私が欲しいか?
私が欲しいならくれてやる!
ARMS的素直クールとかわけわからん電波受信
>>480 その電波はちゃっちゃと話に変換しようぜ
残念ながらジャバウォックは素直クールじゃなくてツンデレだ
ARMS未読で
>>480を考えたらこんなん出た。
「……なんだ?私のことをじろじろ見たりなんかして」
「あいたたた…いや、教室に入るなり全力で体当たりしてきておいてそれはないだろ」
「そうか、君は私にホの字で文字通りのアタックをかけてきたのだな?」
「それ違うしむしろそっちの方だし」
「よしわかった、そこまでして私が欲しいと言うのなら仕方がない。
今すぐ唇から女性器、お尻の穴まで私の全てを君にくれてやる。もちろん返品は不可」
「誰か俺を助けて下さい大至急」
>>483 「む…や、やめっ…ふむっ……んんぅ」
「……ぷはぁ……」
「な、な、いきなり何をするだァーッ!? キキキキキス、キスって――」
「……なんと素晴らしい…君の唇はとてもいい味がするな」
「あ、味って! 俺のファーストキスだったんだぞッ」
「なんと……私は猛烈に感動している。この唇に触れた女は私が最初だとは――!」
「押し倒しながらヘンな叫びを上げるなッ!っていうか離せ!俺の上からど――」
「ん……」
「んくっ……あ……ふぅ……ん……」
「……君の唾液はさらさらでとてもよい味がする。ずっと吸っていたいくらいだ。
それに君の舌に私の舌を絡めると君の体から力が抜けて従順になるのが可愛らしい。
このまま食べてしまいたいくらいだ」
「…」
「こうして嗅いでみると君の体臭も芳しい香りだ。この匂いに包まれて眠るのが今から楽しみだ」
「……」
「まあ、それより前に君とたっぷり一緒に汗をかいてさまざまな体液を分泌するのが順番からいえば先だな」
「………」
「心配するな。私は男性経験はないが、痛みには強いほうだ。君がどれほど情熱的に求めてきたとしても
それを受け入れる自信はあるぞ」
「…………タシケテ」
「ん?早速男性器が充血してきたようじゃないか。しかし、ここは教室だ。ここでするわけにはいかない。
もう少しばかり待ってくれないか?まあ、どうしてもというのならばそのような変態行為に付き合うのもやぶさかではないが
やはりそういうのは段階というか、普通の性行為に飽き足らなくなってから行うべき行為だと思うのだ」
「………(泣)」
内藤「私が欲しいか?私が欲しいならくれてやる!」
隼人「お前はトロクセェんだよ!俺に全ての感覚をよこしやがれ!」
内藤「す、全てだと。私の唇も胸も臍もアソコもアナルも、ああ、全て捧げろというのか!是非!!」
隼人「おい、脱ぎ始めるんじゃねぇ!」
内藤「さぁ!キミのミストルテインの槍で私を深く、強く貫きたまへ!!」
で、内藤と隼人って誰?
>>463 GJ!
ただ正直なところ、エロ無し作品はスレ違いなんで
ほの板の素直クールでやって欲しかった
いままでずっとエロなし許容してきているこのスレで、
いきなり何だそれw
ほの板が過疎っているから人を呼び込みたい
気持ちはわかるけど、
ほの板、VIP
= エロ不可、台本形式もあり(というかメイン)、軽い小ネタ、スレの流れ重視
エロパロ
= エロありメインだがエロなしもあり
小説形式を重視、台本形式はあまり歓迎されない(これはこの板全体として)
という漠然とした住み分けでいいじゃない。
現状、小説としての素直クール作品投下先は、エロのありなしにかかわらず
ここがメインなのであまりそこらへん厳密にしてほしくないよ。
エロ無し?だからなんだ、我々がここで求めているのはエロではない、萌えだ!!
エロなど萌えを得るための通過地点でしかない。
それがわからない凡人は一般人の前でクーによる公開羞恥プレイを受けてこい!!
って電波が
>>486を見た瞬間受信されたんだがなぜだ
いや、クーによる公開羞恥プレイだと御褒美になりませんか?w
そうか、これがFA宣言なのか。
ジャバウォックは初めツンツン後はデレデレと言う
正統派ツンデレだと思う
というか味方側のARMSは皆そうだったような
スレ違いですね
ごめんなさい
ツンツンしてたのレッド兄ちゃんの頃だけだぜ?
