID:???

「ふぁふぁいま,ふぉれほみやへ」
おみやげの肉まんをシンジに渡して,何事も無かったようにソファに座る。
「暖かいうちに食べたほうが,美味しいよ」
もぐもぐしながら,あさっての方を向いてアイツに話しかける。
心臓がバクハツしそうになりながら。

「アスカ・・・ごめんね」
ソファの背をはさみ,アイツがアタシを後ろから抱きしめる。
「ちょ,ちょっとシンジ,何すんのよ!」
予想外の行動に,驚く。初めて抱きしめてくれた。
不安のどきどきが,別のどきどきに変わる。
ココにいていいの?ねぇ?

「家に電話するから,そばに居てくれる?」
「何で?」
「アスカと一緒に居ること,話すよ」
「・・・アタシが出て行ったイミないじゃん」
そう言いながら,自然に頬がゆるむ。

いいのね,ココにいて。
・・・ずっと,そばにいたい。これからも。

Reference from DCT Wonder3 'KUWABARA KUWABARA'
126960:2006/11/10(金) 19:34:40 ID:???

別視点で同時展開してみました。
リンク先のスレをお借りしています。
参考:
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1123423924/952-958
127名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/11(土) 15:10:31 ID:???
>>126
おーつ、もう少しだけ日記っぽくしてくれると嬉しいかも。
同時展開は読んでるこっちも楽しいんですが、向こうはLASで荒れる人が居るらしいことをお知り置きを。
128名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/11(土) 15:22:27 ID:???
正直面白いがシンジの方は向こうでも言われてる様にシンジの心情変化が急過ぎるw
129名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/12(日) 21:33:52 ID:???
>>126
ドリカムですな。この曲をエヴァに結びつけるとわ、すげえです。
130名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/14(火) 01:00:48 ID:???
おつ
131名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/15(水) 22:37:51 ID:???
132名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/16(木) 20:50:00 ID:???
GJ
133960:2006/11/17(金) 21:41:31 ID:???

>>108
先日,日記に一大決心をしたとは書いたものの,
実は,未だそこまで踏み切れていない。
もう少し,もう少しだけ,この居心地のいい空気を吸っていたい。
14年間,人様から見れば,あんまりいいコトなかったのだから,
これくらいだったら,神様も許してくれると思っていた。

でも,カントクは許しちゃくれなかった。

最近,確かに,アタシのシーンでの撮り直しがとっても多い。
台詞をとちったとか,ボケたとかじゃなくて。
カントクと副カントクが撮ったフィルムを見て,
「これは,ツンが足りないんじゃ?」とか,
「デレ過ぎじゃないか?」とごそごそハナシを始めると,
大抵,撮り直しを食らう羽目になる。
他の出演者の視線が痛い。うぅ。ごめんなさい。

っにしても,ツンって?デレ?・・・って何?
誰かアタシに教えて欲しい。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
134名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/18(土) 10:50:46 ID:???
135名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/18(土) 11:28:15 ID:cHJ2Fupf
オッテュ
136960:2006/11/18(土) 19:32:08 ID:???
>>133

「惣流君。君には失望した」
「わざわざ条件の合うチルドレンを世界中から選別したのに,この程度とは,な」
「君には『ツンデレ』が無い。これは,この役を演ずるには,必要不可欠なものだ」
「君には猶予を与えよう。さもなければ・・・代わりを探すまでだ」

今までの人生に無いくらい,深い深い溜息をつく。
カントクから直々の呼び出しを食らったと思えば,いきなりこんなことを言われた。
アタマの中には「ツンデレ」と「降板」の文字がぐるぐる廻ってる。
わかってますよ,カントク。
イメージが違いすぎるのは,自分でも十分承知していますから。
でもアタシは,ただ単にもっと強気で意地っ張りでプライドの高い,
『アスカ』になれば良いと思っていたのだけど,どうもそれは違うらしい。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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アタシ,役降ろされそうだけど・・・。
137名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/19(日) 03:18:27 ID:???
シンジの日記スレがなくなってるな
138名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/19(日) 03:36:17 ID:???
139名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/19(日) 17:17:48 ID:???
オッテュ
140名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 07:58:20 ID:???
おつ
141960:2006/11/24(金) 19:03:15 ID:???
>>136

今日,初めて学校へ行った。

今まで,アタシは『学校』という場所でロクな目にあったことが無い。
この契約上,どうしても学校には行かなければならなかったけど,今まで延ばし延ばしにしていた。
でも,降板のコトバさえ告げられたアタシには,もう選択の余地は無かった。

昨晩,明日から学校へ行くことを碇さんと葛城さんに伝えると,二人ともとても心配してくれた。
普段の会話から,なんとなくアタシが学校へ行きたくないことを悟ってくれていたようだ。
ネイティブじゃないアタシには,二人の機微がとても助かる。

「『アスカ』,大丈夫?」 朝食の席でも心配された。
「ええ,大丈夫ですよ。・・・たぶん」 
「登下校は一緒にいるし,クラスも一緒だから,何かあったらすぐ言ってね」 
碇さんって,ホントに優しい。
「・・・ま,綾波さんも一緒のクラスだし,心配ないよ」 
げ。それ,一番心配かも。
「そ,そうなんですか,安心しました」 動揺が顔に出ないよう,相づちを打つ。
142960:2006/11/24(金) 19:04:23 ID:???

さて,戦闘準備だ。

今までの経験から,極力地味に目立たぬよう学校行きの支度を整える。
頭の中心線から髪をクシでぴしっと分け,2本にまとめて付け根から三つ編みにする。
本当は周囲と溶け込むよう黒く染めたかったけど,役柄上,それはダメって言われた。
せめて,格好だけは地味にジミに・・・。
コンタクトは外し,地味専用の無難なメガネに替える。
制服を着るのは初めて。だけど,皆と一緒なら目立つことはないだろう。
姿見の前でくるり,と一回転する。
スカートの丈をチェック。短すぎもなく長すぎも無く,OK。
どこからどう見ても,『普通の』14歳,中学生に見える。

鏡に映った自分を見て,無理に背伸びしていた昔を思い出し,ちょっと暗い気持ちになった。
143960:2006/11/24(金) 19:07:36 ID:???

フスマをノックする音がする。
「『アスカ』,そろそろ時間だよ」 碇さんだ。
鞄を持ち,自室を出る。

リビングには,朝食を終えた葛城さんもいた。
制服に着替えたアタシを見た途端,目が点になっていた。
「『アスカ』,ど,どうしたの?」 二人がハモる。
えっ?アタシ,何かヘン?
「それって・・・」 碇さんがアタシを指さしたまま,絶句する。
唖然とする葛城さん。
そういや,この姿を見せるのは初めてかも。
「あ,向こうの学校に通っていたときは,このスタイルだったんです」
アタシはこの時,二人の反応の原因を大きく勘違いしていた。
もっとも,このことは後々になって気づいたのだが。
144960:2006/11/24(金) 19:09:09 ID:???

登校途中,周囲の人たちがアタシの方を見てる気がする。
いや,気がする,ではない。
見てる。
見て見ぬふりをしているだけだ。

こそこそと囁く声が,セミの鳴き声に混じり聞こてくえる。
「あの人,碇さんと一緒の女の子,アスカ役の・・・」
「え,全然違うじゃない,あれで・・・」
「単にクォーターってだけで,役もらええたんじゃ・・・」

周囲からの興味と妬みの入り交じる視線。
でも,こんなことは今までも幾度となくあったことだ。
もう慣れっこだ。いちいち,気にしちゃいられない。
145960:2006/11/24(金) 19:10:07 ID:???

教室にいたのは,当然,同級生役の人ばかりだった。
殆ど,初めての人ばかりだ。一応,全員の前で挨拶をする。
「『惣流・アスカ・ラングレー』役の惣流です。よろしくお願いします」
ぺこり,と日本風におじぎをする。
良かった。昨晩の練習どおりに出来た。

一瞬の沈黙の後,教室にざわめきが走る。
碇さんに至っては,やれやれといった表情をしている。
へっ?何か,おかしなコトした?アタシ?

窓際の席に,包帯ぐるぐる巻きの綾波さんを見つける。
「どうしたんですか?そのケガ?」 一応,心配しているように話しかける。
「・・・あんたバカ?」
はぁっ? 
・・・って,ソレ,アタシの決め台詞じゃん。
「なんで,バカ呼ばわりされなきゃならないんですか!」
「バカだからよ」 ぼそぼそと答える綾波さん。

チャイムが鳴る。先生が教室に入ってくる。
席に戻っても,アタシには納得いかなかった。
146960:2006/11/24(金) 19:10:56 ID:???

ツンデレ・・・カントクの望むもの・・・それは永遠の謎・・・。
なんて考えながら,撮り待ちでセットに寄りかかっているアタシに,綾波さんが近づいてくる。
学校での事もあって,今はちょっとお話ししたくない気分。
アタシは目線が合わないよう,顔を伏せて自分の足先を見ていた。
綾波さんはそんなことに構うこと無く,微妙に距離を取り,同じようにセットに寄りかかった。
アタシの隣で目線を宙に泳がせながら。

「ねぇ?アナタ,降板ってハナシ,本当?」
綾波さんが,ボソリと独り言のように話す。
一瞬,息をのむ。
「・・・どこで聞いてきたんですか,そんな話」 
アタシは驚いて,綾波さんの方を見た。
でも,アタシの反応に綾波さんは特に驚くこともなく,そのまま何も無い空間を見ていた。
「ハナシも何も,あちこちでウワサになってるわよ」
帰って来た返答に更に驚く。アタシは声すら出ない。
何よ,それ。

「・・・私から見ても『アスカ』に見えないもの,惣流さんって」
無言のアタシの頭に横殴りされたような衝撃が走る。がんっ,と。

「・・・綾波さんみたいに出来れば良いんでしょうけどね」
それだけを言うのが,精一杯だった。
綾波さんは,無視しているのか無関心なのか,アタシの嫌味なんて気にも留めていなかった。
「ほら,素がすぐに出るでしょ?そこが違うのよ,アナタは」
「私も3人目にならないよう,努力してるもの」
綾波さんはボソボソと続ける。
確かに,今の綾波さんは会話の中身を除けば,万人のイメージする『綾波レイ』そのものだ。
147960:2006/11/24(金) 19:11:43 ID:???

「お互いに本名も明かさず,私生活まで役になりきる。このことがあってこそ,この映画は成立するの」
「私はそう信じている,そう・・・カントクを」
「カントクに死ねと言われたら,今なら本当に死ねるかもしれない。私は」
「惣流さん,シンジのことを考えるとアナタには代わって欲しいけど,
このまま最後までいて欲しい気持ちもあるのよ・・・二律相反ね」
「じゃあね,・・・また会えたらだけど」

・・・きいっっっっっっっっっ!悔しいっ!
けど,図星だ。何も言い返せないくらいに。
アタシも,自分では役者の端くれだと思っていたけど,綾波さんのような覚悟までは無かった。

昔,自分なりにベストを尽くそうとしたことがある。
でも,結果はさんざんだった。特に,人間関係は最悪の結末となった。
それ以来,アタシは『他人が期待する自分』というものを適当に演じることで今まで生きてきた。
処世術と言えばそれまでだけど,14歳が独りで生きていくためには仕方無かった。
今回はそんな半端なことじゃダメってこと・・・か。
148960:2006/11/24(金) 19:12:36 ID:???

「ただいま・・・」
ジオフロントからの帰り道,足取りは重かった。やっと家に着いた。
「おかえり・・・って何か疲れてない?惣流さん,じゃなくって『アスカ』?」
碇さんが,アタシの顔を心配そうに覗き込む。

リビングのソファに,埋もれるように座る。ふぅ,疲れた。
「ダージリンでいい?」
「あ,はい。すみません」
碇さんが暖かい紅茶を入れてくれる。一口飲み,少し落ち着いた。
降板なんて,この業界じゃ割と普通なことなのに,いざ自分のコトになるとどうしても顔に出てしまう。
碇さんに心配かけさせてしまった。アタシの莫迦。

「ねぇ,碇さ・・・シンジ,ツンデレって何?」
シチューをことこと煮込んでいる碇さんの後ろ姿に,話しかける。
すると,碇さんは一瞬硬直した後,だんっと振り向いた。
目はどんぐり目,口をぱくぱくさせて。
どっしぇっー,って表現が一番正しいと思う。うん。

「そ,惣流さん,そんなことも知らないで演っていたの?」
え・・・?
え?ニッポンでは,そんなに当たり前のことなの?
ひょっとして,アタシだけ?知らないの?
碇さんのリアクションに,アタシは奈落の底に突き落とされた気持ちになった。

「ツンデレ・・・でも,ここで説明するとボクが酷い目に・・・」
碇さんが難しそうな顔をして,ぶつぶつ独り言を言ってる。
「い,碇さ・・・ん?」
ほんのちょっと,ショックから立ち直ったアタシが話しかけるが全く聞いちゃいない。
そんなに難しいことなのか。ツンデレとは。
149960:2006/11/24(金) 19:13:45 ID:???

頭の中があっちへ行った碇さんを後に,自室にこもる。
ホントはこちらから連絡しちゃいけないんだけど,こっそりマネージャに電話してみた。
「ツンデレって,何?」
電話の向こうで,呆れた空気が流れるのが解る。でも,怒っちゃダメ。
「・・・ググってみれば?」 ほう,なるほど。その手があったか。
で,実際にやってみた。
『ツンデレ の検索結果 約 4,330,000 件』
げっ。思いのほか多い。
仕方ないので,片っ端から読んでいく。ふむふむ。
全てを読み終わった時には,空が既に白んでいた。

徹夜明けで身体はぼろぼろだけど,頭の中は妙に冴えていた。
ナチュラルハイってヤツね。
で,
結論その1「ツンデレとは(以下略)」
結論その2「アスカはツンデレに分類されていない(Wikipedia上ではね)」
・・・ってことは。
どうりで皆,変な顔をするわけだ。納得した。

わかったわ!カントク!ツンデレの意味!
いつもアタシを護ってくれている!いつもアタシを見ていてくれている!
・・・かな?
間違ってないわよね・・・どきどき。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
・・・ところでアタシの日記,何人のヒトが読んでるの?CMになってるの?
150名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/24(金) 20:02:52 ID:???
GJ!!!
かなり面白いです
楽しみにしてます
151名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/24(金) 20:58:22 ID:???
いちご100%の東城スタイルのアスカ見てえ
152名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/24(金) 21:15:57 ID:???
三人目ノシ

イイヨー(・∀・)
153名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/25(土) 01:43:26 ID:???
オッテュ
154名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/30(木) 00:00:08 ID:???
おもろい。
ワクテカ
ぐっじょぶ。
155960:2006/12/01(金) 19:32:01 ID:???
>>149

今日,カントクに直訴した。
「ツンデレは理解した,もし,出来なければ役を降ろしてもらって構わない」
「ただ,1週間だけ時間が欲しい」 と。
訝しげな表情で,カントクはアタシに何故かと尋ねてきたが,
理由を話すと,こちらの心情を汲んでか一応は了承してくれた。

「では,レートはツン50:デレ50ってことで」 アタシはそう言いつつ,席を立とうとした。
「・・・譲って,ツン90:デレ10だな」 例のポーズのまま,カントクが曰う。 
「そんなっっ!」 慌てて,席に座り直す。
「ツン60のデレ40では,どうです?」  
「・・・惣流君,もう,ドイツの家も引き払って来たのだろう,帰る場所はあるのか?」
ぐっ,痛いところを突かれる。
「・・・じゃあ,ツン80:デレ20では?」 アタシの最大限の譲歩だった。
「プラス・・・脱衣だな」 表情も変えず曰う。 
「えぇっ!脱衣ぃぃ!?脱ぐんですかぁぁ!?」
「それがイヤなら,今晩発のドイツ行きの便を早急に手配させよう」 有無を言わさぬ雰囲気が漂う。
「・・・」 「・・・」
アタシとカントク,二人の間を沈黙がしばらく流れる。

156960:2006/12/01(金) 19:32:51 ID:???

「・・・わかりました」 
葛藤の末,頭を垂れる。負けた。負けてしまった。
どうしよう・・・困った・・脱衣なんて・・・。
惣流家の家訓に従い,困ったときはとりあえず寝ることにしている。
現実逃避と言われようがなんだろうが,家訓だから仕方ない(コトにしている)。
おやすみなさい。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
でも,ひょっとしたら,R-18になるかも・・・。
157960:2006/12/01(金) 19:38:47 ID:???
>>all

960です。
まとめてで申し訳ありませんが,この場を借りてお礼申し上げます。
お読みいただき,ありがとうございます。
158名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/02(土) 00:28:03 ID:???
(・∀・)イイネー
159名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/02(土) 03:20:31 ID:???
オッテュ
160名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/03(日) 20:46:37 ID:???
うむ。アスカの中の人はなかなかカワイイ性格ですな。

今一番期待してますので、ぜひ続きよろしこです>>960
161名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/03(日) 20:57:45 ID:???
今はじめて言おう・・・


監督乙!
162960:2006/12/04(月) 18:13:55 ID:???
>>156

今日は,アタシの誕生日。
さっき,某巨大掲示板を覗いたら,「アスカ,お誕生日おめでとう!」とたくさん書き込まれていた。
板の看板まで,お祝いしてくれてる。
どうして,みんなアタシの誕生日を知っているの?なんで?
疑問がいっぱいだったけど,その時はホントに嬉しかった。その時は。

・・・けど,調べると,たまたま10年前のアニメでの設定が今日だっただけで,
単に偶然の一致だったことに気づいてしまった。
アタシじゃない「惣流・アスカ・ラングレー」が祝福されているコトに,ちょっと複雑な気持ちになった。
おそらく碇さんも葛城さんも,アタシの誕生日が今日だってコトを知らないだろうし。
やっぱり,今年も独りか。

でも,大丈夫。
実は,アタシには『足長おじさん』がいる。
事務所を通してだけど,節目節目には必ず何らかのお祝いが届く。
それだけじゃない。
奨学金で足りない部分の学費や,仕事の少ない時の生活費など,少なからず援助を受けた。
そして,金銭の面だけじゃない。アタシが窮地に立つと,その見えざる手で必ず助けてくれた。
一度も会ったこと無いのに。
お礼をしたくて,いつも事務所に連絡先を聞くけど,本人の希望でそれは出来ないって,教えてくれない。
ただ,こちらからのメッセージは届けてくれてるみたいだけど。
今年はニッポンにいるけど,届くかな。
163960:2006/12/04(月) 18:14:43 ID:???

お祝いが届いた。
さっきマネージャが来て,手渡してくれた。ちゃんと届いた。ちょっと驚いた。
中に入っていたのは,上品な感じのブラウスとちょっとクラシックな丈の長いスカート。
毎回,良い趣味だとつくづく思う。サイズもぴったり。
ありがとう,アタシの『足長おじさん』
これだけで十分幸せよ。

多くを望むと,無かった時の落胆も大きいことは身を持って知っている。
もう,あんな思いをするくらいなら望みはしない,期待もしない。

「ただいま」「ただいま」
碇さんが帰ってきた。葛城さんも。二人一緒とは珍しい。
「おかえり・・・って,何?その大荷物?」
二人とも両手にいっぱいの食材,そして大きな紙袋。
「だって,今日,誕生日でしょ?『アスカ』」
「今晩はごちそうよ,期待してちょうだい,ね」
え?
164960:2006/12/04(月) 18:15:57 ID:???

「あのー,ソレって役の上でのハナシですよね・・・」 
アタシは冷めた声でぽそっと言った。
語尾がフェイドアウトするくらい小さな声で。
二人は顔を見合わせ,一瞬の後,二人とも大笑いした。
「違うわよ,『アスカ』。これは『惣流さん』あなたの誕生日のお祝いよ」
「碇くん,すごかったのよ。カントクに『アスカ』じゃなく『惣流さんの』誕生日をやらせろって。自分の降板まで懸けてね」 
笑いすぎたのか,目尻の涙を拭う葛城さん。
「そんな,葛城さん,わざわざ言わないでくださいよ」 ちょっと照れ気味の碇さん。
えっ?今なんて?

「はい,これ,プレゼント」 
リビングで,葛城さんはまだ茫然自失気味のアタシに,綺麗にラッピングした大きな箱を手渡した。
「碇くんと二人で見立てたの,気に入ってくれると嬉しいけど」
ラッピングをほどくと,中には・・・渋いチャコールグレイのカーディガンが入っていた。
しかも,有名どころのカシミア100%,一体いくらすんのよ!これって!
「・・・」 もう,コトバが出なかった。
葛城さんに目を合わせたまま,カーディガンを抱きしめる。
ぽろぽろと涙がこぼれた。最近,涙腺がとっても緩い。ハナをすする。
「・・・ありがとう・・・ございます」
それだけを言うのが,精一杯だった。
165960:2006/12/04(月) 18:16:44 ID:???

それから,続々と人が来た。綾波さんも,他の出演者の方もスタッフも。
料理も豪華豪華,そこんじょそこらのディナーなんてかなわないくらいに。

「今日が誕生日なら私のほうが先輩ね。これから私のことを『綾波さま』と呼びなさいね」
「あら,この世界じゃ,入った順番で先輩後輩が決まるんでしょ?アタシ,赤ちゃん時分からモデルやってるんですよ。綾波さんこそ,アタシのことを『惣流さま』とお呼びくださいね」
「・・・」 じとっと上目遣いで睨む綾波さん。 
ふっ,勝ったな。へへん。

綾波さんの手でケーキにロウソクが立てられる。何故か5本。
「なんで5本なの?」
「あら,カズ数えられたの,この赤毛サル」
きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!
一触即発のアタシ達。火花が散る。
・・・見かねた碇さんが,あと9本足してくれた。

リビングの電気が消され,Happy Birth day to Asuka〜と合唱が始まる。
ロウソクの明かりの前で,アタシは涙を堪えるのに必死だった。
皆の合唱が終わり,そして,14本のロウソクを一気に吹き消す。
「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでとう!」
拍手,拍手とお祝いのコトバ,ことば。
何だか,補完された気持ちになった。
嬉しい,本当に嬉しい。
アタシは,今日のコトを一生忘れない,忘れられない。
みんな,ありがとう。
166960:2006/12/04(月) 18:17:30 ID:???

「なんで,赤城さんの誕生日はお祝いしなかったんですか?」 何気なく聞いた。
赤城さんは,ぴくっ,とこめかみを引きつらせて,煙草の煙を天井に向かって深く吐いた。ため息のように。
「・・・女は30過ぎたら,もう誕生日って無いのよ」
目がマジだった。やばっ!
触れちゃいけなかったのね。ソコは。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
みんな,本当にありがとう!
167名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/04(月) 18:23:58 ID:???
おつ
168名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/04(月) 18:41:25 ID:???
最高に面白い
がんばってください
169名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/04(月) 21:26:15 ID:???
こういう視点はおもしろいです
170名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/04(月) 21:42:40 ID:???
(・∀・)イイ!
171名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/04(月) 22:59:10 ID:???
作者さん乙&アスカさんおめ
>>155
によると今度の劇場版では2割もデレのあるアスカが見られるのか
超期待
172名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/04(月) 23:26:18 ID:???
ちょwwwなんかリッちゃんリアルでオモシロスwwwwww
173名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/04(月) 23:29:37 ID:???
オッテュ
174名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/07(木) 00:25:15 ID:???
おつ
175名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/07(木) 07:21:54 ID:???
はたして足長おじさんの正体は!?

…正解当てちまったら作者様が続き書くの困るだろうから、犯人探しはやめよう。
176名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/07(木) 20:18:53 ID:???
日記と名のつくスレ一覧(順不同)

アスカの日記って何か教えやがって下さい
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1099727786/
渚カヲルの日記
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1119309531/
葛城ミサトの日記 2冊目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1137160023/
【LAS】アスカの日記 8冊目【LAS】
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1146989124/
綾波レイの日記 3冊目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1155143378/
マナのまなまな夢日記 3冊目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1163600275/
碇シンジの日記 3冊目
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1163926547/
エヴァ量産機の流浪日記
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1153743226/
霧島マナの日記
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1131333238/
177名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/08(金) 01:34:28 ID:???
>>175

われわれはただドロリと待っていればよい
178名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/08(金) 03:25:57 ID:???
>>166
リツコは赤木
179960:2006/12/08(金) 18:56:56 ID:???
960です。

ありがとうございます >>all
>>175 ご配慮,感謝します。
>>178 すみません。以後気をつけます。

それでは,続けます。
180960:2006/12/08(金) 18:58:02 ID:???
>>166

『明日のことは,明日考えよう』
先日,悩んだまま眠り,翌日早朝の冴えた頭で考えて,たどり着いた結論だった。
なんてポジティブなんだろう,アタシって。
自分で自分を褒めてあげたい。

さて,HoneyMoonならぬHoneyWeekだ。
悔いの残らぬよう『家族ごっこ』に全力を尽くそうと思う。

とりあえず,清楚な感じ,をイメージしながら支度をする。
誕生日プレゼントにもらった白のブラウス,長めのスカート,
そして,白いフリルの付いた可愛らしいエプロンを纏う。
言われないとわからないくらいの薄化粧。
髪も1つにまとめ,あっさりとした感じにする。
ちょっとお姉さん風に。

朝食の準備も万全。ちょっとドイツ風味だけど,大丈夫よね。
お弁当も作った。特別に大きいのを一つ。
181960:2006/12/08(金) 18:58:48 ID:???

そっとフスマを開け,碇さんの部屋に入る。
碇さんは・・・ベットの上でタオルケットにくるまり,真ん丸になって眠っていた。かわいい。
起こすのがもったいないくらい,安らかな寝顔。

そっと,耳元で囁く。
「シンジ,朝よ,起きて・・・」
そして,そのまま・・・耳の端を唇で軽く柔らかくはむっとした。きゃー,やっちゃった。
ぴくり,と目を覚ます碇さん。
「おはよ,シンジ」
「・・・」
目が半分しか開いてないまま,碇さんがベッドから起きあがる。
耳先がちょっと湿っているのを,指で気にしながら。
「おはよう,惣流さん・・・って『アスカ』なんでここにいるの!?」 
焦る碇さん。時計を見て更に焦る。
「あっ,朝ご飯作らなきゃ!寝坊しちゃった。ごめんね」
「大丈夫よ,『シンジ』。アタシが全部作りましたから」
「えっ?」
「お弁当も,もう作りましたよ」 得意げなアタシ。へへん。
惚ける碇さん。
182960:2006/12/08(金) 18:59:34 ID:???

朝食。
「はい,『シンジ』あーんして」 
アタシも一緒に大きく口を開けながら,碇さんにあーんするよう促す。
まるで,赤ちゃんにご飯をあげるときみたいに。
「・・・『アスカ』,ボクのこと馬鹿にしてるでしょ?」 むーたれる碇さん。
「それは一体,何・・・?『アスカ』」 呆れたように葛城さん。
「『家族ごっこ』」 アタシはさらりと答える。

葛城さんが指先でちょいちょい,とアタシを呼ぶ。
ダイニングテーブルを挟んでのこそこそ話。
「(惣流さん。降板の噂,聞いてるんでしょ?ヤバイんじゃないの?)」
「(大丈夫です。カントクの許可得てますから)」
「(えぇー,あのカントクが!? よくOK出したわね)」
「(・・・脱衣を条件に,なんとかOKしてもらいました)」
「(えぇっー!脱ぐって,惣流さんまだ未成年じゃない,どうすんのよ!)」
「(なんとかなりますよ,多分)」

葛城さんが左手を腰に当て,やおら立ち上がった。
「シンジ君,命令よ!口を開けなさい!」
右手人差し指でびしっ!と碇さんを指さし,葛城さんが命令する。ミサトになりきって。
「えっ・・・どうしたんですか?葛城さん?」 豹変した葛城さんにきょとん,とする碇さん。
「と・に・か・く,口を開けなさい!早く!」 
さすが演技派女優,迫力満点。アルコールをも役者根性で克服しただけのことはある。
しぶしぶと,碇さんが口を開ける。
そこへ,アタシがちーゃんと飲み頃に冷ましたスープを口へ運ぶ。
碇さんが不満そうなまま,ずずっとスープをすする。
やりいっ!
183960:2006/12/08(金) 19:00:23 ID:???

一緒に登下校できるのはいいんだけど。
・・・前々から思っていたけど,ヒトから見たときに連れなのかそうでないのか,
判断のつきかねるこの微妙な距離って,一体何?

思い切って碇さんと腕を組む。そして,二の腕にきゅっとしがみつく。
コレなら,アタシの胸の感触も伝わるだろう。
いくら『家族ごっこ』とはいえ,こちらから積極的に仕掛けるのは結構恥ずかしいし,勇気もいる。
だけどアタシに与えられた期間は,たった1週間。存分に甘えなきゃ。

「ねぇ,『アスカ』,皆見てるんだけど・・・」 碇さんが恥ずかしげに言う。
「いいじゃないですか。それともアタシじゃ不満なんですか?」 
ちょっと口を尖らせて,他意無く,可愛らしく答えてみる。
「いや,そ,そんなんじゃないけど・・・」 口ごもる碇さん。
「じゃ,いいですね」 
ちょっと強引だけど,いいでしょ?碇さん?
184960:2006/12/08(金) 19:01:52 ID:???

さて,お昼だ,おべんとだ。おなかすいた。
「あれ,『アスカ』ボクの分のお弁当は?」
カバンからお弁当箱を取り出しているアタシに,碇さんが話しかけてくる。
特大のお弁当箱が碇さんの目に留まる。
「・・・まさか?」 
ピンポン。正解よ,碇さん。
逃げだそうとする碇さんの襟首を速攻で掴まえる。そしてそのまま,えい!と持ち上げる。
首根っこをつままれた仔猫よろしく,てろーんと垂れ下がる碇さん。
また,例によって,じとん,とこちらを見ている。
「逃げちゃダメよ,いつも自分で言ってるじゃない,『シンジ』」

でも,さすがにあれを皆の前でやるのは,アタシも恥ずかしい。
仔猫状態の碇さんとお弁当を両手に持って,そのまま屋上へ連れ出す。

「はい,『シンジ』あーんして」
「・・・」
「好き嫌いしちゃ,めんめよ。はい,あーん」
「・・・」
最後には空腹に屈服したのか,文句も言わず食べてくれた。
185960:2006/12/08(金) 19:03:24 ID:???

碇さんがお風呂に入って,かれこれ数分。
そろそろかな。
髪をアップにして,いそいそと服を全て脱ぐ。そして裸身にバスタオルを巻く。
「『シンジ』,背中流すわね」 返事も聞かず,バスルームに入る。
トビラを開けると,ぎょっとする碇さんがいた。
「ちょ,ちょっと『アスカ』これは何か違う!ちがうよ!」 悲鳴を上げる碇さん。
「あ,このバスタオル邪魔ですか?・・・それじゃ,外しますね」 ちょっとボケてみる。
バスタオルを外しかけるアタシに,更に慌てる碇さん。
「そ,そ,そうじゃなくて」
「冗談ですよ,アタシが背中を流したいんです。・・・いいですよね?」
「・・・」 碇さんの無言の返事は肯定と受け取った。いや,降伏かな?
かしかし,と碇さんの背中を洗う。服を着てる時と大分印象が違う。
やっぱり,華奢に見えても男の子よね。背中が広い。ちょっと猫背だけど。
「じゃあ,『シンジ』今度は前向いて」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「嘘ですよ」 くすくすと笑いながら答える。
碇さんの一つ一つの仕草が,かわいくて仕方無い。
186960:2006/12/08(金) 19:04:15 ID:???

「さ,『シーンジ』,こーこ」 
寝ころんでる碇さんの隣で,アタシは正座をして自分の膝をぽんぽんと叩く。
「・・・『アスカ』今度は何なの?」 疑いのまなこ。
アタシの『家族ごっこ』に付き合わされて,散々な目に合っている碇さんには,当然の反応。
「世の定番,耳かきに決まってるでしょ,ほら」
無理矢理,寝ころんでる碇さんの頭を膝に乗せる。その重さに何とも言えない幸せを感じる。
「ほりゃ,こちょこちょこちょ・・・」 耳かきで,かきかきとほじる。 
「・・・」 
最初は嫌がってむーたれてた碇さんも,だんだん気持ち良くなってきたのか,静かに目を閉じた。
そして,次第に表情が柔らかくなり,とうとう最後には眠りに落ちてしまった。
う,動けない。あ,足が・・・。
でも・・・『家族』ってホントにいいな。
187960:2006/12/08(金) 19:05:02 ID:???

「はい,『シンジ』あーんして」
「あーん」
碇さんも,この生活に大分慣れてくれたようだ。
一時は諦めた表情でいたけど,今ではごく普通に赤ちゃんのように口を開けて待ってる。
いつ見ても,かわいい。

「ねえ『アスカ』?寝る前にまた本読んで欲しいな」
「うん。どの本がいい?『シンジ』」

ベットに入った碇さんの横で,アタシがしばらく本を読み聞かせる。
碇さんはそのうち,うとうととし始める。
そして,碇さんが眠った後,アタシは部屋の電気を消し,
そっとフスマを閉めて,碇さんの部屋を後にする。

このまま,時が止まってくれればいいな,と思った。
でも,約束の日は,間違いなく近付いてきていた。
188960:2006/12/08(金) 19:05:48 ID:???

「『セカンド』,アナタ最近やけに,碇君にべたべたしてるわね。もう決定なの?降板は?最後の悪あがき?」
綾波さんが,傍目には判らないくらいの,薄く微笑んだ口元で話しかけてくる。口調はレイだけど。
「いいんですよ。カントクのお許しを戴いてますから」 得意げなアタシ。
「えっ,それって,アリなの?」
「期間限定ですけどね」
「・・・フェアじゃないわ」 
フェアって?・・・アタシ達,何か勝負してましたっけ?

その後,綾波さんはカントクに直訴したそうだが,ダメだったらしい。
だって,一緒に住んでないから『家族ごっこ』にならないじゃん,綾波さん。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
189960:2006/12/08(金) 19:06:35 ID:???

今日,綾波さんのうちにこっそり遊びに行った。
・・・何?この殺風景な部屋?
血の付いた包帯とクスリとビーカー。ゴミが散乱している。

と,言うかヒトが住めるの?こんなところで。
靴下の裏,まっくろになった。
綾波さんも「もうこんな生活イヤ!」と嘆いていたけど,仕方ないもんね。
あなたがイヤなら,代わりは沢山いるって自分で言ってたじゃない。
お互いさまよ。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
190960:2006/12/08(金) 19:07:21 ID:???

いつも思うのだが,初号機に見られてる気がしてならない。
綾波さんも「うん。あるある。時々背筋がざわっとするのよね」って。

ある日,碇さんに何気に同じことを聞いてみた。
「あ,それ母さんじゃないかな。・・・今日,寄らなきゃならない用事があるから一緒に行ってみる?」
へ?
碇さんに連れられ,ケージにある初号機に向かう。
丁度,頭部の側面に取って付けた様な玄関ドアがある。横には『碇』の表札。そしてインターホン。
チャイムを鳴らす碇さん。
「母さん,シンジだよ,開けて」
かしゃん,と鍵が外れ,ドアが開く。中から出てきたのは・・・碇ユイさんだった。
「シンジ,待っていたわよ」 ユイさんが碇さんを抱きしめる。柔和な瞳で,きつく。
ここの『家族』は皆,会うたびに抱きしめるのがデフォルトなのか・・・。
なんて考えていたアタシに,ユイさんがいきなり話しかけてくる。
「あなたが,惣流さんね?」 
「はい。初めまして。惣流です。碇さんにはいつも大変お世話になっています」
当たり障りのない返事をして,ニッポン風に深々とお辞儀をする。
「いえいえ,こちらこそ息子がいつもお世話になりまして・・・」 
と言いつつ,ユイさんの瞳が急に鋭くなる。
アタシのことをつま先から頭のてっぺんまで,値踏みするように見ている。
あれ?この感じどこかで・・・。
191960:2006/12/08(金) 19:08:08 ID:???

「ま,こんなところで立ち話も何だから,入って入って」
一転して柔和な瞳に戻ったユイさんが,アタシ達二人を招き入れる。
中は・・・畳敷きの4畳半に小さめのキッチン,奥のほうにユニットバスかな。
丁度,初号機の目の部分が窓になっている。
あとは,壁の一方にスイッチやらボタンやらいっぱい付いている制御卓のようなものがあるのと,
遠くから聞こえる機械の低い駆動音を除けば,普通のアパートと何の変わりもない。

「あ,それは絶対触らないでね」
アタシが制御卓をしげしげと眺めていると,お茶を持ってきたユイさんが言う。
「あのー,これ,何ですか?」
「あ,それ,初号機の動作をコントロールするのよ」
ユイさんが,制御卓から生えているレバーの一つをちょん,と動かした。
急激に機械の駆動音が高まる。大量の水しぶきと共に,初号機の左手が水面上に現れる。
「ね,すごいでしょ? これで,私のシンちゃんに悪い虫が付いたら,叩き潰すの」
にっこりとユイさん。
あれ?・・・ひょっとして?
「!?」 
目線の正体に気づいたアタシは,どう返事をすればいいのか判らなかった。
こんな時は・・・笑えばいいのかな?
192960:2006/12/08(金) 19:08:55 ID:???

ちゃぶ台を囲んで,嫁姑の間に似た緊迫した空気が流れる。表面上はにこにこしながら。
碇さんだけがそんな空気の中,ホントににこにこしている。
猫舌のアタシは,ユイさんの入れてくれた,超熱いお茶を一気に飲み干すと,
碇さんを促し,そそくさとユイさんちを後にした。
可愛い可愛い1人息子がガールフレンドを,ましてや,同居までしている女の子を連れてきたら,
・・・普通,面白く無いわよね。取られたみたいで。

そして,ふと,思いついた。
「・・・!?」 
ひょっとして,ひょっとしたら?
193960:2006/12/08(金) 19:09:42 ID:???

ケージにある弐号機の正面に立つ。
そして,周囲に誰も居ないことを確認し,意を決して声をかける。
「ママ・・・」 
普通の声で呼んだつもりだったが,消え入るような,か細いつぶやきにしかならなかった。
何年ぶりだろう?ママって呼んだのは。

でも,何も返事は帰ってこなかった。当たり前のことだけど。
ちょっとだけ期待していた分,ちょっとだけ悲しくなった。

落胆したアタシがケージを離れようときびすを返したその時,
背後で巨大な機械が急激に動くような音がした。
振り返ると,拘束具の隙間から弐号機の双眸が2組,鋭く光っているのが見えた,ような気がした。
が,次の瞬間にはもう弐号機は何事も無かったように佇んでいた。
・・・まぼろし,か。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
194960:2006/12/08(金) 19:10:29 ID:???

今日の撮りはプラグスーツ姿。
実は結構,恥ずかしい。
殆どの部分が肌に密着しているので,体のラインが丸わかりしちゃう。
胸の部分は設定どおりなのか,以前,さばを読んで事務所に出したプロフィールを参考にしたからか,
パットの部分だけ"ちょっと"すかすかしてる。
ホントに"ちょっと"よ。
でも,外から見る限りは,美しいボディラインだと自分でも思う。ふふん。

結局,これってスキンスーツなのよね,なーんて,ほけらっと考えていたら,
綾波さんが,つかつかとアタシの目の前に来て,人差し指でつんっとアタシの胸を突っついた。
アタシの赤いプラグスーツの胸パッドが,ぽこんっ!と大きく凹む。
「ちょっと!綾波さん!いきなり何するんですか!」
凹んだ胸を腕でとっさにかばい,後へ身を引く。
「中身無いじゃない,・・・貧乳,うそつき」
くすくすっと小悪魔のような笑みを浮かべて,彼女はアタシが文句をいう間も無く去って行った。
・・・きぃっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぃ!
これは,設定どおりなの!好きこのんでやってんじゃないのよっ!

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・・・熱膨張,やってみようかな。マジで。
195960:2006/12/08(金) 19:11:16 ID:???

さて,今日は・・・この間の復讐だ。
こっそり,綾波さんに近づき,いきなり後ろから両胸をわしっと掴んでやる。
げっ・・・ま,負けた。
ちゃんと中身入ってる・・・それにアタシよりでかいじゃん。きぃっ!

冷ややかな瞳で,肩越しにアタシを見下す綾波さん。
てっきり,ぶたれるかと思った。
でも,綾波さんはそのまま,つい,と視線を戻し,
「あんっ!やめてっ・・・もう,セカンドったらこんなところで・・・」と悶えた。
大きく,アノときの声で。
へっ?
そっちの気は全く無いですよ。別に揉んでもつまんでもいませんし,アタシ。

綾波さんは,アタシなんて見ちゃいなかった。
その目線の先には・・・碇さんが居た。

しばし,空気が凍り付いた後,当の碇さんは何も見なかったように,
ぎくしゃくとその場をフェイドアウトしていった。
それを無言で見送るアタシと綾波さん。アタシが胸を揉みしだいた姿勢のまま。
196960:2006/12/08(金) 19:12:04 ID:???

「・・・さてと」
いつもの口調に戻った綾波さんが,アタシに言う。
「ちょっと,セカンド。いつまでワタシの胸つかんでいるのよ」
綾波さんが語気を強め,アタシの手を汚いもののように振りほどく。
えっ?

「あれ,絶対誤解してるわよね,碇くん」 くすくすっと口の端で綾波さんが微笑む。
「碇くん,潔癖症気味だからね。取り返しつかないかもよ」

はめられた,と気づいた。が,時すでに遅し。
・・・碇さんに見られた。もう,生きていけない。
197960:2006/12/08(金) 19:12:50 ID:???

撮影所のでのこともあり,家に帰ってからも,
碇さんとアタシの間に会話はなく,気まずい雰囲気が流れていた。

・・・沈黙を先に破ったのは碇さんだった。
意を決した様にアタシに話しかける。
「・・・あのっ,『アスカ』,人の性癖には口出すつもりは無いんだけど
・・・アレは人のいないところでやった方がいいと思うよ」

・・・あぁ,やっぱり誤解されてる。
とりあえず,言い訳を考えた。
「あ,あれはね,スキンシップなの,割と向こうじゃ普通よ,こんな風に」 
そう言ってから,アタシは碇さんをハグして頬と頬をくっつけた。
向こうではこんなこと無かったのに,全身が心臓になったようにドキドキした。
あれ?なんでだろ?
でも,碇さんに悟らせないよう,平然を装う。
「そ,そうなの?」 碇さんも緊張しているのが伝わってくる。

前,碇さんに抱きしめてもらった時と同じように,どれくらいそのままだったか憶えていない。
「はーい,カットぉー,そこまでー,はい,お疲れさまぁー」
いつの間にか帰宅した葛城さんに,この心地良い時間を引き裂かれる。うーしくしく。
198960:2006/12/08(金) 19:13:37 ID:???

