素直クールでエロパロPART5

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1名無しさん@ピンキー
ふたば☆ちゃんねる落書き板の天才によりツンデレに対抗すべく、
新たに"素直クール"なる言葉が誕生した。
ツン→素直 デレ→クール
ガチで愛してくれるが、人前であれ、好意に関してはストレートかつ
クールな表現をするため、男にとっては嬉し恥ずかし暴露羞恥プレイ。
しかし、どこか天然。言葉萌えのツンデレ、シチュ萌えの素直クール。

ここはそんな素直クールのエロパロスレです。
荒らし、煽りはスルーでお願いします。

過去スレ
素直クールでエロパロPART1
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1139830862/
素直クールでエロパロPART2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1151146736/
素直クールでエロパロPART3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1165760283/
【エロパロ】素直クールでエロパロPART4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1177753262/

保管庫(エロパロ板)
http://derheiligekrieg.h.fc2.com/cool.html
素直クール保管所(全体)
http://sucool.s171.xrea.com/
2名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 22:34:50 ID:ueeyVQCi
2get
3名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 22:37:53 ID:BjBzQR+N
一乙
4 ◆6x17cueegc :2007/06/22(金) 02:08:10 ID:38CmpyNb
>>1乙&即死回避の小ネタ投下。
今回も書きなぐりのため、ただでさえ低いクオリティが更に低くなっております。

…………………………
やあおはよう。

どうしたんだ、そんな不機嫌そうな顔をして。僕が来て何か不都合な点でもあるのか?

そうは言っても、自分の家の近所で自分の学校が参加する大会が開かれているんだ。観に来ないわけが無いだろう?
君もこれから試合なんだ。応援の気持ちをこめて顔を見に来ただけだよ。

……そこを突かれると痛いな。
確かにどこの会場か関係無く君の出場している試合は観に行っているし、声を上げて応援したこともある。
それでも一応君がいらぬ緊張をしないよう、試合前に立ち寄ることは無かったはずだ。

そういう気遣いをするなら最初から来るなとはひどい言い草だ。
君の顔を見るのが主目的ではあるが、部に対する応援の気持ちが無いわけでは無い。
君は部に対する理解者を切り捨て……

脇腹に、いい、ミドルだ……ッ!
そ、んなに、元気があるなら今日も大勝は間違いないな。僕が来たせいで負けたと言われないようでよかったよ。

心配されなくても勝つ、か。いい言葉だな。
ん?集合がかかっているようだ、早く行ってきたほうがいい。
それじゃ、また試合後に。

……頑張ってくれ。ただ、怪我だけしないでほしい。



5名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 11:28:56 ID:tPT1aZ9Z
gj
6名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 17:53:49 ID:w+XQrJzh
g
7名無しさん@ピンキー:2007/06/22(金) 18:12:18 ID:Vz2xIT5v
ジョブ!
8名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 02:12:37 ID:j6zYDr2+
スレ立て乙!
9名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 02:14:12 ID:tZt1io+X
10名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 04:21:28 ID:S9++yXML
今週VIPに建ってないね
11名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 05:44:48 ID:aRFn2Y+R
即落ちしたんだぜ……
12名無しさん@ピンキー:2007/06/23(土) 23:50:42 ID:j6zYDr2+
保管庫の人、更新乙です !
大量の更新がここ最近の盛り上がりを物語ってるな。
13名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 03:30:05 ID:1X1CvfBw
瑞希希望sage
14名無しさん@ピンキー:2007/06/26(火) 12:16:21 ID:ybtV8zgk
乙〜
15 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:40:21 ID:RqaS/dJQ
>>1乙〜。


この前はシリアスにと言ったけど。
何か知らんが、急にオーソドックスなものでいきたくなった。

年末にちょろっと顔を出した二人です。
16 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:42:38 ID:RqaS/dJQ
 さて、唐突ではあるが、ここで一つ昔話をしよう。
 と言っても、実際は昔なんて呼ぶほどでもない。少なくとも、私にとっては。このあたり、人によって違うからね。まあどうでもいいことだけど。
 あくまで、ちょっとした思い出話だ。軽い気持ちで聞いて貰って結構。

 あれは、二年前の九月三日。まだ夏真っ盛りと思いたくなるような日に、私達は出会った。
 ウンザリするほど日差しの強い……そう、まさに刺すようなと呼ぶに相応しい日だった。
 最高気温は三十九度、最低でも三十度という、赤道直下でもないのにアホみたいな記録の日だった。ていうか、赤道直下のほうがまだ過ごしやすいぞ、実際。
 鮮明に思い出せる。記憶力が高いと、こういう時は便利だな。
 ……続けよう。
 とにかく、そんな日に私は初めてミサキを目にした。

「これは奇遇だね、さっきから何度も」
 その日、彼女を三度目にした私は、好奇心から彼女に声をかけた。
 仕事を早めに終えたことにより発生した、三日間の休日。暇を持て余しての観光も、たまには悪くないと、久々に色々見て回ろうとした。その初日のことだった。
 最初は、ただ目が合っただけ。二度目で、互いに会釈。そして三度目。
 同市内で、それぞれ別の場所で、その日のうちにこれだ。さすがに奇縁を感じずにはいられなかった。
 つい、と。ミサキは私を一瞥する。まだ短かった髪を僅かに風に揺らして。
「――そうですね。ガイドブック片手に回ってるから、そんなこともあるでしょう」
 特に感慨もなさそうに、そう答えられた。
 大袈裟に驚けとは言わないが、もう少しくらい崩れてくれてもいいのに。
 あまりに冷静すぎる表情に、私は苦笑を漏らした。
「失礼ですね。何かおかしいところでも?」
「ああ、おかしい……いや、面白いね」
 そうすると、彼女は少しムッとしたようで、
「貴方、初対面にしては、随分と無礼ですね」
「私は、シンって名前だ。それに初対面じゃないよ。既に二回合ってる。最初は三時間前、二度目は一時間十五分前。それぞれ――」
「茶化すなら、何処が変なのかハッキリ言え」
 ついに丁寧な口調までも崩し、私に詰め寄ってきた。
 凛とした外見そのままに、気の強くハッキリとした――だが、けして荒げてはいない声。
 こちらが素なのは明らかだ。無理して相手に合わせてる感が無くて、かえって好感が持てるから不思議だ。
「そうだね。それじゃとりあえず……」
「?」
「帽子、何処にやったのかな? 熱射病対策は、ちゃんとしたほうがいいよ」
 一回目や二回目の時と違ってる外見を指摘した。
 不意を突かれた彼女は、言葉に詰まり黙ってしまう。顔が赤くなったのは、熱にやられたわけではないのだろうな。
17 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:43:21 ID:RqaS/dJQ


 観光地ゆえ、休憩所には困らない。茶屋風の作りのそこに入ると、私はカキ氷と抹茶のセットを二つ注文した。
 彼女は近くに突っ立ったまま、不機嫌そうに腕組みをして私を睨んでいた。
「ほら、何時までも膨れてないで。座りなよ」
「なんとなく付いてきたが、あたしは付き合う理由が無いぞ」
「ま、そう言わずに。汗かいてるだろ? 奢るよ」
 やはり暑さには参っていたのだろう。水分と冷気の魅力には逆らえず、大人しく此方に寄って来た。
 しかしプライドを刺激したのか、彼女は対面に座るとそっぽを向いて言い放った。
「馬鹿にするな。それくらい、自分で払う」
 可愛いものだ。私は再度苦笑した。
「ここは年長者を立てて欲しいな」
「勝手なお節介を焼いてるだけだろう」
「そうだね。お節介ついでに、気になるならお金以外で払ってもらいたい」
 彼女が強張り、自身守るように抱く。変なこと言うと、警察呼ぶぞといった雰囲気を全身で発している。
 当然の話だった。我ながら怪しい男を演じている。仕方ないことだが、嫌われたものだ。
 そんな小さな拒絶を気付かない振りで流して、私は言った。
「私の名前は、もう言ったよね。それじゃ、キミの名前は?」
「――――ミサキ。美しく咲くでミサキ」
 自意識過剰を恥じて、小さく呟く。事ある毎に、一本取られたといった風情を見せるのが面白い。
 内心、私は勝利の美酒を堪能させてもらう。
 それにしても、からかい甲斐のある女の子だ。

 私はカキ氷の器半分を、一気に片付けた。
 対抗心を呷られたミサキもそれに倣う。
「っ痛ぅ〜……」
 案の定。策に嵌ったミサキは、期待を裏切ることはなかった。
 その辺りで、バカらしくなったのか、ようやく観念した。私が話を切り出すと、コメカミを押さえながら、色々語ってくれた。

18 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:44:18 ID:RqaS/dJQ
 さて、唐突ではあるが、ここで一つ昔話をしよう。
 と言っても、実際は昔なんて呼ぶほどでもないかもしれない。しかし、若輩者のあたしにとっては、昔と呼ぶに充分な年月だ。
 あくまで、ちょっとした思い出話だ。軽い気持ちで聞いて貰って結構。

 あれは、二年前の九月初旬。まだ夏真っ盛りと思いたくなるような日に、あたし達は出会った。
 倒れかねないほど日差しの強い……そう、まさにうだるようなと呼ぶに相応しい日だった。
 最高気温は四十度近くという、赤道直下でもないのにありえない記録の日だった。というより、南国のほうがまだ過ごしやすいと聞く。
 とにかく、まず暑さも相俟ってイライラしていたことばかりが記憶に残っている。今思えば、勿体無いことをしたかもしれない。
 ……続けよう。
 とにかく、そんな日にあたしは初めてシンを目にした。

 第一印象は、正直良いものではなかった。
 馴れ馴れしいし、見透かした態度を取るし、年上振った余裕だし。
 それに何より、目付きが悪かった。ただそこにいるだけで、視線の先を、鋭く、睨むような印象だった。
 まるで、物語に出てくる気障な美形悪役のようだ。こう……組織のナンバー2かつ、黒幕のような。
 そのくせ、無邪気な笑顔は愛嬌があり、警戒感を薄めてくれるのが、さらに憎らしい。
 逆に、悪人ではないという、奇妙な安心感があった。あたしは、そんな感情が納得できず、つい対抗心を剥き出しにしてしまった。
 そんな相手だからか、あたしはいつの間にかペースに乗せられていた。
 ペースに乗せられ、気付けば気軽に世間話をしていた。
 楽しそうに聞き入る彼を見ていると、今も昔もつい歯止めが利かなくなる。その兆候は、当初からあったようだ。
「ふむ……つまり、狭い歩道で蛇行運転の自転車にぶつかりそうになって、その拍子に突風で飛ばされて失くしたというわけか」
 加えて、橋の上だったので回収も侭ならず。
 事の顛末を語ると、シンは顎に手を当てて頷いた。
 思わず恥も晒してしまったし。
「でさ、何でこんなとこにいるの? 見た所高校生っぽいけど。サボタージュ決め込んだ?」
「…………何で解った?」
 観光都市のため、制服着用の学生がうろついているのは、別に珍しい光景ではない。
 警察のお世話にでもならなければ、咎められる心配はないと思っていたのだが。
「何となく。キミの挙動でね」
「それで、どうする?」
「別に何も。保護者への連絡手段は確保してある?」
「一応」
 シンは、その答えに満足したように、
「なら、堅苦しいこと言うつもりはないね」
 と、例の笑顔をあたしに見せた。
「何でもかんでも、見透かしたみたいに……」
「年の功ってヤツかな」
「そう大した違いもなさそうだが」
「へー。それじゃ、どれくらいに見える?」
 改めて、あたしはシンの顔を観察した。小皺の一つ無く、肌もきめ細か。血色も良好で張りがある。
 顔立ちは幼さを残さず、充分に成熟した感があった。
「外見は……二十歳過ぎか。その言い方だと、実際にはもっと……二十代後半くらい。ひょっとして、三十路越えてるのか?」
 口調は軽いが、思えば仕種が老成してるような気がしないでもない。
 かといって年寄り染みてるわけでもなく……年齢不詳というのが、一番似合った形容詞の男だった。
「ご想像にお任せします」
 笑ってはぐらかすシン。
 やはり、好きになれなかった。
19 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:45:25 ID:RqaS/dJQ


「ほっほうー……長年片思いの相手に淡い恋心は気付いてもらえず、挙句の果てに付け入る隙も無い恋人が出来たものだから、さすがに凹んで単身傷心旅行に繰り出した、と」
 一息で言うな。
 何でこう、包み隠さず話してしまったのか。顔から火が吹き出る思いとは、まさにこのことだ。恥ずかしくて死にたい。
 テーブルに突っ伏して、己が迂闊を激しく後悔する。
「まあ、幼馴染なんてそんなものって聞くね」
「当事者になってみると、結構辛いぞ……」
「気心知れてる分、一度くっつけば完璧なおしどり夫婦になるとも聞くが。もう新婚当初から、金婚式ってくらい」
「傷口に塩を塗りこむのが、そんなに楽しいか……?」
 胸に剣が刺さったような思いだった。
 何せ、十五年越しの想いが、認めざるを得ない事実を突きつけられて、あっさり崩れ去ったのだ。
 関係の崩壊を恐れ、見てるだけの口に出せない恋心だったとはいえ、痛まなければ、無情と呼んで差し支えあるまい。
「ウチの親戚なんかは、お向かいで、しかも従兄妹で結婚したなんてのもいるけど……やっぱり少数派か」
「それはそれは。肖りたいものだ」
 本当に、そんな出来過ぎのケースも、あるところにはあるものらしい。
 それを聞くと、迷わず行動に移すべきだったと後悔の仕切り。
 在り来たりの結果に陥り、統計をさらに確かなものにする一端を担ったのには、真に遺憾の意を表する。
「相手は、簡単に諦められないほど、いい男だったのかい?」
「あたしが惚れた相手だ、当たり前だろう。品行方正、成績優秀、スポーツ万能、加えて容姿端麗。誰にでも優しく、誰にでも好かれ……ただ、少し抜けてる所があったな。完璧すぎず、親しみを持って接することのできるタイプだ」
「ふぅん……」
 あたしの熱弁も、それで流された。
 いやまあ、恋は盲目というか……我ながら、さすがにちょっと言いすぎな感が無いわけでもないかったのだが。
 すると、シンが思いも掛けないことを口にした。
「それで、ここは神社なのだが……」
「誰でも知ってるだろう。見れば解る」
「先刻会ったのも、神社だったな」
「観光名所ばかりだからな」
「丑の刻参りの場所でも探していたのかい?」
「違う!」
 あたしは初めて声を荒げて否定した。危ない女という目で見られていたとするなら、あまりに心外だ。
 シンは、そんなあたしを笑った。
 性質の悪い冗談を言う。掌で踊らされている自分が悔しかった。
 しかし――、

 その時のあたしは、意外なほどに心が軽くなってるのに気が付いていなかった。
 そして、これからの数日がどれだけ大きいものだったかも。
20 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:47:10 ID:RqaS/dJQ


 当たり前のことだが、呪いなどという物騒な話ではなかった。嘘から出た真となってしまっては、それこそ洒落にならない。
 心の整理自体はついていたらしく、女性特有の陰湿さは、影も形も無かった。
 むしろ当時のミサキは、既に恋人達の幸せを願っていた。だが、意気消沈するのもまた必然。
 沈んでいた気を昂らせる為に、気分転換がしたかった。
 そのため、幼少の頃幼馴染と家族ぐるみで旅行したこの町へ来訪し、足取りをトレースすることで、かつての自分に別れを告げ、完全に決着をつけようと思っていたらしい。
 ついでにお参りしておくことで、大義名分も万全とのことだった。

 休憩所を出ても、私達は同じコースを辿った。
 途中で帽子を買ったり、一箇所巡るごとに由来や見所を解説したり、カメラマンをやらされたり。
 何とはなしにその一日を共に過ごし、翌日、翌々日も行動を共にする約束を取り付け……させられ、私も特に断わる理由は無いから承諾した。
 その後、宿へミサキを送り届けてから別れた。

 二日目、三日目と。少々のトラブルはあったものの、概ねつつがなく休暇は過ぎた。
 私達二人は、駅前で解散することにした。
 ミサキも取り敢えず憂さ晴らしは済んだのか、同じ日に帰宅することに決めたとのことだ。
 時計を見れば、発車まではまだ時間がある。別れ際の立ち話をするくらいなら、充分だろう。
「悪かったね、私の暇潰しに付き合ってもらって」
「悩む間もなく過ぎ去ったからな、気にしないでいい」
 私は満足の笑みを浮かべた。
「はははは。少しはスッキリしたかい?」
「ん。まあ――顔を合わせたら再燃した、なんてことはなさそうだ」
「それは結構」
「出来れば、根本的に解決するのが一番なんだがね」
 ミサキは当然の希望を漏らした。
 どうせならサービスで最後まで解決してやりたいところだったが、これは当人の問題。
 口出しだけに留めておく。
「そこは時間に頼るしかないな。あるいは、失恋を癒すのは新しい恋が一番なんて言うけど……そんな急にはね」
 私は笑い飛ばした。
「あ、そうか……」
 そんな小さな呟きを気にも留めず。
「まあ――そうだな、仮に見つけたとして。ミサキ、キミは可愛いんだから、もっと積極的に攻めるといい。きっと上手くいく」
「か……っ!?」
 おお、面白い。ミサキは、茹蛸のようになった。
 再度確信し、私は自信を持って本人に伝えた。
「自信を持っていい。キミが可愛いのは、私が保証するよ」
「保証……してくれるのか」
「ああ」
 ますます赤くなって、遂には顔を隠すように俯いてしまった。
 うむ、言ってみた甲斐があった。
21 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:48:25 ID:RqaS/dJQ


 そろそろ時間が押し迫りつつある頃、
「――シン!」
「な、何だ何だ?」
 突然の大声で顔を寄せられて、私は思わず身体を引いた。
「えっと、その……連絡先。そう、連絡先だ。メールと携帯番号教えてくれ」
「あ、うん」
 そういえば、忘れていた。
 それくらいならお安い御用だ。私はそれらを、お望み通りミサキに伝えた。
 ついでに、ちょっとしたオマケもつけてみる。
「はいこれ」
 ポケットから小さなカードを取り出し手渡す。
「名刺?」
「みたいなものだ。困ったことがあれば、頼ってくるといい。力になるよ」
「ふーん」
 ミサキは、興味深げにしげしげと眺めていた。

 こうして、私達はそれぞれの帰路に着いた。
 それからもミサキとの交流は続き、メールのやり取りは頻繁に、時には電話で悩み相談に乗ったりもした。
 特筆するようなことも無い、平穏な日々が続くかと思われた。

 四ヶ月が過ぎるまでは。
22 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:49:24 ID:RqaS/dJQ


 シンと出会って四ヶ月。年が明けて、一月中旬。あたしは、とあるマンションの一室の前に立っていた。
 両手には大荷物。呼び鈴一つ押すのも一苦労だった。
 程なく、インタホンから声がした。
「はいはい。どなたです……か?」
 部屋の主が、あたしの姿を見て固まったのがハッキリとわかった。
 一瞬の硬直より回復してから、慌てて玄関までやってくる。ドアが開けられた。
「やあ、シン。久しぶり。明けましておめでとう」
「あ、ああ。おめでとう」
「悪いが、上がらせてもらうぞ。見ての通りの有様だからな、疲れるんだ」
 了解を得る前に、身体を室内に滑り込ませる。
 荷物を一つ床に置き、一番上に入れてあった菓子折りを手渡した。
「あ、コレ。寒中見舞い。年賀状ありがとう。こちらからは、出さなくて悪かったな」
「……どうも、ご丁寧に」
「それで、何処に行けばいい?」
「えーっと、それじゃこっちに……」
 戸惑いながら、シンはあたしを案内してくれた。
 リビングに荷物を置き腰を落ち着けると、シンはようやく取り戻した冷静さで、あたしに率直な疑問を投げかけてきた。
「突然押しかけてきて、一体何の用なんだい?」
 出されたパックの紅茶を一口含み、事情を説明する。
「こちらの大学を受験することにしてね。ついては、暫く厄介になりたい。了承してもらえると、金銭的にも助かるんだ」
「確かに、困ったことがあればとは言ったがね……ていうか、事前に連絡しようと思わなかったのかい?」
「すまない。ゴタゴタしてスッカリ忘れてた」
 嘘だ。……いや、完全に嘘でもないか。
 とにかく驚かすことばかりに頭が行っていたのは確かな話だ。
 呆れ顔で、シンはさらに続ける。
「それに私達は、そこまで親しい間柄だったか?」
「何。これでも人を見る目はあるつもりだ。あたし本人が信用できると判断した。それでいいじゃないか」
 シンに疲れが見えてきた。勝機は我にあり。
「それに――」
 あたしは部屋を見回した。
「置いてもらえるなら、対価として家事は引き受ける。毎朝サッパリした景色を眺められるぞ?」
 部屋は、汚いというより、多くのモノで散らかっていた。
 一人暮らしに不便は無いのだろうが、他人に見せて気分の良いものではないだろう。
 必要と在らば掃除くらいするにしても、常日頃から綺麗にしておくにこしたことはない。
 椅子から腰を上げ、あたしはキッチンにチェックを入れる。
「どうせ碌な物も食べてないのだろう? 食事もこちらで用意するが、いかがかな?」
 流しやゴミ箱を物色。インスタントや出来合いの残骸ばかりという、惨状でなかったのは安心した。
 だが調理器具の様子や材料・調味料の揃い具合を見るに、いかにも食べられればいいというものばかり作っているのだろう。
 あと一押しと、あたしはシンに向き直り、ややオーバーにリアクションを求めた。
「以前、彼女の一人もいないと言っていたではないか。誰かに見られて都合が悪いわけでもあるまい」
「もっと根本的なところで……短期間とはいえ、若い女性が男の所に転がり込む事実に問題があるだろう」
「身の危険がある、と?」
「いや、無いけど。あるのは世間て――」
「では尚更問題ないな。むしろ、見知らぬ街中に一人放り出されるより安心じゃないか」
 常識的な受け答えなど、通用させてなるものか。
 言葉を遮り、我を通す。
 シンは困ったように額に手をやり、観念した声を絞り出した。
「随分と強引だったんだな、キミは……」
 諦観とちょっぴりの後悔混じりで。
23 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:50:17 ID:RqaS/dJQ
 だが、その認識を改めてもらわねばならない。勘違いをそのままにしておくのは、気持ちが悪かった。
「何を言う。今後は……シン、キミの教えに従うことに決めたまでだ」
「ん? 教え?」
「失恋には、新しい恋だのだ」
「ああ、アレね」
「あれから身近な男を見繕ってみたのだがな……正直、誰も彼もピンと来ない。付き合ってもいいと思える相手がいないんだ」
 あたしの中の基準――比較対象がかの幼馴染では、仕方の無いことだったろう。男たちが悪いのではない。彼が完璧すぎたのだ。
 しかし、と。
 大きく腕を振り、ピッと部屋の主を指差す。
「だが、よくよく考えれば、もう一人いるじゃないかと」
「それが私か?」
「うむ。知力体力経済力、全てにおいて人並み以上。他人を茶化すのが大好物だが、何だかんだで真摯に向き合ってくれる。ルックスも、並外れた目付きの悪さ以外は上々。しかも現在、恋人なし。かなりの優良物件と思わないか?」
「私に同意求められても……や、それ以前に受験勉強はどうした」
 あたしは得意げに鼻を鳴らす。
「ああ。本命はA判定だ。残るは、体調と精神状態だな」
 言外に、協力してくれないと落ちるぞ、との脅しをかけておいた。
 優しい優しいシンちゃんは、小悪魔相手に負けを認め、がっくりとうな垂れてしまいましたとさ。
「はあ……気紛れがとんだ結果になったな」
「こんな美人と同居だぞ。棚から牡丹餅の幸運と思えば、憂鬱も吹き飛ぶだろう」
「短期間でも、自信家になってしまうものなんだな」
「毒を食らわば皿まで、だ。決めたからには、徹底的に自分を変えてみせるさ」

 過去を振り返り、無神論者であったあたしも、今なら言える。
 信ずるに足る神や運命は、確かに存在する。

「覚悟するがいい。もっともっと積極的に――攻めさせてもらうぞ」

 あの日の出会いは、神の采配。運命に導かれた必然であると。
 そして、それを受け入れたのは、あたし自身の意思。ただの成り行き任せじゃない。
 確信を得たから、自信を持って告げられたのだ。

「新しい恋とやらだ。まさか、嫌とは言うまいね?」
24 ◆uW6wAi1FeE :2007/06/27(水) 00:52:07 ID:RqaS/dJQ


誕生編、以上っす。

なんだろう。コイツら書きやすいや。
25名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 01:36:08 ID:/uncHv5w
クール対クール?これはGJ
26名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 01:47:56 ID:ClYqX5GX
>>24
GJ!
良いコンビだなあw
27名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 02:14:24 ID:QGluDuNQ
>>24
お前に惚れた!!GJ
28名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 12:37:36 ID:xHjQtXGB
す て き に む て き ?
GJ
29名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 22:02:28 ID:q9ZiFO6Q
ここからどう転がっていくのだろう
30名無しさん@ピンキー:2007/06/27(水) 23:30:41 ID:mwRr3UCi
グジョーブ(・∀・)
31名無しさん@ピンキー:2007/06/28(木) 18:12:42 ID:7vUzLkvW
32名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 15:52:50 ID:Yv6Fre3b
>>24
前スレであったっけ?
33名無しさん@ピンキー:2007/06/30(土) 18:59:51 ID:Aog2XPkH
>>32
前スレじゃなかったかもしれないが。
http://derheiligekrieg.h.fc2.com/c1/66.html
34名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 01:34:29 ID:9ZLVCGQ1
過疎ってんなぁ。
35名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 01:52:09 ID:rQN9QWPy
>>34
この程度で過疎か?
お前さん、ずいぶん賑やかなスレばかり見てるみたいだな。
36名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 02:55:34 ID:LD2bgLYv
>>34修羅場スレや獣っ娘逆レイプスレじゃあるまいし、そんなにポンポンSSが出るかい。
37名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 14:23:03 ID:pKtcDv2g
……今、修羅場+逆レイプ+素直クールが妄想内で混じって凄い怖い思いをしてしまったんだが。
38名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 15:14:12 ID:F70Xqw9u
>>37
こういうことか?

ーーーーーーー

ピンポーン、ガチャ

男「はーい。なんだ素直か」
素「こんばんわ。上がらせてもらうよ」
男「え?ちょ、待って!」
素「その必要は無い」

ベッドに寝ている一糸纏わぬクール

素「何をしている」
ク「今の今まで愉しんでた所です」
男「クール!……睨まないで、素直」
素「男、私がいながらどういうことか、ゆっくり訊きたいんだが」
ク「時間をかける必要はありません。男さんと私は今日、ついさっき結ばれました。素直さんはもうお邪魔虫なんです」
素「クール、少し黙っていろ。男、どういうことだ。私というものがありながら」
男「え、いやあのね」
素「私と付き合っていて、中出しも幾度と無くしたというのに、こんな女とも?」
男「……ごめんなさい」
ク「男さん、どうして謝るんですか?」
男「あの、その……」

素「君のそういうところは嫌いではないが、言葉に出来ないなら、直接身体に訊くしかないな」
男「え?」
ク「私もご一緒します」
素「腹立たしいがお前も当事者だ、参加する権利はあるだろう」
男「え?え?」
素&ク「「今日は寝られると思うな?」」

数ヵ月後、ミイラ化した遺体が見つかったとか見つかってないとか。
39名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 18:47:55 ID:DaTvRDAk
な、成る程…
40名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 18:59:17 ID:24rk16Qq


クー「男。」
男「何だ?」
クー「私とまぐわおう。」
男「(マグワウって何だ?わからない以上ここは迂濶に了承するわけにはいかないな。とりあえずさぐりさぐりいってみようか。)」
クー「さあ、早くまぐわおう、男よ。」
男「あ、あれは面倒だからなぁー、今はちょっと無理かな。」
クー「確かにあれは終わった後、疲れるがその疲労感もまた気持ちが良くて、君と居れる幸せを改めて実感させてくれるのだよ。だからまぐわおう、男よ。」
男「(疲れるってことはスポーツっぽいな。ということはきっとこういう断り方ができるはずだ。)」
クー「男よ、さあ、まぐわうぞ。私はもう我慢できない。」
男「ちょっと待てよ、クー。大体あれは男と女がしても全然気持よくならないだろ。あれは男同士でやるからこそ気持良いんだよ。」


おしまい
41名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 19:12:34 ID:vIQ2sNiU
地獄だ
42名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 20:54:22 ID:DaTvRDAk
ねーよwww
43名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 21:07:47 ID:rQN9QWPy
>>40
あーあ……
44名無しさん@ピンキー:2007/07/01(日) 21:14:27 ID:F70Xqw9u
>>40
ちょwww
誰も言わないから言っとこう。アッー。

でもクールなら、クールならモロッコに行ってくれる……!
45名無しさん@ピンキー:2007/07/02(月) 01:40:48 ID:sYfEzmtF
wやwりwかwねwんw
46名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 21:18:48 ID:mPvm8Cub


クー「男。」
男「何だ?」
クー「私を孕ませてくれ。」
男「(ハラマセルってどういう意味だっけ?クーのことだからここで安易に了承するのは危険だ。ここはさぐりさぐりいってみるのが得策だな。)」
クー「さぁ、男よ、私はいつでも孕む準備が出来ているぞ。」
男「は、孕むのって結構大変だから、今はいろいろ無理だろ。」
クー「確かに君の言う通り孕むのは大変かもしれないが、そんなことよりも孕んだときのことを考えると、自然と笑みがこぼれてしまうのだよ。だから早く私を孕ませてくれ。」
男「(なるほど、孕むことは楽しいことなのか。だったらこう言えば…。)」
クー「さあ、男よ。私を早く孕ませてくれ、もう我慢の限界だ。」
男「落ち着けよ、クー。だいたい俺は孕ませるより孕むほうが好きなんだよ。そっちのほうが断然楽しいからな。」




おしまい
47名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 21:23:40 ID:gDxN38jU
榎木拓也みたいに辞書引けよw
48名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 21:26:16 ID:T8DaEc68
>>47
ナニゆえ赤僕!?
49名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 21:28:43 ID:FvVLMXcX
クーがどうしようか思案する様子を想像したら萌えた
50名無しさん@ピンキー:2007/07/03(火) 22:38:22 ID:Gjcj+xwX
ペニバンを付けた素クールに掘られる男を想像した
51名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 07:08:49 ID:LPAo1A6j
>>24
GJでおま。
二人とも似た口調なのが少々読みづらいけど、どちらの正確も好みでイイヨイイヨー
52名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 11:12:25 ID:YUmGqwgR
>>48
作中で「孕む」という言葉について国語辞典引いてなかったっけ?
53名無しさん@ピンキー:2007/07/04(水) 21:04:11 ID:bAIDCDBK
>>52
おk
5巻読み直した。
54名無しさん@ピンキー:2007/07/06(金) 02:00:09 ID:99xDVg/p
age
55 ◆uW6wAi1FeE :2007/07/07(土) 02:50:04 ID:BHEUQGml

さてさて、共同生活の行く末はどうなるやら……。
いや、二年後は既に一回目で描写してるんですが。

それでは、始まり始まり。
56 ◆uW6wAi1FeE :2007/07/07(土) 02:51:27 ID:BHEUQGml

 窓から差し込む陽光に照らされ、目を覚ました。
 当たり前だが、冬の朝は寒い。
 まだ頭が回転しない。起きている機能をフル活用し、もそもそと布団から這い出した。
 頭と身体の暖機運転を兼ねて、シャワーを浴びることにする。
「むぅ……」
 寝惚け眼でも、準備は勝手に進む。
 要は慣れだ。殆ど目が開いてなくとも、何処に何があり、どうすればいいのか把握していれば、生活空間程度の範囲ならば支障は無い。
 タオルと替えの下着を用意し、浴室へ向かう。
 脱衣所兼洗面所にて。普段なら気付く違和感にも気付けず。
「……――――」
 寝巻きを脱ぎ捨て、
「…………――――!」
 曇り硝子の先から聞こえてくる声も、右から左に抜け頭に入らぬまま開け放った。

 解放された蒸気を受けて、僅かに意識が覚醒する。
 閉じ込められていた気温と湿度は、より楽な方へと流れて風を作る。靄が晴れ、眼前に晒されるは見事な裸身。
 水気を帯びた艶やかな黒髪。すらっと長く伸びた手足。
 無駄な肉は削ぎ落としたかのようだが、スマートな印象に反して意外と肉付きは良く、特に胸の厚みなどは中々のものだ。
 ボーっとしたまま、視線を落とす。
 胸から腰、そして臀部へ。水の滴る道筋を、そのままなぞった。
 向かって横向きにシャワーを浴びているその人物は、シャワーを止めると半身をこちらに捻った。
 濡れたまま口を開き、何かを告げるが、音としてしか受け取れず、意味の理解は困難だった。
 視線を顔に、再び胸へと下ろす。
 さらに下ろし、臍に。そして、足の付け根へ。そこには、位置関係上、先程は良く見えなかったものがあった。
 後光が差すかのように堂々開陳したるは、厚い毛で覆われた……、

「…………まんもす?」

 間抜けな声を発した所で、ふと現状を自覚。情報が一気に脳に染み渡った。
 眼前の人物は、少し困った顔を見せるシンだった。
 全身の血が、頭に上る感覚。
「あのさ。ちょっと閉め――」
「きゃー! きゃー! 嫌ァー!」 
 耳を劈く悲鳴が上げると、あたしは手近なものを投げた。タオル、櫛、石鹸はもとより、歯ブラシ、コップ、剃刀にいたるまで。
 さすがのシンも、これには慌てる。
「うわ! ちょ、落ち着け!」
「ばかばか、変態!」
 顔を真っ赤に引きつらせ、形振り構わず取り乱す。全弾軽々回避するため、あたしのヒートアップは止まる所を知らない。
 あたしの混乱は、洗面所の小物が無くなるまで続いた。
57 ◆uW6wAi1FeE :2007/07/07(土) 02:52:37 ID:BHEUQGml



「まったく。酷い目に遭ったよ」
 ミサキとの共同生活開始より、丁度一週間。我が家での生活も慣れてきた緩みからか、初めての大騒動を朝っぱらからやってくれた。
 リビングにて、朝食と共に私が淹れた紅茶を出す。
 大騒ぎして落ち着いたミサキは、いくらか消沈しているように見えた。パンにバターを塗る動作も、今一つ精彩を欠いている。
 大胆に太腿を出した扇情的な衣装にしても、いつもの如く誘っているのか、単にそこまで気が回らないのか判断に苦しむ。
「だから、悪かったって……」
「寝惚けてたんじゃ、仕方ないけどね。さてと、何処から手を付けるか」
 思案を巡らせながら、私は紅茶を一口含む。
 やるべきことは、山のように発生した。普通に小物の片付けから始まり、タオルその他の洗濯、壊れたものの補充等。
 出費はどうでもいいが、何はともあれ面倒だ。
 すると、ミサキが片手を出しながら言った。
「いい。シンは休んでてくれ。あたしが責任持って片付ける」
 殊勝な心掛けである。
「仕方あるまいよ、あたしが油断してた。だがな、責任はシンにもあるぞ」
「どんな?」
「第一、何であんな時間に浴室を使っていたんだ?」
 確かに。普段は朝風呂などしない。それは、一週間も一緒に暮らしてれば、おのずと知れることだろう。
 しかし時には例外もあり。この朝は、その例外となる理由があった。
「徹夜仕事後のリフレッシュ」
 ま、一日二日の徹夜くらいどうってことないが、やはりサッパリする。暇があれば、それも一興だ。
「むう……しかし不思議だ。今朝はまだしも、日常的に受験生より遅寝早起きで身体が保つとは」
「そこは慣れと年季の違いというコトで」
「不健康だな。将来の為にも、改善を要求する」
 夜這いや、朝方にベッドに潜り込む等のイベントが実行出来ない、とのこと。
 こちらとしても、そういった発言の改善を要求したい。
「それにしても……。積極的に、と言う割りには、意外と初心なんだな」
「う、うるさい。寝起きに、寝起きにだぞ。あ、あんな……あんなモノ見せられて、平静でいられる処女がいるか!」
 ミサキは逆上し、主張する。
 が。
「あ、そうなの」
「…………」
 私の声で固まってしまった。私は、黙って彼女の反応を待つ。
「…………」
「…………笑っていいぞ。いや、笑え」
 お許しが出たので、思いっ切り腹を抱えて笑ってやった。
 一瞬ムッと顔をしかめられたが、先程の騒動の手前反論は無い。
 ふと、ミサキは赤面し、口に手をやりブツブツ呟いた。
「し、しかし……いずれアレが、あたしの中に入るのか。そうなると、さすがに……」
 何か聞き捨てなら無い言葉を耳にしたような。
「ミサキ。私たちの関係、ちょっと再確認してみようか」
「無粋な男だな。ここは流すべき所だろう?」
「待て待て。ここは流しちゃいけない所だろう」
58 ◆uW6wAi1FeE :2007/07/07(土) 02:53:18 ID:BHEUQGml
 私は懇切丁寧に、ミサキへと説明した。
 キミは受験のため押しかけてきたお客であること、本音はどうあれ当面の目的は合格率を可能な限り上げること、その目的のためならば協力は惜しまないこと。
 少し卑怯だが、悪い結果が出れば預かり主である私の面子が立たないとも付け加えておく。ミサキとしても、それは望まぬ結果だろう。
 ミサキは、黙って私の話を聞き、時折頷いていた。
 ご高説、心底感服したとの様子で、カップに口を付ける。
「ふむ。セイロンだな」
「それはダージリンだ。無理矢理に駄洒落で、聞いてないフリして誤魔化すのは止めようじゃないか」
「ちっ」
 あまり残念ではなさそうな舌打ちをして、ミサキは話題を変える。
「まあ冗談はともかく、勉強は真面目にやっている。それはそれとして、手を出す素振りすら無いというのはどういうワケだ?」
「どう、と言われてもね。他人様から預かった娘さんに手ぇ出すほど、私は飢えちゃいないし」
 実際あれからが大変だった。
 当然の礼儀として、暇を作ってはミサキの実家へと挨拶に顔を出した。愛娘の身の安全を心配し、一晩くらい説教されることを覚悟してたのだが……。
 逆に一晩中酒盛りに付き合わされた。どうも、既に散々惚気話を聞かされていたらしい。
 何だかんだで娘の男を見る目は信頼しているし、ならばその相手も信頼しているとのこと。後は、自らの目で確かめられればそれで良し。
「てなことで、酒でも呑んで、腹を割って話し合おうじゃないか!」
 とはお父上の弁。完全に娘の彼氏か何かと勘違いしていた。
 始終こんなノリだった。週末だったので、もう歯止めが利かない利かない。無理矢理ご相伴させられたあたり、八割方、酒盛りの理由が欲しかっただけと見た。
 きちんと理解してくれた感があるのは、奥さんだけだ。それも、言っても無駄だからと、苦笑でアイコンタクト成立。苦労人である。
 して、ミサキがより濃く継いでいるのは、父親の血の方なワケで。
「飢えているいないに関わらず、欲求はあるのが健康な男性というものではないのか。遠慮しなくていいんだぞ?」
「いや、いいんだぞって言われてもね……」
 むしろ遠慮するべきはキミの方なのだけどね。強引なのは、父親譲りか。
 この際、欲求云々は置いておくにしても、直面してみると非常に手を出しにくいシチュエーションである。
 下手に手を出せば、色々な意味で男としての何かが崩れ去る気がしてならない。
「むぅ……理性的と言うか、身持ちが固いと言うか、はたまた枯れていると言うか。力押しだけではなく、攻め方も考えるべきか……」
 やれやれ、怖い怖い。
 内容が私の耳に届かないよう配慮した呟きは、聞こえなかったものとして処理してあげよう。

 まあ今にして思えば、暫くの間、退屈だけはしないで済んだ、かな。

「やはり情報を制するのが得策か……まず、近所の奥さんに無いこと無いこと吹き込んで……いや、いっそクスリか何かを……」

 退屈よりは良いはずだ……多分。
59 ◆uW6wAi1FeE :2007/07/07(土) 02:54:58 ID:BHEUQGml


前哨戦終了です。
次回は、ちょっと事態が動くかもしんない。
60名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 03:31:37 ID:E0yckInu
GJ!
61名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 03:55:29 ID:PsSU9hp4
>>59
寝る前に巡回して良かった。
GJ。
62名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 07:36:44 ID:bjgzlOeS
GJです
63名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 12:39:53 ID:E7/Bx736
GJ!
wktkだ
64名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 18:51:36 ID:IwiW7NhX
瑞希の続きが読めますように。
七夕様お願い。
65名無しさん@ピンキー:2007/07/07(土) 22:41:08 ID:GV04zBDF
>◆uW6wAi1FeEさん
GJでした
気が向いたら珠樹ちゃんの続きとか書いていただけたらうれしいです。
66名無しさん@ピンキー:2007/07/08(日) 02:02:59 ID:rlM/SdHA
いつもながらGJ

このスレの作品が俺の支えだよ
67名無しさん@ピンキー:2007/07/10(火) 19:33:30 ID:cvnDtxTu
そうか?

俺なんかこのスレなかったら死んでしまう程度だけどな
68-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/12(木) 02:09:57 ID:wr42Mwym
リクエストくれた方、ありがとうございます。
明日の夜あたりに、続編を投下する予定です。
69名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 02:24:01 ID:vR0YZJnQ
>>68
wktkしながら待ってます
70名無しさん@ピンキー:2007/07/12(木) 02:39:27 ID:KZURrE1P
>>68
よっしゃあ!
ワクテカしながら全裸待機してます!!


とりあえず前スレさっさと埋めようぜ。
71-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:11:52 ID:csY2+HJr
もう少ししたら投下します。
72名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 00:23:00 ID:GoB06pm8
クルー
73-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:36:15 ID:csY2+HJr
-同級生型敬語系素直クール その4-


 話は少し遡る。

 雪雨瑞希(ゆきさめ みずき)が、恋人である日阪明俊(ひさか あきとし)の部屋に初めて訪れた日の、前日。
 時間で言えば、明俊がもう1回もう1回とせがんでいる瑞希をなんとかなだめ、家に送り届けた瞬間の、24時間
前のことである。

 丁度その時、駅から延びる商店街の一角にある花屋の前を、サラリーマン風の男が通りかかる所から、この話
は始まる。

 * * * * *

 仕事帰り、行きつけの花屋の軒先に飾られた、見事な紫陽花が目に入り、私は足を止めた。
 薄桃色、濃い紫、夏の空のように鮮やかな青…。山と咲き誇る紫陽花は、まるで雨後の虹のように鮮やかで、
その多彩な色合いに自然と目を奪われる。誘われるがままに、私は店内に入った。

「…“元気な女性”、か」
 立派な紫陽花に、思わず呟いた私の後ろ、店の奥から声が掛けられた。
「こんにちは、いらっしゃいませ。──紫陽花の花言葉ですね」
 エプロンを付けた店員がにこやかに歩み寄る。呟きを聞かれて、少々気恥ずかしい。私は誤魔化すように苦笑
し、紫陽花に視線を戻す。
「見事な紫陽花だから、つい、ね」
「今がシーズンですからね。この紫陽花は、今日入荷したみたいですよ」
「ほう」
 答えてから、他人事のように言う店員の言葉に気付き、振り返る。エプロンを付けた店員は、見覚えのある少
年だった。
「きみは確か……」
「あ、すみません。僕、本当は店員じゃないんです。店長さんに店番を頼まれてしまって…。急な配達が出来た
らしくて…」
 そう言って、少年がはにかむ。彼は、この店で何度か見た覚えがあった。名前は知らないが、常連客の一人だ。
「仕方ない店長だな。人に店番を頼むなんて」
 呆れる私に、少年は柔らかく微笑み、
「ここの店長さんは父の友人なんです。今日は用事があって来たんですけど…」
 捕まってしまいました。と、苦笑して、少年は頭の後ろを掻く。柔らかなそうな黒髪が、彼の人の良さと純朴
そうな雰囲気をかもし出していた。
「なるほど。…きみを、何度かこの店で見掛けた事があるよ」
「僕も、お客さんを何度か見掛けたことがあります」
 屈託のない笑顔を浮かべる少年につられて、笑みがもれる。彼と話をするのは初めてだが、なかなか好感が持
てる少年だ。歳の頃はウチの娘と同じくらいだろうか。このくらいの歳の男の子にしては、柔らかな居住まいで、
自然と頬が緩む。
「ここは、個人店の割には品揃えが良いからね」
「そうですね。僕もよく利用してます。──あ、すみません。ちょっと失礼します」
 店の奥から電話の音が鳴り響き、少年がぺこりと頭を下げて小走りに去る。その後姿を見送ってから、私は紫
陽花に向き直った。
74-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:37:25 ID:csY2+HJr
 “元気な女性”は、彼の言う通り紫陽花の花言葉だ。私の頭に、我が家の最近特に元気な女性が思い浮かぶ。
 最近、ウチの一人娘は何か良いことがあったらしい。余り感情を表に出さない娘だが、ここ一月ほどで随分と
表情が豊かになってきた。表情がくるくる変わる、とまでは到底行かないし、一般的にはまだまだ無表情に見え
るのだろうが、以前に比べれば大きな変化だ。
 元々、感情が表に出てこないだけで、無感動な娘ではなかった。どんな良いことがあったのか分からないが、
内面の感情が、正しく外面に表れるようになったのは良いことだ。
 娘の変化について、妻にそれとなく聞いたことがあるが、いつものにこやか顔で誤魔化された。まあ、悪い変
化ではないし、そのうち娘から言ってくるだろうと思い、私はそれ以上言及しなかった。娘はもう、高校生だし、
何でもかんでも親に報告するような歳ではない。
 そんな、物分りが良く、子離れが出来てる父親、と自画自賛しつつも、やっぱり少し、いや、本音を言うと、
かなり、寂しい。……今度、何気なく娘に、何か良いことがあったのかを聞いてみよう。

 親バカと思われるのを承知で言うが、ウチの娘ははっきり言って、すごく可愛い。親戚の連中も、娘に会う度
に「瑞希ちゃんは、まるでお人形さんみたいだねえ」と目を細める。自分もまさしくその通りだと思う。
 会社から帰って、玄関を開けた瞬間、「おかえりなさい。父さん」と出迎えてくれる娘を見ると、仕事の疲れ
なんて木っ端みじんに吹っ飛ぶ。思わず、ちょこんと可愛らしく佇む娘を抱き上げて頬擦りしたくなるくらいだ。
さすがにそれは我慢して、頭をぽんぽんとなでるだけに留めているが。
 今時の高校生にしてはずいぶんと小柄な娘は、妻のようなモデル体型に憧れているようだが、父親としては、
今くらいの方が可愛らしくて大変よろしい。「そういう、私をいつまでも子供扱いする所が嫌いです」と、ジト
目で言う娘を思い出し、思わず苦笑する。
「すみません。失礼しました」
「…ああ、いや」
 電話から戻った彼の声で我に返る。つい物思いに耽ってしまっていた。
「電話は店長さんからでした。もう少しで戻るみたいですけど、お待ちになりますか?」
「いや、今日はちょっと見に来ただけだから」
 これで失礼するよ。と言い掛け、ふと思い付く。
「いや、そうだな…。せっかくだから、この紫陽花をもらおうかな」
「あ、はい。ありがとうございます」
 お土産にしよう。最近元気な娘と、愛する妻。我が家の二人の女性が、いつまでも元気でいられるように。

 * * * * *

75-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:38:32 ID:csY2+HJr
「いやー、すまんね、明俊君。店番助かったよ」
「素人に店番をやらせないで下さいよ」
 明俊は、ほっと胸を撫で下ろして、配達から戻った店長を出迎えた。時間帯のせいか、客が余り来なかったの
が幸いだった。店側にとっては幸いではないだろうが、明俊にとっては幸いだった。
 短時間とはいえ、人の店を預かるなんて責任重大だ。何事もなく店番をこなすことが出来て、明俊は安堵する。
「大丈夫だよ。明俊君はそこらのプロより詳しいから」
 呑気にそんな事を言う店長に、明俊はエプロンを脱ぎながら、困ったように眉をしかめる。
「そんなことないですよ。それに、注文の電話とか宅配の依頼とか、そういうことはまったく仕組みを知らない
んですから」
 植物についての知識ならともかく、そういった店のシステムのことはさっぱりだ。
「そういうお客さんが来なくて、本当に助かりましたよ」
 店長が宅配に出かけている三十分ほどの間で、明俊が店員として接客したのは、先ほど紫陽花を買って行った
男の人だけだ。彼は何回かこの店で見たことがある。名前は知らないが、この店の常連客の一人だったので、明
俊は落ち着いて接客が出来た。
「じゃあいっそのこと、ウチで働いて、その辺も覚えてもらうってのはどうだい?」
「冗談はよして下さい」
 エプロンを店長に手渡ししつつ、明俊は苦笑する。
「僕には客商売は出来そうにないですよ。今日のでもう懲りました」
「いやいや、明俊君は物腰柔らかいから、接客にも向いてると思うんだけどなあ」
 半ば本気で言う店長に、明俊は自嘲気味に微笑む。
「ただ気が弱いだけですよ。それじゃ、僕はこれで」
「ご苦労さん。本当に助かったよ、ありがとう。今度、お礼に何かサービスするからね」
 そう言う店長に、ありがとうございます。と微笑み、明俊は店を後にした。

 * * * * *
76-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:39:33 ID:csY2+HJr
 カチャカチャと、ボウルに入ったドレッシングをスプーンで掻き混ぜながら、雪雨志鶴(ゆきさめ しづる)は
傍らの娘に声を掛けた。
「瑞希、それが終わったらレタスの用意もお願いね」
 瑞希は、一口サイズに切った鶏肉をキッチンパックに入れて、片栗粉をまぶしている最中だ。しかし、パタパタ
と透明なビニール袋を振って、鶏肉に満遍なく片栗粉をまぶしている瑞希は、虚空に視線を固定し、心ここにあら
ずといった様子だ。
「瑞希?」
 その様子に気付き、志鶴がドレッシングを掻き混ぜている手を止める。
 しかし瑞希は二度目の呼び掛けにも応じず、パタパタとロボットのように機械的にビニール袋を振り続けている。
「……瑞希?」
 パタパタパタパタ…。
「み・ず・き」
 パタパタパタパタ…。
「み・ず・き・ちゃん!」
「ひゃあ!」
 唐突に母親に後ろから抱きすくめられ、瑞希が飛び上がった。
「か、母さん!? 驚かさないで下さい!」
 危うくビニール袋を取り落としそうになる。すんでの所で両手で抱え、難を逃れた。
「瑞希ってば呼んでも全然気付かないんだもの。何をぼーっとしてるの?」
「え? 私呼ばれてました? 全然気付きませんでした」
 瑞希は驚いて後ろの母を見る。後ろから抱きすくめられたまま、首だけ動かして自分よりも頭二つ分ぐらい背
の高い母を見上げる。
「何か悩みごとでもあるの? 瑞希」
 いつものにこやかな表情を絶やさず、志鶴は娘を見下ろす。
「あの…」
 瑞希は口を開きかけ、頭の後ろにある大きな膨らみに気付く。ぽよんと、その温かな膨らみに頭を預けてみて、
感触を確かめる。
「あらあら、どうしたの瑞希?」
 小さな子供のように胸に寄り掛かる娘に、志鶴はくすくすと微笑む。そんな母とは対称的に、瑞希は大きくた
め息をついた。
「…母さんくらい、胸が大きくなりたいです」
「あらそう?」
 母親の志鶴に比べて、瑞希の胸は非常にささやかだ。
 母の、エプロンをふっくらと押し上げている豊かな双丘に対して、瑞希のそれは、すとーんと気持ちいいくら
いの絶壁だ。全然膨らみが無いわけではないが、服の上からはほとんど膨らみが認められない。小さな身体も相
まって、瑞希はまるで人形のようだ。
「せめて、もうちょっと胸が大きくて、もうちょっと背が高くなりたいです」
「瑞希はそのままでも十分可愛いわよ。お母さんは、お人形さんみたいな今の瑞希が好きよ?」
 優しく言って、志鶴は娘のつむじ辺りに頬擦りする。高校生の娘と母親のスキンシップにしては、やや過剰だ
が、瑞希はされるがままになりつつ、
「そんなこと言われても、あまり嬉しくありません」
 呟くように言って、力なくうつむく。そして、また大きくため息。
 その様子に、あらまあ、今日のはなんだか重症ねえ…と、志鶴は困ったように首をかしげる。瑞希が前々から
自分の体型にコンプレックスを抱いているのは分かっていたが、今日の落ち込み方は今までにない大きさだ。
「…男の人は、やっぱりスタイルが良い方がいいのでしょうか……」
 誰に言うでもなく、瑞希が呟く。そのセリフで、志鶴はピンと来た。
77-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:40:29 ID:csY2+HJr
「彼と、うまく行ってないの?」
「いえ。私と明俊君はラブラブですよ?」
 きっぱりと、瑞希が即答する。志鶴は思わず吹き出しそうになった。
「じゃあいいじゃない」
「今でもラブラブですが、私のスタイルが良かったら、もっとラブラブになれるような気がするんです」
「どうして?」
「頑張って明俊君を誘ってるんですが、効果が芳しくなくて…」
 そう言って、またため息。瑞希はちらりと母親の豊満な胸に視線を送り、
「母さんぐらいスタイルが良ければ、明俊君もその気になってくれたかも知れないと思うと…」
 ふう、と、またまたため息。ため息尽くしだ。
 明け透けな瑞希の告白に、志鶴は思わず苦笑する。娘が恋人を連れて来た時に、いつかこんな話が出るだろう
と確信していた。志鶴は娘を安心させるように、優しく言う。
「余り焦っちゃ駄目よ、瑞希」
「ですが…」
「あんまり迫るとね、男の子はかえって逃げちゃうものなのよ?」
「…そうなんですか?」
「そうよ」
 志鶴は自信たっぷりに言い切る。娘の悩みは理解出来る。自分も経験があるからだ。

 高校時代に夫に出会い、一目惚れ。即座に告白して付き合うことになったは良かったが、自分達が初めて結ば
れたのは、付き合い始めてから4ヶ月後だった。正確には121日後の8月5日。
 その間、毎日誘っていたにも関わらず、夫は誘いに乗ってくれなかった。当時から大きかった胸を押し付ける
のは当たり前に行いつつ、朝早くに彼の家にお邪魔し、寝床に潜り込んだことも1度や2度ではない。
 そんな猛烈なアプローチを4ヶ月も重ねて、やっと夏休みに結ばれた。
 娘の恋人とは一度しか会っていないが、彼は高校時代の夫よりも純情そうに見えた。自分達のケースよりも時
間が掛かるかも知れない。瑞希はさぞやきもきしていることだろう。
 志鶴は分かる分かると、ひとり頷く。
78-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:41:28 ID:csY2+HJr
 実の所、娘とその恋人は、付き合い始めたその日のうちにしちゃってるわけだが。おまけにその翌日には、父
と母が結婚記念日で家を空けている隙に、この家で日が暮れるまで貪りあってたわけだが。そんな事になってる
とは、志鶴は夢にも思っていないようだ。
 瑞希の悩みは、恋人と初めて結ばれることではなく、自分は明俊と毎日のようにエッチしたいのに、明俊は安
全に出来る場所にこだわり、誘いに乗ってくれないことだ。自分はどこでも良いのに、もう2週間近くも、正確に
は11日もエッチしていない。そろそろ我慢の限界になってきた。
「では、どうすればいいんでしょうか」
 瑞希はすがるような目で母を見上げる。ここ1週間ほどで思い付く限りの誘惑はしたつもりだ。

・誘惑その1
 毎朝のキスだけでは我慢出来なくなり、移動教室でクラスメイトが居なくなるタイミングを見計らってキスを
強行。そのまま我慢出来なくなり机に押し倒そうとしたが、誰かが探しに来るよと説得され、仕方なく諦めた。

・誘惑その2
 もう、居ても立ってもいられなくなり、図書室に強引に連れ込んで抱きついた。頭の中がエッチな気分で一杯
だったが、邪魔者(先生だが)が入り、彼に逃げられた。

・誘惑その3
 彼がトイレに入るのが見え、気が付いたら後を追い掛けていた。躊躇なく男子トイレに入り、彼を個室に引っ
張り込む。むき出しの彼のものを見た瞬間に、キレた。自分はもう、完全に出来上がっていたのに、彼の強固な
抵抗にあい、断腸の思いで断念した。

 これだけ誘っても、明俊は陥落しなかった。これ以上、どうやって彼を誘惑すればいいのか分からない。場所
だけの問題なので、ホテルにでも行けば良いのだろうが、さすがにホテルには抵抗があった。
 明俊を想って毎晩自分を慰めているが、それももう限界だった。むしろ、独りですればするほど明俊が恋しく
なっていくのを感じ、このままでは気が狂ってしまいそうだ。
79-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:42:28 ID:csY2+HJr
「瑞希、あなた、恋人に抱きついたりキスしようとしたりして誘ってたでしょう?」
「はい、そうですが」
 母の質問に、それが何か? と言わんばかりに瑞希が答える。
「日阪明俊君…って言ったわね? 彼みたいな男の子は、強引に誘ってもきっと逆効果よ?」
「……この1週間で、それはなんとなく分かりました」
 最初の方こそ強引にいってもエッチに持ち込めたが、最近は通用しなくなって来た。
「そういう時はね、別のアプローチをするのよ」
「なるほど…。して、そのアプローチとは?」
 いよいよ核心に迫り、瑞希は真剣な表情で母を見上げる。
「ズバリ、手作りのお弁当よ」
「手作りのお弁当…!」
 それは、非常に魅力的な提案だ。自分はそれなりに料理には自信がある。彼が自分のお弁当を美味しそうに食
べる姿を想像し、瑞希は口元が緩む。
「なるほど。いいですね、お弁当…」
 うっとりと夢心地で瑞希が呟いた。
「男の人は、美味しい料理の元に帰ってくると言われているの。恋人と肉体的な関係を持ちたいと思うのは分か
るけど、こういった繋がりもいいんじゃない?」
「母さん、ありがとうございます。とても良い事を聞きました。早速、明俊君に電話して、明日のお弁当は私が
作りますと伝えてきます」
「ちょっと待ちなさい、瑞希」
 鶏肉が入ったビニール袋を握りしめたまま、電話しに向かう瑞希を、志鶴が止める。
「彼は、いつもお弁当なのかしら?」
「たしか、そうだったはずですが…」
「じゃあ、連絡する必要はないわね」
「何故ですか?」
 事前に伝えておかなければ、彼はいつも通りお弁当を持って来てしまうだろう。そうすると、自分が作ったお
弁当と、彼が持参したお弁当の2つになってしまう。
 瑞希の疑問に志鶴が得意げに答える。
「彼にはあなたのお弁当を食べてもらって、あなたは彼のお弁当を食べるの。そうすることで、彼にはお弁当を
 食べて貰えて、かつ、彼のお弁当を食べる事で、彼の家庭の味を覚える事が出来るのよ」
 まさに一石二鳥! と志鶴が言い放つ。その言葉に、瑞希はショックを受けた。
「パ…、パーフェクトです! 母さん!」
 まさにパーフェクトミッション、完全作戦だ。と瑞希は感動する。
「ふふふ…。この作戦は、お母さんがお父さんに対して使った作戦なの。効果は実証済みよ」
「母さん…!」
 感激し、手と手とを取って喜びあう母娘を、玄関から発せられた声が現実に引き戻す。
80-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:43:39 ID:csY2+HJr
「ただいまー」
「あら、いけない。まだ全然夕飯の支度出来てないわ」
 そう言いながらも、志鶴は一先ず玄関へ出迎えに行く。瑞希も後を付いて行った。
「おかえりなさい。あなた」
「父さん、おかえりなさい」
「ただいま。はい、これ。お土産」
「あら? 綺麗な紫陽花ね」
 志鶴が鞄を受け取り、瑞希が紫陽花の花束を受け取った。
「うん、花屋で見てね。あまりに見事だったから」
 志鶴の夫であり、瑞希の父親である雪雨家の大黒柱、雪雨士郎(ゆきさめ しろう)は、玄関に上がると、花
束を抱えている娘の頭をぽんぽんなでる。瑞希は若干眉をしかめるが、特に文句は言わなかった。父は会社から
帰ると、必ずこうやって瑞希の頭をぽんぽんするのが日課だった。もう高校生なんですから、子供扱いはしない
で下さいと、何度言っても止めなかったので、今ではもう諦めている。
 そんな父を瑞希は見上げ、
「父さん。プランターのバジルを使わせてもらえませんか?」
「ん? いいよ」
 士郎は趣味でプランターにハーブ類を育てている。それらは家族共有の財産として、自由に使っても良い事に
なっていた。そのため、わざわざ確認を取る娘に、士郎はちょっとした違和感を覚える。
 父が感じている違和感を察知したのか、瑞希は理由を口にした。
「お弁当に使おうかと思いまして」
「え? 瑞希がお弁当を作るのかい?」
「はい、そうです」
 きっぱりと言い切る娘に、士郎は戸惑いを隠せない。弁当を? 瑞希が?
「ほ、本当に?」
「ええ。こんなことで嘘をつきません」
 うわ、うわ、どうしよう…! 士郎はまるで子供のように顔がにやけるのを感じた。どうやら明日の弁当は、
娘が作ってくれるらしい。これはやばい。嬉し過ぎる。士郎は小躍りしたくなる衝動を必死に押える。砕け散り
そうになっている父親の威厳を掻き集め、極力平静を装おう。
「そういうことなら、ハーブだろうがなんだろうが遠慮なく使っていいよ」
「ありがとうございます」
 廊下をスキップしそうな勢いで、士郎は一旦寝室に入り、スーツを脱いで部屋着に着替え始める。興奮のせい
か、微妙に手がおぼつかない。
 志鶴は夫が脱いだスーツを受け取ってハンガーに掛けつつ、年甲斐もなく浮かれている夫の様子を、楽しそう
に眺めている。
 夫はどうやら勘違いをしているようだ。娘は恋人の弁当を作るつもりなのに、それを自分の弁当だと勘違いし
ている。
 ふん、ふん♪ と、夫はまるで鼻歌でも歌い出しそうなくらい上機嫌だ。教えるべきか、黙っているべきか。
志鶴は可笑しくなって、くすくすと笑ってしまう。
「ん? どうしたの?」
「ふふっ、なんでもないわ」
 まるで遠足を翌日に控えた子供のように楽しげにしている夫を見て、やっぱり黙っておこうと志鶴は思った。
この状況で黙っているのは意地悪かもしれないが、娘に恋人が出来たという報告は、やはり本人からするべきだ
ろう。期待している夫には悪いが、ここは黙っていた方が良さそうだ。
 娘を溺愛している夫が、娘から恋人が出来たと報告された時の反応を想像して、志鶴はまた可笑しそうにくす
くすと微笑んだ。

 翌日、事の真相を知った士郎が、目も当てられないほど狼狽したのは言うまでもない。

 * * * * *
81-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:45:30 ID:csY2+HJr
 そんなこんなで、瑞希が二人分の弁当を作り始めて、そろそろ2週間が経とうとしている、現在。それはすな
わち、瑞希が明俊と毎日エッチ出来る環境を手に入れてから2週間が経とうとしている、ということでもあった。

 明俊は教室で、今自分が置かれている危機的状況に渋面を作っていた。
 当たり前だ。こうなることは、予想出来たはずだ。
 明俊は採点されて返って来た小テストのプリントを見て、ため息をついた。マルよりもバツが多く、口にする
のも憚れるような点数が付けられている。
 いくら苦手な数学とはいえ、これは酷い。このままでは、来週に行われる期末試験が散々な結果になるのが容
易に想像でき、明俊はこの現実から逃げるかのように、点数から目を逸らした。

 こんな点数を取ってしまった原因は分かっている。最近、勉強の時間が極端に減ってしまっているからだ。そ
の理由は、言わずもがなだが、瑞希との付き合い方にあった。
 学校が終わった後、帰宅する明俊に瑞希は当然のようにくっついてきて、明俊の部屋で満足するまでセックス
に励むのだ。彼女は一回で満足することはほとんどなく、大抵は二回から三回ほど求めてくる。しかも、その状
態が毎日のように続いているのだ。いくら若いとはいえ、これでは体力が持たない。
 自然と明俊は夜早くに寝てしまうようになり、その結果、勉強の時間が減ってしまったわけだ。

 当然、瑞希にセックスの回数を減らす提案はした。せめて3日に1度とか、間を空けない? と提案した所、
「明俊君に抱かれる幸せと心地よさを、もうすっかり身体が覚えてしまいました。なので、3日も間が開くのは耐
えられません。オナニーで発散させようとしても、独りですればするほど、逆に余計欲しくなってしまうんです」
 と真顔で言われて、明俊は赤面して二の句を告げることが出来なかった。
 それでもなんとか、身体が持たないから、と訴えてみた所、翌日の弁当がにんにく尽くしになった。教室中に
にんにくの匂いが充満し、それはそれは大変だった。クラス中から文句を言われ、理由を説明するわけにもいか
ず、明俊は心の中で泣きながらクラスメイトに平謝りした。
 瑞希に、涙ながらに勘弁して下さいと懇願すると、翌日の弁当は普通に戻った。しかし3日ほど経って、明俊
はあることに気付いた。おかずが牡蠣と大豆とレバーばかりで構成されていたのだ。瑞希に理由を尋ねた所、と
んでもない答えが帰って来た。
「これらは亜鉛を多く含む食材です。亜鉛は精液の量を多くするらしいですよ?」
 にこやかに言われて、明俊は卒倒しそうになった。そんな、亜鉛なんて塩酸に入れて水素を発生させるくらい
しか知らないよ…。
 そして、「もう、普通のお弁当にして下さい…」と力無く頼み込み、エッチの回数も変わることなく、現在に
至る。
 とはいえ、なんとかしないとなあ…と、明俊は机につっぷしそうになる頭を、シャーペンの尻でなんとか支え
ながら、正面に目を向ける。
 黒板の前では、教師が小テストの解答とポイントの解説をしている。「この公式は、期末に出るからな。今回
の小テストで出来なかったヤツは、きちんと覚えておけよ」と、丁寧に解説してくれているが、明俊はそれより
も、「期末試験が近い」という現実を改めて突きつけれた気分になって、げんなりする。
 ため息をつき、ロクに回らない頭のまま、ノートを取り始めた。

 * * * * *
82-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:46:31 ID:csY2+HJr
「3………、2………、1…」
 下校中、明俊の横を、手が触れるか触れないかぐらいの距離で歩く瑞希が、嬉しそうに呟いている。
「……0!」
 同時に、飛び込むような勢いで、瑞希が明俊の腕に抱きついた。
「はあぁ……。幸せです……」
 そして、心の底から嬉しそうに呟き、明俊の腕に頬を摺り寄せる。
「あはは…」
 下校時にいつも繰り返される行動ながら、明俊は思わず苦笑し、乾いた笑いが漏れた。
 学校から程よく離れた通学路。「日下部フラワーショップ」と書かれた看板が掛けられた電信柱を境に、明俊
とのスキンシップが“解禁”されるのだ。
 登校時はこの電信柱を越えると、瑞希は明俊の腕を放さないといけないが、下校時は、この電信柱を越えれば
明俊の腕を抱き締めても良いという約束になっている。
「ああ、8時間ぶりの明俊君の腕は、また格別ですね。朝はあの電柱を見ると悲しい気分になりますが、帰りには
とても待ち遠しい気分になります」
 そう言って、瑞希が明俊を見上げる。満面の笑顔に明俊はドキッとするが、瑞希のセリフはどちらかというと、
仕事帰りにビールを一杯飲み干して「このために生きてるようなもんだ」と言うサラリーマンに近いものがある。
明俊は照れるような可笑しいような、微妙な表情で瑞希を見下ろした。
「ところで瑞希さん、数学の小テストの結果はどうだった?」
 明俊は誤魔化すように違う話題を振った。これは、数学の授業を受けている時からずっと聞こうと思っていた
ことだった。
「10問中、9問正解でした」
「うわ、すごい!」
 事も無げに言う瑞希に、明俊は驚く。
「でも、1箇所ちょっとミスしてしまって…」
「いや、それでもすごいよ」
 ほとんど満点なのに、瑞希は自分の出来に不満があるようだ。不服そうに眉をしかめている。
 さすが瑞希さん、学年トップクラスの成績は伊達じゃないなあ…。その様子に、明俊は素直に感心する。
「明俊君はどうでした?」
「あー、いや、その、……4問しか当たってなかった」
「あら、そうだったんですか。明俊君、数学苦手ですものね」
「うん、まあそうなんだけど、ちょっとこれは酷いなあって、凹んでる」
「調子が悪かったんですか?」
「うーん、というかね? あのさ、瑞希さん」
「はい、なんですか?」
「提案があるんだけどさ、いいかな?」
「ええ。──なんですか?」
 歯切れの悪い明俊に、瑞希は不思議そうに小首を傾げながら先を促す。
 明俊は言おうと思っていたことを口にすべく、瑞希に向き直った。
「しばらくさ、その、え、エッチをさ、控え目にしない? ほら、来週期末試験でしょ? だから、それまでは
勉強に専念するってことでさ」
「………」
 様子を伺うように途切れ途切れになりつつも、つい早口でまくしたてた明俊の言葉に、瑞希は途端に不機嫌そ
うにそっぽを向いた。
83-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:47:28 ID:csY2+HJr
 瑞希の反応の若干怯みながらも、明俊は諭すように続ける。
「えっと、さすがにこの点数はちょっと気合入れて勉強しないとマズいなあって思って。だから、ね?」
 説得する明俊を、瑞希が覗き込むようにして見上げてくる。
「私は逆に、明俊君とエッチが出来ないとテストに集中出来なくなって、酷い点数を取ってしまいそうです」
「そ、そんな…。今まで平気だったでしょ?」
「今まではそうでしたが、今はもう、明俊君と抱き合えないなんて耐えられません。少しでも長く明俊君と触れ
あいたいんです。明俊君と身体を重ねている時の幸福感は、筆舌に尽くしがたいほどですから」
 明俊にとって、瑞希のこの反応は、実に予想通りなのだが、実際に言われると、なんというか……物凄く恥ず
かしい。腕を強く抱き締め、真直ぐ見上げてくる瑞希に、明俊は恥ずかしさに視線を逸らし、言葉に詰まってし
まう。
 言葉を失っている明俊に、瑞希はいたずらっぽい微笑みを向け、付け足す。
「それに、とっても気持ちが良くて、もう完全に明俊君の虜になってしました」
「と、虜って…」
「もう明俊君から離れられないということです。身体が完全に明俊君の味を覚えてしまいましたから」
「あ、味!?」
 腕に身体をぴたりと密着させて言う瑞希の明け透けなセリフに、明俊は顔が火照るのを感じた。
 こ、このままではいけない。恥ずかしくて何も言えなくなってしまう。明俊は慌てて説得モードに入った。

