素直クールでエロパロPART6

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1名無しさん@ピンキー
ふたば☆ちゃんねる落書き板の天才によりツンデレに対抗すべく、
新たに"素直クール"なる言葉が誕生した。
ツン→素直 デレ→クール
ガチで愛してくれるが、人前であれ、好意に関してはストレートかつ
クールな表現をするため、男にとっては嬉し恥ずかし暴露羞恥プレイ。
しかし、どこか天然。言葉萌えのツンデレ、シチュ萌えの素直クール。

ここはそんな素直クールのエロパロスレです。
荒らし、煽りはスルーでお願いします。
・職人に対し注意予告の依頼は止めましょう。スルーば自力で。
・職人の投下しやすい雰囲気づくりを心がけましょう。
・ネガティブな意見はなるべく控えましょう。
 理由もなく「嫌い」などの意見はスレには必要ありません。

前スレ
素直クールでエロパロPART5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1182429786/

過去スレ
素直クールでエロパロPART1
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/eroparo/1139830862/
素直クールでエロパロPART2
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/eroparo/1151146736/
素直クールでエロパロPART3
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/eroparo/1165760283/
【エロパロ】素直クールでエロパロPART4
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/eroparo/1177753262/

保管庫(エロパロ板)
http://derheiligekrieg.h.fc2.com/cool.html
素直クール保管所(全体)
http://sucool.s171.xrea.com/
2名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 11:26:39 ID:w1jEbjhQ
2

>>1乙でした。
3名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 11:27:38 ID:RpwTKBFM
>>1さん
立ててくれてありがとうございます。

テンプレ議論の暇かなかったですが
問題があれば修正していきましょう。
4名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 13:55:39 ID:dxy6EluF
いちもつ
5これからずっと ◆6x17cueegc :2007/10/04(木) 16:31:19 ID:DWrfxy7s
前スレで投下してた奴の続きです。
6これからずっと ◆6x17cueegc :2007/10/04(木) 16:35:15 ID:DWrfxy7s
「……やっぱりマズイって。」
安田がファスナーに手をかけジリジリと下げている最中、まだ困惑している俺が口を開く。
「ここまできてまだ言いますか。野暮なこと言わないで下さい。」
為すがままにされ、それでもまだ愚図る俺にきつい言葉が飛ぶ。
「ふふふ、こんなに盛り上がって……」
開いたファスナーに指を突っ込み下着の上からさすってくる。布一枚挟んだ刺激に堪らず声を漏らす。
「かわいらしい声ですね。」
こちらを覗き込みながら反対側の手でベルトのバックルに手をかけると、下着ごとズボンを下ろしてしまった。
押し込められていたペニスがパンツに引っかかって大きくしなる。
「あれ?マズイんじゃなかったんですか?」
先端に指を置き全体を包むように掴むとゆっくりと扱き始めた。俺は声を出すまいと歯を食いしばり眉間に皺を寄せる。
「おかしいですね。ダメだと言っている人がどうして感じてるんでしょうね。」
更に空いた片手も添えて刺激を与えていく。片手は竿に、もう片手は玉の辺りをやんわりと揉む。いつの間にこんなことを覚えたのか。

「先輩、降参ですか?」
ずっと弱い刺激を与え続けられて、もう限界まで張りつめ反り返っているモノを手に訊いてくる。
「……言わんでも、分かるやろ。」
「先輩の口から『したい』と聞きたいんです。」
息も絶え絶えに返したがこんな意地悪を言われた。なんだか普段と立ち位置が逆な気がする。
「さあ。」
「うー……」
「さあ、さあ。」
「うぅー……」
「さあ、さあ、さあ。」
「うぅぅー……」
「ね?」
「……参りました。」
こうして俺は陥落した。文字通りの急所を握られて締め付けられるのだからたまらない。

1時間後。こっそりと裏門を出ようとしたら教師に見つかった。
「おい、何してる。」
「あ、いや……」
一瞬ヤバイな、面倒だなと思ったが、運良くウチのクラスの担任だった。教室の掃除をしていたと言い訳をするとあっさり解放してくれる。
「とっくに下校時間は過ぎてるんだぞ。」
「いや、実行委員に『自分で汚した分掃除してから帰れ』言われたんで……」
呆れた、と天を仰ぎながら同情してくれるが、実際は新たに汚した分を掃除し直していたから余計に遅くなったので自業自得と言える。

「そもそも今日はいつもより早い下校時間だったんだが、実行委員から聞かなかったのか?」
「え!?……頼むで実行委員。」
がっくりと肩を落とす。まあ、おかげで非常にスリリングなひとときを楽しめたので結果オーライだったのかもしれない。
事後、安田を先に帰らせて本当によかった。2人でいる所を見咎められたら、仮に何もしていなかったとしても洒落にならない。
「さ、早く帰れ。……ああそれと。」
『行け』と手を振られ校門を出ようとしたが、すぐに呼び止められた。何事か、と振り返ると教師の顔がニヤリと歪んでいる。
「仲良し遊びは大概にしておけよ。」
「はい?」
「時間差は人が多い時、紛れ込ませるように使うべきだったな。飯嶋、俺はお前のこと信じてるからな?」
……撃沈。
7これからずっと ◆6x17cueegc :2007/10/04(木) 16:36:34 ID:DWrfxy7s
翌日。文化祭本番。
開演前の舞台上は真っ暗で、観に来ている生徒とその保護者、そして近くの高校・大学から遊びに来ている人達でもう満員だ。
学校全体でも模擬店の品揃えも悪くなり始めた頃だから、余計に体育館に人が集まってくる。
俺は裏方で出番が無いから、撤収に備えて体育館の裏手に出て待機する。一歩外に出ると中のざわめきの大きさを再認識した。
それが一瞬、しんと静まり返り、それから拍手に変わる。外で待つしかない身だから祈ることしか出来ない。

ちなみに今日はまだ安田とは顔を合わせていない。お互い自分のクラスの催し物に忙しく、自由な時間が取れなかったのだ。
その分『会えないのは寂しい』といった内容のメールの着信が嫌がらせのように来ていたが、『頑張ってやれよ』とだけ返す。
俺のところなんかに来て、クラスで手伝わなかったツケだ。

不意に甲高いおしゃべりの声がこちらに向かって来た。観覧者用の入り口は逆側にある。きっと間違えたのだろう。
角を曲がると、入り口の場所を間違ったことにすぐに気がついたようだ。
「あれ?」
「あー、入り口やったら反対で……」
「そうですか。ありがとう。」
こちらに来た女性の数人組は笑いながら後ろを振り返り戻っていく。その中の1人の後姿に見覚えがあった俺は思わず追いかけ、駆け出していた。
「待って!」
俺の出した声に驚き、女性達が振り向く。真っ先に振り向いたのは俺の彼女だった人、だった。
8これからずっと ◆6x17cueegc :2007/10/04(木) 16:37:37 ID:DWrfxy7s
と以上です。

次回への前フリの回の上に、うまくいかないで推敲している間にスレの容量が……
しかも前スレで投下されていた言葉責めの人と比べたら女のS度が低く……

とりあえず、スレをまたいだくせに結局フェラさえ書かなかった俺氏ねということで。
9名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 17:24:19 ID:cW+5U9tZ
GJ!
10名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 18:24:58 ID:oIPDQMwm
電車の中なのに勃起した。どうしてくれる!
GJ
11名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 22:04:25 ID:dwIsuq5j
>>1

>>8GJ
12すなおく一る×おとこくん<残月/睦月>:2007/10/05(金) 01:42:15 ID:P/DMl/Kd
前スレで消化不良とのコトだったので、バッサリカットした後始末部分を書き起こしました。
多少はしっくりくるかと。どんな罰を受けても麗子が許せないって人は、スルーして下さい。


「失礼します」
訓は道場の神前に礼をすると、学生鞄を肩に提げた。
訓は珍しく嘘を付いている。ここ数日、手首を捻ったと偽り、部活を早退している。
一流ちゃんを迎えに行くためだ。
レコちゃんの引き起こした事件は一応の終わりを告げた。一流ちゃんの友達の千紗ちゃんは一日休んだだけ回復した。
後遺症も無い。もちろん、あの場にあったテープやカメラは全部ぶっ壊した。(機材まで壊したのは腹いせだ)
男共は茂部というデカイ男が自分も含めて責任とらせるといって、引き取っていった。
それでも一人で歩くのは怖いだろうと、しばらくは二人を送り迎えしろと訓に言ったら、アイツは快く了承した。
元より、アイツはそのつもりだったらしい。ただ、承知はしたが一流ちゃんの学校に行くのは未だに慣れないようだ。
一流ちゃんの彼氏ってコトで、待っている間質問攻めに合うらしい。当然、女子に。羨ましいやつだ。
「礼!!」
俺の号令で先生に礼をして、柔道部の活動が終わる。
訓の代わりも堂にはいってきて、今じゃ部活内での俺の評価も上々だ。
「さっさと帰れよー」
手早く荷物を纏め、柔道場の入り口で部員を待つ。
「一野進が一番最後まで残ってたのになぁ」
「うっさい。ってかいつの話だ。訓が部長になってからは結構真面目だったぞ、俺」
「でも、先輩、いっつもドコにいってるんですか?先輩の家、逆ですよね」
そう、俺も訓と同じように、帰りは寄り道をしている。
「女のところさ」
「ウッソくせぇ……」
「またまたぁ」
……何故だ。


漆喰の壁が延々と続く。門に掲げられた『炎出組』の木彫りの看板。
一流ちゃんの家も随分古風だが、この家の比じゃない。
デカさも。表門を含む塀が道と道の間丸ごと走っている。曲がり角のミラーは星空を写していた。
冬は気温が寒いが故に、星空がよく見える。訓が居たら、あの星は何座で、あの星は何座とか教えてくれたろう。
曲がり角を曲がり、塀を伝って歩き続けると、裏門が見える。
その裏門を俺は二度叩いた。
「…………」
茂部のオッサンが裏門をあける。その小指は皮膚の色が変色した線引がれている。
レコちゃんの監督不行届の責任をとった跡だ。ヤクザって本当に小指を落とすんだなと、初めて聞いたときは乾いた笑いしかでなかった。
これで責任なんだから、勝手に薬に手を出した三人の罰ってのは考えるだに恐ろしい。ボソッと茂部のオッサンが
「整形させてやりましたぜ」と言ったのは忘れたいぐらいだ。フルボッコってのは冗談だけで使いたいモンだ。
庭(広い)から縁側に靴を脱いで入り、本堂を目指す。読んで字の如く、この家には仏像がある。
ヤクザが信仰深いなんてと思わないでもないが、何十万人も殺した独裁者だって無信仰って訳じゃなかった。
そういうモンなのかも知れない。人を傷つけてる自覚がある人間ほど何かにすがりたくなる。
「……よぉ」
「…………飽きずによくも毎日来るわね」
本堂には今回の件の主犯者が禅を組んでいた。
「では」
茂部が礼をして、本堂を去る。
俺はレコちゃんの隣に正座した。
「学校行く気には?」
「ならないわ。今更普通の中学生する資格、私にはないでしょ?」
「間違いを許して貰って、更正出来るのも未成年の特権だと思うけどね」
レコちゃんはあの日以来、学校に行ってない。
その話を聞いて、俺はこの家を訪ねたがアッサリと面会拒否。黒いお兄さん達がゾロゾロ出てきた。
が、その後こっそり俺を中に入れてくれたのが茂部のオッサンだった。
「……私、許されないことをしたわ」
「そうだろうね」
「貴方は怒ってないの?」
「怒ってる。フェミニストじゃないんでね、本当ならぶん殴ってやりたい」
それは今でも変わらない。一歩間違えば取り返しの付かないことになっていた。
13すなおく一る×おとこくん<残月/睦月>:2007/10/05(金) 01:44:33 ID:P/DMl/Kd
一流ちゃんも、そして彼女も。尤も、レコちゃんのコトまでそう思えるのは、なんとか事件が丸くおさまって余裕があるからだ。
「なら殴って。私だけ痛くないのは不公平よ」
「そりゃ、駄目だ」
仏像を照らす蝋燭が揺れた。朱色の光の陰影がレコちゃんの眉間の皺を黒く刻む。
「一流ちゃんや訓がレコちゃんを殴ってないのに、俺が先に殴るわけにはいかねぇよ」
俺は今回の件は脇役だと心得てるつもりだ。少なくとも、訓がこの件に関わった時から、俺はイの一番に彼女を責める権利を失った。
「……一流も、千紗も、もう私なんかと会いたくないでしょうね」
「んなことねーだろよ。ま、神様や仏様じゃないんだから、感情の整理がついてないんだ。
 今会ってしまえば、どうしても辛辣な言葉をかけちゃうとわかってるから会わないんだと思うぜ?」
「…………」
「信じろよ。俺はレコちゃんより一流ちゃんとは長い付き合いだ」
ここまで彼女が話しかけるようになるまで、時間がかかった。
毎日通った成果だ。
通った理由は二つ。
一つは、やっぱり俺はこの件じゃちょい役だったから、人づてじゃなくてちゃんとレコちゃん本人と向き合って見定めようと思ったから。
もう一つは、自分で言うのもナンだが、面倒見のいい性格してるが故だ。ついでに俺は執着心が薄いってのもある。
長続きしないのだ、基本的に。それは感情も含まれる。今でも怒ってるとは言ったが、それは理性でだ。感情ではない。
「仏像の前にいたって、答えはでねぇよ。神様仏様が人間の尻ぬぐいをしてくれる神様なら俺はいらねぇよ。
 人間のやったことの尻ぬぐいは、人間がすべきだと思うからな。考えるコトを何かに預けるのは一番タチが悪い」
「……考えては、いる」
「そ。ならいいさ。けど、実行する前に教えろよ」
伏し目がちに俯くレコちゃんの姿は、とても同い年には思えないぐらい妖艶で、ドキリとする。
蝋燭の火でユラユラと光源が定まらないのも、この仏前の妙な静寂も、それに一層拍車をかけるようだった。







「由羽!」
帰りの会が終わり、教室がざわめく中で俺は早々に荷物を纏めて教室を後にし始めた由羽を引き留めた。
「なんだよ」
「図書室で勉強していかないか?」
今は試験に向けて部活動は休みに入っていた。
「……いかね。レベル合わねーもん。一流ちゃんと図書館でもいけよ」
「お前な、部活無いからって勉強もせずに何してるんだ?」
由羽の成績はよろしいとは言えない。コイツには色々世話になってるから、こういうコトぐらいでは力になりたいと思うのだが。
「来年は受験だぞ?」
「来年なったら頑張るわ。俺、訓みたいに計画立てるの苦手だからな」
「おい!」
足は由羽の方が速い。走り出した由羽に追いつける訳もない。
「はぁ……」

「いいですねぇ、人の心配してる余裕のある人は」
「いや、そんな余裕があるわけじゃ……」
いちるの友達の千紗さんが、俺の話を聞いて頬を膨らました。
「あ、千紗さん、そこの計算間違ってる。ほら、計算の途中で単位を変えるのを忘れてるんだ」
「……やっぱ余裕じゃん、乙古くんは」
向かいに座る千紗さんは、僻んだ目で俺を見てくる。
しかし、やっぱりいちるの学校はレベルが高い。千紗さんだって、ウチの学校なら上位に入れるだろう。
「訓、ここの問題わからないんだけど?」
結局、俺は由羽の言うとおり、いちると千紗さんと一緒に市立図書館で勉強をしていた。
(…って、このくらい、いちるのレベルなら簡単に解けると思うんだけど)
隣に座っているいちるの顔を思わず見てしまう。
「いちる〜、ワザとわからないフリしてるな〜」
と、いちるの問題集を逆さに覗いた千紗さんが、いちるの頬をつつく。
「……バレたか」
「そうなのか?なんでだ?」
訊ねると、空気が凍る。え?俺、何か不味かったか?
14すなおく一る×おとこくん<残月/睦月>:2007/10/05(金) 01:46:57 ID:P/DMl/Kd
「苦労するよ、一流は」
「するよというより、してきたんだけどね」
「何?俺、いちるに苦労させたのか?」
それは心苦しい。いちるが俺のせいで苦労してたなんて……
「訓、もっとこっち」
「え?おい!?」
いちるは俺の腕を引っ張り、その肩が俺の腕に触れた。
女の子の肩は小さいな。なんて思うと、一層いちるを守ってあげたくなる。
「くっつくと邪魔になるだろ?」
「訓がくっついてくれないから、私からくっつくの」
「答えになってないって……」
ノートだって重なっちゃうし、その……いちるが近くにいるのはドキドキして集中できない。
そりゃ、前に比べればしょっちゅうくっついてて、動じなくはなってきたけど、この状態で何かするのは無理だ。
今だって、いちるの匂いが俺の鼻を擽る。シャンプーか、いやいや、そんなに長持ちするもんか。じゃあ、いちるの自身の?
「……手、後ろにまわして髪梳いてるのに、説得力無いと思うなぁ〜」
「え……!?あ……いや……」
千紗さんの指摘に、俺が知らず知らずのうちにいちるの頭を撫でてたのを知る。
「もう、千紗、いらないこと言うんだから」
いちるは弛んだ顔で俺の肩に頭を預けながら、言った。
「いちる、ホラ、今は勉強しにきたから、な?」
手を引っ込めようとして、いちるに手を捕まれた。
「離してくれよ」
「もう片方の手開いてるから勉強できるね?」
「いや、でも……いちるだって集中できないだろ?」
「この状態が一番集中できる」
嘘だ…!めちゃくちゃダラけきった、満たされた顔してるじゃないか!!
可愛いなぁ、もう!!
「α波が出てていい感じなんだよね」
「いや、それいいのか?」
「いいんじゃない、もう。いちる勉強しなくても。乙古くんに永久就職すれば」
あつい、あついとノートで仰ぎながら、千紗さんは呆れている。
「って、何言い出すんだ!?」
「それ、いいかも〜。幼妻だねぇ」
「気が早すぎる!!」
「……否定するのはソッチかい!!」
千紗さん、声大きい。ここ図書館。



結局、勉強はあまりはかどらなかった。
千紗さんを家に送り届けながら、俺といちるは星空の下を歩いた。
「赤い星と青い星、どっちが好き?」
「ん……青い星だな。優しい色だから」
埒もない話、のんびりと歩くにはいい。
「でも、青い方が熱いんだよね?」
「ああ」
「訓と似てるかも。優しそうに見えて、中身は煌々と燃えたぎってるの」
「なんか格好良く言ってるけど、単に表裏激しいだけって気もするぞ」
「アハハ……そうかもね」
いちるの吐く息は白い。一月も末で、今週中にはもう二月になる。寒さは益々続くだろう。
「いちる、もうちょっと寄れ」
「……珍しいね、訓からそんなこと言ってくるの」
「寒そうだったからな」
いちるのかじかんだ手を握り、俺のポケットの中に入れる。
「少し具合が悪いんじゃないのか?今日は早く寝た方がいい」
「確かに、ちょっと熱っぽいけど」
「風邪ひくと、いちるは熱にでるからな」
いちるは身を寄せてきた。俺の固い身体に、柔らかいいちるの身体が沈む。
「よくわかるね。千紗は気づきもしないのに」
「前に気づけなくて後悔したからな」
15すなおく一る×おとこくん<残月/睦月>:2007/10/05(金) 01:49:02 ID:P/DMl/Kd
「私のこと、見ててくれるんだ」
栗色の瞳が俺を覗き込んだ。
空の星の何倍も綺麗な宝石……なんて、恥ずかしくて言えやしないが、いちるこそ俺にとっての宝物であることは疑いがない。
「……訓がこうしてくれるなら、もっと寒くなればいいのになぁ」
「そしたらコート着せる。あとマフラーに手袋」
「じゃあホドホドの寒さでいいや。あ、でもマフラーは賛成」
「なんで?」
と聞いたことを、俺は少し後悔した。
「二人でマフラー一緒に巻くの。夢だったんだよね」
それは人に見られたら死んでしまう……
「嫌がってるね?」
「そりゃ……」
「絶対、巻かせる」
け、決意の目だ……。いちるはやる。あらゆる策を弄して、目的を完遂させると、俺の経験が言っていた。
こうなったら、俺はもう、この冬が暖冬になることを祈るしかない。
「ん……?」
前のバス停に丁度停車していたバスから出て来た少女が慌ててバスの中に戻ろうとしてるのが見えた。
「なんだ、いきなり!?」
少女の後ろに居て、彼女を押し戻したその男の声には聞き覚えがあった。
「由羽!?」
「……あぁ、そういうこと。馬鹿だなぁ、慌てるから、逆に……」
「…………」
珍しい(と言っちゃ失礼だが)ことに、由羽は女連れだった。
が、その少女には俺も見覚えがあった。
「麗子」
「…………一流」
バツが悪そうに炎出麗子は目を逸らした。由羽の後ろに隠れようとして、由羽は先に麗子から離れる。
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙に耐えきれなくなったか、由羽が口を開いた。
「あ〜悪いな、二人の邪魔して。え〜っと、レコちゃんはだな……」
「麗子、今どうしてるの?」
いちるが訊ねると、麗子は肩を震わせて申し訳なさそうにいちるを見た。
「学校に来てないでしょ?心配してるんだよね」
「ゴメン……なさい。でも、学校に行く気は……ないから。ごめんなさい!!」
「おい!レコちゃん!?」
麗子はそう言い捨てると逃げるように……実際逃げたんだろうが、走り出していってしまった。
「……困ったな」
「追わなくていいのか?由羽」
「追いかけて優しい言葉でもかけろってか?」
意外と冷たいんだな……と思いつつも、コイツのコトだ。あとでフォローはするんだろう。
「一緒にいたのか、炎出麗子と」
「俺が適任だろ?」
お前の男気には脱帽するよ。
「由羽くん、麗子は今、何をしているの?」
「ん、今日は養護施設のボランティアだな」
「今日は?ってコトは他にも」
由羽は頷くと、麗子がボランティアを手当たり次第(言い方は悪いが)をおこなってることを話した。
「贖罪?」
「ケジメだろ」
由羽は事も無げに言った。
「ケジメか……似合わないな」
ヤクザらしいと言えばそうだが、炎出麗子らしいかと言えば違う。
「でも、似合わないからいいのかもな」
「流石、親友、俺と同じこと考えてやがる」
贖うことは悪いとは思えないが、後ろ向きだ。ケジメなら、次に進めるだろう。
個人的に言えば、いちるを傷つけたことは腹立たしい。が
「いちる、気にするな……」
「訓……」
16すなおく一る×おとこくん<残月/睦月>:2007/10/05(金) 01:50:39 ID:P/DMl/Kd
「彼女がしてることは彼女の意思だ。いちるが背負うことじゃない」
もし、いちるへの罪の意識からしてる行動なら、それで学校まで辞めるて病的に他人に尽くすのは
重たすぎるといちるは受け取るだろう。自分を責めてしまいかねない。でも、そうじゃない。彼女は自分の意思でしている。
「生まれ変わろうとしてるんだよ。またいちるの友達になるために」
いちるの肩に手を置く。少し、震えていたが、その震えは俺が支える。
「私、麗子を許せるかな?」
「許せないなら許せなくてもいい。でも、いちるは仕返しをしたりはしないだろ?」
「訓、お前はどうだ?」
試すような視線を由羽がみせる。
コイツは優しいから、麗子を許してる。許してるけど、納得してないコトも確かで、それが解決するには俺達の答えが必要なんだろう。
「……許せないなぁ。俺はそれほど人間出来てないから。だからいっそ……引き受けたいな」
「「訓?」」
俺の回答に二人の声が重なる。
「いちるの許せないって気持ちも、由羽の許せないって気持ちも、千紗さんの許せないって気持ちも
 できるなら全部俺が引き受けてやりたい。俺だけが麗子を憎めばいい。それで、みんなが麗子と上手くやってけるなら
 俺はその憎しみはずっと我慢する。そんな風にできたら、それが一番だななんて思う」
いちるの、みんなの辛い顔を見てるのが一番辛いから。
俺はあの場に踏み込んだ時、頭が真っ白になった。
全部、全部、許せなかった。
無力な自分、無力ないちるにむらがる男ども、友人を貶める麗子……狂いそうだった。
叫んで、泣いて、周りのモノを全て壊したかった。
でも、必死に押し込めた。
自分は最善を尽くすべきだし、いちるを抱きしめて受けとめてやりたいし、麗子に後悔させてやりたかった。
それは全部、全部、辛いことだった。
でも俺は我慢するんだ。俺は最高の男を目指してるんだから。
「駄目だよ、訓。この気持ちは私のものなんだから。私が向き合わなきゃね」
「そうだな。でも、半分ぐらいは俺が背負ってやるから。その代わり、嬉しいことや楽しいことも半分くれ」
「訓……」
少しはいちるの震えは止まっただろうか?俺はいちるの力になれてるだろうか?
「……どうした?由羽」
「いや、それってどうみてもプロポーズです、本当にありがとうございました」
な、な、何言ってるんだ!!なんなんだ、今日は千紗さんといい、由羽といい!!
投げるぞ!待て、逃げるな……くそ!追いつけない……アイツの方が運動神経がいい
んだよなぁ、もう!!
「待てぇ!!由羽ゥゥゥ〜〜〜」
「誰が待つか!目が血走って怖ぇーんだよ!」
「ちょっと!待ってよ、訓…ッ」




その週の日曜日、俺と訓と一流ちゃんと千紗ちゃんで出かけていた。
「…………炎出麗子の家?」
訓があっけにとられてる。まあ分かる。俺も始めてきた時はそうだった。
一流ちゃんと千紗ちゃんは来たことがあるらしく、インターホンを押すと手短に挨拶を終えると中に入っていった。
「ようこそいらっしゃいました」
渋い声で茂部のオッサンさんが出迎える。……晴天の爽やかな空気になんて似合わない。
訓は身構えて、一流ちゃんと千紗ちゃんは普通に挨拶して家の中に入っていく。
最後に玄関(正面に熊の剥製があるのは心臓に悪い…)に上がろうとしたら、茂部のオッサンに引き留められた。
「一野進さん、お嬢の為に……色々ありがとうごせぇやす」
「別に麗子ちゃんだけの為じゃないよ。きっちり終わらせないと、みんな明るい顔出来ないだろ?」
「……申し訳ございやせん。自分はお嬢のコト、小さい頃から見てるもんで、お嬢が中々友達が出来なかったことも
 砂奥の嬢さんが友達になって、とても明るくなったことも、上手くいかなくなって……あんな風になっていったことも
 近くで見すぎていて、どうにも止める機会を失ってしまいまして……情けねぇ話ですが。自分は親に捨てられた身なんで
 ああいうとき、どう接していいか、大の大人がそんなコトで尻込みして、そんな内にあんなコトに……」
茂部のオッサンは腰を曲げて、頭を下げた。
「出来れば……これからもお嬢をよろしくお願いしやす」
「……優先順位が訓と一流ちゃんの次でいいなら、引き受けるよ」
あ〜俺って、人が良すぎる。大体、レコちゃんとみんなの対面のセッティングだってしたの俺だし。
そう、レコちゃんは未だに一流ちゃん達と会おうとしない。ので俺はちょっと無い知恵を搾ったのだ。
17すなおく一る×おとこくん<残月/睦月>:2007/10/05(金) 01:52:38 ID:P/DMl/Kd

何度かレコちゃんの家には訪れたが、基本的にこっそり裏口から入ったんで客間に通されたのは初めてだった。
高そうな掛け軸を背に、男が座り、俺達はテーブルを挟んで反対側に座った。
「今回のコトは茂部から聞いた。申し訳ないことをした。不始末をしたモンはもう表も裏も歩けんようにしたよって、この通りじゃ」
顔の厳つい、着流しを着た貫禄のある、俺達に頭を下げた男こそ、レコちゃんの父親。
炎出組の頭である、炎出嘉一(ヤンデ カイチ)だ。
今回、俺達を招いたのはこの人。
「ワシがこんなんだからのぅ、麗子が辛い思いをさせておるのはようわかっておった。だから目一杯甘やかしてしまったかも知れん。
 ワシは婿養子でのう、アレの方がオヤジさんの血ぃ引いてるから、組のモンも大事に扱うもんじゃから
 増長してしまったかも知れんのぅ。いや、言い訳じゃの。けどワシも親なんでなぁ、ついの、スマン」
レコちゃんのお父さんが再び頭を下げると、後ろで控えてた茂部のオッサンも頭を下げた。
「皆さん、お怒りでしょうが、全ては大人である自分がお嬢を止めれなかったとこに端を発しています。恨むなら、自分を恨んでくやせい」
それは嘘だ。レコちゃんは茂部のオッサンが知らないところで他の三人を集めてて、気づいた時にはレコちゃんはもう泥沼に片足を突っ込んでいた。
前に聞いた話だが、茂部のオッサンはレコちゃんのお父さんが小矢場(オヤバ)っていう旧姓の頃から弟分で
レコちゃんにとっても、本当のオジさんと思えるぐらい、家族な人なんだという。
「あの、気持ちは受け取りますが、けどやっぱり私達とレコとの間で決着をつけるべきだと思うんです」
一流ちゃんはハッキリと物申すと、レコちゃんのお父さんの大仰に頷き、茂部のオッサンを下がらせた。
「今、麗子を呼びますんで」
「あの……お父さんはレコが学校行ってないのは、当然……」
千紗ちゃんの問いにも、一々向き合って答えた。
「麗子が自分で決めたことなら。伴田の嬢ちゃんは、身体大丈夫かい?」
「大丈夫、健康だけが取り柄ですから!」
優しく笑いかける男に、千紗ちゃんは力コブをつくるマネをして、笑う。
「………」
(……訓、まだ納得いってないのか?)
沈黙を続ける親友に、俺は小声で話しかける。
まさか、この男に限ってビビってるというのは考えにくい。
(……哀しいなと思ってな)
(ん?)
(あの人、化粧してるんだ。顔に傷があるだろ?アレ、隠そうとしてるんじゃないか?娘の友達の前だから)
訓に言われて、レコちゃんのお父さんの顔をマジマジと見る。確かに。顔に傷がうっすらと走っている。
(そんなに人に愛されてるのに、人を傷つけたのが哀しいなと思って)
(…………)
俺は訓の言葉に何も言い返せなかった。
「何?お父さ…!!」
茂部のオッサンに連れてこられたレコちゃんは、俺達の顔を見て固まった。
慌てて自分の部屋に戻ろうとするレコちゃんを、彼女のお父さんは一喝した。
「麗子、ワシのお客さんじゃ。お前はお茶ぐらい出していかんか」
「…………」
拒否を許さない、ドスの聞いた声だ。レコちゃんはジト目でお父さんと……俺を睨むと、
渋々、部屋とは反対方向の――おそらく台所がある方へ消えていった。
「では、ワシはこの辺で」
着流しの襟を直し、レコちゃんのお父さんは茂部のオッサンを連れて去った。
暫くしたあと、お盆にお茶を載せたレコちゃんがやってきて呆然としてたのは言うまでもない。
「…………粗茶ですが」
諦めたように、さっきまでお父さんが座っていた座布団の上に腰を下ろし、お茶を配るレコちゃん。
「……今日はお越し頂きありがとうございました」
三つ指立てて、俺達に礼をする。
どうやら、父親をダシにつかった俺に対する当てつけらしい。
「…………」
レコちゃんは、あらためて姿勢を正すと、しっかりと俺達を、一流ちゃんを見つめた。
「ごめんなさい。私の我が儘でみんなを傷つけてしまいました。謝っても、許して貰おうとは思わないけど
 何か代償を行っても、それで罪が消えるわけじゃないけど、私に出来ることなら何でもします。
 もう、目の前に現れるなと言うなら、この町をでます。このとおりです」
深々と、レコちゃんは頭を下げた。
「…………」
「…………」
一流ちゃんと千紗ちゃんはお互い顔を見合わせると、頷き、言った。
「じゃあ、私達が春休みになったら……」
18すなおく一る×おとこくん<残月/睦月>:2007/10/05(金) 01:54:55 ID:P/DMl/Kd
「春休み?」
「麗子の奢りでみんなで旅行にいきこうね」
レコちゃんは頭を下げたまま動かない。
「ここにいる全員だけじゃなくて、ちゃんと條と当馬も呼んで……それでチャラにしてあげるよ、レコ」
「そんな……ことで……?」
鼻罹ったレコちゃんの声。
「いちるがソレでいいなら、俺は問題ない」
「右に同じ」
間が悪くなったか、俺と訓は二人してお茶を飲む。どうにも女の涙は苦手だ。
「……あ、でも一つだけ」
一流ちゃんが、付け加える。
「旅行は最低一泊ね。それで私と訓は同じ部屋にしてね」
あ、訓が茶噴いた。汚ねぇ……
「ゲホ、ゲホ!い、い、いちる!!お、お、お、お前な、な、な、な……」
動揺する訓の前で、レコちゃんは顔を上げた。
「一流、駄目じゃない」
「そうだ!麗子も言ってやれ!!」
……鼻からお茶でてるぞ、訓。
「二つになってるわよ」
「あ、そうね」
………………
俺はようやく、レコちゃんの笑顔を見た。
初めて見たレコちゃんの心からの笑顔はやっぱり可愛かった。



「ま、苦労した甲斐はあったかな」
訓達と別れた後、歩道橋を渡りながら抜けるように青い空を見上げた。
レコちゃんはボランティアを続けながら、旅行資金を貯めるためにバイトを始めるらしい。
化粧すると大人っぽく見えるからな、多分年齢は上手くごまかせるだろう。
バイトが決まったらまた見に行ってみるかなんて思ったが、それは過保護すぎるか。
「ど〜にも……面倒見が良すぎるな」
と、自分の性格に呆れた所で、前を登る女の子が階段を踏み外したのが見えた。
「きゃっ…」
「おっと!」
慌てて後ろから支えてやる。
「大丈夫?」
「あ……ありがとうございます!」
小学校中学年ぐらいに見えたその女の子は、そういってペコリと頭を下げると、満面の笑みで笑った。
「どういたしまして」
俺が女の子の頭にポンと手を置くと、くすぐったそうにはにかんだ。
「そうそう、そんな風に素直が一番ってね」
表裏の無い、純真ないい笑顔はそれだけで人の心を優しくさせる。色んなわだかまりとかしこりとか、
空に輝く太陽のような熱と光で溶かしてしまう。それはとても気分のよいものだ。
「はい!」
女の子は元気よく頷くと、走り出していった。
「ん〜」
大きく背伸びをして吸った冬の空気は、カラリと澄んで春の訪れの前の爽やかさを含んでいた。



<了>






さて、次回でそろそろ訓と一流を結ばせますかね
19名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 05:21:34 ID:dwo7WquR
テラGJ
由羽に惚れる女の子がうじゃうじゃいない理由がわからない
20名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 07:20:47 ID:IF0X3Wyf
GJ超GJ!
優しさに号泣っ!

単に作品を締めるだけだと思ってたんで、
まさか泣かされるとは…
21名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 07:45:33 ID:GseoRBmF
策士由羽GJ!


>>1
>スルーば自力で。
スルーば?
22名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 08:16:34 ID:/E71QLI2
>>19
見た目がチャラいからとか?
23前スレ692:2007/10/05(金) 08:30:51 ID:/PDIh/RV
スルー『は』ですね。

>>1 さんごめんなさい、
アク禁で携帯で書いてたら慣れない端末で
間違ったみたい…
24名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 10:47:59 ID:iYSHSo02
昼行灯だからじゃない?>由羽モテない
あるいは典型的お友達タイプと見られてるか
少女漫画的お約束としては実は由羽も一流が好きっていうパターンも



どうでもいいが俺のなかで、由羽のイメージはサンデー連載の『お茶をにごす。』の山田だったりする

25名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 20:02:39 ID:OnvbrnnG
>23
そもそもテンプレには「マンセー以外禁止」って書けば早かったんじゃ?
26名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 21:42:22 ID:iYAsL0ad
投下ラッシュ、空気変えるにしても勿体無いくらいの連発ですね。

>>8
GJ、ですが、前スレ落ちたら前半読めなくなるのがなんとも。
いま保管庫の方ってどうされているんでしょうか。

前スレ落ちたとき、暫定的にでもどこかにログ置き場があればいいんだけどな。
どこかないでしょうかねー。

>>18
GJGJ!
今回のような話をさらりと書けるのはすごいなあ。

次はエロなんでしょうか?
ぶっちゃけ、このシリーズにはエロよりも今までのような
萌えを期待していたりします。
27名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 01:10:34 ID:4m6zd1i9
乙です。やっぱ由羽良いわ

さてと後は瑞希さんでも待ちますかね
28中の人:2007/10/06(土) 01:50:49 ID:uJ7XfRGH
>>26
保管庫の中の人はここにいますが、更新はもうしないのでログは要りません。

つまりは↓ということです。最後まで申し訳ありません。
http://derheiligekrieg.h.fc2.com/retirement.html

素直クールスレに関してはあまり心配していませんが。
他の素直クール関連スレまで目を向ければ、多分誰か保管してくれる人は見つかると思います。
それでも駄目なら駄目で、素直クール用のwikiとかアップローダとかありますからね。
もっと出来の良い保管庫が建てられることと、職人様方のご健筆をお祈り申し上げます。

それではさようなら。
29名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 02:28:16 ID:I+OTyKcl
>>28
読み易くて好きだったのに……
ともかく、長い間お疲れ様でした。
30名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 02:39:14 ID:0UYv3Eq5
うう、残念ですが、今までお疲れ様でした。ありがとうございました、とても助かっていました。
大変な作業だったと思います。

というわけで、保管庫つくりが急務になってしまいましたが、どうしましょうか。
前スレログだけはどこかにすぐにでも置きたいですね。
ほの板wikiに 18禁ページも作ってもらうのが一番早道な気もちょいとしますが、18禁は
別なところのほうがいいのかな……。


31名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 03:09:51 ID:+gYRy3O2
>>25
それはそれで突っ込みやアドバイスまで荒し扱いされたりしてしまう可能性がある
32名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 07:30:45 ID:OpQJwp9G
>>25
好みに合わなければ注意書きの有無に関係なく
スルーしてくださいって書いてあるだけで、
ここをこうしたほうが良いって指摘は禁止されていない。

「マンセー以外禁止」ってまとめるのは
>>1の内容にそぐわないと思う。

>>28
お疲れ様でした。
33名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 07:55:40 ID:eURGYD+C
>>28
今まで乙です。

さて、保管庫か……
一旦エロパロ総合保管庫にお願いというのではダメなんだろうか
34名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 22:24:54 ID:EU+jZoD+
>>28

入用なら過去のhtmlのうpなら俺に任せてもらおう
35名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 22:30:52 ID:VF2GrYbS
ここは素直かつクールに打開策を考えねばなるまい
一時的な保管庫としては総合が一番だろうが、やはり専用保管庫があるのがベターだな
36名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 23:02:32 ID:PuZYZKvk
やはり誰もが素直かつクールに更新できるWIKIが良いのでは
37名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 23:10:13 ID:VF2GrYbS
しかし素直かつホットに荒らすやつがでてくるという点では難しいだろう
38名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 23:26:18 ID:EU+jZoD+
素直かつシュールになら任せろ
39名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 00:35:43 ID:R3ySl1Ad
年度が変わったらやってやろう。





フォレストでよけりゃ…
40名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 08:14:44 ID:+WCny8uE
取り急ぎ、暫定的にミラーだけは作っておきました。
これである程度時間は稼げるかと。

http://red.ribbon.to/~hachiwords/scool/

おかしなところなどがあれば連絡をいただけるとありがたいです。
今後どう運用していくかは別途考えていきましょう。
41名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 16:28:30 ID:s3pbbYTo
>>40
いやもうそれをそのまま本保管庫にしてほしいくらいなんだが。
4240:2007/10/08(月) 02:59:28 ID:EC5YXyXi
>>41
じゃあそこをメンテナンスしていくようにしましょうか。

ミラー作るだけであれば機械的にできるのですが、
まとめを更新していくのは大変そうなのでちょっとお時間をください。

Wikiという手もあるかとも思いましたけれど、
やっぱり悪戯が問題になってしまうでしょうか。
VIPのWikiも時々荒らされているみたいですし。うーん。
43名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 04:27:05 ID:9rESTEl8
結局理想的な保管庫は無いのかな・・・?

必ず更新され、荒らしも何もできない的な保管庫は


求め過ぎか・・・
44名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 06:20:12 ID:kuuzdU9k
正直datさえあれば問題なし
45名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 09:05:47 ID:OuAbquW4
もう少ししたら投下します。
保守変わりとして。

掌編、エロ無しです。
46-“とある日常”系素直クール- :2007/10/10(水) 09:15:29 ID:OuAbquW4
-“とある日常”系素直クール- 『学食にて』


「あーん」
「…………」
 こういう展開は、予想して無かった。
「あーーん」
 確かにこの腕じゃ、食事はしづらい。
 俺は、確かめるように自分の右腕を見下ろした。右腕にはギブスが巻かれている。
「あーーーん」
 ちょっとした事故で、全治2週間。怪我自体は亀裂骨折なのでそれほど重くないが、
ギブスでがっちり固められた利き腕は、日常生活にそれなりに支障をきたしていた。
「あーーーーーん」
 でも、だからと言って、こういう展開は予想して無かった。

 今は昼休み。がやがやと賑わう大学の学食は、満席とまでは行かないが、席が8割方
埋まるくらいには活気がある。
 そんな中、手作りのお弁当を挟んで「あーーん」なんてやってる連中に視線が集まら
ないわけがなく。
 さすがに露骨にじろじろ眺められることはないが、遠巻きにチラチラとこちらを観察
されているし、くすくすと忍び笑いが聞こえてくる。
「あーーーーーーーん」
「いや、自分で食べられるから……」
 左手は無傷だし、箸は無理でもフォークなら使える。
 そう、たまりかねて口を挟んだ。が、
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
「……いただきます」
 プレッシャーに負け、目の前に突き出された一口サイズの稲荷ずしを頬張る。

 じっくりと煮込まれ、味がしみ込んだ油揚げに包まれた、程よい甘さの酢飯が、口の
中でとろける。
「美味しいですか?」
 小首を傾げ、彼女が俺の顔を覗き込む。その顔は実に満足そうだ。
「……はい」
 すげえ旨かったです。羞恥プレイを強要される俺は、控えめに頷くのが精一杯ですが。
「良かった。じゃあ次は唐揚げです」
 まるでピクニックにでも出かけているかのように楽しげに彼女が言って、これまた
一口サイズの唐揚げを箸で摘む。
「はい、どうぞ。あーーーん」
 そして、当然のように口元に運んでくる。
「………」
 心無しか、周りのくすくす笑いが大きくなっているような気が。
 周囲を見回して確認するほどの肝っ玉を俺が持ち合わせているわけが無く、心の中で
耳を塞ぐ。
 あーあーきこえなーい。の心境で、俺は口元に差し出された唐揚げを口の中へ。
47-“とある日常”系素直クール- :2007/10/10(水) 09:17:27 ID:OuAbquW4
 醤油で味付けされた唐揚げは、外はサクサク中はジューシー。弁当の唐揚げなのに、
揚げ立てのようなこの食感は、2度揚げしてる証拠だ。さらに、微かに香るシソと生姜が
とり肉独特の生臭さを見事に消し去っている。
「美味しいですか?」
「うん」
 実に丁寧な作りに、思わず感動し、素直に頷く。と、その時、『ピロリーン♪』と
聞き覚えのある電子音がし、振り返った瞬間にげんなりした。

「いやー、いい絵が撮れた」
 人の悪い笑みを浮かべて、こちらに不躾にケータイを向けている友人が一人。
「……シャメ撮んな」
 ぐったりと疲れて言う俺に、にやにや笑いのまま友人がのたまう。
「いいじゃんいいじゃん。こういうのが後になって良い思い出になるんだよ」
 羞恥プレイの思い出を良い思い出に変えられるヤツがいるなら、見てみたいものだ。
「消せ。肖像権の侵害だ」
 憮然と言う俺に、彼女が割り込んだ。
「あ、消す前に私に送って下さい」
「ちょっ!」
「はいよ。送信っと」
「あ! おい!」
「いつもありがとうございます」
「なんのなんの」
「いつも!? いつもって何!?」
 驚く俺に、彼女が平然と答える。
「ええ。いつも送ってもらっているんです」
 見ますか? と目の前に向けられたケータイのディスプレイには、俺と彼女のツーショット
写真のサムネイルがびっしりと表示されていた。一体、いつの間に……。
「ちなみに私のお気に入りは、この写真です」
 驚愕のあまり、声を失っている俺をよそに、彼女がカチカチとケータイをいじり、
お気に入りらしい写真を呼び出す。

 画面に表示されたそれは、俺と彼女のキスシーンだった。

「ぅおぉい! なんだこれ!」
「ああ、それか。良く撮れてるだろ?」
「ちょ、おま! これ、……えぇ!?」
 なんでこんな写真があるんだ!? いや、だって。俺と彼女はまだ……。
「ちゅーしてるように見えるだろ?」
 呆然と見上げると、にやにや笑いしていやがるヤツが目に入る。
「お前が彼女の目に入ったゴミを見てやっている瞬間を捉えた、俺の傑作だ。どうよ? この
絶妙なアングル。これを見せたら100人中100人はキスシーンって言うね」
「……め、目に、ゴミ?」
 俺と彼女が顔をくっつけあっているようなアングルのせいで、キスしてるように見えるだけで
実際はそうではないらしい。当たり前だ。俺と彼女はまだキスまで行ってない。
 俺と彼女はもっと清い関係なのだ。……断じてそうだ。
48-“とある日常”系素直クール- :2007/10/10(水) 09:20:10 ID:OuAbquW4
「一瞬のシャッターチャンスを逃さない……やばいね。俺、写真家になるべきじゃね?」
「どちらかというと、パパラッチに近いものがあると思いますが」
 うっとりと自己陶酔してるヤツに、彼女が突っ込む。そうだ。もっと言ってやれ。何が写真家だ。
こんなん盗撮じゃないか。
「でも、キスしてるように見えるので、私の大のお気に入りです」
 そうだった。彼女のお気に入りなんだった……。
 思わずがっくりと肩を落とす俺をそのままに、友人が呑気な声をあげる。
「さっき撮ったのも、なかなか良い感じだと思うよ」
「ええ。ラブラブな感じがとても良いですね。ベスト5にランクインです」
「お、久々にランキング更新だねー」
 ランキングってなんだよ……。俺はもう、なんだかどっと疲れて文句を言うのも億劫に
なっていた。
 しかし、彼女の次の一言で再び慌てる事となる。

「この写真は、ぜひ結婚式のスライドショーの1枚として使いたいですね」
 ちょっ!
「なに言ってんの!」
「いいねえいいねえ。『こうして二人は愛を育んでいきました』ってナレーションが聞こえて
きそうだ」
「お前も焚き付けるな!」
「そうなると、スライドショーの締めには、よりラブパク的な写真が欲しいですね」
「なにラブパクって!? つーか人の話聞いてる!?」
「ラブラブ+インパクトだろ。ボキャ天的に考えて」
「そんなん知るかっ!」
 今どきタモリのボキャブラ天国がナチュラルに出てくる大学生なんているか!
「では、ラブパクの10・9あたりを目指して──」
 俺の魂の叫びをことごとくスルーし、彼女が俺の首に手をかけ、
「──んぅ!?」

 『ピロリーン♪』

 学食のど真ん中で、友人のケータイに収められたその写真は、後に「学食にて」という
テロップが付けれて披露される、ちょっと泡を食ったような表情の俺に、彼女が幸せそうに
唇を重ねている瞬間だった。

終わり

49-“とある日常”系素直クール- :2007/10/10(水) 09:22:13 ID:OuAbquW4

以上です。
楽しんで頂けたら幸いです。

50名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 09:24:30 ID:66uk7yRw
GJ!朝からこんな甘甘なSSを読めるとは、早起きはしてみるものだな!
51名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 14:34:35 ID:P5cGNJ4V
あれだな
エロいな
52名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 19:24:48 ID:mQQQf/P+
>>49
GJ
53名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 08:14:32 ID:u/92Hzi2
GJGJ!!
いつもながら、食べ物が美味そうでしかたがないですね。
おいしそうな食事風景を書ける人の小説はみんな上手いなあ、と思ったり。

あーお腹減ったー。
54名無しさん@ピンキー:2007/10/12(金) 16:15:30 ID:hfSAtb4c
>>53
無口スレから来ました
55名無しさん@ピンキー:2007/10/13(土) 08:09:32 ID:NOHEY3Rr
本当に上手ですな。
ニヤケが止まらんじゃないですかwww
GJ!
56名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 23:47:06 ID:/PBsH+j4
GJですwwwwwwwwwwwwww
57名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 02:13:47 ID:SaRjHDFe
瑞希待ちwktk
58名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 21:45:31 ID:rBHbG+eq
まとめサイトに過去スレ置いてあったんで見てきたが、
今年の四月くらいからものすげー勢いで傑作がバンバン投下されてるんだな、このスレ

最近ちょっと息切れぎみのようだが、なんつーかどれも粒ぞろいで
すげー密度でびっくりしたよ

59名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 01:17:42 ID:oBRNjr8p
バンブーブレードのタマちゃんって素直クールかな?
60名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 06:23:02 ID:yurE49ty
全然クールじゃないから除外。
そもそもあの漫画の魅力はテンプレな属性にくくれない人間らしさがキャラにあるところだと思うんだけどなあ、と原作者信者が言ってみる。

……まあ、テンプレな属性にもそれ相応の魅力があるわけで、だからここにいるんですが。
61名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 08:18:21 ID:hDIy40Ft
>>60
悪いが一般的な萌え産業の範疇だと思うぜ
62名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 19:50:53 ID:yurE49ty
いや、原作者が原作者なもんでそういう目で見る対象じゃなかったというか……。
まあ、こればっかりはしょうがないかなあ……。
63名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 20:42:54 ID:njdNvQ87
さんざん引っ張っておいて
「なんのことはないただのストーカーであった」
とやらかすマンガに魅力もなにもあったもんじゃない。
64名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 22:31:34 ID:yurE49ty
いや、元々そういうギャグの作風の人だし……って、流石にスレ違いだな、しつこくてすまない。
65名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 23:36:37 ID:/5be6M4F
一流どうなった?
66名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 01:12:23 ID:KicB+Eqo
土塚キャラが萌えないなんて悪い意味で信者フィルター掛かってるぜ
67 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/21(日) 04:17:40 ID:vkYutblO
この流れで降って湧いた小ネタ。
作業しながらだと、夜更かしが過ぎていかん。


嘘予告1
「瀬川浩毅と藤宮珠樹。二人合わせて、ひろたまの日々。どうぞヨロシク!
いやーガンバっていかなアカンなーと、決意も新たな新学期!
やっと現状に慣れてきた俺を待ち受けるのは、ヘンなのに影響受けた恋人の愛情! 手作り! 弁当! 試食!
逃亡スレスレの食材っぷりに、突然かかった待ったの声!
この子が噂のタマちゃんだぁ!
『浩毅のために作ったの』と、味ッ子チックに現れた彼女の腕前は!?
……って上手いに決まってんだけどぉ! ……決まってんだけどぉ……。
ケミカルとはいえ一応料理! 胸に燃えるはコックの心! 思いついたら、さあ試作。
次回のひろたまの日々は、『あんこ入り☆パスタとライス』で、あなたに一本!(キャベツーを)」

嘘予告2
「はーっはっはっは! ベッタベタに甘ったるい(血糖値的な意味で)瀬川浩毅だ!
君達に愛エプ三つの誓いを教えよう 。
一つ、好き嫌いはやめよう 。
二つ、コメントは考えて言おう 。
三つ、親しいからこそ、はっきりと。
四つ、創作料理はまず味見から 。
四つ目は特に気にしてくれ。
これを守れば、君も立派な食通だ!  巨大化して、口から怪光線で、大阪城をぶっ壊そう 。
次回のタイトルは『穴馬と汁』
だが俺は食わないから……ていうかもう本当勘弁してください」
「はい」 つ旦~
       ↑これはお茶です
「……ふぅ」

嘘予告3
「こんにちは、藤宮珠樹です。
私、まだまだ道半ばですが、料理って楽しいですね。
何が楽しいかって? 美味しいお弁当を広げる、つつく、『あーん』する、しかもみんなの前で。
ビバストロベリータイム!
身体だけじゃなく、精神面も滋養強壮されますわ。
照れながら食べてくれる浩毅の顔を想像しただけで、私の中の彼へのLOVEが鎌首をむくむくと。
二人の絆を育むことで、人間的にも成長出来ますね。
ていうか私、浩毅の為ならいつでもどこでも何でもしますけど。
それはそれとして、次回は『リトルとグルメ』!
マイスウィートハートは是非味わってね……っていうか、お・ね・が・い」
68 ◆uW6wAi1FeE :2007/10/21(日) 04:19:29 ID:vkYutblO

今回これだけ。長編の続きは、もうちょっとかかりそうです。
69名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 04:26:15 ID:LMo3+YHy
ちょ、なんでバンブーブレードスレになってるんだ?
つかひろたままでw
70名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 05:18:55 ID:RK5NNDxb
実は意外といけるらしい「あんこ入り☆パスタライス」、是非一度お試しあれ
(ただしいけるかどうかの判断は名古屋の喫茶マウンテンさんにお任せしております)

あと食通で穴馬と言われるとトロンベ言いたくなるなあ。
71名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 06:34:48 ID:xhy4l8E2
72名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 07:05:20 ID:5BH9OzwR
バンブーはアニメしか知らないが、タマちゃんは素直クールというより
素直系不器用(感情表現が)キャラだと思うんだ。素直デレ?
73名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 08:13:16 ID:zYPu+Vb7
>>67
笑わせていただきました。いや、こんな場所でこれのネタ見れるとは。
74名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 10:59:03 ID:FqGXE7Nt
来栖奈緒
75名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 16:55:05 ID:IV0vaVth
川 ゚ ー゚)×ノパ听)は無しですか?
76名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 17:17:15 ID:Hu9qJIM/
VIPに行け
77名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 10:31:26 ID:gLfJBDMX
エロは無理(´・ω・`)
78名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 11:13:54 ID:t8w5FviL
【総合】新ジャンルでエロパロpart3【混沌】

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ここは?
79すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 19:57:10 ID:t8VQ68rF
今回は長くなったので時間を分けて投下します。
このSSはバンブーが剣道描写に突っ込んではいけないように、柔道関係に突っ込んではいけませんw



桜の芽が枝に付き始めるころ、世の少年少女達は初めて社会の中の競争を知る。
歓喜、絶望、涙……
たった数桁の数字が明暗を分けている。
「あった…」
思わず乙古訓は砂奥一流の手を握っていた。
受験番号。
校門前の広場に掲示された数字の羅列の中に、手の中にある紙と同じ番号があった。
四月から、訓がこの高校に通えるという証左である。
「そうだね」
長いホワイトボードの上に張られた数字の中から、一流は先にに自分の合格を見つけていた。そして、自分の幼なじみへの祝福を忘れない。
「よかったね」
県内一の偏差値の学校……とはいえ、まず訓も一流も落ちることはないだろうという周囲の下馬評もある。
そして当人達も当然そのつもり……ではあるが、やはり緊張したのだ。初めての受験には。
「ああ、よかった」
噛みしめるように訓が言う横で、一流は親や友人にメールを打っている。
その姿は冷静に見えるが、指がボタンに触れる度に口から効果音が出てるのに本人は気づいてるだろうか。
(あぁ……本当に、よかった)
きっと、皆祝福してくれるだろう。
訓は夏の終わりから迷い続けた自分の選択の結果に、満足した。



   ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※   



盛夏が過ぎ、セミの音も少しは収まってきた頃のコトだった。
夏の大会は終わり、三年生はもう高校受験を残すのみ……
図書館で参考書を開く訓の向かいで、一野進由羽が辞書を枕に身体を弛緩させまくっていた。
「あ〜……」
「……珍しくお前から図書館行こうって言ったのに、コレか?」
ノートを丸めて友人の頭を小突こうとした訓だが、由羽は筆箱で防いだ。
「別に勉強するとは言ってないしぃ〜図書館は冷房効いてて涼しいし〜静かだし〜」
「ダラけきってるな」
「燃え尽き症候群なんだよ」
欠伸をしながら、由羽は言い訳をした。
柔道部を引退して以来、暇で暇でしょうがないといった感じだ。
遊ぶ手段を知らないわけではないが、日頃のルーチンワークが急に無くなると途惑う。
それは訓も分からない訳ではない。
「それにホラ、俺推薦だし?」
既に内々に決まっているコトである。
「馬鹿でも一高いけるんだぜ?スポーツ様々だ」
一高とは県でも一番の偏差値を持つ高校の略称だった。訓の志望校でもある。
勿論、一流もそこを目指している。一流の学校の半分は彼の高校を受験するのだ。
「折角さー全国まで出たのに、推薦蹴るなんてどうにかしてるぜ、訓」
由羽にスポーツ推薦があったように、訓にもスポーツ推薦の話はあった。
だが訓は、普通に受験する道を選んだ。
ちなみに、学力も良い当馬憐は推薦で一高に内定している。
「ま、そっちの方がカッコイイけど」
由羽は知ってる。訓は文武両道を自分に課してるコトも、それが幼なじみの一流への不器用な愛情表現であることも。
「……見栄っ張り」
「なんだ、いきなり」
問題の採点をするために赤ペンを抜いた訓は、由羽のからかうような声を咎めた。
「いや、シンデレラって別にガラスの靴を履かなくても美人だったと思うんだけどな、俺は」
「…………ガラスの靴を履いた方が一層キレイだと思うけどな」
80すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 19:59:23 ID:t8VQ68rF
由羽の言わんとしてるコトを察し、訓は切り返した。
「ふむ……しかし気を張ってると、ある時ふっと魔法が解けちまうぜ?」
「ガラスの靴にかかった魔法は解けなかったから、王子とシンデレラは出会えたんじゃないか」
訓のノートに赤い丸が増えていく。
「……色気の無いノートだな」
「は?」
「ラメ入りのボールペンとか、そういう遊びっ気もないな、訓って」
「七割らくがきのノートとどっちがマシか」
訓の反撃に、由羽は渋い顔をする。
「推薦にしたって、授業についていけないと困るだろ?勉強しておいたらどうだ?」
「まあ、確かに俺は気が抜けすぎてますよ。認めますとも。……けど訓、お前は気が抜けなさすぎ。
 部活引退したらスグ、勉強?それってさ……勉強でもしてないとやってらんないって感じに見えるけど?」
辞書から頭を離して、由羽は訓を見据えた。
「納得してないな、全国ベスト16」
「…………」
由羽は溜息をついた。
「一流ちゃんとどっか遊びにいったら?」
「受験生だろ?」
「息抜きも必要だって。それに、お前達が一日休んだぐらいで成績下がらんって」
と言ったところで首を縦に振る筈もないと言うことを由羽は知っている。
「……なんだかんだで、俺達柔道中心に生きてきたわな」
「まあ…な」
「こんなに長続きするとはね。俺はお前に道場で初めて会ったとき…」
「飽きて辞めるつもりだったんだろ」
もう何度も聞かされた話だ。
「感謝、多謝。まさかここまで身を助ける芸に昇華するとは」
「実力だ、お前の」
「生涯の友と逢えたのは運命だろ」
「気持ち悪いぞ、由羽」
訓は顔を顰めながら、しかし否定はしなかった。



「ただいま」
家に帰った訓は玄関に革靴があることに気がついた。父親が帰ってくるには時間が早いと首を捻る。
客人かと胸元の第一ボタンを掛け直す。
「お客さん?」
リビングに至ると、そこには紅茶を茶請けを出された中年の男と初老の男が居た。
中年の男の方はスーツの上からでも分かるほど、筋肉があり、厳つい。
「やあ、訓くんだね。初めまして。最もボクの方は君のコトはよく知ってるんだが」
初老の男は慇懃に立ち上がって挨拶をし、母親の隣――対座に腰をつけるよう訓に促した。
「初めまして、乙古訓です。私のお客さんなのですか?」
「東開大学付属佐上高校のスカウトの方よ」
訓の母親は努めて無感情に言った。それはあくまで進学の意思を訓に決めさせるためなのだろう。
「…………」
訓は大きく目を見開いた。彼の高校、訓でも知ってる程のIH(インターハイ)の強豪校だ。無論、柔道の。
「何のスカウトかまでは言うまでもないだろうが……」
中年の男は浅黒い顔から白い歯を覗かせながら、訓の手を取った。
「柔道部の監督の知日将(チヒ ショウ)だ。よろしく、乙古くん。中総体は見てたよ。惜しかったね」
「いえ、力不足でした。世の中には上手な人も沢山いるんだなぁって、勉強になりました」
実際、訓が個人戦で当たった相手は技巧派で知られた選手だった。接戦に持ち込んだものの、その技術の差が明暗を分けたのだ。
しかし、当の訓に勝った選手も次の試合で負けてるのだから、自分なんてまだまだ……と謙遜する訓に、
その敗北こそ訓との試合で疲労したからですよと、初老のスカウトは中々に人を乗せるのが上手い。
「私の所にくれば、来年頃にはもっと伸びる。どうだろう?一緒に……柔道しないかい?」
つまりは、今の訓の強さもさることながら、素材としての優秀さも評価してとのコトらしい。
それから二、三、柔道のコトを知日が訓に訪ねた。
「私共の高校は施設も充実しています。それに高いレベルの部員同士、切磋琢磨できることが何よりも大きいでしょう」
初老のスカウトの方が高校のパンフレットを出しながら説明した。
パンフレットの中の写真には立派な柔道場と、トレーニングの機械が載せられている。
更には進学の話や就職の話、学費免除の話など訓とその母に向けて多方面に説得をし始めた。
81すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 20:01:27 ID:t8VQ68rF
「まあ、今すぐにとは言いませんが、よく御相談してお決めください。先ほどお渡しした名刺に連絡先が書いてありますから」
そういって頭を下げて帰った二人を見送った後、イの一番に母親は言った。
「母さんはどっちでもいいからね。お父さんも同じだと思うわ」
「普通、初めての子の進学って親はもっと関心を持たない?」
「アンタは手間がかからない子だしね」
ティーカップを片付けながら、母親は言った。
「そういう子供に限って犯罪おこすんだぞ?」
「大丈夫よ。アンタには一流ちゃんも由羽くんもいるんだから」
我が親ながら出来た親だ……なんて死んでも思うかと心の中で叫びつつ、訓は自分の部屋に入った。






夜十二時。息抜きにTVのバラエティを見て一時間勉強。一息ついて一流は勉強机に座りながらホットミルクを手に取った。
夜更かしは女の子には大敵。もう寝ようかと思ったが、暖かく甘いミルクが食道を流れていくと無償にホッとする。
なんと無しにボーっとしてると、訓のコトばかり考えてしまうのは分かってるのに、なんてお粗末。
一流は自分のデコを勉強に使っていたボールペンで叩いた。
(来年から一緒の高校か……)
世の中に絶対はないが、まず間違いないことはあるだろう。
今まで別々の学校で、まあそれなりに楽しいコトもあったが、やってみたいことも沢山あった。
(一緒に登校して、クラスも一緒……は都合が良すぎるかな?席が隣同士なんて理想なんだけどね)
今のブレザーの制服からセーラー服を着た自分を想像しながら、ホットミルクを口に含む。
甘美な口当たりに頬が弛んだ。
(ワザと教科書忘れて訓と一緒に見るとかいいかも。もちろんお昼は愛妻お弁当を一緒に食べるってね)
セーラー服の一流が箸を学生服の訓の口に入れている。所謂“あ〜んだ”。言うまでもないが彼女の妄想である。
「……由羽くん、邪魔したらコロスね?」
そうだ、もれなく訓の親友である由羽もついてくる。間違いなく一緒にいる。二人きりではない。
頭の良い一流は、その妄想ですら自分に都合がよい状態ではなく、リアルだ。
「これは……排斥する必要性があるわね」
一野進由羽、君はよい友人だったが、親友の恋人がいけないのだよ……
「なんてね」
二人きりになれないのはマイナスだが、由羽の存在は訓にとって多いにプラスなのだから
訓を立てる一流としては歓迎すべき人である。それに一流にとっても、由羽は友人としても好ましい人間であることは確かだ。
(それから……訓は高校でも柔道続けるんだろうな。マネージャーとか募集してるかな?してなくても作るけどね。
 そうしたら、そうしたら、訓と一緒に帰って、訓とお茶したり、買い物したり……エッチだって……ね)
手に持ったボールペンが、下着越しに陰部を撫で回してるのを一流は気づいてるだろうか?
顔は上気し、溜息が溢れる様は非道く色っぽい。
「……ん」
一番敏感な部分をプラスチックの蓋が突く。一流は目を開けて、己の下着に広がった染みを見つめた。
「…ぁ…………駄目だな……私って……」
一流の太腿の肉は薄く、スラリとした細い足は下着を脱ぐときは楽だった。
(ん……訓は、エッチなの嫌いかな?……違うよね、男の子だもん……)
一本…二本……一流の細い指は柔らかい肉壁に吸い込まれていく。
(でも、訓の性格からしてあんまりいいイメージ持ってないかも。ううん、でもちゃんと恋人なら、好き合ってるなら……きっと優しくしてくれる)
分泌される粘液は、一流の夢想に比例して溢れていく。
(…ふぁ……ん……私も色々勉強してるけど……口とか、胸とか……)
空いている手の指を口に含み舐めながら、顔を顰める。
(私から強請るのは……幻滅するか…な……ぁっ……でも……きっと、私は……我慢できないだろう…な…ぁ…)
更に深いところへ指を運ぼうとしたとき、机の上の携帯電話が着信音を鳴らした。
「ッ!!」
深夜な上、こんなことをしてた訳で、一流は濡れた手であるにもかかわらず慌てて携帯を開いた。
(まったく、誰かしらね?)
大声では言えないが、よいところだったのだ。それを邪魔されたのは気分が悪い
……が、画面に表示された相手が相手なので一流は出るしかない。
「もしもし、訓?」
82すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 20:03:28 ID:t8VQ68rF
自分の声は上擦ってないだろうかと、一流は心配しながら一流は息を整えた。
「あ、いや……悪いな、こんな時間に」
「ん……訓なら構わない」
「ありがと……いちる?なんか息が荒いみたいだけど?」
こと、彼女のコトにおいて訓が見逃す筈もなく……一流はまさに心臓が飛び出るほど驚いた。
「そ、そう?」
一流が言い淀むなんて珍しい……と電話の訓は怪訝な顔をしてるであろうと、一流には容易に想像出来た。
ただ、何か向こうがお願いがあるみたいなので、力関係はこっちが上だと、一流は冷静に対処することにした。
「なんの用かしらね?」
「ん……いや……その……あ〜…明日日曜日だろ?学校、無いよな」
「うん」
一流にとっては一週間の内で最も憂鬱な日だ。訓に逢えないから。
「うん……だからさ……えっと……………………」
「訓?」
「あ…の…さ…ひ、暇か?時間空いてるか?」
後半早口になったが、一流は訓の言わんとしてるコトを理解した。
そして即答した。
「うん!明日デートしよう!!」
ハッキリ言って一流は浮かれていた。訓から誘われたという事実に。
そして後悔した。もっと言葉を選ぶべきだったのだと。
「ち、違う……!あ、遊ぶだけだ。友達同士で。そ、そうだ……由羽とか、麗子とかも呼ぶつもりだし」
どう考えても今思いついたコトを慌てて口にする訓。
この電話の後、二人とも落ち込んだのは言うまでもない。
「……OTL」
「……orz」



目覚ましのアラームで訓は目を覚ました。訓の自室は一見殺風景だ。
だが、恐ろしい程収納にこだわり、僅かな隙間にもボックス等を詰めた整理整頓された部屋が彼の性格を端的に表している。
「ん〜……」
枕に顔を沈めながら、身体は起きようと布団を蹴り除けた。
寒い。
布団が恋しいのを我慢し、カーテンを開ける。日差しが訓を責め立てる。
「ぐ…ぁ……!!」
腹筋を総動員し、起きあがる・
「ぐうぅぅ……!!」
勝利した!勝利したぞ!!
「睡魔よ…Godspeed」
朝は少しテンションがオカシイ乙古訓であった。
(今日はいちると……他二名と遊びに行くんだったな)
伴田千紗も誘ったのだが、断られた。彼女はギリギリまで一高志望で粘って、駄目そうなら1ランク下げるつもりだ。
その学力は、訓や一流からすれば心とも無いレベルだった。そんなわけで必死に勉強中だ。
「どの服着ていこうか……」
考えながらドアを開けた。
一流の前だし多少は格好をつけてもいいのだが、しかし“友達と遊びに行く”のだから普段の格好でないと矛盾してる気もする。
悩める訓は取り敢えず炭水化物その他を摂取しようとした。
「あ、おはよう」
ドアを開けると、リビングには母親と朝食を食べる一流がいた。
「え……」
「来ちゃった」
訓は寝癖を直しながら状況確認。
「来たのか?」
「早すぎる分には構わないかなってね」
一流はその艶やかな自慢の髪をポニーテールに結って、品のいいブラウスに七分丈のジーパンを穿いている。
首には訓が買った(買わされたとは訓の談だが)月をイメージしたネックレスを付け、腕にはこれまた訓が買った腕時計を着けている。
訓の位置からは見えないが左足首にはアンクレットを着けている。これは一流が訓と私服で会うときは必ずだ。
訓は気づいてないだろうが。恋人の所有物である事を暗喩するものだと知ったらこの男、卒倒するだろう。
(ん……いちるの格好に合わせていけばいいか)
当の本人は呑気なものである。
83すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 20:04:55 ID:t8VQ68rF
「今日の朝食はねー、いちるちゃんがつくってくれたのよー。愛されてるわね、訓」
「母さ…」
「料理は一に愛情、二に時間、三、四が無くて五に技術ですから!」
母と一流の会話に訓は入る余地がない。女同士の話は男同士のそれの1.5倍なのだ。
(……二に時間って、何時に来たんだ)
相当時間を煮込んだであろう肉は口の中で蕩けていった。
味は言うまでもなく絶品である。
「………」
「訓、アンタ駄目。すっごい駄目」
舌鼓を打ってる訓に、母親の駄目出しが飛ぶ。
「“美味しいよ”の一言も言えないの?いちるちゃんが折角作ってくれたのに……」
「いちるが朝食つくって来て、ウチの母親が楽できました、ありがとう」
訓も一応反抗期であった。
「アンタね、今からそんなんでどうすんのよ。お父さんだってね、新婚の頃は美味しい美味しいってね……今じゃ何にも言わないけど…ッ!!」
「待て、母よ。それと俺の白米に塩を振りかけるのとどんな因果関係があるのだ。母よ、俺の血圧を光る雲を突き抜けFlyawayしたいのか」
「寝起きの訓は面白いね」
ちなみに乙古家の朝食は早いモノ勝ちだ。朝起きてこなければ残ったおかずしか食べられない。最悪白米オンリーだ。
(故に……親父にはいちるの料理を一欠片でも食わせん!!)
乙古家家長は爆睡中だった。
「ハグハグ……もぐもぐ……モキュモキュ……ゴクゴク……ぱくぱく……」
「えっと……訓?そんなに急いで食べなくても……」
もはや訓の右腕は神の手だった。遺跡発掘の自作自演とかW杯メキシコ大会とか、そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ
あまりの速さに腕が三本に見える!酢豚を摘んでいた筈の箸はいつの間にか餡かけ揚げ豆腐を切っていた。
(目標補足。ブリの照り焼きまで距離30……!!)
「甘いわね!!」
「ふぁがずん!?(訳:かあさん!?」
ブリの照り焼きに訓の箸が残り3pの所で、母親の箸に奪われた。
「義娘の手料理、私が食べずに誰が食べるというか!!」
危うく訓は吹き出しそうになり、こらえた
「ケホ…ッ!ケホ…ッ!!」
「大丈夫、訓!!」
甲斐甲斐しく一流が差し出すウーロン茶を飲み干して、訓は叫んだ。
「誰が義娘って!」
動揺して文法がおかしい。
「あら?いちるちゃんは私にとって娘だと思ってるわよ」
「違う!今、娘の字が義理の娘になってた!!8行ほど前!!」
「私も訓のお母さんのコトは本当のお義母さんだと思ってます」
またも無視される♂。女男女で嫐ると書く。