「ところで,アスカ,綾波さんと付き合ってるって本当?」 
冷蔵庫をお尻で閉め,ビールを開けながら葛城さんが言う。

あの上品だった葛城さんが・・・人間変われば変わるもんだなぁ,感心感心。
・・・じゃなくって,今なんて言いました?誰と誰が付き合ってるって?

「だって,今日,撮影所で乳繰ってたって聞いたわよ」
げ,何それ?何で知ってるの?
「だ,誰から・・・聞いたんですか?」
「綾波さん」
「は?」 アタシは二の句が継げなかった。
こっちが甘かった。捨て身の攻撃に出やがった。あのアマ。

いつの間にかアタシの腕の中から,碇さんは逃げ去っていた。
部屋のスミで体育座り,疑惑のまなこ,白い目でアタシを見ている。
「・・・ボクの気持ちを裏切ったな」

・・・って,ボクの気持ちって?えっ?裏切ったって?
ちょ,ちょっと待ってよ・・・。
あ,引きこもっちゃった。

・・・これ書き終えたら,回線切ってちょっと吊ってきますね。アタシ。
さよなら。

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アタシが氏んでも日記スレは残るもの・・・。
199名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/08(金) 20:54:59 ID:???
オッテュ
200名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/08(金) 21:50:49 ID:???
(・∀・)オツ!
201名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/08(金) 22:45:43 ID:???
貧乳・・・

 ボクの気持ちを裏切ったな>>960
202名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/09(土) 03:54:26 ID:???
見切った!
貴様の正体はだぶだぶだ!
203名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/09(土) 15:58:40 ID:???
GJ!
204名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/10(日) 16:10:59 ID:???
おつ
205名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/11(月) 16:48:29 ID:???
超乙
206名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/12(火) 20:19:56 ID:???
207名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/13(水) 22:39:51 ID:???
960氏に多謝!
208960:2006/12/14(木) 17:53:09 ID:???
>>198

 ニュースが流れる。

 「今朝,第三新東京市**区のマンションの一室で,
そこに住む中学2年生の女子生徒(14)が自室で首を吊っているのを,
同じ中学2年生の男子生徒(14)が発見し,警察に通報しました」

 「女子生徒は既に氏亡しており,氏因は頸部圧迫による窒息氏でした。
遺書などは無く,第三新東京市警察本部では,いじめや虐待などの事実が無かったかどうか,
同居している男子生徒及び同じく同居の女性(29),また学校関係者から詳しく事情を聞くと共に,
自殺の背景について詳しく調べる予定です」

 「次のニュースです・・・」

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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209名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 20:30:22 ID:???
あ、アスカああああああああ
210名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 23:10:00 ID:???
>>208
偽者にしては手が込んでるな
211名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 23:26:13 ID:???
オッテュ
212名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 23:41:14 ID:???
縊死ってのは窒息より頚骨の骨折(脱臼)によるケースの方が圧倒的に多いはずだけどね。
213名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/15(金) 01:16:26 ID:???
窒息氏 乙
214960:2006/12/15(金) 05:57:58 ID:???
>>208


って,ニュースまで流されました。自分で見てて,びっくりしましたよ。
あの後,電話がじゃんじゃん鳴って大変だったんですから。
全く,日記(?)を真面目に取らないでください。
一体,何処までリアリズムを追求するんですか?カントク?

で,
まず,碇さんにをウソ付いたことを謝って,コトの顛末をそのまま伝えた。
胸のコトは誤魔化したけど。

「本当に?」 訝しげに碇さんがアタシを見る。
「ホントよ」 一度失った信頼を取り戻すのは大変だ。
「・・・じゃあ『アスカ』のこと信じるよ」 ほっと,胸をなで下ろす。良かった。

「『アスカ』おなかすいた・・・」
「ん,何がいいの?『シンジ』」
「『アスカ』の手作りで,それを食べさせてくれるなら,何でもいい」
もう,ホントはアタシが甘える予定だったのに。この甘えんぼめ。
でも,かわいいから特別に許す。『シンジ』

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215960:2006/12/15(金) 06:06:55 ID:???
960です

>>all  いつも,まとめてですみません。ありがとうございます。
>>201 すみません。綾波さんがきつく言い過ぎたようです。寄せて上げてのBなら,貧ではないですね。
>>208 一応,本人です。トリップ付けたほうが良いですか?
>>212 そうなんですか。確かに全体重が首にかかりますよね。これは知らなかったです。勉強になりました。

正直,前段がこんなに長くなると思っていませんでした。
まだ出てきていないキャラが沢山ですので,しばらくこの状況が続きそうです。
何とか,前編公開前までには終わらせたいですが,スケジュール的に厳しいです・・・。
216名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 13:58:51 ID:???
おお、遂に下の名前キタ
GJ
217960:2006/12/18(月) 19:52:42 ID:???
>>214


この役をもらってから,やたらと写真撮影の機会が多い。
普通なら,雑誌のインタビューに合わせてとか,宣伝用スチールくらいなんだけど。
グラビアなんだか知らないけど,とにかく着替え,着替えに次ぐ着替え。
結構疲れるんだな,コレが。

また,例によって,がさっと資料を渡される。
イラスト集,原画集,トレカ,フィギュア等々,すごい量。
何?これ?
何でも,過去に出たこれらを全て「実写で」再現するそうな。
はぁ。そうですか。
またもや,リアリティ,ですね。
218960:2006/12/18(月) 19:53:41 ID:???

こっちのお人形はどうするの?結構エッチなんだけど。
・・・と,聞こうと思った丁度その時,はた,と気付いた。
ひょっとして,脱衣って・・・こういうコトなの?
映画は小中学生でも見られるように,RとかXとかじゃないように撮るって聞いてましたし。

てっきり,某清純派女優の子役時代のように,ロングショットで
『脱いでいることはわかるけど,肝心の所は見せない』程度だと思ってました。
甘かったです。アタシ。

「リアリズム。これこそ,究極の芸術だ」

はいはい,やりますよカントク。
芸術のためなら脱ぎますって,言わせたいんでしょ?
アタシ,ちゃんと出てるところは出てますからね。つるぺたじゃないですよ。
児童なんとか法で,タイホされても知りませんからね。
あと,ガムテープは剥がすとき痛いのでダメです。
4枚刃でセーフティワイヤー付きじゃなきゃ,絶対イヤですよ。

今日の撮影は綾波さんと一緒だった。
黒地に白のフリルのついたワンピースが気に入った。ごすろり,とか言うらしい。
これ欲しい!と衣装の人に頼んだが,本編中で着ていないからダメ,と却下された。
けち。
219960:2006/12/18(月) 19:54:30 ID:???

今日,帰り際,衣装の人から要望どおりの『4枚刃でセーフティワイヤー付き』を渡された。
なんで,判ったんだろ?・・・こわっ!

「そろそろ・・・ね」
自分が悪い訳じゃないのに,衣装の人は妙に言いにくそうに,
両手を目の前で合わせて,アタシにお願いしてきた。
ま,そりゃそうだわね。14歳の女の子がすることじゃないもんね。

お風呂で剃ってから寝ることにする。
おやすみなさい。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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なんか,ひりひりするよう・・・。
220名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/18(月) 23:36:36 ID:???
オッテュ
221名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/18(月) 23:39:32 ID:???
バイパンアスカ…。

















違うか。
222名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/19(火) 11:00:13 ID:???
223名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/20(水) 00:30:07 ID:???
>>221
妄想はおまえの頭の中にだけある。
すべてはシナリオ通りだ。
224960:2006/12/22(金) 21:46:30 ID:???
>>219

約束の日が明日に迫った。
碇さんと手を繋いで,夕暮れの街を家まで歩く。
世界の全てが夕焼けに染まる中,二人の長い影が黒くアスファルトに落ちる。

いつものように,碇さんにゴハンを食べさせて,背中を洗って,
耳かきをして,本を読んであげて,終わるはずだった。
それだけだったのに。

本を読んであげているうちに,碇さんは眠りの世界へ誘われてしまった。
「・・・おやすみなさい」 
碇さんへの,たぶん最後のコトバ。返事は静かな寝息。

自室のフスマを閉じる。真っ暗な部屋の中で,涙がぽろぽろっとこぼれる。
アタシは,この甘ったるい『家族ごっこ』をほんの少し楽しみたかっただけだったなのに。
ただ,それだけだったのに。

期待や望み,そして想いも壊れたときのコトを考えると,
しない方がマシだって,14年間生きてきてイヤってほど思い知らされたのに。
ずっと,そう思っていたのに。
なんでなの。

本当に大事なことは,いつも,その時にならないと判らない。
莫迦なアタシ。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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225名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/23(土) 00:06:35 ID:???
オッテュ
226名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/23(土) 20:44:54 ID:???
オッテュ
227名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/24(日) 00:40:17 ID:???
乙かれ
つ、つづきが……続きが気になる木になる
228名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/25(月) 18:51:55 ID:???
メリークリスマスあすか
229960:2006/12/27(水) 23:01:28 ID:???
>>224

でも,未だ全てを失った訳じゃない。撮影が終わるまで一緒に居られるんだ。
一晩中,泣いて泣いて涙も出なくなった後に,そう考えた。

人生,何事もポジティブってやっぱり大切よ。

さて,稀代の天才子役,惣流・アスカ・ラングレー,一世一大の大芝居。
一丁,役者人生懸けてみようじゃないの。

今までの『アタシ』よ。しばらく,さよなら。
メガネは机の奥底に封印した。
毛玉だらけのジャージも,首ぐりの伸びたTシャツもゴミ箱に直行。バイバイ。

設定どおりのサイズのブラ。足りない分はパットを詰める。
コンタクトを付ける。そばかすはファンデーションで隠した。
昨晩,おフロで念入りにトリートメントした髪を,ツーサイドアップにまとめる。
メイクさんみたいに上手く出来ないけど,大体こんな感じね。
薄く,さりげない化粧。眉をきちんと整える。
制服のスカートは,今風に丈をちょっと詰めた。足のラインが良く見えるように。
表情の調整。目尻をちょっときつめに。口元もきっちりと。ツンよツン。

最後に,小道具さんからこっそりがめてきた,赤いヘッドセットを着ける。

そして,鏡の中の『アタシ』に話す。
新しい『惣流・アスカ・ラングレー』よ。これから,よろしく。
230960:2006/12/27(水) 23:02:19 ID:???

ここで失敗したら,アタシはこの役を降ろされる。
失敗は許されないわよ,アスカ。
自分自身を叱咤し,意を決して自分の部屋を出る。

わざと荒々しく,シンジの部屋のフスマを開ける。
ベットの上に,こんもりと布団のかたまり。かわいい・・・って違うわよ!ダメ!

「こらっ!シンジ!いつまで寝てんのよ!」
きゃんきゃん言いながら,布団を引っぺがす。

「あ,『アスカ』おはよう・・・」
「何が「おはよう」よ!何時だと思ってるの!さっさと起きなさいよ!」
もそもそと,起き出すシンジ。
「どうしたの?・・・いつも,もっと優しく起こしてくれるのに・・・」

そして,アタシの格好に気付いてきょとん,となるシンジ。
「え?どうしたの,その格好。朝から撮影なの?」
アタシは腰に手を当て,すうっと息を吸ってから,コトバと一緒に一気にはき出した。
「何寝ぼけたこと言ってんのよ!バカシンジ!それより朝ご飯は!?」

「え,『アスカ』,作ってくれないの?」
「何言ってんのよ!アンタが作るのよ!」
「え,どうしたの?急に」 
戸惑うシンジ。
それでも,パジャマの上からエプロンをし,ちゃっちゃと朝ご飯の支度を始める。
その口元は,何か拗ねているようにも見えるけど。
231960:2006/12/27(水) 23:03:05 ID:???

「あーん」 シンジが口を開けてゴハンを催促している。
「・・・」 超申し訳ないけど,ここは無視,ムシよアスカ。

「あーん」 まだ,やってる。
「・・・あんたバカぁ?」 
思いっきり,軽蔑を込めたまなざしで見下すアタシ。
ごめん,シンジ,と心の中で謝りながら。

口を開けたまま,唖然としているシンジ。
同じように唖然として,ビールの缶を手からすべり落とす葛城さん。

三人の間に沈黙が流れる。
アタシは素知らぬフリをして,黙々と朝ご飯を食べる。
申し訳ない気持ちで,アタマの中が一杯になりながら。
シンジの作ったご飯は,やっぱりおいしい。
232960:2006/12/27(水) 23:04:25 ID:???

アタシが自然に手を繋げるよう気遣って,さり気なく出していてくれたシンジの右手には,
当然の如く,アタシの鞄を持たせた。

「・・・何?これ?」
「アタシのカバンに決まってるでしょ」
「・・・」

アタシが,シンジの一歩前を背筋を伸ばして歩く。
シンジは,腑に落ちない顔,そして背を丸くして,とぼとぼと付いてくる。
登校途中,周囲の人たちがアタシの方を見ている。いつもの人達だ。

こそこそと囁く声が,セミの鳴き声に混じり聞こてくえる。
「あの人,ほら碇さんと一緒の女の子,誰?」
「え,前のヒト,降板って噂ホントだったの。わざわざドイツから来たのにね・・・」
「でも,今度のヒト,凄いわね・・・」

周囲から驚きと感嘆の入り交じる視線。
ふん!こんなの当ったり前よ!
この天才美少女,惣流・アスカ・ラングレーさまが演ってるんだから。
・・・って感じでいいのかな?
駄目,弱気じゃダメ,駄目よ『アスカ』
233960:2006/12/27(水) 23:05:29 ID:???

2−Aと書かれた教室に入る。
入った瞬間,視線がアタシに集中するのがわかる。
今までのざわめきが,水をうったように静まりかえる。

アタシは,つかつかと黒板の前に行き,流麗な筆記体で名前を書く。
そして,一番綺麗に見えるように振り返り,きっちりとこう言った。
「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく」

静寂が,また,ざわめきに戻る。先よりも大きなざわめきに。
「二人目なの・・・?」
「やっぱ,降板って噂,ホントだったんだな・・・」
アタシは,周囲の空気を気にも留めず自席へ向かう。

ふと,目線に気付く。

いつもの窓際の席に,包帯ぐるぐる巻きのファーストが座っている。
ちょいちょい,と指でこっちに来い,の合図。
234960:2006/12/27(水) 23:06:26 ID:???

「やるじゃない・・・赤毛サルのくせに」 
相変わらず,ぼそぼそと小さい声。
「誰がサルよ。当ったり前でしょ,今さら何を言ってんのよ?アタシは天才なんだから」
見下すようにして,自信満々でファーストに話す。
「アンタがヒントをくれたのよ,それだけは感謝しておくわ」

「それより,ファースト,こないだはよくも嵌めてくれたわね」
「ニュースのヤツも,元ネタはアンタが流したんでしょ」
「・・・」 
見落としそうなくらい僅かな,口端の微笑み。
無言の肯定が返ってくる。畜生,このアマ。
235960:2006/12/27(水) 23:08:59 ID:???

最後に一つ,爆弾を落としてやる。宣戦布告だ。
「アレ,アンタのモノじゃないじゃん・・・じゃあ,アタシのモノにしてもいいのね」

がたん,と椅子をひっくり返し,ファースト,綾波さんが急に立ち上がる。
紅潮した頬。怒りに満ちた紅い瞳。
これは『ファースト』じゃない。『素の』綾波さんだ。
「ぴー」 絶妙のタイミングで間の抜けた警報音が鳴る。綾波さんのモノリスだ。
悔しそうに,モノリスとアタシを交互に見る綾波さん。

「・・・やってみなさいよ,そのキャラで出来るんならね」 
さすが2人目,一瞬にして戻った。これは『ファースト』だ。
「へんっ! この惣流・アスカ・ラングレーさまに出来ないワケないでしょ!」

「セカンド・・・あなた,『EOE』を見てから出直してきたら?」
「もう,ちゃーんと見たわよ。アンタが氏んで3人目になって,でっかくなるトコもね」
まさに,一触即発。戦いの火蓋は切られた。決戦は何曜日?
236960:2006/12/27(水) 23:09:44 ID:???

「あのー,2人とも,もうそろそろ止めたら?」
冷たい火花が電撃のように散っているアタシ達2人の間に,おずおすとシンジが止めに入る。
「ねぇ『アスカ』,ホント今日は朝からなんかおかしいよ,どうしちゃったの?」

アタシは振り向いて,キッとシンジを睨み付ける。
瞳の奥だけは,優しくして。
「何言ってんのよ,バカシンジ!この,ア・タ・シの一体どこがおかしいって!?アタシはアタシよ!」
シンジの瞳を覗き込むよう,腰に手を当てたまま身を乗り出す。

お願い。気付いて。

「・・・」 アタシが覗き込んだ分だけ,引き気味にのけぞるシンジ。
「ちょっと,何とか言ったらどうよ!」 

お願い,気付いてよ。
どうか神様,お願い。一生のお願いだから。

「・・・」
でも,無言のまま,シンジはくるりと後ろを向き,教室を出て行ってしまった。
がっくりと肩を落として,とぼとぼと。

後ろから,小さい小さい含み笑いが聞こえる。
「・・・ほらね」

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
(;_;)クスン
237名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/27(水) 23:30:37 ID:???
PS2版エヴァ2のアスカプレイで同じ展開を食らいましたw
乙!
238名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/28(木) 00:16:43 ID:???
オッテュ
239名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/28(木) 00:19:20 ID:???
ガンバレ負けるな〜w
240名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/29(金) 01:30:46 ID:???
GJ
241名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/29(金) 02:43:36 ID:???
(・∀・)イイネ!
242名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/01(月) 17:08:06 ID:???
日記を書けよ
243名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/01(月) 18:46:56 ID:???
今年もよろしゅう
244名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/01(月) 23:10:56 ID:???
新年おめでとう
245名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/08(月) 07:56:35 ID:???
稲荷町
246名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/08(月) 10:49:33 ID:???
昨日は七草粥にトンカツだた
247960:2007/01/08(月) 20:52:21 ID:???
>>236

判っちゃいたけど,さすがにショックは大きかった。

ま,あれで判ってくれるなら,『シンジ』じゃないもんね。
でも,正直言うと,あの鈍感さが設定どおり,いや設定以上とは思わなかった。
結局,シンジもアタシの上っ面しか見てなかったってことか。

でも,いいの。
そう,本当のアタシを見てくれている人なんて,誰も居ないのだから。
このまま,最後のカットまで『惣流・アスカ・ラングレー』を演ってやる。

・・・でも,その後はどうするの?
ふと思い浮かんだ疑問を,考えぬよう頭の奥底へ沈める。

とにかく,今は役づくりに専念しよう。そうすれば,役を降ろされずに済む。
そして・・・あの2人との家族ごっこを続けられる。

「シンジ,帰るわよ!ほら,カバン!」
アタシの鞄を,シンジに当然のように渡す。
「なんでだよう・・・」 渋々と受け取るシンジ。
248960:2007/01/08(月) 20:58:53 ID:???

アタシがシンジの一歩前を歩く。夕暮れの街を家まで。
世界の全てが夕焼けに染まる中,高さの違う二人の長い影が黒くアスファルトに落ちる。

「そうか!」
学校から何かぶつぶつと独り言を言っていたシンジが,はたと思いついた様に,
いきなり大きな声を上げた。
周囲の人が,何事かとアタシ達を見る。

「ちょっとアンタ,変なところで大きい声出さないでよ!恥ずかしいんだから」
アタシが振り返り,文句を言うのも気にせず,シンジが興奮した様子でアタシに話す。
「ねぇ,アスカは,『アスカ』だよね!」 
え・・・何よ,それ?
「そうよ,決まってるじゃない。アタシはアタシよ!それ以外の何者でもないわ!」 
とりあえず,『アスカ』風に答える。シンジの考えていることが,判らないままに。
「そっか,そうだよね!アスカは,『アスカ』なんだよね!」
とても,嬉しそうなシンジ,釈然としないアタシ。
「だ・か・ら,何言ってんのか判んないわよ!全く,もう!」
注目を浴びるその場から立ち去るよう,アタシは踵を返し,足早に歩きだす。
嬉々としたシンジも,アタシの一歩後ろを付いてくる。

ご機嫌なシンジは,家に着くまで終始そのままだった。
アタシの疑問も,結局そのままだった。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
249名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/08(月) 21:49:11 ID:???
シンジくん敏感だw
250名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/08(月) 21:51:16 ID:???
シンジはアスカにシバかれまくるであろうのにそんなに嬉しいのかw
GJw
251名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/08(月) 22:39:23 ID:???
オッテュ
252名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/09(火) 03:22:33 ID:???
乙乙乙乙
253名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/09(火) 14:49:24 ID:???
おつ
254名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/10(水) 16:30:27 ID:???
>>125の続きはないんですかね?
255名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/10(水) 22:44:11 ID:???
>>254

つ ドリカム「KUWABARA KUWABARA」
256名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/12(金) 23:47:47 ID:???
>>255 ググればわかりますか?
257名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/13(土) 02:48:45 ID:???
ヤフれ
258名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/13(土) 13:29:12 ID:???
>>256
マジでわかんねーの?
ドリカムの歌の歌詞を小説風にしてるんだからこれ以上続けたらそれこそ蛇足ってもんでしょ。
259960:2007/01/14(日) 18:38:00 ID:???

『アスカ』はアスカ・・・。
ぽふっと,ベットに倒れ込んで考える。
考える・・・考える・・・。
あ,そっか。そういうコトか。アタシのほうが鈍いんじゃん。やば。

・・・でも,結局,それは,シンジの中の『家族ごっこをしている』アスカ。
そして,シンジの中の『家族ごっこをしているアスカ』を演じているアタシ。
そして,シンジの中の『家族ごっこのしているアスカを演じているアタシ』のココロ。

本当のアタシのココロなんて,誰も知らない。
誰も判っちゃくれない。

涙で天井がぼやけて見える。
やっぱ,こんな仕事,受けるんじゃなかった。
独りでいたら,こんなに悲しい思いもしなかっただろうに。
いつも嬉しい思いをした分,必ずどこかでバランスがとれて,結局最後はゼロになることは判っていたのに。

でも,シンジは『シンジ』なの?

そう言えば,『シンジ』じゃないシンジって,見たことが無い。
そう。最初に空母の上で会った時から,今まで,何も変わっていない。
・・・ってことは,今までアタシが見ていた『シンジ』は,ホントのシンジじゃない可能性もあるってこと?
じゃあ,ホントのシンジって?

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
ここが潰れたら,何処へ行けばいいの・・・?
260名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/14(日) 18:54:38 ID:???
>>259 乙

使わないで済むだろうけど、第弐の避難スレは健在です。

アスカの日記(仮設)
http://bbs.jssdf.org/test/read.cgi/eva/1057564091/
261名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/14(日) 20:16:43 ID:???
オッテュ
262名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/15(月) 07:41:09 ID:???
乙乙乙
263960:2007/01/16(火) 22:54:57 ID:???
>>259

シンジはアタシより,よっぽど演技は上手い。
誰から見ても,それは明らかだ。
カントクの駄目出しの数が全然違う。もし,駄目出しをくらっても,次の撮りには完全に直ってる。
・・・アタシの方こそ,ホントのシンジを知らないかもしれない。

「ねえ,シンジ。アンタ,なんで子役になったの?」
何気に探りを入れてみる。
うつ伏せに寝転がり,テレビから視線を離さず,さり気ない会話の様に。
すると,堰を切ったようにシンジが話し始めた。目を輝かせて。
「昔ね,向こうで映画に何本も出てたでしょ?『アスカ』」
「ボク,それを見て,どうしても役者になりたくって。それで,今の事務所のオーディション受けたんだよね」
「あの時,ホントに凄いって思ったんだ。憧れだったんだ」
「今回,出演するって,一緒に演れるって聞いて,凄く嬉しかったんだよね」
いやー,それほど褒めてくれなくても・・・。ちょっと照れた。へへっ。

「・・・あと,テレビでやってたあのホームドラマ!あれは・・・」
それを聞いたアタシは,今までの笑みから一変して,即座に『素の』アタシに戻った。

振り返り,右手をかざしてシンジを制する。
「・・・それ以上は言わないで,シンジ」
えっ,と意外な顔をするシンジ。 
「どうしたの?急に?」
「その話だけは,もうしないで。今後一切,絶対ね」
「・・・わかったよ」

何だか,後味の悪い会話になった。話は途切れ,沈黙が続く。
話を切り出したのがアタシだったから,余計にバツが悪い。
リビングに居づらくなったアタシは,そっと自室に戻った。
264960:2007/01/16(火) 22:55:47 ID:???

そう,それだけは触れて欲しく無かった。

テレビで見れば,本当に楽しく愉快で,暖かくほんのり泣ける家族。
でも,裏側では,ほんの一瞬だけの家族。「カット」の言葉と共に崩れ去る家族。

「ママぁー!」さっきまで兄だったはずの男の子が,本当の母親の元へ走り去る。
「お疲れさん」「お疲れさま」
そして,パパだった,ママだった人がアタシの頭を軽く撫で,去ってゆく。
セットの横で,ぽつり,と独りで迎えを待った。

あの頃,どこにいてもアタシは独りだった。
もうこんな思いは,嫌だ。

でも,今,また,ここで同じことを繰り返している。
・・・結局,ロジックじゃないのよね,アタシって。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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2007年初夏ロードショー予定!
265960:2007/01/16(火) 22:57:01 ID:???

「そうりゅう・アスカ・らんぐれーさん・・・ですか?」
撮り待ちをしているアタシに,足元の後ろから急に話しかけられた。
子供の声,しかもドイツ語。
久しくドイツ語からは離れていたので,一瞬,何を言っているのか判らなかった。
振り返ると,足元に小さな頃のアタシにそっくりな女の子が居た。
ご丁寧に,アタシが昔良く遊んでいたサルのぬいぐるみまで小脇に抱いて。
「こんにちわ,あたしも『そうりゅう・アスカ・らんぐれー』です。よろしくおねがいします」
女の子は無邪気に微笑んで,アタシに握手を求めていた。

まさか・・・二人目なの?
背筋に冷たいものが走る。
足が震え,宙に浮く。
冷や汗が止まらない。
頭の中で何かが弾ける。

一体,何がいけなかったの?

弾けた頭の中を,同じフレーズが繰り返し繰り返し流れる。
『殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる・・・』
アタシの右腕が,小さい『アスカ』に伸びる。
266名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 01:48:18 ID:???
超乙
267名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 01:54:08 ID:???
オッテュ
268名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 03:25:36 ID:???
>>265
ちびアスカキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

けど、、、そんなことしないよな?
269名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 12:32:50 ID:???
アスカ、心の迷宮
270名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 18:51:36 ID:???

271名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/18(木) 21:23:19 ID:???
おつ
272960:2007/01/19(金) 21:37:27 ID:???
>>265

アタシは,右手を出しながら彼女の前に屈み,目の高さを合わせた。
そして,引きつった笑顔で握手を返した。きつく。
「こんにちは,アタシも『惣流・アスカ・ラングレー』よ,・・・・よろしくね」
でも,アタシの醸し出す雰囲気は,動揺を隠しきれなかったらしく,
女の子の無邪気な笑顔は消え,今にも泣き出しそうな表情になった。

「いつまで握手しているの?」 聞き覚えのある声が,アタシ達の上から響く。
見上げると,アタシの前のマネージャ,今は所属事務所のチーフマネージャ,が立っていた。
「『アスカ』,久し振りね」 
そして,こう告げた。
「独逸編『アスカ』役の『惣流・アスカ・ラングレーよ』」
アタシがきつく握っていた手を離すと,小さい『アスカ』はすぐにチーフの後ろに隠れた。怯えたように。

「チーフ,どうして・・・」
「日本編のスタッフに挨拶と,あなたに会いに,よ」
やり手を思わせる自身ありげな口調,そして,ソリッドな感じは昔と変わらない。
「どう?調子は?」
「・・・ん,まあまあね」
「本当に?・・・なんだか,心配事があるように見えるけど?」
「・・・」 やっぱ,相変わらず鋭い。
273960:2007/01/19(金) 21:38:15 ID:???

アタシは,話を逸らした。
「ところで,アイツは?・・・一緒じゃないの?」
「あ,マネージャのこと?あんなのとっくの昔に解雇されたわよ」

えっ・・・知らないわよ。
「だって,『アスカ』のこと放って遊んでるんじゃ駄目でしょ?あんなのクビよ,クビ」
言葉と同時に,親指を立てた拳で首をくいっと掻く仕草。
一瞬,自分のコトに感じた。ぞくり,とした。

「じゃ,アタシのことは・・・」
チーフが微笑んで言った。
「私がしばらく 『アスカ』 あなたと,この 『アスカ』 のマネージメントをするわ。また,昔のように一緒にやれるわね」
274960:2007/01/19(金) 21:40:15 ID:???

「ちーふぅ,かえりましょ?」 足元で小さい『アスカ』がぐずり出す。
「ママのところ,いきたい!」
チーフは,やれやれと言った表情でため息を付く。
アタシが昔,よく見た表情と全く変わらなかった。
「こんなところまで,あなたに似なくても良いのにね・・・」
表情と一緒に,アタシはその昔に感じた自分の寂しさを思い出した。
胸が痛む。

「それじゃ,また今度ゆっくりね,何かあったら・・・って,そちらからの連絡は駄目よね,確か」
「独逸編の撮影が終わるまで,十分にはマネージメント出来ないけど,アスカなら大丈夫よね」
「なるべく連絡するようにするわ。それじゃ」
そして,チーフと小さい 『アスカ』 は去っていった。

昨日といい,今日といい,過去を抉られる出来事が続く。
今は,役作りに専念しようと誓ったばかりなのに。
なんでなのよ。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
275名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/19(金) 23:13:05 ID:???
オッテュ
276名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/19(金) 23:14:08 ID:???
オッテュテュテュ
277名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/19(金) 23:18:57 ID:???
アスカがどんどん病んでいく…
278名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/20(土) 10:47:36 ID:???
読ませてくれるねぇ
279名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/20(土) 14:28:35 ID:???
このシンジなら、このシンジならなんとかしてくれるっ!!!
280名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/21(日) 14:33:16 ID:???
「アスカのAV撮影日記」というのはないのですか?
281名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/21(日) 17:27:15 ID:???
>>280
撮影、期待しているぞ。
282名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/21(日) 18:04:15 ID:???
さすがにピンク系の板でやった方が良さそうだけどね…
283名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/21(日) 18:08:49 ID:???
何でアニメビデオでしょ?
別のほうをここで希望するキモクテ頭弱いのなんてエヴァ板には居ないって。
284名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/21(日) 19:02:32 ID:???
AAスレ見てから来ると敏感になってしまうものだ。
285名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/22(月) 18:17:59 ID:???
職人町
286960:2007/01/22(月) 21:15:29 ID:???
>>274

しっかし,男の子の癖にうなじが綺麗なのよね,シンジって。
こないだ,首根っこ捕まえて,持ち上げた時に気付いたの。
アタシ的には,左斜め後ろ45度くらいが一番見栄えがすると思う。うん。

今日もリビングで何気に眺めていたら・・・あ,ヤバイ。うずうずしてきた。
しかも,目標は無防備かつ無警戒。ぼーっとソファにもたれてテレビを見ている。
ダメよ,アスカ。

ネコ耳がぴんっと立つ。気分は,猫じゃらしを前にしたネコそのもの。
ちろり,と口の端で舌なめずりをしながら,そおっと,そおっと後ろに近寄る。
(想像上の)しっぽがゆらりゆらり,と揺らめく。
ダメよ,アスカ。ダメだってば。

でも,アタシの本能が理性の声を無視して,ついつい指が出てしまった。
人差し指でつーっと,首筋の一番綺麗なラインを撫でる。
あぁ・・・すーっとする。気分爽快,何とも言えない充実感。ココロが満たされる。満足満足。

「はぅっ!?」 シンジが,びくん,と飛び上がる。
そして,しばし,とろんと惚けた後,はっと我に返り,アタシのほうを振り向く。
責める目つき。
アタシの指で撫でられたラインを消すように,シンジが自分の手のひらで首の後ろをこする。
頬が,何となく赤い。 
ひょっとして・・・感じちゃった?
「何するんだよ!アスカ!」 照れを隠すようにシンジが怒る。 
287960:2007/01/22(月) 21:16:42 ID:???

おこられちった。
でも,ココで弱気は禁物よ。アタシは『アスカ』なんだから。
頭の中の『How to アスカ』から,適当にセリフを選び出す。こんな時は・・・。

「なに言ってんのよ!このバカシンジ!アンタがスキだらけだからよ!」
「・・・」 シンジの無言の抗議。目つきはそのままで。

ま,怒られても仕方ないコトしたんだけど,アタシは『アスカ』なんだから,しゃーないでしょ。
演らなきゃ,アタシ,アンタとミサトと一緒に居られなくなるんだから。
・・・とは言っても,何となく悪いコトをしたなって思うアタシの気持ちは止まらない。

「な,何よ。こーんなコトも避けられないなんて,アンタが超ニブいからでしょ!」
ごめん,シンジ,とココロの中でアタシは手を合わせながら,言い返す。

うぅ・・・。
いいじゃん,シンジなんて。所詮シンジよ,と『アスカ』
ホントにゴメンなさい,とアタシ。
アタシと『アスカ』の間を罪悪感がせめぎ合う。

「・・・じゃあ,アスカにスキがあったら,ボクもアスカにやっていいんだね?」 
ぶーたれた顔で,シンジが言う。
やめなさいよ,『アスカ』。話に乗っちゃダメよ。このまま,強引に振り切るのよ。

「と,当然いいわよ。で,でも,ア,アタシに限ってそんなスキなんてあるわけないでしょ!」
全然良くないわよ,『アスカ』。うなじって,アタシの一番の弱点じゃん。

・・・ここまで譲歩しても,じとんとした目のまま,シンジはアタシを見る。
もう,これ以上やめなさいよ,『アスカ』ってば。
288960:2007/01/22(月) 21:17:44 ID:???

「し,仕方ないわね・・・」
本当にやめなさいってば,『アスカ』。

アタシはくるりとシンジに背を向けると,後ろ手で全ての髪をかき上げ,右肩に落とした。
左側のうなじが良く見えるよう,そして,挑発するように。
やめて!本当に,本当にやめて!『アスカぁー』。やめてぇぇぇー!

「ほ,ほら,アンタもやればいいじゃん。こ,こうでもしないと,アタシにす,スキなんて出来ないんだからさ」
「えっ,いいの?」
ダメぇー!!!,シンジぃー!!!。
シンジがアタシの首筋に指を伸ばす。そして,すぅーっと背筋まで指を落とす。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!・・・」 
びりびりと電気が流れる。頭の頂点から背筋を通り,足先まで。

膝の力が抜け,へなへなと座り込みそうになる。
腰から下が急に,ずん,と重くなる。じゅん,って何かが溢れてくる。
あぅ・・・,きもち,いい・・・。

「こ,これで,あ,あいこよね・・・」
『きもち,いい』コトを無理矢理隠して,『アスカ』が言う。
でも,シンジを見るアタシの瞳はとろけていたと思う。

でも,シンジは,やめちゃくれなかった。
ここぞとばかりの復讐なのか,よっぽど,アタシの様子が面白かったのか。
いぢわるを楽しむように,笑みを浮かべて,何度も何度もアタシの首筋から背筋までラインを描く。
そのたびに・・・。
アタシも・・・きもち,いいけど・・・このままじゃ・・・ぜんぶ,とろけちゃう・・・。
・・・このままじゃ『アスカ』じゃいられない。
289960:2007/01/22(月) 21:18:30 ID:???

な,なんとかしなきゃ・・・。このままじゃ・・・。

「・・・そうだ,回路をダミーシステムに切り替えろ」 
「管制システム,切り替え終了」
「全神経,ダミーシステムに直結完了」
・・・と,頭の中で小さな声が聞こえたような気がする。

『アスカ』が染みこんだアタシの体が,勝手に動く。
振り返りざまに伸ばした右手で,すぱーん,と気持ち良くシンジにビンタが決まる。
そして,腰に手を当てて上半身を乗り出し,罵倒する。
「何回やるつもりよ!いい加減にしなさいよ,このエッチ!スケベ!変態!」
ひ,膝のちからが,こ,腰がとろけてる・・・。あと,数回されていたら・・・危なかった。

頬を赤くしたシンジが,ぽそっとつぶやく。
「同じこと,綾波にしても,怒らないんだけどな・・・」

なにぃ?
さすがに,シンジもヤバいと思ったらしい。
アタシの表情を見るや否や,脱兎のごとく逃げだそうとした。
わしっと,後ろからシャツの襟を捕まえる。
「シンジ,・・・今なんて言ったの?」
「あ,綾波なら,お,怒られないんだよ,い,今の何回やっても・・・」

正直なのは,大変よろしい。
でも,『アスカ』だったら許さないんでしょ,ココは? 
アタシは,「なーんにも」思わないけど。・・・ホントよ,ホント。
しばき倒し『アスカ』モードにて,シンジにお仕置きをした。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中! 2007年初夏ロードショー予定!
290名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/22(月) 21:28:24 ID:???

ちょっとホッコリした。
本編じゃあ家での2人のシーンが少なかったし…
291名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/22(月) 21:47:02 ID:???

イイヨイイヨー
292名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/22(月) 22:38:50 ID:???

読んでて、ゾクゾクなったわww
>>290
それには同意せざるを得ない
293名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/22(月) 23:09:09 ID:???
オッテュ
294名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/23(火) 01:57:25 ID:???
じゅん、て何が溢れてきたんだい?
295名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/23(火) 11:53:56 ID:???
バキが耳捻ったら出て来るアレ・・・ってことにしとけ
296名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/23(火) 17:34:45 ID:+xprXJDU
ファースト、氏ね
297名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/23(火) 17:38:47 ID:???
報知新聞
298名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/24(水) 00:13:46 ID:???
これはおもしろい
期待してるよ
299名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/27(土) 20:40:15 ID:???
期待待ち
300960:2007/01/28(日) 20:03:49 ID:???
>>289

今回の同居で,困ったコトが1つある。
やっぱり,アタシもシンジもミサトも役者だから,3人同じ屋根の下に住んでいると,
お互い様子を見て,ヒマそうだったっら『一緒に,台本読みしない?』ってことになる。
やっぱり,1人より相手を絡めた練習をしたいもんね。
また,相手が役に没頭しちゃって,いきなりセリフで話しかけられて,どきっとするコトもしばしば。

・・・今回は,アタシがやっちゃった。

いくら,アタシが『天才子役』だからと言っても,さすがに中身まではすぐになれるモノじゃない。
まぁ,外見は例の『勘違い』を除けば,割とすぐ『アスカ』になれたけど。

で,いつも,ヒマがあれば,自室で台本を片手に練習している。
天才子役と言えど,見えないトコロで努力してるのよ,アタシ。

今回は・・・。
頭の中にセリフを叩き込んだまま,キッチンに出たことから,それは始まった。
そして,更に,食卓に頬をつけて口走ったセリフがまずかった。

「ねえ,シンジ・・・キスしようか・・・」
指先でヒマそうに,こりこりと食卓の上をかきながら。
さして,意識もしないで。
301960:2007/01/28(日) 20:05:13 ID:???

「・・・ちゅっ」

返事の代わりに,返ってきたのは・・・。
えっ?
ちょ,ちょっと一体,今,シンジに何をされたの?・・・アタシ。

一瞬,ホントに何が起きたのか分からなかった。
「○×△■※◎@§☆&#%£¢!!!!」
その後,何語とも分からない言葉を口走りながら,真っ赤になって抗議するアタシ。

「だって,誘ったのアスカじゃない・・・じゃ,おやすみ」
シンジは,しれっとアタシの抗議を流して,何事もなかったように自室のフスマを閉める。
呆然とするアタシを残して。

おーい。あんな,『シンジ』ってありかい? 
全然,原作どおりじゃないじゃん。
ベッドの上でお布団を,両手両足でむぎゅっと抱きしめながら,思い返す。
思い返すと,頬が熱くなるのがわかる。
あの時,『アスカ』的には,しばくべきだったのに・・・。 
でも・・・。

でも・・・おでこに残ったクチビルの感触は,ちょっと嬉しかった。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中! 
2007年初夏ロードショー予定!
・・・待って。よくよく考えるとキスじゃないじゃん。・・・せぇーふ。
302名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/28(日) 20:34:29 ID:???
(;゚∀゚)=3 ムホムホ
乙です
303名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/28(日) 20:47:30 ID:???
GJ
EOEを見た後に見るとやっぱりホッコリするわ
304名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/28(日) 21:58:38 ID:???
オッテュ
305名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/28(日) 23:59:57 ID:???
このシーンの撮影のあとのアスカが気になる
306名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/29(月) 00:21:40 ID:???
そうだなw
口付けするも抱きしめずにシンジが離れてアスカは洗面所へ…

気まずくなりそう…
307名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/29(月) 02:22:42 ID:???
アスカ「キスしちゃった!キスしちゃった!キスしちゃった!きs……(以下ループ)」(///)
シンジ「アスカ真っ赤になって可愛かったな」

ってなるはず
308名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/29(月) 12:20:21 ID:???
激しく乙
309960:2007/02/03(土) 19:58:23 ID:???
>>301

最近,漢字の練習も兼ねて,新聞を読むようにしている。テレビ欄だけどね。
「今晩のドラマは・・・っと」 
床に新聞を広げ,あぐらの上に頬杖をついて読んでいたら,シンジが露骨にイヤな顔をする。

「アスカ・・・,みっともないからやめてよ,それ」
「何で?」
「だって・・・そ,その,目のやり場に困るじゃないか」

ちらちらとアタシを見ながら,照れてもじもじしながら言うシンジ。
目線の先には,アタシのタンクトップから見える胸の谷間とはみブラ。
この間,アタシに『ちゅっ』てした癖に。
妙なトコロで純情なヤツだ。

「じゃ,見なきゃいいじゃん・・・っていうかアンタ,どこ見てんのよ!」
動揺してなきゃ,『アスカ』は楽勝で出来る。
その時は,普通にケリを入れて終わった。

今日,いつものように新聞を読んでいたところ,耳の後ろがかゆくなった。
で,足の親指でくいくいと掻いていたら,「ネコみたいだ」とシンジに大笑いされた。

「じゃあ,アンタもやってみなさいよ」 
嫌がるシンジに無理矢理やらせたら,シンジの股関節から「ぐきっ」と変な音がした。
そして,そのままの格好で,シンジは救急車で運ばれていった。
もう少し頑張れば出来そうだったのに,とっても残念だった。
帰ってきたら,もう少し練習させよう。

でも,そのことを言ったら,ミサトにこっぴどく怒られた。なんでだろ?

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中! 2007年初夏ロードショー予定!
310名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/03(土) 20:05:12 ID:???
オッテュ
311名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/03(土) 22:53:58 ID:???
おお、また日常生活の描写だ。
GJ!


