【妖怪】人間以外の女の子とのお話20【幽霊】

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1名無しさん@ピンキー
幽霊妖怪天使に悪魔、ロボットだってエイリアンだって何でもOK!
オカルト・SF・ファンタジー、あらゆる世界の人間以外の女の子にハァハァなお話のスレです。
これまではオリジナルが多いですが、二次創作物も大歓迎!
多少の脱線・雑談も気にしない。他人の苦情を勝手に代弁しない。

<前スレ> 【妖怪】人間以外の女の子とのお話19【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153583027/

<保管庫>
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/
 →「オリジナル・シチュエーションの部屋その5」へどうぞ。

過去スレとか関連スレは>>2-5へどうぞ。
2名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 00:28:34 ID:evl9KVsp
【妖怪】人間以外の女の子とのお話18【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149415855/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話17【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1138894106/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話16【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1136184690/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話15【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1129137625/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話14【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1123248462/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話13【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1118943787/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話12【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1112711664/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話11【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1105867944/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話10【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1102854728/
3名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 00:30:05 ID:evl9KVsp
【妖怪】人間以外の女の子とのお話9【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1099739349/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話8【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1093106312/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話7【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1088018923/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話6【幽霊】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1084053620/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話5【幽霊】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1077123189/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話4【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1072/10720/1072019032.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話3【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1065/10657/1065717338.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話U【幽霊】
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1047/10479/1047959652.html
人間じゃない娘のでてくる小説希望(即死)
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1046/10469/1046994321.html
4名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 00:31:09 ID:evl9KVsp
<関連スレ>
かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その11】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142074376/
【【獣人】亜人の少年少女の絡み4【獣化】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1152198523/
【亜人】人外の者達の絡み【異形】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098260654/l50
ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1150463153/
触手・怪物に犯されるSS 8匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145112008/
猫耳少女と召使いの物語8
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147852863/
魔法・超能力でエロ妄想 その3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145518730/
<エロくないのは↓へ>
【何でも】オリジナルSSスレッド【OK】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1126341412/l50
5お詫び:2006/11/18(土) 00:40:47 ID:evl9KVsp

 前スレで最後に書き込み(投下)していた者です。
 つい前スレでは容量オーバーさせてしまい、途中で書き込めなくなったので、
急遽新スレを建てさせてもらった次第です。
 
 このスレの皆さん、ご迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ありません。
 前スレにはもう書き込めなかったため、何の挨拶もなしに新スレを建ててしまいましたが、
とりあえずはこっちのスレに移動をお願いいたします。

 前スレで投下していた続きは、必ず投下いたします。本当にこの度はごめんなさい。
6その11:2006/11/18(土) 03:56:03 ID:qrUI9Sl2

 前スレを潰した大馬鹿者ですが、目につきやすいようにしばらくageながら、
続きを投下したいと思います。
 
 初めて見る人は、
 前スレ 【妖怪】人間以外の女の子とのお話19【幽霊】
 http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153583027/
 の >>588-597 に冒頭がありますので、そちらからご覧下さい。


 【続き】


「うぁっ、はぁっ、んっ」
 ニィナは耐えられずに、その度に甘くすすり泣くみたいな声を漏らし、びくびくと
震えた。だが、俺の舌が止まると、また俺の男根を握る手に力を込め、精一杯俺に
言われたことを成し遂げようとした。

 俺はそれをわざと邪魔するように、刺激に慣れない初心な花芯を、念入りに甚振った。
「ふぁぁっ、あぁんっ」
 俺が花弁を愛するつど、ニィナの尻尾は俺の頭上で蛇が速くうねるみたいに大振りで
くねった。さももっと強い快楽を欲し、ねだっているように。

「尻尾がすごく動いてるぞ」
「っ、あっ、つ、つい、意識しなくても、か、勝手に動いてしまうんです……」
 切れ切れにニィナは言った。尻尾が目の上で振れるのを見ていると、つい捕まえて
強く握ってみたい気持ちになってきたが、今は放っておいて目前の愛らしい割れ目に
集中した。ニィナのピンク色の粘膜からは、じわりと粘った汁が少しずつ湧いて出てきている。

 俺は挑発するみたいに、舌を離しては勢いよくぬめった肉壁にあて、わざと
いやらしい音を立てた。それを四つの耳で聴きながら、ニィナは恥じるみたいに
頭上の耳を震えさせている。ニィナの手が懸命に俺のものをしごき続けて、俺は
途切れ途切れの弱い刺激に、そろそろもっと強い感触が欲しいと思った。

 ニィナのピンクの割れ目から口を離すと、俺は言った。
「ニィナ、手はもういい。次は口だ」
「は……はい……」
 短い指示に、ニィナは耳を折り畳んで躊躇いつつ、それでも俺のものを
目を見開いてまっすぐに見つめ、おずおずと桜色の舌を突き出した。ぺちゃりと
湿った温かいものが触れ、俺は息を吐く。ニィナは俺のものの下側を握ったまま、
そろそろと舌を当てていった。

 その顔は真っ赤に染まっており、泣きそうなほど瞳は潤っている。
「男のものを見るのは、別に初めてじゃないんだろう」
「あ……は、はい……」
 落ち着いた口調で尋ねる俺に、ニィナは恥ずかしげに返事をする。その間も、
大きく膨張した俺の男根から放たれる熱気を肌で感じ、圧倒されたように目を
眩ませながらである。
7その12:2006/11/18(土) 03:58:21 ID:qrUI9Sl2

「今までのご主人様は、こんなことはさせなかったのか」
 ニィナは湿った音を立てながら、俺の質問にたどたどしく答えた。
「わ……私は、すぐに追いだされてしまったので……する暇がなかったんです……」
「ほぅ?」
 言いながら、俺はまたニィナの花弁に舌を当てる。

「はふぅっ、っ」
「横側から舐めるんじゃなくて、口全体で咥えろよ」
「あぁ……はい……」
 言われた通り、ニィナは口いっぱいで俺のものを頬張った。湿った柔かい口内に
すっぽり包み込まれ、俺はますます猛った。すでに限界まで膨れ上がっていたと
思った男根は、ニィナの口の中でまだ膨張を続ける。

「んぅっ、うぅ」
 それに脅えるように、ニィナは塞がれた喉から声を漏らす。
「ちゃんと根元まで呑みこむんだ」
「……ふぁい……」
 さらに要求を出す俺に、ニィナは困惑しながらも従う。口の中が俺のもので埋まり、
苦しそうに眉間をゆがめ、それでも懸命に舌を動かしている。

 尻尾のほうは、左右にしずかに揺れている。ニィナの意識は口に集中しているので、
振り出した尾が慣性でしばらく宙を舞うような、動きのない揺れ方だった。
「そうだ……そのまま続けろよ」
 ニィナは息を漏らすみたいにしてはい、と言う。俺はニィナの花弁をまた責め始めた。
ニィナの全身は揺れるが、構わずに舐め上げてやる。ニィナはぐずりながら、
舌を使っては、俺の送り出す刺激に反応して止める、というのを繰り返していた。

 数分経っただろうか、俺は自分の中のものがすぐそこまで昇ってきたのを感じ、
ニィナにラストスパートをかけた。より強く、速い速度で、ざらついた舌を
刺激に慣れない花肉にこすり付けていく。
「んぁっ、ぁっ、ふぁ」
 ニィナはひくひくと体を震わせながら、子供みたいに声を上げる。それでも、
達するのは俺の方が先だった。
8その13:2006/11/18(土) 04:01:27 ID:qrUI9Sl2

「んっ、っ」
 俺の先端から、白いものが大量にほとばしった。それはニィナの口壁にぶつかり、
いくらか喉の奥へ滑り落ち、大半は地面に吐き出された。

 げほげほと喉を押さえて、ニィナは目尻に涙を滲ませる。俺はおもむろに体を
起こすと、口の端に垂れた濁った液を、指で拭ってやった。
「あぁ、全部出しちまいやがって、勿体ないな。今度からはちゃんと飲むんだぞ」
「は……い……」
 幾分疲れた瞳で俺を仰ぎ見ると、ニィナはそれでも従順に頷いた。俺は満足して
微笑み、ニィナを抱き寄せた。俺の膝の上に下ろすと、子供が用を足すときみたいに、
膝の下に手を挿し入れ、両側から大きく脚を開かせる。

「あっ、やぁっ、は、恥ずかしいですっ」
 ニィナは叫んだ。恥部が惜しげもなく晒しだされ、俺の目の下で開いた貝の口が、
空気を吸っている。その下では黒色の尻尾が、感情の起伏に合わせてばたつく。
「さっきまで眼前のどアップで見られていたのに、今さら恥ずかしいことがあるか」
「で、でも、こんな格好、ぁっ」
 俺はニィナを揶揄するように、二本の指をニィナの花弁に挿しこんだ。黒く柔かい毛を
掻き分けて、指の関節を折り曲げ、中に沈めてやる。

「ぁっ、ぁぁっ」
「俺に舐められてヒクヒクしてたくせに、澄ましたって駄目だ」
 俺は指を中に入れたまま、激しく掻き乱した。俺の指の下で、柔かい花弁は
捲くれ上がり、いやらしい音を立て始める。上下に手を滑らせて花弁に
こすり付けてやると、ニィナは泣きながら身をよじらせた。尻尾が暴れるみたいに
ばたばたと律動する。

「うぁっ、ぁっ、ご主人様ぁっ」
「イきたいなら、イってもいいぞ」
「ぁ……イ……く……?」
 途端にニィナは、ぼんやりした問いかける目で俺を見上げる。
本当に意味がわからないようだ。
9その14:2006/11/18(土) 04:03:28 ID:qrUI9Sl2

くすりと笑うと、俺は指の先で、肉の鞘に守られたニィナの小さな豆を見つけ出し、
丁寧に苛めてやった。指の腹ですりつぶすように摘み上げると、華奢な肢体は
俺の膝の上でびくびくと喘ぐ。耳がぴーんと張るのに相対して、尻尾は地面の上で
跳ねるみたいによくうねる。

「ぁっ、ご主人様ぁっ、そ、それ、変ですぅっ」
「どうした? どう変なんだ?」 
 なおも手をいやらしく動かしながら、俺はそ知らぬ言い方で訊いた。
「はっ、はじめて……こんなの……ぁっ、んゃっ」
「お前が感じているのは、よく躍る尻尾を見てれば一目瞭然だ」
 意地悪に言ってやる。そう言っている間にも、俺が指の間で強く豆を挟むのに
反応し、尻尾は勢いよく波打っている。

「っぁっ、み、見ないでっ……くださいっ……」
「見るなと言っても、目に入ってしまうだろ」
「自分でも、止められないっ……ぅぁっ……んですぅっ……」
 ニィナは羞恥に顔を歪める。俺の目の下で、耳はぶんぶんとはためき、空を切った。
俺は、ニィナの花弁を掻き混ぜながら、もう片方の手でニィナの胸を掴み上げる
みたいにして揉みしだいた。

「はぁっ、ぁっ」
 一段と高い嬌声を上げるニィナを見ていると、俺はまた自分のものが熱く屹立し、
硬さを増してくるのがわかった。俺は一方の手をニィナの膝下に戻すと、びくびくと
血管を浮き上がらせる男根をニィナの花弁に擦り付け、そのままこすり上げた。

「はあっ? あんっ、うぁぁっ、ふぁぁん」
 ニィナが驚いたように大きく鳴いた。今までで一番顕著に反応し、俺の腕を
必死に振り解こうとした。が、俺はそれを残虐な気分になって見つめながら、
ニィナの脚に指を食い込ませ、ニィナの体を上下させて自分のものに押し当て続けた。

「やぁっ、やだぁっ、あ、あぁっ」
「どう嫌なんだ、ここが嬉しくって涙を流しているじゃないか」
「やあっ、やめてぇ、やめてください、ご主人さまぁっ」
 ニィナは涙を流して懇願した。それでも俺の言ったとおり、ニィナの花びらからは、
大量の透明な蜜が溢れ出て、俺のものに絡みつき、それが余計に滑りをよくし
動きを加速させている。
10その15:2006/11/18(土) 04:05:39 ID:qrUI9Sl2

「はぁっ、んぁっ、ぁぁっ」
「舐められるより、こすられるほうが好きなのか」
 低い声で俺は、動きを緩めないまま、訊いた。
「あぁっ、やっぁ、だぁっ、こんなの、おかしく、んぁっ……なるっ……いや、です、
ご主人さまぁっ……」
 空気を探し求めるように、ぱくぱくと口を開いて、ニィナはたどたどしく喘ぐ。
奥まで舌が入り込む繊細で細かい刺激とは違って、硬い棒が入り口に擦り付けられている
だけなのだが、その有無を言わせない強くて熱い感触が、初心な花弁を震わせ、
ニィナから正気を奪っている。

「正直な子だ……」
 俺は呟いて、いっそう強く男根の腹をニィナの花弁に埋め、花びらを内側から擦り上げた。
はあっ、あぁん、とニィナは喉をびくつかせる。花びらは捲くれ上がっており、その周辺の
細い毛も巻き込まれてもみくちゃになっている。内部に当てられた男根は、容赦なく
下から突き上げるみたいにして、柔かい肉に擦り込まれていく。

 花びらが捲れて露出した肉の豆が、ちょうど亀頭の切れ込みに当たって、えぐるような
快感が花弁を貫き、体中を痺れさせる。それにさんざん弄ばれながらも、ニィナは
なかなか達することはなかった。ただ目の芯を蕩けさせ、白みがかった風景を見つめる
ようにしてぼうっと口を開けている。

 そうこうするうちに自分の方が到達しそうになり、俺はニィナの腰を少し浮かせると、
その花弁の真ん中に自分の先端をあてがって、中へずぶずぶと沈めていった。
「っ、っあっ? んぁぁっ」
 ニィナは嫌がるみたいに腕をばたつかせたが、俺は取り合わなかった。ニィナは
涙を零しながら、背筋をぴんと張り、尻尾は固くなって動きをひそめている。ニィナの
花肉が押し分けられ、内部に硬いものが侵入する。その異物感に身を細かく震わせながら、
ニィナは耳をばたばた、ばたばたと二回ずつ何度も振り倒している。

 俺は全部沈めようと思ったが、ニィナの華奢な花弁は、俺の全長の中間ほどまでしか
受け入れなかった。それでも半分入ったので、俺はニィナを両手で抱えて、その体を
上へ下へと滑らせた。ニィナの軽い肢体は、簡単に上下する。
11その16:2006/11/18(土) 04:07:59 ID:qrUI9Sl2

「はっ、あっ、っぁあっ」
「……ニィナ、お前は今までご主人様に、されたことがなかったのか」
 あまりに身を竦めて、痛みに耐える声を上げるニィナに俺は尋ねた。ニィナは、
きつく瞑った目の片方をこわごわと開くと、喘ぎ喘ぎこう言った。
「はっ、あ、ま、前の旦那様は、さっきまでご主人様がしてたようなことを、私に、
されました。で、でも、わたしはその次が、私が、ご主人様を受け入れるのに
小さすぎて、入らなかったんです」

 ニィナの返事を受け、俺は納得した。
「成る程な、だから経験はあるが処女ってわけか」
「しょじょ?」
 呂律の回らない舌つきで、ニィナはとろりと口に出す。俺はかすかに笑うと、
何でもない、と言った。
「はっ、ぁっ……あ、処女……はい、そう、っ、ですっ……」
 体中を緊張させ、俺のものが中に入り込み、肉壁にこすり付く感触を懸命に
受け入れ続けるニィナは、少しして言葉の意味を思い出したのか、こう言った。

「……しかし、それにしてもその主人は、お前に他のことをちっとも教えなかったのか」
 大きさに相違があり過ぎて受け入れられないとしても、なら余計に別のことに
力を入れそうなものである。
 ニィナは口を開いて息を吸い込み、そこから舌を出したまま、答える。
「はっ、あ……わ、私は、やらされたけど、下手くそで、ちっとも覚えられない
ままでした……ちゃんと教えられる前に、奥様が、私が旦那様に抱かれているところを
見て、怒って、んぁっ、追い出され……ましたし……」
 
 ようは見目麗しい猫が、主人に愛撫されるのが、たった数日間でも我慢できなかったと
いうことだろう。女性の飽くなき嫉妬心というものを感じ、俺は心の中でため息をついた。
目下の少女は、黒い相貌を苦しげに伏せて、体を強張らせたまま、俺の繰り出す動きに
耐え続けている。

 それでも、俺が根気強くニィナの体を揺すり、腰を突き上げていると、だんだんと
中の滑りが良くなって来た。はっ、あぁっ、と、ニィナの漏らす吐息も、少しずつ
堂に入ったものに変わってきている。


12その17:2006/11/18(土) 04:10:10 ID:qrUI9Sl2

「………小さいな、お前のここ」
 俺は指摘した。ニィナは顔を紅くして俯く。
「ご、ごめんな……さ……」
「別にあやまることじゃない」
 俺はひんやりとしたニィナの髪に顔を埋めると、その匂いをいっぱいに嗅いだ。
柔かくて甘い匂いがした。

 空気を全面で浴びるみたいにして動く耳に、舌を挿しいれてみた。びくん、と
跳ね除けるように大きく振れたが、毛の生えた裏側から、じっくり舐めてやる。
窪んだ表側を、ざらついた舌で掻きまわすと、ニィナはうっとりと目を蕩けさせた。

 下に垂れ下がった尻尾は、その先を俺の足首に巻きつけている。ふわふわした毛の
こすれる感触が、何とも言えず心地よかった。
「しっかし、その旦那様ってのは相当なデカマラだったんだな」
 俺が呟くみたいに口に出すと、ニィナは否定の色合いを瞳に映した。
「はぁ、っ、あっ、ち、違います……」
 そして、俺の腰の動きに全身をびくつかせながら、一生懸命に説明した。
「あ、だ、旦那様は……わ、私を、こんなに丁寧に、扱ってくれませんでした。あっ、
わ、私は、あの方には、こんなに、その、濡らしたり、出来ませんでしたし……それが
表に出て、あの人のものを、受け入れられなかったんだと思います。その、私は、
ご主人様だから……ご主人様の、ものだから、……んぁっ……こ、こうして、
受け入れてるんだと……ふぁっ、あっ、……思うんです……」
「………」

 可愛い奴。俺はいっそう手に力を込めると、ニィナの体を引き下げるようにして、
自分のものを根っこまで突き入れた。
「あぁっ、ぁぁっ……ぁぁあ……」
 ニィナは脚をばたつかせるみたいにして反応した。初めて、男のものをいっぱいに
受け入れ、びくびくと震え、尻尾は俺の足首から離れて宙を喘ぐ。

「今度は俺のものを全部呑み込めたじゃないか」
「……っ、はいっ……」
 嬉しそうに、ニィナは喉から声を絞り出す。俺は誉めるように、
ニィナの耳を舐めてやった。
「はぁっ、あんっ」
 ニィナはますます深く吐息を漏らし、体をくねらせた。
13その18:2006/11/18(土) 04:12:26 ID:qrUI9Sl2

 俺が自分の快楽を高めるよう、ニィナの中で自分のものを突き動かすと、ニィナは
びくびくと耳をはためかせる。尻尾は大きく揺れ、俺の膝の裏側から、ふくらはぎに
かけて巻きついた。その先端が撫でるみたいに肌を張って、毛玉が通っていくような
感覚に、俺はいっそう自分のものを猛らせた。

「うぁっ、ぁぁっ……」
 ニィナは涙を零しながら、初めての痛みに耐えている。俺はこそげ落とすように、
ニィナの内部を掻きまわす。ただでさえ狭い道が、生まれて初めて受け入れる異物を
はね返すようにひくひくと収縮し、俺は温かい内部がきつく自分に絡みついてくるのに、
ますますニィナの体を揺する手を速める。

「あっ、あっ、ぁくっっ……」
 苦痛を感じながらも、うっすらと悦楽を理解し始めているニィナに、俺はさらに
胸をしだいてやった。二本の指で乳首を転がし、先端をじっくりとこする。
「はっ、あぁっ」
「お前のここ、つんと立ってるぞ。石みたいに固くしこってる」
「はっ……嘘……」
「嘘じゃないさ」
 にやりと俺は言う。そして、さらに奥までニィナをえぐっていると、不意に
ニィナの尻尾がぴこんと上に上がって、俺の背中の裏側を撫でた。

 ほわほわした短毛が、頼りなく肌の上を滑っていく。股間の熱くて湿った、
ぬめった感触を感じているときに、同時にこうして触れられると、何と言うか。
これは、いい。なかなか癖になる気持ちよさだ。

 俺は無意識に口の端を上へ釣り上げた。
「いいぞ、気持ちいい」
「はぁ、あぁんっ」
 渦の真っ最中にいるニィナには聞こえないようで、尻尾はニィナの意思に関係なく、
別の生き物のようにますます強く俺の体に擦り付いて来る。俺がそれを後ろ手で強く
握ってやると、ニィナは感動したみたいに高い声を上げた。
14その19:2006/11/18(土) 04:16:47 ID:qrUI9Sl2

「あ、あぁっ、な、なんか……来る……こわいっ……」
「怖いもんか。俺がついてるさ」
 俺が手の中の尻尾を逃がさずに、しごくみたいに丹念に手を上下させると、ニィナは
ぴくぴくと脚を震わせ、限界を訴えた。俺は心得たように頷き、最後の追い込みで腰を
じっくりと、尚且つ強く動かす。

「あぁっ……ご主人様ぁっ……」
 泳ぐように手の平を漂わせるニィナに、俺が指を絡めてやると、そのまま
強く握ってきた。ニィナは爪を食い込ますぐらい力を込め、自分の中に
昇り詰めてくるものを待った。やがて、俺を包み込む花弁が、さらに強く
ぎゅっと俺を締め付けた。

「は、あぁっ、あぁぁあんっっ」
 ニィナは声を上げた。それを追いかけるようにして、俺も果てた。
ニィナの中に思い切り、欲望を吐き出す。それがばしばしと奥へ
ぶつかる感覚に、ニィナは喉を極限まで絞って、長く細い嬌声を上げ続けた。

「んっ、くっ」
 俺から最後の一滴を搾り取るように、ニィナの内側は痙攣したみたいに俺を
長い間締め続ける。それに自分の濁りをすべて流しだすと、俺はニィナから
体を離した。岩の上に全身で仰向けに寝転がり、その上にニィナがぐったりと
横たわってきた。

 初めての絶頂を知り、尻尾は熱く昂ぶった余韻を冷ますように、虚空の中を
ゆっくりと泳いでいる。長い睫毛を伏せて、俺の胸の硬さを感じるみたいに
目を閉じているニィナの頭上で、二つの耳が切っ先だけ、ぴくぴくと空を払っていた。

 俺は腕を動かしてニィナの頭を優しく撫でると、その耳も指先でそっと
触れてやった。喜ぶみたいに、俺が触れるたび、ぱたぱたと早く揺れる。
中の窪みに指を入れて丁寧になで上げてやると、心地良さそうに尾が中空を回って、
恍惚とした表情になってニィナは俺の胸に顔を埋めている。

「ニィナ、なかなか良かったぞ。俺はお前が気に入った」
「ほんとですかぁ」
 ニィナはうつぶせたまま顔を上げた。
「ああ、本当さ。お前がこれからも素直で俺の言うことを聞くなら、
ずっと可愛がってやろう」
「嬉しいです。私も、ご主人様のことが、好きになりましたから」
 頬をほんのり赤らめて、ニィナは俺の胸に子供のように手を置いたまま、
そっと言った。
俺がその言葉に何か言う前に、ニィナは再び俺に頬をくっつけて、そのまま
静寂の眠りの中に落ちていった。

 静かな寝息が、闇の中に流れては消えていく。ニィナの耳は呼吸に同調して
かすかに揺れ、尻尾はくるりと巻いて、俺の足の上に置かれてある。その繊細な
柔かい温かみをじっと感じていると、自然に口元が緩んできた。俺は壊れやすい
宝物を抱えるみたいにして、そっとニィナの背中に両腕を回すと、固い石の感触を
背中に感じつつ、瞼を下ろした。気温は少し肌寒いが、体温の高い猫と一緒なら、
心地よく眠れそうだ。

 終わり

15名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 04:19:23 ID:qrUI9Sl2

 投下終了です。2スレにまたがってしまい申し訳ないです。
 最後まで読んでくださった方がいたらお礼を言いたいです。
 では、今後このスレがますます発展しますように。
16名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 04:25:00 ID:QWM93Dgb
gj & スレ建て乙
17名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 08:33:25 ID:2f5OlU9U
ベラってアリ?
18名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 23:23:18 ID:I7N7xvNi
妖怪人間だからなんとも言えないw
前スレでキュンキュン氏に文句言ってたヤツがいたがそういうのは心のうちかチラシの裏にでも書くもんだぜ
19名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 04:29:31 ID:0P2QZXnX
↑ ↑ ↑
擁護を装う荒らしか自演

キュンキュンだかキョンキョンだかいーよもう、どーでも
なにこっちまで引きずってんの?
よーするにあそこの前スレとこれが発端だろ「自業自得」って言葉辞書で引け

567 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2006/10/26(木) 22:27:23 a0Diq5b.
あのコテハンの職人さんは有名な人なのかな?
知らないけど…。 
568 名前: キュンキュン ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日: 2006/10/26(木) 22:38:56 EpQqxz4I
>>567
自分では特に有名ではあるとは思っておりませんので、
ご存知なくともなんら問題ないかと思われます。

個人的には有名であろうとなかろうと、作品内容だけで評価していただきたいものですが、いやはや。 
569 名前: 本スレの550(Part.9) [sage] 投稿日: 2006/10/26(木) 23:20:29 xdX2mpy.
決してキュンキュン ◆4hcHBs40RQ 氏に噛み付く訳じゃないんですが・・・ね。
以前常駐していたスレで自分宛の粘着荒らしが登場しまして、それでスレの雰囲気がグダグダになり・・・
それを覚えてるので別スレでハンドルの流用はどうかと危惧した訳です。
スレの住人さんが荒らし耐性強かったり、基地外潰しが上手かったりすればともかく
Part.9の粘着バカとその辺りの流れを見てると、ちょっと及び腰になりまして・・・

ですから、キュンキュン ◆4hcHBs40RQ 氏は勇気があるなぁと思うしだい。 
570 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2006/10/27(金) 00:22:22 0MvAajHs
別スレでも使ってるコテハンだとそっちに気を取られて作品評価は二の次になりそうな予感。
実際なっちゃってるし。
>>568
個人的にはこの後どう転んでいくかで評価は決まりそうだが、今後もテキスト投下推奨。 

20名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 04:35:49 ID:0P2QZXnX
>>4
ついでに一部修正
猫耳少女と召使いの物語10
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161785657/l50

今後ここであのコテの話題持ち出す馬鹿は荒らし認定な
21名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 04:56:39 ID:+fsJvmCj
あんまり人来ないけど、まだみんな新スレの存在に気付いていないのかな?
そこはかとなく荒れてた時は短時間でレスがついていたのに・・
荒れたら伸びて、普通に戻ったらスレの伸びが止まるって、どのスレもそうだろうけど
いつ見ても嫌な現象だな。

というわけで、今後この話題はもう終了ということで、
職人さんたち頑張って投下してくれたまい。そしてGJの嵐を巻き起こすのだ!
22名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 05:43:26 ID:KvqkhwMV
キュンキュン氏は離れないでほしいな。
あれ程度でもうあの作品が読めなくなるのは惜しすぎる。

というわけで、キュンキュン氏、作品投下待ってます。
23名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 06:02:48 ID:GkP9ZHNJ
いい加減空気嫁

コテ連呼するだけ引っばるだけだろボケ

本気で惜しむなら
ほとぼりが冷める迄そっとしてやるのも情けだろ
ああ、粘着野郎の自演か。
釣られた俺もアホだったな
24名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 06:05:38 ID:0P2QZXnX
………('A`)
25名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 14:15:33 ID:qq4c87IB
いつのまにか読ませてもらう立場から
読んでやる立場に変わっちゃったのか?

粘着が荒らしているだけで、住人は巻き込まれてるだけだよね?
26名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 14:51:45 ID:LEnh0jW2
新スレ立ってたのか…気づかなかったorz
>>1
ぬこかわいいよぬこ GJ!
そしてスレ立て乙!
27名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 15:00:51 ID:wE3lVZUC
>>25
巻き込まれてはいるが、進んで参加してるアホがいるのも事実

粘着馬鹿が荒らしてるスレにわざわざコテで乗り込んで、しかもコテで煽りの自己語りしてりゃ
寝た子を起して回ってるようなもんだ
そいつらを引き連れてやってきて、前スレで煽ったままトンズラ

疫病神か貧乏神もしくは邪神以外のなにものでもあるまい

そういう勘違い職人は<にちゃんねる>という所の作法を身をもって知るべき

読ませてもらう、読んでやるって何卑屈になってるんだ?
職人だって投下しなけりゃただの読み手、対等なはずだろ

作品読むのに自己主張の激しいコテはイラネ。つかもうコイツの話題飽きたっつってんだろ
28名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 15:49:25 ID:PlIeRhM5

言う側はなんとでもいえるわな。
たとえばこんな感じで。

・コテがコメントを入れに来る→空気を読めていない。
・コテがコメントせずに静観→逃げた。無責任。
29名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 16:10:49 ID:DtxVsYxj
まあ荒らしといえば荒らしなんだろうが…
>>19のレス見てなんとなくまるきり見当違いではなく正論も言ってはいるとオモタ。

今回のはコテがコメントせずに静観、ではなく
・粘着に対し住人が意味不明の謝罪後静観←これだろ

前スレの謝罪もバカにされたように感じたが
>個人的には有名であろうとなかろうと、作品内容だけで評価していただきたいものですが、いやはや。
これもなあ…皮肉に皮肉で返してるように見えても仕方ないんジャマイカ?
30名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 16:24:51 ID:GkP9ZHNJ
だからさあ・・・
生暖かく見守ってやれってばさ・・・・
31名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 16:47:07 ID:AyZ2tib8
>・粘着に対し住人が意味不明の謝罪後静観←これだろ
でもどうせ、キュンキュン氏がまたやってきたら叩くんだろ?

謝罪で馬鹿にされたと思うんなら、お前に何らかの負い目があるんじゃねーの?
なんで自分と関係のない人に対しての謝罪に腹を立たせるんだよ。
あんなんで挑発と感じるなら、あんたが他人に対して干渉しないとすまないたちなのか、
それとも当事者くらいしか思い浮かばないんだが。

>>19のだってなんで取り立ててやり玉にあげるのかわからん。
別に偉ぶってるわけじゃないし、むしろ有名と言われているのを嫌がっている節があるんだが。
そこで有名だ有名だ言い出したのはキュンキュン氏じゃなくて、読み手の方だし。
32名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 17:07:50 ID:yjzfgKIm
どうみても自演コテ叩きと過剰コテ擁護の泥試合です。 
本当本当に本当にありがとうございましたと何度いえば(’A`) 
33名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 17:32:24 ID:GkP9ZHNJ
もはや痛々しさに笑いさえ浮かばんな・・・
34名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 17:51:32 ID:BjPAzTQr
作品投下以外でスレを伸ばすな。
住人も荒らしをちゃんとスルー汁。
35名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 18:15:57 ID:GkP9ZHNJ
いや、住人は普通に引いてるって。。
泥仕合やってるのは特定個人らだろ
36名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 19:47:09 ID:qq4c87IB
誰もが「自分のレスだけは、荒らしレスでは無い」と思っている
って奴ですね
37名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 20:20:55 ID:B1mFtxtX
よし、スレが荒れている隙に
俺一人でラミアたんにロールミーされてくるぜ!
誰にも邪魔させないぞ!
38名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 20:36:13 ID:VM3PR1r5
じゃあ俺は冬らしくもこもこふわふわとした九尾さまの尾に埋もれて抱き合うぜ!

37は大変だな、南国へと旅立つとは
39名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 20:41:04 ID:rLGEuY94
ならば儂はちょっと温泉スライムさんの所へ旅立ちますよ
40名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 20:41:20 ID:AN6BbLK7
雪女さんの季節はもう少し先か?
いまのうちに登山用具を準備しておかねば。
41名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 20:41:36 ID:GnduSy0U
>>37何を言う!!ラミアたんは俺のものだ!!
足コキしてもらうんだ!
42名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 21:44:30 ID:L/K4d++f
>>41
お前それトカゲじゃね?
43名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 23:30:26 ID:rM/Isxvi
二口女をネタにして1本書いてみました。
エロ無しなんですが、このスレでも大丈夫でしょうか?
44名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 23:34:20 ID:rLGEuY94
>>43
WKTK
45名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 07:40:48 ID:BmdjsRd0
>>42だから尻尾でこう、マイサンをロールしてだな…ギュッと締め付けたりとな…
まぁ色々だ!!
46名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 09:44:03 ID:jTXqXqT4
>>43
このスレでおkだと思う。
でも一応、投下直前にも注意書き推奨。

>>45
くっ…その手があったか! 想像するとかなりエロいな
4743=18スレの314:2006/11/20(月) 12:53:10 ID:KSwm7g5k
二口女のお話、投下させて頂きます。約20レスほどお借りします。
暗い話は初挑戦なので拙いですがご容赦を。
エロ無し、ダーク系、捕食有りがダメな方はスルーをお願いします。
48A girl's wish:2006/11/20(月) 12:54:30 ID:KSwm7g5k
 すぅ、と息を吸う。
 はぁ、と息を吐く。
 呼吸をすると言う、たったそれだけの事がひどく重労働に感じる。
 暖房一つ入れて貰えずに冷え切った空気はかさかさに乾いた唇を切りつけて、弱った肺を刺していく。
 少女以外には誰も居ない部屋。
 しんと静まり返り、音なんて自分のか細い呼吸と止まりそうな心臓の音ぐらいしか聞こえない。
「あたし…しんじゃうのかな」
 元は綺麗な桜色をしていたであろう唇が微かに動き、呟いた。
 誰とも無く呟かれた問いに応える者はなく、その言葉もまた彼女の吐息同様に部屋の空気へと溶け消えた。
 天海雫(あまみ しずく)は死の淵を彷徨っていた。

 そこは病院ではなかった。
 病院ならば、衰弱しきった身体を薄い毛布一枚きりに包んで床で寝かせるような真似はしない。
 押入れの中には布団があるのにそれを出す事も、冬の足音が聞こえ始めている時期なのに暖房を入れる事も許されないのは病院などではない。

 三秒に一人、人が死んでいくと言われる過酷なアフリカに雫はいる訳でもない。
 それなりに平和で、諸外国に比べれば随分と安全な現代日本の片隅。飢え死ぬ者や凍え死ぬ者がそうはいない国。
 一般的な十一歳の少女が簡単には死神の鎌にかからない場所に彼女はいる。

 雫の家は医者にかかる金もないほど貧乏なのでもない。
 そんなに金がないのなら、雫一人を家に放って置いて両親が揃って飲み屋に行くような余裕はない。

 そう、まさしく彼女は放って置かれた。
 家族の誰にもまともに相手はされなかった。
 満足行く食事も、否、最低限の食事や水すらも碌に与えられていなかった。
 かと言って勝手に台所でも漁ろうものなら手酷く殴られた。
 だから動かなかった。
 そして動けなくなった。

 ネグレクト。児童虐待。
 雫は唾棄すべき犯罪行為、その現在進行形の被害者だった。
49A girl's wish:2006/11/20(月) 12:57:06 ID:KSwm7g5k
 雫も産まれてからずっとこんな目にあっている訳ではなかった。
 厳しい所もあったが優しい父と、気の弱い所があったが明るく料理の上手い母との三人家族。あまり裕福ではなかったけれど十分に幸せな家庭だった。
 その父が事故で亡くなったのが、雫が幼稚園から小学校に上がった頃。
 父は勤務中の事故死だったとは言え、勤め先はさして大きくもない会社、むしろ零細企業と言っていい。満足いく保障を得られる前に、事故の補償費用に立ち行かなくなった会社はあっさり潰れてしまった。
 いきなり大黒柱を失った一家は父親の勤めていた会社の人間には頼れなかった。
 それはあくまでも事故であり、何の悪意も意思も働いてはいなかったが父の事故死がきっかけになって会社が倒産したのは事実であり、少なからぬ人間が雫の一家を恨みながら職を探す羽目になっていた。
 親戚に頼るのも無理だった。雫の生まれる数年前、駆け落ち同然に結婚した父と母はどちらの親戚とも疎遠になってしまっていた。のこのこ田舎に帰ったところで、塩を撒かれるのが落ちだったろう。
 一縷の望みをかけて裁判を起こす為、母は弁護士を尋ねたが結果は芳しくなかった。弁護士の予想は冷たかった。
 曰く、誰だって無い袖は振れない。
 裁判を起こせば保障を勝ち取れなくも無いが、相手は既に潰れた会社。得られるだろう雀の涙の保障よりも裁判の経費が上回り結果的に赤字になるだろう、と。
 ついでに彼は冷徹に、私もボランティアじゃないんでね、と付け加えた。彼は法律扶助協会により裁判費用の援助が受けられる制度の事などおくびにも出さなかった。仮に弁護を引き受けても、目の前の未亡人からでは大した儲けが期待出来そうに無かったからだ。
 母に打ちひしがれている暇は無かった。
 雫を養う為、母子二人を食べさせる為、寝る間も惜しんで働いた。
 昼間のパートだけでは食っていけずに、止むを得ず夜の街にも働きに出た。
 みるみるやつれて行く母を少しでも手伝う為に雫も奮闘したが、所詮は小学生。出来る事と言えば、ちょっとした家事を引き受けるくらいが関の山だった。
 明るかった母が次第に荒んでいくのを目の当たりにし、雫は幼い心を痛めたが彼女にはどうしようもなかった。

 母が再婚について口にした時、雫は反対しなかった。
 死んだ父を忘れたのではない。彼女は、母が自分を養う為にどれだけ働いていたかを知っていたから。
 誰にも頼る事の出来ない母子家庭。母親の体と心を相当の疲労とプレッシャーが苛んでいたのは、まだ幼い雫でも容易に想像出来た。
 実際、母親の心は疲れきり、ほんの微かな風を受けただけで倒れてしまいそうな朽木のような状況だった。
 だから、彼女は寄りかかる人間を探した。肩を貸してくれる人を求めた。
 それが三年間前の夏。
50A girl's wish:2006/11/20(月) 12:58:27 ID:KSwm7g5k
 雫の母に男を見る目が無かったのか、それとも男運が無かったのか、疲れた心には誰でも優しく映ったのか。それは誰にもわからない。
 分かっているのは、夜の街で働くうちに知り合ったろくでもない男に引っ掛かてしまったという事だけ。
 雫は、義父となる男に初めて会った時のことを今でも覚えている。
 彼が自分に何を言ったのかはもう覚えていない。記憶の底にこびり付いているのは、粘りつくような底意地の悪い冷たい眼。うなじの毛が逆立つような感触。
 子供の直感と言うものは、時にけして馬鹿に出来ない精度を発揮する。雫は既にこの時に義父の本性を見抜いていたのかもしれない。が、見抜いた所で幼い子供に成す術は無かった。
 義父が家に来て半年くらい経った頃から、彼は本性を表し始めた。
 母親が連れてきた男、雫の新しい父親は控えめに言って屑だった。
 昼間から酒浸り。競馬競輪競艇とあらゆる博打三昧。闇賭博に手を出す度胸がないのがまだしもマシだった。
 当然ながら、その金は雫の母親に稼がせたものだ。
 たまに金を稼いだと思ったら、無辜の人間に因縁を付けて恐喝まがいで巻き上げた金だった。
 下劣な勢いだけのチンピラ。その言葉だけで雫の義父の全てを表現できた。

 彼は酒に酔っては雫に暴力を振るった。酔っていなくても振るったが、酒の抜けている時の方が冷静に拳を振るうのでさらに性質が悪かった。
 暴力を振るう理由など無かった。全ては義父の気分次第。聞けば誰もが、たったそれだけの事で、と呆れるくらいの些細ないら立ちが雫に向けられた。
 同時に汚い言葉を喚き散らし、繊細な雫の心をも痛めつけた。
 雫がわんわんと泣き、止めてと必死に懇願するその様を見ながら彼は嗤った。嗤いながら雫を傷付け続けた。
 初めの頃は、母も雫を庇った。
 泣き叫ぶ雫に覆い被さり、必死で盾となった。その庇う母の背中にも容赦の無い暴力が浴びせられた。
 それが繰り返されるうち、しだいに母は雫を庇おうとしなくなっていった。
 そして、遂にある日、母は義父と一緒になって雫に手を上げた。
 親である事を捨て、義父の暴力にとうとう屈したのだ。
 被害者が嫌ならば、加害者になればいい。
 娘と共に被害者であり続けるか、加害者となり少なくとも自分は夫の暴力を避け得る安全な位置を得るか。どこまでも過酷な選択に、雫の母は後者を選んだ。
 暴力を振るわれる側になんて回りたくない。
 確かにそうだろう。誰だってそう思う。だが、それは親として踏み越えてはいけない、許されざる一線だった。
 人はそれを、堕ちた、とも言う。
 雫は一人きりになった。
 それからは雫へ加えられる虐待は倍に増えた。
 地獄だった。
 幼い少女にとって、地獄とは死後の罰を謳う為に宗教が作り上げた概念上の存在ではなかった。
 彼女の家庭が地獄そのものだった。
51A girl's wish:2006/11/20(月) 12:59:32 ID:KSwm7g5k
 殴る蹴るはまだしも軽い部類に入った。
 義父が好んでやったのが、火の点いたままのタバコを皮膚に押し当てる、いわゆる根性焼きだ。
 六百度以上に達する熱を押し当てられ悲痛な泣き声を上げる雫に向かって、義父はサディスティックに笑いながら言い放った。
 お前の根性を鍛えてやってるんだ、と。
 当の雫に、そんな理由にもなっていない理由なぞ聞いている余裕はこれぽっちも無かった。
 子供らしく伸びやかな腕も脚も、爛れた火傷跡だらけの無残な状態へと変わっていった。

 ある時、叩かれ続ける雫の振り回した手、その指先が義父を引掻いた。
 引掻いたと言っても爪がほんのちょっとかすったに過ぎず、傷跡どころかミミズ腫れにもならない程度。
 別に雫は反撃しようとした訳ではない。自身を防御しようとする反射的な行動で、義父の手を払いのけようとしただけだ。
 が、義父はそうは思ってくれなかった。思っても見なかった彼女の反撃に、彼はさらに激高した。
 相手が子供だと言うのにも関わらず、雫の右顔面を思い切り何度も殴りつけた。
 それっきり、雫の右目は何も映すことは無くなった。光を感じ取るのが精一杯。
 医者ならば網膜剥離と診断したが、少女にそんな知識は無かった。
 家にあるテレビみたいに、手荒く扱ったら機械が壊れた。それと同じように、雫は自分の右目がただ壊れたんだ、と思った。

 不幸中のごくごく小さな幸いとして、雫は性的虐待は受けていなかった。
 それは別に母親がそれだけはと必死の思いで庇ったり、義父に良心の欠片めいた物が残っていて幼い子供に手を出すのは気が引けたからとかではない。
 ただ単に、義父は彼女のやせっぽちな身体がお気に召さなかっただけの話だ。もう少し彼女の年齢が高かったら、雫は彼の毒牙にかかっていただろう。
 甚だ身勝手な理由ではあったが、どうにか雫は純潔を守り通していた。
52A girl's wish:2006/11/20(月) 13:02:13 ID:KSwm7g5k
 虐待の嵐に彼女を取り巻く大人達も、じっと手をこまねいていた訳ではない。
 雫の甲高く良く通る悲鳴は近所の住人全員の知るところであったし、事実、彼女のアパートの隣部屋の住人は正義感と社会的な義務感からきちんと然るべき所へ通報もした。
 当然、幾度となく児童相談所や警察が訪れた。
 義父は相手が誰であろうが罵声を浴びせ、頭悪そうに喚き散らし、他人が家に立ち入るのを頑として拒んだ。
 虐待ではない、子供の躾だと強硬に主張した。
 雫の家は、義父が手に入れた彼を頂点とする絶対王制の敷かれた国なのだ。誰かが入り込めば自分が頂点ではなくなってしまう。そんな下らない思いから、彼は他人を一歩たりとも踏み込ませる気はなかった。
 そこは断じて家庭などではなかった。
 下衆な王様一人、不幸な国民二人。義父が己の薄っぺらい自我を満足させる為だけに築いた、義父だけが君臨する紛い物の王国。
 『無い』と言われてしまえば、それまで。あえなく児童相談所はすごすごと退散するしかなかった。
 訪れた相談所職員を糾弾することは出来ない。使命感に燃える職員は、凄むチンピラ相手に一歩も引かず粘り強く頑張った。
 だが、人間とは組織の中で生きるもの。ことなかれ主義的なお役所判断により、義務感に燃える彼は役所内に余計な仕事を増やす人間として他の仕事へと回されてしまった。
 警察は警察で、彼らも玄関の中に一歩も入れずに退散する事になった。
 基本的に彼らは先手を打って動けない組織である。このような場合に連携すべき児童相談所は、不手際とも言える熱の入らない対応しかせず、警察が雫の家に強行突入する機会は永久に失われた。
 さらに義父は、児童相談所を呼んだ隣の家の人間を脅した。自分が暴力団関係者である事をたっぷりと匂わして。
 義父は会社でいえば孫請けのさらに下請け。下っ端もいい所だったが、そんな実態なんて誰も知っている筈が無い。それらしい臭いがあるだけでどうしたって腰が引けてしまう。
 勿論、そんな曾孫請け程度の義父は盃を受けてなぞいなかった。
 もし、義父の上に立つ人間に彼がそんな事を吹聴しているのが知れたならば、逆に義父が彼らの流儀による制裁を受けただろう。
 かと言って、隣の住人を責めることは出来ないだろう。わざわざ『誰それさんはお宅の組員さんですか』なんて電話をかけて確認するような度胸のある一般人は、普通いない。
 誰だって分かりきっている地雷原に足を踏み入れたくは無いし、普通の人間にとってヤクザとは関わるべきではない人種なのだ。
 雫の義父は愚かな男ではあったが、小悪党らしく狡猾でくだらない悪知恵だけはよく回った。
 用意周到にも、脅した隣の住人に警察に電話を掛けさせ、通報したのは全て自分の勘違いであったと伝えさせたのだ。民事介入の根拠を失い、黒に限りなく近いグレーと分かっていても警察は迂闊に手が出せなくなった。
 執拗に脅された隣の住人は、とうとう部屋を引き払い、どこかへと引っ越していった。
 全ては小さな不幸が重なり合ったに過ぎない。
 だがそれで、雫に手を差し伸べる者はいなくなった。
53A girl's wish:2006/11/20(月) 13:02:59 ID:KSwm7g5k
 地獄の中で雫も学んだ。
 見聞きした情報から頭で色々と考えたのではない。それは身を守る為の本能的な動作だった。
 義父は雫が悲鳴を上げて泣き叫ぶ様子が楽しいのだと、自分の中で結論付けた。
 ならば、彼を楽しませないようにすれば叩かれずに済むかもしれない。
 それからと言うもの、雫は虐待されるたびに団子虫のように身を丸め、ひたすら我が身を守った。頭を守り、腹を守り、身体を硬め、心をも凍らせた。
 何をされても、以前のように泣いたりしなくなった。
 義父は、雫が自分の暴力に反応しなくなったのが詰まらなくなったらしい。
 とことん下衆な義父にとって、雫は少しばかり毛色の変わったリアルな玩具に過ぎなかった。
 彼は雫に飽きた。
 だが、それは事態の解決に向かう糸口にはならなかった。
 飽きたオモチャはオモチャ箱の中、その片隅で顧みられなくなり朽ちるのが宿命。

 彼女の居場所として与えられたのは部屋の隅に置かれた毛布一枚分だけ。寝ても起きても、そこにしか居られなかった。トイレも義父の目を盗んでした。少しでも目立てば即座に拳が飛んできた。
 そうして雫は放置された。
 しだいに彼女には食事すら与えられなくなった。
 義父は責め方を変えたらしい。より悪質に、より陰湿に。
 雫が徐々に弱っていく様を眺め、面白がっていた。日に日に弱っていき、痩せ衰えていく姿を笑った。
 数日間、食事を抜き続け、そして弱りきった辺りで死なない程度に食事を与える。その繰り返し。
 既に人の所業ですらない反吐の出そうな行為にも、とうとう母が何か抗議する事は無かった。
 栄養失調に雫の肌から若々しい艶と張りが消え失せた。
 そうした悪魔同然の人間に弄ばれる日々がどれだけ続いたのか、雫にはもう分からなかった。
 幸せな笑顔を浮かべているべきである少女は、その青白い顔に何の表情も宿すことなく死に瀕していた。
 今までに何度も食事を貰えなかった事はあったが、それでもここまで長い間ご飯を貰えないのは初めてだ。
 かつては生命力に溢れていたが今や棒のようになった腕。その手を動かす気力も無く、焦点の合わない瞳で雫はぼんやりと天井を見つめていた。
「お腹すいたなぁ」
 と考えながら。
54A girl's wish:2006/11/20(月) 13:17:54 ID:KSwm7g5k
 天は自ら助けるものを助くと言う言葉がある。
 自ら努力する者に神は祝福を授ける。
 だが、その小さな手を動かす事すら叶わぬ少女に天は救いの御手を差し伸べるのだろうか。
 そんな時、天とは対極に位置するモノが静かに忍び寄るのだ。優しげに右手を差し伸べて、体の後ろに隠した逆の手には真っ黒い悪意を携えて。
「お嬢さん、お困りですかねぃ?」
 母親でも義父でも無い誰かが、いきなり声をかけてきた。
 それが誰だかは知らなかったけれど、両親でないのだけは分かった。母親は『お嬢さん』なんて彼女を呼ばない。義父にはそもそも名前で呼んで貰った事すらない。
 視界は白く濁っている。目前には何も見えない。何を言っているのかもよく聞き取れない。
 だと言うのに何故だか、その誰かが言っている内容は理解できた。
 雫の幼い知識でも、死にそうな人間の枕元に立つ存在は知っていた。
 僅かに残った力で疑問を口にする。
「しにがみ…さん?」
「違いまぁすねぃ。アタクシ、彼らほど仕事熱心じゃございませぇん」
 気障ったらしくチチチ、と指を振るのが雰囲気で分かった。
 その様子が面白かったのか、雫が微かに笑みを浮かべた。
 ただか細い息が詰まったようにしか聞こえなかったけれど。
「じゃ…だ、れ?」
「ふぅ〜む、どう説明したものでしょうかねぃ。貴女の認識可能な範囲で説明するならばぁ、悪魔、というトコロでしょうかねぃ?」
「あなた、アクマさん…なんだ…あたし、地獄に…落ちる、の?」
「そっちの悪魔とは少し違いまぁす。アタクシ、言ってみればセールスマンのようなものでしてぇ。時に貴女、もっと生きたいですかねぃ?」
 本当に死にたいと言う願いを抱えて生きる人間など、そうそういない。
 雫の痩せ細った顎がコクリと、じっと注意して見ていなければとても判別不可能なほど、小さく小さく縦に振られる。
 そうでしょうそうでしょう、と大きく頷く自称セールスマンの悪魔。
「ただぁ、貴女の人間としての命はぁ手遅れです。ですのでぇ、少々手を入れさせて頂く事になりまぁす。それとぉ、悪魔との契約ですので当然こちらの方も頂きますねぃ」
 悪魔は、右手の親指と人差し指で大きな丸を作ってみせる。
 チェシャ猫さながらにニタリと大きく笑ったが、それもすぐに消えた。
55A girl's wish:2006/11/20(月) 13:18:43 ID:KSwm7g5k
「おっとぅ、これは失礼をば致しましたぁ。もう見えておりませんでしたかぁ」
 言葉とは裏腹に、その態度には悪びれるような気配など微塵も無かった。
 自称悪魔はバッと右腕を振り上げ、高々と掲げられて右手を大仰な振りで顎に当てて、しばし瞑目。
「お代の方ですがぁ…ふぅ〜む、貴女の右目、頂きましょうかねぃ」
「あたし…の、目…?壊れちゃってる…けど、いいの…?」
「はぁい、ご心配なぁく。それで十分ですねぃ。それはもう動こうが壊れてようが悪魔にはあまり関係ありませんからねぃ」
 ポンと手を叩く音。
 悪魔は、念の為申し上げておくとぉアタクシ廃品回収じゃございませんよぅ、とおどけてみせる。
「じゃ、上げる…あた、し、もっと…生きたい、の」
「ではぁ、契約成立と言う事ですねぃ。天使の連中は代価無しなので適当な仕事しかしませんがぁ、アタクシは違いますよぅ。契約に基づき、お代さえ払っていただければぁ、きっちりしっかりはっきりお仕事させて頂きますねぃ」
 雫には相手が天の御使いであろうがなかろうがどうでも良かった。
 虐げられ続けた彼女に数年ぶりに差し伸べられた手なのだ。死にたくなんて無かった。もっと生きたかった。だから、それが何であれ、掴む以外に考えられなかった。
「まずは、お代の方をお先に頂きますねぃ。あぁ、心配には及びませぇん。これっっぱかしも痛くございませんからぁ」
 寝ている自分の枕元に悪魔が立って、こちらを見下ろしている。
 もう眼の焦点を合わせる力すら無い瞳には悪魔はただの人影にしか見えず、その人影も顔どころか体の輪郭すらもぼんやりとしていてよく見えない。
 それでも、その人影が立ったままなの程度は分かる。
 だと言うのに。
 少女の顔に、人影の手が伸ばされてきた。
 生気を失い乾いた頬に触れた悪魔の指先が冷たいのか暖かいのかすら、今の雫には分からない。その指先は彼女の頬を労わるように一撫でした後、視界の無くなった右の眼孔にゆっくり優しく差し込まれた。
 悪魔の言う通り、痛みは無かった。
 あったのは喪失感。
 ぷちぷちと自分の中から何か球体のような物が引き出されていく感覚。
 体と心から、小さな小さな、だがとても大切なナニカが零れ落ちていく感覚。
 眼球を失い小さな穴と化した眼孔。
 そうして不意に出来たその穴を満たそうと、何かが入り込んでくる。
 ぽかりと開いた虚ろを満たしていく痛いほど冷たいようでいて春の日溜りのように暖かいドロリとした何かに、雫はそれきり意識を失った。
56A girl's wish:2006/11/20(月) 13:19:30 ID:KSwm7g5k
 深夜だというのに隣近所への迷惑になるのも顧みず、バタンと大きな音を立てながら乱暴に玄関のドアが開かれる。
 雑に扱われた蝶番とダンパーが、揃ってギイギイと軋んで抗議の声を上げた。
 ひどく酒臭い息を吐きながら、玄関をくぐる大人が二人。
 雫の母親と義父は靴を脱ぎ散らかし、揃えようとする意思すら見せずに家に上がりこんだ。
 玄関を抜けるとまともに掃除もされていない雑然とした台所。ステンレスの流しにはいつの頃から洗っていないのか食器が溜まり、異臭を放っている。食卓の上には、コンビニ弁当やレトルト食品の食べカスが捨てられもせずに積もっている。
 そこを通り抜け、義父は居間へと続く磨りガラスの嵌まった滑りの悪い引き戸を力任せに開ける。
 部屋の真ん中に少女が立っていた。
「お父さん、お母さん。あのね、お腹、すいたの…」
 耳に心地よい、鈴を転がすような可愛らしい声。
 呆気に取られる両親には、部屋に響いた声が誰から発されたものか、しばらく分からなかった。
「あぁん?!このガキャ、なんで起きてやがる!」
 父親は長らく娘の声を聞いた覚えがなかったから。
 辛うじて、最後に聞いたのは木枯らしみたいなヒュウヒュウとした嫌な音だったと思い出した。
 筋力が衰えて立つ事も出来ないほどの状態だった義理の娘が、どうして部屋の真中に立っているのか。
 その問いに父親の愚鈍な脳味噌は、理解不能とだけ答えた。
 もし、彼がもう少し観察力に富んでいて、彼の脳がもう少しまともだったのなら異変に気付いただろう。
 パジャマから覗く雫の手足、彼女の小さな身体中に刻まれた度重なる虐待の傷がすっかり消えていた事に。 
 雫の腰まで伸びる長い黒髪。それが烏の濡れ羽色の艶やかな美しさを取り戻していた事に。
 理解出来ない事に対する戸惑い。
 常に攻撃的に出て相手よりほんの少しでも優位に立とうとしなければ安定しない安っぽい自我は、その戸惑いを対象への反発へとすり替える。
 アルコールの臭いをぷんぷんさせ、酔った勢いで加速された理由も無い怒りの衝動に任せて、部屋の真ん中に立つ娘に怒鳴りつけた。
「テメェなんざいらねぇんだよ!とっととくたばっとけや!」
 唐突に室内に笑い声が響いた。
 ゲラゲラと割れ鐘のような低い笑い声。
 それを聞いて、義父の眉間の皺が危険なほど顰められる。
 この手の人種は他人に向ける悪意には頓着しないくせに、自らに向けられる悪意には敏感だ。
 いまだ続く笑い声の中に明確な悪意を感じ取っていた。
 そこにぽつりと雫の呟きが混ざる。少女の小さな声は、しゃがれた哄笑の止まぬ中でもやけにはっきりと聞こえた。
「お腹、すいたよぅ」
「ンだとぅ、テメェに食わす飯なんざねェつってんだろが!この…」
 チンピラ崩れが何か凄もうとするのを遮って、雫の右目があった部分に出来た口が死刑宣告を吐いた。
「ダッタラ、オまえヲくッテヤルサ!!」
57A girl's wish:2006/11/20(月) 13:20:24 ID:KSwm7g5k
 雫の右目があった場所。
 少女に全く似つかわしくないしゃがれた低い声はそこから発せられていた。ただ、丸く暗い穴が開いているだけだと言うのに、両親はそこが口である事を直感した。
 そこは口だと言うのに唇は無かった。
 そこは口だと言うのに歯も無かった。
 そこからは舌が幾本も延びていた。
 だがそれを舌と呼んでいいものだろうか。口の中から伸ばされるモノならば舌と呼ぶのが妥当であると言うだけで、それらは人の舌とは似ても似つかぬ触手だった。
 先端から穴の内側に消えている根元まで全てが、星一つない闇夜を切り取ってきたかのように黒い。触手の、蛇で言えば胴に当たる部分はのっぺりとしていて自由に曲がりくねり、先端は槍か刀のように鋭く尖っている。
 蛇の如く身をくねらせて静かに鎌首をもたげる触手の群れ。
 異形の舌。

 そのうち一本が振るわれ、ひゅん、と小さな風切り音を立てた。
 義父には、それが僅かに部屋の空気を掻き乱しただけに感じた。
「な、なにしやがっ…」
 ずる、と世界が傾いでいく。
 壁が自分に向かって倒れてくる。
 何が起きたのか分からず、受身も取れずに顔面から叩きつけられて初めて、義父は自分が床に転がり、地面に這いつくばっているのだと理解した。
 一拍遅れて襲ってくる激痛。
「へ…あ?あ、あ!あ!!俺の、俺の足があああぁぁぁあ!!!」
 両の足の膝関節から下を斬り飛ばされていた。
 主が倒れたのにも気付かず、鮮やかな断面を見せて棒のように立ち続ける二本の足それぞれに別の黒い舌が伸ばされ、絡めとる。
 断面からボタボタと血を滴らせる右と左の足を掴んだ触手は、這い出す穴へと巻き戻された。
 そして足を絡めとったまま、いまや二つめの口と化した眼窩に吸い込まれた。
 足だけとは言え、大人の物だ。明らかに少女の頭より大きい。ましてや、眼孔と同じ程度の穴に入る筈が無い。
 だと言うのに。
 しゅぽん、と気の抜けた音を立てて両足は消えた。
58A girl's wish:2006/11/20(月) 13:21:10 ID:KSwm7g5k
 何をしたのか、は分からなかった。
 が、何かしたのは確実だった。
 どうやったのか、は分からなかった。
 が、どうなったのか、は明らかだった。

 喰われたのだ。
 須らく人がするように、口から食物を食べて栄養を摂ると言う行為。
 少女の右目に開いた穴が口だと言うのなら、言葉を吐くだけでなく物を喰らうのも道理。
 ただ、それだけだった。
「あ!ぎゃっ、て…てめっ!俺のあ、足!殺っぞっ!ごるぁ!」
 苦し紛れの罵声では雫の感情に細波一つ立てられはしなかった。
 義父がのたうち回る姿を見ても一言も発しない雫。そんな彼女を代弁するかのように、音も無く触手が動き、狙いを定める。
 狙うのはただ一つ。
「ぎっ、ひっ、ひぃ!あ…あ…あっ、ゆ、ゆるしてぇ、や、やめっ!」 
 足を喰われた上、頭上で身構える触手に我が身の運命を悟ったのか、義父は必死に命乞いをする。
 雫にその命乞いを聞いてやる義理は無かった。
 床にひっくり返った義父に触手の群れが放たれた。
 両の太腿、腹、左腕、右肩。
 微塵の容赦も無く、無造作にどすどすと突き刺さる。耳を塞ぎたくなるような悲鳴と真っ赤な血が部屋中に撒き散らされる。
 わざとなのか偶然なのか、器用に急所以外を貫いた黒い穂先は引き抜かれる事無くそのまま義父に絡みつく。
 細い触手のどこにそんな力があるのか。触手は義父を軽々と宙に持ち上げた。
 生まれて初めて味わう激痛と恐怖に彩られた義父の顔。
 そこへ雫はちらりと視線を走らせたが、何の感慨も見せずに触手を巻き戻した。ちょっと垂れ目がちの大きな瞳が印象的な可愛らしい顔には、憐憫の情など欠片ほども浮かんではいなかった。
 じたばたともがく体がゆっくりと雫へと引き寄せられていく。
 まるで南洋のトローリングを思わせる。
 ずぶ、と膝が飲み込まれた。右目の穴が義父の体を膝からゆっくりと飲み込んでいく。
 それは異様な光景だった。雫の右眼孔はまったく大きさが変わっていない。にも関わらず、何の抵抗も見せずに人を飲み込んでいく。まるで小さなブラックホールが巨星を引きずり込むかのように空間が歪んでいた。
 一瞬の遅滞も見せずに、ベルトコンベアーで運ばれるようにして膝、脚、腰、腹と順番に右目の闇に消えていった。
 穴に飲み込まれず、まだこちら側に残っていて、無様に泣き喚いて助けを求める右手と頭。
 しゅぽん。
 それらも実に呆気なく、この世から姿を消した。
59A girl's wish:2006/11/20(月) 13:21:47 ID:KSwm7g5k
 二つめの口はただの口などでは無く、肉食獣の顎だった。
 世にもおぞましい咀嚼音が響く。
 ばりばりと頑丈な骨を砕く音。
 ぶちぶちと肉を引き千切る音。
 ぢゅるぢゅると液体を啜りあげる音。
 そして、生きながらに貪り食われる人間の悲鳴。
 ホラー映画に登場する俳優達の上げる断末魔が如何に作り物めいているのかを、まざまざと聞く者の耳に焼き付ける。一度聞けば生涯耳から離れないであろう、まさに地獄の底から聞こえてくるような絶叫。
 それも、一際大きい何かを粉砕する音がしたと同時に途絶えた。
 少女の細く白い喉がこくっと動く。
 けふ、と凄惨な食事風景とは対称的な可愛らしいゲップが彼女の普通の方の口から漏れた。

 唐突に訪れた静寂。
 それは、およそ現実感を欠いた光景に脳がショートしかけている母親を、過酷な現実に引きずり戻すのに十分だった。
「ひ、ひぃ…や…あ、は、は…はぁっ」
 口から紡がれる言葉は意味を成さず、耳元で何かがカチカチと音を立てて酷く五月蝿い。
 それが恐怖に震える自らの歯の鳴る音だと、気付く余裕すら母親には無かった。
 彼女は何を求める訳でもなく、ただ無意味に左右に首を巡らせた。何でもいい、兎に角そうでもしていなければ本当に気が狂ってしまいそうだったから。
 と、汚らしい流し台の片隅に突っ込まれていた物が、きらりと蛍光灯の明りに煌めいた。
 その光が意味する所を思考が理解する前に、身体が先に反応していた。母親の目には、それが溺れた者がしがみつく藁にも見えた。恐怖に溺れた者には藁でも無いよりはマシだ。
 抜けかけた腰をどうにかして動かす。
 今にもへたり込みそうな力の入らない足はよろめいて、支えにした椅子はバランスを崩して母親ごと床にひっくり返った。
 テーブルの縁に手をかけて体を引き起こそうとして、やっぱり転ぶ。テーブルの上に置かれた物をがらがらと薙ぎ倒し、辺りにぶちまけながら床を這う。
 転がるようにしてようやっと流し台の前へたどり着き、目当ての物に手をかけた。
 ぐ、と手に力を篭める。
 握った手の形に合わせて作られた黒いグリップと銀色の光る刃先が心強く感じる。
 掌中に感じる重みに、体を縛り付ける恐怖から少しだけ解放され、いくらかは力の戻った体を引きずるようにして母親は居間へと取って返した。
 娘の形をしたナニカはまだ部屋の真ん中に立っていた。
 幼い身体。痩せぎすの、十一歳のちっぽけな少女の身体。
 そこに飢えの衰えは僅かばかりも見られない。それどころか、虐待で押さえつけられていた、本来するべき成長までも雫は取り戻していた。
 義父を喰らった位置から一歩も動かず、少女らしい柔らかな両の腕をダラリと垂らし、何をするでもなく呆けたようにただ宙を見つめている。
「…なか……いた…ぁ」
 水気に溢れた形の良い唇が小さく動いて、何事かを呟く。しっとりと濡れた唇は雫の纏う虚無的な雰囲気と相まって、少女には似合わぬ表現だが、ひどく扇情的だ。 
 虐待を受ける以前と同じ黒曜石のように艶やかな瞳。
 焦点を結ばぬ澱んだ視線。
 その顔が、引き戸に手を突いて萎えそうになる身体を支えている母親に向いた。
60A girl's wish:2006/11/20(月) 13:22:26 ID:KSwm7g5k
「…まだ足りないの。お母さん、あたし、お腹すいたよぅ」
 カメラの絞りをあわせるようにして、急速に焦点を結ぶ大きな一つの瞳。
 何の感情も含まれない冷たい視線に捕らえられ、母親は本能的に理解した。既に自分は母親などではなくただの餌に過ぎない、と。彼女は死ぬまで思い至る事も無かった。母親と言う役目など、当の昔に放棄していた事実に。
 本能はまた、目の前にいる娘の形をしているモノが絶対の強さを持つ捕食者だとも告げていた。
「ひ、ぃ、や…いやぁぁぁぁっっ!!」
 母親は奇声を上げながら少女に襲いかかった。
 愛する者を救おうだとか、夫の仇を討とうだとかでは全く無かった。
 生まれて初めて被捕食者の立場に置かれた彼女の頭の中には、夫の存在自体、片隅にも無かった。
 万物の霊長に立った人が忘れて久しい、喰われると言う生命体としての根源から来る恐怖。
 生き延びたいと言う本能が取らせた純粋な防御反応。
 鼠も窮すれば猫を噛むのだ。
 袈裟懸けに振るわれた包丁は狙い過たず、雫に叩きつけられた。
 女の振るう一撃とは言え、斬撃を真正面からまともに浴びて、避ける素振りすら見せなかった雫の身体は軽く吹き飛ばされた。
 そこには血の繋がった母と娘などいなかった。
 やらなければやられる。
 己の生存をかけた一体の生物がいるだけだった。
 吹き飛ばされた雫は背中から落ちて、仰向けにひっくり返り、触手があるにも関わらず抵抗らしい抵抗も見せない。
 母親は手入れのされていない切れ味の悪い包丁を逆手に握り、何度も何度も、雫の痩せぎすな体めがけて切先を執拗に突き立てた。
 少女の左の瞳が、自らに圧し掛かってパニックに陥りながらも包丁を振るう女を見つめていた。
 しかし、鼠が噛みついたのはただの猫ではなくライオンだった。鼠の歯如きに何の意味があろうか。
「お母さん…なんで…?」
 幾度も突き刺された少女の言葉に、母親の手が止まった。
 驚愕に見開かれる母親の瞳。その顔が名状し難い恐怖に歪んだ。
 ずたずたに切り裂かれたパジャマの下、白い少女の肌には掠り傷一つ付いていなかった。
「お母さん…産んでくれてありがとう…いい子に出来なくてごめんなさい…」
 少女の瞳がゆっくりと閉じられた。
 そこにあるのは鎮魂の祈りか。
「いただキマァス」
 奈落と化した眼窩から闇で出来た触手が伸びた。
 人の目で捕らえるのも難しいほどの神速で伸びるそれらから、狂乱する母親が逃げられる筈がなかった。

 ごきり。

 首が真後ろを向く。
 それは血の繋がった者へのせめてもの慈悲なのか。
 一分の隙も無く母親の上半身に巻きついた触手の群れは、彼女を一瞬で絶命せしめた。
 その体から力が抜け、くたりと床に崩れ落ちる前に。
 しゅぽん。
 彼女もまた夫の後をたどり、この世から消え去った。
61A girl's wish:2006/11/20(月) 13:23:02 ID:KSwm7g5k
 雫は母親に斬りつけられ押し倒された床に寝転んだ体勢のまま、感情の抜け落ちた表情で天井を見つめていた。
 両親を喰らった彼女はどのくらいそうしていたのだろうか。
 よいしょ、と可愛らしい掛け声と共に少女は体を起こし、呟いた。
「もう、ここにはいられないなぁ…」
 雫の両親は消えてしまった。
 遠からず、両親が消えた事を不審に思う者が出てくるはずだ。とすれば、警察を始めとする様々な勢力が介入してくるだろう。その時に彼女一人残っていると言う状況の説明のしようがない。
 死体が出る筈も無いので両親の消失自体は怪事件の一言で上手く片付けられても、まだ小学生である雫自身には色んなしがらみが纏わり付いてくるだろう。
 親を失い孤児となった人間を保護する施設があることくらい雫だって知っていた。
 だが、人ではなくなってしまった雫が保護されてどうするのだ?いずれ、どうなるのか?
 ならば、
「めんどうクセェことニナルまえニトットトきエルカ」
 右目の口が続く。
 それは、とても小学生の思考レベルではない。
 雫は悪魔の手により人ならざるモノへと変化させられていた。体の方は言わずもがなだが、肉体的のみならず精神的にも変わってしまっていた。知識の量こそ追いついていないが、頭脳は並みの大人を超えるまでに引き上げられ一般的な小学六年生のそれを遥かに凌駕していた。
「その前に…」
 ちょいと視線を自分の体に落す。
「洋服、ダメになっちゃったから変えないとね」
 パンクファッション張りに穴だらけにされてしまった薄汚れたパジャマ。
 悪魔はなかなか気が利いていたらしい。どんな魔法を使ったのかは知らないけれど、残る目は左だけになったと言うのに視界は眼が二つあった時と同じようになっていた。
 そこで、雫はふと気が付いた。
 何か熱い物が頬を伝い落ちている。
 なんだろうと不思議に思い、手を当ててみれば、それは残った左眼からこぼれている液体だった。
 少女は手を濡らす液体を見て、僅かに首を傾げた。
 これはなんだろう、と。
 何故だか知らないが眼から溢れて来て、拭っても拭っても止まらない。
 それが何であるかが分からない事がひどく哀しく思えたけれど、心にも右目と同じにぽっかりと深く暗い穴が開いてしまったようで、どうして哀しいのかさえも分からない。
 流れ出た液体は雫の病的に白い頬を濡らし、整った尖った顎を伝い、ぱたぱたと床に染みを作っていく。
 溢れる透明な液体はいつまでたっても止まらず、仕方が無いのでとうとう雫は拭うのを諦めた。
 ポロポロと左の眼から大粒の涙をこぼしながら、彼女は自分の服を探す作業を続けた。
62A girl's wish:2006/11/20(月) 13:23:42 ID:KSwm7g5k
 とりあえずは破れていない服に着替えて、外に出れるような格好にならないと。
 と、雫は困ったようにちょっとだけ首を捻った。
「あたしの服、どこなのかな?う〜ん…わかんないや」
 とりあえず目に付いた衣装ダンスに小さな両手と、二つめの口から伸びる触手達が伸ばされた。
 自分の服がどこに仕舞ってあるかなど全く見当がつかないので、雫は家中の考え付く場所全部を探す事にした。
 人体をたやすく貫く雫の触手。その鋭利に見える先端は鋭ささえも自在に変化が可能で、手の代わりにもなった。
 しかも、のっぺりとした外見の一体どこに感覚器が付いているのかは分からないが触手にはそれぞれ感覚まであった。触手一本一本の見ている景色が雫にも見える。
 探す場所は多いけれど、幸い『手』は随分と増えていたので効率は格段に上がっている。
 しなやかに曲がり、思うままに長さも変えられる便利な触手達を使い、雫は隅から隅まで家捜しした。
「あんまり良いのない…」
 しばらく、あちらの箪笥こちらの引き出しと漁っていた彼女だったがようやく戦果が挙がった。
 冬に着るには少々寒そうな夏物のワンピースを引っ張り出した。
 両親が彼女にほとんど服を買ってやらなかったので着る物は少ない。
 さらに雫は人ならざるモノへと変わった時、虐待され栄養失調で滞っていた分の成長を取り戻していた。
 残っているのは古い物ばかりで、サイズが変わってしまっている雫には締め付けのゆるい服しか着れそうに無かった。
 とは言え、流石にこれだけでは寒そうだ。
 さらに探す。
「クソッタレガ、シケタふくシカアリヤガラネェ」
 二つ目の口からぶつぶつと愚痴を吐きながら。
 蛇が獲物に巻きつくみたいにして、服に身を絡めた触手が戻ってくる。
 触手の持ってきた一番無難そうなデザインのジャンパーコートを雫は手に取った。大人用なそれは少女にはいかにも大きく、雫が着るとブカブカなのだがこの際仕方がない。
 羽織って見ると、手を伸ばしても指先が袖口からほんの少し覗く程度。裾は踝辺りまで達してしまいロングコートのようになってしまっている。まぁ、取り敢えず歩く分には問題なさそうなので雫はほっとした。
 靴も下駄箱の片隅から見つかった。
 別に両親がきちんと管理していた訳ではない。ただ単に、整理されて捨てられる事も無く、下駄箱の奥に無造作に突っ込まれて放置されていただけだ。
 ちょっときついが何とか履ける。
 本人は着替えながら、黒い触手達はまた別の作業を続けていた。
 全ての準備を整え終わると雫は静かにドアを押し開けて、外に出た。
 ふわりと家の中に入り込む風が頬を撫でる
 冷たい夜の空気。
 澱んだ室内の空気しか吸えなかった身体にはとても新鮮だった。
 これからは誰に憚る事無く、好きなだけ満喫できる。
 それを思うと自然と頬が緩む。
 大きな瞳が僅かに細められ、うっすらと微笑みを浮かべ、雫は歩き出した、
 そうして一度たりとも振り返る事無く、彼女の姿は夜の闇に消えた。
63A girl's wish:2006/11/20(月) 13:24:16 ID:KSwm7g5k
 雫が立ち去ってから数時間後。
 閑静といえば聞こえは良いが、ただ単に交通の便が悪く辺鄙で人が少ないだけの住宅街。
 その静かな夜のしじまを大音響が切り裂いた。
 爆発。
 轟音。
 閃光。
 衝撃波を受けたガラスは粉微塵に砕けて飛び散り、炎を照り返して、一瞬だけ幻想的な光景を描き出す。
 続けて赤々と燃える炎が辺りを支配した。炎の舌が舐めると、あっという間に家具は火の塊へと姿を変えていく。
 轟々と燃え盛り、手を取り合って激しく踊る火と煙。
 やがて、遠くからサイレンが聞こえてきた。
 遠からず消防車が辿りつき、職業意識に燃えた人々の手により荒れ狂う炎は鎮火するだろう。
 だが、それもまだ時間がある。それは雫がいた家を燃やし尽くすには十分な時間だ。

