素直クールでエロパロPART1

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1名無しさん@ピンキー
素直クールでエロパロ
荒らし、煽りはスルーでお願いします
2名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 20:43:30 ID:+ucPOwQk
<関連スレ、或いは対極のスレ>
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第4章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133794297/
3名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 23:59:39 ID:tzRvhPLX
日付が変わる直前に3ゲット!
4名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 00:05:47 ID:W/Xoi3v4
なんだこのスレ
こんなの出来たのか
とりあえず職人期待保守
5名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 00:08:37 ID:vLJMZo/X
クーデレってやつ?
6名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 01:41:12 ID:pAp+u7BZ
>>5
そう

保守age
7名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 14:29:02 ID:AaAuTodj
>>1乙です

あんパン準備しつつ保守りますよ
8名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 19:02:27 ID:lYbVaAlR
>>1
ザ・スニーカーでも読んだのか。
9アイリス:2006/02/14(火) 19:13:33 ID:YsZT2HUI
初めましてアイリスです!!よろしくね!!
10名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 20:30:36 ID:jujSiFq4
よろしく!
11名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 07:39:44 ID:3t1l7ulU
なんだかなぁ……保守
12名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 12:23:11 ID:xHKAcGk0
職人さん期待age
13名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 17:25:58 ID:g36Sj0JF
エロ画像、エロ画像♪

素敵ですわん

http://www.pic-navi.com/
14名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 12:57:33 ID:iTeE680o
保守
15名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 13:26:31 ID:ex+7z5ay
以前別のところにおとしたのを保守代わりに投下していい?
素直クールは結構好きだから応援したい
16名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 14:00:11 ID:wOqooq87
>>15
よいとおもわれ
てかキボン
17名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 17:31:28 ID:iTeE680o
ええいっ!>>15の作品はまだか!
18 ◆GkRPJL.Q4U :2006/02/17(金) 18:08:43 ID:4Rvc/hvP
15ですよ。
ID違うけど、こっちはPCから。
一応よそで投下したものなので、本人証明のために鳥つけときますね。
それでは7レスほどお借りします。
19 ◆GkRPJL.Q4U :2006/02/17(金) 18:09:43 ID:4Rvc/hvP
トントンと包丁がまな板をノックする小気味良い音。
鼻腔をくすぐる暖かい味噌の香り。
ありふれて見えてしまいそうなそんなものが、なぜだか今朝はひどく幸福に思えて、
冷たい冬の空気を布団と一緒に跳ね除けて勢いよく飛び起きた。
おお!これぞまさに日本の朝の風景!
「……て、おい」
冷静になれ。ていうか目を覚ませ。
俺は、間違いなく、一人暮らしである。
自分で作らない限り朝食なんて出てくるはずはない。

……脳裏をよぎる嫌な予感。
この軽快な怪音と心地よい異臭の発生源であろう台所を慌てて確認する。
狭い部屋だ。首を回せば見通せる。

そこにいたのは、
「――ああ、やっと起きたのか。
 まったく、冬休みだからってだらけすぎだぞ」
我が物顔で包丁を振るう不法侵入者。
「……なにやってんだ」
「すぐに出来るからな。 布団たたんで机出しといてくれ」
低い声ですごんでみても謎のエプロン女は全然動じる様子もない。
しかたなしにため息をつきながら狭い部屋に二人分の食卓の準備をした。
いたしかたあるまい。
出来上がってくる料理には罪はないのだ。


「勝手に家にあがるんじゃねえっていつも言ってるだろうが。
 ピッキングまでしやがって。犯罪だぞ、それ」
もぐもぐと純和風の朝食に箸をつけながら、もう何回分からない科白を口にする。
「キミがいつまで経っても合鍵をくれないからピッキングなんかしなければいけないんだ」
「いや、だから。 合鍵なんて渡したらそれこそお前、毎日来るだろ?」
「当たり前だ。
 本当は今すぐにでも一緒に暮らしたいところだが、学生の身分ではそうもいかないからな」
頭が痛くなってきそうなので、一方的に会話を打ち切って食事に集中することにした。
ずず、と音を立てていつだか大根の味噌汁をすする。
そういえば、と、いつだったか好物だと話したのを思い出す。

あー、くそ。
うまいなこのやろ。
20 ◆GkRPJL.Q4U :2006/02/17(金) 18:10:49 ID:4Rvc/hvP
むっつり黙って爪楊枝をくわえながら、片されてゆく食器を眺める。
結局、全部平らげてしまった自分に軽い自己嫌悪。餌付けされている気分である。
「今朝はやけに不機嫌だな。 またなにか粗相をやらかしてしまったか?」
「……お前、いつから料理始めた?」
質問に、ちょっと思案をおいて、
「5時からだな」
さらりと言う。
「馬鹿め……」
どうりで食卓が豪勢なはずだ。
思わずそうぼやいていた。
「……やはり、迷惑だったか?」
少し不安そうに伏せられた顔に、どうしたって続く言葉は尻すぼみになる。
「いや、むしろ有難いくらいだけど――」
逆接に続く言葉は、一転、突きつけられた彼女の微笑みに遮られた。
「――――そうか。よかった」
安堵のため息にも似た、声。
普段感情の表現が乏しいだけに、そんな嬉しそうな顔をされると調子が狂ってしまう。
「だからって、こんなことしてもらったままっていうのは、なんだか、申し訳ない」
すぐに、なんだそんなことを気にしていたのか、なんて呆れた風の答えが返ってきた。
「私が勝手にやっていることなんだから、キミが気を使う必要はない。
 ただ、そうだな。ありがたいと思ってくれているのなら、ちゃんと言葉にしてくれると嬉しい」
……いじらしいじゃないか。
しょうがない。流れ的に誤魔化すのもなんだしな。
「ああ、わかった。 ――――ありがとな」
照れくささに苛まれてつつも、そう口にする。
要求されて応じたからじゃない。紛れもない、俺の本心だ。

「………………」
が、言ってもらった当人は、なぜか釈然としない表情をしている。
え、あれ、俺なんか間違った?
「……そうじゃない」
「へ?」
「キチンと、愛してる、と言ってくれ」
ごふっ。
要求されていたのはさらにもう一個上らしいかった。
「……………………言わなきゃダメ?」
「…いや、別に言いたくないのならいい。
 ……そうだな。嘘をつかない誠実さというのも、人間として大切なことだからな」
拗ねられた。

く、くそう!
やっぱり言わなければならないのか!
21 ◆GkRPJL.Q4U :2006/02/17(金) 18:11:47 ID:4Rvc/hvP
「…………あー、」
なんとか搾り出した一音目に彼女は、ピクン、と小動物じみた反応を示す。
僅かに期待がこもった視線を感じながら、声帯を震わせて、唇で言葉をつむごうとする。
「あー…………、あ、」
駄目だ。
まだ、どもっているだけだというのに、恥ずかしくてたまらない。
「…………えへん、あー」
咳払いを一つ混じえる。
何この羞恥プレイ。

「あー……――――、言えるか、このヤロォ!」
男は言葉じゃなくて行動で示すんだとばかりに、半ばやけくそで彼女を抱きしめた。
有無を言わさず唇を押し付けると、一瞬力んだ体から、すぐに力が抜けてゆくのが分かった。

「………………卑怯、ものめ」
「嫌になったか?」
恨めしそうな視線。
にやりと笑って返事をしてやるけれど、本当のところ、ただの照れ隠しでしかなかった。

「いいや、そういうところもキミらしい。
 ――――すごく、気持ちよかった」
「………………っ」
きゅ、と抱き返してくる細い腕。
一気に顔に血が上る。
どうしてコイツは、涼しい顔でこんなこと言えるのか。
なんか、悔しい。

「な、もう一回…………」
「ん……」
甘えた声に応じて、もう一度唇を寄せる。

今度は、もっと深く。
口を開いて、互いの舌を絡めあわせる。
「――――う……ん、」
どちらともなく離れると、甘い吐息が頬に当たる。
ちらちらと重なる視線が照れくさくて、無言のまま抱き寄せた。
「やっぱり男の子だな。見た目より、ずっとしっかりした体だ」
抱きしめられたまま俺の胸に頬を寄せて、そんなことを囁く。
「なにを今更。水泳部でエースはってる誰かさんと比べたらたるみまくりだ」
「そんなことない。肩幅もあるし、胸板も厚い。すごく、男らしくて、――ドキドキしてる」

……う、ぐ。

ドキドキしてるだって?
そんなのは、こっちの科白だ。
腕の中の体は折れそうなほど細くて、潰れてしまいそうなほど柔らかくて、
まさしく女の子のものだったから。

「………………」
「……………………」
「…………なにか当たってるぞ?」
「…………すまん」
だって男の子だし。
22 ◆GkRPJL.Q4U :2006/02/17(金) 18:12:40 ID:4Rvc/hvP
「別に謝る必要はないんだが――――っん、」
予告もなしに肩に回していた手で胸に触れると、上ずった声が跳ねた。
「胸……、弱かったっけ?」
耳元で囁いて、うなじに沿って舌を這わせる。
動きにあわせて形を変えるふくらみは、まるで見繕ったようにぴったりと手の中に収まった。
「キミが――――、触って、くれるから……ッ、」
「……可愛いこと言うじゃないか」
途切れ途切れの声を聞いていれば、否が応でも興奮は高まっていく。

全体をこねるように揉んだり、服の上からでもわかる突起をぐりぐりと指で苛めてみたり。
「ふ、ぁ……、私、も――――」
されるがままに息を乱していた彼女が、うわ言のように呟いてもぞもぞと身を捩じらせる。
なんだ、一体何すんのかなんてと思ってたら、
「――――――ッ」
いきなり下半身をつかまれて、息が止まった。
まだ八分咲きだった海綿体に、一気に血液が流れこむ。
「ん――――ふふ、どんどん熱くなってくるのが、布越しにもわかる……」
悪戯っぽく笑って、手を上下に動かし出した。
ズボンの上からとはいえ、じんわりとした快感が腰からにじむ。
当然、みるみる容積を増すマイサンは、パンツの狭さに悲鳴を上げ始める。

「……服、脱がすぞ」
戦況はやや不利。
脱衣にて、アイデンティティーの奪還を目指す。
違う、イニシアチブだ。

「うん……、脱がしてくれ」
そう言って目を閉じたのを確認すると、あんまりに飾り気のなさ過ぎるトレーナーに手をかけた。
へその辺りまでまくりあげると、痛いそうなくらい白い肌が瞳に刺さる。

そこで、なんだか不意に心配になって、手を止めた。
「……寒くないか?」
冬も真っ盛り。
部屋の中とはいえ、良い暖房器具が入ってるわけでもない。
素っ裸でいるには寒いかもだ。
「一回シャワーでも浴びてから……――――」
顔をあげ、ちょっとだけ体を起こす。
そのまま離れてしまうと思ったのか、引き止めるように彼女は手を回してきた。
「確かに少々肌寒いが、それも肌を重ねていればきっと平気だ」
「だからって、風邪でも引いたら面倒だろ」
「心配してくれてるのか?」
歯を見せて笑っている。
「…………俺が風邪引きたくないだけだよ」
素直になれないのは我ながら悪い癖だ。
受け止めきれなくて、いつだって誤魔化してしまう。
少しは見習わなくちゃいけない。
俺はそんなことを思っているっていうのに、向こうは更に笑みを深くしていたりする。
「でも、すまない。私が我慢できないんだ。
 ――――ほら、もうこんなに濡れている」
手をとられ、スカートの、更にその奥へと導かれる。
指先が触れれば、小さな水音が聞こえた気がした。
23 ◆GkRPJL.Q4U :2006/02/17(金) 18:13:23 ID:4Rvc/hvP
「…………エロくなったなぁ、お前」
子供の成長を喜ぶ父親のようにしみじみと言う。
流石に少しは照れるかと思ったが、やっぱりけろりとした顔で返された。
「好いてる人間とできるのだから、当然だ」
あんまりに真っ直ぐな表現に、照れるのはこっちのほうだ。
なんというか、相手のほうが一枚上手。
調子乱されっぱなしだ。
「……しょうがない奴」
まあ俺も十分に準備オッケーなんだけど。
それならと、こっちも行為に集中する。

「っ、ぁ――――ん」
触れた指をそのまま撫でるように動かすと、半開きの口から色っぽい声がこぼれた。
ただその声がもっと聞きたい一心で、より近く、体を寄せ合う。

トレーナーをちょうど胸の高さまでたくし上げて、下着をずらす。
現れた淡い桃色の蕾に軽い眩暈を覚えながら、口をつけた。
うっすらと広がる汗のしょっぱさも、興奮を煽る材料でしかない。

「ふ――――ぁ……、きもち、い――――ッ」」
指は膣(なか)へは入れず、執拗に入り口付近の陰核を優しく撫でてやる。
経験上、そっちのほうが反応が良かった。
固くしこった陰核を軽くつまんでやると、蕩けるような声が快感を素直に言葉にした。
こみ上げてくるのはきっと欲情よりも愛情だ。
こうして触れ合ってるだけなのに、言葉にするのが恥ずかしいくらい、愛しい。

だから、もっと。
もっと、気持ちよくなって欲しい、なんて思ってしまう。

…いや、まあ。
正直に言えば、自分がちょっと辛かったというのもあるのだけれども。

「入れても……?」
彼女はすぐに頷いてくれた。
下に手を伸ばして、スカートの下のショーツだけ脱がす。
全部脱ぐのはやっぱり寒そうだから、服は肌蹴させるだけにしておいた。
やられっぱなしが嫌らしいので、こっちの下は彼女に脱がしてもらう。
熱く硬くなったそれが、外気に触れてぴくんと跳ねた。

彼女らしい長い黒髪を梳かす様に撫でてやると、安心したのか体から力が抜けていくのがわかる。
それを見計らって、出来るだけゆっくり腰を突き入れた。

「ぅ……ん――――、」
もう何度も繰り返してきた行為だというのに、彼女の膣はひどくきつい。
十分に濡れているはずなのに、すべての異物を拒むかのように締め付ける。
こちらの快感が上がる分、少し荒くすれば、彼女には苦痛だけになってしまう。
もともと、膣では感じにくい体質なのかもしれない。
それでも彼女は、俺を受け入れたがるのだ。

「っ、く――――ぁ、」
飲み込まれそうな快感で暴走しそうになりながら、緩やかな動作を心がける。
自分だけ気持ちよくなりたいのなら自家発電でもしてればいい。
この行為には、もっと大切な意味が必要だ。
24 ◆GkRPJL.Q4U :2006/02/17(金) 18:14:11 ID:4Rvc/hvP
「ん……、ん――――」
抱き寄せるように唇を吸う。
舌を絡めながら、うなじから胸を撫でる。
少しずつ、少しずつ。
とろ火で煮詰めるように、行為は深くなっていく。

「――――――ッ」
名前を、呼ばれる。
締め付けはもう痛いくらい。
ただ、息を切らしながら伸ばされた手を握り返す。

「っ――――も、う……」
先に音をあげるのは男の俺のほう。
きつすぎるし、気持ち良すぎる。
ちょっと早すぎるなんてなけなしの意地がちらつくのだが、
「いい、よ……、な、かに、出して――――ッ」
男の意地なんて、そんな顔をされてしまうとあっけなく崩れ去るのだった。

無理。
絶対無理。

我慢するだけ無駄だと悟った瞬間が、限界だった。
「っ、っ…………!」
二度、三度。
体ごと震わせながら、滾りに滾った欲望を吐き出す。
「は……ぁ…………、お腹に、たくさん…………、」
それをうっとりと受け入れる彼女が愛しくて、最後に長い口づけを交わした。


・・・


「念のため聞いとくが、今日は、安全日――」
「じゃないぞ、勿論」
ああ、やっぱり。

事が終わって、とりあえず二人で毛布に包まると、擦り寄ってくる彼女がさっきからなんか妙に嬉しそうにお腹を撫でていることに気が付いた。
ようやっと冷めてきた頭で、学生としては当然の心配を口にすると、案の定な答えが返ってきてしまった。

「あー……」
天を仰ぐ。
見えるのは狭い上に薄汚いアパートの天井だった。

「と言っても、安全日ではないだけで、危険日というわけでもないんだが……」
「いや、そういう問題じゃないし」
こういうのはやっぱ、けじめの問題だろう。

大体、安全日だとか安全日じゃないだとか、中だとか外だとかじゃなくて、そもそもゴムつけてない時点で駄目でした。
俺の馬鹿。ばーか。
うう、その微笑みが小憎らしい。
25 ◆GkRPJL.Q4U :2006/02/17(金) 18:14:52 ID:4Rvc/hvP
「……まあ、やっちゃったもんはしょうがないんだけど、」
今回で当たっちゃったら、神様のプレゼントということにしよう。
「けど、なんだ?」
「せめて……せめて、そうだな、お前が卒業するまで待ってくれ」
気恥ずかしさに目をそらせて、いつもの説教のような口調で、告げた。
こんな勢いみたいな形で言うのは不本意だが、そろそろ腹を括ってちゃんと形にしようと思ってたころだったし、良い機会だ。

冷静な彼女も、流石に今回ばかりは目をパチクリさせ、……と、思ったらまたいつもの微笑を浮かべて、
「それはつまり、プロポーズということで良いのか?」
なんて身も蓋もない要約される。
こっちはざっくり照れ隠しを切り捨てられて羞恥心に悶えながら、黙って頷いた。
ああ――、と、返ってくる嬉しそうな声。
「本当に、嬉しい。 ――――ありがとう」
胸の気持ちをそのまま言葉にして、彼女は、ぎゅう、と抱きついてきた。


「……ところで、」
素直に喜ばれて、なんかときめいてしまった。
「なんだ?」
「お前、さっきイってなかったよな?」
毛布を被ったまま、もう一度上から覆いかぶさる。
「あ、いや、確かにその通りだが、私としてはキミが満足してくれれば、」
お、珍しく慌ててやがる。
「いーや、駄目だ。 俺だけイって終わったんじゃ、俺が下手糞みたいじゃないか」
「そんなことはない、キミの技量は十分だ。 だ、だが、こういうのはやっぱり――――」
「いいから。 ちょっと黙ってろって」
ごにょごにょと要らん事を言う唇を、唇で塞いでやった。



・・・・・・



「…………もう終わりかい?」
「ごめんなさいすいませんそんなもの欲しげな顔しないで下さいもう出ませんごめんなさい」



    お わ り。
26 ◆GkRPJL.Q4U :2006/02/17(金) 18:15:34 ID:4Rvc/hvP
いじょーです。
すでに他所で投下済みのSSで申し訳ありませんが、
少しでもこのスレの賑わいになれば幸いです。
VIPのほうとか知らないんで、空気読めてなかったらごめんなさい。
27名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 18:37:53 ID:DOO2ijQz
ちょwww稲負さんwww
何度読んでもいいなあ。素直クールでもまた何か書いてくれる事を望みます。
非常にGJですた
28名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 20:37:16 ID:7ejpdrAA
す……素晴らしい……(*´Д`)
29名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 20:52:24 ID:3vbY51L0
くっ・・・・・・(*´Д`)
これが・・・・・これが萌えなのか
30名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 20:59:21 ID:iTeE680o
>>26
GJ!!


そういえばVIPのほうの
奴等ってここのこと知ってんのかな?
31名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 22:58:01 ID:H2eZC1ix
>>30


つっても俺が向こうでは古参だからかもしれん。
vip古参は激しく素クール好きだからな。
あと、vipは最近、15禁らしい。
もし、vipで投下された作品群に興味があったら、以下を参照して欲しい

素直クール保管所
http://sucool.s171.xrea.com/
32名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 00:09:09 ID:vLGmP6gv
>>30
宣伝は止めてね
33名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 01:52:13 ID:oczcpzHl
>>32
>>31のアンカミスか?
>>30は宣伝してないぞ?といいながら保守
34名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 01:59:46 ID:iEtPPxB3
宣伝に行かれる前に釘を刺したんじゃね?といいながら保守
35名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 11:07:30 ID:q/ABCZ1o
っても、このスレ立った瞬間に
エロパロ板に立った〜って書き込みがあったが。
アドレスを直で載せてるわけでもないし
他のVIPスレとはまた違う雰囲気漂うスレだから
そんなに心配することはないと思うが。

ま、過剰な宣伝はよしたほうがいいってのは分かる。
36名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 13:52:53 ID:BIX7MEYB
VIPと同じノリにならないことを祈るばかりだ
37名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 15:37:15 ID:iOqEyyWu
38名無しさん@ピンキー:2006/02/19(日) 10:44:14 ID:e8adZSWJ
よし、保守をしよう
39名無しさん@ピンキー:2006/02/20(月) 13:25:30 ID:ATHgASc5
捕手
40名無しさん@ピンキー:2006/02/20(月) 13:42:56 ID:KgAO1hJR
こうやってツンデレと同じように無駄に広まって汚れていくんだな
41名無しさん@ピンキー:2006/02/20(月) 13:58:21 ID:ATHgASc5
>>40
何を言いたいのかよくわからない
42名無しさん@ピンキー:2006/02/20(月) 19:52:53 ID:pDuaNYIm
素直クールって「貴方が好きです」より「そんな貴方、嫌いではありません」の方がしっくりしますか?
43名無しさん@ピンキー:2006/02/20(月) 20:10:39 ID:JuzglCI6
キャラクターの個性にもよるかな。
44名無しさん@ピンキー:2006/02/20(月) 20:54:52 ID:5LQjPxDd
>>41
古参
懐古
終焉
45名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 07:37:02 ID:DnpcrGUm
自然と滲み出て来る萌えからああこれ素直クールだツンデレだと自分で思うのがいいのに、
ジャンルが流行って最初からはいこれ素直クールですよ萌えろよみたいな事されるとつまらん。
46名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 10:41:09 ID:UG4eouXx
>>45
だったら何故このスレ覗いた?
47名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 14:50:07 ID:DWDtVEVO
とりあえず
みんな萌えれば
それでよし
48名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 16:30:58 ID:43X99mfr
>>45
そうやって萌えた上で、ほかにもっと同じ傾向のSSないかな?と思ってこういうところを覗くんだろう。
いやなら覗かなければいいだけの事。
49名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 21:25:56 ID:Duc7rU2M
>>46-48
スルーしろよ
50名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 00:16:58 ID:VJb09f6v
>>49
別にすべきでないだろ
話し合うってのも面白いじゃない
51名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 00:24:21 ID:w8UnT66C
参加してる人はねー
52名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 00:38:53 ID:VJb09f6v
職人もいないしさー
53名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 01:35:39 ID:w8UnT66C
じゃさじゃさ、新しい素直クールの形式作ろうぜ
なんか素直クールってしゃべり方とかそういうのけっこう決まってんじゃん
そういうの提案しあえば?俺寝るけど
54名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 01:38:10 ID:w8UnT66C
あーでもクールだもんなあ
クールってったら幅広くしづらいよなあ
55名無しさん@ピンキー:2006/02/23(木) 17:12:34 ID:bYLdhoHL
素っ気ないクール
素直でクールだが、必要以上にデレデレしない。
「私はキミの傍にいるだけでいい。」
「暑いから離れてくれないか?――それは離れすぎだ、少しでいい。」
56名無しさん@ピンキー:2006/02/23(木) 18:14:59 ID:bYLdhoHL
ウブ素クール
素直でクールだが、恋愛や性的な知識に乏しい。
「こんなとき‥何て言ったらいいのかわからない‥」
「これが好きという感情か、なかなか‥いいものだな」
57名無しさん@ピンキー:2006/02/23(木) 18:18:43 ID:iarkDl2F
>>56
「こんなときどんな顔したらいいかわからない」
「笑えば…いいと思うよ」

あれ?(゚д゚)
58名無しさん@ピンキー:2006/02/23(木) 18:26:20 ID:0l97R/Wb
>>57
こっち見んな
59名無しさん@ピンキー:2006/02/23(木) 18:57:44 ID:cPmKtAsS
クールにも色々ある、男っぽい言葉遣いじゃなくてもクールはいけるはず
冷めた態度もクールじゃね?
60名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 14:44:43 ID:QMALkTvT
age
61名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 18:36:57 ID:lGlGscAk
考えてもいいが……エロ展開にもってけないのでやめとく
62名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 12:27:47 ID:cHnzihLY
>>61
根が素直だからエチーしたいと思ったら
男を襲ってまでも使用とするのが
現在SSでよくつかわれる素直クールの図だな。
63名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 13:01:22 ID:UBsYihDs
age
64名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 14:46:32 ID:f7ltyhJl
素直クールってキャラをまだよく解っとらんのだけど、
>>56を読む限り、電撃文庫の「先輩とぼく」の先輩みたいなのが素直クールってのかな?
65名無しさん@ピンキー:2006/03/04(土) 02:06:01 ID:u5peL70X
保守
66名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 16:19:05 ID:op0Wthpn
age
67名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 21:13:21 ID:/6H2J3F7
>>64
その本は読んだことないが説明見る限りそんな感じ
68ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/03/06(月) 03:47:54 ID:TEoNZ1mK
なぜ君と結婚したのかだって?
簡単なことだ。
結婚すれば、君と思う存分セックスできるからな。
恋人関係や同棲とちがって、夫婦になれば、
どれだけ君と愛し合っても誰にも後ろ指を指されないからな。
笑うなよ。
私は理屈が多い女だが、これだって私なりに考えた選択だ。
恋や愛情は理屈では割り切れない。
君と出会ってから、私は、自分がしょせん動物のメスでしかないことを思い知ったよ。
だが、今はそれを嬉しく思う。
君はオスで、私はメス。
惹かれあうのも求め合うのも、自然の摂理だ。
だが、私たちは理性ある人間でもあるから、
それに関する状況を整えるためには、冷静な判断が不可欠になってくる。
私は、誰が何を言おうともあまり気にしない性質(たち)だが、
君との長い生活を考えれば、君や私の親族や、友人や職場の人間を
味方につけられるなら、そうした状況に持っていくのがベストと計算した。
──いや、べつにむずかしい話ではない。
私が、君を死ぬまで独占するためには、婚姻関係を結ぶのが一番有利だという結論に達しただけの話だ。

婚姻関係には、法的にも、慣習的にもいろいろな特典がある。
君の子供を産めるというのは、その最たるものだな。
別に、未婚でもできなくはないことだが、生まれてくる子供にとって
私生児よりは、両親がきちんと結婚している夫婦であることのほうが間違いなく幸せだ。
結婚式にきた君の親族にも言われたばかりだろう。
「はやく子供を作れ」と。
おせっかいなことばだが、今なお多くの人間が夫婦とはそういうものだと思っている。
つまり、私が君の妻になった以上、どれだけ君とセックスしようが、
避妊をせずに君の子供を孕もうが、誉められこそすれ誰にも非難されない、ということだ。
それは、私の望みにも関係してくることだからな。
──君の遺伝子を受け継ぐ子供を作ると思うと、とてもどきどきする。
私の子宮で、君の精をと私の血と肉でまぜあわせて、君の命を次世代につなぐのだぞ。
女として、これほどの快楽はない。

ふふ。
それに、君は、セックスの時に生でするのが好きなのだろう。
安全日にはいつもコンドームをつけずにセックスしたがっていたからな。
生でしたときは、避妊手段を講じたときよりも君は感じていた。
私は、その顔を見るのが好きでな。
君がいつもよりも感じているが嬉しくてしかたなかった。
はじめて私の膣に精液を中出ししたとき、君の気持ちよさそうな表情を見て、
私は続けざまにオルガスムスに達してしまった。
ふふふ。
今日から私たちは、危険日だろうがなんだろうが、
大手を振って膣内射精ができる間柄だぞ。
新居には、最初から、避妊具の類は何も持ち込んでいない。
これからの私たちには、必要ないものからな
──いつもながら、君の性器は正直だな。
天を向いてそそり立っている。
──私の性器も正直だって?
当然だ。
私も、私の性器も、自分に正直でなかったことは一度もない。
だから、君を迎え入れたくてこんなに濡れもするさ。
ふふ、では夫婦の交わりをはじめようか。
新婚初夜だ。
朝まで、たっぷりセックスを楽しもう。
69ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/03/06(月) 03:55:14 ID:TEoNZ1mK
エロパロ板なのでこっちのコテで投下。

笑うなよ、は名CG リボルバーケータイA5502K
http://www.geocities.jp/hokakoko/sunaocool6.html



>君がいなくなってから変わったこと?
>そうだな、自慰の回数が増えた。
>笑うな。私も女だ、こう見えても。

をみてどこかで使いたかったパターンです。
70 ◆GkRPJL.Q4U :2006/03/06(月) 06:27:23 ID:157Xy9wa
あら徹夜明けで覗いてみれば
ここでもお会いしましたね、ゲーパロ氏GJっす
いい素直クールでした

まあ、俺が>>18-25書いたのもゲーパロ氏の作品を読ませてもらったからなんで、
そのうち来てくれるかなーとは思ってたんですがw
またここに投下してくれるのを楽しみにしております


あと、コテでこういうレスをすると嫌な顔をする人もいると思いますが、今回だけにしますんで、大目に見てください
71名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 20:37:49 ID:FgzHYBr1
神が集うスレッーー!
期待して裸待機。新人さんも来てくれるとうれしーな。
72名無しさん@ピンキー:2006/03/10(金) 03:33:18 ID:58+BDqy1
age
73名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 22:22:45 ID:iAQdrmJQ
>>71
同感
だれかかいてくりぇええええええ
74名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 22:38:23 ID:dJ6wI3A6
エロは書けないな
7573:2006/03/11(土) 22:39:59 ID:iAQdrmJQ
エロは無理だと思うけど書いてみるかも
その時は批評してバカにしてくれるか?
76名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 22:47:31 ID:oInQIv4i
>>75
マゾか貴様はw
ええい、好きなだけやってやらぁ!
77名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 23:10:17 ID:fs+FwIEQ
>>75
さっさと書きな!この屑が!
78お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2006/03/11(土) 23:54:46 ID:IMW/v5/V
すみません。エロ無しの習作です。

「相変わらずモテるね。すごい手紙の量」
「ええ、困っています。私には、貴方という人がいると何度も公言しているの
にこの始末。ひょっとすると皆さん、日本人ではない?」
「いや、ここは日本だし、大抵のみんなは英語の方が成績悪いと思う」
「どうしてでしょうね」
「多分、周囲から見て釣り合わないからじゃないかと」
「一応確認。どの辺がでしょうか」
「まず、成績。俺は中の上。君は常にトップ」
「はい」
「運動神経。俺は中の上。君は常にトップ」
「さっきと同じですね」
「容姿の問題。俺は……どうなんだろう?」
「男前です。私としては世界一」
「……多分それはあんまり参考にならない意見だと思う」
「この場合、主観的な意見は却下ですか」
「客観的に見て、これでも過大評価だとは思うけど中の上?」
「自分を卑下するのはやめた方がいいですよ。間違っても不細工ではありません」
「そして、君は言っちゃ何だけど美人だ。いやちょっと待って。抱きつくのス
トップ」
「愛情表現です」
79お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2006/03/11(土) 23:56:05 ID:IMW/v5/V
「うん、分かるけど、教室でそれやられると、俺を見る男子の視線がさっきか
ら殺意視線うなぎのぼり中」
「人気のないところでは?」
「いや、そういう問題でもないんだけどね」
「で、彼ら殺りますか?」
「待て、今サラッと怖い事言わなかったか」
「あなたが傷つくのは我慢なりません」
「……それで君が殺人犯になったら、それはどうかと」
「悲しいですか」
「……まあ、悲しいかとだから抱きつくのストップストップ」
「愛情表現」
「それはさっき聞いた」
「話を戻しましょうか」
「そうだね。性格面は……自分の評価ってこれ、難しいよね」
「問題ないと思います。バスでお年寄りに席を譲ったり、迷子の子供のお母さ
んを助けてあげたり、善人だと思います」
「え? 困っている人を助けるのは当たり前だろ。その程度、善人とは言わな
い。普通のことじゃないか」
「そういうところが私、好きなんですが」
「? よく分からないな」

80お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2006/03/11(土) 23:57:49 ID:IMW/v5/V
「いいんです、それで」
「君の性格は……うん、常に冷静、でも冷たくもないかな。それとちょっと変
わってる」
「冷静だけど冷たくない、というのは微妙な表現ですね」
「じゃあ、涼しい人」
「褒められています?」
「んん、褒めてるつもり」
「ありがとうございます。今の言葉、魂に刻んでおきます」
「いや、そこまで」
「七代先まで語り継ごうかと」
「行き着くところまで行く気か、君は」
「その前に一つ問題が」
「何」
「語り継ぐには貴方との子供を作らないといけません」
「……教室の男子の殺意視線マックス状態」
「避難しましょうか」
「もう休み時間終わりだけど」
「体調が悪いので、保健室にという名目で二人いっしょに」
「いやそれ、多分駄目だと思うから。あ、本鈴鳴った」
(ひとまず終了)
81お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2006/03/12(日) 00:00:45 ID:IMW/v5/V
イメージ的には長い黒髪の静かなお嬢さん。
相手は自分を善人とは思ってない善人の少年。
ちょっと飛び入り参加したくなったので、軽く書いてみました。
コテハンはよそ(孕ませSS)のスレで使用しているものです。
よかったら向こうも読んでくれると嬉しいです…
…と、少し宣伝的な事も言ってみてよろしいでしょうか。
書いてて楽でしたが、この二人でエロやったらどうなんだろ。
82名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 00:02:09 ID:SOLjd64p
迷子の子供の『おかあさん』を助けた…


迷子おかあさん…

チョトかわいいかもなw
83名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 01:45:29 ID:NcO9Pyel
>>81
孕ませスレでも読ませていただいた直後にこちらを覗いたのでちょっと驚いて
しまいました…
この小説もいいですね〜ぜひ続きを書いてください!><
8473:2006/03/12(日) 08:37:23 ID:/7DyCx+M
一応作ったので出しておきます
バカにしていただけると光栄です(マゾじゃないぞw
8573:2006/03/12(日) 08:38:37 ID:/7DyCx+M
『お前が好きだ』
瞬間、誰がどう見ても告白にしか聞こえない事を言い放った女性はぐらりとおれの
ほうへ倒れて来た。
慌てたおれは、その身体をぎゅっと抱き、倒れまいと支えた。
『・・・ありがとう。嬉しいぞ』
「・・・え?」
いつも無表情だと謳われるクーがこの時は天使のような笑顔をしていた。
『私の身体を支えたという事は、私の事がすきなのだろう?』
「ちょ・・・!何を・・・」
『ん?嫌いなのか?ならば何故私を助けた』
「助けたというか・・・」
まあ、嫌いじゃなかった。なんたって、あのクーだ。学年で、いや学園で一番とい
えるくらいの美人で、噂ではスポーツも男勝り、勉強なんて都内一位だって話だ。
『とにかく、私は君が好きだ。君の返事を聞きたい』
そんなクーに告白をされたのだ。
「・・・おれも、好きだよ」
断る理由が見つからない。
『嬉しい・・・好きだ男』
言って唇を重ねたおれ達。
そうして、おれ達は恋人となった。


『どうした、さっきから遠くを見て』
「ん・・あ、ごめん。」
『もしかして、こんなコースじゃ満足できないか?・・・やっぱり最後はほてr・・もがっ』
「違うから。そういうえっちなことは考えてない」
『なんだ、つまらないな。私はもっと如何わしい内容でもいいのだぞ?男が望むの
であればこの身体がどうなろうと・・』
「嬉しいけど!」
おれとクーは今、水族館の休憩コーナーで隣り合って座っている。学園とあまりか
わらない服装。しかし、言動は学園の人達が知っている物とは全く異なるだろう。
おれだけが知っている彼女だ。それが酷く嬉しくて、愛おしくさえある。
8673:2006/03/12(日) 08:39:31 ID:/7DyCx+M
今日は祝日なので人が多い。
そんな中、大声で言うことじゃないだろ! と注意した所で無意味だろう。
今までの経験からして、注意してそれが効いた事は一度としてなかったように思える。
『嬉しい、けど・・・?』
「・・・いや、なんでもない。そろそろ行かないか?」
『あぁ、そうだな。急がないと君と居れる時間が少なくなる。私にとって、君と居れ
る時間は、アンパンを食べている時ほど幸せなのだからな』

五年前の告白から、毎日のようにクーはアンパンを食べていた。よほど好きなのだろう。

「そりゃどうも、お姫さま」
『む、なんだその棒読みは』
ぷぅと膨れるクー。
「いえいえ、お嬢様」
そんな顔さえ可愛くて、再びわざとらしく言ってしまう。
『怒った。今からホテルに直行だ。覚悟しろ』
「え゙」
『え゙とはなんだ?嫌か?』
目がギラリと黒く光る。
「い、いえ」
『よし、じゃあ・・・』
「こ、今度は何を・・・」
ギラギラの目がキラキラに変わり
『手を繋ごう!!』
そういって手をからませ、俗に言われる"ラブつなぎ"をするクー。あの日から、逢った
ときは必ず手を繋ぎ、そして必ずキスをした。そうしないと、クーの機嫌は悪くなる
8773:2006/03/12(日) 08:40:54 ID:/7DyCx+M
「何時でも繋ぐのな・・・」
『ああ、じゃないと、君が逃げてしまいそうだからな』
そう言って、突如として切なそうな顔をするクー。とてつもなく愛おしくなり、抱きし
めたい衝動に駆られるが、そこは我慢。おれの理性は、告白されてから踏ん張りっぱな
しだ。時には吹っ飛ばしたりしたけど。まあ、それはまた別の話。
「そんな事ないよ。好きだよ、クー」
そう言って、繋いだ手に力を入れる。
ああ、何て小さな手だろう。これからおれは、この小さな存在を守って生きていくのだ
ろう。誰が止めようと、何があろうと。
『・・・その言葉、信じるぞ』
「あぁ、任せとけ」
いきなりキスをしてくるクー。唐突だったので、唇に力が入る。しかし、すぐにクーの
舌が唇を割って入ってくる。しまった、ディープなんて教えるんじゃなかった。
「ふぉ・・・ふー・・(ちょ、クー・・・)」
さっき食べたパフェの味がする。チョコのような、バニラのような。あんまりパフェは
好きじゃないんだけど、こうやって食べさせてもらえるなら大好きになれるな・・・。
『んちゅ・・ちゃ・・・んふ・・』
くだらないことを考えていた所為で、自分達がどこに居るのかを忘れていた。
腕に力を入れ・・・左腕が使えない。そういや、ラブつなぎしてたんだ・・・。
周りの人達がコソコソと何かを言っている。それに気が付いた瞬間、いっきに身体が熱くなった。
今度こそ(片手で頑張って)クーを引き剥がす。
『ふぁっ・・・何をする。お楽しみ中に』
8873:2006/03/12(日) 08:45:07 ID:/7DyCx+M
とんでもない事を言い放つクーの口からたれている唾液をふき取り、なんとか説得の言葉を捜す。
こういうときはどうすればいいんだ・・・ああ、もう口から出任せだ。
「あれだ・・・ほら。続きはベッドでな」
しまった、と思った。一気に熱くなりきったと思った身体がまるで温泉の源泉みたいに熱くなった。
『・・・有り難う、でも時と場所を選んで言おうな』
そういって、珍しく頬を赤らめるクーが可愛くてたまらなかった。
そんな顔を見ていたら、お前の所為だろ!などと云うくだらない感情はどっかに吹っ飛んでしまっていた。
「しるか、クーの所為だ」
可愛すぎるんだよ
と云う本心は、おれからの反撃のキスで隠してしまう。
『んっ・・・ちゅ・・・』
おれ達は水族館の休憩コーナーを二人の空間のように、まるで周りの目なんて無いか
のように、長く、深く、激しいキスをしまくった。

おれ達は、いつだって一緒。
毎日キスをして、手を繋いで。
こうやって、僕らは生きてゆく――


              終わる!!
8973:2006/03/12(日) 08:46:39 ID:/7DyCx+M
即興でつくったのでオチがありません・・・・
出来ればバカにしt(シツコイ
90名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 11:55:34 ID:wWZvXcsE
激しくGJです!!!
続き期待してます
91名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 14:16:21 ID:pq0XYLkL
>>89
馬鹿にしろと言われてもこれくらいしかできないが
m9('A`)プギャプギャー

とりあえずGJ!
92名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 17:12:48 ID:NcO9Pyel
>>89
( ´∀`)σ)Д`)
9373:2006/03/12(日) 17:36:30 ID:wU7gun7I
>>90-92
とくに >>91-92 有り難う。
ところで、ホワイトデーネタも書いてみたんだけど、
どうしよう。明後日まで松か
94お魚 ◆5Z5MAAHNQ6 :2006/03/12(日) 22:06:40 ID:jZOz9ctB
>>82
結構ミスあります。
殺意視線ではなく殺意指数だったり、
お母さんは探してあげるものだったり、
休み時間ではなく状況的にHR前だったり。

>>83
向こうのスレの方がこちらにも。
とりあえず、宿題は順番に片していこうと思います。
あと、彼らの名前は鈴宮さんと貫井君ということで一つ。
95ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/03/13(月) 01:53:22 ID:OW6INgAr
うをっ、皆さんエロくて上手いなあ。

◆GkRPJL.Q4U様の>>24
>「念のため聞いとくが、今日は、安全日――」
>「じゃないぞ、勿論」
な中出しネタとか、

お魚 ◆5Z5MAAHNQ6様の、
>語り継ぐには貴方との子供を作らないといけません
な、「子作りばっちこーい」なネタをさらりととか、

濃い展開をラブラブでイケる方が来ているのはうれスィ。
個人的偏見では、素直クールは恋人関係だけは飽きたらず、配偶者として人生をともにするのを迷わず選択する度合いが強いと思っているので(笑)
クー「君を好きになったときから、君の子供をどう育てようか考えていたのだが」
男「うぇっ、クー、先走りすぎっ!」
みたいに。中出し、ケコーンネタスキー的にw

73様。
>>83 ギラギラの目がキラキラに変わり
この表現萌えた! 若いクーを書きたい……。


感想ばっかりではなんなので、過去に書いた素直クール的なエロパロを……。

<政略結婚>(wikiに上げているvip版にエロを加えたもの。初出は女性上位で優しく愛撫されるスレ)
ttp://hokan.s8.x-beat.com/josei/ss/04-05.htm

<リルミガンの娘>(これもwikiにあるvip版にエロを加えたもの。初出はWizardryスレ)
ttp://ascii2d.no-ip.info/user/wiz/wizss03-342.html

<アマズールの解放>
(初出Wizardryスレ。前半は別キャラ、後半の女王さんがツンデレ混じりの素直クールキャラ(のはず)です)
前半
ttp://ascii2d.no-ip.info/user/wiz/wizss03-231.html
後半
ttp://ascii2d.no-ip.info/user/wiz/wizss03-316.html

各保管庫管理人様
(ウィザードリィのエロパロ保管庫ttp://ascii2d.no-ip.info/user/wiz/wizsstop.html
(女性上位で優しく愛撫される小説の保管庫ttp://ascii2d.no-ip.info/user/wiz/wizsstop.html
に感謝。

素直クールスレ住人なのに、素直クール一直線なエロパロ書いてないような希ガス。
このスレで刺激を受けて、vipでもここでも書けるようになるといいなあ。
96名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 03:08:01 ID:BI6V2K7S
ゲーパロ氏の
「配偶者として人生をともにするのを迷わず選択する」素直クール
のアンチテーゼとしてなんとなく思いついたもの



不倫素直クール

「別れてほしい何て言わない。
 キミに妻子がいようが構わない。
 私は愛人でも妾でもいい。
 ただ、少しキミの側にいたいんだ────」


ただし、人前でのろける羞恥プレイは男のほうの家庭が崩壊するのでできない
てか、八割方鬱展開になるよね
97名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 04:14:25 ID:Vys/S45C
>>95
ゲーパロ氏に突っ込むのもアレですが、保管庫のアドレスが同じになってます…
98ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/03/13(月) 06:37:40 ID:OW6INgAr
>>97
朝起きて、はうわーっ!
正しくは、こちらでした。すみませぬorz

女性上位で優しく愛撫される小説の保管庫
ttp://hokan.s8.x-beat.com/josei/index2.htm
99名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 10:12:26 ID:WNGWJhgK
>>96
不倫の時点ですでに鬱展開の入り口だし。
10073:2006/03/14(火) 01:07:13 ID:UqUEMz8+
ホワイトデーネタ 投稿します。
どうぞバカにしてください
10173:2006/03/14(火) 01:08:41 ID:UqUEMz8+
『・・・なんだこれは』
「え?」
『これはなんだと聞いている』
そういって、おれが渡した腕時計が入っている長方形の箱をおれに突きつけるクー。
「えっと、今日ホワイトデーだろ?だからお返しを・・・」
『そうじゃない。何故こんなものなんだと聞いている』
こんなもの・・・
確かに安かったかもしれないけど、おれのバイト代を半年も溜めてやっとこれだ。
クーなら素直に喜んでくれると思ったが、やはり乙女心は判らない。と云うことだ
ろうか。
「ごめん・・気に入らないかな・・・」
『いや。とても嬉しいんだぞ。うん。有り難う』
「え、じゃあ・・・」
疑問だった。
どういうことだろう。
ふと、一ヶ月前の映像が蘇る。鮮明に、忘れようとしても忘れられない
『私は、バレンタインに何をプレゼントした?』
幸せな、悪夢を。
10273:2006/03/14(火) 01:09:11 ID:UqUEMz8+
『・・・なんだこれは』
「え?」
『これはなんだと聞いている』
そういって、おれが渡した腕時計が入っている長方形の箱をおれに突きつけるクー。
「えっと、今日ホワイトデーだろ?だからお返しを・・・」
『そうじゃない。何故こんなものなんだと聞いている』
こんなもの・・・
確かに安かったかもしれないけど、おれのバイト代を半年も溜めてやっとこれだ。
クーなら素直に喜んでくれると思ったが、やはり乙女心は判らない。と云うことだ
ろうか。
「ごめん・・気に入らないかな・・・」
『いや。とても嬉しいんだぞ。うん。有り難う』
「え、じゃあ・・・」
疑問だった。
どういうことだろう。
ふと、一ヶ月前の映像が蘇る。鮮明に、忘れようとしても忘れられない
『私は、バレンタインに何をプレゼントした?』
幸せな、悪夢を。
10373:2006/03/14(火) 01:10:15 ID:UqUEMz8+
↑ミス

丁度、一ヶ月前。
2月14日。その日は土曜日だった。学園のやつらは「ただでさえ貰えないのに・・・」と、
バレンタインが休日と重なったことを怨んだ。ちなみに、おれの通っていた学園は、
週五日制になる前から土曜日は休日だった。
そんな事もあって、土曜日の朝は昼前まで寝ていることが常だった。
その日も、いつのものように11時過ぎに起き、顔を洗い、歯を磨き、朝食はどうしようか。
いや、もう昼食か?などとどうでも良い考えを巡らせていると、ふと昨日のクーの言葉を
思い出す。
『明日、起きたら外に出てきて欲しい』
ちなみにクーとは、去年の5月くらいから付き合っているおれの彼女である。付き合い始め
て判ったことだが、彼女はとても率直な子だった。回りくどい事はした事がなかったので、
昨日の言葉は少なからず意外だった。
「・・・」
なにか嫌な予感がしたが、彼女の言うとおりドアのほうへ向かう。
おれはちとボロいアパート暮らしだったので、キッチンからドアまで数歩で行ける。
部屋の内側に開くようになっている扉をゆっくり(それでも大きな音がするほどボロいが)開
けてみる。
すると、部屋の前には1メートル四方ほどの立方体・・・いや、真っ赤なリボンが付いている
所を見ると、プレゼントか何かだろうか。スリッパを突っかけ、外に出てみる。箱の上面には、
宅配便が届いた時についている紙が付いている。どうやら郵送されてきたようだ。
「にしても・・・」
でかい。抱えて部屋に持って入れようとしたが問題が発生。
「・・・重い・・」
でかい上に重い。重さはせいぜい50キロほどだろうが、この大きさでは持ち辛さ100%搾りた
て果汁(?)だ。
やっとのこさ部屋へ運び込んで、ソファーに腰掛け、リボンを解いてゆく。
半分ほど解いた時に、ふと思った。
「これ、クーからなのかな」
だとしたらケーキか?この大きさ、重さ。とても一人では食べきれない。
おれは生クリームが駄目なのだ。クーには言ってなかったかな・・・。
そして、ようやくリボンを解ききった。
瞬間、箱の蓋が吹き飛ぶ。
「うをっ!!?」
おれはソファーから落ちそうになるのを堪えながら、蓋の無くなった箱の方を見つめた。
すると―――
10473:2006/03/14(火) 01:11:15 ID:UqUEMz8+
―――『私がプレゼントだ!!』
と言って、裸族が飛び出して・・・じゃなかった。
胸と股間。それ以外素肌を晒したクーが飛び出してきた。
「・・・・っ!?」
あまりの突然さに声も出なかった。おれは口をパクパクさせながらクーを見つめることしか出来なかった。
『・・・』
すると、クーは不服そうな顔を見せる。あ、怒った時の顔だ。
「あの〜・・・」
やっと思考が追いついてきた。どうやら、クーからのバレンタインプレゼントは自分自身らしい。
しかもわざわざ、胸と股間だけをリボンで隠すという手の込んだものだ。
しかし、そんなもの今時18禁のゲームでもあんまり無いぞ。
『・・・私がプレゼントですよ。何かしないのですか?』
「え・・・何かって・・?」
一応頭では判っていても、駄目だって判っていても、顔がニヤけてしまう。
『・・・』
クーの目が細くなった。クラスで如何わしい本を読んでいるバカを見るときと同じ目だ。
慌ててソファーから立ち上がりクーを抱きしめる。
「うそうそ、すげー嬉しい。ありがとな」
恥ずかしさを紛らさせるため、腕に力を込める。しかし、それでは否が応でも身体が密着してしまう。
『そうか・・・よかった』
そういう声帯の振動までもが、おれの身体に伝わってくる。
それが何故か恥ずかしくて、そして幸せだった。
「で、でも何でクーがプレゼントなんだ?」
ふと我に返り、最大の疑問をぶつける。
『ああ、実はな、巨大なケーキを入れようとこの箱を発注したのだが、以前君が生クリームが嫌い
だと言っていたことを思い出してな。急遽違うものを探したのだがいいものがなくて困っていた。
それで、何が言いかと途方に暮れていたら、書店の雑誌コーナーに「私がプレゼント」と云うものが――』
がくり。
それは雑誌というか、あれだよね、18禁コーナー。
淡々と説明をしているクーの口をおれの口で塞ぐ。
10573:2006/03/14(火) 01:13:43 ID:UqUEMz8+
『んちゅ・・・んぁ・・・』
と、その時
ぎぃぃいいぃ!!
「よぉう!!!!!!」
ボロボロの扉が開く音と綺麗にハモリながら威勢よく入ってきたのは、おれの先輩で
「ちゅ・・・こ、こんにちゎ・・・」
『こら男、まだ途中だぞ』
約3.5秒目が合って、先輩は(あっごめん)と口パクで言って、足早に部屋を飛び出していってしまった。
クーはおれの上に跨り、おれはと云うと、片手をクーの秘所へ伸ばしていた。
『ほら・・・ちゅ・・』
夢中で唇に貪り付いてくるクーをよそ目に、自分でもわかるほど血の気が引いて真っ青な顔をしたおれ――

――『思い出したか?』
「・・・はっ」
思い出したも何も、忘れられるはずが無い。あのから、おれは現在に至るまで、あのネタで先輩に
脅されているのだから。
「・・・思い出したけど、それがどうしたの?」
『私は身体を張って君にプレゼントした』
「まあ・・・」
おれはそれの後始末をそれこそ身体でしてますけど。
『つまりだ、君も私に身体でお返しをするべきだとは思わないか?』
「まあ・・・」
論理じゃ間違ってないね。
『と云うわけで』
10673:2006/03/14(火) 01:15:45 ID:UqUEMz8+
と、彼女はスカートのポケットから何か紙のようなものを二枚取り出した。
『ホテルの3時間無料券を2枚用意した。これから行こうじゃないか』
「・・・」
おれは有無を言わずにクーに背を向けスタスタ歩きだす。
『ははは、私から逃げられるとでも?』
そういってクーはおれの首根っこを鷲掴みする。
「い、いやぁああぁあぁぁ」
『ふふふ、楽しみだなぁ〜今日はどんなプレーだ?騎○位か?バ○クか?たまには松○くずしと
いうマニアックな・・・』
「判った!判ったからここではもうちょっと静かに!!」
クーの口を押さえ、おれは足早に教室を後にした。
後ろからヒソヒソと何か言っているのが聞こえる。
「ずりいよな、男」「ああ、不釣合いだよな」「早く別れないかな」
そんな事言われようと知ったことか。しゃーねーだろ、そんな重い存在をおれは手に入れちまったんだ。

家に生きて帰れるかを心配しつつ、おれは腕の中でいつの間に出したのかアンパンを食べてい
る存在を、これからどう処理するか思考をフルに活用して考えるばかりだった。

             終わる!!
10773:2006/03/14(火) 01:16:39 ID:UqUEMz8+
今回もオチ無しごめん!!!!!!!
108名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 01:24:13 ID:FR60vcl2
いやあ、GJっス!
109名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 02:29:48 ID:Kd07ATA1
>>107
こういう締め方もありかと。GJ!
あとはホテルでの詳細を…
110名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 11:43:30 ID:9hjwMSeo
GJ!

また続きをよろしく!
111名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 00:08:08 ID:Uy72uhYZ
かーしまキタ━━━━━━━━m9( ゚∀゚)━━━━━━━━!!
112名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 00:08:54 ID:Uy72uhYZ
ごめん誤爆…orz
113名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 21:28:36 ID:4GsumYKb
age
114名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 01:05:32 ID:vkf07DdW
こんなスレがあったとは…素直クールいいですね!
今書いているのが終わったら少し考えてみます
115名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 15:49:31 ID:VrFg36j5
>>114に期待あげ
116適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/03/19(日) 18:12:17 ID:xSXE397i
素クールはよくわからないから、
取り敢えずエロなしの試供品を投下してみる。
ちなみに、>>114じゃないよ。
117適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/03/19(日) 18:13:15 ID:xSXE397i
(僕と素直でクールな後輩)

「先生!」
『先生!』
「三年間!」
『三年間!』
「ありがとうございました!」
『ありがとうございました!』
「これからも!」
『これからも!』
「お元気で!」
『お元気で!』
「いてください!」
『いてください!』
「時々でいいから!」
『時々でいいから!』
「僕達、私達のことを!」
『僕達、私達のことを!』
「時々でいいから!」
『時々でいいから!』
「あんな馬鹿な連中がいたなって!」
『あんな馬鹿な連中がいたなって!』
「思い出してやってください!」
『思い出してやってください!』
「三年っ、A組っ、全員起立っ!」
『先生!』
「気をつけ、礼!」
『今までお疲れ様でした!』
118適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/03/19(日) 18:13:47 ID:xSXE397i
まあ、今日は要するに感動の卒業式というわけだった。
三年間通った学校に明日からはもう来られなくなった瞬間だった。
教室ではまだ別れを惜しみ合うクラスメイトの姿が見られるが、それも少数派だ。
実際、クラスのお別れ会は昨日のホームルームと放課後に済ませていたから、
僕を含めてクラスの大部分は先生に高校生活最後の礼を済ませると、あっさりと教室を出ていってしまった。
今日ではなく昨日の内にお別れ会を済ませた理由は二つある。
一つ目は、クラスのほとんどが部活に入っていて、その関係のお別れ会が必然的に予定に入っていること。
二つ目は、この学校は異様なまでにカップル率が高く、午後を二人きりで過ごす奴らが多いこと。
だが、僕には何の関係もないことだった。
三年間を帰宅部で通してきたから部活関係の付き合いもない。
年齢イコール彼女いない歴だから午後を共に過ごす相手もいない。
僕は二重の意味で少数派だった。
帰ってから何をしようか悩みながら、下駄箱の蓋を開ける。
「ん?」
結局、特別な行事の時以外は履かなかった指定の革靴の上に、小学校で使われる給食費の
集金袋のような趣のある味も素っ気もない茶封筒が乗せられていた。
卒業式で、しかも下駄箱の中というシチュエーションはもうラブレターとしか思えないが、入れ物が問題だった。
真っ白な封筒にハート型のシールで封をしてあるのが定番だというのに、これは茶封筒に糊で封をしてある。
入っているのがラブレターではなくて脅迫状の類に思えてくる。これを入れてくれた子はセンスが悪い。
ああ、センスが悪いなどと言っては失礼だ。折角書いてくれたのだから。
どんな子だろう。可愛い子だといい。もし付き合うことになったら、今日はその子と過ごそうか。
そこまで考えて、僕は自分が酷く自惚れてしまっていることに気づいた。
運動神経は中程度、成績も中程度、容貌も十人並み、とハーレム物ラブコメ小説の主人公のような
スペックが続き、眼鏡がなければ一メートル先も見えないド近眼というハンディがつく。
そんなぱっとしない奴の代名詞的存在であるラブコメ物の主人公にも劣るスペックの僕に、
わざわざラブレターを書いてくれるような女の子がいるはずがない。
浮かれていた気分が一気に醒めた。一瞬で醒めた。
そうだ。きっとこれは悪戯に違いない。田中か山田か、まあその辺りの悪ふざけだろう。
僕は何が書かれているかわからない手紙を開封する高揚感ではなく、
絶対に受かると思って受けて順当に合格通知が届いた大学から送られてきた入学手続き用の
書類が入った封筒を開封するような義務感を覚えながら、中身を傷つけないように注意して茶封筒を開封した。
『七山四郎(ななやましろう)先輩へ
       好きです。体育館裏でお待ちします。来ていただけると嬉しいです。
                                       空崎流美(くうざきるみ)』
と、宛先と本文と差出人をそれぞれ本物の筆を使ったらしい達筆な楷書で一行ずつ書いてある以外は何もない、
あれこれと飾り文字だの絵文字だの色ペンだのを使いたがるイメージのある今時の女子高生とは思えないほど
簡潔で直接的な手紙が入っていた。
これはもう悪戯では有り得なかった。先生から「お前らの字は読めない」と史上初の零点を食らったような
田中や山田はもとより、あいつらの彼女もこんな綺麗な字は書けないだろう。
これだけの字を書けるのは、書道四段という異色の資格の持ち主としても有名な空崎以外にはいない。
そして、あの真面目と評判な空崎が田中だか山田だかの悪ふざけに乗ったとも思えないから、これは本物なのだろう。
119適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/03/19(日) 18:14:20 ID:xSXE397i
しかし、なぜ僕にこんなものが?
僕は良家のお嬢様、成績優秀、スポーツ万能、というパーフェクトジオングみたいな完全無欠の美少女から
ラブレターが届いたという現実に喜ぶよりも先に、この手紙の意図を疑った。
一年男子からは「憧れの先輩」、二年男子からは「理想の同級生」、三年男子からは「可愛い後輩」として
ラブレターや告白の十字砲火を浴びせられながらも沈まず、「興味がない」の一点張りで男達を撃破してきた
撃墜女王であるあの空崎が、なぜ僕にラブレターなど書くのだろうか。
馬鹿正直に会いにいったら、黒服の男に囲まれて壷を買わされるのではなかろうか、などと
もし手紙が本物で文面が本心だったとしたら空崎に対して失礼なことを考えてしまった。
もういい。決めた。会いに行こう。内容が本当だったら嬉しいし、そうでなかったら逃げればいい。
最悪逃げられなかったとしても署名さえしなければいい。
僕はいそいそと靴を履き、体育館に向かった。

                  *        *        *

「よかった。先輩、来てくれたんですね」
日が当たらずじめじめと湿った空気が独特のそこには空崎がいた。もちろん一人だ。間違っても黒服の男達などいない。
背はあまり高くない。女子中学生と女子高生の間くらいの年齢に見える。
墨で染めたような艶やかな黒髪は肩の辺りで綺麗に切り揃えられている。
切れ長の瞳が印象的な細面の美貌には評判通りの淡白な表情と共に淡い笑みが浮かんでいる。
うん。日本人形のようなこの子は、間違いなく本物だ。
そう認識した瞬間、動悸が激しくなり、顔が熱くなり、心が舞い上がった。
「え、ええと、あの、手紙、ありがとう。読んだよ」
当たり前だ。読んだからここに来たのだ。動揺のあまり、まともに喋れていないのがわかる。
今の僕は何かを伝えるためではなく、ただ間を持たせるためだけに口を動かしている。
「はい。それで、お返事はいただけますか?」
空崎は僕とは対照的な平静そのものといった態度でさらりと問いかけてくる。
なぜこんなに落ち着いていられるのか疑問だ。実はここまでの流れは壮大なドッキリか何かで、
だからこそ空崎はここまで落ち着いているのではないか。
「……こんなこと訊くのは失礼なんだけど……あの手紙って本当なのかな?」
そんな思いが僕にこの失礼なだけでなく相手を傷つけかねない無神経な質問をさせた。
「先輩、失礼ですね。冗談であんな手紙を書くわけがないじゃないですか。
冗談のために何度も何度も手紙を書き直すようなことをするわけがないでしょう?」
「え……書き直したって?」
それはまあ筆で書く手紙だから、一度書いたら、たとえ間違っていてももう書き直すことはできない。
手紙を出すならそういう場合は新しい便箋に書き直すのが礼儀と言えば礼儀だ。
しかし、書道四段の空崎がたかがあの程度の手紙を書き損じるとは考えにくい。
それも、一度ならばまだしも、何度も何度も、というのは。
「はい。念のために便箋を十枚ほど用意していたんですが、使い切ってしまって……結局、新しい便箋を買いました」
「……君、書道の段持ってるんだよね?」
「いくら技術があっても、心と一緒に震える手まではどうにもできません。
心が落ち着いてまともな字が書けるようになるまで、三枚ほど書き損じてしまいました」
120適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/03/19(日) 18:14:56 ID:xSXE397i
「こ、心が震えたって……君が…?」
正直な話、「物凄くクールな子」「真面目な子」という噂でしか知らないこの女の子が動揺する姿を想像できない。
「本当に失礼な人ですね。私も本当に好きな人に手紙を書く時くらいは緊張します」
「す、好きって……その本当に……?」
また話が振り出しに戻ってしまった。本当に僕という人間はどうしようもない。
だがこれも不可抗力だ。ここまで臆面もなく言い切られると、聞かされている方が照れてしまう。
「ですから、そう言っているでしょう。
そうでなければ、『もっと綺麗な字が書けるかも』なんて何度も何度も書き直したりしませんよ」
「もしかして、三枚書き損じた以外のって……?」
「はい。何度書いても納得のいく字が書けなくて……好きな人に送る最初で最後のラブレターを
汚い字で書くのは一生の恥ですから、納得がいく字が書けるまで書き直しました」
空崎は特に恥ずかしがるでも気負うでもなく、淡々とした調子で、まるで業務上の報告をするように語った。
「そ、そうなの……」
対する僕はといえば、恥ずかしさのあまり卒倒してしまいそうだった。
端から見ている限りだと物凄く羨ましい状況で、僕も傍観者の立場だったら歯軋りした上に地団駄を踏むだろう。
しかし、見るのと体験するのとでは偉い違いがある。
本物の美少女にここまで言われると、嬉しくなる反面、それ以上に恥ずかしく、またその想いに応える資格が
自分にあるのかと重圧を感じてしまう。特に、僕のような並以下の人間の場合はそれが顕著だと思う。
「はい。ところで……お返事の方はどうなんでしょうか?」
上目遣いで問いかけてくる空崎が少しだけ言い淀んだように見えたのは気のせいだろう。こんなにも平然としているのだから。
「え、と……その……」
「できれば、結婚を前提とした交際が希望なんですが」
いきなり結婚と来たか。真面目と評判だからそういう流れも有り得ないこともないとは思っていたが、
いざ実際にそういう話をされるとやはり緊張する。灼熱した顔とは裏腹に、手と背中と膝裏に冷たい汗が染み出してくる。
「ちょ、ちょっと待った!」
「どうしました?」
自覚してやっているのかいないのか、空崎は非常に可愛らしく小首を傾げている。心の琴線にぐっとくるものがあった。
「そ、そんな結婚とか……何でそこまで僕のことが好きなわけ!?」
だがだからこそここで中途半端にしてはいけなかった。それをやると後で悔やむことになりそうな気がした。
「ああ、祖母に言われまして」
「……へ?」
「ですから、祖母が『あの人がお勧めよ』と言うので」
何だか、自分が酷く惨めに思えてきた。要するにこの子が僕を好きなのではなく、僕がこの子のお祖母さんに
なぜだか気に入られたというだけだったのだ。だが、惨めさに浸ってもいられない。そういうことなら、話は別だった。
正直なところを言えばこのチャンスを不意にするのは自分でもどうかしていると思うが、
お祖母さんの言葉に縛られていることに付け入るのは後味が悪い。断腸の思いで断ることに決めた。
121適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/03/19(日) 18:15:29 ID:xSXE397i
「ごめん……そういうことだったら……僕は……君とは付き合えない」
「……そういうこと、とは何ですか?何がいけないんでしょう?」
本気でわかっていない顔だった。淡白な表情は読みにくいが、何となくわかった。
「だ、だってさ、お祖母さんに言われたからなんだろ!?」
「はい。そうですが」
「き、君はそれでいいのか!?自分の人生なんだぞ!?別に好きでもない男と結婚なんておかしいだろ、どう考えても!」
「本当に失礼な人ですね。私は先輩のことが好きだと何度も言ったじゃないですか。
好きになったきっかけは確かにお祖母さんの言葉ですけど、そこから後は全部私の意志です」
空崎は僕の目を見ながらきっぱりと言い切った。やはり恥ずかしい。
「……本当に?」
「はい」
「お祖母さんの言いつけに従ってるんじゃなくて、本当に?」
「はい。私が先輩のことを好きなんです」
「……何で?」
信じられない展開に、また頭がくらくらしてきた。しかし、ここで倒れてしまうわけにはいかない。
「っていうかその前に、お祖母さんは何で僕を勧めたの?」
そもそも、そこからして問題だ。僕は良家の人に気に入られるような人間ではない。
もしかしたら人違いの可能性もあるし、もし本当だったとしたら何が気に入られたのか知りたい。
「はい。何でも、落とした財布を交番に届けてくださった上に、何の見返りも要求しなかったからだとか……」
そういえば、半月ほど前にそんなことがあった。見るからに高級そうな財布が道に落ちていて、
中を見たらゴールドカードやら諭吉さんやらで一杯で、落とした人は絶対に困っているに違いない、
もしかしたらこの金がなくなったせいで人生が狂ってしまうかもしれない、そうなったら後味が悪すぎると
思って交番に届けたら、その持ち主が着物を着た品のいいお婆さんで、お礼にこの中から好きなだけ
取ってもいいと言われて、断っても聞いてくれず、仕方なく諭吉さんを一枚だけいただいたという話だ。
そうか。あの人が空崎のお祖母さんだったのか。
「心当たりがありますよね?」
「あ、ああ。あるけど……」
「それで、今時珍しい無欲で礼儀正しい好青年だってべた褒めで……人を使って身元を調べて、
私に先輩のことを勧めた、というわけなんです」
流石良家というか何というか、そんなことまでされていたとは知らなかった。
「……で、婿選びのお眼鏡に適ったわけか……」
「はい。そういうことになります」
少し無茶な話だが無理な話ではないから、ひとまずは納得しておくことにしよう。
問題はもっと別な部分にあった。
122適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/03/19(日) 18:16:02 ID:xSXE397i
「……それでさ、君は何で僕が好きなの?」
これを知らずには、迂闊な返事はできない。
「実は先輩のことをこっそり観察しまして……
見ている内に、ああ、この人はいい人だなあ、と思ったんです。何の下心もなく人に優しくできる人だと思ったんです。
近所の一人暮らしのお爺さんの話し相手になってあげたり、
小さな子供達の面倒を見てあげたりしているのを、私ははっきりと見ました」
よくわからないが、人を使って他人の身元を調べるような人の孫だけのことはある。
正確な調査だ。どれも身に覚えがあることばかりだった。
「……そうなんだ……」
もうここまで言われたら、何だか凄すぎて話についていけない。辛うじてわかるのは、
この子は僕のことを本当に好きでいてくれて、お祖母さん公認であるということだけだ。
「はい。それでお返事は?」
真っ直ぐに僕を見上げ、淡白な表情のまま問いかけてくる空崎。
まだ迷いが消えたわけではないが、それでも方向性くらいは決まった。
僕は軽く咳払いをして息を整え、努めて静かな口調で答えた。
「……うん、もしかしたらすぐに愛想尽かされちゃうかもしれないけど、僕でよければ」
「ありがとうございます。嬉しいです先輩」
「うぁっ……!」
空崎の行動は速かった。僕が頷いた次の瞬間には、もう僕に抱きついてきていた。
警官が犯人を確保する時のようにしっかりと背中に手を回し、力士で相手を押し出そうと
する時のようにしっかり身体を密着させ、顔を僕の胸元に埋めている。
一体いつの間に動いたのかがわからないほどの早業に、僕は咄嗟にどうしていいかわからなくなり、
抱き返すでも突き放すでも中途半端な形で手を空に彷徨わせていた。
「え、えと、く、空崎……いきなりそういうのは……」
どうすることもできない僕だったが、幸いなことに声帯だけは正常に機能してくれた。
「どうしてですか?恋人同士ならハグは普通ですし、今は誰も見てませんよ?」
埋めた顔を僅かに上げて、例の如くに僕を真っ直ぐに見上げてくる空崎は、
視線で「どうして抱き締めてくれないのか」と問いかけてきているように思えた。
「や、だから、そういう問題じゃなくて……」
僕がどう説明したものか悩んでいる間も、空崎は一切の遠慮もなく身を擦り付けてくる。
腕の中にすっぽりと収まってしまいそうな小さくて華奢な身体はとても温かくて柔らかくて、
こういう密着状態を続けるには、女の子として魅力的過ぎた。
「いいじゃないですか。それとも、先輩、こういうのは嫌いですか?それならすぐにやめますけど……」
別に嫌なわけではないが、だからといってこのままここでこうしているのも誰かに見られそうで怖い。
それに、このままだと理性が麻痺して取り返しのつかないことをしてしまいそうなのも恐ろしい。
「いや、えーと、その……このままだと変な気分になったりしそうで……」
「いいですよ。先輩になら何をされても。私は先輩とそういうことしたいと思ってますから」
123適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/03/19(日) 18:16:34 ID:xSXE397i
あまりにも真っ直ぐに、あっけらかんと言われて、僕の方が恥ずかしくなった。
普通、こういうのは女の子が顔を真っ赤にするものなのに、年長の僕がドギマギしてしまっている。
色々な意味で情けなく、恥ずかしい。
「そ、そういうこと言うなって。付け込まれて弄ばれても知らないぞ」
「先輩はそういう人じゃないって知ってますから平気です」
よくもまあ、こうも恥ずかしい台詞をぽんぽんと言えるものだと思う。半ば、本気で感心する。
「もし先輩が変な気分になっても平気ですから、抱き締めてください」
空崎は僕の背中に回した手に力を込めて、より強く身体を擦り寄らせてくる。
「す、少しだけだからな……」
いい加減に、この華奢な身体を抱き締めるという誘惑に耐え切れなくなっていたので、
僕はせめてものプライドを守るべく渋々を装って、力を入れすぎると壊れてしまいそうな肩と
簡単に折れてしまいそうな背中に腕を回し、ほとんど触れるだけの力で抱き寄せた。
「先輩、それだと抱き締められている実感がありません。もっと力を入れてください。
私はもっと先輩のことを感じたいんです」
折角の配慮にダメ出しされてしまった。が、腹は立たない。凄く嬉しいことも言ってくれているからだ。
「あ、わ、わかった……」
顔が赤くなるのを自覚しつつ、腕に力を込めて自分から身体を押しつけるようにしてみた。
それに応えるかのように、僕の背中に回された手に込められた力が強まり、密着感が高まった。
「……も、もういいだろ?」
「……少し不満ですけど、また次の機会がありますから我慢します」
実際に抱き合っていた時間は十秒くらいのものだったのだろうが、僕には一瞬のことにも
数時間のことにも思えた。それだけ心地よい時間だったということであり、恥ずかしい時間だったということでもある。
僕が腕を離すと、不承不承といった口調ながらも空崎は素直に身体を離してくれた。
「あ、そうです。次の機会といえば、折角ですし、先輩、これから私の家に来てくれませんか?」
「え?」
また唐突な展開だった。この子の中では筋道が通っているのだろうが、凡人の僕はその思考速度についていけない。
「両親と、それから祖母に先輩のことを紹介したいと思いまして。あ、先に私が先輩のお宅にご挨拶に伺うべきでしょうか?」
そうか。そういう話か。突然すぎる展開に眩暈がしてきた。「結婚」「今後の人生」という重苦しい単語が脳裡をよぎった。
「大丈夫です。実はもう祖母が両親にも話を通していますから。それに先輩のご両親の方もきっと大丈夫です。
自分で言うのも何ですが、空崎家はこの辺りでも名家として知られてますから、真剣な交際だということを
ご説明すればきっとご理解いただけるはずです。だから安心してください」
この調子では、思い留まるように説得するのは無理だろう。もう腹をくくるしかなさそうだったが、
せめて時間稼ぎくらいはしたい。心の準備くらいはさせて欲しい。
「あ、ででも、やっぱり菓子折りくらい持ってくのが礼儀だろうし……今度、用意するからその時ってことで……」
「……それもそうですね」
しかし苦し紛れのその場しのぎは呆気なく粉砕されてしまった。ゲーム風に言うと「しかしまわりこまれてしまった!」だ。
「じゃあ、これから買いにいきましょう。よく利用する老舗の和菓子屋があるんです」
少し考える素振りを見せた空崎は、軽く頷くと返事も待たずに僕の手を引いて歩き出した。
外見に似合わない強い力に咄嗟に抵抗できず、引っ張られるままになってしまう。
「え、あの、ちょっ…」
「善は急げです、先輩」
心なしか弾んだ調子の空崎は、僕の抗議など受け付けてくれなかった。
小さいくせに力強い手に引かれながら思う。
僕の今後は物凄く前途多難なような気がするが、まだ訪れてもいない未来の危機を思い煩っても仕方がない。
今は目前に迫っている回避し得ない危機をどう切り抜けるかが重要だった。
124適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/03/19(日) 18:17:20 ID:xSXE397i
ノシ
125名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 20:06:30 ID:7JeTbcIS
>>124
GJ!
126名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 20:08:08 ID:t+Jro3x7
もう最高です!GJ!!
続きを期待して待っております
127名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 20:53:26 ID:4rfjCBlb
>>124
乙です!
128名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 04:16:05 ID:w9uJP85J
>>124
エロくなくてもいいから続きカモン
129名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 05:32:30 ID:hfU2MrTF
>>124
続きをよろ〜
130名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 06:40:35 ID:ivjIdrOE
ネ申
131名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 17:00:38 ID:+uK1nuEf
GJ!
俺も書きたいけど素直クールってキャラかぶるんだよなぁ
132名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 22:20:41 ID:5Cwlg1Rj
 _, ._
( ゚ Д゚)<・・・・