…て、撮影に支障が出るんじゃないの?
312名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/03(土) 23:31:39 ID:???
体柔らかすぎだろ
313名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/05(月) 23:37:45 ID:???
アスカって猫がピッタリだな。

シンジは犬だな、昔のビクターの置物の犬のような。ちょっと首を傾げてるダルマシアンとか。
314名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/10(土) 17:08:13 ID:???
315960:2007/02/10(土) 19:04:34 ID:???
>309

今日,スタジオに行ったら,周囲の空気がアタシにとても冷ややかだった。
昨日,あの後,どうやらシンジは入院したらしい。
そして,その原因がアタシであるコトが皆に知れ渡っているようだ。
「・・・シナリオから少し離れた事件だな」 副カントクからも小言を言われる始末。
でも,その場では『あんな,柔軟体操程度で情けないヤツだ』と『極めてアスカ的に』言い放った。
次の瞬間・・・。
更に,周囲の空気が冷たくなるのが肌で分かった。
・・・だって,仕方ないじゃん。アタシ,『アスカ』なんだからさ。
でも入院って,ちょっとヤバイかな。

で,撮影帰りにシンジの見舞いに行った。
ま,一応,関係者としてお見舞いくらい行ってもバチは当たらないと思うし。
・・・一応よ,一応。
結構,撮影時間が押しちゃったので,スタジオを出るコロにはもう既に薄暗くなっていた。
アタシは満月の下,鼻歌交じりで病院へと向かった。

ナースステーションにてシンジの病室を聞くと,現在ICUに入っているとのことだった。
なーんだ,ICUか・・・とその時は思った。
ICU?
ちょっと待ってよ。ICUって?集中治療室ってコト?
何よ,それ。あんな程度で? 
いや,違う。絶対違う。
何か違うコトが,あの後シンジの身に起きたんだ。
集中治療室に入るほどの,何か,が。 
最悪の事態が頭をよぎる。
とにかく,アイツに会わなきゃ。
316960:2007/02/10(土) 19:05:41 ID:???

「惣流さん!ここは病院です!走らないでください!」
自分でも気付かぬうちに,走り出していたらしい。 看護師に注意される。 
「っとっとっと・・・す,すみません」 急ブレーキをかけ,ぺこり,と頭を下げる。
看護師さんはアタシを怒りの表情で一瞥し,そして一瞬で表情を柔和な笑顔に変える。
「・・・後でサインくださいね」 
はい?

ICU前の廊下では,祈るような姿勢でファーストが長椅子に腰かけていた。
「・・・ファースト」 
月明かりの下,タダでさえ白い肌が余計に青白い。
うつむいた横顔には,普段の能面のような無表情さはなく,絶望が浮かんでいる。 

そのままの姿勢で,ファーストがアタシに向かってぼそりと話す。
「・・・」 何と言ったのかは,聞き取れなかった。 
そして,アゴ先のわずかな動きで集中治療室のトビラを示す。 
あそこね。シンジは。
317960:2007/02/10(土) 19:06:36 ID:???

勢いよくトビラを押し開く。中にいた看護師達が驚く。
「何ですか!あなたは!」
止めようとする看護師を振り切り,アタシは壁の一面にある大きなはめ殺しのガラス窓へ向かう。
ガラス窓の向こうには,おびただしい量のチューブとコード,そしてそれに繋がる様々な機器。
静寂の中に,鼓動を示す規則正しい電子音。
そして,全ての中心にシンジがいた。ベッドに横たわって。

「嘘・・・」
嘘,まさか,そんな・・・。
ばん!と両手をガラス窓に叩き付ける。
「このバカシンジ!!!何やってるのよ!!!」

「ここは,関係者以外立入禁止です」
「診療の邪魔です,出て行ってください」
看護師達がアタシを取り押さえ,この部屋から排除しようとする。
アタシは思いっきり抵抗する。
取り押さえようとする相手を振りほどく,殴る,蹴る,引っ掻く,噛み付く。
少しでも,シンジの側へ行きたかった。
その時は,ただそれだけだった。

そして,あと一歩,と思った次の瞬間だった。
318960:2007/02/10(土) 19:08:11 ID:???

「はい!カットぉー!OKです!」

えっ?

「痛ぁーい・・・ちょっとは手加減してよ,もう・・・」
「あーあ,ひっでえアザ」
「あ,ここミミズ腫れ。いやー血が出てるよ,全く」
看護師さん達が床から立ち上がりながら,口々にアタシに文句を言う。

ちょ,ちょっと待ってよ・・・何よコレ?

「何の文句がある。この迫真の演技こそ,彼女が世界的子役たる所以だろう,少しは見習ったらどうだ」
さっき,撮影所でアタシに小言を言っていた副カントクが,いつの間にか隣にいた。
満足げな表情をアタシに向け,わざわざアタシにタオルを渡してくれる。

えっ?

「そ,そうよ。アタシが本気になったら,こんなモンよ」 
思わず,強がりを言ってしまった。
タオルを受け取り,次々噴き出してくる冷や汗を拭きながら。
んなワケないでしょ・・・。
319960:2007/02/10(土) 19:11:48 ID:???

当のシンジは,ベッドに縛り付けられていて,動きが取れないらしかった。
無事を知らせるよう窓の向こうから,わずかに動かせる右手を軽く振る,アタシに向けて。
とりあえず,何ともないようだ。ホッとした。
「こんなことで,アタシに見舞いまで来させないでよ!」
焦ったじゃない,全く。
「べ,別にアンタに悪いことしたって思って来てるんじゃないからね,勘違いしないでよね」

スタッフが撤収している脇で,ファーストがアタシに話しかけてくる。
「アンタ,マジだったんでしょ?あれ」
ファーストが,ドリンクをストローでちゅるちゅるとすすりながら言う。
「・・・」
「だから,先に『カメラ廻ってるわよ』って言ったじゃない」
「うっさいわね!聞こえるワケないでしょ!あんなボソボソ言われても!」
「そんな,耳元で怒鳴らないでよ・・・」

わざとらしく耳をふさぐファーストからドリンクを奪い取り,照れ隠しに一気に飲み干す。
照れ隠し? 
一体,何に照れてるんだ?アタシは。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中! 
2007年初夏ロードショー予定!
320名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/10(土) 21:30:40 ID:???
ッシャア!!久々の投下GJ!!

アスカかわいいよアスカ
321名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/10(土) 23:00:47 ID:???
乙!
待ってました
322名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/10(土) 23:16:53 ID:???
ドッキリカメラかとオモタw
相変わらずシンジへの想いに自覚しないアスカ萌えす。
323名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/11(日) 20:30:20 ID:???
オツ(・∀・)カレ!
324名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/11(日) 22:19:58 ID:???
オッテュ
325名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/13(火) 16:17:36 ID:???
GJ!
326名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/15(木) 14:09:41 ID:???
327960:2007/02/17(土) 22:26:15 ID:???
>>319

「それは,碇くんのことを意識しているからじゃないの?」
病院からの帰り際,ファーストから指摘された。
思っても見ないトコロを,いきなり,ざっくりと。

「な,何言ってんのよ!」
「こ,この天才美少女,惣流・アスカ・ラングレーさまが? あ,あんなヤツを?」
「冗談でしょ! ア,アタシは,クランクアップまでこの生活を楽しみたいだけよ!」

ファーストはそれを聞くと,ふっと薄い笑いを浮かべた。
「人間,本当のことを言われた時が,一番腹が立つものよ・・・」
「・・・図星でしょ?」

「ぐっ・・・」 
アタシはコトバに詰まる。
でも,このまま引き下がるワケにはいかない。
「アンタこそどうなのよ! 最初はヒトに釘刺しておいて,一体何なのよ!」

「知らないの,私,3人目だと思うから・・・じゃ,さよなら」
「ちょっと!!!」

ファーストはしらを切って,つい,とその場を離れていく。
ずん,と重いコトバと一緒に,アタシはその場に取り残された。

・・・意識してるって? シンジを? アタシが?

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』前編 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
328名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/17(土) 22:41:19 ID:???
オッテュ
329名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/17(土) 22:48:04 ID:???

アスカ、覚醒か
330名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/17(土) 23:16:46 ID:???
面白くなって参りました!!
331名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/18(日) 21:54:25 ID:???
久しぶりに日記スレに来たんだが
なんか斬新だな。一気に読んでしまった

あと素のシンジは以外とプレイボーイだなw
332名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/19(月) 13:09:34 ID:???
333名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/20(火) 18:02:09 ID:???
おつ
334名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/22(木) 19:04:35 ID:???
gj
335960:2007/02/22(木) 21:24:27 ID:???
>>327

シンジが入院した。
ミサトはタイミング良く海外ロケへと出かけた。
アタシは独りになった。

シンジが朝になっても起こしてくれないから,学校に間に合わなかった。
しょうがないので,自主休校にするしかなかった。

シンジがご飯を作ってくれないから,お腹が空いたと言っても,食べるものは何も出てこなかった。
しょうがないので,冷蔵庫をあさった,でも・・・。

シンジが買い物に行ってくれないから,冷蔵庫の中に食べられそうなものはなかった。
牛乳はとっくの昔にヨーグルトになっていた。
しょうがないので,今日もピザ屋に電話した。
電話しながら,ふと,横を見ると・・・,

シンジが洗ってくれないから,シンクの中に洗っていない食器が山になっていた。
触ると崩れそうなので,そっと,そのままにしておくことにした。

シンジが洗濯してくれないから,替えの下着がなくなってきた。
しょうがないので,ミサトのをこっそり借りたが,どう考えても余りすぎだった。

シンジが掃除をしてくれないから,アタシの部屋はカオスと化した。
とりあえず避難をしたが,その避難先のリビングもどんどん混沌に包まれていった。
ミサトの部屋は元々カオスが渦巻いているから,避難先としては論外だった。
しょうがないので,シンジの部屋に緊急避難することにした。

シンジはいないけど,シンジの部屋はなんとなくシンジの匂いがした。
しょうがないので,今日はシンジのベッドでお昼寝をすることにした。
シンジの布団にくるまり丸まると,とても心地良かった。
336960:2007/02/22(木) 21:25:41 ID:???

シンジのお布団のせいで,気持ち良くお昼寝をした。いや,しすぎた。
だから,
シンジのせいで,よい子の寝る時間になっても,目が冴えて冴えて眠くならなかった。
しょうがないので,気晴らしにシンジの机の引き出しをあさることにした。

あさっても,あんまり,面白いものは発見できなかった。
でも,シンジへ宛てた手紙・・・ファンレター?が沢山あった。
漢字が多くて内容は良くわからないけれど,封筒や便箋の雰囲気から,なんとなく面白くなくなった。
面白くないので,ぜぇーんぶ,玄関からリビングへ順番に壁にピンで留めてやった。

一つだけ,カギのかかった机の引き出しがあった。

シンジがいないから,机の引き出しのカギがどこにあるかわからなかった。
しょうがないので,ヘアピンでちょこちょこっとして,カギを開けた。

カギを開けた引き出しの中をがさごそあさると,なんと,ファーストの写真があった。
しょうがないので,とりあえず,マジックでいたずら書きをしておいた。
自分で言うのも何だけど,結構,良い出来だった。
ちょっとだけ,満足した。
337960:2007/02/22(木) 21:26:58 ID:???

一通り,いたずら書きを終えてから,引き出しにカギをかけられないことに気付いた。
もう,既に手遅れだった。
しょうがないので,カオスの中からアタシの一番セクシーな写真をわざわざ掘り出して,替わりに入れておいてやった。
なんて,アタシって優しいんだろう。

シンジがいないから,退屈で退屈で仕方なかった。
シンジがいないから,何をやっても怒られなかった。
でも,何でも好き放題にやっても,アタシはつまんなかった。

だんだん,外が明るくなってきた。
ようやく,眠くなってきた。
今日も平和だった。おやすみなさい。

追伸
ミサトが帰ってきて,部屋の惨状を見て絶句していた。
「アスカ・・・アンタって娘は・・・ファンが見たら卒倒するわね」
でも,ミサトも似たようなモンじゃん,とアッチを向いて素知らぬフリをして言ったら,
「私は,役柄上仕方なく散らかしている」だって。
モノは言いようだ,と言うことが計らずとも証明されたワケだ。

追伸その2
今日,久し振りに撮影所に行ったら,副カントクに褒められた。
「惣流さん,良くやってくれた。これは礼を言わなくてはならんな。ありがとう」 
肩をぽん,と叩いて,そのまま悠々と去って行く。
え? ・・・アタシ,何かしましたっけ?

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
338名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/22(木) 21:49:06 ID:???
オッテュ
339名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/22(木) 22:26:10 ID:???
セカンドチルドレン、良くやった。君の行為は勲一等に値する。
340名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/22(木) 22:53:23 ID:???
GJ!!!!!!!!
>カギを開けた引き出しの中をがさごそあさると,なんと,ファーストの写真があった。
これはユイの写真って事かなと妄想
341名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/22(木) 23:22:28 ID:???
GJGJ

>>340
でも髪の色が違うからなぁ
342名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/22(木) 23:56:10 ID:???
なぜほめられたかがよくらからん。
とにかく乙。
343名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/23(金) 00:37:47 ID:???
果てしなくGJ
344名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/23(金) 04:02:03 ID:???
うひゃーGJ
345名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/24(土) 00:52:24 ID:???
GJ!
>>342
これは「シンジのいない一ヶ月間に何があったか」の補完部分と見た
346名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/24(土) 14:10:25 ID:???
エヴァに消えてたときの話になるのか!
なるほど
347名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/24(土) 14:20:49 ID:???
キスのシーンはいつ撮るんだろ・・・
348名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/25(日) 10:26:25 ID:???
349名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/25(日) 21:41:46 ID:???
350名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/27(火) 12:17:39 ID:???
ageてみる
351名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/28(水) 03:14:13 ID:???
sageてみる。
352名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/02(金) 13:51:51 ID:???
まち
353名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/02(金) 14:02:55 ID:???
まつだい→
354名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/03(土) 18:23:26 ID:???
上町
355960:2007/03/03(土) 21:10:13 ID:???
>>337

まだ,シンジは退院していない。
ミサトは,素早くハウスクリーニングを頼むと,旅行荷物もそのままにホテルへ避難した。
彼女の神経では,さすがにこの惨状には耐えられなかったようだ。
ちっちっ。まだまだ役作りが甘いわね。

「ハウスクリーニング,頼んでおいたから。終わったら連絡ちょーだいね」
「クリーニング代はアスカ持ちだからね」 
「ちょ,ちょっと!」 げ,何よそれ。

混沌の中,アタシはまた独りになった。
356960:2007/03/03(土) 21:10:59 ID:???

今日,久し振りに学校に行った。
でも,シンジの席は空いたままだった。

「・・・すか」
あーあ,何だかね・・・今日もいい天気だわ・・・。

「・・・すか!」
はふん,とため息を一つ付く。
秋でもないのに,何だかアンニュイなアタシ。

「アスカってば!!!聞いてるの!!!」
「・・・へ?」
「へ?じゃないわよ,全く。最近,どうしちゃったのよ?」
「あ,ゴメン,聞いてなかった。何のハナシだっけ?」
「もう・・・」
357960:2007/03/03(土) 21:11:45 ID:???

当然,リハーサルや撮影は続いている。
シンジやミサトがいなくても。

「ダメだ!ダメだ! そこは違う!違うって! そうじゃなくって!」
・・・このシーンだけで,もう何度目のダメ出しなのか分からなくなってきた。

「・・・ったくもう,らしくないよ,惣流さん。どうしちゃったの?」
「・・・」 無言でバツの悪い雰囲気を味わうアタシ。
「あー,もう,休憩!いったん休憩しよう!休憩!」
「休憩入りまーす」 

・・・おこられちった。
自分でも演ってて,何か調子が狂ってるのは分かるのよね,最近。
しっくりこない,っていうか。何というか。
これって,スランプ?

「心ここに在らず,ってトコロかな?」
メイクさんが,アタシの髪を結いながらアタシに言う。
「え,どうしてですか?」 
冷めたコーヒーを口にしながら,鏡の中のメイクさんにアタシは訊く。
「見れば分かるわよ,顔に書いてあるもの」
「えっ?」
アタシは,危うく持っていた紙コップを落としそうになった。
「大丈夫?」 
「え,ええ・・・」 
一体,何が顔に出てるのかを聞きたかったが,何となく怖かったので止めた。
358960:2007/03/03(土) 21:12:31 ID:???

ふと,ケータイを見ると,留守録が入っていた。
え・・・留守録? メールじゃなくって?
この番号は,ほんの少しのヒトにしか教えていないのに。

えっ? ひょっとして? ひょっとしたら!

期待がぽんっと膨らむ。
慌てて,ケータイのボタンを押す。
慌てて,慌て過ぎて,違うボタンを押してしまう。
最初からやり直し,もどかしい。
そして,やっと再生が始まった。

「・・・この気持ち,分けてあげる。痛いでしょう。ほら,ココロが痛いでしょう?」
電話の主はファーストだった。しかもご丁寧にBGM付きで。

がっくりきた・・・でも,アタシはくじけない。
当然,仕返しをしてやる。
かけ直すと,残念ながら向こうも留守録だった。
「発信音の後に・・・」
すぅ,と大きく息を吸ってから電話に向かって,
「この人形オンナ!」
と,あらん限りの大声で怒鳴ってから,電話を切ってやった。ふん。

・・・誰のココロが痛いって?
359960:2007/03/03(土) 21:13:19 ID:???

「ただいま・・・」
ちょっと前まであった返事は,やっぱり今日も無かった。

いつの間にか,体がシンジとミサトのいる生活に馴染んでしまったらしい。
独りには慣れているはずなのに,家の中に自分しかいない感覚に戸惑う。
最初は,昔のように自由気ままにできると喜んだのだけど,今は何か違う気がする。

混沌にまみれていた部屋はキレイになった。
でも,おサイフは薄くなった。

いい加減,出前にも飽きてきた。
でも,自分で作る気にもなれない。

真っ暗な部屋の中,倒れ込むようにソファに座る。
ココロが痛い・・・痛い?
ひょっとして,アタシ,サビシいの?

サビシいなんて気持ちは,自分の中ではとうの昔に捨て去ったと思っていた。
でも,たったこれだけの時間をあの二人と一緒に過ごしただけで,また,思い出すなんて。

ぽたり,と膝の上で握った拳に雫が落ちる。
一度落ちた雫は止まることなく,はたはたと落ち続ける。
360960:2007/03/03(土) 21:14:10 ID:???

どれ位,時間が経ったのだろう。
インターホンが鳴る。

「・・・はい」 アタシは鼻声のまま,返事をする。
「あ,アスカ? ちょっとカギ開けて」

ミサトだ!
ミサトが帰ってきた!
大急ぎで涙の跡をぬぐい,玄関までダッシュ。そして,カギを開ける。
ドアの向こうには,いつものミサトの笑顔。
ミサトだ!ミサトだ!

「どうしたの,アスカ? 電気も付けないで?」
「ん,ちょっと,ね」
「何,その嬉しそうな顔は・・・。まさか,部屋片付いてないとか,そんなオチじゃないでしょうね?」
アタシは,思わずミサトの腕に抱きついてしまう。
「ちょ,ちょっとこんなトコロで腕なんか組まないでよ。荷物あるんだから」
「一体,どうしちゃったのよ?」
「んん,ふふん」
「もう,全く。アンタ何か変よ,アスカ?」
「いいの。いいのったら,いいのよ」
361960:2007/03/03(土) 21:14:57 ID:???

その日の晩は,ミサトといっぱいハナシをした。
ロケのハナシから,最近の流行モノまで。
とりとめのないハナシを延々と。

「アスカ,あんた今日絶対変よ。もう休んだら?」
眠そうな顔をしたミサトが言う。
時計を見ると,日付が変わってかなりの時間が経っていた。
「そうね,じゃ,寝ようか」
「おやすみ」
「おやすみー」

アタシは,ここ最近の習慣どおりにシンジの部屋に入り,
パジャマに着替え,そのままシンジのベットに潜り込んだ。
そして,あっという間に眠りに落ちた。
362960:2007/03/03(土) 21:16:43 ID:???

起きたのは,昼過ぎだった。ミサトはもう起きていた。
「おはよ・・・」 うぅ・・・眠い。
「あら,昨晩は一体どちらにお泊まりでした?お嬢さま?」
にやにやしながら,ミサトが言う。
「どこって,ウチに決まってんじゃん」 
何言ってんの?いったい?
「ふーん,じゃ,お部屋は問題ありませんでしたかぁー?」
相変わらず,ミサトに張り付いたチェシャ猫のような笑みは消えない。
「部屋?へや?・・・あっ!」
アタシはここでやっと致命的なミスを犯したコトに気付いた。
ぼん!っと瞬間的に頭が沸騰する。

「寝心地はいかがでしたかぁー?お嬢さま?」
「あ,あのね,昨日はたまたま間違えただけよ,ホントにたまたまよ」
「ふーん,たまたま,ね・・・」
ミサトが続ける。
「あー,何か冷たいビールが飲みたいわねー」
これ見よがしに,手のひらをウチワがわりにぱたぱたと扇ぐ。

「あっ!持ってくるわね,今」
「・・・持ってくるわ?」
じろり,とミサトがアタシを見る。
「あ,いえ・・・お持ち,します」
冷蔵庫へ猛ダッシュ,ビールを一缶素早く取り,とって返す。

「はい」
ソファの背に両腕を預け,偉そうに座るミサトの後ろから手渡そうと差し出す。
ところが,ミサトは受け取る素振りを見せない。
こっちを向きもしない。
363960:2007/03/03(土) 21:17:29 ID:???

「お嬢さん,違うでしょ?」
「えっ?」 
・・・アタシはミサトの真意をようやく理解した。

トレイにビールとグラスを載せ,ミサトの前でヒザを折り,かしずく。
「ご,ご用意が出来ました,葛城様」

「おや,つまみが無いわねぇー」
「は,はい!ただいまお持ちします!」
またおや,キッチンへ猛ダッシュ。手早く皿に盛りつけ,ミサトの前に置く。

「うむ,くるしゅうない」
妙に芝居がかった言い回しでミサトは言った。
見上げると,そこにはミサトの勝ち誇った笑みがあった。
悔しくて,すぐさま目線を床に落とした。 
くっ・・・惣流・アスカ・ラングレーたるものが,なんたる屈辱。

一瞬ののち,くしゃり,とアタシの頭を撫でる感触。
えっ?
一度落とした目線を再度上げると,普段の優しいミサトの笑みがあった。
「ウソよ,アスカ」
「・・・寂しかったんでしょ?」

「・・・」 こくん,とアタシはうなずく。
ミサトは,そんなアタシを抱きしめてくれた。
昨日とは違う涙がこぼれそうになるのを,ぐっと堪える。
364960:2007/03/03(土) 21:18:18 ID:???

そんな二人の間で,電話が鳴る。

「はい,葛城です」「あ,そう,わかってるわよ。じゃ,後で」
ミサトのマネージャかららしい。 
今日の撮りのことかな?

「シンジ君,今日退院だって」
ミサトはアタシに向かってこう言った。にやにやしながら。
「アタシは撮りがあるから病院行くけど,アスカは?」
「えっ?」
不意を突かれ,声が1オクターブほど高くなってしまった。

聞いたトコロによると,アレはケガという程のケガじゃなく,ほとんど撮影のための入院だったらしい。
退院もホントはもっと早い時期にできたはずなのに,病室のシーンが多いため,かなり遅れたそうだ。
退院って・・・でも,アタシの撮りは無いし。 
どうしよう。

実は,あれから一度も見舞いに行っていない。
ファーストが余計なコト言うから,何か気になって,ついつい時期を逃してしまった。
今さら行くのもちょっと・・・ね。

ここまで一瞬で考えて,こほん,と咳払いをしてからミサトに言った。
「パぁーす。なんでこのアタシが,わざわざ病院まで迎えに行かなきゃならないのよ」
365960:2007/03/03(土) 21:19:03 ID:???

ミサトには,この返事が意外だったらしい。何やら,意味深な表情でアタシを見ている。
「へー,行かないのぉー・・・ふーん」 
アゴを軽く上げ,見下すようにアタシを見る。
なによ,一体?
思わず上目遣いで後ずさりする。

「ねぇ,行かないのぉー・・・ふーん,いいのぉー?」
「・・・」
アタシはわざとそっぽを向く。
「ホントにいいのぉー? ねぇー?」
「・・・」
「・・・っとにネコみたいね,アスカは」
「じゃあ,アタシ行っちゃうからねー,バイバーイ」
「・・・」

ぱたぱたと足音が玄関へと遠ざかっていく。

「・・・全く,うるさいわね,このイキ遅れが」 
聞こえないよう小声で言ったつもりだったが,聞こえていたらしい。
いきなり観葉植物が鉢ごと飛んできた。
「あっぶないわね!もう!」 寸前で見切って,かわした。

そして,玄関ドアが,壊れそうなくらい豪快な音を立てて閉められた。
そうか。これが耳年増ってヤツか,初めて見たぞ。
366960:2007/03/03(土) 21:19:49 ID:???

シンジが退院する。この家に帰ってくる。
どうしよう,悩む。
悩む?
なんで,アタシがこんなことで悩まなきゃいけないのよ!?
・・・でも,何て言って迎えればいいのかな。

「退院できて,良かったわね」 何だか,平凡過ぎない?
「シンジ,本当にごめんなさい・・・」 これは,『アスカ』じゃないわね。
「あら,やっと出られたの,ふーん」 これじゃ,タダの冷たいオンナ。

・・・わかんない。
何と言っていいのかわかんない。
何となく悪いことをしたような気はするんだけど,かと言ってアタシのせいで入院していたワケじゃないし。
でも,やっぱり悪いことをしたような気はするのよね・・・。
今の気持ちをどうやって『アスカ的』に伝えるか,うだうだと考えているウチに時間だけが過ぎていった。
367960:2007/03/03(土) 21:20:35 ID:???

インターホンが鳴る。 
その音で,はっと目が覚めた。
悩んでいるうちに,どうやらそのまま,うとうと眠ってしまったらしい。
ヤバっ!
テーブルまで垂れたよだれの跡を,慌ててシャツの袖で拭く。

玄関ドアが開く音,そして,何やら楽しそうな二人の会話。
シンジとミサトだ。

ひょい,とリビングから顔を出す。
その拍子に,丁度ばったりとシンジの顔と出くわす。

「た,ただいま」 
「お,おかえり」
「・・・」
「・・・」

あれだけ悩んでいたのに,言葉が出てこない。
会話が・・・続かない。 間が持たない。
シンジの顔をまともに見られない。
何で?

アタシは生あくびと背伸びをしながら,独り言のように言う。
「じゃ,アタシ眠いから寝るわ,おやすみ」 
なんで,わざわざこんな言い訳がましいコトを言っているんだ?
手足の動きもぎこちなく,アタシは自室へ戻ろうとした。
368960:2007/03/03(土) 21:21:22 ID:???

その時だった。
「あ,あの,ア,アスカ!」
いきなり,シンジがアタシの背に話しかけてきた。

「いっ?」 驚き,硬直するアタシ。 
どこかで聴いた歌のように,全身が一瞬で心臓になる。 
な,何を言いだすの? い,一体?

「そ,その・・・慌てさせて,ゴメン。病院の撮影のこと,ずっと言おう言おうと思ってたんだけど,言う前に撮影に入っちゃって」
「そ,そのことをずっと伝えたくって・・・」
右斜め下に目線を落とし,照れながらシンジがアタシに話す。
頬を人差し指で掻きながら。

「あ,アタシは慌ててなんていないわよ。あんなのは演技よ,演技」 
アタシはシンジの方に振り向きもせず,そのままぴたり,と背後でフスマと会話とを閉じた。

あぁ・・・もっと気の利いた返事くらいしなさいよ。
外ヅラ作るのなんて,アンタ得意中の得意でしょ?
アタシのバカ。
369960:2007/03/03(土) 21:22:08 ID:???

その日の夜,シンジの悲鳴が家中に響き渡った。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!あやなみぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

びっくりした。何事かと思った。
一瞬,アタシは部屋から飛び出しかけた。
けど。
・・・アタシは思い当たるフシがあったので,お布団の中で丸くなって沈黙を守った。
いいじゃん,いたずら書きくらい。
特別にアタシのあーんな写真をあげたんだからさ。

「シンジ君!どうしたの!」 
ミサトが心配して,絶叫が続くシンジの部屋のフスマを何度も叩く。
その数瞬後,唐突に悲鳴が止んだ。

「シンジ君!」
ミサトが慌てて,フスマを開ける音がする。

「・・・あ,『何でもない』です。『ミサト』さん」

妙に抑揚のないシンジの声が聞こえる。
「何でもないじゃないわよ! いっきなり,あんな悲鳴上げて・・・あれ?」
「・・・ちょっとそれ,どうしたの?鼻血?」
「あ,え,ちょ,ちょっと・・・」 シンジが口ごもる。

ちょっと,シゲキが強かったかな・・・。
今度は,もうちょっと控えめなヤツにしよう。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
370名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/03(土) 21:34:47 ID:???
GJGJ!
371名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/03(土) 21:47:19 ID:???
オッテュ
372名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/03(土) 22:20:07 ID:???
どんな写真だったのか気になる
373名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/03(土) 22:43:22 ID:???
374名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/03(土) 22:52:07 ID:???
>>373
いや>>218位のものなのかと
これ位なら二人の反応が気になって気になって
375名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/04(日) 00:07:55 ID:???
乙!!
でも何故綾波の写真があったのかが気になるなやっぱ
376名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/04(日) 00:41:58 ID:???
ケンスケからか?
377名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/04(日) 07:48:10 ID:???
朝っぱらからGJ
378名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/04(日) 12:46:37 ID:QV3RTk/U
職人さん乙
379名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/05(月) 21:35:10 ID:???
ま、まさか綾波の写真をオカズにしてたとか……。
それに落書き……。
380名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/06(火) 17:06:56 ID:???
381名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/07(水) 16:23:55 ID:???
おつ
382名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/11(日) 11:24:32 ID:???
まち
383名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/13(火) 13:18:25 ID:???
gj
384960:2007/03/13(火) 21:02:40 ID:???
>>369

翌朝。
「お,おはよう・・・」
シンジが,いつになく照れた様子でアタシに言う。
アタシと目を合わせぬように。目線を伏せて。
でも・・・伏し目がちなんだけど,何度となく,アタシの方をちらちらと見ている。
その目線の先には,アタシのあちこち出っ張っているトコロ。
ちょっとは意識してくれているようだ。やっぱ,アレの効果かな。
よしよし。

「・・・あの,アスカ,ちょっと訊きたいんだけど」
「何?」
「ボクが入院している間,ボクの部屋に入った?」
「・・・」 

げげっ・・・,ひょっとして,バレた?
ヤバい。
ふるふるふる。
アタシは,滅相もありませんって感じで首を横に振る。

シンジがしばらく居なかったからか,この時,ちょっと『アスカ的に』油断していた。
後から思い返すと,これが大失敗の元だった。
385960:2007/03/13(火) 21:03:29 ID:???

「ボクのベッド,使った?」
ふるふるふる。使ったけど,知らないわよ。

「ボクの机の引き出し,荒らした?」
ふるふるふる。荒らしたけど,知らないってば。

「・・・綾波の写真に落書きした?」
ふるふるふる。チカラいっぱい落書きしたけど,ホントに知らないってば。

「この写真,ア,アスカが引き出しに入れたの?」
シンジはアタシの写真をアタシに突きつける。
ふるふるふる。入れたけど,ホントにホントに知らないってば。

シンジは,最初の照れていた様子が嘘のように,どんどんアタシを問いつめる。
自分でも気付かぬ間に,アタシはじりじりと後ろに下がっていた。
シンジが真っ直ぐに,アタシの目を見る。
「ホントに違うの!?アスカ!?」

ふるふるふる。そうだけど,違うってば。
アタシは,半べそになりつつあった。
そんなに責めることないじゃん。
だから,写真もサービスサービスぅ!したでしょ。
うぅ。

じとん,と上目遣いでシンジを見ながら,じりじりと後退する。
でも,もう後ろはなかった。
壁に背中がとん,と当たる。
まさに,ピーンチ。
386960:2007/03/13(火) 21:04:14 ID:???

その時だった。
「おっはよー,まぁー,ふったりっとも,朝からあっついわねー」
額に♯が浮かんでいるシンジの後ろから,ミサトが話しかける。
シンジが後ろを振り返る。
「ミサトさん」
「ミサト・・・」
アタシとシンジがハモる。

「あ,今話してるそれって,あたしだから」
あくびをしながらミサトが話す。
「ミサト・・・さん?」
意外,といった表情のシンジ。
「そ,アスカじゃなくって,あたしよ」

「ゴメンねー。シンちゃんの部屋,勝手に使って」
「ロケから帰ってきたら,自分の部屋に寝る場所なくってさぁー」

「じゃあ,机の引き出しは・・・?」
「あ,それもあたしあたし」 
ミサトは自分を指差し,屈託なく笑いながら話す。
「シンちゃんくらいの男の子の机の中身って,興味シンシンで,ついつい,ね」

「綾波の写真は・・・?」
「あ,アイツ,最近生意気なのよねー。・・・で,思わずやっちゃった」
「昨日,シンちゃんが叫んでいたの,コレのことかと思ったけど,何でもないって言うから,あの時は言わなかったんだけど。ゴメンねー」
でも,ゴメンね,と言いつつも悪びれた様子は全くない。
387960:2007/03/13(火) 21:05:06 ID:???

「・・・ア,アスカのは?」
ごくり,と生唾を飲み込んだ後,アタシのあられもない写真をミサトに示し,シンジが言う。
ミサトは写真を受け取り,ふむふむと見た後,アタシの方をちらり,と見てからこう言った。
「あ,これねー。あたしの方が良かった?」
「そうじゃないですよ!ミサトさん!」
「あたしもねー,15年くらい前はこんな感じだったのよねー」
「そうじゃなくって!」
「でも,壁一枚向こうにいるアスカが,こんなの撮ってるなんて,結構そそられるでしょ?」
「あ,ひょっとして,清純派の夢,壊しちゃった?」
「ミ,ミサトさん!」
真っ赤になって怒るシンジ。

「もう,やめてくださいね」
何度となく噛み合わない会話を交わした後,ごまかされたシンジは,何となく腑に落ちない顔をしながら,部屋へ戻っていった。
アタシの写真は自分の手にしっかり取り戻して。

ぱたん,とドアが閉められる。
とりあえず,アタシの悪行は全てミサトのせいで落ち着いたようだ。
・・・せぇーふ。
388960:2007/03/13(火) 21:05:52 ID:???

リビングに残されるアタシとミサト。
アタシの耳元でミサトがささやく。
「バッカねー,アスカ。最初っから『アスカ』で飛ばせばいいのに」
「これ,貸しにしておくからね」
「・・・」
アタシは顔を上げることができなかった。

「さってと,寝直すか。んじゃ,おやすみー・・・っと?」
ミサトの動きが止まる。
アタシは,部屋へ戻ろうとするミサトのパジャマのすそを握っていた。
ミサトがアタシの顔と,パジャマを握っているアタシの手を交互に見る。

「どうしたのよ,『アスカ』。らしくないわよ」
「・・・うん,分かってる」
「全く,もう」
しょうがないわね,といった表情でアタシの髪の毛を撫でるミサト。
「んじゃ,おやすみー」

ありがとう,って言えなかった。
言いたかったけど,言っちゃいけないから,言えなかった。
でも,日記には書こう。
ありがとう,ミサト。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
389名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/13(火) 21:10:09 ID:???
オッテュ
390名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/13(火) 22:29:54 ID:???
GJGJ!!
しおらしいアスカもまたいいものだ
391名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/13(火) 22:55:20 ID:???
GJ
清純派の夢を壊しちゃうような写真なんですよね!?
392名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/16(金) 00:49:26 ID:???
393名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/18(日) 13:19:42 ID:???
まち
394960:2007/03/18(日) 20:42:56 ID:???
>>388

学校に行き始めの頃は,しばらくの間シンジとしか話をしていなかった。
それも,一言二言だけ。
ファーストとはあの一件以来,学校じゃクチきかないし。
学校はやっぱアタシ的には縁遠いトコロなんだな,とその時まで思ってた。

最初は,みんなアタシを遠巻きに見ているだけだった。物珍しそうに。
ま,慣れっこだけどね。
でも,同業者からこんな風に見られるのは初めてかも。なんで?

「あ,あの,『Miss Langley・・・』,Please So ・・・」
そんなある日,そんな中でいいんちょ役の洞木さんから話しかけられた。ものすごく緊張した様子で。
瞬間,水を打ったように,しん,と静まりかえる教室。アタシと洞木さんに集まる視線。

「あ,日本語で大丈夫ですよ,えっと・・・洞木さん,でしたっけ?」
こめかみに人差し指をあて,小首をかしげて思い出す。
一応,キャストもスタッフも台本も全部アタマの中に入ってる。
「えっ?,あっ,そ,そうですけど・・・でも,お話するのって,初めてですよね?」
「多分,初めてだと思いますが・・・」
「あ,そ,惣流さん,あの,さ,サイン貰えませんか?」 
おずおずと色紙を両手で差し出す洞木さん。
アタシは周囲の視線を気にして,ちょっと緊張しながら色紙にペンを走らせる。

「あ,あと,良ければ,握手してもらえませんか?」  
握手・・・あくしゅ・・・って,何でココで?
ちょっと疑問に思ったけど,とりあえずやってみた。
ぱちぱちぱちぱちぱちぱち・・・。
395960:2007/03/18(日) 20:44:12 ID:???

次の瞬間,静まり帰っていた教室が,いきなり爆笑の渦になった。 

へっ? 何で? 
ひょっとして・・・アタシ,バカにされたの? 
この時は,ちょっとむーたれた。

「惣流さん,違いますよ・・・」
洞木さんはにっこりと微笑むと,アタシの右手を取り,そして,すっと強く握った。
あくしゅ・・・はくしゅ・・・。
あ,そっか。
アタシはココで初めて,コトバの意味を取り違えていたことに気が付いた。

今度は,二人で大笑いになった。
笑いすぎて,目尻に涙が浮かぶくらいに。
こんな感じで,アタシは洞木さん,そう,ヒカリと出会った。
そして,さしたる間もなくお互いに名前で呼び合う仲となった。
シナリオ通りに。

同年代の友達は初めてだった。
ここでは14歳のアタシでいられる。
以前のように,ムリに背伸びしなくても大丈夫。
たとえ『アスカ』でいても。
396960:2007/03/18(日) 20:45:01 ID:???

「ちょっとトイレ」「あ,アタシも」

じっと,鏡の中の見つめるヒカリ。そして,時々ハナに手をやる。
「何してんの?」
「ん,そばかすの数チェック。たまーにだけど,多い時と少ない時があるのよね」
「・・・」 はい?
「アスカみたいに,主役級なら専属でメークさん付くから良いけど,私ぐらいの役だとその他大勢と一緒にされるからね」
「・・・」 はぁ。 
そこまで徹底してるのか,あのカントクは。

「アスカが来る前は,みんな,あの『惣流・アスカ・ラングレー』が来るって,大騒ぎだったのよ」
「それが,あれでしょ? クラス全員で期待して待っていたのに・・・。あの時は本当,何かの間違いかと思ったわよ」

そ,それはもう言わないでよ・・・。

「アタシ,ニッポンでこんなに名前が売れてるなんて,思ってなかったから・・・」
「何言ってるのよ,この街であの映画を見てないヒトなんていないわよ」
ヒカリがアタシを指さし,断言する。
「ウチのクラスだったら,あれ見て『俳優になる』って決心したヒトの方が殆どよ,間違いなく」
397960:2007/03/18(日) 20:45:47 ID:???

「ところで碇くん,一緒に住んでみて,どう?」
「どうって・・・普通に『シンジ』よ」
「そっか。さすがよね,やっぱり格が違うか」
「なんで?」
「だって彼,この浮き沈みの激しいギョーカイで,常に上位キープだもん」
「でも,何だか冴えない,フツーのオトコの子よ」
「そこが凄いのよ,アスカ・・・そう言えば,碇くんの映画って見た?」
「ううん。アタシ,こっちの映画って全然見てないのよね」
「じゃ,今度貸してあげる」
398960:2007/03/18(日) 20:46:37 ID:???

で,借りた。見た。
マジで鳥肌モノだった。
これが,あのシンジ?と思えるくらい,別人でCoolなヤツが画面の中にいた。
カッコいい。単純にカッコいい。
こんなヤツがそばにいたら,マジで惚れちゃいそうなくらいカッコいい。
全然,キャラが違う。

前はイヤなところ触れられて聞きそびれたけど,今度こそちゃーんと問いただしてやる。
アタシのことを憧れだって言ってくれた,シャイなシンジ。
思い出すと照れてしまう,この間「ちゅっ」っとしてくれたシンジ。
惚れちゃいそうなくらいカッコいい,銀幕のシンジ。
どれが,ホントのシンジなの?

「ねえ,シンジ」
「なに?」
「これ,演って」 ヒカリから借りた映画のディスクを目の前に突きつける。
その時,アタシの瞳はキラキラのハートマークだったかもしれない。

「えぇー,やだよー・・・だいたい,もう,そんな昔のなんて忘れたよ」
「いいから! さっさと演るのよ!」 
「ちぇっ,わかったよ・・・」 
渋々とシンジが演り始める。

しばらく,シンジの独り芝居を観た。
・・・かかしに演技をさせた方が,絶対マシだと思った。
一瞬にして幻滅した。アンタって,一体何者なの?
399960:2007/03/18(日) 20:47:24 ID:???

「何よ!コレっ!ぜんぜん違うじゃん!この嘘つき!バカシンジ!」
手近にあったクッションでメッタ打ちにする。
「そんなこと言われても,ボクはボクだよ・・・」

しばらくの後,クッションを振り回すのに疲れ,肩で息をするアタシ。
いったん,手を止める。
「じゃあ,訊くけど,アンタ,どれがホントのアンタなのよ」

「んー・・・」
しばらく考え込んだ後,何かを思いついたシンジが自分を指差す。
「これもシンジ,あれもシンジ,かな」
訳の分からん言い訳が,アタシの神経を逆撫でする。

次の瞬間,アタシは素手で殴りかかっていた。
アタシの攻撃を必死で止めるシンジ。
「仕方ないよ,だって今は『シンジ』なんだからさ」
「だって,アスカだって今は『アスカ』じゃないか」

「うっ・・・」
まぁ,それ言われちゃうと,身もフタもないんだけどさ。
400960:2007/03/18(日) 20:48:26 ID:???

