1 :
名無しさん@ピンキー:
前スレで投下が始まったので保守しようと思ったら
512k超えだったので新スレ立てました。
前スレ ◆O8ZJ72Luss さん
続きをこちらでよろしくお願いします。
↓前スレからコピー↓
810 名前: ◆O8ZJ72Luss [] 投稿日:2007/07/26(木) 23:41:20 ID:j6BoGHvf
歳の離れた彼とは付き合って1年経った。
彼が「そろそろしない?」と声をかけてきた。
セックスの誘いだということは解る。
彼のことは大好きだし、断る理由は無かった。
「よろしく、おねがいします」
私は頭を下げた。
「……なんか、その…」
「黙ってて」
とんとん拍子で進んでいく。
彼は行為に夢中のようで私の目すら見てくれない。
私の服を脱がせる。その行為は乱雑とも丁寧ともつかない。
彼は優しく私の脇腹に手を這わせる。
行為を望んだのは私ではないけれど、やっぱり気持ちいいのだなぁと思う。
初めての経験だけれど知識は他の女の子と変わらない。
頭で理解しているから少しだけ余裕もある。
「…っ……ん、幸人さん…」
名前を呼べば相手は喜ぶんだろうなぁ、そうぼんやり頭で考える。
でも相手は相も変わらず行為に夢中。
そっと私のブラのホックを外すと胸に優しく触れた。
「……っ、あ…」
811 名前: ◆O8ZJ72Luss [] 投稿日:2007/07/26(木) 23:42:59 ID:j6BoGHvf
揉まれながら、深い深いキスをされる。
よく解らないまま行為はどんどん進んでいってショーツの中に細くて長い相手の指が滑り込んできた。
驚いて声を上げたけれど、割れ目を指がなぞる度にそれは甘い喘ぎ声に変わった。
この手際の良さからして、きっと彼は慣れてるんだろう。私みたいな子供を相手にするのは初めてだろうけれど。
指の滑りが良くなってきている。ああ、きっと私、濡らしているんだ。
割れ目の間に指が入り込んできて、初めて水音がした。
入り口に人差し指の腹を当てられて、背筋がぞくっとした。
そのまま指に力がこもり、中に入ってくる。
「っひ! う…痛い…です」
「そう」
私の言葉なんか気にも留めず指はどんどん私の中に進入してくる。
もともとなかなかサドっ気があった彼のことだ。今の私を見て喜んでいるんだろう。
第二間接あたりが入ってきたところで指は動きを止めた。
「痛い…痛い……」
「力抜いて」
抜こうとしてもどうすればいいのか、力の抜き方が今に限って思い出せない。
身体が思い出してくれない。
彼は溜息をつくと指をくるくると中で円を描く様に回す。
時々中の壁に指先が当たる。そのたびに私は声を上げる。
「あっ、…う、んんっ…」
「気持ち良い?」
私は正直に首を横に振った。彼は微笑んでまた「そう」と言った。
↓前スレよりコピー↓
812 名前: ◆O8ZJ72Luss [] 投稿日:2007/07/26(木) 23:43:46 ID:j6BoGHvf
指がまた進入を始める。細くて長い指が、ゆっくりと動く。
内側を擦りあげられる。水音が一層大きくなる。
「ゆきひとさんっ! …そこ、駄目だよぉ…」
一点を集中的に擦られる。
そこだけ他の場所とは違う。少しだけ、敏感なような、言い表すことができない。
あぁ、そうだ。こういうの知ってる。ここを良くされ続けると「イク」んだ。
「莉柚」
「うう、んっ、あ、あっ、ああああ」
最終的にその声を聞いた時点で足がぴんとなって全身に変な感覚が走った。
荒い息を整えようと深呼吸する。なんだか、一気にとても疲れた。
「気持ちよかった?」
今度は首を縦に振る。かれはまた変わらず微笑んで「そう」と言った。
すると彼はベルトを外し始めた。
思わず目を逸らす。はっきり見てしまうと、入ってくる恐怖も痛みも増してしまいそうだから。
「ねぇ、入れるよ? いいね?」
「……やっぱりちょっと、待ってくれますか」
「嫌だよ。ほら、力抜いて」
最初から答えがそうなら訊いた意味なんか無いじゃないか、なんて反論する間も無く先端部分が宛がわれる。
息を呑んで目をぎゅっと瞑った。
813 名前: ◆O8ZJ72Luss [] 投稿日:2007/07/26(木) 23:44:28 ID:j6BoGHvf
ゆっくり入ってくる彼。痛くて悲鳴を上げた。
「ちょっと、あ、止まって…痛い、痛いよぉっ」
「力抜いて、大丈夫だから」
あやすように頬にキスを落とされる。
目蓋や唇にも、触れるだけの優しいキス。
「やだやだやだっ、もう抜い…抜いて…っ抜いてください…っ!」
「大丈夫だから」
そう宥めるように言われると、なぜか自分がものすごく我儘を言っているような気がしてならなかった。
ぐっと口を噤み、やっと力を抜くことができた。
「良い子だね…莉柚」
頭を撫でられ、今度は深いキスをされる。
「んんっ……う…」
全部入ったのだろう。キスしたまま彼の腰は動き始めた。
痛みが下腹部を走る。
彼の胸板を力無く叩くが、彼にはそんなの効いてない。
やっと唇が離れると、頬を優しくなでられる。
「あっ、やっ……い、痛っ…ゆきひとさんっ…」
「可愛いよ、莉柚」
痛がるところを見て可愛いという彼はやっぱりそういう人で。
彼の性癖なのだからしょうがない。これよりも酷い人はいっぱい居るだろうけれど、私はきっとこれで限界だろう。
「……っ、ひ…う、くぅん」
前埋まっちゃったんですね。
つづきは・・(;´Д`)ハァハァ私も早く抜かせてください
ところで莉柚って何と読むのでしょうか
何のパロなのか書いてくれるとうれしい。
そういえばパロなのか・・・
このスレはオリジナルが多い気がするけど
もしかして自分が元ネタ知らないだけなのか…?
なんにせよ、◆O8ZJ72Lussさんの続きに期待
キスしたまま挿入=身長差(;´Д`)ハァハァ
職人は!!職人はまだか!!?(;´Д`)ハァハァハァハァ
遅ればせながら
>>1乙
自分も◆O8ZJ72Lussさんの続きに期待
すみません、今のいままで前スレ813でストップしたままだと思ってました
アハハハハハ(ry
>>1乙です。
保守ついでに。
前スレが今見られないのですごく曖昧なんですが、最初の方の雑談で
作品投下待ち以外に好みのシチュについて語り合うとかよその作品を
紹介するとか語るとか、そういう話題ってここでやっていいの?という
流れがあったと記憶しています。
結局曖昧なまま流れたようなんですけど、そういう話題はここでも
いいもんなんでしょうか?
ワカンナイ(´・∀・`)
14 :
377:2007/08/04(土) 23:19:08 ID:rfOnL4QB
さらっと続編思い付いたので投下します。
「あ、晴さんと萩さん、こんにちは。帰って来てたんですね」
…相変わらず、俺と萩の区別が付いていないようである。
普通、区別が付かないのは一卵性の俺と早の筈なのに、こいつ―――俺らのおかん
の妹の娘である、市川愛美は、小さい頃からいつも早の事だけ、見分けが付いていた。
曰く、『だって、早さんが一番かっこいいもん』だそうである。
「らっしゃい愛美ちゃん。僕達も今帰ったばっかりなんだ。髪伸びた?ちょっと大人っぽ
くなったね」
爽やかに笑いながら、愛美の肩を抱きやがる晴。ていうか、愛美ももう微妙な年頃なん
だから、そういうの止めた方がいいと思うんだけどな。
「そ、そうかな?」
お。前だったら微セクハラに気付かんと、ベタベタ触らせてた癖に、やんわり拒絶しや
がる。すぐに晴から離れて、適当に距離を取る。
「さっき母さんとすれ違ってさ。千早は茶の間で寝てるって。僕らもゲーム返して、すぐ
帰るし。ね、千萩」
そう言って、暫く借りていたゲーム機を愛美に見せる。
「あ。あー…だから早さん、新しいのじゃなくてロ○トの剣振り回してたんだ」
「あらら。じゃあもっと早く返せば良かったね。悪い事した」
うんうんと頷く。なんとなく、俺もやりたくなって来た。帰りに借りて行こうと思う。
そんな事を考えながら、久々の我が家に帰って来た。
…俺こと、工藤千萩と、千晴と千早は三つ子である。上から俺・早・晴だけど。精神年
齢的には逆だと思っている。何せ、この3人の中で童貞は俺だけだし。それは別に関係無
いんだけども。なんつーか、俺が一番馬鹿でガキだと思うし。
面倒な事に、3人そろって幼小中高大と一緒の学校で、進学と共に3人でとある一軒家
を借りて家を出るという計画を立てていた。
家から大学まで、大した距離は無いけど、その一軒家は大学まで更に近く、俺が好きな
ペットショップや晴の好きな風俗街、早の好きなゲーム屋まであって、正に理想だった。
が、問題が出た。
高校の時から3人揃ってその家を狙っていたんだけど、管理人の変なおっさんに話を付
けて、中を見せて貰った時だった。
早の奴が真っ青な顔をして、顔を引き攣らせた。同時に俺と晴の首根っこを掴んで即、
家を出た。そして一言。
『俺は嫌だ!!ここに住んだら40秒で死ぬ!!』
…早は、物凄く霊感が強かった。多分どっか、ちゃんとした所で修行したら素手で霊と
格闘出来るだろう、くらい。おっさんはにやにやしながら俺達を見て。
『あ、バレた?でも安心して。俺の父ちゃん、霊感無い奴には無関心だから。君はダメだ
けど、そっちの子とそっちの子は全然大丈夫』
―――などと、のたまいやがった。で。
「あ、早さん可愛い顔してる」
3人揃って、茶の間に。ナルホド、早は俺と同じであろう可愛い寝顔で寝ている。
俺と同じく不健康が売りの割には、俺と同じで趣味の為なら全力を尽くす。この分じゃ、
完徹だな。確か、今日辺り数年ぶりにライターが復活したゲームが出るとか興奮してたな。
フラゲしたと見た。
「早さん、起きて起きてー。萩さんと晴さんが来たよ」
ゆさゆさと、愛美は早を揺り起こしている。
なんというか、どさくさ紛れに触れる事自体が嬉しい、みたいな顔しよって。恋する乙
女はマジ可愛い。超胸キュン。甘酸っぱ。
「いいよ愛美ちゃん。早、満足しながら疲れた顔してるから、当分起きないよ」
「そう?でも離れて住んでるし、早さんも晴さんと萩さんに会いたいと思うよ?」
…お嬢さん、俺らほぼ毎日顔付き合わせてるんですけど。
そこら辺がイマイチよくわかっていないのか、首を傾げる。まあいいや。
本当にすぐ帰るし、愛美にもそれを伝える。愛美だって、早に会いに来たんだから、俺
らは邪魔だと思うし。
「じゃ。早く両思いになれるといいな」
愛美の頭を撫でながら、俺達は早の部屋に向かう。真っ赤っかになった愛美の顔が可愛
い。えっ、えっ?と、バレてないつもりだったのだろうか、後ろで戸惑った声を上げてい
る。晴も笑いを堪えているようだ。
廊下に出て数歩歩く。声を潜めて笑いながら、晴は。
「あは、悪いよ千萩。愛美ちゃんバレてないと思ってたんだから、合わせてあげないと」
確かに、その通り。だが。
「いいじゃん。どうせ早は愛美みたいなガキは趣味じゃねーだろ?今だって女いんじゃん。
愛美と全然違うタイプだろ?」
「んー?確か、それだったら半年以上前に別れたよ。性の不一致で」
さらりと言い放ちやがる晴。危うく吹き出しそうになった。ていうか、別れたんか。そ
ういう話は俺としても生産性無いから、しないし興味も無いしな。
しかし、あいつは一人と長く付き合うタイプで、それこそ好きな女は大事にすんのに、
なんで別れたのやら。あ、性の不一致か。そりゃ仕方ねぇ。俺には縁の無い話題だけど。
でも、いいなあ。あいつ、俺がいいなって思う奴からいっつも告られてんだもんなあ。
例外は愛美だけど。俺も、愛美は可愛いとは思うけど、ガキ過ぎるし、どうしても恋愛対
象には見れない。早もそうだと思う。
「んー、でもさ、チャンスなんじゃね?今なら、ガンガン押しちまえば落ちるかもよ」
戯れに、そう言ってみる。話しながら歩いていたので、すぐに早の部屋に着く。
晴はドアノブを回し、少し苦い顔で。
「いやー、どんなに押しても無理じゃない?愛美ちゃんは可愛いよ?確かに。そりゃ同い
年とかだったら毎晩のオカズとかになりそうだけど、僕らから見れば、愛美ちゃんは幼な
過ぎるよ。千早はどう見てもロリコンじゃあないだろうし」
と、無理!の太鼓判を押した。中々辛辣だ。まあ、確かに愛美が裸で俺に迫って来ても、
勃起するより先に痛々しさとか罪悪感を先に感じてしまうだろう、というのは想像に難く
ない。
愛美の恋は『初恋は実らない』の見本なのかもしれない。
「ま、その内愛美ちゃんも自分に合ったイイヒト見付けるでしょ」
その言葉を最後に、晴は愛美の話題から興味を無くして、ゲーム機の入った紙袋を机の
上に置く。そこらの紙とペンで『ありがと。また来襲ね』と、地味に嫌な誤字をわざと残
して行く。俺も『剣○神借りる』と、下に書く。
ゲーム専用の棚を空けると、すぐに目当てのモノは見付かる。晴も、何か面白いものは
無いかと、物色している。
「あー、久々に僕もDSしたいな」
「え?持ってんだろ?」
「ううん、ディスクシステム」
…たまに、晴と話をしていると疲れる時がある。早と一緒にいる時は、お互いが根っ子
の所が似過ぎているのか、1人でいるような気分になる。勿論1人じゃないし、寂しさと
いうものは全く感じない。寧ろ、心地いい。
対してこいつは、一応三つ子だってのに俺と早と、全然違う。ていうか、こいつはどっ
かおかしいと思う時が多々ある。早と違って、女はとっかえひっかえだし、その割には男
女問わずダチも多い。が、こいつは俺や早と一緒にいる時が多いし、いたがる。
正直俺も、こいつが嫌いじゃない。そんなん俺らは考えた事も無いけど、俺と早が一卵
性で、こいつだけ別のタマゴで生まれたから、何か疎外感を感じているらしい。
俺らから見れば、晴の方が勉強も運動も出来るし人付き合いも上手いし、運もいい。な
のに晴は堂々と俺達すらよくわからない『何か』が羨ましいとか言う。正直マジでわから
ねーんだけど。まあいいや。こいつの頭はどこかおかしいもんなあ。
「お、これか?んじゃ、紙袋に入れてこっか」
容易く目当ての物を手に取り、机の上に置いた紙袋から借りた物を取り出し、今度はそ
れに両方入れる。
「…思ったより長居したな。そろっと行くか」
うん、と、晴も頷いたその時だった。
「あ―――ちょっと、隠れよ」
「へ?な、なん―――」
そんな必要、全く以って無いのに、晴の奴は俺の腕を取り、クローゼットに隠れた。同
時に、戸も開く。
「…ふーん。萩と晴、来てたんか。悪い事した」
「でも、2人ともすぐに帰るって行ってたよ。ほら、やっぱりもういない」
置き抜けで、微妙な顔をした早と、恋する乙女全開の愛美。おうおう、微笑ましいこっ
て。ま、お前の恋は一生実らないがな!!
…と、少々意地悪い事を考えてみる。だって、無理だし。俺は絶対愛美を彼女には出来
ねー。そう思っていたんだが…動いて喋る実物を眼にした愛美は、さっきよりもちょっと
可愛く見える。後、早もなんか、やたら穏やかな顔してやがる。ちょっと前まで、どんな
に愛美が好き好きビーム放射しようが完全スルーだった癖に。しかも、絶対に気付いてい
なかった。
晴も、はてな、と首を傾げている。
「…早さんって、やっぱ鈍いのね」
少しおかしそうに、愛美は言う。うん。こいつは本気で鈍いと思う。そして俺も。てい
うか、今告白?いいシーン?俺はちょっとわくわくして来る。レッツ玉砕。
「んだよ、あいつらみたいな事言って…あいつらか?」
なんか、普通に早は愛美にくっついて、頭を撫でている。おかしそうに笑っている。な
んか、見た事あんま無い表情。
「ううん。近いけど。私が早さんの事好きなの、結局周りにはバレてたんだなーって。早
さんは気付かなかったみたいだけど」
―――!?
俺が叫びそうになって、咄嗟に晴が俺の口を塞ぐ。が、晴も眼を見開いて、物凄く驚い
た顔をしている。こいつのこんな顔見んの、ひっさびさかもしれね。ていうか、それより
も。それよりもおい。
…お、俺の眼が、脳がおかしくなっていないのならば、今、愛美は、早にチューしやが
った。俺、した事ねーのに。俺より4つ下の、つい今しがたまでガキだガキだと言ってい
た、愛美が、早に、チューを。
「えへへー。早さん。早さん」
嬉しそうに早にしがみついて、早の胸に顔を埋めている。対して早は。
「ばーか。なんだこの甘えたさんは。お前は白い猫か」
これまた、見た事無いような顔して、愛美を抱き締めている。頭にチューもしやがった。
「ばかじゃないもん。早さんの方が酷いもん」
顔を上げて、それこそ本当に幸せみたいに笑う。その笑顔はなんていうか、本当に俺で
もちょっとだけ、ドッキリしてしまった。
俺は晴の手を退けて、今はもう確認するまでもなく『恋人同士』の2人を凝視する。
ていうか、いつの間に。俺らがあんな事言って、玉砕が当然と思われていた愛美は既に
早をゲットしていたのである。これはもう、やられたとしか言いようが無い。でかした愛
美。そして何考えてんだ早。
「酷ぇって…このヤロ、襲うぞ」
ぐりぐりと、愛美に梅干をかます。痛い痛いといいながら、愛美は喜んでいる。マゾか。
ていうか、襲うって。お前本当に何考えてんだ。
…なんか。違う。あいつ違う。昨日までいつもの早だったのに、今、違う。全然わかん
ね。いや、あいつと俺はいくら一卵性の双子だからって、違う人間だってのはちゃんとわ
かってる。でも、なんか―――なんか。
ちら、と横を見る。晴の奴はもういつもと同じだ。楽しそうに行方を見守っている。
こいつはなんか、今はわかる。この状況が滅茶苦茶楽しくて、上手く行けば、自分とほ
ぼ同じ顔の男が幼さを残した、けど、やっぱり年頃で可愛い女の子を抱くなんて異常事態を期待している。そんな顔をしてやがる。
「…エッチ」
やっと梅干から開放されて、それからようやっと早の言葉を意識したのか、複雑な顔を
しながら床に座る。機嫌を取るように早も隣に座る。なんか、心臓ドキバグ言ってる。チ
ューしたって、ガキはガキなんだ。まさか、俺らの中で一番常識的な早が、いくらなんで
も愛美に―――
…よっしゃあああああああああああああ!!とばかりに、ガッツポーズを取る晴。俺は
今ほど、こいつにツッコミを入れたいと思った時は無いかもしれない。
「ばーか。お前、わかってなかったのか?」
そう言って、早は愛美の胸に手を置く。愛美は一瞬で耳まで真っ赤になりながら、俯く。
「う…し、知って…た、けど」
それこそ、蚊の鳴くような声で、呟く。まさか、まさかまさか、もう、いくらなんでも
お手付きって事無いよな?
すぐにその手をどけて、座ったまま愛美を抱き寄せる。ちょうど、愛美を手と足で囲う
ような格好。デコ辺りにチューして、耳元で、なんか呟いた。
少し間を置いて、愛美は頷く。
俺は何て言ったのか聞こえなくて首を傾げていると、晴がそっと『今日は5センチって
言った』と、耳打ちした。ますます意味がわからねぇ。
「……」
愛美は顔を上げる。その顔は、絶対に俺らには見せないような顔。なんか期待している
ようにも、笑っているようにも、泣きそうにも見える。俺でも、ドキドキする。なんか、
俺が愛美を抱いているみたいだ。
「…あんまり、胸は触っちゃダメだよ」
ちょっと待て、それは死刑宣告にも等しくないか?俺が呆れながら溜息をついていると、
晴は声を出さずに笑っていた。
「いいけど。お前が今嫌だって言う事なんかしねえよ」
…さ、爽やかだ。爽やかに言い切りやがった。俺なら無理だ。だって俺、おっぱい好き
だし。おかん以外の実物見た事も触った事もねーけど、おっぱいが好きだ。おっぱいが大
好きです!だから、好きな子にそんなん言われたら俺、どうしていいかわかんねえ!!
「…だから、早さん大好き」
男の俺から見たら、早はあまりにも格好良過ぎる。でもって、言われた当事者である女
の子の愛美は、少し震えた声で、これでもかってくらい可愛い顔で、言いやがった。
「じゃあ、あの、そんな風に言ってくれるなら、あの、あの、ちょっとなら…いいよ」
おっほ。もしかして、これ作戦か。作戦なのか。あんまりにスマートだ。俺が尊敬の眼
差しで早を見ていると、当の早は笑って。
「いいんだよ。お前が嫌だって今言った事は今日しない。もう決めたから」
…そう、男で血繋がってて同じ顔でも、惚れそうな事を言ってくれた。
『…俺、今ならあいつに抱かれてもいいかもしんね』
晴に耳打ちする。だけど、晴はなんか、悪魔のようににんまりと笑って。
『愛美ちゃんも千萩も可愛いね』
と、耳打ちして来た。意味は全くわからん。いや、愛美が可愛いってのはもう認めるけ
どよ。まあ、今はそんな事どうでもいい。この行く末だ。
「お前、髪の毛触り心地いいな」
…なんか、さっきまでのエロムードはどこへやら、急にまったりし始めた。が、愛美は
髪を手で梳かれて気持ちが良さそうだ。愛美も早の髪に触れて。
「そうかな?普通…だと思うけど。早さんもちょっとごわごわしてるけど、気持ちいい」
なんとなく、俺は自分の髪を触ってみる。確かにちょいごわごわ。晴も同様の事をして
いる。眼が合う。なんかすげー照れ臭い。にへっ、と晴は笑うが、多分照れ隠しだろう。
「そっか」
早もなんだか照れ臭そうに呟いて、愛美をぎゅっ、と力強く抱き締める。愛美も一瞬驚
いたようだったが、既に覚悟はしているのか、抱き締め返した。
愛美は物凄く、早が好きだ。初恋だの憧れだの考えた事は何度もある。その通りだろう。
でも、それ以上に早が好きなんだ。対して早も、きっと愛美と同じか、きっとそれ以上に
愛美の事を好きなんだろう。見てりゃ顔でわかる。
そういう相手に巡り会えるって、どんなに幸せな事なんだろうって思う。
でも、本当にいつの間に?
男女関係は本当に真面目で、真面目になればなる程に考えている事が駄々漏れになる早
だ。きっと、1人でいる時に色々考えていたんだろう。
そういえば、前の女と別れた事も俺は知らなかった。前なら、殆ど知ってたのに。
俺が好きになる女から、必ず好かれていたのに。やっぱ、別居してから―――てか、別居て。
「―――あ」
が、そんなどうでもいい思考は、聞こえて来た愛美の色っぽい声にぶった切られる。キ
タキタキタキタキタァ―――!!と、あっという間に臨戦態勢に。
「ん…やぁ、早さん、そんなとこ…」
見れば、あの野郎今度は愛美の耳に…なんだ、その、チューって言っていいのか?でも
なんか、愛美がビクビクしてるって事は、口の中で舐め回してんのか?
「く、くすぐったい…やだ、早さ…」
愛美が逃げられないように抱き締め、少し硬くなった声を唇で塞ぐ。一々大げさに反応
する愛美をからかうように、すぐ顔は離れる。早はじっと愛美の眼を見て、笑う。あんま
りに穏やかで、今、何をしていたかも忘れそうな顔。そして、もっかいチューする。
「―――ふぁや―――」
すぐまた離れると愛美も思っていたのか喋ろうとしたが、それは違った。早が舌を出し
て、離れかけた唇をまた追う。初めてじゃあないんだろう。愛美は少し驚きながらもそれ
を受け入れ。早の首に腕を回す。
…なんか、本当にドラマとかよく見た事無いけど、ドラマみてぇ。木曜10時…いや、
愛美がちょい幼いから、金曜9時くらいだろうか。雰囲気だけで思ってっけど。べろべろ
チューしやがって。さっきも思ったが、俺まだした事ねーっつのに。
ちら、と晴を見る。奴は食い入るように見てる。ていうか、今電話とかメールとか来た
ら、きっと俺らは殺される。早か愛美かはわからんが。携帯をこっそり出して電源を切る。
俺を見て、晴もはっ、とした顔をして、急いで同じように切る。ごっそり付いた奇妙なス
トラップの音で気付かれないか、そっちがヒヤヒヤもんだった。
「はぁ…」
ようやく、唇が離れた。愛美はぽーっとなって、力が抜けているようだ。早が支えてや
んなきゃ、今にも倒れ込みそう。そんな愛美を抱いて、さっきみたいにまた耳を攻めやが
る。今度もまたびく、と震えるけど、もう抵抗する気も無いようだ。
「ん…やだ…や…意地悪」
ほほほほ、そんな事言いながら声が嫌がってねぇじゃねえか。ふっへへ。背中や太腿を
撫で擦って、もうお前その手付きは行った事ねーけど、キャバクラでねーちゃん触るシャ
ッチョさんみたいじゃねーか。イヒヒ。でも、確かに約束通り胸は触ってねえな。紳士め。
「―――っ」
…前言撤回。紳士はそんな所に手は突っ込―――む、か?紳士でも、いざとなれば。
「あ、や、それ、またいっぱい上がってる…?」
ハードル?と、晴は声に出さずに言う。なんか晴は朧気にわかって来たみたいだが、俺
はさっぱり全くわかんね。それよりも、こっちだ。愛美のパンツの中に入った手だ。
「さあ?」
エロっ!早の顔、エロっっ!!俺、未だかつてあんな顔した早を見た事ねぇ!!ていう
か、ちっと見えにくいけど、女の子のパンツって可愛いのな。そんな中に手を突っ込むっ
て、お前は本当に犯罪者だな。色んな意味で。
「…やだよ…怖い。は、早さん?…やめて」
震える声。おおお、俺なら、この時点でもう無理。だって、怖いもん俺だって。それに
早、愛美が嫌だつった事はしないんだよな!?
な!と、晴の方を見る。が、晴は本気で笑いを堪えて、震えてやがる。え!?どういう
事ですか!?なんで!?
「だ、だって、やだって言ったら、しないって―――」
「だから、『今』やだって言ったら、って言ったろ?さっきこうするなって言ってたら、し
なかったけどよ」
…うわっほう。詐欺師だ。こいつ詐欺師だ。晴は最初からわかっていたのか、うんうん
と頷いている。視線はパンツってか、手だ。
愛美は真っ赤な顔で『やられた』って表情をしてる。正に今、2つの意味でそうなろう
としている訳だが。
「それに、死ぬほど嫌がってもないみたいだけど」
「…あ、や―――」
声の質が、また変わる。手が動く。愛美の手が、早の腕を握る。
怖さがピークに達したのか、愛美の眼に涙が浮かぶ。早はそれを舐め取って、何度もチ
ューする。それでもパンツから手ぇ抜かないのは最早天晴れだけどよ。
「ふ…む、むー…」
チューしたまんま、ゆっくりした動きでパンツの中のアレだ、なんて言えばいい。こう、
またぐらをもそもそしてる。うっわ、自分で考えて、あまりにもエロくなくてがっかりす
る。なんだまたぐらて。
愛美はもう、どうしていいかすらわからないみたいに、じっとしている。
そんな愛美の頭を撫でて、唇を離す。2人の口の間に糸が出来て、なんか超エロイ。
「じゃ、中に指は絶対入れないけど。そんでも駄目?」
殆ど力の抜けた愛美に、なんつー交渉持ち掛けやがる。そもそもパンツに手を突っ込ん
でる事自体が大変な事だってのに。更にその中にまで手突っ込むつもりだったと申すか。
『…喰い付いてるねー』
『うっせ、お前こそ。顔が生き生きしてんぞ』
非童貞の余裕か、交渉自体にあまり興味は無いのか、もう結果はわかっているのか。晴
はこっちにちょっかい出して来る。正直超うざってぇ。だって俺、こっちに夢中。
「…だ、だ、う―――」
お。どうやら愛美は断りたいみたいだけど、どっかでちょっとだけ期待してるのか?ど
うにも歯切れが悪い。俺は首を傾げる。愛美はずっと、あー、とか、うー、とか唸って。
「っ―――やぁ…」
と、愛美が返事を渋っている内に、早はやっちまう事に決めたらしく、デコチューをし
て、なんか本格的にお触りし始めた。
「やぁ…やだやだ…早さん、エッチ…そこ、やぁ」
「ばーか。エロい事してんだよ。お前こそエロ声出てんぞ」
少しだけ、湿った音がした。あー、これが、俗に言う濡れて来たって奴ですか。俺はも
う、なんか、本当に愛美以上におかしくなって来そうで。
『…下半身生き生きして来たね』
なんか、晴が言ってるけど、言葉が頭に入って来ねえ。眼の前の、本当に異常事態。だ
って、だって、俺の顔した、わかってっけど、でも、俺が、愛美を―――ちっちゃくて、
そりゃ子供だけど、女の子で、ずっとちっちゃい頃から知ってる女の子が―――
『王道的展開だったら、僕が千萩のハイパーって程でもない兵器を慰めてあげるんだけど
ねぇ。如何せん僕は男にそういうサービスするくらいなら舌噛み切って死ぬからね』
…だから、何言ってるかわかんないのに、なんか言うなよ。ていうか、本気で、俺も、
あの子、メチャクチャにしてぇ。
―――けど。
「っ、早、さん…早さん―――」
早に縋り付いて、早の名前を呼ぶ声。
…それは、なんか一瞬で冷めた。ああ、そうだよなあ。あの子は俺じゃなくて、最初か
ら早が好きな子で、あー、AV見て、好みの子だったら俺だってやりたいって思うし、そ
れと同じなんだな、って事に気付く。という事は、やっぱ愛美は俺の好みだったんだ。
好きとか、いいなっ、て思う以前の問題。
俺は愛美の事は親戚の可愛い女の子って意味で好きだけど、恋愛感情はやっぱり持てな
い。でも、裸で迫って来られたら、やっぱ勃起すんなぁ、という事だけは思った。
なんとなーく、下半身も冷めて来たような気がした。
『お、イッちゃうみたいだよ。かぁわいい顔してる』
うっしっし、と、下品に笑う晴。アホだこいつ。いや、今の今までおっ勃たせてた俺が
思う事じゃねーけど。いや、でも、やっぱもっかい行けそうだ俺も。
「―――っ…!」
手で口を押さえて、喘ぎ声をなんとか我慢しようとしている愛美。それがまたそそるそ
そる。ていうか、女の子ってどこをどうすりゃああなるんだろ。俺があちこち触っても、
きっとどうにもならんと思うんだが。
「ほれ、愛美我慢すんなー」
意地悪く、耳元で囁く。同時に、また水音。中に入ってない(そうだが)のに、あんな
音出んのかいな。女体の神秘。
小刻みに震えて、さっきのチューした後みたいに涎が開いた口から流れる。もう口を押
さえる余裕も無いのか、可愛い声で喘いでいる。AVとかより弱々しくて、実際はこんな
もんだろう、と思うより、ずっと色っぽくて、はっきりした声で。
「早さ―――や、なに、やだ―――あ、あ、や、早さん…!!」
…そんな風に。
最後まで、早の名前を呼んで、早の身体に倒れ込んだ。
「…ばか」
「おうっ!」
身体が興奮したせいだけではないであろう、真っ赤な顔で、愛美は悪態を付く。自分が
その言葉通りだと理解した上で、爽やかに返事をする早。
ティッシュで指を拭って、ぐったりした愛美の乱れたおべべを整えてやる。
「結局…今日、何センチだったの?」
「ん?5センチ。ただし、第二ハードルのぉぶっ!」
おおっと!愛美のアイアンクロー!早の顔面を掴む!!ていうか、言っている意味が未
だわかんねー!!
「早さんのエッチ!何が5センチなのっ!!」
…まあ、さっきから、早に言葉の裏を悉くかかれて、おかんむりだって事もあったのだ
ろう。愛美は少し言葉を荒げて、早をぽかぽか叩いている。
「はっはー!ばーか!第二ハードルつったじゃねーかよ!ばーか!!」
今まで、さんざエロ行為をしていたにも関わらず、一気に爽やかラブコメカップルに戻
りやがった。晴は相変わらずにこにこ笑ってるし。楽しそうだ事。
「ばか。早さんのばか」
「うっせー。お前がバカだろ…ってか、ねむ」
くあああ、と、大欠伸。そういや、こいつ徹エロゲだっけ。ナルホド、一晩掛けて抜い
たからこそ、今の愛美相手でも余裕こいてられたってか。
が、そんな事愛美は露知らず。余計に火に油を注ぐ言動じゃないの?と思ったが。
「…眠いの?そういえば、お昼寝してたよね。もしかして、私邪魔だった?」
所詮は徹エロゲなのに、それを知らない愛美は、すぐに早の体調を気遣う。こいつ、絶
対騙されやすいタイプだ。俺がちょっとヤな感じで笑っていると。
『なんとなく。なーんとなくだけど、浮気は一発でバレそうな気がするけどね』
呟く晴。でもなんとなくわかる。が、人の頭の中読むな。エスパーかお前。
「ん、別に―――邪魔なんかじゃない」
…そう言う割には、とろとろ船を漕ぎ出す。ていうか、お前普通に酷くね?彼女横に置
いといて眠いって。
「そう?じゃあ早さん、お昼寝しなよ。私も一緒にするから」
が、愛美もさる者。寧ろ嬉しそうにそんな提案をする。すいません。俺だったら無理で
す。好きな子隣で寝てて何もしないなんて事、無理です。きっと無理です。
「そ。丁度いいか。ほれ、こっち来い」
ぼんやりした顔で、早はベッドに向かう。愛美もそれに続く。
あんまりにもあっさりと、おやすみなさーい。と、2人でお昼寝をしてしまう。
…恋人同士って奥が深ぇなあ、と思うと同時に、俺には彼女が一生出来ないのではない
か、と思った。
2人共寝付きが良かったのか、すぐに熟睡してしまった。コレ幸いとばかりに俺と晴は
逃げ出し、実家を出る。既に夕日が差し、涼しくなって来ていた。
「はああ…イイもの見たああ…最初は脅かすつもりだったのに、こっちがびっくりしたよ」
…本気で言っている所が恐ろしい。が、俺も楽しんでたのだから何も言えない。
「しっかし、もう愛美が早をゲットしてたとはなあ…色んな意味で超ショック」
「まあねー…僕もショック…」
と、何故か落胆したような顔の晴。なんか、俺と意味合いが違うような…
「どした?」
しょんぼりとした顔。いつもの晴じゃあ、ない。思わず、声を掛けてみる。と。
「…だってさ、僕、愛美ちゃんの事好きだったんだもん」
そう。
晴は力のない声で、でもはっきりと言った。
その表情は、ほんの少しだけ寂しそうで、でも、口元だけ笑っていた。
「…晴」
「ん?」
俺の呼び掛けに、元気無さそうに応える晴。なんていうか。
「いや、お前ってさ、なんで意味も無い、誰も得しない、しかも面倒な嘘付くん?」
俺が呆れながら指摘する。晴はすぐさまにへら、と笑って。
「なんでわかったの?」
「なんでわからないと思った?」
ボケに対して、突っ込んでやる。晴は、あれ?という顔をして。
「…おかしいな。絶対わからないと思ったのに」
と、本気で不思議そうにいいやがった。
「お前、本当にわからなかったらどうするつもりだった。俺の心に変なもん投石すんな」
「いや、別に投石したってどうも思わないでしょ?どっち道もう愛美ちゃんは千早だけの
愛美ちゃんなんだからさぁ」
だから、こいつはどっかおかしい…そんな訳無いだろ。ぺしん、と晴を叩いて。
「アホか。胃潰瘍起こすに決まってんだろ」
ばーか、と、尻を蹴りながら言う。いたいー、と、笑いながら袋を振り回して前を歩く。
紙袋、ちょっと剣が突き破って来てるぞ、おい。
「…しっかし、あいつ霊感ある癖に、なんで俺らに気付かないんだよ」
お陰でイイ思いさせて貰いましたが。晴は意外そうに振り向いて。
「え?死んだ生き物と、生きてる生き物って違うモノだからでしょ?僕は生きてるモノの
気配なんかはよくわかるけど、死んだモノは全然わかんないし。千早はその逆でしょ」
…事も無げに言ってくれますが。全く以ってよくわかりません。それより、どっちも鈍
い俺はどうしたらいいんですか。ていうか、だからさっき、早と愛美が来るのをいち早く
察したって事ですか。
「よくわかんねぇよ…」
「あは…僕も。千萩も千早もちょっとわかんなくなった。ついでに、愛美ちゃんも」
笑いながら言うから、こいつは底知れねー。
「そっか?逆に俺はなんとなくわかって来たけどな…お前も早も愛美も」
「そうなの?」
「ん…ああ。わかってたけど早と俺は全然違う人間なんだなーってのと…後はなんとなく」
…曖昧にも程があるが、そうとしか言えないんだから仕方が無い。でも、なんとなく。
「ふーん…そうなんだ」
そう言って、また俺の隣で歩き出す。少し、真面目な顔。すぐに、また笑顔。
「…ね、千萩」
「ん?」
「今日泊まろっか。実家」
満面の笑顔で、爆弾発言。たった今、出て来たばっかじゃねぇかよ。だが、そんな事は
お構い無しに、俺の腕を掴んで元来た道を戻る。
「はぁ!?意味わかんねー!!」
「あはは、僕もよくわかんない。でも、愛美ちゃん追い出そう。今日は3人でいたい気分
なのー」
そう言って、物凄い力と速度で戻る。幸せカップルぶち壊す気か!?ていうか!!
「お前、いっつもそう言ってんじゃねえかあああああああああああ!?」
結局、走っている途中で買い物帰りのおかんと遭遇し、2人揃って荷物持ちをさせられ
る事となった。
ていうか、米の袋と特売のティッシュと醤油一升とでかい瓶詰めを一気に買わないで欲
しかった。
後、俺と晴が帰る頃には、早は愛美の父ちゃん母ちゃんと(勿論愛美も一緒に)一緒に
焼肉を食いに行っていた。ボーリングまでして帰って来て、すぐ寝た。
…晴は、奇声を発しながら寝てる早の隣でロ○トの剣を振り回していた。
俺は、それをただ見ていた。なんとなく、家を出る前と立場が全員入れ替わってるなー、
と思った。ちょっと、面白かった。
終
31 :
377:2007/08/04(土) 23:57:06 ID:rfOnL4QB
こんな感じです。
3つ子だろうなあ、というのは前回のを書いている途中で思いました。
GJ!!
前から思っていたけど、377氏は何かがおかしいと思うw三つ子だろうなてww
萩は萌えキャラだと思う。
相変わらずの神技…GJです。
萩もカワユスだけど、晴のエロが読みたくなりますた。
GJ!最近来たばっかで前の話とか知らんけどマジGJ!!
>>35 >>1の縮刷版で前の話よめますよ
んで、377さんGJ!
早さんが好きだ…
主役プルももちろんだが。萩に萌えた。ハァハァ
ロ○トの剣第二段キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
377さん節絶好調。
すごくおもしろかった。
萌えポイント突きまくり。
萩かわいいよ萩。
萩の初めて話とかすごくおもしろそう。
三つ子設定なんて私なら思いつかない。神。
GJ!!です。三つ子…www
>>34さんにドウイ!
萩カワイイ…でも自分も、晴のも読んでみたいです
読んだ直後は萩に萌、後からじわじわ晴がかわいい…と思えてきました
新スレいま気づいた
1さん乙
そして377さんGJ
萩も晴も好きだー
毎日本当にあちーね。
43 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 23:11:30 ID:jherWyma
暑あげ
皆、どこに行ったのかのう…。
ここブログ紹介所?
初期の頃はお勧め小説サイトの紹介も兼ねてたスレだからね。
45のスレは見てないけどブログ形式の小説サイトなのかな。
そうか。とん
最初は本屋で売ってる小説とかについても語り合っていたな
職人さんカモーン!!age
職人さんを待ちつつ雑談
商業でもよければ、
新潮社「花宵道中」宮木あや子著 をオススメしてみる
R−18文学賞受賞作を含む短編集
吉原遊女 エロイというより切ないっす
保守
えへ
質問。
ここって男女ラブラブしか投下しちゃ駄目なん?
陵辱とか輪姦なのに前戯はみっちりとか、
クンニしまくりとか、
そういう意味の女の子向けなSSは駄目?
あとファンタジーとか書いていい?
触手とか。
好みが分かれそうなものでも、注意書きがあれば問題ないよ派
過去にも陵辱ものはあったけど
ハードなものには反発が大きかったかな。
>前戯はみっちりとか、クンニしまくりとか、
だからといって、作品中の女が感じてる=女向け
になるわけでもないからw
心配なら過去の作品を読んで空気を掴んだらどうかな。
どっちにしても注意書きは必要。
陵辱輪姦ありなら、できれば感想にも対象SSのタイトル入れて欲しいと思ってる。
本編はスルーできても、内容の特定の部分やアンカーを示して感想つける人がいるから
嫌な内容でも完全スルー不可能で、気分悪くさせられる。
そこまで強いるのはどうかとw
そこまでは我侭だと思うなぁ。
凌辱ものっていっても、多少Mっ気のある男性経験有りな女性が〜、ていうのと
うら若い何も知らないおじょーさんがいきなり拉致監禁強姦ていうのとじゃ
また受け止め方も違ってくるなあ。自分の場合。
だから注意書きはお願いしたい。
あんまりレイプから始まる恋ってのは肌に合わないんだけど、
以前読んだ小説は、ハードな強姦シーンもあったけどヒロインが芯の強い子で
ラストシーンに感動して涙したこともあったし、こればかりはケースバイケースだ。
ところで私は絶倫でテクニシャンでSっ気ありなタイプもいいけど
ヘタレな男というのも結構好きですw
最近読んだやつで、女性があまりにスペック高くて怖気づいて最初は上手く
いたせなかったが、その後熱心に研究しその道を極め女性の愛を獲得して
エンドだったのが意外性あって面白かった。
他スレのシリーズもので病弱貧弱な男にふらっといってしまった美少女が
でてきたけどあれも萌えた。
年下がどうのヘタレがどうのってのもいいけど
普段Sっ気持ちの男が恋人に犯されて戸惑うようなのをリクしたいw
あと
>>60に一票入れる。自分もそういうの苦手だし
投下されたこと自体なかったことにしたいのが本音
確かに作品中の女性が感じてればいいってもんじゃないよね
読み手によっていろんな受けとめ方があるし…
注意書きは必須
和姦が一番。
「レイプから始まる恋愛」ものって最近多いっぽいけど、何が良いのかさっぱりわからん。
赤の他人に犯される所妄想する趣味もないしねー
67 :
377:2007/09/29(土) 18:45:34 ID:lMcITbtg
そんな訳で、今までの流れを受けて投下します。
テーマは陵辱ですが嫌いな方でもご安心いただける内容を
目指しました。
後、横溝正史は全体的にエロいと思います。
「つまりアレでしょ?陵辱って嫌な事しながら無理矢理エッチするって事でしょ?だから
さ、僕がミカンちゃんを陵辱するっていうのは、すじこを強引に食べさせながら寝起きに
無理にやっちゃうという事かい?」
…知ってました。
わかってたし、理解もしていた。だけどやっぱり痛感する。
「バカだろ、アンタ」
言うのも辛いわ。馬鹿馬鹿し過ぎて。
「ほらさ、僕はミカンちゃんが大好きだけど、そういう性?の探求者でもあるからさ。エ
ロスクエストっすよ。だからさ、今から鮮魚センター行ってすじこ買って来るからさ。ち
ょっとお昼寝しててよ」
…妙に興奮しながら、財布を捜そうとする。本気かこの馬鹿。
「…別にさ、それって私がバナナさんの買って来た新作ゲームを勝手に始めつつ今読んで
る小説の犯人バラしながらケツを掘る、でもいいんじゃないですか?あ、犯人は実は角田
の生き別れの弟だった大田ですよ。凶器はプラスドライバーです」
ぴた、と、バナナさんの動きが止まる。中腰で止まって、しんどくないのかな。
犯人云々は物凄いマナー違反だと思うけど、この間夜中にトイレで白い仮面被ってセー
ラー服着て驚かしてくれたから、これであいこだ。
「ぶぱきゅるはおわーーーっ!?」
なんか、きっと自分でもよくわからないであろう奇声をあげるバナナさん。あ、これが
陵辱って奴か。この後バナナさんはレイプ眼になって壊れてしまうのかしら。
「さて、一緒に鮮魚センター行きましょう。私、今日は鰯のマリネ作ります。この間テレ
ビでやっていて、実際作ったらすっごく美味しかったんですよー」
私も鞄を持って笑い掛ける。一応、恋人であるバナナさんとお買い物。今日は久し振り
にお泊りだから、色々してあげたい。陵辱は勘弁だけど。
バナナさん、と言うが、それが本名ではない。本名…の中にバナナが入ってるからそう
呼ばれているだけだ。狙った訳では無いだろう。相葉七生さんは、こんなんでも私の3つ
上。ワガママで基本馬鹿でとても馬鹿な人だ。なんでこんなんと付き合う羽目になったの
やら。いや、別にいいんだけどさ。バナナさんが私じゃなきゃやだって咽び泣くから折れ
てやったんだけど。
因みに私もどこぞの新聞のマンガの子みたいに本名がミカンな訳ではない。バナナさん
と同じく名前が速水カンナ、というだけだ。昔からのあだ名である。
「ほらほら、バナナさん鮮魚センター行きましょう。レタスも買わなきゃ。確かお酢…」
「うわあああああああああああああっ!!ミカンちゃんなんか、陵辱してやるー!!」
本気で泣きながら、私の事を押し倒す。
「布団も敷かないでここでしてやる!」
「いや、それってただ堪え性が無いだけでしょ?」
陵辱とは何か違うような気がして言ってみる。と、バナナさんは一瞬言葉に詰まり、で
もすぐに気を取り直して。
「じゃあ、その上服脱がさないでやってやる!」
「それはただの着衣プレイじゃないすか?」
「っ、じゃあ、こうやってこうやって―――ほーら、身動き出来ないでしょ?」
なんか苦し紛れにそこらのコードで私の手首を縛る。あ、これACアダプタだ。細っ。
「いやー…ソフトSMでしょこれ?そんな趣味もあったんですか?」
口ごたえ、というよりは本当に疑問に思ったので、突っ込む。だって、やっぱりちょっ
と陵辱とはズレてる気がするんだもん…
「じゃあやっちゃうよ!そんでカメラとかムービー撮って…」
「だから、それは所謂ハメ撮りでしょ?」
「じゃあ、叩いて悪口言ってやる!」
「余裕でDVじゃん!」
「やだ!なんで僕が大好きな女の子をドメスティックバイオレスらなきゃいけないんだ
よ!何を考えてんのさ!!」
…激昂する。いや、自分で言って自分で否定してますよこのバカ。
肩で息をして、困ったような顔をして、そして、一言。
「…陵辱って、どうすればいいの?」
「知りません」
緩く縛られていたので、自分で解く。私に乗っかったまま、元気なさ気に溜息をつく。
「第一、陵辱なんて…なんでそんな事したがるんですか」
「いや…だって、なんか、こう…こう」
相変わらず、説明どころか日本語にさえなっていない。どうせなんかそういう本でも見たんだろうな。
「…はいはい、もういいですから、鮮魚センター行きましょう。自分に合わない事や理解
も出来ていない事をするなんて、時間の無駄です」
頭を撫でて、未だ私にのしかかって説明しようと頑張っているバナナさんをどかそうと
する。けど。
「あー…の、あのさ、陵辱はもういいや。あの、でもさあ」
なんだかかしこまって顔を近付けて来る。なんだろう?
「ミカンちゃん、あの、その―――今日、鮮魚センターやめよ。後でお寿司食べに行こう。
奢るから。だから、あの、ベッドルームに」
「なんでベッドルーム言うんですか、わざわざ」
そんなの聞いた事無い。妙に腹が立つ。でもお寿司もいいなあ、と思ったので了承する。
それに、私だってずっと、好きな人の下にいたんだから。
「ぬおおーーーーーーっっ!!」
…物っ凄い気合を込めて、私をお姫さま抱っこする。いや、そんな気遣いいらんし。こ
ういうのスマートにやってくれなきゃ、迷惑なだけなんだけど。逆に気ぃ使うし。
よたよたと寝室に向かって、私をベッドに寝かせる。ぜーはー荒い息をついて、腕ぷる
ぷる震えさして、どや、とばかりに笑う。うん、死ぬほどかっこ悪い。
「バナナさん、もう体力全消費してません?」
「だ、大丈夫だと思いたい!」
そう言って、倒れ込むように私を押し倒す。暫く自分も倒れたまま、息を整える。よう
やく元気を取り戻したのか。
「やりましょう!」
と、これまた大きい声で言った。
鮮魚センター行けば良かった、とちょっと思った。
「バナナさん、陵辱向いてないですよね」
「そうかな…もうどうでもいいや…」
確実に向いてない。する前に、お互い裸になってまず最初に何分か抱き締めるのが好き
な人に向いているとは到底思えない。何度かお互いにそのまま寝ちゃって朝になった事も。
ある意味、すげぇ性欲処理の方法だと思う。今日はそうならないみたいだけど。
「性格診断とかしたら、バナナさんってロマンチストになると思うよ」
「いや、実際やったら『あなたはふつうです』って言われたよ」
「…それって、性格診断って言えるの?」
質問の答えは無しに、バナナさんは私にキスして来た。電気も消してあるのに微妙に明
るい中でエッチするのって、そういえば初めてかもしれない。なんだか物凄く恥ずかしい。
バナナさんの身体が全部見えるのも照れ臭いし、私もバナナさんに全部見えられている
のも、考えただけで体温が上がる。
「ミカンちゃんが今考えてる事、わかった」
…そりゃ、わかるだろうなあ、と思った。
「ちょっと眠くなっちゃったでしょ。でも今日はダメー。寝かさないよ」
全然違った。いや、ちょっと前なら正解だけど。
バナナさんはニマニマしながらもっかいキスして、唇を付けたまま、下がっていく。
身体中にキスされて、それが全部見えて、私は恥ずかしくてぎゅっと眼を瞑ってしまう。
でも、唇が徐々に下に行くに連れて、次はどこに触れられるのか予想してしまう分、まだ
眼は開いていた方がいいのかもしれない、とも思えた。
「―――っ!」
来る、と思ったのに、急にそこだけ指で触れられた。だからびっくりしたような声も出
てしまう。でも、びっくりしたのはそれだけじゃない。
「あー、ミカンちゃんもうすっげぇ濡れてる。ほら、指楽々入っちゃう」
凄く楽しそうな声で笑う。指も、本当に簡単に受け入れてしまう。嘘、なんで?
「や…やだやだ、ちょ、バナナさん、待って待って」
ベッドの上で、バナナさんから逃げようとする。けど、すぐ壁にぶつかってしまう。て
いうかこれ、初めての時と似たような状況かもしれない。
「バナナさん―――っ」
そんな状況だから、あっという間に追い詰められる。壁に背を着けて座っていたような
状態で、簡単に太腿掴まれて、大開脚させられる。
「しないけどさ、生ってダメ?」
「…いいって言ったらするんですか?」
「しないよ。超怖い」
色んな意味でか。判断に困るような事言って。
「万が一の事があって、ミカンちゃん悲しませたくないしね」
取って付けたような事を言いながら、うわ、こんなはっきり見るの初めて…バナナさん、
中には入れないように擦り付けて来る。凄く熱い…
「…陵辱ってーと…やっぱ生なのかな…後先考えないでやっちまえ精神…?」
「まだその話っすか!?さっきもういいって言ってたのに…」
ていうか、陵辱って単語、今までどんだけ出たんだろう。いい加減、それがなんだか別
の意味を持つ新手の一発ギャグに思えて来る。ベッド脇に手を伸ばして、近藤さんを取り
出す。そういえば、ちゃんと着けてる所もよく見た事が無い。じー、と見ている私に気付
いたのか。
「やだミカンちゃん恥ずかしい、僕の事陵辱しないでよ」
「…いや、これはただの視姦プレイじゃ」
もう、笑い声になってしまう。なんだこれ。もう単語出るだけで面白い。バナナさんも
わかって言ってるだろ。
手際良く装着して、にんまり笑う。座ったまま、少しだけ腰を浮かされて、そのまま私
の中に入って来る。体勢が体勢だけに、少しきつい。
「ん…んー…」
少し身を反らす。壁に頭が当たる。自然と涙が出て来て、少し苦しいような気がした。
「ミカンちゃん…ミカンちゃん」
私は壁に肩を預け、バナナさんは私の中をゆっくりと行き来する。
本当に、知らない間にそんなに濡れていたのか、動く度に音が耳に響く。上を向いて声
にならない声を吐き出していたけど、不意に下を向きたくなった。けど、すぐ後悔した。
「あ、や―――や、だ」
私と、バナナさんが繋がってるとこ、丸見えだった。
結構な速度で、バナナさんのが出入りして、音が結構大きくて、なんか、凄くぬらぬら
してて、それを見た瞬間、勝手に奥まで入ったのをぎゅう、と、締め付けて、それが凄く
気持ち良くて―――
「あ、あ、あああ…」
小刻みに声が出る。バナナさんが、私が締め付けてしまうのに合わせて、動く。どうし
よう、見たくないのに眼が釘付けになる。だって、最初、痛くて、入った後も奥の辺りが
しっくり来なくて、暫く痛くて、その後も、痛くなくなるまで我慢する時が多かったのに、
それなのに。
「っ、ば、バナナさんも、見ないで…やだ、やぁ…」
「ん…やだ。だって、僕、これ見るの好き。大好きな子と、僕、ちゃんと繋がって…って、
はぁ。わかるし、すげ、イイ眺めだし」
言葉が途切れ途切れになりつつ、そんなとんでもない事を言う。
「っ、れに、ミカンちゃんも…コレ、見たらさ、僕の、ぎゅってきつく締めてくれんじゃ
ん?だから、もっと見ろよ」
薄ら笑いを浮かべて、言う。少しだけ、背中がぞくっとなった。
「…っ、ばかっ…」
それが、いいだなんて一瞬でも思ったのが恥ずかしくて、私はこれ以上見ないでいいよ
うに、見られないでいいように、バナナさんにもたれ掛かる。
「―――わっ!?」
それは意外だったのか、バナナさんはバランスを崩してしまう。そのまま身体を倒して、
今度は私がバナナさんを押し倒してしまうような恰好になってしまった。
「あ、っ―――っ」
ぷちゃっ、て音がした。同時に、今まで入っていたものが抜けてしまう。私は無意識に
腰を浮かせて、先端をまた入り口にあててしまう。ヌルヌルになったそこは、簡単に受け
入れてしまう。けど、そのまま止まってしまった。
「おっ…ミカンちゃん、入れて。そのまま」
「ちょっ…やぁ…やだ、手、やめて」
お尻と、入り口近くのお肉を掴んで、上に押し上げるみたいに力を入れる。あそこが広
がったような感覚を覚えて、大して力も入れずに、するりとバナナさんのものを受け入れ
てしまう。
「んっ…んー…う…っ、あっ?」
「はいはーい。よく出来ました」
少し身体を起こして、ぺしぺし、とお尻を叩く。かと思えば、そのままお尻を撫で回す。
なんか、遊ばれてるような気分になってしまう。
「ほれ、ミカンちゃん動いてー」
それなのに、何故か従わなければいけないような気がしてしまい、腰を浮かせる。さっ
きのバナナさんみたいに、自分で動いて行き来させる。音が、また耳に響く。時折バナナ
さんも動いて、その度に背中に電気が走ったみたいになる。
我を忘れたみたいに腰を動かして、私は快感を貪ろうとする。バナナさんも同じみたい
で、少しだけ乱暴に私を抱いた。
自分勝手に、自分が気持ちよくなるように自分から動いていたせいか、限界はすぐにや
って来た。一瞬だけ、本当に自分が何をしているかもわからなくなって、そのまま押し寄
せて来た快楽に身を任せる。自分じゃないみたいな声が出て、身体中の力が抜けて、私は
半ば気を失うようにバナナさんの上に崩れ落ちた。
「あああああ、えがったぁあああ…」
…オッサン丸出しだ…
なんか、全ての余韻をぶち壊してくれるような感想を漏らすバナナさん。私は何故か無
性に甘えたくなって、布団の中でベタベタしている。抱っこしてもらって、嬉しがってい
る自分がいて、なんだか気恥ずかしい。
でも、不意にとある事を思い出して、にっこにこ笑ってるバナナさんの顔を見た。
「…バナナさん、あの…」
「ん?」
その笑顔を見ると、さっきのが少しだけ嘘みたいに思えて来る。
「さっき、あの、途中、ちょっとだけ陵辱っぽかった…」
なんだか、言ってる事も、やってる事も邪悪なお兄さんみたいだった。そいで、私もそ
れが、あんまり嫌じゃなかったような気がした。
「ウソ!マジで?やったあ!」
…なんか知らないけど、喜ぶバナナさん。なんで?
「なんで喜ぶんですか?」
「…さあ」
改めて言われると我に返ってしまうのか、バナナさんも困ったような顔になった。私も
似たようなものだろう。そして、同時にあくびをする。
「ちょっと、寝ようか。起きたらお寿司ね。お寿司超楽しみ」
「…はい」
頷いて、眼を閉じる。
妙に疲れてしまったけど、なんだかとても満たされた気分で、私とバナナさんは一寝入
りする事にした。日の高い内にする昼寝は、なんだかとても贅沢な気分だった。
「…あれ?ミカンちゃんなんでその皿取るの?嫌いじゃなかったっけ?」
不思議そうな顔をしているバナナさん。私は自分の取った皿を見て。
「あ、すじこは嫌いですけど、イクラは好きなんです。バナナさんこそ、何でさっきから
デザートばっか食べてるんですか?」
バナナさんの前にはゼリーとかアイスとかムースのお皿がたくさん。
「いや、別に…食べたいなーって…」
「そうですか」
「うん。安心して。後で茶碗蒸しとか唐揚げとか食べるから」
「…寿司食って下さい」
「うん。食べる…あ、なにこれ…マグロの竜田揚げ!?食べる!!」
「あ、私も食べたいです!」
終
76 :
377:2007/09/29(土) 19:09:41 ID:sbWPLg8e
こんな感じです。
皆が楽しく読める触手モノってどうすれば書けるんでしょうかね。
うはw
想像してた凌辱モノとはだいぶ違った。これは良いですね。
377氏はすごいです。
377さんは本当にバカだと思うよw
もちろんほめ言葉ですよ。
触手って時点で駄目な人も多いと思うよ。私だけど。
ワロタwww超GJ!w
触手もの、自分は特にNGでもないから377氏が書くんなら楽しみにしてるー
陵辱じゃなければ読めるかも。でも愛ある触手か〜
呪いで下半身がタコやイカになってしまったイケメンとの切ないハートフルコメディとか?
これは凌辱モノじゃなくて、凌辱「ネタ」ですね。
愛とおバカに満ち溢れていてGJでした!
377氏GJ
果物カップルのおバカ度が愛おしいwwwww
>>80 上半身イケメンで下半身イカと言われてアーミンを思い出す件
バカGJwww
なにこのバナナwww
個人的に触手大好きだけど(時々彼氏でそういう妄想するぐらい)
本気で嫌いな人、いるんだろうな
以前は触手?なんじゃそりゃあだったけど
触手スレの和姦ものにこういうのもありかw
と思ってしまった自分がいる。
>>80 ああ、それいっすね。
他スレで下半身蛇の男と云々な話があって、
当初はものっそ嫌がってたヒロインが相手を
認めたらそんな体でも愛しく感じてて、
やっぱり好きになったらそういうもんだよなと。
85 :
377:2007/09/30(日) 18:36:52 ID:zSDYhtyf
みんな楽しい触手はどう考えても無理でした。
自分で話題を出しておいて触手モノでなく触手ネタに走ります。
すいません。
「…イチゴちゃん、君を呼んだのは他でも無い。僕に触手を付けてくれ」
「ふーん…オレに頼むってぇ事ぁ、それ相応の覚悟があるって事か。いい度胸だなバナナ、
悪いが他を当たれ。そんな技術ねぇ」
「そんなの関係ねぇ!僕は、イチゴちゃんと触手について語り合いたいんだ!」
「…そっか。そりゃ確かに関係ねぇな。じゃ行くけどよ、触手付けてどうしたい?」
「僕、大好きな子がいるんだ。あ、そこで僕らをゴミを見るような眼で見てる子ね。ミカ
ンちゃんっていうの。その子の穴という穴に突っ込みたいんだ!」
「ほう…なるほどな。が、そりゃ鼻とか眼とか耳とかも込みか?」
「ばっか!性的な穴だけだよ!ミカンちゃん死んじゃうじゃん!でも、おれのちんこくら
いの太さの触手もいいけど、指くらい細いのもオプションで欲しい!後、イボイボとかは
いらない。つるん、としてる方がいい!」
「へぇ、お前意外にスタンダード好みだな。オレもだけど。でもどうせならさ、各種欲し
いと思わねぇ?十本だったら十種類各ひとつずつ、みたいな」
「えー?そう?邪魔になんない?でもわかる。僕も全部欲しい。でも、つい2個ずつ欲し
くなるんだよね。保存用と使う用で。多分いらないんだけどねー」
「あーわかるわかる。絶対ぇタンスの肥しになんのにな。でもさ、たまにすげー人気出て、
ヤフオクとかでべらぼうな値段になってたりすんのな。出さねーけど」
「そうそう、で、すぐ安くなんのね。あ、安くなるっていえばさ、こないだプレミア付い
てたゲームがダウン販売で600円だったの。昔友達に借りパクされたから買うのもシャ
クだったんだけどぉ、でも新しいゲーム機必要だったから余計高くついた」
「マジでー?馬鹿だろお前。そうそう、ゲーム機で思い出したけどよ、オレの友達マニア
でさ。DS持ってんのにライトも買ったんだぜ。意味あんのかっつったら誇らしげにゲー
ムボーイとゲームボーイカラーとアドバンスとそのSPとミクロとかもう色々持ってると
か言ってんのマジ救えねー。その癖、ロリっ娘ゲットしてんだぜ。あいつ2人で犯そうぜ!」
「え?ロリっ娘じゃなくてそいつ?やだやだ、僕男はパス。だったらさ、この子2人で犯
そうよ。イチゴちゃんなら9万で涙を飲むよ。一回二輪挿しってしてみたかったんだ」
「マジマジ?えー、ミカンちゃん?悪くねーなー。触手無ぇけど代わりに色々似たような
もん持って来る。タコとか。よし、ちょっと鮮魚センターと銀行行って来る」
「あ、僕も。すじこ買う。後、イクラも。ちょっと行って来るね」
…そう言って、2人は出掛けてしまった。
とりあえず、身の危険を感じたので帰る事にした。後、本気で言っているんだろうか。
本気、なんだろうか。どうしよう。とりあえず、窓から逃げようかな。
ていうか、記念すべき誕生日にアブノーマルな世界へようこそ、は嫌過ぎる。
「じゃーん!ほらほらミカンちゃん、欲しがってたお財布、新品で見付けたの!誕生日お
めでとう!…って、アレ?」
「どーもー!さすらいのケーキ職人イチゴさん特製の巨大アップルパイっすよ!好きなだ
け食べてくださ…ん?」
『バナナさんなんか大嫌い ゲーオタの方を輪姦しに行け バカ』
机の上の書置きを見て、双方青褪める。
「ちょ、ウソ、ミカンちゃん僕が他の男にミカンちゃんを抱かせるような男だとでも!?」
「っ、ヤダヤダヤダ、あいつになんかしたら、上か下かロリっ娘のどれかに殺されるわ!