 全ては雫の仕組んだ事だった。
 プロパンガスボンベとコンロを繋ぐパイプに触手で切れ目をいれたのも。
 余計な電気スパークを起こして着火しないよう家中の電化製品のコンセントを残らず抜いておいたのも。
 ファンヒーターを押入れから引っ張り出し、タイマーをセットして起動するようにしたのも。
 アパートの他の家にも類が及ぶ可能性は十分にあったが、雫の知った事ではなかった。
 彼女が虐待されている事を知りつつ、それを見過ごしてきたのだから同罪だ。

 結局、消防の素早い対応により被害は最小限に抑えられた。アパートの雫の家が、彼女の狙い通りに、全焼しただけで済んだ。
 古アパートだったのが幸いしたようで、第一撃の爆圧は構造的に脆い壁面から上手い具合に吹き抜け、無事とは言わないが隣家もろとも吹っ飛ぶような事態にはならなかったようである。
 爆発原因はコンロから漏れたプロパンガスにファンヒーターの火が引火した所為であると発表された。
 捜索の末、爆発のあった家に住んでいた親子三人はどうあっても見つからず、行方不明と処理された。
64A girl's wish:2006/11/20(月) 13:25:54 ID:KSwm7g5k
 ある伝承は伝える。
 二口女と言う妖怪が居ると言う事を。
 継子を憎み、食物を与えず殺した時に二口女と化した子が生まれると言われる。
 彼女らは尽きる事の無い飢えを抱え、終わる事の無い呪詛を二つ目の口から吐き続ける。
 だが彼女らが真に欲するのは、肉体的な飢えを満たす食事などではない。二つ目の口からどれだけ食べたとしても、その口から吐かれる恨み事は尽きない。
 虐げられ、傷つけられ、食べ物も飲み物も、ほんの僅かな愛情すらも注がれる事の無かった子ら。
 二口女はその成れの果てだ。
 生前に親に求めれど、けして与えられる事の無かった心の温もり。彼女らは愛に飢えているのだ。
 それを求め訴える二つ目の口を黙らせる為に、彼女らは喰う。
 心の飢えをほんの少しでも軽くしようと食べ物を口にする。
 そうでもしていないと心が飢え死んでしまいそうになるから。
 だが、彼女らが求める物が与えられるまで、その飢えが尽きる事は無いと言う。
65A girl's wish:2006/11/20(月) 13:26:40 ID:KSwm7g5k
 どことも知れぬ闇の中。

「ヒ!ギャハ!ヒィヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!
 悲しい哀しいかなしいカナシイィィィィ!
 親が子を殺すぅ!子が親を喰うぅ!
 ああ!ああ!とてもとても悲しい哀しいかなしいカナシイィィィィ!」

 スイッチを切ったかのように、ピタリと哄笑が途絶える。

「そして実に面白いおもしろいオモシロイィィ!
 ちょいと歪めてやるだけで、こぉんなにも面白くなるぅ!
 これが代価!これが代償!悪魔との契約は用法用量を守って正しくご計画的にぃ!
 くれぐれも無理の無いのないご返済プランをご計画下さいってかぁ?
 ご計画できるような余裕あるお客様のところにゃ行かねェけどなぁ!
 アハハァ!アァハハハハハハハハハハハハハ!!
 どう生きてどう死ぬのか。どう生かされてどう殺されるのか。
 たぁっぷりと見物させて頂きますぜぇ!
 ギヒャヒャハハアハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 闇よりも昏い狂気に満ちた笑い声がいつまでも響いていた。
6643=18スレの314:2006/11/20(月) 13:27:59 ID:KSwm7g5k
以上、お目汚し失礼致しました。

顔から触手生やした女の子を書きたいが為に二口女の後ろの口を大移動させたら、何故かダークに。
序盤描写の下調べでは本気で泣きそうになりました。

雫はどーにかしてハッピーエンドにしてやらないと…。
67名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 13:43:20 ID:KPrQIZYF
GJすぎる

雫をハッピーエンドにしてやってつかぁさい
68名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 15:25:47 ID:jqDqnplN
GJ!
あんまり関係無いけど姥尊(通称オンバ様)っていう老女神は
お年寄りや子供を慈しみ、邪を屈するという・・・そしてお札代わりに
よく使用された物をば・・・

つしゃもじ
69名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 17:29:06 ID:yX/SjbJk
>>66
是非幸せにしてやってください。
で、二個目の口でふぇらちおとかさせてく(何かがどこかに吸い込まれた)
70名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 20:59:15 ID:W7LPiKy8
GJ。エロは無いし萌えとも違うと思うけど、GJ。
71名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 22:26:52 ID:Nd/umvLP
雫に幸在らん事を。GJ。
72名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 01:22:58 ID:EYYV/xhh
とりあえず板違い&スレ違い乙
73名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 02:25:11 ID:SGJ02Rqz
>>66
ものすげーおっかないけど面白かった。GJ。
最近忘れがちだったけど、悪魔って本来こうなんだよな。とにかく怖かった。
エロパロ板で非エロのダークホラーなんか板違いもいいところだけど、面白ければそれで良い。
虐待され、絶望の中死んでいった子どもたちの魂が少しでも救われると良いけど。
つ「お菓子・おもちゃ・花束・御守り」
74名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 03:45:12 ID:MQ6xRodn
ついでに、
つ「愛情・包容・優しさ」
75名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 06:14:30 ID:PcXEc+ua
そして
つ『依存、エロ、ウマー』

>>69へ飛ぶ
76なしれ ◆8XSSeehUv6 :2006/11/22(水) 18:33:53 ID:8imJhGFd
雫…(つД`)・゚・

ダークな話の次にいつもの二人の話というのもアレな感じですが
住み込み弟子シリーズ第五話投下します。8レス程度予定。
蛇女注意。
77秘密の印:2006/11/22(水) 18:35:17 ID:8imJhGFd
 その兆候がいつからだったか、よく分からない。
ただ、師匠がときどきもぞもぞしていたり、どうも下半身――師匠はラミアだから、
下半身はもちろん大蛇なんだけど――を気にしていたりするのが目に付くようになったのは
二日ぐらい前からだ。でも、不審な様子は、おとといにはせいぜい一日に四、五回だったのに、
昨日は一時間に一、二回になってた。それが今日になると、それこそひっきりなしに
下半身を気にしてる。単に気にしてるだけじゃなくて、こそこそと隠すように
下半身をなでたりさすったりしてるし、柱の横を通るときにはその角に
わざわざこすりつけるようにしてる。客の応対も露骨に上の空になってきたし、
今だって――食事の最中でさえ、なんだか心ここにあらずといった感じだ。
とてもじゃないが、いつもの食欲旺盛な師匠とは思えない。
「あの‥‥師匠、どうかしたんですか?」
「‥‥」
 首をかしげたりしながら、黙々と食べている。‥‥聞こえなかったのかな?
「‥‥師匠?」
「‥‥あ、ああ、ごめん。いつものことだけどおいしいよ」
 かみ合ってない答えを返してくる。‥‥全然聞いてないな‥‥。
「そうじゃなくて。――どうかしたんですか? 最近ちょっと様子が変だから‥‥」
「そ、そう? いつも通りじゃない?」
 いやあの、どう考えてもいつも通りじゃないです。だいたいいつもは驚くほどの
地獄耳なのに‥‥都合の悪いことは聞こえないふりをするけど。――なんてことを考えると、
それだけで「何か失礼なこと考えてたでしょう」と詰問されるのが普通なんだけど、
そんなツッコミさえ返ってこない。一応会話を続ける意志はありそうなものの、
また下半身をさすってる。
「‥‥痒いんですか?」
「んぐ‥‥っ!? げほっ、ごほっ! な、何をいきなり‥‥ごほんっ!」
 俺の言葉に口の中の物を一気に飲み込んだかと思うと、いきなりむせた。
「いきなりっていうか‥‥今日なんか一日中下半身を気にしてたじゃないですか。
今だって掻いたりしてるし‥‥」
「うっ‥‥気づいてた?」
 ‥‥師匠、バレバレです。
「あんまり痒そうだから気になって――」
「ううっ‥‥」
 悔しそうな、というかむしろ恥ずかしそうに顔を伏せる。珍しい反応だ。
少なくとも、めったに見られる反応じゃない。
「ちょ、ちょっと待ってね。せ、説明は、その、後でするから‥‥うん」
「‥‥はあ」
 微妙に気まずい雰囲気になってしまった。師匠はその後もくもくと夕飯をお腹に押し込み、
そそくさと二階に戻ってしまった。も、もしかして口にしちゃマズいことだったんだろうか‥‥。

 * * *

 皿洗いをすませてテーブルも拭いて、ゴミも片付けて、と。
家事を終わらせて、とんとんと自分の肩を叩いてみる。さて、ここまではいつもと
おおむね同じなんだけど‥‥どうしたものかな。「説明は後でする」と言ってたから、
さっきの続きのでも聞いた方が良いんだろうか。あんなに痒そうだったし、
もしかしたら何かの病気だったり‥‥もしそうなら大変だ。
でも、あの反応を見るとそういう「一大事」じゃなさそうなんだよな‥‥。うーん。
「ええい、悩んでてもしょうがない」
 自分に言い聞かせるように独り言を言うと、俺は師匠の部屋に向かった。

「師匠、入ってもいいですか?」
「‥‥」
 返事がない。
「師匠! 入っていいですか!?」
「‥‥あ、うん」
 また上の空だったな‥‥。とりあえず許しがあったのでドアを開ると、
師匠はベッドに腰掛けて、またしてももぞもぞとしていた。
‥‥いいかげんバレてるんだから隠す必要もないと思うんだけど‥‥。
78秘密の印:2006/11/22(水) 18:36:50 ID:8imJhGFd
「さっきの話‥‥続き、いいですか?」
「あ‥‥うん‥‥」
 いやだからその。俺から話せることじゃないんだから、師匠から話してくれないと
どうにもならないんですが。しばし沈黙が寝室に立ちこめたけど、
それに耐えかねたのかようやく師匠は俺の方を向き、口を開いた。
「恥ずかしいから、あんまり言いたくなかったんだけど‥‥」
 またしても沈黙。が、これはそんなに長くなかった。
「その‥‥脱皮の時期なのよ」

「――はあ」
「はあ、って、何よその気のない返事は!
人がせっかく恥ずかしいのを我慢して白状したのに、もうちょっと気の利いたことぐらい
言いなさいよ! だいたいそういうのを聞く、っていうのが無神経なのよ!」
「え、あ、あう」
 すいません、何を叱られてるのかよく分かりません。脱皮、といわれても
「ああそうか、蛇だし」ぐらいにしか感じられないし‥‥その、恥ずかしいとか言われても
全然イメージがわかないんだけど‥‥。
「脱皮って恥ずかしいことなんですか‥‥?」
 そう尋ねると、師匠は真っ赤になった。本当に珍しい。
「は、恥ずかしいに決まってるでしょ!?」
「いや‥‥あの、俺はラミアは師匠しか知りませんし、
ラミアにとって脱皮がどういうものなのか、っていうのも全然知らなくて‥‥」
「‥‥」
 俺が正直にそういうと、師匠は目を丸くして黙ってしまった。
そうか、当然知ってるものだと思ってたのか。あごに手を当て、顔を斜め下へ傾けて
眉を寄せること数秒。ようやく視線だけを俺の方へ向け、どうにか口を開き、
「説明‥‥要るの‥‥?」
「お願いします」

 説明を聞くのはなかなか大変だった。なにせ、すぐ黙ってしまう。
その様子も合わせて察すると、どうも脱皮というのはとても「恥ずかしい」ことのようだ。
とぎれがちな話を総合すると、大人のラミアというのは一、二年に一回ぐらいの頻度で
下半身の脱皮をするらしい。もっとも、成長が早い子供のころはもっと頻繁だし、
ケガなんかをした場合も早めに脱皮するとか。ともかく、脱皮の数日前から下半身が
痒くなり、そしてどこか――たいていは上半身との境目、鱗が生え始めるあたりから
古い皮が剥がれはじめ、そこから下半身すべての皮が「脱げ」る。
それ自体はただの生理的なものだから不可抗力なんだけど、少なくともこのことを
口に出したり、見られたりするのは「はしたなく」て「恥ずかしい」ことなんだそうだ。
‥‥それで食事時に黙ってしまったわけか。

「‥‥そういうことだったんですか。すいません、気づかなくて」
「うん‥‥まあいいよ、初めてなんだし。‥‥で、いつまでここにいる気なの?」
「へ?」
 妙な答えが返ってきた。いや、その、普通夜に師匠の寝室を訪ねた場合、
ほぼ間違いなくそのまま「夜のお楽しみ」になだれ込むんだけど‥‥。
「だーかーら! あたしは今日は‥‥その、脱皮なの。だからさっさと出て行ってよ。
場合によったら一晩中かかるんだから」
「‥‥師匠」
 出て行く代わりに、俺はずいっと近づいて、一言。
「な、何よ」
「俺、手伝います」

 * * *

 騒ぐ師匠を説き伏せるのは多少骨が折れたけど、無理じゃなかった。
恥ずかしいとはいえ、やっぱり一人で脱皮するのはかなり大変らしい。
それになんていうか‥‥「恥ずかしがる師匠」ってのがものすごく新鮮なんだよな。
も、もちろんそんな不純な動機を口にしたりはしない。
79秘密の印:2006/11/22(水) 18:38:33 ID:8imJhGFd

 師匠がベッドにうつぶせになると、俺はその上にのしかかるようにして手伝う。
腰のあたり、鱗の生え際辺りを見ると、なるほど、古い鱗が浮きあがっているのが分かる。
「始めるよ‥‥いい?」
「早く‥‥してよ‥‥」
 なんだかいやらしい口調。
 カリッ。
「っ!!」
 びくんっ、と体が震える。剥けかけている鱗を引っ掻いて、とっかかりを作っただけなのに。
「い、痛かった?」
「‥‥大丈夫よ‥‥。‥‥ねえ、あんまりゆっくりしないで」
 そっか。日焼けの皮を剥がすのと似た感じなのかな?
「じゃ、いきまーす‥‥」
 ぺり。ぺりぺり‥‥。
 かさつく古い皮を剥がしてゆくと、その下から傷一つ無いみずみずしい鱗が現れてくる。
まだ水分をたっぷり含んでいるからだろうか、今までよりもほんの少し色が濃いような気もする。
慎重に、でもある程度の早さで、少しずつ皮を剥がしてゆく。皮が剥がれてゆくにつれて、
新しい鱗がますますきれいに視界を占めてゆく。
「あっ‥‥う‥‥ん‥‥。思ったより、うまい、ね‥‥」
 ‥‥あんまり色っぽい声を出さないで欲しいんだけど‥‥。
こっちもなんだかムラムラしてしまう。
「破れないように気を付けてね‥‥半端に残ると剥がすのが大変なのよ」
「気を付けます‥‥あ、ちょっとこの辺を浮かして」
 ゆっくり、慎重に。かつ、時々大胆に。靴下を裏返しに脱ぐように、皮を剥いてゆく。
手元には透明な鱗の筒が残り、そして師匠の真新しい下半身が次々に現れてくる。
‥‥きれいだ。つやつやの鱗が、ランプの光を受けてきらきらと光る。
古い皮を引っ張ると師匠は少し息を詰まらせ、ときどき深い息を吐く。

 * * *

「ふぅ‥‥」
 結構緊張する。もう一時間ぐらいたってると思うけど、まだ全体の四分の一ぐらいしか
剥けてない。いったん手を離して肩をほぐしていると、師匠も大きく深呼吸をした。
「なかなか上手じゃない、ラート。ほらほら、あんまり休んでないで続けてよ」
 その言葉に促されて、作業を続ける。徐々にコツをつかんできたらしく、
最初のころよりは早くなってきた。ぺりぺりと剥く。きれいな鱗が出てくる。
師匠が息をつく。――その吐息も、なんだか少し早くなってきた気がする。
 ‥‥。
 あ、いや、その、そんなことを気にしてる場合じゃなかった。集中、集中‥‥。
 ぺり。ぺりぺり。
「‥‥ぁっ‥‥」
 聞こえない聞こえない。
「ぁ‥‥っ、はぁ‥‥ん」
 聞こえない聞こえない聞こえない。
「ラー‥‥ト‥‥あぁっ!」
「し、師匠‥‥お願いですから、その、あんまり色っぽい声を出さないでくださいよ‥‥」
「いいじゃない‥‥気持ちいいんだから‥‥んっ、そこ‥‥丁寧にね‥‥あ‥‥ぁんっ!」
 ううっ‥‥我慢我慢。襲いかかりたくなるけど、もし途中で手を出したら
張り倒されるに決まってる。気合いで音を遮断して、なんとか目の前の作業に集中する。
蛇の部分も半ばを過ぎて、後半に入ってくると少しずつ細くなってくる。
そうすると皮を剥くのも少し簡単になってくるから、作業もはかどってきた。
‥‥よく考えたら、前半は確かに自分じゃやりにくいかもしれないけど――
「師匠、ここまできたらあとは自分でできるん――」
「嫌、ってこと?」
 皆まで言う前にじろりと視線が返ってくる。
「いえ、喜んでお手伝いさせていただきます」
 ‥‥我ながら弱いなあ‥‥。って、だいたい師匠も最初は自分でやるって
言ってたじゃないか。勝手なんだから‥‥。
80秘密の印:2006/11/22(水) 18:40:51 ID:8imJhGFd

 * * *

「うう、痒いよ‥‥」
「あと少しだから我慢してください。‥‥っと、あとちょっと」
 本当にあと少しだ。尻尾の先の尖った部分にさしかかってきたから、
もう終わる‥‥ほら、もうこれで――
「――はい、終わりまし‥‥あっ!?」
 ぺりっ!
「あちゃ‥‥すいません、少しだけ鱗が‥‥」
「ちょっと何やってんのよ! あーあ、二枚だけ残って‥‥やっかいなのよ、
こういう残り方をすると‥‥。ちゃんと剥がしてよ」
「すいません‥‥」
 師匠の言葉通り、尻尾の先には二枚だけ古い鱗が残ってしまった。
まあ、ちょっとひっかいて剥がせばすぐだよな‥‥っと、あれ? うまく爪に引っかからない。
「ちょっ‥‥と‥‥早く、しなさいよ‥‥っ!」
 あれ? あれ? なんで剥がれないんだ!? 爪で引っかけようとしても、
なぜかするりと行きすぎてしまう。もうちょっと強くひっかかないと‥‥大丈夫かな?
「ちょ‥‥っ、はぁっ‥‥!
さっさと、しなさい‥‥ああっ‥‥!! き、傷がついちゃうでしょ!? もっと優しく‥‥」
 強めにひっかいたら怒られた。でもおかげでとっかかりができたみたいだ。
これで剥がせる‥‥
「‥‥っと、よし!」
「んうっ!」
 ぺりっ、という小さな音と同時に、師匠は少し身体を震わせた。はぁ‥‥疲れた‥‥。
「終わりましたよ、師匠」
 ベッドの脇には大量の抜け殻が散らばってる。相当な量だ。
透明でかさついたそれとは対照的に、ツヤツヤとした尻尾がベッドの上にのたくってる。
ベッド脇のランプの光がその一つ一つの鱗に反射してきらきらと光る。
いつも師匠の顔や上半身の美しさに目を奪われていたけれど、まさか下半身も
こんなにきれいだったなんて‥‥。少し上気した師匠が、新しくなった下半身を
ゆっくりとなでている。
「痒いの、収まりましたか?」
「あ、うん‥‥一応ね。ありがと」
 少し顔を赤らめて微笑んでくれた。‥‥ダメだ。俺。もう限界。
「ナイアさん――!!」
「ちょっと、いきなり‥‥! んっ、んんぅ!」
 一気に押し倒して唇を奪う。あまりの唐突さに抵抗らしい抵抗もない。
細い手首をまとめて押さえ込み、服の上から胸を揉む。柔らかいのに見事な弾力が
手のひらへ跳ね返ってくる。ぐっと揉み込むと吐息が鼻から漏れる。
唇を離すと、かすかな喘ぎが甘い響きと一緒に溢れた。
「ナイアさん‥‥これは何?」
 胸の一点を指でなでながら、そう言ってみる。
胸だけを覆い、背中で結んだ布きれ――これが今日のナイアさんの「服」だ。
その服の一点が、下から押し上げられてツンと浮き出している。円を描くように
そこを指先でなで、軽く弾きながら詰問する。ぴくん、と身体を震わせながら、
ナイアさんは濡れた瞳で俺を見つめ、かすかな声で喘ぐ。
「あんなに色っぽい声で喘ぐから‥‥我慢できないよ。
でもナイアさんも興奮してたんでしょ?」
「‥‥だって‥‥気持ち、よかった‥‥から‥‥」
「偉そうに弟子に手伝わせながら、気持ちよくて喘いでた?」
 いつになくしおらしいナイアさんを、わざわざ嫌味に問い詰めていく。
これがいつもなら、「だ、誰がよ!」とか「うるさい!」とか言って怒ってみせるんだけど
‥‥今日はこくん、と顔を赤らめるばかり。信じられないくらいおとなしいなあ‥‥。
いつもの積極性の権化のような師匠とはまるで別人だ。
‥‥脱皮したら性格まで変わるんだろうか。まさかね。
 と、そんなことを考えながら、ナイアさんとしばし見つめ合う。
互いの吐息が触れあうくらいまで顔が近づき――
「‥‥ラート‥‥!」
81秘密の印:2006/11/22(水) 18:42:35 ID:8imJhGFd
 俺の名を呼んだかと思うと、ナイアさんが一気に絡みついてきた。首と背中に腕を回し、
全身を俺にすり寄せてくる。でっかいおっぱいが胸に押しつけられてむにゅっと形を変え、
お腹も、腰も、真新しくなった蛇の下半身も全部俺にぴったりとくっつく。
暖かく柔らかなナイアさんを全身に感じながら、その細くくびれた腰を抱き、
そして強く唇を重ねた。そのとたん、ナイアさんの長い舌が待ちかねたように俺に襲いかかり、
俺の口内を激しく愛撫し始める。俺の舌に巻き付き、絡め取り、口の中の隅々まで
丁寧に舐めてゆく。それを追いかけて俺も舌を動かすが、まるでついて行けない。
「‥‥ぷはっ‥‥ナイア‥‥さん‥‥っ、ちょっ‥‥!」
 どうにか息を継ぎ、猛攻をしのぐ。でもそれはほんの一時的なもの。
いつの間にか下着の中に潜り込んできた指先が、さっきから勃ちっぱなしのモノに絡みつく。
指先だけを使って根元から先端まで、包み込むように絡ませながら何度も上下させてゆく。
一切力は入っていないのに、強烈に気持ちいい。思わず呻いてしまったその声に、
さっきまでのしおらしさとはまるで無縁の笑みを見せるナイアさん。
‥‥襲いかかったのは俺なのに。軽々と手玉に取られてしまったのが情けなくて、
腹立たしくて、俺は自爆覚悟でその唇にもう一度襲いかかる。
‥‥あっさり撃破されたのは言うまでもない。
「んむ‥‥はむ‥‥ん‥‥。んん‥‥っ。‥‥はぁっ‥‥。
ふふ、キスと指先だけでそんなに感じてていいの‥‥?」
 わざわざ甘い吐息を混ぜながらの口づけがようやく一息つくと、発情しきった瞳に
妖しい笑みを浮かべてそう言う。かと思うと、そのきれいな唇が俺の唇にもう一度触れ、
そして耳と首筋に柔らかい刺激を与え、歯で甘い攻撃を加えてくる。彼女の頭を抱き寄せ、
身体をまさぐりあい、互いに余計な布をはぎ取ってゆく。ベッドの上で横に並び、
甘い吐息と言葉を交わしながら、さわさわと身体に触れあう。
 不意に身体を起こしたかと思うと、ナイアさんは俺の股間の方に頭を向けた。
――当然、俺の目の前にはじゅくじゅくに濡れそぼった秘裂があり、
そしてその下には真新しい鱗に覆われたつややかな下半身。
だけどそれに見とれている暇はなかった。熱くぬめった感触が股間に直撃し、思わず震える。
「んぐ‥‥んぅ、ぷは‥‥。ふふ、もうギンギンになってる‥‥すてきよ、ラート」
 横になったまま顔を持ち上げ、艶然と笑う。ぬるぬるとした感触が上から下へ、
下から上へと移動し、かと思うと先から根元まで一気に粘膜に飲み込まれる。
頭が上下に動き、そしてその間も指先が股間の周辺を丁寧になぞってゆく。
太ももの付け根あたりを軽くひっかくようになでられると、情けないほど腰が跳ね上がる。
そんな俺の反応を横目で見つめながら、ナイアさんの口撃はますます激しくなってゆく。
長い舌をサオ全体ににゅるにゅると巻き付けながらも唇は先端だけを咥え、
粘膜で亀頭やカリを責めあげる。そうかと思えば裏筋を唇と舌を使って
いやらしく舐め上げたり、おいしそうに口いっぱいに頬張ったりする。
「んぶ‥‥ぅ、れるっ‥‥はぁん‥‥。おいしいわ、あんたの‥‥。
ふふっ、どう? イきそう?」
「っく、うぁ‥‥っ! まだ、まだ大丈、夫‥‥くぁうっ!」
 強がってみた瞬間に鈴口を吸い上げられる。や、やばい。このままだとあと二十秒ももたない。
力が抜けてしまった腕に意識を戻し、手近にあった下半身をぐいっと抱き寄せ、
そして割れ目を舐め上げて――
「ひぅっ!?」
 ピクンと強く震え、唇や舌の動きが止まる。ここぞとばかりに肉の突起を舌で転がし、
秘裂全体に舌を這わせて舐め上げる。ピクッ、ピクンッっと全身を震わせ、
肉棒を頬にすり寄せたまま荒い息をつき始めた。――反撃成功!
「どう、気持ちいい?」
「んあう、はぁっ! ああう、んっ、ちょっ‥‥と、あぁっ!!」
 甘い喘ぎが溢れる。ガチガチになった俺のモノを掴んだまま、ひくひくと震えてる。
どうだ、俺の舌技も捨てたものじゃ‥‥あれ? よく考えると変だ。今、俺はナイアさんに
声を掛けて、そして反応を見ている。つまり、アソコを舐めている最中じゃない。
なのにナイアさんは震えて、喘いでる。‥‥なんで?
「あ、あう、お願い、下半身、触られたら‥‥!」
 ‥‥そうか。なるほど。ほほう。つまり、こういうことですか。
「脱皮直後で、まだ鱗が柔らかくて‥‥感じすぎる?」
「――あぁああっ!! くぁっ、や、やめっ、ひぁうっ!!」
 すうっ、と鱗をなでると、信じられないくらい見事な応えが返ってきた。
82秘密の印:2006/11/22(水) 18:44:24 ID:8imJhGFd
――そうと分かれば、今日しか味わえない快感ってやつをナイアさんに
きっちり教えてあげないとね。ベッドの上でうねうねとくねっている下半身を抱き寄せ、なでる。
腰の辺りから、ゆっくりと手のひらを這わせて。
「あああっ! お、お願い、やめっ、っくあああっ!!」
 俺のモノをしゃぶるのはもちろん、掴むことさえできずに悶える。
 するり。するっ。――丁寧に、隅々までなでてゆく。ときおり円を描くように、
あるいは波の模様を描くように指先を動かすと、ますます喘ぎが激しくなる。
ベッドにうつぶせになった上半身はべったりと汗がにじみ、腰を浮かせたり、
のけぞったりしながら休みなく喘ぎ、悶える。俺はベッドの上で四つんばいになり、
ナイアさんのいやらしい下半身を片っ端からなでる。
「ああぅっ!! あはぁう、ひぅうっ!! ――っは、くは、っ、あっはぁああぁああ!!!」
 喘ぎ、悶え、何かを言おうと唇を動かしたその瞬間。ひときわ大きく叫ぶと
全身をがくがくと震わせ、ナイアさんは突っ伏した。開いた唇から溢れたよだれが
シーツにシミを作り、汗だくになった身体には髪が張り付いている。
その身体をなまめかしくくねらせながら、放心状態の目でぼんやりと俺を見ていた。
――俺の中で、何かが爆ぜた。

 汗でしっとりとぬめる肩をつかみ仰向けにすると、ぐしょぐしょに濡れたところに指をやる。
指を少し入れただけでも、中の肉襞が物欲しそうにすがりついてくる。それを確認すると、
膝で蛇を抱えるようにして俺はナイアさんにのしかかり、はち切れんばかりになった分身を
淫裂にあてがい――力強く、貫いた。
「んっはあぁあ!! ああっ、す、すご‥‥い‥‥!」
 腰を少し動かしただけで、ナイアさんは感極まったように喘ぐ。
ベッドに突っ張った俺の腕に白い腕を絡ませ、なまめかしい喉をそらせながら、
激しく悶える。爪を腕に食い込ませ、眉を寄せながらも必死に俺を見つめたまま、
息を詰まらせ、かと思うと快感を爆発させながらよがり狂う。肉襞は俺の剛直を奥へと
引きずり込もうとすがりつき、離すまいとして絡みつく。
そして淫らな蜜を溢れさせ、もう「濡れている」なんて表現じゃ追いつかないほどだ。
「ラート、ああ、すごい、すご‥‥すぎるぅ‥‥!! だめ、ああ、また、イく、あはぁっ!
こ、こんなに、早く――だめ、だめ、もう、あ、あぁぁああっ!!」
 必死に言葉を紡いでいたナイアさんが、またしてもイく。
俺の腕を掴む力が抜けたのをいいことに、俺はベッドに肘をついて体を支える。
胸板に巨乳が密着し、コリコリに堅くなった乳首が押しつけられる。そして‥‥耳元で囁く。
「もっとイかせてあげるよ‥‥。もっと、もっとね。ナイアさん‥‥!」
 同時に、腰を打ち下ろす。感極まった嬌声。
 いつもなら下半身が俺の足に絡みついてくるんだけど、今日はそれさえ上手くできないらしい。
だったら、今日は今日の快感を思いっきり感じさせてあげなきゃ。
‥‥のたうつ蛇の下半身を右手で掴み、左腕で体重を支えながらピストン運動を続ける。
つるつるの鱗をさすり、しごき上げる――その先端までビクビク震え、全身が快楽にむせび泣く。
「ひぃいいっ! お、おねが‥‥い‥‥!! し、ごか、ない、で‥‥!
っく、あひっ、はぁぁあっ!! ――ひっ!!
そ、そこ、やめっ――ぁっぁああああああぁぁあ!!!!」
「すごいよ、ナイアさん‥‥またイったの?」
 じゅぶっ、ぱちゅっ、っといやらしい音を響かせながら腰を動かす。
突き上げられる快感、全身に触れる感触、そして敏感すぎる鱗のせいで狂いまくるナイアさん。
そのあまりのいやらしさに、俺はたまらずキスをする。必死に喘ぎ悶える唇をふさぐと、
それでも俺に舌が絡みついてくる。
「‥‥ん、んんっ‥‥! ぷはっ、あっはあっ!!
ラート、好きよ、ああ、だめ、また――!!」
 キスの途中で音を上げたかと思うと、甘い睦言――そして声にならない絶叫。
すがりついたままビクッビクッと震え、荒い息をつく――だめだよ、まだ休ませないから。
優しく丁寧にキスをすると、ナイアさんが大きく息をしながらも妖艶に微笑んだ。
83秘密の印:2006/11/22(水) 18:47:22 ID:8imJhGFd

 * * *

「っく、あはっ‥‥! すご‥‥い‥‥!! 突いて、攻めて‥‥ああっ、んうぅううっ!!
いい、いいわ、ラー‥‥ト‥‥!! ねぇ、ここも――ひぃぃっ!!
んあっ、くぅっ、ぁああぁああ!!!!」
 ピストン。愛撫。甘い言葉。最初は強烈すぎる快感に少し抵抗していたナイアさんだが、
徐々に積極的に下半身の愛撫を求めるようになってきた。俺が触りやすいところに
蛇をくねらせ、俺もそれに応じてしごき、なで、そして舐める。先の方へ向かって
しごいてゆくと身体を俺に密着させて悶え、逆になで上げると上半身をのけぞらせて喘ぐ。
時には弾む乳房を揉みしだき、手のひらでたっぷりとその量感を楽しむ。
もう、何をしてもナイアさんは感じ、悶え、イく。最高だ。本当に。
「あ‥‥ぁぁ‥‥ぁあああ‥‥っ!!」
「ナイアさん‥‥好きだよ‥‥」
 思わずそう言ってしまう。――返事は、絶頂の喘ぎ。
 ナイアさんはもう完全に沸騰してる。でも、俺だってそうだ。
俺だってもう、二回も射精してしまった。でも萎えない。今のナイアさんを前にして、
萎えるなんて想像もつかない。がむしゃらに腰を振り、全身でナイアさんを愛し、味わう。
ベッドがギシギシと泣き言を言ってる。――好きだよ、ナイアさん。
だからもっと、もっと‥‥!

「ああ、はぁあっ、い、い‥‥! んあっ、あぉっ、ああぁぁあ‥‥!!
も、もう、だ、め‥‥! 墜ち、る‥‥!」
 さしものナイアさんも汗だくになり、ろれつも回らなくなってきた。
それでも、いや、だからこそ俺に必死にすがりついてくる。普段は勝ち気で、いいかげんで、
わがままなナイアさん――そのナイアさんにとって俺が「何」なのか、
十分すぎるほどに伝わってくる瞬間。それを意識してしまうと、
もう俺も我慢できなくなってきた。下腹部に熱く、しびれるような感触が高まってくる。
「あぉおっ、くはっ、ああっ、ひぃ‥‥っ!!」
 猛烈な勢いでふくらむその感覚を必死にこらえ、一瞬たりとも休まず攻め寄せてくる肉襞を
突き上げ、細い腰を腕で強く抱き、そして尻尾の先を口に咥え――噛んだ。
「あああぁぁぁああああーっ!!! あ、あぁぁあああっ、あっはあぁぁぁあ‥‥っ!!!!」
「っくぅうっ!!」
 ブビュウッ!! ドビュゥッ、ドクッ、ドクンッ、ビュクッ‥‥!!
 ものすごい絶叫。そして、訳が分からないほどの快感。頭が真っ白になった瞬間、
三度目とは思えないほどの量が一気に吹き出し、ナイアさんの中を満たしてゆく‥‥。
腕ががくんと崩れて、香しい髪の匂いが鼻をくすぐる‥‥。
はぁ‥‥はぁ‥‥さすがに‥‥こたえたかな‥‥。
 ナイア、さ‥‥ん‥‥愛‥‥してる‥‥よ‥‥。

 * * * * *

 ガラァァン‥‥ガラァン‥‥ガラァァン‥‥
 ‥‥うるさいな‥‥なんだよ‥‥。ああ、そうか‥‥時計塔か‥‥。
 ‥‥時計塔!?
「うわっ、寝過ぎたっ!!」
 街中に響き渡る鐘の音は、つい最近中央広場に建った機械仕掛けの時計塔の音だ。
豪商たちがこのビルサ市の象徴にしようと建設したらしい。定時に鐘が鳴り響き、
おかげでそれなりに生活の役に立っている。って、そんなことは今はどうでもいいんだ。
朝にアレが鳴るってことは、つまり朝市はもう始まってる。大急ぎで行かなきゃ。
ナイアさんは‥‥熟睡中か。かわいい寝顔だけど、今はそれどころじゃない。
着替え着替え――!?
「いだっ、いだだっ!!」
 こ、腰がっ。筋肉痛かよ‥‥。しかたないか、昨日あれだけ激しかったんだから‥‥。
うっ、股間ががびがびだ。あーあ。
84秘密の印:2006/11/22(水) 18:49:12 ID:8imJhGFd

 * * *

 買い出しを終え、とりあえず自分の朝食を先に済ませて。店先の掃除は‥‥終わった。
棚の拭き掃除、商品の補充‥‥できてる。なんだよ、急いだおかげでいつもより早く
用事が終わってるじゃないか。あとは師匠が起きるかどうか‥‥無理だろうなあ‥‥。
一応起こしに行くか、と階段に向かった矢先に、それが聞こえた。
「ああーっ!!」
 なんだなんだ!? いきなり二階から悲鳴。師匠の声だけど‥‥もう起きたのか、珍しい
――じゃなくって。ばたばたと階段を駆け上がり、寝室に飛び込んで――
「どうしたんですか師匠!?」
「ラート!! あんたねぇ、いくらなんでもして良いことと悪いことがあるでしょ!?」
「え!? 俺ですか!?」
 なんで起きた瞬間俺が怒られなきゃならないんだっ?
「これよこれ、見なさいよ!! あんたのせいだからね!!」
 ものすごい剣幕でそう言うと、尻尾の先をずいっと俺の目の前に突きつける。一体何が‥‥
「あ‥‥歯形‥‥」
 尻尾の先、まだぴかぴかのつやつやな鱗に‥‥その、歯形が。やばい‥‥。
「脱皮したての鱗はまだ柔らかくて、傷が付きやすいって言ったでしょ!?
もぉお、これで次の脱皮まで消えないのよ、これ‥‥」
 恨みがましく文句をいうナイアさん。とりあえずその場でしつこく罵倒され、
さらに昨日の抜け殻の掃除がまだできてないことをなじられ、つ
いでに俺が先に食事を済ましたことまで文句を言われた。くっそー‥‥。

 * * *

「ふぅ、おいしかった」
 湯浴みをしたあと、朝からなかなか豪快な量の食事をたいらげ、
ようやく師匠は言葉を口にした。さっきまで黙りこくってたんだから、
機嫌はいくらか良くなったん――
「あ、ラート」
「な、なんでしょう」
 機嫌が良くなってますように‥‥。
「さっきは‥‥ちょっと悪かったね。夜にはしゃいでたのはあたしも同じなんだし‥‥」
 ‥‥もしかして朝だから機嫌が悪かっただけなのか。
「それにしても、ほんとに激しかったよね‥‥。あたし失神しちゃったのよ、最後」
「‥‥たぶん俺も、です」
「へぇ? 珍しいじゃない、あんたが伸びちゃうなんて。
歯形が付いたのは不本意だけど‥‥でも‥‥ふふ、本気で最高だったわ。ありがと」
 立ち上がると、師匠は俺の頬に軽く口づけをしてくれた。
その一瞬でどやされていた不満がすっ飛んでしまうんだから、我ながら現金だ。
「さっきの歯形ですけど‥‥見せてもらえます?」
「え? いいけど‥‥」
 きれいな鱗に、ほんの小さな歯形。ラミアが誰にも見せない脱皮、
その時にしか付けられない――俺だけの印。俺とナイアさんをつなぐ、秘密の印。
‥‥そう思うと、なんだか胸の底から熱くて‥‥思わず、俺はそれにキスをしてしまった。

 ――ぱーん!!

 ‥‥左頬の真っ赤な手形は、昼過ぎまで消えなかった。


(終)
85なしれ ◆8XSSeehUv6 :2006/11/22(水) 18:50:25 ID:8imJhGFd
以上です。
86名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 18:59:47 ID:dqJJBUy2
何でそんなに甘甘なんですか?
何でそんなにグッジョブなんですか?

乙です。
87名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 21:51:50 ID:EYYV/xhh
GJ!!
ちょっくら本家で読みなおしてくる
88名無しさん@ピンキー:2006/11/25(土) 00:53:08 ID:l2Bo0FGu
GJGJ!!
デレデレ甘々ごちそうさまでした(*´д`)ハァハァ
89名無しさん@ピンキー:2006/11/25(土) 09:48:47 ID:vCFrBaXZ
前スレがdat落ちするまで次スレになってたことに気づかなかった
で、超遅レスだけどみなさんGJです。

・・・ところで、ニィナは前回のご主人様から捨てられたのか(´・ω・`)
90名無しさん@ピンキー:2006/11/25(土) 23:59:49 ID:AqIKY55p
雪女のSSキボン
911:2006/11/26(日) 01:34:28 ID:x0/wmdmh
>>89

前スレを潰してdat落ちさせてしまいました者です。
前回も今回も読んでくださったみたいで嬉しいです!どうもありがとう。

ニィナという名前は同じですが、今スレで投下したやつは、
キャラ名だけ一緒の別世界のお話という設定で、別物と考えてください。
それともパラレルワールドって言ってもいいかな。
まあどっちでも自由な解釈で。


またそのうち何か書いてこのスレに投下したいと思ってるんですが、
猫娘の続きでオ○ニーシーンとか含めたやつが構想にあったものの、
いまいち反応が薄いようなので、誰も興味を持ってくれてないのかなと、
それなら全く別物を執筆してみようかと、その二択で迷い中です。
92名無しさん@ピンキー:2006/11/26(日) 04:16:21 ID:N2hWQLdu
俺的には長編というか続編よりも短編というか単発をちょくちょく読むのが好き。
続編だと前回のを思い出す、又は知らない場合見に行くのが億劫で遠慮したいな…。

猫またで違う性格(設定)とかでトライして見るのはどうかな?
9391 :2006/11/26(日) 20:02:27 ID:x0/wmdmh
>>92
どうもありがとう!

自分も前ぐらいのほうがあっさりして好みなので、また色んなキャラを書くのに
挑戦してみたいと思う。
94名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 15:12:00 ID:rpE3UNtQ
>>85
以前、氏が描いたサメ姐さんにそっくりかも。ラミアもあるけど似てるかも
ttp://okusaga.lix.jp/mokei/mermaid/mermaid.html
95名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 17:10:57 ID:LIgBo0U+
>>94
おまいさん、それ本人、本人!
96名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 18:48:20 ID:Z2oG/0iC
>>94の天然ボケっぷりが、非常に萌え。w
97名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 19:43:29 ID:fbn9umeP
新案を考えたよ。
災害を予知するという怪物、くだんをモチーフにして、
可愛い女の子だけど頭に角が生えてて牛の尻尾がある牛っ娘。
災害を予見するというより存在そのものが災害で、怒ったら
地球規模で破壊しちゃうよ。


地球を征服する力を持ってる頭に角がある人外娘


どう考えてもうる星や○らです、本当にどうもありがとうござ(ry
98名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 22:53:42 ID:uQ6N5n0v
くだんは予知すると死んじゃうじゃん
99名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 22:55:00 ID:8t3TCfe0
ヒロインに角があって、緑の髪で、宇宙人で、声が平野文で、半裸のコスチュームで、地球侵略に着て……
ちなみに、アウトランダーズのカームの特徴。
100名無しさん@ピンキー:2006/11/28(火) 09:58:44 ID:hU9qwwe3
声が平野文で



台詞が平野節で

と読んでしまった漏れはHellsingオタ
101名無しさん@ピンキー:2006/11/28(火) 21:52:37 ID:DPfXue1e
諸君 ウチは戦争が大好きだっちゃ
102名無しさん@ピンキー:2006/11/28(火) 22:00:53 ID:2Nz3e0lx
趣味はチンコいじりだっちゃ
103名無しさん@ピンキー:2006/11/28(火) 22:02:24 ID:hrIV3prt
>>100
それは重症だ。
104名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 09:38:54 ID:LGHFh2cy
ちんこいじりって・・・・・・!!
まさか、ふたなりナリか〜!?
105名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 10:32:28 ID:NHQZy8QE
ダーリンのちんこいじりだっちゃ
106なしれ ◆8XSSeehUv6 :2006/12/03(日) 14:50:14 ID:ZCsgCQtu
前回のに感想下さった方々、ありがとうです。
投下が2連続になり申し訳ないんですが、一応できたので投下します。
単発もの。
※逆レイプぎみ/触手/人妻/やや残酷描写あり。
名前覧に題名(『薔薇の咲く頃に』)を入れるので、
その手のネタが苦手な方はスルー/NG指定でよろしくお願いします。
10レス程度消費予定。
107薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 14:52:10 ID:ZCsgCQtu
「やあ。よく来たね、達哉君」
 五月も半ばを過ぎた、暖かな午後。青年が郊外に建つその家――邸宅、と言った方が
いいだろうか――の玄関扉を開けようとしたとき、庭の方から声が聞こえた。
「あ、伯父さん。こんにちは、今日もお世話になります」
「いやいや、いつものことなのにかしこまらなくてもいいじゃないか。ささ、中に入りなさい」
 青年の会釈に、その男性は朗らかに笑った。豊かな灰色の髪に灰色の口ひげ。
まさに「初老の紳士」といったところだろう。大きめのその手には移植ごて。
エプロンも土で汚れている。
「また庭いじりですか?」
「ああ、これかい? そうなんだよ、やっぱり日々の手入れが肝心だからね。
‥‥こんなに汚れてしまって、また家内に怒られるな」
 そう言ってまた笑う。‥‥庭いじりをしているときほど、伯父が楽しそうなときはない。
達哉は常々そう思っているが、やはりその感想は正しそうだ。
「そうそう、今は薔薇の一番花がきれいに咲いてるんだ。せっかくだから先に見に来なさい」
 やれやれ。相変わらず趣味のことになると妙に高揚する伯父に少々あきれつつ、
青年はその後ろに続いて庭――家が「邸宅」ならば、これは「庭園」だろう――へと向かう。
あたりの木々は丁寧に剪定され、それでいて伸びやかに陽光を浴びている。
本当に美しい庭だ――達哉は伯父の家を訪れるたびに感心する。管理者のセンスと愛情が
いかに細やかなのか、園芸に関しては素人の彼にも分かろうというものだ。
 だがその美しさも、ある一角と比べればどうしても薄らいでしまう。この庭の白眉、
伯父の愛情を一身に受けた薔薇園だ。
 ――見事、というほかなかった。種々様々の薔薇が咲き誇り、美しさを競い合っている。
大輪の貴婦人たちが満ちあふれ、さながらどこかの宮廷舞踏会だ。
「今年は天候も良くてね、我ながら見事なものだと思っているんだ」
 ‥‥さあ来るぞ、と達哉は覚悟した。確かに薔薇は見事なのだが、ここまで来てしまうと
絶対に逃れられないものがある。それは伯父の講釈だ。ひとつひとつの品種名、その由来、
栽培の苦労、などなど。柔和で温厚、誠実‥‥人間としても医師としても賞賛されるこの伯父に
何か問題があるとすれば、それは趣味のことになると周りのことが全く目に入らなくなる点だろう。
達哉がどう見ても話を理解していない様子であっても、そんなことには頓着せず、
薔薇園を巡りながらひたすらに解説する。と、唐突にその足が止まる。
惰性で後ろに続いていた達哉は、思わず伯父にぶつかりそうになった。
 そこには、花を付けていない薔薇が一株、寂しげに植わっていた。
「‥‥これは――《アルラウネ》。ごく最近開発された品種でね、系統としては
ハイブリッド・ティー系、少し紫がかった深い色の見事な花が咲くんだ。
実はこれを持っているのは日本でも本当に数えるほどしかいなくて、
私の自慢ではあるんだけど‥‥問題は‥‥まあ見れば分かると思うんだが、栽培が難しいんだ。
実際、日本ではまだ誰も花を咲かせてない。一番乗りを目指してるんだけどね‥‥」
 あまり元気そうとは言えないその株を見ながら、ため息をつく。
「っと、うっかりしてたね、まだ家に上がってなかったか。
薔薇のことになると自分でも止められないんだ。悪かった」
 ため息のせいで正気に戻ったのか、初老の薔薇マニアは思わず苦笑した。

 * * * * *

 達哉は、この伯父の手伝いをしている。――達哉の両親は、彼が大学に入ってまもなく、
交通事故で世を去った。そんな達哉に援助の手をさしのべたのが、伯父・山崎義和だった。
伯父は開業医を営む傍ら、医学者として大学にも非常勤で勤務している。彼は甥の学費を
負担した上に、自分の事務手伝いとして達哉を雇ったのだ。それは経済面の援助であると同時に、
精神面の援助でもあった。それもあって、生活と気持ちが落ち着いてからも
達哉は頻繁に伯父を訪れている。だが、それだけが理由ではなかった。
「いらっしゃい、達哉くん。ゆっくりしていってね」
「おじゃましています、伯母さん」
 居間で談笑中の二人に、甘く優雅な声が掛けられた。ドアの方を振り向くと、三十路前後の
女がティーポットを持って来た。義和の妻、藍華(あいか)だ。数年前に後妻として
この家にやってきたのだが、財産目当てだ何だと陰湿な視線にさらされてきたことは
達哉も知っていた。が、確かにそう言われても仕方のない年齢差かもしれない。
108薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 14:54:16 ID:ZCsgCQtu
 藍華は三人分の紅茶を入れると、義和の隣に腰掛けた。
伯父夫婦と甥の――むしろ義理の親子の、憩いのひととき。
 だが達哉は、この若妻と伯父とが同席するのはあまり好きではなかった。
伯父が妻と楽しげに話している様は、彼の本心として、あまり嬉しくなかった。嫉妬だった。
甥という立場をはみ出た、よこしまな心‥‥それは彼も重々承知している。
伯母の――いや、藍華の甘い声。すっきりと整った華やかな美貌。時折見せる、
ぞくりとするほど妖艶な目。衣服越しにも分かる、むっちりと起伏に富んだ肉体。女の香り。
そういったものに近づきたくて、彼はこの夫婦と懇意にするようになってしまっていた。
邪恋だった。
 だが、その邪恋を叶えてしまうほど、彼は大胆不敵な男ではなかった。
伯父の恩はやはり大きかったし、それに対して仇で報いるほど恩知らずではなかった。
だから藍華に積極的に近づくことはしなかったし、ここを訪れるのも、義和の手伝いという
名目をはみ出るほどの頻度にはしなかった。二人きりになれればいいのに、などと
かすかな期待だけを胸に秘めて。

 * * *

 その期待は、唐突に叶えられた。
 雑談は例によって園芸に及び、そして例によって義和の独演会の様相を帯びてきた。
藍華はあからさまに退屈そうな顔でちらりちらりと達哉を見やり、そして長い脚を
さりげなく組み替える。達哉は相づちを適当に打ちつつ、伯母の振る舞いを注視しないよう
気をつけた。もっとも、注視していても伯父は気づくまいと思われたが。
 講演は接ぎ木の話から始まって、品種改良の蘊蓄に逸れ、一旦もとにもどって、
そこから病害虫の防除へと発展し――
「そうだ、殺菌剤を切らしていたんだ! ‥‥すまん、ちょっと買いに行ってくる。
最近物忘れが激しいんだ、今行っておかないとまた忘れる羽目になるからね。
――達哉君、お願いしたいものは私の仕事机の向かって左側、キャビネットの上に積んである。
悪いけど、先に手を付けておいてくれないかな。私の用事は一時間ぐらい掛かりそうなんでね」
 がたんと音を立てそうな勢いでソファから突然立ち上がり、早口でそうまくし立てると、
あっけにとられる二人を置いてそそくさと居間をあとにした。
「‥‥」
「‥‥ごめんなさいね、いつもあの調子で‥‥」
 あまりの唐突さに、達哉はしばし呆然とドアを見ていた。彼のあごにもう少し締まりがなければ、
それこそぽかんと口を開けて間抜け面を作っていたことだろう。藍華も同様だったのだが、
さすがに妻として多少は慣れているのか、立ち直るのはこちらが早かった。
そして――思いも寄らない言葉を口にした。
「‥‥二人っきりね」
 甘い、声。ぞくんっ、と背筋に電流が走る。藍華はゆらりと立ち上がると、
達哉の右隣に腰を下ろした。
「‥‥ふふ‥‥見てたわ‥‥。私の方ばかり気にしていたでしょう‥‥?」
 甥の太ももに左手を置き、耳元で囁く。ゆるくウェーブのかかった髪が、しっとりとした
香りを放つ。
 いつも望んでいたことなのに、しかも相手の方から行動を起こしたというのに、
達哉は混乱していた。脳が空回りして湯気を上げている。そしてその空回りに、
藍華はますます拍車を掛けてゆく。
「‥‥そ、そんなこと‥‥」
「そう‥‥じゃあ、これは何‥‥?」
 しなだれかかり、耳朶にキスを。熱い吐息を首筋に吹きかけ、豊かな胸を腕に押しつける。
そして、繊細な指先が股間にまとわりつき――その硬さを際だたせてゆく。理性がじりじりと
追いやられてゆく。達哉が困惑しつつも欲情の炎をたぎらせていることを知り尽くして
いるのだろう、藍華は一層淫らな響きの声で甥を誘惑する。
甘い言葉に唾の音を交えながら、若い男の身体に絡みついてゆく。柔らかく、だがまだまだ
しっかりと張りのある乳房をむりやりに揉ませ、達哉の首筋に唾液の筋が残るほどの口づけを‥‥。
「‥‥お、伯母さん‥‥そんな‥‥」
「まだ若いつもりなのに、おばさんなんて言わないで‥‥。
藍華、って呼んでよ‥‥んっ‥‥んん‥‥」
109薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 14:56:13 ID:ZCsgCQtu
 ぴちゃ、くちゅっ‥‥。ついに唇が重なり合い、先ほどまで夫がいた空間に淫らな音を響かせる。
唇を離し、互いに熱情に浮かされた視線を交わし――
「‥‥藍華さん‥‥!」
「‥‥来て、達哉‥‥。‥‥んはぁっ‥‥!」
 理性が、ついに決壊した。歪んだ、いや、むしろ本能のままの想いが奔流となって荒れ狂い、
藍華をソファに押し倒す。細い腰を強く抱き、そして唇を重ね、舌を絡め、互いに身体を
まさぐり合う。女の指先が達哉の背筋を這い、男の指は女の乳房に食い込んだ。
白い身体をくねらせ、女は年下の男になめらかな肌を押しつける。
「はぁ‥‥ん‥‥。あんっ‥‥ふふ‥‥楽しみましょ‥‥。
あの人のことなんて、気にしなくて‥‥いいのよ‥‥。あ、あぁ‥‥。
どうせあの人‥‥薔薇と仕事以外なんてどうでもいいんだから‥‥んっ、はむ‥‥ん‥‥ぁん‥‥っ」
 甥への免罪符のつもりなのだろうか、夫への不満を漏らす。そしてまたしても熱い口づけ。
着衣を上へずり上げると、ぷるん、と柔らかな乳房が溢れる。しっとりとなめらかな、
吸い付くような肌を味わいながら、達哉は一層強く唇を、女の肌を求め――

 バタン!
 唐突に、あまりに唐突にドアの音がした。同時に、獣欲に身をゆだねていた男女が凍る。
だが音は遠い――居間のドアではない。そして足音――反射的に二人は起き上がり、
ドアの方へ意識を向けながらも素早く着衣を整えた。藍華はテーブルを片付けていたかのように
無言で振る舞う。それにつられて、達哉もこれから仕事に向かおうとしていたかのように
立ち上がり――足音が早々と近づき、そして勢い良くドアが開いた。
「いやぁ、まいったまいった。なんだ、念のために確認したらまだ予備が残ってるじゃないか。
私もいよいよぼけてきたのかな」
 わっはっは、と豪快に笑いながら二人の秘め事をぶちこわしにしたのは、もちろん義和だった。

 * * * * *

 それは二人――甥と伯母――にとって、あるいは些細な出来事だったかも知れない。
行為は結局のところ未遂に終わり、それ以後も何事も起きなかった。
伯父は相変わらず優しく、相変わらず園芸マニアだったし、伯母は相変わらず優雅で、
美しかった。だが、あの時の胸の高鳴りと欲望にたぎったひとときは、達哉の胸に
深く突き刺さっていた。そしてやはり、罪悪感もあった。その後二度ほど例のごとく
事務手伝いに伯父の家を訪ねたものの、やはり伯母を正視できなかった。そのことを
自覚してしまったからだろうか、彼はいつしか伯父夫婦と少しずつ距離を置くように
なっていった。たまには遊びに来いという誘いにも、忙しいといって
先延ばしにするようになった。――とはいえ、半年も経つ頃には心も少し落ち着きを取り戻し、
月に一回程度訪れるようになってきたのだが。
 伯父の元を訪れれば、また心の均衡が崩れてしまうかも知れない――そんな思いは
確かにあった。だが、それは杞憂だった。彼が訪問するときには、藍華がいなかったからだ。
最初の二回ほどはそれを残念に思い、その一方でほっとした。三度目、四度目も不在だったときは、
伯母も気を遣って顔を合わせないようにしているのかと考えるようになった。
 五度目の訪問でも、伯母はいなかった。事務処理の合間に、達哉はさりげなく切り出した。
「あの‥‥伯父さん。
最近伯母さんはどうされてるんですか? 実はもう長いこと会ってないんです」
「ああ、家内か。外出中だが、また遊びに行ってるんだろう。私と違って友達も多いようだしね」
 論文雑誌に目を通しながら、義和はそう言って苦笑する。かと思うと、すぐに顔を雑誌に戻し、
真剣な顔で文章を追ってゆく。達哉はそのとき、それ以上訊くことはできなかった。

 それから一月ほど経った頃、達哉はまた伯父の家を訪ねた。あの秘密の未遂事件が
あってから、もう一年が経つだろうか。あの日と同じ、穏やかな午後だった。
「やあ、達哉君。来てくれたか」
 玄関扉を開けようとしたとき、庭の方から声が聞こえた。
「あ、伯父さん。こんにちは、今日もお世話になります」
「君もあいかわらず堅い物言いをするね、遠慮することはないのに。ささ、入りなさい」
 汚れたエプロンをぞんざいにたたみ、軍手と一緒にそれを棚に片付けると、
義和はいつもの穏やかな笑みで招く。軽く会釈をし、達哉は玄関へと足を進めた。
110薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 14:58:11 ID:ZCsgCQtu

 今日も、伯母はいなかった。
 代わりに義和自身が紅茶を入れ、なにやら高級そうな洋菓子を皿に乗せて運んできた。
そしていつものように雑談を交わす――というのは一般的な表現を用いてのことであって、
実情は例によって例のごとく伯父の講演である。変わり者のストレス解消につきあうつもりで、
達哉も普段はそれにある程度注意を傾けているのだが――先月に続き今月も、
達哉はどうしてもこらえきれなくなった。話が一段落したと思われるところで、尋ねた。
「‥‥あの‥‥今日も伯母さんはいらっしゃらないんですか?」
「家内が普段どうしているのかなんて知らないよ、保護者じゃあるまいし」
 珍しく不快をにじませた声で答える。
「すいません。でももう半年以上――いや、一年近くお会いしてないんです。それで‥‥」
「‥‥やれやれ、あれにも困ったものだな」
 苦笑しつつ、紅茶をすする。と、やおら顔を上げ、
「そうだそうだ、忘れていた」
 伯母の行き先だろうか――達哉がそう思いかけたとたん、
「見せたいものがあったんだ。ついてきなさい」
 がくり、と内心達哉は崩れた。伯父が見せたいものがあるといえば、それは庭木に決まっている。
今の季節なら薔薇だ。まあ、これも伯父なりの話題転換なのだろう――落胆しつつもそう考え、
残りの紅茶を飲み干して、伯父の後に続いた。