495 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 03:20:42 ID:lUWaeMnH
第一声が「くれてやる」である以上ジャバは素直だと見ていいとオモ
だが、「クール」は違うと言わざるを得ない
素直クールはナイトだろう
隼人がフルボッコされてクールに登場。
しかも隼人が仁愛の心持つまで待ってたというクール&育成計画っぷり。
自分を心配してくれる隼人に、自分の秘密を公表。超振動でイく(レッドが)
度々暴走するジャバさんIN涼に対抗しようとするも、隼人が黙れというとアッサリ引く素直さ。
アリス世界の武士もクールに評価。デキる女アピール。
バイオレットとのキャットファイト開始。
隼人に言われて全神経預ける。隼人が痛がる姿をクールにオロオロする。
隼人の水の心にキモチイイ〜〜とミストルテインを噴きながらエクスタシーを感じる。
それ以降、もう隼人の為すがまま、三歩後ろを歩く。
最後は「力が欲しいならくれてやる」
なんて素直クールだw
はいはい、またこんな時間ですよっと。
そいじゃあ、久々のあの人たち。どうぞ。
その日の夜は、食欲を誘う甘い香りが、リビングに立ち込めていた。
割り下で、肉と野菜、豆腐に白滝等を煮込んだ料理。所謂すき焼きが、その日の夕食だった。
ぐつぐつと煮えたぎる土鍋に箸を伸ばしながら、私は翌日の夜の予定をミサキに告げた。
「お客?」
「ああ、この時期に悪いけどね。私の方にも、少々事情があって」
最初の試験日まで、一週間を切ったところだ。本来ならば、勉強に集中させてやりたいのだが、こちらも都合を外すことはできなかった。
ミサキには、空き部屋を提供してある。あまり騒いだりしなければ、勉強そのものに支障は無いだろう。
ただ、これ幸いとばかりに、勝手に客の世話を焼き始めるのは目に見えていた。なので、先手を打って釘を刺しておく。
「あまり気を使う必要は無いからね。適当に挨拶したら、部屋で勉強でもしててくれ」
良識はある。この時期にこの理由を持ち出されては、そうそう無茶をしてくれることはないだろう。
しかしミサキは、それを踏まえた上で、気になる事柄があるようで。ジト目になって、追求してきた。
「人数は? どんな関係の相手だ? 性別は? 年齢は? あたしのライバルになり得るか?」
「ぶっちゃけまくってるね……。一人の友人、ってよりは腐れ縁か。男だから、安心して勉学に励みなさい」
「ならばよし」
と、ミサキは満足して、程好く煮えた肉を引き上げ、卵につけてから頬張った。
その熱意、もう少しだけでも他に向けたほうが良いと、人生の先輩は思うのですよ。
人の営みなど気にすることもなく、規則正しく太陽は昇り、また沈む。
地球上におけるこの唯我独尊の権化は、太古より永劫の彼方、寿命の尽きる瞬間まで気ままな生活を続けるのだろう。
と、ポエムってみたところで、不安の種が尽きることはない。
「〜〜♪」
本日のミサキは、極めて上機嫌である。暇を見つけては、鼻唄を奏でながら嬉々としてお持て成しの準備を進めていた。
服装は、汚れても良い部屋着の上にエプロンを掛け、頭には三角巾まで巻いている。家事慣れしているからか、家庭的な姿が良く似合う。
わざわざ気合入れて掃除するほど、気遣いが必要な相手ではないのだが……。それを言葉にすると、不機嫌になりそうなので口を噤んでおく。
「しかしねえ……」
テーブルに頬杖をつきながら様子を眺め、ほとほと感心する。
掃除は上のほうから、という基本を守るどころの話ではない。年末大掃除もかくやといった気の入れようだ。
ミサキが来訪してからというもの、毎日掃除は欠かしていない。しかし、掃除できる場所は、探せばそれだけ出てくるものらしい。勉強になった。が、私室まで掃除する意味はあるのだろうか。
家主とはいえ、女性の部屋に無断で侵入するつもりはない。たとえ散らかし放題でも、発つ鳥跡を濁さなければ、私個人としては一向に構わない。
基本的に世話好きなのだろうが、それを度外視した上でも何かを企んでいると確信を持って言えた。
「頼むから、妙なことはしないと約束して欲しいな」
「んー? 何を言っているのかな、この目付きの悪い人は」
その時を楽しみに待っていろとばかりに、あからさまにわかりやすい態度で彼女はすっ呆けた。
客のキャラがキャラだけに、激しく不安だ。不安すぎる。
舌先三寸その他能力を駆使して聞き出す選択もあるが、それはそれで負けた気になるので却下。
結局の所、私は不安を拭う気もないらしい。一応、楽しんではいるようだ。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「何だアイツ。随分早いな」
