1 :
名無しさん@ピンキー:
お嬢様「あら…新スレですの…?>>1。」
>>5 個人的には見やすく親切な感じでいい感じではないかと思います。お疲れさまです。
>>1さん、
>>5さん、ともに乙&GJです。
それからいまさらですが
前スレ最後の天真爛漫な夜這いお嬢様もGJでした。
>>5 乙!
早速保管庫に収納された作品読んでたら「双子従者と人外お嬢」の続きが猛烈に読みたくなった。
170氏の降臨を待つ。いつまでも待つ。…待ってる。
>>1、
>>5 お疲れ様です。
見返してみたが初代スレ225の人はもう書かないんだろうか。
ずっと完結待ってんだが…
俺は◆/pDb2FqpBw氏の完結を待ってる。
平安物の続きが読みたい…
うにさん忙しいみたいだからなぁ
未完の全部待ってる
新作も待ってる
ここは職人さんが素晴らしくていい所だ
20 :
追憶:2006/09/08(金) 02:07:35 ID:azveFDis
前スレの「秘密」過去編
麗葉処女喪失、エロまでまだ到達してませんが投下します。
如月視点です。
「屋敷はここの角を曲がれば見えてくるはずなんだが…」
地図を開きながら、青年は目的の屋敷を探す。
「…あれか」
ようやくそれらしき門構えを見つけた。地図をおり畳む。
門を潜ると広い庭園が見渡せた。
丁寧に整えられた庭木が青空に美しく映えている。
鳥のさえずりさえも庭園の見事にとけ込んでいた。
『…きゃあ、…あはは…』
どこからか少女らしき笑い声が聞こえてきた。
手鞠がころころと、こちらに転がってくる。拾いあげて近寄ってきた少女に手渡す。
「…ありがとうございます」
少女は青年を見上げて、嬉しそうな顔で礼を返してきた。
その瞬間、青年は息を呑み彼女を見つめた。
「…え?」
彼の変化に少女はきょと、と彼を見上げている。
その顔は彼の知っている人物の顔にどことなく似ていたのだ。
だが、彼女の優雅な動作、どことなく品のある物腰から彼女がこの屋敷の令嬢であることを判断した。
「…麗葉様ですね?私は如月と申します」
令嬢らしき少女に一礼し、彼は挨拶をする。
「今日からこのお屋敷で働かせて頂くことになりました。どうぞよろしくお願いします」
「…そういえば…!ええ…お父様から聞いていました」
思い出したように口元に手をあてると、彼女はこくりと軽く頷く。
彼女によく似合う上品な髪留めが陽光をうけて光り、艶やかな黒髪がさらりと揺れた。
「麗葉お嬢様?」
その時、若い男の声がした。
「北都!」
目の前の少女の瞳が輝き、顔には柔らかい笑みが浮かぶのを見た。
声や姿から判別するに年頃はおそらくそう彼女と変わらないだろう。
「…麗葉お嬢様、この方は?」
「如月よ、今日から使用人としてここで働くのですって」
麗葉は今し方、あったばかりの自分をその男に紹介しはじめた。
「如月、紹介します。彼は北都。私の幼なじみで、他の使用人から比べるとまだ若いけど
長らくこの屋敷に働いてもらっているんです。わからないことがあったら彼に何でも聞くと良いでしょう」
そう言うと麗葉は彼の知っている誰かと似た顔で二人に眩い笑みを向けた。
21 :
追憶:2006/09/08(金) 02:10:27 ID:azveFDis
§
あれから数週間がたった。
如月は午前の仕事があらかた片づきしばしの休憩を取っていた。
今日届いたばかりの手紙に目を通す。
『兄さん、お元気ですか』
そんなおきまりの台詞からはじまり、兄への心配や最近のできごとなどが綴られていた。
「どう?もう、こちらの生活には馴れましたか?」
鈴の音を鳴らしたような可憐な声が気さくに話しかけてきた。
如月は唇の端を少し持ち上げて、彼女に軽く礼を返す。
「おかげさまで」
「そう、良かった」
にっこりと笑った麗葉を見て『妹』を思いだしていた。
妹を残して家を出た、その前夜の記憶――
「兄さん…寝てる?」
そっと背中に掛けられた、か細い声。
「どうした…?」
「一緒に…寝てもいい?」
躊躇いがちな少女の声に、仕方ないなと布団を持ち上げてやる。
潜りこんできた少女の背を優しくなでる。
彼の胸元をきゅっと握り込む白い手。
「明日、本当に行っちゃうの…?」
「…ああ。少し遠いけど昔、母さんが働いてたお屋敷だ」
俯いた少女の頭に息がかかり数本の髪の毛が揺れる。
ふわふわと首に触れてきて擽ったかった。
「……行かないで…っていっても?」
少女が短い沈黙を破る。その声は不安そうに揺れていた。
ため息が彼の口から漏れる。
「大きくなってもまだ甘えん坊なんだな、千鶴は…」
「だって…」
少し潤んだ声が千鶴と呼ばれた少女の口から漏れる。
何を言うべきかわからず再び沈黙が訪れる。
温かな温もりが身を捩る。
「……お母さんも、逝ってしまうに教えてくれれば良かったのに…」
千鶴の言葉に彼は息を呑む。
「千鶴…」
何かを制そうとするように少女の肩を掴んで覗き込む。
彼女はごく真剣な顔をして彼を見つめた。
「大事なことよ…、兄さん。私…兄さんが…」
「千鶴…!」
彼女の言おうとすることに予感を覚えて思わず大きな声を出してしまった。
「……いつも思ってるのよ、本当は私は誰の子供なんだろうって…」
――兄さん…と本当は血が繋がってなければいいなって…
最後の方は音に出さず唇の動きだけで漏らした呟き。
22 :
追憶:2006/09/08(金) 02:11:59 ID:azveFDis
…笑った顔の彼女は、本当に似ていると思う。妹に。
雰囲気は違うが面立ちは姉妹と言われればそう信じてしまうほどだった。
姉妹…
頭の中でそれがずっとひっかかっていた。
「あの、麗葉様は他に兄弟はおりますか?」
「…変なことを聞くのね?この屋敷の娘は私一人よ」
麗葉は首を傾げてみせた。
「そうですね、すいません」
口で謝りながら、やはり麗葉と千鶴は姉妹なのではないかとうっすら思った。
母が千鶴を連れてきたのは母がこのお屋敷で働いていた後だ。
でも…そうだとしたら何故、同じ歳の麗葉はこの屋敷の令嬢で千鶴はそうでないのかわからなくなる。
嘆息がでた。
なんにせよ、自分の憶測はあまりにも無理があった。
思わずため息がでる。すると麗葉が顔をあげた。
「どうかなさって?」
「いいえ。…ああ、それより――」
怪訝そうに眉を寄せた麗葉になんでもないと首を振った。
そして彼は先日のことを思い出し話題を替える。
「麗葉様は北都と仲がずいぶんと良いのですね。いつも二人でいるところを良く見かけるので」
すると、蕾が開くように麗葉の頬がみるみる薔薇色に染まっていく。
その変化につい吹きだしてしまう。
「…!…もう、どうして笑うのですか!?」
耳の端まで赤く染め上げた少女は、目の前の青年に怒る素振りをみせた。
「ふっ…、すいません…。あまりにも麗葉様がお可愛らしいので」
吹き出しそうな口に如月は手をやって堪える。
「馬鹿にして!」
本格的に怒りだしそうな彼女に、如月は両手をあげる。
「いや、ただ…羨ましく思ったんです」
目元を和らげて麗葉を見る。
麗葉は彼の言葉に興味を引かれたのか、怒りの気配をどこかに投げやり彼の言葉に耳を傾けた。
「私には、あなたのように想いを交わすことはできないから…」
「……如月にも好きな人が…いるの…?」
「してはいけないんです」
妹とよく似た顔を見つめる。
じっと見つめられて困惑したのか彼女は逃げるように視線をずらした。
「…そういうのでしたら、わかるような気がします。私も…」
「北都ですか?使用人と屋敷の令嬢。たしかに困難かもしれませんね」
麗葉の顔に影が落ちる。長い髪が顔を隠してしまってその表情は伺い知ることはできない。
「上に立つべき人間が使用人を好きって可笑しいかしら」
「いえ、ちっとも」
即答で返すと少しだけ元気を取り戻したように「ありがとう」と声が返ってきた。
すぐに顔は下がってしまったが…。
23 :
追憶:2006/09/08(金) 02:14:41 ID:azveFDis
「でも、いつか…いつかは私は違う人に嫁することになるわ」
それきり麗葉は俯き沈黙してしまった。
麗葉はこの屋敷の主の一人娘。
より正しい血筋の人間と婚姻を交わし屋敷を継ぐことになるのだろう。
そっと手を伸ばし麗葉の頭に自分の手を置いた。
「…如月?」
麗葉はわずかに驚いた声をだした。軽く髪を撫で梳く。
それは落ち込んだ千鶴に対しても、よくしていたことだ。
「……なんだか、さっきの話じゃないけど…」
俯いたままの麗葉の口元からくすっと笑う声が聞こえた。
「今ね、私、もし兄がいたとしたら貴方みたいな人がいいって思ったわ」
大人しく髪を撫でられていた麗葉が何気なく漏らした言葉。
その言葉に彼は胸がぎくりと冷えた心地がしたのだった。
――千鶴は母がお屋敷で働いていた頃に産まれた娘だ。
母が家に千鶴を連れてきたのはまだ彼女がまだ赤ん坊の頃だった。
父親は誰なのかは母は明かしてはくれなかった。
兄妹はあまり似ている所がなかった。それは外見も性格もである。
二人が成長するに従ってそれは如実に現れるようになった。
それでも二人はとても仲が良かった。
…それがいつ頃からだったろう、兄と妹という関係というだけでは収まりきれなくなっていた。
母はそんな二人を見ていつも咎めようとはしなかった。
気づかぬ振りをしていたのか、何故か、いつも曖昧な笑みを向けて見守っていた。
母が事故で亡くなってからは、二人だけの生活が始まると次第により互いに男女としての意識を強く持つようになった。
妹に想いを告げられたとき、はじめて家を出る覚悟をした。
そうだ…だから、だからこそ離れて暮らすことを選んだ。
少女の頭から手を離す。
さらさらと髪の束が手の平からこぼれ落ちる。
如月はその様子を複雑な顔を浮かべながら見つめていた。
――離れていたほうがいいと思った。
――しかし、それはいずれ悲劇的な結末へ結びついた
とりあえず、ここまで。エロ到達してないし…orz
イイヨイイヨ!!
子供の麗葉様が可愛くってGJ!
思い切り切なくなれそうで期待してる。
25 :
追憶:2006/09/10(日) 16:56:30 ID:5Fr+6sAG
妹からの手紙は頻繁に届いていた。
いつも、そこにはたわいない事や今の自分の気持ちなどが、真摯に書かれていた。
妹の手紙を手に取っていると彼女の笑顔すら見えてくるようだった。
それが、なぜか数週間を境に途絶えていた。
たかが数週間、たまたま忙しくて出せなかったのかもしれない。
いちいち気にしすぎなのかもしれないと、不安な心に無理矢理、蓋をしていた。
天井を向いていた瞳に目蓋が降りていくと、いつしか眠りに落ちていった。
夢を見ていた。
一人であの小さな家に残された妹の夢を…
寂しそうにしている彼女を見ていると胸が痛み、今すぐにでも駆け寄りたかった。
しかしある時、ぱっと彼女が顔をあげて、家の中を散策しだした。
妹しかいないはずである家の中で誰か、何者かの気配があるのだ。
その気配を彼女は兄だと思っているらしい。
だが、それは兄ではない。彼は御屋敷にいてそこにいるはずがなかった。
ざわざわと木々のざわめく音が聞こえる。
暗がりに人影があった。駆け寄っていく妹。やがて、側までくると足を止め
彼女は後ずさりを始めた。
人影は動き、彼女に近づいていく。それは男のようだった。
逃げようとする彼女を捕らえて、引き倒す。
服が破かれ、甲高い叫び声が空気をつんざいた。
少女の身体に覆い被さっていく黒い影――
がばっ、と身体を起こし目が覚めた。
壁掛けの時計を見ると、夜が明けるにはまだ大分時間があった。
まだ、心臓がせわしなく鳴っていた。
もう一度、上掛けを羽織るが虫の知らせとでもいうのだろうか、
いつまでもたっても不安な気配が抜けることはなかった。
26 :
追憶:2006/09/10(日) 17:00:14 ID:5Fr+6sAG
結局、あれから眠ることもできず、まんじりと夜を明かした。
太陽が空の真上を指した頃、麗葉と北都の姿を見つけた。
そこはあまり、普段は人気のないような場所だった。
二人の影が重なっていくのを見た。
彼らはいつも、なるべく人目を避けて逢瀬を重ねていたようだ。
影が離れて、麗葉の綺麗な顔が遠目にも紅潮しているのがわかった。
なぜだか、その顔を見ていると、胸のどこかが、ひどくざわついたような気がした。
彼女とよく似た妹の顔を重ねているからだろうか…
麗葉が北都から離れ、振り向きざまに手を振っていた。
そのままこちらに、駆け寄って、自分の胸にぶつかった。
「きゃ…?!」
「前を向いてないと、危険ですよ?麗葉様」
苦笑して、彼女を胸から離す。
「…如月!…もしかして見てました?」
「ええ、見てましたが…?」
その応答の声には意地悪な響きが混じっていた。
あまりにも真剣な表情をしていたものだから、少しからかいたくなる。
「お願い!如月、今のは見なかったことにしてくださる?」
「でも、見てしまったものは仕方ないでしょう?」
「もう!どうしてそんな意地の悪いことを言うの?」
彼女は形の良い柳眉をきっとあげる。
気の強そうな眼差し。そういうところは比較的大人しめの千鶴とは反対だった。
「…いいでしょう。黙っていて差し上げましょう…そのかわり…条件があります」
麗葉の瞳が一瞬輝き、すぐにそれが不安げなものに代わる。
「なに…?」
沈黙を置かれる。
「……次ぎに会うまでに、考えておきますね」
くすりと笑みを浮かべる。
本当は条件など考えてはいなかった。ただ彼女の変化を楽しみたかったのかもしれない。
「…ちょっと、…そんな…」
手を振って彼女から、離れると戸惑った声が背中の後ろで聞こえて来ていた。
彼女が、振り返っても見えなくなった頃でも、今頃、青くなっている麗葉の姿が
脳裏に浮かんできて、つい人知れず苦笑を漏らした。…自分があまりにも子供っぽい真似をしたなと。
§
それは突然だった。その知らせを聞いたのは――
その知らせを聞いてすぐに、妹の元へ急いだ。
白い布をかけられた小さな顔…
頬を撫でると、ひやりと冷たかった。
細い手首を包み込む。その手首には痛々しい傷跡があった。
いつの日にか、見た夢が思い起こされる。
せめてあの日に、すぐさま妹の元へ帰っていたらと思う。
喪が明けても、それから長らく自分を責め続けていた。
そして、心に深い傷をおったまま屋敷に戻った。
27 :
追憶:2006/09/10(日) 17:02:13 ID:5Fr+6sAG
淡々と日々が過ぎていった。
ある日、如月の充てられていた使用人部屋に麗葉が訪ねてきた…
「如月…いるんでしょう?入ってもかまいませんか…?」
「開いてます、どうぞ…」
かちゃ、とノブが回り麗葉が入ってきた。
「突然、お邪魔してごめんなさい…でも、どうしても話がしたくて」
「…わざわざ、なんのご用ですか?」
彼女は如月を気遣ってか躊躇いがちに口を開く。
「如月の妹って…千鶴さんって言うのね?」
「……そうですが?」
今はできるだけ、千鶴のことを考えないようにしていたのに何故、今持ち出してくるのかと
彼は苛立った。
視線も合わさずに無愛想に窓に目を向ける。ぽつぽつと雨の粒が窓ガラスを叩いている。
「彼女のこと…なんて言ったらいいか…」
麗葉は視線を臥せる。そっといたわるように如月の手の甲に自分の手を重ねてきた。
逃げるようにその手を振り払うと、悲しそうな麗葉の視線とぶつかる。
「あまり、自分を責めないで…如月」
「心配しなくても仕事には支障は有りません。一人でいる時くらい放って置いてくれますか…」
事情をろくに知らぬ人間が何を勝手なことを言うのかと神経が逆立った気がした。
「今は妹の話をしたくはないんです。出ていってもらえますか」
「そ、そんなわけにはいかないんです。…言わなければならなかったことがあるんです」
追い出してしまいたかった。その声も、顔も今は聞きたくも、見たくもなかった。
いたわるような優しさも受けたくはなかった…。
「お願い、聞いて…」
一瞬雷が光った。
「…貴方と『千鶴』は血は繋がってはいないんです」
その眩しい光りにも目は閉じることなく彼は麗葉を凝視した。
「以前、貴方は私に『してはいけない恋』をしているといいました。
…ほとんど感みたいなものでしたでしたが、その相手がもし私の知っている『千鶴』なのだとしたらと思って調べていたんです」
雨はさらに険しく窓を叩いていた。
「…以前、私がまだ産まれたばかりの頃、如月という女性が前にこの屋敷で働いていたんです。
貴方をみた時、顔立ちがなんとなく似ていたからもしかしてって思いました…
お父様の書斎で調べていたら、案の定、彼女と貴方が親子ということが知れました」
如月は彼女の言葉に真剣に耳を傾ける。
「…千鶴は私の母の双子の妹の娘で、私にとっては従姉妹です。
叔母がまだいた当時、屋敷で働いていた使用人との間にできた子供でした」
「…使用人と?」
「ええ…。当時、当主だった祖父は、大変に怒ったそうです。
祖父はその使用人を追い出してしまいました。そして叔母が現に目を覚ますまでと
女中に預けて…その女中が貴女のお母様です」
語る麗葉の瞳は悲しげにみえた。おそらく自分と北都のことを重ねているのかもしれない…
…それが、なぜか癇にさわった。
「…でも叔母は恋人と子を奪われて…
元々強くはなかったのですが、ついに身体を壊してしまったのです。そしてそのまま――」
「どうしてその子を私の家に?」
「祖父は醜聞を隠すために叔母の子を貴女のお母様に託しました。」
それでは、捨てられたも同然だと思った。
質の良い服に身を包んだ麗葉を見つめる。
同じ血を引いていながら、どうしてこれほどの差が生まれたのか。
「…いまさら…そんなことを知ってどうだと言うのです…」
如月は怨念のように低い呟きを漏らした。
「出ていって下さい、本当に今は一人になりたいんです…」
「…ごめんなさい。もう行きますね…」
麗葉は背中を向けて彼の部屋から立ち去っていった。
一度、振り返って何かを言おうとしていたが、結局諦めたように吐息が吐かれたのをみた。
28 :
追憶:2006/09/10(日) 17:06:40 ID:5Fr+6sAG
§
窓を覗くと、麗葉の姿があった。
北都もいた。何かを話し合っているようだった。
仲むつまじい二人の様子を見ているとかつての自分と千鶴を思いだし重ねてしまいそうになり、
目を背ける。
――彼女は千鶴ではない。
そして…一途に慕う少女の瞳、それが自分に向けらたものではない。
その事実が彼の胸を突き刺していた。黒い感情が胸に去来する。
その夜、麗葉は再び彼の部屋へ現れた。
逡巡した後、顔をあげ口を開く。
「…あの、やっぱり私、心配なんです。…貴方が思い詰めてるみたいにみえるから…」
「親切は結構です」
迷惑そうに冷たくあしらう。彼女は悲しそうに彼を覗き込む。
「千鶴はもう…いないんですよ。もっと早くそれを知っていたら、家をでることも
彼女を一人にすることもなかったのに…!」
言葉にだすほどどす黒く怒りが視界を狭める。他人に対しての、そして自分に対しての怒りだ。
どこかにぶつけなければ、気がふれそうだった。
「如月…!」
頭を抱え込んだ彼に、麗葉は近づき慰めるように手を伸ばしてきた。
ふわりと甘い少女の匂いがした。
その時であった。雷がどこかに落ち、部屋の灯りが消えた。
「……あ!」
麗葉は急に暗くなったことに対して驚いた声をあげた。
何かに躓いたのか、ガターンと何かを倒す物音と柔らかい華奢な身体がぶつかってくる。
「…ごめんなさい」
首の付近に麗葉の息がかかる。
くすぐるような息が彼をを苛立たせた。
「そんなに、気に掛けてくださるならば、私を慰めてごらんなさい」
少女の香りが鼻腔を刺激する。
寄りかかる華奢な身体を自分の胸に強引に引き寄せる。
「え…何…どういう意味…?…ぅんんっ…!!」
狼狽えた少女の唇を噛みつくように奪った。
暗闇の中では、目を開けていても何が起こっているのかわからないようだった。
否、理解したくもなかったのかもしれない。彼女は口付けられていても始めは抵抗らしきものがほとんどなかった。
唇を割り生ぬるい舌が口腔を犯した時、初めて彼女は己の状況を理解した。
手首を捕らえると、後が付くくらいきつく握りしめて、悲痛な息の音を聞いた。
「…やぁっ…!何…?!」
華奢な腕が彼の胸を突き飛ばす。…が、深窓育ち細腕では、後ろに軽く押された程度のものだった。
苛立つ心を持て余し、感情のまま乱暴に彼女を引き倒す。
恐怖を感じた麗葉は激しく抵抗した。
びりっと、服がさける音がして彼女の唇から、悲鳴が迸る。装飾されたボタンが飛んで床に硬い音が飛ぶ。
「少し黙っていてもらいませんか」
暗い声音で彼女の口を自分の手の平で押さえる。
「んーっ!?んんーっ」
自由な方の手でめちゃくちゃに殴られる。
多少、うっとおしいが、それを許す。いまから、自分はもっと彼女に酷い行為をしようとしているのだから…
「…大人しくして頂けますか?」
耳朶に囁きかけ、胸元の開かれた鎖骨に唇を落とす。
その感触にびくっと麗葉の肩が大きく揺れた。
29 :
追憶:2006/09/10(日) 17:09:45 ID:5Fr+6sAG
「…ん」
暗闇の中で微かな甘い響きを聞いた。
そんな彼女を口を歪めて、嘲る。
「おや、どうかされましたか?麗葉様」
耳元に唇を寄せ息を吹きかけながら、彼女の下着の下から胸の膨らみに手を伸ばす。
大きいとは言えないが柔らかに押し返すその感触。その頂を摘み、弄ぶ。
「んっ…んんーっ、ふぅんっ」
すぐにそれは、赤く色づき硬く凝る。それを虐めるように指で弾く。
「んんっ!」
麗葉が頭を振り、髪が揺れて広がる。
横に背けられたその白い首に小さな鬱血の跡が見えた。
その赤い印を汚すように己の口唇を押しあてる。
麗葉の目が大きく開かれ、やや勝ち気そうな瞳から一筋の涙が零れた。
闇に目が馴れてくると、その姿に嗜虐心をそそられた。
「…誰を思いだしたんです?…まぁ、想像はつきますけどね」
いつから、自分かこんな風に意地の悪いことをいうようになったのだろう…
千鶴が死んでから、思い詰めすぎておかしくなってしまったのだろうか…
いや、そうではないのかもしれない。
なにがそうさせるのか、知らないが
少なくとも、麗葉と北都に対して嫉妬に似た感情をこれまで感じていたのだ。
「…んん、…やぁ…止めて、たすけて…」
緩んだ手の間から、悲痛な叫びが漏れた。
「如月…お願い、もう、やめて」
その瞳が懇願している。愉悦を感じた。
もっと、壊してしまいたい気がした。
如月の長い指が服の裂け目から更に腹の上をすべり、そのもっと下を目指す。
彼女の大切な部分を隠す布を軽く指で擦る。
布越しに触れられて麗葉が息を鋭く呑みこむ。
その反応を窺いながら淡い茂みに指が潜りこませた。
「だめ…っ!」
その茂みから小さな花芽を見つけだす。
指で押しつぶす。
「…っぁ…」
敏感なそこを、くにくにとこねくり廻す。
「…ぁ…なに?…やぁ…ン…はぁ…」
麗葉は自らの感覚に驚いていた。それを見た彼は意外そうな顔をする。
「…おや、『彼』にはまだ触れさせていないんですか?ここは」
首に跡まで残しておきながら、大事な一線は越えてない。
そんな彼らを哀れに思った。
「…如月、この、よくもこんな…無礼、です…」
「…無礼ですか。ですが、麗葉様のお身体は…」
彼女の秘裂をなぞりあげる。くちゅ、と粘着質な音がした。
麗葉の頬に恥じ入ったように朱が走る。そして唇を噛む麗葉を追いつめる。
「ほら、気持ちいいでしょう?」
奥からひかえめながら、ぴちゃぴちゃと水音がする。それをわざと聞かせるように指を動かす。
「…やぁっ…ん、やめてぇっ…ぃやぁっ」
潤みを得た指先を、秘肉の奥へと侵入させる。
30 :
追憶:2006/09/10(日) 17:12:42 ID:5Fr+6sAG
中で、絡みつく襞を掻き回していく。
悲痛に訴える声がやがて潤み、泣き声へと変化する。
「…麗葉様はここがお好きなのですね」
指先がある一点を刺激していた。そのたびに麗葉の息は乱れ、緊張するように身を震わしている。
「ちが……ぁぁあん」
否定しようと口を開けば、嬌声じみた大きな声が可憐な唇から漏れた。
「私の指をこんなにおいしそうに銜えて、いやらしい方だ…」
麗葉の瞳から涙が溢れていた。それを指で掬い、口に含むと塩辛い味がした。
「ひぁっ…あっ…あん…ぁあ…ぅうんん…」
彼女の身体を抱え起こし、華奢な背中を胸に預けさせ後ろから抱き込むような姿勢を作る。
背後から手を伸ばし胸の膨らみを包む。
下腹部より下ではもう一つの手が彼女の下着の中で蠢いていた。
「…あ、…お願い、ゆるして…」
「強情ですね」
「…ぁはあっ…」
お仕置きとばかりに乳首、そして肉芽を摘み捻る。
「…いい子にしていれば、優しく扱ってさしあげます。どうか抵抗しないで」
赤く色づいた耳元に穏やかに囁けば、彼女は背中をのけ反らせて肌を粟立たせる。
麗葉の耳たぶを軽く噛む。
「…は…ぁ…」
麗葉の濡れた唇から、長い息が天井に吐き出された。
官能に浸った濡れた甘い息だった。
少女の色気だった変化に、彼は頃合いを見計らい彼女を寝台に転がす。
乱れた服をはぎ取られると彼女の本来白い肌は、うっすらと桜色に染まり、汗を滲ませていた。
「…ん…」
顔を重ねても、麗葉は抵抗もなく従順のそれを受けていた。
彼女は咽をならし唾液を嚥下した。
「いい子ですね」
そう言うと彼は、自分のシャツに指をかけ、服を脱ぎ捨てた。そして彼女の太股を掴み広げさせ、脚の間に自分の身体を割り込ませた。
軽く息を吸い込み、濡れた少女の秘裂に己の猛った熱をあてがう。
「………ぁ…ぃぃあああっっっ」
ぼんやりと天井を見上げていた麗葉は突如として起こった、鋭い痛みに悲鳴を上げる。
彼女は目を見開いて、苦痛を訴える。
「…やぁあっぁ…ああっっ…いた…ひぃ…ぁあああっ…」
「麗葉様、お声が…」
あまりの、大きな叫びに彼は眉を寄せた。
少しでも鎮めてくれるように、汗の浮かんだ柔肌を撫でる。
慰めるように、慎重に…
「身体を痛めます。無理に暴れないで、…そう、息をして、ゆっくり…」
「…はぁっ…ぁあっ…ん」
麗葉は痛みから逃れるために必死に彼に従った。
根本まで埋め込まれた時には、ぐったりと身体を投げ出していた。
痛みすら感じるほどきつい締め付け――堪えて抑えなければ、そのままどこまでも突き上げたい衝動に駆られる。
「…ぅ…痛い…抜いて…」
「そうですね、そろそろ大丈夫でしょう…」
ずる、と彼女から己を途中まで引き出す。その際にも「ぁああっ」と悲痛な叫びがあがる。
しかし、すべて抜かれてはおらず、困惑した表情で麗葉は彼を見つめた。
「勘違いされてませんか?…残念ですが、まだ終わりませんよ」
「うそ…、いゃあぁっ、…あぅうっ…はぁっ…あぁっ…」
31 :
追憶:2006/09/10(日) 17:17:46 ID:5Fr+6sAG
荒々しく身体がぶつかり合う。
濡れた肉同士が粘着質な音を立てる。
「ひぃぁっ…ぁあん…」
時に弱点を突き、そして深い最奥を突き上げる。
抱えた彼女の脚を寝台に押しつける。
苦しそうな麗葉の息、その唇を奪う。
「…ぅふぅっ…んん…っ…」
呼吸すら奪われて、麗葉は頭を振った。
離された唇が透明な線が橋を造った。
少女の中に埋められた熱はさらに膨れ上がり、抽送は激しさを増す。
「…ぁぁああ…ぁああ」
もう、堪えられないとばかりにビクビクと華奢な脚が痙攣をしている。
「…私を貴女の中に、受け止めてくださいますか?」
熱っぽい声で麗葉の下腹を撫でる。
その意味を理解した彼女は総毛立ち、逃れようと必死で身体を捩った。
しかし、逆に強い力で引き寄せる。
「…ぁ…うそ…やぁ、だめぇ…ぁああーーー!!!」
「…ッ…」
彼女の叫び虚しく彼は小さく、呻きその奥へ熱を解き放つ。
「…ぁ…あ………やぁぁあああ!!!」
麗葉の胎内に勢いよく精が流れ込む。幾度も身体を痙攣させ、
やがて、彼女は身を震わせながら意識を失った。
§
麗葉の身を清めても、シーツには彼女の破瓜による血痕が残っていた。
いまだ彼女は深い眠りに落ちていた。
そっと、髪を掻き上げ、額を撫でる。
今は綺麗にされていたが、幾方に涙の跡を残していたその顔を思い出し
罪悪感が胸を締め付けた。
これでは、千鶴を犯した男とかわらないではないか。
「……すみません」
身勝手な許しを請い、自らに嫌気がさす。
麗葉の唇が微かに動く。
じっとその唇が刻む動きに注目する。
「…………北都――」
その時、胸の内側に鋭く爪を立てられたような感じがした。
胸元を掴む。
――気づいてしまった自分の心に
いつのまにか惹かれてしまっていたのだ、麗葉に。
この妹の面影を残す顔、でも、おそらくそんなことだけではないのだろう。
何不自由なく、かしずかれてきた令嬢のくせに、何故か他人に対してひたむきな少女だったから…
「…はっ…」
口の端が歪み、自嘲の笑みを刻む。
今になって、千鶴を犯した男の気持ちが理解できたような気がした。
欲しかったのだ、この手に力ずくでも奪いたかったのだ。
それが…どんなに残酷なことであろうと。
壁に手を叩き付ける。
「…くっ」
外では、いまだ激しく雨が降っていた。月の見えない暗い空。
窓を開けると強い風と雨粒が彼を襲った。
どれほど、雨が彼の涙を流そうと、彼の罪も、感情もぬぐい去られることはなかった。
32 :
追憶:2006/09/10(日) 17:21:02 ID:5Fr+6sAG
今回はここまでです。
゚・*:.。..。.:*・゜(*´∀`)。. .。.:*・゜゚・*
待ってました。切ないですね…
次回も楽しみに待ってます。
処女喪失キター!
如月は麗葉様のことが好きなのだと信じてました。
勝ち気な麗葉タンも愛ある鬼畜な如月も大好きです。
超GJ!GJGJ!!
kitaaaa
GJすぎてギンギンです
切なくて愛のある陵辱キタコレ!!
リクエストした甲斐があったよー!!
本当にGJ!
>36
「愛のある陵辱」って矛盾してない?
加害者にとっては(自分勝手な)愛があるのかもしれないけれど
被害者にとってはただの強姦でしょ
そんな無粋な。
如月は麗葉を立派に強姦したという認識してるし、これから自責の念に駆られる。
麗葉は、処女喪失までは何らかの情(恋愛ではなくても)を如月に対して持っていた。
お互いが愛し合うという形だけが、愛ではないかもしれなくて、
それでもやっぱり自分勝手と言われたらそうなんだろうし。難しい…。何を言ってるんだ自分よ。
……続き、頑張って書きます。
>>37 去年辺りから既に「愛辱もの」というジャンル名が出来てるような気がするので
意味は間違っててもキニシナイ
41 :
36:2006/09/12(火) 01:32:11 ID:gDzFIzu9
>>37 こういう男に愛があって、女もテクに負けて気持ちよくなっていって、情もわいて・・・
っていうパターンが大好きなんです。
現実ではこういうパターンに発展することはないし、犯罪だって分かってるよ。
>>39 悩ませてしまって申し訳ないです。続きを心から期待してます。
そういう人は性コミでも読んでたらいいのに…。
いちいち突っかかるなやカス
スマソ。つい本音がね。
だって凌辱の部分について熱く語られてもさ…ここ主従スレなんだし。と思って。
以降は黙る。スレ汚してスマソ。
むしろ陵辱が多くなりやすいシチュで有り得ない世迷言を吐かしてんじゃねー
死ね
別に凌辱が多くなりやすいシチュってことはないだろ。
保管庫の作品読み返してみたって特にそんな印象受けないけど。
従者が男ならリビドーがそっちへ向かう事もあるだろうに
それを無いと言わんばかりの言動はどうなんだか。
結局必要ないと思ってるのは夢見る夢子さんな46だけだボケ
??意味わからん。
必要ないなんて漏れは一言も言ってないけど。
46では保管庫読んだ印象を書いただけ。
それに「そういうこともある」と「多い」じゃ意味がまったく違わないか?
お前らの論争なんか興味ねぇ!
凌辱に愛があろうがなかろうが萌えりゃいい!
ここは所詮創作スレだ!議論はヨソでやれ!
ネ申 щ(・д・ )щカモーン
>>32 処女喪失素晴らしい。文章も素晴らしい
もうGJとしか
続きwktkしながらお待ちしてます
ところで、前スレでも言ったが、奥様モノも見てみたいなぁと思う今日この頃
どなたか書いてくださらないか
>>48 お前の定義じゃ
そういう事もある=滅多に無い
なんだな。
だから腐女子と呼ばれるんだよお嬢ちゃん。
エロパロ板に向いてない性格だという事、今のうちに自覚すべきだな。
奥様もの書いてみる。
旦那がいるとややこしくなりそうなので未亡人ってことで。
窓枠を掴んだ腕に知らず力がこもる。
庭の手入れを終え一休みといったところだろう。汗に濡れたシャツを脱ぎ、男は身を屈めてホースの水で頭を濡らしていた。
短めの黒髪が水に濡れ、日に焼けた蜜色の肌が煌めく。
はしたないと理解しながらもエレインは彼から目が離せなかった。
犬のように身震いし、顔を上げた彼が不意にエレインの方を向いた。
エレインは慌てて壁に身を隠す。
(大丈夫。ここは二階ですもの。私の姿なんて目に入るわけがないわ)
胸を押さえ、エレインは深い呼吸を繰り返す。
嫁いでからの年数は片手で足りるとはいえないが、エレインは年より若く見えるし体も張りを失ってはいない。しかし、それを証明できるような相手はどこにもいない。エレインが肌を晒せる唯一の相手は数年前に亡くなってしまったからだ。
エレインは再び窓に近づくと少しだけ顔を傾けて外の様子をうかがった。
以前勤めていた執事が病に倒れ、その代わりにと甥を紹介された。長年勤めた執事の紹介ならばと顔も知らずに採用を決めたのが数日前。そして、彼が訪れて以来、エレインに心休まる日はない。
先ほどまで彼のいた場所は既に無人と化しており、彼の姿は見えなかった。
エレインは安堵と不満を混ぜ合わせた吐息をつく。
(私、どうしてしまったのかしら)
いつも穏やかな笑みをたたえた夫とは対照的に、彼は無愛想といってもいいほどに表情に乏しい。体つきも夫とはまるで違う。
それなのに、気がつけば彼のことを考え、自然と姿を探してしまう。
夫を亡くしてから不自由を感じたことなどなかった。他の夫人のするように若い愛人を作る必要性を感じたことも、再婚を考えたこともない。愛する夫と過ごしたかけがえのない日々の思い出があればそれでよかった。
それなのに──
「……アルフレッド、私、あなたを愛してるわ。愛してるの」
熱を持ち始めた体を抱きしめ、エレインは今は亡き夫へと思いを馳せた。
つづく
数回に分けてもいいかな。とりあえずさわりだけ。
おっ。いい感じだね。
「奥様」と呼ばせるのもいいけど「マダム」と呼ばせてみてほしいなあ。
kita-!
wktkして続き待ってる。
ところで前スレを、早く埋めた方がいいのかな?
このまま職人さんの埋めシリーズを待ってもいいと思う。
アラビアンナイト風にお姫さまと指輪かなにかに封じられたジンなんてのも主従に入るかな?
指輪の持ち主たる姫君にジンはいやいやながらも従ってるというような設定でジン×姫君を書いてみたいんだが。
面白そう…!
>>57 いいねーいいねー
ファンタジー物もうちょい読みたかったとこだから楽しみ
ジンのあらくれっぷりに期待
大丈夫そうなのでジン×姫君投下します。
前後編にわけたので、今回は前編のみ。
>>59 あらくれってほど荒っぽくないや。期待してもらったのにすまん。
「そういうことならば俺の出番だ。主たる姫君の望みとあらば死力を尽くして叶えて差し上げよう。一言申しつければよい。さあ、ジン。私の命に従いなさい、とね」
にやりと不敵に笑むジンを前にしてアイーシャは眉を寄せた。
浅黒い肌に切れ長の紅い瞳。ターバンから僅かに覗くのは月の光に似た白銀の髪。目の前の男の美しさは人間のそれとは異なるものだ。
「……また聞き耳を立てていたのね」
アイーシャは自らの左手に視線を落とした。人差し指に煌めくのは、数週間前に兄からいただいた紅玉の指輪。
アイーシャは溜め息をついて指輪を飾る紅玉を撫でた。
目の前の男は今し方、この指輪から現れた。彼は指輪に宿る精霊なのだ。
「聞き耳とは人聞きの悪い。お前が指輪を肌身離さず身につけているから嫌でも耳に入るんだ」
「抜けないのだもの。仕方ないでしょう」
「まあいい。そんなことよりも早く言え。お前が望めば何でも叶えてやるぞ」
先ほどの慇懃な態度はどこへ行ったものか。アイーシャが思うように動かぬと理解するやいなやジンは不満たっぷりに表情を歪めた。
「けっこうです。あなたの手を煩わせるほどの問題ではありません。それに、問題はもう解決済みです」
ゆらゆらと空中に浮き、ジンはアイーシャの傍らであぐらをかいている。
「つまらん姫君だな。欲はないのか、欲は」
薄手のベールを引き、アイーシャに顔を寄せる。
「お前が望めば世界一の大富豪でも手に入らぬような黄金の宮殿を作り出すこともできるんだぞ」
「そんなものを用意されても困ります」
「金銀財宝に興味がないとすれば何だ。美貌か? ジンニーヤと比べてはまだまだだが、人間にしてはそれなりに美しいほ」
「黙りなさい」
ジンの腕からベールを奪い取り、アイーシャはくるりと背を向けて歩き出す。
「なんだ。怒ったのか?」
「まさか。なぜ私が怒らなければならないのです」
「女というのは訳もなく怒り出すものじゃないか。特に月に一度の」
「ジン、あなたは部屋で待機していなさい」
あぐらをかいたままふわふわと逆さに浮き、ジンはアイーシャと同じ速度で進んでいく。
アイーシャは少しばかり歩む速度を速めながら、頭上を漂うジンをきつく睨みつけた。
「そういう顔をしてるときが一番艶がある。いい女だな、アイーシャ」
アイーシャの話などまるで聞いていないとばかりにジンはにっこりと笑んでみせた。
「……私はこれからサーリム兄様の元へ参ります。それからシェーラと織物の練習をして、読みかけの書物を読んでしまいます。ついでにアニスに手紙も書きたいと思っています」
「ふむ」
「わかりますか。私は忙しいのです。あなたの戯れ言に付き合っ……きゃっ、ジン!」
いつの間にか地面に降り立っていたジンに唐突に引き寄せられ、アイーシャは円かな瞳をさらに丸くする。
「予定をすべて投げ出して俺と悦楽の海に沈むというのはどうだ」
耳元に低い囁きが落ちたかと思うと、顎を持ち上げられて強引に唇が重ねられる。
触れるだけの口づけではない。舌を絡め、唾液を交換しあう深い深い口づけ。
咥内を蛇のように這い回るジンの舌を感じ、全身が総毛立つ。
背中を優しく撫でられ、アイーシャは無様に座り込まぬようジンの胸にしがみついた。
「い、嫌です。離してっ」
唇が離れたのとほとんど同時に担ぎ上げられ、アイーシャは体をばたつかせて抵抗を試みる。
しかし、小柄なアイーシャと優男然としていても魔物であるジンでは力に差がありすぎた。アイーシャの抵抗など風に吹かれるほどもないとジンは涼しい顔で来た道を逆戻りしていく。
「心配するな。死なない程度にしておいてやる」
抱えた手で尻を撫で、ジンは楽しげに笑う。
「この四日ほど退屈だったからな。お前の花婿候補だかいう男のせいで指輪から抜け出られんし」
ぶつぶつと文句をつけながらもジンの足取りは軽く迷いがない。
あっという間に自室へ舞い戻ってしまい、アイーシャは悔しさに瞳に涙を滲ませる。
初めて戯れに体を弄ばれたのも自分の寝台の上だった。以来何度強引に体を奪われたことか。
屈辱の記憶がよみがえり、アイーシャは唇を噛んだ。
「あの男、名前はなんといったかな」
ぽいと荷物を放り投げるように、ジンは寝台の上にアイーシャを放り出した。羽根の詰め込まれた柔らかな布にアイーシャの体が沈む。
「そうそう。あの気の弱そうな男にあの後面白い贈り物をしてやったぞ。今頃は夢見心地で過ごしているだろうよ」
「……何を、したのです」
「うん? なに、あいつは腐っても一国の王子だろう。贅沢したがってる知り合いを紹介してやっただけだ。飽き性で始末の悪い女だが、暫くはあの男も楽しい思いができるだろう」
くらりと眩暈を感じてアイーシャは額に手を当てた。
目の前にいるのは魔物だ。指輪に封じられた魔の生き物。その知り合いとなればやはりそれ相応の女なのだろう。
先日宮殿を訪れたばかりの幼なじみの身を案じ、アイーシャは心を痛めた。
「あんな男にお前をくれてやるのは癪だからな」
ぎしっと寝台が軋み、ジンがアイーシャにのしかかった。
「ザイールの身に何かあったら私はあなたを許しません」
「ほう。どうする気だ?」
「わかりません。何をどうすればあなたをこらしめられるのか、私には皆目見当もつきません。ですが、絶対にあなたを許しません」
アイーシャとジンの視線は絡み合い、ジンの指が頬を撫で続ける。
「つくづく面白い姫君だ」
くつくつと笑い、ジンはアイーシャの体を寝台に押しつけた。
「よその男のことは後で話すとして、今はこちらの方がいい。お前も嫌いじゃないだろう?」
「あ、アルジャジール! 私は嫌です、嫌いですっ」
「ふん、まんざらでもないくせに。拒絶するのは口ばかりだ」
まるで魔法を使っているかのようだとアイーシャは思う。ジンの落とす口づけに頭が痺れ、気がつけば身につけているものはすべて床に滑り落ちているのだから。
ジンの男らしい骨ばった手がアイーシャの体をなぞるように触れていく。その指が敏感な部分をかすめる度にアイーシャの唇からは悩ましげな吐息が漏れた。
「さて、姫君」
羽根が触れるように優しく全身を撫で回した後、ジンは意地悪く微笑んだ。
「俺にどうしてほしい? その可愛い声で命じてくれるなら俺はどんなことにだって従ってやるぞ」
わざとらしくゆっくりと上着を脱ぎ捨てるジンを眺め、アイーシャはごくりと唾を飲み下した。
つづく
GOD!
早く後編読みたいよGJ!
最高に萌えた
王子様に贈った魔物ってのも気になるねw
アイーシャが指輪を手に入れたいきさつも気になる。
「では、アルジャジール。今すぐ私から離れて指輪へ戻りなさい」
潤んだ瞳でジンを見上げ、アイーシャは精一杯毅然と言い放つ。
「いやだね。こんなうまそうなもんほっぽりだして指輪へ帰るなんてとんでもない」
きっぱりと言い切るとジンは身を屈めてアイーシャに口づける。
豊かな乳房を包み込むようにもみしだきながら、アイーシャの小さな舌に吸いつく。
「んっ…約束が、違います」
「いいか、アイーシャ。こういう時のお願いというのはな、私のことを壊して、くらいはいうもんだ。そうすれば俺がその願いを思う存分叶えてやるものを」
淡く色づいた乳房の先端を舌で舐る。びくりと体が跳ねたのを感じながら、ジンはそれを口に含み唾液を絡めて舌で転がしていく。
「あ…いや、やっ」
おざなりな抵抗は男を燃え立たせるだけだといい加減に気づいてもいいものを、アイーシャはか細い腕で抵抗し続ける。
ジンを喜ばせるだけだと知らないアイーシャはジンの頭を押し返そうと強くその頭を掴んだ。ターバンがするりと落ち、アイーシャは露わになった銀髪に指を絡めた。
豊かな黒髪を広げ、白い肌を桜色に染めるアイーシャは扇状的で美しい。
ジンはアイーシャの体に舌を這わせ、吸い付き、赤い痕を散らしていく。
「欲しくなったらいつでもいえよ」
くるりとアイーシャの体を反転させ、ジンは意地悪く呟く。
アイーシャの体と寝台の間に手を差し入れ乳房を愛撫しつつ、項に顔を埋める。耳朶を噛み、ねっとりと舐る。
アイーシャの甘い喘ぎを聞きながら、ジンは少しずつ確実にアイーシャを追いつめていく。
背骨に沿って舌を這わし、背中にも赤い花を咲かせていく。
「お前はいつまでも処女のようだな。姫君としての矜恃が魔物に体を許すのを拒んでるといったところか」
「あっ、ジン…アルジャジール! いやっ、ああっ」
腰を掴み、高々と突き出させる。顔を寝台に埋め、ジンの前にすべてをさらけ出すような態勢になり、アイーシャは羞恥で身を震わせる。
「体は快楽を覚え込んでるというのに、矜恃が高いのも考え物だ」
目の前に差し出された極上の蜜にジンは躊躇うことなく唇を寄せた。
溢れる愛液を啜りとるように舐めていく。
柔らかな舌の感触とわざとらしくたてられる蜜を啜り舐めとる淫靡な音がアイーシャに羞恥と快感を与えていく。
すでにアイーシャの体の隅々までを堪能しつくしたジンの動きは的確に弱点をついてくる。
するりと伸びた手が淡い茂みに覆われた一番弱い部分に触れた。
「あああっ!」
たまらずにアイーシャは強く寝台を掴む。
全身の血が沸騰しそうに熱い。頭がおかしくなりそうだった。
ジンの指はアイーシャの陰核を巧みに剥き、隠された敏感な部位を撫でた。驚くほどの快感がアイーシャを襲い、彼女は快感に咽び泣く。
「あっ、ああん…アル…アルジャジール! も、いやっ、やああああっ!!」
びくびくと体を震わせ、アイーシャは全身から力を抜いた。ジンが体を離すとアイーシャの体はどさりと寝台に倒れ込む。
「まだ挿れてもないのに達したのか。まったく淫乱な姫君だ」
濡れた鼻先を腕で拭うと、ジンはアイーシャの体を引き寄せて唇を塞ぐ。
達したばかりで敏感になっているはずのアイーシャの体をまたしても優しく撫で回していく。
「ふふ、お前は本当に可愛いな。いつまで可愛がっても飽きないくらい」
ちゅっと額に口づけ、ジンは再び自己主張する赤い突起を唇に含んだ。舌でころころと転がし、思いついたように優しく甘噛みする。唇に含めない方も指で転がしたり摘んだりと絶えず刺激を与え続ける。
「ふっ、ああん! ひゃっ、アルジャジール」
アイーシャにもはや抵抗の色はなく、声は熱く甘く、体はジンを求めてやまない。
アイーシャははしたなくも腰をジンの体に擦り寄せて啼いた。
ジンの唇や指が与えてくれる快感だけではどうしても足りない。体の中の少し前までは知りもしなかった部分が刺激を求めて蠢くのだ。
「アルジャジール……ああ、お願いっ」
愛撫だけで何度も絶頂の極みに押し出され、アイーシャからは理性も矜恃も消えていた。
「お願い?」
「ふぁっ、だって…わたくし、やっ……もう、あっ、アルジャジール!」
「ふん。名前を呼べば何とかしてくれると思ってるわけか」
ジンは意地悪く笑い、アイーシャの胸の頂を強く摘んだ。途端にアイーシャは鋭い悲鳴を上げてのけぞる。今ならば何をされても快感へと変じてしまいそうだった。
「まあいい。お前が欲しいのはこれだろう。可愛い主の望みだ。欲しいのならくれてやる」
アイーシャの熟れきった果実のようにとろけた部分にジンの熱く堅いものが沈み込んでいく。
刺激を求めてやまなかった部分が歓喜に震えた。
「やっ、あ、あああああっ!!」
すべて収まりきる前にアイーシャは体を強く震わせて涙を流した。
ジンは一旦動きを止め、さも楽しげにアイーシャの瞳をのぞきこむ。
「なんだ、もう満足か」
ぼんやりと焦点のあっていないアイーシャの頬に手を添え、ジンは無理矢理に視線を合わせた。
「おい、アイーシャ」
快感で朦朧としているアイーシャが不満とばかりに、ジンはアイーシャの腰を掴むと一気にすべてを叩きつけた。
「ひ、あああっ!!」
「アイーシャ」
「あっ、アル…ジャジール」
「ようし、目が覚めたな」
滲む涙に唇を寄せ、ジンは満足げに笑む。
「どうだ、気持ちいいか?」
ぴたりと体を繋げたまま、微動だにせずジンは問う。
「気持ちよくて仕方ないんだろう。どんなにお上品な姫様ぶったって魔物に抱かれて悦ぶ淫乱な女だからな」
「いや、違います!」
「嘘をつくなよ。俺が欲しくてたまらないくせに」
ジンの言うとおりだった。アイーシャの体は更なる刺激を求めて緩やかに腰を揺らしていたのだから。けれども、それはアイーシャが望んでいるわけではなく体が勝手に動いてしまうのだ。
「違います! わ、私は……」
首を左右に振って否定するアイーシャを追いつめようとジンはアイーシャの腰を掴んで止める。
「いやらしく腰を揺らすくせに、俺には屈したくないか」
「い、いやっ」
腰を掴まれ、アイーシャの体は次に訪れるであろう快感に期待する。
しかし、ジンの体は激しく動き出したりはしなかった。
「本当に嫌ならやめてやろうか。このままこれを抜いてしまって」
言葉通りにジンはぎりぎりまで腰を引いた。今は先端が僅かに埋まっているだけだ。
「認めてしまえ。堕ちてしまえば楽になれるぞ」
アイーシャのたわわな乳房を揉み、太股を撫であげる。
「さあ、アイーシャ。思い出せ、お前に快感をくれてやれるのは俺だけだ。死ぬほどよがらせてやるぞ」
本当に止めてしまう気などないとわかっていた。一度深くまで味わったジンのものは堅く張りつめていたし、アイーシャがどれだけ拒んでもジンがこの行為を止めてくれた試しなどない。
「アイーシャ、俺が欲しいといえ」
今のジンはアイーシャを屈服させることを新しい楽しみと決めてしまったようだった。おそらくアイーシャが認めてしまうまでありとあらゆる手を尽くすのだろう。
アイーシャは悔しさに唇を噛んだ。
ジンの性格がアイーシャの知るどの人よりも悪いことは初めからわかっていたし、アイーシャの体を弄ぶのが好きなのもわかっていた。だから、ジンの意地悪い責め苦も予想できていたといえばできていた。
しかし、それでも悔しいと思ってしまうのはこれだけの屈辱を味わわされて尚ジンを嫌えない自分自身だ。快楽にのまれてしまった自制心の弱い自分自身。一国の王女としての矜恃一つ保てない自分自身。それが悔しくてたまらなかった。
「……アルジャジール」
絶えず緩やかな刺激を与えていたジンの腕を掴み、アイーシャは大粒の涙をこぼした。もう限界だった。
「私、あなたが欲しいの」
小さな、耳をすまさなければ聞こえぬほどに小さな声でアイーシャは呟いた。
「それだけか?」
ジンの低い声に、アイーシャは困惑に瞳を揺らす。
「あ、あの……わ、私を…壊れるくらいに、抱いて」
先ほどジンが言っていたことを思い出して口にする。
にやりとジンの口元が歪んだのと同時にアイーシャの奥深くにジンのものがめり込んだ。
アイーシャは思わぬ刺激に息をのむ。
慣らすような優しさなど微塵もなく、ジンは初めから強く激しく欲望の限りに腰を叩きつけた。
ジンの大きく逞しい肉棒がアイーシャの中を抉るようにして動き回る。
さんざん焦らされた挙げ句の強い快楽にアイーシャはあっという間にのぼりつめた。
体を震わせ、ジンの肉棒から精を搾取しようと襞が強く収縮する。
「そうだ、アイーシャ。いいぞ。もっと啼け」
しかし、そう簡単にジンが達するわけもなく、彼はアイーシャの体を貫き続ける。
ぎりぎりまで腰を引いたかと思えば、子宮に侵入しようとするかのように強く腰ごと叩きつけてみたり。アイーシャの敏感な膣壁を引っかけ、縦横無尽に責め立てる。
ジンの手によってアイーシャの腰はめちゃくちゃに動かされながら、アイーシャも本能から強く腰を振る。ジンの荒々しい動きと相まってそれは更なる快感をアイーシャに与えた。
「ひっ、あ、ああ、やん、あ、あっ、あっ」
ジンの律動に合わせてアイーシャの口からは意味をなさない言葉や呻きが溢れ出る。
あまりの快感にアイーシャはものを考えることができない。
「ふっ、あっ、壊れ…やぁん、ひあっ」
「壊れてしまえ。俺が直してやる」
「あっ、ああ、そんな、んんっ」
アイーシャの足をかつぎあげ、腰を抱きすくめるようにしながらジンはがんがんと腰を叩きつける。
しかし、ただ叩きつけるだけだった先ほどまでと違い、深く浅くと強弱をつけてみたり、アイーシャの弱い部分を集中的に小刻みに責めてみたりと技巧も使いはじめた。
「あっ、アルジャジール! いや、また、あっ、あっ、ああああああっ!!」
何度目かわからぬ絶頂に身を震わせるアイーシャをジンは愛しげに見つめる。
「アイーシャ。忘れるなよ、お前は俺のものだ」
額に滲む汗が頬を伝い、アイーシャの腹に落ちた。
ジンはアイーシャの腰を抱き直すと猛然と腰を動かし始めた。
「あん、あっ、いや、いや、もうだめっ! いやあっ!! ああああああっ!!」
達し続けているようでアイーシャの膣は動き続けるジンを引きとめようと最大限に動いていた。
「ああ、アイーシャ。アイーシャ」
譫言のように名を囁いて、ジンはアイーシャの腰を叩きつけるように引き寄せた。一拍おいて熱い滾りをアイーシャの中へ迸らせる。
熱いものを内部に感じ、アイーシャもまた体をのけぞらせた。
暫く余韻に浸っていたジンが深く息を吐く。そして、アイーシャの体を覆い被さるようにして抱きしめた。
「暫くしたらもう一度だな。いや、一度といわずに朝まで楽しもう」
アイーシャの髪を撫でながら、ジンは優しげな声音で無情な一言を囁いた。
「なあ、アイーシャ。気持ちよかったろう?」
髪に甘く唇を寄せ、ジンは優しく問う。
アイーシャはぼんやりとしたまま、小さく頷く。
「そうか。お前ももっと楽しみたいだろう?」
またしてもアイーシャは頷く。
ジンはおかしくてたまらないとばかりにくつくつと笑う。
「そうかそうか。やはりお前は淫らな姫君だ。俺との情事をもっと楽しみたいとはね」
「……え?」
「なに、お前が淫らになるのは俺の前でだけなんだから恥ずかしがらなくてもいいぞ。普段は毅然と姫君らしくしていればいい」
徐々に意識が覚醒してきたようでアイーシャの頬が朱に染まりいく。
「それから、アイーシャ。俺のことが好きか?」
耳まで赤く染めてアイーシャはジンを見上げる。
期待に満ち溢れたジンの表情に絶句し、アイーシャは目を白黒させる。
「なっ、ジン、あなたという人は」
「お。なんだ、もう正気に返ったのかつまらんな」
「つまらないとはなんですか。人が茫然自失に陥っているのをいいことにくだらない戯れを」
「そういう時こそ本音が出るものじゃないか」
アイーシャはジンの胸から逃れようと身を捩るが、反対に強く抱きすくめられる。
「アイーシャ、俺のことが好きか?」
「し、知りません」
「素直じゃないな。じゃあ、素直な体に尋ねるとするか」
未だ繋がったままだったジンの体が緩やかに動き始め、アイーシャは熱い吐息を漏らした。
「もっと楽しみたいとの主の仰せだ。存分に働かせていただこう」
冷めかけた熱はあっという間に盛り返し、アイーシャは再びジンの与える快楽に身を沈めていくのだった。
おわり
前編はジン×姫君って書いてるのに後編は魔人×姫君にしてしまった。
どっちも似たようなもんだがジン×姫君が正しいタイトル(?)です。
超GJ!
エロが濃厚でとても楽しませてもらいました。
前後編などの予定があればぜひお願いしたいです。
GJ!!
自信家なジンとかプライドの高い姫君とか色々萌え死にました……。
79 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/17(日) 02:27:04 ID:HWOavHS8
若頭×お嬢系が見たい。というわけで期待age
80 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 13:33:44 ID:h6EctuwV
このスレ初めて見たんだが良スレだな。職人方全員にGJ!!
そんな
>>79の期待に応えて昔チャンピオンで連載してたswitchはいかが?
まさに若頭(津田島)とお嬢様(綾香)のエピソードがあるでよ。
主従関係なら同じ作者の893のお嬢様と用心棒の話もイイ!
>>82 お嬢様と用心棒は「ちょこれーとぶるーす」だね。
津田島、というか、つーさんは男から見ても格好いいよな。
>>83顔に傷ができるほど同意
津田島はょぅι゛ょも懐くいい男だし綾香はガチでツンデレカワユス
うまく主従関係にもってけばこのスレ向きになるかもだが…
ここってパロはOKなんだっけ?
ジンと姫君の出逢い編書いてみたので投下します。
摘んだ指輪を日にかざすときらりと中に星が見えた。石の中に傷があると光線の加減でそう見えるんだよと博識な兄が教えてくれたのを思い出す。
背中のすべてを覆い隠すほどの豊かな黒髪と同じく夜の闇のような円かな瞳。白い肌を惜しげもなく晒した衣装はともすれば情欲をかき立てるものになりかねないが、アイーシャの生まれもった気品がいやらしさを感じさせない。
アイーシャは指輪をくるくると回しながら、星の煌めきを不思議そうに眺める。
──いいかい、アイーシャ。この指輪にはジンが宿っているのだそうだよ。指輪の持ち主を主と定め、一言命ずればどんなことでも叶えてくれるという。
──まあ、素敵だわ。私、ジンを見てみたい。
──アイーシャは怖いもの知らずだね。ジンは魔物だ。人の自由にはならない。
──でも、指輪の主には従うのでしょう?
