●趣味の部屋『塔矢愛好会』Part40○

このエントリーをはてなブックマークに追加
932名無し草:03/08/27 00:45
>925
いったん風呂から上がって便所に行きたがるアキラたんに
「ここでやるんだ。」と言い放つのもええな〜(;´Д`)ハァハァ
933名無し草:03/08/27 00:54
アキラたんと風呂場でションベンかけっこしてえ!
>931
カメ虫と呼ばれるようになる883。
934名無し草:03/08/27 01:00
てんぷらです。


●趣味の部屋『塔矢愛好会』Part41○

[愛好会活動内容] 芸術品・塔矢アキラの鑑賞及びストーキング
[愛好会規約]
 小説の後10件はsage進行/ジャンプネタバレは火曜日の午前0時/荒らし煽りは徹底放置
≫活動内容以外の要望・意見・相談等は避難所へ↓
http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=1361&KEY=1028539594&LAST=100
[愛好会会員心得]
 芸術品への思い入れは多種多様であり、 ここは様々な塔矢アキラを受け入れる場所です。
 趣味に合わぬと文句をいうよりも、進んで自分の趣味を語りましょう。

前スレ○趣味の部屋『塔矢愛好会』Part40●
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1060614301/l50

■関連スレは>>2-10参照
935名無し草:03/08/27 01:01
936名無し草:03/08/27 01:01
【関連スレ】
■●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?Part44○
http://academy2.2ch.net/test/read.cgi/campus/1059235765/l50
■筒井くんと囲碁を打ちたい子が集うスレ
 http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1031681695/l50
■和谷魔境
 http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1052519418/l50
■深海スレッド・難破船その2(兄貴ファン向け)
 http://life.2ch.net/test/read.cgi/yume/1051639672/l50

【倉庫番さんありがとう!】
■小説倉庫
 http://ime.nu/blue.ribbon.to/~hikalog/akira/index.php
■魔境避難所 (修正・要望はこちら!プチ避難所、アキラたんAA達もこの中に)
 http://ime.nu/jbbs.shitaraba.com/movie/1361/
■旧お絵描き掲示板
 http://ime.nu/fox.oekakist.com/ha2hika/ )