( ゚∀゚) < ネ申キター!!!!
133名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 22:24:23 ID:eXRMK4nx
>>131
かぶってもいいじょのいこ
134名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 22:31:43 ID:hfU2MrTF
>>131
キャラぐらい被っても気にしない!
135名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 23:23:52 ID:yuEcA/Ng
ログ読んで思ったんだが、エロシーンだけ書くのでもいいのだろうか。
エロじゃない部分は別のところで書いてあるんだが。
136名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 23:43:52 ID:qkDkMPpx
>>135

全然おk
そのエロじゃないところもURL教えてくれないか?
137名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 23:45:31 ID:Vv4puliQ
つうか、素直クールはエロ以外の部分こそ肝じゃないのか?
138名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 23:59:05 ID:qECcCf4Q
エロパロ板だしあるにこしたことはない。
無くてもかまわないけどね。
139135:2006/03/21(火) 12:55:52 ID:PNMLByJP
vipで名無しで書いてるんだよ。

エロは必要なところ以外割愛したんだ。
上の方でvipでも書いてる人見かけたから聞いてみた。
140名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 20:00:19 ID:cxB9/IXC
vip用にもエロ用にも急に書けなくなったorz
141名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 21:41:08 ID:c1pASVrm
たとえVIPでも年齢制限なしの板だからなぁ。
それでも初期のほうは割とエロネタはあったけどね。
>>139であるように最近は必要な描写以外は割愛してるひとが多いからね。
142名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 01:44:52 ID:33EDmbWv
保守
143名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 10:21:07 ID:jRjVkPEc
神待ち保守
144名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 01:31:36 ID:58eJiL7f
保守
145名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 12:22:41 ID:pZ3gwpZG
クールに保守
146名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 19:32:30 ID:fPPYYSUb
>>124に期待あげ
147名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 21:42:24 ID:dtIa7s2O
エロ無しになるかもしれませんが、書いてもいいでしょうか?
148名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 21:56:02 ID:hb/LlmB9
むしろ書いてくれ
149名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 23:06:14 ID:AfjekCSx
野球が始まったからなかなか書く時間が取れないなぁ
150名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 01:32:50 ID:/dRtO4ou
自分114で今書いてるんだけど書いてて訳分からなくなってきた
自分の技量で素直クールは無理なのか?
151名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 12:53:38 ID:O5IFg7JS
技量なんてくだらないぜ。
俺の歌を聴けーーッ!
152名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 19:23:35 ID:zcQg6YGc
ここに投下するつもりで書いていたけど素直クールと違うような気がして他に落としちゃった。
素直クールって難しいですね。
153名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 19:44:56 ID:MOvnAi2k
>>152
どこに落としたか教えてくらはい
154名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 21:47:14 ID:lrNpD2ep
多分気の強い娘スレだと思う
155名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 12:08:26 ID:CP3Zz/al
>>154
読んできた。GJ!
かなりよかった
こっちに投下しても大丈夫だと思われ
156名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 13:29:08 ID:zUFCg29n
ありゃ、てっきり理想郷の18禁投稿板のかと思ってた。
157名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 14:39:41 ID:8T1/zCUI
>>156
kwsk
158名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 15:41:04 ID:jNc+PiNn
>>157
あ、スマン。
正式なサイト名は「Arcadia」だった。
そこの18禁SS投稿掲示板の「僕と僕と私の話」って奴かと思ったのよ。
タイミング的にも大体丁度っぽかったんで。
159名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 22:40:15 ID:MUoazliO
「僕と僕と私の話」 イイネ
タイトルからしてどうみても妹も絡みます。本当にありがとうございましたな感じで。

ただ、感想レスを見たら基地外みたいなやつがいて萎え。

160 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:15:10 ID:+lV7OBJN
素直クール書いたよ!
ただ、これで素直クール名乗っていいのかちょっと判断つけにくいよ!
でも恥をしのんで投下するよ!
1611/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:17:25 ID:+lV7OBJN

 目が覚めると、俺の知らない場所にいた。
 冷たい印象をうけるコンクリートの壁には、窓が一つも見あたらない。
 その部屋のただ一つの出入り口の外には、すぐそこに滑り止めすらついていない階段が見える。
 なんとなく、ここが地下室であることがわかった。

 目が覚めて地下室、というとかなりミステリーな香りのする展開だ。
 陳腐すぎると言えば陳腐すぎるが、それに加えて俺は拘束されている。
 手足にロープで縛られ、大文字に足を開くように固定されている。

 まあ、ここまでならばよくある……いや、人生に一度でも体験したことのない人の方が多いだろうけど、
 それなりによく見る光景といえばそうだろう。
 が、俺を襲った事態はそれの斜め上にあった。

 肌寒さを感じて首を下に向けてみると、そこには俺の将軍様がたらーんと垂れていた。
 俺が何を言いたいのかと言うと、地下室に拘束されたあげく服まで取られちまってるということだ。
 ちんこ丸出しの格好で大文字に貼り付けられてるなんて、一体どんなプレイかっつーの、と一人ツッコミをいれる。

 しばしツッコミをいれたりして精神の安定のために遊んでいたが、流石に五分も経てば何かを考え始めた。
 俺に一体何があったのか、更に誰か人が来る前にこの拘束から抜け出して、出来れば服を見つけて脱出しなければならない。
 こういう展開でのろくさしていても、事態が好転するとは決して思えないくらい俺にも分かっている。

 まずは、俺は頭をはっきりさせて、記憶を思い出す力を強めるために自分のことを思い出した。
 名前、大滝 山郷。年齢、17歳。性別、牡。童貞。
 特にこれといった特技は無し。趣味もなし、強いて言えばマンガを読むことくらい。
 成績は大体学年三百人中百位くらい。低くもないが、そう高くもない。
 モテない……いや、それはないか。一人だけだけど、俺のことを好きと言ってくれた女の子がいた。
 放課後、屋上で夕焼けをバックに告白されて……あれ?
 そういえば屋上から出た記憶がない。
 そうだ、屋上から出ようとしたとき、扉にいつの間にかカギがかかっててそして……。

 ……美人局っていう奴かッ!
 あ、いや、違う。痴情の縺れからの突発的犯行という奴かッ!

「起きたのか」

 目の前には彼女がいた。
 昨日、告白してきて、俺がその申し出を断った彼女。
 別段、彼女は顔が悪いというわけじゃない。むしろいい方だ。
 体つきだって悪くはない。ナイスバディーとおっぱいハンターたる俺が太鼓判を押してもいいくらいだ。
 百番台をうろちょろする俺とは違い、彼女は成績もトップ争いをしているし、
 特に部活もやってないはずなのに何故か運動神経もよい。遺伝だろうか。
 そして性格だって悪くはない。いつでもどこでもクールでスタイリッシュ。
 やることなすこと全てに無駄がなく、的確で、それでいて優美さも失っていない。
 男達にはクールビューティと呼ばれてあがめられ、男女問わず大部分の生徒から人気がある。
1622/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:18:30 ID:+lV7OBJN

 俺が彼女の何が気に入らなくて、告白――彼女の言うところの『男女交際の申し込み』を断ったのか。
 別に不満があったわけじゃーない。むしろ、断った理由は不満がなさ過ぎたとこだろう。
 んな、パーペキ人間相手に俺が務まるわけがないわけだ。
 俺と彼女じゃー不釣り合い。
 彼女とは幼なじみだった、とか、昔から親しかった、とかならまた話は別だろうが、
 昨日以前に口を聞いたことは、トータルで二、三回くらい。
 正直、昨日「放課後、屋上に来てくれ」と書かれた手紙が下駄箱に入っていたときには、何かの間違いかと思ってしまったほどだ。
 まあ、それに、俺の友人にも彼女のことが好きという奴がいて、
 そいつが中々イイ奴で、愛嬌もあって、一途な野郎だということを知っていて、
 「俺も応援してやるよ」なんて軽口を叩いたこともあったから、というのも一つの理由ではあるんだが。

 しかし、どうしたものか。
 俺も一介の男子高校生。一日にオナニーを三回やれば健全らしいお年頃だ。
 フリチンで、女の子の前にいるのは流石に恥ずかしい。
 でも、彼女が俺を気絶させて、第三者の介入無しでここに運んできたのならば、服を脱がしたのも当然彼女なわけで。

 いやん、恥ずかしい、もうお嫁に行けない……。

 アホか、俺。

「出来ることならば、ここがどこで、一体なんでこうなってるか教えて欲しいんだけど……よろし?」
「私の家の地下室で、君が私の申し出を拒否したからこうなっているのだ」
「ああ、さいですか」

 俺ちゃんピンチです。
 もし、もしですよ。もしもの話ですよ。
 彼女が平常時、クールに振る舞っている反動で、こういう色恋沙汰になるととてつもなくホットになってしまう性格だったら、
 しかも、社会のルールを超越しても平気ですから、私! と開き直るようなベクトルのホットな性格だったら。
 そりゃあもう筆舌に尽くしがたいアンなことやコンなことをされたあげく、無理心中がありえないわけじゃないわけでして。
 いや、それは流石に自意識過剰なのかもしれないけど。

 事の大小あれども、この事態はあんまり俺に良い方向には転がるようには思えない。

「あの……もう、今更逃げようとか思わないです」

 俺は白旗を揚げていることを明確にした。
 抵抗しません、勝つまでは。

「だから、一体俺はどうなるんでしょーか?」
「それは君次第だ」

 ああ、さいですか。
 良かったと言えば良かったな。
 あとは彼女がパラノイアじゃなくて、ありもしないことをわめきたてないで、
 包丁を俺の胸に突き立てないことを祈ることばかりだ。

 彼女の方を見てみる。
 とりあえず、外見からは包丁、果物ナイフ、ナイフ、サバイバルナイフ、ポン刀、サーベル、
 五寸釘、アイスピック、千枚通しその他諸々の刃物は持っていない。
 致命的突起物のついた女、というわけでもなさそうだ。銃などの撃たれたら死んじゃうものも持っていない。
 ロープやヒモなどの、首に巻かれて引き絞られたりしたら永遠に眠っちゃうものも所持して無し。
 手で首を絞められたら流石にお陀仏だが、まあ、そんときには腹をくくるしかないな。
1633/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:19:09 ID:+lV7OBJN

「どうした、何故黙っている」
「いやあ、こう見たら、やっぱり君は美人だなあ、と思ってさ」
「そうか」

 とにかく、リスクを減らせるだけ減らしておこう。
 おべっかでもなんでも使って、最悪の事態と次悪の事態くらいは防がないと。
 男のプライド? ふっ、そんなもん、とっくに忘れちまったなぁ……。

「ありがとう。そう言って貰えるととても救われる」

 俺にごますりの才能があったのかどうかわからないが、
 あの妖怪鉄面……おっと、学年でクールビューティと称される彼女が頬を赤らめた。
 ついでに言っておくと、俺は彼女が俺に告白してきたことは何かの間違いだと目論んでいた。
 拉致監禁されている今でさえ、彼女が俺のことを好きなのか疑問を抱かざるを得ない。
 将軍様のお国が、国民に大して公平な配給をしはじめた、と言われた方がまだ納得できる。ごめん、それは嘘。

「いやあ、それにしても成績優秀、容姿端麗。
 才色兼備な君には、俺なんか取り柄のない男なんてぇー釣り合わないね。
 もっとかっこよくて、頭もよくて、人間が出来てる男の方がいいと思うよ。
 俺の友人に一人そんな奴がいるから、紹介してあげるよッ」

 まあ、成績優秀、容姿端麗、才色兼備……だけど地雷女だったわけだが。
 しかも目標を追尾する型の。

「……どうしてそんなこと言うんだ?」
「え? いや、またまた姐さんたら謙遜しちゃってぇ。
 みんな、噂にしてますぜ。姐さんがまたああしたこうしたって。
 もう一挙一動足を解説する勢いで、姐さんの優美な動きを……」
「他の人間の噂なんてどうでもいい。問題なのは君がどう思うか、だ」
「えっと……どういうこって?」

 なんか変な口調になってるな、俺。
 っと、そんなことより彼女の言葉の方が気になる。

「私は常に勉強をし、体を鍛え、プロポーションを保ってきた。
 幸い、顔は親譲りの標準以上でこれ以上いじることはなかったが……。
 今までの、そして今の、更にこれからの全ての研鑽は君のためだけにあったんだ。
 君はこれでも尚、釣り合わないと言うのか?
 君のためならどのような艱難辛苦を受けることもいとわない。
 だが、そろそろ君が振り向いてくれないと、私は……壊れてしまう」
「……へぁ?」

 彼女は顔を伏せ、辛そうに言った。
 常にCOOL。感情を滅多に表に出さず、怜悧さのにじみ出る行動をしている。
 論理的で筋の通らないことはしないが、寛容がないわけでもなく。
 クールビューティの名を欲しいままに、妖怪鉄面皮とも呼ばれていた彼女が。

 正直、こんなに辛そうにしているのを見たのは初めてだった。
 あ、いや、過去に一度だけ見たことがあったような……。
1644/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:19:51 ID:+lV7OBJN

「えっと……」

 やばい、なんだか言葉が出てこない。
 仮にも美少女と呼ばれる人がこんな風に悲しんでいるところを見て、平常でいられるほど俺は鬼畜じゃない。
 かといって、決して俺が男らしいというわけでもない。俺はチキンなだけだぇ。

「なあ、君のためなら何でもしよう。
 金銭を要求するなら工面する。何かしらの労働を求めるのならば喜んで行おう。
 ……君が私のこの肉体を求めるならば……望むところだ。だから……」

 くそう、俺の脳がオーバーロードだ。処理速度を超過しているッ!
 何を言っているんだ。敵国の暗号か!?

 へなっとしなだれかかってくるな!
 くそう、俺の将軍様がオーバーロードしてしまうッ!
 ああ……、女の子特有のいい匂いが俺の鼻を直撃して脳に電撃戦。
 しかるのちに、俺のミートスティックに焦土作戦。

 管制塔! 管制塔!

 しかし、悲しきかな。
 俺の、二枚重ねティッシュペーパーを一枚にしたものより薄い理性が貫通したとしても、
 手足を拘束されてはこれ以上何も出来ぬ。
 彼女の言っていることが、寸分も違わぬものであれば、一声かけるだけで猛る煩悩を鎮めることができようが、
 流石にそこまでやれるほど脳が腐ってない。

 理性は薄いが、これでも道徳観とか倫理観とかそういうところは厚いつもりなのだ。
 つまり腰抜けってことさね。

「き、君が何を言っているのかよくわからない、と言うか、
 どうやら会話がかみ合ってない、みたいなんだけど……。
 落ち着くために、お互い、もうちょっと落ち着けるところで落ち着いて話をしないか?」

 彼女は答えを保留することにちょっと渋い顔をした。
 けど、俺が有り余るほど落ち着いてないっぷりを最後の一文でアピールしたおかげで了承してくれた。
 手と足の拘束がゆっくりとほどかれる。
 服は返してくれなかったが、手と足が自由になったおかげで、ぶるんぶるんと猛る将軍様を隠すことができる。

 そもそもなんで俺は拘束されていたんだろう、という疑問がむくむくと盛り上がってきた。
 趣味、趣向、そう言って斬り捨てるのはいささか乱暴すぎるような気がする。
 それに加え、学校の屋上で気絶させられ、そこからどうやって運ばれたのかも不明だ。
 彼女も、運動神経がいいとは言え、流石に女の子の細腕で俺の体を持ち上げるのは
 中々条件が厳しすぎるだろう。
 もちろん、気絶している男を運ぶ、という行為が人に見咎められないわけがない。

1655/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:21:12 ID:+lV7OBJN

 が、その疑問は一分もしないうちに払拭された。
 地下室から出る階段を登ると、そこは別世界、と言って差し支えなかった。
 中流家庭出身の普通の人間の目から見ると『こんなもんに金をかけるのはただのバカ』くらいしか感想が思い浮かばない、
 豪勢な部屋。
 壷や皿って、本来中にいれたり、食べ物を乗せたりして使うもののはずだが、何故か模様が描かれて飾ってあったり。
 装飾過多な照明器具に、子どもの落書きにしてはいささか超越した巧さの絵画。
 ペルシャだかなんだかわからないが、ふかふかの絨毯。
 別に装飾品に金をかけるのを悪だ、とは思っていないが、この部屋にある物品一つ買うくらいのお金があれば、
 世界のどこかにいる子ども達を一体何人……いや何万人を救えるかどうかを考えれば自然と気分が悪くなってきた。
 自分じゃ、募金なんて一円するのにも躊躇われると言うのに、ついついそう考えてしまう。

 俺は語彙も知識も貧弱なので、この部屋を表す言葉を見つけるとしたら、
 『まるで美術か世界史の教科書から抜き出したような』といったところだろう。
 至る所に金をかけている。
 そういえば、いつか彼女は良家の娘だ、という噂を聞いたことがあった。
 ここまでとは想像も付かなかったが、なるほど、これほどまでの経済力があるならば、
 誰か信頼できる人間を雇って、学校から家まで車で運ばせることくらい簡単だろう。
 俺が気絶させられたときは夕方だった。
 もう少し待てば人も少なくなるし、暗くなって見つかる危険性も少なくなる。
 校門のところまで俺を運ぶこともそう難しくないだろう。
 万が一見つかっても、金を掴ませれば……。

「こっちだ」

 俺は彼女のあとを付いていった。
 どこからか現れた裸の男が、どれほどの規模だかわからないが屋敷の中にひょっこり現れ、
 そのお屋敷のお姫様のあとをフリチンを隠しながら、
 とてとてとついていくのを事情の知らない誰かが見たらどう思うだろう?
 十中八九ショットガンで打ち抜かれるだろうな。
 彼女において、そのようなミスをするとは思えないから、安心しておこう。

 そういう俺の考えは杞憂に終わった。
 何しろ、どこまでこの屋敷は広いのか。
 それとも俺の体が小さくなったのか、やたら長い廊下を歩く最中、ここまで大きな屋敷にいるはずの
 使用人にただ一人も会わなかった。
 もしかしたら、彼女が前もってその時間帯は留守もしくは屋敷のこの区画には入らないように言っていたのかもしれない。

 それにしても、あまり納得ができるような光景ではなく。
 つい寸前まで誰かがいたような雰囲気がそこかしこからする。
 マリーセレスト号のような怪奇が起こっているような感覚がするのだが……。

「ここだ」

 長い廊下を抜け、目的地に到着した。
 そろそろ服が欲しいな、と思っていたところだったが、目的地について今まで服を支給されなかった意味がわかった。
 風呂だ。

 なるほど、これならば服を着る必要はない。
 だけど、なんで風呂なんだ?

「落ち着けるだろう?」
「いや、落ち着けるといえば落ち着けるけど……なんかベクトルが。うぉ」
1666/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:22:00 ID:+lV7OBJN

 彼女が制服のボタンを手早く外していく。
 その制服は、俺の制服でもハンガーにかかっている彼女の予備の制服でも、見知る、見知らぬ第三者の制服でもなく、
 彼女の現在今着ている制服。
 俺が制止の声を上げる間もなく、気持ちいいほどするりと上着を脱いでしまった。

「お、おい! な、なんで脱ぐんだよ!」
「なんでって……服を着たまま風呂に入る習慣は持っていなくてな。
 君が望むのならばその手のコスチュームを用意するが、今は我慢してくれ」
「い、いやいやいやいや! 確かに風呂には服着て入らないけどッ!
 そもそもの問題はなんで一緒に風呂に入るということで。
 いや、そうじゃなくて、まずなんでここが風呂だと聞きたい」
「ここが風呂なのは、私の祖先がそういう風な設計の元、建築させたからだ」
「あ、いや、悪い。今のは省略しすぎた。
 なんで俺を風呂に紹介したのか、それを聞きたい」
「落ち着ける場所に行きたかったのだろう?」

 ……ダメだ、話がかみ合わない。

「……すまない、君に嘘をついてしまったな。
 私が一緒に君と風呂に入りたかったからだ。
 君に嘘などつきたくなかったが、自分自身の心に嘘をついたしわ寄せとして君に嘘をついてしまった。
 全て私の所為だ、申し訳ない」

 言ってることが理解できない。

「それで、疑問は解消できたのか?
 君と私の間に出来た疑問はできるだけ解消できるように努めたい」
「いや、両者の溝はマリアナ海峡よりも深くなってきている」
「そうか、それは残念だ」

 俺が片手を頭に当て、頭痛を堪えるポーズをすると、彼女は泣きそうな顔をした。
 というか、俺の知る彼女は、こんなに常識はずれではなかったはずなんだが。
 一体何があったのか……。

 ひょっとしたら、あの屋上での出来事。
 彼女が俺を気絶させたのではなく、突如火星から飛来した宇宙人が俺たちをキャトルミューテーションし、
 俺たちになんらかの手術を行ったのかもしれない。
 もしくは、今俺がいる場所は地球ではなく火星なのかも……?
 そう考えれば、様々な疑問は払拭できる。

 あの地下室といい、風呂に来るまでの道の雰囲気といい……今まで窓を一つも見なかったことといい、
 純洋風なお屋敷のくせに、風呂は超広いひのき風呂だといい……。

「しまった! いつの間に俺は風呂に!」

 我ながらお馬鹿な思考に嘆息すると、いつの間にか暖かい湯の中に浸かっている俺がいた。
 かけ湯もそこそこに、熱い湯の中に身を沈めている。
1677/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:22:40 ID:+lV7OBJN

「湯加減はどうだ?」

 そして目の前にはお約束通り彼女が。流石に全裸になられるのは俺の目に毒だったので、タオルを巻いて貰っている。
 その代わり、俺には手ぬぐい一つ貰えない。だから将軍様は未だその猛りを隠せないわけで。

「ああ、ちょうどいいくらいだな」

 ここであまりに動揺しても釈なので、表面は平静を整えている。
 彼女は俺に付かず離れず、ちょうど俺のぎりぎり許容できる距離感をもって風呂の中にいた。
 長い黒髪が湯に触れないように、頭でまとめている。
 彼女が顔を横に向けたときに見えるうなじが、これまた俺の官能を刺激するわけで。

「そうか。それはよかった」

 彼女のその言葉を口切りに、沈黙が包まれる。
 時折、ぴちょーんと水滴の落ちる音以外、何も聞こえない。
 体をよじらなければ、このひのき風呂の湯は漏れない。

 しかし、広い風呂だ。スーパー銭湯すら超越した大きさだ。
 これが一個人の自宅にあるとは思いがたい。
 やはり、火星か?

「それで、そろそろ話をしようか」
「……」
「聞いているのか?」
「あ、いや、すまん。聞いてる」
「……いつも君はそうだ。
 私が君の興味を誘おうと努力しているのに、君は欠片もそれに気付いてくれない」

 ……こ、この発言は聞かなかったことにした方がいいのカナ? カナ?
 小声で言ってるけど、こんな静かな風呂で聞こえるなという方が無理だ。

「なあ、私は何をすればいい?
 君は昨日私の申し出を断った。しかし私はまだ諦めていない。
 是が非でも私は君と共に歩みたい。そのために私は何をすればいいのだ?」
「簡単だ。俺の隣に二本足で立って、足を動かすだけでいい。
 左足を上げ、前に重心をずらし、左足が地面についたら今度は右足を……」
「からかわないでくれ」
「……はぁ。君の申し出は嬉しいさ。
 だけど、ソリが合わないんだよ。これはどうしようもないことだから。
 少なくとも、告白されたのを断られて、頭に来て拉致するような人は俺は好かないな」
「そ、それは……」

 ……にしても『昨日』か。
 薄々勘づいていたけど、もう日がかわってるのか。

「一つ聞きたいんだけど。
 なんで俺をここへ無理矢理連れてきて、そんな腰を低くして頼むんだ?
 それだけの行動力が、その態度の低さはかみ合わないと思うんだけど」
「……」

 彼女は黙りこくってしまった。
 俺も口を閉ざして、立ち上がる湯気を見ながら思考を走らせる。

1688/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:23:18 ID:+lV7OBJN

 ああ、暖かくて気持ちいい。
 だけど、不思議だな。初めて来る屋敷にしては、やたら懐かしさを覚えている。

 ……ん? ちょっと待てよ。
 え……え?

1699/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:23:54 ID:+lV7OBJN

 その後、何も言わずに風呂を出て、俺は服を返してもらった。

 しまったなぁ……。
 俺は手を頭に当てて、余計なことを思い出してしまった頭を全力で呪った。
 ついでに、余計なことをしてしまった幼い頃の自分を全力で呪った。
 非常に断片的であるが、幼い頃の記憶が蘇ってきたのだ。
 俺と、彼女の共有する記憶が。

 まさかそんな、子ども同士の戯れだったのに。
 彼女は未だそのことを引きずっているし、『あれ』が有効であると信じている。
 しかし、それは……。

「な、なあ……」
「……」

 彼女は黙りこくったまま。
 俺がこのまま何も言わず帰ろうとしても、恐らくそれは徒労に終わるだろう。
 何、ずっと昔にそれをやろうとして実際徒労に終わっていた。
 第一、この屋敷から自宅に帰る手段がない。
 決して徒歩で帰れるような距離じゃないのだ。

 どういって逃げ出したものか、と考えているとき、不意に彼女は立ち上がり、
 俺が通された客間から出て行ってしまった。

 彼女は、性癖が俺ですら躊躇われるものだが、とても賢い。
 俺があのことを思い出したのにとっくに気付いているだろう。
 ああ、しまった。なんてことだ……。
 彼女の求めを甘受するのがイヤではない。
 ただ、なんというか、とてつもなく後ろめたい。

 小学一年くらいのころに、俺は親の都合で一度引っ越しをしている。
 その直前に、彼女とは会っていた。

 あれは確か昔住んでいた家の近所の公園でのことだったか。
 とても感情豊かな女の子が、当時仲良しだった友達グループの中に加わろうとしてきたときから始まる。

 彼女もそのときは、太陽みたいにぽかぽかした子だった。
 泣いたり、笑ったりとてもいい表情をしていたのを思い出す。
 何がきっかけでそうなったか、もう忘れてしまったが、俺は特別好かれていた。
 そう、俺一人だけ、彼女の家に呼ばれるくらいに。
 千葉にある東京なんとかランドよりでっけぇお屋敷だぜぇー、と妙にはしゃぎ回って、探検ごっこを始めていた。
 彼女ですら、この屋敷の全部を把握していないようで、俺と一緒に回ってたっけ。
 当時は部屋にあるものの価値が全くわからなくて、べたべたべたべたと触りまくったっけ。
 まあ、彼女の家からするとそんなに問題がなかったみたいだけど……。

 そして俺はあの隠し部屋をみつけてしまった。

17010/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:24:49 ID:+lV7OBJN

 ……どうやら彼女の両親は中々ステッキーな趣味の持ち主だったらしい。
 言うまでもなく、父親の方はお金持ちのシャッチョサン。
 母親の方も申し分のないお仕事をグローバルになさっているお方。
 よく考えてみればテレビとかにもよく出る有名な人……だけどその両親が、
 ちょっとアレな趣味を持っていることを知っている人は日本に一体何人いたのやら。

 革製の拘束具に、大人の木馬に、天井から何本も垂れ下がっている鎖に、
 毒々しい色のこけし群に……。
 俺はそういうものを使うための秘密の部屋を見つけてしまったというわけだ。
 すごいよ、この秘密の部屋! グローバルに有名なラノベの眼鏡君だってびっくりの秘密の部屋だよ!

 そこで俺と彼女は子どもの純粋な好奇心から……。

「あああああああああああああああ!!」

 石柱にガンガンと頭を打ち付ける。自傷行為に一体どれほどの意味があるのか。
 押しつぶされそうな罪悪感を少し薄めるくらいの効果はあるだろう。

 いや待て落ち着け、俺は大したことはやっていない。
 落ち着けよ、俺……。何もやってない。
 素数を数えろ、俺。 1、3、5、7、11、13……。
 素数は自分の数でしか割れない孤独の数字……。

 ああああああああああああああ!
 1は素数じゃないし、2が抜けてるぅああああああああ!!

 はぁはぁはぁ……痛い、頭が痛い。
 額が切れて血が出てきている。

「俺は、俺はッ、俺はっっっ!!!!」

 頭を打ち付けたのが、悪かったのか。
 幼い頃の記憶が鮮明に戻ってくる。
 音、映像、その当時感じていた空気まですら思い出してくる。

『あたしは……の妻として……隷になることを……ます』

 ぐあああああああああああああああ!!!!
 なんでお前、小学一年生なのにそんな難しい漢字が読めるんだぁああああああああ!!

 落ち着け! 俺!
 取り乱していても、何も解決できないぞ。

 そうだッ!
 それはいくらなんでも過去の話。
 流石に今まで彼女が引きずっているということはまずありえ……。

 ちょっと待て、引きずってるから俺をここに拉致監禁したんじゃないか?

 更に記憶が戻ってくる。
 どこかの閉塞した地下室で、幼い頃の彼女が裸で磔に……。

17111/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:25:25 ID:+lV7OBJN

 いや待て、これはつい最近見たことのある地下室だ……。
 そう、俺の意識が戻った地下室……あそこに似ている……。
 全て彼女のお膳立てだったとでも言うのか!?

「待たせたな」
「はぅあッ!」

 気付いたら彼女が再び戻っていた。
 ぴゅーぴゅー吹き出す額の血が、心拍数が一気に上がってきたことによってより激しく噴出している。
 呼吸も荒くなり、胸が痛い。

「……大丈夫か? すごい血が出ているぞ」

 彼女が気にしてくれる。しかし、その手には鉄の鎖。
 そして首には赤い革の首輪。
 それの意味することは言わずもがな。

「き、気にするな。ほっときゃすぐ止まる。
 そ、それより、それは一体……何なんだ?」
「これ? これのことか。君ももう思い出したんだろう? ご主人様」

 だあああああああああああ!!
 頭の中が真っ白になって、俺は走った。
 家に帰れなくてもいい。ただこの屋敷から逃げ出さないと!

 部屋のドアを開けて、廊下に飛び出す。
 蘇った記憶をたどり、出口に向かって走り出した。

 が。

「お客様! お待ち下さい!」

 俺が入ってきたときには一人もいなかった廊下に、メイドさんがぎっしりと。
 一体どこに隠れていたんだ、と思うほど。
 しかもそれの全員に赤い革の首輪がつけられていて、恐怖倍増。

「う、うわあああああああああああああ!!!!」

 半狂乱になって俺は無茶苦茶に走った。どこをどう行ったのかは、全くわからない。
 右も左もメイドさんだらけ。
 かきわけてもかきわけてもエプロンドレス。

 彼女らに捕縛され、身動きをとれなくなったその瞬間、俺の精神はセイフティーモードにはいった。
 いっそ気絶した方がマシ、という状況になったのでした。
17212/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:26:20 ID:+lV7OBJN

 いい気分でした。気絶しているときってのは。
 少なくとも、何もかも忘れられて、現実から逃避できてましたから。
 昔の記憶がゴロゴロと思い出されていたせいか、気絶している最中にも記憶が一つ思い出しました。
 その記憶を今回はダイジェストでお送りしたいと思う。


『いっちゃやだよぉ〜』

 そう、あれは俺が両親の都合で引っ越しすることになったころの話。
 いよいよ明日に引っ越しする日が迫っていた。
 仲の良かった彼女と別れるのは、俺も悲しかったので、そのことをずっと黙っていた。
 いつも通り、彼女と遊んだ。
 もちろん、俺が平静を保てるわけがなく、ぎこちなかったのを思い出す。
 彼女はそのころから聡かったので、きっと俺の変化に気付いていたと思う。
 でも彼女は何も言わず、一緒に遊んだ。

 俺は、俺が帰るときになってようやく彼女に引っ越しの話をした。
 彼女は泣きわめき、俺の手を引っ張って引き留めようとしていたな。
 俺もつられて泣きそうになったけど、女の子の前で泣くのカッコワルイとばかりに泣いてないふりをしていた。
 それでもすがってくる彼女。
 『ご主人様』と連呼してすがっていたのは綺麗に記憶から抹消しておくとして、
 感情の高ぶりを抑えきれなくなった俺は、彼女の手を振り払って、走って逃げた。

 しかし、やっぱり捕まった。メイド隊に。流石に赤い革の首輪はしてなかったけど。

 ああ、チクショウ!
 今考えたら、まっとうな大人は屋敷中にいたんじゃねーか!
 なんで使用人の誰一人、その屋敷のお嬢様が一般の家庭のお子様に『ご主人様』と言っているのを止めなかったんだよッ!

 過ぎたことは致し方ない。閑話休題。

 メイド隊に捕まった俺は再び彼女の目の前にひったてられていた。
 泣きながらすがってくる彼女から逃げることはできず、かと言ってこのお屋敷にずっといるわけにもいかず、
 俺は彼女に冷たい言葉を言いはなった。

 正確には思い出せないが、こんな感じだったと思う。

『おめぇなんかが俺のお嫁さんになれるわけねぇーんだよ!』
『ブス! ぺったんこ胸! 運動音痴! バーカ!』
『もっと美人でグラマラスな人じゃないと俺のお嫁さんには務まらないんだ!』
『なんだよお前! 足は遅いし、肩は弱いし。もっとかっちょいい人じゃないとなぁ』
『お前、頭悪いじゃん! ちょっと難しい漢字が読めるくらいなら俺のねえちゃんだってできらぁ!』
『それにな、お前。すぐにぴーぴー泣いたり、かと思ったら笑ったりしやがって!
 クールに振る舞えよ、クールに。感情を顔に出さないでさぁ! クールに! 自分と他人を偽ってクールに!
 けど、俺に嘘ついたりしたら承知しねぇからな!』

 随分酷いこと言ったような気もする。
 小学一年にしてはマセてたし、色々知っていたな。情報源は、秘密の地下室だったりするけど。
 当時は、お嫁さん=性奴隷とかそういう風に認識していたあたり彼女の両親に毒されてると思う。
 まあ、性奴隷というのがどういうものなのか全く知らなくて、地下室で見つけた本にそう書いてあったから
 それをなぞっただけで、当時にその言葉自体の意味として使ってなかったよ。
 ちなみに、そう言えば彼女の両親はずっと海外にいて一度も会ったことない。

 ん、まぁ、俺も泣きながらそんな悪口を言っていたから、彼女も俺の気持ちをきっとわかっていたんだと思う。
17313/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:27:13 ID:+lV7OBJN

『じゃ、じゃあ! 私、言うとおりにする! 言うとおりにするから……。
 ご主人様のお嫁さんに相応しくなってからまた会いにいくから! そのときには……』

 まあ、こんな風に言われまして。げに美しい子どもの情景。
 その情景を作り出す根源の情報が、かんっぺきに歪んでいたから、
 エマージェンシーな今に至るわけで。
 俺は俺で引っ越したら、彼女のことなんかコロっと忘れちゃってたし。

 今思えば、あの感情豊かな女の子が今のクールな女の子になったのは、俺が原因だったわけだ。
 正確に言えば、彼女の両親が一番悪い。
 うん、俺は悪くない。

 いや、俺が悪いような気もしてきた。
 うっわ、俺、極悪人じゃん!
 やべー、やべー! いくら何も知らなかった子どもだからって、それじゃ済まないような気が……。



「わッ!」

 俺はベッドに寝かされていた。
 わざわざ都合してくれたのか、中々ステキなデザインのパジャマを着せられ、豪勢なベッドに寝かされていた。

「起きたのか、ご主人様」

 ちゃりちゃりと首から伸びる鎖を持って、彼女はにこやかに言った。
 彼女は俺の隣に添い寝するような体勢で寝ていた。

「あ、ははは……」
「さあ、もう一度返事を聞かせてもらおうか。
 君が……あ、いや、ご主人様が私のことを完全に忘れていたというのはいささかショックだったが、
 今となってはそう問題ではない。
 ご主人様が全てを思い出した今、もう一度答えを聞かせて貰いたい」

 ちっ、もっと気絶してりゃぁよかった!

「ふふっ。さっきは、共に歩みたい……そう頼んだな。
 ご主人様は、二本足で、と言ったが、本当は四本足だ。この手と足で、四本。
 人ですらない、獣のように四つんばいになって、君と歩みたい」

 彼女は、おもむろにベッドを抜け、立ち上がる。
 ベッドのわきにひざをつき、頭を垂れ、自分の首に繋がる鎖を、
 まるで騎士が守るべき王に剣を捧げるように俺にさしあげてきた。
17414/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:29:11 ID:+lV7OBJN

 どうする? 俺、どうする?
 この鎖を受け取り、彼女の主人となるか。
 それとも拒否し……彼女に健全な関係を求めるか。

 過去のしがらみにとらわれている俺には、彼女との関係自体を断つことは考えられない。
 彼女が、昔の彼女から大きく変わったのは俺が原因の一端を担っている。
 その責任感、罪悪感、もちろんそれだけじゃない。

 指折り数え十二年。
 彼女は俺のことを考え続けてきたのだ。
 性格を変えるほどに。遠く離れた地の、普通の学校に入学するほどに。

 もう俺は彼女の人生を大きく変えてしまっている。彼女を拒否することはできない。
 俺だって、本心から言えば、再び彼女に惚れてしまった。
 初恋は実らぬと言うが、過去の彼女と今の彼女は全くの別人。
 生涯二度目の恋……。

 なんて都合のいい脳をしているんだ、と俺でも思う。
 だけど、彼女のことを……俺は。


 唾の塊を飲み下し、乾いた唇を動かして、俺はゆっくりと口を開いた。

1.彼女の鎖を受け取る。
2.彼女の鎖を受け取らない。
3.メイド隊の鎖を取る。
4.ポロロッカ星人召喚

17515/15 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:30:04 ID:+lV7OBJN
5.はぁッ……はぁッ……なんだ全部夢だったのか。
176名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 22:49:15 ID:5/JdmV8K
ちょっおま、夢落ち!?
177 ◆4hcHBs40RQ :2006/04/08(土) 22:55:04 ID:+lV7OBJN
さて、前編は投下終了。
ちまちまと後編を書きます。ええ。

後編はポロロッカ星人編ですよ(嘘
178名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 23:32:22 ID:bGBnVK9w
1と3 キボン
179名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 23:55:15 ID:eDlPkzmz
クーデレ…………クーM??

続きキボンヌ!GJ!!
180名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 00:48:12 ID:r1ZWcBFD
GJ!
新しいな。クールだが暴走してるし。

そしてわざわざレスが入ってから後半の予告をする作者さんにワロス
181名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 04:18:02 ID:744vuyIJ
1だな
できれば3も入れてほしいが
182名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 06:08:51 ID:OBxm2Ox0
なんやポロロッカ星人って( ;´Д`)
183名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 06:23:51 ID:tJP74wY7
6.続きはWEBで
184名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 07:40:29 ID:JbDMYrsT
笑ったw こーいうのもいいっすな。
1と3と折角なので4も希望したい。
185名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 15:48:22 ID:4u9L+ps6
2でいい、2で。
主人公君の「彼女を真っ当な性格にして真っ当に付き合うようにする」物語がいい。
途中で首輪の誘惑が彼を苦しめるだろうが、艱難辛苦の果てに達成して欲しい。
タイトルはそうだな、「首輪物語」で。
186名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 15:57:43 ID:Ei6oYEx9
>>185
喪舞、漢だな。
187名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 16:01:50 ID:4u9L+ps6
申し訳ないが、私は女だ。
188名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 16:05:21 ID:B6UsyChj
みんなー、素直クール(>>187)が紛れ込んでるぞー
189名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 17:20:34 ID:tJP74wY7
>>185
それなんて指輪物語?

>>177
言うの忘れてた

GJ!
190名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 18:52:59 ID:0J3QIGsX
なんだこの素晴らしいSSはぁ!!
お落ち着け素数を数えるんだ…
191名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 19:59:13 ID:DhMqS3xH
1,1,2,3,5,8,13,21,
192名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 20:17:59 ID:4u9L+ps6
>>191
それはフィボナッチ数列。

>>188
確かに私は他人から冷たい女だと言われることもある。
だが自分ではいつも悪乗りしすぎで公開することも多いので、とてもじゃないがクールじゃないと思うぞ。
193名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 20:24:52 ID:B6UsyChj
フィボナッチ数列って数学のあれだったよな
見ただけでわかるってことは理系か。

俺的に素直クールは理系なイメージがある。
僕の理知的な彼女の影響かなー……
194名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 20:28:39 ID:TiWLgTET
漢女と書いてオトメと読む。
素直クール漢女
195名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 20:31:04 ID:u810hoiC
>>193
映画公開される某ダヴィンチな小説に登場するから最近ちょっと有名かもしれん
196名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 01:11:45 ID:sVdjSMpN
>>192
後悔ではなく公開するのだな。
素直クールなうえに天然とは……
貴様、俺の所に嫁に来ないか?
197名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:03:42 ID:ACpCHUml
>>192
天然で素直クールだって!?

なんてすばらしいんだ!!
198適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/04/11(火) 17:48:48 ID:uwH6hS4V
素直クールの亜種としてドライクール略してドクールなるものを思いついた。

男「君、本当に俺のこと好きなの?いつもそっけないし、本当は……」
毒「好きだが、一々言ったり態度で示したりする必要があるのか?」
男「え、だって、寂しいし……」
毒「お互いに好きだと理解しているのなら、確かめ合う必要はない。
君は1+1=2をわざわざ検算するか?しないだろう。
つまりは、私と君の関係はそれだけ明瞭で確実なものなんだ」
男「で、でも、やっぱり実感したいし……」
毒「仕方がないな。ほら、手を握ってやったぞ。満足か?」
男「そ、そんな味気ない……」
毒「本当に仕方がない奴だ。……ん、キスしてやったぞ。満足したか?
言っておくが、私は誰にでもキスをするような安い女じゃないぞ」
男「……う、うん……わかった」
毒「それならいい。用件はそれだけか?」
男「あ、うん、そうだけど……」
毒「では私はこれで。これから昼食なんだ。君も一緒に来るか?」
男「もちろん行く!」

こんなの。

取り敢えず>>123の続きシコシコ書いてるから、
まあ今週か来週か再来週の土日にでも投下できるかなと思う。
199名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 18:27:53 ID:XZ7h43LZ
>>198
それ好きだ
200名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 18:33:17 ID:wklrpQR0
>>198
ド・ラ・イ・クー・ル ・・・見事な・・・。
201名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 18:57:38 ID:Efkg/3iQ
>>198
古典的クールと素直クールの合いの子みたいだな。
もちろん好きになれそうだが
202名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:06:53 ID:QOrXLiUP
ちょっとした小品を書いてみた。
このスレにふさわしいのかちょっと曖昧だけど投下してみる。
203名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:07:27 ID:QOrXLiUP
昼休み。
がやがやとした喧騒。
「なあ宇治よぉ、このクラスで一番可愛いのは、誰だと思う?」
にやけた顔で友人の江川が問う。
はて――
僕は躊躇した。
考えたことがない。
わがB組、女子生徒は18人、その中で最も可愛いのは誰か――。
天井を眺める。

客観的に、あくまでも一歩離れて見るならば、それは矢代舞であろう。
くりくりとした大きな瞳に小さな口。
童顔とも言える顔立ちでありながら女の色気を内に秘め、
誰に対しても愛想よく振舞う。
悪く言えば八方美人。
しかし男は往々にして騙される。

あるいは、可愛いとは少し違うかもしれないが、藤崎智美の人気も高い。
すらりと整った顔立ちと体型。
お嬢様然とした落ち着いた佇まい。
しかし時として他者を小馬鹿にしたような態度を垣間見せることがあり、
それが僕には気に入らなかった。
204名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:07:59 ID:QOrXLiUP
ふと思う。
僕にとってのベスト。
それはきっと彼女であろう、と。
白石有希子。
今現在はいないが、僕の左隣、窓側に席がある。
静かな人だった。
授業中も、休み時間も、放課後も、
いつも誰とつるむでもなく一人で時を過ごしていた。
何気なく窓の外を見ようとした時、
いつも彼女の横顔が目に入った。
瞳が、まつげが、鼻が、唇が、あごが、髪が、
僕の網膜に貼りついて、
ああ、綺麗だな、と、
歯の裏でつぶやいた。
それだけのことだ。

「白石さん、かな」
「ええっ? お前趣味変わってんなー!」
なにがそんなに面白いのか、江川は目を細めてへらへらと笑う。
そうか、変わっているのか。
「っていうかお前もしかしてあれ? 
 白石のこと好きなん?」
随分な発想の飛躍だった。
そんなことは聞かれていないし、言っていない。
恋、愛、交際、セックス。
僕にはとても遠い世界の話のように思えた。
言葉としては知っていても、
まるで高等数学のように現実感がない。
もちろん高等数学が非現実的だという意味ではなく、
僕の知力ではまだ、そのリアリティを認識できないという意味だ。
205名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:08:40 ID:QOrXLiUP
だけど。
だけどやっぱり、
僕が白石さんを見る目は、
他の女の子を見る目とは違うのではないだろうか?
僕はあらゆる女の子の中で、
白石さんだけを違う存在として見ているんじゃないだろうか?

ふと白石さんとの会話を思い出してみた。
通算でせいぜい10往復かそこらだが、全て覚えていた。
「ありがとう」
そう言って微笑んだのが、僕の知る白石さんの唯一の笑顔だ。
一コマ一コマが妙に鮮明だった。
脳の裏の真ん中あたりにはっきりと焼きついていた。
「君は優しいね」
そんな言葉もあった。
まいったな、これは可愛い。

「好きかもしれない」
江川は口をすぼめて ひゅう と息を鳴らした。
「こりゃビッグニュースだ」
江川が僕の肩を叩く。
「ま、がんばれよ、応援してるぜ」
その前に――と江川は付け足した。
これ異常ないというほど口の端を歪めて。
「宇治、うしろ、うしろ」
206名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:09:22 ID:QOrXLiUP
振り向く。
景色が回る。
止まる。
いた。
立っている。
こちらを見ている。
立っている。
見下ろされている。
白石有希子。さん。
「えっと、どこから聞いてた?」
「白石さんかな、のあたりから」
淡々とした受け答えだった。
――ああそうか、ほとんど聞かれていたんだ。
それは仕方ないな。

立ち上がる。
これはどうしたことだろう。
好きかもしれない、そう認識したとたん、
彼女はまったく別の生き物に見えた。
それは今まで想像したこともないほど、
きらきらと輝いていた。

お洒落に気を使っているとは言い難い。
無表情も相変わらずだった。
冷静に、射抜くように僕を見ていた。
射抜かれた。
207名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:10:11 ID:QOrXLiUP
彼女の右手を両手で握った。
ああ、見られてる。
僕は思う。
教室中の人達、ざっと20人ぐらいが僕らを見ている。
きっと口をぽかんと開けて、驚きと好奇の目で。
不思議だった。
それがわかっているのに、
僕の目には白石有希子しか映らない。

まっすぐと前を見たまま、
「あなたが好きです」
そう言った。
「そう」
彼女が言った。
「私もよ」
少しだけ、ほんの少しだけ彼女が目を細めた。
僕の全身が一瞬震えた。
足から、手から、頭から震えが来て、
最後に心臓がきゅっと締まった。
「私もあなたが好き」

そんな始まり。
208名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:13:00 ID:QOrXLiUP

完。
もし男も女も素直クールだったらどうなるか?
という思考実験の結果生まれた一発ネタです。
ヒロインが実質ラストにしか登場しないという意味でも実験作でした。
209名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:19:03 ID:zln5jWcz
GJ!

イイネ、イイネ。
素直クールと素直クール、どう考えても両者の間に誤解なんてできません。
永遠にバカっぷるです、な感じで、パーヘクツでした。
お前ら、人目をはばかれお、コンチクショウ、という展開が予想できたであります。

210名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:21:32 ID:uwH6hS4V
素直クールと素直クールがくっつくと
その日の内に婚姻届け出して子作りに励みそうだなぁ
211名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 23:58:59 ID:nZ5Zt0t2
いや、巧い、巧い。
過剰な修飾を排したすげーシンプルな文章なのになんと豊かな事よ。
楽しかったです。
212名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 00:49:22 ID:hAq5LEcF
亀な突っ込みだが、
キャトルミューティレーションじゃなくて
アブダクトじゃね?
213名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 02:36:36 ID:8bcHgFlg
死んだ。
いや、萌のダメージが致死量をはるかにこえましたよ。
もうギューン
⊂ ̄ ̄ ̄→ ̄ ̄|⊃
みたいな感じ。分かる?
とにかく、FJ!
214名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 11:56:51 ID:++FAIL0p
>>203
GJ
だがしかし、個人的事情により白石さんのファーストネームがクリティカル
ちょっと首吊ってくる
215名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 19:21:01 ID:cBbzB3qe
ちょっと前、このスレで名前の出たArcadiaの素直クール書いてた人。
このスレを射程にいれたな。





裸で、ワクテカしながらまっとります。
216名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 21:22:54 ID:cmr2ETGW
これはやべええええええええええ
217名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 21:33:17 ID:6pdMgBpt
少しだけど活気がでてきたな
218名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 00:54:01 ID:x0G4DHeY
うむ、活気があるのはいいことだ
219名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 01:23:04 ID:+SESIv1N
ああ、素晴らしい事だな。
思わず職人の方々を愛してしまいそうだ。
220名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 02:33:37 ID:osxOpZQi
ズキュ=(´□`)⇒ン♪
221名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 00:37:57 ID:Uf43bH22
>>215
スマン、誘導してくれないか。
222名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 02:06:42 ID:1k4W+dot
保守
223名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 01:52:26 ID:2qin5Jvb
保守
224名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 16:59:48 ID:86rQjfhB
厳密には板違いだがいい素直クールなんで

キー:moemoe
ttp://up.viploader.net/src/viploader20340.zip.html
225名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 20:40:56 ID:gOtv2m7u
>>224
貴方にはこの称号を与えましょう


つ 【神】
226名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 00:25:08 ID:EMTAUP9s
ケータイだからみれない…(´・ω・`)
227名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 00:50:19 ID:3St/DmR0
>>224
gj これはいい素直クールだ
228名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 02:18:33 ID:wcroGEB2
>>224
素晴らしい
今度こそ手に入れ申した
229名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 16:47:37 ID:TaalIVqe
>>224
おぉッ!快楽天でやった奴だ。
超GJww
230名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:29:56 ID:8Vh7xmIP
え・・・もしかしてもう無い?無いの?
231名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 01:05:48 ID:3ebFw4H0
欲しければ半虹の素直クールスレで再きぼんするんだな
232名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 20:09:25 ID:7Z3j6+H9
試してから言え まだある
233名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 04:37:56 ID:S21+AOeO
触発されて素直クールSS書いてみたんだが、ほぼ初めてなんだわ
投下していいものかどうか悩む、あんまエロくないし長いし
素直クール出番少なくて男の独白部分がちと多いんだがアリだろうか?
あと主人公の名前は決まってるのと○○君とどっちがいいですかね?
234名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 05:17:59 ID:lxxKGk5l
>>233
初めてでもまるで問題なし
名前はどっちでもいい。そちらさんの好みで
ドンドン頼む
235名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 05:23:38 ID:vEBlRNNi
こんな時間に人がいるとは…

>>233
どっちでもばっちこーい
236名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 07:43:51 ID:31ckJA2R
それでは一晩で書き上げたテンションで一気にいきます
おそらくお目汚しでしょうが失礼します

☆1/12
容姿端麗成績優秀一見して完璧な彼女は皆の羨望の的、愛想に欠けるところも
あるが理性的で沈着冷静、クールな魅力で学年男女を問わず人気があり
狙っている男は数知れず、周囲には人が絶えない

はずだった、少なくとも入学して間もないうちはそうだったのだ
しかし今では彼女は何時も一人でいる。教室の端でぽつんと窓の外を眺める彼女は
表情にこそ出ないがどこか寂しげに見えて、しかしそれでもクールで様になっている
同じように一人でも他人の視界から隠れるように生きる自分とは違う

いや、はじめから誰にも相手にされていなかった自分と比べるのは失礼だった。
そもそも彼女が何故独りになったのか、それはその性格に問題があったからだ
正確には発言か?ともかく彼女の性格が普通の人とは少し違っていたのは確かだ
決して悪いと言うことではない、むしろ今時珍しいぐらいにまっすぐで力強く
それでいて独り善がりでも自己満足でもなく相手を選ぶこともない、誰に対しても
公平で相手の為になることを優先して発言し、余計なことは言わない。

それが結果としてほとんどの場合☆耳障り☆聞こえの良いものにならなかったのは
学生というあらゆる意味で未成熟な人間の集団の中では仕方のないことだったし
彼女の歯に衣着せぬストレートな物言いと無機質な態度が冷たい印象を与えて
彼女の周りからは時が経つにつれて人が減っていった。

☆2/12
あからさまに向けられる好意をも彼女は容赦無く断崖に突き落とす
「私は貴方に対して恋愛感情は無いな、悪いがつきあってやることはできない。」
それでも彼女にちょっかいを出し続けるような男達も居た、ライバルが減ったと喜んでいたが
彼女がそういう手合いを相手にすることは無く、月日の流れるうちにそれさえも
いつのまにか居なくなっていった。

それを彼女が気にすることも無かったし、むしろ一人で居る方が似合ってさえ見えた

そんな彼女を今日も僕は眺めて過ごす、それが今の自分の生きる意味。

自分のことは自分が一番よくわかる、自分の身体は人より大きく劣っていた
それは能力的な意味でもそうだし外見的な意味でも劣っているのがはっきりとわかる
鏡を見るのが嫌い、写真に映るのも嫌い、他人の視線に対しても敏感になる。
自意識過剰と思うだろうか?しかし客観的に見ても平均以下なのは間違い無い
平均以下の外見ならば同じコトだ、恋愛の対象になど選ばれることは無い。

小さな子供のうちは良い、楽しくやっていればそれで十分なのだ。
だが異性を意識すればそうは言っていられない、勉強ができてもそれだけでは無意味
会話で相手を楽しませられても付き合いの薄い友人が増えるだけだ。
さあ、答えは目の前だ。認めたくないが僕はそこに辿り着いた。
237名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 07:44:43 ID:31ckJA2R
☆3/12
そんな無意味で、しかし有意義な毎日に僕は確かに満足していた
彼女と同じクラスであるという幸運、これ自体が奇跡と呼ばずなんと言おう
何もしなくても常に彼女の近くに居ることが許されている。
それどころか彼女と週に一度は会話することが出来るのだ
自分から話しかけることなど出来ない僕に、彼女が話しかけてくれる
挨拶、他愛の無いおしゃべり、冗談を言ってたしなめられる時など天にも昇る心地だ

誰もが彼女に距離を置くようになったことで僕に彼女が話しかけてくれるのだと
思うと感謝したいぐらいだった、このチャンスを少しでも無駄にはしたくない
現状に満足していてはいけない、そうだ少しでも彼女に近づきたいんだ。
友人などとは言わない、せめて一言でいい毎日会話したい!!!…無理かな。

生憎と彼女の席は窓際で僕の席は廊下側、つまり離れている
遠くから彼女を見守るには丁度良いが直接会う機会には恵まれない。
といって自分から彼女に近づいて話しかけることなど出来るはずも無い
気付かれてはならない、僕のこの気持ちを悟られてしまったら
彼女は僕を拒絶するに違いない、そうなったらもうお仕舞いだ。
リスクが高すぎる、やはり…ダメっ!不可能っ!

☆4/12
「よぉ〜○○、お前聞いた?」
放課後、クラスの違う友人に会った、昔からの付き合いだが
最近は会うことも少なくなっていたのだが…
「砂尾、砂尾冷子ってお前のクラスだよな?」
またどうせくだらない…なに?
「なんか教頭だか校長とヤッたらしいじゃん?」

………………こいつはいったい何を言ってるんだ?
「詳しいこと聞いてない?同じクラスだろ?」
落ち着け、落ち着け…確かに今朝から変に騒がしかった、落ち着け、
そういえば彼女に対する皆の反応にいつもと違和感が…落ち着け、落ち着け…
「いや、今はじめて聞いた」
「おま、どうしたwすげえぞ汗」
「ごめん、ちょっと急用」
それだけ言うのが精一杯だった、どういうことだ?嘘だ、嘘に決まってる
走って帰ってそのままベッドに潜って泣きながら眠った。
目が覚めて、思い出して最悪の気分で、でもどうにかしたい気持ちだけで学校まで走った。

誰も居ない、まだ7時前いつもなら寝ている時間だ、そもそもどうすればいい?
人の噂など気にしたことはない、不愉快なものでしかないからだ。
しかし今回は話が違う、不愉快も不愉快、なんだこのどす黒い感情は?
運動不足でなまった身体が暴れ出したくてその場でしゃがみこんだ
地面を見つめて唸って居ると水のようなものが零れ落ちた。
238名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 07:45:30 ID:31ckJA2R
☆5/12
「なにを見ているんだ?気分でも悪いのか?周りに迷惑になるぞ?」
どれぐらい経ったのか、気付くとちらほらと登校してくる生徒が居た
顔を上げるとそこには―――――ッ砂尾冷子

コレナンテエロゲ?
「ぁ、あ、いや急に腹痛が、、あッでももう収まったからなんでも…」
「大丈夫か?とりあえず保健室だな、それにしてもちょっと怖かったぞ
 蹲って唸るほど苦しいなんて、殴られでもしたのか?それとも内臓が悪いのか…」
彼女は焦って離れようとする僕の肩をつかんで軽々と引きずって歩いていく
「日頃から身体を鍛えていないからだぞ、最近は朝食をとらない者も多いと聞く
 朝は食べてきたのか?缶コーヒーだけ?愚か者め、そんな事だから……」
コレナンテエロゲ?