 僕も瑞希さんとエッチするのは、その、好きだけど、やっぱり勉強の時間を犠牲にするのはどうかなと思うん
だ。あ、いや、もちろん、瑞希さんとの付き合いをないがしろにするつもりはないよ? でもほら、バランスと
いうかね、勉強と恋人らしい過ごし方の2つは、両立出来るんじゃないかなと思うんだ。と、必死に説得。
「まあ、瑞希さんの成績が下がっていないのに、僕に合わせてもらうのは、もちろん悪いとは思っているんだけ
ど…」
 明俊は心の中で自分の頭の出来を嘆いた。瑞希は別に成績に影響が無いのに、自分はもろに影響が出てしまっ
た。これは自分の頭が問題なのであって、瑞希のせいではない。瑞希との性生活が負担になっているのは確かだ
が、自分の都合で瑞希に我慢を強いるのは、筋の通らない話だ。
 情けない思い一杯で言った明俊に、瑞希がかぶりを振った。
「明俊君の成績が私のせいで下がるのは、私としても不本意です。…そうですね、期末試験が終わるまで、エッ
チを控えたほうがいいかもしれませんね」
「え? ホントにいいの?」
 散々説き伏せるセリフを吐いたのは自分だが、予想外にあっさり承諾されて、明俊は拍子抜けする。
「もちろん残念ですが、私は構いません。でも、その代わり、提案があります」
「ごめんね僕のせいで」
 明俊は謝りつつ、なに? と先を促す。
「明俊君の家で、2人で一緒に勉強するのはどうですか?」
 瑞希の提案に、明俊は「なるほど、それはいいね」と即答しそうになるが、一瞬考えてから口を開いた。
84-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:48:31 ID:csY2+HJr
「……なるほど、それはいい提案だね」
「ですよね? では早速明俊君の家に急ぎましょう」
 嬉しそうに微笑んで明俊の腕を引っ張る瑞希に、明俊が待ったをかける。
「でも、勉強するなら学校の図書室の方がいいよね?」
「そうですか? 私は明俊君の家の方がいいと思いますよ?」
 明俊の言葉に、瑞希はキョトンとしたように答えているが、微かに目が泳いでいる。普通では分からない変化
だが、気付かない明俊ではない。
 明俊はジト目で瑞希を見つめ返す。
「瑞希さん、駄目だよ? 僕の家で一緒に勉強するなんて言ってるけど、絶対、エッチする気でしょ?」
 この時期の図書室は、放課後に残って勉強している生徒がそれなりにいる。対して明俊の家は、確実に2人っき
りになってしまう。そんな状況で、瑞希が大人しくしているとは思えなかった。
 明俊の疑惑の視線に、瑞希はふいっと顔を逸らし、
「そんなことはありません」
「そっぽ向いて言っても説得力無いよ…」
 思わずため息をつく明俊に、瑞希はわざとらしく悲しげに睫毛を伏せる。
「私を信じてくれないなんて、悲しいです…」
「じゃあ、瑞希さんは、僕の部屋で2人っきりで勉強しててもエッチを我慢できる?」
「そんな、私を発情期のネコみたいに言わないでください」
「じゃあ、我慢出来るんだね?」
「………」
「………」
 しばし無言で見つめ合うが、明俊の問い詰めるような視線に耐えられなくなったのか、瑞希が視線を逸らす。
「……もう、明俊君のいじわる。我慢出来るわけ、ないじゃないですか」
 拗ねるように唇を尖らす瑞希に、明俊は苦笑する。やっぱりエッチする気だったか。というか、瑞希は自分で
言った「発情期のネコ」というセリフを認めてしまっている。それに気付いて、明俊は瞬間的に顔が熱くなる。
「誰にも邪魔されない環境で明俊君と居たら、エッチしたくなるに決まってるじゃないですか」
 完全に開き直って、さも当然のように言う瑞希のセリフに、明俊は更に顔が火照ってどうしようもなくなり、
「それもどうかと思うよ…」
 と力無く突っ込むことしか出来なかった。

 * * * * *
85-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:49:31 ID:csY2+HJr
 とりあえず、「図書室で一緒に勉強」という案で話はまとまった。
 その日から、明俊にとって、実に2週間ぶりとなる休精日が訪れることとなった。期末試験が終わるまでなの
で、休精期間とも言えるが、とにかく、明俊にとっては勉強に集中出来る期間が出来たので一安心だ。

 瑞希は不満そうだったが、
「瑞希さん、図書室で一緒に勉強するのと、自宅で別々に勉強するのはどっちがいい?」
 と聞くと、明俊を真っ直ぐ見上げて即答。
「明俊君の家で一緒に──」
「却下します」
 そう言うと思った…。明俊はため息混じりに切り捨てる。
「…もう、いじわる」
 瑞希は不満げに目を逸らすと、しぶしぶ、「図書室で2人で勉強する方がいいに決まってるじゃないですか」と
答えた。
 思わず心の中で一息つく明俊に、
「その代わりと言ってはなんですが、お願いがあります」
 そう言って、瑞希がいたずらっぽい微笑みを向ける。
「な、なに?」
 明俊は思わず身構えた。瑞希がこの表情をする時は、無茶なことを言い出す前兆に他ならないからだ。
 そんな明俊の心配をよそに、瑞希は小首を可愛らしくかしげ、覗き込むようにして見上げて口を開く。
「明俊君の制服のYシャツか体操服を、しばらく貸してくれませんか?」
「………何に使うの…?」
 前にもこんな展開があったような……まさかアレに使う気じゃあ……。
 嫌な予感全開で、疲れた顔で問う明俊に、瑞希は当然のように答える。
「オナニーのオカズにしようと思いまして」
「やっぱり……」
 明俊は思わず肩の力が抜け、遠い目をしてしまう。
 予想通りだけど……出来れば外れて欲しかった…。
「なんで突然、お、オカズなんて欲しがるの…?」
「だって、期末試験が終わるまで明俊君とエッチ出来ないんですから、オナニーで発散させるしかないじゃな
いですか」
「だ、だからって、別に僕の服を欲しがらなくても…」
「駄目ですか? あ、もちろん、私も明俊君にオカズとしてパンツを提供しますよ?」
「要らないから!」
 思わず叫んだ。一体何を言い出すんだ、瑞希さんは。呆れる明俊に瑞希はくすくすと微笑む。
「でも明俊君、私のパンツ好きですよね? 前に気持ちよかったって言ってましたよね?」
「いいい言ってないよそんなこと!」
 咄嗟に否定しつつも、以前、瑞希に渡された(というか仕込まれてた)下着を思い出し、明俊は顔が真っ赤
に染まる。
「…というか、もう、お願いだからその話を引っ張るのは止めて…」
 明俊はほとんど泣きそうな勢いで瑞希に懇願するが、瑞希はいたずらっぽい表情を浮かべたまま、更に明俊
を追い詰める。
「男の人がどういう風に独りでするか、よく知りませんが、興奮するためのネタは必要ですよね?」
「ネ、ネタって…」
 あまりのセリフに真っ赤な顔のまま呆然と言葉を返す。
「あ、もちろん、私のネタは明俊君ですよ? 明俊君に突き上げられてるのを想像して指でこう…」
「ちょ、そんなこと説明しなくていいからっ!」
「私は、明俊君が私以外のもので興奮して精液を出すのは嫌です。だから、私のを使って下さい」
「いやいや! そもそもするって決まってないから!」
「えー」
「えー、じゃないよっ!」
86-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:50:48 ID:csY2+HJr
 そんなやり取りをしながら、最終的には、
「明俊君のYシャツと私のパンツを交換するまで、この腕を離しません」
 などと、とんでもないことを言い出す瑞希に、仕方なく、明俊は承諾した。
 交換しても、別に自分は使わなければいいだけだ。というか、そもそも使うつもりもない。僕はそんな変態
じゃないし。……この前のはちょっとした気の迷いだ。うん。
 そう高をくくる明俊だったが、考えが甘かった。

「明俊君のYシャツを抱きしめながらのオナニーは、とっても気持ちよかったですよ?」
 翌朝、瑞希はいきなりこんな報告をしてきた。
 さらに次の日も、
「昨日もまた明俊君のYシャツのお世話になりました。Yシャツに顔を埋めて、明俊君の匂いを胸一杯に吸い込
むと、それだけで濡れて来ちゃうんです」
 そしてまた次の日も、
「昨夜は、裸になって明俊君のYシャツだけを着てオナニーしてみました。ちょっと怖いくらい興奮しちゃって、
声を我慢するのが大変でした。おかげで今日は少し寝不足なんです」

 毎日毎日こんな調子でオナニーの報告をしてくる瑞希に、明俊はもう、どうにかなってしまいそうだった。
 明俊とて、健康な男子高校生だ。人形のように可愛い彼女が、自分のYシャツでオナニーしてる様子をこうも
生々しく報告されては、性欲の溜まり具合が加速される一方だ。しかも、ご丁寧に彼女に下着まで渡されてい
るのだ。
 夜中、ふとした拍子にスイッチが入ってしまい、発散させたくなってしまいそうになるのを無理矢理押さえ
込んだのは、1度や2度ではなかった。
 適当に済ませてしまえば良いものを、彼女にオカズ用にとショーツを渡されている手前、それを使わずに
済ませるのは彼女を裏切るようでとても出来なかった。さりとて、彼女の下着を使って発散させることも出来
ずに、ともすれば噴き出しそうな欲望を、明俊は持ち前の鋼の生真面目さでもって押さえ込んでいた。

 しかし、困ったことばかりではなかった。
 放課後、毎日のように瑞希と図書室で勉強をしているおかげで、今度のテストはかなり良い成績を修めるこ
とが出来そうだった。
 瑞希はさすがに学年トップレベルの成績だけあって、教えるのも上手だった。勉強に集中出来る場所と、分
からない所を教えてくれる先生がいる理想的な環境で勉強が出来、1週間足らずの勉強期間だったが、明俊は
苦手な数学も随分と理解することが出来るようになっていた。

 * * * * *
87-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:51:49 ID:csY2+HJr
「期末試験まで、あと3日ですね」
「うん。こんなに余裕をもって臨めるテストは初めてだよ」
 今日も下校時間ギリギリまで図書室で勉強をし、明俊は確かな手応えを感じながら瑞希と一緒に校門を出る。
 期末試験まであと3日だが、試験範囲はあらかた終わり、後は自信の無い箇所を復習して行くだけだ。瑞希を
家まで送ったら、帰りに本屋に寄って行こう。参考書を買ってこないといけない。
 そんなことを考えている明俊に、瑞希が問いかける。
「明俊君、土日は何か予定あります?」
「ん? 家で勉強してるつもりだけど?」
 今日は金曜日で、週明けの月曜から期末試験がスタートする。明俊はこの土日は自宅でがっつり勉強するつ
もりだった。
「では、私も明俊君の家で勉強します」
「よし、じゃあ、街の図書館にでも行こうか?」
 即答する明俊に、瑞希は唇を尖らせる。
「明俊君、最近いじわるです。そんな即答しなくてもいいじゃないですか」
「瑞希さんだって、断られるの分かってるクセに…」
「話の勢いで“うん、いいよ”って言ってくれるかなと」
「言わないから。そもそもそんな話の流れじゃ無かったでしょ…」
「冗談ですよ」
 絶対に冗談じゃないと思う…。しれっと言う瑞希に、明俊は思わず疑いの眼差しを向けてしまう。
 そんな明俊を知ってか知らずか、瑞希はにこやかに微笑んで楽しげに言う。
「では、私の家で一緒に勉強しませんか?」
「え? えーっと…」
 突然の提案に明俊は口籠る。
 瑞希と一緒に勉強するのは、大いに助かる(2人っきりという状況は除くが)。それは、ここ1週間の図書室
での勉強の成果が物語っていた。でも、週末に彼女の家に行くと言うことは──
「父も明俊君に会いたがっていますし、どうですか?」
「あー…。そ、そうなんだ…」
 そうだ。恋人の父親と面会という重大なイベントが発生してしまうわけで。もちろん、明俊もいつかは挨拶
に行きたいと思っていたが、なかなか思い切りが持てないというか、踏ん切りが付かなくて今日まで挨拶出来
ずにいた。
「土日は父も母も家に居ますから、何もしませんよ。襲ったりしませんから安心して下さい」
「そ、そういうことを心配してるんじゃないよ」
 逡巡していた明俊に、何を思ったのか瑞希がそんなことを言ってくる。明俊は慌てて否定した。
「私としては、明俊君の方から襲いかかってくれると嬉しいのですが…」
「そんなことしないからっ!」
 いたずらっぽい表情でそんなことを言ってくる瑞希はとりあえず置いておいて、明俊は思い悩んだ。急に恋人
の家族と対面するのは心の準備が出来ないと言うか、正直、先に延ばせるなら延ばしたいところだが、むしろ、
現在の「テストの勉強をしに行くついでにご挨拶」というやつは、なかなか都合が良いシチュエーションでは
ないだろうか。
 挨拶が主目的ではないため、幾分、気軽だし、何より勉強をしに行くという所が学生っぽくて良い印象を与え
るのではなかろうか。
 それに、今日のように、瑞希の帰りを毎日のように遅くしている状況のまま、挨拶も無いというのは、さすが
にまずいと思われる。明俊は腹を括った。
「…うん、じゃあ、瑞希さんの家に行くよ」
「本当ですか? 嬉しいです」
「うん、瑞希さんのご両親にも挨拶したいと思ってたし」
 嬉しそうに微笑んでこちらを見上げる瑞希に、明俊は照れくさくなって頭の後ろを掻いた。

 * * * * *
88-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:52:44 ID:csY2+HJr
 会社帰りにふらりと立ち寄った本屋で、彼を見つけた。
「やあ、今帰りかい?」
「あ、どうもこんばんは」
 少年はいつものように人の良さそうな笑みを浮かべて挨拶を返してくる。
 あの紫陽花を買った時から、3週間ぐらい経つだろうか。彼とはあれからも何度か花屋で顔を合わせ、世間話
をするぐらいの仲になっていた。
「最近、“日下部”に居ないね?」
 日下部とは、私の行きつけの花屋で、正しくは日下部フラワーショップという。私が彼から紫陽花を買ったの
もその店だ。
「ええ、来週から期末試験なんです。なので今週はずっと放課後に学校に残って勉強してました」
「ほう、それは偉いね」
 感心して言う私に、彼は「いえ、出来が悪いからですよ」と困ったような笑みを浮かべる。「でも、ちゃんと
勉強してるのは偉いよ」と言うと、彼は照れくさそうにはにかんだ。
「参考書でも買いに来たのかな?」
「あ、はい、そうです。──あ、これは…」
 彼は慌てた様子で手にした本を棚に戻す。彼の小脇には数学の参考書と思われる本が抱えられているが、今、
彼が棚に戻した本は参考書の類ではなかった。
 バツが悪そうな様子の彼に、私は微笑ましくなった。
「まあ、確かにその本は学校の勉強には直接役に立たなそうだけど、とても良い本だよ」
 彼が棚に戻した本は、植物観察についての本で、私のバイブルでもあった。
「この本、ご存知なんですか?」
「うん。この著者は植物学の権威らしいね。私が植物に興味を持ったのも、この本を読んでからだよ」
 ちょっとした図鑑くらいの大きさのその本を棚から取り出すと、ずしりと慣れた重さが手にかかる。
 この本は、学術的なことよりも、植物の生態と観察する楽しさを全面に押し出した本で、私が大学を卒業した
ころに出た古い著書だが、未だに本屋に並んでいる本だ。
 植物学は日進月歩で、常に新種の発見や新説の発表がある分野なので、図鑑などの本はどんどん時代遅れになっ
てしまうが、この本は「植物観察の楽しさ」という普遍的なテーマを記してあり、ベストセラーというわけでは
ないが、長く本屋に留まる定番の書となっているようだ。
「お薦めだよ。機会があったら読んでみるといい」
「あ、実は持ってるんです。僕が産まれる前に出た本なのに、まだあるんだなあと思って」
「ああ、なるほどね」
 言われてみれば、この本は一部では有名な本だし、彼が持っていても不思議ではない。むしろ、これまでの彼
との会話で、彼がどれくらい植物が好きかは理解していたので納得した気分だ。
「この本は私が大学を卒業したころに出たから、もう18年ぐらい前だね」
 私はなんとなく嬉しくなって、パラパラと本をめくった。
「あ、すみません。それじゃ、僕はこれで…」
「ああ、悪いね、引き止めちゃって」
「いえ、そんな」
「勉強、頑張って」
 参考書を抱えて、「ありがとうございます」とぺこりと会釈をしながらレジに向かう彼を見送って、ふと思い
出した。
 そういえば、ウチの娘もテストが近いというようなことを言っていた。最近娘は彼氏と放課後に学校で勉強し
ているらしい。私はまだ娘の彼氏を見たことがないが、「可愛らしくて、礼儀正しい少年だったわよ」とは妻の
セリフだ。
 娘が選んだ男だ。恐らくは妻の言う通りに好青年なんだろう。しかし、娘を信じていないわけではないが、ど
うにも心配だ。今度連れてくるように言ったが、まだその機会が訪れていない。
「そういえば、また名前を聞くのを忘れたな…」
 つい独りごちて、少年が去った方向に目を向ける。娘の彼氏も、あの少年くらい純朴そうで人が良ければいい
のだが…。そんなことを考えながら、私は背表紙に“日阪秋生”(ひさか あきお)と記された本を棚に戻した。

 * * * * *
89-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:53:44 ID:csY2+HJr
 約1ヶ月半ぶりに入った瑞希の部屋で、明俊は大きく息を吐いていた。落ち込んでいるわけではない。安堵し
ているのだ。

 土曜日の午後1時半。長期間放っておいた砂糖のようにガチガチに固まり、緊張した状態で雪雨家を訪れた明
俊だったが、瑞希の父親である雪雨士郎と対面して、ぽかんと放心してしまった。士郎の方も驚いたらしく、
2人仲良くぽかんとしてしまった。
 お互い、日下部の常連客で顔は知っていたが、名前を知らなかったので起きてしまった、妙なすれ違いだった。
ああ、なんだそうだったのか、驚いたよ。こちらこそ、そうだったんですね、驚きました。と何とも間の抜けた
事を言いあって、改めて自己紹介をした。
 士郎は明俊の名字を聞いて驚き、日阪秋生は自分の父であると告白すると、さらに驚いた。
 何の話をしているのか良く分かっていない瑞希と志鶴をそのままに、明俊と士郎は植物談義に文字通り花を咲
かし、2人の世界に突入。そのまま15分が過ぎようとした辺りで、「明俊君は私と勉強しに来たんです。父さんは
引っ込んでいて下さい」と、瑞希の静かな怒りが炸裂し、明俊は引きずられるようにして瑞希の部屋に連行され
た。腕をきつく抱かれて、階段を引きずられるように登っている明俊が後ろを振り返ると、愛娘に突き刺さるよ
うな視線を投げられ、ショックでへたり込んでいる士郎を、志鶴が困ったような笑顔で慰められている所だった。

 そんなこんなで瑞希の部屋で勉強することになったのだが、明俊は密かにため息をついて声をかける。
「あの、瑞希さん」
「なんですか?」
 左下から、やや固い口調で答えが返ってきて、明俊は少し身体を仰け反らせる。
 瑞希はシンプルなワンピースにカーディガンを羽織った格好で、綺麗な黒髪をポニーテールのように後ろで縛っ
ている。
 見慣れない私服の瑞希に、明俊はどぎまぎしながら控え目に口を開いた。
「いや、左腕を抱かれていると、勉強し辛いんだけど…」
「駄目です。離しません」
 そう言って、瑞希はより強く明俊の腕を抱き寄せる。
「でもほら、こんな体勢じゃ、瑞希さんも字が書きにくいでしょ?」
 瑞希は明俊の左腕に自分の右腕を巻き付け、明俊に寄り掛かるようにしてノートを取っている。小さなテーブ
ルに2人で並んでいるため、お互いのノートが重なりそうだ。
 明俊が困惑している原因はそれだけではない。瑞希の小さな体をゆったりと包むワンピースは、密着している
明俊の位置から見ると胸元がきわどい所まで覗き、目のやり場に非常に困ってしまうのだ。ほとんどふくらみが
無いせいで、すべすべした真っ白い胸元が下のほうまで見えてしまって、ひどく艶かしい。
「私は平気です」
「ああ、そう…」
 即答され、明俊は諦めて自分のノートに向き直った。
 えーと、なんだろうこの状況は…。明俊は微妙に頭が混乱して思わず遠い目をしてしまう。
 瑞希さんは、瑞希さんのお父さんに対してやきもちを焼いているのだろうか…。
 そんな馬鹿な。と思いたいが、先ほど瑞希を放っておいて2人で語り合っていたのが、余程気に入らなかったら
しい。瑞希はさっきからずっとこの調子で明俊の腕を放そうとしなかった。
 瑞希の体温を左から感じ、微妙に落ち着かない明俊が、なんとか目の前の参考書に意識を集中しようと四苦八苦
している所に、志鶴がノックと共に入って来た。
90-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:54:43 ID:csY2+HJr
「あらあら、そんなにくっついたら勉強出来ないんじゃないの?」
「平気です」
 明俊が口を開く前に、瑞希が答える。
 どことなく、邪魔しないで下さい。と聞こえてきそうな口調で言う娘に、志鶴がくすくすと微笑む。
「瑞希、お母さんとお父さん、ちょっと買い物に行ってくるわね。…そうね、2時間ぐらいかかるかしら」
 え? ……えええ!?
 突然の意味深な志鶴の言葉に、明俊が慌てるが、
「3時間かけてきて下さい」
「ちょっ!」
 瑞希がさらに明俊を慌てさせる。
「ふふ、分かったわ。じゃあ5時頃に帰ってくるから、お留守番よろしくね。明俊君、娘をお願いね?」
「いや、あのっ」
 志鶴は明俊の言葉を待たずに、いつもの微笑みのままドアを閉めて出て行ってしまった。
 階下から、何やら士郎の声が聞こえるが、ガチャ、バタンと玄関が閉まる音が聞こえ、家中が静寂に包まれた。
 え? ちょっと待って…。ええ!?
 明俊は突然の状況に動揺を隠せない。な、なんでいきなり瑞希さんと2人きりになってるんだ?
「さすが母さん。話が分かります」
 独り言のように呟く瑞希の声で、明俊は我に返った。
「いや、あの、瑞希さん?」
「2人っきりになっちゃいましたね? 明俊君」
 そう言って、瑞希が明俊に寄り掛かる。
「いや、いやいやいや! 駄目だからね? テスト終わるまではエッチしないって約束だったでしょ!?」
「いえ、エッチを控えると言っただけで、しないとは言っていないはずです」
「でも、ほら、」
「誰にも邪魔されずに、2人きりになったら、我慢出来ないって、言いましたよね?」
 明俊の言葉を遮って、瑞希が迫る。興奮しているのか、瑞希の言葉は途切れ途切れだ。明俊は慌てて、
「いやいや! 我慢するのも大事だとおも…んぅ!」
 口をキスで塞がれて、押し倒された。
91-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:55:48 ID:csY2+HJr
「んっ…、は、ちゅ、んぅ、はぁ…」
 口の周りを涎でべとべとにしながら、瑞希が顔を離す。目は潤み、顔を上気させ、瑞希は完全に出来上がって
いるようだ。
「あは。明俊君の、すごく大きくなってますよ?」
 嬉しそうに微笑みながら、ズボンのなかで張り詰めているものを手でさする。久しぶりの刺激に、明俊は呻い
て身体を仰け反らせてしまう。
「だ、駄目だよ。瑞希さん」
 それでも、微かに残った理性で抵抗を試みるが、口だけで身体は言葉通りには動かない。我ながら説得力のない
有り様だが、それでも言わずにはいられなかった。
「もう駄目です。我慢の限界を超えちゃいました」
 潤んだ瞳で明俊の目を見つめながら、瑞希がカチャカチャと素早い手付きで明俊のベルトを緩め、陰茎を取り出
す。
「ぅわ、ちょっ」
「はあっ…。明俊君の久しぶりです…」
 嬉しそうに呟いて、瑞希は明俊にのしかかる。
「私もう準備出来てますから、入れちゃいますね?」
 言うなり、右手で明俊のものを支え、左手でワンピースをたくし上げ、下着を横にずらすと腰を沈めて行く。
「ああああ…! 気持ちいい…」
 途端に瑞希は歓喜の声をあげた。瑞希の小さい身体に、明俊の張り詰めた剛直が飲み込まれていく。
「はあっ…。動きますね? んっ!」
「うぁ、瑞希さん、ゴム、付けないと」
「あ、んっ…。駄目、ですっ。もう、入れちゃいましたから…はぁっ」
 瑞希は明俊の肩に手を置いて、貪欲に腰を揺さぶる。ワンピースで隠れた結合部から、ぐちぐちと淫らな水音が
響き、明俊の理性を削っていく。
「ああ気持ちいい…! 明俊君のすごい気持ちいいです。んあ、はあっ」
 至近距離で、瑞希が蕩けた表情で微笑みかける。その淫靡な表情と熱い吐息に、明俊はとうとう居ても立っても
いられなくなり、瑞希を抱き寄せると唇を貪った。
「ん、ちゅ、はぁ、んぅ、ちゅっ…」
 お互いの口内で舌を絡ませあい、だ液が熱い吐息と共に隙間から漏れる。
「はぁ…。明俊君、もっと…。んぅ」
 一旦離した口を、また瑞希が貪ってくる。そうしながらも、腰を淫らにくねらせ、明俊の肉棒を味わっている。
 人形のように小さく可憐な彼女が、快楽を求めて本能のままに動く姿は計り知れないほど催淫的だ。明俊は瑞希
と交じわる度にこの光景を目にしているが、何度見ても慣れることはない。むしろ、冷静に観察すればするほど、
瑞希が如何に欲情して明俊を求めているかが分かり、回を重ねるごとに明俊は瑞希に夢中になっていった。
 瑞希の方も、それは同じだった。付き合い始めて1ヶ月半ほどだが、すでに飽きるほど明俊と身体を重ねている。
しかし、愛しい人との情事は回を重ねるごとに心地よくなっていき、どこまでこの気持ちよさが高まるのか、瑞希
はもう、怖いくらいだ。
92-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:56:48 ID:csY2+HJr
「ちゅ、んぅ…明俊君、気持ちいいです…。ああっ…腰とけちゃう…」
「瑞希さん、いやらしすぎだよ…」
「は、あんっ…。だって、明俊君のが久しぶりで、気持ちよくて、ああ、んっ…」
「僕だってこの1週間我慢してたのに…。もう、止まらないからね」
「はい、止めないで下さい。もっと、はあっ!」
 瑞希の声を待たずに、明俊が腰を激しく突き上げ始めた。途端に瑞希が仰け反る。
「あッ! あッ! いい、奥、当たって…。気持ちいいッ!」
 上下に激しく揺さぶられながら、瑞希が悶える。
「きもちいっ! あ、んッ! そこ、そこいいですきもちいい! あはぁッ!」
 身体を若干後ろに倒し、前の壁を激しく肉棒で擦り付けられ、瑞希が髪を振り乱して快感に耐える。明俊が与え
てくる刺激に、膣が悦んできゅうきゅう締まるのが自分でも分かる。腰の奥が急速に熱を帯び始め、熱い粘液が
とろとろと溢れてくる。
「あーッ! あーッ! 気持ちいッ! ああ明俊君、も、イキそ、ですっ。わたしもうッああきもちいーッ!」
「んっ、いいよ、僕も、出すから…ッ」
「あーッ! ああーッ! イクそッ! もうイッちゃう!」
 口の端から涎を垂らし、どうしようもない快感に瑞希が耐える。一方で、がくがくと腰をはしたなく揺さぶり、
更に快楽を貪ろうと動く。
「ああどうしようすごいきもちいーッ! あッ、ああーッ!」
 腰の奥から沸き上がる快感に、瑞希はもう、腰も頭も蕩けてどうしようもなくなって、明俊に必死にしがみつく。
「ああッ! やあッ! こし、なか、あああッ! ゃあああーーッ!」
 もう気が狂いそうなのに、腰の動きが止まらない。まるで腰だけが別の意志を持っているかのように勝手に動き、
瑞希を更なる高みへ誘う。
「あーッ! あーッ! あーッ! きもちいダメもうイッちゃうああイクぅ…ッ!」
 限界をとっくに超えた快楽が、瑞希の神経を1本残らず焼き尽くすような勢いで、腰の奥で弾けた。快感の津波
が瑞希の全身を襲う。
「ああイク! イクぅ……ッあああああーー!」
 瑞希が絶頂に達し、仰け反ると同時に、
「くっ! 出るっ!」
 明俊は最後の理性で瑞希の腰を掴み、ペニスを引き抜く。その刹那、弾かれたように肉棒が跳ね、精液を噴き
出した。
「あ、ああああッ…! 明俊君の精子…ッ」
 溜まりに溜まった1週間分の精液を全身に浴び、瑞希が震える。久しぶりの射精は勢いは凄まじく、服だけで
なく、顔にまで精液が飛び散っている。
「ご、ごめん!」
 我に返った明俊は慌ててティッシュを抜き取り、瑞希に飛び散った精液をぬぐい取る。中に出すのだけは避け
なくてはと思うあまり、ペニスを引き抜いた後の事まで頭が回らなかった。
 瑞希は荒い息をつきながらぐったりした様子でなすがままにされているが、頬に付いた精液を指ですくい取ると、
無意識のうちに口に含んでいた。
「はぁ…、はぁ…。んっ…思ったより、ヘンな味ですね」
「な、なにやってるの!? なめちゃ駄目だよ!」
 慌てる明俊をそのままに、瑞希はまた指で顔に付いた精液をすくい取る。
「でも、クセになりそうです」
 言いながら、ぺろぺろと指に付いた精液を子供のように無邪気になめ、
「はあっ…。凄い匂いです。頭が痺れそう…」
 と恍惚とした表情で身体を震わせる。その様子に、明俊の心臓が大きく跳ね、精を吐き出して萎えかけた肉棒
に再び血液が集まるのを感じた。
「はぁ、はぁ、ね、明俊君、もっと…」
 息が荒いのは、激しい絶頂の余韻だけではない。強烈な精臭に、瑞希は頭の中が情欲一色に染まり、興奮のあ
まり自然と息が荒くなる。
「もっと、精液下さい……。ね?」
 精液に完全に酔ったかのように、瑞希がとろんとした表情で明俊に迫る。明俊は唾を飲み込むように、頷いた。

 * * * * *
93-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:57:52 ID:csY2+HJr
「紫陽花の、花言葉を知ってるかな?」
 たっぷり3時間かけた買い物の帰り、疲れたように呟く士郎に、志鶴がきょとんとして答える。
「“元気な女性”って、この前あなたが言っていたじゃない」
「いや、そうなんだけど、その他にも花言葉があるんだ」
 花言葉は大抵は複数あり、紫陽花も例外ではなかった。
「あら、どんな?」
「“移り気”。……ああ、瑞希はもう、父さんよりも彼氏がいいんだね…」
 さめざめと泣きそうになっている夫に、志鶴が呆れたように答える。
「あら。あなただって、明俊君の事気に入ってるじゃない」
 それに、移り気も何も、瑞希は夫を父親以上に思っていないのだから、その表現は適切でない。が、それは
黙っておくことにした。夫も分かっていて言ってるのだろう。単に寂しいだけなのだ。
「それはそうなんだけどさ…」
 元気なく呟く夫に、志鶴はむくれたように声をかける。
「わたしはずっとあなた一筋よ? それじゃ不満?」
 途端に、さっと士郎の顔に赤みが走る。
「い、いや、そういうわけじゃないよ」
「ならいいじゃない」
「う、うん」
 仲睦まじく重なった影を引きながら、士郎と志鶴が娘とその恋人が待つ我が家の玄関をくぐった。

 * * * * *

「終わったあぁあーーー!」
 期末試験の最後の教科が終わり、教室中が歓喜の声に包まれた。気の早い生徒は既に帰り支度を始め、友人達と
放課後の予定について楽しげに話し合っている。
 明俊がほっと一息付いて、固い背もたれに身体を預けると、
「明俊君、どうでした?」
 すでに鞄を持って、帰り支度が済んでいる瑞希が、明俊に話しかけてきた。
「うん、結構出来たんじゃないかと思う。瑞希さんは?」
「私も、特に問題ありませんでした」
 まあそうだろう。昨日までの試験内容を2人で自己採点を行った所、瑞希は全教科ほとんど満点に近い成績だっ
た。今回もきっと明俊が見たことがないような点数になっているに違いない。とは言っても、明俊自身も今まで
よりも随分と良い点数を取ることが出来た。瑞希と勉強したおかげだろう。……この前、瑞希の家に勉強に行った
時は、結局ほとんど勉強せずに時間ギリギリまで愛欲に溺れていたため、一時はどうなることかと思ったが、
杞憂だったようだ。
94-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:58:49 ID:csY2+HJr
「さ、帰りましょう。明俊君」
「あ、うん。ちょっと待って」
 瑞希に急かされるように鞄に荷物を詰め、明俊は席を立った。
 今日は、これから瑞希の家で夕飯をご馳走になる予定だ。明俊は瑞希の父にも母にも気に入られたようで、
試験が終わった慰労にと夕食に招待してくれた。
 ちなみに、この前瑞希の家で一緒に勉強した時も、夕飯をご馳走になった。その時の夕飯はあろうことか
赤飯だった。
 瑞希の母がにこやかに言った「おめでとう、瑞希」というセリフに明俊は気が動転し、ロクに味が分からな
かったのを憶えている。勉強しに来たのにセックスに耽っていたのは完全にバレていた。瑞希の服装は変わって
いるし、部屋中にファブリーズの匂いがしてるし、風呂も使用した後が残ってる。これだけ状況が整っていて
していないなんて説得力がなさ過ぎる。
 嬉しそうな瑞希ママとは対照的に、明らかに空元気と分かる態度の瑞希パパに、明俊は、視線を向けること
が出来ず、その時の夕飯中、ほとんどうつむいて顔をあげることが出来なかった。

「あ、そうだ。忘れないうちに渡しておきますね」
「え? なに?」
 瑞希の家が近くなったところで、思い出したかのように瑞希が言った。
 不思議そうな顔で見下ろす明俊の横で、瑞希は自分の鞄を漁り、半透明のカプセルを取りだす。
「はい。どうぞ」
「え? フィルムケース?」
「はい。そうです」
 にこやかな顔の瑞希に手渡され、つい受け取ってしまったそれは、まさしくフィルムケースだった。
「え? これが何?」
 わけが分からず、明俊は戸惑う。それもそのはずで、フィルムケースには肝心のフィルムがなく、ケースだけ
だった。無論、中身には何も入っていないように見える。
 頭に?マークを浮かべる明俊に、瑞希はいたずらっぽい微笑みを浮かべ、とんでもないことを言い出した。
「それに、明俊君の精液を入れてきて下さい」
「はあ!?」
 明俊は思わず素頓狂な声をあげてしまう。え? な? ええ!? 精液!?
「ちょ、な…、せ、い液なんて、な、何に使うの!?」
「この前、明俊君とセックスした時になめた精液の味が、忘れられなくて」
「な!? あ、味って…」
「この前のセックスの後始末で使ったティッシュ、まだ残してあるんです。明俊君の精液が染み付いて、凄い
匂いで…」
 瑞希は一旦言葉を切ると、頬に片手を当て、うっとりとした様子で続ける。
「あの匂いを嗅ぐと頭が痺れて、物凄く興奮するんです。でも、もうあの時のティッシュは匂いが無くなって
きてしまったので、新しいのが欲しいなあと思いまして」
 まるで、誕生日のプレゼントを欲しがるような調子で言う瑞希に、明俊はもう、呆然として口をぱくぱくさ
せることしか出来ない。
95-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 00:59:57 ID:csY2+HJr
「駄目ですか?」
「駄目って言うか、その…」
 突拍子がないにも程がある瑞希の要望に、明俊はどう答えていいか分からず、口籠る。
「あ、今までのように毎日エッチしてくれるなら、別にいりませんよ? 逆に、そうでないのなら、フィルム
ケースに精液を下さい」
 う、そう来たか…。瑞希の2択に、明俊は頭を抱えそうになる。テスト前のように、毎日のようにエッチする
か、精液をオカズとして提供するか。
 恋人に迫られる2択とは思えない内容だ。明俊は思わず現実逃避したくなるが、瑞希が急かすように腕を抱き
締めてくるので、仕方なく思案する。
 精液をフィルムケースに入れて渡すなんて、恥ずかしいにも程がある。だが、毎日エッチするよりは身体には
優しそうだ。明俊の心がフィルムケースに傾いた時、瑞希が口を開いた。
「明俊君の精液が入ったフィルムケースを持っていると、我慢出来なくて学校でなめちゃいそうです」
「ちょっ!」
 明俊が慌てて瑞希を見ると、いたずらっぽい微笑みを浮かべていた。
「あ、放課後に渡す、なんて事言わないで下さいね?」
 にこやかな顔で釘を刺され、明俊は瑞希の魂胆が読めた。無理な提案を突き付けることで、毎日エッチする
方向へ話を持って行くつもりだ。
「どうします? 私としては、フィルムケースでもエッチでも、明俊君の精液を味わえればそれでいいので、
どちらでもよいですよ?」
 いつものようにいたずらっぽい微笑みで覗き込むように見つめられ、明俊は、
「と、とりあえず、エッチの方向で…」
 と力なく、小さな恋人に屈した。
「ふふ、良かった」
 嬉しそうに微笑んで、より強く腕を抱き締めてる瑞希に、明俊は照れくさくなって視線を逸らす。
 ふと、道ばたに咲いたちょっと季節外れの紫陽花が目に入り、その花言葉が脳裏に浮かんだ。
 ……ああ、これはまさに、今の自分と瑞希にぴったりな花言葉だ。

 瑞希の場合はもちろん、“元気な女性”。そして、明俊の場合は“耐える愛”。

終わり
96-同級生型敬語系素直クール-:2007/07/13(金) 01:01:03 ID:csY2+HJr
以上です。
楽しんでいただけたら幸いです。

ちょっと変則的な話のつながりなので、分かりにくかったらごめんなさい。
読んでくれた方、ありがとうございました。

97名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 01:30:43 ID:jxIdd+bP
>>96
GJ!ほのぼのとした日常とそうでない場面との落差が激しいなw
98名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 01:36:52 ID:LubzFG0V
変態娘ktkr
99名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 03:11:16 ID:YBbciKfP
>>96
ああもうこの甘々ラブラブバカップルめ!!
GJ!
100名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 03:33:14 ID:+ljP4vNJ
下がりすぎage
101名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 05:26:07 ID:GoB06pm8
>「3時間かけてきて下さい」
>「ちょっ!」

思わず吹いたwww
やべえやっぱこの作品最高だわ
102名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 08:24:07 ID:qzf2MoHn
GJ
103名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 09:05:24 ID:18lQx8F1
>>96
すばらしい GJ!
104名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 11:53:24 ID:xln6n3vD
GJ
105名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 12:58:14 ID:Xwi1yJI2
名作ですな、GJでございます。
続きもwktkしてお待ちしてます。
106名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 17:35:54 ID:uoi9nFD4
gj
107名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 19:47:32 ID:nApP7sTy
GJ!素晴らしい!!
続き期待!
108名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 22:42:31 ID:P5DxpvJh
やたー
今週がんばった甲斐があった
まさか続きが読めるとは
また気が向いたら書いてください
109名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 01:21:29 ID:7Gf2qGeZ
どうも、前スレの埋めネタを書いていたのですが微妙に入りそうにないので
こちらに投下させていただきます。

注意事項として
・エロはありません
・文のほとんどが会話文です。地の文もありますがお飾り程度です。

上記の二つが嫌いな方はスルーをお願いします。
では投下します。内容は前スレで少し話題になった
嫌い→好きとなる素直クールをダイジェスト風に書いたものです。
110キライからスキへ ダイジェスト:2007/07/14(土) 01:22:52 ID:7Gf2qGeZ
 ちょっとした勘違いにより、女子更衣室を覗いたという冤罪を着せられた
新入生の赤井広道は、生徒会長の提案により執行部員として働かされることに。
しかも、パートナーとして組まされたのは赤井を覗き魔として捕まえた張本人である、
正義感と冷酷さを兼ね備えた凄腕執行部員・青樹司であった。

「赤井君、見回りの前にあなたに一つ言っておくわ」
「は、はい、なんでしょう」
「会長はああ言って下さったけれど、私はまだあなたを全く、微塵も、一片も
 信用してないわ。もしまたおかしなまねをした場合はその場で処刑するから、そのつもりで」
「は、はいぃ……」

 こうして、表はごく普通の私立高校、しかしてその実態は教師さえも欺き不正非道が日常茶飯事の
無法地帯、俵利高校を舞台に二人の物語は動き出す……

「赤井君、仕事よ」
「え? でもまだ昼食が……」
「強制連行」
「ちょ、いたたたたたっ! なんで顔を掴むんですか! しかも親指と中指がご丁寧に
 こめかみにセットされてるしって痛い痛い痛い!」
「少し五月蝿い。いい、簡潔に説明するわよ。例の事件がまた起こった。今度は北校舎でよ」
「ッ!?」

 最初こそギクシャクした二人だったが

「――もし彼がこの一連の事件の黒幕としたら、なんであの時否定したのかなって」
「……」
「あ、あの……青樹先輩? 俺変なこと言いました?」
「赤井君……それは盲点だったわ。良いところに気がついた」
「えっ、そ、そうですかね」
「ええ、少し見直した」
「い、いやいや。俺なんてそんな――ってあいた! ……っくぅ、机の、脚に……小指をぉ……!」
「やっぱり馬鹿か」
「訂正早っ!」

 少しずつ日を重ねるごとに

「そうね、この仕事をやるには赤井君の性格は優しすぎる」
「……」
「でもね……あなたの誰かを助けたい、守りたいという想いは良いと思う」
「え……?」
「私と赤井君、ベクトルの向きは違えどその正義心には共感できるものがあるから。
 あなたはあなたのやり方でいいのよ、きっと」
「……そうですよね。よしっ! なんかやる気出てきたぞおおっ!」
「赤井君が単純で本当に助かる」
「……わーい、一気にやる気が薄れたや〜」

 絆は深まっていった。
111キライからスキへ ダイジェスト:2007/07/14(土) 01:24:17 ID:7Gf2qGeZ
「二人ともボロボロとはね……。部長のお小言もいつもの三倍は覚悟した方がいいわね」
「ま、マジですか……」
「まあでも、美咲に頼めばなんとかなるでしょう」
「ああ……ベタ惚れですもんね、賀川先輩のこと」
「それはいいとして……赤井君」
「……はい」
「なんであの時攻撃しなかったの」
「それは……」
「私は避ける自信があった。いえ、確信があった。もし万が一避けられなかったとしても、
 軽微な怪我ですんでた。もう過ぎたことだし、大事に至らなくてすんだけど、あなたのとった
 行動は褒められたものじゃない。なんで攻撃しなかったの」
「……青樹先輩を、助けたかったから」
「……は?」
「青樹先輩も、俺の守りたい人の一人ですから」
「……赤井君」
「は、はいっ」
「そういうことは、私におんぶされないようになってから言うべきだと思うわよ」
「うっ」
「まあ……気持ちだけ受け取っておくわ、ありがとう」
「……はいっ」
「明日からもビシバシいくわよ、広道君」
「はい! ……って、ヘ? 今……」
「執行部として認めてあげる、ということよ。広道君」
「青樹先輩……ありがとうございます!」
「あ、でもまだ覗きについてはこれからも言及していくからそのつもりで」
「ええっ!? 今執行委員として認めるって――」
「それはそれ、これはこれ。あなたが無実という証拠は未だゼロなんだから当然よ」
「……とほぉ」

 そして少年は少女を知り

「司ね、ああ見えて結構寂しがり屋さんなんですよ」
「えっ、そうなんですか?」
「ええ。あの娘、子供の頃からあんなだったから友達とかあまりできなくて。
 両親も忙しくてあまり構ってあげられなかったみたい」
「……親も、ですか」
「だからね赤井さん、司とこれからも一緒にいてあげて。口では何だかんだ言っても
 赤井さんのこと好きみたいですから」
「えぇっ?! す、好きって……!」
「あ、友達として、ね」
「そ、そうですよね」
「……まあ、今後次第でどうなるかは分かりませんが」
「賀川先輩、何か言いました?」
「いえ、なにも」

 少女は少年を知る
112キライからスキへ ダイジェスト:2007/07/14(土) 01:24:58 ID:7Gf2qGeZ
「……今、なんて」
「確かにあたしは広道の姉だけど、あたしと広道は血はつながってない。
 もちろん、どちらの親ともね」
「養子……? 広道君が?」
「ああ」
「じゃあ、彼の両親は……」
「……死んだ。とっくの昔に」
「……そう」
「それが事故とかならまだよかったんだけどな」
「え……?」
「広道の両親……心中したんだ。それも、赤ん坊の広道も一緒に」
「!?」
「まあ、広道の方は母親に抱えられてたから奇跡的に無傷だったけど。
 そのあと、昔からの付き合いだった広道の親父の姉夫婦、つまりあたしの親が預かった」
「……」

 そして絆はより固まる。

「……この状況で随分と余裕ね、青樹司」
「ええ、彼がそのうち来ると思うから」
「それはどうかしら。ここまでに何人も見張りがついてるのよ?
 そんな敵だらけのところにのこのことやってくるかしら」
「……彼は、赤井広道は、馬鹿で単純で猪突猛進で不器用な男よ」
「いきなりなにかしら」
「そこから導き出される答えは一つ――」

「――……ぅぉぉぉおおおおッ!!」

「なっ!」
「――自分の信じたことを、全力で、一直線に突き進む」
「青樹先輩、無事ですか!」
「遅い。まだまだ走り込みが甘かったみたいね。明日からメニュー分にプラス50週追加」
「ちょっ!? これでも超特急で来たんですよ。途中で大量の黒服黒人さんがいて気絶させるのに
 時間が――」
「言い訳無用」
「……嘘、あなたまさか、あれだけの数を一人で!? それもこんな短時間に!」
「え? あ、はい、まあ……」
「信じられない……」
「私は信じていたわ。彼を、広道君を」

「……う、うぅん……」
「気がついた?」
「……はは、またおぶられちゃいましたね」
「別にいいわ、あなたのお守りにももう慣れたし」
「お、お守りですか……」
「でもま、最初に比べると頼もしくはなったわね」
「そうですかね、俺からしたらまた青樹先輩を守れなくて申し訳ないっていうか」
「あなたに守られるほど落ちぶれてはいないわ」
「で、ですよね」
「……ねえ」
「はい?」
「もう少し私を頼ってほしい。確かに広道君は男の子で、女の子を守りたいっていう気持ちも
 分からなくはない。でも、あなたが私を守りたいのと同じように私もあなたを守りたいんだから。
 だから、互いに互いを信じて、頼っても良いと思う。……パートナーって、そういうものじゃない」
「青樹先輩……」
「私は広道君を信頼してる。だから、広道君も私を信じて、頼って欲しい」
「……はい、わかりました」
113キライからスキへ ダイジェスト:2007/07/14(土) 01:25:37 ID:7Gf2qGeZ

 しかし、その絆も想いの変化によって、

(いつからだろう、こんなに彼を認めるようになったのは。
 いつからだろう、こんなに彼を信じるようになったのは。
 いつからだろう、こんなに彼を守りたいと思うようになったのは。
 そして……いつからだろう、
 こんなに彼を強く意識するようになったのは)

 脆く、

(最初は、怖い人だなぁと思った。
 でもそれは見た目だけで、とても強くて、優しくて、頼りになって。
 でも、ほんのちょっと寂しがり屋の普通の女の子で。
 そんな彼女を俺は守ってあげたかった。
 そういうお節介な性格は小さい頃からあったし、なにより他にも
 クラスの友達や執行部、生徒会の人たちも俺の守りたい対象の一つで、
 青樹先輩もその中の一人って感じだった。
 でも変わった。他の誰よりも青樹先輩を守りたい、いや、支えてあげたいと思うようになった)

 優しく、

「パートナーは解消。もう執行部に来なくてもいいから」
「え……な、なんで。何でですか、青樹先輩!」
「……さようなら、赤井君」
「っ!?」

 崩れ去る。
 そして物語は――加速する。
114キライからスキへ ダイジェスト:2007/07/14(土) 01:26:40 ID:7Gf2qGeZ

「司は怖いだけです。赤井さんに拒絶されるのが。だから、自分から拒絶した」
「ち、違う!」
「でも司、自分から遠ざかるのも誰かに拒絶されるのも、結局同じ。寂しさは変わらない。
 だったら、勇気を出したほうが良いと思いますよ」

「青樹のやつ、お前が来てから以前より笑うようになったんだぞ、知ってるか」
「……」
「少なくとも僕は、あんなに楽しそうに笑う青樹を見たのは初めてだったぞ」
「部長は……まだ、間に合うと思いますか」
「間に合うか間に合わないか。それを考える前に先走るのが、『赤井広道』という男だと
 僕は認識してたが?」
「……ありがとうございます」
「ほれ、さっさと行け。ここは僕が払っておく」
「はいっ」
「全く、毎度毎度世話の焼ける……うおっ! ……あいつ、
 ちゃっかり一番高いラーメン食ってやがる……!」

「飛ばすぞ広道! しっかりしがみ付いてろ!」
「ちょ! 姉ちゃんスピード違反!」
「ふふふ……久し振りに『疾風の嬢』の血が騒ぐぜ……!」
「騒がなくていいから! ああっ、スピードメーターが三桁を悠々と越えてる!」
「あたしは今……光を越える!」
「疾風なのに光って! しかも光越えたら溶けてなくなっちゃうから!
 ああぁ、スクランブル交差点がもう地獄絵図に!」

「なんで来たの! あなたはもう執行部じゃないのよ!」
「うるせえよ!」
「なっ……!」
「なんで来ただと? そんなの先輩が心配だからに決まってるだろうが!
 一人が寂しいくせに勝手に人を遠ざけて! 勝手悲しんで!
 そんな自分勝手な先輩が心配で来たんだよ! あんたこそ俺をもっと信じろよ!
 頼ってくれよ!」
「……でも、それは結局、パートナーとして、でしょ」
「違う!」
「え……?」
「俺、分かってなかった。自分の気持ちに。先輩のこと、どこかで特別な存在だと思ってたけど、
 それがなんなのか分からなかった。でも、今なら分かる! 俺は……俺は……

 俺は、司さんが好きだ!」

 そして、物語は終幕へ……
115キライからスキへ ダイジェスト:2007/07/14(土) 01:27:29 ID:7Gf2qGeZ

「……広道君、重くない?」
「いえ、これも司さんの重みならどうってことないよ。
 それより、やっと俺がおぶる側になりましたね、へへ」
「ええ、そうね」
「じゃあ改めて、あの時のセリフ言いますね。司さんは俺の守りたい人です。
 けどあの時と違うのは、大多数の中の一人じゃなくて、一番に守りたい人になった、
 ってところですけど」
「……ありがとう」
「どう致しまして」
「そうじゃなくて。こんな私のこと、好きになってくれて」
「……そんな。司さんは十分魅力的な人――」
「広道君」
「つ、司さん? なんですかいきなり耳元で囁いて」
「あなただけにそんなこと言わせっ放しじゃ、執行部・青樹司の名が泣くわ。
 だから言わせて。……私、怖かった。今までこんな気持ちを持つことなんてなかったから。
 どうすればいいか分からなかった。だからあなたを遠ざけ、傷つけてしまった。
 そうすることで自分の気持ちに変わりはないのに。寧ろ、より強く感じてしまった。
 ……だから、勇気を持って言う。

 ……好きよ、ヒロ」

「……はい」
116キライからスキへ ダイジェスト:2007/07/14(土) 01:28:12 ID:7Gf2qGeZ
 こうして二人の物語は終わりを――

「あ、一応言っておくけど、まだ性行為についてはなしだから」
「ええぇっ!! な、何でですか!?」
「あのねぇ……生徒同士の不純行為は校則で禁止よ。執行部が率先して校則違反はまずいでしょ?」
「不純じゃありません! それは純粋な愛の営みだと主張させていただきます!」
「屁理屈ね、それは。……まあ、半年の我慢よ。それぐらいは待てるでしょ」
「ヘ? 半年って……」
「私が卒業したら生徒同士の不純行為じゃなくなるでしょ」
「……それこそ屁理屈じゃ」
「そう、じゃあヒロが卒業するまで我慢しなくちゃね」
「謹んで、半年間を清い付き合いでいかせていただきます」
「分かればよろしい。……私だって年頃の女の子なんだし、交じりたい気持ちはある。
 我慢するのは同じなんだし、一緒に頑張りましょう」
「つ、司さん……!」
「けど、ヒロがそこまでスケベだったなんて、意外ね」
「うっ。お、男の子なんてみんなそんなもんですよ」
「……やっぱり、あの覗きもヒロが」
「まだ引っ張るんですかそれ?! いい加減信じてくださいよ!」
「いやよ、これからも言及の手を緩める気はないから」
「……勘弁してください」
「そう……これからも、ずっとヒロの隣にいて……ね」
「司さん……」
「浮気したらその場で処刑するから、そのつもりで」
「……ふっ、はい、了解です」
「なに笑ってるの」
「いえいえ、なんでも」

 ――まだまだ続きそうである。

117名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 01:30:21 ID:7Gf2qGeZ
以上です。いかがでしたでしょうか。少しでも悶えた方がいれば幸いです。

では。
118名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 03:08:46 ID:jkV+s7+1
>>96乙&GJ!
親公認になって、後は行き着くところまで行っちゃいそうですね。
残った問題は彼氏が赤玉が出そうなことくらいかw
119名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 10:17:10 ID:LCccsbhf
>109-117
GJ!&ダイジェストじゃなくてフルに見たい!
120名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 10:24:18 ID:rJTKNUwz
こんなナイスな長編をダイジェストで全部書いちゃったお前の罪は重い
121名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 10:27:25 ID:Q0vP2aJa
>>117
わかったことがひとつだけある。

「ダイジェストを読むと本編も読みたくなる」
122名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 17:39:25 ID:S8RxN22K
>>117全く、お前はわかってて言ってるんだろう?さあ、続きを!
123名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 01:35:54 ID:5ZjP/rmL
とりあえず前スレ>>479の空気読まなさに激しい怒りを感じた。

>>◆ELbYMSfJXM氏
GJ!
そうか、嶺センセは昔は素直クールだったのか。
そんでもって保健医やってるのはこういう経緯か。

詳しくは男装スレを読め。
124名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 01:48:07 ID:4bvunZre
最近、500kb目前になると変なAAが貼られるよな。

これは仕様なんだろうか。
125名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 18:40:42 ID:DcN9jN6o
前スレうめネタは嫌なものを思い出させてくれたな
缶コーヒーって……orz
126名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 19:10:34 ID:5ZjP/rmL
>>125
どうかしたか?俺で良ければ相談に乗るぞ?
127名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 05:56:36 ID:lVX+tnwo
>>125保守ついでに教えてくれ。
128名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 08:57:27 ID:jk/vNcni
前スレの最後のSS嫁>コーヒー缶
129名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 12:18:03 ID:Ko9ZSuJc
130名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 20:37:26 ID:Qjs7jfWO
>>125
マンコーヒーのことか?
131名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 21:28:46 ID:/Dl6VFtX
クーの父親のナニのサイズだよ。
132名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 03:00:09 ID:sRXcIRdC
保守。ところで保管庫は何時みれるようになるんだ?
133名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 03:07:38 ID:/U2subwu
>>132

普通に見れたが。
更新マダー?という意味なら、管理人氏もこれにばかりかまけてられる程ヒマじゃあないんだと考えとけ。
134名無しさん@ピンキー:2007/07/18(水) 14:10:18 ID:sRXcIRdC
>>133そうか・・・まあゆっくり更新を待っとくか。
135暇つぶしにどーぞ:2007/07/20(金) 09:03:32 ID:+tOUtwAL
               ある晴れた日の朝   緋色の青春ぱーとつぅー


                ☆前回までのあらすじ☆


州菜「緋色公人(ヒイロ キミヒト)は転校してきた州菜瑠子(スナ ルゥコ)に操を狙われていた」

緋色「粗すぎるでしょ、そのあらすじ」

州菜「やあ緋色おはよう。朝からノリツッコミとは流石だな。でもどうせ突っ込むなら私の

緋色「州菜さんおはよう。今日も天気がいいね」 ←続きを遮るように

州菜「そんな、州菜だなんて、他人行儀はやめてくれよ。雌豚、そうだ雌豚と呼んでくれ。
    蛆の湧いた肉を食む豚を眺めるような目で、ツバを吐きかけるように、嗚呼、雌豚と、言ってくれぇ」

緋色「・・・・・・めすぶた」

州菜「ッッ! ッハァァ!! (ビクンッビクンッ)」

緋色「……」

州菜「っふ、ぷふぅ、ん、ンフフッ、なかなか、イケるじゃあないか(ハァーハァー)」

緋色「で、こんな朝早く誰も居ないうちから、なにやってるの。僕の机で」

州菜「ああ、ちょっと、ね。椅子を暖めておこうと思ってね、緋色の為にね(スーリスーリ)」

緋色「はぁ、そう、お疲れ様」

州菜「もっと褒めて欲しいなあ、朝の五時からこうして居たのに(ホオズリ・ホオズリ)」

緋色「ご!? そ、それはまた、なんていうか、あの、あ、ありがとう」

州菜「ッハァァッ、ハァハァ、イ、イイんだよ、ィィ、スゴクイイ、緋色が喜んでくれて、ァフウ、嬉しいよぉ(ビッチョビチョ)」

136暇つぶしにどーぞ:2007/07/20(金) 09:04:53 ID:+tOUtwAL

緋色「で、でももうこういう事はしなくて良いから、なんか(気味)悪いし」

州菜「ェゥフ、そう? そうか? 私は好きでやってるんだから別に

緋色「嫌、しなくて良いから。絶対しなくて良い。やめて。お願い」

州菜「ああ、わかったよ。残念だけどしかたない。名残惜しい。実に、名残惜しいが」

緋色「あの、椅子に座りたいんだけど、良い?」

州菜「良いよ、ほら、座って(ハァハァ)」 ←しっとりと濡れた太股を観せながら

緋色「(イラッ)嫌、そうじゃなくって、退いてってこと」

州菜「ああそっちか(ガッカリ)わかったよ。ちょっと拭くから後ろを向いていてくれ」

緋色「(ふく?) ん、あぁ、はい」

州菜「(嗚呼、椅子がビチョビチョ。まぁ朝からイキッぱなしだったからしかたないか。
    しかし危うくもう少しで緋色に観られるところだった。ハァハァ、ぁぁ、あんな乱れた姿をみられたら
     きっと……ぁぁああっ!! ダメッ、そんな目で観られたら! 私またッ!! んんんッ!!)」

緋色「もういい?」

州菜「っっぁあ!! イイッ!! んんっ! ダメェェッ!!(ビクンビクンッ)」

緋色「・・・・・・どっちだよ」



つづく・・・・・・?
137名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 18:08:44 ID:5JV63K4V
クール分が不足したのて保管庫に行ってきますね
138名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 04:13:02 ID:2DFcj/r1
>>136気づけ緋色www
139>>136の続き:2007/07/21(土) 08:30:48 ID:8j0Ih8IO
★五分経過★

州菜「ハァハァ、さ、さあいいよ座って。たっぷりたあっっぷり、暖めておいたから、フヒヒ、イイよぉ」

緋色「はぁ、どうも(ヨッコイショ……っう)」

州菜「(はぁ、代えのパンツ持ってきておいてよかった。もうビチョビチョで卑猥で恥ずかしい)」

緋色「っふ、っげふ (なんか、変なくさい。机も椅子も微妙に湿ってるし)」

州菜「それはそうと今朝はずいぶんと早いんだねえ(ハァハァ、念を入れてナプキンも着けておこう。ゴソゴソ)」

緋色「あ? ああ、今日日直だからね僕(なんか足元に水が、水滴がたくさん)」

州菜「そうなのか、じゃあ私も何か手伝うよ。何でもするよ、ほら命令して、何でもするから、
    ほらあ、命令してよぉ、んんっなんでもぉ、言うこときくよぉ、ああっ、ききますぅ(ビクビクッ)」

緋色「嫌、別に手伝いとかいらないから」

州菜「あへ? そんなぁ、遠慮するなよ緋色、命令してくれたまへよぉ、ふぅん、ねぇひいろほぉ(ヒクヒク)」

緋色「(イラッ) じゃあ自分の席に戻ってもらえるかな州菜さん」

州菜「あぁんっ、また州菜だなんて、ヤだよそんなのはそんなのヤぁん。雌ってぇ、めすb(フルフル)」

緋色「あっちいってろ雌豚」

州菜「ッッァアア!! イィィッ!! ハィィ、イきますぅっ、嗚呼、もぅ、イきまぅう、んんっ! フゥフゥッ(ガクガク)」

緋色「はぁ〜〜あ(変な人に気に入られちゃったな)」

州菜「ハァハァ、も、もうぃっちゃすぎて、フゥンッ、ナプキン、剥がれちゃっ、嗚呼、だめぇんっっ(ヨタヨタ)」 ←自分の席に向かう
140暇つぶしにどーぞ:2007/07/21(土) 08:32:28 ID:8j0Ih8IO
  ( ガラガラガラ )

? 「おはよう」

緋色「あっ、おはよう。けっこう早いんだね」

? 「ああ、今日は緋色が日直だったよな?」

緋色「うん」

? 「だから、な。今日は早く来た」

緋色「うん? うーーん、うん」

? 「(クスッ)鈍い奴」

州菜「フゥフゥ、も、もう、たってられない、ハァん(ビチャンッ!!)」 ←席に着いて果てる

緋色「さて、当番の仕事はじめるかなっと」

? 「手伝うよ」

緋色「えっ、いいの? でも悪いし、別にいいよ?」

? 「いいんだよ。好きで手伝うんだから。好きだから、さ。気にするな」

緋色「そう、んじゃ頼みますか! HR用のプリントと返却ノート取りに行ってくるから黒板よろしく!」

? 「(クスクス)ん、任された」

州菜「・・・・・・」 ←ボーっと二人のやりとりを眺めながら若干の違和感を覚える

  (ガラガラ、タッタッタッタッタ) ←走り去る緋色

? 「(クスクス)」 ←黒板に取り掛かる

州菜「・・・・・・(なにか、嫌な予感が、いや、イヤイヤでもまさかね)」


つづく・・・・・・?
141暇つぶしにどーぞ:2007/07/21(土) 08:35:32 ID:8j0Ih8IO
☆次回予告☆

筆者が書いてる途中「コレって全然素直クールじゃねえよな」 と気づいてしまい
急遽、州菜と緋色の間に登場させたこの人物。

いったい、誰なんだって?

ハイハイハイおまたせいたしました! これぞ元祖素直クールでございます!
次回からは緋色を奪い合って、上へ下へのおおさわぎ。
いやはや、三人の恋路、一体全体、どーなることでござーましょうね!?        (声:羽佐間道夫) 
142名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 09:22:35 ID:00rFiwnP
>>141
あんたって人はっ!!GJ!!
外雨降ってるけど全裸で正座しながらwktkして待ってる。
143名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 13:01:27 ID:CKtiTCvE
>>141
ヤンデレかw
続きにwktk
144名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 13:11:31 ID:ScmrBk2v
確かに素直クールというよりドMだなw
145名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 13:45:07 ID:i4CFoMkv
>>141
GJ!
「上を下へ」ではなく「上へ下へ」なのは、州菜が上になって騎乗位になったり謎の人物が下になって正常位になったり、乱交プレイの伏線ですね!?
146名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 14:13:20 ID:+E3OFLxs
>>145どんだけ妄想力あるんだよw
>>141でもそういう事なんですよねっ!
147名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 14:34:29 ID:usQBxeYv
GJ!
全くw何でオレが二人も居るんだよwww
148名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 19:09:29 ID:i4CFoMkv
>>146
妄想力は必須スキルです。
149名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 21:28:13 ID:Ok7J6G+P
|д゚)だれもいねぇ
150名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 21:38:44 ID:xZWTjnW2
>>149
…ここにいるよ
151名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 21:40:06 ID:+ezVw8bQ
>>149
おいおい、君は私の事を忘れてしまったのかい?
152 ◆6x17cueegc :2007/07/24(火) 22:06:57 ID:xk7UXk7t
>>149
いるよー。

さて、長期規制中で書き込めなかったときに書いたSSがありますがどうしましょ。
このまま〆てもいいし、エロ追加してもいい内容だしで悩んでるんだよね。
153名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 22:22:05 ID:xjkhop7e
>>149
居るっすよwwwフヒヒwwwww

>>152
まずは落ち着いて此処が何板かを思い出すんだ
そして眼を閉じて内なる声に耳を澄ませ

そりゃ読んでる身にはエロスも欲しいけど、
必然性のないエロ描写は逆に萎えるしねー。
結局は書き手さんのサジ加減一つと云う感じですよ、ええ。

ROMマーは黙ってwktkするのみですよ
154 ◆6x17cueegc :2007/07/24(火) 22:26:26 ID:xk7UXk7t
>>153
>まずは落ち着いて此処が何板かを思い出すんだ
ですよねーw
じゃあもう少し練ってきます。



>そして眼を閉じて内なる声に耳を澄ませ
……誰だ、今めんどくさいとか言った奴。
155名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 04:29:36 ID:mlAFSDVs
>>154
それはあなたの心の内にいる中村雄二さん(和歌山県在住、57歳会社員)の声です。
156名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 04:33:25 ID:DGXcwKNa
保守
157名無しさん@ピンキー:2007/07/25(水) 21:01:27 ID:ce7Nb8U8
>>154
俺の声だろ…常考
158名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 02:50:02 ID:zCcXY0XW
投下町
159名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 06:29:43 ID:GnrhtVA+
瑞希分が不足してきた。続編お願い
160名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 15:04:49 ID:edCdaBhW
一万年と二千年前から愛してる
161名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 15:17:56 ID:qGvfjbS1
一億と二千年後も愛してる
162名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 17:14:13 ID:DPWpZHs/
8ナノ秒過ぎたころにはもっと素直になれた
163名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 17:57:04 ID:rC0WIY66
刹那よりはええw
164名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 18:01:40 ID:CxjF3x65
>>160-162
何故か坂本ジュリエッタが心に浮かんだ
165名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 18:38:49 ID:KVlCmpgR
>>162
ほぼ直後じゃねえかwww
166名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 18:48:52 ID:VT0TJRRm
誰だよ無駄にスレ消費してんのはwwwww







もっとやれ
167名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 19:00:32 ID:CO5cofXr
>>155親父・・・・・
168名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 23:09:09 ID:wflHIoXr
>>167
息子よ・・・・
169名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 00:25:01 ID:195anRPz
>>168
「お義父さん、>>167さんを婿に下さい。
私は彼を愛してます。どれくらい愛しているかというと
週末は休日ということでいつもより六割増しの愛の抱擁を三時間ほど行い
キスもより深く、しつこく、ねっちょりと絡ませ私は彼のキスだけでもう下の下着はぐっちょり濡れてしまい
頭もくらくらしているというのに彼は更にそこから私の申し訳程度の胸へ腕を差し込むと触れるか触れないかの絶妙なタッチで
触り続け、私はその感覚にゾクゾクさせられてしまいそうして油断したスキに私の乳首を強めにつままれ
軽くイってしまい、それだけでもう私は息も絶え絶えだというのに彼は休ませる暇も与えずその剛直を――ん? もういい?
で、ではいいのですか!? やったぞ>>167!! ついに私たちも夫婦に……って、どうしたそんなに顔を赤くして」
170名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 00:35:48 ID:RYHJc+Ks
次はお前がこうなるんだ…ピッコロ大魔王
171名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 15:18:32 ID:+usGELKz
光栄に思うがいい……この変身(夜の変身)を見せるのは

貴様が最初でッ!