「……御馳走様」
箸を置いた訓は実に満腹。正面に座る一流のにこにこした表情に、訓は頬を掻きながら言った。
「おいしかった…ぜ」
「50点」
母の採点は厳しい。
「ちなみに「美味しかったぜ」の後に「愛してるぜ」で100点ね」
「おい!」
「お義母さん、私、訓がお義母さんに言われなくても自然と言葉に出てしまう位、料理を上手くなってみせますね!」
ガッツポーズをする一流。この母の前だと何故かノリがいい……
「っていうかまた義理の字で言った。二回も言った」
訓の目はすっかり覚めていた。
(心臓に悪い朝だ……)
84すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 20:06:24 ID:t8VQ68rF



そんな朝のお陰で、集合場所のバス停前に現れた訓は非道くやつれていた。
「……大丈夫か、訓」
「いや、……ちょっと朝から疲れただけだ」
派手なアロハシャツを着た由羽が訓の様子を見て思わず聞いてしまった程度には。
「あ、麗子可愛い」
「でしょ?」
炎出麗子の着ているチャイナ服を模したシャツを見てはしゃいでる辺りは二人とも普通の女子中学生だ。
「……訓、俺、思うんだけどな」
「なんだ?」
そんな二人を見て由羽は力説した。
「果たして下がズボンのチャイナ服を、スリットから生足が見えないチャイナ服を、チャイナ服と呼んでイイのかと!!」
そう。麗子のチャイナ服は上半身のみ。下は普通にズボンを穿いてるのだ。
「……バス来たぞー」
「待て、お前は男のフェイヴァリットドリームをスルーするのかぁぁ!!」
「えぇい!鬱陶しい!!大体チャイナ服は元から下にズボンを穿くものだろーが!!」
暗転。
「な、なんだってぇー!?う、嘘だと言ってよ…バーニィ……」
それも起源を辿れば「Say it ain't so」ではないか。
「チャイナ服を素足に着て深いスリットを入れたのは娼婦だからな。まあ、お前が麗子を娼婦扱いするなら構わないけどな」
「お前……俺にコンクリ抱いて溺死しろと?」
マングースに睨まれた蛇のようになった由羽の横を一流と麗子が横切る。
先に座っていた訓の隣に一流が腰を下ろす。
「レディーファーストは?」
「いや…すまん」
密着する一流の身体に頬を染めながら、訓は謝った。いつも密着してるとはいえ、私服の一流は新鮮だった。
一流は咎めたものの、自分が先に座っていたら訓は隣には座ろうとはしないだろうと思って先に行かせたのだった。
「ところで、訓」
「なんだよ」
一流はイタズラを仕掛けた子供が、大人がそれにひっかかるのを待ってるような目をしていた。
「スリットの深いチャイナ服が娼婦なら、キャミソールもコルセットも駄目って事だね」
「……聞いていた?」
「聞こえてた」
その笑顔だけを見れば百人が百人、天使の笑顔と言うだろう。訓にとっては小悪魔だが。
「別に駄目とは言ってない。そういう背景で成立しただけであって、今は普通にファッションだ」
「じゃあ今度着ようかな?」
それは訓にしか聞こえないように耳元で囁いた言葉だった。
訓は思わず想像してしまった。実に艶かましい。一流の生暖かい吐息が欲情を一層誘う。
「な、何言ってるんだ……」
だから訓は慌てた。窓を向いて一流の姿を視界から消した。見慣れた町の風景が流れていく。
その無機質な光景は何か新しい情報で脳を塗り替えるには乏しすぎた。
(チャイナ服か……アレって下着のラインが出るからパンツ穿かな……何考えてるんだ、俺はぁ!!)
無駄な知識量が訓を苦しめていた。
「おい、モンクみたいな顔なってるぞ、訓」
後ろの席に座っていた由羽が頭に手刀を加えた。
「痛っ!?由羽、今ちょっと舌噛んだぞ!」
「折角遊びにいくのに眉間に皺寄せてるからでしょ」
由羽の隣に座る麗子が笑う。大人びいた顔立ちの彼女も笑うと年相応に見えた。
「ホントは一流と二人がよかったんでしょ?」
訓の耳元に顔を寄せて、麗子は唇を上げた。
「そ、そんなことはない」
「じゃ、Wデートのつもりとか?」
「あのな……!」
ムキになってる時点でそうですと言ってるようなものだが。
そんな訓の口元を麗子は抑えた。
「むが!?」
「まあ、なるべく邪魔者は消えるようにするから、ね?」
八重歯を覗かせながら、麗子は子供を宥めるように言った。
85すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 20:08:20 ID:t8VQ68rF



訓達は郊外にある動物園と遊園地の複合施設で足を下ろした。
山間を切り開いたこの施設は、近場でいけるとはいえ動物園としても遊園地としても中途半端ではある。
まあ日帰りで気軽にこれるとすればそれなりに親子連れや恋人達も歩いていて大盛況とまでは言わないが
寂れてると言うほどでもない。まして今日は休日だった。
「お〜カバがメロン丸かじりだぜ…………俺だってメロン食いてーよ……」
「何一人で落ち込んでるんだ、由羽」
「メロンぐらいウチに来たらいくらでも食べさせてあげるわよ」
「餌付けか……いい作戦だね、麗子」
こういう時は騒ぎ立てる由羽がいると場が明るくなってよい。
「…………」
「訓?」
「ん?……あ、いや、何か買って来ようか?」
キリンの柵の反対側にファーストフード店を見つけた訓は全員に聞いた。
丁度昼食の時間だが、時間帯だけにどこも混んでるし、食べるなら動物園と遊園地の間にあるファミレスがいい。
それまでに食べ歩きして少し小腹を満たしておいた方がいいと考えていたのだ。
「じゃ、俺フランクフルト!」
「由羽、普通こういうのは男の仕事……」
「いいよ、訓。私も一緒にいくから」
一流は麗子のリクエストも聞くと、訓の腕を取って店に向かった。
「いちる、別に走らなくても……」
「……訓、楽しい?」
「楽しいよ?」
店員に注文しながら、訓は答えた。
「……本当言うとな、ちょっと聞いて欲しいことあって」
一流に嘘は付けない……訓は降参と言わんばかりに眉を上げた。
麗子のクレープと由羽のフランクフルトを両手に受け取る一流は頷いた。
「だと思った。いいよ。相談料は白クマのヌイグルミね」
「入り口の売店の?こういうところの、高いだろ」
自分のフローズンメロンソーダと一流のタイ焼きをお金と交換しながら、訓は呟いた。
「ここで買うからいいんだね。だって思い出も一緒に買ってるから」
「そっか。そういうのは分かるな」
ふと一陣の風が吹いた。今日は天気も良く風もないから暖かいが時期が時期だけに日が落ちると寒い。
全員薄着だから、なるべく夕方には帰れるといいと訓は思った。



遊園地で観覧車は定番と言えば定番で、むしろコレがあるからココはかろうじて遊園地と言えるぐらいだ。
何せここのジェットコースターは迫力が足りない。子供はいいだろうが、中学生の訓達が叫ぶ程のものではないのだ。
ミラーハウスでぶつけた頭を撫でながら、由羽はその観覧車に乗って今日は帰ろうかと提案した。
日も落ちて、観覧車から見える風景はきっと一面朱色だろう。
「由羽……」
四人で観覧車を待つ列に並んでる中、訓は由羽の腕を引っ張った。
「あの…さ…」
一流と麗子に聞かれないように気を配りながら、訓は口を開く。
「お前と麗子は……二人で乗ったらどうだ?」
この観覧車、四人で乗れないことはない。ただ、訓は一流と二人っきりになりたかった。
「へぇ〜…」
意地の悪い顔でニヤける由羽に、訓も馬鹿らしくなり
「ああ、そうだよ、俺はいちると二人で乗りたいんだ」
「ほ、成長したな、訓」
「黙れ」
耳まで真っ赤にしてはひそひそ話も意味がない。
由羽は呆れるたが、まあ親鳥が巣立つ雛を見る気持ちもあったり……
「レ〜コちゃん!」
由羽は後ろから麗子に抱きついた。そういう行為ができる由羽を訓は羨ましかったりもする。
86すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 20:10:52 ID:t8VQ68rF
「何?由羽」
「二人っきりで乗ろうぜ?」
麗子も判った事で、一流を見てから承諾した。
「じゃ、お先……」
「一流……密室だからね、頑張って!」
観覧車に乗って上昇していく二人からは、訓どころか一流までもが顔を赤くしてるのが見えた。



「あの二人、上手くいくといいね」
麗子は下界を眺めた。二人も観覧車に乗り込んだようだ。
「レコちゃんが言うと色々重いな」
「一年前の事は言わないでよ……なんて、言う資格ないか」
向かい合って座っている二人の間には少しの距離がある。
「そうじゃなくて……ま、ちゃんと失恋してるみたいだからいいけどな」
麗子は訓が好きだった……その事を知ってるのは由羽だけだろう。
「それも古い話……」
「さいですか」
麗子は立ち上がると由羽の隣に座った。二人の距離は縮まる。
きっと今頃、訓と一流も並んで座ってるだろう。
「ね?どうして由羽はそんなに二人が大事なの?」
麗子の唇にひかれたルージュが夕焼けに混じる。
「もう何回も話したろ?」
柔らかに抑えられた太陽の光は、それでも直視するには眩しすぎた。
「また聞かせてよ、初めてあった時の話」
「だから……別につまんねーっての。
 ……俺はベンキョーは出来ないけど、それ以外ならちょっと練習するだけでコツが掴めて人並み以上に出来た。これは本当。
 そんな訳で、努力とか忍耐とか苦手だった。そんな俺を親父達は見かねて、矯正の為に武道をやらせたのだろうな。
 小四の時に始めた柔道も、一年経つ頃にはクラブで俺に敵う奴は居なくなっていた。
 人を投げ飛ばすのは中々爽快ではあったんだが、それも飽きてきて辞めようかと思ったときに訓に会ったのさ」
煙草を吸えたら、多分自分は一服しながら話してるんだろうななんて、由羽は思いながら続けた。
「女連れで道場に来るヤツ。ま、その女ってのは一流ちゃんなんだけど……その女の前で情けない目に合わせてやろうと思って稽古を申し込んだ。
 訓は簡単に投げ飛ばされた。当たり前だな、初心者なんだし。だけど、あの馬鹿はしつこいぐらい俺に挑んできた。
 俺は面白がって、訓に当時覚えてた技全部使ってやった。
 大抵の奴は二、三度、叩きのめしてやればシッポを振って逃げ出すのに、何度もかかってくる奴が珍しかったのもある。
 これだけ意地の張った奴は見たことが無かった。正直、俺と真逆すぎて同じ人間に思えなかったぜ。
 技が三周目に入った頃、いい加減飽きてきた俺は、もうやめねぇって言ったんだが、アイツはヤダの二言で却下した」
由羽の唇が気づくと上がっていた。ああ、そんな頃からアイツは頑固なんだと、遂に声をあげて笑った。
「アイツに言ってやったんだ。お前、こんだけやられてどっちが強いかわかんねぇ訳?ってな。
 そしたらあの馬鹿は肯定しやがった。訳わかんなかったよ。自分の方が弱いって分かってて挑んでくるなんてな。
 むかついて一本背負いをしようとしたところで――踏みとどまれた。ま、背負えないなら、別の技で崩せばいいだけのコト。
 慣れてないアイツはは対応しきれずにあっさり倒れた。それでも言うんだ。もう一本!ってな。
 しつけーよ!!って言いながら、俺はそいつと組んでいた。その後足払いで転がしてやったが、まだ立つんだな。
 んで、いい加減頑張りすぎだろって言ったら、後ろの一流ちゃんを指したの。知ってる?一流ちゃんって活発なんだぜ?
 私服もズボンが多いし、昔は男の子に混じって遊んでたらしい。ついでに負けず嫌いなの。
 ……そうそう!バトミントンの試合とか負けるとスゲー不機嫌なのな。アレ、訓が居ないと宥まんないんだぜ。
 その一流ちゃんが訓を投げ飛ばす度に立ち上がろうとするの。別に一流ちゃんは入門しに来たんじゃなくて、訓の付き添いで来たのに。
 まあそれでも男と女だからな。体格や筋肉の違いも出てくる頃だし、俺に勝てるわけないっての」
由羽は一息ついて、外を見た。もう四分の一は回ったか。それでも頂上まではまだ遠い。
「そしたら訓は、“だから負けられないんだ”ってさ。当時の俺はガキだから確かに手加減しないし、ヘタしたら怪我させるわな。
 一瞬、頭が真っ白になった。コイツ、何考えてるの?と。そうそう、そんぐらいの時からあの二人はそうなのさ。
 ま、あんまりにも馬鹿げた言葉にいっそ清々しさすら感じてしまっていたけどさ。
 だからか、俺は気がつくとソイツに背負われていた。
 別にそこから抜けることも、受け身を取ることもできたけど、あえてソイツに一本取らせた。だって俺が負けないと終わんないし。
87すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 20:12:24 ID:t8VQ68rF
 でもアイツはそれはそれでムカついたらしい。俺は思ったね、”コイツ面白れぇ”って。
 俺は柔道を続けようと思った。こんなに面白い奴を特等席で見られるんだから悪くないってな……お終い」
由羽はその時は判らなかったが、今ならば判る。由羽にとって訓は羨ましい。
訓は一流の為ならマグマの中にだって飛び込むし、シベリアの極寒に真っ裸で突っ込むことも出来るだろう。
「あそこまで一途になれるのは羨ましいな。俺には無理だね」
「無理ねぇ、それは。一流みたいな子だってそう簡単にいないしね。でもいいじゃない、由羽は一野進由羽でしょ?」
「レコちゃん?」
由羽の鍛えられた太腿に、麗子の細い指が重なった。
「一野進由羽は、もっと砕けてサバサバした人だと思ってたけど?」
「冷たいんだ。あんまり悩まずに物事を決めれる」
「由羽らしくていいじゃない?由羽が私の隣で割り切った判断してくれたから、私は救われたわ。悩んでる時も由羽がスグにアドバイスをくれた」
由羽の手は麗子の腰に添えられていた。
「訓と違って、身が固く無いね」
「軽薄なだけさ。アドバイスだって所詮は他人事だから言えることだって……ん」
由羽と麗子の唇が重なる。
お互いの舌を絡ませ合う、濃厚なキス。
初めてではない。成り行きでいつの間にかこんな事になっていた。
(まあ、一年近く面倒見てれば…な……)
「……やっぱ軽薄だよね。俺、レコちゃん可愛いと思うけど、恋まではしてないと思う」
「かもね。でも、最後までしないのは良心?」
麗子は由羽の男根をズボンの上からなぞった。
「さぁ…?手を出しちゃうと、レコちゃんは怖いかなって?」
「人を地雷女扱いして…」
血液が溜まって硬度を増した由羽の男根は、ズボンの下で窮屈だと主張していた。
「微妙な関係……心地よくはあるけど、ね」
「まぁ…ね」
「私のココ、きっと気持ちいいと思うけどなぁ……」
ズボンのファスナーを下ろしながら、麗子は由羽の耳朶を噛んだ。
「レコちゃんの口も十分気持ちいいし?」
「今日は駄目。口でしたら由羽だけ気持ちいいじゃない。ちゃんとお互いに手で、ね?」
由羽の一物を麗子は撫でながら、自分の秘所に由羽の手をあてがった。
観覧車は丁度、頂点に至っていた。








「……なんで隣に座る?」
「訓が暖かいから」
訓に買って貰った白クマのヌイグルミを抱きながら、一流は観覧車の中で息を吸った。
密室の中で訓と同じ空気を吸っていると言うのは、彼女にとって幸福だった。
「それに、目が合うと話しづらかったりするでしょ?」
「なるほど……って、何か上手く言いくるめられたような気がするな」
窓から見える風景は段々ミニチュアのように小さく、そして命を感じられなく見えていく。
それでも夕日の柔らかな赤が、そこに命の脈動を伝えているようだった。
「こうやって……いちると同じものを見れるって、凄く幸福なんだと思う」
厳しい顔つきの訓の横顔は、普段見せないような優しさに包まれていた。
「……ッ!」
「ん?どうした?」
「ずるいね、訓。そんな顔、そんな台詞、私……堪らないよ」
訓をいくら誘ったって、訓をいくらからかったって、それが全部本気でも、訓が自然に垣間見せるそれに敵わない。
一流はどうしようもなく、乙古訓に惚れているのだ。
「…………家にさ、東開大佐上高校の人が来たんだ。柔道、強い高校でさ」
「迷ってるんだ」
「うん。自分でも驚いてる。俺、こんなに柔道が好きだったんだなって。手段だった筈なのに、いつの間にか目的になってたんだ」
訓にとって、柔道は一流に相応しい男になるための修練の場だった。だからそこまで本気になる必要は無かったのだ。
少なくとも日本の中学生の中では16番程度には強い。だから成果は十分だ。それ以上を求める理由は訓には……無い。
88すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 20:14:35 ID:t8VQ68rF
しかし……
「全国大会で負けて、悔しいと思った。もっと強くなりたいとも思った。一高も強いけどさ、
 アッチはIHとか何回も優勝してる高校なんだ。強くなれると思う。でも、そうなるとずっと柔道漬けだし、
 この町とも……いちるとも離れなきゃならなくなる。得られるものと失うものを比べて、どっちを選ぶべきか……」
文武両道を目指す訓にしてみれば、柔道だけ強くても意味がない。
そして高校を受かったら……一流に告白しようとしていた訓にとって、遠距離恋愛は心苦しかった。
「…………」
「…………」
観覧車は高く、高く、登っていた。
二人の家は見えるだろうか?学校は?一緒に遊んだ場所は?
全部、二人の視界の中に見える。思い出が詰まっていた、故郷だ。
(自分といちるが出会えた、奇跡の場所だ……)
窓ガラスに映る画を一匹の鳶が抜けていった。
しかしその鳴き声も、この小さな箱の中では聞こえず、静寂と二人の鼓動だけがあった。
「いくよ」
「いちる?」
「私は……訓と同じ高校にいく」
それはとても自然に出てきた言葉だった。
なんの逡巡も、緊張も無く、当たり前のことだと言うように一流は言った。
「訓がどこにいても……私は隣にいるから」
「もし、向こうを選んだら、一人暮らしになるんだぞ?」
「うん。親は説得してみせる。いいね。知らない土地で知らない人達の中で、訓と二人っきり
 それもとっても魅力的だね。きっと私、歯止めがきかなくなっちゃうな。あ、でも訓に向こうにいけって言ってるんじゃないよ?」
「わかってる。人に言われた答えを選んだって意味がない。俺はただ、いちるに聞いて欲しかっただけだ」
訓は一流の膝に置かれたヌイグルミを撫でた。
観覧車はゆっくりと地上に降りていった。












ここで一旦切ります。また今日中に続きを投下します
89名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 20:28:06 ID:pPfKi4e0
グググググググググGJ!!!!
90すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:29:18 ID:t8VQ68rF
ハイハイ、ちょっと桃色台風が通りますよ・・・

<続き>

ずっと訓と一流は手を繋いでいた。
バスを降りて、一緒の道を歩いて、家の前で別れた後、手が寂しいことに訓は初めて気づいた。
秋風の寒さが身に染みる。早く家の中に入ろうと駆け足になり始めた時だった。
「あれ?訓ちゃんだ〜〜」
「先輩?」
正直、今相手にするには疲れる人と会ってしまった……と訓は思った。
「聞いたよ〜全国大会いったんだって?私も部活無ければ応援いきたかったなぁ〜」
「……それと俺に抱きつく事と、どんな因果関係が?」
「またぁ、そんな難しいこと言わないの〜うりうり〜」
訓の頬を先輩――亜根脇迩迂は拳で捻った。しかし、彼女の手よりも胸の方が揺れてるのはどうにかならないものか。
「いいですよ、負けたんだし。お金かかる」
「ん〜私タダで旅行するの得意だよ〜」
「……どうやって」
「ヒッチハイク。イエ〜イ!」
迩迂は道路に向かって身体を屈めながら親指を突き立てて出した。
しっかりとその巨乳……いや、爆乳がアピールされてる。本人に自覚があるかどうかは知らないが。
「先輩、危機管理能力をもっと身につけてください……」
「また難しいこと言う〜」
再び頬を狙う迩迂の手を、先んじて訓は払った。
「つッ!?」
「先輩?」
そんなに強くは払ってない筈だ。だが、迩迂は手首の辺りを抑えていた。目も少し潤んでいる。
「あ、気にしなくてイイよ。部活でちょっと痛めちゃっただけだからさ」
「…………」
訓は黙って迩迂の手首を持った。
「?」
「……えい」
「!?!いたい〜〜〜!!訓ちゃん、痛いよぉ〜〜〜」
手首を少し曲げると、迩迂は身体と胸を振るわせて悶えた。
「ちょっと痛めた感じじゃないと思うんですけど?」
「え〜大丈夫だよ〜唾つければ治るっていうもん」
「それは外傷でしょうが!!」
頭は悪くない……というか一高に通ってるぐらいなのに、どうしてこうもヌケているんだろうと、訓は頭を抱えた。
「ホラ、先輩、今から病院行きますよ」
今から行ってもギリギリ開いてるだろう。
「えぇ〜注射いやだ〜〜」
「打ちませんから!!」
むずがる迩迂の腕をとって訓は病院へと向かった。
「へぇ〜訓ちゃんって手が大きいねぇ〜」
(人の気も知らないで!)
整骨院には自分も何度か世話になっているので迷うことはない。
住宅地の中の神社の裏側にある小さな病院だ。



「三日間、激しい運動禁止……ホラ、結構な怪我だったじゃないか」
「あはは……訓ちゃんはしっかりしてるなぁ」
「先輩がしっかりしてないだけだと思うけど……」
薬局で軟膏を受け取った訓は包帯を巻いた手首をプラプラさせている迩迂をしかった。
「ひどいなぁ〜」
「先輩も16歳でしょ。昔の人なら成人ですよ、成人」
「まあまあ、私は訓ちゃんをアテにしてるから〜」
(駄目だコイツ……はやくなんとかしないと……)
訓には新世界の神の声が聞こえた気がした。
「だって、春からまた同じ学校でしょ?」
「…………」
91すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:32:25 ID:t8VQ68rF
「一高受験するんでしょ?」
「…………」
訓が沈黙したのを見て、迩迂は姿勢を正す。
「分かった。お姉ちゃん、しっかりするね!!」
ビシっと手を伸ばし、敬礼をする……痛めた手首の方で。
「痛い〜〜〜〜」
「はぁぁ〜……ムガッ!?」
溜息をつく訓の頬が引っ張られる。
迩迂の指が訓の頬を伸ばして笑顔をつくった。
「もっと笑わないと駄目。眉間の皺、深くなってるぞ〜」
「…………」
「もっと我が儘でいいんだよ、訓ちゃんは」
「我が儘ですよ。少なくとも、一人女の子を俺の我が儘で待たせてる」
眉間の皺を更に深くしようとした訓の眉を、迩迂は引っ張る。
よく考えれば痛めた手首に力を入れてるのだから、辛い筈だ。
だが、そんな素振りも見せず、お姉さんの顔で迩迂は訓に示した。
「じゃ、我が儘じゃなくて、素直になりなさい」
迩迂は姉の顔で訓に言った。





教室掃除をしていた由羽を捕まえて、隣のクラスの人間が訊いてきた。
「なあ、乙古が柔道で県外の高校にいくって本当か?」
由羽にこの質問をしてきたのはこれが今日で三度目だった。
「……知るか。直接本人に聞けよ」
考えれば当然というか、東開大佐上のスカウトは学校の方にも話を通していた。
教員達も生徒の進学に関わる個人情報なので大っぴらには生徒に話してはいないが、
そこは人の口に戸は立てられぬとでもいうか、三日もすれば大抵の連中は噂を耳に挟んでいた。
それで真偽の確認をしてくる野次馬根性とデリカシー欠如を併せ持ったヤツが何人かいたのも自然の成り行き。
「ったく」
訓に柔道の特待生話が来たのは事実だが、まだ“いく”とは言っていない。
勝手に騒ぎ立てる周囲の連中が由羽にとっては腹立たしかった。
「悪い、係の仕事で遅くなった」
「おう、机運べよ、訓」
掃除に合流した訓に、少し苛立ちを含んだ声を向けてしまい、由羽は少し自己嫌悪した。



「由羽、俺の進学の事で苛ついてるのか?」
掃除が終わって、係の仕事をしてた為に帰りの支度が出来てなかった訓を待っている由羽に訓が話しかけた。
「ん?」
「何で訓にだけスカウトが来て、俺にはこねーんだ!!とか?」
実際、訓はそう思っている。由羽の方が才能は上だと。ただ個人戦の代表になれるのは一人だけで運良く自分が勝っただけだと。
団体での活躍では埋もれてしまって、スカウトは気づかなかったのだろう。その不明さを叱ってやりたくもある。
「あのなぁ、それはそんなに心狭くねーよ」
「じゃあ、俺から聞けなかったこととか?相談しなくて、悪かった」
「相談ならしたんだろ?一流ちゃんに」
「まあ。あ、そうだ、日曜日に動物園にいったときの写真だってさ。プリントアウトしたい写真、あったらいってくれって」
訓は一流の持っていたデジカメを由羽に渡した。
「ん……写真あってもアルバムに入れるほどマメじゃないからな〜俺」
「そうか?この遠近法を使った、“ゾウの鼻から飛び出す一野進由羽”とか中々よく撮れてるぞ」
「相変わらず無駄な所にも才能持ってるな、一流ちゃん……」
「この麗子が兎とじゃれ合ってる写真とかは?いい笑顔じゃないか」
「なんか猟奇的なもんを感じるのは俺だけか?耳掴んでるし」
「最後の集合写真、由羽疲れてないか?」
「……まあ、タンパク質搾り取られたからな」
「?」
「気にするな。お前は未だH2Oで言うところのシンデレラなのさ」
92すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:34:24 ID:t8VQ68rF
「はぁ?」
「だから気にすんなって」
由羽はデジカメの電源を切って訓に返した。
「部活、行こうぜ?」
「OBの俺達が行ったって迷惑だろ?」
「また、そんな事いう……ん〜じゃあ警察道場は?」
警察道場はクラブの時も、部活の時も何度も世話になっている。
それに今の時間なら人も居ないだろう。
「ウズウズしてるだろ。俺もだけどな。気分転換、気分転換」
「気分転換なら、日曜遊びにいったじゃないか」
「じゃ、訓、俺に相談しろ。悩んでるんだろ?で、柔道するのがオレ流のアドバイスなんだ」
強引だが、由羽の好意を感じないでもない。訓は諦めの溜息をついて道場に足を運ぶことにした。
警察道場までは歩いて20分ほどかかる。英単語を聞きながらでも行こうかと訓は片方の耳にイヤホンをさした。


顔なじみの警官に許可を貰って、柔道場に二人は入った。
先に何人かの警官も来てるようだった。
「あ、乙古と一野進じゃないか」
「当馬?なんでここにいるんだ」
柔道着姿の当馬を見とめて、由羽が素っ頓狂な声をあげる。
「何でって…まあ、親父の職場だし。使わせて貰ってる。お前達も稽古に?」
「補導されて道場にくるヤツはいないだろう」
「そりゃそうだ」
珍しく気の利いた事を訓が言うと、由羽は声を張り上げて提案した。
「よし!今ここで県内最強決定戦をやろうぜ」
「はぁ?」
「県予選じゃ、訓にニラ湯を飲まされたからな」
「煮え湯だ、煮え湯」
訓が訂正するのを尻目に由羽は着替え始める。
「そこの乙古は俺と一野進を倒して県代表になったんだ、決定もなにも三人の中じゃ乙古が一番強いって事だ」
「当馬、あんまり人をおだてるな」
「おだてもするさ、全国ベスト16」
「だから、そのベスト16を倒せば俺達ベスト8じゃん」
由羽は奥歯まで見えるほど二カッと笑い、訓の腕を取った。
「ぬぁっ!?」
畳にしたたかに背を打ち付けられた音が道場にこだました。
「何するんだ、由羽!」
「今日はぶっ倒れるまでやろうぜ。明日、創立記念日で休みだしな」
訓が見上げた由羽の顔は実に生き生きとしていた。
「初めて道場でやり合ったときみたいにな」
「……あの時みたいに一方的には負けないぞ」
「そりゃいい。夢中になれば、今だけは他の何にも考えないでいいだろ」
気がつくと笑っている。訓は友の気遣いがありがたかった。



「はぁー〜…はぁぁ……」
「ぜぇ、ぜっ…」
「ふひぃ〜〜〜」
四時間後、三つの屍が道場に打ち棄てられていた。
「お前ら、俺まで巻き込むな……明日学校あるんだぞ……ゼェ、ゼェ」
口の中に汗の塩味を感じながら、掠れた声を当馬は出した。
「本当に…ハァハァ……ぶっ倒れるまで、やるか…ぁ……」
訓ですら、泣き言を言ってる。
全力で組み合った。一方が負けるとすぐさま、空いてる一人が勝った方とやりあった。
それを二時間繰り返して、流石に体力の限界を感じた頃、勤務時間を終えた警官の御一行様が道場に到着、
みっちり二時間、三人は可愛がられたという訳だ。
「み、水、飲んでくる……」
「立ち上がるのか、訓。俺はもう動きたくねー……」
ふらふらと足下が覚束ないまま、道場の外に出て行く訓を由羽と当馬は見送るのが精一杯だった。
93すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:36:35 ID:t8VQ68rF
「基礎体力作りは欠かさないからな、アイツ……」
「後半は一野進の方が勝ってたな……やっぱお前達は強い」
「ハッ……俺は小狡いからな、上手な身体の使い方を知ってるんだ」
由羽は這って壁まで辿り着くと、壁を背に身体を休めた。
壁の冷たさが心地よい。
「乙古、東開大佐上にいくって?」
「……結構有名なのな。やれやれ、俺も全国じゃ無敗なんだけどな」
訓と由羽の学校は全国大会の団体戦二回戦目で由羽と訓以外の三人が負けて敗退している。
「後一人、お前達レベルの人間がいれば……な」
「そんな上手くはいかないさ」
「……俺がいるだろ」
未だ練習を続けてる警官達の声がやけに遠くに聞こえた。
「あんだって?」
「もし乙古が一高に入れば俺達三人で優勝旗をウチの県に持って帰る事だって……出来る」
冗談ではなく、真剣なのは当馬の目を見ればわかる。
「そりゃ、面白れぇ」
不可能じゃない気はするのは若さ故の無鉄砲だろうか。否、由羽は断じた
(俺はアイツが後ろに控えてると負ける気がしねぇ……)
「一野進、乙古を引き留めれないか?」
「…………冗談じゃねぇ」
それは低いが、熱した鉄のように熱い言葉だった。
当馬は知っている。この由羽は、一流が麗子に攫われた時と同じ。
普段は飄々としてる由羽が、真剣になる瞬間だった。
「アイツを引き留めれるのはこの世に一人だけだ」
言うまでもない、一流の事だ。
「思うに……訓の中には一流ちゃんがいるのさ」
「乙古の中に砂奥が?」
「……例えば、財布を落として困ってる人が居る。そいつを見たら訓は自分の財布をあげちまうのさ。それが知り合いでも赤の他人でもな。
 俺ゃ無理さね。知り合いでも金貸すのはためらう。当馬、お前が財布落として金は貸してやらない。千紗ちゃんやレコちゃんなら貸すけど」
由羽の例えに少し機嫌を悪くしながら、当馬は続きを促した。
「なんでそれが出来るかって、それは訓の中に一流ちゃんがいるのさ。その一流ちゃんは常に訓を見てる。だから訓は一流ちゃんの前で人として恥じた行動は出来ない。
 訓の武士道みたいなのは、その実、反対の恋愛主義で成立してるんだ。訓が一流ちゃんに惚れた時からな」
「本人が言ったのか?」
道場の天井を眺めながら、当馬は聞いた。
「いや。俺が五年もつきあってて感じたことさ。ま、それでだ……訓の中の一流ちゃんを越えて訓を動かせるのは、只一人だわな。
 その一人は絶対に訓の足枷になることを望まない。本物の一流ちゃんはな。
 だから結局、訓を動かせるのは訓だけなのさ。けど、訓はああいう性格だから例えお前でも、面と向かって引き留めれば悩む。
 ただな、これには障害があるんだ。俺は訓の自由意思を踏みにじることを望まない。だから俺が俺の意思で……」
「わかった、もう言わん。お前を敵にまわしたくない」
それは心底そう思う。今の由羽は一流の事がかかった時の訓に匹敵する威圧感を持っていた。
(ヤレヤレ、乙古の人徳だな、これは)
恋敵(になれる土俵にすら立ってないが)にこんな親友がいたのでは敵う筈がないと、当馬は溜息をついた。
「んにゃ、お前の考えは確かに面白いんで、賛成はしたいけどよ」
由羽はカラリと表情を変えて答えた。
当馬へのフォローではなく、心からそう思ってるようだった。
その切り替えの速さには、正直ゾッとすらもすると感じさせた。
94すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:38:17 ID:t8VQ68rF








『お疲れ様』
「来てたのか。東京まで、わざわざ」
『うん』
「負けちゃったよ」
『うん』
「悔しいな……」
『訓が泣いてるの、久しぶりに見たよ』
「格好悪いだろ。みんなから逃げるようにしてさ、武道館の端っこで」
『安心したかな。訓が涙が必要ないぐらい強くて、冷たい人なら、私を必要としてくれないと思う』
「…………」
『…………』
「手、頭の上に……」
『昔みたいに撫でてあげる』
「ありがとう……いちる」



「夢か……」
訓は身体のアチコチが痛むのを感じた。どう考えても筋肉痛だ。
寒さに身を屈めながら、起きあがる。
「武道館……天井のライトが一斉に点くのは圧巻だったけど……」
その二日後には敗北の味を噛みしめることになった。
今でも夢に見る。
「いちるがいなきゃ、俺はきっと八つ当たりしてたな」
「そうかな?八つ当たり、したくてもできないタイプだと思うよ、訓は」
「そうか……………………………………………って、何で俺の部屋にいるんだ、いちる!!」
一流は訓の布団を畳んでいた。
「ん?今日は創立記念日でしょ?」
「なるほどそうだった……って、一流の学校は違うだろ!!」
「あはは、バレた?寝起きの訓なら騙せると思ったんだけど」
口に手を当てて笑う一流に何となく許してしまいそうになるのは、その可愛さからか。
「訓のお母さんはこれで騙せたのになぁ」
「母よ……」
訓は身体だけでなく頭も痛かった。
「えへへ…初めて学校サボっちゃった」
「なんで?」
「訓と一緒にいたかったから……じゃ、だめかな?」
一流はズルイ。女の子にそう言われては反論する手段を失ってしまうからだ。
冗談にして流すには、訓は誠実でありすぎた。
「…………」
「だめ?」
小首を傾げる一流は少し頬が赤い。
「分かった。で……何、する?」
「ん〜取り敢えず、ソレなんとかして?」
一流が指した先には、朝の男の生理現象が存在を主張していた。
「キャーーーーー!!」
「いや、それ私の台詞だよ、訓」
95すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:40:47 ID:t8VQ68rF

日曜日を境に、グンと寒くなってきたので訓はコートまでとはいかないまでもそれなりに厚着をして外に出た。
無論、一流も一緒だ。一流はサボってる身でもあるので、流石に駅前の繁華街は面倒かと思いながら、アテもなく歩いている。
無意識のうちに外に出たのは、日曜日二人っきりで遊べなかった埋め合わせだった。
「お城、いこうか?」
一流の提案を訓は拒否する理由は無い。
お城といっても城がそのまま残ってる訳でなく、今は跡地が公園として残ってるだけだ。
城の名残と言えば城門と櫓(ちゃんと漆喰で塗り固められた立派なもの)が残ってるぐらいか。
無論、水堀や石垣も残っていて、堀にはカルガモが泳いでたり。冬になれば白鳥もやってくる。
「春になれば、お花見の客でいっぱいになるんだろうな」
「そうだね」
かなりの広さと植えられた桜の木は、この公園を絶好の花見スポットにしていた。
日本人は、武士は桜を好んだ。その仄かで艶やかな色もさることながら、咲いて一瞬で散る、その潔さを善しとした。
全国のお花見スポットに城跡地が多いのも、彼らが熱心に植林した結果である。
(来年見る桜は、ここの桜だろうか……)
「訓、覚えてる?昔ここでよく遊んだよね」
「ああ、覚えてる。ゴムで回るプロペラの飛行機飛ばしてさ……」
「木にひかかった」
二人は顔を見合わせて笑った。
「いちるはさ、その飛行機取るんだって、木に登り始めてさ」
「落ちたね。わんわん泣いた。膝すりむいて。そしたら訓、私のことおぶってくれた」
「耐えられなくなってコケちゃったけどな」
情け無さそうに訓は頬を掻いた。
「それで二人して膝を赤くして帰ったね」
「ああ。買って貰ったばかりのボール、堀に落としたこともあったな」
「訓ってば凄く怒って、あの後口きいてくれなかった」
まるで昨日のことのように怒り出す一流に、訓も昔のことながら謝った。
「悪かったよ」
「ん〜じゃあ、一つお願いきいてくれたら許してあげるね」
「もう時効じゃないのか?……で、何をお願いするつもりだ?」
小高い場所に作られた城は、広場を抜けた先の階段を登ると街を一望……とまではいかないまでも
それなりに町並みを見渡せる高さがあった。その石垣の階段まで、二人は足を伸ばしていた。
「おんぶして。あの頃みたいに落とさないでね?」
「わかったよ」
普段なら恥ずかしがって拒否する訓だが、今日は自然と受け入れていた。
その理由は、多分色々あるし、そのどれもがハッキリと言い表せないと訓は思う。
しゃがんだ訓の背に一流が飛び乗った。
「もうちょっと静かに乗ってくれよ」
「楽しいんだもの、しょうがないね」
一流の乳房が当たるし、顔も間近だというのに、訓は不思議と緊張していなかった。
「昔より軽いな」
むろん、一流の体重が当時より軽いのではなく、訓に筋肉がついたというだけだが、それが訓には嬉しかった。
「天辺までね」
「ん〜このまま家まででもいいぞ?」
「ホント?」
「少しは恥ずかしがれって……」
苦笑しながら、石段を踏みしめていく。
丁度紅葉を迎えた季節で、階段の脇の林がひどく鮮やかな道のりにしていた。
「ねぇ…訓……」
「ん?」
「この先の天辺にある一本桜、覚えてる」
「あの早咲きのヤツか」
その桜の木だけは、他の桜と違って早めに咲いた。土が違うのかもしれないし、種類が違うのかも知れない。
あるいは植林された桜と違って、元からある桜だとかという話もある。兎に角、この公園の一番高いところにある桜は早咲きの桜なのだ。
「昔……あの桜の下で訓が私に“結婚しよう”って言ってくれた」
「そ、そうだったか?!」
「……らいいなぁって思ったの、子供の頃ね。将来の夢はお嫁さんだったから。ベタだね」
冗談じゃない、寿命が一年は縮まった……と訓は文句を言おうとしたが、昔語りをする一流の顔を見てやめた。
綺麗な顔をしていた。どんな物語に出てくる美しい少女より、美しいという言葉が似合う。
訓はいつも一流の事を綺麗だと、美しいと思ってるが、今日のは隔絶だと心の中で嘆息した。
96すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:43:49 ID:t8VQ68rF
「ほら、天辺」
「うん」
桜の木は他の木がまだその葉を落としてないのに比べて、ちらほらと下に落ち葉が見受けられた。
その木の近くには木製のベンチがあるが、あえて一流をおぶったまま、訓は町を見渡した。
「あの通り……」
一流が指を指す。この前、動物園に行く時にバスで通った道だ。
「お祭りの時に山車が通るの。山車の上でさ、太鼓叩いたよね」
「……そうだったな。腕が痺れた」
「うん」
一流は今度は別の場所を指した。整骨院の裏の神社。
「あそこの神社、裏の木は柿の木だった」
「渋柿だったけどな……」
「土まみれになって取ったのにね」
「潰れた柿の色がとれなくて母さんに怒られたよ」
「私も」
声を合わせて二人は笑った。
さらに一流は指を動かす。
それは訓が昨日警察道場に向かう途中に歩いた場所だ。
「あの辺りにさ、文房具屋さんがあったよね?私は中学校が遠くなったから行かなくなったけど、おばあちゃん元気かな?」
「……そう、だったな。俺も学校の購買つかってばかりだから、もう何年も会ってないや」
「今度いこうか?受験の時は鉛筆使わなきゃならないし」
「ああ、そうだな」
訓は目一杯、この町の空気を吸い込んだ。
「つい忘れてしまうけど、やっぱり俺は、俺といちるはこの町で育ったんだな。いっぱい思い出があって……
 だから、今の俺がいるんだ。いちる……決心がついた。本当は最初から傾いていたんだけどな……」
(でもやっぱり、最後の決め手はいちるなんだな。俺はずっとそうだなんだ。今までも、これからも……)






   ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※   





「訓?どこに行くの訓?」
合格を確認した後、訓は一流の手を取ると目的も言わずに走り出した。
かなり軽快に走っているが、一流もお嬢様ではないので走るのについて行けないということはない。
だが、制服なので動きづらい。スカートであることだし、靴だって革靴だ。
それに何より女の子なので髪が乱れるのは勘弁して欲しいところだった。
「俺が決めた場所」
「決めたって、何を」
一流の問いには答えずに、訓は沢山ある城跡の公園の入り口を掘を越えて入った。
新芽が春を待つ桜木の広場を越えて、石段を駆け上る。
待ちきれないように、一段跳ばしで。
「桜?」
「咲いてるだろ、もう」
最後の段を踏み切った時、白群青の空に朱華色の雪が舞っていた。
「あ……」
そのコントラストを表現する言葉が一流には思い浮かばなかった。
「半年前に一流の夢を聞いた」
「訓……」
「一年と半年前に一流に約束した」
俺の惚れた女は極上の女だから、俺も極上の男になりたいと。そんな子供じみた約束。
でも確かに、ココにいる乙古訓のステータスは完璧だった。
頭も、力も、人望もある。
97すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:47:16 ID:t8VQ68rF
「それでも……俺は悩んだり、人に迷惑をかけたり、全然凄いヤツじゃないかも知れない。
 いちるが胸を張れる、自慢できる男にはまだまだ足りないのかも知れない。
 でも、足りなくて当たり前だ。俺は……みんながいないと駄目なんだ。
 そして何よりも、誰よりも、いちるがいないと駄目なんだ」
早咲きの桜の木の下で、訓と一流は向かい合う。
まるで、ドラマのような1シーン。
でもそれは全然滑稽ではなくて、本当に美しいものの在り方を示しているようだ。
「訓……聞かせて」
訓の言葉を、訓の表情を、訓の匂いを、訓の熱を、一瞬でも逃さないように、心に刻みつけるように
一流は一歩、訓に近づいた。
「俺は……砂奥一流が好きだ。俺の恋人になって欲しい」
シンプルな言葉。
誰よりも誠実で、誰よりも真っ直ぐで、誰よりも真剣な、訓らしい言葉。
花吹雪の中で、一流は更に一歩を踏み出した。
そこは愛しき人の胸の中。
「……はい」
優しく……でも強く、一流の身体は訓の腕に包まれる。
「私を……乙古訓の彼女にして下さい」
素直な、純粋な、どこまでも澄んだ言葉が一流から溢れた。
「それは、俺の夢だった」
一流の肩越しに聞こえる、訓の返事。
「夢はおしまい?」
「次の夢がある」
再び見つめ合う二人。
「私の左指の薬指に?」
「その約束を、いちるの唇に……したい」
一流は涙を零した。
求められてる。
愛されてる。
分かっていた、分かりすぎるほど感じていた。
それでも、面と向かって言われる時の心の震えは、なんて……
「嬉し…い……」
その口づけは、唇と唇が触れあうだけの優しい口づけで
それでも長く、長く、心が溶け合って、まるでそこには最初から一人しかいなかったような
「いちる……」
「訓……」
桜の花言葉は善良。
健やかで、華やかな二人に、この町は祝福を







両親は今日、親戚の葬式で家に居ないと切り出してきたのは訓だった。
言外に、男と女の行為をしようという意味を含んでいた。
意外でもあったが、一流は嬉しかった。
告白して一日で……などは思わない。二人が重ねた月日からすれば遅いぐらいだ。
親になんて言い訳をしようかなんて、人生で初めての考えを一流は楽しみながら、訓の後をついていった。
訓の背中はこれからの事を思ってか、緊張して強ばって見えた。
「…………」
一流には何度も潜った訓の家のドアが、今日は違って見えた。
「…………」
「どうしたの?訓」
玄関で足を止めた訓の身体の横を一流は覗いた。
散乱した沢山の靴。リビングの方から見える光。
「えっと……」
「この靴、由羽の靴だ」
「こっちの、千紗と麗子のね」
98すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:49:59 ID:t8VQ68rF



案の定というか、リビングに入った二人を出向かえたのはクラッカーの弾ける音だった。
「合格オメデトー」
麗子が二人への祝福の先陣を切った。
「春からまた後輩だねーー!」
訓に抱きついた迩迂に、一流の殺気の籠もった目が向けられる。
「まったくだ。頼もしく思えるぜ」
格好つけてる当馬の頭には三角帽が光っていた。
「学校が違うからって、付き合いやめたら許さないからね。あと男の子紹介しなさい」
千紗が二人を座らせる。
「なんだぁ、一流ちゃんを親の居ない家に連れ込んで何しようとしてたんだ?」
最後に由羽が茶化す。
「…………」
「…………」
訓と一流は顔を見合わせた。
「おいおい、こりゃ、俺達お節介だったみたいじゃんか」
「まぁ……ね」
「いちる!!……いや、突然の事で驚いただけだ」
取り繕う訓に由羽は笑い転げた。
「いやさ、謝らなくていい。俺達はお前達の邪魔をしにきたんだ」
「へぇぇ……由羽くん、なら後でたっぷり仕返しさせてもらうね」
三日月に口の形を変えた一流に由羽はおののいて麗子の後ろに隠れる。
「……なんで私の後ろに隠れるのよ」
「まぁまぁ……コレ、みんなで用意したのか?本当に嬉しいよ」
テーブルに並べられた料理や、部屋の飾り付けなどを見てお礼をいう。
寿司、ケンタ○ッキーフライドチキ○ン、ポテトサラダ、ピザ、ケーキ、シャンパン、ワイン、日本酒
「……って、飲み物がアルコールしかねぇぇ!?!」
「ナイスツッコミ」
「無礼講なんだよぉ〜〜訓ちゃん」
訓に素早く紙コップと持たせ、ワインを注ぐ当馬と迩迂。
「ワインは俺の親父秘蔵のモノを持ってきた」
「警官の息子が窃盗なんてスキャンダル〜〜」
「……ねえ、ひょっとしてもう飲んでる?」
同じくワインを注がれた紙コップを千紗に持たされた一流は珍しく呆れた声を上げている。
大体、未成年飲酒の時点で犯罪である。
「ちなみにお寿司はレコが握ったのでした!」
「お父さんとよく行くお寿司屋さんに教えて貰ったのよ。まあプロじゃないから味は保証できないけど……
 あ、あとピザとポテトサラダを載せてる皿は居間に飾ってた伊万里だからーーー!!」
「高いぞーーー!!」
ハイタッチする千紗と麗子。
「しかしアレだな、赤飯用意しておくべきだったな」
「待て、由羽。なんで人の家の台所を漁ってる?」
「いやいや……まあ、形が似てるからいいか」
由羽が引っ張り出してきたのは底が深めの皿だった。
「はいはい、駄目駄目、この二人はコッチでしょ」
訓と一流のコップを取り上げて、皿に日本酒を注ぎ直す。
「なるほどぉ〜じゃあ、コレ白無垢代わり〜〜」
「先輩ーー!人の家のカーテン引きちぎるなーーー!!」
顔を青ざめながら訓が絶叫する。
「私、鈴みつけたわよー。これベルねベル!」
「伴田、それじゃ洋風じゃないか」
「いいじゃない、今の結婚式なんて和洋折衷よー。当馬もなんかやれー」
「なぬっ……えぇ、それじゃあ三つの袋の話でも……」
キッチンからタイマーのベルが鳴る。
「何?まだ何かあるの?」
「ふっふっふ……じゃーーん!!」
一流の疑問に、由羽は(あやうい足取りで)台所に向かうと、一際大きな皿に焼いた鯛を載せて戻ってきた。
「どうよ!朝からチャリ漕いで海に行って俺が釣ってきた鯛はぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
99すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:52:05 ID:t8VQ68rF
「めで鯛〜〜〜〜〜!!!」
「がぜん結婚式ぽくなってキターーーーー!!」
「……で、二つ目の袋は……」
「ちなみに信楽焼ですーーー!!お値段は秘密ーーー!!」
テンションMAXの五人に、訓と一流は苦笑するしかない。
「ホラホラ、レコちゃん、レコちゃんもなんかやる!」
「え……じゃ、じゃあ日本舞踊でも……」
「意外な特技ーー!!わ、わ、怒らないでよ、レコーーー」
「……三つ目の袋は……」
「訓ちゃんも、一流ちゃんも、飲んでくれないと始まらないよ〜」
これは断れないなと、訓は諦めたか、皿のお酒に口を付ける。
(えっと……確か、俺が飲んで、いちるに回して……)
こんな時でも真面目に結婚式ごっこをしている訓であった。
「じゃ、いちる…」
訓に渡されたお酒を今度は一流が上品に飲む
「はい……」
まだ残ったお酒を、再び一流は返す。
(ああ、また俺が飲むんだっけ……?)
「……アナタ」
「ぶっ……!!」
危うく訓は皿を落としそうになった。
「「「「「ヒューヒュー」」」」」
囃し立てる外野陣。
「おまえらーーーー!!」
残りを一気に飲み干した訓はいい加減、身を乗り出し叱ろうとした。
「…………合格、おめでとう。訓、一流ちゃん」
「由羽……このタイミング、卑怯だぞ」
振り上げた拳を固めたまま、訓は口を尖らせた。
「ありがとう、由羽くん、みんな」
訓の分も込めて、一流は改めて礼をいった。
「ね?訓。貴方の選んだものがここにあるでしょ」
「…………」
一流の言葉に訓は腰を落ち着けると、全員を見渡した。
「最後までやってやる。よく見ておけ」
それだけ宣言すると、一流の肩を掴んで引き寄せた。
「ん!?」
流石に一流も不意打ちだったらしい。目を丸くして訓のキスを受け入れている。
「……訓、酔ってる?」
唇が離れたとき、一流は思わずそう呟いた程だ。
「いや、素面だ」
言い切った訓に、由羽は大笑いした。




十一時、散々ドンチャン騒ぎした挙げ句、家に勝手に上がり込んでた五人は潰れていた。
誰が言い出したか、暑いという言葉のせいで窓が開いている。
訓は床に寝ころんでいるみんなを踏まないように気をつけながら、窓を閉めた。
「上にかけるの、これでいい?」
一流が毛布やらタオルケットやらを訓に言われて引っ張り出してきた。
「ああ、風邪ひかれても困るしな」
二人は手分けして全員にかけてまわった。
「うーん、千紗さんはちゃっかりソファーの上で寝てるあたり、抜け目ないな……」
「迩迂の胸を枕代わりにしてる由羽くんもね」
「……頭、蹴っ飛ばしてやろうか」
言いながら、麗子のめくれたスカートを直す訓である。
「訓……」
「いや……別にやましい気持ちはない。黒だったとか、そういうことは見ていない」
やはり訓も酔ってると俗っぽさが出てくるというのだろうか。
一発ビンタでも食らわせようと、一流は訓の所に近づいた。
100すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:54:34 ID:t8VQ68rF
「きゃっ!?」
一升瓶を抱えて涙で目元を濡らしながら寝ていた当馬にぶつかって、一流は倒れた。
幸い、訓の方に倒れたのでしっかり受け止められたが。
「…………ありがと」
「ん」
「このままギュってしてくれたら、許してあげる」
「OK」
少し酔ってる……が、他の五人に比べて酔ってないのは意識したからか、周囲もあえて進めなかったからか。
迩迂がカーテンをひっぺ返したせいで、窓から月明かりが差していた。
「ね……訓の部屋って、鍵ついてたよね?」
「ああ」
一流の言わんとしてることを察して、訓は頬を赤らめた。
一流は時計を横目で見る。
「今日の内がいいな……今日は、訓が告白してくれた日だから」
「一々嬉しいことを言ってくれる」
また、キスをした。今日一日で何回したんだろうと、二人は思う。
「よっ……」
「お姫様抱っこ?」
「いや、女の子は好きかなって思って」
「うん」
一流は訓の首に腕を回すと、身体を預けて訓の部屋に入った。
「……鍵、締めてくれ」
「両手塞がるからね」
おかしそうに笑った一流は手を伸ばして鍵を閉めた。
そっと、一流の身体をベットに下ろしてから、布団を捲る。
「これも考えてなかった」
「足で捲ったら?」
「そんな器用なコトできるか。いちるを落としでもしたらどうするんだ」
ああ、ズルイ……告白してからずっと訓は自分の胸を切なくさせてくれる――一流はきっと自分の秘所は濡れてしまっているだろうと思った。
それを今、訓に見られる……はしたないと思われたらどうしよう?そう思う度に興奮する。
「私って、ちょっとMなのかも」
「い、いきなり何言うんだ」
「ん……初めてだけど、遠慮しなくてもいいよってことだと思って」
暗がりの中で、訓が赤くなったのが一流にはわかった。
「馬鹿言うな……その……なるべく優しく……する。お、俺も初めてだから……い、痛いかも知れないけど」
「だから、痛くしてもいいって言ってるのにね」
「痛くない方がいいだろう!」
何やらムキになり始めた。一流はおかしくなった。
「まあ、気持ちいいのが一番だけど、微妙なのよりは……痛い方が忘れられないかなって」
「…………ッ!ば、馬鹿!!」
訓は一流を押し倒した。
ベットが軋む。
「そういう事言うと、コッチは堪らないんだからな!」
「私だって……こんなに訓が近くにいて、堪らないね」
そう言い返すと一流はスカートを自ら捲って、訓の手を自分のショーツに触れさせる。
「脱がせてみれば分かるよ。私、エッチだから期待してるんだ」
「そんなの……湿ってる……」
訓が生唾を飲む。
「興奮してる?」
「するよ、それは」
「初めてが……制服プレイだね」
確かに、訓は学生服を(動きづらいので)脱いでワイシャツとズボンだが、一流は……
「いちるの学校の制服……」
進学校で、良家や金持ちの子弟がゆく学校の……有り体に言えば訓がコンプレックスを持っていた制服だった。
「皺にしても、汚しても……いいよ。最後だし」
「だから……なんでそんな……エッチなこと……言うんだ」
「私だけエッチなのは嫌だから。訓もエッチになって?」
一流は啄むように訓にキスを繰り返す。
「んぁ…!」
訓の指が一流の秘所をショーツ越しになぞった。ざらざらとした生地の感触に粘りのある液体が絡みつく。
101すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:56:55 ID:t8VQ68rF
「…………」
「ん……なんで辛そうなの?」
「理性が……保てなくなりそうだ。一流が…ッ、喘いで……」
汗で湿ったワイシャツのボタンに、一流が手をかける。
「獣みたいに……なってもいいよ」
「馬鹿……ドア一枚隔てて、由羽達が寝てるんだぞ……」
訓は一流のショーツに広がる染みが増えたのを感じた。
「いちる……」
「ゴメン……私って、本当にエッチ……」
羞恥心からか、目尻に涙を浮かべ始める一流。
「馬鹿…ッ!ああ、もう、さっきから馬鹿馬鹿言ってばかりだ!!
 いいんだよ、いちる!俺はいちるの事、丸ごと好きなんだ。いちるがエッチでも全然構いやしない。
 それに、一々色々気にしてるのは俺に勇気が無いだけだ。俺はいちるの彼氏なんだ。だから…ッ!」
乱暴に一流の胸元を広げる訓。ブレザーのボタンが外れ飛んで、皺になったブラウスの白さが暗がりでも分かる。
そのブラウスのボタンを、(震えながらというのが訓としては情け無いが)一つづつ外していく。
「いちる……」
何の抵抗もしない。一切を自分に任せる一流に、訓も自然と余裕が生まれてきた。
(……リボンってどうやって外すんだ?いや、別にいいか……その、男の夢だし?)
余裕が生まれたはいいが、何やら妙な考えをしてるのは多分、少しアルコールが入ってるせいだろうと、
訓は納得し、臍の位置までボタンを外すと、一気に左右に広げた。
「……ピンク?」
「い、言う必要なんて……」
「や……つい……」
桜の色だ……なんてボンヤリと考えながら、一流のブラジャーを外した。
(今度は失敗しなかった……)
その安心を悟られないようにしながら、訓は一流の形のよい胸を観察した。
(あの時は直視できなかったけど……)
これは自分のモノだという感慨が、訓を満たす。
「…………あ、悪い、見とれてた」
「本当?」
「嘘ついてどうする……」
訓は一流の乳房の先端、桜色の突起に優しく口づけをした。
「ぁ……」
しょっぱいのは汗だろう。甘いのは……一流の味だ。訓は何やら感動に打ち震えていた。
(やっぱり、いちるは甘い)
いつも一流から感じてる匂いと一緒の、甘美で爽やかな味だと訓は再び口づけをした。
「ぁ…っ……ぁあ……!」
今度は簡単には離さない。上唇と下唇でしっかりと挟んで、舌で唾液をまぶしてゆく。
「ふぁ…ッ……く、訓は……私の胸、好き?」
「当たり前だろ」
「だって……亜根脇さんほど大きく無いし、形だって、麗子なんかは綺麗な釣り鐘型だし……」
「あ……そう……」
何やら貴重な情報を聞いた気がするが、追求すると機嫌を損ねてしまいそうなので訓は黙って一流を褒めることにした。
「いちるだって……綺麗な形してるじゃないか。柔らかいし……俺の手にピッタシだし」
言ってて何か自分が変態のように思えてくる訓であった。
「ピッタシ?」
「ああ、吸い付くようだ」
「うん!……私、訓専用なんだね」
どうやら機嫌は上々の様だ……初めて一流を上手にあしらったかも知れないと、訓も内心満足だった。
(うん、そうだ。付き合うからには亭主関白でいくぞ!)
決心も新に、今度は乳房を掬い上げるように下から揉みほぐす。
「ん……」
(乳首の方が感じやすいのか……)
訓は一流の張りに張った乳首を摘み、突き、撫で回し、そして労った。
「ふぁぁ…ッ…ぁ……ん…ッ…駄目……そんなに……ソコだけ………ぅぁ……苛めないでぇ…ッ」
普段気丈な一流が自分のなすがままに翻弄されてる姿を見て、訓の中で嗜虐的な快感が芽生え始めてくる。
「乳首、固いな。でもこれで最高ってことはさ……」
言われた通り、乳房全体をこね、鷲掴みしながらも、やはり先端への責めを重点的にしながら訓は一流の耳元で囁く。
「ひょっとしてさ……陥没気味?」
「ぅ……」
102すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/22(月) 23:59:47 ID:t8VQ68rF
図星だったらしい。一流は今にも泣き出しそうな顔をし始めた。
「わっ……ご、ごめん」
悪役になりきれない男である。
「泣かないで……いちるの胸は大好きだ」
赤ちゃんの肌のように柔らかい頬に軽いキスをして、訓は一流の胸に顔を埋めた。
一流の匂いが鼻腔一杯に広がる。ああこれだ、これが自分を狂わせると訓は焼ける脳で気づいた。
「ちょっと……痛くする……」
「え…?ああぁぁぁ!?」
カチカチに勃起した一流の乳首を、力を込めすぎないように噛んだ。
身体を真っ直ぐに電撃が走ったように、一流は感じた。それが悲鳴になった。
流石に訓もヒヤッとしたが、もう由羽達にバレてもいいと腹をくくった。
「はぁ…はぁ……」
「陥没してても関係ないな。こうして、勃たせてやる」
「訓……悪い顔……んはぁ……」
一流の乳房を撫でた訓の手はそのまま汗の溜まった鎖骨を滑り、お情け程度に残っているリボンを越えて細い首を伝い、顎を支えた。
「意地悪したり…優しくなったり…」
一流のそれ以上の愚痴は言えなかった。
「ん……は……」
一流の唇を割って、訓の舌が侵食してきたからだ。
「ふぁあぁぁぁ……」
信じられない……一流は知った。キスがこんなにも気持ちの良いものだったのだと。
もはやなすがままに、訓の舌は一流の口内を蹂躙し、悪辣な王の如く振る舞っている。
まず、歯茎全てに印が付けられた。一つ一つ、丁寧に嬲っていった。
次に、舌を根本から先まで、表から裏まで、絡みついて滑っていった。
さらに、その舌を伝って訓の唾液が口内を満たしていった。
唾液は一流の唾液と混ざり合い、掻き混ぜあってジュクジュクと泡を立てる。
「…はぁ……ひぃ……んほ……ぁ……」
「……ッ」
訓は、慌てて唇を引き離した。
あまりにも長い時間睦み合っていて、これでは酸欠になると思ったからだ。
「……はぁ……ふぁぁ……」
トロンとした目で口をだらしなく開いたままの一流は、涎すら垂らしているのに淫靡であった。
「ん……ぬほぉ……ぁ…」
溜まらず、訓は再び貪りついた。
一流も朦朧とする頭の中で、自分もして貰ってばかりではと舌を伸ばす。
「はひぃ…ッ!」
伸ばした舌は、今度は掃除機のように訓の口の中に吸い取られていった。
「ふぁああぁ……あ……ぁ゛……ぁあん……!!?!」
唾液も重力に逆行して奪われていく。
それは仕方ないのだ。訓にとって、一流の唾液は蜂蜜より甘い奇跡の飲み物だった。
チュポン……そんな音が響いて、二人の唇は離れる。
名残を惜しむかのように、七色に輝く唾液の橋が架かっていた。
「……ぁ…あ……激しいよぉ……訓……」
「あ……」
これでは身体が保たない。だが、
(壊れちゃっても……いい……)
これほど激しく、荒々しく、身体を貪られながらも、訓の一流を支える腕は優しい。
時に、子供をあやす親のように背を撫でてくれる。
決して視線を逸らすことなく、黒い瞳は一流の茶色の瞳を見ている。
「……訓……訓……」
「いちる……愛してる……いちる……」
一流が望めば、何度でも愛の言葉を訓は返した。
訓が「いちる」と自分の名前を呼ぶ。他の人と少し違う感じ、優しい言い方……それが一流は大好きだった。
「訓……」
“頂戴……”とおねだりしようとした所で、訓は喘いだ。
「いいか?」
掠れて、僅かに残った理性が緊張を呼んだが、そこには抑えきれない獣性を秘めていた。
一流はただ黙って頷く。
カチャカチャとベルトが外れる音がする。
訓がズボンを脱ぐ僅かな時間が、一流を少し冷静にさせた。
103すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/23(火) 00:01:44 ID:t8VQ68rF
(……緊張してる)
なんて馬鹿らしいのだろう。散々、そうなることを望んで、妄想して自慰をしたことだって数度じゃない。
なのに手はシーツを握りしめ、胸の鼓動は(きっとずっと高かったのに)ハッキリと聞こえてしまっている……一流はその滑稽さに笑おうとした。
普段の一流だったら笑えた筈だ。だが、上手にできなかった。
「いちる?……大丈夫か?」
それに気づいたのだろう、下半身をさらけ出した訓が心配そうに訪ねた。
「あ……」
視界に入ってしまう。訓の起立した性が。
当然、その視線を追って、訓も言葉を失った。
「違う…の。なんか……不思議で……なんて表現したらいいか……分からないけど……嫌じゃないからね」
「ああ」
上擦った声を出す一流に比べて、訓は落ち着きを払った声で答えた。
それに安心したか、一流は訓にキスを求めた。
「ん……」
乾いた唇が湿る。
段々鼓動が遠くなって、景色も遠くなって、世界には訓と一流だけが居た。
「シャツも脱いで?」
「ん……ああ、着たままだったな」
中学生にしては完成された肉体が露わになる。肩にはいくつか痣があった。
それは昔の打ち身が残ったもので、痛くはない。
けれど、それは自分がつけた傷のような気がして一流は痣を舐めた。
「ん…ふ……」
「いちる……」
「あ、訓も……固くなってる」
隆々とした訓の胸の先端を一流は舐めた。訓の身体が震える。性感帯は男も女も一緒なのだ。
「いちる、あんまり刺激しちゃ……」
「出ちゃう?」
グロテスクな訓の真ん中にあるモノを、一流は細い指先で触れた。
「それも悪くないね。訓のを……体中に浴びて……ゾクゾクしちゃう。制服にもたっぷり染みこんで
 私はいつでも、訓の匂いを嗅げちゃうの……。きっと狂っちゃうね、私。ううん、もう狂ってる。訓に狂ってる」
「いちるの狂ってるなら、俺も狂う。どこまでだって……でも、最初は中がいいな。いちるの中から染めていきたい」
訓の固い手が一流のショーツをずらしていった。
一流から溢れ出た愛液の匂いが解き放たれて、訓を刺激した。
「スカートも……」
「脱がすのか?」
聞き返しながら、惜しいと思った自分は筋金入りではないかと訓は戦慄した。
「うん……訓と、繋がってるところ……みたいの」
そう言われて否と言える男がいようか。訓は手早くスカートを脱がした。
(エロい……)
訓は自分が鼻血を流してないのが不思議だった。
一流のセミロングの髪は扇上にシーツに広がって、前髪は汗で額に張り付いている。
首輪のようにリボンが巻き付いていて、白磁のような肌とのコントラストが美しい。
綺麗な曲線を描いた鎖骨を境に、肩から先はブラウスとブレザーに隠れて、身体の中心線だけが肌を露出させていた。
丸みを帯びた乳房は、訓の涎でテラテラを反射し、荒い呼吸に胸から臍まで波打っていた。
そして……
「とろとろだな……」
「…あぁ……ん……」
その言葉一つで、また蜜が溢れたようだ。薄い陰毛が守る神秘から溢れ出す蜜は留まるところを知らない。
何重にもヒクついている、その貝に訓は目をそらせられなかった。
(これ、ほぐす必要あるのか……?)
訓の性知識では必要だと思っていた。が、実際の一流は想像していた以上に感じやすいようだった。
クリトリスも……痛いぐらいにそそり立ってる。男の性器と一緒だと訓は感じた。
念には念を……そういう言葉もある。しかし、訓も辛い。今の息子の膨張具合は自己ベスト間違い無いと見ている。
(突っ込みたい、出したい……)
原始的な言葉で表現するしか浮かばない程、訓は切羽詰まってはいる。
それでも持ち前の精神力ならまだ多少は……
「…………」
蜜壺から先に伸びた太股は余分な肉が付いてなく、スラリと伸びていた。
一層白い。日の当たらない部分だからだろうか。白粉でも塗ってるんじゃないかと思う程だ。
そしてその先を追うと、紺のハイソックスが目に入る。胸元のリボンに負けないぐらいのコントラスト。
104すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/23(火) 00:04:40 ID:ihdWgb/n
(くぉあ!)
やはりエロい。誰だよ、これを発明(?)した人間は!
訓の残っていた精神力は今、決壊した。
「いくぞ!」
「うん…」
今まで二人の共同作業は何度もあったが、これが最大にして最強(←?)だろうと息を合わせた。
「…………」
本当ならば両の手で一流の足を割って、その男で進入したい所だ。
(だが、あくまで確実さを狙う……)
訓は片方の手で自分の男を支えると、一流の女へ狙いを定めた。
みっともなさは覚悟の上だった。
ああ…こんな時まで本当に訓らしいと、一流は笑ってしまったのだが
「あぁっ!?」
笑ったことで身体の強張りがとけたのがよかったのか、先端を飲み込むのに抵抗は無かった。
「……入ってる」
一種の感慨をもって一流は呟いた。
が、訓の方はそんな余裕は無かった。
無かったが、無意識の内に一流の髪を撫でているのは、彼の思いの強さだろう。
(キツい……)
だが、熱い。そして大量の愛液は訓を奥へ奥へと誘う。
「ぁあ……あぁあぁぁ……」
自分の身体が広げれていく初めての感覚に一流は身もだえた。
「……コレか」
抵抗が強まり、今までの惰性では進めなくなる。壁のように感じるそれは……
「私の……はぁ……初めて……のぉ……ぁ……証……」
胸を上下させながら、一流は訓を見つめた。信頼と愛情の瞳。
「ねぇ……動くときは……また言って。愛してるって」
その願いを歌う声は儚げでもあり、執着でもあり、それがどんなに幸福か感謝をしてもしたりないと訓は頷いた。
「いくよ……いちる、愛してる。大好きだ」
訓は腰に力を込め、一気に一流と密着した。
「あああ゛あぁぁ゛ぁあぁ゛あぁあぁぁぁあぁぁ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
獣のような声。
とめどなく溢れる涙を拭おうともせず、秀美な眉は醜く歪み、伸ばした手は虚空を彷徨った。
それでも……それでも……
(なんて……)
なんて得難い美しさなのだろう。
「いちるッ!」
精一杯の、目一杯の愛情を込めて訓は叫ぶ。
彷徨った手を握りしめる。
折り重なり、共に身体を震わせた。
「いちるッ!!」
「訓ッ!大好き!愛してる!!訓ッ!!!」
一流の中は焼けるように熱かった。訓はきっと何度肌を重ねても、この熱さを忘れないだろう。
「訓……訓……キスして、ねぇ……」
一流の懇願を受け入れる。舌をゆっくりと絡ませる。一流のペースに訓は合わせた。
二人の中間で唾液が混ざり合い、ポタポタと一流の肌に落ちる。
その度に、一流の中が蠢いた。
「く……」
入れる前からすでに限界だったのだ。根本まで咥えられて、締め付けられて、幾ら丹田に力を込めたって
訓は沸き上がる射精の衝動を抑えきれるモノではない。まだ一往復もしてないのにだ。
しかし、耐えるには一流の秘肉はあまりにも……
「気持ち…いい……」
こんなこと、口にするなんてどうかしてる……そう思いながらも、訓は止められないでいた。
波打つように蠢く秘肉は、訓の男を圧迫し搾り取り、中へ誘おうと必死だった。何という働き者か。
だけでない。くちゅくちゅと、その接合部から溢れ出てる愛液も、ともすれば熱すぎる一流の中を心地よい温度へと調整してくれる。
「…ひぃぁ……ふぅ……ぁ…ぁ……」
「いちる?大丈夫」
「うん……訓は?」
“大丈夫”と嘘をつけないのが訓の困った所だった。
「辛いの?」
105すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/23(火) 00:07:25 ID:ihdWgb/n
「その表現は間違ってない。我慢するの……辛い」
「いいよ、出して」
「それは……男の沽券に関わる」
初めてなのに色々と望みすぎだ。だが、そこに山があるから登るのが登山家。
高ければ高いほど、心の中の蝋燭の炎が燃えたぎってしまうのが男、漢……乙古!!
(いやでもね……ホラ、別に恥ずかしいことじゃないと思うんだけどね。早いってことは悪いことじゃないし。
 むしろ短期間で遺伝子を残そうという正統なる進化の果て?……無理か)
一流は快楽でボーッとする頭で考えた。
(我ながら、初めてなのに随分感じてるわね……)
それも当然と一流は思っているが。
「ホント言うと、もう軽く…ね、イッちゃったんだ、私」
「軽くだろ?」
そういう訓の顔には意地も見えなくもない。
これだけ強情だと百年の恋も醒めるというものだろう。
もっとも、訓が一流を丸ごと好きなように、一流も訓のことを丸ごと好きなのでどうしようもない。
「もう……」
このまま暫くでも悪くないと一流は思う。確かに快楽も感じるが、異物感と痛みも確かにあるからだ。
それにこんな風に挿入したまま動かないスローセックスは最終的に得られる快感は高いと言う。そこまで訓は知ってる訳ではないが。
「ん……」
今一度、一流は訓の匂いを嗅ぐ。同じく訓も一流の髪を撫でた。
激しい愛撫や挿入から一転、こうしてゆっくり時を重ねるのも……
「悪くないね」
「ん…」
一流の感想を肯定しようとしたときだった。
――ガコ!ガコ!
「「っ!?」」
ドアノブが動いた。
「だ、誰か起きた…ッ!?」
(危なかった……危うく暴発するところだった……)
二人は肌を合わせて息を潜めた。
「だ、誰だ……」
「も、もしかして、さっきの私の……」
処女膜を破ったときの絶叫……あれならリビングで寝ている連中が起きても不思議でない。
「う……っ!?い、いちる…!?」
「ぁ……」
聞かれてる……その事実に一流は興奮していた。
キュッと締まった膣に、思わず訓は呻きをあげる。
――ガコ!ガコ!……ガコ!…………
ドアノブを回す音が止んだ。諦めたのだろうか。
「はぁ〜〜……」
二人は脱力した…………のが不味かった。
「くぁっ!?」
「ぁ……ああぁぁ〜〜!!!」
一流のソプラノが響く。
頤を漏らして、一流が痙攣する。一番奥に白い飛沫が子宮の入り口を叩いた。
「ふぁぁ……」
「あ……いちる?」
「う…ぅ…ん……」
ぐったりと枕に頭を埋めた一流に、訓も覆い被さる。
「ん……重た……」
「いちる?」
結合部から血と精液の混じったピンク色のグニャリとした液体が流れた。
「見られてるかも、聞かれてるかもって思って……緊張の糸が切れたら、訓が熱いの私の中にするんだもんね……」
自分が征服されてる……その感覚に一流は酔っていた。
「イったのか?」
一流は恥ずかしげに頷いた。
散々よがって、普通じゃない状況で興奮して、それでも恥じらうのは矛盾してるが、それが男心を擽った。
「抜かないぞ」
「訓……」
訓は体力はある。そして、一流の中の訓は硬度を取り戻し始めていた。
106すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/23(火) 00:09:45 ID:ihdWgb/n
「訓?」
「当たり前だろ。いちるは可愛すぎるんだから」
腰を引くと、さらにピンク色の精子がシーツに飛び散った。
「んあぁっ!!」
「……声が大きすぎないか?」
「いいよ!」
「後悔するなよ!」
一流の最奥に再び腰を打ち付ける。
肉が無い思われた一流の身体でさえ、その打ち付けに肉が波打った。
「ぁあっ!!」
八の字に綺麗で長い眉を顰め、その大きな瞳は一層見開かれた。
幼い顔立ちを引き締めている眉が歪むと、一流の顔は2、3は若返って見えるのは少し妙な気分だ。
「あ…あぁぁん……あっ…あっ……」
ピストン運動を繰り返す度に、結合部から飛び散る液はピンクから透明な……一流の愛液が増えていく。
「また感じてるんだな」
「うん……んぁっ……はっ…うぅん……」
訓の腰に一間遅れて揺れる一流の乳房が押し止められる。
「ふあぁ…ッ!胸も……?……あぁん……ダメ、…そんなの……あはぁ……おか、ろかしくなっちゃう……」
爪を立てて、乳房を抉った。といっても柔道をする関係上、爪は切ってあるので切れて血が出たりする危険はないが。
「んはあぁん!?!」
髪を振り回して、快楽に抵抗する一流。
だが訓も、一流が嬌声を上げる度に膣が締まり射精の悦楽を我慢しなければならない。
「はっ…はぁ…ん……めぇ……メー……だめぇ……ぅあぁ……」
訓の亀頭が一流の膣を押し広げ、そして竿に密着していく。
「私…わたひの……アソコの形……ひぁ……訓に……訓のにされちゃう……!!」
一流はすでに呂律がまわらなくなってきている。
「ひゃぁ!…はふぅん……ぁっ…あっ……」
嗚咽を繰り返しながら、しかし一流のしなやかな足は訓の身体に巻き付き離さない。
「いちる……身体、動いてる」
「ふえぇ……ぬ…ひゃ……あぁ……ぁあ……ほ…ぁぁぇ……」
聞こえてるのか聞こえてないのか、しかし一流は身体を訓に合わせて動かしている。
自分から刺激を求めて、求めると底なし沼のように果てがないそれを、それでも求めてくる。
「…く…ん……しゃみ、しゃみしい……あぁ……ぉほぁ……」
舌を伸ばす一流の意図を汲み取り、訓はキスをする。
「……きゃ…ぅ……あ…しにゃわせ……ぅあぁ……」
「いちるは……気に入ってるのか?」
「はあぁ…ッ……う…うん……んあぁ……好き……」
訓の律動の合間を縫って、ちゃんと答えようとする一流に、訓は一層愛しさを感じずにはいられない。
珠ような汗が一流の臍に水たまりを作ってた。それを掻き出すと、一流は身悶えた。
「…んくぅ!……ひゃめぇ……くあぁ……そんなの……くすぐっちゃい……のに!……ああぁ……」
「だから……!いちるは……!なんで……!」
守ってやりたいのに、壊してやりたいと思わせる、相反する欲望を刺激する。天使か悪魔か……
自分のモノが訓の形にされると彼女は言ったが、むしろ逆だ。異常なまでに一流の肉襞は訓のモノに引っ付いてくる。
それは単純な処女の狭さではない。確かに、彼女の身体が、細胞が、意思を持って訓を欲しているのだ。
「ああ、もう!!」
「ひゃああぁぁぁぁ!しゅごい、しゅごいよぉぉ……」
力加減を訓は誤った。絶えず転がしていた訓の乳房を思いっ切り握りつぶしてしまったのだ。
それでも、それすらも絶頂に変えて一流は訓を求める。
「本当に……マゾか……!」
「しゃがうのぉ……あむぁ……だって……だっちぇ……訓だもん……アッ!…くひっ……訓だもん!!」
「俺だって、いちるだよ!!いちるなんだよ!!」
もう理性の外だ。だた愛情を込めて打ち付けるだけだ。飲み込むだけだ。お互いの全てを。
「いちる!!」
訓は乱暴にリボンを引っ張った。一流の顔が引き寄せられる。
そのままキスをして、少し歯がぶつかった。だからなんだと言うのだ。
そんなものは互いの体液を交換してる内に治る。
「んちゅ……ちゅぱ……じゅるる……んはぁ……うぁあ!?あぁぁ!!!あ……ぁ……ぁぁぁぁぁぁ………」
ズンっと、訓が一流の子宮を叩いた。
肩に頭を預ける一流の髪を撫で梳かしながら、訓は形のよい耳を甘噛みした。
「ふひゃあぁ!?!」
107すなおく一る×おとこくん<花月>:2007/10/23(火) 00:12:29 ID:ihdWgb/n
振り子の様に今度は訓から離れ、上半身を仰け反らせる一流。
汗の臭い、一流の甘い体臭、そして牝の臭いが訓の脳髄を眩ませる。
「く……」
イチルの腰を押さえる手を小振りのお尻に下ろしていく。代わりに髪を梳かしていた手を脇の下に潜り込ませ支えた。
「ん……ふぅぅ……」
軽くイった後は反応が鈍いと理解しながら、訓はゆっくり愛撫をして一流を待った。
待ってはいるが、限界は近い。
「かけて欲しいって…?」
「…ふぁあ……あぅぅ……はぁ……ん……んぁあ……」
聞いてるのかいないのか……だが訓は肯定と受け取る事にした。
両手でしっかりと、一流の力を込めたら折れそうなくびれの優雅な腰を押さえる。
「あっ!ぁっ!あ゛!ぁ゛ぁ゛!!……しゅご!…きょわ、…ぁあ゛…きょわれ……るぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
パクパクと形の良い唇を金魚の様に上下させながら、濡れた声がこだまする。
「も゛う…も゛ぅ……いく…いぐ……わたしぃ……ああ゛ぁぁ゛あ……きゅるよ……神経が……ふりゅりゅうぅぅぅぅぅ゛ぅぅ゛ぅぅ゛ぅ……!!!!!!!」
一際大きく一流の身体が跳ねた。
まるで、御伽噺の人魚の様だと目に刻みながら、訓は己の分身を抜いた。
刹那、意識が飛ぶ。
「うぁはっ……!!」
身体の中心に突き刺さっていた芯が一気に引き抜かれる感覚。
絶悦の奔流と共に、白い精が愛する人の身体に降り注ぐのを、虚脱した神経で訓は見ていた。
「あ…ぁっ!……ああぁぁぁぁ!!ああぁ゛ああああぁ゛ぁぁあぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
自分に訓の精液がかかるのを感じ、今一度、一流は達したようだった。
男のそれに比べて、女のそれはタダでさえ長いのに、被さるように絶頂の波が来たことは一瞬一流を気絶させた。
「……ぁ………ぁ…………ぅ………」
(うぁ……)
自分が出したとは言え、その量に(しかも二回目なのに)唖然とする訓
「いちる?疲れたか?」
「あ……訓……」
訓の精液は一流の美しい髪にまでかかっている。髪は女の命だ……訓は急に申し訳ない気持ちになった。
「ん……訓の、臭い……」
たっぷり汗を吸ったブラウスは重たく、一流は腕を動かすのも億劫だったが、その指に粘付く訓の遺伝子を掬った。
「熱い……」
気怠げに、うっとりと言う一流に、訓は唾を飲まざるえない。
「ん……」
「いちる!?」
何を思ったか、精液でコーティングされた自分の指をしゃぶり舐めた。
「……苦い」
日本人形のような均整のとれた顔が歪む。
「……けど、訓のだもんね。……きっと好きになる」
「好きになるって……」
「ん……私は訓の彼女だもん。訓のしたいことさせてあげる。私のしたいことしてあげる」
「あはは……なんか爛れた性生活になりそう……高校生なのに」
口元を無理矢理引き上げながらも、さり気なく腕を枕にする訓。
その行為に一流は甘えることにした。女の子なら憧れるシチュエーションでもあることだし。
「ん〜……学校も無くて、お金も自動的に入ってくる生活だったらね、ずっとこうしていたいよね」
「俺を殺す気か。というか、冗談に聞こえないんだけど」
「本気で言ってるモンね」
声を潜めて一流が笑う。
その笑顔は、訓が一流に惹かれた理由の一つだ。
それに、そのいつも本気で素直な所も。
「俺も本気で言うかな」
「何を?」
「いちるが好きだってことを」
それは今までも決して変わらなかった事実。