保健室に行く必要などない、それに昨日の今日で彼女とコレは無い
おそらく酷い顔であろう(もとからだと言うのは言わないでくれ)
今の自分をこんな目立つ状態で、正直恥ずかしくて死にそうだ
「あ、あのちょっと待って、その…」
トイレの前で彼女を止めてなんとか逃げ込むと個室の中で大きく深呼吸
「すぅ―――――、はぁぁあああ…」

落ち着いて今何時だろうと時計を見る、7:32
…いや、もういいんだ、過ぎたことよりおそらくトイレの外で待っているだろう
彼女のほうが問題だ、またあらぬ噂を立てられかねない、僕のせいで、だ。
それは避けたい、なんとしても避けたい。しかしどうすればいい?
どう考えても僕が出ていくしかない、いやトイレの入り口まででいいんだ
彼女が居なければそれでいいし、居たらもう大丈夫だから教室へ行くように
言えばそれで済むことなんだ、そうだそれでいい、何も難しいことは無い。

☆6/12
きーんこーんかーんこーん♪
「遅かったじゃないか?もう大丈夫なのか?一応保健室には行った方がいい
 思い当たることがなくとも万が一ということもあるからな」
結局保健室でなんにもなく(あるわけない)二人で遅れて教室に入った
これは…なんだ?いったいどうしてこんなことに…

その日は一日中なんにも頭に入らなかった、自分のことが噂されるのが心配で
彼女が何度も心配して様子を見に来てくれたのに、上の空で相づちを打ってしまって
いることにさえ気付かなかった。自宅で思い出しても後の祭だ。

それどころかあれだけ気にしていた彼女の噂のことまでどうでもよくなっていた
結局我が身が一番可愛いのだ、そうだ、僕はそういう人間だ、だから…
そんな自分に対する彼女の他意の無い優しさが眩しくて、痛くて
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
なんでだ?なんで自分はこんなに惨めなんだ?醜いんだ?外見だけじゃない
自分の心の弱さが、卑しさが苦しい。太陽のような彼女がまぶしい。
眩しくて、でも憧れて、なんで自分はああじゃない?彼女のようになれない?
なんで…なんでなんだよ、苦しいよ悔しいよ、どうすればいい?
ドウスレバイインダ…

翌日、昨日の自分の失態に関する何の噂も何処からも聞こえてこなかった。
来るわけも無かった、何があったわけでもない。自意識過剰にも程がある。
239名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 07:46:14 ID:31ckJA2R
☆7/12
それから何日も経ったけれど、結局彼女の噂はよくわからないままで
本人に聞けるわけも無く、噂は噂として広まっていて、でも彼女はそんなこと
まったく気にも留めないでいつも通り振舞っていて、彼女に直接聞く勇気が
ある人間が居るとは思えないけれども、どこかで耳にはしているはず

そんなことを考えながら今日も彼女を観察していると
放課後担任に呼び出されていた、間違い無く件の噂についてだろう
そこでなにが行われているのか、話されているのか知る術は無い

僕は情けないことに日に日に全てを諦めていった
彼女が潔白かどうかよりも、それを信じることで自分がどうなるか
彼女を信じたところで自分を愛してくれるわけではない
彼女を信じた挙句全て事実だったら、その時自分はその事実に耐えられるのか
だったらもういっそ全て諦めた方が自分は傷つかなくて済む
そんな風に考えてしまっていたんだと思う

しかも彼女に対する噂はさらに悪質に、執拗に広がっていった
友人から聞いた噂だけでも彼女は教頭を含む三人以上の教師に加えて
少なくとも各クラスに一人以上の男と関係を持っているらしかった
自分から名乗り出る者までいて、半年以上前に初めての男になったとか
どう考えてもオカシイ、嘘に決まっている。

☆8/12
でも自分が嘘だと思えば思うほど、それは事実のように感じられた
噂は抜きにしても彼女にそういう関係を持った相手が居ても不思議は無い
今まで考えないようにしていたが、否定したい自分の気持ちがあったからで
彼女の美しさを考えれば当然だが相手には困るはずもない
彼女の性格さえ男の影響を考えてしまう、あるいはなんらかの不幸が原因で…
ええいもう止めだ考えるほど頭が痛くなる、彼女のことなのに
自分のことのようだ、いや、僕は彼女を自分よりも大切に思っているのかも

それはそうだろう、自分のことは嫌いだ、こんな自分より大切なものなら
いくらでもある、でも彼女はその中で一番なんだ、だからこそ苦しい、気が違いそうだ。
「…
もういい、もういいんだ、諦めた、諦めたんだ、どうあれ彼女が僕に振り向くことはない
そんなことはずっと前から分かっていたことだ、彼女を初めて見た時から
僕は諦めてきた、ずっとずっとずーーーーっと諦め続けてきたんだ。
「…
彼女が誰と寝ようが付き合おうが僕にはなんの関係も無いんだ
今でなくてもいつか僕が知らない何処かで誰かと彼女はそうなるんだ
それはハジメカラ決まっていて
「おい!聞こえないのか?○○君、君の耳は節穴か?」
――――え?
240名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 07:46:59 ID:31ckJA2R
☆9/12
「私は今決めたぞ、君は私が嫌いか?」
え?え?え?なにこれ、なに?ドッキリ?バレタ?駄目?もうダメ?
「どうした!嫌いなら嫌いと言ってくれ」
「い、いや嫌いじゃない…です」
「そうか、それはよかった。では○○君、私と今夜せっくすしてくれ」
「せ?せ?くぁwせdrftgyふじこlp;―――」
ああああ周りの目が集まってる、羞恥心に全身から火が出そうだ
堪え切れず僕は頭を下げた、彼女はそれを同意と解釈したのか
「では放課後校門の前で待っているからな」
と言い残して立ち去ってしまった。

どういうことだ?これは、確かに彼女は無頓着なところがあるようだった
しかし、これは…拷問か?僕に対する恨みでもあるのか?
いや落ち着け、これはつまり…そうか、やはり彼女への噂は本当だったんだ

なぜ彼女が僕を指名したのかはわからない、まさか本当に教頭と?
そう考えれば自分だってそんな中年よりはマシだろうとは思ったが
それにその理由はいくら考えても理解できそうになかった
急に彼女が遠くに行ってしまった気がした、自分の知っていた彼女は
本当の彼女ではなかった、彼女はそういう女だったのだ。

自分の心の中で何かが壊れる音がした気がした

☆10/12
「待っていたぞ○○君、確認するが本当にいいのだな?」
校門で待っていた彼女はいつもと違ってどこか浮かれているように見えた
僕は心の中で彼女を見下し始めていることに気付いた
「ああ、僕も砂尾さんが好きだったんだ」
まわりに見える景色がまるでモノクロ写真のように殺風景に感じた
彼女を遠くで見ていた間、自分が恋をしていたのだと今更わかった
世界はずっと美しくて輝いて見えていたからだ
「そうじゃないかと思っていたよ、私は別に君が好きではないが構わないのか?」
全てが色褪せていく
「それはこっちが聞きたいぐらいだけど、でももうそんなことどうでもいいや」
僕は彼女と
「好きな女の子と愛し合うのに理由なんていらないでしょう?」
こんなカタチで
「…そうだな、では行こうか」

初めて入るホテルにもなんの感慨も湧かない、最早あれだけ自分を苦しめた
羞恥心すら感じなくなってきている、現実感がない、自分が自分でないようで
まるで夢の中にいるようにさえ感じる。
ぼーっとしていると彼女はすでに服を脱いで素っ裸になっていた
241名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 07:48:42 ID:31ckJA2R
☆11/12
美しい、顔立ちだけでなく彼女の裸体はつま先まで完璧に整っていた
無感動な心の中に性欲だけが湧きあがってくる、やはり人間は動物だ
生殖欲か独占欲か知らないがこういう欲求はどんな時でも働く。
僕は制服を脱ぎ捨てると彼女の身体を求めた
「あ、おい、どうした?さっきから黙っているかと思ったら、こんな急に」
柔らかい、僕はひたすら彼女の感触をたしかめていく
指で、掌で、肌で、舌で、「あぁ、ちょっと待ってくれ、駄目だッそんあっん」
「ふぅ、君は以外と、はあ、激しいんだアッ…な。」
「さっき君を、んっ、好きでもないと、言ったあぁが、私は別にっ
 異性を、好きになったことはない、というかあああちょっと待て待て駄目
 まだだ、早い、性急に過ぎるぞ君は、急がば回れというああ駄目だっと言って」
彼女の性器を指で弄繰り回してみる、ここで好きでもない何人の男と繋がったのだろう
という雑念を振り払い目をつぶって彼女の感触に集中する
「だめっだっこんあっ感じてるのかっ私がっすごいなこれはっ可笑しいっフフっ
 ハハハッこんなものが、確かに、すごい、、な、ハァッハぁッ」
今は僕が彼女を、独り占めしているんだ、僕だけのものだ僕だけが彼女を
「あ、もう、するのか?はぁ、はぁ、君が激しいから、準備出来てしまったようだ
 でもその前に、焦りすぎだ、避妊具をつけたまいよ、ふぇぅ?」
そう言って後ろを向いた彼女を抱きしめてそのまま彼女の中に注意深く進入する
「うぇぁあ、だ、だめ、、、だ、こんな、、急に、はあっふううッうぐぐ、おおっぎぃい」

☆12/12
ああぁ、彼女の中は途方もなく気持ちいい、すごい、これが、せっくすなのか
「あ、ああぁ、イダイ、ダメぇだあッだめっうごかっあがああああ」
止まらない、彼女を気遣う余裕もない、ただ自分の性器をひたすらこすり続ける
「あぁうぅぐッ、ううぅぅんっ、あうっんぐっ、ううぅんうぅああうぅ…」
そのまま一気に上り詰め彼女の中で射精して、気がついた。
赤い、赤いあかーい真っ赤な、血?…ということはアレ?どういうことだ?
「……ぐっんぐ、ずずっ、○○君、君は、酷い男だ、私は、こんな、ぐすっ」
血の気が引いていく気がした、もしかして僕は、とんでもない勘違いを…
戦慄する自分の意思と裏腹に僕の世界は再び、色彩を取り戻しはじめている
「な、なんで君が泣いているんだ?こんな酷いことを私にしておきながら…」
僕は自分勝手で馬鹿で酷い男だ、だから僕は彼女を以前よりずっと大切に思った

とりあえず、めでたしめでたしでおしまい。
というか色々と説明不足だったりするところはゴメンナサイ
彼女は男、というか他人はみんな同じに見えると言うかそういうことにしておこう
外人の顔が見分けつかないような感じだと思って欲しい
エロは書くのホントはじめてなんだ、全然ダメだろうが勘弁して下さい
242名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 08:29:39 ID:8lz3fYq4
エッロいなー
243名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 09:31:13 ID:kCx/iI6N
GJ!! なんだけど勿体無い。

少年の心情描写は長すぎる部分もありましたが、それはいいとして、玲子の心情、背景描写が無さすぎて、最後のせっくすにいく流れが
感情移入しづらい。
たまにする玲子との会話、そこでもうちょっと、少年しか知らない意外な面とか、キャラを掘り下げても良かったかも。
なんで少年を気に入ったのか、後書きで、顔の区別がつかないというのはわかりましたが、内面で特に惚れるような描写も無かったし。
たとえばですが何回かの会話の中で、少年がさり気なく噂を訊いたら、
『やっぱりきみも同じか…………残念だよ』
こんな台詞から一悶着あれば、最後のせっくすの場面にいくらか繋げ易いかな? お互いの男らしさ女らしさが出しやすいと思います。

エロの部分は前フリが、私個人としてはあまり利いてないので、レイプみたいに感じられて、シメ方も弱いからちょっと後味が悪いかな?

色々生意気なことを書きましたが、話の印象はとても好みなので、次作も期待してお待ちしております。
244名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 10:05:06 ID:nhrc4sN9
>>241
GJ!
だけど私も書きたいから書く。

謎が謎のままなんだよね。
・噂の真相
「君」が落ち込む要因にしたいだけなら教師まで出さなくても
例えば「誰かかっこいい男と歩いてた」って噂だけでも充分なわけで。
#ありがちではあるが、これなら謎解きも簡単だし。

・何故彼女は「君」とエッチしようと思ったか
男なら誰でもいいなら「君」じゃなくてもいいわけで。
介抱した流れからも繋がってないし、>243ではないがレイプみたいな嫌悪感がある。
#バッドエンドみたいじゃん。

ついでに言うと私自身素クールとレスされたこともあるが、冷子には感情移入できない。
勿論、理由は既に書いた通り。
245236:2006/04/20(木) 10:43:50 ID:20Pd1/Zg
うああ、ありがたいレスが沢山、ありがとうございます。
本当はもっとちゃんと全部辻褄合わせたかったんだけど
短くまとめようとか気にしてたら入らなくて徹夜明けのノリで
最期エロいシーン描いたらコレでいいやってゴメンナサイ
だから全然素直クールな彼女が描けてないんだ、一人称視点に拘りすぎて
主人公が知らないことは書けなくなってしまった部分もあったりで
なんとも不完全燃焼で次からはもっと時間置いて完成度上げてからにします
お粗末さまでした。
246名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 13:02:29 ID:bJ8h7cJh
そういうときには伝家の宝刀

つ[これは後で知った話なんだけど…]
247名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 21:01:35 ID:1ZI9FZZw
僕はどこをとっても平凡な男だ。
名前は田中孝史。
家も普通、容姿も普通、成績も上から数えても下から数えても変わらない。
スポーツも下手ではないし上手でもない。
対して彼女、神足沙良は完璧な女だ。
家は地元の大地主、容姿は端麗、成績はトップに君臨し続けている。
さらにスポーツも万能。

そんな男とそんな女の話です。
248名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 21:02:09 ID:1ZI9FZZw

僕が彼女と接点を持ったのは新学期の事。
クラス替えがあり、沙良と同じクラスになった。
幸か不幸か、僕は彼女と隣の席。
僕の気持ちは”天才と何を話せばいいんだよ・・・”と憂鬱だった。
女子と会話した事もあまりないし、まさに月とすっぽん。
どうすればいいのか悩んでいる矢先に彼女が声をかけてきてくれた。
「新しくクラス替えして友達が少ないんだ。話し相手になってくれるとうれしいが・・・」
僕はとまどってしまい、
「うん・・・」
と、その一言しか言えなかった。

最初はぎこちなかったもののだんだんと打ち解けてきた。
彼女は天才と言えどやはり学生。
ドラマとかは見るらしい。僕が好きなドラマと同じドラマが好きらしく
その話題などでなんとか話をしていた。
クラシックも好きらしい。
共通の話題を作るため僕もベートーベンやモーツァルトなども聞くようになった。
家が二人とも遠く電車の中で二人で話すこともよくあった。
だんだんと僕は神足さんが好きになっていた。
249名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 21:03:21 ID:1ZI9FZZw

ある朝の登校中に神足さんが不良たちに絡まれていた。
そのまま通り過ぎようか考えていると声が聞こえてきた。
どうも不良のリーダーが彼女に交際を申し込んだが、クールな性格の彼女は一言で
「いやだ」
と切り捨てたらしい。そして不良たちが逆上して絡んでいる。
「兄貴になんてことを!」「殴れてーのかこの女!」
現状認識終了。
選択肢。
1.助けを呼ぶ。
助けを呼んでもいいが田舎なうえまだ朝である。見てる人は僕しかいなかった。
却下。
2.素通りする。
隣の席なのにこれはまずい。
このことが広まったりすれば僕の学校生活は終わる。
これも却下。
3.助けてあげる。
スポーツが万能でも人数差がある。1対3はあまりにも分が悪い。
決定。
とりあえず彼女が助かればいいかと僕は決意を固めた。
「やめてあげなよ。」
と声をかけた。案の定不良たちは
「ふざけてんのか!?」
と声を荒らげる。リーダーらしき人物もこっちをにらんでる。
「だから彼女一人に3人はひどいよ。
彼女も嫌がっているしやめてあげなよ。
”いやだ”って言われてr」
と僕が言い終わるか終わらないかのうちに
「てめぇぇぇええええ!!!」
不良たちは殴りかかってきた。
僕は腹部や顔面をぼこぼこに殴られ意識はフェードアウト・・・
250名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 21:04:01 ID:1ZI9FZZw
気がつくと側に神足さんがいた。
「大丈夫か?私のせいで・・・ありがとう」
殴られた腹部に鈍痛が・・・でも
「そんなことより神足さんは大丈夫だった?!」
僕は自分の事より最初の目的が達成されたかが気になった。
「君が倒れた後、彼らはすぐに行った。
その男に助けられたな、とか捨て台詞を残して。
だから私は何も危害も加えられてない。」
良かった、僕は心の底からそう思った。
「しかし神足さんも大変だね。彼氏がいると断れば良かったのに。」
あれ?彼氏はいたっけ?でもこれだけ美人だかr
「そんなものはいない!」
と光に近い速さで否定がきた。
「いや、そんなに怒らなくても・・・
だって神足さんってすごい美人だs」
「本当にそう思うか!?」
今度は光速突破。何でこんなにテンションが高いんだ?
「う、うん。ほかにも勉強も出来るし、スポーツも上手だし。」
「そうか、ありがとう」
あれ?心なし神足さんの頬が赤い・・・
まさか!
251名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 21:05:08 ID:1ZI9FZZw
「神足さん・・・頬が赤いよ・・・」
「そ、そんなこと・・・」
もっと赤くなる。これは確実に・・・
「不良たちに殴られたんでしょ!?僕が余計な手出しをしたばっかりに・・・」
あれ、神足さんの頬の赤らみが消えた。その上目を泳がせている。
「神足さん、もしかして。。。」
「いや、だから、別に・・・」
「僕が余計な手出しして殴られて怒ってるんでしょ!ごめんなさい!本当にごめん!
こんなことしなければもうちょっと穏便に済んだかもしれないし。マジでごめん!」
神足さんはこけた。これはどうしたものか。
このような行動パターンは不可解。今まで培った知識の中に情報がない。
と神足さんが口を開いた。


「・・・君の、いや英次のことが好きだ。付き合ってくれ。」
「うん。・・・ってえぇぇぇえええ!!」
ちょ、ちょ、ちょっとまて。
これはなんだ!?不可解すぎる。え?何?”英次のことが好き?”
英次って僕?何がなんだかわからない!
あ。これは夢か。夢なのか。だから神足さんに告白されt
「だから英次。君のことが好きだ。君は私のことが嫌いか?」
「いや、そんなことはないんだけど。ちょっと待って」
現状を把握しよう。
とりあえず神足さんは僕のことが好きらしい。
で、僕は彼女が好きなのか?
確かに僕は彼女のことが好きかもしれない。
いつもはクールだが一度だけとてもやさしくにっこりと微笑んだ事がある。
多分そのときから僕は彼女の事が好きなのだろう。
252名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 21:06:54 ID:1ZI9FZZw
とりあえず前半です。
エロは多分無理です。
そこまでの技術力がありません。
駄目なところとか書いてくれるとうれしいです。
よかったとか書いてくれるともっとうれしいです。
253名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 21:37:04 ID:IAiGmUDi
今後の展開が楽しみではあるんだけど、主人公の名前が途中で変わってない?伏線?
254名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 21:46:18 ID:1ZI9FZZw
ぐは。
>>247が間違いです。
孝史じゃなく英次が本当の名前です。
恥ずかしい・・・
255名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 00:06:10 ID:xMig9zpM
素直クール娘ってなんでダメ男が好きなの?
256名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 00:11:20 ID:XA8XiQef
>255
駄目男と出来た女がくっつくのは現実問題でも割とよくある話だ。
心理学的には異性に自分に欠けた部分を求めようとして
自分と対照的な人間を選ぶとか選ばないとか。アニマとかアニムスというあれ。
257適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/04/21(金) 00:18:59 ID:dawCADqE
>>255
俺はこういう風に考えているかな。
書き手としての意見。


何でもできる上に美形という完璧男に女が惚れるのは当然の話で、
当然だからこそ展開としてはありきたりで面白くないというのが一つ。
(重要度低)

素クールはそういう世間の価値観に囚われない独自の考えを持ち、
相手の隠れた美徳に気づく洞察力を備えた女の子であって欲しいというのが一つ。
(重要度高)

感情移入の対象となることが多い男が完璧男だと、完璧男ではない読者や
俺の感情移入が難しくなる、要するに読んでいて今一つ面白くない、
書いていて苦痛だ、というのが一つ。
(重要度高)


まあ、同じ理由で本当の駄目男にも感情移入はできないし、
そんな奴に惚れるような女の子であって欲しくはないわけだから、
結局は「駄目だ駄目だと言われつつもいい所のある男」が主人公になるわけだが。
258名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 01:28:01 ID:1Eve+VJr
>>255
ギャルゲやエロゲの主人公は言うに及ばず、
ラノベだの漫画だのの主人公のお約束は
「常識的思考のできる、何の取り柄もない平凡な少年」
少女漫画も「何の取り柄もない少女」がイケメンと恋に落ちるし

それに「何にでも一生懸命」「やさしい」「正義感がある(喧嘩は弱い)」がくっつくとまさに王道
259名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 02:21:18 ID:07HGXAUI
>>229
KWSK
260名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 04:13:02 ID:JENGK77a
ただダメ男はダメ男でも性格とか微妙にパターンが違うからそこは作者の腕の見せ所。
ダメ男の方も彼女にベタ惚れなのも居ればダメ男なりにプライドがあって彼女にそっけなくしてそれがトラブルの種になって話が面白い方向に転がるとか。
261名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 05:18:56 ID:CSr5D2f/
ダメ男に世話を焼く、世話好きの素直クールを我々は欲しているのだ。
262236:2006/04/21(金) 15:49:04 ID:zVzYToVo
○○君と砂尾冷子さんの不完全燃焼ぶりを補うために
Bパート砂尾さんの場合とかを書いてみているです。
一応説明不足だった素直クールな彼女の側の視点で書いてるんですが
なんだか素直クールなのかどうなのかよくわからなくなりそうだ。
一応表向きは素直クールのテンプレな口調なんだけど
内面を深く描写しようとするとすごく難しい。
明日の早朝ぐらいにはできるかも。未熟者ですががんばってみてます。
263名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 17:15:48 ID:ALvhEyFe
エロなし

 ふたりで

 往生際が悪いのは重々承知してるが、俺は何度目になるかわからない愚痴を、ため息交じりで呟かずにはいられなかった。
「何故ここにいるんだろう?」
 深夜の学校。
 勿論人気なんてものがあるわけがない。
 そのあるわけのない、というか、あっちゃいけない場所と時間に、俺とこいつは職員室の扉の前にいた。
「説明したろ」
 そいつは首だけを動かして俺を見る。
 ただ、その間もカチャカチャと、ヘアピンを鍵穴に差し込んで、片膝立てた姿勢のまま、小刻みに忙しなく手は動かしていた。
「見張りが必要なんだよ。それも決して裏切らない信用できる見張りが。それはきみ以外には、絶対に考えられないからね」
「そりゃどうも」
 まったく。
 こいつのこういうとこが嫌いなんだよ。
 とてつもなく恥ずかしい台詞を、何でもないことのように、当たり前のように、全然恥ずかしげもなく言いやがる。
「…………」
 悪い気はしないけど、さ。
 そんな理由でご指名を受けた俺は、テスト前日、いや、もう日付が変わって今日、問題用紙を盗む為のパートナーとしてここにいる
 のこのこと『会いたい……』、なんて誘いに乗ったのが運の尽きだ。
 学校一の変わり者、宇喜田美沙 電話の声は切なさ爆発で、なかなかの演技派である。
「あのときは俺も若かった」
「うん? いま何か言ったかい?」
「なんにも」
 すでに顔を鍵穴へと戻してる美沙の、この闇に溶けてしまうんじゃないかというくらい綺麗な黒髪、その旋毛を見下ろしながら、
状況にも慣れて正直暇になってきた俺は、ずっと思っていた疑問を口にしてみた。
「なあ美沙」
「何?」
 彼此カチャカチャと美沙がやり始めて十分ほど、知らない人が聴いてもわからないだろうが、その声はかなり苛ついてきている。
 結構短気。
 気が散るからもう黙ってろ、という気配を言外に感じられるが、俺はそんなこと知るかよと口を開いた。
「お前ならさ、こんなんしなくたって、今日のテストくらいは余裕じゃん。何で問題用紙を盗もうなんて、思いついちゃったわけ?」
 俺を巻き込んで。
 とは、まあ、さすがに言わなかったけどね。
264名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 17:16:52 ID:ALvhEyFe
 この女は授業にはほとんど出ないくせに、成績は必ず毎回トップという、漫画のキャラみたいにふざけた奴だ。
 今日一晩ぐっすり寝るだけで、やはり今回も予定調和のように、いつも通り何も変わらず、当たり前に定位置に座るだろう。
 こんなリスクを犯す意味はまるでない。
 ただ俺に限って言えば、一考も二考も価値があるけどな。
「サメというのは常に前進してないと死んでしまう。それと同じことなのだよ」
「は?」
「きみという存在を知ってからというもの、わたしは常にドキドキしていないと、何だか気が済まないんだ。わかるかな?」
「…………」
 わかるかボケ。
 くりんっと俺を見上げるな。不覚にもドキドキしてしまったじゃないか。
「いままで生きてきて、わたしは何をやり遂げた? 何年か経って人生を振り返ったらこう言いたい」
 珍しい。
 俺だってそうそうはお目にかかれない、心奪われ蕩けるような、最高にとびっきりの笑顔を美沙は浮かべる。
「見ろ。わたしはあれをやったんだ。馬鹿だったかもしれないけど、わたしがやったんだぞ。そう言いたい…………きみと一緒に、ね」
「…………」
 くっそう。
 聴こえたよ。聴こえやがったよ。鼓膜ではなく心で、はっきりとばっちしと聴いちゃったよ。
 自分の胸の奥の奥で、ズキュユユユュュュュュュンって、ガンダムだったら間違いなく、ザクが撃ち抜かれたみたいな音が。
「だからわたしの、宇喜田美沙の人生の目標は」
 すくっと美沙が立ち上がる。
 俺の背がそれほど男として高くないのもあるが、美沙は女性としては比較的背が高い方だ。
 お互いの目線はほとんど変わらない。
 その瞳は愉しげだけど儚げで、強い光を放っているのに、どこか脆さを感じさせて、魂までもが吸い込まれそうなほどに魅惑的だった。
「…………」
 ああ、俺はこいつに、完璧に惚れてるな。
 認めざる終えなかった。
265名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 17:17:47 ID:ALvhEyFe
「きみみたいに馬鹿なことを一杯して、きみみたいにスリリングな人生を、きみと共に歩くのが、いまのわたしの人生の目標だよ」
「えっ!? ちょ、ちょっと待てくださいよ」
 俺は自分の人生は平凡ながらも、そこそこ順風満帆だと思ってたんですけど。
「自分ではなかなか気づかないもんさ。でももっと自信を持っていい。わたしが保証する。きみの生き方は間違いなく――面白い」
「……保証するって」
「わたしの言葉が信じられない?」
「いや、その、そういうわけじゃなくてだなぁ」
「ならここを触ってみて。嘘じゃないのが、良くわかるはずだから」
 情けなくもあたふたしている俺の手を、美沙がすぅっと取ると、そのまま何の躊躇もなく自然な流れのままに導く。
“ぐにゅ……”
 想像してたよりも大きくて柔らかな、びっくりするほど手にしっくりくるいい乳だった。
「指を動かしちゃ駄目だよ。まだそれは早い。わかるだろ? わたしの心臓がドキドキしてるのが。きみを感じるだけでこんなだ……」
 美沙は色っぽい掠れた声で言いながら、俺の厚くもない胸に、その身を捧げるようにしなだれかかってくる。
 こいつ絶対に確信犯だ。
「くっ、うう、ぬぬっ、くくっ」
 しかし神に誓って一ミリたりとも、指先を動かしちゃいないが、
“むにゅにゅ……”
 めり込む柔らかい肉の感触が、そりゃもうこの世に者とは思えないくらい絶品で、滅茶苦茶に狂いそうなほど気持ちいい。
 美沙の早すぎる心臓の鼓動がそれに拍車を掛けている。
「いまこれ以上されたら、ふふっ、もしかしたら、死んでしまうかもしれない」
 生き地獄。
 それはこういうものだと、俺は生まれて初めて、元気ハツラツの股間の痛みと共に知った。
「わかって貰えた? きみがどんなにわたしをドキドキさせる、何にも代え難い面白い存在だということが?」
「あ、ああ、ま、まあ、な」
 耳朶に吐息を吹きかけるような囁き。
 堪らなくくすぐったい。
「良かった……」
「あっ!?」
 俺は思わず未練がましい声を出してしまった。
「この続きは次の機会に」
 対して美沙は素っ気ないほどあっさり身体を離すと、またしゃがみ込んで、ヘアピンを鍵穴に差し込もうとしている。
266名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 17:18:47 ID:ALvhEyFe
 次の機会ってそりゃいつだよ。
 などと思いながら俺は、
「どけ」
 美沙を少しだけ強引に押し退けて、鍵穴の前にどかりと、不貞腐れたように座り込んだ。
 何にもせずに突っ立ってると、全開で勃ってるだけに、欲望のままに美沙を押し倒してしまいそうで怖い。
「ヘアピン貸せ。お前不器用なんだよ」
「ふふっ、そうかもしれないな」
 大人しくすんなりとヘアピンを俺に渡す美沙。
 なるべく視界に収めないよう、鍵穴に極力集中して受け取る。
 恋に恋する思春期の中学生女子みたいに、俺にはあまりに眩しすぎて、いまはまともに美沙の顔が見ることができない。
「俺は汚れてるなぁ」
「そんなことないさ」
「そんなことあ――」
“カチャ”
「あれっ!?」
 まだ二、三回しか揺すってないのに、いま何か、外れたような音がしなかったか?
 美沙にもそれは聴こえたのか、無言で扉に手を当てると、立て付けが悪いのか、がらがらと耳障りな音をさせながら横に引く。
「開いたね」
「開いたな」
「それじゃ今度は閉めてくれないか」
「は?」
「言ったろ。わたしはドキドキしたいだけなんだ。ここから先は多分、ドキドキしないと思うから」
「そう……だな」
 想像してみた。
 盗んだ問題用紙を眺めてる美沙。確かにあんまりドキドキしないかもしれない。
「オッケー不二子ちゃん」
 扉を元に戻して俺はまたヘアピンを揺らす。
「任せたよルパン。ああ、でも、朝までにできればいいからね」
「そんなにかかるかよ。こんなのすぐに終わるさ」
「それは残念」
 言いつつ美沙はスカートを折りたたんで、俺の隣りに体育座りでちょこんと腰を下ろした。
267名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 17:19:47 ID:ALvhEyFe
“カチャ”
「きみとこうして二人っきり、誰もいない学校にいると、わたしはとてもドキドキする。……本当に……残念…………」
「開けるよりも閉める方が難しいんだ」
「そうなのかい?」
「そうなのだよ」
“カチャ”
 俺ってすげぇ。
 どうもコツを掴んだみたいで、開けたり閉めたり自由自在だぜ。自分にこんな隠れた才能があったとは思わなかった。
「だからちっとはゆっくりできる」
「嬉しいよ」
 にっこりと微笑む美沙。
 視界の端でそれを見ながら、しばらく美沙には内緒にしとこうと、俺は固く固く心に決める。
“カチャ”
 ピッキングの才能が開花したことと、
「寄りかかってもいいかい?」
「訊くまでもない」
 ずっとずっと宇喜田美沙と、面白い人生を歩いていくことを、肩に心地よい重みを感じながら…………。

                                                 終わり


クールにクールにってのを意識すると難しいですね。意識しすぎると型通りのキャラになっちゃいますし。

236さん 横入りみたいになっちゃって申し訳ありません。

○○君と砂尾冷子さん 愉しく読ませていただきました。前回の補完『砂尾さんの場合』期待してお待ちしてます。
268236:2006/04/21(金) 19:41:42 ID:m+grmTFb
うああ、キタキタずぎゅーんって来たわwこれいい、すごくいい
あと十分エロイwあとありがとうモチベ貰った頑張る
269適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/04/21(金) 22:25:25 ID:dawCADqE
投下開始
270適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/04/21(金) 22:25:57 ID:dawCADqE
来てしまった。空崎に引っ張られていく内に「まあいいか」という気分になってしまったのがよくなかった。
気づけば、七山家のような一般家庭の人間は余程のことがなければ利用しない高級店で、
七山家のような一般家庭の人間は絶対に買わない高級和菓子を割り勘で購入し、
時代劇に出てくる武家屋敷のように立派な門構えの純和風の豪邸の前に立っている。
この豪邸はとにかく大きく、白塗りの立派な塀が左右に長く続いている。
「どうかしましたか?」
歴史の重みを感じさせる門の中でそこだけ現代的なインターホンを押している空崎が、
硬直して立ち尽くしている僕に訝しげな視線を向けてくるが、何も言えない。
駄目だ。これは予想以上だ。評判の名家だから漠然と立派な家を想像していたが、
ここまでとは流石に思っていなかった。こんなヤクザの組長の家のような豪邸だとは思わなかった。
もう無理だ。よし帰ろう。
「あ、あのさ、空崎……」
踵を返そうとしたが遅かった。
「私です。七山先輩も一緒です」
もう手遅れだった。
「何ですか、先輩」
「何でもないよ……」
インターホンを押す前なら逃げるという手もあったのだろうが、名前を出されてはそれも無理だ。
いや、単純に逃げるだけなら全力疾走でもすればいい。スポーツ万能の空崎を運良く振り切れれば
という条件付だが、逃げ去ることも不可能ではない。
だが、それをやってしまうわけにはいかない。今それをやったら、空崎を傷つけるのみならず空崎家からの
あるのかないのかわからない信用をも失い、空崎と今後も付き合いを続けていくようなことは不可能になってしまうに違いない。
正直、結婚だの婚約だのというのは気が重い話だが、いずれはするものを今するだけだと割り切れば大したことでもない。
しかし、空崎と結婚するというのはともかく、空崎の家族に挨拶するというのは緊張する。心の準備ができていない。
家族に挨拶するのも「結婚」の内だとしたら、つまりは結婚の覚悟さえ決まっていないと言えるのかもしれない。
だがもうここまで事態が進んでしまった以上、四の五の言っても仕方がない。
とにかく、もう逃げられないのだから覚悟を決めるしかなかった。
ここまできたら、もう空崎の家族に誠心誠意挨拶して何とか交際だけでも認めて貰うしかない。
「先輩、行きましょう」
「あ、うん……」
心底からの覚悟を決めて、僕は何が起こるかわからない戦場へと足を踏み入れた。
空崎に手を引かれ、雑木林の道を歩いていく。
「先輩、こちらです」
「あ、うん……にしても凄い家だな……」
「そうですか?」
「うん……凄いよ」
空崎家は物凄い家だった。とにかく広かった。いや、家が広いというよりは敷地が広かった。
ぱっと見た限りでは小学校の運動場と同じくらいの敷地面積があったのだが、そのほとんどが雑木林だったのだ。
その雑木林を貫くように真っ直ぐ伸びる石畳の先に、空崎家はあった。
丁度、磯野家と伊佐坂家を足して二階建てにしたくらいの豪邸だった。僕の家の何倍も大きい。
流石に玄関の大きさはそこまでの差はなかったが、建売住宅の我が家とは比べ物にならないくらいに古めかしかった。
271適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/04/21(金) 22:26:42 ID:dawCADqE
「どうぞ、先輩」
戸を開け、敷居を跨ぐ空崎が、振り返って微かな笑みを浮かべる。
「あ、はい、ええと、お邪魔します……」
その笑みに本当に後戻りできないところまで来てしまったことを実感しつつ、僕は空崎に手を引かれるままに歩き出した。

                        *     *     *

「お父様、お母様、お祖母様、悠美ちゃん。こちらが七山四郎先輩です」
僕の隣に寄り添うようにして正座した空崎が、緊張で死にそうになっている僕を彼女の家族に紹介する。
今のこの座り位置は非常に居心地の悪いものだった。いきなり現れた男が娘とべたべたくっついて座る姿を見て、
空崎の家族が一体何を思うかを考えるだけで冷や汗が出てくる。
僕が通された和室では、僕達との間に大きな卓袱台を挟んで空崎のご家族が並んで座っていた。
その背後には見るからに高そうな掛け軸や壷が飾られていて、いかにも純和風の名家という感じだった。
「は、はい……七山四郎です、娘さんとは、その、親しくお付き合いさせていただいています」
紹介されてそのまま黙っているわけにもいかないので、僕もドラマで見たような挨拶をしてみる。
これが実際に正しい挨拶なのかはよく知らないが、他にやり方がわからないので仕方がない。
どれだけ貧しい手札でも、勝負するならそこから札を切る以外に方法はないのだ。
「ほう、君が七山くん……あ、いや、四郎くんか。話は義母(はは)と娘から聞いているよ」
僕の対面に座っているのが空崎のお父さんが、重々しく応える。
気難しげに顰められた顔がわけもなく不安を掻き立てる人だ。つまり威厳たっぷりということだ。
「ええ。とても誠実でお優しい方だそうで」
その右隣に座っているのが空崎のお母さんが相槌を打つ。高校生の娘がいるとは思えないほど若々しい、
空崎を表情豊かにして熟成させたような感じの人だ。つまり美人だということだ。
「突然だったのに孫のことを誠実に受け止めてくださって、本当にありがとうね」
その隣に座っているのが空崎のお祖母さんが後を引き継ぐ。空崎のお母さんを更に熟成させたような人だ。
つまり「こういう風に年を取れたらいいな」という人だ。
「え、えーと、あの、お姉ちゃ――姉のこと、よろしくお願いしますね」
お母さんとお父さんを挟む位置に座っているのが空崎の妹さんが締める。
空崎から落ち着きを取り去った空白にあどけなさと快活さを加えたような感じの女の子だ。
つまり美少女ということだ。
何だかよくわからないが、僕は歓迎されているらしい。緊張して損をした気分だった。
「ところで四郎くん、夕飯は食べていくんだろう?」
唐突に空崎のお父さんが口を開く。
「え……」
咄嗟に反応できない。
「そうね、それじゃあ、四郎さんのために腕によりをかけて用意させて貰おうかしら」
「あら、それなら私も手伝うわ。何てったって可愛い孫のためだもの」
「今日はお兄ちゃんの歓迎会だね」
どう答えたものか迷っている内に、話は勝手に進んでいく。
どうも空崎だけでなく、一家揃って思考速度が凡人とは段違いらしい。
彼ら一家の間ではもう僕は家族の一員になっているらしく、僕が夕飯を食べていくことは
決定事項らしかった。この速すぎる展開にはどう頑張ってもついていけそうにない。
272適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/04/21(金) 22:27:13 ID:dawCADqE
「あ、え……?」
僕は口をまごつかせて話を聞いているだけだった。
「先輩、何か好き嫌いはありますか?」
「特にない、けど……あ、辛いものはちょっと苦手かな」
当然のことのようにいきなり話を振られ、ふと気づくと食事の好みを語っている自分がいた。
「だそうです、お母様」
「わかったわ。じゃあ、これからお買い物してくるから楽しみにしててね」
空崎のお母さんはにっこりと笑って頷き、いそいそと立ち上がる。
「あ、お母さん。私、荷物持ちするね!」
妹さんがそそくさとその後に続く。
「私はお散歩にでも行ってこようかしら……」
大儀そうに空崎のお祖母さんが立ち上がる。
「あー……うん、そういえば注文した本が届いたんだった。私はこれから取りに行ってくる」
しばらく考えてから頷き、空崎のお父さんが立ち上がる。
「それじゃあ四郎くん。悪いけれど、流美と一緒にお留守番お願いするわね」
「えっ、ちょっ、まっ……」
「行ってきまーす、お兄ちゃん」
「くつろいでいて頂戴ね」
「……では、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
気づいた頃にはもう遅く、手を振る空崎に見送られて空崎のご家族は全員外出してしまった。
一家揃って急に用事ができる、或いは思い出すというのはどう考えても出来すぎている。
それどころか、空崎のお父さんなんかは露骨に用事を作り出していたようだ。
明らかに全員が全員とも無理矢理理由をつけて家を出ようとしていた。
「……二人きりですね、先輩」
ぴったりと寄り添ってくる空崎は、とても嬉しそうな様子だった。
「そ、そうだね……」
僕はその淡い笑顔と身体の側面に生じた体温に対して、まるで純真な中学生だった頃に
女の子といい雰囲気になった時に感じて、それ以来忘れていた胸のときめきを覚えた。
「二人、きり、だね……」
どうしていいかわからなくなって、落ち着きなく周囲を見回しながら鸚鵡返しに空崎の言葉を繰り返す。
どうやら僕は、完璧に罠にはめられたらしい。
空崎家は、今日紹介されたばかりのどこの馬の骨とも知れない男、つまり僕と、嫁入り前で
しかもまだ女子高生の大事な娘が二人きりになるような状況を家族ぐるみで作り出したのだ。
それだけ僕のことを信頼してくれているというか気に入ってくれているということなのだろうが、
正直なところを言えば、どうかしているのではないかとも思う。
「先輩、気づいているでしょうけど、家族には二人きりにしてくれるよう前もって頼んでおきました」
緊張と困惑のあまり正座したまま動けずにいる僕とは対照的に、空崎は実にリラックスした様子で擦り寄ってくる。
「三時間は帰って来ないようにお願いしてありますから……」
寄り添うような状態のまま、あまりにも無駄がなさすぎるせいで大した速さでもないのに認識できなくなった、
流れるような動きで更に迫ってくる。気づいた時には既に、僕は空崎に抱き締められていた。
失礼にならないようにときちんと揃えた膝に座られ、正面から抱きつかれて肩口に顔を埋められた。
273適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/04/21(金) 22:27:45 ID:dawCADqE
引き締まっている印象があるのに不思議と柔らかい腿と尻の感触に下半身を刺激され、
華奢だが痩せこけているわけではない腹部から胸元にかけての温かさと柔らかさに上半身を刺激され、
人形のように小さくて愛らしい手に外見からは想像もつかない力強さで背中を抱かれ、
肩口に埋められた口元から吐き出されるしっとりとした息に幼い外見に似合わない色気を感じさせられ、
僕は今度こそ本当にどうしていいかわからなくなり、まともに喋ることすらできなかった。
何か雰囲気の出る言葉でも囁けばいいのか。今すぐやめるようにやんわりとたしなめればいいのか。
力強くしがみついてくる手に負けないくらいに抱き返してやればいいのか。問答無用で振り払えばいいのか。
僕にはわからない。どれも不正解で、しかしどれも正解であるように思えてどうしようもない。
僕は呆然としたまま、空崎は僕に抱きついたまま、沈黙と共に時間が過ぎていく。
「……先輩は、私とこういうことするの嫌ですか?」
どれくらいの時間が経っただろうか。肩口に埋めていた顔を上げ、空崎が呟いた。
「嫌なら、やめます。嫌われたくありませんから……」
背中に回していた手を緩め、透き通った湖のような瞳で真っ直ぐに見つめてくる。
もし僕がイエスと答えたならば、きっとこの子はすぐにやめるだろう。そうして、もう二度と自分から
こういうことをしようとはしなくなるに違いない。この子には、そういう、変なところで真面目で律儀そうな雰囲気があった。
それでは駄目だ。それは僕の本意ではない。
少なくとも、嫌がっているわけではないのだ。どちらかと言えば嬉しいくらいなのだ。
それを何と伝えたものか悩んでいると、僕の沈黙を悪い方向に解釈したのか空崎の手が背中から離れた。
「……いや、別に嫌がっちゃいないよ!」
それを残念に思う自分に気づいた瞬間、僕は反射的に、半ば叫んでいた。
身を離そうとした空崎は、驚いたように軽く目を見開き、硬直している。
「別に、嫌ってわけじゃないんだ。でも、ほら、やっぱり、さ……ね?」
自分が出した大声に、たぶん、僕は空崎以上に驚いていた。どうとでも解釈ができるというよりは
どうとも解釈のしようのない歯切れの悪い言葉を紡ぐばかりで、何一つとして意味のあることが言えなかった。
「……やっぱり、とは?」
どうやら僕が嫌がっているわけではないことを理解してくれたらしい空崎は、心持身を寄せてきながら僕を見上げた。
「……えーと……」
それは僕にもよくわからないのだから答えようがない。沈黙に耐えられずに何となく言っただけなのだ。
「……やっぱり、ほら、『間違い』があったらまずいでしょ?」
今この瞬間に浮かんできたものだが、しかし同時に心の底からそう思っている理由を答えた。
僕は本日を以って高等学校を卒業した身ではあるが、まだまだ社会的には半人前未満だ。
就職はおろかアルバイトすらしたことがなく、生活にかかる費用も娯楽に費やす金も全て親に頼っている
僕には、もし空崎が妊娠でもした場合、一緒に育てる資金はおろか中絶の費用も出せそうにない。
そんな人間に女の子を抱く資格があるはずがない。権利に伴う義務と責任を果たせない人間に何かをする資格はない。
「結婚を前提にお付き合いするんですから、それは『間違い』にはなりませんよ」
「でも、怖いんだよ、僕は。もし子供が出来ちゃったら、って思うとさ」
「私なら、平気です。先輩の子供なら、むしろ避妊具にこっそり穴を開けてでも欲しいくらいですよ」
冗談で紛らわせてくれているつもりかと思ったら、空崎の顔は真剣そのものだった。
「僕だって、その、君との、子供だったら、さ……でも、育てるだけの力がないんだ……しかも、出産費用も出せない」
「お金なら大丈夫です。お祖母様にお願いすれば……」
「駄目だよ!」
「なぜですか?」
「そんな、家族から金を貰って子供を育てるなんて駄目に決まってるじゃないか」
彼女にしてみれば実家の援助を受けるだけだろうが、僕からしてみれば、その、妻の実家に援助して貰うことになる。
ろくな生活力もないくせに「娘さんをください」とばかりに押しかけた挙句に一時の衝動に駆られて妊娠させた上に、
「出産費用が足りないんでちょっとお願いします」などと言えるわけがない。たとえ空崎家が状況をお膳立てしたからだといえども、
それではあまりに虫が良すぎるというものだった。僕のプライドがどうたらではなく、道義的に問題がある。
274適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/04/21(金) 22:28:17 ID:dawCADqE
「……何か勘違いしてません?」
呆れたような、微笑ましいものを見るような態度で空崎が僕を見上げる。
「何かって何を?」
「お金を出して貰うつもりなんてありませんよ?」
「え、それはどういうこと?」
「足りない分は貸して貰うんです。何年かかってでも、二人で働いて返すんですよ」
「あ、そうなの……」
どうやら虫のいいことを考えていたのは僕の方らしかった。もちろん、空崎家の財力をあてにしていること
それ自体に変わりはないのだが、それでも心構えが違えば向き合う姿勢も変わってくる。
本来は全て自分達で出すのが筋だろうが、最悪、借りるというのも一つの手段ではある。
「はい。だから何にも問題なんてありません……もし問題があるとしたら……」
「……あ、あるとしたら?」
空崎がわざとらしく言葉を切って顔を寄せてくる。しっとりとした息がかかるくらいの距離にまで
近づいてきた顔に、僕は軽く息を呑んだ。冷静に考えればただ顔が近づいただけのことなのに、
もうそれが何か決定的なものであるかのように心がざわめく。ついでに言えば、思考の方も大分ざわめいている。
空崎の息がいい香りだとか、僕の息は臭くないだろうかだとか、あと少しでキスができるなだとか、
そういった思考が脳内を高速で流れていく。
「先輩が、その気になってくれないことだけです」
背筋に心地よい震えが走るほどの艶を秘めた声が耳を離れず、言葉を紡ぐ桜色の唇から目が離せない。
少しずつ、少しずつ、近づいてくる。いつの間にか、空崎は目を閉じている。
「先輩は、私とこういうことするの、嫌ですか?」
距離がゼロになった。僅かに湿った、すべすべとした、温かくて、冷たいものが、僕の唇に触れている。
接触時間そのものはほんの数秒だったのだろうが、僕には時間が停まっていたようにも思えるほど長いものだった。
「私は、先輩とこういうことしたいです」
そんなことを呟きながら、空崎は僕の胴を抱えるようにして抱きつき、胸に顔を埋めてきた。
「先輩は……嫌ですか?」
そんなことをこんな体勢で、寂しげで悲しげな口調で呟かれてはもう堪らない。
「ぼ、僕は……僕は、僕も君と色々したいと思ってる。キスや、ハグや……その、もっとえっちなこととかも……」
気づけば僕は、膝を跨ぐように座っている空崎の華奢な身体を抱き締めていた。
「でも、今は駄目だ。一時の感情に流されちゃいけない」
僕は空崎にと言うよりは自分に言い聞かせるつもりで言った。
「……わかりました。今は我慢します。その代わり、お願いがあります」
しばらく悩んでいた様子だったが、何とか了承してくれた。埋め合わせくらいはしてあげてもいいだろう。
「言ってみて」
「はい……このまま、みんなが帰ってくるまで抱き締めていてくれませんか?」
かなりハードな埋め合わせだが、抱き締めるくらいなら軽いものかもしれない。
そういえば、「困難な要求を持ちかけた後でそれよりいくらか軽い本命の要求を行う」という手法は
心理学的に考えて有効らしいが、もしかしてこの子は、それを実践したのだろうか。もしそうだとしたら末恐ろしい。
「……まあ、いいか」
「ありがとうございます」
抱き締めるくらいなら、と考えてしまうに至った僕は、まだ出会って一日にも経っていないこの子に大分毒されている。
そんなことを考えながら、僕は正座の形に組みっぱなしだった脚を胡坐をかくように組み直して長期戦に備えた。
「先輩に抱き締めて貰っていると、とても落ち着きます」
僕の背中に手を回し、大した筋肉もついていない胸板に頬を擦り付け、空崎は幸せそうに微笑んだ。
275適当 ◆iQ7ROqrUTo :2006/04/21(金) 22:28:51 ID:dawCADqE
ノシ
276名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 22:50:36 ID:L5EzZgq3
GJ!
277名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 22:52:28 ID:+HwKv8pb
GJだぜ
278名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 23:07:47 ID:JMKOYAsK
職人様方皆gj!

ところで>>263さん、もしかして西尾スレで戯言先生書いてらっしゃる方ですか?
違ってたらすみません。
279名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 01:01:25 ID:+nfPC5zy
GJ!

空崎カワユスw
280236:2006/04/22(土) 06:54:29 ID:qUrb27qM
砂尾冷子の闘い、あるいはもしも素直クールがダメ男に恋をするとしたら?
注:エロいシーンはこんぱちぶるなので>>236〜を読んでね

☆1/11
物心ついたとき既に、私は自分が周囲の人間と明らかに違うことを感じていた

産まれてすぐに父の仕事の都合で一家でオーストラリアに移り住んでから
十ニ歳で日本に帰国するまで、別段人種の違いで差別を受けたというわけではない
むしろ友人にも恵まれていたし、両親は仕事で居ないことが多かったが
祖父がそれを補って余るほどに愛情を持って育ててくれた。
日本に来てからも、祖父のおかげで言葉や習慣の違いに悩まされることはなかった

それでも明らかに自分だけが周囲と違う外見であるということを
気にせずには居れなかった、だからこそ日本に行けばその疎外感、違和感から
解き放たれるような気がして祖父と二人で帰国することを選んだのだ。

しかしそれは正しい判断だったのだろうか
確かに周囲と比べて自分が違っていると感じることはなくなったが
誰も彼も同じように見えてしまう、馴れれば判るようになると祖父は言うが
数年を経てもあまり改善は見られない、しかしさほどそれで困ることもなく
またそれ以外でも大事無く今まではやってこれたのだが…

最近になって私の通う高校で非常に難しい問題が発生してしまった
それも私自身に関することで、しかしあまりにも身に覚えのない話である

☆2/11
高校での私は常に一人で居ることが多い、昔と違いこの国では親しい友人を
つくることが出来ないでいた。
それには私が人を顔で見分けるのが苦手であると言う事よりもむしろ
私自身の心の持ち方に問題があったのだと思う
人にとって幼少時に過ごした場所と言うのは重大な意味がある
それが幸せであればあるほどに、そこから離れれば離れるほどに
振りかえり求める気持ちが強くなっていく。

辛く苦しいとき、それは心の支えとなるかもしれない
しかし古き良き思いでに縋るあまり、新しい出会いや変わっていくことを
拒絶することに繋がってしまってはいなかったか?
そんな現実を認めるのが嫌で勉学に励み、心身を鍛えることに没頭していった
しかしそれは現実逃避でしかなく、私は気付けばいつも一人だった

私は恐れていた、新しい友人を持つことで古い友人を忘れてしまうことを
祖父の言うとおりこの国は好きになったが、私の故郷はここではないのだ
言い訳であることはわかっている、自分の弱さだと認識してもいる
そのせいで祖父を心配させてしまっているのも心苦しい
それでも私は友人をつくることが出来ないでいた。

そしてそのことが、問題を大きくしてしまったのかもしれない
281236:2006/04/22(土) 06:55:22 ID:qUrb27qM
☆3/11
はじめはたいしたことではないと考えていた
たかが噂である、その内容も突拍子のないもので
明らかに悪意のある者が流したのだと聞いただけでわかりそうでさえある
相手にしなければそのうち皆も忘れるだろうし、何よりも私は潔白なのだ
虚偽の悪評を流されたところで、なにも困ることはない。

昨日、クラスメイトが校舎の手前で苦しんでいたのを介抱したが
思い返すと私を避けているようではあった、せいぜいがそんな程度のことだ
誠意を持って相手に接すれば分かり合えるのが人間だと私は信じている

いや、しかし私は本当に誠意を持って相手と接していただろうか
表面上は相手のためになるように考え行動しているつもりだが
そこに私の心はこもっていただろうか、相手のために行動する自分を
演じるために相手を利用していただけではないのか
だからこそ、皆は私を避けるようになったのではないのか
なにより私が相手を求めていないのだから、それ以前の話かもしれないが

数日後、噂は広がる一方のようで、担任に呼び出された。
まさかこんなことで呼び出されるとは思っていなかったので
指導室で教頭先生が待っていたことにも驚いたが、それからされた話には
驚きも怒りも通り越して呆れるしかなかった。

☆4/11
「こういう問題はね、非常に困りますよ、砂尾さん。
 私にも貴方と同じ位の子供がいるし、妻も悲しませたくはない
 貴方のように優秀な生徒がね、こういう問題を起こすことは珍しくないんですよ
 でもね、どうして私をこういうことに利用するのかなぁ…
 はっきり言って迷惑なんです、いいですか?これが事実であるかどうかは
 たいした問題じゃないんですよ、こういう噂が、流れて、私が、
 貴方達のような不埒な連中と一緒にされて、それどころか身に覚えのない
 咎を責任を負わされる、こんな不条理なことはない。
 いいですか?今度こういうことがあれば、、、なんらかの処分を考える必要も…」

迷惑している?迷惑しているのは私も同じだ、しかし長い説教を聞き終えて
論を返そうとするや「もういい、帰りなさい。私も忙しいし今回は大目に見ます。」
と言ってさっさと出ていってしまった。

ストレスを発散して満足したかっただけなのだろうか?
少なくとも私に大目に見てもらうようなことをした憶えも事実もないのだ
一体どうなっているんだろう。教室に戻ると誰かが一人で机に向かっていた
もう外は暗くなりだしている、照明も点けずになにをしているのか?
「本でも読んでいるのか?暗いところでは目を悪くするぞ」
明かりを点けてみる、この間の腹痛の彼だ。机の上にはなにもなく
うつむいて何処を見るでもなく、ぼーっとしているだけだった
考え事でもしているのか、邪魔をしては悪いと思いそのまま帰ったが
そういえば彼もいつも一人でいるような気がする、少しだけ親近感を覚えた。
282236:2006/04/22(土) 06:56:11 ID:qUrb27qM
☆5/11
このまま放っておいていいのだろうか、それともなんとか対処するべきか
しかしどうすればいい?教師はあてにならないし祖父にもこれ以上
心配をかけたくない。相談しようにも相手がいない。
かといって私にはどうすればいいのか皆目見当もつかなかった。

そうこうするうちに噂はさらに増えていった、誰かが悪意を持って
流しているのだろう、それをつきとめようと噂の流れを聞いて回ってみたが
一週間かけてもなんの成果も得られなかった。

私は自分の無力さを思い知るようだった、勉強もスポーツもなんの役にも立たない
いや、私は殴り合いをしろと言われても負ける気はないが、それも同じこと
頼りになる友人が居てくれれば、と古い顔を思い出してみるが
彼らはここには居ないのだ、なにをすることもできないのだ。
一人で良い、疲れたときに気を許せる相手がいたらどんなに助かるだろうか

弱音を吐く自分に負けそうになる、ここから逃げ出してしまいたくなる
そんな現実を忘れたくて私は必死に勉強や部活動に自己鍛錬に向かった
へとへとに疲れるまで動けば、余計なことは考えずにすむ
これでいいのだ、学校はもともと勉学、自己研鑚に励むための場所なのだから

☆6/11
噂が広がるに比例するように、周囲の人間は私を避けるようになっていった
その代わりに行状の善くない不逞の輩が私に声をかけてくるようになった
興味本位で近付いて来る者は以前にも居た、しかし私が相手にしなければ
自然といなくなったのだが、今回はしつこい、遠くから囃すような者も居る
私が知りもしない男たちが私に言い寄ってくる、どれも同じ顔だ
断っても断っても終わらない、金を持ってくる馬鹿も居た。顔面に叩きつけて
そのうえから蹴り倒してやった。

家を出るのが嫌になる日もある、でも祖父に心配はかけられない
教師に呼び出され説教もとい愚痴を聞かされるのも何度目か。

放課後遅く教室に戻るといつも○○君が一人で座っている
これも何度目だろう、彼は私を避けないのだろうか、いやあの時は避けていたな
その後も教室で何度か話しかけたことがある、いつも落ち着かない様子で
それでいて私の話に興味を示していたように思う、詰まらない冗談は考え物だが
私の言葉に対する返答には誠意のようなものが感じられて好感が持てた。
一人で考え事をしていることも多く、そういう時は遠くから呼んでも反応がない。
今日もそうだ。それに彼に話しかけられた記憶もないな。
私の噂を信じているのだろうか、そう思うとなんだか少しだけ悲しくなった
283236:2006/04/22(土) 06:56:46 ID:qUrb27qM
☆7/11
「あの〜、砂尾さん、ちょっといいですか?」
おずおずと声をかけてきたのは小柄で大きな目が特徴の少女
たしか出席番号一番の天野幸恵だったか。

これまで彼女とは同じクラスにも関わらずほとんど接点がなかったのだが
話を聞くとどうも彼女は私の噂を信じて私が経験豊富であると考えたらしく
つきあっている男子とのそういった方面での悩みを打ち明けられた。
「待ってくれ、期待を裏切るようで悪いがあの噂は全部嘘であって
 私も妙なことになって困っているのだ、だからアドバイスもなにもできない
 本当にすまない。」
驚いたことに彼女はそんな私に落胆するでもなく、噂に対して憤慨したうえで
同情の意を寄せてくれた、他人からの好意がこれほどありがたいものだという事を
思い出させてくれた、と同時に彼女の期待に応えられなかったことが残念でもあり
そういえば私はそういった事に関して今まであまりに無知であったことにも
気付かされたのだった。

そうだ、もともと避けていたのは周囲の皆か、私か、どっちだったか。
昔の思い出に甘えて、他人と真剣に関わることを面倒がって避けてきたのは
私の方では無かったか。それが結果として、今の事態を招いたのではないか?
これは私自身の弱さゆえに起きたこと、そうか、そうだったのか。

☆8/11
ならば私が変わらねば事態は変わらない、時が解決してくれるなど
行動しない者のする言い訳だ、そうして待っている間に失われたものは
帰ってこない、或いはそうでなかったとしてもそれは本当にどうすることも
出来ない状況である場合のこと、今の私にはまだ出来ることがある
試してみるべきことがあるはず、そう思えた。

手始めに周囲の人間に自分から働きかけてみることにした
噂を無視し、聞こえない振りをするのではなく、自分から否定していく
思えば聞いて回ったときになぜそれをしてこなかったのか。

本人が否定したところで信じないと思ったのか、信じていなかったのは
私の方だ。端から相手を噂を鵜呑みに信じるような人間達だと決め付けていた。

「おはよう〜、砂尾さん」
翌朝、歩いている背中から久しぶりに挨拶をかけられた。
噂が広まってからというもの挨拶すらろくにされなくなっていたのだ。
「おはよう天野、ありがとうふふ…」
何故か礼を言う自分がおかしくなって笑った。
天野はしばし珍しいものを見たような顔をしたあと笑いながら行ってしまった。
私の心に何か心地良い風が吹き込んでくる感じがした。
284236:2006/04/22(土) 06:57:26 ID:qUrb27qM
☆9/11
それから私は周囲の人間をよく観察してみることにした
これまでは必要でないこと、有意義でないことと切り捨てていたことだ。
そこで面白いことに気付いてしまった、私を常に観察している者がいる。
これはどういうことだろうか?
視線の主は○○君、本人は完全に気付かれていないと思っているようだが
注意して見ていれば観察されている私からは明白にわかる。

考えてみたがその理由は大きく二つに分けられると思う
即ち私に興味があるか、私に恨みがあるかのどちらかだろう。
前者は、つまるところ…私を好きだということ?
後者はもしかすると、件の噂に関係があるかもしれない
あるいは誰かに頼まれていると言う場合も含めて。

だが、私は彼に恨まれるような覚えは全くない、彼の行動が怪しくないかと言えば
嘘になる、しかしどちらの場合でも辻褄は合うように思えた。
私自身の経験ではないが文学、漫画、映画などによると恋をすると人の行動は
不安定になるという、その範疇であると言える程度だからだ。

どうにも彼のことが頭から離れなくなってしまい、私達はお互いを観察しつづけた。

☆10/11
三日間考えてもどうにも答えは出ない、これはどうも私の能力を越えている
そもそも色恋に関しては私は全くと言っていいほど未熟だ。
即席でそれらしい資料を漁ってみたが頭がおかしくなりそうだ
本当にこんなことをしているのだろうか?意味がわからない。
やはり経験だろう、それが絶対的に不足しているのだ。
そして彼が犯人であるのかどうかも結局のところ何も証拠は出なかった
本人に聞いてみる、言い逃れはいくらでもできるのだから意味はない。
やるとすれば彼を逃げられないように追い詰めて問い詰める。
しかしそこまでして、もし彼が無関係だったらどうだ?

むう、彼自身が望むかたちで追いこめば良いのではないか?

まず彼に私が好きか嫌いか問う。しかしこれはどちらの場合でも
好きだと言う可能性がある。だからそのあと呼び出して
二人きりになる、そこで問い詰めればいい。
私に恨みがあるならば私に対してなんらかの行動を起こすはず
そうでなかったら?

その時はそのまま彼と経験してしまうのも悪くないか?
私はいつの間にかそんな風に考えはじめていたのかもしれない。
いったいどちらが本当の目的なのかわからなくなってきていたとも…
いずれにせよあまりに軽はずみな行動だったと思う。
285236:2006/04/22(土) 06:58:12 ID:qUrb27qM
☆11/11
「……ぐっんぐ、ずずっ、○○君、君は、酷い男だ、私は、こんな、ぐすっ」
痛い痛い、本当に痛かった、裂けるかと思った。これがせっくす?
全然気持ちよくないよ、こんなこと、それに避妊具もつけないで中に…

彼を見ると何故かいままでの冷たい雰囲気が消えて、そのうえ涙を流していた
「な、なんで君が泣いているんだ?こんな酷いことを私にしておきながら…」
彼はまるで夢から醒めたように周囲を見回したり、自分と私とを見比べたりして
何度も目を瞑ったり、見開いたりして、それからこう言った
「ごめん、砂尾…れい、こ…さん、僕はその、ほどいコト、じゃなくてッ
 その、信じていなくって、だから、その、噂が、信じてしまったんだゴメンッ」

計画はほとんど失敗だった、私は彼に自分が嫌いか問い、彼がそれを否定すると
彼を性行為を餌に呼び出した、でもその後は、なんだか彼は人が変わってしまったようで
その結果、私自身の仕掛けた罠を使って私自身が強要されているような状況になってしまい
問い詰めるどころの話ではなかった。

しかし、どうやら悪い方の予想は杞憂であったということが私にはよくわかった。
こんな結果は私も望んだわけでもないが、自業自得というものだろう。
(いや、私はどこかでこうなることを?…)、それに今の気分はなぜかそれ程悪くない。
「○○君、当然のことだが、責任はとってくれるんだろうね?」
「えっ、責任って、あ、はい!よ、よろしくお願いします。」
「ふ、なんだいそれは?君は本当に情けないな。あともう一つ、言っておくが
 せっくすは二度としないからね、こんなことのなにがそんなにいいんだか…」
「え?あ、は、はぃい、ごめんなさい。」
彼は情けなく頭を下げながら、とても幸せそうな顔をしていた。
そんなところが腹立たしくて、頭を勢いよく踏んづけてやった。
「いた、痛い、ごめん、ホントにごめんなさい〜。」

――――了
まあオチは結局ご都合主義になってしまうのですが

これ、素直クールになってるかな?ちっと背景とかやりすぎかもしれず
一応冷子の内面とかを掘り下げつつ無理がない範囲で補完していったつもりなんだけど
正直この二人がくっつくのには壁がありすぎる、特に男は徹底してダメに書いたから
女が惚れる要素皆無wだと思うし、キャラ崩してももっと活躍させたほうが
スムーズだったかもしれないね。彼はこの後きっとおじいさんに殺されるね。
自分では結構頑張ったつもりなんだけども、い、如何でしたでしょうか?