最後だッ!
172名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 15:19:40 ID:+usGELKz
こんなくだらんネタで上げてしまったorz
173名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 21:29:11 ID:4c5sPHzM
私はあと2回(夜の)変身を残している。この意味がわかるか?
174これからずっと ◆6x17cueegc :2007/07/28(土) 22:22:50 ID:DRlpzThI
わかりません!
って言ったら実演してくれるんだろうなー。

さて。

皆さんおはようございますこんにちはこんばんは。これからずっとの人でございます。
●荒らしで永久規制とかふざけてるのかと運営を小突き回したい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

短いですが楽しんでいただけたら幸いです。
175これからずっと ◆6x17cueegc :2007/07/28(土) 22:23:31 ID:DRlpzThI
「先輩。」
「なんや後輩。」
「そろそろ帰りましょう。」
「それやったら、まず膝から降りてくれるか?」
彼女の重さに痺れてきた大腿をゆっくり曲げ伸ばししながらお願いする。
今ではすっかりクラスに溶け込んでいるこの光景だが、最初は見物人が出来るほど辺りがざわめいた。
ちらちらとこちらを見ながらのヒソヒソ話が展開されたが、内容までは聞こえてこない。むしろ聞こえない方が幸せだったのかもしれないが。
しかし人の噂も75日。1週間後、次の月曜日には日常の光景の一部分と化していた。人間、慣れって怖いね。

荷物を持って立ち上がると右手をさらわれ、そのまま指を絡められ掌を合わせる形で手を繋ぐ。
「このクソ暑いのに、手ぇ繋ぐんそんなに好きか。」
「嫌いならしません。好きな人と手を繋ぐのはダメなことですか?」
「いいええ。ただ、暑いねえってだけや。」
5月以前から短い梅雨と水不足が懸念されていた通り、梅雨宣言がされてから2週間しないうちに梅雨の終了が宣言された。
関東にも大きな水瓶があるんだから何とかなるだろうと思うのだが、そんなに楽観視してはいけないらしく、毎日TVではマズイマズイと騒いでいる。
そんな夏だから7月もまだ半ばなのに連日最高気温が35度を記録し、熱帯夜が睡眠時間を削る。
教室の扉を開けると蒸した空気がぶつかってきた。最近は空調の効いた教室から出るのが本当に辛い。

引退以来、放課後学校に残ることも少なくなってきた。ほんの1ヶ月前までそうだったのに、夏場でも暗くなるまで居残ったのが懐かしく感じる。
これが体育会系のクラブなら顔を見せて練習に参加するなり出来るのだろうが、美術部でそんな解消方法が出来るわけもない。
はっきり言って、やることが無い。

下足ロッカーに教科書類を放り込み、押し込んで鍵を閉める。
受験を控えている奴は多少重くても持って帰るんだろうが、実家に就職が決まっている俺は気楽なものだ。
一応センターは記念受験するが、自分の将来には関係が無いので真面目にセンターに備えて勉強もするつもりは無い。
これから命を鉋で削っていく級友たちには悪いが、一足お先に長い夏休みを楽しませてもらおう。

片膝をついてスニーカーのかかとを押し込んでいると、いつの間にか背後に回り込んでいた安田が覆いかぶさってきた。
「重いから止め。立てへんやん。鞄も本が詰まって重いのに、お前まで提げられるかい。」
「嘘つき。教科書なんて持って帰ってないくせに。」
耳元でボソっと囁きながらピョンピョンと背中の上で跳ねる。
両足が離れる度に彼女の体重が全て俺にかかるから、バランスがおかしくなって何度も倒れそうになって危ない。
「後ろにひっくり返りそうやから止めなさい。怪我すんで?」
「おんぶしてくれないなら、腕を組んでくれますよね?」
「俺からせんでも、いつも勝手にくっついとるやろが。……行こか。」
「はい。」
よいしょと立ち上がると、彼女はすぐに俺の右腕を絡めとった。
もう夏なんだから暑苦しい、と言っても、まるで自分の居場所はここだと言わんばかりに腕にしがみついてくる。
176これからずっと ◆6x17cueegc :2007/07/28(土) 22:24:12 ID:DRlpzThI
ここで時間は75時間ほど遡る。

「先輩。」
「何や後輩。……近いねん、ちょっと離れ。」
「今週の土日はお暇ですか?」
残念ながら俺のお願いは聞こえなかったようだ。膝の上に乗ったまま、鼻の頭にキスせんばかりの距離で質問を投げかけてくる。
「土曜は暇やな。日曜は予定あるわ。」
「今週末、家に誰もいないんです。1人で留守番は危ないので、先輩が付き合ってくれるとうれしいんですが。」
ゴツっとおでこをぶつけられ、睨むようにして視線を合わせてくる。
「嫌ですか?」
そのまま視線を外さない。おそらく「うん」というまで身じろぎひとつさえしないだろう。
俺も暇なら根比べに付き合ってもやれるが、残念なことに午後の始業まで後5分と無い。
「お前ズルいやっちゃなぁ……」
「何のことです?」
「いや、ええわ。お邪魔させてもらいますわ。」
「ありがとうございます。それでは、また。」
花が咲いたような笑顔を見せると、膝から飛び降り自分の教室へ駆けていった。

3時間後。放課後の下足室にて。

「なあ、訊きたい事があるんやけど。」
いつものように抱きついてきた安田を一度押し遣り質問する。
「1人で留守番って、ご両親と田辺さんは?」
まさかとは思うが、俺との逢瀬のためだけに追い出すのではないだろうな。
「両親は旅行に出かけましたし、お兄さんは週末はゼミ合宿だそうです。」
そんなことだろうと思った。コイツがそんな凡ミスを犯すわけが無い。
「さっきは行くって言うたけど、俺も親に言わんとアカンから行けるか分からんで。」
こいつの家は学校を挟んで俺の家と正反対の位置にあり、一戦……いや何戦か交えて帰ると帰宅時間は結構遅くなる。
「構いません、許可は取ってますから。」
にっこり笑んで、唇で頬へ軽く触れる。

……って。
「おい、許可って何や。」
「はい?」
「だから、許可って何や。」
「親御さんからの許可はいただきました、行きましょう、と言ったつもりでしたが。」
いや、訊きたいのはそういうことじゃなくて。
「……いつの間に連絡を取り合うてたんや。」
「携帯電話は秘密の小箱、だそうです。」
俺の携帯電話のアドレスを覗き見て連絡を取ったとしか考えられない。息子のケータイ勝手に覗くなよ、情けない。
「行きましょう。」
彼女は深く溜息をついた俺をの相手を使用ともせずに車の止められている駐車場へ引っ張っていく。
177これからずっと ◆6x17cueegc :2007/07/28(土) 22:25:13 ID:DRlpzThI
再び72時間後。彼女の家の最寄り駅から瀟洒な住宅街へ登って行く途上。

「あづい。」
「ええ……少し暑いですね。」
まだまだ頭上にある太陽が噴き出させた汗が制服のYシャツを身体に貼り付け、顎からは滴り落ちる。
彼女は汗でヌルヌルしていても構わず腕に掴まっているが、相当参っているのか顔を歪ませている。
「暑かったら離したらええやん、腕。」
「そうですか。」
言われてすぐに手を離す。あまりにあっさり離れてしまうのでちょっと寂しい。
彼女は離した手で喉元のボタンを外し、シャツをはたはたと前後させる。チラッとのぞくブルーの肩紐に目が留まるのは悲しい男の性だ。
安田はその目線に気が付くと、シャツを前に目一杯引き伸ばしたまま手を止めた。
「続けましょうか?」
「いや、動かしてたほうがそそるな。」
「チラリズム萌え、ですね。」
「……どこでそんな言葉を覚えてくるんや。」

彼女に先導されて何度か見た門扉の前に立つ。駅からここまで歩いてきたのは初めてだ。
「結構駅から離れてるんやなぁ。」
「知らなかったんですか?」
「最初に来たときは騙されて、2回目は強引に、どっちも車で運ばれたんやから知っとるわけ無いやろ。」
「そうでしたっけ。」
彼女は記憶に無いふりをしながら鞄から鍵を取り出してドアに突っ込み捻る。カチャリと音がして鍵が開いた。
「お邪魔します〜。」
ドアを開けてくれたのでありがとう、と声をかけて先に入らせてもらう。
日陰に入って楽になると思っていたが、閉め切った部屋に篭った熱気が身体に纏わりつき、一層汗を噴き出させる。
後ろから入ってきた彼女も同様に感じたのか一瞬動きが止まった。
「……自分の部屋、クーラーあるやんな?」
「……はい、あんまり冷えませんが。」
少し眩暈がしたが、あがらせてもらうことにする。

ゴンゴンと重低音をさせてエアコンが動き出したが、部屋の中はすぐには涼しくならない。しかも床に絨毯を敷いているから尻が熱い。
「下に着とるTシャツ、ベチャベチャになっとるわ。」
「私もあまり汗はかかない方なんですが、下着が絞れそうです。」
お互いに不快な部分を述べ合い、どうにもそういう雰囲気にならない。なんとなく2人とも黙ってしまった。
しかし本当に気持ちが悪い。こういうときは……
「なあ、風呂入らへん?汗流してさっぱりしたいわ。」
178これからずっと ◆6x17cueegc :2007/07/28(土) 22:26:22 ID:DRlpzThI
張り付いてくるTシャツを引き剥がして裸になると浴室へ足を踏み入れる。一般家庭よりもかなり広い浴室だ。
浴室に水気は無く壁や床のタイルは熱を持っていたが、シャワーで水を撒くと幾分か楽になった。
「はあぁぁ……」
床へ向けていたシャワーヘッドを今度は頭上に掲げて全身に水を被る。肌の表面にくっついて澱のようになった汗が流れる感じがして、とても気持ちがいい。

暫く至福の時を味わっていると浴室の扉が開いた。振り返ると素っ裸の彼女が悪びれる様子も無く入ってくる。
そのまま近寄ってきて抱きついてきた。肌が変な熱を持って汗でぬめっている。
「身体、冷たくて気持ちいい……」
そのまま頬ずりするので頭からシャワーをかけてやる。最初のうちこそ冷たい刺激に驚いて肩に力が入ったが、暫くすると大人しくなった。
「スッとしたか?」
「はい、もうすっきりしました。先輩も、ココ以外は……」
さっきから緊張しっぱなしの一物を軽く握り、優しく撫でる。背筋に電気が走ってビクッと跳ねた。
「ふふっ……鎮めますね。今日は私が気持ち良くしてあげます。」
元気な反応を見て破顔すると、プラスチックの低い椅子を指差した。

言われた通りにプラスチックの椅子に腰を下ろすとその前に回りこんで屈み込む。
「なっ……」
「親戚のお姉さんに聞きました。男の人はこうすると、とても喜んでくれるって。」
絶句している間に先端にキスが降って来た。すぐに舐め回しになり口に含む行為に変わっていく。
「待って!身体洗ってないから、それは止めよう!」
シャワーを浴びたとは言っても身体の表面を軽く撫でたくらいだった。肩を掴んで引き剥がそうとするが構わずに舐め続ける。
「汚いから、な!?」
「汚くないですよ。先輩をこうやってしてあげられるの、とってもうれしい。」
うろたえる俺を尻目に我が分身はどんどん張りつめていく。少し粘ったような唾液がまぶされて、ぬめった舌が這っていく。
「あ、大きくなってきた。」
時々口を離してそう言うと、唾液を滴らせて大きな音を立てながら吸い込んでいく。もう限界だった。
「アカン、もうダメ、止めよう!」
我慢が出来なくなって叫ぶが、彼女は俺の懇願を意に関せず吸い続ける。
「う、くっ!」
我慢できなくなって小さく声を漏らすと射精してしまった。

口の中に思いっきり放ってしまった。彼女を見ると咳き込んでいる。
「ゴメン!」
「どうし、コホッ……どうして謝るんですか?」
精液が絡んで呼吸が苦しいから涙目になっているのだ。目尻に水滴が浮かんでいる。
「先輩が私で気持ち良くなってくれて、すごくうれしいです。いつも私、されるだけだったから。」
涙を拭いながらそう言うと、ごくりと喉を鳴らした。

「なっ!?」
「どうかしましたか?」
「だ、だって、アカンやろそんなモン飲んだら!」
「この間も言いましたが、身体に悪いものではないんですからそんなに驚かなくてもいいじゃないですか。」
大体私を舐めている人に言われたくありません、と文句を言いながら少し萎えた俺自身にまた口を寄せてきた。
「キレイに、しますね?」
鈴口から中を抉るように舌が走る。快感からまた力が戻ってきた。
「こんなに元気にして……よかった。」
硬くなり始めたそれに気付き安心したように呟くと、吐息を吹きかけながら全体を舐め回す。
179これからずっと ◆6x17cueegc :2007/07/28(土) 22:28:01 ID:DRlpzThI
とうとう我慢が出来なくなって、脇に手を入れ抱き上げて膝に乗せる。
「もう止めて。これ以上されたら前戯じゃ済めへんようになる。」
「嫌ですって言ったらどうしますか?」
「続きはベッドで。」
階上を指差すが、その手を?まれて強く握られる。
「嫌。」
「でもコンドーム無いし。」
「だから嫌なんです。今日は無くても大丈夫ですから。」
強い口調で拒否して強硬に避妊具無しでしたいと言い続けるが、応じるわけにいかない。
「本当に安全な日ぃなんて無いって知っとるやろ?」
「それを言ったらコンドームだって絶対に安全じゃないですね。」
真面目な顔をして屁理屈で返してくる。何がそんなに不満なのか。
「それでも、ヤるんやったら一応使わんとアカンやろ。」
「中学生のときは、そんなもの使わなかったのでしょう?」
ハッとした。何故そんな話が出てくるのかが分からず、思考が停止する。
「そんなに怖い顔しないで下さい。言い過ぎました。」
身体を寄せて耳元で囁いてきた。それと同時に腕を回してきて胸を押し付けてくる。
「先輩、私とするの、嫌ですか?……私、まだそういう風にしてもらったことないから、何か変なところがあるのかなって、ちょっと、不安で。」
語尾が掠れて浴室に反響する。

「うーんと、Hするんは気持ちええし嫌いではないよ。でもするん好きや、って言うたら、自分絶対見境無くなるやろ?」
身体を離して鼻の頭に口で軽く触れると、彼女は首を反らし唇を合わせてきた。そのまま舌を絡めると青い臭いが鼻につく。
それも少しすると気にならなくなったが、一度唇を離す。彼女は小首を傾げてもう一度迫ってくるがそれには応じない。
「話を聞きなさい。そういうのを見境が無くなると言うんや。」
「先輩から誘ったじゃないですか。」
「まあそうやけど。……なあ、妊娠のリスクは減らした方がええのは分かるな?」
こっくり頷く。
「それやったら一番ええのは、最初からせえへんことなのも分かるよな。」
「分かりますけど、我慢できません。」
「うん、それは俺も一緒や。一応オトコノコやし。」
同意して大きく深呼吸。前から考えていたんだけど、と前置きして話を続ける。
「回数減らして、ちゃんと避妊して、それで出来れば安全と言われとる日にせえへんかって思うんやけど、どう?」
俺だってヤれるならヤりたいが、間違いを起こすわけにはいかない。俺のためじゃなくて、俺の周りの人たちのために。

「仕方がないですね。」
納得してくれたとほっとしていると、軽くキスをされた。
「出来る時に、ん、いっぱい、ん、してくれるんだったら、んは、納得しますよ?」
何度か触れるだけのキスを繰り返してくる。明らかに誘ってきている動きだ。俺は腹を括ると、彼女の頭を捕まえて深くキスを交わす。
180これからずっと ◆6x17cueegc :2007/07/28(土) 22:30:20 ID:DRlpzThI
「今日はどのくらいしましょうか?」
「んー、どっちかが満足するまで?」
「2人とも満足するまで、です。ただ、先輩とのHは気持ちがよ過ぎて、いつまでも満足しそうにないですけど。」
「あのな、俺にも体力の限界ってものがっん……」
「……ん、はぁ。限界がなんですか?」
口で口を無理矢理塞がれて反論を封じられた。漫画の様な手段で黙らされて目を白黒させていると、もう一度。
「……何でもないです。」
「そうですか。それはよかったですね。」
ぽつりとそう言うと体重を掛けて押し倒してきた。椅子から落とされて仰向けになる。
彼女はその上に圧し掛かると、俺の薄い胸板に指と舌を走らせた。浴室のタイルが背中から熱を奪っていく。
「お姉さんにはいっぱいテクニックを教えてもらってきました。今日は楽しみにしていてくださいね?」
「……お手柔らかに。」

30分後、彼女の部屋のベッドの上で。

冷房が効きすぎた部屋で、2人だけは身体を真っ赤に染めていた。
「もう我慢できません。」
「俺も我慢出来へん。……挿れるで。」
正常位で身体をずらすように押し込むと、身体が弓なりに反り返る。
「あっ、やっと、先輩が、はあぁっ、中にっ!」
今度は身体を逆に折り曲げてしがみついてきた。俺はそれを抱きとめると、ゆっくり腰をグラインドさせる。
「やだぁ……先輩、出て行かないで……?」
「ん?」
「中で熱くて大きいのを感じていたいんです。お腹の中をぎゅうぎゅう押し広げられてて、とっても気持ちがよくってぇ……」
言うと自分の腰を揺らした。繋がった部分が擦れるように当たってピチャピチャ音を立てる。
「あっ、先輩、動いちゃ、う、ふっ、ダメですからね?」
押し付けるように腰を振りながらキスを求めてくるが、敢えてそれには応えず身体を入れ替えて俺が仰向けになる。
これで彼女がしたいように出来るだろう。

前、後ろ、右、左。
安田は腰をバラバラに動かして快感のポイントを探している。その間、俺は動かないで下から眺めていた。中がグネグネ動いて十分気持ちがいい。
目を閉じ口を半開きにして一心不乱に腰を振っていたが、ふと動きを止めると目を合わせてくる。
「先輩、あんまり見ないでください。変な顔見られるの、恥ずかしいです。」
「変な顔違うで。めっちゃかわいい。」
目を潤ませ喘いでいる顔は本当に愛おしい表情をしているのに、どうして変な顔だなんて言えようか。

「それに自分で『動くな』って言うたやん。それって、じっくり見てくれってことと違うん?」
「…………」
「そんなに睨みな。動いてええか?」
「はい、動いて下さあぁっ!」
返事を全部聞かないうちに腰を突き上げると恨めしそうに睨んでくる。
「どしたん?」
「ニヤニヤ、笑わないで下さい。」
「笑っとるか?」
「……もういいです。」
ふくれっ面をしながら抱きしめられると、また大きく動き出した。蕩けそうな快感がまたせり上がってくる。

また暫く後。

「……やっぱり笑ってます。」
「笑ろたらアカンか?」
「いいえ。先輩は笑顔が一番素敵ですから。」
「…………」
「そんな顔しないで笑ってください。」
181これからずっと ◆6x17cueegc :2007/07/28(土) 22:31:49 ID:DRlpzThI
と以上です。
親戚のお姉さんからの聞いたテクニック、何を教えられたのかはまた今度ということで。
気が向いたらそれで1つ書くかもしれません。

最初に7月半ばとあるように、これは2週間ほど前くらいが投下予定の時期だったんですがかなり遅くなってしまいました。大きな反省材料です。

最後に。
他スレでもネタをちょこちょこやってるので暫くSSには触れませんがご容赦下さい。
182名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:51:40 ID:4N+AX9kO
>>181
GJ!
余所へ追っかけ行きたいけど自重します。
183これからずっと ◆6x17cueegc :2007/07/29(日) 00:15:54 ID:AqXNfPLC
>>182
ここ含めて4つくらい並行してやってますが、トリつけてるの2つだけですしSSはここだけなので追っかけても無意味ですよw
184名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 11:55:32 ID:IhpMhzMS
GJ!
やはり素直クールはすばらしい・・・
185名無しさん@ピンキー:2007/07/29(日) 23:51:19 ID:mFJAY1JxO
保守代わりに落とします、内容は素直クールの胸の内みたいな感じです。




誰も居ない空間、外から差す朱色の光、何処からともなく漂って来る夕餉の香。
この時間は楽しみであり、そして涙が出る程、寂しい、思い出すのは、大切な人達。

何時の頃からか…甘えなくなった自分。
もう大人だからと…割り切って考え、そして寂しくなる。

そうやって生きて居た私は、彼と出会って恋をした。
胸の内を秘めたままでは居られなくて、溢れ出した感情を伝えたのも、こんな夕日の差す教室の中。
彼は、真っ赤に染めた頬を夕日のせいにしながら、私の心に答えてくれた。
彼と出会い、初めての恋に怯え、溺れた。
彼と過ごした日々は、今でも大切な宝物。
初めてキスをしたのは教室、ファーストキスはお弁当の卵焼きの味だった。
その後、何故か臍を曲げてしまった彼、今でも理由は、分からない。

初めて契って、迎えた朝は、とても嬉しくて、思わず校内放送で語った…いかに素晴らしい行為かを。
そしたら2日も口を聞いて貰えなかった、今でも理由は、分からない。

永遠に続くかと思った日々は、終わりを迎えた。
もう、恋は一生出来ない…私の恋は、終わりを告げ…


そして、愛に変わる…
恋しいと思う気持ちは、愛しいと思う気持ちになる。
私の気持ちは今、私の中を流れ、新しい命へと流れてゆく、それはとても自然な事。
父と母の愛は私に流れ込み、私と彼の愛は子供へと流れて込んでゆく。
きっとこうして、人間は愛という遺伝子を紡いで、繋いで行くのだろう。

さぁ…愛しの彼の為に夕餉を作ろう、そしてご飯を食べながら、愛してると言ってやろう。
ずっと愛し合って生きて行こう、彼と共に。
そうやって生きて行けば、私達の子供にも愛し合う素晴らしさが伝わるから。

きっとそう、だって愛は伝わってゆくものだから。
186185:2007/07/30(月) 00:04:03 ID:Ce2l2Ltc
なんか、こんなんもアリかなと思って書いたんだけど
クール分もエロ分も無いなと思った次第であります、勉強し直して来ます。
187名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 01:02:05 ID:zQn/crQV
今まで男キャラがツンデレっぽい振る舞いに出たときには、
「素直じゃないなぁ」とか勝手に思ってニヤニヤして読んでいたが、
>>185を目前で口に出されたら俺もそうなっちまう自信はあるな。
188名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 02:46:26 ID:ADwpI/qj
>初めて契って、迎えた朝は、とても嬉しくて、思わず校内放送で語った…いかに素晴らしい行為かを。

先生たち大わらわだろ、これwwwwww
189名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 02:57:15 ID:a/nTgWo2
これから氏超GJ!!
いつも巡回してるがやっぱり良いSS見れるとその日一日幸せになれるな。
190名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 20:21:28 ID:mlv1HLzU
>>185
>今でも理由は、わからない
でなんかフイタwww

これこそが素直クールが素直クールたる所以なんだろなwww
191名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 04:20:10 ID:nRlPwZDf
投下待ち
192名無しさん@ピンキー:2007/08/02(木) 22:37:53 ID:JGiBZdpS
ミサキの続きが見たいなんていってみたりして。
いやマジで
193名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 05:39:24 ID:nV0lmQb5
わかりやすい夏厨だな
194名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 11:23:25 ID:Ln6dSfmB
女「なぁ」
男「何だ女」
女「……………」(見つめる)
男「…………」
女「……………」
男「……………」
女「アメリカ」
男「????」
女「あ、間違えた 米」
男(米国だからなのか!?米国だからなのか!?)
女「貴方が好きです」
男「へ?」
 
なんか付き合う事になりますた(´・ω・`)
 
 
どうかんがえても素直シュールですが投下する場所わかんなくてここにした反省してる(´・ω・`)
後一つ言うと次スレ建てる場合素直クール(エロパロ)だけじゃなくて素直クール・シュール・ヒート総合(エロパロ)にして欲しいその方がネタが増えるから 
どう思いますか?
195名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 12:04:53 ID:hVgYts9f
確か新ジャンル総合エロパロスレがあったような気がする。
もう落ちたのかもしれなし、よく分からん。
196名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 13:36:10 ID:76l04eNW
これですな。
【総合】新ジャンルでエロパロpart2【混沌】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1185291735/l50
197名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 19:40:05 ID:Ln6dSfmB
クールとかシュールって専用スレも総合スレもあるしエロパロの方もクールとシュールひとまとめにしても良いんでない?
198名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 19:46:42 ID:hgLCCTNv
199名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 22:16:11 ID:5xM6RWrx
>>195以外に素直ジャンル総合みたいなスレなかったっけ?
200名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 22:18:56 ID:5xM6RWrx
【素直】クール・シュール・ヒート【総合3】
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/honobono/1175411602/

あった。
201名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 22:19:02 ID:Ln6dSfmB
>>199
無いよ
202名無しさん@ピンキー:2007/08/04(土) 23:48:05 ID:naG8aDEE
素直シュールでガチエロ書きたいんなら>>196
微エロならほのぼの板の総合スレが一番波風立たないんじゃね

素直シュールは素直クール発祥だからこのスレでもいいと思うがな
203名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 01:25:55 ID:eFywzzPp
素直シュールはすでに新ジャンルじゃない気がするのは気のせいですか?
204名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 02:26:05 ID:+5ECzs+N

「新しい」から新ジャンルってついてるわけじゃないような。

俺はここの素直クールは、新ジャンルの中の古参に分類されると思う(変な日本語だな)
それは素直クールという呼び名が先に現れて、そこからキャラが誕生したからだ。
(対照的にツンデレやヤンデレなんかは、具体的なキャラが先にあって呼び名が後から出て来た)

「新ジャンル」ってのは、具体的なキャラより呼び名が先に現れた属性を指すものじゃないか。
だから、素直クールも素直シュールも新ジャンルだと思う。というか新しい古いで決めるとあまりに曖昧だし。私見で悪いが。


ま、素直クールは探せしゃ昔にもいるんだろうけどね。
205名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 07:22:40 ID:IYYT6Umg
このスレは素直クールのスレで俺も素直クールが見たくてここに来てるから
ここで素直シュールとか投下されてもウザいだけなんだが。
素直シュールでエロ書きたければ>>196で投下するなりスレ立ててVIPやらほの板やらのスレに宣伝して職人募集するなりすればいいし。

>>194
>後一つ言うと次スレ建てる場合素直クール(エロパロ)だけじゃなくて素直クール・シュール・ヒート総合(エロパロ)にして欲しいその方がネタが増えるから
ってーのも投下が増えてもヒートやシュールに興味のない人にとっては素直クールの投下が増えないと意味がないどころか
邪魔なものが混じるわけだから百害あって一利なしなわけで全力で反対する。

>>197についても同様に反対。シュールとクールをひとまとめにしたスレが欲しければこのスレをそういう風にするんじゃなくて自分で新しく立ててくれ。
206名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 15:11:42 ID:IydcagjB
えらく自分本位なお方が居ますね
207名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 16:22:00 ID:n6ib6mj2
自分に素直という奴だな
208名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 17:06:43 ID:hPj3ZImb
まあでも言ってることは間違ってない
重複しない別ジャンルなんだから別スレ立てるのが本来だ
209名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 22:57:21 ID:pjmRUkxE
言ってることはまぁそれほど間違っちゃいないが、大体そうして自治されて過疎ってくんだよな。
210名無しさん@ピンキー:2007/08/05(日) 23:42:47 ID:+5ECzs+N
要は「俺がうざいから投下すんな」ってことでしょ。
たとえ内心がそうだったとしても、角が立つ言い方は止めてほしい。
211名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 01:59:12 ID:3QyOgvr4
まあここは素直クールスレだしね
他のジャンルは他のところでやってくれって人もいるのは当たり前

まあなんだ、まったりしようぜ
212名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 08:08:45 ID:MpwO5mdY
213名無しさん@ピンキー:2007/08/06(月) 19:26:57 ID:QrSrQim1
>>194-211
まぁなんだ、もしも新スレ立てたらの話だが
その時はこっちにも誘導レス頼みたい

後たまにはポエム板のシュールスレの事も思い出してやってくれると嬉しい
(´・ω・`)
214名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 22:59:05 ID:Y7wyolNV
今このスレは小休止中?
215名無しさん@ピンキー:2007/08/08(水) 05:25:04 ID:CWX8CGvg
>>214職人さん達も盆に向けて仕事の最後の追い込みが忙しいんだろ。

俺も休みになったらゆっくりできるし、その時は投下する。
216名無しさん@ピンキー:2007/08/08(水) 10:55:09 ID:2IiJoQrs
作品待ち保守
217名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 11:05:38 ID:oJYWNwWL
せっかく、エッチOKなヒロインを用意してやったのに、主人公が意地をはって手を付けようとしない。
盆休み中にはなんとか説得して、投下できるようにするよ。
218名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 23:00:23 ID:Fe18QY8K
そうか……全裸に正座で、待っている。
219名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 23:03:12 ID:oNRfN8qZ
>>217
あー、スゲー分かるw
どっちかが欲望に忠実だと、もう片方がブレーキにならないと話が回らないんだよな。

どっちにしろwktkしてるよ
220名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 08:20:39 ID:79UZaX18
保守
221名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 12:09:46 ID:cICkou94
保守
222名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 12:39:29 ID:cICkou94
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1180199790/341-345
孕ませスレより。
曹長が素直クールっぽいと思ったのですが、どうでしょう?
223名無しさん@ピンキー:2007/08/13(月) 01:18:41 ID:23/NtJha
>>222
俺も思ってた

作者も「素直クールみたいになってしまった」
って言ってしまってるしな
224名無しさん@ピンキー:2007/08/14(火) 04:06:28 ID:jmQU1r8X
投下町
225名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 05:40:27 ID:WALl6/yh
俺の夏は終わった・・・。
226名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 17:18:40 ID:2ML/nT3H
>>225
どうしたんだ?
素直クールにツンデレな対応してたらツン言動をそのまま受け取られてちょっと擦れ違い気味になったところで別の鳶に油揚げ掻っ攫われたのか
227名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 23:18:46 ID:YtfxijjK
テラ深読みwww
228名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 23:23:20 ID:Pl8LfLzC
>>226
なんだその致命傷・・・
229名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 00:57:03 ID:9Xv9cmkh
違うだろ>>225は素直クールと思ったらただ嫌われてたのに気づかなかった可哀想な子だよ
だからきっとやさしい素直なおねーさんに拾われるよ


大丈夫だよ!
脳内はいつだって天国だよ!
230名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 15:14:45 ID:JYVHaiCZ
家は金持ちで文武両道な完璧超人で男女共に人気がある素直クール
普段は、ギャルゲーをよくやる為クラスでも女子からは避けられぎみだが、実は格闘技の達人な主人公
恋人はスナイパー見てたらこんな妄想が沸いて出てきた
文章にしようにも文才が無いから書けない、何か参考になるもの無いですかね。
231名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 15:41:54 ID:ZbKIKyZY
文才は「ある」ものではない。「つける」ものだ。
というわけで自分で書くんだ。

wktk
232名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 17:39:26 ID:JYVHaiCZ
>>231
分かった、なんとか書いてみる。
233名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 20:16:42 ID:N3TeYklL
自分が面白いと思った作品の文体をよく観察するのが上達の近道にして王道だよ。
どれだけ地の文を詳細に書いているか、似たような言い回しや文末を繰り返さないか。
または、どうすれば説明臭くない、生きた台詞を喋らせられるのか。
ノベルゲーっぽい作品作りたいなら、nsdecとか使ってNスク製のゲームのシナリオなんか検討するとといいかも。
234名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 22:31:11 ID:JYVHaiCZ
すいません、書けませんでした、俺の妄想よければ使ってやって下さい
235名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 23:12:00 ID:XBUK/Cgf
夏の風物詩age
236名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 23:12:05 ID:nZnodK1r
>>233
>似たような言い回しや文末
表現手法としてそういう物もあるから、一概に悪いとは言えないがな。
テンポ作りの為にあえてやる人もいるし。
音読してみると結構面白い。
237名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 00:37:09 ID:MTNhz2Do
保守
238名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 05:58:44 ID:qDeBnKqv
保守
239名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 10:03:03 ID:KCeaKuhV
先輩、クーっぽい?
イカされすぎてスレより

http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1182314033/164-
240名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 18:37:55 ID:2cbgBFoy
sageろ夏厨
241名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 18:31:43 ID:wvYbBdLj
242名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 20:00:53 ID:MPexTPQL
勝手に立てりゃいいじゃないかと
シュールとヒートでエロを書く人がいればだがな……
過疎るのが簡単に想像出来るし、落ちもせず延々と保守が繰り返されるのが目に見えている
243名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 01:49:15 ID:LSOtlkPm
>>239
リンク先 164の書き手です。
このスレで紹介されているとは思いませんでしたのでちょっとびっくりしました。

書き手としては、素直クールをめちゃめちゃ意識しています。
というより、自分にとってのクーのイメージわりとそのままです。

自分はこの春 vipとほの板のクールスレで
始めて SSを書き出したクチで、クーにはかなり思い入れがあるのでした。
クー以外のヒロインはほとんど書いたことがないですし。
素直スレ以外での SS投下はリンク先スレが始めてでもあります。

書き手が、それもよそのスレに出張ってしまってすみません。
そのうちこのスレにも投下できたらいいなあ。
244名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 02:02:52 ID:jinOaLxi
楽しみにしてます。
あれの外伝的なものも欲しいよ。
大統領の娘とかさー色々居るじゃん?
245名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 02:24:27 ID:oAZxOYSz
あー……どうにか完成の目処がついた。
今週中に一本投下しますよ。
246名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 04:36:19 ID:LSLAsdDb
>>243ここで会えるとは・・・
素直クール好き仲間なのも俺には嬉しいよ。

>>245久しい投下全裸でエベレストに待機してる
247名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 04:46:51 ID:U8oUoxCB
それが>>246の最後の言葉だった
248名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 05:47:02 ID:TIjzkhUh
俺は全裸でサウナに待機だ
249名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 08:06:37 ID:QDmKVrzp
そして248は帰ってこなかった…
熱中症こあいよ
250名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 09:07:18 ID:5yi8OvyH
クーがハーレム作れとか岩内だろ常考
251名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 10:04:50 ID:g3qEpljb
ハーレムはともかく、
自分は男を愛するけど、男からの愛を求めることには
淡白な、ある意味ドライなクーってのは
自分的にはありかな。
252名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 10:08:56 ID:2AhW4fBC
『知らない女に寝とられるより目の届く範囲のハレムのがマシ』
そんなクーが居ても良いだろ上皇…

・素直な愛情表現(≠痴女)
・クールで冷静な感情表現

この二点さえ押さえてあれば他に制約など無いはずだろ?

253名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 10:10:27 ID:oDasdiSc
独占欲が強い=愛情が深い
わけじゃないからねえ。
254名無しさん@ピンキー:2007/08/22(水) 14:39:59 ID:Gx887GwN
とりあえずNGできるようにはしといてくれ
俺は好かん
255名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 02:36:25 ID:tZOsxGw0
認めていないけど男に女が勝手に寄ってきて結果ハーレムになってしまう
というのはクーデレらしいというか、クーデレは「他の女を排除」というより
「自分のテクニックで男に気を向かせる」って感じがする
256名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 03:18:14 ID:5htwctqi
>>255
とりあえずスレ違いだ
257名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 12:04:33 ID:9kBjftgU
瑞希タソを全裸で待ってる漏れガイル
258名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 15:09:07 ID:VI9d5VFF
素直クール=クーデレじゃねぇってなんどいえb
259名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 19:37:25 ID:tZOsxGw0
>>258
違うのか
260名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 21:22:54 ID:cdU+9JuN
>>259
クーデレとは、ツンデレと同じアルゴリズムで言えば…
普段はクールだが、時折(≒二人きりの場合?)デレが出る。

対して素直クールは、いつでも何処でも素直でクール…つまり>>1だ。
あるいは>>252で俺が述べた通り。

これが些細な差異に感じる人も居れば、あくまでこだわる人も居る。
因みに俺はそんなにこだわらない方だと思っては居るが、
デレ分が多すぎてドロドロになったりすると…やはり萎える。

まぁ大体そんなカンジ、ギャグ漫画日和。
261名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 21:27:53 ID:VV6aJSJu
>>260
後半いらない
262名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 06:52:22 ID:d4wqVn5e
姐御肌的幼馴染みな素直クールとロリ巨乳後輩型素直クールの人マダー?(AAry
263名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 01:32:13 ID:0mge7cQ3
>>260
ツンデレの解釈が微妙だからなぁ。それのアントニムを目指して創造されたクーデレにもブレがある。

確かに「通常はツン、二人きりのときはデレ」ってのはツンデレの重要なファクターとして存在するけど、
ツンデレには“あくまで最後まで「ツン」「デレ」が並行する”というキャラの意味もある(語源を考えるとむしろそちらが妥当)
この意味の対極としてクーデレを扱う場合は、>>1>>252とほぼ同じものを指すんじゃないかね。
264 ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:17:15 ID:I5gyCyJV

シン「さて、>>245の約束通り完成したのだが、作者から伝言がある」
ミサキ「ほう。あの怠け者から」

シン「では――『このクソ暑いのに、鍋やら炬燵やら出てくる季節の物語書いてられっかぁ!
    筆がノるわきゃねえだろ、コンチクショー!』――とのことで、ちゃぶ台返したぞ」
ミサキ「……怠慢が原因で、暑い時期に突入したくせに……自業自得だな」
シン「まあ、そのうち続きを書く気はあるようだから、それまで私達はお休みだ」
ミサキ「仕方ない。――ところで、随分演技が板についてたな」
シン「そうかい?」
ミサキ「まさか、昔はあんな喋り方だったとか? だとしたら、意外な一面が見れた感じで嬉しいな」

シン「……さ、バトンタッチといこうか」
265ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:18:29 ID:I5gyCyJV


 木々のざわめき、小鳥のさえずり。穏やかな風はそこに在るものを優しく撫でる。
 木の葉の隙間から差す陽光は、切り取った景色を彩るように、幾本もの白い線を引く。
 その空間中心となるは、頭上十メートルより落ちる水の音。
 足全体で水の流れを。足の裏には、踏み締める小石を。風にそよぐように揺れ動く苔や藻を。時に寄ってくる小魚を。
 それら全てを肌で感じて、彼は佇む。
 少年というよりも、顔付き体付きが青年と呼ぶ時期に差し掛かりつつある一人の男性。
 腰に木刀を携え、道着姿で川の中に下半身を浸けたまま、微動だにせず精神を研ぎ澄ましている。
 練り上げるように。そして鍛え上げるように。
 大きく息を吸い、
「よしッ!」
 カッと目を見開いて、木刀を構えた。
 真っ直ぐに。大上段に振り上げる。
 遥かな高みを目指して。
266ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:21:42 ID:I5gyCyJV

 ただ偏に高みを目指し。
 目指して。
「到着……っと」
 相変わらずの暑さに息を切らすのは、頬を火照らせた長身の少女。その手には、小さなバッグとバスケット。
 長い石段を登り終えて、ようやく気を抜けると、シャツの胸元を扇いで空気を送り込む。続いて、パンツの裾を摘んで、こちらもはしたなくない程度に扇ぐ。
 デニムの生地は着こなし次第で可愛くなるが、今日と言う日に選んだのは失敗だったと反省する。
 汗で湿った素肌に風を感じながら、珠樹は瀬川神社の境内を見渡した。
「うわ、凄い」
 たった一人、女性の姿を確認できた。
 まるで暑さを気にも留めないかのように、直射日光の下、箒で掃いている。
「あら? あらあらあら。いらっしゃい、珠樹さん」
 すぐさまこちらに気付いた。箒を手にしたまま、珠樹に近寄る浩毅の母。
 何度目にかかっても、その若さが羨ましい。二十年後も、由美か○る以上の身体をキープしていそうで怖いくらいだ。
 近くで見れば薄化粧しかしていない上に、この様子からして、大して紫外線を気にする素振りもない。自分と大差ない肌の張り。
 ド○ホルンリ○クルでもこうはいかないだろう。同じ女として、その秘訣を教わりたいものだった。
「こんにちは、おばさま。あの……それは……」
 そんな思いとは別に、見つけた時から気になっていたモノを指摘する。
「ん? ああ、これ? どう、似合うでしょう?」
 その場でくるっとターンしてみせる。その動きに合わせて、薄めの布地がふわりと浮いた。
 珠樹は困惑する。
「ええ――その……」
 信じられないくらい。
 思わず出かかった言葉を飲み込む。
 わざわざポニーテールに結い上げて、赤い袴の見事な着こなし。見紛う事なき巫女ルックだった。
「でもねえ。浩毅やお父様――浩毅のお祖父ちゃんからは、あんまり評判良くないのですよねえ。だから、鬼の居ぬうちに」
 胸中で、珠樹は頷く。
 いくら若々しく似合ってると言っても、三十代も半ば過ぎの女性の格好ではない。
 外見ではなく、年齢を考えろと言いたいのだろう。
「でもでも。あの人はキレイだって言ってくれまして。それでそのまま……きゃー、やだもう!」
 箒を落とし、浮かれつつ両手で顔を隠す母。
 珠樹、絶句。
 強者だ。どちらも。
 二人が辟易する理由は、この断片だけで想像するに余りある。
267ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:22:30 ID:I5gyCyJV
 そろそろ打ち切らないと際限が無くなりそうなので、惚気が途切れた瞬間を狙って本題に入る。
「あの……それで――」
「ああ、浩毅ですね」
 コロッと対応する母。切り替えが早い。
「お宅が留守だったもので」
 門には鍵が掛かっていたし、道場も同様に人の気配は無かった。
 特別どこかへ出かける予定が無いならば、神社の方かと顔を出したのだが。
「ええ。ちょっと、大荷物担いで、ここの裏山に入っていきましたよ」
「ここの?」
 珠樹が首を動かし、浩毅の母背中、さらに神社の後ろにそびえる山を見た。
 展望台があるわけでもない。観光名所もない。ましてや登山道があるわけでもない。どこにでもある、小さな山にすぎない。
 そんな疑問に、母は答える。
「あまり知られていませんけれど、これでもちょっとした霊山でして。普段は、一般には公開されてませんが、珠樹さんなら、入っても構いませんよ」
 瀬川の管理するこの山。知る人はもう少なくなってしまったが、古来より様々な謂れがある。
 村近郊に伝わる土着の昔話には、この山が舞台となるものが幾つもあるという。
 そもそも神社の開祖からして、山に巣食う鬼退治とか、そういう類の伝承を残している。
「まあ。昔は昔で、それだけ物騒だったということですが」
 しかし近代に入り、妖は遠いものとして、やがて人々の間から廃れていった。
 同時にこの山も、ひっそりと人の営みの変遷を見守ることを選んだ。
 ならば、そんな場所に、浩毅は何の用事があるというのか。
「息子が気になりますか? 剣の修行でしょう。多分ね」
 現在でも、各種行事のため、儀式や修行に用いることはあるが、日常的に使用することはない。
 今回浩毅が使用しているのは、完全に本人の気分によるところだ。
「修行で山篭りって……可愛いけど」
「あはは。男の子ですものねえ」
「子供っぽいだけでは?」
「んー、どうでしょうねえ?」
 全てはお見通し。
 まるでそう言いたげな含み笑い。
「詳しい事情は、浩毅本人から聞いてみたらいかがです? それ持って。ね?」
 と、珠樹のバスケットを指差す。
「ああ、それから――」
「?」
268ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:24:04 ID:I5gyCyJV


 数分後、霊山入り口。
 借りた登山靴に履き替え、バスケットのみを持った珠樹を、浩毅の母は送り出す。
「それでは、浩毅をよろしくお願いしますねー」
「ええ。できれば末永く」
「はいはい。楽しみにしてます」
 道なりに進む珠樹の背中が見えなくなるまで、母は小さく手を振っていた。
「我が息子ながら、何とも……」
 甲斐甲斐しい恋人の存在に、苦笑を漏らす。
 もうそんな相手が居ても、全く不思議な年ではないのだなと、ふとした瞬間に感慨深くなる。
 尤も、
「まだ老け込むような年齢じゃありませんけどね」
 と、誰も見ていないのに、くるりと袴を浮かせてターンした。
「さて、と。お掃除お掃除」
 ステップも軽く、浩毅の母は日課の再開をする。
 元気な母親だった。
 そんなご機嫌な彼女の前に、
「今のが、浩毅の女か? ……そうか。あの娘がな」
「あら?」
 一人の男が姿を見せた。


「はぁ……暑ぅ」
 少々ボヤいて、珠樹は額の汗を拭う。ずっと木陰続きといえど、やはり夏場の登山は暑い。
 延々三十分。そろそろ到着しても良い頃だ。
 目的地までは一本道で迷うことはないとのことだが、終わりが見えなくては不安にもなる。
 しかし、進めばそれだけゴールに近づくのもまた確実。
「?」
 水の音が、耳に届いた。これが聞こえれば、もう一踏ん張りだそうだ。
「……ここ?」
 程なくして、それらしい場所に辿り着いた。
 数メートル先に、開けた空間がある。先にあるのは、小さな滝と流れる川。水気を含んだ、冷たい風が流れてくる。
 一歩藪を越えれば、枝と青葉の天蓋へ踏み入ることになる。
 その前に、様子を確認する。
「あ」
 浩毅がいた。
 川原ではなく、川の中にいる彼はすぐに見つかった。
「――――ふぅぅぅぅ……」
 滝を前に立ち、正眼に木刀を構えている。
 深く、さらに深く呼吸を繰り返し、神経を研ぎ澄ます。
 水の飛沫の一つまで把握するほどに鋭敏化させ、
「ハッ!」
 気合一閃。縦一文字に線を走らせる。
 切っ先は余分な水を弾くことなく、落ちる水面を滑らかに滑った。
「……っし!」
 一太刀の出来を確認すると、浩毅は剣を肩に乗せる。
 くるくると川の流れに弄ばれながら、一枚だった木の葉は下流へと運ばれていった。
269ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:24:37 ID:I5gyCyJV
「……」
 気取られないよう、珠樹は足音を殺してそっと後ろから近づく。
 今は満足の行く結果を出したことで、気が緩んでいるはず。そこが狙い目だと教わった。
 手頃な重さ大きさの小石を見繕い、浩毅に放る。
「っと」
 三つの小石が描く軌跡を、浩毅は難なく避けた。
 向けられた攻撃に怒るのでもなく、
「危ねえなァ。祖父ちゃんか母さんの差し金か? 他のヤツにやるんじゃねえぞ、珠樹」
 何もなかったように、投石の主へと身体を向けた。
 珠樹は拍手で賞賛する。
「凄いね」
「まァ、ちっとは成長してんだ」
「そろそろ、お祖父さんとかに……」
 剣の冴えは上々、彼の母より託された課題(不意打ち)も、問題なくクリアした。
 これなら、一矢報いることができるのではないか。
 そんな率直な感想も、
「いやぁ、無理無理無理無理」
 全力で否定された。
「でも葉っぱを……」
 片手で、珠樹の言を遮る。
 木刀を腰に納めると、浩毅は腕組みして忌々しそうに滝の上眺めた。
「ウチの祖父ちゃんならさ、同じこと片手でひょいっとやれるぜ、多分」
「そんな……」
 いくらなんでも誇張表現が過ぎると珠樹は思う。しかし、当人はそう思えるくらいの実力差を感じているのだろう。
 川原の手頃な大きさの岩に腰掛け、膝に頬杖突きながら続きを聞く。
「そう思うか? 昨日、俺はこっ酷くやられちまったんだぜ?」
「へえ」
 それは何時ものことだろうに、何をそんなに悔しがっているのか。
 あまりに差が開いていることから、上達を実感できない焦りがあるのかもしれない。
 そう結論付けた時、珠樹は驚くべき言葉を耳にした。
「まさか……素手の相手に完封されるとはなあ……」
「……嘘?」
「嘘吐いてどうなるんだよ」
 珠樹は耳を疑い、浩毅は歯軋りをする。
「再現してみるか? これ持って」
 川から上がった浩毅が、腰の木刀を珠樹に渡す。
「え?」
「本気で打ってこい」
「できないよ。怪我させたくない」
 珠樹は首を振る。
 先程の小石とは違う。あれは命中しても怪我しない程度のものを選んだ。
 防具を着けてない人間へ、剣を打った経験は無い。加えて、相手は浩毅だ。躊躇してしまうのも無理はなかった。
「大丈夫だよ。今のお前相手に怪我するほど、ヤワじゃねえから」
「でも……」
「危ない時の外し方も、ちゃんと心得て――てか、心得させられてるから」
 相手が素人ならかえって危険性が高いが、基本が身に付いている珠樹ならそこは問題ない。
「でも、やだ」
 しかし、突っ返された。
 まあそれは仕方ない。浩毅も、この結果は想定していた。
 木刀を自分の荷物の所に置いて、代用品を物色する。
「解ったよ。んじゃ、こっちならどうだ?」
 後で火を焚く時の為に拾ってきた薪。その中でも、適当なものを選んだ。
「……これなら」
 丁度、小さな子供がチャンバラごっこをする時に使う程度のものだ。振り回しても変にしならなく、かといって頑丈でもない。
 よしんば怪我をしても、精々打ち身やミミズ腫れ、小さな裂傷くらいにしかならないだろうと、珠樹は妥協した。
「よし、どっからでも来い」
「うん」
270ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:25:41 ID:I5gyCyJV
 正眼に構え、距離を測る。
 隙を見つけられず攻めあぐねる珠樹へ、浩毅が指先を揺らして挑発する。
 それに呼応し、一足で踏み込む。
「――ハァッ!」
 渾身の面を打ち込むが、それを浩毅は軽く身体を捻るだけで、紙一重で躱す。
 浩毅は、間合いに入った標的へ、ゆっくりと手刀を振り下ろした。狙うは篭手。空を切り、刃が迫る錯覚が珠樹を襲う。
「……ぅ……っ!」
 あわや一本というところで後退が間に合い、珠樹は射程外へと距離を開けた。
 と、安心する間もなく懐に潜られ、咽喉元への突き。
「っく!」
 浩毅と同じ様に紙一重で躱すが、彼とは逆に余裕が無い。運良く躱せた、という表現が正解に近い。
 攻め立てられながら二度三度棒を振るうが、あるいは避けられ、あるいは跳ね上げられる。
 剣閃を逸らされ、無防備となった胴体を横薙ぎが攻めてくる。バックステップのみでは足りず、何とか腰を引いて間に合った。
「これで――」
 頃合いかと浩毅は珠樹の腕を掴み取り、
「決まりだな」
「ぁう!」
 後ろ手に捻り上げた。
 それほど痛みは無いはずだが、関節を極めたことで、まともに力は入れられまい。
 珠樹が得物を落とした所で、勝負ありと解放した。
「とまあ――こんな風にやられたワケだ。何度もな」
「…………これだけ強くても?」
 一見緩慢とした動きのはずが、非常に避けにくかった。すなわち、それだけ動作の精度に差があるというわけだ。
 理解しただけで、都合五回は寸止めによる手加減があった。仕留める機会なら、この短時間でも二桁は固い。
 最後の決め手に至っては、打てば終わりという話ですらなく、難易度は格段に跳ね上がる。
「全っ然勝負にならん」
 剣道三倍段という言葉がある。読んで字の如く、得物を持った相手に素手で勝利を掴むには、およそ三倍の力量が必要であると言われる。
 得物がるというのは、それだけで充分すぎるアドバンテージなのだ。
 無論、絶対的な指標ではないし、条件や相性によっていくらでも結果は変わってくる。
 しかし、環境と条件を整えた真っ向勝負で安定した勝率を保つならば、やはり最低限それくらいは必要となる。完封ともなれば尚更である。
「ったく冗談じゃねえ。どんだけ強いんだ、祖父ちゃんは。化け物かっての」
 浩毅は強い。そこらの段持ちであれば、軽くあしらえるだけの実力があると自負している。
 そしてそれは、自惚れでは無く正当な評価なのだ。特別強いというわけでもないが、それなりの経験者・実力者である珠樹も、身を以って知った。
 なのに勝てない。勝てないどころか、逆に素手で軽くあしらわれ続けた。
 そのショックはどれほどのものか。人によっては、プライドを打ち砕かれて剣を捨ててしまうかもしれない。
「なるほど」
 それで修行か。
 男の子だからというのも、そういう意味だろう。
 可愛いものだと、珠樹は微笑む。
「ふふ」
「んだよ、珠樹」
「そういうとこ、やっぱり好きだなって」
「言ってろ」
271ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:26:31 ID:I5gyCyJV


 本殿から境内に顔を出したのは、六十過ぎの大柄の男。
 黒に入り混じる白髪と蓄えた髭とが、その体格を強調し、より威厳を持たせていた。
「お父様」
「うむ」
 呼ばれて答える。
 既に凡その事情は把握しているらしい。
「意気込んでますけど、どう見ます? 浩毅のこと」
「さてな」
 腕組みして、やや呆れ混じりに大きく息を吐く。
「アイツはああ見えて、少々根が真面目すぎる。無闇に気負いすぎだ」
「昨日あの後も、散々痛めつけた口で言いますか」
「うむ。今時の感じで言うなら、フルボッコ」
 それはもう、生き生きとしていた。本人曰く、超最高。傍目の感想、超哀れ。
 浩毅など、何度やっても掠りもしない結果が続き、最後には半分涙目になっていた。
 父の悪乗りは今に始まったことではないと、昨夜の浩毅を思い出し、諦め半分で同情する。
「しかし、まあ……確かに性格が若干の足枷になってる感は、否めませんね」
 それとは別に、浩毅の母は個人的な見解を述べ、父に同意する。
「何か吹っ切れるか開き直るか、あるいは悟るか……さすれば、次のステップに上がれるのだが」
「上がれると思いますか?」
「まだまだ序の口。大丈夫だろう。俺の孫、そしてお前の息子だ」
「尤も、煩悩に悩むうちは、まだまだですけれどもね」
「うむ。消し去ろうとするのではなく、受け入れ、そして御さなくては始まらん」
 その実、浩毅が思うほど彼らとの間に実力差は存在しない。
 身体も技も、見るモノが見れば完成しつつある。加えて、こと体力においては、若い分だけ彼らを凌駕する。
 勘やセンスにおいても、そこは同じ血筋。引けをとるものではない。
 だが実戦では、力や技はおろか、スタミナでさえ浩毅は遠く及ばないという、無様な姿を晒してしまう。
 それは何故か。
 答えは偏に、経験。そして精神。
 高い領域に至れば至るだけ、そういった僅かな差の積み重ねこそが、決定的な実力差として如実に現れる。
「だがいずれ……そう遠くない将来――」
「私やお父様を超えると?」
 早くも大きな壁にぶつかった孫へ向けて、祖父は口元を吊り上げる。
「若いうちは、同じ経験でもより濃度が高い。期待するさ。だが今は――」
「青春を謳歌させてあげましょうか」
 初々しい恋人たちを見守るのは楽しい。良い話の肴になる。
 またこういった他愛もない物事こそ、文武において――ひいては人生において、最も頼りになる経験へと昇華する可能性が高い。
「だな。取り敢えずは、一皮剥けるかニ皮剥けるか。戻ってきたら、軽く扱いて見極めてやろうか」
「お手柔らかに」
 鼻息も激しく満面の笑みで張り切る父を、娘は苦笑を以ってやんわりと制止した。
 と、そこで。
 話は一段落ついたと、祖父は今までツッコミ難かったものへ。
「ところで……やはりその格好は……」
「駄目ですかね?」
272ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:27:25 ID:I5gyCyJV


 浩毅は、来訪者へ聞きそびれていたことを訊ねる。
「そういうお前は、何しに来たんだ?」
「プール」
 それを聞いて、思い出した。
 電車で一時間ばかり揺られたあたりに、大きなレジャープールがある。そういえば、あまりに暑い日が続くので、少し前に遊びに行きたいと珠樹は言っていた。
 同時に、予定の無い日も聞かれて、それにも答えていたはずだ。
「誘うつもりだったのか」
「携帯繋がらないし」
「悪ぃ。邪魔んなるから、部屋に置いてきた」
 浩毅は軽く謝るが、同時にそら恐ろしいものも感じる。
 遠出は在り得ないと確信していたに違いない。日を改めてと考えることもないあたり、この娘の勘は侮れない。
「あとお弁当」
 そう言って、珠樹はバスケットをポンポンと叩いた。
 珠樹は言う。本来はプールで食べるつもりだったが、無駄にならずに済んで良かった、と。
 弁当。連絡つかないのに、お弁当である。しかも太陽大活躍のこの時期に。
 正式に付き合い始めておよそ一月半。浩毅はもう、珠樹のちょっとやそっとの奇行に心を揺らすことはないと決心していた。
「サンキュ。そこ置いといてくれ。昼になったら、いただくよ」
 深く追求せず、気持ちはありがたく受け取る。
「二人分だし、それまでここで見てる」
「つまらねえぞ」
「そんなことないよ。浩毅だから」
「へ」
 何が何だか。
「ま、そこまで言うなら別にいいさ」
 勝手にしろと、浩毅は笑う。他には誰も居ないのだから、視線を気にする必要はない。
 心中を察したのか、その後暫く、言葉通り珠樹も大人しく見物していた。
 だが、さすがの珠樹も、一時間もすれば飽きが見え始めた。
 物珍しげに近くをウロウロしたり、岩に腰掛けて川面を足で叩いて水遊びしたり。何もすることがないと、身体が疼いて仕方がない。
 もういい。少しでいい、思い切り身体を動かそう。
 浩毅の集中力は良く続いている。何も見えていないのではなく、全てを見ている。
 おそらく話しかけても、動きに淀みはなくはっきりと答えが帰って来る。一人どころか、数人で雑談しながらでも続行可能かもしれない。
 多少騒いだ所で、邪魔にはならない。
 もっと早く気付いていれば良かったと悔やむが、今は身体を動かしたくて仕方ない。
 業を煮やし、浩毅に断りを入れる。
「ね。泳いでもいいよね?」
「服が濡れてもいいなら、好きにしろよ」
「全部脱ぐから平気」
 ならば何もいうコトはない。
「あっそ。――――って、おい!?」
「?」
 慌てて振り向けば、シャツをたくし上げている珠樹。何をそんなに慌てているのかと、不思議そうな目をしている。
 不覚を取ったと、浩毅は気恥ずかしげに、視線を外した。
「……だよねぇ。何慌ててんだ、俺は」
 いたのは、既に下に水着を着込んでいた珠樹。入れ知恵したのは、おそらく母親。
 修行が足りない。思わず脳裏に浮かんだ映像を振り払った。
273ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:28:24 ID:I5gyCyJV


 適当な所で午前の訓練を切り上げ、珠樹の暇潰しに付き合う。
 とりあえず服を着替えた後は、ピクニック気分で近くを散歩。村全体を見渡せる見晴らしの良い場所まで行き、珠樹の弁当で腹を満たす。
 川辺に戻ってからも、暫しの休憩。
 水遊びは言うに及ばず、かまど作りや並んで釣り糸を落としたりで、珠樹にもキャンプ気分を味わってもらった。
 今は足を水に漬け、二人でただボーっとしている。
 左側に珠樹。この現状に、浩毅は複雑な感情を見せる。
(うーむ……これは……)
 なんというか、和む。
 精神衛生上では良いことかもしれないが、本来の目的を見失いつつある気がしないでもない。
(しっかしなぁ……)
 ちらりと、傍らの珠樹へ視線を向ける。
(アレをプールで着るつもりだったのか?)
 今の珠樹は、水着の上にパーカーを羽織っただけの格好で、浩毅に寄りかかっている。その服の下には、大胆に背中と胸元の開いたワンピースタイプの水着。
 切れ込みの大胆に、爽やかで健康的な姿だが、それこそ健康な男子の心を乱すには充分な刺激があった。
 自分が見る分にはいい。女性が見る分にもいい。しかし、同性が見る分には、非常に悔しい。
 一旦気になってしまうと、もう止まらない。
 穏やかな表情の珠樹。それを形作る通った鼻筋と、艶やかな唇。少し細めの顎から咽喉を通り、柔らかな胸元へ。
 服の上からでもハッキリわかるラインに沿って、視線を落としていく。
 形の良い、大きめの胸。くびれた腰。引き締まって、するりと伸びた足。
 爪先まで進んだ所で、先程は素早く過ぎた地点へ視線を戻す。
 足の付け根。閉じられ、さらに服の裾で陰になった場所。見えそうで見えない隠され方で、否が応にも興味をそそられる。
 おかげで、周囲に気を回すこともできず、
「浩毅?」
「んぇあ!?」
 気付かれた。
 浩毅は気まずさを誤魔化すため、白々しく咳をする。
 と、珠樹は悪戯っぽく、裾を小さく捲った。
「もっと見たい?」
「…………やめとく。抑えが利かなくなりそうだ」
「かもん」
 珠樹は手招きしつつ、
「かもん、ってぅぉい! 結局そっちから来るのかよ!?」
 浩毅の身体を抱き締め、互いの肌を密着させる。
 艶かしい動きで何度も柔らかさを体感させ、浩毅の手を取る。
 右の指先を己の唇に触れさせ、キメ細やかな肌をなぞらせながらパーカーの内へ潜り込ませ、ボリュームのある乳房へと誘う。
 そして同じく左手は、膝を始点に、注視されていた箇所を終点とする。
 明らかに汗ではない湿り気を帯び始めているのを左手に感じながら、若者は理性という名の兵を総動員して耐える。だが、将軍珠樹率いる敵対勢力は手強い。
「ぐ……ぐぐぐ……ぅ……」
「ねぇ――」
 一気呵成に攻め立てる。
 珠樹は浩毅の耳元に口を寄せ、
「ひ・ろ・き?」
 吐息のかかる距離で囁いた後、耳を食む。

 浩毅、陥落。そして逆転。
「――ぁ、ん――」
 珠樹を押し倒し、山中に嬌声を響かせた。
274ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:29:11 ID:I5gyCyJV


「俺ってヤツは! 俺ってヤツはぁ!」
 事を終えた後、浩毅は血涙滂沱として禁せず、立ち木に額を打ち付ける。
「あ……ぁあ、ちょっ、浩毅……?」
 まるで釘を打つかのような勢いに、流石の珠樹も戸惑う。
 何度打ち付けたか。
 珠樹が止めるタイミングを見失っていると、不意に浩毅の動きは止まった。
 トドメに強く頭突きをかまし、
「――――ふぅ。っしゃ、これでもう惑わされんぞ」
 仕上げに、両の平手で頬を打つ。
 痛みを以って煩悩を制し、爽やかに宣言した。
 珠樹としては、そんなことより怪我の有無のほうが心配だった。
「コブとか出来てない?」
「フン。誰の所為だかな」
「頭大丈夫?」
「嫌な言い方すんなよ」
 どっかと川原に胡坐をかき、そっぽを向く。
 何はともあれ、未熟を痛感させられたのは事実だ。浩毅は己を恥じる。
「参ったなァ、初日でコレかよ。これじゃ、何しにここにいるんだか……ま、あまり根を詰めても、仕方ねえっちゃ仕方ねえんだけど」
「浩毅」
「んー?」
 不機嫌な声のまま、反応する。
「スッキリ?」
「あー、したした。色々と。お蔭さんでな」
 珠樹より顔を背け、口をへの字に結んだまま返事をした。
 するにはしたが、しっくりとは来ない。解りきったことだ。その原因は……。
「やっぱ、お前といるとペース狂うわ」
 頭を掻く。
「何だろうなあ……アレコレ意地張るの、ちょっと馬鹿らしくなってきたぜ」
 頭の中で、二人の自分の声が木霊する。

 たった一言で、楽になる。
 知っている。
 そろそろ忍耐も限界だ。楽になってしまえ。
 簡単にやれりゃ、苦労は無い。
 いい加減悟れ。引っ張れば、余計に後で苦労するぞ。

 長く続けてきた自問自答も、飽きてきた。
 飽きてきたので、面倒だからさっさと悟った。
 少しばかり真面目な顔を作って、珠樹へ。
275ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:29:54 ID:I5gyCyJV
「なあ、珠樹」
「ん?」
 腹を括ろう。覚悟を決めよう。
「いい機会だし、ちっと状況変えてみるか」
「?」
「どーせ何時までも隠しちゃおけねえしな。新学期始まったら、発表するかってぇの」
 今まで、二人の交際の事実は、断固として否定してきた。
 しかし正直な話、浩毅の気持ちがバレバレなのは、その本人も百も承知。
 仮に現時点交際してなかったとしても、いずれ納まる所に納まるのは確定事項だろう。精々数ヶ月程度、早いか遅いかの違いしかない。
 その点、このタイミング。夏休みを挟んでのことなら、言い訳も簡単で済む。
 自分が恥ずかしいのを我慢するだけで、珠樹が喜ぶならば御の字だと、自身を納得させる。
 だが、この言葉を受けても、珠樹の表情は変わらない。
 不審に思う。
「うれしくないのか?」
「んーん。でも……」
 珠樹の目が光った。
 言い知れぬ予感に、浩毅は身震いする。得てしてこういうことこそ、的中するものなのだ。
 珍しく満面の笑みを見せ、死刑宣告。
「今、予行演習しとこうか」
「――マジ?」
「マジ」
 予想通り。
 二人っきりの羞恥プレイを要求してきた。
 慌てて手を振って、この申し出は却下する。
「いーや、駄目だ駄目だ。こういうのは、やっぱり、もっとこう……」
「本番でトチるよ、きっと」
「そ、それは……だな」
 そう言われてしまうと、身も蓋もない。自覚してれば、尚の事、返す言葉もない。
 こういうことに関しては、非常に照れ屋だ。まず間違いなくグダグダになる。それは確かなのだが……。
 本心は解っている。要は、面と向かって明言して欲しいのだ。
 珠樹は、ジッと浩毅の目を見据える。
「う……」
 視線を逸らさず、
「うぅ……」
 わざとらしく、涙さえ浮かべて。
「ぅわぁった、わぁかったよ! 言やぁいいんだろ、言やぁよ! クソっ、お前の眼力、反則なんだよ」
 視線を逸らした浩毅が負けた。
「いいか? 一度しか言わねぇから、耳かっぽじって頭ん中叩っ込んどけ!」
 大きく深呼吸。
 いっそのこと、どうせ誰も居ないのだからと、真っ赤になりながら叫んだ。
「俺、瀬川浩毅は、藤宮珠樹と恋人としてのお付き合いをさせていただいております!」
「もう一声」
「何なんだよもぉ……」
 泣きたくなってきた。
 こうなれば、もうどうでもいい。自棄になって捲くし立てる。
「珠樹、俺はお前が好きだ! 大事に思ってる、ずっとお前と一緒に生きていきたいです! っだああ、くそ、馬鹿がうつった!」
「もういっちょ」
「お前を守るために、少しでも強くなっておきたいから今修行してんだ! ――いいんだろ、これで!!」
 言い終えて、浩毅憤死。
 岩に突っ伏し、顔を隠して全身のむず痒さに耐える。
 たっぷり数分経って、ようやく顔を上げ、真っ先に目に入ったのは、勝ち誇った珠樹の顔。
「ふふん……」
「んだよ、したり顔で」
「言わせてやった」
「チッ。悪趣味な女」
 それ以上、文句は言わない。負けた自分が悪いのだ。
「男の趣味は健全」
「そりゃー光栄なことで」
 相変わらず素直ではない様子で、浩毅はまた顔を背けた。
276ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:30:29 ID:I5gyCyJV


 浩毅が機嫌を直し、再び修行を始めた頃、珠樹は言った。
「ところで今後の予定は?」
「そうだな……。何日かキャンプするから、気が向いたらまた顔出せよ」
「ん」
 訊くだけ訊いて、微妙な沈黙。珠樹は黙ってリアクションを待つ。
 浩毅は嫌な視線を背中に感じ、冷や汗を垂らした。
「…………」
「……あのな。今度こそ、何が何でも、絶対、確実に、断固として惑わされんから、変な期待した目で見るな」
 必死な浩毅が可笑しくて、たまきは笑う。
「決意は固い、か」
「ったりめえだ」
「あまり軽くても、言葉に有り難味がないしね」
 満足した珠樹は、帰り支度を整える。
 ちゃんと服を着替え、荷物は全て一つに纏める。
 すっかり用意できたところで、浩毅に向かって敬礼のようなポーズをとった。
「ここでお暇」
「おう」
「…………」
「んだよ」
「納得いくまで、頑張って」
「ん? ああ」
「後で助けるから」
 訳のわからない言葉を残し、珠樹は去った。
「……変なヤツ」
 どうせまた悪戯心で残したものだろう。
 気にしても踊らされるだけだと、浩毅は修行に集中した。
277ひろたまの日々〜葉月〜  ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:31:00 ID:I5gyCyJV


 そして一週間後。
 修行を終えた浩毅の報告は……、

「た、珠樹! 宿題見せてくれ!」
「為にならないから駄目。解らないところは、教えてあげる」
「よ、よし……それでいいから、手を打とう」
「条件呑んでくれたらね」
「な……に……」
 ついっと、滑らかな動きでブイサインを作った。
 その条件とは、
「予行演習パァト2」
「マジかよ……勘弁してくれ」
 地に手を付いて項垂れる浩毅。
 その肩に、優しく手を添えて続きを告げる。
「ロンリーウルフがいい?」
「いやもう、ホント私が悪かったんで、お力を貸していただきたいのですが……」
 条件を呑む以外に道は無い。
 泣く泣く、浩毅は珠樹の軍門に下ることとなった。

 時は八月三十日。
 まだまだ残暑の厳しい季節――。


 ところで、貴重な休みを消費した甲斐はあったのかというと。
「成果は?」
「――――え、得物を握らせるくらいなら、なんとか……」
 多少は進展。しかしまだまだ道は遠い。
 それでも確かな一歩だ。着実に進み続ければ、一泡吹かせられる日がきっと来る。
「頑張って」
「おう」
 珠樹の激励を受け、浩毅は拳を握り締める。

「でも今は宿題片付けちゃお」
「…………おう」
278 ◆uW6wAi1FeE :2007/08/26(日) 02:34:32 ID:I5gyCyJV

以上です。久々に長くなったなあ……。

内容の捕捉しますと、時系列は浩毅と珠樹が付き合ってすぐの話。
約一年前に書いたあたりの直後となりますか。
折角覚悟を決めたのに、この後もあんま変わらない日常を送ることになるわけで……。
ガンバレ、男の子。

というあたりで、今回はここまで。
それでは、おやすみなさい。
279名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 02:56:19 ID:lMELhxZC
うあ、ひろたまが来てる、
GJ,超GJ!