【ひろたんありがとう!】
■魔境共同お絵描き掲示板
 http://ime.nu/w6.oekakies.com/p/hiroto/p.cgi

【ログ取り屋さんありがとう!】
■ログ置き場 →http://ime.nu/www3.to/hikarutan/
 「誰かコイツの名前教えろ」「お下劣しりとり」等もここから!
■ぷち魔境大辞典→http://ime.nu/u-go.to/a-dictionary/
 〔愛好会語丸わかり!どんどん書き込もう!〕
■魔境・ぷち魔境 (;´д`)ハァハァ あぷろだ(チサーイの専用)
 http://ime.nu/snow.prohosting.com/makyo/cgi-bin/up/upload.cgi
 〔新設!ハァハァものをどんどんうpしる!〕
937名無し草:03/08/27 01:03
>933
ションベンかけっこの後で別の物もかけっこしたいんだが(;´Д`)ハァハァ
938名無し草:03/08/27 01:09
>934
てんぷら乙〜!
>937
やりてー!ハァハァ(;´Д`)
アキラたんとヒカルと社の北斗杯打ち上げ珍子汁でシャンペンシャワー!とか見てー
!ハァハァ(;´Д`)
939名無し草:03/08/27 01:13
「あッ!ハァ・・ハァ・・まだ出るぅ・・!」
愛好会員達の頭、顔面、体にション便をかけまくるアキラたん。
ホカホカな黄金水シャワー(´Д`;)
940名無し草:03/08/27 01:18
>938
勝利のシャンペンシャワー(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ
…倉田のシャンペンも混じってるのか?(;´Д`lll)ハァハァ
>939
好きなだけ出してください、ぶっかけてくださいアキラ様(;´Д`)ハァハァ
941名無し草:03/08/27 01:21
アキラ様の黄金水をボトルに入れて
インテリアとして部屋に飾りたいです(;´Д`)ハァハァ
942名無し草:03/08/27 01:25
アキラちんこ汁をムースとして使用したいです(*´Д`*)ハァハァ
943名無し草:03/08/27 01:28
アキラたんを使用したいです(;´Д`)ハァハァ
944名無し草:03/08/27 01:32
女体盛りの代わりに、アキラたん盛り(;´Д`)ハァハァ
945名無し草:03/08/27 01:33
>928
ドラマCDは前にも一つ出てるぞ!
アキラたん番外編も収録されている。アキラたんの声は何度聞いてもいい(*´Д`*)ハァハァ
946名無し草:03/08/27 01:35
>944
ジジィに弱みを握られ料亭での夕食を共にすることになった兄貴。
そこへ運ばれてきたのは(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ
947名無し草:03/08/27 01:48
刺身をのけていくと下から姿をあらわすアキラたんの白い肌(*´Д`*)ハァハァ
実際にはにょたいもり+刺身は人肌でぬるくなってあまり美味いもんではないらしいが
アキラたん盛りなら何を載せても(゚д゚)ウマー
948名無し草:03/08/27 01:57
>947
アキラたんの肌の上でまだピチピチピクピクと跳ねる刺身。
その動きにあんあんあへあへで汁が垂れてるアキラたん(;´Д`)ハァハァ
949名無し草:03/08/27 01:58
切なそうなネコ目で早く食べて・・・♥と誘うアキラたん盛り。
こりゃ酒も進むぜい。
950名無し草:03/08/27 02:26
真のメインディッシュは刺身ではなく食後のアキラたん♥
(;´Д`)ハァハァしつつスレ勃て挑戦。
951名無し草:03/08/27 02:32
勃ちますた。
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1061918901/l50

アキラたんおやしみ〜!
952クローバー公園:03/08/27 06:52
>870-872

(38)
アキラの声がする。自分を呼んでいる。ヒカルは重たい瞼を必死でこじ開けた。
ネクタイ姿のアキラが視界に入った。今日は仕事だろうか……
「進藤、今日、手合あるんだろ?」
うん―――、と唸りながらヒカルは目をこすった。
「進藤、調子はどうだ?」
アキラがヒカルの隣に屈んだ。声が少し枯れている気がする。
「オマエこそ、どうなんだよ……」
「うん、気分いいよ。昨日ですっきりしたからね」
すっきり……そう、すっきりねぇ、と苦笑いしながら身体を起こすと、
身体のあちこちに鈍い痛みが走った。
「な、塔矢、でも、たまには玄関も良かっただろ?」
「良くないよ!もう二度とごめんだね」
アキラは間髪入れずに返す。
「そーいやオマエ、キスもちょっと上手くなったんじゃねェ?
いっつも噛みつくみたいにしてくるんだもんなぁ〜。
なんかちょっと色気も出てきたしな?なんかあった?」
「噛みついてくるはキミの方じゃないか!それより、震えが止まらないくらい
欲情するなんて、頼むから今回限りにしてくれよ。心配して損したよ」
953クローバー公園:03/08/27 06:57
(39)
「それは見境なく色気振りまいてたオメェが悪ぃんだよ!
でもさぁ、結構興奮してたじゃん…すっげー腰振って、
声だって、いつもよりずっと大きくて、いっぱい出してさぁ…。
あれってやっぱ場所かな?それとも電話?親に聞かれちゃうと思って興奮した?」
あーまずい。思い出したら、なんかもっぺんしたくなってきた。
今からしようって言ったら…ダメかな?