「私も。私も訓が好き」

それはこれからも変わることのない想い。

<了>
108名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 00:35:27 ID:Km+JXhHB
キテルー!!!

G!J!
109名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 00:56:51 ID:wu9FZEyK
キター!

GJ!
110名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 01:20:39 ID:YSsbSteG
GJ だが、何か当馬が哀れなのがマイナスポイント
111名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 01:28:09 ID:kSibDlAf
そこはむしろ名前に忠実なポイントかと


一流エロい子だよ一流(´Д`;)
112名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 01:32:18 ID:YSsbSteG
いや単純に俺の好みの問題だけど、当て馬キャラってのは、基本嫌な奴じゃないと同情してしまってね。
113名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 01:46:12 ID:1nCAWSix
もう猿になるだろうこれは
114名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 06:46:00 ID:gM/zasrO
ドアノブの件もあるし由羽サイドの視点もほしいぜw
115名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 11:06:40 ID:iK/5M6zg
超GJ!だけど誰か一人だけでも当馬の三つの袋の話聞いてあげてくれw
116名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 14:43:58 ID:SG1urpaw
GJすぐるw
今回の当馬の輝き具合は異常www
117名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 15:57:27 ID:QJtPpIFY
GJ
さすが当て馬、輝きが違うwww
そして一流がエロいwww



さぁ次は当馬サイドをキ(ry
118名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 18:00:22 ID:m9Lqp1Tr
ちょっ、GJすぐるww
当馬もそうだがこの作品、サブキャラの輝きっぷりが異常w
個人的に当馬サイドもだが由羽と麗子のその後も気になったり。
119名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 20:34:42 ID:mSo3xDlx
当馬は千紗や迩迂とくっつくのか?それとも永遠に孤独なのか?
それが気になる。個人的には一方的に迩迂に捕食されてほしいがw

由羽と麗子サイドも勿論見たいが、一番見たいのは
訓・由羽・当馬の高校柔道編だったりするwww
120名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 20:57:07 ID:IGqlFu/B
GJGJ!
おまいらサブキャラ番外編ばかり望んでいるようだが、
それも訓と一流に魅力があるからなんだぜ?

ってことで正当な続編希望ー。
121名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 01:41:37 ID:PXQdHmRD
GJ!

>119
>訓・由羽・当馬の高校柔道編だったりするwww
それなんて帯ぎゅ?
122名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 01:43:09 ID:NCuNUJj+
ドアノブは誰が聞いてても面白いな

・由羽ORレコ→翌朝ニヤニヤ
・当て馬→カワイソスw
・姉→弟奪還フラグ
・由羽&レコ→せっくる開始

大穴で全員w
123名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 10:29:34 ID:ZTNelQEs
俺は
悲鳴に飛び起きた当て馬ガチャガチャ→部屋の中を察した周りの面子が引きずって帰る
と推察したw
124名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 12:41:04 ID:BMJZT+FV
ガチャガチャが由羽&麗子ならエロス突入の可能性が出るが…
それ以外はエロスに発展しにくいからなぁ…



いや、由羽&麗子以外でも勿論いいんだよ?
125名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 05:57:07 ID:F+cWDgzd
・一流の自演
126名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 11:00:23 ID:Nx9JlNj0
>>125
どうやってw
127名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 11:49:17 ID:LMmUI88d
訓「ここで注目してほしいのは鍵を締めたのはいちるという事だ。
  俺はいちるを信頼するあまり“鍵は締まってる”と思い込んでいた……
  だけど実は鍵は締まってなんかいなかったとしたら!」
一流「ぁん…焦らさないで……訓」
訓「だがドアノブになんら細工された痕跡はなかった……
  もし犯人がいちるなら何らかの時限装置を使わなければ犯行は不可能だ」
一流「そんな…ところぉ…」
訓「だが俺は念入りな調査の結果、天井に糸状のものが引きずられた後を見つけた。
  後が残るような強度を持つ糸……由羽の釣り糸ではないか?
  そう、さらに時限装置としてクーラーボックスの中のドライアイスを使ったとしたら?」
一流「そんなに吸ったら…跡、残っちゃう…」
訓「ドライアイスならば痕跡は残らない。さらに千紗さんの持ってきた鈴
  あれの中身にドアノブが連動してたとすれば……なぞは全て解けた!」
一流「溶けちゃううぅうぅぅ!」
訓「さぁ、お仕置きだ!」



訓「……っていう経緯で、週七回のHが週六回に減ったんだ」
由羽「それはノロケなのか?」
128名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 17:36:24 ID:/clAvJBX
迷推理だなw
129 ◆6x17cueegc :2007/10/26(金) 18:55:56 ID:UEOnkcuq
皆さんおはようございますこんにちはこんばんは。これからずっとの人でございます。

どうも『これから』も『とある異国』も書く気にならなかったので、気分転換に短めの奴を書いてみました。
私はあれもやりたいこれもやりたいで内容を詰め込みすぎるケがあるので、それをなるべく我慢するための練習文です。
題名は『キンモクセイの頃』。当然のことながら非エロです。

それではどうぞ。
130キンモクセイの頃 ◆6x17cueegc :2007/10/26(金) 18:56:55 ID:UEOnkcuq
「サイ!俺、部活の朝練あるしもう出るけど、遅刻するなよ!」
僕達2人のための子供部屋に設置された2段ベッドの下から声が響く。
「……うん。いってらっしゃい、セイ。」
「おう!」
バタン、と乱暴にドアが閉じられる。その余韻が頭に響いているうちに枕元の目覚まし時計を持ち上げる。
「6時、10分か……寝よ。」
目覚ましを置きうつ伏せに枕に顔を埋めると、もう一度夢の世界に戻る。

朝、時間は8時15分。始業まで後5分。
あくびをかみ殺しながら高校へのダラダラと長い坂を歩いていく。もうすぐ1時間目の始業時間だから、皆もの凄い顔をして自転車を漕いでいる。
うちの高校は坂の上に建っていて、そこへ登っていく道は1本しかない。だから全校生徒がここを登っていく。
登校時間によっては割合狭めのこの道は高校生で埋め尽くされるが、この時間帯は電車やバスの時間の関係もあって歩いている人は殆どいない。
僕はというと、家が近所なのでギリギリまで家を出ない。そのせいで遅刻したことも多いのだけど、とある理由で最近は遅刻をしていない。

てくてく歩いていると、隣に僕の遅刻を減らした原因が立った。
「おはよう兼木(カネキ)君。今日もギリギリだね。」
同じクラスの三嶋桂華(ミシマ ケイカ)だ。
「……おはよう。」
今ここにいるお前が言うなよ、と言いたくなったが寝不足でダルかったから口にはしない。

彼女という人を一言で表すなら、『文武両道』だ。頭の方は勉強は学年でトップクラス、全会一致でクラス委員に推薦される才女。
身体のほうは体育祭でも女子リレーで陸上部を押しのけクラスのエースとしてアンカーを任される運動神経の持ち主。
ついでに顔も十分美人の範疇だし、プロポーションも抜群。特に胸の辺りが。
性格は一言で言うなら冷静沈着。口数は少なめだが決して冷たいわけではないようだが、曲がったことを許せず、思ったことをズバズバ言うタイプらしい。

そんな学校全体の憧れの的と何故か一緒に登校しだしたのはつい最近からだ。本当にたまたま一緒になっただけなんだけど、なぜかそれが続いている。
ただ彼女は必要以上のことは喋らないし僕は口下手。こうして2人黙って並んで歩くと言う風になってしまった。
実は僕は彼女に好意を抱いているのだけど、彼女は僕のことをどう思っているのだろう?
毎朝一緒になるのが偶然だとしても、嫌われてはいないんだろう。本当に嫌われているなら時間をずらすだろうし。

ふと何かが香って鼻を鳴らし立ち止まる。そんな僕を横目に彼女は僕を置いていくが、数歩歩いて振り返る。
「どうしたの?……キンモクセイ。」
僕の立ち止まった理由を嗅ぎ付けると一言声を漏らす。生垣に植えられた小さな黄色い花が強く自己主張していた。
「好きなの?」
「あ、えっと……」
「私は好きだな、この花。」
唐突に話しかけられて僕は言葉に詰まってしまった。しかし彼女はそんな僕を気にする様子も無く再び口を開く。
彼女にとって一度に二言以上話すのも自分について何かを語ることも珍しいことだった。自然、次の言葉を待つ。
「飴玉みたいなにおいがして、本当に好き。」
「……それは僕も。さ、遅刻しそうだから急がないと。」
珍しい光景に立ち会えたので出来ればこのまま話を聞いていたかったけど、遅刻するのはマズい。
僕は彼女の秘密を1つ知った満足感を胸にしまうと、彼女の横をすり抜けるようにして校門へ足を向けた。
131キンモクセイの頃 ◆6x17cueegc :2007/10/26(金) 18:57:32 ID:UEOnkcuq
「しかしよぉ、いつになったら告白するんだ?」
「告白ってなんだよ。」
「いつも寝ぼすけのサイが遅刻しなくなったのは、その娘と一緒に登校するためだって自分で言ったじゃないか。」
その日の夜、部活が終わって帰ってきた弟のセイと2段ベッドの上下で言い争う。ちなみに僕は帰宅部、セイは野球部だ。
「今日だって親戚の葬式で親いないのに、自力で起き出して来たみたいだし。」
「茶化すなよ、セイ。」
「茶化してねえよ。好きなんだったら告白しちまえ。当たって砕けろだ。」
「簡単に言うなよ……お前と違って俺は同じクラスなんだぞ。」
登校は別になっても構わないが、教室の中でまで気まずくなるのは勘弁してほしい。

「じゃあこのままでいいのかよ。バット振らなきゃホームランはおろかヒットも打てないんだぞ。」
「振らなくてもフォアボールで出ればいいじゃないか。」
「俺はフォアボール出さねえもん。」
「そりゃキレとコントロール重視タイプのピッチャーが四球出すのは……てそういう話じゃないだろ。」
微妙に話がずれたのを感じて軌道修正する。うちの高校の野球部のエース様は我が強くて困る。
「まあとにかくだ、俺は応援してるからな。」
「そりゃどうも。」
「んじゃ、おやすみ。」
「おやすみ。」
ベッドの下のセイが立ち上がり部屋の電気を消す。僕は布団を被り目を閉じるが、なかなか寝付けなかった。
明日も遅刻しないように早く寝ないと。

翌日、三嶋が俺の弟に告白したというニュースが学校中を駆け巡った。
何しろ相手は俺の弟だ。しかもつい昨日の夜に僕と彼女の中を応援してくれると言ったばかりだったのに。
三嶋も三嶋だ。今日も登校は一緒だったのに兄の僕にそんな素振りを見せることもしていなかった。
弟の肉親だからこそ言いたくなかっただけかもしれないけど、嘘を吐かれていたようで気分は良くない。はっきり言ってショックだった。

昼休みにセイが来た。渦中の人の登場に教室がざわめいたが、教室に三嶋はいなかったし、そもそも僕が目当てだったからすぐに静まった。
「こういう雰囲気嫌いだ。」
小声で囁くと近くの空いていた席に腰を下ろす。
「サイ、今日の放課後暇?」
「僕が帰宅部なことくらい分かってるだろ。」
「それなら暇なんだな。じゃあ俺の練習終わるまで待っててくれないか?」
「なんでさ。」
憮然として言葉を返すと、僕が何を考えているのか分かったのか声のトーンを抑える。
「噂が立ってるのは俺も知ってる、だけど理由があるんだよ。それ、説明したいからさ。」
「ここですりゃいいじゃないか。俺は構わないし。」
辺りに人は立っていないし、声を潜める方が返って周囲に怪しませることになる。セイもこういうことに無頓着だから問題は無いだろう。
「あの、いや。」
「セイにしちゃ歯切れが悪いじゃないか。」
「……とにかく、よろしく!」
言って席を立ち上がると自分の教室へ駆けて行く。一体なんなのだろうか。

昼休みも終わり近くに、三嶋が教室に戻ってきた。噂を確かめようとする女子に取り囲まれていたが、すぐに授業が始まり輪が解ける。
授業中彼女の席を振り返って表情を盗み見たりしたかったのだが、前から2列目ではそんなことも出来ない。
そんなだから全然授業の内容が頭に入らなかったが、この精神状態ではそれも仕方が無いことだろうと思う。
132キンモクセイの頃 ◆6x17cueegc :2007/10/26(金) 18:58:39 ID:UEOnkcuq
結局言われた通りに野球部の終わるのを待つことにした。たまたま読みたい本もあったし、読みながら自分の教室で待つことにする。
教室内にひたすらページをめくる音が響く。それも2つ。片方は僕のもの、もう片方は三嶋のものだ。
がらんとした教室に三嶋と2人の状況に、今度は手元の文庫本の内容が頭に入らない。どうして彼女は教室に残っているんだろうか。

「ねえ。」
どう声をかけようかと頭を巡らせていると先手をかけられた。飛び上がらんばかりに驚いて文庫本を取り落としてしまう。
机の脚に文庫本の背が当たり派手な音を立てた。それを背をかがめて取りに行く。彼女と目を合わせられない。
「兼木君。」
「何?……う、わ。」
「こっちに向いてくれないから。」
更に呼びかけられて振り向くと、三嶋の端正な顔が目の前にあった。驚いて尻餅をついてしまった。
「だからって、近いよ。」
「そう?」
彼女はしゃがみこんでいた俺に合わせて腰をかがめていたのだが、それを伸ばして僕を見下ろす形になる。
「ちょっと話がしたいの。いい?」
僕の隣の奴の席をガタガタと引っ張ってきて座る。僕も立ち上がると自分の席に座った。

向かい合う形で座ると彼女の言葉を待った。思ったこと、考えたことを率直に口にする彼女だからすぐに本題に入ったのだけれど。
「兼木君は誰か気になる人っている?」
「えっと、その『兼木君』って僕のこと?それともセイのこと?」

この答え方はなんだかおかしいという事は僕自身も分かっているけれど、これは質問への回答用定型文その1みたいなものだ。
今までに僕からの紹介で弟のセイに告白する女の子が何人もいたし、僕に一緒についてきてほしいと頼む子もいた。
女の子達が僕にコンタクトをとってくるときの第一声は決まって「兼木君に気になる人はいる?」だった。
そんなだからいつの間にか過度の期待を持たないようにこんな回答を自分の中で用意するようになっていた。
一応言っておくと、別に僕は僕で、セイはセイだ。劣等感が無いわけじゃないけど、そんなことがあまりにも多いために今ではもう慣れっこだった。

「どうしてそんなことを訊くの?……君に、サイ君に訊いているに決まっているじゃない。」
「僕が訊きたいよ。そういう風に聞いてくる女の子はみんな……って、え?」
気になっている人その人に誰が気になっているかなんて訊かれて、一瞬頭がフリーズする。
「いるの?」
更に聞かれて答えに窮した。そもそもこんなことを女の子に訊かれたのは初めてだったし、『君のことが気になっています』なんて言えるわけが無い。
「あっ、と……いない、かな。」
「……そう。」
目をしばし宙に泳がせてからそう答えると、彼女は落胆したように肩を落とした。
「話って、それだけ?」
「うん。それだけ分かれば十分。」
彼女はそう言うと席を立った。

立ち上がるときにふわりと何かが香った。すんすん鼻を鳴らして嗅ぎ分ける。
化粧品の類はよく知らないけれど、なんだか不思議な匂いだ。化学薬品臭くなく、なんだか落ち着ける甘い匂い。
どこかで嗅いだ匂いだな、と出来の良くない頭脳をフル回転させて記憶を絞り出すと、運良く何かがカチリと噛み合った。
「キンモクセイ?」
思ったまま口に出すと、立ち上がりかけた三嶋がもう一度席へ腰を下ろす。

「気が付いた?」
また顔を寄せてくる。上体をこちらに突き出すようにして顔を寄せてくるから、その、なんだ、豊かな膨らみが視界の端で強調されている。
「だから、近いよ。」
「でも、こうした方が匂いは良く分かるでしょ?」
「そりゃそうだけどさ……」
彼女の胸の谷間を視界に収めない様に右上に視線を逸らしながら言い返す。
彼女と教室に2人きりだというだけでこんなにも鼓動が速くなっているというのに、こんなに近付かれたらどうなってしまうのだろうか。
133キンモクセイの頃 ◆6x17cueegc :2007/10/26(金) 18:59:34 ID:UEOnkcuq
「兼木君がね、昨日の朝言ってたでしょ?」
「え?」
僕はキンモクセイに似たいい香りと目の前の彼女の顔に酔ってぼうっとしていたのだが、
「キンモクセイの花の香り、好きだって。だから探してみたの。」
「僕の為に?」
「うん。だから気がついてくれて、すごくうれしい。」
僕の為に。そう言われただけで頬がかあっと熱くなり、ドクドクと鼓動が激しくなり、呼吸が浅くなる。
これは勘違いしてもいいんだろうか。でも三嶋は弟に告白したんじゃないのか……?訊いてみないと分からないけど、訊いてしまっていいんだろうか。

しかしうやむやなままでいるのも苦しい。腹を括る。
「1つ、質問しても良い?」
「何?」
「噂でさ、ウチの弟に……」
「告白したってアレ?」
「うん。いや、あの、別に兄弟だから気になるってだけで、別に君が気になるとかじゃなくてっ……!」
最後に声が上ずる。腹を括ったつもりでもヘタレてしまった。かっこ悪いな、僕。ほら、三嶋もキョトンとしてる。いきなりこんなこと言ったからだよ。
自分が情けなくなって俯いてしまうが、僕の顎に手が添えられて頭が持ち上げられた。視線が真っ直ぐぶつかり、目を逸らせない。

「噂は噂だよ。『付き合ってほしい』って――ちょっと一緒に来てほしいって意味ね――言っただけなのが、面白おかしく広まっただけ。」
「ああ、そうなんだ。」
聞いて大きく息を吐き出した。そうならそうと言ってくれればいいのに、あの弟には意地悪をするなと言いたい。
「安心した?」
三嶋がふっと笑う。彼女の笑みを見たのは初めてかもしれない。
「うん。もし弟と付き合いだしたんなら、僕とはちょっと付き合いにくくなっちゃうだろうしさ。……ところで手、離してくれない?」
彼女の手はまだ僕の顎へ添えられている。彼女の手はひんやりしていて気持ちいいけど、あんまりずっとこうしているのはなんだか申し訳無い。

「ねえ。離してくれな……」
「私ね、君のことが気になってるの。正直弟君はどうでもいい。」
夢にまで見たような一言は意外とあっさり吐かれた。僕は口を挟むことも出来ず、彼女は続けて喋り続ける。
「だから、君のことをもっと知りたい。」
思わず唾を飲み込んだ。渇いた喉が張り付いて痛い。その痛みがこれが夢ではないことを告げる。
「ダメかな。」
「ダメじゃない!……全然、ダメじゃない。」
弾かれるように声を張り上げたが、もう鼻が触れ合いそうなほどの至近距離だ。彼女の端正な顔が一瞬歪むのを見て、静かに言い直す。
「さっきは嘘ついちゃったけど、僕も君のことが気になって……ううん、片思いしてたから。」
「片思い……」
「うん。毎朝好きな娘と登校できてドキドキしてた。」
『好きだ』と言うことを散々躊躇していたのに、いざ言ってしまうと堰を切ったように言葉が溢れてくる。

ひとしきり僕に話させてから彼女が口を開いた。
「君は片思いなんだ。……私はまだ恋なのかは分からないな。本当に気になってるくらいだった。」
衝撃の一言。じゃあ僕は先走ってしまったってことなのか。今までの高揚した気分が一転、どん底に突き落とされる。
「ああ、あ、あ、あのっ……!」
「何?……告白したこと?気にしなくていいよ。ちょっとだけうれしかったから。」
顔面蒼白だろう僕の顔を覗き込みながら、面白いものでも見るかのようにニコニコしている。実際顔色が赤くなったり青くなったりして面白いのだろう。
「だけど、答えは待ってもらってもいい?まだ君のことが好きなのかどうか分からないの。自分で気持ちの整理がつけられないと付き合えない。」
無言で首を縦にぶんぶん振る僕。
「そう。ゴメンね、変な性格で。」
「確かに変だけど……でもそういう頑固なところ、僕は好きだな。」
さっきとは違って『好き』というフレーズを使う。ほんの少しの自信を込めて、使う。
うん、僕は三嶋のことが好きなんだ。
「キンモクセイが散るまでには答え、出すからね。……一緒に帰ろ?」
一瞬セイの顔が思い浮かんだが、僕の中の天秤はあっさり彼女の側に傾いた。
134キンモクセイの頃 ◆6x17cueegc :2007/10/26(金) 19:01:16 ID:UEOnkcuq
「おーい、サイ!……って、アレ?」
教室の戸を引き開け、練習終わりのセイが入ってくる。しかしいるはずの兄はいない。
「もう帰っちゃったのかな。」
サイが放課後残るように頼んだのは、今日の昼休みに三嶋から頼まれたからだ。
どうして本人に直接言わないのか、と訊いたら、なんだか恥ずかしいから、と言われた。ピンと来てその申し出を受けたのだが……
「まさか、なぁ。」
上手くいってほしいとは思っているが、平々凡々なあの兄が成功したとは思えない。どうなったのかとても気になる。
まあいいや。家に帰ってから話を聞いても遅くは無い、うんざりするくらい訊いてやろう。そう心に決めて彼は教室を後にした。


………………………………

朝、時間は7時50分。始業まで後30分。時間は十分にある。
「おはよう。」
「おはよう。」
坂の下からなんとなく学校の方を見上げていると、後ろから声をかけられる。三嶋だ。僕も振り返りながら返事をした。
薄いベージュのコートを羽織り、首には赤いマフラー。そんないでたちの彼女が僕の横に立つ。吐く息が白い。
「行こう。」
「うん。」
僕は手を伸ばすと彼女の指を絡め取った。軽く握ると強く握り返された。同時に身体も寄せてくるので、香水の甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
「今朝は一段と寒いね。」
「今年一番の冷え込みなんだって。でもサイの手があったかいから寒くないよ。」
「そんなに体温高いかな、僕……」
そんな他愛のない話をしながら坂道を登っていく。

まだ僕達は始まったばかりだけど、キンモクセイの香りのように甘い関係はいつまでも続きそうだ。
135キンモクセイの頃 ◆6x17cueegc :2007/10/26(金) 19:03:08 ID:UEOnkcuq
と以上です。

文章を短く纏めるために、かなりいろいろなところを端折って書きましたので補足を。
・主人公とヒロインが一緒になったのは偶然だけど、毎日一緒になるのはヒロインが坂の下で待っていたからで、
今回のイベントがあるまでは彼女は毎朝30分近く路上に立ちっぱなし。
・ヒロインがわざわざ宣言をしたのは不器用な性格だからで、ちゃんと相手に断らないとそういう目で見てはいけないと思っているから。
・最後のシーンは2ヶ月ほど後の話で、2人が正式に付き合いだした頃のつもり。

どの設定もキャラに喋らせることも出来たのですが、ちょっと長くなっちゃいますんで削りました。

名前の元ネタについて。
双子の名前はそれぞれ犀(サイ)と星(セイ)。兄貴の名前は兼木 犀(カネキ サイ)となります。
最初はそのまま『金木 犀』にするつもりだったんですが、あまりにそのままになんで1文字いじりました。
弟とセットで犀星。室生犀星から貰っています。『犀』の字がつく名前の人、この人くらいしか思いつかなかったので。
どうでもいいですがヒロインの名前はキンモクセイで有名な神社の名前と、キンモクセイの異名からいただきました。Wikipediaって便利ですね。

しかし書けば書くほどヒロインが綾波系になるのはどうにかならんのか、俺orz
136名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 22:43:43 ID:ew9p0JKt
時期ですなあ
GJ!
137名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 23:35:48 ID:xI1tvMYo
室生犀星なんて高校の時に聞いた事あるだけだわ。
あの人の詩は結構好きだけど、よくは知らないな。
やっぱ文書く人はそういうとこが違うなぁ。
なにはともあれGJ!
138名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 23:39:38 ID:lfD4va6p
>>135
GJ!

関係ないけど、セイと聞いて
ザス!サイ!サ!という古い漫画のセリフを思い出してしまったぜw
139名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 02:52:25 ID:x0yD5vYX
投下致します。注意無し、エロ無しです。


「好きだって言っているでしょう、いい加減に信じてくれないと私は…」
目の前の男を半眼で睨む。
「はいはい、冗談はもういいから、しかしお前も飽きないね〜そのネタ」
人の告白を聞いてこの態度、何か間違ってない?
「だから違うって言ってるでしょ、大体…ネタで1日20回以上も告白しないよ」
因みに一回一回が一世一代の告白である。
「ほれ、チャイム鳴ったから自分の席に戻れよ〜」

授業中はずっと彼を見ていた、途中チョークが一斉に何本か飛んで来たが全て投げ返した、
一体誰が投げて来たのかは分からない、だがその後から先生の声が聞こえなくなった。
「先生は、きっと私にチョークを投げて来た不審者を追っていったのだろう」
「「「「んな訳あるかっ!!」」」」
「まぁ…ぶっちゃけ先生の事なんてどうでも良い」
「いやいや!! 良くないだろ」
「どうでも良い」
「だから!!」
「どうでも良い」
横に座っている男、名前は知らないし興味も無い。
「ちょと!! もう一学期も終わりなのに覚えてないって…まぁ良いや俺は…」
どうでも良い人との話は省略します。
「扱い酷くないか!?」
取り敢えず授業も終わったのでお弁当を2つ持って彼の所へ。

彼は授業が始まって10秒きっかりに眠りの世界に誘われた、彼としては頑張った方だ。
ぐぅ…と小気味の良い音が鳴り彼は強い使命感に燃えた、
「飯は食べれる時に食べないと後悔するな…何時バーニアで吹っ飛ばされるか分からんし」
訳の分からない事を言いながら食堂に向けて歩き出そうかとしていた。
「今日は食堂に行かなくても良いよ、私作って来たから」
後ろを振り向くと、弁当が入っているであろう袋を2つ持った女子が居た。
「ずっと食堂ばっかりだと栄養偏っちゃうよ? だから私が朝の5時に起きて作って来たから」そう言いながら彼女は近づいて来て俺の前に来るとはっきりと周りに聞こえる声でこう言った。
「一緒に食べて、お弁当と私を」
俺の脳のキャパシティを越えたせいで絶句して何も言えない俺。
周りではアパム、アパムと騒いでる奴らの声が俺には遠く聞こえていた。

此処から全ては始まったのかもしれない。
140139:2007/10/27(土) 02:55:44 ID:x0yD5vYX
やべっ!!改行し忘れた、しかも短いw
小ネタなんで許して下さい。
141名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 22:03:47 ID:71dzD6zC
>>139
よしわかった。
許すので続きを投下してくれ。
142名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 08:04:36 ID:sDn/VcvE
>>135
GJGJ!
安田の続きも読みたかったのですが、これはこれで良いですねー。
ちょっとこれの続きも早く読みたいですよ?

タイトル、なぜか【キンモクセイのなく頃に】と読んでしまって
【〜解】を期待したのは秘密w

>>139
続き、あるんですよね? 勝手に wktkしてますよ?

あと、もう少し前の人の投下から時間を空けた方がいいかも、と思いました。
流れをぶった切って小ネタだと、スレでみんなが反応しづらくなっちゃう気がします。
143名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 19:03:04 ID:aFahyn0I
>>全て投げ返した、一体誰が投げて来たのかは分からない
・・・なんかオカシクね?
細かいとこ突っ込んでスマン。
GJ。
144名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 00:50:57 ID:0SlFFCqP
涙が自然にあふれてきた。
自己の呼んでいる素直クールエロパロ板の作品こそが最高であることを目の当たりにしたから。
いつか自分もたどり着きたい理想の書き手の作品が目の前に輝いているから。

いつか私も…ってことで皆様GJです!!
145名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 19:32:31 ID:0SlFFCqP
そういえば保管庫の話どうなったの?
146保管庫ミラー”管理”人:2007/10/30(火) 04:05:39 ID:w/KKacMN
保管庫(ミラー)管理人です。

>>145さん
ここで保管庫を管理しています。

http://red.ribbon.to/~hachiwords/scool/

メンテは続けていきますが、
本家が存在している限りはミラーのつもりでいます。

なにか問題などがあればツッコミよろしくお願いします。
147名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 08:10:17 ID:IllMBRkI
管理人さんに一言、乙です
148名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 17:38:52 ID:KyaYQHM3
>146
すいません、何故か見れないんですが。Forbiddenと表示されてるんです、何故か分かる人教えてください。
149148:2007/10/30(火) 18:17:05 ID:KyaYQHM3
ごめんなさい、別のとこから検索すればみれました。
なにやってんだ俺orz
150名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 18:21:50 ID:IcRzkzwK
2chからの直接 JUMPははじかれているみたい。

リンクから飛ぶんじゃなくて、
URL "http://red.ribbon.to/~hachiwords/scool/"
をコピペなり手入力したら見えるんじゃないかな。
151名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 18:29:56 ID:UqSb0GIT
専ブラ、Janeからは飛べるな。IEは弾かれたのか?
152名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 19:29:36 ID:/QB/bP6G
>>146
素直クールの星が足りなくね?
153名無しさん@ピンキー:2007/10/31(水) 02:26:29 ID:9B90tl4/
そういえばさ、PART4の最後に投下された作品って、何故か保管されてないよね。なんでだろ?
154保管庫ミラーの人:2007/10/31(水) 05:28:52 ID:58j7UyLo
たびたびおじゃましてすみません。保管庫ミラー管理人です。

>>152
ラーメン屋の話『素直クールの星の下(もと)に』と
妹の話『見よ、飛雄馬・・・あれが素直クールの星だ』は
収録を確認しましたが、他になにかありましたっけ?

>>153
「櫻嵐舞う◆ELbYMSfJXM」ですね、収録しておきました。

part4ラストあたりは埋めネタだったので収録対象から
抜け落ちてしまったのではないかと。

収録作品は見落とすこともあるかと思いますので、ツッコミ
いただけるととてもありがたいです。
連絡はこのスレでも構わないのですが、直接メイルなり
保管庫ミラーの掲示板にでもお気軽にお伝えください。

155名無しさん@ピンキー:2007/10/31(水) 08:20:29 ID:LdGdHqik
乙なんだぜ
156ひまだからほっしゅ:2007/11/01(木) 00:16:41 ID:e5Xmpha4
ほしゅss


うそつき男と箱入りクール


とある電車内にて

車内放送が次の停車駅を告げ程なく電車は減速をはじめる。


「男、ちょっと質問があるんだが」
抑揚の無い声が頭上から聞こえた。
先ほどまで運転席を覗いていたはずのクーがそこにいた。

『なんだいクー?ここで答えられるような事なら答えるよ』
読みかけの本を閉じつつやんわりと防衛線を張る
事、公共の場において彼女の質問は刺激が強すぎるのだ。

「駅の近くになるたびに聞こえてくるビープ音はなんなのだ?」
今回はきわどい話題ではないようだ。

最近の電車は停止位置の誘導に電子音が鳴るものがある
音の間隔で減速位置をしらせるのだ。
それを踏まえた上で僕はウソをつく

『それはねクー、後続の列車からのミサイルロックだ』
自分で言うのもなんだがあんまりなウソである。
彼女の答えを待たずに先を続ける。
『日本の運行ダイヤは世界に類を見ないほど正確なのは知っているだろう?』

「それがなんでミサイルにつながるんだ?」
彼女は普通に返してきた
疑ってもいないが特に驚いてもいないという感じだ。
157ひまだからほっしゅ:2007/11/01(木) 00:17:31 ID:e5Xmpha4
強敵である。

『クー、電車が止まるとどうなる?』
真顔で質問を掛ける

「困るな」
真顔で即答する彼女
やはり手強い。

『なら電車を止めない為にはどうすればいい?』
まだだ!僕の優位は揺らいじゃあいない!!

「そこでみさいるなのか?」
彼女はかすかに目を見開く。
いったい彼女の脳内でどんなシナプスの連結が有ったのだろうか?

『そうだ!!駅で停車している間にも後続の電車は距離を詰めている
 もし追いついてしまえば緊急停止なんてことになってしまう、じゃあどうするのか?』
このまま畳を掛ける
「どうするんだ?おとこ」。
年上の彼女は目を輝かせいつもより幼く見える。

『そこでさっきのビープ音なんだあれは後続の列車からレーダー照射を受けると鳴り出す
 ロックされると音の間隔が早くなるそしてミサイルが発射されると連続音になる。』
一息に喋り切る。
だが…
「まてまておとこ。私を箱入りだと思ってかついでいるな?」
くそっ 復帰が早いな。
だんだんと旗色が悪くなる。
158ひまだからほっしゅ:2007/11/01(木) 00:18:58 ID:e5Xmpha4
『事実だ。』
ウソである。
だが悟られるわけにはいかない。

「そのわりにはほかの乗客が騒がないな」
彼女は冷静に切り返してくる。

『これが日常だからさクー。券売機で切符を買った時、もしくはパスモで改札をタッチした時に
 運転手と車掌に命を預けてるんだ。みんな知ってるから騒ぎなんて起きやしないんだ』
こちらも冷静に切り返す。
まだ焦るような時間じゃない。

「だがそんな話は初耳だぞ?第一前のを列車をミサイル攻撃したら進路が塞がれてしまうじゃないか!」
もっともだ。
心の中で同意しつつ切り返す。

『そこは各鉄道会社の腕の見せ所なんだ。運転手は後続の気配を車両越しに感じペースを見切る。
 車掌はミサイルが発射されれば直ちにチャフ、フレアを射出してECMを作動させる。
 広報は各関係機関への欺瞞工作だ。』
ねーよwww

「なんと!」
のりきったか?

またビープ音が鳴り出す。


『話しているうちにもうすぐ次の駅だぞクー?』
今度こそたたみきる。。

「どうするんだ!男!!」
珍しく焦る彼女。

『クー、この電車の運転手は旧国鉄時代から西部戦線で戦ってきたエースだ。
 安心して見学してくるといい』
ここで最後の大嘘だ。

「わかった男!行ってくる」
うれしそうに彼女の後姿を見送りつつ僕はやり遂げた達成感と罪悪感に苛まれていた。
いったいどこで引き際をまちがえたのか?


終われ
159名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 02:19:50 ID:ZhHVt+GB
GJ!&ねーよwww
160すなおくーる×おとこくんΖ 朧月:2007/11/01(木) 07:01:21 ID:souXxBds
千紗「ハイ、どうも。高校編に入って学校が違うせいで元から少ない出番が更に減りそうな伴田千紗です。
   私のファンは!?誰か私の濡れ場を見たい人は居ませんか!!(でも当馬はパス。タイプじゃない!)
   ……失礼、取り乱しました作者より電報が届いてます。え〜と……

   「すなおく一る×おとこくん」は もうちびっとだけ続くぞ!
   番外編の主人公は、今イチ人気の無い主人公・訓にかわって
   そのチャランポランな親友、一野進由羽じゃ!

   ……以上です。でもタイトルのΖはZ(ゼット)ではなくΖ(ゼータ)だったりします。
   尚、この下の寸劇は著しくキャラが崩壊してますので、ネタ心とオタ心を持つ人のみ閲覧することをオススメします。」

訓「……ニンキナイ……OTL」
由羽(素直に喜べねぇ……)
いちる「わ、私の中で訓は一番だよ!!」
迩迂「私も訓ちゃんの方が好きー!!」
いちる「!!」
レコ「……私も」
由羽「レ、レコちゃん!?」
レコ「冗談よ。私は訓も由羽もどっちも好きよ。良い男二人、股間に弄する事あれば女の本懐にすぎるものはないわ」
いちる「!!」
当馬(つまるところ、乙古と一野進で3Pしたいと…?)
茂部「ボウズ、妙なこと考えてると東京湾に沈だぜ?」
粲「大変だわ!浮気を危惧したいちるちゃんが迩迂ちゃんと麗子ちゃんに向かって斧を!斧を!!」
夏「素直クール・ダメ姉・ヤンデレの三国志が今、始まろうとしてる!!」
当馬「……誰?」
いちる「お義母さん、お義父さん!!結婚式にはお呼びしますから出番が無いからって頑張らなくても大丈夫です!!」
由羽「ええい!この勝負の決まっている争いを止めれるのは訓、お前だけだ(性的な意味で」
訓「由羽…すごいヤツだよ おまえは……お前の人気はオレにはとてもかなうモノじゃなかった…
   住民が望むのは おまえだけだ……(略)……がんばれ由羽……おまえが ナンバー1だ!!」
レコ「由羽が主役なら、私がヒロインよ。苦節1スレ跨ぎ……我が世の春が来たわーー!!」
???「それは違います。思いこまないで下さい。私と由羽さんはときを越えて惹かれ合う……」
訓「馬鹿な……彼女がヒロインだと?これでは××すぎて規制の冬が来るぞ!」
いちる「大丈夫よ、先人は言いました“この作品に登場する人物は全員18歳以上です”って」
当馬「いや、お前たち中学生だったじゃないか……」
由羽「ここを見てる人だって21歳以上なんだから、大人になれよ、まるで・ダメな・オス…略してマダオ」
当馬「誰がマダオか!誰がマダオか!!」
條「駄目な雄……ED?(出番あった!)」
当馬「勃つから!ホラ、勃つから!!左手は添えるだけで勃つから!!俺の愛馬は凶暴だから!!」
條「キャーーー!!」
いちる「変態」
レコ「粗末なモン見せんじゃないわよ」
迩迂「可愛いねぇ〜」
粲「大丈夫よ…きっとまだ成長するわ」
???「……貴方って最低の屑ですね」
当馬「(;゜Д゜)」
訓「お前は今、泣いていい……」
由羽「無茶しやがって……」

千紗「……え〜、以上、楽屋裏からお送りしました。次レスから記憶をリセットして外伝をお楽しみ下さい」









.
161すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/01(木) 07:03:54 ID:souXxBds
校長先生の話というのは大概にして長い。短い校長先生の話など見たことがない。
これはアレではないか?もしかして話してる時間分給料でも貰ってるんじゃないかと邪推したくなる。
まあ、最後まで聞いたことなんて一度も無いが。
俺は早々に夢の国へダイブしていってしまったから。
「ふぁぁ〜〜」
入学式が終わり、背伸びをしていると前方から桃色前線が足を伸ばしてきた。
「や、由羽」
「ひさしぶり〜」
俺の親友・乙古訓と、その彼女の砂奥一流だ。
「あのよぉ、入学式ぐらいくっついてるの止めたらどうだ?」
「いちるが離してくれなくてな」
「あんまりアレだと、目つけられて来年別々のクラスになっちまうぞ?」
日頃の行いがよろしかったのか、高校でも俺――一野進由羽と訓は同じクラスだった。勿論、一流ちゃんも。ついでに当馬まで。
「由羽くんは麗子が遠くへ行っちゃったんで、淋しいんだよね」
「ん……まあな〜。春休みは親友も、その彼女も付き合い悪かったし〜」
っていうか、メールぐらい返事しろって。
「悪かった。麗子から連絡は?海外派遣って」
「手紙は何通か。元気みたいだぜ。半月もしたら戻ってくるってよ」
レコちゃん、スゲー達筆で俺のヘタクソな字で返信するのが躊躇われるが。
すると訓は俺の肩を引っ張って一流ちゃんに聞こえないように囁いた。
「お前から麗子に言っておいてくれないか。あんまり変なものいちるに送るなって」
「変なモン?」
「…………精力増強剤だ」
ドーピングですか。
「いや、もう肉体改造……改造人間?」
エ〜…春休ミ、オマエラナニシテヤガリマシタカ……
「ふっ……」
遠い目をするなよ、親友。
「つくづく思うよ、男は出してばっかりだから身体がもたないって……」
「桜舞う初々しい季節にする話じゃねーな……」
俺は伸び始めた髪を掻き揚げながら、溜息をついた。
「ま、柔道の方、おろそかにしないでくれよ。本気だからな。俺達で優勝旗」
「分かってる」
「訓、由羽くん、写真取ろうよ」
一流ちゃんがデジカメを取り出して誘った。
「俺はお邪魔なんじゃないの〜」
「まさか。由羽くんがいないと誰がカメラ撮ってくれるの?」
おいおい、カメラマン扱いですか……
「冗談だよ、由羽、本気で落ち込むな」
「落ち込んじゃいないが、あてられてるんだよなぁ……」
やっぱ彼女が欲しい……頭の上に落ちてきた花弁を払いながら俺は願った。
「おい!そこのお前!!」
「ん?俺か」
生徒の声じゃない、大人の声に俺は呼び止められる。
「そうだ」
厳ついが、スーツを着ている。まあ普通に考えてこの学校の先生か。対抗が入学式に出てる生徒の父兄、大穴で生き別れた俺の兄ちゃん。
「何だ、その髪の色は」
「……地毛ですけど」
その事で不快な思いをした事は数えればキリがない。何度同じ目に遭っても腹が立つ。
「あの、貴方は誰ですか?」
罵倒を腹の中に飲み込んでる内に、訓が俺の代わりにソイツに聞いていた。
「この学校の教師だ」
「由羽くんは地毛です。それは私達が証明できます。でも、そもそもこの学校の校則では頭髪は自由な筈ですが?」
一流ちゃんが教師だという男に追求する。
「それは生徒が勝手に押し通したことだ。俺は認めていない」
憮然とした顔でその男はむちゃくちゃな事を言った。
「先生は認めて無くても、学校は認めています。関係のないことです」
「それにマズ、由羽くんに誤るべきです」
俺の親友とその彼女は実に理路整然としていらっしゃった。
が、それだけに男を逆撫でする結果になる。
162すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/01(木) 07:07:01 ID:souXxBds
「お前達、どこのクラスだ。名前は……」
ちっ…
「そこの二人は関係ねーだろ、オッサン。たっく、県下の一高の教師ってのはこんなのとはガッカリだね」
「由羽!」
「ホラホラ、さっさとデートでもしにいきな。お前達がいちゃついてるだけでも、このオッサンはムカついてるんだぜ?
 だって、このオッサン、モテそーにねーもん。訓にはわかんねーだろうけどな、そういうヤツの嫉妬はロクでもない癖にしつこいんだ」
さて、挑発としてはこれで上出来だろ。
「ぐぬぬ……」
おー、顔真っ赤だぜ、オッサン。
「お前、俺が体罰も出来ないような昨今の貧弱な教師だと思うなよ」
「お前じゃねーよ……俺は一野進由羽だ!」
俺の名前はしっかり覚えてもらわねーとな、訓や一流ちゃんを忘れるぐらいに。
「俺は乙古訓!クラスは1−Eだ」
オイ、親友……
「私は砂奥一流、クラスは一緒」
……このバカップルは俺の好意を無駄にして〜〜
「……殊勲な心がけだ。一野進、乙古、砂奥か。だが、正直に答えたから罰はないと思うのは甘いぞ。それに俺は罰も男女平等だ」
「センコーのすることか!」
アッタマ来たぜ。入学早々、謹慎くらっても構いやしねぇ、コイツぶん投げる!!
「教師だからできるんだろうぉ!!」
男は素早い足裁きで後ろに引き、俺が伸ばした腕は空振りする。
「何!?」
「先に手を挙げたのはお前だからなぁ!!」
顔を醜く歪ませた男の拳が間近に迫る。俺は思わず目を瞑った。
「由羽!!」
く…………
「ん?」
寸止めか?それなら目をつぶっちまった俺はスゲー格好悪りーが……
「なんだ?」
俺の視界は黒一色だった。
「男女平等と聞こえました。結構な事です」
腰まで届く長い栗色の髪……
この学校のセーラー服を着たその女は
「1年E組、守猶撫子(スナオ ナデシコ)、そちらのお三方にお味方致します」
伸ばした折りたたみ傘で男の拳を止めていた。
「…………」
俺は息を飲んだ。桜の花片の中で佇む彼女が美しかったからではない。いや、それもあるんだが
それ以上に、なんていうか……漫画みたいな言い方をすりゃ、「隙がない」ってそんな感じを受けた。
凜とした彼女がそこに立つだけで、舞い散る花片すら規則を持って落ちていくような……そんな張り詰めた空気になる。
「二口(フタクチ)先生、何をしてるんですか!」
この学校の教師らしき人が、男を咎めながら近寄ってきた。
「一野進?」
「当馬?」
教師と一緒についてきたのは当馬だった。入れ違いに男は立ち去る。
「君たち、二口先生に何か?」
「まぁ……ちょっと」
「地毛の髪の色を注意されたぐらいです。ですが――」
撫子と名乗った女の子は淡々と説明を教師にした。
「……災難だったな」
「別に」
俺は彼女を見ながら、当馬に答えた。
「あの先生は?」
「この学校の柔道部の顧問だ。俺の親父の後輩でな、案内して貰っていた」
訓の質問に当馬が答えてる内に、彼女は慇懃に挨拶をするとその長い髪を翻して小さくなっていった。
「あれ?……なんだ、守猶と知り合いじゃなかったのか?」
その様子を見た当馬はポロリと口にした。
「彼女の事、知ってるのか!」
「なんだよ……一野進、意気込んで」
あ……いや……何でだろ?
「そういや、お前達が警察道場に来る日は居なかったかもな、彼女」
163すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/01(木) 07:09:42 ID:souXxBds
「彼女も柔道するの?」
「いや、剣道だ。めっぽう強い」
一流ちゃんの問いに答えた当馬は真剣な面持ちだった。元から顔を崩すヤツではないが、どうやら彼女は本気で“めっぽう強い”ってことなんだろう。
「剣道か。たしかに道場は一緒だけど……よく顔知ってたな。知り合いって感じじゃなかったけど」
訓の質問に、もう彼女が去っていった方向を見ながら当馬は答えた。
「目立つのさ。二刀流だからな。女子で二刀流ってのはな、男子でも滅多に見ないのに」
「そうなのか?」
「ああ。しかし同じ高校だったんだな」
それから当馬の県内の剣道談義に入っていったが、俺は彼女と同じ色の自分の髪を摘みながら、春の空を見ていた。










春の空は青というよりは水色に感じます。全体的に色が淡いからです。
淡いけど、それは消え入りそうな淡さではなくて、瑞々しい淡さ……そんな気がします。
それにしても……
スケッチブックを脇に抱えながら、指でフレームをつくります。
「……邪魔です」
建設途中で止まっているマンション。著しく風景を害してます。
もう殆ど完成してるのに、大人には色々事情というものがあるのでしょう。
「……子供の私には関係ないですけど。迷惑です」
ここは去年まではお気に入りの場所だったのです。
私は風景画が主です。それもあまり人工物や人間が入ってない自然の光景が。
国道に面しているとはいえ、この辺りは比較的高い建物は少なかったので私は好きだったんですが。
建物があるのは別に悪い事じゃないとは思います。それも一つの風景になりえる。けれど、あのマンションはバランスを壊してます。
「……そうです、あのマンションに入ってしまえばいいんです」
我ながら名案に思います。鍵がかかってるとはいえ、それ以外は無人です。こっそり忍び込めば問題ないでしょう。
著しく景観を壊す(あくまで私にしてみれば、ですが)あのマンションも、視点にすれば申し分ない高さです。
私は小走りでマンションに向かいました。



「はぁ、はぁ……」
私はあんまり体力がないです。元から病弱なんです。家が道場で子供の頃から剣道をしてて、それでもこれです。
額の汗を拭って、マンションの入り口を見ると、高校生?の男の人と女の人が入り口に立っていました。
私は慌てて身を隠します。勝手に忍び込むんだから、人目につかない方がいいに決まっています。
(それにしても……)
女の人は凄く綺麗です。私のお姉ちゃんが世界一だと思ってたけど、同じぐらい美人です。私もあんな風になれるでしょうか……

「開いたよ、訓」
「いいのかなぁ……麗子がくれたとはいえ……」

男の人も格好いい方だと思います。肩幅が広くて男らしい男という印象です。美人の女と並んでいて絵にならないという感はありません。
なんて観察していたら、二人はマンションの鍵を開けて中に入っていきました。
「え?」
なんで高校生がマンションの鍵を持っているんでしょう?
私は疑問に思いながら二人をつけました。元々忍び込むつもりだったからラッキーですけど、
それよりも私の目的はあの二人の正体を突き止めることになっていました。

「七階?」
「うん」

二人はエレベーターの中に消えてしまいます。困りました、一緒に乗るわけにはいきません。私は慌てて階段を選択しました。
マンションは殆ど出来上がってて、内装は傷一つないのに、埃を被っている有様です。
164すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/01(木) 07:11:50 ID:souXxBds
「ぜ……ぜ……」
しかし、正直階段を走るのはキツイです……。剣道続けてなかったら心臓発作起こしていたかも知れません。
お父さんに感謝しながら、私はへろへろになって七階に着きました。
「でも……はぁ……見失って……はぁ……しまいました……」
よく見ると、一階に比べて部屋数が少ないようです。上の階は間取りが大きく出来ているのでしょう。
「手当たり次第に探しますか……」
そう思った時、私は三番目の部屋の前に落ちている桜の花片に気がつきました。
この辺りに桜の木はありません。あの二人から落ちたものでしょう。
「私は運がいいです……」
花片のあったドアをゆっくりと開けます。しかし部屋の鍵まで持ってるなんて、あの二人はどんな二人なのでしょう?
玄関を出て、スグ右に部屋があります。が、この部屋は扉が開いていて中には誰も居ません。
廊下の左にはお風呂場もあって、一番奥の扉の先が多分リビングでしょう。私は靴を脱いで足音を立てないように進みました。
「………」
リビングの扉を少し開けて中を覗いますが二人は居ません。二人の持っていた鞄はありました。開きっぱなしのそれを、しかし覗き見るのは趣味の悪いことでしょう。
「……寝室の方でしょうか?」
リビングに直結した部屋は二つありましたが、両方ともドアは開いたままです。まさかキッチンということはないでしょう。
なるべく気配を消して、寝室の扉に近づきます。よく見ると、閉め忘れたか少し開いていました。
これで音も立てずに覗けると、私は屈んで隙間から中を見ました。

男の人と女の人が抱き合っていいました。否、肌を寄せ合っていました。

私は息を飲みました。男の人は学生服もYシャツもはだけさせて、鍛えられた胸板を見せていましたし、
女の人は男の人に服を捲り上げられて、くびれた腰と私にはない豊かな胸が半分見えていました。

「がっつかないの……」
「ベルトに手をかけながら言っても、説得力がないって」
男の人はそのまま女の人の上半身を生まれたままの姿に剥きました。
「乱暴」
「これは乱暴じゃないのか?」
男の人はYシャツの襟を捲ってみせる。首元に痣が見えます。
「人が寝ている間に、またつけたろ?」
咎める男の人の首もとの痣に、女の人は唇を重ねました
「おい!」
「ん…」
男の人は眉間を寄せると、チュポンと音がして女の人は唇を離しました。
痣は一層赤くなって、涎に塗れてます。
「……するなとは言わないから、目立たない所にしてくれ」
「やだ」
「…………ワザと俺を怒らせてるんじゃ、ないだろうな?」
呆れと怒りが混じった声で、男の人は女の人をベットに押し倒しました。

(……キスマーク?)
頭がショートしていた私は、ようやく追いついて現状を理解しました。
まず、あの痣はキスマークで、それで……それで……今、あの二人がしようとしてるのは……しようとしてるのは……
(エッチ……なんだ……)
私だって子供じゃないです。それぐらいは分かります。分かるけど、知ってるわけじゃない……
「……ゴクッ」
気がつくと唾を飲んで、さらに前のめりになっていました。
二人の目的が分かった以上、別に長居する必要なんて無い……ううん、まだ二人がどうして鍵を持ってるのか
(……そうです。それが分かってないから、私はまだ居ていいんです)
言い訳です。
私の頭の中の隅っこで、私が言っています。
でも、その小さな声は私の身体を動かすまでには至らないようです。

「ん……んぁ……ちゅ……じゅるるる……」
女の人と男の人は激しく唇を吸い合いました。密着した二人の間から溢れた唾液が落ちていきます。
「ん…!?……んふぅ!?……むぁあ……ちゅぉぉお……はぁ……」
女の人がキスをされながら身体を震わせました。
見ると、男の人の手が女の人のスカートの中……ショーツの中に滑り込んで蠢いています。
「訓……ぁ……」
165すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/01(木) 07:14:02 ID:souXxBds
「“コッチ”もだいぶほぐれやすくなってきたよな?いちる」
「ぅん…」
訓といちる……お互いの名前でしょうか。
「高校生になったな」
「うん……だから今日は後ろの初めてをあげる約束……」
いちる…さんが、上気して赤い頬を一層赤らめました。訓さんが頷くと、スカートとショーツを一気に奪いました。

(うわぁ……)
同じ女だけど、いちるさんって人の、その……アソコと私のソレは……随分違います。
訓さんの手に隠れてよく見えないけれど。
(それに…なんかヌルヌルしてます……おしっこ…じゃない……なんでしょう?)
そのヌルヌルに塗れた訓さんの手が……手が……

「あ…ふぅ!?」
訓さんの指がいちるさんの……お、お尻の穴に入っていく……
それも人差し指と中指、二本も……!!
「訓のエッチ……訓のエッチぃぃ……」
「……最初にココ、誘ったのいちるだろう」
訓さんの指がゆっくりと穴から引き出されていきます。
「んぁあ…っ!……ご、ゴメンなさい……私、私……」
「淫乱だもんな、いちるは」
「だって……だって……訓のこと考えると……」
えっと……なんか訓さんがいちるさんを苛めてるように見えます。エッチの時って男の人はそうするものなんでしょうか?
「……俺、Sに調教されてるよーな……」
「訓?」
「いや、なんでもない。ホラ、いちるの中、広がってるぞ」
再び訓さんは指を侵入させます。第一関節、第二関節と苦もなく吸い込まれ、根本まで埋まっていく……
「わかるか?襞の一枚一枚……」
「ふぁぁ……撫でられてるよぉ……んぁあ!?!」
いちるさんの身体が跳ねました。
よく見ると訓さんの手に力が入っています。いちるさんの……その、な、中で何が起こってるんでしょう……!?
「ダメ…ダメだよ…ぉ……んぁ…ふぁあん!?……広げちゃ…ら……め…ぁあ……」
「そうか?じゃあ抜くぞ」
「ふあぁぁあぁぁあぁ゛ぁあ!?!!?!指曲げないでぇぇぇぇぇぇぇぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!?!」
いちるさんの声に、驚いてしまいました。
いちるさんの穴から、第一関節を曲げたままの訓さんの指が出てきます。
目にうっすらと涙を浮かべながら、肩で息をしていました。
正直……酷いことをすると思いました。だけど、訓さんは汚れてない方の手でちるさんを撫でます。
「ん……訓……」
「軽く、イッたろ?」
頬に手を添えて、涙を拭うとキスをしました。さっきのような唾液を交換するのではなく、触れるだけの優しいキスです。
「可愛いいちるだ」
訓さんの顔や声から、彼を知らない私でも彼がいちるさんを大切にしてること……伝わってしまいます。
「訓、大好き……ね、頂戴?」
いちるさんの言葉に訓さんは服とズボンと……その、パンツも脱いで……思わず私は目を手で覆ってしまいました。
だ、だって……お、男の人の……そ、その……あ、アレ……なんて……なんて…………
「いちる、苦しかったら言うんだ。俺は、いちるの辛い顔が一番嫌いなんだからな」
「嘘……意地悪な顔してる」
訓さんの言葉に悪戯っぽくいちるさんが反論します。
「切ないいちるの顔は好きさ」
訓さんは一流さんの両足を抱え、中に割ってはいると、菊の花のような蠢くその……穴に……
その……あ、アレを……な、なんで……入っちゃうんでしょう…………!?!
「んぁあぁぁぁ…ああぁあぁぁあぁぁ!!!!」
いちるさんが叫び声をあげます。当たり前です、あんなの……入りっこありません。壊れてしまいます。
でも……ソレが埋まりきった後にいちるさんが言った言葉は……
「ふぁあ……凄いよ……訓……トンんじゃいそう……」
「いいのか?」
「うん……け、軽蔑する?」
上目遣いに訓さんに訊ねたいちるさんは、同姓の私から見ても心が奪われる可愛さでした。
166すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/01(木) 07:16:06 ID:souXxBds
「エッチだなとは思うさ。でも、それは俺も変わらないし……もう出てしまいそうだ。いちるって……」
「うぁあん!?」
訓さんが動いただけで、いちるさんは色っぽい声を出します。決して、苦しい風ではありません。
「いちるって、どこも気持ちよすぎる……大体にして、俺はいちるを抱きしめてるだけで頭が蕩けそうになる」
「訓……抱きしめて……いっぱい私の体温を感じて、感じさせて?いっぱい訓の臭いを嗅がせて、嗅いで?」
「ああ……いちる」
二人は繋がったまま、互いに慈しみ合うように抱き合いました。
さっきまで獣のようだったのに、今はまるで天使のよう……二人は再びキスを繰り返しています。

(エッチって……色々……凄い……です……)
でもこれで終わりじゃないはずです。エッチの……セックスの究極の目的は…その…子作りなのですから
つ、つまるどころ、せ、精子が……男の人から、で、出て……こ、この後……そんなことが……
想像が想像を呼びます。正直、エッチって想像してたよりもずっと――でした。だから、だから……
――カツン!
「!!」
色んな事が頭の中で巡りすぎていたからでしょうか?思わずスケッチブックと筆箱を落としてしまいました。
慌てて拾い、そのまま逃げるように(実際逃げたわけですが)、その部屋を後にしました。
逃げてる間、気が気でありませんでしか。二人は気づいてはいなかったでしょうか?まさか追いかけてはこないでしょうが……
確かめる術も無いまま、でも全力で家まで走りました。シューベルトの魔王の親子の気分です。別に追われてる訳でもないのに……







家に帰って……息を整えると、ふと本来の目的を思い出します。スケッチをする積もりでした。
仕方が無いので人物画の練習をします。あんまり得意ではありません。
けれど、今は中々良く鉛筆が滑ります。男の人のバストアップ。……本物の男の人の裸を見たからでしょうか?
――ポキ
変なことを考えたからでしょう、Fの芯を折ってしまいました。Fの鉛筆はよく使うので二本持っています。
折角筆が(鉛筆ですが)ノっているので、削り直すよりは二本目のを取ろうとして……
「あれ?なくして……しまいました?」
落としたのかと、私は机の下なんかを潜りこんだりしてみます。
「楼里(ロゥリ)?何をしているのですか?」
声がしました。よく知っている声。
「お姉ちゃん。いえ、鉛筆を無くしてしまって、落としてないかなと」
机から頭を出して答えました。
お姉ちゃんは今日入学式で、真新しいセーラー服に身を包んでいました。
「そう。……珍しい、人物画を描いているのですね」
書きかけのスケッチを見て、お姉ちゃんは漏らしました。
「楼里が描く人物画はいつも同じ顔に見えます」
「そ、そうですか?」
「もしかして意中の人であったり?」
「ち、違います!!」
お姉ちゃんは栗色の長い髪を揺らしながら笑います。やっぱりお姉ちゃんも美人です。
167すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/01(木) 07:17:43 ID:souXxBds
「あの…何か用ですか?」
話題を逸らそうと訪ねますが、お姉ちゃんはそれを分かっていて答えてくれました。
「これから道場の方にいこうと思ってるのですが、一緒にどうですか?」
「そうですね……」
今ので集中力も途切れてしまいました。気分転換もいいでしょう。
「でも、お姉ちゃんの相手は御免ですよ」
「どうしてです?」
キョトンとするお姉ちゃん。こういう所はお姉ちゃんの数少ない悪いところだと思います。まあ魅力でもありますが。
「いいですか、お姉ちゃん。守猶撫子は全国有数の女流剣士なんですよ。推薦、幾つあったと思ってるんですか?
 高校でも即戦力と目されてるお姉ちゃんの相手を、ただの平凡な小学生が出来るわけが無いじゃないですか」
パンっとスケッチブックを閉じながらお姉ちゃんを叱ります。
「そうですか……ごめんなさい、楼里」
……叱りすぎました。ションボリしすぎですお姉ちゃん。
「先に道場で待ってます……」
ああ、お姉ちゃん!!肩が淋しすぎます!私は正論を言っただけなのですが……とても罪悪感を感じています。
「はぁ……」
お姉ちゃんが部屋から出た後、机の上の倒した写真立ての中の――私の意中の人に懺悔します。
「楼里はダメな子です。素直に生きているつもりですが、言い方に気をつけないといけません……」
その写真は横顔です。私が彼が出ている柔道の大会でコッソリ撮った写真。
いつか横顔ではなく、正面から私を見て欲しいです。
(でも……あの男の人と女の人みたいなこと、やっぱりするんでしょうか?)
いえ、私より彼はずっと年上ですからもうしてるのかもしれません。ちょっと切ないです。
そして、彼と私が……あんなことをするのを想像すると……
(……なんか、あつい……です……)
私は頭を振って、写真立てをまた倒すと道場に向かいました。








<続く>
168名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 09:07:16 ID:fW6nWuFw
あんたに対するGJはただのGJじゃない。愛の詰まったGJだ

もちろん新年度のシナリオも最高だったが、だったが


当馬「勃つから!ホラ、勃つから!!左手は添えるだけで勃つから!!俺の愛馬は凶暴だから!!」



あと3日は思い出し笑いでいけるな
169名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 10:20:35 ID:92LqZcKH
おぉ、ktkr、GJGJ!