もう寝るとこだったけど、大好きなひろたまじゃあ
寝られませんよ。

>>275
この辺りの会話が、たまりませんね。微妙にいじめっこな
珠樹が、もう。
『女の子に振り回されたい欲』みたいなものをすごく
刺激させられます。
280名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 15:20:49 ID:VglvDlDE
>>278
こういう、初々しい恋人恋人した感じが大好きですよ。
GJ!
281名無しさん@ピンキー:2007/08/28(火) 03:59:24 ID:NUaaFt2l
age
282名無しさん@ピンキー:2007/08/28(火) 13:11:24 ID:97Vp3Z+o
ひろたまカワイス

やっぱいいわぁ
283すくらば〜S'Cool Lovers:2007/08/29(水) 22:38:07 ID:7dkVVTSr

 サイドにあるスリットにIDカードを通せば、空気の抜ける軽い音と共にメカニカルな扉が開く。
 機密ランクB。発令所要員及び許可を受けた者しか入れない、中央制御室だ。

 無数の大型ワークステーションの前では、専用のインプラント改造を浮けたオペレータたちが、忙しそうに作業をしている。
 その中央部。もっとも大型で複雑なワークステーションの前に、一人の少女が座っていた。
 その姿は、入り口付近からでもわかるほどに小柄。大型のワークステーションに半ば埋没しているようにも見える。
 入室した青年は、そんな彼女の姿を認めると、ゆっくりとそちらに向かって近づいて行く。

「――何の用だ?」

 彼が声をかけるより早く、彼女が言った。
 眼鏡越しの彼女の視線はモニタへ向けられたまま。しかし、その頭頂部にある物体は、彼が部屋に入った時から、彼の足音を追い続けていた。
 それは、猫のそれを模した一対の獣耳だ。
 失った聴覚機能を補うために、頭部に直接移植されたサイバー機器である。

 彼女と付き合いの長い青年は、入室してからというもの彼女のその猫耳が彼の足音を追い続けていることに気づいている。
 だから、彼は笑みを浮かべ、

「いや、疲れてないかなと思ってさ」

 その言葉に、彼女はキーを打つ手を休めようともせず、やや憮然としたように、

「昨夜、寝かせてくれなかったのは君の方だろう。まったく、君の体力は底無しか?」
「お前が体力無さ過ぎるんだよ。いつも機械ばかりいじってないで、少しくらい運動した方がいいぜ」
「そうか。なら、今夜も君の部屋に行くとしよう。――どんなスポーツより、その方が運動になりそうだ」

 相変わらずモニタから目を逸らさぬまま彼女は、しかし口元にわずかにゆるめる。
 それと同時、ただでさえかなりの高速だった彼女のタイピング速度がさらに加速した。

「おいおい、あんまり無茶するなよ?」
「作業が溜まっていてな。速度を上げなければ、君との時間が作れそうにない。
まったく、疲れた体にこれだけの作業量はかなり堪えるぞ」
「で、疲れた体に鞭打って、さらに疲れるために頑張ってるってわけか」

 呆れたような口調で青年は、しかし嬉しそうにそう言った。
284すくらば〜S'Cool Lovers:2007/08/29(水) 22:38:52 ID:7dkVVTSr
「まあ、体の疲労と心の疲労は別物だ。確かに昨夜――いや、正式には今朝もか――はかなり疲れたが、非常に有意義かつ充実した時間だった。
叶うならば、今夜もそんな時間を過ごしたいものだ」
「何か手伝おうか?」

 そんな青年の申し出に、だが彼女は軽く首を振り、

「残念ながら、私の作業は酷く専門的でな。インプラント改造を受けていなければ手伝いすらままならないんだ」
「そうか。じゃあ、あんまり邪魔する訳にも行かないし、俺はそろそろ行くぜ。仕事、頑張れよ」

 と、青年は立ち去りかけ――ふと立ち止まって振り返る。

「二秒でいい。こっち向け」
「――何だ?」

 言いながら、彼はわずかに膝を曲げ、前傾姿勢になりながら顔を寄せる。
 言われて振り向く少女。
 振り向いた彼女の唇に、青年の唇が重ねられた。
 と同時。口移しで伝えられたのは甘く、そしてわずかにほろ苦いチョコレート。

 青年は言った通り、きっかり二秒で唇を離した。
 彼女は名残を惜しむように、口の中の甘くほろ苦いチョコの香りをなめる。
 見上げる彼女に、彼は悪戯っぽく微笑んで、

「補給できたか? 色々と」
「補給できたさ。色々と」

 応えるように彼女も微笑む。

「だが、これでは全然足りないな。残の分は、今夜たっぷり補給させてもらうとしよう」
「ああ。期待しながら待ってるぜ。じゃ、また今夜。俺の部屋で」

 そして青年は、今度こそ彼女に背を向け、ドアに向かって歩きだす。
 が、再び立ち止まり、ふと気になったかのように、

「そう言えば、お前ほどの人間がそんなにてこずる作業って、一体なんなんだ?」
「そうだな。専門的に言うならば、基地内の各システムに潜在的に潜むバグの調査や不具合や故障の早期発見を含む日常的業務――」

 そして彼女は言葉を切り、その一対の猫耳に相応しい、チェシャ猫のような笑みを浮かべ、

「分かりやすく言うなら――保守、だ」
285名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 23:57:21 ID:kCHLM/ys
>>283

最後の行と、最後から10行目だけで事足りるのだろう?
まったく、無駄というものだよ。才能も時間も、もっとふさわしいシチュエーションで使われるべきだ。
そうでなければ、君は正当に評価されるチャンスを逃してしまうかもしれないじゃないか。

けど、どうしてだろう、そんな不器用な>>283が堪らなく愛おしいんだ。
286名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 02:14:04 ID:qQybYT00
>>283-285
愛してるぜ、フラテッロ。
287名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 05:02:14 ID:AbRc0aju
これは保守小ネタではなく一つのSSに昇華されるべきだと思うんだ。

15人の素クール最高裁判官達よ、判定を頼みたい。
是か否かの判定を
288名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 05:17:14 ID:bVBMDV0l
>>283-284
悪いんだが本編投下の日程を教えてくれると嬉しい
289名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 06:27:01 ID:ZWYU4Ecp
>>284
で、濡れ場はいつ投下するんだい?
290名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 13:11:05 ID:mMO7DSPp
「ねぇ、クー? この>>283の件なんだけど……」

「うむ。>>283の発言は機械的な保守作業にとどまらず、SSとしても無限の可能性を秘めているな」

「やっぱり……>>283には多少無理してでも続きをお願いするべき、かな?」

「当然だ。こういう言い方はしたくないが、住人たちに過度な期待をさせてしまった>>283
 罪は重い。才能のある者はスレという社会の中でそれを発揮すべし、という義務と権利がある」

「そうだね……SSを投下すれば充足感とか……それなりの報いはあると思うし……」

「何より、わたし自身が続きを読みたいのだよ。わたしと男の愛を書き手それぞれの表現法法で
 綴ってほしい……愛にはどれだけ多くの形があっても良いと思うのだ。皆もそうではないかな?」
291名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 13:24:29 ID:2IodbuIC
つづきはまだか?
292名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 15:11:26 ID:Nr2hAGw3
とりあえず君らがっつき過ぎだw
ここは黙って全裸の正座でwktkするのが正しい住民の姿と言えよう
293名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 15:15:02 ID:2IodbuIC
おk
パンツ脱いで正座して待つわ
294名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 16:57:03 ID:gaNzJKyQ
 (;´Д`) シコシコシコシコ
_(ヽηノ_
  ⊃⊃
295名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 17:32:31 ID:SAsWasdv
アッ――
296名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 20:43:21 ID:jYEmlNrc
保守っていうレベルじゃねーぞ!
297すくらば〜S'Cool Lovers:2007/08/30(木) 21:30:01 ID:aTfw3lh3
「――よし」

 無機質な金属性の前で、一人の少女が小さく拳を握る。
 その頭には、一対の猫のそれに似た耳。両手で抱き締めるように持っているのは、ふかふかな白い枕。
 かわいらしいピンクのパジャマと、その上から羽織った皇国空軍のジャケットがアンバランスだ。
 服装、良し。シャワー、浴びてきた。コロン、とっておきの奴を少々。
 仕事、全て終えた。監視カメラ・盗聴器、周囲の物は既に殺してある。
 避妊具、必要なし。覚悟、どんとこい。

 深く息を吸い込んで心を落ち着け、彼女は青年の部屋の扉のロックをハッキングしてこじ開けた。


 その時彼は、自室のパソコンに向かって部下たちの訓練予定を立てていた。
 そんな時、唐突に室内に鳴り響く警告音。電子的にロックされている扉に対する、正面からの直接ハッキング。
 何重にも仕掛けられているはずのファイアウォールはあっさりと突破され、16桁のパスコードが次々と解読されていく。
 残り4桁となった時点で彼は電子的な抵抗を諦め、即座にパソコンの前を飛びのく。
 机の脇に立て掛けてあった愛用の軍刀を引っつかみ、走るというより飛ぶようにして、一歩でドアの前まで。
 ちょうどその時、パスコードの最後の1桁が解読され、軽い空気の圧搾音と共に扉が開いた。

「待たせたな――どうした? まさか、待ち切れずに眠ってしまったのか!?」
「……頼むから、普通にノックして入って来てくれ。ハッキングなんか仕掛けてくるから何かと思った」

 いつも通りの理知的な表情を崩さぬ彼女の姿に、思わず青年は脱力し、愛刀を抜いたまま床にへたり込む。
 そんな彼の姿と、非常警戒体制に入っている彼の部屋に視線をやり、こくりと彼女は頷いた。

「よしわかった。次は警報を鳴らさぬよう、ダミープログラムを走らせることにしよう」
「あー、もうそれでも良いや。とにかくおとなしく入って来てくれ。じゃないと、警備班が飛んでくるぞ」
「安心しろ。周辺の監視機器はすべて電子的に殺してある。今現在、君の部屋及びその周囲は完全に監視の死角だ」
「いやむしろそれはどうだろう。何かこう、軍事基地的に」

 青年が思わず立ち上がって突っ込みをいれると、途端に少女は不満げな顔。

「――どうした?」
「……そうじゃないだろう」

 ぽす、と軽い音を立てて彼女の持っていた枕が床に落ちた。

「私は、今夜を君と過ごしたくて、とてもとても頑張ったのだぞ?」
「え……ああ、わかってるさ。待ってたぜ。とにかくそんなところに立ってないで、早く中に入れよ」
「頑張ったんだ。とてもとても頑張ったんだぞ?」

 青年が言うが少女は動かず、上目使いに青年を見上げたまま、もう一度呟く。
 ふ、と溜め息をついて青年は苦笑し、愛刀をドア脇に置いて彼女に近寄り、

「ああ、わかってるよ」

 言葉と共に、彼女の小柄な体をお姫様抱っこで抱き上げる。
298すくらば〜S'Cool Lovers:2007/08/30(木) 21:30:44 ID:aTfw3lh3
「あ――」

 流石にこの行為は予想外だったのか、少女は小さく呻いて黙ってしまう。
 頬を赤く染め、しかし青年の体に回した腕に精一杯の力を込め、

「重く――ないか?」
「平気平気。航空歩兵をなめるなよ」

 ゆっくりと、もどかしいほどゆっくりと。
 少女を抱えたまま、青年はベッドへと歩いて行く。

「どうしても、生身の骨や臓器と比べ、人工物は重くなってしまうからな。辛いだろう、本当は」
「だから平気だって」

 表情を見せず、胸元に顔を埋めるようにして呟く少女に、青年は優しく微笑んだ。

「ほら、ついたぜお姫様」

 その体を優しくベッドに座らせると、彼はドアの前まで歩いて行く。
 床に落ちていた枕を彼女に向かって放ってやり、ドア脇の刀を掴み上げ、今度は部屋の片隅の冷蔵庫の方へ。
 刀を脇に立て掛け、冷蔵庫を開いて振り返る。

「何か飲むか?」
「そうだな、ワインが欲しいところだが……無いよな?」
「残念ながら、航空歩兵にアルコールは厳禁だからな。生ジュースしか無いぜ。林檎にオレンジ、葡萄にトマト。どれがいい?」
「なら、トマトを」
「了解」

 できれば洒落たワイングラスでも欲しいところだが、彼の部屋にあるのは無骨で頑丈なセラミック製のマグカップのみだ。
 まず、彼女のマグカップにトマトジュースをなみなみと。そして自分の分のマグカップには林檎ジュース。
 青年が運んできたマグカップを、少女は両手で大切そうに受け取る。

「さて、何に乾杯するべきかな?」
「そうだな……。今日と言う日を無事に過ごせた事。そして、明日もまた今日と同じく、平和な一日である事を願って、と言うのはどうかな?」
「ああ、そうだな。じゃあ――平穏であった今日と言う日と、明日もまたそうである事を願って――乾杯」
「――乾杯」

 やや重い音と共に二つのマグカップが触れ合う。
 二人は互いに己のカップを傾け、だが少女がふと気になったように、

「君のそれは――どんな味だ?」
「どうって、普通だぜ」

 少女の質問に青年は悪戯めいた光を帯びた瞳で応え、ついでカップの中身を口に含むと、そっと少女に顔を寄せる。
299すくらば〜S'Cool Lovers:2007/08/30(木) 21:31:23 ID:aTfw3lh3
「んっ……」

 唇と唇が重ねられ、少女の喉がこくりと鳴った。
 ぷは、と唇を離し、青年は言う。

「な、普通に甘いだろ」
「――ああ、普通に甘いな」

 再び己のカップを傾けながら彼は、

「酒保で売ってるような混ぜ物入りの奴じゃなくて、産地から直送の特別な生ジュースだからな。甘さも格別だろ」
「なるほど、特別なジュースだから甘いのか」
「ああ。特別だぜ」

 瞬く間に青年のカップが空となる。
 対する少女は「そうか、特別なのか……」と口の中で呟き、意を決して残ったジュースを口に含むと、今度は自分から青年に顔を寄せる。

 再び唇と唇が重なり合い、さらに舌と舌が絡み合う。
 唇が離れると、少女は青年の瞳を見つめながら、チェシャ猫のような笑みを浮かべ、

「どうだ、私のトマトジュースも、特別だろう?」

 そんな彼女の問いに、しかし青年は答えを返さない。
 代わりに空のマグカップを床に置くと、有無を言わさず三度彼女の唇を奪い、そのまま少女の体をベッドに押し倒す。
 彼女の手からカップが転げ落ち、床に弾んで鈍い音を立てた。


――だから、青年の部屋にはワイングラスが一つもなく、頑丈で無骨なマグカップだけが置いてあるのだ。
300すくらば〜S'Cool Lovers:2007/08/30(木) 21:35:54 ID:aTfw3lh3
そんな訳で続きです。
帰りの○の内線で書いた単なる保守SSに、ここまでの反響があって恐縮です。いや本当に。

正直、続編の事なんて考えてなかったので、皆様のご期待に沿える出来となっているかは甚だ疑問ですが……
とりあえず、今日の車内で書けたのはここまでです。
明日の帰りの丸の○線で運良く座れたら、続きを書きます。
それでは〜

追伸 次こそエロいです。
追伸の追伸 男も女も(作者としては)素直クール。故に素直クールな恋人たち。
301名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 21:38:28 ID:d6NEavNJ
>>300
リアルタイム投下! 続き待ってる!
302名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 21:55:08 ID:mqOHrDy+
この世におられるであろう素直クールの神よ!
私は今日ほど貴方に感謝したことはない!

ああ……!

素晴らしい……

光がみえ……る……――
303名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 22:25:49 ID:J6lS/hs+
やはり、どうやって 300 のために明日の○の内線の座席を確保するのか
計画を立てねばなるまい。

あらかじめ誰かが全裸で○の内線の座席に座っておく必要があるだろう。

東京の勇者よ、いまこそ行動の時である!!
304名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 23:36:12 ID:FB/tQfRv
『1番線より、21時12分発荻窪方面行き、まもなく発車する。
 駆け込み乗車などせず、あくまで冷静に乗車して欲しい。
 なお、ただ今の時間、最後尾は【素直クール専用車両】となっている。
 乗客の諸君には、予めご了承いただきたい』
 
305名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 23:41:41 ID:54ICLi3r
>>303
それ300も座らんからwww
306名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 03:12:18 ID:i27MBjb4
>>300あ・・・り・・が・・とう・・・
残念ながら・・・私はきゅん死に寸前のダメージをくらったみたいだ・・・・
もう持ちそうにない・・・

だが・・・最後に私の権力を使い・・・丸の内線には永久に君しか乗れないようにしておく・・・
あの世で・・・ずっとwktkしとくから・・・な?

最後に・・・・GJ・・だ・・・
307名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 07:57:44 ID:jR9zy4XK
GJ!なんだが人工物の件がよくわからん、アンドロイドなん?


孕みないのかっ!?でも上に覚悟完了ってあるしなぁ
308名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 08:13:20 ID:4+cPAuhs
GJなんだが、みんなのノリが妙すぎるキガスw

wktkして待ってるけど、続きが少々遅れても構わないから無理しないでくれな。
309名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 11:54:42 ID:QLtW0ldH
GJ!続きに期待だ!

>>307
1本目にインプラント埋め込んでる記述がある。

>>308
夏休みの最初にこそ投下があったけど、後半殆どなかったから……w
310名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 17:04:10 ID:P9SCg2pq
チェシャ猫好きだねぇ
311名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 04:26:49 ID:xGctEgS9
保守
312名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 05:11:23 ID:5Xqa3oHE
>>305
やはり座らなかったな。
313300:2007/09/01(土) 06:39:40 ID:EDNVJ+18
すみません。どうもエロシーンが助長に長くなってしまって終わりませんでした。
このスレの同志のおかげか、無事に座る事は出来たんですけどね。
もう一日二日待っていただけるとありがたい。

>>307 詳しくは次回で。
>>310 不思議の国のアリスのチェシャ猫の印象が強いんですよ。猫の無いニヤニヤ笑い。
素直クールの笑顔と言えば、口元を僅かに緩ませる微かな笑みか、普段のクールさからは想像もできない柔らかな、見ている方がドキッとする笑顔。
そのあたりがスタンダードですが、うちのクール娘は敢えてニヤッと笑うのです。
314名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 11:39:14 ID:RzFl8wB1
もう少ししたら投下します。
エロ無し、本文短か目です。
315-無口系素直クール-:2007/09/01(土) 11:40:34 ID:RzFl8wB1
-無口系素直クール-

『石瀬ぇ〜。石瀬です。降り口は左側でございます』
 車掌のアナウンスと同時に、電車の左側のドアが一斉に開き、沢山の乗客と共に、
冷たい外の空気が車内に滑り込んでくる。
 冬の厳しさが薄れ始め、少しずつ春の足音が聞こえてきたとはいえ、朝はまだまだ
寒い。俺は制服の上に羽織ったコートの前を掻き合わせ、冷気に首をすくめる。

『水都線、桜川行き。間もなく発車致します。閉まるドアに御注意下さい』
 独特なイントネーションのアナウンスが電車内に響き、プシューと音を立ててドアが
閉まった。
 その直後、たすき掛けにしたバッグを、くいっと軽く引かれる感触が。
「おはようございます」
 いつものように俺のバッグを掴んでいる女の子が、無表情で挨拶をしてくる。
 大きく、意志の強そうな漆黒の瞳。瞳と同じく、漆黒の艶やかな髪の毛。それとは対
照的に、雪のような白い肌。着ている制服が高校のものだと知らなければ、小学生と間
違えてしまいそうな、華奢で小さな身体。
 寒さで少しほっぺたを赤くしているのが、ただでさえ子供に見える彼女を、更に幼く
見せている。

「ん。おはよ」
 斜め下から真直ぐ見上げる彼女に軽く視線を合わせ、俺も挨拶を返す。
 ガタンと電車が揺れ、動き始める。彼女は俺のバッグのたすき部分を控えめに握り、
平坦な声で告げる。
「今日も、お世話になります」
「ん、どうぞ」
 一言、簡単な俺の承諾を聞いた彼女は、まるで命綱でも握るかのように俺のバッグの
たすきを手袋をはめた両手でしっかと握り締める。俺はそれを横目で確認した後、視線
を正面に戻した。

 朝のラッシュで満員となった電車は、ガタンゴトンといつもの調子で見慣れた風景の
中を走って行く。俺は吊り革に掴まり、幾分重みを増したバッグを肩に感じながら、ぼ
んやりと流れる風景を見つめる。
 このまま時間が流れ、6つ先の駅で「ありがとうございました。明日もよろしくお願
いします」とまた平坦な口調でお礼を言われ、彼女が降り、その2つ先で俺も降りる。

 これが、毎日繰り返えされる、俺と彼女の通学風景だった。

 彼女と言っても、いわゆる「彼氏彼女」の彼女ではない。
 そもそも名前すら知らないのだ。
 俺が彼女について知っていることは、彼女が着ている制服から、この辺りでは有名な
お嬢様学校の生徒で、おそらく1年生だろうということだけだ。

 毎日同じ電車に乗っていると、名前は知らなくとも顔見知りは出来る。朝の通勤通学
で混み合う電車は、だいたいいつも同じ人間が利用するからだ。
 俺のバッグに掴まっている彼女も、そんな、名前は知らないが顔はいつも見かける中
の一人だった。ちなみに、彼女を1年生だと判断したのは、今年から見かけるように
なったからだ。

 すなわち、俺の彼女の関係は、毎日同じ時間の、同じ車両を利用する乗客ということ
だけというわけだ。一言で言えば、全くの他人。

 そんな赤の他人が、なんで俺のバッグのたすきを握っているのか。それを説明するには、
半年ほど時間を遡らなければならない。
316-無口系素直クール-:2007/09/01(土) 11:41:36 ID:RzFl8wB1
 * * * * *

 あれは確か、夏休みが終わり、2学期が始まる日だったと思う。
 満員電車に揺られ、いつものように吊り革に掴まっている俺のバッグが、くいっと引
かれた。最初は、満員電車ゆえに、バッグが人に押されただけだろうと思っていたが、
その後もくいくい引かれるので、不思議に思って見てみると、女の子がバッグを掴んで
こちらを見上げていた。
 彼女と真っ向から視線が合い、あ、いつも同じ車両で見かける女の子だな。と俺が
認識したと同時、
「すみません。掴まっていても、いいですか?」
 と、彼女が口を開いた。
「あ、え?」
 唐突な彼女の発言に、俺は思わず言葉を失った。
「私、背が低くて吊り革に掴まれないので、もし良ければ掴まらせてもらいたいのです
が、いいですか?」
「え、あ…。ど、どうぞ」
「ありがとうございます」
 物凄く変で、物凄く常識外れなお願いなのに、俺は思わず承諾してしまっていた。
 真直ぐこちらを見上げている彼女の瞳があまりに綺麗で、それにつられるような形で
頷いてしまっていた。
 または、彼女の身長が俺の鳩尾ぐらいまでしかなくて、満員電車の人の海に溺れてし
まっているように見えて、思わず助けないといけないような気分になったせいもあるか
もしれない。

 ともかく、その日から、名前も知らない女の子に吊り革代わりにバッグのたすきを
提供するのが俺の日課となった。

 * * * * *

「……」
「……」
 ガタンゴトンと揺れる電車の中、二人の間に会話は発生しない。
 朝の挨拶と、降りる時のお礼。それに対する俺の返事。それが俺と彼女の会話の全てだ。
 我ながら無愛想な男だ思うが、彼女も無愛想なのでそれはお互い様だ。

 彼女とこういう関係になった最初のうちは、なんとなく落ち着かずにいろいろと話し
掛けてみたが、それに対する彼女の答えは全て「はい」か「いえ」だけだった。
 もっと会話らしい返答をしてくれることもあるにはあったが、大多数が「はい」か
「いえ」で、とても会話を楽しむという感じではなかった。
 もともと俺は、女の子と積極的に会話出来る人間じゃないし、彼女も特に俺との会話
を望んでいるわけではないようなので、今ではすっかり無言で、俺は文字通り、彼女専
用の吊り革と化している。

 会話も無く、名前も知らぬ女の子にただ吊り革代わりにされるだけだが、少なくとも
俺はこの吊り革役を楽しんでいた。
 彼女は無愛想だが、朝の挨拶とお礼の時だけ、真直ぐこちらを見上げて、綺麗な瞳を
正面から見せてくれる。その瞬間が、毎日の楽しみになっていた。

 それだけに、今日でこの吊り革役が出来なくなるのが、残念でならなかった。
317-無口系素直クール-:2007/09/01(土) 11:42:36 ID:RzFl8wB1
「…あのさ」
 彼女が降りる駅に着くまで、後数分の所で、俺は久しぶりに彼女に挨拶以外の声をかけた。
「はい?」
「えっと、その…」
 彼女はいつものように無表情でこちらを見上げてくる。綺麗な瞳と正面から視線が交叉
し、俺は思わず口籠ってしまった。

『俺、今日でこの電車を使うの最後なんだ。今日、卒業式だから』

 その一言を言おうとして、口をつぐんだ。

 だからなんなんだ。卒業だからなんだというのか。吊り革役が出来なくなるのがなんだ
と言うのか。
 今までだって、完全に毎日吊り革役をしていたわけではないじゃないか。試験などで
電車の時間がずれることもあったし、その時は別に彼女に何の断わりも入れていなかった
じゃないか。

 自分が伝えようとしている内容が、なんとも間の抜けたことのように感じて、口に出す
のを躊躇してしまう。

「いや、ごめん。何でも無い」
 結局俺は、誤魔化すことにした。
 彼女は微かに不思議そうに首を傾げたが、すぐに無表情に戻り、正面に視線を戻した。

『黒羽根ぇ〜。黒羽根です。降り口は右側でございます』
 電車は定刻通りに駅に到着し、彼女がいつものようにお礼を言ってくる。
「ありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
「あっ…」
 俺のバッグのたすきを掴んでいた、小さな手が離れ、彼女が踵を返す。
 彼女のセリフが、脳内にフラッシュバックした。

『明日もよろしくお願いします』

 明日は、無いんだ。今日で、最後なんだ。

 小さな身体が人波の中に消えていくのが、まるでスローモーションのように見えた。

「──ごめんっ」
 思わず、声を上げていた。
「ごめんっ。明日無理っ。というか今日で最後。俺、今日卒業式で、春から大学で、そんで、
大学は電車使わないからっ」
 近くにいた乗客が何人か俺の方を振り向く。瞬間的に赤面した。そんな大声ではなかっ
たが、明らかに場違いな声だった。
 おまけに、肝心の彼女には届かなかったようだ。彼女の姿はとうに消え、電車は無情にも
発車のメロディと共に扉が閉まり、動き出した。

 …ああ、踏んだり蹴ったりだ。言わなきゃ良かった。
 俺は顔を両手で覆いたくなるのを抑えながら、吊り革に掴まった。
 いいやもう、どうせこの電車を使うのは今日で最後なんだ。ああ、くそっ。
 俺は、吊り革を掴んでいる右腕に赤くなった顔を埋めて、羞恥心に身悶えながら2駅の
間を過ごした。

 * * * * *
318-無口系素直クール-:2007/09/01(土) 11:44:06 ID:RzFl8wB1
 翌日、気になっていつもと同じ時間に、いつもと同じ車両に乗ってみたが、彼女は姿を
現さなかった。
 その翌日も、そのまた翌日も、彼女の姿は無かった。
 1週間ほどその行為を繰り返し、とうとう彼女に出会えなかった俺は、その時、初めて
激しい喪失感に襲われ、自分は彼女が好きだったんだと気付いた。
 同時に、もう二度と彼女と会えないのだと気付き、満員電車の中で泣きそうになった。

 * * * * *

「いってきます」
 玄関のドアを開けた俺を出迎えたのは、見事な五月晴れだった。
 眩しい朝日に目を細め、今日は半そででも平気かも知れないな、などと考えながら自転車
に跨がる。
 大学生になってから1ヶ月が過ぎ、随分大学にも慣れてきた、そんな日だった。

 麻のYシャツのそでをまくり、大学に向かって漕ぎ始めた時、目の前に停まっていた黒塗り
のハイヤーから白髪の運転手が降りてきた。
 こんな平凡な住宅地に立派なハイヤーが何の用だ? と脇目で見ながら通り過ぎようとし
た時、運転手がうやうやしく開けた後部座席から出てきた女の子が目に入り、俺はスッ転び
そうになった。急ブレーキをかけ、ほとんど足で強引に止めるような形で自転車を停止させる。
 綺麗な瞳を真直ぐにこちらに向ける彼女は、相変わらず綺麗な黒髪を風に揺らし、小さい
身体で佇んでいた。

 彼女は俺の傍に歩み寄り、こちらを見上げて静かに口を開いた。
「あなたに掴まれないと、私は朝の満員電車で押し流されそうになるので、あなたの卒業式
があった翌日から、車で登校することにしたんです」
 その口調は、いつも聞いていたように平坦だが、心なしか楽しそうに聞こえる。
 突然の再開に声が出ない俺をそのままに、彼女は微かに首を傾げ、続ける。
「でも、何か落ち着かなくて。どうも何か掴まるものが無いと駄目みたいなんです」
「…よく、ウチが分かったね?」
 ようやく出た言葉は、そんな内容だった。そういうことが言いたいんじゃないのに。
「調べるのに2ヶ月近くかかりました。通っている学校と、水都線を利用しているという事
しか知りませんでしたから」
「…あの日、俺の言ったこと、聞こえてた?」
「はい。降りてしまっていたので、また電車に乗ろうとしたんですが、間に合いませんでした」
「そうだったんだ。ごめん。もっと早く言うつもりだったんだけど…」
「いえ。あの時の言葉で、あなたが私の事気にかけてくれていると気付いて、とても嬉しかっ
たです」
「…今日は随分おしゃべりだね。もっと無口なのかと思ってた」
 気持ちを見透かされたような気分になり、恥ずかしくなって、つい意地悪なことを口にして
しまう。
「2ヶ月分ですので」
「…そっか。2ヶ月か」
 何気なく呟いた途端、彼女の顔が泣きそうに歪んだように見えた。
「…これまでの人生で、もっとも長く感じた2ヶ月でした」
 彼女は微かに首を傾げ、泣き笑いのような顔で続ける。
「これから、私はどこに掴まれば良いのですか?」
 彼女の問いに、自然に口から言葉が出た。
「ここ、空いてるけど、掴まる?」
 車より乗り心地悪いと思うけど。と、自転車の後ろを指すと、彼女はとびっきりの笑顔で
答えた。
「はい」

終わり
319-無口系素直クール-:2007/09/01(土) 11:44:42 ID:RzFl8wB1
以上です。
思い付きと勢いだけで書いたものですが、
楽しんで頂けたら幸いです。

320名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 12:51:11 ID:Y3tryO0X
>>319
GJ!!!!!!!!!!
いいもん読ませてもらいました。
ラストにほんわかしてます。
321名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 14:06:32 ID:isnPJ4dV
やっぱり何度でも思うんだぜ。
素直クールに好かれる主人公役の男が、どいつもこいつも羨ましくて恨めしくて仕方ないw
322名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 14:58:39 ID:ErzF15v8
いや、これは何て言うか気持ちいいな
清清しいぞ

GJ
323名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 17:17:31 ID:C+KEtCM4
このほんわか感がなんともたまりません
GJ!
324名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 18:14:56 ID:IrrwzBLG
いいもん見せてもらったよ
GJ
325名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 18:35:19 ID:pzUjgCkl
 俺、マウンテンバイクで通勤してるけど、後部座席付けることにするぜ。
326名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 19:48:05 ID:lCVAVFzt
吊り革の代わりになるバック買わないといけないな・・・・
327名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 20:36:07 ID:2pdz38tB
>>325
>>326


よし、お前らに言ってやる




俺も混ぜろ
328名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 20:43:35 ID:nCJ0LpX7
俺吊革買お
329名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 22:07:30 ID:Y3tryO0X
俺来世は吊革になる。
330名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 23:17:31 ID:lCVAVFzt
とりあえず野球部が持ってそうなバッグ買ってきたw
これなら頑丈だからおk
・・・・でもスーツ姿には変?
331名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 00:27:42 ID:BxbuHpUf
とりあえず後部座席付の自転車とバッグと吊革はそろったな。
で、水都線の買収は誰がやるんだ?
332名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 00:32:48 ID:X4yMnS4Q
素直クール基金で一つ
333名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 00:57:00 ID:gu5XCgGC
96円で精一杯だが、いいか?
334名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 03:54:03 ID:ShAkP+rL
本当に素直クールが来れると言うのなら残額1万出していいぞ
335名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 04:09:48 ID:1oBynxla
GJ!
前半、こなたを連想したのは内緒。
最近首都圏の一部の路線では、優先席付近の吊革が低かったり
3個ごとに低い吊革になっていたりして、こういうドラマになりにくいのが残念(間違い
336名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 06:20:42 ID:2MIaI7jH
> 300
すまぬ、○の内線の座席の確保ができなくなった。
なんとか、自分でがむばってくで。

おれも自転車にする。
337名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 10:08:57 ID:1oBynxla
○の内線と交差している地下鉄で、小学生がふらふらしてたから
「私に掴まる?」ってのはやったことあるけどね。
338名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 10:14:17 ID:61mifT7u
>>319
GJ!

>ALL
お前ら少しは落ち着けw
そして吊革になりたい奴は自分たちが役に立ってないことに気づけw

これを読んでまたエロSS書き始めてしまった。薄汚れてしまった俺を許してくれorz
339名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 11:19:27 ID:nLPGrCC4
>>338


君も参加するんだ、とりあえず○の内線の座席確保から始めよう


こっから本文

wktkしながら踊りつつ投下待ってるよ
340名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 13:46:44 ID:2MIaI7jH
荷物を座席において確保し、自分は立って吊革になる。

これだ!!
341名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 15:51:47 ID:/nzu4ZpS
>>340
鬼才現る
342名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 17:13:08 ID:PFryaGnU
>>319
ところで、あれだ、続きまってる。
343名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 17:55:54 ID:wB07n3he
>>340
それは単なる迷惑行為。
344【素直クールスレが好きなのは】:2007/09/03(月) 22:05:04 ID:122U/nik
なんとなく思いついた小ネタです。
住人の皆さんネタにしちゃってゴメンナサイ
なんかもういろんな人にいろんな意味でゴメンナサイ

--
「『吊革になりたい』だなんて、最近このスレのみんな、ちょっとはしゃぎすぎてる気がするな」
「そうかしら。そこが可愛らしいと思うのだけれど」
「可愛い? 子供っぽいの間違いじゃなくて?」
「その二つは対立概念じゃないでしょ? それに君自身、子供っぽいところが可愛いのよ」

 そう言って、クーは背後からぼくの首に腕を回し、そっと唇をぼくのそれに近づけて
くる。ぼくもそれを促そうとしたけれど、指先が緊張で震えているのが自分でもよく
わかった。我ながらヘタレている。
 もうなんども交わしている口付けなのに、ちっとも慣れることはないみたいだ。
 彼女のその唇は、熱く、そして、とろけるように甘く。

「しかし、クーはこのスレが好きだね」
「私ね。このスレのSSを読むと、どれを読んでもなぜかとても懐かしくなるの。切なくて泣きそうになるのよ」
 クーは突然そんなことを言い出した。
 意外すぎる。
 いつもクールに振舞う彼女だ。
 ドラマでも小説でも泣いたことのない彼女だ。
 その彼女が、そんなことを言い出すなんて思いもよらなかった。

「君は『火の鳥』を読んだことはあったかしら?」
「手塚治虫の?」
「そう。あの話の中で猿田彦は、あらゆる時代あらゆる場所で、さまざまな人生を体験するのよ。
何度も何度も転生を繰り返し」
「そういえばそうだったっけ。懐かしい」
「このスレのSSでもいろいろな場所、いろいろな時代の物語が紡がれているけれどね。実はそれらはすべて
本当にあったことのような気がするの。書き手は皆、無意識のうちに自らの記憶を投下していて。誰もが皆、
火の鳥と同じように、何度も何度も転生を繰り返し」
 クーは真面目な顔で話を続ける。
「ここのスレに描かれていることは全て、過去の私が経験したことで。だからこのスレに投下している
人たちは皆、かつて私の知り合いだった人たちなのじゃないかしら。あるいは、私自身か」
「あはははは。でもその言い草は書き手の人に悪いよ。――コーヒー入れてくる。クーも飲むよね」

◆◇◆

「コーヒー入れてくる。クーも飲むよね」
 そう言って彼は席を立つ。
 どこか、あきれたような表情で。

「――ま、信じろとは言わないけれど」
 私は肩をすくめひとりごちた。
 電波に聞こえるかもしれないし、突拍子も無い話だし。信じろとは言わないよ。

 でも私には、ぬぐいきれない実感がある。
 このスレの SSを読んで感じる懐かしさ。狂おしいほどの切なさ。
 それはとても言葉にはできないほどのものだから。

――それから、ね。私の言っていることが本当なら、転生しているのは君も一緒なんだよ。
 私は口の中でそっと呟いた。

 剣の道を突き進む少年にも、『出会いはオナニー』から始まってすっかり彼女に振り回されながら、
実は結構芯のしっかりした男の子にも、挨拶にいって彼女の父親にオイオイ泣き出された彼にも、
じっと吊革になる青年にも、その誰の中にも、私は『君』を感じ取ることができる。
345【素直クールスレが好きなのは】:2007/09/03(月) 22:06:07 ID:122U/nik
 SSの主人公だけじゃない。
 スレの住人にも、また。
 私のために吊革にまでなりたいなんて、とても君らしい言動だ思うし、反対に迷惑行為だとたしなめる
生真面目さにも、やはり君の匂いを見つけてしまう。
 それに何より、スレ住人の誰も彼もから、君から与えられるそれと同種の、私への暖かな
愛情がそこかしこにしっかりと感じられるのだから。

 だから、私は思う。 このスレの住人は皆、『私』か『君』の生まれ変わりではなかろうか、と。

 このスレを読んでいるあなた。
 ちょっと自分の周囲を確認してみてほしい。
 そこに、私の転生した姿は見当たらないだろうか?
 あるいは今後、転生先の私と出会う未来は、予想されないだろうか?

 残念ながら、あなたとはしばらくは出会うことができないのかもしれない。この人生では
会うことのかなわぬ運命なのかもしれない。
 でも、いつか。いつかきっと出会えるはずだから。
 どこかにずっと、それを待ち望んでいる私もいるはずだから。

 ばかばかしい妄想。
 そう思う人もいるだろう。
 でも、しつこいようだけれど私には確信がある。
 だって、これが真実でないのなら、どうして彼と私は、
『勘違いしてまだ投下されていないSSの感想を言い合う』ことができるのだろうか ? それも、一度や二度ならず。

 このスレを読む、すべての『君』と、すべての『私』。
 どうかあなた方が皆、お互いを見出すことができますように。皆、幸せに過ごせますように。
 『君』に出会えぬ『私』の生ほど、寂しいものは無いのだから。
 願っても仕方が無いことだけれど。
 それでも私は、願わずにはいられない。すべての『君』と、すべての『私』の幸せを。

「クー? コーヒー入ったよ。 ん? どうかした? 何、そんなに笑ってるのさ」
「ん、私って、世界一利己的な人間じゃないかと思って。ふふ。コーヒーありがと、今行くね」
 私は PCの電源を落とし、彼の元へ向かう。
――明日はこのスレで、素敵なSSが読めたらいいな。そう、願いながら。
 そこに懐かく優しい記憶が記されていますように。そう、願いながら。
--
以上ですよ。
346名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 22:19:33 ID:MMwq31sd
あれ、どうしたんだろう。目から汁が。・゚・(つД`)・゚・。
347名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 00:00:25 ID:3CHrFNBB
>『吊革になりたい』

中島みゆきが頭の中で絶叫しています。
もうだめかもしれんね > 俺
348名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 00:55:09 ID:iWhc5b4+
>>337がクーの転生かと思うと萌える。
# 勿論相手の小学生は男の子で。
349名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 02:30:53 ID:rrma8Wjc
このスレには俺が多すぎて困る
350名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 17:17:07 ID:f9HQ9SDL
>>347
夜明け間際の吉野家…?

351名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 20:05:36 ID:LS7ZIKkY
おかしいな、目から液体が・・・・止まらない
352名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 22:50:31 ID:M6vtBguw
>>350

ただ一度では足りない。

毎日、毎朝、吊革だ。
おまえは吊革となるのだ!

ルール無用の混雑に男の根性見せてやれ!
353名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 23:07:03 ID:+Zabh5tt
>>352
ワラタ。>>350は伊○×人だったのか!
354名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 23:39:43 ID:T1CNRUW0
>>352で何故かコッチの方が出て来た


っ『明日の為にその一、吊り革』
355名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 04:33:07 ID:6sj5sWdk
9月に入ったとたん年齢層が引きあがったような気がする今日この頃。

>>354
こんな電波、受信してしまいましたよ。
--
 職員たちは絶句した。
 独房の中、彼はベッドを壁に立てかけ、一心不乱に吊革になっていたのだ。
 前代未聞である。

 ――へへっ、おっつぁんよ。
 次だ。次を早く送ってきやがれ。明日のために、その2、その3、もう
とにかくなんでもいい、次を早く、早くっ!!

 どうしても倒したいヤツがいる。憎たらしいが、すごいヤツだ。
 オレはそいつと、どちらが先にクーを見つけ出してその心を射止めるか、
勝負することになっっちまった。
 頼むぜ、おっつぁん。よろしく頼む。

◆◇◆
「勝算はあるのかしら」
「よしてくださいよお嬢さん。確かにあの吊革には驚きましたがね」
 ウェイト・トレーニングをしながら、彼は慰問にきた少女に話しかける。l
「確かに奴の吊革はプロ級だ。四回戦でも十分に通用するでしょう。だが、それだけだ。
――一分だ。一分で、奴をこの地べたに這いつくばらせてやりますよ」

◇◆◇
 待ちに待ってたおっつぁんの手紙。
 そこには、こう記されていた。

 ――米。
 おっつぁん、違うぜ間違いだ、こいつは素直シュールだ……。
356名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 04:51:26 ID:wRGuUsbC
吊革以外にクーを射止める必殺技って
何があるのかねー
357名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 05:21:04 ID:41CUEm9Z
>>353

むぅ、教官殺しか。
関東豪学連総長がでてくるとは・・・

やつは元一号生筆頭だ。
おぬしは地獄すら生ぬるいと思うことになるだろう。
358名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 05:46:26 ID:IrnK0YEL
臣人の方かよっ!!w 
359名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 07:04:32 ID:5pVAq4aq
>>356
捨てられている子犬や子猫を助ける
360これからずっと ◆6x17cueegc :2007/09/06(木) 00:50:57 ID:G8gWZlLI
>>359
動植物に優しいのは鉄板だね。

さて。
皆さんおはようございますこんにちはこんばんは。これからずっとの人でございます。

エロは頑張ったんですがそこはあんまり期待してほしくないな、なんて思ってたり。
ではどうぞ。
361これからずっと ◆6x17cueegc :2007/09/06(木) 00:52:20 ID:G8gWZlLI
「先輩。」
「何や後輩。」
「マンネリだと思うんです。」
「何を突然言い出すんや。」
放課後に招待された2人以外誰もいない安田邸で、いつものように体を寄せてくることもせず真面目な顔をして話を切り出してきた。
毎日のように付きまとっていればマンネリにもなるだろうとは思うが、どうもそういうことではないらしい。

「SEXが、マンネリだと思うんです。」
「……バリエーションが少なくてごめんなさい。」
よくないと言われてうれしい奴はいない。深く凹んで頭を下げる。
「あの、そうじゃなくて、SEX自体はとっても気持ちよくて満足してるんですけど……」
どうやら違うところに不満があるらしく、軽く言い淀む。
「たまには先輩から誘ってほしいな、って。いつも私から誘ってるでしょう?」
確かに彼女からのアプローチが毎日続いていて、こちらから何かをしたことは殆ど無い。実際今日も半ば引きずられるようにして連れてこられたのだ。
「私1人、我侭を言っているようで心苦しくって。」
「あ、そ。」
「反応が鈍いですね。」
「いや別に。」
逆に好き勝手にしていない日があるのかと訊きたかったがグッとこらえる。

「というわけで、私に迫ってみてください。」
「…………」
「どうかしましたか?」
「それって自分から迫ってることにならへんか?」
「あ、えっと……」
小首を傾げて、どうしよう、と呟いている。知らないよ、と返してから膝の上に呼び寄せると、スルスルと這い寄ってきた。それを抱き上げて背中から抱きしめる。
「ええ誘い方ってのが分からんから、代わりに1つ、我侭言うてもええ?」
こちらを見上げるように首を捻ると、こくりと頷いた。

ベッドの横に立たせて後ろを向いたまま服を脱いでもらう。特別恥じらう様子もなくスカートを落としリボンを外すと、手が止まった。
「どうかしたん?」
「背中は、えっと。」
「分かってるよ。脱いで?」
恐る恐る、といった様子でシャツを足元に落とす。火傷の痕を隠そうと後ろで手を組んでいたが、今度はブラジャーを外そうと腕を上げていく。
「下着はそのままでええよ。」
「え?」
振り向こうとするのを押し止め、ベッドに腰掛けていた俺は火傷の痕に手を置く。

「あの、そこは……」
「どうかしたん?」
指で、掌で、少し膨れたようになっている火傷の痕をなぞると、雷に打たれたようにビクリと力が入る。
「触り心地ええな。」
「そんなことっ、ふっ、ありません。……気持ち悪いでしょう?」
「正直に言うと最初に見たときはちょっと引いたな。でも何か問題あるんか?」
言いながら撫でるのは止めない。安田は驚いた様子でこちらを振り返ったが、もう一度問いかけると視線を合わせると前へ向き直った。
「……そこを見たら、誰だって私のことが嫌いになります。」
「俺は例外みたいやけどな。」
言って背中に唇を寄せ、ちうと吸い上げると赤い痣になった。少しやりすぎたな、と今度は舐める。
362これからずっと ◆6x17cueegc :2007/09/06(木) 00:53:03 ID:G8gWZlLI
「……汚いから、止めて下さい。」
口を寄せたことに気付いた瞬間飛び退くと、半分泣きそうなか細い声で懇願する。
「汚くない。向こう向いて?」
嫌がる彼女を無理矢理後ろに向かせて膝に座らせると、体重を預けてきた。背中を見せないように抵抗しているのだ。
それを引き剥がすと背中に手を置きなおしてもう一度撫で始める。ゾワゾワっと彼女の腕が粟立ったが、気にせずに撫で回すとぐずり出した。
身をくねらせて逃げようとするが、空いた手で押さえつけて逃がさない。
「や、だ……くすぐったいよぅ……」
「もう汚いとか言わへんよな?」
「だって、だって……」
「俺、自分の背中のラインすごく好みなんやけど、それでも見せてくれへんの?」
無言。だが何か言い訳しようと懸命に頭を回転させてはいるようだ。

暫く答えが返ってくるのを待っている間に、少し意地悪をしてやろうと閃いた。
肩において身体を押さえていた手を腹に置き、下着の間を上下させる。やがて頭を振りながらも甘い声が漏れ出した。
「ぁふ、あの、えっと……」
「言いたくない理由があるんやったら、無理して嘘つかんでもええよ。」
大体お前がすぐに答えを返せないって事は嘘吐いてるってことじゃないか、と呟いて、腹と背中に置いた手をせわしく動かす。
時々下着の上から敏感なところに触れたり指で軽く叩くと、彼女の息が上がり目が潤んできた。
「……止めて下さい。嘘は、もう吐きませんから。」
「じゃあ理由聞かせてくれるん?」
「それは、少し、もう少しだけ待ってください。」
「分かった。背中にも……今日だけは触らせて?」
もう触らない、と言いかけて翻す。手に吸い付くようなカーブを描いていて納まりがよく、このまま手放すのはちょっと寂しい。

「いいですよ。でも、他のところにも触ってほしいです。」
「例えば?」
「ここ、とか。」
自分の右手をブラジャーの頂点に置き、
「ここ、も。」
左手は潤み始めた割れ目を這う。
「どういう風に?実演してもらわんと分かれへんな。」
困惑している彼女を尻目に、お腹と背中をゆっくりと撫で続けながら背中に置いた手でホックを外す。露になった乳房に腹側の手を添える。
「横で真似するからやってみて?」
クスクス笑いながら囁いて耳たぶにキス。後ろから顔を覗き込むと少し睨まれた。
「我侭は1つだけでしょ?……今度は私の番。」
きつい視線が一瞬で緩むと、こちらに向き直って唇を奪ってきた。咄嗟に受け止めたがこらえきれずに倒れこむ。
363これからずっと ◆6x17cueegc :2007/09/06(木) 00:54:57 ID:G8gWZlLI
スプリングが効いて2,3度身体が跳ねる。耳の奥がギシギシ響いている中、唇を合わせ舌を吸い合う。
もういい加減キスに飽きても良さそうなくらい唾液を交換しているが、彼女の舌を味わうたびに嵌っていく。もう半分中毒だ。
時々唇を離すとその度唾液で橋がかかるが、それがマットレスに落ちないうちにまた橋の両端がくっつく。
この夏の猛暑を経験しても何故か日に焼けることが無かった、血管が青く浮き出そうな白い頬が赤く染まっている。

かわいい。もうどうしようもなく、ただ愛おしい。
身体に腕を回し、強く抱きしめる。
ああ不味いなあ。俺、コイツの事、本気で好きかもしれない。

「先輩。」
「何や後輩。」
「私の我侭、聞いて?」
さっきからタメ口をきいている。暫く付き合っていて分かったことだが、何かをはっきりと言いたいときの癖の様だ。
「何?」
「私のこと、名前で呼んでほしい。」
息が荒くとろんとした目だが、決して芯が無くなっているわけではない。強い意志が瞳の底に見える。
「こういう風に2人きりの時だけでいいから。先輩、恥ずかしがり屋さんだから人前では我慢しますよ?」
前半は真剣に、後半は微笑んで囁く。こんなタイミングでお願いされたら断れないのを分かっているから笑っているのだ。
「ずるいなぁ。」
「何のことだかさっぱりですね。」

「えーっと、安田?」
顔を真っ赤にしながら目を合わせないようにして口を開閉する。
「せ・ん・ぱ・い?」
「名前、何やったっけ?……あークソ、翠!これでええな!?」
冗談も言えないくらいに睨まれて、結局言うことになった。怒鳴るように吐き捨てて、もう顔から火が出そうだ。
名前を呼んだ瞬間、彼女は俺の体にしがみついてきた。痛いくらいに身体を寄せられ息が詰まる。
「こういう風になった時は、『いつも』呼んでくださいよ?」
おでこ同士をぶつけて視線を絡ませ、この呼び方が今だけではないということを強調してぐりぐりと頭を擦る。当然拒否は出来ない。
なんだか我侭の内容がフェアな気がしないのは気のせいだろうか。

暫くして。
安田は……翠は俺の上で繋がり腰を振っていた。お互いの腰がぶつかり、ピチャピチャと卑猥な水音があがる。
今まで小さな彼女の身体を潰さないようにと俺が下になることが多かったが、彼女も自由に動けて深く繋がれるこの体位を気に入っているようだ。
「もっと、触って、下さいっ……」
耐えられない風に髪を大きく振り乱す彼女の要求に応えて手を伸ばし、なだらかな丘の控えめな頂点を摘む。摘んでから指先で転がす。
刺激を与えると膣内がきゅうきゅう締まって、その度に一瞬目の前が真っ白になる。
思わず弄る手を止めると何故止めるのかと詰られるから、止める事もできずにあっという間に限界まで昇りつめてしまった。
「先輩、すごくかわいい顔、してますよ?」
「……かわいい言うな。お前の方がかわいいわ。」
ムッとして起き上がり彼女の身体を抱き寄せて耳元で囁くと、俺の体に腕を回して俺以上の強さで身体を締めあげる。
「うれしいです。……激しく、してください。」
黙って頷いて大きく一突き。よがり声を上げる彼女を間近に見ていると、こっちも感じてしまってダメだ。
364これからずっと ◆6x17cueegc :2007/09/06(木) 00:56:07 ID:G8gWZlLI
「好きっすきっスキっ……」
突く度に漏れる甘い声に頭の芯が痺れてきた。それまで弄っていた胸から手を離し、ギュっと抱いて更に突き上げる。
抱きしめ返されて汗をかいた身体がぬめるのさえ快感に変わる。
「あっ、あぁああっ!先輩っ、先輩っ!イく、イくっ!イっちゃうよぉ!」
「俺も、アカンっ……!」
腰の奥がゾワゾワして身体が震えてきた。お互いがお互いの顎を肩に埋め、夢中で腰を振る。

終わりはすぐに来た。彼女の体中が――当然膣内も――突っ張る。
「やっ、あっ、あぁっ!」
ブルブルと震えるながら手足を、そして襞が絡んでくる。俺もその刺激を受けて果てた。言うまでも無いことだがゴムはつけている。
「先輩も……一緒に……?」
萎えていく俺の分身を感じたのか、荒い息を整えながら視線を合わせる。
「気持ち、良かったですか?」
「うん。お前はどうなん?」
「幸せです。こうして先輩と抱き合えるのが。」
「そうか。よかった。」
まだ彼女の息が荒い。ああもう、と呟いて頭を撫でると、まだ絡み付いていた手足をまた締め付けてきた。
「どした?」
「……幸せ充填中。」
「あ、そ。」
半分呆れながら撫で続ける。

「ところで。」
何戦かやり合って、疲れてまどろんできた。眠る前に疑問をぶつけておく。
「何でいきなり名前を呼んでほしくなったん?」
最初は『Hがマンネリだから』という理由だったような気がするが、それがどうして名前の呼び方に繋がるのか。
「親戚のお姉さんに『もっと仲良くなりたいなら名前を呼んでもらえ』と言われたので。」
コイツに<色々>教え込んだ人か。よっぽど頼りになる人なのだろうか。
「お姉さんも旦那さんも独身時代にこれをして、すごく燃え上がって更に仲が良くなったと言っていました。」
姉さん女房でそれまでは敬語交じりだったそうですが、それ以降はそれ以降は直ったそうですよ、と続ける。
前言撤回。やっぱりコイツの血筋だ。碌な事を教えていない。

「で、呼んでもらってみて、どうやった?……満足そうな顔しとるから訊くまでもないか。」
猫のように身体を丸めてうとうとしている姿を見て、こっちもなんだか心が満たされていく気がする。
「先輩は……?」
「んー、名前呼びはちょっと恥ずかしいな。」
もう一度呼べといわれても何だかんだ言ってはぐらかすつもりだ。普段から誰かを渾名で呼んだりしないから、尚更恥ずかしい。
「あの、そうじゃなくて。我侭は言い足りましたか?」
「あー、あれなぁ。……ただちょっと意地悪したかっただけやから、忘れてもらってええよ。」
「そうですか。それならいいんですけど……」
何か心配事でもあるのか不安そうな顔をしている。
「結局私の我侭を通した気がするので。」
「我侭言うとる自覚あったんかい。」
少しは我慢しろ、と軽く頭を小突く。

言えないよなぁ。
『お前の全身を愉しみたいから、嫌がられるの分かってて我侭言った』なんて。



「私も先輩のこと、名前で呼んでいいですか?」
「それは止めて。恥ずかしいから。」
「やっぱり先輩って呼んだほうが萌えるのかぁ……」
「違う。それは絶対違う。断固抗議する。」
365>>338=これからずっとの人 ◆6x17cueegc :2007/09/06(木) 00:59:59 ID:G8gWZlLI
と、以上です。
お前ら夏休み中何してたんだ的な感じで、ベッドルームから話を始めてしまいました。

いや、夏休みネタも書いてたんですよ?でも気がついたら8月30日で……2日で仕上げるのも無理だったんでボツにしてしまいました。
ああ、戻って来いマイサマー。

あと男の名前を決めてないのが今回響いてきた感がorz
もういっそのこと『誠』にでもしてやろうか。

>>344-345
挨拶にいって〜云々は私が前に書いた奴でしょうか?
数書いてるだけで稚拙な文章ですが楽しんで頂いている様で光栄です。
366名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 01:30:30 ID:w4Ldb97Z
>>365
GJ!
全くもってけしからん!けしからん夫婦だ!!
367名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 03:09:27 ID:cHmz68Sm
>>365世界に存在する萌えの原点を見た気がした。
GJ!
368名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 04:01:56 ID:Z2k/o0i9
>>365
GJ!GJ!
安田、先輩と呼び合うこの二人の今の距離感、すごく好きなわけですが、
「二人きりのときだけ呼び名が変わる」というのには更にクラクラくるものが。

>夏休みネタ
別に夏休みに間に合う必要は全くないと思うのは自分だけでしょかね? めっちゃ気になるのですが。

>挨拶にいって〜云々は私が前に書いた奴でしょうか
あんな父、他にいないと思うw ネタニシテゴメンナサイ
369名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 09:06:52 ID:/FpY2rPr
内容はいいんだけど不自然な関西弁が…。
やっぱ文章だと違和感あるな

でもGJ!
370名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 14:26:20 ID:v9/hWPrs
>>369
あまり違和感なく読めた大阪人の俺は異端なのか
371名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 18:48:05 ID:1E22sOsA
>>370


大丈夫だ、俺も違和感なく読めた大阪人





そして小説はとてもGj!
372名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 18:56:08 ID:KMwRHtmx
男の台詞の中でも標準語と怪しい大阪弁が混じってて
その度に引っ掛かる感じがする

たぶん作者は日常的にそんな感じの使い方してるだろうから
別に違和感無く書いてるんだろうとは思うが

人物の台詞として書き起こす場合は
一定の規則性を持たせてみるのはどうだろう

例えば語尾だけ方言にするとか
人に呼び掛ける時は特定の言葉から入るとか

台詞の全てを方言化してしまうとベタベタ過ぎて欝陶しくなるし
373名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 04:04:15 ID:wPsvImL/
方言の使い方の違和感ではなくて方言使った文章に違和感があるって意味だと思うけど
374名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 07:04:46 ID:o9ZlKoi7
保守
375名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 11:05:08 ID:IDvHEdTz
方言つかっていいのなら書いても見たいが。
ズーズー弁書いたところで訳入れない限り伝わんねーだろうなw

つかその前に根本的にちゃんと話を最初から最後まで書けるかどうかが問題だけどw
376名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 14:43:26 ID:2Ntv9y4d
俺は生まれも育ちも兵庫だから大阪弁と言うより関西弁だけど変に標準語
と混ぜて使われるよりは標準語で書いたほーが読みやすいな、違和感も無いし。
そもそも口語体の文章をそのまま書き付けるというのが違和感ありすぎ。

実際の日常会話でもイントネーションが標準語と違うだけで関西弁それも兵庫だと
京都と和歌山を除く多くの県と同じでさほど特異なもんじゃないし。
大阪弁でも濃ゆいのは河内弁とかそんなもんだけじゃろ。

特徴的な言い回しがしたいのなら何かの言葉を方言で喋ってみるという方が
効果的だな。特に流行りだけで多府県の人に面白がって方言使われるのは
個人的にはいい気持ちではない。
377名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 20:41:55 ID:c/dsvR5J
流行りってw
まぁオレも沖縄が舞台の映画とか観たらかなりムカつくがねwww
378名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 22:30:37 ID:U/4/7Mu0
首都圏の者だが、標準語使われてもムカつかないが
379名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 01:13:12 ID:c2MQyamW
そら標準語だからだろ。

いいじゃねえかよ、作者の書きたいように書いてもらえば。
方言と文章表現について語りたいのなら、創作文芸板のほうが適当でしょ。
380名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 03:50:55 ID:H0Go+8TQ
まぁこればかりは作者の土地柄の問題だから色々言うだけ不毛だろうな
381名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 06:42:17 ID:kZSGMWiv
せかすつもりはないけど、
300の人はどうしてるのかな?
382名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 14:28:11 ID:CYa2Eq08
方言で書いてみたいと思ったそこのあなた! 

こちらにドゾー( ´∀`)つ【関西】方言少女でエロパロ【東北】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1159883686/
383名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 00:13:50 ID:DBhoNmv/
>>381
「何で300人のスパルタ戦士?」と素で思った俺イズヒア。
384名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 02:14:34 ID:3UQQeWhf
一騎当千の古強者だとしても、300人じゃ100万人に勝てん。

少佐よ、ぬかったな。



と思った俺もいる。
385名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 02:20:31 ID:4mTo/M2g
てかいくら強いのが300人でも遊撃部隊としての能力は認めるけど防衛する分に関しては不利だろ…圧倒的に
386名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 04:18:55 ID:zt2YZrGJ
日本語で
387名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 13:19:04 ID:CW6snFY3
388名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 21:11:25 ID:qq8Tm7j3
389名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 00:04:03 ID:CW6snFY3
390名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 00:08:11 ID:DsFMB2SR
391名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 16:20:49 ID:36EuzOp2
過疎らないと、ねこミミ保守は来ないのだらうか…
392300:2007/09/11(火) 21:52:38 ID:EeGKwkSs
すみません、現在激しくスランプ中につきもうちょっと待ってて下さい。
エロシーンむずいよエロシーン(´・ω・`)
393名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 22:03:00 ID:sLjgFaPJ
>>385
その圧倒的不利でも闘い抜いて、ペルシア軍に大損害を与えたからこそ、あの話は燃えるんじゃないか。
394名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 22:16:31 ID:dxe0GuZl
むしろアレは筋肉萌えだろうと思うぜ>300。
正直ペルシア王がアフリカ人っぽかったのが気になってしょうがなかったが。
ヒゲはどうしたヒゲは。
395名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 21:46:37 ID:y3CxWTwD
>>392
いっその事エロを抜いてほの板に(ry

過疎こわいよ過疎(´・ω・`)
396名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 23:23:56 ID:mzDCtiT9
>>393-394

つまり100万の素直クールに300人で挑めと。
397名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 23:26:47 ID:kUwWOsI8
「300」は映画だからアレだけど史実ではちゃんと援軍のギリシャのポリス連合軍
がおるからなー。
398名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 00:01:46 ID:1QP+i9Kq
しかも、確か他のギリシア軍の一部がペルシア軍に抜け道を教えてやったんじゃなかったっけ。
あいつら実は一枚岩じゃないしね。そのせいで今まで苦戦してたのをついに突破されたとか。

>>396
想像しただけで気圧されたんだが……
399名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 00:03:05 ID:0UYIHguZ
好き好きオーラで死にそうだ
400名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 00:06:03 ID:VwaXco+0
>>397
史料によってまちまちだけど、ギリシア連合軍が7000人あまり、ペルシア軍が21万〜210万らしい。
以下Wikipediaより

ギリシア陸戦部隊
スパルタ重装歩兵: 300
テゲア兵: 500
マンティネイア兵: 500
オルコメノス兵: 120
アルカディア各都市の兵: 1,000
コリントス兵: 400
プレイウス兵: 200
ミュケナイ兵: 80
テスピアイ兵: 700
テバイ兵: 400
ロクリス・オプンティア兵: 不明 (地区の全兵力)
ポキス兵: 1,000
合計 5,200
以上はヘロドトスの述べる数字であるが、シケリアのディオドロスによるとスパルタ軍には300人隊に加えて1,000人のスパルタ装甲歩兵が参戦していたことになっており、ロクリス・オプンティアの全兵力を加えたギリシア側の総数は7,000人前後と推定される。
最後まで戦闘に参加したのは、スパルタ、テスピアイ 、テバイの兵 (合計1,400人〜2,400人) のみである。

ペルシア陸戦部隊
歩兵: 1,700,000
騎兵: 80,000
アラビア人の駱駝部隊・リビアの戦車部隊: 20,000
ヨーロッパより参加の歩兵: 300,000
合計 2,100,000
以上はヘロドトスの述べる数字である。
ヘロドトスによるとこのほか水兵が541,610人おり、総兵力は2,641,610人。
また非戦闘員が同数帯同したと仮定して遠征部隊の総勢を5,283,220人と見積もっているが、これらは明らかにペルシア遠征軍の実数としては認められない。
ペルシア遠征軍の陸上部隊の実数については多くの学説が提唱されており、15,000から30万まで様々な推定がなされている。
古代ペルシア語から古代ギリシア語への翻訳の過程で単位が1桁間違って伝わったという解釈に従うと、ペルシア陸戦部隊の総数は21万人となる。
20世紀以降の学者の見解に限ればペルシア陸軍の総数を10万人以下とする推定が大半であり、平均すると6万人前後である。

ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%94%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84
401名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 00:18:06 ID:MaMwdsbi
>>400
流石に他でやってくれ。つーか引用するならリンク先だけ書きゃ十分じゃねーか。
402名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 02:43:01 ID:aEs4ihzm
>>401
素直クールってのは、曖昧なことは良しとしないもんなのさ
403401:2007/09/13(木) 14:56:01 ID:bcNh2js+
>>402
一瞬納得してしまった自分が憎らしいw
404名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:00:30 ID:JjXVEZfz
>>402
それならせめてクーと男の講義形式にしてくれよ
それなら何処からも文句は出なかったと思うが

ただの蘊蓄垂れ流しなら然るべき板の然るべきスレで演ってくれ
このスレは>>1にも在る通り素直クールに萌える為のスレだ
405名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:05:50 ID:GqsOxSlT
402に言う文句ではなかろう
406名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:42:34 ID:WqIZKVlR
>404
お前の方がウザイ奴と化しているぞ
407名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:57:45 ID:o1Bs+doh
双方それまで
クールに行こうぜ、クールによ
408名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 00:06:11 ID:mRCVRroQ
なんか最近荒れてるスレ多いな
409名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 00:31:26 ID:0TjrzDW6
夏はもう過ぎたのにな
410名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 00:34:20 ID:GDlvQGkw
ヒント:大学生はまだ夏休み。
411名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 00:51:56 ID:DVkCF2BR
ヒント2:大学生もゆとり世代
412名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 00:54:20 ID:PmOm/8aC
ごめんなさい、会社員辞めてもう一度勉強しなおす為に大学行ったんです
ごめんさい
413名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 01:27:49 ID:YOtFFUfh
300でこじれたならいっそネタに

 ハインリッヒの法則
「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」
414名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 02:17:47 ID:YOtFFUfh
クー「ハインリッヒの法則をしっているかい」
男 「はいんりっひ?」
クー「うむ、妻になるのは29人の恋人を蹴落とし、300の親友泣かせるという話なのだがな」
男 「……」
クー「君に隠し事をされるのはつらい…。すまない、こんなことを君に言うつもりは無ったが私はあまりにも幸せすぎて…」

男、クーを全力で抱きしめ


エロなしですまん
415名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 12:36:59 ID:9RsIQR8j
わっふるわっふる
416名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 17:47:06 ID:/dMotm28
いまひとつ書いてるんだけどどうにも初めてなのでうまくかけないorz
417名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 22:27:10 ID:HHoL9HHM
それを告白して、何か楽しいことでもあるのか?
他人に見て貰う価値のあるレスだと思うか?
418名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 22:39:50 ID:4l8Tgsk3
>>417
んなこといわれてもwwww


素直クール風に言ってくれたら
直す気になるかもしれんが。
419名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 23:57:30 ID:9NlCnyxW
素直クール風に直す……ふむ。
俺は>>417の文面のままでも割とスムーズに脳内変換できるなぁ。



上手く書けないか、それなら私が力を貸してあげよう。
君には経験地が足りないのだ。さあ、服を脱ぎ給え。
420名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 01:52:33 ID:BKHuNeVu
「初めて」を言い訳に使うのはよくない。
例えば他人との出会いを考えてみよう。
君が今までどれだけ人に会ったか知らんが
少なくとも私と会ったのは初めてだろう。
だから臆することはない。私に任せたまえ。

……いや、私も初めてなんだがね。
421名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 01:56:32 ID:Gn1o9cs2
今付き合ってる彼女いるんだけどさ
俺が短小包茎だってこと言い出せないんだよな
やっぱ引かれるかな?ベッドでナニこれって顔は見たくないんだよね
過去の男と比べられるってマジ死にたくなるじゃん?
ぶっちゃけ21だし相手が処女…だと嬉しいけどマジないじゃん?
俺どーてーじゃん?皮びろーんじゃん?
どうしたらいいんだろうな
ヤる前に短小包茎って正直に話した方がいいと俺は思うんだけど踏ん切りがつかない
422名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 01:58:37 ID:Gn1o9cs2
誤爆だからスルーして欲しい
423名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 02:33:48 ID:pTryCfvs
>>421、それは誤爆なのかね?
 誤爆を装って私にそれを告白してみたのではないのかね?」

「ふむ。さて、わたしは君の男性的価値を男根には置いていない。
……待て。そんなあからさまに落ち込むな。
馬並みにでかい、アメリカンポルノみたいな大砲が好きだったら
ラグビー部の巨漢なんかと付き合ってるさ。にもかかわらず、君を選んでいるという時点で
君の魅力がどんなものかわかるだろう」

「わからない? わたしはいつも誉めているじゃないか。『君はアホだが優しい』とか
『君は信じられないくらい足が遅いがすくなくとも一生懸命だ』とか
『空気読めない代わりにバカがつくくらい真面目だ』とか
『要領が悪いが絶対に不正をしない』とか」

「君の男性器が小さかろうが細かろうが異音を発しながら怪光線を照射しようが、
とにかくそんなのは君が気に病むようなことじゃない。…え?異音も怪光線も吐かない?それはよかった。
わたしの中でそんなものを照射されたらどうしようかとちょっとだけ心配だったんだ。
まあとにかく、わたしが君と一緒にいるということはわたしにとって君はとても魅力的だということなんだ。
わかったか?わかったらほら、そんな怪しげな男根増大器なんか捨ててしまって、飲みに行こうじゃないか。
大丈夫、明日も明後日も休みだから帰ってこれなくなっても全然心配要らないぞ」
424名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 07:58:40 ID:O0SCYHkk
>>異音を発しながら怪光線



いいこと言ってるなと思ったら
ここで激しくコーヒーを吹いたぞ、どうしてくれる
425名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 08:14:57 ID:Gn1o9cs2
>>423
真面目に癒された
こんなに誤爆に優しいレスは生まれて初めてだ…。

正直真面目さしかとりえのないツマラナイ男だが精一杯のことしてみるぜ
ありがとよ

あとスレ汚しスマン
426名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 08:27:51 ID:dQdcu2HV
この誤爆で息がwwwww息がwwwwwwくるs
427名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 15:55:33 ID:vchJqvGZ
>>426が呼吸困難で逝った……
428名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 16:56:35 ID:WAcwPULU
>>426
>息がwwwww息がwwwwwwくるs

異音は発しているようだが、怪光線はどうだろう?
429名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 18:49:55 ID:O0SCYHkk
>>428


出てないみたいだな……怪光線
非常に残念だ
430名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 22:40:06 ID:g+mrKCfE
目からビーム出たらカッコ良いよな……
目からコミックビーム出たら怖いよな……
431名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 22:50:25 ID:9qGcd1yh
素直クールは常に好き好き光線を出しているわけだが
432名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 23:36:50 ID:WAcwPULU
バイザーかけて照射をコントロールするのだな。
433名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 23:49:46 ID:uePVpHLo
それなんてサイクロプス?w
434名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 01:26:32 ID:xrleFUfF
「キミはサイクロプスとギガンテスのどちらに惹かれるんだ?
何? 無論、私はサイクロプス派だ。
どちらも同じロンダルキアの雪原に現れる、単眼の青い巨人という共通点があるが、
前者は己の肉体のみで闘う屈強な戦士だ。実に素晴らしい。
能力的な強さという“現象”を求めて、安易に道具に頼るようになったギガンテスには哀れみさえ覚えるよ。
……別に全滅させられたからといって怒っているわけではない。
どんなに情けない……そう、キミのような皮余りのモノであろうが、私はそれが好きだ。
太くなくとも、持久力に難があろうとも、キミのその身体でぶつかってきて欲しい。
だから、その右手に隠し持っているプラスチック製の道具を置いてから私の布団に入るんだ。
……待て、捨てろとは言っていない。置けと言ったのだ。」
435名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 03:24:56 ID:WeMZqrpZ
>>434
テラハーゴンwww
436名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 04:31:19 ID:hjk80Grc
こんなん言われたら男のプライドズタズタwwww
てか女の方もやっぱ性病極細短小包茎早漏で全然気持ち良くしてくれない物は嫌な訳だなwwww
437名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 05:39:07 ID:iDqB9E30
極細短小包茎早漏と性病は明らかにカテゴリ違うだろw
438名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 10:42:34 ID:1P99776x
ギガスって単眼だったっけ?
439名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 10:46:00 ID:tnxSRx5T
DQU(その後もDQ含む)ではそのようなデザインになっていたな
440名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 11:53:21 ID:TzSpcGGY
>……待て、捨てろとは言っていない。置けと言ったのだ。

後で回収するつもりかwww
441434さんすんません:2007/09/16(日) 12:45:44 ID:EQzaljWC
ヴヴ……
……ンッ、フウッ
まず、君自身を感じたかったのだ
純粋にな
クッ
君が回復するまでの繋ぎとして、ンアッ!
つ、使えな……いことは、ハウッ、な、ない
ヒィッ……

私の恥態を求めるのであれば、どんな屈辱にも耐えるぞ
全裸でハーレムの裏通りでも歩くし、裸エプロン猫耳尻尾付きで秋葉原の歩行者天国だって歩いて見せる
君の隠した性癖だって、全て受け止めてみせるさ
何故かって
君の全てを知りたいから、私の全てを提供する
……いや、少し違うか
もはや私の物なんて、存在しない
とうに君のものだ

さあ、どう使う?
442名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 13:21:29 ID:0PDhRrv5
>>438
ttp://www.geocities.jp/ashground/giga.gif

身体が青くて素手なのがサイクロプス
棍棒持って緑がかったのがギガンテス
棍棒持ってオレンジ色なのがアトラス
もうちょっと凶悪な棍棒持って紫色なのが5のラマダ
443名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 13:57:52 ID:xrleFUfF
>>440

――ッぁあ! ハァ、ハァ……

ッ……どう、だ? キミの身体だけで私は……んんッ!
どうやら、キミも満足してくれたようだ、な……
私のなかで、脈動しているキミを感じる…

少し、目を閉じてくれ…いいから、さぁ……
もっと四肢の力を抜いて、そう…私に全てを預けるよう、に……

――っせいやぁ!!