 薔薇園は今年も見事だった。咲き誇る薔薇、薔薇‥‥。だが、今日は一つ一つの解説はなく、
義和の足はまっすぐ一箇所へ向かっていった。
 美事な薔薇だった。
 やや紫がかった、きめ細かいビロードを思わせる花弁が幾重にも重なっていた。
その色は吸い込まれそうなほど深く、厚手の花弁の重なりが描く曲線は植物という枠を超えて妖艶だ。
「どうだい、すごいだろう。たしか以前説明したね、《アルラウネ》という品種だ。
日本で咲かせたのは私が最初なんだよ。海外の品評会で見たことはあるが、
これはそれを超えるほど美しい――ひいき目ではなく、私は心底そう思っているんだ。
こんな美しい薔薇はこの世に一つしかない。私だけが持っている、世界最高の薔薇だ。
そう、私だけのね」
 いつになく高揚した声で、伯父はうっとりとしながら自慢する。その自慢は
半ば常軌を逸しており、彼を「薔薇マニア」呼ばわりするのは失礼なものであるかに感じられた。
むしろ「薔薇狂い」だろう。
「薔薇はいい‥‥。手を掛ければ掛けるだけ、かならず良くなる。
こちらの愛情に必ず答えてくれる。《アルラウネ》は、世界一の花を咲かせることで
私の愛情に答えてくれたんだ。つまり私の薔薇への愛情は世界一だと言うことだよ。
こんな名誉なことはない。そうとも、手を掛けようと、愛情を注ごうと、
気ままに振る舞う人間なんかと比べものになるものか」
 伯父の口は止まらない。薔薇を見つめたまま視線は動かず、瞬きさえしない。柔和な表情は、
一見いつもと同じのように見える。だが、何かがおかしい――そんな印象を抱かせる、奇妙な微笑。
「私が愛しても、愛しても、あれは気にもとめない。気づきもしない。
私が知らないとでも思っていたのだろうか。浅はかな女だ。藍華だよ、あの淫乱な雌狐――。
君も手を出したんだ、いや、出されたのか。知らないとは言わせないよ。
‥‥正直に言って、君ならまだ良かったんだ」
 薔薇を見つめたまま、笑顔を貼り付けたまま。伯父は変わらぬ調子で続ける。
「私も年だ、もう頑張るのは無理なんだよ。それは分かっている。
だが、あれはそれを思いやることなんて思いつきもしない――そういう女だったんだ。
私の留守には若い男を引きずり込み、思うさま楽しんでいたよ。
そうとも、それならまだ、素性の知れた君の方がいくらかマシだったんだ」
「‥‥財産目当ての後妻だと言われていても、私は藍華をかばったよ。
むしろそういう中傷が当たっていても、私は別に構わなかった。藍華が、たとえお義理であっても
私の想いに応えてくれるなら、それで十分だったんだ。‥‥それさえ期待できない女だとは
思いもしなかった‥‥!」
「わかるかい、わかるだろう。あれに比べれば薔薇の方が何千倍も、いや、比較することさえ
無意味なほど誠実なんだ。それでも――それでも、私は藍華に惹かれていたんだ。愚かなことだ。
上っ面だけの美貌に私は籠絡されていたんだ。今もだよ。だから私は、あれを私の元に
引き留めたかった。誰とも知れない男たちに、妻の身体を好きにされるのが耐えられなかった」
 表情も声も、変わらない。変わらないが故に一層空恐ろしさが募る。
111薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 15:01:09 ID:ZCsgCQtu
「‥‥伯父さん‥‥まさか‥‥」
 舌が乾く、喉が渇く。
「私は考えたんだ。どうすれば藍華を本当に自分のものにできるのか。
君のものでもなく、他のだれかのものでもなく、私のものにするにはどうすればいいのか。
なんだ達哉君、何を心配してるんだ。‥‥殺してしまってはだめだよ、この世から消えてしまう。
この世に留まり、私の愛情に応えて欲しかったんだ。――そして、応えてくれた。
あの藍華が、淫乱で、思いやりのかけらさえないあの売女が、私に応えてくれた」
「君はこの前から藍華を気にしていたね。目の前にいるじゃないか。ほら、ここに。
世界一の薔薇になって、私に微笑んでくれているじゃないか」
 そう言って、義和は達哉に微笑みかけた。会心の笑顔だった。嫉妬に狂った、狂気の笑顔だった。
「‥‥でも藍華はまだ寂しがっているんだ。相変わらずの男好きだよ、困ったことだ。
そこでね、君にお願いがあるんだ。私が藍華の元に行くまで、あれの相手をしてやってくれないか。
嫌じゃないだろう、ほら、こっちに来なさい。どうしたんだ、早くこっちに来なさい。
大丈夫、藍華のときと同じだよ、怖くなんてないとも‥‥!」
 ずっと薔薇の方を向いていた体が、達哉の方へと向き直る。その手には――注射器が
握られていた。達哉はじり、じり、と後退する。だが義和は微笑を浮かべたまま、
無造作に近寄ってくる。生命の危険が目の前に迫っていることに脳が全力で警報を鳴らし、
達哉は一目散に走り出そうとした。しかし――
「うわっ! っく、くそっ! 来ないで伯父さん、く、来るなっ!!」
 足がもつれたのか、それとも薔薇に引っかかったのか、後ろへ振り向こうとしたとたんに
彼は倒れた。薔薇の刺が引っかかったのか、足や腕にも抵抗がかかり、容易に抜け出せない。
恐怖に見開かれた視界に、手が、注射器が迫ってくる。
「ああ、うわぁああっ!!!」
「おとなしくしなさい、みっともない――うぅっ!!」
 暴れる甥を押さえ込もうとするが、しかし体力はやはり比べようもない。
抵抗する腕を押さえかね、ひるんだ瞬間‥‥達哉の指が義和の顔をひっかいた。
生命の危機に際して手加減などしようはずもない――その顔から、幾筋かの血が流れた。
その血が、ぽたりぽたりと落ちる。地面に、達哉に、薔薇に。
「ぐあああっ、あああっ、貴様、ぁぁあっ!! 妻を寝取ったばかりか、
大恩ある私にけがをさせるのかぁあああ!! このクズが、畜生がっ!!」
 傷を押さえ、罵声をまき散らすその男は、もう柔和な初老の紳士などではなかった。
伯父でさえなかった。わめき散らしながらも、もう一度注射器を手に達哉に襲いかかる。
一気に針先が迫り、首筋に突き立つ――その寸前に、止まった。
「なっ――これは‥‥っ!?」
 義和は違和感に驚き、自らの手首を見た。
信じられない事が起きていた――《アルラウネ》から、蔓が伸びていた。
その蔓は義和の手首に巻き付き、締め上げている。
「何だというんだ、これは――!? っく、馬鹿な、こんな馬鹿なことが‥‥!!」
 蔓は一本ではなかった。何本もの蔓が素早く這い寄ったかと思うと、
ふりほどこうとする腕に絡みつき、足に絡みつく。棘が突き刺さり、服に紅いシミが
何箇所も広がってゆく。
 達哉は呆然と見るほかなかった。《アルラウネ》から無数の蔓が伸び、凄まじい勢いで
義和に絡みついてゆく。地面の下からさえも大量の蔓が伸び、のたうちながら絡みついてゆく。
薔薇はもう、薔薇ではなくなっていた。無数の蔓が、葉が、花が、絡まり合い、膨らみ、
別のものへと変貌していた。
「やめろ、やめ‥‥てくれ‥‥!!
ひぎぃいっ! あが、ぎひっ‥‥!! あ、あい、か‥‥!!」
 苦痛に満ちた声が漏れ――その一言が絞り出されたとき、ようやく達哉は
目の前のものが何の姿なのかを理解した。人間の――女。かつて彼が欲望を抱いた女、藍華だった。
彼を誘惑したときと寸分違わぬ美貌と肢体――だが、その姿は人間などではなくなっていた。
白磁のような肌はわずかに緑色を帯び、髪は紫がかった深紅――それだけでもう、
人間ではないと判断するに十分だ。だがその手足はもっとひどいことになっていた。
手は、あの繊細な指先ではなくなっていた。脚も膝のあたりより下は変わり果てていた。
どちらも無数の蔓が絡まり、より合わさり、手や足の形を作っているに過ぎなかった。
薔薇の、化け物だった。
112薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 15:05:21 ID:ZCsgCQtu
 その薔薇の化け物は、手足から伸びる触手のような蔓でかつての夫を絡め取り、
締め上げ‥‥その姿はもう見えなくなっている。蔓に埋もれ、顔さえも見えない。
「うふふ‥‥久しぶりね、達哉くん‥‥」
 甘く、妖艶な声。あの日を思わせる、淫らな声。――だが、何かが違った。
何かもっと本質的なところで、別のものの声だった。
「お‥‥伯母さん‥‥ですか‥‥? それは‥‥その姿は‥‥一体‥‥!?」
「いやだわ‥‥藍華、って呼んで‥‥ふふふ‥‥。分かってるくせに‥‥。
さっきこの人が言ってたじゃないの‥‥」
 ついっ、と冷たい視線を義和――だったものに向ける。蔓の塊はもう動いていない。
ぐしゅ、ぐぢゅ、と気味の悪い音が漏れ、地面には紅い水たまりが広がっている。
「‥‥そこに転がってる注射を打たれて、埋められたの‥‥ここにね。
あとはもう‥‥言わなくても‥‥ね?」
 くすくすと笑う。ぞっとするほど妖艶な笑み。愛憎の末の、勝者の笑みなのだろうか。
「‥‥私の気持ちを知りもせずに、確かめようともせずに‥‥臆病で、卑怯な男‥‥。
好きな薔薇に食い殺されるのよ、本望でしょう‥‥? ふふ、ふふふふふ‥‥!」
 冷たく、残酷な、そしてわずかに悲しみを交えた笑い。くぐもった含み笑いが
徐々に高笑いに変わってゆく。同時に、その声も、表情も、ますます残虐に、そして妖艶に、
淫らになってゆく。笑いながら、徐々に蔓をほどいてゆく。蔓の塊はみるみるうちに小さくなり、
そして――ついに、その「芯」が崩れ落ちた。紅い水たまりに、ぱしゃりと小さな音を立てて。
真っ赤に染まったぼろ雑巾――それは義和が着ていた服に少し似ていた。
「ひっ‥‥お‥‥伯父さん‥‥!?」
 いまだ薔薇に絡まり尻餅をついたまま、達哉は小さな悲鳴を上げた。
「あぁら‥‥あなたを殺そうとした男なのに、まだ『伯父さん』なんて言うのね‥‥ふふ‥‥。
かわいいわ、達哉くん‥‥私が慰めてあげる‥‥」
 血だまりには一顧も与えず、ざわざわと蔓をうごめかせて近づく。逃げだそうにも、
薔薇の蔓や棘が服の繊維に絡まってしまっている。――もっとも、たとえこの薔薇から
逃れられても、達哉は藍華だったものから逃れることはできなかっただろう。
ざわざわと蔓が近づく。それは藍華の方からだけではなく、四方八方から彼へ向かって
這い寄ってくる。満足に動かせない手足に、蔓が蛇のように絡みついてゆく。
だが、不思議に棘の痛みは感じない。手首・足首から衣服の下へと入り込み、
彼の肌の上をくねくねと這いまわり、絡みつく。何本もの蔓が絡みつき、全く身動きが
できなくなった頃――周りの薔薇に異変が起きた。まるで意志があるかのように動き、
達哉の体を解放しようとするかのように揺れ、そして服に刺さっていた鋭い棘が縮み、
繊維から抜けてゆく。同時に、彼の体は宙に持ち上げられ、一気に藍華の元へと運ばれていった。
 藍華は微笑んだ。その美貌は全く変わっていない――いや、さらに美しくなっていた。
恐怖に駆られながらも、達哉はあの日を思い出していた。あの甘い香り、脳がしびれるような声、
柔らかな胸、細くくびれた腰。絡み合い、押し倒し、口づけを何度も交わして――。
彼があのとき征服しそこねた身体が、そこにあった。だが、体を這い回る蔓の感触が、
そのほろ苦くも甘美な思い出に浸ることを許さない。
「達哉‥‥そんなに怖がらなくていいのよ‥‥? あの日の続き、楽しみましょう‥‥」
 そう囁くと、藍華は達哉を抱き寄せ、唇を――だが、達哉はそれを拒む。
確かにあこがれの伯母だった。だが、そのあこがれも消えてしまった。彼が知っている伯母は、
たとえそれが演技であったとしても、上品で、優雅で、それでいて妖艶な「人間」だった。
まかり間違っても、手足の代わりに蔓がざわめいているような化け物ではなかった。
「‥‥あら‥‥? ふふふ‥‥そう、拒むの‥‥。でも、いつまで拒んでいられるかしらね‥‥?
くくっ‥‥ふふふふ‥‥」
 不気味に嗤うと、一旦達哉を離した。蔓で宙づりにしたまま、その様子を眺めて
薄ら笑いを浮かべている。
 ざわり。
 蔓がうごめく。着衣の下で、肌の上を直接に這う。それは――不思議なほど、
不快感を感じさせなかった。ざわり、するり‥‥細い指のような、繊細な感触。
首筋、背中、腰。内もも、脇腹、乳首。何本もの触手が、自在に這い回る。あたかも何人もの女に
愛撫されているような――おぞましいはずの感触をそう感じてしまった瞬間、思わず彼は呻いた。
113薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 15:07:19 ID:ZCsgCQtu
「ふふっ、どうしたの‥‥? 気持ちいいの? だめ、もっともっと感じさせてあげる。
私を拒んだお仕置きよ、達哉‥‥」
 冷たく、楽しそうに笑いながら、一層愛撫を強めてゆく。蔓には時折わずかな棘が生え、
達哉の皮膚を苛む。だが、傷を付けることはない。絶妙の強さでひっかき、つつき、絡みつく。
「っく、うぁ‥‥っ、伯母さ‥‥ん‥‥、やめ――くあぁあっ、うぅ、ぅぅ‥‥っ!!」
「藍華って呼んで‥‥何度言わせるの? ふふふっ‥‥」
「あ、藍華さ‥‥ん‥‥! や、やめ、ゆるし‥‥ひぃぃっ‥‥!」
「くく、くくくっ‥‥だぁめ‥‥まだよ、まだ許してあげない。でも‥‥」
 そこで言葉を切ると、またするすると達哉を抱き寄せ、鼻がぶつかりそうなまでに近づき――
「あなたが私を求めるなら、生殺しは許してあげる。
‥‥どう? あの日の続き、したいでしょう‥‥?」
「‥‥」
 顔に様々な表情が浮かぶ。恐怖、困惑、嫌悪‥‥だが、それは藍華が望む表情ではなかった。
「――そう、もう少し悶えなさい」
 言うやいなや、蔓が動きを取り戻す。達哉の体を隙間なく這い回り、愛撫し、苛んでゆく。
そして――今まで故意に触れなかった部分に、ついに蔓が絡みついた。
そう、本人の意志にかかわらず張り詰めてしまった股間の肉棒だ。何本もの蔓が絡みつく。
巻き付き、ほどけ、擦り寄り、撫でてゆく。カリの周りを這い、裏筋をするすると滑り、
蔓の先端が鈴口を優しくつつき、撫でる。先走りの滴をすくい取り、亀頭に、竿に塗りつけてゆく。
十指で愛撫されるよりもはるかに繊細な、丁寧な刺激。
「ふふ‥‥いい顔になってきたわ‥‥」
「あ、ぁぁっ、っく、ううっ‥‥! はぁっ、ぁ‥‥――んんんっ!! んう、う‥‥」
 ついに唇が重なり合った。一年ぶりの、キス。
 あの日と、同じだった。
 柔らかい唇、香しい肌。背中には細い指が絡みつき、柔らかい乳房が胸に押しつけられる。
鼻から抜ける甘い吐息、絡み合う舌。美貌も、味も、香りも、何もかも同じだった――
背徳的な欲望のままに貪り合った、あの日のキスと。
 達哉は、そう感じてしまった。もう――終わりだった。
 何が同じだというのか。背中を這い回っているのはうごめく蔓だ。あの日の藍華も香水を
付けてはいたが、それは薔薇の香りだったろうか。きめ細かな肌も、こんなに病的に
白かっただろうか。だが、もう達哉には区別が付かなくなっていた。間断なく与えられる愛撫、
そして濃密な薔薇の香り――いや、瘴気によって、理性が狂い始めていた。
‥‥そして何より、彼自身がこの期に及んで藍華への想いを残していたのが致命的だった。
「んん、んうぅ‥‥はぁ‥‥っ‥‥藍華さん‥‥ああ、っく、はぁ‥‥っ」
 積極的に舌を絡め、宙づりにされ動けないながらもその肌を抱きしめようともがく。
その様に満足げな笑みを浮かべると、妖女は男を抱き寄せ、抱きしめた。柔らかく大きな乳房が
形を変え、むっちりと押しつけられる。そして、達哉の衣服に異変が起きた。
背中、腕、脚の背面に内側から蔓が浮かび上がり、生地の隙間から無数の棘が突き出す。
それはしばらく突っ張っていたかと思うと――
 バリィッ!! バリバリ、ブチッ!!
 驚くほどの音を立て、服が爆ぜた。ジーンズさえもズタズタに破れ、裂けた。
布きれになった衣服はばさばさと落ち、そして全身を蔓に絡め取られた達哉の体が露わになった。
「あぁん‥‥達哉ぁ‥‥。ずっと楽しみにしてたのよ、あなたとこうすること‥‥。
もっと早くに食べてあげたかったわ、待たせてごめんなさいね‥‥んんっ‥‥んふぅ‥‥。
素敵な顔、素敵な体‥‥素敵なあそこ‥‥ふふ、私好みよ、本当に‥‥」
 白く滑らかな肌をくねらせ、全身で絡みつく。胸板に触れ、乳房が形を変える。
そのたびに色づいた先端は硬くなってゆく。そのしなやかで柔らかい身体を達哉は抱きしめた。
唇を何度も重ね、ついばみ、舌を絡めながら。藍華は蔓で情人の身体を一層強く抱きしめ、
妖しい瞳で見つめる。そして囁く――あの日と同じ言葉を。
「‥‥達哉‥‥来て‥‥」
 その言葉の威力は強烈だった。野獣と化した達哉は、全身を絡め取られながらも
藍華を押し倒そうともがく。その衝動を叶えてやるべく妖花は蔓をゆるめ、腕を達哉の首に
回しながらゆっくりと押し倒され‥‥周りの薔薇たちはそれを受け、瞬時に美しいベッドを
織りなして二人を迎えた。
114薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 15:10:56 ID:ZCsgCQtu
「藍華さん‥‥藍華さん‥‥!」
 うわごとのように女の名を呼びながら、その全身を愛撫する。みずみずしくつややかな唇、
ほっそりと白い首筋、豊かな、それでいて全く垂れていない乳房、そして見事にくびれた腰。
吸い付くほどに滑らかな肌を指で、手のひらでなぞり、しっかりと肉の詰まった張りのある尻を揉む。
「あぁ‥‥ん‥‥はぁ‥‥、っ‥‥そう、そうよ‥‥うまいわ‥‥。っ、あ、ん‥‥ふふふ‥‥」
 その愛撫に、藍華はどろりと甘い声を漏らす。ずるり、ぞわりと蔓がざわめく。
貪るように女体をなぞり、舐め、甘噛みする男の背中を蔓はするすると這い回り、
腹に張り付きそうなまでに硬直した男根にまたしても絡みつく。蔓の一本一本が締め上げ、
しごき、なぞり――それは、指でもなければ舌でもない、人間では到底味わわせることのできない
感覚だった。その感触をこらえようとすると、どうしてもそれが表情に浮かんでしまう。
それを見て、妖女は声もなく笑う。
「はぁ‥‥ん‥‥。ねぇ、達哉‥‥そろそろ‥‥抱いて‥‥。
ふふ、あなたの今にも暴発しそうなのを、私の奥に、ね‥‥ふふ、ふふふ‥‥ほら、早く‥‥」
 理性の光を失った目が、ぎらぎらと欲望を湛えて妖女を見る。
がばっ、と白い身体に覆い被さり――自ら肉棒を挿入する必要はなかった。
無数の蔓がその器官に巻き付き、蜜を湛えて待ち受ける裂け目へと的確に誘導し――
「んあああっはぁああっ!!」
「――っくぁ、あ、ぐぅううっ!!」
 伸びやかな嬌声と、息が詰まるような呻き。
「あ、ぁ、いい、いいわ‥‥あはぁっ、はぁん‥‥予想以上よ、達哉‥‥!
‥‥あら、どうしたの‥‥? ふふふ、そう、気持ちよすぎるの‥‥くくっ、くくく‥‥
だめよ、もっと感じて‥‥」
 快楽に溺れる笑みを浮かべながらも、邪悪な含み笑いを漏らす。そして半ばから
蔓の束に変わっている腕で一層強く絡みつき、その首筋にキスを。
「ぅぅっ‥‥! っぐ、ぁぁっ、あい、か、さん‥‥!」
 ほとんど苦悶そのものの顔、声。肉棒をくわえ込む蜜壺の感触は、それほどまでに凄まじく、
貪欲だった。ぐじゅり、ぐちゅりとうごめき、熱い蜜が湧き出る。襞の一枚一枚、
起伏のすべてがすがりつき、くわえ込み、引きずり込もうとする。
「はぁあ、ぁぁんっ、そう、そうよ、突いて‥‥! いいわ、本当に‥‥!
あはぁぅ‥‥んぅ‥‥ずいぶ、ん‥‥我慢するじゃない‥‥いいのよ、そんなに堪えなくても‥‥。
ふふ、イって‥‥。イきなさい‥‥!!」
「あ゙、あ゙ぁあっ!! ぐ‥‥ひぐぅ‥‥っ! うぁぁあっ!!」
「あはぁぁああんっ!! いい、いいわ、熱い‥‥!! 出して、ほら、もっと‥‥!!」
 妖花が絶頂を命じると同時に、達哉の身体が痙攣した。苦悶の咆吼、艶やかな淫声。
女の声はますます高揚し、毒々しいまでの甘さをまき散らす。
毒に当てられ萎えることのできないペニスが、藍華を何度も貫き、命を吐いて痙攣する。
 彼女は薔薇などという生やさしいものではなかった。食虫、いや食精植物だった。
ありきたりの「名器」などという言葉では形容できないほどの刺激と快楽を、
秘裂を貫く器官に刻み込む。犠牲者の精液、生命力を根こそぎ奪うかのような動きと締め付けが襲う。
動けば快楽と引き替えに命がすり減ってゆく。生存本能は恐れおののいていたが、
肉欲はそんな警報に気づこうともしない。がむしゃらに腰を突き込み、柔肌を全身で味わおうとする。
「あぁんっ、最高、最高よ、達哉ぁ‥‥っ!! はぁっ、んぁあっ、すごい‥‥わ‥‥!
カタくて、太くて‥‥奥まで、んぅっ!! ザーメン出して、ほら、ぁあぁっ!!」
 蔓がますます絡みついてゆく。首、胸、腰、脚‥‥身動きできないほどの強さで締め上げてゆく。
蔓に小さな棘が生まれ、皮膚に刺さってゆく。紅い滴が、達哉の体から幾筋も流れ始める。
だがそのことは達哉にとって苦痛ではなかった。腰が満足に動かせないことが苦痛だった。
もっと貪りたい、もっと貫きたい。藍華に溺れたい、すべてを捧げたい。
「いい、いいわ‥‥もっと出して、ぶちまけて‥‥。
ふふ、ふふふっ、動けないの? じゃあ代わりに――絞ってあげるわね‥‥ふ、ふふっ‥‥!」
「あ‥‥ぅぁ――ぐっ!? あ、ぁぁっぐぅぅうっ!! な、なんだ‥‥こ‥‥れ‥‥!!」
115薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 15:13:25 ID:ZCsgCQtu
 じゅる、ずるり‥‥ぐしゅる、ずぢゅぅ‥‥!
 何度も白濁液を吐き出したそれに、強烈な刺激がまとわりつく。蔓だ。
あるいは肉洞の奥から、あるいは周囲の肉襞から、無数の蔓が絡みつく。
ただでさえ媚肉が男根にまとわりつき淫らに締め上げているというのに、さらに極細の蔓が
ペニス全体を飲み込み、嬲る。ピストンなど必要ではなかった。そこに捕らわれているだけで、
こらえようもない快楽の沼に引きずり込まれてゆく。
――そして、またしても命を差し出してゆく。
「が‥‥ぁ‥‥あ‥‥い‥‥か‥‥さ‥‥」
 魔性の肉体に覆い被さったまま目を見開き、がくがくと震えて。
人外の快楽に耐えられるはずなどなかった。崩壊が‥‥既に始まっていた。

 * * *

 夕闇があたりを包んでゆく。だが、達哉はそれに気づくこともできなかった。
「あぁ、いいわ‥‥あん、あぁん‥‥!
ほら、もっと揉んで‥‥私の胸、揉みしだいて‥‥あはぁっ!」
 うわずった声で悶え、薔薇のベッドの上で腰を振るのは化生の美女。男にまたがり、
その腕をとって豊満な乳房に押しつける。だが、その男からは生気が失われつつあった。
顔は土気色になり、呼吸も乱れている。それでも、女の腰が上下する際に覗く剛直は
いささかも固さを失っていない。無数の触手に喰われながらも妖女の凶暴な秘部をかき分け、貫く。
そして引き抜かれるたびに、たっぷりと注ぎ込まれた精液と溢れる愛液が絡まり合い、こぼれる。
二人の股をつたい、薔薇のベッドに落ちる。葉の端から、白い滴がぽたりぽたりと地面を潤す。
夜風に吹かれ、薔薇の花びらがはらはらと舞う。それは美しくもグロテスクな光景だった。
「あいか‥‥さん‥‥くる‥‥し‥‥」
 とぎれとぎれに、かすれた声を必死に絞り出す。
「まだよ、まだ‥‥。もう少しよ、最後は頑張りなさい‥‥ほら、こうすれば‥‥!」
 ――ずぶり――ぶずり――!
「――っ!!!」
 数本の蔓が、前触れもなく体に突き刺さった。首筋、胸、脇腹、太もも‥‥。
そしてその蔓は、それぞれに蠕動するようにうごめく。まるで何かを注入するかのように――。
「ひぎ‥‥ぃっ‥‥あ‥‥がっ‥‥たす‥‥け‥‥ぁああっ!!」
 全身が不規則に震える。肌が紅潮する。顔色は不自然に血色を取り戻し、苦悶に引きつる。
そしてそれを思いやるそぶりなど全く見せずに――藍華は、甥のすべてを奪いにかかった。
蔓を、肉襞を、腰を、全力でうねらせ――
「あああっ!! すごい、すご‥‥い‥‥!! お、奥まで、あぁ、当たって‥‥る‥‥!!
いい、いいわ、最‥‥高‥‥っ!! ねぇ、は、早く、ぶちまけて、ぁ、ぁぁあ、っ‥‥!!
ぜ、全部、出して‥‥わ、私が、食べ‥‥尽くして‥‥あぁぁっ、あげ、る‥‥からぁっ‥‥!!」
 前後左右に腰を振りたくる。淫猥な音を愛蜜とともにまき散らし、快楽に溺れ熔けきった顔を
のけぞらせる。張り詰めた乳房がゆさゆさと揺れ、深紅の髪が月光に輝く。
数え切れないほどの蔓が、達哉に、彼女自身に絡みつく。その狂乱が最高潮に達し――

「ぐぅうう――あ゙あぁぁぁぁぁっっ!!!!」
 ブシュウゥゥウウッ!!! ドクンッ、ドクンッ、ドクン、ドクン、ドク‥‥ン‥‥。
「あくぁぁあああああっ!! すご‥‥いぃいいっ!! っく、っくううぅうううっ!!!」

 咆吼。そして――生命の最後の火花。何度も放ったとは思えないほどの、膨大な量の精液が
激流となって藍華の中へと吹き上げる。
「ああ、あぁっはあぁぁっ!! なんて‥‥量‥‥!! おいしい‥‥狂いそう‥‥っ!!」
 膣内に収まりきらないほどの液を受け、藍華は絶頂に達し続けた。嬌声を上げ続け、
腰をがくがくと痙攣させる。無数の蔓が快楽に暴れ回り、達哉の体を締め上げる。
鋭い棘がその皮膚を無情に裂き、それでも止まらない蔓が次々に肉体に突き刺さり、潜り込み、
引き裂いてゆく。血を、生気を、命を吸い上げてゆく。――肉体が、肉体でなくなってゆく。
蔓の突き刺さった箇所から皮膚がひび割れ、灰色に変わり、崩れてゆく。
手が崩れ、足が崩れ、灰と散る。
116薔薇の咲く頃に:2006/12/03(日) 15:16:15 ID:ZCsgCQtu

 ――なんだ‥‥暗い‥‥夜か‥‥月が‥‥でてる‥‥。
‥‥? 誰だよ‥‥俺の上に乗ってるの‥‥。‥‥伯母さん‥‥? 
ああ、そうか‥‥伯父さんが出てる間に‥‥ふふ‥‥最高だ‥‥。
でも‥‥悪いなあ‥‥ごめん、伯父さん‥‥。
 ああ‥‥気持ちいい‥‥藍華さん‥‥きれいだ‥‥。
‥‥はあ‥‥ごめん‥‥先に‥‥寝るよ‥‥。

「はぁぁ‥‥ああ‥‥気持ち‥‥よかった‥‥。‥‥達哉‥‥」
 犠牲者の体をゆっくりと抱き起こし、妖花は唇を軽く重ねる。
人間のものではなくなった手で、男の体を抱きしめ‥‥一瞬の抱擁のあと、達哉の体は崩れ去った。
 ――風が吹いた。塵が舞い、花びらが舞った。一粒の滴が、落ちた。

 * * * * *

 郊外に、屋敷があった。以前は医師が住んでいたというが、もう無人になって久しい。
完全にうち捨てられているらしく、すっかり荒れ果てている。
その前に、二つのミニバイクが止まった。
「着いたぞ」
「‥‥これかぁ? 『出る』ってのは」
 乗っていたのは少年二人だった。高校生ぐらいだろう。さび付いた門扉を開くと、
耳障りな金属音が響いた。煌々と照らす月明かりの中、伸び放題の庭木に邪魔をされつつ、
生い茂る雑草を踏み分けながら二人は建物の方へと近づく。
 ――ガチャリ、きぃぃ‥‥。
 ドアは難なく開いた。鍵が掛かっていなかったところを見ると、もう誰かが何度も
忍び込んでいるのだろう。
「へぇ、もっと荒れてるかと思ったら案外きれいだな」
 暗さのせいでよく見えない、というのもあるのかもしれない。
だが、もっと幽霊屋敷然とした中身を想像していた二人は少々気が抜けたようだ。
部屋はよく片付いており、とてもではないが廃屋とは思えなかった。
「なんつーか‥‥もうちょっと『それっぽい』かと思ったんだけど、そうでもないな」
「だからー、そんな怪談なんて信じる方が間違いなんだって。
どうせあいつも噂で聞いただけだろ?」
 そう、二人は友人から「幽霊屋敷」の噂を聞いてここへ来たのだ。
「郊外の廃屋で、窓に女の影が動いていた」というような、実になんとでも解釈できそうな
噂だった。子供じみた武勇伝としてだろうか、二人はなんとなくそこを訪れる気になったのだが、
もう少し「それらしい」感じであって欲しかった、というのが少年たちの本音だった。
これではただの「無人の家」だ。
「‥‥なんかつまんねーな‥‥。どうよ、帰るか?」
「‥‥ふふ‥‥」
「なんだよ、変な声で笑うなよ」
「は? 笑うって‥‥誰が?」
 二人は不審げに顔を見合わせる。そこに、ふっと何かが匂った。
 香水だろうか、艶やかな香り。――そう、薔薇のような‥‥。


(終)
117なしれ ◆8XSSeehUv6 :2006/12/03(日) 15:17:10 ID:ZCsgCQtu
以上です。
118名無しさん@ピンキー:2006/12/03(日) 17:33:27 ID:KF3ucU8I
>>117
誰GJ!!
やっぱり一番怖いのは人間だな。藍華さんはエロいだけだもの。
119名無しさん@ピンキー:2006/12/04(月) 17:25:15 ID:ULrkTDWt
GJ!
エロいわ〜。
120名無しさん@ピンキー:2006/12/05(火) 23:20:58 ID:s5u9/zuP
すれ違う夫婦の愛憎劇キタコレ!
薔薇に妬いてたのに薔薇にされたビッチ伯母の恨みなんて、怖え怖えw

しかし、このオチはアッー!w
121名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 22:48:09 ID:HCmC25Fy
スゲー。
ホラーとしてもエロとしても良いレベルに仕上がっている。
この板って、時々下手なラノベ書きよりもレベル高い人がいるな。
12218スレの314:2006/12/07(木) 19:46:56 ID:8Y4sHddP
>117
楽しませて頂きました。ダークかつエロとはこういう事なのですね。

ある暖房器具が妖怪に成ったら、と言う発想で書いてみました。
20レス程度、お借りします。前半10レス程度はエロ無しです。
異形成分と触手成分多め、逆レイプ風味、終盤で男の尻責め有りです。
その手の描写が苦手な方はスルーをお願いします。
123お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:48:12 ID:8Y4sHddP
「あ、おかえりなさーい」
 手にぶら下げたデイバックがドサリと床に落ちる。
 言葉が無い。
 なんか家の中に女がいる。
 それもコタツに入って。
 あまつさえミカン食ってテレビ見ながら笑ったりしてる。
 俺にあんなに可愛い彼女なんかいない。可愛くなくてもいないけど。
 誰だあの女。
 もしかして違う家か。間違えて隣の家に入ったとかそういうオチか。
 いや、鍵は自分で開けたし。
「ねぇ、おかえりなさいって言われたら、なんて返すか教わらなかったの?」
「え、あ、悪い…ただいま」
 頭の中は混乱一色に塗りつぶされて思考停止していたら、軽くたしなめられた。
 常識的な躾をされてきた身にとって礼儀とはきちんと通すべきもの。挨拶されたら挨拶を返さなければいけない。反射的にきちんと挨拶を返してしまった。
 本来ならば不法侵入者に対して怒るべき立場なのだが、先手を取られた上、あまりに予想外な言葉に思わず素直に答えてしまう。
「はい、おかえりなさい」
 極上の笑顔と共にもう一度、帰宅の挨拶をされてからそれに思い至った。
「誰だ、あんたーー?!」
 裕輔の口から至極当然の叫びが迸った。
124お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:50:07 ID:8Y4sHddP
 叫んだままの格好で硬直した彼を不思議そうに見ながら、コタツに入った女が声をかける。
「どしたの、ユー君?」
 彼の名前は吾野裕輔。
 確かに『ユー君』と愛称で呼ばれるのは不思議ではない。それが彼の顔と名を知っている知り合いになら。
 見ず知らずの人間に自分の顔と名が知られていると思える程、彼は自惚れてはいなかった。
 それに、それほど親しげに彼の名を呼んでくれる女性は、残念ながら彼には母親と妹しかいなかった。
 慣れ親しんだ自分の名を呼ばれ、はっと我に返った。
 事態は相変わらずよく飲み込めない。が、何とかしなくては進まない。裕輔の思考は自動的に認識できる状況を限定し、分かる範囲から手をつける事にした。
 とりあえず、当座の疑問を口にする。
「なんで俺の名前を知ってるんだ」
「あれ、間違ってた?君、吾野裕輔でしょ?もしかして…ユー君の同棲相手だとかじゃないよね?」
「名前は合ってる。それに勝手に人をホモにすんな。そうじゃなくって、なんで顔も見たことないのに人の名前知ってるんだって聞いてるんだよ」
「ああ、そう言う事ね。だって、表札見たし」
 女は、やっと合点が行ったという顔をする。
 コタツに突っ込んでいた右手を抜き、ちょいと人差し指で裕輔の後方、玄関を差す。
 形の良い長い指の指し示す先、室内からは窺う事は出来ないが、壁を抜けたその先には彼の家の表札がかかっている筈である。
 日本国内をくまなくカバーする恐るべき精度を誇る郵便ネットワークの弊害が今ここに。
 吾野裕輔。大学生。寂しい一人暮らし。
 せめてもの気晴らしにと、気取ってフルネームの表札なんか出したのが仇になったようだ。
「オーケィ、オーケィ。あんたが俺の名前を知っている理由は分かった。次に行こうか」
 両手を軽く前に突き出して、何かを押さえつけるようとする仕草。
 台詞と言い、仕草と言い、海外物の映画やドラマに出てくる俳優のようだ。
 端から見たらアホのようだが、今の状況は彼が素で対応できる範囲を超えている。こうでもしてどこかで現実逃避していないと思考が凍り付きそうだった。
「ユー君、バカみたいだよ」
 彼の脳味噌をカオスに突き落としている元凶が、ストレートな感想を述べる。
 言葉は脳を更にシェイクする。
「…落ち着け、俺。焦ったら負けかなと思ってる。クールに決めるぜ。ビークール、ビークール」
「みたい、じゃなくって完全にバカっぽい、か」
「ぐわー!ちくしょう、あんた誰なんだよぅいい加減に教えろよぅ」
 混乱はその極みを超え、とうとう泣きが入った模様。
125お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:51:02 ID:8Y4sHddP
「んー、まぁ、立ち話もなんだし座ったら?」
 コタツに入った女が、ちょいちょいと自分の入っている対面を示す。
 コタツ。
 日本に古くから伝わる暖房器具の一つだ。
 小さめの正方形の机。四方にある机の脚は短く、高さはおおよそ四十から五十センチ程度。
 机の裏側には赤外線ヒーターが取り付けられ、その机を覆うようにしてコタツ布団を掛けたもの。
 そして、そこに足をいれ暖を取る装置。
 コタツは大きく分けて二種類ある。床を数十センチ掘り下げて足を曲げられるようにした掘りコタツと、床はそのままの置きコタツである。
 当然、アパートの部屋には簡単に穴を掘れはしないので、彼女が入っているのは置きコタツの方だろう。
 元々、裕輔の部屋にコタツは無かった。
 親から仕送りを貰っているとは言え、彼はそこそこ貧乏な大学生。当然ながら部屋は狭い。
 ただでさえ広いとは言えない部屋がさらに狭くなるのが嫌でコタツは置きたくないと言うのもあったし、床でごろごろする分にはホットカーペットで十分と言うのもあった。なので、彼はコタツを持っていない。
 そのコタツが何でここにあるのか。
 どう考えても、この女が持ち込んだとしか考えられなかった。
 それだって、けして小さな物ではない。女の力で運べない程に重くはないが、それでもかさ張るのは間違いない。
 しかも大きなコタツ布団込みで、だ。どうやって持ち込んだのか、裕輔が疑問に思うのも無理はない。
「そのコタツも、あんたのなのか?」
 状況証拠からほぼ確実ではあったが、念の為、口に出して確認する。
 いちいち確認でもしないと、この非常識すぎる状況を受け入れられなかった。
 いきなり可愛い女の子が推し掛けて来て、なんてハーレム物漫画では良くあるパターンだ。
 だが、それはあくまでも漫画などのフィクションの中での話。
 それにハーレム物でもヒロインは色んな手段で主人公の下に押し掛けていたが、まさか留守中にマイコタツ持参で勝手に上がりこんで完全に部屋に馴染みきってるなんて展開は聞いた事がない。
 あまつさえ地味なトレーナーを着た緊張感のない姿でミカン食って茶飲んでテレビ見ているヒロインがいてたまるか。
「そうだよ、これもあたしなの」
「あーやっぱりそーでしたかー」
 裕輔は半ば虚ろな意識で、そう頷くのが精一杯だった。
 何とかこの非常識な事実を受け止めようとしているのか、頑張って現実逃避しようとしているのか。
 頭の回転数の落ちきった裕輔の反応は鈍い。
 目の前の女が発した言葉も右から左へと抜けていった。
 当然、その言葉の意味する所もまともに考えられず、頭には入っていない。
 普通ならば女の言葉は、「これもあたし『の』なの」となる筈だのに。
126お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:51:58 ID:8Y4sHddP
「ほらほら、そこで立ってても仕方ないでしょ?座って座って」
 もうどちらが部屋の主人だか分からない態度で、女は裕輔に席を勧めた。
 しばらく逡巡していた裕輔ではあったが、腹を決めたようだ。
 こうして立っていても仕方がないし、第一、彼はバイトから家に帰ってきたばかりである。
 ただでさえ寒い冬、しかも夜気で体は冷えてしまっている。
 目の前にある暖房器具は実に魅力的だった。
 彼とてコタツの心地良さを知らぬ訳ではない。
 ひとたび入れば二度と出たくなくなる、身体全体でなく主に腰から下を暖めるので茹だる事無くいつまでも入っていられる、あの温もり。
 羊水の中にたゆたうような、母の胎内に戻ったかのような安らぎを与えてくれる。
 それは、まさに至福。
 日本人の文化に根ざした抗いがたい魅力に裕輔は屈した。
 冷えた体と、目の前にある暖かいコタツ。
 ここで、コタツに入らない、という選択肢を選べるほど裕輔は我慢強くなかった。
 相対するはコタツの魔力。
 正体不明の存在を前に警戒を怠ったとしても、その不備を誰が責められようか。
 そうして布団を捲って足をコタツに差し入れるのに気を取られ、女の口の端に小さな笑みが浮かんだのを、彼は見逃した。

 あたたかい。
「…あ゛ー」
 おっさん臭い呻き声は、裕輔の口から漏れたものだ。
 寒さにかじかんだ足先に温められた血液が巡り、じんじんと痺れるような感覚。凍えた裕輔の体が、末端から徐々に融け始める。
 とん、とコタツの温もりを甘受する彼の前に湯飲みが置かれた。
「ユー君、ポット借りてるね」
 ポットどころか湯飲みまで借りられていた。日常のどこで目にするのかも怪しい様々な魚の漢字がびっしりと書かれた裕輔愛用の湯飲み。ちなみに近所の寿司屋が開店十周年記念とかで作ったのを貰った物だ。彼に回らない寿司を食いに行けるほどの金はない。
 中は緑色の液体で満たされ、ほのかな日本茶の香りと湯気を立ち上らせている。
 裕輔は、ふーと濃緑色の液面から立ち上る湯気を息で払った。
 ゆっくりと女を睨みつけるようにして湯飲みの縁に口をつける。険しい視線は茶の熱さで火傷しないようにか、毒でも入ってないかと警戒しているのか。
 湯飲みを傾け、一口。
「あ、美味い」
「でしょ?京都の友達に貰ったんだけどね、やっぱり有名なところだけあって美味しいのよね〜」
 いきなり警戒の緩んだ裕輔に、自分で葉を摘んだ訳でもないのに女が偉そうに自慢する。
「ふーん、やっぱり有名所の葉っぱは違うんだな」
 ずずず、と音を立てて啜る。
 西洋的な、食事では音を立ててはいけないと言う礼儀など知らない。これが日本茶を飲む時のマナー。それが裕輔のジャスティス。
 わずかな甘味と日本茶独特の渋みがハーモニーを奏で、裕輔の口から鼻へと抜けていく。そして食道を通り、胃へと滑り落ちていく熱い液体は冷えた体を内側から温める。
 これを至福と言わずして、何と言おう。
 裕輔の表情はすっかり緩んでいた。そこには女に対して剥き出しにしていた警戒心など微塵も無い。
 夏の日向に置いた氷みたいに、硬かった警戒心はすっかり溶かされていた。
127お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:52:38 ID:8Y4sHddP
 茶を啜りながらも、ぼーっと考える。
 男の部屋で男女が二人きり。
 しかも同じコタツに入って、仲良さそうにお茶まで飲んでる。
(こうしてると、なんかカップルみたいだよなぁ)
 それを意識した途端、ドクンと大きく心臓が跳ね上がった。一気に顔が火照る。無論、それはコタツに入って暖まり始めた所為ではない。
「あれ?どうしたの、ユー君?顔が赤いよ」
 心を静めようと思う暇も無く、向かいに座る女に気付かれた。
 三メートルと離れずに向かい合って座っているのだからそれも当然。気付くなと言う方が無理か。
「少し温度下げようか?」
「いいい、い、いや、いい。大丈夫。大丈夫だから」
 裕輔を心配してか、彼の顔を覗き込むようにして近づいてくる。
 間に天板を挟んでいるのだから実際はそんなに傍までは寄ってはいない。だが彼には、彼女の吐息すら感じられるようだった。
 間近で香るのは女性の匂い。
 ふわりと鼻をくすぐるそれが彼女の体臭なのか香水なのか。裕輔には判別は出来なかったが、それは女性に慣れぬ体にはとても馨しく思えた。彼の思考を蕩かすほどに。
 紅潮した顔を見られるのが嫌で、熱い湯飲みを抱えるようにして裕輔の顔は下を向く。
 半ばパニック状態だった時は考える余裕すらなかったのだが、ひとたび落ち着くと周りを観察する余裕が生まれてしまう。
 向かい合う女の子がどれだけ可愛いのか、をしっかり認識してしまうくらいの余裕が裕輔の心には生まれていた。
 年齢当てクイズにはあまり自信が無かったが、年の頃は裕輔とほぼ同じ程度だろう。
 くるくると表情を変える好奇心旺盛そうな大きな瞳。
 大人びた冷たく冴えた美しさはないが、温かい雰囲気を纏った顔立ちは実にキュートだ。
 卵型の輪郭も、ややシャギーの入ったナチュラルボブも、その可愛らしさを引き立たせている。
 ただ、おそらくはリラックス出来るようにだろうが、彼女の着ている服がサイズの合っていない大きめのサイズのトレーナーなのが、どことなくだらけた感じがする。
 正体不明ではあるがすぐ間近に可愛い女性といると言う慣れない事態に、裕輔はどうしても彼女の顔を真っ正面から見れなかった。
「はい」
 そんな彼に差し出される、剥かれたミカン。
 白い甘皮とすじは丁寧に取り除かれている、水気に溢れた冬の味覚。コタツの友。
「……ありがと」
 どこから取り出したのか、女も自分用のミカンを手にして皮を剥き始める。
 ちらりと裕輔が視線を上げれば、何が嬉しいのか、ニコニコしながら裕輔を見つめて返す。
 それが妙に照れくさくって、また下を向いてしまう。その繰り返し。
128お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:53:16 ID:8Y4sHddP
 途切れる会話。
 部屋の中でする音と言えば、時折二人が茶を啜る音とミカンを食べる音くらい。
 そして点きっ放しのテレビから流れるバラエティ番組だけ。
 会話は沈黙したっきりだ。
 だが二人の間に漂う雰囲気は重くはない。むしろ、そのゆったりとした空気が心地良い。
 誰かとコタツに入ってるのって良いよな、と温もりに浸りながら裕輔は思った。
 はふぅと満足げな溜め息をつき、茶を啜ろうとする。
 湯飲みの中は既に空だった。
 ポットが女の脇にあるのを思い出し、お代わりをお願いしようとした所で、裕輔は我に返った。
「てえーい!和んでる場合じゃねー!!」
129お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:54:32 ID:8Y4sHddP
 コタツの和みの呪縛を振り払った裕輔が居住まいを正す。
「本題に入るか。まずは、アンタ一体誰だ」
「ん〜?」
 ミカンを一房、はむっと咥えたままの格好でくきっと首を右に倒す女。
 毛先が外側に向かうようなボブに切り揃えられ、少しだけ赤銅色がかった髪がふわりと揺れる。
「あたし?」
「他に誰がいやがりますかっ」
「そう言えばまだ自己紹介してなかったっけ。あたし、達子。よろしくね〜」
 す、と右手が差し出される。
 僅かな間。
 それが握手を求められているだと裕輔が理解するのに、それだけの時間を要した。
「あ、ああ、よろしく」
 ほんの少し冷たいが滑らかな肌。握るとそっと握り返してくる、男である裕輔のとは随分違う華奢な手。
 裕輔の心臓が刻むビートを早める。
 指先の所々がミカンの汁に染まってオレンジ色をしてたりするが、うわ女の子の手握っちゃったよ、とか青い感想で一杯の裕輔にはあまり関係なかった。
「残念ながら苗字の方は無いんだ、妖怪になった時に捨てちゃったから」
 そうして、彼女はさらりとすごい事と言った。
「へぇ、妖怪なんだ」
「その通り。何を隠そう、あたしは妖怪なのだ」
 あははー、と笑みを交わす。
 和やかな雰囲気に見えて、その実、片方の笑い声は酷く乾いていたけれど。
 瞬間。
「なめてんのか、こんにゃろーーーー!!」
 裕輔が爆発した。まぁ、無理もないが。
 正体不明の不法侵入者を問い詰めたら実は妖怪だと告白されました。
 そんな世迷い言を信じる者がどこにいるだろうか。頭の横でくるくると指を回す仕草をしないだけ、まだしも裕輔の対応は紳士であった。
「あー、信じてないなー」
 ブーと頬を膨らませて抗議する達子。
 裕輔からすれば無茶言うなという感じである。
 あの説明だけで信じる人間がいたとしたら、余程のお人好しだ。
「生憎こちとら霊感とかオカルト関連にはとんと関わりない上に、生まれてこの方現実しか見たことがありませんでねぇ」
「分かったわよ、最初っからきちんと説明してあげる…そうだ、長くなるからお茶のお代わりいれようか」
 額に青筋を浮かべそうな勢いの裕輔に、湯飲みを寄越せと手を差し伸べる。
 どちらが持ち主か分からない態度だ。元よりポットも急須も湯飲みだって裕輔の物ではあるが、もうそんな事はどうでも良かった。
 ここまで来たのだ。聞いてやろうではないか。長くなる?どうせ彼女がいなくたって、大してする事はないのだ。こうなれば自棄だ。とことん付き合ってやる。
 裕輔は、ぐいと空いた湯飲みを差し出した。
 そうして、彼女、達子と名乗った妖怪は自分の出自を語りだした。
 自分が生粋の日本人である事、元は人であったが死んで妖怪に変化した事、妖怪ではあるがさして長生きもしていない事など。
 そうして話の内容は、裕輔の聞きたかった事、彼女の正体へと及んだ。
130お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:56:18 ID:8Y4sHddP
 日本人の文化に根ざした抗いがたい魅力で人を惑わす家電、コタツ。
 その魅力はまさしく魔力の域に到達すると言われる。
 だが人々の心に潤いを与え、癒しの空間を作るべき家電は、その保有する魅力ゆえに時として人を堕落させる。
 コタツの余りの心地良さに囚われ、僅かの間でも離れたくなくなってしまうのだ。
 コタツの周辺、手の届く範囲にあらゆる物を配置して、コタツに入りながらにして生活しようと試みる。そして、遂にはコタツと一体化して生活することを望むようになる。
 コタツをこよなく愛し、遂には魂までもコタツと一つになる事を望んだ者。コタツに心を奪われた者。
 極限の和みと安らぎとダラケを求めた者が、死して後、その怠惰の果てに辿り着くとされる姿。
 その姿は殻を被った蝸牛にも似ると言う。
 故にその名を、こたつむり。

「…なによ、その目は」
 己の第二の出生の秘密全てを語り終えた達子の前には、とても生暖かい眼差しで彼女を見つめる裕輔がいた。
 その視線は限り無い許容の色をたたえている。手っ取り早く言えば、可哀想な人を眺める目付き。
「ううん、なんでもない」
「うー、その目は絶対に信じてない目だ。本当にあたしは妖怪なんだってば!」
「ほほぅ、だったら本当にコタツ妖怪なのか確かめてや…ぐはっ」
 がばっとコタツ布団を捲り上げて、中を覗こうとした裕輔の後頭部に重い一撃が落ちる。
 どこから取り出して、いつの間に手にしたのか。達子がその右手に携える得物は、孫の手。
 それ一本あればコタツに入ったまま、ちょっと遠くにある物でも自在に引き寄せられ、ついでに背中も掛けると言う究極のツール。
 孫の手の、背中を掻く為に手を模した形状になっている方でなく、その反対側。肩を叩く為にウレタンでカバーされた重し側で叩かれた裕輔が頭を上げた。
 無論、本気ではないがそれなりに重いので痛い。
 問答無用の武力行使に、殴られた頭を押さえて抗議した。
「いってーな!いきなり何すんだ!…よ…するんですか」
 その抗議の声は、侮蔑に満ちた冷たい目に見据えられ、尻つぼみになる。
「サイテー」
 いきなり最低呼ばわりされる裕輔。
「女の子が足入れてるコタツの中を見ようだなんてエッチ、サイテー」 
 普通に考えれば、他人が入っているコタツの中を見ようとするのはあまり行儀のいい行為とは言えない。
 特に達子は自称妖怪だが、見た目は完全に裕輔と同年代の女の子だ。スカートを履いていれば、パンツが丸見えとはいかなくても覗けてしまうだろう。
 実際にスカートを履いているかは定かではないが、履いていなかったとしても少なくとも女の子が入っているコタツの中に頭を突っ込もうとする裕輔の姿は、パンツを覗こうとする痴漢と変わらない。
 力の差に物を言わせて強引に潜り込むのも考えたが叩かれまくるのも嫌だったし、何よりあまり格好いいものではない。
 裕輔も男の子である。女性に良い所を見せたいと思いこそすれ、嫌がるような事をしたいとは思わなかった。
 しぶしぶ中を見て確認するのは諦めて、裕輔は再び元の位置に座った。
131お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:57:11 ID:8Y4sHddP
 長話でだいぶ中身の減った湯呑みに口をつけ、温くなり始めたお茶を音を立ててすする。
「妖怪だったら、夜は墓場で運動会とかするんじゃないのか。行かなくていいのかよ」
「あー、パス。あたし、そういうの苦手。ほら、あたしってば由来からしてインドア系だし」
「飯とかどうするんだよ」
「妖怪だって言ったでしょ。これでも少しくらいは力があるんだからね」
 見てなさいよ、と鼻息を荒くする。
 達子がパチンと指を鳴らすと、ポンと言う間の抜けた音と煙。
 それはいかなる神秘の技か。
 コタツ机の天板の上には、カセットコンロに乗った鍋が姿を現していた。
 ぐつぐつと煮立つ土鍋。鍋からはみ出すほど大きく太いタラバ蟹の赤い足。
 様々な具材の煮える、美味そうな匂いが部屋中に満ちる。
 神秘を目の当たりにし、阿呆のように口を開けっぱなして目を点にしている裕輔にさらに追い討ちが入る。
「ミカンも出せるよ」
 ホラホラ見てみて、とミカン召喚を行う達子。熟練のマジシャンのように、下に向けた手からボトボトとミカンが落ちる。
 確かにマジックには違いない。タネも仕掛けもないけれど。
 達子の言う通り、これならば食うのに困らないだろう。
 しかし、何と言う締まらない妖力。
「妖怪なんだろ?何と言うか、こう、目からビーム!とかそんな感じなのはないの?」
「なーに言ってんの!コタツに入ってこの温もりに浸りつつ、ずっとずーっとダラダラしたり、お茶飲んで鍋つついたり出来るのよ?!」
 天板を抱きしめるようにして寝そべり、頬をべったりくっ付ける達子。
 ちなみに鍋はいつの間にか消えていた。一瞬で出せるのだから消す事も可能なのだろう。
「あぁ!もー、この幸せを手放したくね〜!」
 ダメだこいつ。
 諦観が裕輔の心を支配する。
 妖怪こたつむりがコタツをこよなく愛した怠惰な人間の成れの果てだと言うのが、今ならば何の疑いもなく、心の底から信用出来た。
 コタツの天板に頬擦りを繰り返す達子には、成るべくして成った、という言葉がピッタリだった。
132お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:57:46 ID:8Y4sHddP
「あんたが妖怪だと言うのは分かった。世の中、まだまだ不思議でいっぱいだと言うのも良く分かった。だから、その茶を飲み終わったら帰るように」
「えー、『だから』の前と後ろで話し変わりすぎー意味わかんなーい」
「うるさいわい。どこの誰とも知らない、しかも妖怪をなんで部屋にいつかせなきゃならんのだ。さぁ帰れとっとと帰れ」
「酷い、酷すぎる!こんな可愛くてか弱い妖怪を一人、冬の寒い夜空に放り出そうなんて。鬼よ、あなたは人じゃなくて鬼に違いないわ!」
 顔を両手で覆い隠すようにして、しくしくと泣く自称可愛くてか弱い妖怪。
 どう見ても嘘泣きです本当にありがとうございました。
 何処かで聞いたようなフレーズが、テレビのテロップのように点滅しながら脳裏をよぎる。
 顔を覆った手、その指の隙間からちらちらとこちらを覗き見ているのがバレバレである。
 だいたい、自分で自分を可愛いとか抜かす人間に碌なのがいた試しがない。今回は妖怪だが。
「ああ、あんなに激しく愛し合った仲だって言うのに…」
「なにその過去形。まだ指一本触ってねーじゃねーか」
「むむむ、意外に細かいヤツめ。少し時系列がずれちゃってるけどね〜。正確には、これから愛し合う事になるんだけど」
 会心の悪戯が成功した子供のように、実に嬉しそうににんまりと笑う。
 コタツの掛け布団が独りでに動き、裕輔の腰をきゅっと締めつけた。
 痛かったり圧迫感こそないが、突然の動きに体は勝手に反応し、反射的にコタツから体を引き抜こうとする。
 が、万力にでも掴まれたようにびくともしない。
 目の前の女が妖怪こたつむりだと言うのならば、なんでコタツ部分もその妖怪の一部だと疑問に思わなかったのか。
 ヤバイと思った時には既に脱出不可能。
「結果が同じなら、ちょっとばかり途中が違っても問題ないよね?」
 してやったりと得意そうな笑顔を浮かべているのを見て、裕輔は自分が罠にかかったのを自覚した。
133お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 19:59:31 ID:8Y4sHddP
「放せ、この妖怪女!俺をどうする気だ!」
「どうするもこうするも…初心なオボコじゃあるめーし、分かってるんだろうが?」
 妙に時代がかった悪党っぽい言い回しで、へっへっへっとわざとらしく下品に笑う。
 概ね、こういう台詞が出てくる展開と言えば一つしかない。
 これがテレビの時代劇ならば、引退した癖に権力を振りかざす老人一行様や本来の仕事放り出して街中で暴れる将軍やらが割って入り、いい所なんだから余計な事すんなと視聴者の不評を買うのだが、今は余計な邪魔者はいない。
 悪代官ならぬ妖怪こたつむりの思うままに全ては進みそうである。
 言われた方はと見れば、茹ダコさながらに顔を真っ赤に染めて押し黙っていた。
 いきなりの変わり様にぽかんと見つめる達子の視線を避けるように、裕輔は不貞腐れた態度でぷいと顔を逸らした。
 達子は裕輔の予想外の反応に驚き、驚きながらも原因に思い至り、それを口にする。
「えーっと、あれ?もしかして……初めて、だったりする…の?」
「悪いかよ…俺は魔法使い目指してんだよ、ちくしょう」
 口にするにはデリカシーに欠ける推測。
 男性、それも全てを達観するには未だ至らぬ年齢の男にとっては割りと致命傷に近い言葉が刺さる。
 妖怪でも一応は女性の口から、ずばりと核心を突かれると泣きたくなるほど胸が痛い。
 古くから言霊には力があると言うが、それを実感する。
 苦し紛れの誤魔化しも、胸に刺さる言葉の矢の傷みを消してはくれない。
「大体、なんでこんな事すんだよっ」
 先ほど、彼女が見せた妖力。あれがあれば食うには困らない筈である。食生活が偏りそうではあるけれど。
「だって外は寒いんだもん。だから、春まで置いてくれない?」
 この通り、と両手を合わせて拝むようにして頼み込む達子。
「嫌だ」
 純粋な拒絶。
 達子の言動からすると、彼女は自らのカラダを餌に家から家へと流れる生活を送っていた事になる。
 意外に潔癖症の裕輔としては、それは許せなかった。
 彼の表情から察したのだろう。穏やかな笑みを浮かべた達子が静かに語りかける。
「妖怪が訳も無く来ると思う?なんて言うか、匂いって言えばいいのかな。妖怪を惹きつける人っているのよ。誰でもいいって訳じゃないの。ユー君だから来たんだよ」
 生まれて初めて囁かれる類の言葉が、裕輔の理性を根本からグラグラにしてくれる。
「…放せーだいぶクラッと来たけどやっぱり嫌だー初めてが妖怪なんて嫌だー」
 崖っぷちに踏みとどまって、耐えた。
「何て言われようが嫌だー妖怪に人権はねー」
 勢いに任せて訳の分からない余計な事まで言ってしまう。
「そこまで言われちゃしょうがないわね。力づくで『うん』って言わせてあげる」
 それが引き金になったのか。
 じたばたと暴れる裕輔の対面で、いつの間にか、達子の眼が妖しい光を放っていた。
134お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:00:51 ID:8Y4sHddP
 その人ならざる眼光に魅入られたのか、裕輔の体は氷のように固まった。
 硬直する彼の前で、達子の体がしゅるっとコタツの中へと引っ込んだ。
 と思った次の瞬間、裕輔を捕らえて放さないコタツ布団、その腹を締める部分が弛み、僅かな隙間を押し広げながら達子が飛び出してきた。
 裕輔は男性としては小柄な方、むしろチビと言ってもいい。小中高と学校の体育の時間では、常に前から数番目が彼の定位置だった。
 女性相手とは言え、いきなり軽くボディプレスされて持ちこたえられる筈もなく、そのまま押し倒された。
 今、裕輔と達子の目線はほとんど同じ位置にある。
 こうして圧し掛かられてしまうと、自分が女性と同じ背丈だと言う事を嫌でも思い知らされ、コンプレックスがちくちくと刺激される。
 顔に息がかかる。鼓動と体温が感じられる。服越しに柔らかい塊が二つ、押し付けられているのが嫌でも分かる。
 レッドゾーン目指して胸の回転数が一気に上がっていく。原因は様々であるが、顔の内側に火でも点いたかのように、頬が熱くなっていくのが自分でも分かった。
 それを見られるのが嫌で、達子の顔を見られなくって、顔を逸らした。
 そんな初々しい裕輔のおとがいに白い手がかかり、そっと優しく、だが否応無しに真正面を向かせる。
 視界一杯を達子が占める。
 彼女の綺麗な眼。その黒目は猫のようにきゅうっと細められ、爛々と輝いていた。
 絶対に人ではありえない。先ほども見せ付けられたが、彼女の瞳はその事実を改めて裕輔に突きつけていた。
 パチンと達子が指を鳴らす。
「う、うわっ…?!」
 途端、がくっと足が落ちる感覚が裕輔を襲う。ありえない事だが、コタツの中だけ床面が消え失せたのだ。
 落ちる、と思ったがそれもほんの束の間。消失した床に変わって、何か暖かく柔らかい物がコタツの中を満たし、裕輔の下半身を包み込むようにして支えていた。
 それは生暖かく、さらには蠢いていた。
 ただでさえ人知を超えた状況に加えて、何がどうなっているのか全く見ることが出来ない言う恐怖。
 服を着ているのもあって、ナニカに包まれた足から伝わって来る情報は酷く少ない。知覚を制限されるのがこれほどの恐怖を招く事を裕輔は思い知った。
「うわ!うわ!うわ…ん、んんぅっ?!」
 うろたえる声しか出てこない裕輔を、達子は自分の唇で塞ぐ事で黙らせた。
 ごく軽く、お互いの唇の表面が触れ合う程度の口付け。だが一度きりではない。ちゅ、ちゅと音を立てて何度も何度も。
 裕輔の唇を軽く咥えては甘く噛んだりするバードキスを達子は繰り返した。
「ユー君、可愛い」
 達子の眼下では、突然のキス責めにすっかり目潤ませた裕輔が荒い息を吐いていた。
 不安と混乱と興奮の入り交じった表情のまま、達子の奇襲攻撃にすっかり大人しくなっていた。その姿は、十分に彼女の保護欲と嗜虐心をかきたてるものだった。
 くすくすと微笑みながら、達子は再び裕輔を求めた。
 今度はより深く、さらに濃く。
「ふぅ…ん、は……んっんっ…」
 達子の温かくぬねった舌が、放心したように半ば開いた裕輔の唇と歯をこじあけて侵入する。
 口内へと入り込んだ舌はまるでそれ自身に意思があるかのように蠢き、裕輔の口腔を犯し、蹂躙していく。
 歯の裏側を丹念になぞったり、舌を絡めとっては強く吸いあげる。
 その度に裕輔の鼻息は一段と荒くなる。それがさらに聞きたくって、達子の舌が一層激しく蠢く。
 ぴちゃぴちゃと唾液を交わす音、男女の荒い呼吸音。
135お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:01:23 ID:8Y4sHddP
「ん、んんんぅぅっ?!」
 キスの快感にトロンと呆けかけていた裕輔の眼が見開かれた。
 何かが自分のズボンを脱がしにかかっている。
 達子の手ではない。現に彼女の手は今も自分の肩に置かれている。
 身を捩って抵抗するが上半身は達子に、下半身はコタツの中にいるナニカに押さえられている。そうこうしている内に手際よくベルトは外されてしまった。
 何が起きているのか問いただしたくても、絶妙のディープキスで文字通り、口を封じられている。
「ふ、んぅっーーー!」
 ベルトが外れれば後はすぐだった。手際よくズボンに靴下と取り去られ、最後に残ったトランクスもあっさりと脱がされた。
 いかなる手段によってか、全ての衣服を剥ぎ取られた裕輔の下半身。
 その素肌に、粘液に塗れた柔らかい物体、おそらくはゴムチューブのような管状の物体が触れる。
 それは一本ではなかった。数はまさに無数。それらが絡みつくようにして裕輔の下半身を支えていた。
 気色悪さに上げようとした悲鳴さえも、達子のよく動き回る舌に絡め取られた。
「んっ…んっ…は、ぁっ…ユー君、キス上手だね」
「ぷはっ、ひ…ひあっ、うわっ、な、なに!なんだ、これっ」
 褒められたって礼を返すような余裕など、今の裕輔にはなかった。
 何から何まで初めての感覚に、ただただ、戸惑いの声を上げるのみ。
「ねぇ、ユー君。この中がどうなってるか見たいでしょ」
 その問いにどう答えたものか。
 見たくはある。見てどうなっているのか確かめたい。が、見てしまえば今以上に恐ろしい物を目にする予感もする。
 逡巡する裕輔の答えなど待たずに、達子はコタツ布団に手をかけてちょいと捲り上げてみせた。
「ひっ…!」
 裕輔の顔が明確な恐怖と、見なければ良かったと言う後悔に歪んだ。
 裕輔の常識ではこの世の中に偏在するオカルトなど作り物に過ぎない。ありえる筈が無い。こんな非常識な事が、あっていい訳が無い。
 うねり、のたうつピンクの世界。
 うぞうぞと蠢いているのは、触手。そう形容するしかない物体でコタツ布団の中はみっしりと埋め尽くされていた。
 似たような生物を探せばイソギンチャクが適当だろうか。
 海中で潮の流れに合わせて揺らめき、近づいてきた運の悪い魚を絡め捕らえる触手を持つ生物。今、その触手はコタツの中に満ちていて、その運の悪い魚は裕輔の足だ。
 捕らえられれば、逃げる事なぞ不可能。
136お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:01:58 ID:8Y4sHddP
 その触手の群れの中から達子の上半身、腰から上が生えていた。下半身との継ぎ目は波打つ触手に覆われて見えない。否、このコタツの中と触手全てが彼女の下半身と言えた。
 脅える裕輔の恐怖を和らげようと言うのか、触手達は宥めるように肌の上をぬるぬると這い回る。そこには悪意は感じられなかった。イソギンチャクが絡めとった魚を餌にするように、取って喰おうとする雰囲気は無い。
 触手の太さは様々だった。糸のように細い物から腕ほどもありそうな物まで、まさに千差万別。
 幾本もの触手が足全体に絡み付き、太腿から踝までを優しく撫でるように這い回る。その度に裕輔の肌の上に蛞蝓が這ったような粘液の跡が残され、それもすぐに他の粘液に上書きされる。ウドン程度の直径の触手が足指の間に入り込み、くすぐる。
 ぞわぞわと身体の奥を爪弾かれるような、くすぐったさと似て非なる感触。
 裕輔も認めざるを得なかった。
 気色悪さと同居するのは、明らかな快感。触手がしている行為は愛撫だと。
「く、あ…ふぅっ…うっ」
 ぬちゃりぬちゃりと言う粘液質の水っぽい音の伴奏に併せて歌うのは、裕輔の上擦った声。
 悲鳴は次第に嬌声へとシフトする。

 心の何処かが微かに期待してしまった。
 あの触手で己の肉棒を触られたらどれほどの快感になるのだろうか、と。

「あはは。ユー君の、元気になってるよ。カラダは正直だよねぇ」
 内腿をゆっくりと焦らすようにして、触手達が二本の脚の中心目指して這い登ってくる。
「ね、あたしをユー君の部屋に置いてくれる?」
「……嫌だ」
「あらら。頑張るわね。じゃ、あたしも『うん』って言って貰えるように頑張ろうっと」
 裕輔は頑として拒む。
 確かにここで彼女の言い分を認めれば、この気味の悪い空間から解放されるかもしれない。
 だがそれは、彼女に屈する事になる。裕輔も男である。前言を翻したくは無かったし、少々手段が変わっているとは言え、力尽くで誰かの言いなりになどなる気はなかった。
「強情なユー君にはこーんな事しちゃうもんねぇ…」
 達子には手に取るように分かっていた。裕輔の言葉は明らかな強がりだ。
 それが、ぐすぐすと涙に塗れて哀願する様へと変わる所を夢想すると、達子の中がじわりと昂ぶってくる。
 達子はサディストではない。他人を痛ぶり、他人の恐怖を精神的、肉体的な快感とする人種ではない。彼女の場合、少しばかり母性的な保護欲が旺盛なだけだ。
 強がる男を赤子のように変え、自分の身体全てで包み込み、自分に甘えさせるのが好きなのだ。そして裕輔は、達子にとっての『可愛い』ツボを突きまくる存在だった。
 が、とりあえず今日はそっちはグッと抑えて我慢の子。この強情っぱりに、どうにかして首を縦に振らせるのが先決だ。自分の部屋を勝ち取る為に。
137お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:03:00 ID:8Y4sHddP
 自分の胸の存在を殊更に強調するように押し付けて、裕輔へとしな垂れかかる。ここまでされているのにまだ照れる余地があるのか、真っ赤になった裕輔の耳たぶをはむっと口に含んだ。
「はぅっ…!」
 その声をもっと聞きたくって、ふうふうと吐息を吹き込んでやると、裕輔は面白いように身を捩らせた。
 その反応が達子の体と心にピンク色の熱を孕ませる。
 達子が耳を弄ぶのと同時に彼女の下半身、裕輔の内腿をマッサージするように這い回るのみで進撃を止めていた触手達が、遂に最後の砦目指して蠢き始めた。
 今まで放置されており刺激を求めて切なげに身を震わせている肉棒に、つぃっと触手が触れた。目指すのは、高くそびえる肉塔の先端。
 触手の覆う領域は内股から陰嚢へと侵食し、螺旋を描くようにして這い登る。
 とろとろと零れていた先走りも、あっという間に触手の粘液と区別がつかなくなった。
 裕輔の脳を占めるのは、けっして一人では味わう事の出来ない目も眩むような快感。
 もう彼の口からは理性のある言葉は紡がれていない。その様子を、頬を紅潮させ熱く浅い息を吐く達子が愉しそうに眺めていた。
 じわじわと領域を広げていた触手は遂に全てを占領し終えた。股間で滾る肉棒全体にぴったりと、元の姿が見えないほど一分の隙間も無く張り付いている。
 それもただ張り付くだけではない。いやらしくぬめる自身の粘液をお裾分けだと言わんばかりに肉棒の表面に擦りつける。柘榴のように真っ赤に熟れた亀頭に巻き付いて、舌で舐めるようにしゅるしゅると撫でる。パンパンに張った玉袋もあくまでも甘く優しく揉まれていた。
 しかもその全てが、一気に裕輔が絶頂へ達することのない程度の強さで協調して行われていた。
 自由になる二つの手の他に大量の触手を持つ達子ならではの技。
 何枚もの舌に舐めしゃぶられ、幾本もの指に愛撫されているかのように。
 肉棒にある性感帯全てが掘り起こされ、同時に責められる。
 腰の裏から背筋を伝わり延髄を直撃する恐ろしいまでの快感だった。自分の右手以外でシた事のない裕輔にとって十分に致命傷に成り得るほどの。
「くっ!は、あぁぁっ!イ、イくっ!」
「え…?!」
 耐える間もあればこそ、一瞬で達してしまう。
「……はや」
 そんな裕輔を見下ろし、ぼそりと一言。
 達子の発した氷のように冷たい、ただその一言が裕輔の心を脆くも突き崩す。
 じわりと視界がにじむ。
 情けなさと悔しさと不甲斐なさがぐちゃぐちゃに混ざり合う。 
 理性と自制心で堰きとめていた物が眼から溢れそうだった。
 そうして泣きそうになっている自分が更に情けなくなって、頭の中がグチャグチャ具合を増していく。
「…ふふっ、ユー君ってば可愛い。嘘だよ、早くないよ。あたしの触手に耐えられる人なんていないし」
 今にも目尻から零れ落ちそうな涙が舌で舐め取られる。
 赤子をあやすような手付きで裕輔の頭を撫でながら、達子は淫靡に微笑んだ。
「一回出したから、次はあたしも楽しめるかな?」
138お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:04:06 ID:8Y4sHddP
 いつの間に脱いだのか、達子は素肌を晒していた。
 彼女の地味なトレーナーと薄いブルーのブラは絡まりあい一つの塊のようになって、脇に放り投げられている。
 傷一つ、染み一つ無い肌。普段ならば健康的に白いのだろうが、今は肉欲に上気し、しっとりと薄桃に色づいていた。
「ほら、ユー君も触って…」
 そっと裕輔の手を取り、己の胸へと誘導する。
 達子の乳房は大き過ぎず小さ過ぎず、軽く丸めた掌にすっぽりと収まる程度の大きさだった。サイズこそそれなりだが、汗ばんだ肌は瑞々しく、はちきれそうな弾力に溢れている。
 触れれば絶妙の手触りと弾力を掌に返す。裕輔が物心ついてからこっち、一度も触った事の無い柔らかさ。裕輔の理性は一気に氷解した。
「んぅ…ぁ…っ、ふふっ、ユー君ってば赤ちゃんみたい」
 裕輔の耳にその言葉は届かなかった。彼は一心にその柔らかさを求めていた。
 手が達子の胸を揉むたびに、彼女は鼻にかかった甘い吐息を漏らす。それが裕輔をさらに駆り立てる。
 揉みやすいオッパイの先端に咲くのは朱鷺色の乳首。そこは先ほどまでの裕輔の痴態に興奮してか、愛撫を受けるまでも無くすっかり硬くなっていた。
「ふう…んっ…ねぇ、触るだけじゃなくって、吸ってもいいんだよ?」
 そういう言葉だけは耳に入るのか。達子の誘導に従って、裕輔はツンと突き出した先端を口に含んだ。
 初めはおずおずと。が、それも直ぐにむしゃぶりつくような勢いに変わった。
「あ、んっ…!あんっ、は、いい…、オッパイいぃのぉ…ユー君、ね、ユー君、もっとぉ」
 言われずとも、裕輔は赤ん坊のようにちゅうちゅうと乳房を吸い、芯に硬さのある乳首の感触を楽しむように舌先で弾く。
 口の端からぼたぼたと涎が零れ落ちて、床に染みを作ってしまう事など針の先ほども気にせず、達子を求めた。
 発情しきった達子の口の端から一筋の涎が伝う。
 当然ながら、裕輔は初めてなので技巧的に拙い。勢いのある愛撫も、あまりテクニックと呼べるほどの物ではない。
 だが、求められていると言う事実が達子を昂ぶらせる。
 本能の虜となった裕輔の頭を抱き締める。
 すっかり元気を取り戻した肉棒を触手で愛撫し返してやる。
 達子の方も欲しくて堪らなかった。裕輔を一方的に責めてはいたが、その実、彼女は彼女で精神的な快楽を貪っていた。その間、身体の方に直接的な刺激は一切なかったのだから焦らされ続けていたようなものだ。
 潤んだ眼差しで裕輔を見つめ、んっと力むようにうめいた。
「ね、ユー君…来て…」
 蕩けた口調で達子がねだりながら、二人の腰にかかるコタツ布団を大きく捲り上げた。
 先ほどまでは達子の腰から下は触手に隠れていたが、今は膝から上が姿を現していた。
 食っちゃ寝妖怪の癖に見事なまでの腰の括れ。すらりとしながらも肉感的な太腿。そして美脚の間にあるのは…。
 それを見た途端、裕輔が弾けた。
139お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:05:30 ID:8Y4sHddP
「ぐ、おぉぉぉぉっ!」
 今まで戒められていた分の自由を謳歌するように、露わになった達子の腰を掴み、狙いを定めるのもそこそこに一気に腰を突き上げた。
 産まれるのは、高低二つの喘ぎ声と、じゅぷっという一際大きい湿った音。
 触手による微妙な誘導もあって、熱い肉棒はしとどに濡れた蜜壺に正確に叩き込まれた。
「ひゃっ!あぁん!あ…ふぅ、は…ぁぁ〜…全部入った、よぉ。ユー君のおっきいね〜…ユー君の初めて貰っちゃったよ。卒業おめでとう」
 裕輔の応えは無かった。
 応えられなかった。彼は目を見開き、初めての快感に酔いしれていた。
 一回射精していなければ、挿れた瞬間に達していただろう。
 達子の膣内は狭くて暖かくて絡みついてきて、右手とはまるで比べ物にならない。比べるのが馬鹿らしくなるほどの気持ち良さ。
「ねぇ、動いて…」
 言われるまでも無い。裕輔は猛烈なピストンを開始した。
「ひゃうっ!ユー、君、いきなり、はぁっ…んっ!はげし…!」
 求めに応じて腰を動かす。そこにはテクニックも何も無かった。
 達子の中は素晴らしく心地良かった。狭いようでいて柔軟に肉棒を包み込む。
 まさに彼女のコタツと同じ。亀頭に、竿にと絡みつく粘膜を味わいたくっていつまでも中に挿れていたくなる。一度差し入れれば温かく男を絡め取る。
 欲しい。この快楽が、達子がもっと欲しい。
 裕輔はただひたすらに達子を貪った。野獣のように息を荒げ、乱暴に腰を動かす。
 がむしゃらに動く彼を、達子は歓喜をもって迎えた。裕輔が引けば達子も腰を浮かせ、裕輔が突けば達子もお尻を落す。
 濡れた物同士を打ち合わせるリズミカルな音が響く。
「あっ、はぁっ!ひぃ…ん!すご…ぃ、ユー君のすご、いのぉ…!んぅっ…もっとぉ…!」
 初めての裕輔と、焦らされきった達子。
 一突きする毎に頂きがどんどんと近づく。お互いに限界が訪れるのは早かった。
 グイッと勢い良く突き込まれた肉棒が、達子の膣の最奥を抉った。
「あ、あぁっ、や、いぃ、の…イっちゃ、うぅん!はっ、あぁっ…あぁぁーーっ!」
 ぐっと達子の身体が反る。白く細い喉を曝して、甲高い叫びを上げる。
 きゅうっと肉筒全体が収縮し、中で暴れる裕輔自身を締め上げた。
 強烈な締め付けに一溜まりも無く、彼も爆ぜた。
 白濁液が達子のナカ一杯にぶち蒔けられる。陰裂を満たす熱さが、彼女をさらに一段上の頂きへと放り上げる。
 最後の一滴まで注ぎ込もうと裕輔が、最後の一滴まで搾り取ろうと達子が、震える。
 絶頂に戦慄く二つの身体。

 未だに点きっぱなしのテレビからは、場違いな明るい音声が漏れ続けていた。
140お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:06:27 ID:8Y4sHddP
 うたた寝するような余韻から、先に覚めたのは裕輔だった。水底から浮き上がるようにゆっくりと意識がクリアになる。
 離れなければ。
 このコタツは達子そのものだ。コタツに入り続ける事は、彼女に主導権を取られ続ける事を意味する。
 出した直後で欲望から醒め、冷静さを取り戻したこの一瞬。今を逃しては再び達子に啼かされ続けてしまうと言う、確信にも似た予感があった。
 捲れあがっていた布団は再び二人を被っていたが、達子がイった事で弛緩したのか、彼の腰を締め付ける布団の戒めは緩んでいた。
 裕輔は覚悟を決めた。
 力を篭めて体を捻る。ぐるんと世界が反転する。
 仰向けからうつ伏せへ。
 体の上で脱力していた達子が、べちゃっと床に落ちて変な声を上げたが気にしない。
 ぐ、と肘を床に立てる。前方を見据える。
 匍匐前進。ゴーアヘッド、フルスラスト。

 あっさりと捕まった。
 膝までコタツ布団の外に出た所で、自由に指先がかかった所で、足首に追っ手がしゅるりと絡みつく。
 細くて弾力に富んでいる癖に強靭な触手は、一度捕らえれば脱走者を逃がさなかった。
「いやだぁーーー!」
 カーペットに指で十条の溝を刻みつつ、裕輔の体がこたつむり目掛けて後退していく。
 裕輔の覚悟と決心は、敢え無く一瞬で無にされた。
141お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:07:15 ID:8Y4sHddP
「あ〜、逃げ出そうとするなんてひどーい。こんなに可愛い初エッチの相手から逃げようとするなんて酷いなー傷つくなー」
 なんとかして逃げようと、空回りし続ける匍匐前進中の裕輔を見て、達子はぷぅっと頬を膨らませて抗議する。一見ふざけているような仕草だ。
 が、目は全然笑っていない。
「あぁ、あたしのガラスのように繊細なハートはびしびしにブロークンですよ?」
 ガラスはガラスでも拳銃弾では傷もつかないような防弾ガラスの間違いだろうが。
 それを言葉に出している余裕は裕輔には無かった。
 一刻も早く、一歩でも遠く、このふざけた存在から離れなければ。 
 何をされるか分からない。
「やっぱり、こういう場合は」
 達子が愉しそうに、にやりと口元を歪ませる。
 その笑顔に不穏なものを感じ、裕輔は何とかして体をコタツから抜こうと手と肘で床を掻く。
「乙女心を傷付けた不届き者にはお仕置きだよね」
 手の動きがニトロでも焚いたかのように一気にスピードアップ。
 クロールのように凄い速さでばたばたと回転させるが、全ては無駄だった。