無印よりかZの方が長くなるのは
必然だよなっ!
170名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 16:29:29 ID:RbugST33
つまり由羽が主人公の話の方が続いてほしいと?
穏やかな心を持ちながら激しい怒りで何かに目覚めるぞw
一流はすでに目覚めちゃってるがw


しかし毎回、新キャラの名前をニヤニヤしながらみてるが、
素直(大和)撫子
素直ロリ
男さん(オヤバカ1のパターンだと旧姓は女?嫁?母?)

夏と二口はなんだろう?


まぁGJです!
171名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 00:52:26 ID:5Dby4lEd
ロリかぁ・・・と思ったが考えてみれば由羽も高一なんだから別に変でもないか
高校生と中学生のカップルだって普通にいるしな
フラグ立ててる麗子が妖艶系だから差別化の意味でも(お姉ちゃん×由羽かも知れないが)
172名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 04:10:22 ID:Y6eqEGIZ
ロリよりお姉ちゃんの方がいいなあ…
173名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 06:41:24 ID:NIihevYo
GJ
ロリと由羽話ってことでいいのかな?

お姉ちゃんがモノ素直属性だがロリ登場で一瞬素直属性は訓担当かと思ってヒヤヒヤしたぜw
174名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 02:42:45 ID:NgzYZWhM
教師のほうは単なるバカっぽい
175名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 11:02:23 ID:Q5sfC7Gb
>>154
先生!
『素直クールの星輝くとき』が抜けているような気がします!
ちなみにPart3の511からです。
176名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 19:03:24 ID:frzXJLI6
GJ!GJ!

個人的には妹さんより撫子お姉ちゃんのほうが格好よくって
好きです。大好きです。
177名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 13:12:01 ID:FBQ0PDHt
GJ!

なのはいいんだが、楽屋裏ネタの元ネタを全部把握してしまった俺って……
リーンの翼まで混じってるし。
178名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 16:30:28 ID:9PB+vgPf
電車の中で読むんじゃなかった。痛いくらいフルボッキ。
179名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 23:05:00 ID:aIdTL/oG
うーむ、いいじゃないか、GJ。
180名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 21:11:17 ID:oNSyR2Ji
素直クールの星が保管庫に収録されている。管理人氏、お疲れ様です。

だが続きが投下されてないのが残念。
作者さんは他のスレに投下してるので、そのうち帰ってきてくれると信じて待つ。
181名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 10:38:54 ID:kEwd4qD5
なんだこの過疎りっぷりは。
182名無しさん@恐縮です:2007/11/10(土) 10:49:05 ID:Me7pPCpW
無料エロ動画やばすぎ
http://kuroutodaizenshuu.h.fc2.com/
183名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 12:33:20 ID:sGXeqNHc
これで過疎ならよそは…w
184名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 12:55:34 ID:VMMkweVp
立ったのが去年ってスレも中にはあるしなw
185名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 00:15:20 ID:jKDKu2jX
素デレ(素直デレ)キャラはこのスレでは許容できませんか?
186名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 00:19:36 ID:/PZxU72R
素直クールはいつでも素直にデレてる気がするのだが。
別物の属性として存在するのか>素デレ
187名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 00:23:31 ID:y6jt/ERO
素直クール←素直デレ→素直ヒート

こんな感じ?
188名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 00:43:30 ID:I91SuWYh
そう考えると…この板の作品は素直クールと素直デレの割合があまり変わらない気がするのは俺だけ?だれか素直デレの説明頼む。
189名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 01:06:14 ID:npftU7zH
デレ=ガンダムX
ヒート=ガンダムXディバイダー
クール=ガンダムDX

デレ=ゲッター3
ヒート=ゲッター1
クール=ゲッター2

デレ=ナナジン
ヒート=サーバイン クール=ダンバイン

わけわからん例えしてみる
190名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 01:34:13 ID:HrSjfQV7
するってぇと、
デレ: 梟
ヒート: 大鷲
クール: コンドル
ってことですか?(Y/y)
191名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 02:15:05 ID:d8KkWdQc
クーデレは、むしろツンデレスレに相当するのか
やっぱ素直は外しちゃいかんのだろうか
素直クールに嫌われている(むろん、反転する)のはまずいか

悩んでばかりで筆が進まん
192名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 03:07:53 ID:m9yWsjtw
素直デレは極端な話うる星のラムみたいなのを言うのか?
クーデレと素直クールも違うんだよね、素直クールはあくまで素直にクールで
相手に対する意識はないという感じがするんだけど
193名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 03:56:50 ID:jL6GG06C
素直デレ=デレデレ=スレ違い
194名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 04:16:44 ID:y6jt/ERO
素クー「私はキミの事が好きだ……何?どの辺がだって?やれやれ、そんな事も判らないのかい?
     キミは私が捨て猫の飼い主を捜している時に一緒に手伝ってくれたじゃないか。そんなお人好しなどころだよ」

素デレ「私、キミの事が大好き!え?そんなの全部だよ!キミの事はぜーーーんぶ大好きなの!!
     その髪の色も、そのすこし伏し目がちな瞳も、努力家などころも、私と一緒に捨て猫の飼い主を捜してくれるような優しい心も全部!」

素ヒー「好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!私はキミが大好きだぁぁぁぁぁぁ!!なんだ、恥ずかしいって?でもキミはそうして私の傍にいてるれるじゃないか
     捨て猫の飼い主を捜してくれた時も、最後まで一緒にいてくれた!そんな懐が深いキミが、優しいキミが大好きなんだ!好きで好きで堪らないんだ!!」

クーデレ「私はキミの事が好きだ。ああ、全部好きだ。具体的に好きな箇所を上げると137つもあるが、……ああ、私としては全て話したい。……そうか、駄目か。
      じゃあ、私が一番気に入ってる、そう、一緒に捨て猫の飼い主を捜した時だ。土砂降りの雨の中、私は絶望の中……え?晴れだった?いや、雨の方がキミの登場が格好いいと思って…




自分で書いてて訳分かんなくなった      
195名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 05:41:24 ID:jL6GG06C
>>194
全部何か違う気がする
196名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 05:54:44 ID:KoyeHHQ8
素直クールは素直かつ冷静沈着で羞恥心が全くないかあっても薄い(っていうか薄くても羞恥心があるものってほとんどない気がする)

素直デレは素直だけど冷静でもないし羞恥心も普通にある

クーデレは初出は素直クールのVIPでの呼び方として決めたはずなのに、ほとんどそう呼ばれなかったり
音の響きがツンデレの仲間っぽかったりごたごたがあったりでツンデレの亜種になったし元はどうあれ名前にない以上素直じゃなくても別にいい

っていう違いなのか? だとしたら素直デレはスレ違いなわけだが
197名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 06:02:34 ID:npftU7zH
>>194、おまえはエロいな
198名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 10:18:22 ID:FBbRAVBM





オレも過去、素直クールと素直デレの違いについてかなり悩んだクチ
今だから告白するが、オレは以前VIPで長編モドキを投下していた
だがある時、自分の生み出したヒロインが素直クールではなく素直デレに
分類されることに気付いてしまい、考えていた先の展開が使えなくなってしまった
ヒロインが感情的に叫ぶようになったり、主人公スキスキオーラ全開で
クールさが薄れていくなど、話が進むほどヒロインの性格が素直クールから
離れてしまうのだ。無理に軌道修正しようにも構成がガタガタになり、
物語そのものが成り立たなくなってしまう……
それでも完結するまで投下すべきか悩んでいる中、某所にてメチャメチャに
叩かれたこともあり……結局投下するのをやめてしまった

元々あまりウケもよくない話だった気もしないでもないので、
先を読みたがっている人もそうはいなかったろう、というのがせめてもの救いか……
その節はスレの皆さんに大変ご迷惑をおかけしました
199名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 11:13:25 ID:jL6GG06C
ほのぼので言え
200名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 12:53:43 ID:0vI0qBA7
主観だがシてる最中もクールならちょっとなぁ

-同級生…-とかのシリーズが大好物なんですよ

これは違うとかよりも作者さんに一言入れてもらえればそれでいいんじゃ
保管人氏にも協力してもらって
201名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 14:13:51 ID:qN5cXHES
素直系での長編か〜
目線の違いじゃね?書きたいこと描ききったw?
202名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 22:56:52 ID:0GWkYYcn
2人きりの時は素デレでみんなの前では素クールってのはこのスレ的にOK?
203名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 00:18:42 ID:NTIYz81f
>>202
新ジャンル総合スレでやれ
204名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 02:26:54 ID:J2v5QBxs
素直デレは素直とついてるが全くの別物

クーデレでクールなデレ

素直クールはクール且つ素直


つまり素直クール最高
205名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 03:52:28 ID:jjSx7LIX
>>203
別にいいだろ
みんなの前の描写がしっかり入ったら
振れ幅次第だろうしそこまで区別はできんだろ
統一規格なんてないんだし、あまりに規制し過ぎたら過疎る
206名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 07:38:27 ID:q4MmFJDa
素直デレって、よくわからないんだけど、
素直にデレる==素直クール定義のところの素直部分
じゃないの?

だとしたら、>>202 これ別に普通の素直クールじゃん。
素直とクールの比率がどうとかいう話なのですかい?
そんなん気にする必要ないと思うけどな。
207名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 14:06:22 ID:J2v5QBxs
素直デレは素直デレでまた違うだろう、素直デレが素直クールと同一視されるなら
素直無口とか素直ヒートまで同じ扱いで素直っ娘総合スレにしろって話になってくる
>>202のやつだって素直クールの時点でデレなんだから素直デレと分ける必要あるのか?
みんなの前
「男、愛してるぞ」

二人きり
「男君大好き〜!」
ってならないのか?
208名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 14:06:28 ID:uypI1nCZ
まぁ、ここにいる人は素直クールを愛してるのは多分間違いないからいいんじゃない?
209名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 15:23:42 ID:E3xEd1QJ
ややこしい

属性としては、クールが重要なんだよな
素直な子がデレたって意外性はないんだし、クーデレだとデレ時にクール部分の解消がありうる
クールな子は「愛だの恋だの馬鹿馬鹿しい」と拒否するのがお約束だった訳で、素直クールとは、あくまでもクールな子が愛に突き進む意外性を楽しむ嗜好ではなかろうか
故に、基本クールな女の子が、(素直に)愛を表明する(デレる)のが、素直クールでいいんじゃねが?
しかし、クールな子が切羽詰まって冷静さを失うのも、アクセントとして面白い所だし……

わがんね
210名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 16:22:24 ID:Atw5862d
素直クールという人格属性を持つ女性は、現実社会では明らかに
変人扱い(言葉は悪いが)される存在のはず。
そしてその変人が好意を持った男に対して彼女流のアプローチをする。
それが現実社会においてまかり通っている常識とギャップがあるから、
周囲の人々は仰天し、男の方は気恥ずかしい思いをしたりする。

これが素直クールのヒロインを中心にした物語の主な流れ(のはず)。
しかし基本がこの図式に当てはまっている限り、斬新な話の創作は難しい。
基本は女のストレートな好意、照れる男、という図式が成り立つ上、
素直でクールという縛りは感情表現の幅が狭いのと同義だから、毎回違った
リアクションをする役は男や周囲に偏りがち。
長編の物語を描こうにも毎度同じパターンに陥ることが多く、ヒロイン側に
何らかの変化(一時的なものであれ)を与えない限り、ネタが続かない
というのが本当の所ではなかろうか。

……って、何熱く語ってんだろうね、オレ? 議論する場でもないのに……。
211名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 16:29:09 ID:qWk5qYhd
素直クールがスキなみんなが集まってるんだから思い入れとかあるだろうけど
持ってるイメージとか解釈?は違ってしょうがないんじゃないかなぁ
書いてくれる人が居ないと廃れてしまうわけで,ある程度許容していかないと
ぶっちゃけ投下しにくいし,多少のズレも許容しないっていうのは
自分たちの首を絞める行為な気がする
212名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 17:55:48 ID:5CeNBCh6
「多少のズレ」は当然許容すべきだけど、
「クール」分がまったくないというのは、そのレベルを超えてるんじゃ?
213名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 00:01:44 ID:ZMQO2n4n
おまいら一回ちんこ冷やして来い。

投下wktk
214名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 00:27:31 ID:Igz1U2eV
そもそも恋愛っていうのが方向的にHotな感情だからな。
恋するクールって言うのもやりにくいもんだ。
ま、そこをどうにかするのが腕の見せ所なんだろうが・・・。
215名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 00:28:52 ID:JReHkvQw
この雰囲気で投下する人がいるか?
216名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 00:32:43 ID:3jmOx+o7
そうそう居ないだろう。居たら神。
217名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 00:43:38 ID:pg0aFO1r
「男」
「なんだよ」
「む、不機嫌だな」
「もう9時だぞ、そろそろ帰れ」
「・・・今日は泊まる」
「いやいやいや、親御さんが心配するだろ」
「母には了承を得ている、父は知らん」
「俺も知らん」
「じゃあ勝手にいる」
「おまっ」

―――



「いいお湯だったぞ」
「あーそうか、ほれ寝ろ」
「男のベッド・・・(じゅる)」
「涎」
「よし、寝よう」
「あぁお休み」
「む、男はベッドじゃないのか?」
「俺のベッドは一人用だ俺はソファだよ」
「だったら私がソファで寝る!」
「ばーか、風邪引いたらどうするんだよ」
「男・・・」

――

「二人で寝ると暖かいな」
「・・・狭いだけだっての」
218217さん、スンマセン:2007/11/14(水) 02:36:06 ID:X2zEP626
「ば〜か、風邪引いたらどうするんだよ」
「男……」


スルリ
「なっ……」
「この部屋の主は君だからな
私は床で寝る」
「そうじゃねえ!
なんで服脱いでんだ」
「私は寝る時、何時もこの恰好だ
気にしないでくれ」
「バッ、なに……」
「ちなみに私は虚弱体質だ
風邪を引いて死ぬかもしれんが、気にやむことはない」
「おまっ……」
「この部屋の物は毛布一枚使わないから、あんしん……」
カバッ
ドサッ!!
「これでいいのか!」
「君と共用する分には、拒絶する理由はないな」


「二人で寝ると暖かいな」
219名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 03:39:44 ID:4UdHvUvV
ある程度許容してないとってのは判るが、
職人的にどの程度が基準なのか不安になる事も在るだろう・・・
そんな時は【スレから追い出されたSSを投下するスレ】に投下してくだしぁ!
220名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 06:19:32 ID:xumWkyHD
ちょ、そんなはなっから追い出さなくてもw ここに投下すればいーじゃない。

ヒロインが
・愛情表現に素直であること
・クールであること
この2点を踏まえていればそれだけでよし。逆にどちらがかけてもダメ。

ただ、両者の比率とか状況に応じて
どちらが強く表現されるかなどということは書き手依存で。基準なんかないよ。
二人きりのときにクールさが見えなくなってもいいじゃない。

前からそうだったじゃないか。
なんでこんな流れになってんの?

221220:2007/11/14(水) 06:35:46 ID:xumWkyHD
みんなごめん、>>217-218
空気換えようとしてくれたのに台無しだね。スマンカッタ
222名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 07:15:56 ID:pg0aFO1r
「男」
「ん?」
「生徒会長になったぞ」
「そうか」

「男」
「ん?」
「全国模試で一位になったぞ」
「そうか」

「男」
「ん?」
「ミスコンで優勝したぞ」
「そうか」

「男!」
「どうした?」
「男は・・・どうしたら喜んでくれる?」
「へ?」
「頭が良くても、美女と言われる体でも、人望があっても、男はいつも「そうか」しか言わない」
「俺はお前が側に居てくれたらそれでいいよ」
「えっ?・・・あ・ぅぅ・・」
「ずっと一緒にいような」
「・・・・・・・・・・うん」

「男!」
「今度はどーした」
「一緒に暮らそう」
「俺達まだ学生だけど?」
「荷物は持ってきた、男は独り暮らしだから問題はないだろう?」
「いやいやいやー」
「ダメだ、昨日の男の言葉で一瞬でも男から離れたら死ぬ病にかかってしまった」
「ねーよ」
「別名、恋の病」
「病は気から」
「さて、夕食は何がいい?」
「話を聞けー」
223名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 08:30:00 ID:Igz1U2eV
>>220>>222もGJなんだぜ!
224名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 08:48:04 ID:0XR4g+AM
>>220なんつう強引なwww
まぁそれも味か



>>222
和みつつ吹いたwww
225小ネタ?:2007/11/14(水) 20:58:38 ID:VqPqsoqF
「あぁ…素晴らしいな…こうやって密着して君の体温を感じることができるというのは…。それに君の香りを思う存分嗅ぎ続けられる、
いやそうすることしか出来ないこの程良い束縛感がまたいい。まるで鼻腔と脳が君の香りに陵辱されているようだよ。
あぁ、こんなことを考えていたら子宮が疼いて下着が用をなさぬ程に濡れてきたよ。今から家まで我慢するのは到底不可能だな。
よし、予定を変更してホテルに行こう。なに、今日は元々食事が目的だったんだ。食事ならホテルででもできる。
私にとって重要なのは何を食べるかではなく君と食べられるかどうか、だからな。
あぁ、早く到着しないものか。一刻も早く、君の太くて逞しい剛直に貫かれ、膣内を縦横無尽に掻き回され、
子宮口にあらん限りの子種を叩きつけられたいというのに」
「あーちょっといいか?」
「なんだ?愛しの君よ」
「一応聞いておくが…今がどういう状況で、ここが何処なのかわかっているのか?」
「ん?突然何を言い出すんだ。身動きが取れない程に混み合った、満員電車に決まっているじゃないか」
「そうだ。で、何か言うことはあるか?」
「あぁ、君は人前でこういう話をされるのが嫌だったな。
すまな…いや、やは
226名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 23:34:05 ID:+QYrvdmQ
途中送信……おそろしい寸止め
227名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 23:34:37 ID:VqPqsoqF
「あぁ、君は人前でこういう話をされるのが嫌だったな。
すまな…いや、やはり謝罪は後にとっておこう」
「何故だ?」
「ベッドの上で足を開き『私めに罰をお与え下さい、ご主人様』と言う方が君は喜ぶだろ?」
「駄目だ…わかってねぇ…畜生、お前ら俺をそんな軽蔑したような目で見るな!俺の女をそんないやらしい目で見るな!」
「ふふっ俺の女か…なんかくすぐったくて恥ずかしいな」
「恥ずかしいのはそこだけかよ…」



俺が思う素直クールをエロパロ風に表現してみたんだが…
長文投下は慣れてないんでミスしてしまった。すまない。
原因は文字数オーバーなのかな
228名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 13:58:22 ID:MudjAuPC
まさに素直クール!GJ!



それから素直クール論議についてだが、
それら全てを総括して「素直クール」でよくないか?ツンデレだって元義は「始めツンツン、後でデレデレ」
な訳だし
229名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 21:13:57 ID:R6aT2WwT
まあ、議論自体も楽しいからやってたが、確かに投下しづらくなるな
控えます
230名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 09:09:27 ID:W3byrm9q
おかしいな。
15kぐらいの短い掌編だったはずなのに、40k近くなってきた。

週末か週明けか、その辺りに投下します。
231名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 12:24:10 ID:8yocDSfI
>>227
乙&GJ!
こういう素でエロいこと言うのはたまらんな
232名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 02:44:27 ID:05wkDevy
もう少ししたら投下します。
1度に投稿するには長すぎるので、分けて投下します。
233名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 02:56:49 ID:c7hlOgFO
『では、次は生徒会長からの挨拶です』
「えー、引き続き生徒会長を務めることができて嬉しいです、これからもみんなの
ため学校のため頑張って生徒会活動に勤しみたいと思います」
『えー、次は「それと!新入生の男子生徒に言っておく」
『あ、あの「私には将来を約束した愛する恋人がいる、毎日ラブレターや告白に
来ても無駄、無意味、有り得ない、信じられない、時間の無駄だ!」
『一年生の皆さん落ち着いて下さい!会長、だからそれは言わないでって打合せ
したじゃないですか!』
「何を言っている、私が告白されたりラブレターを貰ったことで男が嫉妬で苦しんだらどうする」
『彼氏さんは気にしてないじゃないですか!』
「・・・それでは挨拶を終わります」
『ああっ、逃げた!?あわわっ一年生の皆さん落ち着いて!先生も笑ってないでなんとかしてください!』

 その日、新入生の7割りが枕を涙で濡らしたという――


「バカ野郎!また俺の立場が狭くなるだろ!」
「だから生徒会に入れと言っているだろう、私の権限で副会長にして
やる、そうしたら毎日生徒会室で・・・(ポッ」
「帰宅部としてそこは譲れんな(´_ゝ`)y-~~」
「素敵だ・・・」

続かない
234名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 03:06:47 ID:05wkDevy
大丈夫かな?
投下します。
235-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:07:18 ID:05wkDevy
-妹的幼馴染み型素直クール-

 ──10年前。
 依友太一(よりとも たいち)13歳。
 沢澄知晶(さわずみ ちあき)6歳。

「たいちおにいちゃん。おにいちゃんは、しょうらいのゆめってありますか?」
「ずいぶん難しい言葉知ってるね。……知晶は将来の夢あるの?」
「うん。あります」
「へえ、なに?」
「わたしのゆめは、たいちおにいちゃんのおよめさんになることです」
「そ、そっかあ。でもそれは大きくならないとなれないよ?」
「どのくらいですか?」
「えっと、大人になるくらい、かな」
「おとなですか。とおいです」
「そうだね」
「がんばります」
「そ、そっか。えっと、がんばれ」
「はい」

 ──5年前。
 依友太一、18歳。
 沢澄知晶、11歳。

「太一兄さん。女の人は16歳で結婚出来るそうです」
「ああ、そうだね」
「じゃあ、16歳になったら、私のことお嫁さんにしてくれますか?」
「え? うーん。そうだなあ……」
「だめ?」
「知晶が16歳になってもそう思っていたら、その時に答えるよ」
「本当?」
「ああ」
「約束ですよ」
「うん。約束する」

 ──そして、現在。
 依友太一、23歳。
 沢澄知晶、16歳、になる前日の事だった。

 * * * * *
236-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:08:13 ID:05wkDevy
 午後9時を10分ほど回ってから、依友太一は会社から自宅に帰った。
 閑静な、と言えば聞こえは良いが、要するに周りに何も無く、静けさだけがウリの
住宅地の一角。そこにあるアパートの一室が、太一の自宅だった。
 所謂ベッドタウンと呼ばれるその街は、最寄りのコンビニまで徒歩8分、駅に至って
は徒歩35分、バスを使っても7、8分はかかるという、都内にしてはなかなか辺鄙な所に
位置している。
 ちょっと不便だが、周りは静かだし、自分が住んでる部屋も両隣が空いているため、
気兼ねなく暮らすことが出来るので、太一は気に入っていた。

 太一は自室のドアノブに鍵を突っ込み、回した。その時、いつもとは違う手ごたえを
感じ、一瞬、首をひねるが、すぐにその原因に思い当たり、鍵を抜いてドアノブをひ
ねった。
 鍵がかかっているはずのドアはあっさり開き、太一に予感が当たったことを知らせる。
 1Kの部屋の小さな玄関には、見覚えのある女物のローファーがちょこんと1足。
 太一が後ろ手に玄関のドアを閉めるのと同時、奥から制服を着た小柄な少女が顔を
出した。

「おかえりなさい」
「ただいま。来てたのか、知晶」
 知晶と呼ばれた少女は「うん」と頷きながら、玄関まで歩み寄ってくる。少し長め
の漆黒の髪の毛がさらさらと揺れ、小さな耳が隙間から覗く。くっきりとした眉と、
髪の毛と同じ色の大きな瞳。華奢で小柄な体を包む黒いブレザーの制服が、それとは
対照的なミルク色の肌をより白く見せている。

 太一と知晶は、少し歳が離れた幼馴染みの関係だ。通常、そういった関係はお互いに
歳を経るにしたがって疎遠になっていくものなのだろうが、彼らの場合はその例に当て
はまらなかった。今でも家族ぐるみで仲が良いし、太一が社会人になって独り暮らしを
始めてからは、平日に顔を合わせる機会は減ったが、かわりに休日は必ずと言っていい
ほど知晶は太一のアパートに遊びに来ていた。

 つまり、幼い時からの親しい関係が今でも続いているというわけだ。もちろん、親し
い関係というのは兄妹のような、という意味であり、所謂恋人とかそういった類のもの
ではないと、太一は思っている。

「はい」
「ん?」
 太一が革靴を脱いで部屋に上がったと同時、知晶が小さな両手を差し出してきた。
「鞄、持ちます」
 鞄を寄越せとのことらしいが、こちらを見上げ、小さな手を突き出してくる様は、
まるで抱っこをねだる子供のようだ。彼女は太一の胸よりも背が低く、身体付きも
近ごろの女子高生にしては女らしさの主張が薄い、有り体に言えば、非常に華奢で
起伏に乏しい体型なので、余計にそう見えてしまう。
「いや、いいよ」
 その子供っぽい仕草に噴き出しそうになりながら、太一が答えた。
 この部屋は1Kで、玄関からキッチンを抜け、部屋に辿り着くまでわずか6、7歩だ。
わざわざ鞄を持ってもらうほどでも無い。そう思ったが、
「駄目です」
 と、知晶に半ば強引に鞄を奪われた。
237-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:09:11 ID:05wkDevy
 知晶は太一の鞄を大事そうに胸に抱え、部屋に戻って行く。仕方なく、太一もその後に
続き、前を行く彼女のつむじを見ながら問いかけた。
「学校から直接来たのか?」
「うん」
 知晶が通っている高校からこのアパートはそれなりに近い。ギリギリ徒歩圏内と
いったところだ。
「珍しいな。平日にくるなんて」
「せっかく合鍵を持ってるんですから、有効利用です」
 つむじから、どことなく楽しげな知晶の声が聞こえてくる。ちなみに合鍵はねだられて
根負けするような形で渡した。

 今日のように平日で、しかも学校から直接来るのは珍しかった。彼女は特に
クラブに所属していないため、学校が終わってから真っ直ぐ来たということは、
太一のアパートに来てから少なくとも5時間近くは経っているだろう。
「言ってくれれば早く帰って来たのに」
「ん、いえ。それなりに楽しかったですから」
「楽しかったって、何が?」
 ゲームでもしてたのだろうか? 最近、特に新作とか買って無いはずだが……。
 太一の問いに、知晶が平然と答える。
「なんていうか、帰りが遅い旦那様を待つ若奥様の気分。というのを満喫してました」
 キッチンを抜けて8畳の和室に入り、薄くいたずらっぽい笑みを浮かべて彼女が
振り返る。
「時計と電話を見比べながら、『あの人まだかしら…? そろそろ連絡してみよう
かしら…』なんて思い悩んでいる奥さんの気分を味わってたら、すぐ時間が過ぎて
しまいましたよ」
「………学校から帰ってから、ずっとそんな事してたのか?」
 このヒマ人め。と、太一は思わず呆れた。
「ずっとじゃないです。掃除したり、Yシャツにアイロンかけたりもしてました」
「ああ、そうなんだ。いつも悪いな。助かる」
「んーん。好きでやってますし。ついでに本棚の裏とかパソコンのブラウザの履歴
とかもチェックしてますし」
「待て。それはやめろ」
「でも基本ですよね?」
 人の悪い笑みを浮かべながら、しれっと彼女が答える。
「太一は、本棚の裏どころか、押し入れの奥にも何も隠して無いし、ブラウザの履歴も
毎回消してるみたいだからつまらないですけど」
 太一は「お前がそういうことするから痕跡を消さないといけないんだろうが」と言い
かけ、口をつぐんだ。
 彼女の家捜し癖はいまに始まったことではなく、太一が実家に住んでいた時からの
ものだった。今ではもう、こいつの習性なのだろうと、太一は諦めている。コンセント
周りのコード類に異常な関心を示す小動物のようなものだ。きっと。
238-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:10:13 ID:05wkDevy
 知晶の習性を今さら言っても仕方が無いので、太一は別の話題を切り出した。
「なあ、いい加減に呼び捨てやめろよ。“太一兄さん”だろ?」
 諭すような口調で言うと、知晶はふいっとそっぽを向いた。
「やです。太一はお兄さんじゃないですから」
「昔はそう呼んでくれたじゃないか……」
 いつの頃からか、知晶は太一を呼び捨てにするようになった。7つも年下の女の子に
呼び捨てにされるのは何とも奇妙で、太一はあまり好きでは無かった。
 出来れば昔のように“太一兄さん”と呼んで欲しい。その呼ばれ方が好きなのでは無く、
なんとなく、知晶には兄として接して欲しいと思っている。
 しかし、知晶はどことなく必死な表情で太一を見上げ、こう言うのだ。
「私は、太一と兄妹になりたくないから、太一兄さんって呼ばないことにしたんです」
 俺は妹同然だと思ってるのになあ……と、太一は知晶の真意に気付かず、心の中で
溜め息を付きながらスーツを脱いだ。
「じゃあせめて、さん付けで呼んでくれよ」
「それもやだ。なんか余所余所しいですし」
「余所余所しいって、そんなしゃべり方してるお前が言うなよ」
 知晶は何故か敬語で会話する女の子だった。昔から、それこそ子供の頃からそうだったので、
自分は聞き慣れているが、学校で浮いたりしてないだろうか? と、つい心配してしまう。
まあ友達は多いようなので杞憂なのだろうけど。

「このしゃべり方は癖ですから、諦めて下さい。それより」
 そう言うと、知晶は太一を見上げたまま、覗き込むように小首を傾げる。
「くん付けならどうですか? たっくん、とか」
「それは勘弁してくれ」
「わがままですね、太一は」
「どっちがだ」
 そんな、いつもの調子でやりとりをしながら、太一が脱いだスーツをハンガーに掛けようと
手を伸ばしたところで、知晶が割り込んできた。
「私がやります。スーツを貸して下さい」
「別にいいのに」
「駄目です」
 太一の答えを待たず、知晶がスーツを手にする。
 てきぱきと、慣れた手付きでスーツをハンガーに掛ける知晶を、太一はネクタイを緩め
ながらなんとなく眺める。
 知晶は、太一が会社帰りの時は必ずこうやって出迎えた。まずは玄関で鞄を持ちたがり
脱いだスーツもハンガーに掛けたがった。
 太一には知晶が何故そんなことをしたがるのか分からなかったが、手伝ってくれるのは
助かるのでなすがままにしていた。
 丁寧にハンガーに掛けたスーツをクローゼットに入れようとしたところで、知晶が不意に
眉根を寄せた。
「……タバコ臭い。どこか寄ってきたんですか?」
「ああ、ちょっと飲みにな。…………会社の同僚とだぞ?」
 じっとこちらを見つめる知晶の視線を受けて、つい言い訳するように付け足す。今日は
週末なので同僚と軽く飲んできたのだ。
 お前が来るって知ってれば、真っ直ぐ帰ってくるつもりだったんだぞ。と口にしようと
したところで、唐突に、知晶がぽふっと胸に寄りかかってきた。
「あ、おい」
 突然の行動に目を丸くする太一をそのままに、知晶は両手を背中に回し、胸に顔をうず
めるように抱きしめてくる。
「こ、こら。何してんだ」
 制服を着た女の子に正面から抱きつかれ、太一は一瞬ドキッとする。
 何をドキドキしてるんだ。相手は知晶だぞ? 確かにここ数年、急速に可愛くなってきて、
不意に近付かれると内心慌てることはあるが、身長どころか身体付きまで子供のの頃から
全然変わって無いじゃないか。というかそもそもまだ子供じゃないか。何を慌てる必要が
あるんだ。と、太一は自分に言い聞かせるようにして心を落ち着かせる。
239-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:11:10 ID:05wkDevy
 そんな太一の心情を知ってか知らずか、知晶はYシャツに顔をうずめ、くんくんと匂いを
嗅ぐ。
「んー…、タバコ臭い。あとお酒の匂いもします」
 そして「臭い臭い」と繰り返す。しかし、その言葉とは裏腹に、口調は不快そうな感じ
ではなく、逆に楽しんでいるかのようだ。その証拠に、もっと匂いを嗅ぎたいかのように、
ぎゅーっと強く抱きついてくる。
 お腹に微かに知晶の胸の膨らみを感じ、太一は落ち着かせた心臓が、また早くなるのを
感じた。
 不意に高鳴ってしまった心臓を誤魔化すように、太一は憮然と言い放つ。
「じゃあ嗅ぐな。悪かったな、臭くて。つーか嫌なら離れろ」
「いえ。別に嫌じゃないですよ? タバコの匂いもお酒の匂いも好きじゃないけど、太一
からしてる時は好きです」
 平然と言いながら、Yシャツに子猫のように頬を擦り付ける。
 なんと答えて良いものやら、太一は返答に困った。とりあえず、未だ引っ付いている知晶
を引き剥がそうと、肩に手を掛ける。
「ほれ、放せ。着替えられないだろ?」
「ん。もうちょっと」
 言いながら、知晶はくりくりと額をYシャツに擦り付ける。もじもじと身体を動かしている
ため、知晶のささやかな胸の膨らみがお腹に擦り付けられ、柔らかな感触がより強調されて
しまう。
「…ほら、もう時間切れだ」
 思わぬ感触に、声が裏返りそうになるのを押さえ、知晶を引き剥がす。
 知晶は一瞬残念そうな顔をするが、
「あ、そうだ。首筋見せて下さい」
「いでで! ネクタイ引っ張んな!」
 唐突にネクタイを引っ張られ、思わずぐえっと呻いてしまう。
 ネクタイを引き寄せられ、前かがみになった太一の首を覗き込みながら、知晶が確かめる
ように言う。
「キスマークとか、無いですよね?」
 至近距離での発言。吐息が耳にかかる。一瞬遅れて、ふわりと薄く甘い匂いも鼻をかす
めた。太一は、折角抑えた心臓がまた大きく鼓動するのを感じた。
「そんなんあるか」
 それでも普段通りに口を利けたのは、彼女とのスキンシップに慣れているからだろう。
「ん。よろしい」
 偉そうに言って、年下の幼馴染みの少女は満足げな顔でネクタイを放した。
 ようやく解放され、太一は胸の鼓動を悟られないように、少し乱暴にネクタイを引き抜いた。
240-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:12:09 ID:05wkDevy
 その後、部屋着に着替え、座ぶとんに腰を下ろしてやっと落ち着いたところで、知晶が
聞いてきた。
「お腹空いてませんか?」
「ん……、少し空いてるかな」
 言われてから気付く。軽く飲んできただけなので、小腹が空いていた。それに気付くと
同時に、知晶のことを思い当たる。
「あ、お前、メシは?」
「まだですよ?」
 当然のように答える知晶に、太一は眉をしかめた。
「あれ、なんだよ先に……って、待ってたのか」
「うん」
「ごめん。悪い」
 何の連絡もなく急に、悪く言えば勝手に、太一の所に来たのだから謝る必要はないのだが、
なんとなくばつが悪くなって謝ってしまう。
 申し訳なさそうな顔をする太一に、知晶は何でもないように首を振る。
「私も連絡しなかったですし。それにさっき言った通り、旦那様の帰りを待ってる若奥様
ごっこして楽しんでましたから」
「……お前はなんでも楽しめそうだな」
 呆れたようなほほえましいような、微妙な気分で太一が苦笑する。
「なんでもじゃないですよ? 私が楽しめるのは、相手が太一だからです」
「俺はお前のおもちゃか」
 太一は思わず苦笑する。知晶は何か言おうと口を開いたが、先に太一が促した。
「で、メシどうする? 何か買いに行くか?」
「太一の帰りを待ってたのに、私が何の用意もして無いと思いますか?」
 太一の問いに、知晶は得意げに言って、腰をあげる。
「ん……いや、何か良い匂いがするな、とは思ってたけど」
 畳の上に転がっているテレビのリモコンに、寝転がるように手を伸ばしながら太一が見上げ
ると、知晶はポケットからシンプルなヘアゴムを取り出して、髪を後ろで縛りながら答えた。
「温め直すから、ちょっと待っててください」
 そして、エプロンを着けながら台所へ向かう。
 くるりと踵を返し、制服のプリーツスカートとエプロンの裾が舞う。真っ白い膝の裏と、
華奢な太ももが覗き、太一は慌てて視線を逸らした。横に寝転がるような姿勢で見上げていたため、
際どい位置まで太ももが見えてしまった。

 極力平静を装いながら、手にしたリモコンをテレビに向け、電源ボタンを押す。が、なんど
押しても反応がない。なんだ? と思ってリモコンを見ると、リモコンをテレビとは反対に向けて
おり、見当違いのボタンを押していた。

 思わず、ため息が出た。……なんであんなんで動揺してるんだ、俺は。本当に今日はどうかしてる。
 太一は軽く頭を振りながら、手にしたリモコンを持ち替えた。
241-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:13:11 ID:05wkDevy
 遅めの夕食は、湯豆腐と、湯通しした豚肉を乗せたサラダだった。
「ごちそうさま」
 お茶を啜り、ふぅと一息。食後はやはり、濃く煎れた熱い緑茶に限る。
 食器を下げ、ちゃぶ台を布巾で拭きながら知晶が尋ねる。
「美味しかったですか?」
「ああ」
「良かった」
 布巾をちゃぶ台の端に置き、知晶もお茶を飲みながら微笑む。そして、そのままじーっと
太一を眺め続ける。
「………」
 じーー。
「………」
 じーーー。
「………」
 じーーーーー。
「……どした?」
 知晶の視線に耐え切れず、太一が切り出した。
「ん? 見てるんです」
「……何を?」
「太一を」
「……なんで?」
「見たいから」
「……そうか」
「うん」
 いたずらっぽく微笑んで、ちゃぶ台の上に身体を倒し、顎を乗せる。上目遣いで太一を
見つめ、絹糸の様に細く艶やかな髪の毛がさらさらと肩口からこぼれ、テーブルに広がる。
 知晶は楽しげに頭をゆらゆら揺らしながら、なおもじーっと見つめてくる。
「……行儀、悪いぞ」
 太一は視線から逃れるかのように少し背を倒してお茶を飲む。それには答えず、知晶が
口を開く。
「ご飯、美味しかったですか?」
「ん? ああ、うまかったよ。……さっきも言ったろ?」
 知晶の良く分からない行動に、太一はつい口調がぶっきらぼうになってしまう。
「じゃあ、ご褒美が欲しいです」
 頭を傾け、覗き込むような形で知晶が言う。その言葉に、なんとなくイヤな予感を感じ、
太一は身構えてしまう。思わず胡散臭さそうな視線を知晶に向けた。
「……ご褒美ぃ? なに?」
「……んっ……」
 知晶が取った行動に、太一は盛大に溜め息をつきたくなった。
 知晶はちゃぶ台に乗り出すようにして顔を突き出し、軽く目を瞑っている。
「………」
 太一が呆れて言葉を失っていると、知晶は焦れたように更にちゃぶ台に乗り出し、
「んーーー」
 と、唇を突き出してくる。
「………」
 キスをねだる知晶に贈られたのは、デコピンだった。
242-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:14:10 ID:05wkDevy
「いたっ」
 ぺしっと軽く、太一のデコピンが知晶のおでこにお見舞いされる。
「お前なあ……」
 太一が心底呆れたように溜め息をついた。
 知晶はデコピンされたおでこをさすりながら、不満そうに唇を尖らせる。
「けち」
「そんなご褒美は受け付けられません」
「昔はよくしてくれたのに」
「……子供の頃の話だろ」
 それに、“した”んじゃなくて、お前から“してきた”んだ。と付けたし、何を考えて
いるんだ。という感じで太一が眉をしかめる。
「つーかもう10時半じゃないか。そろそろ帰らないとまずいだろ?」
 太一が帰宅したのが9時10分。それから食事してなんだかんだとくつろいでたら、
いつの間にか10時30分になっていた。知晶とはいくら家族ぐるみの付き合いだとはいえ
そろそろ家に帰さないとまずい。
「ほら。送って行くから」
 立ち上がり、ほれ立てやれ立てと知晶をせかす。知晶の家はここから歩いて30分ほどだ。
結構離れているし、なによりこんな夜中に一人で帰すわけにはいかない。

 それに、知晶には悪いが、今日は何か調子がよろしくない。メシだけ作らせて帰らせる
とは、物凄く酷い扱いで非常に心苦しいが、その埋め合わせは後でするとして、とにかく、
今日はこれ以上、知晶と顔を合わせていると何かマズい気がして、さっさと送って一人に
なりたかった。
 しかし、知晶はそんな太一を更に追い詰める。
「今日は泊まります」
「はぁ!?」
 思わず素っ頓狂な声が出た。
「と、泊まるって、お前……」
 頻繁に遊びに来ていた知晶だが、今まで泊まったことはない。予想外の展開に、太一は
思わずうろたえる。
「いやいやいや、ちょっと待て。そんな急に……」
「駄目?」
「だ、駄目っつーか……。家に連絡は? それに学校」
「朝、学校に行く前にお母さんに言ってきました。学校は明日お休み。土曜日ですから」
 しれっと言いつつ、「ほら。お泊まりセット」と楽しげにバッグの中から歯ブラシや
ヘアブラシなどを取り出し、太一に見せる。
 ……始めからそのつもりだったのか、こいつめ。
 呆れ顔の太一を尻目に、知晶はバッグから荷物を取り出す。タオルやパジャマはともかく、
下着まで引っ張り出すので、太一は慌てて止めた。
「ちょっ、お前! それはしまっておけ!」
「これ?」
 びろんと、知晶が純白のブラジャーを両手で広げて見せる。
「おまっ…広げるな!」
「この前買ったんです。可愛い?」
「胸にあてるな!」
 控え目に飾りが付いたブラジャーを制服の上から胸にあて、小首を傾げる知晶に、太一は
思わず頭を抱えたくなった。
243-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:15:10 ID:05wkDevy
「あのなあ。泊まるつもりなら、事前に言っておけよ……」
「ごめんなさい。迷惑でした?」
「あ、いや……。そういうわけじゃ、ないけどさ…」
 不安げな表情でこちらを見上げてくる視線を受けて、太一が口ごもる。
「とりあえず、一応家に連絡だけするぞ。おばさんに言ってあるなら大丈夫だろうけど、一言
預かるって言っておかないといけないしな」
 そっけなく言いつつも、知晶を安心させるように頭に手を置き、ぽんぽんと撫でる。知晶を
見下ろした時、バッグの中にブラとおそろいの柄のショーツが目に入り、慌てて視線を逸らす
羽目になったが。

 電話に向かい、暗記してある番号を打ち込む。数度の呼び出しの後、『もしもし?』と聞き覚えの
ある声が電話に出た。知晶の母だ。
「夜分遅くにすみません。太一ですが……」
 途端に、『あらあらあらあら』と所謂おばちゃん特有の甲高い声に迎えられる。
『太一君? 久しぶり〜。元気? あ、そうそう。知晶がそっちに行ってると思うんだけど、よろし
くね〜。なんならそのままずっと一緒に暮らしてもらってもいいわよ〜。学校までの距離はあんまり
変わらないし〜。え? 駄目? も〜、太一君相変わらず真面目なんだから。まあとにかく、そんな
わけだから、知晶をよろしくね〜。末長く。なーんてね。あはは。じゃ〜おやすみ〜』
 まくし立てるような知晶母のセリフに太一は、「お久しぶりです」「ええ、それで…」「いやいや、
そんなわけには……」「いや、ちょっ」「あ、おやすみなさ(ガチャ。ツーツー)い」と、相槌程度の
対応だけで精一杯だった。
 ため息をついて振り返ると、ちょこんと正座してる知晶が「ね?」と見上げてくる。
「おばさん、あんなに放任主義だったか?」
「放任主義ってわけじゃないです。太一だもの。信頼されてるんですよ」
「信頼されてるっていってもなあ…」
 昔からの付き合いだからといって、そんなに簡単に外泊を認めて良いのだろうか? 大学の頃とか、
実家から通っている女友達はほとんど門限があるらしかったので、まだ高校1年生の知晶にそんな甘い
対応でいいのか? と人事ながら心配してしまう。
「太一の所に泊まるって言ったら、あっさり承諾してくれたし、むしろそのまま一緒に住んじゃえって
言われました」
「あー、さっきも電話で似たようなこと言ってたな…」
「あと、『必ず仕留めて来い』とか『手ぶらで帰ってきたら家に入れない』とも言われました」
 太一は「なんだそりゃ?」と思いつつも、深く追求しないほうが良さそうな予感がし、口を閉ざす。
気を取り直して、財布と携帯を持って上着を手に取った。その様子に、知晶が怪訝そうに見上げる。
「どこか出かけるんですか?」
「とりあえず、お前は先に風呂に入っちゃえよ。俺はコンビニにでも行ってるから」
「わざわざ外に出なくても。なんならお風呂に一緒に」
「却下だ。却下」
 ぴしゃりと言って上着を羽織る。
244-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:16:13 ID:05wkDevy
 太一の部屋の風呂場は所謂ユニットバスだが、よくあるトイレと一緒になっているタイプのものでは
なく、風呂場だけのユニットバスで、トイレは別に設置されている。そのため、脱衣所として使える
スペースがない。一人暮らしで誰かを泊めることなど無かったので今まで不便には感じなかったが、
まさかこんな事態になるとは思わなかった。
「部屋のドアを閉めれば大丈夫ですよ。上がったら声掛けます」
「いいよ。丁度コンビニで買うものもあったし。ほら、さっきのご褒美。お前の好きなハーゲンダッツの
ビターキャラメル、買ってきてやるから」
「ご褒美ならお風呂に一緒に」
「だからそれは却下だっつーの」
「けち」
 知晶は不満そうについっとそっぽを向いて、わざとらしい口調で言い募る。
「夜中まで帰りを待ってて、晩ご飯まで用意してたのに、カップアイス1つで済まそうなんて。太一に
とって、私は税込み263円程度の存在なんですね」
「ちょ、お前、それは……」
 勝手に上がって、勝手にメシ作って、勝手に待ってたのはお前だろう。という言葉は、さすがに
飲み込んだ。
 知晶は拗ねたような口調だが、あくまでポーズだろう。本気でそう思ってるわけではないだろうが、
一度こうなるとなかなか解放してくれない。
 知晶は基本的に、とても聞き分けの良い利口な娘だ。しかし、昔からときどき妙に抵抗する時があり、
太一はその度になんだかんだと振り回されてきた。

「久しぶりに、一緒にお風呂入りたいなと思ったのに」
 久しぶりにって、いったい何年前の話だ。最後に一緒に入ったのは、もう10年以上も前だろうに。
「……はぁ」
 太一はため息をついて、正座のままそっぽを向いてる知晶のそばにしゃがみこんだ。
「……お前、明日で16歳だろ?」
「うん。……覚えててくれたんですね。誕生日」
「当たり前だろ。毎年プレゼントあげてるじゃないか」
 誕生日のプレゼントは何がいい? と聞くと、大抵、キスだのなんだの無茶を言ってくるのが
困るが、太一は毎年何かしらプレゼントを贈っていた。

 ちなみに去年はコートを贈った。知晶は高校受験を控えていたので、受験シーズンの冬に風邪など
ひかぬようにと、奮発して上質なカシミアのコートをプレゼントした。今年もすでにプレゼントは
用意してある。

「16歳になる女の子が、一緒に風呂に入りたがるなよ。もう大人なんだから」
 大人、というフレーズになんとなく違和感を覚えたが、太一は諭すように言う。しかし、知晶は
待ってましたとばかりに口を開いた。
「じゃあ、誕生日プレゼントは一緒にお風呂が…」
 そのセリフに、太一が「却下だって言ってるだろ」と言う前に、「あ、違います。そうじゃなかった」と
知晶が慌てて取り消した。
245-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:17:10 ID:05wkDevy
「今のは無し。今年の誕生日のプレゼントは、もっと大事なリクエストがあるんです」
「……お前のリクエストは、いつも突拍子のないものだからなあ…」
 太一は思わず胡散臭そうな顔をしつつも、「何だ?」と先を促す。
「ずーっと昔から予約してるお願いだから、突拍子なくないですよ?」
「昔から?」
「うん。でもそれは、日付けが変わって、私が16歳になった時に改めて言います」
「日付けが変わってからって……。もしかして、そのために今日泊まることにしたのか?」
「うん。どうしても16歳になった瞬間に伝えたいんです」
「………」
「? 太一?」
 一瞬、言葉を失った太一に、知晶が不思議そうに首を傾げる。
「あ、いや。まあ、なんだ」
 太一はなんでもないように手を振り、続ける。
「そのリクエストは置いておいて、とりあえず風呂入れ。上がったら携帯に連絡してくれ。
鍵は持って行くから、風呂入る前に戸締まりしとけよ」
 話を切り上げるように少し早口で言い、立ち上がる太一に、知晶がすかさず、
「お風呂は一緒に「いつまで繰り返すつもりだ」
「……けち」
 光の速さで突っ込まれ、唇を尖らせる知晶を尻目に太一は呆れた顔で玄関に向かった。

 * * * * *

 太一は玄関から出るなり大きく深呼吸し、
「っはあああああぁぁぁぁ…………」
 でっかいため息をついた。
 秋が深まり、夜はしんと冷え込む季節。微かに白い息が、玄関の明かりに透ける。
 太一はポケットに手を突っ込み、この辺りで一軒しかないコンビニに足を向けた。

 ハーゲンダッツのビターキャラメルの他に、追加でリッチミルクも頼まれてしまった。
 社会人1年目の給料日前のこの時期に、そんな贅沢なもの頼みやがってアイツめ。タダでさえ
今月は、誕生日のプレゼントで財布が軽いと言うのに。と、太一は独り毒づきながら街灯の下を歩く。
 はあ…と、また溜め息が出た。

 別に、アイス代が痛いわけではない。知晶の誕生日のリクエストが、太一の心に重くのしかかって
いたのだ。
246-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:18:12 ID:05wkDevy
 やつのリクエストは大体想像が付く。16歳と言えば、あれだ。あれしかない。

『16歳になったら、私をお嫁さんに──』

 とうとうこの時が来てしまった。という感じだった。
 昔は、それこそ口癖のようにしょっちゅう言ってた事だが、最近はとんと言わなくなってたから、
忘れてるとばかり思っていたのに…。
 太一の淡い期待は砕け散ってしまったようだ。

 もしかすると違うリクエストかもしれないが、わざわざ泊まりに来てまで16歳になった瞬間に
言いたいことなんて、それしかないと思われる。

「はぁ……」
 太一は今日何度目になるか分からない溜め息を付いた。

 予想通り、知晶のリクエストがソレだった場合、もちろん、答えは決まっている。──却下だ。
 当たり前だ。当たり前だろう? まだ高校生なのに結婚なんて出来るか。そもそも自分は23歳で
知晶は16歳だ。この歳の差はどうだ? 犯罪だろう?
「歳の差7つは大きいよなあ…。さすがに駄目だろ?」
 太一はつい独りごちた。

 しかし、知晶が高校を卒業し、大学を出ると、
「そしたら、あいつは22歳で、俺は29か…」
 これなら、ギリギリOK、か? ……って、何考えてんだ!
 ふと心に浮かんだ考えを、慌てて掻き消す。
 そうじゃない。そういうことじゃない。知晶は妹なんだ。俺は“太一兄さん”と呼んで欲しかった
はずだろ!
 太一はブンブカ頭を振り、すれ違った人を無駄に怯えさせつつ夜道を歩いて行った。

 * * * * *
247-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:19:09 ID:05wkDevy
「はあ……」
 本日1発目の溜め息は、午前0時0分16秒に出た。
 ちゃぶ台を挟んで向こう側には、水色のパジャマに着替えた知晶がちょこんと座っており、
彼女の前にはこちらに向けられた書類が一枚。……婚姻届だ。
 わざわざ時報で時間を確認し、文字通り日が変わった瞬間に出してきた。
 一体どのようにリクエストしてくるのかと思ったら、こんなものを出してくるとは。

「……これは、なんだ?」
 溜め息からたっぷり30秒後、絞り出すように声を出した太一に、知晶がしれっと答える。
「婚姻届です」
「んなことは分かってる。そうじゃなくて、なんで婚姻届が出てくるんだ」
 太一はちゃぶ台の上に広げられた書類に視線を落とす。それには既に知晶の名前と印が
押されており、おまけに書面の下の方、「その他」と書かれた欄に「この婚姻に同意する」と
いう文字と、知晶の両親の署名と捺印がしてあった。
 一体、あの両親は何を考えているんだ。太一は頭を抱えたくなった。
「私の16歳の誕生日プレゼントのリクエストは、ここの欄に太一の名前を書いてもらって、
ここに判子を押してもらうことです」
「いや、あのな……」
「私が16歳になったら、私のことをお嫁さんにしてくれるかどうか、答えてくれる約束でした
よね?」
 遮るようにして言われ、太一は「うっ」と言葉を飲んだ。
 ひるむ太一を真直ぐ見つめて、知晶が意を決するように口を開く。
「改めて言います。私は、太一が好き。私のこと、お嫁さんにしてくれますか?」
「……」
 真直ぐな告白に、太一は言葉が出なかった。
「………なあ」
 一瞬の静寂後、やっとの思いで口を開く。
「何ですか?」
「…お前、まだ16歳だろ? 結婚とか、そういう歳じゃないだろ」
「法的には16歳で結婚出来るはずです」
「そりゃ法律ではそうだけど、現実問題として、高校とかどうするんだよ?」
「結婚してても通えるから、問題なしです」
「問題あるだろ。既婚者の女子高生なんて、聞いたこと無いぞ」
「そういう存在が珍しいだけです。法的には問題はないですよ」
「だから、法とかそういう話じゃないんだよ…」
 太一は今度こそ頭を抱えた。言葉が通じるのに言葉が通じない人間と会話しているみたいだ。

「ねえ。答え、聞かせて? 太一は私のこと、好き? 私をもらってくれる?」
「俺は……」
 呆然と見上げると、知晶が真剣な表情でこちらを見つめていた。その視線を受け、太一は一瞬
口籠る。
「俺は………」
 意を決し、口を開いた。
248-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:20:32 ID:05wkDevy
「俺は、お前とは結婚出来ない」
 言葉にした瞬間、確かに空気が緊張を孕んで震えるのを感じた。
「…どうして?」
「俺は、お前を妹だと思ってる。だから、結婚は出来ない。お前の気持ちには答えられない」
「でも、私と太一は兄妹じゃないよ? だから、」
「兄妹じゃなくても、俺はお前を妹としてしか見れない」
 言葉を遮り、突き放すように言うと、知晶は口をつぐんでうつむいた。
「太一は…」
 微かだが、徐々に、知晶の声が震えていくのが分かった。それが分かって、太一は呼吸が出来なく
なるような胸の苦しさを感じた。
「太一は、私のこと、嫌いですか?」
「そうじゃない! お前の事は好きだよ。…妹としてだけどな」
「そう……」
 うつむいたまま、消え入りそうな言葉で知晶が呟いた。
「太一は、私を妹としてしか見てないんですね」
 髪の毛が垂れて表情は見えないが、パジャマに包まれた薄い肩が微かに震えているのが見て取れた。
ずきんと、心臓を鷲掴みにされたような痛みが太一の胸を貫いた。
「ああ」
 胸の痛みを誤魔化すように、ズボンをきつく握り、きっぱりと肯定する。
「……そう、ですか」
「……」
 そのまま、静寂が部屋を支配する。

 どのくらい時が経ったか。ほんの1、2分だろうが、重苦しい静寂は、まるでブラックホールにでも
吸い込まれて時間が停止しているかのような錯覚を憶えた。

「……もう遅いから、寝るか。それとも、家に帰るか? 帰るなら、送っていくぞ」
 そう切り出すと、知晶が小さく首を振った。
「……泊まっていきます」
「そっか」
 立ち上がり、布団を敷くべく押入れに向かう。太一は背中の知晶に語りかけた。
「お前の気持ちには答えられないけど、お前の事を大事に思ってるのは間違いないから」
 言ってから気付いた。まぎれもない本心なのだが、なんとも言い訳じみていて、振った相手に
言うセリフじゃないなと、後悔した。
「…うん。分かってます」
 背後で、知晶は静かに頷いたようだった。聞こえてくる声はまだ少しだけ震えていた。

 布団を敷いて(布団は一組しかないので、太一はコタツ用の布団を敷いて寝ることにした)
電気を消す。風呂に入ってないが、入るだけの気力がなかった。風呂には明日は入れば良い。
どうせ明日は休日だし。

 いつもと違う感触の布団に潜り、暗がりの向こうに声を掛けた。
「おやすみ、知晶」
「おやすみなさい。…………太一、兄さん」
 久しぶりに聞いたその呼び方は、あんなに望んでいたはずなのに、何故だか酷く悲しい気分に
なった。

つづく。
249-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 03:21:40 ID:05wkDevy
一先ず、ここまでです。
残りは日を置いて投下します。

読んでくれた方、ありがとうございました。
250名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 03:21:48 ID:EgBzmSeo
続編に期待♪
251名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 04:41:32 ID:c7hlOgFO
空気読まなくてゴメン(´・ω・`)
252名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 06:03:31 ID:oKu75e0K
すごく・・・生殺しです・・・
早く投下してくれないと餓死しちゃいます・・・
253名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 06:40:16 ID:45Ck9Vry
GJすぐる!
しかし、こんなところで引きかー。どうしろとw
254名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 08:10:18 ID:RsNOKuTm
これは辛い鬱。
二人がどうなるか見守ってます。
GJ!
255名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 08:37:01 ID:HFAyzcJC
これはいい素直クールですね。
男がかなりキモイが、続編に気体。
256名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 08:43:20 ID:45Ck9Vry
キモイ? なんで?
257名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 08:54:28 ID:Hvruvubq
うまくいくといいなー、と思った

いや、おそらく上手くいくんだろうが切なくなってしまった
あんた最高だよ
258名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 09:58:00 ID:Z+Io7/l8
GJ!!
「結婚しよう。6年後に」→29歳と22歳で無問題!
上では16歳になったら答えるといってるだけで、
すぐケコーンするとか言ってるわけでないから
女性を感じる年齢まで先延ばしにできるだろうに・・・
ブキヨウさんメ!!
259名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 10:37:51 ID:+LH1LB6D
GJ!
萌え死にしそうだぜ
260名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 13:37:19 ID:9C5V6KZ7
GJ!
261名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 14:01:50 ID:UML0HPMo
日をおかず今日にでも続きを!
262-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:33:11 ID:05wkDevy
思ったより推敲が順調に行ったので、
もう少ししたら投下します。
続きとなります。

>>251
いえいえ。
続かないなんて、つれないこと言わずに
か か な い か
263-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:35:39 ID:05wkDevy
 * * * * *

 妙に気が張ってなかなか寝つけないまま時間が過ぎ、ようやくまどろんできた頃。
ギシッと微かに畳が軋む音で、太一は意識が引き上げられた。
「…太一兄さん、起きてますか?」
「あ、ああ」
 背後から掛けられた声が思ったよりもずっと近くから聞こえ、太一は驚いたような声を
上げてしまった。
「どした?」
「そっちに行ってもいいですか?」
「…自分の布団で寝なさい」
「いやです」
 言うなり、背後で知晶が布団に潜り込んでくるのを感じた。
「あ、こら!」
「兄妹なんですから、いいじゃないですか」
「…こんな歳になってまで一緒の布団で寝る兄妹がいるか」
「ここに居ます」
 肩越しに振り返ると、知晶はもうすっかり顎まで布団に潜り込み、テコでも動かなそうなほど
居着いてしまっている。
「…今日だけだからな」
 ぶっきらぼうに言って、太一は再び知晶に背を向けた。
「ん。あったかい」
「ぉわッ!」
 突然、ぴたりと背中にくっつかれ、太一は飛び上がりそうになった。
「な、何してんだ」
「くっついてるの」
 当然のように言って、知晶が太一の首筋に頬をすり寄せる。
「やめろ、くすぐったい」
 首の後ろを温かい頬と柔らかい髪の毛にくすぐられ、太一は思わず身悶える。
「じゃあ、こっち向いてください」
「…別に向き合う必要無いだろ。俺はこっち向いて寝るのが好きなんだよ」
 なんとなくイヤな予感がし、突き放すように言うと、知晶はしれっと答えた。
「じゃあ、私も好きにします」
 言うなり、太一の胴に手を回し、抱き締めてくる。
 太一は背中に感じる温かさと柔らかさを必死にシャットアウトしつつ、なんとか寝ることに
意識を集中しようとする。
「太一、兄さん…」
 そんな太一を追い詰めるように、知晶は呟きつつ、なおも身を寄せてくる。そして、
「好き」
「……!」
 背中で囁かれた言葉に、太一は思わず硬直した。
「好き。大好き」
「………わかったから、寝ろよ」
 なおも呟く知晶に、太一はたまらず口を出した。
「うん。今のは寝言です」
「…起きてるじゃねえか」
「太一兄さんがこっちを向いてくれないと、ずっとこの寝言を言い続けてしまいそうです」
 なんだよそれは……。と、まさに寝言は寝て言えの状態に、太一は溜め息を付いた。
「好き。好き。好き。大好き」
「…ああっもう! 分かったよ! そっち向きゃいいんだろ!」
264-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:37:08 ID:05wkDevy
 なおも囁かれ続ける言葉に、太一は半ば自棄になって振り向いた。そんなに耳元で囁かれては
とても寝つけそうにない。
 振り向いた瞬間、
「大好きっ」
「ぅおっ」
 がばっと抱きつかれ、そのまま上から覆い被さるようにして組み敷かれる。首にしがみ
つくように抱きつかれ、頬を艶やかな黒髪がくすぐる。
「お、お前っ……!」
 慌てて抗議の声を上げようとした太一に、顔をぶつけるようにして知晶が迫る。
「──んんっ!」
 太一の視界が知晶で埋まった。暗がりでよく見えないが、軽く目を瞑った知晶が見えた。
長い睫毛が微かに震え、ミルクのように瑞々しい肌が、至近距離で薄闇に映える。
 唇に感じる柔らかな感触と、隙間から漏れる熱い吐息で、キスをされたことにようやく
気付いた。
「っ!」
 突然のキスで固まっていた身体が自由を取り戻すと同時、顔をねじってキスから逃れた。
「っぷあ! な、何して…!」
「好きっ、大好きっ、大好きっ」
 唇だけに飽き足らず、所構わず知晶がキスの雨を降らせる。頬、額、目蓋、顎、耳、首。
目に付く所全てを唇で埋めるかのように、知晶が情熱的にキスを降らせる。キスの嵐だ。
「大好き。大好きっ」
「おま、やめ、んぅっ!」
 抗議の声を封じるかのように、再び唇を奪う。
「んっ、んぅ…。はっ、ん、ちゅ」
 何度も何度も唇を重ね、上唇や下唇をついばむように吸ってくる。
「ちゅ、ん。んぅ…はぁ、太一…。ちゅ、ん…」
 きつく抱き締められ、密着した身体からは湯気が出そうなくらい熱をもち、集中豪雨の
ように降らされるキスで、太一の顔が熱い吐息に炙られる。
 太一はもう、熱いやら恥ずかしいやらで、思考回路がずたずただった。
「もうっ、いい加減にっ……しろ!」
 それでも、なんとか理性を振り絞って太一が知晶の肩に手を掛け強引に引き剥がした。
 馬乗りにされ、覆い被さるように抱きついていた知晶との間に空間ができる。
 目の前で、興奮のせいか、顔を上気させた知晶がこちらを見下ろしている。
「知晶っ! いい加減に……」
 あまりの行為に怒鳴りかけた時、ソレに気付いて言葉を失った。
 押し退けるように肩を掴んだ手の平に感じる、温かく柔らかな肌の感触。
 自分の顔の横から伸びる腕は、透き通るような白い肌で、二の腕から肩のラインが暗がり
に輝く。
 知晶の顔を凝視していた視線を呆然と下に移すと、白い首筋、艶かしく浮き出た鎖骨、
そして、もうしわけ程度に膨らんだ小さな胸と、見えてはいけないはずの乳首まで見えた。
265-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:38:23 ID:05wkDevy
 ──裸だ。と気付いた瞬間に顔を反らした。
「な、な、なんで、裸、なんだよ」
 おそらく、全裸だ。真っ白いお腹も目に入ったし、その下もちらっとだけ視界に入って
しまった。もちろん、部屋は薄暗いし、半分布団を被った状態だったため、ほとんど見えて
ない。断じて、見てない。もしかしたら、さすがにパンツは穿いているかもしれない。
 しかし、その期待はお腹に感じる感触で打ち砕かれた。
 知晶は太一のお腹に腰を下ろすようにして馬乗りになっている。お腹に感じる感触は、
パジャマや下着などの布越しのそれではなかった。柔らかいお尻の感触を腹部に感じ、
太一の頭が沸騰する。混乱のあまり、思うように動かない口を必死に動かし、言葉を紡ぐ。
「…なに、考えてんだよ。なんで、そんな、格好なんだ」
「太一兄さんが好きだからです」
「…お前は、好きだからって裸になるのか?」
「太一兄さんが傍に寝てると思うと、我慢出来なくて」
「…我慢しなさい。そんなはしたない娘に育てた覚えはないぞ」
 太一は顔を背けたまま冗談めかして言いつつ、その実、混乱している頭を必死に
落ち着かせようとするだけで精一杯だった。

 なんで、なんでこんな状態になってるんだ。なんで知晶が裸で俺に迫ってるんだ。
ちくしょう、見ちまったじゃないか。……ああああ! 思い出すな思い出すな!
 太一は頭を掻きむしりたい衝動に駆られる。心を落ち着かせようとするほど、
先ほどの知晶の肢体が脳裏に蘇り、よけい気が動転してしまう。

「はたしなくてごめんなさい。でも、私がそうなるのは太一兄さんだけですから」
 囁くような知晶の声が耳に届く。顔を背けているため知晶の表情は分からないが、
声を聞く限り、落ち着いているように感じる。こっちはもう一杯一杯だっていうのに。
「太一兄さんが好きで好きでたまらないんです。私の身体、見ましたよね? どう
でした?」
「ど、どうって……。お前…」
「胸は…小さいですけど、形は悪くないと思います。太一兄さんは、胸は大きい方が
好きですか?」
「お、俺の好みはどうでもいいだろ。それに、見てない。暗くて、見えなかった」
 またもや知晶の身体を思い出してしまって、太一は慌てて否定する。小さくて
ささやかな胸は、よりにもよって、太一の好みど真ん中ストレートだった。
「じゃあ、見て下さい」
 言うなり、知晶は太一の顔を両手で挟んで正面を向ける。
 今度こそハッキリと、知晶の身体が目に入った。
 透き通るような白い肌が暗がりに浮かび上がる。薄い胸が目の前にあり、ほっそり
とした華奢な腰まわりが視界の隅に映る。
 見ちゃ駄目だ。見ちゃ駄目だ。と理性が必死に脳内で警戒音を発生させているが、
視線がまるで磁石に吸い寄せられるかのように下にさがる。
 一瞬、凝視してしまい、慌てて知晶の手を振り切って顔を反らした。
「…いい加減にしろよ。怒るぞ」
 太一は凄むような声を絞り出す。さすがにそろそろ離れてくれないとヤバい。
いろいろとヤバい。
 太一は内心焦りまくりながら、努めて冷徹に聞こえるように声を出す。
266-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:39:26 ID:05wkDevy
「いいか? お前のことは妹としてしか見てないんだ。だから、裸を見せられても
嬉しくないし、困るだけだ」
 裸で抱きつかれて、顔中にキスされて、馬乗りにされて腹に尻が当たってる状況なんて、
マズすぎる。いくら知晶とのスキンシップに慣れているとはいえ、太一も健康な成人男性だ。
当然、反応する所は本人の意志とは無関係にあさましく反応してしまっている。頼むから
気付かないでくれと、必死に念じる。

「私を妹としてしか見てないなら、裸を見てもどうってことないんじゃないですか?」
「どうってことないわけあるか」
「じゃあ、私の裸を見て興奮してくれるんですね?」
「ちがう!」
 段々、太一は苛ついてきた。自分が折角耐えているのに、なんでこいつは追い詰める
ような事を言ってくるんだ。
「さっさと離れて服を着ろ。本当に怒るぞ」
「やだ」
「お前…! いい加減に」
「だって、太一は嘘を付いてるもの」
「嘘なんか付いてない」
「じゃあ、これは何?」
「──っ!」
 知晶はお尻を後ろに下げ、ぐりっと太一の盛り上がった股間を刺激する。急な刺激に
太一の腰が跳ねた。
「太一の、おっきくなってる。私で興奮してるってことですよね?」
「それはっ、ちがっ…ぅくっ!」
 知晶の小さな手がズボン越しに股間を撫で、否定しようとした言葉が途切れる。
「嬉しいです。私でこんな大きくなって…」
 本当に嬉しそうに言いながら、知晶が太一の股間を撫で回す。
「やめろっ!」
 ほとんど悲鳴のような声を上げ、太一が上体をおこし、知晶の腕を掴む。
「何考えてんだ! いい加減にしろ!」
 なるべく知晶の身体を見ないようにしながら、太一が叱りつける。
 もう本当にこれ以上は駄目だ。叱る言葉とは裏腹に、太一は焦っていた。
 本当にこれ以上はやめてくれ。どうにかなりそうだ。太一は「知晶は妹、知晶は妹」
と頭の中で繰り返し、理性をつなぎ止める。
 知晶相手にどうにかなっちゃ駄目だ。という気持ちと、何故駄目なんだ? という
気持ちがごっちゃになって、まともに頭が回らない。とにかく、この状態から抜け出す
ことしか考えられない。
「お前、こんなことしてどうなるか分かってるのか!?」
「分かってますよ」
「じゃあ、やめろ!」
「やだ。だって、太一としたいんだもの」
「…っ!」
 至近距離で真直ぐ見つめられ、知晶が迫る。
「おっきくしてるってことは、太一もしたいんですよね?」
 違う! と叫んだつもりだったが、声が出なかった。
267-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:40:17 ID:05wkDevy
「太一、セックス、して?」
「お前…ッ!」
 その言葉に、太一が弾かれるように叫んだ。
「お前、分かってねえ! いいか! 男は、そんな風に迫られたら、身体が反応しち
まうんだよ! セックスしたいから勃ってるんじゃない、ただの生理現象なんだ!」
 太一の剣幕に知晶は驚いたように目を見開いたが、すぐに薄い笑みに戻り、
「それは、要するに男性の本能ってことですよね?」
「そうだ、だから、」
 俺の本心じゃない。という言葉を遮って、知晶が微笑む。
「太一は、本能では私とセックスしたいってことですね?」
「本能であって、俺の本心じゃない」
「一緒ですよ」
「違う。お前は、俺の身体だけでいいのか!? 確かに本能じゃ興奮してるし勃っちゃ
てるよ! でもな、それは俺の身体だけで、俺の心は、気持ちは、そうじゃないんだよ!」
 その言葉に、知晶は息を飲んだように震えた。
「セックスして、俺と身体は重ねられるかもしれないけど、俺の心はお前と1ミリも重なって
ないぞ! お前はそれでいいのか!? 俺の気持ちは全然、お前のものになってないんだぞ!?」
「………」
 太一の言葉に、知晶がうつむく。知晶の気持ちが、みるみる萎んで行くのが太一にも
分かった。

 思わず太一は心の中で息を付いた。本当にギリギリだった。これ以上ねばられたら、
どうにかなってしまいそうだった。

 正直、知晶は可愛い。ぶっちゃけてしまえば、物凄く自分の好みだ。小柄な身体も、
綺麗な長めの黒髪も、全部好きだ。

 でも、7つも歳が違う。

 もしも、双方が共に大人になってから出会ったのなら、あるいは気にならない差だった
のかもしれない。
 でも二人は子供の時から、それこそ太一は知晶が赤ん坊のころから知ってるのだ。

 太一が小学2年生の時に、知晶が産まれた。そのころの記憶はさすがに霞んでしまって
おぼろげだが、もみじの葉っぱみたいな小さな手で自分の指を握ってきた赤ん坊の知晶を
憶えている。

 今は確かに知晶は16歳になって、法的には結婚出来る年齢になったが、太一の中では
小さな子供のままだ。守るべき小さな女の子の、大事な女の子のままだ。
 そんな知晶に、自分が理性を失って手を出してしまうことだけは、どうしても避けた
かった。
 それだけ、太一は知晶を大事に想っていた。

 ──ああ、そうだ。その通りだ。自分は知晶が好きだ。それも、一人の女の子として
好きなのかも知れない。
 でも、今はそう見ることは出来ない。
 あと何年か。知晶が社会人になるくらいになれば、自分も、一人の女性として彼女を
見ることが出来るかも知れない。せめて、その時まで──
268-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:41:23 ID:05wkDevy

 長い沈黙の後、知晶が口を開いた。
「ごめんなさい…」
 消え入りそうな声で呟く。
「ごめんなさい…。太一兄さん」
「知晶……」
 どうやら、知晶は分かってくれたようだ。太一は胸を撫で下ろした。
 未だ馬乗りになっている知晶の肩に手を乗せ、太一は出来るだけ優しく言う。
「ほら、ちゃんとパジャマ着て、布団に入れ。風邪ひくぞ」
「ごめんなさい…」
「もういいから。怒鳴って悪かった。ごめんな」
 ほら。と知晶の肩を掴んで下ろそうとするが、知晶はうつむいたまま、微動だにしない。
「ごめんなさい…。太一兄さん。私、」
 言いながら、太一に覆い被さってくる。
「ちょ、知晶?」
「私、セックスしたい」
 耳元で囁かれた声に、太一は頭をバットでぶん殴られたような衝撃を受けた。その隙に
知晶がまた唇を重ねてくる。
「んんっ!」
 そのまま押し倒され、また馬乗り状態に逆戻りしてしまう。
「んぅ、ちゅ、太一兄さん、好き。んっ」
 知晶は唇をちゅっちゅとついばみながら、するすると太一の腰に手を伸ばす。
「知晶っ、やめっ、ぅあッ!」
 少し力を失って萎えかけていた股間を、知晶の手が撫でる。みるみるうちに硬度が増して
行く。
「ごめんなさい。やっぱり駄目。セックスしたい。ね? お願い」
「お前、まだそんなことを……うくッ!」
 直情的な知晶の手で股間を撫で回され、太一が呻く。顔から首筋までキスの雨を降らせて
いる知晶を、太一は股間の感触に歯を食いしばりながら呆然と見つめる。
 なんてことだ。あれでも知晶は納得しないのか。理性がキリキリと千切られて行くのを
はっきり感じた。
「知晶、やめろッ!」
「ちゅ、んぅ。……やだ」
 キスを一旦止め、知晶は至近距離で太一を見つめる。その目は据わったようになっており、
意地になっているようにも、泣きそうになっているようにも見えた。
269-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:42:22 ID:05wkDevy
「本当は太一の心も欲しい。でも太一は私のこと妹としてしか見てない。だったら、どうせ
叶わない想いなら、せめて身体だけでも結ばれたい。嫌われてもいい。この機会を逃したら
私は永久に太一の身体も手に入れられない。それなら、どうせ嫌われるなら、どうせ、私の
こと好きになってくれないなら、無理にでもしちゃいます。…だから、ごめんなさい」
「──ッ!」
 なんだそれはと、叫びたくような腹立ちが、太一の頭を一瞬で真っ白にした。
 太一は自分が何故耐えているのか、何のために耐えているのか分からなくなった。
 そして、自分が必死に耐えているのに、執拗に誘惑してくる知晶の態度が苛ついてしょうが
なかった。
 もちろん、頭の奥では、自分が勝手に耐えているだけで、それにたいして苛つくのは
理不尽だと分かっている。しかし、度重なる誘惑で擦り切れた脳みそは、まともな判断が
出来なくなっていた。

 そしてなにより「どうせ嫌われるなら」とか「どうせ好きになってくれないなら」という
言葉に、目の前が真っ赤になって、──キレた。

「ふ、ざ、け、ん、なーーーー!!」
 絶叫し、知晶を強引に引き剥がす。
「ふざけるなッ! 嫌われるだと!? 誰がお前の事を嫌いだと言った!? 嫌いになる
わけないだろうがッ! くそっ、ふざけんな!」
 こんなにも大事に想っているのに、小さい頃から見守ってきて、誰よりも大事に想って
いるのに、嫌いになんかなるわけがない。何故それが分からないんだ。
「た、太一兄さん…?」
 突然の豹変に、知晶が呆然と見上げる。
「太一兄さんと呼ぶな! 太一だろ! 俺はお前の兄じゃない!」
 ビシッと指を突き付け、言い切る。
「お前は、俺の妹じゃない!」
「た……、太一…で、いいんですか?」
「よくないわけあるか! くそっ! 好き勝手散々誘惑しやがって、何が嫌われてもだ!
嫌いなわけあるか! 何が好きになってくれなくてもだ! 好きに決まってるだろうが!」
「え? え? えぇ!?」
 困惑する知晶をよそに、太一は暴走し続ける。もう自分が何を口走っているか、分かって
いないようだ。
「俺がどれだけお前の事が大事で、どれだけお前の事が好きだと思ってるんだ! お前に
じゃれつかれるたびに、俺がどれだけドキドキしてると思ってるんだ!」
 くそっ、ふざけんな! と言いながら、部屋の電気を付け、ドスドスと足音を立てて
部屋の隅に寄せたちゃぶ台に歩み寄る。
 分からせてやる。こいつに俺がどれだけお前の事が好きなのかを、分からせてやる。
 ちゃぶ台の上に置きっぱなしだった婚姻届をひっつかみ、殴るような勢いでペンを
走らせる。鞄から印鑑を取り出し、ガツンッと捺印。
 そして、書きたてほやほやの婚姻届を知晶に突き付ける。
「どうだ! これで俺とお前は婚約同士だ! これでも俺が、お前のこと嫌ってるとでも、
好きじゃないとでも言うのか!」
 ざまあみろ! と言わんばかりに太一が言い放つ。
 眉をつり上げ、怒りで興奮して息を荒げている男が、裸でペタンと座り込んでいる
女の子に婚姻届を突き付けているという、なんだかよく分からない状態のまま、時間が
流れる。
270-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:43:41 ID:05wkDevy
 たっぷり数十秒後、未だにぽかーんと、呆然として固まっている知晶の様子を見て、
太一がようやく、己の行動の意味に気付いた。

 …………あれ? 今、俺……何をしてた?