特に下とロリっ娘!」
あわあわしながら、イマイチずれた事を言う。
手が震えて来たのか、お互い手に持っていたものを机の上に置き。
「とりあえず、追いかけよう!」
「どこ行くかわかんのか!?多分家だろうけど!」
「ううん、きっと鮮魚センターだよ!!」
そう言って、2人はまた外へ出る。そして。
「…やっぱバカだ…」
押入れから顔を出して、私は机の上のお財布が入った包みと巨大アップルパイを見て、
頬が緩んでしまったのだった。
あと、ちょっとだけホッとした。
終
88 :
377:2007/09/30(日) 18:46:02 ID:zSDYhtyf
こんな感じです。
なんか、ずっと俺のターン!なんで職人さんプリーズです。
鮮魚センター吹いたwwwwwwwwww
鮮魚センターを口から吹いてる
>>89を想像してワロタ
そして377氏大好きだ!
鮮魚センターが要所要所に出てくるのが何か好きだw
GJ!
377氏!
あなたが書くならなんでも読めそうだ!!
次作超期待!
兎に角GJ!
377さん、いつもながらすげぇぇぇぇw
鮮魚センター夢に出てきそうw
GJ!
>>92-93 既に好評なんだから
その誉め方はかえって気持ち悪い
下手したらアンチが沸くぞ
ほどほどに
>>94 ごめん、今日投下に気づいたんだ。
スマン自重する。
ロリっ娘ゲットしたゲーオタって、ロ○トの剣ふりまわしてたあいつかw
期待!
ほっしゅっしゅ
101 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 00:15:05 ID:qwitRQPR
絵も物語りも萌えた。
強引な和姦。ややラブコメ。3回の投下予定でエロまで長いです。
あたしが好きな青山君は人の彼女を奪うのが好きだ。
ほとんどビョーキ。4年半見続けているので間違いない。
顔にそこそこ自信のあったあたしは、中学ン時に告白してあっさりフラれた。
その頃彼は、野球部のエースで4番だった男の子の彼女に猛アタックをかけていた。
ショートカットのおとなしいちっちゃい子。あんな子に負けるはずがないと、
あたしはさらっさらの髪を揺らしながら上目遣いの必殺ワザを繰り出したけれどあえなく撃沈。
藤野さんに僕はもったいないよと、にっこり笑って断る青山君。小首を傾げたまま固まるあたし。
それまでフルことはあってもフラれたことはなかった。あの時味わった屈辱は、いま思い出しても腹が立つ。
ちなみにショートカットのちっちゃい子は、エースで4番だった男の子と別れて青山君と付き合い出したけれど、
すぐに別れた。なんと、次のターゲットは新婚ほやほやの英語教師だった。
信じらンない。なんか修羅場になったみたい。噂がピークに達した頃、その女教師は転任させられた。
あんな、人のものを欲しがるガキなんてサイアクー、こっちから願い下げだッ。はいはい、つぎつぎー。
……とはいけなかった。一目惚れだったから。はじめて本気で好きになった男の子だったから。
いくら口汚く罵ってもあたしは彼を心底嫌いにはなれなかった。ちょっとでも付き合えた彼女達がうらやましかった。
虫も殺さぬやさしい顔で狙った女を確実に落として、泣かせて、ひどい奴。
でも不思議と恨む女の子はいなかった。あの仔犬のような目で困ったようにごめんと言われると、
胸がきゅーんとなって理不尽だと思いつつ、誰もが彼を許した。
さすがに彼女を取られた男子とは険悪になっていたけれど、いつまでも尾を引くようなことはなかった。
告白してフラれた次の日。青山君は何事もなかったかのようにふつーに話しかけてきた。
プライドずたずたのあたしはむっとして距離を置こうとしたけれど、3日で断念。
元来前向きなあたしは、気が付けば友達から恋人へというナイスな作戦を思い付く。
じわりじわりと敵の懐に入り込み信頼を得た頃にはあら不思議、かけがえのない大切な女に。これだッ!
青山君を追っかけて、あたしの頭ではむりと言われた高校も恋のパワーで見事合格。
涙ぐましい努力の甲斐あって、いまでは親しげに繭ちゃんと呼ばれて何でも話せる仲になれた。
あとは青山君があたしの存在の大きさに気付くのを待つばかり。
晴れて彼女になった暁には、薫〜と呼ぶ予定だ。
――待ちくたびれた。
あたし、このままだとおばあちゃんになっちゃうよ? 処女のまま死んじゃったりして。やだやだやだ。
やきもきするあたしをよそに、青山君は奪っては捨て奪っては捨てを繰り返していた。
なんでそんなに人のものを欲しがるのか、一度聞いたことがある。
長いまつげを伏せてしばし考え、心が動く瞬間を見るのがたまらない、と顔を上げてぽつり。
彼氏を裏切る葛藤で、揺れる瞳に少しずつ強い光りがともっていくのを見るのはぞくぞくするそうだ。
完全に気持ちがこっちに向いた時に見せる、共犯者めいた眼差しが最高らしい。
体中の血が沸騰する感覚が好きなんだよねー、と話す青山君はとても楽しそうだった。
続けて、でもなーだんだん重くなってきて疲れてくるんだよなー、というのを聞いてあたしは殴りたくなった。
はあ? なに勝手なこと言ってんの? 最後まで責任取りなさいよッ! ってむかついたけれど、
途方に暮れたような彼を見ていたら、なんだか可哀相になってきて救ってあげたい気持ちでいっぱいになってしまった。
青山君、あたしと付き合ったらそんなビョーキ直るよ、きっと。
そう言いたかったけれどぐっとこらえた。フリーの子がいくら言い寄ってもだめなのは、散々横で見てきた。
ほんとにぴくりともむくりとも関心を示さない。敵ながらあっぱれ。ある意味感心する。
どうやら、気が付けば友達から恋人へ作戦は失敗っぽい。無駄な時間を過ごしてしまった。
あーあ、ついにポリシー曲げてあの作戦の登場かー。はじめての彼は青山君って決めてたんだけどなー。
こうなったら仕方がない。もう手段を選んでる場合じゃないからね。あたしはやるよ。
郷に入っては郷に従えの精神で挑むそれは、題して寝取られ大作戦!!
敵はとことん狩猟民族だ。あたしは狩られるために彼氏を作る。
彼氏という名の撒き餌。当て馬ともいう。
ちらっと罪悪感がよぎったけれど、恋する乙女は残酷ってことで策を練る。
恋の障害物は大きければ大きいほど青山君はばかみたいに燃える。
こいつから奪いたいと思わせるような男子は誰だろうと考えて、ふと黒澤君の名前が浮かんだ。
いつだったか、いっこ下の子に告られた黒澤君がみんなのいる前でこっぴどくフッて泣かせたらしく、青山君怒ってたっけ。
女の子を泣かせちゃいけない。やさしくしないと、ってどの口が言ってんのよッ、って呆れたんだった。
普段めったに不快感を表したりしないのに、めずらしいなーと思ったのを覚えてる。
気に入らない男子からなら奪いがいもあるだろう。確かあのふたり、同じクラスだったな。
ライバルが近くにいるのもいいかもしんない。よしッ、決めた。
さみしい夏休みを過ごしたあたしは、決意も新たに明日から始まる2学期に備えて早めに寝ることにした。
***************
始業式が終わり、ぞろぞろと教室に戻る列の中に黒澤君を見つける。
ちょうど周りに人がいなくなった。チャーンス。ぱたぱたと近づいていく。
黒澤君の白い背中が目の前にある。うその告白とはいえ、青山君以来なんで緊張してきた。
繭子、ほんとにやるの? 自分の下衆い目的のために利用していいの?
さまよわせた視線の先に、笑っている青山君の姿が飛び込んでくる。
となりではバスケ部のキャプテンと付き合っている谷口さんが歩いていた。
身振り手振りを交えて話している青山君の肩を、ばんばん叩きながら谷口さんも笑っていた。
お馴染みのひりつきが胸のあたりを襲う。こんな痛いのもういやッ!
あたしはえいっと一歩踏み出して、黒澤君の横に並ぶ。
こっちを見てる気配がする。あたしは前を睨んだまま口を開いた。
「黒澤君、あたしと付き合わない?」
20秒待ったけれど、なんの反応も返ってこない。あれ? 聞こえなかったかな。
ちらっと横目で窺うと、じっと見下ろされていた。眼鏡越しの視線が鋭い。怖いんだけど……怒ってる?
だめだこれは。まあ、うすうすこうなるとは思ってたけどね。あたしは黒澤君のタイプじゃないだろうなー、と。
たぶん彼は、自分とよく似た頭のいい大人びた女の子が好きなんじゃないかな。勘だけど。
ふふん、こんなこともあろうかと、当て馬候補は他にも数人選んでおいた。ぬかりはない。
さて誰にしようかと考えを巡らせていると、いいよ、ととなりから低い声がした。
ええっ! 思わず大きな声を上げてしまったあたしを気にせず、黒澤君は続けた。
「今日、部活早く終わるから一緒に帰るか?」
「……(あうあうッ!?)。う、うん……じゃあ、あたし図書室で待ってる」
意外そうな顔をした黒澤君は、軽くうなずいて渡り廊下を左へ曲がっていった。
あたしは右に曲がって自分の教室へと向かう。なにいまの!? あたしが本を読むことのほうが告白より驚くことなのか。
……まあいい、とにかく彼氏を作ることには成功した。17年生きてきて、はじめてできた彼。
あくまで仮だけどね。カモフラージュの彼。
1時限目の休み時間。
教室で千明と夏休みのことを報告し合っていると、青山君がにやにやしながらやってきて言った。
「聞いたよ〜、繭ちゃん黒澤君と付き合うんだって〜?」
「なにそれ!? 繭子それほんと?」
あたしが青山君を好きなのを知ってる千明がびっくりした声で訊いてくる。
「あー(昼休みにゆっくり話そうと思ってたのに)、うー(聞くの早ッ。てか誰から!?)」
「ほんとほんと。俺、藤野と付き合うことになったからって、黒澤君に宣戦布告っぽく言われちゃった。
なんか僕と繭ちゃんの仲を疑ってるみたいだったよ? ただの仲のいい友達なのにね〜。
誤解は早く解いといたほうがいいよ〜。あ、やば遅れる。つぎ音楽なんだ。じゃ」
しどろもどろのあたしをさえぎって、千明の疑問に答えた青山君は言うだけ言って慌ただしく教室から出ていった。
ただの仲のいい友達発言にぐさりときながら、いつもより早口だったのは動揺してるせいだといいなと思った。
それにしても黒澤君、頼んでもいないのにいい仕事してくれる。
「はあ? 寝取られ大作戦!? ばかじゃないのあんた」
「しっ、声が大きい」
いまは昼休み。教室内はざわついている。
誰もこっちを注目していないのを確認してから、興奮すると口が悪くなる千明に言い返す。
「でもあたしが黒澤君と付き合うって知ったらすっ飛んで来たじゃん。
ロックオン状態になると音信不通になる青山君がだよ? 早くも作戦の効果ありッ!
もう谷口さんからあたしにターゲット移行してるかもよ? うわぁ、あたしついにロックオンされちゃうのかー」
「あんたはそれでいいかもしんないけど、道具にされる黒澤はいい迷惑だ。
わたし中学一緒だったから知ってるけど、あいつ性格きつい割りにモテてたよー。けど全然彼女作んないの。
いつも男とつるんでたからホモ疑惑があったくらい。なんだってまたこんなばか女を好きになるかな」
「好き? あはは、それはないって! 好きな子相手にあんな険しい顔普通しないと思う。
黒澤君もなんか事情があるんじゃないのォ。断り続けるのが単純に疲れたとか、それこそホモ疑惑を払拭するためとか。
あっ、もしかしたら……! 黒澤君は青山君のことが好きとか? うわぁ、なんかよくわかんないけどフクザツー」
「……あんたにはついていけない。まあ、方法間違ってると思うけど他の男に目を向けるのはいいんじゃないの。
目を覚ますいいきっかけになりそうだし、どうせ反対したってするんだろうし。わたしは応援するよ、黒澤を」
「えっ、そっち!?」
千明は高校に入ってできた友達だ。最初は嫌いだった。
青山君がまっ先に目を付けたのが彼女だったから。
はっきりした顔立ちの正統派美少女には他校に通う幼馴染の彼氏がいた。
いつになく張り切る青山君。けれど千明はまったく相手にしなかった。その鮮やかな撃退っぷりにあたしは惚れた。
話をしてみると、竹を割ったような性格で妙に気が合う。2年で同じクラスになり、ますます仲が良くなった。
あたし達3人の関係は、傍目には時々ケンカはするけれど仲のいい姉弟のように映っているらしい。
青山君ははじめて土をつけられた千明に頭が上がらず、いい加減人の心を弄ぶのはやめなさいよっ!
って叱られるたびに笑ってごまかしている。お姉ちゃん強し。あたしはさしずめ口答えばかりして言うこと聞かない妹か。
昼休み終了のチャイムが鳴った。
あたしばかだけど、千明がほんとに心配してくれてるのはよくわかってるよ。
席に戻る千明のまっすぐな背中に向かってつぶやく。本気で怒ってくれてありがたいよ。
でもまるで苦いものを飲み込んだような顔はちょっとなぁ。悲しくなる。
それにシワができちゃうよ? 凛々しい顔が台無し。
まあ見てて、今回は手ごたえあるんだ。笑って報告できると思う。あたし、幸せになるからッ!
ってまるで嫁いでいく娘のようだな、あたし。
「黒澤君てなに部?」
「将棋部」
訊いた瞬間しまったと思った。告白した相手の入っている部を知らないでどうする。
あせったけれど、黒澤君は別に気にしてないみたい。淡々としたものだ。熱いものがまるで感じられない。
やっぱり黒澤君には黒澤君の事情がある様子。深くは追求しないでおこう。
しょせん仮の彼だしあたしも訊かれたら困るしと、並んで歩きながらそう決めた。
図書室で待ち合わせをして、校門を出るまでの間に結構な数の生徒に目撃された。
びっくりした顔やうらやましそうな顔を眺めるのはちょっと面白かった。
正直、かわいい系が好きなあたしのタイプとは違うけど、ルックスのいい男の子と一緒にいて悪い気はしない。
青山君はあたしと同じくらいの身長だから、こんな風に見上げるのも新鮮だ。首疲れるけど。
「黒澤君、身長いくつ?」
「178センチ」
「視力は?」
「右0.2、左0.3」
「コンタクトにはしないの?」
「眼鏡が好きだから」
さっきから一問一答のような会話(?)が続いていた。
どうでもいい質問に黒澤君は表情を崩さない。変な人だ。一緒に帰るかなんて訊いてくるから、
なにか話でもあるのかと思えば黙々と歩いている。あと少しで駅に着く。
あたしは電車通学だ。3駅先のマンションに両親と兄の4人で住んでいる。
黒澤君の家は駅の向こう側にあって、父親とふたり暮らしだそうだ。
へぇ〜、いいとこに住んでるんだねって言ったら外人みたいに肩をすくめてた。
「9月に入っても暑いねー」
「ああ」
黒澤君の顔は涼しげだ。なんだかイライラしてきた。
よく考えたら、青山君は女の子と遊ぶ軍資金を稼ぐために学校が終わるとバイトに直行する。
他の男子と一緒にいるところを見せ付けて、嫉妬心を煽るつもりが無駄足じゃん。
黒澤君の淡々とした態度がイライラに拍車をかける。
この人、なにかに熱くなることあんの? うらやましいほど滑らかな肌が赤らんだりとか、
誰かをめちゃくちゃ好きになって胸が苦しくなったりとか――
「黒澤君て童貞?」
ぎゃあああああああ! なんてこと訊いてんのー、あたしーっ!?
暑さで頭がパーに。わわわ忘れて、いまの忘れてッ!
黒澤君が立ち止まったのは、前からすごい勢いで自転車が来たせいだろうか。
腕を引っ張られたのと同時に、そうだよ、と耳元で囁かれた。
すぐ脇を自転車が走り抜けていく。心臓がばくばくいって止まらなかった。
***************
あっという間に3週間が過ぎた。
劇的な変化は現れてないけれど、落ち込んではいなかった。ゆっくりと動き始めている気がする。
噂で、谷口さんが彼氏と別れたと聞いた。でも青山君と付き合い出したとは聞かない。
いつもだったら青山君本人に根掘り葉掘り訊くところだけど、いまのあたしは彼氏(仮)持ち。
他の男の子なんて全然目に入りませーん、という態度を貫いている。
最近、しばしば青山君の視線を感じるようになった。
目が合うと、急にとってつけたような笑顔を返してきたり、なにかを言いかけてやめたりする。
そんな自分に戸惑っているように見える。いままでにはなかったことだ。
やった! もう一押し。とはいっても、どこを押せばいいのかわからない。
「――で、黒澤とはどうなってんの?」
「どうって言われても……別に、ふつーだよ。あー、この間一緒に映画観に行ったかな」
5時限目は体育。制服を脱ぎながらのろのろと答える。
すでに着替えの終わった千明が目を輝かせた。
「おっ、初デート!」
「そんなんじゃないもん。誰誘っても断られるし、女の子ひとりでは行きにくいから付いて来てもらっただけ」
「いったいなに観に行ったの?」
「昔の時代劇。黒澤君、子供の頃おじいさんに連れられてよく観に行ってたんだって」
「へ、へぇ……良かったじゃない。趣味の合う彼氏ができて」
確かに。彼氏云々は置いといて、なかなかする機会のなかった時代小説の話ができるのは嬉しい誤算だった。
あたしが好きな作家の本をほとんど読んでた黒澤君。
すごく詳しくて、他にも色々教えてもらっておススメの本を借りたりもしている。
映画を観に行ったのはその延長線上でのこと。たいした意味はない。
「……だから、家に誘われたのもたいした意味ないよね?」
亡くなったおじいさんが集めていた公開当時のパンフレットとか、
古い映画雑誌がたくさん残ってるから見に来ないかと、黒澤君に言われていた。
にんまりと意味ありげな笑みを浮かべている千明が気に食わない。
あたしはずぼっと体操服をかぶり、自分でもおかしいと思うくらいべらべらと喋った。
「さっ、それより早くグラウンドにいこ。遅れたらエロ本になにされるかわかんないよ。
女子は今日マラソンなんだって。やだなー、あたし走るの苦手ー。男子はサッカーなんだって――」
む、またエロ本の奴が見てる。
みんな汗だくで、体操服は体に張り付きブラが透けていた。
ぜえぜえと上下に揺れる胸に舐め回すような視線を感じる。うわっ、いま舌をぺろっとしなかった? 気持ち悪ッ!
影でエロ本と呼ばれている榎本は、嫌がられてるのを承知で体に触ってくるセクハラ教師だ。
走り終えたあたしは、エロ本からできるだけ離れた場所にへたり込む。
発育が良かったせいか、小学生の頃から見られることに慣れているとはいえ、
エロ本みたいな中年おやじの粘りつくような視線には耐えられなかった。生々しすぎて恐怖すら覚える。
同世代の男の子が向けてくるギラつく視線のほうがまだマシだ。
ギラつく視線かぁ……早く青山君にそんな風に見られたいなぁ。
仔犬のような目が狼になっちゃうところを想像して、どきどきと震えた。
最近の青山君の様子から、想像が現実味を帯びつつあり期待で胸が膨らむ。
ただ一方で不安もあった。いざそんな場面になった時、テンパって支離滅裂なことをしてしまいそうだった。
いきなり張り手を食らわすとか大嫌いって口走ってしまうとか……、大丈夫だろうか?
子供っぽいマネをして、呆れた青山君に嫌われないかと心配だ。
あたし、普段男子とふつーに喋ってるから別に苦手意識なんかないと思ってたんだけど、自分をよくわかってなかった。
誰とも付き合った経験がないせいか、男の子とふたりっきりになった時の距離感がうまくつかめない。
はっきりいって男慣れしてなかった。中身が中学生で止まってる。へたしたら小学生レベルかも。
黒澤君と付き合うようになって思い知った。仮の相手なのに、情けない。
しかもむこうは落ち着き払ってるのに、あたしだけテンパってるのが余計みじめだった。
共通の趣味の話では盛り上がれるんだけど、それ以外だとあきらかにぎこちない。
はっ、そうか! その不自然さが青山君にも伝わっていて、狩猟本能にブレーキがかかっているのかもしれない。
もう一押し足りないのはそれかッ! もっと自然に黒澤君と仲良くしてるところを見せ付けないと。
俄然、やる気が出てきた。習うより慣れよ。迷ってたけど、いっちょ黒澤君ちに行ってみるかー。
あたしの好きな時代劇スターが特集された映画雑誌も見たいことだし。
あーだこーだとひとりごちていたあたしの耳に、あぶねーどけーっ、という怒鳴り声が飛び込んできた。
ん? と振り向いた瞬間、ばしんと顔面に衝撃を受ける。サッカーボールが直撃したのは覚えている。
あたしはひっくり返って、今度は地面にごつんと後頭部をぶつけて意識を失った。
(つづく)
うおおおお書き手さんキテター.。゚+.(・∀・)゚+.゚
おにゃのこ1人称は何やらかわいらしいですな
無駄に行動派な女の子かわええ
続き!楽しみにしてる!!
黒澤クンに萌えた。
つづき楽しみにしてますよ〜!
最初は、やな女(というかバカな奴)…と思ったけど
読み進めるうちに可愛く見えてきたよ。
当初の予定が狂って本当に瓢箪から駒となるといいなあ。
がんばれ黒澤君!w
息苦しさを感じて目を覚ます。
一瞬なにが起こっているのか理解できず、レンズ越しに見つめ合っていた。
吸い込まれそう。きれい……少し緑がかった茶色の瞳。そこに、あたしが映ってる……?
ひゃあああああああ! く、黒澤君っ!? かか顔と顔がくっついてる! てか、唇と唇もッ!
あああたしのファーストキス。なんてことしてくれんのよーーーッ! ばかああぁぁぁあああああ!
言いたいことはたくさんあるのに動転して声にならない。
すっと体を離した黒澤君を睨みつける。つんと鼻の奥が痛くなった。
ごしごしと唇をこすっていると、いつもと変わらない冷静な声で矢継ぎ早に質問してきた。
「藤野、なにが起きたか覚えてるか? 吐き気は? 手足の痺れはあるか?」
「ひひひ(ひどい!)……ヒィィーック!」
マヌケなことに、しゃっくりが出てちゃんと喋れない。涙がぽろぽろとこぼれてどうしようもなかった。
気を失っている間に保健室に運び込まれたようだった。黒澤君は黙って突っ立っている。
なんで他に誰もいないんだろうとしゃくりあげていると、すぐにドアが開いてふたりの足音が近づいてきた。
ひとりは千明で制服を持ってきてくれた。もうひとりは保険の女の先生でトイレに行っていたらしい。
先生に黒澤君と同じ質問をされた。
しゃっくりは止まらないものの、あたしの意識がはっきりしているということで病院には行かず、
ここで休んで様子を見ることになった。あたしが泣いてるのは、腫れた顔面が痛むせいだと思われていた。
君達はもう教室に戻りなさいと先生に言われて、ふたりは出て行った。
「ヒィィーック! ヒィィーック!」
静かな保健室にあたしのしゃっくりだけが聞こえる。
先生もいるはずだけど、なにをしているのかカーテンに仕切られているのでわからない。
ぼんやりとベッドに横たわっていると、いやでもさっきのことが蘇ってくる。
――なかったことにしよう。幸い感触も残っていない。それほどかすかなものだった。
日常生活で肩や腕がぶつかるのはよくあること。それと同じでたまたま唇と唇だっただけ。
し、舌を入れられたわけじゃないし、あんなのキスとは呼べない。たぶん。
そう思わないとやってられない。忘れろ忘れろ忘れろ……さん、にい、いち、はいッ! 忘れた。
ところでなんで黒澤君がいたんだろう? 授業中なのに?
いくら考えてもわからなかった。
結局あたしはホームルームも出ずにそのまま休んでいた。
まだ少し顔がひりひりしてるけど、他はなんともないので歩いて帰れますと先生に伝える。
制服に着替え終わった頃、千明が鞄をふたつ持って保健室に入ってきた。
「あ、ちあキィィーック! ありがとゥィイーック!」
「はい鞄。やだ、まだしゃっくりしてんの。ふふ、これ見たら止まるかもよ? じゃーん!」
黄門様の印籠よろしく、千明がケータイの画面をこっちに向けて突き出す。
「――ッ!」
心臓が止まるかと思った。そこにはあたしを抱きかかえた黒澤君が映っていた。
ななななにこれ!? 慌てふためきながら、どうやらあたしを保健室まで運んだのは黒澤君らしいと気付く。
でもなんでそんなことになっているのか、さっぱりわからなかった。
「驚くよね〜。まさかあのクールな黒澤がこんなことするなんてね〜。もうみんな大騒ぎ」
演劇部所属の千明が、ひとり何役もこなして起きた状況を再現してくれた。
「――で、ぐったりと気を失ってるあんたをエロ本が保健室に運ぶことになってね。
それはそれはもうやらしい顔と手付きで迫ってきて、周りにいた女子全員がひィィーっ、繭子万事休す!
ってのけぞった瞬間、現れたのよ黒澤がっ! 俺が運びますからって、颯爽と! 上履きのままで!」
くらっときた。また気を失ってしまいそうだった。まさかそんなことになっていたとは……。
教師も生徒も全員がポカンとするなか、黒澤君はさっさとあたしを抱き上げてその場を去ったらしい。
あとに残った女子の、きゃあーお姫様抱っこーかっこいいー合唱はすさまじかったと熱弁をふるう千明。
それに応呼するように、あたしの顔もみるみる赤くなっていく。
あたし重くなかった? 汗臭くなかった? ああッ、透けた胸を間近で見られた!
恥辱に身悶えていると、この写真はね〜、と千明がとどめを刺すように説明し出した。
「黒澤のクラスは理科室で実験中だったんだって。ほら、あの教室ってグラウンドに近いじゃない?
立ってたからよく見えたんだろうね。突然黒澤が教室を飛び出したと思ったら、あとは知ってのとおり。
みんな授業そっちのけで窓に鈴なりになって見物してたらしいよ〜。んで、当然激写。これ学校中にバラまかれたよ」
いやああーッッ! 誰か嘘だと言ってええええ。恥ずかしくて明日から学校に来れないッ!
黒澤君もなに考えてんのーっ。ばかばかばか。
「じゃあ、わたし部活あるからそろそろ行くね。気を付けて帰るんだよー」
手を振る千明に上の空で返事をする。いつの間にかしゃっくりが止まっていた。
すっかり脱力して昇降口で靴に履き替えていると、名前を呼ばれた。
見るまでもない。声ですぐわかった。まともに顔を合わせらなくて、下を向いたままで訊く。
「……黒澤君、今日は部活ある日じゃなかったっけ?」
「休んだ。家まで送るよ」
「いい。ひとりで帰るから」
普段通りの声が出せて良かったとほっとしながら顔を上げると、
てこでも動かない顔をした黒澤君が立っていた。
その背後に、下級生が数人こっちを指差してにやついているのが目に入る。
かあとなって、くるりと背を向けて走り出す。ああ、また子供っぽいことしてると泣きたくなった。
黒澤君の一度言い出したら引かない性格には呆れる。
いいよと何度も断ったのに、結局一緒に電車に乗るはめになってしまった。
案外しつこい。そして認めたくはないけれどやさしい。
手すりも吊り革も使えない場所に押しやられてふらつくあたしに、
ほら、と照れもせず腕を差し出したりする。なんでそんなこと自然にできんの?
ガタンと電車が傾き、とっさに掴んだ腕のたくましさに驚いて、急いで袖を掴み直すあたしはすごく不自然だった。
――ありがとうを言い忘れた。自己嫌悪。ほんとやンなる。恥ずかしい思いをさせられたけれど、
保健室に運んでくれたお礼もまだしていない。部活を休んで(黒澤君、部長なのに)家まで送ってくれることに対してもだ。
ふがいない自分に、ちっとも収まらない鼓動にうんざりして、シャツの袖をぎゅっと握りしめる。
あ、いけない。しわしわになっちゃった。
いつ言おう、いつ言おうとぐずぐずしているうちに家に着いてしまった。
立ち止まってマンションを見上げている黒澤君に声をかける。
「あ、うちここの5階。えと……」
こういう場合、部屋にあがってもらってお茶とか出すんだよね?
お父さんは会社。お母さんも確か今日はパートで遅い。お兄ちゃんは大学のあとバイト。
誰もいない。……むり。あたしにはむり。そんな難題突き付けないで。
早く帰ってと思っていたくせに、じゃあ、と言いかけた黒澤君を大声でさえぎっていた。
「く、黒澤君っ! (げ、呼び止めてる!?)あああの(繭子、お礼お礼。お願いだから余計なことは言わないで!)、
今日はありがとっ、送ってくれて。それから……あのあのッ、保健室に運んでくれたのが黒澤君で良かった! 助かった!
エロ本だったらと思うとぞっとする。あいつ触りまくってただろうから(そ、そんなこと言わなくていいからッ)。
あ、あたし重くなかった? でもっ、意識失った体は重く感じるっていうし、違うの違うのッ(やー、口が勝手にー)。
そそそれと腕もっ、電車の中で。……ありがと。なんか袖、しわくちゃにしてごめんだけど。
えと、なんで黒澤君そんなにやさしいの? 黒澤君は……っ、なんであたしと付き合ってんの?」
頭の中がまっしろ。もやもやと考えていた反動なのか、ぶちまけるように一気に言葉を吐き出していた。
あたしってば口滑りすぎ。途中からわけわかんないことに。特に最後。
深くは追求しないでおこうって決めてたのに、なに訊いてんの!?
黒澤君、ちょっと眉をしかめてる。けどかなり呆れ果ててるのが伝わってくる。ひゃ、口開いた。
「藤野は思ってた以上に馬鹿で鈍感なんだな」
「はあァ〜〜〜!?」
黒澤君はふっと鼻で笑って、すたすたと行ってしまった。
はあ? はあ? 何度も呼びかけたけれど、振り向きもしなかった。
頭きた。ばかで悪かったな。
そりゃあ常に学年トップを誇る黒澤君からしたらあたしは大ばかだよ。言われなくてもわかってるよッ。
鈍感て鈍感て……え? あ、はいぃぃ? もしかして、好きってことォォ!?
それはないでしょ。急に冷静になる。だってそんなこと一言も。そんなそぶりだってなかった、よねぇ?
時々眩しそうに目を細めて見てるのは気付いてた。その視線に優越感を感じてたから。
でもォ、自分でいうのもなんだけど、目の保養的なニュアンスしかなかったような気がするけど?
最初は警戒してたんだよねぇ。ひょんなことからっていうか自分で訊いたんだけど(いま思い出しても恥ずかしい)、
黒澤君が童貞だと知って、あたしで筆下ろしするつもりー!? それが告白OKした理由かッ!
って血相変えたんだけど、なんか黒澤君全然がっついた感じじゃないんだよねぇ。
実際、手も握られたことないし。なーんだ、あたしの勘違いだったかと安心するやら拍子抜けするやら。
あっ、とひらめいた。なんでそんな簡単なことにいままで気が付かなかったのかと歯ぎしりする。
やっぱりあたしの恋愛偏差値小学生レベルかも。やさしいイコール好きなんかじゃない。
やるためだったら男はなんだってするってよく耳にするじゃない。下心を見せないのも変にやさしいのもすべて演技だ。
最初の直感が正しい。やりたい一心でのことだったんだ。黒澤君はそれを巧妙に隠してたんだ。
ふー、危ない危ない。あやうく騙されるところだった。でもあたしは負けない。
むこうがどんな手を使ってきても華麗にさばいてみせる。相手として不足はない。いい練習相手だ。
居ても経っても居られない気分で、その場をぐるぐると回っていた。
***************
次の日。登校すると、案の定チラチラと見られた。くすくすと笑われた。
朝から好奇の目に晒され質問攻めに遭い、ほとほと疲れた。
ひとりになりたくて、昼休みは図書室に逃げ込む。
まじめでおとなしい生徒が何人かいるだけ。ここだったらほっといてくれる。
まあ、あと2日の辛抱だ。それで今週は終わる。来週になったら噂も落ち着くだろう。
ため息をつき、寝不足のあたしは机に突っ伏した。
「――繭ちゃん、繭ちゃん」
肩を叩かれて、顔を上げた。ぱっと体を起こす。
「あ、青山君! びっくりした。全然気が付かなかった」
「みたいだね。フフ、黒澤君のこと考えてた? 見たよ、昨日。やるな〜妬けちゃった」
うつむいて髪で顔を隠す。色んなことに動揺していた。
吐息がかかるほど体を寄せて囁かれたことに。
からかうような口調とは反対に目が真剣だったことに。
いまのいままで青山君のことを思い出しもしなかったことに。
「繭ちゃん、耳まっ赤」
びくっと肩が跳ねる。髪を後ろになでつけられて、耳をあらわにされた。
あたしは動けない。耳が心臓になってしまったかのように、どっくんどっくんと脈打っている。
青山君にも伝わっているだろうか。男の子にしてはほっそりした指でぐるりと輪郭をなぞり、青山君が言った。
「きれいな耳だね」
「……そ、そんなの、どこで判断するの?」
声がうわずった。
「薄くて華奢で、全体的にきりっとしてて。それにここ」
一段とひそめた声で囁き、耳たぶのすぐ上にある窪みに指先をはめ込む。
「繭ちゃんのここ、狭くて深いね。ここで名器かどうかわかるらしいよ。黒澤君に締りがいいって言われない?」
「そそそそんなこと、したことないもんっ!」
勢いよく立ち上がり、叫んだ。派手な音を立てて椅子が後ろに倒れる。
他の生徒達がいっせいに白い目を向けてくる。なかでも一際冷たい視線があたしを貫いた。
放課後。おじいさんが蒐集していたものを見に、黒澤君の家に寄ることになってしまった。
誘う黒澤君の表情は他にも話があると強制していて、とても断れる雰囲気じゃなかった。
逃げてると思われるのもいやで、ついうなずいてしまったあたし。
前を歩く彼の影を踏みながら思案に耽る。
繭子、やっぱりやめたほうがいいんじゃないの?
いっちょ黒澤君ちに行ってみるかと、気軽に考えてた昨日とは状況変わってない?
なんか嫌な予感がするんだけど。でも、あんなこと言われたら気になって仕方が無い……。
――黒澤君、いつから図書室にいたんだろう?
鋭い眼光に射すくめられて一歩も動けなかった。時間が止まったみたいだった。
視界の隅でなにかが動いて、やっと感覚が戻ってきて、黒澤君に向かって歩いていく青山君をぼんやりと追う。
立ち止まって、なにか声をかけた。青山君のあんな意地の悪い顔、はじめて見た。
無表情な黒澤君。視線はこっちに向けたまま。怖い。なにを言われたんだろう? 気になる。
青山君は図書室を出て行く前に、あたしを振り返ってにこっと笑った。いつもの天使のような笑顔。
逆に、悪魔のような冷淡な表情を浮かべた黒澤君が近づいてきて言った。
――青山のことが好きなんだろ。協力してやろうか。
協力ってなに? なに考えてんの? 黒澤君の頭の中が覗けたらいいのに。
それにしてもこのへん、立派な家が立ち並んでるなぁ。きょろきょろと周囲を見渡す。
わあ、あそこなんて女の子が夢見るようなお屋敷だなーと感嘆していたら、
黒澤君がそこにずんずん入っていくじゃないの! ってここが黒澤君ちー!?
目の前には蔦の絡まる洋館が建っていた。木が茂り、清涼な空気に包まれる。
ひゃー、世界が違う。目を白黒させて広い玄関に足を踏み入れると、お帰りなさいませというセリフが!
リアルで聞いたっ。小柄な中年の女性がにこやかに出迎えていた。
マサさん書庫に紅茶を、と告げて黒澤君は階段へ足を向ける。
あたしはマサさんと呼ばれた女性にぺこりと頭を下げて、長身のあとに付いていった。
良かった〜。他にも人いたんだ。ふたりっきりになるのはマズイんじゃないかと思ってたから安心した。
それに、もしなにかされそうになってもきっぱり拒絶すれば問題ないよね?
黒澤君は無理やり女の子をどうこうするような人じゃないだろうし。
なんだか気が楽になってトントンと階段を上っていった。
ところで書庫と書斎の違いってなに、という疑問は中に入って消し飛んだ。
うわー、床から天井までびっしりー。難しそうな本がいっぱいー。洋書がたくさんあるー。
前もって用意しておいてくれたのか、低いテーブルの上には古い映画雑誌が山積みにされていた。
黒澤君を振り返るとうなずき返されたので、さっそく手に取って読み始めた。
かちゃかちゃとポットとカップを並べる音で我に返る。
ごつい石の門柱を過ぎてからこっち、テンション上がりっぱなしだった。
自分の現金さにちょっと恥じる。訊きたいことがあるんだったっけ。
マサさんが入れてくれた薫り高い紅茶を飲んで気持ちを落ち着かせた。
のんびりしてはいられない。こほんとひとつ咳払いをして、向かい側のソファに座っている黒澤君に話しかける。
「黒澤君、図書室でのことなんだけど……青山君になに言われたの? それと、協力ってなんのこと?」
「――いくつか確認したいことがある」
めずらしく即答をさける黒澤君に、あたしは先を促すようにうなずく。
「藤野は青山のことが好きなんだよな?」
しばし沈黙。真っ正面から見つめてくる黒澤君から顔をそらして、こくんとまたうなずく。
なんだろう……胸がざらざらする。
「俺と付き合ってるのは青山を忘れるためか?」
硬い声。黒澤君でも緊張することあるんだなと思ったら、込み上げてくるものがあった。
これは、なに? わかんないわかんない。わかりたくもない。
ぶんぶん頭を振っていたら、やっぱりな、という苦々しいつぶやきが耳に入る。
「そんなことだろうと思った。あいつ、人のものにしか興味持たないからな。彼氏効果が効いてきて満足してるんだろ、藤野。
けどまだ完全じゃないな。青山も言ってたぞ、まだしてなかったんだ、って。物足りなさそうだっだよ。
ふっ、ほんと人のものを奪うのが好きなんだな、あいつ。――協力してやるよ。俺も中途半端なことは嫌いなんだ」
ななななんなの!? 突然べらべらと。惚けたように見ていた。ひしひしと黒澤君の怒りが伝わってくる。
嫌いなんだ、と吐き捨てながら立ち上がった黒澤君につられるように、あたしも立ち上がる。
かちゃんとカップが揺れた。ものすごく身の危険を感じる。逃げなくちゃ。
が、テーブルを一跨ぎした黒澤君にあっさり腕を掴まれてしまった。無言でもみ合った末、ソファに倒れ込む。
はあはあと荒い息をつきながらぶ厚いドアへ目をやるあたしに、黒澤君が言い放つ。
「手伝いに来てくれてる人はもう帰ったから、助けを呼んでも無駄。それに本が厚い壁替わりになって声も外に漏れないから」
「こ、これってレイプ!? やだッ! やめてよ。こんなの、こんなの……っ、黒澤君らしくない!」
「俺のなにを知ってるんだよ。藤野、おまえ俺の下の名前さえ知らないだろ」
ぎくっと引きつったあたしを見て、黒澤君が乾いた声で笑う。
……知ってるよ。武士みたいな名前。読めないんだって!
訊けば簡単だけど、なんとなく自力で正解したくて奮闘中なんだよ。
「――俺の、ものにしてやる」
黒澤君は絞り出すように言って、シャツのボタンに手を伸ばしてきた。
まさかこんなことで黒澤君の赤い顔を見ることになるとは思いもしなかった。
冷たくて熱い目。こんなに怒るなんて……、バレても肩をすくめるくらいで済まされると軽く考えてた。
あたし、ひどいことしたんだ。息が苦しい。さっきも感じた、重くきりきりしたものが胸を襲う。
でも自業自得とはいえ、レイプは許せない。黒澤君もあとできっと悔やむ。苦しむ。
シャツの裾を引っ張り出されて、前をはだけられた。胸に視線が注がれる。
ほっぺたが燃えるように熱い。ブラの上から大きな手で包み込まれた。
「やっ! レイプなんてだめだめだめ。黒澤君、絶対あとで後悔するからっ。やめて!」
「さっきからレイプレイプって騒いでるけど、和姦にするつもりだから」
「はあァ? なに寝ぼけたこと言ってんのっ。あたし何度もやだって言ってるじゃないッ」
「こういう時のやめてはアテにならないだろ。だから体で判断することにした。濡れたら合意とみなすからな」
なにその傲慢な言い草ッ。そうこうしている間にも、黒澤君の手は縦横無尽に動きまわる。
髪を撫で、お腹を撫で、背中を探る指がホックを外す。無防備になった胸を下から持ち上げるように揉みしだく。
「いやああッ(なんか下のほうがもぞもぞする!)」
「乳首が硬くなってきてる。感じてるんだ?」
執拗に指でいじられ、赤く尖った先端が口に含まれようとしたその時、
あたしは思いっきり腕を突っぱねそれを阻止した。うがっと変な声がしたけれど気にしない。
「かか感じてなんかないもん! しつこく触るから、ただの条件反射だもん! 寒い時硬くなるのと一緒ッ。
濡れたら合意って、そんなの卑怯! 感じてなくても防衛本能で濡れるもんなのッ。だからだめ。そんなの認めない!」
黒澤君は体を起こして黙り込んだ。首をこきこき鳴らしている。なにやら難しい顔で思案中。
必死の抵抗が届いたのか。冷静になればわかってくれるはず、と期待したのも束の間。
「わかった。じゃあ、触らないで見てるだけにする。それで濡れたら問答無用で抱くからな。いいんだな」
「う、うん……は!?」
あまりにもストレートに抱くと断言されて、うなじの毛が逆立つ。
うそおォォ、あたしってば勢いに押されてとんでもない約束を! いまのなしなしッ。
慌てて起き上がったあたしを牽制するように、黒澤君は付け加えた。
「格好はそのままで。それと、さっきので濡れたんだったら一旦拭いておけば?」
「だからっ、感じてなんかないの! で、見てるってどのくらいよ。さっさと終わらせてよねッ」
売り言葉に買い言葉であとに引けなくなってしまった。迂闊さを呪ってももう遅い。
はたと気付くと、スカートはめくり上がりパンツが見えている。シャツもブラもずり下げられて半裸状態。
猛烈な羞恥に襲われたけれど、押し殺してソファに座り直す。
負けないもん。ぎゃふんと言わせるんだもん。その高い鼻をへし折ってやる!
「藤野の誕生日はいつ?」
意図はわからないものの、7月12日と仏頂面で答える。
足して19か、とぶつぶつ言いながら黒澤君はテーブルの上のものを片付けて、そこに座った。
テーブルとソファの間は50センチくらい。至近距離で対峙する。
「いまから19分。見てるから」
そう宣言して、馬鹿げた睨み合いがスタートした。
(つづく)
つ、続きを、続きをはやくっ!
イケイケ黒澤〜!
イイゾ黒澤〜!
ゴーゴー黒澤〜!
黒澤君がんばれ!
個人的には青山君派だけどな!!w
127 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 18:11:42 ID:iNVJpfQg
はやく続きを………ッ
超支援
ま、まちきれない…!!
足して19って、意味不明だからっ!
黒澤くん、頑張れ〜!
続き、イイコで待ってます!
あたしはできるだけ卑屈に見えないようにソファの上で姿勢を正し、
まっすぐ前を向いて黒澤君の後ろの壁にかかっている時計を睨み付けていた。
あれ、壊れてるんじゃないの? ちっとも針が進まない。
――やっと1分が経った! まだ18分もあるのかと思うと気が遠くなる。
19分は長い。てか、なんで足してんのよッ。つっこむタイミングを逃してしまった。
7分、せめて12分にしてとはいまさら言えない。なんか早々に音を上げるみたいでしゃくに障る。
しゃくといえば、余裕しゃくしゃくの黒澤君が憎たらしい。腕を組み、片方の手をあごに置いて見下ろしていた。
じりじりと、視線が肌の上を這い回る。まるで脳裏に焼き付けるかのごとく丹念に。
目の動きでどこを見られているのか、だいたいわかった。
尖ったままの乳首や脚の付け根。思わず手で隠したいのをぎゅっとこらえる。
そんなことしたら余計いやらしく映ってしまいそうだ。太ももの脇で、爪が食い込むほど拳を握る。
見られた箇所が熱を帯びて、煙が立ちのぼりそうだった。黒澤君の眼鏡は虫眼鏡かッ。
無理にでも怒ってないとくじけてしまいそうな気がした。
――あと13分。沈黙に押し潰されそう……。
相変わらず黒澤君は見続けている。一言も喋らず凝視。いったいなにを考えているのやら。
って、そんなの決まってる! すすすすごい、えっちなことされてる、いっぱい。頭の中で。
下腹部がしくんと蠢いた。さりげなく内股をこすり合わせる。なんかいま、違和感が。うそッ、まさか!?
ごくりと唾を飲み下す音がやたら耳につく。意識すればするほど呼吸は乱れた。
熱い。とにかく熱い。うっすらと汗がにじんでいる。喉がカラカラ。
「……黒澤君、紅茶飲んでもいい?」
「ああ」
ポットに残っていたお茶を黒澤君はカップに注ぎ、手渡してくれた。
ばかみたい。おっぱいを晒してお茶を飲んでいる自分がみっともなくてため息が出る。
口の中が苦くて涙がこぼれそうになった。
「藤野の体はきれいだな。他の――、男にも言われたことあるだろ?」
なんだ、その妙な間は。あたしが遊んでるとでも言いたいのか。失礼なッ。
「あるわけないでしょ! いままで誰にも見せたことないんだからッ」
叩きつけるように言い返す。自慢じゃないけどあたしは一途に想うタイプだったの! あれ、過去形?
それになんだかあたし、きれいだと褒められて喜んでるみたい……。
こんなおかしな状況に追い込まれたせいで、頭までおかしくなっちゃったじゃないのーっ。
どこか満足げな黒澤君に不審を抱きつつ、ぐびぐびと紅茶をあおった。
「オナニーはどのくらいの頻度でしてるんだ?」
「ぷはあーーーッ!」
大道芸人ばりに紅茶を噴き出す。
幸い、そっぽを向いていたので黒澤君やテーブルの上の雑誌にはかからなかった。
黒澤君はやれやれといった感じで肩をすくめている。
「藤野はすぐ顔に出るからわかりやすいな。バイブを使ってるのか?」
「ばばばバイブなんか持ってるわけないでしょ! 家族と一緒に住んでるんだからッ」
「自分の手か。――青山のことを思い浮かべてしてるんだな」
それはもう質問でもなんでもなくて、断定口調だった。
最近はしてないもん! あ……ほんとだ。あたし、最後にオナニーしたのいつだったっけ?
口を開けば開くほどドツボに嵌っていくのがわかったので、黙っていることにした。
黒澤君がじっと手を見つめているのに気付き、太ももの下にさっと隠す。
動揺ばればれだけど、必要以上に意地を張るのはもうやめた。神経消耗するだけだ。
どうせ黒澤君はなんでもお見通しなんでしょっ。半ば逆ギレ気味に時計を見る。
――やった! あと7分。
黒澤君も腕時計で時間を確認していた。
顔を上げた彼と視線が絡み合う。決意漲る表情にどきりとする。
な、なによ今度は。狂ったように心臓が打ち始めた。
「途中経過見せて」
意味がわからないふりをしていると、黒澤君が膝を立てて脚を開くようにと指示してきた。
いやッ。だってさっき変な違和感があったもん。中からなんか出たような出ないような……。
黒澤君はあたしの知らない間に催眠術でもかけたんじゃないの!?
じゃなきゃ説明がつかない。いやだという意識はあるのに、あたしの体は勝手に動き出す。
そろそろと踵が持ち上がってきた。ソファがぎしっと音を立てる。
右足。続いて左足。だめだったらだめーッ。
ぴったりと合わさった膝はがくがくと震えている。なにも考えられない。
開いて、と少しかすれた低い声。あたしは魅入られたように両脚の力をほどいていった。
――見られている。吸い付くような眼差し。こめかみから汗が一筋流れた落ちた。
そんなに見ないでッ。布に隔てられてるとはいえ、恥ずかしさに変わりはない。
ましてやシミができてるかもしれないと思うと気が気じゃない。
きつく口を結んでないとうめき声が漏れてしまいそうだった。
黒澤君はなにも言わない。あ、あたしの勘違い? 取り越し苦労? う、こっち向いた。
かすかに口元を緩ませているのを見て、不安と焦燥が渦巻く。
「藤野の細い指じゃ3本入れても想像つかなかっただろ。実物に触ってみるか?」
はあァァああああああ!? じーつーぶーつーーーーッッ!? さささ触ってみるうううううう!?
心の中で絶叫するのみ。突拍子もない発言になすすべなし。止めるひまもなかった。
固まってるあたしを尻目に、てきぱきとズボンとパンツを脱ぎ出す黒澤君。
え、あ、ちょ……っ! シャツの裾から突き出たものに絶句する。うそでしょ!?
だってあれ、指3本(てか、1本しか入れたことないって!)どころかあたしの手首くらいない?
それにあの動きはなに? わざと? 陸に上げられた魚みたいにびちびちびちびち。
「――や、来ないでッ」
ぼうっと観察しているうちに実物が目の前に迫ってきていた。
すっかり下を脱ぎ捨てた黒澤君はソファの背に両手をつき、あたしを腕の中に閉じ込める。
「触って」
熱い息がおでこにかかった。
ひやぁと情けない声を上げ、押しやるつもりで胸板に手を当てたとたん、はっとする。
黒澤君の体は硬く、やけどしそうなくらい熱かった。掌からどくどくと鼓動が伝わってくる。
その力強い響きに、なぜか落ち着きを取り戻す。優位に立った気さえした。
軽くM字に開いた膝の間にある実物に目をやる。不思議と嫌悪感は湧いてこない。
ちょ、ちょっとだけなら触ってもいい、かな。ちょっとだけなら……。
好奇心に負けたあたしは、恐る恐る手を伸ばす。
不規則に跳ねる実物の根元をそっと押さえて、先端を触ってみる。
なんでこんな形をしてるんだろう。奇妙としか言いようがない。松茸みたい……ストップストップ!
食べ物に譬えるのはなしッ。めったに口にしないとはいえ、あとで困ったことになりそうだ。
気を取り直して、先端の割れ目や浮き出た血管を指で撫でさする。
うっと苦しげな声が頭上から聞こえて、ぱっと手を引っ込めた。い、痛かったかな?
指先がぬるぬると光っている。思うより先に行動していた。
くんくんと匂いをかぎ、あろうことかその指をぱくりと咥える。少ししょっぱ、あ、やっちゃった!?
黒澤君の驚いた気配に正気に戻る。引かれたっ、と思った次の瞬間には押し倒されていた。
反則! とっさに浮かんだのはそれだった。
残り時間あと1分というところで黒澤君はあたしの体に触った。
見てるだけという約束を破ったんだから、抱く宣言は無効なんじゃない?
重い体をばしばし叩きながらそう訴える。黒澤君の肩が小刻みに揺れている。笑っていた。
「途中チェックした時に、もう濡れてたよ。自分でもわかってただろ。藤野こそちゃんと約束守れよ」
「そ、そんなこと……ないもん。あ、汗じゃない?」
苦しい言い訳だった。その証拠に言い返す口調は弱しく、黒澤君を正視できない。
往生際が悪いな、と黒澤君はあたしの手を掴んで股間に強く押し当てた。
そして重ねた手をゆっくりと動かしながら耳元で囁く。
「ほら、びしょびしょだろ。藤野は見られただけでこんなに濡らしたんだよ。入れて欲しくて仕方ないんだろ」
「やめ……んっ、やあぁ……きら、い……黒澤くん、なんかっ……大っ嫌い!」
手がほどけて、めちゃくちゃ振り回した拍子に黒澤君の眼鏡が飛んだ。
カシャンと落ちた場所に見向きもせず、黒澤君は足からパンツを抜き取り、顔の前にかざす。
「嫌いな相手にこんなことされて悔しいだろ。言うこと聞かない体が情けないだろ。
――たまんないな、その顔。もっと泣かせたくなる。別の意味でも、だな」
なにかのスイッチを押してしまったのか、黒澤君の様子が豹変した。眼鏡のせい?
かけてる時とない時では全然印象が違う。さっきまでは興奮していてもからかう余裕があったようだったのに、
いまは激情が抑えられないといった感じだった。とにかく、いじわるモード全開。
着ていたものは瞬く間に剥ぎ取られて、素っ裸にされてしまった。黒澤君も全裸になってる。
見ないで、と言えば全身をじっくり舐めるように眺め回し、
触らないで、と言えば敏感なところを指で責め立て唇がそのあとを追ってくる。
「ああッ、だめえぇぇ……そんなとこ! 恥ずか、やあっ、舐めないで!」
「少しは学習しろよ」
黒澤君はがっちりと抱え込んだ脚の間から顔を覗かせ、小ばかにしたように鼻を鳴らす。
ひどいッ。なに言ってもやめないくせにーーーっ! し、ししし舌があああ!?
ぴかぴかにでも磨くつもりなのか、黒澤君はあそこを何度も何度も舐め上げてくる。
しまいには唇を密着させ、液体を吸い込む下品な音まで聞こえてきた。
やめてーッ。ほんとやめて! おかしくなっちゃううう。助けてえぇぇえええっ!
背中を大きく仰け反らせて、いやいやとすすり泣く。
「あ、あ、あ、やあぁぁあああああ!」
クンニでイかされた。悔し涙があふれる。自分の体に裏切られた気分。
茫然と天井を見上げる。もうやだ……なにも考えたくない。
ぐったり虚脱していると、黒澤君が体を重ねてきた。
入れるぞ、と怒っているような泣いているような声がして、硬いものがめり込んでくる感触が走った。
「だ、だめえええっ。ああ赤ちゃんができちゃう!」
「大丈夫。ちゃんと付けてるから」
……そうなんだ、いつの間に。や、そうじゃなくてそうじゃなくて! なんか間違ってる。あたしも黒澤君もなんか間違ってるッ。
暗い目で見下ろしてくる黒澤君がすごく悲しい。胸が張り裂けそうだ。
「はぁはぁ、黒澤く……んあっ、こんなことして……た、楽しい?」
「――ああ」
「うそッ! だったら.……はぁ、なんでそんな……つらそうな顔っ! いたぁっ」
「……出そうなんだよ、食いしばってないと。藤野のここ、熱くてぬるぬるしてて……こんなに気持ちいいとは思わなかった」
ぎゅっと黒澤君に抱きしめられたのと同時に、あたしの中がいっぱいになる。
太ももから肩までぴったり。ふたりの境目がわからないくらいくっついたまま、10秒、20秒――
繋がってる部分に意識が高まる。目を閉じると、さっき目にした魚のように跳ねていたものが脳裏に浮かび、体が打ち震えた。
「――青山のこと、思い浮かべてるのか?」
ぱちっとまぶたを開くと、黒澤君が鬼のような形相でねめつけていた。
悲鳴を飲み込む。怖いけど、どきどきする。
いつも冷静沈着な黒澤君がこんな風に激しい感情をぶつけてくるの、あたし……嫌いじゃないかも。
「……だったら、なに。やめてくれるの?」
思ってもいない言葉が口をついて出てくる。ひゃあああ、なに挑発してんのー!?
絞め殺さんばかりの憤怒の色を浮かべる黒澤君に、痺れるような快感を覚える。
いままでやられっぱなしだったから、一矢報いてほくそ笑んだ。のも一瞬で、首に腕を回され肝を冷やす。
ここ殺されるううう、と思いきや体を引き寄せられただけだった。
なななによッ。混乱するあたしに、黒澤君はいたぶるように腰を突き出して言う。
「見ろよ、ほら。しっかり咥え込んでる。好きでもない奴に処女奪われるのは、どんな気持ち?」
「――! い、いたい……よ。すっごく痛い……やぁ、抜いて……抜いてったらッ!」
「いやだ。それより力抜いて」
くうぅぅ……何度も瞬きを繰り返す。
そんなことをしても、濡れそぼった局部や抜き差しされる肉の棒は消えない。
その事実に打ちのめされる。ばかだ。ふたりともばか。
お互い相手の傷つくようなことをわざわざ口にして、取り返しのつかないことに。
痛い痛いと叫ぶ。黒澤君に突かれるたび、ぼこぼこと心に穴が空くようでたまらなかった。
どのくらい時間が経ったのか。気が付いたらすべてが終わっていた。
ずるりとあたしの体から離れた黒澤君は、背中を向けてなにかごそごそやっている。
――パンツ。とりあえずパンツが穿きたい。素っ裸は居た堪れない。
黒澤君はいったいどこへ投げ捨てたのか。よろよろと立ち上がったあたしの手首を掴む者がいる。
……なんなの。力なく振り向いて、ぎょっと目を剥く。
黒澤君は臨戦状態だった。
「誰が一回でやめるって言った?」
「はあァ〜!? いい加減にしてよッ。もう気が済んだでしょ!」
「まだだ。藤野がイクまでやめない。初体験は痛かっただけだと記憶されるのは許さない」
「……い、いいから。あたしが許すから、やめて……」
黒澤君は真顔だ。この調子ではなにがなんでもやり通すつもりなんだろうな……。
しゅるしゅると全身から抗う力が抜けていく。つつーっと粘液が内股を伝っていった。
ただ手首を強く握り締められてるだけなのに、あたしの体はソファのほうへと傾き始める。
そして黒澤君の上に座る形で、後ろから貫かれた。
どう考えても、はじめてとは思えない。
首筋に唇を這わせながら両手で胸を撫で回し、その上座った状態で腰まで動かすなんて芸当、初心者のすることォォ!?
「黒澤く……あんッ、童貞って、うそでしょ! な、慣れてるもん……ほかの、ほかの……っ、なんでもないッ!」
この、胸がぎゅーっと締め付けられる感じ。覚えがある痛み。……嫉妬?
後ろを向けていて、吐きそうな顔を見られなくて良かった。
自分でもよくわかってないのに、なにを見透かされるかわかったもんじゃない。
「――他の子としたことはないよ。藤野がはじめてだ……ずっと前から、こうしたかったんだ。
本当は鏡の前でしたかった。繋がってるところや、藤野の乱れた姿を鏡越しに眺めながらしたかった」
「ヘヘヘヘンタイ! やらしいこと言うのやめてよっ、ばか!」
「しょうがないだろ。やらしいことしてるんだし、藤野の体がやらしすぎるんだ……ここ、勃起してるな」
「いやあぁぁんっ!」
黒澤君は片方の手を下に滑らせ、充血したクリトリスを指でこすった。
信じらンない。黒澤君がこんなすけべだったなんて! むっつりすけべってやつだっ。
もっと信じらンないのは、あたしもどうやらすけべだったってこと。そんなの知りたくなんてなかった!
黒澤君のすることなすことに、いちいち反応するあたしの体。どうしてくれんのーっ!?
物欲しそうに揺れるお尻がいやッ。どっから出してんだかわかんない鼻にかかった甘ったるい声がいやッ。
「そこ、だめなのォ……触っちゃ、やぁああ……へ、へんになっちゃうのおォォ……いやあああああっ!」
月並みな表現だけど、体中に電流が走った。どこかへ飛んでいってしまいそうな感覚に襲われた。
口が裂けても自分から言うつもりはないけど、確かにあたしはイった。
自分でするより何倍もの恍惚感に包まれた。
黒澤君にそのことを指摘されるのは死ぬほどやだけど、なにか言ってくれないと動くきっかけがつかめない。
もどかしく重苦しい空気が流れるなか、突然あたしのケータイが鳴った。
びくっと鞄を見つめるものの、出る元気がない。
ほっといていると軽快な着信音は止み、それが合図になったかのように黒澤君が喋り出した。
「いまのは……だめだ」
意味不明の顔をしていると、ここでイっただろ、と指先で軽くクリトリスを弾かれた。
「きゃっ!」
「だめだ。俺ので感じないと……俺のでイクところが見たい」
黒澤君の思いつめたような切ない眼差しに、胸がつまってなにも言えなくなってしまった。
ど、どんだけ黒澤君は頑固なの……、どんだけあたしは押しに弱いの!?
みたびたくましい体を迎え入れた時、再び場違いな着信音が鳴り響いた。
誰からだろう、うちでなんかあったとか? 千明? まさか、青山君……?