「どういうお仕置きにしようかな〜」
 腕組みして首を捻っている。
 お仕置き宣言はしたものの、どうすればいいのか悩んでいるようだ。それとも、悩むほど彼女のお仕置きレパートリーは広いのか。
 と、何かを思いついたようだ。
 何を思いついたのか分からないが、裕輔はそれが自分にとって悪夢以外の何物でもないのだけは分かった。
 そうでなければ、あんなに良い感じに嗜虐に染まった笑みを浮かべている理由がない。
「前の方の初めてを貰ったから、ついでに後ろの方も貰っちゃう事にけってーい」
 裕輔は血の気の下がる音と言うのを、生まれて初めて聞いた気がした。
 何とかしなければと、恐怖に支配されかけている脳がフルパワーで打開策を模索する。
 今そこにある貞操の危機。
 とは言っても、混乱し切った脳の考える事などたかが知れている訳で。
「いや、俺って実はウホッ!な人な訳で。は、初めてじゃないんだよね」
 どう聞いたって、苦し紛れの嘘だ。
 だが、何も考えていない言動は時として状況をさらに悪化させる。
「ふーん、そうなんだ。それなら開発されてる筈から、たくさん突っ込んであげられる。良かったね、ユー君。お尻の穴、触手でたっぷり可愛がってもらえるよ」
 こんな具合に。
「嘘ですごめんなさいノーマルです初めてです」
「はい、良く出来ました」
 まるで幼稚園の先生がお遊戯の上手い子を褒めるかのような口調。
 しかし、
「でも嘘吐きにはお仕置きー。罰としてユー君の後ろの初めてを頂いちゃいまーす」
 結局、待っていたのは同じ結末。
「いやーーーー!」
142お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:08:33 ID:8Y4sHddP
 不意に裕輔の背中に重みがかかる。達子が上半身をしな垂れかからせてきたのだ。
 肩甲骨の下辺りに押し付けられる素晴らしく柔らかくって暖かい丸い物体が二つ。その先端は達子の興奮を示すように尖りきり、裕輔の背中にコリコリとした感触を伝える。
 彼女がくすくすと楽しそうに笑う度、暖かく緩やかな風が耳にかかり心地良い。
 それだけで若い体は反応し、さっき出したばかりだと言うのに股間の主砲は見る見るうちに力を漲らせ、次弾発射準備に入っていた。
「ねぇ、ユー君さ。今、自分がどんな格好してるか、分かってる?」
 背中で潰れるおっぱいの感触に浸っていられたのも、それまで。
 強制的に与えられる余裕。その無理やり与えられた冷静さの欠片が、裕輔に改めて自分の格好を思い返させる。
 うつ伏せで胸を床に着け、腰を高く上げて突き出した格好。
 服従のポーズ。
 はしたなく尻を突き出し、己の秘すべき部分を主に捧げんとするポーズ。
 十八歳未満お断りなゲームや夜のオカズとして妄想の中で女にさせこそすれど、自分でしたいとは少しも思わなかった姿。
 逃げようにも、相変わらず腰はがっちりとコタツ布団に固定されてしまっている。
「うふふ、いい格好」
 背中で感じる達子の乳房はマシュマロのように柔らかく、耳に吹きかけられる吐息は熱い。
 実に正直な裕輔の息子はその刺激に反応し、じんじんと熱を帯びている。だと言うのに、頭の中は真冬のように底冷えしていた。
 それは達子の愉しそうな声に、嗜虐の色が多分に含まれていたからか。
 コタツの中から抜け出そうと、こたつむりの戒めを振り払おうと必死になって裕輔はもがいたが全ては無駄な努力だった。
「ユー君ってばそんなお尻振っちゃって〜。おねだりが上手だね」
 一見普通に見えて意外に膂力のある腕が、がっちりと裕輔の肩を押さえつけ組み伏せる。
 耳朶をたっぷりと唾液を乗せた舌で舐められ、はむはむと甘噛みされると、思考には霞みがかかり体から力が抜けてしまう。
 僅かに残っていた抵抗が消えたのを見計らって、裕輔の左右それぞれの尻たぶに太い触手が絡みついた。
「や、やめろっ!やめて、やめて下さいお願いしますっ」
「それじゃあ、ご期待に答えさせていただきまーす」
 達子は耳を貸さない。いや、聞こえない振りをして裕輔の懇願を引き出し、それを楽しんでいる。それは、絶頂直後でいい気分だった所を顔面から床に落された報復なのか。
 尻にへばり付いた触手達が、ぐいっと尻たぶを左右に割り広げる。
 その中心に別の触手が差し伸べられ、触手の先端が窄まりにちょんと突き立った。
「ひぃ、ゃ…ぅっ」
 まだ浅い。ほんの数ミリ。
 突き立った触手はすぐに引き抜かれ、窄まりの周囲に放射状に刻まれた皺を舐めるように粘液を塗りつけて去っていく。そして再び窄まりの中心へと戻る。
「あぅっ…も、やめ…ろぉ…はぅ、ふ…んっ」
 浅く刺しては舐めあげる。延々とその繰り返し。
 その度に、後頭部の中を虫が這い回るような感覚が裕輔を襲う。
143お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:10:42 ID:8Y4sHddP
 初めて味わうおぞましい感触。
 おぞましく、気色悪く、そして同時になんと素晴らしい快感。
 止めてと哀願する声三割、もっとと望む嬌声七割。
「下拵えはこんな感じかな?ユー君、力抜いててね」
「えっ?!ちょ、まっ…やっ、やめて止めてやめて止めて!」
 彼女のアドバイスとは反対に裕輔は力を篭めて入り口を狭め、何とか侵入を阻もうと抵抗をする。
 それも柔らかく弾力に富んだ触手相手では全くの無意味。
 つぷ。
 そいつは無遠慮に侵入口を押し広げ、ゆっくりと裕輔の腸内へとその身を潜り込ませていく。
「やぁ、め…てぇぇ……」
 本来ならば出すだけの器官に物が入ってくる、恐ろしいまでの違和感。
 粘液に塗れた触手はデリケートな部分に傷つける事無く、その身を奥へ奥へと進ませる。
「どう、ユー君?ロストバージンの感想は?気持ちいい?」
「…気持ち良く、なんか…ふぁっ!…ない」
「ふーん、そうなんだ。でも嘘はよくないな〜」
 ごく細い触手が一本、肉棒の先端へと伸ばされる。男の急所の中でも、とりわけ敏感な亀裂をちょろりと一舐め。
「ひぃっ!」
 そこは既に痛いまでにぎんぎんに勃起し、先端を舐めた触手には触手が分泌するのとは違う種類の粘液がたっぷりとこびり付いていた。
 前に負けじと後ろの方も責めを止めない。腹を遡っている肉のチューブは、とうとう彼の直腸奥にある胡桃大の瘤を探り当てた。
 触手はゆっくりと、隠された男の性感スイッチを弄り始めた。こりこりとした肉瘤の表面を優しく優しく奥から手前へと撫でる。
 一撫でされる毎に、裕輔には宙へ浮き上がるような快感が流れ込んでくる。
 肉棒を責められた時のように焼け付くような激しい快感ではない。炭火にも似た、心を包んでくれる穏やかな快感。
 それは肛門を弄られる事のおぞましさと屈辱を押し流して余りあるものだった。
「初めてなのにこんなに感じちゃうなんて…ユー君のエッチ」
「あ…っ!は…ぁ……!か……っ!!……っっ!」
 アナルに突き立った触手がぐりっぐりっと身を捩る。
 かはっと裕輔の肺から空気が絞り出された。それは悲鳴なのか喘ぎ声だったのか。
 裕輔の目尻には涙が浮かび、ぱくぱくと金魚のように開閉されている口からは涎が滴り落ちる。
「あらら、もうダメっぽいかな。ほら、いいよ。イっちゃえ、ユー君」
 後ろの触手はジュルンと大きく突きこんで暴れ、前の方にも触手が殺到した。
 裕輔の絶頂の悲鳴は、既に声にすらなっていなかった。
 背骨が折れそうなほど反り返らせて、虚空に向かって無音の遠吠え。
 肉棒は壊れた蛇口のようにドクドクと精を吐き出す。
 その勢いも次第に弱くなり、やがて終わった。
 放出のタイミングにあわせてビクンビクンと震えていた体から力が失せ、裕輔はくたりと床に崩れ落ちた。
144お茶とミカンと彼女は魔物:2006/12/07(木) 20:11:36 ID:8Y4sHddP
 それからは裕輔にとって天国のような地獄だった。
 魂まで吐き出すような射精から回復した後も、達子は裕輔を放してくれなかった。
 何度も何度もイかされた。
 騎上位で跨られて激しい腰使いで搾り取られた。座位で抱き締められてキスされながらイかされた。四つん這いにされてあらゆる感じる箇所を同時に弄られて啼かされた。
 もう無理勃たないと泣いて懇願する裕輔の肉棒を、無数の触手が元気にさせて、無理矢理に全力疾走の準備をさせた。
 それでも反応が悪くなってくると、触手がお尻の奥にあるスイッチを甘くさわさわと擦って発射準備を整えさせた。
 裕輔も頑張って達子をイかせもしたが、如何せん愛撫の手数が違うのでイかせた回数の優に倍以上はイかされた。
 あれだけ交わっても全く衰えを見せない達子が、弱りきって息も絶え絶えといった状態の裕輔を見下ろしている。 
 そうして、もう何度目になるのか分からぬ事を、また問うた。
「で、どう?気は変わった?あたしを置いてくれる?」
「……もう、好きに、しやがれ」
 精も根も尽き果て、陵辱されきった裕輔には弱々しくそう呟くのが精一杯だった。
「やったぁ、ありがとう!あたし達って相性良さそうだよね〜。とりあえずは春までよろしくね、ユー君!」
 望んだ答えに、ぱぁっと花が咲くように満面の笑顔を浮かべる。
 嬉しそうに手を叩いてはしゃぐ達子を見ながら、やっぱりコタツは魔物だなぁと考えて裕輔は意識を手放した。
14518スレの314:2006/12/07(木) 20:12:37 ID:8Y4sHddP
以上、お目汚し失礼致しました。

コタツが欲しいなぁと思っていた所、ネタを受信しました。
書いてる内にえらく量が増えるわ、なしれ氏とエロ傾向が被るわで…。
146名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 21:26:06 ID:Z713u5MH
GJ
ほのぼのしてて良いっすね。
147名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 21:43:09 ID:oEOpWwvR
GJ!!
ウチなら一冬とは言わず末長く置かせていただきますからどうかこちらへ。
っていうか夏はどうしてんだろうという素朴な疑問。
148名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 23:57:09 ID:gFJ3i7V7
>夏のこたつ
スイッチつけると吹雪を起こす南極一本杉製ってのがうる星にでてたなぁ。
149名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 02:09:33 ID:TY6yVxyc
炬燵は神が日本人にのみ許した最高の贅沢だと思います。
150名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 10:50:19 ID:dyRHVTpe
余談だが、昔の火鉢使用の掘り炬燵でな、一酸化炭素中毒で意識を失い、炭化するまで足を焼かれた人がいたらしい。
たしかアワーズのナポレオンの人のHPにあった。
151名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 23:42:34 ID:sK+Sf0cX
おお、クラーケンの人お久し振り
前とは随分と雰囲気が違う、と言いかけたとこで濡れ場はやっぱりドMすねw

>150
そんな余談じゃハァハァ出来ねえw
152名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 09:30:28 ID:cvmN8oP2
おれは一酸化炭素にやられて死人がよくでたって聞いたことある
153名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 10:14:10 ID:HSG2KnQG
>151
そんなわけで、両足が炭化して一酸化炭素中毒で死んだ少女がモノノケとなった。
炭化した両足の代わりとして、下半身が炬燵に融合して上記の少女になったとか。
154名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 22:30:32 ID:OxfbmmHF
で、「私の下半身はどこ?」と峠道をもの凄い速さで手で駆け抜ける女性の霊が……
155名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 23:02:51 ID:Td2UW3+r
他の車をぶっちぎりながら、峠で勝負するテケテケとターボばあちゃんとか考えちゃったじゃないか。

「あたいもこの峠じゃちょっとは知られた名なんだ。年寄りの冷や水は止めといた方が身の為だよ、婆さん」
「ふん、小娘が。少しだけ走りってヤツを教えてやるとしようかねぇ」
156名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 23:46:05 ID:ZXYMuKXk
一瞬炬燵に「○○とうふ店」とか書いてるのを想像してワロタ
157名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 00:56:08 ID:rz/gmm0h
あるあ…ねーよwwwwwwwwwwww
158名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 10:22:08 ID:DYvzmEPN
妙義の谷は深いぜ……って誰に引っぱり上げてもらうんだよw
159名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 12:24:29 ID:C8ZeXEWs
>>155
首無しライダーとモスマンと渡瀬隊員も頼む。
160名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 13:13:59 ID:oV+vwNgl
>>158
炬燵なら電源コードが伸びているからザイル代わりに……
161名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 13:40:43 ID:coma0rKI
>>160
「やめてぇ〜! そんなに電源コード激しく引っ張られたら、抜けちゃうぅ〜!」

意外な弱点
162名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 22:03:10 ID:ds4OlUJ7
>>159
クールに反撃スレ住民乙
163名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 23:04:37 ID:vjLXrH9A
今書いてるやつ、なんか上の流れで考えた話みたいだw
164名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 23:20:24 ID:7v/SPnKk
>>163
つまり、豆腐屋の跡取りで峠最速の走り屋の主人公が
テケテケやらターボばーちゃん(若返りモード)やら
首無し女ライダーやら高速こたつむりなどと勝負を重ね
全員虜にしてハーレムを築く素晴らしい話なんでつね。
165名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 01:52:53 ID:5S6Iyoky
うらやましいのかそうでないのか。
166くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:06:54 ID:WdZiRNRE
15レス使用で投下します
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
まつろわぬ者 第二話
『バカは死んでも』


 片野千恵が高速道路の中央に立ち、静かに呼吸しながら長い髪を結わえる。ま
だ肌寒い初夏の夜風に、水色の神官服が微かな音を響かせていた。
 バリケードを築き終えた警官達は点検を済ませ、足早に引き揚げていく。彼ら
の白い息が装甲車に吸い込まれると、電灯の唸りさえ聞こえてくるようだ。周囲
に広がるビルの谷間から、街の音が遠く届けられた。
「準備完了しました。追尾中の部隊は、あと五キロの地点にいます」
 トランシーバーで交信していた中年の刑事が、片野の背中に告げる。彼女は酷
薄そうな目を開き、振り返らずに答えた。
「御苦労様です。あなたも退避して下さい」
「ええ。それじゃ、後はお願いしますね」
 遠ざかる足音と入れ替わり、サイレンの音が近付いてきた。オレンジ色の常夜
灯が闇夜を淡く拭う中を、赤色回転灯の波が迫ってくる。ヘッドライトがビル壁
を舐め、長い影が瞬く間に流れていった。
「二人とも、来るわよ。康介君、いざという時は、美紀ちゃんを頼むわね」
「はい」
 バリケードに張り付いた二人のうち、少年の方だけが声を返す。彼は頷くだけ
で精一杯の少女に気付くと、肩を叩いて安心させるように笑いかけた。
 目に見えて落ち着いた少女に苦笑しつつ、片野が慎重にタイミングを図る。バ
リケード越しに差し込む光が、数本の帯から次第に視界を埋め尽くし始めた。
『前方の暴走霊に次ぐ! 集団での危険走行は禁止されています、ただちに停止
しなさい』
「だとさ。年寄りは大人しく、お巡りさんに家まで送って貰ったらどうだい?」
「最近の若者は、情けないねえ。実力で勝てないと、すぐ警察なんかに泣きつき
たがる。あたしの若い頃は、そんな腑抜けはいなかったもんさ」
「こりゃ面白え。誰を挑発したのか教えてやるぜ、婆さん」
「はっ! 尻の青い小僧が、舐めた口を利くじゃないか。こっちはね、あんたが
母親の腹の中にいる時から走ってんだよ」
 パトカーの上げる警告を無視して、疾走する霊達は速度を増していった。
 頭の無いバイクライダーと白髪の老婆を先頭に、無数の霊が道路上を駆ける。
仏教の法衣を纏った半裸の鬼や、上半身だけの人間。薪を背負った銅像に、人の
顔をした犬。車輪の燃え盛る、牛の見えない牛車などが、勢いを落とさずにバリ
ケードを突き破ろうとした。
「今よ!」
 片野の合図に合わせ、大人しそうな少女が御守りを持つ手でバリケードを押さ
える。霊達の突進は膨大な質量の壁を軋ませる程だったが、彼女は難なく片手で
受け止めた。
 志藝山津見神<しぎやまつみのかみ>の名が入った御守りから炎が吹き上がり、
道路の上を煌々と照らし出す。対峙する霊達との間に起きた圧力で、ばちばちと
火花が飛び散っていた。
「そのまま、少しだけ我慢してて」
 装甲車に向かって片野が手を振ると、霊達の退路を断つべく金網が下ろされた。
すぐに彼女は玉串を振り翳し、祝詞を上げて封じ込めに掛かる。逃れようと金網
に体当たりした銅像が、青白い稲光と共に弾き飛ばされた。
 少女を支える少年は、山を越えたと安堵しかけて、軋んだ音に目を見開く。霊
達の圧力にコンクリートを固定したナットが緩み、ワイヤーも千切れかけていた。
「まずい! 先生、バリケードが保ちません」
「あと一分だけ」
「無理です」
 片野は自分でも崩壊寸前の壁を確かめ、忌々しげに舌打ちした。
「ったく、根性の無いバリケードね。作戦失敗、二人とも退がって」
 逃げる二人の視界の隅で、玉串を振って片野が結界を張る。不可視の力場が霊
達を遮るものの、鈍い音を上げて壁面に亀裂が入った。
 少年が腕の中に少女を庇いつつ、装甲車の陰へと転がり込む。鳴り響いた轟音
に顔を向け、少女は弾け飛ぶバリケードに叫んだ。
167くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:07:35 ID:WdZiRNRE
「片野さん!」
「大丈夫」
 暴れる彼女を抱き留め、落ち着いた声で少年が告げた。
 片野は道路の中央に立ったままで、襲い来る破片から逃げようともしない。鞭
のようにしなったワイヤーが、彼女を引き裂かんと迫るものの。半透明に揺らい
だ片野を擦り抜け、アスファルトを砕いていった。
「先生は、幽霊と人間のハーフなんだ。その辺にある物で、あの人を傷つける事
なんか出来ないよ」
 尊敬を込めて呟く少年に、返事は無い。彼は心配そうに少女を覗き込み、真っ
赤な顔を見て自分達の体勢に気が付いた。
 慌てて離れつつ、しどろもどろに謝罪する。何度も首を振った彼女が、恥ずか
しそうに俯いていく。前髪に覆い隠された目の下で、緩んだ口元が小さな呟きを
洩らした。
「よっしゃあ。どさくさ紛れに抱き締めるなんざ、松原君もあたしを意識しつつ
あるようじゃねえか。来てる、こりゃ来てるぜ。しかし、あの感触と溶けるよう
な安心感は、軽くヤバイな」
「どうかした?」
「ううん、なんでも」
 返事と共に顔を上げた少女は、まるで邪気を感じさせない笑みを浮かべていた。
 場違いなムードの二人を余所に、封鎖を破った霊達が暴走を再開する。土埃を
抜けた彼らが、競い合いながら走り去っていく。追跡のパトカーは瓦礫に進路を
塞がれ、成す術無く見送る事しか出来なかった。
 ふわりふわりと夜空に浮かんだ片野が、その様子を見下ろして舌を打つ。冷酷
そのものの表情の中で、敗北を舐めた目が鋭さを増していた。

 朝の気怠さを漂わせながら、席に荷物を置いた生徒が会話に混ざる。このクラ
スに限らないが、学校では昨夜の高速での捕り物が話題の中心だった。
 ニュース番組で簡単に取り上げられた程度の、本来なら適当に聞き流す事件だ
ろう。ゴールデンウィーク開けだから、無駄に浪費した連休を愚痴るのが自然で
もある。しかし、警察に協力した霊能者に、バイトである三年の二人もついてい
ったとなれば話は別だ。真偽不明な物も含め、詳細な情報が飛び交っている。
 同じクラスの和也が、先週末から霊能者のところで働くと言っていたので。何
か知っているかもしれない彼の登校を、クラスメート達は待ち構えていた。
「おはよう」
 だが、ドアを開けた和也に、誰も挨拶を返さなかった。
 生徒の半分ぐらいが、彼、正確には隣に立つセミロングの少女を見て硬直する。
ブレザーの色が紺ではなく、クリーム色をした他校の制服だから、ではない。訳
が分からずにいた者も、理由を教えられて戦慄を覚えたようだ。
「思った通りね」
 青ざめた顔を見回して、蛍が静かに呟く。対応に困っていた和也は、それで一
気に憤慨へと針を振ったらしい。彼女を庇うように立ち、薄情なクラスメート達
を怒鳴りつけるべく息を吸い込んだ。
「朝から心霊現象か」
 しかし、口を開く前に真後ろからツッコまれ、気勢を削がれてしまう。振り返
ると、髪の長い女生徒が、戸口に立つ二人を邪魔そうに眺めていた。
 彼女、浦島夏子は艶のある黒髪が印象的な少女だ。意志の強そうな整った顔立
ちよりも、手入れの行き届いた綺麗な髪に目を奪われる。その割に立ち居振る舞
いはぞんざいで、さっぱりした気性を感じさせた。
「別にいいじゃねえか。校則には、幽霊が来ちゃいけないなんて書いてないだろ」
「馬鹿か、お前。誰がいつ、そっちの彼女を問題にしたんだ」
 いいから退けよ、と視線に込めながら夏子が睨み返す。
 蛍は気付いたようだが、和也に入り口を塞いでいる自覚は無いらしい。もう一
方のドアから入るべきだったか、と一瞥した夏子が視線を戻すと。和也が何かに
気付いたように目を血走らせ、非常に真剣な顔で迫ってきた。
「なるほど! つまり、俺への愛に気付いて、その胸を揉ませたいんだな」
「どこをどうしたら、そんな結論になるんだ」
 わきわきと手を蠢かせながら飛び掛かった和也を、夏子がフック一発で黙らせ
る。倒れ掛かってきた彼を蹴り飛ばし、長い黒髪を手で払い除けた。
「みんなが驚いてたのは、和也に彼女が出来るなんて心霊現象に、だと思うぞ」
「それは違う!」
168くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:08:16 ID:WdZiRNRE
 やっと硬直が解けたらしく、数人の男子生徒が和也を受け止める。ほっとした
彼を全員で床に押し倒し、殴る蹴るの暴行を加えた。
「認めん! こんな奴に、そんな可愛い彼女が出来てたまるか」
「ちい。俺には視えないんだが、和也、てめえは許されざる罪を犯したようだ」
「そこの君も安心してくれ。僕達の手で、必ず悪を滅ぼしてみせるよ」
「誰が悪だ!」
 抗議する和也へ、お前だという返事と共に無数の蹴りが入った。
 男子生徒達が次々に席を立って、私刑の環へ加わる。クラスの団結力に夏子は
感心したものの。蛍は相変わらずの無表情ながら、不快そうな声を出した。
「彼氏を滅ぼされても困る」
「騙されてるのが分からないの!」
 彼女の進路を遮るように女生徒達が湧き、口々に説得を始める。仕切り屋タイ
プの数名が、熱心に言葉を重ねる一方で。全く視えない者達は、見当外れな場所
へ挨拶したりしていた。
「どんな弱みを握られたか知らないけど、力になるわ。森崎なんかと付き合って
も、人生の汚点にしかならないんだから」
「早まっちゃ駄目。生きてれば、きっと良い事もあるはず」
 そうよそうよと唱和する女子達へ、蛍は不可解そうに答えた。
「もう死んでる」
「相手にされないから殺すなんて、人間の屑ね」
「なんて野郎だ!」
 女子も加えながら、クラスが一つとなって和也の息の根を止めようとする。ど
んなストーカーだったのかを推理していくと、膨らんだ詳細に誰もが身震いを覚
えた。勢いを増して糾弾するクラスメートを、怒りを漲らせた和也が振り払った。
「抵抗する気? ストーカーは大人しく死になさい」
「ふざけんな、冤罪だろうが!」
 確かに、彼が殺したという証拠や、被害者の訴えは無かった気がした。蛍に聞
いてみると彼女は事故死で、どうやっても和也は関与出来ないらしい。
 疑いが晴れた事を共に喜びつつ、クラスメートは噂の怖さについて感想を洩ら
す。その間中、視線を逸らし続ける女子達に指をつきつけて、和也は叫んだ。
「乳の一つも揉ませないくせに、人の恋路を邪魔すんじゃねえよ。文句を言いた
いなら、さっき見せてたパンツを下ろしてだな。俺の溢れんばかりの情熱を処理
してからにするのが、筋ってもんだろ」
 俯いた女子達を見て、調子に乗ったのか和也は少し胸を反らした。
 だからだろう。悲しい事に、目先の勝利に酔った彼には、距離を取る男子達が
見えていなかった。当然ながら、女子の間で高まる殺気も。
「勝手に人の下着を見てんじゃ無いわよ」
「死ね、犯罪者!」
「俺が覗いたわけじゃないだろ」
 無罪を訴える和也の主張は頷けるものだったが、怒れる女子達には届かない。
無慈悲かつ徹底的な制裁に、男子生徒達は同情の涙を禁じ得なかった。
 打撃音と悲鳴に肩を竦め、夏子は立ち尽くす蛍へ目をやる。表情は乏しいまま
だが、凝視する様子から心配しているのが伝わってきた。いつもの事だと安心さ
せてから、彼女は気になっていた点を尋ねてみた。
「悪い奴じゃ無んだが、和也は『ああ』だから、誰も恋愛対象にしてなかったん
だ。参考までに、どの辺に魅力を感じたか聞いても良いか?」
「素直なところ、だと思う」
 あれはそういう風にも言えるのか、と夏子は感心したように頷いたものの。や
っぱり、よく分からなそうに髪を掻き上げた。
「それに、物理的に他の人じゃ駄目だから」
 蛍は自分の言葉を証明すべく、一人の女子が挨拶と共に差し出した手を取る。
擦り抜ける手に、初めは驚いたものの。すぐに周りの女子も一緒になって、触れ
ないという事にはしゃぎ始めた。
 楽しそうな彼女達から離れ、夏子が自分の席へ荷物を置きに向かう。そこへ灰
色のスーツを着た教師が入ってきて、入り口付近の女子を出席簿で追い払った。
「とっくにチャイムは鳴ってるぞ。席に着け」
 教壇まで進んだ教師は、殴る蹴るの暴行を受ける和也の姿に目を止めた。
「なんだ、イジメか? 見なかった事にするから、どうしてもイジメたいなら学
校に関係ないところでやれよ。もし森崎が自殺した場合は、責任を持って遺書を
検閲するように。先生もな、二人の子供を大学へやらなきゃならないんだ」
169くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:08:54 ID:WdZiRNRE
 素直な返事をする女子達へ、満足そうに頷き返す。出席を採ろうとした彼を、
蛍の近くにいる女子の挙手が遮った。
「どうした」
「あの、彼女が授業を受けても良いでしょうか」
 部外者は駄目だと言いかけた教師を遮り、幽霊だと告げた。彼女の手が蛍の体
を突き抜け、何度も往復する。背後の景色が透けているのも見て、教師も納得し
たようだ。
「幽霊の立ち入りは、校則で禁止されて無かったな。構わないが、邪魔はしない
ように。ただし、授業料を払ってない以上、単位はやれんぞ」
 自分の事のように喜ぶ周りの女子へ、蛍は曖昧な礼を言っていた。今だに続い
ている和也への暴行の方が、気になっているらしい。
 教師は仕事を次に進める枕詞のつもりで、他にあるかと尋ねた。助けを求めて
和也が手を挙げたものの、それは無視して名簿を読み上げる。和也の罵詈雑言は、
蹴りに埋もれて聞こえなくなってしまったが。教師は返事が無くても、彼の出席
に丸をつけてやった。

 高速道路上では、警官による交通誘導が行われていた。渋滞に長く捕まったド
ライバー達が、原因を確かめようと作業に目をやり。それが車線の制限以上に、
渋滞の混雑を増す要因となっていた。
 作業員が飛び散った破片を取り除き、アスファルトや壁面を補強する。騒がし
い工作機器の音を背に、壁際に集まる人々の姿があった。
 十郎がヒビの走る壁面へ手を当て、隣の金髪女と意見を交わす。古めかしい服
装の彼女は、亀裂から目を離して頷く。眼鏡のツルを叩いて何やら考え込む十郎
に、反対側から和服姿の女が飲み物を差し出した。
「ほう、今日は紅茶なんだね」
「もしかして、気を遣わせたかしら」
 ツリ目を和らげた金髪に、日本髪は柔らかい笑みを浮かべた。
「好みに合わせてこそ、お茶も美味しく飲んで頂けますしね。十郎さんは何でも
良い方なので、張り合いがありませんけど」
 苦笑する十郎を肴にして、二人が会話に華を咲かせる。警官達は、優雅にティ
ータイムを楽しむ彼らに戸惑っていたが。付き合っていられない、とばかりに片
野が吐き捨てた。
「で、何か分かったの?」
 埃を払って立ち上がる十郎と、間近で向かい合う。そうして並ぶと、酷薄そう
な顔立ちが、非常に良く似ているのが分かった。
「壁面へ加えられた衝撃は、散発的な物だけよ」
 宥めるように割って入った金髪が、片野へ説明した。機械じみた実直な態度へ、
尖った視線が向けられる。調べるまでもなく分かっている、と片野が言う前に十
郎が話を続けた。
「千恵ちゃん。僕は確か、自分の目で現場を確かめろと教えたはずだけどね。彼
らは試行錯誤もろくにせず、前方の一ヶ所に集まって結界を破ったんだよ」
「そんなの、現場にいた私が見てたわよ」
 小馬鹿にしたように、やれやれと十郎が首を振って見せる。
 歯を噛んで怒りを堪える片野へ、少し怯えつつも。好奇心には逆らえず、一人
の婦警がおずおずと手を挙げた。
 しかし、声を出すよりも早く片野に遮られる。彼女が真顔だった為、婦警も息
を飲んで足を止めた。
「それ以上、近付かない方が良いわ。身内の恥を晒すようだけど、兄は父に似て
見境が無いから。両脇の二人も仕事仲間じゃなく、彼の女なのよ」
 話を聞いた婦警は、笑顔のままで片野の背中に隠れた。下らない事で警察と揉
めずに済んだ、と息を吐く片野を、眼鏡の奥から十郎が冷たく睨んでいた。
「心外だな。僕が、人間の女なんかに興味を持つとでも?」
「全くですわ。たとえ妹さんでも、言って良い事と悪い事があります」
 気分を害したらしく、十郎達が顔を見合わせあった。和服の女も、厳しい顔で
片野の無理解を嘆いている。目の前で悪口を言い始めた彼らを、片野は鬱陶しそ
うに手で払い除けた。
「馬鹿やってないで、とっとと封鎖の計画を練りなさいよ。兄貴が助っ人に呼ば
れたのは、私より強力な結界が張れるからでしょ」
「それは違うな」
170くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:10:03 ID:WdZiRNRE
 お茶らけた雰囲気を捨てた十郎が、冷え冷えとした目つきになる。いかにもプ
ロらしい態度を、よく似た顔つきで片野は歓迎した。
「僕が受けた依頼の内容は、今回の騒動の解決だからね。勿論、予算の範囲内で。
千恵ちゃんの結界で止まらない連中を抑えるとしたら、電気代だけで赤字を覚悟
しないと」
 そんなの無理でしょう、と眺める彼に管理職らしい警官が頷き返した。
 交通封鎖も、経済的損失や業界団体の突き上げを考えたら、気楽に出来るもの
ではない。しかし、暴走側が全く自分の身の心配をしない分、放置すれば事故に
繋がる危険性も桁違いで。ローリング族等よりも、厄介な連中だと言えた。
 解決が遠退いたと感じたのか、片野の眉間に皺が寄る。結論を急いだ妹に冷笑
を浮かべて、十郎が自分の分析を教えてやった。
「分からないかな。ある集団が、さして時間も掛からず一点へ集中して突破を行
っているんだ。それには、必要不可欠な要素が存在するじゃないか」
「つまり、先導者ね」
 引き取った片野はビデオを確認すべく、警察に準備を頼もうとする。しかし、
それを止めた十郎が、既に絞り込んでいた容疑者を告げた。高速道路の監視映像
から、首無しライダーか韋駄天が中心人物だと分かったらしい。
 今後の方針が決まり、現場の警官が上と連絡を取る。話がつくまで待とうと、
四人は路肩に停めてある十郎の車に乗り込んだ。
「旦那様は、お元気ですか?」
「おかげ様で」
 和服女から湯呑みを受け取った片野は、礼と共に目を細めたが。ふと、何かを
思い出して十郎を振り返った。
「そういえばさ。まだ結婚祝いをくれないの、十郎兄さんだけなんだけど」
「あげたじゃないか」
 三年も経つのに、という台詞に被せて十郎が言う。自信たっぷりな彼の態度に
記憶を探ってみても、片野には見当もつかない。だが、文句を言いかけたところ
で、何かに思い当たったようだ。
「もしかして、あの現金?」
「誰から何を貰うか分からないのだし、使い道に困らない方が良いと思ってね」
「どうせ、買いはしたものの惜しくなったんでしょ」
 片野は軽い憎まれ口だけで、ちゃんと礼を言うつもりだったのだが。目を逸ら
した十郎と、苦笑する二人の女を見て、呆れの溜め息しか続けられなかった。
 兄弟の多い家庭で育っただけに、親子ほども離れた一番上とは、喧嘩をした覚
えも無い。その点、歳の近い彼らは同レベルで張り合う事も多く。腹違いなのが
分からないほど、仲の良い兄妹になっていた。
 彼らは肩の凝らない雑談をしつつ、お茶を楽しんでいたが。仕事に関わる話に
なると、揃って視線を鋭くさせた。
「その竜脈の乱れが、今回の件にも関わってる?」
「断言は出来ないけれどね。しかし、影響はあっても、直接どうこうは無いと思
うよ」
「悠長過ぎるわよ。うちの美紀ちゃんに続いて、兄貴のとこにも山津見神の加護
を受けた人間が現れたんでしょ。何かの前触れかもしれないわ。例えば、数年前
のような鬼との全面戦争とか」
「彼らに怪しい動きは無いさ。それに」
 くっくっく、と底意地の悪そうな含み笑いを十郎が洩らす。
「たかが鬼程度が相手じゃ、神様の力なんて要らないねえ。酒呑童子が復活した
時でさえ、あんな御守りを扱える者は現れなかったんだよ。現に、人間の力だけ
で倒せてしまっただろう」
 警官の呼び声に軽く手を挙げて、二人は湯呑みを和服の女に渡した。性別の違
いもあり、立ち上がる仕草には共通点など感じられない。
「じゃ、もっとヤバイ相手なわけか」
 片野が冷酷な眼差しの下へ、ゆっくりと薄笑いを浮かべていく。頷き返す十郎
に浮かんだ表情は、顔の造り以上に二人の血縁を物語っていた。

「すぐにまた会えるなんて、これはもう運命としか言えないじゃないか」
「同じクラスなんだから、下駄箱にいりゃ出会すもんでしょうが。めっちゃ急い
でんのに、邪魔すんじゃないわよ」
「そんなに照れなくても良いさ。二人の時間は、たっぷりとあるんだから」
「人の話を聞け、時間無いって言ってんの!」
171くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:11:12 ID:WdZiRNRE
 慌ただしく靴を履いていた女子生徒が、鞄で和也を追い払う。しっかり受け止
めた彼は、下手な芝居で恰好つけながら、馴れ馴れしく腰へ手を回した。
 ぞぞっと背筋を震わせると、今度は一切の手加減抜きで女子生徒が殴りつけた。
顔面に直撃を貰っても手を離さない和也へ、更なる追撃を加える。股間を抑えて
蹲る彼に苛立たしげな鼻息を残し、彼女は走り去っていった。
 流石にダメージが気になったのか、連れの女生徒が和也の隣に屈み込む。外か
らの苛立たしげな呼び声を聞いて、和也は心配要らないと笑顔をみせた。手は振
れなかったが。
「お大事に」
「ありがとな。俺は大丈夫だから、早く行った方が良いぜ」
 小走りに駆けていく女生徒を、蛍は不思議そうに見送っていたものの。やはり
気になったのか、隣で呆れている夏子に解説を求めた。
「さっきの娘も、可愛かったと思う」
「ん、ああ。決まった相手のいる奴は、対象外らしい」
 二人目の彼氏について、夏子が簡単に説明していると。なんとか立ち上がった
和也が、靴を履き替えて彼女達に並んだ。ぎこちない動作の彼へ、蛍が労るよう
な声を掛けていたものの。夏子の方は、これ以上無いほど蔑んだ目で眺めていた。
「彼女でも出来れば、少しは落ち着くかと思っていたんだが」
「そんなの和也君じゃない」
「まあ、加藤が気にしないんなら、あたしが口を挟む事じゃないけどさ。いくら
なんでも、節操無さ過ぎるだろ。本気で、誰でも良いんじゃないか?」
「ふざけるな!」
 夏子の言い分に腹を立てたらしく、和也は真剣な顔で詰め寄った。
「可愛い子限定に決まってんだろうが」
「威張るとこじゃねえよ」
「安心しろ、お前でも全然全く構わないぞ」
 自信満々に宣言した和也の横で、同意するように蛍が頷く。どこかが完全にず
れた二人を見て、夏子は眉間の皺を揉みほぐした。
 勢いに乗って女の子の良さを力説し始めた和也が、ふと真顔で考え込む。蛍は
無表情ながら、心配そうに見守ったものの。ろくでも無い事だと断定した夏子は、
和也など気にせず蛍に話し掛けた。
「甘い事を言ってると、こいつ本当に浮気しまくるぞ」
「別に。私は和也君が好きなんであって、私だけを見てくれる男なら誰でも良い
わけじゃないから。でも、」
 少し言葉を切った蛍の顔には、変化らしい変化など何も感じられない。だとい
うのに、夏子の背筋へ寒気を与え、言葉を奪う迫力があった。
「私に飽きたら憑き殺す」
 微妙に綻んだ口元を見て、はっきりと夏子は理解したようだ。目の前の相手が、
人外の存在なんだという事を。
 意外に大物だったか、と夏子が感心する間に。妙な敬意を向けられた当の本人
は、ようやく何かを思い出して一つ手を打ち鳴らした。
「そうそう、あれだ。三年に、霊能関係のバイトやってる先輩がいるだろ。彼女
には何も感じなかったな」
「あの二人は付き合ってるはずだから、それでじゃないのか?」
「いや。俺の勘では、まだ恋人同士じゃないぞ。性格は悪いらしいが、顔さえ良
ければ全く構わないんだけど。不思議な事に、まるで惹かれないんだ」
 和也は例を示すと言って、夏子を見据えた。瓜実顔と呼ばれる少し面長な輪郭
の中で、切れ長の目が睨み返している。綺麗な黒髪が目立つものの、黙っていれ
ば育ちの良さが窺える顔だ。どことなく清楚な、お嬢様じみた雰囲気さえ感じさ
せる。
 ごく自然に和也の手が胸へ伸び、平手で叩き落とされた。
「ま、このように。魅力的な相手を前にすれば、行動に移るものじゃないか」
「そのうち捕まるぞ、お前」
 何か反論しかけた和也の目が、蛍の姿を捉える。
 感情を表に出さない事もあるだろうか。肉付きの薄い顔は、冷え冷えとした眼
差しの威力を存分に発揮していた。セミロングの揺れる肩は細く、景色が透けて
いなくても、儚げに見えてしまう。
 考えるより先に飛びついた和也は、両手でしっかりと蛍を抱き締めた。嫌がる
どころか目を細めた彼女に、感動で視界が滲んでいった。
172くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:11:53 ID:WdZiRNRE
「まさか自分に、これほどまでの幸せな時が訪れるとは、密かに思ってました。
神様、いや、何よりもまず加藤蛍さんに言いたい。ありがとう御座います」
「いちいち大袈裟」
 蛍は冷たく言ったものの、頬は僅かに緩んでいるようだ。
 周囲の生徒達は行き過ぎかけてから、片割れが和也と知って自分の目を疑った。
事実だと知るや、世の中の不可思議さ加減に首を捻っている。
 夏子でさえ違和感を覚えたのだから当然だろう。和也の人となりを説明するに
は、『女子に迫って殴られる奴』の一言だったのだから。
 しばらく至福を堪能した和也が、待たせた詫びと共に歩き始める。蛍から見た
学校の感想を話題に、囁かれる噂の中を進んでいたものの。校門の外に出たとこ
ろで、和也は不思議そうに周囲を見回した。
「あれ? 今日は迎えが無いのか」
「渋滞に捕まったらしい。高速の規制が影響して、下も混雑してるんだと」
「んじゃ、駅まで一緒だな」
 方向が同じなので、駅前へ向かう夏子と並んで進む。途切れた話を再開させた
のだが、すぐに和也の注意は余所へと逸れていた。
 道路脇にある小さな公園を、多くの人が通り抜けていく。
 付近の学校の通学路が重なる場所なだけに、小中学生の姿も多い。彼らは交友
関係の義理や塾へと、足早に向かっており。公園の入り口で呼び掛けるOL風の
女になど、構ってやる余裕が無かった。
「ちょっといいかしら」
「間に合ってます」
「私、キレイ?」
「ポマード」
 中学生は単語帳から顔を上げず、小学校低学年の女児にすら軽くあしらわれる。
大きな白いマスクをした女は、世間の風の冷たさに肩を落とした。
 諦めを湛えた彼女の目の前に、和也が黙って手を差し述べる。
 おずおずと顔を上げた女へ、歯を光らせながらキザっぽい笑みを返す。悲しい
ほどに似合っていなかったが、心遣いが身に染みたのだろうか。マスクの女は救
いを得たかのように、瞳を輝かせていた。
「貴女のような美人を無視するなんて、愚かな連中もいたものですね。さあ、何
なりと仰って下さい。この森崎和也に出来る事でしたら、全力を尽くしましょう」
「それじゃ、一つだけ聞かせてちょうだい。私って綺麗かしら?」
「当たり前じゃないっすか!」
 和也が鼻息荒く答えると、彼女は嬉しそうに目を細め。マスクに手をかけて、
一気に引き剥がした。
「これでもか!」
 耳まで裂けた口を見た和也は、悲鳴を上げて逃げ始めた。
 にたにたと不気味に笑いながら、女が鎌を片手に追いかける。これだ、これこ
そが生きている証なのだ。言葉にせずとも、充実感に溢れた彼女の表情から、今
を楽しんでいる事が伝わってきた。
「逃げろ、ヤバイ女に関わっちまった」
 叫びながら走ってきた勢いのまま、和也が二人の腕を取って行きかけたのだが。
素直に従う蛍とは違って、夏子は彼の手を振り払った。
 足の裏で制動をかけ、絶叫しながら戻ろうとする。必死に指を伸ばす和也の前
で、女の持つ鎌が振り下ろされ、不敵な笑みが夏子の口元に浮かんだ。
「まだまだ、だな」
 夏子は左腕で鎌の柄を受け止めると、右足で女の下腹を蹴り抜いた。呻きなが
ら前屈みになった顎を、鋭いアッパーが打ち据える。体ごと飛ばされた女は、公
園に跡を残しながら転がっていった。
 感嘆の声と共に拍手する和也に合わせて、蛍も無表情ながら手を叩く。厳しい
顔で女を注視していた夏子が、二人のところへ駆け寄ってきた。
「駄目だった。逃げるぞ」
 問い返すまでもなく、夏子の背後で起き上がる女が見えた。
 和也が表情を強張らせ、しっかりと蛍の手を握って全力疾走する。懐から夏子
が携帯を出す間にも、彼から嘆きの言葉が溢れ出てきた。
「ちっくしょう! いくらなんでも、運が悪過ぎる。神は、世界は、運命は、ど
うしてここまで俺に試練を与えるんだ」
「声を掛けたのは和也君でしょ」
173くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:12:24 ID:WdZiRNRE
「今度という今度ばかりは、俺も反省しました。マスクで顔を隠してる時点で、
疑ってかかるべきだったよ。でも、目元だけなら美人だったんだから、しょうが
無いじゃないか」
 わけの分からない言い訳をしているが、決して手を離そうとはしない。蛍が惚
れたのは、彼のこういう部分だろうか。少し想像しながら電話を終えた夏子が、
真剣な目を向ける和也に教えてやった。
「さっき駅前に着いたらしい。飛ばしても、追い付かれる方が早いな」
 言外に、何か手は無いのかと夏子が尋ねる。
 和也が振り返って確認すると、鎌を持つ女は世界新を塗り替える速度で迫って
いた。頼れそうなのは十郎ぐらいだが、助けを求めても間に合うはずが無い。
 望みがあるとすれば、一つだけ。上着のポケットから御守りを取り出すと、落
とさないように手へ紐を巻き付ける。迷いを振り払った和也は、珍しく真面目極
まりない顔を夏子に見せた。
「夏子、大事な話だ」
 無言で頷き返した彼女に、真摯な態度で和也は頼んだ。
「乳を揉ませろ」
 一瞬の間も置かずに鉄拳が振われ、和也が前へつんのめる。なんとか転ばずに
済んだが、かなり痛かったのか涙目で頭に手をやった。
「お前という奴は、この非常時もそれなのか!」
「真面目に言ってんだよ!」
「尚悪いわ!」
 夏子と怒鳴り合う和也へと、横から冷え冷えとした視線が浴びせられる。笑っ
て誤魔化そうとした彼を、芯まで凍り付きそうな鋭い目が貫いた。
「なんで私に言わないの」
「あ、いえ。せっかくだから普段味わえない感触を、と思いまして」
「嫌?」
「そんなわけがあるか。俺はただ、もし駄目でも夏子なら自分の身は守れるだろ
う、って」
 和也は慌てて自分の口を押さえたが、一度出た言葉が戻るはずもない。
 本気で怒る蛍に釣られて、本音が洩れてしまったようだ。自分の馬鹿さ加減を
悔やむ和也に、蛍は口元を僅かに綻ばせ。彼の手を退かしながら、顔を近付けて
いった。
「大丈夫、私はもう死んでいるから」
 唇同士が触れ合い、和也の口の中に蛍が舌を伸ばす。唾液と共に舌を絡め合い
ながら、足を止めた和也が、夏子に逃げろと手を振った。
 馬鹿にされたと思ったのだろう。口の裂けた女は、驚きに立ち止まる夏子など
無視して、和也へと迫る。
 女を捉えた和也の視界の隅で、御守りが燐光を放ち始めた。
 蛍の細い腕が回されると、青白い火種となり。見た目よりも大きな乳房の感触
に、半透明の火花が散る。唾液を飲み下す音や、甘ったるい鼻息によって、大き
な炎が吹き上がった。
 脅威を感じながらも女は接近を止めず、鎌を振りかぶる。間合いを計った和也
が御守りを握り締め、両者が腕を伸ばした、ちょうどその時。
「この、馬鹿者がっ!」
 鎌女の背後から物凄い速さで現れた鬼が、彼女を殴り倒した。
 彼は仏僧の法衣を半裸に纏い、よく日焼けした筋肉質な肉体を披露していた。
血管の脇を伝った汗が、地面に染みを作っていく。
 頬を抑えて文句を言いかけた鎌女は、鬼の浮かべた憤怒の形相に、喉の奥で悲
鳴を上げた。
「何を考えておる。勝負に負けそうだからといって、凶器を使うなど言語道断。
かような心得で、貴様は己の鍛え上げた肉体に申し訳が立つのか。それほどの健
脚、生半可な修練で身に付く物ではあるまいに」
 鬼は繋がりの分からない説教を始め、はらはらと男泣きに泣いた。
 理解不能の事態を前に、和也達は困惑する事しか出来なかったのだが。鎌女の
胸には響いたらしく、彼女は武器を投げ捨てて崩れ落ちた。
「私ずっと、本気で叱ってくれる人を待ってたの!」
 涙ながらの懺悔を行う彼女へ、そうだろうそうだろうと鬼は頷いてやった。
 ひとしきり泣いた後、口裂け女が腕で涙の残りを拭い去る。和也達に向き直っ
た時には、とても晴れ晴れとした笑顔になっていた。
「みんな、ごめんね。私、間違ってた」
174くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:14:42 ID:WdZiRNRE
「いや、今のあんただったら、口が裂けてようと綺麗だと思うぜ」
 お世辞の無い和也の言葉を聞き、はにかんだ笑みと共に深く頭を下げる。顔を
上げた彼女は、すっきりとした表情で、大きな口へ照れ臭そうな微笑みを浮かべ
た。
「少年達にも、迷惑をかけたようだが。この者は責任を持って、心身共に鍛え直
すと約束する。だから、私に免じて許してくれないだろうか」
 筋肉に満ち溢れた大男の頼みを断るなど、怖くて和也には出来るはずもない。
こくこくと頷く三人へ、にかっとした笑みを残すと。半裸の鬼は口裂け女を連れ、
駅前の方に走り去っていった。
 道路を疾走してきたバイクが、彼らに親指を立ててみせる。どんな表情をして
いるかは、首が無いので分からない。
 他にも二宮金次郎像や老婆等が合流し、競り合いながら大通りへと向かう。全
身を躍動させる口裂け女が、爽やかな汗を流しているのは容易に想像ついたもの
の。見送った和也達は、ただただ呆然とする事しか出来なかった。
「今の、何だったんだ」
「きっと、分からないままだと思う」
 まとめた蛍に心底同意してから、ようやく和也の頭が回り始めた。
「そういや夏子。電話しといた方が良いんじゃないか?」
「あ、車か。すっかり忘れるところだった」
 短く礼を言った夏子が、携帯電話を取り出す。呼び出し音を聞きながら顔を上
げ、彼女は和也の背後に迫る物に気付いた。
 牽いている牛がいないものの、外観は牛車のようだった。燃え盛る車輪でアス
ファルトに軌跡を描きつつ、高速で疾駆してくる。それだけなら、どうという事
も無かったのだが。
「和也、後ろ!」
 火車が歩道に寄せたので、夏子が警告を発する。背後を振り返った和也が、御
者台から身を乗り出す馬面を目にした。
 馬の頭に人の体を持つ者が腕を伸ばし、逃げかけた和也の襟首を掴んだ。咄嗟
に彼へしがみついた蛍ごと、火車に引っ張り上げ。火花と和也の悲鳴を散らしな
がら、遠ざかっていった。
 追いかけた夏子の先で、火車と擦れ違って黒塗りの外車がやってくる。車道に
飛び出した彼女を見て、外車は後輪を滑らせつつの急停車を行った。直前で停ま
った車の後部座席に乗り込み、夏子が運転手に前方を指差した。
「今のを追え。和也が攫われた」
「お嬢様ならともかく、森崎君を? なんでまた」
 ぐにゃぐにゃした声で尋ね返した助手席へ、不機嫌そうな視線が浴びせられる。
運転手の方は余計な事は言わず、唇をひと舐めしてアクセルを踏んだ。
 急な加速に助手席が愚痴を零したが、後ろから椅子を蹴られて黙り込む。火車
を睨み据えた夏子は、和也達の身を案じながらも。理由が分からず、困惑してい
るようだった。

 車輪の上げる火花が跳ねて、御者台にも降りかかっていた。確実に白バイが追
跡する速度で流れる景色に、落ちたら最後だと思いつつ。しっかりと両腕の中に
蛍を庇い、和也は火車を操る二人を観察した。
 一人は馬の頭に男の体、もう一人は牛の頭に女の体。二人とも、まるでピザ屋
のような制服を着ている。
 牛面の方は、並みの女なら十人分ありそうな巨大な乳房を持っていたが。顔が
死んだ目をした牛では、心の友が反応するはずも無かった。
「何なんだ、お前ら。身代金を要求しても、うちの親は多分出さないぞ」
「私の親は他界してる」
 他の奴を狙えと喚き散らす和也に、手綱を操る馬面が顔を向けた。どう見ても
馬の口が、流暢に言葉を喋り始める。
「勘違いだぜ。俺らはただな、おめえに協力して欲しいんよ」
「とても急いでいたので、了解も取らずに済みません。ですが、せめて話だけで
も聞いて頂けないでしょうか」
 言葉は丁寧でも、口を全く動かさずに話す牛の顔は不気味な物だった。ついで
に、荒い鼻息まで聞こえてくる。和也が頷いたのは、話への興味や落とされる不
安ではなく、そのせいだろう。怯えを含んで何度も頷く彼へ、馬面は不思議そう
に首を傾げていた。
「まずは自己紹介からですかね」
175くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:15:31 ID:WdZiRNRE
 牛面のセルヴィと馬面のオロッソに続き、和也と蛍も自分の名を告げた。
 二人は牛頭<ごず>と馬頭<めず>という種族で、死者を冥土に運ぶ仕事をし
ているらしい。そこまで聞いて、和也は蛍を抱き締めつつ逃げ道を探し始めた。
「こいつは俺の女だ、誰にも渡さん」
「心配要らんて。俺らが運ぶんは、生前に悪行を重ねた奴だけだかんな」
「ええと、加藤蛍さんは全く問題ありませんね。むしろ、森崎和也さんの方が危
ないと思います」
「放っといてくれ!」
 帳面を繰りながら告げるセルヴィに、唾を交えて和也が抗議した。
 火車の追う霊の集団は次第に膨れ上がり、二車線を埋めるほどになっていた。
進路の先には、高速に続く国道が見えているが。どんどん霊が流れ込み、普通の
車の通行は止まりかけていた。
「話を続けます」
 セルヴィは大混雑に姿勢を正し、引き締まった声を出す。しかし彼女の牛面は、
蛍の無表情どころでないほどに、何の変化も無かった。
 彼らが受けた任務は、この混乱の収拾だそうだ。
 一人の韋駄天、さっき和也達も見た、法衣を纏った半裸の鬼が元凶らしい。彼
は方々で霊や妖怪を勧誘し、暴走行為を繰り返しているのだが。規模が大きくな
り過ぎ、人と鬼の停戦条約に抵触しかねなくなっていた。
「野郎を捕まえようにも、えれえ速くてよ。そこで和也、おめえの出番なんだ」
「俺のどこをどう見間違えたら、世界記録保持者に見えるんだよ」
 馬頭に食ってかかる和也へ、牛頭が首を振る。呆れ混じりの荒い息は聞こえた
ものの、やはり口すら微動だにしなかった。
「この火車は、霊力を燃料としています。残念ながら、私とオロッソの力では韋
駄天に叶うほどの速度は出ませんが。闇山津見神<くらやまつみのかみ>の加護
を受けた貴方の協力があれば、何者よりも速くなれるでしょう」
「誰なんだ、それ。聞き覚えも無いぞ」
「例の御守りに書いてある」
 蛍の指摘を受けて調べてみると、確かに闇山津見神の名が記されていた。
 考え込む和也と、牛頭が向かい合う。彼女の死んだ目からですら、その期待が
感じられた。ついでに、手綱を握る馬頭の横顔からも。
 残る蛍は、火車に乗った時から収まる和也の腕の中で、温もりを堪能している。
幸せそうに目を閉じた彼女を見守るうち、決心を固めて和也が顔を上げた。
「俺達には関係無さそうだし、降ろしてくれないかな」
「お願いです。私達に出来る事なら、どんな御礼でもしますから」
「ああっ、やっぱりか! こいつら断るなんて許さねえ気だ」
「当たり前だろ」
 ぼそっと呟く馬頭と、和也が怒鳴り合いを始めた。不毛な諍いを積んで、火車
が高速への侵入を果たす。落とされないように踏ん張った和也は、道路脇に見え
た人物に全身を硬直させた。
 霊団を監視する警察の中に、十郎の姿があった。
 雇い主である彼からは、慣れるまで危険な仕事に連れて行かないと言われてい
る。つまり、彼が今いるのは呼ばれていない現場なのだろう。
「嫌じゃあ! もしかしなくても、これってヤバイ事件じゃねえのか」
「安心していいぜ。俺らが失敗した場合は、また人間と鬼の戦争になる。そんと
きゃ、まず間違いなく、お前も死ぬんだから」
 けらけらと笑う馬頭に腹を立てつつ、和也が路面に目をやった。飛び降りたら
確実に死ぬ速度だろう。進退窮まった彼の肩を、牛頭の両手が強く掴んだ。
「あなたに助けて欲しいのです。性的な意味で」
「話だけは聞こうか」
 和也は返事をしてから、己の浅はかさに頭を抱えた。
 もし彼女に抱いて欲しいと言われても、相手の顔は牛だ。いくら乳が巨大だろ
うと、お願いしたい相手では無かった。
「別に、危険はありません。森崎さんも御存知でしょうが、闇山津見神の力は性
欲によって導き出されます。車内で、それを高めて頂きたいんです」
「簡単に言や、奥でセックスしてくれ」
 戸惑う和也に、人間の交尾になんか興味が無いとオロッソは下品に笑い立てた。
「ただな、ヤり続けてくんねえと困るわけだ。そこで、丸一日は交尾し続けられ
る特性の丸薬をやろう。引き受けてくれるなら、御礼って事で一年分やってもい
い。どうだ?」
176くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:16:37 ID:WdZiRNRE
「分かったわ」
 和也に迷う暇さえ与えず、蛍が頷いた。
 説得しようにも、興味津々に輝く瞳を見れば無駄だと分かった。一緒に住み始
めた先週末、ほとんど裸で過ごしていたものの。性欲の旺盛な和也でさえ、流石
に一日中ずっとは無理だったのだから。
 退路を断たれた和也の目の前で、妖しい笑みを浮かべた蛍が唇を舐める。生唾
を飲んだ彼は、馬頭の取り出した丸薬をひったくって口へ放り込んだ。
「そうだな、困ってる奴を放っておけないよ」
 台詞は爽やかだったが、血走った目が台無しにしていた。

 蛍を抱きかかえて車内へ入った和也は、用意されていた布団に彼女を下ろした。
そのまま離れずに覆い被さり、唇を重ねる。舌と舌を絡めながら、彼は蛍の胸に
手を伸ばしていった。
 ブレザーの上から揉み込んだ胸が、柔らかさと共に生地の質感を伝える。上着
だけでなく、ワイシャツやブラがずれる様子も明瞭に感じられた。
「なんだろう、制服のせいかな。いつもと違う気がする」
「多分、さっきの薬で霊力が高まってるんだと思う。私も、はっきり和也君を感
じるもの」
 差し出された舌に舌先で触れると、肉の艶やかさが一杯に広がった。混じり合
った唾液が、お互いの喉を流れていく。淫らに溶け合う舌の感触で、今までのキ
スが気持ちで満足していたのだと分かった。溺れそうなほどの肉感的な快楽に、
二人は夢中になって相手の口を貪り始めた。
 鼻息を弾ませた蛍が、服越しの愛撫へもどかしげに身を捻らせる。彼女がワイ
シャツのボタンに手をやると、和也も競うように脱がしていった。
 はだけたシャツの中に侵入し、ブラのホックを外す。体のわりに大きな胸は、
車の振動によって、ふるふると美味そうに揺れていた。
「すげえ、こんなに柔らかかったんだ」
 和也が感動しながら堪能するのに合わせ、蛍から可愛い喘ぎが洩れる。掌全体
で味わううちに、固く尖り始めた乳首に気付いた。
「あ、ふあっ、和也君」
 指先で優しく摘んだ彼に、甘い声が呼び掛けた。
 もっと聞きたくなるほど魅力的だったので、吸い付いた和也が舌で転がしてみ
た。降り注ぐ乱れた息により、心の友が完全に目を覚ます。ズボンを破りかねな
いほどに隆起し、早く解放しろと叫んでいた。
 ファスナーへ持っていこうとした手が、蛍の脚に触れる。切なげに擦り合わせ
る動きに、陰茎が力強く反応した。
「その、蛍」
「さっきから言おうと、してたのに」
 和也の口が離れて、ようやく身動きが取れるようになったらしい。力を抜いた
脚を、だらしなく左右へと開き。スカートを捲り上げた蛍が、下着に指をかけた。
 くちゅり、と濡れた音が淫靡に響く。もう片方の手を和也の頬に添え、口付け
ながら蛍が囁いた。
「来て」
 垂れかける鼻血を啜った和也が、壊しかねない勢いでベルトを外す。蛍が下着
を脱ぎ捨てるのを見て、ズボンを下ろしながら彼女の股を割った。すべすべとし
た太腿に促されるまま、心の友がスカートの中へ潜り込む。
 出迎えた陰唇は、淫らに濡れた身で絡みついてきた。
 スカート越しに陰茎を押し下げて、膣口に照準を合わせる。腰を進めると、何
度か味わっているはずなのに、まるで違う場所のようだった。
 淫靡な孔に詰まった肉が強く締め付け、膣内を狭くしている。しかし、襞の一
つ一つは陰茎を包み、奥へと誘うようで。たまらなくなった和也は、我慢などせ
ず腰を落としていった。
「あ、これって、くうっ」
 蛍が眉間に皺を寄せ、痛々しい悲鳴を洩らす。
 驚いて止まり掛けた和也に首を振り、蛍が体全部でしがみつく。痛々しく疼く
膣内ですら、離すまいと密着を増している。
 火車のスピードが増したようで、何もしなくても床が二人を揺り動かす。結合
部から溢れた蜜が、いやらしい湿った音を響かせた。
「悪い、焦り過ぎたみたいだな」
「違うわ」
177くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:17:35 ID:WdZiRNRE
 すぐに否定した蛍の口元が、ゆっくりと綻んでいった。とても嬉しそうな表情
は、目を奪われるほどに魅力的で。この女に惚れている自分を、改めて和也に実
感させた。
「分からない? 今、私の処女を和也君が奪ってるの」
「ちょっと待てよ。ここ数日、ずっとシてただろ」
「あれは、文字通り体を重ねてただけみたい。だって今までよりも、んっ、和也
君を感じるもの。良かった、ちゃんと和也君に初めてをあげられて」
 痛みを浮かべながらも、本当に心から喜んでいる。そんな蛍を見て、和也の胸
いっぱいに愛しさが込み上げてきた。
 彼女の体を強く抱きしめ、根元まで一気に突き入れる。
 奥まで埋めきった陰茎を通して、蛍の鼓動が伝わってきた。彼女のリズムを感
じるうちに、心の友も脈を打ち始める。車の揺れで動いた和也は、辛そうな息に
踏み止まったものの。押し潰した胸の柔らかさが、あっさり理性を崩壊させた。
「ごめんな。痛いんだろうけど、止まれそうに無え」
「我慢しないで。和也君が私で気持ち、あくっ、良くなってくれると」
 嬉しい、と掠れた声で続けた口を奪って、和也は欲望のままに舌を求めた。
 注挿を行う度に、引きつるような襞が纏わり付いてくる。拓いたばかりの初々
しさは、気遣いを掻き消すほどの感動を与えた。
 深く深く繋がると、シャツからこぼれた乳房が和也の体を撫でてくれる。剥き
出しになった肩を抱き寄せ、その細さに心を満たされながら。膣の最奥を押し上
げた和也が、彼女への愛しさを迸らせた。
 どくんっ、どくどくどくっ
 精液を浴びた膣内が蠢き、陰茎に残った分も搾り取っていく。和也は心地よい
脱力感を味わいつつ、息を整える蛍と口付けを交わした。
「あったかい」
 注ぎ込まれた胎に当てた掌を、ゆっくりと蛍が動かす。子宮に染み込ませるか
のような手つきに、陰茎が再び硬度を増したのだが。蛍が限界だと分かる和也は、
頷く彼女に苦笑しながら首を振った。
 目的地にでも近付いたのか、さっきまで増し続けていた火車の速度が落ちる。
 和也と蛍は繋がったまま、頬を触れ合わせて互いの息に聞き入った。目を見交
わして、甘酸っぱい気持ちに浸る。
 蛍の額に張り付く髪を払ってから、和也がキスをしようとした時。慌てて飛び
込んできたセルヴィが、弱り切った声で叫んだ。
「どうかしたんですか! 速度が落ちてますよ」
 牛頭の背後、開け放たれた扉の向こうに、暴走する霊達の姿が垣間見えた。
 高速を猛スピードで突っ走る彼らは、車線や他の車になど構わず競争に熱中す
る。扉が閉まるまでの間にも、上半身だけの霊が自動車を擦り抜けていき。泡を
食ったドライバーがハンドルを切り損ね、路肩に突っ込んでいった。
「もう少しで追いつけそうなんです。疲れたのかもしれませんが、ここは踏ん張
って頂かないと」
 休んでいる二人へ、セルヴィが必死の説得を行う。和也が事情の説明を始めた
ところで、カーブを曲がったのか車体が大きく傾いた。
 バランスを失って転びかけた彼女に、和也が駆け寄る。床で頭を打つより早く、
受け止めたはずだったが。死んだ目をした牛頭は、ころころと転がっていった。
 それを見送った和也が、恐る恐る腕の中の人物へ顔を向けた。
 褐色のうなじに、汗で湿りきった白い髪が密着して、色っぽいコントラストを
作る。髪の間から生えているのは、牛の角だろう。丸っこい顔の中から、黒目勝
ちの大きな目が和也を見つめる。縋るような視線が無くても、放っておけない感
じの女の子だ。
 着ている服はともかく、和也が乳を見間違えるはずもない。作り物だったらし
い牛頭に目をやってから、腕の中の少女に問いかけた。
「あんたセルヴィ、だよな」
「助け、て」
 セルヴィは荒い息の下から言うと、何かを求めるように手を動かした。
 どうすれば良いか尋ねる和也の声など、耳に入っていないのだろう。懸命に周
囲を探っていた手が、剥き出しになった和也の陰茎に触れる。童女のように微笑
みつつも、洩れた吐息は淫らなものだった。
 両手で大切そうに陰茎を掴んだセルヴィが、ぐいぐいと股間へ押しつける。邪
魔な下着を破り捨てた彼女は、安堵の表情で膣に迎え入れようとした。
「ちょっと待った! 何なんだ、一体」
178くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:18:14 ID:WdZiRNRE
 我に返った和也が彼女を抑えて、挿入を阻んだ。しかし、セルヴィが死力を尽
くすので、触れた膣口から先端を離せない。涎を垂らしながらキスしてくる陰唇
も、魅力的だったが。蛍の視線を感じた和也は、なんとか踏み止まっていた。
 説明を求めても、彼女は交わる事しか頭に無いらしい。耐えきれなくなったの
か、セルヴィが髪を振り乱しながら泣き叫んだ。
「お願い、早く精液注いでえっ!」
「何やってるの」
 背後から聞こえた声に、和也が慌てて振り返った。肘をついて上体を起こした
蛍は、不思議そうに彼らを眺めていた。
「見れば分か、って俺も分かんねえけどさ」
「彼女じゃなくて、和也君よ。そんなに相手がシたがってるのに、なんで?」
「せっかく蛍っていう彼女が出来たのに、浮気なんかして振られたくないんだよ。
学校で、俺が全くモテ無いの見てただろ。お前を逃したら、二度と恋人なんか作
れないに決まってんじゃねえか」
 和也は腕に当たる大きな乳房に惑わされないよう、何度も頭を振った。その振
動で震えさせてしまい、背筋を抗いがたい快楽が昇ってきたが。
「やっぱり、周りの女に見る目が無いだけ」
 誇るように目を細めた蛍を見て、ますます和也が自分を律する。セルヴィを押
し返せそうになった彼へ、蛍は首を傾げてみせた。
「私、他の女を口説く和也君に嫉妬なんかしてた? 私が好きになった人だもの、
他の娘があなたを好きになっても当然でしょ。ちゃんと私を好きなら、いくら増
やしても良い」
「そんなの決ま、うわっ」
 力説しようとした事で注意が逸れ、セルヴィに咥え込まれた。そのまま全体重
をかけてくるので、押し戻せそうにない。まだ和也にあった迷いは、彼女の流し
た嬉しそうな涙に吹き飛ばされた。
 腰を掴んで引き寄せると、本当に悦んで応じてくれる。彼女と対面座位で抱き
合いつつ、和也は蛍へ笑いかけた。
「好きだぜ、蛍」
 蛍が小さく頷いて、照れ臭そうに俯く。はにかんだ笑みで応じる和也と、初々
しい青春物のような雰囲気を作っていたものの。他の女と交わっている最中なの
だから、二人ともどこかがずれていた。
 セルヴィに向き直った和也が、彼女の背中に腕を回して抱き締める。
 乳児の一人二人は入りそうな乳房が潰れて、隙間など無くしてしまう。中身の
詰まった柔らかさを味わいながら、陰茎をリズミカルに突き上げた。
「ふあっ、早くちょうだい」
 脚の筋肉が鍛えられているのか、セルヴィの膣内は強く絡みついてくる。深く
浅く、捻りも加えて抉る陰茎を、決して逃さないかのように吸い付き。奥へ奥へ
と導いて、いやらしく蠢いていた。
 人間とは造りが違うようで、一番奥の突き当たりに、こりこりとした子宮口が
あった。
 そこを突く度、セルヴィが期待に満ちて腰を震わせた。再び速度を増した火車
が、腰の動きに思わぬ変化を与えて快楽を高める。何度か繰り返すと、蕩けきっ
た顔が辛そうに歪んでいき。我慢の限界を振り切った彼女は、太腿に置かれた和
也の手を掴み、自分の下腹に触れさせた。
「ここ、ここっ」
「もしかしなくても、子宮じゃないのか」
 セルヴィは嬉しそうに何度も頷き、子宮口で先端にキスを降らせる。その奥に
ある場所を想像し、陰茎が大きく膨らんだ。
 膣内に完全に収めきり、円を描くように腰を動かす。座っていられなくなった
セルヴィは、和也の首に両腕を回して抱きつくと。彼の耳元へ、甘えるように囁
いた。
「種付けして」
 彼女の腰を掴んだ和也が、子宮口を押し上げる。感極まって泣きじゃくるセル
ヴィに、望み通り注ぎ込んでやった。
 どくっ、どくんっどくどくどくっ
 陰茎から全て絞り出そうと、余すところ無く膣内が包み込む。本能的なものな
のか、無数の襞が陰茎の先を子宮口に当て続ける。一滴残らず欲しがる子宮へ、
和也は心ゆくまで精液を飲ませてやる事にした。
179くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:19:03 ID:WdZiRNRE
 回転を速め続ける車輪の音が、規則的に聞こえてくる。荒い息で体力を消耗し
ながらも、二人は満ち足りた目で唇を合わせた。
「すみま、せんでした」
 少し落ち着いたらしく、セルヴィが謝罪の言葉を口にした。もっとも、腰は蠢
き続けていたが。
 蛍も回復したのか、和也の背中にくっついて腕を回す。足を引き摺った様子を
見るに、まだ痛みが残っているらしい。労るような和也のキスを受けてから、水
音を響かせるセルヴィに尋ねた。
「それで?」
「私は牛頭と人間の合いの子なんですが。あの被り物が無いと、自分を制御しき
れなくて」
 脱げてしまった為に、膣内で精液を浴びるまで理性が飛んでいたそうだ。
「森崎さんを選んだ大きな理由も、あふっ、好みの人だったからです。本当は最
初から、私が抱いて貰うつもりだったんですけど」
「恋人が一緒だから遠慮した、訳でも無いんでしょ」
「ええ。私に処女膜はありませんが、初めてでしたから。やはり、良く知らない
方が相手では躊躇もあったので、加藤さんにお任せしようと」
 納得する蛍に合わせたかのように、火車がスピードを緩め始めた。しばらくす
ると完全に停まり、御者台から馬頭の降りる気配が届く。外では捕り物が行われ
ているらしく、罵声や激しい物音が起こっていた。
 騒ぎを取り巻いて、駆けつけたパトカーのサイレンが鳴り響き。大勢が取っ組
み合うような、乱暴な騒ぎも聞こえてくる。
「追い付いたみたいね」
 さして興味も無さそうに呟き、蛍が冷静にセルヴィを見た。
 馬頭に続いて表に出ようという意志など、欠片も無いらしい。張りのある太腿
で和也の体を締め付け、少々の力では離れないくらいに密着していた。
「まだ半日は続くんです。せめて、その間だけでも構いませんから」
「駄目よ。この先ずっとなら、私は構わないけど」
 輝くばかりの明るい顔で、セルヴィが大きく頷く。和也の顔を覗き込んだ彼女
は、繋がり続ける許しを請う。承諾された歓びに陰唇が震え、激しくなった腰の
振りが乳房を弾ませた。
「という事らしいわ」
「何がなんだか」
 まとめた蛍へ曖昧に返した和也は、分からない点を尋ねてみた。
「そもそも、あの牛の頭で何を制御してたんだ?」
「発情期」
 照れどころか抑揚すら無く告げられた答えに、ごくりと和也が唾を飲んだ。視
線をずらすと、柔らかく形を変える巨大な乳房を挟んで、セルヴィと目が合う。
たまらず唇を重ねてきた彼女が、熱っぽく訴えた。
「子宮が疼いて仕方ないんですっ。森崎さんとの子供を宿したいのに、ああっ、
宿しているべきなのに。まだ孕んでいないなんて、間違っています」
 セルヴィが陰茎の先を子宮口に固定し、自分の言葉を裏付ける。
「お願いで、ふあっ、すから。確実に子供が出来るよう、たっぷり注ぎ込んで欲
しいんです。私の子宮を、ふうっ、どうか森崎さんの子種で、いっぱいに満たし
続けて下さい!」
 返事の代わりに舌が絡み、腰の動きが加速した。
 互いが抱き寄せるので、これ以上ないほどに深く繋がり。再び放った和也の精
液は、子宮口を通して子宮の中に流し込まれた。
 休みを置かずにセルヴィは動き続け、和也もそれに応えた。彼女の体から、た
ぷたぷと精液の立てる音が聞こえると。和也は褐色の肌を組み敷き、悦ぶセルヴ
ィの子宮へ子種を迸らせた。何度も何度も。