「でも,アタシはいつでもアスカに戻れるもん!」
それを聞いたシンジは,ほう,といった表情を見せる。
「じゃあ,『アスカ』がアスカになってくれるなら,ボクもいいよ」

「そーんなことなら全然簡単じゃん! でも,ちょっとだけ,よ」

素のアタシに戻るだけ。
この時はとってもカンタンに考えていた。
ソレよりも何よりも『アスカ』コードに引っ掛かって,役を降ろされるほうが気になった。
アスカに戻るってコトは,アタシはアンタと一緒に居られなくなる。
この3人の奇妙な共同生活が無くなるのよ。
アタシは,この生活を手放したくない。
だから,ちょっとだけ,ね。シンジ。

一度,シンジに背を向け『アスカ』をリセットした,はずだった。

『私,惣流・アスカ・ラングレー,汎用人型決戦兵器ヱヴァンゲリヲン弐号機専属パイロット・・・』 
くるり,とシンジの方を振り返り,両腰に手を当て胸を張り,大いばりで言った。
・・・あれ? 
違う!ちがう!こんなのアタシじゃない!
と,いうコトで,もう一回。

『私,惣流・アスカ・ラングレー,汎用人型・・・』
・・・あれれ?
違う!ちがう!こんなのアタシじゃない!

シンジが,にやにやしながらアタシの方を見ている。
401960:2007/03/18(日) 20:50:35 ID:???

「ちょ,ちょっとタンマ」 
深呼吸をする。息を大きく吸って,吐く。ふぅ。
よし,OK。

『私,惣流・アスカ・ラングレー,汎用人型・・・』
・・・あれれれ?
アタシ,アスカに戻れないの?
がーん。

「・・・ほら,ね」 
勝ち誇ったようににやり,と笑うシンジ。
「何,にたにたしてんのよ!シンジのくせに!」
悔しさから,矛先をヤツに向ける。
「アンタこそ,仕方ないじゃないわよ!ちょっとくらいいいじゃない!ケチ!」

とりあえず『アスカ』として,関節技を決めてヤツからギブを取った。
でも,聞きたかった肝心のコト・・・『ホントのシンジ』は,またうやむやになってしまった。
そんなことより,『アスカ』から戻れなくなったことのほうがアタシには重大だった。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
染まった・・・染まっちゃった。
どうしよう,アタシ,『アスカ』に染まっちゃった・・・。
ママ・・・。
402名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/18(日) 21:55:35 ID:???
オッテュ
403名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/18(日) 22:50:39 ID:???
GJ!!
まぁ環境や意識が変われば自然と染まってしまうもんですたい。
404名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/20(火) 05:39:51 ID:???
職人さん、乙。
405名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/20(火) 13:52:45 ID:???
おつ
406名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/22(木) 21:45:33 ID:???
保守
407名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/23(金) 14:28:24 ID:???
408名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/23(金) 16:03:04 ID:???
豚もおだてりゃ木に登る
409名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/25(日) 15:28:38 ID:???
日記スレだよね?
410名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/26(月) 19:20:19 ID:???
稲荷町
411名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/28(水) 00:52:09 ID:tELR24Ic
上町
412名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/28(水) 10:56:53 ID:???
まち
413960:2007/03/28(水) 22:38:55 ID:???
>>401


「はい,それじゃ行きまーす,3,2,1,はいっ!」
カチンコがアタシの後で鳴る。

ファーストの話は,ここで終わりの様であった。
暫し,私と彼女との間に沈黙が続く。
私が彼女を強引に引き留め,そして話を始めてから,既にかなりの時間が経過していた。
話の間中ずっと,私の瞳を射るように真っ直ぐに見据えていた彼女が,目線を外す様にふと俯く。

そして,次に顔を上げた時,その紅い瞳が潤んでいた。
そこには,普段の無表情はなく,怒りとも嫉妬とも受け取れる表情があった。
紅い瞳から涙が溢れ,頬を伝い,水滴となって床に落ちる。途切れることなく。
しかし,彼女はその事を気にする様子は無かった。

涙? 
あの人形が? ファーストが涙を?

驚いた次の瞬間,私の左頬に重い衝撃が走る。
一瞬,自分の身に何が起こったのか,全く分からなかった。

突然の出来事だった。
私は,ファーストから平手打ちを受けた。それも全身の力を込めた,怒りに任せたものを。
「何故,なぜ,あなたなの?・・・」
いつもと変わらぬ口調,だが,それが逆に,普段の彼女には有り得ない行動とその表情を際立たせる。
「どうして,あなたなの?・・・」
私には,頬の痛みより,そう,彼女が私の前で初めて感情を吐露した事の方が驚きであった・・・。
414960:2007/03/28(水) 22:40:00 ID:???

「カット!」

・・・あー,痛でででで。
左のほっぺたがじんじんする。
手加減なしで,引っぱたきやがった。
演技と分かっていても,演出の指示だと分かっていても,やっぱ,ぶたれるのはムカつく。
でも,セルフコントロール,セルフコントロールよ,アスカ。
アタシはプロなんだから。そう,プロなんだから。
ココロの中でアタシは自分に言い聞かせるが,自分の雰囲気まではコントロールできていないみたいだった。
ADさんがアタシの前で,オモテを上げず,ひざまずいて,冷たいタオルを,怯えたようにおそるおそる差し出す。
アタシは引ったくるようにタオルを奪い取り,火照るほっぺたに当てる。

ふぅ。
冷たいタオルをほっぺたに当て,一息つく。
本気で引っぱたかれると,さすがに痛い。
いくらアタシでも,こんなの何回もできないわよ。
あ,でも,空母のシーンは5回撮り直したんだっけ。
うっ,自己嫌悪。
415960:2007/03/28(水) 22:41:03 ID:???

「綾波ぃ!最後のトコ,まだ口の端が笑ってる!ココはあくまで悲しみと怒りだから,絶対笑うな!」
演出カントクから,綾波さんにきつい口調で指示が飛ぶ。
あらま,めっずらしいー。綾波さんがNGの連チャンで怒られるなんて。
さすがに何度も同じトコロでミスが続くと,やっぱ,誰でも怒られるわよね。
これは,結構へこむよなーっと思ったけど・・・当の本人はそんなコトをぜーんぜん気にしていない様子。

「はい」
綾波さんは『レイ』のまま,平坦で抑揚のない返事をする。
そして,静かに気合いを入れるように右手の手のひらに,はぁーっと息を吹きかけ,にぎにぎとしている。
「リテイク,それは撮り直し・・・それはとても気持ちの良いこと・・・」
『レイ』のまま,コレができるのもある意味すんごいけど,気持ちの良いことって・・・何か,ヤな予感がする。
綾波さんのその横顔が,にまり,と薄く笑んだように見えた。

「はい,行きまぁーす,3,2,1,はい!」
「すぱーん!」「カット!綾波ぃ!まだ笑ってる!」「はい」
「すぱーん!」「カット!まただ!」「はい」
「すぱーん!」「カットぉ!何度言わせるんだ!おい!綾波ぃ!」「はい」
「すぱーん!」・・・。

ビンタ,カット,怒号,・・・そして,抑揚のない,感情のひとかけらもない返事。
一体,何度繰り返されただろう。
途中でアタシは数えるのを止めた。
416960:2007/03/28(水) 22:41:55 ID:???

「もう,今日はやめにしよう・・・」
どう見ても,左右のバランスが崩れたアタシの顔を演出カントクが見て,今日の撮影の終了は決まった。

「ゴメンね,惣流さん。痛かったでしょう?」
綾波さんが,さも同情するかのようにアタシの顔を覗き込む。
でも,目は嬉しそうに笑っていた。
「痛いわよ!そりゃ。見て分かるでしょ!」
ついつい,『アスカ』のまま本気で怒ってしまう。

綾波さんは,普段の2割増しくらいに大きくなった右手をアタシの前に差し出した。
「でも,私も手が痛かったから,お互いさまね」
他人から見えぬようにくす,と笑むと,綾波さんは彼女のマネージャと一緒に去っていった。
お互いさまって,ちょっとアタシの顔どうしてくれるのよ,全く。
417960:2007/03/28(水) 22:43:25 ID:???

「ただいま」
「おかえ・・・り?」
アタシの顔を見たシンジが,ぷっ,と吹き出すのをこらえる。
「ど,どうしたの? その顔?」
「・・・」
アタシは憮然としたまま,無言でシンジを睨み付ける。

「・・・こんな時,どんな顔をしたらいいか分からないの」
シンジは笑いを必死でこらえている。
こんな時に,ファーストのセリフなんかマネしないでよ。全く。
「・・・笑えばいいと思うわよ」
皮肉っぽく,シンジのセリフで返したが,当のシンジはとっくに大笑いしていた。

あーあ,ほっぺたは痛いし,シンジには笑われるし。
今日の運勢は最悪かも。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
418名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/28(水) 22:54:10 ID:???
乙!
面白くてニヤニヤが止まらない
419名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/28(水) 22:57:49 ID:???

続き期待してます
420名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/28(水) 23:09:57 ID:???
オッテュ
421名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/28(水) 23:36:54 ID:???
GJ
422名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/29(木) 00:18:16 ID:???
423名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/29(木) 01:25:36 ID:???
wktkしまくり
職人さん乙そしてGJ
424名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/30(金) 09:49:51 ID:???
425960:2007/04/03(火) 21:01:35 ID:???
>>417

今日,追加分の台本が渡された。
追加? いまさら何を追加するっていうの? 
また,カントクのリアリズム,かいな?

ざっと目を通すと・・・あやややや。
とうとう来ちゃいました,メンヘル。
冒頭の説明書きでいっきなり,『目がいっちゃってるアスカ』・・・だって。

ショックだ。
あーあ,やっぱ演らなきゃダメか。
すっぽんぽんで汚水のバスタブに浸かる『アスカ』が脳裏をよぎる。
アレはイヤだなー,ヤだなー。
脱ぐのは,まぁ,カントクとの約束だから仕方ないとしても,汚いのは・・・ちょっと勘弁してほしい。
でも,アタシも子役の延長線上とか,ルックスだけで見られるんじゃなくって,演技派女優ってちゃんと認められたいし。
うーん,ambivalence。
426960:2007/04/03(火) 21:02:21 ID:???

今度は,きちんとそのシーンの前後を読む。
メモ用のボールペンをハナと上くちびるではさむ。
・・・うーん。
ちょっと,思っていたのと違うみたい。
メンヘルなことはメンヘルなんだけど,台本だけじゃ状況がよくわかんない。
セリフもあんまりないし。

ぽりぽりとボールペンのおしりでアタマをかく。
・・・わからん。
やっぱ,演出に直接訊くのが,一番手っ取り早いか。

で,訊いてみた。
「それ,撮影終わってますよ」と演出助手さん。

へっ? 
アタシ,演ってないわよ?
ひょっとして,誰か,代役立てたの?
まさか・・・2人目なの?
どぎまぎしながら,どんどん怖い考えのスパイラルに落ちていく。

「あ,セリフだけ後入れですね,これ」
一体それって,どういうコトよ。
蒼白になって胸ぐらをつかみ問いつめるアタシに,最初は断っていた演出助手さんも恐れをなしたのか,最後の最後でようやく折れた。
「編集途中なんで,ホントはまだ見せちゃダメなんですけどね,内緒ですよ」
そう言って見せてくれたのは,1本の映像。
427960:2007/04/03(火) 21:03:06 ID:???

その映像には・・・シンジの入院中にアタシがやった悪事のもろもろが映っていた。

けたけた笑いながら,シンジへのファンレターをピンで廊下に順番に貼っているアタシ。
羽毛クッションの中身を部屋中にぶちまけるアタシ。
ぐちゃぐちゃの部屋の中での唯一のスキマ・・・シンジのベットで丸くなって眠るアタシ。
部屋の真ん中でいきなり下着まで脱ぎだし,ミサトのを着けて部屋中を踊り廻るアタシ。
かたり,と物音がすると,混沌の中からいきなり起き出し,玄関まで走っていくアタシ。
にまにましながら,アタシの写真をシンジの机に入れるアタシ。

カット割りの妙なのか,カメラアングルの上手さなのかは分からないけど,
映像の中のアタシはどこからどう見ても『いっちゃってる』ようにしか見えなかった。
しかも,台本・・・『シナリオ』どおりに。

「・・・」
アタシは言葉も出なかった。
まさか,まさか,こんなコトってアリなの?

「・・・でも,惣流さん,凄いですよね」
へっ?
「副カントクも絶賛してましたけど,やっぱ,このシーンでココまで役になりきれるのって,信じられないですよ」
「コレだったら,演出の指示なんていらないですしね。さすが,惣流さんって思いましたよ」
「・・・でも,演出の立場からすれば,正直,悔しいですよ,全く」

ち,違うわよ・・・アタシはただ・・・。
428960:2007/04/03(火) 21:09:23 ID:???

「そ,そうよ,当然じゃない。こんなのアタシにはあったりまえよ」

・・・あーあ,またそうやって,強がり言うんだから。
ホントはマジで恥ずかしいやら,照れくさいやら,だった,のに。
たぶん,アタシの顔は真っ赤っかだったと思う。
編集部屋が暗くてよかった。助かった。

ふと,思いついた。
ひょっとして,これシンジ・・・碇さんも見るの?
「ええ。たぶん,試写の時に見るんじゃないですか」

え。
それじゃ,アタシがやったってバレちゃうじゃん。
試写のときは・・・どうしよう。
とても困ったので,惣流家の家訓に従い,とりあえず家に帰って寝よう。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
429名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/03(火) 21:52:00 ID:???
オッテュ
430名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/03(火) 22:30:15 ID:???
GJ

旧世紀版でいう20話にあたる部分か…恐ろしいw
431名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/04(水) 08:59:34 ID:???
GJGJ
アスカ可愛いな。
秘密がバレてアスカが暴走することでシンジとの修羅場を迎えないことを祈るが、
逆に起きても見ごたえがあるから困る…w
432名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/05(木) 00:00:29 ID:???
職人さん乙
433名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/05(木) 12:54:17 ID:???
434960:2007/04/10(火) 20:28:08 ID:???
>>428

「ねぇ,シンジ,『おかず』って何?」
あえて,意味が分からないフリをして,何気に聞いてみた。
「ハンバーグとか,おさかなフライとか,ごはんとは別に作る料理のことだよ」
さわやかに,さらりと返された。
うぬぅ。やるな,おぬし。

「ところで,アンタもアタシをオカズにしてるの?」
気の利いた冗談のような感じを出しつつ,肺腑を抉るような質問を浴びせてみた。
「いや,この前まで綾波だったけど,今はアスカだよ」
シンジも冗談で返したつもりだったらしい。

でも,アタシの表情を見ると,シンジは途端に真っ青になった。
「・・・」
「・・・」
かなーり,気まずかった。やめときゃよかった。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
オカズにされるくらいなら,ね・・・。
435名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/10(火) 20:48:03 ID:???
オツ

このアスカ、時代劇見すぎの予感がする…w
436名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/10(火) 22:15:31 ID:???
オッテュ
437名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/11(水) 05:29:41 ID:???
GJ
438名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/11(水) 21:09:26 ID:???
職人さん乙
次回作も待ってます
439名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/11(水) 21:17:53 ID:???
>序
対応早いなw
440名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/15(日) 23:04:12 ID:???
職人さん待ち
441名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/17(火) 02:52:06 ID:7OG307XX
アゲ
442960:2007/04/17(火) 20:59:00 ID:???
>>434

今日,撮影所でアタシの知らないヒトに,いきなり絡まれた。
そのヒトは,目を真っ赤に充血させ,疲れ切った様子で何事かを独りぶつぶつと呟いていた。
やば,と思って通り過ぎようとした時,アタシは何もない空間を見ていたそのヒトと,目が合ってしまった。

そして,それは唐突だった。
アタシをアタシを認識した,そのヒトの目にいきなり怒りが浮かぶ。
先ほどまでの浮遊したような足取りはなく,地を踏みしめるようにずんずんとアタシに迫ってくる。
逃げる間も,助けを呼ぶ間もなかった。

「あなたの・・・あなたのせいで・・・あなたのせいよ!」 
アタシの目の前に来たそのヒトは,アタシをぶつよう右手を大きく高くかざした。
アタシはぶたれる!と思い,とっさに目をつぶって身構えた。
443960:2007/04/17(火) 21:00:11 ID:???

・・・が,何も起こらなかった。
おそるおそる目を開けると,そのヒトの後ろからカントクが右手首を捉えていた。
捉えていた,というよりねじり上げていた。その力が尋常じゃないことは,すぐに分かった。

そのヒトの顔がみるみる青ざめる。
「気に入らんな・・・己の無能を転嫁するとはな」 

騒ぎを聞きつけ,スタッフ達が慌てて駆け寄る。
「連れて行け」
カントクから解放された知らないヒトは,スタッフに両脇を抱えられ連れ去られていった。
なんだか知らないトコロで,アタシは恨みを買っているらしい。

「あ,ありがとうございます,カントク」
「何,礼には及ばん」
アタシを見下ろすサングラスの奥の瞳が,何となく柔らかかったような気がした。
気のせいかな?

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
444名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/17(火) 21:36:14 ID:???
乙です
なんかいつもと毛色が違うけど
コレも又良し!
445名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/17(火) 22:01:07 ID:???
乙。
このさきどう絡んでくるか期待w
446名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/17(火) 22:18:35 ID:???
オッテュ
447名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/17(火) 23:55:33 ID:???
GJ
448名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/18(水) 02:57:00 ID:HkDc5gMv
GJ
449名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/18(水) 08:08:18 ID:???
450名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/24(火) 03:31:30 ID:CNlOex/g
待ち
451あぼーん:あぼーん
あぼーん
452あぼーん:あぼーん
あぼーん
453あぼーん:あぼーん
あぼーん
454あぼーん:あぼーん
あぼーん
455あぼーん:あぼーん
あぼーん
456あぼーん:あぼーん
あぼーん
457あぼーん:あぼーん
あぼーん
458あぼーん:あぼーん
あぼーん
459名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/24(火) 15:41:03 ID:???
十日待ち
ポスター撮影の話が出来ないのがちょっと痛そうだが
460960:2007/04/25(水) 19:25:25 ID:???
>>443

なんでも,今度の日曜日は「完全オフ」だそうだ。
完全オフって? 何それ?
とどのつまり,その日一日,アタシは『アスカ』でなくてもいいってコトらしい。

「そっか,アスカは初めてよね」
ミサトが心底嬉しそうに話す。
「その名のとおり,本当に完全にオフよ。アスカも『アスカ』じゃなくっていいのよ」
ふーん。
「そっかそっか……」
ミサトはここでいったん言葉を切ると,人差し指を頬に当て,目線を天井に向けた後,こちらを見る。
にま,と笑んでいる。
「ま,ガンバってね」
え?
「頑張るって,何を…?」
「んー,いろいろと,ね」
あん? 何だか,ワケが分かんない。

ミサトは,久々に自分の家に帰るそうだ。
シンジは……どうするんだろ? やっぱ,自分の家に帰るのかな?
アタシには帰るトコロはもともとないので,どうもこうもないし,
実際問題として,たった一日で『アスカ』からアスカ,そしてまた『アスカ』ができるか,というとちょっと微妙。
まあ,『アスカ』じゃなくていい,というのは気がラクだけど。
そっか,完全オフか……。
461960:2007/04/25(水) 19:26:11 ID:???

チャーンス。
日ごろ『アスカ』にしばかれて,大変であろうシンジ…碇さんにお詫びするのにちょうどいいかも。
そうだ,いいことを思いついた。ゴハンでもご馳走しよう。
ホントは手作りで,と行きたいけど,どうせなら,どこか美味しいレストランでブランチなんて,いいんじゃない?
確か,前にヒカリから聞いた美味しいトコ,そう,確かケータイにメモってある。
あったあった。うん。ココからは二駅ね。
あー,何着ていこうかな,髪も切らなきゃ,せっかくだし……。

それより,何より,大事なこと。肝心の碇さんを誘わなきゃ。
でも…。
でも……。

でも,思い切って,誘ってみた。『アスカ』的かつフランクに。
内心はドキドキものだった。
「シンジ,今度の日曜ヒマ?」
「あ,ゴメン。その日はちょっと用事があって,家にいなきゃダメなんだ」

あっさり,フラれた。
一瞬,くじけそうになった。でも,こんなコトでめげるアタシではない。
だてに,14年間この業界で食ってきたワケじゃない。
ひょっとして,完全オフって知らないだけじゃないの?
「アンタさ,完全オフってハナシ,聞いてる?」
「うん,だから…さ」
462960:2007/04/25(水) 19:29:41 ID:???

「……」
アタシは完全に沈黙した。
あーあ,がっかり。 かくんっとうなだれる。

……って,アタシは何でがっかりしてるんだ? 
別にいいじゃん,こういうのは気持ちよ,気持ち。気持ちが大事なんだから。
当日に詫び入れれば,こんなのはOKでしょ。

「そ,それよりさ,アスカはどこか行かないの?」
…なにぃ?
ちょっと,カチっ,と来た。
アタシの誘いを断っておいて,何で,アンタがアタシの行くトコロを気にするのよ!
「アタシがどこに行こうとアタシの勝手でしょ!」
全く,イヤになっちゃう。アタシがこーんなに考えてるのに。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
序……? えっ? アタシがいない……。
463名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/25(水) 22:21:22 ID:???
オッテュ
464名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/25(水) 23:05:22 ID:???
真打は遅れて登場するってね♪
GJ!
465名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/25(水) 23:10:21 ID:???
サ、サプライズ用に伏せてあるんだよ・・・きっと orz
466名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/26(木) 00:47:32 ID:???
467名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/28(土) 00:36:01 ID:???

アスカは阪神でいう藤川なんだよ。きっと…
468名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/29(日) 02:48:58 ID:???

アスカは巨人でいう豊田なんだよ。きっと…
469名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/29(日) 20:33:01 ID:???

アスカは中日でいう岡本なんだよ。きっと…
470960:2007/05/01(火) 23:22:50 ID:???
>>462

日曜日。
今日一日は晴れて自由の身だ。
ミサトはもう出かけたようだった。
ひさしぶりに,髪の毛を頭の中心線できっちり分け,三つ編みを二つ作る。
コンタクトは面倒なので,今日はナシ。
最近,新しく作ったメガネを掛ける。
あんまり派手派手しいのはスキじゃないので,ちょっとクラシカルなヤツね。
そして,クローゼットから,絶対『アスカ』じゃ着ない,着られないだろう地味めのワンピをチョイスする。
普段のタンクトップとパンツは役柄上やむなく着てるけど,アタシ的にあれは露出多すぎ。
……でも,鏡に写った自分にちょっと違和感を感じた,久しぶりのせいかな?

支度を調え,さて,どこに行こうかと考える。
ま,気の向くまま足の向くままでいいっか。

「さぁって,行きましょうか!」
張り切って出かけようとしたら,何だか,妙に外が騒がしい。
事件でもあったのかな?

窓から外を見ると……人,ヒト,ひと。
目前の道路がヒトで埋まっている。延々と。その数は知れず。
警備員がその群衆を必死で押しとどめているのが分かる。
そして,アタシが窓から下を見ているウチに,その中の一人が目ざとくアタシを見つけたらしい。
アタシを指さし,きゃーきゃー言ってる。
それと同時に,カメラのフラッシュが幾重にも光る。
思わず,後ろ手でカーテンを閉めた。

「何よ,これって! 一体!」
471960:2007/05/01(火) 23:23:37 ID:???

「何って,ファンでしょ?」
さして珍しくもないようにシンジが言う。
「普段はエキストラかもしれないけど,今日はみんな完全オフだからね」
え”。
「で,でも,いくら何でもこの人数ってあり?」
「だって,この映画に出たいからって,わざわざこの街に引っ越してきたようなヒトばっかりだよ」
「中にはボクのファンだって,アスカのファンだっていてもおかしくないでしょ?」
「じゃ,シンジ……碇さんが家にいなきゃならないのって」
「そう,そういうこと。 ボク,前に一度エライ目にあったから」
「だから,アスカに気を付けて,って言おうとしたのに」
「………」
なんで,こうなるのよ。もう。
碇さんにフラれたことに,更に追い打ちをかけるようなこの事態。
やり場のない,このがっかり感。
あーあ。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
472名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/02(水) 00:05:11 ID:???
オッテュ
473名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/02(水) 00:22:48 ID:???

474名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/02(水) 02:39:49 ID:???
乙かれです
シンジと一緒に家にいられるじゃん!
475名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/03(木) 14:17:52 ID:???
GJGJ!!
そうだよオフの日でもシンジと暮らせてるしw
476名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/05(土) 00:11:35 ID:???
乙です。いつも楽しませてもらってます。職人さん頑張って下さいね!
477960:2007/05/09(水) 20:44:01 ID:???
>>471

あ,そうだ,そうだった。
がっかりのあまりに,危うく忘れるトコロだった。
碇さんに謝らなきゃ。

改めてとなると,とても照れくさい,恥ずかしい。
うつむいて,おなかの前で両手をもじもじした。
でも,勇気を出して,顔を上げてちゃんと言った。

「あのー,役の上とはいえ……,いつもいつもシバいてゴメンなさい!」
深々と頭を下げて,碇さんに謝った。

「あ,そ,それは,お互い役柄上仕方ないから,そ,その……き,気にしないで」
アタシが謝ったコトより,碇さんは他のコトに気を取られて,そわそわしている感じがする。
何となくだけど。

「そ,そんなコトより,あ,アスカ,その,さ,今日はドコも行かないよ,ね……?」

え? そんなコト……って?
アタシが,あんなに勇気を出して謝ったのに?
……でも,ポジティブに考えると,碇さんの中ではアタシに毎日シバかれても,
それはホントに大したコトではなくて,『そんなコト』程度なのかも。
それはそれで,ま,いいか。

「これじゃ,外に出られませんよね,やっぱり」
「そ,そっか。 そ,そうだよね,やっぱり……」
478960:2007/05/09(水) 20:46:12 ID:???

外で歓声が高まる。
何事かと思って,カーテンのスキマからそおっと外を見ると,人波を無理矢理こじ開けるように,
めちゃめちゃ長っーい真っ白なリムジンがマンションのエントランスに横付けされていた。

眼下の群衆には,そのリムジンに誰が乗っているのか,もう分かっているらしかった。
わっと群がる群衆と警備員との間で,小競り合いが激しくなる。

警備員が群衆を押さえこんで,ざわめきから全く隔絶された静かな空間が,エントランスからリムジンまでできる。
その間を結ぶよう,しずしずと赤い絨毯が敷かれる。
そして,リムジンのドアが丁寧に開けられ,1人の女性が降り立つ。
わぁっと歓声があがり,フラッシュが幾重にも焚かれる。

ドレープのたっぷりした白のドレス,白のヒール,そして,つばの広い白い帽子。肘までの白い手袋。
歩きながら群衆に向かって,軽い会釈と手を振って歓声に応える。

いやいやいや,あるところにはあるのね,お金って。
妙なトコロで感心してしまった。
それにしても,赤い絨毯はちょっとやり過ぎじゃない? アカデミー賞じゃないんだからさ。

まぁ,最初はセレブだセレブだ,ってシンプルに喜んで見ていた。
……けど,けど,ちょっと待ってよ。
あの背格好,歩き方,どこかで見たような気がする。
「!」
帽子のせいで顔は見えなかったが,誰なのかは分かった。
479960:2007/05/09(水) 20:47:33 ID:???

ぴんぽーん。
チャイムが鳴る。
そして,カギを開けたアタシに向かっての第一声がこれだった。

「……で,何でサルがココにいるのよ?」
「誰がサルよ,アンタこそなんでウチに来んのよ」
「あ,このサル,日本語しゃべってるぅー,すっごーい」
「きぃぃぃぃぃ! ケンカ売りに来たの!」
「きゃー,こわいー! 赤毛三つ編みメガネザルが怒ってるよぉー! 助けて! シンジーぃ!」
けたけた笑いながら,綾波さんがシンジを呼ぶ。
アタシと綾波さん,二人の間でシンジがおろおろする。

「そう,そういうコトなのね,碇さん。 アタシが出かけるかどうかを知りたがっていたのは」
「よーく分かったわ! どうぞ,ごゆっくり!」
思いっきり自分の部屋のトビラを閉める。
……ふんっだ。

せっかくの,夢のような休日なのに,自分の部屋にこもるコトになるなんて。
あーあ……。
ベットの上で体育座りをする。
あごをヒザにのせる。
そのままヒザを抱え,ころりんと横に転ぶ。
壁の向こうから二人の話し声が聞こえる。
……聞こえてくるだけで,聞き耳を立てているわけじゃないのよ。決して。
480960:2007/05/09(水) 20:48:26 ID:???

「惣流さんって,普段もあんなヒトだっけ?」
「いや,最初のころはあんなに『アスカ』『アスカ』してなかったと思うけど」
「はまったのかな?」
「はまったんじゃない?」
「あれ,今日は一体何のマネ?」
「いや,アレが普段の格好みたいだよ。中身は『アスカ』のままだけど」
「何か,今日は一段と外見と中身のギャップ激しいよねー,せっかくのオフなのに戻らないんだー」
「そうみたいだね」

2人の楽しい楽しい雰囲気が壁越しに伝わってくる。
ちっ。

ソコまで言われっぱなしもくやしいので,カッコを『アスカ』に切り替えることにする。
髪をほどき,コンタクトを着け,パットを押し込み,普段どおりのカッコに戻す。
最後にヘッドセットを付け,鏡を見ると,何となくしっくりした自分に驚いた。
ひょっとして,コレって……精神汚染っていうヤツ?
481960:2007/05/09(水) 20:50:11 ID:???

そんな楽しげな2人の間に,暗雲がたれ込めるまでそんなに時間はかからなかった。
「……あれ,これ,あたしが前にあげた写真?」
「何よこれ? せっかくあたしがあげた写真に! ひっどーい!」
「ち,違うよ。これ,その,し,知らないうちにこうなってたんだ!」
「あーっ! こ,これってサルの写真?」 
「……い,いやぁっー!エッチスケベ変態!もう信じらんない!!シンジのばかぁ!!!」

すぱーん!
あ,いい音。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!

……ねえ,アタシはホントに映画に出られるの?
(無言)
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
482名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/09(水) 21:58:56 ID:???


あの写真がこんなところで役に立つとはw
483名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/09(水) 22:12:54 ID:???
オッテュ
484名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/11(金) 00:42:49 ID:???
伏線GJ!
485名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/11(金) 00:59:31 ID:???
GJ
アスカはまだ「碇さん」と呼ぶのか。
シンジはもう「アスカ」で固定されてるな。
486960:2007/05/17(木) 22:17:16 ID:???
>>481


「サルーぅ!,お茶ちょうだい!」
部屋の外から,大きな声で綾波さんに呼ばれる。
言い返そうと部屋から出ると,そこにはソファの背に両腕を預け,大股を開いてどかっと座っている綾波さんがいた。
あーあ,そのお上品なカッコが泣くわよ。

「誰がサルだって?」 
「あ,仮装やめたの?」

ダメだ,会話が全然かみ合ってない。 ちょっと,いい加減にしてよね。
「ちょっと待った……サルって,多分アンタが言ってるのとあたしが言ってるのとイミ違うわよ」
食ってかかるアタシを,綾波さんはびしっ!と手のひらで制する。
へっ?
「Souryu Aska Langleyでしょ? 日本語では略すとSAL,サルになるのよ,知らなかった?」
ほー,そうなのか。

「ちょっと待ってよ,さっき玄関先で三つ編みメガネザルとか言ってなかった?」
「あれは,コトバのアヤよアヤ」
アヤ? アヤって? なにそれ?
「うーん,説明しづらいなー。綾波のあや,というか,そういうこと」
……ふーん。
お茶を入れながら,何となく納得させられてしまった。
ニホンゴ難しいアルね,やっぱ。
487960:2007/05/17(木) 22:18:28 ID:???

気になって聞いてみた。 綾波さんの前に,お茶を置きながら。
「綾波さんって……ひょっとしてお金持ち?」

お茶を出された綾波さんが姿勢を正す。
背筋をぴんっと伸ばし,手を膝に添え,足を閉じて斜めに並べる。
極めて上品に,そして,洗練された優雅な動き。
うわっ,お嬢様座りだー。

「いいわ,今日だけ特別に答えてあげる。 ちなみに,お金持ちなのは私じゃなくって,パパ」
何故か,口調と周囲の空気が「レイ」に戻る綾波さん。
「じゃあ,なんで子役なんてやってんのよ,お金が必要なわけじゃないんでしょ?」
「パパの趣味」
目を閉じて,そっと,湯飲みに口を付ける綾波さん。
趣味って……。
「そう,趣味……私は仕組まれた子供なの,この白い肌も蒼い髪も紅い瞳も……」
えっ。
綾波さんは湯飲みに口を付けたまま,上目遣いで冷ややかな紅い瞳でアタシを見る。
聞いてはいけないコトを聞いたような目で。
やばっ。 話題変えなきゃ。

沈黙の中,アタシのアタマの中が次の話題を探してぐるぐるしている時に,綾波さんが目線を更に鋭くし,アタシに言う。
「ところでサル,あの写真は何?」

そ,それは……。
488960:2007/05/17(木) 22:19:54 ID:???

「あ,あれはミ,ミサトが,その……」
葛城さん,ごめんなさい,とココロの中で思いつつ,思いっきり罪をなすり付けた。

「ミサト,葛城ミサトね。 あの,ばあさん,最近,妙に突っかかってくるのよね。」
「また,やり口も陰険なのよね。 やっぱり年食ってるだけあって,その辺ケーケン豊富だわ」
「いつまでもアイドルのつもりなんだから。 こっちはいいメーワクだわ」

ば,ばあさんって,綾波さんってば。
……この上品な佇まいと毒舌のギャップ,これって,一体何?
ハナシは逸れてよかったけど,まさか,こんなキャラだとは思わなかった。

もう一つ,今日でなければ聞けないコトを訊く。
「……碇さんとは?」
何故かごくり,と生唾を飲み込む。

「お隣さんで幼なじみ,そして所属プロダクションも一緒」
「……それだけ?」
「それ以上はパス。 後は想像に任せるわ」
想像って,うーん,分かんないわよ。 それじゃ。

「さてと,そろそろやりましょうか,……碇君」
湯飲みを置き,すっと立ち上がった綾波さんが,碇さんをぼそりと呼ぶ。
「サル,アンタもついでにやりなさいよ」
へっ? 何するの?
489960:2007/05/17(木) 22:20:44 ID:???

綾波さんが,しずしずとベランダの窓を開け放つ。
ちょ,ちょっと,そんなコトしたら下のヒトが……。
アタシの心配を全然意にも介さず,綾波さんはベランダへと出て行く。
ひときわ,歓声が高まる。
あーあ,言わんこっちゃない。

「ほら,来なさいよ」
アタシもベランダに出るよう促す。
おそるおそる出てみると,眼下にはさっきの倍以上のヒトたち。 またたくフラッシュがまぶしい。
綾波さんはそのヒトたちに,にこやかに手を振って応えていた。

「ほら,そんな呆けたカオしてないで,スマイル,スマイル,よ」
綾波さんにせっつかれて,アタシも作り笑いを浮かべながら手を振る。 ははは。

「一体,何よ,これ?」
ヒジで綾波さんの脇をこづき,小声で尋ねる。
「ファンサービス,売名行為,営業,何とでも言えるけど。 ま,個人事業主の涙ぐましい努力ってヤツね」
はあ。
「サルくらい名前売れちゃえば,こんなコトしなくてもいいんだろうけどね」

そういえば,テレビで見たことあるぞ,コレ。
そう,NewYearのなんとか参賀じゃん。

いつの間にか,シンジ……碇さんも隣に来ていた。
しかもタキシード,正装じゃん。 片頬がちょっと赤くなってるけど。
ベランダから3人で,にこやかにファンに向かって手を振る。
ははは,もうヤケだ。 どうにでもなっちゃえ。
490960:2007/05/17(木) 22:21:56 ID:???

結局,あれから都合4回,やりましたよ。
サービス,サービスぅ!って言いますけど,やっぱ疲れるわよ,コレって。

「アタシ達は夢を売っているんだから,仕方のないコトよ」
「そ,夢,をね」

綾波さんも碇さんも,何かアタマの中身がちょっと浮遊してる感じがする。

ま,理想をいえばそうなんだけど,でも,結局のトコロ,これってタダ働きじゃん。
契約事項にもないし。
……碇さん達はいいわよね,演らなくても食べさせてくれる家族がいるんだからさ。
ひょっとして,お遊びで演ってるんじゃないの?

こういうのを見ると,ついつい,シニカルになってしまう。
「いいわよねー,日々の生活に心配のない方々は。やっぱ,お遊び気分で演れるって,余裕よねー」

「遊び?」 
さすがの碇さんも,これにはカチンときたらしい。
「遊びってなんだよ! 自分がちょっと有名だからって!」
シンジは本気で怒っているようだった。

有名? 
そんなコトでアタシは演ってるんじゃない。
ここはアタシも絶対に譲れなかった。
「アタシは好きで有名になったんじゃないのよ!」 
「アンタ達と違ってアタシは生きていくために,独りで生きていくために仕方なかったんだから!」
491960:2007/05/17(木) 22:24:20 ID:???

「じゃ,私,先,帰るから」
そんなアタシ達2人の間を,綾波さんは我関せず,で通り過ぎようとする。

「ちょっと! 綾波も何とか言ってよ!」
碇さんが綾波さんの背中に話しかける。
綾波さんは,振り向きつつ無言で腕時計をちょんちょんと指差し,それに応える。
えっ,もうこんな時間なの……。

「お茶,ごちそうさま」
そう言って,来た時と逆の順序で綾波さんは帰って行った。

外でまた大きな歓声が上がる中,アタシと碇さんは気まずい雰囲気の中に取り残されたままだった。
そして,時計が0時を,夢の終わりを告げた。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
492名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/17(木) 23:07:04 ID:???
乙かれです
> そして,時計が0時を,夢の終わりを告げた。
切ないな……
493名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/17(木) 23:27:39 ID:???

ちょっと何かあると歯車がずれるな…
494名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/18(金) 03:11:58 ID:???
オッテュ
495名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/18(金) 13:09:04 ID:???
496名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/23(水) 01:07:53 ID:???
保守
497960:2007/05/24(木) 20:09:59 ID:???
>>491

ぽふっと,力なくベッドにうつ伏せに倒れ込む。
アタシは間違ってない。
……でも,『遊び』まではちょっと言い過ぎたかも。

でも,実際演らなくても,食べさせてくれる家族がいるんでしょ?
それなら,お遊びと変わらないじゃない。
アタシみたいに,後がないワケじゃないし。
……でも,言い過ぎたかも。

アタマの中が後悔のスパイラルに堕ちていく。

でも……それより……。
『有名だからって!』
その一言が,アタシが,碇さん……シンジにそんな風に思われていたのが,とてもショックだった。

『有名だから』なんて,今まで自分で考えたコトもない。
その日の糧を稼ぐために,生きていくために,
自分でできることを精一杯努力した結果がたまたまそうなっただけで,自分で望んだワケじゃない。
その昔,マスコミに『悲劇の子役』に祭り上げられたコトだって関係あるだろうし。
ちょっと,ブルーになる。
498960:2007/05/24(木) 20:10:50 ID:???

一緒に住んでいるからか,ついつい,自分のコトを解ってくれているような気になっていた。
そして,上っ面だけの家族ごっこ,ってコトもすっかり忘れていた。

ちょっと,深入りしすぎたかな。
もう悲しい思いをするのも,絶望するのもイヤ。
それなら自分が傷つかないように,今までみたいに適当なトコロで折り合いつけなきゃ。
自分で自分に,無理矢理言い聞かせる。

無理矢理……えっ? どうして?
自分の中に湧き上がる疑問をそれ以上考えぬよう,リミッターが掛かる。
これは,もう考えちゃいけない,これ以上は,もう,アスカ。 ダメよ。

この業界にいて14年,妬まれるのはもう十分慣れていると自分では思っていた。
一時期はワザと傲慢に振る舞ったコトもあるし,似たようなコトは何度もあった。
それでも,シンジの言ったコトバがアタマから離れない。
『有名だからって!』……か。
何で,こんなにシンジの言葉だけがアタシの胸に突き刺さるのだろう?

寝返りをうち,天井をじっと見る。 
眠くならない。 眠れない。
久し振りに,朝が来なければ良いのに,と思った。
499960:2007/05/24(木) 20:11:41 ID:???

でも,やっぱり朝は来た。
結局,眠れなかった。
お約束のとおり,鏡の中のアタシにはひどいクマが二匹住み着いていた。

シンジと顔を合わせづらい。 合わせたくない。
でも,顔を合わせたくなくても,同居していればイヤでも合う。

「どうしたのよ,2人とも,朝からひっどい顔して」
ムスッとしながら,朝食を食べるアタシとシンジにミサトが話す。
「……別に,何でもないわよ,ごちそうさま」
アタシは箸を置くと,席を立ち,そのまま自室にこもる。

「アスカ! 学校は?」
ミサトが心配して,フスマ越しに声をかけてくる。
「今日はパス!」
ったくもう,とミサトが呆れる様子が伝わってくる。

「X時にはリハーサルだからね,それまでにはスタジオ入りしていてよ」
ミサトのその言葉を聞き,アタシは嫌な考えに拍車がかかる。

心配? 彼女は本当にアタシのことを心配しているの?
そう,心配なのはアタシじゃなくて,『アスカ』のコトなんでしょ?

仲たがいの原因を知らないミサトにまで当たるのは筋が違うとは思う。
けど,どうしても今は違うコトまで悪い方向に考えてしまう。
もう,何もかもが皮肉にしか思えてならない。
500960:2007/05/24(木) 20:13:29 ID:???

「3,2,1,はいっ,スタート!」

零号機,初号機,弐号機。
EVA三体が本部へと帰還する。

「初号機,第二拘束具,接続確認,引き続き,第一拘束具接続準備」
「弐号機,第二及び第一ロックボルト接続確認,引き続きアンビリカルブリッジ接続準備」
「零号機,エントリープラグイジェクト開始,停止信号プラグ挿入準備」

「じゃ,ちょっと行ってくるわね」
「はい」
EVA格納作業のアナウンスが流れる中,葛城ミサトは発令所からケージへと向かう。

作戦部長という要職にも関わらず,必ずパイロット達を直接ケージで出迎える。
作戦終了後の後始末が幾ら有ろうとも,たとえ,それが単なる訓練で有ろうとも必ず。
イジェクトされるエントリープラグ,排出されるLCL,そして,ハッチが開きコックピットが搬出される。
チルドレン達がそれぞれアンビリカルブリッジに降り立つ。
髪から滴るLCLを,整備員から手渡されたタオルで拭きながら。
501960:2007/05/24(木) 20:14:23 ID:???