わずかに見せた狼狽になにかを察知したのか、黒澤君が鞄を手元に引き寄せた。
「ち、ちょっとなに……やめてっ。人のケータイ勝手に、あっ……!」
黒澤君は着信名を一瞥するや否や、素早く開いて通信ボタンを押してしまった。
目を見開き口をつぐんでいるあたしを見据えながら、黒澤君はケータイに耳を澄ませている。
その顔がみるみるいつもの、というかいつも以上の冷淡なものに変化していくのを、かたずを呑んで見守った。
黒澤君が無言でケータイをあたしの耳に押し当ててくる。
『――あれ、おかしいな。繭ちゃん、聞こえてる? もしもーし……』
青山君の明るいのんきな声が耳朶を打つ。
最悪の事態だ。こ、こういう場合はどうすれば……電話。とにかく電話を切らなくちゃ。
かたんと横のテーブルに置かれたケータイに手を伸ばす。
が、当然のごとく黒澤君に阻まれる。
両手を頭の上に押さえつけられ、下半身は釘付けにされていて身動きが取れない。
懸命に体をよじるも、それは単に性器をこすり付ける淫らな行為なだけだと悟り、抵抗をあきらめた。
「やらしい声、聞かせてやれよ。その方があいつも燃えるだろ」
黒澤君は特に声をひそめることもなく言った。
楽になるぞと言わんばかりのやさしい声音とは反対に、表情は冷ややかそのもの。
なんでこんないじわるするのッ! 泣きわめきたい心境だった。
ケータイと黒澤君を交互に見やりながら、電話切れてますようにとひたすら願い、
やめてよばかばか光線を送り続ける。早く終わってと念じることしかあたしにはできなかった。
黒澤君がぐちゃっぐちゅっとわざと卑猥な音を立てながら腰を使い始めた。
反射的に胸を反らす。ああッ、だめ! そんなことしたら吸って欲しいとおねだりしてるようなもんじゃないっ。
果たして、黒澤君がおっぱいにむしゃぶりついてくる。腰同様に、わざと音を聞かせるように舐めたり吸ったりしている。
足の先からなんともいえない熱い痺れが這い上がってきた。
「――ッ!」
食いしばった歯の間からくぐもった声が漏れる。
声出せよ、と黒澤君が呪文のように繰り返す。あたしは目に涙をためて、首を振り続けた。
「我慢してる姿がどれだけそそるか、わかってないだろ。声出さないと、その顔撮ってあいつに送るぞ」
「や、やめてえぇぇ!」
本気でしそうな勢いに、大声を張り上げて制止する。
一声発して緊張の糸が切れてしまったのか、ぼろぼろと泣き出す。
「うっ、ぐすっ……ひどいよぉ、こんな……うう、いじわる……も、もう知らないッ……ひっく、あ、やあぁんッ」
泣き声があえぎ声に変わっていくのに、そう時間はかからなかった。
あたし……ボロ負けじゃん。完膚なきまでにやられて、逆らってたのがばからしく思えてくる。
もうどうにでもなれという気持ちで黒澤君の動きに合わせて腰を振り始めた。
黒澤君が片脚を肩に担いで、奥まで深く突き刺す。摩擦のスピードが激しくなってきた。
ああッ、えぐるようにこすり付けられるのがたまらないッ! 体がびくびくと痙攣して大きく跳ね上がる。
「あぁっ!? な、なんかくるっ……やあぁ、怖いぃ……あっ、あっ、あっ、あぁあぁぁああああああーーーっ!!」
「まゆっ、――だ!」
……なんかいま、下の名前を呼ばれたような? あとに続いた言葉もよく聞き取れなかった。
だ、だめ……部屋の景色がぐるぐる回ってる。頭が重い……複雑なことは考えらンない。
暗くなっていく視界のなかに、黒澤君の姿が浮かぶ。なんだろう……しまったって顔してる。
うっかりミスはあたしの専売特許だと思ってたけど、なにかしでかしたらしい……うろたえぶりが半端じゃない。
く、くそぉぉ……せっかく黒澤君の弱みを握れそうだったのに……意識が、薄れてきた……む、無念。
(おわり)
ラブラブなふたりも書きたいところですが、いかんせん疲れてしまいました。
充電後、つづき書くつもりですが当分先になりそうです。ではまた。
GJ!!!超GJ!!!!黒澤くん萌え
続き楽しみにしてるよ
ゆっくり休んでください
黒澤くん中出しかw
つーか青山くんどうでるんだろう。
続きすごく気になるけどまったり待ってます。
投下乙でした。
>>140 つけてる描写あるよ
乙でしたー。すごく良かった!
あれ、そうか。一回め終わったあとの
背中を向けてごそごそやってる…のところで外したのかと思ってた。
じゃあ何にうろたえたんだろう。ますます気になるな〜。
うろたえたのは、自分がつい言ってしまった言葉に対してだと思われ
GJ! 充電終わるまで待ってるよ!
黒澤君頑張れ〜!!
書き手さん超GJ!!!
燃えた…ss読んで久々に燃えたよ!!
黒澤君の鬼畜デレぶりがたまらん!
十分に充電してから続き投下して下さい。正座で待ってる
個人的にはお互いが好き合ってないと、もえられないな……
今後の展開によっては結果オーライになるかもしれないけどw
えー、繭タンにも何かは芽生え始めてると思ったよ。
まだ自覚以前の段階みたいだけど…
作者さん超GJ!夢中で読んだよ!
初めてこのスレ覗いたけどこんな萌え&燃えに出会えて凄く嬉しい
続き自分のペースで頑張って下さい!
>>148タンに激同!繭タンも嫉妬?って自問自答してたし♡
んも〜すげーGJ!!
携帯で青山くんは当然聞いてたワケで、今後どう出てくるのか楽しみっす!
続き、いつまででも待ってますので、ゆっくり書いてくださいね(^^)
このSS読んでスレをお気に入り登録してしまったほどに萌えた
>>148 いや、だから自覚してんだかしてないんだか分かんない状態で処女奪われたくねええぇ
…と私は思ったわけで。
まあ、そこは人それぞれだよな
ネ申SSを読んだ…GJすぐる
天才だよ、おま
154 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 01:33:46 ID:L6MpzGSt
黒澤くんGJ
繭タソGJ
作者さんGJ
ゆっくり休んで
是非シリーズ化を!
SS超大作
マンセーレスが多いとちょっと引く
いいものはいい
あんまりマンセーが過ぎると、作者さんが今後来にくくなっちゃうよ
半年ぶりにこのスレに来た。377氏も繭子たんもGJ。
つ 【好みはひとそれぞれ】
キャラ名が黒澤じゃなければな、とオモタw
脳内で好きな名前に変換してくる
test
前スレで『Baroque』『teacup illusion』を書いた者です。
何か陵辱ネタの話が出ていたので、チャレンジしてみました。
あと、HNを付けてみました。トリップも今後これで固定です。
まとめサイトの方には、よろしくお願いします。
『NO REFUGE, BE PRAYING』
従兄との、傷つけ合うような、貪り合うような、危険な情事の記憶。
色恋沙汰も知らない子供のころは、従兄のことが、単に物静かで優しい
親戚のお兄ちゃんだとしか思っていなかった。
私は昔からわがままで意地っ張りで怒りっぽくて落ち着きがなくて、
今でもそんな自分が嫌いなのだが、従兄はいつもそんな私に少し困ったような笑顔で
付き合ってくれていた。そして私は、そんな彼に最大限甘えきっていた。
母も叔母も、そんな私たちを見て、仲のいいことだとか、お嫁さんになっちゃえとか、
そんな色んなことを言ってきた。私はそういうことを言われるのが嫌で、いつも癇癪を起こしていた。
そして従兄はそんな私を見て、また困ったような顔で笑うのだった。
従兄が高校に入ったとき、寮に入ったため、しばらく会う機会がなかった。
二年間何があったのかはよく知らない。久々に会った彼は、相変わらず物静かだったが、
何となく近寄りがたい雰囲気を持っていた。
「久しぶりだな」
「う、うん」
「しばらく会わないうちに大きくなったな……あ、いや、きれいになったな」
「あー。今、一瞬、子供扱いしたでしょ」
「はは、済まん済まん」
何か、背の高さといい、声の質といい、喋り方といい、昔とずいぶん変わって見えた。
「なあに、大人ぶっちゃってさあ?」
「そうか? そうかあ。そう見えるのかあ」
一人で何か難しそうな顔で小首を傾げる。
「ぶっちゃけ、おっさん臭いよ、色々と」
「ははははは、酷いことをいうなあ」
心なしか、余裕ぶってあしらわれているように感じる。
少し、むっとしたところで、母が割って入ってきた。
「まあまあ、しばらく会わないうちに、大きくなっちゃって」
「お久しぶりです、伯母さん」
「大学受験はどう? 大変でしょ?」
「いやあ、キツイです。できれば一発で受かりたいんですけどねえ」
「ケーキがあるから食べてね。ほら、あんたの分もあるわよ」
「あ、じゃ、いただきます」
「はーい」
私は母と従兄を追って台所に向かった。小さなしこりを、胸の奥に感じながら。
母と叔母が台所で長話に入っている間、ケーキを食べ終えた私たちは所在なく、
居間のソファに並んで座っていた。
何となく、会話もなく、やや重苦しい空気が流れていた。
「寮は……」
不意にそんな言葉が口をついて出た。
「どうなの?」
「んー、毎日楽しいよ。食堂はあるし、浴場は広いし、何より個室だし」
「学校は?」
「楽しいね。勉強は大変だけど、バドミントン部は準優勝って実績を残せたし、
図書室は本が一度に五冊も借りられるし」
「じゃあ、勉強は?」
「うーん、それが、だいたい十位以内……二年のときは。
五位以内に入れたり入れなかったりする。最近は二位」
あまり満足していないような口ぶりだった。高望みしすぎだ、と心の中で思った。
「何よ、一位じゃないんだ?」
「ああ。そこまでくるともう、いかにパーフェクトをキープするかって世界だからなあ。
神経の消耗っぷりも尋常じゃないね」
目に光がなかった。私もほんの少し前高校受験を経験した身だが、
いくら大変だったとはいえ、ここまで疲れ果ててはいなかったと思う。
従兄が、深く、溜息をついた。
「もう、老けて見えるよ、本当に」
「うわ酷いことを言われた! ショックだ!」
おどけてみせている。どこからどう見ても自然に振舞っているところが逆に作りっぽかった。
どうもさっきから気になる。一体何なんだろうか。
お茶を台所に取りに行って湯呑茶碗を二つ持って帰ってきたら、
従兄が目を閉じて静かな息を立てていた。
(ああ、なるほど)
疲れているのだろうと思い、黙って茶碗を置いて横に座った。
従兄の寝顔は安らかだった。さっきまでの微妙に張りつめた雰囲気が、今はない。
(そうか、親戚付き合いだから、無理して頑張ってたのかな)
気力だけで極力普通の振りを装っていたのだろうか。だとしたら、あのわずかに感じられた
わざとらしさも分からなくはない。本当は勉強でヘトヘトになっていて、だから目を離した隙に
寝落ちしちゃったりするのだ。
口の端から少しよだれが垂れている。
(もう、仕方ないなあ)
人差し指で拭ってあげると、従兄の表情が変わった。やや苦しげに眉をひそめて、
うう、と唸っている。起こしてしまったかと驚いて指を離したが、そのままうなされ続けていた。
悪夢でも見ているのだろうか。
(大変なんだなあ)
従兄のこんな辛そうな様子は今まで見たことがない。胸がうずいた。
気丈に振舞っているが、本当はいつも気力の限界ぎりぎりのところで生きていて、
夢の中でも安らぐことすらできないのだろうか。
そっと、従兄の手の甲に、自分の手を重ねた。彼のうめき声が、わずかに小さくなった。
私はそのまま、何も考えずに、しばらくじっとしていた。
次に気がついたときには、自分もすうすうと息を立てて、従兄にもたれかかって寝ていた。
眠気が伝染ってしまっていたらしい。
ふと彼の顔を見ると、彼は目を開けて、ぽかんとした表情で私の顔を見つめていた。
(……あれ?)
妙なことになっている。私もつられて彼の目を見返してしまった。彼の手が、びくん、と
わずかに強張ったのを感じた。
そのまま、また、何となく気まずい空気が流れた。
従兄の方が先に耐え切れずに目をそらせた。私たちの手を見た。肩と肩が触れ合い、
密着しているのを見た。彼の全身が大きく強張るのを、私は体越しに感じていた。
そのまま、途方もなく気まずい雰囲気が、ずっしりとのしかかってきた。
(な、何か……何かしなきゃ。何か言わなきゃ)
私も動転していた。飛びのいて離れるのが、この場合最も自然な反応なのだろう。
しかし、私はぎゅっと彼の手の甲に力を込めると、彼の腕をぐいっと自分の腕に絡ませていた。
「お前……」
従兄が呆れたような声で言う。私はそこでやっと、自分が何をしているのかに気づいた。
「な、何よ、そそそ、そんなんじゃないんだからね!」
「そんなんって、お前……どんなんだよ」
「ななな、何よ、そ、そんなこと、私に言わせるつもりなの、このムッツリスケベ! 変態!」
「へ、変態って何だ! というか、マジで何なんだ一体!」
自分でもよく分からない。既に混乱の最中にいた。
彼の表情が私の目に映った。狼狽、困惑、焦燥、悶絶、そうしたものが入り混じった顔。
でも、彼の瞳はただ一つの感情を私に示していた。
呆れている。
(私に呆れている)
そういうことだった。それはそうだろう。私にだって分かる。でも、
いつの間にか私は泣いていた。声を上げずに、ただ涙だけが止めどなく流れていた。
従兄は、一瞬歯を食い縛った。苦虫を噛み潰しているのとは違う。
何か、どうしようもない運命を、仕方無い、と黙って受け止めたような顔だった。
そのまま唇をぐっとへの字に閉じると、空いていた腕を伸ばし、私の背に回した。
私は、ずるずると身を崩すと、そのまま顔を彼の胸に埋めた。
(何やってるんだろう、私。馬鹿みたい)
声を出すような真似はしなかった。母や叔母に聞かせる訳にはいかない。
上手に事情を説明できる自信がなかった。
しばらく彼の胸の中で泣いているうちに、頭が少しずつ冷静さを取り戻してきた。
(本当に、何がどうなって、こんなことになっちゃったんだろう)
今まで全然意識していなかった。彼は私の行動に動揺したし、私は彼の反応に動揺したことになる。
どう動揺したのか?
答えは私が自分で言っていた。性的な意味で、だ。彼は私を異性として認識して、
それで当惑したのだ。そして私は、
(私は?)
異性として見られて、恥ずかしかったのは確かだ。
(でも、何で私、泣いてたんだっけ)
恥ずかしくて泣いたんじゃない。悔しくて泣いたんだ。じゃあ、何で悔しいと思ったんだろう?
(彼の目だ)
私が醜態を晒した後、彼は呆れたような目で私を見ていた。そのとき、私は異性ではなく、
ただの癇癪持ちの変な子供でしかなかったということになる。
子供として見られるのと、異性として見られるのと、どっちが悔しいか?
逆に言えば、どっちがより嬉しいのか?
(私は子供じゃない)
異性として見て欲しいかと言われても困るのだが、自分も無意識のうちに彼を異性として
求めてしまっていたのは確かだ。私は彼の手を取って、腕を絡ませた。
それが、偽らざる本心なのだ。多分。
私は彼の胸から顔を起こすと、一つ大きく深呼吸をした。
「大丈夫か?」
彼が小声で心配そうに訊いてくる。
私は答えず立ち上がった。そのまま階段まで歩く。
階段の半ばで振り向いた。彼がまた、困惑の極みのような表情で、
こっちを見ているのが分かった。
私は無言で彼を手招きした。彼はさらに困惑を極めたような顔になったが、
それもせいぜい三秒くらいで、意外と素直についてきた。
そのまま、二人して、足音も立てずに二階に上った。
二階の私の部屋に入ると、私は内鍵をかけた。そんな私の手元を、
彼がまた呆れたような目で見つめた。
だが、すぐに顔を引き締め、厳粛な表情になった。
「……で、何だ?」
何だろう。
二人っきりになりたかったのは確かだ。人の来ない閉鎖された場所で、特に何より私の部屋で。
で、その後、私は一体何をどうしたいんだ?
(危ないことをしてるな)
こんな状況を自ら作って、どういうことが起こりうるか、分かっているつもりだった。
危ないこと。
私にとって、途方もなく危険なこと。
痛いかも知れない。傷つくかも知れない。後悔するかも知れない。
取り返しがつかない、何か途方もないことが起きるかも知れない。
そんなことを、本当に私は望んでいるのか。
私は、今、おかしくなっている。
でも。
私は彼に向き合うと、目と目で見つめ合い、顔と顔を近づけた。
そのまま、唇と唇がくっつく大分手前で、ぴた、と止まった。
彼の目の色が変わった。またしても、覚悟を決めたような色だった。
そのまま、息をゆっくりと吐きながら、不思議なくらい安らかな瞳に変わっていった。
私のあごに優しく手を添えると、唇を半開きにして、私の唇に重ねた。
(わ……)
私はぎゅっと目をつぶった。これが私のファーストキスになる。
彼が私の唇をつまむようにして吸う。音が耳元に響くたびに、私の体は硬くなり、
同時に頭は霧がかかったように曖昧になっていった。
何か、大きなものが、失われていくのを感じた。
(もう、戻れない、かな)
怖いのに、これから起きるであろう色んなことを、受け入れてしまっている自分がいた。
唇の端を舐めたり、舌を軽く入れて私の舌をかき回したりして、彼が私のことを求めてくる。
何か、ものすごいファーストキスになっている。
うっすらと目を開けて彼の瞳を見ると、相変わらず不思議なくらい穏やかだった。
私は昔読んだ漫画のことを思い出していた。獲物を見つけた獣は、決して唸ることなく、
穏やかな目をするという。
(獣なんだ)
私の方が唸っていた。苦しいような、切ないような、そんな鼻声だった。
気がつくと、彼が私の背中をがっちりと抱き締めていた。痛くないが動けないぎりぎりの加減で、
ゆっくりと力を込めてくる。
ぐい、と傾く感じがあった。彼が体重をかけて、私をベッドに押し倒しているのだ。
彼の瞳が私の瞳をじっと見据えている。私の反応を慎重にうかがっているような、そんな感じだった。
また、漫画のことを思い出した。コタツから追い出されようとしている年老いた重い雄猫が、
人間の手を噛んで抵抗する。血が出ないように、ゆっくりと、ゆっくりと力を込めて。
その瞳は、自分の方が人間より偉いのだ、人間が本当に怒る直前のぎりぎりのところまで
そのことを思い知らせてやるという、ご主人様の目だったと書いてあった。
その年老いた重い雄猫と、従兄とが、かぶって見える。
少し肩に痛みが走る。そこで私は、自分の体がガチガチに硬くなっていることに気づいた。
彼は私の目を見ながら、少し半眼になって、わずかだが明らかに力を抜いた。
(ずいぶん優しいご主人様だなあ)
私も体の力を軽く抜いた。そのまま、私の背中が、とさり、とベッドに倒れ込む音を聞いた。
手慣れていないが、それでもてきぱきとした手順で、彼はあっという間に私を裸にした。
私の裸体を見て、彼が大きく溜息をつく。
「ほーう……」
「な……何よ」
「きれいだ」
「なっ!」
恥ずかしくなって、胸と股を手で覆った。
「何言い出すのよ、こ、この、ド変態!」
「いや、かわいいな、その隠す仕草もさ」
「う、うるさい! このムッツリスケベ! エロオヤジ!」
「うん。まあ、否定はしない」
うんうんと神妙な顔でうなずいている。またあしらわれている、と感じた。
「まあ、いいや。とにかく」
彼は私の耳たぶに顔を近づけると、はむ、と唇で挟んだ。
「きゃっ!」
そのままあちこちを、ちゅっ、ちゅっ、と音を立てて強く吸った。
跡をつけているのだ、と理解するのに、十数秒程度の時間が必要だった。
(こいつ……マーキングしてる)
ますます獣だ、と思った。人の体を縄張り扱いするな、とも思った。
不意に、胸を隠している腕と、股を覆っている手の甲に口づけをされた。
「わっ! そこはやだっ!」
「んー?」
彼は無理に手をはぎ取るようなことはしなかった。ただ、手の甲をひたすら
音を立てて吸っていた。
妙に抵抗する気にもなれずに、しばらくされるがままになっていたが、
次第に腕と掌に妙な感覚を覚え、その正体に気づいて愕然とした。
胸の先が尖って、腕に当たる。
隠している場所が、しっとりと潤っていく。
(嘘っ!)
恥ずかしくなってつい手を離して、べたついた掌をまじまじと見つめてしまった。
「これは……」
「ち、違う! そんなはずは……」
「嬉しいね。反応してくれてるんだ」
信じられなかった。それほど激しい愛撫ではなかったはずなのに、濡れている。
なぜだ。ひょっとして、信じたくはないが、この状況下で私も興奮しているのか。
(……て、いうか、いいのか、私)
さっきから、一方的にされるがままになっている。今の姿を冷静に考えると、
男の欲望に屈して流されている形になる。そんなことが果たして許されていいものか。
まして、こんな状況下で興奮している私は、一体何なんだ。マゾか。マゾなのか。
そういう変態さんなのか、私は。
「初めて見るが、こんなんなってるのか。じゃあ……」
彼が股間に顔を突っ込もうとしていたので、反射的にチョップで沈めた。
「うがっ!」
「ば、馬鹿馬鹿馬鹿! そんなバッチイところ舐めるなっ!」
「舐めるなってお前……舐めないと、後で大変だよ?」
何が大変なのかは聞きたくなかった。従兄の頭を全力で押し返すと、
意外にも彼は素直に頭を引いた。
そのかわり、私の体の上にかぶさってきた。
「うわっ!」
「……本当に分かってるのか?」
体重で潰れない程度に体を浮かせて、私の耳元で真面目な顔で言う。
「わ、分かってるわよ……ていうか、本気?」
「既に俺の中ではそういうモードなんだが」
彼の目が据わっていた。穏やかだが、何かに酔っているようでもある。
「それに、言い訳っぽいが、誘ってくれたのはお前だ。それは本当に有難う。
で、俺はそれに乗りかかった船だ。最後まで行くよ」
「ううっ……」
正直、ここまで来ると、怖さの方が強くなっている。
だが、もう止められない。ものすごい勢いで、雰囲気に流されている感じがあった。
それに、丁重に感謝までされてしまった。酷い男だ。これじゃ、断れないじゃないか。
「……好きに、すれば」
私の方も、無責任ながら、そう覚悟を決めた。
従兄がズボンのチャックを開く音が聞こえる。
「叫ばれるとアレだから、口を塞ぐ。悪く思うな」
唇を唇で塞がれた。
「むー……」
下半身の狭い入口に、何かがあてがわれるのが分かった。
次の瞬間、入口から脳天にかけて、全身に激痛が走った。
「んんんっ!」
たまらず彼の唇を噛んだ。
彼も痛そうに顔をしかめて、そのまま硬直していた。
「んー! んー!」
悲鳴をあげたが、彼はそんな私を見て、難しそうな顔をするばかりだった。
(あ、そうか。叫ばなきゃいいんだ)
ぐっとこらえて、彼の脇腹をぱんぱんと叩いた。そこで彼は口を離してくれた。
「何だ?」
「ぬ、い、て」
彼は言うままに抜いて、どさり、とあぐらをかいて座った。
「血……」
彼は私の下半身を見て、複雑な表情になっていった。
そうだ。ヴァージンを彼に捧げた形になる。
こんな形で。半ば押し切られる形で。
嗚咽が、つい、口から漏れ出した。
「お前……」
彼がまた唇を重ねる。また黙らせるつもりだろうか。それともひょっとして、
これで慰めているつもりなんだろうか。
悔しくなって、つい、彼の舌をがりっと噛んだ。彼はまた痛そうな顔をしたが、
噛まれるままに甘んじていた。
悲しかった。痛いのも悲しかったが、それだけが悲しいんじゃない。
やっぱり、もっと優しく抱いて欲しかった。こんな半ば強要されて、
暗黙のうちに受け入れるのを余儀なくされる形なんて、そんなのってない。
彼は沈痛な面持ちのまま、目をぎゅっとつぶって、私の背を強く抱き締めた。
私も返す形で、彼の背にひびを入れるくらいの心意気で抱き返した。
(傷つけ合っている)
涙が止まらなかった。何でこんなことになっちゃったんだろう。
痛かった。傷ついた。今は後悔している。最早、取り返しがつかない。
全て、分かっていたはずだった。
私が泣きやむのを待って、彼が口を離し、そして開いた。
「我慢できなかった」
「は?」
いきなり何を言い出すのか。
「女として見てしまって、正直、おかしくなっていた」
今さら謝ろうというのか。
「まあ、今もおかしい訳だが」
本当に何なんだ。
「だから言う。お前は可愛いよ。それに、会わないうちに、色っぽくなった。
率直に言って、お前が欲しい、と思った。俺のものにしたい、というか」
「は……はああ?」
こいつ。何でこんな歯の浮くようなこと言ってるのか。素か。素なのか。
「お前の優しさが身に染みたし、お前の覚悟も真剣に受け止めた。
お前の誘いに乗ろうとも思った」
何だ。何だ何だ何だ。マジでどういうつもりなんだ、こいつは。
「そういうことをひっくるめて、愛してると言っても過言ではない。
いや、愛してるよ、マジで」
「だ……だ、だだだだだ、黙れ! 黙れ黙れ黙れ! それ以上言うとコロス!」
また脳のどこかが暴走しはじめた。ようやく、こいつがただ単に
本心を吐露しているだけなのだと気づいた。
そう、本心なのだ。謝るとか、誠意とか、配慮とか、そういうの一切抜きで。
それが、一番、私の心にダイレクトに響いた。トラックと正面衝突して、
そのまま吹っ飛ばされたような感覚だった。
彼は私の背中に手を回して、やや和らいだ表情で続けた。
「そのまま溺れていたら、多分俺は本当に楽になってたんだろう。
だが、そうはいかなかった。お前は嫌だった訳だからな」
「ふ、ふん、何よそれ。好きにすればいいって、私が言ったんだから、
好きにすればよかったんじゃない」
彼がニヤリと苦笑した。
「そういう強がるところ、嫌いじゃないよ。こういうこと言うとお前は嫌なんだろうけど」
「うん。あまり嬉しくない」
「そうか。済まん」
苦笑していた彼が、真面目な顔になった。
「まあ、それでだ。お前が痛がっているのに、喜んで続けるほど、
酷い男じゃないつもりだよ、俺は。だから止めた。そういうこと」
抜け抜けとそう言い放つ。少し、むかっ腹が立ってきた。
「じゃあ、最初からするな、って話にならない?」
「ああ。だが、そこで、我慢できなかった、というところに話が戻る訳だな」
「自分に甘いのね」
私の言葉に、彼が苦いものでも飲んだかのように沈痛な顔になった。
「……ああ。そこは俺の甘えだ。正直、お前の迷惑をあえて考えずに、
最初の最初で自分の楽な方を選んでしまったきらいはある。済まない」
ぎゅっと抱き締めてくる。本当に申し訳なく思っているのが伝わってきた。
不意に、胸が締め付けられるような感じがあった。こういう重い空気は慣れてない。
何か、返事しなきゃ、と思った。
「……あのさ。私が誘ったからってところも、ある?」
言ってからすぐに後悔した。何で私はこう、自ら退路を断つようなことを言うのか。
「ああ。その辺のお前の覚悟を、真剣に受け止めた、つもりだった。
だが、それが結果的にこうなるんだったら、俺は踏みとどまるべきだったんだろう。
本当に……済まない」
「……」
この男はこういうところで本当に素直で、本当に冷静で、本当に誠実で、本当に、
本当に嫌になる。
「……何をしている?」
私は彼の上に馬乗りになってのしかかっていた。
「続き」
「続き?」
言ってる意味が分かってないらしい。
「さっきの続き」
「続きってお前……正気か?」
「正気じゃないわね」
まだ下半身がひりひりする。だが、最早そんなことはどうでもよくなっていた。
再び涙が溢れる。自分の感情に耐えられなくなっている。
こんな状況で交わるなど、正気の沙汰でないことは分かっている。だが、
(全部、こいつのせいだ)
こいつには、責任を取る義務がある。
何もかもおかしくなってしまった私を、どうにかすることも含めて。
依然として固い彼のものを、無言で自分の中に受け入れた。
正直、じんじんと痛くて動くどころではなかった。彼もそれは分かっているのか、
私の腰に両手を添えたまま動かなかった。
ただ、彼と私の呼吸と鼓動が、そして彼のもののわずかな硬化と肥大が、動きの全てだった。
「正直、助かる……」
「それはお互い様だ。まさか第二ラウンドとは思わなかった」
ゆっくりと痛みが引いていく。わずかに擦れるたびにそこがうずいたが、
我慢できないほどではなかった。
彼の方は気持ちいいのだろうか。本当は動きたいのではないのか。
「動きたくないの?」
そんな余計なことを訊いてしまう。さっきから私は、本当にお馬鹿さんじゃなかろうか。
「まだいい。お前の痛みが引いてからだ」
「うん。ごめん」
「お前が謝るこたあないよ」
彼の表情が和らいでいく。
それからしばらくの間、私たちは、ひたすら無言で、小さな律動に身を任せていた。
「不思議だな」
不意に彼がつぶやいた。
「え?」
「さっきまで、まさかこんなことになるとは思ってもみなかったよ」
「うん」
私も思わなかった。そう言えば、元はと言えば、第二ラウンドは私が始めたのだった。
気がつけば、さっきまでの胸を刺すようなやるせなさが、いつの間にか薄らいでいる。
痛みもなくなってきていた。わずかな動きが、どことなく心地よいような気さえしていた。
「本当に申し訳ないが、この流れのまま、最後までやる。悪く思うな」
「……もう」
そんなこと、いちいち言わなくていい、とかそういうことを言いたかったが、言葉が出なかった。
無駄なことだ、とも思った。
動いていいよ、とは言わなかった。代わりに、眉を開いて、ふう、と長く息を吐いた。
彼はそんな私の表情を、長風呂でのぼせたような蕩けた瞳で見ていた。
「実は……」
彼岸からのつぶやきのような声が、私の耳に届いた。私も少しのぼせてきているようだ。
「そろそろ逝きそうだ」
「うん」
「動くよ。さっきの姿勢に戻る」
「分かった」
彼がゆっくりと起き上がる。私はちょうどそのまま、ベッドにふわりと柔らかく押し倒されていった。
最初は緩やかに、次第に激しく、彼が動いていく。
痛みはあったが、あえてぐっとこらえた。
「いいのか、おい」
「いいから、最後までちゃんとして」
「……」
彼が無言で行為に没入していく。汗が額ににじむ。苦しいとも切ないともつかない唸り声が聞こえる。
私もつられて、やはり苦しいとも切ないともつかない唸り声を絡めていた。
(切ない?)
確かに私も切なくて声を上げている。不思議だ。
彼の表情が微妙に変わっていく。苦しいとも切ないともつかない唸り声はそのままに、
牙を剥き、私の顔に目をひたと据えていく。
何となく、人の顔に見えなかった。
(……そうか)
彼の中の雄の獣の狂気が、ようやく本格的に頭をもたげてきたのだ。
覚悟はしていたはずだった。男は、こういうとき、愛も何も関係ない、
肉欲だけの獣になりうるということを。
不覚にも今まですっかり忘れていた。ということは、さっきまで彼がよっぽど我慢していたことになる。
だが、それでも、今の恐怖と嫌悪と虚無がなくなる訳ではなかった。
(人じゃない何かに犯されている)
最後まで人として扱って欲しい、愛して欲しいというのは、女のわがままなんだろうか。
肉体関係に肉欲が伴うのは当然のことだ。それを嫌がってもしょうがないのは承知しているつもりだった。
でも。でも。でも。
「俺は」
彼が不意に口を開いた。
「獣になる。お前も獣になれ」
「え?」
一瞬、ぎょっとした。心を読まれたか、と思った。
「俺は最後までやる。だから、お前も最後までついてこい、と言っている」
「……」
躊躇していると、彼が正に獣の笑みを浮かべて、こう言った。
「せっかくだ。最後の最後は、自分の中のものを全部解放した方が、きっと楽しいぞ。俺も、お前も」
獣が、否、悪魔がささやいている。
(そんなこと、私にできるんだろうか)
迷いながら、静かに首を縦に振った。
彼の笑みが、究極に邪悪なものに変わった。
わずかに人らしさを残していた目の色が、完全に人ではないそれに変わっていく。
激しい律動の最中、彼の目を凝視した。
肉を噛みちぎるような強烈な快楽の瞳が、私を射る。
(獣だ。獣だ。獣だ)
食われてる。食われてる。食われてる。
従兄が、私を貪って、その快楽に酔い痴れている。
不意に、小さな痛みが走った。彼がぐっとうつむいて、肩甲骨の上に歯を立てていた。
信じがたいことに、痛みを上回る強烈な甘い痺れが全身を貫いていた。
脳髄が焦げるような感じがあった。体が異様に重く感じられる。逃げられない。
下半身から何か生温かいものが噴き出しているのが、遠のく意識の中で分かった。
最早、律動とは関係なく、途方もないだるさの中に落ちていく。
地獄へ、落ちる。
(そうか。逝くって、こんなんなんだ)
死の淵を覗き込む行為に似ていた。こんな途方もない境地を、なぜ人は望むのか。
(でも、解放感はあるな、確かに)
これを楽しいと言い切れる彼の気持ちは、ほんのわずかだが、理解できなくはなかった。
わずかに、肩甲骨の上に、生温かく柔らかい感触がある。彼が噛んだ跡を舐めているのだ。
ぼうっとした瞳に、彼の目が映った。主人の顔を舐める飼い犬のように、優しく甘えた瞳だった。
どうやら私は、激しい動きではなく、むしろそういう小さな変化に敏感になっているようだった。
彼が口を肩甲骨から離すと、律動を再開する。
次第に、彼の周囲が、ふわりと毛羽立って見える。
瞳の中に、不思議な色が見える。牙を剥いたまま、微妙に表情がまた変わる。
奇妙なことだが、怯えているように見えた。
(何に、なんだろう?)
何となく思い当たる節があった。さっき、私が噛まれたとき、全身を貫いた快楽。
あれは、望ましいものというより、どこかしら避けるべきおぞましいものがあった。
自分の意思を離れた凶暴な感覚。たとえ、それが快楽であれ。
自分が失われる、その前兆の予感。
「ううう……」
彼の声に、明らかに悪寒めいたものが混じった。素晴らしいがおぞましい、何らかの感覚に耐えている。
その恐怖がどんどん大きくなっていき、やがて瞳から、声から、顔全体に拡散していく。
「……くっ!」
愕然とした表情を浮かべた後、何かに耐えかねたように目を閉じる。
次の瞬間、私の中に、生温かい感触が注ぎ込まれていた。
(あ……)
どろどろになった私の全身の毛穴から、彼の精が隅々まで染み込んでいくような気がした。
全身に、ぶるっと、大きな震えが走る。
精の中に、自分が溶けて、ずぶずぶとどこかに沈み込んでいくイメージがあった。
(二度、逝ったんだ)
意識を失う中、彼の姿が網膜に焼きついた。
深くうつむいているその姿は、どこかしら、祈りを捧げる姿に似ていた。
(それにしても、男って、大変なんだなあ)
うかつにも、それが意識を取り戻した直後の、率直な感想だった。
精を全部吐き出したのか、彼の体からオーラが消えた。
同時に、さっきまで目まぐるしく変化していた表情が、拭ったように消えていた。
放心したまま、わずかに体が崩れる。
私の上に崩れ落ちる直前で、がくり、と彼の体が硬直した。そのまま無理やり体勢を立て直す。
物憂げに腰を離す。白く赤く半透明に濁った液体が、糸を引く。
彼はポケットに手を突っ込むと、ティッシュで丹念に結合部位を拭き出した。
(うん。大変だなあ)
下半身がひりひりする。だが、私は意外にも、不思議な満足感に浸されていた。
(やり遂げた)
彼の中の、混沌とした凶暴な熱情を、全身全霊で受け止めたという実感がある。
彼が私に服を着せる。私の肩を抱きかかえたまま、また難しそうにブラのホックをつける。
「いい。自分でやる」
何だか微妙にズレているパンツを直しながら、私は彼に背を向けたまま、落ちている服を拾った。
「あのな……」
彼が何か言っているので、振り向いた。
「何?」
「ごめんな。ありがとうな」
結局、謝った。彼の性格から、そういうことをする気はしていたのだが、
「ごめんな、は余計だわ。謝るくらいなら、最初からやるな、ってさっき言ったでしょ」
彼は気まずそうに笑ってうつむいた。
「……そうだな。二度と言わない」
「ふふ。それじゃあ次に何か、もっととんでもないことされたときに困るわ」
すると、彼は神妙な顔で、こう言い放った。
「……するかも知れないなあ」
「……おーい? 何をサラリととんでもないこと言ってやがりますかこの男は?」
「いや、したい。お前と、また、いつか」
「……おーい」
本当に、この男は。
全く、しょうがないんだから。
服を全部着終わると、私は彼を、不意打ちの形で、飛んで押し倒した。
「うわっ! 何だ!」
「えへへえ。そういうこという口は、こうだから」
ちゅーっと、奥深くに舌を突っ込んで、吸った。
「お、お前……」
唇を離すと、悪戯っぽく笑ってやった。
「これで、仕返し終了。チャラにしておいてあげるわ」
彼はまたしても呆れたような顔で口を拭うと、私の頭をつかんで引き寄せた。
「わっ?」
「チャラになんかされてたまるか。借りは作ったままにしておく。返すのは次の機会だ」
さらに奥深くに舌を突っ込まれて、吸い返された。
「……えっへっへえ。そういうことするんだあ」
「ふははっ。そういうことするんだよ」
「あはははは。次まで待ってろって訳?」
「ははははははは。そういうことになるなあ」
こいつ。
私を、こう、犯したくなったこいつの気持ちが分かった。
私も、今、全く同じ気持ちだ。
私は彼をさらに押し倒した。抱き潰す勢いで、強く、深く。
「次までお預けね」
「ああ。次までお預けだ」
「ふふん。待ってるわよ。次は容赦しないから」
「待たせるよ」
「鬼。悪魔。獣」
「どれも否定しない。だが、俺を押し倒している人間の言うセリフじゃないな」
彼は足を上げると、振り子の原理で私の体ごと起き上がった。
その勢いで、私をさらに痛いほど抱き潰し、唇をきつく吸った。
傷つけ合っている。
傷つけ合いながら、お互い貪り合っている。
犯し、犯され合っている。
こんなのって、ない。
こんな危険な狂った関係、あってたまるか。
私の下半身から、ごぼっと音を立てて、残っていた液体が溢れた。
「帰るわよー」
叔母の声が聞こえ、二人してビクッと震えた。
「やばい。戻るぞ」
「うん。ちょっと待って」
慌ててパンツにティッシュを挟んだ。やはり汚れている。後で秘密裏に処分しなくてはならない。
「今行く。ちょっと待ってくれ」
彼は私の手を引くと、部屋を出て階段を降りた。
彼はまた見事によそ行きの表情を浮かべて、丁重に私と母に挨拶をした。
私はまた、最大限よそ行きの表情を浮かべて、丁重に従兄と叔母を見送った。
頬が歪むのを、必死でこらえて。
体のあちこちの傷がうずいた。下半身、肩甲骨、手の甲、唇。
彼との、悪魔の契約の印。
逃れられない。
彼と再び出会い、あの獣のような交わりに溺れることを。
彼の欲情に屈し、犯され、貪られ、傷つき、穢されることを。
祈っている。
祈っている。
祈っている。
あとがき(超簡素版)
女の子が思い出していた漫画は、「シグルイ(9)」と「とりぱん(たしか3)」です。
「シグルイ」は残酷武士道漫画で、「とりぱん」はほのぼの田舎野鳥動物漫画です。
我ながらよく分からない組み合わせですね。(ていうかあとがきじゃないなコレ)
>>183 リアルタイムktkr
GJっす(*´д`*)
GJ。感じました。
ただ途中までは普通に面白かったのに後半から
話(というか二人の会話)がいまいちわからなかった。
当方♂ですが、面白かったです。
陵辱ものなのに男キャラがややいい人なところはアレですが、マイルドになっているとは思います。
ところで、作者さんってゲーマー?
今回の題名とか、今までの作品の中のオチのフレーズで、どこかで見たようなネタがあるんですけど。気のせい?
teacup illusionの人だ!
A-Kさんの書くお話は私の好みど真ん中にストレートで入ってきます。
作品全体に漂う雰囲気(?)がたまらなく好きです。
最近久しぶりにteacup〜を読み返したばかりだったので興奮気味…
同じくBaroqueも好きでした。
A-Kさんのはエロシーンが独特で面白い〜。
今回のは凌辱風だけど凌辱じゃなくてw、GJっす。
ヒロインはツンデレ風味ですな。
ごめん、無粋だとは重々承知しながら、
避妊の方はどうだったんだろー
と思ってしまう自分がいた。。。
雰囲気とか文体とかは好みでしたー。
あとがき(もうちょっとまともな)
今回はちょっとリアルの方で大変だったので、
書くのに一週間かかってしまいました。
『Baroque』は丸一日、『teacup illusion』は三日だったことを考えると、
どんどん遅くなっています。マズイですね。
本当に色々キツかったので、
「おかしい! 参考資料の某女性作家のエロ漫画が参考にならない! (何やってんだか)」とか、
「女はツンデレ! 男は素直クール! 二人合わせてヤンデレモード! (上手くいってない)」とか、
「今回のBGMは『レイディアントシルバーガン』のサントラにしよう(シューター)」とか、
そういうよく分からない悲鳴を上げながら書いていたような記憶があります。
今回は、元某大生・元SE・元同人作家の知人の男性にバシバシ添削されました。
(前二作の男性キャラのモデルです)
「男がクズすぎる。こんなのにやられる話を喜ぶ女性読者がそんなに多いとは思えない」とか、
「女がリアルじゃない。嫌悪感に切実さがない。メリハリに欠ける」とか、
「女もある程度肉欲に溺れてないと、感情移入する女性読者が辛くなるだけなんじゃないのか」とか、
まあ、メチャクチャ参考になりました。(多分彼の好みの問題もあると思いますが)
今回は彼の協力がなければ(しょっちゅう世話になってるけど)、もっと時間がかかっていたか、
多分途中で投げ出していたと思うので、大感謝です。
仕事が落ち着いて、心に余裕ができて、何か思いついたら、また何か投下します。
ではでは。
>>184,187
ありがとうございます。
>>185 まとめサイトの方だと思いますが、早急な対応、ありがとうございました。
会話については、確かに説明不足が数点見受けられました。次は気をつけます。
>>186 マイルドになったのは、女性読者重視のためです。
『Baroque』は『斑鳩』、『teacup illusion』は『レイクライシス』ネタを入れています。
(というか、このスレでそんなところまで読んでる方がいるとは思いませんでした)
>>188 私も元同人作家ですが、いわゆるツンデレや素直クールやヤンデレについて
あまり分かってないので、「こんなのかなー」と試してみたという側面はあります。
ツンデレは書きやすいですね。作り手や受け手の間で流行るのも分かる気がします。
>>189 本当は「妊娠のリスクに気づいて三か月ノイローゼになるくらい悩む男役」とか
やりたかったのですが、話全体との絡みを考えると読後感が悪くなるので、
今回はバッサリカットしてしまいました。ご了承ください。
192 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 04:33:07 ID:2Wdi8KzO
弁明じみた後書きも添削してもらったらよかったんじゃないかな
それにしてもこんな長い後書きいらんだろ…
どれだけ作品が良くてもこれは萎える
195 :
186:2007/11/05(月) 09:04:17 ID:kpUWYZkZ
やっぱりゲームネタだったか。
作者さんには次はアホの子キャラにチャレンジして欲しい。
196 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 10:24:42 ID:rWDSm0iO
黒澤君、期待アゲ
198 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 22:06:54 ID:nbaxp+iY
黒澤くんにマジ萌え!
作者さんGJ!
ゆっくり充電して続きを是非vv
繭と黒澤君のことで頭がいっぱい。
早く続きを!
催促するようなレスは控えましょう
催促する気持ちはすげーわかる
話うまかったもんなー
読んでて、何だか高校時代のことを思い出したよ。
あの頃は良かったな。
まゆちゃんも黒澤君もいとおしいよ。
黒澤くんに惚れました。
クールな男の子がたまに見せる激情っていいよね。
首を長くして待ちながら保守
206 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 23:45:53 ID:DBeu2rM1
黒澤君期待age
プレッシャーをかけてはいかん
他の書き手さんも投下しにくいだろうし
他の職人さんもお待ちしています
ごめん、つい。
誰でもいいから投下お願いします
うぜーw
212 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 08:23:14 ID:ttJM568v
ほ
げ
投下待ち
香織のメイド日記 きぼんm(__)m
216 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 17:58:17 ID:zm3BMbWx
☆
過疎ってますね
なんでだろうね
いつもこんなもんだ、マターリ
もう来ないのかな?
期待してます
エロ薄めでよかったら投下しますが…
ばっちこーい
224 :
無題:2007/12/03(月) 21:15:12 ID:mNzvJ3+G
「頼むッ! 恋人になってくれ!」
土下座までするソイツを見て私は踊りだしたいような高揚感に包まれた、と思う。
もちろんそれはおくびにも出さないというか出せないというか。
私たちは幼馴染、というだけでアイツにはいつも好きな女の子がいたし、
私は『一番仲良しの女子』というポジションを崩さないように自分の気持ちを封じ込めていたから
アイツの毎度毎度の恋愛相談にも快くのっていた。
なのに。
「頼むよ。恋人になってくれよぅ」
「どうしたの? とりあえず土下座はやめて、部屋で話そっか」
目の前で起こっている出来事が夢でも覚めないで欲しい、そう願いながら
おそるおそる事情を聞くことにした。
「来週ウチのガッコの学園祭があるんだけど……ダチ全員彼女連れてくるって言うしさー」
「この前告白したミクちゃんとかいう子はどうしたのよ」
「その日は本命の彼氏のガッコの学園祭なんだと」
「それって……」
「うん。 いや、俺がね、本命じゃなくてもいいから付き合ってくださいって告白するときに言ったんだけど」
「自業自得じゃん」
「うん。 だからちー子、頼むッ! 恋人になってくれ!」
……それは。恋人じゃなくて学園祭で自分だけ一人なのが恥ずかしいからってことじゃないの。
「頼めるのお前しかいないんだよぅ」
「もう、情けない声出さないでよ。はいはい、わかりました。学園祭に一緒に行けばいいんでしょ」
「やった! さすがちー子様!」
「お昼ごはんとおやつ、ぜーんぶアンタのおごりよ?」
「もちろんでございますぅぅ」
ウソの彼女だっていい。アイツの彼女として側にいられるなんて、ずっと願ってきた夢みたい。
だから当日、私はケバくないように、でもしっかりとメイクをして、髪もしっかり巻いてセットした。
アイツが友達に「女を見る目がないヤツ」と思われないように。
もしアイツの友達に話しかけられたらおとなしめでいよう、とか無駄に好印象プランを練りまくって。
「すげえな。本当に女の子みてえ」
迎えに来たアイツの目が丸くなってるのがわかる。
「はいはい、どうせ普段はオッサンですよ」
「や、違うって! かわいい! かわいいよ」
ぶーたれる私をなだめようと必死に私を褒めてくれるのが、嬉しい。
にやけそうになる顔を必死にこらえているだけなのに、アイツはまだ一生懸命褒めてくれる。
「どうせだから」
「え?」
「手、繋いで行こっか。 せっかく恋人同士なんだし」
ななな、なんで今日は積極的!? うろたえる私に
「そういや昔はいっつも手繋いでたな」
「それはアンタがすぐ迷子になるから……!!」
わあわあ騒ぎながら電車に乗って、アイツの通う学校に着く頃には私たちは恋人になっていた。
たこ焼き、ホットドック、クレープ、おしるこ、カレー、カキ氷、おでん……
模擬店を各個撃破していると、うきうきした気分で満たされてくる。
当たり前だ。お祭り気分というだけじゃなく、模擬店に行っても展示を見に行ってもアイツの後輩が出てきて
「先輩の彼女さん、キレーっスねー」
と言って私を褒めてくれる。社交辞令にしろその言葉はアイツの彼女としての私に向けられた言葉だ。
ずっとずっと願ってやまなかったその立場に自分がいる。
ウソだけど。
一日だけだけど。
心の奥に刺さった棘がチクンと痛んだ。
「あれ?」
アイツがいない。私がよそ見してる間にどこかへ行ってしまったんだろうか。
子供の頃いつも迷子になって泣いていたのはアイツだった。
今は図体だけはデカくなったけど。
そんなことを考えていたら急に寂しくなって、泣きたいような気持ちになる。
賑やかなお祭りの中でただ一人置いていかれているのは自分だけだ、というような。
「ちー子! すまん、知り合いにつかまってた」
背後から不意に懐かしい声が響いた。
「どこいってたんだよ。ちー子が迷子になるなんて、らしくねえぞ」
「ごめん……」
泣きそうなのをこらえるには、あまり喋らないほうがいい。
「いや、こっちこそごめん。ちー子にとってはアウェーだもんな。ずっと側にいなかったオレが悪かった。
やっぱり手ぇ繋いでよう」
こっちの気持ちはお見通しみたい。今日のアイツは妙に冴えてる。
お腹がはちきれそう。甘味の屋台を巡るのにもそろそろ限界だ。
「少し休憩するか」
アイツの言葉に私は素直にうなづいた。
私の手を引いたアイツは人ごみに逆らって校舎の中を奥へ奥へ、人気のないほうへと進んでいく。
「美術準備室」と書かれた部屋の前でアイツの足が止まった。
「ここの窓、鍵が壊れてんの。ちょっと待ってて。ドア開けるから」
そう言うとアイツは泥棒みたいに窓から部屋に入っていった。
ドアを開けてもらって入ったその部屋は埃っぽくって、それでいて落ち着きを感じさせる空間だった。
デッサン用の石膏像や描きかけのキャンバスもあって雑然としているけど、かえってそこが落ち着く、みたいな。
「コーヒー飲むか?」
「うん」
そう言うとアイツは教員用らしいコーヒーメーカーを使ってコーヒーを淹れてくれた。
「慣れてるのね」
「美術部にもダチいるし、よく来るんだ」
「ふーん」
私の知らないアイツ。
「そういえば、ちー子昔はコーヒーダメだったよな。今は大丈夫なんだな」
「……今も得意じゃないけど」
「ゴ、ゴメン」
「謝らなくていいわよ」
「今キスしたらコーヒー味だな」
不意をつかれて私はフリーズした。
アイツはそのまま何も言わずに私の髪に手を伸ばした……そう思った瞬間にはキスしていた。
「イヤか?」
それはコーヒー味が? キスが?
返答に困っていると、もう一度キスされた。
今度はいわゆるディープキスというやつ。
もうコーヒー味とかそんなの全然わからない。心臓がバクバクする。顔もきっと赤かったと思う。
「……ゴメン」
長いキスの後、最初に口を開いたのはアイツだった。
なんで? なんで謝るの? そう聞きたかったけど、何か怖かった。
「今日ちー子と一緒にいてさ、スゲー可愛いと思った。で、さっきの顔見てたら、つい……キスしたくなったんだ。
だけど、お前の気持ち無視して本当にゴメン! 形だけの恋人って約束、忘れてた。」
え? え? それって……どういうこと?
「今の、忘れてくれ」
「忘れられるわけないじゃない。ファーストキスなのに」
「ウソだろ」
「本当。ついでに言うと、ずっとアンタのことが好きだった」
隠していた想いが堰を切ったようにあふれ出してくる。
「ウソでもいいから恋人になれて、嬉しかったの。デートできて、めちゃくちゃ嬉しかった」
「「恋人になってください」」
重なる、声。
投下乙
とりあえずガリレオ終わったらゆっくり読みます
引き寄せられて、抱き合う。
何度キスしたか途中で数えるのを私はやめた。
「やべえ」
「どうしたの?」
「いや……」
アイツの目線の先には、膨らんだズボンの股間。
「お前を抱きたい。ケーベツされるかもしれないけど、お前のこと好きだからこうなっちゃったんだもん」
「今、ここで?」
「できれば。お願いしますちー子様」
哀れっぽく言うその姿に思わず笑ってしまう。
「初めてなんだからね」
「じゃあ手でお願いします」
「いいけど。私、その……初心者だから、うまくできるか自信がないんですけど」
椅子に腰掛けてズボンとパンツを下ろしたアイツの姿は、傍目に見るとややマヌケだったと思う。
けど、私はそんなことを考えている余裕もなくて、目の前に出されたソレの存在感にただただ吃驚するばかりだった。
「どうすればいいの?」
「キツく握って。大丈夫だから。で、上下に動かしてみて」
言われたとおりにやってみたつもりだけど、よくわからない。
アイツの顔を見てみたけど、アイツが嬉しそうな顔して私を見ているのに気がついて目をそらしてしまった。
勢い、ソレだけに注目している状態になってしまう。
気持ち良くなってくれますように。それだけを感じながら懸命に手を運動させる。
「たまんねえ」
感極まったような声を吐くアイツに運動は中断させずに問いかける。
「気持ちいい?」
「なんつーか、このぎこちなさといい、初々しくて最高です!」
でも、男の人の「おわり」にはまだ達しそうもない。
私は思いきって、いつか見たHな漫画を思い出しながらソレに唇をつけた。
「わ、わっ! ちー子っ」
「嫌? 気持ち悪い?」
「いや、スゲー気持ちいいんですけど……無理しなくていいんだぞ」
「大丈夫」
最初はキスの雨を降らせるように。徐々に大胆に舌を絡めてゆく。
思い切って口に含んでみる。
「いい。スゲーいいよちー子。そのまま上下に動かせるか」
リクエストどおりに自分が行動できてるかは自信がなかったけど、気持ちよくなってほしい一心で何でもしてあげたいような気持ちだけが私を動かしていた。
クチュクチュ、ピチャピチャという湿ったいやらしい音とアイツの吐く息、それに私の心臓の鼓動だけが時間の流れを表していた気がする。
「ちー子」
呼び止められて顔を上げる。
「もう、いいから…… ティッシュ取ってきてくれ」
「ん」
戻ってきたときにはアイツは息を荒げて、辛そうな苦しそうな顔をしていた。
「手のひら、ここに当てて?」
訳がわからないまま先端に手をあてた、と思ったら
「「!!」」
精が放たれた。
「ゴメン。本当にゴメン」
「謝んならすんな」
冗談交じりに憎まれ口をたたく。
「でも、本当に気持ち良かった。ありがとな」
「ん」
「愛してるから」
「ホンマかぁ〜?」
思わず関西弁でツッコミを入れた。
「ずっと…」
「「そばにいてください」」
この瞬間は、ウソじゃない。
(完)
乙す
読みました
初々しくて良い感じですが、もうちょっと「人が来たらどうしよう」的なドキドキ感も欲しかったなぁと思います。
この二人の初エッチも読んでみたいなーと思います。
気が向いたらまた書いてくださいねー
231 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 02:04:33 ID:8012KFsF
乙です!
テンポよく読みやすかったです
ただこの流れでは、ちー子がセフレにされるんじゃないかと心配になったw
嘘の恋人だと友達にばれてちー子争奪戦とか、性欲以外に♂の愛情が見えるエピがあったら
エロも萌えも高まると思いました
キャラと状況設定と長さがうまくバランスして理想的。
読んでて気持ちよかったよ、GJ。
乙!かわいい話で良かったです。
この長さの話に盛り込むのは大変だと思うけど、
男の子→ちー子なところがあったら、なおGJでした。
微エロにも満たない微エロですが…
電気を落とした部屋は寒い。
その中で彼女は自分の布団だけが嫌に暖かいのでなかなか寝付けないでいた。
「はぁ…熱い…」
もぞもぞと布団から顔を出すと黒く冷たい空気がひんやりと頬に気持ちいい。
毎日寒い日が続いたにもかかわらず…と、彼女はうたたねをしてしまった事に後悔をした。
ため息をついたらうとうとと眠れそうな気がする。
ふぅと一つ息をはいたらすばやく布団の中をくぐる音がして、背中にひんやりとした感触がひたついた。
「ちょ…何してるんですか!」
「冷え性で寝付けないんでな」
彼は彼女の背中から手を離すと狭い布団に潜り込み、暖かい寝巻きに唇を寄せた。
「言ってる意味が…」
分かりません、と繋ごうとした唇を無理やり塞がれた。
強引に引き寄せられた首の痛みと共に、彼の冷たい体のにおいが首筋をのぼってくる。
「ん…!」
身じろいだ隙に、寝巻きのすそから冷たい手が入り込む。
その冷たい感触だけでぞくぞくとしたものが背中を走るのに、彼の指は胸を執拗に攻め始めた。
「んぅ、ん…ぁ!」
声が全部舌に吸い込まれて消えていく、たっぷりと蹂躙された後ようやく唇が離れた。
「か…風邪感染りますよ」
「お前の弱っちぃ風邪なんか感染らねぇよ」
そう言い終わらないうちに彼女の熱い首筋に軽く歯を立て、親指で突起をいじる事に専念する。
「あ、いや…んっ」
彼女の細い指が力なく彼の肩に抵抗するが、彼の舌はいともゆっくりと首筋から鎖骨に伝い、胸の先までたどり着く。
「熱いな…」
「だめ、ですってば…!」
痛みと痺れるような快感が胸の先からちりちりとうなじまで上ってくる。
まばたきですらも高熱を感じさせる、もう良いだろう?と呟いて、彼は手を火照る彼女の下半身へと伸ばした。
次の日
「ゴホッ」
「あー、やっぱり風邪ひきましたね」
「ひいてねぇ」
「ひきました」
「ひいてねぇ」
「ひーきーまーしーた!」
―――――――――
以上です。
実際、風邪の時は本当ダメらしいですね。
携帯からな上、短くてすみません。
224です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
書くの久しぶりというか、以前一回書いたっきりだったので自信がなかったんですが
反響がかえってきて嬉しかったです。
言われてみれば確かに、恥じらいの無いバカップルですいませんw
(実は最初の構想ではちー子の経験&知識不足にアイツがつけこんで
最後までヤってしまう…という展開だったのですが、
さすがに初体験でどんなプレイだよwということでこういう風になりました。)
アイツの心理描写が甘かったのも、確かにそうですね。
今読み返すとアイツが自分の手でフィニッシュまでもっていく描写も入れ忘れてた… orz
次は頑張ります。
238 :
377:2007/12/14(金) 17:38:48 ID:VzljUG6Q
お久し振りです、投下します。
ちょっくら長いです。
ていうか、あいつ嫌いだ。
男の癖に私より顔がキレイで髪がサラサラだし。
勉強出来るし運動出来るし、センスとか全然無いけど、もてるし。
性格イヤミの癖に人望あるし、家は金持ち。なんだこの完璧超人。
…ひがみなのか?と自分も思ったし、他人にも本人にも言われた事ある。悩んだ事もあ
る。けど、今は―――というか、小学校2年生くらいでもう悟った。単純に嫌いなだけで、
あいつがブサイクだろうが貧乏だろうが、きっと変わらなかっただろう、と。
なので、一緒にいると精神衛生上悪いから離れようとしたんだけど…
なんか知らんけど、今度はあいつがわざわざ私に突っ掛かって来るようになった。
用も無いのにわざわざ寄って来てイヤミを言って来るし、変な技掛けてくるし…
あいつとは、ただ単に本当に相性が悪いだけじゃなく、きっと前世は巨人ファンと阪神
ファンか源氏と平家かLAWとCHAOSか何かの、争うべき立場だったんだろう。
―――いや、ホントのホントに自分でそう思っていたんだけど。
「…?」
現在、時刻は9時43分。ドラマのちょうどいい所でチャイムが鳴った。イラっとしな
がら、覗き窓から来訪者の顔を見る。どうせ酔い潰れた工藤か、ケンカして来た三沢だろ
うかと思っていたけど、アラ勘違い。
「え?マジ?」
顔が引き攣るのがわかった。だってそこには、あいつが―――立てば悪口、座ればイヤ
ミ、歩きながらのブレーンバスター、最早自分で何を考えているかもわからんくなるくら
いに嫌いなあいつ、千田昌平の野郎が。
「すいません、どちら様ですか」
とりあえず、他人のフリをする。バレたら妹が来てるって事にしよう。
『…先に言っておくが、お前に妹はいない』
バレるどころの話ではなかった。
くそ、人の行動パターンとかも逐一読みやがって…私は負けたと思ったので、ドアチェ
ーンは外さずに戸だけ開ける。あれか、何かの罰ゲームとかか?
「…なんだよ。これ以上は開けないし、入れんぞ」
こいつの性格を考えて、爪先も入らないようなくらいちょっとだけ開ける。
「ふん、俺だってお前の部屋になんぞ入りたくも無い」
「じゃあ帰れ」
そう言って、ばたん、と閉めてすぐに鍵も掛ける。ドラマは頼まれて録画してあるから、
テレビを消して寝てしまおう。そう思ったのに。
ぴんぽーん、ぴんぽ、ぴん、ぴん、ぴん、ぴんぽーん。
…千田の癖に、中々切羽詰った?状況なようで。私はちょっとだけ優越感を感じながら、
とりあえず『うるせー、死ね』と、メールを送る。すぐに返事。『黙れ、お前が死ね』。よ
っしゃ、私は更に返信『あーあ、傷付いた。せっかく入れてあげようと思ったのに』と。
送ってすぐに電話が掛かって来た。
『最初からそんな気も無い癖に言うな!!』
名乗らずに、怒った声で叫んですぐ切れた。ていうか、何がしたいんだこいつ。私は携
帯の電源を切って、さっさと寝る準備に掛かる。が、またチャイムが鳴る。くっそ、こっ
ちも電源切ったろかと思いつつも、ここまでしつこいと気になって来てしまう。
「用件だけ言え」
根負けして、私はさっきと同じだけドアを開いて言った。
「お前は来客に対して」
「閉めるぞ」
まずイヤミかよ、と思ったけど、こっちが今は上なので、強気に被せる。珍しく悔しそ
うな顔をしていた。
「…入れろ」
「断る、嫌だ、絶対に嫌だ。死んでも嫌だ」
即座に断る。ふざけんなバーカ。なんで嫌いな奴を部屋の中に入れなきゃいけないんだ。
まあ、こいつが私に何かする、というのはプロレス技かイヤミ言うかくらいで、なんつ
ーか、ホレ、そういう事したいってのは、限りなくZeroどころかマイナスだろうけど。
うう、なんか一瞬そういう『へっへっへ、もう逃げられないぜ』『きゃー、いやー、おか
あーあさぁーん』『観念しなー』『ああぁ〜…』ぽと。(←椿かなんかの花が落ちる音)…と
か想像して、マジ寒気がして来た。自分の想像力の貧困さにも泣けて来た。
千田は私の顔を見て、やっぱり同じような想像をしたのか顔を引き攣らせながら。
「安心しろ、お前をどうにかするくらいなら工藤をどうにかする方がまだいいしい楽だ」
「…どの工藤だ」
因みに、工藤は三人いる。
「三人全部だ」
「ハゲて死ね」
ばたん、と閉める。もう開ける気は無い。けど。
「―――っ!?」
ドアを開ける音。
しまった!鍵忘れてた!でもドアチェーンが、とか油断していたら相手の思うツボ!!