時計を見れば、午後一時半。約束の一時間前だった。
気紛れでも起こしたのかと私が腰を上げた時、バタバタとミサキが奥からやってきた。
「あー、待った待った。それ、あたしだ」
ハタキを放り出し、ミサキは玄関へ。
「――ええ。はい、着払いで……」
「おいくらですか?」
「はい。ええっと、千四百――」
宅配員とのやり取りが聞こえてくる。
軽く雑談をしながら、お金の受け渡しをしているらしい。値段からすると、そこそこの大きさがありそうだ。
何が届いたのか気になり、私は立ち上がった。
「それじゃ、ここにサインを――はい、確かに。どうも、ありがとうございました!」
チラッと玄関に顔を出すと、帽子を脱ぎ、深々と頭を下げる緑色の宅配員。初見だし、新人だろう。声も元気が良いし、なかなかの好青年である。
「ご苦労様。これ、取っといて」
「お疲れ様です」
私は冷蔵庫から持ち出した缶コーヒーをお礼に渡し、ミサキは彼に労いの言葉をかけた。
「あ、こ、これは気を使っていただいて」
突然現れた私に、思わずどもる青年。ま、いいさ。慣れてるから。
ミサキは口に手をやり、可笑しそうに笑いを漏らす。数秒後、一息ついたところでフォローを入れた。
「あまり怯えないでくださいね。目付きが悪いだけで、こう見えて優しいんですよ」
「は、そうで……ああ、いや。勿論です。任せてください!」
急にしゃきっとした顔を見せる宅配員。雑談の間に、ミサキの毒にやられた模様。
相変わらず、ミサキの外面は完璧だ。素人では、微妙な演技臭さなどまず見抜けまい。
扉が閉まり気配が去ると、荷物両手に、くるりと部屋へ踵を返す。
荷物を置くと、顔だけ出して訊いてきた。
「気になるか?」
「気にしないことにしたよ」
「つれないな。こんなにもキミの気を惹こうと必死なのに」
一分ほど不機嫌が混入した表情と声を私に投げると、反応を待たず部屋は閉ざされる。
私は肩を竦めて苦笑した。
一時間後、無機質なチャイムが再び鳴らされた。
「今度こそ来たか」
ミサキの部屋の前を通った時、
「あ、シン」
「やっぱりいいよ。別に顔出さなくても」
ドア越しにかけられた声へ返す。
事と次第によっては、用件が終わると同時にお引取り願おう。奴に関しては、礼儀など必要ない。
しつこく連打されるチャイムに辟易しながらドアを開けた。同時に外気が流れ込んでくる。
「煩いぞ。他人の迷惑を考えろ」
「よう、生きてたか。忙しいのに、暇作って来てやったぜ。泣いて頼まれちゃあ、断われねえもんな」
「相変わらず口の悪い奴だな、アマギ」
「ケケケ。お前の目付き程じゃねえよ。残念でした」
そこにあるのは、見知った顔。
無精髭にボサボサ髪。最近目立ち始めた小皺。開口一番憎まれ口を叩く、ひょろりと背の高いガラの悪い男。
それがこのアマギという客だった。
「しっかし、何でまたこんなボロマンションに住んでんのかね。今時、玄関まで素通りってどうよ。袖くらい振れるだろ」
「ボロくはないし、住みやすいからいいんだよ」
一昔前の建築だが、基礎はしっかりしているし、外観も小奇麗に保たれている。部屋の間取りも広く、天井も高いし、設備も使いやすい。
大切なのは、生活が快適かどうかだ。変に新しいだけの建物よりは、こちらのほうが余程重要に決まっている。
「ともかくな、まァ、入れ。受験生が居るんだ。あんまり騒がしくするなよ」
「そーいや、女ァ手篭めにしてんだってな。噂通り美人か? 具合はどうだ?」
下世話な物言いに、気が滅入る。
「……何でオレは、お前と知り合いやってんだかねェ」
「おろ? 心友じゃねえの?」
「知り合いでも有り難いと思え、バカが」
リビングに通すと、座布団を敷く。アマギは乱暴に上着を脱ぎ捨てると、炬燵に入って足を伸ばす。
私はそのジャンパーをハンガーに掛けてから、足早にキッチンへ。
「今、茶を出してやるから、そこに座ってろ」
「へいへい。甲斐甲斐しいこって」
アマギは、勝手に漫画雑誌を読みふける。そのままでいてくれると、静かで助かる。
私はやかんを火にかけ、その間にポットや湯呑みを用意する。
玉露は常備しているが、アマギには勿体無い。焙じ茶で充分だろうと、棚に手を伸ばした。
使用済みのお茶っ葉をフライパンで炒ったものを、やかんに投入して煮出す。知恵袋的な代物だが、日用としては悪くないものだ。
煮出し終えたらポットに移して、湯呑みと一緒に持っていく。
「ほら」
二人分の湯呑みを前に出し、私も腰を降ろした。用意しておいたノートPCを開いて、電源を入れる。
「はいどーも。んでよ、早速だが――」
「うむ」