──さて、どうだろう。見返りに何を求められるか。魔物に魅入られた者の末路はいつだって死だよ。
アイーシャは先日の兄とのやりとりを思い出す。
──だからね、アイーシャ。もしジンが現れたとしても決して願いを口にしてはいけないよ。可愛いお前の魂を魔物などにくれてやりたくはないからね。
「この星がジンなのかしら」
古い御伽噺にすぎないけどねと最後に兄は笑っていたが、アイーシャはジンが宿るという不思議な指輪を眺める度に胸が躍った。
血のように紅い紅玉の指輪。一体どんな物語が秘められているのだろう。
いつまででも眺めていたかったが、そろそろシェーラの元へ行かねばならない。年頃のアイーシャには覚えねばならぬことがたくさんある。花嫁修業も大変だ。
宝石箱に指輪をしまいこもうとして、アイーシャはふと思いついた。
指輪はアイーシャの指のどれにも合わないほどに大きかったから今までは眺めるだけだった。けれど、その石が指で煌めく様が見たくなり、アイーシャは左の人差し指にそれを通した。
「……え?」
確かに指輪は緩かった。それなのに、指の根元にたどり着いた途端に指輪はアイーシャの細い指にぴたりとはまった。
そして、押しても引いても動かない。
「……抜けないわ」
とりあえず、兄に相談してみよう。アイーシャはそう思い立ち、寝椅子から立ち上がった。
それは一瞬の出来事だった。紅玉が紅く煌めいたかと思うと目の前には見覚えのない青年がいた。それも宙に浮かんで。
「やあやあこれはこれは。ふむ。なかなか悪くない」
月の光を溶かしたような銀髪と紅玉と同じ色をした切れ長の瞳。醸し出す雰囲気が人のものとは明らかに異なる美しい青年。
くるりと辺りを見回して、ぶつぶつと何かを口にしている。
ジンだとアイーシャが理解するのにそう時間はかからなかった。
「さて、麗しの姫君。自己紹介が必要ですか」
「ジン、なのね」
「いかにも。さあ、姫君。あなたの望みは? 主の望むことならなんなりと、あなたのためならどんな無茶な願いでも叶えて差し上げよう」
アイーシャへずいと顔を近づけ、ジンは妖艶に笑む。
紅い瞳に吸い込まれてしまいそうで、アイーシャはぎゅっと拳を握った。
(いけないわ。お兄様と約束したんだもの)
アイーシャは少しだけ残念に思いながらも、小さく首を振った。
「私、あなたに叶えていただく望みがないの。今の生活には何の不満もないし、大きすぎる欲望は身を滅ぼすわ」
ずいぶんと近い場所にあったジンの顔がさらに近づく。アイーシャは本能的に後ずさり、寝椅子に座り込んだ。
「それは違う。よろしいですか、姫君。あなたの中にも欲望は必ずあるはずだ。それを叶えられる好機が巡ってきたというのにあなたはそれを無碍にしてしまう気なのですか。金銀財宝、名誉に地位、美貌の伴侶。あなたが望むならば何だって用意できるというのに」
ふわりとアイーシャの周りを飛び回り、ジンは低く甘い声音で囁き続ける。
(そういえば、殿方がいつもよりも低く甘く囁きだしたら下心を疑えとシェーラが言っていたわ)
人間離れした美しさを惜しげもなく振りまいてジンはアイーシャを誘う。
(やはりお兄様の言うとおり、私の魂を求められるのかも)
アイーシャは指輪をぎゅっと右手で押さえた。
「そうして私の願いを叶えてしまったら、あなたは見返りに何を求めるの」
「それはまた無粋なことをお尋ねになる。見返り? それは願いによって変わります。望みが大きければ大きいほどに私もあなたに多くを望む」
ふわりとジンはアイーシャの隣に腰掛ける。
「しかし、姫君。何も不安に思うことなどないのです。私はあなたが持ちうるものしか求めません。あなたの無理はききますが、私はあなたに無理をいわない」
「……ジン。まずはあなたの名前が知りたいわ」
「ふむ。いいでしょう。私の名はアルジャジール」
ジンはアイーシャの髪を一房手に取ると恭しくそれに口づけた。
「さあ、姫君。見返りにあなたの名をお教え願いましょうか」
「アイーシャ」
「アイーシャ。麗しいあなたに相応しい名だ。美しい」
柔らかく優しく笑むジンには悪意など欠片も見当たらない。それどころか好ましくすらある。
アイーシャの頭の中では兄からの忠告とジンへ抱いた好意がせめぎあっていた。
「アイーシャ。あなたの望みを教えてほしい。あなたの喜ぶ顔が見たいのです」
「アルジャジール……」
「ほら、思い出してごらんなさい。あなたの中の欲望から目をそらしてはいけない」
いつの間にかジンの胸に顔を寄せ、アイーシャは目を閉じて彼の口上に聞き入っていた。
(欲望? 私は……)
──魔物というのは恐ろしい姿をしているか美しい姿をしているかのどちらかだ。人を誑かそうとする時は美しい姿をしているものだよ。だからね、アイーシャ。美しい魔物の言葉に惑わされてはいけない。彼らは総じて人を騙すのが上手いんだ。
(ああ、お兄様)
アイーシャの脳裏を兄の言葉がかすめる。
(お兄様はいつも私を守って下さる)
ふるふると首を振り、アイーシャは誘惑に負けてしまいそうな自分を叱咤した。
ふと気がついてみればいつの間に脱がされたのか、露わな乳房にジンの手が包み込むように触れていた。
「な、何をするのです!!」
慌ててジンの腕を掴むと、肩に口づけていたジンが緩慢な仕草で顔を上げた。
「む。これは驚いた。醒めるのが早いな」
「手を離しなさい。無礼者!」
ジンが手を離すとすぐにアイーシャは立ち上がって衣服の乱れを直す。
「やはりあなたは魔物なのですね。私としたことが騙されてしまうところでした。さあ、今すぐ私の前から消え失せなさい」
王女らしい風格と威厳を持ってアイーシャはジンに言い放つ。通常の人間ならばその気品に気圧されて逃げ出しただろうが、彼はあくまでも魔物。面倒くさそうに頭を掻くだけで寝椅子から立ち上がろうともしない。
「あーあ、これだから聡い姫君はいやなんだ。予備知識が多すぎる。素直に俺に従えば願いは叶い、快楽に溺れ、夢見心地で死ねたものを」
「なんですって……!」
「ふん、ああだこうだと喚いたところでお前の運命は指輪を手にした時に決まったんだ。お前のすべては俺のものだ。魂も血肉もなにもかも」
先ほどまでとは打って変わって尊大に言い放つジンを眺め、アイーシャは驚きに目を瞬かせる。
「その代わりに願いを叶えてやる。幸せの最中で死ねるなら文句はあるまい」
ぐいっとジンに腕を引かれ、アイーシャは寝椅子に逆戻りする。
「幸い、俺はいい女には優しい。お前は綺麗だ。特別可愛がってやる」
ジンの腕の中に捉えられ、アイーシャは呆然と眼前の美貌を見つめた。
「アルジャジール」
「なんだ?」
「私はあなたに望みを叶えていただく気はありません。他の方を探した方が早いでしょう」
「それは無理だ、アイーシャ。お前の左手に指輪がある限り。……ああ、先に言っておくがそれは外れんからな」
やわやわと腰を撫でるジンの手を感じ、アイーシャは身を捩る。
「離しなさい!」
「逃げても無駄だぞ。役得は思う存分味わうと決めてるんだ」
「役得? 何の話ですか!?」
言うが早いか軽々と担ぎ上げられ、アイーシャは寝台に放り出された。
「時間はたっぷりあるんだ。命をかけた願い事、ゆっくり考えるんだな」
寝台の上で身を起こし、アイーシャはにやりと笑むジンを見上げた。
「さあ、楽しもうじゃないか。麗しの姫君」
彼の言う役得が何を指すのか、気がついた時にはすでに逃げ場などなかった。
「先に聞いておくが……アイーシャ、お前は当然生娘なんだろうな」
「アルジャジールっ!!」
頬を叩こうと振りあげた手は絡めとられ、叫ぼうと開いた口は唇で塞がれ、アイーシャはジンと縺れあうようにして寝台へと沈んでいったのだった。
おわり
つ、続きを・・・
ここで寸止めなんて辛すぎる。
ジンの豹変振りが良かった。GJです。
>>91 わかるwなんか、いのまたむつみのイラストが思い浮かんだ
す、寸止め…!!
俺を萌え殺す気か職人様。
保守
前スレをきっちり埋めきった職人さんGJ。
ハッピーエンドと繊細な描写が良かったよ。
ジン×姫君(出逢い編)の続き書いてみようかと思う。二三日の内には投下できるかと。続き読みたいと言ってくれた方、お待ちあれ。
全裸でお待ちしてます。
前スレ埋めGJ!!
やっぱ騎士×姫はたまらん。
99 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/24(日) 20:06:53 ID:D92U5tNi
おおっ、こんな良スレがあるとは…
まだまだ2chも捨てたもんじゃないな。
というわけで、頭の中に2つ構想があるのだがどちらを投稿してほしい?
1.学園生徒会もの 女生徒会長×男生徒会員(平)
2.ファンタジー(?)もの 女召喚士×使い魔(人タイプ)
確認だけど↑のはこのスレの内容に当てはまるよな?
なんか主の方が姫ばっかなのでとりあえず確認。
返答があったら書き始めます。
単に女性上位だったらずばり女性上位スレがあるけど、あそこは今ひどいからな…
102 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/24(日) 20:43:10 ID:D92U5tNi
>>100 なるほどなるほど。
ではそれ以外にテーマをくだされば、構想がない分遅くなりますが
作ることもできるのでなにかありますでしょうか?
自分の書きたいものを書いておくれ。
書き手がノッてかいてるものは読んでて伝わってくるから。
出来上がったものがこのスレの趣旨に合ってたら投下してくれると嬉しい。
2は使い魔とその(女)主人いう設定だったら、全然ここでもおkだと思うんだが?
あと、あまりスレ違いでなければ、どちらを書くのかは自分次第かと。
105 :
100:2006/09/24(日) 21:56:32 ID:CcJnpAEF
>>102 超えてはいけない一線てのが
具体的には身分の差のことかと迷ってたんで
2について歯切れが悪くなりました。
微妙な書き方して申し訳ないっす。
単純に考えれば104さんの言う通りですな。
遠慮せずお好きなのを書いてくださいまし。
…と言いつつせっかくだからリクもコソッと置いていく。
10代の女王陛下(未婚)の幸せな和姦エロを読んでみたいです。
1の方にしても、学校終わればお嬢様と執事な関係にすれば全然問題なさげだな。
まぁ、多少スレ違いな作品でもうまくフォローしてくれる住人達が住む良スレだ。
出だしだけ投下してみるのもいいかもね。スレ違いになりそうなら誘導も出来るし。
107 :
102:2006/09/24(日) 22:24:36 ID:D92U5tNi
わかりました。
>>104−106を参考になにかランダムで書いてみます。
とりあえず全部書くつもりなので期待しててください。
…もしかして俺って欲張りすぎか?
むしろネ申。
全裸でお待ちしております。
>>105 そういうのが好きなら押しとどめろスレの205がオススメかも。
1レスしかないけど。
女王とか姫様ならお姫様でエロなスレもなかなか。
ここと向こうのどっちにも常駐してるんだけど
なかなか良SSあり。
それじゃ
>>102の投下の繋ぎに単発ネタどうぞ。繋ぎにならねぇよって突っ込みはなしで。エロもないよ。
優しい日差しが降り注ぐ午後のひと時。
「アナタが入れてくれるお茶は本当においしいわ」
「ありがとうございます」
あなたと過ごす、残り少ない至福の時。
「よくぞここまで、というくらい私の好みの味なんですもの」
「…お嬢様には幼少の頃からお仕えさせていただいておりますから」
「……そう、ね」
距離をとる。
立場など気にせず接していた幼き日々。そこには主従などなかった。
けれど、それは無かった事にしなければならない。
あなたを傷つけると分っていても。
「本当にいいお天気。気持ちがいいわ」
「ええ、本当に。この天気が明後日の婚儀まで続いてくれればいいのですが」
そう、あなたはもうすぐここを去る。望む望まざるに関わらず。
自分の見知らぬ誰かのもとへ行く。
僅かに落ちた沈黙。
ふと空を仰いでみる。
どこまでも澄んでいて、明後日までいい天気になりそうだと、そう思った。
しばらくそうしていると、あなたが呟いた。
「……ねぇ…ずっと、このまま………一緒にいられるといいわね」
「…そうですね」
あなたに触れる事はない。
けれど触れようとしてもあなたは拒まない、そう思う。
切ねぇぇ!駆け落ちする続きが欲しい!
このスレには神しかいないようだな
114 :
102改め107:2006/09/27(水) 01:52:33 ID:xSiGtK15
>>107です。
本来は26日中に投下するつもりでしたが、
リアルにやらなきゃいけない課題が出来たので
投下が少し遅れます。
申し訳ありませんm(_ _)m
マッタリかつ濃厚に待っております。
課題頑張ってー
では改めてジン×姫君の続きを待つ!!
117 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/29(金) 23:25:39 ID:ItvYYq59
満月の夜、数人のヴァンパイアハンターに追い詰められ不覚にも重傷をおってしまった男(結構高位の吸血鬼)は偶然通りかかった少女を襲い、一命を取り留めた。
唯一の誤算は、気の弱そうな、びくびくおどおどした少女が実はヴァンパイアハーフ(最下級のヴァンパイア)で、さらに何故か男より格が上だったこと。
彼の左手にしっかりと刻まれた”従属の印”これは、高位のヴァンパイアが血を与えることで下位のヴァンパイアを従わせるときにできる契約の印であり、下僕となったヴァンパイアは主人(マスター)の血を定期的に貰わなければ朽ちて死んでしまう。
純血種の男が、たかだかヴァンパイアハーフの使い魔になるなどプライドが許さない。
半ば八つ当たりのように少女にきつくあたる男。
自分は何一つ悪くないのに責任を感じているのか、主人である少女は彼に一切”命令”してこない。
ヴァンパイアの常識も一切知らない少女、その事実も彼を苛立たせる。
血を吸う度に陵辱しても、責任感からか抵抗するそぶりを見せない少女に苛立ちと共にある感情が芽生え始めるのだった。
以上、あらすじ。
一応ラストは考えてありますがネタバレ?なのでとりあえず書いてません;
ものすごくツボなスレにひかれてやってきました。
↑俺様な下僕と、心優しい控えめなご主人様なんてどうでしょうか?
誰か、奇特な方がいらっしゃれば書いていただけるとありがたいです。
俺の筆力では大まかなあらすじが限界なので・・・。
外見とか気にする方ですか?
しっかりイメージがあったりとか
いいシチュだね。あらすじだけでも萌える。
せっかくだから自分で書いてごらんよ。
そんなに文章力がないとも思えないし。
せっかく書いてもらっても自分のイメージから離れると楽しめないよ。
120 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/30(土) 22:56:08 ID:a6jX4gEz
>>118 外見、全く気にしない方です。
イメージもかなりあいまいなのですが、なんとなく設定は現代です。
ご主人様の両親については父がヴァンパイアの最高位にあたる人物で母がヴァンパイアハンターという感じで。
孤児院で育ってますが、そこのシスターが元ヴァンパイアハンターで実の母親だが娘には秘密にしており、本人は自分を孤児だと思ってます。
>>119 有難う御座います。萌えるといっていただけてとても嬉しいです。
実は、以前友人にも同じ事を言われ挑戦中なのですが一向に進まず…。
その間に、どんどん違うあらすじが浮かびすでに20近く;
現在執筆中の一話だけでいっぱいいっぱいなので、もし書いてくれる方がいらっしゃれば小躍りして喜びます。
もしイメージと違っても、自分で書くより読むほうが好きなので
せっかく助言していただいたのに本当にすいません。
こういう設定もいいね
個人的に大人しい主人ての萌える
とりあえず執筆中の投下してみないか
気になって仕方ないw
122 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/01(日) 01:23:14 ID:EiZj15Yy
>>121 すいません、誤解を招く書き方してました。
現在執筆中の物は、全年齢向けで高校生の少年が巫女さん3姉妹と出会いトラウマを克服し
自分の隠された秘密に迫るという話です。
全く違うジャンル(先生と生徒・義兄妹・魔王と勇者・幼馴染)等々で話の案をどんどん思いついてしまうので、読みたいのに書けないという混迷状態に;
気になってくださってるのに申し訳ないです。
実は、主従ネタは姫と騎士でも一つあったりします;
>>122 ネタが幾つも浮かんでくるのは羨ましいが
まず1つのSSを仕上げるよう頑張れ
あれもこれもと書いてたら、結局どれも完成しないままだぞ
125 :
117:2006/10/01(日) 21:36:17 ID:pO8r0Pog
>>123 ありがとうございます。では、今書いてるのを頑張って頑張って完成させます。
やはり他力本願はよくないですね。勉強になりました。
まぁネタがあっても一人で延々と披露するのはヤメレ
ネ申のご投下まで、暇つぶしとして書いてみたんだが……
エロがNEEEEEE!!
普通にいい話で終わっちまった……orz
>>127 まとめサイト見ればわかるが、過去作にもエロなし多いよ
気にせず投下してくれ
130 :
127:2006/10/02(月) 18:59:37 ID:zDCTYMpD
んじゃ、お言葉に甘えて……暇潰し程度に、どうぞ。
131 :
127:2006/10/02(月) 19:00:25 ID:zDCTYMpD
「……んぅ」
小さな吐息と共に、少女が起き上がる。
寝乱れた襦袢から細い鎖骨が覗いている。
黒い髪が一筋、唇に張り付いていた。
煩わしそうにそれを払いのけ、少女は差し出されたコップを受け取った。
コクッ、と小さい音がして、喉が妖しく微動する。
空になったコップを、私は静かに受け取った。
神聖な儀式のように、厳かに、澱みなく。
「直樹、おはよう」
鳥の囀りのような、ささやかで柔らかい声が少女の唇からこぼれた。
静かな空気に、その声は完璧なほど溶け込んでいた。
だから、最初はその声が私に向けられたものだとは気がつかなかった。
「お は よ う」
「……おはようございます、結花様」
私の目を見て、少女が改めて朝の挨拶をする。
一文字ずつ、区切るように。
私はそれでようやく反応できた。いつものように朝の挨拶を交わす。
「いよいよ、今日ね」
くぅっ、と伸びをしながら、少女が言った。
長い髪が波打って、止まった。
「はい、いよいよ今日ですね」
「あら? 随分と不満そうじゃない」
いえ、と曖昧な返答をしながら、私は困惑していた。
自分は平静を装っているつもりだったが、少女には通じなかったらしい。
私の戸惑いが面白かったのか、彼女がクスクスと上品な笑い声を漏らした。
「私より直樹が緊張してるみたい。大丈夫よ。上手くやるわ。
オンカミ様にもきっと気に入られる。大丈夫よ、大丈夫」
後半は独白のように、自分に言い聞かせていた。
必死に平静さを装ってはいるが、やはり彼女も不安なのだろう。
「朝食の準備が出来ています。今朝は旦那様もご一緒に召し上がるそうです」
告げた途端、少女の顔があからさまに曇る。
「父は……嫌い……」
少女の呟きを聞かなかったふりをして、私は部屋を出た。
入れ替わりに着物を抱えた侍女が入っていった。
132 :
127:2006/10/02(月) 19:01:06 ID:zDCTYMpD
年季の入った柱に身を預け、息を吐く。
私の役目はここまでだ。
少女の世話係として、この神谷の家に来てから十年。
少女は私の手を離れて、神の嫁となる。
神谷の家に代々伝えられてきた、悪しき因習。
数えで十六歳になる神谷の長女が、捧げられる儀式。
どんな儀式かは知らないが、神に気に入られず、廃人になった者も少なくないと聞く。
私は知っている。少女は知らない。
知っていたにも拘らず、私は言えなかった。いや、言わなかった。
分家の小倅が口を挟める問題ではない。
儀式に異を唱えた瞬間、災いが降りかかる。
それは神の力じゃない。人の力だ。
狭い世界の中で行われる排斥。
それは時として、神の怒りより恐ろしい。
私は知っている。
私と同じように儀式に疑問を抱き、抵抗し、葬られてきた人々を。
だから、私は何も言わなかった。
我が身可愛さで少女を神に捧げる。
結局は私も、私が蛇蝎の如く嫌ってきた神谷の人間と同じだ。
ガンッ!! と柱に頭を打ち付ける。
噛み締めた唇から、鉄の味がじんわりと広がった。
その痛みは、私の後悔を消してはくれなかった。
133 :
127:2006/10/02(月) 19:03:26 ID:zDCTYMpD
儀式は夜に行われる。
彼女は昼から物忌みの儀に入り、男は傍に近付くことが出来ない。
儀式が始まるまでの十数時間を、彼女は一人で過ごす。
そして、儀式が終わった次の日から、彼女は神の嫁として特別な存在になる。
近づける男は本家の長男だけ。
身寄りの無い私は、何かしらの役割をこの家で与えられ、死ぬまでここで過ごす。
彼女には近付くことも出来ないまま。
朝に交わしたあの短い会話が、十年を共に過ごした彼女との最後の会話だった。
そう思うとやりきれない。
こうして後悔と懺悔だけを繰り返す。時間は刻々と過ぎていく。
腰を下ろしていた岩から立ち上がり、歩き出した。
私は――
【逃げ出す】 ←
【逃げ出さない】
134 :
127:2006/10/02(月) 19:05:43 ID:zDCTYMpD
【逃げ出す】
神谷の家に来た時に宛がわれた自分の部屋に戻る。
持って行くべきものはすでに入っている。
大き目のボストンバック一つ。
それが私の神谷の家での十年全てだ。
それを抱え上げ、私は神谷の家を出た。
儀式? 神谷? 災い?
そんなもの、もう私には関係ない。
遠いところに行こう。
いつか、今日の事を笑い話に出来るように。
車の後部座席に、ボストンバックを置き、走り出す。
遠出したい、と言った彼女の我儘を叶える為に、免許を取ったんだっけな。
彼女との思い出が甦り、知らず知らずに微笑んでいた。
車は神谷の家の物だ。
退職金代わりに、少しの間拝借しよう。
私は、逃げ出す。
身寄りが無いというのは、こういう時には便利だ。
ただ彼女のことだけが気がかりだった。
あんな耐え難い環境に押し込められて……。
車を道の脇に寄せて、停めた。
後部座席のドアを開け、ボストンバックに近付く。
ゆっくりとバックのファスナーを下ろした。
私の神谷の家での十年。
そこで得た全てが入っている。
「暑い! 狭い! ……直樹ぃ!」
少女が飛び出してくる。私の首に強く腕を絡める。
私は黙って少女を抱き返した。
儀式? 神谷? 災い?
そんなもの、もう私達には関係ない。
遠いところに行こう。
いつか、二人で、今日の事を笑い話に出来るように。
私達は、逃げ出す。
135 :
127:2006/10/02(月) 19:09:49 ID:zDCTYMpD
以上、「逃亡end」でした。
AA略
あ……ありのまま 今 起こったことを話すぜ!
『いい話で終わるって聞いてたからドキドキしてたら
いつの間にかバッドエンドに直行していた』
な……何を言ってるのかわからねーと思うが
おれも 何をされたのか わからなかった……以下略
これはバッドエンドじゃないだろ
少女も心の底で望んでいた事だろうし
二人で駆け落ちできるなら
充分ハッピーエンドではなかろうか
>>131-135 GJ!
136は女の子がばらばらにされてボストンバッグに詰められてて
「直樹ィ」てのは直樹の妄想だったというオチだったEND
て風に解釈したのかと思った。え、二人は末永く幸せに暮らします的な
普通のハッピーエンドなんだよね。
儀式はきっとエロいものだろうに3000点。
神に陵辱されちゃう少女とか見てみたいがそりゃさすがにスレ違いか。
なかなかGJでした。乙〜。
>>117のネタが超好み(禿萌えたよ)だったもんでネタのみ頂戴して
てじなーにゃてじなーにゃ! いまだエロなし。微妙にまだ主従でもなし。
次で主従契約&エロっぽい雰囲気だす(努力をする)んで許してくだちい。
*******
夜の静寂(しじま)を破る耳障りな靴音が辺りに響いていた。
満月に照らされて浮かぶのはいくつもの影、影、影―――
闇に溶ける紺色の法衣を身につけた男達が、銀の鎖をはめた犬を連れ、一人の男を追っていた。
身につけている法衣は銀糸で十字が縫いこまれた聖教会のもの。
彼らは、教会が独立組織として抱える魔物祓い(エクソシスト)であった。
今彼らが追っているのは、一人の男だ。だが、それはただの男ではない。
人間ですらない。男は、魔物祓い達が滅ぼさんとする、“闇に生きるもの”であった。
人の血を吸い、命を繋ぐ吸血鬼。彼はその一族であり、中でも幾人もの魔物祓いたちを
返り討ちにし、戯れに下僕と変えた強大な力を持つと噂される吸血鬼、
エドガルド・ブラドゥと呼ばれる男であった。
久方ぶりの大物の“祓い”に魔物祓い達は、緊張気味に自身の法力を銀の楔に封じ込めていた。
特別な訓練を受けた犬達も連れ、用意は万端。あと少しでエドガルドを殲滅する所まで迫っていた。
既にエドガルドの身につけた黒の上着は所々が破れており、彼の顔も、むき出しになった腕も
傷だらけになっていた。
ウォォ、と犬達がエドガルドに向かって吼える。犬の吠え声には魔力が宿っている。
特にこの犬達は聖教会が魔物殲滅のために育てた犬達だ。その力も大きい。
吠え声にエドガルドさえも不快気に眉をひそめた。すると彼の動きが数瞬ばかり遅くなる。
力の弱り始めた彼には些細な妨害も感にさわるほどの効果をあらわしてしまうのだ。
「忌まわしき吸血鬼! もはや貴様に逃げる場所は無い。
おとなしく我らが神の裁きを受け、塵に還るが良い!」
魔物祓いの頭首らしき者がそう、声を張り上げた。
その声を皮切りに、次々と法力のこめられた銀の楔がエドガルドへと投げ放たれる。
一つ、二つ。空気を切り裂く音を立てながら。
「甘いわ!」
エドガルドが一喝すると、突如砂の混じった風がごぉと魔物払いたちの周りに吹き荒れた。
慌てたように身を引く紺服の男達。風に追い返されて放たれた楔の多くが、エドガルドの傍まで
辿りつかずに地に落ちてしまう。だが、それでも防ぎきれなかった楔のいくつかが
エドガルドの腕に腿に腹にと突き刺さった。
「…………ッ!」
鮮血が満月に照らされ光を返す。エドガルドは小さく舌打ちをした。
今宵は月が強すぎる。魔物祓い達も法力を高めるのに月の魔力を借りているのであろう。
だがそれは逆手にも取れるはずだ。エドガルドは月を背にして振り向くと、魔物祓い達を
目をかっと見開いて見つめた。その瞳が爛々と紅く光っている。
空恐ろしいまでに輝く瞳の光が魔物祓い達を捉えた瞬間。
「「ぐぁぁっ!」」
幾人かの魔物払いたちが頭を抱えながら苦痛の叫びを上げた。
両の目から血のように赤い涙が流れ落ちる。彼らはエドガルドの『邪視』に射抜かれたのだ。
その様子を見て、エドガルドは鼻で笑った。
この程度で壊れるようなやわな生き物が自分を追い詰めるなど、馬鹿馬鹿しいと。
だが、突如胸の痛みを感じ、エドガルドは中空で身を折った。
激しい咳を繰り返し、吐き出たものにはだいぶ血が混じっている。
既に彼は満身創痍なのだ。人間相手に、と彼の矜持は絶対にその事実を認めはしないけれど。
(……思っていたよりも傷が深い。こざかしい人間どもが……。
だが、俺はお前達に滅ぼされなどしない!)
エドガルドは小さく舌打ちをすると、痛む体を無視しながら風を蹴り、夜闇の中を更に大きく跳躍した。
そして苦痛に呻く者、エドガルドを睨みつける者たちを傲然と見返しながら言い放った。
「お前達、このブラドゥを倒したくば風を操り闇に溶ける術を覚えることだな!」
風を絡ませ、息を吐き、もはやぎりぎりの力を振り絞りながらエドガルドは闇祓い達を振り切った。
そして苦痛のためか屈辱のためか、唇をかみ締めながら闇の中をいくあてもなく跳躍していった。
*******
ユーリエは夜道を、辺りを気にしながら歩いていた。
彼女は隣村の知り合いに頼まれ、その村で出産の手伝いをしていたのだが、長丁場のために
すっかり遅くなり、辺りが既に真っ暗になってからの帰宅になってしまったのだった。
「やっぱり……小母さんが言ってくださった通りあちらのお家に泊まっていった方が良かったかしら」
不安げに瞳をめぐらしながら独り言のように呟く。
そう時間はかからない距離とはいえ、女一人で夜道を歩くのは不安であった。
けれどユーリエは他人に心配をされる事を極度に避けていた。
もの柔らかな物腰と、人当たりの良い性格の割りに、彼女はどこか人との関わりを避けるようなきらいがあった。
それはもしかすると『自分は孤児である』、という彼女の意識がそうさせているのかもしれなかった。
ユーリエはしばらく歩みを進めることをためらっていたようであったが、気を取り直したように
小声で知っている限りの唄を歌いながら不安を紛らわせ、家路を急ぎ始めていた。
満月のためか道は比較的明るい。彼女の、銀に近いほどの髪も月光を弾いて艶やかに輝いていた。
月を見上げながらユーリエはふと思った。
(今日が満月でよかった。真っ暗だったらとてもじゃないけど家に帰れない。それに……)
それに、ユーリエは月が好きだった。
美しく滑らかに輝く白の光を見ていると嫌なことも不安なことも全て忘れてしまう。
胸がきゅんとなるような、郷愁にも似た感情が浮かぶのだ。
そして……、上手く例える事はできないけれど体の奥から不思議な力が湧いてくるような
そんな気さえするのだ。その力を勇気と呼ぶのか、希望と呼ぶのかは分からないけれど。
唄を口ずさみながら歩くユーリエの歩みがふと止まった。何か、黒い影を目の端に捉えたのだ。
(何……?)
途端、胸が警戒をあらわす早鐘を打ち始めた。恐怖がじわじわと背骨を這い上がり身をすくませていく。
ぎゅっと一度目をつむってしまったユーリエだったが、必死に自分を鼓舞しながらそっと
目を開け、恐怖の源を見据えようとした。
「……な、何なの……?」
ユーリエは驚愕に目を見開いた。満月に黒い影が映りこんでいる。
それは人の形を模していた。そして段々と大きくなっていく。
形がはっきりとしていく。男だ。紅い目をした男が月を背に、空を舞っていたのだ。
男は黒い服を纏っている。その服は所々破れ、裂けてしまっているが不思議とその男に
野蛮な感じはない。まだ若い男のようだが、どこか老成したような雰囲気も持っていた。
そして男はユーリエの目の前でゆっくりと地上へと足を下ろしていった。
驚きと恐怖でユーリエは、身動きできないほどに固まってしまっていた。男は、
そんなユーリエをためつ眇めつ眺めると、唇の端をあげて笑って言った。
「……若い女か。今の獲物には丁度良いだろう」
*******
(続く)
素晴らしい。文章化されるとやはりいいなあ。
エロエロ吸血編を楽しみにしてます。
>142
感想ありがd。
吸血編投下です。エロエロじゃなくてごめんなさい。
次回でおしまいのつもりです。
きちんと主従にして終わらせるので「おまいこれスレ違い!」の
ツッコミはお手柔らかに〜〜。
144 :
吸血編:2006/10/04(水) 00:48:52 ID:0WSzUgB2
エドガルドがゆっくりとユーリエの元へと近づいてくる。
月の光がかえって闇の色を深くしながら、ユーリエの目の前へと迫っていた。
華奢な体を恐怖に震わせながら、ユーリエは必死に叫んだ。
「いやっ、近寄らないで!」
そして魔物相手にさして意味はないであろうに、少しでもエドガルドから
距離をとろうとじりじりと後ずさっていった。
エドガルドは目を細めると、その奥に愉快そうな色を溶かし込んで
ユーリエの様子を見つめていた。
彼女の戸惑いと、恐れが甘く重い粒子となってユーリエの周りを取り巻いている。
ふ、と息を吐いて顔を笑みの形に歪めると、エドガルドはユーリエの恐怖さえも『喰った』。
「……生きながら死に通ずる甘美な苦痛を与えてやろう」
そして低く喉の奥で笑うと、エドガルドはユーリエに紅い瞳を向けてひたと見据えた。
その瞳の光を受けて、ユーリアは一歩も動けなくなっていた。
恐怖で身がすくんでしまっている、という事もあるが、エドガルドの瞳の魔力、
人あらざる魔性の力にユーリアは捕らえられてしまったのだ。
「いや……嫌……」
夜の眷族を前に人の子はあまりに無力。たわむれに鼠を玩ぶ猫のように、純粋で残酷な心持ちを
持ってエドガルドはユーリアの傍へと一歩一歩近づいてくる。
その途中、ふとエドガルドは頬の辺りにちりちりしたものを感じ片眉をあげた。
何かと思えば目の前のユーリアが動けないながらも必死の様子で、
エドガルドを睨みつけ、小さく主への祈りを呟いていたのだ。
それは聖なる文句。魔物を祓い、場を清める祈りの言葉だ。
不快な気持ちでエドガルドは眉の間にしわを寄せた。
「……小賢しい真似をするな小娘。矮小な魔物ならいざしらず、
俺をそのくらいの聖句で追い払えるとでも?」
「きゃ……」
あごを掴まれ上向かされて、ユーリアは悲鳴をあげた。
襟元からしなやかに伸びる喉元が月明りに白く浮かび上がる。
その喉から、こくんと嚥下する音が聞こえた。
「酷くされたくないのならばおとなしく従え」
ユーリエは逃げようと身じろぎをするのだが、魔力で拘束された身ではそれも叶わない。
エドガルドがゆっくりとユーリエの震える首筋を下から上へと撫でていく。
その奥の、温かい血の流れが指先で感じられるようであった。
145 :
吸血編:2006/10/04(水) 00:50:15 ID:0WSzUgB2
「あ……っ」
途端、甘い感覚がユーリエの喉元から、全身へと痺れのように伝わった。
吸血する相手を魅了する、吸血鬼の能力の一つだ。
エドガルドの指がもたらす不思議な甘美さが喉元から、触れられた唇から、
ゆっくりと全身へ浸透していく。
どうしようもなく恐ろしいのに悲鳴すらあげられない。
ユーリエの唇からかすかに息が漏れた。
エドガルドはそれを見てにぃっと笑ったかのように見えた。
だが、それは違う。彼の口の両端から銀色の牙がむき出される。
牙は一瞬光を弾くとユーリエの喉元へと深く喰らいついていった。
「―――っ!」
声のない悲鳴が夜闇にこだまし、誰聞くものも無くそのまま闇に消えていった。
紅い紅い血がエドガルドの口を染めていく。それを器用に舐めとりながらエドガルドは
更に深くユーリエの喉元に口付けた。どくんどくんとユーリエの鼓動が高鳴るたびに
エドガルドの力は高まっていく。
不思議なほどに魔力が高まり、それに乗じてあらゆる傷がふさがっていく。
(――良い獲物をとらえた)
エドガルドは強くそう感じていた。今ひと時、多少の力を回復する場つなぎのつもりで
彼女を獲物にする事を決めたのだが、思っていたよりもずっと力が回復していく。
生娘か。聖職者か。あるいはそのどちらもか。
「あ……、ああ……」
その当のユーリアは空気を求め、喘ぐように声をあげていた。
エドガルドが邪視を少しばかり解いてやると、膝をがくがくと震わせながら
その場に崩れ落ちそうになった。そんな少女を抱きすくめると、エドガルドは
優しく口付けるように深く牙を突きたて血を啜る。
「んっ、んん……」
拒絶するために伸ばされた手は、ふとエドガルドにすがり付くように肩に置かれた。
血を吸われる瞬間の甘美な痺れはユーリエの全身を支配していた。
頬を紅潮させ、浅く息を繋いでいたが、哀れな少女は遂に吸血鬼の腕の中で意識を失った。
彼女の喉元には赤い痕が二つ残っている。
それは、痛々しいまでにくっきりと浮かび上がっていた。
*******
(続く)
デビルチョップは破壊力
147 :
117:2006/10/04(水) 23:31:23 ID:lJ/S9cMb
148 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/05(木) 08:54:23 ID:FtxAVKdx
149 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/05(木) 09:47:34 ID:/62VhL1L
>144-145
乙〜。なかなかよかですたい。
良いけど主従ぽくはねぇなと思ってたら次で主従になるのね。
楽しみに松!
保守
保守がてら最後まで投下。これでおしまいです。
めちゃめちゃ楽しかったです。117さん素敵なネタをありがとう(*´∀`*)
>147(117)
いやいや、自分が勝手に書いたものなので117さんの考えてるイメージとは
かなり違うとは思いますが^^; 許してくれてありがとーう。
*******
腕の中でくたりとなったユーリエをみやり、エドガルドは考えた。
(この小娘……このまま死ぬに任せるか。
それとも我が下僕(しもべ)として闇に甦らすか……)
先ほどまで自分を追い詰めていた魔物祓い達の姿を思い出す。
皆一様に生真面目そうな男たちばかりであった。
哀れにも闇の下僕にされた、元は人間であったはずの年若い娘。
そういった娘を相手にするとなれば彼らもさぞや狼狽し、娘を滅する時もさぞ迷うであろう。
ふと、唇をゆがめた。それはなかなか興を誘う思いつきであった。
エドガルドはユーリエを足元へと横たえると、少しばかり自分の中の魔力を高めた。
「――闇に沈みし人の子よ、我が下僕として蘇えらん……」
さっと左手を上げ、眼下に横たわる娘に闇の魔力を与えようとしたその時、
エドガルドはある事に気づき、雷を受けたような衝撃を覚えた。
左手の甲の中央に赤黒い染みが浮かんでいる。
染みはだんだんと大きくなり甲を全て覆うほどの円を描いた。
円の中央に複雑な文様が浮かび、それが沈み、あらたな模様が浮かび上がっていく。
「な……っ、そんな馬鹿な……!」
エドガルドの叫びもむなしく、円の周囲に次々と血文字のような赤い文字が刻まれていく。
その文字の意味するところは――
『隷属』 『忠誠』 『契約』
「ありえない!」
更に言葉をつなげ、呪詛を吐こうとしたエドガルドであったが、その言葉は最後まで放たれる事はなかった。
彼は額に、そして両の手足に突然杭を打ち込まれたような痛みを覚え、声を殺して呻いたからであった。
「…………ッ!!」
しゅうしゅうと焼けるような音をたてながらエドガルドの額と両手足に印が刻まれていった。
それらは一旦黒く沈むと、うっすらと消えていき遂には見えなくなる。
ただ、彼の左手の甲にだけ複雑な文様と文字が書かれた円状の印が赤黒く残っていた。
その円状の印こそは闇の下僕に刻まれる“従属の印”。
主の許し無き限り、塵に還るその時まで彼を永遠に縛る枷であった。
(何故だ何故だ何故だ……ッ!)
エドガルドは苦痛のために膝を折り、必死に思考をめぐらしていた。
闇の下僕というのは、相手が魔物であれ、人間であれ折伏させた相手を
その魔力なり霊力なりで魂を縛りつける事によって生まれる。
――何故自分はこの娘の血を吸っただけで印を科せられた?
その答えは一つ。ある種の魔物は自分の魔力を相手に与えることで魂を隷属させる。
下僕となる者は付き従う代わりに主の魔力を受け、力を増していく。
その代わり主に絶対服従を誓い、その力を受けることができなくなれば塵に還ることとなる。
大抵の場合、戦いにより勝利した者が、敗れた相手を塵に還す事が惜しい場合に行われる契約だ。
負けた者も塵に還るよりは、とその誓いを受け入れる。
そして吸血鬼の魔力の拠り所は、その血液。血を与えることで主従の誓いを結ぶのだ。
つまりエドガルドが契約に縛られたという事は目の前の少女が吸血鬼である事に他ならない。
しかも、彼よりも高い魔力を持った。
(まさか……、この娘からは確かに人のにおいがした……)
人でありながら、吸血鬼の魔力を持つ。その意味は。
(この娘、もしや“混じりもの”か――!?)
そう気がついた瞬間、エドガルドはあまりの屈辱に顔を紅潮させ額に筋を立てた。
自分は永き時に渡り、血と名を継いできた吸血鬼の名門、ブラドゥ家の純血の後継だ。
一族の者が衰退し、離散しようとも、自分だけはとその名をずっと守ってきた。
夜を駆け、人の血を啜り、天敵たる魔物祓い達を多く屠ってきたのだ。
その自分がまさか、下種たる人間の血が混じった混血の吸血鬼に従属するとは!!
激しい怒りが身のうちを駆け巡る。エドガルドは目の前の少女が憎くて憎くて仕方がなかった。
(真に契約がなされる前に、この娘を殺してしまえばいい)
ゆらり、とエドガルドは立ち上がり地面に横たわるユーリエを冷たく見下ろした。
その目は憎悪と怒りで赤く輝いている。
エドガルドは金属的な音を立てながら自らの爪を伸ばした。
細剣ほどの長さになった爪をしゅっと振り下ろすと、気を失った少女の喉元へと突きつける。
「く…………っ」
エドガルドは小さく呻いた。もはや目の前の少女は彼の魂を縛る主人なのだ。
主を殺すことはおろか、傷つけることすらできはしない。
魂に刻まれた枷と、自らの怒りの間で揺れながら苦しみ、エドガルドは脂汗を浮かべた。
しばらくの間そのまま留まると、エドガルドは諦めたように爪を納めると少女の傍に腰を下ろした。
*******
「う……」
ゆるゆると頭を振りながらユーリエはゆっくりと目を覚ました。
そして自分はどうしたのかと、先ほどまでのことは夢だったのかと辺りを見渡し、そして凍りついた。
すぐ傍に彼女の血を吸った魔物が座っているのを見たからだ。
「な……あなた……」
新たな恐怖に囚われながらそう呟くと、彼女の傍に座った男は軽く舌打ちをした。
「目が覚めたか」
つっけんどんに言われたその言葉には嫌悪感がにじみ出ている。
ユーリエは自分に向けられる負の感情に当惑し、怖れていた。
「何なんですか……いったい」
言葉に嫌悪感はあるものの、男はユーリエに何かする気はなさそうだった。
それが余計にユーリエを当惑させる。
気を失う前に自分を襲った魔物は本当に彼だったのか? と。
だが男がしばし唇をかみ締めた後、自分の前に片膝をつき、そのまま頭をたれたのを
見ると当惑は吹き飛び、変わりに今度は驚愕がやって来た。
「ちょちょちょ、ちょっと何してるんですか!?」
「……我が主よ(マイマスター)」
苦いものでも飲み込むかのように一言、呼ばわれたその言葉はどこか重く、
ユーリエは身体の奥を深くつかれたような不思議な心持ちがした。
「我が名はエドガルド・ブラドゥ」
エドガルドの名乗りにようやくはっとユーリエは我に返った。
「エドガルド……さん?」
「“さん”はいらん。俺はお前の下僕だ。心ならずもそう誓いが我が身に刻まれている」
その言葉はユーリエの理解を超えており、彼女はどう反応すべきか迷っていた。
だから彼女はぽつりと自分の疑問を口にした。
「あなたは何なんですか?」
「俺は吸血鬼だ。……吸血鬼の血はお前にも流れているだろう。
お前の中の血は、自分の同族くらい見分けられないのか」
あきれたように言われたその答えにユーリエは怪訝そうに眉を寄せた。
「私は、吸血鬼なんかじゃありません……」
「ならばどうして俺はお前に囚われている!?」
かっとなったエドガルドにそう怒鳴られて、ユーリエは思わずびくりと身を震わせた。
「だ、だって私、血なんか吸ったこともないし……わたし、そんな……」
おろおろと泣き出しそうなユーリエの様子をエドガルドは苛々と見ていたが
ふんと鼻をならすと、手をひらひらとさせて言葉を打ち切らせた。
「もういい。契約は最後までなさねば俺自身もお前から魔力を上手く供受できない。
さっさとやってしまおう」
「契約……?」
エドガルドはユーリエの前で更に深く頭を下げ、地に額をつけるほどに叩頭すると
はっきりとした口調で誓いの言葉を口にした。
「我は御身の影となり、塵と還るその時までとこしえの忠誠を誓約申し上げる。
……マスター、許諾を。」
だが、ユーリエは困ったような表情をして口元に手を当てると
途方にくれたような風情を見せていた。
「……俺に触れて一言『許す』と言え」
不機嫌そうにそう言われ、ユーリエはためらいながら目の前の男の肩に触れ
自身なさげな小さな声で呟いた。
「許す……」
瞬間触れたその場所から身を灼くような痛みが走り、ユーリエの髪が
風もないのにふわりと浮かび上がった。
「きゃ……っ」
エドガルドは痛みをこらえるためか瞳をつぶり眉根を深く寄せている。
どちらの魔力か、魔力の層が可視できるほどに浮かび上がり、
ユーリエとエドガルドを包むと蒼く輝かせた。
しばらくしてその光がおさまると跪いていたエドガルドが顔を上げ、主の顔を見た。
そしてぶっきらぼうに伝える。
「契約はなされた。必要な時には俺の名を呼べ。どこにいてもお前の命には従う」
「は、はい……」
どちらが主か分からぬほどに、ユーリエは控えめな返事を返した。
それが気に入らないのかエドガルドは剣呑な目でユーリエを睨みつけた。
紺色の夜空に浮かぶ満月が、一対の主従を照らしていた。
彼らの主従としての物語はここから始まる。
*******
(終)
契約の辺りに色々なものの影響受けまくってるのは生暖かく見たって下さい。
やー、ネタはすげー萌えるのに上手く表現できなくてすんまそんでした。
SS書くのって難しいね。
そいでは名無しに戻って神投下楽しみにしてます。
158 :
117:2006/10/11(水) 21:53:57 ID:gWfYt0TR
萌え!?萌えですよ!!
最高に良かったです!!!!!
GJ!
絵が浮かぶいい文章でした
ちょ、つづきをっ
エドガルドの鬼畜っぷりを!
ユーリエタンの啼きっぷりを!
おながいしますマスター!!
これは良い十二国記ですね
超GJ!!!
これで終わるのはもったいなさすぎる!
自分も心より続きをおねがいしますマスター!!
>>161 お前は俺か。
だがあんまり無粋なことは言わないでおこうぜブラザー。
164 :
157:2006/10/12(木) 23:31:01 ID:vv0xEDUl
名無しに戻るといった舌の根の乾かぬうちに書き込みスマソ。
感想もらえて嬉しい。ありがとう。
>161,163
やはりお気づきになられましたか、主上。
天命以外には「これは微妙なFateですね」もやや混じっております。
ちょっと他に書いてみたい主従話があるのでまとまったらまた来ます。
方向的には誘惑小悪魔お嬢様系で。また吸血鬼もいます。
(・∀・;)
(((・∀・;)))
(゜∀゜)現人神ご降臨ー!!!!
GJ!!!GJ!!!!!
保守の必要ないかもしんないけどとりあえずほす。
主従良いよね主従。このスレわりと色んなパターンでてるよね。
ツンデレお嬢と執事でたでしょ、若奥様と執事でたでしょ、
姫騎士に、高貴お姫と鬼畜魔物に、大人しい娘と鬼畜魔物……。(皆乙&GJ!)
まだ出てないパターンてあったっけ?
とりあえずジン&姫君の続きを…!!
個人的には旦那様と召使いキボンヌ。
旦那様の方は愛のない結婚で、ふとしたきっかけから
健気で心優しい召使いに惹かれていく様な感じの。
その場合、奥方様とはセクースレスでも
変態セクースでもおk(;´Д`)ハァハァ
禿胴でジン×姫君の続きを待っているであります。
>>167 それはメイドさんスレの方に行ったほうがいいんじゃね?
ここは女が主で男が従なスレだし。
>>168 俺ガイル
とりあえず全裸で正座してますね
坊ちゃま×女家庭教師(ガヴァネス)みたいなのが読みたい。
もしくは若君×乳兄弟。
こう、主従っていうか、雇用者と被雇用者なんだけど、メイドとか使用人というとちょっと違うみたいな。
>>171 んーでもここはあくまで女が主の主従関係だからちと厳しいかもよ。
お嬢様とチューター/姫君と乳兄弟の側近
ならバリバリおkだろうけど。
そういや男が主の主従関係てのはメイドスレしかないのかな。
定期的に話題がでる気がするんだけどその誘導先がいつもメイドスレだから。
めちゃくちゃ亀レスだけど、57さんの
アラビアンナイトなお話は、
「はるか遠き国の物語」から来てるよね。
昔すごーく好きだったよ…
シェーラさん(当然さん付けw)とシャー・ザマーンの
カップルの話を書きたくなってしまった…
>>173 おまいさんがそう思うのは自由なんだけどジン×姫君は
「はるか遠き〜」とはちと違うような希ガス。
どちらも創作の根幹にアラビアンナイトがあるってだけで。
や〜それにしてもシェーラさん懐かしいな。姫さんとのコンビがすごく好きだった。
おてんば姫とそれをいさめる(振り回される)美人侍女。
お兄様とのカプはすげー好みなんだけどそれだと男が主で、女が(以下略)
…もう【男が主で女が従の主従関係スレ】を作ったほうが
いいんじゃねーのという気がしてきたよ。
それでは色んなSSの続きと新作SSを全裸でワクテカ待ち。
なんか問題があったり、拒否反応がでるって人がいないんなら、
このスレで男が主で女が従のSSも受け入れちゃっても
いいんじゃないかなあ、と思っていたりする。
自分が女主男従とか男主女従に拘らない人間だから
そう思ってしまうだけなのかなあとも思うけども。
でも、設定が限られているからこそ
ここがマターリしているのかも‥と思ったりする。
逆シチュも可なら、祭りのように賑わうのかもしれないが‥。
男が主なら、スレの伸びようは格段に違うだろう、と思う。
絶対嫌、というわけではないが。
女×男だからこそ、萌えるオレみたいのもいる。
こう、ちっさい女の子が、身長も歳も倍近い男に命令してる姿がたまらんのよな。
>>176 >男が主なら、スレの伸びようは格段に違うだろう、と思う。
っても現状で単独スレはないし、メイドスレも結構過疎ってるよ
もし男主・女従スレがあったとしても、エロ重視な暴君男主人の徹底的陵辱パターンと、
少女漫画的な身分違いの王子様とラブラブパターンと、
両極端に別れてそうだから、一致団結してスレを盛り上がげる展開にはならないと思うな
だからこそ、このスレでの受け入れはちょっと嫌だなーと思うわけだが…
漏れもこのスレではやだなー。
男主な話も好きだよ。
例が微妙に古くて恐縮だが
ヤン提督とフレデリカみたいな関係性の男主・女従の話とか書いてみたいし見てみたいし。
ただこのスレは女が主だからこそ萌える話が多くて
それが好きな自分としては変えて欲しくない。
主従スレを立ち上げた者だけど、
女主と男従者(女従者も可)限定のつもりで立ち上げたスレなので
申し訳ないが男主×女従者は新たにスレを立てるかなにかして対応して欲しい
175だけど、スレ立て主さん含めて、女主男従のみがいいーって人が
多数みたいなので、このままでいく方がよさそうと思った。
色々答えてくれた人たちありがとう。なんか紛糾させてしまってすまん。
待ってくれてた方の期待に添えるかわからんが
>>86の続き投下します。
二三日なんていいながら一月近く経ってしまったorz
携帯からの投下なんでメール画面に打ち込んでたんだが出来上がりかけてたのを間違えて削除したせいでえらい時間がかかってしまったんだ。すまん。
触れるだけの口づけすら経験のないアイーシャにとってジンの口づけは未知のものでしかなかった。
強引に歯を割られ、舌が侵入する。ぬるりとした他人の舌の感触に嫌悪感で総毛立つ。せめてもの抵抗にとジンの舌を押し返せば皮肉にもそれは口づけを深めていくばかり。
唇が離れ、アイーシャは濡れた唇をごしごしと手の甲で拭う。噛みついてやればよかったとにやつくジンを見上げながらアイーシャは悔いた。
「やはり高貴な姫君ともなると違うな。これだけ美しく魅惑的でありながら手つかずとは」
いそいそとジンはアイーシャの腰紐を引き抜いた。
ぐるりと視界が反転し、アイーシャはうつ伏せにされる。何が起こったのかとアイーシャが瞬きを繰り返している内にジンはアイーシャの手首を後ろ手に固定した。
「多少の抵抗はなければつまらんが、暴れられては手間だからな」
強い力で手首を握られ、アイーシャは慌ててジンから逃れようとする。しかしながら、力の差は歴然でアイーシャの手首を固定していた腕は腰紐にとって変わられた。
「こんな……」
あまりの辱めにアイーシャは言葉が出なかった。
「そういう顔もできるのか。俺を殺してやりたいと顔に書いてあるぞ」
ぐいっと引き起こされ、アイーシャはジンの膝に座らされる。
再度重ねられた唇にアイーシャは思い切り噛みついてやった。
「ふん。じゃじゃ馬め。だが」
僅かに血の滲む唇を舌で舐め、ジンは不敵に笑う。
「落としがいがあるというものだ」
アイーシャの肌を隠す柔らかな衣服をジンは躊躇うことなく引き裂いた。布の裂ける音が室内に響きわたる。
「い、いや! やめなさい」
アイーシャが身を捩っても腰に回されたジンの腕はびくりともしない。そうこうしている内に寝椅子の上には衣服の残骸がどんどん散っていく。
素肌のほとんどを晒す形になり、アイーシャは伏せた睫を震わせた。心なしか体も少し震えているようだった。
「もう諦めたのか」
頬に口づけ、耳朶を噛み、ジンの熱い吐息が肌にかかる。
アイーシャは怒りと屈辱と恐怖の混ざった複雑な感情に胸を揺らす。
「……好きにすればよいのです。それであなたの気がすむのなら」
「ふむ」
「こんなことで私があなたに屈すると思っているのならばそれは間違っています。例え体を汚されようと私はあなたに従いはしません」
きっぱりと言い切るとアイーシャはそれきり口を噤んで俯いてしまった。
ジンはそんなアイーシャをしばらく眺め、唐突に笑い出した。
「面白い。では、姫君のお言葉に従って好きにさせていただこう。己の言葉には責任を持てよ? 気のすむまで堪能させていただくからな」
ジンの噛みつくような荒々しい口づけにアイーシャは翻弄されるばかり。今度は抵抗すらできない。舌を吸われ、溢れる唾液を飲み下し、されるがままだ。
ジンの手の中でアイーシャの乳房は形を変えていく。時に強く時に優しくジンの指は動き、アイーシャは初めての感覚に呻いた。その呻きさえもジンは飲み込んでしまう。
湧き上がる不快感にだけ意識を集中させ、アイーシャはひたすらに耐えた。
太股に跨るようにアイーシャを座らせ、その体にジンは舌を這わせはじめる。
口づけの合間の呼吸に慣れていないアイーシャはようやく解放されたと深々と呼吸を繰り返した。
ぬめった舌が項を伝い、鎖骨を辿って濃い桃色の頂に触れる。他人に体を舐められるなんて想像したこともなかった。
アイーシャはジンが動く度に体を震わせ、しかし声だけは絶対にあげるまいと唇を噛んだ。好きにしろと啖呵を切った手前、やめてくれとも言えない。アイーシャにできるのは耐えることだけだ。
「知っているか、アイーシャ。女がどこで男を受け入れるか」
ジンは黙って愛撫を続けながらアイーシャの答えを待つ。
促すように強く乳首を摘まれて、アイーシャは頭を振って答えた。
「……し、知りません」
「では教えてやろう」
ジンの指が腹を辿って下ろされる。そうしていまだかつて誰も触れたことのない茂みの奥へと潜り込ませた。
「ここだ」
閉じきった割れ目をなぞり、ジンは低い声で囁く。
「ほら、まだまだ足りないとはいえ少しは濡れてるだろ」
ゆるゆると指でこすれば自己防衛から蜜が溢れはじめる。
鼻歌交じりのジンが懐から小さな瓶を取り出した。
「ま、最初は手っ取り早くすましちまうか」
アイーシャはジンの手のひらにどろりと零された怪しげな液体に見入る。
ジンは甘ったるい香りのするそれをあろうことかアイーシャの秘所にたっぷりと塗り付けた。
「ひゃっ」
冷たくぬめった感触に思わず身震いしアイーシャは慌てて唇を噛む。声だけは絶対に出したくない。
まんべんなく液体を塗り付けた後、ジンは人差し指を挿入させた。内部にまで液体を塗り付けようとするように指を動かしていく。
指の与える不快感にのみ集中し、アイーシャは時折沸き上がる甘い感覚には気づかないふりをする。
「さて、それじゃあそろそろ」
寝台の上に倒され、ジンの体から一時的に離される。アイーシャは深い呼吸を繰り返して自身を落ち着ける。
しかし、その試みはすぐに失敗した。ゆっくりとアイーシャの体にのしかかり、ジンが深い口づけを落としてきたからだ。
足の間にジンの体が割り込まれ、太股に熱いものがあたる。それがなんなのかアイーシャはなんとなくではあるが理解した。
「アイーシャ」
ジンが足を抱えあげると腕が体で押しつぶされて痛んだ。
「あなたなんか大嫌いです」
睨みつけてそういうことだけが精一杯の抵抗だった。
「それは結構だ。いつまでも虚勢を張っていればいい」
熱いものがあてがわれ、ゆっくりとアイーシャの中へ潜り込んでいく。先ほど塗り付けられた液体のせいか、痛みはさほど感じなかった。
しかし、強烈な異物感を与えながらジンはアイーシャの奥へとその身を埋めていく。
「痛くはないだろう? 直に自分から腰を振ってねだるようになる」
ジンは焦って腰を振りたてるような真似はしなかった。深々と挿入しながらも動かず、アイーシャの与える締めつけを楽しんでいるようだった。
アイーシャの背に腕を回し、ジンは再びアイーシャの体を抱き起こす。縛られた腕が僅かに痺れているようだった。
「俺の名を呼んでみろ、アイーシャ」
燃えるように紅いジンの瞳が鏡のようにアイーシャを映し出す。そこにいる自分は目を背けたくなるほど哀れで惨めな姿をしているというのに何故か艶めいて美しく見えた。
先ほどまでとは打って変わってジンは宥めるように優しくアイーシャの背を撫でる。そうしながら額や瞼、頬や項と羽根が触れるように優しく口づけを落としていった。
不快感だけに意識を集中させようとしてアイーシャは戸惑う。乱暴に力で奪われるならばそれも可能であったかもしれない。先ほどまではそうできていたのだから。
しかし、アイーシャに触れるジンの指は慈しみに溢れている。無理矢理に体を繋げられているというのに優しさを感じてしまう。
アイーシャは僅かながら変化を始める自らの体を持て余した。じんわりと深い場所から甘美な感覚が沸き起こりつつあったのだ。
体の奥が熱い。それがジンの塗り付けた液体のせいか、ジンから感じる優しさのせいか、アイーシャにはわからなかった。
「アルジャジール、私…私は……」
「考えるな。思考は放棄してしまえ」
それでもまだ何かを口にしようとするアイーシャに舌打ちし、ジンはその体を抱き寄せた。緩やかに下から突き上げられアイーシャは呻いた。
ジンが動く度に粘膜が擦られ淫靡な感覚が湧き上がる。アイーシャはジンの肩に頭を預け、頭を振って啼いた。
「ああ、お前は啼き声まで美しい」
ジンの掠れた声が耳に届き、アイーシャの体に悪寒に似た何かが走る。
「あ、あっ…ゃ……」
噛みしめていた唇は緩み、堪えていた声は溢れる。自分は負けてしまったのだと理解した途端、大粒の涙が零れた。
けれどもそうした確かな意識を保っていられたのも数瞬でアイーシャはジンの与える新しい感覚に瞬く間に呑まれていったのだった。
***
微睡みから覚め、まず目にしたのは浅黒い肌。
アイーシャは驚いて半身を起こした。あろうことか、アイーシャはジンの胸を枕に眠っていたようだ。
「気分はどうだ」
ジンの体からのろのろと退き、アイーシャはその隣に座り込む。
「……最低だわ」
体を隠すものがないかと辺りを見渡しながらアイーシャはぽつりと呟いた。
残念ながらアイーシャの身につけていた衣装は布切れに変わっていたし、手の届く範囲には何もなかった。
「そうか? 俺にしがみついて快感に咽び」
手近にあった枕をジンに投げつけるとそれは顔面を直撃した。
「に、二度とあんな真似は許しませんから! 覚えておきなさい」
「……言われなくとも姫君の痴態は覚えておくさ。ああ、忘れませんとも」
悪びれなく言ってのけるジンをきつく睨みつけるが、さっぱり効果はない。
アイーシャは溜め息をついてうなだれた。これから先どうなるのだろう、と。まったくもって前途は多難だ。
おわり
>>173 「はるか遠き〜」はガラスの仮面の次に大好きな少女漫画だから、意識したつもりはないけど無意識に似てしまったのかもしれない。
侍女の名前はシェーラさんからいただいたわけだし。
シェーラさんとシャーザマーンは大好きだ。主役カプより好きだった。
シャーザマーンがシェーラさんにアニースジャニースが嫁いだら私のところへおいでみたいなこというシーンでは萌え死にそうになった。あの頃は萌えなんて言葉は知らなかったが。
スレ違いだが「はるか遠き〜」好きに出会えて少し興奮してしまった。
GJ!!
全裸で待ち続けた甲斐がありました。
慈しみの溢れる指のあたりがツボです。
この二人で他にも構想があるなら是非また書いてください。
191 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/18(水) 03:03:31 ID:6DO1nfrg
続きイラネ
なんでやねーん
GJーーーーッ!!
ジン×姫君続きキター(・∀・)
待ってた甲斐がありまくりだよ。すごい良かった。
投下者タン次第だけどできれば『ジン、姫君の願いを叶える編』
とかも見てみたいな
>>189 GJです
173じゃないけど、私も「はるか」大好きでした。
「はるか」内なら、ヤスミン姫とアーマドが
女主男従のカップルだけど、
シャー・ザマーン王子とシェーラさんの方が萌える。
最近読んだ漫画では「薬師アルジャン」が、このスレ的に
ヒットでした。
姫と元毒見役という身分差に加え、全身に猛毒を持つ特殊体質のため
触れ合うこともできないという身体的障害まである。
絵が泥臭く、華やかさに欠けるのが残念。
続きリクエストしてた一人です。
GJ!!
散々意地悪に攻め立てるのに、姫君が覚えてなさそうなところで不意に優しい素振りを見せるジンがかなりツボってます。
萌えをありがとう。
196 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/19(木) 02:37:59 ID:iRvC9+X5
>>193 ジンが姫君の願い叶えたら姫君死ぬんじゃないのか?魂と引き換えに願い叶うんだろ。
>>194 少女漫画・少女小説全般スレに「薬師アルジャン」のエロパロあったよ。
198 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 02:19:06 ID:45DgbUlf
ジンと姫君は主従カテゴリに分類されるのか?主従っぽくない希ガス
>>198 分類されるに一票〜。
いうなれば主人と使い魔の関係だろ。
ジンは使い魔ともまたちと違うが。
自分の中の主従カテゴリて↓なんだが皆どんな感じ?
正統派、主人と使用人
含ファンタジー、主人と使い魔
信頼関係、上司と部下
上司と部下ってのはなんつーか、サラリーマン的なのじゃなくて
隊長と副隊長の関係みたいなやつ。
一例だけど『男装(じゃなくてもいいけど)の女騎士と、
彼女に影のようにつき従う右腕的存在の副官』みたいな
どれも、普段は主に頭があがらないが夜になると下剋上、てのが好き。
そうですか
201 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 16:37:54 ID:45DgbUlf
>>198 う〜ん。ジンが従者っぽくないんだよな。逆に主人みたいに見える。
使い魔ってそんなもんなのか?もっと従順なイメージがあったからさ。
202 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 16:38:39 ID:45DgbUlf
ジンが姫君を主人として見てないからかな
単に良い玩具を手に入れたような感じだから
それがまた萌えるわけで。
姫にエロいことしまくるジンGJ!
新作&続きものSS期待待ち。
207 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 18:33:34 ID:45DgbUlf
208 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 18:36:08 ID:45DgbUlf
>>203 それだ!そういうのも主従に入るのか疑問だったんだよ。
前に誰かが越えちゃいけない一線を越える背徳感が主従には必要的なこといってた気がしたから。
二回も書いてしまったorz
立場上では姫が主人でジンが使い魔なわけだから特に問題なくね?
>越えちゃいけない一線を越える背徳感が主従には必要
必要というか主従における一例というか。
テーマに沿っていればこのスレ的にはおkじゃなかろうか。
てかDgbUlf、メール欄に半角小文字で「sage」ようぜ
↑もう一言
色んなタイプの主従があってもいいんじゃないかってことで
背徳感がなきゃだめなのかと思ってた。すまんかった。
>>201好きなシリーズだしなにげに愛だから続けて欲しいけどココだと荒れる元かなぁ…まだ荒れてないけど。
ふさわしいスレ無いかどうかさがしてみる…確かに主従っぽくないよね。
>越えちゃいけない一線を越える背徳感
これは言葉だけで萌える不思議だw
>ID:45DgbUlf
なぜメル欄大文字で入れてる?
あまり限定しすぎるのも問題な気がするんだけど、どうなんだろ。
もしジンが従順に従っていればそれは主従で問題なしだった?
あまりに形に縛られると何も投下されなくなる気が…w
個人的には大好きなシリーズなのでこれからも続けて欲しいYO!
ああいうランプの精みたいなやつって、何でかしらないけど
持ち主が御主人様なんだから、それでいいんじゃね?だめ?w
まあでも、お姫様がジンの主人として制御してるところはしてるとか、
態度はクソえらそうなのはお姫様に従わざるを得ない理由があるからとか、
そこらへんが出て来ると見る目も変わるような気がする。
×態度はクソえらそうなのは
○態度はクソえらそうだけど
何書いてんだ…
45DgbUlfが実はこのスレを荒らしにきたような感じがしてきた
sageが大文字だしな
スゲェネ申だしジンとお姫様はこのままそっとしておこうよ!好きなシリーズなんだよ。
───────────でも下克上も見たいw普段は付き従っていて敬愛しているけど…ってヤツw
>>193の『姫君の願いを叶える編』書こうと思ったけど願いをどうするか決まらなくて悩んでた。
ベタに人間になって私の側にいてとかでいいかなと思ったけど今の姫君はそんなこと言わんしな。というわけで姫君とジンの仲をもう少し深める話を書いて投下しにきたんだが。
誘い受けと言われそうだが一応訊く。
ジン×姫君投下していい?
ジンがあまりにはっちゃけ杉とはいうが
多分本当に危機な場合は能動的に守りそうな気がする
だからこそあんだけふてぶてしい態度が出来る訳で…
今の反対派、俺様キャラが嫌いなだけじゃないのかと勘繰ってしまう
職人の方、覚悟して聞いてるのは判ったけど
投下はもうちょい待った方が良いかも
わかった。ほとぼりが冷めた頃にこっそり投下しにくるよ。
俺様キャラが嫌いなわけじゃないんだ、むしろ好きだ
ジン×姫君の話もすごく面白いと思う
ただ主従ものと言われた時に、俺の中の主従ものの定義から外れてる気がするだけで
要は単なる俺のワガママです
本当に面白いと思ってるから、続き投下してもらえたら嬉しい
うーん『主従』の概念とが定義については、ある程度
それぞれの好みとか主観によっちゃうよね。
だからこういうSSは投下×ってのはスレを衰退させる原因になると思うし
よっぽどスレ違いでなければ(明らかに身分にも階級にも差がなかったり
雇用関係でも契約関係でもない、とか)受け入れOKにした方がいいんじゃない?