「…俺を入れんと、借金取りの真似事をするぞ」
この野郎、何が目的かは知らんが強行手段飛び越えて脅しに掛かってキヤガリマシタ
ヨ!ていうか、ここまでアレだと、なんか必死に見えて来る。とりあえず趣味の悪いグラ
サン掛けて発声練習してやがる。
ま、こいつは本気で私に何かしようとかは無いだろうしな。いやいやホント。
物凄く嫌だけど、恥をかくくらいなら、と私はこのバカタレを部屋に招く事を決めた。
「さて、なんの用だ。すぐ死んでくれるとありがたいけども」
「お前が先に死ね」
ふん、とでかい態度でそっぽ向くけど、なんとなく若干いつものキレが無いような気が
する。とりあえず何か飲み物でも…
「冷えた豚汁と水道水、どっちがいい」
「あっためろ」
ツッコミは一応機能している。若干、震えている…のか?本当に、犬猿どころか軍鶏VS
軍鶏みたいな関係の私の家に来るって、本当にどういうつもりなんだか。とりあえず、指
差して笑うのは、もう少し情報入手してからだな。とりあえずは油断させるか。
「ほれ、生ぬるい豚汁」
あっつあつにしては、逆に罠かと思われる。なので、中途半端に油が浮いてぬるい豚汁
を湯飲みに入れて渡した。イヤーな顔しながら、でも一応飲む千田。ほっと一息ついた所
で、湯飲みを机の上に置いて…なんか、急にいつもの横柄なオレ様千田に戻る。
「よし、出てけ」
私は改めての挨拶代わりに玄関を指差す。が、千田は動かない。
「ふん、相変わらず礼儀がなってないな。この俺がわざわざお前の掘っ立て小屋に来てや
ったんだ。丁重にもてなせ」
…やっぱ、こいつにいつものキレは無い。ボケが甘い。ここは掘っ立て小屋じゃない。
立派な賃貸マンション、しかもこいつの親の持ちもんだっつーのに。
普段の千田なら、こういう細かい所で突っ込まれるようなボケは放たない。因みに、な
んで私がこいつの親のマンションにいるかっていうと、こいつの親とは仲良しだからだ。
まあ、実家近いし、親の前じゃ千田もいいこちゃんぶってるから、それに乗って仲良し
でいると物凄い形相で千田が睨んでくるから面白くて面白くて。
結果『貴枝ちゃんがお嫁さんになってくれればいいのに』と言われている現在。
…おばちゃんには悪いけど、それは多分無い。ま、それはさておき女の子のひとり暮ら
しはこのご時世危ないという事でイイお値段で部屋を借りている訳だ。
で、こいつなんだけど。
「お前、おばさんに言うぞ。このマンション掘っ立てとか、夜這い掛けに来たとか」
あまりに私に優位過ぎる状況で威張ろうったって、土台無理な話なのに。やっぱおかし
い。ここはひとつ、大人な私が降りてやるしかないのだろうか。
「…ふん、俺がお前を夜這いだと?」
「うん。変なグラサン掛けて、私がお前に借金してるって嘘言いふらすとか脅し掛けて部
屋に入って来るって…立派に親御さんに言える」
だから、馬鹿だなあ。問題はお前の気持ちじゃなくて、歪曲も何もしていない事実を伝
えられた側がどう思うかって、今は思い付かないのか。
「―――もう。まあいいや。馬鹿話は後だ。用件言え。今からスーパー真面目タイム。茶
化しは無し」
これ以上はもう、ただの繰り返しになる。有益な情報も手に入らない。私は姿勢を正し
て、千田の顔を見る。千田もスーパー真面目タイムと聞いて、ようやく我に返る。
「…お前、霊とかそういうの、信じる方か」
お前、宗教走ったんかい。と、すぐさま口をついて出そうになったけど、止めた。なに
せ今はスーパー真面目タイム。元はスーパーのタイムセール品を両方のお母さんに買って
来いと言われ、その時だけは争いなしで協力し合う時の言葉だったんだけども。
「…私は、そういうの感じた事無いけど…信じるかっていったら、ちょっと信じる」
ちょっと、と、親指と人差し指をくっつけて、1cmくらいだけ離す。ほっ、と千田は
安心したような顔になる。
「―――工藤の新居、行ったか」
「え?うん、行った。高校ん時から住みたいって言ってたし。自分らがゲットするまで場
所とか教えてくれなかったから、興味あったし。あそこいいよね。すっごい住みやすい」
でも何故か、そこには工藤の内2人しか住んでいない。別にいいんだけど。
はん、と、なんか鼻で笑われた。スーパー真面目タイムなのに、カチンと来た。私は千
田を睨んでやる。けれども意に介さず。
「―――ふん、やはりな。お前みたいな鈍い人間にはわからんか。工藤達もお前レベルだ
からこそ、あんな所で住めるんだろうがな」
「そんな事より、お前が言うと工藤が結婚したみたいだな」
わざと、話の腰を折る。先にルール違反したのはそっちだ。商談not成立だ。
「で?鋭い千田様はなにがおわかりになったんですか千田様。ご自慢が終わったら早急に
お帰り下さいな」
べー、と舌を出す。ホントにこいつ嫌い。ていうか工藤も水沢もなんでこいつとつるん
でんだかわかんない。まあ、あいつらもお世辞にも性格がいいとは言えないけどさ。
「…つまりだな、俺はお前と違っ」
「寝言は寝て言え、この珍滓が」
つまり、の時点で被せてやったわ。
そして、ルール違反は見逃してやる。こいつ、おかしい。支離滅裂にも程がある。同じ
事を短時間に何度も言いやがって。もう本当におかしい。
私は冷蔵庫に走り、中からマヨネーズを取り出し、蓋を開けて顔に突き出す。
「単刀直入に何があっただけ言えええええええええええええ!!」
「工藤の家でめっちゃ怖い幽霊が出てこっち向かって来たんで逃げてきましたあああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
眼球に刺さる勢いで突き出したのにマジビビリしたのか、絶叫してくれた。
そして、今がチャンスと思い、私はマヨネーズの蓋をしめて、指を差して。
「っはん」
と、鼻で笑った。
けれども、一旦その恐怖っつーの?開放してしまったらもう抑え切れなくなったのか、
私の嘲りをスルーして、顔をみるみる青褪めさせて変な動きをして語り始めてしまった。
「だからな?カラオケ行って遅いから工藤ん家呼ばれて、コンビニ新商品祭しようって話
でさ。俺は普段そんなコンビニのもんなんか食べないだろ?もうすっげぇ食いたくて、そ
んでもって家入った瞬間だよ、なんか、首がそこまで曲がっちゃいけないだろ確実にって
くらい曲がってスーツで血塗れの頭髪の不自由な30代から60代のオッサンが、俺の方
だけ見て、眼が合ったら一目散に追いかけて来て、俺、全力で走って全力疾走して、気が
付いたら、その…ここに」
ガクガクと変な動きして、大分変な日本語で状況説明してくれた。
「あ、だからさっきからお前のコートに血ぃ付いてたんだ」
「ひぎぃいいいぃぃいっ!?」
「わ!?」
明らかにウソ丸出しなのに、変な喘ぎ声みたいな叫びで私に飛び掛って来た。重い。抱
き付くな。ていうか、本当だからすげー怖い。コートの肩付近に血の手形がべっとりと。
いや、気付いたのはついさっきなんだけどさ。
「っ、う、うううう、ウソ、嘘だろ!?」
「いや、あの、嘘だったらよかったよね」
…これ、工藤達と千田の壮大なドッキリならいいのになあと思いつつ、私はとりあえず
千田のコートを脱がせる。そして。
「捨てて!捨てて棄ててすててえええええええっっ!!」
見た瞬間、また大パニックを起こす。とりあえず、私は玄関まで飛んで行って、丸めて
外に置いておく。このコート、千田はもう着ないだろうな。私欲しかったから、血ぃ取っ
て塩撒いてから着ようっと。
玄関を閉めてしっかり鍵を掛けて、ついでに、そこらにあった水沢から旅行の土産で貰
った変な魔除けの人形をドアノブに引っ掛けておく。ストラップ付きだから、多分こうい
う時の為にあったんだろう。ご利益無くて、もしえらい目にあったらその時は化けて出る。
くっそ、嫌がらせか。戻ったら千田は小鹿のようにプルプル震えやがってた。
「…ほれ千田、もう大丈夫だから。水沢の協力もあって多分奴は入って来れない」
とりあえず、水沢の名前出しときゃ大丈夫だろ。あいつ素で霊丸とか廬山昇龍覇を撃て
そうだし。
「ほ、ホント?じゃあ、俺生きたまま脳ミソ弄られて情報搾取とかされない?」
「…お前から有益な情報出ないから大丈夫だっての」
はあ、と溜息をつく。こいつ、恐怖のあまり普段のうっすい殻が完全に剥げ落ちてやが
る。ていうか、もしかして。
「泊まる気?」
「―――さて、彩川。お前俺に言う事があるだろ?」
視線で気付いたのか、うっすい、ぺっらい、いつもの殻をようやく被って、若干まだ青
褪めながらもいつもの千田に戻った。ていうか、言う事とは?
「ヘタレ」
「…違う。この俺がここまでお膳立てしてやっているんだ。馬鹿なお前でもわかる筈だ」
いやいやいやいやいやいや。
いや、本当にわからないって。どういう事だ?そんな事より、明日休みとはいえもう眠
くて仕方ないんだけど…
「あの、もう寝るからさ、頼めないんなら家出すよ?お前は本当にいいとこのボンボンの
癖して礼儀がなってないよな」
「…彩川、お前俺が好きだろう。受け入れてやるから告白してもいいぞ」
びしっ、と、なんかキメやがった。別の意味でもキメてやがるな。恐怖で。
「あのさ。お前はもう、泊めてやるからそこで寝ろ」
もう、疲れた。本当にこいつ嫌い。どうしてこんな自信過剰でアホなんだろ。こんなや
つ好きにはならないっての。
「ベッドよこせ。後、流すな」
「…流しもするわ。な、千田」
こういうのだけは、こいつは本気でわかってなかったとしたら今後も大変だろうし、そ
うでなくたって凄く不愉快になったから、言う。
「…お前、人に―――私にものを頼むのが嫌だからってそういう事言うんだろうけど、そ
れって凄く嫌だ。仮に、本当に仮に、百歩譲って仕方なく、仮定として言うけど、私が本
当にお前を好きだとしても、そんな事言われたら嫌いになる。それに」
珍しく神妙に、黙って私の話を聞いている。
「それに、なんで今この状況でそういう事言うんだよ。これで付き合う事になったら、一
緒の布団で寝られるから怖い思いしないで済むってか?」
…千田との口喧嘩は、大抵お互い捨て台詞を言って別れて終わる。だから。
「―――」
息を飲む音が聞こえた。
私は言うだけ言って、寝室に向かう。付き合いが長いんだから、私がもう話を一切する
気が無くて、寝るのだってわかった筈だ。
顔も見ない。どんな表情してるかも考えない。私はこいつが大嫌い。
静かに戸を閉めて、一気にパジャマに着替えて、布団の中に潜り込む。何も考えずに眼
を閉じる。元々眠かったから、すぐに寝れそうだ。けど。
戸が開く音。しまった、また鍵忘れてた。ぱっ、と、電気が付く。ひた、ひた、と、力
なくこっちに近付いて来る。というか、これ例の悪霊だったらどうしてくれる。水沢超ご
利益無ぇ。今度会ったらボコってやる。それより、今日この事態が既に悪夢みたいなもん
だけど―――
「…ベッドよこせ」
「断る。床で寝ろ」
千田は人の話も聞かんと、人の布団の中に入って来ようとする。私は壁側を向いて、意
地でも顔を合わせようとしなかった。
「彩川」
無視する。無視無視。こんな奴、もう知らない。私は何の反応もせずにただ、眼を閉じ
て意識が落ちるのを待つ。けど。
「…俺は、お前が好きだけど」
割と、嫌じゃなかった。さっき想像したのに、あいつが驚いて私に抱き付いて来た時だ
って、嫌悪感はそれほど無かった。思っていた悪寒なんか何も無くて、今だって触られて
いるのに、ていうか一緒の布団に入っているのに、嫌だとは思わない。多分、きっとこい
つがようやく折れてしまって、今の言葉込みでなんだろうけど、それでも不思議。
「お前がさっき言ったみたいになんか、思ってない。それだけは訂正させろ」
千田は細い。身長は私より5〜6cm高い程度。体重はきっと私が重い。私のが食うし、
どう見たって千田モデル体型だし、きっと私の手首の方が太い。
嫌い。だって、いつだってこいつはイヤミで馬鹿で根性悪で、そうだ、プロレス技だっ
てしょっちゅう掛けて来るからこんなに近いのなんて大した事じゃない。なんでこいつの
手、こんなに大きいんだ。後ろから抱き締めて、人の手首握るな。
「…お前、何キロ」
「聞くかそれ。お前より重いわ」
またイヤミかよ。ふざけんな、この期に及んで一人になりたくないくせに、イヤミだけ
は言うのかよ。ていうか、やべえ喋っちゃった。無視する気だったのに。
「普段からそれ言ってるよな。悪いけど、俺お前より多分10キロは重いぞ」
「―――へ?」
へ?と言ったはいいものの、千田の野郎もそれ以降は黙ってしまった。
今日は少し寒いし、こいつがくっついているとあったかい。けど、これって問題だろ。
相変わらず私の手首を掴んで、がっしりとくっついたまま離れない。くそ、足くっつけん
な鬱陶しい。
「…嫌がらんのか?」
「嫌がったら出てってくれんの?」
いつものような軽口。違うのは、こんなにくっついているのに、技を掛けられているで
もなし、イライラした感情もなし。
「流石に、お前が泣き叫んだら引き下がるしか無いだろ。なんでお前は無反応なんだ」
馬鹿にしたような口調。すん、て音。後頭部に鼻くっつけやがった。びくっ、とした。
「あ、なんか、嫌だ」
今までのはまだいい。けど、今みたいな匂い嗅がれるとか、それはちょっと。
だって、それってちょっと違う気がする。
「今更それって何だ。止まるか」
「―――あ、あ?」
びく、が、ぞわ、になった。なんて事すんだこの馬鹿、人の首の裏―――えと、うなじ
に口付けやがった。抱き締める力も強くなった。
「普通、嫌いどころかちょっと好き程度でも、こんなんなったら何がしかの反応するだろ。
倦怠期の夫婦か、俺らは」
「…間柄としては近いかもなあ」
付き合い、ホント長い。でも、ケンカばっかしてて、こいつは組み技が得意になってっ
て、私は殴る蹴るが得意になって、幼稚園から今まで、なんでかずっと一緒で、でも、ず
っと嫌いだったし、今更―――ああ、本当に今更感丸出し。
「今更だよ。今から関係変わったら、きっとしんどい」
すとん、と、はまったような気がした。うん。きっとそうだ。
「…私、ずっとお前が嫌いだと思ってここまで来たんだ。急にそんな事されたって、本当
に今更だよ。しんどい。お前とはずっと嫌い同士でいいよ。その方が」
…楽しいし、心地好いし、楽だ。
なんだかんだ言って、嫌いだけど、わかってる。そんなの最初から知ってる。千田とい
る時が一番楽しい。嫌いだけど。だから、別の関係になんて今更なれない。それに。
「ごめん。わかんないんだ本当に。気が付きゃお前とばっかいたから、私に好きとかそう
いうのはわからない。恋とかした事無いんだよ。だからやめとけ」
ぺし、と、手を叩いてやる。
一応、自分としてとても納得出来る断りのお言葉を、出来るだけ真摯に伝えた。千田だ
って馬鹿じゃない。むしろ頭いい。だから、きっとわかっ―――
「―――っ!?」
胸。おい。胸、胸。何触って、しかも揉みしだいてくれてやがりますかこの野郎。
「ちょ、おま、聞いてなかったのか?さてはお前寝てたのか!?わかってくれてんだろ?
お前はいつだってわかってんじゃんか!」
「だから、ここまで来て今更だと言うとろうが!それにな、お前は俺がずっといたから恋
愛がわからんと、馬鹿丸出しな事を言ってるがな、いいんだよそれで!これからわかれ。
俺はずっとお前といるからな。この俺からここまで言われて、まだ何も思わんというか、
この罰当たりが!!」
…硬直は、する。だって、こいつ馬鹿だ。あまりの馬鹿っぷりに逆に引くわ。ナニコノ
永久ストーカー宣言。男のヤンデレってただの犯罪者か801のどっちかだって誰かが言
ってたけど、こいつは正にそれじゃんか。
「ば、罰当たりって何…やだ、やだやだ、やめて、やめてって」
急に、怖くなる。怖い。さっきの千田みたいに、パニック起こしそうになる。さっきは
あんなに怖がっていた癖に、忘れたみたいに私の事性的に抱き締める。
「いいから、観念しろ。お前の相手は俺しかいないし、逆もまた然りだ。どうせ近い内に
こうなっていた。その時が今来たと思え!」
せ、説得力のカケラも無ぇ!お陰で怖さが持続しねぇ!ていうか、マジ?私、マジでこ
いつに犯られるんか!?
「い、いやいやいや、お前、実はまだどっか変なままだろ?私だよ?勃つんか?勃たんだ
ろ?いやホン―――」
イヤホン?
…自分で言って、本当に何を言ったのかもわからなくなった。
今まで、なんとか、抱き締められながらも後ろを向いて抵抗していた訳だけれども、い
とも簡単に転がされて仰向けになってしまう。思わず瞑っていた眼を開いてしまって、そ
してその目の前にはいつものように人を見下して笑っている千田。
ホント、こいつキレイな顔してる。ちっさい頃は女の子によく間違われてた。成長した
今は、女に間違われるなんて事は当然無いけど、線は細くて、でも実際に女装でもしよう
もんならホンモノ臭く見えてしまうだろう的な感じで、なんていうか。
…だから、あの、性的なモノは感じなかったというか、それなのに。
私の手を取って、あろう事か、友だちんこをしよった。いや、それって普通笑うか怒る
かドン引くかなんだけど、なんで、私、どうして。
「充分、勃っているだろう。満足か?」
「う、あ―――あ、は、はい」
ここまで堂々と言われたら、そりゃ返事するしか無い。うんうん、と千田は満足そうに
頷いて、私の手を放した。
「さて、逃がす気は毛程も無い。お前は俺の事だけ考えていろ。何もせんでいい」
犯る気満々でビンビンでギンギンの千田さん。私はもう、諦めるしか道は無い模様。こ
こまで愛してくれるんだったら、最初からそうしてくれればいいのに…
「いや、あの、だからさ、私は別にお前とするなんて言ってないし、パジャマ脱がすな。
だから、あの、その、勘弁して下さい。服脱ぐな」
人の服脱がしたら、次は自分か。私は微妙な寒さと状況の寒さに慣れる事が出来ない。
そもそも、こんなんしてたら『バリバリオッケーです!どんと来い生殖活動!!』と言っ
ているようなもんなんだけど、なんで私は無抵抗なんだろうか。
部屋明るいし、本当にお互い丸見えだし、実感が湧かない。だって、これから私、千田
とやるんだよなあ。初めてなのに。そういや、千田はどうなんだ?
「…千田、お前どうなの?」
付き合いが長いから、それ、とは言わなくても察する事は出来る。
「ふん。俺のこの華麗な身のこなしを見てわからんか?」
自信満々のご様子。華麗かどうかはともかく、なんとなくわかってたけど。でも。
「千田はいつから私が好きだったの?」
でっかい眼が、もっとでっかくなる。私は素っ裸の幼馴染を見て、純粋に疑問に思った。
私が千田を好きだから、千田は私を好きになったって言った。でも、私にはまだ、千田を
好きかどうかもわからない。それで、千田は私が好きなのに、他の女の子と付き合ったり
やる事やったりしてたとなると、どうなんだろう?
「…そんな事、どうでもいいだろう」
一瞬だけ、迷ったような顔をして、私の胸に掴み掛かる。さっきは身体が横になってた
から揉み甲斐はちょっとあったかもしれないけど、今は仰向けだから無い胸が更にナイム
ネに。ていうか、スタイル悪いよな私。今は千田の方が重いってわかったけど、腹もちょ
っと出てるからなあ。幻滅してないか。また、物笑いの種にされないか。
「彩川」
声が掛かる。う、ほら来た。乳無いとか、腹出てるとか、太ってるとか。
「…お前、身体つき、幼いな」
これまた、対処に困る。言い方が戸惑っているから、悪口じゃなくて心底思っているっ
ぽくて、逆に悲しくなって来る。
「なんか、あの、お前は背があって、手足長いのに、胸とか…こことか、なんかアレで、
逆にやらしい。なんか、子供の頃のお前にイタズラしているような気になる」
たどたどしく、なんか危険な発言をしているバカが1人。お前、子供に対してその下半
身かよ。後、さわんな。ついでに生えてないのがそんなに珍しいか。
「剃っているのか?」
「…ううん」
声が、弱弱しくなる。そりゃ、こんなの親にだって見せてない訳だし、一番最初がまさ
かこいつになるなんて思ってもいなかった。
「あの、笑うなら笑えよ?お前になんか変に気ぃ使われるの、一番嫌だ」
少し、声が上ずる。そっか、腹出てるのとか、太ってるんじゃなくて、幼児体型みたい
なもんか?しかも、それで欲情するって、マジでバカかこいつ。なのに、なんでそんな顔
すんだ。同情してるなんてカケラ程も思えない。こんな顔、初めて見る。
「彩川」
既に、私の言葉なんか耳に入っていない模様。駄目だこいつ。もうやる気だ。
「…っ」
触れた。指が、あそこに。怖い。くすぐったい。するっと指が、ウソ、中に簡単に入っ
た。すぐに抜かれて、でも、またすぐに中に入れて来て、なんか、太い。指細いと思って
たし、実際細いのに、なんでこんなに太いんだ?
そう思っていると、もう片方の手が頬に触れた。その手に、手を重ねて、多分入ってい
る人差し指を摘まむ。やっぱり、私よりは太いけど、こんなもん…だよな。
「…2本、入れてる?」
びっくりする程声が出ない。身体がだるい気がする。
「いや、1本だ。痛いか?」
「…痛くは、ないけど…凄く太く感じる」
凄くバカっぽい会話だったと思う。それでもいつもみたいに鼻で笑うとかそういうのは
無しに、そうか、とだけ呟いた。
「でも、そんな指太くないな、お前」
「…ああ」
浅く入れていた指が、もう少しだけ奥に入り込む。身体は震えるし、涙が出そうになる。
声が出そうになるのを必死で我慢した。
「お前、怖いなら俺にしがみ付いてもいいぞ」
「あ、遠慮する」
う。なんか、千載一遇のチャンスを自ら潰した気がする。こういう所、可愛くないんだ
ろうなあ。くそ。でも、そんなのしちゃったら、きっと、もう。
…不意に、千田の視線が外れる。怒っちゃったのかと思ったけど、違った。
「や―――だめ」
こんな事してる時点でもう駄目なんだろうけど、それでも、ベタベタするよりはこうい
う風に一部分とかだけくっついていた方が、まだ。手遅れにならない気がする。
千田の口の中に、私の胸がある。熱い息が掛かる。凄く、見た目いやらしい。
「待って、だめ。だめ、だめ―――」
駄目って10回言ったらやめて貰える気でいたけど、そんな事はけして無くて、そのま
ま吸ったり、口の中で舐めたりする。ゾクゾクして、千田の髪の毛を引っ張ったりしても、
全然やめてくれない。その間にも私の中で指がなんか、蠢いてるみたいな動きをしていて、
気が気じゃない。わざと音を立てるみたいに胸を吸っているし、下の方も湿った音がする。
千田とこうなる前に、なんで私は家に入れちゃったんだろう、と、今更ながらに後悔し
始めていた。
こいつ、気持ち悪い。
次から次に、私の身体を全部舐めそうな勢いで舐めて来る。一心不乱というか、眼が虚
ろというか、レイプ眼というか。
徐々に、怖いよりもキモイになって来る。でも、こんな事されて喘いでる自分もキモイ
事には変わりないんだろう。
…こうなって来ると、やっぱり千田も、努めて必死に私を好きになろうとしているんじ
ゃないかと思って来る。心のどこかで、もうやめたいなんて思ってるんじゃないかと。自
分は彩川貴枝が好きなんだって、必死で言い聞かせているように見える。
だってキス、して来ない。普通する…だろ?それなのに、身体ばっかり舐めてる。
「―――入れる」
「へ?」
突如、がばりと私の脚を開いた。あ、入れるってそういう事か。
…怖いという気持ちは吹っ飛んでいる。今は何もかも、顔も行動も全てがキモイ。理不
尽なくらいに熱いのが、押し付けられる。それでもあまりくっつかない。
今殴れば、正気に戻るかな。戻るかも。そう思ったけど、腰を浮かされて、先端がめり
込んで来た時にもうアウトだと思い知った。
「彩川―――彩川、彩川、彩川っ」
綺麗な顔を歪ませて、泣きそうな顔で、千田は私を呼ぶ。
「いっ」
不意に、鈍い痛み。下を見ると、先端の方が私の中に埋まっている。ウソ。これ、だけ?
それなのに、なんで身体の奥まで締め付けられるみたいな感覚なの?だって、先っぽだけ
だろ?
「あ―――あ、ぁ!?」
そこで、初めて私は言いようの無い恐怖を感じて、引き攣った声を上げた。
「っ」
同時に、私の手首を掴む。右も、左も。
「…彩川、しがみつけ。楽だぞ」
いつの間にか出ていた涙を舐め取って、もう一度、千田は呟く。一瞬戸惑うけど、もう
少しだけ楽な言葉をくれる。
「様式美だ」
…そう言われるとなんとなく、そうした方がいい気になって、ようやく私は千田に抱き
ついた。あ、楽だ。本当に、そう思った。
千田のかたい身体と、匂いと、体温と、全部が楽だ。擦れ合う頬が気持ちいい。
「まだ、辛いか?」
頬で頬を擦られる。耳元を声がくすぐる。さっきから、私の中で何も動かない千田。私
は反射的に首を横に振る。と、嬉しそうな顔で。
「そうか」
とだけ呟いた。さっきから口数が少ない。千田といえば余計なまでにくっちゃべるのに。
「っ―――」
また、少しだけ私の中に入って来る。さっきの状態でも痛かったのに、更に。でも、大
丈夫と伝えた手前、声を上げるわけには行かない。
我慢する。大丈夫。死にはしない。きっと死にはしない。けど。
「…痛いだろ。無理をするなバカタレ」
また、千田は動かなくなった。鈍い痛みは、動かなければなんとかなる。楽になったけ
ど、でも、なんでわかるの?
「え―――なん、で?いたく、ない」
「…気付いていないのか?」
普段だったら、こういう私がわからなくてこいつがわかる、みたいな時は心底バカにし
た顔なのに、今は違う。呆れたような顔はしているけど、なんだか違う。
「お前に気を使われるのは御免だ」
どこかで聞いたような言葉。おでこをおでこにくっつけて、ようやく唇にキスされる。
…なんだか、何かが終わってしまったような気がした。
「…だい、じょうぶだから…いつもは、私が何言ったって好きに、する、だろ…平気だよ、
いたくない。いたく―――っぐ!?あ…あっ!」
びち、と、こめかみにデコピン(?)しやがった。一瞬視界が真っ暗になって、同時に。
「折衷案だ。お望み通りにしてやった。暫く動かんから、もっとしがみついていいぞ」
変に身体が緩んだ隙に、一気に入れやがった。声が、出ない。なんか撃ち抜かれたみた
いな感覚。そんな経験無いけど。
私は痛くて、反射的に千田を抱き締める力を強めてしまった。頬とこめかみと目頭が熱
くて、下半身が焼けるみたいに痛くて涙がぼろぼろ出て来る。
痛い。苦しい。でも、それでも、口で痛いって言う訳にはいかないような気がした。
きっと、千田にはもう全部わかられているんだろう。いつもと同じだ。でも、それでも。
「…だから」
涙で濡れてしまった頬に、また頬擦りして来る。涙を吸って、頭を撫でる。
「痛いんだろ。ていうか、俺も痛い。背中。背中。お前、そんな事にも気付かないくらい
痛いのか」
「―――え?」
何を言っているのかすら、よくわからなかった。背中?
「あ」
私、ぶっ刺してた。爪、思いっ切り、千田の背中に。
気が付かなかった。力の限りしがみ付いて、千田にこれ以上ないってくらい、頼ってた。
「っ、ごめん―――ごめん」
ぱっと手を放す。反射的に謝ってしまう。そりゃそうだ。相当痛かったろうに。
「痛い?」
「多分、お前よりかは痛くないだろうな。お前が俺にしがみついて、こうなるまで1セッ
トの様式美だから気にするな」
一度したからって、もう当たり前みたいにキスして来る。言っている事がわかるような、
わからないような感じで、なんだか翻弄されてるみたい。仕方が無い。こっちに関しては、
私は全くの素人なんだから、こいつに一日の長があるのは仕方が無い。
…でも。
「どうして、さっきまでしなかったのに、今、するの?」
それがキスの事だというのは、すぐに気が付いたみたい。
「…うるさいっ、バカタレが」
一瞬だけ不機嫌な顔をしてから、悪態をついて私の口を塞ぐ。勿論キスで。それでなん
となくわかった。嬉しかった。素で忘れてただけなんだ、と。
嬉しくもあったけど、それでも内心はやっぱり複雑。
こんな事になっているのに、未だに吹っ切れないのにも、腹が立つ。嫌い嫌い言ってい
たのだって、もう、最初から詭弁だったって認めてる。
嫌いっていう言葉は、全部『すき』って言葉だった。なにもかも、気に入らない所はな
にもかもすきな所だった。こんな事許すのなんて、こいつしかいない。ううん、こいつに
なら何をされてもそれが自然だと、だから、今となっては全部予定調和だったんだ。
―――そう、必死で思い聞かせる。理屈ではわかっている。私はこいつしかいない。こ
いつも私しかいない。身体だって、徐々にこいつを受け入れている。息だって荒くなる。
鈍い痛みは取れない。それでも少しずつ、少しずつ慣れて行く。私の中に千田がいる事
が当たり前みたいな感覚になる。不意に、千田が繋がってる所、より上に触れて来た。反
射的に、きゅっ、と千田を締め付けてしまう。声も出る。何より、悪くなかった。寧ろ、
変になるくらい気持ち、良かった。
千田はそれがわかってる。私がそれに戸惑っている事も、受け入れたくない事も。
なんでこいつ、人の気持ちを読むのが得意なんだろう。そういう奴だから、といえばそ
うだけど、空気だって凄く読むし、そうだ、空気読めない工藤と空気読まない水沢と、こ
いつら3人セットだとバランスいいんだよな、割を食うのはこいつなんだけど―――
「あ―――っ」
ずるりっ、て感触。そんな音する訳無いけど、そんな音が頭に浮かんだ。抜かれる。痛
くは無い。熱い。やらしい声が出る。
「…ふざけるな。俺の事だけ考えていろと言ったろうが」
怒った声。わかられてた。悔しい。抜かれた時と同じくらいの速度で、また入って来る。
何度も、征服されてるみたいな気分になる。
「っ、はぁ…あ、あ…っ、あ」
だらしなく口が開く。引き攣ったような声しか出ない。声を我慢しようとすると、そん
な声になってしまうけど、我慢しなかったらもっとマヌケな声になると思って、我慢しか
出来ない。
痛い。でも、それが気持ちいい。全部、とけそうになって、爪はもう立てたくないけど、
しがみつきたくて、さっきのこいつみたいに、匂い、かいで、いい。凄く、いい。
「っ、せん、っ、千田…千田」
名前を、呼ぶ。名前じゃないけど、きっと一生、こう呼んでる気がする。
「―――彩川」
こいつも、きっとそうだと思う。私らは、多分そんなだから、ずっと一緒にいたんだし、
これからもいるんだと思う。でも、そうだったのに、これからは―――
「っ…あ、あ、や、やあ―――っ、や―――」
考えが、中断される。自分の身体が変になる。声が、我慢出来ない。自分の身体が、千
田に吸い付く。もう、何も考えられなくなる。また、涙が出て来る。
頭が、ぐらぐらした。身体中が気持ち良くて、それしか考えられなくて、それしか考え
ないまま、私はどうにも眠くなって、そのまま意識が遠くなって行った。
暗い中、目が覚める。隣には千田。静かに寝息を立てている。ゆっくりと、千田を起こ
さないように身体を起こす。
「…れ?」
なんでだろ。
さっき、散々泣いたからもう出ないと思ってたのに、痛くないのに、涙が出て来た。
理由は、すぐにわかった。悲しいんだ。
「―――あや、かわ?」
目覚めてしまったのか、はたまた最初から起きていたのか。ぐずっている音で、千田を
気付かせてしまった。
「泣いてるの?」
千田の手が、頬を撫でる。私はやんわりとその手を拒否した。
「どして、私と、したの?」
触られたくない事を察してくれたのか、千田は私に触らなかった。千田の気の付きよう
に今は感謝しながら、自分が落ち着くのを待った、そして、聞いた。わかっていたのに。
聞いても答えられてもどうしようもないの、知ってたのに。
「…好き、だから。好きで、ずっとこうなりたくて、だから」
幽霊云々はきっと本当だったんだろう。それを忘れたかったのも、あったんだろう。で
も、それ以上にこれがチャンスだからと、そう思ったから、こうなったんだろう。
思っていた事は殆ど当たっていて、さっきの問いも―――いつから私を好きだったのか
も、ちゃんと答えてくれた。
「きっと俺はお前が最初から好きだった。子供の頃、お前に離れられそうになった時、そ
れっきりになりたくなくて、ずっとお前に纏わり付いてた。それがわかったのは、本当に
最近で、俺はお前と嫌い合って殴り合っている関係が凄く楽で楽しいって思っていた」
千田とは思えないくらいに乱暴に私を抱き締める。
その乱暴さが心地好くて、私も千田を抱き締める。
こうなって、後悔はしていない。私だって、結局こいつといたいし、好きだと…多分、
思う。こいつ意外に楽しくて楽で、よくわからないけどこんな気持ちになる奴なんて、き
っといないけど。
「…うん。楽しい。多分―――多分な、そういう今までの私らの関係って凄く幸せだった
んだと思う。だから、そういうの捨ててまで、今まで以上に楽しいのかなって、そう思っ
て、もしかして、凄く大切なものを自分で手放したんじゃないかって思って」
そんで、涙が出た。
「俺も―――ん。気が合うな。俺もそれ考えた。それでも、他の誰かにお前を取られるよ
りかは、いいと思った。だから、行動に移した」
…それでも。
手放したものが、手に入れたものより大切ではなくても、充分大切で、心の中を占めて
いたものだとはわかっていて、だから、悲しい。
「…もう、前みたいには出来ない?」
「…さあなあ。そればかりはわからん」
私を抱き締めたまま、寝転がる。
「楽しかったよなあ。お前ってなんで組み技とか寝技専門になったの?まさか私に触りた
かったとか?」
あはは、だとしたらキモイ。超キモイ。でもあり得る。
「半分正解。後の半分は『グラップラー』という響きに憧れてな。因みにお前はストライ
カーだ」
…いや、マトモに答えられても凄く困った。マジだこいつ。
「私はお前に寝技掛けられてるの水沢に見られて『健康的エロス!!』て言われて、なん
か怖くて、必死に捕まりたくなくてそっち行ったなー。それ言われたとき中1だぞ?絶対
ぇ水沢頭おかしいよ」
「まあ、奴の頭がおかしいのは認めるが」
「うん。それに大きく分ければお前と水沢は同じ所にいるしなあたたたたた」
ストーカー気質と陰湿エロ、という括りで。いや、実際は知らんけど。ていうか。
「…なんだか、変わらないかも」
頬を引っ張って、笑う。
「そう、だな。なんだか考え過ぎているのが馬鹿らしくなって来たな」
やっぱ、変わったような気もする。柔らかく笑う千田が、なんだか嬉しい。というか。
「もしかして、こうなる方が難しいのかも」
手を引っ込めて、いままで引っ張っていた場所に口付ける。似た様な場所に、千田が口
付ける。
「ふん、構わんさ。そんな時はこう言えばいい」
―――やっぱ、付き合い長いっていいのかも。同じような言葉が頭に浮かんだ。そして、
同時に口に出す。
『スーパー恋人タイム』
「ってか?」
「だろう?」
顔を見合わせて、にんまり笑う。そして。
「とっとと寝ろ。その年で夜泣きかバカタレが」
「うっせー。文句あんならFULL珍で床で寝ろ。その間にオッサン幽霊来るぞ」
…お互い、痛いところを突く。本気で腹立つ。けど、これでいい。
「ふん、まあいつまでも泣かれていては鬱陶しいからな。特別に胸を貸してやろう」
「はん、そんな事言ってオッサン怖いんだろ?生まれたての小鹿みたいにぷるぷる震えて
ろよ。あ、漏らすなよ?」
顔を見合わせる。お互い引き攣った顔してるんだろう。
ふん、と鼻を鳴らして布団を被った。まだ納得した訳でもしっくり行った訳でも無い。
それでも、これで良かったんだと思える程度には―――
「安心した」
「何がだ?常識でわかる範囲内で説明してくれ。お前の頭を酷使する羽目になるだろうが」
安心し過ぎて、こいつの事殴りたいなー、と、やっぱり今日も思った。
‐後日談‐
「ああ、それですね。知っています。通称三田村屋敷事件です。俺の地元じゃそれなりに
有名ですよ」
休み明け、なんとなく工藤の新居であった事を工藤に聞いてみたら、水沢が答えた。
「へーぇ、そうなんだ。ま、僕達は普通に暮らせてるから、別にいいけど」
当事者である工藤(晴)は、全く興味が無さそうにしている。
「そんなんよりかさ、貴枝ちゃんはなんで昌平くんのコート着てんの。僕だってそれ欲し
いなーって思ってたのにズルイ。謝罪と賠償と慰謝料と生活費とお小遣いを要求します!」
染み抜きしたら、血っぽいのカンタンに取れた。千田は二度と着ないと言っていたので
貰った。本人は捨てて欲しいっぽいけど、もったいない。高いし。ていうか工藤図々しい。
「なんか、霊感ある人に向かって行くんだって」
自分の言った事に責任は全く持たないのか、早速別の話題に移る工藤。という事は、千
田は霊感があるって事なのか?
「加えて、お金持ちの人が大嫌いだそうです。匂いでわかるんですかねぇ。三田村正二、
当時47歳。銭ゲバですが、自分の息子に裏切られ、犯された挙句に首を折られて殺され
たそうです。それ以来あの屋敷に霊感のある人が入ると無差別に襲い掛かるそうです」
これまたあっさりと、おっとろしい事を言いやがる。中盤が特に恐ろしい。
「へーぇ大ちゃん詳しいねぇ。もしかして実際お目にかかったとか?大ちゃん素で念とか
固有結界使えそうだし」
…有りうる。確かに水沢なら霊感とかありそうだし。近所だし何より詳しい。少し期待
しながら水沢を見る。が、当の本人は少し困ったように笑って。
「いいえ。実は叔父と不法侵入した事はあるんですけど、2人揃ってなーんも見えも聞こ
えも感じもしませんでしたよ。詳しいのにも理由はあります。その息子本人と名乗る人が
この話を道行く人にしまくるっていう事がありまして。あ、俺が小学生の時です。でも不
思議なんですよね。確かにその家の管理をしている人なんですけど、息子本人は警察に捕
まる前に首を吊って死んでいるんですよ」
やっぱりさらっと水沢は言ってくれたけど。
―――なんとなく、空気が凍った気がした。工藤も、表情を固まらせている。
「…なんか微妙な人だと思ってたら、虚言癖でもあるのかな?千萩に気を付けるよう言わ
なきゃ…」
お前も怖いわ。物凄くズレてると思うけど、今は工藤のズレ方と、水沢の神経がとても
羨ましい。この場に千田がいたら、卒倒してるんじゃないか?
「でも―――うん。実際に殺された人はまだいないんだよね?」
何かを思い付いたように、工藤は物騒な質問をする。
「ええ。どうも霊の方は屋敷から出れないようですし。となると、千田さんは幸運だった
のかもしれませんね」
「ていうかさ、捕まったら、どうなるんだろね。今度実験してみない?」
おいおいおい。いきなり物騒な事言い始めるなあこの男。
「なに?千田か工藤連れてくの?2人とももう、敷地内どころか半径100m以内にも近
付きたくないって思ってるだろうに」
「ううん。ちょうどいいのがいるから。多分その子霊感あると思うし。最近さあ、千早に
彼女出来たんだけど、それが凄く嫌な子で、千早カンッペキに騙されてるんだよね」
…あらま、憎々し気な顔しちゃって。いつもにこにこしてる工藤にしちゃあ珍しい。
「…工藤さん、顔が怖いですよぉ?ていうか、本気ですか?」
本気なんだろうなあ、という顔だ。こいつこういう所怖いんだよなあ。
「俺は反対ですよ。人が死ぬかもしれないのをあえて見過ごすなんて嫌過ぎです」
「私も反対。ていうか、お前気に食わないなら直接対決しろ。その子にしろ、工藤にしろ」
まあ、その嫌な子と工藤の問題なんだから、工藤には関係無いと思うんだけど。
「―――いいよ、別にあんな子死んでも」
プイっ、と顔を背けて拗ねてしまう。ていうか軽くヤバくね?
「…千萩と千早にはこの事言わないでよ?…ウソだよ、僕の生活スペースにあんな子入れ
たくないもん。だから、僕がその子嫌ってるって事言わないでね。2人とも騙されてるも
ん。人に取り入るのだけは上手いんだからさ」
そのまま、頬を膨らませて黙り込んでしまった。
「そういえば、千田さんはどうしたんですか?」
私、若干引いてるのに水沢はなーんも気にしとらんと、話題を普通に変える。
「え、あ、え―――せ、千田?あ、千田?知らない」
別に、意識していた訳でもないんだけど、いきなり振られると口ごもってしまう。
朝になって最初に眼が覚めたのは私だった。幸せそうに寝てる千田の顔を見たら、なん
だか変にソワソワして、叩きたくなったので、落ち着ける為にお風呂に入る事にした。
で、身体洗ってたら、急に転げ落ちるような音がして、家中を走り回る音がして、もし
かしてこの時間になってオッサン来たのかと思ってたら、風呂の戸が開いて、そこには全
裸の千田様が血相変えて立っていた。
「え…え?ど、どしたの?あ、おはよ…」
ぜーはー荒い息をついて、私を凝視する。私は泡の付いたスポンジくらいしか持ってな
かったし、半分呆気に取られていたので叫ぶ事もせずに、とりあえず手で身体を隠した。
「あ―――あ、お、おはよ」
ようやく我に返ったのか、千田も手を上げて挨拶をし返す。
「…いや、あの、その―――もしかして、夢だったのかと、思って」
「FULL珍で、人のベッドで寝ておいてか?」
よっぽど自分様の御身体に自信があるのか、堂々と私に身体を見せ付けている。多分、
気が付いていないんだろうけど。
言われてようやく気付いたのか、急に顔が真っ赤になる。バーカバーカ。更に元気にさ
せてみようと、私は追撃を仕掛ける。
「で、どうするよ?もしかして、昌平ちゃんは一緒にお風呂入りたいんでちゅかあ?」
うぇへへへへへ、と、下品に笑ってみせる。ここまで馬鹿にすりゃあフリーズ状態から
再起動するだろ。そのまま帰るもよし、不貞寝するもよし。
―――が。
「……………………」
今度は、私がフリーズするハメになった。別の場所が再起動しよった。
結局、私がこの期に及んで、昨日の夜にすりゃあよかったように、泣き叫んでそこらにあ
ったものを投げ付けて、ちょうど満タンに入ったボディソープの容器が元気になったうま
い棒にクリーンヒットして、千田は悶絶した。
その後怒って帰って、会っていないままだ。
「そうですか。この間借りたDVD返そうと思って持って来たんですけどね」
「へー、どんなの?」
「こんなのです」
時と場所を考えろ。ここ構内だぞ。なんだ『美人教師・由愛子の淫乱性指導―困惑の生
徒23人レイプ・レイプ・レイプ―』って。センスのカケラもねぇな。それよりも乳でけえ。
「なにそれなにそれ!あ、由愛子の新作じゃん!僕に貸してよ!!」
一瞬で機嫌が直ったのか、すぐに飛び付いて来る。新作て。
「え、その由愛子って有名なの?」
私が周りに人がいないかどうか確かめながら聞くと、水沢は普通に頷いて。
「一部では、ですね。ええ。後工藤さん、駄目です。借りるなら千田さん本人に言って下
さい。又貸しはマナー違反ですよ」
そう言ってDVDをカバンにしまう。そっか。千田は巨乳好きなのか。
「あ、昌平くん!愛してる!!」
「千田さん、俺は愛していません」
思うところあって、少し考えていると、不意に愛の告白と逆告白のお言葉。振り返れば
奴がいた。微妙に不機嫌そうなお顔の千田。
「よう、巨乳大好き千田さん」
私はげひひひひ、と笑いながらあいさつする。
「…工藤、お前の愛は重い。水沢、奇遇だな俺も愛していない。でもって彩川」
よっぽど、お前の方が幽霊みたいだと思った。
首を少しだけ傾げて、ゆっくりと私の方へ向き直る。おお、千田のなく頃にか?
「俺が巨乳好きだといつ言った」
「へ―――?え、それは―――」
水沢が借りたDVDが、と言おうとしたんだけど、私の手を掴んで、もと来た道を戻る。
「せ、千田?」
うわ、怒ってる。なんでか知らんけど怒ってる。私はどうしよう、と思いながら千田に
されるがままに引き摺られていた。
「僕、左ストレートで貴枝ちゃんの勝ち。大ちゃんは?」
「俺はバックドロップで千田さんに」
「僕が勝ったら大ちゃんの彼女のおっぱい揉ませて」
「じゃ、場外乱闘という事で今ここで決着付けましょうか」
カーン、と、あっちでもゴングが鳴ったような気がした。予想としては、2秒で水沢勝
利。予想通りにすぐになんか、しちゃいけないような音がしたけど気にしない。
今は、千田だ。どこに連れて行かれるかわからなかったけど、多分あまり人目の無い所
だろう。うう、こいつがこんなので怒るなんて思わなかった。
「―――さて、彩川」
私を壁際に追い詰めて、相変わらず物凄く不機嫌そうな顔をして、私を睨んだ。
「な、なんだよ。やるか。やるんだったらお前もさっきの工藤みたいに2秒で―――」
「…いつ、どこで、誰が、何時何分何秒、巨乳が好きだと言った」
しょ、小学生かお前は。若干呆れながら千田を睨もうとする、けど。
「もしかしなくても、傷付けたか?身体つきが幼いって言った事」
―――ん?
私は、首を傾げる。え?何それ?え?とりあえず頭をフル回転させる。あ、言ったか?
そういやあの時、妙にそれで興奮?してたのキモイって思ったな。あー、あ、そういう事?
…うわ。思わず、下を向いてしまう。
やべ、なんか頭の裏っ側が熱くなったような気がした。いや、照れてる場合じゃあない。
何、勝手に罪悪感持ってんだバカ。
「あ、違う。違うんだって。あの、水沢がお前にDVD借りたの返したいって言ってて、
それ見せてもらってさ。あー、お前ああいうの好みなんだなあって、そう―――」
しどろもどろに話す。ていうか、なんだかくすぐったくて居心地が悪い。私、なんだよ、
千田にすっげぇ大事にされてるなあって実感しちゃった。どうしよう、なんだか、凄く。
「あ、あの―――」
俯いていた顔を上げる。が、既に千田はそこにはいなかった。
「え、え?千田?」
消えた!?
幽霊に連れ去られたかと一瞬思ったけど、違う。多分―――
「何してくれてんだお前はああああああああああああっ!?」
「え、ちょ、えええ、なんでそんなに怒っているんですか、引きますわー」
「お前の態度に引くわ!!」
…元いた場所で、千田と水沢が追いかけっこをしていた。
あら可愛い、千田は自分の性癖?を知られた事がそんなにショックだったのか?今まで
だったら気にしなかった…のか?それはわからないけど…
「おはよ貴枝ちゃん。ねー、どうしたのあの2人。工藤くんたら、賭けだけ持ち掛けて原
因教えてくれないの」
観戦モードに入っている三沢がいつのまにかそこにいた。ていうか、工藤まだ倒れてる。
「あ、おはよ三沢。なんか、痴情のもつれ?」
「え、ウッソー。なになに?じゃあ、そこで倒れている工藤くんは?負けたの?それとも
賞品?だから原因教えてくれないの?」
なんか、妙に輝きながら私に聞く。
「…知るか。ていうか、いらねー」
なんだか、よく言っている事がわからないけど、ロクでもないという事だけはわかった。
「ところで貴枝ちゃん。どうして千田くんのコート着てるの?」
「ああ、なんか工藤の家で頭髪の不自由なオッサンに襲われて、体液付着しちゃったから
もう着たくないっていうし…染み抜きして貰った」
一応、端的に説明する。
「―――っ、千田総受伝説の幕開け!?じゃあアレは襲い受け!?」
「そこ!バカに変な知識を植え付けるなバカタレが!!」
水沢を追っかけながら、三沢へのツッコミも忘れない。うーん苦労性。しかし、そんな
隙を見逃す水沢じゃあない。ツッコミに行く、と判断した瞬間に別方向に逃げ出した。そ
して千田が振り返った時には、もう遅かった。
「…ちぇっ、私の負けかあ。工藤くんはい、これ」
「まいどありー。ね、僕の言った通りでしょ」
負けたらしい三沢は、勝負が付いた時にはもう起き上がっていた工藤に持っていたパン
の紙袋を渡す。あ、アゲアンパンと苺牛乳だ。いいな。
因みに、工藤は水沢の逃亡成功で、三沢は暫くしたら水沢が転んでとっ捕まる、だった
そうだ。2人ともいい読みをしていると思う。工藤はさっそくアゲアンパン食べながら。
「貴枝ちゃん、そういや2人のバトルはどうなったの?」
と、聞いて来た。あ、そういやそんな話になってたな。
「…いや、別に…最初から戦ってない」
あれ?と首を傾げる工藤。フラフラしながら千田も戻って来る。
「あ、おかえり昌平くん。ねー、なんでさっき貴枝ちゃん連れてったの?」
「…うるさい…もうどうでもいい…」
体力を相当削られたのか、まるで徹夜明けのようだ。まともに捕まえられたら、水沢秒
殺だったのになあ。わかってたからこそ、必死で逃げたんだろうけど。
「ねー、貴枝ちゃんおせーて。どしたの、どしたのー」
千田はダウンしたので矛先がこっちに。あ、三沢も興味津々。
…まあ、隠す事でもないけど、でも千田も私も、まだ色々と納得していない。言うのは
得策じゃあないなと思って。
「いやね、千田は巨乳も好きだけど、実はつるぺたにも異常に興奮するらし―――ぉぶっ」
千田が、私の後頭部にチョップを。うわあ腹が立つ。せっかく誤魔化してやったのに!
「やるかコラァ―――っ!?」
「来いやオラァ―――っ!!」
一瞬で臨戦態勢に。
後ろでどっちが勝つか早速話し合いをしている。あ、水沢いつの間に戻って来た。千田
も水沢を見た筈なのに、既に私しか視界に入らないようだ。ま、99%私が勝つだろうか
らな、今は。油断は出来ないという事か。
―――これで、いいか。
そう思いながら、既に体力の無い千田をどう料理してやろうかに集中する事にした。
ボロクソにした後は、一緒にお風呂入ってあげようかなあ、と思った。
終
262 :
377 :2007/12/14(金) 18:32:36 ID:VzljUG6Q
こんな感じです。
最後の最後で24ページでなくて23ページなのに気付きました。
あと、『終』の位置が変ですね。申し訳ございません。
gj面白かった。
したの名前では呼び合わないの? けじめ?
GJ
数週間前に377氏のファンになり、初めてリアルタイムで遭遇。
楽しく読ませて頂きました
もう二、三度読み返して堪能させて頂きますね。
乙です。
GJ!!
GJ
千早と彼女編が早く読みたいw
千晴がそこまで嫌う子がどんな子なのか激しくwktk
377氏の書くストーリーに嫌な奴ってあまり出てこないから
千晴の思い違いなのかなー等と想像しながら楽しみに待ってます。
あれ
勘違いレスしたっぽいな……
ちょっと読み直そう……
GJ!!
377氏の作品は登場人物のリンクが多いね
初投下です。
あんましエロくないですが、感想、批評いただけましたら幸いです。
また見られてる。
もう全く気にしてないけど、最初は戸惑った。というか、恥ずかしかった。
でも大分慣れてしまったな。
コイツは私が化粧するのを見てるのが好きらしい。一緒に暮らす前から知ってたけど。
いつだったか理由を聞いた時、私は軽くショックを受けた。
『なんか見てるうちに、だんだん見覚えのある顔になってくのが楽しくて』
本っ当に失礼な奴だ。笑いながらこんな事を言う。
おまけに人の気も知らずにマイペース。
「このマニキュア良い色だねぇ、借りて良い?」
また始まった。どうせ趣味のプラモ作りに使う気だ。
私は、使ってみたいの?とは訊かず、何を塗るの?と訊く。
「ガンダムの白い部分がパールで光ってたら格好良くね?」
格好良いかどうかはさておき、この狭い部屋にまたガンダムを増やす気か。
私は部屋の隅に置いてある飾り棚に目を遣る。
コイツのお陰で無駄に名を憶えてしまったロボットが6体、戦車が3台、バイクが4台並んでいる。
「ダメ、高いんだからね。ってか、これ以上増やすんなら古いのヤフオクで売っちゃえば?」
「だねー、合計で20個になったら古いのから順に売っちゃうか」
絶対売る気ないな、これは。
確か、会社のデスクにも1体飾ってると言っていた。ザクレロとか云うふざけたデザインのロボ。
よく上司に怒られないもんだ。
彼は化粧ポーチからアイシャドウを一つ取り出して
「ケイさ、この色あまり使わないよね。全然減ってないし」
赤系のシャドウ。買ってみたは良いけど、私にはあまり似合わなかった。
と言うか、妖艶さを強調したくて頑張ってみました的な印象を感じ、買った事を後悔した色だった。
「なーんか大袈裟な感じになっちゃうから、それ」
簡潔に理由を説明すると、彼はふーんなんて解っているのかいないのか、会話の上では納得したよう
な返事をしていた。
珍しい。これまで化粧する私を見てるだけで、マニキュア以外の化粧品に興味を示す事は無かったのに。
今度は口紅を取り出していた。
「これもあまり使ったとこ見た事ないよねぇ」
薔薇のようにやや暗めな赤のそれも、赤系のシャドウと同じような理由でほとんど使ってない。
「どしたの?塗ってみたい?」
何気なく訊いてみただけの言葉だが、反応が面白かった。
「え?いや、別にそうじゃなくてさ。ポーチん中ぎゅうぎゅうだから、どんなの入ってるのかなーって
思って。女装願望とか別に無いし、ってか化粧似合うようなツラ構えじゃないしさ」
少し慌ててる。何?そういう趣味あるの?
確かに化粧映えする顔じゃないと思う。男らしい顔ってわけでもないけど、中性的なわけでもないし
ぶっちゃけカッコイイわけでもないしね。好きだけどさ。
けど、悪戯を見破られた子供みたいな目で、無駄に饒舌になっちゃってる彼の言葉は私の中のスイッチ
を入れた。
私は自分の口紅もそこそこに彼に紅筆を向ける。
「ちょっ、まっ、出掛けるんだろ?こんなんしてる時間ないだろ」
「どこか予約してるわけでもないんだから良いじゃん、ちょっとだけやってみようよ、ね?」
今日は別に何処に行くかを決めた日でもない。ただ土曜日だから、二人でどこかでご飯を食べて、映画
でも見に行こうとだけ決めていた日。だから多少予定がずれたところで困らない。と言うか、元々ちゃん
とした予定なんか無いんだから。
この人が口紅を差して、アイシャドウを塗って、チークを入れたら、どんな風になるんだろう?
絶対に綺麗や可愛いなんて結果にはならないのだけはわかる。でもしてみたい。きっと馬鹿笑い出来る。
にじり寄る私にじりじりと後退りしていたが、彼の背中はすぐに壁に止められる。狭い部屋だから、
逃げるスペースも数十センチしか無い。
やめて、とか、まじでまじで、なんて言ってたけど、すぐに彼は観念した。
大した抵抗を受けなかったところを見ると、少しは興味があったんだろう。
絶対似合わないけど、それを知っているからこそ照れている。わかりやす過ぎて笑えてくる。
普段リップクリームすら塗らないカサカサの唇を紅筆でなぞる。が、元々綺麗にしてあげる気なんか無
い私は、筆を口紅そのものに持ち替えて豪快に塗り始める。
最初だけ、ほんの最初だけは唇の輪郭に沿って塗ってあげようと思っていた。
しかし、思いの外似合わない。いや、似合わないだろうとは思っていたけど、予想を遙かに超えた似合
わなさ。
正直、同情を禁じ得ないほどだ。
私は即座に予定を変更し、思い切って唇をはみ出したラインを描き始めた。
ギャグにしてあげなきゃ可哀想なくらい似合ってなかったのだ。
しかし明らかに唇をはみ出して塗り広げられている状況に彼も気付かないわけが無かった。
「お前っ、ふざけっ……やめっ!やめれっ!」
耐えきれずヒクヒクしだした彼の腹筋に釣られて私も笑い出す。
「オバQだ。オバQが出たっ」
笑いながら言い、なおも口紅を塗り続ける私に抑えつけられながらも、彼は腕を伸ばしていた。
化粧ポーチに。
ポーチの中から手探りで一本のアイブロウペンシルを取り出した彼の反撃が始まった。
「お前を残虐超人にしてやるっ」
彼は私の額に何かを書き始めた。多分「中」の文字だろう。
バトル開始のゴングが頭の中に鳴り響く。
私は壁に凭れた彼のマウントポジションを取り、鼻の穴に口紅の先を突っ込んでそのまま下に引いた。
ざまぁみろ、鼻血を出させてやった。が、彼も負けじと私の頬に何か書いている。また文字だろうか?