真剣な面持ちを前に、声のトーンを下げた。
「――件の女はどうした?」
「お前……」
「馬っ鹿。美人かどうかって答えすら聞いてねえんだぞ。本題なんざ、後だ後!」
「本題だから、先に済ませるべきだと思うが……」
「わーったわーった。さっさと進めりゃいーんだろ、あァ!?」
メンチを切られた。この逆ギレも合わせて、チンピラっぷりは見事としか言いようが無い。
「で?」
が、流す。アマギもそれは承知済みだ。
「へ。コイツが資料さ。目ぇ通しときな」
「ったく。ふざけたりしなけりゃ、話は早いんだぞ」
「余計なおふざけが無けりゃ、人生なんてやってらんねえよ」
そうして大量の文字と図が羅列された書類の束に、私は視線を走らせていった。
「――よし、この線で行こう。成功したら、次の段だな」
三時間後。情報の入力をし終えると、私はノートPCを閉じた。
胡坐をかくアマギは、区切りがついたのを確認すると、待ってましたとばかりに膝を叩いた。
「おっしゃ! じゃあ今度こそ本題だ、本題! 観念して、会わせろや」
ああ……ついに入れ替わったか。私は根負けして、立ち上がる。
時間を考えれば、ミサキのほうも、休憩する頃だろう。あまり長居させねば良いだけだ。
何より、そろそろミサキは勝手に夕飯の支度を開始する。台所の主は、色々な人の感想を聞くのが好きだと言っていたことがある。今更追い返すのも気が引けた。
「わかったわかった。ついでにメシにするから、大人しく待ってろ」
「女の手料理、ぃやっほーう!」
「大人しく、な」
「うぃ、むっしゅ」
大人しくなった。
静かになったアマギはその場に置いて移動。私は彼女の部屋のドアをノックする。
「ミサキ。ちょっといいかい?」
「開けても構わないぞ」
返答に甘えて、遠慮せず開け放った。
「悪いけど、ちょっと顔見せ――」
ぱたん、と。戸を閉じて、眉間を摘み正気を確認する。
……大丈夫だ。私は狂っていないし、幻覚を見たわけでもない。
ということは、今のは紛れも無い現実……。
軽く深呼吸をして、もう一度開ける。
「…………」
閉じる。
「何故閉じる?」
悩む私を尻目に、ミサキ自身が戸を開けてきた。
ドアから窺える範囲――部屋の中の人物は、ミサキただ一人。
「えーっと……」
悩む私。
「遅ぇぞ、シン。何グダグダしてやがんだ。引き篭もってんなら、天の岩戸ぶっ壊してかっ攫って来い!」
そんな折、業を煮やしたせっかちが、こちらの都合を無視して迫ってきた。
「!」
慌てて閉じるが、
「だから、何故閉める?」
空気を読まず、ミサキは私達二人の前に、姿を現してしまった。
「あん?」
彼女を目にして、アマギが目を丸くする。
数瞬後、目を輝かせて私の背中を何度も叩いてきた。
「おお! こりゃ噂に違わぬ美人ときたか! だがなぁ……いい趣味してるぜ。気合入ってんなァ、おい」
いい趣味か……。その言葉に目眩を覚える。
私の横を抜けて、二人は挨拶する。まずはミサキが頭を下げた。
「初めまして、わたくし、ミサキと申します」
「こいつぁどーも。俺様はアマギってんだ。ヨロシク」
「すぐご飯の支度しますから、少々お待ち下さい」
「格好負けしないの頼むぜェ」
……おや?
アマギに茶化されない。にこやかに笑って、ミサキの容姿を褒めるだけだ。
現在のミサキの装いは、落ち着いた色の和服にエプロンというもの。正月もとうに過ぎたというのにこれでは、不審に思っても仕方ないはずだが。
これは一体、どうしたことか。
「ところでミサキ……その格好は?」
「水仕事用にって、母さんのお下がり」
そういえば、ミサキの実家は呉服屋だった……。以前お邪魔した時も、御母上は着物姿で出迎えてくれた。
私の目には窮屈そうに見えなかったあたり、環境と趣味とが合致していた可能性が高い。ひょっとすると、普段から仕事以外でも和服を身につける機会が多いかもしれない。
彼女にとって、これは当たり前の見慣れた装いなのだろう。
先程の上機嫌も、この姿を見せるのが楽しみだった。ただそれだけに違いない。
アマギはアマギで和食派な為か、あっさり受け止めたらしい。
自分の発想を呪う。
いかんな、何も無いところで邪推してしまうとは。着実に毒されつつある証拠だ。気を引き締めねば。
「あァ、そうそう。それとだな、嬢ちゃん――」
キッチンへ向かうミサキを、アマギが呼び止めた。
「猫被る必要はねェぜ。女豹のが好みなんだよ」
ミサキが私に視線を投げかける。何を言いたいか察した私は、げんなりしながらも首を横に振る。
「粗野な外見に似合わず、目敏いな。さすがはシンの友達といったところか」
「おうよ。一番のダチだぜ」
ただしワーストな。