 ハッと、自分の言動に気付き、頭に登った血が音を立てて引いて行き、背中にぶわっと
冷たい汗が噴き出した。

「ふ、ふふ……ふふふふふ……」
 沸き上がるような含み笑いが聞こえ、太一が呆然と知晶を見下ろすと、にまぁと顔を
ゆがめて無気味に微笑んでいた。
「い、いや、今のは、そのっ」
「ふふふ、駄目です。ちゃあんと聞こえました」
 慌てて言い訳しようとするが、知晶に遮られる。
「そぉですか。そんなに太一は私が好きなんですか。うふふふ…」
「や、その、あれは…」
 ぺたんと座り込んだまま、知晶が楽しそうに肩を震わせる。こちらを見上げる目が
人の悪そうに細められ、頬を上げて含み笑いをしている。
「とても、嬉しいです。私達、両想いなんですね?」
 言いながら、知晶が立ち上がる。電気を付けた明るい部屋に、知晶の肢体が晒され、
太一は慌てて目を逸らした
「ち、知晶、お、落ち着け。今のは、違うんだ、その…」
 太一は血の気が引いて青ざめたり、知晶の裸を見てしまって赤くなったり顔色が忙しく
変化している。混乱のあまり、頭が真っ白だ。
「違うって、何がですか?」
「あのな、さっきのは」
「何も、違うことなんてありませんよ?」
「うっ──」
 ぴたりと寄り添い、嬉しそうに微笑んで見上げている知晶に、太一は言葉に詰まる。
「私は、太一が好き。太一も、私が好き。相思相愛です」
 迫られて、言葉も詰まって、頭も混乱して、太一は口をぱくぱくさせることしか出来ない。
「嬉しいです。太一、大好きっ」
「──ぉわっ!」
 子犬のように飛びつかれ、バランスを崩して布団の上に尻餅を付く。
「太一、太一、太一」
 名前を連呼しながら首にしがみつくようにして抱きつき、唇を押し付けてくる。
「セックス。セックスしよ? ね?」
 はぁはぁと息を荒げ、鼻と鼻がくっつくような距離で知晶が言う。
 興奮のせいか、相思相愛の嬉しさのせいか、瞳が潤み、頬も上気している。
「太一、私、嬉しい。もう、我慢、出来ません。セックス。ね? しよ? セックス。ね?」
 ちろちろと太一の唇や下顎をなめながら、すっかり発情した知晶が早口で捲し立てる。
熱い息が太一の顔を焦がし、太一は脳みそまでも熱で蕩けてしまいそうな錯覚を覚えた。
「ち、知晶、駄目だ。俺は、お前を妹として…」
「何言ってるんですか。さっき『お前は俺の妹じゃない』って言ったじゃないですか」
 案の定、苦し紛れの言い訳は、あっさり看破された。今さら言っても説得力がないのは
分かっていたが、言わずにはいられなかった。それに、
「知晶、お前は16歳だろ? 分かるだろ? ほら、18歳未満の女の子と俺みたいな大人の
男がしちゃうと、駄目なんだよ。な?」
「ええ、知ってます」
「じゃあ、」
「でもそれは、結婚を前提とした付き合いならば問題ないはずです。ほら」
271-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:44:38 ID:05wkDevy
 そう言って、嬉しそうに婚姻届を太一に見せる。
「私達は、すでに婚約してるんですから、そういった問題はありませんよ?」
 そうだった……。勢いとはいえ、自分はなんということをしてしまったのか。太一は
八方ふさがりの状況に頭を抱えたくなった。
「太一が自主的に署名したんじゃないですか。もう忘れたんですか?」
 くすくすと微笑みながら、知晶が迫る。
「もう、私達の間には何の障害もありません。ね、太一。貴方の心も身体も、私のものですよ?」
「…っ!」
 ゆっくりと知晶が抱き締めてくる。
 そして、耳元で囁く。
「その代わり、私の心と身体は太一のものです。ずっと、大事にしてくださいね?」
「知晶…!」
 ──ああ、もう……。
「…どうなっても、知らねえぞ」
「うん。私を無茶苦茶にして。太一も、私で無茶苦茶になってください」
 ──もう、駄目だ。

 知晶は、赤ん坊の頃から見守ってきた、大事な女の子だ。
 そんな女の子に手を出すなんて、絶対に許されない。ずっとそう思っていた。
 でもそれは、極めて自分勝手な考えなのだろう。自分の中の知晶を壊したくなくて、
彼女と深い関係になるのを恐れていたのだ。

 彼女はこんなにも真直ぐに自分に好意を伝えてきている。そのやり方には少し問題が
あるかもしれないが、逆に、彼女が真に自分を好きでいてくれていると感じられ、太一は
愛おしさで胸が一杯になった。

 歳が7つ離れてるからなんだ。そんなのを理由にして、今まで自分の心と知晶の気持ちから
目を逸らしていた。無視し続けていた。

「太一。大好き。んぅ…」
 知晶が潤んだ瞳で唇を重ねてくる。

 覚悟を決め、迷いを振り切るように、太一が知晶を初めて抱き返した。自らも唇を重ね、
舌を絡める。

 太一がとうとう年下の幼馴染みに陥落した、その瞬間だった。

 * * * * *
272-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:45:38 ID:05wkDevy
「太一、太一っ」
 今までとは逆に、太一が知晶にのしかかり、小さな胸に舌を這わせている。
 知晶は愛しい人に胸を愛撫され、歓喜と快楽に身を悶えさせる。
「あ、ゃ、やあ…んんっ」
 未知の快感が身体中を駆け巡り、知晶が布団の上で仰け反る。
「んっ、ぁ…、はぁ…、やっ、ゃあ…」
 執拗に乳首を攻められ、知晶の身体がびくびくと痙攣するように震える。
 太一はなおも乳首を舌で愛撫しながら、右手でもう片方のふくらみを撫でるようにして揉み、
左手を背中に回す。
「ふ、ぅんっ……あ、やっ…は…、ああ…きもちぃ…!」
 両方の胸を愛撫され、知晶が溜まらず愉悦の声を漏らした。快楽と興奮で首筋まで真っ赤に
染まり、瞳も情欲に染まって潤んでいる。
 固くしこった桜色の乳首を強めに摘むと、「っはあ!」と鋭い刺激に知晶が背を丸める。
背中に回した左手で、丸まった背を背骨にそって撫でてやると、「ふぁああっ!」と今度は
仰け反る。敏感な知晶の反応が楽しくなって、太一は胸と背中を交互に攻めたてる。
「やっ! それ、だめ、だめだめぇ! ふあっ! は…、やあ…あッ!」
「…敏感だな。知晶は」
「やあっ…だって、これ、んっ…。きもちいっ…ふああぁ…」
 歓喜の声をあげ、髪を振り乱す。長めの髪の毛がしっとりと汗で濡れたミルク色の肌に
貼り付く。
「だめ、だめ、ビクってなっちゃう。あああっ……」
 強過ぎる感覚に、知晶は小さな身体を震わせる。快楽に翻弄され、頭はもう、より太一と
気持ちよくなることしか考えられず、はぁはぁと喘いで半開きになった唇から涎が垂れる。
「太一、太一、太一ぃ」
 愛しい彼の名前を口にしながら、耐え切れなくなったように太一の頭を胸に抱く。
 執拗に攻められた乳首は痛いくらいに固くなり、切羽詰まった知晶の心情を表している
かのようだ。

「…知晶。お前、可愛すぎ」
 胸から顔を離し、太一が呟く。
 折れそうなくらい華奢で、抱き締めたら腕の中にすっぽり収まってしまうくらい小柄な
知晶が、自分の名前を呼びながら快感に悶える姿は、目眩がするほど卑猥で、太一は頭が
くらくらしてきそうだった。
「太一、下も、こっちも、触って?」
 情欲に染まった瞳でこちらを見つめ、太一の手を掴んで下腹部に誘う。
「お前、こんなにエッチだったんだな…」
 はしたなくおねだりする知晶に、太一が呟く。下腹部に触れた手が、熱い体液でじっとりと
濡れて行く。
「だって、太一と、セックスしてるんですよ? 嬉しくて、頭も心も身体も蕩けそうです」
「蕩けちまえ」
 恥丘を優しく揉むように撫でると、途端に知晶が反応した。
「ああっ!」
 わずかに綻んだ割れ目から愛液がとろとろと染みだし、太一の指の滑りを良くする。
 ゆるゆると割れ目にそって優しく撫でてやり、染みだした愛液を擦り込むように愛撫。
「ひっ、いっ、ふあっ…。ああっ…! きもちいい…きもちいぃ…」
 腰の奥がじんわりと熱を持ち、身体が蕩けそうになる快感に、知晶は太一の肩に掴まって
耐える。
273-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:46:35 ID:05wkDevy
「あっ…ふぅ……。す、好きな人に触ってもらうと、自分でするよりずっと気持ち良いって
本当、なんですね」
 時折身体をびくびくと震わせながら、知晶が潤んだ瞳で微笑む。
「自分で、してるのか?」
「…うん」
 少し恥ずかしそうに頷いて、潤んだ瞳で真直ぐ見つめてくる。
「太一を想って、んっ…。いつも、独りでしてます」
 秘所を刺激されながら、知晶が真っ赤な顔で告白してくる。
「実は、今日、あっ…。太一が会社から帰ってくる前に、この部屋で、独りでしてました」
「んなっ…」
 突然の告白に太一は固まる。
「まだ洗ってないYシャツの匂いを嗅いだら、我慢出来なくて」
 ……このエロ娘め。と、太一は中指の第一間接の半分ほどを不意打ちで秘裂に入れた。
「ひあぁッ! ゃあっ」
 途端に嬌声をあげて知晶が仰け反る。反射的に太ももがぎゅっと閉じられ、秘所を
いじっている指がより圧迫される。
「ああああッ! やッ! だめだめだめぇ!」
 敏感過ぎる秘裂の内側を刺激され、知晶が髪を振り乱す。神経を駆け巡る快感に、
太ももの力を緩めることが出来ず、更に強く刺激されてしまう。
「た、太一ッ! それだめッ! あッ! やッ! ああーーッ!」
 ガクガクと小さな身体を痙攣させ、強烈な快楽が腰の奥で弾けた。
「あーッ! だめッ! イッ、イッちゃ……ああああッ!!」
 絶頂に達し、知晶はやっと太ももを緩めることが出来た。
「はっ…はっ…」
 強過ぎる性感に、身体がカタカタ震え、絶頂の大きさを物語る。
「知晶、だ、大丈夫か?」
「は、はい…」
 太一にしがみつきながら、息も絶え絶えで知晶が答えた。
 自分の手ではく、好きな人の手によって強制的に絶頂に達せられる快感は、知晶の
想像を遥かに超えていた。
 余韻でまだ身体が言うことを聞かず、彼にしがみついて接触している部分からも
じんわりと気持ちよさを感じてしまうほど、身体が快楽を感じる神経を過敏にして
いる。

「すごく、気持ちよかったです」
 振り乱した髪の毛が、汗と涙と涎で濡れた顔に行く筋か付いている。とろんとした
表情でしがみつき、絶頂の余韻に時折身体を震わせる知晶に、太一は居ても立っても
いられなくなった。
「お前、そんなエロい顔するなよ……」
「私、エッチな顔してます?」
「ああ…」
「太一のせいですよ? 太一が私にこんなエッチな顔をさせてるんです。気持ちよくて
もう頭がおかしくなりそうです」
 蕩けた顔で微笑み、そのままキス。
「んぅ、ちゅ、ん、ふぅ…。ちゅっ…んっ」
 情熱的に唇を重ね、舌を絡めあう。知晶はその感触だけで腰が震え、自分の大事な所が
さらに濡れて行くのを感じた。
「んっ……」
 離した唇からだ液が糸を引く。
「知晶、その…いいか?」
274-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:47:33 ID:05wkDevy
 鼻と鼻がくっつきそうな距離で、太一が尋ねる。
 その言葉に、知晶は腰の奥からとろとろと温かいものが溢れてくるのを感じた。
 ああ、とうとう自分は彼のを受け入れられるんだ…。
 ゾクゾクと下腹部が震え、何の刺激もしていないのに、膣が収縮を始めたような気がした。
「うん。太一、して」
 太一はゆっくりと知晶に覆い被さり、ズボンを下ろして陰茎を取り出した。ガチガチに
なった陰茎が飛び出し、知晶の目を釘付けにする。
「出来るだけ優しくするから、痛かったら言えよ」
「…うん」
 お互い荒い息を付き、逸る気持ちを抑える。知晶は早く挿入してもらいたくて、腰を
はしたなく浮かしそうになり、太一はがむしゃらに突っ込みたい欲望を必死で抑える。
 触っていた時よりもぬかるみ、だいぶ綻んでいる秘裂に、いきり立ったものをあてがう。
 一息付いてから、ゆっくりと侵入。
「んっ…」
 狭い膣内が熱い肉の銛によってこじ開けて行く感覚に、知晶の声が漏れる。
「あ、ふぁ……、んっ…」
 入り口で慣らすように出入りを繰り返し、徐々に深く突き挿さってくる。
「あ、あ、あっ……、っ!」
 破瓜の痛みに、知晶が顔をゆがめる。身体が硬直し、シーツを固く握りしめる。
「大丈夫か?」
 知晶の表情の変化で太一が一旦動きを止めた。とろとろに溶けて温かい膣口が亀頭を
吸い込むようにきゅうきゅう締まる刺激に、太一が耐える。今すぐ身体の奥深くまで
ペニスをめり込ませたい欲求に駆られるが、なんとか抑え込んだ。
「んっ…。平気です。動いていいですよ」
「ああ」
 ゆっくりと出し入れを繰り返しながら、奥へ侵入して行く。
「ふ、んっ…あ、あ、んあっ」
 小刻みに出し入れされ、いきり立ったペニスが膣内を擦る度に、強い刺激が知晶を
襲う。
 前戯で一度達しているためか、膣内は柔らかく溶け、初めての侵入者をスムーズに
受け入れている。
「あっ、は、ふあっ…ゃ、んっ」
 同時に、一度絶頂を迎え、全身の快楽の神経が敏感になっている知晶は、熱い肉棒に
擦られる度に声が出てしまう。
「ゃ、ぁ、んんッ! あ、はッ! ん…」
 やがて、肉棒を1/4ほど残して、知晶の膣内が一杯になった。
「はぁっ…ん、あ…。全部、入りました…?」
「ああ…」
 小さな身体でいきり立った剛直を飲み込み、荒い息で喘いでいる知晶に、太一の
興奮が高まる。
 大きな瞳を潤ませ、小さな胸が荒い呼吸に上下している。彼女の細い腰の中に自分のが
入っていると思うと、居ても立ってもいられなくなり、がむしゃらに腰を動かしたい衝動に
駆られた。

 知晶の方も、待ち望んだ挿入に腰が震える。狭い膣を一杯に広げられ、否応無しに
彼のものの存在を感じてしまう。
 自分が、太一のものを受け止めている。一番、深い所で繋がっている。その事実が、
知晶の興奮をさらに高め、破瓜の痛みを綺麗に消し去っていた。
275-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:48:39 ID:05wkDevy
「太一、動いて、動いてっ。私のナカ、擦って」
 言いながら、自分で腰をくねらせる。その刺激に呻きつつ、太一は負けじと腰を振り
出した。
「あッ! あーッ! ふあっ、ナカ、すごいッ」
 深いストロークで出入りする肉棒に、知晶が悶える。
「やッ! やッ! だめ、だめっ、きもちぃッ! あああーッ!」
 先ほどの指とは比べ物にならない存在感で、知晶の膣内を陰茎が蹂躙する。敏感な
所を容赦なく擦られ、抉られ、知晶は髪を振り乱す。
「ああーッ! ああーッ! 太一! 太一!」
「知晶…っ」
 顔を情欲一色に染め、知晶が太一の名を連呼する。その様子に、太一は更に深く
腰を打ち付けようと動きを激しくして行く。
「ああ太一…! セックス、セックスしてる! ああ太一とセックスしてる!」
 自分が行っている行為を確認するかのように、知晶が叫ぶ。そして、叫ぶ度に心の奥で
その行為を認識し、興奮が増していった。
 もう知晶は、太一とセックスしてることしか考えられない。
「あッ! ふああッ! きもちぃっ、きもちぃっ! だめぇッ!」
「知晶っ! 俺も、気持ち良い…!」
 お互いの腰が激しくぶつかり、水音が響く。ぐちゃぐちゃと結合部が泡立ち、どんどん
溢れる愛液が知晶のお尻まで伝ってシーツを濡らす。
「あーッ! あーッ! やあッ! あああきもちいッ!」
 激しく突かれ、知晶の子宮が揺さぶられる。強過ぎる快感に、頭の中がぐずぐずに
なって、快楽一色に染まっていく。
「太一! 好き! 大好き! 大好きぃ!」
「俺も、好きだ!」
「あああッ! 太一!」
 がむしゃらに腰を振る太一に脚を絡め、知晶もより深く突いてもらいたいかのように、
脚を引き寄せ、腰をくねらせる。
「太一、イク、イク、イキそ、私、私、もうっ」
 狂ったように絡み合いながら、知晶が切羽詰まった声をあげる。
「あッ! あッ! 太一、太一は? 太一も、イッて、イッて、出して」
 太一の首に手を絡め、知晶が喘ぎながら声を出す。快楽を一身に浴び続け、蕩けきった
顔で知晶が懇願する。
「私、イク、イク、イクから、太一も、出して、イッて、私で、私で出して、私でイッて!」
「──ッ!」
 知晶の懇願に、太一の背筋が震えた。
 細い腰を両手で掴んで、激しく引き寄せるように腰を振る。
「あ、や、きもちぃッ! イクッ!、きもちぃぃもうイッちゃう! 太一、太一!」
「知晶ッ! 出る…ッ」
「ああイクッ! ああーーッ! あああああイクぅぅッ!」
 絶頂を迎え、一際大きな嬌声を上げて知晶が仰け反る。同時に、
「うくッ!」
 膣の中で、肉棒が跳ねた。大量の精を放ち、子宮に叩き付けるように次々噴き出す。
「ああ出てる! 出てるぅ…。太一の、太一が、ああッ!」
 太一がイッてる! 太一がイッてる! 太一がイッてる! 私でイッてる!
 愛しい彼が、自分でイッてくれて、出してくれたことが何より嬉しく、興奮した。
 その事実と、驚くほど熱い精液を膣内で感じ、知晶がまた嬌声をあげる。
「あーーッ! あーーッ! あーーッ!」
 再び絶頂に達し、強すぎる快感が知晶の小さな身体を駆け巡る。
 逃れようのない快感に、どうしようもなくなって、知晶は太一にしがみついた。
「ああ、あ、太一…。好き、好き」
「知晶…」
 激しい絶頂の余韻に身悶えながら、二人は顔を寄せあい、唇を重ねた。

 * * * * *
276-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:49:43 ID:05wkDevy
 今日ほど、自分の部屋の両隣りが空き部屋だったことに感謝した事はなかった。
 1Kのアパートだ。特別壁が薄いわけじゃないが、あんな激しくしたら確実に隣に声が
漏れていただろう。
 太一は静かに息をついて、婚約届けを封筒にしまう。
「じゃあ、これは俺が預かっておくから。………そんな顔すんな」
「だって、てっきり明日届けに行くと思ったのに…」
 布団にくるまって、知晶が不満げに見上げてくる。
「そんなわけに行くか」
 溜め息をついて、封筒を収納ケースにしまう。
 知晶はすぐにでも婚姻届を役所に届けるつもりらしいが、さすがにそういうわけには
いかない。
 太一は知晶の傍にしゃがみ込んで、諭すように言う。
「お前が大学を卒業したら籍を入れようって言ってるんだから、いいじゃないか」
「16歳になったら、太一と結婚出来ると思ってたのに。後6年も待たないといけないんですか?」
 明らかに納得していない顔で、知晶が言う。
「結婚はしてないけど、婚約はしたってことじゃ駄目か? …それと」
 言いながら、鞄からラッピングされた正方形の箱を取り出す。
「ほら、誕生日プレゼント」
「あ、ありがとうございます」
 この場でもらえるとは思っていなかったのだろう。知晶は少し驚いたような様子で、手の平に
乗るサイズの箱を受け取る。
「開けても良いですか?」
「どうぞ」
 凝ったラッピングを知晶が丁寧に解いていき、箱をあける。
「あ、これ…」
「うん。前にお前が欲しがってたから」
 プレゼントは、シルバーで縁取りされた、シンプルなデザインのウッドリングだった。
 前に二人で出かけた時、知晶が欲しがっていたリングだ。その時は、こんなアクセサリーは
まだ知晶には早いと思っていたが、まあ1つぐらいなら持っていてもいいだろうと、今年の
誕生日プレゼントはこれを選んだ。
「ありがとうございます。嬉しいです」
 満面の笑みに、少し照れくさくなって頭を掻きながら太一が付け足す。
「婚約指輪ってわけじゃないけどさ、記入済みの婚姻届と、この指輪だけじゃ、不安か?」
 知晶は指輪をしばらくじっと見つめ、ちらっとこちらを見上げる。
「…浮気したら、許しませんよ?」
「そんなことはしない」
 きっぱりと答えた。
「約束ですよ?」
「ああ」
 太一は力強く頷く。知晶は、今までの人生で一番大事な女の子だった。そして今日からは、
残りの人生でも一番大事な女の子になった。浮気なんてするわけがない。
 太一は箱からウッドリングを取り出し、知晶の手を取る。
「知晶、誕生日おめでとう。それと、これからよろしくな」
 すっと、知晶の細い薬指にリングが通される。

「太一、大好き」
 年下の幼馴染みの女の子は、満面の笑みで愛しい彼に抱きついた。

終わり
277-妹的幼馴染み型素直クール-:2007/11/18(日) 15:51:07 ID:05wkDevy
以上です。
15Kぐらいのつもりが、結局60K近くまで膨れてしまいました。

長文お疲れ様でした。

楽しんでいただけたら幸いです。
読んでくれた方、ありがとうございました。
278名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 15:59:02 ID:v6dyr0P3
>>277
GJ!
279名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 16:01:02 ID:o74nSRzL
>277
リアルタイムで楽しませてもらいました。流石としか言いようがないなぁ
氏の書く女の子は乱れっぷりが凄い。かつ甘え方が上手すぎだと思う

にしても、素クールな女の子を黙らせられる男なんてのは久々に見た気がするな
280名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 16:45:19 ID:45Ck9Vry
うは、続きキテたー!
やはりGJすぎだ!
281名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 16:58:36 ID:5i2eSdzt
GJ!
可愛いなぁ
まだ、強引さが控えめだが、この後の展開が楽しみだ

ただ>>232はいらんのよ
投下予告はよほど込み合ってるスレでしか必要ない
さっと、作品だけ投下するのが一番スマート
282名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 18:15:58 ID:+S07T+FW
GJだなぁ。
エロシーンのセリフが甘々でグッとくる。
いいものを読ませてもらった。


>>281
> ただ>>232はいらんのよ

君のそのコメントこそいらんのよ
予告レスが誰かの迷惑になったか?
職人がスレに配慮しつつ自分のペースで予告、投下してるんだから。
スマートとか何とか、君の趣味を主張しなくていいよ。
283名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 18:29:53 ID:TxrZ+9Z/
>277
GJGJ!
素直クールはこうでないといかん。堪能しました。


>281
別に目くじら立てるようなことじゃない
284名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 18:51:20 ID:7hhsaZwj
GJですた
285名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 19:41:26 ID:5TlbwF06
>>277
素敵だ、やはりあなたは、素晴らしい…
どうやったらそんな素晴らしい文章が書けるのか、GJでございます。
自分も書いてるんですが、なかなかどうにも…
286名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 00:43:45 ID:CKy2ThEr
>>277
ごちそうさまでした、おいしかったです
287名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 00:44:08 ID:3KTdeOmw
GJとしかいいようがない
女の子が可愛いらしいのがたまらん
また気が向いたら書いて欲しいです
288名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 01:09:56 ID:poHYscD/
眠たい目を擦りながら読んでたら目が冴えていつの間にかナニを擦ってたじゃねぇかw
眠れなくなっちまった、どうしてくれるんだGJ!
289名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 02:03:36 ID:byUjv9RX
>>277まさしく究極の素直クール作品ですな。
文章きれいだし、ストーリー構成最高。
真っ暗鬱で心が沈んだ後にあんな甘々展開やられて暴走したじゃまいか。主に俺の脳内がな。



・・・・・・はっ!これは孔明の罠か!?いかん、ひきかえs(うわぁぁぁぁ!!)

最高でした。神GJ!!
290名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 15:57:43 ID:nTy9qPoY
なんか、褒め言葉が大仰でキモくなってきたな。

究極なんて言葉は簡単に使わない方がよろし。
291名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 17:21:29 ID:Iq0f330n
至高にして究極のSS
292名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 20:04:10 ID:3Jqm1ZFm
素直クールに似合うのは貧乳?それとも巨乳?
保管庫を見ると貧乳のほうが多いようだが、巨乳は似合わないのかな?
293名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 20:07:54 ID:v1OVfDdo
巨乳を武器に迫る素直クール…いいじゃないか!
294名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 20:24:43 ID:FLRbf8mP
なんというGJ
これはまさしくGJ
295名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 21:34:03 ID:bmPJAA3x
無口や無表情ってジャンルないっけ
別のスレに
296名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 00:14:36 ID:syUcziA4
>>295
無口スレはある
無表情は知らないな
297名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 00:30:04 ID:MQBrEOtE
>>292
素直クールは完璧美女が多いイメージがあるからむしろ貧乳は少ないと思ってた
298名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 00:39:30 ID:+Q7upbaQ
ここで投下されてる作品では、体型について言及されてるのはそんなに無いような?
「バランスの取れた体型」な人が一番多い希ガス。
そこで中くらいの胸を想像するのかぼんきゅっぼんを想像するのかは個人任せなわけだし。
299名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 00:44:26 ID:j8EDaGcK
クール→スレンダー

そんなイメージがある罠。
ボンキュボンはホットな性格が似合う
300名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 02:11:09 ID:sUyfzFEM
>>277
目が覚めた。ど う し て く れ る!

つ、つまり ぐっじょぶってことなんだからね!べ…別に新作に期待してるわけじゃないわよ!
あったらいいなとは思うけど… ゴニョゴニョ
こうやって書くとツンデレも結構素直?クールじゃないからスレチかな?
301名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 04:13:23 ID:2VL1u+uY
>>299
高身長属性忘れてないか
302名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 07:53:58 ID:wcOtvUSD
貧乳だろうが巨乳だろうがどっちでもいいよ
とにかく作者さんGJ!!!
303名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 19:13:25 ID:IltHQJXF
単なるクールや尊大のエロパロってある?
304名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 07:58:04 ID:D/WSYpxf
「いらっしゃい」
「マイルドセブン下さい」
「あのね、ウチは葉巻専門店だよ。普通のタバコは置いてないよ」
「うん、知ってるよ。ダメもとで聞いてみたんだ。
 じゃあさ、タバコ屋はどこか、場所教えてよ」
「出ていけ」
305名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 21:04:00 ID:rvb9Jhfj
誤爆乙
306名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 21:13:19 ID:0Bz+JVeG
「やっぱメンソールがいいよなぁ」
「今度ブーストって新商品出たよー」
「買う買う! ワンカートンちょうだい!」


素直クール
307名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 22:56:49 ID:K0lTyoRU
すくらばの人はどうしているだろうか…

誰か○の内線の席を確保してきてくれ
308名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 17:15:22 ID:IfPvsNhx
>>295
無口スレでいくつか無口無表情なヒロインの作品が

ああ、そういやあそこ今リレーやってるからな
309名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 01:21:58 ID:bDVSA62U
なんか異様に>>233の素直クールが異常なくらい俺の心を刺激した
ちょっとたぎったものをワードにぶつけてくる
310名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 19:09:51 ID:TR8ahSH1
保守しておこう。
311名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 22:22:14 ID:0AbnWPHF
 城壁の内側から流れる優雅なメロディー。
 今日は、長らく難病で伏せていた小さな王女様の全快記念兼誕生日パーティ
ーだ。国内国外の貴族達が今頃、城内で豪華な料理を食しながら、踊っている
ことだろう。
 光があれば闇がある。
 宮廷魔術師であるヨハンはこの夜、王城の警備に就いていた。
 担当する城壁は難攻不落、最も攻めがたい場所……なのだが。
「……どうして、誰もいなくなってるだ?」
 これはいくら何でもあんまりだ、とヨハンは思った。土に汚れた茶色のロー
ブに包まれた身体は小さく、分厚い眼鏡をかけ、言葉には辺境の訛りがある。
 宮廷魔術師と言っても、ほとんど名ばかりだ。これはひょっとすると、警備
兵達からの、新手のいじめなのかも知れない。
 などと、ヨハンが思っていると。
「うん、不用心だな」
 後ろから、そんな声が聞こえた。
 いや、ありえない。
 彼女は今、後方の城の中でパーティーに――
「だがヨハン、お前がいれば問題なかろう」
 ――は参加せず、彼女はやはり、目の前にいて微笑んでいた。
 銀色の長い髪が、水色のドレスと共に緩やかに風になびいていた。
 侯爵令嬢であり、同時に百人騎士の役職に就く少女、コルネリアだった。薬
草学の専門であるヨハンとは、騎士訓練所を通して知り合った仲だ。
「コ、コルネリア様!? パーティーに出てるはずじゃ、なかっただか?」
 コルネリアは、自分のドレスの裾を、両手でつまんだ。
「この格好で訓練をしていたとでも? 抜け出すのに苦労したぞ。ったく、ど
うして男はこう、ダンスが好きなのだろうな」
「いや、それは単に、コルネリア様と仲良くなりたいからじゃないだか?」
「よし、ヨハン。踊ろう」
 そう言うと、コルネリアはヨハンの手を取った。もう一方の手をヨハンの腰
に回し、ステップを踏み始める。
312名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 22:24:18 ID:0AbnWPHF
「仕事中だよ、オラ!?」
 何とかそのステップについて行きながら、ヨハンは抗議した。
 一体全体自分のどこがいいのか、コルネリアはヨハンのことをえらく気に入
っているのだ。
「心配は無用だ。踊りながらでも見張りは出来る!」
「は、はぁ、そんな力強く言い切られると、どうも……しかし、コルネリア様、
どうしてここに?」
 ヨハンの問いに、コルネリアは形のいい眉をひそめた。
「む、ヨハンお前意地悪だぞ。惚れた男が一人っきりで見張り番。この好機を
見過ごすほど、私は間抜けではない」
「は、はぁ……まさか、オラ以外、見張りがいないのは、コルネリア様のせい
じゃないだよね?」
「ふふん、さあどうだろな」
「…………」
 まあ、違うとは思うが。何だかんだで、コルネリアはその辺の線引きは、そ
れなりにしているはずだ。
「ヨハンは強いからな。もしそうだとしても、一人で充分仕事をこなせるだろう」
「ううむー……まあ、やる事はやるだが」
 オラそんなに強くないだよ、とヨハンは思う。
「という訳で、私のような邪魔者が一人増えたところで、問題はないのさ。そ
れに、私はパーティーよりも、こっちの方がよほど楽しい。国王陛下の許可も
ちゃんと得てるのだぞ」
 さてまあ、どうしてこうコルネリアや国王陛下は自分を買ってくれるのだろ
うなぁと、ヨハンは不思議に思う。
「あ、ちなみに王女様も抜け出したがっていたが、私はライバルに助力してや
るほど甘くないのでな。ふふふ、当分二人きりだ」
「王女様、元気にしてただか?」
 途端に、ヨハンの顔が、コルネリアのふくよかな胸に押しつけられる。
「こら、ヨハン。私を抱いている時に、他の女の話をするな」
「……ど、どっちかって言えば、オラが抱かれているだが?」
313お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2007/11/24(土) 22:26:28 ID:0AbnWPHF
「男は些細な事に拘るな。あと、王女様の体調は完璧だ。自分の集めた薬草と、
造った薬の力を信じろ」
「わ、分かっただ……だから、そろそろ、苦しいだ」
「うん。ではま、二人でパーティーを楽しもう」
「だどもコルネリア様、ここには何もないだよ」
「分かってないな、お前がいるので私は充分なんだ。見ろ、料理と飲み物を持
ってきた。さすがに見張り番の最中に、酒はまずいからジュースばかりだがな」
 そう言って、ヨハンから身体を離したコルネリアは、ドレスの裾端から皿と
瓶を取り出した。
「……一体、どこに隠してただ?」
 さっき、踊っていた時も、そんな硬いモノが当たった憶えはないのだが。
「ふふふ、乙女のスカートの中は秘密でいっぱいなのさ。うん、私も見張り番
に立とう」
「……本気で中が気になるだ」
 城壁の縁に料理と飲み物を置くコルネリアを見ながら、ヨハンは呟いた。
 すると、コルネリアは振り返り、
「いいぞ、見せよう」
 ドレスの裾を持ち上げた。
 ヨハンは慌てて、顔を背けた。
「わわっ! ひ、必要ないだ! まくらなくていいだよ!」
「そうか。絹製のいい下着なのだがな」
 どうやらスカートは、おろしてくれたようだ。
「そ、そういう事を言わないで欲しいだ。オラ仕事中だ」
 言って、ヨハンは城壁の縁から城下を見下ろした。王女の全快祝いは何も城
の中だけで行われている訳ではない。城下町からも、陽気な音楽や喧噪がここ
まで届いてきていた。
「うん、じゃあ仕事が終わったらじっくりスカートの中を観察していいぞ」
「し、しねえだよ」
「私はいつでもいいのだがなぁ」
 そう言いながら、ヨハンの横にコルネリアも並ぶ。
「……とりあえず」
「うん、二人で保守だな」


※以上、保守ネタでした。
ごめん、完全一発書き。
314名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 22:45:35 ID:BSM4k75T
>313
ちょっと!
保守ネタかよ!
萌えすぎ

続きを超期待
315名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 22:50:53 ID:ygQG6b3N
貴様、それ保守ネタで済ませられると思うか
ここで止めるな、はやく続きを書けーー!!

いや続きも必要だが
その前の、王女含め3人が知り合った経緯から
しっかり書くように
316名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 23:31:50 ID:SGUGEcey
>>313
私はこの小説をしっている!!!
いやヨハンという男と、コルネリアと言う女を知っている!!
どうも、てらおかさん、GJです
317名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 02:03:50 ID:bRAVcu/t
このスレの保守ネタはクォリティ高ぇなぁ全く…

出来れば続き書いて下さい
318名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 06:47:25 ID:QLG5I9lw
319名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 06:54:43 ID:d26A2fkN
>>311-313
な ま ご ろ し だ  こ の や ろ う

優良ネタすぎる
これは>>315の言うように3人の経緯から書いてもらわないと
320名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 07:27:12 ID:GKRJCqse
>>277
>>313

暫くこない間にGJすぎるだろ…心からのGJを送る。
保守といわず続きもキボンだぜ?
321名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 08:41:43 ID:xjMlGWgB
自分の気持ちに「素直」で、かつ男女の恋愛に対しても「クール」であるが故に、二人の男性と付き合ってしまう女の子は素直クール足り得るのだろうか?
322名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 09:38:34 ID:pUkQ6TPQ
キャラか成立するのか?
323名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 11:18:53 ID:vpkNjWDS
男2女1ってよほどうまくないとその設定だけで嫌う人いるだろうから
大変そうだけどな
324名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 11:23:08 ID:NusHzqQa
藤堂志津子の「マドンナのごとく」とか?
325名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 16:06:57 ID:Ja5nu43W
>>323
半ラジアンぐらい回転して女三人で姦しくいくのはどうだろう?
326名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 16:40:27 ID:NusHzqQa
才色兼備の生徒会長と、幼馴染のはっちゃけ娘、生徒会のおとなしめの後輩の三角関係とか?
なんか、その辺に転がっていそうだw
それはさておき、半ラジアンじゃ30度弱だと思うのだが。
327名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 17:18:34 ID:Ja5nu43W
あ、しまった。πラジアンで180度だもんな。
数学なんて○年前のセンター試験の勉強以来縁が無いから忘れちまったよ。

本当に転がってたらいいのになぁ……
328小ネタ?その2:2007/11/25(日) 20:58:29 ID:bRAVcu/t
「なぁ愛しの君よ、キス、してくれないか?」
「断る」
「あぁ、やはり駄目か。
君からキスをしてくれるのはいつもベッドの上でだけだ。
いや、そういえば以前一度夜の公園でしてくれたことがあったな。
あの後勢いでした生まれて初めての青姦は想像以上に刺激的で…
あぁ、思い出しただけで濡れてきたよ。もうキスだけでは満足できそうにないな。…なぁ君、一つお願いがある。
私は今から君の唇を奪い舌を蹂躙するつもりだ。
その間、君はその大きな手と太さの割に繊細な指で私の胸を揉みしだき乳首を弄り、クリトリスを嬲りつつ膣内を掻き回してはくれないか?叶うなら潮を吹くまでひたすらGスポットを擦り続けてくれ
一度イカせてもらわないと収まりがつきそうにないんだ」
329名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 20:59:21 ID:bRAVcu/t
「一つ聞くが…ここが何処かわかっているか?」
「勿論。昼休みの教室に決まってるじゃないか。」
「どんな様子だ?」
「皆時間が止まったかのようにこっちを見て静止しているな。赤面してる者や前屈みになってる者もいる」
「何か言うことは?」
「ああそうか、『私の疼きを鎮めて下さい、ご主人様』と言うべきだったかな?」
「…授業中に教師の前で言わないのが救いと考えてるべきか…」
「授業中は私語を慎み授業の進行を妨げるようなことはしない。その程度のルールは守るよ。」
「俺のクラス内での立場も守ってくれよ…」
330225:2007/11/25(日) 21:01:25 ID:bRAVcu/t
突然閃いたので書いてみた
331名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 21:38:08 ID:lK1pInfW
>330
アンタはアホだな
銀河系一素晴らしい才能だ!もっとやれ!
332名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 22:16:00 ID:qPU7C6Cs
>>330
ぐっじょぶだ!もっとやってくれ!
333名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 23:41:02 ID:4yMAgvfc
もっと評価されていい
334名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 23:59:50 ID:bU36lhia
>>330
お前は馬鹿だ!!
いいぞ!!もっとやれ
335名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 00:07:45 ID:q9x3J+ru
>>330
もっとやれ
336前スレM+14FhJ5:2007/11/26(月) 00:28:43 ID:P8TSr70X
とりあえず、未だ拙い文章ながら1話目完成です(前のはプロローグです)
需要があるかは分かりませんが投下させていただきます。
337前スレM+14FhJ5:2007/11/26(月) 00:29:57 ID:P8TSr70X
俺、水乃京太郎は出来るだけ目立たずに、学校生活を過ごしてきたつもりだ。
成績は良いほうだと思うが、この学校は頭のいい奴はとことん頭がいいから問題ない。
体育なども平凡に、大きなミス無く、活躍もせずと言った感じだ。
人付き合いも、あまり人とは話さず、部活も入らずにすごしてきた。
外見も、なんかアニメのモブキャラみたいな面(進藤談)だそうだ。
つまり俺は、周りには目立つ要素のまったく無い平凡な男に見えるはずだ。
それなのに…………
「君が好きだ!付き合ってくれ!!」
……何故こういうことになったんだ!!



「………へっっ!!?」
あまりに突然の出来事に、一瞬思考が止まって間抜けな声を出してしまった。
教室に来て、何かと思えば告白!?しかもこんな場所で!
「どうなんだ、水乃君、私じゃ駄目か?」
「あ、いや……」]
「嫌なら嫌と言ってくれてもかまわないんだ、たのむ、答えてくれ」
いや、それはそれでまずいことになる気がするんだが、だって周りの奴ら―
「何で水乃なんかが、先輩に告られるんだ!!!?」
「ていうかさ、あの噂ガセじゃなかったのか?」
「今告白したって事は付き合ってるっていう噂は、ガセだったんだろぉ、畜生!」
「何であんな目立たない奴が、よりによってあの清宮先輩に……ああ殺してぇなぁ!」
―こんな感じだからな…断ったら即総攻めにあうだろう、普段周りの事など無関心な俺だが、自分に関係あるとなれば話は別だ。
ただ、それ以前にOKしても結局あまり変わらない気がするが……。
まずい…、これまで目立たぬようにしてきた努力が一瞬でパアだ。
しかも、他のクラスの奴までこのクラスに湧いてきてるのが見える。
どう足掻いても俺はしばらくの間、学校の話題の的になってしまうのは避けられないだろう。
これ以上目立ってしまったら、どうなるか分かったもんじゃない。
早く何とかしなければ、とりあえずこの状況を何とかするには………
「どうしたんだ?ぼーっとして」
突如清宮の顔が、俺の視界を埋め尽した。
「うおぉ!!」
あまりに驚いて俺は、思いっきり叫んでしまった。
ていうか、少し顔を動かせばキスしてしまいそうな距離だったぞ!。
一体何を考えてんだ、ていうか、この女には羞恥心がないのか!
「むぅ……そんなに驚くこと無いじゃないか、悲しいぞ」
そんな俺の様子などお構いなしに、清宮が不満を口にする、少しショックを受けたらしい。
ならいきなり顔を近づけるな!と言いたいが、言ったらまた厄介なことになりそうだ…
しかし、いきなり目の前に人の顔が、ドアップで来たら驚かない人はいないと思う。
「……すいません」
少々納得がいかないが謝っておく、こうしておけば、ほとんど無駄なトラブルは起きない。
「いや、別にいいんだ、それより答えを聞かせてくれ、こうしてる間も胸が張り裂けそうなんだ」。
いや、そんな事言われても、困るとしか言いようがない…
その時、一つ疑問がわいた。
「すいません、一つ聞いてもいいですか?」
「ん、何だ?」
「あの、何で俺なんですか?」
338前スレM+14FhJ5:2007/11/26(月) 00:31:31 ID:P8TSr70X
本当にそう思う、よりによって何で俺なんだ?
もっと顔のいい奴や頭のいい奴ならばいるだろうに。
「そんなこと決まってるだろう、君だからだ」
……いや、全く理由になってないんだが……
「そうじゃなくて…、別に先輩から告白される様な事は無いってことですよ」
隠すことも無いので正直に答える、本当に惚れられるようなことは全くしていない。
……まあ主観的な判断と言えなくもないが……
「…あの約束、覚えてないのか?……京ちゃん…」
……?最後ボソっと何か聞こえたような?
それにしても、あの約束?
分からん、何の事だ?
そんな疑問が俺の頭を駆け巡る。
考えてみるが、さっぱり分からない。
「約束?、何の事ですか?、…先輩、もしかしてなんか勘違いしてるんじゃないですか?」
焦ってたのもあって、思った事をそのまま口にしてしまった。
だが、それがまずかったらしい。
俺が言い終えると同時に、さっきまで静かだった周りの奴らが騒ぎだしたのだ。
「ふざけんな水乃!あの清宮先輩に告白されといてなんだその言い草ぁ!!」
「死ね水乃、氏ねじゃなくて死ね」
言いたい放題言ってくれるな、お前等だったらこの状況、どうするっていうんだ……。
とりあえず、もうこれ以上この学校での俺の評価を下げたくはない、もしこれ以上嫌われようものなら、最悪いじめにあうかもしれん。
この学校はそれなりに優秀なほうで、あからさまな不良等はいないが、進藤から聞いた話だと、裏でいじめなどをしている可能性のある奴らは結構いるらしい。
そういった連中を極力刺激したくない、そういう気持ちもあるから俺は目立たず平凡に過ごしてきたというのに。
「……グズ」
そこまで考えてると、誰かが鼻をすすったような音が聞こえた。
思考が切断され少々不愉快な気持ちを味わいつつ、音の聞こえた方向を見てみると。
「やっぱり、忘れ…てたんだ…ね…」
いつものクールな表情を歪ませて、清宮が泣いていた。
「……へ?」
なっ泣いてる!!!何故!!?
確かに言ったことはひどかったかもしれないが…、泣くほどひどい事言ったか!?
分からない、俺と清宮の間に何があるって言うんだ!?
告白などというまったく未体験の事に、もはや俺の脳は、処理能力の限界を超えていた。
頭が痛い、むしろこっちも泣きたくなってくる。
「グズ、すまない、急に泣き出してしまって」
そうしてる間に、清宮は涙を拭いていた。
「いえ、別に……」
もうどうすればいいか俺には分からない、ただ、早くこの状況が過ぎ去るのを祈るのみだった。
「……なあ、京ちゃん」
しばらくの沈黙の後、清宮が口を開いた。
「……京ちゃん?」
俺の名前は京太郎だから、そういうあだ名があってもいいだろう。
だがあまりにもなれなれしい、疑問のあまり声を出してしまうほどに。
「……本当に忘れてしまったのか?あの時の……約束……」
明らかに声が沈んでいる、よほどショックだったんだろう。
俺にはまったく関係ないから、どうでもいい事だが。
「忘れた何も、知らないんですけど…」
へんな希望をもたれても困るから、ここははっきりと言っておく。
はやく誤解を解いてくれるといいんだが、こっちとしても当然その方がいい。
「なら、思い出させてあげる……」
339前スレM+14FhJ5:2007/11/26(月) 00:32:28 ID:P8TSr70X
思い出させるって……
あまりにも人の話を聞かないので、さすがに混乱よりも苛立ちが勝ってきたその時。
俺の唇にやわらかい感触を感じた。
「……!?」
周りがキャーだのギャーだの騒いでいる、だがやかましいと思う余裕も今の俺には無い。
「ん……」
キス?!、キスしてるのか?!清宮が、俺に!!
「ぷはっ、どうだ、思い出したか?京ちゃん……」
動揺する俺の気持ちなど露知らず、清宮は少しうれしそうだ。
「……なななななぁ!!!」
何だ!?この女!!何を考えてるんだ!?
告白して返事も聞かずにキスする女がいるか!?……いやここにいるが。
「本当に覚えてないのか?小さいころはよくこうしたじゃないか……」
?小さい……頃?
その言葉を聴いたとたん俺の脳が妙な反応を示した。
記憶の奥底にあった何かが湧き上がる感覚…
「京ちゃんは、私のこと怜ちゃん怜ちゃんって呼んでくれたじゃないか……本当にわすれてしまったのか?」
とても不安そうな声だ、だがその声から来る言葉が俺の心を刺激する
……京ちゃん……怜ちゃん……
「っっ!!!」
ああ……思い出した………
「どうした京ちゃん、もしかして……思い出してくれたのか!?」
突如片手で頭を抱えた俺の行動に驚いたのか、清宮が期待の入り混じった声で叫ぶ。
京ちゃん―その言葉がさらに俺の脳から昔の記憶を引っ張りあげる。
「いえ…少し気分が悪くなってしまって、すいません……返事は後でって事にしてくれませんか?」
確かに俺は全て思い出した、だがその拍子に出来るだけ思い出さないようにしていたあの事件のことまで思い出してしまった。
そのせいだろう、本当に気分が悪い。
「そうか、すまなかったな……でも忘れないでくれ、私が好きなのは他の誰でもない、君だ」
最後の言葉は強めの口調だった。
「そう…ですか……では」
そして俺は荷物をもって、何か喚いてる周りの奴らを掻き分けつつ急ぎ教室を出た。



「やれやれ、これは良い事、悪い事?ってやつだな」
それにしても、あいつのあの戸惑いっぷりときたら。
「クックフフ…」
思い出すだけで、笑ってしまいそうだ。
……おっと、さすがに廊下でニヤニヤするのは拙いな、俺一応教師だし。
さ・て・と、俺はどうしたものかね…このままだと、またあいつ酷い対応して周りを敵に回すだろうな。
…まったく、俺以外とロクにコミュニケーションとらないからあんな対応しか出来ないんだ、だから友達作っとけとあれほど…
っと、いかんいかん、少し脱線してしまったな。
ま、とりあえず、清宮がどんな女か確かめてからでも、結論付けるのは遅くないな……。
もし上手く事が転がれば、京太郎のあの病気も治せるかもしれないな……
アレに関しては、俺一人じゃどうにもならない問題だ。
まったく、あの事件さえなければ京太郎は今頃……
……いや、過ぎたことを言ってもしょうがないな。
それにしても清宮の話を全て信じるなら京太郎とは、ガキの頃はあだ名で呼び合う仲だった。
それで再開して、速攻告白andキッス……………「これなんてエロゲ?」
ハァ、幼馴染か……うらやましい。
ガキの頃……か正直思い出したくないだろうな……
この話ばかりはあいつ次第だな、無理して聞いても碌なことがない。
「さてと……やる事は決まったな…」
俺は携帯を取り出し、京太郎にメールを送る。
「これでよし……」
さぁて、そんじゃ残りの仕事を片付けますか……
340前スレM+14FhJ5:2007/11/26(月) 00:37:19 ID:P8TSr70X
ここは、駅前にあるバーミ○ン、夜遅くと言うこともあり結構な賑わいを見せている。
そこで俺は―
「…………遅い」
―苛立ちながら、奥のテーブル席で進藤を待っていた。
何でこうなったかというと、先程の騒動の事を考えてる最中、突然進藤からメールが来た。
『今日の夕飯、駅前のバーミ○ンで食わないか?、割り勘で☆』
行き詰ってた俺は気分転換もかねてOKした、だが。
奴から来た返事はこうだ。
『じゃあ8時半頃バーミ○ンでな♪、先に食ってるか無しだぞwww』
今は9時40分だ、もう一時間以上オーバーしている。
5,6分の遅れならばまあいいだろう、……だが遅すぎだ!
俺も人間だ、当然腹は減る。
だが、もし奴を無視して家に帰っても、奴がのこのこと遅れてきて、後で居なかったことを言われるのは面倒だ。
だから、こうして待っているわけだが……
「本当に帰るか……」
さすがに携帯のゲームじゃ退屈をしのぎきれん、電源も危ない、もう残り一本だ。
それに店員がさっきからこっちをじろじろ見ている。
駅前の夕食時、水だけで1時間も居座られてはたまったものではないだろう。
何度も来る場所ではないからいいとしても、やはり目立つ。
そして、もう自腹でいいから食って帰ろう、そう思ったその時。
「悪い悪い、遅れた、すまん」
軽い声と共に進藤がのこのことこっちにやって来た。
そしてそのまま俺の正面に座る。
「……進藤、5分前行動って知ってるか?」
声から怒りがにじみ出てるのを感じたのか、進藤は慌てた様子で弁解した
「いやいやスマンスマン、途中で欲しかったゲームがあってさ」
ビニールからうっすら女の絵が入ったパッケージが見える、どうせまたこいつの事だ、エロゲーだろう……。
「メールしようにも地下だったら電波届かなかったんだ、まあ許せって、奢るからさ」
…………まあ奢ってくれるならば許してやろう。
「まあいい、それよりさっさと食うぞ、腹減ってるんだ」
「オッケイ」
……以外と単純だな、俺。
そして、あらかた注文したものを食い終わった時
「今日は災難だったなぁ、京太郎」
明らかに哀れみのかけらも無い声で進藤が話しかけてきた。
「……何の話だ」
「とぼけんな、あの清宮怜子、教室で後輩に大胆告白って学校じゃ大騒ぎだったぞ」
やはりそうか……予想はしてたが……
「お前のあの時の狼狽っぷりときたらもう……クック……」
……こいつは……
「それで何だ、俺を笑うためにわざわざ呼んだのか?」
もしそうだったらこいつのパソコンこっそり全部初期化してくれる。
「いーや、単純にお前の話を聞きたくてな」
「話?」
俺がそういうと、進藤は普段とは違う真剣な顔つきになった。
「なあ京太郎、お前清宮とどんな関係だ?やっぱ幼馴染か?」
「そのことか、……そうだ、小さい頃のな……」
341前スレM+14FhJ5:2007/11/26(月) 00:41:35 ID:P8TSr70X
正直話したくは無い、昔の事を考えてしまう
「…………ガキの頃のか」
「ああ……」
「……あの事件の前の…か?」
「そうだ……、分かっているなら言うな……!」
……駄目だな、どうしても小さい頃の事になると、どうしても苛立ってしまう。
この後、しばらくお互い無言の状態が続いた、この話題になるとどうしても言葉に間が空く。
そしてしばらくして、進藤は煙草に火をつけた、煙が空調の方に流れていく。
「その事……話してくれないか?」
声が沈んでいる、俺の暗い雰囲気が移ったんだろうか。
「何故だ?……正直、思い出したくないんだが……」
清宮の…いや小さい頃の事を思い出すと、あの事まで、一緒に思い出してしまう……
「単純にお前のガキの頃に興味があるだけだよ……嫌ならいいさ、別に」
すまなそうな声だ、そういう声を出されると何かモヤっとするものが胸に出来てしまう。
「……分かった、話そう」
面倒だが、このモヤっとするものがあるほうがウザったいからな……
「そうか……わるいな……」
「あやまらなくていい……」
それにしても、こいつが真面目だと妙に違和感を感じるな……
「あれは……」


「うっグズっううう……京ちゃん…」
家に帰ってから、何があったのかと心配してくる使用人を無視し、私は自室のベットで一人泣いていた。
あの時、彼の母親の都合で離れ離れになってしまった時、もう二度と会えないとばかり思っていた。
しかし、6月の終わり頃転校してきた生徒が、彼と同じ名前であることを知ったとき、心臓が飛び出るかと思うほど驚いた。
そして、昨日、彼に助けてもらった時、その男は彼――京ちゃんであることを確信した。
だが、京ちゃんは自分の事を知らないという。
「もう私の事、忘れてしまったのか?」
ようやく再開できたと言うのに、京ちゃんは私のことを完璧に忘れている、そう思うだけで涙が止まらない……。
「うっうう……」
すっかり夜も更けてきている、そういえば昔はよく京ちゃんが家に泊まりに来て夜遅くまで一緒に遊んでいたな……
「京ちゃん……」
あの頃は楽しかった、生きてきた中で一番と言ってもいいくらいに。
そう思うと、私は昔の記憶に思いを馳せた……
342前スレM+14FhJ5:2007/11/26(月) 00:48:03 ID:P8TSr70X
これまでです、ではあとがきを(と言う名の言い訳)
これで投下は二度目と言うことになるわけですがやはり他の方みたいには行かないものですね。
文章も変な感じですし、キャラの書き分けが難しいし……
……さて、この話は元々ウッチャン主演の某ドラマを見たのがきっかけで書き始めました(もう原型ありませんけど)。
なので、次の話では無駄なアクションシーンがあるかもしれません……
こんな拙い話を見てくださった方々ありがとうございました。
最後に一つ皆様に質問です。
京太郎と進藤、もしかしてホモっぽかったですか?
343名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 00:52:54 ID:VaQra77R
>>342
リアルタイムで乙。
もしかして携帯からコピペで貼ってる?投下の間が空いたから連投規制なのかと思っちゃったよ。

>もしかしてホモ〜
俺は全然気にならなかった。
344前スレM+14FhJ5:2007/11/26(月) 00:59:47 ID:P8TSr70X
>>343
いえ、ちょっと大きな修正が見つかったもので、すいません

あと言い忘れてました、この作品のコンセプトは〔歪んだ男を素直クールは癒せるのか?〕です
345名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 05:17:05 ID:iSPlymIA
続きに期待!

ホモっぽくは感じなかった。
ただ、続き物ならタイトル付けた方がいいかもと思った。
(どれくらい続くのかにもよるだろうけど)
その方が保管庫の人もまとめやすいだろうし。
346名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 10:45:23 ID:p/TECIVv
>>342
乙。
いきなり美人の先輩が告白+幼いヒロインとの約束+過去のトラウマ
と、清々しいほどにギャルゲの王道なので、むしろ変にひねらず突っ走るのが吉かもね
347225:2007/11/26(月) 12:38:29 ID:EoL0Pp3l
>>329に間違い発見

× 救いと考えてるべき
○ 救いと考えるべき


>>342
続き、期待しています
348名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 12:52:53 ID:32o9uvFr
2chも小説書くのもどちらも素人っぽく見えます

誰とは言いませんが
あなた自身のためにももう少し自分を客観視した上でお願いします
349名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 14:01:28 ID:4V0YfnhV
プロってなんだよって話になるな
350名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 15:05:45 ID:fDNNA46c
2chのプロとか
自分で言ってて恥ずかしくない?
351名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 15:49:33 ID:6i2ijyuJ
反応したら負けだ


とりあえず、まったりと、素クールおにゃのこに羞恥プレイくらう妄想をするんだ
352名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 16:02:22 ID:AYdVV439
朝、枕元にボクっ子な素直クールがいて「おはよう」っていって起こしてくれる……


どっかにいないかなぁ……そんな子……
353名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 16:16:35 ID:RVhWwgu2
枕『元』で、良いのか?
どうせなら、腕枕『上』にボクっ子な素直クールがいて
真っ赤な顔をしながら、「おはよう」って言って(ry

もう一段階進めて、膝枕『上』から「おはよう」って声が降ってくる……てのも、可
354前スレM+14FhJ5:2007/11/26(月) 16:27:49 ID:P8TSr70X
>>348
ご忠告ありがとうございます。
355名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 21:47:57 ID:VaQra77R
>>353
一歩引いた気がする>腕枕→膝枕の流れ
356名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 23:32:29 ID:EoL0Pp3l
ボクっ子な素直クールが相手なら、先に起きて寝顔を眺めつつ、
優しく起こしてあげるのも良いのではなかろうか


…半分頭が寝たままの状態で、未だ夢の中にいるような顔で
「おはよ〜」とボクっ子素直クールは朝の挨拶をする。
しかし頭が覚醒するにつれ置かれている状況に気付き始めた
ボクっ子素直クールは、恥ずかしさのあまり、頭からすっぽりと
布団をかぶって丸まってしまった。
しばらくもぞもぞと悶えていたようだったが、
恐る恐るといった様子でボクっ子素直クールは顔を出す。
その真っ赤になった顔を隠すかのようにシーツに埋めながら、
恥ずかしそうに、だが幸せそうに微笑みかけてきた…



ついついここまで妄想してしまったよ
357おはよう:2007/11/26(月) 23:40:13 ID:8vOi3bec
 いつも冷静沈着でなければならない、そう思って生きてきた。いつの頃からかはもう憶えていない、
未だ少女の頃からそうして生きてきた。施設で育った私は泣きじゃくってしがみつける親もなかったし、
大人に甘えるにはどうすればいいのかいつも計算していなければいけなかったから。
 大人から見たら「手の掛からないいい子」の私は、泣くことはあっても「感受性が豊か」ではあっても
激することもなく。常に一歩引いて見ているのが当たり前だったし、それがつらいとも寂しいとも思わなかった。

 そんな私が感情をぶつけられる、そんな男が目の前にいる。友情を育んだ挙句に惚れてしまい
告白したものの、回答保留のまま未だに「親友」でしかない男なのだけど。このすっとこどっこいは
私に自分でも知らなかった感情を教えてくれて、自分でも馭し切れない想いに気付かせてくれた。
こんなにあいつを思っているというのにね。

「ん? どうした? 顔になんかついてる?」
 ありゃ、そんなことを考えていたらいつの間にか睨み付けていたらしい。それにしても……
「いや、眠そうだと思ってね」
 実際、ホントに眠そうだ。連日睡眠時間が短いと言う。それなのにこうして会いに来てくれて、それはそれで嬉しいけれど。
「ん〜、大丈夫〜。君の珈琲飲んでる間は眠らないから」
 なんて言いながら、私のベッドに背中を預けたまま、マグカップを抱えて今にも眠りそう。
 私はしょうことなしにあいつの隣に行ってマグカップを取り上げてみる。最初は抵抗があったが、
ものの一分もしないうちにマグカップはあいつの手から離れた。

 うとうとしていても抱えたマグカップの珈琲を溢したことのないあいつのことだから、どうせ半ば意識はあるのだろう。
そうは思ったけど、首を不自然に垂らしている。これじゃまた後で肩凝りか、さもなきゃ筋を違えるよ。
「たまには膝枕でも如何?」なんてそっと口にしてみれば案の定、「人間の頭は以外に重くて」だとか呟きが返る。
 その能書きが意外にもすぐに寝息に変わり出したので、ちょっと茶目っ気を出して頭を引き寄せてみる。
いつもなら目を覚ますか頑なに姿勢を崩そうとしないのだが、驚いたことに今日はそのまま倒れこんできた。
 慌てて頭を抱えるようにしてそっと膝におろす。全くもう、意識が曖昧なときだけ素直なんだから。

 あいつの寝ている横顔を見ていると、愛しい気持ちが溢れてくる。昔の私が知らなかった気持ち。
あいつ以外には向けたことがない気持ち。あいつが目を覚ましたらなんて言ってやろう。皮肉の一つも言おうか、
それともその前にキスの一つでもしてしまおうか。
 なーんて考えるのは楽しいけれど、選ぶ言葉は一つだけ。ありったけの思いを籠めて……
358名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 14:53:14 ID:Tdjtg1K5
>>357
GJ
359名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 15:12:30 ID:M0CttHIO
>>356
それは全然素直クールじゃない気が
360356:2007/11/27(火) 18:53:52 ID:62FN3PWI
>>359
読み返して驚いた。あらぬ方向に妄想が暴走していたようだ。
多分これは俺が思うボクっ子素直ヒートなんじゃないかな。

素直クールじゃなくてすまん。
361小ネタ?その3:2007/11/27(火) 21:55:36 ID:62FN3PWI
「おはよう。清々しい、実にいい朝だ。今までの人生の中で、最も素晴らしい朝と言っても過言ではない」
「おはよう…朝からテンション高いな…」
「それは当然だ。まさか君と結ばれ君と共に朝を迎えるという私の夢の一つがこんなに早く実現するとは思わなかったからな」
「ああ…まさか処女に逆レイプされて童貞喪失とはな…」
「初めは痛かったが…愛する君の剛直に貫かれ、愛する君の子種を膣内に受けることがこんなに幸せなことだったなんて」
「いつか使う気で買っておいたコンドームを窓から投げ捨てられるとは思わなかったな…」
「ふふ…しかし君はタフだな。あんな量の子種を出しても尚君の剛直は硬さを保っていた」
「だからといって抜かずの五発はひどくないか?」
362名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 21:56:40 ID:62FN3PWI
「…ああ、そういえば電話をするのを忘れていた」
「誰にだ?」
「母にだ。…もしもし、私だ。ついにヤったよ。ありがとう。
ああ、助言通りに彼を押し倒し、唇を奪い舌を絡ませ、彼の股間を優しく撫でた。
何故か彼は抵抗したがしばらく続けてみると彼の抵抗がなくなったので彼の下半身を覆っていたものを一気に脱がした。
すると20cmはあろう彼の…あ、何をするんだ」
「それはこっちの台詞だ」
「どこに問題があったかわからんが…まあいい。母には帰ってから話せばいいことだ」
「どこから突っ込んだらいいのやら…」
「突っ込みたいのならここに君の剛直を突っ込んでくれ。今日は日曜日だ、一日中繋がっていられるぞ。」
「なんでコイツと付き合おうと思ったんだ、昨日の俺よ…」
363名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 21:57:48 ID:62FN3PWI
即席で書いてみた。

試しに趣向を変えて会話っぽいことをさせてみたが、
なかなか難しいものだな。
364名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 22:48:46 ID:Ob86ZFao
投げ捨てたのかよw
365357:2007/11/27(火) 23:13:40 ID:79AUYNZO
>>358
THX!
この板への投下で、初めてGJを貰った気がするよ。

さて、膝枕を書いたからには腕枕と枕元を書きたいのだが>357の彼女は果たして素直クールなのだろうか。
このスレの素直クール娘たちと違って、薹は立っているしあけすけでぶっきらぼうなところもないし……
# 困ったもんだ。
366名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 01:31:06 ID:G2gya/9Q
圧縮回避保守
367名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 01:49:27 ID:20mpbRcM
>>363
いつもGJ!!
貴方の作風とか、貴方の書く素直クールが大好きです!!