私は得物を奴と同じくペンシル型のアイライナーに持ち替えて応戦する。
額に「肉」、頬に「バカ」と書き入れてやったが、彼も私もそろそろ限界を迎えつつあった。
主に腹筋の。
「あー、笑い死ぬ。終わり終わり」
ペンシルを放り投げ、彼が私を抱きしめる。
まだ腹筋がヒクヒクと痙攣してる。私もだけど。
「あー面白かった。てかこれじゃ出掛けらんないね」
「まだ昼前だし、後でそこのダイ○ーでも行って買い物してこよう。すき焼きとか食べたくね?」
昼からすき焼き?という問いかけを彼の唇が遮る。
腰に回した手に力が込められるのを感じると、私は自然と舌をのばしていた。
もう条件反射かもしれない。コイツにこんな風に抱きしめられるとすぐにスイッチが切り替わる。
おふざけモードから一転、いちゃいちゃエッチモードだ。
ぬるぬると舌が絡み合う。んんーなんて言いながら私の口の中で遊び回る彼。
その鼻に抜けるような「んんー」が色っぽいというか、可愛いというか。きっとコイツは解った上で
言ってるんだ。私がその声に反応する事を充分に知ってるから、わざとそうしてるんだ。
良いよ。何度でもその手に乗ってあげる。
彼の舌を吸いながら、絡まって私のか彼のかもう区別が付かない唾液をこそぐように口を離していく。
舌先を手放す際にちゅぽんと音を立て、すぐさま彼の首筋に唇を這わす。
ちゅっちゅと音を立てて首を登っていき、耳朶に到達すると、彼はいつも通りほんのちょっとだけ震え
て、はぁ、と力無く漏れる吐息が私の耳に当たる。
この瞬間が大好きだ。本当に可愛くて、絶対誰にも渡したくないと思う。
きっと誰も欲しがらない、ただのガノタなのにね。
耳の中に尖らせた舌先を入れると足が震えだして、座っていた場所が硬くなり私のお尻を持ち上げようとする。
すでに準備を整えた彼が愛おしくて、もう一度キスをしようと耳朶から口を離すと
「ぶっ」
そうだった。お互い落書きだらけの顔だった。
「ヒロの顔……ひゃはははは」
「おまえの顔だって……くくくくっ」
二人で笑い合っているうちに、彼が硬さを失っていくのを感じる。
すこし寂しい。
「顔洗ってさ……続きしよっか」
私は頷いて軽いキスをした。
服を脱ぎ、この部屋に相応しく狭いバスルームに二人で入る。
私はそこで初めて鏡を、落書きされた自分の顔見た。
案の定額には「中」と書かれており、右の頬には「バカ」の文字。
そして左の頬には「オレの」と書かれていた。
ああ、参った。これだからこの男は油断ならない。久しぶりにキた。ずっきゅぅーんだ。
鼻の下にバカボンパパのような髭まで書かれていたが、それはまあ良いよ。
どうしようもなく昂ぶった気持ちは、私の隣で「まじオバQじゃんこれ」なんて言ってる男にぶつける事にする。
まだお湯も浴びずに肌寒さで全身鳥肌状態のまま抱きついてやる。
ぎゅーの刑だ。
「なになに、どうした。まずシャワー浴びようよ」
いけしゃあしゃあと、どうした、だって?なんなんだこの色男め。
相手の顔にどれだけ面白い落書きをしようかって戦いの最中、お前は私の顔に「オレの」なんて書いたんだぞ。
相撲の取り組みを終えて、控え室でまわしを取ったら、中に対戦相手からのラブレターがねじ込まれていた、
みたいなもんじゃないか。ウホッ やな喩え。
あーもうどうでも良い。とにかくキスさせろ。
むちゅーっと唇を押しつけて、舌で無理矢理に彼の口をこじ開ける。
舌を入れたまま大好きと言ってみるが
「あいふひ」
としか聞こえない。まぁ、伝われば良いのよ。
胸に彼の手が触れる。下からむにっと持ち上げられ、大きい手の平に包まれる。
あ、少しだけはみ出す感じね。そんなに小さくはないから。
むにゅっと掴まれたまま人差し指と中指で先っちょを摘まれると、表面じゃなく、胸の中をぎゅーっと
されてるような気分になる。
「すっげぴんこ立ち」
違う。寒いからだ。
でも別に良い。私がもうバリバリに感じて発情してると彼が勘違いして、それで燃え上がってくれるなら、
訂正する事に意味なんか無い。
私も彼のに手を伸ばして、お返しに言ってやる。
「ヒロもぴんこ立ち」
彼も恥ずかしがる事無く、うむ。なんて言ってる。
でも目が合うとやっぱりお互い落書き顔。
とりあえず顔洗っちゃおうか、とクレンジングオイルを彼の手に絞り出す。
「これ、普通に顔洗うみたいにしていいの?」
「うん。あまり目をぎゅーっとつむってると……あ、大丈夫か、目の回り描いてないから」
言うが早いか、彼はオイルの付いた両手の平で顔をごしごしと擦りだした。
「なんかぬるぬるだな、これ」
「いやまぁ、オイルだし、そりゃぬるぬるでしょ」
と答えてひらめいた。けけけ。
私は自分の手に必要以上のクレンジングオイルを絞り出し、しゃがみ込んで彼のを握った。
オイルまみれで目が開けられない彼を犯してるような気分。
「なっ……何してんの」
彼は半笑いで言うが、語尾は僅かに色っぽい。
いけるっぽいね、これ。
「ぬるぬるで気持ちいくない?」
私はそれ全体にオイルを塗り広げてから右手できゅっと握り、ゆっくりと上下に扱き始めた。
「やばい、気持ちいいけど、目ぇあけらんないからなんか怖い」
怖いとは言ってるけど、まだ声が笑ってる。それに少し喜んでるっぽい。
親指の腹で先っちょをくるくると刺激し、左手でたまたまさんを下から撫でてみた。
「あ……」
彼は肩を震わせ、色っぽい声を漏らした。
これだ。
「たまたまさん気持ちいい?」
おっと、我ながら意外と大胆。滅多にこんな事言わないのに。
「ん……。すごい良い。足震えてきた」
ほんとだ。太股あたりがふるふるしてて切なそう。
透明なのもいっぱい出てる。
色々と撫で方を試してみたが、触れるか触れないかくらいでたまたまさんを撫でると足の震えが大きくなるみたい。
「んっ…… ケイ……が、我慢出来なく…なっちゃうよ」
でた、『なっちゃうよ』。攻められて気持ちが昂ぶってくると、彼はちょっと乙女モードに入る。
『なっちゃうよ』とか『もっとして』とか、そんな言葉が多くなるのだ。
愛い奴め。
そんな可愛い乙女の先っちょを舐めてあげる。
鈴口をちょんちょんと舌先で突っついて、傘の部分をくるーっとなぞる。
オイルと彼のが混じり合って変な味。
「あ……んっ……。い、いくかも」
かもって何よ。
彼の言葉通り、左手で撫でていたたまたまさんがくぅーっと上がっていって、限界付近だと教えてくれる。
「うん? ヒロくんいっちゃうの?」
わざと作った甘ったるい声で子供に話しかけるように言ってから、私は彼の亀頭をぱくっとくわえ込んだ。
歯を当てないように注意しながら、口の中で彼を撫で回す。
先端から溢れるおつゆを舌で亀頭全体に塗り込めるよう愛撫し、一旦口を離すと舌全体を密着させるよう
にして根本からゆっくり舐めあげる。
彼はこの攻撃に弱い。
お尻にきゅっと力が入り、舌の上の彼がぴくっと跳ねた。
逃がさないわよ、ともう一度口の中へご招待し、括れた部分をチロチロと撫でる。
「んっ、いく」
と切ない声の後に、口の中の彼はぴくんぴくんと痙攣しながら、精液を放出した。
このまま飲んでしまっても良いかな、とも思ったが、毎回それを期待されては困るのでやめておく。
排水溝に向かって、音を出さないよう気をつけつつ口の中の精液を吐き出した。
ぺっぺ、なんて音を立てたら、いくら彼でもきっと良い気はしないだろう。
シャワーヘッドをフックから取り、蛇口をひねってお湯を出す。
「流すよー」
手で湯温を確かめてから、彼の顔を流してあげる。
「ヒロ……、気持ちよかった?」
やっと目を開けた彼にちょっと色っぽい声で聞いてみる。が
「うはっ、俺こんな顔した奴にしゃぶられていっちまったのか」
笑いながら酷い返事。
……吐き出さずに口移ししてやりゃ良かったかな。
「すぐいっちゃったクセにぃ」
少し語尾を伸ばして拗ねましたよのサイン。我ながらきもいが、コイツの前だから少しくらいかわいこ
ぶっても良いだろう。
さして慌てもぜずに、気持ちよかったよ、と私の背中を抱きしめてフォローする彼を無視してシャワーを
フックに戻し、自分の顔を洗い始める。
目の周りを丁寧に洗っていると、ものすごくぬるぬるしたものが内腿に触れて、背中がぞくっとした。
それが彼の指だとわかるまで3秒くらい掛かったと思う。
先刻の仕返しかお返しか純粋なスケベ心かはわからないが、彼の悪戯が始まったらしい。
毛の部分を撫でられてシャワシャワと泡立っていく感覚で、彼の指のぬるぬるがボディソープによるものだ
とわかる。
アッという間に泡は股付近一帯に塗り広げられ、ぬるつく太股を割って彼の手が私に触れる。
彼のを舐めながら充分に反応していたそこは、大いなる期待を持って彼の指を迎えた。
別に普通だよね。好きな人のあそこを舐めてたらそうなっちゃうもんだよね。
意地悪な言葉に拗ねたふりをしていた私は出来るだけ声を押し殺してやろうと我慢していたが、一番敏感な
突起に指が到達した瞬間に
「んっ……あっ……」
簡単に負けてしまった。我ながら情けない。でも気持ちいい。
「気持ちいい?」
小声で聞いてくる彼の声が頭の中でぐわんぐわん響く。
元々風呂場に居るんだから、多少エコーの掛かった声なのかもしれないが、目を開けられない状況で与えら
れる気持ちよさが、私の耳にカラオケマイク並のエフェクト機能をもたらしている。
「気持ちよくない?」
返答を待ちきれない彼は片手を私の胸に当てて来た。
それはまずいって、そんなぬるぬるの手で触られたら1秒掛からずにツンツンになる自信あるって。
あっ―――ほらね……。
「気持ちよくない?なんかアッという間に乳首立ったけど」
訊きながら彼は、ぬるぬるの指で乳首をゆっくりと緩く摘んではつるんと逃がす攻撃を繰り返していた。
「あ…んっ……気持ちいい…よ」
もう足は一寸前の彼以上に震えてる。後ろから支えてくれてる彼のおかげでやっと立ってられる感じ。
なのに次の瞬間、彼はシャワーのお湯で泡まみれのそこを流してしまった。
あれ?もうおしまいなの?でもなんで胸の方は流さないの?
素朴な疑問と少しの残念さを感じている間に、ぬめりを失った指が再び私のそこに触れた。
さっきまでやたら攻め立てていた場所よりもうちょっと下の、入り口付近に近づく。
恥ずかしい事に表面の泡を流されても中はまだ自前のぬるぬるでいっぱいになっていて、私は彼の侵入を
簡単に許してしまった。
付き合い始めの頃に洗いっこをしてて、石鹸で中まで洗われると後でぴりぴりするから、と彼の悪戯を諫
めた事があったのを思い出した。
ああ、この人は私が言った事をちゃんと憶えてくれてるんだ、と嬉しくなってしまう。
やっぱり単純なんだな、私って。
なんて、約1年前のエピソードでまったりした気分に浸る暇もなく、彼は私の中で指をくいっと曲げて
最近開発されてしまったポイントをくにくにと刺激しだした。
指を曲げたまま引っかけるように往復されて、真っ暗なはずの目の前がどんどん白く霞んでいく。
「目かくしされてるみたいだろ?」
「あっ、あっ、んっ……あふっ」
耳元で囁かれるが、もう返事なんか出来ない。
「可愛いよ、ケイ」
きっとこういう時の可愛いって言葉は信用してはいけないんだと思う。
乱れてる様子を見て「そそるぜ」とか「エロいな」って言葉を聞こえの良い「可愛い」に置き換えてるだ
けだと……頭じゃ理解してるんだけどね。
理解してても、さっき思い出したエピソードや頬に書かれた「オレの」のおかげで私は好き好きモードに
入っちゃってるし、乳首は相変わらずぬるぬるの指でぴんこ立ちにされたまんまだし、目が開けられなくて
なんだか普段よりイケナイ事してるような感覚だし、そこで「可愛いよ」なんて言われたらもう、ね。
「ああっ、だめっ……だめ、もうっ……」
なんとか言葉を絞り出した私に
「いいよ」
と答えた彼は、ほらいけっ、と言わんばかりに私の右耳をついっと舐めあげた。
「ああっ…いっ、いくっ……ああああっ」
舐められた耳から右の乳首まで一気に鳥肌が立つような感覚に襲われ、絶頂を迎える。
「ああっ……ああっ……ああっ」
一定のリズムであそこが痙攣してるような感覚が、目を開けずとも自分の身体が今どうなっているのかを
解らせる。
くじらさん状態。
曲げた指で攻められると、こうなってしまう。
きっと彼の手には生温かい飛沫がたくさん掛かっているんだろう。気持ちいいけど非常に恥ずかしい。
「んー、可愛かった」
痙攣が収まるのを見届けた彼が頬にキスをくれた。
まだオイル流してないのに。早く目を開けたい。
「ほれ、流すよー」
という言葉の前にちゅぽという音が聞こえた。
嬉しさと恥ずかしさで一気に顔が熱くなる………それは舐めちゃだめって言ってるのに。
オイルとボディソープを流してもらって、数分ぶりに光を得た私は、シャワーヘッドを持ってえっち
くさい笑みを浮かべたままのヒロの唇に思い切りえっちなキスをした。
好き好きモードをなめるなよ、こんなんじゃまだ満足しないんだからね。
私は先に言われてしまう前にどうしても自分から言いたかった言葉を彼に伝える。
「ベッド行って続きしよっ」
――終――
すごく、いい。
こういう、大きな仕掛け無しなのに
丁寧に読ませるもの書ける人、尊敬する
GJ!!萌えた!
GJ!書き慣れてるって感じがしました
いろんなタイプのものが読めて嬉しい
職人さんたちありがとうございますぅ
>くじらさん状態
いい呼び方だなー、ほのぼのしますな。
左ほっぺの落書きもステキです。
いちゃいちゃも、えっちも、女性が受け身一辺倒じゃないのがいい。
面白かった〜、ありがとう。GJっす!!
287 :
270:2007/12/17(月) 23:33:18 ID:g9NvcqfY
拙作にご感想をお寄せ頂き、感謝感激です。
二人が可愛く見えるえっちを目指して書いてみたので
エロ的には物足りない内容かと思いますが、ほのぼのした空気を感じていただければ幸いです。
こんな短編を書くのに二週間もかかってますw
推敲も何度もやったつもりなのに脱字等ありますねぇ・・・
(
>>276 2行目 自分の顔見た× 自分の顔を見た○ 等)
またなにか書けたら投稿しに参ります。
やっと規制解除の喜びカキコ
377氏、目一杯笑わせていただきました。
純な恋心をへらず口と暴力で武装した二人のやりとりがとにかく可笑しい。
工藤その3と三沢もいいキャラですし、
個人的にツボな水沢と話題にさり気なく出てきた
さくら(彼女)とシロー(叔父)の箇所で思わずニヤリとしましたw
相手が6人増えた由愛子の新作、当然誠司も買ってるでしょうね?
289 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 17:22:50 ID:LE4/sZ2U
緊急保守
290 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 01:48:48 ID:KZFHruZD
保守乙!
>>277 エロもなかなかだけとラブラブっぷりとほのぼのに萌えた。Gj
ほしゅ
保守!
職人さん、お待ちしてます。
保守
296 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 21:32:29 ID:s0sEvqNW
ほしゅ
前スレの◆O8ZJ72Lussさんは
続きを書いてくれないのだろうか?
続きが気になる。
黒澤くんに会いたいなあ…
299 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 22:59:03 ID:soXB2z61
300 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 02:55:23 ID:ZEs3RXXN
自分も繭子たんの話をまた読みたい
カツオ「マ、マスオ兄さんッ太くて大きい。」
マスオ「カツオ君のアナル、すごい締まりだ。」
中島「ワカメたん、ハァハァ。」
302 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 21:50:19 ID:SaqYn3WR
_,._
(・д・)…
保守がてら投稿します
携帯からですみません…。
「優、ほんっとごめん!ダッシュで行くから!」
「早く来てよねもー!電車の中で走れっ!」
私は賢に言うだけ言って電話を切った。
賢とは遠距離で、付き合ってもうすぐ1年になる。そして今日が付き合ってから初めての賢の誕生日。
…なのにヤツは寝坊したと言うのだ。
こっちへ来るのに4、5時間はかかるというのに、賢が起きたのがたった今。こっちへ着く頃にはもう夜だろう。私は朝からバイトで、モーニングコールできなかったから気にはなってたけど…見事にやってくれた。
(お昼からデートしたかったのに…こんなのエッチだけになっちゃうじゃん)
遠距離でなかなか会えないから、会うときはデートの後にホテルでいちゃいちゃするのがお決まりのコースだ。それは嫌いじゃないけど…むしろスキンシップは大好きなんだけど。
(賢がすぐ触ってきたりするから、なんっか満足できないんだよね…)
ほんとは、ホテルではまったりとデートの話をしながらちゅーしたり抱っこしてもらって、気分が乗ってきてからエッチしたいのだ。
でも彼は普段あんまり会えないし、思春期真っ盛りだしで、ちゅーしてたらすぐに手が胸にいったり、色々といじってくる。
それがドキドキするときもあるけど、やっぱり気持ちよくなりたいから、物足りない。
でもお互い初心者で、まだ恥ずかしいのもあって、もっと焦らして濡らして気持ちよくさせてほしいなんて言えない訳で。
それでもいつもは一日中遊んで、気持ちが満たされてる状態だったからそんなに気にしなかった。
(でも今日は、寝坊して遊べなかったから、さっさと手ぇ出してきたらキレる!絶対させてやんない!)
と、女性脳の特異な思考回路で私はよく分からない決意を固めていた。
紫煙
男の敬語に萌えるので、色々あさってみたんだけど、
なかなかないねぇ〜
「恋するたんぽぽ」くらいかな〜
このスレ初めてなんですけど、保守がわりに投下してもタイミング的に大丈夫ですか?
携帯からなのと、ちょっと長くて15レス位なんですけど…
>>307 過疎の村へようこそ。お待ちしておりました。
どうぞどうぞ、遠慮なく。
307です。投下させて頂きます。
改行には気をつけたつもりですが読みにくければすみません。
あまりエロくはないかも
えーっ。ちょっと、そこあたし使ってんですけど。
ジュースを買いに立ったらその間に場所取られた。有り得ない。
あたしは構わずカーテンを開けてやった。
「ちょ、テメェ何しやがんだ!」
慌てて男がパソコンの画面を手をバタバタしながら無かった事のように隠そうとする。
「……それ位じゃ今時誰も驚かないよ」
わざわざんなとこまで来てエロ画像かよ。ダサッ。
「つうかさ、人が使ってるとこ勝手に開けんじゃねえ!」
「それはこっちのセリフだよ」
ああ?と男はあたしが指差した椅子の下を見た。
小振りのバッグが1つ。足下にあるのに気がつかなかったらしい。
「……悪い」
気まずそうに頭をポリポリと掻いて電源を落とすと席を立って、隣りへ移った。
あたしは再び席に着こうとする、が、館内放送に仕方なくバッグを手に立ち上がった。
「何だよ、使わねえのかよ」
さっきの男が顔をしかめてこっちを覗く。
「時間」
この店――いわゆるネットカフェだが――では9時までしかあたしのような女子高生は
いられない。
「ガキは早く帰れよ」
男は軽くばいばいと手を振りながら紙コップに口を付ける。
あたしはそれを見ながらこの後の事を考えていた。
そして、閉めかけたカーテンに手を掛けてその動きを止めた。
「な、なんだよ!まだ何かあんのか?」
「……ねえ、あんたさ、彼女いないよね?」
金曜の夜にこんな所でエロ画像見てるんじゃ当然そうだろうけど。
「う、うるせえな。だったら何なんだよ?」
こいつ、口は悪いけど人は悪くなさそうに見えた。ちょっと無精髭が残念な感じ?
ちゃんと髪も手入れしたらそこそこの見た目だろうに。
思い切って言ってみた言葉に男は飲み物を噴き出しかけてむせた。
「な…………!?」
無理も無い。だってあたしが言ったのは……。
「あたしとどっか泊まらない?」
だって、あたしはその日帰るつもりなんかなかったんだから。
1週間後。
あいつ……『コージ』はまた居るだろうか?正直期待は出来ない。部屋のパソコンが
壊れたから来ただけだと言っていた。修理が終われば用はない筈だから、あれっきり
でも不思議じゃない。
メアドも携帯番号も教え合う事はしなかった。聞かれはしたけど、教えなかった。
そんな事したら何だか格好悪い気がして、だから互いに下の名前――それも普段呼ばれ
慣れた愛称位の物だけを教えてあった。それも便宜上の事だから大して意味は成さな
かった筈。
醒めた1度だけの付き合い。それだけでも良かったのだ。
あの後コージは戸惑いながらも結局はあたしとラブホに行って、当然セックスした。
ただ、する前と事後とではあいつの態度はちょっと変わっていた。
『お前……!?』
苦痛に歪んだ顔と少し汚れてしまったシーツを目にした途端、頭をポリポリ掻いて
『ごめん……』
と消え入りそうな声で呟いた。
部屋に入れば当たり前の様に交替でシャワーを浴びてさっさとベッドに入った。
そのまま当たり前の様に始めた行為だったから……それは驚くのも無理はないのかも
しれない。
『なんでお前……!?』
『別に』
捨てるという事自体にはあたしは正直何の感傷も抱いてはいなかった。ただもっと
こいつがイヤらしいオヤジだったりし馬鹿そうなヤンキーだったりしたらさすがに
そんな事しなかったけど、なんて考えてた。
『家に帰りたくなかったから。誰かが一緒にいてくれたらそれで良かったんだ』
それが、たまたまあんただっただけだよ。
そんな風に考えながらただグッタリとベッドに沈んでいたあたしは、気付いたら
コージのされるがままに腕枕されて眠ってしまっていた。
気恥ずかしくて朝、ばいばいとだけ言って速攻ホテルの前で逃げる様に別れた。
それから一週間後、またあたしはネカフェにいる。
「マナ、か?」
思わずビクッとして振向いた。この間の様にパソコン周りをうろついて見た。でも
まさか居るかどうか期待半分、諦め半分だったから正直凄い驚いた。
「来たんだ?……てことはまだ直してないんだ?パソコン」
「ん」
短い返事だけしてコージは空いたブースに座る。
「お前は?」
「別に。……時間まではいるつもりだけど」
「そっか」
口調はこの間と変わらずぶっきらぼうだった。だけど何故かあたしはちょっとだけ
ホッとしていた。何ていうか、知らない場所でやっと自分の知り合いに会えて安心す
るような感じに似ている。
会いたかった?まさか!
1回寝た――大して大事にしていたわけでもない貞操とかいう奴をたまたま渡した
だけの相手に?そんなのダサすぎる。
あたしは両親が互いに不在がちで上手くいっていない、よくある話に乗っかって
しまって週末に1人家にいるのがばからしかったのだ。
だからあたしが家にいてもいなくても同じなわけで、だったらどうせなら誰かと
一晩位過ごして見たかっただけだったのだ。その最初の相手がたまたまこのコージ
だっただけ。それだけ。
「なあ」
「なに?」
「今日はちゃんと帰るのか?」
「さあ」
特に何をするわけでもなくパソコンの前に陣取りながら言う。
「だったらまた今夜も俺といるか?」
ほっぺを指先で掻きながら目線は画面に向けたまま、低く小さな声で呟く。
「……そうする」
答えた途端あたしの手を掴むと立ち上がって、そのまま店を出た。
またこの間と同じ様に交互にシャワーを浴びてセックスした。
ただ違ったのは、黙ってさっさと始めてしまった慌ただしくどこかギスギスしたこの
前とは雰囲気が変わった気がした。
「んっ……」
おざなりだったキスを嫌と言う程浴せられ、時間をかけてあちこち丁寧に撫でられた。
その後はまた腕枕されて眠って、同じ様に朝には別れた。
翌週も同じ様にそこにコージはいて、同じ様にラブホに行った。
今度はあたしが先に入ったシャワーの途中でいきなり自分も入って来て、そのまま
押し倒された。
「なん……っ」
驚く事もままならないうちに唇を塞がれ、ソープの泡で滑る身体を長い指がはい回る。
「あ、ちょっ……」
「……嫌なら、やめるけど」
そう言いながら後ろから抱き締められ……というよりはがい締めにされた感じで
あたしは身動きが取れないままツルンと乳首の先を摘まれ、思わず
「……は、ああっ」
と声をあげてしまった。
「立ってるじゃんか」
「こっ、これは、寒かったからで……や、んぁっ」
耳朶の後ろに熱い息が掛かり、そのまま噛まれてぞくぞくした。この間気付いたん
だけど、あたしの弱点だったようだ。
その上両胸を鷲掴みにされたまま中指で尖端を擦られ、おかしくならない方がどうか
してる。
「……ふ、あぁ、や、だめ、だめ、だっ……あああっ!!」
「よく滑るな」
右手がいつの間にか下半身に伸びていて、ぬるぬるとした感触とカッと火照りだした
そこの熱を帯びた感覚にあたしは思わず膝が震えた。
「辛いか?」
必死で頭を縦に振ると、コージは立ててあったマットを敷いてその上に座り、あたし
を膝の上にまた後ろ向きにしてから乗せた。
「泡とお前のとどっちだろうな」
もうあたしのあそこは音を立てて濡れまくっている。
「声出せ」
「そんなやだぁ……っ、あ、ああっ」
「やめたくないだろ?」
「…………っ」
「俺もやめたくないから」
肩に乗せられた横顔をチラッと見る。切れ長の目がSっぽい雰囲気を醸し出してる。
だけど決して乱暴な事はやらない。むしろ、回を重ねる毎に優しくなる気がする。
愛撫は止まず、風呂場にやらしい水音とあたしの喘ぎ、コージの息遣いが響き渡る。
「あ、ーーーー……っ!!!!」
その日、初めてあたしは、イク感覚を知った。
全てが済んでもまだぼうっとマットに沈んでいたあたしを、コージは抱き抱えて
起こしてくれた。そのまま何となく流されるままに身体を洗われて、髪を洗うのも
手伝ってくれた。
気恥ずかしいけど嫌じゃなくて。だから、あたしも背中を流してコージの頭を洗って
あげた。
やだ、なんか。
あたし笑ってる。
「これって気持ちいい?」
指先でマッサージするように地肌を洗ってやると
「うん」
と心なしか弾んだ声が聞こえた気がした。
「……また、頼むな」
「いいよ」
またって事はこの次もあるって事。約束したんだあたし達……初めての約束。
どこまで続くのだろう?正直、初めてのあの時で終わるもんだと何の疑問も持たな
かったのが嘘の様だ。
次を決めてしまったら、切れてしまう事を考えるのが恐い。あたしはどうしてしま
ったんだろう?
2人で広い湯船に向かい合わせで膝を立てて漬かった。改めてじっくり見合うと、
今更何だか気恥ずかしい。
「なあ、歳聞いていいか?」
「…………17歳。高2。あんたは?」
「ハタチ。××大の2年」
そういやあたし達は互いの事ほんとに知らない。
「17か、本当はこれってやばいんだろうなぁ?」
「さあ」
コージは頭を軽く掻きながらあたしを眺めている。
「別にいいじゃん。いちいち誰も聞きやしないよ」
「だな」
本当に今更。そんなの最初に考える事じゃん?だけど、だからって会うのやめよう
かと今更思いもしなかったのも事実。
頬から首筋まで自然にコージの指があたしに触れる。長くて綺麗だな、といつも心の
中で思いながらそれを眺めている。
代わりにあたしは無精髭を何となく撫でてみる。と、引き寄せられるように唇が軽く
触れ合うだけのキスをした。
「……ちょっとチクチクすんね」
「悪い」
でも嫌いじゃなかった。
あたしはコージの事を知らない。コージもあたしを知らない。それでも良かった。
でもこのままだとあたし達はどうなるのだろう?
いわゆるセフレ。それでいいのかもしれない。
今夜は迷っていた。
建物の前まで行ったものの、中に入るのはためらわれた。
コージは来てるだろうか?最初の時から3週間は経ってるし、パソコンが直ってい
たらもうここには用はないんだ。
時間はもうすぐ9時になろうとするから、今から中には入れない。仕方ない、今夜は
うちに帰ろう。
「…………待て!」
「きゃっ!?」
後ろから肩を掴まれて驚いて振向いた。
「なんだよ。もう来ねえのかと思っただろうが」
息を切らして店から飛び出して来たのは奴だった。
「…………うん、ごめん」
何で?あれ、何であたし謝ってんの?
「具合でも悪かったのか」
「ううん」
「そっか」
心配してくれた?……まさかね。
「行くか」
自転車を取って来ると、いつもの様に後ろに乗れと促された。だけどあたしは動か
なかった。
「ごめん……」
まさかそんな返事が返って来るとは思わなかったんだろう。切れ長の目がかすかに
開いた気がした。
「どうか、したのか?」
「今日はダメなんだ」
行きたくても一緒に行けない。何故なら……。
「あたし今日できないから」
「は?」
「だから、昨日から、始まっちゃったから、その……」
最初は首を捻っていたコージは徐々に理解したようで、途中から
「あ、ああ、なるほどな。そっか」
頭を掻きながら
「いや、いいんだ、うん。そっか」
って心なしか顔を赤らめた気がした。
「……んじゃ、送ってやる。乗れよ」
「いいよ」
「気にすんな。いいから、ほら。こんな時間に1人で帰せるかよ」
確かにこんな時間に来た道を戻るのは賢いとは言えなかった。あたしはコージの言う
事を聞くことにした。
ダウンのフードのファーの感触がくすぐったいけど、奴の背中は広くて暖かいと思
った。落ちないようになんて言い訳しながら掴まる手に力がこもる。
「……良かった」
ふいにコージが呟いた。
「え?」
何を言うのだろう。あたしは思わず聞き返す。
「ねえ、何が?」
するとその場で自転車を漕ぐ足を止めて言った。
「もう会わないんだと思ったから」
肩越しにあたしを見る目はいつものつり目の筈なのに、寂しげに――だけど少し安心
した様に感じたのはあたしの思い上がりだろうか。
「そんなの考えた事ない」
あたし何を言ってるんだろう?でもそれは思わず口をついて出た言葉だから、きっと
本心だろう。
……あたしは自分で自分の気持ちをわからないのか。捻くれてる。
「そう、か」
ちょっと笑ってまたコージは自転車を漕ぐ。
まだこいつとは離れたくなかったんだ。あたしはそれに気付いてしまった。
「止めて」
「え?」
近所の寂れた公園の前で自転車を降りた。
「おい、どこ行くんだ」
「いいから」
戸惑うコージの手を引っ張って奥のベンチにあたしは向った。
植え込みの側のベンチにコージを座らせた。あたしはそのまま前に跪き地面に座る。
「おい、何を……うわっ!?」
許可を得ずにベルトを外して一気にジーパンのジッパーを下ろすと、勢いで下着の
上からコージのモノに触れてみる。戸惑いながらも一気にそれは硬くなって。
「大丈夫だよ。昼間だってほとんど人なんか来ないから、ここ」
「お、おい……う」
思い切ってそれに唇を当ててみる。布越しにもその熱が伝わって来て、何故かあたし
まで喉の奥が渇いてゆくような熱を帯びて来た様な気がして、
それを治めるかのように一気に下着を下げてそろそろと先端に口づけをした。
「……あっ」
小さく呻く声が漏れた。ピク、と微かに反応して唇からブレたそれに思い切って
もっと深く含む。
「何でこんな……マナッ……」
そのテの雑誌なんかで読んだ程度の知識だがそれを思い出しては動いてみる。
戸惑いながらも徐々に反応を示し始めてそのうちコージは黙ってしまった。
もはやあたしのするがままになっている。荒い息遣いをしながらその手は押さえる
事のない程度の力であたしの頭に撫でる様に乗せられている。
「…………っ!?、ダメだ、マ、ナッ……!!」
小さな悲鳴の様に似た声をあげてコージの身体が震えた瞬間、それまでにじわじわ
と溢れて来た物とは違う何かが勢い良く口の中に流れ出て、思わずむせ返りそうになっ
た。
「悪い……」
大丈夫かと火照らせた頬をしながら申し訳なさそうにあたしを見下ろす。目が合って
初めてあたしは急に恥かしくなって、口元を押さえたまま目を逸らした。
「無理に飲まなくていい」
確かに辛い。頷いてバッグから何とかティッシュを取り出して吐き出した。まともに
見たのは初めてだ。いつもコージはゴムを付けていたから、それ越しにしか目にした
事はなかったから。
勢いとはいえ、何て真似をしたんだろう。まともにコージの顔が見られない。
無言で家の前まで辿り着いた後、やっとコージの方から口を開いた。
「新庄っていうのか」
表札を見て呟いた。
「新庄。新庄愛永(まなえ)」
それがあたしの名前。今更だけど。
「……まなえ、でマナか。なるほどな」
自転車を降りて門へ向う。
「親とか大丈夫なのか?」
「まあね。多分どっちもいないから平気。明日は母親が帰るけど、父親はいつかわか
んない」
そう言うと、何とも言えない複雑な顔をした。無理もない、こんな時普通は何と
言っていいかわからないもんなんだろうし。
両親とも仕事が多忙で家に帰れず、2人共それぞれの職場の近くに部屋を借りて
いる。母親は土曜になるとあたしに会いに帰って来る。……ていうのは建前で、単に
月〜金まではいる家政婦に洗濯物を押し付けて新たな着替えを取りに来るだけなのだ。
父親に至ってはもう月1あれば良い方で、すっかりそれに慣れてしまった。
どちらにもそれぞれ別に相手がいる事も、もはや公然の秘密である。
コージはあたしのそんな下らない独り言のような語りを黙って聞いて、
「だからあんな事したのか?」
と呟いた。
「俺でなくたって良かったんだよなぁ……」
俯きながら、息を吐く。白くて深い溜め息。
「……俺だって人の事言えたもんじゃねえけどよ」
自転車の向きを変えるとしばらく背を向けていたが、やがてゆっくり振向いて聞いた。
「……なあ、何で今日あんな事した?」
その顔は何だか少し哀しそうに見えた気がした。
「……出来なかったから」
「だからって何で?」
問われていきなり締付けられたように苦しくなって、思わず胸を押さえた。
「だって、やれなかったら意味ないじゃん。あんたにとって、あたしは会う事の意味が
なくなって、だから……」
あたしは何を言ってるんだろう?いたたまれなくなって、逃げる様に家に入った。
しばらくして、自転車が走り去るのを自室の窓から眺め、泣いた。
単なる逃げ場であり、セフレだった。
そうしておけば深みに嵌らず傷付かずにいられる筈だった。
なのに誤算だった。あいつはそうするには優し過ぎたんだと思う。
最初はあっちだって単にやりたいだけだったんだろうし。それがあたしがうっかり
処女だったりしたもんだから、優しいあいつは構わずにはいられかったんだろう。
優しくされるのは嬉しいけど辛い。だから今のうちに捨ててしまえば良い。
愛情だなんて勘違いに気付いて深みに嵌って傷付いてもがき苦しむ前に……自分で
断ち切ってしまえばいい。
土曜の夜には一応母親と呼ぶ人がやって来る。情けないけど、食べさせて貰ってる
らしい今は偉そうな小言に付き合って母親風をふかせてやらなきゃなんないらしい。
日曜は学生である以上、翌日のために備えておく。
だから空いた金曜の夜、あたしは自分を求めてもらいに行こうと思っていた。
そして運良くコージを見つけた。
もう会わないつもりだった。だから大してショックは受けずに済む筈だった。
だけど、突然やって来たそれは自分が思っていたより空いた穴をさらにえぐる様に
苦しみを与えた。
『勝手ながら閉店します』
気が付けばまたフラフラと足が向かっていたその場所は、もう踏み込む事が出来な
くなっていた。
コージには結局携帯番号もメアドも敢えて教えていないままで、名前も正確には聞か
ないままにしてしまった。家も知らない。
あたしは完全に居場所を失くしていた。
そして、コージも失った。
もう会う事はない。いや、会えないんだ……。
そう思ったら、初めてあたしは自分がしでかした事の馬鹿さと重さに気が付いた。
でももう遅過ぎた。醒めたフりしてコージを傷付けて、自分自身も痛め付けただけ。
「よお、暇なんだろ?俺に一晩付き合えば2万やるぜ?」
背後から中年のオヤジが声を掛けて来た。
「こんな時間に1人でいるんじゃ、どうせ家出かウリだろ?どう?いい気分にさせて
やるよ、ん?」
どうしよう。でも元々最初はそういう事も考えなかったわけじゃなし、もう捨てる
物なんかない。だけど、けど……。
「な、行こう」
酔った息が気持ち悪い。
「いや……」
ダメだ、やっぱり嫌だ、嫌だ、嫌だ!
「嫌だ!離してよ……コージ……コージ……」
あたしは弱々しい声で、涙を堪えながら掴まれた腕を振りほどこうともがいた。
いや、恐い。初めて恐怖を感じた。夜の町は何てあたしのようなガキには恐ろしい場所
なんだろう。
今更後悔しても遅いのかな、もう色んな事が。
そう思っていたら、
「悪いな、待たせて」
そう言ってオヤジに掴まれた腕を引っ張られ、引き離された。
そのままその腕に抱えられるようにして抱き寄せられた。
「悪いけど、コレ俺んだからさ。他当たってくれ」
そいつは静かに切れ長の目で相手を睨む。涼しげな目元に長身はそれだけで迫力が
あるらしく、アッサリ敵は逃げ出した。
「何で……?」
信じらんない。だって先週あんな別れ方したのに。店だってなくなって、ここには
もう用はない筈じゃない。
「あれから考えた。最初は単に溜まってたし、暇だしヤれりゃ別に悪くない話だしっ
て正直な話、思った。けど、何か気が付いたらハマってて……。ヤれなくても別に
がっかりしなかった。会えないかもと思った方が辛かった」
冷たい夜風から守られてる様な気がしながら、抱きすくめられて聞かされた。通る
人間の視線がたまに向けられてもどうでも良かった。
「……うち来るか?」
あたしは迷わず頷いた。
『早川浩史』
アパートの表札に書いてあったそれが名前だった。
相変わらずパソコンは潰れたままだそうで部屋の隅にカバーを掛けられたまま放置
されていた。
「結構片付いてんじゃん」
「……実はバイトの給料前で金キツくてさ。だから連れて来るつもりで片付けた」
部屋の隅にはゴミ袋が積まれてあって、洗濯物がカーテンレールに掛けてあった。
そういえばホテル代はいつも全部払ってたし。ああ、だからか。
「パソコンもまだ直せないんだ……?」
あたしがそう言うと頭を掻いて
「茶飲むか?」
と流しに立った。畳がミシッと湿った音を立てる。
「ううん、いい。それより……こっち来て」
ベッドに座ってコートを脱ぐと、コージに手を差し延べた。
「……やらなくてもいい、無理に」
「あたしもだよ。だけどそうして欲しいの」
近付きたい、彼に。
「もう抱きたくない?」
「いや」
「本音は?抱きたい?」
「……うん」
「じゃあそうして」
「……マナ」
あたしの腕を掴むとコージは体重を掛けて来て、一緒にベッドに倒れ込んだ。
激しく、深く舌を絡ませてコージはあたしの口内を弄ぶ。
「ふ、……んっん、ん〜」
しばらくの間濡れた音を静かな部屋に響かせて、やっと離れた時には唇から唾液が流
れた。
「あたしの事好きになった?」
「うん」
「やれなくてもいいんだ?」
「うん」
「でもしたい?」
「うん」
あたしはさっきまで重なり合っていた頬を両手で挟んで、自然と潤んで来た瞳を精
一杯開いてコージを見つめながら、じわじわとわかってきた自分の気持ちに胸が締付
けられていた。
ああ、これがそういう事なんだ。
「会いたかった。あたしも会いたかったんだ。あんたが……コージが…………好き」
生まれて初めて人に好きだと言われた。好きだと言った。
「なんで泣くんだ?」
「わかんない」
わけもわからず流れて来る涙を、コージの長い指が拭い、優しく唇がその跡をなぞる。
「マナ」
そのままその唇はあたしの耳朶へと動き、指は首筋から下へ這ってゆく。
セーターの裾を掴むとそれを捲りあげ、ブラが覗いた胸をそれごと揉み上げながら
首筋へと舌が動く。
「あ、はぁ……やっ」
カップの上の隙間から指を忍ばせ乳首を軽く転がす様に探る。
「立ってんな」
耳元でボソッと低く呟くと背中に手を回してホックを外した。
「脱がせていいか?」
頷くと身体を起こされて、バンザイさせられてセーターを脱がされ、ジーパンも脱
がされた。その後慌てて思い出した様にヒーターのスイッチを入れに立つと、自分も
トレーナーを脱ぐ。
ジーパンに手が掛かりボクサーブリーフが覗くと、もうそれが膨らんでいるのがわ
かって、この間自分がした事を思い出して赤くなった。
「あんま見んなよ」
ほっぺを掻きながら近付いて来て布団を捲る。そのままあたしの上に重なると、唇を
啄む様にキスをしながら鎖骨、胸へと手をやり再び乳首の先を
苛め始める。
両手の指で左右それぞれの先端を円を描く様に撫でられると、くすぐったくてそれで
いて痺れる様に感じてくる。だめ、気持ちいい……。
キスをやめて唇を離しても、おでこを、鼻をくっつけたままあたしの唇から漏れる
吐息を確かめる様にじっと黙って目を閉じたままのコージがイヤらしくて恥かしい。
反応を確かめている。
「これはいい?」
ちょっと摘まれる。
「あ……ちょっと痛い」
じゃあこれは?と軽く擦る。
「んっ……やあっ、あ、あんっ」
背中を反らせて胸を突き出してしまうのを自分でもどうにも出来ない。
「もっと声、出せ」
「いやぁ……き、聞かれちゃう」
壁にピッタリのベッドじゃきっと隣りの部屋まで届くんじゃないか?なんてこんな
時に変に冷静に頭に浮かぶから不思議だ。まだ余裕があるのか。
「マナの声好きなんだ」
そう言うと目の前にあった顔は胸の上にあり、舌の先で吸い付きながら弄ばれる。
「……ああ、あ、もっ、とぉ」
「ん」
今度は舌で押さえ付けられる。のけ反った背中の隙間から滑り込んだ掌で背筋を撫で
られてぞくぞくと快感が走り回る。
「あああっ!」
もうどうにでもして。そう思った時にはショーツの端に指が掛かっていた。
一気に引き下ろされ、膝を曲げられると指があそこをじっくり上下に動く。その滑
らかな感触から自分がかなり濡れているのがわかって恥かしい。
「……いい?」
何を?と問う間もなくその指先は一番敏感な花芯を捕えた。
「…………っ、はあっ、いや、やあそこっ、だめ、あ、あっ……」
「嘘付け」
水音を立てながら確実にそれはあたしを狂わせていった。さっきまで気にしていた
隣室のことなんてどっか行ってしまった。
指がふと止まる。
「…………う、嘘、そんな……あっ……あ」
初めてヤられた。唇を当てて、舌で充分過ぎる程敏感になった場所を攻められてあた
しはやがて目の前が真っ白になっていった。
「イッたな」
少ししてコージを見るといつの間にか避妊の準備を済せ、あたしを間近で見つめな
がら入口に自身をあてがっていた。
「いくぞ?」
あたしはただ黙ってしがみついた。
苦労せずしてそれはすんなり中に納まった。
「大丈夫か。もう、動くぞ」
「うん……」
2週間ぶりの痛みは感じなかった。
安物っぽいパイプベッドが動きに合わせて軋む。
「マナ、マナ」
あたしの名前が何かの呪文のように繰り返される。
「何?」
返事なんか期待しない。けどコージの唇は何かを漏らしたそうで、つい聞き返して
しまう。
「……きだ、好きだ。マナ」
もう1度言って。
「俺は……好きだから」
うん、うん。
苦しくて、伝えたい言葉は喘ぎ声にすり変わってしまう。あたしもだよって伝えたい
だけなのに、ただ呻いてしまう。
「はあっ、は、はっ」
コージの顔が歪み始めて言葉が聞き取れなくなってきた。潤んだ瞳が愛しくて、腕
を回してキスをせがんだ。
唇を重ねながら繋ったまま、コージの身体が大きく震えた。
「んっ……んん、ん……」
苦しげに微かに呻くと唇を離し大きく息を吐くと、あたしの上に倒れ込んだ。
どれくらいこうしていたのか。コージの腕枕にまどろみながらぼうっと部屋を眺めて
いた。
田舎から大学進学のために出て来たため、ほとんど余分な物は無いという。ベッド
とパソコン、小さなコタツと暖房器具。あとは小さな食器棚?とか冷蔵庫位か。他は
押入れってとこか。
「何見てんだ?」
寝てると思った相手が起きてたのでびびった。
「いや、人ん家って面白くてさ」
「そんなもんか?」
「コージはそうじゃないの?」
「ん……どうかな。向こうじゃともかく、こっちじゃあんまり知り合いいないからな」
どちらかと言うと無口で、お世辞にも陽気とは言えない男だ。無理もないかもしれ
ない。時間を掛けて付き合えば良さのわかる奴なんだろう。
「あたしもあんまり付き合い良い方じゃないよ」
だから一緒にいて心地よいのかもしれないと思う。
「なあ」
「何?」
「携帯教えといて欲しい」
「わかったよ」
2人で携帯を取り出して、メアドと番号を交換した。
「こういうのって普通は最初にするんだよね」
「だな」
なんか全てが順番飛ばしなあたし達におかしくなって、気が付いたらただ笑ってた。
バカだよ。バカ同士で似合いだ。
一通り笑って、また腕にあたしの頭を乗せる。
こんなの寝苦しそう、ってテレビとか漫画なんかじゃ思いながら見てたのに、それが
心地よくて好きになってる。
コージがあたしを意識したのは、最初の日の腕枕らしい。
『無防備に寝る顔が可愛いと思った』
多分知らずに安心してたんだろう。パズルの凹凸がうまく嵌るように、あたしはこの
場所にハマったのかもしれない。
ふと近くで見て今更気が付いた。
「無精髭がない」
「お前チクチクするって言ったから」
マメに剃ったのか。思わず吹いた。
「笑うな」
「ごめん。でもさ、あたしそれ、嫌いじゃないよ?」
ちょっと痛いけど、くすぐったくて何か本当に嫌いじゃなかった。
「そっか」
また頬を掻く。
あっ、とそれで気が付いた。わかってしまった。
コージの癖。困ると「掻く」んだ。
頭を掻く時は困った時。けど頬を掻くのはきっと同じ困ったでも「照れ」たり「嬉
しい」「恥かしい」時だ。
「何ニヤついてる」
「いや、別に」
わかると面白い。
「あのな、来たくなったらいつ来てもいいから。後で鍵やる」
「……ヤれなくても?」
ちょっと間はあった気もするけど。
「別に構わん」
「うん」
半端なあたしは欠けていたピースかもしれない相手と、居場所を手に入れたのかも
しれない。
それは逃げ場ではなく、安らげる場所として。
「来るよ」
逃げるんじゃなくて、好きな人に会うために。
<END>
以上です。粗り
すいません、途中送信しました。
粗削りな文章になってるかと思われますが、少しでも暇潰しになれば幸いです。
GJ!
読了感すっきりで、すごくよかった(*´∀`)
GJ!
個人的に凄く好み。
329 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 02:21:07 ID:/9PKi5dG
確かエロくはないんだけど、そっけないようでいて、雰囲気の伝わってくる文章に引き込まれました。
GJでした!
謎が解けた瞬間、タイトルのつけ方が巧いな〜と感心した。
マナの子供っぽい虚勢や内に抱えた孤独が癒されていく過程が
丁寧に綴られているし、エチシーンもあれくらいの描写で抑えたのが
リア女子高生って感じで良かったです。
GJ! 次の登場をお待ちしてます。
書き手です。初投下にレスありがとうございました。
話重心の上あまりエロく書くのが上手くないので心苦しかったのですが、
お誉めいただいて嬉しいです。
また勉強してきます。
>>331 いまきた。GJ!
体の関係から始まる話、好きですw
またなにか書けたらよろしく〜
書き手様、ありがとうございました〜
334 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 13:11:29 ID:Vqx9pkKU
捕手しとくか
黒澤くん待ち保守
336 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 03:02:53 ID:sYy8XbrM
ほす
おいらも黒澤くんほしゅ
バレンタインの話を書きかけて途中で放置しているのだが、
次のバレンタインまでもう一年寝かせておくべきだろうか……
一気に書いてココに投下しちゃいましょう
是非ぜひっ!
あなたが保守い
黒澤くんマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チン チン
黒澤儲うぜぇ
343 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 03:37:26 ID:KIhMiIrm
繭たんまだー?
344 :
338:2008/02/23(土) 22:38:38 ID:iAQOMrRt
バレンタインの話を投下します。
たぶん6ページぐらいのはず。
チヨコレイトー。ねえ、チョコレートちょうだいよー。手作りのやつぅ〜。
お菓子よりも甘ったるい声を出して私にチョコレートをねだっているのがれっきとした
成人男性だというのだから私はうっかりこの国の将来を案じてしまう。
素人が作るチョコレートなんて、市販のチョコレートを溶かしてまた固めただけで、それのどこが「手作り」
なんだと私は疑問に思っているし、そんな素人が加工した食べ物が美味しいとはとてもじゃないが信じられない。
おまけに、私自身はチョコレートという食べ物がわり苦手なのだ。
その訴えは棄却されました。
甘ったるい願いを一刀両断に却下してみた。
ええー。ひどいや。樹璃さんは男のロマンってモノを理解してないよぅ。味は二の次、ハートがこもった
チョコが欲しいんだよう。去年もチ□ルチョコ詰め合わせだったし…!
チ□ルでも何でも貰えるだけでもありがたいと思いなさい。
えー。でもみんなは義理チョコでももっといいもの貰ってるよ。
じゃあ私以外の人から貰えば?
ヤダヤダヤダ、樹璃さんからもらいたいんだよう。どうしてそんなに意地悪なの。
だって可愛いから。心の中で返事しておく。
なんというか、この子のこういう子供っぽいころも嫌いじゃない、というか好きなのだ。
きっとバレンタインデーまでに私はチョコレートを用意してしまうんだろう、内心にやけながら。
チョコレートが駄目なら、リボン巻いて「私がプレゼント(はーと)」とか! いっそ
生クリーム女体盛りとか!!ねえ!ねえねえ!!
……頭痛がしてきた。誰がするか、そんなもん。
食べ物を粗末にする子にはバレンタインデー開催中止のお知らせですよ。
わぁーん、女体盛りは嘘です、嘘。でも願望って言ったほうがいいか。
じゃれあいながら、その日はファーストフードで夕食を済ませて駅で別れた。
それが目に飛び込んできたのは偶然だった。一人で地下街を歩いているときに店頭キャンペーンを
やっているのに遭遇したのだ。意地悪だって怒るかな? でもプレゼントは自分が貰って嬉しい
ものを贈るのが鉄則だよね。それにイロイロイイコトもできそうだし。
バレンタインデー当日。私達はちょっと奮発して高級焼き鳥屋で早めの夕食をとった。
地鶏と地酒が有名なこの店は早い時間だと客も少なく落ち着いた雰囲気で、私達はたまにここに
来る。そういえば前に来たのはクリスマスだったっけ。そんなことを考えていると、
まだ時間あるでしょ? デートしよう。
確かに私が帰宅するにはまだ早い時間だ。でも、上手に彼の家に誘導しないと。
借りたい本があると言って彼の家に行こうとしたのだけど…
バレンタインデーだよ? 恋人たちの祝日だよ? 外でいちゃいちゃしようよ〜。
別に祝日じゃないし。それに、外でデートするよりももっとイイコトをしてあげようと
思ってるんだけど。なんておくびにも出さないで、私は強引に彼の家へ上がりこんだ。
本当は借りたい本なんて無いんだけど、適当な本を見繕って借りることにする。
テレビをつけて……黙ってテレビに集中していると思ったら、違った。
澄んだ瞳がこちらを見つめている。
樹璃さん。ずっと、一緒にいようね。
真面目な顔でそんなことを言われると、こっちまで照れてしまう。
私から抱き寄せて、ぽんぽんと背中を撫でる。大丈夫。大好きだよと伝わるように。
不意をつくように髪の毛をわしゃわしゃと掻くと、びっくりした表情になるのが可愛い。
髪の毛、煙くさいね。焼き鳥の臭いだ。お風呂入っといで。
言えた。作戦決行だ。
彼の家のお風呂はいわゆるユニットバスというやつで、単身者用のそれは本当に狭い。
なので彼は湯船には浸からずにシャワーを浴びるだけのことが多いらしい(窮屈な湯船に浸かっていると自分が漬物になったみたいな気分がするのだと言う)。
だけど今日は作戦のことがある。さっさと出られては困るのだ。頭洗ったら湯船に浸かりなさいよ、と念を押しておいたから大丈夫だと思うけど。
頃合いを見て、自分も手早く服を脱ぐ。カバンの底に隠しておいた例のブツを取り出してバスルームへ向かう。
頭洗った?
うん、洗ったよ。どうかしたの、樹璃さん?
一緒に入ってもいいかな。
……そ、それは期待してもいいのかな。
彼の声が上ずっているのを感じて、こちらもにやけてしまう。いかんいかん。表情をなるべく普通にして……
お邪魔します。
なんだか間抜けな第一声になってしまった。
何持ってるの?
目ざといというわけではないと思う。裸眼での視力はすこぶる悪いはずだ。だからきっとそれは、香りのせいだったと思う。
んー、甘い匂いがする。
鼻をクンクン鳴らしてる姿は大型犬に似ていて、そんな彼をたまらなく愛おしいと思う。
自分もバスタブに移動して、持っていた石鹸を手早く泡立てる。
あ、それかぁ〜。いい匂い。チョコレート……だよね?
食べられないけどね。
石鹸のついた手を彼の手に重ねる。
洗ったげる。
そう宣言して石鹸を彼の身体に塗りたくった。
ちょ、ちょっとくすぐったいです、樹璃さんッ。
逃げ回ろうとしても、バスタブは狭いのですぐに捕まえられる。大事なところも、しっかり洗ってあげよう。
ひゃっ! や、そこはいいですってば!!
どうして? 生クリームプレイしたがってたよね?
それはちーがーうーっ、…っうん。はぁっ、っあっ。
抗議の声に吐息が混じったのは、泡だらけの手で私が彼のモノを握ったからだ。
樹璃さん、恥ずかしい。恥ずかしいよ。
我慢しなさい。
上下させる速度を速め、石鹸を舐めないように注意しながら先のほうに息を吹きかける。
ついでに袋のほうもやわやわと揉むと、
ダメッ、もう我慢できないっ。出ちゃうよぉ。
目線を合わせて、いいよのサイン。
……!!
ふう、と息を吐くとニッコリ笑って
今度は樹璃さんを洗ってあげますよ。お礼です。
結構です、と断るより前にぬるぬるした大きな手が胸に触れる。いつもとは違う感触と
濃厚なチョコレートの香りに肌が粟立つ。
ごめんなさい、寒かったですよね。
そう言ってシャワーが私の背中にかかるように調節してくれる。
もう一個、男のロマンを言ってもいいですか?
瞳が輝いている。悪巧みをしているときの表情だ。
胸に石鹸を塗って……、こうしてもらえますか。
言われるがままに両脇を締めるような格好になって初めてわかった。
おっぱいちっちゃくてゴメンネ。
いわゆる、パイズリというやつができるほど私の胸は大きくないと自分では思っていたし、
彼も今まで言い出さなかったのでそういう趣味はないのかと思っていたのに。
いえいえ、樹璃さんがしてくれるから嬉しいんですよ。
そういいながら、無理やり作った胸の谷間に彼自身をあてがって往復させる。 チョコレートの香りと
彼自身がさっき放出したぬめりが一体化して、それなりの形にはなってると思う。たぶん。
気持ちいい?
気持ちいいっていうか……すっげぇコーフンします。
樹璃さんすっげえ色っぽい。ね、もしかして感じてるの? 乳首勃ってるよ?
や、これは寒いから!
じゃあシャワーかけますね。
お互いにシャワーをかけあう。狭いユニットバスの中では身体を離すのも一苦労といった感じなので、結局おおまかにしか流せないのだけど。
んー、いい匂い。
嬉しそうに笑ってくれると、こっちまで嬉しくなってくる。
樹璃さん、大好きだよ。
そういうと私の身体を半回転させて
後ろ、向いて。
え?と聞き返す間もなかった。後ろから抱きすくめられて耳朶に吐息がかかる。
ここでしたい。今すぐ。
気がつくと彼の片手はそっと私の乳房に添えられていて、もう片方の手は後ろから濡れた割れ目をなぞっている。
樹璃さんも、濡れてるよ。
反論できない。
壁に手をついて。
言われるがままに、壁に手をつくと、お尻を突き出したポーズになってしまう。
入れます。
宣言して、彼は入ってきた。意外にすんなりと侵入を許してしまうあたり、やっぱり私も興奮してたのか、
なんて考えることができたのは後になってからで。
……嬉しい。
そういって律動を刻みだす。
深く、浅く、私の一番いいポイントを探そうと動くと同時に、乳房に添えられた手は乳首に触れるか
触れないかのところで淡い快感を送り出す。
駄目だ、声が出てしまう。しかもお風呂場だから響くし。盛大に恥ずかしい。我慢して声を押し殺そうとすると耳元で
樹璃さんの声、聞きたいよ。我慢しないで。
でも、隣に聞こえる、と最後まで言わせてくれなかった。
最奥を激しくノックする動きに変わったのだ。
同時にクリトリスをつままれる。
ダメ、お願い、あ、ああ……ッ
階段を昇りつめるにつれて私の声はすすり泣くようになっていった。
彼のスピードが速くなる。
樹璃さん、愛してる、愛してる……
うわごとのように繰り返される魔法の呪文に、普段封印している言葉を私も言ってしまう。
好き、大好き!
狂ったように繰り返すと高みへ昇るスピードも速くなっていく。
宙に浮きそうなのを必死につかまってるみたいな、あの感覚。
彼も同じなのだろうか。
樹璃さん、俺、もうイきそう。
来て…い、いいっよっ。
先に達したのがどちらだったかなんて憶えていない。
気がついたら、ふたりともバスタブのなかでへたりこんでいた。
……酸欠で死にそう。
私も。のぼせちゃったね。お風呂上がったら冷えたビールを飲もう。
ホワイトデー、楽しみにしといてくださいね! 三倍返しにしますから。
んー、何のことかなぁー?
うそぶいて彼の目を見る。
大好きだよ。声には出さないけどね。
三日もレスないのかよ。書き手さんへこんでそう。
間空くと感想付けづらいな。悪くはなかったと思う。乙でした。
個人的には恋人同士のラブラブな話より片想いの切ない話が好きだ。
ひこーきの運転手、ってのを思い出しました。
今来て今読んだ!亀ですが職人さんGJでした!
最初セリフか心の声か分かりづらいと思ってたのに、読み終わってみたら逆にそれがいい味出てた。
…四日も経ってからエラそうにスマソorz
ただこれだけは言わせてくれ。甘々好きとしては大満足でした(*´д`)
樹璃さんの職人の方GJ。
彼氏のキャラがいい。
ええカップルですな。自分はラブラブ話好きだから楽しく読めた。
355 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 13:56:49 ID:NWatMVn9
>>352 カーラセンセイが上り調子だった頃のネタだな
生真面目なキャラが祟って描けなくなり、鹿児島で淋しく余生を送っておられると聞くと悲しくなる
>>137のつづき
***************
――ケセラセラ。
学校を2日休んで迎えた土曜日の昼下がり、しぶしぶ結論を出す。成るように成る、だ。
ベッドの上でごろごろごろごろ考えてたら、疲れちゃった。知恵熱(?)まで出る始末。
もっとも、そのおかげで学校を休めたわけだけど。熱が引いていくにつれ、徐々に吹っ切れてきたような……。
うー、もうどんな顔して学校に行けばいいのッ!?
黒澤君も青山君もなにも言ってこない。嵐の前の静けさ? 不気味。あたしどうなっちゃうのォォ!?
などと悩んでいてもしょうがない。いくら考えてもどうすればいいのかわかんないんだもん。
だいたい、あたしに相手の出方を見て臨機応変に対処するとかできるわけないんだし、成り行きに任せるしかない。
ほんとにいいのかそんなんで。自分でも自棄になってるなとは思うけど、いまいち現実感がない。
それはあの日、青山君に聞かれてるかもしれないという状況にもかかわらず、
狂ったように自分から腰を振ってイってしまった時から続いているような気がする。
――夢じゃない!
あの日、失神して意識が戻ってきたあたしは開口一番そう叫んだ。
目が覚めると、書庫にはあたしひとり。制服も下着もきちんと身に着けていたからもしやと思ったけれど、
けだるい疲労感や下腹部を覆う鈍い痛みがあたしの淡い期待を打ち砕いた。
まあ本気で夢だと信じてたわけじゃないけど。陰部をきれいに拭かれた形跡に赤面する。
く、黒澤君はどこ? 鞄を胸に抱きかかえ、そろそろとドアから首だけ出して窺う。少し離れた場所から水を流す音がした。
トイレ!? 気付いたのと同時に廊下へ飛び出し、忍び足で階段の上段まで突き進んで身を伏せた。
書庫に歩いていく黒澤君の足音を聞きながら、一段一段慎重に後ろに下がる。
ドアが開かれたのを合図に猛ダッシュで玄関まで駆け下りた。
――藤野っ!
黒澤君ちから逃げるように、というか正に逃げ出した際、背中に突き刺さった張りつめた声が耳に残っている。
それだけじゃない。体中に残るキスマークや節々の痛みが実際に起こったことだと如実に物語っていた。
まさかセックスで筋肉痛になるとは想像もしていなかった。たぶん黒澤君も一緒。あたしよりひどいかも。
あの最中には気が付かなかったけれど、黒澤君はあたしに負担がかからないように無理な体勢で自分の体を支えていた。
硬く締まった肩や腕の筋肉を思い出し、顔が火照る。いやああーーーッ、人の筋肉痛心配してる場合じゃないし!
布団をかぶり、またごろごろと転がった。
「繭子ー、お友達が心配してお見舞いに来てくれたわよー」
部屋のドアをノックされ、母親の妙に弾んだ声に思考を中断される。
ちょうどいい。ひとり悶々としていても埒が明かない。ここはひとつ千明に相談だ。
何度か電話をくれたけど、口ごもるばかりだったから心配して様子を見に来てくれたのかな。
さぞかし的確なアドバイスが――と、リビングに入った足がソファに座っている人物の後姿を見てぴたりと止まる。
「あああ青山君!?」
ゆっくりと振り向いた顔は満面の笑み。良かった元気そうで、とこぼれるような白い歯が眩しい。
リビングには和気藹々な空気が流れていた。仔犬のように人懐っこい青山君に目尻を下げている母親。
青山君のことはちょくちょく話題に上げてたから、初対面という気がしないのかもしれない。
「それにしてもそっくりですね。でも親子には全然見えません。美人姉妹って感じかな」
「うふふ、嬉しいこと言ってくれるわー。繭子ったら、いつまでも立てないで座りなさい。
青山君にシュークリーム頂いたのよー、紅茶でいいわね?」
あんぐりと口を開けているあたしに、もう照れちゃってというような視線を寄こしながらうきうきと訊いてくる。
そんな浮かれている母親を無視して、青山君の腕を引っ張り立ち上がらせた。
「部屋で飲むからっ。青山君、ちょっとこっち来て!」
部屋に押し込めたのはいいけれど、これはこれで困ったことになった。
まだまだ話し足りなさそうな母親からトレーを受け取り、
テーブルにケーキ皿やティーカップを置いたあとはすることがなくなってしまう。
あたしは所在なく、お気に入りの大きなテディベアを抱きしめながら青山君を探るような目で見る。
青山君はあぐらをかいて座り、体を左右に揺らしながら興味深げに部屋を見回していた。
今時のアイドルではなく剣劇スターのポスターが貼ってあるのが異質なくらいで、
あとはファンシーな小物やぬいぐるみに囲まれたよくある女の子の部屋。
見慣れてるだろうに、と思うあたしの気持ちは平静だった。
はじめて部屋に男の子を入れて、しかもその相手が青山君だというのに、自分でも驚くほど落ち着いている。
ひとしきり眺めて満足したのか、青山君が動きを止め静かにカップを口に運んだ。
「ここのシュークリーム好きだったでしょ。食べたら?」
「……うん。ありがと」
なんかさっきから変だあたし。
いつもなら、青山君を前にすると苦しいくらい心が浮き立つはずなのに、いまのあたしは笑っちゃうほど冷静だ。
ケセラセラと何回も口ずさんでたせいで度胸が据わったとか? 首を傾げながらシュークリームにぱくつく。
さくさくのシュー皮と卵の味が濃厚なカスタードクリームが、いっとき幸せな気分にさせる。
「繭ちゃん最近変わったよね」
口一杯頬張ってるのをいいことに、黙って見返す。
寂しそうな言い方にもやっぱり心は波立たない。いったい話はどこに行き着くのか、困惑するばかり。
「前からかわいかったけど、さらに磨きがかかったっていうか……はっとするほど色っぽくなったよね」
熱のこもった眼差しが降り注がれる。ひたすら口をもぐもぐと動かすあたし。
こ、これはひょっとすると……完全にロックオンされちゃってる? 困るッ。えっ、ええぇぇえええええーーーっ!?
ショックに身を強ばらせた。ああああたしっ、あんなに焦がれて焦がれて何度もつらい思いをして、
苦肉の策で仮の彼氏まで作って、やっと自分が望んでいたとおりの展開に進んでいるというのに、ちっとも嬉しくない!
むしろ迷惑。やめて欲しい。いったいぜんたいどうなっちゃってんのォォ!?