少なくともジン×姫君は大大大好きなシリーズなのでできれば
投下続けてホスィ…。
個人的なワガママは言い出したらキリがないから、
好みから外れる不満が出る気持ちは分からなくもないけど、
チラシの裏にそっと書いておくといいよ。
続き投下して欲しいならなおのこと。
そうやって個人感情を書いていって衰退していったスレ、
なくなったスレは後を断たないけど、ここはそうならないでホスィ
というわけでここ数レスは華麗にスルーして続きドゾ
漏れも待ってますよ〜
空気読まずに
旦那が早漏で独りよがりなせいで満足なセックスを出来ない日々を送っている純情な若奥様(17)と
嫁ぐ以前からずっと彼女を見守ってきた従者(三十路)の禁断の情事
を希望。
もちろん若奥様は政略結婚。俺はツンデレより純情派。
それって和姦?微妙に強引だったら萌え!
最後ははぴえんでも。
どっちでも萌えるだぜ?
立場が主従であれば、なんでも萌えるぜ?
>>226 その設定いいな。年の差がまた萌え。
不倫は苦手なので旦那死亡で書いてみた。
甘い感じが出したかったけど出てるかわからん。
天蓋付きのベッドに腰掛けているのは年若い可憐な少女。薔薇のような派手さはなく、百合のようなきつさもなく、例えるならば桃の花のように柔らかな美しさだ。
寝室を訪れているからといって私と彼女の関係が恋人又は夫婦だと思わないでほしい。彼女は私の主人である櫻塚智光の妻櫻塚志乃、仕えるべき相手なのだ。
そして、私の名は柏木誠一。大学卒業以来十年櫻塚家の執事を務めている。
そんな私がなぜ主人の寝室にいるのかというと、彼女の為のホットミルクを持ってきたからだ。メイドに任せてもよかったのだが、どうしても直接渡したかった。それというのもここ数ヶ月、彼女が体調を崩してしまっているからだ。
実は櫻塚家当主である櫻塚智光は半年前に不慮の事故により他界してしまっている。つまり、彼女は夫を亡くしてしまっているのだ。十六になると同時に嫁いでから僅か一年。早すぎる別離であった。
「柏木……」
私の存在に気づき、志乃が顔を上げる。儚く消えてしまうのではないかと心配してしまうほどに生気がない。
「やはり眠れませんか?」
こくりと志乃は頷く。
「蜂蜜入りのホットミルクです。昔から眠れない夜はこれを好んで飲んでいらしたでしょう?」
「ありがとう」
私の手からカップを受け取り、志乃はカップに唇を寄せる。そのまま僅かに傾けてミルクを啜る。
「懐かしい味がします」
ほっと息を吐く姿は小さい頃と変わらない。
「……ここへ座って」
ぽんと自らの隣を軽く叩きながら、志乃は私を見上げてくる。
ミルクを飲み干したのを確認しだい帰るつもりでいた私はまぬけな声を上げていた。
「お願い。ダメなの?」
縋るような目でねだられては拒むわけにはいかない。昔から私は彼女に弱いのだ。ねだられれば這いつくばって馬にだってなる。……昔の話だが。
「失礼します」
一礼し、私は志乃の隣に腰掛けた。
使用人と主人の間柄だ。間違いなど起こるはずもないが、さすがに少し緊張する。彼女の意図が読めないものだから余計に。
「膝に座ってもかまわない?」
またしても私は素っ頓狂な声を上げていた。さすがにそれはまずい。丁重にお断り申し上げると彼女は僅かに瞳を潤ませた。
「昔は泣いているとあなたは私を膝に乗せて頭を撫でて慰めてくれました」
「それはあなたがまだ小さい頃の」
「もう抱いてはくれないの?」
第三者が聞いたら確実に誤解を招くであろう台詞を彼女はさらりと口にする。
「わ、私が汚れているから?」
「お嬢さま?」
「柏木、柏木! 私、私……っ!!」
止める間もなく志乃は私の首に腕を回してしがみついてきた。薄い夜着越しに柔らかな肢体が押し付けられる。
「私、怖いの」
「落ち着いて下さい。どうされたのです?」
志乃はすっかり取り乱しているようで泣きじゃくりながら私の肩や胸に顔をすりつけてくる。
香水とは違う志乃自身から漂う清潔な香りが鼻孔をくすぐり、なんともいえない気分になってくる。
「大丈夫です。大丈夫。お嬢さまには私がついていますから」
引き離そうとすればより強くしがみついてくると経験上学んでいたので、私は志乃の背を撫で気の済むまで泣かせることにした。
ほどなくして志乃は私の首から腕を離し、膝に横座りになるようにしながら私の胸に頭を預けた。私の右手は志乃の背を支えるようにしつつ、彼女の両手にしっかりと捕まれている。
「私、とても悪い子なの」
時折鼻をすすりながら、志乃が語り始めた。
「私がここにきてから柏木はあまり話をしてくれなくなったでしょう。いつもなんだかよそいきで。それに、智光さんに触られるの本当は嫌だったの」
「はあ」
「智光さんがいなければいいって……私、智光さんが帰ってこなければいいって」
志乃の目に再び涙が溜まり始める。
「ずっと他の女の人のところにいればいいって思ったの。そうしたら、そしたら……」
私の右手を放り出し、志乃は私の胸にしがみついてまた泣き出した。
なるほど、タイミングが悪かったわけだ。帰ってこなければいいと願ったら夫が不慮の事故により他界。気の優しい志乃は自分のせいだと思い悩んでいたわけか。なんとも純粋なお人だ。
「大丈夫です」
「でも……」
「お嬢さまは旦那様が死んでしまえばいいなんて思ってはいないでしょう」
志乃が小さく頷く。
「運が悪かったのです。旦那様が亡くなられたのはお嬢さまのせいではありません。あれは不幸な事故だったのですから」
それでもまだ不安げに瞳を揺らす志乃を安心させようと私は頭を撫でながら微笑んでみせた。
「柏木がいうなら信じるわ」
志乃の顔にも僅かだが笑みが浮かぶ。
「さあ、もうよろしいですね。私にはまだ仕事が」
言い終わるよりも早く頬に柔らかなものが触れた。確認しなくてもわかる。
「柏木、今夜は側にいてくれる?」
ぱくぱくと金魚のように口を開け閉めしている私に志乃は微笑みかけてくる。
それはどういう意味ですか?
口にしかけた言葉を飲み込んで、私は盛大な溜め息をついた。
「添い寝は執事の業務から著しく外れますので」
「どうしても?」
「当たり前です」
惚れた女と一晩過ごして何もしないなんて真似ができるほどまだ人間できてはいないんだ。
私の狼狽を知ってか知らずか志乃は涙を浮かべた目で私を見つめる。
ああ、だから、私はその目に弱いんだって……。
「お嬢さま。元気になって下さったのは非常に喜ばしいのですが無理をしてはいけません。今日のところは早めに休まれることをおすすめします」
しばらくは名残惜しそうに私を見上げていたが諦めたように吐息をついてベッドに横になった。
「眠るまで側にいて」
「はい」
「手を握っていて」
「はい」
「それと、キスして」
はいと答えかけて私は思わず噎せた。
「柏木」
添い寝よりは数倍マシだと言い聞かせ、私は身を屈めて彼女の額にキスをした。
「おやすみなさい、志乃さま」
額へのキスに不満げな表情を見せたが、優しく髪を撫でるとそれ以上の不満は口にしなかった。
目を閉じて眠りに落ちていく志乃を眺め、握りしめた柔らかな手の感触を楽しみ、私は暫しの幸福に酔いしれていた。
つづく
情事編も書けたら書きたい。
>>230-233 あ な た が 神 か
ありがとうございます萌えた
志乃かわいいよ志乃
情事編wktk
お嬢様の手にしっかり捕まれているところで勃起した。
いいなぁ。
(*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア
>>230 できたらちょっと強引におながいします!!!信じてるお嬢様を…
でも,お嬢様はそれを望んでいるふうだし駄目か。
>>226のイメージと違うかもと思ってたから気に入ってもらえてよかった。安心した。
情事編投下します。
柏木は強引にはなれなかったよ。ごめんよ。
ドガッ!!
効果音をつけるならばまさにそれ。志乃の右足が見事に私の頭を直撃した。
「ってぇ……」
志乃は私が怯んだ隙に毛布を引き上げて露わな肌を隠した。
私は後頭部をさすりながら、その動作を恨めしげに眺めた。
「何するんですか、お嬢さま」
至極当然な疑問を口にしただけだというのに顔面めがけて枕が飛んできた。私はそれを片手で受け止め、溜め息をつく。
「それはこちらの台詞です。柏木こそ何てことをするんです!」
「何って……抱いてとおっしゃったのはお嬢さまでしょう」
「い、いつもはああああんなことしないじゃないの!」
真っ赤な顔で責め立てられ、私は自らの行動を省みる。志乃と愛を交わすのは今日で三度目。前二回と違うことと言えば、彼女の体のあらゆる場所に口づけようとしたことか。
「嫌ですか?」
憤懣やるかたないといった様子に苦笑が浮かぶ。ウブな人だ。
「き、汚いもの……」
「三十分もかけてシャワー浴びてきたじゃないですか」
「でも、そこは、だって」
「お嬢さまの体に汚いところなんてありません」
きっぱりと断言し、私は毛布を力任せに引っ張った。あっという間に志乃の体を隠していた毛布が取り払われ、桜色に染まった麗しい肢体が露わになる。
「か、柏木!」
「お嬢さま。車と男は急には止まらないものなんです。覚えておくといいでしょう」
我ながらくだらない理屈をこねて志乃の足首を掴んで引き寄せる。少々強引かとは思うが、抱いてとねだられてからやれシャワーだなんだと散々待たされたのだから仕方ない。
「ちょっと待って。きゃあ!」
がっちりと腰を掴み、私は志乃の股間に顔を埋めた。先ほどまでの愛撫で既に蜜を滴らせている。そっと舌を這わせると志乃の体がびくりと震えた。
可愛い。
まだほんの子供だった頃から志乃は私の想い人だった。小さな手が私の手を掴む度、鈴のような声が私の名を呼ぶ度、守ってあげなければと思ったものだ。
そうして十数年、守り続けた志乃の体を今は思う存分貪ることができる。愛情に愛情を返してもらうことができる。こんなに幸福なことがあるだろうか。
私は至福に浸りながら、志乃の蜜を啜り舐めていく。まるで極上の酒のようだ。後から後から湧き出る蜜はどんどん私を酔わせていく。
「あっ、はぁ……かしわぎぃ」
初めはくねくねと体を捩らせて抵抗していた志乃も、大人しく私の愛撫を受け入れはじめた。甘い声で啼き、太ももで私の頭を押さえる。
舌を尖らせ、中へ差し込み、より強い刺激を与えると志乃の口からは嬌声が漏れる。感じているのだとわかると奉仕にも熱が入る。
隠された肉芽を摘んでみたり、指を挿入してかき回してみたり。志乃が絶頂に達するまで私は執拗に愛撫を続けた。
「ほら、気持ちよかったでしょう?」
ぐったりと力なく横たわる志乃が素直に頷く。素直なところがまた可愛い。
「柏木、きて……」
両手を私に差し伸べ、志乃が切なげに囁く。
ねだられるまでもなくそのつもりだった私は嬉々として志乃の上にのしかかる。
「大好きよ、柏木」
志乃の足を広げ、先端を潜り込ませる。志乃がぎゅっと目を閉じたのを見ながら私は一気に奥まで突き上げた。志乃の中はきつく狭い。そこに押し入る感覚は何度味わってもいい。
「動きますよ」
言いながら既に腰を揺らしているのだからあまり意味はないかもしれない。しかし、こうしていちいち声をかけてしまうのは職業病の一種だと思う。
「あん、あ、あ、あっ」
突き上げる度に志乃が可愛らしく啼く。
きつい締め付けももちろんいいのだが、とろけきった志乃の表情と甘い声が私を悦ばせてくれる。主人の悦びが従僕の悦びとまでは言わないが似たようなものだ。
志乃の襞が肉棒に絡みつき、溢れる蜜が淫猥な音を奏でる。
あまり長くは持たないかもしれないと思いつつ、私は行為に没頭していく。速く遅く強く弱く深く浅く。単調にならないように変化をつけながら、的確に志乃の弱点を責めていく。
「あっ! いっ…ぁ、かし…ぎ……あああん!! いいの! あっ!! ああっ!!」
「志乃、すまない。そろそろ」
背中に爪を立てる志乃に深い口づけを落とす。志乃はキスが好きらしく、唇を離すと今度は自分から吸いついてくる。
「あっ、だめっ、もうっ!! あ、いっちゃう!!」
志乃も限界が近いのだと悟り、私は志乃の腰を掴み猛然と腰を叩きつけはじめる。ラストスパートだ。
快感が一番高まった時を見極め、私は一際強く腰を叩きつける。動きを止めた瞬間に熱い滾りが弾けた。何もかもすべて体から抜け出てしまうような、それでいてひどく心地よい脱力感。
ふと見下ろせば志乃も達したようで小さな体を震わせていた。それを確認したとたんに愛おしさがこみあげる。
「愛してる」
唇を重ね、貪るように何度も何度も口づけを交わす。
気のすむまで志乃の唇を堪能し、私はそっと体を離した。志乃の体から私の放った精と志乃から溢れた蜜が混ざり合って零れた。
またシャワーに時間をかけるのだろうなと思いながら、私は志乃の隣にごろりと横になる。
「お嬢さま」
のろのろと顔を上げる志乃に手を差し出すと迷わず私の腕の中に潜り込んでくる。猫がするようにすりすりと私の胸に顔をすりつける志乃を見つめ、私は満ち足りた気持ちでいっぱいだった。
おわり
おねだりするのはいつも志乃。そして、柏木は志乃に滅法弱い。でも、主導権を握るのはいつも柏木。
二人のイメージはそんな感じで。
>>226 素敵な設定のおかげで楽しく書けました。ありがとう。
投下されてるー!!
GJですた!
GJ GJ!!
おねだりお嬢様いいなぁ。
244 :
226:2006/10/22(日) 10:43:43 ID:WiQzowDE
>>241 GJ!超絶GJ!こちらこそありがとう。設定も書いてみるもんだな、勃起した!
志乃可愛すぎるぜ
情事の最中はお嬢様ではなく志乃呼びなんだね。萌え狂うぜまったくwww
ところでニュースサイトにこんなものがあがってた。
tp://anime.livedoor.com/movie_ranking/215/
そして姫とジンに期待
>>245 普段はお嬢さまで、切羽詰まった時だけ名前呼び捨て。情事中も余裕がある時はお嬢さまと呼ぶ。
そういうのが好きなんだ。
ジン×姫君。大丈夫そうなんで投下します。
エロは雰囲気だけだし無駄にシリアスぶってるから期待に添えない可能性あり。
仲を深めるには修羅場が必要かなと思って書いた。
目を開ければ自分を見下ろすジンの顔が見える。その表情が冷たく無機質なものだということを改めて思い知らされるのが嫌でアイーシャはきつく瞳を閉じたまま身動きせずに呼吸を整えていく。
性急な行為だった。
今までも強引に奪われてはいたがジンはジンなりに優しく抱いていたのだと今更ながらに気づかされた。
達したばかりだというのにアイーシャの中に埋め込まれたジンのものは萎えることがなく、それだけでアイーシャの緊張は解けることなく持続する。
「……アイーシャ」
掠れた低い声。
「アイーシャ、目を開けろ」
ジンの手が頬に触れ、アイーシャは観念したように目を開いた。
先ほどの熱など微塵も感じられないほどにジンの瞳は冷めている。
初めて奪われた時よりもずっとアイーシャの胸は痛んでいた。
「そんな目で私を見ないで」
毅然と言い放ったつもりだったが、どうしても声が掠れてしまう。
アイーシャはそれ以上話すことを諦めた。あまり喋ると泣いてしまいそうだったからだ。
「お前は何もわかっちゃいない」
痛みを堪えるようにジンは顔を歪める。
「どうして俺がお前の側から離れないのか。そんなこともわからないのか?」
それは私がいつまでも願いを口にしないからでしょう──そう答えかけてアイーシャは口を噤んだ。
(違うの? でも……)
困惑に瞳を揺らすと、ジンがもどかしげに舌打ちをする。
「…………それで、さっきの話によれば俺は強欲な国王に金で売り飛ばされるってわけか」
唐突にジンの体が離れる。
「抜けない指輪に宿るジンを。指ごと切り落としでもするのか?」
ずるりとジンのものが抜け出る感触に不完全燃焼だった体が反応する。しかし、アイーシャの漏らした吐息にジンは気づかないふりをする。
「指輪は抜けるはずだとお兄様が」
「お兄様! そうか。またサーリムがお前に余計なことを吹き込んだわけだ」
ジンは低く悪態をついた。
「お兄様のことを悪くいうのはやめて」
アイーシャにはジンがなぜそんなに腹を立てるのかわからなかった。
数日前に父に呼ばれ、さる国の国王がジンを欲しているのだと聞かされた。指輪は抜けないのだからと父に断りをいれたが、兄から指輪は抜けるはずだと言われてしまった。ジンがその気になれば簡単に抜けるはずだ、と。
兄と父に頼まれれば拒むことなどできるはずもない。そもそもジンを手放すことにデメリットなどないはずなのだ。
(喜ぶべきだわ。これでもうアルジャジールに振り回されることもなくなるのだもの)
父にジンを手放すと約束し、それをジンに打ち明けたのが数時間前。話を聞くが早いか問答無用で押し倒された。怒りに任せた行為は陵辱と呼ぶにふさわしいものだった。
「アイーシャ」
不意に抱き寄せられ、アイーシャの思考は急停止する。
「アイーシャ、アイーシャ」
何度となく名を呼ばれ、息ができないほどきつく抱き締められる。
ジンの声が胸を締め付ける。苦しくなるほどに切ない声。
「離れろというならそうしてもいい。お前がどうしてもと望むなら俺はそうせざるを得ないからな。わかってるだろ。……だが、お前は本当にそれでいいのか」
その問いに返すべき答えがアイーシャにはわからなかった。
頭で考えれば肯定するのが正しい。きっとそうするのが一番いい。ジンにとってもアイーシャにとっても。
けれど、気がつけばジンの背に手を回し、きつい抱擁を受け入れている。離れたくないと胸が押しつぶされてしまいそうなほどに願ってしまう。
「あ、アルジャジール」
口を開いたとたんに涙が溢れた。大粒の涙が頬を伝う。
「わからないのです。あなたは我儘で意地悪でいやらしくて、でも、気がつけばいつだってあなたは優しくて……でも、あなたはジンで、ずっと側にいたりできなくて。だから、だから……」
時折しゃくりあげながらアイーシャは胸に溜まったものを吐き出していく。
「私はわからないのです。どうすればいいの? アルジャジール、私はどうすればいいのです?」
涙が止まらずに、アイーシャはジンの胸にすがって声をあげて泣いた。
「……アイーシャ」
すっかり泣き疲れて膝の上でぐったりとしているアイーシャの髪をジンは優しく梳いてやる。
「悪かった。泣かせるつもりじゃなかった。俺は、ただ……」
「ただ?」
ジンを見上げ、アイーシャは首を傾げる。
何かを口にしようとして、ジンは小さく首を振る。そして、力なく微笑んでみせた。
「お前が可愛くて仕方なかったよ。お前の頼みなら何だって叶えてやりたかった。……初めはお遊びのつもりだったんだがな」
そっと頬を撫でた指がそのままゆっくりと下へ下りていく。そして、指輪の上で止まった。
「さあ、姫君。忠実なる下僕の最後の奉仕だ」
ぴたりとはまっていたはずの指輪がジンが動かすとくるくると回る。少しずつ緩んでいくのがわかった。
「俺を誰かに譲るか一生側に置いておくか。宝物庫に放り投げるのもありだな」
ジンが何をするつもりなのか、アイーシャは悟った。兄の言葉はやはり正しかったのだ。しかし、今はそんなことを考える余裕はない。
アイーシャはとっさにもう片方の手でジンの手を掴んだ。
「後悔しないようによくよく考えてから選べよ。二度目はないぞ」
確かに掴んだはずだった。
「アルジャジール……?」
けれども、掴んだはずのジンの腕はなく、代わりに握られているのは外れなかったはずの指輪。
「意地悪……」
止まったはずの涙が再び溢れ、零れた。
「あなたは意地悪です。……わからないと言ったのに」
疲れて果てて眠るまで、アイーシャは指輪をきつく握りしめて泣き続けたのだった。
おわり
ジン×姫君好きだって言ってくれた方々ありがとう。嬉しかったです。
リアルタイム投下ktkr!!!
GJ!!!
神キタ―(・∀・)―!!
GJ!切なくて歯痒い展開に萌えた…!!
職人様本当にGJ!
関係ないが主従っていつか離れる時が来るっていう点が切ないが萌える要素だと漏れは思うんだ。
GJ!切なくてよかったです。
アイーシャの今後の選択にwktk。
アイーシャアアアアァァァァ
萌え(*´Д`)ハァハァ
今回も萌え転がらせていただいた。
どうなるんだがワクテカしながら待つぜ
ふぉおおお〜〜神投下2連続〜〜!!!
志乃タン可愛すぎるぜ志乃タン(*´Д`)ハァハァ
柏木の標語『車と男は急には止まらない』は素晴らしいと思う!禿ワロタ
そしてアイーシャも!! あああ、超切ないよアイーシャ。
お兄様のサーリムも再登場しないかなぁなんて。
誘惑小悪魔系お嬢様な話を書いてみた。キリのいい所まで書けたので
投下します。ちとバカっぽいのでその辺はよろしく。
256 :
怪物お嬢:2006/10/23(月) 22:54:17 ID:r+H9i0qc
丘の上に建つ洋館には、とある名がつけられていた。
その洋館は赤煉瓦が積まれてできた欧州風の作りで、元はさぞ優美な雰囲気を
持っていたのであろうと思われるような大きな屋敷だ。
元は、というのは久しく住まう主のないままに時を過ごしたせいか、
灰緑の蔦が壁の全体を覆っており、屋敷は一種異様な様相を呈していたからであった。
その屋敷を守るかのように巡っている金属の柵は、館とは逆に年月も風雨も関係なしに
黒光りしており、正門には翼の生えた怪物、ガーゴイルを模した飾りが物々しく飾られていた。
屋敷は、その姿のせいか門に鎮座しているガーゴイルのせいかこう呼ばれていたのだ。
すなわち――『怪物屋敷』と。
*******
夜の帳が空を覆い、藍色の闇がその彩(いろ)を深めていた。
ざあっ、と生暖かい風が吹き怪物屋敷の門扉が耳障りな音をたてる。
どこかこの日は屋敷の雰囲気が違っていた。
それもそのはず、ふと見れば屋敷から灯りが漏れ見えていた。
二階の一部屋に明るく灯がともっている。
何年ぶりか、何十年ぶりか屋敷に住人がやってきたのであろう。
その住人は、きしむ音を立てながら年を経て開きづらくなった窓を開けようとしていた。
がしゃっ、と窓を開けたのは年の頃は二十四、五ほどの男だった。
黒髪に黒目、着ているものも黒、と黒ずくめの青年で、名をセレムという。
彼は何やら浮世離れした雰囲気の礼服を身につけており、それがどこか
この屋敷には良く似合っているように思えた。
257 :
怪物お嬢:2006/10/23(月) 22:54:48 ID:r+H9i0qc
セレムはしばらく窓から、空を穿ったような白い月を見ていたかと思うと
ふと目をすがめて独り言のように呟いた。
「勝手に飛び出したりして……全くもう、どこに行ってしまったんですかね」
そして落ちつかなげに窓枠を指で叩く。
誰に問うでもない呟きは、当然のごとく答えるものもなく冴え冴えとした
月光の中に吸い込まれていった。
セレムは唇を引き結ぶと優雅な動きで向きを変え、部屋の中に戻った。
眉を寄せて部屋の中央に据えてあるテーブルに手をつくと、そこに置かれたグラスを手に取った。
その中には、なみなみと赤い液体が注がれていた。
部屋の灯りに揺らめくその輝きを、セレムは闇色をした瞳を一瞬、血のように赤く光らせて眺めた。
それは人ではありえない眼差しであった。
薄く開いた唇から異常に鋭く尖った左右の犬歯がのぞく。
彼は人間ではなかった。その瞳も牙も魔物のもの。
セレムはグラスを手に取ると、その、独特な匂いのする赤い液体の入ったグラスを傾けた。
馥郁たる香りが彼を誘う。一気に喉をならして中身を飲み切ると、突然セレムの
背後から彼に声をかける者がいた。
「驚いたな。吸血鬼が血ではなく、トマトジュースで喉をうるおすとは」
よく響く高い声。その声は二階の窓の外からであるのに、セレムは驚いた様子もなく
振り向いて、声の主の姿を認めた。
月光を弾く金色の髪。それをベルベットのリボンで可愛らしく二つに結わえた少女が
セレムの部屋の窓の桟に腰掛けていた。その髪と、黒いワンピースからのぞく裾のフリルが
窓からの風でふわりと揺れる。少女の青い瞳が愉快そうな光を宿しながらセレムを見つめていた。
「……レティシア様。あなたが私に言ったんでしょう。ここに住む間は人の血を吸うなと」
「そうだった?」
少女――レティシアは、くすくすと笑いながら言葉を返した。
彼女もまた普通の人間ではない。吸血鬼が敬称をつけて扱う存在であり、そもそも
窓から突然現れる、というその行動だけで普通ではありえないものであった。
「夜のお散歩はどうでしたか?」
セレムが腰に手をあててそう問うと、目の前の少女は細い指を当ててあごをすっと引いた。
「悪くない。この街、わたしはなかなか気に入ったな。そうだ、セレム。お前のしもべの友達もいたよ」
そう言ってレティシアは手のひらをくしゃりと握った。そのまま、ぱっと開いた手のひらから
羽根をばたつかせたコウモリが現れる。
レティシアはちぃちぃ鳴くコウモリの黒い羽を掴んだまま、ほら、とそれをセレムに差し出した。
258 :
怪物お嬢:2006/10/23(月) 22:55:38 ID:r+H9i0qc
「小さな子供みたいな真似をなさらないでください」
セレムは額に手をやると小言めいた口調でそう言い聞かせた。
その言葉にレティシアは、ふん、と鼻を鳴らして唇を尖らせると、掴んだ手をしぶしぶ離した。
ようやく解放されたコウモリは羽を勢い良く羽ばたかせながら、あっという間に
窓から外へと逃げだしていった。
「何だ、人がせっかく見せてやろうと持ち帰ったのに」
「見慣れていますから結構です」
コウモリは吸血鬼第一のしもべだ。セレムも自分の意思一つでコウモリを呼び出して使役することができる。
「つまらないの。初めて人間界に来たのだからお前も目新しいものでも探せばいいのに。
お前はわたしの教育係なんだから、わたしに人間界のものを教える義務があると思うなぁ」
「おやまぁ、ずい分と勉強熱心になったものですね」
足をぶらぶらとさせながら言った言葉にセレムは腕を組みながら冷ややかに答えた。
その返答から、何やら不穏な雰囲気をレティシアは感じた。
「……妙につっかかるな。お前、何か言いたいことでもあるのか?」
ふと疑問に思って尋ねただけが、レティシアは言った瞬間後悔する事となった。
「言いたいこと? もちろんありますよ。お散歩をしてきていいと、誰が言いましたか?
魔界から人間界(こちら)に来るのに扉を開いたばかりでこの辺りの魔力磁場が安定できてないって
言いましたよね。今の段階で人間に見られたら、魔力を使っても記憶を操作できなくなるから
困ったことになるって言ったの覚えてます?」
笑顔でそうまくしたてながら、セレムは一歩一歩窓辺に腰掛けるレティシアへと近づいていく。
その迫力にさすがのレティシアも途端に顔色を変えて言い募った。
「だ、だって……暇だったんだもの……。お前はこの屋敷に来てすぐ何か一人で
やってて相手してくれないし……」
その答えにセレムは思わず脱力した。
「仕方ないでしょう。魔界から来たばかりで色々人間達の情報を操作しなきゃ
いけなかったんですから……。私の魔力だって無尽蔵じゃないんです。
そもそもあなたが協力してくれれば……いや、もう分かりました。過ぎたことです、良いですよ。
……ところでレティシア様、人間には見られていないですよね?」
その質問に、レティシアは金色の髪の毛をくるくる指に巻きながら目線をそらした。
「レティシア様?」
259 :
怪物お嬢:2006/10/23(月) 22:56:10 ID:r+H9i0qc
*******
今から約一時間前、レティシアは『怪物屋敷』から人間の足で大体20分ほどかかる距離の場所にいた。
そこには集合住宅――彼女は呼び名を知らないが『アパート』と呼ばれる建物があった。
そこに来る前からレティシアは、セレムの言いつけを破って屋敷を飛び出し、夜の空を飛び回って
街のいたるところを見に行っていたため、やや疲労を感じていた。
すると、アパートの近くに生えた大きな木を見つけ、レティシアは良い場所があったとばかりに
枝に腰掛けていた。そこの先客であったカラスがいなければ、彼女とて静かにその場にいるつもりであったのである。
鳥の羽音と、枝がざわめく音。それはアパートの中で木に一番近い部屋に届いてしまったようであった。
「な、に……うるさいなぁ……」
目をこすりながらガラッと窓を開けたのは、見た限りレティシアと同じくらいの年齢の少女であった。
小さな柄のついたクリーム色の、ゆったりとした服を着ている。
その少女が、アパートの一室からレティシアの姿を見つけ、思わずといった様子で硬直している。
レティシアの方もいきなり事でうろたえてはいたものの、すぐに気を取り直した様子で胸を張りながら言った。
「よく聞け人間の小娘! わたしはレティシア・ガーラント。魔界の帝王が直系の王女である。
この度は王位を継ぐための勉学の一環として人間界に遊学に参った。そなたが望むなら
この人間界のことをそなたに教わってやってもよい。……さぁ、我が言を受け入れるならば
そなたも名乗るがよい」
「はぁ……市村ヒロコといいますけど……」
半分寝ぼけているのか、少女は素直にそう名乗った。だが、それは寝ぼけているというより
現在の状況が処理できていないだけのようにも見えた。
「相分かった、ではヒロコ。これよりはそなたはわたしのこの世界での学友とでもいうべき存在。
名誉に思え」
「……それはどうも、ありがとうございます。それでは」
そのまま市村ヒロコは部屋の窓をからからと閉めた。そして締め切ると部屋の中でふと我に返り
激しく動揺した。ずるずるとその場にしゃがみこんで呟く。
「な、何だったの……今の……」
次に彼女が勇気を総動員して窓を開けたときには、そこに外国人めいた居丈高な少女の姿はなく、
ヒロコは先ほどのことは夢だったと思うしかないと自分に言い聞かせたのである。
260 :
怪物お嬢:2006/10/23(月) 23:01:15 ID:r+H9i0qc
*******
「めちゃくちゃ人目についてるじゃありませんか!!」
レティシアから一部始終を聞いてセレムは思わず怒鳴っていた。
彼にとってレティシアは主筋にあたる娘だ。
だが、教育係として彼女に仕えていたため、なまじ幼い頃より知っているせいか
セレムはレティシアに容赦がなかった。
「……大丈夫だって。わたしの直感は当たるんだ。あの娘は悪い人間ではないぞ」
「またそんな事を言って。小娘とはいえ、記憶を操作できない人間がいるのは
我々にとって都合が悪いことですよ」
ひらひらと手を振るレティシアをセレムは眉間にしわを寄せてたしなめた。
だが、レティシアはさほど堪えていない様子で笑みを作ると、セレムの眉間に
ぴっと指を当てて言った。
「そんなに苛々すると長生きできないと思うな」
「……あなたが困らせるからでしょう」
そう言ってセレムは困ったようなため息をついた。だが、レティシアは構わず
腕を伸ばしてセレムの襟元をつかむと、それをぐっと引き寄せた。
そして、近づいてきた従者の首筋にレティシアはそっと唇をつける。
「ちょっ……、レティシア様。言っておきますけどまだお説教は終わってないんですよ」
そう言いながらセレムはレティシアを引き剥がしにかかった。だがレティシアは
悪戯っぽく舌を出すと、猫のようにそれをセレムの首筋へと這わせた。
「もう……、誰がこんな事を教えたんです」
そう言いながらも既にセレムはレティシアの腰へとその手をまわしていた。
レティシアはふふっ、と笑顔を見せるとそのままセレムの首に手を伸ばして彼に体を預ける。
そして彼の耳へ、そっと囁いた。
「お前が教えたんだろう?」
その言葉は魔力を持っていたかのように、セレムの耳朶を熱くさせ、彼を押しとどめる
理性の最後のかけらを砕け散らせた。
*******
(続く)
小悪魔っつうか、リアルに悪魔じゃないかw
続きを楽しみにしてる。
キリがいいとか言いながら実際は変なところで豚切り投下スマソ。
次からエロシーン。あと多分皆わかってると思うけど元ネタは『怪物くん』。
『怪物王女』のマンガの方は借りて読んでみた。姫かわいいよ姫。ハァハァ
「これは仕置きなのだからもっと苦しそうにしたらどうなの!?」
部屋の中央に置かれた椅子に両手両足を縛り付けられたリチャードさんの表情は俯いているせいでよく見えません。
奥様はそのまわりを忙しなく歩き回りながらリチャードさんに罵声を浴びせます。
私は扉の横に立ったままリチャードさんに行われるお仕置きを呆然と眺めるしかないのでした。
私のせいなのに。奥様の大事にしていた花瓶を割ってしまったのは私なのに。
「あ、あの……」
優しいリチャードさんが私の身代わりになって下さったけれど、これ以上リチャードさんがいたぶられるのを見ているのはつらいです。
私のかけた声に振り向いた奥様は聖母のように優しい顔で微笑みかけます。
「なあに、ソフィア。立っているのがつらいならベッドに腰掛けてもかまわなくてよ」
首を振ろうとしたけれど、リチャードさんと目が合ってしまってそれもできなくなりました。リチャードさんの目が黙っていろと言っている気がしたからです。
奥様はまたリチャードさんに向き直りました。
リチャードさんのズボンからは大きなあれが取り出されていて、奥様はそれの根本をきつくリボンで縛っています。奥様のお仕置きでリチャードさんのあれには媚薬が塗られてテカテカに光って大きく反り返っていました。
私の見ている前でそうしてなぶることでリチャードさんのプライドをズタボロにするのが奥様のお仕置きです。
「ふん。普段クールな顔してても薄汚いオスだね。こんなにして、侮辱されて勃起するなんて変態だよ」
リチャードさんは何も言わずに奥様からのお仕置きを受けています。きっと、本当はとっても嫌なんじゃないかと思います。
「何とか言ったらどうなの!?」
「申し訳ございません」
「そんな台詞がききたいんじゃないわよ!」
バシッと乾いた音がして、私は思わずぎゅっと目を閉じてしまいました。リチャードさんの頬が真っ赤になっていきます。
「お、奥様!!」
リチャードさんがあまりに可哀想で私は奥様に駆け寄って腕にしがみつきました。
「ご、ごめんなさい! 奥様、私、私!」
「ソフィア! 下がってろ」
リチャードさんの声に体がびくりと震えます。でも、
「まあ、私のソフィアになんて口をきくの」
「奥様! リチャードさんは本当は何にも悪くないんです」
本当のことが知れたらリチャードさんにされたのと同じことを奥様にされてしまうかもしれません。でも、リチャードさんは何にも悪くない。私が悪いんだから仕方ないのです。
「可愛いソフィア。優しい子」
奥様が優しく私の頭を撫でて下さいました。
「でも、罰は与えなければいけないわ」
「わ、私が罰を受けますから」
奥様の腕を掴んで懇願すると奥様は困ったように眉を寄せます。
「だって花瓶を割ったのは本当は私なんです」
奥様は整った美貌を一瞬歪めて、けれどすぐに妖艶な笑みを浮かべて私を見ました。
「まあ、いけない子」
「申し訳ございません。だから、リチャードさんを……」
「だめよ。それなら、リチャードは嘘をついたことになるでしょう?」
くすくすと笑うと奥様は私の腰に手を回して顔を近づけてきました。
目を閉じると奥様の柔らかな唇が触れます。すぐに舌が絡んで、私の頭はとろけてしまいそうになりました。
「先にあなたにお仕置きしなきゃいけないみたいね」
奥様の言葉に体がびくりと反応してしまいます。体の奥がきゅんとしてあそこがなんだかうずうずしてきました。
私がもじもじしているのに気づいた奥様がそっと手をスカートの中に忍ばせてきました。
「きゃうっ」
「あら、もう濡れてるじゃない。リチャードのお仕置きを見て興奮したのかしら」
「あっ、あん! 違いますぅ」
奥様の指が直接あそこに触れただけで私の体はがくがく震えて立っていられなくなります。
「ふふ。ソフィアったらいやらしい」
ぐちゅぐちゅといやらしい音がして私は恥ずかしくてたまらなくなってきます。リチャードさんにも音が聞こえているかも。
「あっあっぁあっ」
「気持ちいいの?」
「い、いいっ!! 気持ちいいのぉ」
奥様の指が三本も入ってぐちゃぐちゃにかきまわされます。恥ずかしいのと気持ちいいのが混ざって変になっちゃいそう。
「このままじゃお仕置きにならないわね」
「あ……」
奥様の指がとつぜん引き抜かれて私は切ない声を上げてしまいます。
「そうだわ。二人同時にお仕置きしてあげる」
いたずらを思いついた子どもみたいに奥様は可愛らしく微笑みます。
「達したくても達せないのと達しても達しても終わらないのはどちらがつらいのかしらね」
「お、奥様?」
「リチャードの上に跨って」
奥様は椅子に固定されたままだったリチャードさんを指差します。
奥様の言葉の意味を悟り、私は呆然と奥様を見上げました。
「あ。その前にスカートは脱いでしまいなさい。よく見えないから」
奥様の命令には逆らえません。私は仕方なくスカートを脱ぎました。ブラウスとヘッドドレスはそのままです。
その間に奥様はリチャードさんのあれにとろとろとしたものをたっぷりとかけていました。あれは、たぶん一番最初に使っていた媚薬だと思います。リチャードさんが苦しそうに呻いていました。
「さあ、ソフィア。リチャードは椅子だと思えばいいのよ」
「は、はい…奥様……んっ」
私はおそるおそる肘置きとリチャードさんの隙間に膝を突いてリチャードさんのあれに手を添えました。リチャードさんのは大きくて逞しくてガチガチに固くなっています。
「ああ…」
そっと先端が触れてゆっくりと私が腰を下ろすのと同時にリチャードさんが入ってきます。
奥様に可愛がっていただく時にディルドやバイブで貫かれたことはあるけれど生身のそれを受け入れるのは初めてでとても緊張します。
「んんっ」
少し時間はかかったけれどなんとかリチャードさんの上に座り込むことができました。
リチャードさんのは作りもののそれと違って熱くてドクドク脈打っています。まるで生きてるみたい。
「……大丈夫か?」
耳元でリチャードさんの低い声がします。私はこくんと頷いてみせました。私よりもリチャードさんの方がたぶんずっとつらいから。
「ソフィア。どう? 気持ちいい?」
「あ、リチャードさんの熱くて、なんだか私……」
「気持ちいいのね」
私が頷くと奥様がそっとキスをしてくれました。そして、奥様は私のブラウスのボタンを外していきます。
じわじわと繋がった部分がうずうずしてきて私はたまらなくなって腰を揺らしてしまいました。はしたないけれど我慢できないのです。
「あん、あっ」
すっかりブラウスの前は広げられて奥様の手が胸をぐにゃぐにゃとこねまわします。
リチャードさんが奥に当たるのが気持ちよくて私は夢中で腰を揺らしました。
「いやらしい子ね。気持ちよくてたまらないって顔に書いてあるわよ」
奥様は私の乳首を舐めたり吸ったりしながら、もう片方の乳首をぎゅっと摘みます。
いつの間にかリチャードさんも耳や首筋に舌を這わせてきます。
「あっ、ああ、いい!! 気持ちいいですぅ、あっ、もっと、奥に欲しいのぉ」
ずんずんと腰を振りたてても自分ではあまり上手にできなくてもどかしい。もっと奥を乱暴に突いてほしいのに。
「仕方のない子ね」
奥様がリチャードさんの腕を縛っていた縄を外します。
リチャードさんが私の腰を掴んで激しく腰を動かし始めました。
「ああああああっ!! もっと、ああん! 気持ちいい!! あっ、あっ、奥にっ奥にあたってるぅぅ」
リチャードさんの動きにあわせて私も夢中で腰を使います。私とリチャードさんの体がいやらしい音を立ててぶつかり合います。
「ソフィア、可愛い」
触れてきた奥様の唇に私は自分からむしゃぶりつきました。息が苦しくなるくらいに舌を絡めて唾液を啜ります。
だんだんと頭の中がぼうっとしてきました。
「いや、奥様っ、わたし、いくっ!! いくの、ああああ……いきますぅ、いああああああああっ!!」
びくびくと体が震えて、気持ちよさで頭がいっぱいになります。あっという間に全身の力が抜けて私は奥様にしがみついたまま泣いてしまいます。
「まだよ、ソフィア。お仕置きだもの」
いつもなら優しく頭を撫でて下さるのに奥様は意地悪く微笑みます。それに応えるように私の中のリチャードさんがぴくりと動きました。
私がイった時にリチャードさんが低く呻いていたけれどイってはいなかったみたいです。
「先にギブアップするのはどちらかしら?」
そうか。リチャードさんはあれをリボンで縛られているからイケないんだ。
でも、奥様の命令には私もリチャードさんも逆らえません。
奥様に促されてリチャードさんがまた動き出しました。
「あッ、あひっ、あ、いい!! すごいぃ……ああん、いいのッ、奥…奥にぃ、ああああんっ!!!!」
リチャードさんの逞しいそれで突かれ、奥様に体中を優しく愛撫され、私の頭はぼんやりと靄がかかったみたいになります。
何度も何度も奥様とリチャードさんに責め立てられて私はイッてしまいました。
「ああああん! イッてるの、イッてるのにまだ…あッ、動いてる……中でこすれて、や、いやあああああ」
奥様のお仕置きは私が気を失うまで何時間も続きました。でも、とっても気持ちよかったし、奥様のごきげんもなおったし、リチャードさんも最後はリボンをといてイかせてもらってたから、あれでよかったんだと思います。
あんなに気持ちよくなっちゃうならお仕置きもいいかなと思っちゃったのは内緒です。
269 :
奥様×メイド:2006/10/24(火) 14:41:56 ID:ubjs1OcD
久しぶりに屋敷にお戻りになっていた旦那様が昨日旅立ちました。旦那様は世界各国を飛び回るお忙しい方なのです。
旦那様の前では奥様はとても可愛らしくなります。まるでティーンエイジャーの女の子みたい。旦那様のことを本当に愛していらっしゃるのだと思うとなんだか微笑ましい気持ちです。
今夜は奥様に呼ばれているのでたくさん慰めてさしあげたい。
私は奥様の部屋の扉をコンコンとノックします。奥様はすぐに扉を開いて出迎えて下さいました。
奥様はネグリジェ姿で金色の髪を緩く編んでいます。私のことを黙ってぎゅっと抱きしめて下さいました。奥様は私より頭二つ分くらい大きいので奥様の腕は簡単に私を捕まえてしまうのです。
奥様の甘い香りに包まれているとなんだかくらくらしてきます。
「ソフィア。私、眠れないの」
項を奥様の繊細な手が撫でて、耳に吐息がかかります。私はドキドキしてぎゅっと目を閉じました。
奥様は私の手を握り、ベッドまで引っ張っていきます。
二人で並んで横になって手を繋いで見つめあいます。
「ソフィア」
そのまま眠ってしまうこともあるけれど今日は奥様の腕の中に引き込まれました。
「あったかい」
ぎゅっと私を抱きしめて奥様は髪に頬ずりします。私はくすぐったくてちょっと笑ってしまいました。
やわやわと奥様は私の背中やお尻を撫でてきます。ちっともいやらしくない優しい動きです。
私たちはどちらからともなく唇を重ねあいました。触れるだけのキスを何度か繰り返してから舌を絡めあいます。
お尻に触れていた奥様の手がだんだんと熱っぽく変わっていくのがわかりました。
続きはまた後で投下します。
>今夜は奥様に呼ばれて
この前に『旦那様が旅立たれて奥様はとても寂しそうです。』が入ります。
sage忘れてすみません。
・・・・・・(・∀・;)
・・・((・∀・;))
GJ!!!(゜∀゜)
272 :
270:2006/10/24(火) 22:20:54 ID:ubjs1OcD
A.奥様と舐めあう69
B.←→こんなの挿してギシアン
どっちがいい?
B
B
両方という選択肢は無いのか。
アイーシャがどう選択したのか気になる・・・
作者さんがサイト作ったら絶対通うね、ものすごいツボった。
277 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 22:48:35 ID:lRpkqLXD
サイト見つけた俺は勝ち組wwww
ジン×姫君が気になってしょうがない。
続きが気になって眠れんよー
>>277 見つけられない漏れは負け組orz
マジで!?
俺にヒントkwsk
てか、サイトの話題をここで振るのは職人さんに迷惑かかるんじゃないか
ひっそり探して楽しもうぜ
281 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/26(木) 17:02:32 ID:kYhWO3wH
つ【携帯サイト】
創作ランキング入ってたけどさっき確認したら外してた。入ってそうな同盟回ればwww
暇だからネタでもふってやるか。
おまいらの萌える主従って何よ?俺は若頭とお嬢。セーラー服と機関銃はネ申だ
>>282 オーソドックスにお嬢様と執事。執事は家庭教師でもおkだ。
ジーヴスみたいなスーパー執事とかんしゃく持ちお嬢様とか
妄想するとご飯3杯はいける。
若頭とお嬢もいいな。ヤクザ者の「お嬢!」呼びは萌える。
>若頭とお嬢
イイ!
でも自分893は書けないから誰か頼む!
お嬢様と執事もいいな。
強大な帝国のお姫様と弱小国の王子→政略結婚→お姫様の機嫌を損ねる=帝国の機嫌を損ねる?→妻に頭が上がらない旦那.....こういうのも主従になるか?どこまでが主従なのか疑問なんだ
>>283 ちょうどウッドハウスを読んでいたところなので、ジーヴスは激ツボ
お人好しで、ぐうたらで、執事にぞっこんなお嬢様(詩の引用が趣味)と
頭が切れて鉄面皮で、何でも知ってる執事
「かしこまりました、御主人様(お嬢様?)」とか言っているといい
つくづく原作の若主人が男なのが惜しい
287 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/27(金) 04:04:19 ID:zln71peR
>>285 強大な帝国が弱小国侵略→その国の王子を姫の従者に〜、という流れなら主従だけどなぁ…
まぁ少し前でも議論されてるが結局のとこ、主従関係を感じさせられればスレ的にはokなんじゃない?
線引きははっきり言って無理だろうし。
実際書いてみて判断できれば、一番いいのかもしれないが。
>>277のせいでアイーシャの人がこなくなったらどうしようといらん心配をしてしまうorz
ここって王様×大臣(♀)とかダメなの?
逆に、どう頑張っても女大臣が主で男王様が従になるとは思えないけど、そこんとこどう思うかと問いたいわけで。
このスレは女性の立場が上だからこそ、と思うが。
よってこのスレには合致しない気がする。
メイドはスレがあるけど、
>>291みたいなのは無さそうだし良いんじゃない?
女主人派が主流ではあるけど自分はどっちも読みたい。
おいおい。少し前にも男主女従の話出てたけど結局このスレは女主男従以外だめだって結論に達してなかったか?
295 :
補足:2006/10/28(土) 03:52:17 ID:wph9/NVu
男主人を否定するんだったら次スレで女主人と主従関係みたいなスレタイに変更だな
個人的には間口狭くしても寂れるだけだと思うけど
女主のカプだけでも結構バリエーションはあるから良いべさ
奴隷をいたぶる女王様とかだって範疇だし
ほいじゃ次スレは分かりやすく表記とゆーことで。
今のスレタイの【お嬢様】と
>>1は引き続きで追加で1にでも
「ここは女が主で男が従者のスレです」とでも入れる?
それともスレタイ自体【女が主で】主従関係でエロパロ【男が従】にでもする?
個人的には主には姫君も奥様もいるからスレタイ変更をキボン
まだ容量あるし先の話だけどね。
ま、それはおいおい話してくとして引き続き新作SSアンドSS続きドゾー。
女主人てとこがいいんじゃないか。
この板にもフェチものが沢山あるけど、それぞれちゃんと趣向にあった作品が投下されてる。
>【女が主で】主従関係でエロパロ【男が従】
わかりやすくていいね。
良スレなので、今後も期待してます。
よく考えたら女主人と女従者もありなんだよな。
したら【主従で】女主人とその従者【エロ小説】でもいいかもね
まだ300レス、74kbの時点で次スレの心配してどうするよ。
議論はいい。主従を、一心不乱の主従カプを!
関係ないけど主従モノが見たかったらベルバラスレ行くと幸せになれるかもな
ちょっぴりヲヴァ臭がするが…あそこの職人はうまい。
しかし作品の傾向か、表現が特殊で最初は笑ってしまった。
個人的には主従だと言い張りたいが、読む人によっては主従には見えないかもしれない。
肌に合わないと感じた方はスルーして下さい。
ジャスミンにとって男とは概ねすべて自分にかしずく従僕に過ぎなかった。
そもそも国王と第一夫人の間に唯一生まれた子として幼い頃より甘やかされてきたのだ。異母兄や異母弟、他国の王や王子。ジャスミンの機嫌を損ねるような真似をする者は誰一人としていなかった。
そうした幼少からの環境が影響してか、年頃だというのに未だに嫁ぎ先も決まらず、父王は頭を悩ませていたのだった。
条件のよい夫候補を見繕ってもジャスミンは頑として首を縦に振らない。一度強く言って聞かせたところ、望まぬ相手に嫁ぐくらいならと短剣を胸に押し当てる始末だ。
だからといって、ジャスミンに意中の相手がいるのかと訊ねれば首を振るのだからお手上げだ。
とうのジャスミンはというと知己である姫君の元に数日前から滞在中である。
宮殿の一角、煌びやかな衣装をはためかせジャスミンは憤懣やるかたない様子で歩を進めていた。
蜜色の肌に金に近い茶の瞳。瞳と同色の髪は緩くウェーブがかかったように波打っており、腰まで伸びている。派手な顔立ちの麗しい女性である。
ジャスミンはふと足を止め、傍らの扉を勢いよく開いた。
「サーリム!!」
書棚に手をかけていた青年が一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐさま笑顔でジャスミンを振り返った。
白い肌に黒い髪。ターバンは巻いておらず、衣装もずいぶんとくつろいだものだ。僅かに開いた胸元からは引き締まった胸がのぞいている。
ジャスミンはつかつかとサーリムに近づき、彼女より頭三つ分は背が高いのではないかと思われる彼を睨みつけた。
「やあ、ジャスミン。今日もお元気そうでなによりですね」
「黙りなさい。サーリム、今日という今日は許しません」
「許さない? おや、私は姫の気に障ることをしましたか?」
「今のその態度が気に入らないわ。私との約束を破っておいてどうして平然としていられるの!?」
サーリムの国はジャスミンの父の国といっていい。なぜなら、サーリムの父はジャスミンの父に忠誠を誓っているからだ。
ならば、サーリムはジャスミンの臣下といってもおかしくない立場だ。もっと自分を敬うべきだとジャスミンはサーリムに再三申しつけている。
ジャスミンの意を汲み、サーリムは臣下のようにジャスミンに尽くしているのだがなぜだかいつも不興をかってしまう。今日もまた理不尽な怒りをぶつけるジャスミンをサーリムは困りきった顔で見下ろした。
「そう言われましても私はあなたと約束をした覚えは……」
そこまで口にしてはたと気づく。そう言えば、夕べジャスミンが何か言っていた気がする。
(もしかして……。いや、しかし、私は約束した覚えはないが)
サーリムは難しい顔をして考え込む。一方、ジャスミンは腹立たしげに腰に手を当てサーリムの答えを待っている。気まずい沈黙が数秒続いた。
「こんなことをいうのは大変心苦しいのですが、やはり私はあなたと約束をした覚えがございません」
かあっとジャスミンの頬が紅潮していく。
「すみません」
深々と頭を下げるサーリム。しかし、ジャスミンの顔から怒りの色が抜けることはない。
「嘘つき」
ぽつりとジャスミンが口を開く。
「だって、あなたは夕べ言ったじゃない。興味があるのならいつでもお教えいたしますよって」
「はあ、確かに」
「だから私は言ったわ。とても興味があるって」
その会話には覚えがあった。
夕食を終え、夜風にあたりながらサーリムは紅玉や碧玉、金剛石などの宝石を眺めていた。
サーリムは石の輝きが好きだった。それは時に意志を持つように人々を魅了する。特別な力を持った石も存在する。サーリムはジンの宿る紅玉の指輪を見たことだってあった。
そうして就寝前の時間を趣味に費やしていた時にジャスミンは現れた。相変わらず機嫌が悪そうな彼女の表情を見て、サーリムは苦く思ったものだ。
何をしているのかと問うジャスミンに説明し、先ほどの台詞を口にしたのだ。ジャスミンが興味があるのなら宝石のことを教える、と。
だが、具体的な日取りについてジャスミンと予定を組んだ覚えはない。ただの社交辞令にすぎないものとサーリムは判断していた。
サーリムは改めてジャスミンの顔を見下ろした。どうやら本気で怒っているようである。
「それでは、あなたは本日教わるつもりでいたのですね」
「当たり前でしょう。私はいつかは国に帰らねばならないのだから。時間は限られているのよ」
「それは申し訳ないことをしました。では、明日改めてあなたのための時間をもうけましょう」
サーリムにしてみればこれ以上ない譲歩だ。ジャスミンのわがままの為に一日予定をあけるのだから。
「それだけなの?」
しかし、ジャスミンの機嫌はそんなものでは直らない。
「困りましたね。私はどうすればよいのでしょうか」
一つ大きな溜め息をついて、サーリムは肩をすくめてみせる。
「あなたが私の所有物だって証明して」
つづく
前置き長くてすみません。エロは次回後編で。
「蜜色の肌」っていう表現がエロくて気に入りました。
続き期待。
309 :
304:2006/10/29(日) 02:56:23 ID:rboxdK+3
携帯充電終了したので続き投下します。
「ジャスミン、それは……」
ジャスミンが言い出したら聞かないことはわかっている。以前にも根負けしてジャスミンの言うとおりにしてしまった経験がある。しかし、二度とあんな真似はするまいとサーリムは心に決めているのだ。
「あなたは私のものよ。違うの?」
サーリムはジャスミンが好きだ。昔から妹のように可愛がってきたし、ジャスミンが女王のように振る舞い始めてからも──少々呆れはしたが──大切に思う気持ちは変わらない。
「いいかい、ジャスミン。体を支配すれば精神まで支配できるなんて下卑た悪党の思考だ。もっとよく考えて行動した方がいい。君は聡い娘だと私は信じているよ」
「黙って! あなたは私の言うとおりにしていればいいの」
ぐいっとシャツを引かれ、唇を奪われる。ふんわりと甘やかな香りと柔らかな肌に包まれる。
「ジャスミン!」
力任せに引き離し、サーリムはきつくジャスミンを睨みつけた。
「サーリム、私に逆らうのね」
サーリムは首を振って否定する。呼吸を整えて冷静さを保とうと必死だ。
「そうではありません。ジャスミン、頼むから聞き分けて下さい」
「あの頃の忠誠は消えてしまったの?」
ジャスミンのいうあの頃の忠誠とはおそらくサーリムが犯した若さ故の過ちのことに違いない。サーリムは盛大に溜め息をつく。
「ジャスミン、あなたは私のすべてです。それは変わりません。あなたへの忠誠を誓えというなら何度でも誓いましょう。しかし、あなたの体を欲望で汚すような真似は二度としたくないのです」
一年と少し前。ジャスミンの命令と自らの欲望に屈して彼女を抱いた日。幸福の絶頂と奈落の底を一度に経験した日。あんな思いは二度としたくないとサーリムは断固拒否する。
「見くびらないで。私は汚れたりしません。何人たりとも私を汚すような真似ができるはずがありません。……それに、私を汚すにはあなたの指は優しすぎるじゃない。唇も、吐息も」
ジャスミンの左手がサーリムの右手を握り、右手は唇に触れる。
「サーリム、あなたは何もかも優しい」
「ジャスミン、お願いですから離れて下さい。私は……」
「あなたが私を大事に思っている証がほしいの。あなたのすべてが私のものだと実感させて。忠誠を誓うなら私の命令には従いなさい」
ごくりとサーリムは唾を飲み込む。
(後悔するのは目に見えているというのに……)
サーリムの腕を引き、ジャスミンは背伸びする。
「サーリム、キスして」
引き寄せられるようにサーリムはジャスミンの赤い唇に唇を重ねた。触れるだけの口づけ。そっと唇を離し、けれども再びサーリムはジャスミンの唇を奪う。
若さ故か、欲望に支配されるのはあっという間だ。求めてやまないものがそこにはあった。
サーリムは口づけを交わしながら、ジャスミンの体に触れていく。一年前よりも少し肉付きのよくなった体。女性らしい丸みの増した体。
「ああ、そうよ。サーリム、それでいいの」
サーリムが項に唇を寄せ、ジャスミンの胸を包み込むように優しく愛撫していく。ジャスミンは満足げに呻いた。
書棚にジャスミンを押し付け、サーリムは夢中で彼女の体を貪った。
「ん、ぁ…きゃっ」
つんと上を向いた胸の頂をサーリムが口に含むとジャスミンが驚いたような声を上げて彼の髪に指を差し入れて掴んだ。
「あっ、ぁ…ん」
ぎゅっと握った左拳を口元に当て、ジャスミンはサーリムの与える刺激に耐える。サーリムの手が腿を撫でる度、舌が乳房を這う度、ジャスミンの口からは甘い声が漏れた。
「ジャスミン、気持ちいいですか?」
両の乳房はサーリムに舐めまわされてぬらぬらと光り、瞳には快楽で靄がかかる。すっかり快楽の虜になっているジャスミンの表情に気をよくしたサーリムは膝をついて臍に舌を這わせた。びくりとジャスミンの体が跳ねる。
「はぁ……あっ、あん! サーリム、そこはっ」
うっすらと生い茂る茂みの奥。既に蜜を沸き上がらせている泉へサーリムは唇を寄せた。ジャスミンは思わず、足を閉じようとサーリムの頭を腿で挟み込む。
けれども、そんなことは意に介さず、サーリムは舌を使ってジャスミンの秘所をゆっくりと解していった。強い快楽を与えながら。
「あっ、サーリム!! ああっ、いや……んう、はぁ…」
ジャスミンの嬌声がサーリムの愛撫に熱を込めていく。もっと声を出せと言わんばかりにサーリムの行為は激しさを増す。
「あ、あ、ああああああっ!」
ぶるぶると体を震わせ、ジャスミンは甲高い悲鳴を上げた。差し込んでいた指を襞がきつく締め上げ、蜜が止めどもなく溢れる。
サーリムの体が離れるとジャスミンは床に崩れるように座り込んだ。
「ジャスミン」
抱き寄せて宥めるように背を撫で、サーリムはそのこめかみに口づける。
「サーリム、サーリム、私のものよ」
息も絶え絶えといった様子だというのに、ジャスミンはサーリムの背に手を回してそう呟く。
サーリムはジャスミンの体を横たえ、覆い被さった。ジャスミンの中にゆっくりと熱く滾った欲望を沈めていく。
「ふ、あぁ……」
ジャスミンに軽く口づけ、サーリムは緩やかに腰を揺らし始めた。襞がきゅっと吸い付き、サーリムを強く締め付ける。
「愛してるよ、ジャスミン。君は私のすべてだ」
絶えず嬌声を上げ続け、サーリムの声など耳に入っていない様子のジャスミンに、サーリムは何度も愛を囁き続けたのだった。
*
「ああ、私は愚かだ。誓ったばかりだというのに」
身支度を整え、髪を手櫛で梳いていたジャスミンは不満たっぷりにサーリムを振り返る。書棚に背をもたせて座り込んでいるサーリムは不幸のどん底と言わんばかりの表情だ。
「サーリム! あなたって何て無礼な人なの!?」
先ほどまであんなに熱く体を繋げていたというのにこの仕打ち。ジャスミンはぎゅっと胸が締め付けられるような痛みを覚える。
「そう、わかったわ。あなたは私のことなんて本当はどうでもいいのね」
サーリムは驚いた顔で立ち上がる。
「違う。私は欲望に容易く支配されるような自分の精神の弱さを」
「言い訳はいいの。違うならいって。私が世界で一番大切だって。それから、そんな世界の終わりみたいな顔するのもやめて」
目を閉じ、サーリムは深呼吸を二度繰り返す。再び目を開いた彼の表情は僅かに恥ずかしそうなものに変わっていた。
「私は世界の終わりみたいな顔をしていましたか。すみません、ジャスミン」
「それから?」
「…………あなたは私のすべてだ。あなたのためならば私は命すら厭わない。私は、ジャスミン……あなただけのものです」
恭しくサーリムが頭を下げるとジャスミンは嫣然と微笑んだ。
「よろしい。それでこそ私のサーリムだわ」
おわり
ツンデレが書きたかったのにあんまりツンデレっぽくならんかった。
イイヨイイヨー
一年と少し前の過ちについてkwsk
314 :
怪物お嬢:2006/10/29(日) 16:25:51 ID:S42j9Z9r
>>256-260 の続き
*******
セレムは窓の桟からレティシアを抱き上げると自分の寝台へと運び、とすんと座らせた。
覆いかぶさるように抱きしめて、額に、頬へと口づけを繰り返す。
背中に手を伸ばしてレティシアの服のホックを外すと、セレムは器用に彼女の体から服を
はがしていった。同時に自分の上着をも脱ぎ捨てる。
レティシアは、自身の乳房をさらしてしまうと一瞬羞恥のためか頬を赤く染め、顔をそらした。
彼女は自分の胸は小ぶりだと、やや気にしていたのだ。
だが、セレムはレティシアの困惑に構わず彼女のあごを掴むと、その顔を強引に自分の方へと
向けさせた。そのまま唇を重ね、中へと舌を差し入れていく。
「んっ、……」
鼻にかかった声でレティシアは小さく抗議の声をあげた。
今日はずい分性急すぎる。
ぐいと肩を押して唇を離すと、レティシアは自分をかき抱く男にこう尋ねた。
「……まだ、怒ってるの?」
「怒ってませんよ、別に。……ただ、次からはきちんと私の言いつけを守ってくださいね。
私が出歩かないようあなたに言ったのは、何も人間の事だけじゃないんです。
今はさすがに鳴りをひそめてますがね。あなたを狙う輩がこちらまで来ないとも限らない。
……お傍にいなくてはあなたをお守りする事だってできません」
レティシアは魔界の次代を担う女王候補だ。そして現在の魔界の主である祖父王に一番
目をかけられているのは彼女だ。それ故にいらぬ恨みと妬みをかう。
彼女を弑して自らや、自らが冠する者を王の座へと近づけようとする不逞の輩は
闇にまぎれて確かに存在していた。
セレムはレティシアの手を掴み、引き寄せるとその甲へとそっと口付けた。
「わかった……、気をつける」
神妙にうなずきながらレティシアは言った。だがセレムはそれを見ても、ただただ苦笑した。
喉元過ぎれば何とやらで、レティシアはいつでも自分の好奇心を優先させてしまうのだ。
315 :
怪物お嬢:2006/10/29(日) 16:27:39 ID:S42j9Z9r
「それでは次からはきちんと約束を守るよう、今日はちょっとおしおきをしましょうか」
冗談めいて言ったその言葉にレティシアは吹き出した。
「おしおき? だったら今日はひどくするの?」
「そう、だから手加減してあげませんからね」
宣言してセレムは再度レティシアの唇を奪った。口内に侵入してくる質量をレティシアは
迎え入れると、おずおずとそれに自分の舌をからめていく。
あごを支えていた手をずらしていき、セレムはレティシアの乳房を手のひらですっぽりと包んだ。
唇を吸いながら小さなふくらみを緩急つけながらもみしだいていくと、腕の中の少女が
眉根を寄せて呻いた。
「ふ、う……」
セレムは、手のひらの中央に段々と小さく尖った感触を感じ始めていた。
「レティシア様」
熱のこもった声音で名を呼んで勃った乳首をつまみあげると、レティシアは
セレムから唇を離して背をのけ反らせた。
「やぁっ」
「逃げないで」
セレムはレティシアの腕を掴んで引き寄せ、華奢な肩に力をかけてゆっくりと押し倒した。
白い胸がセレムの手のひらに押し上げられて形を変えていく。
「ふ……あぁ、……っ」
くりくりと乳首を刺激するとレティシアが何事か小さく呟いた。その声には艶やかな色が混じっている。
そして仰向けになったレティシアのほっそりとした足をセレムは掴むと、ぐいと強引に開かせた。
「…………っ」
膝を割られ、秘すべき花弁をさらしてしまうとレティシアは手のひらで顔を覆った。
羞恥のために、その頬は真っ赤に染まっていた。
セレムが内腿に触れると、反射的に力が入り、レティシアは抵抗のつもりはないのだろうが
足を閉じようとした。
誘うような真似をしてみても、レティシアは未だ艶事に慣れておらず、組み敷こうとすれば
生娘のような反応を見せていた。それがセレムには愛おしい。
優しげにセレムはレティシアの内腿をなで上げた。
レティシアの反応はどうあれ、その肉体は既に快感を覚えさせられている。
快楽への期待半分、その訪れへの恐怖半分がレティシアの中でうずまいている。
彼女の白い喉がこくりと鳴った。
316 :
怪物お嬢:2006/10/29(日) 16:28:09 ID:S42j9Z9r
セレムはレティシアの割れ目へと手を伸ばすと、その入り口に指を押し当てた。
「あっ……」
まだ、触れられているだけなのにレティシアは思わずといった様子で声をあげる。
だが指は執拗に入り口のみを刺激して、中へ入ろうという気配を見せなかった。
レティシアは眉を寄せ、首を振るとセレムの腕を掴んだ。その腕の力が、彼に『お願い』と訴える。
セレムはそれを受けてレティシアの陰唇を広げると、指先を中へ差し込み変則的な動きで中を刺激した。
「あうっ、……はぁっ」
レティシアの嬌声を聞きながらセレムは指先の感触を楽しんでいた。
生暖かい、むしろ熱いほどのレティシアの内部がセレムの指をくわえ込む。
ねっとりとした愛液が奥から湧き出て彼の指の侵入を助けていた。
「まだ指だけだというのにこんなに濡れて……」
愛しげにそう呟くと、顔を紅くしたレティシアが身を起こしてばしっと彼の頭をはたいた。
「そ、そういう事をいちいち口にしなくていい!!」
必死に訴える様が愛らしくてセレムは思わず笑いをこらえてしまった。
それを見てかっとなったレティシアは、更にセレムをぶとうと手を振り上げたが
その手を逆に絡め取られ、目を見開いた。
「……人をそう何度もぶつものじゃありません」
「お前がそういう事をさせるからじゃないか」
レティシアは握られた手の感触にうろたえていた。セレムのその手は生暖かく、湿っている。
「あなたのですよ」
けろっと言われた言葉にレティシアは眉を吊り上げた。
「だから――」
言いかけてレティシアはぎゅっと唇を噛みセレムの腕へとすがりついた。
そのまま小さく息を吐いて、レティシアはびくっと体を震わせる。
317 :
怪物お嬢:2006/10/29(日) 16:29:03 ID:S42j9Z9r
「あ……」
レティシアの中を、セレムの指が蹂躙していた。
細長い指が器用に動いて粘膜を刺激する。
「ふ……、あああっ、んんっ」
淫靡な音をたてながら、セレムはレティシアの花芯から湧き出る蜜を掬い取り、それを
また彼女自身の花弁へと擦り付けた。
それを繰り返して更に深くレティシアの中を抉っていく。
「ああんっ、あっ、あっ」
絶え間ない指淫によって、レティシアは追い上げられていた。
「やぁっ、セレム、セレム……もうむり……っ」
導かれるままに高みへと連れて行かれながらも、開放されるその一瞬で
セレムはレティシアを導く手を離してしまう。
目尻に涙を浮かべながらレティシアは訴えた。
「も……だいじょう、ぶ……。だから早く……っ!!」
だが、セレムはわざと更に指でレティシアを翻弄すると彼女の耳にそっと囁いた。
「早く? 何ですか?」
「……いじわる……! ばかっ、変態!」
罵り言葉に苦笑しながらも、涙目で睨みつける様が可愛らしくてセレムは彼女をじらすのをやめにした。
自身の屹立をあてがうと、セレムはゆっくりと深くえぐるようにレティシアの中に侵入した。
「あ、あああ――っ!」
質量を受け入れかねてレティシアは喉をのけぞらせて叫び、セレムの肩を強く掴んだ。
レティシアの内部はとても狭く心地よくセレムを締め付ける。肩の痛みさえもセレムには好ましかった。
「こ、れが……欲しかったんでしょう? レティシア様……」
名を囁いてぐっと更に深く差し入れると、レティシアは悲鳴をあげた。
「ちがっ、……ああ、いや……っ」
「嫌? ならやめましょうか」
「やだ……、やめないで……」
318 :
怪物お嬢:2006/10/29(日) 16:29:59 ID:S42j9Z9r
レティシアは甘やかな声音で呟くとセレムの体に抱きついた。
柔らかな乳房が裸の胸に当たりセレムは何ともいえない感触を感じていた。
主へのせめてもの気遣いで、できる限りゆっくりと、セレムは腰を動かし始めた。
「ああぅっ、んっ、ううっ……」
突き入れるたびにレティシアは艶を帯びた鳴き声をあげた。
密着してくる体を抱きしめると、レティシアは安心したようにセレムの喉元にそっと唇を寄せた。
触れられた場所から、じん、と燃えるように欲望が広がっていく。
今やセレムは目の前の少女の一挙一動に欲望を煽られていた。
セレムの瞳に情念の光が灯り、一瞬血のように紅い光を帯びた。
悪戯心を起こしたセレムはレティシアの首筋に、彼女と同じように口付けた。
「…………?」
その唇の思わぬ冷たさに、レティシアは怪訝そうに視線を向けた。
するとセレムの唇の端から尖った牙がのぞいていた。レティシアの顔にさっと焦りの色がかすめる。
「や、やだ……っ、血を吸うのはやだっ!」
そう叫ぶと、レティシアは慌ててセレムの顔を掴み、自分の首元から引き剥がそうと力をこめた。
だが再びセレムに奥へと差し入れられて、深く繋がる事を要求されると、レティシアの
手足は途端にその力を萎えさせてしまった。
セレムの顔を掴んでいた手は力なく落ちて、されるがままに体を揺らされていた。
「う――」
瞬間、レティシアは首筋に甘美といえるほどの痛みを感じた。
その場所から魔力が抜けていき、同時に体中の感覚が鋭敏になる。
「はっ、あ……っ、ううっ……ん」
首筋に歯をたてられ、舌を這わされ、強く吸われながらレティシアはゆるゆると首を振った。
「血を……吸わない、と約束したのに……。嘘つきっ」
「“人間の血は吸わない”という話だったでしょう?」
319 :
怪物お嬢:2006/10/29(日) 16:30:30 ID:S42j9Z9r
セレムがレティシアから唇を離し、にっと笑った。その顔は小面憎いほど愉快そうだ。
「第一、いつもトマトジュースじゃいくらなんでも身が持ちませんよ。
たまには……血を吸わせて頂かないと。ああ、あなたの血は特別極上でしたよ」
捕食者の目をしながらセレムはレティシアの首の傷跡をぺろりと舐めた。
「うっ、ううっ……」
そして、そのまま鋭敏になった体中に口付けをされて、レティシアは身を震わせた。
セレムが身動きするたびに、自分を貫く肉の存在をはっきりと感じてしまい、
息も絶え絶えにあえいでいた。
中を擦られて、耐えられないほどの愉悦が電流のように身のうちを走る。
「あっ、あああああ―――っ!」
許しを請う唇は、セレムによって塞がれた。
引き抜かれ、再び挿入されてレティシアは腰の辺りから全身へと広がる快楽の波に身を任せていた。
腰をつかまれ、数度目の抽送が始まってレティシアは足でシーツを突っ張らせた。
再び波が高まっていき、レティシアは今度こそ解放される予感を感じていた。
叩きつけられる度にその波は高まっていく。
セレムもまた、レティシアの中で張り詰めた欲望を解き放とうとしていた。
自分が吸血した痕をセレムは再度舌で辿っていく。
「う……」
するとレティシアが小さく息を吐き、その内部がきゅう、と動いた。
セレムは身震いするほどの吐精感に勢い良く欲望を吐き出し、レティシアは
声なき悲鳴をあげてそれを受け止めた。
「……大丈夫ですか?」
しばらくの間、二人ともぐったりとしていたが、セレムは呆然としているレティシアを
抱き起こすと、首を傾げて尋ねた。
「い、嫌だっていった、のに……。血を吸うのはやだって……」
小さく呟いたレティシアの姿に、セレムは思わず居住まい正して謝った。
「その……申し訳なかったです。ちょっと悪ノリしたというか……」
「いつも好き勝手するんだから!!」
ぐーで殴られたセレムの肩が小気味の良い音をたてる。
「すみません……」
「……次にあんな事したら、お前としてる最中に『変化の術』で
お前自身の姿になってやる……」
「私が悪かったです……ホント許してください」
恐ろしい復讐方法の提案に本気で謝りながら、セレムは主の顔色を窺った。
夜が明けるまでにはまだ時がある。
だがセレムは、レティシアの機嫌を直すまでは眠りに落ちることは許されなさそうであった。
*******
(終)
320 :
怪物お嬢:2006/10/29(日) 16:39:53 ID:S42j9Z9r
おしまいです。自分の萌えが満足できてすげー楽しかったー。
『怪物くん』にはあとオオカミ男もフランケンもいるので
他のお供たちとからめて話書いたらまた勝手に投下しに来ます。
ではでは
萌えた(;´Д`)ハァハァ
少女漫画なんだけど、森生まさみのミモザにサラダって漫画は、
主従萌えにはたまらん漫画だよ
>>314 GJーーーー!!