こんな激しく素直に卑猥な事を言ってくれる彼女がいたらなぁ…
368女教師素直クール:2007/11/28(水) 02:39:53 ID:qbVXuCFE

女「男、前に出てこの問題を解いてみろ。」
男「はい…カキ、カキ、カキ。」
女「うむ正解だ。よくできたな、男。」
男「(ってこれ、昨日、ウチに乗り込んできて教えてくれた問題そのまんまでしょうが。)」
女「……。」
男「(んっ?珍しく深刻そうな顔だ。何だ?)」
女「……いかん、いかん。思わず見惚れてしまい、私としたことが危うく大事なことを
忘れるところだった。」
男「ハッ?」
女「正解を答えられた男には、ご褒美として頭を撫で撫でしてやらねば♪」
男「…お断りします。」
女「何、アタマ撫で撫ででは足りないというのか!欲張りだな、男。では、ご褒美はチューに
しよう♪♪」
男「……勘弁してください。」
女「何だと私の唇を奪うだけでは満足できないというのか!負けたよ、男。仕方ない、今宵は
君のリクエストに応えて、ベッドの上で心ゆくまで愛し合うことにするか♪♪♪」
男「………先生、頭が痛いので早退します。」
女「んん?ま、待て!男、どこへ行く?諸君、私は退っ引きならぬ用事がたった今できた!
そのため、残りの時間は自習とする!!……待てぇ〜、男!!!」

生徒一同「先生、今週、自習4回目ですよ…。」
369名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 07:49:38 ID:ZfCg7oxv
>>368
ちょwww首になるぞwww
ってかこんな先生現実に居たらイヤァァアアアア!
勉強受けさせろぉぉぉぉお!!
370すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:27:08 ID:dEqxZ9w0
エロ無し(取り敢えず由羽と撫子・楼里の顔見せってことで)




入学式は終わったが、本格的に学校が始まるまでは一週間の空きがある。
まあその間に指定された教科書やらなんやらを買えという名目の休みだ。
駅前のデパートで期間限定で市内の高校の教科書が販売される。
一ヵ月後には落書きだらけだろうソレを自転車のカゴに入れた俺は、おつりの小銭を自動販売機に入れた。
「来週からは自転車通学か……」
地区に合わせて決まる中学とは違う、改めて俺は高校生になったのだという実感が沸いた。
ちなみに学校まで(心持ち早めに漕いで)自転車で30分
つぶつぶ果肉入りオレンジジュースを飲み干すと、俺はポケットから鍵の束を取り出した。
自転車の一回り小さい鍵の隣の鍵に、ふと目が留まる。
レコちゃんに貰った鍵だ。何の鍵かと言うと部屋の鍵。部屋といってもレコちゃんの実家ではない。
レコちゃんの組が建設してるマンションの鍵。殆ど出来上がってるんだけど、色んな事情で誰も入ってない。
勿体ないからと、レコちゃんが親父さんにせびって貰った少し大きなオモチャ。
「俺のポケットには大きすぎらぁ……」
なんてどこぞの有名な怪盗の孫の台詞を言ってみたりして。
俺が何でそんなもんを持ってるかっていうと……まあ、なんだ、燕?
流石にレコちゃん家でレコちゃん抱くなんて、心臓に悪いし?
ラブホもドコに目や耳があるか分かったもんじゃないし、財布も哀しいことになるし?
「……アレ?知らない間に俺、レコちゃんに囲われてた?」
不味いな……いつぞや訓には「その時が来たら考えるタイプなんだよ、俺は」なんて見栄をきったが
ひょっとしてこの俺、一野進由羽は裏社会に就職内定している?
(いや、いや、いや、いや……)
落ち着こう、由羽。素数だ、素数を数えるんだ!!……素数って何だ!?
(別にレコちゃんが極道継ぐとは限らないジャン?)
…………待て、現状からその要素を引いた場合、俺は単なるヒモってことにならないか?
「うわぁぁああぁぁぁ!!齢15にして駄目人間じゃん!!!!」
そうだ!これは夢だ!夢なんだ!!直視すべき現実じゃないんだ!!
「目覚めろ!俺!!手っ取り早く痛みで!!!」
――ガン!ガン!ガン!ガン!!
「あ〜君?自動販売機に頭をぶつけてる少年というのは君かね?っていうか君しかアリエナイよね」
俺の前に立ちはだかるお巡りさん。
なんということだ!!これは孔明の罠か!!
「ちょっと交番まで一緒に……」
「昔のエライ人は言った……三十六計逃げるにしかず!!!!!!!!」
「あ、ちょっと!?!」
俺が小学生の頃に買った、MYサイクリングバイク!俺の友達!!
三段階ギアチェンジと俺の脚力が合わされば、一つ一つは火だけれど、二つ合わせれば炎になる!!
――ギギ……
錆びてるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?!!
「ふんぬーーーーーーー!!!」
――ギ……ヴァルンゴッ!!
正常じゃない音を立てて、強引にギアチェンジが完了
息子がお巡りのお世話になるのと、息子の新しい自転車を買うのとでは、断然後者の方が親孝行な筈!多分!
「ヌォォ!ドリフト走行!!」
絶妙な加減でブレーキを効かせてカーブを曲がる。もしかしたら競輪選手が天職かもな、俺……な〜んてな!
「待ちなさいーーー!!」
はは……幻聴が聞こえるよぉ……
「お巡りさん、頑張りすぎだから!!」
「そうだ、私がお巡りさんである以上!青少年を救う使命がある!!」
白バイならぬ白チャリが俺の後ろをホーミングする
「だぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!なんでそんなに必死なんだーーー!!」
「少年、分かるぞ!少年は悩みを抱えてるんだろう!だからあんな自傷行為を!!」
「いや、別に何も自称してねーよ!?」
カゴの中で買った教科書が暴れる。
「少年ぐらいの年はみんなそういうもんなんだ!俺も盗んだバイクで走り出したもんだ!だから意地を張らず、本官に……お兄さんに打ち明けてみろ!!」
「別にそんな大したモンじゃないわーーーー!!健全な男子のほんのりピンクな悩みを行き先も分からないものにするな!!」
371すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:30:37 ID:dEqxZ9w0
目の前の信号が点滅していた。ここが振り切り時だ。ペダルを踏む力を一層込める。
俺が渡りきったと同時に、信号は赤になった。
「ふぅ……」
思わぬ所で汗をかいt……
――キキィー
――プップーー
――何やッてんだ!信号が赤なのが見えないのか!
今の音は、車のブレーキとか、クラクションとか、運転手の野次とかです。信号無視です。本当にありがとうございました。
「お巡りが信号無視していいのか!!」
俺の全身の筋肉を再びフルスロットル。エンスト起こさないあたり、俺の肉体は自動車より優秀なのではないか。
「待てぇぇぇぇぇぇぇーーー!!」
俺を追ってくる後ろのアレも自動車以上な気もする……
「いいんだ!確かに君とお母さんは血は繋がってない!そして肉体関係を持ってしまったことは……」
「アンタの中の俺に何が起こったんだ!?!?!」
ヤベェーよ、あんなのが警官な日本お終いだよ。郵便局より警察を民営化しろって!
「なんかないか、なんかないか……は!!」
打開策を求めた俺の視界に見えたのは、カゴの中の教科書と一緒に買った水彩絵の具!!
「これだあぁぁぁ」
チューブのソレを拳に握って後方にバラまく!!名付けて撒き菱作戦!
「うわっ!?」
お巡りの自転車に轢かれたチューブは、中身を噴出し、お巡りの視界を奪い、タイヤを滑らせ、
「ぎゃぁあーーーーーーーー!!?」
――ガシャ!ゴロ!ドグシャァッ!
え……ちょっと待って、その効果音は激しくヤバ気なんですが!?リングにかけるボクサーのパンチぐらいヤバイと思うんですが!!
「男なら振り返るな!!過ぎた日は戻らない!!」
お巡りさん、貴方の事は忘れない。主に恐怖的な意味で。
「ま゛ぁ〜で〜ぇ゛ーーーーーーー!!!」
じゅ、柔道で鍛えた俺の野生のカンが、俺の後ろに何かが居るとビンビン告げてるぜ……!!
「ひぃぃぃぃぃぃいいぃぃ!!!」
「待てぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!!」
あのお巡りの頭から流れてる赤い液体は、多分絵の具だと俺は信じてる!!
っていうか、クラッシュしたのにお巡りのチャリはスピードが落ちてない。
白い悪魔だったそのチャリは、血塗ら…もとい、絵の具に塗られて真っ赤になって通常の三倍のスピードで迫り来る!!
「だ、誰か助けてくれぇぇーー!!訓ー!一流ちゃぁぁんー!!迩迂センパーイィー!!この際、当馬でもいいからぁーー!!」
ペダルを漕ぐ太腿が悲鳴をあげている。今にも筋肉繊維の一本一本が千切れそうだった。
――その角を左よ
(レコちゃん!?)
酸素不足で朦朧とし始めた中で、レコちゃんの導く声が聞こえた。
俺はその導きのままに、ハンドルを切った。






「……ハー……ぞうだっだ……ハー……例のマンションはここら辺にあったんだ……ハー……」
Tシャツを脱いで搾ると、汗の水たまりが出来た。
気がつけば俺はレコちゃんから貰った鍵のマンションの方向まで走っていたらしい。
「助かった……」
残りの力全てを出して一瞬お巡りを振り切った後、見つからないように逃げ込んだ。
コンクリートの床が、気持ちいい……もう立っているのは限界で、倒れ込んだ。
「ア゛〜〜〜〜……」
あのレコちゃんの声も、この場所に初めて来たときの記憶だった。走馬燈かよ……
「水……」
兎に角、部屋に入って水を飲もう。もう水道は通ってる。じゃなきゃ、事後にシャワーも浴びられないし。
右手を左手で支えながら、エレベーターのボタンを押した。
1…2…3…4…5…6……
七階の表示で、浮遊感は終わる。俺はなんとか壁に持たれながら703号室のドアに手をかけた。
「……?開いてる?何で?」
不審に思った俺は、用心して音を立てないよう気をつけながら中に入った。
372すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:33:40 ID:dEqxZ9w0





「いくっ……いく、いっちゃうのぉ!訓、訓ーー!!いくぅぅぅーーーーーーー!!!!!」
「いちる……ッ!!いちるぅぅ!!……うッ!」



俺はコケた。
ギャグマンガ見たくコケた。物理的にアリエナイと思っていたが、人間何でも出来るモンだ。
奥から聞こえてくるのは、どう考えても俺の親友とその彼女の声だ。全財産賭けてもいい。
「…………」
無性にムカついた。
俺がチキチキ猛レースに強制参加されてるときに、こいつらはエクスタシー全開だったってのか!!
「訓ーーーーーーー!!!」
いきなりドアを開けた俺に、訓が目を丸くし、一流ちゃんは悲鳴をあげ……る余裕が無い位、消耗してた。
「お盛んすぎるわーーーー!!」
なんか違うツッコミと共に、グーで訓を吹っ飛ばす!
「いきなりなんだ、由羽!!」
当然ながら訓もキレた。ヤツは全裸のまま(当たり前か)、俺をグーで殴りやがった。
「うるせぇ!今限定で、俺は、お前の、全てが、気にいらねぇんだよぉ!!!」
ジャブ、ジャブ、アッパー!!!3コンボ!!
しかし、訓は人体の急所である顎に衝撃を食らってなお、踏みとどまる。
「いちるの裸を見ていいのは俺だけだぁぁぁーーーー!!!」
訓のストレート。しかもコークスクリュー!!いつのまにこんな高等技術を!!
俺はキラキラと光る血なんだけど血ではない何か(テレビ規制)を撒き散らせながらリビングまで吹き飛ばされる。
「く……チャリの全力マラソンで体力を消耗してなければ……ッ!!」
「ちぃぃ……いちるとの五回戦で体力を消耗してなければ……ッ!!」
本当なら柔道の技を使いたいが、訓は今ゼンラーだ。密着したくない。寝技なんてもってのほかだ。
「訓ーー!!」
「由羽ーー!!」
俺の拳が訓の腹に、訓の拳が俺の頬に入る。
「ぐぅ…」
「かぁ…」
訓の拳に俺がふらついて身体を屈めたのを見逃さず、訓は下から拳を突き上げようとした。
「だぁっ!」
しかし、俺も屈んだ姿勢のまま全身をバネにして訓に飛び込む。
「痛っ!」
俺の頭突きが訓の顎に入った。本日二回目の脳震盪に流石の訓も頭を抱える。
「トドメ!!」
「甘い!」
決定打を与えようとする俺の攻撃をかわし、交差方で肘打ちを出す訓。
「ぐ……やるじゃぇか、訓!」
「お前もな、由羽!!」
数年来のダチだ。次に何を考えてるかなんて、目を見れば分かる。
「「次の一撃で決める!!」」
お互いに大きく振りかぶる。刹那、時間がゆっくりに感じた。
「死ねぇぇぇ!!」
「沈めぇぇぇ!!」
「止めなさい!!」
俺達二人の暑い拳は、冷たい金属のフライパンが脳天を直撃することで終わりを告げた。


……あぁ……そういやココ、調理器具も完備のシステムキッチンって……レコちゃん言ってたなぁ……



.
373すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:37:09 ID:dEqxZ9w0



そんで、男二人は正座して説教を食らっていたのでした。
「なんで殴り合うのかな?二人には口って無いのかな?な?」
取り敢えず服を着た一流ちゃんは、俺達の前に何故か片手にお玉を持ち大魔神の如く立っている。
「悪かった、いちる。反省してる。……そろそろ服着たいんだが」
訓が未だマッパなのは何かのプレイなんでしょうか、一流さん?
「由羽くんは?」
うわ、スルーされた。
「由羽くん?口だけでなく耳もないのかなぁ?」
「ヒッ!……いや、その……すみませんでした……」
もう何に謝ってるのか自分でも判断が付かないが、俺の額を床に擦りつけるだけで事態が解決するならいくらでも……
「私がなんで怒ってるのか判ってるのかなぁ〜」
笑顔が怖いです。
「えっと……なんていうか……乱入?したから……でしょうか?でありましょうか?でございましょうか?」
出来るだけ謙って答える。プライド?何、ソレ、食えるの?
「違うでしょ?」
「そうだ!お前がいちるの身体をみt」
「訓は黙ってなさい!!」
「……はい」
訓……親友の憐れな姿に涙を禁じ得ない
「いい、由羽くん?」
一流ちゃんはお玉で俺の顎を掬った。
「理由も無く、私の訓を傷つけたら駄目でしょ?ね?」
そっちか……
「えっと……いちる?なら何で俺は……」
「訓!……誰が喋っていいって言った?ねぇ、その口は躾けが必要なんじゃない?」
「「…………はい?」」
いや、ちょっとまって下さい一流さん
その訓の前に差し出した生足は一体どういう意味でしょうか!?
「……いちる?」
「舐めなさい」
女王サマ!!女王サマのおなあぁぁぁぁりぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!
「…………」
助けを求める訓の子犬のような目から、俺は顔を逸らす。
知らん、俺は何も見ていない、聞いてない。親友の倒錯した性行動なんて知らない!!
「訓、貴方は私の身体を他人に見られるのは厭なんだよね?」
「……はい」
「でもね、訓?由羽くんが闖入してきたときに、私を庇うより先に撃退したのは矛盾した行動じゃない?」
「……はい」
「私の事、忘れて殴り合っていたんだよね?訓」
「……はい」
怖いよぉ……お巡りと競争していた頃が懐かしいよぉ……
「だから、罰としてお舐めなさい」
「…………」
訓が迷っている空気が伝わってくる。許せ、親友!俺には見守ることしか出来ない!むしろ見てないのが最後の良心だけど!
「…く…ぅ……」
訓!出来るなら遠くの世界の住人にはなって欲しくない!しかし、俺はどんな選択をしてもお前を咎めはしないだろう!
今の一流ちゃんはまさに暴君・女帝!そして俺と訓はセリヌンティウスとメロス!
「…………出来るかぁぁぁぁーーー!!!」
「訓?!きゃぁ!?」
一流ちゃんの足を掬い飛ばす訓。まあバランスを崩した彼女をしっかりキャッチしてるあたり、もう犬も食わん。
しかし、訓!俺を殴ってくれ(もう殴られたけど!)力一杯に頬を殴れ!俺は一度お前が一流ちゃんに屈するかも知れないと思ってしまったのだ!!
「訓……」
「いちる、確かに悪かった。でも俺はそんな事をするためにいちるの彼氏になったんじゃない!」
「その通りよ、訓。訓ならきっとそう言うと思っていた。改めて惚れ直しちゃったね」
「「……え゛?」」
374すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:39:43 ID:dEqxZ9w0
訓に抱きかかえられた一流ちゃんはうっとりとした表情で、訓の胸に顔を埋めた。当の訓は硬直してしまっているが。
……訓、俺に殴らせてくれ(もう殴ったけど!)力一杯に頬を殴らせろ!(以下略
「さあ、訓、服を着て……」
そうだ、その少女は勇者が裸でいるのが心苦しいのだ……ってぇ、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!
「そうカリカリしないでよ、由羽くん」
何しれっと言ってるの?ねぇ?しれっとさぁ!ポイントはしれっの「っ」の部分だよ!!
「……ねぇ、なんで由羽くんがここの鍵持ってたの?」
「なんでって、レコちゃんに貰ったからに決まってるでしょ!むしろなんで訓達が持ってるのか聞きた…」
あ゛…
「なんで貰ったんだ?」
「そりゃお前……」
……お前達と同じナニをするために……と言いかけて、ハタと考えた。
(ここでそんなこと言ったら、俺とレコちゃんが付き合ってる事になってしまうな……)
俺達は別に告白した訳じゃない。恋人じゃない。ただナァナァで肉体関係を結んでしまったのだ。
それをこの二人に説明して理解して貰えるだろうか?否。っていうか、軽蔑されるに違いない。
きっと蛆虫を見るような目で蔑まれ、近づくのも嫌がられ、親友として過ごした五年間は音を立てて崩れてしまうだろう。
まあ過剰表現は兎も角、俺は未だこの関係を崩したくない。
「……いや、ほら、ココって学校に近いじゃん?住めないかなーって、ハハハ……」
俺は訓と違っていくらでも嘘がつけた。
「流石に住むのはどうかと思うぞ」
一流ちゃんは疑っていたが、訓はコロリと騙された。今日ほどコイツの素直さをありがたいと思ったことはない。
「ま、レコちゃんがお前達に渡したってことはそういうことなんだろう」
どうせ俺に使う機会なんてないとでも思ってたんだろうさ、レコちゃんは。
「じゃ、お邪魔したな。もうこの部屋には来ないから。うん、今日の事はお互い忘れよう!ははは!!」
ボロが出ないウチに
「ははは……あべし!?」
「由羽くん!?」
「由羽……何もない所で倒れるな……」
いや、なんか踏んだんだって……ん〜
「……鉛筆?」
拾った鉛筆は、妙な削り方がされていた。芯が長く出ていて、コレじゃあ書きづらいだろう。
というか、この長さだと鉛筆削りじゃ無理だ。どうやら手でわざわざ削ったらしい。
「訓のか?」
「いや」
だよな。こんな心に余裕のある遊びのような削り方を訓がする筈がない。
「これって、デッサンする時の鉛筆ね。堅さもFで、普段はあまり使わないものね」
「へぇ〜……建築した人の忘れモンか?」
「う〜ん……建築なら細いシャープペンシルか、ペンを使うと思うんだけど」
まあ、ここに落ちてたってのは確かな現実なわけだ。
「誰かが入ってたりしたら気味が悪いな。もし今日みたいに、その、なんだ……俺といちるが……してたのを
 コホン、誰かに見られてたりしたら、それは気分が悪いし。……いちる、その“そうかな?”って顔はよしてくれ」
…………ま、まあレコちゃんに他に鍵をあげた人間はいないか、一応聞いてみるか。
俺は無造作に鉛筆をポケットの中に入れた。






.
375すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:42:54 ID:dEqxZ9w0

クラスの席は多くの学校が始めはそうであるように出席番号順だった。
なんの因果か、「い」の俺と「お」の訓の間の「う」「え」で始まる名字が居なかったせいで俺達は前後の席になった。
「いや、参った。電車ってのは空いてるのが当たり前だと思ってたのによ」
俺は椅子に前後逆に座り、後ろの席の訓に向き合いながら埒もない会話をしていた。
お巡りとの激しい戦いの末、俺の自転車は壊れてしまった。
――それに対して母は言いました。「新しい自転車は自分の金で買え」と。
高校でバイト禁止されてるのに。お年玉なんて残ってないのに。
それならそれで修理すればいいとは我が親友の言。モノを大事にする古き良き日本人な男。
しかし当分は電車通学になりそうなのであった。
「一野進、乙古」
「なんだ?」
「放課後、柔道部に行くよな?」
今日から一週間は先輩達による部活動の勧誘が後を絶たない。一方、新入生の俺達は見学期間だ。
「一緒に練習して貰えることにした」
「ほぅ」
当馬は中々顔が広い。中身は人当たりがよいのだが、口調と顔で若干損してる気も無きにしもあらず。
しかしそれ以上に、コイツはなんか致命的に……いい人で終わりそうなオーラが男の俺からも判ってしまう、憐れ。
「……なんだ?一野進」
「いや」
訓とは別の意味で鈍いヤツだ。人の悪意に気づかないのは図太いとも言えるんだろうが……
ああ、人当たりは良いけど人の気持ちは分からないのか、コイツは。難儀な性格してるいるなぁ
「……あ」
俺が心の中で当馬を評していると、教室に栗色の髪を靡かせた女の子が入ってくる。
「やあ、撫子ちゃん」
「はい?」
声をかけられた彼女は俺の顔を見て一瞬考えたあと、思い出したのかフワリと桜の花の様に笑った。
「おはようございます」
「…………」
「どうか?」
「あ、いや……おはよう」
俺は息を飲んでいた。撫子ちゃんのその笑顔、ゆったりとした動作に……心を奪われていた。
「お名前は確か……」
「一野進由羽。俺は一野進由羽ってんだ。コッチが乙古訓。ついでに当馬憐」
「私は守猶撫子と申します。あらためまして。由羽さんと……お呼びした方がよろしいですか?」
「え…っ」
いきなり下の名前を呼ばれた。それだけのことで心臓が跳ねた。
「私の事、撫子ちゃんと呼びましたでしょう?」
身体は微動だにしない。ただ頬だけが笑う無駄のない、それでいて優雅な姿。
「あぁ!いや……迷惑だったか?」
「いえ、そういうことではなく、ただ合わせただけです」
「じゃあ、それで」
丁度その時チャイムが鳴った。撫子ちゃんは慌てる様子もなく足を進めて席に着いた。
当馬も続いて席に戻っていったようだが、俺は気がつくと撫子ちゃんを目で追っていた。
そういいえば彼女の席は一流ちゃんの前か。当の一流ちゃんはチャイムを聞いて慌てて教室に入ってきたようだった。
「バトミントン部の勧誘に捕まってね……訓が助けてくれないから」
拗ねてみせる一流ちゃんの視線を訓は見ないようにして答えた。
「いちるが勧誘に粘られてるのなんて見たこと無いな」
ああそれは確かに。想像も出来ない。言いたいことはバッサリ言ってしまうのが一流ちゃんだ。
「甘えさせてくれないのね」
首を竦めてみせると、一流ちゃんは席に向かっていった。
「喧嘩か?」
「タダの意見の相違だよ。部活も始まるんだし……その……数を減らさないかと頼んだんだけどな……」
藪蛇だわ。また犬も食わないモンに手を出してしまったらしい、俺。
「だって身体が持たないだろう」
「いや、俺に言われても……」
180°回転して、これ以上関わらないと示した俺の肩を訓が逃がさんとばかりに掴んだ。
376すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:45:36 ID:dEqxZ9w0
「あんだよ…」
「由羽……」
訓が珍しく意地の悪そうな顔をして囁いた。
「お前、守猶撫子のコト随分意識してるな」
「な、なにいってやがる!!」
「先生来たぞ」
む……コイツ、人をからかうコトを覚えやがった。一流ちゃんの影響だろうか。
俺は渋々前を向くと、担任の先生の自己紹介に耳を傾けた。



.
私は学校の案内板を見て剣道場へ足を運びました。
色々な部活が新入部員を獲得しようと朝、昼休み、そして放課後と廊下や玄関前に犇めいています。
そんな方々も竹刀と防具袋を担いでいる私には声をかけませんが。
私、守猶撫子の出来ることといえば剣道ぐらいなのですから、高校でも私が剣道部なのは当然のことです。
「失礼します」
道場に礼をして入ると、もう数人が道着に着替えて準備運動をしていました。その影に隠れて奥に座っているジャージ姿の人が見えます。
あの人が顧問の先生だろうと私は入部届を取り出して歩き始めました。
「一年、守猶撫子、今日よりよろしくお願いします」



.
「やぁ、来たな憐。それに一野進と乙古も」
柔道場に入った由羽達を認めたのは、入学式の時に当馬と一緒に居た教師――この部の顧問だった。
「尺旦行灯(セキタン ユキトウ)って言うんだ。実家が寺でね、変わった名前だろう?」
入部届を受け取りながら、行灯は気さくに話しかけてきた。歳は若い方だ。独身でも既婚でもおかしくない。
そんな年齢に、少し不相応な円熟した穏やかさを感じる。
「そっちのお嬢さんは?」
「砂奥一流っていいます。柔道部はマネージャー、募集してますか?」
「ふむ……いないこともないけどね」
先ほどまで訓の腕を放さなかった一流であったが、今はキチンと折り目正しく礼をする。
それは多くの人が知っている一流像であり、由羽達にとっては久しぶりな一流の姿だった。
「まあまだ部活動見学週間だからゆっくり考えた方がいい。そこの男三人は柔道以外考えられないっていう顔してるけどね」
行灯は当馬、由羽、訓を順々に見ると、頷いた。
「今、他の部員は外でランニングをしている。ま、ウチの部はそんなに勧誘に熱心じゃないからね。着替えて準備運動をしてるといい。
 みんなが帰ってきたら試合をしてもらおう。普通の一年生なら相手にはならないだろうけど、
 君たちなら問題はない筈だ。というより、高校柔道をまず肌で感じて欲しい。一年後のエースになるためにね」
その言葉に、由羽と訓は目配せをし頷きあう。
「先生、俺達もランニングにいってきますよ。じゃなきゃ、試合が不公平でしょう」
「ついでに無差別級団体のレギュラーは三つ空けといて下さいってね」
二人は更衣室を見つけ柔道着を持って向かった。性格は真逆と言っていいが、この二人は不思議とこういう行動は一致する。
当馬も驚いたようだったが、その後笑みを浮かべると二人に続いた。
そういう姿を一流は羨ましいとも思わないでもない。少なくとも訓と共有出来ない感覚であるからだ。
恋人であり、家族(幼なじみ)であり、親友でもあるというのは望みすぎだろうとは一流も判ってはいる。
それでも訓を独占したいという衝動は如何ともしがたく、彼が困るのを承知で一流はキスの印をつけるのだ。
「砂奥さんは乙古くんが好きなんだねぇ」
「わかります?それとも当馬くんに聞いてました?私が訓の彼女だって」
普通、こんなことを言われると少しは動揺するものだ。
しかし一流がむしろ胸を張って、自分が訓の彼女であることを誇らしげに言うのには、行灯も面を喰らった。
「いや……憐は捻くれてるから、自分の好きな女の子の話はしないな」
「え?当馬くんが私を?」
今度は心底驚いている一流に、行灯は苦笑した。なんともわかりやすくてわかりにくい子だと。
一流が訓をいつも目で追ってるように、当馬も一流のことを目で追っている。ただ当馬のソレは諦めを含んでいるが。
「乙古訓のマネージャーをしたいなら、別に柔道部に拘る必要はないんじゃないかな?」
「………」
「まあ、ゆっくり考えてくれ。キミは人の迷惑や人の気持ちを考えられない人ではないと思うよ」
「……でも、考えられない人ではなくても、考える人ではないかも知れませんよ?私は私の幸福を優先したいっていつも思ってます」
気負いもなく衒いもない、この少女の自然体な姿に当馬は惚れたのだろうか?行灯はそのように考えた。
377すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:48:24 ID:dEqxZ9w0



「しゃ、いくか!」
「何十周走ればいいんだ?」
「二十周だ」
柔道着に着替えた由羽達は、軽く身体を伸ばした。一周のルートは他の部活の周回してるのを見てれば自然と判る。
そのウチ、当の柔道部にも追いつくだろう。むしろ抜いてやるつもりですら三人はある。
「1、2…1、2……あと3周ゥ!!」
彼ら走り出し、助走を付け始めたとき、横を剣道部らしき一団が通り過ぎた。
先頭の紺の道着の男が主将であろう。音頭を取っている。
「ん?守猶撫子じゃないか」
一番後ろを走っているのは、白い袴と道着の撫子だった。
ただ……
「撫子ちゃん?何だよ、その腕と肩の」
由羽は併走しながら、撫子に訊ねる。いや、訊ねるまでもない。それは重しだった。
砂の入った黒のアンクルが白い姿に強く映る。
「……これぐらいしないと、私には準備運動にならないそうです」
息を乱すこと無く、撫子は答える。ただ、声の張りは幾分弱い。
「そうです?誰の言葉さ」
「監督の」
平然と答えた撫子だが、汗は額を伝ってるし、道着はぐっしょりと濡れている。
他の剣道部の背中も汗が広がっていたから、この周回は始まって短いというコトではないらしい。
それだけの距離と時間を、重しを乗せたま少女が走る疲労は並のものではないだろう。
由羽と話したことで遅れだした撫子は、会釈をするとスピードを上げて剣道部の集団に追いついた。
「……嫌なこと思い出したぜ、一野進」
「当馬?」
その姿を訓や当馬も不安と不審を持って見送っていた。
「入学式にな、お前達と揉めていた先生、アレ確か剣道部の顧問だった筈だ」
「そいつはぁ……面白くねぇなぁ……」
由羽は乾いた唇を舐めた。



はぁ…はぁ…はぁ……呼吸三つで息を整える――上出来。
撫子は薪をくべ過ぎた炎が、安定していくのを己の身体の中に感じた。
「次…どうぞ」
その言葉に肩を震わせているのは彼女と試合をした男子だった。
まるで彼との試合はなんということもないとでも言いたげな言葉に、しかし敗者である彼が放つべき言葉はない。
更に言えば、撫子は三年生の女子を立て続けに三人倒した所で、彼との稽古に入ったのだ。
「………」
撫子は面の金具越しに試合線に入ってくる相手を睨む。
ここの男子剣道部は去年、一昨年と県四位であり、その実績に違わず部員の質も平均よりは高いだろう。
「女子だからといって手加減するな!」
監督の――二口馬太(フタクチ ウマタ)の怒声が道場に響いた。
(思い出しました……入学式の時の先生ですか)
今更、撫子はコレが自分に対する意趣返しということに気づいた。
通りで嫌悪感を感じた筈だと思いながら、開始線で蹲踞をする。
瞬間、彼女の頭から雑念が消える。
馬太の「始め!」という声と同時に気合いを放つ。
試合はあっけない。
(小さい男ですね)
蛙の潰れたような声を放ち、撫子の相手をしていた二年生男子が崩れた。開始と同時に突きを一本。
高校から解禁される突き。これを中心に組み立てれば体力は無駄に消耗することはなかった。
憮然とした表情で撫子は馬太を見た。
「この“歓迎試合”まだ続きますよね?」
「…………」
喉元に強い衝撃を受け、気を失った相手は両脇を抱えられて試合場から運ばれていく
場内は水を打ったように静かだった。この瞬間の道場の支配者は間違いなく馬太ではなく彼女だった。
「……一番強い方からどうぞ」
378すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:51:43 ID:dEqxZ9w0
その一言に、場内は騒然とした。在る者は握り拳をつくり、在る物は冷や汗を流し、在る物は歯噛み。
そのにわか支配者の高慢さを許容できる筈がない。しかし彼女もまた、一人一人の人数を数えていた。
後何人倒せばいいか……まるで夕食の買い物でもするかのような気楽さで数を数える姿はしかし、実力に裏付けられたものだ。
それが一層、場内を煽る結果になる。ともすれば乱闘になりかねない気持ちだが、理性が落としどころを探している。
際どいヤジロベーのように興奮と冷静が右往左往している空気。
「順番は俺が決めることだ」
馬太の一声で、場が静まった。しかし燻った熱は用意に炎に戻りやすいものであり、特に撫子が指名してきた
“強い方”を自負する連中は自分が馬太に呼ばれることを心待ちにしている状態だ。
しかし、馬太が指名したのはレギュラー以外の人間。
(小賢しいコトです)
そう思うが、笑うことはしない。ただ黙々と相手を下す撫子はある意味冷酷だ。
(疲労した後に強い相手とは厭らしい手です。その小狡さの結果が県四位なのでしょう)
撫子は息を吸った。
(逆を言えば……)
「では、次の方どうぞ」
(その程度だから県四位止まりなのです)
そして撫子は、その程度を正面から破ることぐらいはして見せる気でいる。
「ヤアァァアアァアァッ!!」



男三人がしゃがんで道場の壁の下窓から中を見る光景など、様にならないことこの上ないだろう。
しかしそのような感想は、すでに三人の頭の中にはない。
道場の中で孤立奮戦する撫子の傍観者になってもう30分以上になる。
彼女が疲れてない筈がない。動きにキレが無いのは三人には見ていてわかる。
重しを付けたランニングに、もう20試合は連続で戦っているのだ。由羽は歯ぎしりした。
「おメェェェェェェェン!!」
また撫子の勝利。しかし、開始線に戻るまでの動きも鈍い。
「当馬、ここの剣道部は強いのか?」
「強いさ。ここ十年はずっと県で上位に入っている」
訓の質問は尤もなものだ。三人は……撫子が一本取られているのを見ていない。
だから一見、彼女以外の部員が弱いような錯覚に陥る。いや、確かに相対的には弱いのだが。
「ただ、守猶は全国上位の実力ってコトだろう。それも男子でな。多分、大学女子でも上位にいけるだろう
 さっきの片手面だって、並のものじゃない。大体筋力で劣る女子の速さじゃない。」
栗色の結ばれた長い髪が揺れると同時に撫子は胴を斬っていた。
強い。
そして戦う意思は焼けた鉄線のように熱く誰にも近づけさせない。
その意思がある限り……由羽達は手助けをする訳にはいかなかった。
「……もういい!!」
馬太が痺れをきらし、立ち上がる。
「次は俺だ」
ジャージを脱ぐと、彼に用意された部屋に向かった。
「当然だな」
訓の感想に由羽と当馬は頷いた。
残りの部員が手練れであっても、撫子には勝てないだろう。
それほど強い。そしてその強さが相手を萎縮させる。それ程の実績をたった今つくってしまったのだ。
それは独裁者であった馬太にとっての革命勢力以外の何者でもない。
「しかしあの監督に守猶は勝てるかな?」
「流石に他の部員と同じようにはいかないだろうが、さて……ただ、あの男の性格からして勝てる算段があるから挑んだんじゃないか?」
「勝っても自慢になるかよ。撫子ちゃん、疲れてるじゃねぇか」
馬太が着替えてる間に少し休めればいい……そんなささやかな由羽の願いを、馬太は簡単に裏切って見せた。
「俺が準備するまでの間、守猶が打太刀で懸かり稽古だ……全員でな。別に打ち返しても構わんぞ、守猶」
その意味を理解した当馬は言葉を失う。
「な…っ!」
「当馬、どうゆうことだ?」
「……懸かり稽古は文字通り、かかっていく稽古だ。休まずに無茶無二な。疲れるんだよ、兎に角。打太刀ってのは……」
当馬が解説するより早く、道場で気勢が上がった。
一人が撫子に向かって突っ込んでいく。撫子は大降りの竹刀を、僅かに手を動かしただけでいなし
彼女の竹刀がすれ違い様に相手の面に沈む。最小限で最大限の一撃。
「メデェエヤァァァァァ!!」
379すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:54:53 ID:dEqxZ9w0
「ッ!!」
その横から、撫子の面に竹刀が打ち落とされた。
「オイッ!!」
由羽は思わず怒声を上げた。それも部員の気勢に掻き消されていく。
次々と……撫子にかかってくる相手は常に一人だが、彼女に打たれた瞬間、次の人間が襲いかかる。
「あんなものは武道じゃないぞ」
怒りを押し殺した声を訓が発する。
「当然だ、剣道でもない」
当馬がソレに同意する。
「あそこにいるのは男でもねーだろ……」
無論、女でもなく、人でもない……そう言いたげに由羽は拳を握りしめた。
「まったく、入部したばかりなのに練習すっぽかすし、迷惑をかけるしで、あの人の良さそうな先生には悪いけど……」
それでもこの不快感はどうしようもない。それ以前にコレを見過ごすコトは彼らには出来なかった。
「「「ぶっ潰す!!」」」



これは乱闘だ。
撫子は自分に言い聞かせていた。
竹刀を振り回し、必死に足を動かし、間合いに入った人から打ち倒す。
始めは意識して行っていた動作が、やがて反射的に出来るようになる。
「は…っ…は…っ…」
もう既に、一対一という形式ですら守れてない。
こんな状況では突きを使っては相手を怪我させてしまう。故に突きは使えない。
面越しに脳震盪を起こすような面など女の身で打てるはずもない。
胴は尤も厚く守られている場所。
撫子は自然と小手を狙った。竹刀を持てないほど、したたかに打つ。
それが彼女に残された最優の手段だった。
(せめてもう一本竹刀を持てれば……!)
しかし泣き言が頭を過ぎる程、撫子は追い込まれている。
本来二刀流は高校生では禁止されている。それでも撫子は強く惹かれ、二刀なら負ける気はしない自信があった。
一対多数では二刀の方が有利(逆に言えば一対一での二刀流の非有効性は宮本武蔵も喝破するところだ)である。勿論、二刀を修練してあることが前提だが。
「…痛ッ…」
半端に避けたせいで、撫子の腕に竹刀が入った。
一瞬足が止まる。
(しまった……!)
突き、面、小手……三方向から同時に狙われ……
「ガホッ!!」
横から面を狙っていた男が、前のめりに滑るように倒れ込んだ。。
一瞬、撫子一人に向かっていた視線が玄関――男の頭にめり込んだ竹刀が飛んできた方向に集まった。
「誰だ!竹刀を投げるなんて不作法だぞ!!」
「……あん?一人の女の子に寄って集って攻めかかるのは不作法じゃないってのか?」
その三人は付けた防具がどうにも不格好で、慣れてないのが目に見えてわかった。
つまり素人であり、この空間における異邦人だった。
「誰だ、お前らは!!」
主将が叫んだのは、本当のコトをつかれたからか?否、そんな理性があればこんなことにはなっていない。
今、この道場は異常な状態にある。集団興奮の状態であり、普通の思考判断が働いてない。
故に、異邦者に対して本能的に拒絶する。
「誰かって……そりゃ……」
竹刀を腕ごと振り回しながら由羽はヘラヘラと締まりのない顔を面の下に隠しながら半歩進んだ。
同じように、眉間に皺を寄せてはいるが訓もまた一歩進む。そして、己を指さした。
「「 新 入 部 員 ! ! 」」
ノリがいい……当馬は思った。由羽は兎も角、訓のこの機転の利かせ方は意外でもあった。
ただ由羽のある種の何事も楽しみを持って行う狂言的な原理ではない。
不条理には不条理なりの筋の通し方で一応の大義名分をもって相手を理論でも力でもねじ伏せる、そういう愚直な真面目さだった。
そこまでは当馬は理解できない。が、二人は異種であり同質なのだとは漠然と感じさせた。
「嘘は言ってないだろう」
「親友の言うとおり、俺達は新入部員だ(柔道部の)」
心底楽しそうな顔をする。まるで遊びに行くかのようだ。
それは自分達の行動に一切の後ろめたさが無い証拠だった。
380すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:56:48 ID:dEqxZ9w0
「歓迎試合なんだろう?混ぜて貰おうか」
竹刀を投げた張本人である訓が挑発する。
「もちろん、俺達は撫子ちゃん側でね」
その握りからしても素人なのが判る由羽が続けた。
「ふん。答えは聞いてないがな。勝手に混ざらせて貰う」
鼻を鳴らした当馬は少し心得があるように撫子には見えた。
だが素人が突っ込んでは危険なことはこの上ない。しかも、状況は火に油を注ぐより悪い。
「しゃらくさい!!あまり先輩を舐めるなよ!!」
主将のその言葉が引き金で、道場の火は一気に再加熱し、由羽達は撫子の援護に向かって走り出し……
「ぐえ!?」
部員の面の直撃を喰らっては床に突っ伏した。
「由……じゃなかった、新入部員Y!!」
訓はどうやら咄嗟に偽名が思い浮かばなかったらしい。
少し由羽が呆れている間に当馬もやられまくっていた。
竹刀を持たない訓は言うまでもない。
「イヤアャァァッ!!」
倒れた由羽に打ちかかろうとした男を撫子が吹き飛ばす。
「大丈夫ですか……由羽さん」
バレてた。
「なんで?」
「私を撫子ちゃんと呼ぶのは貴方だけですから」
「あ〜そーなんだ……しっかし、足手まといかな?もしかして」
「はい」
しかし撫子は面の上からでもわかるほどの笑顔。
「……でも嬉しかったです。気力は貰いました」
由羽の竹刀を取ると、二刀に構える。
「守猶撫子……参ります!!」
由羽の前に庇うように立つ撫子に、同時に三人が襲いかかる。
その時、由羽は見た。
一人目の男よりも早く右手で面を打ち、
二人目の男の小手狙いの竹刀を左手で払いざまに突き、
三人目の男の突きを首皮一枚で外しながら逆袈裟に面を打った竹刀で胴を払った。
「女傑……」
当馬が呟いたのも無理はない。この場に居た人間は皆思ったろう。
戦慄した。
坂額御前、韓娥、ラクシュミー・バーイ、ナージェジダ=アンドレーエヴナ=ドゥーロワ、カタリーナ=デ=エランツォ……
青史に名を刻む女傑達の後ろで戦っていた男達は、由羽と同じような気持ちであったのであろうか
それ程までに敵を寄せ付けない撫子の姿は……
(た、頼もしい……)
男としてなんてぇ情け無い感想だろうか……由羽は思わざるおえない。しかしその言葉しか浮かばないのだ。
「くやぁあぁあぁああああ!!!!」
生まれた静寂を、彼女は自ら破った。
棒立ちになったその一人は、突きを狙うのには容易であった。
「うげ」
声を伸ばす暇もなく、後ろの人間も巻き込んで吹き飛んでいく。
その空間だけ、まるでモーゼの十戒のように開く。
「……どうしました?稽古になりませんよ」
その一言に数人が弾かれたように飛び出した。
それも撫子の持つ二振りの竹刀によって弾かれる。
「う、うああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」
狂ったように部員達は撫子に襲いかかる。
それは今までの興奮とは明らかに違う種類の興奮。
恐怖を振り払う為の必死の抵抗であった。
しかし――虚しい。
白い道着に、靡く栗色の髪は白鷺を思い浮かべさせる。
舞うが如く動く撫子の周りを竹刀や人間が擦り抜けていく。
否、それは撫子によって弾かれ、いなされているのだ。
「すぇやぁあぁぁ!!」
静から動へ。
華麗な舞は幾千の流星が地表に降るが如く、一条の光となって相手を砕いていく。
381すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 18:59:40 ID:dEqxZ9w0
「………」
その光景に誰もが目を、息を、己が身体への支配を奪われる。
もはや立木と貸した部員を、再び優雅な舞が擦り抜ける。
だがその美しい羽は鋼鉄の羽が如く、触れたモノを切り裂いていく。
それでも人々は動けない。この舞台はまさしく撫子一人の独壇場であった。
「うおおおぉぉ!!」
「訓!?」
その中で訓だけが己が意思で舞台へと乗り上がる。
否、
「らぁ!!」
小手を捨てて、訓は相手を――投げた。
「ふん!無理に剣道に合わせる必要も無い。どうせ乱闘なんだ」
自分を見失う必要はない。己が舞台は己が創ると吼えた。
そして地に伏せた相手を訓は蹴り飛ばした。
「訓?」
らしくない行為だった。相手への敬意が全くない。だが訓に言わせれば外道に人間の礼は要らないと言うことか。
「クールなヤツだ……」
「だから頼もしいんだよ、アイツはな」
由羽達も続いて小手を外し、掴みかかっていった。
襟を取るまでに数度叩かれるがソコは耐えるしかない。
「どりゃぁ!!」
大外刈りで相手は姿勢を崩し豪快に倒れた。
「こりゃイケ…る!?」
自分の得意なところで勝負する。当たり前のコトだが、それは道ではなく術だ。
柔“道”を教え込まれた由羽達にはあくまで正々堂々という意識がどこかにあって、馬鹿正直に剣道でやり合おうとしてた。
「尊敬するぜ……親友」
「当然、いや必然」
それは自信ではない。
(近くにお前やいちるのような才気の塊がいる俺にとって、頭を使わなきゃ並ぶことはできないからな)
「いくぞ、由羽」
「オーケー……はっ!お前と会ったのはさ小五の時だろ?もしもっとガキの時に会ってたらよ……!!」
腕を庇いながら相手に近づき、由羽は腕を取った。
「一緒にヒーローごっこでもしてたかね!」
「成る程。いいじゃないか。今日はヒーローだろ、レッド」
訓が相手を組み伏せる。
「俺がリーダーか?ありがたいぜブルー!イエロー、コレ終わったらカレー食おうぜ!!」
「誰がイエローだ!!」
二人同時に組まれながら、何とか一人の足を払った当馬が叫ぶ。
「当馬ァ!!」
由羽が叫ぶより早く、当馬は背後から痛烈な一撃を食らう。
「何!?ガッ……!」
当馬は木の葉のように吹き飛ばされ、剣道部員を巻き込んで転げ回った。
「何だ貴様らは」
「は、駄目先公のお出ましか」
白い道着・紺の袴、金色の胴が目立つ。
隆々とした肉体は一個の岩の塊を連想させる。
しかしこの男を倒せば由羽達の勝ちだ。頭である馬太を倒して逃走……それが由羽たちの描いたシナリオだった。
そして自分達の敗北は撫子が倒れることと認識している。故に
「要は……俺が差し違えてでも!!」
由羽は道場の床を蹴る。同時に馬太は竹刀を振りかぶった。
今までのように打撃は耐え、懐に入る……由羽は単純にそう考えていた。
しかし由羽が伸ばす伸ばした手に馬太の襟はない。
「な…ッ!?」
空を切った。
「剣道三倍段って知ってるか、小僧!!」
由羽の右耳に馬太の声が聞こえた。由羽は振り返るので精一杯だった。
「うげっ!?」
肩に痛みが走る。外すほど馬太の腕は未熟ではない。あえて外したのだ。
剣道三倍段。素手の相手が剣を持つ相手と戦うのは三倍の技量が必要……。
「センコーのやることかぁぁ!!」
382すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 19:02:24 ID:dEqxZ9w0
「フン、それで思い出したぞ。一野進由羽!!」
「男に名前覚えられても嬉しかねぇんだよ!!」
由羽がもう剣道も柔道もなく、頭突きを狙う。
……が、簡単に避けられる。
「由羽さん!!」
撫子が叫ぶ。由羽の攻撃を避けると同時に馬太はモーションに入っている。由羽に出来るのは歯を食いしばるぐらいだ。
「撫子ちゃん!?」
走っていた。
竹刀を振り下ろした馬太と由羽の間に撫子は走って割って入っていた。
それは華麗とはほど遠く、読んで字の如く“身を盾にして”
「あぅ…」
竹刀は撫子の小手でも面でも胴でも竹刀でもなく、腕に当たっていた。
小さくうめき声を上げて、竹刀を落とす撫子。
「テ…メ…ェ……!!」
右手を伸ばす、空振り、左手を伸ばす、空振り、右手を伸ばす……
「届けえぇ!」
その声は喉からでも腹からでも出たモノではない。まるで別世界から響いたような、そんな由羽の鬼気迫る声
「無理だ」
冷酷に弾く馬太。由羽の前に立ちはだかる彼は絶対だ。
「そうでもない」
しかし由羽は一人ではない。
「訓!?」
馬太が頭の後ろに振りかぶった竹刀を、訓が掴む。
「1+1+1は?」
「何ぃ?」
小学生レベルの問題を出されて、困惑する馬太。しかし考えるより先に、馬鹿にされたという思いが先に来る。
が、矛先を訓に変えようと腕に力を込めても、動かない。
力比べでは訓に分があるらしい。それは訓の日頃の努力の賜物だ。
諦めて馬太は竹刀を手放すと、素早く身を引いて近くにいた部員から竹刀を奪い取った。
「仮にアンタと俺達との戦力比が1:3だったとして、こっちにはその1が3人いる。当馬!いつまで寝ている!!
 俺達三人で全国の頂点に立つ積もりなら、俺の足を引っ張るような実力じゃないはずだ」
醒めた炎……怒れる訓を顕すならば由羽はスグに答えるだろう。
不思議と、普段あたたかいこの男は怒れば怒るほど冷めていく。
いつもどこか冷めている自分を感じている由羽が、どうしようもなくキレると見境が判らなくなるのとは逆だ。
「五月蠅い。やられたフリをして隙を覗ってただけだ」
倒れていた当馬が立ち上がる。それは強がりが、真実か。
「一野進、乙古、剣道の動きは柔道が相手を中心点にした円軌道なのに対して、剣道の動きは自分を中心点に360°自在に動く。竹刀の間合いと一緒に歩幅も考えろ」
「そういう大事なことは先に言え」
「なんか勝てる気がしてきたぜ、訓」
「負けたときに俺のせいにするなよ。……正直、個人競技の俺達に連携なんか出来るかどうか」
それならば問題はない。今の三人の意思は同一線上にある。理由は相手――馬太にあった。
「同じ」
「男として」
「許せないだろう!!」
一番遠くに居た当馬が助走をつけて馬太に突進する。
馬太は後ろに跳び下がりながら竹刀を振り下ろす。
「ぐっ!!」
だが、当馬は振り下ろした竹刀をしっかりと握りしめて、動きを封じた。
刹那、訓が駆ける。
「踏み台にか!!」
当馬の背中を蹴って馬太に肉薄する訓。
慌てて竹刀を離し、さらに後ろに逃げようとするその袴の裾を、確かに訓は握った。
馬太の動きが止まる。
「いけえぇ!!由羽ゥゥゥ!!!」
当馬を二度踏み台にして、由羽は馬太を――掴んだ!
「喰らえ!愛の一本背負い!!!」

剣道場の床がうねりを上げた。

.
383すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 19:05:06 ID:dEqxZ9w0
「…………はっ!……どわっ!?」
「「愛ってなんだ、愛って!!」」
「た、躊躇わないことさ?」
「そこは友情だろうが、友情!!自分一人の手柄にするつもりか!!」
「恥ずかしい台詞禁止……」
「人の頭を蹴るんじゃねぇ!当馬!」
「俺を二度も踏み台にしたくせに!親父にも踏み台にされたことないのに!」
「五月蠅い!兎に角……コホン……俺達の勝ちだぁぁぁぁぁぁ!!」
「そして……」
「逃げる!!」
「いくぜ、撫子ちゃん!!」











.
偶に授業が短くて天気のいい日は、電車で少し遠くに出て写生をします。
ただ、電車の釣り革は私には少し遠くて、でもドアの近くに立っていると、流れる風景が見れて、これはこれで悪くありません。
ただ……
「あ、ゴメン」
時間帯を間違えると高校生の皆さんで一杯になってしまって、小さな私は押しつぶされそうです。
「いえ……あっ」
「ん?」
私にぶつかったその人を私はよく知っています。
「由羽…さん……」
「はぇ?」
一野進由羽さん……
私の……好きな人。
「えっと……誰?」
「あっ……いえ、その……同じ学校で……」
「は?」
「いえ、しょ…小学校が」
私はお姉ちゃんとは違う小学校でした。何故なら家の改築をしていたからで、今ではそのコトに感謝しています。
私が一年生の時、由羽さんは六年生で、でもその時はまだ好きじゃなかったですけど……
「ん〜俺ってそんなに有名人?」
「はい。その……茶髪で柔道の強い人って」
「ああ、この髪か。目立つかな」
お姉ちゃんと同じ栗色の髪を捻りながら、由羽さんは苦笑しました。
「あの、由羽さんはいつもこの電車に乗ってるんですか?」
「んにゃ、今は自転車が壊れてて……オッと!」
電車がカーブに曲がり、車内が揺れます。人の波もつられて揺れ、私は潰されそうになりました。
「大丈夫?」
防波堤になるように私の前に達、由羽さんは身体を崩した私を支えてくれました。
(あの時と一緒の言葉……)
「あ…ありがとうございます」
「どういたしまして」
私を支えた手には湿布が貼ってありました。柔道の練習で怪我でもしたんでしょうか?
あぁ、そんな手で私なんかを支えてくれたなんて……
「由羽さんは優しいですね。みんなは……結構怖い人って言ってたんですけど」
それは単純に当時の由羽さんは小学生にしては大きいし、茶髪だったからで、中身までと言うわけではないのですが。
私は思わず呟いた言葉に慌てて補足を入れました。けれど由羽さんは笑って
「いや、今日は偶々気分がいいから優しいだけだな。普段は知らないヤツに分け与えるほど優しさなんて持っちゃいないよ」
「じゃあ次からは私を助けてくれないんですか?」
384すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 19:07:20 ID:dEqxZ9w0
「ん?あはは!!」
由羽さんは何を思ったか笑い始めました。私が拗ねたのが子供っぽかったでしょうか?
「そういう言い方する女の子を知ってるのさ。キミはいい女になるぜ」
「その女(ヒト)って……?」
ひょっとして由羽さんの彼女とか、好きな人とか?
「親友の彼女なんだけどな」
私は肩が軽くなるのを感じました。
同時に車掌が次の駅の案内を始めます。
「名前は?」
「え?」
「言ったろ?知らないヤツは助けてやんないって」
「あ……ろ、楼里。私の名前」
始めは声が擦れて上手く出ませんでした。自分の名前なのに……
「ん、じゃぁ期間限定、もし同じ電車同じ車両に乗ってたら、な?楼里ちゃん」
私の名前……呼んでくれた……
――ピピピピピピピピ
駅に着くと、機械音の後にドアが開きました。
由羽さんは放心する私の頭をポンと撫でると、「じゃあな」と電車を降りる高校生の波の中へ消えていきました。
「由羽さん……」
私はスケッチブックが入ったカバンを握りしめていました。
明日から、絶対、必ず、この電車に乗ろう。乗ります。








.
「あ……」
お風呂から出て、髪を乾かそうとしてドライヤーを落としてしまいました。
「…………」
監督に打たれた腕が少し青いです。
「湿布……」
家が道場なので、怪我は付きもの。居間にも救急箱はありますが、自分の部屋にも常備しています。
今日は家の道場に出ていません。なのに怪我をしたのを両親に見られたら少し面倒でしょう。
私一人なら兎も角、由羽さんや訓さん…えっと…その他一名を巻き込むわけにはいきません。
(変な人達……)
対して深い仲ではない私をあんなにまで必死になって助けてくれたのですから。
「…………」
二階の私の部屋の救急箱を開けると乱雑に置かれた薬品や包帯を一個づつ取り出して底にあった湿布の袋を見つけます。
「……きれてます」
一階の居間に降りるより隣の楼里の救急箱から失敬した方がよいでしょう。
「楼里、入りますよ」
断りを入れて、私は楼里の部屋の取っ手を引きます。
「お姉ちゃん!?」
「どうしたのです?楼里」
「それはコッチの台詞です!どうして裸なのですか!」
「お風呂に服を着て入る人は居ないでしょう?」
だってお風呂上がりは熱いじゃありませんか。
「せめて下着着てください!」
部屋に帰ったら穿きますよ。
「湿布ありますか?」
「せめてその頭のバスタオルを巻いてください!」
髪が濡れたままなのです。
「お姉ちゃんは無防備過ぎます!あと救急箱は左の棚です」
何故か怒り出した楼里を宥めながら、言われた場所にあった救急箱を開きます。
「自分の部屋の救急箱は?」
「湿布がきれてました」
385すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 19:09:10 ID:dEqxZ9w0
「きれた時にちゃんと補充しておけばいいでしょう?それにお姉ちゃんのことです、本当にきれていたのか……」
失礼な。私は片付けられないだけで探せない人ではありません!
「胸を張って言わないでください……」
何故か呆れている楼里の横で、私は湿布を腕に貼ります。
ひんやりとした感触に背筋がゾクゾクとしました。
「怪我ですか?」
「少し。気にすることではありません。私は丈夫ですから」
力こぶをつくって見せます。私は二刀流を使う為に腕の筋肉だけは男の人にも負けない位鍛えてるのですから。
「くす……そうですね。でも、今日のお姉ちゃんは楽しそうです」
「そうですか?」
そのように見えるならきっと……
「あの人たちのせいでしょうね」
まるでつむじ風のように現れた由羽さん達の顔が思い浮かびます。
あの監督を倒した後、呆然とする私を攫うようにして抱えると、道場を逃げ出しました。
遅れて先輩達も私達を追いかけました。剣道部のメンツに関わるからでしょう。
なんて無茶苦茶な人達でしょうか?
そして私を抱えた由羽さんはひどく楽しそうに、まるでイタズラをした子供のようで
でもきっと、私も同じ様な顔をしていたのかも知れません……
「誰です?」
「友人です。新しい友人」
「どんな人ですか?」
楼里は興味をもったようで、由羽さんたちのコトを聞いてきました。
「そうですね……破天荒な人です。でも優しい人」
「そうですか。私もそういう人は好きです」
「そう、楼里の意中の人はそのような人ですか」
「男の人なのですか!?」
私はからかってそんなコトを言ったのですが、楼里は私が男の友人をつくったことに意外そうに声を挙げました。
「ええ、男の人ですよ」
「……お姉ちゃん目当てではないのですか」
「人の友人をあまり悪く言わないでください。それに私はそれ程いい女ではありませんし、一人はちゃんと素敵な彼女がいますよ」
「一人?あの人達って、何人なのですか?」
何やら息を巻いて楼里が尋問を始めました。
「三人ですか?」
「二人は彼女いないじゃないですか!気をつけてください!お姉ちゃんだって十分素敵な女の人なのですから
 妹の私としてはそこら辺の有象無象十把一絡げな男と付き合うのは許せません。釣り合うような素敵な男の人と付き合ってください」
「まぁ、こわいですね楼里は」
「当然です。あとお姉ちゃんは嫁入り前にはちゃんと片付けられるようになること!」
耳が痛いです……
386すなおくーる×おとこくんΖ <朧月>:2007/11/28(水) 19:15:10 ID:dEqxZ9w0
「くしゅん!」
「……あと、風呂上がりもちゃんと着ること」
なんででしょう?私は鼻を啜りながら、首を傾げました。
「もう…お姉ちゃん、早く服着てください」
「そうですね、このままでは湯冷めしてしまいます」
「それもそうですけど……」
何故頭を抱えるのでしょうか?楼里は。
ふと部屋を見るとイーゼルの上のクロッキー帳に描きかけの絵がありました。
「楼里、夜遅くまで描いていたら駄目ですよ」
「わかってます!それに……これは明日も同じ場所にいって続きを描く積もりですから」
楼里は怒ったのか、顔を赤らめていいました。
私は楼里の絵が好きです。暖かい雰囲気は楼里の心を映してるよう。
でもあの絵は暖かいというよりは……
「楽しそうな絵ですね?」
「そうですか?山の風景画ですが……」
「私は絵のコトはよく分かりませんが……でも楼里がウキウキしながら描いたように見えます」
「か、からかわないでください、お姉ちゃん!」
……何故か怒られてしまいました。
楼里ももう小学五年生ですからね、半分大人なのです。私にも判らない事が増えてきたということ。
……少し姉としては淋しいものを感じます。
「それでは、おやすみなさい楼里」
「おやすみなさい、お姉ちゃん」
でも、楼里はいい子です。私の自慢の妹。
私はこの笑顔を守るために強くありたい……




<続く>



<オマケ>

名前について(>>170

二口馬太 先生 → 二+口=目,馬+太=駄 → ひっくり返して駄目 先生
乙古夏(訓父) → 夏→summer→様  → 男様
387名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 20:52:15 ID:3Kgy4gQx
当馬wwwwwwwww
388名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 21:07:22 ID:D9VsLfDe
その他1名w
389名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 22:29:10 ID:14CTL5Yz
当馬のフラグ絶望的wwwwww
390名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 23:47:36 ID:8MzkYmxJ
誰か当馬にも光を与えてやってくれ、なんか某百合アニメの某ソーマを見てる気分なんだが。
つまりとても哀れ。
391名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 00:02:42 ID:7GxAOsb4
さすが当て馬www
392名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 02:37:37 ID:4EdNLnI0
待てやお前らw
当馬の不運っぷりを嘆く前にこうあうべきだろw


GJ!!と




訓と一流、この二人馬鹿ップルまっしぐらですかせんせー?
由羽はどうなる♪
393名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 03:30:23 ID:9HkuzhAA
昼行灯先生……
394名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 07:40:27 ID:85FflHnm
むしろ由羽に修羅場フラグが立ってないか?
ヤンデレとロリと最強姉ちゃんの三方向から
死ねるぞw
395名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 00:14:21 ID:32VRAxvN
凄まじいモテ期だな。流血的な意味で
396名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 04:28:42 ID:O3R0GjJ4
由羽にフラグが勃つ感じか

まぁ訓にだったらそれはもう由羽以上に未曾有の修羅場になるだろうからなw
あれ、そういやもう一人いたような(´・ω・`)?
397名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 12:34:41 ID:6995crbM
やべーこのシリーズ全部通して読んだが由羽に惚れるな。
ひたすら平和してるバカップルはあれだが、由羽を取り巻く恋模様が楽しすぎるw
398名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 16:41:59 ID:gCxbSQcM

         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『おれはギャグSSを読んでると
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        思ったらいつのまにか無双ってた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    当て馬wだとかバカップルwだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいもののGJを味わったぜ…
399これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:15:07 ID:N48iy/k5
>>390
でも世界は救えたりするわけですなw
何気にいいじゃないか当て馬、かっこいいぞ当て馬。

さて。
皆さんおはようございますこんにちはこんばんは。これからずっとの人でございます。
初っ端からクソ長くてエロくも無い文章が続きますので、「エロだけ見たいんじゃあ!」な人は最初の何レスか飛ばしてください。

ではどうぞ。
400これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:15:56 ID:N48iy/k5
「先輩。」
「何や後輩。」
「1つ訊きたいことがあるんですが。」
「何や。」
「何か秘密にしていること、ありませんか?」
「例えばどんなん?」
文化祭の余韻も抜け周りはセンターへと突っ走っている中、俺は塾にも予備校にも通うことなく駅前のバーガーショップに入り浸っている。
安田はそこに当然のように付いて来て、当然のように向かいに座っている。
今は一食食べ終わって休んでいたところだ。そこに唐突に質問された。

「女性関係です。」
例えば、と訊いたのに断定して答える。
「最近、私に余所余所しくないですか?」
「それは元々と違うかったっけ?」
「確かに先輩が私に冷たいのは最初からですけど、少しずつ優しくなってくれていました。」
サラリと『冷たい』と言われた気がするが、問題はそこではない。
「気のせいやろ。」
「……そうですね。」
まだ疑っているようだがここは攻めない方がいいと判断したのだろう。
とっくに空になった紙コップを持ち上げストローに口をつけるとズゾゾッと不快な音をさせる。
俺は内心ヒヤヒヤしていた。一応、やましいことは何もしていないのだが。

…………………………
文化祭で偶然にもあの人と再会した俺は、その場で話し込みたい衝動を抑えて連絡先を訊いた。こちらもクラスの仕事があったし、向こうも友人連れだったからだ。
あの人の友人は先に行っているから、と踵を再び返して去っていく。その場には俺とあの人しかいない。
あの人はにっこり微笑むと携帯を突き出すと、慣れた手つきで自分の番号とアドレスを呼び出した。
「大学、こっちに来てん。それで交換する機会も多かったし慣れてもた。」
苦笑しながら画面をこちらに向けて手渡ししてくれる。俺はその画面に映った文字を自分の携帯にゆっくり打ち込むと、少しためらってから返した。
「どしたん?」
「あ、いや……」
「私と少しでも一緒にいたいからとかやったりして?」
今度は少し小馬鹿にしたようなニュアンスの笑みだ。ころころと笑顔が変わるところは昔と変わっていない。
「図星なんやろ。」
「……うん。」
「素直なところ、変わってへんなあ。」
彼女は自分の携帯を受け取りながらうれしそうに目尻を下げた。

それ以来、日に何通かのメールのやり取りをしている。とは言ってもお互いの近況や身の回りで起こった出来事などを報告している程度なのだが。
あの人と元鞘に戻るかなんて考えたことも無かったが、俺が望めばまた昔みたいに手を繋ぐ仲に戻れるのだろうか。
…………………………
401これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:16:27 ID:N48iy/k5
「今度の土日、暇ですか?」
氷まで噛み砕き、完全に空になった紙コップをトレイに置くと喋りだす。
「土曜日は暇、日曜日は無理。」
毎週のようにこうやって家に呼ばれているので、いつものように答える。
「……いつも思うんですが。」
「なんや?」
「どうして日曜日は暇じゃないんですか?」
もう数える気も失せるほど誘われたが、その度日曜は暇ではないと言い続けてきた。それを今更ながら怪しいと思ったんだろう。
「何でって……家業の手伝いしてるだけやで。」
「か……ぎょう……って?」
首を捻り瞳に『?』を浮かべながらぼそぼそ言っている。こいつにはまだちゃんと言ってなかったか?
「俺、卒業したら親戚のとこで働くんや。3月頃にはもう学校行かんようになるし、それまでに早よ仕事覚えなアカンから。」
本当は土曜日も行ったほうがいいのだが、今はその分を平日の放課後に埋め合わせている。

「そういえば先輩は就職すると言っていましたね。どちらにお勤めの予定ですか?」
「親戚の手伝いするだけ、みたいなもんやから、ちゃんとした就職とは言えへんとは思うけどな。」
「で、どちらに?」
話題を逸らせようとしたがダメだったか。舌打ちをしてじろりと睨むが彼女は意に介さない。
「言うたら絶対押しかけてくるやろ、仕事先に。」
「妻として勤め先を確認するのは当然だと思いますが。」
「…………」
「どうかしましたか?」
「…………」
「あの、その。」
「…………」
「突っ込んでくれると思ってたんですが、放置プレイですか?」
「何で黙ったか分かってるんやったらこれ以上訊きな。絶対教えへんからな。」
402これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:18:25 ID:N48iy/k5
で、その週の日曜日。
朝、かなり早い時間に家を出て親戚のやっている店に到着すると、何故か背後に安田がいた。
「なんでおるん?」
「尾行しました。」
「素直なのはええことやな。……ちょっと来い。」
店先で言い争うわけにもいかず、少し離れた公園まで引っ張っていく・

ちなみに親戚の店というのは伯父夫婦がやっている和菓子屋のことだ。
元々俺の祖父母が開いた店だったのを伯父が継ぎ、今ではこの辺りでは少しは名の知れた店となっている。
幸い始業時間まではまだ間があったのでそれまでに説得して家に帰らせたかったのだが、彼女も強情でなかなか帰ろうとしない。
昔のこともあるので親戚にこの光景を見られるのはすごく不味いんだけど……

30分も押し問答をしていると流石に疲れてきた。イライラしてきたが怒鳴りつけるのも大人気ない。
「帰れ言うたら帰れ。もう始業なんやから。」
「それなら仕事ぶりも見ていかないと。」
「……ええ加減にせえよ、あんまり俺を怒らしな。」
「怒らせるようなことはしていないと思いますが。」
暖簾に腕押し、糠に釘。何を言っても自分の意見を変えようとしない安田に、段々と沸点が近付くのを感じる。