こ、こら、暴れるな、狙いが定まらん!
なんのためにこのようにブッといバイブを持って来たんだ?
男にとってケツ穴というのは非常に重要な性感帯の一つであり、そこを責めてもらうためであろう!?
この期に及んで恥ずかしがるな。私がきちんとキミの欲求を処理してやるから。

――! ま、まて! 動くな、っ違う! 膣内でキミのが擦れて…!
落ち着くんだ。私はさっき絶頂したばかりで敏感にッ――!!!!
444名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 17:23:20 ID:Ov5gl6Ga
そろそろ雑談自重しろ
もしくは避難所でやれ
445名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 17:26:01 ID:3YFkfPB7
雑談自重という自治厨がでてくると荒れるという法則があってだな
446名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:42:55 ID:VATY24fe
雑談しちゃいけないとはどこにも書いてないんだけどな。
LLの記述を見れば萌え談義OKだし。職人さんが来るまでの暇潰しだよ。
だいたい、何日も「保守」しか書き込みの無いスレなんか淋しいじゃないか。
447 ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 22:57:56 ID:NcBShNXd
個人的には、雑談が主流となって職人が追い出されるとか、
一日に百も二百のレスがついて、よっぽど短期間に雑談だけでスレが流れるとかじゃなければいいと思うけどね。

まるで内容と関係ないってわけでもないし、スマイルスマイル。
448例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:00:54 ID:NcBShNXd
 瞼を開け最初に目に入ってきたのは、夜空に浮かぶ月だった。
 月。お月さま。満月。月という孤島の輝く星の海。
 満天の夜空。数多の星屑が闇を彩る宝石箱。
 何も頭が働かず、彼女はしばしこの状況に身を委ねる。
 眠りについた森の中。静寂極まりないその世界でも、耳を澄ませば生命の営みを感じることができた。
 水に沈んだ聴覚は、水音と心音を捉えて離さない。
 青々と茂る木々の間を吹き抜ける風が、湿った肌に心地よい。
 筋肉の緊張をほぐすように四肢を広げると、それに合わせて水音がした。身体が木の葉のようにたゆたう感覚を楽しむ。
 ゆらゆら……ゆらゆら……。
 静かだ。
 平和とはこんなことを言うのだろうかなどと、取り留めのないことを考える。ずっとこのままでいられたら、何と素晴らしいことだろう。
 こうやって泉の真ん中で横たわったままでいられたらどんなに……。
 ……待って。ようやく頭が覚醒してきた。
 夜空? 森? 泉? そもそも、此処は何処? 何がどうなっている? 何故こんな場所にいる?
 勢いよく上体を起こし、視線を彷徨わせ辺りを見回す。
 森。静かな森だ。背の高い生き生きとした木々が、泉を囲うようにそびえ立っている。それはいい。問題は、どこの森なのかということ。
 泉。きれいな泉だ。直径にして、人の背丈の約十倍の円形の水たまり。滾々と湧き出る清水が、腰のあたりまで浸している。立てば膝まで届かない程度の深さだ。それもいい。やはり問題は、何故こんな泉の真ん中で寝そべっていたのかということ。
 自問しているうちに、さらに少しずつ頭から霧が晴れてきた。差し当たりの問題は、このまま続ければ認めたくないことを認めざるを得ないことだろう。しかしながら、状況把握はまるでできていない。これを続けるくらいしかやることがないのも事実だった。
 少しだけ泣きたくなってくる。
 ……仕方がない。気を取り直して進めよう。
 彼女は視線を下に落とした。月明かりに照らされ、夜だというのに水面に映る顔がはっきりと見て取れた。
 年齢は十三〜四。やや丸みを帯びた頬、そしてやや尖ったあご。細い眉。目鼻立ちは整ったほうだろう。困惑気味の大きく深い蒼の瞳が印象に残る。
 水に濡れた長い茶色の髪は、無造作に後ろに流している。背中に張り付く感触が、くすぐったい。
 水鏡を見ながら彼女は思う。これは私だ。私の顔だ、と。
 では、「私」とは何だ?
 一つ溜め息をつく。
 彼女には、目を覚ます以前の記憶がなかった。

 
「……困ったな……」
 自分でも意外なほど冷静に、そう呟いていた。
 普通ならここで取り乱すものなのだろうが、彼女はそうならなかった。
 むしろ、身体は欲求に正直だ。こんな時でも、元気に腹の虫が鳴る。
 それほど図太い神経をしているのか。それとも、この程度では微動だにしないほど感情の起伏が乏しい人物だったのだろうか?
 ……いや、違う。そうじゃない。
 何故だか解らないが、そう確信していた。
 私は覚えていなくても、「私」という「存在」は覚えている。
 私がここにいる意味を、私は知っている。少なくとも、知っていたはずだ。
 それだけは、何故だか確信できた。
449例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:03:08 ID:NcBShNXd
 軽く風が吹き、濡れた肌に鳥肌が立った。自分でも細いと思う肩を抱く。
「う、寒っ……!」
 考えてみれば、なにも律儀に水に浸かったままでなくても良いだろう。
 いつまでも尻餅をついているわけにもいかず、彼女は立ち上がった。
 瞬間、
「おやおや、こんなところに……。さては天女様、ですか。ようやく見付けましたよ」
 その場に声が響いた。
 誰の姿も見えず、発せられた方向も掴めない。例えるならば、頭の中に響く声。まるで声だけの存在のように、耳だけがそれを知覚することが出来た。
「!? 誰……?」
「おや、お気に召さない? 女神様と呼んだ方がよろしいでしょうか?」
 何もなかったはずの場所に気配が生まれた。立木の陰から見知らぬ人影が現れる。
「折角ですから、ご一緒していただけると、ありがたいことなのですが、ね」

「……貴方、一体?」
「警戒なさるのも無理はありませんが、ご安心を。危害を加える気はありませぬよ。さ、此方へ……」
 そう言って、現れた男は泉の淵より手を伸ばした。
 風になびく外套のような襤褸と、それに備え付けられた頭巾を目深に被って顔を隠した、見るからに怪しい男だ。
 いや、それだけではない。言い知れぬ異様な感覚に、女は身を竦める。声だけは優しいが、気を許してはならない。
 一歩、後退りする。
「ふふふ……そう怯えなさるな」
 襤褸の男はそのまま続ける。
「尤も、自主的にご同伴していただけないならば、無理にでもお連れいたしますよ……。不本意なことではありますがね」
 不適に笑い、頭巾の奥の瞳が光った。
 そこにあるのは邪悪な意思。人の命に何の興味も無い、人外の精神。
 丁寧な物腰は、腰が低いのではない。見下した故の余裕。命に微塵の敬意もない、反吐が出るほど腐った性根。
「さあ……あまり手荒な真似はさせずに……」
 襤褸の男は一歩先、泉に片足を踏み入れる。
「…………」
 少女は一歩後、水を踏み締め同じだけ距離を保つ。
 さらに進めば、さらに後ろへ。襤褸の男が、泉の幅三分の一程進むまでそれは続いた。
 すると、
「まあ、こうなりますよね」
 予想通りの行動を楽しむかのように、襤褸の男はさらに腕を伸ばした。
「趣味ではありませんが、こんな趣向はいかがでしょう?」
「ッ!?」
 言葉を合図に、文字通り腕が、そして指が伸びた。
 腕は鞭か蛸の足のように。指は蔓か触手のように。しなり、絡みつき、少女の自由を奪う。
 もがけばもがくほど、逃がすまいと複雑に少女の肌を伝ってゆく。
「――ぁうっ!」
 触手は、少女をさらに締め上げた。手足を大きく開かせ、無防備な姿を晒させた。
 拘束しつつ高く空へ持ち上げ、屈辱を与えるため、舐め回すように凝視する。
「まったく、扇情的な光景ですね。感触も、なかなか素晴らしい」
 わざとらしく舌なめずり。
 指が変化した触手は少女の全身を這い、身体の線を強調させつつ柔肌に食い込む。
「この……痴れ者!」
「それは光栄の極み」
 慇懃無礼に、男は笑う。
「っく! ――ああっ!」
 少女は力任せに腕を振り上げるが、さらに強く締め上げられる結果を招いただけだった。
 その弾みで、服の中から首飾りが顔を出す。
 細い金色の鎖で繋がれた、血の様に真っ赤な宝石。見るモノの心を捉える紅玉は、月の光を反射して怪しく輝いている。
 襤褸の男が気付くと、宝石と合わせ、少女の価値を上方修正する。
「ほう、それは……。成る程、我が主がご所望されるわけですね」
「ゾッとしないわ。変態の親玉なんて」
「いけませんねぇ」
 触手の先が怪しく蠢く。袖を引き千切り、裾を縦に裂き、露出を増やす。
 わざとらしくゆっくりと這いずり、襟、裾、袖の口から中を探った。僅か一寸ばかりを潜り込ませ、素肌の上を直接滑らせ、先端でいやらしく突付く。
「これ以上が嫌ならば、大人しくなさってください」
450例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:03:53 ID:NcBShNXd
「うぅ……」
 抵抗する自由すら奪われ、少女の身体から力が抜ける。
「そうそう。素直に言うことを聞いてくだされば、何もしません。それでは、参りましょうか」
 男がそのまま少女を連れ去ろうとした時、一陣の風が吹いた。
 銀色の線が黒の背景を走り、強靭かつ柔らかく、斬り難いはずのそれを事も無げに切断した。
「きゃあ!」
 軟体の腕は本体より切り離され、そのまま霧散して消えた。体重を支えるものを失くした少女は、重力に従い泉へ落ちる。
「これは!? どなたですか、このような無粋な真似をするのは」
 斬撃の放たれた方向を、襤褸の男は睨む。
 其処には、長く伸びた黒髪を無造作に束ねた青年の姿があった。
 年の頃はおそらく二十二〜三。みすぼらしいほどの軽装をその身に纏い、右の手に抜き身で携えるは一振りの剣。
 服装に反し、その剣には一片のみすぼらしさも無い。
 細く、しかし力強く。滑らかな曲線を描く。豪奢な装飾は一切無く簡素な刃。質実剛健を極めた先に、芸術的な美しささえ得た剣。
 その輝きに、少女は我を忘れ魅了される。
 場の空気を支配した青年は、余裕を持っておどけてみせる。
「月に誘われ夜道を歩けば、はてさて其処にはいたいけな娘子を嬲る怪しげな男……。女に優しく、それが教えでな。手出し口出しは、道理ではないか?」
「なるほど、確かに。しかし残念ながら思い違いです。天女様を月夜の散歩へのお誘いなので、ね」
 負けじとおどける襤褸の男。その言に、青年は顎に手を当て頷いてみせる。
「ふむ、そういうものかの」
「ええ。ですから、これ以上の邪魔をせずにお引取り下さい。それでこの腕のことも、水に流して差し上げます」
「それは寛大なことじゃな」
 青年は、泉に踏み入る。
 そのまま進んで少女の前に立ち、襤褸の男と対峙した。
 眼前に立つ隻腕の男を、青年は評する。
「汝、鬼か。魑魅魍魎……妖怪変化の類じゃな」
「見ればお解かりでしょう。差し詰め、貴方はお山を守る天狗様といったあたりですか? 私を相手に、いかがなさるおつもりで?」
「知れたこと。討ち取るまでよ」
 青年の宣言に、襤褸の男は苦笑で答える。
 断ち斬られた腕を瞬時に再生し、腕組みしてみせる。
「勇気と無謀を履き違えた方は、何とも哀れなものですね。見逃すわけにはいかなくなりましたよ」
「そうかい。お喋りな奴よな」
「こう見えて慈悲深いのですよ。少しでも長く、この世に留まらせて差し上げようかと思いましてね」
 気取った態度に、青年は鼻で笑う。
「は。いらぬお節介か」
「そのようですね。それでは、そろそろお別れです」
451例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:04:35 ID:NcBShNXd

「汝が、この世とな」
「なに?」
「偉ぶるだけの下等な妖なぞ、真面目に相手するまでもないと言うておる」
 手にした剣の切っ先。見てみろとばかりに揺らしてみれば、小さな塊が蠢いている。
 拳大で気色の悪い肉塊だ。例えるなら、心臓のように脈動する黒い脳のような外見をしている。
 襤褸の男は、目を見開き驚愕する。
「あ? あぁ――そ、そんな……それは……?」
「つい今しがた、腕を再生させたあたりにの。気付かんかったか?」
 笑って、青年は刃より抜き取ったそれを握り潰す。残滓は霧散し、痕跡もなく風に消える。
「く――ッ、仕方ありませんね……」
 襤褸の男の目から光が消えた。
 力無く前のめりに倒れてきた身体に蹴りをいれ、背中から泉に沈める。
 激しく波を立て、やがてそれも治まり波紋となった頃、男の身体は衣服と共に溶けていく。
 静かな泉に墨汁を落としたような光景も、程なくして消えていき……。
 そこには、二人の人間だけが残った。
 妖を降し、青年は懸念を抱く。
「近頃、この手の輩が多い。厄介な事態にならねば良いが……」


 青年は剣を鞘に納め、少女へ向き直る。
 しゃがんで頭の位置を揃え、問いかける。
「やれ、娘。怪我は無いか?」
「一体、何がどうなって……」
「案ずるな。当面、身の危険は去った」
 安心させようと、青年は少女へ笑いかけた。
「わしは、この山に住む者。名は鋭介」
「エー……スケ?」
 鋭介と名乗った青年は、未だ尻餅をついたままの少女に手を差し出す。
「エースケ……エースケか……」
 呆然としていた少女は、伝えられた固有名詞を何度も反芻する。
 まるで心に刻まれたその名を確認するように。
 少女は鋭介の顔を見る。
 綺麗な顔だ。花や宝石ではなく、まるで彼が帯びる剣のような鋭い美しさ。優しさと生命力に溢れた瞳。
 少女は確信する。
 先程の男が危険だと直感したように、紛れも無く鋭介は味方であると。そして、もう一つ。
「私は……貴方に会うため此処に来たのかもしれない」
 笑顔を以って、少女は差し伸べられた手に、自らの手を重ね――、
「はは、むず痒いな。ところで、おぬしは?」
「私……私は……?」
 重ねようとして、止まる。
 忘れていたことを忘れていた。
 少女は自らの肩を抱き、小さく震え出した。
 そんな少女をどう思ったのか。
 空気を読んだのか、あるいは読まなかったのか。鋭介は率直過ぎる感想を述べてしまった。
「ふむ。天女か。言いえて妙じゃの」
「え?」
 少女は鋭介の視線を追う。
 青年が見ているのは、自分の姿。身に纏うのは、小袖よりもさらに薄い、
「……あ!」
 水に濡れた白装束一枚。

 誰も居ない山中に、乾いた音が響いた。
452例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:05:13 ID:NcBShNXd
「むぅ……。何も命の恩人の顔に、紅葉を貼り付けんでも良かろうに。色男が台無しじゃ」
「どうせなら、最後まで色男でいれば良いでしょう」
 それもそうかと、鋭介は豪快に笑い飛ばす。笑いながら、これ以上身体を冷やさないよう、少女に自分の上着をかけた。
「しかしなぁ。やはり痛いもんは痛いんでな。平手打ちは……」
 勢い余って唇を噛んだ。気になる部分を舌ですくうと、血の味がした。
「じゃあ、これでお相子ね」
 少女が鋭介の頬に手をかざすと、仄かに暖かい光が燈る。
 瞬く間に痛みは引き、口内の鉄の味も消えてゆく。
「これは……! そうか。天女、あるいは女神……成る程な」
「おしまい」
 終了の合図に、少女は鋭介の頬を軽く叩く。
 もうすっかり痛くないはずだ。その気になれば、もっと大きな怪我だって治せるのだから、これくらいは容易いことだった。
「ん?」
 神妙な顔をする鋭介に、少女は首を傾げた。
 普通のことを普通にやっただけなのに、何故そんな顔をしているのか理解に苦しむ。
「娘……おぬし、この類の能力、わし以外の人前で使ってはならんぞ」
「どうして?」
「…………。世間知らずじゃのう。どうやら、神というのは真らしいの」
 常識というものは、どう説明すれば良いものか。
 悩むが、どんな形であれ此処で納得しておいてもらったほうが、今後の彼女のためだろう。
 ともあれ、実際に説明しないことには始まらない。筋が通るように、言葉を尽く説得を開始する。
「人は往々にして、異物を排除したがるものでな。神通力か法力か……とにかく、おぬしのその能力は、然るべき場以外では異物に値する可能性が高い」
「異物? んー……」
 未だ実感しない少女に、今度は解りやすい例を挙げてみる。
「平たく言えばな、先程のあやつみたいのと同類に見做されるかもしれんと」
「むぅ……それは嫌だな。わかった。気をつける」
「よォし、良い子だ」
 と、鋭介は少女の髪をグシャグシャに撫でた。
 少女は不満気に頬を膨らませて抗議する。
「ちょ、子ども扱いしないで」
「はっはっは。スマンスマン」
 そして一言。
「ともあれ、気が解れたようじゃな」
 言って、少女の鼻を摘む。そして無邪気な笑顔を見せるのだ。
 馬鹿らしくなる。少女の顔も思わず綻んだ。
「もう、変な人。でも貴方みたいな人……好きですよ」
 かけてもらった服を、ぎゅっと握る。
 ボロボロで、そこかしこがほつれている。ザラザラして肌触りも悪い。しかし、暖かい。
 少女は、鋭介と視線を合わせた。
「もう一度、名前を」
「鋭介。受け継ぎし姓は瀬川。瀬川鋭介じゃ」
 鋭介の手は、再び少女の目の前へ。
「セガワエースケ……貴方なら、安心してこの身を預けられそう」
 今度こそ、少女は差し伸べられた手をしっかりと握り締めた。

 握り締めて、安心して……、

 その瞬間、少女の腹が鳴った。
「あ――えと……」
「ウチに来るか? 少しばかりなら、食い物くらいあるぞ」
 少女は赤い顔して頷いた後、笑う鋭介を何度も叩いた。

 それは、星の綺麗な夜のこと……。
453例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:05:47 ID:NcBShNXd


「腹が減っておるのじゃったな。大したものは無いが、遠慮せず食うと良い」
 剣を置き、鋭介は台所へ足を運ぶ。
 少女が通されたのは、山中を流れる川の程近くに、ぽつんと建つ一軒家。
 小さな掘っ建て小屋で、彼女の感覚からすれば、吹けば飛びそうと形容するに足るほど貧相なものだった。
 だが、中は意外としっかりしている。骨組みは確かだし、見た目に反して頑丈そうだ。
 玄関を抜け、少女が段差を上がろうとすると、鋭介に止められた。彼に借りてた履物を脱ぐ。それが慣習らしい。
 椅子など無いので、部屋の中央にある剥き出しの暖炉のようなものの前に直に座る。たくさんの灰で、四角く切り取られた穴の中は埋められていた。
 物珍しげに、少女は家の中を見回す。
 何をどう使えば良いのかは良く解らないが、生活用品らしきものが散見された。
 やがて鋭介が、小脇に布を抱えつつ、中身の入った鉄鍋を持ってきた。
 暖炉の上。天井から伸びた鉤に吊るし、鍋を焚き火にかける。
 暖めている間、鋭介から渡された布を広げる。するとそれは女物の服だった。鋭介は後ろを向く。
 だが上手くいかない。帯が留められず四苦八苦したので、仕上げは鋭介に手伝ってもらった。
 用が済めば、鋭介は鍋をかき回す。
 深い夜。静かな家の中。赤い光が二人を照らし、薪の弾ける音だけが響く。少し、煙が目に沁みた。
「あの……さっきのあれは……?」
 沈黙に耐え切れず、少女は訊ねる。
 人の姿をしていながら、明らかに人ではないモノ。
 そして、
「――――」
 充分な光源の無い中、陰に隠れた鋭介の表情を窺う。
 そして、それを容易く滅したこの男は何者なのか。
 一息置いて、鋭介は口を開く。
「所謂、悪鬼じゃ。放っておけば、人里に出て悪さをする。奴らを懲らしめるのが、まあ、わしの副業ということになるか」
「副業?」
「左様。陰(おに)の技を以ち、羅刹となりて悪鬼を討つ。生業と共に、押し付けられての」
 聞けば、異様な気配を感じた為、真夜中に起き出しあの場へ向かったと言う。
「必要があれば、おぬしのような者を保護するのも我らの役でな。まあ、要は人助けよ。あまり深く考えるな」
 だから、安心するといい。
 あえて飾らぬその一言が、彼の人柄を表す。
「さあ出来たぞ。口に合えば良いが。暖めただけの、余りものですまんな」
 木の器に盛り付けられた粥と汁。
 待望の暖かい食事。だが、食べられない。
 身体は食物の摂取を求めているというのに。
「ん、どうした?」
「――使えない」
 食器なのだろうか。二本の棒を出されても、どうして良いのか解らなかった。
454例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:06:39 ID:NcBShNXd


「そうか。記憶を失くしておるのか」
 食事を終えて事情を説明すれば、さらりと受け入れられた。
 それは大変じゃのう、などと年齢の割りに特徴的な年寄り臭い口調で、寂しそうに空になった鍋を弄りながら頷いている。
「あっさり信じるんですね」
「風貌といい仕種といい、何処か浮世離れしてる雰囲気があればな」
 それに、人を見る目はあるつもりだと鋭介は言った。
「焦らぬことじゃ。こんなボロ家で良ければ、好きに使うがよい」
 台所へ食器を片付けると、戻ってきた鋭介は、今度は部屋の中の小物を隅へ除けて隙間を作る。
 一見ではあるが、部屋の中がガランとした印象に変わった。
 尤も当然の話ながら、ちょっと脇に視線を移せばその限りではないのだが。
「どれ、今日はもう遅い。細かい説明は明日に回し、今夜はゆっくり休め」
 つまり、今作った空間で寝ろということ。存外大雑把な男だ。
「寝床を用意しよう。狭い所じゃが、我慢してくれ」
 これもまた、部屋の隅から畳まれていた布団を引っ張り出してくる。
 床に広げて枕も置く。実に簡単に準備は整った。
 だが、少女は不審に思う。
 布団は一つ。空けた床の広さも、人一人が睡眠をとる分には、かなり寝相が悪くても申し分ない。
 かといって、二人が寝るには少々狭い。そもそも、布団は一式しかない。
「エースケは?」
「わしは納屋で寝る」
「私は……近くでも構わないけど」
 むしろその方がいい。
 なのに、気持ちは鋭介に伝わらない。あろうことか、こんなことまで言い出す始末。
「好いてくれるのは嬉しいがな。おぬしのその感情は、錯覚にすぎんよ。不安より出た、一時的な依存じゃ」
「そうじゃなくて……」
 手で少女を遮り、鋭介は自分の理屈を展開する。
「時として感情に身を任せることも必要じゃが、それも贋物の感情では身を滅ぼすぞ」
「あのね……」
 まずはちゃんと人の話を……、
「そんな女に手出しは出来ぬ。落ち着いて、ゆっくり考えると良い」
 聞きもせず、外へ出て行ってしまった。
 心遣い痛み入る。
 気を使ってくれているのは解る。純粋な優しさからの言動なのも解る。
 だが、
「……自分勝手な人」
 何とも面倒で、不器用な生き物だ。

 彼も。そして自分も。
455例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:08:14 ID:NcBShNXd


 半刻後、耐え切れなくなった少女は、納屋へ侵入を開始した。
 相手は鋭介、加えて戸の立て付けなど良い筈が無い。当然、あっという間に気付かれた。
 壁に背を預ける鋭介は、呆れ顔で少女を見やる。
「おぬし、わしの言うことを聞いてなかったのか?」
「人を見る目は……あるつもり……」
 少女は近付くと、わざわざ持ってきた掛け布団ごと鋭介に覆い被さる。
 胸に飛び込む形で、女の匂いが鼻孔をくすぐる。
 鋭介も男だ。格好付けた手前、理性を崩壊させるつもりなど無いが、年頃の娘と密着するとなれば多少は動揺する。
 これ位なら構わぬかと、軽く少女を抱き締めれば、彼女の心情が伝わってきた。
 鼓動、息遣い、そして震え。全てがない交ぜになり、言葉にしなくとも鋭介の心を打つ。やましい気持ちは、消え失せた。
「――そうか。すまんな」
「信頼していい……よね?」
「安心しろ。これで中々、誠実さで通っていてな」
「貴方は、私を守ってくれる人?」
 上目遣いで訊いてくる少女を、鋭介は抱き締めた。
 何も縋れるものがない状況。それでも守ってくれる者がいる。頼れる人物がいる。
 その一点があれば、心を強く持つことができる。
 それは青年も身に染みて知る心理。
 だから、答える。
「女神の頼みとあらば」
「じゃあ……お願い……」
「心得た」
「うん……。物分りの良い……人……は――」
 緊張の糸が途切れたのか、会話も半ばに寝息を立てる。
 鋭介は、その小さな肩を離さないよう、もう一度強く抱いてやる。
 程なくして震えが治まったのを見届けると、真っ暗な天井を眺めて苦笑する。
「やれやれ、自惚れてたか。わしもまだまだ修行が足りん」
 ふと寝顔に目をやれば、少女は穏やかな顔をしながらも、水が一滴頬を伝っていた。
「取り敢えずは、名前を考えてやらんとな」
456例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:10:26 ID:NcBShNXd


 翌朝、鋭介は村を見下ろす高台で、少女に付近の地形を説明していた。
 まず前方遠くに見える川を指差す。
「見えるか? 向こうの川が、若干赤くなっておるじゃろう。この辺りは鉄が採れてな、あれはその証拠」
 次に指を動かして、説明の対象を変える。
「で、向かって右。南側へ流れていって、そこで村の西側を流れる川――わしらの後ろの方、家の近くの川になるな。それと、ずーっと下流の方で合流する」
 合流地点付近には、小さな建物が集中していた。
「村の主な集落はその辺りで、職人はそれぞれで離れて居を構えておる者が多い。わしもその一人でな。この西の山で、普段は鍛冶師をしておる」
 少女は目を見開く。
 在り得ないとは思うが、ひょっとすると……。
「まさか、その職人は全員――?」
「いや。副業を持つのは、おそらくわしだけかの」
 昨夜のような事が起こったならば、鋭介は個人で動く。
 何となく、少女は胸を撫で下ろした。
「ただ、それぞれ山向こうの情勢を伝え合ったり、場合によっては村から村へ援助を出したり出されたり……ま、どこも持ちつ持たれつ。その仲介になったりもするな」
 加えて、鋭介の依頼で情報収集をしてもらうこともあるらしい。
 その見返りとして、金物の修理や新調を格安で行うこともある。鋭介のような事情に関わらず、この周辺の地域は、ずっとそうやって生活してきた。
「じきに村のほうも案内しよう。皆、気の良い奴じゃ。楽しみにしておれ」
 振り返って、見える景色に目を輝かせる少女に微笑む。
「いずれ慣れた頃、おぬしがあちらに住まわせてもらえるよう尽力しよう。それまでは、悪いがウチで我慢せい」
 少女は興味津々の様子。
 鋭介は、今後の展望について訊いてみる。ものによっては、伝手に頼って便宜を図ることも可能かもしれない。
「気が早いかもしれんが、今後について、何か考えていることはあるか?」
「んー……さすがに、まだ特には」
 顔をしかめて、少女は述べる。
 そもそも昨夜から状況に振り回されっぱなしで、何かを考えられる材料は揃っていない。
 それでもあえて挙げるというならば……。
 ふと思いついたことを、鋭介に冗談めかして言ってみた。
「贋物を本物にするとかはどう? いっそ、エースケも協力してくれるとか」
「はっはっはっは。わしの女房にでもなるつもりか?」
 笑う鋭介を指差して、
「それ、貰った」
「――は?」
 その発想は無かったわとばかりに、目標を定めた。
「いいね。鋭介のお嫁さん」
 呆然として、鋭介は言葉を失った。
 自分と少女を交互に指差す。
 その発想こそ無かったわとばかりに苦笑した。
「一宿一飯の恩義で、押しかけ女房か?」
「命の恩人、でしょう? それに――」
 何も無いならば、既に在る何かを。
「ただの一宿一飯じゃないから」
「ただの一宿一飯じゃないのか」
「違うよ。今までの“私”の一生を世話してくれた恩義」
 見事なトンチに、鋭介は噴き出した。
「わははは! 一本取られたな。成る程、それならば仕方あるまい」
 呼吸困難になるほど笑ってから、目尻に溜まった涙を拭う。
 痙攣し、腹を押さえながら、少女の肩を叩く。
「わしも、おぬしのような面白い女は嫌いではないぞ」
 息を整え、少女の頭を撫でる。
「どれ。気が変わるか変わらぬか、見ものじゃな」
「変えるわ、本物に……きっとね」
「おう、やってみろ」
457例えばこんな昔話  ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:11:06 ID:NcBShNXd


 太陽も高く上った。そろそろ日常に帰る時間だ。
 踵を返し、家路へ。これからまた、新しい一日が始まる。
「では戻るぞ、煌星」
「きら……え、何?」
「おぬしの名じゃ。何時までも名無しでは不便じゃろうが」
 戸惑いがちに背中へ向けられた言葉に、鋭介は顔だけ向けて返す。
 昨夜少女を助けた時、降り注ぐかのように、空を埋め尽くしていたもの。それが、彼女の名前。
「気に入らぬか?」
「ううん。貴方のくれたものだから」
 名無しの少女――煌星は、青年の背中を追った。
 ただただ一途に――。
「ありがとう、エースケ」


 春夏秋冬、季節一巡り。四百回ほど遡った昔。
 この地で出会った、一組の男と女。
 やがて蒔かれた種は芽吹き、茎を伸ばし、花をつけて生命を育む。
 いずれ花は、新たな種が実らせる。
 ある種は風に乗って、山を、海を越えてゆく。
 ある種は地に根付き、小さくも確かな花園を作り出す。

 全ては、ここから――。
458 ◆uW6wAi1FeE :2007/09/16(日) 23:13:30 ID:NcBShNXd

タイトルは仮題。
神社に伝わる物語。その第一章ということで。

真偽の程は、どうなんでしょう。
459名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 23:36:27 ID:0PDhRrv5
>>458
「鬼が来たりて」思い出しながら読みました。
GJ!
460名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 23:49:11 ID:lFuDmzrU
>>458
GJ
瀬川って「あの」瀬川君ですかw
461名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 23:55:09 ID:itiy/tGN
瀬川ときくと、、、いや、なんでもない
GJ
462名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 00:20:59 ID:eqLmKzXG
なんというご先祖様
GJ
463名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 00:36:02 ID:l+Mh+sjR
このスレも終わりだな
雑談という名の馴れ合いが酷いし
チャット感覚で書き込んでる奴多すぎ
464名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 00:43:21 ID:XZV1gw75
4のゾロ目の誰かさんと同一人物っぽいな。
SS投下直後にスレが終わりだとか何とか書いてるヤツにこのスレの行く末を憂う資格はないと思うよ。
465名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 01:06:59 ID:kpUuvuMC
>>1
466名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 02:02:02 ID:/wb4oTZ0
>>463
お前別のスレでも同じ事いってんだろ
荒らし乙
467名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 03:32:10 ID:4Zyv4Nqt
涼しくなったらシンとミサキが来てくれるかと思ってたのですが、
ご先祖様ですか GJ!

綺麗な音楽に聴き惚れる、なんて表現がありますけど、
素敵な文章を読んだときにはどういえば良いのでしょうね。読み惚れる?
そんな日本語あるのかどうかわかりませんが、
少女が覚醒するシーンの美しさにベタ惚れです。

お話的にはここで終わりで後は読者の想像にお任せってのもありかもですが、
続きをお待ちしてもいいでしょうか。てか、待ってますよー。
468名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 03:49:59 ID:sITnOMCC
年下素直クールは、軽ツンデレとの差が……
469名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 18:49:44 ID:BLX8zUUN
道路一本挟んでお向かいだけど、学区が違うので小中と学校が違う幼馴染
っていうシチュを考えてみたが内容が思いつかん。
だれか、オラに文才を分けてくれ!
470名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 19:13:17 ID:7UepoV9U
>>469

土日ごとに一緒にお出かけ、一週間に一度しかあえないから
すれ違ったり誤解したり、でも素直だから基本ラブラブ。
でもお互いの学校のクラスメイトがモーションかけてきて……。

みたいな感じでいいんじゃないか?
471名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 20:14:09 ID:7f8VCDsq
男は創立記念日でお休み

男「……お前、学校はどうした?」
女「有給休暇だ」
男「ねーよ……」
女「さぁ、きっと今日はネズミーランドもすいている。行くぞ」

これが素直クールなのかどうかは知らない。
472名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 20:59:21 ID:pQYQ1qAB
でもさ、実際んとこそのシチュは難しいよね
小中ならともかく、それ以上となると同じとこ受験しろってなるし
もっと言えば、越境自体は中学くらいでもわりと簡単にできる

……どっちか片方、試験落ちたことにするか?
473名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 12:25:31 ID:/if4CHhp
年の差三歳にすればところてん方式で違う学校になるから簡単なんだがな
あくまでも同い年じゃないとダメなのかな?
474名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 13:11:23 ID:cb7UmDY7
それだと学区が違うからって条件が消えるようなもんだしね
「学区が違う幼馴染」じゃなくて、単なる「年上(下)の幼馴染」
475名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 14:47:58 ID:zZFtjWvf
男は公立、女は小中一貫の私立でいいんじゃない?
476名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 16:02:38 ID:YOg0UNS+
それは両方私立でも成り立つね。
片方を女子(男子)校にすると、こっそりと会いに行って大騒ぎになるとかのシチュが思い浮かぶが。
477475:2007/09/18(火) 16:57:27 ID:zZFtjWvf
>>476
男の家はごくごく一般的な家庭なので市立等の公立、
女の家は金持ちでも違和感ないので私立、というイメージw

ところで小中学校に男子校や女子校ってあるの?
478名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 16:58:33 ID:JWVxXnz8
中学はそりゃあるだろ
479名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 18:00:56 ID:YiKblarI
>>477
私立なら別学の小中学校も少なくないよ。
ついでに言えば、宮城二女高が中高一貫の公立高校になんて話が進んでるらしい。
もっとも、共学化するらしいがね。
480名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 21:12:06 ID:kXblDNtf
>>472
同じところを受験したはいいが、男がスライドして学科が違っている+校舎が違うとか。
481名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 18:38:36 ID:M+14FhJ5
初めてながら、一つプロローグ的なものを書いてみたんですが、投下してもよろしいでしょうか?
482名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 18:40:07 ID:E/2meBXP
さあ、早く投下するんだ。
技量について不安なら、書けば書くほど腕は上がるものだから書きまくれば問題ないさ。
483名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 18:40:52 ID:1yJgj+0y
書いても書いても投下する勇気がない場合はどうしたらいいでしょう
484名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 18:54:02 ID:gPcATOkf
>>483
酒は人に勇気を与える
485名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 18:55:20 ID:qo/pdUKH
自サイトでも作ってみたら?
486名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 19:06:39 ID:M+14FhJ5
「失礼します」
俺は、昼飯を食ってる最中に、突然指導室に呼び出された。
まあ呼び出された理由は、だいたい見当が付いてるが。
「おお、よく来たな京太郎(きょうたろう)来ないかと思ったぞ」
机と椅子が行儀よく並ぶ指導室の椅子には、俺の予想とは違い生活指導の教員では無く担任の進藤悠輔(しんどうゆうすけ)が座っていた。
「何だお前か、いきなり呼び出しといて何の用だ?」
「そんなこといって、どうせ要件は分かってんだろ」
「昨日のことなら、もう教員全員には朝全て説明したはずだぞ、忘れたのか?」
タメ口で話しているが問題は無い、俺と進藤は、現在は親友のような関係になる、面倒な事になりそうだから学校には内緒だが。
「そのことなんだが京太郎」
「早く言え、昼飯まだ全部食ってなくて腹減ってるんだ」
「お前、清宮怜子(きよみやれいこ)と付き合ってんのか?」
「は?」
この男、まさか…
「そんなことで俺を呼んだのか?わざわざ放送使って」
「別にいいじゃん」
普通に答えやがった。
「帰る」
「待て待て!、これは大事なことなんだよ!」
「たかが女と付き合ってることのどこが大事だ!帰る!」
「おい、たかがって何だぁ!それは彼女いない暦27年の俺への嫌味か!」
「彼女が欲しいならまずパソコンからギャルゲー等を消すことから始めろ!」
「俺の命を消せって言うのか!」
「なら一生独身で生きろ!」
この男は、普段はギャルゲー、エロゲーと、いわゆる萌えのあるものならば何でもやるいわゆるオタクだ。
しかもそれを隠そうとしないために女子からは、少し白い目で見てる奴もいる、まぁ男子には一部師匠と仰ぐ奴もいるようだが。
そういう奴は、何を考えてるんだか…とりあえず不毛な口論が続いたので、話を戻す。
487名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 19:11:20 ID:M+14FhJ5
「ゼェゼェ、で、何が大事なことなんだよ」
「あぁそうだそうだ、お前の噂が広がってるぞ」
「噂?どうせくだらない事だろう、一体どんな噂だ?」
「お前と清宮が付き合ってるって言う噂だよ」
「………何?」
「昨日お前と清宮が一緒にいたって言ってただろ、それを学校の誰かが聞いて広めたらしくてな、俺もさっき権藤先生から聞いたばっかなんだ」
馬鹿な!俺はいままで女子は愚か男子ともほとんど話をしなかったいうのに、何故付き合ってるという噂が立つ、しかも、あの清宮怜子と。
確かに、朝早く昨日の説明のために職員室で会ったが、それでそんな噂がたつはずが無い。
この学校で清宮怜子といえば、知らない人間はいないといってもいいだろう。
父親が大会社の社長で、成績は常にトップ3に入り、女子でありながら元空手部副部長で部員や後輩の人望も厚い。
さらに、男女の人気も高く、1、2年と連続して生徒会役員にもなったことがあるという絵に描いたような完璧人間だ。
「あれは、あの後一緒にいたって言う意味だ、ずっと一緒にいたわけじゃない」
「じゃあ、一緒にいたってところだけ聞いちまったんだろ、運が悪かったな、同情するよ京太郎」
この男、同情のかけらも見えない、それどころか楽しそうだ。
「それ以前に京太郎、お前周りの視線に気が付かなかったのかよ?」
「いや、廊下を歩いてる時とかに視線は感じていたが、別にたいしたこと無いと思ってな。」
「周りに無関心過ぎるからそうなんだよ、少しはクラスの奴らからも友達を作れよ」
「そんなものは必要ない」
「友達ってのはいいもんだぞ、俺も友達のつもりだだけど同年代の友達だとまた違うだろ?」
「気持ち悪いことを言うな、それに同じ年の奴らなどやかましいだけだ」
「…そうか、まあお前のことだからあんま干渉はしないけどよ…」
人に自分のことを深く知られるのは嫌いだ(進藤は例外)。
友達ができれば、俺のことを深く知る可能性もある、知られるとロクなことが無かった。
まあ俺が、単純に周りの奴らに興味が無いのもあるがな。
「そんなことより、どうすればいいんだ」
「ま、噂が消えるのを待つしかないな、人の噂も何とやらだ」
「冗談じゃないぞ!」
本当に冗談じゃない、普通の噂ならともかく、清宮怜子関係の噂はすぐには消えそうに無い。
ほっておけば学校の奴ら全員が知るだろう、清宮怜子という女はそれだけの有名人だ。
それにこのまま噂が続けば、俺のことを深く探ろうとする奴も出てくるだろう。
そんなことになる前に何とかしなければ。
「噂の発信元心当たり無いのか?」
「俺もさっき権藤先生から聞いたばかりだと言ったろうが」
「知らないということか」
「そういうことだ、残念だったなぁ」
やはり楽しそうだ。
「使えないな、教師のくせに」
「おい、教師のくせにって何だ、教師にもなぁ色々つらいことがあるんだぞ」
何かつらいことでもあったのか、俺の言葉に過剰反応する進藤を無視して、席を立つ。
「とりあえず話はそれだけだな、今度こそ帰るぞ」
「おい!俺の話を聞け!」
後ろで何か言ってるが、無視して指導室を後にする。
488名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 19:13:48 ID:M+14FhJ5
さてどうしたものか…。
何とか誤解を解いて、これ以上噂が広がるのは止めなくては。
あの後教室に帰っる道中けっこうな視線を感じた。
今までは気にならなかった視線が急に気になってくる。
早く何とかしないと面倒な事になってしまう。
この状況を打開するためにどうすればいい?
考えてみるが思い浮かばない。
「おい、水乃!水乃京太郎(みずのきょうたろう)!!」
英語の権藤明徳(ごんどうあきのり)が俺を呼んでる。
そういえば5限の英語の授業中だったな。
「何ですか?」
「問の13、お前が訳してみろ」
権藤の授業は、正直分かりにくい事で有名だ。
それに、訳せないことも無いが、今は考える時間が惜しい。
「分からないです」
「おいおい、こんな問題も分からないのか、じゃあいいよ」
微妙に人を小馬鹿にした声だ、どうでもいいが少しむかつく。
そうすると、周りから微妙にヒソヒソ声が聞こえる。
断片的にしか聞こえないが、どうやら清宮という言葉が出ているところを聞くと、噂は俺のクラスにまで広がってるようだ。
まさかこれほど速く広まるとは、昼食と昼休みで急激に広がったか。
こうなると、今更どう取り繕っても無駄だな。
まったく、どうしたものか。
そう考えていると、また話し声が聞こえた。
「なあ、水乃が清宮先輩と付き合ってるのってガセじゃね?」
「うんそうだよねぇ、あの清宮先輩があんなのと付き合ってるなんて信じらんない」
そう思うなら、ガセだと広めてくれ、たのむから。
ん…ガセ?
そうだ、ガセだ!
何でこんなことを思い浮かばなかったんだ俺は。
考えてみれば清宮は人気のある完璧人間、俺は、はたから見れば人気の無い目立たない普通の人間。
そんな二人が付き合ってるという噂が立って、二人の接点がほぼ無いならば、まずガセと考えるのが自然だろう。
まったく、深く考えすぎてしまった。
一応確認のため、こっそりと他の奴の話を聞いてみるか。
そう思ったところで、チャイムが鳴る。
489名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 19:16:46 ID:M+14FhJ5

6時間目の授業も終わり、後はHRで終了だ。
この時俺は、安心しきっていた。
6時間目が終わった時、他クラスの女子が話してるのを、聞き耳を立ててみたんだが。
「ねえ、清宮先輩と水乃君が付き合ってるのって嘘じゃないの?」
「そうだよねぇ、さっき清宮先輩のお友達の人にも聞いたんだけど、その噂はガセだって先輩言ってたらしいよ」
「考えてみれば、ありえないよね、あの二人ほとんど接点ないし」
この話を聞く限りでは、かなりの生徒がガセだと思っているようだ。
というか、本人が否定してるじゃないか、まったく、俺は今回は焦りすぎたな。
この分なら噂も休日明けには消えるな、ガセだと分かれば、消えるのも速いだろうし。
「よーし、号令係」
「起立、令」
進藤の声で、号令係が号令して、適当に挨拶してHRが終わった。
さて、何か面倒事が起きる前に帰るか。
そう思い、教室を出ようと廊下に体を向けた。
体を向けた方に、清宮怜子が立っていた。
「なっ…」
思わず声が出る。
何故ここにいる、彼女達3年の教室は3階のはず、ここは4階だ。
「失礼する」
清宮が教室に入ってきた、そして俺の姿を確認すると、まっすぐにこっちに向かってくる。
教室にいる奴らが騒いでいるが、彼女は気にしていないようだ。
何だ、一体何の用だ?
俺は驚きつつもこの教室に来た理由を考える。
彼女も噂を聞いて、相談しにきたのか。
いやありえない。
それなら彼女がガセだといえば、済む話だ、実際さっきガセだといっている。
ならば、何故?
そう考えてるうちに彼女が俺の前に来る。
「水乃君」
「清宮先輩、何か俺に用ですか?」
出来るだけ動揺を隠しながら話す。
「水乃君、私は…」
「あぁ、変な噂のことなら大丈夫ですよ、先輩がガセだとみんなに言えば終わる話です」
「違う!」
いきなり大声を出され少し驚いた、何故か知らないが彼女は、少し焦ってるようにも見えた。
周りの奴らは、いつもと違う憧れの先輩の様子に戸惑っているようだ。
「どうしたんだ?清宮先輩がなんか変だぞ」
「あんな先輩始めてみるわ、まさかあの噂は本当だったの?」
「水乃の奴先輩に何をしたんだ?まさか、何か弱みを握ってるとか」
周りの奴らが好き勝手な事を言っている、はっきり聞こえるほどのデカイ声だったが、清宮には聞こえてないようだった。
「よし、言うぞ、…水乃君聞いてくれ」
「は…はい?」
「君が好きだ」
「……へ?」
聞き間違いだな、そうに違いない。
そんな俺の願望は、一瞬にして彼女の叫びにかき消された。
「君が好きだ!付き合ってくれ!!」
その叫び声ともいえる告白は、廊下一帯にまで響き渡っていた。
490名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 19:19:16 ID:M+14FhJ5
以上です、自分で見ても少し痛い文章ですが、お目汚しにならなければ幸いです。
続きは、そのうち書くかもしれません。
見ていただいた方々には、感謝です、ありがとうございます。
491M+14FhJ5:2007/09/19(水) 19:21:11 ID:M+14FhJ5
修正が一つ、あります
あの後教室に帰っる道中けっこうな視線を感じた
ではなく
あの後教室に帰る道中けっこうな視線を感じた
でした、申し訳ありません。
492名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 19:23:21 ID:MAwNXpJj
リアルタイムで見れたし

とってもGJ
と言っておこうか

493名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 19:24:24 ID:E/2meBXP
うん、このまま濡れ場があればこの板にもふさわしい内容だ。GJ。
494名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 20:37:04 ID:/GnnU1Ms
うん、初めてでこれだけ書けるなら上出来ですよ。
アドバイス的なものしてみれば、ちょい説明口調が気になるかな。
思考や言動が最適化されすぎて、淡々としているように感じられるので。
人間は結構アナログだから、もう少し行動や思考にノイズがあったほうがいいな、と。
あと、直接心情を書くよりは、行動で表現した方がいろいろ伝えられるものがあると思いますな。
495名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 22:46:20 ID:cG/T7L1V
君が書きたかったのは、プロローグじゃなくて内容だろうさ
素直にぶつかろうよ

直球で感想返します
496名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 03:09:54 ID:0zhzTCBT
>>490
一刻も早く続きを書くんだ
なぜなら俺は全裸で正座して続きを待ってるんだからな!!!
497M+14FhJ5:2007/09/20(木) 16:53:11 ID:0KWwR7OE
さまざまな感想ありがとうございます
続きは、いつかまた。
498すなおく一る×おとこくん:2007/09/20(木) 20:09:45 ID:d+cEdgZc
>>475のシチュに萌えて振ってきた電波に従い無心でキーボートを叩いた
素直クールと言うよりは幼なじみ萌えな気もするが、微エロで






「せんぱーい、彼女さん待ってますよー」
「彼女じゃねーっての!」
「ハイハイ、主将は道場の鍵閉めなきゃいけねーんだから、お前らとっとと帰る。訓が帰らないと、一流ちゃんずっと待たなきゃいけないだろ」
部員全員帰宅したのを確認して俺は鍵を閉めた。夏が終わって、主将を引き継いで一ヵ月も経ち、
俺の覚束ない主将姿も親友の助けもあり、それなりにみれるようになってきたんじゃないかと、
胴着を背負いながら自画自賛してみたり。とうの親友は気をきかせたつもりなのか先に帰っていた。
「それじゃ、いこうか?」
校門の前で待っていたいちるが俺の横に並んで歩く。
「う〜眠い……」
俺といちるはこれから塾だ。部活後の塾ほど疲れるものはない
と、いちるはカバンの中からクッキーを取り出す。いちるの手作りだ。蜂蜜入りでコレがまた疲れた体に効く。
「餌付け、餌付け」
「わんわん」
俺はだらしなく体を弛緩させながら、いちるのクッキーをねだった。
砂奥一流(スナオク イチル)と俺、乙古訓(オトコ クン)は幼なじみだ。
といっても俺は公立の平凡な中学、いちるは私立の一貫校。
俺たちの住んでいたところはこの市じゃ旧武家屋敷だった場所で、そんな場所は、
江戸時代から続く地元の名家名士の家か、公務員の宿舎が並んでいるのが相場である。
いちるの家は前者で俺の家は後者だ。昔はそんなこと知らないで遊んでいたけど
いい加減十も幾つになったらそれぞれの場所で人の輪をつくるもんだと思う。
俺は小五の時はじめた柔道が面白かったし、年頃のテレもあって男友達とつるむようになってた。
それでなくても小学校の頃から制服だったいちるは外で遊ぶときは、
土まみれになってしまうから、一人で俺たちを見ていたんだ。それが俺は嫌だった。
なんかいちるが除け者みたいで。いちるの名誉の為に言うと、いちるは決して運動音痴じゃなない。
むしろ、現在バドミントン部でレギュラーとってるぐらいには動ける。
「あのさー……いや、なんでもない」
“別に俺を待たなくてもいいんだぞ”と言いかけて口をつぐむ。
いちるが俺を待っているのは今にはじまったことじゃない。
中学に入ってからずっとだ。普通の公立中学の校門にエリートさんの学校の制服を着た女の子がいれば嫌でも目立つ。
その上、嘘というか、噂も続けば真実となるのか、今じゃ周りはいちるのことを俺の彼女だと思ってる。
いちるはひいき目に見なくても美人だと思う。セミロングに切り揃えられた黒髪は艶やかで、肌は雪のように白い。
少し色素が薄いのか、瞳は琥珀色で、書いたように細く真直ぐな眉がともすればやや幼く見える顔立ちを引き締めている。
昔いちるの家で日本人形を見たとき、いちるみたいにキレイ……と俺は彼女の前で言ったらしい。
俺は覚えてないがいちるがことあるごとにからかうのでそうなんだろう。
まぁとにかくいちるは美人なんだ。最近じゃ身体つきもグンと女らしくなって……ゴホゴホ
ま、俺にとっていちるは幼なじみだったんだけど、そんな俺でもいちるに女を感じてる。
いちるの部活の試合を見にいったときも、ポニーテールに縛った髪から見えるうなじにドキドキしてしまった。
そんな訳で俺は周りからいちるの彼氏だと思われるのは悪い気分じゃないんだ。
でも俺なんかが彼氏だと思われてるいちるになんか申し訳ないっていうか……釣り合わないよなぁ
ひょっとしていちるは向こうの学校でうまくいってないのかな?と思ったりもしたが
件の部活の様子をみるととてもそうには見えなかった。むしろいちるはみんなの中心人物だったぐらいだ。
「何?ハッキリしないなぁ?」
「あ、いや……」
言い淀む俺にいちるは聞き返す。いちるに真っ直ぐ見つめられると、俺はどうにも嘘がつけなくなる。
「俺を待ってると大変だろ?」
「別に。だって通り道じゃない」
「そりゃ、塾との間に学校はあるけどさ……」
いちるの学校から俺の学校を経由して塾にいくと、丁度“く”の字に迂回する形になる。間にあるけど遠回りには違いない。
「それじゃあホラ、女の子の一人歩きは危険だってコトにしよう。訓ちゃんが一緒なら私を守ってくれるからね」
「ああ、それは守るさ」
「うれしいね」
いちるが俺の顔を覗き込んで笑う。
499すなおく一る×おとこくん:2007/09/20(木) 20:12:04 ID:d+cEdgZc
ついこの間まで同じくらいだった身長は、今では20pも違う。
いちるが無邪気に繋いでくる手も、俺の硬い手と違って柔らかい。
「なあ……いちる……」
「何?」
俺はいちるの目を見ないようにしながら、「手を繋ぐのは辞めないか」と言おうとして
「寒く…なってきたな、最近」
「ん…」
暖かいいちるの手を俺は強く握っていた。結局俺は、この関係を手放すのが惜しいと思ってるみたいだ。
「鍛え方が足りないな」
「そう?訓ちゃんは寒がりだったんだから、昔に比べれば凄い進歩だと思うな」
「昔の方が良かったよ」
「変なの」
そう言ったいちるが、手だけでなく腕まで繋いで身体を寄せてくる。
「いちる!?」
「くっつけば暖かいかなと」
ふわりといちるの髪の匂いが花をくすぐった。
「い、いい!もう寒くないから!!」
「今度は私が寒いんだ」
嘘だ……!メチャクチャ暖かいじゃないか!あと、すっごく……柔らかい。
「いちる〜〜〜!!」
「そんな顔しなくたっていいじゃない。傷つくよ、私魅力無い?」
あるから困るんだろ!と言えたらどんなに楽なコトか。
それに今はまだウチの中学の学区内。俺みたいに部活帰りの生徒や、ファーストフード店でダベってた生徒が
何人か俺達を目撃していた。これでまた、俺といちるが恋人同士っていう噂が加速していくコトは間違いない。
「俺達、ただの幼なじみだろ」
「それが?」
聞き返してきたいちるの目がなんだか冷たい。が、負けるな俺!
「幼なじみはこんなことしないの!」
「それを証明するものは?」
…………はい?
「統計学的に幼なじみがするべき行動を示してくれるなら、訓ちゃんの言うことにも従うけどね。
 訓ちゃんのいう「こんなことしない」は、訓ちゃんの主観であって、客観性を欠くんじゃないかと思うんだ。
 尤も、私も訓ちゃん以外の幼なじみを知らないし、幼なじみの統計も知らないから、私のしてることが
 必ずしも幼なじみとして正しい行動とは証明できないけど、それは訓ちゃんも一緒ってコトでしょ?」
うぅ……いちるが何を言ってるか分からない、分かりたくない。
そうなんだ、俺はいちると喧嘩して一度だって勝ったコトが無い。常に言い負かされてきた。
いちるは頭がいい。学校の成績はもちろんのコト、頭の回転自体が早いのだ。なので弁論じゃ勝つことは出来ない。
かといって、(例え幼少の頃であっても)女の子を殴るのは絶対に出来ない。
そして俺は悟ったのだ。こうなったときの対処方を……!!
「ア〜ア〜(∩゚д゚) 聞こえない聞こえない」
「あーまたぁ……」
聞こえない、聞こえない、ア〜ア〜
「ちょっとぉ……」
聞こえない、聞こえない、ア〜ア〜
「もう……」
聞こえない、聞こえない、ア〜ア〜
「…………大好きだよ、訓ちゃん」
聞こえない、聞こえない、ア〜ア〜
「わかった、わかった、離れるから」
聞こえない、聞こえない、ア〜ア……っと、ようやく離れてくれたか。
「まったく、子供みたいだね」
「いちるの口がいけないんだ」
「じゃあ黙らせればいいのに」
小首を傾げるいちるは笑っている。
「無理無理、言葉じゃいちるに勝てやしない」
「じゃあ……無理矢理黙らせるとかは?」
物騒なコトをどこか楽しそうにいちるは言い出す。
「あのなぁ、いちるを守る俺がいちるを傷つけてどうするんだよ」
「はぁ〜…」
な、なんで溜息をつくんだよ……
500すなおく一る×おとこくん:2007/09/20(木) 20:14:17 ID:d+cEdgZc
「手じゃなくて、別の場所で黙らせるんだよ」
「は?なんだそれ」
「教えない。宿題ね。いつか分かったら実践してみること」
いちるとはずっと一緒だったから、いちるの考えてるコトは大抵分かるつもりなんだけど
最近はそうでもないというか、時々いちるの考えが読めない。
いや、なんでいちるがずっと俺を待っているのかも読めてないから、時々ってレベルじゃないのかも知れない。
でも、いちるは俺のコト分かっているのかとも思う。お互い、少しずつ知らないことや分からないことが増えていく。
そんなもんだろうと、納得してる自分が居て、でもいちるが遠いところにいったような気分になるのが辛い自分も居る。
「訓ちゃん」
「なんだ?」
「ちょっと時間不味いかも。早足ね」
いちるが腕時計を見る。ちなみにその腕時計、俺の小遣い三ヶ月分。
去年のいちるの誕生日に買わされたものだった。俺はあの時、“ねだる”って“ゆする”と同じ漢字を書くんだと知った。
抵抗したさ、俺だって抵抗したんだ。しかし幼なじみのいちるは俺の恥ずかしい過去も満遍なく知ってるからな……シクシク


塾は学力ごとにクラスに別れている。俺といちるは同じクラスだ。このクラスにはやっぱりいちると同じ学校のヤツが多い。
それで心なしか、男子からの視線がキツく、女子からの視線は値踏みをしてるかのようだ。
それだけでもいちるの学校での彼女の人気がわかると言うモノ。そしてやっぱり彼氏と勘違いされているんだろうなぁ……
席は自由なので、遅れてきた俺達は後ろの席に座る。ウチの学校の連中だったら前の席が空いているんだろうが
流石にこのクラスは前の席から埋まっていく。教室に時計は無いが為に、隣に座っているいちるの腕時計を覗くと丁度五分前。
「ギリギリだったな」
鞄から筆記用具とノートを出しながら、そんなコトを埒もないコトを言うがいちるに反応は無い。
「いちる?」
「え?……ぁ、そうだね」
「いちる?変だぞ」
いちるは歯切れの良い女だ。言い淀んだりすることは珍しいし、話を聞いてない時は聞いてなかったと言う性格だ。
「人を邪険にしたり、変って言ったり、今日の訓ちゃんは意地悪だなぁ。ホラ、先生来たよ」
「…………」
それからの教室は静かなもので、講師の講釈と生徒の応答とノートに走るシャーペンの音しか聞こえない。
複雑に交差された図形の特定の角を求めるので俺の頭は精一杯で、その間だけはいちるのコトを忘れていた。
塾は60分×3コマで、終わる頃には十一時をまわる。1コマめの数学の授業と違い、2コマ目の英語に俺は集中できなかった。
「…はぁ…はぁ…」
妙に隣のいちるの息が耳に残る。というか、色っぽい……じゃなくて、普通の呼吸とは違う。
よく見ると汗をかいているみたいで、夏服が透けてブラジャーが……じゃなくて、教室はエアコンが効いていて暑いということはない。
「いちる、お前さ……」
2コマ目の後の休み時間、俺はいちるに確認する。
「何…?」
「具合、悪いだろ」
「………」
いちるの沈黙を俺は肯定とみなした。いちるは基本的には素直なんだが、俺の前では無理をするコトが多い。
それを以前指摘すると、「見栄だね」といちるは答えた。今更俺の前で見栄なんてはる必要ないだろうと言い返したが
いちるは「訓ちゃんの前だからでしょ」と当たり前であるかのように答えた。意味が分からない。
「兎に角、おばさんに連絡して向かえに来て貰おう」
「……母さんと父さんは今日は旅行にいってる」
「参ったなぁ……家の親父も今日は飲み会だっていうし」
「大丈夫、別に具合悪くないとか、そういうコトは無いから」
いちるが言い返した時、丁度3コマ目のチャイムが鳴った。
「次の理科、後半は小テストでしょ。点数悪いとクラス変わるよ?」
「理科苦手なの、いちるの方だろ」
もしかして、だから平気なフリをしてるのか?
「いちる、お前さ…」
「平気だからさ」
無理してるいちるに、流石の俺もイラっと来た。いちるの髪を掻き揚げて耳朶を摘む。
「何するの!?」
「耳朶って、身体で一番冷たい部分なんだ」
「だから何よぉ…」
いちるは多分、次に俺が言うことを理解して尚、駄々をこねてると俺は思った。
「熱いんだけど」
「……温度計でも当てて見なきゃ分からないでしょ」
501すなおく一る×おとこくん:2007/09/20(木) 20:15:40 ID:d+cEdgZc
「子供の屁理屈」
「子供だもんね」
何で熱あるのに、コイツはこんなに頭が回るんだ。
「おい、おまえら〜いちゃつくのは授業終わってからにしろ〜」
中年の科目に似合わず体格の良い理科講師が、俺達に向かって注意をする。
教室中の視線が集まっていた。
恥ずかしいが、これ幸いといちるが具合が悪いコトを伝えて家に帰そうと、俺は口を開いた所で足を思いっ切り蹴られた。
「〜〜〜ッ!!」
柔道の試合でもこんなに痛かったコトはない。犯人を見ると、「イッタラコロス」と目が雄弁に語っていた。
(いちる!)
いちるはキングコングで俺は手の中の美女というぐらいの力関係を強制するいちるのオーラ
しかし、当のいちるの身体のコトだ、俺も引けない。
ノートに文字を走らせると、いちるに俺の意思を伝える。
(黙って帰れ。もし大変な病気だったらどうするんだ)
(多分、風邪だから大丈夫。今朝も少し咳と熱があったから薬飲んできたし)
(薬飲んでも具合悪いなら悪化してるじゃないか!)
(あと一時間ぐらい平気)
(別にいいだろ、理科ぐらい。俺もついて行くから)
(訓ちゃんも?)
(そうだよ。女の子の一人歩きは危険だからな)
(……うん)



結局折れたいちるは、俺と一緒に塾を早退した。といっても、もう十時を過ぎてるけど。
街灯のオレンジ色の光が俺達を照らして、まばらな間隔で自動車が通り過ぎていく。
「朝から具合悪かったって?」
「うん」
「だったら、外で俺を待ってたりするなよ」
「待つよ」
俺に寄りかかりながら、それでもしっかりと言葉を返すいちる。
「あのなぁ…」
「ねぇ、おんぶして」
俺の腕を掴むいちるの力が少し強くなった。
「え?」
「歩くの辛いしね」
「だったらタクシー…」
「おんぶがいい」
まあ、昔はよくしたよな……と俺は少し懐かしがりながら、いちるの我が儘に答えた。
が。
(もう、昔じゃなかったんだよな……)
いちるは制服だ。スカートだ。おんぶをすると必然的に俺はいちるの素足に触れるコトになる。
だけじゃない。背中にいちるの胸と鼓動を感じるし、首や耳にいちるの吐息がかかる。
(し、心頭滅却、心頭滅却……)
自分の不純さに吐き気がしそうだ。いちるは純粋に幼なじみである俺を頼ってるのに、こんな時にでさえ、俺は男になってる。
「背中、暖かいね」
「いちる?」
「さっきまでずっと寒かったんだけど、今とっても暖かい」
いちるは俺の背中に身体を密着させてくる。
「そ、そ、そっか、よかったな」
「訓ちゃんは?寒くない?」
「…………暖かいよ」
「熱あるもんね、私」
いちるが笑っているのを、俺は背中で感じた。
「いや、俺はいちるが傍に居るだけで暖かい……」
「え……?」
「あ、いや、……なんでもない」
思わず口にしていた言葉に、俺自身が途惑っていた。
それは俺の素直な気持ちだった。あまりに素直すぎて、俺は途惑った。
「……私も訓ちゃんが傍に居るだけで暖かいよ」
502すなおく一る×おとこくん:2007/09/20(木) 20:17:01 ID:d+cEdgZc
「え?」
「なんでもない」
「な、なんでもないって……ん?」
なんか急にいちるが重たくなった気がした。
「おーい、いちる」
「………」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「って、しっかりしろ、オイ!急ぐぞ!走るぞ!いいな!!」
もう住宅街に入っている。タクシーを探すよりは走った方が早いだろう。
空は晴れていて、星がきっかりと見えていた。秋風は澄んで頬に冷たい。
そんな夜道を走っていった。