追記…国は外国ならどこでもよかったのでてきとーです
286名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 09:08:29 ID:2rDB5Igt
ゴメン、最初の設定が悪くて、今度のがそれに引き摺られてしまって勿体無いと思ってしまった。
というわけで、これに懲りずにまた書いてくれるときっともっと楽しめると思う。
287名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 09:08:46 ID:Dn7RUsgI
乙。

砂尾さんがこの先二度とセックルしなさそうで悲しい。
288名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 11:12:52 ID:Lv8uuwlj
おおっ!みなさんGJ
289名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 16:05:20 ID:9ky83D6D
乙。贅沢を言えば問い詰めてる場面がもっと欲しかったかな……
290名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 16:56:37 ID:PAE+fGto
236さんへ

話自体は悪くないと思うんですが、読後感がどうしても、不完全燃焼みたいになってしまうのは、やはり○○君が原因の一つでしょうね。
書いてるご本人もおっしゃってますが、確かにこのままの性格設定だと、砂尾さんが惚れる要素はほぼ零に近い。
キャラを崩して活躍させろとは言いませんが、保護欲みたいなのから変化させれば、あるいはよかったのか……う〜〜〜〜ん。

それと教師に呼び出される場面。あれはもう少し嫌らしい言い方をさせた方が、個人的にはしっくりきます。
『きみのことは信じてるけど、火のない所に煙は立たないというからね』
みたいな感じで。脳みそ筋肉の体育教師ならいいんですが、教頭とかの地位があるキャラだと、いきなり断定口調は違和感がありました。

やはり今回も全体的に勿体ないです。
次作などがありましたら『ふたりの場合』みたいな感じで続き物になるのか、まったくの新作になるのか、とにかく期待しております。
そして今回もわかったようなレスでお気を悪くなされたら大変申し訳ありません。


>>278さん 違うスレで見つけられると、何となく小っ恥ずかしいもんですねw
291名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 19:20:09 ID:9qz0gnKG
>>236
お前の問題点は技術とか表現力とか以前のところにある。
お前には、絶望的なまでに推敲が足りない。
これからは一晩で書き上げてそのまま投下するようなことは
せずに、一度自分で読んで、手直しをしてみるよう心がけることを勧める。
292236:2006/04/22(土) 20:17:13 ID:+2KhcsuX
またしても勿体無くてすみませぬ、アドバイスやレス沢山ありがとう〜
投下するときは結構不安なんで助かります、励みになります感謝感謝。

今回は辻褄あわせとか結構気を遣ったつもりですが、細部が疎かになってしまったり
結局前の話の解説と補完に留まってしまったり。まだまだ手探りです。

>>291さんそうです、なんだかすごい当たってる気がします
勢いで書いてる部分が多いので、一応何度も読み返すんですけど、
手直しが苦手なようです、なんとかしようと思います。なんとかしてみます。

砂尾さん愛着も高まってるんで、できればこのまま二度とwにはしたくないですが
まったく別の話も書いてみたくもあり、いろいろ考えて試してみます。
293名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:28:15 ID:c34ljDVo
まぁあれだ。
素直クールには悲しいエチ話は似合わない希ガス。
もっとホノボノで嬉し恥ずかしで男優柔不断で後ラブラブが萌え素。
294244=286:2006/04/22(土) 23:19:37 ID:2rDB5Igt
処で、
>「見張りが必要なんだよ。それも決して裏切らない信用できる見張りが。それはきみ以外には、絶対に考えられないからね」

> とてつもなく恥ずかしい台詞を、何でもないことのように、当たり前のように、全然恥ずかしげもなく言いやがる。

これってそんなに恥ずかしいものなのかな。
信用できるからそう言っているだけだと思うのだが。
295名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:24:47 ID:9qz0gnKG
ただの友達からその場のノリでふざけて言われるのはともかく、
好きな女の子から真面目にそういうことを言われると、
やっぱり照れ臭いものがあると思うな、俺は。

いや、羞恥心を刺激されるのかどうかは知らんけど。
296名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:25:13 ID:AAvQecw1
>>293
あんまり型に嵌めすぎると発展性がなくなっちゃうだろう。

まあ、悲しいエチ話が向いていないっていうのは同意だけど。
297名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:39:41 ID:kI6732fU
ところで、素直でクールと来るとどうしても「スポーツ万能成績優秀」と続いてバリエーションが
狭くなるから、ここでさらに「天然」とか「方向音痴」とかそういうアビリティーを追加したらいいん
ジャマイカ?
298名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:46:38 ID:dRebfzDO
>>297
理知的なイメージでコーティングされているから気づきにくいが
ステレオタイプとなっている素直クールは周りの空気を読めない天然っ子が少なくないぞ
299名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:51:58 ID:3IUrjiiY
悲しい素直クール妄想

結ばれないと分かりつつ、一夜だけの関係を迫り、
事後に「あなたの子供が授かればいい」と男に言い放ち、
子供は授からず、男とは別離、一夜の思い出だけを抱いてクールに生きていく女。
周囲はクールな彼女の悲しみに気づかず、彼女自身も悲しみに気づけず、
ふとした瞬間に、「そうか、私は悲しかったのか…」と気づき静かに泣くとか?
300名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 00:00:17 ID:9qz0gnKG
しかし問題なのは
そういう鬱展開の需要が限りなく低いことだな。
欝OKという人はいても欝キボンという人はあまりいないはず。
301名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 00:40:27 ID:exfH0Mi2
>>299
相手が死ぬ(戦死、病死など)なら切ない悲劇としていいけど、
不倫や友達の彼氏(男は幸せになる)な展開は見たくないな

ワガママ?
302名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 01:08:56 ID:Uu97epuY
男が幸せにならなくても>>299は成立しそうだなぁ
死ぬのもありだけど、ただの音信不通でもそれはそれで切なさは出ると思う
303名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 01:10:03 ID:Uu97epuY
スマソ、あげちまった
304名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 01:36:40 ID:F7ci3Z4y
>>301
欝展開も、読み手が納得できるキレイな話ならOKだな

で、首輪の人マダー?
305名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 13:42:55 ID:M79eIUlf
>>301
激しく同意。
個人的な意見だけどNTRは好きじゃないし。
306名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:51:22 ID:5PSZJmXA
激しく保守揚げ
307名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:42:29 ID:JFgPiXW9
あー、ちょっとインスパイアされたので、書いてみましたよ。
素直クールかどうか、ちょいと微妙かもしれんけど。
いっちょ投下します。
308名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:43:51 ID:JFgPiXW9
「さようなら――」

 それが、僕の聴いた彼女の最後の声だった。
 僕は、以前彼女に誓った。
 もう二度と泣かせない。共に歩いて行こうと。
 そのために死力は尽くした。足掻けるだけ足掻いた。
 それでも、変えられない運命というのは確実に存在した。
 力一杯手を握っても、酷く頼りない。
 溢れる涙は零れるに任せる。
 拭うことも忘れ、ただただ、彼女の顔を記憶に留めようと……それだけに、意識を注ぐ。
 視界がぼやけて、一メートルも無い距離をまともに見ることが出来なかった。
 僕は……無力だ。
 彼女は、もう何も言わず、ただジッとしていた。
 ――力が抜ける。


 握った手が、滑り落ちた。


 僕は彼女に、高校生の時に出会った。
 入学してすぐのこと。学校の屋上で、一人昼食を摂っているのを見かけたのが最初だ。
 その時は、特に何も無かった。屋上の隅と隅で、会釈を交わすことすらなく、淡々と購買のパンを食べ終えた。
 何てことはない。きっかけといえば、それがきっかけだったのだろう。
 それから日を追うごとに、一歩一歩座る位置が近づいていき、いつしか会話もするようになっていただけのこと。
 互いの名前を知ったのも、微妙な距離の昼食が日課となって、随分と経ってからのことだった。

 彼女は、僕の一つ上の先輩で、いつも寂しそうにしていた。
 いや、それには少し語弊があるかもしれない。
 友達と朗らかに過ごしていたこともあるのは知っていたけど、きっと誰も彼女の寂しさには気付いていなかった。
 何故なら、彼女はそれを隠そうと必死だったからだ。
 けど、僕は気付いた。
 僕と彼女は、どこか似たようなところがあったからかもしれない。
 気付けたことが、その当時の僕の、唯一の自慢だった。

「あたしね、人と接するの苦手なんだ」
 ある日、彼女は僕に言った。
 二人の座る位置は、そろそろ一メートルになろうとしていた。
 暗に、これ以上自分に近づかないほうがいいという意味だろう。
 この時、珍しく無性に腹が立った。
 よって、近づく。手を引っ叩かれた。離れる。
 再び近づくと、足を踏んづけられた。離れる。
 また近づくと、今度は顔を叩かれた。離れる。
「バカ? それともM?」
 失敬な、断じて違う。
 ただ、嫌ならもっと早くにハッキリ言えってんだ。
 だから僕は、絶対にこれ以上離れてやらないと思った。
 それを告げると、
「そう。物好きね」
 それだけで、その日の会話は終わった。

 彼女は、人を避けようとするくせに寂しがりやだった。
 そして優しすぎ、強すぎた。それでありながら、弱すぎた。最悪の組み合わせだ。
 なんでもかんでも、自分の責任として内に溜め込もうとする。
 後に知った話から察するに、幼い頃の経験がそうさせたらしい。
 もう少しでも弱ければ、人の輪に混じることを選べた。もう少しでも強ければ、完全に孤立できてそれを気に留めることも無かった。
 そんなだから、見ていられなかったのかもしれない。
 これ以上近づかれるのが嫌だというなら、せめてこの距離は保ってやろうとした。
 それがせめてもの意地だった。
309名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:44:54 ID:JFgPiXW9
 別の日のこと。
「ね、あたしみたいのにかまけて楽しい?」
 弁当を、きれいに空にした昼食後のまったりタイム。
 ひなたぼっこしながら本を読んでいると、唐突に、そんなことを訊いてきた。
「んー……楽しいっていうか、落ち着きますね」
 目を逸らさずに返す。
 僕も、人付き合いは得意なほうではなかった。けど、人嫌いというわけじゃない。
 だから正直、近くに居るだけというこの距離感は好きだった。
 何かあっても、すかさずフォローはできるし。
 もっと近づきたいのは確かだけど、嫌がるのならそうもいかない。時間の経過に身を任せることにした。
「そう。でもゴメン、納得できない」
「そんじゃ、先輩が美人だからってのはダメですか?」
「ダメですね」
 即答されてしまった。
 自覚していないということはないと思うのだけれど。
 僕も男だ。少なからず、見た目に誑かされた部分がある。
 あわよくば、なんて邪な期待がないわけでもない。
 ……まあ、僕以上に見た目に騙された男は、不用意に踏み込もうとした挙句、彼女本人に痛い目を見させられてるらしいので、それも仕方ないかもしれない。
 勿体無いような、安心したような。
 でも、武力行使はいけないと思うな、僕ぁ。
「そう言われても……何ででしょ?」
「何ででしょうね、この変わり者」
310名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:46:10 ID:JFgPiXW9

 また別の日のこと。
 出会ってから、約一年の時が過ぎた。
 僕は二年に。彼女は三年に、無事進級を果たした頃。
 フェンスの向こう。桃色の雪が降る校庭を眼下に、僕は彼女の言葉を待っていた。
 背後には、どう言葉を紡ごうか迷っているだろう彼女が居る。
 たっぷり五分を数えてから、ようやく、
「…………本気?」
 それだけ返ってきた。
 振り返り、目を見て伝える。
 本気も何も。
「嘘言ってどうしますか。そんな度胸はありません」
「じゃなくって」
 さも当然そうに、彼女は僕に言った。
「あたしは、とっくにキミと恋人だったつもりだけど。――自惚れかな?」
 耳を疑った。
 この瞬間の僕は、目を丸く見開き、ありえないほどのマヌケ面を晒していたに違いない。
「いや、だってそんな……」
 意を決して告白したのに、そんなあっさり。
 ていうか、人を避けるもんだから、ハッキリ言わないと進展しないもんだと。
「ん? この前の休日は? 今日のお弁当は?」
 彼女の言葉に、はたと気付いた。
 思えば、休日を一緒に遊んで過ごしたことは、両手を使って数えるほど。
 弁当を交換したことは、数知れず。しかもお互いの手作り。わざわざ二人で、料理本買いに本屋まで繰り出したりした。
 色っぽい展開こそ無かったものの、それはまさしく……。
 うん。気付け、僕。
「鈍いね。けど、そんなところに助けられたのかも」
「いや、お恥ずかしい限りで」
 顔を赤らめる僕に対して、彼女は微笑を見せた。
「ふふ。家のコトも、昔のコトも……拘るのが、バカらしくなっちゃってね。引き摺って、今がバカを見たりしたら損じゃない」
 大きく空を仰いで、清々しく言い放つ。
「キミといるのが、落ち着くんだもの。一緒に出かければ楽しいし、顔が近くなれば心臓が早鐘を打つ」
「あー……」
「これって、キミが好きってことでしょう?」
 真顔で言うな真顔で。
 つい最近、ようやく自覚した自分がアホらしくなった。
「なのに、キミときたら……よって、ペナルティを課します」
「お手柔らかにお願いします」
 びしっと人差し指を立てる。
「一つ。さっきの臭い台詞を、実行することを確約なさい」
 僕の目の前で、もう絶対に泣かせることはしない。そのためにも、共に歩んで生きていこう。
 どうやら僕は、本気で熱病に浮かされていたらしい。
 反芻するだけで、全身が痒くなる。なんて歯が浮く台詞だ。
 まあ、けど、
「嬉し泣きは、例外とするなら」
 わざわざこの場でこんなこと付け加えられるあたり、我ながら図太い神経しているのではなかろうか。
「よろしい。次」
 中指追加。
「先輩って呼び方、変えなさい」
 その日から、僕は彼女を名前で呼ぶようになった。
311名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:47:41 ID:JFgPiXW9
 それからの五年は、順風満帆に過ぎた。
 僕は彼女と同じ大学に進学した。
 学力的には、やや厳しかったけど、何とかの一念岩をも通す。
 そして何より、彼女の存在が力になった。
 退屈で変わり映えしないながらも、充実した日々。
 些細なことで喧嘩の一つもしたことはあるが、大概翌日には仲直りしていた。
 周囲からは、バカップルなどと冷やかされたりすることもまあある。
 そんな日々。
 そんな日々に、あえて変化をもたらそうと、彼女を呼び出し一念発起!
「け、結婚してください!」
「そう。いいわよ」
 ……したのにねぇ。
「あのさあ。もうちょっと迷うとか驚くとかしないの?」
「別に。いつかすることだもの。早いか遅いかの違いだけでしょ? それとも、ここは断ったほうがいいの?」
 差し出されたリングを前に、全く動じていない。
 結婚してくれの一言では、インパクトが足りなかったようだ。
 全ての御膳立てを整え、直接式場に連れて行くくらいしないと、驚いてくれないのか。
 くっ、後悔先に立たず。最早、後の祭りか。
「でも――」
 そんな僕を余所に、小箱から指輪を取り出し、そのまま自分の薬指に嵌めた。
「ありがとね。嬉しい」
 指輪の光る手を、胸に抱く。
 ああ――そんな愛しそうにされたら、もう何も言えない。
 一生勝てないと、今更ながらに思い知らされた瞬間だった。
「ねえ。僕のこと……好きですか?」
「愛しています。当然でしょう。貴方はいかがですか、旦那様?」
「当然、僕も貴方を愛しています、奥様」
 芝居がかった口調に、どちらからともなく吹き出した。


 最初の出会いから、十年近い月日が流れた。
 僕達の関係は、今、終わりを告げようとしている。
 たった十年。
 しかし、何物にも代え難い十年間だった。
「ねえ。何か……話そう」
 力ない願いは、静寂に打ち消された。
 彼女は、黙して語らない。
 何かを堪えるような顔で、僕を見つめている。
 きっと僕の言葉を、嘘にしないよう頑張ってくれているのだろう。
 そんな顔をさせてしまったことに、軽い自己嫌悪を覚えた。
 代わりに、僕が涙を流す。
 何故泣くのかと言うように、手の握りを改めてきた。
 二人の手は、強く握り締められたまま。必死に、力を込める。
 彼女の顔が、よく見えない。
 どれほどそんなことを続けていたのか。
 僅かに震えながら、彼女の唇が動く。
 その一瞬。僕の視界に、彼女の顔だけが確かに戻った。
 彼女は一言、僕に告げた。
 どれほどの想いが込められたものだろうか。
 いままで見たこともない、とても優しい笑顔で。
「さようなら――」

 意識が消え行く中、一滴の雫が頬に落ちた。
312名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:48:52 ID:JFgPiXW9
「――――ん」
 窓からの朝日を感じて、あたしは目を覚ました。
 上体を起こして、伸びをする。筋肉がほぐれ、身体のほうも目を覚ます。
 カーテンを開け放ち、空を見る。
 雲一つ無い青空に、燦々と太陽が輝いている。
「いい天気。……ねえ、そう思――」
 ベッドには、自分以外いない。いつも隣で寝ていた人は、もういない。
「そう。……解っていたつもりだったけど」
 枕元。棚の上に置かれた写真立てへ目を移す。
 手に取り、じっと眺める。そこには、いつも変わらぬ笑顔を浮かべる二人の姿があった。
「ちょっと、早すぎるぞ」
 写真の少年を、指先で弾いた。
 記憶と変わらぬ少年の顔は、笑顔を崩すことはない。
 張り合いが無い。
 写真立てを、元の位置に戻した。
 今わの際に、彼はあたしに言った。もう自分を気にせず、好きに生きろと。
 だから、これから好きに生きることに決めている。
 嵌められたままの指輪は、その決意の証だ。一生、外すことはない。
 自分を忘れて幸せになれなんて、死者のエゴだということを教えてやる。
 ありがた迷惑だ。在り来たりな台詞を言ったことを、後悔させてやる。
 忘れなくても、一人きりでも、幸せになれることを見せてやる。
 そしていつか伝えてやろう。貴方以上の出会いはなかったと。
 一人でもそれだけ幸せなのだ。
 もし、二人だったならば……。
「キミは、本当に勿体無いことをしたね」
 かつての呼び方で、居ない相手に話しかける。
 もし二人だったならば、どれほど幸せか。キミは泣いて悔しがるだろうか。
 いい気味だ。
 その時になったら、遺された恨みつらみを、ついでに思い切りぶつけてやろう。
「キミ以外に、好きになる男なんていないんだから」
 窓を開け、抜けるような青空を見上げる。
「ああ――本当に、いい天気」
 気付かぬうちに欠伸でもしたのか。滲んだ瞳で、空の青がぼんやりと揺らいだ。

 小春日和の朝。
 命の芽吹く季節までには、まだ少し時間がある。
313名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:53:07 ID:JFgPiXW9
いじょ。
死別ものです。

彼女の口調は、別パターンがないかなと模索。
口調が違うだけで、一気に素直クール雰囲気じゃなくなった気もするけど……。
ま、気にしない。気にしない。
314名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:03:59 ID:zlNPl+FQ
死別バージョンキタ!
GJです。
315名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:04:48 ID:erGrLZY1
充分素クールしているから大丈夫
君も今日から素クール職人

死別ネタでも不思議と読後感が鬱じゃないのが秀逸
316名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:06:44 ID:cI0Wyj+8
最初女の方が死んでしまったのかと思ったジャマイカ
だがGJ!
317名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 02:41:50 ID:rvVJwx+U
すごくよく纏まってると思う。読後感もさわやかだし。

>>316
同志よ。俺もだ。
318名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 03:37:45 ID:5Ox1gBUa
ごめん、俺この作品で素直に泣けた
今思い出すだけでも泣けてくるわ
319名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 04:32:38 ID:OezjPD3E
>>313
GJ!
二人の素性を敢えて語らないのに感情移入できるのが素晴らしい。

それにしても、こういう男には死んで欲しくないねぇ。
死ねばいいような男ならごろごろしているのに……

でも、忘れなくても、一人で幸せだったとしても、もっと幸せになれる出会いがあると思いたい漏れガイル。
320名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 05:37:00 ID:nUbALndr
すごいですね、間違いなく感じるものがあった。
でもなんだかうらやましいと思ってしまう自分が嫌だ
俺死ねばいいような男だorz

あとやっぱり素直クールって生き方がたまらなくカッコイイね
321名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 06:52:12 ID:U4SmmK9O
GJ!
エロなしでも大歓迎!

だけど、個人的には非18禁でこれほどの名作の数々が
wikiの保管庫とかにのらないのは哀しいかも。

ここのエロなし職人さんたちはあっちのスレや
保管庫に興味がないのかな。
掛け持ちしている人も多そうだけど・・・。
322名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 10:02:37 ID:bhJHwYzz
VIPはなぁ・・・
323名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 10:28:34 ID:wO33J8OQ
GJ!!
仕事投げて二回読み返した。
324名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 11:40:18 ID:uMUEWWjN
保管個ってつくらないのか?
325名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 15:12:03 ID:erGrLZY1
俺はVIPが嫌いだからあっちには投下してない。
ただしあっちの保管庫は見てる。
326247:2006/04/24(月) 15:35:40 ID:4EWqfrcA
後半を投下しようと思っていたんですが、
ほかの方の作品や自分の作品に対しての反応を見て投下はしないことにしました。
もっと文章を書く力を伸ばして、いつの日か皆様を萌え死なせるぐらいの大物を投下しようと思います。
スレ汚し失礼しました。
327名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 15:43:32 ID:VteRwiHA
>>313
エロスも何も無い。静かで、綺麗な文章乙です。本当に泣けてきた。

>>319
生きるべき者が死に、死ぬべき者が生きる。
理不尽で不条理なこの世の真理さ。

>>322
wikiにも登録されてるけど、喪板にもあるよ。

素クールライフ Part2
ttp://etc4.2ch.net/test/read.cgi/motenai/1137202118/
328名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 16:10:05 ID:erGrLZY1
>>326
お前ふざけるなよ
一度書いたものはちゃんと完結させろ
それでこそ職人だろうが
今投下しなかったら絶対にそのことを後悔するから投下してから消えろ
329322:2006/04/24(月) 16:12:25 ID:GSwou4aw
>>327
VIPや喪板にあるのは知ってるが、喪板でもVIPの話が出ると荒れたし、
はっきり言ってしまえばVIPとは関わりたくない。

ここの保管を向こうでするとかいう話があるが、俺のは保管してほしくないと思ってる。
330名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 18:50:32 ID:j0z/RXmq
ま、それなら投下時に保管しないでって言えばヨロシ
331名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 20:48:55 ID:IzsJfvp8
エロパロ板保管庫に補完を依頼するというのは無理?
332名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 02:09:28 ID:6eF/sVa1
>>331
確か、保管庫の中の人が忙しくて更新を見合わせてたような
333名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 09:52:07 ID:BDgnYdw5
>308
視界がにじんだ。
良いものを読ませてもらいました。ありがとう、そしてGood Job!
334名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 22:09:13 ID:TvoN1AyQ
>>326
もったいないですね、残念です。でもその気持ちは少しわかる気もするというか
私の場合あんまりに未熟なので、比べる以前の状態と言うかなのでw
投下するのも心臓バクバクです。私ももっと精進したいー頑張りたいーぞ
335名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 19:48:41 ID:fxbMGPr4
一気に廃れたから保守
336名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 02:00:51 ID:Wl+7FgNd
>>177さんのポロロッカ星人編を待ち続けながら保守
337名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 17:37:19 ID:15sS7izk
>>307
GJ!!
338名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 14:57:37 ID:1OoDwqx6
このスレに出会えた事と類まれなる職人達に百万の感謝を・・・

つーことで保守。
339キュンキュン@首輪の人 ◆4hcHBs40RQ :2006/05/01(月) 17:56:07 ID:dtGs1w5k
雌奴隷キボンヌな素直クールのSS書いてた人だけど、後編はもうちっと待っててね。
何故かアドバンスのポケモンにはまりまくって、SS書かずにそっちばっかやってたから、
遅くなっちゃった。

とりあえずチャンピオンロードまでクリアしたから、後編書くのバンバってくるよ。
340名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 17:59:50 ID:eWwSGyt+
>>339
コイキングをミュウにするやり方教えてあげようか?
341名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 18:24:05 ID:TEdtWnSf
>>339
そこまでいきゃあとはミュウツーでゴリ押しだ
342名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 10:06:43 ID:CEARsxCt
>>339
たいあたりって以外に強いよな
343名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 20:11:39 ID:VfRO+deX
高飛車素直クールについて書いていますが、需要はありますか?
344名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 20:20:44 ID:g+qoMcTH
ある
モンスターボールぐらい需要ある
345名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 21:37:15 ID:MT+MLJ8b
モンスターボールどころか、マスターボール並みに渇望。
346名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 21:57:15 ID:WrKYMEbc
むしろげんきのかたまり
347名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 21:59:10 ID:uwESjiwC
むしろポケモン。
それがないと始まらない。
348名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 08:04:29 ID:4sdjcXZU
むしろ需要=高飛車素直クールくらいですよ。
349名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 13:20:43 ID:7kwF4h4s
ポケモンといえば最期の四天王にクールなお姉さんが居た気がした
素直だったかは忘れたけど
350名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 13:28:41 ID:IKjo30JW
>>349
あれか、氷の人か。
351名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 15:32:14 ID:a1oq3f16
超能力少女のところで頭を抱えた覚えがあるな
ビルの中と違って皆同じような場所にワープするから
352名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 15:48:17 ID:8ZriQ6TH
そろそろポケモン雑談やめにしないか?
353名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 19:01:15 ID:4sdjcXZU
じゃあ、デジモンの話でもするか
354名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 19:59:00 ID:qTt4JHNm
バカ野郎
モンスターファームの話をするべきだろう
355名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 20:04:15 ID:8ZriQ6TH
そんなことやってると職人がいなくなるぞ
356名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:24:04 ID:IBfsEFuQ
ちょい相談。
今素直クールSS書いているんだが、
話の構成上エロを外せないくせにエロ、特に本番部分が薄いのだ。
かれこれ1週間ぐらいそこで煮詰まっている。どうしたらいいだろう?

1:薄くてもいいから投下する これなら割とすぐ、遅くても連休中には書き込めると思う。
2:遅くなってもいいから推敲する。 連休の間になんとか頑張ってみようか…。
3:その他

どれがいいだろうか?
357名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:27:22 ID:8ZriQ6TH
2じゃないかな。
作品の質を落とすのはよくない。
358名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 22:54:13 ID:0Fe+TGWh
2でお願いします。
359名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 23:31:08 ID:tWDhsX8z
2だね。しばらくは待つよ。あと、「行き詰る」だよな?
360名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 02:47:55 ID:BnEqwF2Q
3で気分転換に短いの書いてから2を。
361名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 20:48:10 ID:oe8H8jU0
さて。保守がてら、書き溜めたものを。
他の人の作品を期待しつつ、「彼」と「彼女」の思い出話をば。
362名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 20:48:56 ID:oe8H8jU0
 あたしが彼と出会ったのは、何時頃のことだっただろうか。
 もう思い出せないほど昔の話。想い出は積み重なり、整理もされず、記憶の隅へと大切にしまわれた。
 まるで、子供の玩具箱のように。
 たった十年間に、百年に勝る想いが詰まっていた。
 どれもこれも、掛け替えのない宝物。それは、アルバムを整理するのも大変な量の記憶。
 大切だけれども、何処に何があるのかわからないほどの。
 けど、それでも。
 それでも、あの日のことは、何時でもすぐに思いを馳せることができる。
 特別に選り分けられた思い出。
 その一枚を、頭の中から引き出す。
 写真はセピアに色褪せても、笑顔が翳ることはない。積み重ねた年月の分だけ、味が出るもの。
 彼は知らない、あたしだけの思い出。
 伝えることの出来なかった、本当の出会い……。

 あたしと彼は、高校で出会った。
 少なくとも、彼はそう思っていた。それは決して間違いじゃない。
 ただ、あたしの中では違うだけ。彼と出会い、思い出すことが出来た過去。
363名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 20:49:51 ID:oe8H8jU0
 あれは確か、あたしが高校に入ってすぐ――彼が入学する、丁度一年前だったと思う。
 彼が片頬を腫らしながら、家路を歩いているのを見かけた。
 誰かと喧嘩でもしたのだろうか。
 困惑するような、納得のいかないような、そんな顔をしていた。
 腫れた頬を、片手で塞ぎながら。
 それは、どこか哀しそうで……、
「どうしたの、それ?」
 気付けば、あたしは彼に声をかけていた。
「ああ、ちょっと……大丈夫です。何でもありませんから」
 お気遣いどうも、と軽く頭を下げた。
 愛想笑いが、痛々しい。
 あたしは、こういう顔を知っていた。
 本当の自分を押し隠すような、仮面で表現される感情を。
「そう。ちょっと待っててね」
 近くの自販機に走る。硬貨を投入し、ミネラルウォーターを買った。
 元の場所に戻ると、律儀に彼はその場に留まっていた。
 恐縮してるような緊張してるような、そわそわと、どこか落ち着かない様子を見せる。
 少し、悪戯心が湧き上がった。
「はい」
「冷た!」
 ペットボトルを顔に押し当てると、目を白黒させる。その様子が面白い。
 けど、ちょっと強くすると、すぐに顔をしかめた。
 遊ぶのはここまで。早めに次に移ったほうがいいだろう。
 よく冷えたそれで、手持ちのハンカチを濡らす。
「そ、そこまでしなくていいですよ」
「いいから。善意は受け取ろうよ」
 言い分は却下。怪我人は、他人の言うことを聞くべきだ。
 それからしばらく、無言で冷やしてあげた。
 彼は観念したのか、大人しくあたしに従う。
 静かな時間が流れた。
 少しは楽になったかなと思う頃、あたしは彼に別れを告げる。
「じゃあね。腫れが引かないようなら、ちゃんと病院へいきなさい」
「あ、待って。これ……」
「いいよ、それくらい。あげる」
 笑顔を向けて。
 互いに名前を告げることもなく、その出会いは終わった。
364名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 20:52:53 ID:oe8H8jU0
 そして一年。
 彼との再会が、あたしたちのスタートライン。

 時は過ぎる――。

「ふふ」
「む、何さ」
 あたしの微笑みに何か感じたのか、彼は訝し気な面持ちでこちらを見る。
「ちょっとね。初めて会った時のこと思い出して」
「あ、そう?」
 何か面白い出来事でもあったかな、と首を傾げる。
 そんな様子が、また面白い。
 それにしても……、
「あの時のコと、今じゃこうなるなんてね」
 思いっきり、腕に組み付く。
 彼はあたしに告白し、あたしはそれを受け入れた。
 もっとも、あたしとしては、もっと前から恋人のつもりだったけど。
 デートしたり、お昼の交換したり。遠回しな愛情表現だって口にした。
 我ながら露骨な表現していたとは思うけど、それくらいしないと、彼は自覚しなかった。
 自覚したにしても、独りよがりを危惧して内に溜め込んでいた可能性は高い。
 要するに、逃げ道を塞ぎ、彼が痺れを切らすのを待っていたのだ。
「わからないもんですね」
 軽い調子で彼は言う。
 事実は事実として、どんなものでも受け止める人だ。
 誰より優しく、誰より弱い。嫌われるのが怖いので、自分を演じて周囲に合わせる。
 演じてみるのは、求められる自分。
 だから、どこか一歩引いて、客観的な目線を失わない。物事に深入りもしない。
 それは結果的に、自分を軽視することだ。控えめではない。他人を立てるのでもない。
 自分は他人より上に位置づけるべきだという、当たり前のことを知らない。
 そんなことを、誰にも気付かれることなく、ずっと続けてきたのだろう。
 きっと、本当の彼は、仮面の奥底で押し潰され続けている。
 そんな彼が……。
365名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 20:53:31 ID:oe8H8jU0
「そりゃそうでしょう。わからないものよ、人生なんてね」
 彼を見上げ、不器用にウインクしてみる。
「あたしが証人」
「経験者は語るってやつですか、先輩――あ痛っ!」
「おしおき。名前でね?」
「すみません」
 頬を抓られ、改めて名前で呼びなおしてきた。
「うん、よろしい。素直なコは好きよ」
「うぅ……参ったな」
 僅かながら赤面する。こういう変化を見るのは楽しい。
「今度は、あたしの番だからね」
「は?」
「いいの。気にしないで」
「さっきから何なんだか」
 そんな彼が、何をどう考えたのか、あたしの為に傍にいてくれた。
 自分の感情の為に動いた。
 それに気付けば、その事実がたまらなく嬉しい。
「ずっと一緒にいてあげるってこと。文句は?」
「あるもんですか」
 あたしの弱さを静かに受け入れ、救ってくれた人だ。
 今度は、あたしが彼のために動く番。
 仮面を引っぺがし、中身を外気に晒させよう。本当の意味で、彼が素直になれる日がくるように。
 長年押し潰された彼は、酷く強固で、酷く脆いだろう。それを守るため、どんどん仮面を厚くする。
 行き先は袋小路。無理していれば、いつかは壊れる。
 けど今は、あたしがいる。
 砕けても大丈夫。受け止められる。新しいカタチを与えられる。
 弱さは罪じゃない。
 感謝のカタチは、教えられたことを、教えてあげること。
 互いに足りないところは、二人で補おう。
 どんなに時間をかけても、その鉄仮面を脱がせてみせよう。
「そう。あたしに溺れる覚悟、あるんだ」
「う、浮き輪の用意は?」
「認めません」
 これが決定打。一歩前進。
 彼の困ったような嬉し顔は、そうそう忘れられないだろう。
366名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 20:54:37 ID:oe8H8jU0
 約束どおり、あたしは彼と一緒に過ごした。
 幸せな日々が過ぎるのは早く、あれから五年。
 あたしたち二人は婚約し、今は一緒に暮らしている。
「――――さて、キミに頼みがあるんだけど」
「珍しいね。何?」
 腕……いや、胸の中の彼に声をかける。
 時刻は深夜零時過ぎ。恒例の二人だけの時間も一段落し、お互いの鼓動を確かめ合っている時間。
 ベッドの上、二人で布団に包まっている。
 素肌の触れ合い、息づかい、温もり。
 激しい時間も好きだけれど、その後のこういう穏やかな時間も大好きだった。
 今夜は、あたしが抱きしめる日。そして明日は彼。飽きることなく続けられるローテーション。
「近いうち、両親に会わせて」
「……遂に来ましたか」
「来ましたよ。観念なさい」
 お決まりのパターンのやりとり。
 しかし、今日に限っては、彼の声に複雑な感情が混じっているような。
「……ね、ひょっとして、両親と折り合い悪い?」
 彼に限って、まさかとは思う。
 けど、彼も木の股から生まれたわけではない。何かしらきっかけがあれば、そうなることもあるだろう。
 そういえば、家族構成を聞いたことはあっても、人柄を聞いたことはなかった。
「だとしたら――」
「あー、ちょっと足踏みしただけだから、大丈夫大丈夫。会いに行きましょう」
「いいの?」
「ええ。立派な人ですよ。……立派な、ね」
 やっぱり何かある。
 心持ち、抱きしめ方を優しく変えた。
「言える?」
「ありがとう。……うん、大丈夫。大袈裟な事情じゃないし」
 彼があたしに、縋るように抱きついてくる。
「親は立派な人で、愛情だってたっぷり注いでもらった。僕も親を好きだし、尊敬もしてます」
「…………」
「ただ、何て言うのかな――あまり褒められたことがないっていうか、理解してくれなかったっていうか……」
367名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 20:56:14 ID:oe8H8jU0
 訥々と、彼は語る。
「立派なものですから、何でも自分基準なんですね。褒められるようなことは、出来て当然。出来ないのは、努力が足りない」
 解らないことは、自分で調べろ。弱音を吐けば、もっと頑張れ。
「充分に考えて、解らないから訊いたし、本当に辛いから弱音を吐いたつもりなんですけどね」
 それを説明しても、言い訳や努力不足としか取り合ってくれない。
 やる事為すこと失敗ばかり。失敗すれば、自分が悪いと叱られる。
 だから自分で覚えたことは、のらりくらりと物事かわし、出来ることだけやって評価を下げないことくらい。
 評価を下げなければ、叱られない。求められる自分でいられる。
 極めつけは、
「虐めにあった時、かな。虐められる原因があるはず、お前も悪いだって」
 ここで、本質的に分かり合えないと気付いてしまったらしい。
 あの日の下校道が脳裏に浮かんだ。
 虐め……あの時か。
 あるいは、もっと前からかもしれない。
「だから、親を好きになりきれない。そんな自分も、嫌だった。長く引き摺っていたこともね」
 根っこの部分で、人を嫌いになれないから、一番嫌いなのは自分。
 他人を責めることはない。
 優しく育ったのは、親の教育の賜物。しかし、追い詰めたのも、親に責任の一端はある。
 なるほど。でも、
「今は?」
「誰かさん相手なら、心置きなく、弱音を吐けるから大丈夫。昔よりは、自分が好きですよ」
「そう、良かった。よし、いいわ。今日はもっと甘えなさい」
「こ、これ以上? 恥ずかしいよ」
「ああもう、可愛いなあ」
「うぷ」
 ぎゅっと顔を抱きしめる。息苦しくてもがくのがくすぐったい。
 身を捩り、ようやく鼻だけ開放されると、あたしの様子を上目遣いで窺ってくる。
 不安の翳は見えない。ある程度、吹っ切れた感がある。
 今の彼の目を見ると、自然に顔が綻ぶ。
「うん。キミ、変わったよね。昔と比べて、良い顔するようになった」
「む、そんならむしろ“先輩”こそ」
 わざわざアクセントを置いて強調する。
 キミに対して、先輩ときましたか。でも、まだ甘い。
「そう。変わったよ、貴方のおかげでね」
 感謝を込めて、満面の笑みを見せてあげる。
 彼は、顔を赤くし、視線を逸らせてしまった。こんな関係になったのに、シャイなところは相変わらずだ。
 ほらね。あたしに勝とうなんて、まだまだ甘い。
「はぁ……いつか、一本取ってやりたいな」
「うふふ。それじゃ、楽しみに待っていましょうか」
 二人で過ごす甘い時間。
 何より大切な現在は、積み重ねて過去となる。
 より大切な未来を得るために。

 幸せな時間は、まだ暫く続く――。
368名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 20:59:21 ID:oe8H8jU0
以上。
書いてる間、身体中が痒くなったわけだけれども。

バカップル万歳。
369名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:02:52 ID:ExjbOi02
ハイル・バカップル!
370名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:32:05 ID:6wZaCzvW
痒くなったよりも鳥肌が立って治まらないオイラが来ましたよ
371名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:54:10 ID:dd+McxQp
372名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:56:24 ID:xXXumnbq
>>370に次いで俺も来ましたよ
兎に角GJです!!
373名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 22:15:06 ID:Kcoho0LL
うちも親ふつうにそんなかんじだったから結構共感しつつ読んだよ
手に入らないからこそ憧れるなあバカップルw
374名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 00:12:10 ID:h+KUxWxb
いいですねぇ〜!GJです!そして素敵過ぎです!こう言う甘いの大好き!

そしてバカップル万歳www
375名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 03:42:04 ID:ujtZgHlQ
こーゆー甘々なの大好きだ俺。
ハイル・バカップル!
376名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 08:08:15 ID:f33J+Krv
これってやっぱり甘甘なのか。ちょっとぴんと来なかった漏れガイル。
いや勿論、いい話なんだが余りにみんなが甘いと言うもんでね。
つーか、漏れも一部共感しまくりなわけなんだが。
377名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 11:50:30 ID:yHFgjjoe
共感できるのはわかるけどさ。
そっちじゃなくて、作品の内容の方を着目してあげるべきだよね、とか思ったりする。
378名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 20:17:03 ID:hQ6+oWzj
もうすぐだお
379キュンキュン@首輪の人 ◆4hcHBs40RQ :2006/05/05(金) 20:37:36 ID:hQ6+oWzj
雌奴隷キボンヌなSS書いていた人だけど、後編書いたよ。
これから投下するお。
380首輪の人 1/7  ◆4hcHBs40RQ :2006/05/05(金) 20:38:50 ID:hQ6+oWzj

「ふっ……ぐ……ひ、卑怯……だ」

 ところ変わって自宅。もちろん、俺の。
 赤い首輪をかけた見た目ちょっと頭がカワイソウな子を連れ帰ったというのに、
 何故か俺のお袋はニッコリ笑って、気持ち悪いほど数日ぶりの帰宅を暖かく迎えてくれた。

 特に何もいい咎められることもなく、黙っていることに耐えられなくなった俺は、
 自分からお袋に説明しようとしたが、お袋は「お母さんはみんなわかっているから大丈夫」とありがたい言葉を言ってくれた。
 多分、わかってないと思う。わかっていたら、お袋はエスパーだ。

「首輪を外せよ」

 今は俺の部屋で、まあ、なんだ……その、ナニをしている。
 恥ずかしながら、これが俺にとって初めての経験なんだが、中々うまくことが運べていると思う。
 こうしている間にも一つ一つの幼いころの封印したい記憶が蘇ってくる。

 そうだ、こうしたんだ……俺は。

 口の中に苦い唾が満ちていく。
 吐き出したい衝動にかられるが、残念ながら俺は部屋の中で唾を吐くような下品な真似ができるようにしつけられていない。


 彼女は、何故か制服を着て、俺の家にきた。
 そうして、今は俺のベッドに、足を大きく開いて座っている。
 俺はスカートをめくりあげ、その奥にある下着を、ゆっくり指でいじくっていた。

 稚拙な指使い、とは言えない。
 ……何故こんなことまで出来るのか、自分でも不思議なほど滑らかに指は動いていった。
 上から優しく、強く撫で、突起をつまむ。
 自分でやっておきながら、いじらしいほど指の先端で彼女を刺激していく。

「う、あぁ……だ、だめ……」

 彼女が途切れ途切れにあげる苦悶の声が、俺にさらなる力と記憶を与えているような感覚がする。
 段々と指の動きが速くなり、指先にこもる力も強くなっていく。
 まるで自分の手じゃないかのように。
 最初、染み一つなかった下着も、今では彼女の体から漏れる液体に濡れ、
 うっすらとピンク色のナニかを透かして見えるほどになっている。

 指で嬲るのに飽きた俺は、下着を少しずらし、彼女に向かってゆっくりと舌をのばした。

「ひあああッ!」

 彼女の背筋がビンと伸び、足が上がる。
 動くな、と、手を使うな、と言っておいたので、彼女は逃げることも防ぐこともできない。
 ただ、耐えることしかできない。

 だから、俺はゆっくりと、彼女の足と足の間に頭を寄せていく。

「あああッ」

 銀色の糸が見える。
 下着と肌に伸びる銀色の糸。

 びくんびくんと震える彼女から顔を遠ざけ、自分の体を持ち上げる。
 膝で立って、背中に腕を回し彼女の上半身を引き寄せる。
 ちょうど、俺の口元が彼女の耳元になるように。

381首輪の人 2/7  ◆4hcHBs40RQ :2006/05/05(金) 20:39:46 ID:hQ6+oWzj

 ただ左の手は下着の隙間に滑らせる。

「なあ、首輪を取れよ」

 俺は彼女に、彼女が首輪をしている存在を求めなかった。
 ノーマルな関係から始めましょ、と、端的に言えばそう言ったのだ。
 だが、彼女は納得しなかった。

 アクセサリーとしてでいいから、これをつけさせてくれ、と頼まれたのだ。
 彼女の提示した条件を、納得がいかなかったが、それでも俺は譲歩した。
 少しくらいなら耐えられるだろう、と。
 けどその考えは甘かった。

 思っていた以上、首輪は目立つ。

「ひ、卑怯だ……首輪はいい、って……言った、ぅ、じゃないか……」
「気が変わったんだよ」

 下着の中で指を動かす。
 ちょっと動かしづらい体勢だったので、彼女をゆっくりとベッドの上に寝かせた。

 彼女の黒い髪が、パァとベッドの上に放射線状に散らばる。
 何か、こう、その動きが、言葉にできない美しさをかもしだしていた。
 肩で息している振動がベッドを微かに揺らし、額に浮かぶ汗が、きらきらと光を反射させている。

 無言で一旦体を引き、ついでに左手も下着から抜いて……
 彼女のショーツに指をかけた。

 脱がすぞ、とは言わない。
 彼女はわかっている。
 わかっているから、少しでも脱がしやすいようにと腰を浮かせた。

 右端と左端を手前に引っ張る。
 段々と両端が下がってくる。
 白い太ももが、目にまぶしい。

 彼女の秘部が露わになる。
 昨日にも見たことは見たが、こう、じっくりは見ていない。

 するするする、と呆気なく下着はずり下ろされていく。
 一番大事な場所を隠している部分が、剥がれていくように離れる。

 思わず、喉が鳴った。
 自己紹介をする際に、『とりあえずクール』と称す他に何も思いつかない俺でさえ、
 このシチュエーションには興奮せずにはいられない。
 心臓が早鐘を打ち、手が少し震えている。

 ……大丈夫、僕ならできる。

「どう……だ? 私の、ソコは」

 彼女の切れ切れな声が聞こえてくる。
 彼女を誰か他に紹介するとき、『とりあえずクール』と称す他に何も思いつかない彼女が、
 おそらく俺と同じくらい顔を赤らめて、興奮している。
 下着がまだ引っかかった状態の足の膝の裏に腕を回し、大きく、くの字に折れ曲がる。
 俺の方に全てを露出する勢いで、彼女の秘部が晒された。
382首輪の人 3/7  ◆4hcHBs40RQ :2006/05/05(金) 20:41:03 ID:hQ6+oWzj

 目が、目が潰れるッ!
 あまりにも神聖不可侵ニシテ犯スベカラズな部分が、俺の目を潰すッ!

「よく見えないか? こ、これでどうだ?」

 膝の裏に回していた手をそろそろと下に降ろし、指先で両端を抑えるとそのまま分かつように手を少し引く。
 女性にのみ内蔵されている内臓が、俺の目の前で全てをさらけ出そうとしている。
 とろり、と透明な液が中から溢れ出て、シーツを汚す。
 全体的に綺麗なピンク色のそれは、何かを求めるかのようにひくひくと小刻みに震えていた。

 な、なるほど。
 俺はここを指で弄んだり、舌で舐めたりしていたわけか。
 やべ、ちんちんおっきした。

「ふ、ふふ……こ、ここを好きにしていいんだぞ。
 いいか、君だけだ。私の一番大事な場所をなぶれるのは」

 彼女が舐めるような視線をこちらに向けてくる。
 露出をし、俺に対する献身による快感に酔っているのか、
 物理的な快楽とはまた別種の、顔の赤みが浮かんできたように見える。

 切れそうなほど鋭い目で、冷たい言い方をするように振る舞う彼女。
 だが、ここでイニシアティブを取られると、後々厄介なことになりそうだ。

 俺は自分を奮起させ、右手の中指をそっと彼女の入り口に添える。
 彼女は熱い吐息とともに短い悲鳴をあげ、冷たく鋭い目を緩めた。

「生意気言ってるンじゃねーよ。
 なぶれるんじゃなくて、なぶって……」

 言いかけてハッとした。
 危ない危ない、挑発に乗るところだった。
 これじゃ、対等な立場じゃない。
 まだ、俺の性奴隷だかなんだかになることを目論んでいたわけか。

 俺が気付いたことに、彼女が察知したのか、小さく舌打ちをしていた。
 ……危なかったな。
 率直な言葉をぶつけてくるかと思いきや、こんな搦め手を使ってくるとは……油断ならぬ相手だ。

 とりあえず、腹が立ったのであてがった中指を一気にねじ込んだ。

「うっ、ああああああッ!」

 思っていることと、やっていることが全く逆のような気もするが、
 まず、相手が余計な企みを考えられないようにしておこう、と考えた。
 まあ、彼女を前後不覚にするほどのテクが俺にあるかどうかが今後の課題だけど。

「あッ……はぁッ……」

 等々、心配していたのだが、指をただ入れただけで七転八倒の大悶え。
 背中を思いっきり反らせ、先ほどまでの快楽に酔ってはいたものの怜悧さを残していた顔は、
 一瞬にして消し飛んでいた。
 乱れた髪が数本、口元の涎にくっついているのがエロチズム。

 それでも、俺が最初に言った通り、足を閉じようとせず、その場から大きく移動しているわけでもないので、
 忍耐力があるのやら、ないのやら。
383首輪の人 4/7  ◆4hcHBs40RQ :2006/05/05(金) 20:42:06 ID:hQ6+oWzj

 ここから更に指を動かしたなら、どうなるんだろう? と好奇心がむくむくわいてくる。
 指を入れただけでこうなったのだから……、と、トンボを捕まえた子どものような、そんな好奇心。
 よくよくそういう好奇心は、無知故に容赦なく、残酷らしい。

 うん、俺もわかってる。
 だけど、それでも羽をむしっちゃうのはやはり俺が男だからか。

 中指を強引に折り曲げた。

「くぁッ! あッッッああああああああ!」
「うあっ!」

 彼女が、一本釣られたカツオよろしく一際大きく震え、秘部から大量の粘液を放出したかと思うと、
 その場でくてっと倒れ込んでしまった。
 俺は彼女が絶頂を迎えた瞬間、驚いて指を引き抜いていた。

 び、びっくりしたぁ〜……。
 ちょっと敏感すぎやしないかい?

「は……あぁっっ……いい。いいぞ、とても気持ち、いぃ……」

 汗だくの額に、手の甲を当て、目にかかる髪の毛を払う彼女。
 恍惚とした表情で、天井を見ている。
 その表情がたまらなくかわいらしく淫靡だったので、ほけっと見惚れていたら、
 突然、抱きしめられた。
 細い腕が背後に回され、ちょっとキツイぐらいの力で抱きしめられる。
 当然、彼女のナイスでバディーな胸が俺の胸板に押しつぶされてむにゅっと形を変えている。

「わ、私のことを『淫乱』と言ってくれないか?」
「は?」
「頼む」

 え、えーと……。
 こういうシチュエーションって、確か、男の方が
 『ほら、そんなこと言ったって、お前のここがこんなにキュウキュウ締め付けてるぞ。
 この淫乱が!』
 とか、そういう場面で言うんじゃないでしょうか?

 女性の方から私を淫乱と呼べなんて、百合物のエロマンガでしか読んだことないぞ。

「ふぅ……あっ。だ、ダメなんだよ、私は……」

 混乱している間、彼女は途切れ途切れに独白し始めた。

「君に淫らな女と思われている想像をすると、体の芯がどうしようもなく熱くなるんだ。
 君に力ずくで組み伏されたり、冷たく罵られているところを想像すると頭の中が白くなる。
 今も、君に淫乱と呼ばれる想像をして胸が高鳴っている、ほら、分かるか?」

 確かに密着している胸と胸同士の間から、彼女の心臓の鼓動が痛いほど伝わってくる。
 なんで体が震えないんだろう、と思ってしまうほどその振動が大きいほどだ。

 口の中がネトネトする。
 ここで彼女の言うとおりに『淫乱』と言ったらどうなるんだろう?
 興味が尽きない。心臓発作を起こして死んでしまうんじゃないだろうか?
384首輪の人 5/7  ◆4hcHBs40RQ :2006/05/05(金) 20:43:01 ID:hQ6+oWzj

「い……こ、この淫乱めッ」

 その瞬間、ものすごい勢いで彼女が震えた。
 俺の胴に回されている手が痛いほど力を込められて、俺を締め付ける。
 なんだか獣のようなうなり声を上げると、ぐったりして俺に寄りかかってきた。

 ……母さんとかにバレたな。まあ、いいか。

「すごい……言葉責めだけでここまで感じられるとは……。
 本番をしたら一体私はどうなってしまうんだろう?」

 こつんと俺の肩に顎を置いた彼女が、顔を上げた。
 目には大粒の水滴が浮かび、俺をまっすぐに見つめている。

 なんだかその目を見ていると、吸い込まれそうな……。



 気が付いたら、裸だった。
 それだけじゃない、結合までも済ませていた。

「うっ……あっ! 激しッ……むっ、無理だ。やめてくれぇっ」

 思考がワープしていたのは、俺の体に鬼畜大明神様が降臨なさっていたからなのか、
 彼女を四つんばいにさせて、後ろからがっつんがっつん突き上げていた。
 記憶があるのに、それを経験した実感がない。
 なんだか夢を見ているような気がするが、この状況は明らかに現実。
 チンポに絡みつく彼女の感覚が、実に如実に物語っている。

 彼女の方はもうとっくに限界がきているようで……。
 多分、彼女は敏感すぎてすごくメーターが振り切れやすい状態だったんだろう。
 ひじに力が抜けて、そのまま前のめりに倒れそうになっているのを、
 俺が覆い被さった状態で彼女の腕に俺の腕を絡ませて、無理矢理起こしていた。

 対する俺は、自分でも知らなかったが案外タフガイだったのか、
 まだ一度も放出していないという、輝かしい戦績をたたき出している。

 彼女は白旗を振っているどころか、明かなオーバーキル状態だとわかっているのに
 俺は自分を止められなかった。

 それこそ野獣のように腰を振り、覆い被さっているので耳元で「好きだよ」とか体が痒くなりそうな言葉を言い続け、
 身もだえる彼女をどんどん追いつめている。

「だ、めだっ……て、言ってるのに……」

 いままでずっと俺を翻弄し続けていた彼女が、クールさ形無しで俺の下でうめいている。
 それも俺を興奮するにたるスパイスだった。

 絡めていた腕を外し、上体を起こす。
 俺の腕で支えられていた彼女の上半身は、そのまま重力に負けて落ちる。
 しゃくとり虫のようにお尻を上げたまま床にべったり付いているような、そんな無様ではずかちー格好。
 だけど、彼女はそんなことに構ってられないのか、うめき声をあげている。
385首輪の人 6/7  ◆4hcHBs40RQ :2006/05/05(金) 20:43:43 ID:hQ6+oWzj

 一旦、腰を引き、ゆっくりと彼女から離れた。
 後ろから彼女の秘部がまじまじと見る。
 彼女はやはり初めてだったので純潔の証である破瓜の血があるはずだ。
 けれど、それはその後からわき出たと思われる大量の愛液によって流されてしまったのか、
 布団にもその跡を見ることはできない。

 とにかく、俺がハッスルしすぎたのか、俺のベッドはおもらしをしてしまったかのようにぐっしょりと濡れている。
 それが涎だったり愛液だったり、俺と彼女の汗だったりするのだが……。

「き……君は……酷い奴だ、な。無理だって……言っているのに」

 彼女は体力をかなり消耗しているのか、体全体を揺らして呼吸をしている。
 その間を縫って、彼女は呟くように口を開いていた。

「やはり……君には……ご主人様としての……才能が」

 ちょっと、俺も腰回りに疲れが出たのか、彼女の切れ切れの言葉を聞きながら、ぼうっと余韻に浸っていたのが、
 彼女の一つの単語によって、胸に熱い炎がともされてしまった。

 「ご主人様」

 俺としては、特に何もその言葉に惹かれることはないと思っていたのに。

 「御主人様」

 その響きが、本当の俺を呼び起こした。

 「ごしゅじんさま」

 実に十三年ぶりの本当の自分の開放。

 「My Master」



 フォォォォォォォォォォォ!

386首輪の人 7/7  ◆4hcHBs40RQ :2006/05/05(金) 20:44:48 ID:hQ6+oWzj

 その瞬間、信じられないことが起きた。
 俺のムスコが。今まで一度も放出してこなかった、辛抱強い良い子が。
 ビキビキビキッと音を立て、アンビリーバブルな進化を遂げた。

 よりわかりやすく、ブーンで表すのならば。

 ( ^ω^)

 これ(今までのチン坊)が。

 ( # ^ ω ^ )ビキビキ

 こんな(これからのチン坊)感じに。

 そりゃあもう、一匹五百円で掴まされた無能なさかなポケモンが、
 はかいこうせんで全てを焼き尽くすきょうあくポケモンに進化するかのごとき成長。

 心の奥底からわき上がってくる、デストローイな波動に身を任せ、彼女のボックスにねらいを定める。
 愛液にまみれた秘部が、くちゅ、と音を立てると、リボルビング・ステーク射出2秒前。

「あ、ちょ……まだ息を整えてな……」

 こちらの変化に気付いていない彼女は、まだ呑気なことを言う。
 彼女の腰に添えた手と自分の腰に同時に力が入った瞬間、彼女はどうなったのか。
 なんだか獣が押しつぶされたような声を上げていたが、刻の涙を見たんじゃなかろうか。


 ……全てが終わったときに、泣きつかれました。
 ごめん、ごめんよ。





「ふふ……これから頼むぞ、ご主人様」
「……なあ、やっぱり……」
「ダメだ。あんなに私のことを責めておきながら、まだ私のご主人様になることを拒否するつもりか?
 私の体にあんな大穴を開けておきながら、ヤリ逃げするなど絶対に許さないぞ。
 君が地の果てにまで逃げても、私は追いかけていって、私を君だけの性奴隷であることを認めさせてやるからな」
「わ、わかったよ。も、もう何も言わない……。
 けど、人前であまりおおっぴらにするなよ。俺の手に冷たい金属のわっかをつけさせたくないならな」
「ふふ、わかっている。人前では清い男女関係というものを演じよう。
 私とて、そういう役柄になることはやぶさかではないし、それに……その、
 少しあこがれ、みたいなものもあるしな」

 俺も満足がいくまで放出し、彼女も……いや、彼女はお腹一杯、どころか食べ過ぎてリバースしている感があるけど。
 まあ、ともかく、情事は終了し、色んなものがついていてべたべたする布団をどかして二人でいちゃいちゃ寝転がっていた。

 とりあえず彼女は俺に愛想を尽かすようなことはなく、
 逆に俺が彼女に愛想を尽かすこともなく。
 むしろ、二人の絆はより深いものになっちゃったりしちゃったりしていたような気がしないでもなくもなくもなくもないわけで。

「ふふ。明日から楽しみだな」

 彼女のそんな呟きを最後に、彼女が目を閉じて静かに寝息を立てているのを確認すると、
 俺も目を閉じて、腰回りの凶悪的な疲労感による眠気に身を任せたのでした。

387名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 20:46:54 ID:QQ1E4dmv
うはwwwリアルタイムでおにんにんおっきしたwww
超GJ
388キュンキュン ◆4hcHBs40RQ :2006/05/05(金) 20:50:19 ID:hQ6+oWzj
後編終了っす。

色々とあったので今回は難産でした(具体的に言うとポケ○ンとか)
プロット立てずにアホが書いたので、何本か没案もあり。
実はエロが全くなく、『俺』と『彼女』が普通に学校で素クールライフするというのも考えたのですが、
「お兄ちゃんどいてそいつ(以下略」な妹とか、弟に彼女ができて何故か色々と動くブラコンな姉とか、
多く作り過ぎちゃったとかいって弁当を渡そうとして、素直クールに邪魔されて憤慨するツンデレな人とか
書きましたが、没にしました。

でもまあ、気にはいっているのでいずれ日の目も見るようなこともあるかもしれませんが。
あんまり自分語りすんのもなんなので、ここらへんにしときます。

またいつか、ここかどこかで会いませう。
389名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 20:54:17 ID:Ad/+/DCj
エロパロ板保管庫に依頼するって話はどうする?
向こうの掲示板見たけど、新しいスレの保管も続けてるみたいだし。
390名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 00:34:45 ID:OxKjo+8R
GJです!


さて

盛 り 上 が っ て 参 り ま し た
391名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 02:54:46 ID:1SCp9tZQ
ぃやっほう! GJ!
ハイル・ポロロッカ星人!

>>376
そんなこと言うから、作っちゃったじゃないか。
こんなんでいいんでしょうか?

部屋を転がりたくなったよ、俺。
392名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 02:56:06 ID:1SCp9tZQ
「甘々かぁ」
「甘々ね」
「解ります?」
「解りませんね。他人の恋愛事情なんて、気にしたことないし」
「同じく」
 男のほうが、悔し気に唇を噛む。
「――こんな形で、他人のことに首を突っ込まなかったのが、仇になるなんて」

 えー、みなさんこんにちは。
 私は二人共通の友人、石森マドカと申します。
 どうやら、私の不用意な発言が、このバカップルの何かを刺激した模様……。

 事の起こりは、こんな一言。
「貴方達って、普段どんな甘々ライフ過ごしているんですか?」
 周囲より甘々バカップル呼ばわりされる二人。
 バカップルなのは否定のしようがありませんが、数年来の友人であるせいか、甘々というのはどうにもピンときません。
 よって、直撃インタビューしてみました。
 が、
「何てコトだ……。僕は、普通のカップルがどう過ごすのか知らない」
 彼は、どうやら基準そのものを持ってない。
 本気で悔しそうな顔しなくても……。その真面目さは、別方向に向けたほうがいいと思います。
「あたしは、一緒に居られればそれでいいだけよ」
 彼女は論外。
 ご馳走様。畜生。
「甘々っていうと……やっぱり、海岸で笑いながら追いかけっことかですかね?」
「古くない? むしろ、夜景を眺めるレストランで、キミの瞳に乾杯とか」
「うーん……他には、エレベーターの中でキスとか?」
「くるくる回りながら抱きしめあうってのもいいわね」
 突っ込みませんよ。突っ込んでなるものですか。
 ていうか、もう何処から突っ込めばいいのかわかりません。実行したのかしてないのか、そのあたりすら読み取れません。
 ひょっとして、二人で私をからかってますか?
 からかってますね? むしろそうあって下さい。
「あ、いっそ呼び方変えます?」
「どんな風に?」
「例えば……マイハニー!」
「それでは……マイダーリン!」
 それはもういいですから!
 がしっと、息もピッタリ抱き合う二人。まったく、以心伝心ですね。
 本当、からかってるんじゃないでしょうか。
393名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 02:57:02 ID:1SCp9tZQ
「とりあえず、話を戻すと……えっと、人前でどんなコトしていますか?」
「マドカ、よくあたし達知ってるはずじゃない」
「だからこそ、なんですけどね。人前じゃ、隣り合って座ってるか、精々手を繋いでるくらいですし」
 今さっきのは、例外……というか、記憶から除外するとして。
 普段から、恥ずかしいことをのたまってたりする(主に彼女が)とも言いませんが。
 いや、正直もう答えは出てるようなものなんですけどね。
「人前じゃ、それくらいで間違いないですよ」
「あたしはね、もう少しベタベタしたいんだけど?」
「僕が恥ずかしいんで、勘弁して下さい」
「そう、残念ね。あたしはこんなに好きなのに……キミは、あたしほど好きじゃないんだ」
「あはは、拗ねないでよ。僕がどれだけ好きなのか、知っているでしょう?」
「うん、勿論冗談。いいの、あたしにさえ見せてくれれば」
 ……やっぱり、これですかぁ。
 人は慣れる動物だとは聞きますけど、私の感覚も麻痺してたんですね。
 ああもう、好きにして下さいよ。
 私は、生暖かい目で見守らせていただきます。
「あー……その、もう理解したので、これでいいです」
「あれ、もういいの?」
「僕達、マドカさんの問いに答えるようなことしました?」
 ええ、充分すぎるほどに。
 不意に、バカップルの片割れその1(男)が、私の顔を覗き込んでくる。
「な、何か?」
 内心を読まれましたか?
「ん、ちょっと顔色が悪いような気がしたもので」
「え、ええ……ちょっと、胸焼けしたんですよ」
 主に貴方がたが原因で。
「そうですか、お気をつけて。大丈夫でしょうけど……もし悪くなるようなら、言って下さいね。良い医者紹介しますから」
 屈託の無い極上スマイル攻撃。
「……」
 一瞬、心臓が跳ね上がるような感覚。
「あれ、どうしました? ひょっとして、ただの胸焼けじゃないとか? だったら――」
「いえ! 大丈夫、大丈夫ですから! 心配性だなと、ちょっと呆れただけです」
「ありゃ、僕の所為ですか。それはすみません」
 何となく、片割れその2(女)がああなったのも解る気がします。
 もし、昔からこの顔してたなら、私も墜ちてましたね。多分。

 やれやれ。まだまだ胸焼けは続きそうです。
 私も、早く相手が欲しいですね。
394名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 02:57:50 ID:1SCp9tZQ
 ――数ヵ月後、あのバカップルが婚約したとの報が入りました。
 私も張り切って、いずれ来る日のために、調べ物してあげたり、お節介で方々駆け回ったりしましたよ。
 いいですね、学生結婚。
 その幸せ、分けて貰いたいものです。……おのれ。
 そして今日、二人の新居に招かれたわけです。
 何でも、色々世話になったお礼に、手料理をご馳走してくれるとか。
 律儀なことです。
 約束の時間。駅前で待っていると、彼が迎えに来ました。料理担当は、やはり彼女でしょうか。
 適当な会話しながら、目的地に向かいます。
 ……さて、ここでちょっと気になることが一つ。
「妙にそわそわしてるのは、どうしたんですか?」
 まさか、私と歩いているからということもないでしょう。
「う、そ、それは……後の、お、お楽しみ、という……コト、で」
 めっちゃ動揺してます。
 さては、彼女が何か企んでますね。
 そんなこんなで、新居到着。それなりに良いマンションですね。
 ロックを開けて、エレベーターに。降りたら部屋の前に。
 彼、マンションの入り口くぐってから、ずっと無言です。
 ノブに手をかけ、大きく息継ぎ。
 意を決して、元気よく、
「た、ただいま!」
 ………………………………………………………………。
 意識が飛んだというか、空気が凍りましたね。
 正直、記憶の彼方に追いやりたい出来事です。
「お帰りなさい、あ・な・た」
 はい。ご想像の通りでございます。
 彼なんか、火を噴く顔を押さえて俯いてますよ。
「ご飯にする? お風呂にする? それともぉ……あ・た・し?」
 わざわざ猫なで声まで習得したんですか、貴方は。
 お玉も手に、仕種も色っぽく、やたらと堂に入ってます。
 思考能力も停止し、感情の無い目で彼女を眺めます。
「……あれ? どうしたの、マドカ? これじゃダメだった?」
「だから止めようって言ったじゃんか」
 彼の涙ながらの訴えが、届く様子はありません。
「ぼ、僕、続き作ってくる!」
 あ、空気に耐え切れず逃げ出した。
 料理は、二人の合作なんですね。楽しみに待っています。
「むー、甘々の定番っていうと、コレでしょう。……折角驚かせようとしたのに」
 ええ。驚きましたとも。
 驚きましたけど、それ以上に、脳が受け付けを拒否しました。
 そうですか。数日前の会話であの時の話題を出したのは、この為の布石でしたか。
「まあいいわ。上がって」
 お言葉に甘えて、お邪魔させていただきます。
「……ところで、いつもあんなコト――」
「してるわよ」
 マジですか?
 それは流石に、彼が不憫ではないでしょうか。
「ふふ。冗談。ここ数日、練習の為だけね」
 それでもやってたんですね。
 物凄くキョドりながら付き合う彼の姿が、目に浮かぶようです。
「さ、彼の料理美味しいんだから、しっかり味わっていってね」
「それは楽しみですね」
「今じゃ、女のあたしも妬けちゃうくらいよ」

 そんなこんなで、この日は過ぎていきました。
 あ、二人の共同作業の成果は、しっかり堪能させて頂きましたよ。実に美味でした。
 いつか、もっとスパンの長い共同作業の成果を、味わわせられてしまう日が来るのでしょうか。
 怖いような、楽しみなような。
 本当、早くお相手が欲しいです。
395名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 02:59:17 ID:1SCp9tZQ
新キャラ投入。
そういえば、第三者が出てくるの初めてだな。
396名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 03:40:47 ID:CozlgCLW
GJ!!
いや、緩急自在でありますね。素敵だ
397376:2006/05/06(土) 06:14:20 ID:83W9Z/Ne
>>391
え〜、あたし〜、と思いつつ読んでましたが……
なるほど確かに胸焼けしてきた気がします。
なんつーか、ホントにGJなのですよ〜。
398名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 18:15:17 ID:RFN6isJ3
うはー……マドカさん、お疲れさまw
途中何回か吹き出したですよGJ!
399名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 19:15:30 ID:PH6+o0Cv
>そりゃあもう、一匹五百円で掴まされた無能なさかなポケモンが、

そういやそんなイベントあったよなぁ……忘れてた。
GJ!マドカさんの幸せも祈っております。
400名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 02:12:20 ID:r9yETqQZ
職人方々乙です

>>343です

高飛車系素直クールはこんな具合でいいのでしょうか?