「どうしてそんなに嫌がるんですか?理解できません。」
彼女としては特に大きな意味は無かったのだろうが、この一言で限界を超えた。頭に血がかあっと昇る。
「中学の時、俺が何をしたんか知ってるやろ。知っとったら俺が親戚にどんな風に見られてるんかも想像つけへんか!」
感情的になって吐き捨てる。安田は一瞬はっとした表情を見せると下を向いてしまった。
「……帰ってくれ、頼む。」
俯いた彼女の顔を覗き込むことも出来ず、それだけ言うと俺は背を向けてその場から離れた。

その日は1日中上の空で働いていた。店頭で接客をしては注文された商品の個数を間違え、裏に引っ込んでは積んであった段ボール箱を崩してしまう。
あまりに邪魔ばかりするので、ついには伯父さんに雷まで落とされた。流石にそれ以降は大きなミスはしなかったが、それでも安田のことが頭から離れなかった。

夜、仕事が終わってロッカーに戻ると、置いてあった携帯を確認する。着信履歴もメールも無い。画面を閉じて溜息をつく。
怒鳴りつけたのは完全に俺の都合なのは分かっている。でもここにまで来られるのは困るのだ。
喉に綿を詰めたような息苦しさを感じて、俺はもう一度溜息をついた。

とりあえず安田にメールを送ろうともう一度携帯を開くと、突然電話がかかってきて震えだした。驚いて取り落としてしまうが、すぐに拾い上げ通話ボタンを押す。
「もしもし?」
「もしもし。今ヒマ?」
携帯を取り落としてしまったので誰からの着信かの画面の表示を見ることが出来なかったが、声で誰かがすぐ分かった。あの人だ。
「別に予定は無いで。」
「それやったら晩酌の相手でもしてくれへんかなあ?1人でビール飲んどっても寂しいねん。」
電話口の向こうで陽気にけらけらと笑っている。かなり気分がよくなっているようで声のトーンが高い。
「自分、まだ未成年やろ。」
「細かいこと言いな。大学入ったら飲まされるんやでぇ。……なぁ、おいでや。」
誘われて悩む。あの人の下宿はどこにあるのかは教えられてはいるが、どうしても変な事を期待してしまう。
でもあんなことがあったのだ、SEXをするわけにはいかない。それは向こうも分かっているだろう。
「……ほんなら行くわ。30分くらいかかるけどええ?」
本当に飲みに誘っているだけなのだと自分に言い聞かせて返事をした。
「近くまで来たら連絡してな。迎えに行くし。」
「うん、分からんかったら電話するわ。それじゃ。」
俺は電話を切るとコートを羽織った。もう外は真っ暗だし、少し厚着をしないと寒いくらいだ。
403これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:19:09 ID:N48iy/k5
店からの最寄り駅まで歩きながら安田の携帯へ電話をしてみるが、数コールの後、留守番電話に切り替わってしまう。
いつもなら3コールも置かずに電話に出るのに、何かがおかしかった。
とりあえずメールでも打っておこうと思い、言いすぎて済まなかった、もう怒っていない、といった内容のメールを送信しておく。
もしかしたらもう寝てしまったのかもしれないし、連絡が来なくても変に焦らないようにしようと自分を落ち着かせた。

彼女の下宿の最寄り駅まで数駅、そこから教えられた辺りまで歩いてから電話をするとすぐに迎えに来てくれた。寝間着の様なジャージの上にコートを羽織っただけの軽装だ。
「いらっしゃい、寒かったやろ。早よ部屋行こ?」
彼女は俺の手を握るとぐいぐい引っ張っていく。その暖かさと柔らかさに一瞬中学生の頃を思い出す。
少し涙が滲んだのを誤魔化すように大きく鼻をすすり上げた。

初めて入る彼女のアパートは意外と広かった。それでもタンスやコタツが引っ張り出されていて足の踏み場を探すのは難しい。
それでも何とかコタツの一角まで辿り着くと腰を下ろした。晩酌と言うにはかなり早い時間帯から飲み始めていたようで、空き缶もつまみもそこら中に散らばっている。
「暖房入れてるしあったかいやろ。」
彼女は台所からグラスを1つ持ってくると、俺の背中を抱くようにして腰を降ろす。
「何すんねん。」
「アンタが座っとるとこ、ホンマは私の場所なんやで?ヒトの場所とっとるくせに文句言いな。コート脱がすで。背中、冷たいしな。」
羽交い絞めをするように俺の喉元まで腕を回すと、器用にボタンを外していく。全て外すとコートを無理矢理下ろして背中に頬ずりをしてきた。
「あったかいなあ。自分の背中、好きや。」
ずり下ろされたコートに手首をロックされてしまい俺が抵抗できないのをいいことに、後ろからの手が俺の胸や腹を撫で回す。
「大きくなったなあ。昔と違って、丸みが無くなってもうた……」
残念そうに腹の辺りを何度もなぞってくる。我慢できなくなって無理矢理コートから手を引き抜くと手を重ねた。
「止めよ。それ以上されたら、俺、我慢できんようになる。」
彼女の手を強く握り締めたが、撫で回す動きは止まらない。
「我慢、せんでいいよ。……ウチもそのつもりやったし。」
その言葉に、俺は思わず息を飲んだ。

「……そんなん、したらアカンやろ。」
飲み込んだ息をゆっくり吐きながら喋る。吐き出した息と一緒に体温が奪われていくように感じる。背中に当たる彼女の身体が温かい。
「そんな嫌がっても口と身体は別みたいやで?ほら、大きなってる。」
彼女は俺の手を振りほどくと、自由になった手がジーンズのジッパーにかかる。
「止め、言うてるんや。」
「前からの方がええん?」
「そうやない。ホンマに止めてくれ。」
ようやく手が止まる。彼女は空いた両手の置き場所に少し迷ってから、俺の腹に置いた。暖かくて柔らかいのが服を通じてでも分かる。

「……なんやねん、そんなキツう言わんでもええやろ。」
「だって止めてくれへんから。」
「別にええやんか。今日、大丈夫な日ぃやし、いっぱい、中で出してもええんやで?」
その言葉に軽い絶望感を覚える。仮に今日が本当に安全日だとしても万一ということがある。彼女はあんなことを繰り返したいのか。
すぐに引っ越してしまった俺と違い、彼女は向こうに残ったはずだ。俺以上に辛い目に遭っているはずなのに、どうしてしようという気になれるのか。
「もしかしてウチのこと嫌いになったん?」
そうじゃないんだ。今でも君のことは好きなんだ。でも。
「Hは出来へん。」
「勃たへんとか?」
「そうじゃなくて!」
言いたいことが伝わらずにイラついて声を荒げてしまったが、彼女はビクリともしない。俺がどうして怒っているのか分からないのだろうか?
404これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:19:40 ID:N48iy/k5
彼女は無言で立ち上がると手を伸ばしてコタツの上の缶を手に取った。
「……ウチはアンタのこと、好きや。好きで好きで堪れへん。でもあんたが受け入れてくれへんかったら、ウチどうしたらええの?」
手の中のチューハイを開けるとぐいぐい呷りだした。あっという間に空にしてしまうと、残ったゴミをコタツへ置く。
俺は何も出来ないで黙って見ていたが、彼女は甘ったるくて酒臭い息を吐き出しながら崩れ落ちてきた。咄嗟に受け止めると覆いかぶさるようにしてキスをしてくる。
舌で唇を割られてチューハイの甘さとアルコールの苦さの同居した唾液を流し込まれる。甘くて苦くて懐かしい味だ。

侵入してきた彼女の舌は俺の口の中を次々に蹂躙していく。歯列を舐め回し、顎をこじ開けて口蓋や舌を滑っていく。
「ん、ちゅ……ちゅく……ふ、はぁ、じゅるっ……」
唾液の交わる音が耳に響き、アルコールで少し上がった体温が舌を通じて伝わってくる。押し倒された上に口を塞がれて息が苦しい。
彼女はというと恍惚とした様子で必死に舌を吸っている。彼女の口の端から涎が垂れると俺の首筋へ流れ落ちた。
大人になって一層可愛らしくなったと思うし、すごくそそられる。だけど昔とは何かが違った。

「なんで?」
一旦唇を離すと不満そうな声をあげる。彼女が舌を絡ませようとしても俺が動かなかったからだ。舌が奥に引っ込んだままではどうしようもない。
「だから、止めようや。」
「だからなんでぇな。Hしたくないん?」
「何で嫌がってるんか分からへんのか……?」
「言うてくれな分からへん。」
その言葉に頭が真っ白になる。昔は言わなくても分かってくれたじゃないか、と喉元まで出かかって、そして気が付いた。
今も彼女のことは好きだけど、それはきっと愛情ではないのだ。昔を懐かしむ一種の郷愁という言葉が一番しっくり来る、そんな感情だ。
俺にとって彼女は過去の人になってしまっている。

「ゴメン、俺、帰るわ。」
もう逃げるしかない。答えを先送りにするしかないなんてあまりいいことだとは思えないが、それしか選べなかった。
なんとか傷付けない言葉を探してみるが見つからない。最後に言う言葉はもう決まっているからだ。
「ウチのこと嫌いになったん?」
「……違う。多分、いきなりでびっくりしただけやから。」
嘘を吐いたせいでまともに顔が見れない。顔を逸らすようにして後ろに回した腕にほんの少し力を入れて抱きしめる。
恐らく時間にして2、3秒。鼻先に茶色がかった髪が揺れて甘い匂いが鼻腔に広がる。
「……ホンマに、ゴメン。」
腕を広げて立ち上がり、くしゃくしゃになったコートを拾い上げて着直すと、部屋を後にした。
俺が出ていくまで、彼女は一言も話さなかった。

この時期になるともう夜はグッと冷え込む。強い風に煽られないようにコートの襟を合わせると駅へ歩いていく。
いろいろなことが頭の中に渦巻いてぐるぐる回っている。
昔のこと、今のこと、これからのこと。全部があの人に関係のあることで複雑に絡み合っているからいくら考えても答えが出ない。

ふと気がつくと見知らぬ場所に出ていた。考え事をしながら歩いているうちに道に迷ってしまったらしい。
「参ったな……」
この辺りに来ること自体初めてだったし、彼女のアパートの近所までの道はなんとなく覚えているが、そのルート以外はからっきしだ。
辺りを見渡しても耳を澄ませても電車の音も大通りの車の走行音も聞こえない。夜中の住宅街だから人も歩いていない。
とりあえず歩き回るしかないか、と来た道を振り返ると、見知った影が立っていた。
405これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:20:11 ID:N48iy/k5
「先輩。」
「お、前……!」
安田だった。
「びっくりしましたか?」
口元を軽く持ち上げて薄く笑んだ表情のままこちらへ歩み寄ってくる。
「なん……で……?」
今朝、家に帰れと言ってから顔を合わせていないのに。
「後を付いて来たからに決まってるじゃないですか。」
何を当たり前のことを、と言いながら目の前まで来る。こんなところに何か用事があったのだろうか、という虫のいい期待は脆くも打ち砕かれた。
「ああ、ちゃんと家には帰りましたよ。仕事の終わる時間を見計らってもう一度お店のほうに向かったんです。ずっと外にいても風邪、引いちゃいますし。」
言いたいことはそういうことじゃない。だけど声が出なかった。安田はそんな俺の手を取り自分の胸へと収めると横へ並ぶ。腕を組む格好だ。
「帰りましょう?私は道、分かりますから。」
そのままかなり強い力で引っ張っていこうとするので、俺はつんのめってバランスを崩してしまう。
「ま、待てって、ゆっくり歩いたら……」
「一刻も早くここから離れたいんです。」
こちらを見もせずに言う。いつもの強情さとは少し違う色が混じっていて、俺はそれ以上何も言えず駅まで引っ張られていった。

「……家まで、送ってこうか?」
改札を抜けて電車に乗る直前にようやく言えたのはその一言。それまでこちらを見ようともしなかった安田がようやくこちらを見上げる。
「お願いします。」
言ったきりまた前を向く。目の前には広告看板さえ無いというのに、何かを見つめるようにじっと視線を逸らさない。

「なぁ。」
「なんですか?」
「何か……言いたいことでもあるんか?」
「何もありませんよ。」
今度は視線をこちらに向けることもしない。右腕はまだ彼女に絡め取られたままだというのに大きな距離を感じる。
「何にも無いこと、無いやろ。」
空いた左腕で彼女の顎に手を当てこちらに向かせながら言ったが、すぐにプイとそっぽを向いてしまう。
「少し、訊きたいことはありますけど、今の状況で何を訊けと言うんです?」
いつも通り静かな口調だが明らかに怒っている。その証拠に抱きしめられた右腕にかかる力が強くなってきていた。
「何か言うべきなのは先輩でしょう?」
「俺が?」
「まだ何も教えられていなくて、情報なんてこれっぽっちも無い状況で、何を怒れと言うんですか。」
俯いて、吐き捨てるように言葉を地面にぶつける。彼女のそんな様子を見たのは初めてだった。
「……何から、話せばええ?」
「全部です。今日のこと全部。最初から最後まで。包み隠さずに。私の部屋でお話してください。」
明日は月曜日だ。それは安田も分かっているはず。それでもこんな時間に家に来いと言っているのだ。
「分かった。」
そう言うしかなかった。
406これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:21:14 ID:N48iy/k5
1時間ほど後、彼女の部屋で。
「そういうことなら早くに言ってくれればいいのに。」
「……昔の彼女と会うたなんて、言えるわけ無いやろ。」
洗いざらい吐かされて俺はぐったりしていた。変に嘘を吐こうものなら金輪際口を利いてもらえなくなりそうな雰囲気を振りまいて目の前に迫っていたからだ。
結局キスをされた辺りのことはぼかしつつ、用事を思い出したから帰ることにした、とだけ嘘を吐いた。
「どうしてですか?」
「何が?」
「私に言えない理由ですよ。」
「あっ……と……」
特に理由は無いはずなんだけど、どうして言えなかったんだろう。それが分からずポカンと口を開いたままにしてしまう。
「どうしたんですか、そんなに呆けた顔をして。」
「あー、いや、特に理由は無いと思うんやけど……何で言わへんかったんか、自分でもよう分からん。」
皆目見当がつかずに頭をポリポリと掻く。

「そうですか。それならいいです。」
口の端をほんの少し持ち上げると顔を寄せるようにして擦り寄ってくる。2人が乗ったベッドが軋み、その距離を近付けるように真ん中が凹む。
「先輩。」
「何や後輩。……近いねん。」
「エッチ、しましょ?」
「お前なぁ……」
明日は月曜だろう、と言ってみるが彼女は取り合わない。
「先輩はもう3年生ですし、私は1日休んだくらいじゃ進級に響きませんよ。……それに、先輩に愛されているんだって再確認したら、疼いてきちゃって。」
俺の手を取るとスカートの中へと誘う。さらさらとしたタイツに柔らかい生地のパンティと2枚も布地を挟んでいるのに、そこはしっとりと湿っていた。
「愛、されてる?」
指先の感覚に集中しながら、先程の彼女の発言を反芻する。
「は、ひぃっ!」
彼女が返事をする瞬間に偶然、クリトリスを弾いてしまい語尾が跳ね上がる。見ると目が潤んで息も荒くなっている。
その様子が可愛らしくて更に弄ると、身震いを何度かしてこちらに倒れてきた。それを受け止めて、座ったまま抱き合う形にして指は動かし続ける。
「だって、『今の彼女』に気を遣って言わなかった、んんっ、でしょう?」
熱い吐息と共に耳元で言葉を紡ぐ。耳たぶがくすぐったい。

「……言われてみればそうかも知れへんな。」
考えもしなかったことだけど、自分の中で安田の存在はかなり大きくなっていたようだ。それも、あの人の存在と入れ替わるくらいには。
それは過去の自分を全て否定するようで恐ろしいし、やっと新しい自分を認められるようになれたのだとうれしい、そんな複雑な感情だ。
これ以上安田に踏み込んだらあの人を忘れてしまう。けれど安田を好きでいる今も心地いい。
どちらかを手放してしまうことは辛いけれど、不器用な自分では両立させることなんてとても無理だ。いつかは決断しないといけないだろう。

「せ、んぱいぃぃ……」
「ん?何や後輩。」
「そんなに、弄ら、ないでぇ……イッちゃいますぅ……」
考えながらも指先は止めていなかったから、彼女はもう限界らしい。声が震え続けているし、目尻からは涙がこぼれて、一筋、光の筋を作っていた。
そこを舐めあげて瞼にキスを落とし、鼻に落とし、唇へ落とす。唇が触れるよりも早く、お互いが伸ばした舌が先に触れ合う。
音を立てて唾液の交換をしながら指の動きを更に激しくすると、彼女はむーむー、抗議の声を上げようとする。仕方が無いので一旦唇を離してやる。
「ひどいです。はぁ、はぁ……私はこんなに感じてるのに、まだし足りないんですか?」
「足りへん。だってお前、もっとしてほしい、ちゅう顔しとるで。」
「……そんな顔、してません。」
恥ずかしいのかそれとも興奮しているのか、頬を真っ赤に染めて俯いてしまった。その仕草も何もかもが愛おしく、つい苛めたくなってしまう。
「へえ?こんなんしても?」
言って指先に力を込め、ほんの少しだけ裂け目へ指を埋める。それまでの表面を撫でるような動きとは違い、強引に埋めて動かす。
もしかしたらタイツを破ってしまったかもしれないが、こんなに愛液で濡れてしまっているんだからもういいか、と少々乱暴にこすりあげた。
「あっ、ひゃあぁぁ……っ!」
掠れた声を上げるとしがみついてくる。少し刺激が強すぎたようで、暫くの間目の焦点が定まっていなかった。
そんな彼女にもう一度軽くキスで触れると、すぐに反応が返ってきた。蛇のようにチロチロと舌を出したり引っ込めたりして俺のキスに応える。
「一晩中、SEXしましょうね?」
「……そういうこと言いな、はしたない。」
言われなくても、ここまで来たらこっちだってそのつもりだ。
407これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:22:21 ID:N48iy/k5
滴るほど濡れたタイツとパンティを全て脱がしてしまうと、薄い繁みを通り抜け、その下の割れ目へ手を差し入れて愛撫する。
そこは下着越しに触る以上に柔らかかった。今下着を脱がせたばかりだというのに、愛液が内腿を伝っている。
その垂れた愛液を刷り込むように大陰唇を何度も擦ると彼女は大きくかぶりを振った。
「んっ……中、触ってえっ!」
直接触られる機会だというのに周りをさする動きしかしていなかった俺に、安田が焦れて腰を振る。
俺はその要求に応じて人差し指をほんの少しだけ突き入れると、すぐに引き抜いた。
「先、ぱいぃ、抜かないで、もっとぉ……」
「じゃあ指だけでええん?俺も我慢出来へんねんけどなぁ。」
ニヤっと笑って、息も浅く目もうつろな彼女の鼻の頭に少し歯を立てる。その刺激で我に返ったのか、一拍置いて慌てだす。
「指だけで……?嫌、嫌です。ちゃんとHしてください……ねぇ、早くぅ!」
彼女は言いながら俺のジーンズのベルトに手を掛けて、カチャカチャと音を立てながら脱がされる。
そんなに慌てなくてもいいのにと内心苦笑しながら、したいようにさせてやる。

正常位の格好で、痛いほど張りつめた分身を彼女の入り口へ押し当てる。愛液が噴き出している泉の縁を数度撫で、潤滑油を塗してから押し込む。
「くううぅぅぅ!」
彼女は声を上げて俺を受け入れた。腰を動かさずに顔を覗き込むと、犬のように浅く荒い息を繰り返す安田に睨まれる。
「早く、動いてぇ……」
頭の芯が痺れそうな声音で懇願される。涎が垂れて、口の端からキラキラと糸が首筋に落ちている。
ああもう、何でこんなにエロくて、こんなに可愛いんだ。首筋から涎を舐めあげると唇を塞ぐ。舌を吸い合う。
「う、むっ……ちゅ、ちゃ、んんっ!はふぅ……じゅっ、じゅる……」
息継ぎを細かく挟みながら口での触れ合いを続ける。左肘を彼女の耳元に置いて体重を支えられるようにすると、自由になった右腕を胸に伸ばす。
上着をめくり上げてブラジャーをずらし胸をあらわにすると、裾野から触ることをせずにいきなり頂を摘み、軽く捻りあげる。
「ひぐっ!……ふむっ、ちゅっ、ちぃぃ……ぷはっ!」
唾液を流し込み、また流れ込んでくる。そのやり取りを愉しんでいたら息継ぎをするのを忘れていた。彼女に突き放されるようにして唇を離す。
「……せんぱいぃ、おっぱいばっかりじゃなくて、下も動いてぇ……」
「嫌や。」
答えてキスと掌での愛撫を続ける。どこか触るたびに下半身がきゅうきゅう締まるのが気持ちが良くて楽しい。止められない。

不意に下半身の繋がりが動いた。唇を離して下を見ると彼女が自分で腰を振っている。
「せんひゃい、動いて、くれない、から……」
呂律が回らないまま顔を真っ赤に染めて身体を揺すり続ける。彼女が1つ動く度に襞が絡むように動き、腰の辺りをゾワゾワと行き来していた快感が一気にせり上がってくる。
「ちょ……っ!」
「先輩も、気持ちいいの?……じゃあ、もっと動きますね。」
そう言って大きく動き出した。負けじと俺も指と舌をさらに動かす。

暫くすると、急に一点を攻めるように少し腰を浮かして小さく震えだした。
「はぁ……はぁ……ここ、ここ、きもちい……っ!」
触れているその部分だけに小刻みに擦りつけているのか、腰を浮かせるという少々不自然な体勢にもかかわらず、結合部分は殆ど動いていない。
「先輩、先輩、先輩……っ!」
俺のことを呼びながら身体を揺らせ続ける。自分で生み出す快感を全部受け止めるのに必死なのか、金魚のように口をパクパクと動かし呼吸も途切れ途切れになっている。
「気持ちよすぎて……腰、かっひぇに動いちゃう……っ!」
少し長くなってきた髪を振り乱してかぶりを振る。自分の身体の制御が利かない様子で、痙攣を起こしたように身体を揺らし続けていた。
この辺りが頃合だろうか。俺も我慢出来なくなってきた。一言、動くぞと耳元で呟いてやってから、大きく腰を行き来させ始めた。
408これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:23:09 ID:N48iy/k5
「ひゃうっ!」
さっきの呟きが聞こえなかったのか、俺の動きに虚を突かれたようだ。全身の震えのような動きが一瞬治まる。
2回、3回と突いてやる度、彼女からはさっきよりも大きな嬌声が上がる。涙で濡れる瞳を見つめていると滅茶苦茶にしてしまいたい衝動に駆られる。
そんな衝動をぶつけるように何度も突く。腰を引いたときに見える、掻き出された襞が劣情を余計に刺激する。
「やっ、あっ、せっ、ぱいっ、イッちゃう、イッちゃうよお!」
彼女は空いた腕を俺の背中に回すと抱きついてきた。俺は彼女の身体にぴったりと圧し掛かっていたわけではないので、彼女の身体が浮き上がりぶら下がる格好になる。
少し重かったが両腕をついて彼女を潰さないよう支えてやると、更に動きを激しくした。1つ突く度に身体が揺れ、彼女の胸が押し付けられて俺の着ている上着と擦れる。
ああ、脱いでおけば擦れて気持ちよかっただろうな、なんて馬鹿な事がチラと頭の隅を走りぬけた瞬間、彼女の身体が弓なりにしなった。
「はううぅぅぅっ!んんんっ……!」
一度叫ぶと、今度は声を殺すように俺の肩に口元を埋め、また叫び続ける。顔を真っ赤にして、きつく閉じられた瞼からは涙がこぼれている。
どうにも表現できない感情が生まれて頭を撫でる。きつく抱くと壊れそうで、でも壊してしまうほどに抱きしめたい、そんな変な感情。

今のこの気持ちは、昔、あの人に対して抱いていた感情に似ている。そしてそれは、今日のあの人に対しては生まれなかったものだった。

* * * * *
「こうやってヤキモチ妬くのも、たまにはいいものですね。」
数回戦を戦い終え、2人でベッドに並んで寝転がっている。既に裸同士だ。
「あ、でも、だからといって浮気はダメですからね?」
「なんや、楽しいんやったらどんどん外行ったろ思たのに。」
俺の肩越しに見上げてくる彼女の頭を撫でる。彼女はくすぐったそうに首をすくめると、俺の身体の上に乗りかかってきた。
重いと文句を言うが聞き入れられず、逆に抱きついてくる。
「恥ずかしがって、かわいい。」
「恥ずかしがってなんか……」
「嘘つき。先輩が何を考えているのかくらいは分かるんですよ?」
私は先輩の彼女だから、と付け足して、胸板に頬擦りをしながらそのまますやすやと眠りについてしまう。
「……っとに、聞き分けは悪いくせに、寝つきだけはええんやから。」
降ろそうとも思ったが変に揺り動かしても起こしてしまうだろうと思い直し、暫くの間我慢することにする。

満足そうに眠る彼女を抱きしめて俺も目を閉じた。こういうのを幸せというのだろうか。
409これからずっと ◆6x17cueegc :2007/12/01(土) 02:23:50 ID:N48iy/k5
と、以上です。

年末に合わせて書きたいネタがあったせいで、急展開が急展開で収まるというアクロバティックな内容に……orz
修羅場ネタはもっと長く引っ張りたいネタだったんですが、去年のクリスマスも外した身としてはクリスマスネタを書きたいのです。どうか我侭をお許し下さい。

エロ、特にセリフは今回相当頑張ったのですがどうだったでしょうか。
個人的に呂律が回らないセリフを書くのはこっぱずかしいので今まで敬遠してきたのですが、今回初解禁してみたのでそれについてのご意見お聞かせ願いたいです。

あと男の勤め先の職種には特に意味はありません。私の実家の一番の近所の店がそれだった、というだけなので。
この先、もし描写におかしい所があっても突っ込まないで下さい。イヤ、マジでお願いしますorz


久しぶりに次回予告。
クリスマス頃に短編を3作、全部エロシーン入れての投下を予定しています。
出て来るのは3編とも違うカップル。微妙にリンクさせたいとも思ってますのでその辺も楽しみにしていただければ、と思っています。
410名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 02:52:26 ID:p0wmydDv
GJ!ただこの一言に尽きる
411名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 06:39:02 ID:hgQkMl15
安田かわいいよ安田ーGJ!
このシリーズ読んでると学生の頃が思い出されてちょっとグッときますよ。
いい意味でノスタルジックな感触が。

年末もwktk〜
412名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 06:56:46 ID:k738A8FS
413前スレM+14FhJ5:2007/12/02(日) 03:01:05 ID:jdJZyrNs
>>370氏 >>399
お二方ともGJでございます。
私のSSで気を悪くした方もお二方の作品で癒されたと思います。
ただ……失礼ながら370氏に一つ気になったことを。
撫子なんですが、助けてもらったのにもかかわらず名前を覚えていなくて、しかもその他一名で済ませるのはかなり失礼ではないかと。
いくら当馬がそういうキャラだとしても、少し違和感が…
失礼しました、気になったのはそこだけで、後は素晴らしいの一言につきました。
私もお二人の領域を目指し精進していきます。
最後に、あらためてGJです。


 
414名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 04:30:55 ID:yvbf3NOw
バイト中に見るんじゃなかった・・・どうしようこれ
415名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 10:43:32 ID:to7U1+c3
「どう思う?」って見せ付けるんじゃないの?
416名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 11:23:58 ID:TRKYWXxr
さんたさんへ
ことしのくりすますぷれぜんとは
みずきたんのつづきをください
417名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 12:00:27 ID:uPup3cZK
自分は吊革ネタの続きでもいいです。
418名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 22:22:53 ID:Kdza6yhD
サンタは、子供だけです
419名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 23:07:51 ID:wjaWEKA3
サンタコスのクーとエロ(ry

そんな妄想が頭を過ぎりました
420名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 00:36:32 ID:XZKQBPnN
「さあ、この服に着替えるんだ」
「これはサンタか?で、なんでお前がトナカイなんだ?」
「着替えたらこれに乗ってくれ。説明はそれからだ」
「着替えたぞ。で、これは…車輪付きのソリ?本格的だな」
「乗ったら私が四つん這いになり、君がこの3本の手綱を引けば私が走り君を運ぶ。どうだ、サンタらしいだろ?」
「確かにサンタっぽいが…お前の服の穴から伸びているこの手綱、一体何処に繋がっているんだ?」
「勿論、両乳首とクリトリスだ。さあ、引っ張ってくれ」
「断る。というかそもそもこの狭い部屋では走れないだろ」
「何を言ってるんだ。私は町内一周も辞さないつもりだぞ」
「却下」
「そうか…仕方ない、ケーキの女体盛りとシャンパンのワカメ酒で我慢しよう」
「普通にクリスマスを過ごすことは出来ないのか…」



>>419を見てこんな妄想が浮かんだ俺はどうみても異端
421すなおくーる×おとこくん <小ネタ>:2007/12/03(月) 01:10:55 ID:zwlo1azd
「ねぇねぇ、訓、十二月だね」
「ああ早いな」
まったくである。もうすぐ期末試験だってのに何にも勉強してないのであった。
中学と違って赤点とると補習あるし、部活の大会出れなかったり……仕方ないので優等生組に教えて貰っている訳だが。
「ねぇねぇ、訓、十二月といえば二十四日だよね」
「他の三十日全否定だな」
片手の参考書を読みふける訓に接近すること1pの一流ちゃん。
慣れとは恐ろしいものだ。この状況、中学生の訓なら顔がゆでタコだったろう。
「ふぅ〜」
「ひゃ!?何をするんだ、いちる!」
訓の耳に息を吹きかける一流ちゃん。流石に訓も飛び跳ねた。
「十二月二十四日は?」
「ジョン失地王の誕生日。マグナカルタを認めたことで評判が悪いが、自分の剣をエクスカリバーを呼ぶ兄の人気の後ろで割りを食ったとも言えなくもない」
物理の参考書を閉じながら答える訓。何者だ、お前。
しかしこの答えの決まり切った質問を明後日の方向に返した訓に一流ちゃんは不満だろう。
「そうだよね、近代建築家のブルーノ=タウトの命日だよね。でも日本の工芸教育には合わなかったね」
ボケ倒しました。
「っていうか、オマエラ日本語話せ。誰だソイツら」
俺は回答を終えた国語の問題用紙を訓に渡す。
「「………」」
二人は俺の回答を見て
「「はぁ〜……」」
「失礼だろ!!」
「五月蠅い〜……こっちは時差ボケなんだから」
俺の膝で眠るレコちゃんがケチをつける。
「……寝たいならちゃんと布団の中で寝たらどうですか?」
何故か機嫌の悪い楼里ちゃん。
「わかったわ。寝る。由羽も一緒に」
「由羽くんの勉強会なんだから、由羽くんが寝るなら私達も寝ましょう。性的な意味で」
「「なんでやねん」」
ハモる俺と訓。
「こっちは平和でいいわね……」
やつれた顔で部屋に入ってきたのは千紗ちゃんだった。
「どったの?撫子ちゃんと一緒にキッチンでおやつつくってたんじゃないの?」
「ええ、つくってましたよ、そりゃもう見事な羊羹でしたよ」
「当然です。お姉ちゃんの和菓子の腕は一級品ですから」
我がことのように胸を張る楼里ちゃん。
「途中で迩迂さんが来て“もうすぐクリスマスだからケーキつくる練習しよう!”と言うまでは……」
「ピギャァーー!!」
ろ、楼里ちゃん!?
「だ、駄目です!お姉ちゃんに和食以外つくらせたら駄目なんです!」
真に迫った肉親の告白に、その場の全員が凍り付く。
「く、訓、亜根脇先輩がついてるから大丈夫だよね?」
一流ちゃんの問いに、黙って首を振る訓。哀しいかな、俺達は先輩の作ったクッキーで川越しに死んだ爺ちゃんと再会した経験がある。
「ま、混ぜてはいけないものを混ぜてしまったんじゃないか?」
「待て、慌てるな由羽。マイナスとマイナスは積算すればプラスになる……」
積算って何?
「加算するとマイナスのままじゃないですか……」
楼里ちゃんがツッこみを入れる。……加算って何?
「ぎゃあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!!」
「あ……防波堤として残しておいた当馬が殉職した」
「憐さんが倒れました!もしかしたら水道水に有害な物質が入ってるかも知れません。煮沸してあるとは言え、手元のコーヒーは飲まないように!!」
慌てて走ってきた撫子ちゃん……どう考えてもキミのケーキ食べたからだ!っていうかケーキ作ってたのに何で水道水使う!?
「「いや、それ 撫子さん・お姉ちゃん のせい だからね・ですから 」」
なんで言いにくいことをこんなにサラッと!?
「あ、もしもし、茂部?うん私。今から一人、沈して欲しいんだけど……うん、偽装、偽装」
未だ死んでない、未だ当馬は死んでないから、レコちゃん!!
「く…ッ奥が深いですねケーキ!山籠もりです!山籠もりして、この守猶撫子!必ずやケーキを習得してみせます!」
「ケーキが作れないなら、女体ケーキにすればいいのにね。クリームと果物あればできるでしょ」
「いちる、一寸待て。それは今年のクリスマスの計画か?いや、答えは聞きたくない」
422名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 09:14:47 ID:+xuGu0aW
最近このスレ知って保管庫見たんだけど素直クールというより
ツンデレ、素直デレ、ヤンデレじゃねーのとか、もう素直クール
関係ない展開じゃね?と思うSSも多かった。

もしかして俺の素直クールの認識がおかしいのかと思ったので
確認したいんだけど、〜派みたいのがまとまった派閥図はない
ですか?
それとも作者が素直クールだと思えばそれでOKということ?
423名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 09:21:50 ID:M2sNdMMU
ないね。
定義は作者依存。荒れやすい話題だから
あまり定義についてここでは語らないでほしい。
424名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 11:04:31 ID:5mXcpBVf
ビジュアルもねえしな。あれば個人によるイメージの差異もそれなりに埋まるんだろうけど。
425名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 12:02:55 ID:n15rbVDZ
いきなりスレに登場して、
「このスレでやっているのは素直クールじゃない」
って、お前はどこの山岡士郎だよw

悪気は無いのかもしれないが、そんな否定は荒れる元なんだぜ?
426名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 12:44:00 ID:pfcO5TyR
まぁ、好み的な問題かね

ちなみに俺は男口調の素直クールが大好きなんだ
427名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 14:01:39 ID:iw8GC74O
>422
なんだと!では貴様は本当の素直クールがわかるとでも言うのか?!



まあ、違うってんであれば君が書いちゃえばいいじゃん
428名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 16:19:54 ID:5mXcpBVf
一週間待ってくれ。本当の(ry
429名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 02:19:03 ID:cklloDan
>>422
ツンデレが"ツン"と"デレ"で構成されてるんだから
素直クールも"素直"と"クール"があれば大体okだろう

>>426
俺も男口調好きだぜw
430名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 02:27:03 ID:RNMZX596
>>426
男口調はいいよな
女口調もいいもんだ

だが……


ボクっ娘であればどんな口調でも関係なく完全に十全に素敵に無敵なんだ!!
431名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 12:28:32 ID:s+e0E4B0
俺は無口クールが一番好きだ
432名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 13:44:07 ID:jnfKBxYD
来るクール拒まず
433名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 21:07:13 ID:fRYPKTVf
>>432

なんという名言
434名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 21:45:21 ID:d7j5oRzM
ねーよ
435名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 21:52:44 ID:qApLUfct
シンとミサキの続きは無いのかな?
436名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 21:57:18 ID:X1fFyiMs
ここは素直に
クールものは拒まず、で
437名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 00:35:48 ID:YkzYE2O0
こねーよ(泣
438名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 18:47:25 ID:CyFImj2N
携帯から書き殴った
今は反省している。すまない

「男よ、来るクール拒まずって言ってくれないか?」
「いきなりどうした?」
「ただ試したいだけだ、頼む」
「しょうがないな、来るクール拒まず」
「ふむ、これはなかなか…」
「?いつものことだが、どうしたんだ?」
「ああ、少し試していてな
次にクール者は拒まずって言ってくれないか?」
「?
クール者は拒まず、これでいいか?」
「あぁ、いいぞ。ふむ、どちらもいい。」
「思案顔になってどうした?」
「どちらが男に言われて心にくるか試してみたんだ
だが困った。どちらも男に言われるとあそこが濡れてくる」
「いきなりそういうこと言うなよ…」
「いいじゃないか、授業をサボって愛し合わないか?」
「…さっき拒まずって言ってしまったしな…
しょうがないか」
「あ、今日は十回くらいやりたいんだが…」
「それは拒むわ」
439名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 21:25:57 ID:XtYnl//B
だから、こねーってんだろう(怒



君よ、まだ見ぬ君よ、巨乳で素直クールな君よ。

どうやら、この人生ではまだ君に会えないようだ。

君を待っている。
ただただ待っている。
全裸で待っている。

いつか君に会えるその日まで。
440名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 03:20:30 ID:2bPZzVx8
残念ながら俺ポエムの需要はありませんよ
441名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 20:57:21 ID:xkP0wPW7
>>439
保管庫みればいいのに
>>440
スルーすればいいのに
442名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 08:04:08 ID:/PmIweYl
投下します。
443-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:05:17 ID:/PmIweYl
-上級生型ボクっ娘系素直クール-

「やあ、小鉄君。きみは相変わらず大きいね、名前に反して。また背が伸びたんじゃないか?」
 放課後、昇降口に向かう俺を待ち構えていたかのように、ヒノキ先輩が声を掛けてきた。
「……伸びてませんよ」
「ん? ボクの勘違いか。それは失礼」
 セリフとは裏腹に、ヒノキ先輩に悪びれた様子は微塵も感じられない。
 胸を張り、腰に手を当て、尊大な態度で見上げてきているこの人は、2学年上の先輩だ。こんな
偉そうな態度で、自分のことを『ボク』なんて言って、名前もヒノキなんて男っぽい響きだけど、
先輩はれっきとした女子生徒だ。
「先輩こそ小さいですね。名前に反して」
「まったくだよ。きみの身長を少し分けて欲しいものだ」
 言い返した俺の言葉を全く気にせず、先輩はいつものように平然とした口調を崩さない。

 先輩はデカい態度とは対照的に、その身体は非常に小さい。
 女子高生の平均身長を大きく下回るその背は、俺の胸より更に低い。そのため、先輩は首をほと
んど真上に向けているような状態で俺を見上げてくる。
 まあそれは、俺の背がヒノキ先輩とは逆に、男子高校生の平均身長を大きく上回ってしまってい
るせいもあるけど。
 しかしそれを踏まえても、ヒノキ先輩が2つ年上だとは到底思えない。それどころか、2つ下と
言われても納得出来るかどうか、微妙なところだ。
 なぜなら先輩がそう見えるのは、身長のせいだけではないから。
 子猫のようにぱっちりとした瞳を覆う、大きめの野暮ったい眼鏡。
 寝癖のように所々跳ねている、手ぐしで整えただけのような適当な髪型。
 袖から覗く手首は折れそうに細いし、プリーツスカートから伸びた脚もとても華奢だ。
 それらの要素が低い身長と相まって、よけい年下のような、はっきり言えば子供のような印象を
受けてしまう。
 おまけに口を開けば『ボク』だ。全然高校生らしくない。(更に言えば、女の子らしくもない)

 そんな年上に見えない年上のヒノキ先輩が、大きめの眼鏡の奥から俺を見上げながら、歩み寄っ
てくる。
「きみが朝見た時よりも大きくなっているような気がしてね。どれどれ」
 躊躇なく近寄り、正面から寄り添う。そして、先輩がまるで俺の身体で身長を計るかのように、
頭の上に水平に乗せた手を動かす。
 とすっと当てられたその小さな手は、俺の制服(ブレザーだ)のボタンよりも少し上に位置して
いた。
 それを確認すると、子猫のような瞳を満足そうに細めて見上げてくる。
「ん、いつもの位置だな。気のせいだったようだ。失礼した」
「……失礼だと思っているなら、顔を合わせる度に確認しないでください」
 自分の身長が人より高めだと言うのは自覚してるけど、だからといってからかわないで欲しい。
 わざと冷たく言い放って、廊下を遮るように仁王立ちしているヒノキ先輩の横をすり抜ける。
 仮にも先輩に対して取る態度ではないが、毎日毎日顔を合わせるたびに背をチェックされては、
そんな態度も取りたくなるものだ。
 人によっては、高い身長は羨ましいものなのかもしれない。でも俺にとってはコンプレックスの
1つだった。過ぎたるは及ばざるが如しと言うではないか。何事も普通が一番なのだ。
 しかし先輩は俺の非難をまるで気にせず、当然のように横に並んで歩き始める。
「そんなムッとした顔をするな。良い男が台無しだぞ?」
 先輩が足元にまとわりつく猫のような感じで俺の横を歩き、顔を覗き込むようにして見上げてく
る。
444-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:06:24 ID:/PmIweYl
「……先輩が俺にそういう顔をさせているんですよ」
 俺は力なく呟いた。またそんな事を言って俺をからかうんだから……。この人は、よほど自分の
言動に自覚が無いらしい。
 誤解が無い様に言っておくと、一応、俺はヒノキ先輩のことをとてもいい人だと思っている。同
じ図書委員の先輩として、とてもお世話になっているし、先輩もそれを鼻に掛けたり恩着せがまし
くするわけでもなく、実にさっぱりした性格で、接していてとても気持ちが良い。あまり気兼ねな
く接することが出来る先輩なんて、なかなか得がたい人脈だと思う。(気兼ねなくと言っても、も
ちろん、相手は先輩なので最低限の礼儀は守っているつもりだ)
 なんだけど、ときどきヘンなことを言い出したり俺をからかってきたりする所はちょっと困りも
のだ。
 俺は人知れずため息をついて下駄箱に向かった。
「先輩、それじゃあ」
 ぺこっと頭を下げて帰りの挨拶をし、昇降口の左端、1年生の下駄箱の場所に足を向けたところ
で先輩に呼び止められた。
「ああ、小鉄君。ちょっと待った」
「なんですか?」
「今日はボクと一緒に帰ろう」
「は?」
 一瞬、何と言われたのか分からなかった。
「は? じゃない。一緒に仲睦まじく帰宅しようではないか。と言ってるんだ」
「はあ」
「なんだその気の抜けた返事は」
 曖昧に返事をした俺を、先輩が心なしか悲しそうな表情で見上げてきた。
「ボクと一緒に帰るのは嫌なのか?」
「あ、いえ。そういうわけじゃないです。ちょっとびっくりしたというか……」
 毎日のように顔を合わせている先輩だけど、一緒に帰るなんて初めてだ。先輩の真意を計りか
ねて、思わず戸惑う。
「じゃあ、ボクと一緒に帰ってくれるんだな?」
 気のせいか、先輩が大きな眼鏡の奥の瞳を不安げに揺らしながら見上げてくる。
「え、ええ」
 それにつられるような形で、気が付けば頷いていた。
 俺の答えを確認すると、先輩は「良かった」と言って微笑み、寝癖のように跳ねた髪の毛をぴょ
こぴょこと楽しげに弾ませながら3年生の下駄箱の方へ向かって行った。

 * * * * *

 ヒノキ先輩と知り合ったのは半年ちょっと前。高校に入学して間もない頃、俺たちは同じ図書委
員として出会った。
 最初にヒノキ先輩を見た時は、てっきり自分と同じ新入生かと思った。
 だって、背が俺の胸より低いし、なんだか髪の毛が手ぐしで整えただけのようにくしゃくしゃで
所々寝癖みたいに跳ねてるし、飾り気のない大きめの眼鏡の奥で輝く瞳は、子猫のようにぱっちり
してるし、とにかく、年上の女の人にはとてもとても見えなかったのだ。
 制服のネクタイがグレーでなければ、絶対に先輩だと気付かなかっただろう。(ウチの学校はネ
クタイが紺、エンジ、グレーの3色あり、入学した年によって色が異なる。すなわち、ネクタイの
色を見れば学年が分かる仕組みというわけだ。ちなみに、自分たち1年生は紺、2年生はエンジだ)
 もし先輩が制服ではなく、シャツとジーンズのような男が着てもおかしくない服を着ていたら、
女性とすら認識出来なかったかも知れない。たぶん、小学生か中学生の男の子に見えただろう。
 なにしろ(これはきっと俺の心の中に一生しまっておくべきことだと思うが)ヒノキ先輩の第一
印象は、“ちんちくりん”だったのだから。
445-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:07:28 ID:/PmIweYl
 図書委員の最初の集会は、班を決めることだった。
 班といっても二人一組のペアみたいなもので、これから1年間、そのペアで図書委員の業務を行
うことになるらしい。
「そうは言っても、班は途中で変えるのも全然OKだから。まあカタチだけだけどね」とは図書委員
長のセリフだ。
 とにかくそういうわけで、班を作って行くことになった。
「2年生は2年生同士、1年生は3年生と班を組んでもらうから」
 皆の前に立つ図書委員長が、決まりごとと活動内容の説明をして行く。1年生が3年生と班を組
むのは、仕事を覚えるためらしい。
「一応、班はくじ引きで決めちゃうけど、さっきも言った通り、班はあんまり厳格なものじゃない
から、1年生も仕事に慣れたら1年生同士で組み直していいよ」
 丁寧に説明をしながら、あまり図書委員長には見えない短髪で精悍な印象の先輩が皆にくじを引
かせていく。
 俺が引いたくじは、黒い3本線が引かれているものだった。
 相手は誰だろう、親切な先輩だといいな。と、若干緊張して周りを見渡していると、どこからと
もなく声が掛けられた。
「そこの背の高い1年生。──そうそう、きみだきみだ。………どこを見ている。下だ」
 声は聞こえるものの姿が見えず、キョロキョロを辺りを見渡していた視線を慌てて下ろすと、こ
ちらを見上げた例のちんちくりん、もとい、小さな3年生が立っていた。その小さな手には、俺と
同じく黒い3本線が引かれたくじが握られている。
 大きな眼鏡の奥から、ぱっちりとした瞳で真っ直ぐこちらを見上げている彼女と、真っ向から目
が合った。その瞳は力強く、俺は気持ち身体を仰け反らせてしまった。
「ボクは松綱陽乃樹(まつつな ひのき)だ。きみは?」
「あ、えっと」
 ちっちゃい見た目とは裏腹に、力強い瞳と堂々とした口調で自己紹介をしてくる彼女に、一瞬気
圧されて口ごもってしまう。『ボク』という特殊な言い方には、見た目のせいか、あまり違和感を
覚えなかった。
「えっと、浜園小鉄(はまぞの こてつ)です」
 気を取り直して自己紹介を返すと、突然彼女が眉をひそめた。
「コテツ? きみはコテツというのか?」
「え? あ、はい。小鉄、ですが……」
「どういう字を書くんだ? 刀のほうの虎徹?」
「いえ、小さい鉄と書く小鉄です」
 訝しげな顔で名前を確認され、戸惑う。何がそんなに気になるのだろうか。
 俺の名前はちょっと珍しい、というか今時古風な名だから、それが気になったのだろうか?
 それともどこかで会ったことがあるとか? いやいや、こんなに印象の強い、一瞬で俺の脳内に
“ちんちくりん”というイメージが浮かぶような人を忘れるわけが無い。
 不思議に思って「俺の名前が何か?」と聞こうとしたところで、彼女が口を開いた。
「これは面白い。そんな大きな身体で小鉄とは」
「………」
 思わず、言葉を失った。
「ふむ。実に面白い」
 繰り返し言って、大きな眼鏡の奥の瞳を輝かせながら見上げている。
 ……な、なんだこの人は……。初対面でいきなり言うことがこれか?
 先輩とはいえ、あまりに明け透けというか遠慮が無い発言に絶句した。彼女はそんな状態の俺を
お構い無しに「これは墓場まで持っていけるネタだな」とか好き勝手に言っている。
「それにしても、きみは本当に背が高いな。身長はいくつなんだ?」
「……別に、いくつでもいいでしょう」
 あまりに直接的に聞かれたので、ムッとした口調になってしまった。
446-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:08:25 ID:/PmIweYl
「ああ、失礼。きみがあまりに大きいから、気になってしまった」
「……いえ、別に」
 彼女に悪びれた様子は全く感じられなかった。絶対失礼って思ってないよ、この人。
 俺の表情を見て察したのか、彼女が眉を僅かに下げる。
「そんな顔をしないでくれ。つい親近感を感じてしまってな」
 親近感?
「ボクも、ヒノキという大木のような名前なのに、こんなナリだからな。背丈と名前のギャップに
関しては、ボクも似たようなものだから、つい嬉しくなってしまった」
 そう言って、小さな先輩が両腕を少し広げて、自分の体を確かめるように見下ろす。
「ああ、なるほど……」
 確かに彼女はヒノキという名前から連想されるイメージとは180度違う。名前に反して身体は小さ
いということか。現象は俺とは逆だけど、境遇は同じだ。
「ボクが思うに、名は体を表すと言うが、あれは嘘だな」
「はあ」
「そうでなければ、世の中に犯罪者など生まれるはずが無い。そうだろう?」
 彼女がうんうんと独りで頷きながら、同意を求めるように言ってくる。
「……まあ、そうですね」
 極論だけど、まあ、言いたいことは分かった。
「分かってくれるか! ふむ、きみとは話が合いそうだ」
 同意すると、小さな彼女が笑顔で見上げてきた。
 その笑顔が、なんていうか……。その、凄く可愛らしくて、思わず固まってしまった。「にぱー」
という擬音がしっくりくるのような、屈託の無い笑顔だ。
 そう感じたのと同時に、先ほどの失礼な言葉の理由も分かって、俺は不快な気分がすっかり消え
去っていることに気付いた。
 彼女は笑顔のまま、小さな手を俺に差し出してくる。
「これから1年間よろしく頼むよ。小鉄君」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。松綱先輩」
 その手を握り返して、彼女の手の小ささに驚いた。俺の手にすっぽりと収まっているその手は、
とても小さくて、でもとても柔らかくて。その柔らかさに「あ、そうか。女の子の手なんだ」と改
めて気が付いた。
「ヒノキだ」
「え?」
 唐突に言われた言葉に、一瞬何のことか分からなかった。
「きみの小鉄という名前が気に入った。ボクはきみを名前で呼ぶことにする。だから、きみもボク
のことはヒノキと名前で呼んでくれ」
「え? えっと……」
 ……なんだかよく分からないが、一方的に宣言されてしまった。
「どうした? 小鉄君」
 握手をしたままの状態でこちらを見上げた彼女が催促してくる。俺は半ば忘我状態で口を開いた。
「あ、えっと、その……ヒノキ先輩?」
「クエスチョンマークは要らない」
「……ヒノキ先輩」
「ん。よろしい」
 偉そうに言って、ヒノキ先輩は眼鏡の奥の瞳を嬉しそうに細めた。

 これが、俺とヒノキ先輩の出会いだった。

447-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:09:26 ID:/PmIweYl
 図書委員会の仕事は、だいたい2週間に1度ぐらいの割り合いで当番が回ってくる。当番の日は
昼休みと放課後に、図書室で仕事をこなさなければならなかった。
 仕事と言っても、貸し出しの手続きと本の整理だけなので、拘束時間は長いものの作業自体は大
変なものではない。
 その仕事をヒノキ先輩と一緒にこなしていくうちに、彼女のことがだんだんと分かってきた。
 言動が少し突飛というかはっきりしてるというか、ちょっと変わった言葉遣いだけど、基本的に
とてもいい人だ。図書委員の仕事を懇切丁寧に教えてくれたし、勉強で分からないところを教えて
もらったこともある。(ヒノキ先輩は実は学年トップクラスの成績なのだ)
 口調も、いつも平坦というか平然とした調子を崩さないけど、冷たいわけじゃないし、どちらか
というと物怖じしない人懐っこい性格なんだと分かってきた。しかし誰にでも人懐っこいわけでは
なく、ちゃんと相手と自分の関係を踏まえたうえで、親しい友人には人懐っこく接するようだ。何
事にも臆さない性格に見えるが、分別はわきまえているらしい。
 例えばこんなことがあった。あれは、先輩と知り合って3ヶ月ぐらい経った時。確か夏休みを数
週間後に控えたある日の放課後のことだった。

「ふむ……」
 本の貸し借りを管理している帳簿を記入していると、横で考え込むような先輩の呟きが聞こえた。
 顔を上げると、先輩が思案顔でこちらを見つめている。
「どうしました?」
「いや、ちょっと気になることがあってな」
 言いながら、俺につつつと近寄ってくる。まるで内緒話をする時のように、隣に寄り添う。
「何ですか?」
 何か話でもあるのだろうか? 椅子ごと先輩に身体を向けるが、先輩は俺のそばにちょこんと佇
み、細いあごに手をあて、眉を寄せてこちらを見つめ続けたままだ。
「ヒノキ先輩?」
「んー……」
 先輩は相変わらずしかめっ面のまま、首をかしげる。
「どうかしたんですか?」
 それには答えず、先輩はしばし考え込んだ後、口を開いた。
「小鉄君。ちょっときみのヒザの上に座らせてもらえないか?」
「…………は?」
 ……突然、何を言い出すんだこの人は。
「何故か知らないが、急にヒザの上に座りたくなってきたんだ」
「……ネコでも乗り移ったんですか?」
 呆れて言うと、先輩は首を傾げたまま、大きな眼鏡ごしに目をしばたかせる。
「ボクは至ってまともだが?」
「突然、人のヒザの上に座りたいなんて、マトモな人の発言とは思えません」
「ふむ、駄目かね?」
「……………駄目です」
 悲しそうな顔をするので、つい承諾しそうになってしまった。俺は誤魔化すように付け足した。
「そんなに座りたいなら、水野先生に頼んだらどうです?」
448-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:10:25 ID:/PmIweYl
 水野先生とは図書委員の先生だ。おっとりとした先生で、いつもニコニコしてる穏やかな性格の
女性の国語教師だ。歳は今年で28らしい。俺のクラスの国語は水野先生の担当ではないので、詳し
くは知らないが、旦那さんを大変愛しているらしく、授業中にときどきノロケ話が始まるらしい。
 この時間ならばまだ隣の図書準備室に居るだろうし、水野先生なら先輩の唐突なお願いも「あら〜
いいわよ〜」とニコニコしながらOKしてくれそうだ。
 しかしヒノキ先輩は眉をしかめて口を開いた。
「何を言っているんだ、小鉄君。先生にそんなお願いをするなんて非常識ではないか」
「……俺にお願いするのは非常識じゃないんですか?」
「きみは後輩であり友人なのだから、そのようなお願いは非常識ではないだろう? しかし水野先
生は教師だ。教師と生徒は信頼関係で結ばれているべきだが、それが馴れ合いのような関係になっ
てしまってはよろしくない。教師は敬慕の対象ではあっても、友達感覚などといういい加減なもの
ではないぞ。それを履き違えてはいけないな」
 腰に手を当て、先輩がとうとうと並べたてた。
 何か知らないけど、どうやら叱られているようだ。微妙に納得がいかない。それは意見の内容に
ついてではない。先輩の言っていることは俺も同意だ。そうではなく、急にヘンなこと言い出した
先輩に言われたくなかった。
「小鉄君、分かったかね?」
「はあ、すみません」
「分かればよろしい」
 しかし、勢いに負けて謝ると、先輩は偉そうに頷いた。寝癖のように跳ねた髪の毛が、それに合
わせて揺れる。
「きみのそういう素直なところは長所だと思う。好感が持てるぞ」
 年下の子を褒めるように言いながら(実際年下だけど)、先輩が嬉しそうに俺の頭を撫でる。
「……ありがとうございます」
 椅子に座った自分よりも背が低い先輩に子供扱いされるのは、非常に奇妙な経験だった。
「で、だ。どうしてもヒザの上に座らせてくれないのか?」
 ひとしきり俺の頭を撫でた後、先輩がまた聞いてきた。
「……友達に頼んでくださいよ」
「きみも友人だろう?」
 そう思ってくれているのはありがたいのだけれど、そうではなくて。
「同性の友人に頼んでください。男友達に頼むことじゃないですよ」
「ふむ。そうか? まあ、残念だがきみが嫌なら仕方が無い」
 嫌、というわけではないけど、女性をヒザの上に乗せるなんて普通しないだろう。俺のヒザの上
に乗っかった先輩を想像すると、身長差もあってとてもおさまりが良さそうだけど。

 結局先輩は、同じクラスの友人に頼んでヒザの上に座らせてもらったらしい。
 「願いがかなったじゃないですか。どうでした?」と感想を聞くと、「イメージと違った。もっ
と幸せな気分になれるような気がしたんだが……。あと、後頭部が痛い」と良く分からないことを
言って、首を傾げた。

 そういえばこの日以降かも知れない。先輩が俺に頻繁に声を掛けてくるようになったのは。
 この日までは、先輩と俺の接点は2週間に1度程度回ってくる、図書委員の当番の時だけだった。

 しかし、ある日の休み時間に、ソレは起こった。夏休みが明けてまだ間もない、蒸し暑い午後の
休み時間だった。
449-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:11:25 ID:/PmIweYl
 教室内の喧噪が、何か異質な雰囲気のものに変化したことに気付き、友人とだべっていた口をつ
ぐんで周囲を見渡して、驚いた。
「やあ、小鉄君」
「ヒノキ先輩!?」
 見れば、ヒノキ先輩がまるで自分の教室のような足取りで俺の席に向かっている最中だった。
「どうしたんですか?」
 今日は図書委員会の当番の日じゃないはずだが……。何か変更があったのだろうか? 突然の訪
問に驚いている俺と同様に、周囲もいきなりの上級生の出現にざわついている。
「『どうしたんですか?』か。ふむ。確かにその通りだ」
 俺の席まで歩いてきた先輩が思案顔で呟いている。
 大き目の眼鏡の奥からぱっちりとした瞳をこちらへ向けて、先輩が続けた。
「ボクは、どうしたんだろうな?」
「………………大丈夫ですか?」
 わけがわからない。前からヘンな人だとは思っていたけど、暑さのせいか、とうとうおかしくなっ
てしまわれたか。
 思わず不気味そうな顔と可哀相な顔を足して2で割ったような表情する俺に、先輩が平然と答えた。
「いや、問題ない。ボクは正気だ」
 残念ながら、全然正気とは思えない。
「知ってますか? 酔っ払いは自分のことを酔っ払ってないと言うらしいですよ」
「失敬だな、きみは」
 先輩は眉をしかめ、言い募る。
「小鉄君の素直なところは長所だが、そういう素直さは短所だぞ」
「先輩がヘンなこと言うからですよ。で、どうしたんです? 図書委員の当番が変更にでもなった
んですか?」
 らちがあかないので、本題を切り出した。タダでさえ友人やクラスメイトに注目されているのだ。
これ以上、変なやり取りをして、衆目を集める真似は避けたかった。
「いや、そうじゃない」
 しかし、先輩はあっさり首を振った。
「あれ? じゃあ……?」
 図書委員の用事以外で、先輩が俺に何の用があるのだろうか?
 俺の疑問に、先輩はいつものように平坦な口調で答えた。
「ボクは小鉄君に会いに来たんだよ」
「……いや、ですから、会いに来た理由はなんです? 何か用があったんですよね?」
 先輩が俺に会いに来たのは知ってる。現にココにいるし。そうではなく、会いに来た理由が分か
らないから聞いてるのだ。いつもは先輩はこんなに察しが悪いわけじゃないのに、やはり今日の彼
女はどこかおかしい。
「理由は、実はボクにも分からないんだ」
「は?」
「突然、訳もなく急にきみに会いたくなってな? 居ても立ってもいられなくなって、こうしてき
みの教室まで馳せ参じたわけだ」
「はあ」
 ヒノキ先輩のよくわからない主張に、俺は曖昧に返事をした。
 先輩は大き目の眼鏡の奥から、こちらをじっと見つめている。思わず呆然とそれを見つめ返すと、
先輩が突然顔を逸らした。
「……小鉄君。そんなに見つめるな。何か落ち着かない」
「はあ、すみません」
 そっちが見つめてきたのに、と思いつつも、つい謝ってしまった。
 先輩は困惑しているような顔でそっぽを向きつつ、「おかしいな。なんだこの気分は?」などと
ぶつぶつ独り言を言っている。
 あまりに様子がおかしいので心配になって声を掛けようとしたところで、予鈴がなった。
「む。授業が始まってしまうな。それじゃ小鉄君、来週の水曜は委員の日だからな。忘れないよう
に」
「ええ、わかりました」
 先輩は早口で言うと、途中、何度も俺の方を振り返りつつ教室から出て行った。
 直後に、「ナニ? あのちっこい人」「先輩なん?」「何の用だったんだ?」などと友人から飛
んだ質問に俺は、
「前からヘンな先輩だったけど、どうも暑さにやられたみたいだ」
 と答えた。
450-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:12:28 ID:/PmIweYl
 その日から、だいたい1週間に1度の頻度で先輩が休み時間に俺の教室に来るようになった。
「先輩、何か用事ですか?」と聞くと、「いや、きみの顔が見たくなっただけだ」と平然と言って
見つめてくる。
 で、俺が見つめ返すと、慌てたように顔を逸らして「小鉄君はボクを見るな」など偉そうに命令
し「きみは級友とおしゃべりしてるんだ。ボクはそれを見てるから」などとわけが分からない事を
言ってくる。
 当然、上級生がじっと見てる前で普通に雑談なんて出来るわけがなく、最初は友人共々戸惑うこ
としか出来なかった。(先輩が去った後に友人から「あのちっこい先輩をなんとかしろ」と俺が文
句を言われた)だが、先輩の教室訪問が週1から週2となり、気が付けばほぼ毎日になっていた頃
には、クラスメイトもすっかり慣れ、普通に雑談できるようになっていた。
 その頃には先輩も「ボクを見るな」など言わなくなり、むしろ、俺の机の前に陣取って「こっち
を見ろ」と言って来る始末だった。

 そんな特異な先輩に、俺の友人たちよりも女子たちの方が興味を惹かれたらしく、いつの間にか、
「ひのちゃん、今日来る?」などとあだ名で呼んで俺に聞いてきたり、「あ、ひのりん来た。ねえ
ねえ、ひのりん」「む、ちょっと待て。小鉄君の顔を拝んでからにしてくれ」などとやり取りを始
めて、すっかりクラスに馴染んでいるようだった。

 先輩の訪問が日常的になった頃、突然、クラスの女子が聞いてきた。
「ねえ、ひのりんと浜園君って、付き合ってるんだよね?」
 途端に、ざぁッ! と教室中の視線が集中するのを感じた。「ついに聞いた!」とか「GJ!」と
か「遅いよ、聞くの!」など周囲から囁きが聞こえる。
「いやいやいや。違うよ」
 先に答えたのは俺の方だった。
「ヒノキ先輩とは委員会で同じ班なだけで。ねえ?」
 俺の机の正面に陣取った先輩に視線を向けると、彼女は細い顎に手を当てて首を傾げていた。
 しばし考え込むように首を傾げたのち、口を開いた。
「付き合っている、とは、つまり恋人ということか?」
 先輩が首を傾げたまま、質問した女子に顔を向ける。
「うん、そう。違うの?」
 意外そうに俺とヒノキ先輩を交互に見つめるクラスメイトに、先輩がきっぱりと答えた。
「違うな。ボクと小鉄君は友人であって、恋人ではない」
「なーんだ……」
 がっかりしたようにクラスメイトが言う。同時に、周囲からも「つまらねえ」とか「誰だよ、絶
対付き合ってるって言ったヤツ」とか「俺、付き合ってる方に賭けちゃったよ」などと言っている。
……賭けって何だ。
「ひのりんも浜園君も、いっつも一緒にいるから、付き合ってるのかと思ったよ」
 全然、そんなつもりはなかったが、なるほど。言われてみれば、俺とヒノキ先輩はクラスどころ
か学年も違うのに毎日顔を合わせている。そう勘違いされてもおかしくない。
 ふと気になって先輩の方に視線を送ると、先輩は眉をしかめて首を傾げていた。小さな声で「恋人」
と呟いている。
 ……あー、ヘンな誤解をさせてしまって、気を悪くさせてしまったか。
「変に誤解されちゃいましたね」
 先輩に苦笑して言うと、「ん? ああ、そうだな」とはっきりしない様子で答え、また眉をしか
めて首を傾げる体勢に戻った。
 その仕草は、不快になっているというよりも、考え込んでいように見えたのは、俺の気のせいだ
ろうか。

 それから間もなく、ヒノキ先輩は休み時間に教室に来るだけでは飽き足らず、朝の昇降口でも俺
を待ち構えるようになった。
 そして、「やあ、おはよう小鉄君。きみは相変らず背が高いね」と言って、俺の身体で自分の身
長を計るように頭の上に乗せた手を動かしてくる。
 その小さな手がいつもの位置にあるのを確認すると、満足げに「にぱー」と微笑んで、「それじゃ
小鉄君。また休み時間に会おう」と言って、寝癖のように跳ねた髪の毛をぴょこぴょこと楽しげに
弾ませながら3年生の教室の方へ消えて行くのが日課になった。

 * * * * *
451-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:13:29 ID:/PmIweYl
 そういうわけで、俺とヒノキ先輩は毎日顔を合わせるのが当たり前の関係になっていた。
 だが、突然「一緒に帰ろう」とはどういうことだろうか?
 ……まあ先輩のことだし、単なる思い付きだろう。
 そんなことを考えながら昇降口を出た所で待っていると、先輩が小走りに寄ってきた。
「待たせたね。小鉄君」
「いえ」
「よし、じゃあ、一緒に帰るぞ」
「………」
 気のせいか、ヒノキ先輩が気合いを入れるかのように拳を握っている。なんとなく口をつぐんで
いると、先輩が不安そうな顔で見上げてきた。
「どうした? やっぱりボクと一緒に帰るのは不満なのか?」
「ああ、いえ。その……先輩の家はどっちの方向なんですか? 俺は商店街の北の方なんですが」
 誤魔化すように言うと、先輩は眼鏡の奥から真直ぐ見上げて答えた。
「私は商店街の東だ。途中まで一緒だな」
「ですね。商店街のアーケードに入る前までですかね」
「うん、そのくらいだな」
 隣を歩く小さな先輩の小さな歩幅に合わせて、俺はいつもよりも随分とゆっくりした足取りで校
門へ向かって行った。

「最近、めっきり寒くなってきたな」
 校門を出て、学校からの帰り道。俺の隣にいる先輩が下から話しかけてきた。
「…………そうですね」
「ん? なんだその間は?」
「いえ、寒くなってきたのは同意なんですが。……なんで俺の腕を抱えてるんですか?」
 先輩は、寄りかかるようにして俺の腕を抱えている。ちなみに何の断りもなかった。
 しかし先輩はいつものようにマイペースでしらっと答える。
「ああ、寒くてな」
「……なんで寒いからって俺の腕を抱えるんですか……」
 この人は寒いからといって、勝手に人の腕を抱くのか。人懐っこい人だとは思っていたけど、こ
こまで奔放だったとは。
 思わず呆れた声を出すと、先輩が真っ直ぐ見上げてきた。
「きみに掴まっているとな、何故か身体が内部から火照ってくるんだ」
 そう言って、「きみは実は身体から遠赤外線でも放射しているんじゃないかね?」と不思議そう
に眉をひそめる。
 見れば、こちらを見上げた先輩の頬が、熱を持ったようにうっすらと赤くなっていた。
「遠赤外線って……。そんなわけないでしょう」
「ふむ。そうか」
 先輩は独りごちるように頷くと、より強く腕を抱きしめて来た。
「うわっ……と」
 不意に引っ張られるように腕を抱かれ、バランスを崩してたたらを踏んでしまう。
「先輩、急に強くしがみつかないでくださいよ」
 ただでさえ、先輩の歩幅に合わせてゆっくり歩いているのだ。足を小出しに歩いている時にそん
な急に引っ張られてはたまらない。腕を抱えられた状態で歩くのがこれほど難しいとは知らなかった。
「ん。これはいいな。身体が温まる」
 しかし先輩はまるで気にせず、満足げに言いながら俺の腕に小さな身体をこすり付けるようにし
て抱いてくる。……ホントにマイペースな人だ。
「人を暖房器具代わりにしないでください」
「良いじゃないか。温まるし、それになんだかとても幸せな気分だ」
 呆れる俺をそのままに、先輩がうっとりと目を細める。
 その顔が本当に幸せそうなので、なんとなく言葉に詰まってしまった。
 いいともやめてくれとも言えず、腕に感じる先輩の体温がほこほこと温かくて心地よいのもあっ
て、まあいいかと半ば諦めの境地で、結局そのまま歩き続けた。
452-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:14:37 ID:/PmIweYl
 商店街のアーケードの前、そこにある大きな交差点に差し掛かり、俺たちは足を止めた。
「じゃあ、俺はこっちですので」
 自分の家の方向を指して、未だ腕にしがみついている先輩を見下ろす。
「うん。じゃあ小鉄君。また明日」
 先輩は、さっきよりもほんの少しだけ赤くした顔で見上げてくる。
「ええ、それじゃあ」
「うん」
 帰りの挨拶をして、自分の家の方向に足を向けようとするが、ヒノキ先輩はまだ俺の腕を抱いた
ままだ。
「………それじゃあ、先輩。さようなら」
「うん」
 念を押すように言っても、先輩は抱いた腕を離さない。
「……………先輩」
「ん? どうした」
 溜め息をつくと、ヒノキ先輩は不思議そうに首を傾げる。
「いや、腕、放して下さい」
「ん? ああ、すまない。ボクとしたことが。忘れていた」
 珍しく慌てたように口を開き、「いや、きみの腕が温かくてな? つい馴染んでしまった」と言
い訳するように言う。
 どうやら本当に忘れていたようだ。そのマイペースさに、思わず苦笑した。が……。
「……む。おかしいな」
「どうしました?」
 見下ろすと、腕を抱いたまま、先輩が眉をひそめている。
「いや、腕が放れない」
「は?」
「放そうと思ってはいるんだが、言うことを聞かない」
「いやいやいや」
 何を言ってるんですか。思わず噴き出しそうになったが、当の先輩は本当に困惑したような表情
を浮かべている。
「むう。どうなってるんだ。小鉄君、きみの腕は磁石にでもなっているのか?」
「俺のせいですか」
「なんだこれは。一向に放れないぞ」
「いやいやいやいや」

 結局、そのまま20分ほど経って、やっと解放された。
「いや、すまないな。小鉄君。ボクの腕が迷惑をかけた」
 すまなそうに眉を下げ、先輩が後ずさる。
「くっ、これ以上きみに近付くと、また抱き締めてしまいそうだ」
 そう言って、自らの腕を押えるように抱いている。
「はあ。それじゃあ、先輩」
「うん。また明日、学校で会おう」
 先輩が身体を引きずるようにして歩いて行く。少し見送って、俺も自宅に足を向けて歩き出した。
453-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:15:31 ID:/PmIweYl
 俺が先輩の突飛な行動の意味に気付いたのは、自宅に帰ってからだった。
 ──ああ、そうか。あれは。腕が放れないと言っていた、あれは……。
「……邪気眼、か」
 変わった先輩だと思ってたけど、そうかあ、邪気眼かあ……。
『くっ! 俺の腕が……! くそっ! 言うことを聞け!』という、アレかあ……。
「まあ悪い人じゃないし、生暖かく見守ろう」
 俺は思わず遠い目で呟いた。