そんな気持ちが表情にも現れていたらしく、青山君がなじるような口調で言い募る。
「そんなに黒澤君のことが好き? でも本気じゃないでしょ。僕の気を引くためにわざと付き合ってるだけだよね」
あ、バレてたんだ。まあ百戦錬磨の青山君からすれば、あたしの拙い作戦なんて先刻承知か。
そんなことより、別のことに心が奪われていた。
――黒澤君のことが好き? 好き? 好きいいィィいいいいい!?
その衝撃で一瞬反応が遅れた。
「口にクリームが付いてる。取ってあげるね」
とっさによけたけど、ほっぺたに柔らかい感触を受ける。
唇を肌に押し当てたまま、青山君がくぐもった声で悲しそうに言った。
「僕のこと嫌い?」
「き、嫌いとかじゃなくて、そうじゃなくて……! もっともっと好きな人がッ。どどどどうしようっ!?
ミイラ取りがミイラ? 策士策に溺れる? あ、あたしっ、黒澤君のことがすっごく好きみたい!!」
青山君を突き飛ばし、両手でばっと顔を覆う。体の震えが止まらない。
「――みたいってことは、はじめての相手は忘れられないってやつじゃないの? 繭ちゃん思い込みが激しいから、
好きだと勘違いしてるだけじゃない? それにしてもあんな声、聞かされるとは夢にも思わなかったな。
あれ結構傷つくね。僕好きな子を盗られる気持ち、はじめてわかったかも。ケータイ叩きつけて壊しちゃった」
青山君がさらっと本気とも冗談ともつかない調子で言い放つ。
そのことに一切触れてこないから、おかしいと思いつつ完全に油断してた!
「や、やっぱり聞いてたんだ! どどどどこまでッ!?」
「ふたりがほぼ同時にイったとこまで。ふたりっきりの時はまゆって呼ばれてるんだね。
繭ちゃんは黒澤君のことなんて呼んでるの? かおるだと僕のこと思い出したりしない?」
待って待って待って! 頭の中がぐっちゃぐちゃ。ちょっと整理させてーっ。
とりあえず名前の件はあとでゆっくり考えよう。いまはそれどころじゃない。
恥ずかしすぎる声を聞かれてしまったこともこの際どうでもいい。済んだことをぐちぐち言ってもはじまらない。
そそそれよりっ、空耳かと思ってたけどやっぱりまゆって呼ばれてたんだ。
黒澤君があの瞬間に発した言葉、聞いてたんだ。でかしたッ(?)、青山君!
「あああ青山君っ。あの時黒澤君すっごく焦ってたみたいなんだけど、まゆって呼んだあとなんて言ってた? 聞いてたんでしょ!」
きょとんとしてる青山君を揺さぶりたい衝動はなんとか抑えたものの、問い質す声が裏返ってしまった。
「んー? なんだったかなー、イクとか出るとかだったと思うけどー?」
うそだッ。だって二文字じゃなくて三文字だったような気がするし、思わせぶりに語尾延ばしてるんだもん。
キッと睨みつけるも青山君は屈託のない笑みを返してくるだけ。む、喋る気全然ないな。
「もういいッ。本人に直接訊くからいいもん!」
「黒澤君はプライド高いから絶対言わないんじゃないかなー。そんなことより、僕かなり本気で好きなんだけど?
繭ちゃんが他の男と一緒にいるの、なんかすごく嫌だ。胸が苦しくてたまらない。――助けて」
青山君が息も絶え絶えといった様子で手を握ってくる。
なんだか妙な成り行きになってきた。目まぐるしく変わる展開についていけない。
「僕は誰かさんみたいに意地悪なことして泣かせたりなんかしないよ? 思いっきりやさしくするよ?」
甘い甘い声で囁き、ふわりと引き寄せ床に横たえようとする。
だめだってば……。押しのけようとするけれど、腕に力が入らない。
ここ一番に見せる天使のような笑顔には、あたしの抵抗を奪うだけの威力がまだ残っていた。
……ま、まずい。あたし髪触られるの弱いんだよね。
美容室でも毎回猫みたいに目を細めてうっとりしちゃう人なんだけど……。
青山君は肩肘をついてあたしの横に寝そべり、もう片方の手であやすようにさっきからずっと頭を撫でていた。
あー、ぽわぽわする。正直気持ちよくて眠たくなってきた。最近考えることがありすぎて寝不足気味。
自然とまぶたが重くなり、ふあぁと大きなあくびが漏れる。
がちがちに固まっていた体がゆっくりと弛緩していくのがわかった。それと思考力も。
あれれ、なんかおかしなことになってなァい? でも手付きにいやらしさは微塵も感じられなしィ、マッサージ? みたいな……。
「繭ちゃん凝ってるねー」
「……うん。悩みごとが多くて……あ、そこそこッ。気持ちいいィィ」
青山君の繊細な指が的確にツボを押す。絶妙の力加減で首、肩、腕と揉みほぐされていく。
時々ふっと意識が飛び、ふわふわした温かいものに包まれる感覚がする。うーん、とろけちゃいそう……。
足も揉んであげるね、と遠くのほうから声がして、足裏マッサージ? 痛いのはやァ、とまどろみながら返事をしていた。
「フフ……舐めるだけだから、痛くなんかないよ」
「――ひあぁっ!? くく、くすぐったい!」
足の裏にむずむずした刺激を受け、がばっと跳ね起きる。
目の焦点が合ってくると、いつの間にやら足元のほうへ移動している青山君がいた。
しかも、あたしの左足首(靴下脱がされてるし!)を掴んでいる。さらに、美味しそうに足の指を咥えていた。
夢心地から一気に目が覚め赤くなる。
「ななななにやってんのーっ!? 離してってば!」
「こうされると気持ちいいでしょ?」
人の言うこと全然聞いてないしーっ。青山君の手から足を引き抜こうとしてもびくともしない。
痩せて、力なさそうに見えるけどやっぱり男の子なんだと愕然としてる間にも、せっせと足を舐めてくる。
尖らせた舌先で指の股をつつき、一本一本ちゅーちゅーと音を立ててしゃぶっていた。
あああ脚フェチ!?
はっ、いけない。
見事な舐めっぷりに呆然としながらも見入ってしまっていた。驚いているヒマがあったらいい加減やめさせないと!
恍惚とした表情を浮かべた青山君がふくらはぎに頬ずりし、上へ上へとついばむように唇を落としている。
いまや完全に脚を持ち上げられ、青山君の位置からだとスカートの中が丸見えだった。
「――青山君。それくすぐったいだけだから、もうやめて。あたしわかっちゃった。
ぼけっとされるがままだったくせになんだけど、こういうのは好きな人にされないと感じないんだよ。
念のため言っとくけど、さっき気持ちいいって声上げたのは単に凝ったところをほぐされたのが理由だから。
あたし確信した。やっぱり黒澤君のことが好き。どうしようもないくらい好き。だからごめん。青山君の気持ちには応えられない」
ひゃー、まさか青山君に対してこんなことをとうとうと述べる日が来るとは!
スカートの裾を押さえながらってのがいまいちサマになってないけど、ちょっと感動。
とは違うか、なんか一抹の寂しさを感じる。人って変わっていくんだなー、と。あんなに好きだったのに……。
しょぼんと項垂れている青山君を見るとさすがにズキっとくるけれど、あたしの決心は揺るがない。
罪悪感よりも恋する高揚感のほうがまさった。そうとわかればこうしちゃいられない!
黒澤君に会いたい。声が聞きたい。笑顔、は見たことないけど見たい。
ひとり勝手に盛り上がっているところに不意打ちを食らう。
突然青山君が圧し掛かってきて、スカートの中に手を入れられた。
「……そっか、繭ちゃんやさしくされるより強引にされるほうがいいんだ。確かに濡れてないね。
でも大丈夫。僕Sにもなれるから、それに手マン得意だし任せて。そのうち緊張もとれてくるよ」
だからーっ、人の話を聞きなさいってええええええ! 緊張してるんじゃなくて嫌がってるんだってば!
てかその空気読めないふり、やめてよッ。そんな青山君なんて見たくないし、じゃないとあたしなにするか――
「ああっ!? そ、そこに触っていいのはっ、黒澤君だけなのおおォォおおおおお!!」
パンツのわきから指が滑り込んできて、ぶち切れた。渾身の力を込め踵をお腹に叩き込む。
ぐえっと蛙が潰れたような声を出して青山君が尻餅をつき、そして苦しそうに体を折り曲げ咳き込み始めた。
「繭子っ、静かにしなさーい。下に響くでしょー」
ドアの向こう側から聞こえてきた母親の叱り声に、はーい、と慌てて返事をする。
視線を青山君に移すと、むせていたのが次第に壊れたような笑い方に変わっていくところだった。
「げほげほっ、は、ははっ……こんな、文字通り足蹴にされたの、はっ、はじめてだよ。ははっ……あははははは」
ちっともおかしくなんかない。怒りと悲しさと虚しさがどっと押し寄せ、涙がにじんだ。
「……青山君、もう帰って。このままだとあたし嫌いになっちゃいそう……」
ようやく笑いの発作が治まり、静かになったのを見計らって疲れた声でそう告げた。
弾かれたように頭を上げた青山君がくしゃりと顔を歪め、またすぐ頭を下げる。
「ごめん! ほんとごめん。どうかしてた。繭ちゃんが僕から離れていくのかと思ったら、かーっとなってつい。もうこんなことしない!
だから泣かないで。わかった……つらいけど諦める、ようにする。繭ちゃんの恋が成就するよう応援する。協力するよ!」
――協力。どっかで聞いたセリフ。まったくどいつもこいつも。その手には乗らないもん!
「……遠慮しとく。自分でなんとかするからほっといて」
「えー、でも繭ちゃん男のことよくわかってないしー、このままだとセフレ一直線だよ?」
「せ、セフレえええ!? そんなのやだッ」
「でしょー。だったらもう黒澤君と寝ちゃだめだよ? それと簡単に好きとか言っちゃだめ。利用されるだけだから。
気を許したら最後、要求はどんどんエスカレートしてくるよー。毎回ごっくんさせられて、アナル中出し当たり前。
撮られた写真をネタに複数プレイを強要されたりなんかして、気が付けば肉奴隷。やでしょ?」
「に、肉奴隷て……黒澤君はそんな鬼畜なことしないと思うけど?」
「甘いっ」
一喝され、思わず正座をしてしまう。
青山君曰く、10代男子の性欲を侮ってはいけないらしい。
それはそれはすさまじく、想像を絶する世界だそうだ(自主規制とやらで具体的には教えてくれなかった)。
あの、えっちな行為を聞かせてくる時点で鬼畜の萌芽はすでに見えると言い切られ、なにも言い返せないあたし。
……た、確かにすっごくいじわるだった。普段のクールな黒澤君からは考えられないほどの暴走っぷり。
溜まりに溜まった性欲が爆発すると、あんなことになっちゃうのか。しかもあれで序の口とは……。
ほっといたら、もも、もっととんでもないことされちゃうわけえええ!?
くらくらして、ごくりと生唾を飲み込んだ。
「黒澤君みたいに自制心が強いタイプはさー、一度箍が外れると大変なんだよ。
おまけに支配欲も強いときてるからタチが悪い。とことん屈服させるまで容赦ないでしょ?」
「わ、わかる!? そうなのッ。淡白そうに見えて実はねちっこい性格なの!
むむ、むっつりすけべなのおォォ。ああああたしっ、いったいどうしたらいいの!?」
藁にもすがる思いだった。これまでの経緯を洗いざらい打ち明ける。
時折顔をしかめながら、ふんふんと真剣に聞き入っている青山君がなんだか頼もしく見えてきた。
「――寝取られ大作戦か、またばかなこと考えたね。
まあ、すぐそばに一番大事な子がいるのに今頃気付く僕もばかだけど。
繭ちゃんとはいずれ結ばれる運命だったのに……。あ、僕二股でも全然構わないよ?」
「そんなこと訊いてないっ」
「ちぇ、切り替え速いなー。えーと、はいはい黒澤君ね。
知ってた? 繭ちゃん校内のオナペットランキングでいつも上位に食い込んでるんだよ。
まず間違いなく体目当てだろうねー。簡単だよ、拒否って不機嫌になるようだったら別れればいいだけの話。
嫌われたくないからって安易に体を許すのは絶対だめだからね! いざとなったらさっきみたいに強烈な蹴りをお見舞いして、
一目散に逃げてくればいいって。逃げるが勝ちだよ。その時は僕が守ってあげるから、安心して!」
がっくりと肩を落とす。すでに黒澤君ちから逃げ帰ってきてるのに、わかってて言ってるのか。
ちょいちょい自分をアピールしてくる青山君がうるさい。
それに体目当てだったら別れればいいなんて、恋愛問題でよくあるQ&Aじゃん。
そりゃあ、あたしも黒澤君はやりたい一心で付き合ってるんじゃないかと疑ってたけどさぁ。
そこをなんとか打開する斬新な解決法はないわけ? って、まだ完全に体目当てって決まったわけじゃないしーっ。
だいたいセフレなんて言い出したのも……あ、あぶない。まんまと青山君のペースに引きずり込まれるところだった。
まったく油断も隙もない。そんな邪気のない顔で丸め込もうとしても、もう通用しないんだから!
そうは思っても、ずけずけと指摘してくる言葉を聞き流すこともできず、どんどん暗くなっていく。
体目当てかどうか訊いたところで素直にそうだと答えるバカはいないだの、
いまさら好きだと告白しても今度はなにを企んでるんだと思われるのがオチだの、
気分はすっかりどん底に。あーあ、変な工作で付き合うんじゃななくて、健全な恋愛の手順を踏みたかったなぁ。
でも、青山君のことで切羽詰ってなかったら黒澤君のことなんて見向きもしなかっただろうし、人生ままならない。
結局どうしたらいいのかわからないまま。むしろ混迷を深めただけ。ひどい徒労感。
青山君に相談したあたしがばかだった。げんなりとため息をつく。
生返事を繰り返すあたしに潮時だと感じたのか、青山君がそろそろ帰るねと言い出す。
ずっと部屋にこもりっぱなしだったから、気分転換を兼ねコンビニに行くついでに下まで一緒に降りることにした。
「あっ」
エレベーターの扉が開いてすぐ、青山君が愉快そうな声を上げる。
つられて顔を向けると、マンションの入口付近で仁王立ちしている黒澤君の姿が飛び込んできた。
ぱああと胸が弾んだのと同時にうろたえる。ひー、冷気がここまで伝わってくるッ。あ、あれは絶対なんか誤解してる顔だ!
それにしても、まさか青山君に続いて黒澤君まで家に乗り込んでくるとは。怒涛の奇襲攻撃。
そりゃ会いたかったけどっ、声聞きたかったけどっ、ここ心の準備があああああ!
「じゃあ繭ちゃん、今日はほんと楽しかった。またあとで連絡するね」
ちょっと! なに言ってくれちゃってんの。しかもわざとらしいウインク付きでっ。
数メートル先からびしびし放たれる視線が痛い。赤くなったり青くなったりと忙しいあたしに頓着せず、
さっさと去っていく青山君。黒澤君とすれ違いざま、にやりと笑いかけるのも忘れない。
あたしの恋を応援するんじゃなかったの!? ま、信じちゃいなかったけど。
てかどうしたらいいのッ、この凍りついた空気!
黒澤君の体が近づいてくる。
あのしなやか腕で抱きすくめられて、あの大きな手で鷲掴みにされて、あの長い脚で押さえつけられて――
だ、だめだ……あの時の感覚が次から次へと鮮明に蘇ってきて、頭がどうにかなりそう。
見たいのに、恥ずかしくてまともに顔を見られない。うつむけばうつむいたでついつい股間に目がいってしまう。
いまは平常時みたいだけど、あれがあんなことになってあんなことされて――
いやああっっ!? なに考えてんのッ。あたしってば、もしかして淫乱!? そんなーっ!
「――したのか?」
声を聞けば荒い息遣いが再生され、それとセットで激しい腰使いも呼び起こされる。
大好きな黒澤君の匂いに包まれて、朦朧としてきた。
「あいつと寝たのかって訊いてるんだよ」
「……ふえ? (ぼーとしてて、なに言われたんだかわかんない。め、目が怖い。ばば場を和ませないと!)
えとえと、黒澤君……きき、きん(肉痛大丈夫だった? なんて訊けないッ)……もくせいの香りが漂う季節になったねぇ。
朝晩すっかり冷え込んで、あさってから衣替えだねぇ……(うわ、なに年寄りじみたこと言ってんの、あたし!?)」
「なんだその誤魔化し方は。見せろよ、あいつのことだから盛大に上書きされたんだろ」
「はあ? 言ってる意味、ぜんっぜんわかんないんだけど。な、なに? どこいくの? い、痛いってば!」
腕を掴まれ、ずるずると引きずるように連れていかれた場所は1階と2階をつなぐ階段の踊り場だった。
いきなり壁に背中を押し付けられたと思ったら、着ていた前開きのカットソーのファスナーを一気に下まで下ろされる。
よりにもよってフロントホック。抗う両手を後ろで固定され、あっという間に胸を剥き出しにされてしまった。
素肌に空気が触れ、さっと鳥肌が立つ。黒澤君に見つめられ、寒いんだか熱いんだか怒ってるんだか喜んでるんだか――
「やだっ、や……あん、誰かに見られちゃう……だめえぇぇっ!」
いくら抗議の声を上げようがお構いなし。冷たい指先が肌の上をすべる。
数日前、黒澤君に付けられた鬱血痕をひとつひとつ丁寧に触られた。
その、わずかな変化も見逃すまいとする真剣な眼差しに、やっと上書きの意味がわかる。
「もしかして……青山君が上からキスマークで塗りつぶしたとか思ってる? ありえないからっ、そんなの!」
すっと細められた眼鏡の奥の瞳は猜疑心ありありで、その後も体の検証は無言で続いた。
鎖骨、胸、脇腹とあちこちに散らばる赤い痕。それらがすべて自分が付けたものだと納得したらしく、
ようやく手首の拘束が解かれ、あたしは急いでブラを直しファスナーを引き上げる。
「黒澤君のばか! 信じらンない! こんなところで――ッ、あ!? ちょっと、やっ、まだ調べる気ィィ!?」
おもむろにひざまずいた黒澤君がスカートをめくり、太ももに手を置いた。
ぎゅっと膝に力を入れたのに、内股の柔らかい部分を撫でられ簡単に体を開いてしまう。
すぐ反応する自分が情けない。やっぱりあたしってば淫乱!? こんなこんな……っ、流されちゃだめだ!
足の付け根を念入りに点検している黒澤君は隙だらけ。
顔面に膝蹴りして撃退するチャンス。って、そんなこと好きな人にできるわけないしーっ。
どうやったらこれをやめさせられんの!? 体がぶるぶると震えて立ってるのもつらい。もう泣きたい。
「……そ、そんなことしても意味ないもん! だって、青山君とはなんでもないんだからっ。
終わっちゃったんだもん(あれ、なんか未練がましく聞こえたかな?)……え、えーと、これまでもなかったし、
これからも金輪際ないの! それでいいのッ。だって……だってあたしっ、黒澤君のことが好きなんだもん!!」
ひゃあああああ。言っちゃった! 言っちゃった! 言っちゃった!
でもいい。これですっきりした。妙な小細工なんかするより素直に気持ちを伝えるほうが性に合ってる。
それにあたし、こういうことは男のほうから言って欲しいとか古風なこだわりないし。
あとは黒澤君の気持ち次第。緊張で口から心臓が飛び出そう。きつく目をつぶる。
たぶん、嫌われてはないと思うんだけど……嫌ってたら付き合ったりしないよね? 体目当てだったらどうしよう……。
祈るような心境で黒澤君の言葉を待った。
「――今度はなんだ。なにを企んでる」
「た、企んでるって(青山君の言ってたとおりになっちゃってる!?)……違うッ。ほんとに好きなの!
じゃなきゃあんなことできるわけないもん! 本気でいやだったらもっと死に物狂いで抵抗してたはず。
あたしばかだから自分の気持ちに気付くの遅くなったけど、好きなの。黒澤君とええええっちしたのっ、後悔してないから!」
意を決して、立ち上がった黒澤君と目を合わせた。……なんか、複雑そうな顔してる。
あたしだってついさっき好きだと気付いて驚いてるくらいだから、突然こんなこと言われて戸惑うのは当然かもしれない。
「あ、あのォ……青山君の気を引くために黒澤君をダシに使ったの、すごく後悔してる。……ごめん、ごめんなさい。
いまさら謝ってももう遅い? あたし黒澤君とちゃんと付き合いたいんだけど、無理?
だめだったらちゃんと言って欲しいんだけど……?」
耳を澄ませても、聞こえてくるのはどこかの部屋で飼ってる犬の鳴き声や玄関を開け閉めする音のみ。
なんで黙ってるの!? これ以上の沈黙は耐えられないッ、とやきもきし始めた頃。
不意に腕が伸びてきて、くいとあごを持ち上げられた。
やるせない表情の黒澤君。こ、このシチュエーションはっ、きききキスううう!?
「れ?」
あごに添えられていた親指がすっと下に降りてゆき、胸の先端を捉えぐりぐりと押し潰した。
あん、と思わず掠れた声が漏れる。無意識にこすり合わせた太ももを一瞥した黒澤君の口元が歪む。
「こうされるのが好きってだけだろ。嫌いな相手にイった自分が許せなくて、そんな理由をあとから付けたんだろ」
「ち、違うもん! こんな風になっちゃうのはっ、黒澤君が好きだからだもん!
好きだから感じて濡れちゃうのッ(やー、なんてこと言わせるの!?)。だ、だって青山君に触られた時は全然濡れてなか、あ、いや。
いまのは言葉のあや……でもなくて、いい一瞬危なかったんだけどっ、蹴り飛ばして事なきを得たしっ(もうしっちゃかめっちゃかー)、
ななななんでもないのッ。気にしないで! と、とにかくっ、あたしがいま一番好きなのは黒澤君なのっっ!!」
「――いまだけか。ま、いいよそれで。あんな気持ちいいことそう簡単に手放すつもりないしな。
藤野が飽きるまで付き合ってやるよ。ただし、他の奴との共有は認めないぞ。するのは俺だけにしとけよ」
「……黒澤君、言葉尻を捉えてわざと婉曲してない? 体目的を正当化しようと――」
「その言葉、そっくりおまえに返す。したいだけのくせに好きでもないのに好きとか言うな!」
みなまで言わせず怒鳴り付けられた。
なんなのこの展開は。二の句が継げないとはこのこと。
相変わらずの傲慢な物言いのわりに被害者面している黒澤君が解せない。
傷ついてるのはこっちのほうだ! あ、飽きるまでってなに? したいだけのくせにってなに? まるで人を、人を――
「淫乱。だったんだな、藤野は」
「〜〜〜!」
自分でも薄々思っていたことをずばりと指摘され、口を開けたまま固まってしまった。
違う違うと首を振って訴えるものの、見返してくる黒澤君の表情に絶望的な気分になる。
こんな強情で冷ややかな顔をしている時になにを言っても無駄だ。危険だ。
告白したタイミングがまずかったかも、といまさらながら気付く。
ここは一時撤退したほうがよさそうだと周囲を見回した時、またもやがしっと腕を掴まれた。
「そう簡単に手放すつもりはないって言っただろ。それに――」
と、淡々と告げながら下半身をまさぐり出す。
パンツの中に手が忍び込んできて、びくんと体が跳ねた。
「こんなに濡らして説得力ないんだよ」
「ちがっ、んんッ……やぁああ」
黒澤君の中指が吸い込まれるようにして中に入ってくる。親指が敏感な突起を転がす。
内側と外側からクリトリスをしごかれ、頭がまっ白に。はあはあと崩れ落ちそうになる体を腕にしがみついて支えた。
「好きだろ、こうされるの」
「んん、そこだめぇ……やあ、こんなところで……はあ、あっ、あっ、ぁあああっ!?」
切ない疼きが突然消えた。
取り残されたような気持ちでぽかんとした視線を黒澤君に向ける。
苦笑、冷笑、嘲笑。皮肉った態度にみるみる顔が熱くなっていく。
「ふっ、ここではいやなんだろ。だったら明日俺のところに来いよ。いくらでもしてやる」
追い打ちをかけるような捨て台詞を残して、黒澤君は帰っていった。
脱力したあたしはその場にへたり込む。
濡れたパンツを通して伝わってくる床の冷たさに、体を震わせながらぼんやりと考えていた。
どうしよう……10代女子の性欲も侮れないみたい、と。
投下終了。
遅筆につき、つづきはまた何ヶ月か先になりそうです。あしからず。
GJ!
楽しませていただきました。
続きktkr!
青山くん、電話で聞いてたのか。
繭たんの心のぐるぐる感が良く伝わってきて、読んでて楽しかったです。
鬼畜モードの黒澤くんがデレになるところを期待。
作者様、GJでした。
ヤバイ面白い!gj!
超GJ!です。
続きがまた読めるなんてうれしいです。
のんびり続き待ちます!
374 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 22:38:36 ID:vbQQHDka
待ち焦がれてました!
超GJ!!
鬼畜な黒澤くんも、ラブラブな二人も読みたいです
まったりお待ちしてます
うわー、黒澤君だー
また読めて嬉しいよ
黒澤君がデレるまでのんびり待ちますよ
GJ!!!
繭ちゃんがかわいくてしょうがないw
超絶GJ!!!!!
続き楽しみにしてます!!!
GJGJ!戻ってきてくれてありがとう!
待ってた甲斐があったよー!
黒澤かおる?くん大好きだw嫉妬してるとこに萌えるww
続き楽しみにしてます。
黒澤君にまた逢えてうれしい!
今回も面白展開&黒澤君と繭ちゃんに萌えさせていただきました!!!
黒澤君のデレ期が来るのを楽しみにしながら
まったりと続きお待ちしてます!GJ!!
黒澤君もたしか初めてだったんだよね?
のわりには余裕あるなあw
本や映像でみっちり勉強してシミュレーションしていたと思うと可愛いかもw
黒澤君 キテタ━━(´∀(´・ω(゚∀゚)_ゝ`)゚ω゚)━━!!!!
正座しながら萌えたw
繭ちゃんホントに可愛いな。続編を鎮座してお待ちしております。
繭ちゃんが、書庫から逃亡するシチュに禿萌えw
後ろから叫んだ黒沢君は何を思っていたのだろう。ああああああ気になる。
Sっぽいけど本当は優しい黒澤君イイヨイイヨー
壁に背中を押し付けられて後ろで両手固定シチュもツボw
逃亡時の「張りつめた声」も切なくていいなー。
できることならシリーズ化キボン!
パンツ脱いで待ってます
こんなにレスがつくSSは珍しい
投下の仕方もスマートで良いな
繭たんが俺の好み過ぎて困るぜ…GJ
続き投下に出会える日を気長に楽しみに待ってるよ
繭たん&黒澤君待つ間に恐れ多くも、ちょいと投下させていただきます。
支援?
===========
あたし、板倉リカ。
悪びれもなく言うけど、モテる。
155センチの低身長だけど、おかげで男心をくすぐる上目使いは自然発動できる。
ふわふわロングの天然栗毛、沢尻エリカに似てると言われる黒目がちな大きな瞳。ハーフじゃないの、純日本人。
ああ、あたしって神様に愛されて生まれた天使かも。
17年間生きてきて付き合った男は20人強。
全員年上、詳しく言えば25歳以上の職有り。車持ち。1人暮らしのマンション住み。
これを満たしていれば顔は中の上でも我慢する、してあげる。
それ以外は論外。ありえない。
安定した収入のない男なんて眼中にないんだから。
あたしに見惚れるなニート共!…のはずだったんだけどなあ…。
高校2年の夏、
あたしに革命が起きた。
なんか書き込めないな…
更新遅くなります。
========
蒸し暑さがピークに達する昼休み。
都立は私立と違ってクーラーがない。国は学生を熱中症で殺す気なのか。
自宅から教室に持ち込んだ卓上扇風機のなまるい風を親友の愛(めぐみ)と取り合いながらコンビニで買ってきた冷やし中華をすする。
ショートヘアのさっぱり美女の愛こと通称メグとは中3の時に塾で出会った。
塾内で有名なセクハラ講師の被害を受けていたあたしは、靴箱に入ったそいつのスリッパに接着剤を塗ろうとしていたところ、
激辛練り唐辛子のチューブを持ったメグと遭遇した。
聞けば同じ目的だと言う。
意気投合したあたし達は力を合わせて、接着剤と激辛練り唐辛子をスリッパに塗りたくった。
セクハラ講師は何も知らずにスリッパを履き、足裏の激しい痛みから逃れられずにのたうち回っていたらしい。ざまーみろ。
その後同じ高校を目指していることを知り、さらに意気投合。
切磋琢磨しながら見事2人で合格!
まさかの腐れ縁で2年間同じクラスになって今に至る。
「これあたしが持ってきたんだけど」
「いーじゃんケチ」
「あ、メグ目の周り黒いよ。アイラインにじんでる」
げ!とメグは鞄の中の鏡をガサゴソ探す。
その隙に扇風機を抱え込み、風を独り占めする。
「全部にじんでないじゃん!………なるほどね。あんた本当に卑怯ね」
「賢いと言ってくれます?」
左手で扇風機を抱え、右手で冷やし中華をすすりながら爽やかーな笑顔を向ける。
すると思わぬ反撃。
イイヨイイヨー
ヘタレ男いいねぇ
更新楽しみに待ってるよ!
>>392 一行目が改行(エンターキーを押しただけの)空白で、22行以上のSSを書き込もうとした
もしくは、一レスに書き込める分量を守っていても、同じ記号を多用(20個以上?)し過ぎ
暫く前から、↑のような文章は、荒しスクリプトの類とみなされて『書き込み出来ました』と
表記されても、実際にはスレに反映されない仕組みになっているようです
どうしても、一行目を空白にしたい場合は、全角スペース挿入&改行すれば、OK
記号多用の場合は、分割して投下してみて下さい
イイヨイイヨー続き待ってます。
今、私の中で空前のラブコメブームが!
>>395 丁寧にありがとうございます。
2ちゃんはROM派なので書き込みには慣れていなくて…
更に半年ロムらなきゃ…
しかし、その前に書き上げちゃいますね。
深夜に投下するのでしばしお待ちを…
「このクンニマニ…もがっ?!」
『ア』まで言い切る前に席から勢いよく立ち、ぐわしっとメグの口をふさいでやった。
周囲を見渡す。いまの誰も聞いてないよね?
幸運にも昼休みの喧騒のおかげでセーフだったようだ。
一人だけクラス委員の男子(あいつ名前なんだっけ?)がうるさそうに顔をしかめて見てきたので、にこっと笑って首をかしげれば
しかめっ面をほんのり赤くして手元の文庫本に視線を戻した。ウブ男はちょろい。
「むうーっ!んぐぐ!むぐうーっ!」
苦しそうにもがいているので手を離してやった。
「ぷはー!何すんのー!」
「あんたねぇ…」
顔を寄せ、声のトーンをうんと低くする。
「それ禁句だって言ったでしょ!」
だってー、とメグが不満げに唇を尖らせた。
「本当のことじゃん、リカのせーへき」
「べ、別に性癖じゃないもん!…ただ何てゆーの?舐められるのが人よりもちょーっと好きなだけだもん…」
メグは呆れているような引いてるような様子で口元を引きつらせた。
「あたしだったら好きな人に自分の股間舐めさせるなんて恥ずかしくて死んじゃうよ」
その恥ずかしさもスパイスになるんだってば、と思ったが口には出さなかった。
これ以上クンニマニアなどと言われる要因を作っていけない。
そう、あたしはクンニが大好きなのだ。もはや『人よりちょーっと好き』なんてレベルではない。
テレビで筋肉くんが出る度にクンニを連想してしまう程なのだ。重症なのだ。
それは中2の時、3人目の彼氏によって開拓された。
当時からあたしは年上好きだった。
そして大人に異常に好かれた。まだロリコンの意味を知らなかった。
2人目の彼氏と初体験を済ませたあたしは当然3人目ともエッチをすることになった。
彼の部屋のベッドの上でじゃれ合っていたら、そーゆう雰囲気になった。男と女だもんね。
何度もキスをされて、舌を絡ませ始めたあたりでパンツの中に手を入れられた。
特に抵抗もせずに足を軽く開いてあげた。
彼が優しく笑って、チュッと音をたてて首筋に吸い付いた。
割れ目をさすられる、いやらしい心地よさ目を閉じると耳元で喜々とした声があがった。
『わ、リカちゃんてパイパンなんだね!』
私もマニア的支援
「んっ…!パイパ…?」
知らない単語に反応し目を開くと、
『パイパン。ここに毛が生えてないことだよ。剃ってるの?』
彼は笑顔を輝かせながら、クリトリスを親指と中指で上下にしごき始めた。
「あんっ…剃って…ないよ…っ!リカの…やっ…はぁん!んっんっ…!喋ってるんだから…ぁ…手止めてぇ…!」
『ははっ、ごめんごめん!一生懸命しゃべる姿が可愛くてつい』
そう言いながらも手を休めようとしない彼の腕を起き上がって掴んだ。
「はぁっ…ちゃんと聞いてよっ!リカは元から体毛が薄いのっ!だから…その…下も全然生えなくて…」
だんだん恥ずかしくなり口ごもったあたしを見て、彼もゆっくり起き上がった。
そっかあ、と微笑みながらあたしのYシャツのボタンを外していく。
『リカちゃん、それは悪いことじゃないよ。むしろ好都合ってゆうか』
「好都合?」
『うん、こちら側としてはやりやすいというか…』
なんのことを言ってるんだと訝しげな顔をしていると、
彼は『百聞は一見にしかず』と目を光らせた。
そして『あ、せっかくだし』と言うとYシャツのボタンを留め直してしまった。
「え…エッチしないの?おしまい?」
拍子抜けして聞く。
『ううん、これからだよ。でも制服着たままの方がそそるし!あ、パンツだけ脱いで。靴下は履いたままで。リボン着け直しといて』
何を言っているんだ。
彼の企みが理解できないまま、とりあえず言われた通りの格好になる。
ベッドから離れた彼は部屋の照明を明るくして、タオルを一枚持ってきた。
ますます訳がわからない。
股間のスースー感に身をよじりながら、彼を見上げると『準備完了』と親指を立ててきた。
『じゃあリカちゃん、ねっころがって良いよー』
額にキスをされて、ゆっくり押し倒された。
次はばんざいしましょー、とまるで赤ん坊相手のような口調で指示される。
今は149センチだけど、まだ成長期なんだからね!なめてると痛い目にあうわよ!チビの恨みは怖いぞバカ!と胸中で文句をたれていたら、
『できた!』と彼の陽気な声が聞こえた。
手首に感じる違和感に視線をやると、タオルで器用に縛られていた。
本編?というかヘタレ登場まで、もうしばらくかかります。
序盤が長くてすいません…
全然おk
いい流れだわー
男性目線だとこういうのないんだよね
超紫煙
さすがに身の危険を感じる。縛るってやばいでしょ…
「ちょっ…なにコレ?!」
『あー…リカちゃんさ、クンニって知ってる?』
質問を質問で返されムッとする。
「知らないっ!それより解いてってば!」
『やっぱり。あのね、初めてだと抵抗あるだろうし、暴れられたら楽しめないからさ。ちょっと我慢して?』
あたしの太ももをやんわり撫でながら、眉を下げて申し訳なさそうに彼が言う。
子犬みたいな表情にドキっとしちゃうよ。
「わ、わかった。痛いのなしだよ?」
負けじと、とびきりの上目使いで言ってやった。
『痛くなんてないさ。うんと気持ち良くさしてあげる』
そう言うと彼は下の方に下がっていった。
なにかの儀式なのか?顔付きは神聖なことでも行なうかのように真剣だ。
すると突然足首を掴まれ持ち上げられた。
その手の冷たさに「ひゃっ」と声をあげ驚いていると彼はあたしに向かって力をかけ、閉じたままの膝を曲げて太もも全体をお腹にペタンとくっつけてしまった。
スカートがパラリとめくれる。
シワになることを心配し脱がせてと訴えると
『そこは譲れないよ。十分気を付けるから履いてて』と懇願された。
不満だったが、それは次の瞬間吹き飛んだ。
『オープン!』
彼が楽しそうに言うと、あたしの膝に手を当て一気に広げたのだ。
「…っ!」
あまりの恥ずかしさに叫ぼうとしたが声がでなかった。
彼は足の間を凝視する。荒い呼吸が聞こえてきた。
こんな明るい部屋でまじまじと他人に秘部を見られている…こんな屈辱初めてだ…!
「っ…やっやめて!見ないで!電気消してよ!やだっ!お願い!」
やっとのことで声を出し、まくし立てる。
しかし彼は何も聞こえないかのようにそこに顔を近付け
『いただきます…』とささやいた。
まさか…と思った時には遅かった。
彼の舌が秘部全体をベロリと舐めあげたのだ。
「いやぁ!汚いよっ…そんなとこ…あっ…だめ…やああ!」
続けざまに舐めあげられる。
半分パニックになり涙が止まらない。
『汚くないよ…舐め甲斐のある綺麗なおまんこだよ…』
彼のくぐもった声が股間から聞こえる。恥ずかしさが頂点に達し目をギュッと閉じた。
「だめぇ…!やぁぁ…」
―チュッチュッ
大丈夫だよ…とでも言うように彼が2度優しくクリトリスを吸った。
しかし恥ずかさのあまり恐怖を感じていたあたしには大丈夫とは思えなかった。
『一度イッたら緊張もほぐれるかな』
泣きじゃくるあたしを見て彼はつぶやいた。
そして指を一本ナカに入れると軽く曲げて出し入れをし始める。
「あぁっ!はっ…やぁ!んっんっんぅぅ!あぁん!」
クチャクチャクチュッ…
粘膜をこすられる音が弾みを付けて聞こえてくる。
「あっ…あぁっ…!」
涙はいつの間にか止まり、恐怖の代わりに快感につつまれた。
彼は指を出し入れしたまま再びクリトリスに吸い付いた。「…っ!あっあっあっ!いやぁ…はんっ…!きも…ちいい…よぉ…ぁん!」
それを聞いた彼は指を更に激しく動かし、吸い付いたクリトリスを舌先で激しくこねる。
「もっ…だめぇっ…いっちゃうぅ…あぁん!いっちゃうよぉ…っ!ぁっあぁぁん!イクっイクぅ!!!!!!はぁぁぁん!!!!!!」
腰を跳ねらせてあたしはイッた。頭がしばらく真っ白。ぷかぷか浮いてるみたい。気持ちいー…。
うっすら目を開くと満足そうな彼の顔が映った。
『気持ちいいでしょ、クンニ』
声を出すのが億劫でコクコクとうなずく。
『緊張もほぐれたし再開しよっか!』
言い終わらない内に彼は再び顔を股間にうずめた。
続きマダー?
捕手
また過疎かよ!
質問
ファンタジー系の作品って以前は投稿されていたよね?
それっぽく書けていればファンタジーでも投稿おk?
いいと思う
あ、エロスをお忘れなくwお待ちしてます
待ちつつ保守
417 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 17:17:01 ID:5wpaVF8j
投下町
自分のSSがどこまで女性に通じるか試そう思ったが、
投下された作品見てギブ。
俺は死んだ。スイーツ(笑)
自分の性別を伏せて思い切って投下していただきたかった。
あとスイーツでないのも好きって人はいますよ。愛が無い話ばかりになるのも辛いけれど。
男性と女性の嗜好って違うよね。
でも、人によっても違うし、何でも歓迎!
>>418 投下してくれれば良かったのに
個人的にこのスレのSSすごく楽しめる
逆に男の人向き?なSSは読めないこともある
人それぞれだね
とりあえず投下して〜
一度読んでみたいので投下願う。
今他のも書いてて、新作投下できないから、また今度既作を転載させていただきます。
小生、ついに女性相手に羞恥オナニーをしようとする我が身に畏れを覚えました。
保守
黒澤君待ち保守
黒澤君カモーン
ヘタレ男と高飛車女続き待ち保守!
>>418 情けない男だな。誘い受けにしても包茎短小で見苦しい
とりあえず繭子たんを楽しみに待つ俺も保守
待ち
430 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/17(木) 06:28:16 ID:VRThmW7p
補習
保守
支援
職人さん待ち捕手
434 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 23:40:22 ID:uldyQ677
スレ1の虜囚ってもう読めないんですか?かなり前のものだと思うんですが
>>434 ここの1に過去スレへのリンクがあって、1とか2とか読めるのでそれで。
あと縮刷版に作者さんサイトへの行き方があるので、それでも。
ほっしゅ
437 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/30(水) 18:56:46 ID:5HSYi7jC
そろそろ投下してくれー
黒澤きゅん…
GW保守
短めのやつをうpしようと思っているのですがおkかな?
ばっちこ〜い
いつも感じる、背中に突き刺さるような視線。
思わず振り返れば鋭い目付きの男性が資料を読み進めている男。
あぁ、まただ。また見られていた。
気にせずに、作業を再開するのにやっぱり気になってしまう。
スカートのポケットに入れていたケータイのバイブが振動する。
深夜のオフィスで全裸になったあたしの胸を揉みしだきながら、あそこに入れた指を動かす。
十分にされた愛撫に蜜がどんどん溢れ出てくる。
次第に音が大きくなる水音に身体がもっと火照っていく。
もっとして……下さい。
恥ずかしくて口にはしない言葉。
けど、この人は察してくれるようでいつも気持ち良くしてくれる。
指の出し入れが早くなっていくよ。
乳首も痛いぐらいに沢山摘んでくれて声が抑えられない。
あ……指引き抜かないで。もう少しでイキそうだったのに。
机の上に押し倒されて両脚を開かされて、何かが触れる。
やだ、今度は貴方ので感じさせてくれるの?
時間をかけてからしてくれるのに、なんだか切羽詰っているみたい。
昨日も一昨日もしたのにあたしがそんなに欲しいのだ。
昼にはあんなに厳しい目線を送っているのに、夜はこんなに優しくしてくれる。
スーツをばっちり着こなして髪の毛も整えているのにね。
今はジャケットを脱いでネクタイは外している。オールバックの前髪が額に垂れているよ。
乱れた彼の姿を見ているのはここで働く人は知らない。そう、あたしだけしか知らない。
は、入ってくるぅ。ゴム越しなのに熱くて、凄く硬いの。
ゆっくり、そう、ゆっくり入れて。
奥まで届いてそんなに慣れていないから苦しいや。
動くの? いっぱいしてもいいよ、夜景に照らされた貴方の表情を見つめていたい。
すごいや……初めっから激しいなんて。
グチュグチュって音大きいし、あたし濡れすぎ。
「やだ、熱い」
「お前の中はそれ以上に凄いけど? エロい表情もそそるし」
お互いに見つめ合って微笑む。
そして、舌を絡ませるキス。
ホント、こんなの彼誰にも教えたくないよ。
いっぱいピストン運動されて吐息が漏れていく。
大丈夫、ただの吐息だから。警備員さんに見つかるわけがない。
癖ついちゃったね、ホテルとかでしている時にうまく喘ぎ声出せるかな?
頭がボーっとして全身がビリビリ痺れていくような感覚。
やばい。さっき中途半端に指でされていたからイッちゃうかも。
って、突き上げるように動いてこないで。一緒にイキたいのに。
だ、ダメ。本当に、イッちゃう! イ……くぅ……。
ゴム越しに彼のも痙攣して、熱いのを放った。
なんだ、結局一緒にイッちゃった。
彼は後処理をし、あたしは服を着てから、ふと思った。
セックスしているのばれたら彼、クビにされるし。
あたしはインターシップだから大学に報告されちゃって、下手すれば退学かも。
今更だけど彼の家でした方が安全じゃない。あたし、気が付くの遅い。
「ここでするのは止めない?」
「何で?」
「警備員さんにばれたら会社、クビにされるよ」
「そうかもな。でも、昼と夜の態度の違いが楽しめるからここでしたい」
……あはは、思わず顔が引きずるような答えを出したよ。
ま、いいけど。
翌日、いつも通りの雑用が続く。
と、やっぱりあの視線を背後から感じ取れた。
昨晩と今日とのギャップがあまりにも激しすぎて、口元が緩んでしまう。
あたしは冷たすぎる視線を浴びながら、今晩も行うだろう熱すぎる情事に胸が高鳴った。
おわり。
445 :
440:2008/05/05(月) 01:59:53 ID:XjFomuQo
以上です。
うまく30行で切れなくて、微妙なところで切ってしまったので
読みづらかったらごめん<(_ _)>
よかったよ。
なんかぐっときた。
妙にリアルで臨場感があるのがよかった。
GJ!
448 :
440:2008/05/10(土) 00:40:32 ID:zn4fKuiy
感想ありがとうございます。
スレが過疎化しているので、何にも反応がなかったらと不安でした。
※をいただけけただけでも感無量です(*ノ-;*)
書けたとしてもSSぐらいですが、機会があればうpしに来ます。
投下してくれてありがとう
大好きなスレだから過疎って悲しかった
またSS投下しに来てね
450 :
sage:2008/05/10(土) 20:11:31 ID:yPv9qW1n
GJ
451 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 14:10:43 ID:QGYtWGPy
SS投下希望〜
>>445 ありがとう。良かったよ。
次に期待しているのでちょっと言わせてくれ。
インターンシップ、 顔が引きつる
^^^ ^^^^
良作豊作ホックホク〜
454 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/16(金) 09:39:53 ID:zA/TRFaD
保守しまぁす
黒澤君マダー?
投下してくれるのならなんでもええ。
保守。
457 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 09:00:24 ID:3I0mLVMo
>>456 投げやりね
でもそんな貴方も好き…
保守
黒澤君&繭ちゃん、いいね。
次の投下が楽しみです。
それにしても、このふたりラブラブになったら絶対、「大奥ごっこ」とか
「越後屋プレイ」とかするよねw
すいません
「ごっこ」とか「プレイ」とか一体何のことですか
無知な私めに事細かに説明して下さい
>>458 「そちも悪よのぅ、越後屋…」
「えっへっへ、お代官様こそ…」
…これはプレイなのか?www
>>459 「上様、どうかお許しを」
「フハハハ…良いではないか良いではないか〜」
ほどけた帯(or腰紐)を引っ張ると女の体がクルクルと回る
「あ〜れ〜!ご無体な〜〜〜」
という脱衣プレイ
こっそり
鮮魚センター
とつぶやいてみる
ロリっ子ハードル、とかもつぶやいてみる。
意味がよくわからな
水沢君とさくらちゃんの再登場を待っている俺は一体
誠司と千佐子の再登場を未だに待っている俺は一体
ホシュ
黒澤君、お待ちしてます。
| \
|Д`) ダレモイナイ・・投下スルナラ イマノウチ
|⊂
|
そういう訳で、拙いですが投下させてもらいます。
元々ここ向けに書いていた物だったんですが、
なりゆきでで別スレに既に投下しちゃった奴です(つっても2年前ですが)。
枯れ木も山の賑わいという事で、場の繋ぎにでもなれば嬉しいです。
473 :
無題 1/3:2008/06/07(土) 02:31:40 ID:fWqzryJB
どうしようどうしたらねえどうしようごめんなさい
そんな言葉は彼に届くはずもない。
うなじから耳にかけて、舌で舐めあげられる。熱い。それだけで体の中心から、また
零れ出してしまう。私のなかをかき乱している指を、また締め付けてしまう。
体育館に通じている非常階段の踊り場。遠くでバスケ部の練習の声が聞こえる。
耳元で、クッと喉がなる音がした。軽蔑されたのかもしれない。こんなところで、しっかり
濡れている私は。ひどい格好だ。シャツはボタンが外されて胸だけが露出するように
なっているし、ブラもホックが外されている状態。ショーツは足首のところで絡まっている。
もしかしたら、もしかしたら誰かがここを通るかもしれないのに。
「なんで、逃げたの」
熱っぽい吐息と共に、彼が言葉を吐き出す。体がびくびくと震える。
だめ、この人の声だけで私は。私は。
「ねえ……」
「…ぁ……んん…っ」
何も考えられない。あまり触ってもらえなかった敏感なそこを、こねくりまわされる。
長く美しい、私の好きな彼の指で。
きっと私はこの上なく、うっとりとした顔をしていたと思う。だから、指を引き抜かれて
彼と向き合うように体を回された時、ひどく残念だった。腹立たしくもあった。
「答えてよ」
私のなかから引き抜いた指を舐めながら、彼が問う。ああ、その目が好きだ。
太腿にとろりと、零れる感覚がした。
「あ……ごめんなさ…その、私、」
「ホテルのロビーから、君が見えた。声、かけようと思って外に出たのに、なんで」
474 :
無題 2/3:2008/06/07(土) 02:32:24 ID:fWqzryJB
昨日の話だ。ガラス張りの戸の向こうに彼がいた。私はたまたま通りがかっただけ。
まさか会うとは思わなかった。そして彼は女の子といたのだ。少し離れた高校の制服。
なのに、まさか、彼が私のもとにわざわざ来ようとするなんて。
「なんで、逃げるの」
舐めていた指を、そのまま私の口のなかに突っ込む。犯されている。彼に犯されている。
私は彼の手を取ると、指を舐めあげた。そして彼のものを奉仕するかのようにしゃぶった。
好き、彼の指が好き。
とても久しぶりだった。こんな事をするのも、彼に触れるのも、彼に触れてもらうのも。
彼に触れてもらえなくなって、1ヶ月。その間、彼は全く単なるクラスメイトとして振舞ってきた。
何故彼が触れてこないのか、怖くて、全くわからなくて、私はただ心が空ろになったいったの
を覚えている。でもどこか頭は冷えていて、仕方がないと思ったのだ。突然始まった関係は、
突然終わるものだろう。そう納得したのに、昨日はきっとどうかしていた。
「だって、もう耐えられない……」
あなたこそ、なんで近づいてくるの。
彼が、私以外の女の子と一緒にいる。それも仕方がないと思っていたはずだ、少し前なら。
なのに悲しくて、耐えられなくて、そして体が疼いてしょうがなかった。
「あの時話していたら私、きっと馬鹿な事言ってた。軽蔑されてもおかしくない、いやらしい事」
指から唇を離して、少しずつ話す。目は合わせられない。怖い。
すると顎を持ち上げられたかと思うと、キスをされた。舌が入ってくる。いつもより乱暴なキスだ。
そういえば、今日初めてキスをしたなと思った。
私は本当に馬鹿な女だった。彼の行う全てに欲情し、すぐ濡らす。
キスが久しぶりで、それでも私は確実に幸せを感じていて、涙が零れた。
唾液を交換しながら、舌を絡めながら、階段に座らされる。
唇が離れて、彼が目尻の涙を舐め取った。そしてそのまま額にもキスされる。
475 :
無題 3/3:2008/06/07(土) 02:32:52 ID:fWqzryJB
「言ってよ」
「……え?」
「今。そのいやらしい事」
少し微笑んだように思えるのは気のせいだろうか。
その表情があまりにもきれいで、見とれてしまっていると、ほら、と彼が催促する。
それでも口にするのはためらいがあった。
「……いっぱい……して…。いかせて…」
やっとの思いで、口に出す。羞恥で声が震える。きっと真っ赤な顔をしている。
こんな風にねだった事などなかった。
おそるおそる彼を見ると、今までに見た事のない目の色をしていた。
軽蔑された? 嫌われた? わからない。
けれども不思議と怖くない。そんな事、今までなかった。
彼は、私の足を開かせた。どろどろしたそこが丸見えだ。
「ぁ、やぁっ…何…」
一瞬ひるんでしまって情けない声を出してしまう。
彼は構わずに私の中心に唇を寄せた。そして、嬲られる。
「ん、や、やぁ、あ、」
舌で、その啜る音で、指で、追い詰められる。
何より、彼が彼が私に触れている。
その事実が、
「ぁ、は、いい……っ あ、んん、好きぃ…」
もう何が何なのかわからない。私はうわごとのように、好きと繰り返した。
ああ、そうか。
頭が朦朧としていく中、ひとつだけわかってしまった。
逃げたのも、耐えられないのも、彼を欲したのも、全部、そうだ。
私は彼が…
End.
以上です。
週末に良いもの見れました、ありがとう&乙です
もっと詳しく書いて欲しいなぁ
彼は女の子のことどう思ってて、なぜ他の女の子といたのか
なぜまた戻ってきたのか
ぜひ続編として…!
エチにいたるまでの設定がしっかり描けてないと萌えない…
オツなのにごめん
館もんの明かされてない謎を伏線回収してくれええええ
千尋ルートは結ばれてめでたしめでたし、だったけど、誠司はメインルート?だから
結ばれて終わりってわけじゃなくて続き気になりすぎ!!
>>479 私もそうだなぁ。
冒頭から最後まであはぁんっ→AV
セクロスに至る過程と登場人物のバックボーン描写つき→Hシーンつき映画作品
のようなイメージがわくので、AVは興奮するが心にこない。
映画は感情移入できる。
みんな好みが厳しいなあ。
バックグラウンドに想像の余地がある感じで、
こういうのも結構好きだ。
ってことで、自分は少数派かもしれんが、GJでした。
ありがd! 楽しませてもらったよー。
好み激し過ぎ。だから過疎るんだろ。
自分としては館もんの人は前フリ長すぎだと思う。
趣旨に反していなければそれでいいじゃないか。
書き方や特徴は人それぞれで好みも人それぞれなんだから、
文章としてよほど酷いというならある程度は仕方がないけど
注文つけすぎるのはよくないと思う。
あたしもこういうのも好きー
>>479や
>>480が言ってることもわかるけど、
>>473のは背景やら気持ちがいろいろ妄想できてイイ。
文章が好みなんだろうな。
ってことで
>>473さん乙でした!ありがトン!
好みはあるのはわかるが、
職人は時間を割いて書いてくれてるんだ。
自分好みにしたければ、
自分が書けばよい。
ここに投下するのは読み手の反応を知りたいからじゃないのか?
無反応よりはたとえマイナス意見でも読んだ感想を知りたいんじゃないの。
まぁ、投下したあとに賞賛のレスがつかなければ、いちいち聞くまでもないって
いうことなのかもしれないが、それも結構残酷だろ。
作品のクォリティとは別にスレタイの女の子が感じるにこだわるなら男性とは異なり
Hに至る過程、性衝動のみでなく男性が気持ちの部分でも女性を強く欲する心情が
読み手も納得できるように描かれているとより萌えやすいのは確かだよ
ただそれをテンポよく描写するのが難しいことも皆よくわかっている
だからこそ素晴らしい作品にはレスがいっぱいつくんじゃないのかな
レスあるときはいっぱいあるよね…こんなに住人がいたのねってくらい
ただレスしなくても書き込み自体にはいつも感謝してます
添削するような部分ではなくて好みのレベルだと思うよ。
そういう手法の作品なんだから、あーしろこーしろと言われても
作者さんもどうしようもないんじゃないかな。
女性向け18禁添削虎の穴スレじゃないんだから、
自分好みの作品にしたければ自家生産する。
明らかにスレ違いの作品でもなければ、気に入らないならスルー汁、
過剰なマンセーもイラネ、というのが昔からの空気だったと思うけどなぁ。
そもそも、こんな論争続けてたら他の作者さんが投下しづらいじゃないか。
つか、何か上から目線なんだよなぁ。
それを意見だからと言ってても、スレが繁栄する訳ないと思う。
初期スレみたいに、わいわい雑談しながらの雰囲気が好きだった…。
私もあまり好みじゃない作品もあったりするけど
投稿してくれる事自体はありがたいと思ってるよ。
初期みたいなわいわい雑談てただの馴れ合いじゃん
>>473 GJGJ!
自分は妄想で補完するの好きだから
大好きだこういうの!
あたしも好き
こういうのははっきり書かないとこが萌えると思うんだが
初カキコなんだが、書こうかどうか迷ってる話がある。
兄と妹なんだが、妹のほうが兄大好きで兄の子が産みたいくらい思い詰めている。
兄のほうは「可愛い妹」くらいしか思ってない。
しかし、妹はその家の子供ではなかった。産院で取り違えられたらしい。
妹は驚くより喜んでしまう。「これで兄と結ばれても構わない」と。
そしてあの手この手で兄を誘惑し、ついに結ばれる。
天にも昇る気持ちの妹は毎日でもSEXしたがる。
一方、妹に手を出してしまった兄は悩み始める。
しかし、肉体の快楽に負けてダメだと思いつつも妹を抱いてしまう。
そして――
というのが大まかなあらすじ。ラストはまだ決まってませんが悲劇かも。
どこに投下していいのか判らなくてここにカキコしました。
お目汚し失礼しました。
妹スレなんてものもあるぜ!
でも読んでみたいぜ!
近親ものはその属性が集まる人のスレに書いたほうがいいかと。
ここより圧倒的に受け付けてくれる人多いですよ。
でも、他人なんだよーあの二人。
近親ものはあの禁断な雰囲気がいいのかと・・・。
それと兄のほうが妹LOVEで無いので妹スレは場違いな気がした。
読んでみたいけど、ここじゃないかな〜
と思う
ガチな近親ものは苦手なので血の繋がらない兄妹なら読みたいっす
どこに投下するか決めたら教えていただけると嬉しい
ほす
黒澤くんに逢いたい保守
ほっしゅあげ
捕手
504 :
灰色 猫:2008/07/02(水) 00:39:10 ID:6rAJ76oC
20レス程お借りします
エロまでがちょっと長いので人によったら嫌かも
中学からの親友ふみちゃんは言うわけだ。
「あんたらマジでつき合ってんじゃないかって、みんな噂してんだけどね」
いや、ありえないんだなコレが。
クリスマスは一緒にファミレスでご飯食べてゲーセン行った。
バレンタインは本命への手造りの余りをあげた。(基本的に義理はあげない主義だが)
でもホワイトデーに全く期待しなかったクッキーのお返しなんぞくれたりしたんで
(しかも自分で作れるんだこれが)、直後の奴の誕生日には一応プレゼントをあげた。
この男「ケン」とあたし「奈緒」は1年の時たまたま隣の席になったのが
きっかけで仲良くなった。
あたしも割とゲーマー寄りなので話が合ったわけだ。(だがあくまで私自身は
ヲタではない……と思う。いや、思いたいけど傍目には同類かもなorz)
「ねえ、それレベル上げダルい?」
「いや。けど敵がえげつない……やる?」
「いや、いい」
「ラスボスならまた手伝ってやるよ?」
「んじゃ、やろっかな」
ん、とニッコリ笑うとケンはまた画面に釘づけになった。眉間に皺が寄る。マジじゃん。
今も新刊の文庫を読みふけるあたしの隣の席で、DSの新タイトルにのめり込んでる
こいつを見ていると『傍目には似合いのヲタクカップル』に見えるんだろうなと思う。
いや全然ちがうんだけどね。嫌いじゃないし、どっちかっていうと好きかも。
早々と読み終わった文庫をケンのリュックに入れてやる。
いつもこんなもんだ、色気も何もない。でも一緒にいるのはあたしは好きだ。
けどそれは親友としてのレベルである。互いに好きな相手もいるし、それを
それぞれが応援している。
「よっしゃクリアー!俺マジ天才!!」
「あーもうっ、うるさい!」
またやってる、くすくす笑う声が教室のあちこちから聞こえる。
いやだから、一緒にしないで……。
「奈緒ー。後でね」
うんバイバイ、とふみちゃんに手を振って自分もパンを取り出す。
「広野さんあっちのコたちと食べるんだ?」
「そうみたいだね。ん……何?」
自分も弁当を出しながらケンはあたしをじっと見てる。
「いや、女の子ってトイレとかランチとかみんなで行くの好きじゃん?奈緒は
そういう所ないよね」
別に嫌いってわけじゃないんだけど、何か苦手なのよ。用足し位落ち着いてしたいし
なんつうかその、ああいうのが肌に合わないんだ。
「やっぱ変わってんのかなー」
「いいんじゃないの?無理したってボロが出て結局辛くなるよ。それに広野さんていう
いい友達がいるじゃんか」
そうなんだよね。誰とでも仲良くできるふみちゃんのお陰でハブられずに済んでんだ。
「俺だって相当変わってると思うよ?」
確かに。自分で弁当作るのが好きな男子高生はそういない。男女逆なら嫁にしたい。
そう言うと「マジで?」って結構喜ぶんだよね。変な奴。
隣のクラスの山田君が呼びに来たけど手振って弁当開けてる。
「行かないの?」
「うん、ここで食べる」
あっ、そう。あたしも1人はちょっと寂しかったりもするんで嬉しいんだけど、
時々『気を遣ってくれてるのかな』と考えたりしてしまう。
……まさかね。そんな義理ないよね。
「あっ、ケン、ユリちゃん♪」
小声で肘をつつくと廊下の窓を示す。ケンの片思いの彼女『永井ユリ』が通ったからだ。
背中までの髪は綺麗で、体は小さくて白くて可愛い。
ちっちゃくピクッと体を反応させて「ん」とだけ言うと、「いただきます」と
行儀良く手を合わせてご飯を食べ始めた。
「やけにあっさりじゃない?」
「いや、普通だよ?」
「照れてんの?」
うるさい、って呟きながら卵焼きを1つくれた。
「昨日の本さ、まだ読めてないんだけど〜」
「いいよ。ゆっくりで。まだやりたいエロゲーあるんでしょ?」
「うん……てエロゲーって言うな!恋愛シュミレ」
「はいはい」
帰りまで一緒かい。
あたしは趣味が高じて書店でバイトしている。本代はかさむし、社員割引なるものも魅力的。
ケンも趣味には金が掛かると新聞少年をやっている。
「何であんたも付いてくんの……あっ、また何か買う気?今日発売のアレなら
あたしが買っといたげるよ」
「いや、いつもだと悪いし」
「ついでだからいいよ。エロ本以外なら」
「ば……!なら、頼んどく」
周り気にして真っ赤になってやんの。案外ウブな奴。
並んで歩くと155センチのあたしと180のケンはすっごく凸凹してて、あたしは首が痛い。
結構顔も整ってるし、髪型とか気をつければ……惜しいなあ、などと良く思う。って
人のこと言ってる場合かあたしは。自分こそ何とかしろよ、この寝癖。
今朝、時間がなくて誤魔化すためにとりあえず編んだ似合わない三つ編みをいじりながら歩く。
肩までだと跳ねやすいんだよね。でも一応女の子ですから、長い髪で少しでも
可愛くなれるもんならと頑張ってるんだけど、今度こそと一度位は背中まである
髪に憧れたりしては何度も切っては後悔する。
今が限度だ。ユリちゃんとやら、マジ尊敬する。
「あっ」
下駄箱の間から出てきた相手とぶつかりかけて、思わず顔を見て息を呑んだ。
「ああ……深田か」
少しハスキーがかった声に、反応すまいとしてあたしの肩に力が入る。
「志真、くん……」
「元気そうだな」
「うん」
顔、見らんない。
しばらく沈黙した後、彼は口を開いた。
「深田、今からちょっといい?」
「あ〜……バイトで」
じゃ明日。そうあっさり約束事を交わして彼は玄関から出て行った。
「おい、今のって呼び出しかなぁ?奈緒チャンスじゃないか!……おい、どうした。
嬉しすぎて声出ないか?」
肩を掴んで揺さぶりながら笑ってるケンに、あたしは愛想笑いしか返せなかった。
志真くんは、あたしの想い人だった。
翌日の放課後、下駄箱の前に彼は待っていた。
「深田」
気づかない振りして素通りしようと思ったのに、あっさりと捕まってしまった。
「志真くん……」
すぐ後ろにはケンがいた。
「行こう」
そう言いながらその視線はあたしを通り越しチラとケンを見る。
「……あ、俺ブクオフ寄ってくから」
あたしの肩をポンと叩くと一度も振り返らず行ってしまった。
残されたのはあたしと志真くん。久々に間近で聞いた声はあたしの胸に小さな亀裂を産んだ。
その時ほんとうは、ケンにいてほしかった。
誰もいない視聴覚室準備室にあたし達は向かい合っていた。
何を言えばいいのだろう、彼は何をするつもりなんだろうか。
何を考えてるの?