(公衆の面前で手を繋がれて)

男「ちょ、手を繋ぐのは…」
女「私はあなたが好きだから手を繋ぐのよ?別に気にすることなんてないじゃない。
何か問題でもあるの?」
男「いや…人がたくさんいるよ…」
女「いてもいいじゃない。見せ付けてやるわよ。私はあなたが好き。だからこうして
一緒にいるの。誇りを持ちなさい」
(抱きついてくる)
401名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 02:19:40 ID:W52rO4XT
>>400
まさにそれ!!
402sage:2006/05/07(日) 08:23:32 ID:I5bYgMit
俺の持ってる小説にそんな感じのキャラがいる。
高飛車素直クール+隠れMといったところ。
もっとも、クールと呼ぶにはかなりテンションが高いキャラなので微妙かも。
403名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 08:26:25 ID:I5bYgMit
ゴメン間違えたorz
404名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 09:20:37 ID:99JkMWU5
>>402
その小説教えて下さい。
405名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 11:47:00 ID:I5bYgMit
>>404
青橋由高の恋妹〜彼女はふたご!
ttp://www.france.co.jp/bisyojo/index.html

ヒロインは双子の妹と生徒会長(上記のキャラ)
一見、双子がメインかと思いきや実は生徒会長がメインを喰っている。
406名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 19:41:50 ID:TvUYqp0E
どいつもこいつも実に良い仕事してくれやがるGJGJ!!
407名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 23:11:37 ID:ONNidRMz
ほしゅ
408名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 23:35:35 ID:57Bltet2
筆の遅い自分にぐんにょりしながら保守。
とほほ。
409名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 01:10:31 ID:lErs5Mhd
保守がてら一本書きましょうか?
例によって例の如く、「彼」と「彼女」になりそうだけど。

ただ、なんかシチュエーションがなぁ……今のストック、超真面目パートしかないし。
もっとこう、琴線に触れるようなフレーズがあれば。

>>408
楽しみにしてます。
ゆっくりいいものを書き上げてください。
410名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 15:37:35 ID:0lnEKqgA
>>409
や、是非ぜひ。読みたいっす。

>>408
三択の方ですか?明らかに作業量の異なりそうな1,2がどちらも連休中を期限にしていたので、
大変じゃないかしらと心配しておりましたが。焦らずどうぞー
411名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 17:32:07 ID:IRxareJQ
エレベータの中でキスはバカップルか、そうか・・・orz

胸を貫くようなGJ!
412名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 01:01:02 ID:s6utBvVF
保守かねていくよー。
413名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 01:01:48 ID:s6utBvVF
 それは、二人が出会って最初の秋。
 木々の色付きも真っ盛りなこの時期、僕らの学校も、ご多分に洩れず賑わいを見せていた。
 そして今日は、賑わいも最高潮となるその日。文化祭である。
「……はぁ。またこんなトコにいるし」
 屋上で一人佇む彼女に、呆れの溜め息を吐く。
 肩まで伸びた髪が、風に揺らいだ。
「キミこそ、こんなトコで何してるの?」
「探しモノです」
「見つけられた?」
「わりと簡単に。目的は果たしたんで、一緒に踊ります?」
 何処ぞで聴いたようなフレーズをアレンジして返すと、彼女は、小さく困惑の表情を浮かべた。
 ちょっと洒落たつもりだったけど、滑ってしまっただろうか。
 彼女は、まるで僕のことを咎めるように、
「あのね、あたしなんか気にしないで、友達と回ってきたらいいじゃない」
「残念ながら、掴まえられなかったもので」
 嘘だ。むしろ、誘いを蹴って彼女を捜した。
 直感に頼って、まず最初に選んだ先がビンゴだとは思わなかったけれど。
 何というか、一緒に回ってみたかったという思いが一番にあった。
 白々しい、見え透いた嘘。多分、彼女もそこは理解している。
 だから、ちょっとした意地悪をしてみる。
「先輩のお連れは?」
「…………」
「見たところ、誰かと待ち合わせってわけでもなさそうですし」
 黙りこくってしまった。
 少々卑怯な言い方かもしれないけど、これから言うことが本心であることは間違いない。
 後一押しだ。
「僕は、先輩と回りたいんですけど」
 手応えあり。
 彼女は、大きく溜め息を吐くように、台詞を吐き出した。
「掴まらなかったって……他には?」
「いないんですよ。百の友人より一人の親友が信条なもので」
「それはそれで寂しいね」
「う」
 痛いところを突かれた。手厳しい意地悪返しだ。
 これを機に、どこか晴れ晴れしたような表情を浮かべる。
 まずいなぁ……正直、可愛いぞ。
「まあいいわ。苦労を労って、寂しいキミに、付き合ってあげましょう」
「お付き合いされます、先輩」
 と、僕の腕に、彼女が組み付いてくる。
「せ、先輩!?」
「今日だけのサービスよ。あたしも、やっぱり一人で見て回るより二人のほうが楽しいしね。ご褒美よ」
「ご褒美、ですか?」
「そ。探しモノを見つけたキミと……賭けに勝ったあたしにね。ここまできたら、踊らなきゃ損でしょ?」
 何がそんなに嬉しいのか、僕に笑顔を向けてくる。
 さっきは、ちょっと非難するような目をしてたくせに。
 ま、いいか。
 同じアホなら、ね。
 それにしても……、
「ところで、賭けって?」
「ふふふ。実は、待ち合わせしてたってこと」
「はぁ」
 誰かが来ないことに賭けていたということだろうか?
 理解の色を示さない僕の頬を、彼女の指先が抓った。
「痛たたたた」
「お仕置きよ、鈍チン」
「?」
 何なんだ、今のは?
414名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 01:02:39 ID:s6utBvVF
「…………ところで」
「んー?」
「いつまでこうしてるんです?」
「あら、嫌だった? あたしは、そんなコトないんだけど」
 嫌じゃない。嫌なわけがない。もうホント、全っ然嫌じゃないんだけど……。
 まあ、その、なんだ。組み付かれてると、歩いて身体が揺れるたびに、なんか柔らかいモノを感じるワケで。
 断続的なその感触が、僕を惑わせるというか……全身全霊を持って意識を集中すべきか、あるいは逸らすべきか悩むワケですよ。
 嗚呼、男のジレンマ。
 ついでに、現在校内を徘徊中。
 様々な感情の入り混じった視線が痛いです。
 あらあら、若い人はいいわね。なんて微笑ましそうに、わざわざ聞こえよがしに言うおばちゃまもいたりします。
「さすがに恥ずかしいんですけど」
「気にしなければいいのよ」
 と、手にしたクレープを口にする先輩。
 これまで、綿菓子やケーキなどのお菓子はおろか、たこ焼きやお好み焼き、焼きそばなどの炭水化物も摂取している。
 まさか、制覇するつもりだろうか?
 この細い身体のどこに収まるのかなあ、なんてことはむしろどうでもよくって、両手使わなきゃいけないモノの時くらい離れてくれないものか。
 人にモノ持たせて、自分は食べてるだけって……。
 持ってる自分も自分だけど。ていうか、この体勢で人の手から食べるのって、器用ですよね。
 ジト目で見ると、先輩は、
「食べる?」
 なんて、手の中のモノを、僕の口に寄せてくるし。

 先輩、貴女は何を考えてるんですか?
415名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 01:03:53 ID:s6utBvVF
 そして今、僕らはある教室の前にいる。
 いくら健啖家を披露したとしても、食道楽も長続きするわけもなく、次第に目的は出し物見物へをシフトしていった。
 こういうのは、クラスの個性が出る。
 つまらないもの、楽しいもの、熱意があるもの、ないもの。
 そういった視点で見るなら、閑古鳥が鳴いているような教室も面白いと言えるかもしれない。
 その途中に、とある人物に出会った。
「相変わらず仲が良いですね」
 などと冷やかしてきたのは、先輩のクラスメイトの石森マドカさん。
 このところ校内を駆けずり回っていたけど、今は休憩中なのか、わりと暇そうにぶらぶらしていた。
 それでもマドカさんの存在感をアピールするのは、身につけているものによる。
 いかにも手作り感が漂うそれは、何も語らずとも信頼感を与えてくれる。実行委員会の腕章が輝いているようだ。
 どこか浮かれたような雰囲気の先輩と、どこか呆れたようなマドカさんの話は弾んだ。
 しばらく立ち話をし、別れ際にマドカさんはこう言った。
 彼女には聞こえぬよう、僕だけに。
 多分、何か考えてのことだろう。
「2−Eに行ってみるといいですよ」
 というわけで、この場にやってきたのだが……。
「ここは……」
 しがみ付く手に、力が篭るのが解った。
 先輩のクラスだ。
 出入り口はおろか、隙間という隙間が塞がれて、中を窺うことは出来ない。
 入り口には、扮装した生徒が呼子として客を誘っている。
 そうか……。
「ね、此処は止めない?」
 表面上はいつものように冷静ながら、声はどことなく窮しているかのよう。
 僅かに眉を寄せ、冷や汗一筋。警戒色を見せている。
「ね?」
 僕を見上げ、懇願する。
 人気があるのか、客足が途絶える様子はない。むしろ評判を聞きつけて、人は増えるばかりだ。
 苦手なんだな。
 漠然と理解した。マドカさんの内緒話は、これを見越してのことだったわけだ。
 確かに、彼女は此処は嫌かもしれない。しかし、せっかくの好意を無駄にするわけにもいかない。
 可哀想かもしれないけど、ここは彼女に涙を呑んでもらうとしよう。
 並んでる間も、彼女は小声で必死に訴えてくる。
 残念だけど、腹は決まっている。訴えは、即時取り下げさせてもらうことにする。
 そして、程なくして僕達の番がやってきた。
「何だ? 仕事サボってると思ったら……いいよいいよ。その様子じゃ、仕方ないね」
 僕達の様子を見て、先輩のクラスメイトは言った。
 多分、先輩本人の異変には気づいていない。あくまで、表面的には極僅かな変化しかないのだ。
「それでは、二名様ご案なーい!」
「ちょ、ちょっと!」
「いいから。恥ずかしなさんな」
 小さな抗議は聞き流され、僕ら二人は教室内に押し込められた。

 入り口の生徒が扮しているは、左前の白装束。
 看板には、血の滴るようにおどろおどろしく、でっかく赤字でこう書かれていた。
 お化け屋敷、と。
416名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 01:05:20 ID:s6utBvVF
「う、うぅうぅぅぅ……」
「お、落ち着きました?」
 買ってきたジュースを手渡す。
 僕達は、再び屋上に戻ってきていた。というより、戻らざるを得なかった。人が少なく、落ち着いて座れる場所はあまりない。
 紙コップに口をつけて、咽喉を鳴らす。一呼吸置いてから、彼女は恨み言を吐いた。
「マドカめ……余計なコト吹き込んでくれちゃって……」
「いや、ともあれ決定したのは僕ですけど」
 まさかあそこまで苦手だとは思わなかった。
 半分腰が抜けて、冗談抜きでしがみ付かないと自力で歩けなくなるほどだとは。
 それでありながら、大声で悲鳴を上げず、飲み込むだけで我慢していたのは流石だ。
 それはそれとして、やっぱ柔らかかったな。
 反対の手でさすって、腕に残った感触を思い出す。少々不謹慎とはいえ、役得だった。
「――だから、クラスに顔出したくなかったのよね。何、あのクオリティ? 高校レベルでやること?」
「ははは……。異様に凝ってましたね」
 聞くところによると、壁前面を発泡スチロールその他で覆い、防音。空気が篭ることは、雰囲気作りも兼ねてエアコンをガンガンに利かせることで対処。
 照明は薄暗く、フィルムも使って視覚効果を。
 迷路のように仕切りもしてあって、面積は狭いながらもそれをあまり感じさせない。
 さらには、メイクから小道具まで、技術も物資もどこから持ち込んだと疑問を抱くような完成度。
 お化けの胸像なんて、小学校にでも放置したら、多分泣く子が続出間違いなし。人体模型レベルだ。
 かくいう僕も、正直肝が冷えた。
 そのくせ、チープにコンニャクまで用意しておく拘りよう。
「おかげで、あたしはサボリ魔扱いよ」
「……高校生になって、お化けが苦手ってのはバレたくないですよね」
「ふん」
「あの……」
 彼女にそっぽを向かれた。
 いかん。拗ねられたかもしれない。
 どうすれば、機嫌を回復してくれるだろうか。
 数瞬の沈黙の後、彼女はぽつりと……聴こえるかどうかといった声で呟いた。
「まぁ、昔色々あったからなんだけどね。みんなには、あまり触れられたくないし」
「えっと」
 ここは、流すべきなんだろうな。
 話を変える意味も込めて、
「その――すみませんでしたッ!」
 とりあえず、頭を下げておく。
「調子に乗って、嫌だってことしちゃって」
「反省してるの?」
「しています」
「本当に? あの時、暫く顔が緩んでたみたいだけど?」
「あう」
 痛いところを突いてくる。
 喜んでいた部分も無きにしも非ず。言い訳できない。嫌だね、こんな自分。
417名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 01:06:28 ID:s6utBvVF
「本っっっ当に怖かったんだから」
「ご、ごめんなさい」
 ダメだ。痛すぎる。涙目で睨まれちゃ、男に勝ち目はない。
「あたしが、どれだけ叫びたくなったか……堪えてたかわかる?」
「すいません、本当にすいません! もう二度と、もう二度と調子に乗りませんから! だから――」
 だから、
「っ――?」
 口の動きを、先輩の人差し指で制された。
「はい、そこまで。自省できるコは好きだけど、やりすぎはいただけないわ。いい?」
 と、腕を組みながら、さっきの人差し指を振る。
「悪いコトしたら、もう二度としない。それでいいの。取り返しのつくコトなんだからね」
「あの」
「返事は?」
「――はい」
 ……えっと、涙は演技?
 だからの後、自分で何を続けたかったのか、すっぽり抜けてしまった。
 やられた。女の武器、侮りがたし。
 呆けていると、彼女に後ろを向かされた。そのまま、再び組み付いてくる。
「さ、もう気分はよくなったから、まだ見てないトコ回ろ」
「またこの体勢ですか?」
「うん。まだ腰が心許なくて」
 笑顔を見せた彼女の目尻に、涙の残滓。
 単なる演技の名残か。それとも……。
「ふぅ」
 頭がごちゃごちゃしてきた。
 小さく溜め息。わしわしと、暇な手で頭を掻く。
「あら。不服?」
「いいえ。贖罪も兼ねて、しっかりエスコートさせていただきます」
「お願いね。あたしの王子様」
「了解しました」
 過ぎたコトを考えるのはやめだ。
 しっかりと、二人で楽しませていただきますよ、お姫様。
418名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 01:09:29 ID:s6utBvVF

以上。

時系列的には、告白前の恋人にもなってない時期……のはず。
周囲の面々はきっと、
「ええいっ、くっつけ! さっさと正式にくっついてしまえぃ!」
と、やきもきする毎日を送っているコトでしょう。

……マドカさんも、お節介の一つも焼きたくなるよなぁ。
419名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 02:11:54 ID:Ne9Pq43U
GJ!!
夜遅くにご苦労様です。


できれば続編にも期待。
420名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 05:14:40 ID:meo8WZzv
うう、こんな素敵な二人なのに……
結末が判っているだけに切ない…
421名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 01:21:46 ID:3TkY1+Zh
GJ!!
422名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 02:13:04 ID:njwOa9Tf
保守で一本
423名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 02:14:31 ID:njwOa9Tf
「そば、寄ってもいいか?」
「いいよ」
身体をぶつけるようにして、遥が俺のすぐ隣に座り直す。
彼女は俺の右腕をとり、豊かな胸の中でぎゅっと抱く。
この癖のおかげで、二人で寄り添うように座っていても、
彼女の肩に腕をまわしたためしがない。

自分を包んでいた匂いが、皮製のシートのものから、遥が発するものへと変わっていく。

「しかし、まぁ…」
「?」
「この広い車内のほんの一部しか使ってないな、俺たち」
「ふふ、そうだな」

フルストレッチ・リムジンの、後部座席のすみっこ。

「もっと普通の車でよかったのに」
「初めての旅行だしな。おまえに息苦しい思いをさせたくなかったんだ」
身体を押し付けながら、俺をさらにシートの隅に押しやりながら、そう言う。
それがおかしくて、可愛くて。
「それに広いからいろいろできる」
「…できないよ」
「あぁ、おまえの匂い」
俺の腕を抱いたまま、顔を首筋に埋めてくる。
やわらかく、温かく、濡れた感触。
「だめだぞ。向こうに着くまでは我慢してくれよ」
むぅううんとくぐもったうめき声がする。
「車の中でなら何度もしたじゃないか」
「あのね、今走ってる最中。いくら向こうからは見えないからって、
 車が変に揺れれば運転手さんがびっくるする。そして事故る」
聡明な彼女だが、こういうときだけは至極当然な理由を説明しなくちゃならない。
「向こうに行ったら5日間ふたりっきりだ。だから、な?」
「…ふぅ、残念だがおまえが正しい。その代わり着いたら、分かってるだろうな?」
こんな口調にさえ笑みを返してしまうのは、惚れた弱みと己のスケベさゆえ。
「大丈夫だって。俺だってその気はまんまんなんだから」
体力についてはまた別の話になるんだけどね、とは言わない。
424名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 02:15:38 ID:njwOa9Tf
「なぁ、頼みがある」
しばらく無言で寄り添っていたら、遥がそう言い出した。
「いいぞ、ここで出来ることならな」
「なんて言えばいいんだ、人間座椅子か?」
「?」
「ここに座りたい」
俺の両腿の間をぽんぽんと叩く。
あぁ、後ろからぎゅっとされたいわけだ。
「いいけど。でも人間座椅子はないだろう」
思わず笑ってしまった。
「すまない」
「いいよ。でもさ、今までしたことないだろ?」
「ああ。おまえの顔が見えなくなるし、キスもしずらいからな」
「じゃ、なんで?」
「愛し合うことが出来ないなら、せめて、おまえの中に包まれていたい」
「…」
俺の半分でいいから顔を赤くして言って。

遥の腰に手を添えて、ゆっくりと自分の前に座らせると、
静かに上半身を預けてきた。
彼女のそれぞれの腕をそっと掴むと、胸の下で組ませ、
さらにその上からかぶせるようにして、腕ごと彼女を抱きしめた。
「あぁ…、なかなかいいものだな」
「そりゃよかった」
しばらくの間は、ロードノイズと二人の呼吸の音だけ。
「しかし…」
「ん?」
ゆっくりと身体をねじってこちらを見た彼女の目が、妙に艶かしい。
「やはりキスがしたくなった」
半開きになった唇が近づいてくる。
チロッと俺の下唇を舐めたあと、ふたりの唇が重なった。
「はぁぁ」
キスをしながら遥の口から漏れてくるのは、吐息とも、声ともつかない、そんな音。
彼女の太腿が切なげに擦り合わされているのを、その上に置いた俺の手が感じ取る。
俺はシートの上にゆっくりと押し倒され、初めての人間座椅子の時間はあっという間に終わってしまった。
こうなってしまっては、俺自身にもブレーキは効かない。
この状況でどうしたら彼女を満足させられるか、そんなことを考えながら、
遥のシャツの裾から、ゆっくりと中に手を差し込んでいった。


以上
425名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 02:53:44 ID:Akw7eaMj
乙乙それにGJ!!
426名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 14:10:38 ID:sWTDlzhN
つ、続きはッ!?
早くしないと漏れちゃうッ!!
427名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 01:36:52 ID:bBCohHbh
続き無いの?寸止め過ぎる…
428名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 03:19:46 ID:de0ZHkzh
ひとつ書いてみました。
「したいと思ったら自分から即馬乗り」
以外のシュチュエーションを考えてみたんだけど、
果たして、これで素直クールと言えるかどうか…
429名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 03:20:36 ID:de0ZHkzh
彼女の右手が僕の髪を、左手が腰の少し上辺りを優しく撫でる。
僕は彼女の上に倒れこんだままだが、身体をどけることはしない。
腰だけを少し浮かし、温かい彼女の中からペニスをそっと引き抜く。
彼女の汗ばんだ首すじに何回もキスをし、少し分かりやすいくらいに、甘えてみる。
「ふふふ、普段から素直に甘えて欲しいものだ」
うん、とは言わず、ただ深呼吸をする。
本当の戦いはここからなのだ、早く呼吸を整えなければ。
「愛するものに甘えるのも甘えられるのも、どちらも嬉しいものだからな」
もう少しこうさせていて、と口を開きかけたとき、
腰を撫でていた手が、尾てい骨の辺りへ下りてきた。
あぁそんな待って。力が抜けるような、入るような…。
耳元で囁くように彼女が言う。
「横にきてくれ」

身体をずらして皺だらけのシーツの上に身体を横たえるまで、
彼女はずっと両手を僕の頬に添えていた。
その手は、柔らかくて優しくて、力などまったく入っていないみたいで、
そしてその優しさが僕に、たとえ身体を移動させるためであっても、
二人の身体の間に大きな隙間を作ってはならない、と思わせる。
互いの息がかかりあうように抱き合うと、彼女が足を絡めてきた。
下腹部がさらに密着する。
「ずっと、こうしていたいな」
同じセリフを初めて言われ、僕もだよ、と答えたときに彼女が見せた、
してやったり的な笑顔は今でもよく憶えている。
思ってもいなかった。
彼女の言う"こう"に、今のように甘く静かに抱き合っている状況だけでなく、
その前(後)の激しい時間のこともまで含まれているなんて。
結局あの時は何回したんだっけ…。
文字通り精も根も尽き果て、はめられた、とつぶやいてしまったときに、
ちょっとおかしそうに笑った彼女の口から出てきた、
「ふむ、しかし行為としては"はめた"のはキミだな」
というセリフは、僕を一瞬の思考停止状態に陥らせ、
その後、僕が彼女に説教するなんていう珍しいことがあった。
430名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 03:22:57 ID:de0ZHkzh
そんなことを思い出しながら、彼女の細い切れ長の目を覗き込む。
今はさらに細められているが、決して閉じられてはいない。
その奥にある瞳は、いつでも確実に僕を捉えているのだ。

彼女の顔が近づき、唇同士がそっと、触れ合う。

そんな目で見つめられ、こんなキスをされたら…。
もう愛しくてたまらない。

「最初のころはこんなに感じなかったのにな」
彼女はそう言いながら、僕の手を豊かなふくらみの片方へと持っていく。
すかさず心の中で、嘘つけ!、と叫んだ。
「この手のせいだな」
彼女は僕の手をあやつり、ゆっくり円を描くように動かす。
今度は、頼むよ、まだ息があがったままなんだよ、と訴える。
彼女のその行動に抗いはしないが、自分から動かすこともしない。
ささやかな抵抗と、時間稼ぎ。僕はそう簡単じゃないぞ。
彼女は僕の手を、さらにふくらみに押し付ける。
結局、わしづかみにするようになってしまった。
ふくらみの柔らかさと、その先にある可愛らしくも敏感な突起が気になって仕方がない。
僕の心の声は、すべて彼女に聞こえているんだろう。
その上でこうしているのだ。そうに決まっている。

「でも一番は…」
身体が跳ねる。
「こいつのせいだ」
彼女の手がペニスに触れた。
握ったりなんてしない。指の腹で、そっと撫でるだけ。
指の動きは決して大きくないが、今の僕はそのすべてを完全に感じ取ることが出来る。
一つ大きく息を吐いたあと、僕は勢いよく彼女にのしかかった。
彼女の頭部を抱えるようにして、胸の中で強くぎゅうっと抱きしめ、すぐに離す。
同じ勢いで、今度は唇をよせていく。
唇が重なりあう直前に見た彼女の瞳には、満足感と悦びと期待が浮かんでいた。
ああするさ、いくらでもなんでもしちゃうさ、
その嬉しそうな表情が見れるなら…。
ふたりだけの静かなの空間に響く、熱く激しいキスの音で、次のラウンドの幕が開いた…。



以上、こんな感じです。
431名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 03:41:36 ID:EJVGrmVj
ktkr
432名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 20:20:42 ID:a0zpW/v5
オレには、コレしかできない・・・


(;´Д`)ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
433名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 01:13:30 ID:97iLxES3
ああ……イイ…………


すいませんBASARAスレに帰ります。
434名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 02:02:10 ID:w1C5/FZj
>>428
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
435名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 09:45:24 ID:WXrtm2AJ
>>428
超GJ
436名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 02:35:37 ID:X74cfDQr
「ね……ちょうだい?」
 彼女の唇が艶かしく動き、その言葉を紡いだ。
 太陽が沈むまで、まだしばらくある時間のことだった。
 特に予定のない休日。僕達は、ソファで寝転がっていた。
「何を……ですか?」
 嫌な予感を覚えながらも、僕は極力平静に応える。
 その言葉の意味するところは明白だ。つまり……。
「貴方の、大事なモノ。美味しいモノを――ね?」
「で、でも……それは!」
「それは?」
 それは、
「まだ……早いよ。もう少し我慢しよう……頼むからさ」
「嫌。あたしは、今がいい」
「でも、ね?」
「あたしは、大好きな貴方のだから欲しいの。自分のじゃ嫌。貴方のじゃないと嫌なの」
 突き刺さった僕のモノを指差しながら、彼女は視線でも懇願してくる。
「お願い。あたしに……太くて立派なモノから頂戴」
 僕の手を握り、身体を寄せ、潤んだ瞳で僕を射抜く。
 互いの距離が近くなったことで、威力は増す。視覚、聴覚、嗅覚、触覚で、僕の理性へと揺さぶりをかけてくる。
 放置された残る一つの感覚を満たそうと、本能が語りかけてくる。
 いけない。このままでは負ける。彼女の魔力に屈してしまう。
 これは計算済みの言動に違いない。
 彼女は、僕がその目に弱いことを、誰よりも知っているから。
 しかし、せめて最後の悪あがきくらいは……。
「けどこれ以上は、取り返しがつかなくなるかも」
「あたし……もう我慢できない。収まりがつかない」
「く……もう、どうにでもなれ」
 僕は弱い。悪あがきは所詮悪あがき。大波の前のさざなみのようなものだ。
 僕はあっけなく彼女の前に屈し、その願いをかなえるために……。
 体勢を変え、動く。
 まずは、ソレを引き抜いた。
437名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 02:36:20 ID:X74cfDQr
「はぁ……ん。ふぅ、美味しい」
「く、うぅ……無念だ」
 彼女は恍惚に囚われたように、静かに身体を震わせる。
 咽喉を鳴らし、体内へと受け入れる。
 白濁液が、口の端から洩れた。重力に引かれようとする一筋のそれを、小さく赤い舌が、可愛く舐め取る。
 舌なめずりする様が、妙に扇情的だ。一滴たりとも逃がさないというような気迫が、そうさせるのだろうか?
 対する僕は、自分の情けなさに打ち震えるしかなかった。
 何かに、あるいは誰か――彼女の行為か、それともそれを阻めなかった自分自身にか――に悔しさを覚え、僕は心中で涙する。
 拳が作られ、無意識に力が込められた。
「ふふふ、そんなに落ち込まなくてもいいじゃない。――あたし、貴方の好きよ?」
「でも、僕は……。僕はね」
 僕の言葉を遮り、そっと優しげな声で彼女は告げる。
「いいのよ。あたしの我が侭なんだから、気に病むコトはないわ」
「それは、そうだろうけど――」
 でもやっぱり、

「野菜は、もっと熟してからのほうが良かったんじゃないかな」
「……だって、あたしが作ったの、尽く失敗してたんだもの」
 ベランダの家庭菜園に目をやる。
 ささやかな趣味として、どっちが美味しい野菜を作れるか、競争していたわけだけれども……。彼女は、こういうことに意外と不器用な性質だった。
 ちなみに。夕食のメニューは、僕特製の獲れたて野菜のクリームスープだ。
 あのあと、一番よく育っていたモノを収穫させていただきましたよ。ちぇっ。
「それに、まだまだ残ってるでしょ? そっちは我が侭言わないから、一番美味しい時期にさ」
「やー……意外と量を使ったからね。危うく全滅するところだったよ」
「む。それは悪いコトしたかも」
 さすがに、ちょっとは反省してくれたようだ。善哉。善哉。
「美味しいものは、出来るだけ長く楽しみたいし」
 速攻で前言撤回。反省してないよ、この人。
「…………ま、いいか」
 何にせよ、美味しそうに食べてくれるのは、作り手として嬉しいものだ。
 舌鼓を打つ彼女の笑顔は、濁った気持ちを吹き飛ばしてくれるだけの力がある。
「今度は、一番美味しいのを食べようね」
「うん」

 こうして、何事もない夜は更けていく。
438名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 02:39:33 ID:X74cfDQr

……あれ、おかしいな。
ちこっとエロを書いてみようと思ってたのに。

>>419
続編……今書いているけど、辛い展開なんですよね。
下手すると、素クールがどうとか言ってらんないかもしれないくらい。
それでもOK?
OKなら、完成次第投下しますが。
439名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 16:01:38 ID:YD+lQsfi
最近保管所がまともに見れないんだが何かあったんだろうか
440名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 16:08:04 ID:l50Vzm0q
保管所ってどこ?
441名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 18:37:32 ID:dTwVTp7O
>>439
なんかすぐ
Service Temporarily Unavailable
って出るよな。
442名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 19:24:28 ID:Jk7ps7zp
>>441
更新押しまくればどうにでもなる
443名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 19:59:34 ID:YD+lQsfi
444名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 20:16:43 ID:l50Vzm0q
>>433
サンクス
ここってVIPとなんか関係あるの?
445名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 03:00:57 ID:iVDASU7n
>>438
GJ!!
446名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 04:54:46 ID:Iq4o8SKN
>438
くそっ、くそっ、くそっ! 騙されたじゃないかちくしょうGJ!
447名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 19:33:00 ID:hel8sYlH
>>444
あるどころか基本的にVIPの保管庫だから。
448名無しさん@ピンキー:2006/05/26(金) 16:24:02 ID:n738C6kr
保守
449ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/05/27(土) 07:37:03 ID:rRpwhm4h
ちょっと体液系。
汗まみれとかが好きでない人は読まないほうがいいかも。
450ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/05/27(土) 07:38:16 ID:rRpwhm4h
<クールでウェット>

「では──別れよう」
クーのことばは、唐突ではなかった。
この一年ほど、何度も何度も話し合っての結論だった。
「……クー……」
「言うな。もう、何も」
彼女が視線をそらすのは、めったにないことだった。
高校の時から付き合い始め、大学卒業、就職――そして一年前からの同棲。
見晴らしのいい東向きのマンションの一室は、
夏でもクーラーが要らないくらいによく風が通る、いい物件だった。
二人暮らしなら、家賃も格安と言っていいだろう。
足掛け十年にわたる深い恋愛がおかしくなり始めたのは、ここで同棲を始めてからだった。

別れの原因は──セックスレス。
この一年ほど、クーとのセックスが激減した。
彼女のほうは、今までと変わりがない。
僕のほうの「したい」気持ちがなくなっていったのだ。
なぜかはわからない。
学生時代の、お互いが燃えあがるあの交わりの衝動が遠ざかって久しい。
一晩で二桁を数えたこともある二人の営みが、まさか月単位でゼロになるとは。
「……私は、君がとても好きだ。人間としても、男としても。誰よりも、誰よりも。
だから、いっしょに生活をしたい、という思いと同じくらい、君とセックスしたい」
話し合うべきことがあるとき、クーは決してことばを濁したりしない。
間違えようのない、直接的なことばで話し合いに臨む。
そして、話し合いにしても行動にしても、どこまでも誠実だ。
だから、クーが別れを切り出すということは、もう打つ手も取り付く島もないということだ。
実際、僕の不調を治すために、クーは僕以上に熱心に動いてくれた。
だけど、彼女が調べてくれて通うようになった病院やカウンセリングも結局は役に立たなかった。
そして、リミット──処刑宣告。
451ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/05/27(土) 07:40:09 ID:rRpwhm4h

「――私は今でも君のことが世界で一番好きだ。
たぶん、この先、一生君以上に想える相手はあらわれないだろう。
だが、それでも──いや、だからこそ、君が私を「女」と見てくれないのは
……耐えられない」
クーは視線を床に落としたまま呟いた。
「ごめん……」
僕は、うなだれたまま返事をした。
ベッドの中での僕の男根のように、それは元気がなかった。
「謝らなくて、いい。私は、ここを出て行く──部屋は、もう借りてある」
「そう……」
クーはなんでも出来る女性だ。
僕と別れても、仕事も私生活も何も心配は要らないだろう。
「……この部屋よりは随分劣る。狭いし、西日がきついし、エアコンもおんぼろだ。
しかし一人暮らしだ。仕方あるまい」
「僕も、ここ出るよ。一人じゃ家賃も高いし、広すぎる」
「……そうだな。――荷造りをする」
クーはさばさばとした表情で立ち上がった。
全然平気な顔をしているけど、唇が震えていたのがわかるのは、
世界広しといえど僕一人だけだろう。
彼女の乏しい表情の変化を読み取れる人間は数少ない。
──でも、もうそんなことも、意味がなくなってしまうんだ。
僕は心臓が締め付けられるのを感じたが、何もいえなかった。
クーが決めたことは、正しい。
もうどんなにことばを尽くしても、これ以外に
今の二人にとってベストな選択肢はないのだ。
僕は、黙って荷造りを手伝い始めた。
452ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/05/27(土) 07:40:47 ID:rRpwhm4h

黙々と荷物をダンボールに入れていたクーが額をぬぐった。
「暑いな。エアコンは──そうか、昨日故障したのだったな」
何かの手違いで、奥の寝室が8畳部屋なのに12畳用のものが付けられているのもこの部屋のいいところだった。
パワーのあるエアコンと、いい風の入る窓を巧みに使い分け、
クーはいつでもこの部屋を快適な空気で包んでいた。
「以前の安アパートではこうはいかないな」
と笑ったのは、入って二日目か、三日目のことだ。――あの笑顔、よく覚えている。
「窓、開けるね」
立ち上がって窓に手をかけたとき、爆音が耳をつんざいた。
たまにやってくる暴走族。
この部屋の唯一の欠点。
この部屋のすぐ下、隣の駐車場でたむろい始めると、音だけでなく排気ガスもすごい。
「……閉めたままにしておきたまえ。煙くさい風が入るよりはマシだ」
クーが眉をしかめて言った。
それから一時間、僕たちは、だまって荷造りを続けた。
運が悪いことに、今日は五月の終わりにしては猛烈に暑い。
閉め切った部屋の温度はどんどん上がっていった。
くそっ!
額の汗が流れて、目に染みる。
涙があふれて、頬を伝うくらいに。
「……」
そんな僕を見ないようにしながら、クーは作業を続けた。
やがて──。
「あとダンボール一個分だな──それで終わりだ」
ぽつりと呟いた彼女の一言を、僕は別の意味にとらえた。
新しい涙が、ぽろぼろと落ちた。
453ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/05/27(土) 07:41:28 ID:rRpwhm4h

「泣くな──。泣かないでくれ」
クーの頬にも涙が伝っていた。
くそっ。
何でお互いこんなに好きなのに、好き合っているのに、別れなきゃいけないんだ。
なんでこの娘を失わなきゃならないんだ。
泣きながら、だけど僕はその理由を分かっていた。
僕がクーを抱けないから。
クーを「女」として扱えないから。
だって、彼女を前にしても、僕の分身はうなだれたままで──。
「あれ……」
僕は、ズボンの前を押さえた。
僕のそこは、いつの間にか天を向いて堅くそそりたっていた。
「――どうした……?」
突然黙りこんだ僕に、クーが声を掛ける。
クーの、汗をたっぷり吸った白いTシャツは、うっすらと彼女の身体を透かしている。
その姿が目に入ったのが、引き金だった。
「――」
僕はクーに飛び掛った。
頭の中は、真っ白だった。
何がなんだか、よくわからない。
でも、本能が、それを求めていた。
「なっ──何をっ……!」
飛び掛られたクーは、床の上に押し倒された。
僕は、絞れば汗が滴り落ちそうなTシャツをまくり上げた。
ブラジャーまでぐっしょりとなっている。
もどかしくそれをずらしたときには、クーはもう抵抗するのをやめていた。
454ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/05/27(土) 07:43:11 ID:rRpwhm4h

ぴちゃぴちゃ、という音で形容には僕の舐め方は乱暴だった。
舐め上げ、すすりたてるようにして、クーの胸を愛撫する。
塩辛い汗の味には、極上の女の甘い匂いが混ざっている。
「くっ……そ、そんなにっ……」
身体に絡みつくTシャツを引き裂かんばかりの勢いで剥ぎとった僕は、
彼女の白い首筋に舌を這わせた。
そのまま上にずらしていって──唇を求める。
クーは、戸惑ったような表情になったが、すぐにそれを受け入れた。
唇を割って舌を口腔に差し入れる。
クーの甘い唾液が僕の舌に絡んだ。
キスだけは、最近でもよくしていたが、こういうキスは久しぶりだ。
セックスの時の、ディープキスは。
だけど、舌や唇は動きをよく覚えていた。――クーの舌と唇も。
粘液まみれで絡み合う二匹の蛇は、互いの口の中で激しく暴れまわった。
「――」
僕はクーのGパンに手をかけた。
意図を読み取ったクーが慌てる
「だ、だめだ。そ、そこは──汚い。シャワーを……」
「クーの身体に汚いところなんてないよ」
パンティーを脱がして、太ももを押し広げながら僕は答えた。
ああ、いつかもこんな会話したな。
あれは彼女と初めてセックスした時だったっけ?
部活帰りの彼女と、今やっているようにこうやって──。
身をよじるクーの股間に顔をうずめた僕は、彼女のあそこを熱心に舐めはじめた。
455ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/05/27(土) 07:43:51 ID:rRpwhm4h

クーの濃密な匂いに包まれながら、僕は彼女の女性器を舌で熱心に愛撫する。
「だ、だめだっ、はずかしいっ……」
彼女が甘い悲鳴を上げる。
「いまさらそんなこと言わないでよ。何度もこうしたじゃないか」
たっぷりとクーの女性器を舐めまわした舌先を、その下にあるすぼまりまで這わせながら答える。
「ひっ、そ、そこは、もっとだめだっ……」
「のけぞりながら言っても説得力ないよ」
そうだ。僕はクーのことを何でも知っている。
こうして舐められるのがすごく好きなことも。
「――っ!!」
ひときわ大きく跳ね上がるように身をよじらせたのは、軽くイッた証拠。
でも、こういうときクーの身体は、すでに次の絶頂のために準備していて……。
「は、入るよ、クー……」
ガチガチに堅くなった男根をあてがいながらささやくと、クーは、こくんと頷いた。
「――くふっ」
「あっ…ああっ……」
潤んだ肉を割って彼女の中に入っていくと、僕たち二人はあえいだ。
お互いの粘膜がからみつく。
他人が聞いたら、漏れ聞こえる分だけでも顔を赤らめそうな
粘液質な交接音と、あえぎ声と、ささやきとが部屋の中に満ちる。
淫蕩な匂いも。
締め切った部屋の中、汗まみれで交わる二人は、大きく燃え上がり、
酸素を求めてのた打ち回りながら、それ以上にお互いの身体を求め合った。
何度も、何度も。
やがて、僕もクーも限界に達し、夕日も落ちて薄暗くなりはじめた部屋の中で
折り重なって倒れこんだ。
456ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2006/05/27(土) 07:44:50 ID:rRpwhm4h

「――君は、汗にフェロモンを感じる人間だったのだな。
それも、濡れたTシャツに欲情する性癖もあわせ持っている」
冷蔵庫から取り出した冷えた麦茶を飲みながら、クーがあきれたようにつぶやいた。
「そういや、学生の頃にしたのは、いつも部活帰りとかだったね」
「前のアパートは、エアコンなしだった」
窓から入ってくる夜風が、肌に心地よい。
暴走族も、どこかへ行ってしまったようだ。
静かな、涼やかな空気は、限界まで燃え尽きたあとに最高のご馳走だ。
ずっと、このままでいたい。
だけど──。
「――」
クーは立ち上がった。
「……残っている荷作りを終わらせよう」
「……うん」
時の流れは、元に戻せない。
さっき彼女が言ったとおり、これを荷造りし終えれば、それで僕たちの時間も終わりだ。
最後のダンボールは、半分くらいしか入れる物がなかった。
「……クー、隙間に、なんか詰めていく?」
「ああ、――これと、これと、これだな」
クーは、僕のコップと歯ブラシと、僕の下着と、僕のパジャマを取り上げた。
「……え?」
「この部屋を解約するのは後にするとして、だ。とりあえず、君は身体一つで新居に来たまえ」
有無を言わせず僕の着替えと洗面用具をダンボールにつめてガムテープ張りをしたクーは、
こちらを向いてにっこりと笑った。
「君と私の新しい部屋は、いい部屋だぞ。――西日がきつくて、エアコンがおんぼろ。
──つまり、君が四六時中、私に欲情していられる部屋だ」
「クー!」
涼しい風の入る部屋の中だったけど、僕は、思いっきりクーに抱きついた。
                                             FIN
457名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 08:57:26 ID:qvrHv/ZT
ゲーパロ専用氏>
GJです!すげぇいい!
続き待ってます!
458名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 08:58:11 ID:qvrHv/ZT
すいません……あげちまった……orz
459名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 09:10:27 ID:2zireRQl
オチが良いなぁ。うまいです。
エロい表現も、学び取りたいです。
460名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 02:03:11 ID:Y6XRY/KQ
ゲーパロ氏程に多スレに渡って作品を投稿するエロ職人はなかなかいないのでは。
相変わらず氏のエロ素クールは1ランク上の面白さがありますね。GJ!
461名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 15:17:22 ID:FxLIxh/L
ゲーパロさんお疲れ様


ところで京都弁の素直クールって萌えないか?
462名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 15:39:53 ID:GXDlmo4R
すごく…萌えます…
463名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 17:39:16 ID:0INlscmR
京都・兵庫の田舎辺りに萌えるw(大阪・奈良はちとどぎつい)

あと、個人的な嗜好だと、広島弁や博多弁に萌える
しかしこれはツンデレ向きか…
464名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 22:06:05 ID:FxLIxh/L
>>463
舞-乙HIMEのシズル様みたいになるのかな…>京都弁素直クール
465名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 15:22:57 ID:OvpLwxvZ
方言ではないが、侍とか忍者とか公家みたいな、
時代物(もしくは現代だが古風な)素直クールと
言うのはどうだろう?
466いつぞやの356:2006/06/01(木) 00:26:03 ID:l30uTM5k
やっと書きあがったので投下してみるテスト。
正直、書けた時間に相応するものが出来たかどうか不安だけど…。
15レスぐらい。
4671/15:2006/06/01(木) 00:27:14 ID:l30uTM5k
「祐司。君に折り入って頼みがあるんだが」
「……なんだ?」
 いつもながらの唐突な頼みに、俺はちょっと身構える。

 コイツ…晶は一応、俺の彼女と言うことになっている。
 コイツの特徴は、一言で言えば『完璧』。二言で言えば『完璧超人』。
 そんな晶が、なにゆえ昨今のエロゲの主人公並にへたれで平凡な俺と付き合っているのかは、
 付き合い始めて1月たった今でも俺の中の七不思議の1番上にランキングされている。

「その……なんだ。私と子作りをしないか?」
 ぶはぁ。
4682/15:2006/06/01(木) 00:29:49 ID:l30uTM5k
「……お気に召さないか?」
 マテ。なぜそんな不機嫌そうな顔をする。
「い、いや。だって俺らまだ学生だし……そんないきなり言われても……」
「…ふむ。確かにそれもそうだな」
 焦る俺と冷静な晶。しかしとりあえず俺の貞操の危機は回避されたように見えた。
 しかし、1秒後に晶さんは素敵な笑顔でこういってくれたのです。
「じゃあ……将来に向けた予行練習、というのはどうだ?」
 ……いわゆる”明るい家族計画”を手に。

 ……そして気がつけば、目の前には晶の顔。
 俺は仰向けに転がっていて、晶がその上に覆いかぶさっている。
 晶の長い髪が俺の顔のすぐ近くまで垂れ下がっていて、とてもいい匂いがする。
 息が詰まる。自分の心臓が早鐘を打っているのが分かる。
 そのまましばしの時間が流れた。

「……済まない」
 そのままの体制で、晶が呟いた。
4693/15:2006/06/01(木) 00:31:26 ID:l30uTM5k
「え?」
「私は、君の望まないことをしてしまったようだ。……謝罪する」
「お、おい、待てよ! 俺は……」
 そこまで言ってはたと気がつく。
 俺はこれから、とんでもなく恥ずかしいことを口に出そうとしているのではないだろうか、と。

「…………」
 しかし、本当に済まなそうにこちらを見ている晶の姿を見て、続きを言わずにはいられなかった。
「……俺は、望んでなくなんかない。お前のこと……好きだから」

 あー……。言っちまった。言っちまったぞ、俺。
4704/15:2006/06/01(木) 00:33:20 ID:l30uTM5k
「ふふ、ふふふふふ……」
 顔から火を噴きそうな俺に対し、晶は満面の笑みだ。
「嬉しいぞ。私は本当に幸せ者だ。……君に愛されるというのは、こんなにも心地よいものなのだな」
 そのまま、俺の胸へと顔をうずめてくる。
「……んな恥ずかしいこと言わせないでくれよ……」
「却下だ。毎日でも言ってくれ。
 それに、私も君のことが大好きだ。好き同士なのだから、恥ずかしいことでもないだろう?」

 ……なぜコイツは、そんな恥ずかしい台詞を照れずに言ってのけることができるのだろう?

「……それに」
「それに?」
「君も、私を欲してくれているのが、たまらなく嬉しい」
 そういって、晶は俺の『動かぬ証拠』をそっとつかんだのだった。
4715/15:2006/06/01(木) 00:34:38 ID:l30uTM5k
「うぁっ……」
 晶からの誘惑(と思わしきもの)とさっきからの密着で、
 悲しいかなマイサンは立派に生理現象を起こしているのだった。
「……私の胸も触っていいぞ。君が望むなら、好きなだけ」
 小悪魔的な笑みを浮かべながら、晶の細い指がズボンの上から俺の性器を撫でてゆく。
「男は、女の胸が好きなんだろう? 私の胸でよければ、好きなだけ触ってくれ。
 ……いや、むしろ君に触れられたい」
 そういいながら、晶はいとおしげに俺の性器を撫で続ける。

「……いいのか?」 
「……ああ。滅茶苦茶に、してくれ」
4726/15:2006/06/01(木) 00:36:37 ID:l30uTM5k
「ひゃっ……」
 有無を言わさず、強引に抱きしめた。
「不意打ちとは卑怯だぞ。このっ」
 晶も、強く抱きついてくる。
 自然に2人の唇が1つになった。

 そのまま、手を晶の胸に這わせる。
「んぅっ!」
 小ぶりな胸だと思っていたが、晶の胸は予想以上に柔らかかった。
 吸い寄せられるように手が動き、貪るように揉みしだいていく。

「……や、やぁっ!!」

 晶の甲高い声に、ハッと我に返る。
「……あ、晶……。す、すまん」
「いや……謝ることはない……」
 顔を真っ赤に染めながら、荒くなった呼吸でそう告げる。
「嫌なわけじゃないんだ……だが、もう少し……やさしくしてくれると助かる」
「……こうか?」
 今度はそっと触れ、慈しむように優しく手を動かす。
「んっ……ぁ……あぁ。嬉しい……。
 もっと……身体中触ってくれ……。私の全てに、触れて欲しいんだ……」

「……服、脱がすぞ」
「ああ……裸にしてくれ。君の手で」
4737/15:2006/06/01(木) 00:37:58 ID:l30uTM5k
 それから、2人で裸になった。
 俺が晶を脱がせて、晶が俺を脱がせる。

 最後の一枚を脱がすときは、流石に緊張した。
 晶が軽く腰を浮かせてくれたのに合わせ、下着の横を持ち、静かに下ろしていく。
 薄い陰毛に覆われた、晶の性器を初めて見た俺は、思わず喉を鳴らしてしまった。

「私だけ見られるのは少し恥ずかしいな……。だから、君のも見せてくれ」
 晶が俺のトランクスに手をかける。
 立派に自己主張している(と思いたい)俺の分身が、晶の前に姿を見せる。
「これが……君なんだな。
 不思議だな、柄にもなくどきどきする。胸がはちきれそうだ」

 それからもう一度二人で抱き合った。
 直に重ねる肌の感触、たちこめる汗のにおい、全てがいとおしかった。
4748/15:2006/06/01(木) 00:39:18 ID:l30uTM5k
 あらためて晶に目を向けると、まず2つの膨らみ……乳房が目に飛び込んでくる。
 乳房の先端には可愛い突起が、まるで触れられるのを待っているかのように鎮座していた。
「あ、あの……いくら私でも、そこまで見つめられると恥ずかしいのだが」
 いつになく取り乱したような晶の姿に、ふと悪戯心がこみあげてくる。

 ……もし、この胸に思い切りキスしたらどうなるだろうか、と。
 思うより先に、唇を寄せていた。

「ひゃあんっ!?」
 赤ん坊のように乳首に貪りつき、美味しそうな乳首を吸い上げる。
「ゆ、祐司、なにをいきな……ぁっ、やぁっ、あ、ぁ、っ」
 右の乳首を味わいつくした後、今度は左の乳首の味見をする。
「だ、だ、あっ、だめっ、だって……っ、んんっ」
 ぴちゃぴちゃと水音が立つほどに、夢中になってなめ続けた。

「晶、可愛いよ」
「……じょ、冗談は、……くぅんっ!?」
「冗談なんかじゃないさ、晶がこんな可愛いなんて知らなかった」
「…………馬鹿」
 顔を真っ赤にしながら必死に言葉を紡ぎだす晶は、
 誰が何といおうと、間違いなく最高に可愛かった。
4759/15:2006/06/01(木) 00:40:44 ID:l30uTM5k
「あ……」
 そっとふれた花園は、既にとろりとした液体で存分すぎるほどに濡れていた。
「……君がスケベなせいだからな。その……私が、い、淫乱、などというわけではなくて……」
 そこまで言って、ふう、とひとつ息を吐く。
「まあでも……、スケベはお互い様か。ほら」
 晶の冷たい手が俺の息子に触れる。その途端、脳髄に電流が走った。
「うぅぁ……っ」
「……あ、痛かったか!? 済まない……」
「い、いや……」
 恐らくは赤く染まる俺の顔を見て、晶の表情が変わった。
「ふむ、どうだ? 気持ちいいのか?」
 晶の指がそっと俺の性器に伸びる。
「……ああ、気持ち、いい……」
 にやり。そんな擬音が聞こえた気がした。
「じゃあ、お返しをしてあげないといけないな。私だけと言うのは不公平だし……
 それになにより、私の手で君が気持ちよくなってくれるなら、こんな嬉しいことはないしね」
 そういって微笑む晶の笑顔が、どんなグラビアよりも官能的に見えた。
47610/15:2006/06/01(木) 00:42:10 ID:l30uTM5k
「えっと……こう、でいいのか?」
 恐る恐るといった感じで、晶の指が動き出す。
 別にエロい、という動きではないはずなのに、何故かその動きは俺を激しく興奮させた。
「うぅっ……」
「……っ、……そんなに、気持ち良かったのか?」
「あ、ああ……」
 どこか上の空で答える俺。うかつに気を抜けば暴発してしまいそうにすら感じた。

「……誓って言うが……」
 たどたどしく指を動かしながら、晶がぽつりとつぶやいた。
「な、なんだ?」
「こういうのは初めてだからな? 手馴れているとか思わないでくれ。
 私は……、君一筋なんだから」

 びくんっ

「……お、大きく……なった?」
「…………」

 ……神様。
 も、もう、限界です。
47711/15:2006/06/01(木) 00:43:10 ID:l30uTM5k
「あ、晶っ!!」
「きゃっ?!」
「お、俺、もう……」
 強引に晶を押し倒した。
 晶は目をぱちくりさせていたが、意を決したのか、

「……ああ、来てくれ」
 そう、言ってくれた。

「……いくぞ」
 慎重に、分身をあてがう。
「…………」
 緊張が欲求より先に来ていた。晶を傷つけてしまうことが怖かった。

「……大丈夫。私は君とひとつになりたいんだ。痛くたって構わないさ」
 でも、晶はあっさりと。俺の躊躇いを消してくれた。
 そこから先は、もう止まらなかった。
47812/15:2006/06/01(木) 00:43:58 ID:l30uTM5k
「っぁあああっ!」
 締め付けるような抵抗感と、晶の悲鳴。
 それに抗い、奥へと進んでいく。
 晶の秘所からは、赤い鮮血が一筋流れていた。
「……ぁ、……はぁっ、はぁっ……」
「だ……大丈夫か……?」
「あ……あぁ……」
 晶の腕が、頼りなさげに俺の肩に触れる。
「すまない……少しの間、抱きしめていてくれ……」
「ああ」
 抱きしめて、華奢で繊細な首筋をそっと撫で、柔らかな頬に口付けした。
「はぁ…………」
 晶の口から夢見ごちな吐息が漏れるのが嬉しくて、欲するままに晶を抱きしめる。
 髪に触れ、頬に触れ、首筋、晶の全てに触れていく。
 その度に、晶が俺を好きでいてくれることに、たまらない嬉しさを感じた。
47913/15:2006/06/01(木) 00:44:56 ID:l30uTM5k
「……もう、大丈夫だ。動いてくれ……」
 そういった晶の呼吸は、まだ少し乱れていた。それでももう、俺は止まれそうになかった。
 晶の想いを受け止めたかったから。それになにより、たまらなく晶が愛しかったから。

 ゆっくりと腰を揺らし、晶の中をかき回す。
「晶……。すごく、あったかい……」
 むしろそれは、あったかいと言うより熱くて。
「ふぁあっ、あぁっ……君のも……凄く熱い……」
 何も考えられないまま、ひたすらに晶を貪る。

「祐司、祐司……はあぁっ!!」
 晶がねだるように軽く腰をくねらせる、それだけで脳を駆け抜ける刺激が倍加する。

「晶、晶……」
「ああっ、いぃ、すごぃ、あっ、ああっ……」

 俺が腰を突き上げるたびに、晶が艶やかに揺れ、それが俺をますます興奮させる。

「ゆ、ゆうじぃ、ゆうじぃ、ゆうじいいぃぃっ!!」

 晶の声だけが頭の中に幾重にも響いていくなかで、晶の手が伸びてきて、俺の身体をぎゅっと掴む。
 柔らかい肌が、胸が、太腿が身体全身を包む。


 そして、あっけなく、限界が訪れた。
48014/15:2006/06/01(木) 00:45:57 ID:l30uTM5k
「はぁ…………」
 夢見るような声の晶が、俺の傍で満足そうに横たわっている。
 俺はと言うと、事を成し遂げた達成感と、心地よく気だるい疲労感の中で、
 それでもはっきりと幸せに包まれていた。

「……ありがとう、祐司。私は本当に幸せ者だ」
「礼なんていいよ。その……俺も嬉しかったし」
「祐司は、気持ちよかったか?」
 ……晶が突然猫のような笑みを見せた。
「な、なにを……」
「……そうか。私の貧相な身体など美食家の祐司には食指が動かないか。ああ残念だ、全く残念だ」
 今度は一転、おどけたようにいじけてみせる。
「な、まて、その……」
「なんだい?」

 …………。
 ややあって、返事の代わりに、唇をふさいだ。
48115/15:2006/06/01(木) 00:46:50 ID:l30uTM5k
「……ふふ。君は照れ屋だな。まあ、そこも可愛いんだがな」
 頭を撫でられた。完全に晶のペースだ。
 ……そのことを悔しいと思わなくなってきているあたり、かなり重症なのだろうが……。

「これからは毎日、こんな幸せな気持ちになれるんだな。……ふふ。笑みが止まらない。これも君のせいだな」
 ……え、今なんて……『毎日』?
「期待しているぞ、祐司」
 晶の顔は、幸せそのものだったわけで。

 ……体力がもつのだろうか、と思いつつ。それでも。

「……キャンセルは効かないからな?」
「ああ、無論だ」

 ぎゅっと晶を抱きしめた。
 後悔なんて微塵もない。
 気がつけば、自分も笑みが止まらなかった。

「ふつつかな女だが、よろしく頼むぞ」
「……おう、任せとけ」
482あとがきかもしれない:2006/06/01(木) 00:49:13 ID:l30uTM5k
…というか、そもそもこれは『素直クール』なのだろうか。

とりあえず、書きたいものを書いてみたらこうなった、ということで。
「素直クール」と「素直バカ」のカップルって相性よさそうだな、とかそんな感じで。
483名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 01:20:27 ID:7LHVqn7B
はげ上がるほどにGJ
484名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 01:58:13 ID:C927jcxY
はげ上がってるけどGJ!
485名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 02:54:55 ID:BB6c69DV
GJ!
むしろ素直馬鹿でないと素クールのノリについていくのは困難かと(;゚∀゚)=3
486名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 18:47:03 ID:MUO8cfZh
燃え尽きるほどGJッ!!
487名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 20:24:46 ID:1xzmt1zO
mage上がる程GJだぜ
488名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 23:30:18 ID:31g9zeqp
よく解らないものが上がるほどGJ
489名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 01:08:24 ID:CUWG3FXn
スレageるほどGJ
490wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/06(火) 05:58:22 ID:O9yVIjgt
さくっと投下してみます。とりあえず前編7分割
---------------------------------
 梓緒がやってきたのは昼休みだった。
 購買から伸びる長い混雑を書き分けて梓緒は姿を現す。食堂の入り口でわ
ずかに首を振っただけで俺を見つけて彼女は接近してきた。
 相変わらず人気が有る梓緒は何組もの女の子たちに挨拶を受ける。涼しげ
な美貌とすらりとした姿態はもちろん男子の人気もそれなりにあるのだが、
あまりにも直裁な言動で『引く』やつらも少なくないらしい。
 そこへ行くと、梓緒のさっぱりした物言いは、上級生にはもの珍しい野良
猫のようにかわいがられて、下級生には凛々しいお姉さまと慕われるという
具合だ。『引く』やつらも少なくないとはいえ、これでなかなかの美人。男
子生徒俺もやっかみを受けているのだが、知ったことか。梓緒のことではこ
れでも苦労をしているのだ。
「司、探したぞ」
 梓緒は俺の近くまでたどり着くと声をかける。梓緒はいつもこの調子だっ
た。いつでも直球というか、直球過ぎると云うか、言葉を飾るとか、呼吸を
読むとか、そういう機能がついていないのだ。

「おう。もう飯は食ったのか? 座れば?」
 そんな梓緒と付き合ってもう半年。ずいぶん振り回されはしたものの、俺
も多少は慣れてきた。こいつのこんな言い方は別に悪気はないのだ。
 だから俺は落ち着いて梓緒に椅子を勧める。
 俺の前には授業を一足早く抜け出して購入したカツ丼と惣菜パン。午前中
は何かと忙しかった。健康な高校生としてはこれくらい食べないとやってら
れない。
「司、聞いてくれ」
 梓緒は椅子にも座らずに俺の近くで直立したまま話し始める。顔は微妙に
思いつめた表情。俺はなんとなく嫌な予感がした。前回こいつがこんな顔で
話し始めた時のことを思い出したのだ。
491wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/06(火) 05:59:05 ID:O9yVIjgt
「ちょっと待て、落ち着」
「いや、落ち着けない。一大事だ」
 梓緒は俺の手からカツ丼を取り上げてテーブルに戻す。是が非でも話を聞
けということだろう。
 梓緒は切りそろえられた艶やかな黒髪をかきあげて、思いつめたような表
情をしている。話だけでも聞いてやらなければ済みそうにはない。
 俺はあきらめて紙パックの紅茶を一口飲んで梓緒を見上げた。目線で「そ
れで?」というように促す。

「実は折り入ってお願いがあるのだ」
「うん?」
「私は是非『いちゃいちゃ』というのがしてみたい」
 梓緒は声を潜めることもなく言い切った。
 言い切りやがった。
 周囲の物音が波打ち際の波のように引き視線が一気に集まるのを感じる。
「……あのぉ」
「司は知っているか? 恋人というのは『いちゃいちゃ』をするらしいのだ。
むしろそれが恋人の通常状態であり、それがないのは何らかの機能に重大な
障害が有る可能性があるのだとか」
――いや障害があるのはお前だよ。
 俺はそう突っ込みそうになったのだが、梓緒の真剣な眼差しと、何より周
囲の視線および聞き耳がそれを許さなかった。
「私としては司とこの春、肌を重ね、契ったのは慶事であった」
「ちょっ、お前っ、何をっ」
 梓緒は突然とんでもないことを口走り始めた。最近はこんなトラブルはめ
っきり少なくなっていたので、すっかり油断していた俺は初期動作が遅れて
しまった。必死に言葉の先を止めようと腰を浮かしかけた俺などお構いなし
に梓緒は続ける。
492wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/06(火) 06:00:02 ID:O9yVIjgt
「司に抱擁されて子種を注ぎ込まれたときの安心感と幸福感は私の人生でも
特筆に価する」
「だ、黙れーっ」
 必死に手を振って言葉をごまかそうとするが梓緒は気に留める様子すらな
い。
「これで私も一人前の司の恋人になれたのかと思うと感無量だったのだが。
どうも周囲と話が食い違う。どうも世間で言う恋人は『いちゃいちゃ』とい
うものを交換しあっているらしいのだ」
「お、お前というヤツは」
「司っ」
 梓緒は俺の両肩に手を置いた。濡れた黒曜石のような瞳で懇願するように
俺をじっと覗き込む。
「一生のお願いだ。『いちゃいちゃ』というのをしてくれないか」
「……あ、う」
 混乱して返事につまる俺を梓緒は生真面目で思いつめた表情で見つめてく
る。梓緒には絶対にいえないけれど、俺はこの表情に弱い。というか、やっ
ぱり梓緒そのものに弱いのだと思う。
「頼む、司。是非ともだ」
 結局、梓緒の『お願い』に屈してしまった。
 その日の午後は散々だった。
 クラスメイトにも苛められ、生徒会の先輩にも虐げられた。
 一体俺が何をしたというんだ。
493wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/06(火) 06:01:37 ID:O9yVIjgt
「で、司」
 そんなわけで数日後。
 計画を実行に移すべく俺は梓緒を自宅に招いた。
 急かす梓緒をなだめるのに苦労をしたのだが、俺としては衆人環視の中で
『いちゃいちゃ』をする気はしなかったのだ。
 別に日本男児を気取るつもりはないが、さすがに恥ずかしい。もちろん、
恥ずかしい以上に俺だって自分の身が可愛い。これ以上梓緒のファンに狙わ
れるのは避けたい。
「早速してくれるのか? 『いちゃいちゃ』を」
 梓緒は凛々しい表情に、期待を僅かににじませてたずねてくる。
 一回家に帰って着替えてきたのだろう。スリムのジーンズと裾の長い純白
のドレスシャツといういでたち。長い黒髪がアクセサリなどを付けない梓緒
のすっきりした姿に似合っている。
「うん、ああ。まぁ、その前に」
 俺は大きめの机の前の椅子に腰をかける。キャスターつきの俺の指定席を
くるりと回して、梓緒にはそこらに腰をかけるように勧める。
「いくつか確認したいことがあるんだが」
「何だ?」
 梓緒は素直にベッドの端に腰をかける。
 日を置いて多少は冷静になったのか、今日これから『いちゃいちゃ』する
ので焦ってはいないのかは判らなかったが、この間よりはこちらの話に耳を
傾けてくれるようだ。
「……うーん。ところで、梓緒は『いちゃいちゃ』ってどういうことだか判
っているのか?」
「いや、わからない」
 梓緒の即答に俺は思わず椅子から落ちそうになる。
494wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/06(火) 06:03:29 ID:O9yVIjgt
「判らないのに欲しいのかよ」
「うむ。確かに判らないのだが、良いものだと聞いている」
 梓緒はまじめな顔で頷く。
「誰からだよ」
「良子先生と和美と奈々から」
 悪乗りで有名な養護教師と梓緒の友人の名前だ。そういえば和美は最近彼
氏が出来たのだとか。誰かまでは気にもしてなかったが。梓緒に何を吹き込
みやがったんだ。あのやろう。
「話によると、なんだかとっても素晴らしいらしい。契るのに勝るとも劣ら
ないというか、むしろ契るよりも日常的に交歓されるものであるという」
 まぁ。そりゃそうだろう。俺たちの年頃だと人目を避けるのもなかなか大
変だ。俺だって今日、自宅が無人じゃなかったらもうちょっと梓緒を待たせ
ることになったと思う。
 それにしても、いい若い娘が『契る、契る』と連呼するのも。なぁ。……
こっちが赤面しそうだ。

「高校生くらいの恋人関係の場合『いちゃいちゃ』が十分に供給されるとバ
カップルというものになれるそうだ」
 梓緒はなんだか憧れの視線で続ける。
 あー。なれちゃいますね。そういうこともありますね。
「認定試験や制度については詳しいことは聞かなかったが、『いちゃいちゃ』
は若い恋人同士の醍醐味であるそうなのだ」
 聞かなくていいよ。誰だよ。こんなことを教え込んだのは。

「あー。大体判った」
「判ってくれたか」
 梓緒の表情がぱぁっと明るくなる。そんな顔をするといつもは多少不機嫌
に見えるほど凛々しい梓緒が、とたんに可愛らしくなる。そんな顔を見れる
数少ない人間が自分だと思うと、俺は頬がほころぶのを感じる。
 いかんいかん。これじゃ梓緒になめられてしまう。
495wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/06(火) 06:05:00 ID:O9yVIjgt
「うーん」
「どうした? 何か問題があるのか?」
 梓緒が問いかけてくる。
「いや、問題というほどじゃない。一口に『いちゃいちゃ』といっても色々
種類があるんだよ」
 俺は答える。結局梓緒は良くわかってないわけだし、手ごろなところで―
―たとえばおでこにキスとかで――ごまかすことは出来るだろう。とはいえ、
それでいいのか? と考えると微妙だ。
 第一、それでは梓緒が『いちゃいちゃ』に何故こんなに積極的なのか判ら
ない。
 それに、俺だって――そりゃ少しくらいは、なんだ。
 梓緒とくっつきたい。
 高校生の男子なんだぞ。
 当たり前だ。

「そうか。種類があるのか」
 俺の考えをよそに梓緒は納得したように頷いている。
「それでは『おなかだっこ』をお願いしたいのだ」
「ぇうっ!? 『おなかだっこ』?」
 どうしたものかと悩んでいた俺は、また機先を制されてしまった。
「お前、それもやっぱり……」
「うむ。これは奈々から聞いたのだ」
「そうか、やっぱりな。――あれ? 奈々ちゃんって彼氏いたっけ?」
「いや、奈々は兄上にしてもらうのだとか」
「ああ。そっか、兄ねー」
 兄ね。奈々ちゃんも高校一年にしては小さいしね。兄かー。
「いや、おい待て待て待て待て待て待て」
 待て。
 それはいくらなんでもいろんな意味で倫理上まずいのではないか?
 いやしかし、まずくない『おなかだっこ』かもしれない。肉親だし。
 ……背が低くて胸が小さいとはいえ高一の妹を『おなかだっこ』して倫
理上まずくない兄がいるのか?
 しかも『いちゃいちゃ』なんだぞ? それってなんだかとってもあれじゃ
ないか。
496wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/06(火) 06:06:47 ID:O9yVIjgt
「何を待つのだ」
 ちょっと不機嫌になった梓緒が口をへの字にする。
「いや、すまん。はるか彼方に思いを馳せてしまった」
 俺は奈々ちゃんのことはいったん脳裏から締め出した。今は梓緒のことの
ほうが大事なのだ。さようなら奈々ちゃん。このことは聞かなかったことに
しておきます。
「うむ。で、『おなかだっこ』をお願いしていいか?」
「あ、ああ」
 まぁ、それはそれで好都合だ。
 俺は冷房の温度を下げた。この季節だ。24度の設定温度は肌寒さも感じさ
せるだろう。週末の放課後作業をこなして一回家に帰っての集合だったから、
そろそろ日も暮れてきている。
 そういう意味では、梓緒に触れるには理想的な状況だといえた。
「えっと……」
 俺は少し緊張してかすれた声で、梓緒に指示をする。ベッドの上にいくつ
かクッションを投げて、俺は背中を壁に預けて体育すわり。その広げた足の
中心をぽんぽんと叩いて、梓緒に合図。
「ここに座る、のか?」
 梓緒はベッドの上をのそのそと猫の姿勢で近づいてくる。
 好奇心たっぷりの素直さで、俺の両膝の間に腰を下ろした梓緒はきちんと
背筋を伸ばしたまま「それでどうするんだ?」などと聞いてくる。
「もうちょっと、こう」
 俺は梓緒の両肩をつかんで後ろに引いた。梓緒の黒髪がふわりと甘い香り
を立てる。ちょっと緊張した梓緒の背中が腕の中に寄りかかってくる。俺よ
りは低いとはいえ、梓緒は女子の中では長身だ。
 だから、俺の顎の下にすっぽりとはまるということはなかったけれど、俺
の左肩の辺りに梓緒の頭部があるのはむず痒いような嬉しさがあった。
「重くないか? 寄りかかっていいのか?」
 梓緒は気づかわしげに尋ねてくる。
「いいんだよ、もっと寄りかかっても。『いちゃいちゃ』ってのは、多少時
間がかかるんだ。DVDでも見てようぜ」
 俺は梓緒を抱きかかえるように贅肉のないすっきりしたおなかに腕を回し
た。
497wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/06(火) 06:09:03 ID:O9yVIjgt
以上っ。後編は一両日中に……えっと、あげてよければ。
「素直クールで僅かに受け」とか微妙なラインの需要があればなんですが。
498名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 09:34:33 ID:FjIJqgmw
燃え上がりつつGJ

需要?あるに決まってますがな。
499名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 13:24:46 ID:2ok3aJBT
「いちゃいちゃ」の続きが気になる〜

うp待ってますよ。待ってますってば。
500名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 14:06:38 ID:Xwfa1o3y
需要大有りですよダンナっ!
501名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 14:12:36 ID:qyU97wt2
ホントにすまんが最初だけヒロインの名前にルビふってくれ
502名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 14:52:53 ID:bpnW1GwC
刻むぞッ!生命のGJッ!!
バイトのあとが楽しみだわ(*´Д`*)
503名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 01:34:13 ID:aqw+NNnj
なんというか、久しぶりに素直クールらしい素直クールを読んだ気がする。
GJ!
504wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:13:20 ID:o8DDQbHZ
需要があるみたいで良かった。さくっと投下。中編11分割。
うわっ。おわんなかった、ごめんなさい。
---------------------------------
「で、司」
 そんなわけで数日後。
 計画を実行に移すべく俺は梓緒を自宅に招いた。
 急かす梓緒をなだめるのに苦労をしたのだが、俺としては衆人環視の中で
『いちゃいちゃ』をする気はしなかったのだ。
 別に日本男児を気取るつもりはないが、さすがに恥ずかしい。もちろん、
恥ずかしい以上に俺だって自分の身が可愛い。これ以上梓緒のファンに狙わ
れるのは避けたい。
「早速してくれるのか? 『いちゃいちゃ』を」
 梓緒は凛々しい表情に、期待を僅かににじませてたずねてくる。
 一回家に帰って着替えてきたのだろう。スリムのジーンズと裾の長い純白
のドレスシャツといういでたち。長い黒髪がアクセサリなどを付けない梓緒
のすっきりした姿に似合っている。
「うん、ああ。まぁ、その前に」
 俺は大きめの机の前の椅子に腰をかける。キャスターつきの俺の指定席を
くるりと回して、梓緒にはそこらに腰をかけるように勧める。
「いくつか確認したいことがあるんだが」
「何だ?」
 梓緒は素直にベッドの端に腰をかける。
 日を置いて多少は冷静になったのか、今日これから『いちゃいちゃ』する
ので焦ってはいないのかは判らなかったが、この間よりはこちらの話に耳を
傾けてくれるようだ。
「……うーん。ところで、梓緒は『いちゃいちゃ』ってどういうことだか判
っているのか?」
「いや、わからない」
 梓緒の即答に俺は思わず椅子から落ちそうになる。
505wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:13:56 ID:o8DDQbHZ
「判らないのに欲しいのかよ」
「うむ。確かに判らないのだが、良いものだと聞いている」
 梓緒はまじめな顔で頷く。
「誰からだよ」
「良子先生と和美と奈々から」
 悪乗りで有名な養護教師と梓緒の友人の名前だ。そういえば和美は最近彼
氏が出来たのだとか。誰かまでは気にもしてなかったが。梓緒に何を吹き込
みやがったんだ。あのやろう。
「話によると、なんだかとっても素晴らしいらしい。契るのに勝るとも劣ら
ないというか、むしろ契るよりも日常的に交歓されるものであるという」
 まぁ。そりゃそうだろう。俺たちの年頃だと人目を避けるのもなかなか大
変だ。俺だって今日、自宅が無人じゃなかったらもうちょっと梓緒を待たせ
ることになったと思う。
 それにしても、いい若い娘が『契る、契る』と連呼するのも。なぁ。……
こっちが赤面しそうだ。

「高校生くらいの恋人関係の場合『いちゃいちゃ』が十分に供給されるとバ
カップルというものになれるそうだ」
 梓緒はなんだか憧れの視線で続ける。
 あー。なれちゃいますね。そういうこともありますね。
「認定試験や制度については詳しいことは聞かなかったが、『いちゃいちゃ』
は若い恋人同士の醍醐味であるそうなのだ」
 聞かなくていいよ。誰だよ。こんなことを教え込んだのは。

「あー。大体判った」
「判ってくれたか」
 梓緒の表情がぱぁっと明るくなる。そんな顔をするといつもは多少不機嫌
に見えるほど凛々しい梓緒が、とたんに可愛らしくなる。そんな顔を見れる
数少ない人間が自分だと思うと、俺は頬がほころぶのを感じる。
 いかんいかん。これじゃ梓緒になめられてしまう。
506wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:15:55 ID:o8DDQbHZ
うわぁ。ごめんなさい。ミスUp><
次からです。orz
507wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:16:48 ID:o8DDQbHZ
需要があるみたいで良かった。さくっと投下。中編9分割。
うわっ。おわんなかった、ごめんなさい。
---------------------------------
 DVDは十年ほど前の洋画だった。歴史に残るような名作ではなかったし、
子供だましだなんて評判もあったけれど、俺はこの映画が気に入っていて
廉価版で買ったのだ。梓緒(しお)と一緒に見たこともある。最も今日の目
的はDVDを見ることじゃないから問題はなかった。
 はじめは金色だった窓の外が、やがて朱く、そして紫から群青へと変わ
ってゆく。
 俺は梓緒を後ろから抱きかかえるように『おなかだっこ』していた。
 はじめは緊張していた梓緒も、三十分もするとやっと少しは落ち着いた
みたいだ。それでもどこか借りてきた猫のように礼儀正しさを崩さないの
が、梓緒らしいといえば、梓緒らしかった。

「司」
「なんだ?」
 梓緒が俺に体重を預けすぎないように気をつけながら振り返るようにた
ずねる。
「これが『いちゃいちゃ』なのか?」
「ああ。そうだな。正確に言えばその一部だな」
「そうか……」
 梓緒が少しだけ口を尖らせるように画面に視線を戻す。
「どうしたんだ? 気に入らないのか?」
 体重を預けきらない梓緒がもどかしくて、俺は何度目になるかわからな
いが梓緒を抱き寄せる。
「いや、そうじゃない。むしろ、暖かくて気持ちいいのだが」
 俺の掌は梓緒のほっそりしたおなかの上で重ねられている。贅肉のない
すっきりした梓緒のウェストはこうやって抱きしめてみると思ったより細
くて、こんな中に俺のと同じ内臓が入ってるのかと思うと不思議な気がし
た。
508wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:17:51 ID:o8DDQbHZ
 白い薄手のシャツの上からでも、触ったときの肌触りがすべすべしてい
て、それでいて柔らかくて体温がある。生きている人間なのだから当たり
前なのだが、とくとくと鼓動まで感じられるような抱きしめ方をしている
と、ぞくぞくするような興奮があった。
 もっとも、そんなことを態度に出せない俺はこうやって梓緒となんでも
ないように会話をしている。