 そんな俺の考えが、全くの検討外れだったと知るのは、翌日の休み時間になってからだった。

 * * * * *

「やあ、小鉄君」
「あれ? 先輩、今日は早いですね」
 1時間目の休み時間にヒノキ先輩が教室にやってきた。教室に来る時は、だいたい午後の休み時
間が多かったので、イレギュラーだと言える。
 先輩は早速、「あー。ひのりんだー」「ひのちゃんこっちこっち」と女子に捕まっている。
「待て待て。ボクは小鉄君に用があるんだ」
 先輩は慌てて女子を制して、解放された。
 クラスメイトの女子に絡まれているヒノキ先輩を見ると、彼女の小柄さが際立つ。2年も年上な
のに、まるで女子高生に囲まれている中学生(しかも1年生か2年生)にしか見えない。
「ふう、やれやれ」
 ほうほうの体で逃げ出したかのようにため息をついて、俺の席の横に佇む。
 先輩は、じっと挑むような視線でこちらを見つめ、意を決したように口を開いた。
「小鉄君」
「はい?」
「ボクは──」
454-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:16:30 ID:/PmIweYl
 * * * * *

 ボクが彼を始めて見たのは、入学式の日だった。
 初々しい新入生の列から、頭1つ飛び出した彼が、妙に印象に残った。
 それから2週間ほど後、図書委員の最初の集会で、再び彼を見つけた。間近で見た彼は、自分の
記憶の中よりも更に大きく見えた。
 そんな彼と同じ委員になって、同じ班にまでなれたのは、今考えるととても僥倖だったのだろう。
当時のボクはそんなことには気付かなかったが、自分の気持ちに気付いた今となっては、本当にそ
う思う。
 最初は、「大きい1年生だな。ちょっとふけ顔だし、本当に1年生か? 2つ下どころか、2つ
上だと言われても釈然としないぞ」などと思っていた。正直に言うと、同じ人間とは思えなかった。
 ボクはよく望美(小学校からの友人だ)に「あんたは何かを言う前に、3秒数えてから口を開き
なさい」と言われているので、さすがにこれは口にしなかったが、「彼が噂のUMAじゃないのか?
もしくはピクルじゃないのか?」とすら思っていた。
 しかし、彼の名前を聞いて、急に親近感が沸いた。
「これは面白い。そんな大きな身体で小鉄とは」
 ボクの言葉に、彼はムッとしたようだった。 
 しかし、理由を説明すると納得してくれたようだ。それどころか、「名は体を表す」に対するボ
ク考えに同意してくれた。ボクは無性に嬉しくなった。
 彼──小鉄君とボクは、そうして同じ委員の班となった。

 小鉄君は、その豪快な姿に似合わず、とても細やかな男の子だった。
 細かいと言っても神経質なわけでも計算高いわけでもなく、よく気が付く、細かな気配りが出来
るという意味だ。
 ボクの言うこともよく聞いてくれるし、最近の若者(ボクも若者だが)にありがちな、先生との
馴れ馴れしい関係を疑問に思っていなかったようなので、それを諭すと素直に謝ってくれた。
 大きな身体なのに、気が利いて、自分の非はきちんと認め、望美を始めとする友人から「あんた
の言うことは突飛がなさすぎる」とよく言われるボクの話も根気よく聞いてくれる小鉄君が、まる
で心優しいグレートピレネー犬のように思えてきて、ボクは委員の当番で彼に会うのが楽しみになっ
ていた。

 今にして思えば、小鉄君に対する自分の感情に違和感を覚えたのは、あの時が最初だったのだろ
う。
 それは、高校生活最後の夏休みが近付いてきた、ある日の放課後のことだ。
455-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:17:32 ID:/PmIweYl
 大きな身体で図書室の小さな椅子にせせこましく腰をかけて、帳簿を記入している小鉄君の横顔
を眺めていたら、無性に膝の上に座りたくなってきた。そうすることで、とても幸せな気分になれ
る気がしたからだ。
 しかし、残念ながら彼には断れてしまった。
 仕方ないので翌日、望美に頼んだら不承不承受け入れてもらえた。智子(彼女も友人の1人だ)
が「はいはーい! 私の膝の上に乗っていいよ!」と、いつものハイテンションで膝の上をぽん
ぽん叩いていたが、遠慮させてもらった。
 彼女は一度くっつくと「ああ〜、なんでひののんはこんなに可愛いの〜っ!」と中々離しても
らえないからだ。彼女はどうもボクをぬいぐるみか何かと勘違いしている節がある。とても良い
友人なのだが、そういうところは困りものだ。
 涙を流している智子を横目に、望美の膝の上に座らせてもらったが、期待していたような満足
感は得られなかった。
 しかし、頭の後ろにある大きな膨らみが、存外に心地良かった。望美はボクと違って胸が大き
いし、背も高い。
「望美の胸は本当に大きいな。確か89だったか? ふむ、心地良い」
 大きな胸の感触に感動し、感想を述べたところ、
「おおおおおおっきい声で言うな!」
 と真っ赤な顔でぺしーんと後頭部をはたかれた。さすがは女子バレー部部長。実にスナップが
利いている。おかげでボクの眼鏡が飛びそうになった。
 眼鏡のズレを直し、後頭部をさすりながら後ろを振り返ると、教室が「うおおおお……!」とい
う歓声に包まれた。
「89だと……!」
「メモメモ……っと」
「おいおい、ランキング変更されるぞ、これは……」
 など男子が騒然としている。
 そんな中、「ひののん! 私! 私、82だよ! 望美ちゃんほどじゃないけど、ほら!」と
智子が胸を寄せるようにしつつも、膝をぽんぽんぽんぽん叩いていた。
 またも教室に歓声が上がった。
「このどアホ!」と望美が真っ赤な顔のまま、智子の脳天にチョップをお見舞いしていた。


 夏休み中は、受験勉強に忙しかった。
 でも、小鉄君の事を思い出さない日はなかった。

「あーあ。高校最後の夏休みも、もうすぐ終わりかあ」
 シャーペンをクルクル回しながら智子が漏らした。
「ボクは、早く終わって欲しいな」
「えー! どうしてーー!?」
456-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:18:37 ID:/PmIweYl
 ボクの言葉が相当意外だったらしい。智子がテーブルから乗り出すようにして驚いている。
「しばらく小鉄君の顔を見てないからね。早く会いたい」
「……なッ!!!」
「ほう」
 理由を言った途端に、智子と望美が驚いたような声をあげた。ちなみに「……なッ!!!」が
智子で、「ほう」が望美だ。
「ちょ、ちょちょちょちょ! ちょっと! ひののん!」
「なに?」
「こっ、こて、こてこてっ、こてっちゃん! じゃなくて!」
「小鉄君?」
「そうっ、それ! なに!? なんで!? 会いたいって……。ええええええ!!!」
「あんたはちょっと落ち着きなさい」
 両手をほっぺたに当てて、ムンクの叫びのようになっている智子に、望美がいつものように冷
静に突っ込んだ。
 望美は楽しそうな顔でボクに向き直り、
「陽乃樹。小鉄君って、同じ委員の子だっけ?」
「うん」
「そっか。会いたいんだ?」
「うん。どうも小鉄君の大きな姿が見えないと、落ち着かなくてね」
 そう言うと、望美は優しい笑顔で「そっか、そっか」と頷いた。
「ついに陽乃樹にもそういう人が出来たかあ。あたしも智子も協力するよ」
「いーーやーーーー!! ひののんは私のなのーーーーーー!!!」
 絶叫しながら智子がボクに抱きついてきた。首を抱かれ、頭をくしゃくしゃと撫で回されて目が
回りそうになった。
「こら! せっかく陽乃樹にも好「いやー!」が出来たんだから、放しなさい!」
 望美のセリフに智子が強引にかぶせたので、ボクの耳には届かなかったが、ボクはそれどころで
はなかった。智子にもみくちゃにされ、望美がボクを引っ張り、暑さと苦しさに気が遠くなりそう
になっていたからだ。


 夏休み明けの、最初の図書委員の当番の日は、丸々2週間後だった。
 しかし、どうにも我慢出来ず、午後になってから小鉄君の教室に行くことにした。

「やあ、小鉄君」
「ヒノキ先輩!?」
 突然のボクの訪問に、小鉄君は驚いているようだった。
 久しぶりに見る小鉄君は、やっぱり大きくて、その姿を見ているとボクは何故か心が温かくなっ
ていくのを感じた。
 それが心地良くて、じっと見つめていると、小鉄君もボクを見つめてきた。
 途端に、心臓が破裂しそうになった。思わず彼から視線を外す。
 小鉄君を見たいのに、小鉄君と目が合うと恐ろしく落ち着かない気分になって、非常にもどかしい。
「……小鉄君。そんなに見つめるな。何か落ち着かない」
「はあ、すみません」
 小鉄君の声が横からボクの耳に届く。それだけで、さらに落ち着かない気分になっていった。
 でもそれは、決して不快な気分ではなかった。むしろ、なんというか。非常に形容し難いが、と
にかく、落ち着かなくも心地良い気分だった。
 初めて感じた気持ちに、この時のボクは大いに戸惑い、小鉄君の視線に慣れるまで、結構時間が
かかった。

 最初のうちは、1週間に1度程度、発作的に小鉄君の顔を見たくなり、その度に彼の教室にお邪
魔した。しかし、だんだんとその間隔が縮まり、それがほぼ毎日になるまでたいして時間はかから
なかった。
457-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:19:45 ID:/PmIweYl
「ちょっと小鉄君の所に行ってくる」
「はいよ」
 休み時間になり、ボクが望美と智子にそう声を掛ける度に、望美が慣れた手付きで智子を羽交い
締めにした。
「やーー! お願い、望美ちゃん、放してぇ!」
「だーめ。あんた、邪魔しに行くでしょ」
 何故か、智子はボクが小鉄君に会いに行くのを嫌がっていた。
「ほら、陽乃樹。行ってきな」
「うん。行ってくる」
「やーーーー! ひののーーん! カムバーーーーック!」
 いつもの悲壮な智子の声を背中に、ボクは小鉄君の教室へ足を進めた。
 智子が嫌がっているのが残念だけど、ボクはそれでも小鉄君に会いたいのだ。

「ねえ、ひのりんと浜園君って、付き合ってるんだよね?」
 小鉄君の教室で聞かれたその言葉の意味を、始めは分からなかった。
「付き合っている、とは、つまり恋人ということか?」
 その言葉の意味するところを思い当たり、尋ねると、「うん、そう。違うの?」と意外そうな声
で聞かれた。
「違うな。ボクと小鉄君は友人であって、恋人ではない」
 小鉄君は後輩であり、友人だ。つまり恋人ではない。それは事実だ。
 しかし、「恋人」と口にした瞬間に、ボクの心は大きくざわついた。
 恋人、それはつまり、お互いに恋愛感情に基いた好意を寄せている関係の事だろう。ボクにはそ
ういう経験はないが、そういう関係があることは知っている。
「恋人」
 そう呟いただけで、心臓が大きく脈をうつのを感じた。

 その日以降、ボクは今までにも増して、小鉄君の顔が見たくなって、朝、昇降口で小鉄君を待つ
ようになった。
 近くで見ると、彼は本当に大きく、ボクは彼と自分の身長差が知りたくなった。
 小鉄君のブレザーの上のボタンよりも少し上あたりが、ボクの身長だと分かった。それが分かっ
たら、今度はそれを毎日確認したくなった。

 そして、秋が深まり、そろそろマフラーが恋しくなってきた今日この頃。
「陽乃樹」
「ん?」
 ボクの首に後ろから抱きついている智子が、ゴロゴロと猫のように喉を鳴らしている横で、望美
が神妙な顔で語りかけてきた。
「あんた、例の小鉄君とはどうなってるの?」
 途端に、頭の後ろで智子が「シャーーッ!」とケンカ中の猫のような声をあげて望美を威嚇した。
「どうって?」
 望美の質問の意味が分からず聞き返すと、望美はため息をついた。
「そんなの、進展してるのかどうかを聞いてるに決まってるでしょ」
「このワシの目が黒い内は、進展なんてさせんわ!」
「あんたは黙ってなさい」
 何故か野太い声で言う智子に望美はぴしゃりと言い放ち、催促するかのようにボクを見つめてきた。
「今日も、小鉄君のボタンよりも少し上がボクの身長だったよ。小鉄君もボクも、進展無し」
「そういう事じゃないでしょ……」
 望美は呆れたような声を出した。
「?」
 ボクはその理由が分からず、彼女を見上げると、望美がずいっと迫って口を開いた。
458-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:20:35 ID:/PmIweYl
「大して進展してないのは、今のあんたの反応でよーく分かった。陽乃樹、小鉄君を誘って、一緒
に帰るとかしてみたら?」
 望美のセリフに、頭の後ろで「ヒッ」と息を飲んだような声が聞こえた。
「ななななな何を言ってるの望美ちゃん! あんな男と一緒に帰ったら私のひののんが拉致られて
襲われてヘンなクスリ打たれてガッシ!ボカ!でスイーツになっちゃう!」
「……あんたは黙ってなさい」
 なにやら騒ぐ声が聞こえるが、ボクの耳には入らなかった。
『小鉄君と一緒に帰る』
 その言葉でボクの頭が一杯になっていたからだ。
 こんなに胸踊る行動に、何故気付かなかったのか。
 ボクは放課後がとても待ち遠しくなった。


「最近、めっきり寒くなってきたな」
 気温が低いというよりも、空気が冷たいと感じる季節になってきた。でもボクは現在、身も心も
とても温かだった。なぜなら──
「…………そうですね」
「ん? なんだその間は?」
「いえ、寒くなってきたのは同意なんですが。……なんで俺の腕を抱えてるんですか?」
 そう、小鉄君の腕を抱いているからだ。
 帰り際、智子を卍固めで抑えている望美が「思いきって手とか繋いじゃえ」と言っていた。それ
を思い出して小鉄君の大きな手を見ていたら、なんだか腕ごと抱えたらもっと幸せそうな気分にな
れる気がして、早速実行した。
 結果は、想像よりもずっと良いものだった。彼の腕を抱くと、身体の奥からぽかぽかしてきて、
顔が火照るくらい温かかった。(まるで遠赤外線で炙られているかのような熱を感じて、小鉄君に
そう尋ねたが否定された)
 しかも温かいだけでなく、心が溶けそうに幸せな気分になった。いつもならば10分はかかる道
のりも、その時は幸せすぎてほんの一瞬で着いてしまったような錯覚を覚えた。
 小鉄君の腕の温かさと心地良さも不可解だったが、それよりも私の腕が言うことを聞かなくなっ
たことはもっと不可解だった。

「……む。おかしいな」
「どうしました?」
 真上から怪訝そうな小鉄君の声が聞こえた。
「いや、腕が放れない」
「は?」
 放そうとしているのに、一向に腕が言うことを聞かない。それどころか、より腕に力が入って抱
き締めてしまいそうになる。
 小鉄君とはここで別れるのだから、腕を放さないといけないのに、ボクの腕はまるで磁石にくっ
ついたクリップのように、頑なに密着したままだ。
 やっと放れた時は、20分も経過していた。
 しかし、ともすればまた小鉄君の腕を抱き締めそうになって、ボクは自分の腕を押えるように、
きつく腕を抱いたまま小鉄君と別れた。
459-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:21:35 ID:/PmIweYl
 自宅に帰ってからも、ボクの腕には小鉄君の感触がずっと残ったままになっていて、胸が激しく
ざわめいた。
 小鉄君に会いたい。小鉄君と話したい。小鉄君にくっつきたい。
 彼の連絡先を聞いていなかったことを、これほど後悔したことはなかった。

 何故ボクはこんなにも小鉄君に会いたいのだろうか。
 夜中、ベッドの中でそれをずっと考えていた。
 腕は未だに小鉄君の感触が残っていて、胸の前で腕を抱くと、なんだか落ち着かなくなってきた。
自然と息が荒くなり、身体の奥がじんじんと熱を持っていくのを感じた。
 今すぐ、小鉄君に抱きつきたい衝動に駆られ、腕をきつく抱いて目を瞑った。
「小鉄君」
 彼の名前を呟くと、目蓋の裏に、いつものように大きな小鉄君が浮かんだ。想像の中で、小鉄君
に抱きつく。小鉄君も私を抱き締めてくれた。
 小鉄君の大きな腕がボクを抱き締め、身体の奥がどんどん熱くなっていく。まるで、身体が小鉄
君と溶け合うような一体感を感じ始めた。
 それは、大きな力でボクの気持ちをどんどんどこか知らない場所に向かって高めて行く。その大
きな衝動に、ボクは少し怖くなったが、止めようとは思わなかった。
「小鉄君、小鉄君、ボク、ボクは……」
 頭のどこかで、引き返せる臨界点を越えたのを感じた。途端に、ボクの身体の奥から沸き上がる
大きな力が、これまでとは比べ物にならないくらいの激しさで、ボクの身体を駆け巡った。
「……ッ! ……んッ! ……ふぅッ!」
 正体不明の虚脱感に見舞われ、ボクは身体を2度3度震わせた。
「……はっ、あっ、はあ……」
 気が付けば身体は汗ばみ、無意識の内に噛んでいたらしい布団から口を放した。
 まるでマラソンの後のように息が荒くなり、身体が弛緩して言うことをきかない。でも、それは
決して不快な気分ではなかった。むしろ心地良いくらいだった。
 汗で濡れた肌が少し気持ち悪かったけど、心地良い痺れもあって、ボクはすぅっと眠りに落ちて
いった。


 翌朝、ボクは汗だくで目が覚めた。
 よく覚えていないけど、夢の中でも眠る前と同じ感覚を味わっていたようだ。
 身体が甘い痺れに支配され、ボクはぼーっと天井を見つめて、夢の内容に漫然と気を向けていた。
夢の内容にはすでにもやがかかり、思い出すことは出来なかったけど、1つだけ思い出すことが出
来た。それは、とても大事なことだった。
「小鉄君。好き」
 ボクは、夢の中で何度もそう口にしていた気がする。
「ボクは小鉄君が……好き?」
 口の中で呟いた途端、頭の中で、ごちゃごちゃだったパズルが一気に組み上がって行くのを感じた。
 今こそ分かった。ボクは、
「小鉄君が、好き」
 足下しか見えないような深い霧が、ぱあっと晴れたかのような気分になって、ボクはベッドを飛
び出した。

 そのまま制服に着替えて学校に行こうとしたが、あまりに汗だくだったのでシャワーを浴びるこ
とにした。
 パジャマは汗で湿り、特に下着はひどく濡れていた。よほど汗をかいたに違いない。用を成さな
くなったパジャマと下着を脱いで洗濯カゴに入れ、熱いシャワーを浴びた。
460-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:22:35 ID:/PmIweYl
 起きた時間はいつもよりも少し早かったが、シャワー浴びたので学校に着いた時間はいつもより
遅くなってしまった。
 小鉄君は既に登校しているらしい。出来れば朝一番に伝えたかったが、仕方がない。一瞬、シャ
ワーを浴びて時間が遅くなったことを後悔したが、激しく寝汗をかいた状態で会うのはさすがに躊
躇われた。
 1時間目の休み時間に会いに行こう。そして自分の気持ちを伝えるんだ。
 ボクは逸る気持ちを抑えて自分の教室に向かった。

 * * * * *

「やあ、小鉄君」
「あれ? 先輩、今日は早いですね」
 1時間目の休み時間になった瞬間に、ボクは自分の教室を出て小鉄君の教室に向かった。
 小鉄君は机に座ったままボクに顔を向けた。昨日会ったばかりなのに、何故かとても久しぶりに
会うかのように感じた。
 小鉄君のクラスの女の子たちがいつものようにボクを囲んでくる。
「待て待て。ボクは小鉄君に用があるんだ」
 包囲網をくぐり抜け、小鉄君の机の横に立った。
 小鉄君は、「どうしたんですか?」と言いたげな顔でボクを見つめてくる。
 ボクは、やっと自分の思いを彼に伝えられる喜びを感じながら、口を開いた。
「小鉄君」
「はい?」
「ボクは──」
461-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:23:38 ID:/PmIweYl
 * * * * *

「ボクは今、とても晴れやかな気分だ。何故かって? 決まっている。やっと自分の気持ちが分かっ
たんだ。ここ数カ月の不可解な気分の正体が今朝、正確には6時45分2秒に、やっと分かったの
だよ。いいか? 小鉄君」
 背の高いの彼の前に立つ陽乃樹のセリフが、教室中に響いて、廊下にまで聞こえている。
 迷いのない、真直ぐな声だ。陽乃樹は彼を見据え、思いをぶつけた。
「ボクは、きみが好きだ」
 その瞬間、それなりにざわついていた1年生の教室が、しんと静まり返った。
 陽乃樹の真直ぐな声だけが、凍り付いているかのような教室の空気をさらに震わせる。
「小鉄君、きみが好きだ。大好きだ。きみとくっつきたい。寄り添って、ずうっと離れたくないし、
放したくない。きみのそばにいつまでも居たいし、きみもボクのそばにいつまでも居て欲しい。き
みさえ居てくれれば、ほかに何もいらない。きみと水と空気さえあれば生きていける」
 一息で言い切って、また陽乃樹が口を開いた。
「更に言えば、きみが口を利くのはボクだけであって欲しいし、きみと触れ合うのはボクだけであっ
て欲しいし、きみの視界にはボクだけを映して欲しい。つまり、きみを独占したい。」
 淀みなく言い切り、また一息付いて陽乃樹が続ける。
「でもさすがにそれは無理だと理解している。……だからそんなに力いっぱい引かないでくれ」
 見れば、彼は椅子からずり落ちそうになっている。陽乃樹の言葉通り引いているのか、それとも
単純に驚いているのか。廊下からでは判断が付かなかった。
「ボクが言ったのはあくまで理想だ。それこそ人っ子一人いない未開の奥地にでも行かないと叶え
られないということは分かっている。そしてそれはきみが望むことではないだろうということも分
かっている。もちろん、きみがOKしてくれるのなら、今すぐ飛行機のチケットを二人分買って、ア
マゾンの奥地まで旅立ちたいわけだが」
 いきなり無茶苦茶な事を言い出した。いや、こんな公衆の面前で告白すること自体が無茶苦茶で
はあるが。
「だから、きみがそれを望まないのは理解しているから、そんなに首をブンブン振らないでくれ。
少し悲しくなる」
 噂の小鉄君が、首をぶんぶか横に振っていた。その様子に、私は少し可笑しくなってしまった。
「小鉄君。ボクはきみが好きだ。どうしようもなくきみが大好きなんだ。きみは、ボクのことをど
う思っている?」
 いよいよ核心に迫り、私は手に力が入った。教室の様子を聞き漏らすまいと、廊下から耳をそば
たてる。
 その時、私の下から苦しそうな声が聞こえてきた。

「むー! んむー! んんー!」
「あ、ゴメン。忘れてた」
 廊下で、私がキャメルクラッチの体勢で押さえ込んでいる智子が、腕をパンパン叩いてギブアッ
プを知らせてきた。

 授業が終わり、休み時間になった瞬間に、陽乃樹が「ちょっと小鉄君に告白してくる」と言って
きた。
 私は、「ああ、いつもの日課か」とスルーしそうになり、一瞬遅れて驚いた。
「こ、告白!?」
 慌てて振り返れば、陽乃樹が寝癖のように跳ねた髪の毛を楽しげに揺らしながら教室を出て行く
のが見て取れた。
 思わず呆然と見送った、数十秒後、けたたましい音を立てて椅子を蹴倒し、智子が駆け出した。
私も慌てて後追い、現在に至る。
 いやあ、間一髪だった。
 スライディングからカニばさみ。引きずり倒して流れるようにキャメルクラッチを極めた。
 通常のキャメルクラッチはあごに手をかけて仰け反らせるが、智子が声を出して陽乃樹の告白を
邪魔してはいけないと、口を手で塞ぐようにして技を掛けている。
「今いい所だから、もう少しだけ我慢してて」
 私はむーむー唸っている智子に囁き、少しだけ手の力を緩めて教室に視線を戻した。
462-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:24:43 ID:/PmIweYl
 小鉄君は、廊下からでも分かるくらい、顔を真っ赤にしている。逆に陽乃樹は後ろ姿しか見えな
いが、その佇まいは落ち着いているように見える。寝癖のように跳ねた髪の毛もピンと立ち、陽乃
樹の真直ぐな気持ちを表しているかのようだ。
 今だ静まり返った教室で、大きな小鉄君が、縮こまりそうになりながら、もごもごと口を動かし
ている。陽乃樹が相槌を打つように小さく頷いているのが見て取れるので、何か言っているらしい。
「……くそう。ここからじゃ聞こえないか。……おおッ!?」
「んむぅうううううーーーーーーー!!!!!」
 彼の言葉は聞こえなかったが、その意味する所は分かった。なぜなら、
「小鉄君!」
 陽乃樹が感極まった声をあげながら、彼に飛びついたからだ。
 そのまま小鉄君は陽乃樹の身体の勢いを吸収し切れずに(情けないやつだ)、後ろに倒れた。 
 椅子が横倒しになった音で凍り付いていた空間が解かれたのか、周囲が弾かれたようにどよめき
出した。
 騒然となった教室で、尻餅を付いた小鉄君の膝の上に向き合う形で座っている陽乃樹が、周囲の
声にも消されない、良く通る声で告げた。
「ふふふ。やっと小鉄君の膝の上に座ることが出来たな? 予想通り、とても幸せな気分だ」
「……こんな膝で良ければ、いつでもどうぞ。ヒノキ先輩」
 初めて聞いた小鉄君の声は、図体の割には優しい響きを含んでいた。
 開き直ったのか、かなり大胆なことを言っている。いつでもどうぞって、聞いているこっちが赤
面しそうだ。
 というか、前にお前が素直に膝に座らせておけば、私のバストサイズが暴露されることはなかっ
たんだぞ。責任を取れ。もちろんそれは、私の小学校からの友人を幸せにすることだ。
 その友人は、実に嬉しそうに微笑んでいる。智子が一目惚れした、あの「にぱー」だ。
 そのとびきりの笑顔を彼に向け、口を開いた。
「『先輩』は余計だぞ? 小鉄君」
「あ、えっと、その……ヒノキさん?」
「クエスチョンマークは要らない」
「ヒノキさん」
「ん。よろしい」
 偉そうに言って、陽乃樹が……って、ちょっと待った! それは……ッ!

「んむううううううーーーーーーー!!!!!!」
 とんでもない光景に、バタバタと私の下で智子が暴れた。
 目の前で起きたその行為に驚いて、力が弛んだ瞬間をつかれ、キャメルクラッチが解かれ、弾か
れたように、智子が叫んだ。
「ひののんのファーストキスは、私が予約してたのにいいいいいいいいいい〜〜〜〜〜!!!!」

 悲痛な叫びの向こうで、小さい彼女が大きな彼と、幸せそうに唇を重ねていた。

終わり
463-上級生型ボクっ娘系素直クール-:2007/12/08(土) 08:25:34 ID:/PmIweYl
以上です。

投下前に書くのを忘れました。
ほとんどエロ要素無しでお送りしました。

楽しんで頂けたら幸いです。
464名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 09:19:29 ID:75aPetSz
>>463
素晴らしい作品だ、これがGJ!!というやつか
いや略して言うのは良くないな、GOD JOB!
465名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 09:49:18 ID:dwflZVTx
GJしてもよろしいでしょうか?
GJ!
466名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 09:51:29 ID:f6O2pCMj
>>463
GJ!!
いやぁ、素晴らしいです。
いろんな視点で書かれおり内容がより深くなってて、いいですね。
467名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 11:05:38 ID:rBmohD/T
ひののんはあきらめた・・・

望美の89cmの双球に顔を埋めた後、グランドコブラで極めてほしい。
468名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 11:48:45 ID:FCRou5nV
GJ!

しかしこの学校ねらー多すぎるだろw
469名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 12:06:13 ID:1/2JV1gT
ニヤニヤしちゃったじゃん
素直クールに幸あれ
470名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 14:50:55 ID:9dQFK4lK
なんというGJ!!
そうだよこういうやつなんだ読んでてニヤニヤが止まらなくなるやつなんだよ
このあとの教室の展開を考えて吹き出したのはきっと俺だけ
471名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 15:58:00 ID:aaJCD0/Z
GJ!!

>>453から>>460の展開に飛んでも全く問題なかったというのに
ヒノキ視点の話を入れることで更に濃厚で面白いものになった

後頭部が痛い理由とかもよくわかったw
最初読んだ時は巨乳に圧迫されて痛いと思ってたんだがなwww
472名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 16:08:47 ID:aaJCD0/Z
間違えた
>>453から>>461の展開、だ
473名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 16:15:38 ID:R2NizvGR
なんだこれ!?かわいすぎるだろ、ひののん!!
水と空気とこれの続きだけで生きていけるわ
474名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 17:41:24 ID:slW08FOO
GJ

巨乳と百合の友人完備とは凄いなw
475名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 17:54:47 ID:0Wae2BQw
続き!続きー!
476名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 21:45:43 ID:TVquOTJj
す ごく
な なまいきな
お っぱい
477名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 23:56:18 ID:k1ga4q08
めちゃいい話だなあ
脇を固めるキャラが良いと、話がひきたつのかな
ラストを友人視点にして直接書かないところも憎らしいw
478名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 02:43:24 ID:0LwWDPIH
89cmのワッフルを頼む
479名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 05:14:21 ID:rjMOtw7e
良い話だね。
ただ告白の内容が友人さん方の立場なし
(先輩にとってイラナイ存在)みたいなのがひっかかる
480名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 10:52:09 ID:8w+aLcjA
私が欲しいか?

私が欲しいならくれてやる!


ARMS的素直クールとかわけわからん電波受信
481名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 13:08:38 ID:dDTpLn6O
>>480
その電波はちゃっちゃと話に変換しようぜ
482名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 15:23:41 ID:2dmoQGUF
残念ながらジャバウォックは素直クールじゃなくてツンデレだ
483名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 16:34:50 ID:uO634cs5
ARMS未読で>>480を考えたらこんなん出た。

「……なんだ?私のことをじろじろ見たりなんかして」
「あいたたた…いや、教室に入るなり全力で体当たりしてきておいてそれはないだろ」
「そうか、君は私にホの字で文字通りのアタックをかけてきたのだな?」
「それ違うしむしろそっちの方だし」
「よしわかった、そこまでして私が欲しいと言うのなら仕方がない。
 今すぐ唇から女性器、お尻の穴まで私の全てを君にくれてやる。もちろん返品は不可」
「誰か俺を助けて下さい大至急」
484名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 16:58:25 ID:9ShV84g5
>>483

「む…や、やめっ…ふむっ……んんぅ」
「……ぷはぁ……」
「な、な、いきなり何をするだァーッ!? キキキキキス、キスって――」
「……なんと素晴らしい…君の唇はとてもいい味がするな」
「あ、味って! 俺のファーストキスだったんだぞッ」
「なんと……私は猛烈に感動している。この唇に触れた女は私が最初だとは――!」
「押し倒しながらヘンな叫びを上げるなッ!っていうか離せ!俺の上からど――」
「ん……」
「んくっ……あ……ふぅ……ん……」

「……君の唾液はさらさらでとてもよい味がする。ずっと吸っていたいくらいだ。
それに君の舌に私の舌を絡めると君の体から力が抜けて従順になるのが可愛らしい。
このまま食べてしまいたいくらいだ」
「…」
「こうして嗅いでみると君の体臭も芳しい香りだ。この匂いに包まれて眠るのが今から楽しみだ」
「……」
「まあ、それより前に君とたっぷり一緒に汗をかいてさまざまな体液を分泌するのが順番からいえば先だな」
「………」
「心配するな。私は男性経験はないが、痛みには強いほうだ。君がどれほど情熱的に求めてきたとしても
それを受け入れる自信はあるぞ」
「…………タシケテ」
「ん?早速男性器が充血してきたようじゃないか。しかし、ここは教室だ。ここでするわけにはいかない。
もう少しばかり待ってくれないか?まあ、どうしてもというのならばそのような変態行為に付き合うのもやぶさかではないが
やはりそういうのは段階というか、普通の性行為に飽き足らなくなってから行うべき行為だと思うのだ」
「………(泣)」

485名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 17:07:20 ID:f0lhda49
内藤「私が欲しいか?私が欲しいならくれてやる!」
隼人「お前はトロクセェんだよ!俺に全ての感覚をよこしやがれ!」
内藤「す、全てだと。私の唇も胸も臍もアソコもアナルも、ああ、全て捧げろというのか!是非!!」
隼人「おい、脱ぎ始めるんじゃねぇ!」
内藤「さぁ!キミのミストルテインの槍で私を深く、強く貫きたまへ!!」
486名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 08:02:00 ID:w3fQ6AQI
で、内藤と隼人って誰?

>>463
GJ!
ただ正直なところ、エロ無し作品はスレ違いなんで
ほの板の素直クールでやって欲しかった
487名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 08:26:31 ID:6EcoXLvm
いままでずっとエロなし許容してきているこのスレで、
いきなり何だそれw

ほの板が過疎っているから人を呼び込みたい
気持ちはわかるけど、

ほの板、VIP
  = エロ不可、台本形式もあり(というかメイン)、軽い小ネタ、スレの流れ重視

エロパロ
  = エロありメインだがエロなしもあり
   小説形式を重視、台本形式はあまり歓迎されない(これはこの板全体として)

という漠然とした住み分けでいいじゃない。

現状、小説としての素直クール作品投下先は、エロのありなしにかかわらず
ここがメインなのであまりそこらへん厳密にしてほしくないよ。
488名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 16:23:29 ID:llfj8MNh
エロ無し?だからなんだ、我々がここで求めているのはエロではない、萌えだ!!
エロなど萌えを得るための通過地点でしかない。
それがわからない凡人は一般人の前でクーによる公開羞恥プレイを受けてこい!!















って電波が>>486を見た瞬間受信されたんだがなぜだ
489名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 17:22:19 ID:+DVum3Aw
いや、クーによる公開羞恥プレイだと御褒美になりませんか?w
490名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 22:37:42 ID:0dAio1pa
>>485
ARMSネタでFA?
491名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 22:58:42 ID:ZiJ6WA7K
>>490
FA
492名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 00:09:29 ID:Hq65x+yf
そうか、これがFA宣言なのか。
493名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 00:15:48 ID:LOHH77ux
ジャバウォックは初めツンツン後はデレデレと言う
正統派ツンデレだと思う
というか味方側のARMSは皆そうだったような

スレ違いですね
ごめんなさい
494名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 00:24:10 ID:9nruoBPi
ツンツンしてたのレッド兄ちゃんの頃だけだぜ?
495名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 03:20:42 ID:lUWaeMnH
496名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 18:35:54 ID:OdCRXwC4
第一声が「くれてやる」である以上ジャバは素直だと見ていいとオモ
だが、「クール」は違うと言わざるを得ない
497名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 22:04:55 ID:9nruoBPi
素直クールはナイトだろう

隼人がフルボッコされてクールに登場。
しかも隼人が仁愛の心持つまで待ってたというクール&育成計画っぷり。
自分を心配してくれる隼人に、自分の秘密を公表。超振動でイく(レッドが)

度々暴走するジャバさんIN涼に対抗しようとするも、隼人が黙れというとアッサリ引く素直さ。

アリス世界の武士もクールに評価。デキる女アピール。

バイオレットとのキャットファイト開始。
隼人に言われて全神経預ける。隼人が痛がる姿をクールにオロオロする。
隼人の水の心にキモチイイ〜〜とミストルテインを噴きながらエクスタシーを感じる。
それ以降、もう隼人の為すがまま、三歩後ろを歩く。

最後は「力が欲しいならくれてやる」
498名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 23:47:07 ID:KYgcedhq
なんて素直クールだw
499 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:48:18 ID:TpPr2dN2
はいはい、またこんな時間ですよっと。

そいじゃあ、久々のあの人たち。どうぞ。
500 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:50:16 ID:TpPr2dN2
 その日の夜は、食欲を誘う甘い香りが、リビングに立ち込めていた。
 割り下で、肉と野菜、豆腐に白滝等を煮込んだ料理。所謂すき焼きが、その日の夕食だった。
 ぐつぐつと煮えたぎる土鍋に箸を伸ばしながら、私は翌日の夜の予定をミサキに告げた。
「お客?」
「ああ、この時期に悪いけどね。私の方にも、少々事情があって」
 最初の試験日まで、一週間を切ったところだ。本来ならば、勉強に集中させてやりたいのだが、こちらも都合を外すことはできなかった。
 ミサキには、空き部屋を提供してある。あまり騒いだりしなければ、勉強そのものに支障は無いだろう。
 ただ、これ幸いとばかりに、勝手に客の世話を焼き始めるのは目に見えていた。なので、先手を打って釘を刺しておく。
「あまり気を使う必要は無いからね。適当に挨拶したら、部屋で勉強でもしててくれ」
 良識はある。この時期にこの理由を持ち出されては、そうそう無茶をしてくれることはないだろう。
 しかしミサキは、それを踏まえた上で、気になる事柄があるようで。ジト目になって、追求してきた。
「人数は? どんな関係の相手だ? 性別は? 年齢は? あたしのライバルになり得るか?」
「ぶっちゃけまくってるね……。一人の友人、ってよりは腐れ縁か。男だから、安心して勉学に励みなさい」
「ならばよし」
 と、ミサキは満足して、程好く煮えた肉を引き上げ、卵につけてから頬張った。
 その熱意、もう少しだけでも他に向けたほうが良いと、人生の先輩は思うのですよ。

 人の営みなど気にすることもなく、規則正しく太陽は昇り、また沈む。
 地球上におけるこの唯我独尊の権化は、太古より永劫の彼方、寿命の尽きる瞬間まで気ままな生活を続けるのだろう。
 と、ポエムってみたところで、不安の種が尽きることはない。
「〜〜♪」
 本日のミサキは、極めて上機嫌である。暇を見つけては、鼻唄を奏でながら嬉々としてお持て成しの準備を進めていた。
 服装は、汚れても良い部屋着の上にエプロンを掛け、頭には三角巾まで巻いている。家事慣れしているからか、家庭的な姿が良く似合う。
 わざわざ気合入れて掃除するほど、気遣いが必要な相手ではないのだが……。それを言葉にすると、不機嫌になりそうなので口を噤んでおく。
「しかしねえ……」
 テーブルに頬杖をつきながら様子を眺め、ほとほと感心する。
 掃除は上のほうから、という基本を守るどころの話ではない。年末大掃除もかくやといった気の入れようだ。
 ミサキが来訪してからというもの、毎日掃除は欠かしていない。しかし、掃除できる場所は、探せばそれだけ出てくるものらしい。勉強になった。が、私室まで掃除する意味はあるのだろうか。
 家主とはいえ、女性の部屋に無断で侵入するつもりはない。たとえ散らかし放題でも、発つ鳥跡を濁さなければ、私個人としては一向に構わない。
 基本的に世話好きなのだろうが、それを度外視した上でも何かを企んでいると確信を持って言えた。
「頼むから、妙なことはしないと約束して欲しいな」
「んー? 何を言っているのかな、この目付きの悪い人は」
 その時を楽しみに待っていろとばかりに、あからさまにわかりやすい態度で彼女はすっ呆けた。
 客のキャラがキャラだけに、激しく不安だ。不安すぎる。
 舌先三寸その他能力を駆使して聞き出す選択もあるが、それはそれで負けた気になるので却下。
 結局の所、私は不安を拭う気もないらしい。一応、楽しんではいるようだ。
 その時、玄関のチャイムが鳴った。
501 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:51:20 ID:TpPr2dN2
「何だアイツ。随分早いな」
 時計を見れば、午後一時半。約束の一時間前だった。
 気紛れでも起こしたのかと私が腰を上げた時、バタバタとミサキが奥からやってきた。
「あー、待った待った。それ、あたしだ」
 ハタキを放り出し、ミサキは玄関へ。
「――ええ。はい、着払いで……」
「おいくらですか?」
「はい。ええっと、千四百――」
 宅配員とのやり取りが聞こえてくる。
 軽く雑談をしながら、お金の受け渡しをしているらしい。値段からすると、そこそこの大きさがありそうだ。
 何が届いたのか気になり、私は立ち上がった。
「それじゃ、ここにサインを――はい、確かに。どうも、ありがとうございました!」
 チラッと玄関に顔を出すと、帽子を脱ぎ、深々と頭を下げる緑色の宅配員。初見だし、新人だろう。声も元気が良いし、なかなかの好青年である。
「ご苦労様。これ、取っといて」
「お疲れ様です」
 私は冷蔵庫から持ち出した缶コーヒーをお礼に渡し、ミサキは彼に労いの言葉をかけた。
「あ、こ、これは気を使っていただいて」
 突然現れた私に、思わずどもる青年。ま、いいさ。慣れてるから。
 ミサキは口に手をやり、可笑しそうに笑いを漏らす。数秒後、一息ついたところでフォローを入れた。
「あまり怯えないでくださいね。目付きが悪いだけで、こう見えて優しいんですよ」
「は、そうで……ああ、いや。勿論です。任せてください!」
 急にしゃきっとした顔を見せる宅配員。雑談の間に、ミサキの毒にやられた模様。
 相変わらず、ミサキの外面は完璧だ。素人では、微妙な演技臭さなどまず見抜けまい。
 扉が閉まり気配が去ると、荷物両手に、くるりと部屋へ踵を返す。
 荷物を置くと、顔だけ出して訊いてきた。
「気になるか?」
「気にしないことにしたよ」
「つれないな。こんなにもキミの気を惹こうと必死なのに」
 一分ほど不機嫌が混入した表情と声を私に投げると、反応を待たず部屋は閉ざされる。
 私は肩を竦めて苦笑した。
502 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:51:57 ID:TpPr2dN2

 一時間後、無機質なチャイムが再び鳴らされた。
「今度こそ来たか」
 ミサキの部屋の前を通った時、
「あ、シン」
「やっぱりいいよ。別に顔出さなくても」
 ドア越しにかけられた声へ返す。
 事と次第によっては、用件が終わると同時にお引取り願おう。奴に関しては、礼儀など必要ない。
 しつこく連打されるチャイムに辟易しながらドアを開けた。同時に外気が流れ込んでくる。
「煩いぞ。他人の迷惑を考えろ」
「よう、生きてたか。忙しいのに、暇作って来てやったぜ。泣いて頼まれちゃあ、断われねえもんな」
「相変わらず口の悪い奴だな、アマギ」
「ケケケ。お前の目付き程じゃねえよ。残念でした」
 そこにあるのは、見知った顔。
 無精髭にボサボサ髪。最近目立ち始めた小皺。開口一番憎まれ口を叩く、ひょろりと背の高いガラの悪い男。
 それがこのアマギという客だった。
「しっかし、何でまたこんなボロマンションに住んでんのかね。今時、玄関まで素通りってどうよ。袖くらい振れるだろ」
「ボロくはないし、住みやすいからいいんだよ」
 一昔前の建築だが、基礎はしっかりしているし、外観も小奇麗に保たれている。部屋の間取りも広く、天井も高いし、設備も使いやすい。
 大切なのは、生活が快適かどうかだ。変に新しいだけの建物よりは、こちらのほうが余程重要に決まっている。
「ともかくな、まァ、入れ。受験生が居るんだ。あんまり騒がしくするなよ」
「そーいや、女ァ手篭めにしてんだってな。噂通り美人か? 具合はどうだ?」
 下世話な物言いに、気が滅入る。
「……何でオレは、お前と知り合いやってんだかねェ」
「おろ? 心友じゃねえの?」
「知り合いでも有り難いと思え、バカが」
 リビングに通すと、座布団を敷く。アマギは乱暴に上着を脱ぎ捨てると、炬燵に入って足を伸ばす。
 私はそのジャンパーをハンガーに掛けてから、足早にキッチンへ。
「今、茶を出してやるから、そこに座ってろ」
「へいへい。甲斐甲斐しいこって」
 アマギは、勝手に漫画雑誌を読みふける。そのままでいてくれると、静かで助かる。
 私はやかんを火にかけ、その間にポットや湯呑みを用意する。
 玉露は常備しているが、アマギには勿体無い。焙じ茶で充分だろうと、棚に手を伸ばした。
 使用済みのお茶っ葉をフライパンで炒ったものを、やかんに投入して煮出す。知恵袋的な代物だが、日用としては悪くないものだ。
 煮出し終えたらポットに移して、湯呑みと一緒に持っていく。
「ほら」
 二人分の湯呑みを前に出し、私も腰を降ろした。用意しておいたノートPCを開いて、電源を入れる。
「はいどーも。んでよ、早速だが――」
「うむ」
 真剣な面持ちを前に、声のトーンを下げた。
「――件の女はどうした?」
「お前……」
「馬っ鹿。美人かどうかって答えすら聞いてねえんだぞ。本題なんざ、後だ後!」
「本題だから、先に済ませるべきだと思うが……」
「わーったわーった。さっさと進めりゃいーんだろ、あァ!?」
 メンチを切られた。この逆ギレも合わせて、チンピラっぷりは見事としか言いようが無い。
「で?」
 が、流す。アマギもそれは承知済みだ。
「へ。コイツが資料さ。目ぇ通しときな」
「ったく。ふざけたりしなけりゃ、話は早いんだぞ」
「余計なおふざけが無けりゃ、人生なんてやってらんねえよ」
 そうして大量の文字と図が羅列された書類の束に、私は視線を走らせていった。
503 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:52:31 ID:TpPr2dN2


「――よし、この線で行こう。成功したら、次の段だな」
 三時間後。情報の入力をし終えると、私はノートPCを閉じた。
 胡坐をかくアマギは、区切りがついたのを確認すると、待ってましたとばかりに膝を叩いた。
「おっしゃ! じゃあ今度こそ本題だ、本題! 観念して、会わせろや」
 ああ……ついに入れ替わったか。私は根負けして、立ち上がる。
 時間を考えれば、ミサキのほうも、休憩する頃だろう。あまり長居させねば良いだけだ。
 何より、そろそろミサキは勝手に夕飯の支度を開始する。台所の主は、色々な人の感想を聞くのが好きだと言っていたことがある。今更追い返すのも気が引けた。
「わかったわかった。ついでにメシにするから、大人しく待ってろ」
「女の手料理、ぃやっほーう!」
「大人しく、な」
「うぃ、むっしゅ」
 大人しくなった。
 静かになったアマギはその場に置いて移動。私は彼女の部屋のドアをノックする。
「ミサキ。ちょっといいかい?」
「開けても構わないぞ」
 返答に甘えて、遠慮せず開け放った。
「悪いけど、ちょっと顔見せ――」
 ぱたん、と。戸を閉じて、眉間を摘み正気を確認する。
 ……大丈夫だ。私は狂っていないし、幻覚を見たわけでもない。
 ということは、今のは紛れも無い現実……。
 軽く深呼吸をして、もう一度開ける。
「…………」
 閉じる。
「何故閉じる?」
 悩む私を尻目に、ミサキ自身が戸を開けてきた。
 ドアから窺える範囲――部屋の中の人物は、ミサキただ一人。
「えーっと……」
 悩む私。
「遅ぇぞ、シン。何グダグダしてやがんだ。引き篭もってんなら、天の岩戸ぶっ壊してかっ攫って来い!」
 そんな折、業を煮やしたせっかちが、こちらの都合を無視して迫ってきた。
504 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:53:46 ID:TpPr2dN2

「!」
 慌てて閉じるが、
「だから、何故閉める?」
 空気を読まず、ミサキは私達二人の前に、姿を現してしまった。
「あん?」
 彼女を目にして、アマギが目を丸くする。
 数瞬後、目を輝かせて私の背中を何度も叩いてきた。
「おお! こりゃ噂に違わぬ美人ときたか! だがなぁ……いい趣味してるぜ。気合入ってんなァ、おい」
 いい趣味か……。その言葉に目眩を覚える。
 私の横を抜けて、二人は挨拶する。まずはミサキが頭を下げた。
「初めまして、わたくし、ミサキと申します」
「こいつぁどーも。俺様はアマギってんだ。ヨロシク」
「すぐご飯の支度しますから、少々お待ち下さい」
「格好負けしないの頼むぜェ」
 ……おや?
 アマギに茶化されない。にこやかに笑って、ミサキの容姿を褒めるだけだ。
 現在のミサキの装いは、落ち着いた色の和服にエプロンというもの。正月もとうに過ぎたというのにこれでは、不審に思っても仕方ないはずだが。
 これは一体、どうしたことか。
「ところでミサキ……その格好は?」
「水仕事用にって、母さんのお下がり」
 そういえば、ミサキの実家は呉服屋だった……。以前お邪魔した時も、御母上は着物姿で出迎えてくれた。
 私の目には窮屈そうに見えなかったあたり、環境と趣味とが合致していた可能性が高い。ひょっとすると、普段から仕事以外でも和服を身につける機会が多いかもしれない。
 彼女にとって、これは当たり前の見慣れた装いなのだろう。
 先程の上機嫌も、この姿を見せるのが楽しみだった。ただそれだけに違いない。
 アマギはアマギで和食派な為か、あっさり受け止めたらしい。
 自分の発想を呪う。
 いかんな、何も無いところで邪推してしまうとは。着実に毒されつつある証拠だ。気を引き締めねば。
「あァ、そうそう。それとだな、嬢ちゃん――」
 キッチンへ向かうミサキを、アマギが呼び止めた。
「猫被る必要はねェぜ。女豹のが好みなんだよ」
 ミサキが私に視線を投げかける。何を言いたいか察した私は、げんなりしながらも首を横に振る。
「粗野な外見に似合わず、目敏いな。さすがはシンの友達といったところか」
「おうよ。一番のダチだぜ」
 ただしワーストな。
「では、本人の許可が出たので、失礼だが今後は遠慮しないでいく。難儀な性分でね、敬語は疲れていけない」
「気が合うな。解るぜ、その気持ち」
 奇妙な友情を育んだらしき二人。互いに親指を立てて意思疎通完了。
 一頻り挨拶が済むと、ミサキは私に話を振った。お気に召さないことがある模様。
「ときに、シン。何か言うことは無いか?」
「――……そうだな。とてもよく似合っているよ」
「間が気になるが……今の所は、それで勘弁しておこう」
 薄く微笑みを浮かべた。
 この場を去るミサキを、私達は見送る。
「かっかっかっか……っ」
「んだよ、ヘンな笑いして」
「台所が似合う和服美人か。いいねェいいねェ、羨ましいねェ。大和撫子ってヤツかい」
 アマギはとても良い笑顔で、しつこく肩を叩いてくる。
 結局、私は一人で空回りしてただけか。
「どーしたどーした、シケたツラぁしやがって」
「いや……」
 何かもうどうでもいいや。
505 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:54:39 ID:TpPr2dN2


「にしても、どういう風の吹き回しだい。暫く、女にゃ深入りしないんじゃなかったのか?」
 不躾にそんなことを訊いてきた。
 だが返答に困る。私自身、答えを出していないのだ。この感情は理解しきれるものではないし、これからもずっと学び続けてゆくべきものなのだろう。
「強引さに負けて、な」
「だからって、お前ならいくらでもあしらいようがあらァな。やっぱ気に入ったんだろ」
「かもな。複雑な話だが……ああいうタイプは初めてだしな」
 だが気に入っているからこそ……、
「本当は、オレみたいのには深く関わって欲しくないんだが……」
 気に入っているからこそ、彼女を想って自嘲を浮かべる。
「ま、今は大学に合格してもらって、普通に付き合う相手を見つけてもらうのを期待するさ」
「そんなん期待されて、幸せなのかねぇ」
「幸せだろ。少なくとも、オレなんかとずっと一緒に居るよりは」
「客観的に、第三者視点で見りゃあな。けど、何事も結局は本人次第だろう」
 自分に正直になれとばかりに、私の胸へ人差し指を数度付き付ける。
「頭ぁ狂ってるわけでもなけりゃ、本人が幸せだったらそれでいいじゃねえか」
「これからの長い人生を、オレなんかの我が侭に費やさせるわけにもいかんだろう」
 まだ若い彼女を縛り付けるつもりは無い。せめてもう少し、大人になってもらわなければ。
 この類の答えを予想していたのか、アマギは勝ち誇ったようにいつもの慇懃な笑い方をする。
「気楽に行きゃいいのに、殊勝だねェ。長い長い人生、そんな態度じゃあいつか潰れるぜ」
「誰がだ。その程度で潰れんなら、とっくの昔に潰れてるよ」
「彩りがあるに越したこた無えだろが」
「たまにだから、有り難味があるんだ、バーカ」
「勿体無えの」
 女好きのチンピラは、心底残念そうに頬を膨らませブーイング。ちなみに三十代。
「そういうんなら、お前が手ぇ出してみたらどうだ?」
「はンっ! 下らねェ。動物園に猟銃持ち込む馬鹿がどこにいるよ。手前ェで囲っとけ」
 これ以上の押し問答は無用。私達の会話は、いつもこんな調子で終わりを告げる。
「フッ――……ミサキ、私も手伝おう」
 お互い気持ちを切り替え、それぞれが次の行動に移る。
 たまにはサービスも良かろうと、私はキッチンへ。
 そして客であるアマギは……、
「さてっと。暇んなっちまったな。完成まで何して時間潰そっかね」
506 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:55:31 ID:TpPr2dN2

「まずは定番。下着漁り、と」
「イキナリ人ん家で何すんだ、貴様ァ!」
 ノブに手をやる不穏な気配を感じ、私は光の速度で舞い戻る。
「ふぐぉぁ!?」
 体重を乗せた蹴りが、アマギのコメカミにクリーンヒットした。
 私の制裁を受けたアマギは、二回三回と転げながら床を跳ねた後、土間床に顔をめり込ませて痙攣する。
 へばったところを、すかさず押入れから持ち出した紐で簀巻きにする。
 そのままリビングに運んで放置。食事が出来上がるまで、監視下で気絶していてもらおう。
「ったく、あのボケは。油断も隙もあったもんじゃない……!」
 怒り心頭ながら、足は台所へ。
 一つ大きく息を吸って、気を落ち着ける。
「すまないね。ちょっと手間取った」
 腕をまくり、エプロンも掛けて、包丁片手に食材と格闘しているミサキへ加勢した。
 石鹸で手を洗い、私も食材をまな板の上に並べた。予備の包丁を取り出し、野菜の皮を剥き始める。
「大丈夫なのか?」
「問題ない。キミの下着は死守した」
「そっちじゃなくて。いや、そっちも大事なんだが……」
 ちらりと、白目を剥くアマギを見やる。奴を知らないミサキとしては、心配もするだろう。
「ああ。大丈夫大丈夫。あれくらい慣れてるから」
「そ、そうか……」
 だが、その心配も通過儀礼のようなもの。顔をあわせる回数が増えれば、自然と慣れてくる。そして人によっては、自然と乱暴なツッコミを入れるようになる。
 冷や汗がミサキの頬を濡らすが、それ以上何も言わないことから、この件についてはスルーを選んだようだ。
 気を取り直したか、話題を変えるためか、彼女は私の手元を見た。
「意外と手馴れてるな」
 皮むき器も使わず、野菜の表面を刃が滑るように片付けていく私にかける声には、小さな感嘆が混じっていた。
「料理が苦手と言った覚えは無いが」
 言って私は、次に取り掛かる。
 長い一人暮らしで、いつしか身に付いたスキルだ。近頃は面倒が勝つことも多かったので、ミサキが来訪するまでは簡単なもので済ませることも多かったが。
507 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:57:09 ID:TpPr2dN2


「……なあ、シン」
「ん?」
 ふと、あたしの口から呟きが漏れた。手元から目を離すことなく、口の滑るままに任せる。
「あたしが、素の言動を向けられるのは、いつになるのかな?」
 剥いていた芋の皮が、最後までいかず途中で切れた。
 今の言葉はあたしの本心。いつも彼に感じていた壁、あるいは人を隔てる渓谷のようなもの。
 正直、シンと大声で悪口を言い合う、あのアマギという男に嫉妬していた。そして、あたしの知らない彼を知る、まだ見ぬ誰かに。
 そんな感情を見透かすように、シンは咽喉の奥で笑う。そして言ってのける。
「人は一面だけで測れるものじゃないよ。感情のままに任せるだけが本質じゃない。微笑ましさを感じながら接するのも、それはそれでいいじゃないか」
 話しながら、鮮やかな手際で野菜を刻む。
 言葉を聞いて、あたしは一つ理解した気がする。
 この何処か底知れないものを持つ男は、誰にでも自然体なのだ。見せる姿、全てが素。だから接する人によって、見えるものが違ってくるだけ。
「つまり……あたしは、シンにとって落ち着ける存在なのか?」
「落ち着くかなあ」
「む」
 でもちょっとカチンときた。社交辞令的なお世辞くらいは欲しい。
「見てて楽しい、面白い女の子だとは思うけどね。愉快……っていうのも違うな。近いのは安心かな」
 前言撤回。素直な賛辞は嬉しい。
「何にせよ特別な存在ということか。つまりオンリーワン。良い傾向だな」
「そうかい?」
「そうだとも。審査をクリアして、花屋の店先に並んだということだからな。個人的には、鉢植えとしての購入をオススメする」
 見舞いにはご法度。しかし彼は万年健康体。贈り物には宜しかろう。
 と、上手いこと言ったと悦に入るのは許されなかった。
 何がどう心に触れたかは知らない。ただ少しだけ……誰が見逃して当たり前なくらい、ほんの少しだけ……。
 本当は、単なる気のせいかもしれない。
「――――私が買うのは、専ら切花だよ。さもなくば、花壇で育てる」
 深遠の、更にその奥。僅かに見えた真の本心のカケラ。
 呟いたシンの瞳は、優しく、そしてどこか寂しげな光を帯びていた気がした。
 果たしてそれは幻か、あるいは真実か。解らない。けれど、
 ならばあたしはこう答えよう。
「ではこの身に刃を入れるといい。そして思うままに生けてくれ。見る者楽しませるのも、また花の生き様だ」

 シンは何も言わず、ただ静かに微笑んだだけだった。
 その想いは、きっと――……
508 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:57:58 ID:TpPr2dN2


 マンションの駐車場で、アマギはバイクに跨りながら片手で頭を抑えた。まだ若干フラフラするらしい。
「あーあ。ひっでぇメに遭ったぜ」
「キック一発で全てチャラな上に、晩飯まで入ってるんだ。儲けものだと思え」
 まあ普通なら運転を控えさせるところだが、コイツなら大丈夫だろう。
 事実、両手で自らの顔を叩いて気を引き締めれば、気合充分、気分爽快。メットを被ってキックする。
 定番の憎まれ口も飛び出すというもの。
「ま、いーもん見させてもらったし、ここは許してやるかい」
「お前、何様だよ」
「お――」
「俺様禁止」
 固まるチンピラ。何事も先手必勝。常在戦闘を心掛けるといい。
 特に、
「っらァっ!」
 こういう血の気の多い輩が近くにいるならば。
「危ないな、おい」
 不意打ちを掌で受け止め、腕の力が抜けたら解放してやる。
 報復失敗で、ヘルメットを被っていても不機嫌な表情をを隠せない。
「…………いけ好かねェ」
「逆ギレとは、理不尽なもんだな」
「理不尽こそ人生だぜ。お、いいこと言った。……フッ。ここで終わらせるとは、俺様も大人になったもんだ」
 楽だな、大人って。
「次は無闇に暴力振るわないことを目標にしろよ」
「チッ! 俺様が人様の迷惑考えるようになったら、一体何が残るんだよ。只の完璧超人になるだけじゃねェか!」
 何が気に障るもか、ワケの解らんことでがなられた。
 こんなのが大学で教鞭取ってるんだから世も末だ。
「じゃァな」
 アマギはバイザーを降ろして、二本指を立てた手首を振って別れの挨拶。
「とっとと帰れ帰れ」
 しっしと追い払う。
 アマギの駆るバイクは轟音を上げ、夜を迎えた街中へ消えていった。
509 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 03:59:00 ID:TpPr2dN2

 完全に音が聞こえなくなった頃、入り口から出迎えのミサキが駆け寄ってきた。
「シン……アマギは帰ったのか?」
「ああ」
 それ以上、特に話すことはない。
 歩幅を合わせて、心持ちゆっくり歩く。
「なぁ、シン――」
「うん?」
「今度、また誰か客を呼んでくれ」
 静寂を遮って少女の口より伝えられたのは、そんな小さな頼み事だった。
「もっと色々な一面が見たい」
 可愛いものだ。
 私はミサキの頭に手をやって、ポンポンと軽く叩いた後に撫でてやった。
「やめろ。髪が乱れる」
 赤面しながら抵抗された。面白いので、さらに続ける。
「こら、子供扱いするな」
 そうは言っても、私から見ればまだまだ子供だ。私が教えてやれることは多い。
 乗りかかった船だ。ここは一つ、もう少し付き合うとしよう。
「合格したらね。そうしたら、ご褒美は考えないでもないかな」
 どこまでも子供扱いする私に腹を立てたか、その場で足を止める。
 距離が開いたところで、助走で勢いをつけ一気に、
「とう!」
 ミサキが私の背中に飛び掛って負ぶさる。
 柔らかく軽い身体を、身近に感じる。ふわりと香る彼女の髪が、鼻孔をくすぐった。
「何だい、突然」
「女として意識したか?」
「いや。尚更、子供として意識した」
「む。これならどうだ」
 さらに密着。背中に当たる程好い大きさの柔らかい何かが、動きに合わせて変幻自在に形を変えるが……、
「ほらほら。馬鹿やってないで、さっさと戻るよ。結果が出なければ、ご褒美も無しだからな」
 こういうアプローチしか出てこないことが、子供である証拠だ。
 同じ行動でも、あえてそれを選ぶという発想があるならば、まだ話は違うのだが。
 戸惑いすら見せない私に、敗北感でも覚えたのだろうか。
「逆に言えば、結果が出る毎にご褒美が貰えるワケか。仕方ない、ここは引いておくとしよう」
「ぐぇ」
 言いつつ前に回した腕に力を入れ、最大に密着。ついでに首絞め。
 きっかり三秒その体勢をキープしてから、今度は離れる。
「後片付け、まだ終わってなかったな」
 それ以上は何も無く。
 振り向くこともしないで、彼女はマンションの入り口へ消えていった。

 冬の寒風に身を晒し、過ぎた日、そして来る日を思う。
 日の沈んだ空は、限りなく黒に近い蒼空。
 柄にも無い感傷を一笑に付し、私は暖かい場所で待つ今日の団欒を享受しに向かった。

 今日は何を教えようか。どれから手を付けたものか、楽しく頭を悩ませる。
 さりとて、本日教えるべきコトは――。
「何も言わずとも、食後のお茶とか気を利かせてくれると嬉しいんだけどな」
510 ◆uW6wAi1FeE :2007/12/12(水) 04:01:50 ID:TpPr2dN2


なかなかエロい展開まで漕ぎ着けられんなあ……。
ま、ペースは遅くても、一人でも期待してくれるならちまちま書き続けましょう。

では、おやすみなさい(もう定番の締めだな、コレ)
511名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 04:57:17 ID:tYSNrU/j
おお、ktkr、GJGJ!
アマギ、いいキャラすねw
ゆっくりのんびりな空気がいいので、エロ到達が遠くても期待してますぜー。

ところで、容量がかなりキテるので、誰か次スレ立ててくれないかな。
保管庫の URLも新しいの入れてくれるとありがたく。
512名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 09:18:24 ID:RMot/2FL
GJ!
扉をしめた時、すっぽんぽんを期待したのはオレだけか?
513名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 11:58:59 ID:/UIn+ZQA
GJ!
>>512そして俺と同じことを考えていたやつがいたとは
514名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 13:01:28 ID:/GgvPXnX
GJ!多彩な比喩表現に正直感心した

同時に自分の表現力にorzという感じだが


>>512>>513
よう俺
515名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 14:58:07 ID:bu6Hqfo0
GJ。

ところで、俺が大量発生してるんだが?
516名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 18:29:13 ID:ZYu4FfYd
GJ!
みんないい性格w
続きを楽しみに待ってます



なんでこんなに俺が居るんだ
517名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 21:38:15 ID:dYQM2Yxv
GJ!

>>512-516
やっぱり俺がいっぱいいる。
518名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 22:07:49 ID:UAJrNPHw
GJ!

しかし変だな、クローンを作った覚えは無いのだが。
519名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 22:35:03 ID:Rial1Rqp
GJ

むしろ、裸じゃないのか?と疑って何度も読み返してしまった
520名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 00:27:56 ID:zxRQ20f3
GJ!!!

いつも掛け合いが最高に楽しい二人だけど、今回みたいなお話も非常に良いね。
続き期待して待ってます!

皆と同じく一瞬期待してしまったが、冷静に考えりゃ想い人の友人とはいえ
見ず知らずの男がいるのにすっぽんぽんにはならんわなw
521名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 21:21:40 ID:6vnmIEWP
新スレ立てたよ。

素直クールでエロパロPART7
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1197548369/
522名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 00:29:31 ID:k4R95RTI
>>521


ところでまとめの503っていつ解消されるんだろうか・・・
読みたい作品があるんだがまったくみれん・・・
523名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 00:40:34 ID:BebH+XIr
524名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 03:10:39 ID:UNssJt9j
>>522
ひょっとして、>>150 これに引っかかってるんじゃね?
525名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 08:07:49 ID:emH50Z1n
新スレ立ったか

梅用age
526名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 13:22:23 ID:emH50Z1n
携帯からなんで良く解らんが
今スレ容量いくら?
527名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 13:27:05 ID:69P7ydpg
497KB
528埋めネタ・素クールじゃないかも:2007/12/14(金) 23:12:43 ID:vI8qkbXh
「……寒いですねぇ」
「……同意ね。私は雪は好きだけど、寒いのは苦手なのよ」
いやはや、ついてないもんですねえ。
修士論文の調べ物ついでに大学の研究室に少し顔を出してみれば、近年まれに見る豪雪と来ましたか。
電車は止まってアイスバーンで車は動かせず。
もちろん歩いて帰るのは論外と。……10メートル先も見えないなんて、どこの雪国ですかここは。
この研究室、ご時勢に沿わずに暖房器具は石油ストーブ一つのみ。
まあ、もう少しお金をかけてもいいとは思うんですけど、どうしても研究費に費やしたいのはそれこそ考古学なんて金にならない分野にとっては仕方ないんでしょうね。
ここを出たくても、部屋の外に出ればどれだけしばれることか。
何せ部屋の反対側は室内なのに小さなツララができてるんですよ? ストーブの半径3メートルから出たくもありません。

いずれにせよ、吹雪に閉じ込められたのが僕だけじゃなくて幸いでした。
話し相手がいるというものはいいものです。
「……さて、どうしましょう柳瀬さん。僕は愛用のパソコンも読む本もなくて物凄い暇なんですが」
「私に聞かれても困るわよ……。それはこっちもなんだから。とりあえず会話かしら、泉くん?」
「会話ですね」
「会話、なの?」
「会話しかないんじゃないかと」
「…………」
「…………」

……うーん、困りましたねえ。
僕たちはどっちも研究馬鹿で気の利いた切り出しも出来やしない、と。
僕は冴えない眼鏡の昼行灯。それなりに真面目でそれなりに適当。
柳瀬さんは知的な地味系。どっちかというと美人というより童顔だけど中身は落ち着きすぎている。
どっちもどっちでそもそも会話を楽しむタイプじゃないですし。
普段どおりならそれこそ同じ部屋にいようと黙々とそれぞれの作業やってるだけなんですが。
……はて、そう言えば。
529名無しさん@ピンキー
「……柳瀬さんは今日、何故ここに?」
「ん……? ああ、この間の藤山寺墓群の……G−18抗出土品のクリーニングが終わったというので写真を撮らせてもらったの。
君もやったでしょ? 真木先生のバイト、学部の子たちに手伝わせてるやつ」
「あれですか、ええ。そういえば柳瀬さんもやってましたっけ」
「趣味と実益を兼ねたバイトだったからね。好きこそ物の上手なれ、よ」
「……なるほど、僕と同じですね」
「こんな道選ぶのは同じ穴の狢だけでしょう?」
「……その通りで」
「…………」
「…………」

……会話、続きませんねえ。まあ、別にそんなので気まずくならない程度には親しいと思うので別にいいんですけど。
そんな事を思った折、
「泉くんはどうしてここに?」
「……いやはや、僕はちょっとしたした統計資料を写させてもらいに来ただけだったんですけどね。
そのついでに学食でも寄ろうかと思ったんですけど、外に出るのが億劫だったので。
ここなら備え付けのカップ麺とかありますし」
「……つまり、お腹が空いたけど無理するのも面倒なのね?」
「その通りです」
「……まあ、それは叶わなかったみたいだけど」
「……まさか水道が凍って出ないなんて想定していませんでしたからねえ、たはは」

……うーん、正直何か口にしたいところなんですけど、食べるものは何もなしと。
はあ……、こんな中コンビニに行く気もしませんし、動かないでカロリー消費を抑えるくらいしかできませんか。
「……しかし寒いですねぇ。すみません、もうちょっとそちらに行っていいですかね。
ストーブにもっと近づきたいんです」
「構わないけど……ちょっと待って」
「はい?」

言うなり柳瀬さんは鞄の中から魔法瓶を取り出して僕の方に。
「……あの、これは?」
「砂糖がいっぱい入ってるから少しはお腹の足しになるんじゃないかなと思って。体も暖まるしね」
「……これはこれは、いや、どうもありがとうございます」
せっかくのご好意、謹んで受けさせていただきます。
急いでストーブの効果範囲外にある自分の湯飲みを取りに行って、ポットの中身を注いでみれば、そこにあるのは湯気を上げるミルクティー。
口に含めば体中に染み渡る甘さ。……ああ、幸せです。

「お気に召してもらった様で何より、かな」
……にっこり笑う柳瀬さん。いや、本当感謝感激です。
「すみません、助かりました。……このお礼はいずれかならず」
「気にしないでいいわよ。私もいいものが見れたから」
「……はい?」
「泉くんの事は嫌いじゃないからね。喜んでもらえたらこちらとしても嬉しいもの」
「はあ……」
……まあ、学部の3年の時からの付き合いですからね。自然とそれなりの友愛は感じてもらえてるってことですか。
会釈をしつつ、ポットを返すと柳瀬さんも自分の湯飲みでミルクティーをこくこくと。
そしてしばらく僕たちは、なにも言うことなくお茶を楽しみ、その後も雪が弱くなるまで途切れ途切れの考古学談義を楽しんだのでした。

いやはや、気心の知れた関係というのはいいものです。
別に無理して話題を探さなくてもいい相手というのは貴重な存在だというのが今日の僕の最大の収穫ですね。