可愛いよ悪魔っ娘お嬢様〜
うおお、俺怪物くん大好きだったんだよ!出だし読み出して「もしかして…」と思ったけど…萌えまくったー。GJ!
次は狼男希望。やっぱりコックさんなんだろうかw
怪物くんと言えば怪子ちゃんが大好きだった(;´Д`)ハァハァ
今見てもオシャレだよ。
GJ!!悪ノリしちゃうセレムがツボです。
色んなSSの続きをハアハアwktkしながら待ってる俺がちょっと通りますよ。
暇だから雑談をしてみる。
モマイらの主従神作品はなんだ。読んでみたいから教えれ(´∀`)
じゃない「教えてくださいご主人様」だな。
ちなみにミモザでサラダてのはどんな漫画?
主従萌えと聞いていっちょ挑戦するかと思ってる。
俺が買ってもヘンタイ扱いされなさそうな内容なら。
322じゃないけど持ってる
両親と祖父を亡くし、莫大な財産を相続したお嬢様ミモザ
祖父の遺言でボディーガードのカイルと暮らすことになるが、彼はなんとロボットだった!?
って感じの少女漫画。微エロ。
まとめサイトは更新されないのかな?
327だけど328、教えてくれてd。
そうか微エロか。なら特攻できそうだ。
>>329 リアルが忙しいのかもよ。
そーいやなんか『更新速度は遅いかも。ゴメンネ』的な事言ってたのを姫スレの方で見た気もする。
気長に待つが吉だとオモ
328なんだが、微エロといっても少女漫画だから期待に応えられるかはわからないことを了承願いたい
性コミみたいなエロではないし
332 :
5:2006/11/03(金) 23:33:49 ID:3O2+dcCS
個人的な事情で保管が遅くなっていて、大変申し訳ないです。
このスレの前スレのSSは保管済みなので
姫スレと女兵士スレの過去スレを先に保管しています。
それが終わってからこのスレのものもぼちぼち保管していくので
気長にお待ちくださると嬉しいです。
応援してくださる方々には本当にありがたく思っております。
いつも乙です。
怪物お嬢マダー?
アイーシャマダー?
エレインマダー?
337 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/05(日) 19:56:16 ID:F53HsC0L
ユーリエマダー?
志乃マダー?
ソフィアマダー?
>>331 おうよ。ま、古本屋で気長に探してゲットしてみる。
あーなんか性コミはすごいらしいな。
鬼畜ロリやら変態ボーカリストやらがわっふるわっふるしまくってるらしいじゃないか。
羨ましいじゃないか。
とりあえず俺も新作と続きマダー。
でも投下者さんズ、無理はしなくていいからね(´∀`)
何でもいいから主従SS読みたい(´・ω・`)
職人様マダー?
みんなも希望を書き込むんだ!!!!!
牡奴隷がエロスな女主人に色エロされる(させられる)話とか読みたいです安西先生
でもぶっちゃけ主従ものなら何でもいいです
>>111の続き。神々の続編じゃなくて悪いが繋ぎにどうぞ。繋ぎにならねぇよって突っ込みはなしで。エロもないよ。
最後に少し話しがしたい。
そんな想いに囚われて自分は今、彼女の部屋の前にいる。
時刻は夜。しかも、婚儀を祝う前夜祭のような晩餐会の最中だ。
仕事を放り出して、しかも彼女の部屋の前にいると分ればただでは済まない。
それでも、彼女に会いたい。
「失礼します、お嬢様」
有無を言わさず、部屋に入る。
普段ならば絶対にやらない行為。そしてその勢いに任せて彼女に何かを言おうとした。
けれど…
「っ!…ど、どうかしたの?急に入ってくるから驚いちゃったわ」
ベッドの縁に座っていた彼女の頬にある涙の跡に気付いて勢いはなくなった。
しかし、無意識に呟いていた。
「……どうして、泣いてるんですか」
理由など分っている。彼女はこの婚儀を望んでいない。
私がそれを分っていることも彼女は気付いているはずだ。
けれどその言葉に彼女は儚く微笑みながら答えた。
「…そうね。彼は本当にいい人だわ。会ったのは今日が初めてだけれど、『この人は私を幸せにしてくれる』そう思えたもの」
その言葉に胸が疼く。なんとなく彼女の方を向いていられなくて視線を床に落す。
しかし、自分もそう思ったのだ。彼女の夫になる人は彼女を幸せにしてくれる、と。
「……だけど、ね。それでも彼は私が願う人ではないから」
その言葉に顔を上げて彼女を見る。彼女の頬を再び涙が伝っていた。
「私が願う人は…生涯共にありたいと願う人は…アナタだから」
そう言って、今度は彼女が顔を伏せる。
鼓動がうるさい。なのに体は金縛りにあったように動かない。
そんな中、頭の中で何かが警告を出す。
自分は何も聞かなかったことにしてこの部屋を去る、その方が彼女は幸せになれる。
それが彼女のためだ、と。
その声が聞こえた時、今まで動かなかった体が動いた。いや、勝手に動いていく。
体に染み込んだ従者としてあるべき動き。その動きで離れていく。
部屋の扉から。
そして顔を伏せる彼女の前に立つ。頭の中ではまだ止めようとする声がする。
けれど私は、いや俺はそれを無視する。この声は臆病な俺の遠吠えだから。
俺が近くに来たことに気付いた彼女が顔を上げる。
手を伸ばしその頬を伝う涙を手で拭ってやる。昔そうしていたように。
「ん……ふふっ、なんだか昔に戻ったみたい…」
彼女も、いや、コイツもそう思ったらしい。
「そうだな。…けど、お前は昔より綺麗になったぞ」
「え…?」
俺の口調が変った、いや昔に戻った事に驚いたのかきょとんとしてる。
ああ、こういう顔は昔とおんなじで可愛いな、なんて思う俺は終わってる。
まぁそれは置いといて、今だに呆けてるコイツに手を差し出し、声をかける。
「行くか?」
それは2人で屋敷を抜け出す時のいつもの儀式。
断られた事なんてない。コイツはいつだってこう答えたから。
「うん!アナタと一緒なら何処だって!」
以上〜。
駆け落ちする続きが〜ってレスがあったんで書こうとは思ってたけどなかなか…orz
まぁ、男が急に従やめちゃってるけどそこは・・・ゴメンナサイ反省します。
いやおk。
幸せになってほしいものだ。
DQ4の小説のアリーナとクリフトみたいな話が読みたい。
思い返せば、あれが主従萌えの原点だわ。
アリーナとクリフト!
なつかしーな。今でもこの主従好きな人多いよね。
それにしても幼なじみで乳兄弟で姫と神官で
強気主とヘタレ従者てコンボ決まりすぎ。萌えるなぁ。
でも乳兄弟てのは昔でてたエニクス小説版だけの設定だったっけか?
あの小説、文章とか雰囲気とかあんま好きじゃなかったけどクリフトがアリーナを
押し倒すイベントがあって(未遂だけどな)禿萌えた。
350 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/06(月) 19:54:52 ID:KxaULM9J
佐々木みすずの「お嬢様シリーズ」我侭お嬢様瑠璃子と
お守り役義明のエッチなお話。萌えー
>>283 こんな感じ?
本が手元にないのでなんか色々と違ったらすみません。
一応名前は変えてみたけど、なんか別物みたいですね。
――――――
シーブスっていう執事の話をするなら、彼はなにをとっても素晴らしい。
主人を気持ち良く起こす時間というのも心得ているし、なによりもジー
ヴスの作った特製ジュースは二日酔いに抜群に効く。
これだけでブラヴォーってもの。
誰もが羨む比類なき執事。パーフェクト。
これが私の執事だ。
私とこの執事はもう何年もロンドンのアパートメントに気侭に2人暮らし
をしているわけなんだけれど相性ってものなのか私の人徳ってものなの
かしら、それがこれまでにないってくらい快適な暮らしだ。
それにはシーブスの能力っていうのも大きく関わってくるのだけれど、
上記の通りシーブスの能力は疑い様もないので私は今まで彼を雇った誰
よりも彼の事を重宝している。
休日のハイドパークで彼の良さを演説したっていいくらいには召使いな
がらも彼のことを尊敬しているが、しかしまぁ人間誰しも欠点がある。
そしてシーブスだってその例外じゃない。
シーブスの欠点をあげるとするなら、家事でもなく(彼の料理はロンド
ン一よ。少なくとも執事の中では)運転技術でもなく(私よりは上手い。
これまた少なくとも)、実はその保守的な服装の趣味だったりする。
気持ち良く目覚めたきっかり5分後にシーブスが目覚めのソーダ水を持
って寝室に入って来た。
ノックはあるけど挨拶はない。
「おはよう、シーブス。良い朝ね」
仕方ないのでこちらから極めて好意的に朝の挨拶をすると、シーブスが
少し驚いた顔で返事をする。
「お早う御座います、ご主人様。まだ眠ってらっしゃるかと。」
あんまりな言葉ににっこり笑い返してみるけど、いくら私だってジーヴ
スのこの言葉が嘘かぐらいなんて見抜けるってもの。
シーブスにとっては私の起床時間を当てることなんかボートレースの順
位当てより簡単なものだ。
というのも、今の私達の間にはテムズ河より不透明で陰鬱な深い溝が出
来てるのだ。
原因は分かってる。昨日の昼間のことだ。
ウィンドウでそのブラウスを見つけたとき私は神から天恵を受けた。
素敵なブラウスだった。触り心地も最高だったし形も良かった。
なによりその色が一番気に入った。
こんな色のブラウス、ロンドン中捜したって見付からないだろう。
もう一目で心を奪われてしまって後先の事が考えられなかった。
だって気が付いた時には既に私はそのブラウスを手に入れていたのだも
の。
それなのに弾んだ心持で部屋に帰った私を迎えたシーブスの顔ったら!
子どもの頃ラテン語を教わった50を過ぎたカヴァネスが、ラテン語の
暗誦に詰まった私を見る時の顔にそっくりだった。
またやっちまったな。
しかし私だって主人だ。服装まで召し使いの言い成りになってなんかい
られない。
今まで虐げられていた分、今日こそ断固として自由を勝ち取ろう!
ヴースター家不屈の精神は今こそ発揮されるべきだ。
「朝食はこちらにお持ちしますか?それとも先に」
お決まりの朝の台詞を吐くシーブスを遮る様に、私はこほんと咳払いを
した。
「うん、先に着替えようかな。」
「…左様で御座いますか。では着替えを。」
とクローゼットに行きかけるシーブスを慌てて引き留める。
「あー待って。今日は昨日のブラウスを着るわ。」
よし言った!えらい、私ったら!
「…左様で御座いますか。」
シーブスの苦苦しい声。
私は自分を褒め称える高揚感とそれを隠そうと努めた冷静さの入り混じ
った顔でシーブスの顔を覗き込む。
「ん?なにか不満そうね。」
「滅相も御座いません。」
「いいえ、そんな顔じゃあないわよ。不満があるなら言って御覧なさい。
召使いの話を聞くのも主人の勤めというものよ。」
言いながらついでに勝利の笑みをするとシーブスは仕方がないと口を開く。
「でしたらご主人様。昨日のブラウスですが…」
「あら、その話は昨日きちんと説明したじゃない、素敵なブラウスだって。
お前はあれのどこが不満なの?」
「いえ、御座いません。ただ虹色は大衆受けは難しいかと存じます。」
俯きながら応えるシーブスの気持ちを抑えた哀しい声に、少し調子に乗り
過ぎたかと反省する。
私だって悪魔じゃない。落ち込んでいる召使いにはそれなりに情が移る。
「シーブス、お前なにか欲しい物でもある?」
化粧台にいくらかあったはずだ。ブラウスを諦めてもらう代わりにこづか
いくらいやってもバチは当たらないだろう。
「よろしいのですか?」
「いいよ。何でも言ってご覧。」
それでシーブスの機嫌が直るのなら安いものだ。
正直、昨日からのシーブスの不機嫌に付き合うのはそろそろさよならした
い。
「ではお言葉に甘えまして」
シーブスは務めて嬉しそうな顔を作ると、それに騙されああやっぱり執事
にはこれくらいの広い心で接しないとと油断した私の背中をぐっと抱いて
顎を掴んだ。
驚きに思わず目をつぶると、吐息かなにかもわからない空気の揺れを感じ
た唇に柔らかい物が降りてきた。
唇と唇が擦れあうと、今度は角度を変えて私の下唇を唇ではさんでくる。
ちょっと歯をたてられるとそのかすかな痛みに反応して開いた唇に、素早
く舌が侵入する。
「あ…はぁ」
息が苦しくて顔を離そうとするけれどシーブスががっちりと私の後頭部を
掴んでいるのでそれが適わない。
シーブスの舌が私の上顎を撫ぜると寒気のようなものがぞくりと背中を駆
け上がった身震いに反応した舌がシーブスの舌と擦れあう。
戸惑う私を置いてきぼりに、その舌をシーブスの舌が絡めとるとぎゅっと
引張る。
快感と酸素不足で頭がクラクラしてきた。
「あふ……」
でももう少し、と伸ばしかけた私の手はその相手によってするりとかわさ
れた。
シーブスが前倒しにしていた自分の体を起こしたからだ。
彼は突然なにかを思い出したかのように立ち上がると、キスの余韻もなに
もなかったかのように私の唇からだらしなく垂れたよだれを拭いた。
綺麗に伸ばされた背筋がカーテンを開けた窓から差す日の光に映える。
「申し訳御座いません、まずお着替えでしたね。昨日のブラウスをお持ち
致します。」
シーブスはそう言うとくるりと私に背を向けた。
あまりの態度に私はあわてて彼の服の袖を掴む。
「いかがされましたか?ご主人様。」
もう一回、とは貴族の沽券にかけて言うわけにはいかない。
しかしなにかを言わなくては。
「シーブス、あのブラウスだけど…」
「なんで御座いましょう?」
私は胸の中であの素敵なブラウスとの別れを惜しんだ。
あぁ、せめて一度位は袖を通しておけば良かった!
気分はまるで無実の被告に死刑を告げる裁判官のようだ。
「処分して頂戴。」
「有り難う御座います。もう致しました。」
シーブスは繊細な仕草で彼の右腕を持ち上げると
にっこり微笑みその袖を掴む私の指先に軽くキスをした。
やれやれ、まったく!
というわけで再開までの時間が短縮出来たってもの。
どうだろう、やっぱりシーブスより完璧な執事はこの世にいまい。
おわり。
355 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/06(月) 23:47:39 ID:0SmhYE7a
GJ!!
いい!!
アイーシャの続き。まだ終わりではないです。ちょっと長くなってしまった。
少し前までの日課と同じくアイーシャは紅玉の指輪を眺めていた。相変わらず星は静かに煌めいていたが、動き出しもしなければ形が変わることもない。ジンが現れたなど夢ではないかと思わせる。
指輪をしまいこみ、アイーシャは宝石箱に鍵をかけた。
ジンが指輪に戻って以来つきたくもない溜め息ばかりがこぼれ、胸が締め付けられるように苦しい。恋しいだなどと認めたくはないけれど、この胸の痛みが何であるかアイーシャには少しずつわかってきていた。
アイーシャは寝台に倒れ込み、全身の力を抜いた。ゆっくりと体が沈んでいく。
気づいてしまったからこそ、アイーシャはジンを呼び出すわけにはいかない。再び目の前に現れてしまえばきっと今までのようには振る舞えない。それに、ジンは気の遠くなるほど長い時間を生きるのだ。永遠に側にいることなどできない。
じわりとアイーシャの瞳に涙が溢れこぼれた。
「アルジャジール……」
目を閉じれば声が聞こえる。肌に触れる腕を感じる。それが幻だとわかっていても、その幻にすがることしかできない。
幻に抱かれ、アイーシャは緩やかに眠りに落ちていた。
*
「目が覚めたかい、お姫さま。また泣いていたんだね」
少しばかり痛む目を擦り、アイーシャは傍らに置かれた手に手を重ねた。優しくアイーシャの髪を撫で、サーリムは微笑んでみせる。
「こうなる前に私としては手を打っておきたかったのだが」
「お兄さま」
「仕方がないな。一度傾いた想いは落ちていくばかり。そのくらいは私にもわかる」
アイーシャはサーリムの顔を見上げた。昔から兄に隠し事などできなかった。今回も兄は何もかもお見通しなのだとアイーシャは悟る。
「お兄さま、わたくしは……」
愛しい兄の膝にすがる。膝が濡れるのもかまわずにサーリムはただただ優しくアイーシャの髪を撫で続けるのだった。
*
かたりと音がしてサーリムは傍らに視線を移した。アイーシャの髪を撫でる手はそのままに、もう片方の手で髪をかきあげる。
「……ジン」
「よお、サーリム」
腕をおろすとさらりと髪も落ちる。サーリムはさして驚きもせずにジンに笑いかけた。アイーシャに見せる微笑とは違う、少しばかり呆れを含んだ笑みだ。
「そんなに心配なら素直になればいいのに」
サーリムの呟きには答えず、ジンは寝台で休むアイーシャの側へ近づいていく。
「まったく。どこまでも世話のかかる奴だ」
「誰のせいだと思う?」
「元はといえばお前が余計なことを言うからだ」
「兄として可愛い妹をジンに渡したくはないさ。当然だろう。……アイーシャがこうなるとは計算違いだったがね」
小さく舌打ちをしてジンはアイーシャから離れて窓辺に近づく。窓枠に腰掛け、顔をしかめて兄妹へ視線を向ける。
「俺はどうするべきだと思う?」
サーリムはアイーシャを愛おしげに見つめながらそれに答えた。
「それを私に訊くのか? 愚問だな」
「わかってるさ。お前は俺が嫌いだからな」
「そんなことは言ってないだろう。私が厭わしく思うのはアイーシャを傷つけるものだ。アイーシャが大切に思うものは私にとっては守るべきもの」
ジンが整った顔を心底嫌そうに歪めるのをサーリムは楽しげに眺める。
「お前に守られたいとは思わんな」
「君のことを言った覚えはない。君を守るなど私としても御免被る」
「……性悪め」
「お互い様だ」
ふっとサーリムが表情を引き締めてジンを見上げる。
「冗談は抜きにして、私が願うのはいつだってアイーシャの幸せだよ。お前はお前のしたいようにすればいい。それがアイーシャにとって幸せなものであれば私は全力で援護する」
「幸せなものでなければ?」
「ありとあらゆる手を使って阻んでみせよう」
くつくつとジンは笑う。赤い瞳がきらりと煌めいた。
「言うと思ったぜ。シスコンが」
ジンは窓枠からおりて、再びアイーシャの側へ歩み寄る。その頬に軽く触れ、唇を寄せた。
「とにもかくにも姫君に選択権を与えたんだ。選んでもらわなければ俺には何もできない」
「それで、捨てられたらどうする気だい?」
「地の果てに追いやられたって舞い戻ってやるさ。捨てていいとは言ったが戻ってこないとは言ってない」
ジンの顔をまじまじと眺め、サーリムは堪えきれないとばかりに吹き出した。
「知っているか。諦めの悪い男ほど見苦しいものはないんだぞ」
「お前に言われたくない。十も下の女に頭が上がらんくせに」
二人は黙り込んで睨みあう。あわや口論になるかと思いきや、ジンが小さく溜め息をつき、空気が和らぐ。
「そろそろ姫君がお目覚めだ。俺は退散しよう」
サーリムが視線を落とすとアイーシャが何事か意味をなさない言葉を呟いた。
「アイーシャが……」
ぽつりとジンが言葉を落とす。
「アイーシャが俺のことを忘れたがっているなら、その時は」
「わかってる」
「……頼むぞ」
それきりジンは姿を消し、宝石箱は変わらぬ姿をさらしている。
ジンの開け放った窓からは少しばかり冷たい風が吹き込み、サーリムの髪を揺らした。
──こんなことをお前に頼むのは癪だが、お前にしか頼めないのだから仕方ない。
アイーシャが指輪をなくしたと父に伝えた晩、サーリムの枕元にジンが現れた。手渡されたのは小さな青色の瓶。中に入った液体を飲み干せば望む記憶をなくせるのだという。
「馬鹿な男だ。なあ、アイーシャ」
眠りから覚める頃なのだろう。僅かに身じろぐアイーシャを見つめながらサーリムは深々と溜め息をついた。
つづく
サーリム兄様とジンは仲良し。
次でアイーシャに決めさせたいと思う。
361 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 03:22:45 ID:eEb9aMeV
うぉぉお!続き気になる!
アイーシャタンガンガレ(´Д`)
アイーシャ!アイーシャ!
アイーシャきたー!
ジンはこんなにもアイーシャのこと大切に思ってたんですね。
二人の間にどんなことが今まで起きてきたんだろう・・・!
続き気になります。357さん素敵な作品をありがとう!
姫君の選択完結編投下します。
>>193の希望に添えていればよいが。
夢を見る。愛しい人に抱かれる夢。けれども、感極まって愛を囁こうとした途端に優しい腕は消えてしまう。
アイーシャは緩慢な仕草で目を擦り、夢の余韻を追い払う。
(ダメだわ)
連日連夜夢に惑わされて泣いている。このままではいけないとアイーシャは深く吐息をついた。
決心したはずなのにいざとなるとやはり気が引けてしまう。しかし、先延ばしにしたところで何も変わりはしないのだ。
アイーシャは寝台から降り立ち、宝石箱の鍵を開けた。二重底の下に隠した紅玉の指輪を摘みあげる。
捨ててしまえればどんなに楽であったろう。他人に譲ることができればどんなに楽であったろう。アイーシャにはジンを遠ざけることがどうしてもできなかった。
指輪のまま側に置くことも考えたが、あの逞しい腕にきつく抱きしめてほしいという思いの方が強かった。例えそれがジンの長い一生の中の刹那に過ぎずとも。
深々と呼吸を繰り返し、アイーシャは指輪を指にはめた。それがアイーシャの指に沿って形を変えても今度は驚かなかった。そのまま指を口元へ寄せ、そっと唇を押し当てる。
「アルジャジール。私のジン。使えるべき主の呼びかけです。出てきなさい」
毅然として言い放てば視界が一瞬眩む。
「アイーシャ」
ふわりと宙に浮き、眩しげに目を細めた青年がアイーシャを見つめている。
「アルジャジール」
声がかすれた。ジンの腕に飛び込み、胸にすがりつきたい衝動をこらえてアイーシャはぎゅっと拳を握った。
「アイーシャ。我が主。再び見える日が来ると信じていた。お前は俺を手放したりしないだろうと」
アイーシャの頬を撫で、その指で顎を持ち上げる。ゆっくりと近づく唇から逃れるようにアイーシャは顔を背けた。
「アイーシャ?」
不審げに顔をのぞき込みながらアイーシャの腕を引いて抱き寄せる。
「観念したんじゃないのか?」
耳に唇を寄せ、ジンは低く囁く。
「アルジャジール。私は決めました」
ジンの胸を軽く押し、アイーシャはその顔を見上げる。
「あなたに約束してほしいことがあります」
「約束?」
「あなたを長く側に置くために必要なことです」
こほんとアイーシャは小さく咳をはらう。
「まず一つ。むやみやたらと人を傷つけないこと」
「わかった。ただし、俺とお前に害があると判断した場合は容赦しない」
「出来る限り寛容に頼みます」
「心得た。寛容にね、寛容に」
そっと唇が重ねられ、アイーシャは抗議するようにジンの胸を拳で叩く。しかし、ジンはそんなことはお構いなしに口づけを深めていく。唇を舌でなぞり、強引に割り入れていく。悦びに流されてしまいそうな自身を叱咤してアイーシャは口づけに応えてしまわぬよう努力した。
熱烈な口づけに応えないアイーシャを訝しんでジンが唇を離した。アイーシャは呼吸を整えて話を続ける。
「アルジャジール。まだ話は終わっていません」
「まだ何かあるのか。後にしよう」
「いけません。大切な話なのです」
おあずけを言い渡された犬のようにうなだれながらもジンはアイーシャを抱えて寝台に座り込む。アイーシャを膝に横抱きにし、背中を撫でながら髪に口づける。
「人前では人間のように振る舞うこと。あなたがジンだと知れると色々と面倒なのです。宮殿に外の者が訪れている時は気をつけなさい。姿形は自由に変えられるのでしょう?」
項をなぞるように唇が触れ、アイーシャの体はびくりと震える。求めてやまない刺激に誘惑されながらもアイーシャはジンに語りかけることはやめない。
サーリムへの態度を改める、宮殿内の女性に色目を使わない、ところかまわず押し倒さない、アイーシャの意志を尊重する等々。アイーシャはジンに約束してほしいことを並べ立て、答えないジンを不満げに見上げた。
「約束してくれますか?」
「つまり、行儀よくしていろってことだろ。一つ訊きたい。肝心なことだ。お前は夜ならかまわないのか?」
「何の話です?」
「お前を抱きたくなったら夜まで待てばいいのか? 日が落ちればいくら求めてもかまわないんだな」
アイーシャの頬が一気に朱に染まる。ジンは至って真面目に問いかけているようで表情にからかいの色は見られない。
「アルジャジール、あなたという人は!」
「昼間がだめなら夜しかないじゃないか」
「知りません! そんなこと、訊かないで」
羞恥と怒りに震えるアイーシャを見て、ジンは小さく笑う。
「わかった。その時その時のお前の態度で判断する」
ちゅっと音を立てて頬に口づけ、ジンは微笑む。
「もういいだろう? お前が約束しろというなら何だって約束してやるさ」
寝台に押し倒し、ジンはアイーシャに覆い被さる。
「アルジャジール」
唇が重なり、今度はアイーシャもジンに応える。優しく肌を這う指を受け入れ、激しく熱く絡みつく舌を受け入れ、アイーシャは自分が満たされていくのを感じた。
「待って」
しかし、アイーシャはジンの腕を掴み愛撫を中断させた。項に舌を這わせていたジンが不満げに呻く。
「アイーシャ! 俺はもう我慢したくない。後にしろ」
「だめよ、だめ! んっ、待って」
これだけはどうしても訊いておかねばならない。アイーシャは苛立つジンの頬を両手で挟み込む。
問いかける言葉はすぐには出てこなかった。何度も口を開閉し、アイーシャは困りきって眉根を寄せる。
「あ、アルジャジール」
焦らされながらもジンは黙ってアイーシャの言葉を待つ。
「どうしても、訊いておきたくて……わ、私、私の…ああ、どうすればいいの?」
「アイーシャ、落ち着け」
「ええ、そうね。あなたは…私と、離れたくないと、思ったの? 正直に言って」
不安に揺れる瞳と震える唇から漏れた言葉にジンは安堵の吐息を漏らす。アイーシャの欲しがっている言葉が何か理解したからだ。
「当たり前だ。お前は俺がお前から離れたがっていると思ったのか。俺はお前がほしかったよ。ずっと側にいたかった」
「本当?」
「俺は嘘はつかない。お前は血も肉も魂も俺のものだと言っただろ。俺がお前を手放したがるわけがないだろう」
じわりとアイーシャの瞳に滲んだ涙をジンは口づけで拭いとる。
「それなのに、お前が望むなら離れてもいいと思えた。お前は特別だ、アイーシャ」
にっこりとジンはアイーシャに微笑みかける。
「だが、お前は俺を選んだ。もう二度と離したりしないからな」
「約束、してくれますか?」
「ああ、誓う。だからお前も誓え」
誓いますと口にしかけたアイーシャの唇はジンの唇で塞がれ、その腕は少しばかり荒々しくアイーシャの体に触れていく。しかし、アイーシャは拒まずにそれを受け入れた。
求めてやまなかった愛しい人が愛を囁いても消えないことを確かめ、アイーシャは幸せを強く実感するのであった。
おわり
一応ハッピーエンドということで。
ずっとロム専でしたが我慢できずにGJ!!
むしろGOD JOB!!
二人が幸せになってくれてよかった
350で挙げてた佐々木みすず作品好きだ。
あのころは良かったんだがな。
和田慎二の「忍者飛翔シリーズ」とか…
小説だと定金伸治の「ジハード」…は微妙かなぁ
>>364 GJ!!乙でした。
アイーシャたんかわええ。幸せになってくれて良かった。
>>364 二人の雰囲気に浸ってこっちまで幸せになれました。本当にありがとう。
また何か書いてくれると嬉しいです。
GJ! GJ! GJ!
ですがアイーシャさん、
幼なじみ殿が放置されております。
ということで、彼の話も希望してみるわけです。
>>373 ザイールとジンニーヤの話か。二人のキャラは決めてるから書けないことはないんだが女主男従にはならないな。スレ違いになってしまってもかまわないなら書くけどそれではやはり悪い気がする。すまん。
>>375 ありがとう。でも人外らしさは稀薄だからスレ違いになりそうな気がする。
>>373 今日は仕事も休みで時間があったからザイールの話書き上げてみた。スレから追い出されたSSを投下するスレに投下したからよければそちらを見てほしい。
ファンタジー系主従投下します。
少し説明が多くなってしまった。肌に合わない方はスルーよろしく。
辺りに人の影はなく、しんと静まり返っていた。もしも道行く人がおり、尚且つその者が空を見上げていたならば煌々と照らす月と音もなく飛び回る大形の鳥の姿が見えたことだろう。
月明かりを頼りに飛んでいた鳥は一軒の宿屋へと降り立った。正確には宿屋の横に生えた大きな木の枝に。鳥は羽根をしまいこむと途端にその形状を変化させた。ぐにゃりと鳥の付近の空間が歪む。
暫くの後、枝に立ち尽くしていたのは一人の青年であった。青年は器用に枝を移動し、一つの部屋へと入り込んだ。
青年の入り込んだ部屋は無人ではないようで微かながら誰かの寝息が聞こえてくる。青年は迷うことなく寝台へと近づき、跪いて眠りこけている人物へ顔をよせた。
窓から差し込む月明かりがその人物を照らし出す。年の頃は十五、六といったところか。緩くウェーブのかかった淡い桃色の髪、月明かりにさらされた肌は白く、柔らかそうな唇は誘うように開かれている。
対する青年は二十といわれても四十を越えているといわれても納得がいくような不思議な姿をしていた。姿形は若く見えるが、纏う空気に若々しさはない。跪けば床に広がるほど長い黒髪、切れ長の瞳は鋭く冷たい。
「……また眠っておられる」
ぽつりと呟く声は低く、呆れと落胆の色が濃く現れていた。
「眠らずに待っていてくださると約束したのに仕方のない方ですね」
柔らかな頬を指先でつつくとぷにっと音がしそうな感触がして、青年はふっと表情を和らげた。
少女の名はエルカ。半年前に討魔士を始めたばかりの未熟者だ。そして、青年の名はギィ。本当はもっと長々とした名があるのだがエルカがギィと呼ぶので今の彼の名はギィだ。ギィはエルカが初めて従えた魔物である。
眠るエルカを起こすような真似はせず、ギィはあいている寝台に横たわり朝を待つことにした。
翌朝、エルカが目を覚ました時にはギィはすっかり身支度を整え、エルカのための朝食を用意しているところだった。
「おはようございます、主殿」
眠たげに目をこするエルカにギィは笑顔で声をかける。エルカに近づき、乱れた夜着を整えながら頬に口づける。
「主殿、そろそろ燃料補給が必要かと」
「ねんりょうほきゅー……?」
「はい。村を出てからずっといただいておりません」
ギィの唇が耳に触れ、短い髪をかき分けてうなじに到達する。軽く首筋に噛みつかれてエルカは慌ててギィの胸を強く押した。
そこまでされてようやく目覚めたようだ。
「ま、また、あれを?」
「嫌ならかまいませんよ。私も他の者と同じく印となりましょう。主殿の世話もできなくなりますが一人でも平気ですね」
エルカの従える魔物の数は三。ギィを除く二つはエルカが幼い頃より親しくしていた低位の魔物で戦闘力の足しにならないばかりか完璧な人の姿をとることもままならない。
討魔士は魔物と契約を結び使い魔とする。基本的に契約は倒した魔物と結ぶもので、友好的に結ばれることは少ない。そもそも討魔士とは荒ぶる魔物に苦しめられた民を助けるために魔物を倒し、二度と人に危害を加えぬことを誓わせるために従える。いわば正義の味方なのだ。
使い魔は普段はここではないどこかで過ごしており、主の呼びかけに応えて召還される。エルカの手の甲には使い魔の名を記した印が模様のように浮かんでいる。強い討魔士ほどその数が多く、複雑な模様を記しているものだ。
はっきり言ってしまうとエルカは弱い。使役された魔物は具現化するために主の魔力を使う。強い魔力をもつ討魔士ならば必要のないことだが、魔力の弱いエルカの場合は魔力が足りないと言われれば血か肉かそれに変わるものを与えねばならない。
エルカはぎゅっとギィのシャツを掴んだ。
「快楽に溺れてしまいそうで恐ろしいのですか?」
ギィはエルカ自身を欲しがる。血を吸われるのをエルカが怯えて嫌がるからだと言うが、行為自体が好きなのではないかとエルカは疑っている。
「すぐ終わる?」
「求める間隔が狭まってもかまわないのでしたら手早くすませてもかまいませんよ」
村を出る前にエルカはギィと契約した。なぜかそう至るまでの子細は覚えていないのだが、契約後にギィに抱かれてしまったことだけははっきりと覚えている。ギィに教えられた新しい感覚を思い出し、エルカはごくりと唾を飲み込んだ。
「朝からでは主殿もお嫌でしょうから今夜までにご決断ください。さあ、朝食にしましょう」
あっさりと体が離され、エルカはほんの少しがっかりした。そして、がっかりした自分に驚いてエルカは顔を赤く染めたのだった。
食事を終えてからエルカたちは宿を出た。
討魔士は旅をしながら魔物退治に精を出す。しかしながら、エルカの手に負えるような魔物は少なく、畑を荒らす小さな魔物を捕まえてお説教したり悪戯好きな妖精を捕まえてお説教したりとそんなことばかり。
エルカの夢は遙か遠くに居城を構えていると噂される魔王を倒すことなのだが今の調子では何度生まれ変わっても叶うことはないようにみえる。
今日もエルカは歩きながら仕事を探していたのだが今朝のギィとのやりとりが頭から離れず心ここにあらずといった様子だ。ギィはそんなエルカに気づいていながら何も言わずにエルカの後ろを歩く。
エルカに危機が訪れればギィは命を賭してエルカを守る。エルカ一人では三日と続かなかったであろう旅が半年も続いているのはギィが側にいてくれたからなのだ。暴漢や盗賊の類を軽くいなすギィを見たのは一度や二度ではない。
結局、その日はただ歩き回っただけで何の仕事もせずに新しい宿屋へたどり着いた。
部屋へ着いてすぐにエルカは風呂へ直行した。汗を流しながら、エルカは高鳴る胸を押さえきれずにそわそわと落ち着かない様子だ。時間をかけて念入りに体を洗い、湯船にもいつもの倍近い時間浸かっていた。
風呂からあがったエルカは肌をタオルで拭いながら溜め息をついた。ギィに触れられるのだと思うと恥ずかしくて死んでしまいそうになる。
ちらりと自分の体を眺めれば、エルカの小さな手ですっぽり覆い隠せてしまう胸と必要以上に肉がついているわけではないがぷにぷにとした腹や足が見える。どう贔屓目に見ても大人の女性の体とはいえない。エルカは再び溜め息をついた。
洗面台についた鏡を覗き込めば落ち込んだ表情の自分が見えた。エルカはふるふると首を振って雑念を追い払う。ギィに抱かれるのは魔力補給に必要な、いわば儀式だ。体の成熟度などギィには関係ない。行為自体が重要なのだ。
エルカはなんとか自身を奮い立たせて衣装に手を伸ばした。しかし、そこではたと気づく。今から抱かれるとわかっているのにわざわざ服を着る必要があるだろうか。かといって裸ではあまりに恥ずかしい。
うんうん唸りながらたっぷり十分は悩み、エルカは大きなタオルを素肌に巻き付けて部屋へ戻った。
ギィは寝台に腰掛けて本を読んでいた。エルカの編んであげた長い髪を前に垂らし、真面目な顔で分厚い本のページをめくる。
ギィの姿を見た途端エルカの胸がぎゅっと締め付けられた。ギィを見つめているといつもそうなる。自分にはよくわからないけれど、ギィには特別な力があってそのせいなのかもしれないとエルカは思っていた。
「覚悟を決められましたか。よかった。主殿を一人で旅立たせるなど不安でたまりませんから、拒絶された場合の対策を練っていたのですが要らぬ心配でしたね」
エルカに気づいたギィが安堵の表情を浮かべて近づいていく。
「ギィは前に言ったでしょ。討魔士は一番信頼できる使い魔を常に側に置くものだって」
「ええ。ボディーガードのようなものです」
「ライもデュカも大好きだけどギィみたいに上手に人になれないし」
もじもじと胸の前で手をいじりながらエルカは喋るのをやめない。
「ギィでないとダメなの。ギィが側にいてくれないと、私……」
「大丈夫ですよ。主殿のお気持ちは承知しています。さあ、恥ずかしがらないで。怖がらなくていいんです。私を信じて」
ギィの腕が伸ばされてエルカの剥き出しの肩に触れる。身を屈めて触れるだけのキスを落とし、ギィはエルカの体を抱えあげた。
「あ、あのね、ギィ」
そっと寝台に横たえ、ギィは額に口づける。
「あんまり胸大きくないの。おなかもキュッとしてないし、それから」
早口にまくしたてるエルカの口を塞ぐようにギィは口づけた。
「ん…ぁ……」
ギィの腕を掴み、エルカはギィの口づけに酔わされていく。優しく口腔を弄る舌におずおずと自らの舌を絡めてみた。徐々にエルカも口づけに夢中になり、ギィの髪に指を差し入れてしがみつく。
「そんなことは主殿を愛する喜びに比べれば些末なことです。体の形など問題ではありません。私は主殿の魂に触れたい」
二人の唇を銀糸が繋ぎ、数秒でそれは消えた。
ギィに見つめられただけで身動きがとれなくなる。触れられると泣きたくなる。ギィに抱かれるのは怖くないのになぜか泣きたくてたまらなくなるのだ。
エルカは肌を這うギィの指に意識を集中させる。ギィの指が胸の頂に触れると甘い感覚が沸き上がる。強く摘むような真似はせず、あくまでも優しくギィは指で先端を撫でている。それだけでも慣れないエルカにしてみれば強すぎる刺激だ。
「ん、ぁ……ギィ、あっ」
脇に流れた肉を集めるようにしてギィは胸を揉む。小さいながらも柔らかく、少しの刺激にも敏感に反応してくれる。
「主殿、目を開けてください」
エルカはぎゅっと目を閉じ、唇に拳を当てていた。ギィの呼びかけに応えて、ゆっくりと目を開く。葡萄色の瞳がギィを映す。
「愛しています、我が主。あなたを選んでよかった」
「ギィ……あッ、だめっ」
ギィの指が下腹部へ滑り、茂みに隠された陰核へ触れる。指で軽く押さえただけでエルカの体はびくびくと震える。感じやすい主の体を愛おしげに眺め、ギィは微笑む。
「可愛いですよ、主殿」
片手で陰核を撫で、片手で乳房を揉み、唇で胸の先端を愛撫してギィは少しずつエルカの体を溶かしていく。
陰核を撫でていた指を下へずらして割れ目をなぞる。そこはシーツを濡らすほどの蜜を溢れさせてとろけきっていた。慎重に指を差し込むとエルカの体は思いの外簡単にギィの指を受け入れた。
「あっ、ん……ああっ、ギィ…ひゃっ、あッ」
慣らすように指を増やして出し入れを繰り返す。エルカの口から漏れる声に苦痛の色はない。ギィは安心して指を引き抜いた。
「あん、ギィ」
無意識だろうが不満げに見上げてくるエルカにギィは満足そうに微笑みかける。
「心配しないで。これからが本番ですから。堪能させていただきますよ、主殿」
腹につくほどに反り返った欲望を取り出し、ギィはエルカの足を開かせた。足首を掴み、踝に口づける。
「少し痛いかもしれませんがすぐによくなりますからね」
割れ目に先端を当てる。ギィが少し力を込めると存外簡単にのみこまれていった。異物の進入にエルカが少しだけ表情を歪めたがそれも一瞬で、ギィが陰核を摘むと愉悦に変わった。
「ギィ、熱っ…ああ、あ、んうっ」
腰をぴたりと寄せてギィは一旦動きを止める。じっとしているだけでもエルカの内部の蠢きがギィに快楽を与えてくれた。ギィはその感覚を楽しみながら、エルカの呼吸が整うのを待った。
「とても気持ちいいですよ、主殿。きついのに滑りがよくて温かくて」
「やっ、いわな…でぇっ」
「恥ずかしがり屋さんですね、主殿は。褒めているのに」
真っ赤になって顔を隠すエルカをギィはくすくすと笑いながら眺める。
「そんな主殿も好きですがね」
抜けそうになるまで腰を引き、再び根元まで差し込む。それを数回繰り返しただけでエルカは快楽に我を忘れる。甘い声で喘ぎ、ギィにすがりついてくる。
気をよくしたギィはエルカの腿を撫でながらリズムをつけて腰を揺らす。結合部からはとめどなく蜜が溢れ、淫らな音が奏でられている。
「ギィ、あッ、ギィっ! あ、あん、あッ、あっ!」
喘ぎに混じってギィの名前を呼ぶ声が繰り返される。エルカが名を呼ぶ度にギィは満たされるのを感じた。
腿を撫でていた手が腹を伝い、乳房に触れた。
ぴんと尖った先端を弄りつつ、ギィはさらに深く中を抉ろうと体重を前に落とした。往復するギィの体が先ほどよりも強く最奥を抉る。叩きつられる度にエルカは歓喜の悲鳴を上げて仰け反った。
「く、っ…主殿、もっと力を抜いて、ください。とてもきつい」
ギィの囁きはエルカには届かず、エルカの襞はギィの欲望に絡みつき意志を持っているかのようにきつく彼を締め上げていく。
だんだんとギィの動きは激しさを増していく。エルカはちかちかと目の前が光りだしたのを感じた。
全身の感覚が研ぎ澄まされ、ギィに触れられた場所がありえないほどの熱をもっていく。
「あ、ん…くっ…ひぃっ、あッ、あぁん」
自分の体が弾けてなくなってしまいそうな気がしてエルカはギィの体にしがみつき、その背に爪をたてた。しかし、そうしていてもギィの与える快楽はエルカをどんどんと高みへ追いやっていく。
唐突に体が強ばり、電流が走った。稲妻は全身を駆け巡り、エルカの体を支配していく。あまりの快楽にエルカは悲鳴をあげたが、口からこぼれでたのは絶頂の喘ぎに他ならなかった。
エルカが達したことに気づき、ギィは動きを止める。吸いつくようなエルカの締め付けに射精感がこみあげてきたが、それをなんとかやり過ごす。まだ達するには早い。
「ふぁ…ギィ……」
虚ろな瞳で見上げるエルカの唇に吸いつき、ギィは体の線をなぞるように優しく撫でてやる。
素直に口づけに応えるエルカの体から力が抜けたのを確認し、ギィは再び腰を揺らし始めた。
「もっと見せて。もっとあなたを感じさせてください。愛しています、我が主」
まともにものを考えることなどできなくなったエルカの耳にギィは何度となく愛と忠誠を囁き続けた。
エルカの瞳と同じ色をした葡萄を膝に乗せ、ギィは器用に皮を剥いていく。そうして皮を取り去った葡萄をエルカの口元へと運ぶ。
「はい、主殿。口を開けてください」
「あの、ギィ」
「ほら、汁が垂れてしまいますよ」
促されて仕方なくエルカはギィの指ごと葡萄を口に含む。ギィの指にエルカの柔らかな舌が触れ、ゆっくりと離れた。
「葡萄くらい自分で食べられるわ」
「主殿は私から楽しみを奪う気ですか? それに、今は体がつらいでしょう? ゆっくり休んでください」
「……わかった」
にっこりと微笑まれ、エルカは頬を染めて頷く。
定期的に与えればそうでもないのだろうが、ぎりぎりまで我慢させたせいでギィはエルカの体を思うままに貪った。初めての時の数倍は凄かったとエルカは思う、いろいろな意味で。ギィの言うとおり、体は重いし、だるさが抜けない。今日一日は休む必要がありそうだ。
「はい、主殿」
新しく剥いた葡萄を差し出され、エルカは素直に口を開く。
すっかり魔力を吸い取られて体はつらいが、それでも不思議と気分はよかった。それはギィが優しかったせいかもしれない。温もりも指も声もギィはすべてが優しかった。
不意に甘く低く掠れた声で愛を囁くギィの声が耳に蘇り、唇に触れるギィの指と連動してエルカの体温を一気に上昇させる。
「主殿?」
「な、なんでもない!」
耳まで赤く染めたエルカの顔を不思議そうに覗くギィから顔をそらし、エルカは寝台に倒れ込んで布団を頭まで引き上げた。
「私はもう寝るから、ギィは本でも読んでて!」
くつくつと笑うギィの声を聞きながら、エルカはギィの香りの残る布団を体に巻き付けて、落ち着かない様子でごろごろと寝返りをうつのだった。
おわり
GJ!
優しいエロもいいが、なにより討魔士の設定に萌えた
陰核ってエロイなぁ
あー、熱いなあ。
ちょっと窓開けよう。
甘いモン食べてないのに胸焼けするし。
GJ!
期待age
過疎ってるな。誰かいる?
こんなの過疎ってるうちに入らないよw
神光臨期待age
俺はエドガルド×ユーリエのエロをいつまででも待つぞ!
続編投下待ちの繋ぎにでも。
エロなし。軍人もの。
近頃はめっきり肌寒くなってきたもので廊下を歩む足も知らず早まる。
先ほどの上官とのやりとりを思い出し、考えごとをしていたゲイルは正面から歩いてくる人影に気づかない。
ほどなくして彼は正面の人物と衝突することとなるのだった。
「……失礼」
倒れかけた人物を支え、ゲイルはすぐさま謝罪を口にする。
そして、相手の姿を確認し、慌ててその手を離した。
「エステル……いや、失礼いたしました。大佐、お怪我は?」
桃色の髪を器用に編み込んで一つにまとめ、士官服を身に纏った二十歳前後の若い娘。
暁に似た色をした瞳がゲイルを移して光を増した。
「まあ、ゲイル教官!」
腕を掴んでいたゲイルの手に手を重ね、微笑を浮かべる。
「戻っていらしたのですね」
「ええ、五日ほど前に戻りました。その様子だと平気そうですね」
エステルの手からさりげなく自身の手を引き抜き、ゲイルは一歩引く。
「それでは、私は急ぎますので失礼させていただきます」
早々に立ち去ろうとするゲイルの腕をエステルは両手で掴んだ。
「教官、せっかく会えたんです。もう少しお話を」
「大佐、私はもうあなたの教官ではありません。それに、私のような男と親しくしていては兄君たちがお怒りになるのではありませんか?」
「なぜそう思われるのですか?」
「あなたはハインツ家の大切なご令嬢ですから」
ハインツ家と口にした途端にエステルの表情が曇る。
ゲイルの腕を掴む手にも更に力がこもった。
「教官の仰る意味が私にはわかりません。どうして教官とお話をしてはいけないのですか。私は教官とお話がしたい」
困ったように眉を寄せるゲイルをエステルは真っ直ぐに見上げる。
「上官命令です。ゲイル少佐、私が屋敷に戻るまでの護衛を命じます」
そんな命令があるものかと呆れながらもゲイルにはエステルの手を振り払うことがどうしてもできなかった。
*
エステルと向かい合って乗った馬車の中、ゲイルは無言で車窓から外の景色を眺めていた。
三年前、エステルが十八になったばかりの頃にゲイルはエステルを含めた数人の士官候補生の指導係に任命された。
国の権力を握る御三家の一つハインツ家。
軍人を多く排出してきたハインツ家の末子エステルは愛らしい容姿と慈愛に満ちた性格が民に人気で昔から何かにつけて父とともに表に出ていた。
軍人になるのだと聞いた時は軍のマスコットキャラクターにでもしたいのかと呆れたものだ。
しかし、周りがどうであれ本人は至って真面目に責務に取り組んだ。
優秀な成績で士官学校を卒業したエステルはゲイルの指導の元優秀な成績で研修を終えてはれて中尉となった。
あれから三年で大佐になってしまったが、それが親の後押しばかりではないことはゲイルにもわかっている。
エステルは人の三倍も四倍も努力する。
ハインツ家の名に恥じぬように──教官時代によく聞いた言葉だ。
これみよがしに大きな溜め息が聞こえ、ゲイルは正面のエステルへ顔を向けた。
「教官はユリシス兄様の部下ですものね。本当ならこんなことしなくても……」
「大佐のご命令とあらば従いますよ」
「命令でなければ送ったりしてくださらないのですよね」
すっかり気落ちした様子のエステルにゲイルは言葉をつまらせる。
一度部下に指示を出すエステルを影から覗いたことがあったが、なかなかどうして様になっていた。
口調から振る舞いから軍人そのものであり、一度ならず指導した者として嬉しく思ったものだ。
しかし、あの凛々しさがゲイルの前では露と消えてしまうのだから困りものだ。
教官時代に少々甘やかしすぎたかと昔を思い出しても甘やかした記憶など微塵もないのだから不思議だ。
「困ったって顔に書いてあります」
エステルが好意を向けてくれていることに気づかないほどゲイルも鈍感ではない。
ゲイルは美丈夫ではないし、家柄がよいわけでもない。
長身ではあるが、いかつい体と常に眉間に皺が寄っているような無愛想な顔。
気の利いた言葉をかけてやれるほど口がうまいわけでもない。
自分が女性から高評価を得られるような男でないことを知っているからこそ、エステルに好意を向けられるとたじろいでしまう。
今もそうだった。
エステルが身を乗り出して顔をのぞき込んでくれば、ゲイルは反射的にのけぞって顔を反らす。
「わがままをいっているのはわかってます。でも、軍に入ってから三年も経つのに教官と同じ任務に就いたことは一度もないし、たまにお会いしても教官はすぐにどこかへ行ってしまわれるし」
「私と大佐では所属する部隊が違いますから」
「今日だけでかまいませんから、お茶に付き合ってください。お願いします」
すがるように見つめるエステルを無碍にはできず、ゲイルはまたしても頷くことになるのだった。
*
二杯目の紅茶を飲み干し、ゲイルは後悔の溜め息をついた。
やはり断るべきであったとエステルに部屋へ通されてから何度も思った。
きっちりまとめていた髪は下ろされ、白いワンピースに着替えたエステルは出逢った頃のまま、若く愛らしく麗しい。
「ゲイル教官」
立ち上がったエステルが向かいのソファからゲイルの隣へ移動する。
ふわりと甘やかな香りが立ち上る。
「もう一つだけわがままをきいてください」
「私に拒否権は」
「ありません」
にっこりと微笑むエステルは天使のようだ。
「今日は私の誕生日なんです」
「それは、おめでとうございます」
「ありがとうございます。だから、プレゼントをください」
言いながらエステルはゲイルの腕を掴んで引き寄せた。
ゲイルの唇にエステルの柔らかな唇が押し当てられる。
不慣れな、ただ唇を押し付けるだけの口づけ。
「エステル! 君は何を……」
呆然としていたゲイルだったが我にかえってエステルの体を引き離した。
「私……」
声を張り上げたゲイルに怯えたかのように、じわりとエステルの目に涙が滲む。
「ご、ごめんなさい」
「泣くくらいならこんなことをするんじゃない」
「だって、だって、教官がちっとも私の気持ちに気づいてくださらないから」
気づいているさと口にしかけ、ゲイルは慌てて飲み込んだ。
エステルはぽろぽろと大粒の涙をこぼして震えている。
箱入りのエステルがどんな思いでキスをしたのか考えると頭が痛くなる。
「嫌いに、なりましたか?」
「いや、そんなことはない」
「本当に?」
見上げてくるエステルの頬を両手で包む。
厄介な感情が頭を擡げ始め、ゲイルは呻いた。
一平民の自分が惚れていい相手ではないと何度言い聞かせてきたことか。
「本当に嫌いになっていませんか?」
エステルの目尻に唇を押し当てる。
そして、唇をそっと重ねた。
優しく触れた後、そっと下唇を唇で挟むようにして口づけを深めていく。
慣れないエステルが怖がらないようにゆっくりと舌を絡めて口腔を犯していく。
エステルの手が手首を掴んでもゲイルは口づけを止めなかった。
エステルが息苦しさに身じろぎをして、ようやくゲイルはエステルの唇を解放した。
「誕生日プレゼントなんだろう」
深い呼吸を繰り返しているエステルにゲイルはそう呟いた。
「キスというのはこうするものだ」
言いながら照れてきたのか、ゲイルは顔を背けて咳をはらった。
その耳が赤く染まっているのをエステルはぼんやりと眺めている。
「き、教官」
「なんだ」
「今のは突然すぎてよくわかりませんでした。もう一度お願いします」
「……断る」
「で、では、私が実践しますから正しいかの確認を」
ぎゅっと胸にしがみつくエステルを引きはがそうと肩に手を置いたゲイルだが、目の前に迫ったエステルの顔を見て観念したように目を閉じた。
終わり
GJ!
続きマダー?と駄駄捏ねたくなるくらいGJ!
名前の元ネタはファルコム?
ともあれGJ!