「深田とこうして話すの久し振りだね」
そう話しながらカーテン越しに外を眺めて目を細める。陽に透けた薄茶色の柔らかな
髪が眩しいと思った。
ここに来るのもバレンタイン以来だった。
「俺とつき合う気まだある?」
いきなりの台詞に面食らった。思わず彼の顔を凝視してしまったまま固まった。
「なに、言ってるの……?」
「あいつとは別れた。今度こそ終わりだ」
突然の事にパニクって志真くんが近付いてくるのをどうにも出来なかった。
気が付いた時には、腕を掴んで抱き締められてた。
「う……そ」
返事もしないうちに彼は首筋に唇を当て、そのままあたしの唇へそれを滑らせようとする。
「……ちょっ!」
背筋が一瞬にして凍った。その寒さに耐えきれなくて思い切り顔を背けた。
「ふか……っ」
ガタガタッ!!
その時ドアが大きな音を立てて揺れた。
あたしは今だ!とばかりに駆け寄って出入り口へ向かった。
もっとも、そこしか無かったんだけど。
だがドアを開けたあたしを待っていたのは、今のよりもっと重い衝撃だった。
目の前に立ち塞がる大きな人影。
「な、んで……!?」
「いや、あの」
いたたまれなくなって、あたしは後ろも見ずに2人の男子を残してその場から逃げ出した。
背後からはあたしを呼ぶケンの声だけが響いていた。
「彼、すっごく心配してたけど」
あのまま家まで逃げ帰ったあたしをふみちゃんが訪ねてきた。
「彼って?」
「どっちだと思う?」
その時あたしの頭に浮かんだのは1人だけだ。
「多分、奈緒が考えてるので合ってると思うよ」
見透かしたようにあたしを見ながらお茶に口を付けた。
「何があったかは教えてない。でもきっと何か勘付いてるんじゃないかなー?」
重い気分で膝を抱えていると、場違いに明るいゲーム曲が流れ出した。
……ケンだ!
出な、と手をひらひら振って促すふみちゃんが背中を向けて手近な漫画を開くのを見て
携帯を手に隣室へ出た。
「……もしもし」
『俺だけど、ケンだけど。……無事か?』
「うん」
心臓がバクバクする。
出来れば電話叩き切って、みんな無かった事にしてしまいたい。
『今××にあるコンビニなんだけどさ〜……出て来れねえかな?』
「えっ!?」
来るまでいるからって切れた。……マジっすか。
ふみちゃんと家を出て送りがてら外を歩く。足は重い。
「もう忘れちゃいな」
ガラスの向こう側に見えるケンの背中に気付くと、ふみちゃんは一言だけそう呟いて帰った。
休憩コーナーのベンチで携帯を凝視しながらケンは待っていた。
あたしが声かけるより先に気付くと、位置をずらしてあたしの座るとこを作った。
無視して突っ立ってるわけにもいかず、腰を下ろす。だけど言葉は見つからない。
「あいつと何があったの」
静かに呟く質問に 答える事が出来ずに黙ったままのあたしに
「何された」
いつもの柔らかな声とは違う、低く静かなそれが突き刺さる。
「本当に好きなの?あいつの事」
「……何で?」
「奈緒、逃げてるみたいに感じたから」
心臓を捕まれたような気がして、思わずケンの顔を見た。
ケンもあたしを見ていた。
「怯えてるみたいにも見えた。……何があった?」
Gパンの膝を握る手が小刻みに震えた気がした。
「……ごめん」
それだけ言うのにかなりの力がいった。
「何が?」
「あたし、あたしね」
楽になるのかな?
忘れること、出来るのかな?
「うん」
「あたしね。あたし……もう、綺麗じゃないんだ」
がしゃん。
ケンの携帯が足下に落ちてる。
「何て?」
「落ちたよ、携た」
「だから何て!?」
いつもモバゲーするためだけにあるような四角い通信機は、床の上に放置された。
いつもなら慌てて拾うのに。
「あたしね、ほらバレンタインにチョコあげたって言ってたじゃん」
「うん。でも渡しただけだって……」
そう、告白はせずに逃げちゃった、ってケンには言った。志真くんには他校に彼女がいるし。
中学からずっと好きで、だから、渡して振られてそろそろ諦めても良いかなって思ってた。
今時流行んないよね、そういうの……。
でもその後の展開は意外だった。
『付き合ってもいい』と彼は言ったのだ。彼女とは年末に別れてしまったから、と。
それからのあたしは混乱していた。
キスされて胸を触られた。後は……。
とにかく恐くなって彼を突き飛ばして逃げ出した事は覚えている。
そして数日顔を合わせないまま過ごしているうちに、元カノと復活したのを人伝に聞いた。
皮肉な事にバレンタインのあの出来事の直後だった。
「ふみちゃんには話したけど、あたし……話せなかった。ケンには言えなかった」
「…………」
「異性だし、軽蔑されて友達でもいられなくなると思って……。簡単に
キスとか許しちゃった事になるんだもん。おまけにそれを後悔してるなんてさ」
ごめんね、何でも相談するって言ったのに。
携帯を拾ってふらふらと出て行く後ろ姿を見ながら思った。
あたしは、大事なひとを失ったんだ。
翌日学校は地獄のように退屈で、苦痛で、早く放課後が来る事ばかりを待ち望んだ。
ケンはとんでもなく遅刻して昼前にやっと来たと思うと、昼休みになるや否や
どっかにすっ飛んでった。
あたしと並んでるのが嫌なのか気まずいのか……とにかく追う事も出来なかった。
普段は無理にあたしを女子の輪に誘う事のないふみちゃんは、珍しく声を掛けてきた。
「いいよ、あたしに気遣わないで」
「じゃ、あたしが奈緒といていい?」
そう言うと他のコにごめ〜ん、て挨拶してさっさとケンの席に弁当持って座った。
こういう時、普通は1人になりたいと思うものかもしれないが、逆にそれに慣れて
しまったあたしにはありがたかった。人間……というよりあたしって、勝手。
「森山って、ああ、2組の森山研?」
……ケンの事だ!
次の授業前にとトイレを済ませ、個室の扉に手を掛けた時聞こえた声に思わず
ノブを握り締めたまま出そびれてしまった。
「あいつって、ユリの事好きだったんだよね?」
「そうそう!」
「ああ、何かそうみたい……」
1組女子!ユリちゃんもいる。
ケン、何かしたのか?ユリちゃんに。バレてんじゃん!!
「でもあいつヲタ入ってんじゃん。キモイよねー。ユリのタイプじゃねぇわ」
「ん〜まあ、ちょっとね」
「見た目は悪くないけど、なんかこう……ああいうのってさ〜」
「ああ、わかるわかる」
ハァ!?
何が?知りもしないくせに見た目だけで決めつけんなよ!!
何か知らんが頭に来た。思わず出て行こうとしたその時だ。またあたしの手は止まった。
「けどあの人どうしちゃったんだろうね?3組の男子殴ろうとしたってマジ!?」
「ねー。相手はふざけてただけですって言ったらしいけど、本人は殴るつもりだった
って言ってるらしいよ。でも理由は頑として言わないみたい。相手が庇ってる
んだとしたらせっかくなのにバカだよね」
3組男子ってまさか……。
「やっぱりああいうタイプってキレると恐いのかね?」
散々喋って彼女達は出てった。
静かになってからようやく個室から顔を出すと、隣の個室からは同じ様にふみちゃんが
顔を出してた。
「奈緒、今の話」
「うん……」
鳴り響いたチャイムに会話はそこで終わった。
「行こ。……とにかく本人に聞きなよ」
そうするほかない。ふみちゃんに手を引かれて教室まで走った。
午後の授業が終わってもケンは教室に戻って来なかった。ずっと主張を替えずに
いた挙げ句理由についてはだんまりを続けていたそうだ。
しかし庇っているかもとは言え当の相手(やっぱり志真くんだった)は実際のところ
殴られてはいないのだし、先生達もお手上げで折れるしか無かったそうだ。
「ごめんな。もう、変に構ったりしないから」
玄関で待っていた志真くんはあたしにそう言って頭を下げた。
「結局彼女に逃げられて、その穴を深田で埋めようとした俺が悪かったんだ。森山が
怒るのは当然だと思う。『そんな奴ずっと好きだったなんて奈緒が可哀想だ!』
って……本当に悪かった」
寂しさに負けたんだ。そう言った。あたしはキープされる所だったわけか……。
結局は彼女に適いはしなかったわけだ。そう思っても別に悲しくは無かった。
少しだけ、遠ざかる彼の背中に胸はちくん、と痛んだけど。
もう少ししたら多分解放されると志真くんが言ったとおり、間もなく職員室から
ケンが出てきた。
あたしと目が合うと気まずいのか床に目を落として歩いてくる。
「……待ってたの?」
「うん。あー重かった!一体何入ってんの?こん中」
机に置きっ放しだったリュックを渡す。
「今日バイトないからさ。一緒に帰っていい?」
「……うん」
余計な心配かけてごめんな。
小さく呟いて歩き出した。
「俺も奈緒に黙ってた事がある」
「えっ!?」
「奈緒と仲良くなってすぐ、だから半年以上前か……告って振られた。永井さんに」
はあ!?聞いてない!
「何度も言おうとしたけど出来なかった。そしたらもう奈緒は俺の背中押してくれなく
なるし、そういう繋がりがなくなったら話とかしなくなって切れるって思ったから」
あたしも言えなかったようにケンも言えなかったって事?
「振られんのはわかってたからまあ、すぐ立ち直ったんだけど。そん時より昨日の
奈緒の話の方がショックだった。……軽蔑はしないけどむかついたし、苦しかった。
ごめん俺、奈緒と今迄通りは付き合えない」
一番恐れていた事が起きたと思った。やっぱり騙してた事は大きい。あたしは
取り返しのつかない事をしてしまったんだ。
「好きなんだ。永井さんに告白した時は気付かなかっただけかもしれない。
奈緒が、好きだったんだ。思ったほど悲しくなかったのがショックだったんだ、
失恋しても」
気がついたら、ぽつぽつ降り始めた雨にも構わないほどあたし達の空気は張りつめていた。
「奈緒、困る?」
「ううん」
たった一言であたしの心は新たな色に染まりゆくだろう。でもそれを受け入れられるかが怖い。
「……あたしは志真くんがOKした事も、キスされた事も嬉しいよりショックだった。
それを後悔してるあたしにもショックだった。好きだったら結果どうあれそんな筈ないのに」
「綺麗じゃないって……どこまで?」
ケンはあたしの目を見ずに言った。
「……胸少し触られただけ。怖くて逃げたから。けど、そんな気持ちになったんなら」
あたしには黒歴史だ。流されて、悔やむなんか最低だ。
「それ、忘れられる?」
「えっ!?」
「無かった事にはならないかもしれないけど、俺が塗り替える事……出来る?」
「ケン」
「ごめんな。俺何だかんだ言っても結局同じ様になろうとしてんのかもしれない。
でもマジなんだ。奈緒……お前としたい」
どこまで?
そんな無粋な事聞けない。じゃあどこまでなら構わないというのか。それより
あたしはどうしたいのか。
「濡れるなー」
誰にともなく呟くとリュックから折り畳み傘を出してさすケンの広い肩を見ていた。
歩いてるうちに段々視界が薄暗くなった。少しずつ傘があたしの方に傾いていくのに気付く。
「濡れるよ」
「いいよ」
でも、と見上げたケンの顔はあまり良く見えなくて、途端に得体の知れない不安に襲われた。
「……た」
「なに?聞こえない」
「もっと早くに気が付いて、何とかしたら良かった。ごめんね」
気付いた所で結局は嘘を突き通したのかもしれないけど。
互いを失くさないための悪あがきのための心からの嘘を。
「謝るな。……泣くなよ」
「ごめん……」
「明日、会える?」
駅まで送ってくれたケンの言葉に迷い無く頷く。
「今夜ひと晩よく考えてな。俺の事も、奈緒の……気持ちも」
あたしに傘を押し付けるようにして、本格的な雨の降り始める中に消えてゆく
背中をずっと見ていた。
翌日は学校は休みだったから、昼からバイトに出てた。店を出ると外の植え込みに
腰掛けてTシャツに短パン姿の兄ちゃんが必死の形相でDSやってた。ていうか
どう見ても立派なオタクに見えるんですが。……まあ、いいけど。
あたしに気付くと
「飲む?」
ってリュックからペットボトルをくれた。
いつも何入れてんだ一体。ていうか更にコンビニの袋見えたんですけど、何故出さない?
……重そ。
「うちな、親社員旅行で明日の夜まで留守してんだ。……来る?」
「うん」
「どっか遊び行ってもいいけ」
「ふみちゃんに頼むから」
ゆうべひと晩考えた。何度も何度も、どれだけ悩もうと答えは同じだった。
黙ってあたしの手を握るとやりかけのDSを閉じて立ち上がった。
「俺、いいんだよね?奈緒の事諦めなくても」
「うん」
あたしも恐れるのはやめる。
終わった事悔やむのも、嘘つくのも。
母子家庭だし1人っ子だからって言ってたから、3部屋あるうちの1部屋はケンのもの。
「団地ってどこも造りは同じだね。でもうち弟いるからさ、未だに部屋一緒だよ!?いーなぁ」
しかしフィギュアやらゲームやら、そら金掛かるわ。バイトも頑張るわな。
「言っとくけどエロいのはねぇぞ」
ばれてたか、弱みを握ってやろうと思ったのに。
「明日朝、3時位に一旦朝刊配りにでるけど、いい?」
「うん」
朝、あたしはどういう顔してるんだろう。
「……奈緒、あの、抱いてもいい?」
「は!?」
いきなり!?
「いやその、そっちじゃなくて……抱き締めてもいいか、と」
「あ、ああ、うん……いい、よ」
そっち!?……まあどっちにしろ恥ずかしいけど、ムードというかスマートじゃないなぁ、
ストレート過ぎて恥ずかしい。
でもそういうの勝手な幻想なのかもしれない。
本を読むのが好きだった。一度書いた感想文が賞を貰った時褒めてくれたのが志真くんだった。
そっから妙に彼を美化してしまってた気がする。だから違ったんだ。
ゆっくりと近付いてきて、いきなり距離が無くなった。あたしの顔はケンの胸にあって、
どちらも互いの表情が見えない。
ただしがみつくだけしか出来なくて、そこからどうしていいのかわからないでいると
頬にあった胸の温もりが消えて、あっ、と思う隙もなく唇が塞がれた。
がちっ!
「痛っ!?」
勢い余ってぶつかった歯を抑えて2人とも顔をしかめた。ムードぶち壊しじゃんorz
今度は焦らずゆっくりと触れ合う唇を感じながらキスをした。
「奈緒のちゅー顔可愛いな」
「やだ……って、えっ、目!」
ニヤリといやらしく笑う顔をマジでつねってやろうかと思った。こ、こいつっ……。
「今日は全部見せて貰うから。今迄我慢したんだから」
まさか意外とS!?……早まったか?あたし。
いや後悔はしないけど、などと思ってるうちにまたぎゅっと抱き締められて、
さっきよりも強いキスとともに思考が途切れてゆく。
背中に回されていた手が徐々に下りてGパンのお尻に触れた。
抗議しようにも塞がれっ放しの唇は声1つ漏らせない。無理やり喋ろうとして
逆に舌をねじ込まれどうにも出来なくなった。
絡み合ってくる舌の動きと下半身を撫でる掌に翻弄されて、しがみついた背中を必死で叩く。
「んっ、痛……何、やっぱり嫌?」
「えっ、いやそうじゃなくて」
ただびっくりして恥ずかしくて俯いて目を逸らした。
「ごめんな……つい」
「ううん」
今度はそうっと抱き締められて、あたしは逆にぎゅっとしがみついた。強く、強く。
大丈夫。あたしはこの男が好きだ。
お風呂を借りて夕飯を食べた。(ケンが作ってくれてあった)
うっかり寝間着を持ってなかったあたしはケンのスウェットを借りた。
パンツはあまりに長いため穿くのを諦めて上だけ着たけど、それでも結構大きくて
膝を抱えただるまさん状態でころんと転がったままテレビを見ていた。
風呂から上がってほかほかの顔でペットボトルを抱えたケンが、じーっとドア
を開けた状態で見てるのに気が付いた。
「なに?」
「……水玉」
「???…………!!!!!」
慌てて起き上がって必死で裾を引っ張った。
「誘ってんのかと思った」
「ばっ……ふ、不可抗力!」
焦ったあたしの顔もきっとこんなだろうと、赤い顔したケンを見て思う。
「消していい?」
リモコンを指差したのに頷くとケンはそれでテレビを消した。
「こっちも消す?」
「……お願い」
部屋の灯りが落ちた。
頼り無げな豆電球の灯りの下、ベッドの上で背中合わせに恐る恐る服を脱いだ。
「奈緒、こっち向いて」
初めて異性に肌を晒すのかと思うとただ恥ずかしくて、胸に押し当てた服を握る手に力がこもった。
背中に感じる視線とケンの気配に意識が集中して身動きが取れない。
「これ、取っていい?」
ブラのホックをくい、と引っ張られ、一瞬戸惑ったけど何も言わずに頷いた。
ごそごそとホックをいじってる。上手く外せないんだ……慣れてないから。
いや変に上手でも何かヤだけど、どうしよう?手伝った方がいいの?なんて延々
考えてるうちにあたしの胸は解放された。
肩紐を腕から抜こうと引き下げて
「こっち向いてよ」
と耳元で囁く声の柔らかさにぞくっとした。
体をケンの方に向けると覆い隠していたモノを剥ぎ取られ、裸の胸に抱き締められた。
「ずっと、ずっとこうしたかった。奈緒が欲しかった」
喉元にこみ上げてくる切なさに、ため息しか出ない。
体が熱い。
「……好き」
やっとの事で絞り出した声に応えるように唇が重ねられた。
何度も啄むように浴びせられたそれは段々激しさを増し、唇をなぞるように
這わされた舌がやがて口内を蹂躙し始めた。
もう後戻りできない。
のしかかられてそのまま後ろへ倒れたあたしをケンが見下ろしていた。
じんわり滲んだ汗に張り付いた髪を指ですくい、首筋に息をかけられた。
「ひゃ……」
初めての感覚に思わず声が零れた。それに被せるように吸い付き舌を這わされ
そのぞくぞくする感触に背中が仰け反る。
「あ……っ」
出すつもりなんかないのに、意思とは関係なく普段とは全く違う声が出る。
やだ、絶対変!
とっさに手の甲を押し当て口を塞いだ。
そんな事にはおかまいなしに這わせた唇や舌はそのままに、両胸に熱い手の温もりを感じる。
しばらく撫で回された後鷲掴みにされて揉みしだかれながら、唇をまた塞がれ
ごく当たり前に舌を絡まされるともうされるがままにケンのペースに巻き込まれてゆく。
キスが再び首筋へと移り胸に落ちた。何気に目を向けると目を閉じて吸いつく
表情が何だか可愛くて、思わず頭を撫でたらケンがこっちをちらと見たので目が合った。
うわっと恥ずかしくなって顔を背けると、反対側の乳首に走った刺激に
「……っ!?あっ」
予定外に声を出して反応してしまった。
「ふーん。揉むのよりこっちのがいいんだぁ……」
両手で指先を使ってそーっと触れる。その焦らすようなもどかしい刺激に堪えきれず
背中を反らし、思わずケンの髪をかきむしった。
「ああ、あ……」
「気持ちいいの?」
そんな事聞かないでよ!ていうかわかんないよ。
でも止めて欲しくはなくて、むしろもっと狂ってしまっても構わないとさえ思う。
感じる、ってこういうの?
「なんか声だけでイケそう、俺」
はあ、と熱い息が耳に掛かるのがまたぞくぞくする。
出したくないのに、喉の奥から絞り出すような嬌声が唇から零れて、すぐ側にある
ケンの耳にどんどん届いて吸い込まれてく。
口を塞ごうとすると両手をそれぞれ押さえつけられ、再び吸い付いた胸を舌で弄ばれた。
「う、んーっ……あ……」
唇を噛んで我慢するけど、呆気なくそれは失敗する。
ケンの無駄な肉のないそれでいて大きな体に組み敷かれては、あたしなんかもう
どうにも出来ない。
いつしか自由になった両手を動かすのも忘れて、お腹や太ももを撫で回す彼の
愛撫にされるがままに身を投げ出している。
そのうち、体の中心の奥でじんわりと不思議な熱が溢れてきて、それに我慢ならなくなった。
無意識に身を捩って摺り合わせた脚が長いケンの脚に絡み付く。
「どした?」
「……んっ」
わかんない。でもこのままじゃ……。
黙ってケンの顔を見ると触れるだけのキスをして抱きついた。
どうしよう。多分もっと先を求めてる……。
ぼうっとなった頭でそんな事を考えてると、最後の砦となった布越しに指の感触がした。
「すげ、湿ってる」
「うっ……!!」
見なくても解るくらい。その指の動きで下着が軽く張り付いてしまっているのがわかってしまった。
「う……そお」
「そう思うなら触ってみ?」
手首を掴まれてそこへあてがわれた。本当に、布越しにでもぬるっとした感触がわかる。
これ、濡れてるってやつ……!?
「自分でした事ないの?」
「ない……」
だから全く初めての事にどう反応していいのかがわからない。興味がなかった
わけじゃないけど、なんか怖くて、イケナイような気がしていた。
「あんた、するの?」
「聞くなよな、お前」
そっちが先だろうが。軽く呆れるわ。
「男だからな。もう結構ヤバい」
ケンのそこは下着が突っ張って見えるから、初めて目の当たりにするあたしでも
かなりな事になってるのは何となく想像がついた。
「でもまだ我慢だな」
そう言ってあたしの最後の1枚を脱がしに掛かった。
さすがにこれだけは顔から火が出そうで抵抗しようと試みたものの、既に力が
入らなくなった体はあっさりと全てを晒すことになった。
脚の間に体を割り込ませると、ついにケンの手がそこを探った。
指を動かすと微かにぴちゃっという濡れた音が耳に届いて、あたしは恥ずかしさで
死にそうな程心臓が縮まった気がした。
「良かった。気持ちよかったんだ……?」
ちょっとホッとしたように息をついて、また動き始めた指はあたしを休ませてはくれない。
多分そこは一番感じやすい所なのだろう、触れられる度に勝手に声が漏れて体が跳ねた。
「あっ、うぁ……やぁん、ああ……」
自分でも凄く感じてる、とわかる。熱くて、溶けそうで、息が出来ない。もし
今止められたら辛いかも……。
「ちょっと力抜いて」
初めてあたしの中に何かが出入りしている。少し痛い?
「何?」
「俺の指。奈緒ん中暖かいよ」
そんな事言われたらもうどうしたらいいのかわからなくて混乱する。
黙って指を抜くと濡れたその先をぺろりと舐めた。うわあ、や、やらしいっ!
ニヤリと歪んだ口元に何となくやな予感がよぎったが時既に遅し、次の瞬間あたしは
これ以上ない羞恥に追い込まれた。
「うそっ!?だ……だめ、や、ああっ!!」
文字通り体を開かれて指の代わりに舌の滑る熱が、あたしの理性を壊し始めた。
両の太ももの付け根をがっちりと押さえつけられて頭を押し付けられては、閉じたくても
閉じられずどんな抵抗も出来なくてただ泣き声をあげるしかなかった。
「やああ……あああ……っだ、めぇっ……んん」
じたばたと腕を、頭をぶんぶん振ってもがいても、その波から逃れることは出来ない。
体全体を痺れるような突き抜けるような何とも言えない感覚が巡り、言葉も思考も
吹っ飛んでばらばらになったような気がした。
気づけば枕を千切れそうなほど握り締めて、悲しくもないのに訳も分からず
泣きじゃくっていた。
「大丈夫?……もしかしてイった?」
「う……わかん……ない」
話には聞いても、それが何なのかわからないあたしには判断のしようがなかった。
きゅうっとその体にしがみついて泣きじゃくるあたしの頭を撫で、のし掛かるように
抱き締められて、狂った時間を徐々に落ち着かせていった。
「奈緒。もう限界……。入れていい?」
一瞬体が強張ったけど、黙って頷いた。
ケンは起き上がるとリュックをごそごそと探り、中からコンビニの袋に入った箱を出した。
あ、昼間のペットボトル!そっか、だから袋ごと突っ込んで重い思いしてたわけか。
納得。そう考えたら悪いけど笑えてしまった。どんな顔して買ったんだ?だって
他にどう考えてもお菓子やら漫画やら、ついでに買いすぎ。
「お前……なんか想像してるだろ!?」
すっげ恥ずかしかったんだぞ、と言いながら作業を終えて振り向いたケンを見て
一瞬にして顔色が変わった(に違いない)。
「ま、まじで?本当にする………の」
「は?何、心配してんの?大丈夫だろ。ちゃんと入るように出来てんだろ」
わかってるよ!わかってるけど。
「だって、何か思ったより……おっきいんだもん」
「ああ、俺背高いからな」
「えっ!!関係あるの!?」
「知らん」
「はあ!?」
がくっ。マジで言ってんですけど!あたしの不安をよそにくっくっとお腹を抱えて
笑ってやがる。むーかーつーくーっ!!
「怖いか?」
「もういい」
一転して不安げな目であたしを覗き込むケンを見て、あまりの忙しさにそんなのどっか行った。
ゆっくり優しく体を押し倒されて脚を開かされ、何かをあてがわれたのを感じると
さすがに怖さが先に立って目を瞑った。
「いくよ」
「う……」
それは強い力であたしの体を押し開き始めた。
「いた!痛い、痛いっ!!」
体が勝手に退けてきて、しがみついた上半身とは逆に下半身は逃げようともがいてる。
「ごめん、奈緒、ごめんっ!!でももう無理……」
あたしだってわかってる。だけど心と体はバラバラで、受け入れたくてもそれに
耐えることが本当に辛くて、悲鳴をあげそうになっては歯を食いしばって思いとどまる。
「う……はあ、はあっ、んっ」
少しずつ引き裂かれるように体を貫いてくるケンのそれに、思考の全てが持って行かれる。
「も、少しだから」
「んっ」
またあたしは泣きながら思い切りしがみついて耐え抜いた。
『やめて』
そう言うのは簡単だけど、それだけは絶対引いてはならないカードの数字のようで
初めから見なかったものとする。
じゃなきゃ何故今ここにこうしているのかあたし自身に説明がつかない。
それに、あたしはやっぱりどんな思いをしても、このひととだけは繋がっていたいんだ。
幼稚な嘘で守り通した絆を。
「は、入った……全部」
高い背丈を縮めて流れた涙にキスして、そのまま唇同士を重ね合わせてきた。
「ごめんな……」
首を振って答えると、すぐ終わらせるから。そう言って腰を少しずつ引いては押し付ける。
「た……痛いっ……んっ!!」
我慢しようとしても想像以上の激痛に顔が歪む。
「はあっ……な、おっ……。ごめん」
息も切れ切れに喘ぎながら名を呼ばれてふとその顔を見た。
「ケン、気持ちいい?」
「う……ん。すげ、気持ち、いい。マジでごめんっ、やめんの無理……」
その顔を見て少しだけ、ふっと力が緩んだ気がした。
嬉しい。
こんなに痛い思いをして、抱かれているのに自分の方がケンを抱いてる気がしてきて
凄く愛おしく思えるその髪を撫でた。
「あ、俺、イキそ」
「いいよ」
更に激しさを増した動きにまた痛みがぶり返し、再びしがみついて耐える。
「…………っ!!」
最後になんか呻いてあたしの上に倒れた体を精一杯受け止める。
和らいでいく痛みも今は何だか心地良くて、頬に掛かる荒い息遣いに耳を委ねた。
けど現実として。
「あの、ケン、重っ」
「あ〜……ごめん」
ぼうっとした顔で体を起こすとゆっくりキスして肩で息をする体は、とても大きく見えた。
「もー俺のもんだ!」
大事にするから。そう言って汗で湿ったあたしの髪を目を細めながら撫でた。
「ん」
「ごめんな」
少し鈍い痛みの残る下腹を撫でられながら、抱き合って事後の時間を過ごした。
……んだけど。
腕枕されてまどろみながら程よいだるさに眠りにつこうか、などと目論んでいたのに。
ピッピッ…ピピ
「ねえケン、あたしの事好き?」
「うん」
ピコピコ…ピピピピ
「大事にするってゆったよね?」
「勿論」
ピピー…チャラララ〜♪
「だったら今やんなーーーーっ!!」
DS潰したろか!!何故今やる?
「ちょっと待って、もうちょいでこいつをっ……ああミスった!よし持ち直した、と」
ムード無さ過ぎ……。
「奈緒待ってる間ずっとやっててさ〜、そしたらレアアイテムget出来たんだよ!
だからもちょっと待っ」
「知らん!これだからゲーオタはーっ!!」
「オタ野郎なんてこんなもんでしょ?……よし倒した〜!」
いや、それは違うと思うよ。謝れ、全国のオタクに謝れっ!!
「さっきまではもっと優しくて男気があったのに……。ああ、もう別れてや」
「ちょっ、ごめん。捨てないで!マジでごめんなさい。俺奈緒にまで見離されたら
一生独男じゃん」
「なんか……微妙」
部屋の灯りを消して3時のアラームが鳴るまでくっついて眠った。
いわゆるモーニングコーヒーという物は、ケンのバイト後2人で早朝の公園で
食べたコンビニサンドと缶コーヒーで済ませた。
時々こうして朝ご飯食べようか。
健康的なデートだ、って笑った。
月曜日の体育の時間、ケンは腹痛だって嘘付いて休んでた。
「まあ、そりゃ無理もないわな」
ふみちゃんがニヤニヤしながらあたしの前の席に後ろ向きに座ってる。
「こっ、声がでかいって」
あの後あたしの爪痕でケンの背中はエライ事になってしまった。当然人には
見せられなくて(多分バレる)ズル休みする羽目になってしまった。
まあ半分は自分のせいだしねぇ……。
「ところでさ、彼氏持ちな深田奈緒子クン。あんたさっきから何してんの?」
「か、彼氏持ちはやめてよ。自分もじゃん!……いや、やっぱりあたしの髪って
猫っ毛だからブロー持たないのね」
必死で寝癖直して来たのに水の泡だわ。
「ん。何ふみちゃ」
「ん〜?んふふふ。今日の奈緒はカワユいねっ♪」
頭ナデナデ。あたしは子供ですか?
でっかい図体の子供がトイレから戻ったので、ふみちゃんはじゃあね♪と行ってしまった。
別にいいのに。
「奈緒、今度の休みデートしよっ」
「は?いいけど」
今までにも2人でいた事あるから今更って感じなんだけど。
「ちゃんと付き合ってするの初めてじゃん。どこがいい?」
付き合って初めて、でちょっと感動してしまった。
「どこでもいい」
ケンと一緒なら。
「じゃ、任せといてな」
それが甘かった……。
「どこでもって言ったじゃん」
「だからって何で初めてのデートがここなのよ!?」
ま、漫画喫茶って……。この前一緒に見たテレビで『初デートでこれはないわ』
ってやってたじゃん。
「いいじゃん。ほら奈緒が読みたがってたやつ全巻あるぞ?俺も存分に遊べるし〜♪」
備え付けのゲーム機に目を輝かせてるこやつに何を言っても無駄かもしれん。
「だったら社会見学行くか?」
「どこ」
「裏のラブ」
「ここでいい!」
神様、あたしはヲタではありません。と言いつつ長編漫画を読みふけってしまった。
世間から見たら立派なヲタカップルみに見えるんだろうなー、なんて考えながら
でも好きなんだよな、とケンの横顔を見ながらため息をついついてしまうあたしだった。
* * *おしまい* * *
終わりです。
もしや読んで下さった方ありがとうございました
乙でした!
ゴメン言いながら止まらないケンに萌えたw
超乙!!
恋愛シュミレじゃなくて、シミュレーションね
ケンがそう言う人間ならしょうがないけど
流れが丁寧で良かった、乙です
乙です!リアルでよかったよー
繭タンと黒澤君書いてる人?上手いよね。
530 :
書き手です:2008/07/05(土) 04:06:26 ID:wZR8j3wP
>>528 あ、本当だ…
ごめんなさいorz
ちなみに申し遅れましたが以前
>>310書いた者です
繭タンは自分も楽しみに待ってます
310もよかったよ。
今回のも面白かった!
なんかプロットひらめくポイントとか教えてほしいくらいだ。
>>525 文体に見覚えあると思ったら『週末のパズル』の職人さんだった!
今回も等身大の女の子の心理描写が上手いなぁと感心しました。
奈緒とケンのキャラクターがとてもイイ! エチシーンも
初めて同士のいっぱいいっぱい感が微笑ましくて、量的にも良かったです。
一作きりで終わるにはもったいない〜!
また作品読ませて欲しいと思ってたよ!
また来てくれて本当にありがとう
良かったらまた読ませてね
既出かな?
「夕焼けの窓辺」って作品が凄くよかった
>>534 たまにはこういう情報もうれしい。
アリガトサンクス。
536 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 23:27:01 ID:12UulmB2
ホシュ
ほしゅ
ほす
540 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 14:29:36 ID:lyv0FtRB
(;´д`)ゞ アチィー!!
黒澤くん待ち
ほ(`・ω・´)す
繭タソ…
続き読みたいなぁ
職人さんまち
?
あげ
黒澤くん待ち
550 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 11:39:24 ID:cJd1PeBb
待ちあげ
職人さん待ち
「週末のパズル」を書いた者ですが、連投になりますが一作できた所なので投下します。
注意書きとして
※年の差(10歳程度)
※血縁無し、親子とも兄妹ともつかない微妙な関係
※未遂だけど強引な箇所有り
長いので取りあえず1/3程度にします。エロは今回少な目、
それぞれの該当スレにするには中途半端過ぎたので…
あと男、ヘタレかも…
「大丈夫だよ」
その温もりの主はそう言った。
「僕がいるから」
ぎゅうっと握り締められた私の左手が、微かに震えていたのを覚えている。
そして、その頬に流れていた涙のことも……。
「ねえ、アレだれかのお兄さん?」
「本当だ。若いね」
今クラスの子達が噂してるのは、歳の頃は20代後半のスーツ姿の男性だ。
高2の冬、来年は受験や就活となる私達は今日は三者面談という事もあり、廊下にちらほら
見える親の顔に皆緊張や興味で、小学生の参観日のように浮き足立っている。
この歳になればそうそう親が出て来る事なんてありはしないから、無理もないのか?
何だかんだ言っても暇なんだ。
そんな中、中年に紛れて1人中途半端に若い(?)のがいたら自然と目に付くのは仕方の
ない事なのだろうが、それを感じてか見られている方も落ち着かない様子で益々ぎこちなく
所在なさげに小さくなっている。
「林葉。林葉香子(かこ)」
はい、と呼ばれて立ち上がると私はそのまま男の元へ向かった。
「いくよ、イチ君」
ああ、と小さく返事して私の後につき進路指導室へと向かう。
背中に感じる視線やひそひそと聞こえてくる声にも、もう慣れた。好きに想像して下さいな。
「そんじゃ今日このまま仕事戻るよ。下手すりゃ帰るの午前様かもー。ご飯いいから先に寝てな」
「ん、わかった。行ってらっしゃーい」
役目を終えてホッとしたのだろう。月末の忙しさからなのか(いや、いつもか)ボサボサの
頭を掻きながらまた会社へと急ぐ姿を見送る。
八神伊知朗(やがみいちろう)は私の保護者だ。年は27歳。
かといって兄ではない。血は繋がっていないのだ。
もしママが生きていたら……。
彼は私の――パパになる筈の男だったのだ。
「ただいま」
二間のアパートに戻ると直ぐに茶の間の隅にある小さな仏壇に向かい、まず手を合わせるのが
我が家のルールである。
「ただいま、お母さん」
右側の写真立てにあるふっくらした優しい顔に声をかけ、それから左側の写真立てに挨拶する。
「ただいま……ママ」
2人に手を合わせると台所へ向かった。
「あー何もないな。今日は1人だから卵でも焼くか」
小さな2人掛けのテーブルに1人で着くと、ふと思い出す。あの頃もこうしてママの帰りを
待っていた事を……。
7年前の今頃、雪の降る日に学校から帰ると具合が悪くなって、なかなか帰らないママを
待っているうちに心細くなった私は、徒歩10分程の職場へ自ら歩いて向かう途中に倒れて
しまったらしく、気が付いたらママの勤める病院のベッドで寝かされていた。
側にいたのは心配そうに手を握っていたママと、青い顔して私を覗き込んでいた若い男の人だった。
私の顔を見るとホッとした様子で『良かった〜』と呟くと、私の頭をわしわしと撫でた。
その手の温もりとママの顔に安心して、またそのまま眠ってしまったのを覚えている。
当時流行っていたインフルエンザに掛かってしまっていた私は、その後数日寝込んでしまった。
道の真ん中で倒れていた私を背負って近くの病院まで運んでくれた若い男の人は、何度も
家まで見舞いに来てくれて、元気になってもママのいない時の話し相手になってくれた。
当時大学生だった彼は、自分より15も年上の子持ちナースに惚れたのだ。だが大学を卒業
したら結婚してくれと猛アタックし、唯1人の身内である母親の説得を済ませた直後、
ママは事故で呆気なくこの世を去ってしまった。
未婚のまま私を産んだママには頼れる人間は誰もなく、私は1人ぼっちになってしまった。
ママのお墓の前で佇みながらその人は私の手を握り締め、
『大丈夫だよ』
そう言って微笑んだ。
『僕がいるから』
かすかに震えるその右手で私の左手を強く握り締めながら、泣きはらした瞳で。
『僕が守るから』
きっぱりと揺るぎない口調で。
親戚には猛反対されたらしい。当然ながら若さ故の気の迷いだとか、まだ自分も学生の癖に
甘い考えが過ぎるだとか、まあもっともだと思う。だけど、彼は決して私を捨てようとは
しなかった。
『きょう子さんに約束したんだ。香子ちゃんも同じように大事にするからって』
その言葉通り、私は大切に守られて今まで暮らしてきた。学生時代はバイト、就職してからは
建設会社で真面目に働いて、私に決してひもじい思いはさせまいと頑張った。
彼の母親も最初は戸惑ったけれど、本当は女の子が欲しかったから、と私を可愛がってくれた。
私も「お母さん」と呼んですぐに懐いていた。
だけど、お母さんも3年前の中2の時に病気で亡くなってしまった。
それから、私は彼――イチ君こと八神伊知朗と暮らしている。
親子でもなければ、兄妹でもない。一体私達は何なのだろう?
お母さんが死んでしまってから、経済的な理由もあって今の部屋に越して来たけど、
周りには兄妹だと言ってある。名前が違うので色々噂されているかもしれないけど、
余所の家庭の事情までは皆口出しなど下手に出来ない。学校でもしょっちゅうあったしもう
慣れてしまった。
私達は「家族」という括りの中にいる。それだけだった。
だけど今、私は彼が父親になり損ねた10歳違いの兄のような人間から、「男」という
生き物である事を見せつけられて恐ろしい程動揺してしまっていた。
何気に目についた本棚の裏の隙間から覗くモノ。
思わず引っ張り出して思いっ切り後悔した。そして見なかった事、としてまた元に戻した。
イチ君がいない日で良かった。それだけが救いだった。
「なあ、本当に就職すんの?香子は頭いいんだから大学行ってもいいんだよ。それ位の貯えは
あるから」
「いいの!私勉強そんなに好きじゃないし、やりたい事もあるわけじゃないからさ。それに
りっちゃんも進学はしないみたいだし」
りっちゃんとはママが生きてた頃からの長い付き合いの友達だ。腐れ縁でもうずっと同じ
クラスというから驚きである。彼女んちとは家族ぐるみで付き合いがあるので、私達の事情も
知っている、数少ない関係者である。
「そっか、りっちゃんもかぁ」
「それに私早く一人前になって、イチ君に甘えてばかりじゃなくなりたいんだよ。……もう、
夕べ遅かったんだからさー、寝てて良かったんだよ?今日は出勤遅くでいいんでしょ」
欠伸を繰り返しながらヨレヨレのスウェットで味噌汁を飲むイチ君に、テレビで時間を
見ながらご飯をよそう。
「駄目!朝は一緒がうちのルール」
そうなのだ。昔からどんなに二日酔いで辛くても絶対起きてきて、私と必ず会話するのだ。
だから余程でない限り、1人で朝ごはんを味わった事はない。
お母さんが生きていた頃から学校の行事にも来てくれたし、亡くなってからは尚更。お陰で
私はママが居なくなってからも寂しい思いをした事はなかった。
それを当然のように受けていた。私は大切にされていたのだ。それは成長するにつれ彼への
感謝の気持ちを私の中に満たしていったし、信頼を増す一方のものだった。
だけど今、それがどこかでほんの少しだけ狂い始めている。
今朝、初めて目を合わせずに「行ってきます」を言って部屋を出た。
何故か一刻も早くあの場から離れたくて、余裕はあるのにやたら急ぎ足で駅まで向かった。
1本早い電車に乗りながら、私は胸の奥からどす黒い気持ちが渦巻いては消えようと
もがいてるのを感じていた。
何に対してかは解らない。だけど。
「イチ君のばか……」
裏切られたような気がした。
今日も残業か、と彼の分の夕飯をテーブルに残して部屋に引きこもった。
私の机は二間のうちの奥の部屋にあって、寝るのもそこにしていた。
布団を敷こうと押し入れを開けようとして、ふと隅の本棚に目が止まる。背板と壁の隙間
から覗くそれを少し躊躇しながらも引き出すと、怖いもの見たさからついページを捲って
しまった。
『Fカップの誘惑』
『現役女子大生のフルヌード』
『特選風俗情報』
袋綴じまで開いてあった。−−絶句。
隠すように置いてあるって事は、やっぱり知られたくないって意味で、私も見ない事にする
つもりでいたのに……好奇心と何から来るのかわからない苛立ちが私を襲った。
見なけりゃ良かった。
そう思ってまた元の場所へ、それを汚いものを棄てるような気持ちで押し込んだ。
しばしぼうっとしながら部屋の真ん中で固まってしまっていた。
「あ、洗濯物忘れてた……」
リビングに放り込んだままの塊を思い出して、気持ちを切り替えるようにそっちへ動いた。
彼は寝るときはこっちに布団を運んで寝ている。お母さんがいた時はよく川の字で寝ていた
けど、2人になってここへ来てからは一緒の部屋で寝なくなった。
ふと考える。一体いつそんな事してるんだろう……?
私はまだ異性とも、自分での経験もなかった。だけど17歳ともなれば周りには色々な変化は
あるし、知識としては既に頭に入っていた。
イチ君のような歳ならまだ若いし、男なのだ。そういう事位は当たり前にするんだろうと
頭ではわかってる。わかってるつもりだった。
だけど私と襖1枚隔てたここで?などと想像してしまうと、生々しくてどことなくぞっとする。
それと同時に胸の奥が押しつぶされそうに痛むのだ。
あのグラビアを見て何を想うのか、もしかしたらどっかでビデオでも観てるのかも……。
そう思うと、何だか苛ついてくる気持ちをどう呼んだらいいのかわからなくて、
なぜか悔しくてたまらない。
洗いたてのYシャツを畳もうと触れて、ふとその大きさに両手で目一杯広げたそれをしげしげ
と眺めた。
意識した事無かったけど……こんなおっきな体してたんだ。背は178は軽くあると思う。
痩せてはいないけど、現場に出る事の多い顔はよく焼けていて、がっちりした体格に合ってる。
何気に香る洗剤のと共に男の人の匂いが残っている。気が付くとシャツに顔を埋めていた。
「……なにやってんだろ?ばかみたい」
そう思いながら、ふとそれはどんなものなのだろうかという気持ちに駆られていた。
イケナイ。
なのに私の右手は、パジャマの上からそうっと誰にもまだ触れられた事の無い自身の体を探ろうとする。
どんな気持ちになるんだろう……?
下着を付けていない上からの刺激に、直ぐに先端の尖った様子が生地越にもわかった。
そっと触れると驚く程感覚が鋭くて、小さく声が漏れてしまった。
「あっ……」
何これ?へんな感じ。摘むと少し痛くて、軽く擦るように撫でると痺れるように疼く。
そんなにも強くない程度の暖房の部屋の中、首筋と脇辺りにじわっと汗が流れそうになった。
やだ、やめなきゃ、こんなコト。
そんな風に思うのに、ボタンをはだけて直にまさぐり始めた胸の感覚から逃れられない。
「んんっ……」
終わらさなきゃ。
何故か途中で止めることが出来ないと思った私は、嫌悪を抱きながらも胸の上に左手を
残しながら右手をパジャマの中に入れた。
下着の上からそうっと割れた部分を撫でると、初めてそこがじんわりと熱くなって疼いて
来る感覚にたまらず床の上に投げ出した脚がじたばたと動くのをやめられない。
「あ……」
熱い。何かが中で焼け付くように暴れて、もっともっと、と欲している気がして、それを
知るために躊躇無く直に下着に指を差し入れた。
裂けた深みにそって恐る恐る指を滑らせると、ぬめりを帯びたものが絡まる。そのなめらかさが
益々快感を産んでいくのをどうにも出来なくなっていた。
一心不乱に指をかき回しているうちに小さな芯に触れた。その途端、今までにない程の
快感が全身に駆け巡った。
「っあ……」
発するつもりがないのに自然に吐く息に声が混じる。だめ、やめなきゃ、なのに止まらない。
ふといつの間にか閉じていた瞳を開けると、投げ出したままのYシャツが目についた。
「…………イチ……」
27の男ならどう動くのだろう?
強く胸を掴む。
「こう?」
それとも。
「……はあぁっ、ん」
下着の中を自ら玩ぶ指の、もはや暴走とも呼べる動きを止めることなど出来ず、無意識に脚を
開いては気付いて閉じようと繰り返す。
「イチ……」
何故そうなってしまうのかわからない。口を開けばその名を呼んでしまう。何度も、何度も。
自分の息遣いに紛れて耳を掠める濡れた音が段々と速く流れていく。それは指の動きと同化
して痺れるような疼きを私に送り込んでくる。
「……あっ!た、たすけ、て……イチ……っ」
ぼやけた視界にその顔を思い浮かべながら、呼吸困難に陥ったような感覚のまま私は
眠ってしまった。
「……れ?」
布団の中で目が覚めた。いつの間に?確か夕べは……。
記憶の糸を必死で辿りながら、段々と羞恥心がその中を占めてゆく。
『私……何てこと』
しかし、と考える。自分で布団に入った覚えはなく、あれは夢だったのかと思えば、ふと
確かめた胸元はそのまま2つ程ボタンが外れたままだった。普段きっちりと上まで閉めないと
気が済まない癖があるので、やはりあのまま寝てしまったのか。
「お、起きたか?」
襖が開いてイチ君が顔を覗かせたのでびっくりした。
「12時頃帰ったら部屋の真ん中で大の字になって寝っ転がってたんだぞ?……風邪、ひいてない?」
おでこに手のひらが当たった瞬間、反射的に自分でそれを払いのけてしまった。
「あ、ごめん。大丈夫だから!」
「……へ?あ、なら、いいけどさ。早く起きないと遅刻すっぞ」
卵を焼いた匂いがする。
「……もっと早く起こしてくれたら良かったのに」
少し焦げた匂い。それを嗅ぎながら襖を閉めて制服を取った。
「あ、やっぱ焦げてるじゃん!もう無理しないで起こしてくれりゃいいのに。……イチ君は
モノ造る仕事してるくせに、料理のセンスはないんだからさ」
「心が痛っ!ちょっと傷ついたかも。でもそろそろ家事くらいちゃんと出来ないとな」
「何で?今更」
私を育てると言った手前、料理やら何やら頑張ってはくれたものの結果は散々だった。
だから結局の所お母さんがやって、その後は私が頑張ってる。まあ最初は散々だったけど。
「俺だっていつまでも香子に甘えてるわけにはいかないからな」
「え?」
どういう意味かと問おうとして固まった。
「そのYシャツ……」
「ああ、香子がやってるの思い出してやってみたんだけど、難しいなー。高いけどこれからは
形態安定のやつにすっかな」
アイロンまで自分でやったんだ。所々まだ皺が残ったままのシャツを眺めていて、テーブル
の隅にある桜色の封筒に目が留まった。
「何これ?」
手に取ってみた途端イチ君が慌てて引ったくろうとするが、私の方が中身を引き抜くのが
一瞬だけ速かった。
「……どこに行ってた?」
まだ昼間なのにカーテンを引いたままの部屋は薄暗かった。
「何時だと思ってる」
「……11時」
はぁ、と溜め息をついて低い声で背中を向けたままもう一度訊かれた。
「どこにいたんだ?香子」
「……どこだっていいじゃん。イチ君には関係ないでしょ?どうせ他人になるんだから」
瞬間振り向いた彼は私の頬を平手打ちした。
「っ…………!?」
焼け付くような熱さと痛みが後から徐々に襲ってくる。
「どれだけ……俺がどれだけ心配したと思ってるんだ!?連絡1つ寄越さないで、もしもの事が
あったらって俺がどんなに……」
痛さと腹立たしさで涙が溢れた。その瞳で睨みながら私の中で切れた何かが喉の奥から
次々と気持ちを爆発させてゆくのがわかりながらも、自分を抑える事が出来なかった。
だが、本棚の裏から引き出され大きな音で床に叩きつけられた物を見て、呆然とするイチ君の
顔は何故か妙に冷静に見ている自分もいる。
「イチ君だって男だもんね。わかってるよ、別にこんなのじゃ驚きも何ともしないってば」
彼はそれをばつが悪そうに拾うと、黙ってゴミ箱につっ込んだ。
「……ごめん」
「何で謝んの?」
苛々してきた。頬が痛いのと得体の知れない悔しさが体中を駆け巡る。
「色々。……いきなりぶって悪かったし、ごめんな」
ぶたれた事なんかなくてびっくりした。そのショックで黙っていた私の頬にそっと彼の手が
触れた。だが、
「……触らないでよ!!」
反射的にその手を思い切り払いのけた。
「香子」
「ママが死んでからも7年も経つもんね。本当我慢したよね?いい加減自由になりたいよね?
正式に結婚してたわけじゃないし、私がいなくても……むしろいない方が都合いいよね?
色々と」
ダイニングテーブルにあったままの封筒を掴んで中から二つ折の台紙をまた床に投げた。
和服姿の女の写真がひしゃげた状態で壁にぶつかった。
「それは……上の人が世話好きでたまたま今回持ってきただけだよ。俺だけじゃない」
「そんなの!……じゃあ何で今更家事なんかすんの?私が居なくなるのが当たり前みたい
じゃない。あんな……本とか。時々石鹸の匂いさせてくんのもどっか行ってんじゃないの?
最低っ」
「あれは、現場で汚れた時に会社のシャワールームで汗流して来るって言ってるだろ!?」
「どうだか?」
「……もういい。勝手にしたら?」
じっと私を睨みながらも、話にならないと言った様子で首を振りながら溜息をついている。
「俺は誰とも付き合う気もないし、結婚だってしない。……他の誰とも」
「は?何言ってんの。もう頑張んなくてもいいってば。ママだってきっと許してくれるよ?
私には反対する権利はないんだしどうでもいい」
「……本気で言ってんのか?」
冷たく静かながらもきつい声だった。普段の柔らかな喋りからは想像がつかない位堅い。
「本気で言ってんのかよ!?」
手を掴まれて乱暴に引っ張り寄せられた。その強さに負けるように、私の体は床に転がった。
「イチく…っ」
「結婚なんかしないって言ってるだろ!?」
倒れた私の上にのしかかり手首をがっちりと掴まれた。
「や……!」
「何で、何でわかってくれないんだよ……」
何か言わなきゃと開いた唇はすぐに彼のそれで塞がれた。初めてのキス。
思い描いていたのとは違って、強く激しく押し潰されるような感覚に空想の壁が打ち崩されてゆく。
彼の−―男の体の重さに押しつぶされて苦しい。息が出来ない。
乱暴なキスは、押し当てられただけの様な感覚から、徐々に緩く柔らかく軽く啄まれる
ものに変わっていった。それに何故か声が漏れる。
「んっ……」
何度も何度も繰り返し唇を重ねられる毎に自然と体の力が抜けていく。不思議。
「香子……」
ようやく離れた唇からその声が漏れた時、私は完全に力が抜けていた。何も抵抗できずに。
「香子」
私の顔の映るその瞳がまた再び近づき距離を無くした。もうされるがままになりつつキスの
雨を受けると、ふいに両手が楽になった。それと同時にブレザーのボタンが外され
一気にブラウスが捲り上げられた。
「!!……いやぁっ!?」
いきなりの事に停止しかけた思考が戻り、おかれている状況に精一杯の対応を試みるも、
剥き出しになったブラのカップが引き下ろされかけて、彼の舌が中に侵入しようとしていた。
「や、だめっ」
頭を押し退けようとして逆にまた腕を掴まれ胸に顔を埋められた。
「香子……香子」
頬や唇の触れる感覚に羞恥と恐怖が入り混じり、もう一度声を上げて抵抗しようとした。
だが、ふと私は開きかけた口を閉ざしてしまった。それと同時に僅かに残る力での抵抗も止めた。
その様子に腕を押さえる力が緩み、胸の重みが消えた。
「……どうして?」
抵抗を止めた事に戸惑ったのか顔を上げた彼と目が合って、恥ずかしくなって逸らした。
「いいよ。好きにしてくれて構わない」
これだけ薄い壁だ。声を出したら近所の誰か通報するかもしれない。そしたら世間の噂になる。
2人とも益々好奇の目に晒されて、きっと何を言ってもダメになる。隣のテレビや外の車の
音が私の耳に届いた時そう感じた。
私は……まだ彼と離れたくはなかった。
「ごめん」
重い体を引きずりながら動くように、ずるずると音を立てて私から離れ立ち上がった。
「ごめん。俺どうかしてる……」
「どこ行くの?」
ジャンパーを羽織る背中に急に不安を感じて声を掛けた。
「……ちょっと友達んとこに行ってくるから。今日は泊めて貰う、本当にごめん」
「……私昨日りっちゃんとこに居た。おじさんたち旅行で居なかったから電話も留守にして
貰って、携帯も切ってた。私こそ心配かけてごめん。酷い事も……」
「わかった。もういいから」
いつもの顔で少し弱々しく微笑む口元には、さっき胸に感じた無精髭が見えた。そういえば
Yシャツにネクタイのまま。一晩中私を待っていたのか。かくいう私も制服のままだった。
昨日の朝例の見合い写真を見てから飛び出すように学校へ出て行き、そのまま帰る気がしなく
なった私は幼なじみの家へ行った。
無断外泊も初めてだったけど、あんなに叱られたのも初めてだった。
……もっとも、なるべく波風の立たないように過ごしてきただけの事かもしれないけど。
困らせたいと思った事も一度だってなかった。
玄関が閉まり、足音がしなくなるのを聞いてから小さな引き出しをそっと開いた。
隅っこにひっそりとしまわれていた小箱を取り出すと中を開く。
決して高価とは言えないその中身は−―指輪だった。
ママに渡されるはずだった物。貧乏大学生には精一杯の贈り物だったんだろう。
中学生になった頃にふざけて指にはめてみて言った事がある。
『これ私が大人になったら貰っていい?』
たわいない子供の言葉だったのに、彼は真剣に言ったのだ。
『駄目だよ。それはママのために買ったものなんだから』
それは私の心を静かに、だけど確実に打ちのめした。
それが何であったのかはその時の私にはわからなくて、ただ深く傷ついたのを覚えている。
私達は義理とはいえ父親と娘になり損ねた上に、兄と妹になりきる事も出来ず。
「なんで死んじゃったの?ママ」
あなたさえ生きていてくれたなら。
ごく自然な筈の感情がこんなに自分を傷つけ苦しめる物だったのなら。
「私って悪い事してるの?……」
恋なんか知りたくなかった。
*** ***
俺は何という事をしでかしてしまったんだろう。
宝物のように守って来たつもりの香子に酷い事をしてしまう所だった。
……いや、もうやってしまっているのかもしれない。
いつ頃からか、肩の上で揺れる髪に気軽に触れる事が出来なくなった。スカートから伸びた
脚から意識的に目を逸らすようになり、顔を寄せて喋る事も自然にしなくなっていった。
そんな自分がいつか抑えられなくなる日が来てしまうのではないかといつも恐れていた。
欲望を爆発させてしまうのを防ぐために時折自己処理を施して体の欲求を抑えつけても、
気持ちの高ぶりは置いてけぼりになって益々体と心がバラバラになっていく気がした。
もしそれがバレたらどんなに軽蔑されるかと思っているうちに、それはとうとう見つかって
しまった。目の前に突きつけられた時にはまるで犯罪を暴かれたような気持ちになった。
想像はついていた筈だったのに、まるで汚い物を見るような香子の瞳が刺さるように痛くて
あんな物さっさと棄てておけば良かったと思い切り後悔した。
なじられたその瞬間抑えていたどす黒い欲望が否応なく噴き出して、気が付けば無抵抗に
躰を投げ出した香子の悲しそうな顔があった。
あのまま助けを呼び叫べばきっと、俺は悪意の塊として香子から引き離される事となって
世間に曝され二度と彼女と逢うことは無くなってしまったかもしれなかった。
そんなことは堪えられないと今の今まで思っていたが、いっそそうなってしまった方が
楽なのではないのだろうか?
昨夜帰宅した俺の目に映ったのは、畳みかけたYシャツを抱き締めて眠る香子の姿だった。
布団に運んだ時にはだけた胸元が見えたが、直そうかと手を出しかけて本心は違う事を
思っているのに気が付いて、触れてしまう前に布団を掛けて隠し離れた。
子供のままの寝顔に密かに見える女としての姿に、俺は……怖くなったのだ。
きょう子さん、あなたが生きていてくれたなら。
あの子を傷つけずに済んだんだろうか……?
*** ***
鍵が開く音がして、玄関に立った。
「お帰り」
「……ただいま」
あれからずっと、翌日の晩まで彼は連絡一つよこさず。私はいつ帰るのかと問うことさえ
出来ず部屋で待ち続けていた。
「……待ってたのか?」
ラップをかけたまま冷えて並んだ夕飯の皿を見て、申し訳なそうに目を伏せた。
「だって、いらないって聞いてなかったし。……もう済んじゃった?だったら別に」
「いや、まだ。食べるよ」
上着を脱いでハンガーに引っかけ席についたのを見て、温め直した食事を出した。
「……来年から出るつもりなの?家」
突然思ってもみなかった事を言い出されたので、ずっと何となく合わせ辛かった視線が絡んだ。
「は?」
「だって就職したら自活するつもりなんだろ?」
ぽつりとそう言うとゆっくり静かに箸を口に運び、私の方を見ないまま食事を続けた。
「……何でそういう事になるの?」
私は自分も食べ始めるつもりで持った箸をまた置いた。声が震える。
「違うのか?」
「そんな事言ってないじゃん!……私が邪魔?いない方がいい!?」
私自身驚く位の剣幕におののいたのか、彼は箸をくわえたまま目を見開いた。
「……誰もそんな事言ってないよ。ただ、もう俺に頼る気はないような事言ってたからさ」
「あれは、今までみたいに生活の負担をイチ君に全部かけなくて済むようにって意味で……」
役に立ちたかっただけなのに。
「私一度もここを出ようなんて思った事ないよ。だからこれからだって家事なんて私がやるから」
そんなふうに思われてたのか。だから急に出来ない料理なんかやろうとしたんだ。
「そっか……俺の早とちりか、ごめん」
ほっと肩の力を緩めた。だが
「でもいつかはそうなるんだよ」
その言葉にまた私の心が痛みをぶり返した。
「なんで?なんでそんな事言うのよ……」
たった今その気はない事は言った筈じゃないか。
「いつまでもこのままってわけにはいかないだろ?香子だってこれからなんだから」
「何でよ!今までこれでやってきたじゃない。これからだって……」
「無理だよ」
彼はきっぱりとそう言った。
「いつまでもこんな暮らし、不自然だと思うよ?俺は香子の親みたいなもんなんだから。
その代わり……お前が嫁に行くまでは……」
我慢のならない一言だった。
「しないよ。私……イチ君がするまでは」
「俺はしないって」
「だったら私だって好きにするよ。勝手に決めないでよ、そんな事!……やっぱり私がいない
方がいいんじゃない」
それに対して動きを止めた彼は静かに箸を置くと、唇を噛んで瞳を逸らす私の方を見て
信じられない言葉を吐いた。
「そうかもな。その方がいいかもしれないな、俺達は」
まさかそんな事を言われるなんて考えもつかなくて、冷水を浴びたようなショックで
動けなくなった。
「その方がいい。俺達一緒に居すぎたんだ」
「……」
「ごめんな。香子の事大事にするって約束、守れそうにない。ごめん」
涙腺が壊れた。
「……嘘つき」
「うん、ごめん」
「僕がいるって言ってくれたのに!ずっと一緒にいてくれるって……。なのに今になって
私を1人にするの?じゃあ何であんな事……」
しようとしたの?昨日のあなたは。
「ごめん。それしか言えない。ごめんなさい」
テーブルに付くくらい頭を下げ続ける彼をこれ以上見たくはなかった。
「謝らないでよ……謝るような事しないでよ、バカ!!」
いたたまれなくなって席を立つとそのまま部屋に引きこもった。その間、キッチンからは
身動き一つする気配はなく、私は唯流れ続ける涙を手の甲で拭い続けた。
その間、昨日出て行ったままの皺の残るシャツと剃られないままの無精髭がずっと焼き付いて
益々私はたまらなくなるのだった。
翌日の朝からは、食事の用意だけをすませて早めに家を出るようになった。
夜は同じように夕飯をテーブルに並べて置いて、後はずっと部屋に引っ込んで過ごした。
もっとも、連日遅く帰ってくるようになった彼とはどのみち顔を合わさなくなったんだけど……。
もう何日会話していないのだろう。
朝になると必ず空にされて洗い桶に浸けてある食器を眺めては、取り留めのない言葉の
やり取りが今となっては遠い日々の事のように思える。
そんな事を考えながら布団に潜って眠れない夜を過ごしていた。時計を見ると11時半。
明日も早いし寝なくちゃ、と灯りを落とした所で玄関の開く音がした。
「ただいま……」
誰も返事のない電気の消えた部屋に小さく呟く声に、胸が締め付けられた。
『おかえり』
その一言がかけてあげられない自分が情けない。
彼の気配に神経が全て向かってしまう。それを悟られたくなくてじっと身を固く耐えていると、
ゆっくりと襖が開いた。
向こうに背中を向けた状態だったので、幸いにも目を閉じてさえいれば寝たふりをする
事ができた。
しゃがんで覗き込んで居るのだろうか?ズボンの衣擦れの音と側での気配がする。
「香子……」
そうっと髪を撫でられて小さな声で囁かれる。
バレないようにひたすら我慢してじっとしていると、髪に絡んだ指がゆっくりと離れた。
「ごめんな……」
そう言って静かに隣室へ消えた彼の後には、微かにお酒の匂いがした。
翌朝洗濯しようとしたYシャツからはやはり友達のだろうか、煙草の匂いがした。毎朝私が
出して置いたシャツを着て出勤する。昨日はこれだった。
文句も何も言わず食べて着て……穏やかながらもそれは何だか冷たく寂しいやりとりに思えて、
ふいに哀しくなって思わずシャツを抱き締めた。
「香子」
まさか起きてくるとは思わなくて慌てて振り向いた。
「俺今日は早く帰るから。……話したい事もあるし」
いきなり脆い足場に立たされたような不安な感覚に陥って、シャツを掴んだ手に力がこもった。
「続」
うお…
一気に引き込まれてしまった。
ここで引きなんて鬼だーw いやいや、GJでした!