「では、本人の許可が出たので、失礼だが今後は遠慮しないでいく。難儀な性分でね、敬語は疲れていけない」
「気が合うな。解るぜ、その気持ち」
奇妙な友情を育んだらしき二人。互いに親指を立てて意思疎通完了。
一頻り挨拶が済むと、ミサキは私に話を振った。お気に召さないことがある模様。
「ときに、シン。何か言うことは無いか?」
「――……そうだな。とてもよく似合っているよ」
「間が気になるが……今の所は、それで勘弁しておこう」
薄く微笑みを浮かべた。
この場を去るミサキを、私達は見送る。
「かっかっかっか……っ」
「んだよ、ヘンな笑いして」
「台所が似合う和服美人か。いいねェいいねェ、羨ましいねェ。大和撫子ってヤツかい」
アマギはとても良い笑顔で、しつこく肩を叩いてくる。
結局、私は一人で空回りしてただけか。
「どーしたどーした、シケたツラぁしやがって」
「いや……」
何かもうどうでもいいや。
「にしても、どういう風の吹き回しだい。暫く、女にゃ深入りしないんじゃなかったのか?」
不躾にそんなことを訊いてきた。
だが返答に困る。私自身、答えを出していないのだ。この感情は理解しきれるものではないし、これからもずっと学び続けてゆくべきものなのだろう。
「強引さに負けて、な」
「だからって、お前ならいくらでもあしらいようがあらァな。やっぱ気に入ったんだろ」
「かもな。複雑な話だが……ああいうタイプは初めてだしな」
だが気に入っているからこそ……、
「本当は、オレみたいのには深く関わって欲しくないんだが……」
気に入っているからこそ、彼女を想って自嘲を浮かべる。
「ま、今は大学に合格してもらって、普通に付き合う相手を見つけてもらうのを期待するさ」
「そんなん期待されて、幸せなのかねぇ」
「幸せだろ。少なくとも、オレなんかとずっと一緒に居るよりは」
「客観的に、第三者視点で見りゃあな。けど、何事も結局は本人次第だろう」
自分に正直になれとばかりに、私の胸へ人差し指を数度付き付ける。
「頭ぁ狂ってるわけでもなけりゃ、本人が幸せだったらそれでいいじゃねえか」
「これからの長い人生を、オレなんかの我が侭に費やさせるわけにもいかんだろう」
まだ若い彼女を縛り付けるつもりは無い。せめてもう少し、大人になってもらわなければ。
この類の答えを予想していたのか、アマギは勝ち誇ったようにいつもの慇懃な笑い方をする。
「気楽に行きゃいいのに、殊勝だねェ。長い長い人生、そんな態度じゃあいつか潰れるぜ」
「誰がだ。その程度で潰れんなら、とっくの昔に潰れてるよ」
「彩りがあるに越したこた無えだろが」
「たまにだから、有り難味があるんだ、バーカ」
「勿体無えの」
女好きのチンピラは、心底残念そうに頬を膨らませブーイング。ちなみに三十代。
「そういうんなら、お前が手ぇ出してみたらどうだ?」
「はンっ! 下らねェ。動物園に猟銃持ち込む馬鹿がどこにいるよ。手前ェで囲っとけ」
これ以上の押し問答は無用。私達の会話は、いつもこんな調子で終わりを告げる。
「フッ――……ミサキ、私も手伝おう」
お互い気持ちを切り替え、それぞれが次の行動に移る。
たまにはサービスも良かろうと、私はキッチンへ。
そして客であるアマギは……、
「さてっと。暇んなっちまったな。完成まで何して時間潰そっかね」
「まずは定番。下着漁り、と」
「イキナリ人ん家で何すんだ、貴様ァ!」
ノブに手をやる不穏な気配を感じ、私は光の速度で舞い戻る。
「ふぐぉぁ!?」
体重を乗せた蹴りが、アマギのコメカミにクリーンヒットした。
私の制裁を受けたアマギは、二回三回と転げながら床を跳ねた後、土間床に顔をめり込ませて痙攣する。
へばったところを、すかさず押入れから持ち出した紐で簀巻きにする。
そのままリビングに運んで放置。食事が出来上がるまで、監視下で気絶していてもらおう。
「ったく、あのボケは。油断も隙もあったもんじゃない……!」
怒り心頭ながら、足は台所へ。
一つ大きく息を吸って、気を落ち着ける。
「すまないね。ちょっと手間取った」
腕をまくり、エプロンも掛けて、包丁片手に食材と格闘しているミサキへ加勢した。
石鹸で手を洗い、私も食材をまな板の上に並べた。予備の包丁を取り出し、野菜の皮を剥き始める。
「大丈夫なのか?」
「問題ない。キミの下着は死守した」
「そっちじゃなくて。いや、そっちも大事なんだが……」
ちらりと、白目を剥くアマギを見やる。奴を知らないミサキとしては、心配もするだろう。
「ああ。大丈夫大丈夫。あれくらい慣れてるから」
「そ、そうか……」
だが、その心配も通過儀礼のようなもの。顔をあわせる回数が増えれば、自然と慣れてくる。そして人によっては、自然と乱暴なツッコミを入れるようになる。