エロなしでも充分萌えた。教官が照れてしまうのがいいね。
この先のエロを妄想したくなるよ。
GJ!
軍人ものは俺のツボだ!
>一平民の自分が惚れていい相手ではないと何度言い聞かせてきたことか。
ここ好き。
やべえ萌える、ジャストミートだ(;´Д`)ハァハァ
堅物軍人+身分の差マンセー!!
ごっつい軍人とお嬢。禿げ萌えた。gj!
403 :
393:2006/11/20(月) 01:04:22 ID:uiMrptfr
GJもらえて嬉しい。ありがとう。
>>399 名前は適当につけた。
ファルコムが何かよくわからないや。漫画とか小説かな?
404 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 02:11:55 ID:UZqjcY3Z
ああぁぁぁアイーシャの人の小説をもっと読みたいぃぃ〜
さんざん探してるのにちっとも見つからん・・・・・orz
>404
同志よ!
漏れももっと読みたい〜
アイーシャの後日談的な番外編とかないかな・・・
でも全ては作家さん次第
また来てくださることを祈って待ち続けよう!
406 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 11:32:31 ID:lLhpwDd/
11月23日オープン 日本初の出会い系!!
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407 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 19:39:43 ID:MrRbhQB8
>>393 エステルとゲイルはこれで終わりじゃなくて、続きも書いてください。
楽しみにしています。
俺もこの2人の続きよみたい
>>397のすぐ後のエロシーンだけでもいいから頼む
>>393 399です。
ファルコムというメーカーが出しているRPGシリーズに、エステルと
ゲイルという名前のキャラが登場するので元ネタかと思ったんだ。
もちろんパクリとか言うつもりはなく、思い切り楽しませてもらいました。
他の住人も萌え猛ったようなので、気が向いたらこのキャラたちで
何か書いてください。
重ねてGJ!
>>404、405
アイーシャの人です。
このスレ好きだからちょいちょい投下してますよ。
コテつけてないからわからないかもしれないけれど。
>>407、408
続き読みたいの声は嬉しいです。ありがとう。
397からエロにいくとは思ってなかったから続きはちょっと難しい。
もしもネタが浮かんで書けそうだったら書いてみる。
でも、書けるかわからないから期待はしないでおくれ。
>>409 ゲームだったのですか。でも、そのゲームは知らんです。
続きに関しては上に同じです。
それから、重ねてのGJありがとう。
エステル&ゲイル、すんごい萌えた!!(*´Д`)ハァハァ
あああ超好みだよ…っ! キスを実践確認するエステルたん萌えぇ
>>392 自分が投下したもんに、そう言ってくれるのは嬉しい。
でも自分がエドガルドユーリエネタで書くとどうにも主従からずれていく。
なんで続き書けたら、それが主従ぽかったらここに、主従ぽくなかったら
亜人スレとか、追い出されスレとか利用して落としていくわ。
他スレ投下時にはその事だけこそっとだけ挨拶するんで、ヨロシコ。
と、これだけ言うのもなんなので場つなぎにエロなし短編投下。
ばばーっと書いたものなので変な所あったらスルーよろ。
久しぶりに蔵書発掘したら平安超萌えだよ。
――時は平安。
右大臣家の二の姫は年頃を迎えており、佳人の噂も相まって
邸には毎日のように求婚の文が引きもきらずに届けられていた。
「ねぇねぇ、こっちの人はどうかしら?」
明るい声でそう言うのはこの邸の二の姫、その人であった。
噂に名高いその姿とはいえば、確かに愛らしい顔立ちはしているが
匂うばかりの藤というよりは、野に咲く菫といった風情の少女であった。
ただその髪の美しさは格別で、『玉鬘』の異名をとるのもかくあらんと思わせるものがある。
その二の姫は、文を広げるとそこに書かれた歌を読みあげた。
但し文の数があまりにも多いため、二の姫はぱらぱらとめくってはぞんざいな扱いをしている。
御簾を隔てた向こう側に、押し黙ったまま控えている人物はその気配を察して
こほんと小さく咳払いをした。
「ねぇってば」
だが、構わず二の姫はその咳払いをした人物へ声をかける。
するとしばらくの後、間を空けて低い声がためらいがちに、だがはっきりと答えを返した。
「……文の管理も私の仕事ですので拝見致しましたが。その御仁は姫には相応しくないかと」
彼の名は、孝守(たかもり)。実直そうな眉の青年は右大臣家に仕える家令でもあった。
彼の母が右大臣の北の方、腹心の女房であったことから、彼は幼い頃から
右大臣邸に仕えており、年の近い二の姫の幼馴染でもあった。
「あらまぁどうして? 道兼さまといえば、先の帝と遠戚にあられる立派な家柄の方。
父さまはこの方がいちおしみたいよ」
そう言いながらも二の姫は、言葉とは裏腹にやる気のない様子で手にした文をひらひらと揺らした。
「僭越ながら申し上げます。文はその方の人となりを表すもの。
手蹟を見れば、大抵のことは分かるものです。良いですか、姫。この度道兼殿が書かれた歌、
これは見るものが見れば分かる単なる和歌集からの借り物です。しかも本歌取りなど片腹痛い
単なる剽窃にすぎません。しかも二首目の恋の字、ご覧なさい。普通はその前に墨をつけ直し
その部分を目立たせ、切々とした恋情を訴えるものです。それがどうです、そのかすれ文字。
求婚を願う恋のお文に墨をけちるなどと、よほどの吝嗇家なのでしょうよ。
そのような御仁を通わせては、姫の名折れ、右大臣家の名折れ。姫がご不幸となりましょう」
孝守はそれだけの長台詞をかしこまったまま一息に言い切った。
二の姫からしてみれば、そのようなちまちました事を大真面目に語るのだから妙におかしさが
こみあげてきて、思わず扇で口元を隠してしまう。
「そんなのあなたの考えすぎよ、第一この家を継ぐのはわたしじゃなくて姉様よ。
だったら、わたしは適当なあたりで妥協して、文を多く頂いているうちに婿君を迎えるのが
世間的にも良いし、得策ってものじゃないかしら」
「いけません!」
髪の毛をいじりながらそんな事を言っていた二の姫は、突然大きな音がしてびくりと身を震わせた。
孝守が拳で板張りの床を叩いたのだ。
「いいですか、姫。これはあなた様の縁談なのですよ。だのにあなた様ご自身がそのような
よりよき婿がねを選ぶ気概がなくてどうされます。もったいなくも長く、近くお仕えしてきたのは
妙ちきりんな男に御身を任せるなどという所をみるためではございません。
姫には、最高の、都一の婿君をめとっていただかなくては!」
鼻息も荒く熱弁を振るう幼馴染の言葉に、二の姫は思わずため息をついた。
「みょ、妙ちきりんってあなたねぇ……。大体孝守はわたしを買いかぶりすぎてる。
大体わたしにこーんなに求婚のお文が来るのは皆わたしが『素晴らしい姫だから好きだ』とか
いうんじゃなくて、うちの父様が権力者だから擦り寄ってきてるだけじゃない。
はなから幸せな結婚だなんてあるわけないのよ。
だから妥協が必要だと言ってるの。せめてうちにも利益がある結婚だとか」
世間ずれした物言いに、孝守は一瞬あっけにとられた顔をした。
「……薫君に憧れてご自分で絵巻物もどきを作った方とは思えぬ口ぶりですね。
あの時書かれた絵はきちんと取ってありますから持ってきましょうか?」
「あ、あの時はわたしだって小さかったの! 源氏を読んだことある姫なら一度は薫か匂宮か迷うはずよ!」
「そうですか」
孝守はしれっとした様子で返事を返す。その飄々とした様相を崩してやりたくて
二の姫は居住まい正して彼に声をかけた。
ずっと言えなかった事を彼に向かって言ってやれば、きっと彼は慌てるはずだから。
「わたしにだって、思う人くらいいるわ。でもそれは叶わぬ思いなの。
その人と結婚できないのなら誰と結婚したって同じだわ。そう思ってるの」
その言葉に孝守はぴくりと体を動かした。そしてそれが無礼だったと言わんばかりにやや下がって
座りなおし、姫の方へと体の向きを変えた。
「その御仁は誰ですか? 私はあなたに幸福になってほしいだけです。その思う方というのが
もしもそれなりの家柄の方でしたら私は全力をかけて大臣を説得いたしますよ」
「それなりの家柄じゃなかったら?」
「全力をかけて阻止します」
「これだもの。言えるわけないじゃない」
二の姫がぱしっと音をたてて扇を閉じると、その音に孝守は眉に皺を寄せた。
「つまり、その男は取るに足らない身分のものだと」
「わたしはそう思っていないけれど」
「いけませんよ、姫。そのような男、何をあなたに吹き込んだのか分かりませんが。
……ああ、いつそのような男を姫に近づけたのだ。女房たちは何をやっている!
いいですか、とにかく男というのは都合のいい言葉で女君を篭絡するものです。
決してそのような男に身を任せてはなりませんよ」
孝守は懇々と説教をするように二の姫に言い聞かせる。
彼はいつまでも二の姫にとって、良い兄のような仕え人であらんとしているのだ。
「それが誰か知りたい?」
「もちろんですとも。ただし、私が知ればそのような下司、右大臣家に出入りすることなど
許しませんよ。あなたはそれでいいのですか?」
「だから名前なんか言ったりしないわ。こんな人って特徴を言うの。それで当ててみて」
二の姫の、悪戯っぽい声の響きに孝守もまた笑んだような気配を返してきた。
言葉遊びは幼い彼らの大好きなものだった。
「いいでしょう、いってご覧なさい。余計な虫を追い払うためです、絶対に当てて見せますよ」
孝守のその言葉を皮切りに、二の姫は大きく息を吸い込み、一言一言はっきりといった。
「その人は、堅物で、仕事一途で、馬鹿正直で、朴念仁。わたしのことをずーっと昔から知っていて
ずっと傍にいるの。それでわたしの幸せをいつも願ってくれている。そればっかり。
自分の幸せなんか全然顧みないの。馬鹿だわ。でもすきなの。ずっとその人の事が好きなのよ。
誰のことかわかる? あなたには分かる?」
その告白はあまりにも熱情的だった。訴えるように言葉が継がれた。孝守は思わず息を呑んだように身を引いた。
二の姫は言ってしまった、もう戻れないという焦燥を少しばかり感じていたが、後悔はしていなかった。
そして唇を引き結んで目の前の男の、次の言葉を待った。そしてその孝守がようやくといった様子で口を開いた。
「いえ、全く」
瞬間、二の姫は御簾も全て取っ払い、この男の頬を引っぱたいてやりたい衝動に駆られた。
「な…、な……っ」
「ずい分と特徴を話されておりましたが、具体的なものが全くなかったので。
抽象的な説明ではどなたの事なのかわたしにはさっぱり……」
「もういい」
「はい?」
「もういい! 琴の練習するからあんたは出て行ってーーー!!」
ヒステリーを起こして孝守を追い出した二の姫は、一人になった部屋の中で
散らばった文を構わず姫君らしくなく握り締めると、心の内で思い切り叫んだ。
(孝守の大ばかーーーーっ!)
当の孝守はその瞬間くしゃみをしたとかしないとか。
*******
(おしまい)
二の姫かわいいよ二の姫
孝守ニブチンだよ孝守w
もし続きがあるのなら、二人には幸せになって欲しいものです。
GJ!!ほのぼの萌えた。
孝守気づいててとぼけてるのかと思ったけど素で気づいてないんだな。
エステルとゲイル書いてみた。
前後編で最終的にはエロを絡めるつもりです。
とりあえず、前編投下します。
外部からの侵略があるわけでもなく、民が反旗を翻すわけでもなく、国は今日も平和だ。
とはいえ、軍隊にいるからには実戦を想定した訓練は欠かさず行うわけで、ゲイルは部下たちの行う訓練を少し離れたところから監視していた。
そして、その様子を眺めながら先日のことを思い出していた。
首に回された腕、恐る恐る絡められた舌、息継ぎの度に漏れる甘い吐息。
熱病に似た何かがゲイルを苦しめる。
集中しなければと自身を一喝した直後に遠くで喚く声が聞こえた。
その声の意味を理解したのは飛んできた障害物の下敷きになった後だった。
(なんてざまだ。これが実戦なら死んでいたぞ)
思い切りよく障害物をはねのけて起き上がる。
左足の感覚がおかしい。
(油断したな。くそっ、不覚だ)
折れているかもしれないと思いながら、ゲイルは駆け寄ってくる部下に心配するなと右手をあげてみせた。
*
「少佐ともあろう方が訓練の監視ごときで負傷するとは」
ベッドに座ったゲイルを呆れ顔で見下ろしているのは部下のジェシカ。階級は中尉だ。
「言うなよ。自分でも呆れている」
「しっかりして下さいよ。少佐は平和ボケしてんじゃないかって噂になっちゃ困るでしょう」
「わかっているさ」
部下のくせに懇々と説教を続けるジェシカにゲイルは溜め息で答える。
「それにしても、たかが足の一本で入院なんてオーバーじゃありません?」
「足以外にも異常がないかどうか検査をするんだと。おかげで三日も拘束される」
「少佐ともなると扱いが違いますね」
ジェシカの疑問に曖昧に答えながら、ゲイルはエステルのせいだろうと思っていた。
軍事病院で手当をしてもらい、さて帰ろうかという時に唐突にこちらへ移された。
ハインツ家に縁の深い場所なのだから、エステルの影を感じずにはいられない。
一体どこで怪我のことを知ったのかとゲイルは不思議に思うのだった。
「まあ、休暇だと思ってゆっくり休むさ」
「これを機に煙草やめてはいかがです。院内は禁煙ですしね」
「冗談だろ。私の唯一の楽しみだぞ」
「酒も女も賭事も嗜む程度ですからねぇ、少佐は」
それのどこが悪いのかとゲイルは憮然としてジェシカから顔を背ける。
「煙草は体に悪いでしょう、お酒の方がマシですよ」
「一日に何本も吸わんのだから問題ない」
「ま、少佐の体ですからね。好きにして下さい」
くすくすと笑うジェシカの声にゲイルの眉間の皺は増す。
「じゃあ、私はそろそろ帰ります。何かいるものあったら言って下さいね」
「ああ、すまんな」
頭を下げて立ち去るジェシカの背を見送って、ゲイルはベッドに横たわった。
夕食の時間までまだしばらくある。
少し眠ろうかと目を閉じたが、すぐさまそれは控えめなノックの音で遮られた。
「どうぞ」
扉を開いて現れたのはエステルだった。
それも軍服ではなく私服で、ふわりとした髪は緩く編まれ、タートルネックのセーターにミニスカートといった装いだ。
「教官、お怪我の具合はいかがですか」
ひよこのような動きでエステルはゲイルに近づいていく。
彼は上半身を起こして左足に視線を向けた。
「大したことはありません。大佐にご心配いただくほどの怪我ではございませんよ」
「そうですか」
いつもならゲイルが戸惑うほどに真っ直ぐ彼を見つめるエステルが視線をさまよわせて目を合わせないようにしている。
(なんだ? 照れてるのか)
不思議そうにゲイルはエステルを眺める。
「ジェシカ中尉がいらしていたのですか?」
拗ねているように聞こえたのは気のせいだろうかとゲイルは訝しむ。
「ええ、あれは私の片腕みたいなものですから入院中の職務の引き継ぎなどがありまして」
「片腕、ですか」
「はい。ついでに必要なものを届けてもらいましたし」
照れているのだと思っていたが、どうやら機嫌が悪いらしい。
エステルの表情をまじまじと眺めていたゲイルはようやくそのことに気づいた。
(何を怒っているんだ?)
椅子を引きずり出してエステルはそれに腰掛けた。
「私にいってくださればよかったのです」
顔を赤くしたエステルが唇をとがらせる。
「そうしたら、私がゲイル教官の為に色々とお世話いたしましたのに」
「大佐にそのようなことはさせられません」
「やめてください!」
唐突に声を荒げたエステルをゲイルは眉をひそめて見下ろした。
「やめるとは何をですか」
「その話し方です。軍服を着ていない時はエステルと呼んでください。敬語も嫌です」
見上げてくるエステルの瞳は潤んでいる。
理不尽だと思いながらもエステルの涙に弱いゲイルはたじろぐ。
「上官に対してそのようなことはできかねます」
「でも、教官の方が年上です」
「大佐、年は関係ないのですよ」
「この前は」
エステルの頬が怒りとは違う意味で赤みを増す。
「呼んでくださいました。エステルって」
「あれは……その、気が動転して」
「二人きりの時だけでいいんです」
エステルの手がゲイルの右手をぎゅっと掴む。
ゲイルは溜め息混じりに肩を落とした。
「聞き分けのない子だ。あまり私を困らせないでくれ、エステル」
仕方なしに敬語をやめれば、エステルの顔が輝く。
花開くような笑顔を見せられると、眩しさに目を反らしてしまう。
「教官、約束しましょう」
「何をだ」
「お世話が必要な時は私を呼んでください。ジェシカ中尉を呼んではダメです」
ずいっと身を乗り出され、ゲイルは反射的に後ろへのけぞる。
「中尉に世話を頼む気はない。たかが三日の検査入院だろう。誰の世話も必要ない」
途端にエステルはしゅんとしてうなだれる。
「……ジェシカ中尉は綺麗ですよね」
突然話があらぬ方に飛び、ゲイルは頭上に疑問符を飛ばす。
「スタイルもいいし、性格もさばさばしていて、ああいう方を姉御肌というのでしょう?」
(こいつは何の話をしてるんだ)
「やっぱり教官もジェシカ中尉みたいな女性がお好きですか? 私ではダメなのですか?」
ゲイルは右手で額を押さえて、上体を折った。
どうしてそういう思考になるのか、ゲイルにはまったくもって理解不能だ。
そのまま転がって枕に顔を埋めて思考を停止して現実から逃げ出したくなる。
しかし、エステルがそれを許すはずもなく、肩に手を置いて更に問いつめる。
「エステル」
額に置いた右手を下げて、ゲイルは呻いた。
「ジェシカ中尉は部下だ。それ以上でも以下でもない。そういう邪推は彼女に失礼だろう。そうは思わないか」
「でも……いえ、すみません」
力ないエステルの返事を聞き、ゲイルは体を起こしてエステルの方へ視線を戻す。
すっかり元気のなくなったエステルを見ているのも何だか悪いことをしたような気がして具合が悪い。
「ああ、言うのを忘れていた」
手を伸ばして、エステルの頬を手の甲で撫でる。
「わざわざ見舞ってくれてありがとう」
それだけ言うのがゲイルの精一杯だった。
もっと近づけば抱き寄せて口づけてしまいそうだったし、突き放すにはエステルに好意を抱きすぎている。
一気にエステルの表情が明るくなっていくのを見ていると気恥ずかしくてたまらなくなる。
ゲイルはエステルの頬を撫でていた手を引き戻そうとしたが、それは途中でエステルに掴まれて彼女の膝の上で両手に包み込まれてしまった。
「教官」
好意を前面に押し出したエステルに見つめられ、目を反らすに反らせず、ゲイルは背中を変な汗が伝うのを感じていた。
「え、エステル」
何を期待しているのか、目を閉じてしまったエステルを前にゲイルは唾を飲み込んだ。
(どうしてこうなるんだ)
焦れたように手をきつく握られ、ゲイルは観念してエステルに口づけを落とした。
つづく
萌えええええええええ!!
後編に期待しております、教官殿!
二の姫もエステルもどっちも萌えぇ!
一晩に二本も投下があるなんてラッキー。
スレが活気づいてるね(゚∀゚)
エステル後編超楽しみにしてる。
ゲイル教官が我慢の限界を越えてエステルを押し倒すんだろうか(´Д`;)ハァハァ。
自制しつつもそっちの方向に逝ってしまう教官萌え〜〜〜
イイヨー!!!
お二方超GJ!!!!
本当にここは素晴らしいスレですね
>>426 男主女従も好きなので嬉しい。
上手く住みわけて互いに良スレになるといいな。
エステルとゲイルの続き投下します。
不揃いに剥かれた林檎を一つずつ口に運んでいく。
エステルのナイフさばきは令嬢育ちにしては悪くなかったが、剥かれた林檎は少々歪だった。
しゃくしゃくと林檎を噛みながら、ゲイルはちらりとエステルに視線を向ける。
今日のエステルはシャツにカーディガンを羽織っており、下はやはりミニスカートだ。
どうしていつも短いスカートをはくのかとゲイルは少し不満に思う。
「もっと剥きますか?」
「いや、これで十分だ」
昨日、一昨日とエステルは毎日通ってきた。
現れてはあれやこれやと世話を焼きたがる。
万が一にもエステルの夫になるようなことがあれば尻に敷かれてしまうのかもしれないなどと考え、即座にそれを否定する。
万が一どころか億に一もない可能性だ。
しかし、想像するだけなら誰に咎められることはないとゲイルはエステルとの未来を少しだけ想像してみるのだった。
「明日はご自宅までお送りしますから」
「明日は中尉が迎えにくる予定だ」
途端にエステルが頬を膨らませる。
ゲイルは咳をはらって訂正した。
「……と思っていたのだが、やはり君にお願いしよう。よろしく頼む」
ぱあっと表情を明るくするエステルがおかしくてゲイルは小さく笑った。
この三日間でずいぶんと距離が縮まってしまったようにゲイルは感じていた。
軍部ですれ違いそうになれば通路を変え、ばったり遭遇してしまってもすぐさまその場を離れ、エステルと必要以上に親しくすることを避けていたのにそれもすべて無駄になってしまった。
こうしてともに時を過ごしていると距離を開けようとしていた理由を忘れてしまいそうになる。
「あ、そうです」
ぽんと両手を合わせ、エステルが立ち上がった。
そのままゲイルへ近づき、ベッドの脇に腰掛ける。
「……なんだ?」
訝しむように眉を寄せるゲイルの手から皿とフォークを取り上げてエステルはにっこりと微笑む。
「はい、教官。あーんしてください」
林檎を刺したフォークを口元に差し出され、ゲイルは反射的に口を開く。
もぐもぐと林檎を噛みながら、ふと我に返ったゲイルは顔を赤くして俯き、右手で額を押さえた。
(何をしているんだ私は)
ゲイルの苦悩を知らないエステルは再びフォークに林檎を刺す。
期待に満ち満ちた視線をゲイルに送り、彼が顔を上げるのを待つ。
「私は子どもではない」
「病人ですから」
「病気をしているわけではない。左足以外は健康体だ」
エステルの手から皿を奪い取り、ゲイルは残りの林檎を急いで平らげた。
「教官の意地悪」
手にしたフォークに刺さった林檎をエステルはつまらなそうな顔をしながら食べた。
「君のわがままには付き合いきれんよ。意地悪なのはどっちだか」
ゲイルの膝近くに腰掛けているエステルを眺めれば自然と露わな太股に目がいく。
愛らしい膝小僧と白い太股を眺めているとエステルの手がスカートの裾を引いた。
「教官?」
はっとして視線を上げると恥ずかしそうな顔をしたエステルと目が合う。
「少し短すぎはしないか」
「嫌いですか?」
「いや、好き嫌いの問題ではなくだな」
「教官がお嫌いなら次からは長くします。短いのは嫌いですか?」
ゲイルは返答に詰まって唸る。
短いのが嫌いなわけではなく、他の男の目に入るのが嫌なのだ。
さんざん迷ったあげく、ゲイルは溜め息混じりに答えた。
「嫌いではない」
「じゃあ、次も短いのにします」
「それはだめだ」
エステルは不思議そうに首を傾げる。
「あまり、その、見せびらかすな」
「はい?」
「よからぬ虫がついては困るだろう」
二度瞬きを繰り返した後、エステルは唐突に吹き出した。
「やだ、教官ったら」
「笑うなよ。私は君を心配してだな」
エステルは少しだけゲイルに近づき、彼の胸に頭を預ける。
「教官に会いに来るときだけですから」
ゲイルの体が強ばり、表情が固まる。
「わかります? 少しでいいから教官に女として見てほしくて」
頬を擦り寄せ、エステルは囁く。
「私の気持ち、教官はいつも気づかないのですね」
エステルの髪からは甘い香りが漂い、まるでその香りに酔わされたように眩暈を感じる。
喘ぐように名を呼ぶと、エステルがくすりと笑った。
「いいんです。それでも私は教官が好きですから」
「エステル。私は君の気持ちには答えられない。期待をさせるようなことをしてしまったのは本当に申し訳ないが」
「本当にわかっていないのですね」
「わかっているさ」
「いいえ、教官はわかっていません」
きっぱりと言い切られ、ゲイルは口をつぐんだ。
「教官が一言……そうです、たった一言でよいのです。愛していると仰ってくださるなら私は家も家族も名前すら捨ててかまわない」
顔を上げてゲイルを見つめるエステルの眼差しは真剣そのもので、ゲイルはごくりと唾を飲み込んだ。
「教官の気持ちを教えてください。あなたはいつだって私を慈しんでくださいました。眼差しで指先で唇で、あなたは伝えてくださったではありませんか」
エステルの幸せを思うならば身を引くべきだと理性が訴えかける。
だがしかし、エステルの幸せとは何だ。
家柄のつりあう男と一緒になるのが幸せか。
ゲイルの目の前で、震える手を握りしめて愛を訴えるエステルがそんなことで幸せになれるのか。
ゲイルの脳内を疑問が浮かんでは消えていく。
「私は自信がない」
ぽつりとゲイルが呟く。
「君を幸せにしてやれる自信がない。君の生まれは私からしてみればあまりに貴い。住む世界が違うとしか思えない」
ゲイルの腕をエステルが掴む。
その手に指を絡め、エステルはきつく手を握りしめた。
「触れているではありませんか。世界とは何です? 私は今こうしてあなたに触れています。それでも越えられぬものがあるのですか?」
エステルの瞳に涙が滲み、今にもこぼれ落ちてしまいそうになる。
「あなたが気になさるのであればハインツの名を捨ててもかまわないのです。私はただの女です。どこにでもいるただの女なのですよ?」
「エステル……」
「怖がらないで、私はあなたを愛しています。何があっても、ずっと、愛しています」
エステルの頬を涙が伝い、ゲイルは無意識にエステルに掴まれていない方の手でその頬に触れた。
「すまない」
「ゲイル教官!」
「いや、そうではなくて……君にそこまでいわせる自分が情けなくてな」
ゲイルは困ったように眉をよせながらも笑んでみせた。
「私も覚悟を決めよう。君を愛してはいけないと自分に言い聞かせてきたんだがそれで止まるようなものでもないからな」
「それでは」
「ああ、愛しているよ。私はずっと……たぶん、初めて会った時から君が好きだった」
はっきりと言ってやるつもりが声がかすれてしまう。
大粒の涙を溢れさせたまま、エステルはゲイルの胸にすがりついた。
エステルの髪を優しく撫で、ゲイルはエステルが落ち着くのを待った。
先のことを考えると胃が痛くなりそうだが、今は何も考えずにエステルの髪の感触を楽しむことにした。
しばらくしてエステルの涙も止まり、猫が甘えるようにゲイルの胸に頬を擦りよせてきた。
「もう一回」
「ん?」
「もう一回言ってください」
「そうそう何度も口にするようなことではないだろう」
甘えながらねだるエステルにゲイルは照れているのか冷たく答える。
それでもエステルは嬉しそうな表情のままだ。
冷たく言い放ってもゲイルの手は優しく髪を撫で続けているのだから。
「じゃあ、いいです」
ごそごそと体を動かし、エステルはゲイルの太股に跨るように座り込んだ。
「かわりに態度で示してください」
きょとんとしているゲイルの前でエステルはカーディガンを脱いだ。
「エステル?」
「こういう時は愛を交わすものではないのですか?」
シャツのボタンに手をかけたエステルをゲイルは焦って止める。
「どうしてそうなる」
「違うのですか?」
「違わないかもしれないが、もっと段階を踏んで、こう、心の準備とか」
ぶつぶつと小声で説明するゲイルの手を掴み、エステルは胸に押し当てた。
「心の準備ならできています」
服越しとはいえ柔らかな感触が伝わり、ゲイルの中の欲望が目を覚ます。
素直すぎる自身の欲望に狼狽しながらもゲイルはエステルを止めようと必死になる。
「せめて退院してから……っ、エステル!」
強引に唇を重ねてきたエステルの肩を引き離そうと掴んだが、結局ゲイルは欲望に屈してしまった。
口づけだけは会う度に交わしていたおかげかエステルは器用にゲイルの理性を崩していく。
ゲイルの教えたとおりに舌を絡めて吸いつくのだからたまらない。
ゲイルの手は自然とエステルの太股に触れていた。
肝心な場所には触れず、ただ撫でるだけ。
エステルの指がゲイルのシャツにかかり、ボタンを一つずつ外していく。
半ばまで外されてようやくそのことに気づいたゲイルはエステルの腕を掴んで唇を離した。
「す、少し待て」
とろんとした眼差しで見上げてくるエステルを眺めていると理性などかなぐり捨てて骨の髄まで貪り尽くしてしまいたくなる。
「教官……嫌なのですか」
エステルの手が開いたシャツの隙間から入り込んで腹を撫でる。
「嫌なわけがあるか! しかし、ここは病院だ」
「ナースコールでも押さない限り誰もきません。そのように言いつけてあります」
呆気にとられたゲイルにエステルはいたずらっ子のように笑う。
「だって、教官と少しでも長く一緒にいたかったのですもの」
エステルの腕を引き、ゲイルは荒々しく口づけた。
半ば自棄になったゲイルはエステルのシャツをたくしあげて胸に触れた。
意外と大きな胸はゲイルの荒っぽい愛撫で下着からこぼれだし、ゲイルはそれを直に触れて揉みしだいていく。
ゲイルの荒々しさにエステルは僅かに体を固くしたものの、すぐに緊張を解いてゲイルの愛撫に応えた。
求めてやまなかったものが腕の中にある。
逃げるどころか協力的で、むしろ積極的ですらある。
ゲイルを止めるものなどどこにも残っていなかった。
「……痛っ」
苦痛を訴えるエステルの呻きに気づき、ゲイルは顔を上げた。
エステルの胸の頂はゲイルの唾液に濡れて、てらてらと光っている。
「エステル?」
「あっ、だいじょうぶ…です」
エステルの中へ挿入していた指をゲイルは引き抜いた。
すっかり困惑した様子のゲイルにエステルは困ったような表情を浮かべる。
「まさか、初めて……なのか?」
「そうではないと思っていらしたのですか?」
悲しげな顔をしたエステルにゲイルは自分の浅はかさを呪った。
「いや、そうではないかと思っていたのだが君があまりに積極的だからもしかしたら初めてではないのかもしれないと」
「だって、私がお願いしないとあなたはいつまでも何もしてくれないような気がしましたから」
おそらくきっとその通りだろう。
ゲイルは返す言葉もないとうなだれる。
「エステル、力を抜いてごらん」
もう一度エステルの秘裂に触れ、今度は蜜を絡めながら入り口を撫でる。
「私だけよくなっても仕方あるまい。君にも感じてほしい」
敏感な頂を再度口に含み、舌で転がしたり吸い付いたりしてゲイルはエステルの感度を高めていく。
次第にエステルも甘い声を上げはじめ、もどかしい刺激に焦れたように腰を揺らし出す。
ゲイルは頃合いを見計らって再び指を挿し入れた。
先ほどよりは抵抗も緩く、エステルの痛みも和らいだように見える。
「ん…あ、教官! やっ、なんだか…へんなかんじ」
耳朶を噛み、愛を囁けばエステルの反応は殊更強くなる。
指の本数を少しずつ増やし、ゲイルはエステルの中が解れていくのを辛抱強く待った。
「あっ、あっ…ああッ」
敏感な肉芽を摘んでやるとエステルの体が大きく跳ねた。
「あっ、だめ!」
いやいやをするように激しく首を振るエステル。
ゲイルはかまうことなく陰核を撫で続けた。
執拗に愛撫を続けているとエステルの体がびくりと強張り、小刻みに震えた。
軽く達したのだと判断し、ゲイルは指を引き抜いた。
「君は本当に可愛いな」
濡れた指をぺろりと舐め、ゲイルは愛しげに呟く。
エステルはぐったりとしてゲイルの胸に寄りかかっている。
「疲れたろう。続きは私の足が治ってからにしないか?」
「でも、教官はまだ……」
「私は君と違って自分でどうとでもできるからね。そこは心配しなくていい」
指だけで痛がったエステルを片足が使えないような不自由な状態で優しく抱いてやるのは難しい。
初めてで上になれというのも酷な話だ。
エステルが初めてでないのなら最後までしてしまいたかったが、そうでないのなら我慢してもいいとゲイルは思った。
我慢するのはわりと得意な方なのだ。
「教官」
しばらく無言で考え込んでいたエステルが思い切ったように真剣な顔でゲイルを見上げた。
「ご自分でどうにかされるくらいなら私がどうにかいたします。手を使えばよいのですよね」
「エステル、それは」
「初めてですから上手くできるかわかりませんけれど、教官が教えてくだされば何とかなりそうな気がします」
服の上からエステルの手が欲望に触れる。
どうしていつも思い通りにならないのかと嘆きながらも、ゲイルはエステルに押し切られて呟いた。
「……わかった。とりあえずズボンのチャックを開けてくれ」
「はい!」
「あと、頼むからあまり強く掴んでくれるなよ」
「はい!」
まるで訓練に望むかのようなエステルの態度にゲイルは脱力してしまうのだった。
おわり
GJであります。
しかし、そこで終わらせてしまうのでありますか大佐ぁぁぁぁぁ!!
エステルたんおなに〜は経験済みなんだな(;´Д`)ハァハァGJ!
甘い甘い甘い甘々だぁぁぁぁあ!
あまりの甘さにベッドの上を転げまわってしまうw
ラブラブは安心して読めるからいいな。
GJでした。この二人大好きです。
激しくGJです!
エロ格好良く押しとどめスレの住人でもあるので
教官の煮え切らない態度に、じりじりニヤニヤさせて頂きました(;´Д`)ハァハァ
ここは百合NGですか?
NGじゃないよ
>>438 そのSS好きだ。亜人スレのものですよね。
ふらりと立ち寄った保管庫で2番目位に読んだものでした。
ペット(人型の人外)×飼い主(人)も主従に入る?
まあでも好みの分かれそうなものは注意書きをつけといてほしい。
人外ペットと飼い主のお嬢様の話。
人外っぽさは薄いと思うけど苦手な方はスルーして下さい。
「エシェンバード!」
広い屋敷の中、少女は一つの名を連呼しながら扉という扉を開け回っていた。
タートルネックのセーターとプリーツのミニスカート、ニーソックスにローファー。身につけたものはすべて黒で統一されている。
鳶色の髪は高いところで一つに括られ、肌の色は白い。同じく鳶色をした瞳には怒りの炎が燃えていた。
「エシェンバード!」
「……やあ、セラス。そんなに情熱的に呼ばなくても私には君の気持ちを受け止める覚悟があるよ。心配しなくても逃げたりしないんだけどなあ」
白衣を着た長身痩躯の青年が場にそぐわぬ笑顔を見せた。
セラスは眉間に皺を寄せ、鷹揚に腕を組んだ。
「そう。覚悟はできてるわけね」
言うが早いかセラスはエシェンバードに殴りかかった。
すんでのところで拳を受け止め、彼はアイスブルーの瞳を困惑に揺らした。
「君の気持ちを受け止める覚悟はあっても、拳を喰らう覚悟はないんだけど」
「うるさい!」
両手を掴まれた状態でセラスが喚いた。彼女が酷い興奮状態にあるのは一目瞭然だ。
エシェンバードは溜め息をついて彼女に問いかける。
「君の機嫌を損ねるようなことしたかな?」
セラスの顔が一気に怒りに染まる。
「私のルゥに何したのよ!」
エシェンバードは首を傾げる。
「ルゥっていうのは君の愛玩動物のことかい」
「それ以外に何がいるのよ!」
「うーん、心当たりは皆無だな」
彼が嘘をついているようには見えず、セラスはようやく体から力を抜いた。
それに気づいたエシェンバードも彼女の腕を解放した。
「前に実験したいとか言ってたからあんたが勝手にルゥを弄りまわしたのかと思った」
「君の許可なく触れたりしたら私はあれに八つ裂きにされるだろうからそれはないね」
セラスは大きく溜め息をつき、倒れ込むようにして近くの椅子に腰掛けた。
「ルゥが変なの」
ぽつりとセラスが呟く。
「部屋に閉じこもって出てこないのよ。散歩もしないし、ご飯も食べないの」
「ふーん」
「時々呻き声は聞こえるし」
「そう」
気のない返事を返すエシェンバードをセラスはきつく睨みつける。
「私が診察してあげようか、くらい言ったらどうなのよ!」
「あのねえ、確かに私はあれに興味があるけど、君は私の実験に非協力的だからね、データがない。どこに異常があるかなんて私にはわからないよ」
「とにかく! 一回診てよ。わかんなくても怒んないから……お願い。心配なの」
エシェンバードはあからさまに嫌そうな顔をしてセラスを見下ろす。
「嫌だなあ。見返りのない労働って嫌いなんだよね」
「エシェンバード。ルゥに何かあったら一生恨むわよ」
「怖い顔しないでくれよ。ああ、災難だなあ。私ってどうしてこう不幸なんだろう」
渋々といった様子でエシェンバードは棚から鞄を取り出し、怪しげな器具をあれこれ詰め込みはじめるのだった。
*
「いやあ、春は恋の季節だからねえ」
パタンと後ろ手に扉を閉めてエシェンバードはしみじみと呟いた。
「はあ?」
腕組みをして彼を待っていたセラスは不機嫌な声を上げる。
嫌がるルゥを扉越しに説得し、エシェンバードだけが入るという約束で扉を開けさせた。
一緒に中に入るつもりだったセラスは、分娩室の外で待つ夫のように落ち着きなく歩き回っていたのだった。
やっとのことで現れたかと思えば、エシェンバードはわけのわからないことを言う。
セラスは非常に苛立っていた。
「前も言ったと思うけどあれは人間じゃないからね、我々の常識は通用しないんだよ」
「わかってるけど。だから、何だってのよ?」
「セラス。君は発情期って知ってる?」
ぽかんと口を開けてセラスはエシェンバードを見た。
「人間は万年発情期だけど、大体の動物はそうじゃないだろ。求愛する季節が決まってるものだ」
彼が何を言い出したのかセラスが理解するまでに多大な時間を要した。
エシェンバードの言いたいことを理解してかあっと顔を染めたセラスを見て彼は満足げに頷いた。
「まあ、そういうこと。時期が来るまで放っておくか、そこらの雌犬もしくは娼婦でも買って放り込めば事態は解決だね」
とんでもないことを淡々と語り、エシェンバードは鞄を担いで立ち去ろうとする。
「待ちなさいよ! 放っておくなんて可哀想だし、犬や娼婦を放り込むなんて問題外だわ」
「じゃあ、君が相手する? 相当な体力が必要だと思うけどね」
絶句するセラスを置いて、エシェンバードはさっさと屋敷から立ち去っていくのだった。
*
セラスは迷っていた。
ルゥを拾って三年半、よもやこんな事態に遭遇するとは夢にも思っていなかった。
拾ったばかりの頃はセラスよりも小さくて弟のようだったルゥがここ一年あまりで平均的な成人男子以上の逞しい体に成長した。
中身は子どものように甘えん坊のままなのに体ばかりが大きくなってしまい、最近は少しだけ扱いに困っていたのも事実だ。
大人の男に抱きつかれて頬をすりよせられたり、舐められたりというのは変な感じがするものだ。
セラスは深々と溜め息をこぼす。
発情期だなんて、これで名実ともに大人になってしまったわけだ。
「ルゥ?」
セラスは扉越しにルゥに声をかけた。
何はともあれ、まずはルゥと話し合う必要がある。
もしもルゥが女性を欲したなら不本意だが娼婦を買うぐらいのことはしてもいい。それも飼い主の義務だ。
「入るわよ」
ドアノブに手をかけた瞬間、中から拒絶の声がした。
「ルゥ、顔が見たいわ」
扉にぴたりと体をよせ、セラスは訴えかける。
「お願いよ、ルゥ」
「だめだよ、セラス」
「どうして。私のこと嫌いになったの?」
言いながらセラスはいいようのない不安に襲われた。
ルゥに本当に嫌われてしまっていたら──
(そんなのはいやっ!)
ルゥからの返事はいつまで待っても返ってこない。
セラスは痺れを切らしてもう一度ドアノブに手をかけた。
しかし、ドアノブをひねるとルゥが悲痛な声でそれを拒絶する。
「セラス。僕はセラスの顔見たくない」
「ルゥ!」
「僕、変なんだ。体が熱くて、胸が苦しくて、セラスのことばかり考えてる」
ルゥの声は震えているようだった。
「ドクターが言ってたよ。僕はセラスに近づかない方がいいって。側にいるとセラスをめちゃくちゃにしちゃうから。僕もそう思う」
「ルゥ、あんな奴の言うこと真に受けちゃだめよ」
「僕はセラスが大好きだ。セラスは僕に名前をくれた。たくさん、いろんなこと教えてくれた。セラスは僕の大事なご主人様だ」
ルゥの声を聞いているとセラスまで胸が苦しくなってきてしまう。
我慢できなくなったセラスは部屋へ押し入った。
「あ……セラス!」
想像以上に部屋は荒れ果てていた。
ベッドはずたずたに引き裂かれて中身の綿や羽根が散らばっており、柱や壁は爪でひっかいた跡だらけだ。隣の浴室もおそらくは悲惨な状態になっているに違いない。
部屋の真ん中にルゥは座り込んでいた。
ズボンだけを身につけた格好で、髪はくしゃくしゃに逆立ち、瞳は涙で潤んでいる。耳と尻尾は力なく垂れ下がっており、すっかり元気をなくしている。
「セラス、だめだ、来ちゃ嫌だ」
ぎゅっと自分の膝を抱えてルゥは小さく丸まる。
その姿を見ているとルゥは痛いほどに胸が締め付けられた。
体が大きくなっても、やはりルゥは初めて会った時の小さなルゥのままなのだ。
「ルゥ、大丈夫よ」
セラスは膝をついてルゥの体を抱きしめた。
「怖がらなくていいの。大丈夫」
「セラス……」
「一人で苦しむなんて、ルゥはおばかさんだわ」
ちゅっとルゥの旋毛にセラスはキスをする。
「やだ、あっちにいって」
「嫌よ。私だってルゥが大事なんだから」
いやいやと頭を振り、ルゥの尻尾がセラスの太ももを叩く。
「私が何とかしてあげる」
ルゥがおそるおそる顔を上げる。
「こういう時は出すもの出すとすっきりするって聞いたことがあるわ」
ルゥを安心させようとセラスはにっこりと笑んだ。
「ご主人様のいうことには従うこと。大丈夫だから、私に任せて。ね?」
不安な面持ちながらルゥはこくんと頷いた。
セラスはルゥの正面に座り込み、彼のズボンに手をかけた。
チャックを一気に下げ、前をくつろげるといきり立つ欲望が現れる。
「あ、やだ」
ルゥは恥ずかしそうにうつむいて尻尾をせわしなく動かす。
それでもセラスを突き飛ばしたりしないのは任せると約束したからだろう。
「あ、あの……ごめんなさい」
だらだらと先走りをこぼすものをまじまじと眺めているセラスにルゥは謝る。
「いいのよ。ルゥはなんにも悪くないんだから」
そう言いながらもセラスは想像以上の大きさに動揺していた。
しかし、これも可愛いルゥのためと覚悟を決めて、セラスはそれに手を触れた。
「んっ……」
ぴくりとルゥの体が反応し、先走りがより一層溢れた。
セラスはその粘液を絡めるようにして根元から先端を握りしめて往復していく。
セラスには陰茎に触れた経験などなく、力加減もよくわからなかったがルゥの反応を見て加減を調節する。
少し強めに握り、激しく上下させるとルゥが気持ちよさそうに呻いた。
「ルゥ、気持ちいいの?」
くちゅくちゅと濡れた音がする度にルゥは恥ずかしそうにぎゅっと目を閉じる。
「ねえ、ルゥ」
セラスは胸がドキドキしてくるのを感じていた。
自分の行為がルゥに快感をもたらしているのだと思うとなぜだか酷く興奮した。
「ルゥのすごく大きくなってるわ」
「んっ……そんな、うあっ」
「ほら、びくびくしてる」
恥ずかしそうに顔を振るルゥを見ていると少しだけ虐めたくなり、セラスは顔を耳元へ近づけて声低く囁く。
「いってごらんなさい。セラスの手が気持ちいいって」
「ふっ……いい、きもちい…セラスの手、やわらかくて…あっ、すごく、いいっ」
次第に我慢できなくなったのか、ルゥは自分からセラスの手に擦りつけるように腰を動かしはじめる。
セラスは手の中でどんどん質量を増す陰茎に驚きながらもスピードは緩めずにルゥを追いつめていく。
「セラス! なんか、出る。だめっ……あ、うあああっ」
大きく脈打ち、大量の白濁をルゥは吐き出した。
白濁はセラスの手だけではなく、髪や衣服までもそれは汚していく。
長い射精を終え、ルゥは深々と息を吐く。
そして、自らの欲望に汚されたセラスを見て慌てふためいた。
「あ、あ、ごめんなさい。きれいにするから」
呆然としているセラスに顔を近づけ、ルゥは頬についた白濁を舐めとる。
自身の精液を舐める嫌悪感よりも、セラスを汚した罪悪感の方が強かった。
顔についた白濁を舐め終え、ルゥは髪を舐めはじめる。
「あ、ルゥ」
ようやく我にかえったセラスはくすぐったそうに身をすくめた。
それでもかまわずにルゥはセラスの髪を熱心に舐める。
セラスは自身の手にまみれた白濁を眺める。
そして、未だ猛ったままのルゥの欲望へと視線を移した。
(まだ、あんなに……)
大人しくさせるにはあと何度出すもの出せばいいのかとセラスは眉をしかめる。
「ごめんなさい、セラス」
髪を舐め終えたルゥがセラスの手を掴んで舐めはじめる。
ルゥの舌が指を這い、ぱくりと咥えて吸いつく。
ぞくりとセラスの背筋を何かが走る。
青臭い雄の香りとルゥへの愛情、触れてくる舌の感触がセラスの欲望を僅かながら刺激しはじめていた。
(やだ。なんだか私……)
高鳴りはじめた胸に気づき、セラスは動揺していた。
「セラス、大好きだよ。だから、嫌いにならないで」
必死に訴えかけるルゥの切実な眼差しにセラスの中の何かが弾けた。
つづく
次に本番投下します。
主従のつもりで書いたけど、スレ違いだったらすみません。
GJGJGJGJ
続きかもーーーーん!
続き気になるよGJ!
珍しくヘタレ可愛い系の従者だね。萌えます。
これはこれはこれは楽しみです
>>446-450の続き投下します。
人型の人外ペット×飼い主のお嬢さまなので苦手な方はスルーして下さい。
ルゥの顔を両手で挟み、セラスは唇をよせた。
そして、そっと唇を離して重ねるだけだった口づけを深めるべく角度を変えて再度唇をよせた。
「ん…ふっ」
舌を絡めるキスの合間に吐息が漏れる。
自分の口から漏れたとは思えないような甘い声にセラスは恥ずかしそうに唇を離す。
口の中には先ほどルゥが舐めとった精液の味が広がっていたが、セラスはそれを不快に思ったりはしなかった。
「ルゥは私にこういうことしたかったんでしょ」
図星をつかれたとばかりにルゥは目を見開いてセラスを見下ろした。
「それとも、もっといやらしいこと考えてたの?」
そっと猛った陰茎に手を触れれば、ルゥは切なげに目を細めた。
「ごめん、ごめんなさい、セラス」
「……私だけ?」
ゆっくりと手を上下に動かしながらセラスは問う。
質問の意味がわからないようでルゥは首を傾げた。
「他の女の子のいやらしいとこも想像した?」
ルゥは首がちぎれるのではないかというほどに激しく振って否定する。
「せ、セラスだけ…セラスだけだよ。僕、セラスが好きだ。セラスじゃなきゃいやだ」
抱き寄せられ、セラスはルゥの大きな胸に押し付けられる。
陰茎から手を離し、セラスもルゥの背に両手を回した。
「ルゥ、優しくしてくれる?」
「え? あ、でも、あの……い、いいの?」
「優しくしてくれるの?」
セラスの肩に手を置き、ルゥは少しだけ体を離した。
そして、真剣な顔でセラスを見つめる。尻尾も耳もぴんと逆立っている。
「が、頑張る! 頑張って優しくする。セラスを壊したりしないよ」
本当なら本能に身を任せて目の前の女体をめちゃくちゃに貪り尽くしたいに違いないルゥがセラスへの愛情だけを支えに理性を保っている。
その愛情の深さにセラスは感動を覚えるのだった。
「愛してるわ、私のルゥ」
ルゥは髪留めを外してセラスの髪を下ろしてしまう。
そして、セーターの中に手を差し入れた。
唇を重ねながら初めはおそるおそる触れていたルゥだが、口づけに夢中になるにつれて手の動きも荒々しさを増していく。
ぐにゃぐにゃとルゥの手のひらの中でセラスの胸は形を変える。
「ん…ふぅ……あ、あっ」
ルゥに体重をかけられてセラスは床に倒れ込む。
セラスの足を開かせ、ルゥはその間に体を割り入れる。
唇を離す度にルゥはセラスの名を繰り返し呼び、そうしていなければ息ができないとばかりにセラスの唇を奪い続ける。
陰茎が太股に触れ、セラスの体がびくりと跳ねた。
「セラスのここ、おいしそうだ」
唇を離して体を起こし、ルゥはセラスの股間を撫でながら呟いた。
胸を愛撫する手は休めずに、ルゥはゆっくりと体を後方にずらした。
ルゥが何をしようとしているのか察したセラスは慌てて両手でスカートを掴んだ。
「だめだめだめだめ! 絶対だめ!!」
「でも……」
「それだけは絶対いやっ!」
しゅんと耳を垂らし、ルゥは残念そうにしながらも頷いた。
「セラスがいやならしないよ」
目標を乳房に変え、ルゥは身を屈める。
赤く色づいた頂を口に含み、舌で転がしたり吸いついたりと思うままに愛撫する。
「やっ……あん、ルゥ」
唇に拳を押し当て、セラスは熱い吐息を漏らす。
ルゥが触れた場所がことごとく熱を持ち、セラスの体を溶かしていく。
ルゥの舌は乳房から臍へ移動し、舌先でそこをつついた。
「ああん、や…ああ……」
蕩けきった場所に指を挿入され、セラスはきつく目を閉じた。
ルゥが指を動かす度に淫靡な音が響く。
「すごい。セラス、どろどろだよ」
「やあ……いわな、で…んんっ」
すっとルゥが指を引き抜き、セラスの腰を抱え込む。
太股でセラスの足を跳ね上げ、次の段階へ進む準備を整えた。
「僕、もう……セラス、我慢できないよ」
荒々しく口づけながら、ルゥはセラスの中へと侵入を試みる。
陰茎の先端が触れ、蜜を絡めながら狭い場所へと潜り込んでいく。
挿入とキスの刺激でセラスの思考は完全に麻痺していた。
陰茎がすべて収まりきるとルゥはおもむろに腰を振り始める。
「んっ、あっ、あっ、ああっ、あっ」
痛みはさほどなかったが、体を抉られるような異物感がセラスを襲う。
抉るように奥まで突き上げて、襞をひっかけるようにして引いていく。
ルゥの動きに合わせてセラスの口からは絶え間なく喘ぎが漏れていた。
「セラス、セラス! あっ、きもち…いっ……いいっ!!」
すっかり快楽の虜になってしまったようでルゥはより深くセラスを犯すべく苦心していた。
本能のままに突き上げるスピードを変えてみたり角度を変えたりしていたが、それでも足りないとセラスの足を掴んでより大きく開かせてみたりする。
「ああっ、だめ……あっ! ルゥ…ルゥ!! あああっ! はげしっ……ああん!」
くるりと体を反転させられ、セラスは腰だけを突き出す格好にさせられる。
獣が交わる時の格好なのだとセラスは薄れる意識のどこかで気づいた。
セラスの腰を抱き込み、覆い被さるようにして乳房を揉みしだく。
譫言のようにセラスの名を呼び、時折低く呻きながらルゥは快楽だけを追い求める。
乱暴に、荒々しく抱かれているというのに、耳元で名を呼ばれる度にセラスの襞は陰茎をきつく締め付けた。
セラスもまた快楽に溺れつつあったのだ。
ルゥの動きに合わせて無意識に腰を揺らしながら、セラスは悲鳴に近い嬌声を上げてルゥの求めに応えた。
「だめ…だ、ああ、セラス!」
「や、あ…あ、ああああああっ」
獣の咆吼をあげながらルゥは二度目の精をセラスの胎内に吐き出した。
自分の中に異物が吐き出される感覚にセラスもまた生まれて初めての絶頂に達した。
ぐったりと力なく床に突っ伏したセラスだが、腰はルゥに掴まれたままだ。
ぶるぶると体を震わせて射精を終えたルゥは再び腰を揺らし始める。
「ひっ……あ、ああっ!」
達したばかりで敏感になっている内部を遠慮会釈なしにかきまわされてセラスは再び悲鳴を上げて仰け反るのだった。
*
気がつけば自室のベッドに横たわっていた。
体が酷くだるい。エシェンバードが相当な体力が必要だと言っていたのをセラスは今更思い出した。
「セラス……よかった」
床にぺたりと座り込んでベッドに頭を乗せていたルゥがほっとしたように呟いた。
「ごめんなさい。優しくするって約束したのに」
「いいの。覚悟はしてたもの」
「体、大丈夫?」
あまり大丈夫ではなかったが、ルゥを安心させるためにセラスは微笑んだ。
「ルゥは? もう平気?」
こくんとルゥは頷く。
「セラスのおかげで大丈夫になった」
セラスは腕を伸ばしてルゥの頭を撫でた。
ぱたぱたとルゥが尻尾を振ったようで床を叩く音がする。
「よかった」
二人は暫く顔を見合わせて微笑みあう。
ふと何かを思い出したようにセラスは動きを止めた。
「そうだわ。ルゥの部屋を直さなきゃ」
散々な状態の部屋を思い出したのだ。
「部屋が直るまでは客間を使うといいわ」
セラスの提案にルゥは物言いたげな視線を送る。
「なあに?」
しばし迷ったあげくルゥは意を決したように口を開いた。
「僕、セラスと一緒の部屋がいいな」
可愛いルゥのわがままをきくか否かセラスは小一時間ほど頭を悩ませるのであった。
おわり
GJGJGJー!自分はかなりツボでした!
続きあるなら宜しくお願いします。
ここは雰囲気も良いし神が集う素晴らしいスレだな…。
>>460 やっと見つかったぁぁ!404ではないけど大感謝。
ていうか作者さんフィリップとセシルや
ユリシスとイリス書いてる人だったんだな。
あれも大好きだったからなんか嬉しい。
まだ読んだことのない作品もいくつかあって更に嬉しい。
作者さん&460さんありがとう。
ありがとー!
ど、どこだ? どこにあるんだ?
>>463 はっきり載せるのも迷惑だろうから
趣味・嗜好>主従同盟>丹念に探す
見つかったー。さんく。
あーあ、職人さん来なくなっちゃった…
この板はこのくらいの過疎状態が普通だよ
466が言いたいのは「あのなーお前らあれは神作品だったし
好きなのはわかるけど2chで作者のサイト晒すような真似すんなよ。
もう来てくんなくなるかもしれないぞ」て事ジャネーノ。
つか俺はそう思ってる
こういう事いうと雰囲気悪くなるの分かってるけどさー。
普通サイト捜索は隠れてやるもんだよ。
ここって職人さんレベル高いし読みがいがあるから、凄く好きなスレなんだよね
住人も落ち着いてて好感持ってたんだけど、一部でそういうことやられると
職人さんにとっても、その他楽しみに職人さん降臨を待ってる奴らにとっても
迷惑な行為だと思うんだよ
もうちょっと考えて行動しようぜ
喧嘩ふっかけてるわけじゃないぞ
漏れは喧嘩ふっかけてみる
ちくしょう折角の良スレを。
471 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 01:33:20 ID:qpY1eKqF
ここで雰囲気を一変するために新SSの投下
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
う〜む……「SSがないなら自分で創ればいいじゃない」を実践してるんだが、
やはり難しいもんだね。SS神の方々の偉大さを思い知らされるわ。
得意な人もいれば苦手な人もいるからな、全ての物事において
SS待ってるよ。
時期外した感があるがセレスとルゥに萌えた…
ヘタレだがそこがいい!
そしてセレスは飼い主というか恋人みたいなのがまたよい。
ご馳走様でした。
セラスだた…
すまない作者様…
477 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 17:34:23 ID:VqCbG6H4
気にするな。きっと職人さんはそんな細かいことは気にしないさ
保守がてらSS書いてたら途中で消してしまった。
もう嫌だ。もう駄目だ。もう眠い。
そんな悲しみの保守。
>>478 いきろぉおおおおおお!!!!!!
データ消しちゃったか。悲しかったろうむなしかったろう。
今日は日が悪かったんだな。
また気が向いたら書いてくれ。楽しみにしてるよ。
自分のせいでスレの雰囲気悪くなって正直すまんかった。
サイトの話が出た時に晒す気はないですとはっきり言っておくべきだったと今更後悔。
でも、バレたもんは仕方がないし荒らされてるわけでもないので気にしないことにします。
このスレ好きなので荒んでしまうのは嫌ですから。
というわけでスレの雰囲気変えるのに役立てばとSS投下します。
ゲイルとエステルのその後・前編です。
個人差はあれど効果が現れるのは十分から三十分の間だとイリスは言っていた。
──依存性はありません。
副作用が現れることも稀にあるようですが翌日体が重くなるといった程度。
ひどい筋肉痛が全身におこると思えばいいでしょう。
まあ、ないとは思いますが念の為。
小瓶を手渡しながら兄の副官は淡々と語っていた。
──主に男性に著しい効果が出ます。
詳しくはこちらを。
使用前に必ずお読みください。
用法用量を正しく守ってこその薬ですから。
今、エステルはイリスから受け取った説明書を隅々まで読んでいるところだ。
兄御用達の薬師に調合させたのは媚薬。
飲むと普段どんなに淡白な者でも逆らうことのできない強い情欲に支配されるというエステルの注文通りの品だ。
(これさえあればいくら教官だって)
あらぬ妄想に心弾ませ、エステルはこみあげる笑いをおさえもせずに小瓶を懐にしまいこんだ。
入院中のゲイルと想いを確かめあって早数ヶ月。
続きは退院してからと約束したというのに未だに一線を越えていないのはどういうわけか。
エステルは積極的にゲイルに迫っているというのにのらりくらりとかわされてしまう。
力ずくという強硬手段にでても経験の浅いエステルは返り討ちにあってしまい、自分だけ高みに追いやられたあげくに逃げられるという始末。
しかし、今日という今日こそはゲイルと深い仲になるのだとエステルは決めていた。
布一枚纏っただけといっても過言ではない露出の高いドレス。
素顔に限りなく近いというのにどこか艶めいた印象を受ける化粧。
やる気に満ち溢れている。
そうこうしている内に戸を叩く音がしてエステルは居住まいを正して訪問者を出迎えた。
「すまない。遅くなってしまった」
メイドに案内されて現れたのは愛しの君。
いつもの軍服姿とは違い、今日はタキシードを着込んで正装している。
その凛々しい姿にエステルはうっとりと見惚れた。
「エステル!」
立ち上がってゲイルに近づくと彼は仰け反って悲鳴を上げた。
エステルは不満たっぷりに彼を見上げた。
愛しの恋人に会って早々上げる声ではない。
「は、伯爵夫人主催のパーティーへ行くのではないのか」
「そうです。ですからそのような格好をしていらしたのでしょう?」
「あ、ああ。しかし……パーティーではダンスを踊ることもあるんだろう」
ゲイルはエステルの姿を上から下までゆっくりと眺めた。
「その格好で踊るのか」
もちろんエステルにはパーティーに行く気などない。
ゲイルとともに隣の寝室になだれ込むつもりなのだから。
しかし、エステルはそんなことなどおくびにも出さず優雅に微笑む。
「ええ。いけませんか?」
ゲイルは一瞬返答につまり、しかしすぐに首を振って呻いた。
「できればもう少し大人しい格好に着替えてほしい」
「似合いませんか?」
「似合っていないわけではない。むしろ似合っている。しかし、だ」
ゲイルの手がエステルの剥き出しの肩に触れる。
「君の肌を他の男の目に触れさせるのはできうる限り避けたい」
「教官!」
「情けない男だと思わないでくれよ。自覚はあるんだ」
かあっとエステルの頬が朱に染まる。
ゲイルは時々こうして独占欲を露わにする。
普段滅多に感情を吐露しない分、たまに恥ずかしいことを口にする。
その度にエステルは嬉しいような恥ずかしいような幸せな気持ちになるのだった。
「わ、わかりました」
エステルはゲイルの手をぎゅっと握り、そのまま手を引いて長椅子に掛けさせる。
「それまでお茶でも飲んで待っていてください」
エステルがそう言うとまるで外で待ちかまえていたかのようにメイドがティーセットを運んできた。
メイドを下がらせたエステルはワゴンに乗せられたティーポットからカップへ紅茶を注ぎながらそっと懐から小瓶を取り出した。
ゲイルに背を向けているエステルは彼に気づかれぬように片方のカップに媚薬を落とす。
(一、二滴と書いてあったけれど教官は自制心が強いのだから少し多めの方が)
イリスの忠告は遙か彼方へ消え去っていたようだ。
ゲイルの方へ媚薬入りの紅茶を置き、エステルは彼の隣に腰掛けた。
「着替えないのか?」
「せっかくですから私も紅茶をいただきます」
ゲイルが紅茶を飲むところを見届けるまで安心はできない。
「……エステル」
警戒されないように先に紅茶を飲もうとカップへ手を伸ばしたエステルの手をゲイルが掴み、優しく抱き寄せて唇を寄せてきた。
思いがけないゲイルの行動にエステルは動揺しながらも喜びを隠しきれない。
薬などに頼らなくてもよかったのかもしれないと思いつつ、エステルは積極的に舌を差し込んで口づけを深めていく。
しばらく口づけを楽しむと彼はあっさりと唇を離した。
「早く着替えてくるといい。パーティーに遅れてはいけないだろう?」
キスより先に進む気など毛頭ないといった態度にエステルの眉が残念そうに垂れ下がる。
カップを手に取り、エステルはその中身を一気に呷った。
「それならこのまま行きましょう」
「エステル」
「教官は私とおしゃべりするよりもパーティーの方がよいのでしょう」
「パーティーへ行くから一緒に来てほしいと頼んだのは君じゃないか」
拗ねたエステルの言動に呆れの溜め息をついて、それ以上口論は重ねたくないとゲイルもカップに口をつけた。
(飲んだ……)
ゲイルのカップが傾くのをエステルはドキドキしながら見ていた。
「遅れてもいいのか? パーティーなどは苦手だから君がかまわないのなら私はそれでもいいが」
ことりとカップを置き、ゲイルはそう言った。
「では、少しお話しましょう」
ゲイルの傍らに寄り添い、エステルは会えない間どれだけ寂しかったかを懇々と語り始めるのであった。
ちらりとエステルは壁に掛けられた時計に目をやった。
ゲイルのカップは既に空。
世間話を始めて十分以上経っている。
(おかしいわ)
傍らのゲイルは涼しい顔で訓練中の部下の失敗を語っている。
息が荒くなったり、瞳が潤むようなことはない。
それどころかむしろ──
(私の方がなんだか変だわ)
ゲイルの肩が触れただけで体が異様に熱くなる。
びくりと体を強ばらせたエステルをゲイルが訝しげに見下ろした。
(どうして?)