「なら、いいじゃないか」
「いや、しかし。なんだか、これは想像していたものと違うぞ。むしろ子
ども扱いの類ではないのか? 私がして欲しいのは『いちゃいちゃ』であ
って幼児をあやすよっ」
 梓緒の体が突然きゅんっとしなり言葉が途切れる。抑えたような吐息が
可愛らしくて、つい深く抱き寄せたくなる。
「司っ! なんでくすぐるのだっ」
 梓緒の戸惑ったような憤慨したような声。
 俺はそれには取り合わないで、広げた掌を梓緒のおなかの上でゆっくり
と丸く動かす。その暖かさにするりと力が抜ける梓緒。
 冷房が効きすぎた肌寒く薄暗い部屋の中で、掌と背中で体温を伝え合う。
「つかさっぅう」
 梓緒が重ねて抗議の声を上げるタイミングを見越して、指先を梓緒のお
へそのふちに引っ掛けてやる。ふるん、梓緒の肌が震える。
 漣のようなその震えを追いかけて、指先を脇腹まで彷徨わせる。
 丁寧に梓緒のくすぐったさを拾い上げる。
 あんまり苛めてはいけないのだろうが、梓緒の声が聞きたくて何度も繰
り返す。
509wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:18:59 ID:o8DDQbHZ
「なんで、そんなことっ」
 梓緒はようやく俺の手首を捕らえると困惑したようなかすれ声で尋ねる。
「キライか? これ」
 指先で梓緒のおへその輪郭を辿る。
 そのわずかな動きにも、梓緒は怯えるように首筋に力を入れて震えて耐
えている。
「いや、キライではないんだが。それは、なんだ。……苛めか? 苛めな
んだな!? 司」
 梓緒はいたずらをする俺の手首をがっしりとつかんで、上半身を後ろの
俺にねじり向けて噛み付いてくる。柳眉を逆立てるというほどではないの
でが、そうやって口をへの字に結んだ梓緒が、夕暮れ最後の藍色の明かり
の中で拗ねているのはたまらなく可愛かった。
「いや、違う。これが『いちゃいちゃ』だよ」
「むっ。司。私が『いちゃいちゃ』初心者だからといって騙そうとしてい
るだろう」
「そんなことはないよ」
 話し合いの間も俺はまるで掌にたまった熱で司を説得するように、可愛
らしいお腹にふれている。こうやって抱きしめて体温を感じているのが、
まるで梓緒はここにいて、ちゃんと付き合っている証拠みたいで俺は無性
に嬉しかった。
510wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:20:02 ID:o8DDQbHZ
 この喜びにくらべれば、梓緒から言いがかりの文句をつけられるくらい
はなんでもなかった。
 実際、俺は梓緒にこうやって抗議されるのが嬉しかったのだ。
「そんなことを言ってまた私を騙そうとしているだろう。前回だってそう
だ。練馬大根は堤財閥の遺伝子組み換え工場でプレス生産されてるって騙
したではないか」
「それはお前、騙されるほうが悪いだろう」
 他愛のないやり取り。司は本気で憤慨しているみたいだけど、俺はそれ
を強引に打ち切る。
「ああ、判った判った。ただお前は自分でも云ってる通り『いちゃいちゃ』
初心者なんだぞ?」
「うむ」
 梓緒は納得がいかなさそうに俺を上目遣いで見上げている。
「じゃぁ、せめてDVDが終わるまで、俺の『いちゃいちゃ』教育を受けてお
け。どうせあと1時間くらいなんだから。それで納得がいかなかったらいく
らでも説明してやるから」
「了解した」
 やはりどこか納得がいかない様子で画面に視線を戻す梓緒。
 俺はその様子が面白くて小さく笑いながら梓緒を思いっきり抱きしめた。
511wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:22:11 ID:o8DDQbHZ
 画面の中では登場人物の喜びと悲しみが繰り広げられていたが、梓緒の意
識はそちらには向いてないようだった。
 了解した、なんて言ったけれど緊張していた梓緒の滑らかな腹部をゆっく
り説得するように撫でる。何とか抵抗しようと身を硬くしかける梓緒のお尻
を少し前にずらす。それだけで、不安定な姿勢になった梓緒は後ろに体重を
かけざるを得なくなるのだ。身を預けてきた梓緒の髪を安心させるように触
れて、優しく抱きかかえる。
 低めに設定した冷房が部屋を満たしている。
 肌寒そうに震える梓緒の体を一ヶ所ずつ触れていく。

 滑らかな頬に。
 きゃしゃな肩に。
 濡れたように艶やかな髪に。
 自分を抱きしめているような腕に。

 触れ合っている梓緒の背中が温かい。その背中の体温が、梓緒の緊張を溶
かしていくのがわかる。
 梓緒が体重を預けて油断するのを待って、梓緒がくすぐったがる場所を探
してなぞりあげる。俺にとってはそれは楽しい探検作業だった。
 指先の戯れを何度繰り返しても梓緒ははっとして身体を緊張させる。何か
に戸惑っているような怯えているような反応だった。ちょっとだけ良心が痛
む。だから余計に抱きしめたくなる。

 梓緒の体育座りにした膝にふれる。ひんやりしたジーンズの丸い膝小僧に
温かい掌をかぶせて、するりと撫でる。梓緒が吐息を噛み締める。ずいぶん
くすぐったいらしい。
 俺は左手で梓緒のお腹を暖めながら、右手で何回も膝をくすぐる。梓緒は
何回も力を入れて身をくねらせようとするけれど、俺は力点をずらして梓緒
の体重を受け止め続ける。
512wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:23:29 ID:o8DDQbHZ
 ……やばい。
 俺ってこんな趣味があったのか。
 なんだかすごく楽しい。
 梓緒も強情な娘だから、浅い呼吸を必死に整えようとがんばる。俺は余裕
を持ってそれを待ってやる。しかし、呼吸を整え終わるか終わらないところ
で、梓緒の二の腕を指先で撫でる。梓緒の呼吸が一瞬止まって、首筋がぎゅ
っとちじまるのが判る。
 まるで溺れている人間に一回だけ呼吸をさせて、また水中へと引きずりこ
むような行為に俺はかなりどきどきしていた。自分でも知らなかった。俺っ
て実は苛める側だったんだ。

「司っ」
 何かを堪えているような梓緒の声。
「なに?」
「これって、ちゃんと『いちゃいちゃ』なのか?」
 浅い呼吸を必死に押さえつけるようにたずねる梓緒の声がかすれ始めてい
る。
「もちろん。かなり本物『いちゃいちゃ』だ」
「そうなのか……。知らなかった」
 話しながらもそろそろと体重を逃がそうとする梓緒をまた背中のほうに引
き戻す。猫にするように梓緒の顎の下をくすぐって、おなかに抱えた手で柔
らかく受け止める。
「うぅっ……」
「梓緒。どんな感じ?」
「どんな感じと聞かれても」
 梓緒は困ったような声を出す。
「感想だよ」
 その声が嬉しくて、重ねてたずねてしまう。
「暖かくてくすぐったい」
 梓緒はすねたような声で答えた。俺はその答えの続きを促すように、梓緒
のわき腹を軽く優しく掻く。梓緒が弱いのを承知で、何回も繰り返す。
513wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:26:13 ID:o8DDQbHZ
「ううっ。卑怯者っ」
「だって続きが聞きたいし」
「ううう。このお返しはきっと、ひゃんっ! くすぐったくて、力が抜ける。
――背中からも、手のひらからも力が吸い取られるみたいで、膝に力が入ら
ない。ふわふわして、電池が切れたような気分だ」
「そうか? まだまだ緊張して力が入ってるみたいだぞ」
「そんなことはない」
「いや、嘘だね。ほら、また逃げようとしている」
 梓緒を引き戻して、今度は両手で大きく包み込むように抱く。梓緒の小さ
な頭部を左肩に乗せるように抱きかかえる。
「逃げていたわけではないのだ。これは、その。……だいたい人様に体重を
預けて自堕落な姿を晒すなどという不躾は良くない」
 梓緒の抗議の声。この期に及んで「人様」だなんていう他人行儀が梓緒ら
しい。梓緒らしいけれどやっぱり俺にはちょっとカチンと来た。
「ふぅん。……とはいえ、『いちゃいちゃ』のコツもそこなんだ。もっと体
重を預けて身体の力をぬいてくれないと」
 ゆっくりと体勢を整えながら、そんな言葉を返してやる。案の定、梓緒は
さらに固辞するような言葉を並べ始める。
「いや、いくら恋人の仲でも、そんな放埓な。油断した姿を晒しては私が司
に嫌わっ、ひゃぅっ!?」
 梓緒の耳たぶに軽く歯を立てる。想像していたとおりそこは梓緒の弱点の
中でも最大級だったらしい。釣り上げた鮎のように反り返った梓緒は俺の腕
の中から跳ねだしそうなほど身をくねらせる。
 その柔らかくて滑らかな身体を抱きしめて、二度、三度と唇で耳たぶの形
をなぞる。
「ひゃっ。――ぅぁっ! ――ダメだっ。司、それっ、ダメっ」
 梓緒の甘い抵抗の声を聞きながら、何度か繰り返した俺は開放してやる。
危ない、危ない。だめだ、これはなんだか楽しすぎる。どきどきして、止め
られなくなりそうだ。
514wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:32:53 ID:o8DDQbHZ
「司、ひどいぞ」
 梓緒がいつもの不機嫌なほどに見えるほど凛々しい生真面目な表情を取り
繕って俺をなじる。だけど、その頬は桜色に染まって、大きく上下する胸元
が鼓動の激しさを物語っていた。
「もう一回していい?」
「ダメだっ」
 俺もポーカーフェイスを保とうとしていたのだが、密かな楽しみの表情が
ばれたらしい。すかさず拒否されてしまった。
「じゃぁ、こっちね」
 俺は梓緒の身体ごと、深く背中を壁に倒す。梓緒が不躾だ、礼節だとうめ
くのを無視して、しっかりと抱きしめる。
「さっきも言ったけど、これが『いちゃいちゃ』のポイントなんだよ。ほら、
俺のほうに頭を預けて、そのまま身体の力を抜いて」
「そんなこと、私はしないぞ」
 拗ねたようにそっぽを向く梓緒の耳たぶに、軽く指先を触れさせる。その
体温の伝達だけで先ほどの感覚を思い出した梓緒の首筋にぎゅっと力が入る
のが判る。
「力を抜いて身体預けてくれないと、もう一回『はむはむ』するぞ」
「……くっ」
 梓緒は観念したのか、おずおずと俺に身をもたせかける。
 腕の中で梓緒の身体がゆるりとほどける。

 たったそれだけのなんでもないことなのに、俺はなんだかとてつもなく犯
罪的なことをしてるかのようにどきどきしてしまった。駆け出しそうな呼吸
を抑えて、梓緒にふれる。

「司ぁ」
「どうした?」
 ゆるゆるとかき回すように触っている司が、必死に力を抜こうとしている。
投げ出された足に時折僅かに痙攣するような震えが走る。
「おかしい。なんだか、いてもたってもいられない感じがする」
 生真面目そうな口調の梓緒が不安そうに尋ねる。
「不快か?」
 俺は指先を立てるようにして、梓緒の首筋を触れ、辿る。
515名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 03:44:05 ID:GZ40XgXl
支援?
516wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:49:46 ID:o8DDQbHZ
「不快じゃない。違うけれど、なんだか、怖い。高いところにたって落下し
そうな感じなのに、眠りにつく直前みたいなふわふわした、恥ずかしい気持
ちよさがあるんだ」
 浅い呼吸、湿った吐息で梓緒は続ける。
「そうか」
 俺は安心させるように梓緒と視線を合わせて、小さく微笑んでやる。
「梓緒?」
 梓緒はいつものはっきりした声で応える。多分、本人はいつもどおり、冷
静で直裁な自分のつもりでいるんだろう。自分の想いをまっすぐに言葉に乗
せて、礼儀正しく、いつも凛々しい梓緒のつもりで。そんな梓緒がとても可
愛かった。
「ん?」
 梓緒の瞳は――。
「梓緒、とろとろの表情してる」
 口をへの字に無理やり結んだまま、頬を染めて、潤んだ瞳をして俺を見上
げていた。
「なっ、なにをっひゃっ!?」
 その言葉に抵抗しようとして一気に硬直して身を起こしかける梓緒の耳た
ぶに軽いキス。ひんやりとした梓緒のみみに歯を立てて、甘噛みする。
「やっ、ダメだっ。司ぁ。それはダメだってばっ」
 大げさなほど硬直して、振りほどくことも出来ないほど力なく痙攣する梓
緒の耳に何回もキスを繰り返す。
「だぁめ。力抜かないと、ここを『はむはむ』するって云っただろう」
「無理だっ。それ、卑怯だ。司ぁ、これじゃ……っ! ちからぁぬけないっ」
 抗うように跳ねる梓緒の身体を覚えこむように俺の手が撫でる。
 滑らかなわき腹も、すらりとした腰も、征服のときよりも少し大きく見え
る胸も、全部梓緒だった。触っているだけで、梓緒を愛しく思う気持ちがあ
ふれてくる。
「ちゃんと力抜いて身を預けるまで、続けるから」
 俺の言葉に梓緒は必死に従おうとするけれど、やはり耳は弱点らしい。そ
こに唇が触れるだけで、面白いように緊張と弛緩が繰り返される。
「司ぁ」
「なに?」
 体力も消耗したのだろう。俺の肩の辺りにすがりつくようにして息を弾ま
せる梓緒は、それでもやっぱり梓緒らしいまっすぐさで俺に云った。
「司と契りたい」
517名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 03:50:05 ID:l53Fp4qC
まさかリアルタイムに遭遇したのか!?支援
518wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/07(水) 03:50:49 ID:o8DDQbHZ
うっし、真ん中九個おわったです。素直クールになってない予感もする。
クールになりきれてないというか。俺にはクール書くのは_なのか。
519名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 03:56:05 ID:GZ40XgXl
>>518
いやいやいやいやGJだから!リアルタイムで転げまわるほどGJですから!!
後編も正座で待つよ。
あとルビふってくれてdクス
520名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 04:38:04 ID:yF2p9CoN
ちょっと素直ってのと違うんじゃないかとか、名前が間違っているとか、誤変換があるとか、
そんなことどーでもよくなるくらい梓緒が可愛くて司もやさしくてGJなのです。
521名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 08:54:18 ID:HOkljC3f
GJ、それ以外の言葉は見つからない
522名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 20:57:45 ID:RW3yXY3e
魍魎の匣っていう小説に出てくる柚木加菜子ってのはもろ素直クールだよなーと思いつつ読んでたら



はい。
523名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 23:57:13 ID:k7K0zJNI
>>522
ここでそんなグロい話を思い出させるなよ…
524名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 16:26:02 ID:ZPWLwnMF
ほう
525wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 17:51:20 ID:fKcD6SAl
きょろきょろ(こっそり)。では後編投下です。
これで最後の15分割。大量ですが、長引きました。何で短く書けないんだろう。
---------------------------------
「やだ」
 俺はにべもない返事をする。
 明かりもついてない部屋は夕暮れの最後の残照も種切れになって、古い洋
画の最後のシーンの明かりだけで照らされている。鋏で削られた雪が画面に
舞い散る。その一片一片が肌寒い部屋を照らしている。
「私は司と契りたいんだぅ、んっ!」
 抵抗しようとする梓緒(しお)の耳に後ろからちょっと乱暴に噛み付く。梓
緒は怯えるように耐えるように身体を硬くして、目をぎゅっとつぶる。それ
は前回の身体をあわせたときも一緒。その前回も、最初のときもだ。
「梓緒は、する時、まだ痛いだろう?」
 俺はずっと気にかかっていたことを聞く。
「んっ、それはっ」
 逃げ道を探そうとする梓緒の耳たぶを甘噛みして退路をふさぐ。
「んっ。痛くてもいいんだ。私は司の恋人だ。私だけが世界にたった一人の
司の想い人なんだって感じたいんだ。――司が欲しいものは全部あげたい。
だから痛くたっていいんだ」
 梓緒は梓緒らしい愚直さで俺に告げる。
 それはまさに告白だった。
 その言葉で、俺の心臓が大きく一つ、跳ねる。
 実際問題、嬉しくないわけじゃない。それどころかそんな風に云ってくれ
る梓緒がたまらなく可愛く見えるほど嬉しい。梓緒の後ろに回っていて良か
った。きっと俺の顔だって紅く染まっている。
 だけど。
 それはやっぱり男としてはそのままにしてはおけない問題だった。梓緒が
俺のことが好きで、だから痛くても俺の気持ちよさを優先したい。それは、
嬉しい。でも、男の我侭でしかないかもしれないけれど、俺は梓緒にだって
気持ちよくなって欲しい。
 一人でしか気持ちよくなっていないなんて、そんなのはいやだ。
 せっかく二人で一緒に繋がるなら、最後まで一緒がいい。
526wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 17:52:10 ID:fKcD6SAl
 もっと正直に告白してしまうと、俺はこうやって梓緒のことを『おなかだ
っこ』しているうちに、ちょっと危ない楽しさに目覚めてしまった気もする。
 梓緒の声が聞きたい。俺の腕の中でふるえて蕩ける梓緒が見てみたい。
 それは強いスリルに似たぞくぞくとしたときめきで、梓緒の抵抗が弱くな
ったり無理やり気持ちを緊張させているのを感じると、心の中で「もっと、
もっと」という囁きが俺をそそのかすのだ。
 梓緒を追い詰める楽しさは殆んど麻薬的ともいえるほどだ。
 少し自重しないと癖になってしまう。

「司が三回しかしてくれないのは、私がいたらないせいなのだ。私はこのと
おり気が利かなくて、人の気持ちを推し量ることが出来ない。自分の気持ち
をまっすぐ押し付けるしか出来ない粗忽者だ。――睦み合いもきっと下手な
んだろう。だから、司がしてくれないのは、自業自得なのかもしれ」
 梓緒の言葉を遮るように強引に口付けをする。
 梓緒のさらりとして、整った唇。
 それでも梓緒の口内は発熱したように潤んでいた。とろりとした唾液を絡
めるキス。
 軽く挨拶するように舌先を触れ合わせ、おずおずとまさぐりあう。
 唇をはさみ、柔らかく確かめて、感触を刻み込む。
「……ふぁ」
 離れた俺の唇を追いかけるように梓緒の頭部が起き上がる。
 諦めきれないような唾液の架け橋が途切れ、リップグロスに濡れたような
唇が画面のわずかな明かりを映して煌めいた。

「そんなこと考えてたんだ。……もしかして」
 俺は尋ねかけてやめた。
 『いちゃいちゃ』したいと言い出した梓緒。
 結局はそれも、同じことの延長線上なのだろう。
 梓緒は梓緒なりに悩んで考えて、俺ともっと「繋がる」ために、それが欲
しかったんだろうと思う。それは俺の想像でしかなかったけれど、正解に思
えた。だから、俺はそれを梓緒には尋ねない。
 尋ねられない。
527wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 17:53:10 ID:fKcD6SAl
「判った。梓緒を抱くよ」
「そうか」
 明らかにほっとした様子の梓緒。
 梓緒は強い。いつもまっすぐだ。背筋をぴんと伸ばして凛々しく歩く梓緒
は俺のひそかな自慢だし(たとえやっかみで生傷が耐えなくても)梓緒と付
き合っている時間はかけがえのないものだ。
 だけど、そんな梓緒の強さに甘えていたんだな。そう思うと良心がずきり
と痛む。
 女の口から抱いて欲しいといわせるほどに、不安にさせていたのだ。
 梓緒が素直で、時も場所も選ばずにそんなことをまっすぐ口に出すから
「そういう娘だ」と思って、甘えていた。
 でも。だからこそ。俺のほうにも譲れないラインがあるのだ。
「だけど、条件がある」
 俺の言葉に不審そうな表情も見せずにこくりと頷く梓緒。
「俺の腕の中で蕩けて欲しいんだ」
「……とろ、ける?」
「うん、力を抜いて。油断して。ゆだねて。……眠かったら寝ちゃってもい
い」
「そんな、司の前でだらしなくなるなんて出来ないっ」
 ぶんぶんと被りを振る梓緒。梓緒にとっては自分を律するということは強
い掟なのだと思う。世間の恥ずかしさとは違うけれど、梓緒が梓緒を縛る強
い掟。だからこそ、俺の前ではそれをちょっとだけ緩めて欲しい。
「それでも、して」
「……」
 無言のままじっと俺を見上げる梓緒に、言葉を重ねる。
「して」
 それはお願いに似た、命令。
「……了解した」
528wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 17:53:44 ID:fKcD6SAl
 古い洋画は終わっていた。
 部屋は暗くなって、窓の外の水銀灯の明かりが斜めに差し込んでいる。そ
の青白い光が俺に抱きしめられて、微睡に落ちかける梓緒を照らしていた。
 あの約束からもう1時間はたっている。
 緊張して身構える梓緒はそれでも必死にリラックスして、俺の腕の中で眠
ろうとした。でも、そのたびに俺が梓緒のわき腹や、指先の敏感な部分を撫
で上げていたのだ。
 梓緒は抗議の声を上げることも出来ないで、足指まで反らして耐えた。
 がんばって力を入れる梓緒を力づくで優しく抱きしめて、何回もキスを繰
り返す。なだめる様に、甘やかすように梓緒の髪に触れる。
 繰り返す抱擁。
 梓緒が少しだけ安心をして、おずおずと気を許すように俺にすがりつく。
 でも、そうやってリラックスしかけた梓緒を、その度にくすぐったくて、
切なくてたまらないような刺激で覚醒させる。
 何回も、何十回もその繰り返し。
 梓緒の呼吸はさっきから浅くなって、うめく様な声はもう甘くなっている。

「梓緒、慣れた?」
「慣れるわけないではないか。司は意地悪だ」
 口調こそいつもどおりだが、その声はどこか甘えるように響く。
 その響きだけで、梓緒に触れる指先まで贅沢な満足感に包まれる。
 梓緒の甘えるような声なんて初めて聞いたかもしれない。

「いいよ、そのまま寝ても」
「そんな事が出来るわけないのは、知ってるだろう」
 梓緒はそれでも俺の肩に頬をこすりつけるようにする。表情を俺に向ける
のが怖いのかもしれない。梓緒の身体からは力が抜けて、その左手はくてん
とシーツの上に投げ出されている。
529wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 17:55:40 ID:fKcD6SAl
「あ……」
 梓緒がわずかに声を漏らす。俺が梓緒のドレスシャツの前のボタンをはず
し始めたのだ。ひやりとした空気が肌に触れたのだろう。梓緒の肌は何回も
俺が触れたせいで、普段より熱くなっている。
 白く薄い布地の小さなボタンを全てはずすと、俺はそのまま躊躇いもせず
に水銀灯に照らされて青白くさえ見えるブラジャーのフロントホックもはず
す。
 布地の中にたわめられていた梓緒の美乳がふるんと現れると、こもってい
た香りが立ち上る。

 梓緒の胸を見るのは初めてではない。
 すごく綺麗な胸だと前回も、その前も思った。でも、今日はそのどれとも
違ってすごく特別に思える。呼吸のたびに上下する滑らかな肌に曇りガラス
を通したおぼろな光がはじける景色に、喉が詰まったようになるほど気持ち
が高揚してしまう。
 俺の視線が胸の先に落ちているのが判るのか、梓緒の身体に徐々に緊張が
戻ってくる。俺と約束をしているから、なるべく抵抗をしないように四肢は
投げ出している。それでも背中を預けられているのだ、梓緒の身体がリラッ
クスしているかどうか位はすぐ判る。

 ――つん。
 梓緒の胸に触れる。
 梓緒の身体が急激の化学反応を起こしたように収斂する。
「司ぁっ!」
「だめ。もっと力を抜いて」
 さすがに乳首は耐え切れないらしい。俺は梓緒の胸をすっぽりと手のひら
で包み込むと、そのままあやす様に軽くゆする。梓緒の胸はまだ転がされて
気持ちよさを感じるほどではないと思う。
 強い刺激は痛みに感じるようなことを、前回身体を重ねた時に云っていた。
 それでも、これくらいなら平気だろうという程度の「揺れ」を送り込む。
はじめは歯を食いしばって力を入れていた梓緒が、少しだけ緩む。
530wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 17:56:44 ID:fKcD6SAl
「……っ。……くふ、ぅ」
 梓緒の力が抜け始める。
 それでなくても、もうかれこれ二時間以上はこうして抱きしめている。そ
の間、梓緒はずっと緊張と弛緩を繰り返していたのだ。俺に体重をかけない
ようにずっと不自然な姿勢で耐え続け、逃げ出すようにくねってシーツの上
でもがいていた。
 肌の上をゆっくり撫ですさすられて、普段使わないような筋肉まで痙攣さ
せられていたのだ。本人は意識しているかどうかわからないが、梓緒の身体
はかなり疲れているはずだ。

「梓緒、どう?」
「うん。――ん。平気、力、抜いていられる」
 肌寒いような部屋の中で、背中を体温で暖められて、身体をゆらゆらと揺
すられている。疲れた身体で繰り返される緊張と弛緩。
 俺は掌をわずかに浮かせて、硬く起き上がった梓緒の乳首をゆっくりとこ
する。梓緒の表情が泣き出しそうにゆがむけれど、その手はシーツにだらり
と投げ出したままだ。
 そのまま刺激を強くしないように、何回も、何回も繰り返す。
 梓緒のゆがんでいた表情が次第に穏やかになる。穏やかで、どこか呆けた
甘えるような表情に。
「司ぁ」
 梓緒が吐息に乗せるように囁く。
「ん?」
「おかしいんだ。ふわふわして、なんだか身体が、下半身がなくなりそうだ。
司の体温とまじりあって暖かくて、消えてしまってる」
 梓緒がとろんとした子猫の表情で俺にすがり付いている。それがたまらな
く嬉しい。
「こうゆうの嫌いか?」
「ううん、これは、わりと……。幸せかも、しれない。あ、ぅっ」
 胸をゆるりとゆすられて梓緒が呻く。でも、そこには苦痛の色はないよう
だった。はぁはぁと浅い呼吸をしながらも、梓緒は頬を俺の肩にこすりつけ
る。
531wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 17:57:35 ID:fKcD6SAl
「じゃぁ、これは?」
 俺は梓緒を抱きしめる腕を変えると、伸ばした指先で、シーツの上に投げ
出された梓緒の太ももをたどり、ジーンズにつつまれた梓緒の身体の底の部
分を軽く叩く。
「んっぅっ」
 梓緒の身体にさすがに緊張が走り抜ける。
 でも、その緊張を維持するには梓緒の身体は疲れすぎていたし、俺の体温
に慣れすぎていた。軽く揺するたびに繰り返されてきた弛緩にゆるゆると落
ちてゆく。
 俺は指先でノックするようにジーンズの股間に触れる。
 一滴づつ水滴をたらすように、その水滴が梓緒にしみこむように。
 始めは緊張していた梓緒が、繰り返される水滴のリズムで、じわじわと脱
力していくのが判る。
「司ぁ、あの……」
「ん?」
「これは、睦み合いなんだよな?」
 梓緒は小さなかすれた声で囁く。
「そうだな。睦み合いといちゃいちゃの、真ん中くらいかな」
「私、それなのに、司にちゃんと挨拶してない。身も清めていないし、司を
受け入れてもない」
 梓緒の声は鼻にかかっていて、痛恨を嘆いているようにも、身体の感覚で
弛緩しているようにも聞こえた。
「いいんだよ。今回は。俺のお願い聞いてくれてるんだろう? 俺は梓緒に
もっと身をゆだねて欲しいの」
 囁きを交わす間にも、俺の指先は、ゆっくりと時を刻むように、梓緒のジ
ーンズに包まれた太ももの間を、軽くノックし続けている。厚いジーンズの
布地を通しても、触れれば蕩けるような内側の果肉の柔らかさが感じられる。

「司。私、だらしない顔してると思う」
「気にするな」
「おかしいんだ。司がそうやって私の性器をとんとんってするだけなのに、
なんだかお腹の奥が暖かくて……」
532wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 17:58:25 ID:fKcD6SAl
「暖かくて?」
「眠いくらいに力が抜けてるのに、腰が勝手にきゅぅきゅうって締め付けた
り緩んだりするんだ。それに、う。くふぅっ。ずっとお漏らしをしてるみた
いな、恥ずかしい尿意がする」
 梓緒は恨めしそうに云うと、俺の胸に顔を埋める。
 俺は梓緒のジーンズのファスナーをゆっくり下ろすと、下着ごと太ももの
半ばまでずり下ろす。どこかぼんやりした表情で腰を浮かせて協力する梓緒
の両腿をだきよせて、俺の膝の間で抱えあげる。
 梓緒の下着は湿っている。いくら梓緒でも恥ずかしがるだろうから確かめ
なかったけれど、盛大といってもいい感じだったようだ。
 三角座りした俺の膝の間でスプーンを重ねたように同じ体制で脱力する梓
緒。その太ももを引き寄せる。
「司ぁ、これでは幼児みたいだ」
「しーしーの格好だよ」
 いやいやをするように身をよじる梓緒にかまわず、梓緒の果肉へ指を進め
る。そこはすでに熱く蕩けている。頼りなく感じるほどやわらかいゼリーの
ような沼に指先を絡める。

「ふぁぅっ、司ぁ。まだ力を抜いてなくてはいけないのか?」
「うん、約束したろ」
 指先に絡め取った蜜を、梓緒の隅々に塗り広げる。滑らかになった媚肉は
発熱したような温度で指を追いかけてくる。約束を律儀に守って抵抗をしな
い梓緒だけど、不随意な身体の反応なのか、ひくんひくんと腕の中で跳ねる
のは止めようがないみたいだ。
「ダメだ。司ぁ。――このまま力を抜いていたら、粗相してしまう」
 梓緒が情けなさそうな、つらそうな声で俺に告げる。
533wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 18:00:52 ID:fKcD6SAl
「しちゃえ」
「ヤダっ。司っ」
 俺の冷酷な突き放しに、梓緒の潤んだ媚孔がきゅぅっとしまる。前回とは
比べ物にならないほど濡れているけれど、やっぱりその力は強いみたいだ。
「キミってやつは、ん、くぅんっ」
 梓緒の抵抗を封じるように俺は梓緒の耳たぶをかじった。小さく歯を立て
て、舌先でくすぐる。すっかりそれがあることを忘れていた梓緒の身体は痙
攣するように震える。
「もっと身をゆだねちゃえ」
 耳元で囁く。
「梓緒のこと暖めてあげるから」
 抱きしめる腕に力が入る。
 とろとろになった指先で、梓緒のつんととがった真珠に触れる。
 ゆるゆると蜜を絡めるだけのような僅かな動きを繰り返す。
 春の渚みたいに寄せては返すその動きに、梓緒がうつむいたまま、次第に
引き込まれていくのがわかる。俺の指先の動きを、梓緒の視線が憑かれたよ
うに追っている。ゆっくりかき回すリズムに、いつの間にか梓緒の呼吸のリ
ズムも一致している。
「司ぁ」
 子供みたいに俺の名前を呼ぶ梓緒。
「ん?」
「これが『いちゃいちゃ』なのか? 私、もう判らなくなりそうだ。……こ
のままじゃ馬鹿になってしまう」
 湿った吐息が舌たらずになってしまった梓緒の声と共にもれる。
「司の指のことしか考えられなくなる。こんなの知らない。おかしいんだ。
――性器の奥が熱くて、むずがゆくて、物足りない。司がすぐそばに居るの
に、寂しいんだ」
「そっか」
 余りにも梓緒が情けなく心細そうな声を出すから、俺はくすりと笑ってし
まう。
534wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 18:01:40 ID:fKcD6SAl
「笑うなんて失礼だぞっ、司ぁ、んぅ、ひゃぁぅっ」
 梓緒の憤慨を閉じ込めるように、浅く沈めた指でかき回す。
 紅潮した真珠は自己主張をするように潤んだ媚肉から頭部を覗かせている。
それを慰めるように、何回も何回も、梓緒の蜜を掬い取っては塗りこめて行
く。
「司ぁ。寂しい」
 梓緒の腰が細かく震え始める。
 必死になって脱力している梓緒。
 こんな恥ずかしい痴態を晒しているのに、自分の気持ちを、感覚を言葉に
乗せてくれる梓緒。
 俺の腕の中で仔犬みたいに鼻をすんすんならしてる梓緒。
 うう。梓緒だって卑怯者だ。反則だ。
「梓緒は可愛いよ。大好きだよ」
 言い馴れないことを云った。俺の顔はきっと真っ赤だっただろうし、少し
早口になってしまったと思う。でも、梓緒はそんなことも感じる暇はなかっ
たようだ。
 俺の言葉が梓緒の耳に届いた途端、梓緒の身体の奥が収斂するのを感じた。
掌ですっぽりと覆ってゆらゆら動かしていた梓緒の果肉がどろりとあふれ出
すのが判る。
「つっ、かさっ。ずるい、ずるい、つかさぁっ」
 梓緒の手がまさぐるように俺の服を握り、脚のつま先が何かを握るように
丸まる。梓緒の首筋にも腰にも、一気に汗が沸いて甘い香りを立てる。
「ダメだ。司。お願いだ。一生のお願いっ。――司と契りたい。司に抱きし
められて、突き刺されたい。寂しくて、物足りなくて、切ないんだ。このま
まじゃおかしくなってしまう」
 梓緒は俺の肩口にぐりぐりと頭をこすり付ける。
535wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 18:02:16 ID:fKcD6SAl
「司と契らせてくれ。司の子種が欲しいんだ。お願いだっ」
 ずるいのは梓緒のほうだと思う。
 こんなことを言われて我慢できるほど、俺だって人間が出来てはいないの
だ。
 今まで我慢できたのも、梓緒の仕草と声を感じたかっただけ。
 俺は体勢を入れ替えて梓緒をシーツの上に押し倒す。
 もどかしい思いで梓緒のジーンズを脱がし、自分のものをあてがう。
 きついはずの冷房も感じない。
 感じるのは梓緒の体温と、うるさい位に俺をせかす心臓の音。
「司ぁ。湯浴みもしてないのに、すまない。でも、欲しい。我慢できないん
だ」
 潤んだような泣きそうな顔で、それでもまっすぐに言葉を告げる梓緒。
「梓緒は全部すべすべで、いい匂いだよ」
 抱きしめるように挿入する。
 腕の中の梓緒が熱い。
 熱い身体が俺の腕の中で仕官して、それでも耐え切れないように弱弱しく
もがいている。それは犯罪的なほど贅沢な気分だった。
 梓緒がそこに居るだけで、俺のほうもあっという間に限界ぎりぎりになっ
てしまう。
「熱い、司のが熱いっ」
 違う、その熱は、梓緒のもの。
「司がどきどきして、うずうずして、いっぱい……で……」
 そのどきどきだって、うずうずだって、梓緒のものでもある。
536wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 18:03:11 ID:fKcD6SAl
「司ぁ、ダメだ。私。ダメになってしまう」
 梓緒がむずがるような甘い声を上げる。
「なんでさ」
 梓緒の媚肉が俺に絡みつく。腰を押し付けるように深く入れると、梓緒の
膣の奥に、こつんこつんと当たるものがある。どこも気持ちよくて、梓緒の
声だけしか聞こえない。
 梓緒と俺の汗でぬめるような手で、梓緒の手を握る。
 梓緒の手が俺の手を握り返してくれる。
 それだけの事が嬉しくて、俺の腰は止まらなくなってしまう。
「司のことが好きだ。世界で一番好きだ。司のことが欲しい、司の。んぅ、
くぅんっ。司の、子種が欲しい。司と一緒がいいっ」
 梓緒がかすれた声で云ってくれる。
 その甘い告白が俺の脳を灼く。
 腰の奥の熱いどろどろがせりあがる感覚。
「梓緒」
 梓緒が俺の名前を言ってくれるのが嬉しい。
 いつでも両足で大地を踏みしめてまっすぐに立っている梓緒が甘えるよう
な困ったような声で名前を読んでくれるのは俺だけだと思う。それは視界が
白くなるような興奮をもたらす。
「司ぁ」
 その声が。とろりと潤んだ瞳が。
 半ば開いた瑞々しい唇が、言葉にならない言葉で梓緒の求めを俺に伝える。
 きつく抱きしめて唇を合わせる。
 せっかく時間をかけたのに、もしかしたら最後になって力入れ過ぎてしま
ったかもしれない。こつんと前歯同士が当たる。それでも力を緩めることは
出来なかった。
 梓緒も狂ったように足を絡めて俺を求めてくれる。
 俺は梓緒の中に今までで一番気持ちがいい塊を放ってしまう。
537wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 18:05:35 ID:fKcD6SAl
「はぁ……」
 二人を薄手のタオルケットが包んでいる。
 俺の隣ではすべての衣服を脱ぎ捨てた梓緒が、眠りにつく直前のように幸
せそうな表情で脱力している。
 結局あの後二回も契ってしまった。合計で三回もだ。
 梓緒と身体を重ねるのは四回目だけれど、本当の初めては今日のような気
がした。
「司ぁ」
 梓緒がどこかまだ融けている声で呟く。
「ん?」
「これは、恐ろしいな」
 梓緒が首だけをこちらを見上げて、微笑む。
「契った後も身体中が甘いんだ。指先も動かしたくないほど疲れているのに、
関節にハチミツが染み込んだみたいに、じわぁーっと気だるくて、気持ちが
いいんだ」
 梓緒の髪に触れる。
 俺は男だから梓緒ほど身動きもままならないということはなかったけれど、
感想としてはまったく同じだった。
 梓緒の形のいい乳が俺の腕に押し付けられる。腕の中で安心したように脱
力している梓緒。左腕にかかる梓緒の頭部の重さが、抱きしめたくなるよう
な贅沢な梓緒の存在が愛しい。
 こんなに贅沢で幸せな気分でいいんだろうか。
 神様。
 俺は梓緒なんかと付き合えるような、梓緒に好きと言ってもらえるような、
どんな素晴らしい善行を前世で為したんですか。
 それとも途轍もないラッキーなのか。
538wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 18:06:54 ID:fKcD6SAl
 気持ちがあふれ出して、身体から、心からこぼれてしまう。それなのにき
っとそれは梓緒には伝わらない。
 ――それは俺自身のせいだ。梓緒みたいに素直に気持ちを言葉に乗せられ
ないから。
 そのもどかしさに、また梓緒を抱き寄せたくなるのを自制する。

「それが何で恐ろしいんだ?」
 自分で意地っ張りなのは判っているけれど、声をつくろって尋ねる。
「幸せなんだ」
 梓緒は囁く。
 こつんとつけた梓緒のおでこ。
 汗が引いてひんやりした肌に、梓緒の絹のような前髪が触れる。

「気持ちよくて、幸せで、司が愛おしい。前からずっと好きだったけれど、
今日のいちゃいちゃと睦み合いのせいで、余計に、本当に幸せになってし
まったんだ」
 夢見るような言葉。
「バカップルという言葉の意味も判った。こんなに気持ちがよいことを日常
的に習慣にしていたら、あっという間に馬鹿になってしまっても仕方ない。
麻薬みたいだ。病み付きになりそうだ。もしかしたら、もうなってしまった
かもしれない。――だから、怖いんだ」

 梓緒の黒髪に指をもぐらせる。
 さらさらと流れ落ちる宝物のような感触。
「気にするなよ。カップルというからには一蓮托生さ」
 微笑う。梓緒はやっぱり梓緒だ。
 世界で一番可愛いとまでいうつもりはないけれど、百人の女の子を集めた
程度じゃ一番可愛いだろう。千人でも一番可愛いだろうな。一万人だったら
……いや、優勝しそうだ。十万人でもあっさり勝ち抜きそうな気がする。
 そんなことを考えてる俺も、つまりは馬鹿なのだ。
539wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 18:08:01 ID:fKcD6SAl
「そうか」
 梓緒も鮮やかに笑う。
「ついては相談なのだが」

「おう、なんだよ。『いちゃいちゃ』については判ったんだろう?」
 梓緒の言葉に俺は軽く答えた。梓緒のお願いについてなら何でもかなえた
い。それがこのときの俺の偽らざる気持ちだったのだ。
「うん、お陰で納得することが出来た。そこで次は『調教』についてなのだ
が」
「ちょっ、お前っ! 何をっ」
 真剣な表情で話し始める梓緒に俺は慌てる。こ、こいつはいったい何を言
い出すんだ!? 『調教』!? それってなんのことだ、おい!

「どうやら一人前の大人の恋愛というのは『調教』抜きでは語れないらしい
のだ。私は詳しくは知らないのだが、次の段階としてぜひとも経験しておく
べきだと……」
「良〜子〜先〜生〜っ」
 脱力とやるせなさで俺は主犯格の名前をうめいてしまう。
 こんなことを吹き込むのは良子先生だけだ。
 面白がってあることないこと説得する悪魔教師の姿が目に浮かぶ。

「私はどうやら色恋に関してはなんら物を知らぬらしいのだ。でも、司とだ
ったら何をしても幸せだ。今後ともよろしく頼むのだ」
 俺はそれ以上爆弾発言が飛び出ないように、優しく口付けをした。
 大事な宝物。大好きな梓緒。
 触れ合った唇がいつもよりずっと甘かった。
540wkz ◆5bXzwvtu.E :2006/06/08(木) 18:11:00 ID:fKcD6SAl
以上で終了っ。案の定長くなってしまったorz俺短いのかけない。ダメ職人。
でも、GJくれたみなさま、ほんと感謝!
自分でも、これ素直クールじゃねぇなぁーとか思いつつ、
ジャンルにずっぽりはまるどまんなかものがかけない職人ですた。
お目汚しでした、また機会があったら再見!
541名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:22:33 ID:NtD2XHPk
リアルタイムで読んだ。
これでダメ職人だったらこの世に神と呼べる職人などいない…
まさにGJだ。必ずまた来てくれ。頼むから。
542名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:27:23 ID:cc4xYXGv
にゃぁ〜〜、二人とも可愛すぎる〜
読むこっちの方まで幸せでダメになってしまいそうだ〜
543名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 19:03:31 ID:ah4/WoeW
       ○                       
      _ .∩                     ○○○   ⌒○
   ( ゚∀゚)/ ミ        三○       ○(`Д´○○      
   .と   ),ヽ.彡                ○○○○○○○
   /   / ∪                 ○○○○○○○
   し ⌒J
544名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 19:50:58 ID:i3Oim7zR
GJGJ!!
良かったです。じわじわと高められる梓緒がとても可愛くて、
じっくりと楽しませてもらいました。

長いのは作風の都合でしょうがない気がします。
説明や描写のスリム化でわずかには短くできそうですが、
根本的にはこういう細かくじっくり描写な作風では長くなるのが当たり前かと。
だから気にしなくていいと思います。

あと、ひとつだけつっこませてください。
「直裁」じゃなくて「直截(ちょくせつ)」だと思います。
直裁だと別の意味になるので。

ではでは、あらためてGJでした。
545名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 21:16:59 ID:r0yBZFxU
良かったよ。
長ところにじっくり半身浴をしているような心地よさがある。
幸せな気分にもなったし、とにかくGJ。
546名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 22:58:04 ID:NCBu0XIS
(´・ω・`)
547名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 02:02:20 ID:BVpVH0bC
>>540
GJ!!
俺もこんなんかけるようになりたい……
548名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 02:08:13 ID:fp3Phu5q
とろとろ梓緒かわいいよ梓緒---!!!
549名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 18:50:37 ID:bgN0fkZe
破裂寸前だったオレのミルクタンクが
一気に空っぽになりました。
550名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 21:01:15 ID:a1jfSpH5
超GJ!!
調教編を激しく希望する!!!
551名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 22:52:06 ID:JJueufBb
つい先程までこんな神スレの存在に気付かなかった自分を殺したい
552名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 08:15:02 ID:vpdYLXIs
いや、殺しちゃだめだ。
乗り越えて君が神職人になるんだ!
553名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 11:26:56 ID:taaYtctf
気づいた瞬間に、おぬしは生まれ変わったのだ
554名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 15:47:24 ID:iV6Msjhd
俺もロムってたがまったくだ
俺たちは過去に生きてるんじゃないぜ(背中に駄文のを隠しながら)
555名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 17:47:00 ID:qi2x+hEZ
>>554
ほら、駄文なんていわずに見せてごらん?ね?
556名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 17:51:26 ID:PHlWkzLj
>>554
誘い受けテラウザス
557名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 20:22:55 ID:IosNM1Ry
まあそう言うなよ。
558554:2006/06/11(日) 20:58:07 ID:u9fsImvG
自信が無いもので誰かに背中を押してほしかったのだよ。だが、それは甘えだったな。不快感を与えてしまってすまない。胸を張って公開できるように出なおしてくるとしよう
559554:2006/06/11(日) 21:00:59 ID:u9fsImvG
自信が無いもので誰かに背中を押してほしかったのだよ。だが、それは甘えだな。胸を張って公開できるように出なおしてくるとしよう。不快感を与えてしまってすまない。
560名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 21:03:55 ID:FpWAobOj
よし!がんばれ!
561名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 21:05:13 ID:vpdYLXIs
がんばって! よみたいよ!
それに最初は誰だって初めてだよ!
562554:2006/06/11(日) 21:23:48 ID:u9fsImvG
二回やってしまった。それはともかく応援感謝だ
563名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 22:26:24 ID:zbCvr0w5
読み手にまで素直クールを期待しちゃいかんよ。
ツンデレ相手にするつもりで強気に攻めるんだ。
564名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 23:52:51 ID:7uxI6fAx
なんでもいいからとっとと書いちゃいなよ
565名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 04:09:03 ID:/zomKJDY
>>546
(´・ω・`)つ 旦~
566名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 09:43:18 ID:WhFvKH5K
ttp://sylphys.ddo.jp/upld2nd/niji7/src/1150039803741.gif

素直クールってこんなの?
567名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 13:24:43 ID:iTO3kbbi
間違ってはいないんだが
568名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 13:32:33 ID:MG0zRbCm
「ああそうか」の顔がバカっぽくて好きだなw
569名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 16:53:52 ID:wN0RTBwj
>>566
ツボにはまったw
570名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 19:48:16 ID:5Hjdagv7
566

なにそれ




蝶萌える
571名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 19:53:07 ID:Y0ntCfze
>>566の実力に
(((((((( ゚Д゚)))))))ガクガクブルブル
572名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 20:44:42 ID:Lzum/JIp
>>566
(*´д`*)カワエエ
573名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 22:02:30 ID:Jbq8yjWn
>>566
ぜひ絵師として、ここで描き続けてください。


(´・ω・)つ 旦~
574名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 22:29:33 ID:WhFvKH5K
http://www.puyotopia.com/rakugaki/20060610-2.gif
カラーだとこんな娘さんらしいぞ。素直クール
575名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 01:09:06 ID:VH9UiYWX
>>566


……インスパイアされてもいいですか?
576名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 13:42:19 ID:aCCtKCBj
そう言うからには、とっくにインスパイアされてるのであろう?

存分にやれ。
577名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 22:22:59 ID:bZ/L8LxS
>>566は既に見れなかった・・・OTL
>>574はかなり気に入ったというか保存したというかアリガトウ!
と声高々とお礼を言わせていただきたい
目が非常にイイ!
(あ、ID同じって事は白黒かカラー化の差?
578名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 23:00:01 ID:QfFVUaHZ
いや、違う
>>566の方は一枚絵じゃない
579名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 00:26:04 ID:LKoffMOV
http://www.puyotopia.com/rakugaki/20060610.gif
>>577
ちがうちがう。自作じゃないよ。
http://www.puyotopia.com/
サンとこのトップ絵なだけ。
580名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 00:35:19 ID:Ye3tkxcC
これはイイ素クールだな
581名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 00:37:21 ID:tYFJ0+HB
いいですかね。馬鹿話でよろしければどうぞ。短いです。
582素直クール×素直クール(1/2):2006/06/16(金) 00:37:55 ID:tYFJ0+HB
良一が素直でクールな男だというのは、クラスメイトの誰もが認めるところだ。
直美が素直でクールな女だというのは、クラスメイトの誰もが認めるところだ。
つまり、二人は、素直クール。時代の寵児。ツンデレの次に来るもの。
そう、素直クール。彼らの時代がやってくる。

・・・

良一と直美は、座席は隣同士だ。が、普段特に会話はない。
意識して避けているわけではない。彼らはツンデレではないのだ。
用があれば会話をする。用がなければ会話をしない。それが素直クール。

素直であってもクールであっても、忘れ物ぐらいはする。
良平は、消しゴムを忘れた。素直に困る。素直に誰かに借りるとしよう。

「直美さん、すまないが、消しゴムを貸してくれないか」
「いいだろう。2つもってるから、1つ貸してやる」
「ありがとう」
「……」
「良一くん、すまないが、シャーペンの芯をくれないか」
「いいだろう。消しゴムのお礼に、君に提供することはやぶさかでない」
「ありがとう」
「……」

シャーペンの芯を切らしていた直美は、素直に良一に芯をもらった。
さて、授業も終わり休憩時間。教室はざわめきに包まれる。

「直美さん、少し君に話があるのだが、いいだろうか」
「奇遇だな。良一くん、私も君に話したいことがあったのだ」
「消しゴムを貸してくれた君が好きだ」
「シャーペンの芯をくれた君が好きだ」

ざわめきがピタリとやんだ。クラス全員が彼らに注目する。

「ふむ。では、付き合おうではないか」
「そうだな。同意しよう」

静まりかえった休憩時間の教室の真ん中で、二人は愛の告白を交わし、
晴れて恋人同士となった。

「さて、我々は付き合うことになったわけだが、いったい何をすればいいのだろうか」
「そうだな……まずは、抱擁だろう」
「そうか。では」
教室の真ん中で、照れもせず抱き合う二人。素直クールは照れたりはしない。

「次は、接吻だろうか?」
「そうだな。接吻だろう」
クラス全員に取り押さえられた。

「なぜ皆に阻止されるのか、さっぱりわからない」
「そうだな。いや、教室では節度をもった付き合いをしなければならないということではないか」
「なるほど。では、続きは帰宅してからとしよう」
「うむ。それがよい」
クラス全員が赤面する。
「どうした?皆、顔が赤いぞ?」
583名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 00:37:58 ID:Ye3tkxcC
今更なので済まないのだが
誰か>>224の作品を再びアップしてくれないだろうか?
このスレ最近見つけたから取り逃しちゃった・・・・
584素直クール×素直クール(2/2):2006/06/16(金) 00:38:27 ID:tYFJ0+HB
放課後。二人並んで下校する。
友人に冷やかされた。

「手でもつなげよ〜」

考え込む二人。二人、目を合わせて頷き合う。手を繋いで仲良く帰って行く。
素直クールに照れはない。

翌朝。正直、クラス全員は、二人の動向が気になっていた。
いきなりアツアツのラブラブになっていて、バカップルめいた行動を取られたらどうしよう。
いや、昨日の様子では、その可能性も否定できない。
「はい、良一くん、あーん」
「あーん、直美さん、おいしいよ」
などという、精神衛生上問題のあるような光景を繰り広げられてはたまらない。

二人は、揃って登校してきた。しかし、あまり変わったようには見えない。
クラス代表が、勇気を出して、問いかける。

「おっ、おまえらさ、昨日、あれから、どうした?」
「昨日?別に普通だが」
「ああ普通だ」
「普通って?」
「普通の恋人同士のように、抱擁を交わした」
「ほ、ほうよう……」
「普通の恋人同士のように、口付けを交わした」
「いっ、いや、その……」
「普通の恋人同士のように……」
「わーっ!わーっ!わーっ!言わなくていいっ!言わなくていいからっ!」
「何故だ?私達は素直に質問に答えているというのに」
「そうだ。質問してきたのは君の方だろう」
「……そ、そうだけどさ……じゃ、じゃあ、何をしたかは言わなくていいから、
 感想を、教えてくれないか」
「そうだな。心地よかったな」
「うむ。快楽を感じた」
「……そっ、そうなんだ……おまえら、念のために聞くけど、ひ、避妊とか、した?」
「いや。素直に中に出した」
「うむ。素直に中に出された」
「……えっと、その、お幸せに」
「ああ。幸せになろう、直美」
「ありがとう。幸せになろう、良一」

その後、しばらくして、素直クールな二人は、赤ん坊を抱いて登校するようになった。
授業中におしめを替え、赤ん坊をあやし、素直に子育てしている。
彼らは淡々と子育てをこなしているようだが、幸せそうでは、ある。

……素直クールに、幸あれ。

・・・

結論;素直クール同士だと、素直に結合するので、お話が盛り上がらない。
ちゃんちゃん。
585581:2006/06/16(金) 00:39:51 ID:tYFJ0+HB
あはは。失礼しました。いや、素直クール同士ならどうなるんだろうかと思って・・・。
586577:2006/06/16(金) 01:00:29 ID:7iVMrVwg
>>579
dクス
そうかあの絵は氷○女氏だったか〜
ホロウの氷室恋愛探偵事務○をまたやりたくなったジャマイカw
587名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 01:08:14 ID:ZXf4vdkG
>>585
ちょっぴりワロタw
いやGJ。
588名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 01:15:11 ID:ERD7SR+l
氷室は素クールではない
屈折クールだ
589名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 02:11:44 ID:O7u8P7Ch
ロリブルマルートと同じぐらいに氷室ルートが欲しかった
590名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 08:00:18 ID:ADIf7+9T
>>585
気持ちよく読めた。GJ!
591名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 12:29:42 ID:XIbYV7Yu
うぇwww
592名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 15:30:10 ID:vpSSJ+wQ
>>585
なんかにやけてしまうな。面白かった。
593554:2006/06/16(金) 17:59:41 ID:uwbUle6f
出来てしまったわけだが
稚拙な文だが投下してもよろしいか?
594名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 18:02:57 ID:jC2R6wdo
>>593
よしこいすぐこいいまこい
595554:2006/06/16(金) 18:08:59 ID:uwbUle6f
想像以上に長くなってしまったわけだが
ちなみにテーマはお弁当だ
596554:2006/06/16(金) 18:16:35 ID:uwbUle6f
「あーーーーーーん」
「・・・・・・」
「あーーーーーーんだ。ほら」
「・・・・・・・・・(精一杯の抵抗)」
僕は必死で今目の前の情景から意識を逸らしている。
現実逃避と言われようが、膝の上に座られそしてお弁当箱から玉子焼きをを取り出しこちらに箸を突き出されている状態にどう反応しろと。
大体、ここは二人だけの空間というわけでもない。
まだ、カップルしか存在しない初夏の日差し漂う屋上とかなら微笑ましく映るかもしれないが、ここは教室。
そこへやってきて膝に座り「あーーーーーーん」だ!僕で無くとも同じ反応をするだろう。
「あの葛西が・・・」「うわぁ幻覚だこれはー」「何の秘密を握って・・・」
小さな声でそんなことまで360度全天回頭聞こえてくる。
ついでに痛いぐらいの視線も突き刺さっているがそれを確認する事は出来ない。率直に言うとそれをすると今の状態を認めてしまうことになるからだ。
だから僕は目の前の手作りのお弁当を携えてる彼女に視線を葉合わせることしか出来ない。
彼女の名前は昴城 夕夏。一月ほど前に転校してきたお嬢様だ。
成績優秀容姿端麗性格良と3セット揃った優良物件。多少変わってる所があるがそれもまた個性ということで周囲に愛されている。ちなみに僕は忘れていたが幼馴染だった。
反対に僕・葛西俊介は、人間嫌いが祟っていつのまにか不良と化し周囲に恐れられていた。夕夏が来るまでの話だ・・・。
彼女とは色々とあったのだがそれは後の機会に語るとして、結果として僕を慕ってくれた彼女を受け入れたわけだ。
いや、むしろ僕のほうが彼女の世話になってることの方が大きい。それは、とても・・・とーてーもー感謝してるのだけど、この仕打ちは一体なんなのだろうか。
「むぅ、玉子焼きは嫌い?」
「いや、そういうわけではなくて・・・」
「なら、遠慮せずに食すがいい」
ほらとさらに突き出される箸。これは回避不可イベントと言われるものですか?
そ、そりゃ人の作った料理なんて久しぶりだし、何より彼女が作ってきてくれたってことは嬉しいんだよ。だけどさ・・・
「あー頼むから普通に食べさせてくれ」
一縷の望みに縋ってやっと繰り出した一言。
「そうか、君は大胆なのだな・・・」
少し頬を赤らめる夕夏
「まあ多少人目は気になるが君がそれを望むなら・・・」
なんだろ悪い予感がするぞ
彼女は箸を引っ込めると自分の口に持っていく。そしてそのまま食べるかと思った玉子焼きを唇で挟み、そのままこちらへ接近し・・・・・・・・・
ガシッ
とっさにこめかみをつかんでこれ以上の接近を止める。
「・・・おい、今何しようとした?」
「何とはなんだい?私はただ口移しで「馬鹿野郎!少しはTPO考えろ!」
「・・・・・・。」
半眼で見つめられる
「な、なんだよ、」
「言うまでも無いことだが私は生物学上Femaleと分類される。つまり何が言いたいかというと、この場合『馬鹿野郎』ではなく『馬鹿女郎』と・・・」
「そっちかよ!
 ・・・そうじゃねぇだろ、こう人目があるところでなーそんな」
周囲を見渡しながら言うと、皆目を逸らす。
「誰も見てないようだが」
「あのなぁ・・・」
頭痛くなってきた
「あー二人とも私たちのことは気になさらずにごゆっくりどうぞ。私たちは運悪く盛った犬の交尾に出くわしたものとでも考えるから」
お前、それのどこが気にしてないんだよ。
「うむ、協力感謝する」
敬礼して感謝を表す夕夏。ノリがいいのか素でやってるのか謎だ。だけどそういうしぐさも様になってるのがむかつく。
「それではいざっ」
身を乗り出してくる。と思ったときには口の中に甘い味が広がった。

597554:2006/06/16(金) 18:19:05 ID:uwbUle6f
トントントントントン
それは若い女性だ。
台所に立ってエプロンをしている。
まだ朝も明けていない時間だ
背を向けていて顔は見えないけど僕はその光景をずっと昔に・・・


あ、あれ・・・。今のは一体・・・
そ、そうだ見とれた隙に・・・・!慌てて意識を戻すと唇はまだ繋がったままだった。
「ほ、ほい!ひっふぁひふぁひふぉ!(お、おい!一体何を!」
美味くしゃべれずに抗議すると
「覚えてないか?子どもの頃はよくこうやってお互いに食べさせてあげてたじゃない」
ぐほっ!そう言われてみるとそんなことをしてたような気がしないでもないけど、今更過去の封印していた記憶を穿り返すようなことをするな!
「まあその遊びも、君とキスしたいのを悟られたくなくて言い出したことなのだがね。いやぁ、あの頃は怖いもの知らずだったね」
今もかわんねぇよ!つーか、そんなこと言い出す当たりもっと酷くなってるつーの!
教室中が奇異を見る目と生暖かい目と怨念のこもった目で構成されてる。勿論、その中心にいるのは僕たちだ。
「・・・それで、味はどうかな?」
「こんな状況でわかるかー!」

とりあえず、後頭部にチョップ食らわせつつなんとか膝の上から降りてもらうことに成功。ちなみに弁当箱も受け取ったぜ。これでやっとこさ普通に食える。
なにやら「君の膝は私専用のものだとアピールしたかった」とか聞こえた気がするけど幻聴だ。そうに決まってる。
ただ、もし幻聴じゃなかったとしたら、それは僕の責任なんだろうな。独占欲というのもあるのだろうが、そういう方向に心配をさせてしまうのは僕が不甲斐ないからなのだろう。
今の僕があるのは彼女のおかげだ。なら、僕はそれに報いなければならない。
そんなことを考えると
「・・・・・・怖い顔をしているぞ。そんなにお膝抱っこは嫌だったのかい?」
真正面に回った彼女に顔を覗き込まれた。あーまた思考が煮詰まっていたのか。
そうだな・・・。これは義務ではないんだ。そして、彼女もそんなことを望んでるとは限らない。要は僕がどうしたいかって事だよな。嫌々いやるわけじゃない、むしろ望んでやるんだ。なら彼女のように楽しむのが最良だ。
普段使ってない口の端の筋肉を持ち上げてみる。うん、笑えてるよな。さぁ、今こそ・・・っ
「あ、おい・・・「一言君の了解を取るべきだったかと思うのだが、それでは君は絶対に許可しないであろう。だが君の場合、望んでいたとしても素直になれずに拒絶する可能性もあったのでね。
 勿論私もそういったところは理解しているつもりだ。そして私はそこを欠点だとは思っていない。むしろ、君のそんな部分は可愛いと思っている。だが、どうしても意思の完全な疎通は不可能と言えよう。これから二人で時を重ねていくことで克服していこうではないか」
・・・・・・。
598554:2006/06/16(金) 18:20:04 ID:uwbUle6f
なに言ってますか彼女は。
「・・・ツンデレ?」「ツンデレだな」「ツンデレですたい」
おいこら、何ほざいてますかクラスメイト諸君。あと最後の奴無理やりキャラクター作ろうとしてるんじゃねぇ。
「ツンデレ・・・とは何か?」彼女は理解していなかったようで、僕は安堵の息を吐いた。これでツンデレなんかだと認識されたら、この先一生言われ続けるのは目に見えてやがる!
「昴城さん、ツンデレというのはねー・・・」
「俺はツンデレなんかじゃねぇぇ!」
教えに来たクラスメイトの女子をどなって追い返す。余計な知恵つけさせるんじゃない!苦労するのは僕なんだぞ
「知的探究心が疼かされたんだが・・・」
残念そうに言う彼女。
「・・・・・・。『ツンデレ』というのは赤道付近のアフリカ中部、その中でも山岳地帯に自生している樹木、若しくはその果実のことだ。
 学名はツンガララントデレール。ツンガと言う地域に咲く赤き仔という意味だ。果実は赤くすっぱいが食用にも適している。移植は難しいため一般にはあまり知られていない!」
「へぇー初めて聞いたぞ。さすが君は博識だな」
感心する目で見ている。ちょっと心が痛む。
「しかし、何故皆ツンデレを知ってたのだ?」
「昨日テレビでそういう番組やってたんだよ。ほら、さっさと食わないと時間なくなっちまうぞ」
「ん、ああ、そうだね・・・」
よっし、ごまかしきった!腑に落ちない顔をしているが、夕夏には悪いがこのまま永遠に知らずにいてもらおう。
「ふむそのうちにそのツンデレを食しに行きたいな。勿論そのときは君も一緒だ」
「はい?」
「いいではないか。何日かかるかは判らないがそれもまたいいだろう。ならば夏休みを利用するべきではないな・・・」
「あ、あのー・・・」
「うん?・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私と一緒では嫌か?」
目に見えてしょげる夕夏。あーいつもは自信に満ち溢れているのでなんで今になってそんな捨てられた子猫みたいな目するんだよ
嫌じゃない。旅自体は嫌じゃないんだけど・・・
「い、いや、楽しみだよ。見つかるといいな」
ぱーと目が輝き始める。判りやすいな。
「ああ、だが例え見付からなくともそういった旅自体が楽しいと思うのだ。未知なる領域に足を踏み入れる。やはりこれが冒険の真髄であると・・・」
表情と口調はかわらないが目はいっている。
どうやら僕は自らの手で存在しないものを探す旅に出るハメになったらしい・・・・・・。
あはははははは・・・まあいいけどさぁ。しくしく。
599554:2006/06/16(金) 18:21:18 ID:uwbUle6f
ちなみに夕夏も今は自分の弁当に箸をつけている。
「それじゃ、改めて頂きます」
「はい、どうぞ」
改めてお弁当箱を見ると、玉子焼き・唐揚げ・ポテトサラダ等と色とりどり並んでいる。
料理も上手かったんだなと思って見ると、彼女はサッと自分の弁当箱を蓋で隠した。一瞬しか見えなかったがなんだか黒い玉子焼きや唐揚げらしきものが見えた。
「な、なんだ?君の分はそこにあるじゃないか」
「あ、いや、同じ弁当だよね?」
「ああ、いや違う。た、確かに同じ献立かもしれぬが愛情の差ということにしておいてくれ。それ以上は乙女的プライドの問題に関わってくるのだ」
よくわからないようなよく判るような。
他人に対して一番美味しい所を譲るのを礼儀か、それとも自分をよく見せるための虚栄心か。
どちらにしろ知ってしまった以上、あんまし気分のいいことじゃないよな
「いいから見せろって」
「食事中に騒がしいぞ君は」と言いつつ右手に箸左手に蓋で鉄壁の守りを見せる夕夏。
ゆっくりと動かしてるというのに何故か残像が見えるという達人現象が起こっている。
むう、この守りを打ち破るには正攻法では無理か。ならばどうするべきか・・・。
・・・!・・・思いついた。思いついたはいいがこれは・・・
一人黙々と箸を進めている夕夏。さっさと証拠隠滅してしまおうという肝か。
・・・・・・そうだよな。あー馬鹿だな。さっき思ったこともすぐに忘れちゃっている。
意を決して箸を握る。喧嘩売られたときだってこんな緊張しなかったのに・・・。
唐揚げを一つまみ取って彼女の方に持っていく。
「・・・・・・(逡巡)。あ、あ〜〜〜〜〜ん」
ピキン。今教室が凍りついたのを感じた。
夕夏も珍しく目を見開いてる。
えーいお前ら!、僕の散り様をその目にやきつけろ!
「ほら、あ〜〜〜〜ん。だよ、やりたかったんだろ。あ〜〜〜〜〜〜ん」
「あ、ああ・・・」
きっと顔は真っ赤になってる。この公開羞恥プレイのせいもあるが、それ以上に少し頬を染めた夕夏を可愛いと思ってしまったからだ。
『あ〜〜〜〜〜〜〜〜ん』
「うまいか?」
「味の方は我ながらまあまあの出来だ。だが、やはり君が『あ〜〜〜〜〜〜〜ん』してくれたことが最高のスパイスだ」
「そうか、よかったな」
「うむ。ぷりーず、わんすもあ」
親から餌を与えられる雛鳥のように口を開ける
「もお、やらねぇよ!」
「一度やるのも二度やるのも変わらないではないか。この余韻が消えないうちに楽しみたいんだが」
よし、ここで折り返し地点だ。頑張れ僕。例えゴールが(悶絶)死だったとしても。
「僕の食う分が無くなるだろ。まあやってもいいが、その代わり・・・・・・・くぅ・・・・・・俺にもしてくれよ」
「・・・・・・ん?どういうこと・・だ・・・」
首をかしげる夕夏。
僕は意を決して
「あ、アーーーー・・・・・・・・・・ん・・・・」
大きく口を開けた。
「ああ、そういうことかい。やっと素直になってくれたのだね」
くそ、突っ込み入れられねぇ。まあ嬉しそうにしてるからいいか
600554:2006/06/16(金) 18:22:47 ID:uwbUle6f
「ではいくよ・・・」
「ああ、違う違う」
俺の弁当箱からオカズを取り出そうとしてるのを口で停止させる。
「こっちだと減っていく一方だろ。だから、そっちの奴を食わせてくれよ」
「い、いや、これはだね。あ、・・・あまり人に見せられるものではないんだ」
苦笑しつつ隠される弁当箱。
「いーじゃんか。なんでだよ」
「私は料理は出来るには出来るのだけど、元々が不精だからね。自分や家族が食べる分には問題ないんだが、人に食べさせるには少々見栄えが望ましくないんだ。
 やはり料理において色彩は重要なファクターだと今朝調理しながら思ったのだよ。それによって受ける味も変わってくるだろうし、やはり君に美味しいと言って欲しいから見栄えが悪いのはそちらには取り分けなかったんだ。」
 現在も修行中なので腕が上がるまで待って欲しい」
「やっぱりか。僕はそんなこと気にしないよ」
「いや、これは私の問題だ。やはり、君には美味しい物を食べて欲しいからね。こちらを見せて味が落ちたと思われても嫌なんだ」
断固として譲らない。
「あーもー!・・・・・・あのね、僕は嬉しいんだ。人が作ってくれた弁当なんて初めてだし、それが夕夏が作ってくれたならなお更な。
 それに作ってもらったのはこっちじゃないか、それで文句言うつもりなんかないぞ」
「君がそんなことをしないのは判っている。君のそういうところは私も好きだ。
 だが、だからこそなのだよ。好きな人のお弁当というのはそれだけ特別なんだ」
「この、分からず屋!
 結局僕の事を信用してないんじゃないかよ。」
「それは聞き捨てなら無い。
 今のは私に対してだけじゃなく君自身に対しての侮辱じゃないか?
 撤回して欲しい」
「するかよ。
 さっき言ったよな、『家族が食べる分には問題ない』って。
 もし、僕と結婚しても『今日は出来が悪いから朝飯はぬきだ』とかいうのか?」
「それは論理の飛躍だよ。少しは落ち着きたまえ」
「落ち着いてるよ。
 僕にはお前の言ってることは他人行儀にしか聞こえない。
 僕はそんなのは嫌だ。例えどんだけまずかったとしても、それが食えるのは僕だけだっていうのなら喜んで食うね
「・・・・・・」
「だからよ、僕が言いたいのは完璧な人間なんかいないんだってことだよ。
 夕夏だってこんな欠陥だらけの葛西俊介を受け止めてくれただろ。好きだと言ってくれたじゃないか。
 その言葉で僕は救われたんだ」
「・・・・・・」
「・・・・・・。だから、夕夏にはそんなこと言って欲しくない
 料理が下手でもいいじゃないか。夕夏のことだからこれからたくさん練習するんだろ?
 僕はそんな夕夏に惹かれたんだから」
601554:2006/06/16(金) 18:23:57 ID:uwbUle6f
「・・・・・・あ、ああ」
頬が赤くなってる。多分目の錯覚じゃない。
「それに、楽しみでもあるんだ。
 これからどんな風にこのお弁当が変わっていくのかも。
 どんな中身だったとしても全部美味しく頂いてやるからそんな心配しないでくれ。
 おまえが作ったってだけで最高に上手いというのは確定だからな」
「・・・・・・ふふ、随分と安上がりなのだな君は」今まで眉を寄せていた顔がやっと綻んだ。
「それはお互い様。
 まあ、その上でお前が向上心を持つのは悪くないことだってこと」
「ああ、君の言いたいことは判った。そして私の中の君の重要性を再確認した。それに・・・」
「それに?」
「君が私との将来を考えてくれているというのが、やはり嬉しかったな」
『もし、僕と結婚しても〜』
「がっ?!あれは物の弾みでだなぁっ、大体お前がいつも結婚結婚とか言ってるからつい勢いで・・・(あたふた)」
「ああ、そういうことにしておこうか。どんな経緯であれ嬉しかったの本当だ。
 ちなみに、私はいつでもプロポーズしてくれるのは待っているからね。覚えておいてくれ」
「だぁぁぁっ、そういうことじゃないって言ってるだろうがぁ!
 それと周りのお前ら、微笑ましい笑顔で俺を見るな!
 いちゃついてるんだから罵れよ!あんぱん投げつけろよ!」
「いいじゃないか。
 それよりも続きをしようじゃないか」
「だけどなぁ・・・・・・続き?」
「ふふ、あ〜〜〜〜〜〜〜〜ん♪」
ぐぁ!・・・・・・忘れてなかったか。
勢いで行動しないとこんなことは出来ない。んで、さっきので勢い失っちまったからな・・・
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん♪」
やっぱり、回避不可だよな。さっきも同じこと考えたけど、ここで回避は前言撤回になってしまうし・・・
僕は覚悟を決めた

『あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん♪』

パクッ
やっぱり美味い。
だけど、この味・・・・・・懐かしい。
そう、さっきも頭に引っかかったんだ。
僕はこれを昔食べたことがある・・・
602554:2006/06/16(金) 18:25:13 ID:uwbUle6f
『あら、もう起きてきちゃったの?』
さっきの女性が包丁の手を止め振り返る。凄い美人というわけでもないが優しそうな人だ。
『うん、めがさめちゃったんだ』
自分の内側から声がする。これは僕の声か?それにしては目線が低いような
『それよりもおべんとうのなかみってなに?』
思い出した。これは子どもの頃だ。自分で言うのもなんだけど僕もまだ素直だった頃。
『それは秘密♪開けてみてのお楽しみよ』
その笑顔に見覚えがあった
『そっかー、じゃあゆーかちゃんといっしょにたべるよ』
じゃあ、今のはお母さ−

『俊介、一緒に食べるわよ!どーせ、俊介のことだから一緒に食べてくれるのはゆーかぐらいでしょ?』
場面が変わった。ここは山頂?そうだ確かピクニックに来たんだっけ?
目の前にはスモッグを着た気の強そうな娘がいる
『うん、いこっかゆーかちゃん』
そっかこの子が夕夏か。確かに面影がある。性格は今とは大分違うみたいだけど。
二人でシートに座ってお弁当を用意する。
『あれ?ゆーかちゃん、それ・・・』
そこにあるのはコンビニで買ってきたと丸判りの弁当だった
『いいでしょ、別に!パパもママも忙しいんだから!』
気にしていたのか突っかかる夕夏。けれど少し悲しそうだった。
『ねぇ、ゆーかちゃんお弁当半分個しようよ。』
『い、いやよ、哀れみのつもり?!』
哀れみなんて言葉知ってるあたり頭のスペックは高かったんだな昔から
『ううん、僕売ってるお弁当って食べたことないんだ。その代わり僕のを半分あげるから。ね?』
『・・・・・・しょ、しょうがないわねぇ味わって食べるのよ♪』
『うん♪』
・・・・・・。
『・・・・・・どう?』
『うん、ハンバーグ美味しいよ』
『でしょ、だけどあんたのも美味しいわよ。特にこの玉子焼きとか』
『うん、それお母さんの十八番なんだ♪』
『うわ、やっぱり美味しい・・・。俊介は毎日これを食べてるわけよね』
『そうだけど?』
『うーーーん、負けるかも。だけど・・・』
『ゆーかちゃん?』
『ねぇ俊介っ!!!』
『な、何?』
『私、お料理練習する!練習して美味くなって俊介のお母さんより上手くなる!』
『えーけどお母さん上手だからなぁ』
『練習するの!それで、この玉子焼きよりも美味しいのを毎日食べさせてあげる!どう、嬉しいでしょ!』
『僕はお母さんの味が好きだからなぁ』
『な、なら、俊介のおかあさんと同じの毎日作ってあげるわよ!』
『ああ、それだと嬉しいかも』
『ふふん、楽しみにしてなさい♪』

603554:2006/06/16(金) 18:26:42 ID:uwbUle6f
「・・・・・・けっ!・・・・・・介っ!・・・おい、しっかりしろ!」
気が付くと誰かが僕の名前を呼んでいた。あれは・・・
「ゆーかちゃん?」
「へ?・・・・・・よかった気が付いたんだな。どうしたんだ、急に惚けて・・・」
あ、これは夕夏だ。ゆーかちゃんじゃない。夢・・・か?今のは
「びっくりしたぞ、急に黙って動かなくなるからな。衛生には気をつけていたつもりだが何か当たってしまったのかと心配したぞ」
そっとハンカチを差し出してくる。そういえば頬が暖かい。泣いてたのか・・・?
「そ、それよりも、夕夏。この玉子焼きどうしたんだ?!」
「あ、ああ、それはお前に昔食べさせてもらったのを再現しようと苦心してつい先日レシピを完成させたものだ。やはり、それが悪かったのか」
ああ、そっか
「いや、違うよ。そっか、そういうことか・・・」
「それでは・・・・・・」
「ああ、美味いよ。今のは美味い余りのうれし泣きだ」
涙をぬぐいながら
「そ、そうか。なら嬉しいが」
僕の母さんは既に死んでいる。
それ以来食卓にこの味が並んだことは無い。
何度か試してみたことがあるがやはり駄目だった。
それを夕夏は完全に再現してくれたんだ。レシピも何もない状態から、自分の舌の思い出だけで。
きっと試行錯誤した回数は3桁では足りないだろう。
その年月は僕には想像がつかない。だけど、感謝してもし足りない。そして、そこまで想われていると言うことに幸せを感じずにはいられなかった。
ああ、○極さんも鮎食ったときはこんな気持ちだったんだろうなぁ
そんな感慨に耽っていると
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜ん♪」
「なんでしょうか?」
「まだ続きだったではないか。さぁさぁ」
箸先を差し出してくる夕夏
ああ、きっと彼女にとってなんでもないことなんだろうな。
それよりも今この瞬間が大事なんだろう。
なら、僕もそれに付き合おうか。
それを彼女望むならば。

『あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん♪』
604554:2006/06/16(金) 18:29:10 ID:uwbUle6f
以上。
投下してる最中に気付いたがエロがないな。期待してた方々すまん。
一応、同じ二人でエロ有り版も執筆中だが経験のない私には茨も道だ。

一人称うざいとかたかが弁当イベントでなんでこんなに長くなるんだ等批判待っている
605554:2006/06/16(金) 18:31:50 ID:uwbUle6f
しかしな。
いざ書いてみると判るがやはり職人の方々は上手いと言わざるを得ないな。

私は書いた端から浮かんできたネタをとりあえず放り込んでおけという風に書いてしまったのでごちゃごちゃしてしまったようだ
お目汚しすまん
606名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 19:19:00 ID:BhPeGLw6
体中こそばゆくて死にそうになりましたが何か?
超GJ
607名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 19:31:49 ID:TU/S7TlT
>>604-605
>>556

>>554

(;^ω^)
608名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 20:00:52 ID:Hy/6E4XD
>>604
これで、はれて君も職人の仲間入りをしたわけだ
これからもよろしく頼むぞ
609名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 20:35:25 ID:ZmfScb1P
>>604
少なくとも期待には充分応えている分これからが楽しみだね
610名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 23:06:26 ID:H5f00i4e
554氏GJ!
ぜひクラスメイト達に混じって暖かく見守りたいw

大した事じゃないが、
一人称が「僕」な不良というのが思い付かん俺は古い人間なんだろうか?
611名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 00:17:20 ID:era2Z7tA
良く読むんだ。
メイン、特に(地の文)は「僕」だが、クラスメイトには「俺」だ。

つまり、素が出ている場合が「僕」なんだろう。
612名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 00:38:52 ID:eMKBLJ2g
筆力は十分なのに序盤のキャラの説明が厨設定っぽい。
お嬢様が実は幼なじみとか主人公がなんちゃって不良だとか。
俺が幼なじみ=ヒロイン系否定派なせいかもしれんが。
613名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 06:51:15 ID:ZBGeDgAs
>>554
GJ!
いい話じゃないかと。
主人公の母親が死んでいて、彼女がその卵焼きの味を何とか再現していたってところにホロリと来たぜ。
年取ると涙もろくなっていけねぇな。
614名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 08:23:52 ID:55g61uZG
幼馴染スレでも受けそうだね。
615名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 19:23:18 ID:Hc73YLGQ
>>554 GJ!!
この手の話は結構好き。



その後に投下するのも恥ずかしいのですが、自作投下↓

*ちゅーいがき*
入力マシンがぽんこつ携帯なため。
全8レスくらいですが、4レス分投下後インターバルがあります。
読んだ後に(°Д°)な顔になるかと想定されますが、仕様です。

ではでは↓
616アイとユーキの物語A1/4 ◆DppZDahiPc :2006/06/17(土) 19:24:34 ID:Hc73YLGQ
 ムカツク――単純にそう思っていた。

 春日友希はイライラとしながら、手に持った文庫本を幅一杯に本が詰まった棚
へ押し込んだ。無理矢理入れたせいか、表紙がぐにゃりと曲がったが、友希は気
にも止めず。腕に抱えた本を一冊持ち上げ、背表紙下部に貼られたシールを見て、
その場から離れようとした……が。
「春日、いつも言っているだろ。本は大事に扱え、と」
 背後からぬらりと腕が伸び、友希が今本棚に差し込んだばかりの本を抜き出し、
折れた表紙をのばすと。滑らかに本を差し入れた。
 背中に、柔らかな感触を感じる、ヤツはぴたりと張り付いているようだ。落ち
着いた呼気が耳をくすぐった。
「日本には、八百万の神々といって、たくさんの神様がいるんだよ。でだね、私
は一冊一冊の本にも神様が宿っていると考えているのだよ。だから」
 友希は眉間に皺を寄せ「離れろよ」いった。
 聞こえなかったのか、聴いていなかったのか、ヤツは続けた。
「神様を怒らせたくなかったら」
「いいから」
「もっと本は大事に扱ってはくれないか」
「良いから離れろ、暑苦しい」
「おっと、これは失礼」
 小さく肩をすぼめてヤツ――城戸藍はようやく友希から体を離した。
「でも、本は大切に――」
「しつこいっ」友希は声を荒げた。
 二人しかいない図書室、友希の声が響く。
 藍が僅かに身じろぎ、はっとしたような顔をした。――友希はバツが悪そうに
舌打ちし、声を落として言葉を続けた。
「乱暴に本を扱ったのは悪かった。けど、アタシは子供じゃない。一回言われた
ら分かるっての」
……これじゃ、マジ、ガキみたいだ。
「それならいいが」藍がシュンとした子犬のような顔で背を向けてしまった、そ
れをみて友希は更に苛立った。まだなにか言おうと思ったが、藍の背中が出入り
口へ向かっていくのを見て、喉が詰まった。
 もしかしたら怒ったのかも、そう考えると背筋が冷えた――けれど、藍が機械
的に顔だけ振り向かせ、いつものなに考えてるんだかよく分からない顔で。平然
と。
「トイレ」
「へ?」友希は拍子ぬけして聞き返してしまった。
 藍は気にした様子も見せず「トイレ行ってくる」そう繰り返した。
「あ、……そう」
 藍はコクリと首を傾けて、図書室の古くなってガタガタうるさい引き戸から出
ていってしまった。
 友希はただ、それを見送った。
617アイとユーキの物語A2/4 ◆DppZDahiPc :2006/06/17(土) 19:25:44 ID:Hc73YLGQ
 ぴしゃりと扉が閉まり、藍の足音が遠ざかるのを待って、「ムカツク」もう見
えない背中へ毒づいた。
 友希は藍のことが嫌いだ。
 嫌いな理由を上げれば小一時間、気に入らない点をあげるなら更に二時間、聞
くほうが嫌になるだけ藍の悪口をいえる。
 そんな手合いと一緒に図書委員なんてさせられているのだから、胃に穴が開く
のではないかと思うほどだ。
 友希はフンと鼻息荒く、手元に残っていた最後の一冊を本棚へと叩き込んだ。
 それを見ても叱る者は藍くらいしかいない――というよりも、近場に市立の巨
大図書館があるためか、普段から図書室は人気がない。
 一日に二人三人くらいしか本を借りていかず、人の出入り自体も少ないため、
友希たち図書委員の仕事は少ない。
 本当ならこうして図書室にいる理由もない、藍と友希以外の図書委員たちは適
当な理由をつけてサボり、仕事を友希や藍に押しつけていく。なにを考えている
か今一掴めない藍はそれを黙って引き受け、友希はなぁなぁに引き受けさせられている。
 仕事量自体はそれほどではないし、黙って座ってればいいだけ。――楽な仕事
には違いない。
 だからこそ、というわけでもないが。そういう理由も含めて。友希は、なり手
のなかった図書委員になったのだ。
 様々な理由が絡んでいた、けれど、今となってはそれらはどうでもよかった。
 ヤツ――城戸藍から言われる様々な嫌味に耐えること、それだけになっていた。
 意地になっていると言ってもいい。
 自分でも何故かは分からない、けれどヤツから逃げるのだけは嫌だった。
 図書委員の仕事は藍との戦いだと、友希は考えていた。


――そんな、初夏。

 その日も図書室には友希と藍、二人きり。カウンターに並んで座っていた。
 藍はなにがおもしろいのか重たそうな本を、読んでいるのか疑問に思ってしま
う速度でめくっている。
 その様子を友希は漠然と眺めていた。
 することが無いわけではない。もうすぐ期末テストだ、勉強をしなければ父の
怒りを買う。けれど教科書を開き、ノートを開いて――やる気が失せた。面倒だ
った。そこまでする価値があるのか疑問だった。目の前にはテストなどどこ吹く
風の読書馬鹿がいる、読書中毒者と言ってもいい。
 藍の横顔はいつもながら涼しげで、テストなんて期末の猛暑は関係ないようだ。
618アイとユーキの物語A3/4 ◆DppZDahiPc :2006/06/17(土) 19:26:54 ID:Hc73YLGQ
――やはり、普段から本を読んでるヤツは違うってことか。
 友希はフンと鼻を鳴らした。
 天は二物を与えずというが嘘じゃないか。
 この読書馬鹿は、性格こそサイアクだが。頭がいい。それだけじゃなく、悔し
い話だが――顔もいい。
 普段は野暮ったい眼鏡のせいで分かりづらいが、二重瞼の大きな、それでいて
子犬のような愛らしい瞳。ぱちりと瞼を開閉するだけで見栄えする長いまつげ。
控えめながら形のよい鼻梁。尖った顎。
 髪より僅かに明るい色のヘアバンドは、ともすれば重たく見えてしまう長い黒
髪にアクセントを加え。なにより野暮ったくみえる眼鏡と合いまると、文学少女
らしい見栄えとなり。魅力となる。
 身体つきも悪くなく、むしろいい。
 出席番号でも並んでいるため、体育の時間前に着替えるときなど嫌でも目には
いるせいで、瞼の裏に焼き付いてしまった肢体。
 白い極め細かい肌、それを栄えさせる下着。普段は制服に隠されているため分
からない、重たそうな乳房。くびれた腰。
 なにより、友希は藍の唇を、気に入っていた。
 無口な性格を象徴するように少し厚めで、湿った口唇。
 時折描く下弦の月は友希を魅了するためかと思うほど。
 幾度か触りたい――触れたい――キスしたいと思ってしまうほど、藍の口唇は
魅力的で。今もなにか遠慮がちに動いていた、
「私の顔になにかついているか」と。
「……ぅ、え?」
「先ほどから人の顔をジロジロ見て」ぱたんっと本が閉じられた。「そうならそ
うと言ってほしい」そういって、ずれていた眼鏡を直した。
「あ、いや、そういうわけじゃないけど」言ったが、誤魔化しにもならないとは
友希自身も理解していた。
「なら、なんで見てたの」藍の目が友希の目を捉える――友希は思わず目を逸ら
してしまった。
「……ひ、ヒマ潰しっ。ただの、悪いか」
 友希は自分の機転の効かなさを呪った。
「ふむん」藍は顎に手をあて、僅かに何事か考えたのち。「そうか」納得した。
――のはいいが、なにをどう納得したのか。
「そうか」繰り返し。
 ズイッと身を乗り出して、鼻と鼻とがぶつかりそうな程顔を近づけてきた。
「ヌワァッ!?」
 仰け反って驚き――パイプ椅子ごと転びそうになった友希の背を、藍が支えた。
鼻の頭がコツンとぶつかった。
 目の前には藍の無表情な顔があった。
619アイとユーキの物語A4/4 ◆DppZDahiPc :2006/06/17(土) 19:28:17 ID:Hc73YLGQ
「なな、なにする気だよっ」早口でいうと。
 藍は変わらぬ顔つきで「暇つぶし」短く答えた。
「ひ、……ヒマ潰しって」ごくりと唾を飲み込んだ。
 当たり前だが、呼気が間近――キスできそうな距離に友希の顔がある。眼鏡が
邪魔だと思った。
 友希の頼りない胸に、藍の豊かな乳房が衣服越しに触れていた。――心臓の高
鳴りが聴かれているのではないかと思うと、更に心音がビートをあげる。藍の体
温が初夏の空気に混ざって、友希の身体へ伝播するように身体が熱くなっていく。
『離れろ、触るな、どっかいけ』
 言おうとした言葉が、困惑し混乱して混濁する頭の中に溶けて消えていき。―
―代わり頭の中が一つのことで占められていく。
「ひ、ヒマ潰しって……楽しいかよ、ヒトの顔みて」
「楽しい」即答した割に、藍はすぐに言葉を継がなかった。
 その間に友希の頭の中では、その言葉をどういう意味か理解しようと回る。廻
る、周り回って。
 バカみたいな顔してるってこと?
 間抜けな、アホみたいな、顔。――アタシ、バカにされた?
 その考えに至ると、自然、顔が真っ赤になっていた。
 バカにされた――藍にバカにされたという事実が、恥辱が。友希の相好を朱に
染めた。
「楽しい」藍は繰り返した。「春日の顔は見ていて楽しい」
 そうは聞こえない口調で藍は言う。
「……どういう意味だよ」
 楽しいとか抜かしているくせに、藍の顔は普段と変わらぬポーカフェイス、一
つも乱れていない呼気。――どうせ慌ててるアタシを笑っているに違いない。友
希は歯ぎしりする代わりに喉を小さく鳴らし。
「……バカにして」
 呻くように呟く。
 顔を近づけているだけにも関わらず、ドギマギしている自分をあざ笑っている
のだ、この女は。
 怒りにも近いそんな想いを乗せ呟いた言葉へ、藍はきょとんとした顔をした。
驚いたような、そんな表情を。
「していない」
 この女――ヤツ――藍にしては珍しく主語の抜け落ちた言葉をいった、普段か
ら主語だけ言うことは多々あったが。主語を抜かすなんて珍しい――友希は、そ
んな割とどうでもいい、くだらないことをまだ混乱している頭で考えながら。
「な、なに」聞き返した。「していない、て。なにを」
 藍は全く、いや僅かに顔をうつむかせて言った。
「していない。バカになどしていない」と。
620アイとユーキの物語B1/4 ◆DppZDahiPc :2006/06/17(土) 19:36:56 ID:Hc73YLGQ
 友希は逸らしていた瞳を藍へと少しだけ戻した。
「確かに春日の顔を見ていると楽しい、とは言ったが。馬鹿になどしていない」
「う、うそ言うなっ」
 藍は自分を馬鹿にしている。
「楽しいって、んなこといって。今までアタシと喋った時とか殆ど笑ってなかっ
たくせに、ヒドい時にゃ『ハハハ』とか喋ったくせに」
 意味も道理も、なんの関連性もない非難にも、藍は。
「ウソじゃない。春日、私は君といるととても、楽しい……そう、楽しいんだ」
藍なりに真摯に答えた。「私は器用ではないし、笑うのが得意ではない。けれど
君と一緒にいると、心が弾む、というのだろうか。胸がドキドキするんだ」
「むねが……どきどき」友希は口の中で言葉を繰り返した、その呼気は藍にも届
いた。「ああ」
「君が私を見ていた、君が私の隣にいる、それだけで嬉しい」友希の手に藍の手
が重なる。「いいか?」主語の無い言葉――友希は頷いた。
 藍の手に導かれ、友希の手は藍の胸、豊かな乳房の合間にあてられた。
 否応なく小指と親指に触れる乳房が、自分についてるのとは全く違う柔らかさ
と弾力を伝えてきたが。それ以上に、重なる手の温かさ、少し骨っぽい掌。
 なにより、どくんっどくんっと蠢く心音に友希は驚き、藍の顔を見た。――藍
は僅かに瞳を伏せた。
「暇つぶしだと、さっきは言ったな」藍は唐突にいった。
「う、うん」
「嘘だ」
「……へ?」
 意味が分からなかった、なにを言われているのか理解できなかった。
 ただ、心音がさらに速くなったことだけがわかった。
「試した」
 藍の呼気が少しだけ乱れた。
「君の側にいるだけで、私はどうにかなってしまいそうなくらい胸がドキドキす
る。病気かと真剣に考えた、けれど違う。そう違った。だから試した」
 必死で何かを言おうとしていた。
 友希は藍の言いたいことを理解できた――できてしまった。

『――春日友希は城戸藍が嫌い』

 そうじゃなかった。そう思っていただけだった。

『ヤツはアタシをバカにしている』

 違う。違った。違ったんだ。
 ヤツは――藍は、藍は…………

「試した。私自身を。私自身の、心を」言い聞かせるように繰り返した。熱い吐
息が肌に触れ、友希の心を燃やす。
「笑わないでほしい」
「……うん」
「できれば、嫌いに、ならないでほしい」
「うん」
「春日。私は君のことが、君の顔が」
「うん…………ン?」
621アイとユーキの物語B2/4 ◆DppZDahiPc :2006/06/17(土) 19:38:02 ID:Hc73YLGQ
「別に君の顔が中性的だとは言わない。けれど、どうやら私は君の顔が、好みの
タイプなようだ」
「……………………………………は?」
 藍は変わらぬ顔つきで訥々と喋り続ける。
「私は昔から異性という者に対し、恋心というのを抱いたことがなかった。その
理由が分かった、君と出会ったことで。これまでの人生において私は、君のよう
な顔つきの人間にはなかなか親しくなる機会がなかった。いやそれ以前に、子供
時代はひきこもりに近かった。だから君のような――」僅かに口ごもり「ぎゃる、
というのか? まあそんなやつだ」
 友希は口を開けたままぽかんとしていた。
「悪く言えば遊び人とでも言うようなタイプ、軽薄そうに見える人間に魅力を感
じる人間だということが理解できた。つまり――」藍が言う前に友希が言葉を奪
った。
「つまり。アタシみたいな顔の 男 が好き、てこと?」
「ああ、そのようだ」頷いた、ハッキリと。
 ブツンッ、形而上において何かが弾け飛ぶ音がした。形而下に生きる藍には聞
こえなかったが、その代わりに、
「ザッケンナァーー!!」マグマのごとき怒りが噴火し、溶岩流でさえ足並揃え
て逃げだしそうな怒声が図書室に響き。
 驚いた藍はバランスを逸した。
 藍によって支えられていた友希の身体が、パイプ椅子ごと後ろへと引っ張られ
ていき。友希の手をつかんでいた藍もろとも――転げ落ちた。

 眼前には変わらず藍の顔があった。
 眼鏡越しに視線が交わる、驚きと――驚き。
 混ざりあったのは二つの視線だけではなく。
 心音が重なる、胸と胸が重なり。こころもとない乳房で、手では決して収まり
きらない乳房の感触を味わうという不可思議な経験をしながら。――友希は眼を
見開いた。
 そこには藍の顔があった、間近に、キスできてしまいそうな、先ほどより近い
距離に。
 重なっている感触は柔らかかった。
 二つの心音、体温、精神が同じリズムを刻んでいく。初めてだった、なんて恥
ずかしくて言えない台詞が心の中でリフレインされる。
 椅子ごと倒れたせいで背中に痛みを感じていた。――今は痛みを感じていたか
った。現実を忘れてしまいそうな現実。
 時が止まっていると錯覚するほどの、長い長い――
「う、……あ、あ」友希は喉を鳴らして呻いていた。
 そのうめきに、藍はパチリと音が鳴りそうなまつげを動かし瞬きすると。
622アイとユーキの物語B3/4 ◆DppZDahiPc :2006/06/17(土) 19:38:55 ID:Hc73YLGQ
 なにもなかったように――身体を離し、立ち上がった。
 平然とした顔で、けれどギコチナイ動きで「はい」華奢な手を差し伸べた。
「う、うん。……ありがと」友希はその手を取り、助けてもらって立ち上がった。
 体温が感じられそうな距離に二人は立つ。
 どちらからともなく目を逸らす――手は繋いだまま。
 感情という名の血液を掌で感じ合いながら、二人は無言で互いの体温を確かめ
た。それはまだ朝焼けのように不確かで、それでも確かに暖かかった。
 友希はなにか言おうと思い、考えた――気の利かない自分が呪わしかった。
 藍が呟くように、落ち着いた――フリをした――声でいった。
「あぶなかった」
「え」
「気をつけろ。春日」短い言葉。
「わかった」でも伝わった――ように感じた。
 二人きりの図書室に、六時を告げるチャイムが鳴った。窓から差し込む夕日で、
図書室は鮮やかなオレンジに染まっていた。
 友希は視線をオレンジ色の書棚へ向けた、背表紙のシールがキラキラ輝いて見
えた。
「城戸さん――」友希はなにか言おうとしたが、藍は手を離してしまった。
「城戸、さん……?」友希のうめきに、藍は背中を向けた。
 立ち去ろうとする背を、友希は追いかけようとした。けど、言葉がそれを阻ん
だ。
「トイレ」
「は……?」友希は思わず聞き返してしまった。「なんて?」
 藍は機械的に首だけ振り向かせて「トイレ、行ってくる」
 そういって図書室から出ていってしまった。
 それを見送るかたちとなった友希は、気が抜けたように座り込んだ。スカート
がしわくちゃになっていた。
「……ムカツク」友希は呟いた。
 唇に触れる。
 先ほどの感触を確かめるようにゆっくりと、そこにあるのは自分の唇なのにも
関わらず。いつもより柔らかに思えた。
「ムカツク……」もう一度呟いた。
 あんなに落ち着いてるのがムカツク。
 頭がよさそうなのがムカツク。
 スタイルがいいのがムカツク。
 かわいいのがムカツク。
 なにより。
 素直になれない自分が――ムカツク。

623アイとユーキの物語/終 ◆DppZDahiPc :2006/06/17(土) 19:45:05 ID:Hc73YLGQ
 藍はトイレへと足取り確かに向かいながら、先ほどのことを思い出して――胸
を押さえて屈んでしまった。
 心臓が張り裂けそうなほどドキドキする、身体が熱い、頭がボーッとする。…
………これは、
「風邪、か?」



(´・ω・`)続きます。全二回から三回予定。(200X年投下予定)
素直クールて難しいね。
624名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 10:00:13 ID:1PJbk8bW
質問なんですがこれは百合?
625名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 10:21:23 ID:W2L3iUe7
>>624
うん、百合。
主観人物(友希)の描写がおざなり過ぎて、
かまいたちの夜に出てくる青い人影状態だから、分かりにくいけど。

(´・ω・`)分かってるなら加筆しろよってな。


てか百合は駄目でした? 駄目なら退散するけど。
626名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 10:24:50 ID:DnQ44O2T
百合はこのスレ、アリなのか?まぁ、個人的に続きは気になるが。
627名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 12:18:39 ID:jE8BdVUi
スレ的にはアリだと思う
個人的にはあんまり好きではないが
628名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 12:35:12 ID:W2L3iUe7
ふむん、なるほど。
よし、ちょっと性転換させてくる。
629名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 13:54:54 ID:02fPfxCT
とにかく萌えればなんでもよし
630名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 17:10:30 ID:4Fma32Jy
なんか特殊属性あるのは事前に説明あれば
631名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 18:19:58 ID:BgsStpHE
性転換って…










むしろフタでっ!
632名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 19:01:55 ID:W2L3iUe7
Σ(゚Д゚;)ふ、フタナリッ!!? 書いたことないよ。
633名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 19:27:28 ID:sh217V4g
>>632
なんだとっ!?
素直クールとふたなりは合うんだぞっ!?
なにしろ、VIPの素直クールスレで
一番長編な作品を書いている職人さんは
本人がみさくら系ふたなり美少女なくらいだからなっ!!
634名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 19:46:45 ID:DnQ44O2T
VIPか・・・。     突然だけど、素クールというと、なぜか和風なイメージがあるんだが俺だけ?
635名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 19:54:38 ID:mQcEFDRp
まぁ洋風の素直さのイメージはクールと並存しがたいとは思う。
636名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 20:08:12 ID:shHgHgYS
百合か〜・・・百合はちょっとな〜。
637 ◆DppZDahiPc :2006/06/18(日) 21:27:40 ID:W2L3iUe7
よしここまでの流れで理解した。
俺には三つ選択肢がある。

1.職人としてのプライドを貫き、そして「百合はちょっと……」な連中を覚醒させる。
2.フタナリか友希クンにしてお茶を濁す。
3.逃(ry


( ゚Д゚)迷わない、迷わず俺はこの3を選ぶぜ!!
    覚えていやがれ、別なSS引っ提げ戻ってきてやるからなぁっ。
638名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 23:03:06 ID:4Zn9DJcW
待てやコラw
639名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 23:23:22 ID:BgsStpHE
ナレーション「逃げられない! ◆DppZDahiPcは回り込まれてしまった」
ナレーション「逃(ryのコマンドは封じられてしまった。」
ナレーション「住人の攻撃。住人は◆DppZDahiPcを待っている」
640名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 23:46:24 ID:5OU5IeNR
なんか良く解りませんが、こういう事ですか?

「ところで私のちんぽを見てくれ、これをどう思う?」
「す、すごくおおきい、っていうかなんでそんなの生えてるんですか!?」
「君を思うあまりに生えてしまった、や ら な い か ?」
「ちょ、ちょっと待ってください、僕は男の子アッー!」

需要なさそうだなー。
641名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 00:36:16 ID:rSwnAh2b
むう……ヒロインの名前が被った(字や読みは若干違う)けど、どうするか……。

ま、いいや。
無視して出来るだけ早く書き上げるべ。
642 ◆DppZDahiPc :2006/06/19(月) 01:24:16 ID:eyAu8heX
>>639
L2+R2同時押しな方向で。


>>641
実を言うと君の脳からインスパイヤし(ry
643名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 18:12:57 ID:KvUlsOqy
百合がイヤとか言って空気を悪くしてしまった・・・orz
マジでごめんなさい。オレのことは気にせず、このスレの繁栄のためにも
続きを投下してください。(´;ω;`)
644名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 20:40:19 ID:Pjv0s4ht
>>642
で、1バージョンはどこのスレに投下するんだ?
ぜひとも聞かせて欲しい。
645名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:09:31 ID:TONFET4N
始めまして。ちょっとした実験投下。
こういう素直クールもいいかなと思い。評判よければ・・・いいなぁ
646名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:10:06 ID:TONFET4N
「舐めなさい」
「は?」
 俺(早乙女 士郎)の目の前に飴玉が突き出される。
 赤と黒の半透明の袋に入ったそれを俺をに突き出しているのは、この町の旧家の一人娘。久崎凛霞(くさき りんか)その人だ。
 もっとも、俺にとってはただの隣席のクラスメートだが。
「まぁ。いただく・・・・・・・・・んぐぅ。か、かれぇ」
 飴玉を舐めた。最初は不思議な刺激が舌にくると思った手度だったのだが・・・気づけば口の中がヒリヒリする。
「広告に偽り無しですわね。ではこちらはポイしましょう」
 そう言ってポケットに入っていたもう一つの飴玉をゴミ箱へと捨てた。
 人を人体実験に使うなよ。
「あら。もう捨てて結構ですわよ」
「辛いけど、嫌いな味じゃない。てか、旨い。最初の辛いのを凌いだら」
「美味しいのでか?捨てたのもったいなかったでしょうか」
 久崎が俺の方を見る。
「もうないのか?」
「来る途中にコンビニエンスストアーの前で試供品を配っていただけでしたので」
「ふむ。んじゃ、帰りにもらうか買うんだな。お、中に甘い蜜がはいってら。あま〜」
「くぅぅ・・・あ、そうですわ」
 何かを思いついたのか、じっと俺の顔を見る。
「な、なに?」
「吐き出しなさい」
「は?」
 先ほどよりもさらに唐突な命令だ。
 唐突というか突拍子もないというか、とにかく普通では考えられない。
「口の中の物を吐き出しなさいと言っているのです」
「それで。どうなるんだ?」
「私が舐めます」
 教室内がざわめく。
 そりゃそうだろ。俺の舐めている飴を舐めると言い出したのだから。
「吐き出さないつもりですか?」
「当たり前だろ」
「どうあっても飴玉を死守するおつもりですわね。でしたらこちらにも考えがあります。覚悟なさって」
 お、おい。ちょっとまて。
 髪をかき上げてなんで顔を近づける。俺は後ろが壁だから逃げれないんだが。てか、お前ら見てないで助けろ!!
「んっ」
 久崎の唇が俺の唇に押し当てられ、口の中に舌が入ってくる。
「んっっっ・・・ぷはぁ・・・ん・・・本当に甘いですわね」
647名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:10:47 ID:TONFET4N
 あれから女子からからかわれ、男子に殺意を向けられ。散々だった。
 もう一人の当事者は我関せずと言った感じで自分の席で甘い飴を堪能していたし。
「あら。佐久間さん、今お帰りですか?・・・随分遅いのですね」
「誰かさんのせいでクラスの男子にタコ殴りに合いそうになったのを、全員の掃除当番を肩代わりすることで許してもらったんだよ」
 みんなが殺意を抱くのはわからなくもない。
 容姿端麗成績優秀、けど運動音痴。その上金持ちときたらあわよくばと狙っている男だって多いはずだ。
「さて。帰るかな」
「では私も」
 俺の隣りを歩いて久崎が校門をくぐる。
「あれ。今日は車は?」
 久崎はいつもは黒塗りの車での出迎えがあるはずなのだが。
「今日は家の車が全て故障してしまいまして」
「家のて、お前の家ってかなりの台数の車があるんじゃなかったか?」
「えぇ、10台ほど」
 それが全部故障って・・・呪いでもかけられたんじゃないのか?
「じゃあ出迎えは?」
「ありません。朝は聖が一緒だったのですが帰りは時間が合わないので」
 聖とはクラスメートで、久崎とは仲が一番よかったはず。
「あぁ、それでコンビニの飴を持ってたのか」
「はい」
 どおりで。普段は送り迎えあるはずだからなんでそんなもの持ってるのかと思ったよ。
「帰りは居ないのか?」
「はい。私は生徒会の仕事があったので」
「なるほど・・・帰りは一人か?」
「その予定ですが」
「んじゃ。送ってく」
「ありがとうございます」
 こいつ、しっかりしてそうで世間とはかなりはずれてるからな。
 昼間の件だって。
「あ!そうだ、あの飴!!なんであんなことしたんだよ」
「あんなこととは?あぁ、本当に辛いのか自分で試すのは少々怖くて。申し訳ありません」
「じゃなくて。その、口移しというか・・・だから」
「美味しそうだったからですわ」
「美味しそうって・・・あのなぁ。いくら飴が美味しそうだからって普通はあんなことしないだろ」
648名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:11:21 ID:TONFET4N
 久崎が俺を見上げている。心なしか目じゃなくて口元を見られてないか?
「美味しそう」
「は?」
 今日三度目。と言っても今までで一番わけがわからない。
 呆けている俺の顔に久崎の顔が近づき。
「いただきます」
 艶のあるその唇がとても魅力的で。
 気づいたらまたキスをしていた。
「んっぅ」
 久崎の舌が入ってくる。
 俺は学校の塀に背中を預け力が入らない。まるで久崎に押し倒されたような形。
「ちゅ・・・ん・・・はぁ」
 くちゃくちゃと舌の絡まる音が誰も居ない通学路に響き渡る。
 帰るのが遅くてよかった。
 俺はその気持ちよさに、押しのけることも忘れてそんなことを考えていた。
「佐久間・・・さん・・・んっっ」
 久崎の腕が俺の頭に絡まる。
 俺も久崎を求めたくてその腰に手を回して抱き寄せ自ら舌を絡めていた。
「はぁ・・・んっ・・・ちゅぅ・・・ゃぁ」
 口を離すと、お互いの混ざり合った唾液が伸び、地面に落ちる。
「佐久間さん」
 久崎は俺の胸にもたれかかってくる。
「なんで・・・こんなことした」
「我慢出来ませんでした」
「我慢って」
「佐久間さんの唇がとても美味しそうで・・・事実・・・すごく美味しかった・・・頭が溶けてしまいそうなくらい」
 俺は久崎の長くて綺麗な髪を撫ぜる。
 潤んだ瞳で俺を見上げるその顔はとても可愛らしく、けれど、とても淫靡な印象を受けた。
「昼間も・・・飴玉は口実。本当は」
 俺は久崎の言葉を待った。何も言えない自分が不甲斐ないと思ったが、喉が張り付いて言葉が出てこない。
「お慕いしております。佐久間さんの事を思うと・・・家まで我慢で来ませんでした」
 顔が、胸が、体が熱くなる。
「今日は外泊の約を祖父母と取り付けてあります。どうか・・・佐久間さんのご自宅に」
「俺の家は」
 なんとか出た言葉。けど、それも微笑む久崎の言葉にさえぎられる。
「どなたもいらっしゃらないのですよね・・・存じております。だからこそ・・・行きたいのです」
 俺はこの我が侭で素直な女の子の策略に全てはまっていたのかもしれない。
 いや、俺だけじゃなくて・・・きっと彼女の家の車も生徒会も全て彼女の思惑。
「佐久間さん」
 天使とも悪魔ともとれる微笑み。
 それを俺が断れるわけがないじゃないか。
649名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:13:45 ID:eyAu8heX
>>644
ハハハ、大佐。俺の身体は一つしか無いんだぜ。
その上、遅筆なんだそう上手く事が運ぶと思わないでくれよ。
今はとりあえず、こっちを2バージョンで完成させることにのみ心血注ぐ。
それ以外は考えられねぇよ。
650名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:14:17 ID:TONFET4N
以上。ごめんなさい。今回はエロ入ってないです。
一応続きも考えてたり。
世間知らずなお嬢様は素直すぎるあまり色々すっとばした感じになるかなと。
651名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:24:36 ID:nb3bcVtP
イイヨイイヨー

あと全くもって関係ないけど>>650氏のIDはもう少しでトンファーだったのにw
652名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 21:25:35 ID:eyAu8heX
危うく割り込みかけたスマン。

>>650 GJ!!
こういうシチュ好き、つーか飴玉あたりの絡みが、もう最高(*´д`)。
続き期待。
653名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 03:26:01 ID:RVZ4SuAk
>>650
ああ、いいなあ。こんな甘々。
お嬢様は、やっぱツンデレか素直クールに限る。
少年よ、強くなれ。



さて、誰もいない……投下するなら今のうち。
完成まで粘ってたら、こんな時間になっちまった。
とっとと寝よう。

かなり長いですが、ご容赦を。
「彼」と「彼女」完結編、行くぜ。
6541/17:2006/06/20(火) 03:26:38 ID:RVZ4SuAk
 それは、唐突に訪れた。
 いや、違う。いつだって、唐突に訪れ得るものなのだ。
 だからこそ、こう呼ばれる。
「――――事故?」
 その報に、耳を疑った。
 携帯電話からは、誰が、何処で、どうしてそうなったかの説明が続く。
 話が右から左へ流れていくというのは、まさにこのことか。
 情報としては頭に刻まれても、理解を示すのに酷く時間が掛かる。
 まさかそんなことが……。
 予想なんて、しているはずがない。あまりに現実感の無い言葉に、呆けた返事をする。
「誰が?」
 既に一度聞いたことだ。
 解っている。聞くまでもない。そうでなくとも、自分への連絡という状況を考えれば、答えは明白だ。
 息を呑む。
 連絡を受けて、どれくらいの時間が経った?
 十分か? 五分か?
 正確には解らない。何しろ、体感時間では、一時間や二時間も過ぎていると言っても過言ではない。
 実際には、精々一分を越えた程度だろうと、僅かに残った理性は語る。
 息が荒くなり、全身に汗が滲む。
 携帯電話は、頬と掌からの汗で、不快感を覚えるほど湿っている。
 滑らないよう、握る手に力を込める。――軽く、プラスチックが軋むほどに。
 電話の主は、何と言った? いや、解ってる。しかし解らない。
 何故? 話が聞き取れなかったから。嘘だ、聞こえていた。覚えられないだけ。
 何故? 理解できないから。どうして? 声は耳を通り過ぎていったから。
 何故? どうして? 何故? どうして? 何故?
 …………
 ……
 繰り返される自問自答。思考がループに陥っている。
 整理しよう。
 電話の主――病院関係者が言ったことは何だ。
 誰が、何時、何処で、どうなって、今はどうしている。
 大丈夫だ。全て頭に入っている。
 ならば、理解できないはずがない。高等数学というわけじゃないのだ。
 理解できないのには、それなりの理由がある。それも、極簡単なコトだ。
 ならば、
 何故? 理解したくないから。 何故、理解したくない?
 それは、
 それは……、
 理解した。
 最後に、確認しておこう。
 息を整え、電話に向かって声をかける。
「もう一度だけ、お願いします」
「――いいですか、落ち着いて聞いてください」
 子供を諭すように、優しく、ゆっくりと伝えられる。
 今度こそ、流してはならない。耳を傾けなければならない。
「旦那様が、事故に遭われました」
 床にモノが落ちた音がする。
 耳には、剥がれない声が繰り返される。

 どっと、忘れていた現実感が襲い掛かってきた。
6552/17:2006/06/20(火) 03:27:17 ID:RVZ4SuAk
 ランプの点いた手術室の前で、今はただ、ひたすらに祈る……。
 息も絶え絶え駆けつけたときには、もうこの状態だった。
 変化といえば、続々駆けつけた友人たちや、窓から廊下を照らす陽の光くらい。
 あれから数時間、刻々と時間だけが過ぎる。時計の針が刻む音が、酷く煩わしい。
 まるで、一秒一秒、生命が削られていくかのような不安が、頭を過ぎる。
 俯き、合掌した拳に額が当たる。
 あたしは信心深い人間ではない。神様がいるなどと考えたことはないし、お参りだって年中行事以上の意味を見出したことはない。
 ただ、ただそれでも、今は祈りたかった。
 祈って助かるなら、苦労は無い。しかし、あたしに出来ることは、それくらいしかない。
 神頼みを必要とする心理状態とは、こういうことを言うのだろう。
 きっと、祈りが通じた時、人は信じるのだ。
 だから、
 助かってくれるなら、神様の存在を信じてもいい。いや、神様でも仏様でも、何なら悪魔だっていい。
 もう一度、子供のときのように……。
 その存在を、信じさせて欲しい。
 震える手先を、強引に押さえ込む。
 ふと、肩に手を置かれた。
 マドカが、あたしの顔を心配そうに覗き込んでいる。
 かける言葉が見つからないのだろうか。それとも、選んでいるのか。あるいは、軽率な言葉を口にしないよう封じているのか。
 要らぬ気遣いをさせてしまったことに、僅かに心が痛む。
 だからあたしは、力無く、頷くだけで応える。
 大丈夫。あたしは大丈夫。
 大丈夫だから……他には何も望まない。
 彼が助かって欲しい。それだけの、純粋な願い。

 手術室の、ランプが消えた。
6563/17:2006/06/20(火) 03:30:45 ID:RVZ4SuAk
「――ぅ……?」
 小さな呻き声を上げる。それが切欠となったように、彼女は目蓋を開いた。
 窓の外を見れば、もう日は高く昇っている。
 あれから二日。中一日を置いて、病室で目を覚ました。
 肩にかかっていた毛布がずり落ちる。
 病室には、二人しかいない。マドカあたりが、帰りにかけていってくれたのだろう。
「う……ん!」
 ベッドに突っ伏していたせいか、身体が強張っている。軽く動かすと、彼女の背骨や腰、肩が軽い音を立てた。
 疲れも抜けきっていない。
 年齢的にはまだ若いとはいえ、少女というには年嵩がいっている。有り余る体力だけでカバーすることはできなかったようだ。
 とりあえず、顔を洗ってこよう。
 娘は立ち上がる。と、
「……ぁ」
 力が入りきらず、膝から落ちた。
 思考が加速し、時間と風景の流れをゆっくり感じた。尻餅をつくことを覚悟する。
「え?」
 だが、落ちきらなかった。
 見れば、一晩中握っていたらしい手が引っ張られている。
 他ならぬ、青年自身によって。
 この一瞬だけ、無事だった左手に、渾身の力を込めて。
 娘は立ち上がり、顔を覗き込む。
「――危ないところだったね」
「ぁ、あ……」
 その顔には、霧吹きで吹いたような脂汗が浮かんでいる。それでも……心配させないよう、必死で笑顔を作っていた。
 飛びつきたい衝動に駆られるが、怪我人にそれはできない。
 だから、青年の胸に顔を埋める。
「危ないのはどっちよ……そんな状態で、無茶するな」
 負担をかけないよう、少しだけ人の重さを感じられる程度に。
 血と汗と薬の臭い。
 鼻をつくそれも、体温と合わされば生きている証だ。
 湧いてきた安心感から、彼女は一つの悪態をつく。
「バカ……」
「うん。ゴメン」
「バカバカバカバカ馬鹿ばか――」
 静かに繰り返される同じ言葉。
 またとない目覚めの挨拶を、青年は静かに受け入れていた。
 青年は目を閉じる。
 心配、そして約束。申し訳ない気持ちで一杯になる。
 せめて、少しでも。
 最愛の女性の背に腕を回し、落ち着くまで撫で続けよう。
 青年の視界は、闇に覆われる。情報は、聴覚頼りだ。
 病室に響くのは、小さくしゃくり上げる声にならない声。そして、自分の心音、呼吸音。
 安心する。
 心が穏やかになるのに呼応するように、次第に、彼女の鼻をすすり上げる音も無くなっていった。
 やがて来る、音と音の僅かな隙間。静寂。
6574/17:2006/06/20(火) 03:31:35 ID:RVZ4SuAk
「こら」
 油断していたら、彼女に鼻をつままれた。
 目尻に涙を溜めて、潤む瞳で睨みつけてくる。
「何で目を閉じてるの?」
「それは……その」
「そう。どうせ難しく考えすぎてたんでしょう?」
 図星を突かれた。
「あのね、自分で言ったよね?」
「?」
「嬉し泣きは、例外だって」
「――――ああ」
 そういえば、そうだった。
 青年は、心中で苦笑する。
 どうも自分のこととなると、悪く考える癖がある。このシチュエーションは、前向きに捉えるべきだ。
 娘は続ける。
 貴方がそんなだと、安心しきれないじゃない。
「だから――」
 娘が抱きつき、顔を寄せ、耳元で囁く。
 だから――、
「深く、考えないで……。泣かせなさいよ。ばか」
「そうだね……おはよう、優希」
「うん。おはよう、舜一」
 互いに、優しく頬が緩む。
 体中が痛い。生きていることを実感する。何ともありがたい贈り物だった。

 そして、術後一ヶ月。
 抜けるような青空が眩しい日に、舜一は一般病棟へと移った。翌日より、リハビリを開始する予定だ。
「いや、長かった。ようやく、ベッドの上だけじゃない生活になれるよ」
「軽く言うようなコトじゃないでしょ。本当は、まだ早すぎるくらいなんだよ」
 優希の言うとおり、舜一の身体はボロボロになっていた。
 医師の話によると、四肢の欠損や半身不随どころか、死ななかったほうが不思議という程のもので、指の一本も切断せずに済んだのは奇跡に近い。
 さすがに、事故前同様に戻れるほど甘くはないようだが。
 それほどの酷い事故だったという。
「ははは。子供を助けてトラックに轢かれるなんて、実際のところ……当事者になってみると、こう、ドラマチックでも何でもないもんだよね」
 正確には、目の前で起きた交通事故の煽りを食らって子供に突っ込んでいったトラック、である。優希はそう聞いた。
 その上、トドメとばかりにガードレールとサンドイッチされたなどと知らされれば、気が気じゃなくなるというもの。
 運が悪いとか悪くないとか、そういうものではない。
 あまりのシチュエーションに、重なる時は重なるものなのだなと、心のどこかで感心したくらいである。
「のうのうと軽口叩くのは、この口かな? ん?」
「ひふぇへへ! ……ふみはふぇん」
 笑顔のまま、口の端を両手で引っ張られる。
 この笑顔の中に、身も凍るような怒りが隠されているのは、誰の目にも見て取れるだろう。
 それだけ優希が心配した証明ではあるのだが。
 満足に身体の動かない舜一は、されるがままだ。もっとも、満足に動いてもされるがままだろうが。
 こうして気を紛らわすことで、少しでも沈んだ気持ちが解消されるならそれでいい。
 そう。今は、それでいい。
6585/17:2006/06/20(火) 03:33:47 ID:RVZ4SuAk
 そしてさらに一ヶ月。
 舜一は、松葉杖を使えば歩けるほどに回復していた。
 脊髄を始めとする神経系に、ほとんど損傷はなかった。骨格のほうは、ダメージの大きい部分はボルトを入れて固定してある。
 最大限の治療は尽くした。外側さえ塞がれば、多少の無理は利くはずだった。
 とはいえ、この短期間でこの結果は、優れた回復力のみならず、彼の努力の賜物と称するべきか。
 それとも……。
「ん? どうしたの?」
 視線を感じて、優希が首を傾げる。
 そうまでさせる相手を褒めるべきか。
 そしてこの日は、暫定的な退院が許された日でもある。
「それでは、くれぐれも無理はなさらずに。定期的な検診も受けて下さいね」
「わかってますって」
「こら。……すみません、ウチの主人が。ほら、頭下げて」
「はいはい」
「『はい』は」
「一回、でしょう?」
 おどけた笑みを見せる舜一。
 見送りのナースは、二人のやり取りに苦笑する。微笑ましさの絶えない二人だ。
「いいんですよ、昔からの知り合いですから。優希さんも楽にしてください」
「ほら、沙耶子さんもこう言ってるし」
 顔見知り相手に畏まるのも、どこか落ち着かないものだと舜一は語る。
「もう。仕方ないんだから」
「ふふふ。躾はお任せします。舜一くんの手綱、ちゃんと握ってあげてくださいね」
「ええ。任されました」
 張り切ってやらせていただきます、とばかりに小さくガッツポーズ。
 次いで舜一の腕に優希の腕が回される。嬉しそうな仕種で、頬を寄せる。
 世話好きだなぁ、と舜一は破顔一笑。
 看病ばかりではなく、小さくともずっと近くに居られるという名目が増えたのが嬉しいのだろう。
「……当てられちゃっいましたかね。私も旦那とイチャつきたいなぁ」
 最近、構ってくれないし、と溜め息一つ。
 そんな沙耶子を尻目に、
「何を仰るウサギさん。イチャつくのはこれからです」
 惚気るのはデフォのようです。
 優希と沙耶子は、同時に笑顔を交わした。この一ヶ月で、すっかりお友達になったようだ。
 沙耶子が舜一の方を見て、
「本当、昔と比べたら明るくなったし。そのあたりも、優希さんの影響かしら?」
「お互い様ですよ。あたしも変わりましたし。好きな相手の前で格好つけたいのは、男も女も同じです」
「あらあら」
「それより今度、昔のコト教えてください。この人、あんまり話してくれなくて――」
 着々と包囲網が形成されていっている模様。
 昔馴染の姉貴分+嫁にサンドイッチの構図。このままだと、男一人立場が危ういのではないかという予感がする。
 仕方ない。身の安全を図るとしよう。
 会話の途切れ目。タイミングを見計らって、
「それじゃ、そろそろ帰ろうか。我が家が恋しいや」
「え? うん、ごめん。そうよね」
 多少強引に話題切り上げさせ、正面玄関へを足を向ける。
 優希と沙耶子は、フォローも兼ねてその後に続く。
6596/17:2006/06/20(火) 03:35:58 ID:RVZ4SuAk
 蝸牛のようにゆっくりと、しかし確実に前へ進めるようになった背中に、優希は感極まる。
 胸に湧き上がるのは感慨と……、
「あれ?」
 もう一つ。
 何か、とても……。
「どうしました。優希さん?」
「あ、ううん。何でも……ありません。うん、何でもない」
 沙耶子の問いに、頭を振って応える。
 きっとナーバスになっているせいだ。暫くすれば、勝手に胸の内から消えてくれるに違いない。
 そう信じて、振り払う。

 去来したのは、
 とても……とても小さな、

 不安。

「お」
「む? やっと来たか」
 待ちくたびれたぞ、と玄関先で待っていた人物が言う。
 顔に皺の刻まれた、五十代の男性だ。
 白髪雑じりの頭。強い意志を宿した双眸。しゃんと伸ばした背筋と、それを覆う白衣。
 刻んだ年数が半世紀の大台に乗って、尚、未だ壮年期と思わせる雰囲気を放つ。
 舜一は、一分かけて辿り着き、二人が対峙する。
 やや重い空気を割って、優希が会釈をした。男性もそれに返す。
 優希は舜一へ向き直り、
「――タクシー呼んでくるから、ちょっと待ってて」
「うん。お願い」
 自動ドアを抜け、程なく細い背中が消える。
「え? タクシーって、もう呼んで……ああ。私も、失礼させていただきます、先生」
「ああ、ご苦労様」
 舜一と先生――医者に頭を下げて、沙耶子もその場を離れた。
 二人だけが残される。
 雰囲気は重く、言葉が詰まる。
「…………あー、何かあるんじゃないの?」
「なんだな、舜一。意外と言葉が出てこないものだ」
「あのさ。折角気を使ってくれたんだから」
「といっても、見送り以外特に用事は無いからな。悪いか?」
「あっそ。別に悪かないけど」
 眉をひそめる舜一の態度に、大きく溜め息を吐き難色を示す。
「お前なァ……その態度は――」
「ほらまたすぐ怒ろうとする。悪い癖だよ。今日くらい止めてくれ、めでたい日なんだから」
 言われて、見るからに不機嫌そうに、男医師は壁に背中を預けた。
 背中が乱暴にぶつかった音が響く。
「まったく。……あまり家に寄り付かないと思っていたら、まさかこっちに来るとは思わなかったぞ」
「僕も、まさかここに運ばれるとは思わなかったよ」
「あまりに急なコトで、直接自分の手で治療できなかったが……」
「へ。そりゃ残念でしたね、父さん」
 鼻で笑うように言い放ち、舜一はそっぽを向く。
 決して見下しているわけではない。感情が複雑に混じりあい、素直に感謝と敬意の念を払えないだけだ。
 それくらいのコトは、父も理解を示してくれるだろうが……。
「…………」
 怒り出しこそしないものの、納得のいかないというしかめ面を晒している。
 理解と納得は、イコールで結ばれるわけではないか。
 一度は釘を刺されたとはいえ、表情に出すだけで済ませているというコトは、それなりに舜一に気を使っている証拠だ。
6607/17:2006/06/20(火) 03:37:12 ID:RVZ4SuAk
 この病院の雇われ医師である父は、穏やかで優しい人格者で通っている。
 が、それは他人の目から見てのコト。遠慮の要らない相手には、その限りではない。
 理由を話すコトも、言葉に耳を傾けるコトもなく、早合点や思い込みで自分勝手に感情を爆発させるのも当たり前。
 万全ならば、家族相手には極端に短気な人物なのだから。家族を真剣に愛してるコトが伝わる分、性質が悪いとも言える。
 父は、自らを落ち着かせるため、深呼吸する。
 可能な限り平静を装って、胸の内を語り出す。
「なあ、舜一。一旦、実家に戻ってこないか?」
 勿論、優希さんも連れて。その身体では、生活も大変だろうし。
「母さんもいるし、いざという時には、すぐに対応できるしな」
「悪いけど、今の僕が帰る場所は……あっちだからさ」
「そうか」
 やはりそうなるか、と父は頷く。
「――それより、訊きたいコトがあるんだけど」
「何だ?」

「あと、どれくらい保つ?」

「…………」
「父さん」
「何が……どれくらいだ?」
「はぐらかさないでくれ。自分のコトだから、何となく解るんだ」
 真面目な顔で、舜一は言う。
 現在、腹の中には生命活動ギリギリの臓器しか残されていない。投薬で騙し騙し身体を使っている状態だ。ハッキリ言って、この段で退院するのは時期尚早としか表現できない。
 残る時間をすり減らす可能性は、極めて高い。
 しかし、だからこそ許した。意を汲んだ。機械で生かされるのを好まない故に。
「個人差はあるが、半年前後といったところだな」
「うわ。短いな」
「軽く言うな! ――まあいい。そのあたりで、何がしかの臓器が機能停止する公算が大きい」
 どれか一つでもガタが来たとしたら、
「そうなればあとは……解るな?」
 舜一は頷く。
 ショックは受けていない。確証を持ちたかったための質問に過ぎない。とっくに予感し、とっくに覚悟していたコトだ。
 それにしても、ここまで気付いていたとは。
 まだ、伴侶である優希にも伝えていない。折を見て伝え、然るべき後に判断を委ねるつもりだった。
 なのに本人が勝手に気付いていたのだから、何と滑稽なコトだろう。
 父は昔を思い出す。そういえば、知られたくないコトばかり勘の良い子だったと。
「まあ、悲観しないのは良いコトかもしれん」
「ていうと?」
「レアケースではあるが、組織が奇跡的な再生をして助かったという記録も存在する。期待するくらい、罰は当たらんだろう」
「ああ。テレビとかでやったりしてるヤツね」
「うむ。それに私も、時間一杯までお前に適合するドナーを捜す。心配せずに、養生していろ」
 もし見つけたならば、何を置いても手に入れる。それが医師として、父としてやるべきコトだ。
 曲げることはないとの、絶対の意思を以って告げる。
「コラコラ。無茶はすんな」
「ふん。馬鹿者。こんな時くらい、無茶でも無理でも親のエゴを通させろ」
 今まで、無理に通していないつもりだったのか……。
 薄い苦笑いを浮かべ、絶句する。
 舜一の中には、有無を言わさず好き勝手通しまくっている姿しか存在しない。四半世紀の間、それがこの父だと思っていたのに。
 というより、もしかして家族の好意で好き勝手通させてもらってるとか、変なところで謙虚な気持ちを持っているんじゃなかろうか。
 だとすれば、正直大人物だと思う。
6618/17:2006/06/20(火) 03:38:05 ID:RVZ4SuAk
「舜一、優希さんは大事か?」
 唐突に、父はそんなコトを訊いてきた。
「当然」
「もう、あまり時間が無いかもしれないが」
「尚のコトさ。命を賭して守る価値があるね」
「……恥ずかしいヤツだな」
「言ってろ、クソ親父」
 舜一は、からかうように言う。
「っ、お――ええい!」
 激昂しそうになるのを、寸でのところで押さえつけた。
「あ、我慢した」
「ふん。口ばっかり達者になりおって」
 一拍置いて、呼吸を整える。
「まったく、昔はそんな口は利かなかったというのに……」
 ふと気付く。
 思えば、昔は封殺してばかりで、反抗的な口調の一つも許さなかった。言い分や精神状態など考えもせず。目上相手への当然の態度としてだ。
 全ては舜一本人のため。今でも、間違っていると考えてはいない。
 しかし……。
「な、何だよ。急にニヤけて」
「いや、別に」
 面と向かって、わざとらしい暴言を吐けるほどになっているとは。
 どんな時でも、一々言葉に気を付けていたのが嘘のようだ。
 父は満足したのか、話の流れを元に戻す。
「もしもの時は――任せておけ。家族として面倒みよう」
「面倒みてもらいたくないなあ」
「まったくだ。我ながら、ぞっとしないコトを言った」

 話が一段落ついたところで、折りよく優希が遠くから戻ってくる姿が見えた。
「それじゃ、そろそろ」
「優希さんに、よろしく言っておいてくれ」
「了解。伝えておくよ」
 少しでも優希に近づくように、舜一は松葉杖を動かす。
「舜一」
 背を向けた舜一に、この日最後の言葉がかけられた。
「たまには帰って来い。母さんも私も待っている」
「ああ。近いうちに顔を出すよ」
 首だけで笑顔を向け、親子の会話は終わる。父は、遠ざかる二人の背を見送るコトしかできない。
 その頼りない足取りにこそ、頼もしさを抱く。
「いつの間にか……大きくなっているものだ」
 そんな簡単なコトに、何故今まで気付けなかったのか。
「……顔を出す、か。少し妬けるな」
 これも自業自得か。
 小さな呟きが空気を振るわせ、そして消えた。
6629/17:2006/06/20(火) 03:39:01 ID:RVZ4SuAk
 白い湯気が、僅かに視界を遮る。
 眼前は、パノラマ写真のように広がる絶景。見上げれば、半分天井、半分青天井。夜空には星の海。
 立ち上る霞がアクセントを加え、何ともいえぬ趣を醸し出している。
 そして、三方を壁に仕切られ、外界より切り取られた空間に、一つの人影があった。
 二十代半ばの青年である。世間は春の入り。しかしてこの場には、真新しく積もった雪が姿を見せている。
 寒空の下、裸体を曝け出しながら、寒さに震えもしなければ鳥肌も立っていない。
 当然だ。この場にあって、そうなるはずがない。
 湯気が一滴、天井からぽたりと人影の背中に落ちた。
 反応して、肩の辺りを震わせる。
「――冷てえな、っと」
「アハハン……でいいの、舜一?」
 振り向けば、タオルで前を隠す一人の女性。さらにその後ろには、屋内へ続く引き戸がある。
 カラカラと音を立て、戸を閉める。脱衣場へと流れ込んでいた空気の動きが止まる。
「あ、優希さん。反応してくれた」
「ネタかどうか、一瞬だけ判断に迷ったけどね」
 青年――舜一の傍。しゃがみこみ、桶で湯を汲んで身体を流す。
 そう。
 ここは温泉。露天風呂。日本の宝。文化の極み。ビバノンノ。
66310/17:2006/06/20(火) 03:39:51 ID:RVZ4SuAk
「――だからさ、親しき仲にも礼儀ありって言うし、やっぱりマナーとしては……」
「それは、よーく解っています。貴方が、そういうコトに拘る人だってね」
「うんうん。理解を示してくれて嬉しいよ」
「とはいえ、それはそれとして――」
 傍らの青年から視線を逸らし、辺りを見回す。
 無論、誰もいない。贅沢して、この旅館自慢である、専用露天風呂のある部屋を借りたのだから。
 が、やはり、それはそれとして――
「改めてこういうカタチになると、流石のあたしもちょっと恥ずかしいんだけど」
 というより、
「あまりマジマジと見ないでよ」
 胸元から太腿までのラインに沿って視線を感じる。
 やや控えめの胸を、両手で抱え視線を遮る。
 それ以外隠すモノはなにもなく、優希は肩まで湯船に浸かった。
 ついさっきまで身体を隠すのに使っていたタオルは、髪を纏めるのが今の役目だ。
「今更、恥ずかしがるような間柄じゃないでしょうに」
 舜一は、のほほんと、左腕で優希の肩を抱き寄せる。優希も、そっと体重を預ける。
 二人きりで旅行したいという舜一の希望により、今此処にいる。
 籍を入れて、既に五年近く。万年新婚夫婦と呼ばれる機会は多いが、知ったことではない。
 とはいえ、だ。
「これだけ?」
「これ以上しろと?」
「うん。しなさい」
「了解しました」
 優希の命令に従い、顔を寄せ、唇を重ねる。舌を絡ませていると、互いの鼻息がなんともくすぐったい。
 とはいえ、この場でコトをイタすような無粋な真似はしない。風呂は風呂そのものを楽しむべきだ。
 まあ、そもそも……既に事後であり、ベタつく汗を流す意図もあっての入浴であるのだが。
 そのまま二人で、ぼーっと湯加減と景色を堪能する。
 裸の付き合いは良い。心まで触れ合えるような感覚を味わえる。
 ここ二ヶ月あまり、大変なコトばかりだった。のんびりした時間を取るのは悪くない。
 悪くはないが……、
「長湯は、身体に毒よ」
 唐突に。
 どこか力無く、優希が呟いた。
66411/17:2006/06/20(火) 03:40:57 ID:RVZ4SuAk
「まだ大丈夫ですって。心配性だな」
 もともと、熱めの長湯を好む性質である。彼本人にしてみれば、まだまだ序の口だ。
 が、二人で本格的に湯に身体を沈めて、約十分。彼は十五分あまり。やや温い湯加減ではあるが、人によっては、茹っても不思議が無い頃合だ。
 二人の肌も赤みを増し、血行が良くなっていることが、はっきりと見て取れる。
「まったく、自覚が無いんだから。……無茶をすれば、心配もするわ」
「無茶?」
 最近やったかな、と舜一は首を傾げる。
「自分の胸に――じゃない、自分の体中を見回しなさい」
「ああ」
 なるほど。合点がいった。
 要するに、優希は舜一の体調変化に過敏になっているのだ。そして、彼女自身もそれに気付いている。
 故に、一旦気になると落ち着かなくなる。
 先程キスをねだるほど甘えてきたのは、その裏返し。
 舜一は、自分の身体を観察する。
 改めて見ると、まだ新しく痛々しい傷痕が、いたるところに刻まれている。
 血の巡りが良くなったコトで、ハッキリと見えるようになってしまったモノも少なからずある。
 皮肉なことに、療養を兼ねたこの場が、彼女を刺激してしまったらしい。
「事故に巻き込まれたって連絡受けて……」
 そのまま死んでしまうのではないか、とでも思ったのだろう。
 あれから二ヶ月あまり。
 傷そのものは、ほぼ完全に塞がった。だが、後遺症の根は深い。以前と調子が変わらないのは、損傷の少なかった左腕くらいだ。
 右腕は、肘より先に麻痺が残っている。右足も同様。腱が切れて、いくつか動かない箇所がある。左足は、膝関節が砕けた。治癒しても、力が入らない上に慢性的な痛みがある。
 感覚の無い範囲が広いため、杖が無ければ歩くのも一苦労といった状態だ。そのくせ、傷痕が痛むことは多いのでやってられない。
 内臓も大きなダメージを負い、かなりの量を摘出したコトを告げてある。
 外見的に欠損部位が生じなかったのは、奇跡的と言っても過言ではないだろう。
 不幸中の幸いとして、脊髄を始めとする神経系の損傷は軽微。此方に関しては、完治したと言ってもいいだろう。
 上手いコト長くリハビリを続ければ、普通の生活に支障が無いくらいには回復する見込みもある。
「でもさ、ほら」
 舜一は、右の拳を開いたり閉じたりしてみせる。
 力強くは握れない。感覚も無い。指先は動きもしないが、
「ちょっとくらい無茶なリハビリしたおかげで、医者も驚くくらい順調に回復してるし」
 その甲斐あって、日に日に出来る動作を取り戻している。
 今日だって、服を脱ぐのも風呂に入るのも、自分で問題なくやれた。一ヶ月前までは、それも難しかったのにだ。
 普通のことが普通に出来る。
 あまりに当たり前のことが、なんと幸福なことか。
 少しでも優希を安心させられるように、日常生活におけることくらいは、出来るだけ力を借りたくない。
「そうじゃなくて――!」
 表情は、いつものように。あくまでクールなまま。
 瞳に、強い想いが宿る。潤んでいるように見えるのは、気のせいだろうか。
「他人を庇って大怪我するなんて、馬鹿じゃないの」
 みたいではなく、はっきりと馬鹿。
「身を挺して誰かを助けるのは、素晴らしいコトだし、尊いコトでもあると思う。けどね……」
 必然でも偶然でも、咄嗟にそんな行動を取れる人間は少ない。それは、彼の成長の証。
 けど、それでも。
「貴方が死んだら、元も子もない」
66512/17:2006/06/20(火) 03:41:51 ID:RVZ4SuAk
「…………」
「あたしは利己的な人間だから、見ず知らずの誰かが死んだからって何でもない。少し、気の毒に思う……それだけ」
 むしろ、
「貴方に死ぬような目に遭われるくらいなら、誰かが死んでくれたほうがいい。見殺しにしてくれたほうが、ずっといい」
 酷い人間でしょう?
 優希は、小さく自嘲の笑みを浮かべる。
「――そっか。でも、それでもいいじゃん。仕方ないよ。ただ、僕は……」
「貴方は、まだ解っていない!」
 気圧され、息を呑む。
 珍しく語気を荒げた優希に、舜一は目を丸くする。
「いい? あたしはね――」
 両手で顔の位置を修正し。うってかわって、子供に言い聞かせるように、優しく静かに語る。
「あたしは、キミが好き。キミを愛してる。キミが、世界で一番大事。キミは、あたしの生き甲斐。キミと出会って、運命を信じるようになった。キミと伴侶になって、神に感謝した。キミのいない人生なんて、考えられない。キミは――」
 優しく静かに丁寧に。しかし矢継ぎ早に繰り出される言葉に、舜一は唖然とするばかりだ。
 恥ずかしいとか恥ずかしくないとか通り越して、感心するやら呆れるやら。
 それでも、終わりを迎えるのが必定。
 言うだけ言って満足したのか、最後に強い想いと願いを込めて告げる。
 一呼吸置いて、
「――キミは……貴方は、あたしのモノ」
 そして、
「あたしは、貴方のモノ」
 だから、
「あたしを置いて、何処かへ消えるなんて……許さない」
「うん。奇遇だね。僕も、そんなの嫌だ」
 つとめて明るく、舜一は応えた。
 優希の顔が、かすかに、安堵に緩む。小さな、しかし確かな変化。
 この笑顔は、自分の宝だ。
 言葉にこそしないが、優希に言われたコトは、守護を逆転させればそのまま当てはまる。
 互いが互いに、どこまでもベタ惚れだ。
 想いが同じならば、後は自分次第。裏切らないよう、精一杯頑張るとしよう。
「さて、と――」
 ゆっくりと、淵に手を置きながら身体を浮かす。浮力が働くので、上手く利用すれば簡単に立ち上がることが出来た。
「っと?」
「あ」
 バランスを崩し、倒れそうになった舜一を、慌てて優希が支える。
「あはは……貧血」
「急に立ち上がるからよ。やっぱり、長湯しすぎね」
「かもね」
「さ、早く上がろ」
 優希に肩を借りながら、浴場を後にする。
 最後に一度、舜一は星空を目に焼き付けた。
 自分を支える細い身体を感じ、感謝する。だが同時に、不安も覚える。