冷や汗がミサキの頬を濡らすが、それ以上何も言わないことから、この件についてはスルーを選んだようだ。
気を取り直したか、話題を変えるためか、彼女は私の手元を見た。
「意外と手馴れてるな」
皮むき器も使わず、野菜の表面を刃が滑るように片付けていく私にかける声には、小さな感嘆が混じっていた。
「料理が苦手と言った覚えは無いが」
言って私は、次に取り掛かる。
長い一人暮らしで、いつしか身に付いたスキルだ。近頃は面倒が勝つことも多かったので、ミサキが来訪するまでは簡単なもので済ませることも多かったが。
「……なあ、シン」
「ん?」
ふと、あたしの口から呟きが漏れた。手元から目を離すことなく、口の滑るままに任せる。
「あたしが、素の言動を向けられるのは、いつになるのかな?」
剥いていた芋の皮が、最後までいかず途中で切れた。
今の言葉はあたしの本心。いつも彼に感じていた壁、あるいは人を隔てる渓谷のようなもの。
正直、シンと大声で悪口を言い合う、あのアマギという男に嫉妬していた。そして、あたしの知らない彼を知る、まだ見ぬ誰かに。
そんな感情を見透かすように、シンは咽喉の奥で笑う。そして言ってのける。
「人は一面だけで測れるものじゃないよ。感情のままに任せるだけが本質じゃない。微笑ましさを感じながら接するのも、それはそれでいいじゃないか」
話しながら、鮮やかな手際で野菜を刻む。
言葉を聞いて、あたしは一つ理解した気がする。
この何処か底知れないものを持つ男は、誰にでも自然体なのだ。見せる姿、全てが素。だから接する人によって、見えるものが違ってくるだけ。
「つまり……あたしは、シンにとって落ち着ける存在なのか?」
「落ち着くかなあ」
「む」
でもちょっとカチンときた。社交辞令的なお世辞くらいは欲しい。
「見てて楽しい、面白い女の子だとは思うけどね。愉快……っていうのも違うな。近いのは安心かな」
前言撤回。素直な賛辞は嬉しい。
「何にせよ特別な存在ということか。つまりオンリーワン。良い傾向だな」
「そうかい?」
「そうだとも。審査をクリアして、花屋の店先に並んだということだからな。個人的には、鉢植えとしての購入をオススメする」
見舞いにはご法度。しかし彼は万年健康体。贈り物には宜しかろう。
と、上手いこと言ったと悦に入るのは許されなかった。
何がどう心に触れたかは知らない。ただ少しだけ……誰が見逃して当たり前なくらい、ほんの少しだけ……。
本当は、単なる気のせいかもしれない。
「――――私が買うのは、専ら切花だよ。さもなくば、花壇で育てる」
深遠の、更にその奥。僅かに見えた真の本心のカケラ。
呟いたシンの瞳は、優しく、そしてどこか寂しげな光を帯びていた気がした。
果たしてそれは幻か、あるいは真実か。解らない。けれど、
ならばあたしはこう答えよう。
「ではこの身に刃を入れるといい。そして思うままに生けてくれ。見る者楽しませるのも、また花の生き様だ」
シンは何も言わず、ただ静かに微笑んだだけだった。
その想いは、きっと――……
マンションの駐車場で、アマギはバイクに跨りながら片手で頭を抑えた。まだ若干フラフラするらしい。
「あーあ。ひっでぇメに遭ったぜ」
「キック一発で全てチャラな上に、晩飯まで入ってるんだ。儲けものだと思え」
まあ普通なら運転を控えさせるところだが、コイツなら大丈夫だろう。
事実、両手で自らの顔を叩いて気を引き締めれば、気合充分、気分爽快。メットを被ってキックする。
定番の憎まれ口も飛び出すというもの。
「ま、いーもん見させてもらったし、ここは許してやるかい」
「お前、何様だよ」
「お――」
「俺様禁止」
固まるチンピラ。何事も先手必勝。常在戦闘を心掛けるといい。
特に、
「っらァっ!」
こういう血の気の多い輩が近くにいるならば。
「危ないな、おい」
不意打ちを掌で受け止め、腕の力が抜けたら解放してやる。
報復失敗で、ヘルメットを被っていても不機嫌な表情をを隠せない。
「…………いけ好かねェ」
「逆ギレとは、理不尽なもんだな」
「理不尽こそ人生だぜ。お、いいこと言った。……フッ。ここで終わらせるとは、俺様も大人になったもんだ」
楽だな、大人って。
「次は無闇に暴力振るわないことを目標にしろよ」
「チッ! 俺様が人様の迷惑考えるようになったら、一体何が残るんだよ。只の完璧超人になるだけじゃねェか!」
何が気に障るもか、ワケの解らんことでがなられた。
こんなのが大学で教鞭取ってるんだから世も末だ。
「じゃァな」
アマギはバイザーを降ろして、二本指を立てた手首を振って別れの挨拶。