すっかり困惑したエステルは動揺を隠すことができない。
「ふむ」
ゲイルの手が不意に腿に触れ、なぞるように往復した。
「あっ、ああ……教官、だめッ」
普段ならば有り得ないほどに敏感な反応を示すエステルをゲイルは興味深く眺める。
「エステル」
耳朶に息を吹きかけるようにして名を呼ばれ、エステルは甘い吐息を漏らした。
「私の紅茶に何を入れたんだ」
ゲイルの手が腿を撫で回す。
肝心な場所にはまったく触れない弱い刺激にエステルは焦れたように腰を揺らす。
「大体の予想はついているが……正直に答えたなら君の触れてほしい場所に触れてあげよう」
強い刺激を求めてやまないエステルはあっさりとゲイルの質問に答える。
「あ、び…媚薬を……ひあっ、ああん! なんだか、わたし…あッ」
「やはり。どおりで敏感なはずだ」
「そこ、だめッ! あっ、すご……いいっ、あッ、あッ、ああっ」
ご褒美とばかりにゲイルの手が腿の付け根へ滑り込み、濡れそぼった泉をかき回す。
「んっ! なん、で…あっ、や、いっちゃ……ひっ」
耳朶を噛まれただけで信じられないほどの衝撃がエステルを襲う。
「君が私に隠れてこそこそしていたから念の為にカップをすりかえてみた」
「え……ああっ、いつ…まに、ひあっ、あッ、や…ああああああっ!」
がくがくと体を震わせ、エステルは全身の力を抜いた。
くちゅりと指を引き抜き、ゲイルは悪びれなく答えた。
「キスしたときだ」
唐突なキスはカップを入れ替えるためだったのかとエステルは力なくうなだれる。
やはり彼は自分よりも一枚も二枚も上手だ。
「楽になったか?」
優しく頭を撫で、ゲイルは問いかける。
エステルは首を振ってゲイルの首に腕を回してしがみついた。
「教官、体が熱くて、変なんです。つらいの」
まぎれもない事実であった。
一度達したおかげで治まるどころか欲望はより強くエステルを苛みはじめていた。
体の奥が熱を孕み、強い刺激を求めて疼くのだ。
「我慢できないのッ」
ゲイルが何か言う前にエステルはその口を塞いで情熱的にキスを交わす。
観念したように背を撫ではじめたゲイルの手のひらが心地よくて思わず呻いて体を震わせる。
「教官……好きっ! 好きなんです…愛してます」
勢いよくゲイルに抱きつき、自分よりも一回りも大きな体を押し倒す。
窮屈そうなシャツの首元のボタンをいくつか外し、ズボンの前をくつろげる。
「エステル、ちょっと待て」
エステルの痴態に反応し、僅かながら立ち上がり始めていた陰茎を探り出されてゲイルは慌てて体を起こそうとする。
だが、エステルはそれを許さずにのしかかって再び口づける。
「いや! 待ちません。待てないの! 今日は最後までするんです。教官が好きなの! もう我慢するの嫌なんです」
キスをしながらエステルはゲイルの陰茎を扱きはじめた。
エステルの指が動く度に柔らかさを失い、熱を増し、膨張していく。
「教官、ゲイル教官」
夢中で口づけてくるエステルを受け入れ、ゲイルはその髪を優しく撫でつける。抵抗すれば傷つけるだけだと悟ったからだ。
「愛してます、教官」
エステルの唇が離れ、ゲイルがよくするように耳朶を噛み、項を辿っていく。
快感が走るというよりはくすぐったくてゲイルはつい身を捩ってしまう。
「あん、逃げないでください」
すっかり立ち上がった陰茎から手を離し、エステルはゲイルの衣服を脱がしにかかる。
「……すまん」
シャツのボタンをすべて外し、逞しい胸を露わにする。
つづく
続き!続き!
イリスってあのイリスかw
GJ!
ゲイル教官さすがだぜ
キタキタキター
お待ちしてましたよ
やはり教官という響きは最高だぜ
>480
いや、あんたのせいじゃないよ。マジで。だから気にスンナ!
皆が色々言ってたのは、サイト知られたら本人さんがスレから
去っちゃうんじゃね?って心配してたからだし。
やーエステルたん可愛いなw 続き待ってます。GJ!!
引き続き新たな作者さんの作品も待っとりますで(・∀・)
ありがとう。安心した。
続き投下します。
「教官、素敵です」
陰茎よりも少し下に座り込んでいるエステルは身を屈めてゲイルの肌に舌を這わせた。
男も感じるのかはわからないが、自分がされて気持ちのよかったことをゲイルにもしてみたかった。
小さな突起を口に含み、舌を絡めて吸い上げる。
「教官、気持ちいいですか?」
ころころと指で転がしながら問うとゲイルは難しい顔をして首を傾げた。
「気持ちよくないこともないような気もしなくもないがくすぐったい」
芳しくない返答に不満を覚え、エステルは体の向きを変えた。
ゲイルの腹に胸を押しつけるようにして陰茎と向かい合う。
当然、ゲイルの目の前に腰を突き出す形になる。
「こっちは気持ちいいですよね」
ぱくっと先端を咥え、舌を這わせて上下に顔を動かす。
「え、エステル」
ゲイルに奉仕するのはこれが二度目だ。
歯を立てないように気をつけながら、エステルは前回教わったことを必死に思い出す。
(たしか、こうして)
咥えきれない部分を手で扱き、陰嚢をやわやわと揉みはじめる。
背後でゲイルが低く呻いたのがわかった。
熱心に奉仕していると頭の芯が溶けてしまいそうになる。
思考に靄のかかったような状態でエステルはゲイルを気持ちよくさせるためだけに動くのだった。
*
(まいったな)
鼻にかかった吐息が漏れ聞こえ、エステルが熱心に陰茎を愛撫しているのがゲイルにも伝わる。
気持ちいいのだが今にも射精してしまいそうな快感ではない。
これだけで達してしまうのは少し難しいかもしれないとゲイルは思う。
それよりも目の前に突き出された尻の方が気になる。
ドレスがぴたりと張り付いたそれに触りたくてゲイルは先ほどからうずうずしていた。
(さて、どうしたものか。勝手に触ると怒るかもしれんからなあ)
今のエステルは普通の状態ではない。
満足いくまで好きなようにさせようと覚悟は決めたものの、やられっぱなしというのも性に合わない。
(出すまでやめそうにないよな、あれは)
エステルが小さな口で自身の陰茎を一生懸命頬張っているところを想像してみると僅かに感度が増した。
どうせなら見えるようにしてくれればいいのにとゲイルは手前勝手にそう思う。
一つ大きく吐息をついて、ゲイルはエステルの尻を撫でた。
「ひゃっ…あ、んあっ」
途端にエステルが陰茎から唇を離して可愛らしく喘ぐ。
エステルの反応をうかがうようにやわやわと撫で回してみる。
どうやら怒りはしないようだと判断し、ゲイルは僅かに体を起こして邪魔なドレスを捲りあげた。
そこは既にじっとりと潤い、溢れた蜜が下着を濡らして腿を伝い落ちていた。
ゲイルは躊躇うことなく濡れた下着を引きずりおろした。
「……私のものを咥えて感じたのか」
ふつふつと悪戯心が湧きだして、ゲイルはぴしゃりと軽く尻を叩いた。
「ああっ!!」
「悪い子だ。エステル、君はとても悪い子だ」
怒り出すかと思ったが存外大人しいものだ。
(なるほど。こういうのが好きなのか。意外だ)
ゲイルが体を起こしたせいで咥えにくくなったのかエステルは唇を離して手で扱きだす。
ふにふにとした乳房が腹にあたって気持ちいい。
エステルが急に大人しくなったことと人の気も知らないでという若干の苛立ちが嗜虐心を煽り、ゲイルは普段ならば絶対に口にしないような言葉でエステルを責め立てた。
「ご、ごめんなさい。でも、わたし」
「口答えはいい。私の言いつけに背いた罰を受けなければならない。違うか?」
初めはからかうだけのつもりだったが興が乗ってきたゲイルは教官時代のように冷たくエステルに言い放った。
「はい! 教官」
反射的に体をびくりと強ばらせたエステルを見て、ゲイルの口元に笑みが浮かぶ。
「まずは私の体から降りなさい」
素直に体から降りてエステルは正座をしてゲイルに向き合う。
(可愛いものだ)
しゅんとしたエステルの姿を見ていると優しくしてやりたくてたまらなくなる。
しかし、ゲイルは冷たい態度を和らげなかった。
なんとなくそうした方がいいような気がしたのだ。
「あの、教官……ば、罰とは」
このまま体を重ねてもよかったが長椅子ではふとした拍子に転がり落ちてしまいそうな気がしてゲイルはエステルを抱えて立ち上がった。
「ここではだめだ」
エステルを抱えたまま扉を蹴り開けて隣の寝室へ運ぶ。
寝台にエステルを放り出し、邪魔なドレスを引きはがした。
「ああっ、教官」
ゲイルの荒々しさにはまったく動じず、エステルは期待に目を輝かせる。
(処女のくせにどうしてこう)
自らも衣装を脱ぎ捨てながらゲイルは小さく溜め息をついた。
時期尚早だと思っていた。
欲しいか欲しくないかと問われればもちろん欲しい。
それでも我慢していたのは確信が欲しかったからだ。
エステルが自分を慕う気持ちが親兄弟への愛情の延長のような気がしてならなかった。
だから、ゲイルは体を重ねることを躊躇っていた。
いつかエステルが自分よりも若く魅力的な男と恋に落ちて自分から去っていくとしたら、その時は清い関係の方がダメージが少ない気がしたからだ。
体を重ねれば歯止めがきかない。
のめりこんでしまいそうで怖かった。
けれど、もうそんなことはどうでもよくなっていた。
(どうなっても知らんからな)
ゲイルはエステルにのしかかると荒々しく口づけていった。
「これが、ふっ…んん、ばつ…ですか?」
エステルの体がたちまちの内に蕩けていく。
「そうだ。お仕置きだ」
媚薬のおかげかとゲイルは勝手に判断したが、そればかりではなかったろう。
ずっと焦がれていたゲイルとの逢瀬にエステルの心は震えていた。
「好き、あっ、すきです…んん、あっ、はぁっ」
ゲイルの愛撫は性急だった。
既にどろどろに蕩けきった場所にゲイルは熱く高ぶった欲望を押し当てる。
「我慢できないくらい痛かったらいいなさい」
こくんとエステルが頷いたのを合図にゲイルは腰を進めた。
「あ、ああああっ」
さしたる抵抗もなくゲイルはエステルの中へ潜り込むことができた。
媚薬というのは便利なものなのだなとゲイルはひそかに感心した。
きゅっときつく締め付けてきながらも、内部は蜜が溢れてぬめっている。
「エステル。大丈夫か?」
「はい、なんだか…気持ちいい」
試しにゲイルは腰を押しつけてみる。
エステルが震えたが痛がっているようには見えない。
腰を引き、再度押し込む。
やはり痛がっているようには見えない。
「あっ、ん……くっ、ひあっ…んぅ、やっ」
安心して腰を揺らし始めたゲイルにエステルは甘い喘ぎで応えた。
きつく目を閉じ、シーツを掴んで堪えているのは快感だろうか。
「エステル、私のエステル」
休むことなく腰を叩きつけながら、ゲイルはエステルの両頬を挟んで上向ける。
「目を、あけなさい」
のろのろとエステルが目を開く。
「エステル、君は誰のものだ」
「あっ、きょうかん…あんっ、んっ」
「さあ、いってくれ。誰のものなんだ」
「あ、ひあっ…ゲイル、ゲイルきょうかんの……はっ、きょうかんの、もの…です。教官ッ!」
言い終わるなりエステルはゲイルにしがみついて甲高い悲鳴を上げた。
きつく収縮して締め上げてくる感触にエステルが達したことに気づく、しかし止めてやるにはゲイルの気持ちは高ぶりすぎていた。
「そうだ。エステル、私の…私のものだ!」
敏感な内部を擦りあげる刺激から逃げ出そうと無意識に体をばたつかせはじめたエステルをきつく抱きしめて押さえ込み、ゲイルは自らの快感を追い求めて動き続けた。
「愛してる。誰にも、渡さんぞ……くっ、エステル!」
一際強く腰を打ちつけ、エステルの最奥へとゲイルは白濁を迸らせた。
*
「もっと、んっ……あっ、きょうかんっ」
ゲイルの体に馬乗りになったエステルが淫らに腰を揺らしている。
唐突にゲイルが下から腰を突き上げた。
「あっ、ああっ! ん、ふぅ……」
ゲイルが深々と息をつき、エステルは自身の体内に迸る滾りの余韻を味わうように腰をすりつけた。
「エステル、そろそろ……」
「やっ、だめです! まだするの」
駄々っ子のようにいやいやをするエステルを眺めてゲイルは少しばかり焦りを覚える。
(まずい。このままでは死んでしまう)
未だ媚薬の効果が残っているようでエステルは体の疼きを訴えてくる。
初めは楽になるまで付き合ってやろうと思っていたゲイルだが、数え切れないほど出してもまだ欲しがるエステルに生命の危機を覚えた。
「これ以上は無理だ。もう勃たん」
仕方がないとゲイルはエステルの体を引き倒して胸に押しつける。
「体を重ねるかわりに、お前がどれだけ私を愛してるか聞かせてくれ」
「教官……」
「体だけでなくお前の口から聞きたい」
「はい! わかりました」
きらきらと目を輝かせて胸に頬をすりよせてくるエステルにゲイルはほっと息をついた。
(エステル……)
ずっとこのまま腕の中にいてくれたならとゲイルは願わずにはいられなかった。
(いつまでも私のものでいてくれ)
淡い桃色の髪に口づけ、ゲイルは嬉々として語られるエステルの言葉に耳を傾けるのであった。
おわり
気がついたら教官がサディスティックな一面に目覚めそうになってしまって慌てて軌道修正しました。
それから、イリスは予想通りあのイリスです。
ドSな教官も見たかったりw
メラGJです!!
GJ!
まぁ士官の訓練だろうから無茶なものではないだろうけれども、
どうしても軍隊というとハートマン軍曹を思い浮かべるw
GJGJ〜!
積極的なエステルにメサ萌えた。
ゲイルは精根共々吸い取れてしまうといいよ!w
まさか本番まで見れるとは夢にも思わなかった。有り難う>
そして自分以外にも軍人・歳の差に萌える人がいるのだと知り
嬉しくなってしまった。
よかったよ〜ーでも次はドSに責めまくる教官よろしくw
エステルたんは淫乱だなw
ぐあああ。
エステルたんもゲイル教官もGJ!
軍隊に関して無知なのだが、萌え系銀英伝みたいなのを
想像すれば良いのでしょうか?
おぉぉぉぉGJGJ!!
萌えた〜〜萌えた〜〜萌え死ぬかと思った。危なかった。
ってことは、ユリシスとエステルが兄妹なのか…いいな、なんかそれ。
世間知らずっぽいとこが似てる…好みも一緒なのか…<堅物スキ
>>499 軍隊もの書いときながらなんですが、私もあまり軍隊は詳しくないのです。
銀英伝は読んだことないのでなんともいえませんが、ガンダムみたいな感じだと思ってもらえたらなんとなくわかってもらえるかなと。
エステルとゲイルは想いが通じた辺りから主従っぽさがなくなってきている気がするのでこれ以上投下するのもスレ違いかなと思ってます。
Sな教官も書いてみたい気はするんですけど。すみません。
GJ!
最後下になった教官がいつか本当に盛られそうな予感。
大佐なら事前にポットに入れとくとかやりそうだ(当然自分も飲む)。
んで、教官がSでもMでもエステル様あんま変わんなさそう。
暖簾に腕(ryもとい蔦に腕押し(手を出したら教官が搦めとられました)
って感じで。
いや、むしろ思いが通じた後だからこそ、任務などでゲイルが
エステルタンの下に就いて、悶々とするのがいい、などと
思う俺はマニアックな嗜好なんだろうな
どちらにしろ、新しい主従関係を生み出してくれてGJ!
>>52 奥様ものの続きです。
和姦に限りなく近いけれど若干陵辱あり。
505 :
執事×奥様1:2006/12/11(月) 15:44:33 ID:YvGExL2J
支えるように腕に手を添えられた瞬間、エレインの体に電流が走った。
それはエレインの体を甘美に焼き付くし、あっという間に欲望に火をつけた。
「大丈夫ですか、マダム」
低い声が顔のごく近くで聞こえた。
とろりとはしたなくも蜜が溢れはじめたことに気づき恐怖におののく。
自分は使用人に欲情している。
ただ、手が触れただけだというのになんという有様か。
エレインは羞恥に顔を赤く染めた。
「マダム?」
訝しげにかけられた声でエレインは我にかえる。
「離しなさい、スティング。無礼ですよ」
毅然とかけたつもりの声が震えていたことに自身でも気づく。
(アルフレッド……助けて)
謝罪の言葉とともにスティングの腕がエレインから離れる。
解放されたことに安堵しながらも、一方ではそれをひどく残念に思ってしまう。
「わ、私……もう休みます」
「食事はよろしいのですか」
「いりません。今日はもう眠りたいの」
スカートの裾をはためかせて、エレインは淑女らしからぬ早さで階段をかけ上っていった。
自室の扉を勢いよく開き、寝台へと飛び込む。
(絶対に変に思われたわ)
ぎゅっときつくシーツを握りしめる。
スティングは階段を踏み外しそうになったエレインを助けただけだ。
どうして何事もなかったように礼を言うことができないのだろう。
スティングを前にするとエレインはいつも正常ではいられない。
(アルフレッドがいてくれたら)
今は亡き夫に思いを馳せ、エレインはシーツに顔をすりつけた。
頬が火照って仕方がないのだ。
(やっぱりだめ)
がばっと起き上がり、エレインは窓へ歩み寄りカーテンを閉めた。
扉もしっかりと閉めて、ドレスを脱ぎ捨てる。
下着すら脱ぎ捨てレースの靴下だけになり、エレインは寝台へ横になった。
(アルフレッドはいつも)
そっと乳房に触れてみた。
ゆっくりと揉んで感触を確かめる。
アルフレッドが触れたときのことを思い出しながら、指先で乳房の先端に触れた。
びくりと体が跳ねる。
「あっ……」
いけないことをしていると思いながらも指は止まらない。
弾くようにして刺激し、エレインは熱い吐息を漏らした。
両手を使って乳房を弄りまわしていると下腹部がきゅんと切なくなる。
ほんの少しの恐れと多大な期待を込めて、エレインは蜜を溢れさせるそこへ右手を伸ばした。
「ひゃん」
茂みをかきわける内に敏感な部分に指が触れた。
506 :
執事×奥様2:2006/12/11(月) 15:46:19 ID:YvGExL2J
そこはアルフレッドが見つけ出したエレインの秘密の場所だ。
ゆっくりと撫でると快感が背筋を駆け上る。
ぼんやりとしはじめたエレインの意識の中にはいつしか黒髪の執事が見えていた。
エレインの指はスティングの指に変わり、秘めた場所をかきわけてエレインを溶かしていく。
「ん、あっ……や、はぁ」
ぐちゅぐちゅと淫らな音を奏で、スティングはエレインの秘裂に指を差し入れる。
二本の指を抜き差ししながら、親指で陰核を刺激する。
「気持ちいいのですか」
いつもの淡々とした口調まで聞こえてくる。
「あっ、あっ、いい…いいの、んっ、ああッ」
夢中だった。
エレインは恥も外聞も忘れてただただ快楽に夢中になった。
「あッ、ああ…スティング……あッ、あッ、ああああっ!」
アルフレッドと抱き合った時ですら見せたことのないほどに乱れ、エレインはあっという間に高みにのぼりつめた。
ぐったりと体の力を抜くと覆い被さっていたはずのスティングが消える。
それはエレインの欲望が作り出した幻なのだから当たり前なのだが、エレインは酔いから冷めたように急激に正常な思考を取り戻した。
(わ、私は……今、何を……)
さあっと全身から血の気が引いていく。
あろうことか使用人を思い起こして自らを慰めた。
死んでしまいたいほどの後悔がエレインを襲う。
(ごめんなさい、ごめんなさい、アルフレッド!)
ぬめった蜜のこびりついた手で顔を押さえ、それに気づいて慌ててシーツで指を拭う。
気だるい体も、噎せかえるような女の香りも、何もかもがエレインを追いつめる。
(私はなんて浅ましい女なの)
エレインは自分を責めながら泣いた。
ぐずぐずと鼻を啜っていると、扉を叩く音がした。
びくっとエレインの体が強張る。
「マダム、起きておられますか? マダム」
スティングの声だ。
エレインは半身を起こし、シーツを手繰り寄せて胸元までを覆い隠した。
口を開きかけたその時、ドアノブが回った。
許可をした覚えはないのにとエレインが呆気にとられている内にスティングが部屋へ進入してきた。
手にした盆には湯気の立ち上るカップが置かれていた。
寝台に座り込んだエレインに気づき、彼はそちらへ歩み寄る。
「やはり起きておられましたか。先ほど部屋の前を通りかかりましたら啜り泣くような声が聞こえましたので。無礼は承知で失礼させていただきました」
507 :
執事×奥様3:2006/12/11(月) 15:48:29 ID:YvGExL2J
エレインが口を開く隙を与えぬようスティングは流れるように言葉を紡いでいく。
「温かいミルクをお持ちしました。ブランデーが入っていますから体が温まります。気分も落ち着くでしょう」
差し出されたカップを受け取ろうにも手を離してしまうとシーツが落ちて肌が露わになってしまう。
エレインが躊躇しているとスティングはカップと盆とベッドサイドのテーブルへ置いた。
「それともあなたに必要なものはこちらですか? マダム」
唐突に腕を引かれ、唇が重なる。
強引に差し込まれた舌は遠慮もなしにエレインの咥内をまさぐる。
何が起こったのか理解できずにエレインはとっさの反応がとれない。
スティングはシーツを剥ぎ取るとエレインを寝台に押し倒した。
「男日照りが長いとつらいものですか」
スティングの口調に揶揄するような響きが混ざり、エレインの頬がかっと赤く染まる。
迷うことなく両膝を割り開き、スティングはその間に体を割り入れる。
「こんなにして。いやらしいのですね、マダム」
「は、はなして……」
ようやく口をついてでた否定の言葉は自分でも驚くほどに弱々しいものだった。
「あなたが悪いのですよ。欲情も露わにいつも私の姿を盗み見ていた」
「や、ちが…っ!」
「私が気づいていないと思っていたのですか」
自分では止められなかった。
スティングは言葉を止めずに、首元のボタンを外してベルトを緩めている。
体を押さえるものは何もないのだから逃げようと思えば逃げられるはずだ。
「あなたの様子がおかしかったから追いかけて中をうかがえば私の名を呼びながら自慰に耽っている」
スティングがいきり立つ欲望を取り出してもまだエレインは身動きがとれない。
それどころか期待しているかのように、こんこんと蜜が溢れだしている。
「私にも限界というものがあります」
エレインの腰を掴み、スティングが力任せに引き寄せる。
蜜を絡めるように陰茎をこすりつけ、勢いよく突き立てる。
「あなたが悪いのですよ、マダム」
「ああッ!!」
先ほど達したばかりのそこは前戯もなしに挿入されたというのに易々と陰茎を受け入れた。
待ち焦がれた刺激にエレインは軽い絶頂感を味わう。
「もうイッたんですか」
動きの妨げにならないほどに潤ってはいるがきつく締め付けてくる膣の感触を味わうようにスティングは挿入したまま腰を回した。
「吸いついてきますよ。きつく締めあげて喜んでいる」
508 :
執事×奥様4:2006/12/11(月) 15:50:28 ID:YvGExL2J
「や、やめ…て……ああん! あッ、ひっ」
「ほら、いやらしい。こんなに濡れている。気持ちいいのでしょう、マダム」
律動を開始しながらもスティングはエレインを苛むのをやめない。
淫らだと蔑まれながらもエレインは内から湧き上がる快感に抗えない。
自らの欲望だけを追い求めるような荒々しい動きにも快楽しか感じられない。
アルフレッドの時には感じたことのない体のすべてを持っていかれるかのような快感にエレインは溺れていく。
「イッてもいいんですよ。ほら、イきたいんでしょう」
奥深くに力強く打ちつけられ、エレインの体が震え出す。
「だ、だめ! あッ、や、ゆるし…ああっ」
「だめですよ。逃がしません。さあ、私の名を呼んで」
容赦ない責め苦にエレインは呆気なく屈した。
スティングの名を呼びながら、絶頂へと駆け上っていったのだ。
体から力を抜いた瞬間、体の奥に熱い何かが打ちつけられる。
スティングが精を放ったのだと気づいた途端にエレインの瞳から大粒の涙が零れた。
「こんなこと、ゆるしません、から」
絶え絶えな呼吸を繰り返し、エレインは呟く。
頭上でスティングが皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「許さない? ではどうしますか。使用人に犯されたと公言して回るのですか」
エレインは言葉につまった。
スティングはゆっくりと身を屈めて顔を近づける。
耳朶を噛み、声低く囁いた。
「使用人に犯されて達してしまうような淫らな女だと」
どろりと自分の中が濡れていくのがわかる。
くつくつとスティングが笑った。
エレインの中におさまったままのものはまだ萎えてはいない。
「あなたは私を手放したりはしない。欲望には勝てない」
スティングが腰を引くと、エレインの体は離すまいときつく吸いついていく。
「すぐに理解しますよ、マダム。私の言葉の意味を」
ぐっと腰を押しつけられ、エレインは悦びに啼いた。
きっとスティングの言うとおり自分は彼を手元に置いてしまうのだろうと考え、しかしその思考もすぐに快楽に染まり消えていく。
淫らな水音を奏でて重なり合う体は離れることなく一つに溶けていくのであった。
おわり
GJ!
テラエロス
スティングがどういうつもりなのかが気になるな…
おおおGJ!
希望した>53じゃないんだけど「マダム」呼びが
嬉しい漏れがここにいる。
GJ!マダムえろいよマダム
スティングに愛はあるのだろうか
続編希望
GJ!!
続編うp激希望
執事と奥様は単発のつもりだったからここから先どうするかはまったく考えてなかった。
とりあえずスティングの心情だけ書いてみました。
二人がいたしてしまう少し前の話。エロなし。短いです。
昼食以降姿の見えない主を探してスティングは屋敷をうろついていた。
子どもではないのだからと思う半面、世間ずれした彼女の動向を思うと少し不安にもなった。
彼女の夫が遺した遺産は世間一般的な基準に照らせばそれが莫大な額であるとわかるのに、彼女はそういったことに疎く自分の立場を理解していない。
今まではスティングの叔父がすべてを取り仕切っていた。
彼の執事としての手腕には感服する。
金と魅惑的な未亡人に寄ってくる虫をことごとく排除してきたのだから。
同じことを自分も行っていかねばならぬのだと思うと気分が高揚する。
スティングは困難に立ち向かうのは好きだ。
だがしかし、彼女の世間知らずっぷりはスティングの想像を越えていた。
執事に就任して三日。早くもスティングは眉間の皺を増やしつつあった。
「マダム。いらっしゃいますか?」
屋敷はほぼすべて回った。
スティングは最後の部屋の前に立つ。
絶対に入らないようにときつく注意を受けた、今は亡き屋敷の主が使用していた書斎。
ここにいないとなると彼女の身に危険が迫っている確立が大幅に上がる。
スティングは再度扉を叩いた。
室内からの返事はない。
一瞬の躊躇の後、ドアノブに手をかけた。
部屋の中は思いの外綺麗だった。
彼が亡くなって数年、使用人は誰一人として入室していないというのに。
「……マダム」
椅子に腰掛け、机に突っ伏してエレインは眠っていた。
傍らに置かれた籠の中には毛糸玉が入っている。
どうやら編み物に熱中してそのまま眠ってしまったようだ。
(本当に子どもだな。俺よりいくつも年上のくせに)
そっと顔にかかっていた髪を脇によせると彼女が僅かに身じろいだ。
起きてしまうかとスティングは身構えたが目を覚ましはしなかった。
安らかな寝顔を見ていると、なぜだか胸の奥が温かくなる。
スティングは桜色をした柔らかな唇をそっと指でなぞる。
「マダム……」
自分でも驚くほどに掠れた声がもれた。
スティングは動揺も露わに彼女から一歩離れた。
再びエレインが身じろぎ、スティングが部屋を後にしようとしたその時、彼女の唇がゆっくりと動いた。
譫言のように呟かれた名を聞いた瞬間、スティングの中を激情が駆け巡った。
(そんなに……)
スティングの中の攻撃的な部分が目を覚ます。
(あなたはまだそんなに旦那様のことを)
スティングの知っている上流階級の人間とは違う。
彼らはもっと簡単に伴侶や恋人への貞節を捨てる。
恋や愛をゲームの一つだと思っている。
夫を亡くして数年も経っていれば新しい愛人の一人や二人囲っていておかしくない。
それなのに、エレインは未だに夫に操をたてている。
初めて見た日の、花嫁姿の幸せそうな顔のままで。
夫の部屋には自分以外の誰も入れず、慣れぬ掃除も自ら行い、生前のままに保っている。
彼女がここで亡き夫に思いを馳せている場面を想像し、スティングは吐き気を催すほどの感情の高ぶりを覚えた。
壊してしまいたい。
彼女の心に一生消せない傷をつけてしまいたい。
嫌でも忘れられないようにしたい。
スティングはその感情の名を何と呼ぶかには気づかず、溢れる激情を理性で抑えつけようと躍起になっていた。
あと一つでもスティングの感情を刺激する要素があれば迷うことなく彼女を傷つけてしまっていただろう。
しかし、スティングはなんとか激情を抑えこむことに成功した。
無垢な寝顔のエレインに再度近づき、優しく髪を撫でる。
不意に胸が締め付けられ、スティングは首を振って彼女から離れた。
これ以上側にいることは彼女のためにも自分のためにもよくない。
そう判断したスティングは部屋を後にすることに決めた。
「おやすみなさい、マダム。よい夢を」
パタンと後ろ手に扉を閉め、スティングは深々と溜め息をついた。
おわり
ウホwマダムと執事さんキテター!
こうなったら旦那様とマダムの幸せな頃のお話もみたいす。
結婚式後の初めて物語とかキボンヌ
>>513 GJ!
やっぱり愛だよね
>>516 自分も禿しく読みたいが――
……残念ながらそれはスレ違いだ。
>>514-515 続き(?)キテター!GJ!
これ見てからエロ有りのを読むと、また一味違うね
519 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/15(金) 23:43:34 ID:nMp4XgQK
>>478タンは無事に書き上げることができたんだろうか?
520 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 04:09:51 ID:IaBDEuRP
下がってろウジ虫ども!
訓練教官のハートマン先任軍曹が520をgetする!
/ノOヽ
_|__|_
ヽ(#゚Д゚)ノ
| 个 |
ノ| ̄ ̄ヽ
U⌒U
>>496 スレをのぞく前と後にサーと言え!!
なんか、自分すごい馬鹿だと思うけど、
>>484 >「君が私に隠れてこそこそしていたから念の為にカップをすりかえてみた」
>「え……ああっ、いつ…まに、ひあっ、あッ、や…ああああああっ!」
>がくがくと体を震わせ、エステルは全身の力を抜いた。
>くちゅりと指を引き抜き、ゲイルは悪びれなく答えた。
>「キスしたときだ」
>唐突なキスはカップを入れ替えるためだったのかとエステルは力なくうなだれる。
>やはり彼は自分よりも一枚も二枚も上手だ。
ここでしばらくリアルに静かに泣いてしまった。5分くらい。
自分ならもうここで「帰って」って言っちゃうなー。辛い。
最後まで読んでニヤニヤしました。GJです。。もっと読みたい。。
そうですか
エステルとゲイル書いた人のファンになった
>>521みたいな自分に酔ってる婆はキモい。
エステルさシリーズは好きだけどな。
あれは元ネタありなん?
あまりアニメ漫画みないからさしらないんだけど。
>>524 ないとオモ。
名前適当につけたみたいなこといってたから。
豚切り&長い前置きスマソ。
唐突なんだけど、男主人、女従者の主従スレでこの時期だけに
若サンタ×女トナカイっていうネタが出たんだわ。それで数人でSSを投下してて
自分もSSを投下したんだけど(↓こんなん)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1164197419/74-76 書いててとても楽しかったので女主人、男従者でもやってみようと思って書いてみた。
上の話をほぼ同じ流れで主従の性別を逆転して書いてある。つまり男トナカイ×女サンタね。
(一応細かい部分は変えてあるけど大筋は変わらんので)
あと、エロ入れたかったんだけど話の流れで入んなかったのでエロなしって事だけ注意。
まぁ季節ネタってことで保守がわりに投下するので良かったら見ておくれ。
暖炉の薪がかしぎ、はぜるような音をたてた。
その前で、長い金髪の少女が艶やかな髪に火明かりを照り返しながら座っていた。
彼女の傍らには山積みのカードが置かれている。
それらに書かれている宛先はみな同じで、一様にこう書かれていた。
『サンタクロースさんへ』
少女は髪をかきあげ耳に一房をかけると、一番上に置かれたカードを手元へと引き寄せた。
「えっと……、なに? 『彼女がほしい』。なにそれ、いくつよこの子。
三丁目二番地、ジェイク・マクガニア、9才。まだ9才じゃない!
なに考えてるのよこのマセガキ。 ……どんな子かしら」
そう言いながら少女はカードをひらひらと裏返したり戻したりしては眺めていた。
すると唐突に背後から抑えたような、それでいてしっかり聞こえるほどの大きさの
笑い声が聞こえてきて、少女はむっと眉を上げた。
振り向いたその先に立っているのは若い男だ。背が高く、長い体をまるめて笑っている。
その震動で茶色の前髪が軽くゆれていた。
「何がおかしいのよ、ロベルト」
毒づくような声音でそういうと、少女はじろっと上目づかいでその相手を睨みつけた。
するとロベルトはわざとらしく手を口元に当ててタニアへと言葉をかけた。
「失礼、聞こえてしまいましたか。……タニアさま。必要以上の詮索は
プライバシーの侵害ってもんですよ。そんな暇があるならほら、しゃんしゃん続けて下さいよ。
もうクリスマスまで五日きってるんですから」
「なによっ、あたしに指図する気!? あんたなんかトナカイのくせに!」
「指図だなんてそんなおこがましい。とんでもないことですよ。俺は単に『進言』したまでで」
タニアの剣幕に動じた様子もなく、ロベルトはひょいと肩をすくめて笑った。
そして一度自分を指差し、それからタニアを指差して言う。
「俺はトナカイ、貴女はサンタクロース一族のお嬢様だ。
だから、俺はあくまであなたの下僕に過ぎませんよ」
その言葉にタニアは顔をかっと赤くして、怒鳴りつけるように叫んだ。
「もうもうもうっ、あんたには分かんないのよ―――っ!
屋敷にカンヅメで一ヶ月。毎日毎日することときたら、他人のプレゼントのチェックと
その用意だけ。いくらサンタだからって、こんなんじゃ嫌になっちゃう!」
そうやってひとしきり騒いだかと思うと、タニアはふんとそっぽを向いた。
金色の髪が弧を描いて揺れる。
「あたし、もうやらない! がきんちょのためのプレゼントなんか知らないんだから」
その反応にロベルトは小さくため息をついた。昨日あたりからずっとタニアはこんな感じだ。
一年前は大人しく“サンタ家業”をこなしていたはずなのだが……。
その原因を彼は何となく察していた。
だからこそ今彼女のやる気に火をつけるために、切り札を出す時だとロベルトは感じていた。
「……そういえば、ルーカスさまはもう割り振り分の準備が終わったそうですよ。
今年が初仕事とあって張り切られているようですね。
彼のトナカイからそう連絡がありました」
その瞬間タニアの耳がウサギのようにぴくりと動いた。
「ルーカス、ですって……?」
ゆっくりと顔をロベルトの方へと向けると、タニアはその名前を忌々しげに呟いた。
ルーカスは、タニアより一つ年下の従兄弟であった。
そしてその彼とタニアは、何が悪いのか幼い頃から顔を合わせれば罵りあい
つかみ合いの喧嘩が始まる犬猿の仲であったのだった。
そして今年からルーカスが一族の仕事を始めるとあって、彼に強烈なライバル意識を
抱いているタニアはここ数日えらくピリピリしていた。
それというのもサンタクロース一族の長老たちは、同じような新人サンタでも
女の自分ではなく、男であるルーカスを何かにつけ立てて、えこひいきしているように
タニアには思えたからであった。伝説のサンタクロースのトナカイ、アニエスを
彼のトナカイとして長老達があてがったのもタニアは気に入らなかった。
「……ロベルト、ルーカスにできたことが、あたしにできないはずないわよね?」
えらく低い声で問われたタニアの問いに、ロベルトは力強く断言した。
「もちろんですとも」
「今から準備する。だから邪魔しないでね」
そう言うなり、タニアはカードの中から一枚を選び出しその内容を声をださずに
唇だけで呟くとそっと両目を閉じた。
そして胸の前で、小さな鞠を抱くように手のひらを上げた。
するとタニアの手元が淡く光を放ち始めた。段々その光は大きくなっていき、
その輝きが一瞬強烈に強くなったかと思うと、タニアの手の中には
一つの物体が形を成していた。
鉄道の模型だ。
タニアがその形を確かめるや否や、彼女が持っていたカードに書かれていた
『れっしゃのおもちゃをください』という部分に優雅な筆記体で『Finished』と
赤く印が書き込まれていく。
「おみごとです」
ロベルトは本心からそう言った。
魔法で、世界中の子供達のプレゼントを具現化するのがサンタクロース一族の力である。
彼らを補佐し、傍近く侍るトナカイであるロベルトでさえ、その力はいつでも驚きに満ちていた。
タニアは、一瞬ロベルトの言葉に満足そうな表情を見せたが、すぐにカードの山に
向き直り、黙々と子供達のクリスマスプレゼントを出していった。
ロベルトは、その背中を眩しそうに見つめくるりと踵を返した。
今、彼がタニアのためにできるのは待つことだけだったからだ。
*******
「ロベルト、ロベルト!!」
「うわっ」
椅子に腰掛けてチェス・プロブレムをしていたロベルトは急にタニアに
後ろから抱きつかれ、思わず声を上げた。その拍子に一つ二つ、チェスの駒が
引っくり返って乾いた木の音を立てた。
「びっくりしましたよ。突然なんですもん」
「なによぅ、いいじゃない別に。……聞いて、あたしももう終わっちゃった」
ふふっと笑いながらタニアはロベルトの傍に顔を寄せてきた。
えらく上機嫌だ。タニアは、いつもはツンケンしてロベルトをいいように扱うのだが、
その割りにこういう風にスキンシップを取りたがる事が多々あった。
さらりと髪がロベルトの視界の隅をかすめ、甘い香りが彼の鼻腔をくすぐる。
「そうですか……」
こほんと小さく咳払いをして答えた声はいまいち力の入っていないものだと
ロベルトは自分でもそう感じていた。だがそれに気がついているのかいないのか
タニアは更に体を密着させて彼の首に腕をまわした。
柔らかな肢体の感触がロベルトを微妙な気分にさせる。
「これでルーカスとはとりあえず互角ね!」
いかにも楽しげな声でタニアが笑った。そしておもむろに手をぎゅっと握ると
そのまま拳を振り上げるようにして叫ぶ。
「あとは本番だけよ! 当日早くプレゼント配り終わった方が勝ち。
絶対に負けないんだから!!」
一族にとっては大事なクリスマスの儀式を勝敗を決めるレースのようなものとして
扱うなどとは、頭の固い長老たちに知られたらそれこそ大目玉をくらう事だった。
ロベルトはこめかみを押さえた。
――プレゼント配るなんざ、さっさと終わらせて早く屋敷に戻りたいよな。
けろっとした顔でそう言ったのはルーカスだった。その時の彼のパートナー、アニエスの
困ったようなあいまいな表情を考えればロベルトにはルーカスの真意が想像できたが、
それを言葉通りに受け取ったタニアが『初めてじゃ道に迷ってその夜中に終わらないのがオチだ』と
喧嘩を売ったのがこの『勝負』の発端だった。
(アニエスは身持ちの固い女だと思ってたけど、もうとっくにあのお子様の
筆おろしを済ましてたわけね。……分からんもんだなー)
「ちょっと、聞いてるの?」
ぼんやりとしていたロベルトの耳をぎゅっと引っ張ってタニアは息巻いた。
「いい? あたしの輝かしい勝利のためにはロベルト、トナカイであるあんたの活躍が
不可欠なの。だから、ぜったいぜったい全力出してよね!」
「はぁ」
「わかった?」
「ちょっ、苦し……首にスリーパーホールドかけないでくださいよ」
タニアはロベルトの顔ごと彼をぎゅっと抱きしめたまま、くすくすと笑った。
その楽しげな震動が、タニアの胸元の感触と彼女から立ち上る甘い香りを
ロベルトを追い込むように伝えていた。いけないいけないと思いながらも
あまりにもタニアが無防備なので、時々「誘っているのだろうか」などと
思ってしまうのだ。
(俺も、いつまで我慢しなきゃならないのかね……)
乾いた笑いでため息をつくと、それを勘違いしたのかタニアはロベルトの頭を
抱えたまま力強くうけあった。
「大丈夫だって! ……一応、あたしだってあんたの事は……信頼してるんだから」
その瞬間、『信頼』という言葉がずしりとロベルトの心にのしかかったことを
タニアは全く気がついていなかった。
*******
終わり
誘導されてきた。
素敵だ。信頼の重さがイイ!!
GJ!!クリスマスプレゼントありがとう。
投下キター(゚∀゚)!!
タニアかわいいよ!
ツンデレサンタ万歳!
続きとしてエロも書いてほしいな…なんて。
GJ!!
しかし私としてはアニエスの筆下しの方に興味があるのだがw
完結篇が、クリスマスの朝(明日)ですか? サンタさん!
プレゼント下さい!
・・・よい子のお願い
「よい子のみんなには子供を授けてあげよう」
とかいって跡継ぎを増やそうとする産多・クロース
>538
誰が上手いこと言えとw
子供を欲しがるのはよい子だ!
子供を欲しがらないのはよく訓練されたよい子だ!
>>541 誰がうまい事を言えと!
逆スレに書き込めばいいんだろうけど
(向こうはもう、クリスマスは終わってるので)
ビリー・B・ソーントンの「バッドサンタ」って映画、知ってる?
アナル大好きで、「一ケ月は何も出てこないぐらい姦ってやる!」
って腰振るシーンがあるんだけど・・・ 。よいサンタ?
543 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 01:34:21 ID:l/j7T21w
国を滅ぼせる力をもって生まれた姫。
しかしそれを発動させるには姫の命が引き換えになる、戦争の最後の駒として、死ぬためだけに実の親の国王に生かされている姫を守るのは、
命令ならば女子供でも表情一つ変えず殺める事ができる、冷徹で非情だが優秀な若い騎士。
騎士は姫を殺すためだけに彼女を守っている。
この騎士なら情が移って土壇場でやっぱり姫を殺せないなんてこにならないだろうと王が直々に任命した。
冷徹な騎士と姫の悲恋
な話を思い付いて密かに書いてたんだけど小説って書くの難しい。
一か月くらい考えてたのに姫と騎士を合わせることすらできんかったww
非情な奴ってのに萌えられないからなぁ
>>543 既に二人が会ってるとこから書き初めてみたら?
自分はあらすじ読んでモユルと思ったよ。
(悲恋てことは騎士はなんだかんだ言って情がうつるんだよな)
だからがんばれ!書き上げろ!そして投下汁!
「御怪我はありませんか、姫」
「…ありません」
「それは良かった。貴方を守るのが私の使命ですから」
「…殺す為に、守るのでしょう」
「そうです。国の為に貴方を殺すのです」
「……もう、殺して……」
「駄目です」
「どうして……私にはもう…耐えられない…」
「一国の王女ともあろうお方が、自分の国を御捨てになられるのですか?随分身勝手ですね」
「お願い……私を……」
こうですか?わかりません!
最終兵器王女と聞いて『聖戦記エルナサーガ』連想した。
騎士じゃなくて、王子様だけどな。
あと、筋肉むきむき(作者的には)。
>>547 とても良くできました。
でも先生はもう少しエロいのが好きです。
今度は『ぬれば』にも挑戦してみましょうね。
漏れも一瞬エルナ想像したな。
んじゃこの姫さんの名前はアルナで。
>550
安直な…!
しかしエルナ1は名作
ちょ・・・っとまて!
おとといのログごっそりなくなってるorz
おととい読んだ「将軍の意外な趣味」めっちゃつぼだったからショック……
だれかさいうpお願いできない?;
>>552 それは姉妹スレの『男主人と女従者』ジャマイカ?
もちついてもっかいスレ探してごらん。
そうだった、ごめんよorz。
あわてっぷりがワロスw
あけましておめでとう、おまいら。
今年もwktkなssがいっぱい読めることを祈ってるよ。
小説と呼べる代物か判りませんが
執事とお嬢
投下してみても良いでしょうか?
張り切ってどーぞ!
ありがとうございます。
投下させてもらいます。
エロなしで申し訳ないです。
<<無造作紳士>>
物心が付いたときには既に傍らにいた。
傍らにいる事が、空気のようにあまりに当たり前だった。
わたくしの執事。
いつも物静かなところが好き。すっと伸びた背筋が好き。
無駄のない歩き方が好き。乱れなく撫で付けた髪が好き。
ドアノブを握るときの器用だけれど無骨な長い指が好き。
低いバリトンの声と、洗い立ての糊のきいたシャツのにおいが好き。
あなたは気付かないけれど、
気付かない振りをするけれど、
そう。わたくしはもうずっとずっとあなたに恋をしていた。
朝。ベッドから起き上がらないのはあなたを待っているから。
本当はもうずっと早くに目は覚めているのだ。
カーテンを通して窓の外が薄明るくなってくると、わたくしは目が覚める。
鳥の鳴き声。園丁同士の挨拶。徐々に目覚める屋敷の、
けれど決して主人の眠りを邪魔しない控えめな喧騒。
起き上がり、ガウンを羽織って腰掛けて待っていても本当はよいのだ。
今日はお早いお目覚めですねと、あなたが声をかけてくれるかもしれない。
もしかすると、鉄面皮と冷やかされるあなたの驚いた顔を見ることが出来るかもしれない。
けれど、わたくしは起き上がらずに、まどろんだままあなたを待っている。
わたくしの執事を待っている。
焼きたてのパンのにおいが微かに漂い始めると、わたくしの部屋の前に、
毎朝きっかり計ったように、いつもの時間、いつもの足音であなたはやってくる。
ドアの越しに聞こえるくぐもった会話も、いつもと同じ。
―――お嬢様は。
―――まだお休み中のご様子です。
―――では、私が、
そしてはっきりとした、ノックの音。毎朝。3回。
「お嬢様。おはようございます。ご朝食のご用意が整いました」
軽く押さえた咳きの後の、あなたの声。
よく通るあなたの声は、ドア越しでもはっきりと聞こえる。
わたくしは起き上がり、ドアに目をやる。
もしかしたら、と思う。
不意にドアを開いてあなたが入ってくるかもしれない。
まったく毎朝目覚めの悪いお嬢様ですね
旦那様と奥様はお目覚めでございますよ
ほら早くお起きになってください本当にいつまでたってもお嬢様は、
なんて言いながら。
あなたは決して入ってこない。
主従の境に人一倍気を置くあなたは、決してそれを超えることはない。
年頃であり、未婚の主人の寝室。
入るはずがない。
判っている。
判っていながら、わたくしは判っていない振りで、
果かない期待を込めてドアノブを見つめる。
毎朝見つめて、その細かい細工の模様まで焼きついてしまっているそれを。
判っているわたくし。判っているあなた。
わたくしの執事。
暫くしてから、やがてドアを開けるのは、寝室付きの侍女の仕事だ。
朝が弱い主人のために、淹れたての紅茶を銀の盆に載せて、彼女は入ってくる。
カーテンをさっと引いて今日もよいお天気でございますよと、
わたくしに声をかける。
急に溢れる光に目を細め、侍女の声を耳にし、
そうねと呟きながら、ゆっくりと閉まってゆくドアの向こうを見つめる。
その隙間からあなたが垣間見えないかと期待して。
あなたはいない。
いるはずもない。
次の仕事に向かったのだ。
うなだれてわたくしはベッドから降り立つ。
わたくしの20の誕生日だった。
おめでとうと、朝食の席で両親に言われて
すっかり忘れていたことを思い出した。
ああ、それで。
そういえば二、三日前から妙に屋敷内が騒がしかったのはそういう訳か。
今日の朝がいつもより心なしか賑やかだったのも、
普段は使わない大広間の重たい扉が何度か軋んだ音を立てながら開閉されていたのも。
つい数日前までは覚えていたはずだったのに、
わたくし自身結構楽しみにしていたはずだったのに、
なんで今朝に限ってそんな大事なことを忘れてしまったのだろう。
そうじゃない忘れてしまったわけではない。
今朝が、いつもと同じ始まりだったから。
決して顔は上げないように。
行儀良い娘の振りをしながら、わたくしは目の端でわたくしの執事の姿を追う。
あなたはいつものまっすぐな姿勢で、給仕の邪魔にならない絶妙な位置で。
食堂の扉の真横に立っている。
きっちりと正面を向いたあなたは、今何をその目に映しているのだろう。
「……ね?」
ついぼんやりとしていて、父の顔を見ていたにも拘らず、
言葉を聞き逃していたことにわたくしは気が付く。
「え?」
「……なんだ。まだ目が覚めていないのかね?
……まったくおまえはいくつになっても小さい頃と変わらないねぇ。
そうそう、遊びすぎたおまえが食事をしながら何度も突っ伏して眠ってしまっていたねぇ」
「……お父さま。わたくし、そのころよりは少しはお行儀も良くなってよ」
いつの話をしているのだ。軽く睨むと、父は母と顔を見合わせて笑った。
「いつも抱きかかえられて寝室に戻って行ってね」
抱きかかえられ、の言葉のところで父はちらりと執事を眺めた。
父の視線を受けたあなたは、それに気付いてはい、と生真面目な答えを返してよこす。
そうだ。
その頃はまだ、あなたはわたくしの寝室の中まで足を踏み入れてきていたのだ。
眠れなくて駄々をこねた夜、屋敷のものはみな寝静まって音ひとつしなくて。
あなたはわたくしの枕元にかかんで、よく通るバリトンでそっと静かに、
子守唄を歌ってくれていた。
通常の業務に加えて、朝から晩までくるくると良く動いた小さなわたくしに、
付き合って走りまわされて、きっとへとへとだったろうに、
嫌な顔ひとつせず、わたくしが眠るまで、いくつもいくつも。
低く抑えてともすれば掠れ気味になるあなたの声が大好きだった。
いつからあんな夜はなくなってしまったのだろう。
「……おまえも20歳になったのだし、世間ではもういい年だ。
そろそろ好きな殿方の一人でもできたかね?」
好きな人。
わたくしは思わず言葉に詰まる。
ええいるわ本当は一人だけいるのずっと昔から好きだったの
その人はわたくしのことを好きかどうかは判らないけれどそ
うねきっとなんとも思ってないのだわけれどわたくしは長い
間その人の背中ばかり診て過ごしてきたのお父さまその人の
こととてもよく知っていてよきっと名前を聞いたら驚くわ、でも。
そう言えたらどんなにいいだろう。
言える筈がない。
口に出したらきっと、父はあなたをわたくしから遠ざけてしまうだろう。
例え、あなたにそんな気持ちがまったくなかったとしても。
あなたは扉の横で顔を正面に向けたまま、微動だにしない。
聞き耳を立てるでもない、けれど大事な会話は事細かに覚えていて、
主人が必要なときにさっと指し示してみせる手腕。
崩れることのないポーカーフェイス。
きっと結局はわたくしの独りよがりなのだ。
答えられない問いは、あいまいな笑顔で誤魔化してみせた。
部屋から中庭を見下ろす。
園丁が綺麗に整えたバラ園が見える。
等間隔に植えられ露に濡れた三色菫。
雲のような形に刈り込まれた植木。
手入れされた庭は嫌いじゃない。
でもわたくしは、中庭の向こう、本館の更に向こう、
張り巡らされた鉄格子を超えてずっと遠くに広がる野原の風景のほうが好きだった。
「失礼します」
規則正しいいつものノックの後、外を眺めていたわたくしにかけられた、控えめな言葉。
「お茶をお持ちいたしました」
「……ありがとう」
振り返ってその姿を目に入れる。
直立不動の姿。
この屋敷の中で、盆を持った図が一番様になっているのはあなただとわたくしは思う。
流れるような動作でポットから移された紅茶から、
ぷぅんと香気が漂ってわたくしはあら、と声を上げた。
よい香り。
「……すこし、お疲れのご様子でしたので」
チェリーブランデーの香り。
「……ありがとう」
わたくしの言葉に少し腰を折って会釈をし、
「今年も皆様たくさんおいでですね」
「え?」
窓の外を眺めてあなたはそう言う。
言葉につられてもう一度外を眺めると、
なるほど門前には、今夜のわたくしの20歳の誕生日パーティに招かれた紳士淑女の馬車や輿が、
まだ夕刻前だというのにざわざわと列を成しているのだった。
眺めていたのだから視界には入っていたはずなのに、
わたくしはその光景にまったく気が付いていなかった。
野原の風景が綺麗だったからだ。
「もう20歳ですもの」
冗談めかしてわたくしは言う。
「そのうえ伯爵家の一人娘ですもの。わたくしが嫁ぐことになる殿方は、
家柄と財産を一気に手にすることができるのですものね」
わたくし自身の利用価値の高さは認識しているつもりだ。
あの方たちは、わたくしが必要なわけではなくて。結局はわたくしの背後の、父の力がほしいだけだ。
それすらも判らないほど子供じゃない。
けれど、判っているからこそ空しくなる。
わたくしがわたくしでなくとも、あの方たちは毛ほども気にしないのだ。
わたくしの名が付いた人形でも同じことなのだ。
「……今夜の、皆様からの誕生日の贈り物の数が楽しみね」
心にもない言葉を言ってみた。
数が一体なんだというのだ。
それなのにあなたは、去年も大変に多うございましたからね、などと口を合わせてくれる。
すこしだけ、腹が立った。
わたくしの執事。
「あそこに行ったわね」
「……?」
「昔、あそこにみんなでピクニックに行ったわね」
不意に話を変えたわたくしの言葉に一瞬付いてこられずに、
あなたはこちらを見やる。深い緑の瞳。
「お弁当を持って、みんなで行ったわね」
「……ええ、参りましたね」
「あの頃お父さまとお母さまは毎日忙しくて。構ってもらえずに退屈していたわたくしに、
みんなからのプレゼントだって言って」
「そんなことを申しましたか」
あなたが僅かに苦笑する。
「言ったわ。それで、お気に入りのクマのぬいぐるみと、おまえと、
それからあと何人かと、わたくしと。暖かくてお天気の良い日だったわ。
みんなで歌いながら歩いていったわね」
「参りましたね」
屋敷からほとんど外に出たことのないわたくしにとって、それはちょっとした冒険でもあった。
この窓からも見えるあの野原にわたくしたちは出かけた。
きっと季節は春だったのだろう、上着の必要もないほど暖かくて。
わたくしは両手を繋いでもらって、ほかの皆は荷物を抱えたり下げたりしながら、
子供の足で片道1時間の小旅行を楽しんだのだった。
野原は、見渡す限り丸くて白い、可愛らしい花でいっぱいだった。
真っ白な花が、幼かったわたくしの目には、まるで海のようにも見えた。
花の名前がシロツメクサというのだと、教えてくれたのも、あなただ。
笑いがこみ上げてきて、わたくしはふふ、と小さく笑った。
「お嬢様?」
「……あの時。お姫様ごっこをやったでしょう?」
「いたしましたね」
「悪い大臣に囚われた、姫君を助け出す騎士」
「私が騎士をやりましたか」
「そうよ」
「そう、からかわれますな」
すこしだけ眉尻を下げてあなたは困った顔になった。
わたくしにだけ時折見せる、鉄面皮以外の表情。
「おまえ、とても格好よかったわ」
姫君には騎士が必要だと皆で言い張って。
他に適役がいないから、と仕方なく、いつもは真面目なあなたが、
照れくさそうに、でも堅物なあなたらしく、子供の遊びだからと手抜きもできずに
騎士役を演じていたのを思い出す。
「悪い大臣を倒して、高い塔のてっぺんに捕らえられていたわたくしを助け出しに来てくれたわね」
「……よく覚えていらっしゃいますね」
「忘れないわ」
絶対に忘れない。なぜなら、
「花で作った冠を差し出して、おまえは、」
―――どうか、私のお妃に。
わたくしの手を取り、深緑の瞳でまっすぐに見つめて、そう呟いたのだから。
「昔のことでございますよ」
「……ねぇ。」
苦笑いをして視線を外してしまったあなたを引き止めたくて私は口を噤んだ。
あの約束を忘れてしまったの?
夜も更けて。
着ている服が同じであったら、皆同じのっぺらぼうにも見える殿方に、
引き合わされ、挨拶を繰り返し、愛想笑いを振りまいた、
そんな軽い責め苦にも似た長い長い時間が終わって、
わたくしはようやく自分の寝室に戻ることを許された。
付き添いの言葉は断った。
紅茶も、お休みの言葉ももう要らない。
早く一人になりたかった。
この重くて息苦しい衣装を脱ぎ捨てて、自分のベッドに潜り込んで眠ってしまいたかった。
目覚めれば、また朝がやってくる。
本館から寝室のある別館に抜け、後ろ手に渡り廊下の扉を閉め深呼吸をひとつ吐いた途端、
不意にどっと訪れた疲労感に眩暈を感じて、わたくしは壁に手をついた。
「大丈夫でございますか」
耳に良く馴染んだバリトンが近くから聞こえて、わたくしは驚いて顔を上げる。
あなたが立っている。
気遣うように、けれど一定の距離を正しく置いてあなたが立っている。
「お部屋までお連れいたしましょうか」
「ええ……いいえ、大丈夫。一人で歩けるわ。緊張が解けてしまっただけ。少し休んだら、平気よ」
壁に背を預けてゆっくりと呼吸を繰り返していると、気分は次第に良くなった。
「おまえこそ、こんなところで油を売っていて平気なの?」
父もお気に入りのあなたは、つい先ほどまで大広間の片隅で、
まるで隣に並ぶ作り物の甲冑と同じように畏まって立っていたはずなのだ。
「片づけが、残っているのでしょう」
「すぐに、広間に戻りますよ」
「……わたくしのことを心配してくれて?」
眩暈ついでにこの際だ。
普段なら絶対に口にしない言葉を。
あなたはきっと上手にかわしてしまうから、口にできない言葉を、わたくしは呟いてみる。
「ご気分がお悪そうでしたので……」
いつも明瞭なあなたの返答にしては珍しい、歯切れの悪い返答。
「もう、平気よ」
そう言いながら壁から離れた足が、ふとよろけた。
「お嬢様」
とっさに差し出された腕は力強くて、わたくしはその感覚に戸惑う。
「お部屋までお連れいたしましょう」
添えられた右腕に手を置いて、おとなしくその言葉に従うことにした。
「……少し、疲れたわ」
「ええ、たくさんお客様はおいででしたから」
「今晩は、夢の中にまで挨拶文が繰り返し出てきてよ。しばらく忘れそうにないわ」
わたくしの言葉に、歩きながらあなたは微かに頬を弛めた。
「それは大変でございます」
「夢で魘されてしまうかもしれないわ」
「温かいお飲み物でもお持ちいたしましょうか」
「歌が、いいわ」
「……お嬢様」
あなたは言葉を切ってわたくしの顔を眺める。
「わたくしが眠るまで歌を聞かせてくれるといいわ」
「ご冗談が過ぎますよ」
諌める口調は、それでも失礼がないように柔らかくて。
「お嬢様は、もう立派な大人の女性でございましょう。
子守唄がないと眠れないのは赤ん坊でございますよ」
そう、とても大人な対応。
わたくしの倍は生きているあなたの心がわたくしにはよく、見えない。
そんなに、変わらない事だって、あるわ。
俯いて呟いた声は、あなたには届かなかったようだった。
「さぁ、お部屋でございますよ」
淡々としたまま、部屋の前にたどり着いたわたくしの手をあなたは離しかけたので、
わたくしは思わずあなたの腕を押さえた。
「お嬢様」
静かに驚いたあなたの言葉を制するように、わたくしは早口で言葉を紡いだ。
「わたくし、今日誕生日なのよ」
「……20歳でございましたね」
誕生日だなんて、言わなくたってそんなことは判りきっている。
先ほどまでの大広間の馬鹿騒ぎがそうなのだから。
「お祝いを、聞いてないわ」
「……皆様からたくさん、いただきましたでしょう」
「言い直すわ。おまえからのお祝いを、聞いてないわ」
「私めのでございますか」
小さく息を継いで、では僭越ながら、と前置いてあなたは、
おめでとうございますと一言、言った。
「……それだけ?」
「他に言いようがありましょうか」
「殿方はわたくしにお祝いのキスをくださったわ」
順繰りに、両頬に。形ばかり、挨拶代わりの冷たいキスを。
嬉しくもなんともなかった。
「私は使用人でございますよ」
困ったように、それでもあくまでも無表情なあなたを、
わたくしはもう何も言わずにじっと見つめてみせる。
小さい頃、駄々をこねたわたくしとそうして、折れるのは結局あなたのほうだったから。
観念したのか、あなたはわたくしの手の甲へ、たいそう慇懃にそっと口付けた。
「お誕生日おめでとうございます、マイ・ロード」
拍手してもお釣りの来る立派な大人の対応。
決して境を越えてはこない礼儀正しいあなた。
我侭を言って振り回す、まるで子供のわたくし。
そして、ゆっくりおやすみなさいませ、と言い置いてそのまま去っていくのだ。
わたくしの独りよがりの恋。
悔しかった。
「わたくし、」
踵を返したあなたに何とかもう一度振り向いてほしくて、
「わたくし、好きな人がいるの」
背中に向かってそう叫んでみせた。
立ち去りかけたあなたは、不意をつかれたのか一瞬足を止めたようにも見えた。
けれどそのあとこちらを振り返ることはなく、何事もなかったかのように、
いつもの歩幅、いつもの姿勢で大広間へ向かって廊下をまっすぐに歩いていった。
わたくしは階段を降りきって見えなくなるまで、背中を見つめ続けた。
あなたの背中を。
もし、視線に力があるなら。ぐいと引きつかんでこちらを向かせてやりたい。
顔が、見たかった。
足を止めた一瞬、あなたはどんな顔をしていたのだろう。
少しは驚いてくれただろうか。
いいえ、きっと、変わりはないのだ。
もし振り向いたところでいつもの完璧なポーカーフェイス。
あなたは執事の顔をしていたに違いない。
好きな人がいるの。
叫んでまであなたを引きとめようとした自分が、浅ましくて笑えた。
本当かどうか聞いてくれたら、冗談よと答えたのに。
それは誰かと聞いてくれたら、あなただと答えたのに。
わたくしの頭の片隅で、カラカラと車輪のから回る音が聞こえる。
なんとも思っていないから、聞く必要もないのだろう。
誰もいなくなった廊下に立っているのも馬鹿馬鹿しかったので寝室のドアを開けた。
なんだかとても惨めな気分だった。
ベッドまでの距離がひどく遠くて、足を引きずるように歩いた。
カーテンを閉めていない窓から月の光が青く差し込んで、ベッドの上に窓枠の模様を作っている。
いつの間に運んだものか、大広間にあった山のような贈り物が、
わたくし宛になっていながら、実際は父に宛てた贈り物が、
テーブルの上にうずたかく積み上げられ、その一部は床になだれて、
見ているだけでむかむかした。
―――今夜の贈り物の数が楽しみね。
―――皆様からたくさんいただきましたでしょう。
言葉が蘇って、忌々しかった。
本当は、嫌いよ。
大嫌い。
甘ったるい百合やバラの花束も。
陶器でできたという冷たい人形も。
大きくて場所をとるぬいぐるみも。
あなたも。
めちゃくちゃに掻き回してやりたかった。
嫌い。
大嫌い。
ベッドに倒れこんで、そのまま自暴自棄な気分のまま、
布団を被って寝てしまおうと思ったわたくしの指先に、なにか優しいものがあたった。
枕元にそれは置いてあったのだ。
つんと野原が薫った。驚いて顔を上げると、そこに、
シロツメクサ。
丁寧に編みこまれた花の冠。
ねぇ。
あの約束を忘れてしまったの?