アタシは整備員に手伝ってもらい,コックピットからアンビリカルブリッジへ降り立つ。
「こおのっ,バカシンジっ! どぉーして,あんなトコロでアタシの前をふさぐのよ!」
そして,タオルを肩に掛けながら,シンジを指差して罵倒する。
「そんなコトより,アスカだって,わざわざボクの背中にライフルで連射しないでよ! 
いくら模擬弾だからってボクは痛いんだから! 実戦だったらどうするのさ!」
シンジも同じ様にアタシを指差して,怒り返す。
アタシは頬に人差し指を当て,小首を傾げて目線を斜め上の天井に移し,考えるフリをする。
「そうねぇ,使徒を倒す前にバカシンジがハチの巣になるわね,……別にそれでいいじゃん」
「全然良くないよ! アスカっ!」
「だ・い・た・い,そもそもアンタが『この』ア・タ・シの射線上に割り込んでくるのが悪いのよ」
「だからって,残弾をぜーんぶ撃ちつくすまで撃つことないじゃないか!」
「そりゃ,当然でしょ! 目の前の敵は実力で排除しろって教本で習わなかった?」
「なに! じゃあ,ボクはアスカの敵なの?」
「ピンポン,正解よ,サードチルドレン」

口論をしているアタシとシンジが同時に,ケージに来たミサトに気付く。
「何とか言ってやってよ!ミサト!」
「何とか言ってやってください!ミサトさん!」
アタシとシンジ,2人の言葉が見事なシンクロを決める。

「2人ともお疲れさま,それについては……」
そこまで優しい優しい素振りで話していたミサトは一旦そこで言葉を切り,
今度は口調をがらりと変え,怒りを込め,睨みを利かせて2人に言った。
「……アンタたち,ミーティングで,たーっぷりとおしおきだからね」
「えー! なんでよ!」
「なんでですか! ミサトさん!」
502960:2007/05/24(木) 20:15:15 ID:???

2人の抗議を軽く聞き流し,もう1人のチルドレンに言葉をかける。
「おかえりなさい,レイ,お疲れさま」
「……」

パイロットそれぞれに労いの言葉を掛ける。
その言葉には,本当なら本音は含まないはずであるが,大人げないと思いつつも,
作戦完遂の喜びや,失敗や命令違反への怒りが含まれることがままある。
それは訓練でも実戦でも変わりない。 
14歳の子供達を訳の分からない敵,使徒との戦闘に駆り出す立場として,自らが出来るせめてもの償い。
終了後のミーティングの為に,ケージから作戦会議室までをチルドレン達と一緒に歩く。
時には明るくふざけながら,また,時には無言の重苦しい沈黙の中を。
4人のシルエットが廊下の向こうから長く伸びる。
503960:2007/05/24(木) 20:16:05 ID:???

「カット!」

「惣流さん,ここはもっと絵的に派手に,そう,弾けるようにはしゃぐような感じで」
演出さんから指示を受ける。

……って言われても。
かなり濃いブルー入っていて,ちょっとムリかも。
自分で自分にスイッチが入らない。
こんなの今までで初めてだ。 何でだろう?
今日がリハーサルで良かった,本番だったら目も当てられない。

ホントなら『仕事とプライベートは別』って割り切って演らなきゃダメなんだけど,
ヘンに同居しているからか,昔のアタシみたいに割り切れない。

シンジはこの辺は割り切れているのかな。
アタシとあんなコトあったくせに,素知らぬフリをして淡々と演っている。
正直,けっこう悔しい。

あれからシンジとは口を利いていない。
でも,アタシは悪くない。  
実際,シンジは演らなくても食べていけるんだし。
悪くないと思う……思うけど……。
ただ,『遊び』とは,ちょっとアタシも言い過ぎたかもしれない。

でも,今となっては……『アスカ』となったアタシは謝るコトもできない。
製作委員会やカントクは,シンジに謝る『アスカ』を許すだろうか?
……降板だけは,絶対にイヤだ。
504960:2007/05/24(木) 20:16:56 ID:???

今日のリハーサルの出来は散々だった。
らしくないわよ,アスカ。
アンタはプロなんだから,さ,割り切りなさいよ。

しょせん,他人なんてそんなものよ。
でも,今回だけは,いくらそう思っていても,何故か気持ちが浮かばない。
両手両足を縛られて,海に突き落とされたら,こんな気持ちになるのだろうか?
自分では思っていなかったけど,ココロのすみで,アタシはこの家族ごっこに甘えていたのかもしれない。

何とかスイッチを入れ直さなきゃ。
そう思いつつも,自分をリセットするきっかけすら,アタシには見えなかった。

シンジが話しかけてきたのは,そんな時だった。
505960:2007/05/24(木) 20:20:11 ID:???

「あ,あの『アスカ』,ボク,アスカに謝らなきゃいけなくて,その,……ゴメン」
「アスカのこと全然考えてなくって,その,あの後,ミサトさんから聞いたんだ,その……アスカのこと」
「でも,ボクも遊びで演ってるんじゃなくって,アスカから見たら全然下手かもしれないけど,
そ,その,真剣に演ってることは分かってほしいんだ」
「ボクも,アスカに負けないよう頑張るから,さ」

ミサトから? アタシのこと? アタシのコトって?
シンジの瞳からそれを読んだ。 
憐憫,哀れみ,同情……?

「……」
そっか……。
アタシは,シンジが自分の過去を知ったコトが分かった。
気持ち的にはちょっと複雑だけど,アタシのコトを考えてくれたこと,
そして,少しでもアタシの今の立場を分かってくれたことは正直,嬉しかった。

ホントはアタシも謝らなきゃいけない。 
でも,今,アタシは『アスカ』だ。
「はんっ! アンタがアタシに負けないように演るって? せいぜい精進しなさいよ!」
一応,大上段に構えて,高飛車に言い切った。
506960:2007/05/24(木) 20:21:04 ID:???

「……」
今まで申し訳なさそうにしていたシンジの表情がいっぺんに曇る。 
『何なんだよ,コイツ』って顔に大きく書いてある。
仕方ないじゃない,アタシは『アスカ』なんだから,さ。

憮然として硬直しているシンジの脇を,アタシはすたすたと通り抜ける。
そして,脇を通り抜けざま,シンジの右肩に両手の指を重ねてそっと置く。
「……ゴメンね」
そして顔を寄せて,他の誰にも聞こえないよう小さな声で,耳元でそっと囁いた。
シンジの耳たぶにアタシのクチビルが軽く触れる。
えっ?と目の端が驚いているシンジ。 
横目ではそれしか見えなかった。

急の大接近にアタシは超恥ずかしくなって,後ろを見ずにその場を猛ダッシュで立ち去る。
たぶん,シンジは振り返ったと思うけど,そんなの見る余裕なんて全然なかった。
恥ずいー。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
でも,ウチに帰ってきたら,絶対に顔合わすじゃん。
どうしよう……。
507名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/24(木) 21:41:26 ID:???
何かと辛い立場だな・・・
508名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/24(木) 22:55:04 ID:???
509名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/24(木) 23:01:52 ID:???
アスカ・・・かわええ。
510名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/24(木) 23:55:40 ID:???
切ないよなぁ
511名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/25(金) 02:32:08 ID:???
オッテュ
512名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/25(金) 16:44:00 ID:???
GJ!
513名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/31(木) 06:54:18 ID:???
ほしゅ
514960:2007/06/03(日) 16:12:10 ID:???
>>506


「はい,二人とも,今月のおこづかいよ」
何故か,ミサトがアタシとシンジにおこづかいをくれた。

わーい,おこづかいだ。 おこずかいだ。
おこづかいなんて超久し振り。 うれしーい。
封筒を受け取り,早速,ごそごそと中身を確かめる。
わぉ! じゅうまんえん! 諭吉さんが10人よ!
ねえねえ,コレって何Euro? いちEuroがxxxYenだから……。
「!!!」 
すごーい,太っ腹じゃん。 さっすが,ミサト。 オトナよね。

「あ,違うわよ,これギャラね」
えっ……?
ギャラ……?
「ちょっと待ってよ,アタシのギャラがなんでミサトから渡されなきゃなんないのよ!」
「カントクの指示よ」
「一応,14歳らしい生活を送れるように,最大限の譲歩をしたって。 そういうコト」
「それにしても,月10万円なんて聞いてないわよ! 契約額と全然違うじゃん!」
「そういうコトは直接,カントクに言って」

「じゃ,さっそくだけど,二人とも食費と家賃と光熱水費をもらうからね」
ぽんぽん,と電卓を叩いて金額を提示すると,ミサトは素早くアタシ達の手から諭吉さんたちを取り戻した。
「はい,おつりね,毎度ありっ」
アタシの手に返ってきたのは,お医者さんが5人。
「ま,14歳にはそれくらいが妥当でしょ?」
515960:2007/06/03(日) 16:13:02 ID:???

ちょ,ちょっと,マジ?
アタシが文句を言いかけたその時,隣にいたシンジが先に口を開いた。
「ア,アスカと家賃はともかく,光熱水費と食費が一緒なのは不公平です」
なにぃ?
「だって,アスカ,いつもシャワー出しっぱなしでおフロ入るし,
コンビニ行ったら必ず新製品チェックして買ってこないと気が済まないし,
ご飯だって目一杯食べるし,しょっちゅう部屋の電気もエアコンも点けっぱなしで寝てるし……」
なんだとぉ?

「アンタ,オトコのくせに,そんなみみっちいコト言う? それを言うならミサトのビール代だってそうじゃん!」
「あ,これは小道具扱いだから,お金はかかってないわよん」

ビールを片手で横に軽く振りながら,シンジのコトをちらり,と横目で見,ミサトが続ける。
「そんなことより,アスカ,シンちゃんに電気消してもらってるんだから,お礼くらい言ってもいいんじゃない?」

「……???」
「……!!!」
しまった!という表情のシンジ。
ぼんっ!と瞬間沸騰したアタシ。
516960:2007/06/03(日) 16:14:02 ID:???

シンジを指さし,口はぱくぱくすれど,声が出てこない。
顔が真っ赤になってるのが,鏡を見なくても分かる。
そして,シンジは意味不明な笑いを浮かべ,顔を引きつらせながら,この場を立ち去ろうとする。
両の手のひらをアタシに向けながら,じりじりと後退している。
「い,いや,その,あの,ボク,全然見てないから,その,おへそ出したまんま寝てるとか,
シャツ一枚でフトンけ蹴散らかして寝てるとか,
そ,それに,その時はちゃんと,アスカがカゼ引かないようにフトンかけてあげてるし……」

シンジの言い訳は,もう,いたずらに傷口を広げるだけだった。
どーりで,最近アタシはカゼをひかないワケだ。
納得したわ。
Vielen dank,と礼を言い,アタシはシンジの脳天に踵落としを決めた。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
517名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/03(日) 16:51:49 ID:???
GJ
518名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/03(日) 19:12:55 ID:???
GJ!
519名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/03(日) 21:30:13 ID:???
オッテュ
520名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/03(日) 22:37:39 ID:???
軍曹殿、GJでありますっ
521名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/06(水) 05:26:08 ID:???
乙かれです
本編でもありそうな情景でよかったです
いや、本編のアスカだと赤くならずにいきなり怒るかな?
522960:2007/06/06(水) 19:50:22 ID:???
>>516

今日も,アタシは普段の日課どおりにヱヴァ板をチェックした。
どれどれ,ちゃんとCMになってるかな……。
ちょっと,レス数を気にしながら開いた……あれ?
いつも見慣れた画面のはず……なのに,何かが違う。 
何かが違う。

板の看板が変わったのだと気付くまで,さして時間はかからなかった。
なんだ,看板違うだけじゃん。 板を間違えたかと思ったわよ。

でも……。
じっと,画面を注視する。
あれ?
「Happy Birthday.Shinji!!」って……。
Happy Birthday?
え―――――――――――――っ!
今日って,シンジの誕生日なの!?
な,なんで,みんなこーんな大事なコトを先に言ってくれないのよ!

何も準備していない。 それ以前に何も考えていない。
どうしよう。
アタシの時はあんなに盛大にお祝いしてもらったのに,いくらアタシが『アスカ』だからといっても,
何もなしと言うのは,ちょっとどころか,かなりヤバいんじゃない?
どうしよう。
ただただ,ただただ,モニタの前でおろおろする。
523960:2007/06/06(水) 19:51:13 ID:???

「いいじゃん,どうせアンタ『アスカ』なんだから,あんなヤツ,構うコトないわよ」
そ,そうかな?

「絶対ダメよ,自分の誕生日にあんなにお祝いしてもらったのに,アンタ恩を仇で返すの?アスカの名が廃るわよ」
え,やっぱそう?

アタシの中のいい子と悪い子がせめぎ合う。
ああ,どうしたらいいのよ,全く。

それより何より,シンジが喜ぶコトって一体何だろう?
うぅぅ,わかんないよー。
そうだ,ファーストに聞いてみよう。
ぽちぽちとメールしてみた。

「シンジの好きなモノってなに?」
「知っているわ」
「おしえて」
「嫌よ」

あんなヤツに聞いたアタシがバカだった。
でも,アタシに残された時間はわずかだった。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
524名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/06(水) 22:47:20 ID:???
GJ

頑張れ頑張れ
525名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/07(木) 00:05:27 ID:???
オッテュ
526名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/07(木) 01:17:47 ID:???
GJすぐる
527名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/07(木) 01:22:31 ID:???
GJ
528960:2007/06/07(木) 19:42:47 ID:???
>>523

私こと惣流・アスカ・ラングレーは,
今日,この日記に事実のみを客観的に記録する事を誓います。

今,気持ちを落ち着けるため,そして,事実を確かめるため,この日記を書いている。
事実であることは疑いない。
だが,とても,とてもじゃないけど,信じられないことが起きた。

頭痛で目が覚めた。 限りなく昼に近い朝だった。
「痛っ」 
アタマがずきずきする。
部屋中がアルコールのニオイで満ちている。
ココは……どこ?
何となく見覚えのあるような,無いような。
そして,アタシの直ぐ傍らにはヒトが眠っていた。
アタシは未だ薄ら霞のかかったアタマで,ぼんやりと誰かを確認しようとした。

そこには,シンジがこちらに背中を向け,丸くなってすやすやと眠っていた。
なんだ,シンジか。
背中を見ると,細身のようで,ちゃんとけんこー骨のあたりは筋肉がついている。
シンジって何となく貧弱なイメージだったけど,やっぱ結構男の子なんじゃん,ってぼーっと思った。
……ちょっと待ってよ。
肩胛骨?
えっ? ハダカ?
ハダカぁ?
自分では大抵のことは驚かないと思っていたけど,これには流石に驚いた。
529960:2007/06/07(木) 19:43:59 ID:???

えっ?
ってコトは?
改めて自分の格好を見る。
……と,全裸に近い状態だった。
慌ててシーツを捲り上げ,胸元を隠す。
ちょ,ちょっと,コレって……。

改めて自分の置かれた状況を確認する。
ココはシンジの部屋だ。
そして,アタシは何故かシンジのベットの上にいる。
隣にはシンジが眠っている。 
しかもハダカで。

とりあえず,自分が脱ぎ散らかした服をかき集め,身体にシーツを巻いて,
シンジを起こさないよう,そっと部屋を出る。

とりあえず,熱いシャワーだ。
ずきずきと痛むアタマを抱え,とにかくバスルームまで辿り着く。
ざっぷりと湯に浸かりつつ,頭からシャワーを浴びる。 
ちょっと,待ってよ……。

アタシのアタマの中は,頭痛よりももっとアタマの痛い問題……そう,ここに至った状況を思い出そうと必死だった。
なんで,アタシはシンジの部屋で寝ていたんだ?
しかも,殆どハダカで!
そう考えると,思考回路がループする。 なんで!? どうして!?

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
530名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/07(木) 19:55:50 ID:???
ッヲイ!w >アスカ
531名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/07(木) 21:57:00 ID:???
アスカ、何をした?w
532名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/07(木) 22:33:33 ID:???
酔った勢いで

プレゼンとはアタシ!

とか?w
533名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/08(金) 02:55:20 ID:???
オッテュ
534名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/09(土) 20:38:02 ID:???
wktk♪wktk♪
535960:2007/06/13(水) 20:34:37 ID:???
>>529

ちょっと待って。
冷静になって,時系列で物事を思いだそう。
アタシは湯船の中で,思考のループから脱出することに成功する。
ふやけた体をバスタオルで巻き,自室に戻る。
おそらく,この頭痛は二日酔いというものであろうことは,容易に想像できた。
そして,その原因は……。

そう,ファーストにメールした後,アタシはとても困っていた。
困るどころか,困り果てていた。
寝坊して,学校をサボったのもマズかった。
気付くのが遅すぎた。 何もかもが手遅れだった。
しかも『アスカ』で何とかしなきゃならない,って足枷つきで。

アタシはしばらく悩み,考えた。
「仕方無い,か」
独りごちて,アタシは自分に課した禁忌を一つ破った。
自分の薄い財布から,漆黒のカードを取り出す。
過去に一度だけ,その一度だけこれを使った時の嫌な記憶が脳裏に甦る。
吸い込まれそうな黒を見,そのことを思い出して一瞬ためらったが,アタシはその番号に電話をかけた。

「第三新東京市で,とびっきりの誕生日をディナー付きでコーディネートして」
用件だけを伝え,電話を切る。 
賽は投げられた。 後は待つだけだった。
536960:2007/06/13(水) 20:35:28 ID:???

間もなく,チャイムが鳴る。
「お迎えに上がりました」
正装したコンシェルジュが,アタシに向かって恭しく頭を垂れる。
「ご苦労さま,急で申し訳ないけど,宜しく」
「お心のままに」

以前に見た,ファーストのリムジンと対を張るくらい,長いリムジンに案内される。
やおら乗り込む,そして,重いドアが丁寧に閉められ,外界から隔絶される。
久しくこんな扱いはされてなかった,が,体がそれを覚えていた。
アタシの身体に傲慢ではなく,優雅に立ち振る舞うようにスイッチが入る。

「お飲み物は如何なさいますか?」
「ペリエを,で,これからのスケジュールは?」
「はい,この後,一度お着替え頂いて,そして美容室へ,それが終わり次第,そのまま碇さまをお迎え致します。そして……」

まず,それはアタシの着せ替えから始まった。
店の中にはもう既に,あつらえたかの様な,丁度良いサイズのカクテルドレスが用意されている。
しかもアタシ好み。
ホントは色々と吟味したいトコロだけど,時間がない。
とりあえず,ずらりと並んだ中から,数着を試着して,さっと決める。
前に屈んで,胸の空き具合をチェックする。
そして,くるり,と姿見の前で一廻りする。
「お似合いですよ」
コレで良し,っと。
537960:2007/06/13(水) 20:36:21 ID:???

お次は美容室。
映画と同じメイクじゃ,ガキくさいからちょっとオトナめにして貰う。
髪はシャンプーのCMに出てもおかしくないくらいにつやつやに。
当然,ネイルも磨き上げる。

こっちの戦闘準備は完了した。
さてと,肝心の本人に電話するか。
何回かのコールの後,シンジに繋がる。
「あ,シンジ?」
「あ,アスカ,ちょうどメールしようと思ってたんだ,今日の晩ご飯,何か食べたいものある?」
「はぁ? アンタバカぁ?」
「アンタ,今日,自分の誕生日ってコト憶えてる?」
「うん,憶えてるけど……,誰にも何も言われてないし,普通に晩ご飯作ろうかと思ってたけど」

何となく,語尾が湿っぽくなるのが分かる。
ったく,そんなトコロまで『シンジ』なんだから。

「……今,ドコよ?」
「ん,学校だよ,なんで?」
「いいから,校門のトコロで待ってなさいよ」
「え,どうして?」
「あと少しで着くわ,それじゃ」
シンジの疑問に答えず,ぷちっと強引に通話を切る。

「第三新東京市立第壱中学校へ」 アタシは行き先を告げる。
「かしこまりました」
538960:2007/06/13(水) 20:37:12 ID:???

校門ではシンジが仔犬のように素直に待っていた。
アタシを乗せたリムジンが,第三新東京市立第壱中学校へ横付けされる。
下校中の生徒達……エキストラ達が台本に無い出来事に,何事かと注目する。

アタシの目の高さまで,ウインドウがしずしずと開けられる。
「乗りなさいよ」
シンジはアタシがアタシだと,一瞬,分からなかったようだった。
「あの,失礼ですけど,どちらさまでしょうか?」
「……アンタって,ホンっトに鈍いわね」
ぱしぱし,とまばたきをするシンジ。
そして,やっと,アタシだと気付いたらしい。
「ア,アスカぁ?」
「いいから,早く乗りなさいよ」

「ったく,恥ずかしいったらありゃしない」
「だって,そのカッコだったら,アスカだって分かんないし,絶対に14歳に見えないよ」
「じゃあ,一体,何歳に見えんのよ?」
でも,もう既にシンジはアタシの言うことなんか,全く聞いてなかった。
自分の目の前で起きている未体験の現実に,圧倒されているようだった。
「ねえ,アスカ,これ,なんのシーンの撮影?」
興奮気味にシンジがアタシに話す。
「撮影じゃないわよ,このアタシがアンタの誕生日を祝ってやろうとしてんのよ,感謝しなさいよ」
「アスカが?」
「悪い?」
アタシは横目でシンジを睨む。 
いけないってば,アスカ,今日はシンジの誕生日なんだから。
「い,いや,別に,その」
妙にどぎまぎしているシンジ。
しばし,沈黙が続く。
539960:2007/06/13(水) 20:38:03 ID:???

耐えきれなくなって沈黙を破ったのはシンジだった。
「あ,そうだ,ねぇ,結局,今日の晩ご飯は何がいいの?」
「……アンタって,ホント破滅的に天然よね」
思いっきり,呆れてみた。
「今日は,特別にこのアタシが,身銭切ってアンタに晩ご飯を食べさせてあげるわ」
「え―――っ! ……明日は雪?」
「何か言った?」 また思わずじろり,と睨みを効かせてしまった。
「い,いや,何でもない,よ」

話しているうちに,次の目的地に着いたようだった。
「さ,降りた降りた」
シンジを促し,重厚な店構えの目の前に降り立つ。
「アスカ……?」
「アンタの着替えよ,着替え」
それを聞いたシンジは,自分の夏服を引っ張り,アタシに示す。
「ボク,これでいいんだけど」
「アンタが良くても周りがダメなの,ほら入った入った」

「お待ちしておりました」
初老の店員,店員というには非常に上品だが,がアタシ達に向かって頭を垂れる。
「あ,どうも」
シンジは,何とも間の抜けた返事をする。
この映画の主役なんだから,もっと偉そうにしても良いのにと思うけど,これがシンジの持ち味なのかな?
「ちょっと,コイツをおめかしして貰いたいんですけど,お任せしていいですか?」
「勿論,全てこちらでご用意させて頂きます」
「では,よろしくお願いします」
店の奥にシンジが連れ去られていくのを見送り,とりあえず車に戻る。
540960:2007/06/13(水) 20:38:54 ID:???

「宜しいのですか?」
「アナタ達が用意したシナリオでしょう? 信頼してるわよ」
「それは,光栄に存じます」

待っている間,アタシは手鏡で入念にメイクの出来映えをチェックする。
ありとあらゆる角度から,アタシが最高に栄えるように。
ん,オッケーよ。

リムジンのドアが軽くノックされ,すっと開くと,1人の正装した若者が車内に入ってくる。

うん,結構,似合うじゃん。 趣味いいじゃん,さっすが。
寝癖もちゃんと直ってるし。
「……アスカ,これって何?」
「ドレスコードくらい,理解しなさいよ」
「どれすこーど……って?」

次に案内されたのは,いわゆる超高級レストランの第三新東京市支店。
この手の情報に疎いシンジでも,さすがに,ここの名前は知っていたようだ。
「ア,アスカ……,やめようよ,こんな高そうな店」
「……」
アタシも本店には何度か行ったことはあるけど,全部自分が招待される立場だった。
絶対,自腹でこんな店なんて行かないわよ。
こんな機会でも無い限りは,ね。
ごくり,と唾を飲み込み,平静を装って振る舞う。
「ま,アンタの誕生日には丁度いいんじゃない?」
541960:2007/06/13(水) 20:39:45 ID:???

「それでは,こちらへ」
支配人に案内され,席に着く。
シンジは地に足が着いていない様子だった。
「ところで,アンタ,テーブルマナーは大丈夫よね」 こそこそと耳元でささやく。
「一応,母さんに習ったけど,自信無いよ」
「分かんなかったら,アタシに聞くのよ,直ぐに」

そして,ようやく晩ご飯が始まった。
心配だったシンジの様子も,始まってしまえば,意外としっくり馴染んだ。
やっぱ,俳優の性よね。

料理のチョイスは,店にお任せした。
さて,飲み物はエビアンでも頼むか,と思っていた矢先だった。
「xx年もののロマネ・コンティでございます」
とくとくと,Littleウン万円のワインがグラスに注がれる。
えっ?
「これ,頼んでませんが」
「あ,こちらは当店からのBirthday Presentですよ」
支配人は言葉を続ける。
「この映画の主役級のお二人に,わざわざ当店にお越し頂いたのですから,感謝の意味も込めて」
「これで,この店にも箔がつくというものです」

あのー,アタシ達未成年なんですが……。
「それにつきましては,先程,特例A-18が発令されまして,今晩に限り,お二人に関してはご提供しても罪にはならないそうです」
支配人が軽やかにウィンクをして,アタシ達にそれを勧める。
まさかこんなコトまで出来てしまうなんて。
あのカードの威力に,一瞬めまいがした。
542960:2007/06/13(水) 20:40:35 ID:???

「じゃ,お誕生日おめでと」
飲み口の極薄いワイングラスが重なり,硬質な音を奏でる。
「ありがとう」

ワイン……,嫌いじゃないんだけど,ね。
ええい,ままよ,と,くっと一口飲む。
「……」
「……」
これ,おいしい。 
シンジは,と見るとまんざらでも無い様子。
結構いけるじゃない。

「なんだか,綾波んちの晩ご飯みたいだ」
「何よ,それって」
「いや,お隣だからって,たまに招待されるんだ」
「丁度,こんな感じなんだよね」
「……」
ファーストの話題がアタシの癪に障ったコトは,睨み付けたアタシの眼力で分かったらしい。
しばし,フォークとナイフが皿に当たる音だけが2人の間を支配する。
543960:2007/06/13(水) 20:41:27 ID:???

沈黙を破ったのは,また,シンジの方だった。
「ねえ,アスカ,前から聞こうと思っていたんだけど」
「何?」
「アスカ,アレ,今も持ってるの?」
「アレって?」
「……オ,オスカーだよ」
「んなもん,当然じゃない」
「えぇっ!今のウチにあるの?」
「たぶんね,まだ開けていない荷物,そう,どっかのダンボールに入ってるはずよ」
「えーっ! 何で!? もったいない!」
「あんなモノ,過去の遺物よ,アタシには今が一番大事なんだから」
「……」
シンジは唖然として,アタシを見る。
「何よ?」
「……いや,言うことがさすが,最年少アカデミー賞女優だな,って」
「やめてよね,今時そんな肩書きで呼ぶの,今度言ったら殴るわよ」
「ねぇ,あの時ってどんな気持ちだったの?」
「そうね,あの像がやたらと重かったコトだけは憶えているわ」
「それだけ?」
「しつこいわね,ま,今日はアンタの誕生日だから,特別にカンベンしてあげるわ」
「最高に気持ち良いわよ,だって世界中から見つめられてるんだもの」
544960:2007/06/13(水) 20:42:20 ID:???

「まぁ,アレのおかげで確かに名前は売れたわね,仕事はすごく減ったけど」
「なんで? どうして,逆じゃないの?」
「だって,アカデミー取った女優を使って,ヘタに失敗したらどうする?」
「自分がヘボな監督ですって,わざわざ宣伝するの?」
「あ,そういうことね」
「そ,そういうコト,で,これでこのハナシはおしまいね」
「えー!?」
シンジはとても不満そうだった。
が,コレを話し出すと,触れられたくないトコロまで話すコトになりそうで,
アタシはココでハナシを締めた。

いいだけコースも進み,デザートのソルベまで来た時点で,
アタシ達2人のアタマは,普段飲み慣れていないアルコールに支配されつつあった。

「さ,次行こ,次」
「それでは,参りましょうか」
「え,まだ帰らないの?」

次に案内されたのは,かなり大人な雰囲気のバーだった。
足下が全てガラス張り。
ジオフロントを見下ろす,絶好のロケーション。
遠くにリニアレールが螺旋状にきらきらと見える。
ピラミッド型の撮影所がライトアップされ,一種幻想的な雰囲気を醸し出している。
545名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/13(水) 21:19:34 ID:???
wktkwktk
546960:2007/06/13(水) 21:27:41 ID:???

「じゃ,お任せで」
オーダーを取りに来たウェイターに,軽く告げる。
「かしこまりました」

「ア,アスカ? 大丈夫なの?」
「何が?」
「だって,その,さっきから,どう考えてもアスカのおこづかいじゃ足りないでしょ?」
「そんなコト,アンタが心配しないでも全然へーきよ,ほら,乾杯しよ」
「でも……」

運ばれてきたパステルカラーのカクテルで乾杯し,口をつける。
あらら,ジュースじゃん。
あのカードもココでは,さすがに通用しなかったか。
ちょうど,喉も渇いていたトコロなので,くっと一気に飲み干す。
見ると,シンジも同じようなコトをしていた。
「やっぱ,アタシ達,まだ子供扱いよね」
「だね」
2人して顔を見合わせ,くすっと笑った。

それから,しばらくは何てことのない会話が続いた。
場の雰囲気なんだろうか,シンジがすごく嬉しそうに見える。
割と一緒にいることが多いけど,普段,家では見せない,はしゃぐような表情を時折見せる。
よかった,楽しんでもらえて。
アタシもそれを見て,何となく嬉しい気持ちになる。
547960:2007/06/13(水) 21:28:32 ID:???

元々薄暗かった店内の照明が,急にふっと消える。
「停電……?」
足下のジオフロントからのか弱い光だけで,バーの中がぼんやりと照らされる。
でも,停電にしては,ずいぶん長い。
アタシはちょっと,不安になって天井を見上げる。

そんな中,テーブルの上に置いていたアタシの手に,そっと重ねてくる手があった。
えっ?
まじまじと素の表情でアタシはシンジを見る。
「あ,いや,その,アスカ,何か心配そうだったから,つい,……嫌だったら,その」
シンジは一度は手を重ねたものの,アタシの表情に言い訳しつつ手を引こうとする。
「……」
アタシは無言で,自分の片手に重ねられたシンジの手の上から,もう一方の手を重ねる。
何処かで見た恋愛映画のように。
もう,シンジの瞳から目を離せなかった。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
548名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/13(水) 21:45:08 ID:???
続きが気になるじゃまいか(*´д`*)
GJ!
549名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/13(水) 22:17:06 ID:???
ここで更に焦らしてくるとは・・・w

GJ
550名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/14(木) 01:09:38 ID:???
オッテュ
551名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/15(金) 01:55:18 ID:???
乙かれです
なんつー引きだ……
552名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/15(金) 07:28:19 ID:vXtL5HkB
続きキボンヌ
553名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/15(金) 17:39:27 ID:???
乙です
554名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 02:59:00 ID:???
最高につまんねぇ
555名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 13:49:35 ID:???
鬼のようなヒキだね。はやく続きがよみたいです。
556名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 16:01:39 ID:???
つまんね
557名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 17:31:11 ID:???
>>554=556
君の人生つまんなそうだね。
558名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 17:41:25 ID:???
>>557=960
559名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 20:12:56 ID:???
>>554=556
部屋を締め切ってアロマでも焚いて落ち着くといいよ。
(´・ω・`)つ【練炭】
560名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 20:25:18 ID:???
信者なのか作者の自演擁護なのか知らんががキモい。
つまらんと思うやつがいても別にいいじゃん。
なぜ放置できないんだ?
561名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 21:31:52 ID:???
>>560
ヒント:ヒマ
562名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 23:04:55 ID:???
>>560
このレスするのも久しぶりだ、おまえに感謝する
オマエモナー
563名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 00:55:12 ID:???
続きwktk
564名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 01:01:41 ID:???
これさ…
 日 記 じ ゃ な く ね ! ?
565名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 01:09:24 ID:???
がいしゅつ
566名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 02:23:10 ID:???
流れぶち切って続きに期待。
567名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 03:44:34 ID:???
はやくはやくぅ
568名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 07:00:34 ID:???
日記では無いがこのスレの最初の方で議論してたはず携帯からだから確認だるいんでして無いが
完全日記調な書き方と今の書き方でアンケート取って今の書き方になったんじゃね?確か
569名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 09:26:59 ID:???
つまんね
570名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 10:52:30 ID:???
>>569
じゃあおまいが面白いネタ提供しやがってくださいさあはやく
571名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 11:47:49 ID:???
うんこ
572名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 15:37:56 ID:???

初月 初日

今日から日記を書こうと思う。

いきなりだけど、今日はシンジの命日だ。




なんちゃってwwww
573名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 15:44:26 ID:???
ずいぶんファンキーなアスカが来たwww
574960:2007/06/17(日) 17:06:47 ID:???
>>547

その時だった。

突然の閃光が,見つめ合うアタシ達2人を足下から真っ白に照らし出した。
共に,雷鳴のような轟音が響く。 
びりびりと足下のガラス床が震える。

「!!!」「!!!」
突然の出来事に,とても驚いた。 
最初は何が起きたのか,分からなかった。

アタシ達の真下で大輪の花火が開き,そして散った。
ただただ,唖然とした。 開いた口が塞がらない。

花火は何度か見たことはあるけれど,上から見下ろすのは初めて。
こちらに目がけて飛んでくる火の塊が途中で破裂し,巨大な球形となって,そして散る。 
幾度となく繰り返し,繰り返し。
ジオフロントの湖にもその輝きが照り返し,更に彩りを飾る。

「きれい……」
サプライズもいいところだった。 
ちょっと,このカードの威力を甘く見ていた。

どのくらい時間が経ったのだろう。
花火は,もうこれ以上無いくらいに連続した後,唐突に終わった。
Showへ向けられた万雷の拍手とほぼ同時にバーの照明が元へと戻る。

花火に圧倒されたアタシ達は何だかそれどころじゃなくなってしまった。
改めて,シンジと顔を見合わせる。
何だか,急に照れくさくなって,どちらからともなく重ねられた手を離す。
575960:2007/06/17(日) 17:07:38 ID:???

その後は,何度かジュースをおかわりして,何てことのない会話が続いた,はずだ。
何故か,この辺りから記憶が曖昧だ。

「だいたい,シンジ,アンタがぜぇーんぶわるいのよ」
「ボク,一体,ナニがわるいの?」
「アンタといると,アタシ,じしん,なくなるのよ」
「なんで,ぇ?」
「そんなコト,アタシの口から言わせる気なのぉ?」
「だって,きょう,ボクの誕生日なんだよぉ!」
「だから,なにさ?」
「た・ん・じょ・う・び,だって!」
もう,ナニがなんだか分からなくなっていた。

「され,かえろっか」
ふふん。
なんだか,とてもよいきもちだった。
……ことは憶えてる。
そして,家まではちゃんとリムジンで送り届けられた,と思う。
問題は,その先だ。
576960:2007/06/17(日) 17:08:31 ID:???

「そうりゅう・あすか・らんぐれー,きょうは,しんじのとなりでねる!」
ハイになったアタシは,腰に手を当て,人差し指を高々と上げ,早口でそう宣言した,……ような気がする。
「あ,そほう,わかったよぅ!でも,らめ!」
「いやや! ねる!」
そして,シンジのベッドにもぐりこんで,服を脱いで……寝たはず,だ。

ココまで思い出して,アタシはかなり青ざめた。
だって,どう考えても,コレって,コレって,ねぇ。
誰が見たって,ねぇ。
誰……って?

えっ?
24時間撮影のコトを今になって思い出した。
青い顔から更に血の気が音を立てて引いていった。
ど,どうしよう……。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
577名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 17:59:37 ID:???
乙!

毎回楽しみにしてるよ。
578名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 18:18:21 ID:???
GJ!
また何という切り方(*´д`*)
579名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 18:43:00 ID:???
オッテュ
580名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 22:52:40 ID:???
やっぱカクテルだったんだなw
581名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/19(火) 00:36:57 ID:???
乙。
次回も楽しみ。
582名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/19(火) 13:34:24 ID:???
なにこの神スレ
画像でもないのに100万回保存した
583名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/20(水) 01:21:52 ID:???
ネ申乙
584960:2007/06/21(木) 20:42:24 ID:???
>>576

「お,おはよう」
「あ,お,おはよ」

その日,昼過ぎに起きてきたシンジと顔を合わせた時の,気まずいこと気まずいこと。
2人とも,お互いの瞳を真っ直ぐに見られない。
かといって,避けるでもなく,アタシ達はただただ照れていた。

「ア,アスカ,昨日は,その,ありがとう」 
「とっても,嬉しかった」
「初めてのコトばっかりで,驚いたけど」

えっ?
は,初めてって,そ,それはひょっとして。
ご,ごちそうされてしまったの? アタシ?
585960:2007/06/21(木) 20:43:16 ID:???

目の前が真っ暗になる,
……かと思ったらそうでもなかった。

あ,そう,って感じ。 
自分でも意外だった。

でも,その心配もすぐに晴れた。
「せっかくお祝いしてもらったのに,花火の辺りまでは憶えているけど,
その後,よく憶えてないんだよね……ゴメン」

当のシンジも,アタシと同じようなトコロで記憶が途切れているらしかった。
なーんだ。
ほっとして,がっかり。 
がっかり? 
何でアタシはがっかりしてるんだ?
586960:2007/06/21(木) 20:44:19 ID:???

「頭,痛くない?」
「痛いわよ」
「あれ,ジュースじゃなかったんだね」
「そうだったみたいね」
「薬,あるけど,飲む?」
「ん,もらうわ……ソレって一回何錠?」
「二錠かな」

そして,薬の瓶を受け取ろうとした時,アタシの指先がシンジの指先に触れた。
瞬間,心臓が音を立ててどきんっとした。

「どうしたの?」
そうシンジに話しかけられるまで,アタシは薬の瓶を受け取ったままの姿勢でフリーズしていた。
きょとん,とした表情のシンジ。

「な,何でもないわよ!」
まだ,心臓がばくばくしている。 
ひょっとして心臓発作ってヤツ?
とりあえず深呼吸よ,深呼吸。

……そのうちに,心臓の鼓動はいくぶん収まってきた。
救急車は呼ばなくて済みそうね。

もう学校も撮影もサボりだ。 こんな調子じゃ行ってもムダね。
「じゃ,ボクもパスしよーっと」
両手を組んで前に大きく伸びをしながらシンジが言った。
珍しい,シンジがサボるなんて。
「アスカがいなかったら,たぶん我慢してでも行ったと思うけど」
えっ?
587960:2007/06/21(木) 20:45:24 ID:???

どういうイミなんだろうか,と考えている最中,ケータイにメールが届く。
送信者は……昨日をコーディネートしてくれたコンシェルジュからだった。

考えていたコトは,メールに取って代わられ,それっきりすっぱりと忘れ去った。
「お楽しみの邪魔をせぬよう,昨日より,惣流さま,碇さまの携帯メールの受信を一時的に停止させていただきました」
「何卒,ご容赦ください。なお,昨日からの未受信メールは,本メール後に受信を再開させて戴きます」

それを読み終えると同時に,あふれるくらい沢山のメールがアタシのケータイに届いた。
「弐号機パイロット,碇君を返して」
「弐号機パイロット,至急返信しなさい」
「弐号機パイロット,誘拐で告発するわよ」
「弐号機パイロット,早く投降しなさい」
「弐号機パイロット,タダではおかないわよ」
「弐号機パイロット,バナナあげるから」
「弐号機パイロット……」
全部,ファーストからだった。
もちろんアタシは黒山羊状態になって,読まずにぜーんぶ削除した。

シンジのケータイにも,同じようにファーストからのメールが沢山届いていたようだった。
「おっかしいな……,ねえアスカ,昨日のお店って圏外だった?」
「さあ? 知らないわ,そんなコト」
「綾波,なんでこんなに沢山メール送ってきたんだろ?」
「何て書いてあるの?」
「ん,『碇君の貞操は必ず私が守るもの』だって……何のことだろ?」
「……」
あんだい,ファーストのヤツ,アタシがシンジを襲うって心配かい。
588960:2007/06/21(木) 20:46:15 ID:???

そして,あれから何日かが過ぎたが,何のおとがめもウワサも全く音沙汰無い。
撮影所に行っても,ホントにホントに何事もなく,周囲は至って普通だった。
みんな知らないのかな? 
アタシの考えすぎだったのかな?

ただ,一点,違うコトがあった。
初号機のセットが拘束されていた。 
素体に直接拘束ボルト止め,包帯ぐるぐる巻きの上,更にご丁寧に封印までされて。

あ,あのシーンのかな……。
と,何気に見に行こうとしたら,スタッフが大慌てで止めに来た。
「やめてくださいっ! 惣流さんっ!」

ただごとでは無いスタッフの表情。
何事かと聞くと,シンジの誕生日に暴走しかかったらしい。
初号機の中のヒト,碇ユイさんが。
アタシを止めるスタッフの必死の形相から,その原因がアタシであるコトにようやく気が付いた。
やば。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
589名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/21(木) 21:40:51 ID:???
激しくGJ!
590名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/21(木) 22:25:55 ID:???
GJ!
591名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/21(木) 22:26:22 ID:???
うはw レイ可愛いよレイ・・・
592名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/21(木) 23:03:30 ID:???
ネ申だ
あぁ、間違いない・・!!
593名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/22(金) 05:23:04 ID:???
オッテュ
594名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/22(金) 14:13:15 ID:???
うはっ、ユイさん忘れてた!
595名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/22(金) 15:03:30 ID:???
ユイさんの卓袱台返しがあったのかw
596名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/22(金) 15:56:49 ID:???
アスカとレイが直接対面したら修羅場の予感!
597名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/23(土) 02:23:02 ID:???
あまりのGJさに最初から読み直してきた。
598名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/23(土) 06:50:43 ID:FDqpzLl+
GJ!!!
599名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/23(土) 10:42:23 ID:???
バナナwwwGJ!!
600名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/26(火) 16:28:06 ID:???
マッチ
601名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/28(木) 12:02:39 ID:???
ここからの橋田寿賀子ドラマに期待
602名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/30(土) 23:23:53 ID:???
待つでヤンス
603名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/30(土) 23:57:09 ID:???
職人さん待ち
604名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 12:34:46 ID:Sja7uOoV
初めてLASに挑戦します
※この話はシンジとアスカが結婚したあとの話です



X月XX日
今日はシンジがいつもより早く帰ってきたなぜかと言うと結婚して丸1年が経ったからだ。

あの戦いからもう1年半…
戦いが終わり、アタシはドイツに帰ろうと言う決心がついたとき、シンジが「ずっと傍にいて欲しい」と言うってくれた。

アタシが求めていたのは加持さんではなく、シンジだったのかもしれない。

アタシはいつの間にか泣いていた。
「アタシを必要としている人がいる。」
気づけば、アタシはシンジの胸の中にいた。
するとシンジが、「もう独りにはさせないよ…。」と囁いた。
そして半年後アタシ達は結婚した。


一生アタシはシンジについて行こうと思った。


そして今シンジは仕事から帰って来てはいなや料理を始めた。
アタシの大好物の物ばかりだった。

来年の今頃は新たにもう1人いるんだろうな〜




fin
605960:2007/07/01(日) 13:34:59 ID:???
>>588


今回の映画なんだけど,これだけ実生活と撮影が密着していると,
設定上のカップルと実際に演じる俳優がカップルになるのもぜーんぜん不思議でない。

実際,ヒカリだってスズハラと好い関係らしいし。
「それはそうと,アスカはどうなのよ?」
へっ?
「碇くん,とさ」
「14歳の男女が同じ屋根の下,何があっても不思議じゃないでしょ?」
ふるふるふる,何もありませんって。 
……この間はちょっとヤバかったけど。

「あ・や・し・い,わよ,アスカ?」
「仕事だから,そう,契約上やむなく一緒に住んでるだけよ」
「それにアタシ,Liebe……アイだコイだって興味ないし」
「まった,冗談でしょ? 『あの』惣流・アスカ・ラングレーのセリフとは思えないけど?」
「マジでガチ,よ。 アタシ,恋愛ってしない主義なの」
「えーっ? なんで?」
「……ゴメン,その辺突っ込まれると痛いんだ,アタシ」
口調は柔らかくできたが,アタシの瞳の奥まではヒカリに隠せなかったようだった。
睨むようにヒカリを見てしまった自分が分かる。
ヒカリは,一瞬はっとした表情をし,そして沈んだように言った。
「……悪いコト,聞いちゃったね。 ごめんね,今のコト忘れて」
606960:2007/07/01(日) 13:35:50 ID:???