朦朧とするいちるから鍵を受け取って、いちるを部屋に寝かせた。
いちるの部屋に入るのは久しぶりで、普段なら女の子の部屋にドキドキしてただろう。
尤も、いちるの具合の悪いこの状況ではそんな余裕はなかったけど
しかし、勝手知ったる他人の家……何年かぶりだけど、風邪薬とタオルぐらいはどこにあるか分かる。
「いちる、いちる……」
「訓ちゃん…?」
ボーッとした目で、いちるが俺を見る。いちるのこんな表情は初めてかも知れない。
「薬、飲めるか?」
「うん。飲ませて」
「どっちだよ」
苦笑しながら、もう一度訊ねる。
「口移しがいいなぁ……」
「あのなぁ」
俺が怒ると、いちるは笑った。
「コップ持つの辛いから、そこは支えてて……」
「わかった」
俺の手の錠剤を口に含むと、俺は濯ぎすぎないように気をつけながら、いちるの口にコップを添える。
「もういいか?」
「ん…」
いちるの目が肯定を示すのを見て、俺はコップを下げた。
「水枕とかあればいいんだけど……家から持ってこようか?」
家にいって取ってきて戻ってきても10分かからないだろう。
「いいよ。その代わり、訓ちゃんが一緒に居てくれれば」
「わかった。おばさんに連絡は」
「いいよ、折角夫婦水入らずで旅行なんだしね」
薬を飲んで少し元気になった……そんなに早く効き目があるはずはないけど、俺はそんな気がした。
「暑いなぁ…」
「我慢しろ。熱で風邪を殺すんだから」
そうは言いながら、俺はいちるの額のタオルを代えてやる。ああ、意外と過保護だな、俺。
「服、汗でビショビショだし」
「俺にどうしろと……」
「拭いてよ」
真顔でいちるは言う。
「こんな時でも俺をからかうのはよせよ」
「私、訓ちゃんをからかったことなんて一度もないよ」
二人の間に沈黙が過ぎる。
「あのさぁ、こんなコト言ったらヒくかも知れないけど、俺、男なんだ」
「私、女だよ」
「だから!……お前の身体なんて拭いたら、理性……保てない…から……」
ああ、言ってしまった。
これで、もしかしたら今までみたいな幼なじみの関係に戻れないかも知れない。
でも……丁度いい機会だったかも知れない。
「でもさ、今日この家には私と訓ちゃんしかいないんだよ?」
「はい?」
しかし、いちるから帰ってきた言葉は、俺の予想外のものだった。
「訓ちゃん、言ったよね?一緒に居てくれるって。私が眠って、朝起きて、訓ちゃんが居なかったら約束破りだね」
503すなおく一る×おとこくん:2007/09/20(木) 20:20:03 ID:d+cEdgZc
「え…ぁ…そう…かな……」
正直考えてなかった。取り敢えず今はいちるを寝かせるコトしか頭になかったから。
「私の身体を拭くのは問題で、一夜を供にするのは問題じゃない?」
「い、一夜を供にするって、言い方が問題あるだろ!」
「私の身体を拭くと理性保てないけど、二人しかいない家で私が無防備に寝てる傍にいても理性保てるんだね」
なんか話が変な方向にいってる。いってるんだけど、俺はそれを戻せないでいる。
「制服、皺になると困るんだよ……脱がせて」
「いちる!だから!!」
だからの次が出てこない。俺はいちるに何て答えたいのか分からない。
俺はいちるをどうしたいのか分からない。俺はいちるとどうなりたいのか分からない。
「いちる……幼なじみにしちゃ、俺に依存しすぎてないか?」
「私だって訓ちゃんにお弁当やおやつ作ってあげたり、勉強教えてあげてるよ」
「でも……俺には俺の生活があって、いちるにはいちるの生活があるだろ?いつまでも昔みたいにはいかないだろ?
 いつまでも……俺を待ってたりするな。違う……学校なんだから。そりゃ、休日に遊ぶのとかはいいけど
 俺だって柔道部の主将になってこれから忙しくなるし、練習も遅くまでかかるかも知れない。
 それで今日みたいなこと起きたら、俺は俺が許せないし、いちるにも良くない」
いつか言おうと思ってたことを口にする。
それも、いちるは熱で上手く言い返せないであろうタイミングで。
卑怯な自分が情けない。
そしてそれ以上に、心臓が裂けそうなぐらい、辛い。
いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ。
俺はいちるに待っていて欲しい。いちると今の関係を続けたい。
でもいちると俺はただの幼なじみだ。偶々家が近くで、歳が近くで、そんな偶然で生まれた関係だ。
「迷惑……だった?」
「………」
「嘘だよね」
何で、いちるはこうも俺の心を見透かして居るんだろう。
「迷惑じゃなかった。けど、いちるの為にならない」
「どうして?わかんないよ。なんでいつも訓ちゃんはそうなの?一緒にいて楽しいよね?私はわかる。
 だって、いつも訓ちゃんと一緒だったから。訓ちゃん、私のこと嫌いじゃないって。なのに距離を取ろうとするの?」
熱のせいか、なめらかに喋ることは出来ないけれども、それでもいちるの声はハッキリと澄んだ声で聞こえた。
「だって、俺とお前じゃ釣り合わないだろう?」
「何が釣り合わないの?」
きょとんと、心底わからないといった目でいちるが聞き返す。
そう、いちるはわからないんだ。
それが、俺の中で一種の怒りになって、つい、絶対いちるの前では言うまいと
そう思っていたモノを全部、全部、吐き出してしまう。
「全部。この家だったそうじゃないか。部屋が沢山あって、高そうな調度品があって……国の借り屋とは違う」
「でも私の家も、訓ちゃんの家も、私達の持ってるものじゃない。だから私達同じじゃない」
「いちるは頭だっていいじゃないか」
塾のテストや模試で、俺はいちるに勝ったことが無い。
「訓ちゃんだって学校じゃいっつも上位でしょ?」
「俺ぐらいの奴、いちるの学校に掃いて捨てるほどいるだろ」
「掃いて捨てるほどはいないよ。一貫校だからって努力しない子もいるし」
「いちるの学校は部活も強いし……」
いちるはバドミントンで県大会までいった。俺は市大会止まり。それも負けたのはいちるの学校だった。
「この前の団体戦、訓ちゃんだけは勝ってたよ。」
「それでも負けたことに違いはない。いちるの学校に……負けたんだ」
「私だって、負けたんだけどな。つまるところ負けない学校なんて一つしかないんだし」
「違う……いちるの学校に負けたのが悔しいんだ」
財力でも勉強でもスポーツでも俺より優れた奴がいちるの傍には沢山いるんだ。
「そいつらの方がいちるには相応しいんだ」
「……いちる?」
「今わかった。訓ちゃんは、そんなコト考えてたんだね」
そうだ、と肯定するのはとても女々しい。情けない。けど事実だった。
「おかしなの」
「何が」
「どう考えたって、訓ちゃん並の男の子なんて早々いないのに。仮想敵相手に頑張りすぎだよ」
いちるは心底おかしそうに笑った。俺が載せたタオルがずり落ち、咳と笑い声が混じって呼吸が苦しそうになっている。
「訓ちゃんね、それ逆だね。私の方が釣り合わないなって思うときあるから」
504すなおく一る×おとこくん:2007/09/20(木) 20:23:09 ID:d+cEdgZc
あげく涙まで流し始めたいちるは、その涙を拭いながら反論した。
「そんなこと無いだろ」
「あるよ。頭もいいし、柔道も強いし、みんなから信頼されてるし、背も高い方だね。顔も人並み以上だよ、自覚無しだけど」
「それな、お前の方が頭いいし、お前の方がバドミントン強いし、人の輪の中心だし、容姿は人並み以上どころか
 街を歩けば歩いてる人は視線で追わずにはいられないレベル。自覚あるのかないのかわからないけど」
「うれしいね。訓ちゃんに美人って言われたよ。でもね、もう一つあるの。絶対に私が訓ちゃんにかなわなくて、
 それで、その一つで今まで言った全てが例え訓ちゃんが私より下でも取るに足らないコト。わかる?」
いちるは涙を拭った手で俺の頬に手を当てた
「努力家なところ。頭がいいのも、柔道が強いのも、みんなから信頼されてるのも、みんなみんな、その結果に過ぎないんだよ」
言い切った後、いちるは深呼吸をして、何か決心したようだった。
「そんなところが、私は、砂奥一流は、女として乙古訓に惹かれたの」
いちるの熱っぽい息が、俺の顔に近づいたと思ったら、頬に柔らかな感触が当たった。
「いちる……!?」
突然の頬へのキスに、俺は途惑うしかない。
「だから、そんな人と幼なじみとして知り合えたコトに私は感謝している。生まれた家とか能力とか関係ない。
 訓ちゃんがそんな人だったから、私は訓ちゃんと幼なじみとは違う関係になりたいと思った。なれるよう頑張ってもみた」
いちるは胸を張っている。その言葉に偽りも後悔も何一つ無いといった顔だ。
そうか……そうだったんだ……
俺の片思いじゃなかったんだ。いちるは俺のこと……好きって……
「でも、今のは告白じゃありません」
「え?!?」
「だって、私も女の子だからね」
先ほど俺の頬に触れた唇に人差し指を当てて、いちるは悪戯っ子の様に笑う。
「告白は男の子からされたいということだね」
「いちる……それは……」
「私は訓ちゃんと違って自信あるから。訓ちゃんの周りにいるどんな女の子より、訓ちゃんの一番である自信」
気づくと手を握られていた。言葉でも身体でも逃げる道は無いと言うことだろう。
もっとも、逃げつつもりは更々ない。男が廃る。
「いちる、目を瞑ってほしい」
「えっ……うん……」
いちるの肩に手を添えて、二人の距離を詰める。
俺の唇がいちるに触れた。
「…………唇じゃないの?」
おでこを不満そうに撫でるいちるに、少し逆襲してやった気分。
「順番が逆だろ?告白前にキスなんて」
「言葉より行動で示してくれるのかと思った」
と、口を尖らせつつ、俺の告白をいちるは待つ。
「あ〜でもな、俺を好きになった奴は大変だぞ?当分告白する気、ないからな」
「え〜〜」
いちるが悲鳴に近い声をあげる。
「俺はな、自分が惚れた女はしっかり守りたい。もっと言うと養っていける位でありたい。気がはやいって笑うか?」
「笑わない。私も惚れた男には末永く可愛がって貰いたいものね」
「だから惚れた女とは最低限同じ高校に入りたいし、素人が束になっても楽に倒せる位の力も欲しい
 俺の惚れた女は極上の女だから、俺も極上の男になりたいと思うんだ。俺が凡人のくせに努力したのはただそれだけの為だから」
いちるが目を大きく見開いた。
「いちるの為だけに、努力してきた。まだ到達点じゃないんだ。だから待ってくれ」
「……それって、告白にもなっちゃうね」
「そうかな?」
「うれしいな。私は二回も、大好きな、愛してる人に告白されるなんて。風邪もひいいてみるもんだね」
いちるは静かに目を閉じて、何度も、何度も俺の言葉を噛みしめてるようだった。
「訓ちゃん、身体、拭いて?」
「あのな……」
「今、すごくふわふわしてるから、夢みたいで怖いの。だから、訓ちゃんがいるって、現実だって確かめさせて?」
結局俺はいちるに勝てない。
それに、いちるの汗もひどかったのも事実だった。
「……脱がすぞ」
「うん」
ブラウスのボタンを一つずつ外していく。汗で肌にピッタリとくっついた生地が、剥がれていく。
「ぁ……」
いちるの吐息に、手が止まる。拒絶されるはずが無いと知っていながら、なんて臆病。
505すなおく一る×おとこくん:2007/09/20(木) 20:25:18 ID:d+cEdgZc
「腕、動かして。袖が脱げないから」
「ん……」
すらりと伸びた白い二の腕、指先、いつもは白磁の肌が今日は熱でほんのり朱が混じっている。
「ブラジャーも……」
「う……」
いちるの懇願に、極力見ないようにしていた胸部を認めてしまう。
桃色のブラジャー。なんで女性の下着はあんなに凝った意匠なのだろうと、埒もないコトがよぎる。
夏の暑い日に透けて見えた、形のよい乳房。屈んで俺を見上げた時に見えた、谷間。
それが目の前にある。
つい、唾を飲んだ。
「……ッ!!い、いまのは違う!決してやましいつもりじゃない」
慌てて弁明するが、違うならばなんだというのか。
「キツイから……はやく」
「はやくって……外し方、わからないし……」
「フロントホックだから、ホラ真ん中にあるでしょ」
真ん中って、そ、そこに手を伸ばすのか!?
「う、ご、ゴメン……」
「なんで謝るかなぁ」
直視しないように下方45°に顔を向けながら、四苦八苦してホックを外す。
制約から解き放たれた柔肉が揺れるのを感触で感じた。
(う、うわぁ……)
これで直視したら、俺、どうなっちゃうんだろう……
「楽になったよ、ありがとう訓ちゃん」
「あ、あぁ……」
「汗、拭いて、ね?」
「あ、あぁ……」
タオルを手に、いちるの手から伝って身体を拭いていく。
力を入れすぎないように、優しく包むように。
「ん……」
鎖骨に溜まった汗を拭いたとき、いちるの吐息が1オクターブ上がる。
その声の艶やかさに、理性がジリジリと削られていくのがわかる。
「む、胸も拭かないと?」
「駄目」
「わ、わかった……」
俺の手はゆっくりといちるの身体を落ちていく。
なだらかな膨らみ。
撫でるように、動かすと、引っ付いて形を変える。
「ん……ぁ……ふぅ……」
かといって力を込めすぎると、その肉に指が沈んでいくだけ
「…ふぁ…ぁ…ぃぃ…訓…ちゃん……」
鼻はいちるの匂いに麻痺され、耳はいちるの吐息に埋められ、肌はいちるの熱と柔らかさに蠱惑されている。
俺はいちるを押し倒したくて、押し倒したくて、どうしようもない。
狂いそうで、いっそ狂ってしまった方が楽そうで
でも、いちるは俺にとって世界一大切な人だから、なし崩しになんて抱けやしない。
それでもいちるは許してくれるけど、そんな男がいちるの傍にいるのは俺が許せない。
506すなおく一る×おとこくん:2007/09/20(木) 20:27:52 ID:d+cEdgZc

なんとか俺はいちるの身体を拭き終わり、制服をハンガーにかけ、額のタオルを冷やし直して、パジャマ姿(もちろん俺が着せた)のいちるを見守っている。
いちるは妙にアタフタしてせわしなかった俺を見て口元が弛んでいたが、俺はそれに対して反論する武器を持たない。
ああ、もう!いつか俺をからかえないぐらい、俺に惚れさせてやるからな!と俺は心の中で誓う。
それがなるべく早くなるようにまた明日から頑張ろう。
「ねえ、訓ちゃん」
「なに?」
「訓って……呼び捨てにしていい?」
「いいよ」
いちるは安心したようにベットに身を沈めた。
「ねえ、訓」
「なに?」
「手、握っててね」
「もちろんだよ」
いちるの俺より小さな手。大切な人の手。
「朝までずっとだよ?」
「ああ」
「そしたら今度は私がずっと……」
この手に相応しい男になって、ずっとずっと、守っていこう

「待ってるから」


俺の愛しい人を。




<了>
507名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 20:39:18 ID:E2elZOqX
リアルタイムGJ!
508名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 20:44:37 ID:l7lGo49c
まじでGJ!

ぜひ、その後の二人を読みたい。
509名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 20:48:41 ID:ifdFkJBR
いちるタソ萌えすぐる(´Д`;)
510名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 21:25:03 ID:LfXcGHxf
これはなんという好みな属性の合わせ技一本
511名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 23:01:34 ID:xpcSCNEc
なんかわからんけど読み始めてすぐ勃起した
512名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 23:04:31 ID:kgNzjBNF
>>506
マジGJ!
了じゃなくて続き読みたいっす。

>>497
お待ちしてます。
513名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 23:24:07 ID:tt6rxA2U
おおお俺はおっぱいじゃあ興奮しない男なんだぜ!
尻こそが女の真理であっておおおっぱいなんておっぱいなんてぱいぱい
514名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 01:04:43 ID:Eoti4RmT
>>513
おちつけw

しかし俺も同じく取り乱すくらいにGJ
いいカポーだ
515名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 04:28:17 ID:CRdFJ1Wp
>>506
GJ!ただひとつ言わせてくれ

>聞こえない、聞こえない、ア〜ア〜
>「…………大好きだよ、訓ちゃん」
>聞こえない、聞こえない、ア〜ア〜
こんな萌えるセリフ聞き流してんじゃねえよおとこおおおおおおおおお!!
516名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 13:26:10 ID:xog6a4Qp
物語もすごくいいけど、二人の名前もいいねw
駄洒落なのに妙にキャラにマッチしてるというか……響きもいいし。センスあるな。
517名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 14:42:46 ID:CU3yuC63
>>513
認めちまえよ。
ラクになれるぜ。


さて、友人に薦められて「コイネコ」を読んだワケだが。
「素直クールなネコミミ少女」って最強の組み合わせだな。
最初は振り回されていたのに、どんどん互いにベタ惚れになっていくのも素晴らしい。
518名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 15:15:01 ID:l7U0vPrS
直生えネコミミはピンと来ないが、
ネコミミフードを被って、じっとこっちを見つめる素直クール子はいいなと思う。
羞恥も嫌悪もしていない、無機質な目で「……被ったけど?」って言われたい。

くぉあ!
519名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 15:18:43 ID:KMULK0hP
くぉあ!
520名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 15:52:40 ID:Xep8B0Fd
ちょっと見ないうちに二本もSSが投下されていたり、
雑談も盛り上がっていて……


くぉあ!
521名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 16:11:01 ID:LUGb15kE
>>518
うん、それ最高!!

くぉあ!
522名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 16:12:30 ID:XoLNtYkv
猫耳素直クールといえば>>300氏はどうしているのだろうか
523名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 19:13:40 ID:7YScGQME
本当だ
ネーミングセンスがガモウひろしww
524名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 20:00:49 ID:Y+WPkLAC
くぁあ!
コイネコは素直シュール分も充填されるので非常にいい
525名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 01:06:18 ID:XZTc/krh
なんかこれ響きがいいな……

くぉあ!
526名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 10:44:11 ID:EEWCH8NQ
>>448
> では、「私」とは何だ?

ややこしや〜、ややこしや〜



すまん、時機を失しているのはわかっているのだが
いまデムパが・・・・
527名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 12:32:06 ID:jePtWdgO
小ネタを思いついたがSS未経験だから地の文が書けねぇ…
かといって会話のみにすると設定が読み手に伝わらねぇ…
説明臭い台詞ばかりになるのも問題だし…


設定から見直してみるか…
528名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 14:38:06 ID:dGlvjyrV
>>527
ゆっくりゆっくり考えて…

そして…








くぉあ!
529名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 15:17:29 ID:HTmhnry0
>>527
地の文に関しては最初は見よう見まねで構わないんじゃないか?
本棚の本を参考にしたり、他の誰かの作品を参考にしたり。
どんな事でも最初は模倣から始めるモンだよ。
530名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 15:22:24 ID:avDdhl3Q
>>527
ここのSSの文体を真似してみると人気者になれますよ^^
http://wave.prohosting.com/zunnyu/sslink.html
531名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 15:37:24 ID:qDP5IO58
そのネタは邪神スレだけにしといてくれ。
532名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 17:24:41 ID:jePtWdgO
>>528-529
ありがとう

>>530
少し覗いてみたが俺には荷が重い
533名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 17:59:48 ID:ciULSqyz
530はネタだから気にすんな、
がんばれー
534名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 21:09:39 ID:2DvZSmjT
>>532
ワッフルワッフルして待ってる。何度も書き直して納得できるレベルになったらでいいからね。

練習としては、漫画を小説に起こしてみるとかどうだろう?
(あくまで俺の場合は)イメージが絵として頭の中を駆け巡るから、それを文に起こしてる感じなんで。
535名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 22:37:03 ID:V0hY6hcZ
>>527
とにかく沢山書いて人に見てもらうのが上達への一番の近道なような気がする。
他の人に見てもらうと、自分ではわからなかった欠点とか教えてもらえたりもするし。

あと、ワッフルワッフルしてもらえると、書いてて良かったと感動も出来る。
最初は地の文苦手で脚本形式でも、場数踏んでくうちに何とかなる……はず。
STGと一緒で、死んで(経験して)覚えるものじゃないかなぁと一つ。

そして>>506氏マジグッジョブ。名前があれなのに違和感の無いこの素晴らしさ。
あとおっぱいは正義です。
536名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 00:09:13 ID:eek7H6is
>>533-535
ありがとう
試しに書いてみようとしたが…羞恥心が最大の敵だと知った
脳内にあった言葉なのに文字で見ると何故か恥ずかしい
537名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 00:17:29 ID:ap79cFPl
>>536
ああ、わかるわかるw
俺も初めて書いたときはそうだったw

それを乗り越えて作品を完成させた時この上ない喜びになるんだぜ
がんばれ
538名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 07:42:34 ID:dbm6zqBe
ほさゅ
539名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 10:30:42 ID:VwCV4G5R
馴れ合い(笑)
540すなおく一る×おとこくん<霜月>:2007/09/24(月) 00:55:01 ID:2Vpp+WCe
意外と好評だったので続編。エロ無し。取り敢えず新キャラの顔見せ程度?






「なあ、主将。あれって砂奥一流じゃないッスか?」
「うぉ、マジで?砂奥先輩が応援に来てくれたの!?」
雪も降り始めた11月、朝は寒さで張り詰めていた市立体育館の空気も、昼を回るころには
中学生柔道家の練習と試合で熱気と、汗の臭いに満たされていた。
そんな中で、優勝候補に一角に食い込む文武両道の中学校は、学校一の美女の出現に色めき立っていた。
「馬鹿、砂奥は彼氏の応援に来てるんだよ。座ってる場所も向こう側だろう」
それを沈めたのは主将の当馬憐(トウマ レン)だ。
「嘘……砂奥先輩の彼氏って柔道部だったんですかぁ?!」
「砂奥先ぁぁぁ輩ぃぃぃ〜〜」
「どこの学校のどいつだよ!ハン、どうせ柔道やる奴は短足に決まってる!!」
頭を抱える部員、胴着を噛みしめる部員、自分の発言に傷つく部員、当馬は呆れた。
「対戦相手の学校ぐらい、知っておけ」
それっきり後輩の相手を打ち切ると、当馬は瞑想して集中し始めた。
が、女の顔が浮かぶ。
砂奥一流。隣のクラスの女子。何度か話をしたことがある。きっかけは二クラス合同でやる体育の授業だったか。
ハッキリ言って……惚れていた。
後輩達の憧れとは違い、現実感のある感覚として彼女のコトを当馬は好きだった。
無論、それが片思いであることも、彼女には他の学校に彼氏がいることも知っている。
だから、その思いは当馬一人だけしか知らない。
(乙古……)
その彼女の思い人の名は、砂奥一流の彼氏として知られる前から知っていた。
自分と、乙古訓と、その友人の一野進由羽(イチノシン ユウ)の3人は、この市の同世代で柔道をやってる人間なら知らない人間は居ないと当馬は思っている。
すでに一流のコトは当馬の頭から消えていた。
三ヶ月、いやもう四ヶ月も前の夏の大会、二年生の当馬は補欠で正座して試合を見ていた。
試合場から最も近い場所で、訓が先輩から鮮やかに一本取るのを見ていた。
結局、当馬の学校が三勝一敗一引き分けで準決勝に駒を進めた。一敗はもちろん訓で、一引き分けは由羽だった。
当馬の学校の五人が全員三年生だったのに対し、訓と由羽の二年生が健闘した二人の学校は、三年生引退後の最有力強豪校と噂されていた。
実際、当馬は新人戦では苦杯を舐めさせられている。
せめて柔道では勝ちたいものだという男の意地が当馬には――ある。




「試合前に桃色空間発生させるな。士気が下がる」
由羽は端から見ればいちゃついてるようにしか見えない友人に苦言を呈した。
「いちゃついてない!!」
「ごめん、ごめん」
正反対の回答が友人とその彼女から返ってくる。
「訓、弛んでるぜ」
「俺がか?」
「他の奴らが。正直、新人戦の成績が良すぎたんじゃねーの?今日は先生の小言、多いぜ」
柔道部の顧問の先生はその恰幅の良さとは裏腹に、理路整然とチクチク説教をするタイプで、指導力は兎も角
その点では柔道部の部員には好かれてない。勿論、ちゃんとしていれば褒められもするが、今のままでは勝っても負けても説教コースだろう。
それでも勝った方がまだマシ……と由羽は考えていた。
「俺とお前で二勝、でも中で三敗したら負けちまうからな。主将、気を引き締めてやってくれ」
由羽は先鋒で、訓は大将だ。そして由羽は普段軽いというか、後輩にも混じって一緒に騒ぐタイプのムードメーカーで
こういうときに叱るっても効果がない。そういう仕事は厳格で通してる訓の仕事だった。
「二勝は確実って、随分自信あるんだねぇ」
「……そのコトなんだが、一流ちゃん。コイツはもっと謙虚な奴だと思ってたんだが、どうも勝負事になると負けず嫌いだ。
 それも丁度9月ぐらいから、一層拍車がかかってる。まあ、実力が伴ってるからいいとして、俺のカンでは何かあったとm……うのわぁ!?」
由羽の懐にすざましいまでのスピードで入り込んだ訓は、まるでお手本の様に綺麗な一本背負いを決めた。
尤も、床に人を投げつけるのはお手本にしてはいけない。
541すなおく一る×おとこくん<霜月>:2007/09/24(月) 00:59:17 ID:2Vpp+WCe
「っ痛てーなぁ!!お前、試合前に味方潰す気か!?俺じゃなかったら受け身取れてないぞ!!」
「お、お、お、お、お、お、お、お、お前が下らないコトを考えてるからだ!!試合前なのに!集中しろ!!」
(……分かりやすい奴)
だが、由羽は訓のそんな所が気に入っている。
「ま、訓の言うとおりだ。しかし名探偵・一野進由羽としては自分の推理がどこまであたっているか気になるところなんです。え〜
 ぶっちゃけ、その9月のある日を境に一流ちゃんがくっついても前みたいに離れようとしなくなった所をみるにですねぇ〜
 …………ついに一線を越えたな、おまえら」
この間再放送でやっていた昔の探偵ドラマの真似をしながら、確信に迫る由羽に訓は叫んだ。
「ユウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
顔を真っ赤にした訓が叫ぶ。
「それはまだなんだよね。惜しかったねぇ、由羽くん」
そして一流はあっさりと答えた。
「いちるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」



結論から言うと、説教の時間は長かった。特に訓と由羽は残らされていた。
二人を……というか訓を待っている一流はその理由を他の部員から聞いていた。
試合は大将戦を前に二勝二敗で進んでいた。訓と当馬の試合は一進一退で引き分けに終わった。
そこまではいい。しかし点数も一緒だった故に代表決定戦になる運びになった。周りから見ればその時点で訓の学校の勝ちだ。
なぜなら双方の実力者の訓と当馬は接戦で疲労している。だが、訓に並ぶ実力者で由羽がいるのだ。
だが、相手は代表決定戦で当馬が出、訓の学校も訓が出て紙一重の勝利を訓が掴んだ。
それを一流は観客と一緒に見てたし、その熱い展開に周りも多いに盛り上がった。
が、実際は少し違うらしい。
当馬が立った時、訓の顧問の先生は由羽を代表に指名した。だが、訓は下がらず試合場前に立ち続けた。
その訓の姿を見て、先生が何を言おうとも由羽もまた、テコでも動かなかったという訳だ。
結局、勝ったから良かったものの、自分の指示を生徒に無視された先生は怒り心頭で、今も当人達に説教を食らわせている。
「いや、でも正直主将は悪くないッスよ。ちゃんと勝ったじゃないッスか!」
「だよな?だって向こうが当馬出てるんだし、ウチも主将じゃなきゃ男じゃないよな」
一流の前で緊張して若干テンションの上がっている部員が、まくし立てるように言う。それに他の部員も賛同している。
それはどうやら一流が訓の彼女だから彼の行動をよく言ってるのではなく、心の底から訓と由羽の味方であるらしい。
「でもまぁ、普通に考えたら由羽くんの方が勝率高いって思うからね、先生が怒るのもしょうがないでしょ」
「えぇ〜一流さんがそんなこと言わないで下さいよー」
一流の冷静な物言いに、部員達はブーイングの嵐だ。
「そうそう、乙古先輩が当馬なんかに負けるわけないじゃないですか」
「あらら。それ、本人に言っちゃうよ?」
「あ、そっか一流さん同じ学校だったっけ」
「大丈夫だ、砂奥から聞く前に直接聞かせて貰った」
人の噂をすれば何とやらは言うが、本当にあり得るとは一流も初めて知った。
訓の学校の集合場所に、当馬憐が来たのだ。
彼の悪口を言った部員はばつの悪そうに顔を逸らしている。
「乙古は?」
「まだミーティング中」
精悍な顔つきをしている当馬は、話し方は切れるナイフのような雰囲気があり、少し近寄りがたい。
知り合いである一流は、それが彼のデフォルトだと知っているが、他の部員は肝を冷やしたことだろう。
「代決の時なにか揉めていたから、もしかしたら乙古じゃなくて一野進が出た可能性があったかもと思ってきたんだが……」
「ご明察」
一流の答えに、当馬は満足そうに頷いた。
「そうか、礼を言わないとな」
「由羽くんより訓の方が勝てるかもって思ったとかかな?」
「まさか。そんな狭い男じゃないつもりだ。単純に決着つけたかったからな」
一流は冗談で言った。だが、一流に言われると当馬も胸が騒がないでもない。
「……ほんの少しぐらいは助かったと思ったかもな。俺は主将だからチームのコトも考えないといかん」
「だったら由羽くんとやったほうが勝ち目があったかもね」
「……彼氏だからって贔屓の倒しすぎだぞ、砂奥。大体、さっき自分でいったろう。一野進の方が勝率高いって」
嫉妬が混じった言葉が、当馬から出る。
「普通に考えたらね。でも、訓は負けないよ。私の為に負けないんだね」
「………」
真顔で惚気る一流にドン引きする当馬と部員達。
特に当馬は、砂奥のこんな姿は見たことがない。
542すなおく一る×おとこくん<霜月>:2007/09/24(月) 01:03:26 ID:2Vpp+WCe
(学校での砂奥は常に客観的な視線で物事を話し、何かに入れ込むことのない性格だった)
が、そんな砂奥がいうと、何故か本当に訓が負けないような気がすら当馬はする。
(しかしあの砂奥がここまで……)
そこへゲッソリとやつれた訓と由羽がやってきた。
「みんな、着替えて撤収」
「あ、当馬じゃん」
訓の命令に、部員達はめいめい散らばり始め、帰りの支度をし始める。
「何か用か?」
「いや……もう砂奥に聞いた。しかし砂奥とお前は……」
「なんだよ?」
「……お似合いだな」
なぜ当馬にそんなコトを言われるのか分からないという顔をする訓の横で、由羽はうんうんと顔を振っていた。





カルビの油が鉄板の上を踊る。
換気扇が低い音を奏でているが、それ以上の喧噪に消されている。
「……悪かったな、俺のせいでお前まで叱られて」
「気にすんな、こうやって焼き肉奢ってもらってることだし」
「……少しは遠慮しろよ、由羽」
「食べ放題なんだし、気にするな。あ、訓、肉持ってきて。あと野菜とサラダとアイスも」
訓は由羽の付きだした皿に、低く呻きながら、渋々席を立った。
「……悪かったね、一流ちゃん。俺のせいで二人っきりになれなくて」
訓が見えなくなったのを見計らって、由羽が一流に謝罪した。
「うん。まったくだね」
「うわぁお!まさかそう返されるとは思わなかった。でも、なんか詫びるって言ったのアイツだぜ?」
肉を口の中に頬張りながら、幸せそうに由羽は答えた。
この男、黙っていれば二枚目なのに、四六時中三枚目な男だ。
「怒ってる?」
「まぁ……嫉妬してるね」
「なんで?正直、一流ちゃんに嫉妬されるのは怖すぎるんだけど」
天然の茶色の髪を掻きながら、由羽は訊ねた。
「訓に代表を譲ったの、以心伝心って感じで。私より訓と過ごした時間は少ないのに、どうして私より訓のコトが分かるのかなってね」
「え〜。どう考えても訓と一流の方が以心伝心でしょう。っていうか一心同体?あ、まだ合体してないんだっけ?」
「そうでもなかったんだよねぇ。訓とはちょっと前まで根本的なところでスレ違ってたし」
後半のセクハラ発言を華麗にスルーして、一流は答える。
「ふむ……じゃ、ま、なんで俺が座ったまんまだったか答えましょう。
 まず、アイツは引き分けじゃ絶対納得しないと思った。だから代表に絶対なると思った。
 アイツはチーム競技向かないんだよ。自分だけは絶対負けたくないから。正確に言うと負けられないから。
 で、アイツは負けないと思った。勿論、俺でも負けないけど。
 さらに、アイツはテコでも動かないとみた。俺と先生投げ飛ばしてでも代表になると思った。
 だから、俺は無駄にカロリー消費するのは嫌だし、楽できるなら楽したいので動かなかった。
 どうせ説教されるなら、大会がオジャンになったり、投げ飛ばされたりするよりはマシってもんだね」
「それよ」
「はい?」
自分に向けて突き立てられた指先に頭を傾げる由羽。
「訓が自分だけは絶対負けられない理由、知ってたの?」
「そりゃ一流ちゃんの為だろ。アイツは頭固いんだ。一流ちゃんの彼氏の条件、勝手に頭ん中につくってるんだよ」
「……それがずっと分からなかったのにぃぃぃ〜〜〜」
机に突っ伏す一流に、由羽は大声をあげて笑う。
「ああ、そういうこと。面白れー。ホンっと見てて飽きないな、訓も一流ちゃんも」
「………」
「なるほど、なるほど。そこら辺、どうやらお互い確認しあったみたいだな。つまり今の一流ちゃんは訓の彼女の予約済みって訳だ。」
鉄板の焼き肉を裏返しながら、由羽は納得した。
夏までの訓はどこか焦っていた感じもした。理由は想像がつく。要するに一流を別の男に獲られるかも知れないという不安だ。
そのくせ、認めたくないくせに獲られても仕方ないと思ってる節があるのだから、傍目にみてて滑稽だった。
「はやく予約の文字を外して欲しいんだけどね」
「そりゃ、アイツがどこで納得するかだなぁ。ま、いっそ中学一になったら確実だろうけど」
543すなおく一る×おとこくん<霜月>:2007/09/24(月) 01:07:04 ID:2Vpp+WCe
「…………それは冷静に見て厳しいと思う」
「ごもっとも。なんだかんだで色ボケはしてないみたいだね」
肉の合間に野菜を食べる由羽の姿はどこか兎に似ていると一流は思った。
「私が訓だったら、中学一にもなってみせるけど」
「愛の力は偉大って?」
「そうよ。実力で勝てない敵は試合前に潰しておけばいいんだからね」
「…………頼むから俺に本気で嫉妬しないでくれよ」
一流の目は本気だった……と、由羽は後に語る。
「しないよ。由羽くんは訓の一番の親友だもん。死んだら訓が悲しむからね」
「おーい……色々物騒すぎるぞー。っていうかアレか、結局一流ちゃんも世界の中心は訓ですか。この似たもの同士め」
食事とは別の意味でお腹がいっぱいになりそうな由羽であった。
「ま、俺の未来予想図は二人の結婚式でテントウムシのサンバを歌うコトは確定してるから、よろし……」
由羽は思わず手にしていた割り箸を落としていた。
そして思わず「訓…」と呟いてしまった!と思った。自分が何に動揺してるか、目の前の一流に悟られてしまったからだ。
「どうしたの?」
肉を訓が取ってきたんだろうと、由羽の視線の先を追って後ろを振り返る一流。
「見るな!」
由羽の静止はもはや遅すぎた。
「…………偶然、会った」
ソコには困った顔をして肉が盛ってある皿を盛った訓が居た。
腕に巨乳の女性を侍らせて。



吾根脇 迩迂(アネワキ ニウ)は訓や由羽と同じ学校の三年生である。訓が小学六年生の時に隣の宿舎に引っ越してきた。
人懐っこい性格なのは、転勤族ゆえなのか知らないが、姉の居ない訓にとっては本当の姉のように思えることもある。
ただ、だらしがない。訓が彼女と関わりが深くなったのも、ひとえに彼女の生活態度がだらしないので世話を焼いてしまっていたからだ。
「……先輩、受験生なのにこんな所で何やってるんですか?」
「うぅん?私、推薦組だもん」
カルビを取っていた訓を見つけた迩迂はあろうコトが抱きついてた。
それはいつものことと、引き剥がした後、訓が訊ねた答えがこれだ。
「はぁ、さいですか」
「くんくん……ふむ、この汗の匂い。訓ちゃんは部活帰りかぁ。勝った?負けた?」
「……勝ちましたよ」
「おめでとーーー!お姉ちゃん、抱きついちゃう!!」
「ええい、鬱陶しい!!」
と、以上の流れを経て、訓と迩迂は一流と由羽の前に現れたのだった。
「……誰?」
「え?ああ、いちるは会ったことなかったけ?吾根脇先輩。ホラ、家の隣の」
「ああ、その人が、そうなの」
一流の握っている割り箸が折れた。が、死角になってるので、それは由羽にしか見えなかった。
(そりゃ知らねーよ。ニアミスしないように気を配ってきたの、俺だもん)
頭を抱えたのは由羽だ。
おそらく、なんで自分が頭を抱えてるか友人は分からないだろう。そして、迩迂に抱きつかれて平然としてる男も訓ぐらいなものだ。
世の一部の例外的な嗜好の男性を除けば、誰もが訓と代わってみたいと思うだろう。
訓の腕に巻き付いて密着している迩迂の二つの果実は――デカイ。
ラクダのコブには水と栄養が溜まっていて、緊急時に何も食べなくても生きられるようになってるという。
同じ理屈なら、この先輩は地球が滅亡しても一週間は生きられるんじゃないかと、由羽は思ったことがある。
加えて、顔も可愛い。童顔だが、クルクルと表情を変える彼女には凄く合っている。
ウエーブのかかった赤毛の髪と、よく笑う口元から覗く八重歯がその可愛さを引き立てている。
そんな彼女は、訓を気に入っている。その感情が恋愛を含むのか含まないのかイマイチ判断出来ないが、
肉体的なコミュニケーションを好む迩迂を訓と一緒にしたまま一流に会わせるのは危険だと由羽は思っていた。
(……こうなること、予想できてたから)
だが果たして、この場に一流の背後から沸き上がる嫉妬オーラを観測できる人間が由羽以外にいようか?いや、いまい(反語)
「……仲、いいんだ」
「ん?ああ、この人、こんなんだからな。あ、先輩、コイツは幼なじみの砂奥一流」
顎を訓の肩に乗せ、猫のようにじゃれる迩迂に訓は一流を紹介した。
いつもより低い声の一流にまったく気づかない訓に、由羽はいい加減投げ飛ばしてやりたい気分になった。
「一流……あーわかった!訓ちゃんが好きな子だぁ〜。えへへ、ようやく逢えたねぇ〜。私、吾根脇迩迂だよ、よろしく」
差し出された手に一流は途惑った。訓と密着してることは迩迂への第一印象を悪くさせたが、
544すなおく一る×おとこくん<霜月>:2007/09/24(月) 01:11:07 ID:2Vpp+WCe
自分を訓が想っていたことを周りに言っていたことは気分は悪くない。冷静に考えれば訓が自分から明言はしないと思うが
それでも、自分と訓をそういう関係だと認めてくれる人間はすべからく味方にしてもいいと一流は考えてる。
「砂奥一流です。よろしくお願いします」
「いやあ、訓ちゃんの彼女は美人だね〜羨ましいぞ、コノ、コノ!!」
「……なんで、一緒に席に座るんですか?」
冷たい……焼き肉の熱ですっかり氷が溶けきった筈なのに、口に含んだオレンジジュースが冷たい。
由羽はもう逃げたかった。
「私も訓ちゃんと一緒に焼き肉食べる〜〜」
腕をグーにして掲げる迩迂に、一流は微笑みを崩さずに訊ねた。
「どうして訓の隣なんですか?由羽くんの席が由羽くん一人で、私達の席が三人って変ですよね?ねぇ、由羽くん」
「そ、そうだな」
「私、訓ちゃんの隣がいいもーーん」
お気楽な声をあげて迩迂は訓に抱きつく。こういう人だから接触させたくなかったのに……と由羽は胃を抑えた。
「まあ、三人座れないこともないし、いいじゃないか」
訓が場を取りなそうとする。逆効果です、本当にありがとう御座いました。
「…………」
「い、いやいや、俺一人は寂しいぞーー」
一流が無言なのが余計に怖い。由羽は叫んだ。必死だった。その必死さが伝わったのだろう
「わかった。じゃあ俺がそっち行くから」
訓が立ち上がろうとする。伝わったのは必死さだけだったようだ。
「テメーは来るな!俺は先輩御指名なんだよ!!」
「由羽……お前……」
「そうだよ、よーやく空気読んだな、訓」
「先輩のコト、好きだったのか!?」
訓の翻訳機能はYahoo!辞書並だった。
「やーん、そうだったのか〜、一野進くんってば年上好き〜」
悪ノリする迩羽。
「…………」
“もう、アンタは先輩のコトが好きってことにしないさい”という命令を視線で由羽に送る送る一流。
完全に迩迂を敵認定してるようだった。由羽は頭をフル回転させた。おそらく一生で一番脳細胞を使った瞬間だろう。
「せ、先輩、一緒に食べに来てた人放っておいていいんですか?」
「あ〜そうだった!よし、じゃあ呼んでくるから一緒に食べよう〜〜!!」
え?なんでそうなるのと由羽が疑問を呈するより早く、迩迂は立ち去ってしまった。
その0.1秒の間に一流は訓の腕に、迩迂がそうしたように巻き付いてる。
「な!?いちる!?な、なに、なにしてるだ?!」
迩迂の時とはうってかわって動揺する訓。由羽はもう馬鹿らしくなった。結局この二人はこんなんなのだ。
「…………訓、キスしよ?」
「ええっ!?……ウグッ!?」
一流の目が据わっている。いつもの冗談ではないと流石に察した訓は反対しようとしたが、素早く頬を抑えられた。
真正面に一流の顔が迫る。力からすれば一流の手を振り解くのはたやすい筈だが、何故か振り解けない。
「ちょ…待て、待て、いちる……ン……」
「ン……」
二人の唇が触れる。初めてのチュウは焼き肉のタレの味がした by訓。
ちなみに由羽は律儀にも、二人のその瞬間を写メールで撮っていた。



時間は少し遡る。
当馬憐は、一人橋の上で佇んでいた。
自分は恋でも柔道でも乙古訓に負けたという事実は、彼の心を空洞にさせた。
「はぁ……」
橋の下を流れる川で魚が跳ねた。
砂奥一流のコトも、乙古訓のコトも知っていた。けど、一緒にいるとき、お互いを思うときの二人のコトは知らなかった。
それを今日、垣間見た気がする。
「砂奥のあんな顔、初めて見たな……」
学校での一流は凛とした表情を崩さず、他人の基準ではなく常に自分の考えに基づき行動していた。
颯爽としている。彼女が通るだけで、澱んでいた空気がカラリを変わる。
故に、男としては少し近寄りがたい部分も確かにあった。
その彼女が、自慢の彼の話をするときは口が弛む。頬が高揚し、声に愛おしさが滲む。
「そんなのってアリかよ……」
545すなおく一る×おとこくん<霜月>:2007/09/24(月) 01:14:31 ID:2Vpp+WCe
一流に好意をもってる男なら、みな同じ感想をもつだろうと、当馬は思った。
そして、彼女にそんな表情をさせる訓に、嫉妬を通り越して脱帽するしかない。
「はぁぁ……」
もう、何もかも嫌になった。
そんな気持ちで居たからだろう、当馬は勘違いされた。
「死んじゃ駄目だ〜〜〜〜!!!」
「のわあぁあああぁぁああぁあぁ!!!!」
突如走り出してきた少女に体当たりされた、当馬は危うく橋から落ちかけた。
「まだ人生はこれからだよ!何があったかは知らないけど、自殺、駄目、絶対!!」
童顔で巨乳のその少女は当馬に捲し立てた。



「ゴメンゴメーン、なんか虚脱した感じだったから、こう、フラッと飛び降りるんじゃないかと思って〜」
吾根脇迩迂と名乗った少女は、当馬の背中を叩きながら謝罪をした。
それから根掘り葉掘り聞いてきて、当馬が気づいた時にはコトの話を全て吐き出した後だった。
(なんで俺、知らない奴に……)
「そーか、そーか、恋も部活も敗れちゃったのか。いや〜青春だねぇ。お姉ちゃん、泣けちゃうなぁ」
「一歳しか違わないんだろ」
「何言ってるの!思春期の一年は大人の三年ぐらい違うんだよ〜!よし、肉食いに行こう、肉!」
勢いに流されて焼き肉屋に連れてこられて暫く
誘った当の彼女が帰ってこないコトに、当馬は不信がっていた。
(もしかして、食い逃げか?)
などと思った頃、ひょっこり現れた迩迂の知り合いが居たらしく、自分をその人達の所へ連れて行こうとした。
ハッキリ言って、そんな場に自分が行っても浮くだけだと思うがと当馬は思うが、そんなコトを言って聞く人間なら
今頃自分はこんな所にはいないだろうと、諦めて迩迂について行った。
「…………」
筈なのに。
(どうして俺は砂奥と乙古がキスしてる様を見なきゃならんのだ)
「あ、当馬じゃん。なんでこんなトコにいるんだ?」
(オマケに一野進もいるし。というか、砂奥は彼氏の友人の前でキスしたのか!?)
大根RUNをしてる当馬をよそに、訓は一流をはね除けて怒りを露わにした。
「いきなり何をするんだ、いちる!!」
「キス。訓と、キスした」
「な、な……ッ、そういうのは、そういうのは……俺達は恋人じゃないんだから、違うだろう!」
その訓の言葉を当馬は確かに聞いた。二人は恋人じゃない?当馬の頭に次々と疑問が巡る。
いや、それよりも二人が恋人じゃないなら、自分の悩みはなんだったのかとも。
「はぁ〜…」
由羽は訓と一流の様子を見て、溜息をつくと当馬に近づいた。
「一野進、これは一体……」
「なんだって?乙古には負けたが、俺には負けないだと!?上等じゃないか!!」
「は?お前、何を言って……」
「いいだろう、今すぐ勝負してやろう。表に出よう、今すぐ出よう。先輩には二人の勝負の証人になってもらおう!!」
一気に捲し立てた由羽は、当馬と迩迂を引き摺って、焼き肉屋の外へ出て行ったのであった。
残ったのは訓と一流である。
「………」
「まずは謝る、ゴメン、訓」
「………」
肉が既に炭になったテーブルの横で、一流は訓に頭を下げた。
「なんで、こんなことしたんだよ」
「私だって、したいもの」
「何を……?」
聞き返した所で訓は一流に引き寄せられた。
「訓と密着したい」
「……偶にしてるだろ。勝手に腕くんだり、前からずっと」
「もっと、近づきたいし、もっとくっついていたいし、もっとギュッと抱きしめたいんだよ」
うっとりとした表情を見せる一流に、訓の鼓動も高まった。
「あの人みたいなキャラなら、訓とずっとこうしてられるかな?」
「……あんないちるは想像出来ないぞ」
「努力する」
546すなおく一る×おとこくん<霜月>:2007/09/24(月) 01:19:29 ID:2Vpp+WCe
「やめてくれ」
「じゃあ、たまにで我慢するから、その時は訓も抱きしめ返して」
気持ちを確かめ合ったあの日以来、以前ほどくっつても邪険には扱わなくなったものの、
訓は恋人じゃないという線引きの元、決して自分から抱きしめてはくれない。
それが一流には不満だった。愛するのは結構だが、愛し合いたいものだ。
「いや、それは……できない。怒ってるんだからな。勝手に……キスして」
「こんな場所だから?ファーストキスは大事にしたかった?抱きしめ合うのだって、場所を選びたい?」
「う…………そう、だよ」
見透かされてることに、拗ねながら、そこまで分かってるならと訓は責める。
「私はいつだって、どこだって、構わないのにね」
「…………ゴメン」
「そう思うなら今すぐ告白して。今すぐ私を訓の彼女にして」
訓は言葉に詰まる。一流の目にはうっすら涙すらある。
一流に涙を流させてまで、自分の矜恃を貫く必要もないだろうと内なる声が囁く。
「困らせちゃったね、ゴメン」
「違う、俺がわr…」
訓の唇に一流の人差し指が添えられる。
「待つって言ったでしょ?」
「そんなのは……」
「あの日を汚さないで。私はキスよりも、抱きしめ合うことよりも、あの日の思い出が何よりも綺麗で美しくあって欲しいと思ってるから」
「いちる……」
訓は一流を抱きしめようとして…止めた。その代わり、いちるのしなやかな髪をそっと梳く。
「ぁ……それ、いいかも」
「え?」
「しばらく、それで我慢しよう」
訓の手が止まると、一流は訓に続けるよう催促した。
「キスも、ギュッとしてもらうのも我慢する代わりに、これして欲しいね。いいでしょ」
「……最初に無理難題を言った後、本命を言うのが交渉術なんだってな」
「交渉なんかしないよ。私はいつも訓には体当たりだものね」
抱きしめ合う二人をよそに、食べ放題の時間が終わったことを告げに来た店員は声をかけれずに困っていた。












◆予告(ネタ)
男くんの前に立ちはだかる、巨乳おねーさん!
焦る素直クール。もはや身体をつかって繋ぎ止めるしかないのか?
だがあくまで高校進学までお預けを貫く男くん
戦え素直クール!子孫を残す為に!!
次回を待て!!

(放送の内容・予定は変更する恐れがあります。ご注意ください)
547名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 01:44:11 ID:FSk+QK4k
一番槍GJ!!
548名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 01:45:46 ID:D3O3clTp
あとちょっと早ければリアルタイムで見れたのにちょいと残念だ


>>540
超絶乙!
しかし当馬の名前がまんますぎてカワイソス
549名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 01:49:42 ID:Ke3EcB11
1の親友
当て馬憐れ
姉は巨乳


もっと新キャラをみてみたいぜw
550名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 03:19:39 ID:2Ek37eMr
>>540
GJ!
大根RUNってwww
しかも初代JOJO伝説の誤植www
551名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 04:05:03 ID:LGFPoWEU
由羽があらゆる意味でイケメンすぎる
やばいな素晴らしいなおもしろいなGJすぎるな
552名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 11:34:26 ID:5Vadq2qG
面白すぐる、GJ!

予告吹いたw
553名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 13:04:39 ID:sGeh4hwJ
やべえ面白いwww
早く続編をGJ!!
554名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 20:29:02 ID:ECJHDMh6
一流って名前の眼鏡っこメイドがでてくるマンガがあってな、
今まで俺の中では一流って名前のおにゃのこといえば、その子のことだったんだ。

でも今日からは・・・・




GJ !!
555名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 20:36:11 ID:85lnt0UF
一流……ナポレオン文庫を思い出すのはさすがに俺だけだろうな……
556名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 17:57:02 ID:xj94x19v
>>555

よう、俺
557名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 22:41:48 ID:5aw8wMCg
メジャーなのは、逆境ナインの高田の姉貴じゃね
558名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 23:32:19 ID:j94KwCwF
>>554
あの人間離れしたスーパーメイドのことかえ
559名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 23:39:57 ID:1ViBgqdu
ご主人様のチンコがすごい伸びたことしか覚えてない
560名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 04:03:13 ID:o1+Fww1B
保守
561名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 20:04:18 ID:YfPn//pl
出会い系で逢えないのって理由がある。

http://550606.net/
562名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 21:42:16 ID:8bJ+e9QN
>>557
100ッパーどうでもいいが
高田二流(ジロー)の姉は一流美

一流に美しいと書いてイルミだっっ!(背景ベタフラ)
563名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 23:59:18 ID:osyn2CKL
ちなみに呼ぶ時は「ネーチャン」をつけるとモアベター
564名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 07:01:07 ID:D+xmGBVg
はぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜


一流波動拳!!!
565名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 08:56:46 ID:s2bTb6h0
あと1時間ほどで投下します。
本文短か目、エロのみです。

ちょっと実験的な要素を含んでいるので、
素直クール分が少ないかもしれません。
気に入らなかった方はごめんなさい。
566言葉攻め型素直クール:2007/09/29(土) 09:31:35 ID:s2bTb6h0
-言葉攻め型素直クール-

「巧のココ、こんなにガチガチになってる」
「う、くっ……」
 巧(たくみ)と呼ばれた青年の上に、馬乗りになった少女がひとり。
 二人とも一糸纏わぬ姿で、ベッドで絡み合っている。
 青年の方は両手と両足をベッドの端に縛り付けられて身体の自由を奪われ、少女の方
は、青年の太ももあたりに腰を落とし、熱っぽい視線を彼に向けている。
 青年に比べると、少女の身体はひどく小柄だ。傍目には歳の離れた兄妹のように見える。
 やや長めの漆黒の髪の毛を背中に流し、同じ色の瞳を僅かに潤ませ、半開きになった
桜色の唇からは熱い吐息が漏れる。
 凹凸が少なく、折れそうなくらいほっそりとした身体は、透けるようなミルク色。
 若干汗ばんだ肌が、しっとりとした質感を感じさせ、痩せているのにどこまでも柔ら
かそうな印象を与える。

 彼女は小さな手で彼の下半身を撫で回し、口元に薄くいたずらっぽい笑みを浮かべて
妖しく囁く。
「すごいイヤらしい。熱くて、硬くて」
「千紘っ…やめ…うぅ!」
 巧は自由を封じられた身体をねじり、必死に彼女の手から逃げようともがく。
 しかし、千紘と呼ばれた少女はいたずらっぽい笑みを浮かべたまま、更に彼を追い詰
める。
「そんなこと言っても、巧のココはやめてって言って無いよ?」
「ぅあッ!」
 いきり立ったペニスの雁首あたりを指でくりくりといじられ、巧は思わず声を上げて
しまう。
「こんなに大きくしてるって事は、気持ちいいんだよね?」
 雁首を人指し指と中指で挟むようにして撫で、千紘がうっとりとした様子で囁く。
「すごい硬い。木の棒みたい」
「くッ…う」
 白魚のような指で敏感な所をいじられ、巧の腰が跳ねる。己の意志とは無関係に陰茎
がビクビクと震え、快感の度合いを彼女に伝えてしまう。
 そんな彼の様子に千紘は満足したように微笑み、独りごちるかのように呟く。
「イヤらしい形だよね、ペニスって。こんな、肉で出来た銛みたいな形して」
 一旦言葉を切り、千紘は巧を真直ぐ見つめながら続ける。
「この肉銛を子宮まで突き挿して精液を出すなんて、本当、精液注入棒だね」
「んなっ……」
 あまりの表現に、巧は呆然と千紘を見上げる。二人の目が合うと、それを待っていた
かのように千紘が口を開いた。
「その精液注入棒を、こんなに硬くしてるってことは、私に精液を注入したいってこと
だよね?」
「……ッ!」
 その言葉に、巧は思わず目を逸らした。
「私のナカに精液を注いで、私を孕ませたいってことだよね? ね、巧?」
 巧はもはや言葉が出ない。
 千紘は相変らずいたずらっぽい微笑みを浮かべたままだが、息が徐々に荒くなり、巧
の太ももに乗せた腰が、時折身震いするのように震えている。
 巧は顔を逸らしたまま、己の太ももが熱い液体で濡らされていくのを感じ、彼女が我
慢の限界に来ていることを予感した。
「ペニスを硬くして、生殖行動の準備を完了させてるなんて、私に対して性的に興奮し
て、私と生殖行動をしたいってことだよね? 私と子作りしたいってことだよね?」
 どんどん過激さを増していく千紘の言葉に、巧はもう何と答えていいか分からず、た
だただそっぽを向いて恥ずかしさに耐えることしか出来ない。
 はあはあと荒い息が聞こえる。それが千紘の息なのか、それとも自分の息なのか、巧
にはもう分からなくなっていた。
567言葉攻め型素直クール:2007/09/29(土) 09:32:59 ID:s2bTb6h0
「ね、巧。見て?」
 巧の太ももから糸を引いて、千紘の腰が上がる。
「私のココ、何もして無いのにこんなになっちゃった」
 言いながら、千紘はほっそりとした腰を卑猥に前に突き出し、愛液でびしょ濡れになっ
た秘所を巧に見せつける。
 ぬかるんで、トロトロに溶けたそこは、止めど無く愛液を吐き出し、新たな糸を巧と
の間に引く。
「私のココも、巧と同じように準備完了だよ?」
「千紘……ッ」
 蕩けた表情で微笑みかける千紘に、巧が震える。既に限界まで張り詰めているはずの
己のものが、更に大きくなるのを感じた。
「巧。子作り、しよ?」
 千紘が潤んだ瞳で真直ぐ巧を見つめ、情欲に染まった笑みを浮かべて腰を落とす。
「…んっ、はっ」
 巧の剛直が、驚くほどスムーズに千紘のナカに飲み込まれて行く。サイズ的にはひどく
きついはずなのに、内ももまで濡らした千紘の愛液が豊富な潤滑油となって、いきり立っ
た肉棒を飲み込んで行く。
「あッ…んぅ…。入ったよ、巧」
 1/3ほど残しているが、巧のペニスは千紘の膣内を埋め尽くしていた。先端に抵抗を感
じ、それ以上入らないことを巧に伝えてくる。
 火傷しそうなほど熱い膣内は、時折キュッキュと締まり、巧の肉棒に刺激を与える。
まだ全然動いていないのに、散々焦らされたのもあって、巧は早くも射精感が込み上げて
来るのを感じていた。
「動くね? んッ…」
 そんな巧を知ってか知らずか、千紘が腰を振り出す。小さな手を巧の胸板に置いて、
千紘が小刻みに腰を揺さぶる。
「くぁッ…」
「あああ…っ。きもちぃい…」
 奥歯を噛み締めて射精を堪える巧の上で、千紘が歓喜の声をあげる。
「ああっ…いいよぅ…。奥すごい」
 蕩けた表情で、小さな身体が震える。信じられないくらい硬くなった肉棒が膣内を擦り、
千紘の腰が快楽に溶けて行く。
「あっ、はっ、ん! ああ…きもちいっ!」
 愉悦の声を上げ、小さな身体が跳ねる。小刻みだった腰の動きは、今や前後に大きくスラ
イドするような動きに変わり、ぐちゅぐちゅと結合部から卑猥な音が響く。
「ふあっ…、あッ…きもちいいぃ。腰溶けちゃう…」
 瞳を潤ませ、半開き口から熱い吐息と共に涎をたらしながら「気持ちいい気持ちいい」と
千紘が連呼する。
「千紘ッ出るッ…」
「だめっ、まだだめぇ!」
 トロトロに溶けた膣内を散々出入りしたペニスは、もう限界だったが、千紘がかぶりを
振って制止する。
568言葉攻め型素直クール:2007/09/29(土) 09:35:02 ID:s2bTb6h0
「私もッ、もう少しだからぁ!」
 言いながら、千紘がより激しく腰を振り始めた。
「あッ! あーッ! おく、突いてッ、きもちぃッ」
 亀頭に子宮口を押し付けるような動きで、千紘が腰を振る。
「んッ! ああッ! そこっ、そこイイッ!」
 ぐりんぐりんとねじるような動きを加え、より強い刺激を求めて貪欲に快楽を貪る千紘に
巧のペニスがより一層硬度を増していく。
「こし、おくッ、きもちぃッ! あああッ! ああーーッ!」
 頭の中が情欲一色に染まり、千紘はもう、巧のペニスで快感を高めて行くことしか考え
られない。
 腰の動きが跳ねるような動作になり、お互いの腰がぶつかって、ぱちゅぱちゅと溢れた
愛液が飛沫を飛ばす。
「あッ、あーッ! あーッ! きもちぃよぉッ、あッ、ああああッ!」
 1/3ほど残していたはずの肉棒が、今や完全に千紘のナカに入っている。その分、激しく
子宮を揺さぶられ、千紘が強すぎる刺激に悶える。 
「あああッ! ひぁあッ! おくッ、すごいよぅ! ああーッ!」
 髪を振り乱し、がくがくがくがくと一心不乱に腰を打ち付け、千紘は快感を貪る。
 子宮口をこじ開けられそうな勢いで肉棒に突かれ、頭がどうにかなってしまいそうだった。
「あッ! ふあああッ! イ、イキそ! イキそ!」
 喉の奥まで響くくらい子宮を突かれ、どろどろに溶けた腰の奥から一際大きな快感が
千紘を駆け抜ける。
「イクッ! イクッ! ああああイクぅッ!」
「駄目だッ! 出るよッ……! ぅぅううッ!」
 限界まで溜め込んだ精液が、子宮にぶちまけられるのと同時、
「あッ! ああああああーーーーッ!!」
 千紘が絶頂に達して仰け反った。
 ぎゅうぎゅう締め付ける膣壁に反発するかのように、巧のペニスがビクビクと跳ね回り
次々と灼熱の弾丸を子宮口に浴びせ続ける。
「ああッ! 精液きもちいいッ! またイク! ああイクぅぅ!!」
 待ち望んだ精液の注入に、千紘は快楽の連鎖を起こして再び登りつめてしまう。
「──ッ! ──ッ! ──ッ!」
 激し過ぎる快感に、千紘は声も無く仰け反る。彼女の小さな身体の中を、快感が逃げ場を
求めるように駆け巡り、神経を快楽一色で塗りつぶしていく。
 四肢がバラバラになりそうなほど強いオルガスムスに、身体の自由が利かずにビクビク
と痙攣したかのように震わし、耐える。
「……あッ! はあッ……!」
 永遠とも思える性感の津波が過ぎ、千紘は小さな身体を彼に預け、意識を手放した。

 * * * * *
569言葉攻め型素直クール:2007/09/29(土) 09:36:45 ID:s2bTb6h0
「あー、これはやばいな。今度から無しね」
 巧がベッドに腰掛けながら、独り言のように呟く。
「私は気持ちよかったよ?」
 背後からかけられた満足げな声に、巧は苦笑して振り返る。
「いや、俺もまあ気持ちよかったけどさ、もうこれは無しね?」
「なんで? 気持ちよかったならいいじゃない」
 千紘は未だ全裸で寝転んだまま、不思議そうに首を傾げる。
「それに、ちょっと言葉攻めしてみてくれって言ったの、巧のほうじゃない」
 エッチがマンネリ化してきたから、ちょっと変わったプレイをしてみないか? と提案
したのは巧の方だった。
 それを指摘され、巧はバツが悪そうに頭を掻く。
「まあそうなんだけどさ…」
「私なんて、気持ちよすぎてまだ腰が立たないのに」
 千紘がうつ伏せになったまま、楽しげにぷらぷらと足を揺らす。
「明日、仕事休みで良かった。こんなに激しくされたら、仕事どころじゃなくなるし」
「まあ、満足してもらえたようで、なりよりだ」
 気恥ずかしくなって、巧は思わず顔を背けた。
 実の所、気持ちよすぎてクセになりそうだからもう止めておこうと思っているのだが、
彼女には口が裂けても言ってはならない。
 あの小さな身体のどこに詰まっているのかと思うほど、彼女の性欲は旺盛だ。そんなことを
言ったら、文字通り枯れるまで付き合わされる。だから、
「とにかく、もうこのプレイは無し。やっぱり普通が一番だよな」
 などと言ってみる。が、
「じゃあ、普通でもう1回だね?」
「おわっ!?」
 いつの間に復活したのか、千紘が後ろから覆い被さってくる。しかも、
「あっ! お前! ちょ、待て!」
 慌てて振りほどこうとするが、時既に遅し。巧の両手が後ろ手に縛られていた。
「巧は嘘をつく時、いつも目を左に逸らすから、バレバレだよ?」
 くすくすと微笑みながら、千紘が覗き込むように首を傾げる。
「いつもより全然大きかったし、精液だっていつもより多かったし、巧もこのプレイ良かっ
たんでしょ?」
「そ、そんなことはない。だからほどきなさい」
「ほら、また目を逸らした。ね、巧。もう一回しよ?」
「いや、ちょ」
「もう硬くなってきてる。興奮してるんでしょ? ね?」
 熱に浮かされたように迫る千紘に、「もう言葉責め始まってる?」と聞こうとした時、
その口を塞がれて押し倒された。

終わり
570言葉攻め型素直クール:2007/09/29(土) 09:37:40 ID:s2bTb6h0
以上です。

また思いつきで書いたものな上に、また低身長で平らな身体つきですが、
楽しんで頂けたら幸いです。
571名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 12:54:50 ID:kNhqvHfV
超GJ!
いいねぇ。言葉攻めw被虐心をくすぐられるというかw
572名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 13:13:31 ID:9XiK4gfF
相変わらずエロイの書くのうますぎじゃね?
GJ
573名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 18:24:20 ID:o5js+i/9
>>570
GJ!
ちっちゃい子は好きですか?
574名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 03:33:09 ID:UuaJw+6G
バイト中なのにフルボッキした
575名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 08:37:00 ID:opB6yee0
しーん
576名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 10:15:25 ID:Qm+hvaRT
お題「文化祭で男装女装」
577名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 10:28:44 ID:CsQN1RcR
>>570
おおーGJです
ひとつ問題があるとするなら俺が今電車の中でたって(両方の意味で)いることだ
578名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 11:38:00 ID:q8baP2IW
つまり、低身長の子には吊革ではなく手すりが必要である、と身をもって主張している訳だな?
579名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 11:41:29 ID:q8baP2IW
書いた後で気がついたのだが、手すりというのは
580M+14FhJ5:2007/09/30(日) 14:36:10 ID:yafvttqE
やはり、皆さん文章力がすごいですね、自信をなくしそうです。
マンネリな時ってどうしてますか?
581名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 14:44:13 ID:Bn3Qls32
初心に帰るかな

変にこったのを書こうとしないで
VIP風に名前注記いれて地の分なしで1シチュ書いてみたり
展開を広げるとか

ただし、これは完全に駄文なので投下はしないw
582名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 16:31:40 ID:7Ue+2zEb
書かない。他のことをやる。しばらくすると意欲が戻ってくる。
583名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 18:28:36 ID:NSsxm6vq
些細な疑問だけど…

コテやトリをつけるきっかけって何なんだろ

複数のスレで名を馳せているコテ見て思ったけど
584すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:17:50 ID:XHF3qAAu
微エロ。前回出した巨乳ねーさんは出てきません、あしからず(オイ






年も明けて、三学期も中程を過ぎた。まだまだ冬の寒さが続き、そんな時期の一時間目の体育はハッキリ言って寒い。
こればかりは鍛えようがないと思う。もっとも、身体を動かし始めればそんなのはすぐ忘れてしまう。
気づけば、長袖の体育着を脱いでTシャツになってバスケットに興じてる自分たちが居る。
「当馬、パス!!」
と言ったクラスメートにはもうマークが付いてる。バスケ部の奴だ。少し手加減しろ。
「なろっ!」
自らドリブルで切り込んでいった俺に、相手チームは反応しきれてない。
「ホッ!」
俺のレイアップシュートが決まり、チームの歓喜が迎える。
「は〜」
息をつきながら、隣のバレーをしてる女子の姿が目に入る。
気づかない内に俺は砂奥のコトを探してるコトに、自分でも苦笑する。
こんなに諦めが悪い性格だったとは。
(……なんだ?見学か?)
バレーに参加せずに、端に彼女の友人である伴田千紗(トモダ チサ)と一緒に話している。
砂奥は運動嫌いではない。チーム競技も苦手ではない。いつもなら皆の中心になってる筈だ。
(ま、女の日なのかも知れんな)
そう納得して、俺はボールを貰おうと手を挙げた。



俺と砂奥は学校ではもう一つ接点がある。同じ風紀委員会に所属してるということだ。
「おい、3組の砂奥は?」
「来てないだ。俺、呼んでくるよ。隣のクラスだし」
「まったく、風紀委員が風紀乱してどうするんだ……」
小言が多い委員長から逃げるように俺は教室を後にした。



砂奥の教室には彼女の姿は無かった。
それより気になったのは砂奥のコトを聞くと、他の生徒が微妙な顔をすることだ。
「砂奥さんなら、部活いったよ」
そう言った生徒は確か前までは砂奥のコトを一流と呼んでいた筈だった。
「なんだ?」
まるで、砂奥に関わりたくないとでも言うかのように、そくささと去っていく生徒に疑問を感じざる終えない。