 宵闇の降り始めた空の下で、警察が忙しく働いていた。高速道路上で車線規制
を行い、捕まえた暴走霊を護送車に運んでいく。
 その一角に、韋駄天に縄をかけた馬頭と、十郎や片野を主とした人間達が話し
合う姿があった。正式な手続き上は、事務屋に回して長い時間を費やすべきだが。
現場で有利にしてしまえば、書類をつつき回そうが無駄な足掻きにしかならない。
「日本の交通法規に違反したのですから、こちらが身柄を預かるのが筋でしょう」
「こいつを捕まえたんは、俺だ。犯人引き渡し条約は、現地での犯罪者を移送す
るもんだろ」
180くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/11(月) 23:19:47 ID:WdZiRNRE
「後で取り調べに御協力頂く、という形では?」
「んな寝言は聞かんな。そっちこそ、こいつに話を聞きたいなら、出向きゃ良い
んだ。俺は残業代つかねえからよ、早いとこ帰らせてくんねえか」
「待ちなさいよ。あんたが捕まえたって言うけど、この人の事務所の人間が手を
貸したおかげでしょ。条件は、五分五分じゃない」
「残念だが、森崎は就業時間外だっただろ」
 縄張りと面子の問題だけあって、どちらも退けずに交渉は難航していた。頭脳
と舌先を駆使して競り合う彼らへ、半裸の韋駄天が満足そうに頷く。己の全力を
尽くして勝利を得ようとする姿に、感じ入っているようだ。
 規制の列から、一台の黒い車が強引に警察の中へと割り込む。現場は何本か掛
けた電話で、無理矢理黙らせたらしい。
 適当なところで停まると、後部座席から夏子が降り立った。
 辺りを見回して、騒動の中心から離れた位置に火車を見つける。小走りに近付
いていった彼女は、不安を振り払うように車内を覗き。目の前へ現れた光景に、
深々と溜め息を吐いた。
「心配なんかをした、あたしが馬鹿だった」
 背中に半裸の蛍を張り付かせ、和也が胸の大きな女と交わっている。西瓜二つ
分はある乳房は珍しいものの、すけべな和也になど希少価値は全く無かった。
「いや、これには深い事情があってだな」
「やめとけ。何を言っても、説得力は無いと思うぞ」
 バツの悪い顔をする和也を、車内で響く水音を示して嘲り笑う。友人の情事を
眺める趣味など無いので、夏子はさっさと帰る事にした。
「ま、無事で良かった」
「悪かったな、心配かけて」
 ひらひらと背中越しに手を振る夏子は、かなり絵になっていたのだが。セルヴ
ィの可愛い喘ぎが、そんな余韻など破壊し尽くしていた。
「ありゃ、死んでも治らねえだろうな」
 大きく伸びをして、夏子が車へと戻っていく。途中で行き違った連行中の霊達
から、互いの健闘を称える声が聞こえてきた。
「思ったより歯応えがあったぜ。婆さん、あんた伊達に歳食ってるわけじゃねえ
な」
「生意気言うんじゃないよ。ただ突っ込む事をコーナリングと思ってるようじゃ、
まだまだ話にならんさ。まあ、コーナーの出口で膨らむ癖を直せば、ちょっとは
良くなるかもしれないねえ」
「けっ、全く口の悪い年寄りだな。しかし、ありがとよ。そのアドバイスを生か
して、次は俺の背中だけを拝ませてやるぜ」
「鼻っ柱だけ強くても、レースには勝てないもんさ。今度は、それを身をもって
教えてやらんと」
「黙って歩け」
 警官に言われて口は閉じたものの、熱意は全く奪われていない。もっとも、不
敵な眼光の老婆はともかく。首の無いライダースーツは、どこで喋っているのか
分からなかったが。
 言葉通りに、治っていない連中がいるぐらいだ。和也も、一度や二度死んだ程
度では、何も変わらないだろう。
 夏子は心底呆れながらも、口元に浮かんだ苦笑は、どこか温かいものだった。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――
※火車:近世になって、猫バスという説も誕生

>164
ごめんなさい、全然違う代物でw
181名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 23:33:32 ID:OfJVXs1y
りあるたあ〜いむ補足!
相も変わらぬすばらしい人外孕ませでござるな!
182名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 22:36:24 ID:96UQQKiQ
ギャグ調の文もエロも激しくGJでした!
183くなさん ◆DAYgAM2ISM :2006/12/14(木) 00:10:53 ID:kKhkrLi0
感想、ども〜
今回孕ませ関係無いのに、何故か自然とw

次は短めで座敷童子。婆さん言葉だと被るんでキャラ未定
184名無しさん@ピンキー:2006/12/15(金) 06:49:34 ID:gjfxH3b1
くなさんのまつろわぬもの一話目ってどこにアルのん?
185名無しさん@ピンキー:2006/12/15(金) 23:12:34 ID:LrqM4xiv
保管庫の「死ねばよかったのに」がそれじゃない?
186名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 02:18:42 ID:OHmnj3qM
くなさんから、孕ませをとったら何が残るだろう……
いや、いろいろ残るだろうけど、主成分として………


種付け?
187名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 23:43:42 ID:f/xX3X5O
>186
志村〜、スレタイ、スレタイ!
188名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 03:54:02 ID:7PLTkZ9x
>>186
全部読んだワケじゃないから言い切れないけど、少なくともエロは人外、ハーレム、孕ませが主成分だな。
個人的に「ターミネーター」が好き。エリル可愛すぎ。連載化してくんねーかな。
189名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 21:33:35 ID:Qv4Gjw4k
「オデンデンデデン♪オデンデンデデン♪」
とターミネーターを歌いながら母がおでんの大鍋持ってキッチンから現れた。
190某880 ◆/Mgq/8agL6 :2006/12/17(日) 22:52:23 ID:X90/08/8
そっと投下

注意事項:(ソフト)SM
191某880 縛る縄、繋がる心:2006/12/17(日) 22:54:36 ID:X90/08/8
女性が恥じらう姿というものは、それを見る男に様々な感情を抱かせる。
その大半は、可愛らしいとか愛らしいとか、好意的に女性を受け止めるだろう。
しかし、今俺が……恥じらう妻に対し抱いている感情は、戸惑い。
「今夜は……これで?」
妻はこれまで俺を悦ばせる為に、様々な格好……コスプレをしてくれた。
ネコミミメイド服に始まり、ナース、ウエイトレスと続き
婦警、チャイナドレス、セーラー服等々
前回は体操着……ああ、彼女の身体特徴上、ブルマが無かったのは残念だったが……
いや、そんなことはどうでも良い。というより、これを口にすると妻が悲しむ。
妻の下半身は蛇、種族的に言えばラミア。そう、彼女は人間ではない。
そんな妻だからこそ、人間の女性に妙な嫉妬を抱くことがある。
そもそも妻がコスプレをし始めたのは、俺が隠し持っていたAVがきっかけだったか。
コスプレ好きだった俺は当然そちら方面のAVを収集していたわけだが
やはり人間の女性の方が好きなのかと、AVを見つけた妻が激怒。
嫉妬した妻は次の日にAVと同じネコミミメイドの姿で俺を求めてきた。
どうも妻は、俺の目が人間の女性の向くのが我慢ならないらしい。
だから妻の前で、「ブルマは良いなぁ」などと言えるはずもない。
ブルマをはけない妻が「やはり人間の女性の方が……」と嫉妬するのは目に見えている。
その妻が今夜の衣装……いや、これは衣装といえないだろうが……それを二人の間に起き、恥じらっている。
「それで……私を縛って欲しいの」
頬を赤らめる妻は可愛い。が、俺はどう反応すれば良いのやら。
ベッドの上には、真っ白な長い縄が置かれている。
俗に言うSMで使用するような荒縄ではなく、手触りはかなり滑らかで良い。
妻の話では、これは「アルケニーの糸」で作られた縄であり、きつく縛っても肌に跡が残りにくいのだとか。
ソフトSMにストッキングを用いるのと同じような物か……という解釈は正しいのだろうか。
「いやでも……縛り方とかよく知らないし」
反応として正しい返答だったかはもう俺にもよく判らない。
この手のプレイに興味は……あるにはあるが、しかしこう、「SM」となると自分には敷居が高い。
先ほどの言葉ではないが、それこそストッキングでのソフトSMならまだしも
本格的な縄を持ち出されては、色々な意味でどう対処して良いか全く見当が付かない。
「あっ、それは大丈夫ですから……」
妻が言うには、この縄には魔法が掛けられており、
簡単な呪文で脱着可能という便利なSMグッズなのだとか。
……魔法というそのファンタジーなファクターには、ラミアを妻に持つ身として驚きはしないが、
そんなSMグッズを開発する者がこの世にいることがむしろ驚きだ。
世の中、どんなことからもどんな物からもエロ方面へと発想展開していく者達がいると言うことか。
そんな魔法の白い縄を何故持っているのかと尋ねたところ、
なんでも妻が同郷の友人に衣装を返却しにその友人の住まいへと訪れた際に
その友人の知り合いだという三人の女性に会い、譲り受けたのだとか。
「その、たっ、たまにはこういうのも……悦んでくれるかなって……」
首まで真っ赤になった妻は本当に愛らしいが、その妻がこんな申し出をするなんて……
どうやら、その縄をくれた三人に色々と言い含められているらしく、
鵜呑みにした妻はSMなどこれまで全く興味を持っていなかったにもかかわらず
俺のためにとけなげに……なんと愛らしいことか。
そんな愛らしい我妻を、さて俺は縛ることが出来るのか? そのようなことをして本当に良いのか?
「あの……お嫌い、ですか?」
瞳を潤ませ見つめられたら、愛妻家の俺が抵抗など出来るはずもなかった。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
192某880 縛る縄、繋がる心:2006/12/17(日) 22:55:58 ID:X90/08/8
美しい。
これまで何度も妻の裸体を目にしてきたが、その度に妻の様々な魅力を目にして心を熱くしてきた。
今夜の妻は、とても色っぽい。縄がこれほどまで女性を怪しげに艶やかに見せる物だとは思いもしなかった。
腕を後ろに回し縛り固定することで、強制的に背筋が伸び胸も張る。これだけで美しい姿勢が保たれている。
その上で縄が彼女のたわわな胸を、まるで補整下着のように支え強調してくれる。
そして縄が白いことで……ここは好みの問題が色濃く出るが……妻の透き通るような白い肌になじんでいる。
ハッキリと縄で縛っているのが見て取れる方が興奮するかもしれないが、
私にはこちらの方が妻の美しさを際だたせてくれていると感じる。
目立たない割には、柔らかな妻の身体に縄が食い込んでいるのはよく判る。その事実がより興奮させてくれる。
「ちょっとキツイかも……でも、「あなたに」縛られてるって実感できて……その、なんか……」
語尾をすぼめながら恥ずかしがる妻はとても愛らしい。
人は相手の感情を直接感覚で得ることは出来ない。
しかしそれを拘束感という感覚で体現できる事が、つまりは愛情を肌で感じるということに繋がる。
少なくとも妻はそう思いこんでおり、そして俺は恥ずかしがる妻を見る、つまり視覚によって自分の愛が妻を悦ばせていることを実感する。
これがSMの醍醐味なのだろうか?
正直本格的なSM愛好家の心情はよく判らないが、少なくとも私達夫婦は、たった一本の縄でお互いの愛情を確かめ合っていた。
「あの、あなた……それを胸に……塗り込んでください……」
妻が向ける視線の先にはもう一つの道具、真っ白なローションがあった。
これも縄と一緒に譲り受けたらしいが、特注ではある物のさすがにこのローションにまで魔法の力は働いていないらしい。
妻にねだられ、俺はそのローションを直接胸へだらだらとかけ、そしてまんべんなくそれをすり込むように胸を揉んでいく。
「んっ……もっと強く揉んでも……あっ、い、はあ……いつもより、なんだか……んっ!」
元々妻の胸は感度が良い方だが、今日はまた一段と感じやすくなっているようだ。
ローションによって力を入れても自然と滑り力が逃げるため、それがほどよいマッサージのようになっている。
そして何より、いつもと違うプレイに妻が興奮しているのも、彼女の喘ぎをより色艶の濃い物にしている要因となっているのだろう。
193某880 縛る縄、繋がる心:2006/12/17(日) 22:56:30 ID:X90/08/8
「あの、もう……大丈夫です。そのまま、横になってもらえますか?」
息を僅かに弾ませながら、妻は名残惜しみつつ俺に「次」へ移るよう催促する。
素直に俺はベッドに横たわる。我が息子は既に興奮しきっており、いきり立っている。
その肉棒を見つめながら、妻がにじり寄る。そしてゆっくりと上半身を倒し、そそり立つ棒にたわわな胸を押しつけて来る。
そして妻は、胸を押しつけたまま身体を上下に、こすりつけるよう動き始めた。
「いかがですか? きっ、気持ちいい……ですか?」
縄で縛っているおかげで胸が横へ型くずれしないこともあり、谷間にしっかりとはさまれる肉棒。
強く押しつけているもののローションのおかげで抵抗無く肉棒が胸にしごかれていく。
ソープ嬢によるマットプレイ。それを妻が縛られながらもベッドの上で懸命に行ってくれている。
しかもただ奉仕しているだけではない。
「これ……私も、いい……胸、胸にあなたのが、ちゃんと……んっ、感じるの、あなたのを感じるの……谷間が、谷間が……感じるの」
普通パイズリをする場合、自分で胸を掴み横から押さえつける必要がある。しかし今妻の腕は後ろで縛られて使えない。
それでも縄できつく縛った胸は多少形を崩すものの上から身体ごと押しつけていることもあり、しっかりと俺の肉棒をはさみ逃がさない。
ローションの滑りもあり、まるで膣の中に入れているかのような心地よさ。
いや、妻の中とはまた違う快楽……膣と口内が違うように、これはこれで、また別の快楽。
まずい、このままではもうじき……。
「いく? いくの? あなた……出して、このまま逝って……私も、感じてるの、気持ち、いいの……乳首、乳首も擦れて、んっ、いい、から、このまま……」
我慢しきれなくなり、僅かに腰が動いたのを妻がすぐに察していた。
そしてより身体を激しく動かし、俺の、そして自らの快楽をどんどん高めていく。
俺は下から腰を懸命に動かし妻の動きに合わせる。
「いって、いって、あなた、たくさん、んっ、あ……すごい、まだ、出てる……ビクビクしてる、私の胸でビクビクしてる……」
妻が言うように、俺は白濁液を大量にぶちまけていた。
彼女の胸と、そして俺の腹に掛かった白濁液の量は確かに多い。
貯めていたわけでもないのにこんなに出るとは……自分でも驚いているが、よほど気持ちよかったのだろう。
「いっぱい出してくれましたね……ふふ」
少し身体を下げ、妻は俺の腹に掛かった白濁液をペロペロと舐めだした。
ローション混じりなので危険なのでは? と俺は妻に止めるよう進言したが、
妻が言うには、このローションは口に含んでも大丈夫なように作られているらしい。
魔法こそ掛けられていないが、製法そのものは魔法的な要素が強く、なんでも「スライム」を作るのに似ているらしい。
ローションとスライム……似て非なる物同士とはいえ、色々な物にエロ要素を絡める発想力というものに、俺は色々な物を通り越して感心してしまった。
194某880 縛る縄、繋がる心:2006/12/17(日) 22:57:34 ID:X90/08/8
「ではこのまま……よろしいですか?」
俺からの返答を聞くまでもなく、妻は縛られた上半身を、彼女の下半身のようにくねらせながら俺の上を滑っていく。
そして起用に腰の位置を合わせ、既にローションを練りたくったかのようにぐちゅぐちゅに濡れた淫唇を肉棒の先に当てる。
「んっ……くぁあぁっ!」
よほどマットプレイで興奮しきっていたのだろうか……入れた瞬間、妻の身体が小刻みに震えた。
どうやら入れた瞬間に逝ってしまったらしく、ぎゅっと肉棒が膣に握られている。
「……んっ、ん……あっ、んっ……」
しかし妻はすぐに腰を動かし始めた。
「すご、い……あなたの、いつもより……ふと、ふとい……いい、きもち、いい、です、あな、た……んっ、いっ、あ、あはぁ……」
俺に言わせると、膣の締め付けもいつも以上だ。
それでもスムーズに腰が動くのは、既に塗りつけられていたローションと、そしてそれ以上にあふれ出ていた愛液のおかげだろう。
妻は腰を動かしながら、肩を揺らし胸を俺の身体にこすりつけている。
腕が自由にならない分、身体全体で俺を求めてきた。
俺は下から抱きしめたかった。懸命な妻にもっと密着し妻を感じたかった。
しかしそうすると彼女の動きを封じてしまうため、抱きしめることは出来ない。
縛られていないのに俺の腕は妻を抱きしめられない。そのもどかしさが、下からの突き上げを激しくしていった。
「あっ、あなた、はげ、しい、い、いん、いい! おく、おくに、とどいてる、とどいてる! もっと、もっと、もっと、もっとぉ!」
こんなに乱れた妻を見るのは初めてだ。元々妻は種としては淫乱な方ではあったが、性格は嫉妬深いが奥ゆかしい。
故に乱れることそのものを恥ずかしがる傾向にあったのだが……コスプレをするようになってから、妻は大胆になってきたような気がする。
視られることでの快楽。恥ずかしいと感じるからこその快楽……羞恥による快楽に目覚めたということなのだろうか?
そして俺は、そんな妻に興奮している。つまり俺も……という事なのだろうか?
これも夫婦故の愛情なのだと思う。多少複雑にも思うが、乱れ悦んでいる妻はとても美しい。ならそれでいいではないか。
195某880 縛る縄、繋がる心:2006/12/17(日) 22:58:05 ID:X90/08/8
「あなた、ほしい……ほしいの、ねえ、もう、いい、ですか?」
興奮しきった妻がもう一つの快楽を求めてきた。俺は黙って首を傾ける。
開かれた唇から牙がのぞき見え、その牙が俺の首に突き立てられる。
吸血鬼でもあるラミア。妻は俺の血を求め、そしてさらなる快楽を飲み込んでいく。
俺は血を吸われることで僅かに気が遠くなる。ぼやける思考のただ中にあって、肉棒から伝えられる快楽がより鮮明になっていく。
血を求め首にむしゃぶりつきながらも激しい腰は止まらない。
意識が半ば遮断されながらも激しい腰は止まらない。
羞恥がどうとか先ほどまで考えてもいたが……結局のところ、それは「ここ」まで行き着く過程の一つに過ぎない。
結局は本能と愛情が、互いを求めているに過ぎない。より心も体も一つになろうと無意識に腰が動き快楽を共有していく。それだけだ。
「んっ、ちゅ、じゅる……くちゅ、ん、おいし、い、いい、きもち、いい、あな、あな、た、いい、すき、すき……あい、してる、いい、きも、きもち、いい、いい、ん、くちゅ、ちゅぅ……」
血を吸いながらも淫らなあえぎは止まらず、それでも愛を口にする妻。
愛おしい。この女性を愛し妻に出来た俺は、本当に幸せ者だ。
「いい、いく、いくの、あなた、いく、いく、あなた、いっ、いく……ね、おねが、い、いっしょ、いっしょ、いっしょに、あな、あなた、あなた、ね、ねぇ、いく、いく、いく、いっ……んっ、くぅあぁ!!」
ついに俺は我慢しきれず、妻を力強く抱きしめる。足も妻の腰へ強く絡まっていく。
と同時に、白濁した愛が妻へと注がれ、そして妻は膣をぎゅっとすぼめその愛を受け入れていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……あなた……」
口元から僅かに血を滴らせながら、妻が俺を見つめていた。黙って、俺は妻の頭を自分に引き寄せ、唇を重ねる。
互いの舌が絡まる。くちゅくちゅと音を立て、愛を確かめ合う。
そしていつの間にか、別なところからもくちゅくちゅと湿った音がし始める。
「このまま……あの、いいですか?」
確認するまでもなく、俺の足が絡まったまま妻の腰は左右にくねりだしていた。
俺はただ愛しい人に微笑み、横に動く妻の腰へ縦の振動を加えていった。
縛られているのは妻で、SMでいうところの「M」は妻になっているはずなのだが
これでは妻がS、攻めているのは妻の方だ。
むろん、それも悪くない。むしろ積極的な妻は歓迎だ。
そもそも俺達夫婦はSMに興味はない。ただお互いの愛を確認する過程の一つに過ぎないだけだ。
幸い明日は休日。始まったばかりの夜を桃色に染めるには申し分なかった。
196某880 後日談?:2006/12/17(日) 22:58:44 ID:X90/08/8
おまけ


「らっ、らめぇ!」
舌っ足らずな崩れた言葉をわざと口にする。
これが興奮するのだと……私は今、あの縄やローションをくださった三人の女性にレクチャーを受けている。
男性が興奮する台詞。それをキチンと口に出来るための練習に付き合ってもらっています。
「そう、上手ね。ではその調子で、私達の後に続けて……らっ、らめぇ、まらいっひゃらめぇ!」
「らっ、らめぇ、まらいっひゃらめぇ!」
この興奮して崩れる言葉に男性は弱い……というアドバイスの元、私は「親切な」この方達から色々教わっている。
なんでも日本古来からある「みさくら流」という、淫行の流派なのだとか……ギリシャ生まれの私は知りませんでしたが、日本の文化は奥が深いですね。
「かへてぇ、ちんぽみるくぅ、えっちなみるくかへてぇ!」
「かへてぇ、ちんぽみるくぅ、えっちなみるくかへてぇ!」
「巨乳ちんぽしごきがんばるぅ!」
「巨乳ちんぽしごきがんばるぅ!」
「んああ゛あ゛っっ、えっちみるくらいしゅきいぃっ!」
「んああ゛あ゛っっ、えっちみるくらいしゅきいぃっ!」
三人が交互に示す台詞を、私はリピートしていく。
なんか口にするのは恥ずかしいんですが……これで夫が悦んでくれるなら。
この方達がくださった縄にしてもその使い方にしても、実際夫はとても悦んでくれたし、
あの晩は私も興奮してしまって何度も……ああもう、今から夜のことばかり考えてしまうなんて。
「いいわぁ。元々艶っぽい声してるから、効果抜群ね」
「あっ、ありがとうございます……」
褒められて嬉しいのやら恥ずかしいのやら、私は自分で頬が熱くなっているのを実感していた。
「ではこの調子で……ナカで……膣内で! こってりしてるのがでてるよおおあおおおおおおッ!」
「ナカで……膣内で! こってりしてるのがでてるよおおあおおおおおおッ!」
こんな言葉で悦んでくれるものなんですね……私知りませんでした。
口にするのは恥ずかしいけど、これで夫が悦んでくれるのならがんばれます。
夜を心待ちにしながら、私は先生方の教えを学んでいきます。
「わたしのおまんこいじめてくらしゃひっ」
「わたしのおまんこいじめてくらしゃひっ」
197某880 ◆/Mgq/8agL6 :2006/12/17(日) 23:06:46 ID:X90/08/8
以上です


お久しぶりです。
久しぶりの割に、短すぎて申し訳ないorz

今回の話は、随分前に投下させてもらった
「奥さまはラミア」という新妻ラミアの話の続き(?)になってます。
一応前回の話を知らなくても問題ないと思いますが
念のため、その前話の奴も吊しておきます
http://880.h.fc2.com/ura27.htm

ラミアの特徴である「下半身が蛇」というのが
全然作中で生かされていないのが申し訳ない。
なにぶん「まずは縛りたい」という発想ありきだったのでw
なんつーのかな。ラミアだから縛りたいのよ。
そこがいいのよ、ラミアだから良いのよ…誰か共感してくださいorz
デビルサマナー葛葉ライドウに登場する
オキクムシとかにエロスを感じる人なら判ってくれると勝手に思ってます。

しばらく投下してませんでしたが、
今後はこれまでよりはもうちょっと感覚詰めて投下できると思います。
とはいえ、次は来年以降になると思いますが。
またその時にはおつきあいくださいませ。
198名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 00:16:26 ID:7rolFD+O
GJだー!!
奥さんかわいいよかわいいよ奥さん
199名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 00:17:19 ID:HjKjnEte
きゃ〜!880さんってばってばってばぁ!
はろぃ〜んにも投下してくれないから、あ〜、そんなに忙しいのかと思っていたら!
俺的大ヒット奥様はラミアの続編とは!?
もう、どれだけ、俺を幸せの絶頂に絶頂にぃたたき込めば気が済むのぉぉ!?

(普通に暴走に疲れたのでひとまず休憩)

にしても、みさくら語講座とは、ある意味、女の尽くしたいというココロに感動しつつも、えっちのときに演技しているんだろうか、というちょっぴりのorzを覚えたり。
女は魔物ですの。
いや、この場合、実際魔物ですが。
200名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 00:39:51 ID:jgPi1FTe
みさくらバロスwwwww
そしてGJ!
201名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 01:13:22 ID:J78Gegjp
緊縛をコスと表現しかける旦那の心意気に吹いたw
夫婦感がよー出てるのがGJすわ

らめぇw
202名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 15:47:18 ID:wnOn7MtE
オキクムシはエロかったけど、
麻雀牌をどうやってつんでるか分からないから困る
口で一生懸命くわえるのかねぇ。
対面の山から体伸ばしてつまもうとしたら体がつかえて手前の山崩して
チョンボの罰にライドウがおしおきを…

GJ!
おまけで吹いた
203某880 ◆/Mgq/8agL6 :2006/12/19(火) 00:13:37 ID:8kCXNCOV
GJくださった皆様、ありがとうございました。
相変わらず甘々なのしか投下できてませんが
それを楽しんでもらえて何よりです。
そして思いの外おまけに笑ってもらえて良かったw

>202
ライドウ「またか……何度チョンボを繰り返せば気が済むんだ?」
オキク「すみませんご主人様……」
ライドウ「本当はお仕置きして欲しくてわざとやってるんじゃないだろうな?」
オキク「いえ、そんなことは……」
ライドウ「そんな格好でよく言えるな。いいだろう、たっぷりお仕置きしてやろうじゃないか」
オキク「……」
ライドウ「くっくっくっ、読心術で俺の心を読んだか? だったら自分からおねだりしてみろ」
オキク「わっ、私のいやらしく縛られた胸に、熱い蝋燭をください……」
ライドウ「火炎が弱点のお前が蝋燭をねだるか? いいだろう、たっぷり味わえ」
オキク「あっ、熱い! 熱い、けど、んっ! 胸に、あっ! ご主人様! もっと、いやぁ!」
ライドウ「お前の口は叫くことしかできないのか? だから牌をくわえそこなうんだろ。その口俺が鍛えてやる」
オキク「は、はい。この、何も出来ない、はしたない口に、この、このまま、蝋燭、あっ! 受けながら、ご主人様の、んっ! ご主人様の……」
ライドウ「なんだ、もっとハッキリと言え!」
オキク「はい! チンポ! チンポ! ください!! 蝋燭とチンポ! ほしい、ほしいのぉ!!」

こうですか?わかりません
204名無しさん@ピンキー:2006/12/19(火) 23:52:38 ID:K0Mbk2oN
いやそれ二人ともキャラ壊れすぎw
205名無しさん@ピンキー:2006/12/22(金) 00:47:14 ID:MFhIu5hX
ひでぼん風のクトゥルフ邪神娘を思いついた。
書けたらUPします。
206名無しさん@ピンキー:2006/12/22(金) 04:51:13 ID:i+U/FDOC
楽しみにしてるのよー
207名無しさん@ピンキー:2006/12/22(金) 14:22:40 ID:tRCwCTOT
蛇のトコ縛ったらボンレスハムみたいになる気が…www
208名無しさん@ピンキー:2006/12/22(金) 21:45:04 ID:FyFEd4pV
最近、雀の餌付けを始めたんだが
いつか擬人化して恩返ししてくれるのだろうか?
209名無しさん@ピンキー:2006/12/22(金) 22:23:08 ID:SIGmzVCJ
>>208
逆に餌付けされるに一票
210名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 23:59:10 ID:VCuW8wo1
っていうか、種付けに一票!
211名無しさん@ピンキー:2006/12/25(月) 00:00:30 ID:VCuW8wo1
age
212名無しさん@ピンキー:2006/12/25(月) 05:29:09 ID:b1baiONQ
未完成故色々ミニな和服娘が雀か
種付けはさせてもらえるんだよな?されるんじゃないよな?
なんだか文脈が…
213名無しさん@ピンキー:2006/12/25(月) 17:51:07 ID:WuJV3dXJ
「ひでぼんの書」の続編にあたる"魔法怪盗団"はどこで読めますかね?

もしかして、まだ無いとかいうパターンですか?
214名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 01:20:13 ID:19rq5Wez
君の心の中にあるよ
215名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 13:51:27 ID:O/9gToY7
うまいっ!


座布団全部もってっちゃってください。
216名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 15:19:21 ID:wyDUeDT1
俺はセラエノの図書館で借りて読んだけどな。
217名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 15:23:18 ID:O/9gToY7
それってどこ?

っていうか現実(リアル)の話なの?
218名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 15:24:52 ID:/zI/Zxow
信じるという翼を持ったら目の前に現れるよ。
219名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 17:26:59 ID:x9xiY9IQ
お前らかっこいいな
220名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 17:56:29 ID:29duDRm3
>>217
どうでもいいがsageてくれ。(メール欄にsageと入れる)
221名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 18:58:29 ID:O/9gToY7
失礼しました!

いやはや面目ない
222名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 19:07:58 ID:R8VTa6ln
許さないよ
223名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 19:12:51 ID:O/9gToY7
ヒェ〜((((゜д゜;))))
224名無しさん@ピンキー:2006/12/26(火) 23:04:19 ID:wyDUeDT1
ちゃっかり全レスしてるID:O/9gToY7萌え
つーか馴れ合いスレじゃないんだから自重しろよ・・・。

↓すみませんでしたもう止めます のレスも要らないからな
225名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 00:08:48 ID:aNqsUW8r
>>213
ん〜、気になる。

あるかないかわかんなくなってきた(T_T)

誰か教えて(>_<)
226名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 10:05:35 ID:H8keGfS5
教えてクンになる前に己で探す努力しようぜ?冬厨くん?
227名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 00:25:13 ID:tu1Dj50c
漏れもGoogleで探したけどそれらしいものが見つからないんだよな…

と言うか、ほんとに書かれてるの?
しっぴちゅちゅう(なぜか変換できねぇ)じゃね?
228名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 00:40:57 ID:1Wi5oDDI
↑それって"しっぴつちゅう"じゃない?

しっぴつちゅう→執筆中
229名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 04:37:33 ID:2Fu/ipoa
>>227
ウケたwwww
230名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 18:06:19 ID:SoTcdBJj
warosu
231名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 18:22:12 ID:ZA8FkbMn
鷲巣麻雀&吸血鬼で書けないものかと模索中…誰か意見くれ
232名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 20:09:48 ID:wOQThy65
あまりに突飛なジャンルだと説明が大変になる

だから吸血鬼&しょっつる でいってみるのはどうだい
233名無しさん@ピンキー:2006/12/30(土) 14:06:07 ID:CRIRojhi
しょっつるーっ?
234名無しさん@ピンキー:2006/12/30(土) 17:52:52 ID:NurZQ0Gd
しょうゆ?
235名無しさん@ピンキー:2006/12/30(土) 19:08:44 ID:pnzAK1Q+
怪物王女、いいかんじに面白くなってきた。
236名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 00:31:27 ID:CgCGC74u
吸血鬼だと丸パクリだな
何か他の人外で狙ってみたら?
237名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 01:10:31 ID:0Cx/yol8
ゾンビなんかはどう?
238名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 02:50:49 ID:U4OpMnSb
スライム系やピクシーなど妖精系はどう?
239名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 03:09:28 ID:6jAyCXkK
スライムは妖精だったのか
240名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 05:48:09 ID:+Paer8za
流れや空気読まず質問

犬耳系を考えたんだが何かが足りないんだ。
何か参考資料はないかな?先人の知恵が必要なんだ…。
241名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 12:55:15 ID:e6P9Iph5
>>240
犬種としての形質を前面に押し出すとか。
たとえばシベリアン・ハスキーやサモエド、アラスカン・マラミュートなどに代表される極地犬種は、ソリの牽引に利用されるだけあって、頑健な骨格としなやかで強靭な筋肉を有し、寒さに強く暑さに弱い体をしている。
レトリバー系は人懐っこく、賢い。
Wikipediaで確認すれば結構色々書いてあるから参考にするといいかも。
242名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 14:54:50 ID:KhSzcgbQ
>>240
ttp://pwcolors.xrea.cc/hokankon/wan/index.html
日本産の犬に着物を着せてみるとか?
243名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 16:07:20 ID:HPRXpUe7
保守
244名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 17:49:06 ID:U4OpMnSb
犬耳系に必要なもの
1.耳と尾は必須!
2.つぶらな瞳も捨てがたい!
3.性格はワイルド、または破壊的な世間知らず
4.ご主人に対する態度は、忠誠・反抗・友達etc

など

1は必須! 2・3・4は各自の自由です。
245名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 19:26:29 ID:zhDGRH+L
尾を描写するならば、ちゃんと尾てい骨の位置を踏まえた描写が欲しい。

あと、オバQ少女に絶対的優位に立つイヌ少女、ってのがみたい。

「オイオイ、なんだよオマエ、ブルってんジャン♪」
「お、おねがいだよぅ、僕、イヌには弱いんだよぅ・・・」
「ああん?そりゃオメ、アタイたちイヌなんか、相手にしたくないってか?」
「そんなこといってない! ン、いやぁん、スカートまくらないでぇ・・・」
「ケ、イヌに苛められてこんなに濡らしてやがるくせに、『スカートめくらないで♪』ときた」

両方女の子のつもりで書いてたんだけど、なんだかショタカップルのように思えてきた。
246名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 22:41:22 ID:7mLJmpeJ
つ[中島零 「いぬみみ」]
247名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 23:18:10 ID:6Csc1xi4
>>246
それ2巻は持ってるけど1巻がamazonにもないんだよね。
ショパン(なぜか変換ry)だけで増刷されないのかな。
248名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 23:27:09 ID:U4OpMnSb
>>247
それって"ショハン"じゃない?


ショハン→初版
249$omikuji:2007/01/01(月) 00:05:22 ID:zED36DML
あけおめことよろ
          ,へ                      \     |    /     ,ハ百
         \ \                   \   |  /      ム.只
         /へ/)                    ./ ̄\
    ∧_∧∩  )(            ‐ ‐ ‐−──( ゚ ∀ ゚ )──−‐‐ =夫=_
    .(*・∀・)7   (  !      ______ノ'""ゝ. \_/       フi三iヽ
   ゚ .冂つム゚_」   Y       (_   ____)    ':;  |  \      '─'
  ゜ ム_」」」」ゝ   人    ___) (__∠__   \|    \
   (,_,,ノ `ー´   (  ';   (__________)   ~':;,,.     \
   ,' . / .'     ヽ (_        ,,;::'~            ~':::;;,,,_
  / / '        \ヽ.  __,,,,-‐''"~     ∧_∧   ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)
   '0      __,,..l⊂Z_).⊃!         ( ´∀` )    ̄ ̄ ̄ ̄) (二二二二二......  0
  0Π0- ‐‐'''""   |;;:.:. ヮ . .:::;|        ,べヽy〃へ  ( ̄ ̄ ̄             0Π0
  HΠH       ∩.∧_∧∩    ∧∧/  :| 'ツ' |  ヽ  ̄λ_λ ̄ ̄ ̄ ̄ ∧∧ ̄ HΠH
 EEE      匸(´∀`;)フ   (,゚Д゚,). o |=宗=! o |  ( `ー´) ヮ    (゚ー゚*) EEE
  |l|lil|ili|        瓜ゞッ=Lく   ,くリ=ッ=[ゝ.__」「「「「L_.」  厂〉=ッ冂づ ヌ Oヮ⊂[]ヨ  |l|lil|ili|
,,.<卅卅ゝ.__.,.,.,___.__.,.,.,(__)ヾZ)'_.,.,_じ(ノルハ)Jつ」」」」」⊂ソ.,_.,_.(入ム]つつ.__,L!__. (_」つ.,<卅
250名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 00:20:48 ID:nRDx32OG
あけおめ、ことよろ。
中島零なら同人仲間と組めば、猫(海老)・兎(山葵)・犬の耳がそろうな。
251名無しさん@ピンキー:2007/01/03(水) 11:24:35 ID:24yLCY5O
中島の冬コミ新刊はエトナだったのう。
252名無しさん@ピンキー:2007/01/03(水) 23:25:12 ID:/2Kbmx68
久々にひでぼんの新作読みたいなー
253名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 02:14:12 ID:vlDjHOM0
今更ながら、旧支配者とかは妊娠するのかな?
254名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 02:35:25 ID:/y5849ji
ひでぼんなら妊娠してたぞ。
255名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 03:04:59 ID:9T2XTsBd
>>253
ツァトゥグアとフジウルクォイグムンズハーとか血縁関係にある旧支配者も多いしするんじゃね?
2561/4:2007/01/04(木) 17:54:07 ID:de/3fcZF

 長らく平和が続いていた王国に ある日 魔族が攻め込んできた 。
 緒戦は魔族が優勢に戦いを進めたが 王国もほどなく持ち直し 戦況は膠着し
た 。
 物量では圧倒的に勝っていながらも 質のバラつきが激しかった魔族は 弱小
な末端戦力を王国領内に 大量に潜入させ 後方かく乱を行わせた 。
 それに悩まされた王国は 対抗手段として 「ゆうしゃ」の名の下に民間から
義勇兵を募り これに遊撃の任を与えた 。
2572/4:2007/01/04(木) 17:54:46 ID:de/3fcZF
 ゆうしゃは草原を歩いている。
 と、突然何かに足を取られた。バランスを崩して倒れ込むが、柔らかい何か
がそれを受け止めた。
「ン……、ナニ……?」
 どこからか声が響くと共に、透き通った液体が辺りの地面から吸い寄せられ
るようにして集まり、みるみるうちに人間の女性の形を成した。
 ゆうしゃがつまずいたのは昼寝をしていたスライムだったのだ。
 ゆうしゃは慌てて腰の剣に手を伸ばした。が、すかさず手を伸ばしたスライ
ムに腕を絡め取られてしまった。決まった形を成さないスライムの手はたちま
ち腕伝いに這い上がり、皮の鎧の内側まで侵入してきた。ひんやりとした感触
に脇を撫でられて、ゆうしゃの口から小さく悲鳴が漏れた。
「ニンゲン……、ゴハン……」
 うわごとのように呟きながら、スライムはゆうしゃの背中に張り付き、その
まま上体をうつ伏せに押し倒してしまった。ゆうしゃはほとんど身動きが取れ
なくなった。
 自由を奪われたことで、ゆうしゃは自分の肌を冒していく存在をいっそう強
く意識することになる。冷たい感触が男でも敏感な頂まで至り、ゆうしゃの体
がぴくりと跳ねる。
「ココ、違ウ……、ドコ、ドコ?」
 人が手探りで物を探すように、ゆうしゃの体をスライムの両手が這いまわっ
た。こみ上げる何かを堪えるようにして、ゆうしゃは歯を食いしばった。冷た
いものが表面を伝っているのに、体の奥底はじわじわと熱く沸きあがっていく。
 ゆうしゃはなんとか逃れようともがいたが、不利な姿勢で固められた体はろ
くに動かすことができなかった。
「ン……、コッチ、カナ?」
 しばらく上半身を這い回っていたスライムの手は、やがて骨盤を見つけると、
ついに下半身への侵入を開始した。焦らすようにゆっくりと、しかし確実に広
がっていく冷たい感触。
 まるで自分が少しずつ裸にされているような錯覚に囚われて、ゆうしゃは屈
辱から思わず涙を流した。首筋に寄り添っていたスライムは目ざとくそれを見
止めると、肩越しにそっと寄り添ってきて、舐め取るようにしてその雫を吸い
取った。
「ヘーキダヨ……怖クナイヨ……」
 それが本来の意味での優しさだったかどうかは知れない。が、少なくともゆ
うしゃはその言葉を受けて、無意識のうちにいくらか気を許してしまった。張
り詰めていた糸が緩むと、体の奥底で抑圧されていた炎がじわじわと勢いを増
していった。
2583/4:2007/01/04(木) 17:55:44 ID:de/3fcZF
 結果、スライムがようやく至った時、そこは既に熱く立ち上がりつつあった。
「見ツケタ……、ゴハン……ゴハン……」
 カタコトの人語が、いくらか喜色を帯びていた。ゆっくりとしていたスライ
ムの活動が少しだけ活発になり、ゆうしゃのそこはたちまち例のひんやりとし
た感触に包まれた。突然の刺激に、ゆうしゃの口から不覚にもうめき声が漏れ
た。
 スライムは少し時間をかけてそこに自分の体を十分に集めると、それを波打
つように蠢かせて、ゆうしゃのそれを刺激し始めた。
 揉むような動きに導かれて、ゆうしゃの皮に包まれたそれが敏感な場所を曝
していく。スライムは肉茎全体をすっぽりと包んだまま、弄ぶように刺激し続
ける。
「ゴハン、出シテ……、ゴハン……」
 スライムの不思議な声音が、その色気の無い内容に反して、いくらか昂ぶり
を思わせる何かを帯び始めた。初めは優しく舐め取るような動きだったのが、
いつしか渦を巻くように荒々しい動きとなっている。
 不意に、ゆうしゃの背筋を電撃のような感覚が走った。勝手に反応した体が
びくんと跳ねる。興奮の余り体を揺すり始めたスライムの体が、ゆうしゃの不
浄の穴を掠めたのだ。刺激は定期的に訪れ、そのたびにゆうしゃは堪えられず
に体を跳ねさせた。
「来テ……、ネェ、出シテ……ッ、ゴハン……」
 揺するだけだった動きは、やがて体全体を使った躍動へと移って行った。背
後から覆いかぶさられたゆうしゃは、ちょうど女性が後背位で突かれるような
格好になった。
 頭の片隅で理性が屈辱に憤るが、それもすぐに背筋の電流が真っ白く塗り替
えてしまう。いつしかゆうしゃはだらしなく口を開き、涎と吐息を漏らしてい
た。分身は既に限界を越えて張り詰めている。
 躍動するスライムは意図せずしてゆうしゃの全身を撫ぜていて、それがゆう
しゃに包まれている安心感と摩擦による微弱な快感を高めている。
 ほどなく、彼の分身の膨張は、包み込むスライムの水圧を凌駕し――彼女の
体内に怒涛のごとく欲望を吐き出した。
2594/4:2007/01/04(木) 17:56:27 ID:de/3fcZF

 王国の中心である王城 。
 十四人目のゆうしゃの任命式を執り行う国王の傍に 一人の側近が駆け寄っ
た 。
 一言二言 言葉を交わした後 国王は軽く眉を顰めたが すぐに表情を整え任
命式を終えた 。

 その後 玉座にて 。
「おお ゆうしゃ よ 。死んでしまう とは 情けない」
「いえ、死亡の確認は取れていません。MIAです」
 家臣の冷静な 突っ込みに どちらも変わらぬ と 国王は答えた。
「対象は城下の宿屋を出発したのが最後の記録です。
 北西に広がる草原地帯を縦断中、力尽きたものと思われます」
「警備 を 強化 せねば ならん な 。
 巡回 の 当番表 を 改めろ 。城下へ の 侵入 は 決して 許さぬ よう」
 国防大臣は 短く応えた。
 国王は視線を逸らし 物憂げなため息をつく。
「国を 守る ためとは いえ うら若き 者 たち が 命 を 散らして いく の
 を 見る のは やはり 心が 痛む 。一刻も 早く この 戦争 を 終わらせた
 い もの だ な 」
 国王の言葉に応える者は居なかったが その場に居る全員が 黙しながらも
同意していた。
 四月の上旬 。 春の息吹を横目にしつつ 王国の春はまだ遠い 。
260名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 17:57:38 ID:de/3fcZF
こういうのって需要あるんだろうか。
261名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 18:58:18 ID:kHlB+HX1
とてもあります。
262名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 21:32:59 ID:3kssQWq3
国王のしゃべり方がたどたどしくてワラタw
263名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 22:10:56 ID:v+m6/RE1
需要あります。

今ジェネレーションギャップを感じた
264名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 23:14:05 ID:/y5849ji
途中でなんか続き書く気力が失せて、現在保留中の奴を投下します。
タイトル未定で一応吸血鬼モノ。
265名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 23:15:36 ID:/y5849ji
ムグ……
うつ伏せになった女の口から、クチュクチュと淫靡な音がする。
「っ……、くっ」
その下で仰向けの青年が、思わず秘唇への舌使いを止める。
「ふふっ。どう?」
若い女は、鮮やかな色の唇から青年の紫色に膨張したものを解放して振り向く。
もっとも完全に解放はされない。その下の血管の浮き出たそれは、相も変わらず彼女の繊細な指で握られ、こしこしと扱かれ、さわっと撫でられる。
「す、すごい……よ」
彼は端整な顔をとろんと緩め、ハアハアと息継ぎをしつつ答える。
「まだまだ、よ」
切れ長の目に挑発的な笑みを浮かべて、彼女は再び彼のものを頬張る。ズブッと一気に奥まで咥え込み、先端を喉に当て、ギュッキュと強弱を付けつつ口をすぼめる。
「……うっ、あっ……」
青年の舌は既に、充血して液の滴る彼女の秘所から離れ、ただただ相手の舌技への賞賛を漏らすばかり。
彼女はそれに満足したのか、緩んだ陰嚢をくにゅりと揉みしだく。
「ふふっ。あ、そうだ。サービスに、こっちも弄ってあげようか?」
彼女のほっそりとした指が、彼のやや細めで筋肉質の腿を回り込み、引き締まった臀部の間へとするりと滑りこむ。
「あっ、そっちはダメだ」
喘いでいた青年が、不意にしっかりとした声を上げる。
「え?」
怪訝そうな声が返る。
まさか、馬鹿正直に操を立てる相手がいる、などとは言えない。適当に誤魔化す。
「あ、いや。痔なんだ」
「ふーん……。じゃ、そろそろ一回目行くわよ」
彼女の動きが加速した。蠢く舌が、真紅の唇が、繊細な指が、彼の膨張した先端を、そそり立つ幹を、敏感になった袋を、素早くしかし繊細に舐め、締め、揉む。
「っっっっあっっっっ」
間もなく青年の声と共に、彼女の口中に苦く粘る白濁液が迸る。
266名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 23:16:09 ID:/y5849ji
話は三十分程遡る。
季節は晩春、時刻は宵、青年は繁華街に接する道を歩いていた。灰色のスーツで手に黒鞄といういでたちの、どこにでもいるサラリーマンである。
が、彼は集団に埋没するには少々目立つ。まず細身で長身、次に端整な顔立ち、そして何より自信とでも安心とでも危険な魅力とでも感じられる、不思議で静かな微笑。
丁度、人通りも絶えた時だったため、彼女は彼に目をつけた。
「ねえ、そこのお兄さん」
いつもの様に声をかける。
青年は突然ワンレンボディコン――最近の客の好みだそうだ――の女に声をかけられて、ギョッとして振り向く。
彼女は自分が商売女である事を明かし、今日は客がつかないから閉店間際の値引きだと告げる。最初は警戒しているようだった青年も、彼女の巧みな弁舌に次第に乗り気になり、ついには相場より安い金額で手を打った。
やがて二人は近くのブティックホテルへと入る。そして早速服を脱ぎ、事に及んだいた訳だ。

口中の白濁液をペッとティッシュに捨てると、女は早速第二ラウンドに取りかかる。
彼のスラリとした脚に跨って座ると、彼の萎れたものをそっと握りチロチロと舌を這わせる。右手で中程を握り、先端に舌を這わせ、下の袋をそっと揉む。
彼女の口中で、手の中で、彼が復活してきた。
「じゃ、今度はこうしてあげる」
左腕でグッとすくい上げ、その豊満な胸を強調する。
その豊満な両胸にローションをヌラリとまぶすと、まだ膨らみきってない彼のモノを両側からムギュッと挟む。
そのヌルヌルムニュムニュした感触に、むくむくと彼に元気が戻る。
「ね、どう?」
「ああ、サイコーだね」
青年の口から思わず息が漏れる。
それに気を良くしたのか、さらに舌を追加してチロチロと責める。
「じゃ、いよいよ本番ね」
枕元に手を伸ばして、コンドームを一つ取る。
包装をピッと破り、中身をパクッと口に咥える。そして彼に覆い被さり、慣れた様子で口だけで器用に装着させる。
それから中腰になると彼の腰に跨る。形良く刈り込んだ毛と血色に膨らんだ淫唇がはっきりと見える。
彼のモノにそっと手を添えると、静々と腰を下ろしてズブッと飲みこむ。
267名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 02:06:52 ID:NOTDubeg
>256-249
いいね、これ

しかし戦力を逐次投入する王様は無能過ぎるなw
……いや、むしろ強い人間を集めて生贄にしてるのか?
268名無しさん@ピンキー:2007/01/05(金) 10:53:20 ID:3cZnVoLd
ゆうしゃは ラーのかがみを つかった

なんと おうさまは びじんな まものだった

まもの「わたしの しょうたいを みやぶるなんて なかなか やるわね
みられたからには しんで もらうわ!!!」


そして戦闘後、国総出でお仕置き
269名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 00:37:41 ID:7PljiX+f
>268
えー!?

ゆうしゃ は ひとり で おしおきした!
びじんな まもの は なかまになりたそうに こっちをみてる

じゃ駄目?w
270名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 01:20:40 ID:nKwqPmqU
おしおき は
くさやぶろ に
きまり ました
271名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 01:26:26 ID:CA7VZ/q8





( ゚д゚)
272名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 14:45:39 ID:1PRXyjGI
魔物の口撃!!

ゆうしゃは耐えきった!

ゆうしゃの口撃!!

魔物は逝ってしまった!!魔物「ッッ!!…ハァ…ハァ…ま、まだまだこれからよ!!」

魔物は体制を立て直した!
魔物は騎乗位を繰り出した!!

ゆうしゃはすかさず下から突き上げた!!

魔物に258ポイントのダメージ!!

魔物「クッ----…アッ…アアアアッッ!!ちょっ…待っ…」

ゆうしゃはおいうちをしかける

ゆうしゃは激しく突き上げた!!

魔物「イッ…クッッ!!逝っちゃうッッ!!」

魔物も激しく腰を振り出した。
魔物の締め付ける攻撃

ゆうしゃに282のダメージ
魔物「アッ--…アアッ---…もう駄目ぇッ…!!中にッッ!膣にお願いッッ!!」

ゆうしゃ(の精神)に10000のダメージ

ゆうしゃも逝ってしまった!!

魔物「ハァ…すごい、……すごい量がでてるよぅ…」








ゆうしゃは体制を立て直した。

魔物「…えっ!?」

ゆうしゃは後ろから激しく突き出した!!

魔物「ッックッ---…アアッ--!!…もッ…ぅ無…理だっ…てばぁ!!…ほん…とにッ…死んじゃうぅううッッ!!」
273通り魔:2007/01/07(日) 14:49:57 ID:1PRXyjGI
始めて書いた。
しかもsage忘れた。

スレ読んでて無性に書きたくなった。

色々とスマソ。
一部改行ミス有り
色々とスマソ。
続きはなし。
274名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 16:06:26 ID:cOeY3heo
>>272-273
サキュバスクエスト思い出した。
275名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 16:22:49 ID:up7ZqKMY
口撃ワロスw
276名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 16:45:38 ID:35RYQET9
実際一昔前のエロゲーってこんなんだった気がする
277名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 20:06:30 ID:RyAAURvP
不覚にもワラタw
2781/5:2007/01/08(月) 00:12:58 ID:Mps86YGG

 王国北方に広がる山岳地帯。普段から踏み入る者の少ないその一帯には多種
多様な魔物が巣食っており、古来から危険区域とされていた。
 彼らは魔王を中心とした一派とは関わりが無いため、人間に対し積極的な敵
対行動に出ることは少ない。だが、相手が自らの生活を脅かすと判断すれば、
彼らは容赦なく牙を剥く。
2792/5:2007/01/08(月) 00:14:25 ID:Mps86YGG

 弾かれた長剣が、甲高い音を響かせて舞った。
 武器を失ったゆうしゃは、崩れ落ちるように膝を地についた。その身を包む
皮製の鎧は既に壊れかかっていて、防具としての機能を果たしていない。
「チェックメイトね、ゆうしゃさん。威勢だけは良かったのだけれど」
 闇の向こうからかかる声に、ゆうしゃは唇を噛んだ。
 声の主は、余裕を見せ付けるようににじりよってくる。地に落ちたたいまつ
の明かりを受けて、ゆっくりとその姿が浮かび上がった。
 上体は病的に白い肌と髪を持つ、人間の女性――しかし、その額には人間に
は無い六つの眼。下半身は完全に異形のそれで、昆虫で言う腹のような部分が
続いており、その付け根からは節のある昆虫のような肢が六本生えている。
 その姿は、巨大な蜘蛛を思わせた。
 アラクネ――人々の間でそう呼ばれ恐れられる強力な魔物。
 ゆうしゃは山岳で道に迷い、運悪く彼女の巣に迷い込んでしまった挙句、完
膚なきまでに敗北したのだった。
 死期を悟り、せめて精神だけは屈するまいと、ゆうしゃは心の奥底で覚悟を
決める。
 アラクネはそんなゆうしゃの様子を見届けると、紅い唇を妖艶に歪ませた。
「いいわ……、その顔。すごくいい。悲壮な決意で、自分に酔ってる目ね。
 そんな顔をされると――いじめて、屈服させたくなっちゃう」
 ゆうしゃの背筋に、悪寒が走った。ぞっと底冷えのするような声音。
 反射的に逃れようとしたゆうしゃの顔を、アラクネは両手のひらで挟み込ん
で捕らえる。そして、覗き込むように顔を寄せたかと思うと、むさぼり付くよ
うに唇を奪った。
「ん……、ちゅっ――」
 予測できず、反応が遅れたゆうしゃの口内に、あっという間にアラクネの舌
が割り入って来る。そして次の瞬間、頬の内側に小さな痛みがほとばしった。
「ぷは……、ふふ」
 ゆうしゃは反射的に顎に力を込めるが、アラクネは既に引き払っていた。銀
糸をくわえた紅い唇が、意味ありげに歪んでいる。
 ――どくん、と、ゆうしゃの口内が熱く脈打った。
 熱さは血液の流れに乗り、たちまち全身に伝播していく。
 毒を注入されたことに気付いた頃には、ゆうしゃの体は既に言うことを聞か
なくなっていた。
「ねぇ、勝負をしましょう? あなたの心が屈するのが先か――」
 後頭部にそっと手が添えられ、頭が少し持ち上げられる。アラクネの下腹部
が目に入る――一番上の短い肢が器用に動いて、上体と下半身との境にある器
官を見せ付けるように押し広げる。
「あたしが我慢できなくなるのが先か――、ねぇ?」
 紅く濡れそぼったそこが生殖器であることに気付くと、ゆうしゃは無意識に
喉を鳴らした。
2803/5:2007/01/08(月) 00:18:44 ID:Mps86YGG
 アラクネが二番目の両肢を翻すと、ゆうしゃの下半身を覆っていた着衣に大
きく一文字の裂け目が走った。そして、短い一番目の両肢が器用に動き、下着
をずらして起き抜けの分身を引き出す。異質な感触に突然分身を触れられ、ゆ
うしゃのそれはぴくりと反応した。
「ふふ……、びっくりした? こうなってるの」
 それに気付くと、アラクネはゆうしゃにその肢を見せ付けた。一番目の肢は
他の肢と違って尖ってはおらず、先端に細かな毛がびっしりと生えそろってい
る。
「この肢の使い方は、これから見せてあげるから――よぉく見ててね?」
 アラクネは一番目以外の肢を突っ張らせ、体を屈した。ただでさえ巨大な袋
のような腹部が、更に大きく屈曲する。
「さぁ、見ててよ――、ん……っ!」
 アラクネが力を込めるようなうめきを漏らすと、腹部の後端から白く細長い
何かがほとばしった。下腹部に張り付いたそれは粘ついていて、不思議な弾力
を持っている。蜘蛛の糸――ゆうしゃの脳裏に、すぐにその言葉が浮かんだ。
「すごいのよ、これ――」
 アラクネは短い一番目の両肢を別の生き物のようにせわしなく動かし、あや
とりの要領でそれを編み上げていく。
 ゆうしゃの肉茎の周囲で、太く編まれた白い糸が複雑に交差する。
「ん……、ふ――」
 それにつれ、アラクネの唇から漏れる吐息が熱さを帯びていく。
 よく見ると、せわしなく動く両肢は、定期的に同じ場所を擦っているようだ
った。
「ふふ――、気付いた……?」
 アラクネは動きを止めると、ゆうしゃの胸に自らの体を横たえた。そして、
空いている方の腕で、ゆうしゃの方手を自分の下腹へと導く。ちゅく、と水っ
ぽい音がして、指先が熱くぬめった蜜壺に沈み込む。
「糸に、愛液をまぶしてるの――滑りが良くなって、ぬるぬるになるのよ」
 ゆうしゃの腕の端を、糸の冷たくぬめる感触が一瞬撫ぜた。それだけで背筋
に震えが走り、鳥肌が立つ。
「さぁ……、始めるわよ」
 ゆうしゃの肉茎に、八方から弾力のあるぬめった感触が押し付けられた。う
めき声が漏れる。冷たい刺激とぬめりとで、半勃ちだった分身がたちまち熱く
張り詰めていく。
 アラクネはせわしなく動く両肢で巧みに糸を繰り、ゆうしゃの分身を責め立
て始めた。根元を軽く舐められたかと思えば、首の辺りを強く締められる。絶
え間なく送り込まれる不規則な快感に、まだ立ち上がり切らないにも関わらず
一気に射精感がこみ上げる。
「……あら、まだダメよ?」
 しかし、アラクネは敏感にそれを察知し、ぎりぎりで刺激を止めてしまった。
かわりに、肉茎の根元を糸で強く締め上げる。ゆうしゃの肉茎の先が、抗議す
るように赤黒く張り詰めた。こみ上げてくる何かが、鈍い痛みと疼きを残して
押し留められる。
 それが去ると、アラクネはすぐにまた肢を蠢かせ、ゆうしゃの分身への刺激
を再開した。しかし、ゆうしゃが上り詰めそうになると、やはり同じように肉
茎を締め上げて射精を妨げてしまう。
 短い間隔で繰り返し押し上げられて、ゆうしゃは荒い息をつく。視界が歪む。
体力が更に磨耗していく。こめかみが脈動し、鈍い痛みとともに思考を阻害す
る。
 何度目かの絶頂の直後、やはり根元を締め付けてそれを押し留めつつ、アラ
クネはゆうしゃにささやいた。
「ねぇ……、イきたい?」
 毒の回っているゆうしゃは首を動かせない。ただ朦朧とした瞳で見つめ返す。
「声は出るわね……、ねぇ。
 『イかせてください』って哀願すれば、考えてあげなくもないわよ?」
 あえぐように呼吸するのが精一杯の気道は、ただ声を出すのも苦しい。
 毒を注入された位置と近い舌は、重く動きが鈍い。
 それでもゆうしゃは、力を振り絞るようにして、大きく息を吸い込み――
2814/5:2007/01/08(月) 00:20:15 ID:Mps86YGG
 ――口の端から、唾を吐き出した。
 力の入らない舌では方向が定まらなかったのか、アラクネの顔には当たらな
かったが――意志を伝えることには成功した。今まで、戦っている最中でさえ
余裕を崩さなかったアラクネの顔に、ごくごくわずかながら動揺が走った。
 ゆうしゃは精一杯に顔に力を込め、口元で皮肉げな笑みを作る。
 ――精神だけは、決して屈しない。ゆうしゃは、自分の卑屈にさえ思える覚
悟を貫き通すと決めたのだった。
「ふ。……ふふふふふ」
 そんなゆうしゃの様子を見届けて、アラクネは含み笑いを漏らした。怒りを
こらえているのかと、ゆうしゃは思った。――そうではなかった。
「んっ、んん、んん〜っ」
 アラクネが、また強引に唇を寄せてくる。反射的に逃げようと小さくよじっ
た体を、両腕で押さえつけられた。
 最初の口付けでは奥に押し込んでくるだけの舌使いだったが、今度は違う。
積極的に舌を絡め、唾液をすすってくる。まるで――深い仲の恋人同士がする
ように。
「あたしの負けだわ。――完敗よ、もう我慢できない」
 長い口付けを終えたアラクネが浮かべていたのは、ゆうしゃが今まで見たこ
とのない笑みだった。同じ妖艶さを漂わせながらも、どこか暖かい。八つある
目の一番下の、人間に近い構造をした瞳が、こころなしか潤んで見える。いつ
の間にやら背中に両手が回されている。逃さないとばかりに。
 そして、アラクネはゆうしゃの耳元に唇を寄せると、ささやくような声量で
呟いた。
「――あなたの子が生みたい」
 ゆうしゃの腰がわずかに逃げるように動いたが、すかさず一番目の肢ががっ
ちりと捕まえた。
 頬を引き攣らせるゆうしゃにもう一度濃厚なキスを見舞うと、アラクネはそ
のままゆっくりと腰を落とした。
 熱く粘ついた感触がゆうしゃの肉茎を舐める。絡みついたままの糸が、膣圧
で更に締め付けられる。
「ふぅ――、んっ、ちゅ――」
 アラクネはそのままの姿勢で、グラインドさせるように腰を使い始めた。
 滴る愛液でほつれた糸が、滾るような熱さを伴いゆうしゃの肉茎をまんべん
なく撫で回す。
「ん、んんぅ――、ん」
 アラクネは両腕と肢とを使い、これ以上無いほど密着してくる。それでいて
滑らかに腰が動くのは、彼女の人間とはかけ離れた体の構造が故だ。
 その人間ではあり得ない責めを受けて、事前に散々高められていたゆうしゃ
が長く耐えられるはずも無かった。
「ぷは――、ふふ、来てるわ、あなたの……」
 ようやく唇を開放すると、アラクネは片手で自分の下腹を撫ぜた。解放され
たゆうしゃのそれは、激しく脈動しながらそこに欲望を流し込む。
 自分自身が強く搾り取られるような感覚がして、ゆうしゃは虚脱感に包まれ
る。
「ダメよ、まだできるでしょう――んっ」
 が、むさぼるように暴れる舌を押し込まれて、すぐに意識が覚醒した。
「――今日は、あと二回はここにもらうわ。
 あたしの体に火を点けた責任、取ってもらうわよ――ダーリン?」
 ゆうしゃはただ、引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。
2825/5:2007/01/08(月) 00:21:34 ID:Mps86YGG

 王が執務室で書類に目を通していると、書類を手にした側近が入室してきた。
 それだけで、国王は内心ため息をつく。彼が現れたということは、すなわち
また一人のゆうしゃが消息を絶ったことを意味するからだ。沈痛な表情からも
それを察することができる。
 そして、側近は国王の予想と寸分違わぬ報告を行った。
「遺体 は 確認 でき たの か ?」
「いえ、確認できておりません。
 山村の宿屋で記帳した後、消息を絶っています」
「遺族 に 申し開き が できん な 。
 遺骨 を 渡すこと も できない とは」
 たくわえた白い口髭の合間から、物憂げなため息が漏れ出る。
 側近は応えなかったが、その眉は鎮痛な様子でひそめられている。

 八月。夏の終わりの苦しい残暑は、長引く苦難を思わせる。
283名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 00:23:44 ID:Mps86YGG
お手軽ライトエロを目指しているのに、終わってみればいつの日もどろり濃厚。
細かい設定とかは考えてないので、細かいことは気にしないで読んでください。
284名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 00:36:09 ID:9/KpBnr8
>>283
乙!
今度 は ロリ小○生 な ハーピィ で 頼む
285名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 22:44:00 ID:gwZVyTlz
次は世間知らずな若いサキュバスをお願いします
286名無しさん@ピンキー:2007/01/09(火) 16:29:50 ID:QR8yQ4MI
その昔、処女のサキュバスがヒロインという漫画があってのう。
287名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 00:58:43 ID:XugvInJc
何?りりむキッス?
288名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 16:47:38 ID:bl/MdcAf
スレ違いでスマン

どこかのスレでミュージシャンの夢を諦めた主人公が出会った巫女さんによってギターから宿り神?がでてきて
その二人と主人公がHするっていうSSが投下されていたスレって知ってる?
289名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 18:42:47 ID:mzm2FY/8
290名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 23:34:52 ID:bl/MdcAf
>>289
ありがd

そしてわかるか!スレのタイトル分からないのにどうやって探すんだ
291名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 05:32:22 ID:HIMC5a35
>>290
何に怒ってるのかよくわからんが、このスレ(人外スレ)だよ、という意味で書いた。

初出を知りたいのか?