「それはそうと,ヒカリはどうなのよ?」
気まずい雰囲気を変えようと,ヒカリの方に話を向ける。

ヒカリの表情が一転して,ぱっと明るくなる。
「えーっ,アタシ? 実はさ,この前ね……」
そして,嬉しそうにアタシが聞いてもいないコトまで話し出す。

ヒカリのハナシを聞きながら,何だかヒカリのコトが一途でとても可愛く思えてくる。
そっか,誰かに聞いてもらいたかったのか。
うん,分かる分かる,その気持ち。

「……ねえ,アスカ,聞いてる?」
「へっ? あ,ああ,聞いてるわよ,もちろん」
「でね,そのあとね……」

全てを聞き終えたあとは,まさしく『ごちそうさま』って感じだった。
けふっ。
607960:2007/07/01(日) 13:36:41 ID:???

授業中。
さっきヒカリが変なコト言ったからだろうけど,
自分がいつの間にか,シンジのコトを目で追っているのに気付いた。
シンジの後の席から。

えっ?

夕食後の今も,アタシはキッチンの椅子にあぐらをかいて座り,斜め後ろからシンジを見ている。
あ,コイツ,またぼーっとしてる。
本番の時の真剣な顔もいいけど,こう,普段見せる無防備な感じも結構いける。
いける? いけるって?
なーんて,こっちもぼーっと見ていたら,視線を感じたのか,ふとシンジがアタシの方に振り返る。
シンジの目とアタシの目が合う。 
お互い,ぱちくり,っとする。
やばっ。
アタシは慌てて目を逸らす。
そっぽを向いて,口笛なんか吹いちゃう。
608960:2007/07/01(日) 13:37:37 ID:???

前にファーストに突かれたとおり,
ひょっとしたら,アタシは意識しているのかもしれない。
仕事の相手としてだけではなく,それ以上に,だ。

最初,同い年の男の子と同居すると聞いたとき,アタシは絶対ムリ,って思っていた。
元々,独り暮らしが長かったのと,同年代の男の子って聞いて,余計にそう思っていた。

けど,結構一緒の空間にいる時間が長いんだけど,シンジだと気にならない,というか何というか。
かと言って,いてもいなくても変わらない,空気みたいな存在ってワケでもなく,
いなければなんとなく虚ろに感じるというか。
うーん,自分で自分の感情が説明できない。
なんだ,コレって?

深く考えようとしたその時,アタシにリミッターがかかる。
ダメよ,アスカ,絶対にダメ。

アンタは他人と絶対に深く関わっちゃいけない。
そう,これは仕事,契約上やむを得ず,なんだから。
Coolに,Smartに,ね。
自分で自分に言い聞かせる。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
609名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 13:47:33 ID:???
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!

わーい
610名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 14:10:55 ID:???
GJ!
でもなんかせつねぇ…
611名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 20:54:58 ID:???
GJ
なんていうか、このアスカ様はカワエエですね。大好きです、ハイ。
612名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 20:56:00 ID:???
>>604
うむ。偉そうにいってスマンが、もう少しがんばって
ひねりを入れてくれるとうれしいぞ。次に期待だ。
613名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 23:09:33 ID:???
オッテュ
614名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 10:45:23 ID:wQAEpqBU
乙カレー。
615名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 14:58:13 ID:???
GJ!

どうでも良いけど何処まで撮り進んでるの?
616名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 15:02:02 ID:???
時系列順に撮ってる訳じゃないことはわかるけど
どの程度撮れてるのかねぇ

ともかくGJ
617名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/04(水) 07:39:45 ID:???
ガンガレ
618名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/05(木) 22:35:50 ID:???
保守
619名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/06(金) 17:41:36 ID:cc5XBse5
待ちage
620名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/06(金) 17:53:42 ID:LQPHxNlu
男は貞操と言わんのだ
童貞という 普通
621名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/06(金) 20:53:30 ID:???
貞操=童貞と言う意味ではないよ
622名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/06(金) 21:36:28 ID:???
>>620を晒しageたいが良スレなのでやめとく
623名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/06(金) 21:53:38 ID:???
クソスレage
624名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/06(金) 22:52:19 ID:???
良スレsage
625名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/07(土) 00:18:46 ID:???
クソスレage
626名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/07(土) 00:42:39 ID:???
自演の多いスレだな
627960:2007/07/07(土) 22:29:39 ID:???
>>608

例の一件で,今はあんまりファーストとは顔を合わせたくない。
でも,そう思っている時に限って,かち合うんだな,コレがまた。

それは,普段どおりに生徒玄関で上履きに履き替え,下駄箱からあふれた手紙を踏みにじり,教室へ行こうとしたその時に起きた。
アタシは,廊下のずっと向こうに,包帯姿のファーストが立っているのに気付いた。

ファーストは包帯のかかっていない方の目で,アタシを冷ややかに見つめていた。
そして,ギブスで固めた腕を吊っていた三角巾をおもむろに外すと,
その調子を確かめるように肩を反対の自由な手で押さえ,ぐるんぐるんと数度回した。
この時点で,何だかとってもイヤな予感がした。

ファーストはアタシに向かって走り出した。 
猛ダッシュ,と呼んでもいいくらいの勢いで。
「!」
逃げる間もなく,アタシはファーストにラリアットを決められた。
ギブスを巻いた腕で。
マジで脳天に火花が散った。
やられた。
スローモーションのように倒れていく自分を感じながら,そう思ったのが意識が途切れる最後だった。
628960:2007/07/07(土) 22:30:42 ID:???

気付いた時には,保健室のベッドの上だった。
心配そうにヒカリがアタシの顔を覗き込んでいる。
「アスカ,大丈夫?」
「……ヒカリ?」
「良かった,生徒玄関でいきなり仰向けに倒れているんだもん,びっくりしたわよ」
ほっと胸をなで下ろすヒカリ。
「ぜーんぜんっ良くないわよ!」
アタシは,がばっ,とベッドの上で上体を起こす。
が,その勢いでまたアタマの中が何だかくらくらする。
こめかみに手掌を当てる。 アタシの世界はまだ震度2くらいあった。
「あの優等生! タダじゃおかないから!」

「……アスカ,優等生って,綾波さんに何かされたの?」
「そうよ,このア・タ・シに,いっきなりラリアットかましたのよ!」

アタシは激怒に任せて,素早くベッドを降り,上靴を履くや否や教室に向かおうとした……ら。
ヒカリがアタシの制服の端をつかんでいた。
629960:2007/07/07(土) 22:31:34 ID:???

「ちょっとヒカリ,離してよ!」
「あのね,アスカ,ちょっとだけ聞いて欲しいことがあるの……」
「?」
「綾波さん,碇くんの誕生日にプレゼントを用意していたらしいのよ」
「それが,どうしたっていうのよ!」
「ただ,綾波さんも『レイ』だから渡すに渡せなくて,すごっく困っていたのね」
「クラスのみんなも気付いてたんで,周りでそれとなく何度か機会を作ってあげたんだけど,
上手く行かなくて……,碇くんも超ニブちんだし」
「いつ渡せるのか,クラスのみんなでその日一日どきどきしながら見守っていたんだけど,
結局,放課後までそのまんまだったの……」
「そして,最後のチャンス!で,綾波さんが校門の影で待っていたら,
何処からかリムジンが来て,碇くんをさらっていったのよ」
「綾波さん,そのあと半べそかいて必死にメールを送っていたわ,校庭のすみっこにしゃがみ込んでね」

ヒカリが何を言いたいのか,アタシはコトバのウラから何となく理解した。
その訴えの強さを アタシを真っ直ぐに見返すヒカリの目ヂカラが示している。
しばし,無言の空間が続いた。
「……」
「……」
630960:2007/07/07(土) 22:32:26 ID:???

「……つまり,ヒカリはアタシが悪いって言いたいの?」
「そ,そうじゃないわよ!」
「で,でも,あの日の綾波さん,すごっく困っていたし,それにあんまりにも寂しそうだったから」
「詳しくは聞いていないけど,綾波さんってね,お家の事情で『普通の学校生活』って出来ないんだって」
「だから,今回,すごっく喜んでいたのね,映画の中とはいっても普通の学校に行けるって,碇くんも一緒だって」
「ね,アスカ,分かってあげて」
「……」
ヒカリのハナシで,怒りがしぼんで小さくなり,ココロの中に怒りのやり場ができてしまう。
あーあ。

ヒカリと一緒に,ようやく教室にたどりつく。
ファーストはちら,とアタシを見たが,すぐに『設定通りに』窓の外に目をやる。
やられっぱなしも口惜しいけど,しょうがない,今回だけはカンベンしてやる。
オっトナじゃん,アタシって。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
631960:2007/07/07(土) 22:33:17 ID:???

七夕,タナバタ,タナボタ?
知ってるわよ,当然じゃない。 
たいしたコトしなくても,自分にいいことがあるってコトでしょ?
「……全然違うよ,アスカ」

「こうやって,ササに願いごとを書いた短冊をつるすんだよ」
そう言いながら,シンジは願いごとを書いてはせっせと短冊をつるす。
何書いてるのよ,ちょっと見せなさいよ。
なになに,『立派な俳優になりたい』だって? 
ふーん。
こっちは……。
「だめーっ! こっちは見ちゃダメ!」
いいじゃん,減るもんじゃないし。 けち。
「それより,アスカも何か書きなよ」 短冊と筆を渡される。

願いごとか……。

『この映画が興行的に成功しますように』
『降板されませんように』

「ずいぶんリアルな願いごとだね……」
何とコメントしようか迷った果てに,シンジが言った。
「だって,そうじゃん,『序:』がコケたら,『破:』なんてないわよ,きっと」
「えー,あの『ヱヴァ』だよ,コケるわけないよ,前売りだって売れてるし」
「甘いわよ,シンジ。 自分が主役だからって,そう思いたいのは分かるけど」
「そうかなぁー」
「そうよ,きっとそうよ,だからアタシがポスターに写ってないのよ」
「アスカ,一体,ソレって何の関係があるの?」
「だから……」
632960:2007/07/07(土) 22:34:41 ID:???

そうこう,じゃれているアタシ達の間を,いきなりササがわさっと割って入る。
「!」 「!」
ササの主はファーストだった。
アタシ達がつるしているササの隣に,よっこいせ,と置く。
そこには,ササの葉すら見えないくらいにびっしりと短冊がつるされていた。
しかも,全部ファーストのイラスト入りで。
イラスト?

「綾波,これって『序:』の前売り券じゃないの?」
一枚を手に取り,ミシン目を見つけたシンジが話す。
「そう,前売り券,手に入らない幻の,私のイラスト入りの第3弾前売り券」
「どうしたの? これ?」
「余ったから捨てると聞いて,貰ってきたのよ」
「捨てる? えっ? どうして?」
「どうしても,即日完売と発表したい製作委員会が,そう仕組んだの」
「……」
「ほら,見なさい,シンジ,やっぱ甘いわよ」

さて,ファーストの願いごとは,とアタシが見ようとした時だった。
「それ,ください!」
と,聞こえたような気がした。
すると,ドコからともなくヒトが湧いてきて,一陣の嵐のようにササに殺到し,
一瞬,強烈な人混みになったかと思いきや,その次にはその人影すらなかった。
後に残されたのは,アタシ達と丸裸になったササだけだった。
「私の願いごと……」
ちょっとだけ,ファーストに同情した。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』 好調撮影中! 
2007年9月1日ロードショー予定!
633名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/07(土) 23:07:50 ID:???
乙ですー
そうか、綾波さんも「レイ」だといろいろ不都合が多いのなー
ある意味「アスカ」を捨てちゃってプレゼントに走ったアスカと、捨てられなかった綾波さん
好対照かもw
634名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/08(日) 01:51:24 ID:???
オッテュ
635名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/08(日) 19:54:29 ID:???
乙カレー
636名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 10:13:41 ID:sQzNOkGY
乙オツ〜
637名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/09(月) 10:14:19 ID:???
キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
638960:2007/07/10(火) 22:02:15 ID:???
>>632

今日,「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の零号試写があった『そうだ』。
『そうだ』とわざわざ書いたのは,アタシには招待どころか,零号があることすら知らされなかったからだ。
ぶー。

零号を見終わって,ミサトとシンジが帰ってきた。ファーストも一緒だ。
3人とも,普段の格好じゃなくって,結構フォーマルっぽくおめかししてる。
普通のカッコはアタシだけ。
ぶー。

「いやー,自分で自分を見るのって,どうしても慣れないよね」
「でも,碇君,カッコ良かったよ」
ファーストが目を細めながら,そこはかとなく嬉しそうに話す。

「でも,あの編集のままだと,何だか今までの私のイメージが崩れそうだわ」
ちょっと困り気味のミサト。
「でも,これで役の幅がまた広くなりますよね,ミサトさん」
「それもそうだけど……,でも,アレを観てしまうと,私がただ単に飲んだくれに見えるような気がしてならないのよね」
そう言いつつも,ミサトはくっとビールを空ける。
「シンちゃん,もう一本取って」
「でも,確かにそうですよね」
冷えた缶ビールを渡しながらシンジが言う。
「そんな,断定しないでよ」
「だって,言ったのミサトさんじゃないですか」
2人の掛け合いを聞き,くすくすとファーストが笑う。

何だか3人で盛り上がっているけど,ぜーんぜん会話に入っていけない。
所詮,アタシはカヤの外。
ぶー。
639960:2007/07/10(火) 22:03:24 ID:???

「そ,そういえば,アスカね,ワンカットだけ出ることになってたよ」
さっきからぶーたれているアタシを気遣ってか,シンジが声をかけてくれる。

えっ? ホントに? 
アタシ,やっぱ出てるんじゃん!
一瞬,嬉しくなった。
けど……,それなら,なんでアタシは試写に招待されていないのよ?

「あ,それは,その場面がね,
『太陽を背にして,手すりから身を乗り出して下を見ている(たぶんアスカの)シルエット』
ってマジックで書いた紙が映っていただけだからじゃないかな?」

無邪気に,そして深くざっくりとアタシを傷つけるシンジだった。
しかも,ご丁寧にカッコ付きで(たぶんアスカの)って一体何よ?

あ,そう。 さいですか。
どうせ,アタシはいらない子ですよ,ふんっだ。

……でも,『:序』が零号ってことは,今撮ってるのって,一体何なの?

「君はツンデレの無い表現が,ファンに許されると思っているのか」
いつものポーズでカントクが曰う。

と,いうことでアタシの出番は『:序』にはないらしい。 
もお,せっかく撮ったのに。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
640名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/10(火) 22:38:32 ID:???
短期間連作キタ━━━━(゚ω゚)━━━━!!!!!!

職人お疲れさんですお茶ドゾー つ且~
641名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/11(水) 00:28:06 ID:???

アスカ可愛いい
642名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/11(水) 01:54:13 ID:???
オッテュ
643名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/11(水) 23:32:57 ID:???
現実でも1カットだけは出そうな予感
644名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/12(木) 02:35:15 ID:???
エンディング後の次回予告の部分に出てくるような気がする。
645名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/15(日) 00:17:08 ID:???
646名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/15(日) 15:51:54 ID:???
647名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/15(日) 19:11:55 ID:???
648名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/16(月) 02:18:16 ID:???
>>647
渋いなおいw
649名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/17(火) 22:51:07 ID:???
食べたいなっと
650名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/18(水) 17:53:16 ID:???
実は渋柿なんですよ
651名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/18(水) 18:43:22 ID:???
干し柿だから渋柿なのは間違いないな
652960:2007/07/20(金) 22:16:45 ID:???
>>639

ちくしょう!チクショウ!ちくしょう!
手近にあるもの,全てに当たり散らす。

アイツの方がアタシより強いなんて!
壁に叩き付けられた携帯電話が,乾いた音を立てて二つに割れる。

あんなヤツにアタシが負けるなんて!
蹴り飛ばされたカバンが,中身をぶちまけながら放物線を描く。

ちくしょう!チクショウ!ちくしょう!チクショウ!
大事にしていたネックレスを引き千切る,バラバラと小さな粒が机に落ち,弾ける。

悔しい!悔しい!悔しい!悔しい!
教科書もノートも引き裂く,ボールペンを渾身の力を込めて折る。

部屋中の何もかもを破壊し尽くす。
残ったのは,薄暗くなった部屋の中で肩で息をする自分だけ。
後は全て残骸と化す。

悔しいよ,……ママ。
653960:2007/07/20(金) 22:18:39 ID:???

ママ,か。
台本を読んでいて,自分がしばらく,ママってコトバを言ってないコトに気が付いた。
……見ていてくれているかな。 ママ。
突き抜けるような蒼い空を見上げながら,ふっとママのコトを想った。

ぽろりん,とケータイがメールの着信を告げる。
メールの主はチーフだった。
「あなたの仕事ぶりをキョウコに伝えてきました。 色々大変かと思うけど頑張ってね」

「……」
わざわざ,ママのお墓参りをしてくれたんだ,チーフ。
ぐっと胸に込み上げるものがある,そして,溢れそうになる。
でも,それを無理矢理胸の内に押し留める。
絶対泣いちゃダメよ,アスカ。
アタシは今は『アスカ』なんだから。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
負っけてらんないのよ! ママが見てんだから!
654960:2007/07/20(金) 22:19:52 ID:???

「ただいま」
「お,おかえり……」
いつものように,撮りが押して遅くなったアタシの帰りをシンジが迎えてくれる。
でも,今日はいつもと違い,何となく微妙な表情でのお出迎え。
及び腰,というかアタシを危険物か何かと勘違いしているんじゃないか,って感じ。

「何よ,一体?」
「い,いや,そ,その……別に……」
「ヘンな奴,あーあ,おなかすいた,今日の晩ご飯はなに?」
制服姿のまま,大きく伸びをしながら尋ねる。
「ちゃ,チャーハンだよ」
「まさか冷凍じゃないわよね」
「ち,違うよ,ちゃんとボクが作ったよ,……冷蔵庫の余り物だけど」
「それより,アスカ,先にゴハン食べない?」
「何でよ,帰ってきたばっかりなんだから,少し休んでからにするわよ,着替えもしたいし」
あわわ,っとするシンジ。 
655960:2007/07/20(金) 22:20:52 ID:???

一体何なのよ,さっきから。
そんな奇妙なシンジを見ながら,自室のフスマを開ける。
一歩足を踏み入れる,ぐにゅ,っと何かを踏む,妙な感触が足の裏でする。
えっ?
二歩足を踏み入れる,今度は固い何かを踏む。

とてもイヤな考えがアタマを過ぎる。 
部屋の電気を点ける。
「……」 
やられた。
部屋中のものというもの全てが,原型を留めず残骸と化していた。
さっきまで撮っていた,撮影所のセットのアタシの部屋と全く同じに。
肩越しにシンジがアタシの部屋を覗き込み,惨状に絶句する。
「ぼ,ボクは一応は止めたんだけど,ね,スタッフがどやどやっと来て……」
シンジは必死に言い訳をするが,アタシは聞いちゃいなかった。
「……シンジ」 怒りで肩が震える。
「はい?」
「今日はアンタ,こっちの部屋で寝なさいね」
「え――っ! そんな,ひどいよ!」
「アンタが体を張ってでもスタッフを止めておけば,こんなコトにはならなかったでしょ!?」
「そんなぁ……」

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
656名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/20(金) 22:26:16 ID:???
GJ!
657名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/20(金) 22:57:38 ID:???
乙かれです
撮影を離れてもギスギスしちゃうのかなあ
658名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/21(土) 03:47:24 ID:???
乙〜
659名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/21(土) 12:07:37 ID:???
オッテュ
660名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/21(土) 12:23:08 ID:???
ドサクサに紛れてシンジの部屋で寝ちゃうアスカかわええw
661名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/21(土) 19:19:53 ID:???
乙です!
662名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/22(日) 12:06:12 ID:???
>>660
むしろ一緒に(ry べきだと思うのだがどうか
663名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/22(日) 17:34:20 ID:???
m9(・∀・)ソレダ!!
664名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/25(水) 16:36:26 ID:???
665960:2007/07/25(水) 23:16:54 ID:???
>>655

どうしてもヒトが眠れる状態まで片付かない。
と,シンジが半べそをかきながら懇願してきたのは,日付が変わる直前くらいの時だった。
アタシはくすん,と鼻を鳴らし,譲歩案を出した。
「仕方ないわね,アタシがアンタのベッドを使ってあげるから,アンタ,床で寝なさい」
「ねえ,それって,逆じゃないの?」
「そーお,シンジ。 アンタは自分のしたことを棚に上げて,アタシに床で寝れ,と?」

両手を組み,天に祈る。
思いっきり,めそめそと泣き真似をしてやる。
「異国から来た,こんなにか弱い美少女をこの固い床に寝れと……」
「神様,なんて酷いんでしょう,このバカシンジは……」

「……わかったよ」 
ふふん,勝ったな。
666960:2007/07/25(水) 23:18:22 ID:???

翌日。
学校。
教室。

「弐号機パイロット」
ファーストがアタシを窓際の自席から呼ぶ。 珍しい。
「何よ」
アタシが目の前に立つとファーストは目を閉じて,押し黙った。
しばし,沈黙が続く。

「ちょっと! ヒトのこと呼びつけておいてアンタ一体何様よ!」
ファーストはすっと息を吸うと,目を閉じたまま言った。
「……碇君のニオイがする」
ぎっくぅ。
「な,何がニオイよ,アンタってヘンタイじゃないの?」
とりあえず,問題をすり替える。 シラを切り通す。

「……碇君からは,弐号機パイロット,貴方のニオイがしたわ」
どきっ。

「不純異性交遊」 ぼそっとファースト。
どきぃっ。

不覚にも,その言葉にアタシは動揺してしまった。
思えばこれが全ての失敗の始まりだった。
「ば,バッカじゃない! このア・タ・シがあんなヤツと,何で?」
「だいたい,釣り合うわけないじゃん! この惣流・アスカ・ラングレー様と!」
「あんなヤツ,仕事でなかったら一生口なんてきかないわよ」
667960:2007/07/25(水) 23:23:31 ID:???

「そう,なら別にいいけど。 ……碇君」
ファーストは冷たい紅い瞳をアタシに向けた後,すぐその後ろに目をやる。
えっ?
いつの間にかシンジがアタシの後ろに立っていた。
ただ,その表情には深い失望の色が浮かんでいる。
げっ,聞かれた?
「……そっか,そうだよね」
「アスカにはこれが仕事だもんね,洞木さんも似たようなこと言ってたし」

「そ,そうよ,当たり前じゃない」
ヒカリのおしゃべりめ,と思いつつ,勢いで言ってしまったことを後悔する。
でも,後には引けなかった。 そしてどんどん悪い方向へハナシは加速する。
「そう,仕事,契約上やむなく,よ」
シンジはため息を一つ付き,自虐的に笑みながら言った。
「うん,わかったよ。 ボクも仲良くなれたと思いこんで,ちょっといい気になっていたかも」
「アスカにとっては,ボクと同居するのも仕事だもんね」
今まで見たことの無い,とても落ち込んだシンジがそこにはいた。

「これからも,どうぞよろしくお願いします,惣流・アスカ・ラングレー様」
シンジはアタシに向かって他人行儀に深々と頭を下げた。
そして,細い肩を落としてと自席へ戻る。
えっ,ちょ,ちょっと……。
アタシはシンジに弁明しようとしたが,それは授業開始のチャイムに寸断された。
がたがたとクラス中が席へと戻る。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
668名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/25(水) 23:30:58 ID:???
GJ!
アスカ可愛い(*´д`*)ハァハァ
669名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/26(木) 01:19:14 ID:???
むしろショボーンなシンジきゅんカワイス(*´д`)ハァハァ
670名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/26(木) 03:50:26 ID:HLfHs0dc
671名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/26(木) 04:17:14 ID:???
オッテュ
672名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/26(木) 04:17:37 ID:???

せつねぇよ、アスカせつねぇよぉ
673名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/26(木) 21:40:28 ID:???
一波乱キター!乙!
674名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 18:21:53 ID:???
待ちでぃ〜す
675名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/02(木) 04:05:39 ID:???
ほしゅ
676960:2007/08/02(木) 20:54:27 ID:???
>>667

その日から,シンジは『シンジ』になった。
元々シンジは『シンジ』だったけど,アタシに見せるのは今まで以上に『シンジ』になった。
完璧に。

「さっきからどうしたの? 2人とも?」
夕食の席で,妙に明るいシンジと押し黙るアタシを不思議に思ったのか,
理由の知らないミサトが何気に尋ねる。

「え,何かヘンですか?」 『シンジ』が答える。
「別に変わったこと無いですけど,ねぇ,『アスカ』?」
「……」 作られたとぼけ顔で同意を求められても,アタシは応えられない。
「そーお,ならいいけど」 
その模範的な解答に,ミサトは不満げな様子だった。

「さてと」 シンジが席を立つ。
「明日早いんで,今日はもう寝ます,食器はシンクに浸しておいてくださいね」
「じゃ,ミサトさん,『アスカ』,おやすみー」
たん,と軽い音を立ててシンジの部屋のトビラが閉まる。
677960:2007/08/02(木) 20:55:28 ID:???

「なんかずいぶんとご機嫌ね,シンジくん。 ……ね,何かいいことでもあったの?」
ダイニングテーブルの向こうから,ミサトが身を乗り出し,興味シンシンでアタシに尋ねる。
「何でもないわよ」 
「まーた,ケンカでもしたの? あ,分かった,狙ってたシンジくんの分のタルトを先に食べられちゃったとか?」
「違うわよ」 アタシは答えを拒絶するよう固く答える。
「それとも,アレかな,あの……」 
ミサトはふざけてなのか,ワザと聞こえないフリをして続ける。

「何でもないってば!」 
ミサトの茶化した言い方に,アタシは思わずコトバを荒げてしまう。
その語気に,ミサトはたじろぐ。
アタシはダイニングテーブルに箸を叩き付け,そして無言のまま席を立った。
678960:2007/08/02(木) 20:56:29 ID:???

部屋の電気も点けず,そのままベッドに倒れ込む。
ミサトに当たっても仕方ない,とは頭では分かっているんだけど。
ついつい,地が出てしまう。

そう,これは仕事,仕事なんだから。
アタシが稼がなきゃ,事務所だって行き詰まるんだし。
ここで役を降ろされるワケには行かない。

でも,あの楽しかった時間,……熾烈を極めたアイスの取り合い,
ついついTVゲームに熱くなって,徹夜明けへろへろ状態で2人で入ったスタジオ,
解釈の違いから激論になって,しばらくクチをきかなかったあのシーンの練習,
夕食の材料を買い込んだ後,2人で夕日を見ながら帰った帰り道,
そして,何てことのない,ごく普通の平穏な日々。
アスカ,これは全部,あなたの作り事だったの?

「違う!違うのよ!」

でも,外から見れば,アタシの行動は全て仕事なんだ。
自分がどう思おうと,どう振る舞おうと,いくら楽しくても,いくら悲しくても。
その事実が重くのしかかかる。
あなたは,この造られた虚構の世界でしか生きられないんでしょ?

「違う!違うわよ!仕事だけじゃない!」

じゃあ,何よ?
アタシの中で,もう1人のアタシが口の端だけで意地悪く笑みながら問う。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
679名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/02(木) 21:49:42 ID:???
GJ
アスカせつねぇ('A`)
680名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/02(木) 23:44:24 ID:???
GJ。・゚・(ノД`)・゚・。
681名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/03(金) 01:30:09 ID:???
オッテュ
682名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/03(金) 09:44:25 ID:???
いやいや、いいねえ
683名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/04(土) 01:50:28 ID:???
乙カレー!
せつねぇよ、アスカせつねぇよぉ
684名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/04(土) 19:13:53 ID:???
685名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/06(月) 08:17:53 ID:???
俺は思った
このシンジ、かなりのSではなかろうかと。
686名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/07(火) 19:27:39 ID:???
>>685
だがそれがいい。
職人さん乙です。続き楽しみにしてる!!
687名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/08(水) 11:35:50 ID:???
688名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/10(金) 19:22:56 ID:???
待ち
689名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/11(土) 21:07:32 ID:???
しゅ
690名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/14(火) 00:40:51 ID:???
691名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/15(水) 02:37:25 ID:???
692名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/16(木) 00:06:59 ID:???
693名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/16(木) 00:25:59 ID:???
694960:2007/08/17(金) 10:22:21 ID:???
>>678

そうよ,これは仕事よ。 造りごとしかない,虚構の世界よ。
いいわ,否定はしない,でも,肯定もしない。
アタシはアタシのやり方で行くわ。

ばんっ,と勢いよく部屋の戸を開け放つ。
リビングのソファでくつろいでいたシンジが,その音に驚いて振り向く。
「『アスカ』?」
アタシはシンジにつかつかと歩み寄る。
いつもとは様子の違うアタシに気付いたのか,シンジは振り向いた姿勢のまま,歩み寄るアタシから目を離せないでいた。

ソファの背を挟み,逆さになってアタシを見るシンジとそれを見下ろすアタシ。
一度,腰に手をやっていつものように構える。 
くすん,と鼻を鳴らすのを合図に,アタシは後ろから,シンジの細いあごに沿って両手を滑らせる。
シンジの体が硬くなるのが,手のひらを通じて伝わってくる。
そして,アタシは誰もいない空間に向かってにっこりと微笑んだ。

「ア,アスカ? だ,大丈夫?」
端からすれば,ヤバイ感じにも見えるアタシの突飛な行動。
それに戸惑うシンジが,『素の』シンジのまま話しかける。
「大丈夫?って,アンタってホント失礼ね,アタシはいたってフツウよ」
アタシは誰もいない空間から目線を外さず,答える。
695960:2007/08/17(金) 10:23:30 ID:???

「これって,一体何なの?」
「仕事よ」
「えっ?」
「そ,仕事よ,正確に言うと仕事の練習だけど」
「練習って……」
「こんな構図のイラストが資料であるのよ,でも,アンタとのtwo shotだから独りじゃ練習出来ないのよ」
「……」
シンジは,固まったまま押し黙った。
そして,ややしばらくは,黙ってそのままの姿勢でいた。

でも,アタシの本題はこれからだった。
ゆっくりと,アタシはシンジのあごを手のひらから腕でなぞるようにすうっと動かす。
アタシの胸がシンジの後頭部に当たる感触が伝わってくる。
その瞬間,ぴくっとシンジが動く。

そして,アタシはヒジを折り,後ろからシンジの頭を抱きしめるような格好になる。
ぎゅっと力を込める。
目線は絶対合わせない。
アタシとシンジのいる空間だけが,凍り付く。
アタシは平静を装い,自然に振る舞っていた,はずが,何故か心臓だけは従ってくれなかった。
どうか,アタシの鼓動がシンジに伝わりませんように。
696960:2007/08/17(金) 10:28:13 ID:???

シンジのアタマに頬をすり寄せる。
おフロ上がりなのか,シンジの頭からは嗅ぎ慣れた香りがする。
あ,コイツ,アタシのトリートメント,勝手に使ったな。 
最近減りが早いと思ったら,そういうコトか。 アレ,結構高いのに。
やけに,テレビの音が遠くから聞こえる。
その割に,シンジの息づかいはちゃんと聞こえる,なんでだろう。
なーんて取り止めのないコトを考えながら,更に固まったシンジと一時を過ごした。

永遠にも感じられた時間が経ってから,ようやくシンジが口を開く。
素のままで。
「―――アスカ?」 緊張からか,語尾が少し上ずっている。
「何よ」
「そ,その,いつまでこうしていればいいの?」
「アタシが納得するまでよ」
「あ,あのね,暑いんだけど……」 取って付けたようなシンジの言い訳。 でも,シナリオの内よ。
「アンタもだらしないわね,仕事でしょ? コレくらいガマンできなくてどうすんのよ」
そう言いつつ,シンジの手元にあったリモコンを手探りで探し出し,エアコンの温度を下げる。
「ほら,コレでどうよ?」
「……」
また,沈黙だけが過ぎていった。

「ねえ,こんなポーズなんて,あるの?」
「ないわよ」 アタシはきっぱりと即答する。
「!!!」 驚きで声も出ないシンジ。 どんな顔をしているかは見なくても分かる。
「そんな勝手なコトしたら,降板,って言いたいんでしょ?」
その驚きに対してアタシは,極めて不敵に,あさってを向いたまま返事をする。
「これから造るのよ,新劇場版のために」
「結果が付いてくれば,誰もモンクは言わないし,何より,言わせないわ」
「……」
呆れた空気,そしてまた,沈黙が始まった。
697960:2007/08/17(金) 10:29:20 ID:???

時間だけが無為に流れていく。
いい加減,この姿勢も疲れてきた。
でも,肝心なコトをまだ伝えていない。 伝わっていない。

「ねえ」
「……」
「……まだ続けるの?」
幾度かアタシが,シンジのアタマの上で頬の向きを変えた後,シンジが濡れた仔猫のように聞く。
「アンタが,今日はもう『シンジ』を止めるっていうなら,考えてあげてもいいわよ」
「そうしたら,今日の仕事はおしまい,アタシも『アスカ』を止めるわ」

「……でも,『シンジ』を止めたらアスカは口も利いてくれないんでしょ?」
どきっ,と心臓がはねる。 後ろめたい気持ちでココロがいっぱいになる。
それでもアタシは一瞬,返事をためらった。 
そうじゃない,とハッキリ言いたかった。
でも,アタシのポケットでデコられたモノリスがストラップに当たり,ちゃらり,と音を立てる。
牽制するかように。

仕方ない,か。
アタシはシンジの耳元で,周囲に聞こえないようそっと囁く。
「アレは『アスカ』だったから,どうしても,やむを得ず,よ」
「アタシは造った『シンジ』より,シンジと話すほうが嫌いじゃないわ」
「えっ?」
698960:2007/08/17(金) 10:30:30 ID:???

抱きしめていた腕をすっと離す。
そして,やっとシンジと目線を合わせる。
これだけでアタシの言いたいコトが伝わったかどうか不安だったけど,シンジは分かってくれたようだった。
「じ,じゃあ,今日の仕事はもうおしまいにするよ」
軽い驚きと嬉しさがコトバと一緒に返ってくる。
「じゃ,アタシもおしまい。 でも,コレは2人の時だけ限定ね」
「うん」

おやすみ,と声をかけて自室の戸を静かに閉める。
ふう。
ベッドに倒れ込んで大きく息を吐く。
疲れた。 とっても疲れた。
けど,とても心地よい疲れだった。

翌朝。
「ちょっとアンタ,勝手にアタシのトリートメント使わないでよ!」
「じゃあ,シャンプーとリンスはいいの?」
「こぉ―――――――――の,バカシンジ! 全部ダメに決まってるじゃない!」
「……2人とも朝っぱらから,うるさいわよ」 
寝起きで超ダルそうなミサト。
「ちょっと,聞いてよ! このバカ,アタシのトリートメント使ってんのよ!」
「ああ,アレね。 アタシも使ってるけど,結構いいわよね」 
そう言いながら,ぼりぼりとボサボサのアタマをかく。
「な,何ですって―――――――――ぇ!」

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
きぃ――――――――っ!
699名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/17(金) 10:41:00 ID:???
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
GJです(*´д`*)ハァハァハァ
700名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/17(金) 11:13:43 ID:???
読んでる俺もドキドキしたぜGJ!
701名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/17(金) 11:39:52 ID:???
乙GJ!!
毎日待ってた甲斐があったーよ
702名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/17(金) 12:22:23 ID:???
>>698の7行目と8行目の間にどれだけの文章が収められているのかッ
畜生、涙で曇ってよく見えませぬ…
703名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/17(金) 13:43:30 ID:ufXvGUh6
職人さん、待ってました。
GJ!!!
704名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/18(土) 04:29:30 ID:???
覗いたら来てたー
960氏!眼福です!
705名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/18(土) 10:06:22 ID:???
オッテュ
706名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/22(水) 16:19:59 ID:???
保守
707名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/23(木) 04:35:35 ID:???
708名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/24(金) 06:11:56 ID:???
しゅ
709960:2007/08/24(金) 21:01:26 ID:???
>>698

あぢぢぢぢ。
あぢぃ,マジあぢい。

つむじとうなじだけが日焼けしちゃうじゃん,これじゃ。
撮るのはアタシのシルエットだけ,しかもたった1カットのみ。
亜熱帯かと勘違いするようなお日様がさんさんと降り注ぐセットの上は,
当然のごとく照り返しで鉄板焼き状態。
なのに,『雲のカタチが悪い』だの『風が良くない』だので,延々と撮り直しが続く。
あのー,アタシ,さっきから目玉焼きになってるんですけど……。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
……っていうか,コレ『:序』に絶対間に合わないじゃん。
710名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/24(金) 21:35:13 ID:???
日焼け止め大量消費…('A`)
GJ
711名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/25(土) 01:28:04 ID:???
>>709
どっかのスレで見たが完成はリアルで8月最終週らしい
きっとアスカも出られるよ(1カットだけ)
712名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/25(土) 03:12:23 ID:???
オッテュ
713960:2007/08/25(土) 20:51:43 ID:???
>>709

あぢぢぢぢ。
あぢぃ,マジあぢい。
帰ってきても,あぢい……。

今日だけじゃない。
連日のうだるような暑さに,アタシはとっくの昔にやられていた。
なんで……なんでこんなに暑いのよ!ニッポンは! ここは南の島じゃないのよ!

この暑さのせいか,最近,エアコンがサボり気味だったので,ほんのちょっとだけ気合いを入れてみた。
けど,それがいけなかった。
気合いを入れた次の瞬間,エアコンの中からばきんっ!ととってもイヤな音がした。
慌ててスイッチを入れ直した,けど,もーもーと音はするけど,流れてくるのは生暑くて,
しかもカラダにまとわりつく,とってもイヤな風だけ。

……どうしよう。 
どうしよう。 どう考えても思いっきりヤバい。
もうすぐ,2人が帰ってくる。
どうしよう。

こんな暑い部屋にいても,いい言い訳が思いつきそうもないので,とりあえす近所のコンビニに避難した。 
逃げたんじゃないわよ。 戦略的撤退ってヤツよ。
でも,かげらうの揺らぐ道筋,たったあれだけの距離でアタシは日差しに負けて危うく倒れるトコロだった。
714960:2007/08/25(土) 20:52:44 ID:???

いいだけコンビニで涼んだあと,晩ご飯の時間になったので帰ることにした。
新製品のアイスもゲットしたこともあり,エアコンのコトはすっかり忘れてアタシはご機嫌だった。
玄関前までは。
「ただいま」
玄関を開けると,……何よ,この熱気は。
そっか,アタシがエアコンに気合いを入れたからか。 でも,さっきよりひどいじゃない。
「おかえり,ずいぶん遅かったね」
額に汗の粒を作りながら,シンジが出迎えてくれる。
「アスカ,エアコンが壊れたみたい……」

「まあ,それは大変ね!」 さぞ知らなかったように,バックれて驚いてみせる。
「どうしましょう,こんな暑いのに」 それっぽく,おろおろとしてみせる。
そんなアタシの模範的な´ありえない´返事を聞くと,シンジは表情を一変させ,疑いをアタシにかける。
「ひょっとして……アスカが壊したんじゃないの?」
「そ,そんなコト,あるわけないでしょ! アタシだって今帰ってきたばかりなんだから」
「そっか,そうだよね……」
せぇーふ。 ほっ。

とりあえず,まだ帰ってきていないミサトに連絡する。
「あ,そう,それなら電器屋さんに連絡しておいて。 じゃあ,アタシは今日は帰らないから,あとよろしくー」
「帰らないって,どういうコトよ! ……あ,切れた」
逃げやがった。 ちっ。 
まあ,1人分の発熱が減ってよかったとも言えるけど。
……全然よかないわよ,アタシもどっかに避難させてよ。
715960:2007/08/25(土) 20:53:45 ID:???

結局のトコロ,部屋の温度が暑いコトには変わりない。
なるべく冷たいところを求めて家中をさまよった挙げ句,シンジと2人してフローリングの床に寝ころぶ。
少しだけ,床のほうがひんやりしている……感じがする。
大の字になったアタシの足もとに,シンジも同じようにぐってりと寝ころぶ。

「あづい,あづいよー,……あづいのにさわんないでよ! この,ばかしんじぃー」
たまたま,アタシの足に触れたシンジのカラダをここぞとばかり,げしげしと蹴る。
「そんな,八つ当たりしないでよ,暑いのはボクのせいじゃないんだから」
「それに,怒るとよけい暑くなると思うんだけど」
「うっさいわね! アンタと違ってアタシのカラダはデリケートなんだから,一緒にしないでよ!」
「はいはい……」
716960:2007/08/25(土) 20:54:53 ID:???