震え始めた指で取り上げた。
いつのまに取りに行っていたのだろう。
なぜならあなたは、今日一日中わたくしの誕生日の集まりのために、
それこそ食事を取れないほどに忙しく屋敷内を動き回って。
そうでなくても父からあれこれと言いつけられて、本当に息つく暇もなくて、
けれど有能なあなたは一切を顔に出すことなく、ただただ、
冠の根元に、白くて小さなハンカチが引き結ばれていた。
シャツと同じ。洗い立ての糊のきいたにおい。
あなたのにおい。
わたくしの、執事。
おかしいわねわたくしはもう子供の頃のわたくしではないのよ
それにこんな名前も付いていない贈り物で喜ぶと思っているの
かしらわたくし今日はそれこそ両手に抱えきれない以上にたく
さんたくさんの贈り物を殿方からいただいたのよそもそも大変
無礼だわ年頃の主人の寝室に許可なく入ってきただなんて。
「馬鹿ね」
他愛もなく嬉しい自分が。
―――どうか、私のお妃に。
覚えていたのだ。
冠がぼやけて見えなくなって、わたくしは自分が泣いているのに気が付いた。
ああ。
わたくしの、執事。
たったひとつの誕生日プレゼントを抱きしめて、わたくしは、小さい頃のように、声を上げて、泣いた。
* * * * * * * *
長文&お目汚し失礼しました。prz
執事サイドももしよろしければ
次回投下させてください。
GJ!
執事サイドばっちこい。
不覚にも泣きそうになった
GJ
ええ話や……エロなしのシチュに却って感動しました。
立場をわきまえながらも本心を隠しきれないお嬢様の想いが切ない!
慇懃に振舞う執事さんがどう思っているのか気になるところ。
執事さんサイドの話をWktkして待ってます。
GJ
一点lordではなくladyじゃないのかと思ったが。次回楽しみ。
これは良い…!
GJ! お嬢様切ないよ……!
そして遅ればせながらあけおめ〜。
自分も執事×お嬢様でいっちょ投下します。
でぃーぷちっすなベーゼはあるけど本番はなしです。
ジャンがいつものように黒いキュロットのお仕着せに身を包み、使用人たちの監督のために
邸内を見回っていると、まだ年若い女中たちがかたまって、困ったようにひそひそと囁き声で
話をしているのが目の端に映った。
屋敷で働く者たちをたばねる執事としては放っておけずにジャンは声をかけた。
「どうした? 何があった」
すると無駄口を咎められるとでも感じたのか、女中たちは一瞬ぎょっとした表情をして振り向いた。
だがジャンの顔をみるなり、女中たちは思わずといった様子で頬を緩める。
「ギルベール様……!」
彼女達の顔にはあからさまに『助かった』と書いてある。
その様子を見てジャンは、一体何が彼女達の困り事の原因なのかを一瞬にして察する事ができた。
そして呟く。
「……お嬢様か」
*******
ジャンが湯気の立ったカップを持って部屋の中へ入ると、天蓋つきの寝台に
寝そべっていた少女が半身をおこしてジャンを睨みつけるのが目に入った。
レースのドレスを身に纏い、艶やかな金色の髪を貴婦人らしく結い上げている。
だが、突っ伏すように寝そべっていたせいでその髪は今や緩み、ほつれていた。
彼女の名はアンティエット。ジャンが仕えるギュスターヴ家の令嬢であった。
こちらを見据える大きな青い瞳はサファイヤの輝きをはなっている。
そしてその白い肌はなめらかで、まるで陶器の人形のような少女だった。
おまけに血筋は王家の縁続き、とそこまでは完璧なアンティエットであったが、
一つ玉に瑕といえる部分があった。お嬢様育ちのせいか“癇の強い”性分なのだ。
「お嬢様」
ジャンの口からすべりでるように出た呼びかけは静かで、どこにも激しさのない
声であったが、アンティエットは一瞬びくりと身を震わせた。
だがすぐに取り繕ったように、ふんと顔を上げて口を開く。
「なによ。わたしはお前のことなど呼んでいないわ」
「ええ、まぁそうですがね。侍女のジルからお嬢様が夕食を食べないと言い張られていると
聞きましたので。……食欲がなくてもショコラなら召し上がれるでしょう」
そう言ってアンティエットへと差し出されたカップからは甘い香りがふんわりと
立ち上っていた。誘われるようにカップへと目を奪われたアンティエットだったが、
すぐに顔をそらすと強い口調で言った。
「いらない」
その態度はかたくなであったがどこか稚く、ジャンは毛をさかだてた猫の姿を想像した。
思わず漏れた笑みをかみしめる。
「なにがおかしいのよ!」
「いいえ別に。さぁ早くしないと冷めてしまいますよ」
そう言いながらジャンはアンティエットの傍らの机にコトリと微かな音を立ててカップを置いた。
唇を噛み締めてその様子を見ていたアンティエットだったが、思いつめたような
表情を浮かべてジャンの顔を見上げた。
「……お前、わたしに何か言う事があるんじゃないかしら」
「“どうぞ召し上がれ”?」
「違うわ!!」
寝台の上でばっと身を起こし、背を伸ばすとアンティエットは頬を紅潮させて叫んだ。
それに合わせて金色の巻き毛が揺れて動く。
「今日の、ブレモン夫人のお邸での夜会。あれはどういうつもりなの!?
夫人からみな聞いたわ。お前の差し金だというじゃない」
「差し金とはまた大袈裟な。私はただ奥様に一筆手紙をしたためたまでですよ。
お嬢様のことをよろしくお願いしますと」
「そうやってわたしの婚約者候補の品評会を開いてくれたというわけ。
やめてちょうだい。言ったでしょう、わたしは結婚なんかしないって」
そう言い募るアンティエットの瞳にはまぎれもなく怒りの色が浮かんでいた。
強い感情を見せる時、アンティエットはその美貌をひときわ輝かせる。
幼い頃から彼女を見てきたジャンはその事を良く知っていた。
少年の時から彼女を妹のように大切に思い、慈しみながら仕えてきたのだ。
今はそれ以上の感情を抱いているからこそ、アンティエットには確実に、
堅実な幸福を掴んで欲しかった。だからはらわたが煮える思いをしながらも
結婚相手を見繕い、ブレモン夫人に仲介を頼んだのだ。
だが、自分の未練などアンティエットには絶対に悟らせたくなどなかった。
ジャンは低い声で言い聞かせるように言った。
「……そういう訳には参りません。このギュスターヴ家のためにも
お嬢様には早く立派な紳士を旦那様として迎えて頂かなくては」
その瞬間、アンティエットの瞳が傷ついたように揺れたのをジャンは気付いていたが、
あえて分からない振りをした。そしてそっと目を伏せる。
アンティエットがぎりぎりと手のひらを握り締めるのが分かった。
「そう、そうなの……。家、義務、しきたり。お前ときたらそればかりね」
アンティエットは小さくため息をつくと、首を振った。
「わたしが何を思って、どう感じているかなんてお前にはどうだっていい事なんでしょう。
何故わたしが結婚しないと言ってると思ってるの。……わたしは、お前が。お前の事が」
「お嬢様」
その呼び方にはたしなめるような響きがあった。手のひらを握りしめたアンティエットは、
ジャンに顔をきっと向けると挑むような口調で言った。
「キスして」
思わずジャンは目を見開いてしまっていた。
そして自分でも間の抜けた声だと思いながら聞き返す。
「は……?」
「キスしてと言ったの。……そのショコラを口移しで飲ませて。
そうしてくれなかったら、もう明日から二度と食事は取らないし、金輪際夜会にも行かない」
アンティエットの表情は真剣だった。その目はただジャンの姿だけを写している。
それがジャンにとっては例えようもない喜びであったが、理性という彼の番人がそれは
許されない事だとはっきりと告げていた。
だが、ジャンは一歩前に出るとカップを手に取り、甘い黒茶色の飲物を口に含んだ。
そしてすっとアンティエットの頬に手を触れる。
やわらかな頬だ。ジャンはふとそんな事を思った。
そして滑るように指を動かし、アンティエットの顎に当てると彼女を上向かせた。
これはけして彼女の気持ちに応えるためではないと言い聞かせながら。
「ジャン……」
アンティエットは泣きそうな顔をしている。母親に顧みられないままそれを亡くし、
父親も失った彼女が涙を見せるのはいつも自分の前だけだった。
――わがままを言うのは、いつだって寂しいからだ。
ジャンはそのままアンティエットの唇へと口づけた。
「ん……ふ…」
白い喉元が動いて嚥下する音が聞こえる。ジャンは、口づけが甘いのはショコラのせいだけではないと
思った。アンティエットは段々と夢見るような瞳になっていく。その後頭部に手をあてると
ジャンは彼女へとおもむろに深く深く口づけていった。
「ん………っ」
急な欲求に、アンティエットは思わず逃げようとした。だが、ジャンはその体を抱えるように抱きすくめ、
離れる唇を執拗に追う。舌を入れて歯列をさぐり、アンティエットの舌を自分のそれとからめる。
「んっ、んん――!」
アンティエットは首をふろうとした。だがそれさえもジャンは許さない。強引に肩に力をこめて
寝台に押し倒し、動けないよう押さえ付けて何度もアンティエットの口内を蹂躙した。
「…………ッ!」
酸欠のためか、彼の口付けのためか、段々アンティエットの抵抗が収まってきた。
そろそろ潮時だろうとジャンが力を緩めると、アンティエットは渾身の力でジャンを押し返して
彼の腕から逃れた。
確かに自分がそう望んだのだが、実際に口づけを受けたアンティエットの心中は複雑で
嵐のように荒れていた。ドレスの裾を握りしめ耐えたつもりが、目尻に浮かぶ涙を止められない。
肩越しにジャンの低い声が聞こえた。
「……男を誘惑するような真似を安易になさらないことです。たとえそれが戯れでも。
結婚したくない、と仰るならなおさらです」
「た……れ…なんかじゃ…」
戯れなんかじゃない、と言いたいのだがうまく言葉がでてこない。
そのもどかしさにアンティエットは自分自身に激しく腹を立てていた。
「それでは、明日の朝食はご用意して構いませんね。それから今度はマダム・フランソワから
明後日に夜会のお誘いの手紙が来ております。いかがいたしますか?」
さっさと服の裾を直してそう告げるジャンの姿は、アンティエットにとって
小憎たらしいほど落ち着き払っているように見えた。
悔しさが喉元までこみ上げてくる。アンティエットは泣くものか、と胸の辺りに力をこめて返事をした。
「……行きます。そうお返事してちょうだい」
「かしこまりました、お嬢様」
礼を取り、部屋から出て行くジャンの背中をアンティエットは視線に力があるのならば
燃え上がるほどに見つめていた。
だが、彼女の執事は一度もアンティエットを顧みる事もなく部屋を去って行った。
*******
終わり
お終いです。自分の文章力じゃ書けなかったんで多分誰も分かんないと
思うけどおフランスな執事とお嬢のつもりですわ。
ドレスなお嬢と半ズボンな執事さんを脳内で変換してくだされ。
えろえろ本番書けたらまた勝手に投下しにきます。でわ〜
投下待ってます
GJ!
英国のお嬢様、日本のお嬢様で素晴らしいお嬢様は多いけど
仏国のは珍しいね。
そして下がりすぎなんで一度あげ。
>>572 アイヤー。ロードじゃなくてレディでしたか…。
常識不足でございました。 prz=3
執事サイド投下させてください。
再びエロ無しです。ごめんなさい。
<<小心者の恋>>
あなたに初めて出会ったのは、私がまだこの屋敷に勤めだして2、3ヶ月の頃のことだ。
丁度前職をやめて仕事を探していた私は、ここに勤めていた知人の紹介で、屋敷の主に目通しされ、
下働きとして雇ってもらえる運びとなった。
新参者であったし、あまり能弁ではない性格だったから、必要以上に同じ下働きの者と馴れ合うこともなく、
それでも仕事は一つ一つが新鮮で面白かった。
自分自身にまったく縁のない、優雅で豪奢な生活を垣間見ることも楽しみのひとつであったし、
私のどこが気に入ってもらえたのか、主が目をかけてくれたので、言われるままに働いた。
その頃、屋敷には主とその奥方と、それからまだようやく5つになったばかりのあなたがいた。
私のお嬢様。
あなたは一日のほとんどを部屋の中で行儀良く過ごしていたし、
あなた付きの乳母と侍女でいつも囲まれていたから、
私が耳にできたのは、部屋の前を通る時、中庭で仕事をしている時、
時折聞こえる楽しそうな笑い声だけだった。
姿は見えなかったけれど、聞こえてくる笑い声だけで、なぜか私も楽しい気分になった。
姿は見えなかったけれど、聞こえてくる笑い声だけで、見たことのないあなたの笑った顔が想像できた。
鈴を転がすようなあなたの笑い声。
あの日は一日、それなりに忙しかったのだった。
日も暮れていた。
私は裏庭の用具置き場と、木戸の鍵を閉め、その鍵を屋敷に戻したらその日の仕事は終わりだと、
一人思わず溜息を付いたところに、どんと柔らかな衝撃。
足元に目をやれば小さな女の子が、私にぎゅ、としがみ付いているのだった。
この屋敷にその年頃の子供は他にいなかったから、
「……お嬢様で、いらっしゃいますか」
他になんと言葉を書けたらよいのか判らなくて、私はそう言った。
「どうなさいました」
膝を付いてあなたの目線に顔を合わせると、驚いたことにあなたは泣いていた。
きっと迷子にでもなったのだ。
「どうなさいました」
そう思いながらもう一度聞き返す。
あなたの顔を見るのは初めてのはずだったのに、何故か懐かしい感じがして、私は思わずあなたを眺めた。
笑い声しか聞いたことのなかったあなたが、泣いていた。
小さな子供でも、こんなに静かに泣くことがあるのだと、私は妙に感心もしていた。
「お嬢様?」
「……どうか、わたくしと、」
鼻を啜ってあなたは小さく呟いた。
どうかわたくしと、あそんでください?
「え?」
あなたの口から呟かれた言葉が、あまりにも予想外であったので、私は思わず聞き返す。
私が。何故。
「乳母が心配していましょう」
「乳母はもう、おうちに帰ったわ」
「いつもお側にいる侍女たちはどうしました」
「……きょうは、”ばんさんかい”があるから、」
ああ、それで。
外回りの仕事の多かった私には、あまり実感の湧かない言葉ではあったが、
月に数度、主は友人客を呼んで夜更けまで賑やかに過ごすのが常だった。
その手の足りない周り仕事に、侍女たちも駆り出されたのだろう。
「どなたかとご一緒でしたか」
「いいえ」
誰か付き添いのものが一緒であったなら、きっと探していることだろうと尋ねても、あなたは小さく首を振る。
「おへやで、ひとりよ」
こんな小さなあなたが一人。
思わず胸が詰まった。
言葉が出ない私を前に、自分でも口にした後に実感が湧いたのか、また潤みだしたあなたの大きな瞳を見て、
「では」
慌てて私はあなたの手を取った。
「お嬢様、よろしければ私と遊んでいただけますか」
とても小さな掌だった。
私のザラついた手の中に、すっぽりと納まってしまうとても小さな掌だった。
私の言葉を聴いて、あなたは涙をいっぱい目に溜めたまま、嬉しそうに笑った。
つうつうと堪えきれない涙が頬を濡らして、それでもあなたは嬉しそうに笑った。
私のお嬢様。
愛おしいと、思った。
きっとその時から私はあなたに。
朝。
あなたのドアの前に立ち、その向こう、部屋の中にいるあなたに声をかけることから、私の一日は始まる。
「お嬢様。おはようございます。ご朝食のご用意が整いました」
軽く3回ノックをしてからそう声をかける。微かに聞こえる衣擦れの音。
きっと毎朝、あなたは既に起きているのだ。
起きているあなたが、私を待っていてくれる。
そうだ。
私はそれに気付いている。
昔からあなたは目覚めの悪いほうではない。
それどころか小さな物音にもすぐに目が覚める、怖がりで寂しがり屋で泣き虫なあなた。
私のお嬢様。
多分あなたは起き上がり、ドア越しに私を見つめている。じっと、毎朝、声に出さない想いと共に。
私はそれに気付いている。
けれど、言葉にすることはない。
声をかけた後の仕事は、寝室付きの侍女のものだ。
いつまでも未練がましい思いで、ドアの前に立ち尽くす私を、私自身が嘲る。
いい年をした男が、何を夢想しているというのだ。
全ては私自身の夢である。
私は、足早にあなたの部屋を離れる。
最近あなたは、外を眺めている。
窓枠に腰掛け、栗色の柔らかな髪を煙らせて、あどけない顔で外を眺めている。
いつかは園丁の一人が、まるで絵画の一コマだと感心して言った。
綺麗に装飾された外国の絵本の中のようなあなた。
私のお嬢様。
窓枠のキャンバスの中で、あなたは無心に遠くを眺めている。
あなたが見ているのは、園丁が丁寧に手入れした庭でも、
その向こう柵越しの景色でもないことを私は知っている。
その瞳に映るのはきっと、もう遥か昔に感じるあの頃の景色だ。
季節は今と同じ春だった。
野原にあなたを連れて出かけたのは、陽の下で元気に駆け回るあなたが見たかったから。
シロツメクサの咲く、一面の野原を見せたいと思った。
聞き分けの良いあなたは、大人に囲まれた中でおとなしく遊んでいる子供だった。
静かに、と釘を刺されれば、一日辛抱強く部屋に篭っている子供だった。
主夫婦の教育方針なのかどうなのか、同じ年頃の遊び相手が宛がわれることもなく、
あなたはいつも行儀良く一人で遊んでいた。
成長するにつれていい子になってゆくあなたを、私は不憫だと思った。
あまり声をたてなくなったあなたの笑い声を、私は聞きたいと思った。
主夫婦が静養と称して、あなたを置いて数週間、旅行にでかけていったのを良いことに、
私はあなた付きの数人と共に、屋敷を抜け出す計画を立てた。
秘密の計画。
普段は絶対服従が信条の、私のささやかな反抗。
柵に囲まれた箱庭から、ほとんど外出したことのなかったあなたは、目を輝かせて跳ねて歩いた。
子供の足にはそれなりの距離であったから、、途中で駄々を捏ねたら抱えて連れて行こうとも思ったのに、
あなたはくたびれた様子もなく、終始とても楽しそうだった。
一つ一つが大発見の連続。
春真っ盛りの野原に辿り着いて、あなたは息を呑む。
―――これ全部お花なの?……綺麗ね。とても、とても綺麗ね。
初めて見る風景に夢中になり、侍女を連れまわして久しぶりに走り遊ぶあなたは、
花と同じようにきらきらしていた。
日差しが眩しいのがありがたかった。
疑われることなく、私は目を細めてあなたを見つめる。
私のお嬢様。
花を摘み、追いかけっこをし、持ってきた弁当を皆で分け合って食べて。
春の短い日は暮れる。
そろそろ帰りましょうかと私が声をかけると、
はしゃぎ疲れたのか地面にしゃがみじっと黙りこくっていたあなたは、
―――ありがとう。
ぽつ、とシロツメクサの花弁を撫でながらそう言った。
野原はとても花束なんかにはできないから、あなたはわたくしをここまで連れてきてくれたのね。
―――お嬢様?
―――ありがとう。
夕日を背にして振り向いたあなたはやけに大人びた瞳に、私は吸い込まれて動けなくなる。
あなたの20歳の誕生日だった。
誕生日の晩餐で、青褪めて立っているあなたが、給仕を手伝う途中も気掛かりで仕方がなかった。
もともとあまり丈夫な性質ではないことを私は知っている。
真っ青になりながら、来客一人ひとりに父親と共に挨拶をして回るあなたは、
今にも崩れて折れてしまいそうに見えた。
来客は誰も気付かない。
目の前にあるのは宝の山だ。
父親譲りの物とは言え、あなたには地位と名誉がある。
加えて清楚で可憐な一人娘。
莫大な財産もついてゆくだろう。
虎視眈々とそれを狙う来客たちは、けれどそれを決して表には出さず、
あくまでも品の良い、冷たい笑みを浮かべてあなたと、あなたの父親の挨拶に応える。
挨拶に応え、しかし誰もあなたの様子に気付かない。
―――いやまったく申し分のない姫君ですな。
そんな誰かが囁く会話が壁際に直立する私の耳に飛び込んで、無表情を装いながらたいそう不愉快になった。
今のあの人の状態に気付かない男共に、一体あの人の何が判るというのだ。
確かに、彼らは私が持つことのできない物を多く持っている。
比べる次元がそもそも違っているだろう。
私には自信がない。
人を動かす力もない。
嵐の夜あなたが安心して眠れる石造り頑丈な屋敷も、その一部屋の調度を揃える財力すらない。
私に残されたものは、この、あなたへの身分を省みない醜悪な思慕のみである。
身分違い、という言葉がある。
私とあなたは、例えるならば大河を挟んで此方と彼方に立っているようなもの。
張り裂けるほどに叫んでも、声の届くことはない。
姿は見えている。泳ぎ渡れば抱き寄せることができるようにも思える。
けれど決して叶うことはない。
泳ぎきることは不可能である。
大河は万人を阻む。
身分と言うよりも、人種そのものがきっと、異なるのだ。
違う。そうではない。
ただ私は、あなたを失うことが怖いだけなのだ。
身分だとか歳だとか住んでいる場所生まれは本当はどうでも良くて、
ただあなたが目の前から消えてなくなることが怖いのだ。
あなたが時折、誰の目も届かない僅かな瞬間に、私を真っ直ぐに見つめてくるのが判る。
給仕でも侍女でも園丁でもその他大勢の誰かでも。
誰かに悟られたら最後、呆気なく遮られてしまうであろうあなたの視線。
ひっそりと、ほんの一瞬姿を追ってくるその視線。
柔らかな視線。
厭わしいとは思わない。いや、むしろ好ましくさえ思う。
……愛おしいと、思う。
けれど私はこの屋敷に使える執事で、あなたは伯爵家の一人娘である。
そこが判らないほど私もあなたも、我侭でも子供でもないから、口に出すことはない。
もしかすると私のただの思い上がりなのかもしれない。
私のお嬢様。
あなたのように真っ直ぐ見つめることもできずに、私は今なお目を逸らす。
だから。
「わたくし、好きな人がいるの」
背中越しにそう叫ばれた時、柄にもなく私は狼狽し、刹那振り向きかけて、
しかし怖くてとても振り向くことなどできなかった。
本当かどうかと尋ねて、本当だと答えられたらなんと応えればよい。
それは誰かと尋ねて、来客の一人の名前が出たらなんと応えればよい。
左様でございますか。
そう応えるのが執事の言葉としては適当なものだろう。
そう言える自信がなかった。
問い詰めることはできない。境を越えることは許されない。
長い間に築き上げた、鉄壁にも見える、その実酷く脆い自制心が私の心に楔を打つ。
結局、逃げるようにその場を後にした。
大広間の片付けが終わったのは、深夜をかなり回った頃だった。
最後まで片付けに付き合ってくれた侍女たちを労って、
彼女たちが疲れた足取りで各々の部屋へ戻る姿を見送り、
それから私は戸締りの確認をし、開け放してあった重く軋む扉を閉めて、
大広間に鍵をかけようやく肩の力を抜く。
疲れてはいたが、妙に目が冴えてどうにも眠れそうになかった。
早く自分の部屋に戻り、残り少ない睡眠時間とは言え、少しでも取っておかないと、
後々苦労すると判っているのに、私は鍵を預かる特権を濫用して玄関よりそっと表に出た。
冷えた外気温が頬を撫でる。
春とは言え、まだ花冷えするほどに夜は寒いのだ。
等間隔に嵌め込まれた煉瓦の上を音もなく歩いた。
まるで忍ぶ様子が泥棒のようだと自分で思い、ふとおかしくなった。
外灯も消されて、辺りの光源もなかったけれど、勝手知ったる庭である。
思えばもう、私自身の半生をここで過ごしている。
そしてそれはそのまま、あなたと出会った年月に当て嵌まる。
この煉瓦のように規則正しい日々。
月明かりに漫ろわれて、私はこの屋敷の住人ですらあまり訪れることのない奥園へ足を運ぶ。
奥園の小さな池には花が満開だった。
主にほとんど忘れられているそこは、園丁達の手入れも多少おざなりで、
けれどそれがかえって野趣のきいた景観になっていて私は好きだった。
もともと浮かんでいた睡蓮を押しのけて、どこから蔓延ったものか、今の時期は水仙が満開だった。
水仙のあえかで、けれど艶やかな香りの向こうに、小さな東屋がある。
池に臨んだ、傾きかけた東屋である。
誰も邪魔をしに来ないそこは、私の内証の息抜きの場所でもあった。
うっとりと漂う香りをかき分けて、私はいつもの定位置に近づき、
そこで初めて人の気配に気付いてぎょっとした。
「……誰だ」
不意打ちで驚かされざらりとした胸の感触と、
折角の気に入りの場所を占領されている不快感とで、私の声は低くなる。
ほっそりとした人影が、東屋の半ば朽ち果てたベンチの上にあった。
「……まぁ。怖い声」
聞き馴染んだあなたの声がする。
「……お嬢様?」
水仙に混じって仄かに匂うあなたの優しい香り。
違う意味で驚いて、私は瞬時に執事の顔に戻る。
「こんな時間にこんなところで何をしていらっしゃいます」
「あら。おまえも、こんな時間にこんなところで何をしているの」
「……私は、」
「わたくしは星を眺めにここに来たのよ」
くすくすと声を潜めて笑いながら、あなたは空を見上げた。
青い月明かりにしっとりと濡れて、あなたの細い肩が見える。
「お嬢様」
三度驚いて私は声を上げた。
「そのような薄着では風邪を召されます」
「しっ。そのように大声を出しては、誰かが来てしまってよ」
悪戯を見つかった声音であなたは肩をすくめて、それから、そんなに寒くはないのよと言った。
息も白い午前2時に。
どこか遠くで鶏の時をつくる声が聞こえる。
「ここなら、誰も来ないと思ったのだけれど。……おまえが来てしまったわね」
「……申し訳ありません。すぐに去りましょう」
「いいのよ」
そう言ってあなたは、ぽん、と朽ちたベンチの反対側を叩いた。
「おまえもここに座って星を眺めるといいわ」
「いえ。私はここに控えております」
私は数歩離れた場所で首を振る。
「平気よ」
「……誰かに見られたらどうなさいます」
「平気よ。こんな時間に誰も、こんなところに来ないから」
おまえは来てしまったけれど。
あなたはおかしそうに小さく笑って、もう一度ベンチを叩いた。
「おまえもここに座って星を眺めるといいわ」
「いえ。私はここに控えております」
私は数歩離れた場所で首を振る。
「平気よ」
「……誰かに見られたらどうなさいます」
「平気よ。こんな時間に誰も、こんなところに来ないから」
おまえは来てしまったけれど。
あなたはおかしそうに小さく笑って、もう一度ベンチを叩いた。
「先ほど、部屋から外を眺めていたら、流れ星が見えたのよ。しばらくしてまた流れたの。
……いくつも、いくつも。音がするほど流れてゆくものだから、
部屋の中で見ているのがなんだかもったいないなくて。
一人で見ていても咎められない場所を探していたのだけれど」
「今の時期、流星群がございます」
「流星群。あなたは何でも知っているのね」
感心したようにあなたは呟いて、それからまた空を眺めてしばらく押し黙る。
その肩が細かく震えていることに気付いて、私は口を開いた。
「お嬢様」
「おまえは、」
咎めかけた私の言葉は、あなたの言葉に押し被されて消えた。
「おまえは、わたくし付きの執事だったわね?」
「はい」
勢いを殺がれ、仕方なく私は頷いた。
「では、もしわたくしが……、わたくしがどなたか殿方の元に嫁ぐ日が来たら、おまえはお役御免になるのね」
「はい」
今の主夫婦の様子を見ていると、
あなたがもし屋敷からいなくなってもそのまま、雇ってもらえる可能性のほうが高くはあったが、
思えば私自身、あなたのいない屋敷と言うものを想像した事がないのだった。
想像して、私は苦笑する。
あなたのいない屋敷に、居続ける気持ちが、私にはこれっぽっちもなかった。
「執事を辞めたら、おまえはその後どうするつもりなの」
「その後……、でございますか」
考えたこともなかった。
「そうですね。故郷に引き払って、……これまで貯めた給金で、隠居生活でもしましょうか」
早い隠居生活。
あなたのいない生活に、耐えられる自信が、私にはこれっぽっちもなかった。
「故郷。おまえの故郷は山のほうだったかしら」
「はい」
「そう」
あなたの意図が読めなくて、私は途方に暮れて立ち尽くす。
「山は寒いのかしら」
「冬になると大変寒くなります」
「雪は積もるの」
「はい。それはそれはたくさん積もります。
昔、雪の当たり年に、一月ほど家から出られない事があって、大層困りました」
「いいわね」
「……え?」
見てみたいわね。
背中越しに、ともすれば聞き逃してしまうほどの小さな声であなたは言った。
決して、叶うことのない願いを。
「おまえ、もうそれこそいい年でしょう。ずっと独り身のつもりなの」
「……私めは、仕事が連れ合いのようなものでございますから」
誰に対しても当たり障りのない、もはや言いなれた返事を私は返す。
「そう」
ぽつりとあなたは言った。
「わたくしは、しないわ」
「……え?」
空を見上げたまま、
「わたくし、結婚なんてしないし、おまえを安楽な生活に送る気もなくってよ。
おまえはずっと、わたくしの側にいるのよ」
できないことを知っているあなたは、言いながら少し苛立たしげだった。
「……それが、ご命令とあらば私はそういたしましょう」
「命令じゃないわ」
「お嬢様」
小刻みに揺れる肩を見かねて、
私は自身のディナージャケットを脱ぎ、失礼しますと一言言い置いて、あなたの肩に被せかけ、
「お嬢様」
そこで初めて振り向いた、あなたの顔を眺めて言葉を失った。
あなたは泣いていた。
「わたくしね」
月明かりに照らされたあなたは、微笑みながら静かに泣いていた。
「わたくし、さっきからもうずっと流れ星を眺めているの。もう、百ほど流れたの。
両手で拾えそうなほど、たくさん。たくさん、流れたの。
流れ星に願いをかけると叶うのだって、侍女たちが言っていたわ。
……あといくつ願いをかけたら、わたくしの願いは叶うのかしらね」
「……お嬢様」
私のお嬢様。
あなたは、昔からそうやって誰にも気付かれないように、静かに一人で泣くのだ。
あなたの肩が震えていたのは寒さのためではない。
私は、馬鹿みたいに何も言えないまま、あなたの顔を眺めた。
こんなに泣いているのに、あなたは綺麗だった。
つうつうと堪えきれない涙が頬を濡らして、それなのにあなたはとても綺麗に笑っているのだった。
愛おしいと思った。
「わたくしね、」
あなたはそっと私の手を取り、しばらく両手に包み込むようにして、
それから掠れた声で囁いた。
「わたくし、あなたがいないと一人でさびしい」
もう何も言えなかった。
瞑目して私は空を仰ぐ。
明け方前の降るような星空が瞬いている。
どこか遠くで、また鶏が鳴いた。
* * * * * * * *
進展しません……。
うおおおおおお切ねぇえええええええええ
GJ!!個人的には丸く丸く収まってくれることを願う。
GJ!!
GJ!!
すごい切ない。泣きそうになった。
二人が幸せになれるように流れ星に願掛けするよ。
GJ!!!
やばいよやばすぎる。。。。
ハッピーエンドを望みます・・・・
GJGJGJ!
是非またこの二人の話が読みたい!
エロ無しでも全然okok
神キターーーーー!執事さんサイドもええ話や。
「わたしのお嬢様」この言葉に執事さんの想いの全てがこめられている。
ああ切ねぇ…切なくて切なくて身もだえしながら読みました。
このお話にはもはや安易なエチーなど無用!唇へのキスさえいらない。
見つめあい、互いを想い合う姿に
……濡れてしまいますた。
涙と鼻水で顔が。
年上お嬢と年下従者という組み合わせはないものか?
君が書くんだ
>601じゃないけど書いてみた。
細かい事は一切決めてない。勢いだけで書いたんでネタとして取っておくれ。
元幼馴染で今は愛憎関係という感じなつもり。
年下従者×年上お嬢
↓
光に満ちた庭園の中央にある東屋。
その壁の影になる部分で一人の少女が、傍らの少年にびっと指を突きつけていた。
「あんたってホント駄目ね! どうしてそうやってすぐ泣くのよ」
その少女は、ひらひらとしたワンピースが良く似合う人形のように愛らしい少女だった。
指を突きつけられた少年は、少女よりも二つ、三つほど幼いような
細い首がいたいけな少年であった。
彼は、少女と変わらぬほど大きな瞳にうるうると涙をためている。
少年は一人屋敷を抜け出した少女を追いかけてきたのだが、途中で
転んでしまったらしく膝の所に泥がついていた。
必死にしゃくりあげながら少女へと訴えている。
「だ、だっておじょうさまが……い、いなくなっちゃうと思って……」
「もー、ほら。泣かないの」
栗色の頭をなでながら、少女は少年の涙を袖で拭いてやった。
すると泣いたカラスがもう笑う、とばかりに少年はにこにこと満面の笑みを向けている。
「ぼく、ずーーっとおじょうさまのそばにいますね!」
その言葉に少女もまた、嬉しそうに微笑んだ。
*******
あの庭園での思い出は今はどこにいったのか。
彼と共に過ごした光の日々はどこまでも遠かった。
女は、精一杯の憎しみをこめて男をにらみつけた。
あまりの怒りに一瞬意識が白く飛びそうになる。
女の家はかつての使用人である男によって崩壊し始めていた。
「あんただったのね……」
「申し訳ございません、お嬢様」
その言葉はあまりにも静かだった。
見つめ合う男女の間に緊迫した空気が流れていく。
すると、男がふと唇を歪めて苦笑した。
「こうするしかなかったのですよ、お嬢様」
そう言うと、男は女の傍へゆっくりと近づいてきた。
「な、何よ……何をするつもり!? きゃ…」
男は女の体を抱え上げると寝台に向かって歩いていった。
彼が何を考えているかを察して、女は顔色を変えた。そして力の限りに暴れる。
「ちょっと、離しなさい! いや、いや、嫌っ!」
だが、それでも男の腕を振りほどくことは叶わなかった。
男はどさりと女の体をベッドへと横たえると、その上にのしかかっていった。
そして微笑んだまま女の唇にそっと指を当てる。
その指は昔と変わらぬ優しさを持っていて女は泣きそうになる。
「お嬢様、僕だっていつまでも貴女の後を追いかけていた泣き虫のままでは
ありません。こうやって貴女を組み敷くことだってできる」
「…………」
何かを口にしたら泣いてしまいそうで、女はただ唇を引き結んだ。
その唇に男が熱く口付けてきた。舌が強引に割って入り込んでくる。
服が脱がされ、肌が夜気にさらされるのを感じる。
次いで彼の唇を感じ、指を感じ、そのまま女は快楽の海にたゆたいながら
遠い過去を回帰するのであった。
(続かない)
続いてほしい。
触発された……
執事とマダムもとい若奥様。
若奥様は元々執事の縁故で雇われたメイドさんで、
旦那様に見初められてお手つき→妊娠。
奥様に先立たれていた旦那様はすんなり若奥様ゲト。
実はあまり密かじゃなく、幼馴染みでもあった執事を慕っていた若奥様。
それを憎からず思っていた執事。
……ベタ過ぎですかね?
いいと思う
ばっちこーい。
>603-604
GJ!こういうの好きだな。
執事と若奥様のベタ妄想がやまず書いてみたものの、
でも何かベクトルが妙な方向へそれました。
優しい(?)旦那様がしでかしたアレそれ。
結局色々報われない鬱な展開になりました…orz
それでもよろしければどうぞ
肌にまとわりつく熱と湿度と啜り泣きと、そこにけして紛れることのない熱い吐息と。
「もぅ……もう、いやです……………」
割開かれる手が離れても、彼女はしどけなく足を開いたまま横たわる。
言葉で拒絶を口にしても、あくまで睦言の延長としか判別できない従順な態度。
恥じらうように逸らせる色付いた目元は、更なる狂宴の呼び水でしかなく。
そこに嫌悪を少しでも見出せたのなら、
もしかしたら気紛れは起こらなかったのかもしれないけれど。
「そうか、私に可愛がられるのはもう飽きてしまったのだね」
優しく微笑みながら、すべらかな頬を一撫でして身体を離す。
それは思わぬ行動だったようで、素直な瞳が怪訝な表情を浮かべて見返してくる。
もう一度慈しむように頬を撫でられて安堵するように笑った彼女は、
しかし身を委ねる男が卓上の呼び鈴を手にしたことに目を見開いた。
「旦那様…?」
「怯える必要はない。ただ、新しい喜びを教えてあげるだけだよ」
「ぇ、でも……」
それは、彼に仕える別の従順なる人物を呼び出す為のものであるはずだ。
何が起こるのか、起こってしまうのか、まだまだ無垢の殻を破ったばかりの彼女が知るはずもなく。
無情な響きの余韻を残して、鈴の音は鳴らされてしまったのだ。
それは、恐らくこの少女が生まれる前に繰り広げられた宴の繰り返し。
「いやっ! いやですっ、見ないでっっ!」
まさか、と思ったのだ。まさか部屋の扉が開けられるわけがあるものか、と。
「旦那様、こんなのはいやです! 離してっ……………ぁっ!」
背後から少女の身体を容易く捕らえた男はその細い足首を掴むと、
扉の前で変わらぬ無表情を続ける青年に見せつけるように、その左右を大きく割開いた。
「あぁっ!」
強く顔を背ける少女は、何故こんなことが起こっているのか理解できるはずもなく、
ただ羞恥で体中を染め上げて震えるだけだ。
「ウィル、こちらに。さあ、可愛いリィナ。顔をあげて。私を見なさい」
嗚咽を漏らしはじめた少女は、それでも従順だった。
涙に濡れる瞳で、必死に優しいはずの彼女の伴侶を見上げる。
果たして返された微笑みは、極上の砂糖菓子を前にした子供のように
無邪気な甘さを湛えたものではあったけれど。
「ウィル、私の大切な奥方に最高の快楽を与えてあげたいのだよ」
はっと振り仰いだ視界に、青年の姿はなかった。
しかし気配を感じて下げた目線の先、寝台の傍らに跪いて、
少女の全てを見詰める青年がそこにいたのだ。
「ぃ、いやぁっ……………ぁあっ」
上がる悲鳴は、途中で息を詰めた少女自身が飲み込んでしまう。
項を優しくたどる唇と、微かに胸のとがりを爪弾いた指先と。
そんな僅かな刺激だけで、少女の抵抗など封じられてしまうのだ。
「失礼を」
そんな囁きが、寝台に乗り上げてきた青年からもたらされたかもしれない。
ぎくりと、少女は息を詰めた。
恐る恐る、開かれた自身の身体を見下ろす。
その足の間に今まさに顔を埋めようとしているのは、彼女に仕えるはずの、
この広大な邸宅を纏め上げる優秀な執事の一人である青年。
そして今となっては彼女の幼い頃を知るただ一人の幼馴染み、その人であった。
「あぅっ……くっ…ん、んんっ、ひぁっ、ぁあっん!」
こらえようとして、こらえられるものであるはずもなく。
とどまることなく溢れてくる少女の蜜を啜る水音が、彼女を追い詰め、
更なる快楽をもたらしてやまない。
「やっぁ、ぃや、だっめぇ……あぁっ」
「ああ、やはり思った通りだ。とても綺麗だよ、リィナ」
熱に浮かされたような囁きが耳許に落とされても、最早少女には聞こえない。
だが、ぴくりと、青年の物言わぬ背が引きつったのを主は見逃さなかった。
「ウィル、君もそう思うだろう?」
問いかけに、少女の秘裂に埋められた舌が、透明な糸を引きながら引き抜かれた。
「……僭越ながら」
やや高めのテノールが、平坦に答えた。
「ふふ、君のそういう正直なところはとても好ましい。さあ、続きを」
促され、青年に否やがあるはずもなく。
再び下肢に埋まっていく表情のない横顔を、顔色を失った少女はただ呆然と眺めた。
「ところでウィル、舌だけではなく指も使ってあげなさい。遠慮はいらない」
それをどんな表情で青年が聞いたのか、知る者はいない。
すぐに、拷問のような快楽が少女の全身を包んでゆく。
舌先だけでも強烈な刺激は、繊細に扱う指が増やされたことで、
更に少女の神経をむき出しにして追い詰めていく。
「ひっぅ……んぁあっん……ああっ、ああぁっんっ!」
びくりと大きく跳ねた少女の身体を包み込むように抱き締め、
男は断続的に震える身体を宥めるように、その華奢な肩や背中に掌をあてる。
労りに満ちた、慈しむようなその温かな掌の持ち主を、少女は泣き濡れた瞳で見上げた。
「旦那様、……どうして……………」
快楽に堕ちても、少女の瞳はとても素直だ。
常と変わらぬ優しい笑顔で、男は最愛の妻を見下ろしていた。
流行病で身寄りを失った少女を伯爵家の下働きとして招き入れたのは、
執事となるべく幼い頃に伯爵家へと引き取られた幼馴染みの青年だった。
広大な領地を治め、温厚な人柄が人格者としても知られていた伯爵は、
ゆくゆくは執事頭となるだろう有能な青年のそんな行動に、少しだけ注目してしまったのだ。
果たして青年が雇い入れただけあって、少女は学はないものの、よく気の付く働き者で、
そしてどこの貴族の子弟かと時に間違われることのある青年の端正な容貌と並んでも、
全く遜色のない器量の持ち主でもあったのだ。
「ウィルとリィナの村は、皆そんな整った容姿の持ち主ばかりなのかな」
ほどなく明るく聡い少女を近くに置くようになっていた伯爵は、
少女が煎れてくれた紅茶に口を付けながら、傍に控える青年を振り返った。
「どうでしょうか。先日村に戻った時は、目と耳が三つ以上の者も、
鼻と口が二つ以上の者もおりませんでしたが」
「……またそんなことを言って、煙に巻こうとする。
ところでここはせめて自分のことくらい、謙遜するところではないのかね」
「事実を客観的に認められなければ、執事として務まりませんもので」
茶器を扱っていた少女は、思わず吹き出す口許を止められなかった。
「ほら、リィナに笑われた」
「も、申し訳ありません!」
「ああ、リィナは素直でとても可愛いね。どこかの鉄面皮とは大違いだ」
「本当に。笑いながら本日の仕事はこれで終わりだと言い張るどなたかとは大違いです」
片や眉一つ動かさず、片や笑顔で無言の視線を交わし合う二人に、ほんの少し少女は目を見張った。
「全く、可愛げのない!」
そう言って大きく嘆息した直後には笑い出した主の姿に許されて、
少女と青年もたまらず笑顔を零す。
それは、そう遠くない日常であったはずの光景だった。
きっかけは、強いてあげれば『傍にいた』。
今の少女よりも尚若い時分に伴侶を得ていた伯爵は、
しかし今の青年よりも少しだけ年を重ねた頃には最愛の相手を失っていた。
それから今尚降るようにもたらされる再婚話に全く耳を貸すことなく、
独り身を通し続けている。
その理由が語られることはなかったものの、次代の後継が決まらぬ中、
不思議と伯爵の身近に仕える者がそれに異を唱えることもなく、
様々な憶測が飛び交うもののそこは伯爵の人徳か、さほどの騒動とはならなかったのだ。
そして、幾度目の伴侶の命日を迎えた、その翌日であっただろうか。
良く晴れた青空に誘われて、庭の一画に設けられた東屋に置かれた寝椅子の上で、
男は微睡みの中にいた。
そして、夢を見た。
夢の中で、皆、笑っていたのだ。
目覚めると、見下ろす少女の顔があった。
「こんなところで休まれては、風邪を引いてしまいます」
そう言って、向けられた笑顔。
日溜まりの中、少女が笑う。
『兄様、こんなところでお休みしては、お風邪を召されてよ?』
それは、遠い昔に失ってしまったはずのもの。
「旦那様? どうか……ぇっ?」
どうして、その手を引いてしまったのか。
引いて堕としてしまったのか。
そして一つの新たな命が生まれ、少女は逃れるべくもなく。
男の腕の中に捕らえられてしまったのだ。
「本当に、リィナは可愛いね」
変わらぬ笑顔を見上げる少女の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
力無く嗚咽を漏らす細い身体を、あやすように抱き締める。
「昔話をしてあげようか、リィナ」
そう唐突に言い出した男は、そうと悟らせぬ静かさで寝台を降り、
退室しようとしていた青年を目線だけで引き留めた。
「……………っ?」
「昔、それはとても可愛らしい少女がこの屋敷にやってきた」
溢れる涙を優しい仕草で拭いながら、何かを懐かしむように男は目元を和らげる。
「私の五つ下で、もっと幼かった頃には私のことを『兄様』と呼んで、
どこにでも嬉しそうに付いてくる少女だったんだけどね」
あんまり何処でも付いてきて、何でもやることを真似しようとするものだから、
色々手を焼くこともあったけれど。
「とても、とても可愛い少女だった。
でもこの屋敷で暮らす為にここへやって来た時、彼女は一人ではなかったんだ」
喜びと共に少女を迎えた自分に向けられたその笑顔は、初めて目にするものだった。
それはまるで硝子一枚を隔てたような、どうにも空虚な作られた笑顔。
「私と顔を合わせる前には、もう彼女の傍にいたのだそうだ。
年は……覚えていないな。ふふ、年はとりたくないものだな。
絶対に、忘れないと思ったはずだったのにね……」
彼女付きの執事だったという男は、婚家でもそうでなければいけないと、
どうしても少女が譲らずに連れてきたのだと言われた。
それは別段、不自然なものではなくて。
なのに必死にいいでしょうと、縋るように見上げてきた瞳。
……頷いてしまった自分に向けられた視線は、もしかしたら哀れみのそれだったのかもしれない。
ふとした瞬間に交わる、二つの視線。
一つは何事もなかったように逸らされ、もう一つは諦めたように伏せられて終わる。
そうしてふり返った時には、何事もなかったかのように少女は笑うのだ。
それがどれだけこの心を塞ぐ笑顔であるのか、知ろうともせず。
「君達を見ていると、どうしてだろうね。昔のことばかり思い出すよ。
……ある日、彼女を捜して庭を見回っていたことがあった。
東屋の方で涼んでいると聞いて、追いかけたんだったかな」
いつか、その時がやってくると解っていたはずだ。
解っていてその時を早めたいと、自分は望んだのだろうか。
「一人じゃなかったよ。それはいつもの、当たり前のことだったけれどね。
でも、驚いた。とても驚いたんだ。
声をかけることもできずに、ついやってきた道を戻ってしまった位に、ただ驚いた」
解っていても、信じていたのだと。
どうしようもなく、信じたかったのだと。
その時やっと、やっとやっとやっと自分の心を知ったのだ。
「跪いて、こうしてこの小さな手を取って。
ただ見つめ合っていただけだった……………君達のように」
「っ!」
息を飲んだのは、少女だけだった。
そうだろう、青年に、何を恥じることがあるだろう。
この青年こそが、自分に憎悪を向けてしかるべきなのだから。
混乱した私は、とても愚かなことを口走っていたのだろうね。
良く覚えていないのだけれど、許されてはいけないことを願ってしまった。
でも何故だろう、今でもそれが間違いだったとは思えないんだ」
涙を振り絞りながら、縋り付いてきた少女。
どうか許してと、それだけは許して欲しいと額ずいた。
罰を受けるのならば自分こそだと、その嘆きは今も耳に木霊する。
けれど、今度こそ頷かなかった自分。
昔はそういう習慣だったと、また今でもそれを存続する家もあるのだと、その時知った。
「野蛮な因習だと思うのだけれど、ね。
……私の代で終わりにするから、許して欲しい」
向けた視線を、青年が逸らすことはなかった。
その上目顔で頷かれて、それ以上を告げることが、男にはできなくなる。
ああ、本当に、どうしようもなくこの青年達は似ている。
何も語らず、理不尽な境遇への嘆きを表に出すこともなく、その努めを完璧にやり遂げる。
「昔話は終わりだよ。さあ、リィナ。召使いを呼ぶから、湯を使うといい」
果たしてどれだけを、少女は理解できたのだろう。
そしてこの青年は、どこまでを知っていたのだろう。
――考えるまでもない。全て、知っていたに決まっている。
執事とは、そういう存在なのだから。
そして肉体に刻まれた、けして取り返しの付かない刻印と。
「ああ、そうだウィル」
召使いを呼ぶ為の呼び鈴を手にとった男は、思い出したというように青年を呼び止めた。
「何でございましょう」
寝台に座り込んだまま、未だ茫然自失の体で少女が男を見遣り、青年を見る。
そこでいつも一瞬でも視線がとまってしまうことを、気付いているのだろうか。
「お前に暇を出す。荷物がまとまり次第、出て行きなさい」
「旦那様っ!?」
叫んだのは少女だけ。
静かに、ただ静かに青年は一礼すると、かしこまりましたと口にする。
「お前の顔など、もう見たくないのだよ。
……………そしてリィナ、君の、諦めた笑顔も」
「旦那様っ!」
初めて、青年の仮面が外れた瞬間だった。
「…っ旦那、様……?」
言われた言葉の意味を、少女は正しく理解したのだろう。
傷付いた表情で、男を見上げる。それもまた、初めて向けられる眼差し。
「もう、いいんだ。君には残酷なことをした。もう、私を愛そうとしなくてもいいんだ」
そうだ、本当は、一番そうしたかったのだ。
そうすることができずに縋り付いたのは、過去の自分。
状況が許さないと言い訳して、手放すべき手をそうせずに、縛り付けて、傷付けて。
そして、本当に大切にしたかったものを失った。
それをもう一度、繰り返してはいけない。
「君を自由にして、私はやっと解放される……」
「旦那様、奥様は旦那様のことをっ」
「知っている。だが、お前がそれを言うのは許さない」
「……………っ、差し出たことを申しました」
どうあってももう、時は戻せないのだから。
その少年が引き取られてきたのは、まだ十歳にも満たない時分だった。
抜きん出たその利発さを買われて、そのまま生家で生きていては
決して知らなかった世界を与えられ、期待された通りに知識を吸収していった。
だが、たどらされた運命は、果たして幸せなものだったのだろうか。
一生を仕える家に捧げる為にと、本来伴侶へと与えることのできるはずだった
喜びの全てを奪われたことは、どれだけの苦痛を伴うものであったのだろうか。
全てはもう、微睡みの彼方にある。
「……………ま、とーさまっ、父様っ!」
「……ぅん?」
眩しすぎる日差しを遮る為に、目の上に置いていた右腕で軽く顔をこすりながら、
男は自分を呼ぶ幼い声に視線を巡らせた。
「ああ、お早う、リチャード」
「お早うじゃありません! もう、太陽が西に傾きはじめています」
呆れたように肩を怒らせたと思ったら、すぐに表情を弛めた少年は、労るような笑顔を浮かべ。
「こんなところでお休みしては、風邪を引いてしまわれるでしょう?
……………え、ぇ、と、父様っ!?」
それはまるで日溜まりのように、温かい笑顔だった。
お目汚しでした
ごめんなさい
名無しに戻ります
このスレに限ったことじゃないけど最近妙に自分を卑下する
コメント付きで投下する人多い気がする。
その気はなくても誘い受けに見えるからやめた方がいいと思うよ。
SSはいいんだから勿体ない。
新旧執事二人と新旧奥様二人と(読み違えてたらスマン…)
その関係を知りつつ手放したくない旦那セツナス
624 :
621:2007/01/09(火) 23:32:09 ID:4LhS3YSm
まず、前言撤回ごめんなさい。
606でふったネタと違う仕上がりになったから、
期待してくれた人に対して「お目汚しごめんなさい」。
卑屈になったわけじゃないんだ…!
でも感想が嬉しかったので、
砂を吐くような結末が書けたらまた来ます。
>>624 気にすんな!
3人がこの後どうなるのか期待して待ってるよ。
>>624 アサリの砂吐き結末期待してます。
連日、SS読めて嬉しい!
自分も触発されたので執事xお嬢再投下してみます。
丸く治める方は長くなりそうなので場繋ぎに…。
というか、外に雪が降っていたので…。(安易)
<<かざはな。>>
雪が降っている。
淀んだ灰鼠色の空から白い綿が散り積もる。
深深と。
あんなに草臥れたように見える雲から、何故こんなに真っ白で汚れのない結晶が落ちるのか不思議に思う。
深深と。
窓の外、表通りを雪にはしゃいだ子供等が駆けてゆく。
雲と同じに草臥れた大人と違い、子供等は元気だ。
その歓声を地面に降り積もったそれが、じっとりと吸収している。
ああそうか、全ての雑音を吸い込んで、だから雪は溶けるのだな。
そんなことを思いながら紅茶を入れ終えた。
外を眺めている場合ではない。早くあなたの元へ運ばなくては。
暖かいそれは冷めてしまう。
「今日は、鼻の頭が冷たくて目が覚めたのよ」
あなたの部屋に入ると、同じく窓から外を眺めていたあなたは、こちらを振り向きもせず言った。
あえて振り向かずとも、足音やノックの音で私だと判るのだと、そう言う。
そんものなのかもしれない。
「今朝は寒うございました」
言いながら私は、あなたがすぐに飲めるように茶の支度を整える。
時折暖炉から、ぱちぱちと薪の爆ぜる音。
暖かな音だ。
「雪が降っているわね」
「はい。少し遅い春の雪ですが、積もりましょう」
「雪だるま、作れるかしら」
「そうですね」
「近所の子たちは作ってくれるかしら」
わくわくと嬉しそうなあなたの声に私は思わず頬が緩むのを覚えた。
小さい頃からあなたは雪遊びが好きだった。
長じて、流石にあなた自身では雪遊びをしなくなっても、雪遊びをする子供等をじっと眺めている。
どこかうらやましそうに、どこか切なそうに。
「さぁ、どうでしょう」
「おまえあまり雪が好きではないの?」
「え?」
いつものように唐突な話題の転換。ついてゆけないこちらを振り向いて、あなたは私をじっと見る。
その視線は薄い鳶色。
「あまり好きではないの?」
その真っ直ぐな視線に、たじろいで苦笑で誤魔化した。
「……そう聞こえましたか」
「聞こえたわ」
「……そうですね、」
結露した窓を眺めて、私は小さく頷いた。
「あまり、好きではありません」
「まぁ。どうして」
目を見張るあなたに、私は瞬時戸惑う。
ぱちり。薪が爆ぜる。
どうしてだろう。
考えたこともない。
「寒いからでしょうか」
「そうなの?」
「……いえ、」
違う。
思えば、あまり好きでないのはむしろ、真冬のそれではなく、今の時期、春に降る雪なのだった。
何故ならばそれは、
「……、雪がこうして降っていって、やがて止みましょう」
「止むわね」
止んで。
「ほとんどはすぐ消えてしまいますが、中には陽にあたっても、
なかなか溶けないで残っているものがありますでしょう」
建物の影。縁石の横。町の片隅。
何日も何日も何日も何日も何日も何日も、
「いつまでも溶けずに」
それはそこにあって、
「どんなに黒く汚れても」
決して消えない雪になって。
いつまでも。
―――そして春が来る。
「私のようなものでございますよ」
私を見つめるあなたは、こうして降っては、すぐに手のひらの上で消えてしまう淡雪だ。
後には何も残らない。
私は多分、片隅に残っている。
「いつまでも」
あら。
自嘲しかけた私を見つめていたあなたは、おかしそうに笑った。
「残っている雪は、大根おろしのように見えてよ。わたくしは、好きだわ」
とても柔らかだもの。
そう言ってころころと、実に楽しそうに笑う。
大根おろし、のあなたらしい表現がおかしくて、私も笑った。
紅茶を注いだカップから、白い湯気が立ち昇る。
その湯気の向こう側であなたは笑っている。
しばらくそうしていたあなたは、けれど不意に笑いを納めて、
「おまえ、そんなこと思って雪を見ているの」
真面目な顔でそう尋ねる。
「はい」
「いつも?」
「はい」
「……まぁ」
それは大変ね。
首を傾げるあなたは、窓の外の白練色の光に照らされて、ひどく澄んでいる。
純白は、あなたによく似合う。
「では、」
言いながら、あなたはまた窓の外を眺めた。
その瞳に映ったものが何だったのか、私には判らない。
「わたくしが、溶けた端から何度も何度も何度も何度も」
雪になって。
「何度も何度も」
雪になって。
「おまえが嫌になるまで、空から降ってくるわ」
あなたの突拍子もない発想に、私は思わず喉の奥で笑った。
そう、まったく敵わない。
「何度も、でございますか」
「ええ、そうよ」
「雪になって」
「ええ、そうよ」
ああ。
なんて酷い殺し文句だろう。
窓の外には雪が降っている。
深深と。
「……しばらく止みそうにありませんね」
「そうね」
かざはな。
風に煽られ、宙を踊りながら、次々に舞い落ちる。
まるで春に散る花と同じ、それ。
「でもそのうち、きっと溶けるわ」
そう言ってあなたは、窓ガラスに映った間抜け面の私を眺めて、花が咲いたように微笑んだのだった。
* * * * * * * * *
今更気付きました。
>>592 「わたくし、あなたがいないと〜」を
「わたくし、おまえがいないと〜」に
脳内変換お願いします。
この距離感がたまらない
GJ
エステルとゲイルまた書いてみたんで投下します。
やきもちやきなエステルが書きたかったんだ。
扉の方から熱い視線を感じつつ、ゲイルは黙々と書類の整理をすることでそれに気づかないふりをする。
先日ユリシス・ハインツ中将の隊から転属となり今はマルグリッド・フィス大佐の隊にいる。
マルグリッド大佐の補佐官として働いているというわけだ。
どちらかというと文官に近い仕事をしているマルグリッドの元で働くことはゲイルにとっては新しい発見の連続でこれもまた楽しい。
しかしながら、マルグリッド本人を目の前にしてしまうと逃げ出したくなるのだから困ったものだ。
「熱心なのね」
一向に気づく様子のないゲイルに痺れを切らし、マルグリッドが口を開いた。
甘い、誘うような声音。
天気の話をしようが、仕事の話をしようが、ゲイルに向ける声はいつもそうだ。
脳裏にエステルのむくれた顔が浮かび、ゲイルは胃が微かに痛みだしたのを感じた。
近づいてくるマルグリッドを座ったまま出迎えるわけにいかずゲイルは立ち上がった。
「わからないことはない? 困っているなら手を貸してあげるわよ」
「お気持ちは有り難いのですが、今のところ大佐の手を煩わせるほどの疑問には出会っておりません。一人でなんとかなりますから」
「そう? さすがユリシス兄様の元にいただけあって優秀なのね」
「恐縮です」
恭しく頭を下げれば、マルグリッドがくすりと笑う。
「ねえ、少佐」
そっとマルグリッドの手が腕に触れ、ゆっくりとゲイルの腕を這う。
背中を変な汗が伝っていくのにゲイルは気づく。
「今夜、食事に付き合っていただきたいのだけど」
「申し訳ございませんが今夜は先約がありまして」
「そう。じゃあ、明日は?」
「明日も先約が」
「そう。きっと一年先まで予定で埋まってるのね、あなたのスケジュールは」
胃が痛い。
しかし、そんなことはおくびにも出さず、ゲイルは謝罪の言葉を口にする。
未だかつて女性──エステル以外──からこんなに熱心に口説かれたことはない。
マルグリッドが自分を誘う理由に気がついているからこそゲイルは頭を悩ませている。
どうやらエステルはマルグリッドのことがあまり好きではないらしい。
二人は従姉妹であり、昔からよく意地悪されていたのだと力説していた。
今までの言動その他から察するに、どうやらマルグリッドはエステルをからかって遊びたいがためにゲイルにちょっかいを出してくるらしい。
「エステルがそう言えって言ったの?」
その通りなのだが頷くこともできず、ゲイルは喉まででかかった溜め息を飲み込む。
「あまりあの方をいじめないでいただきたい。後で泣きながら八つ当たりされるのは私です」
転属初日にマルグリッドから食事をしながら隊の説明をすると言われて素直に食事に出かけたところ、それはムード溢れる高級レストランでディナーをとらされた挙げ句、
仕事の話など皆無で端から見れば親密に見えるだろう雰囲気を作り出されて困っていた場面にエステルが鉢合わせするという非常に手の込んだことをしてくれたのだ。
あの時のエステルときたら、思い出すだけで胃が痛い。
涙を目にたっぷり浮かべてマルグリッドに精一杯丁寧な態度で挨拶を交わし、ゲイルの手を引いてレストランを出た。
泣きじゃくるエステルを宥めるのにゲイルは凄まじい労力を使ったのだ。
「あら、あの子のむきになった顔ほど可愛いものはないじゃない」
「私はできれば怒らせたくありません」
「食事したくらいであんな顔をするんだもの。可愛いったらないわ」
これが直属の上官でさえなければどうとでもなるものを、無碍に扱うわけにもいかず、ゲイルはただただ心労を重ねるばかり。
おそらくはすべて承知の上で転属先を決めてきたユリシスを恨むことしかできない。
「ディナーが駄目ならランチはどう?」
懲りない上官を見下ろしながら、ゲイルは抑えきれずに深々と溜め息をこぼすのであった。
*
腰にタオルを巻いただけの格好でゲイルは髪を拭きながら寝室に足を踏み入れる。
一般兵の頃はシャワールームがついているだけだったが、士官になって浴室と寝室がついた。
ゆっくりと風呂につかれるだけ有り難いものだとゲイルは常々感じていたが、寝室も別でよかったと感じるようになったのはエステルが訪ねてくるようになってからだ。
寝台に横たわったエステルは布団にくるまってこちらに背中を向けている。
ゲイルは寝台に腰掛けてエステルの顔をのぞきこんだ。
待ちくたびれて眠ったようで、すやすやと寝息をたてている。
自分から訪ねてきたくせに機嫌が悪く、ろくに会話も交わせなかった。
とりあえず仕事帰りの汗を流してしまいたかったゲイルが風呂に入ってくると告げると何を勘違いしたのか顔を真っ赤にしてむくれていた。
寝台に潜り込んで眠ってしまうとは子どものようだと思い、ゲイルは苦笑して頬に口づける。
ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐり、そういえばここのところとんとご無沙汰だったと改めて思い至る。
気がついてしまうと欲求が沸き上がるもので、ゲイルは落ち着かない気分のまま立ち上がって書棚へ近づいた。
そこに置かれたウィスキーを手に取り、ついでにグラスを取りに行く。
再び寝台へ腰掛け、エステルを眺める。
目を覚ましはしないかと期待するが、どうやら夢の中にいるようで起きる気配はない。
ゲイルは仕方なくエステルの寝顔を肴にウィスキーを飲んだ。
(寝込みを襲うのは性に合わんしなあ)
ベッドサイドに置かれた箱から葉巻を取り出して火をつける。
葉巻をくゆらせてウィスキーを飲んでいるとたまには性に合わないこともしてみるべき気がしてくるから不思議だ。
葉巻を一本吸い終え、ゲイルはエステルをうつ伏せにする。
起きてもかまわないと思っているから動きに慎重さは感じられない。
背中のチャックを一気に腰まで引き下ろし、ついでにホックも外してしまって背中を露わにする。
久々に触れる肌は記憶通りの滑らかさでゲイルの劣情を煽る。
軽く肩に噛みつき、ゲイルは舌で背中を愛撫した。
エステルは背中が弱いようだから、うまくいけばこれで目も覚めるだろう。
しかし、吐息に甘いものが混じりはしてもなかなか目を覚まさない。
ゲイルは自らも横たわり、エステルの体を引き寄せた。
背中と腹がぴたりと密着し、ゲイルの勃ち上がりはじめたものがエステルの腰に当たる。
太股をエステルの秘裂に擦りつけるように動かし、乳房に直に触れる。
柔らかな感触に満足げに息を吐き、ゲイルはエステルの耳朶を口に含む。
次第にエステルが身をくねらせはじめ、甘い声をあげだす。
ぴんと尖った乳房の先端を指で押し潰すようにするとエステルが悩ましげに呻く。
下腹部へ手を伸ばし、下着の中へ差し込むとそこが既にたっぷりと濡れていることがわかる。
久しぶりなせいか我慢がきかず、今すぐ熱いものを突き立てたい衝動に駆られるがそんなことをしてしまえば目覚めたエステルに何を言われるかわかったものではない。
迷った挙げ句にゲイルはエステルを裸にして覆い被さり、軽く頬を叩いた。
「エステル」
ここまでして起きないとはいろんな意味で不安になる。
ゲイルはエステルの唇を塞ぎ、激しく咥内を弄った。
苦しげに身じろぐエステルを押さえつけ、熱い口づけを交わす。
程なくして息苦しさに耐えかねたエステルが目を覚まして、ゲイルの胸を力一杯押した。
「き、教官?」
「よし、目が覚めたな」
「え、ひっ……あああっ!」
エステルが目覚めたことを確認するが早いかゲイルはエステルの中へと身を埋める。
何がなんだかわからないまま、エステルはゲイルにしがみついて喘いだ。
「ああ、やはり君は素晴らしい」
感嘆の吐息をつき、ゲイルはエステルの額や頬に口づけを落とす。
そして、緩やかに腰を揺らし始めた。
「あっ、ま……待って、ひゃあっ」
「待てない。私は君が目を覚ますまで十二分に待った」
一方的かつ理不尽な言葉を口にしながらゲイルはエステルが与えてくれる快楽を思う様に貪り、それと同等の快楽をエステルに与えようとする。
乱暴とも思えるほどにゲイルは高みを目指して内部を激しく行き来する。
奥深くで粘膜が擦れ合う度に快感が増していく。
咽び泣くようでいて甘い喘ぎがゲイルを追い立てる。
堪えることをせず、ゲイルは一度目の精を呆気なく吐き出した。
「……ひどいです」
力を抜いてのしかかったままのゲイルにエステルが呟く。
寝込みを襲ったことか、エステルを置いて自分だけ上り詰めたことか、はたまた両方か。
エステルの言葉に込められた非難に対し、ゲイルは考えを巡らせた。
「何度も起こしたのに目を覚まさないからだ」
「だからって、こんな……」
エステルの肩に置いていた頭を起こし、表情を確認する。
やはり少し怒っているようだ。
「まだ達してないからか」
頬を舐めれば中途半端に高められた体が敏感に反応を返す。
「あ、ん……違います」
そう言いながらもエステルの態度は弱々しく、ゲイルの与える快楽を欲しているのは明らかだ。
ゲイルは愛撫を続けながらエステルに語りかける。
「見方を変えればいい。君以外の女性に触れていないからこそこんなに飢えているんだと思えば悪い気はしないんじゃないか?」
我慢できずに腰をくねらせるエステルに応えて律動を開始する。
「ん、くっ、ああっ! あっ、あっ、あっ」
一度達したゲイルには余裕がある。
「君の心配する浮気はしていないということだ」
エステルの一番いいところを擦るように動き、ゲイルは乳房をこねまわす。
「だから、今日のように拗ねるのはやめなさい」
「ああっ、ん、だって……ひっ、だめぇ」
赤く色づいた乳房の先端を摘むとエステルが悲鳴を上げてのけぞる。
「私には君だけだ。やきもちなんて妬かなくていい」
びくびくと体を震わせはじめたエステルを追いつめるようにゲイルはことさら強く腰を叩きつけはじめる。
「わからないのなら何度でもわからせてあげよう。君が理解するまで何度でもね」
エステルの耳に言葉が届かなくなってきたことに気づき、ゲイルはおしゃべりを止めてエステルを責めることに意識を集中させることにした。
*
「エステル。ほら、こちらを向いて」
結局四度も精を放ってようやく満足したゲイルと違い、エステルは終わった頃には息も絶え絶えになっていた。
体を離すやいなや布団に潜り込んで顔を出さない。
ゲイルは布団を突っつきながらエステルを宥めるのに必死だ。
「私が悪かった。謝りたいから顔を見せてくれ」
ぴくりとも反応を示さないエステルに困り果ててゲイルは深々と溜め息を吐いた。
「よし。エステル、君が観たがっていた芝居を観に行こう」
ぴくりとエステルが反応を示す。
しめたとばかりにゲイルはたたみかけるように続けた。
「明後日一緒に出掛ける約束をしていたな。それを芝居に変えよう」
「……本当に?」
むくりと顔を出し、エステルがゲイルを見上げる。
濡れた瞳、少し腫れた唇、乱れて顔にかかる髪、それらのすべてが収まったはずのゲイルの欲望を再び刺激する。
「ああ、約束だ。だから、許してくれないか」
ほんの少し躊躇して、しかしすぐにエステルは頷いた。
「じゃあ、仲直りをしよう」
エステルから強引に布団を引き剥がし、ゲイルは再び覆い被さる。
「や、もうだめ」
「エステル、愛してる」
「あっ……教官」
優しく愛撫しながら囁けば抵抗しかけたエステルも大人しくなる。
これでは十代の若者と変わらんなと自嘲しながらもゲイルは沸き上がる欲望に身を委ねていった。
おわり
GJでした!