【妖怪】人間以外の女の子とのお話3【幽霊】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1065717338/271-276,369-375
【妖怪】人間以外の女の子とのお話4【幽霊】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1072019032/163-179

だ。みみずんにキャッシュがある。
292なしれ ◆8XSSeehUv6 :2007/01/15(月) 21:54:13 ID:a7evj31t
「住み込み弟子」シリーズ投下します。
内容:ラミアもの。
苦手な人はNG指定など推奨。5レス消費予定。
293なしれ ◆8XSSeehUv6 :2007/01/15(月) 21:54:51 ID:a7evj31t
 魔導具店「ナイアのお店」の二階から見えるのは、普段と違った夜だった。
陽気な音楽、楽しげな笑い声、歓声。そんな喧噪が夜空にこだまする。
 今日は冬至祭、明日は新年祭。ビルサでは一年が終わり、新しい一年が始まる時だ。
年が変わる夜、二つの祝祭に挟まれた夜は街全体が活気に飲まれる。神殿や広場に人が溢れ、
そこら中でどんちゃん騒ぎをする。日ごろの罪滅ぼしなのか、大商人たちは酒や食事を
盛大に振る舞い、それに群がる人々が飲んで歌って踊りまくって吐いたり寝込んだりする
――そういう夜だ。
 そういう夜、なんだけど。
「あぁ‥‥ん‥‥ラート‥‥」
 壁に背中を預ける俺に、もう裸になった師匠――いや、ナイアさんが絡みつく。
俺が身動きできないように、手の甲を壁に押しつけさせ、そして身体を密着させてくる。
豊かな――なんて言葉じゃ到底たりない大きさの胸がふたりの間でむっちりと形を変え、
みずみずしい唇が俺の唇を中心にキスの雨を降らせる。唇、額、頬、首筋、唇、まぶた、
唇、唇‥‥。それに応えようとすると、くすっ、と笑みを浮かべて頭を後ろへ引く。
手を押さえられているから、それ以上は追えない。もどかしい。
俺が諦めると、また、キス。舌を絡めもしなければ唇をこじ開けもしない、軽い口づけ。
時には息を吹きかけながら、唇を触れさせてくる。
 手が、ぐっと壁に押しつけられた。そのことで初めて、俺が力を込めていたことに
気づかされる。しっとりと柔らかい手を感じながら、じりじりと焦れながら、
甘いキスの雨を受ける。体が熱くなってくる。芯からなにかが湧き上がるようにあふれ出し、
体と心を高ぶらせてゆく。
 抱きしめたい。思いっきり抱きしめて、逃げられないように頭を後ろから
押さえ込んで、息ができないほどキスしたい。でも、ナイアさんはそれを許してはくれない。
俺の心なんて手に取るように分かっているくせに――分かっているからこそ、
両手を自由にさせてくれない。もどかしさで全身がむずむずする。
「ふふ‥‥そんな顔しなくてもいいわ、あとでじっくり楽しみましょ‥‥。でも、今はだめ」
 そう言うと、また唇を何度も何度も触れさせる。
 顔中に隙間なく、といっていいほどたっぷりキスを降らせたあと、ナイアさんは
俺の耳朶を噛んだ。前歯で、ごく軽く。今度は首筋。鎖骨。また、耳朶。キス。
俺の手を壁に押さえつけたまま、キスと甘噛みを交互に落としてゆく。そして首の
付け根あたりから、つうぅっと舌の先を這わせ、あごへ――ついに、唇へと上ってくる。
思わず唇を開け、舌で迎えようとしたら――やっぱり顔を引いて、かわす。くすくすと笑う
ナイアさん――勝ち気で、自分勝手で、でもたまらなく色っぽい微笑‥‥何度見ても、
毎日見ていても、それでも心臓がばくばくと鳴る。
「唇、閉じて‥‥。かわいがってあげるから」
「‥‥でも、俺‥‥もう‥‥」
 くすくすと笑って、だめよ、と囁く。仕方なく口を閉じる――耳元で囁かれ、目も閉じた。
 わずかな、本当にわずかな時間が過ぎてゆく。堪えられないほどゆっくりと、
ナイアさんの唇を待つ。外の喧噪も凍り付いたように聞こえない。
無音の中で、刺激を待つ――。
 ぬるり。
 びくんっ、と体が跳ねる。上唇を舐めただけの、軽い感触。
舌先だけを使った愛撫――それは信じられないほど複雑な感触だった――そんな気がした。
 ぬるり。
 今度は下唇。
「――っは‥‥っ」
 思わず浅く息を吸い込んでしまう。瞬間、待ち望んでいた感触が襲いかかってきた。
思わず開いた口、歯を一気に突破し、長い舌がなだれ込んでくる。
「んぅううっ! んぅ、はぁあ‥‥」
 上あごの裏を舐め上げ、かと思うと歯茎の内側を舐めてゆく。俺の舌をこともなげに
巻き取り、絡め取ってゆく。逃れようとして舌を暴れさせても、抵抗にさえならない。
それでいながら、舌の裏、歯茎、頬の内側を余すところなく舐め、擦る。
ざらつく熱い粘膜に蹂躙され、犯されてゆく。いつもならもう少し反応できるのに‥‥!
294『冬至祭の夜』 ◆8XSSeehUv6 :2007/01/15(月) 21:56:39 ID:a7evj31t
「ぷはぁっ! はぁ、はぁ‥‥ナイ、ア、さ――!」
 ぶちゅうぅっ、ぐちゅ、ずじゅぅうっ。
 ようやく息を継げたと思ったら、それも一瞬。
一気に襲いかかられて、どんどん追い詰められてゆく。
は、反撃‥‥っく、ぁ、無理だ‥‥手が‥‥押さえられて‥‥力、入らない‥‥!
手は相変わらず壁に押しつけられたまま。両腕を広げたまま口を犯され、
思考にもやが掛かってゆく‥‥。
「ぷは‥‥ぁぁ‥‥っ」
 ――かくん。

 手はナイアさんに捕まったまま、俺の膝が降参した。背中を壁にもたれさせ、
ずるずると崩れてしまう――それを大蛇の下半身で支えられ、どうにかへたり込まずに済んだ。
ずっしりと重いまぶたを必死に開けると、目の前には妖艶に微笑むナイアさん。
その顔が近づいて、俺の顔を少し上へ向け‥‥また、キス。もう手を押さえ込みもせず、
柔らかな両手で俺の顔を支えて‥‥舌を絡め、舐め、そして唾液を流し込んでくる。
自然に、こくり、とそれを飲み下す。でも止まることなく唾液は流れ込んでくる。
それを飲み下し、舌をもてなす。唾液が口角から溢れ、たらたらとこぼれる。
 抱きしめたい――でも、もう腕は自分の物とは思えないほど脱力しきって、
まるで思うようにならない。
ひたすらに口を犯され、心を抱かれ――ああ、こういうの‥‥あったよな‥‥。

 ‥‥初めて、ナイアさんに抱かれたときだ。俺は初めて触れる女性、初めて触れるラミアに
抱きしめられ、熱いキスを味わって‥‥

「‥‥っふぅ‥‥っ! ――ぁ‥‥ぁっ!!」
 頭が真っ白になり、手足ががくがく震え、
ナイアさんの舌が一層強く絡まり――意識が、破裂した。

 ――わあぁぁっ、と歓声が聞こえた。陽気な歌声が聞こえた。
でも、それは窓越しに聞こえる音。
「‥‥久しぶりね、あんたがキスだけでイくのは‥‥。
ふふふ、なかなかいい顔になってるわよ‥‥」
 股間に染みを広がらせてへたり込んでいる俺にからみつき、ナイアさんが艶然と微笑む。
まだしびれたように力が抜けている腕でその細い腰を抱くと、
嬉しそうに俺を抱きしめ返してくれた。
「‥‥最近はあんたもほんとにすごいけど‥‥あたしのこと、甘く見てたでしょ‥‥
ふふふっ‥‥」
 ‥‥ああ、そうだった。それが発端だっけ‥‥。

 * * * * *

 それは今日の夜、食事が終わった後のことだった。まだ多少おとなしい喧噪を
外に聞きながら、俺は思い出したように訊いた。
「そういや師匠、年越しのかがり火は見に行かないんですか?」
 冬至祭の深夜には、ヴァスム、アプトス、ラミーサの三神殿で巨大なかがり火が焚かれる。
力を失った太陽に活力を与えるため、かつて神々が焚いたと言われる火柱――が
そもそもの始まりだそうだけど、実際には年末年始最大の単なるお祭り騒ぎだ。
で、それを見に行くのかどうか聞いてみたんだけど――
「いやよ、めんどくさい。‥‥だって寒いじゃない。人混みばっかりで暑苦しいし」
 ‥‥師匠、理由がめちゃくちゃです。最初の一言にすべてがこもってるんだろうけど。
「じゃ、家で年越しですね」
 皿を片付けながらそう言うと、
「そうね。ベッドの中で‥‥よね? ふふ、なんだか燃えそう」
 夕飯を済ませてしまうと、師匠は――いや、ナイアさんは、あっというまに思考が
「夜」になってしまう。それを改めて痛感しつつ、うっかり言ってしまったんだ。
「ナイアさん‥‥たっぷりかわいがってあげるよ」
 さすがに普通の会話でそれを言うのは恥ずかしくて、耳元で囁いたんだけど‥‥
295『冬至祭の夜』 ◆8XSSeehUv6 :2007/01/15(月) 21:58:49 ID:a7evj31t
「へぇ‥‥。昨日あたしを失神させたからって、あたしを完全に制御してるつもり?
いいわ、思い知らせてあげる。‥‥覚悟しなさい‥‥ふふふ」
「えっ!? あ、いや、そういうつもりじゃなくて‥‥!」
「そんなにおびえなくてもいいじゃない、することは同じなんだから。
――片付けが終わったら来てね。‥‥一生忘れられない年越しにしてあげるわ」
 にやりと笑ったその美貌は、とんでもないほど迫力があった――。

 * * * * *

「‥‥ナイアさん‥‥すごかった‥‥です‥‥」
「んふふ、たまにはこういうのもいいでしょ?」
 嬉しそうな笑顔。機嫌、直ったかな‥‥なんて思った俺は、やっぱりナイアさんを
甘く見ていたんだろう。
「‥‥ふふっ、もっともっと気持ちよくしてあげる。記憶が飛ぶくらいイかせてあげる。
たっぷり味わって、感じて‥‥あたしのラート‥‥」
 ちゅうっ、じゅるぅ‥‥っ、くちゅ‥‥。
 また、深い口づけ。俺の舌を翻弄しながら、手早く服を脱がせてゆく。脱がされた服が
ぱさっと落ちると、ナイアさんのきめ細かい肌が、腕が、俺の体に密着してくる。
しっとりと温かくて、柔らかくて‥‥。
「‥‥ぁっ‥‥!」
 ひやり、と感触。柔らかい指先が、俺のあそこに絡みつく。亀頭に手のひらを
かぶせるようにして、指先でサオを包み込む‥‥。さわさわと繊細になぞり、撫でてゆく。
男が一人でするときみたいな激しさはなくて、軽く、優しい。でもその指先は
俺の感じるところを確実に攻めてくる。さっき放った精子を塗りつけながら、擦りあげ、
包み込み、撫で、確実に俺を高ぶらせてゆく。
「‥‥ん‥‥はむ‥‥うぁ‥‥ナイア、さん‥‥うますぎ‥‥」
「当然でしょ‥‥んん‥‥、はぁ‥‥ん‥‥。‥‥イッてもいいよ‥‥」
 そう言うと、いきなり手の動きが変わる。手首をしならせて、そのバネでしごき上げてくる。
 にちゃっ、にちゃっ、と粘つく音が響き、同時に下腹部から全身に熱が湧き上がり‥‥
「っく、ぁあっ、そ、そん‥‥な‥‥っ!!」
「我慢しなくていいわ、出しなさい‥‥ほら、ふふ、何度でもイかせてあげるから
――耐えても無駄よ」
「ぁ、っくぅううっ――!!!」
 ブシュッ!! ビュゥッ、ドクンッ、ドクン、ビクッ、ビクン‥‥!
 またしても精液を吹き上げる俺の分身。勢い良く吹き出したそれはびたびたと
ナイアさんの下半身を汚し、床を汚す。っく、なんで、こん‥‥な‥‥気持ち‥‥いい‥‥。
「‥‥たくさん出たわ‥‥。すてきよ‥‥たっぷりぶちまけたのにまだガチガチ‥‥」
 ペニスをしごき上げながら、俺の唇に軽いキス。快感に朦朧として、
もう何をしていいのかもわからない。‥‥このままだと、ひたすらナイアさんに
抱かれ続けるのかも‥‥。
「‥‥ふふふ、だいぶ反省したみたいね。眼が完全に堕ちてるわ‥‥。ねえ、どうしたい?」
 挑発的な眼で俺を見つめながら。きれいに紅を引いたつややかな唇が、
俺の欲望を見透かしたように笑みを浮かべる。
「入れ‥‥たい‥‥」
「聞こえないわ‥‥」
 耳元に唇を寄せて、くすくすと笑う。
「お願い‥‥ナイアさん、入れさせて‥‥」
「ふぅん、どこに? ――なんてね、冗談よ。‥‥これ以上焦らしちゃかわいそうだしね」
 そこまで言うと俺の脇に手を差し込み、ぐっと持ち上げる。そしてナイアさん自身も、
蛇の下半身を伸び上がらせて――疑問を差し挟む暇もなく、俺は立ち上がらせられ‥‥
「腕、絡ませてごらん‥‥そう、あたしの首に。しっかり抱きついてなさいよ‥‥」
 まさか、立ったまま‥‥? そう思った時には、もう熱く濡れたところが先端に触れていた。
「‥‥いくよ、ラート。抱いてあげるわ‥‥」
 右手で俺の分身を導き、左手で俺の腰を抱え――
「あぁ‥‥はぁ‥‥っ!!」
「っく‥‥っ!!」
 ――ちゅくっ‥‥ずぶんっ‥‥!
 腰を抱える手が抱き寄せられたとたん、俺はナイアさんにしがみついたまま、ついに繋がった。
296『冬至祭の夜』 ◆8XSSeehUv6 :2007/01/15(月) 22:00:28 ID:a7evj31t
「‥‥っ、んぅ‥‥っ。はぁっ‥‥、なかなか、いいでしょ‥‥新鮮で‥‥。
ほら、腰動かしてごらん、そう‥‥前後に‥‥」
 下半身を脚の間に割り込ませるようにして、そして俺の腰を両手で抱きしめる。
上手く腰が動かせない俺を楽しむように笑みを浮かべ、前後に身体をくねらせる。
意志とは無関係に張り詰めたモノが、その動きにあわせてナイアさんを貫く――そのたびに、
柔肉が俺を溶かしてゆく。
「っ、な、ナイアさん‥‥そん‥‥な、激し‥‥!」
「まだよ、まだ‥‥もっと激しくしてあげる‥‥!」
 言うやいなや、俺の背中を壁に密着させる。そのまま、ナイアさんが猛然と身体を
くねらせ始めた。おっぱいが胸板にこすれ、腰が上下左右、前後にくねる。
俺が主体のピストンでは味わえない感触――信じられないほど、気持ちいい‥‥!
 左右、前後に腰を動かすたびに、熱い襞が締め上げる。ぐちゅっ、ぶぢゅっ、と肉沼が鳴き、
俺の剛直を溶かさんばかりに貪る。上気した微笑がのぞき込む。淫猥な、勝ち誇った笑みを
浮かべ、一層強く腰をこすりつけ、叩きつけてくる。――俺にできるのは、ただ耐えて、
柔肌に抱かれながら犯されることだけ。
「ああっ、はぁっ、くはぅっ‥‥!! どう、気持ち、いい、でしょ‥‥?
うっ‥‥ぁぁ、いいわ‥‥すごく‥‥!!」
 口角から涎を垂らしながら、うわずった声で囁く。
 ぱちゅっ、ずじゅっ、ぐちっ、くちゅっ‥‥!
「はぁぁっ‥‥! いいわ、ラート‥‥まだ、まだイッちゃだめよ‥‥限界まで我慢して、
それから――あああぁっ! はぁあっ、そこ‥‥いいっ‥‥!!」
 俺を立たせたまま、深く腰を落とす――のけぞり、鋭く喘ぐ。荒い嬌声で酷使された喉が、
そして全身が色づいている。全身を艶めかしくくねらせると、
大きな乳房がゆさゆさと揺れ、弾む。
 すごい‥‥っく、だめだ‥‥こんな痴態、見せつけられて‥‥はぁっ、締まる‥‥っ!!
「――ぐぅうっ! お、俺が、調子に、乗っ‥‥て、まし、た‥‥!!
も、もう、許し‥‥うぅうっ!!」
「あはぁっ!! いい、いいわ、たまらない‥‥!
はぁん‥‥だめよ、今さら謝っても‥‥ほら、もっと感じて‥‥!!」
 必死にこらえながら謝る俺を抱きしめ、一層強く上下、前後に身体を揺する。
汗でぬめる肌に必死に抱きつくと、ますます快感が強くなる‥‥やばい‥‥お、墜ちる‥‥!
「‥‥な、ナイアさ‥‥ん‥‥ぅああぁぁぁああっ――んうぅううううっ!!!」
「あ、あぁあっ、――――っっ!!!」
 抱きつき、腰を振り、呻き――唇をふさがれながら。
三度目をナイアさんの身体に放った。抱き合い、唇を重ねたままがくがくと震える‥‥。
「かは‥‥っ‥‥あ、ぁぁ‥‥っはぁ‥‥っ!!」
 白い喉をのけぞらせ、不規則に息をつく。俺を抱きしめて立ったまま、ナイアさんは
ビクビクと震えていた。壁から俺を離して抱きしめ、そのまま少しずつ、
ずるずるとベッドへ近寄ったかと思うと‥‥ゆっくりと身体が傾き――え‥‥!?
 ――どさっ!!
 驚く間もなく、二人はもつれ合ったままベッドに倒れ込んだ。
「ああ‥‥ごめ‥‥ん‥‥。はぁう‥‥イッちゃった‥‥」
 俺の上に覆い被さりながらとぎれとぎれに囁く声は、熱っぽくうわずっている。
しっとりと汗ばんだ肌を抱きしめると、甘い吐息と笑いが耳をくすぐった。
「‥‥あふ‥‥。気持ちよかった‥‥。あ‥‥んっ、すごい‥‥まだ硬い‥‥。
うぅっ‥‥ん、もっと‥‥楽しみましょ‥‥あぁっ、いい‥‥!」
 俺をベッドに押しつけ、見おろす。妖艶な笑みを浮かべたかと思うと、ねっとりと
腰をくねらせる。目の前に弾む乳房を鷲づかみにすると、眉根を寄せて喘ぎ混じりの
微笑を漏らす。淫らな美貌、しなやかな肢体、脚を擦る鱗の感触――ひとつひとつが
五感を刺激し、三回果てた俺の下腹部へもう一度力を集めてゆく。疲れているはずなのに、
そんな気がしない――そんな俺を感じるんだろうか、ナイアさんも甘い笑みを一層淫らに
染め上げて、いやらしい喘ぎを大きくしてゆく――。
297『冬至祭の夜』 ◆8XSSeehUv6 :2007/01/15(月) 22:02:03 ID:a7evj31t

 * * * * *

 もう、嵐のような夜だった。上になり、下になり、絡まり合って。俺の呻きも
ナイアさんの喘ぎも途絶えることなく、必死になって快楽を紡ぎ合う。
ギシギシと叫ぶベッドの悲鳴が、浮かれた人々の騒ぎよりも大きく響く。
 ――突如、外の歓声が大きくなった。
街全体を包む歓喜のどよめき――それに、ナイアさんのよがり声が共鳴し、響く。
「あぁあっ! いい、いいわラート‥‥!! っく、あはぅっ‥‥み、見てごらん‥‥。
年越しのかがり火――ここからも、見え、るの、よ‥‥っくぅううっ!!」
 俺を組み敷きながら、ナイアさんが声を絞り出す。その身体を抱きしめたまま
頭をそらせると、窓の外に明かりが見えた。遠くで赤い点がちらちらと光っていたかと思うと、
見る間に大きな炎となって星空を焦がしはじめる。
「‥‥あれ‥‥ラミーサ神殿の‥‥だっけ――っく、ちょっ‥‥」
「そうよ、愛と豊穣の女神の‥‥ね。ふふっ、休んじゃだめよ。ほら、ああっ‥‥んうぅ‥‥」
 二人で腰をくねらせながら、唇を重ねながら。特別な夜は更けていった――。

 * * * * *

 新しい年の二日目。冬の太陽が少し低めに街を照らす。窓の下からは楽しげな笑い声。
小さな子供が走り回っているんだろう、ぱたぱたという軽い足音や、甲高い歓声が響く。
でも、この部屋はもちろんそんなことは関係ない。
「あっ‥‥かふっ! ちょ‥‥っ、あぅうっ! 激し‥‥すぎ‥‥ぁああんっ!!」
 ナイアさんの背中を壁に押しつけ、立ったままぐいぐいと犯す。モノで貫き、
抱き合ったまま腰を突き上げる。快感に飲まれるナイアさんは
体をまともに支えられず‥‥一層深く俺に貫かれる。そう、この前の晩と逆の体位だ。
朝っぱらから何を‥‥俺もそれはわかってるけどさ。
 ――新年最初の週は休業が普通なんだし、それならたっぷり楽しみたいでしょ?
とはナイア先生のお言葉。
「そんなに大きな声出して‥‥外に聞こえるよ――ほらっ!」
「っくぁああっ!! だ、だめ、そんな‥‥またイく、許して‥‥!」
 がくがくと頭を振って哀願する。背中に爪を食い込ませ、なんとか上へ逃れようと
必死になってる。
「‥‥そう言った俺を、ナイアさんはどうしたっけ?」
「ひぅっ!! ま、待っ――あああぁあああぁぁああっ!!!!」
「またイった‥‥。ふふ、いい顔だよ、ナイアさん。
もっともっと、おかしくなるくらいイかせてあげるよ‥‥」
 外は寒いのに、二人は汗だく。とろけた眼で俺をにらむナイアさんを、
さらに言葉で責めてあげる。
 ――ああ、次は絶対仕返しされるよな、これ‥‥。
 ちょっと怖い気はするけれど、だからといって今、手加減する気はない。
だって――ナイアさんもそれを望んでるんだから。
せっかくの新年祭、二人で楽しく過ごさないとね。


(終)
298なしれ ◆8XSSeehUv6 :2007/01/15(月) 22:03:02 ID:a7evj31t
以上です。半月ほど出遅れた感がありますが…
299名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 22:26:45 ID:kpu6KeJl
魔王(♀)と勇者(♂)の絡みギボン
300名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 22:50:55 ID:r4dxr/Nj
>なしれつぁん
何故だろう。ナイアさん攻めというシュチュに違和感を感じるのは。
ともかくGJ

>魔王(♀)
超絶魔力のツンデレ魔王(処女)が大学生にボコられて下僕扱いにされるちょっとエッチなラブコメを昔読んだ覚えがあるんだけど誰か知りません?
確か魔王(処女)は「ナス子」とか呼ばれてたんだけど。
301名無しさん@ピンキー:2007/01/15(月) 23:45:32 ID:kpu6KeJl
302名無しさん@ピンキー:2007/01/16(火) 01:01:09 ID:BnZandao
>>278-282
蜘蛛孕ませ乙
やばいな、この調子じゃ魔物が増えちまうw

>なしれさん
ラブラブ乙
二年姦通って、いつが姫始めやらw
303名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 01:18:09 ID:5L9khxDJ
ラミア乙です
304名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 12:48:35 ID:xLDnJMZB
GJ

三神殿ってラミアいる街にはラミーサって神殿のみ?
305名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 16:20:54 ID:R5C7cIFg
なしれさんGJ!

ここまでラブラブだと、たまにはやきもち焼くところとか見て見たいですなあ。
306名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 16:37:46 ID:FA4K4I91
正月だけに、やきもちネタを。
307名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 19:15:50 ID:06rj8oCR
いつもGJ!
おれは、二人が小旅行とか行くの読んでみたい。
露天風呂えっちとか。w
308なしれ ◆8XSSeehUv6 :2007/01/17(水) 19:25:01 ID:U3on7ysr
感想くれた方々、thxです。
相変わらずいちゃついてるだけの二人ですいません orz

>>304
いや、作中の街には「三神殿」もそれ以外もあるんですが、
ナイア宅の二階の窓から見えるのはラミーサ神殿のみ、ということです。

>>306
誰がうまいこと言えとw
309名無しさん@ピンキー:2007/01/18(木) 00:36:35 ID:itCZmdWS
やきもちってーと、ラートが近所の女の子と少し仲良くなったのを見て、
ナイアさんが夜にテクニックの限りを尽くすと言う流れが頭に浮かんだ。
310名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 00:29:21 ID:D4ZV/W9s
このスレの住人的にウィッチブレイドはどうなんだろう
本スレでは変身後の顔が恐いとかで微妙だったけど…



俺?俺はもちろん大歓迎だ!変身後のマサムネに犯されたい!
311名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 17:28:26 ID:IF0fltVF
ナイアさんを読んでて思ったんだけど、ラミアはたいてい豊満なオネーサンとして書かれる。
けど、炉なラミアって言うのがいても良い…よね?今までにいたっけ?
まな板ラミアは某ネトゲにいるけど。

炉ラミアが大人ラミアを見習って人間を襲ってみるも、
ロールしようにも蛇部分の長さが短いから腰に一巻きしてるだけ、とか。

襲われた人間がお情けで付き合ってくれたからお姉さんラミアの書いてくれたアンチョコ片手に言葉責めしようとするも、
所々にある難しい漢字が読めない、とか。


「ふふふ、しめつけられてるだけでかんじちゃったのかしら?
 おまえのあらまつなものがびんびんに…ん、え?……えーっと」
「…どこが分からないんですか?」
「おい、人間!この字をなんて読むのか、教えろ!」
「どれです?これですか?…"ぼっき"って読むんですよ」
「そうか!ありがとう!
 えーと…おまえのあらまつなものがびんびんにぼっきしてるじゃないの」
「してません。あと、"あらまつ"じゃなくて"そまつ"です」

そして、この後「何で"ぼっき"しないんだ!」と泣かれる羽目に。
312名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 17:45:12 ID:D4ZV/W9s
ロリ云々は個人の趣味だからとやかく言う気はないが
そんなに短かったら蛇じゃないだろ
本物見たことあるか?
313名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 19:51:53 ID:Vn/cUWT+
あらまつ笑った。w
微笑まし杉。
314名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 22:03:00 ID:kKEuy86+
>>312
ラミア見たことあんのかww
315名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 22:52:03 ID:D4ZV/W9s
>>314
蛇だって言ってるだろw
一巻きしか出来ないんじゃ足のないトカゲみたいなもんじゃねぇかwww
316名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 22:54:47 ID:cFLZZAx0
足のないトカゲ・・・・・・ツチノコだな。
317名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 00:07:11 ID:oGk1+KR6
ツチノコ娘…なんかぽっちゃり系っぽいな。
318名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 00:38:58 ID:lKmObtPA
ツチノコ……ボンレスハムを想像した。
つか、あれ胴体短いような。とぐろ巻けるんかい?
319名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 04:00:31 ID:D8Z+oF3E
晒しと荒らしの発生条件 

1.複数のスレにまたがり、同じコテを流用通用  
2.それで2〜3のスレに留まるならまだしも、あちこち顔出しすぎ  
3.過度の自己顕示や自己主張がウザい(全レス、自分語りや後書き、宣伝広告)  
4.発言内容や主義主張が厨房臭い、メンヘル臭い、自己中臭い  

叩かれやすさの発展度合い 1→2→3→4  

作品の内容やレベルは、実はあまり関係ない  
ネット上のダメな〜スレで語られるところの邪神クラスの酷さでもない限り  
作品内容単体で槍玉に挙げられて問題になるケースは少ない  
ぶっちゃけSS自体はB級C級だろうと、一切自己主張せず淡々と作品だけ投下するに留まれば  
荒れる事はないし、むしろお義理お情けで二、三個の乙は貰える  
まあ荒れないだけで評価もされないんだが、それでも台風の目になるよりはマシだろ?  

1&2→ 叩かれ易くなる要素であって、あくまで間接的原因  
       これをやってても一切自己主張ナシのSS自動販売機に徹してる限りでは  
       案外荒れや叩きを回避できる、できてる場合が多い  
       ただ本人が幾らストイックでも、信者や取り巻きがウザ化した場合は結局叩き要因になる  
       残念だけど、信者取り巻きの不始末が作者本人の悪徳に還元されるのが2ch  
       嫌ならコテつけるのやめるか、せめてスレ変えるごとにコテ使い分けろ  
       てか複数スレまたいでのコテ流用自体、どれだけ取り繕っても結局は名誉名声への執着だ  
       これまで蓄積された評判をリセットしたくねーっていう、女々しい未練がましさだ  
       そんなに評価賞賛が欲しいなら、エロパロ板でなくブログかサイトでも作ってそっちでやれ  
       めんどくさいからとか、個人サイトじゃ人が来ないからとか、寝言ほざいてんじゃねーぞ  

3&4→ 論外。今更言う間でもねーや。名無しでも(多少叩かれにくくなるだけで)大抵叩かれる  
       もちろん1&2の要素と複合した場合は、火に油のごとくに更に叩かれやすく  
320名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 10:42:42 ID:SIVFBXxL
晒しと荒らしの発生条件
自治厨
追跡厨
批評厨
321312=315:2007/01/21(日) 01:08:24 ID:THdJK3MS
俺のことか?すまんかったorz
322名無しさん@ピンキー:2007/01/21(日) 02:32:45 ID:JHOnOgLB
というか荒れてるっていう流れじゃ全然ないし、
マルチっぽいから気にしなくても大丈夫かと。
323名無しさん@ピンキー:2007/01/21(日) 03:37:01 ID:1KcwE6zq
>>31
昔、横須賀にあった店なんだけどわかる?
レコードがあったと思うんだけど

やっぱ吹っ飛ばしたのかなぁ
324名無しさん@ピンキー:2007/01/21(日) 23:27:26 ID:NNWqPI3L
>>311
そういえば、どこかの本で「ラミアは人間の言葉が喋れず、もっぱらその美しい乳房と
身振り手振りで男をおびき寄せる」って説を収録してたような。
これだとラミアが魔乳揃いなのも説明がつくのだが、あまりメジャーな説でもなし、
さて関係があるのかないのか…

他にラミア絡みのマイナーな説だと、ラミアは喋れないかわりに口笛のような音を発して
男を魅了するとか、ラミアは嘘泣きが得意なので騙されないように注意が必要(この話の
ラミアは喋ってた)とかいうのも聞いたことが。

>>314
>>312は、「ロリっ子の上体と自然につながるくらい太い蛇の下半身を考えると、腰に
一巻きして終わり(=ズボンのベルトと同じくらい)の長さでは明らかに短すぎる」と
言いたいのではないかと。

ただ>>311の「長さが足りない炉ラミア」像も微笑ましくていい感じなので、ここは一つ
「大人ラミアの真似をして立ったまま巻きついたはいいが、地面に這わせて体を支える分の
長さが足りず、転びそうになってあたふたする炉ラミア」という図を提案してみる。

あ、ここから「地面に這わせる分を解いたら結局残ったのは腰に一巻きだけ」という
展開なら、結構筋の通った絵になるかも?
(無論「そのまま素直に寝転がりロール」でもいいわけだが)
325名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 00:20:30 ID:4nJcHrh+
あんなラヴラヴなナイアさんとラートって結婚しないのかなー?
326名無しさん@ピンキー:2007/01/22(月) 11:12:27 ID:x5FIbsvX
ボールパイソンみたいに臆病で何かあると胴の部分で頭を守ろうと
ボールみたいに丸くなるラミアも見てみたい・・・

ボールパイソン=1メートルくらいのニシキヘビ。
意外と気が小さく恐怖を感じると丸くなるからこの名がある。
きちんと飼ってやると慣れて丸まらなくなる。
327名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 23:57:35 ID:4kOYrY96
>>326
セクロスの最中
「こんなに濡らしてスケベな女だな」
「は、恥ずかしいです…!」(頭を隠そうと丸くなる)
「ちょっ、待て、ぎゃああっ!!」(巻き込まれて圧死)
…こんな感じか。
328名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:27:05 ID:IybN12ei
つかぬことを聞くが、ラミアが産むのは子供か?それとも卵か?
329名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 17:59:05 ID:+1+RnVwB
普段は子供。環境悪化して長期に渡って生育環境が整わないときは卵。
330名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 18:03:35 ID:3O5RWVlM
勉強になるなぁ
331名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 22:54:13 ID:jEv84Xjt
>>329
そりゃミジンコだろw
332sage:2007/01/28(日) 17:11:14 ID:o58zbf8J
>>328
大きな乳房があるんだから胎生じゃないのか?
卵生だが授乳して育てている、という解釈もあるが
333名無しさん@ピンキー:2007/01/28(日) 21:02:03 ID:6DawwEiZ
ナイアさんに実践してもらえば良いじゃないか?
334名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 00:18:48 ID:2FHMHvYR
子供の頃に読んだ怪談だったと思うが、
妊娠した妻が子供を産むが絶対見ないでくださいといわれ、
まあ、お約束で覗いたら、蛇女(まんま大蛇だったかも)が子供達をあやしているところで、
母子の蛇に追いかけられるってのがあったような……

あれは、卵が無かったようなきがする。
胎生じゃないかな?
335名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 01:02:53 ID:rCTRgor/
そして母子の蛇に(性的な意味で)食われる旦那さん…
336名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 02:18:06 ID:+4y5EUiI
俺が本家のおばあさから聞いたパターンでは『大きな卵をあやしていた』ってなってたな。

ある日、はなれで出産・育児をするとか言い出した女房。
  ↓
外に出てくる女房の腹はすっきりしたが、産声は聞こえてこない。
  ↓
夫がいぶかしんではなれを覗いたら……。

で、正体がばれた女房は子供が生まれると夫の静止を振り切って湖に帰っていった。
自分の片側の眼を子供に預けて。


まあ、地方によって違うからどっちでも良いんじゃね?
337名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 03:15:51 ID:Z55OPiaa
しかしまあ、どうして夕鶴といい蛇の嫁さんといい、「見られた」だけで逃げ出すんだろ?
338名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 07:17:27 ID:ipnwWEEz
ばれたことにより旦那にかなり過激なプレイを求められると勘違いしたのでは?
339名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 07:43:59 ID:TaInn2Sp
種族の差は埋めがたいものなのだよ。
340名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 08:12:56 ID:eOLYp0Ea
ここはその種族の差が大きければ大きい程ハァハァするインターネッターが集まるスレですがね
341名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 11:25:15 ID:xEiHmuJi
>種族の差
そんなの気にしないのにね
342名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 12:53:43 ID:8XGKmweX
うむ。
ちんこを入れる穴と愛があれば種族の差なんて関係ないね。
343名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 14:41:45 ID:CU95JyW+
ラミアや人魚はちんこ挿れる穴無いぞ
344名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 15:33:32 ID:onlEdobI
>卵か胎か

まずはあなたの脳内でラミアのハダカをイメージしてください。
その際、おへそがあったら臍の緒でママンとつながってたってコトだから胎生です。
つるんとしたすべすべのおなかだったら胎生です。

腹筋が割れてたらマッチョ好きです。
オスだったらスレ違いです。
345名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 20:19:47 ID:4o7eAuP7
>>337
実際鶴の恩返しって、飢饉によって生き延びることが困難になった
農民の奥さんが、旅人とか?を相手に体を売る話らしいね。
だから部屋を覗いたら離婚されるため、絶対に開けないで下さいと言う・・
だんだん羽が減っていくっていうのは、まさしく身を削らなければならない
事実から来てるんだろう。
父から聞いたから本当かどうかは知らないけど、こんな裏話らしいよ。
346名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 20:29:05 ID:UVQzw366
>>345
「見るな」のタブーは世界中で民話・神話の「型」としてよくあるから、
そういう「裏」をことさら考えなくてもいいとは思うが。
ヒコホホデミとトヨタマヒメの話もそのパターンだし。
347名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 20:36:00 ID:eQx2w9LU
「見たら死ぬ系」な邪神の皆さんにもハァハァできるんだから大丈夫!

いたくぁさん可愛いよ
可愛いよいたくぁさん
348名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 21:16:40 ID:sCCeGac6
>>344
うん、おれもそのおへそ理論がもっとも理にかなってると思う。
と、するとおれの愛するハーピィたんたちも胎生のハズなのだが…
おれのハーピィフォルダには、産卵するハーピィたちが何人か…。
まぁ、どっちでも好きなんだけどね。
349名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 02:17:13 ID:anluaJd2
人間男とハーピィの夫婦か。
パーピィが卵を暖めている間、男はせっせと食事を食べさせたり下の世話をしたり無聊を慰めたりな?
350名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 21:11:11 ID:/bOOUFsv
おへそ理論、よく見たら両方胎生になっとるぅ・・・
へそなしは卵生だよな。

ところで昔ドラゴンハーフって漫画があって
卵から生まれたヒロインにしっかりへそがあって「なんでやねん」ってツッこまれてたり。
ちなみにその返答は「よくわかんないけど、わたし人間とのハーフだから?」

・・・母さん、幻想どうぶつ生物学はマヂジゴクです。例外だらけで体系化なんてできやしません。
351名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 22:44:04 ID:dMVrnOgc
産まれる瞬間を見るか、産みの親に聞くのが一番早い!
352名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 22:44:35 ID:ZjsCsOoI
卵そのものが擬似胎盤だと考えれば、臍の緒やへそがあっても不思議は無いわけで。
353名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 22:48:19 ID:9BUKFqK8
生まれたばかりの亀にはヘソがあるしな。
354名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 22:58:29 ID:Pmv6R4ph
>>350
しまった!それがあったか!すっかり忘れていたよ。
355名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 19:39:04 ID:iKXr8G7h
ぶった切って悪いが、話がびみょ〜にズレてないか?
356名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 10:28:11 ID:QcGAe+5S
卵胎生
357名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 22:19:24 ID:DLIZaGnD
ひでぼんの書の続編は、諦めた方がいいかな?
358名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 07:07:13 ID:9PVXR8YY
へそ付き卵生娘への屁理屈
幻想生命の生息に魔力は付き物
んでキャパ以上に溜めると化け物化も割とある

併せて卵の殻が魔力を集め供給いていると仮定
卵から丹田に魔力を送っていた器官の名残が彼女達のへそ
で卵胎折衷案とする?
359名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 14:38:53 ID:ThlPWvfR
>>349
VIPのツンデレスレにハーピーものなかったっけ?
360名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 23:27:09 ID:lRo1tUEK
ねーy、、、
361名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 16:45:40 ID:tY5oavGi
怪談みたいなものの投下はおK?
幽霊としてしまう形として。
362名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 17:50:35 ID:qRodidGB
>>361
かもぉ〜ん
363名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 19:13:41 ID:tY5oavGi
では投下させて頂きます。
この作品はエロの入った普通の怪談です。ですから、怪談並のグロ要素もあるので、気に
なる方はスルーしてください。
364名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 19:14:35 ID:tY5oavGi
 これは、私の友人から聞いた話なんですが、聞いてもらえるでしょうか。

 ええ、不思議な話なんです。

 ……その男の人は、大学を卒業してから定職に就かずにアルバイトで生計を立てていた
んですね。いわゆるフリーターです。
 ですが、稼ぎが厳しくなってきまして、家賃を滞納してそれまで住んでいたアパートを
追い出されてしまったんです。そこで、家賃の安い下宿に移ったそうなんです。
 それが、破格に安い家賃でして。都内の少し不便な所なんですが、相場の約半額くらい
で借りられたんです。彼はその安さに喜びましてね。その物件に飛びついたんですよ。
 実際、築何年になるのか、非常に古い木造の下宿ではあったそうなんです。よくあるで
しょう。「〜荘」といった感じの、ひと昔前の下宿。ちょうどあんな感じなんです。
 その男の人はご機嫌で引っ越して、しばらくは何もなかったんですね。ところが、ある
夜から、おかしな状態になっていることに気づいたんです。
365名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 19:15:21 ID:tY5oavGi
 彼はそれまで、一度眠ると朝まで目が覚めない体質だったんですが、そこに引っ越して
から、必ず深夜に目が覚めてしまうようになったんです。
 そして……、そんな時には、いわゆる金縛りと言うのでしょうか。身体がガチガチに硬
くなって言うことを聞かずに、まったく動かなくなる状態になってしまったんだそうです。
そうして、しばらく時間が経つとそれはふっと弛緩し、元に戻ったんだそうです。
 彼は最初は気味悪く感じたのですが、元々楽天的な人だったので、すぐに気にするのを
やめてしまったそうです。ほら、金縛りは脳が半覚醒半睡眠状態なんだって言うじゃない
ですか。彼もそう思ったんです。ちょっと疲れているんだな、と……。
 ……ところがね、ある夜いつものように金縛りになっている時に彼は不思議な音を聞い
た気がしたんです。

     ずず……っ、ずず……っ

 何かを引きずるような音なんです。小さな物音でしたから、彼は気のせいかな、と思っ
て気にしなかったんです。しかし、その音は日に日に大きくなっていくんです。


 そんなある夜、物音が止んだのです。ですが……、代わりに、何かスイカくらいの大き
さのモノがどすっ、と男の人の股間に当たり、彼のズボンを不器用な感じに引きおろした
んだそうです。男の人は悲鳴を上げそうになったんですが、声が出ないのです。金縛りっ
て恐ろしいですね。悲鳴も上げられないんだそうですよ。口をパクパクさせても、喉から
声が出ないんです。
 そして……、何か、ぬめるようなモノが男の人の……、その、大切な部分を愛撫しはじ
めたんだそうです。そう、まるで……、舌で舐めるようにね。彼は恐怖のあまり発狂しそ
うでしたが、不思議なものでねぇ……、あれが勃つわけですよ。生命維持の本能っていう
んですかね。尋常ではないくらいの硬度になるものですから、ますます愛撫が気持ち良か
ったんだそうです。そして……、男の人は果てたんだそうです。すると……、ふっと身体
が弛緩し、金縛りは解けたんだそうです。彼が起き上がってみると辺りには何も変化はな
く、ただ彼が放出した液の残滓が散っているだけだったんだそうです。
 そして、その甘美と恐怖に満ちた愛撫は毎夜続いたのだそうです。楽天的な男の人はね、
そのうちに思ったんだそうですよ。これはきっと、恋人がいない自分に神様がくれたプレ
ゼントなんだってね。だから、やがて恐怖を感じることなどなくなって、ただ未知のもの
からの愛撫を毎日楽しんでいたのだそうです。
366名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 19:16:58 ID:tY5oavGi
 ところが、ある夜気づいたんだそうです。そのモノが、聞き取れぬほど小さな声で何か
を囁いていることにね。
 それは、女の声だったらしいんです。小さな声で「……しで、……」と囁いているんで
す。
 男の人は気になって、毎晩愛撫を楽しみながら聞き耳を立てていたんですね。そうする
と、段々声も聞き取れるようになってきます。「……少しで、……る」。「……う少しで、
……れる」。といった感じでね。
 それとともに、もうひとつの変化にも男の人は気づいたんです。最初は愛撫も、鈴口と
言いますか、亀頭の先端だけを愛撫していたんですが、それが少しずつ飲み込むような形
で下まで下がってきていたんだそうです。ですから、気づいた頃にはかなり根元近くまで
来ていたんだそうですね。そうすると、ますます快楽は深くなっていたんだそうです。

 その頃には、なんだか女の囁きは怨嗟のこもったような、地獄の底から響いてくるよう
な声の色合いを帯びていまして、さすがの彼もこれはおかしいぞ、と思ったわけです。怖
くなって自分の家を飛び出しても、誰もいない所で眠ると例の何かを引きずるような物音
とともにあのモノが近づいてきて男の人の大切な部分を愛撫するんです。想像できますか。
金縛りにあった状態で男の最大の弱点を未知なるモノに預ける気持ちは。そして、それが
快楽となってしまう気持ちは。
 男の人が管理人に訴えても、管理人は頑固な人で全く取り合ってくれないんですね。す
ぐに部屋を解約しましたが、そのモノは最早、部屋ではなく彼自身に憑いていたんです。
 男の人はもう眠るまいと決心して日に日に憔悴しきっていったんですけども、遂にその
日、限界に達した彼はそのモノの正体を暴こうと一計を案じて友人の部屋で眠りこんだん
です。
367名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 19:17:28 ID:tY5oavGi
 そして……、深夜、金縛りとともに目が覚めたんです。
 「……逃げられはしない」
 ああ、今や地獄の底から響いてくるような、世にも恐ろしい声は囁きではなくはっきり
と彼の耳に届いているのでした。

     ずず……っ、ずず……っ

 何を引きずっているのでしょう。やがて彼のズボンが下げられ、彼の陰茎への愛撫がは
じまります。しかし、発狂せんばかりの彼は助けを呼ぼうにも喉から声が出ないのです。
 彼の陰茎がぬめった何かに飲み込まれていきます。

 「……う少しで、……れる」

 ああ、気味の悪いいつもの声です。

 「もう少しで……」

 と間を置いて声は言いました。

 「今日こそ、噛み切れる」

 男の人は目を動かしました。するとそこには彼が昼間の内に仕掛けた秘密兵器、据え付
けの鏡があるのでした。彼は首を動かさずに鏡に映ったそのモノの姿を見ました。

 そこにいたのは、長髪のざんばら髪を振り乱して彼の陰茎に奉仕する、血まみれの生首
でした。

 「ぎゃああああああああああああああああああああああああっ!!」

 どうしたことでしょう。その姿を見た瞬間、魔法が解けたかのように彼の口から声がで
ました。生首は邪悪な視線で鏡を盗み見て、

 「……もう少しだったのに」

 と呟いて、煙のように姿を消しました。後には、男の人以外には何も残っていないので
した。
 なぜ姿を見られたことで、そのモノが消えたかは定かではありませんが、それ以後、彼
は二度と金縛りに遭うことも、そのモノに出会うこともないそうです。

 後日、図書館で古い事件を彼が調べた所、件の木造アパートでの事件の記事が見つかっ
たんだそうです。二十年前、女の人が恋人の性器を噛み切って自らの首を切り自殺すると
いう、悼ましい猟奇事件があったのだそうです。
 ……そして、新聞に掲載されていた被害者の男の人の顔が、彼そっくりだったんだそう
です。
368名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 19:18:24 ID:tY5oavGi
以上です。
369名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 20:58:45 ID:WJCN/sCm
こ、こえぇ〜 ((((゜д゜;))))ガクガク
370名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 21:09:30 ID:TqbdRGSQ
エロいのに怪談で
怪談なのにエロくて
何が言いたいかというと
つまりGJだということです。
371名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 21:09:43 ID:8aI9LXZs
やめて節分の日に噛み切るとかやめて恵方巻き食べれなくなるからやめて
372名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 21:41:50 ID:IBH/fgip
節分の鬼(♀)は?
373名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 22:32:46 ID:m3A/dcxm
今年は妊娠中につき休みだそうだ。
374名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 23:25:03 ID:WnVNYS2Y
>>368
うあー!
俺、ホラー苦手なんだよ!

>>373
ならば、妊婦プr
375名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 00:34:20 ID:YHZ2UvJZ
俺も金縛りにあったことあるんだけどさ
本当に体が動かないんだよね。意識はあるのに
金縛り中は目を開けちゃだめっていうじゃん
だから、無理矢理目を開けてみたんだよね。
そしたらさ
376名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 01:35:31 ID:th1Bhzj4
どかーん どかーん
377名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 02:36:25 ID:A4i6rfX+
あべさだ!あべさだ!
なかなか怖かった。つか、それは嫌だw
378名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 10:13:06 ID:ERpoQbME
>>375
>金縛り
自分では怪奇現象は体験した事が無いと思っているが・・・どうかな?
「脳だけ覚醒した状態」が原因の金縛りの予防法と解除の方法は

顎に布団でもいいから何かを接触させる事。
うつ伏せ寝でも可。

でも金縛り《スタン》状態では寝返りは勿論、手を動かす事も出来ないよね。
そこでもう一手。

体の何処でもいいので末端部分に意識を集中する。
漏れは足がすぐつる方なので指先をお勧めする。
日ごろ自分が鍛えている部位だと制御を取り戻しやすいよ。

末端部分を手がかりに体の基幹部にも意識を拡大する。
漏れはマンドウなので右腕の感覚を戻し、強引に左腕外側(布団)を殴って寝返りうつけど

実家に戻ってからは全く金縛りが無くてツマランww
この対抗手段でテグスネ引いて待っているんだがね
金縛りになり易くなるトリビア マダー?
379名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 14:48:09 ID:OS6GQ0OC
金縛りになりたいと申すか?
あちこちのサラ金から金借りまくれば、めでたく金縛りになるであろう。
380名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 15:57:18 ID:g0rQtBlc
↑誰が上手い事言えとw
381名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 19:24:15 ID:0RhqjopY
>>371
昔素クールスレに「君がいる方向が私にとっての恵方だ。だから君の恵方巻をいただく」って話が投下されてたな。

>>379-380を見て、ナポレオンズは借金塗れになってもあの首を回転させる芸を止めないんだろうな、とふと思った。
382名無しさん@ピンキー:2007/02/04(日) 20:46:49 ID:fSWPWELR
Σ( ̄□ ̄)えらいこっちゃだなぁ、おい!
383名無しさん@ピンキー:2007/02/05(月) 09:49:57 ID:5aYEC1qH
レム睡眠
384名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 11:18:45 ID:bGSOsKfb
>>381
ナポレオンズの首回しとゆーとぴあのゴムはガチ。
385名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 02:39:34 ID:JT6Up8yh
過疎っている俺の好きなこのスレに活気を取り戻すべく、
これから生活に欠かせない在る物の付喪神物をつらずらと投下して行きます。
注意としては、これは異形物&触手物&逆レイプ物ですので、
見たくない場合はNGにしていただけると有難いです
386夢か現か……:2007/02/08(木) 02:40:37 ID:JT6Up8yh
付喪神(つくもがみ)とは、長い年月を経て古くなった対象(その多くは何らかの道具や器物であることが多いが、稀に動物などの生物も含まれるとされる)に、
魂や精霊などが宿るなどして妖怪化したものの総称。九十九神とも書き、この九十九は「長い時間(九十九年)や経験」「多種多様な万物(九十九種類)」などを象徴する。
また九十九髪と表記される場合もあるが、「髪」は「白髪」に通じ、同様に長い時間経過や経験を意味し、
「多種多様な万物が長い時間や経験を経て神に至る物(者)」のような意味を表すとされる。
(以上、出典 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋)

「う〜ん、参ったなぁ……」

昼間の買い物時の為か人々で賑わう商店街の中で青年がしかめっ面で腕を組み、独り言を呟きながらトボトボと歩く
その丸まった背中は悲壮感に溢れ、彼の身に降りかかっている状況が悪い物だと言うのが容易に窺い知れた

彼が困っている事の始まりは、昨晩の事だった。
遊びにきていた友人のタバコの不始末の所為で彼の唯一の布団が燃えだしてしまったのだ。
布団に点いた火は必死に水を掛けまくって何とか消し止めたものの、布団の殆どが焼けてしまい、
おまけに消火の際に掛けた大量の水の所為で水浸しの有様、これではもう使い物にならない。
その夜は新聞紙で代用して寝たものの、冬の寒い時期にこれを繰り返す訳にも行かないだろう。
そんな訳で、彼は焼け焦げ&水浸しとなった布団を後ろ髪引かれながら粗大ゴミに捨てた後
使い物にならなくなった布団の代わりとなる新しい布団を手に入れるべく、
仕事が休みである今日、商店街に繰り出したのだ。

だが、彼の住むアパートの近くの布団屋では、彼が気に入るような布団はどれも高額で、
その反面、安い物は寝心地の悪そうな物ばかりであった。

彼の財布の中身も心寒い物、高額な布団を買ったら給料日まで赤貧の生活を送る事になる。
かといって寝心地の悪そうな布団も論外、安物買いの銭失いでは話にならない。
我侭な様であるが、仕事で忙しい彼にとっては睡眠と言う名の休息は大事なもので、
その休息の良し悪しを左右する布団だけでも、拘りたいのが彼の心情だった。
387夢か現か……:2007/02/08(木) 02:41:18 ID:JT6Up8yh
しかしこれでは拙い、このままでは本当に拙い事になる、
布団が手に入らないままでは、今夜もまた新聞紙で寝る羽目になってしまう
しかも今夜はこの冬一番の寒さだと天気予報で聞いたのだ。
新聞紙で寝ようものなら下手すれば凍死もありうるだろう。
それだけは嫌だった、布団が無いばかりに凍え死ぬなんて無様な最後は遂げたくも無い。

今の彼にとっては低価格で尚且つ自分に合った布団を捜す、それが命題であった。

「仕方が無い、遠出してでも捜すか…………ん?」

彼が家の近隣で捜すのを諦めて二駅先のショッピングモールに行こうかと考えた矢先
商店街の片隅のいかにも古そうな商店へ、彼の目が止まった
良く見るとその商店は雑貨屋なのだろうか、鍋や衣服などの多種多様な商品が店頭に並び
その中には敷布団と掛け布団のセットも並んでいた。

「気付かなかったな……こんな店があったんだ……良し、あの店においてある布団を見てみるか……」

(どうせこんな古ぼけた店だ、良い物は無いだろう。無かったら無かっただけで他の店に行けば良いだけだ)
と、そんな事を考えながら彼は期待半分諦め半分で店に入った。
388夢か現か……:2007/02/08(木) 02:43:03 ID:JT6Up8yh
「……いらっしゃい、何をお求めですか………?」
「…っ!……あ、いや、ちょっと布団を捜しているんですよ……」

雑多に置かれた商品に紛れる様にして椅子に座っている店主の老婆に話し掛けられ
彼は少々驚きながらも自分が布団を捜している事を伝える

「…布団ですか?それだったらこのお布団は如何ですか……?」

老婆の指し示す先には、先程彼が店先で見かけた布団セットが置いてあった
とりあえず、彼は老婆に言われるがまま側に寄り布団に手を触れて見る。

「はぁ……こいつは良いかも……」

触っただけで彼は思わず感嘆の声を出す位、その布団は良い布団だった
布団の生地は良い物を使っているのだろうか、触り心地は滑らかで何時までも触っていたい感じる触り心地で、
そして布団の綿も同じく良い物らしく、例えて言えば女性の柔肌を指で押したような柔軟性と弾力がある。
更に少し持ち上げて見れば重さも程よく、重たくも無ければ軽すぎも無く良い按配の重量がある。
それは敷布団も掛け布団も同じで、違いと言えば用途による形状の違い位であった。
彼は確信した。今日、見て回った布団の中では恐らく最上級と言える一品だと。
389夢か現か……:2007/02/08(木) 02:44:12 ID:JT6Up8yh
だが、それと同時に彼には一つの不安が出てきた
これだけ良い布団だ、恐らくとんでもない値段がついているに違いない。
いくら今まで見た中では最上級の布団であったとしても、彼の手の届かない値段では無意味である。
かといって躊躇している訳にも行かず。
とりあえず、駄目元で店主の老婆にその布団の値段を聞いてみる事にする。

「あの……この布団のお値段は幾らですか?」
「……ん〜、古い物だからねぇ……千円で良いよ」

「(な、なんですと?せ、せんえん?)」
一昔前では夏目漱石、そして今では野口英世の肖像の紙幣
それがたった一枚だけでこの布団が買える?
これは一万円の間違いじゃないのかと彼はつい思ってしまった。

彼が我が耳を疑ったのは至極当たり前の事だった。
今まで見た布団の中では最上級の一品が千円である、何かの聞き間違いだと思うのも当然だった。
だが、老婆の言った言葉は聞き間違いでも何でも無く、嘘偽りの無い事実であった。
そして………

「よし、買った!」
「……毎度あり」

彼が迷う事無く即決で布団を購入したのは言うまでもない事であろう。
390夢か現か……:2007/02/08(木) 02:45:58 ID:JT6Up8yh
「やれやれ、やっと帰ってこれた……もうこんな時間か?」

ややあって、何とか苦労しながらも彼は布団を家へと運び込んだ
普通の体格の彼にとって上下の布団を持って帰るのはかなりの重労働であり、
家に帰りついた頃には日も完全に落ち、程よい疲労感が彼を包み込んでいた。

「今日は疲れたな……飯を食ったらさっさと寝るか……」

そう呟くと彼はさっさと晩飯のカップ麺を食べ、
その後、部屋の畳に今日買ったばかりの布団セットを敷いて枕を置き、そのまま彼は其処へ横になった
流石自分でも最上級だと思った布団である、かなり寝心地が良い。
まるで母の胎内に包まれている感じすらさせる。

布団を何とか手に入れられた安心感と、今まで捜しまわった疲労もあってか、
十分もしない内に彼はそのまま夢の中へと落ちていった……
391夢か現か……:2007/02/08(木) 02:47:05 ID:JT6Up8yh
****************************************************


それから何時間経ったのだろうか、彼は身体に違和感を感じ目が覚めた

(……ん、何だ?ああ………部屋の明かりをつけたまま寝てたみたいだな……
早く消さないと電気代がもったいな……あれ?体が動かない?)

(これが所謂、金縛りと言うものなのだろうか?にしては蛍光灯がこうこうと照っている状態での金縛りは初耳だ。)
そう思いながら彼は何とか首を起こし、自分の胴体の辺りを見る

(何だコレは?)

彼が見たのは明らかに自分一人分が入っているとは思えない位に異常に盛り上がった布団であった
しかもだ、ソレはもぞもぞと動いている上に重さすら感じる
彼は間違い無く自分以外の誰かが布団の中に入り込んでいると確信した。

更に良く見ると、わずかに捲り上がった布団の闇の奥で何かが光っている。
それは人の双眸だと彼が気付くのに数秒を要した。

そんな異常な状況に彼が驚いている間も無く、”それ”は布団からぬぅっと顔を出した

布団から出てきたモノ、それは年の頃15〜6歳の少女だった。
肩まで掛かる位長く艶やかな黒髪、吸い込まれそうな黒い瞳、そして上等な絹の様に白く血色の良い肌、
その彼女の目鼻の顔立ちの整った表情は幼さの中に妖艶さを含ませる。
はっきり言ってしまえばその少女は美人の部類に属するだろう。
392夢か現か……:2007/02/08(木) 02:48:47 ID:JT6Up8yh

「こんばんわお兄さん、目が覚めた?」
「…え?は、はい………じゃなくて、お前はいったい何者だ!?何時からここに居た!?」

少女は這う様に彼の眼前まで近づきながら話し掛けてくる。
その際に女の匂い、そして吐息が彼の触覚と嗅覚を刺激する。
良く見れば彼女は衣服の類を一切身に着けてはおらず、程よく大きく形も良い双丘が彼の視界に飛び込む
彼は一瞬、その色香でぼんやりとなりつつ応えるが、直ぐに気を取りなおし疑問を少女にぶつける

「ん?あたし?嫌ねぇ…忘れちゃったの?」
「忘れた?おいおい、見ず知らずの少女を連れ込むなんて、んな事した覚えないぞ!?」
「もう、忘れん坊さんね、貴方があたし達を連れてきたのよ?しかもお姫さま抱っこで」

な、何なんだこいつは、言っている事が全く理解が出来ない。
何時の間にか裸で人の布団に入り込んでいる上に彼が自分を連れてきたなどと抜かす謎の少女の行動は
一般的な判断力しかない彼の思考を混乱に導くには十分過ぎた。
その所為か、少女が言った”あたし達”の言葉に彼は疑問を感じる事すらなかった……

「さて、こうやって話すのも何だし、そろそろ始めましょうか……」
「ちょっ!?おまっ………離れっ……ろっ!?」

混乱する彼を余所に、謎の少女は笑みを浮かべ、
片手で彼の上着を捲り上げ露出した肌を舌で舐め始める、
決して厚くない彼の胸をゆっくりと、そして淫らに舐めつづける少女の行動に驚いた彼は
直ぐに少女を振り払おうとする、だが彼の四肢はナニかによって拘束されている為、
僅かに身じろぎをするだけで逃げる所か振り払う事すら出来ない。
393夢か現か……:2007/02/08(木) 02:51:18 ID:JT6Up8yh
「フフ、なかなか感度が良いねお兄さん」
「……だ、だからお前は何者だって聞いてるだろ!?」

形の良い唇からぺろりと舌を出し、妖艶な笑みを浮かべる少女
胸を舐められた際の痺れるような感覚と少女の笑みに思考力を奪われながらも彼は尚も問い掛ける
一瞬、少女は「やれやれ」と言いたげな表情を浮かべ

「んじゃあ、ヒントを言ってあげる、先ず一つ目」
「な、何だよ?」
「日本人の家なら必ず一式はある物」
「……はぁ?」

少女は彼がぜんぜん意味を解っていないのに気付くと、
わざと大げさに「困ったね」のポ−ズを取り、更に話を続ける

「更にヒント二つ目。夜、寝る時にはあると良い物」
「………え、え?」

まだまだ彼が理解できていないと見ると
少女は困ったような表情で腕組みして考えた後、再び話を続ける

「じゃあ、最後のヒント。最近お兄さんが千円で買ってきたもの、
これで解らなかったらお兄さんの記憶力を疑っちゃうよ?」

「……っ!!(最近千円で買った物?……ま、まさか!!)」

「その顔からすると解ったみたいね……そう、あたしはこの布団自身だよ
人間はあたし達の事を付喪神とか九十九神なんて言っているけどね?」

彼の表情から考えを読み取ったらしく、少女は自分の正体を明らかにする
彼の目の前の存在は人外なる者だと。それと同時に自分が今寝ている布団は彼女の肌を思わせるが……
それも当然の事だったと言う事なのかと彼は思った
394夢か現か……:2007/02/08(木) 02:52:31 ID:JT6Up8yh
「……って事はお前は俺が昼頃に買った布団が変化した者で、人間じゃないって事か!?」
「ご名答♪」

彼の恐る恐ると言った感じの返答に、少女は笑い掛け応える、
笑みを浮かべながら彼を見つめる少女の瞳は明らかに人の物とは思えぬ輝きを放っていた
その瞬間、彼の心の中に恐怖心が芽生えた
自分はナニかによって身動きが殆ど取れない状態、
そして尚且つ自分の直ぐ目の前には得体の知れない人外の者が居る状況
それだけでも彼を恐慌に陥らせるのには十分だった。

「ひっ!?こ、このっ…離せっ、離せって!!」
「んもぅ…いまさら暴れたって無駄だよ?……こんな状態だし」

悲鳴を上げながら必死に目の前の存在とナニかの束縛から何とか逃れようともがく彼に対し
少女はクスクスと笑いながら片手で布団を捲りあげる。

(な………何だこれは!?)

彼が驚くのも無理は無かった。
自分と少女の被っている布団の裏側は布団の生地ではなくピンク色の肉壁に代わっていたのだ、
無数の襞が重なり合うその肉壁の彼方此方から無数の触手が生え蠢き合い布団の裏側を埋め尽くしていた
布団の裏側で蠢く触手の形状・太さは様々で、
形状は何も付いていない滑らかな物から蛸のような吸盤が付いた触手やイボイボの付いた物等があり
太さは糸の様に細い物から人の太腿ほどの太さの物等などまさに多種多様
その触手の内の何本かが彼の手足に巻き付いており、彼の身動きを完全に封じていた
そして少女の体は足の付け根から先が溶け込む様に布団の裏の一段と盛り上がった肉壁に繋がっており
その真中には花弁の様な襞があり、その中心部に肉穴がヒクヒクと蠢いていた、
恐らくこれが彼女の生殖器なのだろう。
395夢か現か……:2007/02/08(木) 02:53:56 ID:JT6Up8yh
「フフフ、どう?あたしの体は……?」
「ひ、ひぃ……あ!?」

彼は心の中で無駄だと解っていながらも必死に其処から逃れようとした矢先
無数の触手の内の何本かが彼の衣服の隙間から服の裏に入り込み、ネチャネチャと彼の肌に粘液を擦り付ける

「……く、あぁ!…ひうっ…!?……ひぁっ??」
「怯えない怯えない、何も頭からバリバリ食う訳じゃないって。
ま、性的な意味では食うけどね?…にしても良い声出すわね、お兄さん」

思わず嬌声を出してしまうほど背筋がゾワゾワする気持ち悪くもくすぐったく、そして何処か気持ち良い奇妙な感覚
これは快感、そして触手が行っているのは愛撫だと彼が気付くのに数秒を要した。
そうしている間に、他の触手が巧みに彼のズボンのベルトを外し、ズボンを下着諸共引き下ろす。
邪魔する物が無くなり外に露出した彼の肉棒は、先程からの感覚の所為で既に昂ぶった状態であった。

「うんうん、どうやらこっちは準備OKの様ね、それじゃあそろそろ行くよ?」
「え…?ちょ……止めっ、止めてっ!?」

不意に触手による責めが止んだと思うと、少女が彼の首に腕を巻き付けて密着する
それと同時に彼の肉棒に湿った生暖かい感触を感じ、彼は思わず彼女に止める様、懇願する

「ん〜、だぁめ……んんっ!!」

だが、彼の懇願も空しく、頬を赤らめさせながら笑みを浮かべた少女は彼の肉棒を自分の中へと挿入させる

ぬちゅにゅるるぅ

「…っ!?ぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

ドピュドプドプドピュピュ……

彼女の膣中は布団の裏側と同じ様に無数の襞で構成されており、
その襞は彼の肉棒をぬるぬると柔らかに、そしてみっちりと包み込み締め付ける。
今まで女性経験の無かった彼にとってそれは未知の快感であり。とても耐えられる物ではなかった
そのまま数秒で彼は果ててしまい、彼女の中へ大量の精液を噴出してしまう。
396夢か現か……:2007/02/08(木) 02:55:00 ID:JT6Up8yh
「ありゃ………もうイっちゃったの?」
「……うう……」

少女の一言に彼の頭の中は恥ずかしさと申し訳無さで一杯になる
初めてだとは言え余りにも早く果ててしまった、それだけでも彼の男心は十分に傷ついた

「ふふ、まあ仕方ないね。でも大丈夫、あたしの中は凄いから……んっ」
「……へ?」

ぐにゅぐにゅにゅ

「う、うあぁ……な、なにぃ…これ……?」

しょげる彼に対して少女がウィンクをした後、体に少し力をこめる
それと同時に彼の肉棒を包む膣壁がきゅうっと締り、グニュグニュと複雑な蠕動運動を始め、彼の肉棒に刺激を与える
それによって射精の所為で萎びかけてた彼の肉棒は再び硬さを取り戻す
397夢か現か……:2007/02/08(木) 02:55:59 ID:JT6Up8yh
「さぁて、ピチャ……くふっ…動くよ……幾らでも……出してっ……良いからね!」
「ぅ…あ、あぁっ!」

ずぅっ…ずぅっ…ずぅっ

彼の肉棒が再度昂ぶったのを確認すると、少女は彼の口内を舌で侵しながら目元に笑みを浮かべる
それと同時に再び少女の膣壁が蠕動し、さらに少女はゆっくりと腰をグラインドさせ始める
その度に彼女の膣壁は彼の肉棒へ吸い付き、彼の体に痺れるような快感を与える。
更に体に巻きついた触手が舐る様に彼の性感帯を撫でまわし、必死に耐える彼を否が応に昇り詰めさせる

「お兄さんのこれ、イイっ!………んぁっ!!」
「く……あぁぁっぁっ!?」

ブシュドピュブビュピュ……

2度目の射精、だが尚も体中を責める快感の所為で彼の肉棒はまだ滾ったまま収まる事を知らない
そのまま少女は頬を赤らめ喘ぎながら、彼の顔に少女の胸のつんと張った膨らみの先を押し付ける

「あっ、…舐めて!……私のここっ!……んっ!」
「……うっ!……ちゅっ……んふっ……」

彼は無意識の内に彼女の乳首を口に含み、吸い付き舐めまわす
この時にはもう既に彼の頭の中に少女から逃げると言う思考も
得体の知れない者に対する恐怖心も虚空に溶ける様に綺麗さっぱり消えうせ、
唯々快感を味わい、酔いしれるだけの状態だった。
398夢か現か……:2007/02/08(木) 02:57:12 ID:JT6Up8yh

「ぁぁっ!!そこっ……いいっ!!…お返しに、…んっ…もっと良い事してっ……あげる!」
「ちゅ…ん……ああ……?」

少女が彼の舌技に暫し酔いしれると、一旦腰の動きを止める
彼は下半身の快感が止んで、思わず「何故止めるの?」と言いたげな目を少女に向けるが
それも束の間だった

ぐにぐにぐにぐに

それまで覆い被さるだけであった少女の一部である布団が動き出し、彼を包み込む様に蠢く
布団の動きが終わった時には、所謂座位のような状態で彼と少女は肩と胸だけ外に出した状態で布団に包まれて居た
399夢か現か……:2007/02/08(木) 02:57:56 ID:JT6Up8yh
「さぁ……本気で行くよっ……あふっ……んっ!」

ずちゅっずちゅっずちゅっずちゅちゅっ

「か、あっ!?…あうぁっ!!」

そして少女が彼に抱きつく様にしっかりと固定し、彼の耳元で囁き掛ける
その途端、それまでの行為がまるでお飯事の様に思える位に、少女の腰の動きも触手も激しく動き始める
蛸の様な吸盤の付いた触手が、彼の両方の胸の乳首に吸盤で吸い付き、
イボイボの付いた触手が脇などを撫で回しながらこりこりと刺激し、
他の触手も先程よりも素早くネチャネチャと彼の体中へ粘液を擦り付けていく。
更に少女の腰の動きも上下運動だけではなく回転運動に螺旋運動を加え
膣壁も動きに合わせて絶妙な蠕動運動を行い肉棒に刺激を与える

ずにゅっぐちゅっずちゃっずちゅっぐにゅっ

「うぁっ!いっ……いくっ……あっ……イきそう!……」
「お兄さんっ!……いくのっ?……いって!……あたしもっ!……イくっ!」

そして、彼もまたそれに応える様に腰を動かして快感を高めていく
そのまま少女も彼も互いに快感は頂点へと徐々に上り詰めていき

「「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」」

ぶしゅぶぶぴゅぶしゅぶしゅしゅしゅぶしゅぶしゅぶしゃぁぁぁぁぁ

頂点へと達した時、彼は密着する様に腰を押し付け、そして少女もまた自分の中の奥へ肉棒を押し付ける。
それと同時に彼は3度目とは思えないくらいの大量の精液を少女の奥へ流し込み
少女もまた、彼の腰が淫液まみれになる位に淫液を噴出す

「あぁ……ぁ………」
「はぁ…ぁぁ……」

お互いに頂点に達した為か思考は殆ど真っ白な状態になり
少女の体も快感で弛緩したらしく、触手は力を失い、同時に彼を包み込んでいた布団が解け、彼を解放する
400夢か現か……:2007/02/08(木) 02:59:16 ID:JT6Up8yh

「……(逃げるなら……今かっ!)」

先に余韻が開けて理性を取り戻したのは彼の方だった
逃げるなら少女が快感で呆けている今の内だ、
これ以上、この場に居たらこの得体の知れない少女に全てを搾り取られてしまう
下手したら腹上死する可能性も在る、そんなふざけた死に様は御免被る。
彼はそう思いながら仰向けの状態のままで這う様に動き始め、
少女に気付かれぬ様に慎重にその場から離れようとする

「……っ!?」
                          、、、
だが、彼が自由に向けて動き出した矢先、彼の背に在る敷布団の方から腕がにゅうと生え、
彼の首元に巻きつきがっちりとホールドする

「どうやら妹のほうは終わったみたいね………んじゃ、次は私の番ねぇ?」
「……ん、あ…姉さん、起きてたの?」

後ろから誰かが呟くと、腕の主が敷布団から姿を現す
それは掛け布団の少女を在る程度成長させたような眠たそうな目の美女だった
掛け布団の少女は、敷布団の美女を見て姉と呼んだ
401夢か現か……:2007/02/08(木) 03:00:38 ID:JT6Up8yh
「し、姉妹が居たのかっ…聞いてないぞっ!?」
「さっき言ったじゃない、貴方が”あたし達”を連れて来たって、
あたしと姉さんは掛け布団と敷布団の姉妹なのよ?」
「まぁ…妹の言う通りそう言う事よ。……それじゃぁ、始めましょうか?」

驚く彼に対して少女は残酷な事実を告げ、その後少女の姉が彼の耳に囁くと、
彼が逃げ様とする間も無く敷布団から妹と同じ無数の触手が生え彼を捉える

「わたしはねぇ、男の子の後ろを開発するのが好きなのよ……最初は気持ち悪いけど、次第に良くなるわよ……?」
「ありゃぁ…また姉さんの悪い癖が出始めた…。頑張ってね、お兄さん♪」
「へ?……それって……まさか……?」

彼が少女の姉の言葉を理解するより早く、
姉の方から伸びた触手が彼の尻の窄まりに先っぽを当て、くすぐり始める

「ちょっ!?……やめっ!やめぇぇ!?」
「うふふふ………や〜めない、えいっ」

ズニュウ

禁断の世界に足を踏み入れたくない彼の必死な叫びは、少女の姉に届く事無く
少女の姉は玩具を手に入れた子供のような笑みを浮かべ、容赦無く触手を彼の窄まりに押し込んだ

「アッ――――――――――――――――!!!!!????」
402夢か現か……:2007/02/08(木) 03:02:39 ID:JT6Up8yh
チュンチュン………チュンチュン

「尻が…尻が……あ?……朝、か……?」

次に彼が気が付いた時、既に部屋は朝日が差し込み、窓の外から雀が戯れる声が聞こえていた
思わず彼は状況を確かめるが彼の着衣は一切脱がされてはおらず
自分が被っていた布団も、唯の布団でしかなかった

「なんちゅう夢を見たんだ俺は……あ、夢精はして、ないな……やれやれ」

昨日の事は夢だった、彼はそう判断した後、直ぐに自分の下着を確認する
だが、夢精をしたどころか湿ってすらおらず、彼はなんとも言えないため息をついた

「幾ら寝心地が良かったとしても、あんな夢を見るなんて俺も溜まっているのかねぇ…」

彼はそう一人呟きながら布団を暫し眺める
今までに無い凄まじい夢だった、だが、同時に気持ち良い夢でもあった……彼はそう思った後

「さて、今日も仕事だ…ってやべっ!!もう八時前じゃないかっ!……急がないと!!」

ふと彼は時計を見て、職場の始業時間まで残り僅かだと気付くと
慌てて仕事へ行く支度を整えて飛び出す様に玄関に向かい……

「行ってきます!」

玄関の戸を閉める前に、何時もの様に振り返る事無く誰に向ける事の無い出掛けの挨拶を言う、が

「行ってらっしゃーい……」

「…………っ!?」

居ないはずの誰かから返答が聞こえ、その声に彼が気付き思わず振り返る
だが、幾ら良く見ようとも部屋には誰も居ない。

「………き、気のせいかな?……って、早く行かなきゃ!」

暫し考えた後、彼は声を空耳だと判断して玄関の戸を閉め家を後にする

「……こら、日が昇っているときは勝手に動かないと言うのが”お約束”でしょ?」
「……ごめんごめん姉さん、昼間は只の布団で居るのを忘れてた」

人間が一人も居なくなった部屋で、話し声と共にモゾモゾと布団が動いた後、再び静かになる
彼はまだ知らない、昨日のあれが夢で無かった事を……そして毎夜、それが訪れると言う事を……


………………知らぬは、人ばかり…………………
403夢か現か……:2007/02/08(木) 03:07:02 ID:JT6Up8yh
えー、以上です。俺はエロを書くのは初めてなもんで
ここのスレの皆のお目汚しにならなければ良いかと思います(汗
404名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 03:48:01 ID:cQtnTFmF
GJ
405名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 04:26:45 ID:4eYr6fNz
せっかくオナ禁出来そうだったのにお前のSSで抜いちまった・・・
責任・・・とってよね?
406名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 09:32:13 ID:LYKlDjkG
GJ!!
この布団はどこへ行けば買えますか?´Д`)ハァハァ
407名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 10:36:50 ID:LOPcdwhf
枕は?
408名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 11:41:58 ID:tPvQj19V
枕はきっと母
409名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 13:15:38 ID:ahIGrzcK
枕さんは膝枕をするのが好きで、
口と耳とうなじを責めるのが好きだと思う。
410名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 16:26:03 ID:tOgLJ1qL
ホラー系のエロスレってない?
411名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 21:17:38 ID:tPvQj19V
メリーさんくらいか?
412名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 21:38:12 ID:LpRUUS2P
後ろを向いた瞬間攻撃を避けて逆襲。
そのまま済し崩しに・・・w
413名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 13:23:28 ID:HmDoHTVk
続きギボン
414名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 22:52:03 ID:wfBuiPjv
ぜひ姉メインで続きよろしく
415名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 15:26:20 ID:QzHaazGj
>>403
すごく遅れたが…
俺のID。
416名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 16:36:41 ID:YJ0sg9qM
日本たばこ産業?
417名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 17:51:35 ID:iuEvbc74
>>415
兄貴、今度はGjなIDになっちゃってますぜ(`・ω・´)b
418名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 21:28:17 ID:gHIJLSHM
ラミアモノ書いてる人が以前投下した鮫の話で
ファンタジー世界のスレで似たようなやつが投下される。擬人化じゃないけど

チラ裏スマソ
419名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 23:02:46 ID:BG9KEkOW
ラミアといえば今テイルズやってるんだが敵モンスターにラミアやらアルケニーやら人魚やらハーピィが…
倒せないorz
420名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 23:19:47 ID:Y1Ncteg0
そんなおまいにサキュバスクエスト
421名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 23:54:36 ID:2NZ4EFA0
テイルズでラミアに人魚か・・・。
セイレーンの座ってる岩(?)が可愛かったのと
アイフリードの墓でメドゥーサ(ラミアの上位種)に全滅させられかけたのが異常に印象に残ってる。
ちなみに、エターニアでの話。

>>420
テイルズは半アクション形式だからサキュクエと違って動きがある。
ラミアたんのパンチ→尻尾でベチベチのコンボはかなり萌える。ダメージはかなり大きいが。
422名無しさん@ピンキー:2007/02/13(火) 07:40:47 ID:ctfkxbHS
デスティニー2のアルケニーとブラックウィドウで抜いた事がある俺は勝ち組
423名無しさん@ピンキー:2007/02/13(火) 23:41:20 ID:ITwVDmp/
ttp://nijibox.ohflip.com/futabafiles/001/src/sa12307.jpg

何か見つけた。
これの詳細キボンヌ。
424名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 00:27:57 ID:QEeR0+eQ
板違い
425名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 12:14:32 ID:t5zWP878
>>423
だが、教えてやらんでもない
426名無しさん@ピンキー:2007/02/14(水) 23:12:20 ID:CxbR32Nw
>>423
【獣人娘】モンスター娘・約28匹目【魔物娘】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1169983130/
427名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 21:11:57 ID:WRmz96/Q
保守
428名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 02:58:16 ID:VrnRJcEw
保守
429名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 10:53:12 ID:97/j+TG5
〜〜(m`∀´)mウラメシヤー
430名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 18:54:43 ID:w3NQLZa8
期待あげ。

>>429
やらないか(性的な意味で)
431429:2007/02/25(日) 20:31:28 ID:97/j+TG5
>>430
えっ!な、なんであんたなんかと!
いやっ、あたしはべつにヤりたくないってわけじゃなくてさ、
むしろ・・・その・・・し、したいです(///−///)
432名無しさん@ピンキー:2007/02/27(火) 14:42:37 ID:8tXmYgHr
たまには人間all攻めのが読んでみたい
433なしれ ◆8XSSeehUv6 :2007/02/28(水) 21:03:41 ID:IcecXOec
ダレモイナイ…投下スルナライマノウチ…

注意事項;
・蜘蛛女もの。(前に書いた「ささがにの糸」シリーズ)
・序盤、わずかに残酷描写あり。
・6レス程度消費予定。
名前欄にタイトル(「月夜の契り」)を入れるので、
嫌な予感がする人はNG指定でお願いします。
434月夜の契り(1):2007/02/28(水) 21:05:06 ID:IcecXOec
「ぐぁ、うあぁっ! ひ、っくぅああ!!」
 夜空に男の悲鳴が響く。
「あ‥‥ん‥‥。ふふ‥‥もっと、もっとちょうだい‥‥」
 その悲鳴の中に、低く艶やかな女の声。その妖しくも甘い声が響くと同時に、
男の悲鳴は一層悲痛なものに変わる。
「た、たす‥‥け‥‥! あぎぃぃいっ!!」
 荒れた声帯から絞り出される、金切り声にも近い叫び。この声を聞く者があれば、
おそらく誰であれ顔をしかめるだろう。少なくとも、美女と絡み合った男が発しているとは
思うまい。だが、屋外、それも住宅地の中だというのに、その声を聞きとがめる者はない。
 二人が絡み合っているのは、秘め事とは無縁のはずの場――神社だ。
いかなる力が働いているのかヒトの知識の及ぶところではないが、その凄惨な営みは神域に閉じられ、
「外」からはその声や様子はおろか気配さえもうかがえなかった。
「くっくっ‥‥『助けて』だなんて‥‥こんなにカタくして、こんなにたくさん出して、
どの顔でそんなこと言えるの? ‥‥もっと捧げなさい‥‥ほぉら‥‥」
「――が‥‥ぁ‥‥!」
 男の顔を両手で抱き、淫らな響きの言葉を紡ぐ女。土気色になった男の顔が、
くぐもった悲鳴とともに引きつる。その身体が不規則にビクビクと痙攣すると、
女はわずかにのけぞった。
「あん‥‥っ。出てるわ‥‥あなたの命‥‥ふふふ、もう打ち止めね」
 額に軽いキス。男の目は生命の光をほとんど失い、女の美貌を虚ろに映すばかりだ。
その首筋にゆっくりと唇を這わせて――。