う―――――――――――――。
黙っていても汗が噴き出てくる。
カラダがべとついて,キモチわるい。
ガマン出来なくなってシャワーを浴びようと重い腰を上げる。
すると,ナゼかシンジも同時に立ち上がる。
えっ? と,お互い顔を見合わせる。
「何よ?」 「そっちこそ」
「気持ち悪いんで,シャワーでも浴びようかと思ったトコロよ」
「ボクもだよ」
「じゃあ,レディファーストよ,アタシが先よ」 
「しっしっ,あっち行きなさいよ」 手首より先だけで,シンジを追い払う。
「『言っとくけど,覗かないでよ』」 
アタシは悪戯っぽくウィンクをして,真面目な声でシンジに言った。

あれ?と意外な顔をするシンジ。
そして,アタシの意図が分かったのか,了解のサイン代わりにアタシと同じようにウィンクをして,大真面目で答える。
「『……わかってるよ,命かけてまでみたいもんじゃないしね』」
「『んまっ,なによそれ,どういうイミ!?』」
「『うるさいな〜〜〜〜いいから早く入れよ!』」

そして,改めて2人で顔を見合わせて,くすっ,とほんのちょっとだけ笑った。
アタシはシンジの笑みを確認してから,カーテンを閉めた。
717960:2007/08/25(土) 20:55:54 ID:???

一時的にさっぱりする,ふぅ。 
でも,こうなると下着すら着けたくない。
バスタオル一枚でふらふらとリビングに出る。
そして,まだ,ぐってりと床に寝ころぶシンジの顔を覗き込む。
気配に気付いたのか,シンジが目を開ける。
「『お・ま・た・せ・ あがったわよん』」

「ん……,うわあ!」 
「……何よ,そのリアクションは」
「ホントに,そんな格好で出てこないでよ!」
何よ,ちゃんとオリジナルに忠実じゃない。 別に間違ってないわよ。
「『さっきみたいに関心ないようなコト言われると,プライド傷つくのよね』」
「『アタシ,結構ムネ大きいんだョ』」
「『どう? ナマも見てみる?』」
「やめてよ,アスカ,ホントにやめて」  
アタシのセリフから,まだ,ふざけていることは分かっていても,
いざ実際に目の前にすると,ホントに恥ずかしいらしい。

アタシはそれを全く無視して,しずしずとバスタオルのすそをたくし上げる。
バレエのように一度,太股だけを直角に持ち上げ,それからヒザから先をつま先までぴん,と伸ばす。
「どう? この脚線美。 コレをナマで見られるなんて,あんたってホント幸せモンよね」
シンジの瞳が,顔を覆った両手のスキマから見える。
「ヒップは,こんな感じ,恥ずいからちょっとだけね」 
そう言って,アタシはバスタオルをちら,と腰の高い位置までめくる。
718960:2007/08/25(土) 20:57:50 ID:???

アタシの太ももから腰まで,何も身に着けてないコトを見て,
シンジは初めて,これがジョークではないことに気付いたらしい。

「ちょ,ちょっと,アスカ,ホントになんにも着てないじゃない!」
「待って,ちょっと待って,こんな設定なんてないよ」
「だから,言ったじゃない,プライド傷つくって」
「あ,あれはだって,たまたまそういうセリフだったからだけで……」
改めて,シンジの顔を覗き込む。
ぽたり,とシンジへしずくが落ちる。 アタシの濡れた髪から。
「そして,最後にとっておきの……」
小悪魔のような微笑を浮かべ,アタシはおもむろに胸元からバスタオルを外した。

「あ゛――――――――――――――っ!」
もう,シンジは耳まで真っ赤っかだった。
ホントに目をつむって,顔をそむけている。
「なーんちゃって」
してやったり,のアタシ。 
やりぃ!とココロの中でガッツポーズをする。 
へへーんだ,ちゃーんと水着を着てるわよ。
この間,くやしいから買っちゃったんだもん,ピンクと白のストライプのビキニ。
しかも,ちょっと大胆なヤツを。
そして,アタシがシンジを大笑いのネタにしようとしたその時だった。
719960:2007/08/25(土) 20:58:54 ID:???

「――――――――――――――――っ……?」 
シンジの声が絶叫からふつーの声,しかも語尾に疑問を含んだ声に変わる。
目線はアタシのカラダに釘付けだけど,目が点。
へっ?
「な,何よ?」 予想だにしない反応に,ワケの分からないアタシ。
やや,しばらくあってからアタシの胸を指差し,シンジが口を開く。

「……ね,熱収縮?」

ねつしゅうしゅく……?
しゅうしゅく……?
……!!!
あ゛――――――――――――――――っ!
逆に,アタシが耳まで真っ赤っかになる。
あわてて,両腕でムネを隠す。

「いったいアンタドコ見てんのよ,このスケベ!」
照れ隠しにとりあえず,シンジの顔面がめり込むくらいのケリをかました。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
パット入れるの忘れてた……orz
720名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/25(土) 21:05:45 ID:???
あの胸パッドだったのか…w
GJ
721名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/25(土) 21:09:00 ID:???
そういや胸パッドだったなぁw忘れてたw
GJ
722名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/26(日) 02:22:24 ID:???
723名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/26(日) 03:09:13 ID:???
ここで胸パッドネタか!
激しく乙
724名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/26(日) 04:12:57 ID:???
オッテュ
725名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/30(木) 06:37:18 ID:???
gj
726名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/31(金) 12:32:13 ID:???
もつ
727名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/02(日) 17:16:28 ID:???
待機
728名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/04(火) 21:11:57 ID:???
まち
729960:2007/09/05(水) 22:20:26 ID:???

公開。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の公開。
でも,アタシは出ていないらしい。
ふんっだ。

公開初日の朝だというのに,全く普段と変わった様子のないシンジ。
全然,起きてくる気配のないミサト。
アンタ達,なんでそんなに余裕なのよ。 フツーの神経なら,どきどきもんじゃないの?

「シンジ」 「ん?」 
「今日,なんか予定ある?」 「いや,別に。 撮影も休みだし」
「……行くわよ」 「行くって……ドコに?」
「映画に決まってるじゃない!」 「映画って……なに?」 
ぴきっ。 アタシのこめかみが音を立てる。
アタシがこーんなに心配しているのに,なんで,コイツは全然危機感がないのよ!

「あんたバカぁ? 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』を観に行くのよ!」
一瞬,戸惑うシンジ。
「ああ,そっか」 思い出したように,ぽん,と手のひらを拳で叩く。
「そう言えば今日からだったね。 でも,ボクは試写で観たから,別にいいよ」
「アスカが見たいんなら,招待券持ってるよ」
ちっ,ちがーう!!! そうじゃないっ!!!
「そうじゃなくって! アンタ,ナマでお客さんの反応とか見たくないの?」
「うーん,別に……」
「ナニよその態度は! だから,アンタは『史上最も情けない主人公』とまで言われんのよ!」
そのコトバにシンジはいたく傷ついたようだった。
「……ひどいよ,アスカ」 途端,涙目になってすねるシンジ。
730960:2007/09/05(水) 22:21:42 ID:???

「うっさいわね! さっさと支度しなさいよ!」
ぶつぶつ言いながらも,しぶしぶ支度を始めるシンジ。
そして,部屋から出て来たのは,いつもどおりの夏服。
「アンタ,その格好で行くつもり?」 「うん」 「……」
はぁ,疲れるわ,全く。
「このバカシンジ! それじゃアンタ自分で『碇シンジです』って宣伝してるようなモンじゃない!」
「アンタ,ファンに囲まれて映画どころじゃなくなるでしょ!」
「あ,そっか,そうだよね」 「……でも,それなら,なに着て行ったらいいの?」
全く……。 相変わらず手間のかかるヤツだ。
「……このイラストの服,衣装さんから貰ってるでしょ?」
アタシは,資料の山から引きずり出したイラスト集の1ページを開いてみせる。
「うん,確かしまってあると思うけど」 「じゃあ,コレにしなさい」
「アタシもこのイラストのコレ着ていくから,これならシナリオから外れないし,割とフツーのカッコだから目立たないでしょ?」 
「そうだね,そうするよ」

さて,アタシも着替えだ。
鼻歌交じりにイラストの服を探す。 あったあった。
ふんふんふん♪ あとはブルーのチェックの帽子,っと。
ちょっと目深にかぶり,鏡の前でチェック,っと。 よしっ,OKよ。

今からだと初回に間に合うわね。 ちょっと急ぐけど。
「ねえ,ミサトさんはいいの?」 「ミサトはいいの!」
ヤバい,電車に間に合うか。 早く行かなきゃパンフもグッズも売り切れちゃう。
シンジの手をつかみ,強引に引っ張りながら早足で駅へ向かう。
「あ,アスカ,そんなに引っ張らないでよ」 
「んもう,アンタが歩くのが遅いからじゃない!」
731960:2007/09/05(水) 22:22:49 ID:???

何よ,この人数。 すごいわね。 さすが,第3新東京市,ヱヴァの街よね。
なーんて感心してたら,アタシ達と似たような背格好の2人が,仲良さげに手を繋いで歩いている。
デートで見に来る映画でもないのに,と思っていたら何のコトはない,ショーウィンドウに写ったアタシとシンジだった。
えっ?

映画館に着くと,スゴイ人だかりが出来てる。 なんかあるの?
何をやっているのかを見ようとぴょんぴょん跳びはねる。 でも,全然見えない。
「アスカ,やめなよ」 
耳元で小さく囁くシンジを無視して,その原因を確かめようとアタシはごそごそと人波をかき分ける。
やっとの思いで辿り着いた人波の中心には……ファーストが無表情で立っていた。
しかも,プラグスーツ姿。 
ちょっとアンタ一体何やってんのよ。

「私の写真を撮らない……?」
ぼそぼそと周囲を勧誘しているファースト。 また,ファンサービスかいな?
「一枚xxxx円よ……」
をいをい,カネ取るんかい!!!
732960:2007/09/05(水) 22:25:02 ID:???

そのうち,ポーズを作っていたファーストがアタシに気付く。 やばっ!
廻りのヒトもファーストが凝視する先を見,アタシに気付く。 きゃぁっ!
途端,人波が大きく揺らぐ。
ファーストがアタシの腕をとり,引き寄せる。
フラッシュが数知れず光る。 うをっ!
「……セカンド,一緒にやるなら分け前あげても良くってよ」
冗談じゃない,こっちは映画を観に来ただけなんだから。 ええい,はなせぇー!

「アスカっ」 ようやく人波を抜けてきたシンジ。
ソコでファーストとばったり出くわす。
「碇君」 「綾波……」 
時がソコだけ止まる。
なに,2人で見つめ合ってんのよ,こんなトコロで世界作らないでよ,ちょっと。
強引に2人の間に割り込むアタシ。 
いつもならココでファーストと一悶着あるんだけど,何故か今日はあっさりと引いたファースト。
あれっ? ……ちょっと拍子抜けした。 
でも,後から考えるとアタシはこの時,そのイミをもっと考えるべきだった。

「それじゃ,私,仕事あるから……」
ずいぶん今日はあきらめがいいわね。 アタシには勝てないって,ようやく分かったようね。
「行くわよ,シンジ」 「う,うん」
勝ち誇ったアタシは,何となく動きたがらないシンジを引きずって映画館へ入った。

でも,さっきの騒動でアタシ達のことがバレたようだ。
席に座っても,周りのヒトが映画なんてそっちのけで,アタシ達の一挙一動をちらちらと見ている。
うぅ,なんかイヤ。
733960:2007/09/05(水) 22:26:04 ID:???

肝心の映画は,というと,ハナシは旧世紀版を見ていたんで,まあ,何となくは分かった。
シンジは,話が進むにつれ,だんだん落ち着きがなくなってきた。 何よ,一体?

あ,ファーストの部屋。 うわ,汚っ。
あれ,このシーンって,ひょっとして……。 
……ちょ,ちょっと,待ってよ,アレ,マジでやるの?
え゛――――――――――――!
い゛や゛ぁ―――――――――!

ソコから先はあんまり憶えてない。
気付いた時は,笑えばいいと思うよ,だった。
最後に出てきたあのヘンなのは,見なかったコトにした。

そして『つづく』の文字。
つづくって……ア,アタシが出てないじゃん!

履いていたサンダルをスクリーンへぶち投げようとした,その次の瞬間。
お,予告ぅ? 映画で予告って,何よそれ。
あ,アタシ,キタ――――(゚∀゚)――――!!!! 
やったぁ!!! 
……あれ? アレで終わり? 
え――――!
大体何よ,あのメガネっ娘は? 知らないわよ,あんなヤツ。
734960:2007/09/05(水) 22:27:06 ID:???

それより,何より,アレってCGよね? きっとそうよね。
だって,ファーストって14歳だし,この映画だってR18じゃないし。
最近のCGってすごっくリアルよね,ホント。
……ねえ,CGって言ってよ,誰か。

「あ,あれね,ホントにやったんだよ」 得意げに諭すように話すシンジ。
「ボクも綾波も,カメラ廻ってるって全然気付かなかったんだけどね」
「リアリズム,っていつも言ってるけど,これこそ究極のリアリズムだよね」
感触を思い出しているのか,妙に嬉しそう。

なにぃ?
実際に演ったってぇぇぇぇぇ!?

「……こおの,バカシンジぃっ!!!」
平手打ち一閃,火花が散った。
周囲のお客さんから,どよめきと,そして自然とわき起こる拍手,拍手。
「何でぶつんだよ!」 
「しらないっ!アンタなんか,もーぅしらないっ!」

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
735名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/05(水) 22:38:46 ID:???

アスカ人だが序良かった。
アスカが出る破は、新設定多そうなんで期待。
736名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/05(水) 22:47:18 ID:???
GJ
やきもちアスカ萌えるwwww
737名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/06(木) 00:13:10 ID:???
オッテュ
738名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/06(木) 20:58:07 ID:???
捕手
739名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/06(木) 21:36:49 ID:???
740名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/07(金) 20:14:52 ID:???
ha
741名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/08(土) 11:15:55 ID:???
職人さん乙。
742名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/08(土) 15:35:35 ID:???
もう少しで此のスレ一周年だな.
743 ◆0JJuSAuhtc :2007/09/09(日) 15:18:33 ID:???
>>742
スレ自体は1周年だけれど、ネタがここまで続くとは正直おもわんかったよ
744名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 00:46:46 ID:???
ふむ
745名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 08:01:28 ID:???
746名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 15:55:53 ID:???
職人さん待ち
747名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 17:56:42 ID:???
machi
748名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/12(水) 09:00:11 ID:???
ほす
749名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/14(金) 19:08:57 ID:???
まち
750名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/15(土) 22:11:52 ID:???
わび
751名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/16(日) 00:43:05 ID:???
さび
752960:2007/09/16(日) 11:39:05 ID:???
>>734

こんなコトになるんなら,一緒に観に行くんじゃなかった。
帰り道,そして家に帰ってきてからも,アタシとシンジの間にはケンアクな空気がだだ漏れだった。

アタシとシンジが一緒にいたのに,なんでファーストが何も言わなかったのか。
そういうコトだったのか,……とっても口惜しい。
口惜しくて口惜しくて,やっちゃいけないのに,ついつい爪を噛む。
ファーストの策にハマったことが,その口惜しさに更に拍車をかける。
そんなアタシの矛先は,当然,シンジに向かう。

不潔よ! 絶対にフケツよ! ファーストのムネなんか触った手で,あちこち触んないでよ!
「だって,あのシーン撮ったのはアスカがここに来る前だよ」
じゃあ,部屋中がもうすでに汚されてるの!?
もぉぉぉぉぉぉぉぉっ! いぃぃぃぃゃゃゃゃゃぁ!

「だって,仕方無いじゃない,そういう台本なんだから」
うるさいっ! アンタの言い訳なんて,アタシは聞きたくないっ!

「だって,この前『演れって言われたらどんなシーンでも絶対演る』って,大いばりで言ってたじゃない」
うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ!

「だって,『そんな覚悟がないなら,プロじゃない!』って自分で思いっきり言い切ってたじゃない」
うるさいっ! うるさいっ! うるさいっ!

「……自分だって,あんなグラビア撮ってるくせに」

ぼくっ! 
アタシは,普段よりもより一層,コブシにチカラを込めて殴った。
いつもならコレでケリがつくんだけど,今回ばかりはシンジも譲らなかった。
こと演るコトにだけ関しては,シンジも強情だってコトを思い知らされた。
753960:2007/09/16(日) 11:40:09 ID:???

今日の晩ご飯はJapanese Sashimi。 
……ちょっと,一体,どういうコトよ。
「あれー? 今晩はお刺身? 珍しいわね。 でも,アスカ,食べられないんじゃなかった?」
何の事情も知らないミサトが,素朴な疑問を投げかける。
「いいんです,ボクが食べたいんですから」
そして,挑発的にアタシを見るシンジ。
アタシが生サカナはダメって知ってて,わざと,か。
これは,アタシに対する挑戦ね。 
上等よ,受けて立ってやろうじゃん。
いいのよ,ミサト。 アタシもたまには食べたかったんだ。
「たまには,って前は全然ダメだったじゃない」
もう前のアタシじゃないわ,こんなの全然平気よ。

目の前の皿には,大変,高価だろうSashimiがキレイに盛りつけられてる。
アタシはとりあえず,大トロにオリーブオイルを盛大にぶっかける。
「???」 2人の目が点になる。
カルパッチョもどきにして,ニオイを吸わないよう息を止め,無理矢理飲み込む。 
う゛っ! うぇっ!生臭っ! 目が白黒する。
なんで,ニッポン人はこんなモノ食えるんだ!?
咀嚼すると一層生臭さが口の中に広がる。それを水で流し込む。
お,おいしいじゃない……う゛ぇ。
アタシは平静を装ったつもりだった。けれど,2人にはバレバレだった。
「アスカ,そんなにムリしなくても……」
全然,む,ムリなんかしてないわよ! Sashimiっておいしいわね,……う゛っ。
「なんか,日本の文化を侮辱してない?」
あら,カリフォルニア巻きなんて世界のスタンダードよ,ナニ言ってんのよ。
そう言いつつ,次々と無理矢理Sashimiを平らげるアタシ。
そんなアタシに,思いっきりムッとするシンジ。 
へへん,勝ったな。 こんなコトでアタシに勝とうだなんて甘い,甘い。
754960:2007/09/16(日) 11:41:12 ID:???

「アスカ,しょうゆ取って」 ムッとした表情のまま,シンジがアタシに言う。
「ん」
アタシはもぐもぐしながら,ソースの瓶を取る。
そして,受け取りに来ていたシンジの手をかわすと,おもむろにシンジのお刺身へどばどばとかけた。
「あ――――――――――――――――っ! アスカっ!」
「ナニよ」
「勝手にかけないでよっ!しかも,こんなにいっぱい!」
「あーら,わざわざかけてあげたのに。 シンジって味付け濃いほうが好きじゃなかった?」
「かけすぎだよ! これじゃしょっぱくて食べれないよ!」
と,文句を言いつつ,勿体ないのか,とりあえず口に運ぶシンジ。

「……ひょっとして,それソースじゃない?」 
ミサトが冷静につっこむのとほぼ同時に,シンジがぶっと吹き出した。
「きったないわねぇ」
「ア,アスカぁっ!」

アタシは瓶を目線の高さまで持ち上げ,左右に振ってわざとらしく中身を確認してみせる。
「あら,違ったわね,……ま,いいじゃん,アンタには」
「全っ然,良くないよ!」
そんな感じで,アタシとシンジとの攻防は続いた。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
「2人とも,いい加減にしなさい!」「ふんっ!」「ふんっだ!」
755名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/16(日) 11:52:11 ID:???
756名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/16(日) 12:12:28 ID:???
きたぁ。乙
757名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/16(日) 14:10:58 ID:???
意地っ張りアスカかわええ(*´д`*)
758名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/16(日) 16:50:00 ID:???
オッテュ
759名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/16(日) 22:44:56 ID:???
    '⌒⌒ヽ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ′从 从) <  それ、無理だから……
   ヽゝ゚ ‐゚ν  \______________
┏━∪━∪━━━━━━━━━━━━┓
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┃    |     从ノ从 从)   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┃    |    ハG ゚Д゚ノ、   <  あたしはシンジといちゃいちゃしたいのよっ!
┃    |    从 ゚し-J゚ハ    \______________
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760名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/17(月) 19:32:04 ID:???
おつ
761名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/18(火) 03:13:17 ID:???
職人さん乙。
762名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/18(火) 20:27:52 ID:???
乙。次回も楽しみにしてます!!
763名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/19(水) 21:20:45 ID:???
gj
764名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/20(木) 16:07:47 ID:???
GJ
765名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/21(金) 06:54:49 ID:???
灯火街
766名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/22(土) 01:41:54 ID:6B+/ldRs
十日町
767名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/22(土) 11:55:30 ID:XZdUHHzM
透過襠
768名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/23(日) 11:43:13 ID:???
東蒲地
769名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/25(火) 01:46:38 ID:0+CWsccw
頭釜血
770名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/25(火) 22:43:53 ID:???
トーアカマタ
771名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/26(水) 00:40:42 ID:???
とかち!
772960:2007/09/26(水) 21:31:38 ID:???
>>754

あれからお互い,幾度と無くイヤがらせの応酬が続いた。
でも,朝昼晩と食事の主導権を握られているアタシは圧倒的に不利だった。
ずーっとJapanese Food。 
しかも,狙ってアタシの苦手なモノばかり。
今朝はアジの開きとヒジキの煮物,そしてナメコの味噌汁。
う゛っ。
見た瞬間,腰が引ける。 
アジはまだしも,ヒジキは姿形がナメクジの親戚みたいでイヤだった。
でも,それ以上にナメコは生々しかった。
でも,悔しいから,アタシは残さず食べた。 
あー,朝から胸くそ悪いっ!
773960:2007/09/26(水) 21:32:40 ID:???

「アスカぁ……」 
朝食の怒りを引きずるアタシに,ヒカリが不気味な声で話しかけてくる。
「な,なによ」 
ナニよヒカリ。 その顔は。
「みぃーたぁーわぁーよぉー」 
ヒカリ,ちょっとコワイわよ,みんな引くわよ,ソレ。

「碇くんと,デ・ヱ・トしてたのぉー,このぉー,興味ないようなこと言っておいて,このっ!」
コトバに合わせて,このっこのっ,とヒジでアタシのワキを小突く。
「あの,碇シンジを独り占めなんて! ずるい! ずるすぎるわ!」
可愛い子ぶっていやいやっ,としてから一転,またコワイ顔に戻る。
「ファンにばれたら,タダじゃ済まないかもよ」

でーと……? Date……? ……違うわよ!!!
「え,違うの?」
ぜんぜん違うわよ!!! もう!!!
「でも,世間一般の感覚からすれば立派にデートに見えるわよ?」
「あんなに仲良さそうに歩いていたら,ねぇ」

ヒカリ,それは違う,絶対に違うっ!!!
アタシは『:序』の出来が気になって,それと,お客さんの反応が見たくって行ったのよ!
だって,『:序』がダメだったら『:破』なんて有り得ないし,ってコトはアタシ失業しちゃうから心配で……。
それに観客の視点に立って,演技というものを観るのは役者として当然なコトで……。

「はいはい,わかってますよ」
まあまあ,と両手でアタシを押し留めるようにして,言い分をさえぎるヒカリ。
「……でも,デートだったんでしょ?」 にやり,と口の端で笑みながら。
ちっ,ちがうっ!!! ぜぇーったいにちがう!!!
デートだなんて考えもしなかったわよ! もう!!!
774960:2007/09/26(水) 21:33:47 ID:???

「ふーん,たしかに,なにやら進展したようには全然見えないわよね」
向こうの席で,いつものメンツで何やら話しているシンジを見て,ヒカリが言う。

逆よ,それどころか今,大ゲンカ中よ。
「えぇーっ! なんでぇー?」
実は,かくかくしかじかで……,ね,ね,腹立つでしょ? ムカつくでしょ? ね?

それを聞いたヒカリは,一瞬,ほお,と感心した後,首を大きく横に振った。
「アスカ,それを碇くんに当たるのはお門違いよ」
え?
「それは,綾波さんに嫉妬してるのよ」

Shit……,ヒカリ,あのね,そんなはしたないコトバ使っちゃダメよ,ちょっと。
「それ違うわよ,アスカ。 んっと何て言ったっけ……そう,Jealousyよ」
Jealousy? シット?
……ちょっと待ってよ,なんで,なんでアタシがファーストにシットなんてしなきゃなんないのよ!!!
「さあ? それは自分で考えなきゃ」
そう言ってヒカリはくるりと踵を返し,背を向ける。
「さって,今日の晩ご飯は何にしようかな」
ちょ,ちょっと,教えてよ,ヒカリったら。 ねえ。
775960:2007/09/26(水) 21:34:50 ID:???

結局,ヒカリは教えてくれなかった。 けち。
Jealousy? シット?
何でアタシはこんなに腹を立ててるんだろ? ……うーん。
天才子役のアタシにしては,とっても珍しいコトだけど,とっても考え込んだ。
うーん,なんでだろ?
 
そうやってしばらく考えているウチに,いきなり,天啓が舞い降りてきた。
「!!!」
……そう,そうよ! あのシーンよ! 
ファーストの恥も外聞もない,あの,真っ直ぐの体当たりの演技よ!
まさか,アイツがあそこまで演るとは,アレを出来るとは思っていなかったからよ!
アタシが未だ演っていないコトをアイツが演れたからよ!
そっか,そっか,そうか。
だから,アタシはこんなにイライラしてるんだ。
何か違うような気もするけど,ちょっとだけ胸のつかえが取れたような気がした。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
776名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/26(水) 21:38:27 ID:???
GJ
アスカ成長してんなぁ…
777名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/26(水) 21:45:48 ID:XNLnVbwF
見事な舞台裏
778名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/27(木) 02:20:06 ID:???
アスカがんがれ!
779名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/27(木) 06:40:05 ID:???
オッテュ
780名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/27(木) 21:11:54 ID:???
胸も成長するとさらにいいなぁ
781名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/28(金) 03:50:54 ID:???
職人さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
乙です。
782名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/29(土) 19:01:34 ID:???
灯火街
783名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/30(日) 19:04:23 ID:???
おつ
784名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/01(月) 22:16:29 ID:NB02hGEz
785名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/02(火) 03:21:22 ID:???
スレ一気に読んだ。
職人さんGJ!!心から乙。
786名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/03(水) 14:00:40 ID:???
gj
787名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/05(金) 22:44:48 ID:???
02
788名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/06(土) 14:26:51 ID:???
GJ
789名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/07(日) 21:41:12 ID:???
あえ?
790名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/07(日) 21:50:09 ID:???
気持ち悪い
791名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 17:54:42 ID:???
職人さん待ち
792名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 19:29:55 ID:+8S41AQa
793960:2007/10/09(火) 22:23:28 ID:???
>>775

またか……。
真っ暗な部屋の中でアラームが鳴り響く。
アタシはフトンの中から手探りでアラームの主……そう,モノリスを探す。
触れる指先の感覚だけで,それを探り当てる。
違う,これはケータイ。 違う,これは目覚まし。
人差し指にかたん,と触れる。あった。
それをフトンの中に引きずり込み,猛烈な睡魔と戦いながらメッセージを読む。
筐体に浮かぶのは,案の定,思ったとおり「非常招集」の真っ赤な文字。
最初のころは何事かと思ったけど,今となっては何のコトはない。もう,慣れっこだ。
何でも,深夜の緊急出動のシーンの撮影だそうな。
で,緊急に撮影を始めるから,すぐスタジオへ来いってコトだ。
叩き起こされたのはこれで通算ウン十回,しかもここ数日は予告ナシで連続だ。

眠い。ねむい。
こんな状態じゃ,ロクな演技になるワケがない。
眠くて,たるくて,それが原因で撮り直しが続いて,撮影が終わるときにはいつも空が白んでいる。
ようやく家に帰りついても,うとうとする間もなく,学校へ。
眠いけど,学校でも寝てられない。
学校が終われば眠いまま,またスタジオへ。
また,撮り直しの嵐,終わるのは深夜近くになってから。
そして,また「非常招集」……。

参った。もうイヤだ。こっちから辞めてやるっ! こんな仕事っ!

……って言ってやれれば,どんなに気持ちいいだろう!
でも,契約で縛られてる以上,コレすら拒否出来るモノじゃない。
仕方なく,眠い目をこすりながら支度を整える。
リアリティだか何だか知らないけど,ぜーったいにやりすぎ,いい加減にして欲しい。
794960:2007/10/09(火) 22:24:29 ID:???

「ただいま」 
先にシンジが帰ってきているのは玄関のクツを見て分かったけど,シンジからの返事はない。
ここんとこ,ずっとなんで慣れたと言えば慣れたけど……。
でも,ちょっとサビシイ。
えっ?
……ダメ,ダメよ。ここで折れちゃダメよ,アスカ。

それにしても,ずいぶん静かね。
そっとフスマを開け,隙間からシンジの部屋を覗く。
眠っているのだろうか,ベッドの上で身じろぎ一つしない。
チャーンス。
前はミサトに見つかって失敗したけど,今日,そのミサトはいない。
今日こそはやってやる。

物音を立てぬよう,そーっとシンジの部屋に忍び込む。
そして,熟睡中のシンジの耳元で思いっきりBeautiful Worldを歌ってやった。
最高にキンキンHigh toneのソプラノで。

「……ドコでもいいよ……ぉっと?」
サビまで歌ったところで,シンジは目をつむったまま億劫そうにその身をずらし,自分のベッドの半分をアタシに開け渡した。 
そして,空いたスペースをぽふぽふっと叩く。 ココならいいよ,って感じで。
しかも,仰向けで右腕は伸ばされたままの姿勢。 
眠る場所だけじゃなく,どうやら腕枕も付くらしい。
シンジの表情は日だまりで眠る仔猫のよう。 平和そのものだ。
はて,どうしたもんか。ぽりぽりと頬をかく。
ちょっと困った。
叩き起こして,睡眠の邪魔をしていぢめる予定だったのに,何かが違う。
795960:2007/10/09(火) 22:25:30 ID:???

「!!!」 アタシは,はたと思いついた。
そうか! そうよ! コレはまたアタシに対する挑戦よ! そうに違いないわ!

そう思って改めて見てみると不思議なもので,平和そのもののシンジの表情が,
『あの惣流・アスカ・ラングレーが,たったこれくらいのことも演れないの? ふーん』
……って小馬鹿にしているように見えてくる。
よーし,そんなコトなら受けて立とうじゃん。

そう思ったものの,心臓がドキドキし始める。 手のひらに汗がにじむ。
シンジのくせに,なかなか痛いトコロを突いてくる。 挑戦のハードルが高いわね。
なかなか,踏ん切りが付かない。
ごくり,と唾を飲む込む。
……でも,もしかしたら,今度こんなシーンがあるかもしれないし。
練習も兼ねて,そう,何事も練習よ,れ・ん・しゅ・う。何でも経験するのが一番よ。
挑戦と練習を兼ねてるんだから,この場合,仕方ないわよね。
ココはっと……監視カメラの死角になるわよね。よし,大丈夫。

よいしょっと。
シンジの腕をマクラにして,ドキドキしながらその中に丸く収まるアタシ。
腕はシンジの胸から首に沿わせ,ひったりと体を密着させて寄り添う。
セリフを付けるとしたら,うふ,って感じに。
そして,目線はとっておきの上目遣い。

……そっか,腕枕ってこんな感じなんだ。
なんとなく安心感にくるまれる。
やってみたら,あっけに取られるくらい全然簡単だった。 
こんな挑戦なら全然問題ナシよ,アタシ。
796960:2007/10/09(火) 22:26:34 ID:???

そして,しばらく,そうしていたけど……。
ちょっと,待ってよ。 一体何のシーンの練習よ。
観客の目線で見ると,お子様には見せられない構図になっていることに気付く。
急に気恥ずかしくなる。鼓動が更に早まる。逃げ出したくなる。
で,でも,アタシはこんなトコロで負っけてらんないのよっ!
アタシはやむを得ず,腕枕はそのままに,シンジに背中を向けて挑戦を受け続けることにした。
へへん。どうよ。

でも,得意になっているアタシに更なる試練が訪れる。
シンジがむにゃむにゃ,と何か言った後,仰向けから横向きへと体の向きをアタシの方へと変える。
そして,もぞもぞと動いたと思ったら,急にアタシのことをむぎゅ,と抱き締めた。
「!!!!!」
えぇーっ! ちょ,ちょっと!
こ,これって,ひょっとして,う,後ろ向き抱っこぉ!?
アタシは慌てて,シンジの腕を振りほどこうとした,が。
「!!!!!……?」
でも,背後から聞こえてくるのは規則正しい寝息。まだ,眠っているらしい。

ココで,こう来るの!……ま,まだ,アタシに挑戦する気ね!
こ,これくらい平気よ! ほら!
後ろ向きだっこというシンジの挑戦に,アタシは真っ赤になりながら果敢に挑み続けた。

暖かくて,とっても心地の良い,この挑戦。
こんな挑戦だったらいつでも受けて立つわよ,と言ってやりたかったが,
当のシンジは夢の世界から帰ってくる気配はない。
そのうち,アタシもなんだか眠くなってきた。
797960:2007/10/09(火) 22:29:08 ID:???

アタシがうとうととしかけたそんな中,腕枕をされつつ,ふと,目に入るシンジの手。
それを見たアタシの眠りかけのボケたアタマが,何気にとんでもないことを思いつく。
……何が悔しいかって,ムネ触られたかどうかだけよね。
ファーストが出来て,アタシが出来ないワケないじゃん。
それなら,それだけなら,そんなコトなら,ねえ。

こくっとシンジの腕をヒジから折り曲げる。
そして,じっとシンジの手の平を見つめる。
自分の思いついたコトが,もやもやっとしたイメージから急に現実味を帯びる。

やっぱ,恥ずいっ!!! こんなコト出来ないわよ!!!
眠気が一気に吹っ飛ぶ。全身が緊張に支配される。 
でも……。
でも,アイツ,ファーストは演ったわ。
ココで引き下がったら,この天才子役,惣流・アスカ・ラングレーの名がすたるわよ!
自分で自分を鼓舞しながら,もそもそとキャミソールのすそからヤツの手を入れる。
心臓が今までにないくらい,ばくばくしているのが分かる。

そもそも台本にもないのに,わざわざこんなコトをやる必要があるんだろか? 
こんなに恥ずかしいのに。
でも,悔しいじゃん,ファーストが出来てアタシが出来ないってコトがあるなんて!
……ホントにそれだけ?
誰でもってワケじゃないわよ! シンジがファーストに,だからよ!
……じゃあ,シンジが他のヒトに,だったらどうするの?
疑問が脳裏をよぎる。でも,そのコトは一瞬でココロの深くへと押し込まれる。
そんなコトどうでもいいのよ!
そして,プライドが羞恥心を,その一線を超えた。 
798960:2007/10/09(火) 22:30:09 ID:???

アタシのムネの上にシンジの手の平を置く。
シンジの手のひらが,アタシのささやかなムネを覆う。
「!!!!!」
シンジの手が触れた瞬間,背筋にさわっと強烈な静電気のようなシビレる感触が走る。
気絶しそうなくらい,とろけそうになる自分がいる。

そして,アタシはシンジの手の上に自分の手を重ねる。

どうよ! これで一緒じゃん!
やっぱ,ファーストに出来てアタシに出来ないコトはないっ! 
へっへーんだ。 
この時のアタシは,世界で一番ゴキゲンだったと思う。
そして,満足したアタシは全てを元に戻すと,そのまま心地よく眠りの世界へと落ちていった。
799960:2007/10/09(火) 22:31:46 ID:???

「……さん」 肩を揺すられる。
「惣流さん」 誰かがアタシを呼ぶ声がする。ナニよ,アタシは眠いんだから,放っておいてよ。
「惣流さんっ!!!」 
あわわっ!!! ビックリした。
目を開けると,いつもの演出助手さんがいた。

「惣流さんも碇さんも,そろそろ起きてくださいよ」
「んっ」 ベッドの上で上半身だけ起きあがり,目をこすって大きく伸びをする。
あー,よく寝た。 久々にお昼寝したなーって感じ。
隣のシンジは,目は開いたものの,まだ夢の最中なのか,ぼーっとしている。

でも,何かがヘン。
部屋の外がナニやら静かに騒がしい,というか静かになんだけど,ざわめきが聞こえる。
そもそも,なんで演出助手さんがウチにいるの?

見ると,開けられた部屋の戸の向こうを,見慣れたスタッフ達がせわしなく通り過ぎて行く。
皆が皆そろってシンジの部屋を,アタシ達をちらっと覗き,そして,ふにふにと笑みを浮かべながら。
あれっ? なんで,みんなウチにいるの?

「何だか起こしちゃ悪いくらい,お二人ともお休みのようだったんですが,そろそろ今日の分も終わりますんで……」
は……?
眠っていたアタマの中の回路が,だんだん繋がっていく。
あれ……?
様々な情報が,アタシの感覚から集束されていく。
「いやー,惣流さんてやっぱり器が違いますよ,やることが大胆ですよね」 
ホントに感心したように演出助手さんが話す。

あ゛―――――――――――――っ!!!
アタシは自分が取り返しのつかないコトをしでかしたコトに,ようやく気が付いた。
800960:2007/10/09(火) 22:33:42 ID:???

もう,ナニもかもが手遅れだった。
寝不足だったから,ぼーっとしてたからなんて言い訳が通じるとも思えないし,通じたとしても事実は変わらない。
アタシには,もうどうするコトも出来なかった。
真っ赤になったり真っ青になったり,アタシの顔は信号のようにめまぐるしく変わる。
ただただ,シンジのベッドの上で呆然とするだけだった。

「あれ? アスカ? おはよ……」
そんな中,ぼーっとしていたシンジは,ようやく目を覚ましたようだった。
「何かあったの? ねえ?」 
その脳天気な問いが,アタシのリミッターをぶった切る。

「こぉの,バカシンジぃっ!!!!!」
とりあえず,殴らずにはいられなかった。
「なんでぶつんだよ!」
うるさいっ! うるさいっ! ぜーんぶアンタが悪いのよ!
「ボクのなにが悪いんだよ!」
ぜーんぶよ! ぜーんぶアンタが悪いのよ!

スタッフが忙しそうに行き交うセットの袖から,アタシは背中を刺すような鋭い視線に気付いた。
目線だけでそっちを伺う。
……案の定,セットの影から潤んだ紅い瞳が片方だけじとん,と見ていた。
アタシはワザと,その全てを無視せざるを得なかった。
801960:2007/10/09(火) 22:34:53 ID:???

「お疲れさまでーす」「お先に失礼しまーす」「おさきにしつれいしますぅ……」
がっくりと肩を落とすアタシ。
こんなのウソ,嘘でしょ? 現実が悪夢だわ,全く,ああ。
悪夢?
夢?
そうよ,これはユメよ! きっとユメなのよ! コレは!
ユメでもなければ,このアタシがそんなコトするワケがないわっ! 

「夢?」
そんなアタシの独り言を聞いたシンジが,何気に話し出す。
「そう言えば,さっき,セットで寝ちゃった時,変なユメ見たんだ」

ナニよ,誰もアンタのユメなんか聞いてないわよ。
きっ,とシンジをにらみつけるが,当の本人は全く気にしちゃいない。
「んっとね,まな板にくっついたプチプチをふにふにしてるんだよね」
「なんで,そんなユメ見たんだろ?」

………。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
「だから,なんでぶつんだよ!」 「もうしらないっ! このバカシンジっ!」
802名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 22:37:39 ID:???
GJ

リアルタイムで萌え死にかけたw
803名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 23:05:26 ID:???
オッテュ
804名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/10(水) 00:25:25 ID:???
プチプチは乳首か
805名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/10(水) 06:51:34 ID:???
まな板にプチプチ…。
せめてマシュマロの上だったらよかったのに。
806名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/10(水) 16:46:05 ID:???
807名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/12(金) 14:10:06 ID:???
おつ
808名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/13(土) 09:49:17 ID:giw0EnV7
809名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/13(土) 10:20:48 ID:???
せ、「洗濯板にプチプチ」よりはマシなんじゃないかな…?
810名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/13(土) 11:37:42 ID:???
あぁ!?無意識にピンポイントふにふにしたのか
811名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/14(日) 10:56:26 ID:???
シンジ実は確信犯
812名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/16(火) 13:48:36 ID:???
職人さん乙。
813名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/18(木) 21:18:25 ID:???
814名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/18(木) 23:35:36 ID:???
815名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 02:06:03 ID:???
816名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 22:44:36 ID:???
817名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/22(月) 03:22:50 ID:???
保守
818だー:2007/10/24(水) 09:17:27 ID:QmVeBXM0
819名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/26(金) 22:04:23 ID:???
まだ?
820名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/27(土) 09:08:37 ID:???
  (;´Д`) <続きマダー?
_(ヽηノ_
  ヽ ヽ

  ( ゚д゚)Σ <マ…
_(ヽηノ_
  ヽ ヽ

  ( ゚д゚ )  ・ ・ ・ ・ ・
_(ヽηノ_
  ヽ ヽ

  (*゚д゚*)
_(ヽηノ_
  ヽ ヽ
821名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/27(土) 12:35:36 ID:???
アスカさん日記さぼっちゃダメですよ
822名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/28(日) 07:31:09 ID:???
まだ二週間じゃないか。
シンジの日記スレなんて太郎が来るのが半年に一度とかザラだぜ。
823名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/28(日) 08:11:46 ID:???
太郎の自演マダーはしょっちゅうだけどな
824名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/28(日) 09:47:05 ID:???
それより素直クールスレの補完マダー?
825名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/28(日) 17:15:47 ID:???
素直クールは、もう期待出来んわ。
何ヵ月更新止まってると思ってんだ。あれ
826名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/30(火) 03:12:32 ID:???
827名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/30(火) 15:16:42 ID:???
しゅ
828名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/31(水) 22:40:47 ID:IepO0tkG
灯火街
829名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/03(土) 02:58:06 ID:???
マダー?
830名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/03(土) 09:19:17 ID:???
831960:2007/11/03(土) 23:44:13 ID:???
>>801

ようやく,日記を書く余裕ができた。
と,いうのもあれから後,とてもとても大変な騒ぎになり,日記どころじゃなかったからだ。

最も敏感に,素早く反応したのはシンジの事務所だった。
そう,あの後,すぐにシンジのマネージャが飛んできた。
そして,大切なタレントにこれ以上傷を付けられぬよう,その場から即座にシンジを連れ去った。

スタジオからの帰り道,寝不足の回らないアタマでケンカしながら歩くアタシ達。
傍目にはじゃれているように見えるその横に,どんっと横付けされる高級車。
「惣流さんっ!!! 何てことをしてくれたんですか!!!」
「ああ…本当に何てことを!!! シンジ,あなたは悪くないわよ,全部,惣流さんが悪いのよ!!!」
そして,降りて来るなり,ヒステリックにわめき散らす,シンジのマネージャさん。

「何てこと…って,アスカが何かしたの?」
この状況を理解出来ていないシンジが,ぽけっと話す。
それを聞くと,マネージャさんは額に手をやり,信じられないものを見たような目でシンジを見た。
「…シンジ,ひょっとして知らないの?」
そして,間を置くと,その次には一転,破顔の笑みを浮かべた。
「そ,そう!!! そうだったの!!! まだ,シンジは知らないのね」
「知らないって,なんのこと?」
「よかったわ!!! …こんなこと,あなたは知らなくていいのよ! とにかく行きますよ!」
無理矢理シンジの手を引っ張る。
「あ,でも,アスカは…」
「ほら,早く乗って!」
シンジもさして何も思わなかったのか,少々後ろ髪を引かれつつだったが,そのまま素直にマネージャーさんに連れて行かれた。
シンジはアタシに何かを言いかけるが,マネージャさんに急き立てられ車の中へ押し込まれる。

「惣流さん! このことは,正式に事務所を通して抗議しますからね!」
捨て台詞と同時に,アタシの鼻先で勢いよく閉められる車のドア。
そして,夜の闇に残されるアタシと虫の鳴声。
832名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/04(日) 01:23:28 ID:???
ぇ、続きはΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)
生殺し。・゚・(ノ∀`)・゚・。
833名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/04(日) 02:15:25 ID:???
なんという生殺し\(^O^)/
続きが気になってねむれん
834名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/04(日) 13:43:23 ID:???
  (;´Д`) <続きマダー?
_(ヽηノ_シコシコシコシコシコ
  ヽ ヽ

<ピンポーン♪
  ( ゚д゚)Σ <マ…
_(ヽηノ_
  ヽ ヽ

  (゚  )  ・ ・ ・ ・ ・
_(ヽηノ_
  ヽ ヽ

  ( ゚д゚ )
_(ヽηノ_
  ヽ ヽ

  (;´Д`) <マダー?
_(ヽηノ_シコシコシコシコシコ
  ヽ ヽ
835名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/04(日) 17:11:31 ID:???
続きが気になる…。
836960:2007/11/04(日) 20:22:22 ID:???
>>831

とぼとぼと独りで歩いて帰り,ようやくマンションにたどり着く。
まるで,見計らったかのようにケータイが鳴る。一息つく間もなく。
すごっくイヤな感じがした。
誰からかも見たくない。画面を見る気すら起きない。
「……」
でも,その着信はいくら待っても切れる様子が無かった。
根負けして,仕方なく着信ボタンを押す。
「Hell…o…?」
「アスカっ!,アンタ,自分で一体何やったか分かってる?」
いきなりのお叱り。チーフだった。
耳がキーンとする。マンガみたいにケータイを耳から離す。
シンジの事務所から『非常に強い抗議』が来たと,こっぴどく怒られた。

チーフのお小言は延々と続いた。でも,アタシの疲れ切ったアタマはそれを完全にスルーしていた。
「ねぇ?ちゃんと聞いてる?アスカっ!」
はいはい,聞いてますよ。
「大体,アンタは昔っから…」
かなり長くなりそうなので,アタシからぷちっと切った。
ケータイの電源を落とす。家のデンワもコードを抜く。
ただでさえ,事務所の経費で悩んでいるのに,国際電話で長話なんてもったいない,もったいない。
…十分にアタマが働いていなかったからか,この時はまだ余裕があった。
837960:2007/11/04(日) 20:23:24 ID:???