バドミントン部は体育館で練習をしていた。
二人一組になって、ラリー……の筈だが、砂奥は相手が居ない。
いや、人数は偶数なので出来ないコトは無いのだが、組んでいない。
部長らしき生徒が相手の交代を促すが、その輪から砂奥が外れている。
「どうなってる?」
砂奥はバドミントン部でも中心人物だ。それは戦力としてだけでなく、人の輪の中にでもだ。
それが、こうもハブられている。
「…………すまない、砂奥はいるか?」
「ッ!?」
俺が声をかけると、バドミントン部の連中がみんな俺を向く。
否、俺の発した砂奥の名前に反応したんだ。
「……風紀委員、集まらなきゃならんのだが。砂奥、聞いてなかったか?」
「……聞いてないね」
「各クラスの委員長が伝えてる筈だが」
「それなら伝わらない筈だよ。部長、抜けていいかな?」
砂奥の言葉に、厄介払いが出来たとでも言うように部長は頷いた。
585すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:20:05 ID:XHF3qAAu
「…………砂奥、あれはなんだ?」
「なんでもないよ。少し嫌われるようなことしちゃっただけだね」
「そうなのか?女ってのは陰険だな」
俺は砂奥と並んで歩こうとするが、どうにも砂奥に引き離されてしまう。
「おい、急ぎすぎじゃないか?」
「……遅刻しちゃってるからね」
「まあ、そうか」
てっきり俺と一緒に歩きたくないものだと思ったり。
「………」
「どうした?」
風紀委員が集まってる三年生の教室に行く途中、急に足を止めた砂奥は理科室を見ている。
「ゴメン、先に行ってて欲しいな」
「なんで?」
「トイレ」
「…………理科室睨みながら、か?」
俺はそれ程鈍くないと自負している。
「砂奥、何か変だな。なんでこんな時間に理科室に電気付いてるんだ?」
「…………」
「関係あるのか?お前の周りが変なのと」
「なんのこと?」
シラを切ろうとする砂奥に、俺は少々苛立った。故に黙って理科室の扉に手をかけた。
「鍵、かかってるの……かッ!!」
強引に扉を開ける。当然ながら鍵は壊れた。結構大きな音がしたが、周りに人がいなくて助かった。
「……で、中で何をやってい…る……!?」
突然の闖入者である俺に向けられた視線は四つ。
その全員が女性。中には俺のクラスの奴もいた。
「イジメか」
一人の女生徒を三人の女生徒が囲んでいる。囲まれてる女は髪がボサボサで、囲んでる女の手には塩酸が握られていた。
その典型的とはいえ、ドラマか漫画並の光景に感嘆すら覚えたが、生憎俺は正義感なら人並み以上にもってると思っている。
「そこを動くな。今、先生を呼んで……」
「やめて!!」
叫んだのは虐めてる女達ではなく、虐められてる女だった。
「………」
「條、大丈夫!?」
俺の横を砂奥が駆けていく。“條”と呼んだ虐められていた彼女の髪を撫でる砂奥と入れ違いに
虐めていた三人は理科室から出て行く。そのすれ違い様に、「当馬、アンタこれ以上関わらない方がいいよ」と一人が言った。
「まぁ、こういうことなんだね」
「砂奥、こういうコトは隠さない方がいい。何か脅されてるというなら……」
「やめて!関係なんでしょ、アンタなんか!!」
條と呼ばれた女が金切り声を上げる。
「俺の親父が警官なの知ってるだろ。見過ごせないな、こういうの。あの三人主犯じゃないだろ」
顔を見た限りでは特に名前は思い出せない連中だった。とても砂奥のクラスメートや部活の連中に影響力を及ぼせるとは思えない。
特に砂奥は人気者だ。彼女を敵に回せば、多くの人間が彼女の味方をするだろう。
つまり、この件の主犯は砂奥以上の人望を持ってるか、それ以外の何らかの権力を持ってる人間。おそらくは後者だろう。
「……わかった、お前達にはもう関わらない」
勝手に俺は調べさせて貰う。
「当馬くん……」
砂奥は賢い女だ。俺の言外の意味を汲み取ってるのだろう。そして賢いが故に、彼女は俺の行動を制限できない筈だ。
まあ、尤も、俺も正義感だけで動いてる訳じゃない。
単に惚れていた女がこんな目に遭ってるのが我慢できないだけだ。
加えて、こんなこと乙古は知らないだろう。故に、俺が力になってやりたい。
それだけのコト。


「3組の條?そりゃ、お前、ある意味有名じゃん」
手がかりが少ないと思われた今回の件は、部活の友人への聞き込みであっさりわかってしまった。
「下尾條だろ?ホラ、駅前のデパートの」
「ああ、あの会社のお嬢か。ん?でもあの会社、潰れた筈だ」
「だから有名なんだろ」
下尾條(モトオ ジョウ)。下尾デパートのオーナーの娘……だったが、大手企業の地方進出の煽りを受け、父親の会社はこの前倒産したばかり。
586すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:22:08 ID:XHF3qAAu
地方紙にその記事が載ったことは俺の記憶にも新しい。
「どんな奴だ?」
「へ?ん〜俺も人づてにしか聞いたことないからなぁ。3組の奴に聞けば?」
それは出来ない。砂奥のクラスの奴はほぼ全員が大なり小なり彼女を虐めてると思われるからだ。
「なんでもいいから、何かないか?」
「うぅん……最近はしおらしくなったって話だぜ、流石に」
「“最近は”ってコトは昔は違うのか?」
「プライドが高いっての?そんな話は聞いたことあるな」
なるほど。恨みをかう機会はあったってことか。
「確かさ、夏ぐらいに砂奥と言い争いになってなかったか?」
「何?」
砂奥と下尾が?
「そうそう、そのコトで結構下尾は根に持ってたらしいぜ。砂奥の悪口は全部下尾発信って噂になった位」
「そうなのか……」
じゃあなんで砂奥は下尾を……いや、砂奥はああいう性格だ。困ってる奴には手を差し伸べるか。
そのせいで、一緒に虐められることになった……か。
虐められると言っても、露骨なコトはされてないみたいだ。状況証拠があれば砂奥は訴え出すだろうからな。
「お前、噂に疎いからなー」
「……その言い争いの原因は?」
「ん……なんだったかなあ?思い出せないな」
「そうか」
それから何人か……砂奥と下尾に近すぎず、遠すぎない連中に的を絞りながら聞き込みを開始したが、さしたる収穫は無かった。







水泳部は冬は走り込みだけだ。しんどいけど。
私、伴田千紗は友人である砂奥一流が帰るのを図書室で待っていた。
一流は今、虐められている。みんなから除け者にされている。
本当はみんなだってそんなことはしたくないんだろう。一流を腫れ物のように扱うことはあっても
直接傷つけたり、物を隠したりとかはしてない。だから、一流もみんなを心の底までは嫌ってないと思う。
「…………読み終わったぁ〜」
図書室にいるからといって、小難しい本を読んでるわけじゃない。
一流なら難しい哲学書を澄ました顔で読んでるんだろうけど、私には無理。マンガが精一杯。
……横山三国志だけど。
なんで図書室の本ってこういうしかないんだろう。もっと女の子向けのマンガだって入れてくれていいじゃないの。
このマンガ、同じ顔ばっかりで良く分かんないのよね。古いし。なんか李通って人、三回ぐらい死んでなかったっけ?
「………」
時計を見る。もうバド部も終わった頃かしら?なんて思ってると、放課後の人の居ない図書室に来入者。
「……レコ」
炎出 麗子(ヤンデ レコ)、一流を虐めてる犯人。
「千紗、もう水泳部は終わったでしょ?一緒に帰りましょうか?送っていくわ」
レコは私がここで一流を待ってるのを知ってて、そんなことを言う。
「……レコ、私は一流の友達をやめるつもりないから。わかってるでしょ?」
「……アンタも的にしてやるわよ」
腕を組み、高圧的な態度をで私を脅すレコ。切れ長の目を細めると凄味が増す。
「そんなことしたら、一流はアンタのこと一生嫌うわ」
「…………」
「やめなよ、レコ。アンタを見てるの、私辛いよ」
だからといって、私には解決策なんて浮かばない。
せめて私だけは学校で一流の味方でいることぐらいしか、出来ないんだ。


バドミントン部に言ってみると、一流は委員会に行ったっきり戻ってこないらしい。
そんなわけで風紀委員の一人を捕まえたが、隣のクラスの当馬が一流を向かえに行ったが、結局当馬一人で戻ってきたらしい。
(まさか……)
一流に何かあったんじゃないか……私は柔道場に向かって走っていた。
587すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:24:35 ID:XHF3qAAu
「当馬ッ!」
丁度、柔道場から出たところの当馬に敵の用に詰め寄る。
「ん?な、なんだ?」
「一流は!!」
「……砂奥がどうした?」
「それはコッチのセリフだ!!」
「待て、それじゃあ俺が砂奥に何かしたみたいじゃないか」
…………私の勘違い?いや、バド部から一流を連れ出したのは確か当馬だった筈だ。
「アンタは一流と一緒だったんじゃないの?」
「ああ、いや、砂奥は……下尾と、その……」
言い淀む当馬に、大体察しはついた。
「あ、そう。じゃあ一流がどこに入ったか……」
と訊ねようとした所で、携帯が震える。
「……校則違反だぞ」
咎める当馬を無視し、メールの着信を見ると一流からだった。
「美容院?なんでそんなところに」
一流はこの前髪を切ったばかりだじゃなかったっけ?
「………」
当馬は私の呟きに何やらしたり顔だ。コイツ、何か知ってるのか?
「一流に何かあったの?」
「いや……砂奥には何にもない」
一流には……條に何かあったのか。それで一流が付き添って……
「そう、悪かったわね。じゃ……」
「待て。お前は砂奥の味方なのか」
「味方とか敵とかあるわけないじゃない。私は一流の友達よ」






……訓の機嫌が悪い。
いつもなら一流ちゃんが待ってる時間に、一流ちゃんが来てないからか。
そんなことぐらいで、不機嫌になるな親友。
あ、一年が投げ飛ばされた。
ソイツはウチのホープなんだぞ、あんまり自信を失わせるなよ……
「次!!」
もはや道場は訓の勝ち抜き戦の様相を呈してきた。
「お願いします!!」
……無謀と勇気は違うぞ、一年。
あ、もう投げられた。
俺は、道場から唯一校門が見える窓を覗く。まだ一流ちゃんは来ていない。
このところ早かったんだけどな。部活が早く終わってるらしい。
「由羽!ボーッとしてるな」
「……御指名か」
ま、訓の相手出来るのは俺ぐらいだろう。心なしか他の部員の視線も俺達に集まってる。
「よーし、本気でやるかね」
「稽古はいつも本気でやれって言ってるだろう!」

結局その日は一流ちゃんは来なかった。
「今日は塾無いんだろ?ま、一流ちゃんだって友達付き合いもあるさ。訓、久々にゲーセン行こうぜ」
今度は気落ちしている訓の肩を、叩く。
一流ちゃんは友達と一緒にいるらしい。訓の携帯にメールがあった。
「……そうだな」
「そうそう、お前も親友を大事にしやがれ」
訓も乗り気になったところで、先に帰ってた後輩が慌てて走ってきた。
「せ、先輩〜〜!!」
「あん?どうした!」
「乙古先輩、なにかやったんッスか!?ヤバイッスよ、なんかチンピラっぽい人が学校の周りで先輩のコト聞いてます!!!」
…………ハイ?
588すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:26:33 ID:XHF3qAAu
「俺のことを?」
「何したんだ、訓。一流ちゃんに近づいた男を投げ殺したとか?」
「知らん。そんなことしてない」
あ、その例えは否定しないのね。
「その男は何て聞いてるんだ?」
「いや、先輩がどこにいるかって。あと特徴とか、住所とか……」
おいおい、住所はヤバイだろ……
「……裏門から出るか」
「そうだな」
俺達は賢明な判断をした……つもりだったが、
「あっれぇ〜、さっきの坊主じゃん。なんでこんなトコにいんの〜」
後輩に向かって、チンピラ男がヘラヘラを近づいてくる。
長髪でヒョロい男だ。これなら俺か訓なら無傷で撃退できる。……刃物とか持ってなければ。
「……俺が乙古訓だが」
「先輩!?」
ビビる後輩を庇い、訓は前にでる。いいねぇ、男らしいじゃん。
「コイツ、知ってるのか?訓」
「知らないな。アッチも知らないんじゃないか?知ってたら俺の特徴とか聞いてまわらないだろう」
「なる」
頷いた所で、光が奔った。
「!?」
カメラのフラッシュだ。
「ん〜もう用事はすんだわ、じゃあな」
使い捨てカメラをしまいながら、チンピラ風の男は気味の悪い笑い声を立てて踵を返した。
「おい!!」
「あんだよ、ガキが!やんのか!」
チンピラが凄味を効かせる。が、正直強いとは思えない
「……やってやろうか?」
「よせ、由羽。怪我でもさせてみろ。部の問題になる」
「ガキィ!舐めてんじゃねーぞ!!」
自分達が勝つこと前提で会話をするコトに、苛立ったチンピラが怒鳴り声を上げる。
「……俺の写真なんかどうするつもりだ?」
「別に俺がどうこうしようってわけじゃねーよ。お嬢が必要だってんだ。アレ?これって言っていいんだっけ?」
結局俺達はそのチンピラを見送ることしか出来なかった。
「……面が割れて困るようなことはしてきてないつもりだ。気にするな、由羽」
そんな頭のいい奴には見えなかったぜ、訓……





いよいよ、周りが冷たくなってきた。給食の時間も私と一流と條の三人だけでポツンと一緒に食べている。
「…………ごめんなさい、砂奥さん、伴田さん」
「何でいきなりあやまってるのかな」
耐えきれずに條が言うと、一流は意にも返さずにスープを飲んだ。
「一流はさぁ、彼氏とはどこまでいっちゃってるの?」
折角なんで普段なら周囲は聞き耳を立てるような話をふってみる。
「……うっ!!」
よよよ…と崩れるフリをする一流
「まだキス……みたいなものを1回しただけ……」
「……進展無し?」
「無し」
ホゥと溜息をつく一流は、女の私からみても美しい。隣の條も目を奪われているようだ。
「……もしかしてさぁ、一流の彼氏ってEDなんじゃないの?」
「そんなことないね!」
……フォーク折るな。
「………………」
沈黙するな。
「まさかね。まさか……」
「おーい、一流さ〜ん?」
589すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:28:01 ID:XHF3qAAu
「大きな乳がいるのよ。訓にくっつき過ぎなんだけど……訓は平然としてるんだけど……それってそういうことだったからなの?」
「伴田さん……砂奥さんが……どんどん青く……」
ヒィッと喉の奥でおののく條。なんかブツブツ言い始める一流。
私、結構この娘と友達やってるけど、こんなの見たこと無いよ……?
「一流、あ、あのさ……べ、別に胸に反応しないからってアレだとは限らないじゃない?他の性癖ってコトも……」
「ッ!?」
って、なにこの娘は昼食時に自分の胸を揉み始めますか!?!
「訓……小さい方が好きだったなんて……この二つの邪魔者、脂肪吸引すれば……ッ!!」
「待て、待て、待て、待て……どうして極端な方に走るかなぁ?一流らしくないわよ」
「……まだ女性に興味がないんじゃないんですか?砂奥さんの彼氏」
條……その言葉、今の一流は間違いなく歪曲して受け取る。
「そうか……だから由羽くんとあんなに仲がいいんだ。獅子身中の虫……ふふふ……そんな非生産的な関係認めない……」
「落ち着け、一流。勝手に彼氏をホモにするな〜。ハイ、深呼吸して〜」
……って、本当にしてるし。
「そうね、冷静に考えれば、私の胸を触ったときは動揺してたし、訓は健全ね」
「……キスしただけの清い関係じゃなかったの?」
しっかし、彼氏の話になると一流はコロコロ顔を変えて面白い。そんだけ好きなんだろう。
あ〜なんか見てて微笑ましいというか、羨ましいというか。
……ただ、1回ぐらい彼氏に会わせてくれてもいいんじゃないのと思うけど。
「一流ってさ、意外と独占欲強いよね〜」
「ですよね。話聞いてると、彼氏さん、束縛されてるんじゃないですか?」
「いやいや條さん。この娘さんはむしろ縛られてるでやんすよ〜。心がね。おっと、お後が宜しいようで」
「千紗ってば、誰の真似よ」
一流と條の口から笑い声が溢れる。周りは奇異の目で見るが、そんなものは関係ない。
「しっかし、彼氏くん羨ましいなぁ。この一流の肉体を自由に出来るんだよ〜」
「まぁね」
「否定しないのね……っていうか、それは自分の体型に自信アリってことかぁ〜」
「客観的に見ても、標準よりは上のプロモーションしてると思うけどね」
ごもっとも。というか、標準より上じゃ謙遜でしょ?
「その秘訣は?」
同姓として興味があるところだ。
「愛ね」
言い切りました、この娘。
「その心は?」
「訓に見られてると思うコト、訓を籠絡するコト、その為には半端な身体じゃ駄目でしょうってことだね。
 謂わば、生物としての雌の本能ね。その為の努力の結果よ。五カ年計画は伊達じゃないわ。尤もまだまだ磨きをかけるつもりだけどね」
おお〜と思わず拍手を送る、私と條。
なんかしょうもないコトのような、科学的な説明のような、訳が分からないが、説得力があるのは気のせいか。
ヒトラーの演説を聴いてたドイツ市民もこんな気持ちだったのかも知れない。
「アンタ、大物になるよ。私はそれについて行って美味しい汁を吸っていくわ」
「そんなことないよ、私だって千紗に助けられてる」
「そう?」
「そう。さっきみたいに」
はて?私何か言ったっけ?
「千紗の話を参考に、訓にあげるクッキーにクラゲ、スッポン、サソリのしっぽ、朝鮮人参、ガラナ、マムシ……etcを入れてみるね。
 これで訓も発情期の犬以上間違いなし。既成事実さえ作ってしまえば後は…いや、でも18にならないと結婚……
 憲法改正……まだ私には選挙権が……デモ?クーデター?……政治家を恐喝……合衆国化して、州法で……ブツブツ」
「死ぬぞ、彼氏。っていうか、そのクッキー味ヤバイって」
あえて後半は聞き流す。右から左に聞き流す。
「そうか……チョコレートならどうかな?もうすぐバレンタインだし」
食べさせるの決定ですか。食べさせる前に献血行かせたほうがいいな、彼氏。
590すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:30:42 ID:XHF3qAAu

「………」
「一野進センパイ、主将がアレなのって、やっぱり……」
答えるまでもない。一流ちゃんは今日も来ない。もう四日目。たった四日で訓が魂抜けた。
「喧嘩とか?」
「じゃないらしい。塾一緒にいってるし。今日は朝一緒に出たらしいし」
「だから今日の朝練に主将いなかったんだ……」
お前達もだいぶ訓のコトわかってきたな。
「訓、気になるならお前が一流ちゃんの学校行ったら?」
ダメ元で聞いてみる。
「な、なんで俺がそんなこと……」
そう言うと思ってました。
「……じゃ、俺が行ってくる。一流ちゃんの学校って可愛い子多いって言うし〜」
「何?お前、部活サボる気か!」
「Yes、I、do。説得は聞きません。告げ口したけりゃどーぞ。力ずくでは無理ですよ」
今のお前じゃ俺を止めれません。今は俺の方が強い!いつも強いけどな。
「由羽!」
「何?一緒に来る?」
「……行かん!」
今、ちょっと迷ったな。ヤレヤレ……頑固モンだねぇ。



ふむ。こうしてやってくると、なんかみんな俺よか頭よさげに見えるのは目の錯覚か?
っていうか、校舎綺麗だな、オイ。
「………」
なんか視線集めてないか?やっぱブレザーの集団の中に学ランは目立つのか?
……不信人物扱いされたりしないよな。
さて、一流ちゃんはどこにいるんだ?
下校時刻は終わっており、校門に人は少ない。が、グラウンドで活動してる運動部はメチャクチャこっち見てる……
「あの……」
「あ、いや別に怪しいもんじゃ……」
いきなり女の子に声をかけられて、俺ビックリ。
ハッ!もしや逆ナン!?
「もしかして一野進さんじゃないですか?」
なんと、俺のファンか!俺の顔も売れてきたな〜
「一流の彼氏の友達の!」
…………短かったな、俺の春も。
「ああ……俺が確かに一野進だけど」
「やっぱり。茶色い髪で一見軽薄そうな人って聞いてましたから!」
……一流ちゃん?
「私、一流の友達の炎出麗子って言います。よろしくお願いします」
「おう。あらためて……俺は一野進由羽だ。よろしく」
俺は手を差し出した。彼女は少し躊躇った後に手を差し出した。
どうもこういうのに慣れてないといった風で、大人しい深窓の姫君といった感じだ。
「乙古さんも来てるんですか?」
「いや、今日は俺だけ。っていうか丁度いいや、一流ちゃんって最近変わったコト無い?」
本人に聞くよりは周りに聞くのが聞き込みの基本って、ドラマで言ってたし。
「変わったこと……ですか?」
「そうそう。最近、一流ちゃんが訓の奴に構ってやんないからアイツ凹んでて。
 ま、あの二人はかなり愛し合っちゃってるから、一流ちゃんも一流ちゃんでこんなに構わないのは変だなーって」
俺が茶化したように聞いたのとは対照的に、レコと名乗った女の子は思案顔で答えた。
「…………実は一流、最近よくない所に出入りしてるみたいなんです」
「へぇ〜。どんな?」
「繁華街の裏にあるクラブなんですけど……色々悪い噂があって……その、クスリとか……
 その、お金を男の人に貰って、あの、そういうコトするとかって、そういうお店って、私よくわからないんですけど……」
言葉を選ぶように、赤くなったり、青くなったりしながら、レコちゃんは話す。
「あっはっは……面白く無さ過ぎて逆に笑えたよ、その話」
「…………ですよねぇ?私ったら、すみません。人をからかうのがこう見えて好きなんです。いけませんね」
彼女は口に手を当てて上品に笑う。
591すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:32:55 ID:XHF3qAAu
「一流ならもう帰りましたよ?私でよかったら学校案内しますけど?」
「……いや、いいよ。俺もこの学校にまるっきり当てがない訳じゃないんだ」
そう言って、レコちゃんの肩越しにランニングでコッチに向かってくる男を見据えた。
「一野進!?」
「やあ、当馬。……レコちゃん、今日はありがとう。また会いたいね」
「いえ、では失礼します」
レコちゃんは上品に会釈すると、校門を通りすぎていった。
「…………」
「一野進、なんでウチの学校に居るんだ?」
入れ違いに俺に話しかける当馬。どうやら部活中らしく、体育着で額に汗を流している。
「……今の女――炎出麗子ってどんな奴?」
「は?なんだ、いきなり」
「今日はさ、一流ちゃんのコトでここ来たんだ。教えてくれよ。お前、一流ちゃんのこと好きだろ?」
当馬は見ててコッチが困るほど狼狽し始めた。
「バッカでぇ、俺はカマかけただけだってのに」
「なにぃ!?」
「……黙っておいてやるから、教えろよ」
「……炎出は確か砂奥と同じクラスだ」
渋々といった表情の当馬は口を開いた。
「友達?」
「と、聞いている」
「どういう家の子?」
「……なんでそんなコト聞く?」
当馬は明らかに不快感を示した。
「派手なマニキュアしてたからさ。優等生が多いここじゃ珍しいかなーって。っていうか、先生に怒られないの、アレ?」
血のように赤いマニキュアだった。とてもじゃないが彼女が“演じていた”お嬢様とは釣り合っていない。
「……土建屋だ」
「ヤクザか」
「言うな。そういうので人を決めるのは良くない。砂奥だってそう思ってるから友達なんだろ」
「友達ねぇ……」
俺の独自に、当馬は妙に反応を示した。
その後の表情は難しかったパズルが解けた様な、それでいて出来たパズルの絵が想像とは違い、
まるでピカソの絵のように理解しがたい抽象画で驚いてるようだった。









いよいよレコが私に狙いを定めてきた。
今日、水泳部の部室に入ったら一面スプレーで真っ赤。
私個人じゃなくて水泳部全体を狙う辺りが性悪だ。
私一人を狙ったら一流はそれを告発するし、なんとしてもレコを問い詰め、虐めを立証するはずだ。
けど、これは私を狙ったと客観的に判断できない。その上、そのことは暗黙の了解としてみんなが知っている。
巻き込まれた他の部員は私に怒りを向けて村八分にするだろう。
レコは全く自分の手を汚さずに私を追いつめる気だ。第一、これの実行犯だってレコじゃないだろう。
「………」
しかも同時襲撃。一流は今日も虐められた條を慰め、元気づける為に部活にも出ずに帰っている。
ま、部活に出ても練習できる状態じゃないけど。それは私も似たようなモンだけど、どうせ冬の間は走り込みだけだし。
「どうするかな〜」
取り敢えず、これは見なかったことにして部活サボろう。今日一日分は部活で針に突かれるような思いをしなくていいし。
(レコも追いつめられてるなぁ……)
あの子は本当の所で一流に嫌われたくない筈だ。
彼女にとって一流は唯一無二の友達なんだから。
……私もあの子の友達のつもりだけど。
(あの子は――)
一流を独りぼっちにしたいんだ。そして自分が手を差し伸べる。一流を自分だけの者にしたい。
592すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:35:15 ID:XHF3qAAu
「重たいなぁ〜」
もっと気楽な中学生活を送りたかったものだ。
けどしょうがない。
一流みたいな眩しい存在の傍で普通や気楽はちょっと難しい。
鮮やかな光の傍には、明瞭かつ深い影が刺してるものだ。
わかってたこと。
わかってて、でも私は一流に惹かれちゃったんだ。



「はぁ〜〜…憂鬱〜〜」
ゲーセンで乱入してくる敵を片っ端から潰してるが、あんまりストレス解散にならない。
女だからって舐めると痛い目に遭うっての。おかげさまでコッチは100円で長い時間楽しめるけど。
勝利を伝えるサウンドが流れる。
兄貴が相当やり込んでるせいで、いつの間にか私も結構な腕前だ。
この「野菜戦士ベジダム レンコンVSレモン」は
「ん〜…」
でももういい加減飽きたし、負けてやろうか。
よそ見しながら、スティックを動かす。
ここはビルの2階で、ガラス張りのすぐ横の台だから下がよく見渡せる。
人が沢山流れていく。って言っても、流石に東京とかのレベルじゃないけど。
よく見れば顔もわかる。知らない人だらけだけど、私と同じ制服の子もいたりする。
「……って、レコじゃん」
はて?もう、一言物申してぶん殴ってやろうか?
……後で黒い服の人に海に沈されたらしゃれにならない。
「っていうか男連れ?」
いや、最近のあの子は組員を連れてることが多いけど、あれは制服をしている。私と同い年ぐらいだ。
「ウチの学校じゃないみたいだけど……」
そりゃ、最近のレコは悪い子だけど、男遊びまでするかな〜
しかも相手の男、遊び人って感じじゃないよ?
「ふむぅ…?」
使用キャラが撃破されたので、私はゲームの卓を後にした。



駅前の繁華街を越えて、人通りの少ない道を歩いている。
「次、どこ行こうか〜」
「…………」
尾行中の私。聞き耳立てる……周りから不審に見られない程度に。
相手の男の顔は悪くない。顔立ちは少し面長だけど、パーツは大きく崩れた所はない。
背は高め。肩幅が広くて腕力はありそうな感じ。若干眉間の皺が深いかな〜。
(レコってば、ああいうのタイプだったっけ?)
一方的に腕を絡ませるレコに、男は辟易してるみたいだ。
「もういい、怪我もなかった。そこまでして貰う必要はない」
「私はアンタのコト、気に入ったんだよ。車でハネちゃった時はどうしようかと思ったけど」
「……なんで運転手じゃなくて、君が俺に詫びるんだ?」
「組のしたコトは私の責任ってお父さんから教えられてるし」
どうやら、レコの車にあの男は轢かれたらしい。運がいいのか悪いのか……ヤクザ屋の車だよ?
レコに気に入られきゃ、逆に因縁付けられてたんじゃない?
「少し離れてくれないか?今日会ったばかりの女の子に、そこまで近づかれるのはどうかと思う」
「気に入ってるっていったじゃない」
あの男、よくもヤクザの娘にああも言えるなぁ。
っていうか、レコがあの男とくっついちゃえば、もう私達にちょっかい出さなくなったりしないかなぁ?
「……それとも、彼女いるの?」
「好きな子はいる」
……チッ
「どんな子?」
「…………幼なじみだ」
へぇ、一流の彼氏と一緒なんだ……って、なんだか私、単なる出歯亀になってないかしら?
「私より可愛い?」
593すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:36:48 ID:XHF3qAAu
「ああ、もちろ……いや、同じぐらい可愛い」
「私より可愛いんだ」
「いや……あくまで俺からしたら、だ」
……なんだろう、あの男を見てると一流を思い出すんだけど。
「いいなぁ、私、その子になりたいよ。普通の家に生まれて、普通の友達がいて、普通の男の子を好きになったり、なられたり……」
笑っていたレコが驚くほど無表情になった。
昔みたいな、寂しがり屋の目。
でも、レコ。アンタにとって一流や私は普通の友達じゃなかったの……?
「嫌いなのか?自分の家」
「……好きだけど嫌い」
「そんなもんだ。それに、俺は普通の友達にはなれないか?」
むぅ…あの男、結構イイ男だ。本気でレコのコト応援したい。
ああいう人がレコの傍に居てくれたら……あの子だって昔みたいに笑える筈だ。
「……友達かぁ」
レコの顔が一瞬砕けて見えた。虚勢を張って笑ってる顔じゃない、レコの少し感情に遅れて現れる笑顔。
「でも、彼女がいいな〜」
「炎出さん!?」
レコは腕を一層絡ませて、唇を男の耳に近づける。
「ね?駄目?」
「他にいい人見つかるよ。炎出さんは美人だから」
「麗子でいいよ」
素気なく断る男に、レコは益々顔を近づける。
コッチは聞き取りづらくて困るんだけど……コソーリ、接近、接近……
あんまり近すぎるとバレるわよね?私のせいで上手く行かなかったら後味悪いし。
あーでも気になるからしょうがない。人の恋バナほど面白いモンないしね〜。
「ねぇねぇ、別にその子が好きでも構わないよ?」
「よくないだろ、そんなの」
う〜ん、この男、固いわねー。少しぐらい動揺しないかしら、フツー。
「もしその子と付き合っても、私二番目でいいからさ……ね?」
「そんな男は最低だ」
「じゃ、セフレでいいよ?」
な…ッ!?、レ、レコ、あんた何を……
「何言ってるんだ!!」
男も怒った。
「まだ遊ぼうって言ったでしょ?次、エッチしようよ……?」
妖艶……同い年なのに、レコはそう形容するしかない顔をした。
私が男なら間違いなくホテルに行ってる。断言してもいい。
……なんか悲しいわ。
「ふざけるな!」
だけど、その男は違った。レコの手を振り解くと、半歩引き下がる。
「……もっと、自分を大切にしろ」
「私のコト、まだ気遣ってくれるの?」
「当たり前だ。友達だっていったじゃないか」
「………………困ったな、本当に好きになっちゃいそう」
レコが髪を指で絡ませながら呟く。
あれはレコが動揺してる時のクセだ。
「あの…さ、誤解してると嫌だから言うけど、私処女だから」
「な、な、何言い出すんだよ……」
「やっぱり、私は抱けない?私が暗い世界の人間だから?」
「そういうことじゃないって……。俺だって一人の男だよ。その…したいって思うコトは沢山あるし、
 炎出さん……麗子は、魅力的だよ。正直、その……すること考えれば興奮もする……けど
 身体だけで繋がるのは違うと思ってる。人間がいつでもそういうこと出来るのって、身体で繋がるだけじゃなくて
 心も繋がっていたいって思うから。俺は欲求の為だけに、生殖の為だけに女の子を抱けない。
 そんな人間になりたくないし、君にもなって欲しくない。そりゃ、人の考え方は自由だろうけど
 でも、俺の友達の炎出麗子はそういう人じゃないって俺は思ってるから……」
男は困ったように、レコをなだめた。
「乙古…」
レコが男の名前を呟く。へぇ〜乙古って名前なのか、アイツ。
ってか、アレ、おちたね。レコ、間違いなく惚れてるね。
でも、男の方、変わった名字ね。……あれ?どっかで聞いたことのある名前のよーな……
594すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:38:22 ID:XHF3qAAu
「でも……みんな、私のことをそういう人間だと思ってる。私がヤクザの娘だから。嬉しいよ、乙古……
 そういう風に言ってくれたの、乙古が二人目。だから、本気でもう一回言うね。私、乙古が、乙古訓が欲しいよ」
乙古……ええっと……誰だっけ?乙古訓……訓?訓って名前も聞いたことが……凄く身近に……
「――って、一流の彼氏じゃん!!!」
……あ、大声出しちゃった。
「千紗……ッ!」
「い、いちるがどうしたって!?」
う……気まずい。逃げたい。でも、一流の友達として、レコに聞きたいこともある。
「レコ、まさかあんた……一流の彼氏だって知ってて」
私の問いに、レコは一瞬淋しそうに目を細めてから、私達を嘲笑った。
「そうよ」
その言葉は感情を押し殺した、とても冷たい言葉だった。
「いちるの知り合いなのか……?」
「乙古、私ね、一流が大好きなの。だから、貴方を一流と共有できれば一流と仲良くなれると思ったのに……」
な……
突然の告白に、一流の彼氏も目を見開く。
「一流の心がわからないの……一流は私の友達だったのに、どうして一流は私を認めてくれないの?私のすることを間違ってるって言うの?
 埋めなきゃいけないの。一流が居ないと、私さみしいの、辛いの。だから、一流を私のものにするの
 そのための道具として、乙古も必要だったのに、千紗、アンタって本当に邪魔な奴……」
レコの唇から血が流れる。歯を噛みしめ過ぎて、口が切れたんだ……。
「八つ当たりしないでよ、レコ!アンタのやってることは間違ってる!一流はアンタを友達だって思ってるからアンタの味方をしないんだよ!」
「一流のコト、わかったように言わないでよ!!一流のコトがわかるのは私だけでいいの!一流は私だけの友達なの!!」
子供のように理不尽なコトを喚き叫ぶレコ。
薄く化粧をした顔がグシャグシャに歪んでいる。
「…………今どんなことになってるか、見当も付かないけど」
男……いや、乙古が私の前に立ち、レコに話しかける。
「麗子、今の君はいちるの友達にはなれない。それは絶対だ」
「………………」
「いちるだって友達は選ぶよ。いちるが友達と呼ぶなら、それは今の君のような人な筈がない」
「黙れ!」
乙古の言ったことはレコ自身が一番良く知ってるコトだ。でも蓋をしてきたコトだ。
だから、それを突き付けられるのは……辛い。
「人は物のように言う人を、いちるは友達とは呼ばない。人の心をそんな風に手に入ると思ってる人を、いちるは友達とは呼ばない」
「黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!!」
「……さっきまで楽しそうに俺と話してた君は、違っていた。もし彼女が一流の友達だというなら、それはわかる。
 君が何をしてるのかは知らない。でもな、人の心なんて簡単にわかりやしないし、自分の行動を認めてくれる人なんてそうはいない。
 でも、少しずつ埋めてきたから、俺はいちるの心がわかってきた。君もそうじゃなかったのか?
 もし本当にいちるの心がわからないなら、君はいちると……友達じゃなかった」
「違う!!私は一流の友達だ!!もう要らない!アンタなんて要らない!」
一歩、二歩、レコは距離をとる。震えながら、拳を握りしめて。
「レコ……そうやって要らないって切り捨てていったら、アンタは最後には一流まで切り捨てる。
 そしたら……また独りぼっちになるじゃないの。ねぇ、レコ、もう我が儘言うのやめなよ」
「我が儘……千紗、私のやってることが我が儘だって言うの!?」
「だって誰も望んでないじゃない。ねぇ……気持ちは晴れた?アンタは條に仕返しをして気持ちが晴れたの?」
レコは私達の声を振り払うかのように身体を揺すった。
「……賢しらに言ってんじゃないわよ。あの時、私を助けてくれたのは一流なんだから……一流だけなんだぁ!!」
レコが走り去っていく。
私は追いかけるコトが出来なかった。
「私は……」
あの子の友達のつもりだ。だけど、あの子に届く声は一流しかいないんだろう……
「なぁ…」
「あ、ごめんなさい。それから、はじめまして。私、一流の友達の伴田千紗っていうの」
「俺は乙古訓。よろしく、麗子とも友達の千紗さん」
………ッ!
あぁ、そうか、一流が好きになる訳だ。
この人は気遣いが出来る人じゃない。でも、信念っていうのかな?正しくあろうとしてるんだ。
だから、この人の言葉は安心できる。この人が言うなら間違いないって思える。
「私、レコの友達なんだよね」
「俺にはそう見えた。違うのか?」
一流は本当に凄い。こんな彼氏までもってるんだから、かなわないなぁ……
595すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:40:22 ID:XHF3qAAu






早朝の寒さが染みる。空は明るいが、太陽はどこにあるのか分からない。
白い吐息を吐きながら、柔道着を抱えて通学路を俺は歩いていた。
――炎出麗子
砂奥の友達の一人だと漠然と認識していた。彼女と同じクラスで、ちょっと前まで伴田と三人でよく一緒にいた。
砂奥ともっとも仲のいい友達……と思っていた。
昨日、一野進が訊ねるまでは。
思えばこのところ、炎出と砂奥が一緒に居るところは見てない……気がする。
まぁ、炎出をホシにすると意外に筋妻が合うのが確かだ。
まず俺は炎出と砂奥の仲を調べてみた。
二人が接した発端は下尾條にある。
炎出は……その父親の仕事から、周囲から孤立していた。触らぬ神に祟りなしという。まさにそれだ。
それだけじゃない種類の人間もいる。要するに、その職業を卑しいと思うような……
街じゃ五本の指に入る金持ちの下尾にすれば、炎出はそういう対象だったのだろう。
無意識か、意識的にか、彼女は炎出に冷たく当たった。
きっかけは些細なコトで分からないが、いつものように冷たくされた炎出に手を差し伸べたのが砂奥だった。
砂奥は人を外的要因で評価しない。砂奥が手を差し伸べて、さらにその後、下尾に注意したのであれば
おそらく客観的に見て、下尾に否があるようなコトをしたのだろう。それはその後の周囲の評価でも明らかだ。
もっとも、その評価は炎出に対する同情ではなく、砂奥の行動に対する賞賛だった。
砂奥はそういう周囲の評価には頓着しないだろうが、当事者である炎出はそのコトを誰よりも感じてた筈だ。
結局、自分を個人として見てくれるのは砂奥だけだ――そんな思いが彼女に楔のように打ち込まれたんだろう。
その後、感情の拗れから下尾は砂奥と事あるごとに対立してしまうようになった。原因となった炎出にも、今度はハッキリと悪意を向けた。
資産家の下尾には流石のヤクザも手出しできない。炎出の組は下尾に仕事を貰ってたりもするぐらいだ。
並の人間なら下尾に目を付けられては学校生活はお終いだろう。が、砂奥の人徳はどうやらソレに拮抗したようだった。
「…………その状態のままなら良かったのにな」
しかし移ろい変わらぬものはない。地方行政が衰退していく中で、全国区の企業がウチの市にも足を伸ばし、地元企業は衰退する。
下尾の名声も今や過去のもの。下尾と炎出の立場は逆転した。下尾の家は今じゃ炎出の家にも金を借りている始末だ。
同時に炎出の意趣返しが始まる。
始めは些細なものだった。下尾と炎出の個人間でのちょっとした言葉の応酬程度。
砂奥も見過ごしていた……あるいは、それぐらいはと横の伴田が宥めていたのかも知れない。
それがエスカレートしていった。そうしていく内に炎出も自分の実家の力を知り始めた。
そして……
イジメられていた炎出を砂奥が助けたように、再び砂奥はイジメられていた下尾を助けた。
それは砂奥にとっては当たり前の行為。砂奥はそんなことを見過ごせないから。
でも、炎出にとっては……裏切りだった。
「………」
砂奥があんまりにも報われないと思う。当人はそういう思いは無いのだろうが。
虐められてた奴を助けて、今度はソイツが虐め返して、それを助けて、自分が虐められる……
昨日、水泳部の部室がスプレーで落書きされていた。
砂奥の友人である伴田を狙ったんだろう。
自分のせいで周囲が傷つくのは、砂奥には一番辛いのか。
それほど砂奥を理解してる人間が、砂奥を虐めてるというのが虚しい。
「ん?」
噂をすればなんとやら。校門の先を行くのは砂奥ではないか。
(バドミントン部に朝練は無い筈だが)
と、横を黒塗りの車が通りすぎる。
それは炎出が自分の力を誇示する為に組の人間を使って送り迎えさせている車。
「…………」
自分で言うのもナンだが、俺は真面目な人間だと思っている。
が、どうやら初めて朝練をサボることになりそうだ。
596すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:41:40 ID:XHF3qAAu
「学校の屋上は立ち入り禁止でしょ?」
「そうね。……想像もできなかったわ。私がこんなに悪いことが出来るなんて。
 だって、ヤクザの娘が悪いことしてたら、もう普通の学生には見られなれないものね」
俺の考えたとおり、炎出は砂奥を呼び出していた。
しかし、場所が場所だ。周りに隠れるところが無いので、屋上入り口のドアから聞き耳を立てるしかない。
幸い、風が俺に向かって吹いてるので、二人の会話が聞き取れないということはない。
「……どうして私を呼び出したの?」
「あれ?一流、彼氏から何も聞いてないの?」
乙古に?
「訓に……何かしたの?」
「へぇ、そうなんだ。……教えてあげる。可愛がって貰ったの。一流が好きになるだけあるわね。病みつきになりそう」
俺は思わず声を上げそうになってこらえた。
乙古が、炎出と……!?
「…………」
「逞しくて、優しいのね、彼。でもちょっと固いね。私と寝たから一流とは別れるって。私、一流から彼氏を盗るつもりないから安心して」
「麗子、昔から嘘つくときは左手を腰にまわすのは変わらないね」
「…ッ!!」
慌てて炎出は姿勢を変える。
「……嘘だよ。これで、お互い嘘付いたからおあいこね」
「本当なんだから……!私、一流の彼氏と会ったんだから!!」
「でも女としては見向きもされなかったでしょ?あ、でも安心して。意識してないってコトはないと思うから。
 麗子の言うとおり、訓って固いんだね。色仕掛けも雰囲気つくっても最後の一歩は踏み出さないの」
したのか?色仕掛け!?
……いやいや、そんなことを聞くためにここにいるんじゃない、俺は。
気になるけど。
「……千紗さえ邪魔しなければ、あんな男、オトとしてたんだから!!」
「無理だよ。私の最愛の人なんだから。そこら辺の十把一絡げと一緒にしないでね」
じゅ、十把一絡げ……
お、俺もその中の一人と認識されてるんだろうか……
「むかつくのよ、あの男。偉そうに説教して!あんなの、コッチから願い下げだわ!!」
「……なんて言ったかは知らないけど、多分間違ってないね、訓の言ったことは」
「一流!!一流まで、あの男の味方をする!!私の味方をしてくれない!!」
「……当然ね。私は例え世界中が訓の敵でも訓の味方をする」
炎出が息を荒げれば荒げる程、奇妙なぐらい砂奥は静かに言い放つようになっていた。
「そんな選択は訓はしないでしょうけど」
「……………………なんで?」
「麗子、もう見ず知らずの訓からみても貴方は……」
「なんで、私のものにはならないのに、アイツのものにはなるの!!」
「麗子?」
「もういい!」
風向きが変わり始めた。
だが炎出の声は大きく、彼女の言葉は続いて聞きこえてくる。
「もう手に入らないなら……いっそ壊してやるんだから!!」
壊す?
その言葉を口の中で反芻するより早く、獣のような炎出の叫びが耳を衝く。
「死んで!死んでよ!!もう私の友達じゃない一流はいらないんだからッ!!」
フェンスが揺れる音が聞こえるよりはやく、俺は飛び出していた。
「やめろ!!」
「ッ?!」
砂奥の首を絞めて屋上から突き落とそうとする炎出を手を振り払う。
「……カハッ!……ゴホッ……ゴホッ……麗…子……」
「汚いわね、一流。涎垂らして、鼻水も出てるじゃない。それが砂奥一流?」
炎出の顔には明らかに狂気が走っている。
「炎出、お前……」
「違う……こんなの一流じゃない……そうか、そうね……」
「炎出!お前、砂奥を殺す気か!!」
虚ろに呟く炎出を揺さぶり、詰る。
「……殺さないわよ。殺さなくても、一流は消せるわ」
「何?」
「私の中だけじゃない。みんなの中の……千紗の、乙古の、アイツらの中の一流も消してやる!汚してやる!!」
597すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:42:53 ID:XHF3qAAu
俺はそう叫ぶ炎出に気を呑まれた。
試合で何度も経験してる。気後れしたら負けだ。
なのに、俺はその時の炎出の暗い気迫に動けず、逃げ出す彼女を追えなかった。
(…………女は怖いな)
口を拭った砂奥の首に少しついた痣を見て、俺は気分が悪くなった。
「…………」
その日、学校で炎出を見ることは無かった。どうやらあのまま帰ったようだ。
話を聞いた伴田は俺に砂奥と一緒に帰るように頼んだ。
砂奥は遠慮したが、俺は無理矢理ついて行った。
「…………」
「…………」
ついては行ったが、会話が無い。
気まずいが、しかし、かえって気が楽かもしれない。
「!」
「どうした?砂奥」
砂奥はポケットから携帯を取り出した。
『ボディガードが付いてるなんて、いいご身分じゃない?一流』
炎出……!?
電話から漏れてきた声に、俺も携帯に耳を近づける。
「この番号は千紗のよ。……千紗をどうしたの?」
怒っている。砂奥は怒っていた。
端正な眉をしかめて、その瞳を奮わせている。
『一流も可愛いけど、千紗も十分可愛いわ。きっと、素敵なAV女優になれるわね』
な…ッ
『綺麗な胸の形。釣り鐘型っていうの?ああいうの……一流にも見せたいわぁ。ビデオ出来たら一番最初に送ってあげるね』
狂っている。
まるで世間話でも言うように、炎出は話している。
人の尊厳を踏みにじっている。
「麗子……麗子が汚したいのは私じゃないの?」
「砂奥…ッ!何を言ってる!!」
『一流ならそう言うと思ってたんだぁ。今ドコ?向かえの車向かわせるから来てくれるよね?』
俺は砂奥から携帯を奪い、叫んだ。
「炎出、巫山戯るな!お前のやってることは犯罪だぞ!」
『だからぁ、優しい、優しい一流は、私を拉致強姦の犯罪者にしないために自分からAVに出てくれるんだって』
「恐喝って言うんだよ、そういうのは!」
「……当馬くん、返して」
「砂奥!!」
俺から携帯を取り返した砂奥は、今いる場所を手短に話すと携帯を切った。
「やめるんだ、砂奥!!」
「千紗を見捨てろっていうの?」
「警察に……」
「千紗がレイプされそうになってるのよ、今、この時に!」
「じゃあ代わりにお前がそうなってもいいってのか!!」
砂奥の手首を握る。細い。か細い女の手だ。
簡単に傷つけることができる手だ。
「乙古はどうなる?」
「わかってくれる。訓はそういう人だもの。そして訓が好きな砂奥一流って女はこういう人間なのね」
「嫌だ。俺は見過ごせない。この手を放さない……俺はお前のコトが……ッ!!」
白い乗用車が急ブレーキで言い争う俺達の前に止まった。
中から、わかりやすくチンピラな男が出てくる。
「おい、男はいらねーぞ……」
「お前が炎出の…ぐぉ!?」
「オラ、手放せっての!!」
鳩尾にチンピラの足が沈んだ。俺は砂奥の手を握っていたばかりに、それをもろに食らってしまった。
「うぐ…」
「やめなさい。今、車に乗るわ」
「へぇ〜可愛いじゃん。俺も撮影混じりてぇなぁ」
砂奥の顎に、チンピラの手が触れる。
「好きにすれば。早く車出しなさいな」
「はっ……最近のガキはインランだねぇ。じゃあな、ボウズ」
598すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:45:14 ID:XHF3qAAu
「砂…奥……」
もう、砂奥の手を掴むには遠すぎる。
「好意だけ受け取っておくね。ありがとう、当馬くん」
車のドアが閉まる。
砂奥は気丈で、顔を崩さない。
それが、悔しい。自分の力の無さを見せつけられたようだ。
排気ガスが俺の顔にかかり、小さくなっていく車を俺は睨むだけしか出来なかった。
「……くそったれぇ……」






意識が朦朧としている……
私……
確か、下校中に車の中に無理矢理詰められて……
注射器……
「……コレ、大丈夫なの?」
「どうせコレ無しで生きてられなくなりますって……ヘッヘッヘ」
「勝手に薬売ってるのバレて組追放されそうになったのに、まだやる気?」
レコ……?
「お嬢、本当にこれで親父に取りなしてくれるんで?」
「素人攫うにゃ、結構不味いですぜ」
「……薬は不味くないっての?それに、コイツは餌なんだから余計なコトしたら許さないよ」
う……ぅ……気持ち悪い……頭がグラグラする……
「……一流、嬉しいわ、来てくれて」
「千紗!!」
一流……?
「大丈夫よ、1回ぐらい。それに優しさよ、私の。千紗に気持ちよくなって貰おうと思って」
あ、……制服だ……私、着させらて…る?
「でも、こんな表情じゃ、売れないでしょ?一流は薬なしでやってね?痛がっちゃ駄目だよ?媚びるように喘いでもらわないと
 ああ、でも一流はちゃんと自分で脱ぐ所から撮っていくから。オナニーしたことある?それもしてみよっか?
 ……分かってるわよ、茂部、アンタ千紗を外に連れて行きなさい。そう、適当な場所に座らせておけばいいわ」
ちょっと……気持ち悪いんだから、動かさないでよ……
「千紗」
一流……どうしたの、そんな不安そうな顔……
わかるよ……友達じゃない。クールに見えたって、一流はただの中学生の女の子なんだから……
なに……女同士なのに、そんなに抱きしめないでよ……もう……
一流?どこ…どこいくの……?一流……?

一流……私の大好きな友達。
頭もいいし、運動もできるし、みんなの人気者だし、カッコイイし、可愛いし、曲がったことは嫌いだし
だからみんなの人気者で……でも、すっごい惚気屋さんで、彼氏のことになると止まらなくて……
いっつもクールなのに、その時だけは顔がほんのり赤くて、彼氏の名前を口にするだけで幸せそうで
そんな一流を見てると、私もなんだか幸せな気分になって……
そんな素敵な、私の、一番の友達。
友達だから……助けないと……
「助け……ないと……」
何で?何で私、こんなに身体が動かないの?どうして……動いてよ!動いてよ!
誰か……
「誰か、一流を助けてよ……」
「いちる?いちるがどうしたんだ!?」
誰?
「……わかった。千紗さん、悪いけど、ここに置いていく」
「一流を……お願い」
「必ず」
よかった……
きっと……あの人なら……一流を…助けてくれる。
だって…だってあの人は、一流の……
599すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:47:22 ID:XHF3qAAu




やっぱり俺には主将なんて似合わねーな。
っていうか、誰も俺の言うこと聞かないし。
「お前ら、訓が居ないからって、練習に気合いが入ってないぞ!!」
「うーす」
「返事が生返事なんだよ!!」
何とか訓を説得して、今日はアイツを一流ちゃんの学校に向かわせた。
一流ちゃんは一流ちゃんでなんか抱え込んでそうだったし、俺じゃなくてアイツが力になるべきだよな、ウン。
「似たもの夫婦なんだからよ、やれやれ」
お互い自力だけで解決しようとするきらいがある。人の助けを借りないってのは結構だが、好き合ってる者同士、相談ぐらいはするのが信頼ってもんだ。
俺が居ないと、人並みのカップルにもなれないのか、アイツらは。俺は保護者かなんかか?
ま、それも面白いかもな。一生はゴメン被りたいけど。
「乙古はいるか!!」
道場の扉が乱暴に開く。
「当馬……なんだ?道場破り?」
「乙古はいるか!!」
……冗談言える空気じゃない。当馬は切羽詰まってる形相で、ここまで全力で走ってきたらしく汗をかいてる。
「乙古はいるのか!!」
「訓はいねぇ……当馬、一流ちゃんに何かあ……オイッ!」
すぐさま外に走り出す当馬を追いかけて、俺も道場に出る。
「待てって!!」
「…………」
無理矢理肩を掴み、振り向かせた当馬の顔に俺は言葉を失った。
「何、泣いてやがる」
「俺は……乙古に謝っても謝り足りない」
「話せ。隠してると許さねぇぞ……俺は訓のダチなんだからよぉ!!」



「あの女……ぶん殴ってやる……」
聞いてるだけで吐き気がしそうな顛末を当馬に説明され、俺は腹の底が煮えくりかえりそうだった。
「俺が……!」
当馬の携帯が鳴り、取り出した当馬は顔を凍らせた。
その着信は一流ちゃんからだった。
「……炎出か」
『怖い声。せっかくサービスしてあげようと思ったのに』
「砂奥はそこに居るのか?」
『さっき来たところ。それで、いまから音声だけだけど当馬にはライブ中継してあげようと思って!
 メニューは、ストリップからオナニー、セックス、アンコールで大乱交ってね。
 もうねぇ、一流って可愛いからみんな盛りついちゃって、大変なのー』
『おい、駕屋。カーテン開けてるんじゃねぇ!』
『あ、スイマセンっす。眩しいッスか』
『そうじゃなくて、不味いだろーが!!』
ケラケラと笑うレコちゃんの後ろで彼女の組の手下らしき男の声が聞こえる。
本当に本当なんだ。
一流ちゃんが……
「……ッ!」
「おい、一野進!?」
「……やあ、覚えてる?レコちゃん」
『一野進由羽か。覚えてるよ?前に校門であったね。乙古の写真に一緒に映ってたし、声をかけたんだ。何かに利用できないかって』
電波が届きにくいのか、彼女の声は途切れに聞こえた。
「写真?いや、どうでもいい。なぁ、レコちゃん。この状況、冗談でしたって終わらせることは出来ない?」
電話の向こうの沈黙。
『……出来ないよ。一流が女になるところ、一野進さんも楽しんでいってね』
あの日、会話したように丁寧な口調で話す。俺を嘲っている。
「そうか。じゃあ止める。そこに居るのはさ、俺の親友の女なんだよ。だから俺がアンタを潰す。今からそこに行くから」
携帯の電源を切る。
600すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:49:04 ID:XHF3qAAu
「おい、勝手に切るな!上手くいけば炎出から場所を聞き出せ……待て、ドコに行くつもりだ!!」
俺は近くのコンビニに入ると、地図と漫画雑誌を二冊引き抜いて外に出た。
慌てて当馬がお金を払った後、追いかけてくる。
「何をしてるんだ!こんな時にマンガなんて……」
「ヤクザもんなんだろ。取り敢えず腹につめとけばドスとか刺されても平気かなと思ってよ」
一冊、当馬に渡しながら地図を拡げる。
「一流ちゃんが連れ去られた場所は?」
「……ココだ」
「時間は?何分経ってる?さっきの電話まで。車の時速が40キロぐらいだとすりゃ、大体わかるだろ!
 え〜っと、割るんだっけ?かけるんだっけ?」
「かけるだ。それで、この地図の縮尺だと……」
当馬は横から地図に円を描いた。
「この中だ。まさかこの中を全部虱潰しにする気か?」
「……ちげーよ。さっきの電話に少しだけど電車の音がした。電波も悪かったし、多分線路沿いにあるんだ」
円の端を走る線路記号をなぞる。
「どれだけ距離があると思ってるんだ!」
「眩しいって電話の後ろで聞こえた」
「……つまり、西側に窓があるということか?いや、そんなの手がかりにはならんぞ」
「そこまで今日は天気がいいか?」
一月の空は日差しが強いとは言えない。
「眩しいのは他に理由がある」
俺は地図の一点を指した。放送塔や観光、市の催しものなどの時に使われるタワービルがそこにはある。
「ガラス張りか……!しかもアソコはビルが歪曲してて光が集中しやすい。何度か日照問題で裁判が起きてた!!」
「太陽の光が反射してるなら、一流ちゃんがいるところの東側にビルがあるんだ」
円の外線と接する線路沿いで、ビルから西側、それもビルが見える範囲に隣接した場所。
「そこに、一流ちゃんがいる!」
キマまったぜ、俺!
いやーこの前読んだ推理マンガが意外と役だったなぁ。
ネタバレすると尊敬の眼差しが終わりそうなんで黙っておこう。



「この辺りだ!」
チャリを失敬して件の場所にたどり着いた俺達は、東側にそびえるタワービルを見上げながら叫ぶ。
「どこだ!どこだ!どこ……訓!?」
「由羽!?どうしてここに」
どうして訓が……いや、一流ちゃんがピンチなんだ……
「お前がいないとはじまらないか」
「いちるの為に?」
「半分な。もう半分はお前の助けになりにきたのさ、俺は」
お前が一流ちゃんの為に揺るがないように、俺もそれだけは揺るがない。
「……あの先のビルの三階だ。まだ間に合うと信じたい」
訓は右腕の腕時計を見ながら、走り出した。
パチンコ屋の裏の廃ビルといっていいそのビルを駆け上がる。
「いちる……」
階段を登る度に、訓の呟きが大きくなっていく。
「いちる……」
二階を超えた。自然と階段は一段跳ばしになっている。
「いちるぅぅぅぅ!!!」
掠れた看板。事務所とは読めるが、その前の文字が読めない錆び付いたドアを蹴破る。
「…………ッ!!」
男が四人。安いベットと、照明、カメラ、レフ板、そして……裸の少女と、孤独な少女。
「訓……!?」
照明に照らされて、一層白さが際だつ一流ちゃんの身体。
くびれたウエストに、スラリと伸びた足がシーツを乱している。
その肢体に珠のような汗が流れ、光に反射して眩かった。
細い腕で申し訳程度に形の良い乳房を隠した、彼女の顔は、
訓を認めると大粒の涙を流していた。
「乙古…訓……」
炎出麗子が擦れた声で訓を呼ぶ。
601すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:51:16 ID:XHF3qAAu
「来たぜ。約束通り」
「炎出、何でも思い通りになると思うな」
俺と当馬が炎出麗子を睨む中、訓は一言も発せず一流ちゃんを見ていた。
「…………」
そして、そのまま射抜くように炎出麗子を見る。それだけで、炎出麗子は絞首台の前に立った囚人のように身を竦めた。
「来たからなんだってのよ!」
炎出麗子の啖呵と共に、彼女の従えていた男二人が俺達に向かってくる。
「ガキがぁ!」
「ハ…ッ!」
コイツらは俺達を侮っている。その内に倒してしまえるなら倒させて貰おう。
俺と当馬は男二人の懐に入ると、彼らを割れたコンクリートの床に叩きつけた。
カエルの潰れたような声で男達が呻く。
「ただのガキじゃねーんだよ。ガキん中じゃ県内最強の三人だっての」
「……残り二人」
「舐めてんじゃねぇぞ!!茂部、駕屋、何してる!アタシに忠義見せてみろ!!」
奥にいる男二人に炎出麗子は叫ぶ。
「…………」
訓が、一歩踏み出した。
それに、男の内の一人、ありゃ訓を撮った時のチンピラか。そいつはビビってる。
「う……このぉ!!」
チンピラはナイフを引き抜き、それを上段から振って訓に襲いかかる。
「訓、ヤベェ!!」
「…………」
それは速かった。
俺が今まで見てきた訓の動きの中で一番速かった。
「ぐぇ!?」
チンピラはしたたかに背を打ち、呼吸困難になっている。
「な……なんなのよ、アンタ!」
刃物にも動じず、打ち負かした訓に、炎出麗子はヒステリックな声を上げる。
「…………」
対照的に沈黙を続ける。その沈黙が百万遍の言葉よりも彼女を圧する。
「なんなのよ、たかが女一人じゃない!」
その圧迫から逃れるように、彼女は叫んだ。
「その女一人が大切な人だから、ココに集まってるんだろ。俺達も、そして炎出、お前も」
当馬が彼女を否定する。
「茂部、アンタならやれるわよね!」
「殺ってもお嬢がケツ持ってくれるならやりますよ」
最後の一人がドスを抜いて、訓の前に立つ。
デカイ……他の三人とか素人目に見ても格が違う。
「ドスは振るんじゃなくて刺すんだって、コイツは何度言っても覚えねぇ」
倒れてるチンピラを蹴り飛ばし、訓に近づいてくる。
「訓、人質だ!炎出を人質に取れ!!」
ヤバイ、アイツはヤバイ。
「…………」
訓、なにやってんだーーー!!お前、それ武士道か!正々堂々とか、こんな時でもやる気か!!
魔○ブウを相手にした○空とベ○ータか!!
「ふん、その心意気は買うがな、小僧」
「…………」
「俺はソイツらみたいに薬に手だすような小物じゃない。親父さんが見込んでお嬢に付けたんだ」
「茂部、やっちまいな!!」
炎出麗子の声と同時に、男はドスを持った手を大きく後ろに引く。
「訓ッ!!」
「乙古ッ!!」
反動をつけたドスが一気に訓に目がけて伸びる
「…………ッ」
訓は右腕を伸ばす。
アイツ、まさか右腕犠牲にするつもりか?馬鹿野郎、そんなことしたらもう柔道できなくな……
「あれは…!」
訓の右腕には腕時計があった。そうだ。何か違和感があると思ったら、利き腕に腕時計をつけていたからか。
ドスは腕時計を粉砕したが、反発で訓の中心線からずれていく。
602すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:54:11 ID:XHF3qAAu
そうだ、あの時計が訓を守らない訳がない。
「ありゃ、一流ちゃんが訓にあげた時計だからな」
訓の左手が、男の襟を掴む。
「!!」
自分より大きな相手を投げ飛ばす。
俺は昔、それが楽しかった。でもいつの間にか、俺より小さいお前が投げ飛ばせなくなってたな。
俺より弱かったお前は、でも一流ちゃんの為に強くなった。
お前は変わらねぇ。
「最高だぜ」
男が床に叩きつけられたとき、まるでビル全体が揺れてるかのような錯覚をした。
「……やるじゃネーか、小僧」
投げられた男は、訓を見上げて笑った。
「何してるんだ!茂部、アンタはそんぐらいなんでもないだろ!!」
「お嬢……もう負けを認めましょうや」
「茂部、アンタまで私を……」
炎出麗子は学生鞄の中から黒光りするものを引き抜く。
「オイ、まさか……」
だが、抜き去るより速く、俺は炎出の手を弾いた。
「一野進!?」
「お姫様助けるのは王子様の仕事だからな。連れの魔法使いは魔王を確保しておこうと思ってたのさ」
ったく、中学生が銃もってるなんて日本の治安はどうなってるんだ……
「何で私の邪魔をするんだ!」
「邪魔してる訳じゃねーよ。俺は訓の味方してんの。
 アイツと出会う前は退屈だった。俺、器用だから何でもこなせるし。でも、凡人の訓には勝てないの」
孤独で、でも力があって、それでも一流ちゃんに勝てない、そんなアンタと一緒さ。
「芯の強い奴だからな。それが俺には無くて眩しかった」
「…………」
「アイツは俺の理想だ。だから俺もアイツをマネして一つだけ、例え他の何を挫折しても、諦めても、一つだけ曲げないって決めた。
 それはアイツの親友であること。アイツを裏切らず、見返りを求めず助け合うこと」
だから俺は究極のトコじゃ、俺自身の為にここに来ているともいえるけど、ま、そこまで難しく考えるのは馬鹿らしい。
「結局の所、俺も誰かさんと同じであの二人が好きなのさ」
訓が乱入してきたとき、少しだけホッとした顔を見せた誰かさんと。
演技ヘタクソなんだよね、その誰かさんは。
「……ぁ……ぁ……」
レコちゃんは泣き崩れた。
何度も、何度も、「ごめんなさい……一流……千紗……乙古……」と繰り返しながら。





私は後悔しない。
後悔するような生き方は嫌だ。
私が生きてきた時間は、何より貴い時間だと思うから。
その貴い時間の中で、一番輝く、私の宝物。
「……訓……」
その名前を呼ぶと涙が溢れた。愛おしさで心が溢れた。
「いちる」
彼が私の名前を呼んでくれる。
そのたった三文字に、数え切れない気持ちが見え隠れする。
「もう大丈夫だよ、いちる。だから強がらなくていいよ」
「ぁ……」
背中に回される訓の腕が、私の涙を止めさせてくれない。
耳元で囁く訓の言葉が優しすぎて、どこまでも深く落ちていきそう。
「怖か…ったよ……」
「うん」
「嫌だったよ……」
「うん」
「私、訓じゃなきゃってずっと思ってたもん……」
「うん」
603すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:55:39 ID:XHF3qAAu
言葉が止まらない。
嗚咽がみっともなく紡ぎ出され、訓に自分の全部を預けてしまう。
「なんでこんなコトしてるんだろうって……」
辛かった。仲間はずれにされるのも、私のせいで千紗が傷つくのも。
いっそ、全てを見ないふりをして流されてしまえばいいなんて、そんな思いをずっと心の奥底にしまってた。
「自分だけ助かればいいって、そんな最低なことも思ったよ……」
知らない男に裸を見られて、どんなに恥ずかしかったか。
それも自分から、挑発するように脱ぐなんて、どんなに哀しくて悔しかったか。
「もう……訓にあわせる顔がないって……思った……」
自分で自慰をさせられた。
カメラの前で、私はいつか訓に触れて欲しいと思っていた秘部に手を伸ばした。
訓以外に見て欲しくなんかない、私の裏側を覗かれた。
「私……心が汚されて……ごめんなさい、訓って、何度も、何度も……思ったの」
そういう行為をしたことがないというコトは無かった。
私は訓が好きで、好きで、好きだから、訓を思ってシたことは何度もある。
「私、初めて後悔した。自分の選択は間違ってたって思った……」
身体は正直に反応する。
慣れた行為に、粘ついた液が分泌されて、指に絡みつく。
嫌なのに……でもこんな時でも、こんな時だから、訓の顔しか浮かばなかった。
「助けてって……叫んだの。心の中で、数え切れないくらい、訓を呼んだの」
呼ぶ度に心が熱くなって、切なくなって、首筋を汗が流れた。
期待、いや願望と不安が渦を巻いて、興奮を呼んだ。
指はどんどん深く沈んでいって、自然と声が漏れた。
「もう訓のコトしか考えないでいようって……現実から目をそらした……」
訓の名前を呼ぼうとして、でもそれは出来ないと思って我慢した。
私は無機質なカメラと、ゲスな男達の前にいる。
目を逸らしたいのに、突きつけれてる現実を理解する頭が恨めしかった。
それでも、せめて訓を思い、訓を思うと、少しは羞恥も恐怖も安らいだ。
同時に昂ぶりが襲い、千紗にも形がいいと褒められた乳房に手を伸ばした。
男達は歓喜の声を上げてた。
いいんだ、見せつけてやると心に理由をつけて偽った。
せいぜい興奮しろと。でも私が昂ぶるのは貴方達のせいではない。
私を昂ぶらせるのは、蕩けさせるのは、世界でたった一人
「訓だけだったの……私には訓しかいないの……」
乳房の先を爪で繊細に引っ掻いた。コレは訓の手だって思いながら、今まで何度もしてきたことだった。
ジリジリと焼けるような感覚に吐息が溢れた。
呼応して女の一番敏感な所が肥大化してるのが分かる。
でも、それに触れるのは怖かった。だから訓に触れて欲しかった。
それも適わない……それならと、思っていても手を出せなかった。
結局ドコか都合のいい希望をもっていたのかも知れない。
訓が助けてくれるかも知れない。
そんなの嘘だ。
希望に対する肯定と希望が目尻に涙を溜めさせた。
「でも、来てくれた……訓は来てくれた……!!」
嬉しかった
嬉しかった
嬉しかった
強引に奥まで伸ばして自棄のように掻き混ぜて、それでも達することは出来なかった。
無理矢理に自分を納得させて、ほんの僅かな快感に身体を大きく震わせた。
違うんだ。今、訓に抱きしめられてる、この瞬間が本物なんだ。
もう、この訓の体温を感じてるだけで、訓の鼓動を聞いてるだけで、訓の匂いを嗅いでるだけで
私は身体の芯から真っ白になる。筋肉が弛緩してとろとろになってしまう。
心も、身体も、全部、全部満たされてる。
「来てくれたね、来てくれたんだね……訓…訓……訓……!!!」
次は本番だって、触れたくもない男の視線を感じながら、私処女じゃなくなるんだって思った。
処女だけじゃない、訓にあげたかったモノ、全部亡くしちゃうんだって思った。
でも……あげれるね、訓に私あげれるね。
「訓…」
「いちる…」
604すなおく一る×おとこくん<睦月>:2007/10/01(月) 20:57:52 ID:XHF3qAAu
訓が私の髪を優しく梳きほぐす。
訓の指が私の髪の毛一本一本から伝わる。
「訓…」
「いちる…」
訓の黒い瞳。私の大好きな瞳。
見えてる?その瞳の映ってる私、自分でも信じられないくらいの最高の笑顔なの。
それが近づいてくる。
「ん…」
唇に訓の温もりを感じる。
離れたくない……私は訓の首に腕を回していた。
「………」
「………」
訓…訓…
………………大好き!!





