 生ぬるい夜風がふっと通り抜け、干物の髪をかすかに動かした。
もちろん彼女はそんなことを気にも留めず、抱きしめていた干物を無造作に捨てた。
地面に落ちるとそれはくしゃりと崩れ、白い骨がからからと音を立てて転がる。
鋭い脚爪がその丸い骨を押さえると、まるで卵の殻のように、真新しい髑髏(されこうべ)は
粉微塵になった。
 渇く。欲しくてたまらない。なのに、いくら飲んでも足りない。
白く粘つく精気で蜜壺を満たしても、紅く溢れる命で喉を潤しても、渇きが癒えるのは
ごく短い時間に過ぎない。一日も経たず、渇く。こんな渇きはいつ以来だろう――珍しく彼女は
昔を思い出した。
 しかし、思い出さねばならないほどそれは昔のことではない。ずっとそうだった――はずだ。
目覚めてから、ずっと。
 眠っていたのは彼女の意志ではなく、不本意な経過によって眠らされていた――蜘蛛塚などという
寝所に封じられていたに過ぎない。だが、それでも眠りは穏やかだった。例え周りは騒がしくとも、
彼女の寝所をあえて刺激する者はいなかった。穏やかに、静かに眠っていられた。
だが、その眠りは唐突に妨げられた。理由は知らない。気が付くと寝所は崩れ去り、
無粋な鉄の塊が蠢いてあたりの山肌を切り崩していた。それ以来彼女は渇き続け、喰らい続けた。
つい最近まで、ずっとそうだったはずだ。
 軽くため息をつくと、彼女は物憂げに伸びをする。そして八本の蜘蛛の脚をざわめかせ、
古びた本殿の暗がりへと溶けていった。
 すうっ、と夜風。散らばっていた干物が吹き散り、骨さえも塵となって、墨を流した夜の闇へと
吸い込まれてゆく。後には何も――残らなかった。

 土蜘蛛神社‥‥郊外の宅地に取り残され、寂れ果てた小さな神社。
そこが古き神、荒ぶる神を祀る社だと知っている者は、ベッドタウンと化したこの町にはもういない。
‥‥若く平凡な一人の男を除いては。
435月夜の契り(2):2007/02/28(水) 21:06:39 ID:IcecXOec
 
 * * * * *
 
「なぁ大森、最近は急がないのか?」
 残業を終えた若い社員が、こちらも帰り支度の大森秋人(あきと)に訊いた。
「‥‥? まあ、別に用事もないし‥‥」
 曖昧な返事。実に許し難い返事だ。彼の帰宅速度たるや、株式会社「白糸産業」きっての
猛スピードとして有名だったというのに。そのかわり日中の仕事の効率も凄まじく、
のんびりとしていた以前の人柄からは想像もつかない「デキる社員」として上司からも
一目置かれるまでになっていた。にもかかわらず、この前の一週間の海外出張から
帰ってからというもの、すっかり憑きものが落ちたかのようにのんびり社員に逆戻りである。
上司は少々驚いたものの、「たまにはそういうこともあるだろう」と静観し、
同僚は何となくほっとした。
「ふられたんじゃねーの?」
 そう言う同僚もいた。噂に過ぎないが、秋人が急いで帰るのは恋人に会うためだという話が
あったからだ。だが、野次馬根性たくましい者が探りを入れても、彼が最近失恋したという証拠は
掴めなかった。
「なんかに憑かれてたんじゃない?」
 そう言う同僚もいた。たしかに脇目もふらずに大股で帰る秋人の姿は何か鬼気迫るものがあったが、
だからといって憑きもの説を口にする者がそういう現象を本気で信じているわけでもない。
だがいずれにしても、周囲の同僚達は秋人が「ただの同僚」に戻ったことを特に不満には
思っていないようだった。やはりそのほうが落ち着く――あるいは,無意識のうちに
何か不吉なものを感じていたのかもしれない。
 
 * * * * *
 
 会社を出ると、生暖かい夜風が吹いた。別段思うところがあったわけでもないのだが、
ふと顔を上げると、ビル街から顔を出す満月が目に入った。春でもないのに、
それは唱歌の歌詞のようにぼんやりと照り、自動車の音や繁華街のざわめきを見下ろしていた。
秋人は一瞬それを見つめてはいたが、
バスの時間を思い出して脚を運びはじめる。
 
 何かが、妙だった。自宅へ帰るにはバスが一番だ。交通の便からも値段の面からも、
間違いなくそれが最適だ。だが、彼の脚はそうは思っていないかのようだった。
信号で立ち止まるたび、果たしてこちらでよいのかという疑問――どう考えても不自然な疑問が
わき上がる。
(違う。こっちじゃない)
 脚はそう言っている。
 ふと、風が頬をかすめた。生ぬるく、湿った風。秋風らしからぬ性質だが、
彼はそれを不思議なほど心地よく感じた。足下からはぼんやりとぼけた影が伸びる。
朧月が秋人を見つめ、影法師が秋人を誘う。こっちだ、こっちへ行こう、と。
 ついに秋人は根負けした。もうバス停はすぐそこに見えていたが、歩行者用信号が
赤になってしまったその瞬間に、諦めて脚の行きたいところへ向かうことにしたのだ。
 
 いつもとはまるで違う道。いや、知らない道ではない。だが、これは少なくとも
会社から自宅へ帰るための道ではない――それが秋人の理解だった。
 これは――いつか繁華街で食事をして、そこからどこか‥‥どこだったか、
それが良く分からないのだが、どこかへ行く道だったはずだ。通ったことはある。
が、その時は果たしてどの道からどの道へ至って家路に就いたのか全く覚えていない。
 気が付くと繁華街からは少し遠い、住宅街らしき地区に入り込んでいた。整然と区画された
道路の両脇に一定規模のこぎれいな住宅が並んでいる。よく整備された、
というよりむしろ極めて事務的に区画されているため、どこを見ても似たような風景が続く。
だが、秋人の脚は迷うことなく一つの進路をとっていた。
そして徐々に、彼はそれを不思議とも思わず、足が赴くままに歩くことにした。
 どれだけ歩いたのか、良く分からなかった。ずいぶん歩いたのだろうか、そうでもないのだろうか。
朧月はあいかわらずぼやけた輪郭を見せたまま、ずいぶん高く昇っていた。
(‥‥帰りはタクシーかな‥‥)
 なかなか嫌な選択肢だ。少し後悔したが、とはいえ、たまの気まぐれだ。明日の仕事にも
それほど差し支えがあるとは思わなかった。体力にはそれなりの自信があったから。
436月夜の契り(3):2007/02/28(水) 21:08:06 ID:IcecXOec
 
 住宅街が徐々に寂れてゆき、街灯が貧弱な光を放っている。そのころになると、ようやく彼は
自分がどこへ向かっているのかを理解しはじめた。――この道はよく知っている。
そう、そこの角を曲がれば‥‥。
 廃ビルがあった。何もかも、よく知っている廃墟。しかし、なぜここを知っているのか、
なぜここへ来たのか――彼の思考にもやが掛かり、急に不明確になる。
 
 また、夜風。その風に、秋人はぞくりと体を震わせた。
何か、とてつもない何か――そんな漠然とした印象が胸にわき起こった。
そして同時に、妙に懐かしい、心安らぐ何かを感じた気もした。だがそういった感覚を、
恐怖や不安、あるいは懐かしさといった具体的感情として知覚できるほど、
そこに留まることはできなかった。脚がまだ進みたがったからだ。
ガレージのチェーンを乗り越え、なぜか鍵の開いている入り口を開いて、
よく見知った屋内へと体を運ぶ。
 そして、唐突に出会った。
 
 最初、彼は何と出会ったのか一瞬理解できなかった。細身の体。
しかし衣服越しにたっぷりと量感を示す胸と腰が、明らかに女性であることを示していた。
不意に月が明るさを増し、その姿をいくらかはっきりと照らした。闇の中ではほとんど見えない、
だが月光に照らされることで目に見える漆黒の髪。透き通るように白い肌、深く鋭い瞳、
真っ赤な唇。空恐ろしいまでの美女――だが、秋人はそれが何か人間ではないような、
不思議な違和感を感じた。しかし――
「ずいぶん久しぶりね」
 低く、艶のある声。その声を聞いた瞬間、秋人はすべてを思い出した。
「ごめん‥‥しばらくどうしても逢いに来られなくて」
「そう」
 カツン、カツンとヒールの音を響かせて、女は秋人に近づく。濃密な色香が鼻をくすぐり、
そしてその白い指先が秋人の首筋に触れた。
「‥‥遠いところへ行っていたのね‥‥」
 彼の首筋にある二つの傷跡をいとおしげに撫でると、彼女はそう呟いた。
「あたしのもとから逃げようとしたのかしら‥‥?」
 上目遣いに、いくぶん挑発と嘲りを載せて、女は喉で嗤う。そして驚くほど、
秋人の顔色と言葉が変わった。
「そ、そうじゃないんだ、つまらない仕事で、海外に――」
「ふぅん‥‥そう、まあいいわ」
 暖かみを感じさせない笑み――むしろその半分は怒りなのかもしれない。
「逢いに来てくれない間‥‥つまらなかったわ‥‥。
どれだけ食べても、飲んでも、全然楽しめなかった‥‥」
 両腕をするりと首に絡ませて、彼女が耳元で囁く。
「その埋め合わせ、して‥‥」
 女がそう言った瞬間、秋人は唇を重ねた。しっとりと柔らかい唇をついばみ、舐め、
そして舌を差し込み、絡ませて。そう、二人の間はいつもこれで始まった。
廃屋の中で淫らな音が響くのも気にせず、互いに赤い舌を絡み合わせ、粘膜を擦りあわせ、
唾液を送り合う。秋人が女の歯列をなぞり、鋭く尖った犬歯の裏側を愛撫してやると、
女は秋人の口蓋を丁寧に舐め上げる。そして柔らかくぬめる粘膜を絡ませながら、
二人は徐々に興奮を高めてゆく。鼻から抜ける吐息は互いに荒くなり、抱きしめ合う力も強くなる。
唇を密着させたまま、互いに強く抱きしめ合い――秋人は不意に、体が持ち上がるのを感じた。
普通、男が女に持ち上げられることなどまずないだろうが、秋人は慣れていた。
そうされるのが当然であるかのように体を委ね、そしてその間も休みなく口づけを続ける。
 ぶちぶちと繊維がちぎれる音。ばさり、と布が落ちた。視線を足下へ向けると、
女のスカートが裂け、布きれとなって落ちていた。いつものことだ。
 女が器用に体を支えてくれるのを完全に信じて、密着していた上半身を少しだけ離す。
そして女の服のボタンを外して、服を下に落とす。白磁のような肌が顕わになり、
その先端の美しい突起がツンと突き出ていた。
秋人がそれに見とれていると、女は微笑を浮かべて長い脚爪を男の襟元へと伸ばし、
そして股下まで一気に引き裂くと――早くも臨戦態勢になった男根が
勢いよく飛び出した。
437月夜の契り(4):2007/02/28(水) 21:10:34 ID:IcecXOec
「ふふ‥‥いつ見ても立派だわ‥‥楽しませて‥‥」
 血のように赤い唇が睦言を囁く。秋人はほっそりとした首を抱き寄せ、
そして耳朶を軽く噛んでやる。甘い、吐息。
 前戯など、お互いに要りそうになかった。男はすっかり硬く張りつめ、
女はしとどに濡れそぼっていた。淫らな花びらが物欲しげにひくひくと身をよじり、
溢れる淫液が茂みとその下に続く毛に覆われた大きな異形の体を湿らせている。
それでも彼女は男を焦らす。硬く上方を向いているそれの裏筋を、脚の一本で軽くなぞりあげた。
ビクン、と跳ねる肉棒と男の身体。その反応にすぅっと目を細め、彼女はその行為を繰り返す。
上半身を抱きしめたまま秋人は思わず喘ぎを漏らし、それが一層苛烈な焦らしと愛撫になって
返ってくる。
 硬く凶悪な爪先が繊細に責め上げ、その先端が鈴口に達し、入り口を軽くつつく。そして――
「くっ、うぁ‥‥っ!」
 その鋭い爪先が鈴口にほんのわずかに刺さった。しかし粘膜を傷つけることもなく、
それは引き抜かれる。そしてまたゆっくりとペニスをさすり、丁寧に苛む。
その間も彼女のみずみずしい唇は男の唇と重なり、ついばみ合っている。
張りのある大きな乳房を秋人の胸板にこすりつけ、その乳首が触れあうたびに
気だるげな喘ぎを漏らす。
「ねえ、秋人‥‥入れたい?」
 子供をあやすかのような口調で、彼女は囁いた。はち切れんばかりに張りつめた亀頭からは
透明な液体がにじみ、たらたらと溢れている。秋人の代わりに返事をしているようなものだが、
それでも彼女はわざわざ訊き――秋人はうなずいた。
「ふふ‥‥いいわ、来て‥‥」
 彼女の言葉に、秋人は右腕を女の首に絡ませたまま左手で肉棒を掴み、もうぐっしょりと
濡れている秘部にそれをあてがった。半ば宙吊りの体勢だが、慣れたものだ。
熱い亀頭が触れたのを感じると、女は脚を器用に操って男の体を抱え込み――
 ずぶ‥‥ずぶり。
「ああっ‥‥あはぁ‥‥っ!!」
 逞しい肉槍が突き刺さると同時に、がくりと体勢を崩しかけた。
眉根を寄せ、先ほどまでとはうってかわって切なげな表情を浮かべる。
 秋人は女の唇を軽くついばむと、腰をぐいっと押しつける。――溢れる嬌声、喘ぎ。
胸板で見事な乳房を押しつぶし、細い腰を抱きすくめ、そして腰をぐいぐいと押し上げる。
隆々としたペニスが女の欲望の煮詰まったところを串刺しにし、肉襞の一つ一つが
吸い付くように絡みついてくるのを味わいながら奥底を撃ち抜く。
「はあっ、ああっ! っく、はぁ‥‥んむぅっ! んんっ、んうぅっ!!」
 抱きつくような姿勢ゆえストロークは短いが、それでもしっかりと奥を突き上げるピストン。
眉間にしわを寄せて悶え、そしてその悶え声はキスで封じられる。くぐもった喘ぎが漏れ、
赤く彩られた爪が秋人の背中に食い込む。
「うぅっ‥‥! うああっ、っくぅう!」
 秋人が苦悶の喘ぎをあげる。じっとりと脂汗を浮かべて――それは苦痛ではなく、
快楽の責め苦だ。
「もっと、もっと、ああ、もっとよ秋人‥‥! 深く突いて、そうよ、ああ‥‥!!」
 不格好に腰を前後させる情人にあわせて、女はゆっくりと腰をくねらせる。
ただでさえ信じがたいほどの動きを見せる膣肉に、腰の動きが一層磨きをかける。
亀頭、茎、根元の三箇所で巧みに締め上げ、絞り上げる――そしてそれぞれにしごき、絡みつく媚肉。
硬く逞しい肉槍が熱くたぎる淫液で煮詰められ、脳と直結するかのような刺激を受けて
ビクンビクンと跳ね上がる。
「はぁん‥‥っ! ふふ、ビクビク‥‥してるわ‥‥。くくっ‥‥イきたい‥‥?」
「も、もう‥‥俺‥‥!!」
 必死に堪えながら何とか答える。その健気な答えに嗜虐的な笑みを見せて、
「あぁ‥‥ん‥‥! そう、イきたいの‥‥?
いいわ、でも‥‥っく、はぁっ‥‥あたしをイかせてからよ‥‥ふふふ‥‥」
 残酷な言葉。彼女を相手に射精をこらえつつ、秋人は必死に腰を動かす。
蜜のあふれる肉襞をかき分け、奥を突き上げる。女の余裕の笑みが徐々に崩れ、
呼吸が徐々に浅くなり――
「んはぁっ‥‥はぁうっ‥‥ああっ!」
 ついに鋭い喘ぎを漏らし、そしてそこからは一気に加速するように彼女は悶えはじめる。
身体を支えている脚もぴくぴくと震えだし、卑猥な言葉を漏らす唇からぽたりぽたりと
唾液がこぼれた。
438月夜の契り(5):2007/02/28(水) 21:15:37 ID:IcecXOec
「ああっ、そう、そうよ‥‥! あ、はぁっ!! うまいわ‥‥秋人、いい、そこ‥‥!!」
 男を焦らすために手加減していたらしい膣内の動きも、燃え上がる彼女にあわせて激しくなる。
秋人は汗だくになりながらも気力を振り絞って射精をこらえ、
女の声が大きくなるポイントを正確に突く。
「――ああ、ああぁあっ!! っく――あぅうっ!! いっ‥‥くぅ‥‥!!!」
 男の背中を強く抱きしめ、その肩にあごを乗せ、すがりつくようにして彼女は達した。
わずかに遅れて、秋人もくぐもった呻きを漏らし、身体を震わせる。しっとりと汗ばむ女の肌に、
黒くつややかな髪が幾筋かまとわりついている。ひく、ひくっと身体をわななかせながら
紅い唇を秋人の唇に重ね、音を立てずに軽い口づけを交わすと、彼女はようやく深い息をついた。
「はぁあ‥‥っ‥‥良かった‥‥。
ふふ、いっぱい流れ込んでくるわ‥‥あなたの精気‥‥おいしい‥‥」
 うっとりと甘い微笑。妖しく美しい顔立ちが、不思議なほどに可憐な笑みを浮かべた。
しなやかな腕を秋人の背中に回し、柔らかい肌をすり寄せて。硬い二本の脚爪で
秋人の腰をぐっと抱き、涎を垂らす秘肉で繋がったまま、彼女は何度も唇を重ねる。

「‥‥んぅっ‥‥」
 鋭い、小さな喘ぎ。眉根を寄せて、艶やかな唇からくぐもった吐息が漏れた。
「‥‥もっと、もっとしよう‥‥。俺の精気、もっと食べてくれ‥‥」
 自分の身体を抱きしめる力が強まったのを感じながら、秋人は腰を動かした。
「んん‥‥っ。うれしいわ‥‥ねえ、こっちでしましょう‥‥」
 女は腕と二本の脚で秋人を抱えたまま、六本の脚をざわめかせて奥へと移動しはじめた。
月の光がそこを照らす。見えるか見えないかといった程度の太さの、無数の透明の糸が
縦横に張り巡らされていた。天井へ、床へ、柱へ。糸のつなぎ目が水晶のような輝きを浮かべ、
繋がり合った男女を待っている。天井から吊されたその多角形の大きな網に脚を掛けると、
彼女はそこへするすると上った。そして秋人を静かに下ろすと、
「秋人‥‥来て。ここで抱いて‥‥」
 底知れぬほど甘い声。そしておもむろに、女は銀糸の床に横たわった。丸く大きな下半身が
網のベッドを大きくたゆませ、八本の脚と二本の腕を広げて秋人を待つ。
青白い光が、その妖しくも美しい化生の肢体を照らし出した。――ひくり、ひくりと息づく
巨大な蜘蛛の下半身。ほっそりとして、それでいて肉感的な美女の上半身。
そして、異形の身体の継ぎ目に、淫らな蜜をいっぱいに湛えた肉の裂け目。
――「それ」を形容するに、「怪物」あるいは「化け物」といった言葉以外を思い浮かべる者は
そう多くはなかろう。顔立ちがどれほど艶やかであろうと、豊かな乳房がどれほど淫らであろうと、
やはり「それ」は恐ろしく、おぞましい――そう感じることだろう。だが、彼はそうではなかった。
 秋人は網のベッドに横たわる女妖を見つめる。澄んだ瞳、紅い唇、ほっそりとした首筋。
華奢な身体には不釣り合いなほど大きく美しい肉の双丘、ぐっとくびれた細い腰。妖しく誘う花弁、
そして密生する剛毛に覆われた蜘蛛の体。八本の脚の根元には秘肉から溢れ出た液体が光り、
大きな体の端には、このベッドを紡いだ突起が息づいている。
「‥‥きれいだ‥‥」
 醜怪なはずの存在を目の前に、秋人は嘆息した。そのつぶやきに女が口元をほころばせると同時に、
彼はその化け物――秋人にとっては女神にも等しい女に覆い被さった。

 月は既に西へと傾きかけているが、相変わらず薄く霞んでいた。
一見すると破れて開け放たれたように見える窓――見えないほど細く透明な糸でふさがれた
その空間から、がらんとした室内へと柔らかな月明かりが差し込み、照らす。
 薄暗い室内で絡み合う、二人。蜘蛛女の上にのしかかり、腰を振る男。
糸で編み上げられたベッドが反動で揺れ、それが一層、二人の快楽を増幅してゆく。
「あんっ、はぁんっ、あ、あっ‥‥! いいわ、いい‥‥すごく‥‥っ!」
 艶めかしい声をうわずらせ、化生の女は悦びにむせぶ。両手は男の首をしっかりと抱き、
八本の脚がその体を抱え込む。わずかな快楽も逃すまいと必死に絡みつき、
硬い外骨格も柔らかい肌も秋人に密着させ、彼女は悶え狂う。並外れた大きさの男根が
秘裂に根元まで埋め込まれるたびに、湿った蜜音と感極まった媚声が響き渡る。
「あぁあっ、‥‥あぁうっ!! い‥‥く‥‥っ、――イくぅっ!!」
439月夜の契り(6):2007/02/28(水) 21:17:36 ID:IcecXOec
 短くとぎれとぎれに女が叫び、そして歓喜の声を上げ、腰を高く突き上げた。
反動で網が上下にゆさゆさと揺れる。硬い脚が秋人の体を力強く抱き、そのままビクビクと
小刻みに痙攣する。だが秋人は止まらない。のけぞる首筋、咽び、よがり泣く唇に熱いキス。
細長い脚に抱え込まれながらも腰の動きを加速させ、
淫らなダンスを踊る乳房を鷲づかみにする。頂点に達した嬌声がますます激しく、
絶叫を越えてすすり泣きになったかと見えた頃――不意に、男が震えた。
がくんがくん、と腕と腰を振るわせ、そして女の胸に倒れ込む――。
 
 * * *
 
「‥‥くは‥‥っ、はぁっ、はぁっ‥‥」
「あぁ‥‥はぁっ‥‥」
 荒い息をつきながら、二人は見つめ合っていた。
「んぅっ‥‥良かった‥‥やっぱり他の奴らとは全然違う‥‥。
でも足りない‥‥来てくれなかった間の埋め合わせには、まだまだ‥‥足りないの‥‥」
 そこまで言うと、女は秋人の首筋に唇を這わせる。まだ落ち着かない吐息の中に妖しい微笑を
浮かべると、二つ並んだ小さなあざに尖った犬歯を軽くあてがい――
「うん‥‥分かってる。俺が二度と忘れないように‥‥――っ」
 秋人の言葉を確かめるまでもなく、牙が肌に潜り込んだ。ほんの少し溢れた血液が、
首筋にとろりと紅い線を描く。秋人は声を上げることもなく、女が唇を離すのを待つ。
傷口から熱が全身へ広がってゆく――その感触を心地よいと感じてしまうことが、
既に彼がまともな人間ではなくなっていることをありありと示していた。
「んっ‥‥」
 ――つぷり。首筋から牙がゆっくりと引き抜かれると、新たになった二つの傷口に
透明な滴が光った。 秋人が震えた。両腕で女妖の肩をしっかりと掴み、
網のベッドに強く押しつける。
萎えもせずに彼女を貫いていたペニスは、さらに力強く反り返りはじめている。
「ぁ‥‥っ、んふふ、効いてきた?」
 どろりと暗い光を湛えた瞳にたぎる欲望を滲ませ、女が囁いた。
「っく、はぁっ‥‥熱い‥‥。もっと食べてくれ‥‥俺を‥‥もっと、もっと‥‥!」
 顔を上気させ淫らな視線を互いに交わしていたが、もう限界のようだ。
秋人は肉欲――いや、もっと他の感情かもしれない――その激情のままに、腰を叩きつけた。
「――んはぁぁあっ! 深‥‥い‥‥っ、あぁっ、あぁあ‥‥っ!!」
 狂おしい嬌声、荒い吐息、粘つく音‥‥。
絡み合う二人を、いつの間にか冴え渡った満月が見つめていた。
 
 * * * * *
 
「あれっ、大森は‥‥」
「秋人か? さっさと帰ったよ」
 渡す物でもあったのか、秋人を捜していたらしい社員はその応えに顔をゆがめた。
「は、早ぇ‥‥。ったく、加速装置でも付いてんのかあいつは」
「かもな。出張から帰った後は割とまともだったんだけど‥‥最近はまた特急退社野郎だな。
――っと、それ、渡すんだったら預かっとこうか?」
 
 そんなやりとりを知るはずもなく、当人はいそいそと夜道を歩いていた。
風はまだ冷たいが、街中だというのにどこからか梅の香を運んでくる。
 今夜は新月。だが、星も街灯もいらない。明かりなどなくとも、秋人の脚に迷いなど
微塵もない。ただ一心に、思い人のもとへ――彼が仕える、美しき祟り神のもとへと。
 
 
(終)
440なしれ ◆8XSSeehUv6 :2007/02/28(水) 21:18:47 ID:IcecXOec
以上です。
441名無しさん@ピンキー:2007/02/28(水) 21:23:09 ID:EZj0BTbq
リアルタイムGJです。
442名無しさん@ピンキー:2007/02/28(水) 23:21:13 ID:SXRyC8qn
キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆

全体に漂う妖しげな雰囲気、人外な情景描写etc.
GJ!!
443名無しさん@ピンキー:2007/02/28(水) 23:45:35 ID:7vLchMaN
GJGJGJGJGJGJGJGJGj……ッ!
エロだけじゃなく全体構成そのものに惹かれる俺が居るw
444名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 05:32:24 ID:lz61Reen
乙。

洋風雪女モノ書いてみようかと思ったが文才の無さに挫折orz
しかもエロ書けないし…('A`)
445名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 22:13:24 ID:+Lpifs1b
>月夜
GJ!
エロくて妖しくて、人外っぽいラブラブ感があって良いです。

>444
自分もなんかエロってうまく書けない。
エロ無しならなんとかならんでもないんだが、それじゃこのスレにいる意味がないし。
446名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 22:54:16 ID:yrH+WqoF
>>440
GJ!!
他人から見れば「化物の虜になった哀れな男」なんだろうけど、当事者同士は心底愛し合っているんだろうな。少なくとも俺にはそう見える。
やっぱ愛だよ、愛。

>>444-445
偉そうな口叩くが、「エロ書けないから一切書かない」は通用しないぞ。
書く気概が重要なのであって、読めるかどうか、抜けるかどうかはこれに比べればさして重要じゃない。
確かにここはエロパロ板だし、投下されるSSのほとんどはエロだ。
だが非エロSSだって少なからず存在するし、中には非エロが中心なスレもある。
エロが無くても、とりあえず書いてみろ。良識のある板住人は余程の事が無い限り叩いたりしない。
書いてるうちにエロが書けるようになるかもしれない。
どうしても書けないなら設定やストーリーなんかをここに書けばいい。
もしかしたら触発された他の職人が書くかもしれない。
ひとまず頑張ってみようよ。
書けば叩かれるかもしれないが賞賛されるかもしれない。書かなきゃ叩かれもしないけど賞賛もされないよ。
447名無しさん@ピンキー:2007/03/02(金) 00:01:28 ID:+Lpifs1b
既にエロがなくても書きましたが、何か?
既にエロに挑戦してみて挫折しましたが、何か?
既にエロがなくて叩かれましたが、何か?
既に設定やストーリーを書いて触発されて書いた人もいましたが、何か?
既に賞賛を受けた事もありますが、何か?
448名無しさん@ピンキー:2007/03/02(金) 01:11:30 ID:/h7L9QYA
>>447
エロ無しで書いて、エロで挫折して、エロ無しが賞賛されたならエロ無しメインの作家になれば良い。
エロが無いからって叩いたのはそいつが小さい器のでかいクソだっただけ。
設定を書いてそれに触発された人がいるなら名誉な事じゃないか。
>>47-66なんか非エロのダークホラーなんて板違いも甚だしいのに受け入れられてるだろ?

「エロ書けないからこのスレにいる意味が無い」なんて悲しい事言わないでくれ。
「過疎化するのがイヤだ」なんて利己的な理由もあるかもしれないが、それ以上にそんなネガティブな言葉聞きたくないんだよ。
449名無しさん@ピンキー:2007/03/02(金) 12:32:41 ID:aYVghhXx
俺はエロSSが読みたくてエロパロ板に来てるんだ。
450名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 04:18:59 ID:YmiBUUZm
ここに限らず18禁諸板にはエロ原理主義者みたいな人も多そうだしねぇ
451名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 11:07:46 ID:vAEaWN1N
エロじゃないSS投稿する板だってあるんだろ?
エロ無しならそっちで書けば良いじゃん。
452名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 19:58:24 ID:jrwlECb+
>>451
ないからここで書いてもいいよってことだよ
453名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 20:12:04 ID:V5U4iKCe
>>451
FA
454名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 20:34:35 ID:ndVBsZfy
>447
それは全部他のスレの事だろ?
このスレなら前にいたスレとは違うかもしれないよ。
455名無しさん@ピンキー:2007/03/04(日) 00:03:02 ID:Iq1SMkwX
まぁ、エロ無しならそう書いてくれれば、
読み飛ばすだけだからいいけど。
456名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 00:03:04 ID:8SfVbrGC
>454
全部このスレでの話だ。
>451
他行こうとしたら、第三者がなんか文句つけてきた。
457名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 01:19:31 ID:NtpzLXhL
>>456
ちなみにいつの事で書いた話は何?
458名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 02:13:56 ID:GCPmygjU
別に、過去何があったかとか。レベル高いとか賞賛されたとか
そんなんどーでもいいんだよ。
エロSS読ませてくれ、エロSSw
459名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 02:14:39 ID:1Uux+9JW
>447、>456
結局どうしたいのか全く分からないんだが…
460名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 18:42:00 ID:mpoWp2OL
buzama na sasoiUke
461名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 19:15:39 ID:GCPmygjU
エロ無しSSを投下する口実が欲しいんじゃないの?w
別に勝手に投下すればいいじゃん。
エロ無しって書いてくれれば、読まないだけだw
462名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 23:06:52 ID:Xx2nLs75
なんか変な夢見たんだがここにあってるかも知れないので保守代わりに投下
エロ薄めで痛いかも…いろんな意味でw

俺は家出の準備をしていた。
もうこれ以上アイツと一緒に暮らしてなんかいられるか
早く逃げないと…
暗い、なぜか窓の外だけは曇ったように真っ白い部屋でその準備をしていると、
キィ、と後ろからドアの開く音がした。
振り向くと、白いワンピースのようなものに身をつつんだ彼女が立っていた。
なぜ?今日は来ない日のハズ…
…ゆっくりと彼女が近づいてくる。
…恐怖が俺を支配する。声が出せない。体が動かない。
…いつの間にかベッドに押し倒されていた。なぜか服も脱がされている。
彼女に絡み付く様にしなだれかかられ、上半身を愛撫される。
それにキスも加わり、顔中にキスされる。
女性にそんな事をされれば嬉しいはずなのに、抱く感情は恐怖しかない。
怖い。逃げたい。
463名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 23:07:59 ID:Xx2nLs75
だんだんキスの場所が変わってくる。顔から首筋へ、首筋から胸へ。
やがてキスが胸の先端まで達した時。
ぷちん、となにか音が気がした。
違和感を感じて胸を見ると。



噛み切られていた。
そして、彼女の顔がゆっくりこちらを向く。
向き合った瞬間、自分は気を失っていた。
でもその時薄れていく中で抱いた感情は、なぜか、このまま彼女に壊されてしまいたいというものだった。


ここで目が覚めました
ちなみに彼女とは、なぜか家族という認識がありました。
当然当てはまる相手はいませんw
サキュバスにでも憑かれたかな?
464名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 23:18:36 ID:zZcVzEw9
どうみても憑かれてます。本当に(ry
ちくび噛みきられて「違和感」で済むとはさすがサキュバス
465名無しさん@ピンキー:2007/03/06(火) 00:08:34 ID:NRNDSWzU
>462
きっと貴方はこれからも夢の中で彼女に食われ続けるでしょう。
それが貴方と彼女の愛の形なのです。

>459
わかりやすく言うとだな。
444&445「エロSSって難しくて書けないよな」「そうだよな」
446「(相手がSS書いたことないと勝手に勘違いして)まず書いてみろ(と偉そうに説教)」
447「んなのとっくに書いてるっちゅーの」

つまり「446はトンチンカンな事を言っている」というわけだ。
466446:2007/03/06(火) 00:16:36 ID:HSNMO5dW
>>465
正直すまんかった。
でも>>459が言いたい事とは少し違う希ガス。
467名無しさん@ピンキー:2007/03/06(火) 01:06:10 ID:psW4wxLE
>>464
夢だからそこら辺は突っ込まないでw
夢で痛みなんか感じないでしょ?
468名無しさん@ピンキー:2007/03/06(火) 22:58:06 ID:tvVpBUX4
で、>462氏がその後どういう淫夢に浸っているのかとても知りたいw
469名無しさん@ピンキー:2007/03/07(水) 23:21:07 ID:rhte5flz
今更だけど「ひでぼんの書」の別ルートみたいな作品って
まだ書かれてないの?
470469:2007/03/08(木) 13:14:03 ID:eG7wUDyV
すまん。改めてみてみたら‘中止’と書いていたよ。
471名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 11:50:03 ID:iFQQ41z2
保守
472名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 20:41:38 ID:ORn9Kxp4
hosu
473名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 23:54:28 ID:VZJpNTle
マガジンに全裸ラミアキタ!
474名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 17:55:32 ID:w64tYLvF
>>473
し、詳細を頼む!!
475名無しさん@ピンキー:2007/03/18(日) 19:04:41 ID:UN3I62Yz
月刊ジャンプにも人魚ものがあるじゃないか。
476名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 01:34:39 ID:QkHcu8za
妖怪人間ベラさんを徹底的にやっちまう話キボン
477名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 17:06:45 ID:GeYeZQWA
ほす
478名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 00:15:38 ID:msIRpmCt
またナイアさんとラートのお話来ませんかなー?
479名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 16:27:42 ID:B2htHobD
480名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 22:06:40 ID:DZ66DIIo
それなんてえろg
481名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 04:19:13 ID:HUPQLFCJ
>>479
俺のところにも来ないかなぁ・・・w
まあ、妖怪見たな奴は隣で寝てるけどorz
482名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 04:20:49 ID:HUPQLFCJ
うっ ボケそこなった
吊ってくる
483名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 10:09:39 ID:FrxLCYGZ
妖怪名 「見たな奴」
484名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 11:48:29 ID:IK8V1XQ0
「おっ、お前意外と脱いだらすごいんだな」
「見ぃ〜た〜な〜。私の裸を見たからにはただではすまさん。一生取り憑いてくれるわ!」
485名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 12:29:55 ID:hrNRexXl
>>479
オチにわろた
原作BANABA FISHの人か、あの絵でどう描かれていたのかちょっと気になる


ウチにも来ないかなあ……
486名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 18:13:03 ID:2yz/T+9v
>>484
ただの痛い女じゃねぇかw
487名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 00:19:12 ID:I9ofXUQw
そういえば「アトラック=ナクア」ってエロゲなかったっけ?
488名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 00:35:04 ID:gOIW6kgj
何そのワーカホリックみたいなお姉様。



マジレスすっとC社産でッは入ってないぞ。
489名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 01:02:55 ID:1Vng4qDF
アトラク=ナクアだな。
あれは良い。
490名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 08:52:44 ID:MZFtrR3A
蜘蛛女のラブストーリーだな
登場人物(人間)の状態(死亡・贄(肉奴隷?)・外界(興味無し))を決めれて、途中から読み返すモードで状態をいじれるのが便利だった
プレイして感動して公式HPのSSを読んで感動が粉微塵になった記憶がある(褒めている)
491名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 13:32:04 ID:8BuMUuiY
バリバリか。
492名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 13:42:04 ID:dXtFmNgQ
バリバリだなw
493名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 20:03:25 ID:baMBmPn7
あれのバッドエンドの衝撃は今も心に焼き付いている
494名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 23:35:43 ID:gOIW6kgj
蜘蛛女ってのは、このスレの人気種族だな。
なんであんなヤレそうもない下半身を好むんだか……
そういや同じくアレな下半身のラミアもそこそこ人気種族だったな。
反面、メジャーな人魚は逆にレア種族だよな。
あと人気種族ってなんかいたっけか?
495名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 00:33:20 ID:TliDD8oT
昔、俺が幼かった頃の思い出。

母が、俺と妹を映画に連れて行ってくれた。
勤め先で貰った劇場のタダ券だったが、もう期限が切れる、ということで、平日の夜に、母、俺、妹で見に行った。
「蜘蛛女のキス」
ホラー映画だよ、これきっと。
母は得意げに、そういった。

ホモ映画でした。
496名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 01:06:55 ID:cosQut3o
それで妹が腐女子になっちゃったんだな
497名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 02:08:56 ID:bQB2I98m
単にホモ映画で済ますと悲しすぎる>蜘蛛女
が、お子様には向かないのは確か
っつか、知らずにタイトルだけ見れば確かにホラー映画だと思うよねえ

ちなみに、作中でゲイが語って聞かせるキャットピープルのナスターシャ・キンスキーのリメーク版はなかなか扇情的な獣人物w
498名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 02:34:54 ID:c00kpF/D
なんかこんなのあった
ttp://thumb2.uploda.org/file/uporg755449.jpg
499名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 03:21:05 ID:MsYmdRxq
そのシリーズは、ラミア・人魚・スライム・ハーピーまで目撃した
500ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 09:56:29 ID:BjywvTyU
山姫(山姥の眷属? 吸血する)で一本いきます。
長いので前半部分を11レスほど。
甘々のはずですが、血の描写が少しありますので、
読みたくない方は「ゲーパロ専用」をNGワードにして弾いてください。
501ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 09:57:04 ID:BjywvTyU
<山姫さま>

「迷っ……っちゃった……?」
雅人(まさと)は、山の中でつぶやいた。
自分の声の弱々しさにますます心細くなる。
きょろきょろと辺りを見渡しても、今、山のどのあたりにいるのか全然分からない。
春休みを利用して祖父母の家に遊びに来たのはいいが、
穏やかな日差しと風に誘われるまま、
家の裏の山から続いている奥山のほうに行ってみようと思ったのが間違いのもとだった。
はじめて踏み入れる山道は意外と面白く、少年は誘われるようにして奥へ奥へと進んだが
ふと帰り道を意識したとたん、突然山は牙を剥いた。
帰り道は、ない。
ないというよりも幾つもあるように見える。
「……」
少年は泣きそうな表情でもう一度あたりを見渡したが、
いくつも分岐した山道は、都会っ子の少年が見分けられるほど甘いものではなかった。
──夕暮れが近い。
一呼吸ごとに空気が冷えていく。
つい先ほどまで雅人に微笑みかけていた山は、
今や、迷い込んだ少年の苦境も知らぬように冷酷で意地が悪い風貌を見せていた。
「うう……。お腹すいたよぅ……」
昼食を食べ損ねていたことを思い出すと、空腹はにわかに耐えがたいものになった。
「なんでこんなところまで来ちゃったんだろう……」
自分でも不思議なくらいに強く沸いた「山の奥へ行きたい」という衝動の代償は、
夕暮れの深山で遭難しかけている自分だった。
後悔と同時に、祖父母の忠告が思い出される。

(――奥山には絶対に行ってはいけない)
(――山を知らない人間は、絶対に迷うし、……なにより奥山には山姫さまがおられるでな)
502ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 09:57:35 ID:BjywvTyU
山姫(やまひめ)。
奥深い山に住む妖怪、鬼、あるいは女神の類で、山姥(やまんば)の同族という。
山姥と違い、紅い十二単に緋袴という目にも鮮やかな姿の若く美しい女の姿であるが、
その恐ろしさは、山姥をも上回るという。
なぜなら、山姫に微笑みかけられ、それに微笑み返してしまった人間は、
首筋から彼女に血を吸われ、――そして二度と山を降りてくることはない。

ついこの間、雅人がここに遊びきた夏休みも、近隣の山中で行方不明者が続出し、
大掛かりな山狩りが行われたばかりだった。
もちろん少年は、祖父母から聞かされた伝説を鵜呑みにしていたわけではないが、
旧家の末裔である少年の家には、「捜索」のために、どこかからやってきた遠い血縁の人間が集まり、
なにやら深刻に話し込んでいたのを見ている。
(奥山には、何かがある)
どう考えても、警察や村役場の捜索隊とは異なる雰囲気の
「遠縁」の人間たちのことを思い出して、雅人はちょっと身震いした。
あの人たちが怖いわけではなかったが、彼らがここにやってきたことには、何かしら理由がある。
捜索者たちには、そう思わせる佇まいがあった。
何か──すなわち、奥山の何か。
(もしかしたら、本当に山姫さまがいるのかも……)
先ほどまでの自分なら笑い飛ばしていた迷信も、今なら心の底に容易に入り込んでくる。
黄昏時──逢魔が時には。
(と、とにかく歩かなくちゃ)
涙が出そうになるのをぐっと堪えて歩き出そうとしたとき、突然声をかけられた。
「――どうしたの?」
驚いて振り返る。
ついさっき、辺りを見渡したときには、絶対にいなかった人影が、どきりとするほど近くにいた。
「あ……あ……」
その人影が「人」ではないことは、見た瞬間に分かった。
たとえ、美しい少女の姿をもっていたとしても。
503ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 09:58:10 ID:BjywvTyU
人外の美少女は、白で出来ていた。
その十二単(じゅうにひとえ)は、全て白色。
だが、それぞれ異なる手の込んだ織りで作られた単(ひとえ)は、
一枚一枚がそれぞれまったく別の白色に見える。
襟元からのぞく首筋や袖から見える繊手は、さらに白く透き通るようだった。
そして、少女の体と衣服の中で色があるのは、その髪と瞳と唇。
地面まで届く直ぐい髪は、今洗いたてたような艶やかさな黒。
そして同じく、吸い込まれるように澄んだ双眸も、漆黒。
唇だけが、血に濡れたように紅い。
何よりも、その人間離れした──人外の美貌。
祖父母から聞いた話とは、身にまとう色が違っていたが、
目の前の美少女が山姫であることを、少年は一瞬にして悟った。

そして、白と黒と赤だけで存在する人影は、にっこりと笑った。
つられて少年が笑い、――恐怖に青ざめた。
祖父母に教わった伝説を思い出して。
──山姫に微笑みかけられ、微笑み返した者は、
──首筋から生き血を吸われ、二度と山から戻らない。

「……あ…あ……」
少年は金縛りにあったように立ちすくんだ。
山姫は、微笑を浮かべたままゆっくりと雅人の首筋に朱唇を近づけた。
「……!!」
その牙が少年の頚動脈を引き裂──かなかった。
ちゅっ、という音を立てたあと、山姫の唇は雅人の首を離れた。
「……え?」
「微笑み返してくれたわね。――これで、貴方は私の物。ついていらっしゃいな」
血を吸うことなく身を翻した乙女のことばに、少年は抗いがたいものを感じた。
音もなく山道を歩き始めた山姫を追って、雅人は歩き出した。
あたかも吸血鬼のしもべとなった被害者が、主人に盲目的に従うかのように。
504ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 09:58:40 ID:BjywvTyU
「――あの……」
返事が返ってくるとは思わなかったが、
雅人は、1メートルほど先を歩く乙女の後姿に声を掛けずにいられなかった。
「なあに?」
先ほどは気が動転してわからなかったが、山姫の声は少年が想像したものよりも、若い。
茶目っ気すら感じる華やいだ声は、どこか浮き浮きとしているようにも思えた。
神秘的な美貌と装束をのぞけば、まるで、少し年上なだけの少女に思える。
「き、君って……山姫……さま?」
「そうよ。当たり前じゃない」
あっさりと帰ってきた声に、少年は一瞬絶句する。
「……血、吸わないの?」
「……吸われたいの?」
くるりと振り返った美貌の中心にある二つの澄んだ瞳が、雅人を貫く。
どきり、と少年の心臓が高鳴る。
「あ、あ、……い、いや……」
「そう。よかったわ。私、姉さまたちと違って赤いの、嫌いなの。――ほら」
裾に手をかけた乙女が、それをぱっと引き上げたのを見て、雅人はわっと、声を上げて驚いた。
「なあに、変な声を出して?」
「あ、い、いや、何でもない……です」
山姫の動きに、スカートめくりを連想したなどとは言えず、少年は口ごもった。
奥山に住まう人外の乙女が持ち上げたのは十二単だけで、
その下にあるのは下着ではなく、袴だった。
──純白の。
山姫は、白一色の十二単の下に、これも白い袴をつけているのだ。
「緋袴を穿く姉さまたちは、赤いのが好きだから血を吸うみたいだけど、私は白が好き。
だから、血は吸わない。貴方からも別なものを貰うわ」
袴の色は、好んで口にするものに関連するのだろうか、そんなことを言った山姫は、
ぱっと裾を下ろすと、また歩き始めた。
「ど、どこに行くの……?」
「私の家に決まっているじゃないの。貴方、お腹がすいているんでしょ? おいしい御飯、ご馳走してあげる」
505ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 09:59:11 ID:BjywvTyU
山姫の言う「家」は、遠かった。
途中、何度も分岐した山道を通る。
黄昏時は、先ほど少年に見せた冷淡さとはうって変わって、
また穏やかな黄金色の世界を見せていたが、
あまりにも長い時間を歩かされて、少年は焦った。
「あの……どこまで行くの?」
「もう少しよ。疲れたの?」
「ううん」
確かに、疲れてはいない。
歩く気力も心の奥底から振り絞らなければならなかった先刻と違って、
一歩一歩が軽やかに前に出る。
「そう。この「道」は、私の物だから、貴方にも負担をかけないはずだわ」
奥山の支配者は、踏みしめる土に魔法をかけることができるのだろうか。
足の裏から伝わる感触は、どこまでも優しいものだった。
「……だけど……」
ぐう、と少年の腹が鳴った。
いかに協力的とは言え、道は空腹までは癒してくれない。
「我慢なさい、もう少しなんだから」
山姫がそう言ったとき、少年は、道から少し離れたところに木の実を見つけた。
「あ、ヤマモモ……」
祖父母の家の庭にも植えられているそれは、少年にとって馴染み深いものだった。
だが、見たこともないくらいに大きく育ったそれは、
季節はずれの赤黒い実をつけていなければ、きっと別の木だと思ったことだろう。
「おいしそう……」
祖父母の家で甘酸っぱい実を食べた記憶が、空腹の少年に行動を取らせる。
思わず駆け出して実をもごうとした。
山姫が振り向いて、悲鳴を上げた。
「――だめっ! その木はまだ私に懐いていないのっ!」
506ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 09:59:43 ID:BjywvTyU
「痛っ……!」
伸ばした手が、鋭くとがった小枝に傷つけられる。
少年は驚いて手を引っ込めた。
勢い良く手を伸ばしたけれど、身の手前にこんな小枝があったとは気がつかなかった。
少年はゆっくりと手を伸ばして、――またも小枝に肌を裂かれた。
「……何、これ……」
「「道」に戻りなさいっ! その木はまだ私を主と認めてくれていないの!!」
山姫の狼狽しきった声に、少年は振り向く。
わさっ!
背後で、何かの気配がした。
少年は背中の「それ」を確かめることなく、本能的に前に逃げた。
「道」に戻った瞬間、「それ」の気配は消えた。
恐る恐る振り向くと、ヤマモモの巨木は、先ほどと同じように静かに佇んでいるだけだった。
「……」
「――よかった。あの木は、姉さまに一番懐いていた木なのよ。
だから、人間には良い感情を抱いていないわ。
貴方を容易に殺すことが出来る力を持っているのよ」
その言葉が嘘でないことを、少年は瞬間的に理解していた。
奥山には、人智を超えた存在がいくつも存在する。
山姫がいるのなら、人間を殺せるヤマモモの古木も存在するだろう。
「あの……姉さまって……?」
少年は、山姫の言葉に出てきた人物に興味を抱いた。
「……私の前のこの山の山姫。――もう身まかられてしまったけれども……」
その辛そうな表情に、少年は口を閉ざした。
山姫も、目を背けながら沈黙している。
ぽたり。
二人の間に落ちた静寂を破ったのは、少年の手から落ちた、血の雫だった。
「……あっ!!」
山姫が見る見る青ざめた。
507ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 10:00:17 ID:BjywvTyU
「血……、赤いの……、嫌あぁっ!!」
山中に、山姫の金切り声が響き渡った。
「え……」
人外の美少女の突然の狂乱に、少年は目を丸くした。
思わず、駆け寄ってなだめようとする。
「嫌っ、嫌っ、近寄らないでっ!!」
山姫は後ずさりして少年を拒んだ。
吸血の女神は、少年が手の甲から流す僅かな血に、猛烈な拒否反応を起こしていた。
「……はやく、これで、傷をぬぐってっ!!
わたしに、血を見せないでっ! 赤いのを見せないでっ!!」
山姫は、今にも向こうへ駆け出してしまいそうな及び腰になりながら、
それでも袖を振って純白の布を取り出した。
少年に投げつける。
受け止めた少年が、手の傷にそれを当てると──見る見る傷がふさがった。
血をぬぐうと、そこには傷跡一つ残ってない。
「消えた? 赤いの、消えた?」
声は、地面のほうからした。
山姫は、しゃがみこんで震えていた。
目をつぶり、黒髪の頭を自分の手で抱え込んで、少年に質問している。
「うん……消えた」
いかなる力なのか、血をふき取ったはずの布は、純白のままだ。
今さっき、自分がヤマモモの小枝で傷付けられたことが、
まるでなかったような現状を見て、少年は目を丸くした。
──もうひとつ、まるで何事もなかったようなことがある。
少年の返事を聞いたとたん、山姫はすっくと立ち上がった。
雅人の手の甲を見て、そこに傷──血がないことを確認すると、
山姫は、くるりと向きを変えてまた歩き始めた。
「どうしたの? 付いていらっしゃい」
人外の美少女のあまりの変わり身の早さに、少年は、もう一度目を丸くしてから、
駆けるようにしてその後を追った。
508ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 10:06:53 ID:BjywvTyU
──家、と言うのはつつましい表現だった。
山姫の住まいは、山中に立てられた御殿だった。
瓦葺も真新しい屋敷は、誰がどうやって建てたものか想像もつかない。
その一室、青畳が香る部屋で、雅人は、泣き出しそうになっていた。
山姫は、約束どおりご馳走を用意してくれた。
何百畳あるか想像もつかない大広間に並ぶ膳の上には、
山の珍味がずらりと揃えられている。
見るからに美味しそうな食べ物の数々を前に、しかし、雅人の空腹は収まらなかった。

「……食べられないよう、こんなの……」
少年は、恨めしげに膳の上を見つめた。
そこにあるのは、皿にのっている白い餅。
だが、どんな搗(つ)きかたをしたものか。
餅は、とうてい少年の歯が立つものではなかった。
それは、金剛石より硬いのではないだろうか。
無理に噛みしめれば、歯のほうが砕けてしまうにちがいない。
物理的な硬さ──搗いた「もの」の剛力の他に、
あきらかにこの世ならぬ「力」が加えられた食物だった。
<神食>と、人は言う。
妖しの、鬼の、そして神の、食べ物は、常人の食せるものではない。
少年の困惑顔に、山姫はにっこりと笑って隣の皿を取った。
「……あらあら。では、これならどう?」
その上にあるのは、真っ白な握り飯。
しかし、それも同じことだった。
石よりも硬く密度のある握り飯を、少年は飯つぶ一つばらすことさえできなかった。
「……まあまあ。それじゃ、これなら?」
泣き出しそうな表情の雅人を見て、山姫はくすくすと笑いながら、その隣の椀を取る。
椀の中で輝いているのは、白い御飯。
しかし、理想的な炊き上がりを湯気と匂いで証明するそれは、
小砂利のように硬く、少年の咀嚼を拒んだ。
509ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 10:07:24 ID:BjywvTyU
「……だめ……」
口に含んだ飯を、椀のふたに吐き出しながら、少年は涙目になった。
少年は、ずらりと並んだご馳走を目の前にして、絶望的な空腹感に襲われていた。
「――ふふふ、仕方ないわね」
山姫はなぜか上機嫌で笑い、御飯の椀を取り上げた。
その艶やかな微笑みに、少年は背筋をぞくりと這い上がるものを感じた。

「……こっちに来なさい」
山姫は、箸と椀を手に持ちながら山姫は、雅人を促した。
「あ……はい」
素直に従った少年を、笑みを濃くして見つめた人外の美女は、
白飯を一塊、箸でつまみあげると、自分の口の中に放りこんだ。
箸と椀を置き、山姫が目を閉じる。
わずかな咀嚼音が聞こえた。
山の女神は、神のための食物を容易にかみ砕いた。
何度も何度も口の中の飯つぶを丁寧に噛みしめ、やがて、山姫は目を開いた。
「――」
すっと手を伸ばし、側に座った少年を抱き寄せる。
「……!?」
驚いた少年がもがく前に、山姫は、その唇を自分の唇で奪った。
金縛りにあったように硬直した雅人の唇を割り、その口中に何かを流し込む。
どろどろの粥に溶けた、人外の白飯を。
その甘く、温かく、かぐわしい液体は、何の抵抗もなく少年の喉を通り過ぎた。
「!!」
雅人の眼が見開かれた。
510ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 10:07:55 ID:BjywvTyU
「ふふふ……」
「あ、あ……うわ……」
突然のことに混乱する頭と、胃の腑に収めた久々の食物の美味に少年は言葉もでなかった。
その様子を目を細めて眺めた山姫は、また白飯を口に含むと咀嚼を始めた。
噛み終わると、また口移しで少年にそれを与える。
「……白い御飯、おいしいでしょう? 私ね、食べるものも白いのが大好きなの。
たんとお上がりなさい。お腹いっぱいになるまで食べさせてあげるわ……」
その言葉通り、山姫は少年が満足するまで、口移しで粥を与え続けた。
「ふわあ……」
最後の一口を飲み込んだ雅人は、唾液の糸を引きながら唇を離していく山姫を呆然と眺めた。
少年にとってはじめての口付け。
それは、人ならぬ美しさを持った山の女神からのものだった。
少年は、恥ずかしさに顔から火が出るようだった。
「……あ…れ……」
いや、血がまわっているのは、顔だけではなかった。
全身が、火照るように熱い。
「ふふふ、どうしたの?」
山姫が、くすくすと笑いながら雅人の顔を覗き込む。
「い、いや、なんでも…ない……です……」
少年は、もじもじと身体を動かしながら、かすれた声で答えた。
嘘だった。
身体の中が、どこかおかしい。
しかし、反射的に大丈夫だと答えてしまったのは、
それが少年にはなじみの生理現象を伴っていたからだった。
ズボンを押し上げる、股間の中心。
それが、いやらしい雑誌やDVDを見たときよりも、ずっと強く自己主張しているのは、
美しい少女から口付けを与えられたせいなのか。
――意識したとたん、怒張はさらに激しくなり、少年は身もだえした。
511ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 10:08:25 ID:BjywvTyU
「なあに、どうしたの?」
山姫が近づく。
かぐわしい吐息。わずかに白飯の豊潤な香りがまじっている。
それを吸っただけでますます下半身が猛るのを感じた少年は、
思わず後ずさりして逃げようとした。
しかし限界にまで張り詰めた少年の男性器は、
その動きだけでも衣服にこすりたてられ、雅人をますます窮地へと追いやった。
人外の美少女は、そんな少年に容易に追いついた。
青畳の上で、少年に抱きつき、耳元でささやく。
「ふふふ、おち×ちん、熱いでしょ?」
「――え?」
少年は自分の耳を疑った。
だが、山姫は、もう一度、その単語を彼の耳元でささやく。
「おち×ちん、大きくしちゃったのね?」
神秘的な山の女神が、到底口にすることがないようた卑猥なことばに、
少年は驚きとともに、身体と心がしびれるのを感じた。
山姫の漆黒の瞳に淫靡な光が宿る。
それは獲物を捕らえた獣のそれに似ていた。
「うふふ」
抗う術もなく青畳の上に転がされた雅人の上に、白い十二単がのしかかる。
体重はほとんど感じられない。だが、体温は感じられる。
「うわあっ!」
不意に、身体全体に電流が走ったように、少年は身を仰け反らせた。
山姫は、その繊手を雅人の股間に這わせていた。
ズボン越しに、しなやかな指の動きが伝わる。
「すごい……。この……袴の上からも貴方のおち×ちんが大きくなっているのがわかるわ」
ジーンズという単語を知らないのだろうか、一瞬逡巡したが、
うまく自分の知っている単語に置き換えた後は、山姫の言葉はすらすらと出てきた。
男性器の卑称を口にする時は、舌なめずりせんばかりの表情すら浮かべて、
美しい山の女神は少年に擦り寄った。
512ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2007/04/01(日) 10:09:34 ID:BjywvTyU
前半部分はここまでです。
513名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 10:30:37 ID:syNGhKuW
ゲーパロさん、おひさー。
続きも期待して待ってます。
514名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 15:06:28 ID:nGv15cE4
もしかしてここ来たのって初めてじゃないか?
乙です。
515名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 15:34:34 ID:qDxs2Qmw
素晴らしい!

>「私は白が好き。
> だから、血は吸わない。貴方からも別なものを貰うわ」
このセリフがたまらん、続きを期待。
516名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 18:04:04 ID:SkdVAzjs
ちょいと訊きたいんだが。
昨日一昨日と、手癖みたいなもんで、なんとなく書いてて、
なんとなく書きあがったんだが。
投下先が分からないんだよな。

吸血鬼っぽい♂×取り憑き型幽霊♀
   〃   ×左記♂により人間から吸血鬼っぽいものにされた♀
の話は、このスレに投下してもいいのかな?
それともテンプレにある、関連別スレの方が良いんだろうか?
 
 
――と、訊きにきたはずだったんが。
今はそんなことどうでもいい
 
 
>ゲーパロ専用氏
続きに期待して、全裸で待ってる!
517名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 18:58:42 ID:j1TQfQd+
ここでいいんじゃないの
特に外れてる訳でもないみたいだし
518籠城戦 ◆DppZDahiPc :2007/04/02(月) 19:57:41 ID:9TvPyzjy
ID変わってるけど。
んじゃ、投下してみる。

全32レス使用/微グロ・血表現あり/鬱/近親相姦
以上のことが駄目な人は、NG登録よろ
 雪上に埋もれる都市ブランクロッジ。
 ドーム上の隔壁に覆われ/護られ、永久(とわ)に続く氷河から人類を護る、生命の揺り篭。
 彼は、上中下三層からなるブランクロッジの中層/居住エリア、ケーキのように八つに分けられた第二区画にいた。
 彼――着古した背広/裾にほつれのあるフロックコート/ざんばらの髪/疲れたような顔――全体的に無気力感漂う青年。
「……ここですか」
 手にした地図と、番地を照らし合わせ、確認し。僅かに息を吐いた。
「いやぁ、大きな家ですねぇ」
 ここまで来る際に通り抜けた第六区画や第四区画と違い、第二区画は整然として整っていたし。路上に乞食の姿はなく、軍警察の制服を着た者たちが巡回していた。
 建てられている家々も、雑然とした雑居ビルなどではなく。どれも、ウエンディゴのような巨体を宗教絵画のような装飾で飾った、新進の芸術家が奇をてらったような造りをしていた。
 なかでも、彼の目的地である、この屋敷は大きく、なにより馬鹿馬鹿しいほど飾り立てられていた。外装に貼り付けられた宝石を売るだけで、彼が着ている安物のフロックコートが三十着は買えそうだ。
 彼は象牙で作られた呼び鈴を押すと、クルラクルラ鳥のようなけたたましい音が鳴った。
『……はい』
 呼び鈴から不機嫌な声。喋るのすら金の無駄だというような。
 彼は相手が見ているわけでもないのに、営業用の微笑を顔に張り付かせると
「どうもぉ、こんにちはルラーンです」
 名乗った。自らの現在の立場を。
「エクソシストのルラーン・ハウドラゴンです」

***

 ルラーンを呼んだ屋敷の主はルラーンを見て、一瞬表情を歪めたが――直ぐに笑んだ。
「いやぁ、このような辺鄙なところにご足労いただいて申し訳ない」
 言葉尻に浮かぶ、言葉と正反対の自信/意味。
『このすばらしい街へようこそ』
 ルラーンはひょろひょろとした呑気な笑みを浮かべ。
「とぉんでもない。私が見てきた街の中でも、ここは飛び切りユニークですよ」
「満足していただけたなら、街の一市民として嬉しいですね」
 その首元。皺一つないシャツの襟に付けられた議会委員を示すバッジ。権力と富を示すかのように突き出た、その腹。
 口ひげを揺らしながら笑う家主/雇い主に追笑しつつ、ルラーンは視線を巡らせ、玄関ホールを見渡した。
 感想――ここでパーティでもできそうだ。
 それほど玄関ホールは大きく、しかし置かれた調度品/壷/絵画/石像により、幾分か狭く感じる。
「では、まず、仕事のお話をしながら昼食としましょうか」
 その言葉に、ルラーンは仕事を忘れた。
「ええ、そうしましょう」
 ぎゅるりと、三日前より何も食べていない腹が唸った。
 案内されている最中、屋敷の主/マサキ・ジオライド議会議員は、ルラーンへ。
 この街の成り立ち――いかに、自らの一族が貢献したか。
 政治体制――いかに、自分が重職についているか。自身が成した功績についても。
 屋敷――どれだけ金がかかっているか。置かれた調度品の素晴らしさ。住まう住人の素晴らしさ。
 などを話したが、ルラーンは一つも覚えていなかったし。聞いている最中も、どうにも生返事ばかりだったが、ジオライド議員は満足気に話した。
 ――それどころか、ルラーンは食事のことばかり考えていたせいで。途中、案内された屋敷の間取りすら覚えていなかった。
 どうにも、腹が空くと頭が鈍る。
 故に、食堂に案内されると、それまでの陰鬱さが嘘のように華やかな笑みを見せた。
 子供のような表情で、視線をキョロキョロ動かす。
 食卓に並べられた、こんがりと焼き目のついたローストビーフ/表面で油が沸き立つフライドチキン/こんもりと盛られたポテトサラダ/薄くスライスされたトマトとチーズ/大きな椀に入れられたクリームチャウダー。
 ジオライド議員はたっぷりとした腹を突き出し、胸を逸らした。
「堅苦しい料理よりも、家庭料理でもてなすのが、我が家の――」
「……素晴らしい」
 説明を聞くのももどかしげに、ルラーンはコートの袖で口元を拭った。
 ジオライドは僅かにきょとんとしたが、直ぐに苦笑すると。
「では食べましょうか」
 そう言って合図すると、それまでこの部屋にいなかったかのように気配を消していたメイドの一人が、ルラーンのコートと手荷物を預かり。一人が席を引いて、そこへ座るようルラーンを促した。
 ベッドにしてもいいような長い食卓の端と端に、それぞれ腰掛ける。
 安っぽい背広姿になったルラーンが手を伸ばそうとすると、メイドがそれを遮り。
「お取りします」
 といった。
 ルラーン、もどかしげに手を引っ込めると。しかし、食欲丸出しで。
「とりあえず一通りください」
 満面の笑みだ。
 料理を取り分けてもらうと、繁殖期のゴブリンさながらに、猛然と口の中へ料理を詰め込み。
「うまい、うまい」
 と蕩けた呟きを漏らしながら、かっこんでいく。
 ジオライドは、そんなルラーンの様子を満足げに見ながら、他のメイドへ飲み物をと指示を出した。今から出てくる酒が、どれほど高価か、ルラーンに聞こえるように。
 酒が運ばれてきたらきたで。
「かの霧の都で醸造された、極上のワインでして。これを手に入れるために、ヒューイックの絵を一枚買えるほど積みまなければならなかったのには、参りましたが。ですが、やはり、それだけの価値はありますな」
 そう言って、注がれたワインを少女が処女か見極めるような顔で臭いを嗅ぎ、どうやら処女だったようで、満足げに口に運んだ。
 その動作の半分の時間で、ルラーンは口をつけ。
「む?」
 眉間に皺を寄せた。
「おや、どうしました?」
「これが、霧の都で造られたのですか?」
「ええ、そうですが。気にいりませんか? なら、もっと良い酒を……」
「ああ、いえ。大変美味しいので、驚いただけですよ」
 にっこり、微笑む。
 ジオライドはほっとデカイ腹を撫で下ろすような仕草をすると。
「それは良かった。そうですな、この酒は、驚きに値する。賞賛のしようのない、味と風味で。まるで、ユランダの戯曲に巡り合った時の様な新鮮でいて、これのほかにない。そんな感動を与えてくれますな」
「……はあ」
 フライドチキンにかぶりつきながら、息を吐くように相槌を打つ。
「特にこの七十四年ものは――おっと」
 ようやく、ルラーンの表情、その意味に気付くと。残念そうに、口を止め。
「いけないいけない。こうして知識をひけらかすのは、下賤だとは分かっているのですが。感動を共感したい性分でしてな。いやはや」
「ああ、分かります」
 まるでレコードのようにルラーンは応えた。その手に黒糖を混ぜ込まれたパン。
 ジオライドは、頷き。
「道程の疲れを癒していただくのを、まず考えねばならないのに。お耳を汚して、申し訳ない」
「いやぁ、そんなこと」
「そうだ」
 ジオライドは言うや、ルラーンのために料理を取り分けているメイドへ、視線を送ると。
「君、いつまでも料理を取り分けていないで、先生に奉仕してさしあげるんだ」
 メイドは手を止めると。
「はい、ご主人様」
 と答え、料理を取り分けた皿をルラーンの前に置き。
「失礼いたします」
 ルラーンに頭を下げるや、床に膝を着き、食卓の下へと潜り込み。
 ほうけているルラーンの、しわくちゃなズボンの前に手をかけ、開いた。
「あ、あのっ」
 ようやく、自分が何をされるのか理解したルラーンは驚いた。
 ジオライドは笑った。
「そんなに慌てなくとも。躾けてありますので、噛み付きませんよ」
「いえっ、そういうことじゃなくてですね」
 慌てふためくルラーンに構わず、メイドはその口にルラーンの貧相な形に見合わぬ、やけに大きな一物に惚れ惚れしながら、くわえ込んだ。
「ちょっ、駄目ですよ。止めてください」
 ジオライドはそんなルラーンを笑うと、自らも一人のメイドにくわえさせながら。
「照れなくともいいですよ。この娘どもは、そういう風に躾けてありますから」
 その言葉に、ルラーンの言葉と裏腹に勃起している陰茎をくわえているメイドは頷いた。
「だから、そういうことじゃなくてですね」
 ルラーンは頭をしきりに掻き――クソっと喚いた後。
「私は――」
 その言葉を、食堂の階上よりの悲鳴が掻き消した。
 ルラーンは仕事を思い出し、すぐさま行動した。
 食堂の窓を蹴破ると、そこから飛び上がり、階上の窓枠を掴むと、腕力で自らを窓へ叩きつけ、押し入った。
 再び、悲鳴があがる。
 そこは、浴室だった。
 湯気が立ち上る中、うずくまる一人の少女/先ほどの悲鳴の主と思わしき、を見つけ。傍に寄り。
「大丈夫ですか?」
 声をかける。
 少女は声に反応し、俯かせていた顔を上げ――目を見開いた。
 それは、恐るべきものを見たかのような、恐怖に満ちた瞳。或いは圧倒的な驚き。或いはどうしようもないほどの、羞恥。
「どうしました?」
 ルラーン、貧相な顔で、できるだけの笑顔。少女を安心させるため。
 おそらく、ジオライド議員の娘と思わしき少女は、目を見開いたまま
「あ……あ、あ」
 喉を振るわせる。
 ルラ―ン、余程怖いものを見たのだろうと、内心同情しながら、少女の肩に手を置こうとして――弾かれる。少女の手によって。
「へ?」
 どうしたことだと、ルラーンが考えるより早く。
「――いたっ!?」
 ルラーンの頬にビンタが飛んだ。
 少女、涙をためた大きな瞳でルラーンを睨みつけ、もう一発ルラーンをビンタした。
「な、なにを」
「出て行きなさい、この変態っ!」
 もう一発。
「変態とは失礼な。こほん、お嬢さん、私はですね」
「いいから、出て行くか、前をしまいなさい。この変態っ」
 更に一発。
 言われて、ルラーンは気付いた。
「あ」
 前が開いて、自らの猛った一物が露出していることに。
「いえ、これはですね。そういうわけじゃなくて――」
「いいからっ! 前を仕舞いなさい、この変態○○○○野郎っ!!」
 更に、更に、更に……

***


 ジオライド議員は悲鳴のあった浴室に辿り着き、自らの目を疑った。
「このっ、このっ、このつ。いい加減反省しやがれっ、ですわ!」
 裸の末娘が、気を失った大切な客人に跨り、何度も何度も叩きつけていたのだ。