もちろんあの後,即座にスタッフの間には箝口令が敷かれた。
「…ねぇ,聞いた?」
「聞いた聞いた,でもそれホント?」
「そう,ホントみたいよ」
でも,あの人数じゃ人の口には何とやらで,アタシがやらかした失態はウワサ話として,
さざ波のように第3新東京市中に広まっていった。

翌朝には各紙がウワサをソースに,記事を自分達の都合の良いように書き立てていた。
『女優A,深夜のご乱心?』
『今後の撮影に影響?』
『ミスキャストの責任を問う声!』

な,何よ,コレって?
見出しを見,思わずぐしゃり,と新聞を握り潰す。
アタシは,事態が自分の想像を超えて転がり始めたことに,ようやく気が付いた。
しかし,アタシにはもうどうすることも出来なかった。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中? 
2008年ロードショー予定!
838名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/04(日) 20:26:16 ID:???
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
てかどうなんのΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)
続きwktkGJ
839名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/04(日) 22:39:23 ID:???
いまさらながらに気付いたのだが

このスレ、スレタイに【LAS】と入っていない
そしてこの展開…つまり…


ん、こんな時間に来客か
840名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/04(日) 23:10:04 ID:???
職人さん乙。
841名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 02:10:36 ID:???
オッテュ
842名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 16:16:15 ID:???
GJ
続きが気になるのう
843名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 16:45:05 ID:???
これはGJ!イイヨイイヨ〜
844名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/05(月) 21:51:01 ID:???
GJ!
845名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/06(火) 19:22:35 ID:???
GJ
続き気になるなぁ
846名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/07(水) 01:31:27 ID:???
847名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/08(木) 18:17:50 ID:???
848名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/10(土) 22:18:08 ID:???
849名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/10(土) 23:01:25 ID:???
続き街
850名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/12(月) 15:26:34 ID:???
まちまち
851名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/12(月) 15:48:41 ID:???
続き期待街
852名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/12(月) 16:18:21 ID:???
街待ちマーチ
853名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/14(水) 20:59:48 ID:???
ほぜん
854名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/15(木) 10:56:50 ID:???
まち
855名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/16(金) 13:19:03 ID:???
投下街
856名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/17(土) 16:02:14 ID:???
職人さん待ち。
857名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/17(土) 20:57:48 ID:???
まちまち
858960:2007/11/18(日) 11:53:35 ID:???
>>837

ぐしゃぐしゃの新聞を手に,わなわなと震えの止まらないアタシ。
そんな中,インターホンが鳴る。
誰よ? こんな時間に?

…ひょっとして,マスコミ?
過去の苦い記憶が脳裏をよぎる。
アタシは速攻で無視することに決める。
息をひそめ,気配を殺し,様子をうかがう。
何度も何度もインターホンが鳴る。鳴る間隔がどんどん狭まる。
全く,しつこいわね。早く帰ってよ。

その音が,いきなりぴた,と止む。
「……」
やっと諦めてくれたかと思ったら,今度は玄関ドアを大きく叩く音がする。
「!!!」
どきっ,とする。
音は止まず,何度も何度も,怯えるアタシに追い打ちを掛けるように続く。
ひょ,ひょっとして,シンジの「とっても熱烈な」ファン?
「碇くんのファンって,結構怖いわよ,気をつけてね」
ヒカリの台詞がフラッシュバックする。
「聞いた話だけど,前に共演した女の子の所に届いたプレゼントの中にね,ネコの…」
アタマの中がコワイ考えになる。
859960:2007/11/18(日) 11:54:50 ID:???

そのうち,ノックというには乱暴すぎる音が収まった。
と思いきや,今度は金属と金属が擦り合うイヤな音。
誰も出ないことに業を煮やしたのか,音の主は玄関ドアを強引にめりめりと引き剥がし始めたようだった。
「!!!」
ガクブルしながらクッションを抱え,部屋の隅,カーテンの裏に小さく隠れる。
ど,どうしよう,どうしよう!!!

しかし,玄関ドアを無理矢理こじ開け入ってきたのは,黒いスーツの男達。
いつも影で極力目立たぬよう,アタシ達を警護している保安諜報部…SP兼その役の人達だった。

その時は,てっきりアタシを守るために来たのかと思った。
でも,今は何かが,そう,雰囲気がいつもと全然違う。
彼らのもう一つの顔,この映画の撮影を守るために動いている。
アタシを探しているのがびしびし伝わってくる。
コワイ,怖いよぉー,シンジっー。ふぇーん。

「惣流・アスカ・ラングレーだな」
彼らはアタシを見つけると,アタシであることを事務的に確認した。
「保安条例第八項の適用により,貴女を拘束する」
半べそになりながら,ふと思い出す。あれっ? ドコかで聞いたような言い廻し…。
ひょっとして……コレも撮影なの?
「その質問に答える権限を我々は持っていない」
そう答えると,アタシにぱしゅっ,と何かを嗅がせた。
ナニ? この甘いニオイ? あれっ? カラダのチカラが抜けていく…。
「連れて行け,丁重にな」
そう聞いたのを最後に,全身の力が抜け,気が遠のいていった。
860960:2007/11/18(日) 11:55:52 ID:???

気が付いた時には白い天井,白いカベで囲まれた部屋にアタシはいた。
「……」
消毒薬独特のニオイがするリネンのシーツ,そして毛布。
アタシはベッドに横たわっていた。
カラダには点滴のチューブやら心電図のセンサやらが,それっぽく着けられている。
アタシの脈拍がモニタされているらしく,繋がれた機械から規則正しい電子音が小さく鳴っている。
そのまま頭上を見上げると,ベッドの上にはアタシの名とココが303病室であることが分かった。
病院,か。
「…知らない天井,ね」
天井に目線を移し,ため息と一緒に独りごちた。

「ようやくお目覚めかね」
ベットの足元から声がかかる。
声の主を確かめようと上体を起こそうとする…が,ナゼか起こせない。
それどころか,身動きすらできない。
ここで,アタシは自分がベッドに拘束されていることにようやく気付いた。
首だけでアタマを持ち上げ,自分の足下にいる人物を確認する。

「非常に残念だよ,惣流君」
声の主は副カントクだった。
極めて真面目な表情で,アタシを見下ろしている。
どことなく余所余所しい様子。部屋の空気も寒々しい。
ちょっと! 何でアタシはベッドに括られているのよ!
確かにアタシもアレだけど,こんなやり方でアタシを拉致するなんて,
それに,それにこんなベットに拘束までされるなんて,いくら何でも酷すぎるわよ!
861960:2007/11/18(日) 11:56:53 ID:???

副カントクは,拘束から逃れようともがくアタシを見,目をつむると大きくため息を付いた。
「これを見たまえ」
テレビのスイッチが入る。映されるのは午後のワイドショー。あ,今,そんな時間なのね。
 脳天気にそんなコトを考えていたアタシは,映し出された光景を見て絶句した。
「見てください,こちら,こんなに巨大な鉄骨がねじ曲がっています!」
そこにはオーバーなリアクションのレポーターと共に,見るも無惨に破壊されたセットがバックに映し出されていた。
行く手に映し出される,天変地異でも起きたような瓦礫の山,くすぶるケムリ。
生中継らしく,時折画面にノイズが混じる。
えっ? コレどうしたの? 地震でもあったの? 
「凄まじい光景です,あの,偉容を誇ったスタジオがまさかこんなことになるとは…」
「ご覧下さい! ターミナルドグマまで,丸見えです!」
落下防止のロープが張られた向こう…スタジオのあったはずの地面に,ぽっかりと大きく口を開ける穴。
スタジオ…? えっ? コレが?

カメラが広角に切り替わる。
大気の,陽炎の揺らぐ,その奥に見える半壊したピラミッド型のスタジオ。
ど,どうしたのよ? 一体?

その疑問に,アタシの明晰なアタマは一瞬で状況を理解した。
あっ!そうか! 
ひょっとして爆弾テロ? だからアタシを保護するのにこんなに強引に連れて来られたのね!
それで,VIPなアタシは,無理矢理こんなトコロに押し込められているのね!
いやー,怖いわよね,最近。
なーんだ,ソレならそうと素直に言ってくれれば良いのに。
…でも,ベットに括られてるのはなんで? 

「違うな」
まるで他人事のアタシに,副カントクの対応が更に冷ややかになる。
部屋の温度までもが,下がったように感じられた。
862960:2007/11/18(日) 12:03:58 ID:???

「えー,問題の初号機は現在,戦自とのにらみ合いの状態が続いています」
「なお,今の所この件に関して,製作側は一切のコメントを控えています」
しょごうき…,あれっ…?
「初号機の暴走によるスタジオの被害は,ターミナルドグマまで及び…」
リポーターが用意された原稿を読む。
暴走したの? 初号機が?

カメラが切り替わる。今度のアングルはへりからの空撮。
見慣れたマンションが映し出される。
あ,ウチだ。
でも,その足下には埋め尽くすような人の波。
横断幕やプラカードには,ナゼかアタシの名前が入っている。
何やら漢字が書いてあるが難しくて読めない。
アタシのファン? 
わーい,いっぱいいるわね,嬉しいわね。
…あれ? でも,オフ以外こういうコトってダメじゃなかった?

「ご覧ください! 人,ヒト,人! 人の波です!」
「これらは全て,女優Aへの抗議に集まった人々です!」
ヘリの轟音に負けぬよう大声でリポーターが叫ぶ。
女優Aって…? だれ?
抗議って…? なに?
まさか。
アタマの中でストーリーが組み立てられる。
えぇっ…? 
そ,そんな…まさか…。 
ここでようやく,アタシは目の前の副カントクが何を言いたいのかが理解できた。
瞬間,アタシのニューロンがFreezeした。
863960:2007/11/18(日) 12:05:46 ID:???

テレビのスイッチが切られる。
あまりの出来事に,消えたテレビの黒い画面から目を離せない呆然自失のアタシ。
しばし,静寂が病室を支配する。

そして…ややしてから,副カントクが話を切り出した。
「初号機……ユイ君だよ」
「莫大な金と時間を費やして,新劇場版のために造ったスタジオが一瞬でこの有様だ」
「惣流君,ここまで騒ぎになっては,こちらとしてもそれ相応の措置を取らねばならん」
「しばらくは『入院』していてくれたまえ」
そう一方的に通告すると,副カントクは病室から立ち去ろうとした。
一度,トビラの前で足を止める。
「これからの処遇は彼奴…監督が決めることだが,まあ,ある程度の覚悟はしておきたまえ」
副カントクは後ろに手を組んだままの姿勢で振り向きもせず,病室から消えた。
864960:2007/11/18(日) 12:06:47 ID:???

ネットもケータイも全て遮断された。
シンジとはあれっきり連絡も取れない。
アタシは日がな一日,テレビを見ることくらいしか,することがなかった。

テレビは連日,戦自と初号機のにらみ合いを中継し続け,
女優Aの疑惑は第3新東京市ローカルのワイドショーのトップを飾っていた。

戦自と初号機のにらみ合いは,意外なことから破られた。
完膚なまでに破壊された初号機のケージの横で,いきなり真紅の機体…弐号機の双眸がばくん,と開く。
そして弐号機は拘束具,ブリッジをやおら実力排除した後,その重い機体をゆっくりと動かし始めた。
「パイロットは!?」
「無人です! アスカは303病室です!」
「一体,何が起こっているの?」
その問いに答えられる者は,スタジオ内の発令所には居なかった。

戦自と睨み合う初号機の背後から近づく弐号機。
いきなり始まる格闘戦,互いに互いの両の拳を組むと,ぎりぎりとねじ伏せようとする。
周囲は突然の出来事に言葉も出ない。
暫く膠着が続いたが,その均衡は間もなく崩れた。
弐号機が初号機をねじ伏せ,地面に押さえ付ける。
「回収班!急げ!」
事態をようやく飲み込めたスタッフが,わらわらと初号機に群がりだす。

「えー,たった今入った情報によりますと,初号機の非常ハッチがレーザーカッターで切断され,碇ユイさんが強制排除された模様です」
気絶しているユイさんが,オレンジの防護服を着た人に抱きかかえられるように引きずり出される様子がライブ映像として流れる。
「これから,暴走に至った経緯などの具体的な捜査に入るものと…」
865960:2007/11/18(日) 12:08:18 ID:???

カメラが中継を終える。
「はい,以上現場からの緊急生中継でした。さて,コメンテーターの皆さん,この件に関して…」
未成年だからか,顔にはモザイクが入ってはいるが,司会の背景に写っているのは誰がどう見たってアタシだった。
さらに次の瞬間,過去,お金に困って手を染めたきわどいグラビアが,電波に乗って真っ昼間のお茶の間に流れた。

げ。

『あの女優Aにこんな過去が!』
『起きるべくして起きた事件!?』
煽るテロップ。

「この件に関して製作側は一切コメントを控えていますが,しかし,実際にスタジオが半壊して,撮影がストップしている訳ですから」
「疑惑の渦中の女優Aの所在は,今のところ不明であり…」
「その女優Aが主演の碇シンジ君にスタジオ内にて,破廉恥な行為が至ったとの疑惑の可能性は極めて大きく…」
「そして,そのことを知った碇ユイさんが暴走,と…」
「碇ユイさんの,息子さん…碇シンジ君への溺愛ぶりは業界内でも有名ですし…」
「これらの話を総合すると,やはり真相としては辻褄が合いますよね」
「それでは次に,関係者の証言です」
大真面目にアナウンサーがそう言ったのを合図に,画面が切り替わる。
「!!!」
次の瞬間,アタシは,飲んでいたジュースをテレビに向かって思いっきり吹き出した。
黒を背景に映し出される,第三新東京市立第壱中学校の制服の背中。
「…ええ,彼女は間違いなく自分から,彼の手を取っていました」
「あんな人が一緒に出ていたなんて,今でも信じられません」
顔にはモザイクがかかり,音声は処理されたものだったが,あんな青い髪を持つヒトがそうそういるとは思えなかった。
866960:2007/11/18(日) 12:09:20 ID:???

リツコは白衣のポケットに手を突っ込んだまま,無愛想に「無様ね」と。
マヤは軽蔑した眼差しで「…フケツ」と。
それぞれ『入院中』のアタシに,役通りに一言ずつ告げていった。
他の人も反応はそれぞれだったが,相手がシンジだったからだろうか,得てしてアタシに好意的なものは全くなかった。

「まぁ,大変な事になったわねぇー,大丈夫ぅー?アスカぁー?」
語尾を伸ばし,わざとらしく心配するミサト。
「…ミサト」
「ん?」
「実は楽しんでるんでしょ?」
「そりゃ,もっちろん期待してるわよ,これからの展開」
「あの惣流・アスカ・ラングレー,人生二度目の危機をいかに乗り切るか!これをリアルで楽しめるなんて,そうそう滅多にないわよねー」
「…この悪オンナ」
もっと悪態の一つ二つでも言い返してやりたかったが,残念ながらソコまでの気力もなかった。
はふん,とため息を一つつく。
「そんな,落ち込まないでよ,シンちゃんがいないからってさ」
「だ,誰が! シンジなんて関係ないわよ!」
「まった,すっとぼけちゃって,このぉー憎いね,ち・じょ」アタシをヒジでつんつんっと小突くミサト。
「ち,痴女ですってぇ!」
867960:2007/11/18(日) 12:10:25 ID:???

痴女とまで言われたアタシを庇うものは,もう何も無かった。
やむを得ず製作側は,カントクがこの件に関して緊急の記者会見を行うことで,事態の収拾を図ることになった。
誰もが,その場で発表されるだろうアタシの降板を信じて疑わなかった。
それはアタシも同じだった。
降板,か。
でも,不思議なことにアタシは降板よりも,シンジとあんな半端な形で離れたことのほうが心残りだった。

いきなりテレビの画面が切り替わった。
画面上隅には生中継のテロップ。
「えー,たった今,カントクが姿を見せました」
「これから,公式の記者会見が始まります」
幾重ものフラッシュが焚かれる中,おもむろに座ると,いつものポーズをとるカントク。
「それでは,これから記者会見を始めます」
記者の1人が立ち上がり,質問を始める。
「カントク,今回の疑惑についてですが…」
会場の皆が,カントクの一言を固唾を飲んで待った。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中? 
2008年ロードショー予定!
868名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/18(日) 13:09:05 ID:???
なんという展開
GJ
869名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/18(日) 13:38:17 ID:???
オッテュ
870名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/18(日) 15:00:36 ID:???
衝撃的、
   展
   開
871名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/18(日) 17:07:28 ID:???
続きが気になる
872名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/19(月) 12:59:14 ID:???
無月知日
第四の使徒がやってきた。
カブトガニとプラナリアを足して割ったような外見、しかも触手で攻撃しやがる。なんてマニアックwwwwwぅぇwwwww
とか言ってる場合じゃねえ。
まあ餓鬼は従順にエヴァに乗り、今回は滞りなく起動から出撃と進んだわけだが。

「目……死んでるよな」
「こんなんでホントに行けるんですかね」
「おい、家でもこんなんかよ。ゾンビじゃないか」
メガネ、そんな目でこっち見んな!マヤちゃんも疑惑の視線を投げないでください。
まあ常に無気力状態なのは認めるけどな ><
「何か言ってあげる?」
技術部長さん、その一言はきついっす。でもまあなんか一声掛けないと絶対ヤバイ。
そういやバイオリンケースのでっかいの運び入れてたな、こないだ。チラっと見ただけだけど。
えーっとでかいのはコントラバスつったっけか。
「やられかけてもパニクんなよ。コントラバス弾くときみたいに落ち着いてやれ」

『……コントラバスじゃないです。チェロです』
「ケースの大きさで分からんかね、君」と副司令。
「やられるとか、無駄にプレッシャー掛けないで!縁起でもない」これはピリピリしてる作戦部長。
「まあ、お前にしては上出来だよ」メガネ。
「……すいません」
どうやら こうか は なかったようだ!あと、メガネ逝って良し。
873名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/19(月) 13:00:14 ID:???
アオバ日記スレと誤爆った。ごめーん (>_<;;

吊ってくる
874名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/19(月) 18:35:32 ID:???
わろたw
ドンマイ
875名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/20(火) 18:07:10 ID:???
おつ
876名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/20(火) 19:54:11 ID:???
職人さん、次回も楽しみにしてます。
877名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/20(火) 21:25:50 ID:???
続き待ち
878名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 01:33:10 ID:???
2ヶ月前にこのスレの存在を知ってちょっとずつ読んできた。
やっと全部読んだぜ! 続きwktk
879名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/24(土) 16:08:51 ID:???
すげぇ…960さんGJです!
ついでに>>872良い笑いをありがとうwww
880名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/24(土) 18:42:32 ID:???
続き町
881名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/25(日) 12:40:54 ID:???
稲荷町
882名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/25(日) 22:45:21 ID:???
おつ
883名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/27(火) 21:36:00 ID:???
保守sage
884名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/28(水) 07:24:10 ID:???
期待町
885名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/28(水) 23:30:12 ID:Jvde/65R
アスカ!アスカ!アスカ!アスカぁぁあああああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!アスカアスカアスカぁああぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!アスカ・ラングレーの可愛さは異常たんの茶髪ツインの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
アニメのアスカたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
劇場版も公開されて良かったねアスカたん!あぁあああああ!かわいい!アスカたん!かわいい!あっああぁああ!
劇場版破では遂にアスカたんが出て嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…映画もアニメもよく考えたら…
ア ス カ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ネルフぅううううう!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?アニメのアスカちゃんが僕を見てる?
アニメ画のアスカちゃんが僕を見てるぞ!アスカちゃんが僕を見てるぞ!コミックのアスカちゃんが僕を見てるぞ!!
アニメのアスカちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはアスカちゃんがいる!!やったよ庵野秀明さん!!ひとりでできるもん!!!
あ、コミックのアスカちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあレイ様ぁあ!!シ、シンジー!!カヲルぅううううううう!!!ペンペンんんんんん!!
ううっうぅうう!!俺の想いよアスカへ届け!!セカンドチルドレンのアスカへ届け!
886名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/29(木) 00:32:44 ID:HpSN6AFK
>>885
hack乙
887名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/30(金) 14:41:23 ID:HXnzXtya
888960:2007/12/02(日) 20:07:23 ID:???
>>867

「誤報だ」

たった一言。
有無を言わせぬ口調で言い切る。

そして,切り裂くような鋭い目線でリポーターを射る。
この返答に,静まりかえっていた会場が一瞬の間を置いてざわめき始める。

アタシも,この時ばかりは自分の耳を疑った。
アタシはカントクが何を言ったかすら理解できなかった。

「ですが,スタジオの半壊については…」
カントクの目線に怯みつつも,質問を続けようとするリポーター。
「問題無い」
リポーターの質問の途中で,超然と遮るカントク。
問題ない,ですって?

テレビの中では,なおも食い下がるリポーター。
「製作委員会の方には,何と説明を…」
先と同じように,質問の先を先制して言い切るカントク。
「誤報だ」
それだけを話すと,カントクは席を立ち,そのまま立ち去ろうとした。
リポーター達がカントクの背中に向かって口々に質問を浴びせる。
もう,テレビでは何を言っているのかは聞き取れない。
カントクはそれには一切応じず,ただ,一度だけカメラのほうを振り向いた。
サングラスの奥の鋭い目線は変わらず,そしてそれはテレビの前にいるアタシに向けられたように見えた。
背筋がぞくり,とした。
889960:2007/12/02(日) 20:12:23 ID:???

カントクの一言は絶大,絶対だった。

あれから,何もかもが元へと戻った。
この第3新東京市では,全てはカントクの意のままであることを思い知らされた。
本当に影もかたちもなく,全てが何もなかったことになった。
ヒトの記憶以外は。

弐号機は無人だったそうだ。
そして,何故,初号機の暴走を止められたかは不明。
その真相は,結局,事実ごとカントクの一言と共に闇に葬り去られた。
890960:2007/12/02(日) 20:15:35 ID:???
エアコンの音がうるさく感じられるくらい静かな部屋。
その静かな空間に,突然,圧縮空気の抜ける音と共に玄関ドアの開く音が伝わる。
びくんっ,とカラダが跳ね上がる。
「ただいま」
シンジだ! シンジが,シンジが帰ってきた。
ど,どどどどうしよう,どうしよう。
ドキドキドキドキし始める。
どうしよう,どうしたらいいの?

「ただいま」
久しぶりに会うシンジは,照れくさそうにアタシにまた帰宅のコトバを告げる。
「お,おかえり」
と,言ったものの,それっきり2人の間に沈黙が流れる。
微妙な距離を取って,ソファに埋まるアタシ達。
シンジがここに,リビングにいるってコトは,アタシに何か言いたいからだというのは容易に想像がつく。
でも,話のきっかけが掴めない。話しかけられない。
お互い,お互いを見ないように下を向く。

心臓の鼓動は収まらないけど,このままじゃラチが空かない。
思い切って,シンジに話しかける。
「あ,あの」
「あのね」
シンジも同じタイミングでアタシに話しかけ,アタシ達2人の台詞がシンクロする。
「あ,先に…」
「ア,アスカこそ,どうぞ」
891960:2007/12/02(日) 20:19:05 ID:???

また,沈黙が続く。

「あのね…」
時計の短針が一回りしたころ,ようやくシンジが口を開いた。
アタシの目を真っ直ぐに見る,一点の曇りも無い,綺麗な真っ直ぐな瞳。
「ごめんね」
「?」
なんでアンタが謝るのよ,アタシはアンタの価値を暴落させたのかも知れないのよ。
アタシはそう言おうとしたが,シンジはそのまま言葉を続けた。
「その,アスカが綾波に張り合う気持ちを分かってあげられなくて,変に意地張っちゃって」
「そこまでするくらい悔しいなんて,ボク,思いもしなかったから」
そして,ついと目線を床に逸らした。
「…莫迦」
アタシは聞こえないくらい小さく呟く。
張りつめていた気持ちが,ふっと和らぐ。

「また,一緒に演れるわね」
「うん」

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
892名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/02(日) 20:42:21 ID:???
テラゲンドウ
監督いい仕事!
893名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/02(日) 20:56:40 ID:???
乙です!
894名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/03(月) 01:05:56 ID:???
乙かれです
ここのアスカ大好きです
895名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/04(火) 02:11:34 ID:???
オッテュ
896名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/04(火) 08:08:07 ID:???
                         ∧∧   .,^.; i:;
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\  ∧_∧   (*゚ー゚)/ .:i:.i,.::i^:,
お誕生日おめでとうモナ >( ´∀`)  / つ/__i:.i,.::i.;:
 _________/  (.   つ/ ̄ ̄/| ̄ ̄|\
                 | | | | ̄ ̄ .|   |
                 (__)_)
897名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/04(火) 23:35:30 ID:???
おめ
898名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/06(木) 20:57:57 ID:???
899名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/07(金) 18:24:59 ID:???
おつ
900名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/09(日) 08:36:39 ID:???
gj
901名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/10(月) 23:29:48 ID:???
まち
902名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/12(水) 02:13:11 ID:???
保守街
903名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/14(金) 09:54:57 ID:???
十日町
904名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/16(日) 18:20:48 ID:???
まち
905名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/18(火) 19:46:54 ID:???
まち
906名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/21(金) 10:06:44 ID:???
まち
907名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/24(月) 18:49:14 ID:???
まち
908名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/25(火) 11:31:31 ID:???
909名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/27(木) 22:56:28 ID:???
まち
910名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/29(土) 08:08:34 ID:???
もうひとつき
911名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/30(日) 21:40:13 ID:???
もうこないのかい
912960:2007/12/31(月) 11:13:59 ID:???
>>891

シンジの手にはぐるぐると包帯が巻かれていた。
「アンタ,どうしたのよ,その手」
「あ,いや,その…ちょっと」口ごもるシンジ。
「ケガでもしたの? 気をつけなさいよ,アンタただでさえドジなんだからさ」

「あと,あのね……」
「なによ」
「……すごっく言いにくいんだけど」
もじもじしながら,でも意を決したようにシンジが話す。
「その,大きさとかボク,気にしないから」

……。
全然フォローになってないわよ,全くもう。
そもそも,一体コレは素直に喜んでいいのだろうか?
考え込むアタシにシンジが続ける。
「でも,なんでボクなの?」
たまたまよ。今後の自分の演技に幅を持たせるためよ。
もう,恥ずかしいんだから,これ以上言わせないでよ。

……包帯?
あ――――――――――――!!!
このエッチスケベヘンタイっ!!!

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
913960:2007/12/31(月) 11:15:05 ID:???

「宅急便でーす」
荷物が届く。差出人は…カントク!?
慌ててダンボール箱を開ける。
中には,丁寧に梱包された包みが二つ,味も素っ気もない紙が一枚。
「常時装着」
極太毛筆で一筆。そして,カントクの印。
梱包を解くと,そこに現れたのは……。

……いや,いいんですけどね,別に。
やりますよ,やればいいんでしょ? カントク?

早速,着けてみる。
ひたり,と吸い付く。冷たい感触。
まるで,計ったかのようにぴったりと納まる。
あれこれカラダを動かすが,外れる様子は全くない。
でも,一体,何よこの素材って。
上から触ると下の素肌にそのまま感触が伝わってくる。
肌との境目も全然分かんないし。
最初はひんやりしてたけど,今は体温そのまんま。
自分のモノって言い張っても全っ然違和感なし。
さすがニッポン,ハイテクよね。
しっかし,重いわよ,コレ。肩が凝るわよ。
よく,ミサトもファーストもガマンしているわね。
914960:2007/12/31(月) 11:15:43 ID:???

試しに,ちょっと揉んでから,ぽちっとしてみる。
ふーん,こんな感じなのか…。
ふと,シンジの手の感触を思い出す。
ぽっと赤くなった頬に両手をやり,いやんいやんと照れてしまう。
アタシってば何考えてんのよ,もう。

ジップアップのシャツを着てみた。勢いよく胸元をはだけて。
買ったはいいけど,すっかすかで前は着られなかったヤツだ。
どうよ,立派なモンじゃない。
姿見の前で腰に手を当て,満足するアタシ。
…そうだ。

「ねえねえ,シンジ,これ似合う?」
「えっ…!!!」
驚いたっきり,アタシの胸元から目線を外せないシンジ。
見てる見てる。へへっ。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
915名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/31(月) 17:24:26 ID:v8Xjh8Vc
来てたー(゜∇゜)
916名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/31(月) 18:28:10 ID:???
ナイムネー
917名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/01(火) 10:37:01 ID:???
アスカかわええ。
シンジ…。
918名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/01(火) 11:20:16 ID:???
キタ━(゚∀゚)━!!
919名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/01(火) 13:42:58 ID:???
オッテュ
920名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/01(火) 16:02:24 ID:A4Ol8ORq
乙です!
921名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/01(火) 16:03:23 ID:???
ごめん
sage忘れた…
922名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/01(火) 20:39:16 ID:???
いやぁ凄い作品だ
923名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/02(水) 02:01:52 ID:???
やっべwwwww今気付いた不覚orz
924名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/03(木) 23:19:47 ID:???
以前、馬鹿シンジがデジカメを買って馬鹿みたいにはしゃいで嬉しそうに色々撮っていた。
そのうちメモリがいっぱいになったらしくてメカ音痴な馬鹿シンジは
「ねえ、これ写らなくなっちゃったんだけど…」
と遠慮気味に相談してきたけど、私は面倒くさかったから
「そんなの説明書読めばわかるでしょうが!忙しいからくだらないことで話しかけないでよね!」
と罵倒してしまった。
その馬鹿シンジが先日使徒との戦いで死んだ。
遺品を整理してたら件のデジカメを見つけたので、なんとはなしに撮ったものを見てみた。
私の寝顔が写っていた。
頬を何かがつたった。
925名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/04(金) 00:40:14 ID:???
>>924
ちょwwwwwwシンジ死んじゃったんかよwwwwwwwwwwww

作品のクオリティはいいけど頼むから殺さんでくれw
926名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/04(金) 01:02:43 ID:???
有名コピペの改変でしょう
927名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/04(金) 07:48:53 ID:???
(;; 'ー`)   あすかへげんきですか。いまめーるしてます

J(`Д)し うるさい死ね メールすんな殺すぞ

(ll;'o`;)   ごめんね。ぼくはじめてめーるしたから、ごめんね

J(`Д)し うるさいくたばれ、メールすんな
928名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/04(金) 20:33:54 ID:???
まち
929名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/07(月) 12:18:13 ID:???
十日町
930:2008/01/07(月) 18:15:05 ID:???
サゲ
931名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/11(金) 07:32:33 ID:???
ほぜん
932名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/12(土) 13:05:58 ID:???
まちまち
933名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/14(月) 11:51:43 ID:???
まちまちまち
934960:2008/01/14(月) 18:15:29 ID:???
>>914

12月4日。
今日はアタシの誕生日だ。
わくわく。今年もみんなでお祝いしてくれるかな。
もう,一年が過ぎたのね。
月日の経つのは早いなーと思いつつも,去年のコトも一緒に思い出して,アタシは朝からご機嫌だった。
「おっはよー」
「おはよ」
気分良く部屋を出たアタシ。
しかし,それを出迎えたシンジは,いたってフツウ。あれ?
ちょっと待ってよ。
「ちょっと,アンタ,何か言い忘れてない?」
「え? 何のこと?」
「まさか,今日が何の日か忘れてるなんてコトはないでしょうね?」
「今日? ……って何かあったっけ?」
「えぇーっ! このア・タ・シの誕……」
そこまで言いかけた時,アタシのモノリスくんが低く低く唸り始めた。
筐体に浮かぶ赤い文字。そこには『誕生日ヲ禁ズ』とあった。
935960:2008/01/14(月) 18:16:01 ID:???
ど,どういうコトよ!!!
どれどれ,とアタシのモノリスを覗き込むシンジ。
そして,目を閉じ腕を組むとうんうん,と頷く。
ちょっと,なにアンタ1人で納得してんのよ!
「アスカ」
シンジはアタシを諭すように話し始める。
「今日が『もし』誕生日だとしたら,いくつになるの?」
1X歳よ,当ったり前じゃん。
アンタってホントバカね,そんなコトも分かんないの?と言いかけた。
その時,シンジがアタシに何か意味ありげに目配せをした。
それを見て,アタシははっと気付いた。

ごくり,と息を飲む。
「じゅ,14歳よ……」
「じゃあ,前に14歳の誕生日パーティはやったよね?」
「や,やってもらったわよ」
「そう,そういうことだから」しれっとシンジが話す。

そんなぁ…。ま,マジで?
「そ,ボクら,撮影の間はずーっと14歳なんだよ」

そんなコトで,今年のアタシの誕生日は普段の一日と何の変わりもなく過ぎていった。
あーあ。
期待していた分,がっかり感も大きかった。
936名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/14(月) 18:23:17 ID:???
アスカかわいそうw
。・゚・(ノ∀`)・゚・。
937名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/14(月) 21:14:18 ID:???
オッテュ
938名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/14(月) 22:44:15 ID:???
続き待ち
939名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/14(月) 23:26:22 ID:???

足掛け3年は14歳……w
940960:2008/01/15(火) 16:28:16 ID:???
>>935

そんな落ち込むアタシのトコロに,チーフからメールが来た。
やっぱチーフは覚えていてくれてるわよね,と期待しつつメールを開く。
「もう事情は承知していると思いますが,毎年恒例のプレゼントは撮影が終わるまで事務所で保管しておきます」
「これ以上伝えると契約違反になりかねないので,用件のみにて」
……味も素っ気もない文面に,更に落ち込むアタシ。

学校も普段どおり。撮影も普段どおり。
誰も,何も言ってくれない。
「お疲れさまでーす」「おつかれさまですぅ……」
本当に何もなく,終わっちゃうのか。あーあ。
衣装を着替えに,とぼとぼと控室に向かう。
「アスカっ」
シンジがアタシを呼び止める声がする。
何よ,ふんっだ。
誰が振り向いてやるもんですか。

駆け寄る足音。
そしてアタシはシンジに手を掴まれ,強引にセットの裏に連れ込まれた。
ちょっと! 何すんのよ!
「ゴメン,遅くなって,…お誕生日おめでとう」
アタシの肩を抱き寄せ,そっと耳元でささやくシンジ。
そして,アタシの手に小さな小さな包みを握らせた。
「絶対ダメだって言われたけど…,内緒ね」

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
941960:2008/01/15(火) 16:36:38 ID:???
>>940

12月25日。
今日は暦の上では赤と緑でクリスマス,のはずだ。
だけどアタシは朝からブルー。
『クリスマス中止勧告』
モノリスに浮かぶ,非情なまでの赤い文字が恨めしい。

でも,クリスマス中止,と言う割には,いつの間にか枕元に用意されていたのはミニスカサンタの衣装。
何でも,旧世紀版でこんなフィギュアがあったとか無かったとか。
で,そんな格好で一日中,イベントやら挨拶周りやら握手会やら宣伝のための番組出演やら……をやらされた。
「……で,惣流さんは『:序』のどの辺りが見所でした?」
「別に」
「……」引きつる司会,あーあ,どーでもいいから早く帰りたい。
「(惣流さん,スマイル,スマイル)」
こそこそっ,とスタッフがアタシに耳打ちする。
見せられた手鏡の中のアタシの顔,写し出されたのは眉間のシワ。
はっ,ヤバっ。スマイル,スマイルっと。
にこやかに,にこやかに……と思いつつも顔はむーたれる。

「ただいま……」
家に辿り着いた時には,深夜をとうに過ぎていた。
部屋の中は真っ暗,シンジもミサトも不在の様子。
いいわよ,こうなったらアタシ独りでもクリスマスを祝ってやる。
帰り際にコンビニで買ってきた小さなケーキに,ロウソクを一本立て,灯をともす。
そして,メリークリスマスと口の中で小さく呟き,火を吹き消した。
……あれ?
何故か急に視界がぼやける。
ぽたり,と雫がテーブルに落ちる。
アタシ,泣いているの?
……昔を思い出す。思い出したくない思い出を。
942名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/15(火) 16:44:00 ID:???
アスカが沢尻エリカ並に無愛想になってるw
943名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/15(火) 22:33:50 ID:???
オッテュ
944名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/16(水) 14:12:17 ID:???
オッテュ
945名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/17(木) 12:49:06 ID:???
946名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/17(木) 12:49:27 ID:???
947名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/17(木) 12:49:51 ID:???
948名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/17(木) 12:50:18 ID:???
949960:2008/01/20(日) 18:31:15 ID:???

かちゃり,とカギを開ける音がする。
だ,誰よ。
慌てて,涙の跡をソデで拭いて隠す。
電気を点けたのか,急に部屋が明るくなる。
「ただいま……あれ,どうしたの?電気も点けないで?」
シンジだった。アンタこそ何よ,こんな遅くまで。
……まさか!?
誰かとクリスマスで盛り上がってたのね?
で盛り上がって盛り上げってお開きになったトコロで帰ってきたのね
きっとそうなのねアンタ年上から可愛がられるタイプだから
きっときっとどっかのキレイなお姉さんにおいしいモノご馳走してもらってプレゼントもらって
シンちゃん可愛いーとかって言われてちやほやされてきたんでしょ?
アタシは丸一日ずーっと仕事だったのに何よこの扱いの違いは差別だわこんなの
どうせアタシなんか高飛車とか生意気とかバームクーヘンとか言われて誰も誘ってくれないんだ
ホントのアタシは優しくて健気なのに役柄がたまたまそうだからって誤解されてるだけなのに
ヤダもう信じらんないバーカバーカバーカ!ちっくしょー!
へんっだアタシは孤高の女優惣流・アスカ・ラングレーよ
こうなったらこっちにも考えがあるわよ!見てなさいよ!
950960:2008/01/20(日) 18:31:36 ID:???

「……アスカ,なんでそんなに怖い顔をするの?」
「アンタのが今考えているとおりよ」
「ご,誤解だよ!イベントとか握手会とか一日中引っ張り回されて,やっと終わったところだよ」
「じゃ,シンジも今帰って来たトコ?」「そうだよ,あーあ,せっかくのクリスマスなのにね」
ひょっとして……嵌められたの?アタシ達って?
薄ら笑うカントクの顔が思い浮かぶ。やられた。

「あれ?このケーキ,何だかしょっぱくない?」
「あーっ!アタシのケーキ!なに勝手に食べてんのよ!」

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 好調撮影中! 
2008年ロードショー予定!
951名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/20(日) 18:48:00 ID:???
乙、GJ!
952名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/20(日) 21:24:27 ID:???
(*´ω`)乙
953名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/20(日) 22:12:02 ID:???
ぐっじょーぶ!相変わらずいい仕事!
954名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/20(日) 23:08:26 ID:???
オッテュ
955名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 01:35:21 ID:???
>>949
> バームクーヘンとか言われて
確かに差別だw
956名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/22(火) 23:49:19 ID:???
957名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/24(木) 17:47:03 ID:???
958名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/25(金) 19:57:39 ID:???
959名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/27(日) 08:57:03 ID:???
おつ
960名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/29(火) 12:28:41 ID:???
961名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/01(金) 07:47:44 ID:???

962名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/02(土) 01:09:07 ID:???

963名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/02(土) 16:47:10 ID:???
t
964名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/03(日) 14:09:57 ID:zGwM8Nkh
保守アゲ
965名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/06(水) 10:48:10 ID:???
捕手
966名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/08(金) 06:40:29 ID:???
まち
967名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/13(水) 04:13:13 ID:VMBC6Rnt
まち
968名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/20(水) 14:56:04 ID:???
投下
969名無しが氏んでも代わりはいるもの
まち