 願わくば――。
66613/17:2006/06/20(火) 03:42:38 ID:RVZ4SuAk
 数時間後。
「う、く……ふぅ、は、ぁ……」
 闇に覆われた部屋の中で、呻き声が響く。
 何かに耐えるように。あるいは逃げるように。
 布団を跳ね除け、蹲る背中に優希が手を添える。
「大丈夫? 舜一」
「あ、ああ……。いつものコトだし」
 苦しそうに応える。
 いつものコト。
 あの事故以来、発作的に起きる後遺症。
 幻痛。
 何かの拍子に、フラッシュバックのように襲い来る。
 巨大な暴力によって与えられた傷痕。
 精神的な恐怖。そして、肉体的な痛み。
「そう、いつものコトだものね。……大丈夫。あたしがついてる」
 いつものように、優希が抱きしめてくれる。
 暖かい。温かい。
 彼女の身体が、恐怖から守ってくれる。強さを与えてくれる。
 だから、もう大丈夫。

 同じ布団に、身体を潜り込ませる。
 もう怖くない。人の温もりの、何と頼もしいコトか。
 優希の寝息を確認し、暗い天井へと視線を這わせる。意味は無い。ただ、ふと思った。さっきの星空に、何かが届けばいいと。
 目蓋を閉じ、想いを馳せる。
 万が一にも優希に気付かれぬよう、胸に秘めて。

 今、この当たり前の瞬間が、

 願わくば、永く――永く――。
 ただそれだけの、ちっぽけな――。

 ほんのささやかな願い。
66714/17:2006/06/20(火) 03:43:19 ID:RVZ4SuAk
 順風満帆に過ぎ行く日々。
 様々なところを見て回った。様々な人に出会った。
 定められたタイムリミットを、一月過ぎ、二月、三月……半年が過ぎ、体調も安定したかに見えた頃。
「…………ッ!」
 それは来た。
 何時訪れても不思議はなく……しかし、時の流れと共に気に留めなくなりつつあったモノが。
「――は、っぁ……くそ、油断……してたなぁ」
 襲い来る激痛に、力が入らない。
 膝を着く。
 絶え間なく流れ落ちる汗が、アスファルトに落ち、染みを作る。
 体中が痛む。
 頭、胴体、腰部、四肢。五体が、一年前に得た死の恐怖を訴える。
 涙が滲む。脂汗が浮く。
 痛い。苦しい。熱い。辛い。
 逃れようにも、逃れられない。敵は自分の内に潜んでいる。
 力を込められるのは、指先だけだ。
 地を掻き毟る。何度も。何度も。
 何度も――赤い線が描かれる。
「舜一!」
 優希が駆け寄り、手を押さえつけた。
「っ!? 舜、一?」
「はは……参った、な。つい、さっき……まで、何ともなかっ……のに」
 震えている。
 汗で全身を湿らせ、熱を持ち、
 なのに、何故。
 何故こんなに……、

 冷たく感じるのだろう。

「待ってて。今、救急――舜一?」
 優希の腕を取って、そのまま舜一の意識は闇に落ちた。
66815/17:2006/06/20(火) 03:44:21 ID:RVZ4SuAk
「…………」
「…………」
 二人だけの病室は、静寂に包まれている。
「あ……あの、さ」
 先に口を開いたのは優希だ。
 話さなければならないコト、伝えなければならないコトがある。
 誰よりも、何よりも、自分の口で。言葉で。
「あと、保って一週間……だって」
「――そっか。さすがに、今度は確実だろうな」
 優希から顔を背けて、窓の外を眺めながら言う。
「わかっていたコトだけど――いざとなると、キツいなぁ」
 静かに。
 覚悟を決めたように。
「…………」
「…………」
 再び、静寂に支配される。
 一分間の沈黙を破って、舜一が顔を向ける。目が合う。
「やっと、まともに動くようになったのにな」
 ベッドに投げ出された脚を、右手で叩く。
「ね……後悔、してる?」
「何をさ。するような後悔なんて、あるはずないじゃない」
 舜一は、優しい笑顔を見せる。
 何で……貴方はそんなに……。
「ただ、そうだな――未練はある、かな」
「未練?」
「うん。未練」
 それはきっと、本当にささやかなモノ。
 彼にとって、自分の死そのものは恐れるようなモノじゃない。
 人は、いつか必ず死ぬ。早いか遅いかの違いだけ。
 そして、もしも死後の世界というものがあるのなら、いつかまた必ず会える。
 悲しむべきコトじゃない。
 事実は覆らない。悲しむべきコトじゃないのなら、笑って送り出すべきだ。周囲が涙しているのなら、尚更。
 祖父母が亡くなった時も、舜一はそうやって見送った。
 だけど……だからこそ、
「優希さ――優希。キミを遺して逝くのは……」
 辛い。
66916/17:2006/06/20(火) 03:45:25 ID:RVZ4SuAk
 遺す側になって、実感する。
「そう。残念ね。あたしとは、あとちょっとで……半世紀くらい会えなくなるね。うん、あたしも残念」
 作った笑顔が、心に痛い。
 死ぬよりも、余程辛く悲しいコトがある。
「ね、舜一……怖い?」
「情けないけどね」
 ほら、と震える手を見せる。
 優希は、そっと両手で包み込む。
「その日まで、ずっと一緒に居てあげる。だから――」
 怖くないでしょう?
「ね?」
 あまりに眩しすぎる笑顔。
 舜一は、思わず優希を抱きしめる。
 その細く小柄な身体は――小さく震えていた。
「舜一。辛かったなら、悲しかったなら……怖かったなら……泣いていいよ?」
 今、此処には二人だけ。誰にはばかるコトもない。
「ありがとう……でも、大丈夫。もう少し、このままでいさせて……」
 小さな肩に顔を埋めて。
 優希は、何も言わず背中に手を回して、そっと抱きしめ返す。
 背を撫でる。
 母親が、赤子をあやすように。安心させるように。
67017/17:2006/06/20(火) 03:45:59 ID:RVZ4SuAk
 舜一の体調が急変したのは、それから三日後のコト。
 衰弱し、意識も絶え絶え。
 それでも、優希の前では心配させまいと、頑張って意識を保とうとする。
 最早変えようのない運命。結末は、すぐ手の届くところに……。
 最初の出会いから、十年近い月日が流れた。
 舜一と優希。二人の関係は、今、終わりを告げようとしている。
 たった十年。
 しかし、何物にも代え難い十年間だった。
「ねえ。何か……話そう」
 彼の願いを、優希は叶えられない。
 口を開けば……言葉を紡げば、全ては終わってしまう。
 じっと堪えて、せめて舜一を見つめる。
 彼の言葉を、約束を、嘘にしないように。
「…………ごめん」
 聞き取れないほど小さく呟くと、舜一は涙を流す。
 何故泣くのだろうか。何故謝るのだろうか。キミは、何も悪くない。
 優希は手の握りを改める。
 すると、彼は語り出した。
 小さく、力なく、それでもハッキリと、胸の内を伝えようと。

 もう自分を気にせず好きに生きろ。自分を忘れて、幸せになれ。

 そして、

 ――ありがとう。

 二人の手は、強く握り締められたまま。必死に、力を込める。
 舜一は、自己嫌悪に陥る。
 この言葉は呪いだ。
 こんなコトを言われて、忘れられるはずがない。もう自分は死に逝くのに、それでも縛りつけようとしている。
 忘れて欲しくない。たったそれだけの、小さなエゴ。優しすぎる呪い。
 だから、もうよく見えない目で涙を流す。
 どれほどそんなことを続けていたのか。
 優希の握る手から、ゆっくり、確実に生気が失われていくのが解った。
 最期に、一言だけでも。
 僅かに震えながら、優希の唇が動く。
 その一瞬。その一瞬だけは確かに、舜一の視界に、彼女の顔だけが戻った。
 万感の思いを込めて、たった一言を告げた。
 それだけは、届いたと信じられる。
 いままで見たこともない、とても優しい笑顔が。声が。
「さようなら――」
 いつか、どこかで……。

 きっとまた出会える、その日まで……。

 一滴の雫が、舜一の頬に落ちた。
671名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 03:49:56 ID:RVZ4SuAk
終了……疲れた。眠い。

長々と失礼しました。
もちっと分割して投下するべきだったかと思うけど。
実際、温泉パートは本来は別だったんだし。

さて、今後暫くはROM専にさせていただきます。
ま、インスパイア受ければ、また速攻で書くかもしんないけど。

それでは、お休みなさい。

……朝一で仕事だ。
どーすんだ、俺。
672名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 06:20:19 ID:boURC3Mc
滂沱
673名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 07:49:17 ID:vgkq0ssP
>>671
お疲れ様でした。
そして朝から泣かせないでください。
674名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 08:12:23 ID:dsrA7XMo
もう、朝から泣かされちゃったじゃないのよ。これから仕事だってのに。
675名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 13:40:30 ID:fqYzJ4FH
嘘臭い
676名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 14:27:34 ID:FAsw4e0f
何故ハッピーエンドじゃないの?何故ハッピーエンドじゃないの!?

本当に回復したらご都合主義だからって言い訳は無しだぜカーシャ!

(つД`)゚
677名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 15:04:59 ID:JBjOof61
678674:2006/06/20(火) 21:31:38 ID:7orNZJkd
>>676
それはね、>308-312から読んでみれば判るよ。

彼女のその後をリクエストするのは無粋と言うものだろうか。
彼女は彼を忘れないだろうけど、その分余計に幸せになって欲しい。
つーか、彼の思い出も含めて包み込めるようないい男がいると信じたい。
679名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 01:42:05 ID:p2WtwkLi
えっと…
どのへんが素直クール?
680名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 01:45:01 ID:dq0Yysp2
きみは本当に(AAry

作品から滲み出る素直クール分を読み取れるようになってからきなさい。
681名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 01:15:00 ID:+MuE7K5f
・ω・)つ フェニックスの尾
ドゾー


・ω・)つ 魔石「フェニックス」
ドゾー
682671:2006/06/23(金) 00:09:26 ID:DzdIwIP6
まあ、そんなに邪険にしてやるな>>680
他と比べて、読み取りにくいのは確かなのだから。仕方の無いコトだよ。
……実を言うとね、作者本人もそれは百も承知なのさ。

しかし、そうやってしっかりと疑問を述べる>>679の態度には好感が持てるな。
欲を言うなら、もう少しだけ具体性があると有難いのだが。
まあいい。万人に、とはいかないかもしれないが、もっと解りやすくできるよう研鑽させていただくよ。

とはいえ、何もステレオタイプに当てはめる必要も無いと思っているんだ。
素直クールは、未だ新しいジャンルだしね。もう少し色々開拓してみようとするのも、面白い試みではないだろうか?
だから王道は他の人たちに任せるとして、私は少々邪道でいかせてもらうよ。
けれども、もし明らかに間違った方向にいったとしたら、その時は忌憚の無い意見を頼む。

既に新しい構想自体は出来ているんだ。
まあ、暫くROM専などと語った手前、ゆっくり待っていただけたらと思う。
じっくり練って、完成したら投下させてもらうよ。
ふふ。その日が楽しみだ。


とまあ、キャラを作ってみたり。内容は本心ですけど。

>>674(>>678)
その後の物語は書けなくもないが、確実に優希さんの年齢が三十路を突破。
中心に据えるのはどうなんだろう。ただでさえ、他の人たちのキャラと比べて十歳は上なのに。
683名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 09:28:05 ID:hGkO5/fn
素直クールは見るんじゃない、感じるんだ
684名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 10:08:42 ID:WryTILPP
>>682
っ「未亡人の管理人さん」
役とかどうでしょう?
685名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 13:28:33 ID:B769Rxow
勘弁してください。
686名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 22:32:47 ID:wFNeu7Bi
>>684
それなんてめぞん一刻?
687名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 23:19:07 ID:DzdIwIP6
多分そのツッコミ待ちのレスだったんだろうなw
688 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:18:52 ID:umoFQ3Bs
(;゚Д゚)――注意点・基本的には前回投下と同じプロットです、見た人はNGIDにぶち込んでください
・不慣れな習作です、見たくない人はNGIDに(ry
・完全に女上位で進みます、嫌な人はN(ry
・長いです、長すぎです、嫌な(ry
689アイとユーキの物語<改>(前)1/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:20:06 ID:umoFQ3Bs
 負けるわけには、逃げるわけにはいかない。
 そう、退くことは許さない――自分自身の心に誓って。
 気づいたから。
 キミの声が呼んでたのは、誰でもイイ訳じゃないと気づいたから。
 グッと奥歯を噛み締めた。

 ※

 春日祐希はイライラとしながら、手に持った文庫本を幅一杯に本が詰まった棚
へ押し込んだ。無理矢理入れたせいか、表紙がぐにゃりと曲がったが、祐希は気
にもせず。腕に抱えた本を一冊取り、背表紙下部に貼られたシールを見て、その
場から離れようとした、が。
「春日、いつも言ってるだろ。本は大事に扱え、と」
 背後からぬらりと伸びてきた腕が、祐希が本棚へ差し込んだばかりの本を抜き
出し、折れた表紙をのばすと。滑らかに本を差し戻した。
 背中に柔らかな感触を感じる、ヤツはぴたりと張り付いているようだ。落ち着
いた呼気が耳にくすぐったい。
「日本には、八百万の神といって、沢山の神様がいるんだよ。でだね、私は一冊
一冊の本にも神様が宿っていると考えているのだよ。だから」
 祐希は眉間に皺を寄せ「離れてよ」いった。
 聞こえなかったのか、はたまた聴いてなかったのか、ヤツは続けた。
「その本の神を怒らせたくないのなら」
「いいから」
「もっと本は大事に扱ってはくれないか」
「良いから離れてよ、暑苦しいから」突き放すように祐希は言った。
「おっと、これは失礼」
 小さく肩をすぼめて、ヤツ――城戸藍はようやく祐希から体を離した。
「でも、本は大切に――」
「分かったから!」祐希は声を荒げた。
 二人しかいない図書室、祐希の声だけが虚しく響く。
 藍の身体が身じろぎ、祐希はバツが悪そうに顔を曇らせ、声を落として続けた。
「乱暴に本を扱ったのは悪かったと思うよ。でもさ、僕は子供じゃない。一回言
われたら分かるって」
……これじゃ、ホントに、子供みたいだ。
「それならいいが」シュンとした子犬のような顔で藍が背を向けてしまった、そ
れをみて祐希は、まだなにか言おうと思ったが。藍が出入り口へと向かっていく
のを見て、喉が詰まった。
 もしかしたら怒ったのかも、そう考えると何故か背筋が冷えた――けれど藍が
機械みたいに顔だけ振り向き、なに考えてるんだかよく分からないいつもの顔で。
平然と。
「トイレ」
690アイとユーキの物語<改>(前)2/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:20:50 ID:umoFQ3Bs
「へ」祐希は拍子ぬけして聞き返していた。「なんだって?」
 藍は気にした様子もなく「トイレへ行ってくる」そう繰り返した。
「あ、……そう」
 藍はコクリと首を傾けて、図書室の古くなってガタガタうるさい引き戸から出
ていってしまった。
 祐希はただ、それを見送った。
 ぴしゃりと扉が閉まり、藍の足音が遠ざかるのを待って、「……くそ」もう見
えない背中へ――自分へと――毒づいた。

 祐希は藍のことが、嫌いだ。
 嫌いな理由を上げれば小一時間、気に入らない点をあげるなら更に二時間、聞
くほうが嫌になるだけ藍の悪口をいえる。
 そんな手合いと図書委員をさせられているのだから、胃に穴が開くのではない
かと思うほどだ。
 ただ今日に限っては別な理由があった、八つ当たりと言われても間違いではな
い。――実際八つ当たりなのだから、いつもならあんな些細なことで声を荒げた
りしない。
 ただの八つ当たり。そう考えると気が滅入った。僕はガキか、と。
 祐希はフンと鼻息荒く、手元に残っていた最後の一冊を本棚へと叩き込んだ。
 それを見ても叱る者は藍くらいしかいない――というより、近場に市立の巨大
図書館があるため、図書室には普段から人気がない。
 一日によくて二人、三人くらいしか本を借りていかず、人の出入り自体も少な
く、祐希たち図書委員のすべき仕事は少ない。
 大抵の図書委員たちは、適当な理由をつけてサボり、仕事を祐希や藍に押しつ
けていく。祐希はなぁなぁに引き受けさせられ。なにを考えているか、今一掴み
難い藍は黙って引き受けている。
 仕事は殆どない、黙って座ってればいいだけ。――楽な仕事には違いない。
 だからこそ、というわけでもないが。そういう理由も含め。
 祐希は、なり手のなかった図書委員になったのだ。
 それにはある理由が絡んでいた、けれど、今となってはそれらはどうでもよく
なっていた。
 城戸藍から言われる様々な嫌味に耐えること、それだけになっていた。
 意地になっていると言ってもいい。
 自分でも何故かは分からない、けれど藍から逃げるのだけは嫌だった。
 図書委員の仕事は藍との戦いだと、祐希は考えていた。


――そんな、初夏。
691アイとユーキの物語<改>(前)3/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:22:00 ID:umoFQ3Bs
 その日も図書室には友希と藍二人きり、カウンターに並んで座っていた。
 年頃の少年と少女が二人きり……だからといって、周囲の者が考えるようなこ
とはなにもなく。
 藍はなにがおもしろいのか、ただ重たそうなだけに見える本を。読んでいるの
か疑問に思ってしまう速度でめくっている。
 その様子を祐希は漠然と眺めていた。
 することが無いわけではない。もうすぐ期末テストだ、点数が悪ければ父の怒
りを買う。けれど教科書を開き、ノートを開いて――やる気が失せた。
 面倒だった。そこまでする価値があるのか疑問だった。父は確かに叱るだろう
が、それは一過性にすぎず、一度怒鳴れば後は干渉してこないし。目の前にはテ
ストなどどこ吹く風の読書馬鹿がいる、読書中毒者と言ってもいい。
 藍の横顔はいつもながら涼しげで、テストなんて期末の猛暑は関係ないようだ。
――やっぱり、普段から本を読んでると違う、てことかな。
 祐希は小さく鼻を鳴らした。
 天は二物を与えず、というけれど嘘なんだよな。
 この読書馬鹿は、性格こそサイアクだが。頭がいい。それだけじゃなく、悔し
い話だが、顔もいい。
 普段は野暮ったい眼鏡のせいで分かりにくいが、二重瞼の大きな、それでいて
子犬のような愛らしい瞳。ぱちりと瞼を開閉するだけで見栄えする長いまつげ。
控えめながら形のよい鼻梁。尖った顎。
 明るい色のヘアバンドは、ともすれば重たく見えてしまう長い黒髪にアクセン
トを加え。なにより野暮ったくみえる眼鏡と合いまると、文学少女らしい見栄え
となり。魅力となる。
 身体つきも悪くなく、むしろいいようで。
 体型を隠してしまう制服の上からでも分かる、女性的曲線。重たそうな乳房、
極め細かく白い肌、伸びやかな手足。
 なにより、祐希は藍の唇を気に入っていた。
 無駄口を叩かない性格を象徴するような少し厚めで、湿った口唇。
 幾度かさわりたい――触れたい――キスしたいと思ってしまうほど、藍の口唇
は魅力的で。今もなにか遠慮がちに動いていた、
「私の顔になにかついているか」と。
「……ぅ、え?」
「先ほどから人の顔をジロジロ見て」ぱたんっと本が閉じ。「そうならそうと
言ってほしい」ずれていた眼鏡を直した。
692アイとユーキの物語<改>(前)4/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:22:40 ID:umoFQ3Bs
「あ、いや、そういうわけじゃないけど」言ったが、誤魔化しにもならないと祐
希自身理解していた。
「なら、なんで見ていた」藍の目が祐希の目を捉える――祐希は思わず目を逸ら
してしまっていた。
「……ひ、ヒマ潰しっ。ただの、悪い?」
 機転の効かなさを祐希は呪った。
「ふむん」藍は顎に手をあて、僅かに何事か考えたのち。「そうか」納得した。
――のはいいが、なにをどう納得したのか。
「そうか」繰り返し。
 ズイッと身を乗り出して、鼻と鼻とがぶつかりそうな程顔を近づけてきた。
「ヌワァッ!?」
 仰け反って驚き――パイプ椅子ごと転びそうになった、高校生にしては華奢な
祐希の背を、藍が腕を廻して支えた。細腕のどこにそんな力があるのか、藍の腕
は危なげなく祐希を拘束する。
 鼻の頭がコツンとぶつかった。
 目の前には藍の無表情な顔があった。
「なな、なにする気だよっ」早口でいうと。
 藍は変わらぬ顔つきで「暇つぶし」短く答えた。
「ひ、……ヒマ潰しって」ごくりと唾を飲み込んだ。
 当たり前だが、呼気を間近に感じる――キスできてしまいそうな距離に友希の
顔がある。眼鏡が邪魔だと思った。
 祐希の頼りない胸板に、藍の豊かな乳房が衣服越しに触れていた。――心臓の
高鳴りが聴かれているのではないかと、そう考えると、更に心音がテンポを速め
る。藍の体温が初夏の空気に混ざって、伝播してくるように祐希の身体を熱くし
ていく。『離れろ、触るな、どっかいけ』言おうとした言葉が、困惑し混乱して
混濁する頭の中に溶け消えていき。――頭の中がひとつのことで染められていく。
「ひ、ヒマ潰しって……楽しいのか、ヒトの顔みて」
「楽しい」即答した割に、藍はすぐ言葉を継がなかった。
 その間に祐希の頭が、その言葉をどういう意味か理解しようと回る。廻る、周
り回って。
 タノしい、楽しい? 楽しい……バカみたいな顔してるってこと?
 間抜けな、アホみたいな、顔。――僕、バカにされたのか?
 その考えに至ると、自然、顔が赤くなっていた。
693アイとユーキの物語<改>(前)5/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:33:22 ID:umoFQ3Bs
 藍に対しては軽すぎる感情のトリガーが、バカにされたという想念によって弾
かれ、生み出された恥辱が。祐希の相好を朱に染めていた。
「楽しい」藍は繰り返した。「春日の顔は見ていて楽しい」
 そうは聞こえない口調で藍は言う。
「……どういう意味」
 楽しいと言っているくせに、藍の顔は普段と変わらぬポーカフェイス。祐希が
意識し過ぎと言われればそれまでだが、ここまで近くに他人の顔があるというの
に一つも乱れていない呼気。――どうせ慌ててる僕を心の中で笑ってるんだ。祐
希は惨めづいた思考を、吐き出すように喉を小さく鳴らし。
「……バカにして」
 呻くように呟いた。
 顔を近づけているだけにも関わらず、ドギマギしている自分をあざ笑っている
のだ、この女は。
 怒りにも近いそんな想いを乗せ呟いた言葉へ、藍はきょとんとした顔をした。
驚いたような、そんな表情を。
「していない」
 この女――藍にしては珍しく主語の抜け落ちた言葉をいった。普段から主語だけ言うことは多々あったが。主語を抜かすなんて珍しい――
祐希は、割とどうでもいい、くだらないことをまだ混乱している頭で考えながら。
「な、なに」聞き返した。声が震えていた。「していない、て。なにを」
 藍は全く、いや、僅かに顔をうつむかせて言った。
「していない。バカになどしていない」と。
 祐希は逸らしていた瞳を、藍へと――少しだけ――戻した。
「確かに春日、君の顔を見ていると楽しい、とは言った。けれど馬鹿になどして
いない」
「う、うそだ」
 藍は自分を馬鹿にしている。
「うそ?」
「楽しいって、そんなこといって。ワケわかんない……ハハハ」唾を飲み込もう
とした、口の中が乾いていた。祐希の喉を空気だけが通り過ぎた「ウソでしょ?
どうせ、キミは僕のことをバカにしてるんだ」
「嘘だと、どうして言える」
 藍の瞳は少し青みがかった、透き通る瞳は。まるで心の中を一方通行に覗きこ
まれているように祐希は錯覚した。首筋を汗が一滴、流れた。
――情けない。
 そんな声が聞こえたような気がした、ドクンッと時間が脈打った。「だって、
そうじゃないか」祐希はか細い声で言った。
 藍の瞳孔が祐希の瞳孔を捕らえた――祐希は眼を逸らさなかった。
「見て、なにが楽しいっていうんだよ。僕の顔なんか」
 動じない藍の瞳が、揺らめいた。「それは……」
694アイとユーキの物語<改>(前)6/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:34:03 ID:umoFQ3Bs
 城戸藍は僕――春日祐希を馬鹿にしてる。
 高校に入ってからの、この半年足らず、図書委員になってからの数ヶ月――こ
の数ヶ月、藍と二人きりの放課後。
 最初は取っつき難いヤツだと思った。
 暇さえあればずっと本を読んでるヤツ、それくらいの印象しかなかった。
――いつからだったろうか?
 一々、イチイチ祐希のすることなすことへ、口を出してくるようになったのは。
 祐希が藍のことを「ムカツクヤツ」と認識したのは。
 いつからだったかは祐希には、思い出せなかったが、その時より祐希は藍の一
挙一動、受け答えを嫌味に感じてきた。
 そして、それは今もそうなのだ。
 暇つぶしだと言って藍の顔を見ていた祐希、実際そうだし――そうであったな
ら。見ていても確かに、距離は別としても、藍が暇つぶしに祐希の顔みてもかま
わない。
 動揺する祐希のことを、藍が見て、嘲笑するのもかまわない。
 そうなのかもしれない。――けど、それは許したくなかった……ムカツク。
 半顔が引きつっていた。「いいよ、もう」笑った、つもりだった。
「見てたのは謝るし、なんか僕も熱くなってたみたいでさ」
 喉が乾いた笑いをあげる。
「もう、やめよ。いいからさ。ね?」喉がひりついていた。
 藍の瞳は変わらず冷たさを湛えていた。
「離して、くれないかな?」
 沈黙が耳に痛かった、祐希は喋っていないと平静を逸してしまいそうだと、乾
いた喉を奮わせた。
 藍の黒フレームの眼鏡へ朱色の日が差し込み、少し細められる――その動作も
優美に見えた。冷たい瞳が揺らめいた。
 その揺らめきとは裏腹に、藍の桜色の口唇は乱れ一つなく。
「嫌だ」祐希の申し出を断り、いった。「君は勘違いしている」と「それに、私
も勘違いして、いや――気づいた」
 腕に廻された腕の強さが増した、ように感じた。
「うるさいよ。いいから離して」身じろぎできなかった。身体はガッチリ掴まれ、
顔を動かせば触れてしまいそうで。どうすることもできなかった。
 宙ぶらりんになっていた手に、何かが触れた。祐希の身体がぴくりと反応した。
藍の瞳に微かな笑みがよぎった。
 手がゆっくりと持ち上げられていく、
「春日、君は嘘だと言ったが」
 藍の手は、少しひんやりとしていた。
「ウソじゃない。春日、私は君といるととても、楽しい……そう、楽しいんだ」
 夕暮れの傷んだ紅が、藍の瞳を隠した。
695アイとユーキの物語<改>(前)7/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:34:51 ID:umoFQ3Bs
「私は器用ではないし、笑うのは得意ではない。けれど君と一緒にいると、心が
弾む、というのだろうか。胸がドキドキするんだ」
「……どきどき?」友希は口の中で言葉を繰り返した、その呼気は藍にも届いた。
「ああ」
「君が私を見ていた、君が私の隣にいる、それだけで嬉しい」祐希の手に重なっ
た藍の手から熱が滲んでくる。「いいか?」主語の無い言葉――祐希は頷いた。
 藍の手に導かれ、祐希の手は藍の胸、豊かな乳房の合間にあてられた。
 否応なく小指と親指に触れる乳房が、不純で純粋な情念をよぎらせる。それ以
上に、重なる手の温かさ、少し骨っぽい掌。
 なにより、どくんっどくんっと蠢く心音に祐希は驚き、藍の胸にあてられた手
を見、藍の顔を見た。――藍は瞳を伏せていた。
「暇つぶしだと、さっきは言ったな」藍は唐突にいった。
「う、うん」
「嘘だ」
「……へ?」
 意味が分からなかった、なにを言われているのか理解できなかった。
 さっきから祐希は藍に振り回されっ放しだ。藍がなにを考えているのか分から
なかった。
 ただ、心音がさらに速くなったことだけがわかった。
「試した」
 藍の呼気が少しだけ乱れた。
「君の側にいるだけで、私はどうにかなってしまいそうなくらい胸がドキドキす
る。病気かと真剣に考えた、けれど違う。そう違った。だから試した」
 必死で何かを言おうとしていた。
 祐希は藍の言いたいことを理解できた――できてしまった。
 藍の瞳が祐希をとらえた。

『――春日祐希は城戸藍が嫌い』

 そうじゃなかった。そう思っていただけだった。

『ヤツは僕をバカにしてる』

 違う。違った。違ったんだ。
 ヤツは――藍は、藍は…………

「試した。私自身を。私自身の、心を」言い聞かせるように繰り返した。熱い吐
息が肌に触れ、祐希の心を燃やす。
「笑わないでほしい」
「……うん」
「できれば、嫌いに、ならないでほしい」
「うん」
「春日。私は君のことが、好きなようだ」
 重なった手に力が加わる。ドクンドクン、心臓の音がさらに近づいたような錯
覚。
「わらえ、ないよ」
 吐息を漏らすようにいった。
 藍の瞳が輝いているように見えた、眼鏡が邪魔だと思った。
「笑いごとではない。私は君のことが好きだ」鼻と鼻とがぶつかる。ぴくっと藍
のまぶたが反応する。「初めて、だから上手くできるか分からない」そういった。
696アイとユーキの物語<改>(前)8/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:36:09 ID:umoFQ3Bs
 祐希は震える唇で聞き返した。「なにが」動かす度、唇に藍の吐息に触れる。
 少しだけ顔が離れ、藍の頭がちょっとだけ左に傾く。
「君が欲しい」
 短い言葉だった。
 祐希の返事を待たず、藍は顔を寄せた。
 音もなく影が重なった、夕暮れの傷んだ紅に図書室が染められていく。
 なんの技巧もない、ただ重ねただけの口唇。
 しっとりと湿った少し厚めの、柔らかな唇。
 ただ重ねただけ。
 息が止まる、時間が消える、しがらみから解き放たれる。
 あるのは、溶け合っていく二人のビート。重なっていく思考。
 ただ重ねられただけ、なのに祐希は。眼も眩むような光を浴びせられたように
目を細めていた。
「んっ……」息が漏れる。
 藍の瞳が柔らかな光を乗せ、離れていく。
 唇から感触が消え、時間が戻ってきた。
 数秒に満たぬ重なりあい、なのに祐希は肩を上下していた。図書室が夕日に染
められていてよかったと思った。
 少しの間二人は喋らなかった、ただ見つめあったまま息が整うのを待った。
――分からない。
 祐希は思った。
 なんで藍は自分へ好きだと言ったのか。
 なんで藍は自分にキスをしたのか。
 なんで、あんなにも藍の唇が柔らかいのか。
 分からなかった、なんて言えばいいのか。声の出し方が分からなかった。
「君が欲しい」藍は繰り返した。「いつも君のことを見ていた」
「なん、で」
「君のことが、好きだから」藍の言葉はどこまでも真っ直ぐだ。「だから、見て
いた」
 耳から雑音が消えていく。
「私では、駄目か? 春日」
697アイとユーキの物語<改>(前)9/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:44:50 ID:umoFQ3Bs
「だ、ダメか、って……はは、なに言って」
 友希の身体が微妙にあとずさる。椅子がギシリと鳴った。
「分からないのか?」
「ぃ……分からない、分からないよ」
 藍はふむと唸った。
「だ、大体。いきなりキスするなよ。キミ、女の子だろ」
 喚く祐希をほったらかし、藍は「ああ」と一人で納得した。
「春日――」何か言おうとしたが、
「それに、いいい加減はなせよっ。こんな所誰かに見られたらどうするんだよ」
祐希がまだ何か言っているので、藍は「ねぇ、ちゃんと聞いてる――ひっ………
…んぅ」祐希の口を塞いだ。――唇で。
 祐希がおとなしくなるまで、藍は――傍目にはそうは見えないが――辛抱強く
待ち、離した。
「春日、聞いてくれ――」
「またしたっ、なんなんだよ、キミはっ。こんな公共の、いやまあ人はいないけ
ど、ここは公共の場所で。ていうかここ学校じゃないか、そんな場所で……って、
そうじゃなくて。なんでキスするんだよ」
 怒っているのか、照れているのか、わめき散らす祐希に。藍は困ったように柳
眉を寄せ。「仕方ない」と口の中で呟くと。胸を押さえさせていた手で祐希の顎
を掴み、顔を寄せ。
「んー」
 かわいらしい声を出しながらゆっくりと唇を――
「やめろよっ」
 すんでの所で祐希は藍の顔を掴んで押し止めた。
「む……なにをする」
「それはこっちの台詞だよっ、今何しようとした!」
「何って、春日、君がなかなか黙らないからキスをしようと」
 そんなことも分からないのか、という風に言う藍に祐希はうんざりしながら。
「黙らせるのになんでキスなんだよ、もっと、別な方法もあるじゃないか」
「ああ、そのことか。それなら心配するな。今度は舌を入れようと考えていた」
「そうじゃないって!」
 叫ぶ祐希、驚いたのか目を見開く藍。
 藍が黙ると、祐希は顔から手を離した。祐希も喋らず。
 沈黙が少し、流れた後。
「なら、どうしたら良いんだ?」落ち着いた声で藍が聞いた。
「どうしたら、って……」別に答えなくともいいのに、訊かれたから律儀に答え
ようとする祐希、うーんと小さく唸り。「キミはどうしたいんだよ、僕を。僕を欲しいってキミは言ったけど、手に入れ
たら、なにがしたいんだよ。欲しい欲しいっていうだけじゃ通らないよ」
「……、なるほど」
「そうさ」祐希はぺろりと舌で唇を湿らせると、舌先に馴れない味を感じた。
698アイとユーキの物語<改>(前)10/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:46:20 ID:umoFQ3Bs
「城戸さん、僕はキミのことを」――そんなには――「嫌いじゃないし、嫌いに
なりたくない。だから、キミは僕をどうしたいのか、それをちゃんと説明してく
れないか」
「ふむん」頷く藍。
 本当に分かってるんだろうかと祐希は考えながらも、矢継ぎ早に言葉を継ぐ。
「恋び――」祐希は口ごもり、言い直した。「そういう、その、関係になりたい
って言うなら。こんなやり方じゃなく。いや、確かにキミの顔を先に覗き込んで
たのは僕さ謝るよ。でも、だからって……て、忘れてたけどいい加減離してよ」
「ム……春日は嫌か、こういうの」
「イヤじゃないけど……――じゃなくて。そういうことじゃないだろ」
「じゃないじゃないと、もう少し落ち着いたらどうだ」
「僕は落ち着いてるよ」言いながら、そうだろうか? と自分で疑問に感じてし
まうのが悲しい。――確かに落ち着けてはいない。「けど。キミ。落ち着けって
いうなら、離してよ。そしたら落ち着くから、きっと」
「ふむ……」藍は頷き――「嫌だ」すっぱり否定した。
「なっ、なんでさっ」
「ふむ。時に、春日、君の家はなかなかいいシャンプーを使っているな」
 藍の顔が横へとずれていき、目の端に藍の横顔が映り込む。
「な、なななな、なにして」
 ぴとっと、側頭部に堅い感触を感じる、くんくんと鼻息が聞こえた。
「春日、君が使っているシャンプーを教えてくれないか」
「なんで。ていうか離れてよ、くすぐったいよ」
「…………いいにおいだ」
「そんなことはどうでもいいから、離れてよ。シャンプーくらいあげるから」
「ほう、気前がいいな」
 感心したように藍はいい、祐希の頭をなでた。
 抱きつきが強くなる。
「フフフ」耳にくすぐったい笑い声。――嫌な予感がした。
「そ、そんなに嬉しいの?」おそるおそる訊く。
「ああ」藍はこくりと頷き。「とても嬉しい」
 くくくと喉を鳴らす。その笑い方は女の子としてどうだろう?
「月曜日――」藍の切り出しは常に突然だ、祐希はそのことを既に学んでいたが。
心の中で「何がだよ」とは突っ込んだ。
「学校に、君と私が同じにおいで登校したら、周りの者はどう思うか分かるかね」
 月曜日、ということは日曜の翌日で。
 同じシャンプーのにおいがしたら。
…………!?
「だ、だだだっ」
「掘削機か、君は」
「なに腹黒いこと考えてるんだよ」
699アイとユーキの物語<改>(前)11/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:47:15 ID:umoFQ3Bs
「駄目か」
「当たり前でしょっ」
「なら仕方ない」
 藍は祐希の体を離し、立ち上がった。あまりにアッサリし過ぎに思えたが。
 藍の身体が、体温が、呼気が、鼓動が離れていったことに。祐希の心は静まり
――同時に寂しそうな音を鳴らしていた。
 藍の顔も、表情の変化はあまりなかったが。心なし悔しそうに見え、もう少し
くらいなら……と祐希が考えていると。
 藍の手がすっと上へ向けられ、天井を指さした。
 なんだろう? 釣られて祐希が見上げると。
 次の瞬間――胸へ強い衝撃が走る。
 声にもならない悲鳴をあげ、なす術なく、気づいた時には祐希は椅子ごと倒れ
ていた。
 体ごと倒れこんだせいか頭がぐらぐらする、絨毯が敷いてあるのがせめてもの
救いか。
「できれば、こんな手は使いたくなかったのだがな」
 楽しげなのは気のせいだろうか。
 身体の下から椅子が抜かれ、祐希は足を絨毯へ投げだす。
「ちょ、ちょっと……なにするんだよ」
「穏健な手は、嫌だと君が言ったから、仕方ない――そう仕方ない」
 祐希は蛍光灯も眩しげに見上げると。
 均整の取れた筋肉のついた脚が祐希の身体をまたいでいた、更に視線をあげる
とスカートの暗闇が見えた
 制服から伸びるシャドウ、現実味が欠け落ちた情景、状況。祐希の喉がごくり
と鳴った。
 頭が悲鳴をあげていた。状況についていけないと。この半時間、藍に振り回さ
れ続けた思考は既に思考を止めていた。
 膝が曲がり、ふわっとスカートのプリーツが空気を吸い込み、一瞬だけ中間色
の下着が視界に映りすぐに消えた。なのに、陰に彩られた青空色は祐希の視界に
焼き付いていた。
 藍は下腹部にぺたんと座った。見た目よりも軽かったが、祐希としてはそれど
ころではない。
「さあ、春日。えっちしよう」
700アイとユーキの物語<改>(前)12/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:56:43 ID:umoFQ3Bs
「……な…………あ」
 生真面目に閉められたブレザーの前が藍によって一つ一つ開けられ、中に着た
シャツのボタンが外されていく。次第に露わになっていく汗に濡れた優肌、肉付
きの悪い身体付き、弱々しい胸板に体温の低い掌が置かれる。
「ひっ――」祐希が短い悲鳴をあげる、藍の口端が緩んだ。
「汗を掻いてるな、胸がドキドキしてるぞ」
 藍の細い手が胸を撫でまわしている。
「う、うるさいっ」
 その手――指先を口元へと持っていき、ひとさし指をくわえ。藍は。
「舐めていいか?」いった。
 そして返事も待たずに身体を折り曲げ、乳首へキスをした。
 こそばがゆい感触に、祐希の身体が跳ねる。
「や、やめろよ……」言葉が自然、漏れていた。
 少し厚めの口唇が乳首を挟みこみ、むにむにと擦る。漏れる涎が潤滑液となり
その動きを滑らかにする。
「ほひほひふぃへふぃはあ、ふぁんふぇいいふぁ」
 藍が何か言ったが、口を動かしながらで全く聞き取れなかった――が、直後に
理解できた。
 唇の動きが烈しさを増したかと思えば、離れ。熱い舌先が円を描くように乳首
を舐めまわし。再び唇で挟むのかと思いきや。
 硬く尖った上下の歯が、祐希の乳首を挟んだ。
「なんだって……――ヅッ、痛っ!?」
 捻り、つねりあげられる乳首が痛みを発する。
「痛っ、いたたたたた。やっ、やめっ、やめろよ」
 痛みに身をよじらせる、その度に痛みが強まる。今にも泣いてしまいそうな声
で祐希がわめき続ける。
 その様子を見て、藍は黒髪のベールの奥でくすりと笑い、乳首を離した。
 日焼けしてない肌が赤く滲んでいた。それを癒すように、舌先がぺろぺろと舐
め。
「……なにするんだよ……っく……やめろ、やめてよ」
 舌先が薄い胸板を這っていき、塩気の効いた汗を舐めとっていく。ねっとりと
した舌の感触が、柔肌に吸いつく。胸中央を舐め、肌の上を蠢動していく。
 肌というパレットの上で祐希の汗と藍の涎が混ぜられ、藍の喉を嚥下する。
 へそを通り過ぎ、ベルトと邂逅して、藍は顔を上げ。
 藍は額にかかる碧の黒髪を長い指先で払いのけ、額から吹き出していた汗をぬ
ぐい。
「もう少し身体を鍛えてはどうだ、私にこうされるのがそんなに、嫌なら」
 言いながらベルトへ手をかけ、カチャカチャと外そうとするがなかなか上手く
いかない。
 祐希の顔が――歪む。
701アイとユーキの物語<改>(前)13/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:58:07 ID:umoFQ3Bs
「むう……なかなか難しいな」
 眉を八の字に曲げて、そう言いながらも――カチャ。外れた。スルッと剰り部
分が金具から抜けていく。
「――ひっ」祐希の顔が恐怖に歪む。
「……よし」渋面を崩す藍。
 藍の手が、とうとう制服ズボンのボタンに掛けられ、あっさりと外した。
「うっ……ひっく………やめ…………ひぃぃ」
 顔を蒼白にした祐希――藍はソレに気づかず、意気揚々と祐希のズボンを脱が
そうとする。すでに赤いストライプの布地が見えていた。ズボンを脱がせるため
に、藍の身体がわずかに浮く。
 ほんのわずかだが、今の祐希にとってはそれで十分だった。
「やメてっ!」
 力のなさそうな手で藍の肩を掴み、左右に振り、藍の身体を更に引き離し。腕
と脚、尻、身体全体を使ってあとずさり、立ち上がる。ベルトを締め直すことも
できないまま、祐希は出入り口へと走る――その間には藍が待ちかまえていた。
振り切れると祐希は考えた。しかし、それは甘かった。
 祐希の脚に藍がしがみつき、「ま、待てっ」なにごとかわめく。
 祐希は藍を振り払おうと脚をでたらめに動かす「放してよ」子供のような抵抗、
動かし、ジタバタし続け。膝が藍の顎に入った。
「――クッ!?」
 呻く藍、緩む力。
 祐希は生まれた隙をのがさず、逃げ出す。
 出入り口まで、後はなんの障害もない。
 この非現実めいた現状から逃げ出せる。
 逃げれる――逃げる。祐希の最も得意なスタンス、異常への正常な反応。
 けれど。
 ズルズル下がっていたズボン、慌てているせいでもつれる脚。
「……ひ……はっ…………うわぁっ」
 自分で自分の裾を踏みつけ祐希は――転んだ。
 思い切り顔面から絨毯に突っ込み、バダンッと大きな音をたてて倒れた祐希。
足首を藍の華奢な手が掴んだ。
「こうなったら、意地だ」地獄のマントルから藍がささやく。「君の記憶に私が
どう焦げ付いてもかまわない、私は。春日、君が欲しい」
「……なんで」祐希は呻き「なんで」呻き「なんで」呻き「なんで」呻き「なん
で」呻き「なんでっ」――「なんでだよっ、なんでそんなに必死なんだよっ、」
叫んだ。喉が焼き付いても構わない、祐希は叫んだ。
 藍は眼鏡の奥、左目を細め、変わらぬ平静な声で。
「君の事が、好きだから」呟いた。
「……なんでだよ」焼き付いた喉から嗚咽が漏れる「なんで僕なんだよ」
 藍は言った
「君だからだ」藍の身体が祐希に覆い被さった。
702アイとユーキの物語<改>(前)14/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 12:59:12 ID:umoFQ3Bs
 踊るように藍の手が祐希のズボンを下ろす、祐希は立ち上がろうと腰を浮かし
たが、それは失敗だった。
 ズボンが床についた膝まで落ち、藍の手が祐希のトランクスにかかる。祐希は
抵抗しようと両手を伸ばしたが、上手くいかず。頬を絨毯にこすりつける結果に
しかならなかった。
 トランクスがずり下ろされる、頬からこぼれた熱い物が絨毯を濡らした。
 露わになった局部は痛むまでに緊張していた。
 それを、藍が掴んだ。
「――っ、」
 掴まれたソレは、たぎるような灼熱を藍の手へ伝える。
 藍は笑うことなく。
「かちんこちんだ。なんだ。君も興奮していたんじゃないか」淡々といった。
 祐希はふるふると顔を振った、摩擦で頬が痛かった。
 手がゆっくりと熱された肉棒を擦り始める。
 馴れていないことがハッキリ分かるし。
 けして上手ではない。
 けれど。
 華奢ながら柔らかなで極め細かい肌で包まれている感触が。
 自分の意思ではなく、他人の私意によって烈しくされていくのが。
 自分一人では決して味わえない感触と感動、鋭敏化された感覚が藍の吐息を肌
に伝える。尻に押しつけられた藍の下腹、背中に当たる張りのある乳房。正気を
疑う状況。
 じゅぷっ、じゅぬっ、じょぷっ、じゅぷ。濡れていた亀頭先端が音をたてる。
段々と強く、速く、烈しくなっていく手淫。
 動かしにくいからか、いつの間にか片手だけになっていたが。逆に、勢いは増
していた。藍の心の内を反映したかのような、その激しさが祐希の肉棒を刺激し
続ける。
 空いた手は祐希の口唇を弄くり、口内へ侵入して唾液まみれの舌を弄ぶ。祐希
の歯が噛みつくが、藍は血が滲んでも気にせず。指を巧みに動かし、歯茎を触り、
舌裏を撫で、ともすれば祐希が嘔吐しかねなかったが。藍はその一線を破ること
はなかった。
 唾液に混ざった鉄みたいな味。
 漏れる嗚咽と唾液。
 祐希の思考はすでに止まったまま、されるがままになっていた。
 世界を包んでいた夕暮れが閉じ――闇が世界を浸食し始めた。
 侵されることのなかった自尊心が、犯された身体はびくりと痙攣すると、堪え
る暇なく精液を吐き出していた。
 どぴゅっ、どぴゅっ、どぴゅ。精液を吐き出している最中も藍は手の動きを止
めず、祐希自身を磨き続けた。
 白濁したザーメンは絨毯を汚し、藍の手や、自身をも濡らしていた。
 大きく息を吐いて、射精が止まった。
703アイとユーキの物語<改>(前)15/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 13:00:27 ID:umoFQ3Bs
 藍の手が陰部から離れ、背中から体温が消える。祐希はドサッと倒れ込んだ。
緊張したままの陰茎が潰れ痛んだが、今はどうでもよかった。
 荒い息とともに涎が流れ落ち、涙腺が壊れたように熱い物がこぼれ続ける。心
臓が烈しく脈打っている、身体がマグマに突き落とされたように熱い。
……嫌だった。
 祐希が鼻をすすりあげる、それが図書室内に異様なまでに響いた。
 祐希の荒い息以外図書室からは音が消えていた。
 藍が蛍光灯を消し室内は薄闇に包まれた、窓の外から校庭をてらす照明灯がま
るで月のように二人を照らす。
 非現実――現実から引き剥がされたように、何もかもが嘘に思えた。祐希は、
頭の中で『こんなのは嘘だ』と必死に唱え、彼の現実を頭に浮かべたが。今は、
それらが嘘っぽく、フィクションにしか思えなかった。
 受け入れたくない、認めたくない現状、現実。
 ぱさっと何かが落ちた。
 耳が痛くなるほどの静寂が、
「春日」
 破られた。
 いつもと変わらない、透き通る藍の声。以前は魅力的だと感じたその声。
「嫌がっていた割にあっさり出したな」
「………ゥ…うるさい」まだ抵抗する気力は残っていた。
「気持ちよかったか」
「……ワケ無いだろっ」
「そうか。それにしては大量に射精したようだが」
「うるさいよ……」
「次はどこでシて欲しい? 口か? 胸か? それとも」
「うるさい」藍の言葉を祐希は遮った、それ以上は言わせたくなかった。された
くなかった。
 祐希は身体を起こし、振り向く。
 窓を背にし仁王立ちしている藍、暗闇の中、照明灯に照らされ藍のシルエット
がハッキリと見えた。藍はスカートを履いていなかった。
 藍の脚は、嘘みたいに細い。
 シルエットの藍の表情は見えない。
「春日、君はそうやって私を拒絶しようとしているが。その割にまだ下半身はや
る気のようじゃないか」
 祐希の目には藍が笑っているように見えた。
 藍がゆっくりと近づいてくる、祐希は動けない。欲しかない肉棒は、主の意志
とは裏腹にその緊張を強めていく。
 藍が再び祐希に跨る。
 藍の手が再び汚れたソレを掴む、亀頭の先端が柔らかな花弁に触れ、ビクリと
する。藍の手がそれを押さえ込み、ゆっくりと腰を降ろしていく。
 祐希は何かわめこうとしたが、言葉が喉に張り付いてなにもいえなかった。
704アイとユーキの物語<改>(前)16/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 13:08:04 ID:umoFQ3Bs
 肉棒によって藍は自らのクレバスを割っていく、祐希を虐めている最中から湿
っていた薄毛が生えた割れ目は、すんなりと祐希を受け入れたが。自分で招いた
にも関わらず、ある地点を越えると。
 一瞬陰茎の侵入が止められ、藍は電撃でも走ったかのように震えて。藍はくた
りと祐希の上に倒れ込んだ。
 祐希の耳元で藍は。
「意外と大きい、方なのだな。裂けてしまいそうだ。めいいっぱいに拡げられて、
とても熱い」素直な感想を口から漏らす。
 祐希はなぜかそれが不思議に思えたが、喋れそうにはなかった。
 まだ動いていないというのに藍の膣は、祐希の陰茎に吸い付き。肉襞が藍の呼
吸に合わせて内部で蠢動していて、締め付けが強くなったり弱くなったりを繰り
返していた。
 藍は僅かに腰を動かそうとして、殆ど動かせず腰を降ろしてしまい。祐希の背
に藍は腕をまわし、強く抱きしめた。頬を寄せてくる、ほっそりしている割に、
藍の頬は柔らかかった。
 頬が当たったことに祐希が驚き、身体を動かすと。藍はふるふると首を振り、
身体を揺らした。張りのある乳房が胸板に強く押しつけられる。
 その反応で祐希は先ほどの疑問が理解できた。
「ぃ……いたい……」藍が呟く。
 もしかしたら、藍も初めてなのかもしれない。
「………………動かす」
 自身を奮い立たせるように藍はいった。
「イきたくなったら、いつでもイって構わないから」微かに笑った。
 ゆっくりと藍の腰が上げられていく、強い締め付け、陰茎が持っていかれそう
な吸い付き。
「う……あ……」
 ねっとりと腰が降ろされ、亀頭が奥にぶつかり。
「んぅっ!?」藍が悲鳴をあげる。「んぅぅぅ」
 蜂蜜のように甘い声、締め付けが更に強くなり、陰茎が緊張を強くする。
 藍の吐息が一段荒くなっていた。
「春日……もう少し、小さくは……できない、か」
 無理な注文を藍が付けてきた。
 祐希にとっての強い締め付け、それは藍の膣にとって限界に近いだけなのかも
しれない。初めての藍にとって、肉棒が挿入されているだけでもキツいというの
に、それがぴったりとでも言うべきサイズは二重苦なのかもしれない。
 けれど、
「痛いのに……背筋がゾクゾクするんだ…………私は、変態だな」言って喉を鳴
らした。
705アイとユーキの物語<改>(前)17/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 13:09:02 ID:umoFQ3Bs
 祐希はできるだけ皮肉に聞こえるように、
「だと思うよ」返した。
 藍は楽しげに笑い、抱きつきを、締め付けを強くした。
 まるで祐希の体温を確認するように、藍は祐希を抱きしめたまま一息つくと。
腰を動かし始めた。
 引き抜き、挿し入れる度に藍は小さな悲鳴をあげた。それは祐希も一緒だった。
 藍の蜜壷は中で肉棒が動くたびにうねり、愛液に濡れた襞が吸いついき、膣全
体で祐希にからみついてくる。亀頭が奥にぶつかる度、藍の喘ぎに合わせてキツ
く締め付けてくる。
 さっき初めてかもしれないと祐希は考えたが、それはないと頭の中で否定した。
こんなにやらしく絡み付き、精液を絞りだし尽くそうとする肉壷で初めてだとい
うなら。連戦錬磨の技術で磨かれた肉壷はどれほど気持ちいいか、これ以上気持
ちいいとなると……想像もつかない。
 気づけば、身体が抵抗をやめていた。
 抵抗しようにも身体の自由が効かない、身体の一部に快感を与えられているだ
けだというのに、何もできなかった。このまま魂まで抜き取られてしまうのでは
ないかと、思ってしまう。
「……ひ……はっ……――あ……ぅ」
 どこか不慣れな腰の動かし方だが、その不規則な動きが良かった。
 そんなことができるのかは祐希には分からないが。蜜壷の中は愛液で満たされ
ながらも、膣襞が陰茎に吸い付き、膣壁がキツく絞めすぎていて。動かす一動作
一動作が辛そうで。かと思えば、腰を浮かし陰茎の半分ほど秘唇の外に出し、再
び藍の興奮を顕した鮮やかな肉色の唇に吸い込まれていく一瞬だけ、滑りがよく
なり勢いよく膣の中へ招かれ。奥を突く。瞬間締め付けが激しく。
「ぁ…………んうっ……ああ……」
 藍の悲鳴も一段高くなる。
 いつも隣に座っている文学少女の淫らな声が、祐希の心をかき立てる。
「……ぃ――はぁっん…………春がぁ……春日……んあっ、あっ!……」
 藍は求めるように頬を擦り付け、制服に包まれた乳房を押しつけてくる。ぎゅ
っと腕で抱きしめ、祐希を包み込む。祐希を自分の中へ受け入れるように。
「春日、かす日……春日ァっ……ううう…………いあ、ああっ」
 藍の悲痛ともいえる叫びが祐希の耳元で続く、泣いているんじゃないかと思え
てしまう辛そうな声、熱い吐息が耳に触れる。
「………………城戸、さん……」
706アイとユーキの物語<改>(前)18/20 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 13:10:02 ID:umoFQ3Bs
 祐希は藍の背中に腕をまわし、抱きしめていた。
 壊れてしまいそうなほど藍の身体は細く、柔らかかった。
 祐希に抱きしめられると、藍の身体がびくんっと反り、動きが止まる。
「……春日?」
 藍のつぶやきに、祐希は答えなかった。ただ抱きしめを強くした。
 外は一層暗くなり、照明灯の明かりが更に強くなったような錯覚をおぼえる。
 藍はゆっくりと、ギクシャクながらも腰を動かす。
 その動きは先ほどよりもヒートアップしていた、ほっそりした腰を上下に振り
ながら、愛液に濡れる秘陰を祐希の腰へ打ち付ける。
「あっ、あはっ!…………ふあっ……」 ぱちゅんぱちゅ、ぱちゅんっ! 先ほどまでの藍なら、耐えられない痛みと快
楽が藍の中に迸り続けているはずなのに。藍は祐希を気持ちよくさせようと、な
により自分自身の快楽のため。狂ったようにビートをきざむ。
「うっ……う…………あ……あ……んぁう…………」
 喉から声を出すのも辛いのか、鼻から漏れるように藍は喘ぐ。その声を聞く度
祐希の陰茎が緊張の度合いを高めていく。
 先ほどよりも速く、ねっとりとした腰の動きに下腹部が射精への欲求でマグマ
のように燃えたぎっていく。
「かすがぁっ、だ――はぁんっ……もうらめぇ! いく、ひあっ! あああっ!」
 抱きしめられた藍の身体が祐希の上で大きく反りかえり、蜜襞の締め付けが
きゅぅぅとキツくなる。
「……ふあぁっ!!」
 歯止めの効かせかたなど知らない肉棒が欲望のまま、勢いよくザーメンを濁流
の如く放出していた。
「く――――っ! ん、くぅぅ!!」
 びゅくっ、びゅっ、どびゅっ、びゅびゅ――――っ!!
 藍の膣内に煮えたぎる精液の塊が叩きつけられる。
「――あっ!? すごっおいっ!? かすが、かすがあぁぁぁぁぁ――!!」
 文学少女の子宮が極度のエクスタシーに震えた。
 細い腕にこめられるだけの力をこめ、そうしていないといけないかのように、
藍は強く強く祐希を抱きしめていた。
 どくっ、どくっと陰茎は壊れたかのように射精を続け。藍の蜜壷を一杯にし。
最後にびゅっと熱いのを吐き出し。ようやく止まった。
「ふ、ふぁ、あ……」止まり、ようやく藍の身体から力が抜けていき。荒い息を
繰り返した。
 重なる身体は元から一つであったようにシンクロし、快感に震える身体を休ま
せた。
707アイとユーキの物語<改>(前)19/19 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 13:11:51 ID:umoFQ3Bs
「かすがぁっ、だ――はぁんっ……もうらめぇ! いく、ひあっ! あああっ!」
 抱きしめられた藍の身体が祐希の上で大きく反りかえり、蜜襞の締め付けが
きゅぅぅとキツくなる。
「……ふあぁっ!!」
 歯止めの効かせかたなど知らない肉棒が欲望のまま、勢いよくザーメンを濁流
の如く放出していた。
「く――――っ! ん、くぅぅ!!」
 びゅくっ、びゅっ、どびゅっ、びゅびゅ――――っ!!
 藍の膣内に煮えたぎる精液の塊が叩きつけられる。
「――あっ!? すごっおいっ!? かすが、かすがあぁぁぁぁぁ――!!」
 文学少女の子宮が極度のエクスタシーに震えた。
 細い腕にこめられるだけの力をこめ、そうしていないといけないかのように、
藍は強く強く祐希を抱きしめていた。
 どくっ、どくっと陰茎は壊れたかのように射精を続け。藍の蜜壷を一杯にし。
最後にびゅっと熱いのを吐き出し。ようやく止まった。
「ふ、ふぁ、あ……」止まり、ようやく藍の身体から力が抜けていき。荒い息を
繰り返した。
 重なる身体は元から一つであったようにシンクロし、快感に震える身体を休ま
せた。
 二人はそのまま少しの間動けなかったが、藍は
「ありがとう」そうつぶやき、もう一度キスを交わして、身体を離してしまった。
 とろりと女唇から濃い糸を引いていたが、藍は構わずそのままショーツを履き。
スカートを履いて。カウンターの中から自分の鞄を取り出すと、
「また明日」
 そういって立ち去ってしまった。
 祐希はそれを焦点のハッキリしない目で追い、見送った。
 何か言うべきか迷ったが、なにも言えないまま藍は出ていってしまった。
 祐希は疲労と快楽の入り交じった身体を投げだし、まだ時折痙攣する陰茎の後
片づけもできないまま、ゆっくりと大きく息を吐いた。
「……なんなんだよ、全く」
 いろいろ考えねばならないことはあったが、今は考えたくなかった。今はただ
この疲労感を味わいたかった。




――翌日、藍は学校に来なかった。


続く?
708 ◆DppZDahiPc :2006/06/24(土) 13:17:40 ID:umoFQ3Bs
(´・ω・`)うん、長いよね。
709名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 13:27:34 ID:39j7gp1h
>>708
あぁ、長いな。
だがGJ!!
710名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 14:47:53 ID:aKI5EA1n
ぐっじょぶ!です。
前のバージョンも読んでたけど、また読みました。
翻弄される祐希がちょっと哀れで、でもかわいかった。
711名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 18:30:03 ID:xGpbI5NX
何気にもう492kbなのだが、次スレのテンプレとスレタイとスレ立てはどうする?
712名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 19:31:59 ID:umoFQ3Bs
>>709-710
驚いた、一瞬自分が無意識下に自演したんじゃないかと思うくらい驚いた。


>>711
500kb24間経過で落ちるんだったか。
職人さんらのことを考えれば、次スレ建ててくれたらありがたい。


奪ってきたテンプレ

ふたば★ちゃんねる落書き板の天才によりツンデレに対抗すべく、
新たに"素直クール"なる言葉が誕生した。
ツン→素直 デレ→クール
ガチで愛してくれるが、人前であれ、好意に関してはストレートかつ
クールな表現をするため、男にとっては嬉し恥ずかし暴露羞恥プレイ。
しかし、どこか天然。言葉萌えのツンデレ、シチュ萌えの素直クール。

ここはそんな素直クールさんたちのスレです。

過去スレ
素直クールでエロパロPART1
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1139830862/
713名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 19:59:30 ID:xGpbI5NX
>>712
すこし改変して建てますた

素直クールでエロパロPART2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1151146736/
714631:2006/06/24(土) 23:26:18 ID:O5JI9Tzh
くっ。フタじゃなくて祐希クンになったか!
でも攻められる男の子もイイ! GJ(節操ないんか>自分)
715名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 15:28:04 ID:6WYWKegt
GJ!!
716684:2006/06/25(日) 16:10:59 ID:MnAyku0F
>>686
ありがとうw
ただ、別にめぞんみたいなヒロイン役じゃなくて、アパートの住人達の世話や、悩みを聞いてあげる相談役とかならどうだろうと思ってね。
717名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 19:06:49 ID:XBadrZoq
保守
718名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 19:30:14 ID:hzW9ySlW
                              / な 案 べ
            /´ ̄`ヽ             /  い 内. つ
              i  /⌒jノ.           _|   ん し に
            '、 {  __     _  == ¨|   だ て ア
                ´      `ヽ= ¨     |   か る ン
             /             \        |.   ら ん タ
         〃  ,'           ハ   /´ ̄.  ね じ の
            ハ  / .ハ    ,    ハ.  /      っ ゃ 為
          l /トメ  jAr升t    ト、}: |  案 仕     に
              Vハ辷j  弋_ノノ}  ぃ  |  内 事
          / 八"  、  "" ハ. ! 1i <  し だ
          〈_ハ   、l⌒) ,イ ,  l :i l:  |  て か   ト、__
        rrrく_  -‐ハハノ  j/}-jハjノ:  |  ん ら.   | ',
    _   -‐ヘ_}とY_ ァ ¨l ト-./  /´ ` .、|  だ      | _〉
   |_  -┬  ,ノ /  ! Lノ辷ヽノ  .     |  か     l´
          i  l ぃ=、/  / 7´',   ヽ_ rく. ら     /
         |  l/`ヽハ  | l  ',.   / `ヽj、. ね    /
         l   ', /  }. |__ハ___ノ  /   /\っ_/
        l   ./  ′      {  /  /   
       ヽ.  /  /        r‐く  , '′  素直クールでエロパロPART2
        ¨´   く        fΞ7´    http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1151146736/
            /`ー===== 〈/
719名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 19:35:18 ID:hzW9ySlW
            r'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒ヽ
          (  次スレは                                      )
            ) 素直クールでエロパロPART2                        (
          ( http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1151146736/  )
           丶'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'〇'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'⌒'〜'´
                       O
                 ヘ      o
                /   \ )  ゚
                /-──-<\
                /         `ヽ\
              /           l \
           / // ∧/l/l∧/レ、   |   \
           !/!/l/━   ━ | |)  |    \
            | ll      l |   |        >
            LLヽ  -_ノLl,、,、,|    /
             //r几r、.      /
           , -、//  l´ソ `ヽ   /
           l   )< ノ--○--、/ヽ/
        / >< Y /l / lヽ  人ノ、
       //  ヽ/ l ∨∨  | > > 
      </         l    r'´ /   
720名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 18:32:42 ID:h1BjQTZH
721名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 19:27:56 ID:VpDJ53TE
産んでもいいのか?
722名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 22:02:26 ID:thPoE32+
産め
723名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 22:27:00 ID:ji+4mWVi


                    ,ゝ、 _ __
                   ∠ ノ/ ソノ
              _   //フ/ヽ/ソ
          =三三/e`==〉フ∠ヘ〈⌒〉
                   〈 l_l'iヘ / /
                   <v‖X]
                    >/ 〕〔
√]┐                ノンゝ‖
_______
スティンガー/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 ̄  ̄  ̄  ̄                       |
これは警告だ。                       |
今のうちにこのスレを埋めろ              |
724名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 22:44:23 ID:jOf+hzjH
保守あんどうめ
725名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 00:27:49 ID:/XWw/5W/
埋め
726名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 04:02:19 ID:92HEi+a3
ツンデレの振りをする素クール

素:ちょっと!近づからないでよ!
男:な……なんだよ急に?
素:あんたなんかだいっ嫌い!
男:(ガーン)ちょ…ちょっと待てよ!いっつもは頼みもしないのにべたべたしてくるのに今日はなんなんだよ!?
素:うるさいわね!もうあんたなんかとは喋りたくないの!
男:おいおい、何なんだよ、やめてくれよ
素:ほう、やめてくれということは、つまり私と喋りたくて近づきたくて私に好かれたいということだな?
男:……へ?
素:よし、君の気持ちはわかった。今日は私の家にきたまえ、安心しろ親もいないぞ
男:(´Д`)ェエ工
727名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:24:54 ID:oZeS2N/C
ちょっと訊きたいのだが……状況としては

素クールと好きな男が監禁される。
男は手足を縛られ身動きできない。
そんな状況で素クールは好きな男の目の前で、忌み嫌う男に陵辱される。

こんな場合素クールはどんな反応を示すのだろうか?
728名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:29:01 ID:rgcuQxjq
陵辱スレ池
729名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:38:29 ID:2atHXbII
     _ヽ/_
   /´     `\
.  /         ゝ
  !/    从    |    このスレはこれで・・・・
  l  ,∠/uヽ_ヽ. l
,. ‐'rT =  = T、‐ 、
  |゙ヽ、 u、||, ノ/' |   `ー  失礼します・・・
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730名無しさん@ピンキー
>>727
聞いてる者が赤面するくらいに延々とその男と好きな男との違いを語ってくれるかと