***
 情けなくも気を失ったルラーンが目を覚ますと、直ぐにジオライドが駆けつけてきて、ルラーンへ悲鳴の理由を説明した。
 悲鳴の理由は、バスルームに見た目がグロテクスな害虫が出たということ。
「どうも、真に申し訳ありませんでした。これはお詫びというわけではないのですが、ほんの気持ちです」
 ジオライドは何度も何度も頭を下げながら、手にした宝飾品の入った小箱を押し付けてきた。
 ベッドの上に座ったルラーンはそれをとりあえず受け取、枕の隣にそれを置いた。
「あのぅ、できればでいいんですが、お嬢さんとお話したいのですが」
 おずおずと言った。その目には先ほどの暴行への、恐怖のようなものが見て取れた。
 ジオライドはその言葉にハッとすると
「申し訳ありませんでした、気付きませんで」
 そう言って、大きな腹を揺らしながら、ルラーンへ貸し与えた客間から出て行った。
 ルラーンはそれを見送りながら、先ほどの光景とジオライドから聞いた話を思い出し。
 依頼の内容を思い出して、辟易した。
 内容――この屋敷に取り憑いた怪異を滅ぼすこと。
 怪異はジオライド議員の妻と二人の娘、それにメイドを意識不明にしている。それ以外の被害は聞かされていない。
 その情報から、導き出される怪異。推測。おそらく正当。
 依頼額/事前に与えられた情報/都市にいる退魔部隊ではなく、民間の退魔師である自分へ依頼したこと――以上のことから、この依頼を簡単なものだと考えていた。
 しかし――
「あの子」
 ――厄介なことになるかもしれない、ルラーンは思った。
 ただ、自分の能力ならば不可能ではない――が、それは最終手段。
 そこへ、コンコンと扉がノックされる音、
「……入ってもよろしいでしょうか?」
 扉越しの少女の声。
「どうぞ」
 ルラーンはベッドから起き上がり、少女を招き入れた。
「失礼します」
 少女は入ってくるなり、
「先ほどは申し訳ありませんでした。なんでもします、ですから、どうか、赦していただけないでしょうか」
 頭を下げた。長い金髪が左右に分かれ、ビロードのように垂れ落ちる。
 ルラーンはいきなり謝られるとは考えてもいなかったのか、慌てた。
「あ、いや、さっきのことでしたら、私が悪かったのですから、頭を下げないでください。貴女を呼んだのは、そんな言葉が聞きたかったからじゃないんですよ」
「……はぁ」
 少女は顔を上げると、肩にかかった髪を払いながら、ルラーンの顔を見た。
 髪の色と同じ瞳の直視に耐えられず、ルラーンは視線を逸らした。なんとなく、客間の調度品に目をやる。
「では、どのようなことをお訊きになりたいのです?」
 ドレスのようなノースリーブのワンピースを直しながらも、少女の視線は決してルラーンからは外れない。
 その視線は見ている、というよりも、睨んでいるといったほうが正しい。
 ルラーンは頭を掻きながら。
「いやぁ、それなんですが。お訊きしたいのは、貴女が……その」
 困ったように言葉を濁らせた。その様子は、さながら照れてるかのようだ。
 エクソシストだという男の妙な仕草に、少女は小首を傾げ、次の言葉を待った。
「貴女は、その、もしかして、ですが…………処女でしょうか?」
「――はあ?」
 ルラーンの言葉に、少女は耳を疑い――しかし、考えた。
 先ほどとは違い、直ぐには怒らず、自分なりに考える。
 ほぼ初対面の少女相手に、そんなことを訊いてどうするのだろうか?
 それを少女は、できるだけ好意的に解釈し、仮定を弾く。
 目の前にいる男はエクソシストで、その目的はこの家に取り憑き、少女の姉二人と母を寝込ませた怪異を滅ぼすこと――ならば、この問いも彼の仕事に関することだと考えるのが妥当。
 故に、
「はい」
 少女は迷いなく応えた。
「なるほど……となると……」
 ルラーンは顎に手を当て、ぶつぶつと呟く。
 少女は僅かに瞳を鋭めると。
「訊いても宜しいですか?」
「なら――はい? なんです」
「私が……処女だということと、怪異にどんな関係があるのでしょう」
 少女の言葉に、ルラーンはああと呻いた。
「この家に憑いている怪異は、流児と言って。大人になる前に死んだ少女の魂が変容した姿なんですが」
「あの、人の魂が、怪異になるんですか?」
 ルラーンは頷き、応えた。
「流児だけでなく、ほぼ全ての怪異が、人間を源流としています――ああ、立っていないで座ってください」
 部屋の隅にある椅子を示すと、少女はその言葉に従い、座った。
「人間の肉より死越者は産まれ、人間の魂より霊体が産まれる。人間の死体を、丁寧に供養するのは、そうした怪異へ変化させないための、人間が編み出した策なのですが。中には供養もされない者もいる。基本的にそうした者たちが、怪異へ変貌してしまう」
 そういうルラーンの顔は、少女の目には、不思議と悲しげなものに映った。
「ですから。そうした人たちを、解放してさしあげるのが、私たち――エクソシストの役目なんです――と、話が逸れましたね」
「あ、すみません」
「いえ、それで……どこまで話しましたっけ?」
「流児という怪異が少女の変容した姿――というところまでです」
 ルラーンはぽんと手鼓を打つと、
「ああ、そうでしたそうでした」
 頷き、言った。
「怪異には一定の行動パターンというものが存在します。そこから、私たちは怪異の種類を判断します。流児が家に憑いた場合、その家の非処女の女性は取り憑かれた後、意識を失い、七日七晩寝込み続けます」
「そうですか……良かった……」
 母と二人の姉の快気の目処がついたことへ、少女はほっと胸を撫で下ろした。
 ――だが、直ぐに、あれ? と気付く。
「なら、男性や処女はどうなるのでしょうか?」
「男性は、取り憑かれることはありませんが。流児に憑かれた女性は、流児の意思に従い、男性と性交しようとして男性を襲うことはありますが。まあ、害はありません」
 といって、ルラーンは何故か笑ったが。
「失敬」
 と口を押さえ、笑いを止めた。
「ですので、貴女の御父上は、今のところ大丈夫なようですが。問題は――」
「私、ということですね」
 ルラーンの言葉を奪って、少女は言った。
「どうなるのでしょうか――いえ、どうすればいいのですか?」
 膝の上で拳を握り、少女は強くルラーンを見据えた。
 ルラーンは逸らしていた眼を、少女に戻し――
「……ぁ」
 ほんの僅か、少女にすら聞こえないほど小さな声で呻いた。
 ルラーンは呆然として――少なくとも少女にはそうと見える表情で――少女の瞳を視た。凝視といってもいい。
 少女のように、強い意志で見据える、といった感じではなく。
 惹き付けられるように。そこにルラーンの意思など介在していないかのように。見なければならないという風に――瞳孔を見開き、視る。
 その表情に、少女の眉尾が下がる。
「あの、どうしました? 私、何かおかしなことを言いました?」
 少女の問いに、
「あ」
 自失していた、ルラーンが我を取り戻し――苦笑した。
「いえ、なんでもないですよ」
「……はぁ。それならいいのですが」
 ルラーンの笑いは、子供でも分かりそうなほど、誤魔化しているのが見え見えだったが。少女は、そこを突くようなことはしなかった。
 ルラーンは笑いをひっこめ。
「説明が途中でしたね、ええと」
「流児が処女へどのような害を成すか、についてです」
「ああ、そうでした」
 ルラーンは頭をポリポリと掻いた。
「流児というのは、つまり未練を遺し死んだ者が成る姿です。未練――この場合、生きられなかった。人生を謳歌出来なかった。という未練ですね。……ああ、そうそう。死者の魂が流児へ変容するには、ある条件が存在しています」
 別に問われたわけではなかったが、少女は応えた。
「処女のまま、死んだら流児になる――ということですか」
 それに、ルラーンはほおと唸ってみせた。
 ルラーンの表情から、自らの仮定が間違っていなかったことを確信した少女は、続けて言った。
「貴方は、先程『大人になる前に死んだ少女が変容する姿』と言いました。大人になる前、……下らない暗喩ですが、つまり性交を経験する以前、ということでしょう? そして、その条件は取り憑かれる側にも影響する」
「ええ、そうです」
 ルラーンは頷いた。
「流児は死した処女の魂が変容したもの、彼女たちはこの世へ、生きるということへ未練を遺している。生きたいという未練を。
それには、障害が存在します。彼女たちには肉体が存在せず、魂だけの存在になっている。死んだ後となっては、自らの肉体をを取り戻すことは不可能。
ですから、彼女たちはある手段を用います」
 ルラーンの言葉を、少女が継いだ。
「自分と似た少女、つまり経験していない少女の身体を、」
 その次の言葉に、少女は恐怖した。
 しかし、ルラーンは躊躇わず、発音した。
「乗っ取るんです。その肉体に、元から在った魂の意思など無視して。元から、その肉体は自分のものであったかのような顔で、生き直すんです」
 少女は、中身の無い乾いた嘔吐感を覚えた――だが、屈することはなかった。
 まるで、自分を戒めるように、拳を堅く握り締めると。
「どうすれば……私は、どうすればいいのですか」
 と、この事態を唯一打破できる可能性を持つ、エクソシストを睨た。
 エクソシストは、怯えもなく、諦めも感じさせない表情で言った。
「流児が誰にも憑いていない状態であれば、私には手の出しようはありません」
 ――諦めの言葉を。
「そんな……」
 唯一といっていい、頼れるものの言葉に、少女は絶望した。
 それだけの威力を、ルラーンの言葉は持っていた。
 汗ばむ手が緩み、開かれる。
 私が、私の身体が、見ず知らずの者に乗っ取られる?
 それは、想像するだけで恐怖できる事態だった。
 少女がこれまで積み上げてきた人生を、重ねてきた現在を、誰かに奪われる?
 ――考えたくも無かった。
「ですが、」
 ルラーンの言葉は終わっていなかった。
「流児が誰かに取り憑いている状態ならば、滅ぼすことも可能です」
「――え?」
「流児というのは憑いていない状態では、現実への影響力はありません。だって、この世界には『居ない』のと同じことなんですから。
まだ、この世界の住人である、私では手すら触れることはできません。――ですが、流児の目的は現世への回帰であり。その目的を果たすためには、誰かに乗り移らねばなりません。
そこに、隙が存在します。誰かの身体に乗り移った際に、流児の望みを叶えてやること――それが、流児を滅ぼす、唯一といっていい方法です」
 ルラーンはそう言ってのけたが、
「ちょっと待ってください。流児の目的はこの世界で、改めて生きることだとさっきいいませんでしたか」
 矛盾していた。
 流児の目的が人生のやりなおしならば。その目的が果たされるときというのは、人生が終わるとき。
 つまり、乗り移られた者は、死ぬまで乗り移られたまま。ということではないか。
 それでは、好き勝手させるほか、手段がないといっているようなものだ。
 少女は、ルラーンにその言葉をぶつけようとして――呑気なエクソシストの言葉に遮られた。
「ええ、言いました。流児の望みを叶えるしかあありませんが。なにも天寿をまっとうさせてやる必要はないんです。一つ、方法があるんですよ。流児の望みを叶えさせる、ね」
 勢いを殺がれた少女は、仕方なく。
「それはなんですか」
 と聞いた。
 ルラーンは何故か、照れたように笑うと。
「彼女たちは処女のまま死んだ――つまり、破瓜せずに死んだというわけで。
非処女の方たちに、間違って取り憑くと、憎しみを込めて気絶させますが。現実への影響力が薄いため、七日で快気してしまいますがね。
処女の方に取り憑いた場合、一度死んだせいか、どうにもそちらへの欲求に正直になってしまうんです」
「……正直、ですか」
 ルラーンは頷いた。
「ええ。それこそ、歩いている男性を誘惑して、路上でことに至ったり。親兄弟ですらかまわず、襲ってしまうといったこともありました」
 少女は、そんなおとをしている自分を想像して――顔色を変えた。
「そ、そんなの駄目ですっ」
「ですが、そうして絶頂に至った瞬間は、なにより気が緩んでますから。滅ぼすことができます」
「……つ、つまり。その怪異を滅ぼすには、誰かに乗り移らせて」
「はい、やっている間に滅ぼします」
 少女は顔を真っ赤にして、憤るように身体を震わせ、言った。――というか叫んだ。
「ほ、他に方法はないのですかっ。このへっぽこエクソシスト」
「へ、へっぽこ……」
 唖然とするルラーンに構わず、少女は喚く。
「なんのためにお父様が、お金を積んだと思っているのですか。お金が欲しいのでしたら、それ相応の働きをなさいっ。
大体、その方法だったら、どう考えても、私が犠牲になることには変わりないし――というか、何でお姉さま方も、普段清楚ぶってる癖に、いつのまいしていやがっていたんです」
 喚く言葉が、どんどんと汚い言葉遣いに変化していき。内容もそれにともなって、過激なものへ変化していく。
 ルラーンはぽかんとして、それを見ながらも。なんとかしないと、と言葉を探したが。上手いとりなし方は思いつかなかった。
 元より、口の立つ方ではない。
 故に、

 コンコン

 扉を叩くノックの音が聞こえたときには、天の助けかと思えた。
 ノックに、少女は言葉を止めた。父親だと思ったのだ。
「はい」
 ルラーンが出ると、そこに立っていたのは。
「ハウドラゴン様、旦那様がお呼びです」
 先程――食事の際に、ルラーンへ奉仕しようとしたメイドだった。
 ルラーンは先程のことを思い出して、表情を赤らめたが。メイドは、無表情。
「分かりました」
 ルラーンは部屋の隅に居る少女へ視線をやって、
「話はまた後で」
 そう言い遺して、メイドの後に従った。


***

 メイドに導かれ、ルラーンは屋敷の中を歩いた。
 建物の間取りを覚えるのが苦手なルラーンは、今どこを歩いているのか、全く理解しておらず、する気もなく、メイドに追従し。
「おや?」
 昼だというのにカーテンがかけられた、薄暗い室に案内されて、ようやく疑問に思った。
「ここは、どこですか? というよりも、ジオライド議員はどこに」
 という、ルラーンの言葉を全く無視して。

 かちゃり

 扉の鍵が閉められた。
「あの?」
 メイドは胸元のボタンを、一つ、一つ外しながら、ルラーンへ言った。
「旦那様より、ご命令で。貴方をもてなせと」
「――え?」
 ルラーンが驚いた時には、下着に覆われた小ぶりな乳房が露になっていた。
 白い下着に、負けず劣らず、メイドの肌は白く。血の気を感じさせなかった。
「――失礼します」
 言うや、メイドは床に膝を着き、ルラーンのズボンの前を開いた。
 そこから、手を差し込み、
「なっ、ちょっ、待ってください。落ち着いて」
 まだ半勃ちといった感じの陰茎に、残念そうに唇を尖らせ――キスをした。
 掴んだ手は、早く勃(おお)きくなれというように、ゆっくり、ゆっくりと、蠢く。
 ルラーンは突き放そうかとも考えたが、自分にそんなことができないのは、よくよく理解できていた。
 女性に乱暴を働くことは、自らに流れる『血』を肯定するということ。
 それは彼にとって――自らの『血』を呪う彼にとっては、考えたくもないことだった。
 だから、言葉で離そうと/説得しようとするが。
「貴女も女性なら、そんなことをしないで、慎ましやかにって、聞いてませんね。お願いですから、聞いてくださいよ」
 メイドは彼の大きく堅くなっていく、ソレを愛するのに夢中で、聞く耳をもってくれない。
 どうすればいいのだろう?
 ルラーンは考えていたが、――ゾクリ――背筋が泡立つような快感に、思考を見失ってしまう。
 メイドはようやく太く/自らが望む形になってきたソレに満足し、ご褒美だというように、舌先で尿道口に触れ、くすぐりながらも。
 手は、親指と中指がつかないほど太い肉棒を、上下に擦る。
「だから、っ、やめて……と、っぅぅ」
 ルラーンの反応に悦びながら、手に、指先に、変化を与えていく。
 ただ擦るだけ――かと思えば、激しく揺さぶるように――かと思えば、指先で波打つように――かと思えば、優しく撫ぜるように――
 一瞬でも飽きさせないように――いや、一瞬の隙も与えぬように、メイドの手は蠢き。
 舌先は淫靡に乱れる。
「…やめてくだ――っ……」
 抗う声――虚しく。
 くちゅり。
 先端が口の中へ誘われ、口唇によって抱擁される。
 生暖かく湿った感触に、ルラーンは言葉を失う。
「………っ」
 ルラーンはくずおれそうになり、メイドの頭を掴み、堪えた。黒髪の感触は、柔らかで、汗を掻いた手に、よく馴染む。
 亀頭は深くへと導かれ、ぬるりとした唾液に塗れながらも、奥に至り。
「ふふふ」
 喉を鳴らす、微笑みに歓待された。
 メイドは奥に至っても、まだその身を余す肉棒に満足し。淫欲に濡れた笑みをこぼした。
 口唇――否、口全体で、前後にピストンしながらメイドは、マッサージし易いように位置を直していく。
 首を振りながらも、メイドの舌は亀頭に触れ/撫で/冒す。からみつくような舌遣いに、怒張が次第に熱を帯びていく。
 神経が、身体の全感覚が、そこに集約されているかのように、ルラーンは思考できなくなっていく。快感によって。
 そこへ、更に、追い討ちをかけるように。
 ずりゅりゅりゅりゅううぅぅ
 呑みこまれてしまうと、錯覚するほど、激しく、強烈なバキューム。
 尿道から先走りが吸い上げられ、
「――うっ、うわっ!?」
 精巣の中まで空にされそうなバキュームフェラに、足が震え、腰が砕けそうになる。
 猛る肉棒が吸われる度、悲鳴をあげる。
 メイドが息継ぎをする瞬間、気を抜いてしまうルラーンを、更に強く強く、メイドは吸い付いてくる。
――だ、駄目だっ!
 声にならない悲鳴を上げた。
 メイドの喉を撃つように、射精液は迸り。
 どくんどくんと肉棒内を濃いものが中送され、メイドの口腔に吐きだされる。
 吐き出されるモノは、濃く烈しく、なにより膨大だった。
 懸命に喉を鳴らすメイドを虐めるように、精液は次から次からと吐き出され。メイドの口の中に収まりきらず、溢れる。
 口唇を穢した精液は顎を伝い、首を這い、小さいが形のいい乳房の谷間に流れ落ちていく。
 しばらくの間、ルラーンはメイドの頭を抱えたまま動かず。
 メイドはルラーンの赤黒い陰茎についた精液を、丹念に舌で拭いた。
 ルラーンは、ようやく、復活するや。
「あ、ありがとうございました。ですが、もう離れてください」
 と言って、メイドに命じたが。
 確かに、メイドは咥えていた陰茎を離したが。いやいやというように、陰茎を両手で包み、亀頭を自らの頬に擦り付けて離さない。
「……旦那様に言われたのです。今夜は貴方と枕を共にしなければ、首にすると。ですから」
 片手を離し、メイド服の裾を掴んで、まくりあげた。
 スカートの下に、メイドは何も履いていなかった。
 いや、確かに膝上丈の黒いストッキングと白いガーターベルトは着けていた。
 しかし、肝心なショーツを、メイドは履いていなかった。
「お叱りになられる気持ちは分かっております。一度でいいのです。貴方の立派なこれを挿入れてくださいませ」
 髪と同じ色の茂みに眼をやり、ルラーンはごくりと、喉を鳴らした。
 ――したい。だが……
 ルラーンも男であり、そうした欲求がないわけではない。
 だが、した後のことを考えると、する気にはなれなかった。
「すみません、無理なんです」
 ルラーンは手を差し伸べ、メイドの手から、自らの陰茎を解放し、仕舞った。
「何故ですか、私のどこが駄目なんですかっ」
 言い縋るメイドへ、ルラーンは応えた。
「誰ともしないと、決めた。それだけですよ。……ああ、そうそう。とても、お上手でしたよ、貴方のフェラチオ」
 そう言って、ルラーンは部屋を後にした。
「……さて、どうやって帰りましょうか」
 呟くと、来た方向とは逆の方向へと、ルラーンは歩き出した。
 その様子を、一人の少女が見ていた。

***

 ふらふらと屋敷内を彷徨ったルラーンは、運良く、ルラーンを呼びに来たジオライド議員に出くわし。
 共に食堂へと向かった。
 夕食は昼にだされたよりもレパートリーは少なかったが、ブランクロッジ独特の郷土料理が並び、ルラーンはそれを美味しい美味しいと言いながら食べた。
 食堂には先ほどのメイドの姿はなく、
「おや、娘さんは?」
「反省させるために、今晩は抜きにさせます」
「そうですか」
「ああ、下手な情は与えないでください。これは、我が家なりの躾けですので」
 ジオライドは、メイドの一人に咥えさせながら言った。
 ルラーンも薦められたが、丁重に断った。
「一つ、お聞きしたいのですが。以前から、食事の際にはこうしたことをなさっていたのですか? お嬢様が三人ともなれば、あまり良い顔をしないように思ったのですが」
 ルラーンの問いに、ジオライドは笑いで答え。名言しなかった。
 食卓が粗方片付いてくると、思い出したようにジオライドは言った。
「それで、調査の方は進んでいますか?」
 ルラーンは正直に答えた。
「怪異の取り憑き先さえ判明すれば、直ぐにでも、退魔できますよ」
 その言葉に、ジオライドは眼を光らせた。
「そうですか。ところで、どうでしたかな、我が家のメイドの技巧は」
「はあ、良かったですけど。ああいうことは余り好きではないので、できれば遠慮させていただきたいのですが」
「……そうですか」
 仕事の話が終わったのかと思えば――ジオライドは再び、話を方向転換させた。
「では、後二日、我が家に逗留していただいた後。解決ということで」
「――? よくわからないんですが」
 流児が憑いている先を、ジオライドは知っているのだろうか? それとも、ルラーンの能力を信用して言っているのだろうか?
 どちらにしても、違和が付きまとう。
 知っていたのなら、教えてくれればいいし。
 まだルラーンは信用されるような真似はしていない。
 ルラーンの前に、メイドが箱を置いた。
「どうぞ」
 言われるがままに、ルラーンは箱を開け――驚いた。
 箱の中には、この先一年は遊んで暮せそうな大金が詰められていた。
「これは……」
 報酬、とは考えられなかった。だが
「報酬ですよ。調査完了ありがとうございました、いやぁこれで安心して暮せるというものです」
「――は?」
 言っている意味が、理解できなかった。
 ジオライドは笑顔を浮かべて、言った。
「貴方は調査を完了し、無事退魔してくれました。ですから、役所の方へ、結果報告はお願いします。
それは、提示した報酬に多少色をつけたものです。ご遠慮なく、お納めください」
 ルラーンは、ようやく、ジオライドの言っている意味を理解できた。


***


 その夜、ルラーンの部屋へ、少女が訪れた。
「あの、訊いてもいいでしょうか?」
 部屋へ招き入れると、扉に鍵をかけ、少女をベッドに座らせた。
 ルラーン自身は壁に背を預け、少女の正面に立った。
 少女は、薄い寝巻きを着ている以外、何も着ていなかった。
 薄いピンクの布地は透け、少女の突き出た乳房にあるツンとした乳首も、ヘソも、縦に走った割れ目も見えていたが。
 少女は気にした素振りを見せなかった。
「なんです?」
 ほのかに上気した顔で、少女は言った。
「何故、お父様の申し出を蹴ったんですか?」
 夕食後、ジオライドはルラーンへある提案をした。
 だが、ルラーンは引き受けず、渡された金も宝飾品も返却した。
 ルラーンは笑って、応えた。
「決まってます。私のポリシーに反するからですよ」
「ポリシー?」
「ええ、プライドと言い換えてくれても構いません」
 少女は、くすり、くすりと笑い。
「なら、私とさせてあげますから、請けてください」
 こともなげに言った。
 その言葉に、ルラ―ンの表情が曇る。
「……そういうことでは、ありません」
 男のそうした反応すら愛でる様に、少女は微笑む/妖艶に/猥らに口端からくすり、くすりとこぼし落とし。からかう。
「貴方、私のこと気になってるんでしょう?」
「誰がそんなこと言いました?」
 首を竦めて、ルラーンはとぼけた。
「言わなくても分かるわ。だって――」
「成熟した女性の魅力に逆らい、こうして少女姿の貴方を招きいれたから――ですか?」
 妖艶な少女の笑みが、消える。
「……何時から、気付いていたの」
 苦い表情のまま、ルラーンは答えた。
「最初から――と、言いたいところですが、確信したのは、今さっき、貴方が訪れたからです」
「――え?」
「ジオライドさんが私に提案した段階で、薄っすらとは気付いていたのですが。確信を持てたのは、貴方の姿をんぽおかげですよ」
 言われて、少女は自らの姿を見た。
 今少女が着ているのは、薄い寝巻きのみ。薄すぎて、肌が見えるほど。
「これが?」
「ええ、それです。貴女は、この家に来てから、おそらくこの少女の性格をよく知ろうともしなかった。だから判断ミスを犯した。
貴女が憑いている少女――ミナキ・ジオライドさんは、少女らしく恥じらいのある方なんです。見知らぬ男に素肌を見られれば、動転して、見た男を殺しかねない程にね。
そう昼間着ていた、膝丈のスカートですら。膝が見られるのが恥ずかしいといった様子で、必死で手で隠していたというのに。
確かに、男とするためにきたとはいえ。局部が見えるような、そんな足の開き方はしません」
 言われて、少女は気付いたようだが。
「でも、興奮したでしょ。この娘、まだ処女よ。十四にもなったのに、毛も生えそろってないし――それどころか、男と手を繋いだこともない」
 にまっと笑って、受け流した。
 その表情は、ミナキでも昼間のメイドでもない――
「それが素ですか、名を失いし流児」
 怪異としての貌。
 そうこの家に取り憑いた流児は、ルラーンの目の前に居る。

***
 気付いた――というには、お粗末な話だ。
 全てが逆算、結果から弾き出された結論に過ぎない。
 そう
『成熟した女性の魅力に逆らい、こうして少女姿の貴方を招きいれたから――ですか?』
 という言葉すら、確信を持って言ったものではなかった。
 そう、彼女が否定しなかったからこそ、確信したのだ。
 今、ミナキの中に流児がいると。
 ならば、流児は何故、ミナキの中に居るのか?
 その答は、ジオライドの提案がヒントとなる。
『貴方は調査を完了し、無事退魔してくれました。ですから、役所の方へ、結果報告はお願いします』
 ルラーンはあの段階でも、なにもしていなかった。
 昼にミナキに話したのは、事前情報から得た推測を基にした言葉に過ぎない。あの段階ではルラーンはメイドに流児が入っていることすら知らなかった。
 そう、実際。
 この家では、そういうもてなしが普通なのだと。
 事前情報で妻と娘が倒れていることを聞いていたから、その場に娘がいないことへ疑問はなかった。
 そうでないと気付けたのは。
『一つ、お聞きしたいのですが。以前から、こうして食事の際にはこうしたことをなさっていたのですか?』
 という問いを、ジオライドがはぐらかしたからだ。
 もし違うのなら、違うと言えばいいし。
 もし、以前からなら、困惑するなりなんなり、反応はあるはずだ。
 しかし、ジオライドはどちらの反応も見せず。何も言われていないかのように沈黙し、はぐらかした。
 子供でも解る――裏に何かある、と。
 問うたのは、なんとなくに過ぎない。
 ミナキの言葉端から滲む性格や、うぶさから、ああしたことが日常的に行われていないと思ったからに過ぎない。
 夕食時、父親がメイドにフェラチオさせているような家庭で、あんな子へ育つわけがない。
 故に、流児によって、妻や娘二人が倒れた以後からかとも思ったが、そうでもなかった。
 なんとなく、聞いたことに過ぎないが、確信に至る証拠の一つである。
 ならば、普段していないようなもてなしを、わざわざする理由とは何か?
 娘が客人を気絶させただけで、高価な贈り物をする理由とは何か?
 一年は暮せるだけの金を渡してきた理由は、何か?
 それは全て――賄賂、である。ルラーンを懐柔するための、だ。
 メイドの肉体ではルラーンは靡かず、しかし、昼間ルラーンはミナキへは優しく接していた。――だから、ミナキ。
 しかし、一エクソシストに過ぎない、ルラーンを懐柔する理由とは?
 それは、直ぐに、想像が出来た。
 この家に憑いた怪異/流児は、処女の魂が変容したもの。
 そして、流児はその発生理由から男の肉体を求める。強く。
 そう、
「貴女――いえ、貴方たちの目的は、共に居ること、ですね?」
 ルラーンは、静かな声で、そう訊いた。
 ミナキに取り憑いている流児は、こくりと、首を傾けた。
「そうよ」
「やはりですか」
 ルラーンは、深く、ため息を吐き、疲れた様子で言った。
「そういうことでしたら、最初から言ってくだされば協力しましたよ」
「なら、なんで、素直に従わなかったの? 貴方が直ぐに頷いてくれてれば、こんなややこしいことにはならなかったのに」
 ルラーンは、再度ため息を吐いた。
「それは、謝ります。ですが、こういうのもなんですが。
私は勘が鈍い方なんです。真正面から言って下さらなければ分かりません。――ですから、理由を教えてください」
「理由なら――」
「私をここへ呼んだ理由じゃありません。何故、ジオライドさんが、高い金を払って貴女を護ろうとしているかについて、です」
 そう言って、ルラーンは意地悪く笑った。
 その顔を見て、流児は唇を尖らせた。
「……分かって、言ってない?」
 ルラーンはまるで知らないといった顔をして。
「さっぱりです」
 と応えた。流児の唇が更に尖る。
 流児は暫くの間、ルラーンのことを睨めつけた後。
「愛しているからよ……あの人のこと」
「そうですか」
 ルラーンは満足気に笑った。
「それならいいですよ、僭越ながらこの私も協力させていただきます――と、そういえば、あの身体は」
「あれは、死体安置所から貰ってきたの。持ち主は、もう生きたくないって言ってたから、丁度いいと思って」
「なるほど。世知辛い話です」
 死因は分からないが、生きることに絶望したメイドの身体の持ち主/少女のことを思って、ルラーンは冥福を祈った。
 流児は、立ち上がると。
「じゃあ、明日、あの人に、言ってね。協力するって」
「はいはい、分かりましたから。いい加減、ミナキさんを部屋に返してあげてください」
「うん」
 流児は幼子のように頷いた。
 ルラーンは少女の背を見送って、それからベッドに潜り込んだ。
 久しぶりにいい夢が見られそうだと想いながら――

 ――しかし、夜はまだ終わっていなかった。


 流児の少女は浮かれた足取りで、ミナキの部屋へと歩く。
 ――良かった、これでパパと一緒にいられる。
 そう、流児の少女の正体は、数年前に死んだジオライド議員の娘の一人だったものだ。
 死んだ後、流児となって、少女は世界を彷徨い。ようやく、自宅を見つけた時には、あんなに小さかったミナキが、可愛らしい少女へと成長していた。
 ともあれ、家に帰れたことを喜んだ少女を次に待っていたのは、孤独だった。
 流児の身体では、この世界にいる者へ話しかけることはできない。
 だが、少女は努力し、懸命に方法を探し――
 ある日。
 寝ている母親に乗り移れた。
 意識が霞むほどの、烈しい感情が浮かんだが。これで誰かと話せると想うと、嬉しくてしかたなかった。
 だから、そこへ父親が来たことは、少女を更に喜ばせた。
 生前、少女は父親のことが好きだった。
 何か話そうと想ったが、何故か声が出なかった。――それが、処女と非処女の相違による、拒否反応であることを、少女は知らない。
 父親は烈しく少女/母親を抱いた。
 嬉しくて、涙が出そうだった。
 父親は犬のように、少女/母親の身体を隅々まで舐め、胸を揉み、尻に噛み付き、陰部にキスをした。
 それは、少女の知らないことだった。
 父親は母親/少女/娘の膣に挿入した。気持ちよかった。
 こんな気持ちよさ、生まれて初めてだった。
 なにより、父親からの深い愛情を感じた。
 気もち良すぎて、母親の身体から抜け落ちてしまった。
 その日から少女は、代わる代わる姉たちやメイドの肉体を借りて、父親を愛した。
 だが、いつも喋れず。いつも、直ぐに抜け落ちてしまうのが難点だった。
 母親やメイドたちが、その度に倒れることを、少女は知らなかった。
 ある日、新人のメイドが入ってきた。
 少女は喜んでメイドの身体に入り、あることに気付いた。
「おかえりなさい」
 そう、喋ることができたのだ。
 帰ってきた父親に玄関でフェラをし、食事に父親の精液をかけてもらい、繋がったままお風呂に入った。夜は三回もして、繋がったまま寝たが、抜け落ちることはなかった。
 少女はいってらっしゃいのセックスをして、父親を仕事に送り出すと、疲れて一旦身体から出た。
 新人メイドは、自分が何故か裸で玄関にいることに驚き。
 自分の首に首輪、身体には無数のキスマーク、身体中からアンモニアの臭い、確かめると――

 ――新人メイドの鳴き声を、少女は不快に想い、どうしたのだろうと見てみると。
 新人メイドは、綺麗だった髪をむしりながら、肌を爪で引き裂き、何度も頭を床に叩きつけていた。
 錯乱していた。
 少女は、このままでは新人メイドが死んでしまうと思い、新人メイドに乗り移ろうとして――弾かれた
 理由が分からなかった。
 なに一つ思い至らなかった。
 ――いや。
 もしかして、と少女は考えた。
 昨日の夜のことを思い出して、理解した。
 そういえば、昨日、最初に挿入れて貰ったときに、変なモノがあった。
 いつにない違和感。
 母親たちと、この新人メイドの相違。
 それを理解する程度には、少女は大人だった。
 そうか、この子は処女だったのだ。
 少女が屋敷から去っていくのを見ながら、少女は思った。悪いことをした――それ以上に、これからはこんな失敗をしないようにしようと。
 父親は、新人が無断で家から消えていることに、深く悲しんだが。なにより今日の夜、する相手がいないことを悲しんだ。
 その日、父親は寝たまま起きない妻や娘を襲ったが、満足できなかった。
 母親たちを看病させるため/セックスするために、ミナキを学校の寮から呼び戻した。
 少女は父親を満足させるためにはどうしたらいいか、考えに考え。
 今更ながら、あることに気付いた
 した後にいちいち抜け出てしまうのは、身体に二つの魂があるからで、魂が抜けた身体なら――
 少女は考えるや、死体安置所を彷徨い、巡り合った。
 最適な肉体を。
 その身体は日にちが経過しても、抜け落ちず。綺麗で。生きていたなら丁度、同い年で。
 平和的に譲り受けて、家に帰り。父親に言った。
「ただいま」
 父親はきょとんとした。
「わたしだよ」
 少女は自らの名前を言った。
 父親は目を丸くし、少女はこれまでの事情を、全て父親に話した。
「そうか、大変だったな」
 そう言って、強く抱きしめてくれた。
 その日、夕御飯のデザートに、父親は娘へ熱く濃い精液を与えた。
 その日、ずっと繋がったまま、眠った。何度も、何度も、父親は娘が生き返ったことを悦んだ。
 翌日、母親が目覚め、父のことを叱った。
 少女は父が怒られているのに我慢ならず、母に乗り移ると、父と仲直りさせた後、気絶させた。
 起きて、父親を怒るものが出てくるたびに、少女は同じことをした。
 何人かのメイドは、支払う額によっては、考えてもいいと言い出し。父はそれを許した。
 料理を作れぬ少女としては、料理がかりが必要だったから、許可した。
 少女と父親は、時折メイドたちも交えて、交わった。
 少女は末っ子のミナキにも、この楽しさを教えてやろうと思ったが、今の身体の持ち主だった少女の末路を思い出して、辞めた。
 ある日、いつになっても目覚めない母親たちに、ミナキが言った。
「この家、何かに憑かれてるのかなぁ。――いえ、冗談よ」
 その言葉に、少女はあることを思い出した。生前のことだ。
 家に夢魔が憑いた時に、父親が連れてきた男たちのことを。
 彼らは退魔部隊と名乗っていた。
 彼らの仕事は、怪異を滅ぼすこと、彼らはそれへ容赦はしない。
 少女が心配になって父親にいうと、父親も同じことを母親たちを預けている病院の医者から言われたようで
「なんとかしないとなぁ」
 と言った。
 悩んでいる父のおしっこは濃くて、美味しかった。
 それから直ぐに、父親は少女へ言った。
「良いことを思いついた。退魔士いきてもらえばいいんだ」
 父の言葉に、少女は首をかしげた。それでは駄目じゃないの、と。
 しかし。
「お前はまだ子供だから分からないだろうが、金を積めばいくらでも協力してくれるものはいるんだよ」
 そういって、エクソシストの中でも、実力がなさそうで、使命感がなさそうで、お金がなさそうな者を選んだ。
「一度、エクソシストが入って。退魔をしたという書類をあげれば、数年は眼くらまし出来る」
 あのひょろひょろしながら、父親よりもナニの大きいエクソシストを思って、少女は笑った。
 セックスが嫌いなんて変わっているが、良い人だ、と。
 少女はミナキのベッドに寝転がると、ミナキから出ようとして――
「え?」


***

 ルラーンが寝ている客間へ、ミナキ――少女が飛び込んできた。
「助けてっ」
 少女はルラーンに叩き起こして言った。
「出れなくなっちゃったっ!」

 ルラーンは少女から事情を説明されるや、間抜けな顔をして
「そうでしたね」
 と呟いた。
 ルラーン自身が言っていたことである。
 流児を、処女の肉体から引き剥がすには、憑かれている処女を処女でなくすこと。
 つまり、
「貴女がそこから出るには、ミナキさんの身体で誰かとしなければなりません。
いえ、処女膜を破ればいいだけのことですから、モノでもいいのですが」
 ということである。
 ルラーンは
「ミナキさんに恋人は?」
「居ないと思う」
「じゃあ、片思いでもいいです」
「知らないよっ、そんなのっ」
 せめて、幸せな解決法をとも思ったが、そうもいかない現実に頭を抱えた。
 そんなルラーンへ、少女は
「いいからさ、さっさと突っ込んでよ」
 と言った。
 ルラ―ンは顔を上げ、硬直した。
 少女はベッドの上で四つんばいになると、尻を突き出し、片手でミナキの花弁を開くと。
「早くしてよ」
 ルラーンに迫った。
 ルラーンは
「そんなっ、私にしろとっ? 駄目ですよ。駄目駄目駄目」
 拒絶した。
「なに、遠慮してるのよ。いいから早く」
「なんで私が」
「ミナキに、起きたら膣に物が突っ込まれてるなんて悪夢見せる気」
「それなら、私だって同じです。起きていきなりレイプされてたら、泣きますよ。――そうだ、ならジオライドさんを呼んで……」
「駄目。それは駄目」
「何故ですか」
 少女ははっきりと不快そうな顔で答えた。
「だって、パパ、たまーにミナキも混ぜようとか言ってくるんだもん。私よりミナキが気に入られたらどうするのよ。嫌よ、そんなの」
「そんなこと言ってる場合ですか」
「それはあんたもよっ。こんな場合なのに、なにかっこつけてんの。ミナキのこととか考えなさいよ」
「それは――」
 反論しようとして――ルラーンは言葉を喪失した。
 昼間、十数分にも満たない時間とはいえ、聡明さをみせたあの少女の顔を思い出して。ルラーンは言うべき言葉を奪われた。
 怪異に身体を乗っ取られるかもしれないと、知っただけで恐怖した、まだ幼い少女の横顔を。
 助けたくないわけではない、助けたい。
 故に
「私にはできません」
 ルラーンは答えた。
「だからっ――」
 怒る少女の言葉を遮って、ルラーンは言った。
「私は、吸血鬼なんです」
「――いいかげ……は?」
 悲しげな表情で、ルラーンは繰り返した。
「私は吸血鬼なんです。それも、私の牙は陰茎にあるんです」
 少女は、手を離し、振り返った。
「は? そんなのさっきなかったよ」
「女性の膣に入れば、本能的に突出し、私の意志と関係なく、相手を眷族へ変えてしまうんです」
 吸血鬼は呻くように言った。
「私が、ミナキさんの膣へ陰茎を挿入するということは。ミナキさんを吸血鬼へ変容させるということなのです。
そして、退魔部隊の方々にとって、吸血鬼は最重要敵対目標なんです。そんな危険を冒せと――」
 ルラーンの唇が塞がれた。ミナキ/少女の唇によって。
 触れ合っただけに過ぎない。それでも、ルラーンの言葉は停まった。
「犯せっていってるの」
「……で、ですが」
 少女はルラーンの手を掴むと、ルラーンの指を、強引に割れ目へ押し込んだ。
 引きちぎられるんじゃないかという、処女の締め付けに、ルラーンは顔を歪める。
 反論する暇すら与えず、少女は言った。
「あんたがぐじゅぐじゅ言って、パパの申し出に頷かなかったから、私はミナキの身体に入ったの。あんたのせいなのよ、コレは」
「そんな……横暴な」
 少女は目を見開き、口端を釣り上げ哄った。
「知ったこっちゃないわよ。いいから、とっとと突っ込みなさいよ。どうせ、もう大きくしてるんでしょ」
 そういって、素早い動きでルラーンのズボンの前を開け、引き出す。
「なんで萎えてんの? 使えない」
 言うや、少女はルラーンの下腹部へ顔を寄せ。
「や、やめてください――っ!」
 噛み付いた。少女の犬歯で、ルラーンの陰茎に噛み付き、歯でごりごりと擦り上げる。
 そこには、メイドの姿で居た頃の、労りなどなく。
「とっとと勃起させなさいよ」
 という、意思しかなかった。
 ルラーンは抵抗しようとして――
 街へ繰り出しては、無理矢理若い娘を眷族へと変えてきた、父や兄たちの姿を思い出して。
 ――できなかった。
 ルラーンの血とは、つまり暴力の上に刻まれてきた血。ルラーンは、父に眷族に変えられ孕まされた人間を母に持つ。
 母はルラーンを愛してくれた、寵愛してくれた、女を教えてくれた。
 だが、ルラーンが人外の力を発揮し始めると――ルラーンを憎んだ。自らをレイプしたものの息子として、憎悪した。
 ルラーンが自らを不死と知ったのは、母親に刺された晩のこと。
 ルラーンに跨った母親は、ルラーンを幾度も刺し/刺し/刺し/刺し/刺し、その度に苦しむルラーンを見て笑った。
 歓喜と悦楽――復讐と憎悪のもと。
 母は今でも、ルラーンの生家に幽閉されている。
 それと、同じ人生を、この少女に歩ませるのか?
 いや、ここでしなければこの少女は、一生このまま。意識を幽閉されたままになる。それでもいいのか?
 ルラーンは迷い、後悔し、自分を軽蔑しながら――
 少女を押し倒した。
 せめて、自らの手で決断したい。
 少女の歯によって、血まみれにされた陰茎を持ち上げ、笑う少女の膣口に押し込んだ。
 前戯もなく、濡れてもいない膣へ、ただ押し込む。
 先ほどまで強気でいた、少女の流児は、顔色を変え断末魔のような悲鳴をあげた。
「いたいいたいいたい、いたいよっ。いや、やあっ! うぎぃっ! いたいぃぃ――」
 今、口腔にある食用の牙で噛み付き、吸い出せば。自らの血の一部とすることで、この流児の少女を滅ぼすこともできたが。
 ルラーンはそんなことはしなかった。
 ただ、痛みに苦しむ少女を強く強く抱きしめて、流児がミナキの身体から出て行くのを待った。
 そして、永劫と隣合わせの僅かな時間が経過した後。
 流児は少女の身体から消えうせた。最後に
「ありがと」
 と悲鳴をあげて。
 ルラーンは自らの陰茎の先端から牙がはえ、少女の子宮へと伸びていくのが分かった。
 今、引き抜けば。少女の子宮から膣から引き裂いてしまうのが分かっていたから、抜くことはできなかった。
 どくん、どくんと、少女の中へ自らの血を注ぎ込んでいくのが分かる。
「……ん? なに、これ……?」
 少女が眼を覚ました。口元には、既に、ルラーンの口にあるのと同じ、長い犬歯が生えていた。食用の牙が。
 少女はまどろむ思考と視界の中、ルラーンを捉え。
「――え?」
 と上擦った声を出した。
「エクソシストさん? なんで私の寝室へ? というか、そこを――っ!?」
 そして、少女は気付いた。
 自らの膣に、ルラーンの陰茎が突き刺さっていることを。
 長い/長い/長い――悲鳴。
 ルラーンは、後悔した。やはり、すべきではなかった、と。


 しかし、事態は、予想外の方向へと転がった。



 血だらけの陰茎をぶらさげたルラーンは、血塗れの膣を拭くミナキへ、説明した。
 せめて、家族を憎まないようにと。
 だが――
「つまり、なんですか? その流児の小娘が好き放題やりたいがために、貴方は呼ばれて。私も処女を喪失した、と?」
「ええ、そうなんです。流児の子は君のお父様を愛していたからこそ、幾つもの無茶を冒してしまった。
しかし、私は彼女のことを責める気にはなれません」
 というと、キツク睨まれた。
「……ええ、と。ほら、愛って大事なものじゃないですか…………多分、いえ、きっと」
「他人を犠牲にする愛を愛と呼びたくありません」
「いえ、でも、それだけ想いが強かった、というか」
「知ったこっちゃないですわ、そんなこと」
 ミナキは怒っていた。かなり。
 ルラーンは、せめて怒りの方向性を変えようとして。
「でも、貴女に痛い思いをさせたのは私です。ですから、怒るのなら、私を――」
「だって、それは仕方のないことじゃない。貴方が入れてくれてなければ、私は一生その寄生虫娘に身体乗っ取られたまま」
 そう言って、少女は大げさに身震いしてみせた。
「いえ、貴女のお父上に入れてもらうという方法があります」
 と言う言葉は、永劫にこの世に顕現することはなかった。
 なぜなら、ゴーゴンが如き眼光で睨みつけられ、ルラーンは硬直し、そんな言葉など忘れてしまったからである。
 ミナキは、しかし、喚き散らして多少は気が済んだのか。
「まったく」
 といい、息を吐いた。
 これからどうすればいいのだろうか? 吸血鬼の眷族になんかなって。いやそれ以前に、この家にいたら、寄生虫娘に身体を奪われるんじゃないか?
 色々考えながら、あることに行き着いた。
 ルラーンの血まみれの陰茎を、ふむと見つめながらミナキは思った。
 そうだ、責任を取らせればいい。
 にまっと、犬歯が唇を割った。
「来なさい」
 ぶしつけにルラーンを呼び寄せる。
 ルラーンはひょろひょろとした長身を、縮めながら近づいてきた。
「な、なんでしょうか?」
 声も震えている。
 ミナキは、更に楽しそうに笑った。まるで、獲物を見つけた吸血鬼さながらに。
「汚れているから、拭いてさしあげます」
 そういって、ルラーンを目の前に座らせると、陰茎を持ち上げた。
 ずっしりとした重量感に、ミナキはこれが私の中に入っていたのかと驚きながら、ハンカチで血を拭い始めた。
 恐縮するルラーンを見ることなく、言った。
「貴方には、責任をとってもらいます」
 緊張からか、陰茎が震えた。ミナキは笑いそうになるのを堪えながら、言う。
「私は貴方の眷族になった、そうですね?」
「え、ええ。そうです」
 ミナキは頷いた。
「ならば、一族の長として、眷族の者の面倒を見る責任が在るはずです」
「……ええ、ありますが。貴女が何故それを? 吸血鬼に知りあいでも?」
 間抜けなことをいうルラーンに呆れながら、ミナキは
「貴方が言った言葉です。『流児だけでなく、ほぼ全ての怪異が、人間を源流としています』――と、つまり、それは吸血鬼も同じと言うことでしょう? ならば、私が識る人間のルールを吸血鬼が持っていてもおかしくはありません」
「……なるほど」
 心底関心した風に、ルラーンは頷いた。
「ですから、貴方には面倒を見る責任が在ります」
「あ、はい…………ええと、どうすれば」
 ミナキは迷わず答えた。
「これからは貴方の傍から離れません、私は貴方に付いて往きます」
「はあ…………――ええっ!!?」
 ルラーンは驚いた。どうにも予想外の展開に弱いたちである。
「そ、そんなの駄目です」
「何故ですか? 突っ込んでおきながら、責任逃れをすると?」
「そんなはしたない言葉を――いえ、ですから。私たち吸血鬼というのは、得てして人間からはよく思われていません。
私ですら、一度、火にくべられて。厭きるまでキャンプファイヤーの種にされましたし。
中には串刺しにされた方もいます――まあ、風通しが良くなったと笑っていましたが――とにかく、駄目ですよ。
吸血鬼の私についてくるなんて。眷族ならばまだ、市井で暮らす手段はあります。お金持ちなら尚さ――」
 そういって、喚き散らす、ルラーンへミナキは勢いよく顔を近づけ。

 頭突きした。

「痛ったぁぁーー」
「な、なにするんですか、突然」
 ミナキは半泣きになりながら、ルラーンを睨みつけ。
「動くな」
「え、はい――」
 両頬を掴み、固定して、キスした。
 触れるだけ、触れているだけなのに長い、長いキスから解放されて、ルラーンは思わず訊いていた。
「なんですか、突然」
 ミナキはぺろっと舌を出し。
「キスして口を塞ごうと思ったんだけど、上手くいかないものね」
 その言葉に、あるシーンを重ねて、ルラーンはふと気付く。
「昔映画で見たんだけど」
「……ミナキさん。私の勘違いかもしれませんが、もしや貴女、四姉妹の末っ子ですか?」
 ミナキは頷いた。不思議そうに。
「なんで知っているんですか?」
 ルラーンは言おうかと考え――忘れることにした。
 そんなルラーンへ、ミナキはもう一度キスをした。真っ赤な顔で。
「今は、大切なお話の最中です。集中なさい」
「あ、――すみません」
 ミナキはこほんと咳をすると。
「貴方の眷族となった今、ここに居るのも、貴方に付いていくのも、私の危険は同じでしょう? 
なら、家族へ危険が及ばないよう、ここにいなほうがいい。ですから、私は、何が在っても、貴方に付いていきます。
仕方なかったとしても、私を眷族――怪異へ変化させたのは貴方です。責任をとってください」
 そう言って、天使のような微笑/是が非を許さぬ脅迫的笑みで、ルラーンを圧倒した。
 ルラーンは、小さく
「敵わないな」
 と呟き、笑った。
「連れていってくださるのね」
「貴女が望むのなら」
 恭しく頭を下げ、ルラーンは言った。
 そうして、二人は顔を見合わせて笑った。唇から、長い犬歯がこぼれ、光る。

***

「では、詳しいことは明日話しましょう」
 陰茎についた血を拭い、仕舞うと立ち去ろうとするルラーンを、ミナキは呼び止めていた。
「え、あの。……行かれるのですか?」
 ルラーンは扉へと歩みながら、ルラーンは言った。軽やかな声で。
「夜更かしは女性の敵ですからね」
「…………はあ」
「それではまた明日」
 そういって、ルラーンは部屋を出た。……与えられた客間から。
「ん? ――あ」
 格好つけて立ち去ってみたものの、よくよく考えてみれば、この部屋を出たらどこへ行けばいいのだろう?
 ミナキの代わりに彼女の部屋へ――有り得ない。女性の寝室に、無断で踏み込むなどと。というか、それ以前に場所を知らない。
 食堂の場所も覚えていないし、玄関の場所も分からない。
 ルラーンは、今更ながらに、自分の無能さを呪った。二回も行ったのに、何故食堂の場所くらい覚えられないのだろうか?
 ――いや、今更だ。
 廊下で寝ていても怪しまれるし、真実を知った今退魔の仕事と偽ることもできない。
 手詰まりだ。
 ……いや、手は、ある。
 最初から存在していた、そう、少し恥をかけばいいだけなのだから。
 硬質な素材で造られた、今出たばかりの毒々しい紫色の扉を振り返る。
「あの」
 扉越しにミナキの声が聞こえた。
「まだ、そこに立っているんでしょう?」
「……よく分かりましたね」
「それが……」
 ミナキは僅かに言い淀み。
「なにか、……その、口では上手く言えないんですが、分かる――いえ、その、知っている? ……というより。まるで、貴方がそこにいるのを、『解る』みたいなんです」
「解る?」
「ええ……すみません、変なこと言って」
 苦笑するかのような声。自らの混乱を打ち消すように。ルラーンに理解されるか不安で、それでも、理解してもらいたいというように。
「でも、自分のことみたいに、貴方のことが解るんです。なんで部屋出たんだろうとか、ああ格好悪いなぁとか、そんなことを考えてるのが、解るんです」
 ルラーンの記憶に、鮮烈なフラッシュが焚かれるように、記憶――そのシルエットが浮び上がり――思い出す。


『あの人は、妾のことなど、一度も考えてはくれなかった。……でも、お前は違う……
ルラーン、妾の息子、妾の愛しき雛。お前は妾のことだけ考えてくれる、妾のことだけ想ってくれる』
『なんで母様は、ぼくの考えていることが解るのですか?』
『フフフ、濃くてあまぁい血を、妾の膣へたっぷり、注いでくれただろう? ……お前は、妾のことだけ考えていればいい』


 ――あの頃は理解できなかった言葉/意味/意図/理解することへの悲しさ。
 あの頃は理解せず、愛されているから、理解されているのだと考えていた――違った。
「今の、誰です……ええっ、お母様? 随分若い……え……というより、なにして……ええええっ!!?」
「そのことは後です」
 驚くミナキの言葉を遮り、ルラーンは言った。
「貴女が今体験しているのは、血の共鳴現象です。
貴女の中に、私の血が流れたことにより、私の記憶や意思が貴女の中へ流れ込んでいるようです」
「え? ……ええ、と」
「つまり、簡単に言えば。私の考えが貴女に筒抜けということです」
「はあ、そうなんですか……すごいんですね」
「……あまり、人の記憶を覗かないでください」
「あっ、すみません」
「いえ。それよりも、入りますね」
「あ、はい…………痛くないのかしら、そんなことされて――うわっ!」
「だからっ、聞こえてますよ」
 ルラーンは声を荒げ、部屋に戻った。
 ミナキは口元に両手をあてがい、扉から少し離れた位置に立っていた。ルラーンが入ってくると、頭二つ高いその顔を見上げた。
 先ほどまで――いや、今も。頭の中で随分なことをしていた男が目の前にいる。
「……まじまじ見ないでください」
「――あ、ごめんなさい。……でも、…ええと…凄いんですね」
 ルラーンは幾つも、言いたいことはあったが――呑み込んだ。
 仕方ないことだ/責任は自分にある/過去は変えようがない――とにかく、自らを言い聞かせ、言い含め。
「分かりましたから、もう部屋に帰りなさい」
 追い払おうとしたが――
「今日はここで寝ます」
 強い意志の篭った瞳で、ルラーンを見上げる。羨望の瞳。輝く、期待に満ちた眼。
 ルラーンは出来るだけ、自分の意思を抑え。
「……駄目です」
「えー、なんで……私が子供だから?」
「そういうことじゃありません。そもそも、する理由がないでしょう」
「えー」
「えー、じゃありません。いいですか、慎みある女性ならば、そんなことを言ってはいけません。ええ、そうですとも。私の眷族になったんですから、これからは私の言うことに従ってください。分かりましたか」
「首輪とか、した方がいいんですか?」
「……誰もそんなことはいってません」
 ルラーンはあからさまにため息を吐いてみせると、仕切りなおすように、こほんと咳をし。
「ですからね。私の頭の中を覗けるのなら分かるでしょう? 私の陰茎には牙が生えているんですよ。とぉっても痛いんです、ですからね。やめたほうがいいですよ、ええ、冗談じゃなく」
 そういうと、ミナキは暫くの間黙った後。
「でも、気持ちいいらしいですよ」
「なんで貴女が――」
 そんなこと分かるんですか。
 言おうとした瞬間、思い出す。自らの上で猥らに乱れ、狂うように淫れる母親/かつての恋人/狂った女/狂わされ/共に狂った愛しき人――我が――
「あのっ」
 ミナキの言葉が、ルラーンの思考を塞き止めた。
「な、なんですか」
 ルラーンは少女の瞳を真正面から見て、後悔した。
 ――似ている。
 最初、この瞳を見た時から感じていた。
 ミナキの瞳は、惨酷なほどに、母に似ている。
「お母様のことが好きなのは分かりましたから。……私のことも、考えてください。私のことだけ、考えてください」
 ――似ている。どうしようもなく。愛しくなるほど、酷似している。
「しましょう。ルラーン、私の父、私の愛しい源流」
 そっと、ミナキがルラーンに身体を寄せた。少女の感触。小さな触れ合い。血がたぎるような、甘やかな香り。母に似た、瞳。
 少女の細い腕が、伸び、ルラーンの太い首に回される。
 ぶらさがるようにしながら、ミナキは父の胸板に額を――耳を押し付けた。
「……聞こえます」
「は、離れてくださいっ」
「とくん、とくん」
 暗い室に、響く、少女の吐息のような呟き。
「とくん。血父様(おとうさま)の心音が聞こえます。とくん、とくん」
 ごくり、と。ルラーンの喉が鳴った。
 ふふっと少女が笑った。
「血父様、緊張してる」
「――しっ、していませんっ」
 直ぐ様反論したが、それは否定にはならない、肯定と受け取られて当然の裏返った声。
 胸板に押し付けられていた顔が上がり、ルラーンの顔を見て、緩やかな下弦の月を描く。母に良く似た娘の瞳が、息子/父を捉え。捕らえる。
 永劫に、離さぬ。
 ――とでもいうように。
 少女の瞳が、母に良く似た瞳が、少しづつ近づいてくる――否、引き寄せられている。強く、強く、母乳を求める赤子のように、ミナキはルラーンの唇を求め、重ねる。
 先ほどとは違う、鮮やかな手並み。上手すぎる動き。
 ルラーンはそれを受け入れ、受け止め、侵され、冒されて、ようやく処女を捨てたばかりの少女に犯される。
「……ん。…あむ……あ………んんっ」
 ミナキの執拗な攻めに、ルラーンは次第に……
「くっ――ンっ……くちゅ……んぅ」
 ミナキの唇を求めるように、動き始める。どうしようもなく、抗い難い行為に押し流される。
 後で後悔する――理解しているのに、止められなくなっていく。
 もうしないと誓った/まだ知り合ったばかり/優柔不断な/こんな少女を襲う気か/脆いプライド/決断を早く/今は/しかし/だが/それでも――
 言葉を/自我を/理性を――欲望が侵犯していく、陵辱され――堕とされる。
 ルラーンは少女の身体を片手で掴み上げると、くるりと反転、ドアへと叩きつける。
「――かはっ」
 少女の背骨に、きしみが唸る。
 眷族は、不死身ではない、だが不老不死ではある。
 誰かを眷族にする力がなく、滅ぼす手段が存在しているというだけで、吸血鬼と差はなく。
 ヒビの入った背骨が、直ぐに快気する。
 それを、理解しているからの、荒々しさ。狂暴さ。喰らうようなキス。貪るようなキス。ミナキが呼吸できなくなるほど、圧倒的な求め。
 ミナキの身体を、片手で扉に押し付ける。
 小さなミナキの身体は、地面に足が着かず。僅かにもがき、もがき、もがくことを諦め。ルラーンの脚に絡みつかせる。
 ルラーンという名の獣は、自らの娘となった少女と口淫(キス)を交わしながら。その大きな手を迅しらせ、少女の下唇に触れた。
 まだ血が滴るそこへ、指を挿入る。
「――ひっ……くうぅぅ」
 少女が歯を食いしばり、父の舌を噛み千切る。
 溢れるような血が、二人の口腔の中を満たしていく中、ルラーンの舌が再生していく。
 次の瞬間には、ルラーンの舌は、完全に再生されていた。
 口唇から溢れた血が、ミナキの寝間に包まれた身体を清めていく。
 暖かな父の血液に、少女は歓喜し、目を蕩けさせた。
 ルラーンは口唇を一旦離すと――血の糸を引かせながら――少女の耳元で囁いた。
「あんまり、お痛はしないでください。これでも痛覚は存在してるんですから」
「……はい、血父様」
「よろしい。では、おしおきをしなければなりませんね」
「――え?」
 母によく似た少女へ/愛しき娘へ与える罰へ、心躍る。
 かつてと逆転した状況に胸が弾む。
 不意に――少女が笑った。
「どうしました?」
 ミナキはくすくすと笑いながら。
「だって、血父様、楽しそうなんですもの」
「……あまり、人の心の中を覗きこまないでください」
「でもぉ」
 言い縋る少女の口を閉ざす為、ルラーンは指をミナキの膣に入れていた指を、更に深く突き刺した。
「――ぅ」
 瞳孔を見開き、声を失う少女に。ルラーンは満足し、揺さ振りあげるようにして、指を動かす。
 ミナキの狭く、きつい肉筒の中を、血塗られた指先が冒す。
 触れたことのなかった場所への、強烈で、強引なまでの刺激にミナキは喘ぎとも呻きともつかない声をあげながら、震え。耐えられなくなって、ルラーンにしがみ付く。
 ルラーンは娘を抱きとめ。
「あまり生意気を言うからです、年長者のいうことには、きちんと従いなさい」
 にやけながら、少女の耳元で囁いた。
「う、うん」
 童女みたいな頷きに、ルラーンは満足し、手の動きを緩め。痛めつけたことを謝罪するように、愛撫する。
 肉の温かさが、次第に増していき。ゆっくりと、だが、確実に、膣内での指の動きがスムーズになっていく。それでも、肉筒は狭く。
「血父様の、お指って……大きいのね」
「そうですか?」
「ええ……め、いっぱい……拡がる感じで、す」
 これから、それ以上に太いものを差し込まなければならない身としては、ミナキを心配してしまうが。
 共感状態にあるミナキは、ルラーンのそんな迷いすら視透して、微笑む。辛そうに。
「血父様、来て、くださいまし」
「……ミナキ」
「その巨きな愛で、私を貫いてください」
 囁く、掠れる声。悲鳴のような嬌声。
「冒して、辱めて、弄って、嬲って、侵して、姦して……犯してください」
 ミナキの弾力のある唇が、ルラーンの耳たぶを挟み、はむ。
 頭と頭を擦り合わせながら、少女は懇願するように謡う。
「私の中を血父様で、いっぱいにして。私の膣を血父様の愛で満たしてぇ」
 ルラーンは、
「ええ」
 力強く、頷いた。
 華奢な身体を更に高く持ち上げ。自らのズボンの前を開き、抜き出す。
 屹立したそれを
「しがみついてくださいね」
「……はい」
 膣口に狙いを定め、指で押し拓き、迷わず、貫くように、挿入する。
「――――っっ!!」
 ミナキの小さな身体を撃ち貫くような痛みに、少女は声を上げることすら出来ず、ただ只管に堪える。
 挿入した、そこから二つに裂けていくのでは、と。錯覚しそうになりながらも、ミナキは荒く呼吸を繰り返し。
「はぁ、はぁ、はぁ……んっ。ふぅ……すご――――」
 ようやく喋れた言葉が、消える。
 子宮に差し込まれた、陰茎から現れた牙が刺し込まれる痛みに、呼吸が止まる。
 ぎゅっと、抱きしめてくるミナキを抱き返しながら。せめて振動がいかないようにと、ルラーンはきつく抱きしめる。
 陰茎の中を血液が流れ、ミナキの中へ注がれていく。
「……くん……どくん……」
 ミナキが、小さく詠う。
 それを聞きながら、ルラーンは吸血鬼の本能が収まるのを待ったが――
「あれ?」
 血液の抽送は停まったし、牙はミナキの肉から外れたが――しかし、牙が突出したまま、戻ってくれない。
 ルラーンは混乱し、下腹部に力を込めたりしてみたが。牙は引っ込もうとしない。
 その上、
「このまま、動かしてくださっても、構いません」
「――え?」
 ミナキは苦しげに呻きながら、それでもルラーンに提案した、紅色の狂気に染まった提案を。
「牙は、あまり……あたらない、場所、みたいですから。そのまま動かしても、問題はないかと」
 ルラーンは常態ならば、その提案には乗らなかっただろう。
 だが、ルラーンもまた、血と蜜と肉の匂いに程よく狂気に染められていた。
「わかりました」
 言いながら、ベッドの方へ歩き、ミナキの身体をベッドに降ろすと。息つく暇なく、腰を動かし始めた。
 ゆっくり――と、するほど、常気は残っていない。そんなもの食い荒らされ、冒涜されたまま、打ち捨てられている。
 そう、母親に、初めて刺されたあの日から。
 ルラーンを正常に、社会に通じる程度に正常にしていたのは。父や兄、血に逆らおうという気概であって、理性などではなかった。
 だが、娘を作って初めて、ルラーンは理解した。
 父や兄たちの行為の理由も、母が自ら城に篭っている理由を。
 そう、そうなのだ。
 狂う少女を見て確信した。
 一人の少女を狂わせた自分の中に在った、黒い感情に気付き、確信した。
 この少女は、自らのモノだ。
 ルラーン・ハウドラゴンの所有物だ。
 その事実に悦びを感じる。
 ミナキとの快感の共有に、血液が咆哮する。
 歓喜/驚喜/狂喜/狂気――抗い難い感情のうねりに身を任せる、その気持ちよさ!
 嗚呼、そうだ。
 抵抗する必要などない/拒絶する理由など元からない――

『愛しているわ、ルラーン』

 ――母が刺した理由は、そう、憎悪ではない。
 愛していたから、刺したのだ。
 ルラーンは人間ではない、刺されても直ぐに再生できる。
 そう、あれもまた、愛の形だ。
「……愛しています、母様」
 故国の言葉で呟いた、霧と蒸気に包まれたミストの街の言葉で。
 もう、迷いは無かった。
 ルラーンは、産まれて初めて自らに流れる血を肯定した。
 ルラーンは、産まれて初めて自らに流れる血に感謝した。
 眷族といえど、ミナキにも再生能力は備わっている。
 故に
「痛かったら言ってください」
 血の力に感謝した。
「私が興奮しますから」
 その惨酷で凶悪な提案に、ミナキは頬を綻ばせた。
「はい。血父様……愛しています」
 故国の言葉を、ミナキは呟いた。知らなかったはずの、ルラーンの故国の言葉を。
 ルラーンは出来の良い娘に満足し、頭を撫でてやると、腰を動かし始めた。
 先ほどよりも強く
 先ほどよりも烈しく
 先ほどよりも、更に奥へ、奥へ。
 先端から突き出た牙が、ミナキの膣を切りつけ、突き刺し、血まみれにしながら、刺激する。
「――ひっ、ひゃっ…っ……くうっ…」
 痺れるような痛みが/痺れるような快感へ。
 傷つけられ/再生し/傷つけられ/再生し/傷つけられ/再生し/傷つけられ/再生し/傷つけられ
/再生し/傷つけられ/再生し/傷つけられ/再生し――連鎖が、ミナキを悦ばせる。
 人の身ならば、味わうことすらできない快感を、ミナキは一身に与えられる。
 人の身ならば、受け止められない愛を、ミナキは一心に受け止める。
 ルラーンは射血しながらも、腰を振り続ける。ミナキを真っ二つにするように。
 ミナキは逝きかけながらイき、活きながらに逝く。
 死んでしまうかのような攻めに、ミナキは痺れる身体で、父が満足するまでいき続ける。
 声をあげることができない/細かな技巧を使う余裕なんかない/自らの痺れに身を任せるしかない。
 そして、天国と地獄の狭間を彷徨い、ようやく。
「射精しますよ」
 父の言葉に、全身から力を抜いた。
 迸る熱く濃い、貫き抜かれるような、烈しい射精。
 時間にしては短く、僅かな触れ合い、しかし、ミナキは満足し、目蓋を閉じた。
 ――翌日。
 ルラーンは流児のことを脅迫材料として、ミナキを浚っていくことへ、許可を求めた。
 金品は要らず、ただ娘だけさらっていくというルラーンの提案に、ジオライドは渋々了承し、娘を引き渡した。
「準備、出来ました」
 トランクケース一つしか持たず、少女はルラーンの前に現れた。
「おや、それだけでいいんですか」
「はい、これ以上は邪魔になると思って」
「まあそうですね」
 ルラーンはそういうと、怪異に憑かれた屋敷を後にした。
 その背を、ミナキは追った。
「どこへ行くんですか?」
 ミナキの言葉に、ルラーンは暫く考えた後。
「……どこへ行きますか?」
 ミナキに訊いた。
 ミナキはくすりと笑うと、ルラーンの巨きな手を掴み。
「暖かいところがいいです」
 そう答えた。
 
 
 その後のことは誰も、知らない。
551籠城戦 ◆DppZDahiPc :2007/04/02(月) 21:14:34 ID:9TvPyzjy
以上。
後半でいきなりミナキの性格が、随分なことになってたり、愛しちゃってるのは
ルラーンの中にある、母の血と記憶の影響。
――ということを、説明しわすれ(ry

というか、俺、次スレ立ててきたほうがいいんだっけ?
容量的に。
552名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 21:21:04 ID:XfUQJpzC
今492kだし
553名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 21:27:36 ID:9TvPyzjy
まだ、大丈夫なんだね。ならおっけ。
回答ありがと、安心した。
554名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 21:36:31 ID:XfUQJpzC
いや
山姫様の後編控えてるし
そろそろだとは思う
555名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 21:56:39 ID:SkdVAzjs
最大500kbで
450kbだっけか? 以上で放置したら落ちるんだよな。
やっぱり立てた方がいいのか
立ててきていい?
556名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 22:03:21 ID:pUoNKtpL
>>555
おながいします

>>518-551
なまらGJ。
557名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 22:32:00 ID:9TvPyzjy
というわけで立ててきた。
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1175519231/l50

後6kb強は最初に惚れた人外少女のことを語りつつ埋めようか。
558名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 22:33:20 ID:wj589/wL
>551
GJ!!
使い魔なり眷属なりの五感なり記憶なりを主側が取り出すってのはあるけど、
眷属が主人の記憶を読めるのって珍しい気がした。
これってミナキとのことが母親にもバレバレなんだろうか、とか、浮気(?)する度にみんなにバレバレになるんだろうかとか気になるww

是非続きをお願いしたい。
559名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 23:03:46 ID:WZKuT4L/
>>551 GJです!!

血をモチーフにしてこういう語り方もあるのかー!
560名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 23:09:44 ID:bfdrsZ6x
>>551
文中頻繁に出てくるスラッシュが読みづらい。
芸風ならともかく、次回は改善をキボンヌ。


人外少女に惚れた原点か……なんだろう。
三只眼のような気もするし、それ以前かも。
印象深いのはラスト○ンの蜘蛛女とサモナ○2のハサ○か。
あとレ○ェンズのアンナたん。
561名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 23:35:33 ID:wj589/wL
最初に惚れた…マジレスするとシャンブロウかも、あとミンガ処女。
次が吸血鬼カミーラ。
エロエロではスペースバンパイアの女バンパイアことマチルダ・メイww
562名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 23:42:39 ID:wj589/wL
どうでもいいが、>>561 カ−ミラだったなorz
連投スマン

563名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 00:03:43 ID:XbbBJfAN
書きながらに自分でも答えとく。
おそらく最初は、デジモ○テイマ○ズのレナモ○

>>558
「常に頭の中覗かれてるのは嫌なんですが」
「仕様です」

というか、おそらく時間か距離によって、覗けなくなるんだと思う。

>>560
割と仕様。使いこなせてないだけに、芸風とは言えんが。
次があったら気をつける。
 
 
 
というか、新スレに早速、ゲーパロ氏の続きが来てた。
564名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 00:44:36 ID:icQmzg3S
ぬ〜べ〜のゆきめか、GS美神のおキヌちゃんとかかなあ。るろ剣の三条燕も。
こういうタイプのいわゆる「女の子」然としたキャラが好きらしい。
565名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 00:47:53 ID:icQmzg3S
間違った。燕は人間だった。
566名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 00:59:46 ID:FZCRIs9e
>>560
伏せ字にする意味を教えてくれ
567名無しさん@ピンキー:2007/04/03(火) 22:11:48 ID:3GeJeand
>>566
その方が格好いいから!!
568名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 14:05:53 ID:mrhdgTWB
マガジンの妖怪のお医者さんが出る漫画の
えんらえんら(漢字が変換出来ないので)が凄まじく可愛かった

煙だから何か理由付けしないと何も出来ないけど
569名無しさん@ピンキー:2007/04/04(水) 23:51:20 ID:G+2chtXM
アワーズの『散人左道』に登場したえんらえんらは実体を持てたな。
彼女は結構好きだったな。
570名無しさん@ピンキー:2007/04/05(木) 04:25:07 ID:ABFakb7X
>>569
お、こんな所に水上読者がw可愛い顔してイスでペンギン殴打するヒロインが新鮮だった。
「龍と少女と百鬼町」に出てきた精霊の娘さんもけっこう好きだな。
湯上がりにバスタオルだけで登場した時はときめいた。
あとは絶対零度の女王と悪魔の手下A。

氏の作品としては「げこげこ」と百鬼町シリーズが特に好きだ。
571名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 01:53:48 ID:FU7xLTS8
埋めネタPLZ
572名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 13:57:42 ID:r2iXMC7e
>>571
あと3KBなんだからみんなで雑談して、がんばってちゃんと埋めようぜ。
573名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 23:42:25 ID:MtmQCc9v
人外系統の漫画家ではGUMの『足洗い邸の住人たち』が好きだな
猫又からエレメンタル系までより取り見取り
574名無しさん@ピンキー:2007/04/17(火) 13:51:15 ID:EgRHBfOO
すいません。保管庫の『闘技場』の続きはどこデスカ?
もう私続きがキになっテよルもねれナなナナナナナナナナナn
575MISERY:2007/04/17(火) 21:33:35 ID:RQ+mvrpy
ようこうかんかんくるくる」

というお馬鹿な神がいまして、スズキミユキと名乗っていたのは嘘のようです。

しかもこの神、人が寝ている間に
「お前の霊体を犯す」と毎日言っていまして
SEXばっかり要求するかなり馬鹿な神です。


その神様の願いは
「みんながみんなスワッピングでSEXしあって仲良くなりましょう?w」
とほざいているかなり馬鹿な「ようこうかんかんくるくるそうそう」こと
文書菩薩神という私は馬鹿文殊と言っていますが、
まぁ、要はSEX大好きな日本で言う「文殊菩薩こと大黒神、韓国語でいう
「ようかんかんくるくるそうそう」とあえて韓国語で名乗り、、馬鹿文殊と言う神であることを

隠していた気分だそうです。そして、とうとうキレタ私の守護神「妖孤様」が

直接刀にて戒めてました。

やっぱり馬鹿文殊系も要は妄想癖という言葉を掲げて

一人エッチをしまくりなさいと言う(比較的若い文殊系の修行人は言われているそうです。

だけどさぁ〜、結局頭(文殊系責任者みたいなやつ??)
が馬鹿でSEXして霊体犯しまくりましょうなんていってる
馬鹿文殊系の人間の霊界(自分たち的には神界らしい(爆笑))には
考え物だよね。ちなみに私はそんな馬鹿文殊系?人神に毎日?
犯されているらしいよ。


まー30代 女冥利につきますね・・
モテル女は辛いねぇ〜ウッシッシ

ところで妖孤様、かっこよかったなぁ。
幻で姿を見れました。
髪の毛はワンレンで、白い髪に細面の面。目が細くって
衣は、火鼠の衣と言って、人で言う神主さんのような衣装着てました。

刀裁きがカッコいい
黄泉道・妖街道・青街道といった世界で良くご一緒させていただいております。

まぁ、現代用語で言うところのシャーマン、昔で言う「管狐使い・陰陽師」の

MISERYでした。

これ実話なんですよ〜
576名無しさん@ピンキー:2007/04/17(火) 22:31:43 ID:6mYJ0PkM
>>575
日本語でおk
577名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 00:43:52 ID:nlm2vo1m
>>575
理解不能
精神科医の診察を強く勧める
578名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 18:20:46 ID:399VtnRf
>>575
腹が減った まで読んだ
579名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 23:44:43 ID:32TAHc2H
500KBget
580名無しさん@ピンキー:2007/04/19(木) 00:12:12 ID:Wc8GRHXo
だが俺がゲト
581名無しさん@ピンキー
まだ