このスレはGJで溢れている
職人様方、狂おしいほど乙
GJ! GJ! GJ!
初めて覗いたスレでこんな素晴らしいssを読めるとは!
641 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 05:01:31 ID:wVLCUeQy
GJ!!!
そして一度age
「ラウド、だいすき!ずっとわたくしのそばにいてね」
「ユナ様が望むのならば、私はずっとお側におります」
いつものやりとり。
わたくしはラウドと一緒にいるのが一番しあわせ。
ラウドは、わたくしが幼い頃からずっとずっとそばにいてくれた。
でも、何故かしら。
最近なんだかおかしいの。
ラウドの姿を見つけるだけで胸の奥がツンとして。
ラウドが滅多にしない笑顔を見るとなんだか顔が熱くなって。
一日中ラウドのことばかり考えてしまうの。
いつからかしら?
メイドのシュシュとラウドが笑顔で語り合っている姿を裏庭で見とめた時からかしら。
それからこんな風になってしまって胸がくるしいの。
前は「ラウドだいすきよ」が口癖だったくらいなのに、今はそんなこととても言えないわ。
わたくしどうしてしまったのかしら。
「ユナ様?どこにおられますか」
あ、ラウドが呼んでるわ。
お茶の用意ができたのかしら。
では、そろそろ行かなくてはね。
わたくしはひとつ息をすってつぶやいた。
「……保守」
エステルとゲイル!!待ってた!!いい話をありがとう!!
>>642 某801主従スレの「ホシュジュウ」を思い出した
ここ一週間あまり作家さんに対して感想の書き込みないのは、
皆2CH閉鎖祭りに参加しているせいだろうか?w
そんなことはないぞ!
良作の投下が続いて余韻に浸ってたんだよ〜
職人の皆さま、幸せな感動をごちそうさまでした。
「日溜りの笑顔」の過去の縁を絡めた複雑な愛も
「かざはな。」のシンプルで想像を掻き立てる描写も
「エステルとゲイル」の変わらぬ甘ラブい関係も大好きです。
「ラウドとユナ」保守といわずコレでssお願いします。
ムム、それは申し訳ない。
「ラウドとユナ」。
是非とも自分も続きを読みたいです保守。
648 :
ラウドとユナ:2007/01/14(日) 21:46:38 ID:XsXF+gDg
ありがたいお言葉を頂いたので、また書いてみました。
「ユナ様、どこにおられるのですか?」
低く、けれども良く通る声が響く。
ラウドだわ。
読みかけの本を閉じて、わたくしはぱっと顔を上げる。
……あら?どうしたのかしら。
急に胸がとく、とく、と鳴り始めた。
足音が近づいてくるにつれて、鼓動は早くなってくる。
「ラ……」
ラウド、わたくしはここよ。
なぜことばにならないの。
簡単なことじゃない。
「ユナ様、こんなところにおられましたか。私はてっきり自室の方にいるのかと」
「ひゃあ!」
「!どうされました?」
だって突然目の前にいるんですもの、びっくりするじゃない……考え込んでいて気づかなかった、わたくしが悪いのだけれど。
―――そう言えばいいのに、最近のわたくしはなぜかうつむくことしかできないの。
……ほら、またラウドがなんにも言わないわたくしを心配そうに見つめているわ。
「あ……」
「はい?」
胸がきゅう、と締め付けられる。
見つめられていると思うと、やっぱり顔を上げることなんか到底むりよ。
それに、顔をあげたらラウドはきっと笑うのでしょう?
『ユナ様、御顔が真っ赤ですよ』って。
いえ、心配するのかしら。
『ユナ様、御顔が真っ赤ですがお風邪を召されたのでは…』とか言って。
そして、わたくしの幼い頃にしてくれたように額と額をくっつけて熱をはかってくれるのかしら…。
……な、なにを考えているのかしらわたくしったら。
そんなことをされたら、きっといまのわたくしならこの胸のくるしさで死んでしまえるわ……
649 :
ラウドとユナ:2007/01/14(日) 21:52:19 ID:XsXF+gDg
「ユナ様、御顔が真っ赤ですよ?…もしやお風邪を召されたのでは」
びっくりしてはっと顔を上げる。
途端、わたくしを気遣うその真摯な瞳から目をそらせなくなってしまう。
「………」
え、ど、どうしたのかしら。
ふと、先ほど考えていたことが頭の中をよぎる。
いや、でも、そんな、まさか。
そんなことが、あ、あるわけないわ。
こくり、と唾を嚥下する。
「……やはり、様子がおかしいようですよ。今すぐメイド……シュシュあたりを呼び
ますからお待ち下さいね」
「えー?」
言ってしまってはっと口を押さえる。
な、なんなのかしら今の声。
まるで期待でもしていたかのような……。
それに、シュシュって。
なぜかしら、ちくり、と胸が痛む。
「ユナ様?」
「だ、だいじょうぶよ。風邪でも何でもないと思うわ」
そう、風邪なんかじゃないの。
……それなのに、最近のわたくしはラウドをみるとへんなきもちがするの。
これは……病気なのかしら?
「ラウド……わたくし病気なのかしら」
「……え?」
思ったことをそのまま口にしてみる。
それに、ラウドならきっと分かるかもしれないもの。
「わたくしなんだかおかしいの。その人の姿を見るだけで胸がくるしくなったり、話しかけようとしてものどがカラカラになってうまく声が出なかったり、目が合うと顔が火のように熱くなったり……わたくしどうしてしまったのかしら」
『ラウド』ではなく『その人』とぼかしてしまった。
だって、素直に言ってしまうのはなぜだか気恥ずかしい気がしたんだもの。
おそるおそるラウドの表情を見遣ると、少し険しい顔をしていた。
どうしたのかしら。
「……分かりかねますが…しかし、病気では、ないと思います」
一言一言になにか力をこめるように、ラウドはそう答えた。
「そう……でもわたくし、こんなことはじめてなの」
「………」
「本当に胸がすごくくるしくて、それで…」
「……ユナ様、私は旦那様からのことづてを伝えにやってまいりました」
わたくしの言葉をさえぎるようにラウドは口を開いた。
「すぐに旦那様の御部屋に向かうように、とのことです」
「え…はあ…」
「では、私はこれにて失礼致します」
650 :
ラウドとユナ:2007/01/14(日) 21:53:36 ID:XsXF+gDg
ラウドは突然身をくるり、とひるがえして、しかしわたくしには無礼のないような慇懃な態度で挨拶をして去っていった。
わたくしの話をさえぎって去っていくなど、普段ならめったにしないようなラウドのその行動にわたくしは少々面食らってしまった。
……まったく、どうしたのかしら。
GJ!!
関係が良いです!
あとエステルとゲイルの中に出てくるイリスってどなた?
イリスは、エステルのお兄さんの部下です。
653 :
651:2007/01/15(月) 21:36:28 ID:jjURRmiF
感想を読んでいく限りでは「あの」とかいう風に書いてあるんでイリスとそのお兄さんのもあるんでしょうか?
>>651 姉妹スレに行けばきっと幸せになれると思うよ。
主従の範疇からしたら微妙かもしれないけど(このスレで出てた話では)
やっぱ学園もので生徒会の副会長×会長とかもよくね? ビバ下克上。
くじびきアンバランスとかはやて×ブレードとかマイナーなあたりの
百合主従が好きなだけにますます肩身がせまいけど。もちろん男女の
まぐわいも好きだから、オリジナルで鬼畜眼鏡男副会長×いつもは
ツンなお嬢さま会長とかもいいと思う。
655 :
651:2007/01/15(月) 23:39:04 ID:jjURRmiF
dクス!!
>>654 その、メガーネ副会長と澄まし会長を是非書くんだ。
身分違いも激しく萌えだけど、
そこまで制限キツくなくても上下関係の下克上は萌ゆる。
日曜ドラマの「華麗なる一族」、原作読んでない自分は
身分違い関係とか出てこないかとかなり期待して……
アッ 将軍ッ
執事とお嬢完結?編
投下させてもらいます。
<<優しい嘘つき>>
金木犀が甘く薫る頃に、わたくしは家を出た。
花によく似た陽にかざせば薄白の、長い長い裾を引いて。
花によく似た風も羞恥らう、まるで霞のようなベールを被って。
振り仰いだ空は、立ち眩みがするほどに青く、突き抜けて青く、
初秋の日差しがわたくしの目を焼いた。
くら、と振れた頭の奥に、漂いこむ甘い香り。
むせ返るような香り。
わたくしは視線を泳がせてその花を探す。
あなたの姿を探す。
わたくしの執事。
いつもと同じ黒のフロックコートを着込んで、
この天気に汗ひとつ掻かずに、済まして立っているであろうあなたの姿を。
喉元まできっちりとタイを絞めて、平然と立っているであろうあなたを。
表門噴水前の見送りに集まった使用人の中に、あなたの姿は見当たらない。
振り直り、花の香の中を泳ぐように、わたくしは停めてある馬車へと乗り込む。
―――おめでとうございます。
―――おめでとうございます。
窓の外では、口々に歓声。笑顔。わたくしへと手向けられる、花束。
皆、今日の祝いごとを心から喜んでくれているのだ。
誰かが花籠を掲げて、また誰かが色とりどりの花弁を馬車いっぱいに振りまいた。
―――おめでとうございます。
―――おめでとうございます。
皆、嬉しいのだ。ようやく訪れた今日が、晴れがましくてならないのだ。
馬車の中は外と比べると少しひんやりとして、薄暗い。
わたくしはぱちぱちと瞬きし、まるで切り取られたようにも見える外を眺める。
切り取られた四角の向こうは、明るくて眩しくて、
けれどわたくしが手を伸ばしても、きっと届かない。
そこは笑顔で満ち溢れていて、本当に何故か幸せそうで。
車止めが外された馬車は、鞭の小さな唸りと共にゆっくりと動き出す。
花弁が舞い散る。
歓声がまた一段と大きくなる。
わたくしはいつのまにか、すがるように窓の外を眺める。
わたくしの執事。
使用人の中に、紛れ込んでいるはずのその姿。
思わず窓から身を乗り出してあなたの姿を探す。
これで、最後だ。
あなたとはもう会えない。
今日、わたくしは住み慣れたこの屋敷を出て、公爵家に嫁す。
婚礼衣装をなびかせて、初めてわたくしは皆の中にあなたの姿だけを探す。
誰かに気付かれてしまうのが怖かったから、今まで一度もそうしたことのなかった事だった。
皆がはしゃぎ、手を振っている。
花弁が舞い散る。
お幸せに、お幸せに、口の動きが言っている。
金木犀の甘い香りが、風に流れて消えてゆく。
流れる中にあなたの姿を見出そうと、わたくしは目を走らせる。
このわたくしの婚礼の日にも、きっとあなたは黒服を着ているはず。
いつものように、直立不動の姿勢でわたくしを見ているはず。
まるで祭りの雑踏ではぐれた子供のように、必死であなたを探したけれど、
もし見送りに出ていたのなら、そんなに探さなくても、すぐに見つかるはずだと判っていたけれど、
わたくしは視線を右に左に走らせて、
それでもやっぱりあなたの姿は見当たらなかった。
これで、最後だ。
目の前の風景が、滲んで見えなくなる。皆の輪郭がぼやけて、誰の顔だか判別が付かなくなる。
いやよ。
涙であなたを見失うのは嫌だった。
幸いベールに覆われて、見送る皆からはわたくしが泣いていることは判らない。
それをいいことに、もう一度ぱちぱちと瞬いて、涙を頬へ流した。
これで、最後だ。
わたくしの執事。
あなたの姿が見たかった。
けれど、何度探しても探してもあなたの姿はそこにはなくて、
とうとう屋敷は次第に遠ざかり、やがて小さくなって見えなくなった。
頭を鈍く殴られたような衝撃、という表現を以前に本で読んだことがあり、
本当に、そんなに衝撃を受けるものなのかと不思議に思ったことがある。
それはこういう状況、こういう場面なのだと、身をもってわたくしは理解した。
「ウェルリントン公との結婚が正式に決まったのだよ」
急な話だった。
父の書斎へ呼ばれたわたくしが 、最初に突きつけられた言葉だった。
「……断るわけには行かないだろう?公は、お前をお気に召されたようなのだ。
先方から何度も話を頂いてね。それはそれは熱心でね。こちらは伯爵家とは言え、お前は一人娘……、
できれば娘婿に来て頂ける家柄が良かったのだが……。どうしても、と度々催促の御使者を送られるものだから」
足を止めたわたくしに、済まなそうな、
けれども裏には上爵位家と、姻戚関係を結び取れた喜びが、滲み出る父の声だった。
救いを求めるように、思わずわたくしは父の顔を見た。
父は、嬉しそうだった。
「結婚……、」
「そうだ」
「わたくしが、ウェルズリー家へ参るのね」
掠れた声がわたくしの喉から絞り出る。まるで別人の声だと、思った。
「……そうだ。同爵、下爵ならともかく、公爵様を我が家にお呼びするわけにはいかないだろう?」
父は言う。
降嫁というわけにはいかないだろう?
「でも、この家に、誰もいなくなってしまうわ」
わたくしが、この家からいなくなる。
僅かな思いつきに助けを求めて、わたくしは口を開いた。
「20代続いた我が家がなくなってしまってよ」
「なに、心配しなくていい。お前の最初の子を、我が家の養子に迎えることで御使者と話が付いている。
あちらには、先の亡くなられた奥様の遺された御子が二人おられることだし、
大きな声では言えないが、公は何かと浮いた話の多い方だから、お前の長子云々で揉める必要もない。
むしろ、揉める必要がない分、嫁ぐお前も跡継ぎ問題で頭を痛めなくてもいい。気が楽だろう?」
後釜。
わたくしの脳裏に、ふとそんな言葉が浮かんだ。
つまりは、放蕩と耳にするウェルリントン公爵が、奥方のいないままでは何かと風聞が悪いので、
彼の周りの者達がわたくしを選んだ、それだけのことなのだろう。
いいえわたくしを選んだのではない。
丁度手ごろな家柄と爵位を持った年頃の女が、たまたまわたくしだっただけの事だ。
まるで、気に入った馬でも買い求めるように、事務的に。機械的に。
「……そうね」
顔も不透明な相手の許へ、わたくしは嫁ぐ。
わたくしがこの家からいなくなる。
もちろんそんな状況を想像してみなかった訳ではなかったけれど、
あらゆる状況を想像したことはあったけれど、その実まるで実感の湧かない言葉だった。
でも。
「失礼いたします」
重い沈黙が滞った部屋に、張りのあるバリトンが響いて、あなたがノックと共に入ってくる。
父が何か用事を言いつけていたのだろう、あなたは書類を抱え、かつかつと父の許へ近づき、
そっと何かを耳打ちした。
「……ああ、そうか。判った。今行こう」
父は頷き、促されるまま退室しかけて、ふと思い出したようにわたくしを顧見た。
「そうそう、時期は秋に決まったよ。お前もそれで、いいね」
父を見つめる視界の端に、あなたが見える。
あなたの表情は変わらない。
きっとあなたはもう全てを知っているのだろう。そんな気がした。
「そうね、」
父がわたくしをここに呼んだのは、その縁談話に否かどうかの返事を聞きたいために呼んだのではない。
それは既に決定事項だった。
わたくしは、事後承諾を促されるためにここに呼ばれたのだった。
全身が瘧にかかったように震えだす。
それが、我が意が通らない静かな怒りのためなのか、それとも理由のない絶望のためなのか、
わたくし自身よく判らなかった。
「ええ、」
それでも唇が動くのが不思議だと思った。
「楽しみにしていてよ」
言葉は空ろで、すぐに宙に掻き消えた。
いっそこのままシャボン玉のように体が消えてなくなってしまえばいい。
ひと夏は、どこかしら気忙しくて矢のように過ぎていった。
婚礼衣装の仮縫いだの、その儀式を行う付き添いの選抜だの、そういった諸々の事柄から、
わたくしにはよく判らないけれど、持参金だの両家のしきたりだの、裏ではかなりやり取りされていたようだ。
正直、わたくしはなんだか気の抜けた紙風船のように、ぼんやりと過ごしていただけだった。
遠くに見える草原が、春の色から夏の色に移り変わり、そして静かに秋に染まり始めるのを
空高くを鳥が整然とした列を成して飛んでゆくのを、何とはなしに、眺めていただけだった。
刻一刻と迫りくる無音の執行日に、それ以上わたくしにどうしようがあったろう。
我に返ると、婚礼は明日に迫っていた。
気付いて初めて、わたくしは慌てた。
わたくしがこの家からいなくなる。
今夜を境に、わたくしはもうこの窓から庭を眺めることもなく、少しだけ絨毯の擦り切れた階段を降りることもなく、
見慣れたシャンデリアを目にすることもなく、大広間の軋む扉の音を聞くこともなく。
いやよ。
気付いて初めて、日常が溢れ出す。
使い馴染んだフォークとナイフの感触も、噴水の落水音も、愛馬の嘶き、池を泳ぐ家鴨の声。
みんな、なにもかもがわたくしから零れていってしまう。
気付くまでなんとも思っていなかったのに、気付けばそれはとてもとても怖いことだった。
満たされない孤独感に急き立てられるように、わたくしは一人で屋敷を、その内と外を歩いて回った。
これは、わたくしがまだ幼い頃、誰にも見つからないようにこっそりと書いた落書き。
これは、わたくしがまだ幼い頃、庭を野原に変えたくて撒き散らした零れ種から咲いた花。
ああ。
幼いわたくしがあちらこちらで駆けている。
ひとつひとつを確認する度に、まだ何も知らないわたくしが笑っている。
あなたに悪戯を叱られた場所。
あなたと一緒に歌った歌。
あなたのいたあの遠い日々。
笑っていた。
わたくしが笑っていた。
いつだって、笑ったわたくしの側に、変わらない表情であなたが立っていた。
変わらない表情の、けれど本当は優しいまなざしで、包み込んでくれていたあなたがいた。
わたくしの執事。
泣きじゃくりながらわたくしは、大きくなってしまったわたくしは、外灯を頼りに最後に裏庭へ回る。
どこからか金木犀の香が漂う。
裏手に回り、蝶番に少し癖のある木戸、用具置き場の倉庫、そして、
「お嬢様」
あなたがいた。
戸締りの確認をして回っていたのだろう。預けられた鍵の束を持って、あなたが立っていた。
ぐしゃぐしゃになっているわたくしの顔を見て、ちょっと驚いたように、眉を上げて立っていた。
なんという偶然。
「……よろしければ、どうぞ」
そう言ってすっと差し出されたのはいつか見たハンカチ。
洗いたての糊の匂い。
受け取ったハンカチに鼻を埋めて、止まらない嗚咽を押し隠す。
ここから去ることもできないあなたは、律儀にそんなわたくしに付き合って、立っている。
そう思うと、たまらなく悲しかったはずなのに、おかしくなった。
「……ごめんなさい」
ようやく自分を取り戻したのは、それからかなりの時間が経ってからのことだ。
あなたは鍵束に目を落として、じっとわたくしが落ち着くのを待ってくれている。
「どうなさいました」
視線を合わせないまま、あなたは言った。
「……なんでもないわ」
涙声を取り繕いながら、わたくしはあなたから顔を背けた。
落ち着くと同時に、急に恥ずかしくなった。きっとわたくしは酷い顔をしているに違いなかったから。
「なんでもないのよ。……少しだけね、我が家を離れることがさびしくなった、それだけよ」
「左様でございますか」
こちらを気遣うようなあなたの声に、わたくしは苦笑した。
生真面目なあなたが、なんとか場の空気を和ませようと、頭を悩ませているのが判ってしまったから。
「おまえはこんな時間まで仕事なのね。大変だこと」
「いいえ、とんでもございません。これが私の仕事でございます。それにここで、この用具倉庫で最後なのです」
「まぁ。じゃあ、わたくしはおまえの仕事の終了時間を、延長させてしまっているのね」
「とんでもございません」
慌てて取り繕うあなたがおかしくて、わたくしは鼻を赤くしたまま声を立てて笑った。
そんなわたくしを、困った表情でちらと見て、
それから僅かにあなたも笑って、
「……この場所でございました」
「……え?」
囁く様に呟いた。
一瞬空耳と思うほどの小さな、小さな声。
促されなければ自身から口を開くことも珍しい、あなたの言葉だった。
「お嬢様に初めてお目にかかったのは、この場所でございました」
「ええ」
私も頷く。
「あなたはやっぱりそうやって、鍵を持って立っていたのだったわ」
「はい」
「そうしてやっぱりもう夜だった」
「……あれからもう15年。早いものでございました」
15年。
あなたがわたくしの側にいた、その月日。
礼儀正しいあなたは、わたくしより数歩向こうに畏まって立っている。
それが、わたくしとあなたの距離だ。
それ以上近づくことはできなかった。
近づけばきっと、あなたはここから逃げてしまうから。
わたくしの為に離れて行ってしまうから。
臆病者は、あなたではない。
臆病者は、わたくしである。
わたくしが、何もかもを捨て切れないことをあなたは見抜いている。
例えばおとぎ話の騎士と姫君のように、国を捨て二人で幸せになるということ。
自由と言うものに憧れつつも、それでもやっぱりわたくしは、
この家というものや、しきたりと言うものから離れられないわたくしは。
両親の愛情が欠乏していたとは思わない。
何不自由なくこの歳までこの屋敷で過ごせていたのだから、
蝶よ花よと傅かれて育てられてきたのだから、
だから。
どんなにどんなに憧れても、
どんなにどんなに手を伸ばしても、
それでもわたくしは、この”家”というものから逃れることはできないのだろう。
籠の鳥は、大空を知っているからこその籠の鳥なのだ。
もとより籠の中で生まれた鳥は、仮に解き放たれても大空は飛べない。
「明日にはわたくし、この屋敷からいなくなってよ」
「はい」
あなたは静かに頷いた。
「なにか、最後に言い残している言葉はなくて?」
両手をねじり合わせるようにしてわたくしは言った。
それが、わたくしの精一杯の強がり。
あなたはしばらく黙っていた。真っ直ぐに立ち尽くしたまま黙っていた。
「……夢を見ておりました」
あまりにじっとしているので、わたくしが半ばあなたの言葉を諦めかけた頃、
あなたは、ゆっくりと目を閉じ、それから柔らかなバリトンで囁いた。
「長い長い夢を見ておりました。……あなた様と出会ってよりずっと。
それは、たいそう幸せな夢でございました。まるで陽だまりのような、あたたかで、やさしい夢でございました」
その声にわたくしは俯いた。
そうね。わたくしも同じ。
あたたかくてやさしい夢を、あなたと一緒に見てきたのだ。
「ですが、」
言いかけてあなたは躊躇する。
優しい、優しいわたくしの執事。
「……いいのよ。おまえが言わなくていいのよ。判っていてよ。夢はいつか覚める。そうね」
今までは朝になるのを待っていた。あなたが来るのを待っていた。
これからは、一人だ。
「……私は、あなた様に出会えて、私は幸せでした。どうか……お元気で」
そうしてあなたは何もかも受け入れた顔で、いつもの鉄面皮をほんの少し崩して、
「さようならでございます」
さびしそうに、笑った。
さようなら、と言う言葉の意味を教えてくれたのも、そう言えばあなただった。
然様なら。そうならば、そうならねばならぬのなら。
そのような運命だったのなら、だから私は諦めましょうと、
諦めてあなたと別れることにしましょうと。美しい諦観の言葉。
そんなあなたを見て、わたくしも笑った。
出来るだけ楽しい、いい顔をしようと思って笑った。
きっと、あなたと同じ、さびしい笑みを浮かべているのだろうと思った。
婚礼行列の足を止めて野原で下ろしてもらったのは、もう一度だけあの風景が見たかったからだ。
裾を濡らして降り立ったそこは、シロツメクサではなく、秋の野原ではあったけれど。
秋の野草に白い色はないようだった。
いつか駆けたあの頃のわたくしはもうそこには見えなくて、
一面緑のクローバーの中に、ぽつりぽつりと赤や黄色の花が風にそよいでいる。
それは春の花よりどこか凛と生えていて、そして少しだけ孤独そうだった。
あなたに似ているような気がした。
「……もう、いいわ」
野原を眺めているのが辛くなって、自分で言い出したことだというのに、わたくしは早々に馬車に乗り込んだ。
あなたとの世界が、遠くに離れてしまったのだと言う感じがして、恐ろしいほどの喪失感に打ちのめされる思いだった。
馬車に乗り込むと、屋敷から付いてきた金木犀の残り香が、微かに鼻腔を掠めた。
薄らいでゆくそれは、わたくしの育った屋敷の全ての思い出のようにも思えた。
ゆっくりと、ゆっくりとそれは消えていってしまう。
わたくしにとって都合のいいことに、花嫁の馬車の中には付き添いの一人もいない。侍女は皆、後続車の中だ。
体を小さく縮こめて、自分を自分で抱きしめて、わたくしは怯えて呼吸する。
金木犀の香りが、これ以上散ってゆかないように。
これ以上あなたの思い出が、消えないように。
ひとつひとつ息を吸い込む度に、わたくしの心は乾いてゆく。
ひとつひとつ息を吸い込む度に、金木犀の香りも薄れてゆく。
乾ききったわたくしから、もう涙は出なかった。
黒い喪服を着ようと思う。
一日半かけて辿り着いたウェルズリー家の屋敷は、酷く大きくて、屋敷と言うより最早王城のようだった。
それはわたくしの目には要塞にも映る。
堅牢な石の壁。
固い石畳の中央通路を通り、両脇に立ち並んだ、これから世話になるだろうこの城の使用人たちへ軽く愛想を振り巻いて。
長い廊下をしずしずと進んで、わたくしは玉座にも見える応接間へと足を踏み入れる。
どんな方かも知らない、ウェルリントン公が待っているはずだった。
そこで初めて花婿に出会い、それから教会へ向かう手はずになっていると、向かう道すがらに聞いた。
けれど開かれた扉の向こう側には、所在無さ気に背を丸める、この城の執事が立っているだけだった。
あなたには、似ても似つかないような、その男。
―――申し訳ございませぬ。
耳に馴染まない甲高い声で、おどおどと彼は言葉を捜す。
―――旦那様は、その……、御気分が優れないため、寝室から……その……。
語尾は尻窄みになって、わたくしに聞き取ることはできない。
伏せていた視線をそっと上げると、物知り顔で目配せをするこの城の使用人たち。
その仕草を見て、何とはなしに理解した。
何かと浮いた噂のある方だから、と父が口にしていたことを思い出す。
恐らく、男を捕らえて離さない美姫がこの城の、寝室にでもいるのだろう。
それとも、男はこの城にすらいないか。
うっすらと浮かぶ冷めた微笑は、口の中で噛み殺した。流石にここで笑っては、不謹慎な気がしたからだ。
神妙な顔でベールの下から先を促すと、額いっぱいに汗をかいたこの城の執事は、ですから、と続ける。
―――ですから。その、申し訳ありませんが、ひとまずはお部屋にてご休養遊ばしては。
滑稽でしかない。
おとなしく用意された自室に誘導されたわたくしは、人払いをするなりベッドに倒れこんで、一人くつくつと嗤った。
嗤うより他にどうしたらいいのだろう。
新婚の、いいえ、そもそも新婚にすらなっていない花嫁。
一人きりの寝台はとても広い。
一人きりの部屋もとても広い。
けれど、好きでもない、顔も知らない男に無理矢理同衾を強いられるよりは、一人寝のほうがまだましかもしれない。
わたくしの役目は、ここで公の子を成し、その子を伯爵家へ送り返す、それだけのことだ。
価値はそれ以上でもそれ以下でもない。
黒い喪服を着ようと思う。
とてもいい考えだ。
わたくしは黒い喪服を身に纏おう。あなたと同じ黒のそれを身に纏ってここで暮らそう。
誰も咎めたりしないに違いない。
だってわたくしは仮にも公爵夫人なのだから。
でも。おかしいでしょう。
花嫁だと言うのにこの城には誰もいないのだ。
この城には誰もいないのだ。
金木犀はもう香らない。
わたくしは一人きりだ。
寝具からこの城で使われているのだろう石鹸のにおい。慣れないにおい。
まるで古びたインクにも似たにおい。
違和感のある枕に顔を埋めて、もう眠ってしまおうと、いっそさばさばと思った。
眠ってしまえば、朝がやってくる。
例え、いつもと迎える朝が違っても。
半ば不貞腐れて、わたくしは眠ってしまったようだった。
不快な違和感と共に目が覚めた。
目覚めると、朝だった。
広い寝台の上にやっぱりわたくしは一人きりで、
何故かほっとしたような、がっかりしたような感があり、
それから、白のドレス姿のまま眠ってしまったことに気付いて、衣装を調えてくれた侍女たちに対して申し訳なく思った。
寝乱れたドレス。
指の先で伸ばしても、強く付いた皺は伸びない。
溜息をついて顔を上げると、カーテン越しに差し込む光は、もう朝のそれで。
寝台に起き上がり、階下の音に耳を澄ませる。
若い声が聞こえる。この城にいる侍女たちのおしゃべりだ。どこかのテーブルを動かす音。これは、箒。
なんだ、意外に屋敷と同じじゃないか。
わたくしは、自分自身に言い聞かせて微笑んだ。
少しだけ色や形が違うだけで、大きさや匂いが違うだけで、本質にそう変わりはないのだ。
園丁同士の朝の挨拶。日が昇る前の散水。番犬の鳴き声。鳥の囀り。
慣れてしまおう。早くこの城に、この石牢に慣れてしまおう。
それがきっと一番楽な道。
遠くかけ離れた世界が、朝の訪れと共に薄らいでくる。
ほら。
かちゃかちゃ音を立ててと、銀食器が食堂に運び込まれるのも一緒。
焼きたてのパンのにおいが漂いだすのも、屋敷と一緒。
決まった歩幅の靴音と、そして規則正しいノックの音も、屋敷と一緒。
3回。
「お嬢様。おはようございます。ご朝食のご用意が整いました」
ああ。夢が。
夢が覚めてしまう。
声が耳に入ったか、入らなかったかどちらとも付かない瞬間に、
わたくしはベッドから跳ね降りて、見慣れない扉の見慣れないノブに取り付いた。
皺だらけの婚礼衣装のままで、わたくしはノブに取り付いた。
今までは扉が開くのを待っているだけだったけれど、どうせ覚めてしまうのならもう一度。
開け放す。
扉の向こうにあなたが立っていた。
鉄面皮と噂されるポーカーフェイスの仮面をつけて、黒のフロックコートを着たいつもの姿で、あなたは立っていた。
「まぁ」
自分の声が掠れるのが判る。
「これは、夢ね」
目の前がぼやけて、けれどそうしてあなたの姿がぼやけて消えてしまうのが怖かったから、強張る頬で無理に笑った。
きっとわたくしは、まだ夢を見ているのだ。
ほんの二日ほど離れていただけなのに、それはとてもとても懐かしくて。
「おはようございます」
乱れるわたくしと対照的に、あなたは小憎らしいほど平然としていて、慇懃に腰を折る。
開け放した扉に驚くこともなく、頭を下げる。
そして歪に泣き笑うわたくしに、顔を上げたあなたが差し出したものは、一輪、吾亦紅。
秋の野原の花。
あの野原で見つけたのだろうと思った。
呆けたように、まじまじとそれを凝視するわたくしを見て、
あなたは珍しくおかしそうに笑って、ちょっと照れくさそうに笑って、
それから生真面目な顔に戻ると姿勢を正して、
「大変申し訳ございません」
そう言った。
「思い違いをしておりました」
「思い……違い……、」
「はい。……騎士の一番の役目は、囚われの姫君を助け出して他国に逃れることではなく、
飽くまでも姫君の側でその御身を守り続けること。それを見誤った私は愚か者でございます」
わたくしを見つめる視線は、落ち着きと深さのある深緑。
日なたの匂いがする。
わたくしの執事。
「……おまえ……、おまえ、屋敷の仕事はどうしたの」
「お暇を頂きました」
「どうして。折角……長年勤めたのでしょう」
「私は、執事である前にお嬢様の従僕にございます」
「……こんなところまで来て。こんなところまで来て、おまえはきっと後悔してよ。
わたくし、死ぬまでおまえをこき使うわ」
「こき使って下さいませ。それで本望にございます」
駄々を捏ねるように言い募っても、あなたは明快に応えるだけ。
それ以上は胸がつかえて何も言えなくなった。
言葉を捜してわたくしは俯く。
俯いた先には、差し出されたままの小さな吾亦紅。
まるで、自分のものではないような震える指で、わたくしはそれを受け取った。
砂糖菓子のように小さくて赤い花。
それは全く色は違ったけれど、冠にもなっていなかったけれど、あの春の白い花ととてもよく似ていてささやかで。
「囚われの姫君はね、」
胸の奥が熾き火のようにじんわりと熱い。
気付かないうちに涙が頬を伝った。
ああ、わたくしは、泣いている。
けれどその滴は、悲しみのそれではなくて。
吾亦紅。
吾もまた君を思う。
決して言葉には出さないあなた。少しだけ、狡いと思った。
けれどそれがわたくしとあなたの距離だ。
小さな花粒に顔を寄せると、青い野原の匂い。
「きっと姫君の望みは、騎士とずっと一緒にいる、それだけよ」
言いながら顔を上げると、やや首を傾げ、柔らかい笑みを浮かべていたあなたは、
やがて泣きべそをかいたわたくしに、微かに頷いたのだった。
あなたはいつも優しい嘘つき。
* * * * * * * * *
以上です。
感想下さった方ありがとうございました。
ぐああぁぁぁぁぁ乙うぅぅぅぅぅぅ
やベーマジ泣きだああああぁぁぁぁ
GJ!!!
最初から最後までツボにはまりすぎて、もうどうしようかと。
最高に泣いた。GODJOB!!!
またのご光臨をお待ちしてます。
こんな時間だというのに読みふけってしまった。
GJ!!!!
ボロ泣きしてしまった…素晴らしかった!!!GJ!!!!!
神だらけのスレはここですか
あれ、涙が止まらない
目から汗が・・・・
汁から目が・・・・
電車の中で読むんじゃなかった…
目から出る液体が止まらない!
GJでした…!!
わたくしという一人称が萎える読者が通りますよ…
これの執事サイドも読みたかったなあ
男主人・女従者の主従エロ小説でまとめwikiをたてようと考えてる物です
誤爆失礼;
男主人・女従者の主従エロ小説でまとめwikiをたてようと考えてる物です
こちらのスレの2スレ目はまとめサイトに掲載されていないようなのですが
管理人さんの負担もかんがえてこちらのスレもまとめ対象としてよろしいでしょうか?
ご意見をお聞かせください。なおwiki予定地のURLは
ttp://wiki.livedoor.jp/slavematome/d/ です。よろしくお願いいたします。
目から汁出してくださった皆様へ
ノ 〜□ 洗イタテ糊ニオイノハンカチ
>>678 ぬあああああ執事サイドですか!
まったく考えてませんでした。
現在カスカスの麩の如くなっていますので
また書けましたら投下させてもらいます〜。
>>680 いいと思う。
つか個人的に保管庫はいくつあってもいい(見やすくて助かる)と思ってるからな。
ウィキなら管理面でもいいし。
自分は賛成〜。
ノシ
>>680 そりゃもう大歓迎。ありがたい話だ。
>>681 おつかれさまでした。
タナボタの執事サイドを気長に待つことにするよ。
ああああ神さま、ありがとうっっっ
嫁ぎ先に行ってまでもお嬢様に仕えようとする執事さんの究極の愛に涙。
純愛をありがとう。感動で心が震えっぱなしだ……
こんなに萌えたのは久しぶり。
理想的な主従だ。
質問。
SS投下する場合、例えば前置き(出会い部分とか)
長くなっても構わないでしょうか。
それとも軽くキャラ説明付けて、
メイン部分投下したほうがいいのかな。
エロに至る過程や状況をきっちり書いた上での盛り上がりというものもあるから
ある程度長い前置きっていうのは許容してもらえると思う
オリジか二次かにもよると思うが。
自分もエロに入るまでが相当長いのをぶっこんだ経験があるが
暖かく迎えて貰えたんであんまり気に病まなくてもいいと思うよ
688 :
680:2007/01/21(日) 21:36:49 ID:OR2Y8Dt5
ご意見ありがとうございました。
wikiを始動いたしましたんでマターリまとめ作業に入ろうと思います。
一応テンプレートは用意し、簡単な説明も書くつもりですが、
何かありましたらコメントなどでご意見くだされば対応できると思います。
末永くヨロシクオネガイシマス。
689 :
680:2007/01/21(日) 21:40:27 ID:OR2Y8Dt5
……亀レス、話豚切り失礼しました。では口調を戻して。
>>686 流れを重視するとどうしても状況説明とかに力を入れてしまう。
説明ずらずらかくのもあまり好きではないので、情景を挟みながら入れてしまうから
前置きが長くなってしまう……かな。
まぁそれだけエロはいるときは気合い入ることがあるからいいんだけど
だってほら、「主従でエロ」なんて現代モノでも唐突にエロ始まったら違和感ある状況ってない?
>>686 好きにしたらいいんでない。
つか前置きが長かろうがエロが薄かろうが、反対にオールエロシーンでも一向に構わない。
萌えればGJて言うし。
できればエロいのが読みたいけど。
保管庫がwikiになるってことは前の保管庫はもう更新されないのかな?
読みやすくて好きだったんだけど。
まとめサイト重複に関しては、確か姉妹スレのほうでもその話題が出ていたけど、
「いくつあってもいいのでは」という結論にオチついていた気がする。
前の保管庫の管理人さん忙しいのかもしれないし、
更新してもらえたら悦、くらいでマターリ待っていたらいいのではないかい。
次スレ立ったし埋めていくべきかな。埋めついでに小ネタ。
「遅い! 貴様は使い一つ満足にできんのか」
温室育ちの令嬢といった可憐な姿からは想像もつかない気丈な語り口調に恭しく頭を垂れるのは彼女付きの従者。
「申し訳ございません」
「それで、持ってきたのか」
「はい。こちらでよろしゅうございますか」
一回りも年下の主人に促され、青年は手にしたものを差し出した。
柔らかな巻き毛を指に絡め、少女は満足げな笑みを浮かべた。
「いいだろう。お前、そこにお座り」
少女が指差したのは背もたれの高い椅子。
少女の意図をはかりかねて訝しみつつも青年は素直に従う。
少女は青年へと近づき、手にしていた長いリボンを奪い取る。
「何をなさるのですか」
「質問を許した覚えはない。お前は黙って私に従えばよいのだ」
自らの手が少女によって椅子の肘掛けに固定されていくのを青年は黙って見つめていた。
「できた」
青年の両手を固定して少女はにんまりと笑う。
何を企んでいるのだろうかと青年は思考をフル稼働させて考える。
少女は首に巻いていたスカーフを外し、青年の目を覆った。
両手を縛られ、目隠しまでされ、さすがに青年は焦りを覚える。
頭に林檎を乗せろと弓を片手に命じられた時と同じような不安を覚える。
あの時は見かねた姉に諭されて諦めた少女であったが、今は少女を止める者はどこにもいない。
「姫様」
「その呼び方はやめろと言った」
「では、殿下」
頬に何かが触れる。
柔らかな感触に意識を集中させれば、それが羽根であると気づく。
「訊いてもよろしいでしょうか」
「いいだろう。何だ」
羽根は頬を離れ、首筋を辿る。
「何をされているのです」
「姉上が嫁いで気づいたのだが」
シャツに手がかかったかと思うと少女はそれを思い切り引き、ボタンのすべてを一気に引きちぎった。
露わになった胸を羽根が滑る。
「私もいつかは嫁がねばならんのだな」
「それとこれとどう関係するのです?」
「あの忌々しい兄上が消えてくれれば女王となることも夢ではないが、あれは早々簡単にはくたばらんだろうからな」
舌打ちをして、少女は呻く。
「口惜しいが私は女だ。王位につくには障害が多すぎる。ならば、どうする? 先達の知恵に従うしかない。女の武器を最大限に磨いて、男を陰で操るのだ。私は夫となる男を操り、陰の支配者となればよい」
くつくつと少女は喉の奥で笑う。
「殿下の野望は承知いたしましたが……なぜ私がこのような仕打ちを受けねばならぬのです? 解せません」
少女の手がベルトにかかり、青年はほどなくして下半身を晒すこととなった。
「わからんのか? だから貴様は莫迦だというのだ。女の武器を磨くというたろう。男も知らずに夫が手玉に取れるか」
全身の血の気が引いていくのを青年は感じた。
羽根が青年の陰茎をそっと撫でた。
「まずは男の体の仕組みを覚えねばな。書物で読んだが、ここに触れるとよいのだろう?」
「姫様、お考え直し下さい。私は」
「黙れ! 私の処女をくれてやるというのだ。貴様に拒む権利はない。大人しく練習台になればよいのだ」
羽根が離れ、少女の細い指が絡む。
意志に反して全身の熱がそこへ集中していく。
青年はどうすることもできずに、喘ぐようにして少女の名を呼んだ。
「もしも夫を上手く傀儡に仕立てあげることができたらば、その時はお前を宰相にしてやろう。私の一番近くに置いてやる」
「……姫様」
「だから、しっかり協力しろよ。貴様にかかっているのだからな」
羽根とは違う柔らかなものが唇に触れ、青年は体を強ばらせた。
おそるおそる触れてくる舌が、強がっていても不安なのだと伝えてくる。
少女の不安と恐れを感じ取り、なおかつ優しく応えてほしがっていることにも気づきながら、青年は反応を返さぬよう努力する。
唇を離した少女は憮然として口を開いた。
「お前は嫌か」
「嫌です」
途端に頬に衝撃が走る。
「私では駄目だというのか!」
「…………そういうわけではありません」
「では、どういうわけだ」
涙目で睨みつける少女の姿が脳裏に浮かぶ。
青年は深々と溜め息をこぼした。
「駄目だといってもきかぬのであれば、せめて戒めを解いて下さい。協力しようにもできません」
「だ、駄目だ」
弱々しく少女が呟く。
「お前に見られるのは嫌だ。上手くなるまでは見られたくない」
「上手くなるまでですか」
「そうだ。だから、しばらくはそのままでいろ。不自由だろうが我慢しろ」
「では、目隠しだけは我慢します。両手は自由にさせて下さい」
暫し黙り込んでいた少女だったが青年が再度頼むと観念したようにリボンを解いた。
「逃げるなよ」
「逃げたくともとうの昔に私はあなたにとらわれていますから。ついてこいと命じられたなら地獄の果てまでお供いたします」
青年は諦めの苦笑を浮かべて少女に応える。
少女は青年の膝に座り、口づけをねだる。
今度は差し出された少女の舌に自らの舌を絡め、青年は堕落の道へ我が身を落とすのであった。
以上。
ツンデレが書きたくて書いた。
エロなしですまん。
埋めGJ
まだ続きが書けるよ?と言ってみる。
短いけどとても良かった。
続き書いてほしいなあ。
萌えた
姫様もっとSだといいな
ツンデレ萌えました。
ところでここの限界KBは、500ですか?
即レスどうもありがとうです。
ひとつ利口になりました。
小ネタに反応してくれてありがとう。
まだ書けるみたいなんで
>>696の続きというか後日談というかそんなものを書いてみたので投下する。
微睡みの中で目が覚めた。
緩やかに頬や耳を撫でていく指先。
その指先が自分に与えてくれる至上の悦びを思い出し、少女は甘い吐息をついた。
青年の膝は心地よく、ともすれば再び夢に落ちていきそうになる。
しかし、青年の優しい愛撫をもっと感じていたいと眠りに入ることを思考の一部が強く拒絶する。
少女はゆっくりと上体を起こした。
「よく眠っておられました」
「夕餉には間に合わなかったな」
「先ほど侍女に申しつけましたから、殿下が望まれるならすぐに夜食をお持ちしますが」
「よい。腹は減っておらん」
長い髪をかきあげ、少女は欠伸を噛み殺す。
青年の手には分厚い書物が握られており、少女は銀の栞を掴んで書物の間に挟んだ。
書物を奪い取り、絨毯の敷かれた床に放る。
「退屈だ」
青年の膝を跨いで座り、肩に手を置いて顔を近づける。
「姫様、自重なさいませ」
「ふん。この一月、馬鹿王子の相手しかしていない。あの男がどれだけつまらないか教えてやっただろう」
少女の唇が青年の顎に触れ、舌が輪郭をなぞるように這う。
少し伸びてきた髭がざらりと少女の舌を刺す。
「お前が悪いのだぞ。私に触れるからだ」
ふっくらとした形のよい唇が押しつけられ、青年は素直に唇を開いた。
少女の衣装の合わせを解き、膨らみを押しつぶすようにこねる。
どろりとした熱が下腹部に溜まっていくのを少女は感じていた。
青年に触れられるといつもそうだ。
夫に触れられた時とは比べものにならないほどに体に火がつくのが早い。
「悩ましげな寝息をつかれるものだと思っておりましたが」
「貴様のせいだといっているだろう。責任をとれ」
青年の指が内壁を擦る。
少女は青年の愛撫に身悶え、まるでそうしなければ息ができないとばかりに青年の唇を何度も吸った。
青年の指がある地点に触れた瞬間、浮かび上がった泡がふつりと弾けるのに似た感覚を覚える。
びくりと少女の体が強ばり、小さく啼いた。
「我慢できませんか?」
淡々と問う青年に少女はこくりと頷いた。
その瞳は蕩け、涙の膜に覆われている。
指を抜き去り、青年は少女を横たわらせようとする。
しかし、少女はそれを制止して青年の首にしがみついた。
「このままが、いい」
青年は頷き、少女の腰を上げさせる。
衣装をくつろげて膨張した陰茎を取り出すと少女が小さく息を飲んだ。
青年の肩に片手を置き、もう片方で陰茎を支え、少女はゆっくりと腰を落としていく。
「ん……ふっ」
ぴたりと腰が合わさり、少女は馴染ませるように腰を前後に二度揺らした。
そのまま青年にしがみつき、再び口づけをねだる。
唇が離れると青年がおもむろに下からの突き上げを開始した。
「あっ、あっ、んんっ……あッ」
甘い声で啼き、少女も青年に合わせて腰を振りたてる。
淫らな水音が響き、少女の興奮が増していく。
「もっと、あっ…あっ! もっ……ん、ああッ」
夢を見ていた。
愛おしい人に愛される夢。
幼い頃によく見た夢。
近頃はめっきり影を潜めていたくせに、どうして今更こんな夢を見るのだろう。
幼い頃の漠然とした愛され方ではなく、夢は少女の心と体を刺激した。
あんな風に腕に抱かれることができたならと、なぜ今更思ってしまうのだろう。
すべてはもう遅いというのに。
「姫様……」
青年の切なげな表情から限界が近いことを悟り、少女は青年の首にしがみついて体を密着させた。
彼が少女の中に精を放ったことは一度もない。
それが彼なりのけじめなのだろうと少女は思っていた。
「姫様、そろそろ……っ! いけません」
朦朧とする意識の中で少女は下腹部に力を込める。
精を搾り取ろうと襞が絡みつき、青年を追いつめる。
困惑の表情を浮かべた青年が堪えきれずに精を吐き出すまで少女は巧みに腰を揺らし続けた。
「…………申し訳ございません」
深く息をつき、青年が少女の肩に額を乗せる。
細く柔らかな髪が少女の項を撫でる。
「どうして謝る?」
青年は答えない。
少女は苛立たしげに唇を噛み、青年の腕に爪を立てた。
「私がこうしたいと思ったのだ。お前が謝ることではない」
少しでも気を抜けば声が震えてしまったに違いない。
「私は私の子にすべてを捧げたい。あやつに嫁いだのも、あやつがいずれはこの国の王位を継ぐとわかっているからだ。私の子は王になる。そのためには私はどんなことでもする」
「それは、存じております」
「だが、あの下らない男の子は産みとうない。お前は……お前は私のものだろう?」
少女は青年の腕から手を離し、未だ肩に伏せたままの頭を撫でた。
「お前の子ならよい。宿してもよいと思えた」
「王子殿下を謀ると申されますか」
「髪も瞳も、よく似た色をしている」
「姫様」
青年が顔を上げ、二人の眼差しが絡む。
「地獄の果てまでついてくるのではなかったか?」
気丈に語りながらも少女の瞳に不安が揺れたのを青年は見逃さなかった。
「あれは嘘か?」
この瞳が悲しみにとらわれてしまわぬように、必要とされるならばどこまでも側にいようと、少女の幼い頃に誓ったことを青年は思い出す。
「いいえ。私はあなたに嘘は申しません」
少女の不安を取り除こうと青年はその眦に唇をよせるのであった。
以上。
エロがぬるくてすまん。
GJ!!!!!!!!
十分エロい!姫様のツンデレ具合が可愛いよ
次スレでも、良かったら続き書いてほしいくらいだ。
短い中に姫様のめぐらせる陰謀が見え隠れするところもいい。
楽しませてもらってます。
これはいい…。姫さま禿萌。
青年と姫様の過去編書いてみた。
独りになってしまった。
なぜ生かされているのかもわからない。
煌びやかな衣装を身に纏っていた頃は何も言わずとも人は皆足元にかしずいた。
父を殺めた男に同じようにかしずくのを見た時に、皆が崇めていたのは父でも血筋でもなく輝く冠と煌びやかな衣装であったのだと気づいた。
尊いものなどどこにもありはしないのだ。
粗末な麻の服を身に纏い、住み慣れた部屋を追い出され、名も知らぬ男に引き取られた。
男は優しさの溢れる瞳に憐憫を映し出していた。
復讐など虚しいものだと男は言った。
それからは男の息子として彼の屋敷で暮らしていた。
国を離れ、名を捨て、あれからどれだけの時が経ったのだろう。
「……ん?」
少年は足元に現れた白い固まりに意識を引かれた。
小さく鳴いて足にすりよるそれは真っ白な小猫だった。
首に結ばれたリボンに鈴がついている。
少年はしゃがんで猫を抱き上げた。
軍に勤める男に会いに軍部へ赴いてきたばかり。
王宮と軍部は目と鼻の先だ。
飼い猫なのだから王宮か軍部の誰かのものなのだろう。
さすがに軍部に猫を連れ込む者はいないだろうから、王宮から逃げ出してきたに違いない。
少年は猫を抱いたまま、そびえ立つ宮殿を見上げた。
「お前」
か細い声が背後から聞こえ、少年は振り向く。
「お前、その子をはなしなさい」
身なりから判断する限り、家柄のよい娘なのだろう。
毅然と言い放っているつもりだろうが、微かに声が震えている。
少年は猫と少女を交互に見やり、地面に猫を下ろした。
猫は少年の足に擦りよったまま動く気配がない。
少女が困惑気味に猫を見つめる。
少年は一つ小さな息をつき、猫を抱えて少女に近づいた。
首根っこを掴んで差し出すと、少女は大切そうに子猫を抱いた。
「お前、よく探しだしたわ。ほうびをとらせる。何をしょもうだ?」
少女が嬉しそうに猫を撫でながら話す。
少年は僅かに首を傾げ、くすりと笑った。
「では、おそれながら申し上げます。姫様の髪を飾っておられるリボンをいただけますか?」
少女の淡い金髪は両側で一房ずつ桃色のリボンで括られていた。
二度瞬きをし、少女は微笑んで少年を見上げた。
「いいだろう。ふれることをゆるす」
「ありがとうございます」
恭しく頭を下げ、少年は少女の髪からリボンを一つ抜き去った。
円かな瞳がきらきらと輝き、少年を見上げてくる。
「私のへやにくればもっとよいものをやるぞ」
青年は困ったような顔で首を振った。
「私はもう行かなければなりませんから」
少女の瞳に落胆の色が浮かぶ。
「どこへ行くの?」
「家に帰ります」
「お母さまやお父さまが待っているの?」
少年は首を振り、少女は悲しげな表情を浮かべる。
「お前、ひとりなの?」
少女の腕から子猫が飛び降り、少女は少年の腕を掴んだ。
「お前はひとりぼっちなのね。私にはお姉さまがいるけれど、お前はひとりぼっちなのね」
少年は困惑した様子で少女の小さな手を眺めた。
振り払ってこの場を離れてしまえばいいのに、少女の手の温かさが少年を引き止める。
「私、お前をそばにおいてあげる。お前を私の騎士にしてあげるわ」
少女に促されるままに名前を教えた。
少年は一度も頷いていなかったけれど、少女は少年を騎士にするという約束を置いて王宮へかけていった。
腕に残る手のひらの感触に手を重ね、少年は王宮を眺めていつまでも立ち尽くしていた。
以上。
うわー、ツンデレ姫のかわいい傲慢さがたまらん。
過去編でも未来編でもいいからツンデレ姫と成り行き騎士の物語をもっと読みたい。
とねだってみる。
うわ、騎士は元王族ですか。
てことは、世が世なら姫の正式な婿候補になったのかもしれませんね。
紛らわしくてすまん。騎士ではなく従者なんだ。
従者になった経緯だけ書いておく。
埋めの小ネタのつもりだったのに短いがだいぶ続いてしまった。
宮殿内の華美な装飾は帰らぬ日々を思い起こさせ、少年の心に鬱蒼としたものを残していく。
武人でない少年に騎士になる資格がないと知った少女は騎士がだめなら側仕えの従者にすると言い切った。
妻の忘れ形見である少女の我が儘を父たる国王は聞き入れた。
少年の義父が隊長職に就いており、身元が明確であったためかもしれない。
晴れて宮仕えとなった少年の主な仕事は幼い少女の遊び相手になることであった。
初めは王宮に足を運ぶことが忌まわしい記憶を思い起こすきっかけとなって気乗りしなかった少年だったが、訪ねていく度に顔を輝かせる少女の姿を見ていくにつれて苦痛は薄れていった。
今でも不意に記憶がよみがえり苦痛を感じることはあれど初めの頃ほどではない。
いつしか少年も少女の笑顔に触れることを心待ちにするようになっていたのだ。
「私も民をすべる王になりたい」
ぱたんと分厚い本を閉じ、少女はそう言った。
「ほしいものがたくさんあるわ」
少女は小さな手を広げてじっと眺める。
「だけど、いまの私では何もてにはいらない。このてのひらにつかめるものは何もない。王になればいまの私にたりないものがてにはいるわ」
「そうでしょうか?」
「いまの私にはたいせつな人をまもる力もないわ」
眉根をよせ、少年はきつく拳を握る。
「それは違います。姫様、王位につくためには非常に強い覚悟が必要です。
国の命運を左右する責任を常に背負っていかねばならない。いつなんとき玉座から引きずり下ろされるとも限らず、頂点に立つが故の孤独を常に感じておらねばならない。
国王ともあらば肉親でさえも敵となりうる」
少年の瞳が暗く陰る。
「私は姫様にそのような思いをしてほしくありません」
少女の手が少年の頬に触れた。
「お前はやさしい。私はお前が好きよ」
少女は背伸びをして少年の頬を両手で挟む。
「だけれど、いまのお前はきらい」
少年は少女の前に膝をつき、目線を同じ高さに持っていく。
「私は民をあいしている。国をあいしている。私にはまもりたい人がいる」
少年の髪を少女は優しく撫でる。
「お母さまはひとりでないていらした。あいした人をなくしたのだとじじょがいっていたわ。私はあんなふうにないていたくない」
「姫様……」
「お母さまはとても好きだったけれど、お母さまのようにはなりたくないの」
少女の顔に確かな決意を見つけだし、少年は眩しいものを見るように目を細めた。
幼いながらに強い志を持っておられるのだと思えば、心がひどく揺さぶられる。
「お前は私がまもってあげる」
少女には兄と姉がいる。
腹違いの兄弟姉妹がいる。
正妃の娘とはいえ、王位につくなど夢のまた夢だ。
それがわかっていても少女は夢を語るのだ。
「お前をひとりにしないとやくそくしたのだもの」
少女をきつく抱きしめたい衝動に駆られ、少年は抱きしめる代わりに少女の右手の甲に唇をよせた。
「ちゅうせいをちかうの?」
からかうようにかけられた少女の声には答えず、少年は衝動がおさまるまで微動だにせず少女の右手から唇を離さなかった。
守ると約束してくれるなら、同じ約束を自分も交わそうと思った。
孤独など感じぬように側にいよう。
生命の危機にさらされたならば命を賭して守り抜こう。
幼い主への忠誠を少年は静かに誓うのであった。
以上。
姫様が野心に燃えてる理由も書いてみたくなったんだ。
>>715 >青年は困ったような顔で首を振った。
保管庫に収納する際に青年を少年に直していただければ幸いです。すみません。
いまだかつてこれほどすばらしい埋めがあっただろうか
まさにグッジョッブ!
GJ!!いいもの読めた...
まさか梅ネタでこんなGJな作品読めるとは……
姫さまカコイイ!
もしまだ構想があるのでしたら、是非新スレでも
続きが読みたいです。
色々と背負っていて覚悟を決めた上で野心に燃える姫にノックアウト。
ふたりの物語を続いて書いてくれっ!
マジで切望してます。
エロも良かったお(*´Д`)ハァハァ
突発的な小ネタのつもりだったのに反応もらえて嬉しい。ありがとう。
少年少女時代なら書けそうな気がするからまた考えてみるよ。
(*´Д`)ハァハァ な姫と従者をありがとう。
続きの投下、いつまでも待ってるよ。
梅
神に感謝しつつ埋め
ウメ
うめ
宇目
楳
生め
産め
績め
熟め
績め
倦め
少将どのに宛てる文に、とID:??が梅の枝を手折ったと乳母が言う
どうして私が他の殿方に宛てる文のことなど考えられるのだろう
ID:??を指名して、梅を付けずに文を届けさせた
気付けばいい、どうか
埋め
主よ、我が主。あなたに会えてよかった。
従ってきたこの時間は私にとってかけがえのないものだった。
梅の花が散るたびにまたあなたを思う。
埋め
まだ埋まりませんか埋め埋め
意外に書けますね梅梅
うめうめ
梅島
シブといな梅!!
生め
ウメルンジャー見参
助けて!ウメルンジャー!!