「とっとと帰れ帰れ」
しっしと追い払う。
アマギの駆るバイクは轟音を上げ、夜を迎えた街中へ消えていった。
完全に音が聞こえなくなった頃、入り口から出迎えのミサキが駆け寄ってきた。
「シン……アマギは帰ったのか?」
「ああ」
それ以上、特に話すことはない。
歩幅を合わせて、心持ちゆっくり歩く。
「なぁ、シン――」
「うん?」
「今度、また誰か客を呼んでくれ」
静寂を遮って少女の口より伝えられたのは、そんな小さな頼み事だった。
「もっと色々な一面が見たい」
可愛いものだ。
私はミサキの頭に手をやって、ポンポンと軽く叩いた後に撫でてやった。
「やめろ。髪が乱れる」
赤面しながら抵抗された。面白いので、さらに続ける。
「こら、子供扱いするな」
そうは言っても、私から見ればまだまだ子供だ。私が教えてやれることは多い。
乗りかかった船だ。ここは一つ、もう少し付き合うとしよう。
「合格したらね。そうしたら、ご褒美は考えないでもないかな」
どこまでも子供扱いする私に腹を立てたか、その場で足を止める。
距離が開いたところで、助走で勢いをつけ一気に、
「とう!」
ミサキが私の背中に飛び掛って負ぶさる。
柔らかく軽い身体を、身近に感じる。ふわりと香る彼女の髪が、鼻孔をくすぐった。
「何だい、突然」
「女として意識したか?」
「いや。尚更、子供として意識した」
「む。これならどうだ」
さらに密着。背中に当たる程好い大きさの柔らかい何かが、動きに合わせて変幻自在に形を変えるが……、
「ほらほら。馬鹿やってないで、さっさと戻るよ。結果が出なければ、ご褒美も無しだからな」
こういうアプローチしか出てこないことが、子供である証拠だ。
同じ行動でも、あえてそれを選ぶという発想があるならば、まだ話は違うのだが。
戸惑いすら見せない私に、敗北感でも覚えたのだろうか。
「逆に言えば、結果が出る毎にご褒美が貰えるワケか。仕方ない、ここは引いておくとしよう」
「ぐぇ」
言いつつ前に回した腕に力を入れ、最大に密着。ついでに首絞め。
きっかり三秒その体勢をキープしてから、今度は離れる。
「後片付け、まだ終わってなかったな」
それ以上は何も無く。
振り向くこともしないで、彼女はマンションの入り口へ消えていった。
冬の寒風に身を晒し、過ぎた日、そして来る日を思う。
日の沈んだ空は、限りなく黒に近い蒼空。
柄にも無い感傷を一笑に付し、私は暖かい場所で待つ今日の団欒を享受しに向かった。
今日は何を教えようか。どれから手を付けたものか、楽しく頭を悩ませる。
さりとて、本日教えるべきコトは――。
「何も言わずとも、食後のお茶とか気を利かせてくれると嬉しいんだけどな」
なかなかエロい展開まで漕ぎ着けられんなあ……。
ま、ペースは遅くても、一人でも期待してくれるならちまちま書き続けましょう。
では、おやすみなさい(もう定番の締めだな、コレ)
おお、ktkr、GJGJ!
アマギ、いいキャラすねw
ゆっくりのんびりな空気がいいので、エロ到達が遠くても期待してますぜー。
ところで、容量がかなりキテるので、誰か次スレ立ててくれないかな。
保管庫の URLも新しいの入れてくれるとありがたく。
GJ!
扉をしめた時、すっぽんぽんを期待したのはオレだけか?
GJ!
>>512そして俺と同じことを考えていたやつがいたとは
GJ!多彩な比喩表現に正直感心した
同時に自分の表現力にorzという感じだが
>>512>>513 よう俺
GJ。
ところで、俺が大量発生してるんだが?
GJ!
みんないい性格w
続きを楽しみに待ってます
なんでこんなに俺が居るんだ
517 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 21:38:15 ID:dYQM2Yxv
GJ!
しかし変だな、クローンを作った覚えは無いのだが。
GJ
むしろ、裸じゃないのか?と疑って何度も読み返してしまった
GJ!!!
いつも掛け合いが最高に楽しい二人だけど、今回みたいなお話も非常に良いね。
続き期待して待ってます!
皆と同じく一瞬期待してしまったが、冷静に考えりゃ想い人の友人とはいえ
見ず知らずの男がいるのにすっぽんぽんにはならんわなw
>>521 乙
ところでまとめの503っていつ解消されるんだろうか・・・
読みたい作品があるんだがまったくみれん・・・
525 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 08:07:49 ID:emH50Z1n
新スレ立ったか
梅用age
携帯からなんで良く解らんが
今スレ容量いくら?
