H・ピロリに対する胃の受容体が見つかる
科学者達はバクテリアのヘリコバクター・ピロリの受容体として働く胃の上皮細胞にある
タンパク質、補体制御因子(DAF)として特定した。この相互作用をブロックすることに
より、消化性潰瘍又は胃がんのリスクを減少させる新薬の開発につながる可能性がある。
この研究は米国生化学分子生物学会の発行するthe Journal of Biological Chemistry
5月12日号に今週の論文として取り上げられた。
ヘリコバクター・ピロリはらせん形をした細菌で、胃の内側を覆っている粘液の厚い層の
中に生息している。この細菌は世界中のいたるところで見られるが、とくに発展途上国で
顕著で、子供の80%、大人の90%以上がなんの病徴も無しにH・ピロリに感染していることが
実験的に確認されている。
宿主内でコロニーを形成したH・ピロリの大部分は自由な状態で生きている一方、おお
よそ20%は胃の上皮細胞に結合している。この結合により細菌のタンパク質が上皮細胞に
注入されて免疫反応を引き起こし、上皮細胞の形体と振る舞いを変化させる。この相互作用
は消化性潰瘍、胃腺がん、および胃の非ホジキンリンパ腫へ導く可能性がある。
「潰瘍は胃の中や十二指腸粘膜の裂け目で、胃腺がんは胃のがん1つである。H・ピロリ
は酸の生産量を変化させ、酸の生産量を増加する方向に変化させると消化性潰瘍を引き起
こす。H・ピロリが胃がんを誘発する機構はさらに複雑で、おそらく何十年にも渡っての慢性
的な胃炎の浸潤を通して胃上皮細胞の応答を変化させる過程を包含していると思われる。」
と主著者であるVanderbilt大学医学部のDr. Richard M. Peek, Jr.は説明した。
胃で発見された補体制御因子(DAF)と呼ばれる膜タンパク質は、いくつかの微生物
病原体のレセプターとしての機能を持つことが報告されている。PeekらはDAFもまたH・
ピロリの接着に関与しているのではないかと考えた。そこで、彼らはDAFを発現している
細胞としていない細胞について、それぞれに結合するH・ピロリの数を数えたところ、細
菌が実際にDAFを発現している細胞と結合することがわかった。彼らはまた、H・ピロリ
が培養された胃の上皮細胞内でDAFの発現を誘発すること、DAF欠損のマウスは胃の
炎症が少ないことも発見した。
「我々の結果はH・ピロリが宿主のタンパク質を受容体として採用し、胃の上皮細胞でこの
受容体の発現を増加させることができるという事を示している。さらに、この受容体を欠損した
マウスではH・ピロリへの感染による炎症性の応答が消失することから、この受容体はH・
ピロリ菌が引き起こす胃の損傷を仲介していることを示唆して亜いる。」とPeekは言う。
これらの発見はDAFとの結合を阻害する薬が消化性潰瘍や遠位部胃腺がんの防止や
治療に用いることができる可能性がある。このタイプの新薬は、現在行われている3〜4種類
の薬を10〜14日間飲むことを含むH・ピロリ療法を代替するものとして歓迎されるだろう。
記事原文はこちらです。
Stomach Receptor For H. Pylori Discovered
ScienceDaily―American Society for Biochemistry and Molecular Biology May 6, 2006
http://www.sciencedaily.com/releases/2006/05/060506103846.htm The Role of Decay-accelerating Factor as a Receptor for Helicobacter pylori and a Mediator of Gastric Inflammation
Daniel P. O'Brien, Dawn A. Israel, Uma Krishna, Judith Romero-Gallo, John Nedrud, M. Edward Medof, Feng Lin,
Raymond Redline, Douglas M. Lublin, Bogdan J. Nowicki, Aime T. Franco, Seth Ogden, Amanda D. Williams, D. Brent Polk, and Richard M. Peek Jr.
J. Biol. Chem. 2006 281: 13317-13323.
http://www.jbc.org/cgi/content/abstract/281/19/13317 http://news18.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1142089748/267さんの翻訳を使わせて いただきました。
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