「お〜い、いつまでやってんだ〜。もう三分間もそのままじゃないか、おまえら。
 それ、もうキスじゃなくて、人工呼吸だぞ〜。な〜親友に対するお礼とか、少しぐらいあってもいいと思うんだ〜
 それともアレですか?それがお礼ですか?見せつけてるんですか?糖分補給してくれてるんですか?
 ……………帰るか、もう。
 当馬、泣いてるの?いや、いい、何も言うな。今日は飲もう。ジュースだけど。俺が奢ってやるから、な?
 レコちゃんももういいって。謝るタイミングなんて存在しないから、アレ。終わんないから、待っててもしょうがないって
 あーなんか俺も彼女欲しくなってきたなー。そうだ、この際レコちゃん、俺と付き合わない?
 ……なんだよ、当馬。え?レコちゃんの目、アレ?本気の目?俺、地雷踏んだ?
 いやいやいやいや、“今日は俺が奢るから生きろ”って、何、なんで?茨の道?
 ちょ、あ、あのさ、レコちゃん?冗談だからね、冗だ……何?“私、一流みたくなれるかな?”いやいやいや、
 一流ちゃんの相手できるの、世界でも訓ぐらいだって。へ?俺?無理、無理、無理、無理
 なぬ?俺と訓が似てるって?いや、似てるだけだから。全然中身は違うから。シ○ア専用ザ○とジョ○ー専用○クぐらい違うから。
 おい、何首フってるの?当馬。その“諦めろ”みたいな目やめて、マジで。ハエトリ草に捕まったハエを見る目やめて
 レコちゃん、なんで俺の腕に抱きついてるの?ねぇ、“私何でもするから”って、いや、凄く男としてはそそるセリフだけど
 取り敢えず、俺から離れてください。……却下って、さっき何でもするって言ったジャン!!
 いやぁぁぁぁぁぁ愛が重いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」






<了>
605名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:03:15 ID:ib9qhCkV
スーパーGJターイム!!!

愛が重いいいいいぃぃぃぃぃwwwwww
606名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:27:35 ID:uLAaae2I
>604
どれだけ最後に冗談で落とそうったって、度が過ぎてる事に変わりはないと思う。

最初から最後まで痛々しさしか感じられなくて読んでて辛かったよ。

607名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 21:57:05 ID:ID8OImb7
すまん、いろいろとひいた。
608名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 22:08:21 ID:NSsxm6vq
ハラハラドキドキしながら読んだ
ハッピーエンドで本っっ当に良かった
終わり良ければ全て良しって言葉がしっくりくるよ
個人的には最後までシリアスでも良かったと思うんだけど
609名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 23:27:05 ID:uNEKu8V2
せめて注意書きぐらいは張ってくれ
悪者に捕まるのはまだしも、やってないとはいえレイプ的な描写が苦手な奴も居るんだから。

610すなおく一る×おとこくん:2007/10/02(火) 00:06:54 ID:XHF3qAAu
ああ、未遂なんで深く考えてませんで>レイプ描写
すみません。

麗子はその後、(罪の意識から)学校を辞めて、彼女の家に当事者達が行くという流れも考えていたんですが
話の最後を一流の視点で終わらせる為に、カットしました。
最初の話を書いた時点で、一流×訓はもう完結してて、セックスさせるためには高校進学させるしかないんです。
なので二つ目で今度はなるべく引いて書くことで、素直クールってちょっと変っていうか、普通じゃないところが面白いってコトを
今回で周囲の人間から見た素直クール×男くんを書いて、彼らが周りに愛されてるで書くのが格子なので、
今作の一人称では主要人物(訓・一流・麗子)はあえて出てこない。けど最後の最後で素直でクールで完璧に見えた一流の
内面の吐露で締めるという構成に括った為です。最後の由羽の冗談は勝手に奴が動き出した結果です。
キャラが勝手に話の中で動き始めるってヤツですが、コイツが一番です(ホントは千紗とくっつける筈だったのになぁ……
611名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 03:55:18 ID:OrWAARPH
本気で注意書きが欲しかった
悪者に捕まる云々、まあギリギリで助けるぐらいまではともかく
そういう展開の場合悪者がきっちり勧善懲悪されないと消化不良で胸がムカムカする
男達は目を潰すとか玉潰すとかそのぐらいはしないと
あと最初から最後まで主体的に動いてる時点で麗子どう考えてもどうしようもないヤツにしか思えんので最後強引過ぎる
これが自分で後悔してやめかけて男達が止まらず自分もでピンチになってとかならともかく
612名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 04:45:25 ID:89y+zpOF
>>610
乙おつ、GJ
賛否両論あるっぽいけど俺は有りだと思う

スレの性格的に言えばバッドエンドは有り得ない訳だから逆にwktkしながら読めた

それに危機的状況での心理描写とかは、甘々展開な話の多いこのスレじゃ滅多に見れないしな
613名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 04:49:10 ID:I18Sr2F7
目潰しとか玉潰しとか中学生にさせる・見せる方が胸がムカムカするわ
それに男達ってヤンデレ組から追放されるとこをレコに拾われたんだから
この後に制裁うけることは間違いないんだし、罰はうけるでしょ?
作者の演出もわかるが、後日談は読みたいね。それでレコ関係はスッキリする
俺は今回の話好きだ。一話が青春モノ、二話がギャグ、三話が活劇ってかんじで手広くやるのは凄い
614名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 06:15:01 ID:pHU6g/JX
学生生活にヤクザだのレイプだの極端に走るのって引く
最悪の展開にならなかったってだけで、ただただ理不尽を山積みにしたようにしかみえないし
最終的にハッピーエンド?どこがハッピーなのか不思議でしょうがないよ。

極限状態を作るにしてもここまで胸糞悪い事をする必要って本当にあるの?
615名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 06:25:40 ID:ho25VP8d
個人的に一番問題だと思うのは>>610での語りがウゼェってことかな
616名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 06:39:22 ID:7jFIhWG+
むしろ読み手がウザ

前から思ってたが素クールスレって
書き手の質高いけど読み手はレベル低いやな
617名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 06:56:50 ID:I18Sr2F7
展開つーか設定?の好き嫌いは個人の嗜好だし、
それに引くとかいうレスって「ここはお前の日記帳じゃねぇ」んだけど?
気に入らないシチュなら読むのやめればいいのに・・・
あと、ヤンデレは理不尽で自己中でムカついてこそヤンデレ
618名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 07:14:20 ID:xyC3l/JX
GJ GJ!
面白かったです。自分は素直に楽しめました。

>注意書き
未遂なんですし難しいでしょうね、これで注意してたらアクションもの書きづらいとも思いますし。
やはり読み手側でスルーすべきかと。途中でスルーできるのではないですか?

レイプ的描写については、「作品世界の普段のレベル」と、
その「レイプ的描写」とのレベルの乖離による影響ってのも大きい気が。
コメディテイスト学園生活基本のこのシリーズだと、
無理矢理自慰させられるってだけでも未遂とは言いづらい感があると
思いますよ。引くのもわからなくはないです。

>>615
この程度のフォローまで問題視するのはいかがなものかと。
619名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 08:26:50 ID:BKkMB91M
>>617
>>気に入らないシチュなら読むのやめればいいのに・・

なら気に入らないレスもスルーしろよ。
第一読み手がどう思ったのかは書かないと書き手に伝わらないだろ。
620名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 08:31:32 ID:36R9t2sa
不幸な事故とかいろいろやり方はあるだろうけど、カタルシスはなかったわな
でもまぁお疲れ様!
621名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 08:42:48 ID:hOvVnAVT
お前らまずは落ち着け。
そして心を無にして吊り革になるんだ。

見える、見えるぞクールっ子が本を片手に俺を掴むところが!!
622名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 08:46:01 ID:tIR+WJqT
叩いてる奴らは自分の理想通りに話が進まなかったから叩いてるだけにしかみえん
623名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 08:49:46 ID:gxwVVyel
ここは チ ラ シ の 裏 ではありません
624名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 09:00:44 ID:36R9t2sa
>>621
オナニーすれば一発さ!

ってかどっちもどっちつーか2chで何言っても無駄って感はあるぜよ
お互いスルーできないならしょうがない
625名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 09:49:32 ID:5i7uqR66
まあ、その……なんだ。住人同士、喧嘩しないでくれると嬉しい。
626名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 11:48:17 ID:7r2yXbju
他はどーでもいいんだが
>>617
>あと、ヤンデレは理不尽で自己中でムカついてこそヤンデレ
は何を言いたいのか分からない
ここはヤンデレスレじゃないんだがと言わざるを得ない
627名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 11:54:06 ID:G89VNOlP
GJ!
ドラマ性が高くて非常に良かった。
賛は賛。否は否。問題点を提示して「次からはこうしてくださいね」っていうのであれば波は立たないのでは?悪魔で批判したいのであれば書き込まずに現実世界で叫んでください。
628名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 12:08:44 ID:TTrbwHy5
悪魔は狙ってんのか?w
629名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 12:13:13 ID:Y2WhBo1M
賛にしろ否にしろ、これだけレスがあるってのは凄い
良い意味でも悪い意味でも心に響いたってことだからな
630名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 13:36:13 ID:mdklXpHc
力作だからな。賛否両論、激しく議論されるのも判るw

今回の話、あえて苦言をするならヒロインの“表面的に分りやすい素直クール分”が
不足気味だってことかな。まぁ、主人公とイチャイチャしてられる話でなかったので
仕方ないという気もするがw

でもオレ個人としては実に良かったと絶賛しちゃうぜ。
631名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 15:27:44 ID:I18Sr2F7
>>619
学校モノにヤクザがでてくるのは嫌だ
って読み手の意見なんて書き手に何が伝わるんだ?
書き手に自分の好きなもんを強制させないかぎり解決しないぞ
632名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 15:36:50 ID:O66ianhz
良し悪しじゃなくてただヤダヤダわがまま言ってる
だけのここの住人に何言っても無駄だろ、いつもじゃねーか。

SSじゃなくてレスにスルーするのが吉。
633名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 16:02:33 ID:QLna4szi
俺はこの作品に続編が出てくれたことを本当に嬉しく思っているわけだ
レイプも、まあ、未遂だし。俺は大丈夫だったかな

続き書いてくれると本当嬉しいな

あと相変わらず由羽がイケメンすぎる
634名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 17:17:03 ID:i8PF9ErA
25レスも来てるうひょおと思ったら下らねー言い争いかよお前ら
全員死ねばいいのに
635名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 17:46:04 ID:hOvVnAVT
>>634
落ち着け。
素直KOOLは呼んでないぞ。
636名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 17:48:53 ID:36R9t2sa
>>631
横レスすまんがよ
学校モノにいきなりヤクザが出てくることに違和感を感じたって俺の意見は問題ある?
俺としては唐突だったなぁと思った
もちろんSSで十分な説明とか複線とかそういうのに期待しすぎって言われればそれまでだけどさ
637名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 18:32:17 ID:v+/hAtFp
つまりこういうことか
素直クール+ヤンデレ=スレが荒れる
638名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 19:07:38 ID:mdklXpHc
男「……うーん、気のせいか少し荒れてる感じがするね? どう思う、クー?」

ク「人の思いの数だけ素直クールは存在する。人それぞれ、と結論づけてしまうと
  それ以上の議論は空虚となってしまうが……この場合はそれでいいとわたしは思う」

男「誰もが個人的な理想を押し付けあうのは建設的じゃない、と?」

ク「そう。皆が自分の理想を求めるのは素晴らしいことだと思うけれど、それが元で
  諍いが起きるのは見ていて悲しい。わたしは……もっと色々な世界のわたしとキミが見たい」

男「パラレルワールド、だっけ? そういう感じかな?」

ク「まさしくその通り。わたしは常に冷静でありながら情熱的であることを旨としているけれど、
  わたしだって人間だ。時には取り乱すこともあるし、わたしがいつもわたしであることを
  周囲の環境が許してくれるとも限らない」

男「そぉかなぁ? クーはいつも変わらない気がするけど……」

ク「もちろん、キミの前ではいつも変わらぬ最高のわたしでいたいと思っている」

男「コホン……確かにクーは変わらないよ、うん……いつも綺麗だしね(ごにょごにょ)」

ク「最後の言葉をもう一度、ハッキリキッパリ、大声でわたしの目を見て言ってくれ」

男「げふんげふん! ……と、とにかく、素直クールのあり方について、こうでなくてはダメ、
  という明確なルールはあってなきが如しだし、ボクもいろいろなクーが見たいしね」

ク「いろいろなわたし? キミが望むなら、わたしのありとあらゆる姿をお見せするのだが。
  キミだけに見せる笑顔とか、キミだけに見せる淫らな痴態とか……」

男「え、笑顔はうれしいけど、後者は……い、今のところは遠慮しておきます……」

ク「今のところは? いつになったら遠慮しなくなるのかな?」

男「か、会話の方向が怪しくなってきたのでまとめるけど、ボクはこう思うんだ。
  クーの姿は一つきりではないし、クーとボクの周囲のあり方も千差万別。だから……
  もっとこう、寛容な視線でボクらを見守っていてほしいよね!? ね、クー!?」

ク「強引に話を逸らされた気がするけれど、キミの言うことは正しいと私も思う。
  何にせよ、他者が構築した世界に不満があるのなら……あなた自身の理想をSSという
  形にして、わたしたちに見せてほしい。わたしは……もっと男クンとイチャつきたい」

男「せっかく綺麗にまとまったのに……最後の一言で台なしだよ、クー……」
639名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 20:37:54 ID:sGpfCbuF
>>626
ヤンデレの何たるかもわからずにヤンデレに対してグチグチと文句垂れるんじゃねえ、って言いたいんじゃないか?


ここしばらくの流れを見るに、自分の期待通りの展開にならなかった事が気に入らない糞餓鬼が暴れて、スルースキルを持たない馬鹿が煽ってるだけにしか見えない。
640名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 20:46:18 ID:/45yVv/V
うむ、真実。
641すなおく一る×おとこくん:2007/10/02(火) 20:56:56 ID:FKhwvm0v
素直クールとヤンデレがケミストるとヤバイみたいですね。混ぜるな危険

あとヤクザ娘が学校にいるのは変ですか?
女は市立の小中一貫校っていう、元の雑談から膨らました設定のSSです。
そういう学校に通ってるのはお金持ち名家(いちるはコッチ)というイメージですが、
ヤクザ屋さんも十分、“お金持ち”で“名家”(舞台は地方都市なんで、新興のヤクザじゃなく地縁のヤクザなんで)
だと思うんですけど?その娘がそういう学校にいるのは変?
642名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 21:25:37 ID:ev9EVFj1
NGにしてスルーしたかったからせめてどんなものかを投下前に書いておいてほしいな
レイプ未遂表現ありますとかさ
643名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 21:29:31 ID:AZ0+2wMZ
未遂なら別に宣言する必要はないのではないか、と言ってみる。
ま、その辺は個人の趣味にもよるけど他のスレを見るに大体マジレイプ以外は注意書なしじゃないかと思うよ。
644名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 21:34:34 ID:ev9EVFj1
未遂でも注意書きしてる人結構いるんだぜ
全員がそうしろとは勿論言えないが、やはりあったほうが良いとは思うんだ
先にNGにしろと言っておけば無駄に荒れる可能性も減るし
645名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 21:43:48 ID:Y2WhBo1M
予告も良し悪しだけどな
ほとんどネタバレで驚きも面白さも激減、てのはよくある話
646名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 22:18:28 ID:jgAB9P0g
レイプ未遂でガタガタ抜かすのは未成年だろ
647名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 22:38:52 ID:+fnPdot1
いくらなんでも未遂で予告は無いだろ。
普段ドラマも小説もみないやつか?

ドラマにも小説にもそんなもん有り無し予告はして
くれねーぞ?
ネットだからってワガママ言い放題なんじゃね?
648名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 22:51:05 ID:0WBHcNyj
視聴率用にもベッドシーンモドキは被せるのは普通じゃないか?
揚げ足取るようですまんが、たとえがちと悪い感じがする

ただ、作者が書きたい用に書かせてあげる雰囲気も必要だってのは同意
649名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 22:57:10 ID:87pEXl5H
>>1
>荒らし、煽りはスルーでお願いします。

レイプ未遂でも嫌がる厨房や予告付けろという馬鹿は全て荒らし
650名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:12:17 ID:36R9t2sa
嫌がるだけで荒らし扱いとは酷いものだな
予告はまぁ結局は書き手の問題だからどうでもいいけどな

>>641
俺の知る限りでは、小学生までは私立で
中学とか高校からは女子高って流れだった(サンプル数2だがw)
俺の聞いた話では、異性が多いとカップルになることも多くて露出増えて問題つかバレる可能性増えるとかなんとか
まぁなんでもリアルがいいってわけじゃないけどさ
気分悪くされたら謝るけどなんか取ってつけたような感じが俺はした

あと予告に関しては書き手の自由と思うが、荒れない対策(スルー対策)って意味ではある方が問題は起き辛いかも
直接的にレイプ未遂とか書くんじゃなくて人によっては嫌がる描写が入るかもって前置きしてるだけで大分違う
読者への言い訳にもなるしなw
651名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:17:45 ID:lLhe8Pli
もうあれだな、これから投下する職人さんは、

あらかじめ粗筋を掲載して、想定される趣味嗜好嫌悪禁忌をすべて洗い出し、NGワードを明確に宣言し、
住民のみなさんに『かようなSSを投下いたしたいのですがよろしいでしょうか』とお伺いを立てた上、
スレ住民が一人も『否』と言わないことを確認してから、正確に1日以上の時間をあけた後に、

謹んで投下するように。



つぶれちまえ、そんなスレ。
652名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:18:41 ID:87pEXl5H
荒らしのいうことは無視して職人氏は自由に投下してください
18歳以上の大人なんで予告も何も要りません
653名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:28:19 ID:+btomVSm
相変わらずネーミングは秀逸だなw
あと、訓より伊羽のほうが個人的には好きだ
654名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:34:11 ID:0WBHcNyj
クー惚れの前提は、妥協知らないガキと保護してやる母親の関係なんか?
655名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:36:42 ID:Y2WhBo1M
>>641
初めに小中一貫の話を出した俺としては嬉しい限りwww
656名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:56:44 ID:9uoy8L5e
え?これ未遂なの?オナヌーさするとか実行済なんで既に強制わいせつ現行犯じゃね?
薬を打たれちゃった千紗ちゃんのことを忘れないであげてください(つД`)
とかまあ細かい事はどうでもいいね。レイプ未遂くらいで騒いでるのはアホ。
それよりヤンデレだけがつらかったです。つまり
え?ちょっと男達スゲエ怒ってたハズなのにその怒り何処行ったの?
え?いやためらって矛盾した行動なんてなかったよ、由羽くん。
と、ストーリー構成ちょっと整合性が取れてなかったところが。
まあそれさえ除けば主人公(ヒーロー)がヒロインを危機一髪で助ける高品質な活劇。
そしてまあ、ヤンデレはキャラというよりこのシチュを作る為の舞台装置の役割が大きいから整合性の無さも必然。
なのでこのSSは良作でFA
657名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:59:08 ID:qM7pG74C
>>656
日本語でおk
658名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:10:25 ID:cWJXoiMV
レス数が急に増えたとおもって見に来てみたら予想通り荒れててワロタ。

内容から荒れるかなぁとか思ってたがまさかここまでとは。
659 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:21:10 ID:r4v0mYnW
何、この程度まだまだ。酷い場合は、延々煽り合いで数百レス埋まることもある。

でもさ、別にいいじゃないの。色々な意見があるってことで。
まあ、今回みたいに住人の嫌がる部分がはっきりしてるなら、次からは気をつければ良し。
何なら、>>650程度の注意書きを付け加えれば良し。
それでなお文句言うなら、それこそが荒らしだ。
気に入らないから追い出すなんて結果になったら、さすがに狭量が過ぎる。

しかしまあ、ちょっと雰囲気悪い時に書き上がるもんだな。
みんなの気分転換になればいいけど。

ただし、最初に言っておく! 登場人物は、別にロリコンじゃない。
660瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:23:12 ID:r4v0mYnW
 草木も眠る丑三つ時。
 まともな感覚の者ならば、夜明けを待って眠りに就いている頃。明日の為に疲れを癒し、そして活力を蓄えている頃。
 人知れず山中を往く者へ向けて、鋭介は声を掛けた。
「なんと。こんな夜更けにウロウロして。汝ら、どうかしたか?」
 一の二の三の。
 わざわざ指差し、数える。
 表情を窺える部位は、目の付近だけ。頭巾で顔を隠した、いかにも旅人ではない男が三人。
「…………」
「道に迷った――というわけではなさそうじゃの」
 突如現れた余裕綽々の青年を警戒し、一人が、鉈代わりの剣を構えた。
 露出した目を動かし、鋭介を品定めするように見やる。
「一つ訊く。この辺りで、奇怪な娘を見なかったか?」
 切っ先を向け、自分達の都合で問いただす。
「さて。ここらは変わり者が多くての。はてさて、誰のことやら」
 鋭介は軽い様子ではぐらかすが、
「我らは真面目に訊いておるのだ!」
 男の調子は変わらない。むしろ、刃をより近くへ寄せてきた。
 其方がそのつもりならば、此方もそれに従うまで。
 鋭介は態度を変え、怒りを込めた低い声を発する。
「……なれば、まずは刃を納めよ。それがぬしらの礼儀か?」
「貴様――!」
 首領格の一人が、激昂し振り被る仲間を制止し前に躍り出た。
「よい。――そなた、先程の我らの問いに、正直に答える気は無いか?」
「相手への礼を尽くすことを知らぬ者に、一々親切にするほど人間が出来てはおらんでな」
「ならば此処は、力尽くで口を割らせるまでよ!」
「問答無用か。わしとて、大人しく従う気は無いぞ」
「抵抗するならば、殺しても構わん! 勝手に探ればよいだけのこと」
 言葉と共に、手で合図をする。
 首領の命令に、部下の二人が得物を手にした。
「抜いたな? 遠慮はせぬぞ」
 それは即ち、覚悟があると見做す。
「恨み言は、閻魔相手にでも垂れるがよい!」
 裂帛の気合を込めて、闇夜に銀閃が奔った。
「ぬおっ!」
「ぐわああ!!」
 刃を鞘より抜き放ちつつ、擦れ違い様に一人。胴体を横薙ぎにした。
 そのまま袈裟斬りへ移行し、一人目の後ろにいた二人目を、肩口から斬り捨てる。
 一連の動作を終え、瞬間的に鋭介の動きが停止した。命のやり取りの場に置いては、致命的な失敗。
 くずおれる二人を囮に、背中から首領格の男が斬りかかってきた。
661瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:24:30 ID:r4v0mYnW
「ッが!?」
 驚愕に目を見開く。
 捨て駒二人が囮ならば、見せた隙こそ、鋭介の囮。
 刀を逆手に返し、迫る気配に逸早く突き立てた。刃を、赤い雫が伝う。
 男の手から得物が落ちる。
 鋭介は、首魁の男が地に伏せることを許さず、襟を掴み上げてその場に留めた。
 腰と膝の砕けた息も絶え絶えの男を、その鋭い目で睨みつける。
「ぬしら、僧兵か。何処の宗派か知らぬが、仏の徒ともあろう者が、地に落ちたものよ」
「……くっくっくっく。どうやら……この辺りで、間違いないらしいな……」
「なに?」
 焦点の定まらぬ目で、男は続ける。
「同志は、各地に散っておる……。結界のおかげで……此方から連絡こそ出来んが……」
 血を流し、体温を失ってゆく。
「我らが……辿り着いたのだ。いずれ、此処を探し当てるぞ……」
 死すら受け入れ、頭巾の中の男の口が吊り上がったのが判る。
「待て! 目的は何じゃ!」
 慌てて、鋭介は問いかける。
 三人の僧兵は、それぞれ告げる。
「あれは……仏へ至る法――」
「無余涅槃への道標――」
「沙羅双樹の化身――」
 この世で最期に残すのは、はっきりとしない抽象的な言葉。
 部下の二人から、生気は失せた。
 残る一人の辞世の句は、鋭介への忠告。
「気を付けられよ……あれを知られれば、時の、権力者……から、も……」
 そこまで口にして、首魁もまた息絶えた。
 死人をなお苦しめる趣味は無い。掴んでいた襟を放した。
「ついに、妖ばかりでなく……一体、何なんじゃ」
 鋭介は危惧する。
 ここ暫く、結界破りが多すぎる。それも偶然迷い込んだモノではなく、明らかに何らかの目的を持ったモノが。
 時期を考えるに、一因はおそらく……。
「エースケ?」
「ああ。あまり見ぬ方が良いぞ」
 木陰より、煌星が顔を出した。支持に従い、ずっと気配を消して隠れていたが、物音がしなくなって安全と判断したのだろう。
 鋭介は、一言注意をする。
 地に咲いた椿に倒れ伏す三人の姿がある。慣れていないと、見てて気持ちの良いものではない。
「この人たち……」
「気に病むな。お前に関係があるとは限らん。それに、どういう内容かはさっぱり解らぬが、使命に殉じたのじゃ。後悔は無かろう」
 煌星の希望とはまた別に、世間の目を誤魔化す立場に身を置いた方が、後々有利になるだろう。
 敵を斬り伏せる頻度の上昇は、決して口にしない。これくらいが通常だと思ってくれた方が、今はかえって都合が良い。
 そっと手を合わせる煌星の背中に、鋭介は目を細める。
「思えば、哀れな奴らよ。……墓くらい作ってやるか。せめてもの供養じゃ」
「私も作るわ。私に関係があっても無くても……冥福を祈るくらいは出来るから」
 それが、少女の答え。
 たとえ原因が何であれ。たとえ疑惑が真実であったとして。それでも、この少女が悪である筈が無い。
「そうか」
 鋭介は微笑む。
 少々困りモノの娘だが、せめて全容が知れるまでは付き合いたいと、そう願う。
662瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:25:51 ID:r4v0mYnW


「おーっす、鋭介。遊びに来たぞ」
 その日、呑気な声で戸を叩いたのは、鋭介の見知った顔だった。
 鋭介と同年代、簡単な旅姿の青年。住む場所が場所なら、さぞかし引く手数多だろう優男風の美男子だ。
 刃物の手入れをしていた家の主は、見るなり嫌な顔をしてみせる。
「む、なんじゃお前か。こんな真昼間から。仕事はどうした」
「分け前いらないのか? 町へ商品を卸してきた帰りだよ」
「ははは。すまんすまん」
 気軽に笑うと、席を勧めた。
 青年は腰を降ろすと、荷物を開き、売り上げと頼まれていた買い物、それと町土産を手渡す。
「お前の包丁や鎌、鍋なんかも相変わらず評判良かったぞ」
「当然。じゃが、まだまだ師匠には遠く及ばんの。次は刀の注文でも取って来てくれんか」
「ったく。その爺くさい言葉遣いは、何時までも直らないな」
「染み付いた癖じゃ、気にするな」
 鋭介は、机の引き出しから紙束を持ってくる。
「それでな、次のときに頼みたいものは――」
「エースケ、お客様?」
 その時、野良仕事から戻った煌星が、来客の気配を感じて顔を出す。
「ああ。こやつは、わしが此処に来た頃からの腐れ縁で――」
 紹介しようとするや否や、
「うわあああああ!? お、女だと!? 鋭介に女っ気だとお!?」
 一瞬で壁際まで後退り、青年は枯れ尾花でも見たかのように、ガタガタ震え出す。
 頭痛を覚え、鋭介は溜め息を吐く。この男は、一々反応がデカイので困る。
「落ち着け、馬鹿者!」
「え、鋭介……お、おお、お前、何時の間に女房を貰った?」
「義男よ、だから落ち着かぬか」
 元の位置に座らせると、声を荒げ目を血走らせる義男に煌星手作りの茶を出す。義男と呼ばれた青年は、それを一気に飲み干した。
 むせ返ったので、背中をさすってやる。
 落ち着いた所を見計らって、煌星は義男に深々と頭を下げた。
「初めまして。私、鋭介の妻の煌星と申します」
「ぬう……。年頃の娘とは、やるな、鋭介。しかも美人か。祝儀として、分け前多くしようか?」
「今の所、仮の立場じゃ。祝言も挙げておらんよ」
 ピンと来て、鋭介の言いたいことを察する。
「何やら複雑な事情がありそうだな」
「おかげで、この一月、全然手を出してきません……」
 義男は仰天し、声も無く目を見開いた後、ゆっくりと頭を振る。
 そして鋭介の肩に両手をついて、低い声で諭すように語った。
「いかん。いかんぞ、鋭介。夫婦なら、子を作らねば。そうして嫁を守るのも、夫の務めだろ」
「だから仮だと……遊戯のようなもんじゃ」
「何時しか、本当の夫婦になるかどうかの……まあ、賭けみたいなものです」
 鋭介は咳払いをするが、当然のように通じず。
「出会った経緯が経緯だけに、男として愛しているかは、最後の最後でイマイチ自信が持てないところがありまして」
 取り敢えず、あまり余計なことは言って欲しくないのだが……。
 言って欲しくないのだが、言っても無駄だろうから、中断してた刃物の手入れを再開する。
 煌星は詳細を省きつつも、鋭介との出会いから今日までの生活と、そこから得た感動を義男に吹き込む。
 片や義男は、心に染み渡らせるかのように、しみじみと何度も頷く。多分、あまり耳に入れてない。入れても、きっと理解する気がない。
「あ、でも、鋭介が好きなのは確実です。だから……恩もあるし、抱かれても問題ないって言ってるんですけど……」
 そら見たことかと、鋭介に顔を向ける義男。
 都合の良いところばかり聞き逃さない輩である。
663瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:26:54 ID:r4v0mYnW
「だそうだが?」
「以前、余計な一言を口にした手前な。わしも手出ししにくいのだ」
 少し悔しそうにむくれる。
「あ。一応、男として手出しはしたいんだな」
「まあ……」
 鋭介は、道具を床に置いて、煌星の全身を見回す。
 顔の造作も良し、体つきも同じ年頃の娘と比べて大人びて色気がある。はっきりとした年齢は不明だが、結婚しててもおかしくないくらいだろう。
 異国風の髪や瞳も、この娘の場合は何故か自然な魅力として映る。まともな男ならば、彼女へあらぬ衝動を掻きたてたとしても、それを強くは責められまい。
「これだけの女じゃしな。しかし、今更覆したりは、な」
 頭を落とした鋭介に、煌星は身を寄せ迫る。
 腕を取り、さらに密着。
 普段の煌星は、こんなことをしてこない。例の副業に付き合うのを除けば、普通の生活を、普通に鋭介と送っているだけだ。
 それが今日になって、突然積極的になるのは、どういう風の吹き回しか。
「無理しなくていいんだよ。ん? んん?」
「これ、人前じゃ。自重せんか」
「気を許してる相手みたいだから。仲の良さを見せ付けておこうかなって」
「何じゃ、それは……もう知らん」
「あーそうか。まーた不器用さを発揮したな、お前」
 困惑する鋭介を余所に義男は笑う。
「同じ男として解らんでもないが、何かと損してるよな」
「自覚はしておるよ」
 無視を決め込む鋭介の気を引こうと、煌星は鋭介の髪で遊ぶ。
 三つ編みや二つ分け、はたまた上げられても、形容しがたい髪型にされようと我慢する。
 むしろ“仮の”や“遊戯”という言葉に嘘臭ささえ感じつつ、義男は二人に忠告しておいた。
「ま、お前らが納得してるならそれでいいが……村の連中に、内情は知られるなよ?」
「解っておるわ。気にかけてるのは、間違いないからの。ついでじゃ、お前も騙されといてくれ」
「? えと、どういう意味なの?」
 何も解っていない娘相手に、二人は顔を向かい合わせて同時に溜め息を吐く。
「な。世間知らずじゃろ? だから、目を離せんのよ」
「成る程な。解った、俺も協力するよ」
「ああ、頼む!」
「頼まれた!」
 友情の証に、がっちりと右手同士を握る。
「ちょっと。質問に答えて」
 そこを煌星が水を差した。髪を引っ張り、ガクガク揺すって応えを求める。空気の読めない奴だ。
 鋭介は、珍妙になった髪を解く。少し考えてから、できるだけ簡潔な言葉にして説明した。
「本物の夫婦でないと知れれば、村の若い連中は、隙を見ては押しかけてくるぞ」
 髪を結びなおしつつ、仮とはいえ妻である少女に釘を刺しておく。
「特にお前は美人じゃからな。我先にと争いかねんわ」
 この家の立地条件や鋭介の存在から、多少の抑制にはなるだろうが、それでも目の届かない時までは保証できない。 
 性に対して、この国は大らかだ。平民ともなれば尚更である。規範や暗黙の了解といったものは当然存在しているが、そうでない相手には夜這い上等といった風俗だ。
 ただそれも、誰かと夫婦の関係になるまで。色町でもない限り、他人様の伴侶への手出しは厳禁である。
 過去の己を思い起こしながら、義男は語る。
「俺も昔は、随分女に手を出したもんだ。今じゃ、カミさん一筋だがな」
「その上、尻に敷かれておるからな」
「やかまし」
664瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:27:49 ID:r4v0mYnW
 ふと真面目な顔になり、本題に入る。
「で、どんな噂を流しておく?」
「ふむ。西の山の鋭介が、拾った女と一年前から懇ろだった――といったあたりかの」
「そうだな。幸い、ここ一年程でお前が拾ってきた奴はいないし。細かい事情は、適当に取り繕っておくよ」
 元々、人里とはそこそこ距離を置いた生活をしているのも好都合。
 九割の嘘に一割の真実を混ぜるのが肝心だ。それらしい説明さえあれば、一年程度の空白を誤魔化すのは訳は無いだろう。
「あ奴らは元気にしておるか?」
「そう思うなら、もう少し頻繁に顔を出せ。後が怖いぞ」
「耳が痛いな。まあ、近く下りよう。ともあれ、今回はその不精が役に立ったというコトでな」
 苦笑に苦笑で返す義男。
 それもいいかと、強くは言わずに腰を上げる。
「じゃあそういうコトで。後は任せておけ」
「もう行くのか?」
「他にも回らなきゃならない所があるからな」
「そうか。何時も面倒かけてすまんな」
「気にするな。惚れた男の頼みとあらば、断われんよ」
 途端に、煌星が鋭介にしがみ付き、顔芸を駆使して威嚇する。
「どうした、煌星?」
「あげないよ。私の鋭介」
 二人して必死の形相になり、その考えを否定する。
「いやいやいやいや! 要らない。要らないって」
「変なこと言うな、煌星。全く以って気色悪い」
「でも、惚れたって」
 弁明するも、煌星は不信を隠そうとしない。
 これはかなわんと、言葉を発した理由を説明する。
「鋭介は命の恩人だからってだけで、変な意味は無いって。人柄に惚れたとか、そういう意味よ。俺、男色じゃないし」
「もし本気で男色なら、とっくの昔に張り倒しておるわ」
「上等。お前なんて、こっちから願い下げだね」
 暫し間近で睨み合った後、破顔して大笑いする。
 そこまで確認して、煌星は義男の両手を取り、上下に大きく振る。
 困惑し、されるがままになる義男。
 どうやらこの少女、惚れた切欠に親近感を持ったらしい。


「これを持って行け」
 ようやく解放された義男に、鋭介は一振りの刀を投げ渡す。
「これは?」
「護身刀じゃ。脇差の上に試作品だが、使用に差し障りはなかろう」
 白木の柄を抜いて確かめる。
 透けると見紛うばかりの輝きが、瞳を突き刺す。
「高く売れるかな?」
「…………食うのに困ったらにしとけ」
「冗談だ。ありがたく貰っておく」
 そうして、義男は鋭介宅を後にした。
 仮の夫婦は笑って見送り、
「――は!」
 後姿が見えなくなったあたりで、夫ははたと気付く。
「おい! 待て、待たぬか、義男! 目録を忘れるな!」
665瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:28:35 ID:r4v0mYnW


「ねえ、エースケ。この間のあの人って」
「義男のコトか?」
「そう、何日か前の。どんな人なの?」
 壁越しに、煌星からの質問が飛んでくる。
「人となりは見たとおり。村長の息子でな、賢いくせにおつむは単純で……何かと気の好い奴よ。つまり――」
「つまり?」
「馬鹿じゃな。良い意味で」
「ああ」
 その一言で納得した。付き合ってみれば、きっと気持ちの良い相手なのだろう。
「ねえ、エースケ。一緒に入らない?」
「わしが、今此処で火を見てるのは何でじゃろうな?」
 鋭介は竈に薪をくべ、竹筒で空気を送り込んだ。
 見上げれば、柵のついた小窓から湯気が立ち上っている。水音も洩れてくる。
 壁板一枚の向こうは、師匠謹製の浴室。わざわざ作った大桶に水を張り、火をかけてやれば、たっぷりの湯に浸かって疲れを癒すことができる。
 が。
 鋭介は、これがあまり好きではなかった。いや、たっぷりの湯で垢を落とす行為自体は好きだ。だが、その準備が面倒だった。
 使うなら何日かに一片は水の張替えが必要だし、張り替えるならば、桶を肩に担いで何往復もする必要がある。
 その後はこうやって火を使わねばならないのだから、労力は馬鹿にならない。
 家事を手伝ってもらっている為、女にこれ以上の力仕事を任せるのは忍びなく、風呂の準備は自分で買って出たのだが、少々失敗したかと思う。
「もう大丈夫でしょ。良い感じに温まったし、直ぐには冷めないよ」
「ぬう……おのれ、口ばかり達者になりおって」
 自分が先に入ると、煌星は勝手に入ってくる。曰く手間を省くためとのことだが、確実に嘘だ。その為、一番風呂は彼女に譲るのが慣例になっていた。
 こうして誘ってくるだけならば、まだ可愛いものだ。油断してると、あの手この手でその気にさせようとしてくる。
 今回はどのように躱すかと考えた時……、
「また……え? しかも、こんなに?」
「煌星? ――む!?」
 禍々しい気配を感じた。間隔が短すぎる。それも……数、およそ二十。
「お前……」
 煌星は、思わず窓辺に身を乗り出していた。
 そんな彼女を見て、空恐ろしいものを感じる。一筋ばかり、冷や汗が垂れた。
(わしより早く察知するとは。まさか……な)
 雑念を振り払う。
 闇夜の向こう。気配を感じた方向を見やる。
 そして、彼の目が変わった。
 一介の鍛冶師から、邪を祓う戦士へ。
「行くぞ、煌星! 準備し――うわっぷ!」
 力強く立ち上がったところに、頭から手桶でお湯を被せられた。
「何をす……くっ! は、早く支度せぬか!」
 抗議しようと思えば、気付いて咄嗟に視線を逸らす。
 先程は気に留めなかったが、彼女は入浴中。つまり、その姿は……。
 脳裏に焼き付いた光景が浮かぶが、今はそんな場合ではない。すかさず邪念が発生する前に振り払った。
666瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:29:30 ID:r4v0mYnW


 山中を、二つの影が駆け抜ける。風を切り、湿った肌が体温を奪う。
「湯冷めしなければ良いけど」
「まだマシじゃ。濡れ鼠じゃと、さすがに冷えるわ」
 鋭介は、皮肉で一つ身体を震わせる。
「もう。裸を気にも留めないほど貧弱かな。無視されると、ちょっと傷付くよ」
「そんなのではない。気が余所に向いてただけじゃ」
 そもそも、ちょっと気紛れでモノを教えただけで、こうやってついてこられるようになったのが異常なのだ。
 取り敢えずで良い。自分の身を守れる程度の力があればと思って手ほどきしてみたのだが、一を知って十を知られると心穏やかではない。
 やはり彼女は神仏の類で、自分達とは根本的に違うのではないかと思ってしまう。
 男の嫉妬は見苦しいと、煌星には悟られないように隠してはいるし、それも慣れたが。
「本当にそう思ってるのかな?」
「正直、結構な辛さを感じておるよ」
 煌星の火照った裸体が浮かんでは消える。
 本日もそうだが、狭い空間で生活していると、あの手の出来事は多い。
 今回は偶発的なものだが、普段は誰かさんが面白がって意図的に起こすので、今まで遭遇した回数は覚えていない。
 その度に、鋭介は自分を抑えている。
 己の欲を支配してこそ、その先の道を極められる。それが今は亡き師からの教え。
「そ。……お互い心底本気になるまで、あと少しってところかな?」
「早めに本気になってくれると、此方としても助かるな」
「ごめんね、エースケ」
「謝るでない」
 はっきり言って、欲に流されても問題の無い相手なのだが、だからといって手を早くすると、自分に甘えが生まれる。
 今暫くは様子見の段階であると、鋭介は判断していた。
「――お喋りは、ここまでじゃ」
 目標を発見した。
667瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:31:17 ID:r4v0mYnW


 斜面の上から、木立に身を隠しつつ監視する。
 闇の中、明かりを灯すこともなく進行する一団。
 その内訳は、四分の三が異形。残りが――おそらく、例の僧兵の関係者――本来ならば、袂を連ねる間柄ではない者。人間。
「これまた、随分と節操の無い」
「やっぱりこんなに……。何、あの人数」
「有象無象ならいざ知らず、全員手練であったなら、わりと冗談にならんな。特にあの首魁と思われる者――」
 一段と大きな存在感を持つ男を注視する。
「金髪碧眼に赤い肌か。南蛮人……でもなさそうじゃな」
 やや逆立った髪は、本物の金糸を頭皮に埋め込んだかのように眩く。
 赤みがかった白ではなく、血か炎を思わせる肌。双眸は青玉。
 ある意味で目立つのは、袖なしの合わせや袂の無い上衣。集団を率いるような装いではない。そのくせ威厳を出す為か、赤地に精緻な刺繍を始めとする豪奢な装飾を施した派手な外套を纏っている。
 中々に傾奇者だが、いくら鋭介の夜目が利くとはいえ、肌や髪の色はともかく瞳の色など解ろう筈もない。
 しかし、鋭介はハッキリと認識した。何故ならば、光を反射するのではなく、自ら放つように輝いていたからだ。
 いや、実際に光っているわけではない。まるで姿形を正確に認識している、そう錯覚させる程の気配があるだけだ。
 一目で只者ではないと解る。余程の愚図か大物でもなければ、嫌でも意識させられる。
 鋭介は唾を飲み下す。
 今の自分が、あの男に、確実に勝てるという自信は……、
「そりゃあ!」
 掛け声と共に、突如背後に現れた気配から、凶器が振り下ろされた。
「何?」
「見つかったか!」
 迂闊にも、親玉に気を取られすぎた。斥候の不意打ちを軽業で躱す。
 驚く煌星を両腕に抱いて宙を舞い、一団の只中へ降り立つ。
「ありがと」
「気にするな」
 煌星を解放し地に立たせると、斥候が滑り降りてくる。
 不細工な顔をした、人型の妖だ。鍬のような武器を手に、要所を鎧のようなモノで守っている。
「親分、曲者ですぜ!」
「どちらが曲者やら。此処は、わしらの山ぞ。ほれ、もっと痛い目に遭いたいか?」
「何ィ――うへぃやあ!?」
 躱した際に、鞘で礼を一発ぶち込んでおいた。
 胴当てが砕け、思い出したように襲い掛かった衝撃が、斥候を吹き飛ばす。
「ぶぇっ!」
 たっぷり二十尺近く跳ねてから、潰れた蛙の様になって地面と接吻する。
 部下の様子を気に留めず、余裕綽々と、親玉は鋭介の言い分を認めた。
「ふぅむ。確かに、我らの方が悪者だな。ああ、それから――」
 潰れ蛙に注意する。
「何度言えば解る? その呼び方は、野暮ったくていかん。今更言葉遣い全てを直せとは言わないが、せめてもう少し雅やかに呼べ」
 痙攣しながら顔を上げた蛙は、それどころではないだろうと、半眼で訴える。
「あの……お、じゃねえ。親方、いや。主様?」
 軽く無視して、鋭介たちを一瞥すると、優美な仕種で頭を下げる。
「安心したまえ。無闇に事を荒立てるつもりはない。此方の要望に応えてくれれば、早々にこの地を立ち去ろう」
「ちょ、俺ァその男に、こんな目に遭わせられたんですぜ」
「我慢しろ。交渉中だ」
 突き刺すような針のような気配に、鋭介の額に浮き出た冷や汗が、頬を伝って顎から落ちる。
 辛うじて、鳥肌が立つのだけは抑えられた。
 気取られるなと気を強く持ち、男の眼から視線を外さない。
668瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:32:12 ID:r4v0mYnW
「要望な。どうせ、碌な物ではあるまい」
「まあね。そう言われるのも、仕方の無い話だろう」
 外套を翻し、胸を張って告げた。
「まずは名乗ろう。私の名は、石火とでも。要望というのは、その娘……」
 ゆっくりと、人差し指を水平にする。
「此方に引き渡して貰えるか――って、そりゃ拒否もされるな」
 鋭介の背中に隠れた煌星に苦笑する。
 気を取り直して、石火は爽やかな笑顔を浮かべながら背中を向けた。
「まあいい、此処は退いておこう。急ぐでもなし、見境無く神狩りしてるワケでもなし」
「逃げるのか?」
「仮に当たりだとしても、準備ってものがある。物事、浪費を抑えるのに越したことはないさ」
 振り向かぬ背中に、声を浴びせる。
「貴様の目的はなんじゃ!」
「原初の願い――生きとし生けるものの、根源的欲求。言葉面ほど大層なものじゃない。自分勝手な目的だ」
 顔だけたった一度振り返り、軽く手を振ったら先へと止まっていた足を進める。
「それじゃあ。もう会わないことを願って。行くぞ」
「待……む?」
 石火とそれに従う部下を追おうとする鋭介の行く手を、数体の妖が阻んだ。同時に、さらに数体が後方を塞ぐ。
 計、十体弱の妖が、鋭介の生命と煌星の身柄を狙う。
「此処はお任せを。この傷の借りは返させてもらうぜ」
 蛙――鋭介の中では、これで決定した――が、チンピラ然とした態度で凄んでくる。
 そこへ、親切心で遠くから石火が忠告を入れてやる。
「やめておけ。お前達が束になったところで、命を棄てるだけだぞ」
「へへへへ。親方、たかが人間を買い被り過ぎでさ。油断しなけりゃ、負けるはずありゃしませんて。朗報をお待ち下せぇ」
 直らぬ呼称に、一つ小さな溜め息を吐いて、どうしたものかと考えあぐねる。
 だが逡巡もそこそこに、
「――ま、惜しくもないか」
 損得勘定で此処は捨て置いた。時間稼ぎくらいにはなる。
669瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:33:09 ID:r4v0mYnW
 主人の心中を知らぬ蛙は、仲間と共に自信満々鋭介たちを威嚇する。
「ひっひっひ。ってワケで、其処の嬢ちゃんを貰うぜ」
 駆け出し始めた石火一同の後姿から、追跡不可能と状況判断を下す。
「もう追いつけんな。おい、お前。後ろの連中……僅かで良い、押し留めてみろ」
「はい。あなた」
 お前と呼ばれ、それに倣った呼称で返す。
「イチャついてんじゃねえよ!」
 蛙は青筋立てて怒鳴るが、鋭介たちは軽く受け流す。
「フッ。羨ましかろう?」
「羨ましかろう?」
 むしろ、身を寄せ合ってからかってみる。
「う、ううううう羨ましくなんかないわ!」
 頭から湯気を出し、蛙は地団太を踏む。
 ムキになって、仲間に号令をかけた。
「えーい、お前ら! 何をボサッとしてる。さっさと片付けろ!」
 左手を鞘に、右手を柄に。
「やれやれ。中々に憎めない奴じゃが、人里へ下ろすわけにもいかんしな。少し、本気でいかせてもらうぞ」
 一番手を迎え撃つ。
 後の先を取って、鋭介は太刀を抜き放った。まず一体。
 次々飛び掛ってくる敵を、横に、縦に両断し、あるいは急所を貫き沈黙させる。
 鬼神の如き戦いぶりに、蛙は怯え後退る。
「んな馬鹿な……。四人もあっさりと……!」
「汝らだからじゃよ。石火とかいう親玉相手では、こうはいかん。さて――」
 後方を見れば、煌星は同じく四体ばかりを相手しながら、その身に敵を寄せ付けない。
 障壁を張ったり、それを鎖状に展開して動きを奪ったり。防御術ばかりを教えた故、攻める術こそ持ち得ていないが、しっかり身に付け使いこなしているらしい。
 攻めに特化した鋭介よりは、余程才能があることが見て取れる。
「大したもんじゃ――っと!」
「んぎゃ!」
 後ろからの攻撃を躱し、一つ裏拳で黙らせておく。
「ご苦労。後は任せよ」
 跳躍し煌星の頭上を軽く越えるなり、早速一体の首を刎ねる。
 既に勝負は決まっていた。残るは、時間の問題のみ。
 手早く片付けると、蛙の鼻先へ切っ先を置いた。
「ひっ!」
「さて。汝らについて、洗い浚い吐いて貰いたいが。どうじゃ?」
 ちくちくと、鼻の頭を突く。
「だ……誰が話すかー!!」

 意外と強情だったので、仕方なく蛙さんには、夜空の星になってもらった。
 これからは人の足元をすくおうとして踏み潰されるのではなく、誰かを照らす存在になって欲しいと切に願う。
「結局、何も進展を見せんかったな。無駄足か……」
 いくら何でも、最近は結界を突破されることが多い。師の遺したものだけではなく、強化も考える必要があるかもしれない。
 今後の方針について考えていると、煌星が袖を摘んで小さく引っ張ってきた。
 其方を見る。
「無駄じゃないよ。村への危険は、確実に減らせたし。貴方のおかげで。ね?」
「――そうか。そうじゃな。我らの働きは、決して無駄ではない筈じゃな」
 確かにその通りだ。何も難しく考えることはない。人事を尽くして天命を待てば、それで良い。
 悩む必要は無い。やれることをやれば、いずれ必ず報われるに違いない。
「さて、帰るとするか」
 だがその前に。
「うん。エ――」
 片手で煌星の口を塞ぎ、空いてる手で太刀を投げる。
 発射された刃は、次の瞬間には、一直線に木へ突き刺さっていた。
「どうしたの?」
「なぁに。ちょいと、覗き魔にお仕置きをな」
670瀬川双神伝・承 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:35:07 ID:r4v0mYnW


「へぇ。この地の守護者もやるもんだ」
 監視用の小型使い魔が討たれたのを察し、思ったより強力だった敵の力を認める。
 山道を進みながら、面白くなりそうな予感に、石火は笑みを浮かべた。
「いかがなさいますか?」
「放っておけ。確証も無く動けば、騒ぎは大きくなるだけだ」
 指示を仰ぐ部下に石火が下した命令は、現状維持。
「戦国の世は終わり、天下統一が為された。それに伴い、全国的には、妖の活動も沈静化の傾向を見せている」
 およそ十年。
 以前は混乱に乗じて活動していたモノたちも、落ち着き始めている。何の考えもなく暴れるのは、悪戯者か単なる馬鹿。
 もしくは、
「下手を打って、余所の守護者を呼ばれたら厄介だろう? 暇してるのも多いだろうしな」
「では?」
「暫くは表立って動かず、此方は諜報活動に専念する。当たりが出れば、それで良し。外れなら、この地に長居は無用だ」
「はっ」
 もしくは、心身ともに強さを自負するモノ。
「それと平行して、一応儀式の準備も進めておこうか」
「少々大掛かりですが……確証の無い時期に大袈裟では。無駄は省かれるのではなかったのですか?」
「自分の頭で考えてみようね。いくら私の部下だからって、自分の判断まで無くしたら、人間終わりだよ、キミ」
「はあ……」
 尤も、その部下は人間ではない。
 しかし、説明しなければこの場は埒が明かないのも事実。まだまだ見識の甘い部下への教育を兼ねて、ここはちゃんと説明しておく。
「確信はしてるんだ。実は、その裏付けが欲しいだけなんでね」
「…………石火様。お言葉ですが、根拠は?」
 自信満々に、石火は言い切った。
「勘、さ」
671 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/03(水) 01:37:58 ID:r4v0mYnW

以上です。
次回は「転」なので、あと二回ほどお付き合いくだされれば。

きっと、こんなタイトルの書物かなんかが伝わってるんだよってことで。
前回のタイトルも、ちょいと修正して覚えてもらえるといいな。

それでは。
672名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 03:35:43 ID:/Pa3TbCT
>>671
GJ!
石火さんって結構良い人っぽいな。
673名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 04:19:10 ID:ByUn5U9e
GJ



>>650
知り合いにヤクザ関係者が二人もいるのか?スゲーな
674名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 06:35:22 ID:TQ4BvY2F
GJ

引っ張るなよウザったい
675名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 15:48:52 ID:90uAVnTI
GJGJ!

相変わらずこのシリーズ格好良すぎですね、この
文章が大好きです。

676名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 17:55:30 ID:BSsEo09W
まぁ「自分は納得できたらから納得できない厨房ウザ」みたいなレスもアレだな
良かったって意見も悪かった意見もすべては書き手さんへの肥やしになるわけだし
少なくとも批判してる人へ批判するのは良い読み手とは思えないな
批判してる人は別に「こんな作品にGJとかバカじゃねーの」とか言ってるわけでもないし
自分が満足したからって「予告しとかガキかよ」とか単なる自分が
好きな作品が突っ込まれただけでキレる信者と変わらん
それこそ賛美するレスも批判するレスも一意見と見れないやつは未成年だろう

と、今更ながら思った
677名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 18:52:10 ID:QqkiOfZd
予告不要、レイプ歓迎まで読んだ
678名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 18:54:08 ID:r3bRg2EG
>>676の人気に嫉妬
679名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 19:00:35 ID:JVvgUAbK
本当に今更なんて、誤爆スレにでも行って
やってくれないかな?

所で、そろそろ次スレな訳だが。
680名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 19:05:10 ID:n9gZTehF
書きたくなる、書いてもいいかなって思わせる雰囲気希望
作家置いといての、自己満設定押し付け合いはきびじいってさ
681名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 19:13:40 ID:wgtLHr2D
>>676
その賛美批判の意見の交わし合いとやらも、
今みたくただの言い争いと煽り合いに変わったらスレ的には確実にマイナスにしかならないってことに気付けお前は
682名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 19:32:16 ID:iGe3qlwJ
このスレ、どうも荒らしに目をつけられてしまったようだな……鬱陶しいったらありゃしない
683名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:04:34 ID:W+d8FKBJ
お互いにスルーして
それだけでいいから
684名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:31:09 ID:KIuioLm8
巨乳お姉さんマダー?
685名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 23:41:18 ID:UpWzKNsK
こういう時は俺が書き込むべきなんだよな。
ツッコミ待ちのネタどころかぬるぽすら反応されない俺のスレスト能力。スタンドだ。
686名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:42:38 ID:Z8Q/M//b
この内容予告だの唐突だのって、ほの純スレで名前は「男」「女」じゃなきゃヤダって流れに似てんな。くだらねぇ。

独り言だけど。
687名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 02:11:10 ID:dwIsuq5j
>>682みたいのが一番厄介だな、なんでも荒し扱いして結局荒らされる

つか「注意書お願いします」ですむ話で荒れるのも凄いなw
688名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 02:18:23 ID:6eBSSDIN
またしてもスルー検定が投下されました
689名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 02:26:28 ID:EHcDPOQr
次スレの季節じゃないですか。
もう容量いいとこまできてるけど?
690名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 03:48:00 ID:xZWQEcRb
立ててみる
691名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 03:50:50 ID:xZWQEcRb
ホスト規制って……
過去スレ一覧は>>2にした方がスッキリするかも。

ふたば☆ちゃんねる落書き板の天才によりツンデレに対抗すべく、
新たに"素直クール"なる言葉が誕生した。
ツン→素直 デレ→クール
ガチで愛してくれるが、人前であれ、好意に関してはストレートかつ
クールな表現をするため、男にとっては嬉し恥ずかし暴露羞恥プレイ。
しかし、どこか天然。言葉萌えのツンデレ、シチュ萌えの素直クール。

ここはそんな素直クールのエロパロスレです。
荒らし、煽りはスルーでお願いします。
前スレ
素直クールでエロパロPART5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1182429786/

過去スレ
素直クールでエロパロPART1
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/eroparo/1139830862/
素直クールでエロパロPART2
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/eroparo/1151146736/
素直クールでエロパロPART3
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/eroparo/1165760283/
【エロパロ】素直クールでエロパロPART4
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/eroparo/1177753262/

保管庫(エロパロ板)
http://derheiligekrieg.h.fc2.com/cool.html
素直クール保管所(全体)
http://sucool.s171.xrea.com/
692名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 11:12:03 ID:k3n22hI/
自分もムリ。どなたかお願いします。

>ここはそんな素直クールのエロパロスレです。
>荒らし、煽りはスルーでお願いします。

これ以外にこんなテンプレ追加したい気もするんだけどどうでしょうか?
ちょっと言い出すの遅かったかな?

・レイプ、陵辱、残酷描写などがある作品の投下時には、
 必要に応じて適宜注意予告をお願いします。
・職人に対し注意予告の依頼は止めましょう。スルーば自力で。
・職人の投下しやすい雰囲気づくりを心がけましょう。
・ネガティブな意見はなるべく控えましょう。
 理由もなく「嫌い」などの意見はスレには必要ありません。


693名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 11:20:20 ID:wkhcsPmi
次スレ立てた
素直クールでエロパロPART6

http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191464305/l50
694名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 13:42:31 ID:x4G6dnn7
ナイスシカト
695これからずっと ◆6x17cueegc :2007/10/04(木) 16:25:58 ID:DWrfxy7s
>>693
乙です。

さて、容量埋め代わりの新作投下。一応本番は無しで短めの回なので入る……かな?
Word的には約6300文字らしいので入ると思いますが、もし切れちゃったら続きは新スレに書き込みたいと思います。

それではどうぞ。
696これからずっと ◆6x17cueegc :2007/10/04(木) 16:27:08 ID:DWrfxy7s
教室内にトンカントンカンと釘と金槌のぶつかる音が響く。場違いな音ではあるが小気味よいリズムを刻んでいる。
ざわついているのはこの教室だけではない。学校中が落ち着かないのは文化祭本番を間近に迎えているからだ。
「……い。」
「ん?ゴメン、周り五月蝿いからよぉ聞こえん。」
「先輩。」
「何や?」
声音から安田だという事は分かっていたから、背を向けたまま応対する。ちなみに俺は立て看板とにらめっこしているところだ。
「少しお時間いただけますか?」
「無理。見て分からんか?これ全部、1人で仕上げなアカンねん。」
足下には真っ白な紙が貼られた畳1畳サイズの板が4枚転がっている。

ついさっきの話だ。
文化祭を3日後に控え、演劇のセットの色塗りをしていた俺は文化祭実行委員に呼び止められた。
「飯嶋って美術部だったよな。」
「そうやけど?」
「立て看板作る許可取ってきたから描いてくれないか?」
「描いてもええよ。で、どんなん作るつもりなん?」
「これくらいの大きさの板に白い画用紙貼って、その上にイラストを描いてほしいんだ。」
指でL字を作り胸の前の空間に吊り下げて大きさを示す。
「大体畳1畳くらいか。随分大きい看板やな。」
「だから今まで許可取れなかったんだけどな。土壇場で先生説き伏せて何とかした。」
満面の笑みで親指を立てる彼。

……が、受けたのは間違いだった。
まず看板班(仮)に割ける人数は1人のみ。つまり俺だけだ。そして作る枚数。1枚だと思っていたら4枚作ってくれとのこと。
最後にこの実行委員、肝心のデザインを考えておらず、しかも明後日には仕上げないといけないと言う。
「本番、3日後やで?」
「前日までに並べないといけないんだよ。」
それやったらもっと早よ言うてくれればええのに、と文句を言うと頭を下げてこう言う。
「本当は出す気無かったんだけどさ、他の3年のクラスはみんな出すんだよ。ウチだけ出さないのもアレだし。」
かなり厳しいけどのは分かってるが何とか頼む、と拝み倒してくる。
俺も文句は言っているが依頼を受けた以上やる気はあるし、何よりここ1ヶ月よく走り回っていた彼の頑張りに応えたい。
大きく息をつき、分かった何とかするわ、と答えた。

そして現在。
のっぺりとした真っ白な板が4枚、足下に並んでいる。当然下描きさえ描き込まれていない。
デザインはどうしようかと悩んでいた所に安田がやって来た、という訳だ。
「じゃあ作業を続けたまま、聞いて下さい。」
「あー、んー。」
ぼーっと床の一点を見つめ、考え込む。
いつもと違って『苦しんででもいい絵を描こう』ではなく『楽に時間内に仕上げよう』だから、考えがなかなか纏まらない。

「先輩。」
「…………」
「……先輩?」
「あ?」
考えが纏まりかけたところで声をかけられ、ついきつい目で見遣る。だが、すぐに誰がいたか思い出し慌てた。
「ゴメン。」
「いえ。私の話聞いてま……せんよね、どうせ。」
少し拗ねたように視線を逸らす。
「いやいやいやそんなことないで、大丈夫、聞いとったから。」
「じゃあどんな話をしていたか覚えていますか?」
「えっと、聞いとったよ?聞いとっただけ……」
無言のまま睨むので耐え切れずそっぽを向いてしまう。

「……まあいいです。文化祭当日、暇な時間があるか訊きたかっただけですから。」
「暇な時間?」
「一緒に回りませんか、と訊いているんです。」
「うーん、回りたいのは山々なんやけどな、ちょっと無理やわ。ほら、ウチら出番最後やから。」
697これからずっと ◆6x17cueegc :2007/10/04(木) 16:27:55 ID:DWrfxy7s
この学校では例年、1・2年生は模擬店、3年生は演劇をすることになっている。
1学年しか演劇をしないとは言っても、1日で全クラスが演劇をするから最後の演目は相当遅くなる。その待ち時間に最後の練習を繰り返すのだ。
正直最後の足掻きではあるが、高校最後の文化祭で少しでもいいものを出したい。だから3年生は毎年、自分たちが終わるまで朝早くから全員が拘束されるのだ。
そこに例外は存在しない……らしい。

「せやから無理。」
「……そうですか。」
一瞬不満そうな表情を浮かべ、それから残念そうに呟く。人前では無表情な彼女にしては珍しく、顔に出るほどの落胆ぶりだ。
「そんなに落ち込まんでもええやんか。大体お前も自分のクラスでやらんとアカンこと、あるんちゃうんか?」
「一応済ませてからきましたよ。」
「そうは言うても本番直前やで。いくら人手があっても足りへんときと違うんか?」
「そうなんでしょうかね。一応、一声かけてから来たんですが。」
よく分からないです、と言いつつ後ろを振り返っている。少しは自分のクラスが気にかかっているようだ。
「気になるんやったら早よ戻り。俺もこれ仕上げんとアカンし、自分のこと相手しとる暇は無いで?」
そう言って背中を押して追い返した。今は一分一秒でも時間が惜しい。

文化祭前日。
何とか形になった(と思う)看板を運び出した後、帰ろうとしたら実行委員に呼び止められた。
「何やねん。とりあえず仕上げたやろ?」
「それはお疲れ様。ありがとう。」
「どういたしまして。じゃ、さよなら。」
背を向けると肩をガシッと掴まれた。
「じゃあ、片付けてもらおうか。」
奴は俺が占拠していた床を指差しにっこりと微笑む。
「やっぱりやらなアカン?」
「当然。雑巾で全部落とすまで拭けよ、明日チェックするからな。じゃあ、さよなら。」
少しも手伝う様子もなく鞄を掴んで帰っていった。

暫く後、バケツと雑巾を手に提げて、俺は途方にくれていた。
かなり荒く筆やハケを動かしたから、絵の具を派手に撒き散らしてしまった。床だけではなくて壁にまで飛沫が飛んでいる。
とりあえず1時間もあれば落とせるだろうか。大きく溜息をついて膝立ちになり、端から擦っていく。

「先輩。」
「ヒッ!……驚かしな、何や後輩。」
いつの間にか背後に立っていたらしい。小声でポツリと言い出したので心臓が跳ね上がった。足音を消して近寄るなんて意地が悪い。
「先輩だけ、居残りですか?」
「うん。ちょっと派手にやってもうたからな。」
夏が過ぎたとはいえまだ日の長い時期だが、もう外は薄暗くなってきている。そろそろ灯りをつけないと、汚した場所の見分けがつかなくなってきていた。
「悪いけどさぁ、電気つけてくれへんか?もう暗くなってきたし見えへんねん。」
「…………」
背中を向けたまま頼んだが、反応が返ってこない。おかしいな、と膝立ちで後ろを振り返り見上げると安田が倒れこんできた。
「どしたん、気分悪いんか?」
驚いて受け止めると、逆に抱きつかれた。きつく締め上げられて呻き声が漏れる。
「うっ……止め、しんどいから。」
「久しぶりなんですから、我慢してください。」
俺の肩に顔を埋め、大きく息を吸い込む。それからグリグリとおでこをこすり付けてくる。
「ずうっと私のこと、相手してくれなかったでしょう?」
そのまま首を振るから少し長い髪が散らばって音を立てる。
「最後の文化祭だから頑張るのも分かりますけど、私も寂しいんですよ?」
見上げられたその視線にぞくっとした。
「やっぱり、立て看板に負けるのは悔しいですから。」
「大丈夫、負けてへんから。」
脊髄反射で即答する。普段はこんなこと言わないのに、つい口が滑ってしまった。
698これからずっと ◆6x17cueegc :2007/10/04(木) 16:28:31 ID:DWrfxy7s
一瞬何を喋っているのか分かっていないような表情を浮かべたが、すぐに笑みを浮かべると目を閉じて顔を寄せてくる。
「キス、して?」
「ここ、学校なんやけど。」
「この辺りにはもう誰もいないようですが。」
「誰かおるとか関係無いわ。大体他のクラスがどうとか、そんなん分からへんやろ?」
もう随分暗くなってきてはいるが、まだ完全下校には少しだけ時間がある。ウチのクラスは明日に備えて早めに解散したが他のクラスはそうでもないだろう。
「大丈夫です。ここにくる途中見てきましたけど、どのクラスももう帰ったようです。」
「んなアホな。まだ時間はあるんやで?」
「そんなこと、私に訊かれても困ります。……早く。誰か来ちゃいますよ?」
少し楽しそうに更に顔を寄せてくる。もう鼻と鼻が触れ合いそうな距離だ。ふう、ふう、2人の鼻息だけが教室に響く。

「ね?この状況で言い訳は出来ないですし。」
彼女を受け止め座り込んだ俺に、寄りかかるように彼女が覆いかぶさっている。見方によってはキス以上のことをしているようにも見えるだろう。
「……これっきりやからな。」
安田の首の後ろに手を回し引き寄せて唇を合わせる。すぐに離れようとしたが安田は舌を伸ばしてくる。
唇の縁を舌の先で舐められもう一度くっつく。ぬめぬめと舌を絡めあう。
「ふ、むぅっ……はぁ。むぐっ……」
息も整えずに唇を塞ぎあう。何度キスをしても息をきちんと整えようと思わないのはどうしてだろうか。
呼吸なんてどうなってもいいくらい気持ちがいいからなのかもしれない。

数度唇をつき合わせた後、とうとう息が続かなくなった。深呼吸をして肺を大きく膨らませる。
「さっき一度だけだって言っていませんでしたか?」
「揚げ足取らんでええわ。……帰ろか。どいて。」
安田に立ち上がるようにうながしたが動かない。邪魔だから、といってもどかない。
「お前な、俺の邪魔しに来たんか?」
「いいえ、邪魔をするつもりはありません。ただ少し、先輩が恋しくて。」
「恋しい、言うたって毎日顔見に来るやないか。」
「でも、こうしてキスしたりSEXしたのは大分前ですから。」
「なっ……」
何を言うとるんや、と言おうとして絶句した。慕ってくれるのはうれしいが、こんな場所で埋め合わせをしようとしないでほしい。
「いつも『文化祭の準備が忙しいからまた今度』って言っていたでしょう?……どうかしましたか?」
「もう、何言うてもお前は変わらなさそうやな……」
「はい。変わりませんし、変えるつもりもありません。だから。」
また顔を近づけてきて、唇で鼻の頭にほんの少し触れると抱きついてきた。
「もう我慢できません。しましょう?」
「お前の家か?行ってもええけど、親御さんいはるんと……」
「ここで、しましょ?」
言うと俺の股間をこすりあげる。強い刺激で抗議の声を封じられ、何も出来ないうちに顔中にキスを降らせてきた。

「家に帰るまでの間も我慢できません。今すぐ下さい。」
鼻や、瞼や、耳や頬に軽く当てていくだけの行為を繰り返す。
「ダメですか?」
「ダメですかって……アカンに決まってるやろ。」
「でもこんなに大きくしてるじゃないですか。言い訳は見苦しいですよ?」
クスクス笑ってズボンの上から指を走らせる。さっきとは違って、柔らかくくすぐるような刺激だ。
「しゃあないやろ、勝手に反応してまうんやから。」
「うれしいです、私で興奮してくれて。」
俺の言っている意味を分かっているくせにこんなことを言う。
699これからずっと ◆6x17cueegc :2007/10/04(木) 16:30:07 ID:DWrfxy7s
と、ここで断念。続きは新スレにて。
700名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 16:50:12 ID:VcW4zKZ+
乙梅
701名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 17:05:02 ID:pewPyH4r
「かくて紙幅は尽き、素直クールの物語も次章へと続く……」と。
キーボードを打つ音だけがカタカタと深夜の部屋に響く。
一通り打ち終わると、ううんと大きく伸びをひとつ。
「さて、これからどんな物語が紡がれるのだろうね?」
興味深げにスレを覗きながら、私は小さく笑みを浮かべた。
702名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 17:38:34 ID:F2FtGtk0
next
素直クールでエロパロPART6

http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191464305/
703名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 21:20:20 ID:gV38FToQ

うまれ
704名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 21:24:24 ID:x4G6dnn7
る!
705名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 22:36:58 ID:3FPVGOvu
奥さん、元気な双子ですよ!
706名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 23:16:50 ID:eZjTImSd
これでお終い
707名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 01:55:10 ID:wA7NStvm
未だだ、未だ終わらんよ。
708名無しさん@ピンキー
君と私の幾多の物語が、また紡がれますように。