497KB
「……寒いですねぇ」
「……同意ね。私は雪は好きだけど、寒いのは苦手なのよ」
いやはや、ついてないもんですねえ。
修士論文の調べ物ついでに大学の研究室に少し顔を出してみれば、近年まれに見る豪雪と来ましたか。
電車は止まってアイスバーンで車は動かせず。
もちろん歩いて帰るのは論外と。……10メートル先も見えないなんて、どこの雪国ですかここは。
この研究室、ご時勢に沿わずに暖房器具は石油ストーブ一つのみ。
まあ、もう少しお金をかけてもいいとは思うんですけど、どうしても研究費に費やしたいのはそれこそ考古学なんて金にならない分野にとっては仕方ないんでしょうね。
ここを出たくても、部屋の外に出ればどれだけしばれることか。
何せ部屋の反対側は室内なのに小さなツララができてるんですよ? ストーブの半径3メートルから出たくもありません。
いずれにせよ、吹雪に閉じ込められたのが僕だけじゃなくて幸いでした。
話し相手がいるというものはいいものです。
「……さて、どうしましょう柳瀬さん。僕は愛用のパソコンも読む本もなくて物凄い暇なんですが」
「私に聞かれても困るわよ……。それはこっちもなんだから。とりあえず会話かしら、泉くん?」
「会話ですね」
「会話、なの?」
「会話しかないんじゃないかと」
「…………」
「…………」
……うーん、困りましたねえ。
僕たちはどっちも研究馬鹿で気の利いた切り出しも出来やしない、と。
僕は冴えない眼鏡の昼行灯。それなりに真面目でそれなりに適当。
柳瀬さんは知的な地味系。どっちかというと美人というより童顔だけど中身は落ち着きすぎている。
どっちもどっちでそもそも会話を楽しむタイプじゃないですし。
普段どおりならそれこそ同じ部屋にいようと黙々とそれぞれの作業やってるだけなんですが。
……はて、そう言えば。
「……柳瀬さんは今日、何故ここに?」
「ん……? ああ、この間の藤山寺墓群の……G−18抗出土品のクリーニングが終わったというので写真を撮らせてもらったの。
君もやったでしょ? 真木先生のバイト、学部の子たちに手伝わせてるやつ」
「あれですか、ええ。そういえば柳瀬さんもやってましたっけ」
「趣味と実益を兼ねたバイトだったからね。好きこそ物の上手なれ、よ」
「……なるほど、僕と同じですね」
「こんな道選ぶのは同じ穴の狢だけでしょう?」
「……その通りで」
「…………」
「…………」
……会話、続きませんねえ。まあ、別にそんなので気まずくならない程度には親しいと思うので別にいいんですけど。
そんな事を思った折、
「泉くんはどうしてここに?」
「……いやはや、僕はちょっとしたした統計資料を写させてもらいに来ただけだったんですけどね。
そのついでに学食でも寄ろうかと思ったんですけど、外に出るのが億劫だったので。
ここなら備え付けのカップ麺とかありますし」
「……つまり、お腹が空いたけど無理するのも面倒なのね?」
「その通りです」
「……まあ、それは叶わなかったみたいだけど」
「……まさか水道が凍って出ないなんて想定していませんでしたからねえ、たはは」
……うーん、正直何か口にしたいところなんですけど、食べるものは何もなしと。
はあ……、こんな中コンビニに行く気もしませんし、動かないでカロリー消費を抑えるくらいしかできませんか。
「……しかし寒いですねぇ。すみません、もうちょっとそちらに行っていいですかね。
ストーブにもっと近づきたいんです」
「構わないけど……ちょっと待って」
「はい?」
言うなり柳瀬さんは鞄の中から魔法瓶を取り出して僕の方に。
「……あの、これは?」
「砂糖がいっぱい入ってるから少しはお腹の足しになるんじゃないかなと思って。体も暖まるしね」
「……これはこれは、いや、どうもありがとうございます」
せっかくのご好意、謹んで受けさせていただきます。
急いでストーブの効果範囲外にある自分の湯飲みを取りに行って、ポットの中身を注いでみれば、そこにあるのは湯気を上げるミルクティー。
口に含めば体中に染み渡る甘さ。……ああ、幸せです。
「お気に召してもらった様で何より、かな」
……にっこり笑う柳瀬さん。いや、本当感謝感激です。
「すみません、助かりました。……このお礼はいずれかならず」
「気にしないでいいわよ。私もいいものが見れたから」
「……はい?」
「泉くんの事は嫌いじゃないからね。喜んでもらえたらこちらとしても嬉しいもの」
「はあ……」
……まあ、学部の3年の時からの付き合いですからね。自然とそれなりの友愛は感じてもらえてるってことですか。
会釈をしつつ、ポットを返すと柳瀬さんも自分の湯飲みでミルクティーをこくこくと。
そしてしばらく僕たちは、なにも言うことなくお茶を楽しみ、その後も雪が弱くなるまで途切れ途切れの考古学談義を楽しんだのでした。
いやはや、気心の知れた関係というのはいいものです。
別に無理して話題を探さなくてもいい相手というのは貴重な存在だというのが今日の僕の最大の収穫ですね。