続き楽しみに待ってまする。
乙です!
もどかしさがいいですね、きゅうっとなります。
続き早く読みたいです〜
既に泣いた…
続き楽しみにしてます!
GJ!!
続きが楽しみすぎる!
全力で待ってます!
続き投下します
今回のあともう1回で終わります
*** ***
好きな女と堂々と一緒に暮らす、というのはどんな気持ちなんだろう。俺は経験出来ない
うちにその夢が砕けてしまった。
それでも大切なものを手元に置いておく事が出来た。おかげで残された幸せを噛みしめて
生きて来れたのだというのに、それさえも失う覚悟を迫られている。
「それはお前の勝手な強迫観念じゃねえの?」
この部屋の主である早川は大学からの友人だ。
「俺は……元々そんなつもりで香子を育ててきたわけじゃない」
「んなの俺だって解ってるさ。でも人の気持ちなんか変わるもんだろ?」
「…………」
「周りの目なんか気にすんなよ。誰だよハタチで結婚なんて散々俺ら驚かしてくれたやつ。
なんかお前らしくねえよ」
「若かったんだよ。あの時はさ」
「お前あのコ引き取ったの、後悔したりしてるわけじゃねえんだろ?」
「まさか」
香子と暮らしてきて一度だってそんな事考えた日はない。ただ、こんな気持ちの誤算が
起こるなんて思わなかっただけだ。
「そんなに大事ならちゃんと一緒にいてやれ」
「それが無理なんだよ。ただでさえ好奇な目で……って何、お前タバコやめんの?」
早川は洗った灰皿をゴミ箱へ突っ込みながら頷く。
「ん。いい機会だからな。……出来たらしいんだ」
「へ?」
何となくキッチンに洗って伏せてあるカップや、2つ並んだ枕に目がいく。
「もう7年越になるしな。なかなか半同棲から進ましてくんなかったから、やっとって感じかな」
「いよいよか?」
家庭にトラウマを持つという彼女はなかなか結婚に踏み切れなかったらしい。
「生きてる限りは忘れることも必要なんだよ。じゃなきゃ何時までも縛られてばかりだしな。
俺がそれになれるかどうかは解らんが、後で悔やむ前に手に入れとく。……だから連れてくよ」
大事な物を守ると決めた奴の顔は清々しく羨ましかった。
あの頃の自分もこんなふうだったんだろうか。
今の俺は……。
想えば想うほど、傷つけてしまう。そんな気がするのは何故なんだろう。
――そんな気持ちが俺の背中を押した。
*** ***
「美味しい?」
「うん」
数日振りの一緒の夕飯は和やかな時間だった。
「寒いし今日はお鍋にしといて正解だったよね。あ、ビール切れた?ほらそこ煮えてる」
冷蔵庫から新しいのを出して、休む間もなく野菜を取り皿に入れてやる。
「そんな食べらんないよ」
「だめです!」
端から見たら普通の家庭の団欒に見えるのだろう。自分でも意識していた。だけど無邪気な
高校生のはしゃぐ様は、単に沈黙が怖いが為の必死の振る舞いだったし、ちびちびと
アルコールを口にするのも、多分手持ち無沙汰をごまかすにすぎない。元々そんなに強い方
ではないのだし。
「香子」
「何?……あ、ご飯忘れてた」
「いいよ」
「あっそう。じゃ、後でうどん入れよっか」
「いいから」
何かと理由を付けて席を立とうとする私に、
「何もいらないから。聞いて、お願いだからさ」
そう言うと箸を置いた。
少し上目遣いに見つめられ、何だか自分が意地悪をしてしまったような気になって、妙に
逆らえない雰囲気を感じて仕方なく腰掛けた。
「いきなりだけど。俺転勤する」
「……本当いきなりだね」
「うん。こういう話は早い方がいいから」
あんまりサクッと切り出されたから、逆に何というか、「へえー」って感じで冷静な気がした。
「早川が結婚を機に、地元に帰って向こうの支社で働くらしい。そんで俺も誘われた。
……まあ転勤というより転職だな。設計士が欲しいって引き抜かれた」
「そう」
大学の友達で私も知ってる。確か年下の彼女さんがいて、ちょっと無愛想だけどいい人だ。
「いつ行くの?」
「春休み中かな。4月からはあっちだと思う」
「そっか。……私なら大丈夫だから」
イチ君にならどこにでもついて行きたいのに。
「うん」
だからお願い。
「この際思い切ってそうしてみようと思ってる」
言わないで。
「香子は大事なひとだから」
聞きたくない。
「そろそろ離れよう――俺達」
ママ。
どうして私が好きな人は、みんな私を置いていってしまうの?
今までと変わらない日々が続いた。
朝は一緒に必ず過ごし、私がいつも通りの時間に家を出た後に、彼は私がアイロンがけ
したYシャツを着て出勤する。
夜は一緒に夕飯。時々、残業。
だけど着実に準備は進み、部屋は徐々にダンボールで埋め尽くされ、粗大ゴミの日も
待ち遠しくなってきた。
別れへのカウントダウン。
カレンダーの×印が増えてゆく度に、残された時間は消えてゆく。
「香子。何か俺にして欲しい事はある?」
いつものように朝食を取りながらの慌ただしい時間。突然の質問にしばし悩む。
「欲しいものでもいいけど」
「え……うん」
欲しいもの、して欲しい事。
「いきなり言われてもわかんないよ」
「そうか。んじゃ考えておいて」
その日の私は、頭の中がそれで埋め尽くされ、先生に3度は怒られた。
私のしたい事。
欲しいもの。
それは絶対手に入らないであろう、叶わないであろう事。
「ただいま」
夕飯が並ぶ頃タイミング良く帰ってくる。
「おかえりー」
貴重な時間。
スーツを脱いで掛ける背中を見ながら想う。
行かないで。
私を1人にしないで。
だから、あなたと一緒に……。
「今日は焼き魚かー」
「煮付けにしたかったんだけど時間無くて」
「なんで?充分じゃん」
でもあなたを困らせる事は出来ない。
「イチ君、お願い決まったよ」
「あ……うん、何?」
「……どっか行きたい。2人だけで。その日だけは」
「わかった」
私をまっすぐ見て小さく微笑んだ。
「どっか行こう。そん時は……」
忘れておこう、色んなことを。
――あなたの時間を、私にちょうだい。
私達はその週末の朝に車に乗って出掛けた。買い物などの雑用以外で2人でどこかへ行くのは
本当に久し振りだった。
お母さんが死んでからは特に、年齢的なものもあったのだろうか。それぞれ友達といる事が
多くなったりしたから。
新しく出来た観覧車目当てに水族館に行った。着くまでは何となくどう振る舞えば良いのか
終始どちらも無言に近かったけれど、巨大な水槽の魚の群れや周りの和やかな雰囲気にいつしか
私達も溶け込んでいた。
いつ以来だろうか?2人で外食するのも。新鮮な空気に自ずと気分も軽くなり、その後は
ゲームをしたり、初めてプリクラを撮ってはしゃいだりした。
散々遊んでやっとメインの観覧車に乗れたのは、もう陽も傾きかけた頃だった。冬の日差しは
弱く短い。
「今日は疲れた?」
「ちょっとな。でも楽しかったよ」
「……イチ君ごめんね。我が儘言って」
「そんな事思うなよ。俺だって香子と一緒にいたかったさ」
「本当に?」
そういうと頷いた。
「私そっちに座ってもいい?」
「いいよ。おいで」
何故か無性に近くに寄りたくなって、体をずらして開けて貰った場所へ腰を下ろした。
「ちょっと狭いー」
上着のせいもあってか元々きっちりくっついた体を、彼は肩に手を廻して更に抱き寄せた。
「今日は……」
「うん」
何も聞かない。黙って肩に頭を乗せるようにしてもたれかかっていた。
ふたりきり。
この空間だけに許された世界を出来るだけ味わおうと、ただあなたの事のみを想う。
「頂上に来たな」
「うん……」
外を見ると、普段は決して知ることの出来ない景色が広がっていた。小さな小さな建物や
取り囲む木々に、人間なんて何てちっぽけな存在なんだろうかと思う。
その中でどうして私は今ここにいるのだろう。
どうしてこんなに哀しい気持ちにならないといけないの?
俯き気味だった顔をふと上げると、私を見つめている彼と見つめ合う形になった。
ゆっくり近付いてくる顔を避けようと思えば出来たのに、そうはしなかった。この前の
ように早急ではなく、優しく触れる唇を何も考えず受け止める。
軽く触れるだけのキスは初めは短く、段々と長く時間をかけて重なるようになり、何度も
何度も私達は距離を無くしては離れるのを繰り返した。
やがて触れるだけのものから舌で唇をなぞられるようになり、そのうち口内は彼のそれで
いっぱいになる。
肩にあった手は頭の後ろに廻り、私の髪をくしゃくしゃにしながらもう片方の手は
腰にあって、しっかり捕まえられている状態にありながら、私は私で彼の背中に腕を廻して
しがみついた。
やがてやって来た地上への帰還に
「もう一度乗る?」
という私の提案に反対の声はあがらなかった。
次の回も、景色はほとんど見ることは無かったけど……。
「暗くなったな」
夕飯を済ませて車に乗りながら、寒さに身を小さくする。
「後は……なんかしたい事ない?」
エンジンを掛けながら前を向いてハンドルを掴んでいる手に自分の手を重ねた。
「…………イチ君のしたい事でいいよ」
「俺は……」
「いいよ私。……どっか連れてって」
いつもの日常とは離れた所。ただの私達になれる場所。
「いいのか?」
「うん」
手を離してシートベルトを止め、同時に覚悟も決めた。
「香子の事壊すかもしれない」
「大丈夫だよ」
私が一番怖いのはそんなものじゃないから。
まさかこの人とこんな場所に来るなんて誰が想像しただろうか。
「いきなりこんなトコでごめん。俺そういうのわかんなくて」
「それがいいの。だってめったにこんなチャンスないよー」
ラブホテルの一室。これほど今までの私達に縁遠かったものがあるだろうか。
入り口で固まっている彼とは対照的に、私の方は気まずい空気を払拭しようと必要以上に
はしゃぎまくっていた。
「あーお風呂おっきいー!」
家の3倍はあろうかと言う浴槽にお湯を張っていると、ふとある事を思う。
「そう言えば……」
数分後、洗った髪を束ねて湯船に浸かる。
「いいよ、もう」
暫くして開いたドアからおずおずといった感じで入ってくる様子が、背中から伝わってくる。
一緒に暮らし始めた時私はもう10歳で、一度もお父さんと――男の人とお風呂に入った
経験がない。
何となく間が持たなくて、気まずい空気になるのを避けようと冗談めかして言ってみた。
『一緒に入ってみる?』
つとめて明るく。
本当に魔が差した。
まさか頷くとは思わなかったし。無邪気な戯言と一蹴されると踏んでいた。なのに私の
背後で今髪なぞ洗っている様子……。
シャワーの音が聞こえ、それを耳にしながら膝を抱えて湯船に丸まる。
ざはっと派手な水音がしてお湯が少し溢れると同時に、私の背中にぴたっと何かがくっつく
感触がした。
軽く振り向くと背中合わせに膝を曲げて、私と同じポーズでお湯に浸かっている。
「今日は楽しかったよ。久しぶりだなー、あんなに遊んだの」
「……仕事忙しそうだもんね。ここ数年私のために」
「違うってそれは。俺は社会じゃまだまだ若僧だからそういうのは関係ないの。
……香子のせいじゃない。それよりもっと早くこういう事ぐらいしてやれば良かったな」
「今からだって出来るよ」
彼は答えなかった。答えられないと言った方がいいかもしれない。一瞬だけ、私に体重を
掛けてもたれ、また背を離した。
ぶつかった背中の大きさをもう少しだけ味わいたくなって、体を捻ると首に腕を廻して
しがみつき、もたれた。
「香子?」
「ちょっとだけ、こうしていい?」
廻した腕に乗せられた手のひらの温もりと共に彼が小さく頷いたのがわかって、ちょっとだけ
くっつく力を強めると、私の胸がいびつに形を変えて潰れる。
――7年前のあの日。
私をママの元まで背負って運んでくれた背中に久し振りに触れる。今でも充分に広いこの
場所は、昔と比べると小さくなって、そして少し遠くなってしまったような気がした。
私が大人になってしまったからなのか。
……こんなにそばにいるのに……。
変わらないものなんて有りはしないのだ、この世界には。
いくつになっても忘れないものがあるように、それは時には残酷な現実となって私達を苦しめる。
そうっとしておいて欲しいのに、生きている以上それは許されない事もある。
何が正しくて何が間違いなのかは私にもわからない。あるのは芽生えた正直な気持ちだけ。
「もっかい還りたいよ……あの頃に。そしたらイチ君の事なんか、今度は好きになんかならない」
「言うなよ。そんな哀しいこと」
「じゃあ何で……私達そんなに悪いことしてるの?」
「違うよ。俺が弱いだけなんだ、多分」
「……」
私の顔が濡れているのは湯気のせいなのか、涙のせいなのかはもはやわからない。
ただ、哀しみが止まらなかった。
「先に出る」
立ち上がる気配がしたから体を離して、また背を向けた。裸を見るのはまだ恥ずかしかった。
「ゆっくりでいいよ。……待ってるから」
「うん」
でもそれ程待ち時間は必要なかった。出て行って落ち着いた頃を見計らって浴槽から
立ち上がった。
髪を拭きながら部屋へ入ると、ソファーに腰掛けてビールを飲んでいた。
「珍しい」
「……こうでもしないと勢いがつかない」
両手で缶を握り締めたまま私を見ると、
「髪、拭いてやろうか?」
と言うので頷いたらあとの残りを無理して飲み干したらしく、缶をゴミ箱に捨てながらむせた。
「イチ君焦りすぎ……」
「バカ」
照れ臭いのか酔ったのか(弱いくせに)少し赤らんだ頬をして
「おいで」
と手招きされたので、彼の座っている前の床にぺたんと腰を下ろした。
わしわしとタオルで頭を包まれるように拭かれながら、幸せな時間に身を委ねた。
「ありがと」
タオルを外そうとした手を掴まれて、そのまま引っ張られるように立ち上がった。
「見せて」
「へ?」
いきなり何を言うのかと面食らって、座ったままの状態から私を見上げている彼を凝視した。
「な、何を……」
「酔った勢い」
元来気の弱い自分に言い訳するように呟くと、着ていたバスローブの紐をするりと解かれた。
「!」
慌てて前を押さえようとして手首を捕らえられたのでそれは出来ず、合わせの部分がだらんと
中途半端に広がって、体の中心部のみが晒される事となってしまった。
胸の部分は乳首なんかはうまく隠れているものの、おへそやその下――肝心の場所は
ヘアーが見え隠れしている状態になっている。
「却って恥ずかしくない?」
「……は、恥ずかしい」
私は目を合わせまいとするのに、今度は両手で顔を挟み込むようにして見つめられた。
「だから、脱がしていい?」
「……うん」
その手が下がり、ゆっくりと肩を露わにしていく。
肘まで脱がされかけた状態で抱き寄せられ、晒された胸に顔を埋められた。
暫くの間そうされたままじっと立っていたが、ふっと顔を離してから今度はまじまじと
上から下まで何度も視線を往復されて、その羞恥に耐えられなくなってきた。
「あんまり見ないで……っ」
胸だってそんなにある方じゃないし、お腹もどうもぽっこりしてる気がする。いわゆる
幼児体型?というか。
ただでさえ初めて人に見せるのに……こうも明るい所でじろじろ見られるなんて思いもしなかった。
「綺麗だよ。香子は」
「んな事ないもん。エロ本のおねーさんとかもっと凄……痛っ!?」
胸に唇がついた、と思うときつく吸い付かれ、かと思えば軽く噛まれた。離した跡が少し朱い……。
「ばか。お前の方がいいに決まってる」
両腕からバスローブを抜かれ、足下に落ちたと同時に私の躰は彼の腕の中にあった。
「柔らかくて気持ちいい」
言われながら胸にキスされて、言葉を失った。
「……抱っこしようか?」
ただ頷くしか出来なくて、言われるがままに膝の上に乗っかった。
横向に座るとお姫様抱っこのような体勢になり、よくよく考えてみるとバスローブ
を羽織った体の上に裸の自分がくっ付いているのが凄く不自然で、恥ずかしくなって
彼の首にしがみついて顔を埋めた。
「どうした?顔上げなよ」
「やだ」
仕方ないな、と言ってぎゅっと抱き締めてくると、その手で背中を撫で回された。
「ひゃっ……」
首筋に這う舌の感触と、背筋にそって滑り出した指にぞわぞわっとしたものが走る。
思わずぴったりくっ付いていた胸を離すと、背中を這っていた左手がそっちに回った。
膨らみを掴むと同時に唇は塞がれ、忍び込まれた舌に口内をオトされ、
しっかり腰に回した右手に逃げ場を塞がれてどうにもならず、ただ仰け反りながら
膝から落ちないように必死で掴まりその刺激に耐える。
「はあっ……あっ」
ふと離れた唇から息をつくと同時に漏れた声に
「もっと出して」
と囁かれ、首を振ると指で胸の先端を摘まれた。
「ああっ!……やあぁ」
「俺しかいないんだぞ?だから……」
躰をずらすと彼は私の上に覆い被さるようになり、ソファーに押し倒された。
「ここなら大丈夫だから」
両手首を掴まれキスをされる。
「いっぱい声、聞きたい」
耳元で囁きながら手首から離された手は肩をなぞり、また胸元へと下りてゆく。私の肌に触れる
彼の羽織ったままのバスローブが、動く度に擦れて変な感じがした。
首筋から徐々に肩、胸へと下りていき唇と舌が手の動きを伴ってまた堅くなっていく
胸の先を弄り始めると、そんな、と思う気持ちとは裏腹に胸が反り出し、自然と続きを求めて
しまう。
仰向けになったせいでぺたんこに近くなった胸を寄せて出来る谷間に口づけながら、彼は
私を見てニヤリとした。
「やだ!あんまりみ、みちゃダメ」
「なんで?可愛いのに」
再び顔を近付けてきて軽くキスする。
「だって……胸小さい方だし」
「俺はそんなの気にしてないけど」
返答に詰まって黙っていると、ガバッと脚を開かされ間に体をねじ込んできた。
「ちょっ……えっ!?」
「そういう事言えなくしてやる」
両手首を再び掴まれ頭の上に置かれた。それを驚く事に左手だけで押さえられると、右手は
何の躊躇いもなく曲げさせられた両膝の間にあてられた。
「嘘っ、なに?……いやっ」
「本当に嫌?」
じっと私の目を覗きながらゆっくりと指がヘアーをかき分けてゆく。
「!」
すっとすべった指がヌルヌルと何かを絡ませて動いていく。それと同時にむずがゆいような
痺れるような説明のし難い不思議な熱さが全神経を集中させて襲ってくる。
「んーっ、や、あっ」
「クレーム終わり。……他は、好きなだけ出しな」
「あ……ば、ばか……っ、あんっ!」
「もっとヤらしくなれ」
静かにゆっくりと中に何かが入り込んでくる。
「痛い?」
ううん、と首を振ると
「辛かったら言うんだぞ」
と言い、さっきよりきつく締まる感じがした。
「2本入ったよ……俺の指、香子の中に」
「う、うん」
「大丈夫?」
「……多分……うぁっ!?」
ゆっくりと出し入れされる動きにつられて呻いてしまった。
「は……」
「力抜いて。すぐ慣れると思う」
その言葉通り、はあっと息を吐いて脱力するように努めると、少しずつ楽になってゆく気がした。
それと同時に、抜かれる指の動きに多少の残念さを感じてさえしまって、こっそり赤面した。
「あっちに行こう。狭いし」
目線の先にあるダブルベッド。頷くと先に体を起こした彼に抱き抱えられた。
「ひゃあ!」
「よいしょっと」
本当のお姫様抱っこ。
「お、重いよ?」
「大丈夫だって、香子の1人くら……い」
絶対無理してるよね?
だけどせっかくだから知らんぷりしておいた。
ママが好きだった人。
ママを好きになった人。
でも今は、私だけを見ていて……。
ベッドに寝かされると、向こうも息をついてごろんと横になった。
「ちょっと休憩……」
重かったのかな?……ダイエットしときゃ良かった。
「言っとくけど最近運動不足だったからだぞ。さっきみたいな事言ったら怒るから」
胸に残った朱い噛み痕を撫でながら睨まれた。
「何も言ってないし」
「ならいいけどな」
私の上に再び跨ると、自分も着ていたバスローブを脱いだ。手も脚も長くてがっちりしている。
「触っていい?」
「ん」
そうっと寄せた手を掴むと胸板にあてられた。堅くて、若干の胸毛があった。
初めて見るオトコのヒトの躰にしばし釘付けとなったが、それよりも何気に動かした視線が
捉えたそれに目を奪われたまま動けなくなってしまった。
それに気付くと胸にあった手を引き剥がし、そこへそっとあてがった。
「わかる?勃ってんの」
「う、うん」
これがそうなんだ。話には聞くけど、本当に堅くなるんだ。……って普段を知らないけど。
「香子がそうさせるんだぞ」
それにあてがった私の手を握る。
「だからお前が気にするような事無いんだよ。……わかるだろ?」
「……本当?」
「ずっと、ずっとな、我慢してきたんだ。触れる事、抱き締める事、こうする事も」
軽く唇をなぞるとそっと触れ合って、また舌を絡ませ合いながらまたずらした唇で乳首を弄び、
下半身へと手を伸ばす。
「ひぁっ……」
この間自分で触れて達した突起を摘まれた途端に、声が勝手に漏れた。
「いいの?」
「あ……いやぁ」
「だめ?やめる?」
自分でした時よりも数倍強い刺激に朦朧としながら首をゆっくり振ると、
「やっぱり可愛い」
と更に潤いを塗りつけるようにして撫で回され、それに背中を思い切り反らしながら、
悲鳴をあげて応えた。
「目、開けて」
「だめ」
さっきから色んな事をされてるけど、実のところ私はほとんどまともに顔を向けてはいなかった。
「なんで」
不服なのか唇を啄みながら聞いてくる彼に、指をさして示した。
「えっ!?」
さすがに驚いたか。振り向いた先にあったのは天井――鏡張りの――だった。
「なる程……」
まともに見ると物凄い絵。重なった躰が全て仰向けの私からは見えてしまう。
「恥ずかしいの?」
頷いて目を逸らした。
「けどここまできたら我慢出来ない……」
濡れた指を外し、太ももの付け根に置いたと思うと、躰をずらしていく。
「……!い、やぁ……っ!?」
突起を弄ぶものが指から舌に変わった。吸い付く刺激に体中の血液が全ての流れを変えた
気がした。――熱い。
「ああっ……」
わけがわからず溢れてくる涙に滲んだ視界には、ぼんやりと開かれた私の躰とそれを貪る
彼の姿がこれでもかと写し出され、いかに此処が特別な場所であるのかが思い知らされる。
「あっ……ああ、い、いくっ……だ……め」
一度味わった感覚は染み着いていてまた蘇る。舌の動きが強くなり、彼の髪に手を触れた
瞬間。
「……あ……ぁっ」
背中に突き抜けるような感覚が走り、呼吸が出来なくなった……。
ふっと頬に触れる手の温もりに目が冴えた。
「あ……私?」
「一瞬だけな。意識あるか?なんか凄くいやらしかった」
「えっ!?す、すけべっ」
何とでも言って、と私の膝を曲げさせ
「入れるけど」
と準備体制に入った。
「……あ、うん」
いよいよか、と覚悟を決めて深呼吸した。意外と怖くはなかった。
入り口にぐっと堅いモノが当たって、来る、と思った瞬間――離れた。
「イチ君?」
「うっかりしてた」
情けなさそうに頭を掻いて慌てて部屋の隅にあった自販機?みたいな物で何かを買った。
「危なかった。ごめん」
段取り悪いなーとか何とか呟きながら箱から何か出してる。
「あっ……間違えた」
「…………」
その辺に放り出してある残りの小袋を手にしてみて、裏表があるのを知った。……これか。
新しいのでやり直しをしてるのを待っていて、ふとさっきのままでいたのを思い出して
慌てて脚を閉じ、鏡に写る自分が恥ずかしくなって、脱ぎ捨ててあった彼のバスローブで隠した。
でもすぐにそれは引き剥がされ、また脚は開かれる。
指の探る感覚が消えると、それより明らかに太いと思われるモノがぐぐっと押し込まれ、
あまりの痛さに悲鳴をあげかけて仰け反り耐えた。
「う……あっ……痛っ……んっ!」
はあっとさっきを思い出してゆっくり息を吐くが、無意識に力が入る。指なんか比べものに
ならない。
「すぐ、楽になるから。凄い締まる……」
私の手を取ると、
「掴まれ」
と自分の背に回し、体重を掛けてくる。躰が沈む度に突き抜ける痛みに、背中の皮膚を掴む
手にどうしても力が入る。そしてそのたびに彼の顔が歪むのだ。
「ごめん……でも、あっ」
「俺は大丈夫だから。気にするな」
額に汗を滲ませ軽く微笑むと背を丸めてキスをしようとする。
「んっ……」
半ば無理やり近づけた口づけを離すと、胸を合わせて腰をぶつけた。
「ああっ!!」
始まった痛みの波に呑まれ、思いっ切り爪を立てた。
「イチ君……」
「ん」
なんとなく呼んでみたくなった。行為の最中だというのにその存在を確かめたくなって。
「香子……だ」
呼吸が速く、荒く苦しくなる。打ち付けられて躰が上下し、そのせいで段々揺れが激しく
なっていく。
「……チ、く、イチ君……」
意識も視界も滅茶苦茶に壊れていきそうになって、不安になってそこに有るはずの躰を
必死で腕をばたつかせ捜すと、彼の手が私の手を掴み取り、シーツに押し当て指を絡めた。
「いるよ、ここに」
「あ……あ……」
痛みはあるものの、それ以上の何かが私の中を満たしてゆく。
「香子が好きだよ。大好きだ」
「う……」
ぎゅうと絡む指に力が痛い位に伝わってくる。
こみ上げてくる切なさに涙が溢れて絞り出すように呟いた。
「行かないでよぉ……イチ君……」
「か……」
滲む視界に映ったのは力尽きた彼の背中と、その長い脚に絡みつく私の脚の重なり合った
影だった。
「あんまし血出なかったなあ」
まだ少し残る痛みに、さっきの事が現実なのだと記憶する。
「もう大丈夫か?」
「うん」
下着を着けてバスローブを羽織ろうとすると、腕を引っ張られてベッドに寝かされた。
「このままでいて」
「やだ。ちょっと恥ずかしいってば」
「このままがいい」
自分もパンツ一枚で私を抱き寄せ、ぎゅうっと抱き締められる。
「しばらく触らせといて」
「は?……もう、何よぉ……エロ親父!」
片手で胸を包みながら撫で回す。
「そうだよ。俺は男だからこういう事したいって思うよ。何度だって……」
「それって私じゃなくても?エッチな本見てたじゃん」
「あれはいわば道具なの!だからって相手は誰でもってわけじゃないんだ。少なくとも俺はな。
……あんなん見てたって、結局は最後に考えるのはお前の事なんだ。香子が欲しかったんだ。
俺はそういう男なんだよ。……軽蔑したか?」
「……」
首を振ると、ごめんなってまた抱き締められた。
だって、望んでいたのは私も同じだったから。
「香子が好きだ。離したくなんかない」
「私だって離れたくないよ」
強く、強く抱き締め合う。互いに息が出来なくなるくらい。
「でも、連れて行ってはくれないんだね。置いてくんだね、私を」
「……」
「どうして?何で離れなくちゃいけないの」
「香子はまだ色んな事を知らなすぎるから。だからね、それをいい事に俺に縛り付けとく
わけにはいかないんだ。それに……多分世間からはきっと受け入れて貰えないと思う。
そうしたら不幸になるのは避けられないんだ。俺は……」
「……ママにはプロポーズしたんでしょ?反対されても貫いたんでしよ!?なのにどうして」
「……俺さ、何回かきょう子さんには振られてるんだよね」
驚いた。初めて聞いたよ、そんな話。
「若かったんだよ、あの頃は怖いものなんか何も無かった。でも今ならあの人の気持ちもわかるよ」
私を覗き込む瞳は潤んで切なく哀しい。
「まだろくに世間を知らないあの頃の俺は今の香子だ。自分では違うと思ってたけど、
あの頃のきょう子さんの立場にいる俺からしたら、孵化したてのひよこみたいなもんだよ。
知らないから、それが全てに思える。そんな想いが危なっかしくて怖いんだ。
大人になるともっと現実を知って、そのために苦しんだり後悔したりするんじゃないかって」
「イチ君は後悔してるの?ママの事」
私の事も。
「……いや。ただ」
「ただ?」
「変わってしまうものなんだなって。時間が経つと、人の心も。……俺、写真が残って
なかったらきょう子さんの顔が思い出せない。どんな表情でどんな声で笑ってたかわからない。
まだ香子はあと1年高校もあるし、そこから世界が変わればもしかしたら……」
今好きだから。それだけでは駄目だというのか?
確かに今の私はまだまだひよこなのだろう。だけどひよこはひよこなりに精一杯自分の世界を
広げようと羽ばたくその日を待っている。
「待ってはくれないの?」
「いや……待てるよ。だけど」
怖いんだと彼は言う。
「俺の1年と香子の1年は違う。それだけあれば忘れるには充分かもしれないだろ?」
「私は……」
「怖いんだ。要するにこれ以上踏み出すのが、その勇気が、自信がないんだ。情けないけど」
「ほんと情けないよ」
信じてくれないの?どうしてあの時のように言ってくれないの?
『僕がいるから』
大丈夫だよって笑って欲しい。
「すっごいいい女になって後悔しても知らないよ……ばか」
「…………」
泣きながら私から口づけて求めた。時間が許す限り彼を感じていたいと思った。
私達は悪い事してるわけじゃないのに。
誰も悪くないのに、なぜ胸を張って好きだと言えないのか。
「ごめんな香子。……愛してる」
「……うん」
それからの私達は通常の暮らしに戻り、あっさりと別れの時はやって来た。
りっちゃんちに居候する私の事を頼んで、彼は新しい地へと向かった。
消えてゆく車を見送りながら、それでも私は夢を見ることをやめようとは思わずにいた。
胸の噛み痕は薄れてしまったけど……。
「続」
イチくん!!
完結するまでコメ我慢しようと思ったけど言わせて
「あなたが投下した作品、全部好きだ〜!!」
物語に引き込まれて一気に読んでしまった
香子の強がりと脆さ、恋心と家族愛の間で揺れ動く心の描写がいい。
イチくんのヘタレ具合もむしろ愛おしく感じてしまう。
完結編、楽しみにしてます
最後投下します
*** ***
香子を幼なじみの家に預けて新しい土地で生活を始めた。
1人暮らしは初めてで、最初は職場に馴染むの優先に頑張ったせいもあって、なかなかうまく
生活のサイクルが組めなくて困った。
香子からはしょっちゅう心配してメールが送られてくる。
『おはよう。朝はしっかり食べるように!じゃ、いってらっしゃい』
相変わらず卵はよく焦がすし、うっかりパンにカビが生えた。
『今頃お昼休みかなとメールしました。忙しくても野菜はちゃんと食べて』
よく美味しいと評判の店に連れて行って貰うけど、何だか味がしないんだ。
『今日はりっちゃんと帰りに久々に駅ビルに寄り道したら、バーゲンだから激混みで疲れたよ!
って遊んでばっかりみたいで申し訳ない。ちゃんと勉強も頑張ってるよ。イチ君も頑張って
仕送りしてくれてるから、無駄遣いはしませーん。欲しいものなんかないから……お休み』
欲のない奴。……俺だって本当に欲しい物は他にあるけど。
かと思えば
『体育で思いっ切り顔面レシーブしちゃったよ(ノ△T)鼻血出た』
なんて勤務中に吹き出しそうになって困ったものや
『今日こっちはいい天気だけどそっちはどう?休みだからってゴロゴロしてないで掃除!
洗濯も、ちゃんとYシャツアイロンかけてる?』
お見通しに慌ててたまった家事を始めたり
『今日ナンパされました』
そんな資格はないと思いつつちょっとムカついてみたり
『りっちゃんデートでおばさん達買い物。1人でお留守番暇〜(`ε´)』
無性に会いに行きたくなったり。
『今何してる?』
そのたびに我慢が切れて電話を掛ける。掛けたが最後、どうしても切る勇気が持てなくて
それもギリギリまで耐えてしまう。
どこにいても何をしてても想うのはあのコの事ばかりで、会いたくて仕方がなかった。
だから早く忘れてくれという気持ちと、変わらないで欲しいと思う身勝手な矛盾した考えに
嫌んなって泣きたくなる。
「順調そうで良かったじゃないか」
早川の携帯の待ち受けにある奴の嫁の写メを見ていた。少し膨らみが目立ってきたお腹で
恥ずかしそうにしている。
「最近よく動くんだよ。面白れーから腹触りすぎて怒られた」
「……お前変わったな」
こいつこういうキャラじゃなかったような……。この調子じゃ産まれたら携帯のフォルダは
全部子供で埋まるな、多分。
幸せと愛に満ちた男というのはこうも変わるもんなのか。いや、案外それが本当の中身なの
だろう。特別なひとの前でだけ、存分にそれを発揮出来るものなのかもしれない。
そういえば前にボソッと奴の彼女、もとい嫁が言ってたっけ。『むっつりツンデレ野郎』って……。
俺はあの時、出来る限り男としての姿の全てを見せたつもりだった。何もかも晒した上で
嫌われても仕方がないと半ば勝手にやけっぱちになっていた。
それでも香子はまだ、俺を見てくれている。
なのにどうして俺は……。
「お前がヘタレだからだ」
はっきり言うな、早川よ。
「結局一生責任持つのが怖いんだろ?お前。自分基準過ぎるんだよ。幸せなんか主観だろ」
「……じゃあお前、幸せか?嫁さんもそうだって自信もって言えるか?」
「知るか」
「なんだよそれ」
「俺は幸せだからいいんだよ。だから今度はあいつを……マナが幸せだって思えるように
頑張るんだよ、俺は」
俺は幸せだから。
だから、今度は――。
「早川……お前男前だな。マナちゃんが惚れるわけだわ。俺でも惚れる」
「気持ち悪りいわ。昔の誰かさんには負ける」
確かに。ヘタレで女々しくて今の俺は自分でも嫌んなる。
その時。
「はいこちら○○建宅……もしもし?……ええっ!?」
女子社員が取った電話の様子に周りの視線が集まる。ただならぬ空気に自然と緊迫感が
高まっていき何故か胸騒ぎがした。
「あ、あの八神さん。今高速道路で……」
足元でカップの割れる音がした。
車に乗り込んだ途端携帯が鳴った。
「りっちゃん!?」
こちらへかけ直すように言って事務所を飛び出した。本当は危ないのだけれどそんな事は
今はどうでもいい。運転しながら心臓はバクバクしている。
「うん……うん。わかった。何かわかったらまたかけて」
携帯を切ってから、とりあえず会社を飛び出しはしたものの、どうしようと思いながら先ずは
自宅へ向かう。
慌てた声で会社へ掛かってきた電話は香子がお世話になっている家のりっちゃんという子で、
同い年の幼なじみだ。突然の知らせは一瞬にして俺の目の前を真っ暗にした。
香子が乗ったはずの高速バスが先程途中で事故にあったものらしいというのだった。
向こうでは速報が流れたらしい。
『いきなり行って驚かしてやるんだ』
そう言って家を出たそうだ。
――俺に会いに来るために。
夏休みになったら行っていいか、とは聞かれていたが、休みが取れないとか何とか
はぐらかして返事を濁してしまっていたのだ。それにきっと痺れを切らしてしまっていたのだろう。
カーナビをニュースに合わせてみるが、今の時間は再放送のドラマや何かで流していなかった。
念の為、香子の携帯にも掛けてみるが繋がらない。移動中だからなのか、もしくは……!?
ばかな、と頭を振った。
信号待ちの車内で最後にきたメール……今朝の内容を確認して眺めた。
『会いたい。側にいきたい』
たった一言がとんでもなく重く切ないものに思えた。
会いたいのは俺もなのに。
側にいたいのは俺だって同じなのに。
何故それをたった一言言ってやれなかったのだろう。
ちゃんとそれを伝えておけば良かったと思った。きっと不安で不安でたまらなかったのだろう。
簡単な事だったのにと激しく後悔している。
守るなんて言いながら守られてきたのは実は俺の方だ。
香子がいるから1人で生きているんじゃないと思えて、支えていてくれたから立っていられた。
アパートの階段をその足で昇りながら、一刻も早くその安否を確かめようと現場へ向かう
決意をした俺の目に信じられない光景が飛び込んできた。
ドアの前に置かれた見覚えのあるバッグ。
しゃがみ込んだ人影は俺の姿を見ると立ち上がった。
「あ、お帰り」
「…………」
「予定より早い便に乗れたから早く着き過ぎちゃって、どうしようかと思っちゃったよ。
良かった、場所合ってて」
「…………」
「いきなり来てごめんね。びっくりした?」
「…………ああ」
「……怒ってる?」
それには答えず、近づくと思いっ切り抱き締めた。
「香子……!本当に香子か?お前なんだよな!?」
いきなりで驚いたのか一瞬怯んだが、すぐに自ら強くしがみついてくる。
「会いたかったの……どうしても会いたかったの!夏休みになったらだから絶対って……
いきなりごめんなさい……」
「いいよ」
どちらも泣いているようで、互いの声は震えて苦しげにぶつかった。
「いいんだよそんなの……俺だって」
会いたかった。この手で抱き締めたかった。なのに我慢して香子を苦しめ泣かせていた。
「ごめんな。本当ごめん」
隣室の人が気まずそうに通路に立ち尽くしているのに気付くまで大分掛かってしまって、互いに赤面した。
「はい、無事でした。本当にご心配かけてすみませんでした」
りっちゃんちと早川に電話を掛けて会社にも無事を伝えると、ようやく腰を下ろした。
テレビではやっと事故のニュースが流され、その内容から香子が乗るはずだったバスも
数台の玉突き事故を起こしたとかではあったが、幸いにも車は大破したが奇跡的に怪我人が
数名でた程度で済んだらしい。神様はいるのだ、と本心からほっとした。
「うっかり携帯充電忘れちゃって、連絡つかなくて……心配かけてごめんなさい」
荷物の横で申し訳なさそうに座っている体を側に行って抱き締めた。
「いや、俺がしっかりしてなかったからだ。ごめん、本当にごめん。会いたかった。だから
無事で良かったし嬉しい、ありがとうな」
「イチ君……」
「会いたかったよ。俺だって本当は会いたくて仕方がなかった。なのにお前の為とか言って
結局逃げてたんだ。世間の目とか年齢とか、色々気にし過ぎて狡い男だよ俺は……わかったよ
やっと。そんなのどうだっていい。生きていればそれでいいんだよな」
そんな事は一度好きな人に先立たれてしまった時に気付くべきだったのに、なんて学習能力の
ない奴なんだろうな俺は。
「休み中、居たいだけいていい。俺は仕事で構ってやれないかもしれないけど……」
「いいの?」
「うん。都合悪いの?」
「……女の人、いないんだ?」
「は?居るわけないだろうが。この部屋見りゃ解るだろうが……もしかして」
「うん。案外それで私の事避けてんのかと思ったけど、ないねこの様子じゃ」
部屋は今朝急いでて敷きっぱなしの布団、とりあえずまとめたコンビニ袋のゴミ、乾いた
まま畳まずの洗濯物の山。仕方ないなあとそれらを片付けだす。
「んっとに駄目なんだから!……私がいないと」
そうかもしれない。確かに香子がいないと単なるダメ男だ。……いや、元々か。
「ごめ」
「イチ君て謝ってばっかりだよねぇ」
「……」
あと何万回のごめんなさいを俺はこのコに言うんだろう。そして何万回のありがとうを
言うことが出来るのだろう。
「香子」
布団の上で座って洗濯物を片付けていた香子に顔だけ近づけて口づけ、それから肩を
掴んで抱き寄せるようにして押し倒した。
顔を離すと一瞬驚いたように俺を見たが、また強く押し当てた唇からねじ込んだ舌の動きに
従ってしがみつきながら声を漏らした。
何度も何度も離しては繰り返し久々のキスを味わうと、唇の端から引いた透明な糸を拭う
のもそこそこにたくし上げたTシャツから覗く胸に目を奪われる。
背中のホックを外してブラを押し上げて顔を埋め頬をすり寄せた。
「イチ君……?」
そのまま動かなくなった俺に戸惑って声を掛けてきたが、じっと静かに胸に耳を押し当てた
まま黙っていた。
心臓の規則正しい音が聞こえる。はだけた白い膨らみが微かに上下して震えているのがわかる。
生きてる。
間違いなく今俺が抱いている……いや、抱かれているのはこっちかもしれない。だけど、
この確実に感じる事のできる温もりを、今度こそ絶対に失いたくないと思った。
「何ももう考えない。香子ももう何も心配しなくていい。俺はもうお前を離したくはないから」
「……本当?ほんとうに」
「ああ。これ以上我が儘言ったらばちが当たるよ」
生きてるだけでいいじゃないか、大事な人が側にいたいと願ってくれる、だったら何も
いらない。恥じるような関係じゃない筈だ、俺達は。
「何度でも言う。好きだ。いつからかはわからない。けど、守りたい気持ちに変わりはないよ。
香子を愛してる」
「……うん。うん、私も、イチ君じゃなきゃダメなんだよ。寂しかったよ。会いたくて
会えなくてこんなに辛くなるなんて……」
愛おしいその泣き顔にまたキスを落とすと、露わにしたままの胸を揉みしだいた。
「あ……」
すぐに堅く尖った先を指で摘んで転がすと甘い声が上がり始める。
「だ、だめ。まだ明るい……のに。声、聞こえ、ちゃ……ああっ!?」
「構わないよ」
指を離して唇を充ててそれを含んだ。更に乱れる声がする。
そこにいる証を俺に見せて。
頭のどこかで冷静にそういう事を考えながらも、実際は俺の体はせっかちで、早く香子に
挿れたい、繋がりたいとうずうずしていた。
まだ経験の浅すぎる俺達には早急過ぎると思いつつも、少しぺたんと広がった胸を味わい
ながら片手はジーンズのファスナーを下ろす仕事に掛かっている。
俺はこういう面白みのない奴なので、あまり女の子と付き合った事がない。だから
セックスもほとんど経験は無いのだ。大体すぐに振られてしまうか自然消滅で、長続きも
しなかった。
なので、この前の香子との事も仕入れた知識をフルに使って頑張りはしたが、あまり
上手くはないんじゃないかと不安になる。経験のないコだから受け入れては貰えたけど……。
焦るな、と思いながらも我慢が効かなくなってきて、ジーンズそのものを脱がしに掛かった。
クーラーは付けているものの昼間の部屋でこんな事をしてるのはやはり暑くて、じんわり
汗ばんだ躰にぴたりとしたパンツは張りついて剥ぎ取るのに苦労する。
ようやく足から引き抜いたジーンズを放り投げ脚の間に体を割り込ませると、これまでにない
苛立ちでネクタイを外し、Yシャツのボタンを外しながら覆い被さる。
「だめ」
肩を押されて顔を背けられてしまった。
「嫌?」
目を伏せるとううん、と頷いて黙ってしまう。
「じゃ、なに?」
「……明るすぎて恥ずかしいから。閉めてよ」
言われてはっと気が付いた。慌ててカーテンを閉めに行き、そのまま思い出して引き出しを
探る。
(まだ大丈夫だよなぁ……)
あれ以来使用していないままのゴムを確認して手に取り戻る。
頬に触れてきた手を握り返してシーツに押し付けながら、横たえた躰を合わせ首筋に這わせた
舌に喘ぐ声に酔い、離した手を下腹部に回した。
はやる気持ちを精一杯抑えながら貼り付いた下着を指でなぞって弄ぶと、その動きにそって
俺の脚に香子の脚がごそごそと絡み付く。
「んん……あっ」
半開きになった唇から零れる声が徐々に高くなる。下着の上から手を差し込むとそれは
小さな悲鳴となった。
「やっ……だめ。そこ、あっ……!」
指先に絡み付く濡れた感触に思わずほっと息を吐く。俺の愛撫に満足いくものかどうか
正直好きに触りながらもドキドキしていた。
「もっと開いてくれなきゃ触れないだろ?」
「だめ。だって」
「仕方ないなあ」
力を入れて開かないように閉じようとしている膝の間に、俺の脚をねじ込んで止める。
「諦めろ」
「んーっ……いやぁ……」
耳元で力を抜くように呟きながら指を動かすと、初めは多少の言葉の抵抗が感じられたものの
仰け反る背中の動きと共に膝の力も抜けていく。
入口を探り当て中指に侵入させつつ親指を堅い蕾に当てると、両の刺激で言葉にならない
声を出し俺の肩にしがみつく香子の力に事後の爪跡を思い浮かべながら、もう自身の
待ちきれないという要求を抑えられなくなってきていた。
「香子……もう」
虚ろな目で俺を見上げながら頷く。その半開きの唇に長いキスをしながら気持ちを少し
落ち着かせ、枕元のゴムを手に離れた。
焦る気持ちを我慢しながらもたもたと準備を終わらせて香子の下着に手を掛けるが、
それすらも待ちきれなくて引っ掛けた指を外す。
「ごめん」
「えっ?……ひゃっ!?」
下着を脱がさずずらしただけでソレをあてがうと、自分も膝までズボンを下ろしただけと
いう格好で繋がった。
もう僅かでも待てない。
「んん……」
まだ経験の浅い香子には久々という事もあってか、準備はできてる筈なのに苦痛の表情
が見られる。
「痛い……よな?」
やっぱり急ぎすぎたか。もっと優しくしてやらなきゃと多少落ち着いた頭で考えて、
無理に動くのをやめた。
「今更何だけど、無理だとか本当に嫌ならちゃんと言えよ?これから先だってあるんだからさ」
「これから……?」
「ん。お前としかやらないよ」
「信じていい?ほんとに?」
「うん」
他の誰とも結婚はしないと誓った。最初はあの人にだったのに、いつの間にかそれは
香子に対する自分自身への縛りになっていた。
知らないうちにただそれだけを想って――。
「じゃ、ちゃんとイって」
「え?」
「私大丈夫だから……最後までしていいよ。その代わり、離したりしないで」
「わかった」
離すもんか、絶対に。
できるだけゆっくり出し入れするうちに、香子の眉間に寄っていた皺が消えて、少しずつ
甘い声が漏れ始める。
「痛くない?」
「んん……少し、でも大丈夫だよ……」
赤く色づいた頬や中途半端に身に付けた着衣が却っていやらしくて、腕を伸ばして
見下ろしながら動くとすぐイきそうになって、何度も堪えながらまた動く。
「いいよ、凄く……我慢したかいがあった」
「……自分のより?」
「全然違うよ、ばぁか」
それに満足したのか、嬉しそうに肩に乗せてきた腕を引き寄せようとしたのに応えて
重くならないように気を遣いながら肌を合わせた。
それからあっさりと果ててしまって、背中が汗で貼り付いてしまったYシャツを脱ぎ捨てて
香子を抱き締めながら横になった。
「卒業したらこっち来ちゃだめ?」
「えっ?」
「また一緒に暮らしたい。ここなら、私達の事だってどうこういう人もいないでしょ?」
ここなら。新しい場所で1から……。
「ここはだめだよ」
「…………そう」
胸に顔を埋めて静かになった香子に気付いて慌てて話し掛ける。
「あ、違う、違うぞ!そういう意味じゃなくて。俺の稼ぎじゃもっとボロくなるけど」
きょとんとして上げた顔を見ながら、それが面白可愛くて吹き出したくなるのを堪えて喋る。
「もう一部屋はないと無理じゃん。だからそれでもいいなら一緒に暮らそう?」
「……本当?」
「うん。だから、今度こそちゃんと家族になろう。もっと先でもいいからさ、待つよ」
「……いいよ、待たなくて。春までだって永いよ」
絡めた指にキスをすると、今度は向こうから同じようにそれを返してくる。それから互いの
頬に、唇に。
幸せな甘い気分に浸りながら考えた。
このぶんじゃ、家族があっという間に増えるんじゃないだろうか……?
それはそれで楽しみだが。
早川の気持ちがわかる気がした。
香子は夏休みギリギリまで俺の所にいる事になった。
殺風景だった部屋に少しずつ小物が増えていき、2本並んだ歯ブラシや洗顔料なんかが
並んでいくのを見ていると、彼女が出来た男の部屋というのはこういうもんかとウキウキした。
次は冬休みにまた来ると決めて今からその日を指折り数えていると、まだ帰るまで
あるだろうがと早川にバカにされた。ほっといてくれや。
それまでに秋に連休があるので、俺からもりっちゃんちに挨拶がてら会いにいこうと思う。
その時にはきちんと話しておくつもりだ。もしかしたら何か思われるかもしれないが、
良い方達なので多分解って下さるんじゃないかと信じている。
自分達がちゃんとしていれば恥じる事はないのだ。
春になったら卒業式にはちゃんと行こうと決めている。そして、彼女を迎えに。
地元へ帰ってしまう日があと数日にせまった夕暮れ、俺は灯りの点いた部屋へ帰り着いた。
「ただいま」
「お帰り。ちょっと遅かった?」
「うん。寄り道してた、ごめん」
部屋に上がると床に座って、香子においでおいでする。
「なにー?」
「いいから。手出してみ?」
ポケットからそれを出す。今の俺にはこれが限度だけど……あの頃と大して変わりはしないが。
「違う、そっちじゃなくてこっちの……そう、そっちの指な」
以前香子にねだられた物はこっちに来るとき処分してしまった。
あれは、あの人のために買った物だから。その時の想いばかりが詰まった物だから……。
そんな物を香子に渡すわけにはいかない。俺の言葉が足りなくて、酷く傷つけてしまった
事はずっと後悔していた。
香子への気持ちを認めた時に、それはもう思い出となってしまっていた事を同時に認めたのだ。
あの雪の日に始まった出来事がこんな結末を迎えるなんて、誰が予想できただろうか。
背中に背負ったあの時の命を今はこの腕に抱き締めながら、降り積もってきたあれからの
悲しみや切なさが少しずつ解けて流れ行くのを感じながら想う。
きょう子さん。
あなたを忘れてしまったように、香子が僕を忘れてしまう事が本当は怖かった。そして
香子を愛したことであなたを裏切ってしまった気もした。
あの時あなたを一生愛しますからと誓った事が嘘になる、それは罪だと。
だけど形は変わっても約束は守り抜くつもりです。僕の気持ちは変わってしまったけれど、
あなたに対する感謝の心は生きています。
香子を大事にします。守ります。それは決して裏切りません、約束します。
あなたが彼女に与えようとした愛情を、その分僕が注ぎます。幸せにしたいと思います。
僕は今幸せだから……。
だから香子を――僕に下さい。
「終」
以上で終わります。
お付き合いありがとうございました。
投下にリアルタイムで遭遇
>>601 前回の引きがあんなだったからドキドキしながら読んだけど
二人がしっかり決意した上で結ばれて良かった!!
最後の一文が泣かせます。長編、お疲れ様でした。
心からのGJを送ります。
GJ!
半脱ぎHエロす
切なくてエロくて良かったです!
GJ!!!!!!!!
>>601 いつもながらですが、胸がキュンキュンしました。GJ!
特に香子のパートは本当に切なくて、久々に目頭が熱くなりました。
後、「週末のパズル」の後日談部分も嬉しかったです。
605のレスを見て『週末のパズル』読み返したら
イチくんの友達はあのコージ君だったんだ!
おめでたを機にマナは早川愛永になるんだ……よかったね
意外なところで登場人物が繋ってて更に楽しめた。作者さんGJ!
607 :
601です:2008/08/27(水) 19:50:01 ID:oy1mWWp7
コージに関しては友人を書いてて思いついたんですけど、きっとスルーだろうなと
思ってたので気づいて貰えて嬉しいです。
何より喜んで貰えて良かった。
長くなってしまいましたが最後まで読んでいただきありがとうございました。
今やっと全て読みました。もう夜明けだ!
皆さんGJです、長い時間かけて見入ってしまいましたw
皆さんと同じく繭ちゃん小説の続編が気になるところですが‥作者様はどうか気負いなさらずに、のんびり執筆して欲しいと思います。
私もゆっくり待ってまーす。
609 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 14:00:20 ID:oRjK6fr4
ほ
610 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 11:02:25 ID:LUcRiJWX
し
あきこ
どうしろとw
613 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 00:06:51 ID:b8fJ68tg
星 亜希子‥ゴクリ
後の 若本規夫 である。
電柱の陰から「かわいそうに、ひゅるま」
616 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 22:46:48 ID:Ev2vQdUc
巨人の星スレッドと聞いて
617 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 00:58:15 ID:NCEuCd3p
ほしゅ
ひゅーま
619 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 10:49:58 ID:pf5XsRA9
あの巨人の星になれ!
その巨人が後のラ・セーヌである
巨人がセーヌ川になるのか。神話でありそうな話だナー。
622 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/06(土) 19:43:41 ID:uKcpBDOu
よし、「巨人がセーヌ川」をお題にいっちょ書いてみよう!
………文才があったらなぁorz
なんだこの流れw
624 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/10(水) 21:13:11 ID:hhC5U6kD
「巨人」「セーヌ川」はあだ名
お互いに単なるクラスメートな2人だったが、ひょんな事から、巨人「が」セーヌ川に好意を抱いていく
…っていうのはどうかな……
発育が早くて小学生の時のあだ名が巨人、だが高校生になった今は標準サイズ。
なのにあだ名はそのままにアンチ巨人どころかアンチ野球に育った女の子と、
川の流れのような動きでチームメイトをフォローする野球を愛するナイスガイ
セーヌ川(本名征之助)の野球部と手芸部を巻き込んだ一大スペクタクルエロチシズムロマンですね。
あだ名が巨人の所をあだ名が巨乳に見えた自分はもうだめだと思いました
627 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/11(木) 17:00:30 ID:awI58gpi
なんという才能の無駄遣い。
いいぞもっとやってくださいw
巨人とセーヌ川待ちw
629 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/12(金) 23:31:39 ID:8FTUdYuc
巨チン? 虚珍…
神待ちの切なさを紛らすために、雑談ネタ。
おな感ってことで、スレ的には女性一人称が多いんだけど、どう思う?
投下していただいた作品はもれなく美味しく戴いているんだけど、
別に女性一人称に拘らなくてもいいのではないかと思ったりする。
というか、三人称は勿論、男性一人称も読んでみたい。
男性側の心理は非常に興味あるから。
そうなるとどこがおな感なんだとなるけれど、男性と違い抜きの要素は低くても構わない、
性行為に至る必然性をきちんと描き、そこで萌えられれば嬉しいなと
思っている。
このスレの作品はエロ度の高い一般書でも通じそうな作品が多いから
気に入っているんだけど、そこら辺を皆さんの意見を聞いてみたい。
とか言いながら、大好きなこのスレの作品は、女性一人称のものなんだけどさ〜
いや、書き手さんたちの幅に繋がれば、と。
連続ごめん。
細やかな心理描写が好きなんだよね。
心と体の解離とか、お互いの想いがすれ違うのが体を通してもう一度向き合ったり。
ラブラブバカップルの幸せも好きだし、空虚な心がセックスを通して
満たされるのも好きだ。
二人の体の反応が心を動かしていく過程とか物凄く萌える。
だから、設定はSFだろうが女の子が不幸にならない凌辱だろうが、
「私は」おk。
だが、女の子を物扱いしたり、あまりにも男の都合だけで描かれると萎える。
ちゃんと人間として書き手さんも女の子を尊重して欲しい。
男性向けって、女の子にドリーム入りまくりだったり、肉便器扱いしていたり、
そういうのが多いのがきつい。
同意するが解離ではなく乖離が正しい
男の一人称でって難しいんだよなあ
前に二次もので男性一人称エロ書いたことある。
ある程度までは書けるんだけど、挿入後の感覚とか分からないから
書きづらかった。
ヴァキナの中ってよく暖かくて気持ちいいって言うが、
快感の種類というかどういう風にリビトーが上がっていくのかとか、
感覚が全く分からないんだよね。
結局、ありがちな表現しかできず、納得いかなかった。
三人称って難しくない?
書いてるうちに混乱していつの間にか一人称になってしまう(´・ω・`)
難しいと思ったことはない。
確かに、部分的一人称が入ることはあるが、視点を定めておけば書けるものだよ。
一人称だと複数キャラが入り乱れる話など、主人公以外の場所での動きが書けないため、
話を動かしづらい。
アクティブなキャラか、内省的キャラが一人称に向くと思う。
ほす(`・ω・´)
638 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 11:34:53 ID:iKwGYdz+
たしかに。
一人称は主人公の心理描写に長けるけど
その他の登場人物の心理描写できない欠点もある。
それを想像で補うのが好きな人もいるかもしれないけど。
だから、自分としては部分的に一人称を入れた三人称のほうが好き。
もちろん、女性一人称も大好きなんだけど。
639 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 13:50:46 ID:N+Qm691W
保守
男性一人称で、年下の彼女と交際している男性が肉欲wと、彼女を汚してはいけないという理性の間で
葛藤するような話だとどうだろうかねぇ。
彼女のほうは背伸びしている感じで彼に抱かれる気まんまんであれこれ誘惑するけど、彼氏のやせ我慢の
おかげで現状維持してしまっているとか。
小娘相手ではなくて相手が男性にとって憧れの対象である女性(女教師とか若い叔母とか)で、彼女に
不貞をさせてはいけないという理性との間の葛藤でも話は成立するかもしれないけど。
でもコメディ向けだろうか?w
家庭教師が中学生の教え子と・・・みたいなサイトはあった
コメディでした
やっぱそうなりますかw
つか、少年誌や青年誌のちょっとHなコメディ向けの設定の基本ですしね。
でもそれを男性読者向けではなくて、女性読者向けに男性主人公の葛藤とか書いたらどうなるんでしょうね。
>>640 いいなぁそれw
自分的には後者がぐっとくる
現代版 源氏物語ですね。
>>640 後者の場合女性の方から誘惑する理由が必要だねぇ。
それでいて、主人公が彼女に幻滅しないような設定も必要か。
女教師じゃなくて叔母さんであれば昔からの付き合いだろうから
多少の欠点?は承知した上で憧れを維持できるだろうけど。
普段は清楚なのにお酒を飲むとだらしなくなるとかw
この前読んだ、図書館戦争シリーズの小牧×マリエのカップルだな。
>>640 前者は「こどものじかん」がそれっぽい気がする。
後者は・・・飛龍乱の昔の作品を思い出した。でもあれは母娘丼の話か。
しかしあれか。
ヒロインの絶頂は男の視点で描かれ、
男が出すときも同様。
やせ我慢の後で火照る身体を鎮めるための自家発電や
その後始末もw
黒澤くんを待っている
650 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 21:00:57 ID:Jyb7QZz0
>>649 同じく。だけど黒澤くんと同じくらい他のSS職人様の光臨にwktkしてる‥
652 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 15:04:10 ID:+RZFdOTS
あがってなかったorz
653 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 23:01:16 ID:nNUWGUVf
じゃぁ自分は密かに巨人とセーヌ川を待っている
みかんちゃん…
655 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 01:00:20 ID:VIMngx5l
30代くらいの男性教師と女子高生の設定で誰か書いてくれないかな><
頑張ってあなたが書きなヨ☆
>>655 エロにならない切ない恋物語しか浮かばない。
658 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 21:32:13 ID:XMwePDCX
>>657 忍空〜切ナイ恋物語〜を思い出しました。
あれより面白い話なら、是非読んでみたい。
659 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 22:49:32 ID:I8vSP8v5
>>657 エロになると途端につまらんくなるかもしれんしな><
書き方にもよるかも
ほす(`・ω・´)
SM系が大丈夫って人なら、調教SSスレの愛奴日記を読んでみるのもいいかも〜(*^艸^)
間に熟女書いてる荒らしがいるけど、一読の価値は有るよ!
だんだん文が上手くなってきてる愛奴タン、ここでも連載してくれないかなぁ…