ヒカルはにやけて意味ありげにこちらを見ながら返事を待っている。
こういう時だけは、なんて小憎らしいんだろう。
「だったら何で、お父さんが出た時は大人しかったんだ?
息も潜めて固まってたじゃないか。
なんだかんだ言いながらキミも結構臆病だったよね」
痛いところを突かれて、ヒカルは言葉に詰まった。
「進藤、ほら、早く仕度しないと遅れるよ」
アキラはヒカルの考えを見透かしたかのように冷たく言い切り
朝ご飯、用意するから、と言い残して出ていった。

朝食の間ずっと、ヒカルは昨日のアキラの七変化が頭から離れなかった。
もともと分からないと思ってはいたけど、昨日でますます分からなくなった。
でも、今日のアキラは黙々と食事をしていて、いつものアキラっぽい。
なんかいろいろ引き出しがあるのも、ちょい面倒だなぁ、とヒカルは思った。
954クローバー公園:03/08/27 07:01
(40)
食事が済むと、アキラはヒカルに右手を出すように言った。
言われるまま手を差し出すと、ヒカルの中指に絆創膏が巻かれた。
まだ青々と歯形が残っている。
「そんなの、いいのに」
「……痛む?石、打っても大丈夫かな」
「今は平気。石は、打って痛かったら考えるよ」
「――――済まなかった」
「いいけど、謝るなら、もっと早く謝れよ」
アキラは俯いて無言を返した。
「んじゃぁ、今からもっかい玄関でさせてくれたら許すよ」
ヒカルは冗談のつもりだったのだが、アキラは真剣に何か考えているようだった。
「―――塔矢、冗談だよ!また今度な。…ところで今日は?仕事?」
アキラは顔を上げ、あからさまにむっとしたような表情を返した。
「変な冗談はよしてくれないか。もうイヤだってさっき言ったろう。
今日はボクも手合だよ。さあ、そろそろ行こうか」
955クローバー公園:03/08/27 07:04
(41)
「あれ、進藤?あっちから行くんじゃないのか?」
普段なら、ヒカルはアキラの家から別れて、一旦自宅方面に廻るのだが
昨晩のアキラの無防備さが不安で、今日は一緒に行こうと決めていた。
アキラは嬉しそうにふわりと笑ったが、纏う空気の厳しさは普段と変わらなかった。
並んで歩くと、やはり昨晩とは違う、いつものアキラだ。
でもふと気がつくと、アキラはまた手を口元に置いている。
指が唇を滑る動作がまた始まっていた。
「塔矢!」
えっ、と顔を上げたアキラは、またやはり昨晩の無防備だった。
「そーゆーの、しちゃダメだって!」
ヒカルはアキラの手を掴んで下ろした。
「え?ボク?え?」
「外で、そーゆー風に触ったらダメだって」
ヒカルは何故かやたら怒っている。そんな気がして理不尽を感じながらも
何か理由があるのか、少しアキラは考えた。
「あぁ…ばい菌入っちゃうかな。そうか、気を付けるよ」
アキラの返事は的外れだったが、どちらにしても気を付けるのは良いことだ。
そーだよ、気を付けろよ、とヒカルは念押しした。
956名無し草:03/08/27 11:15
さっそくヤマネコにクローバー公園キタ━━━━━━\(゚∀゚)/━━━━━━ !!!
二人とも若いなぁ…ヒカルとアキラたんのやりとりがイイ!
アキラたんが唇を触ってたら誘ってるように見えるよな(;´Д`)ハァハァ
957クローバー公園:03/08/27 12:04
(42)
電車は相変わらず混んでいた。そんな中でアキラと一緒に居ると
はた目には奇異に映るのか、時々視線を感じることがないわけではなかった。
そんな視線の一つがアキラを嘗め回し、それに気づいたアキラは
厳しい一瞥を、視線の大元に投げつけた。
アキラの様子に気づいたヒカルが、そのアキラの視線の先をちらりと見ると
顔色の悪い脂ぎった中年男が一人、額の汗を拭うような仕種で
何かばつの悪さをごまかしている感じに見受けられた。
アキラの耳元で、小声で問う。
「あのオヤジ、こっち見てたの?」
ヒカルの耳元で、アキラが小さく返す。
「うん、なんか、じろじろ見てたから…お返ししといた」
どうやらもう、いつものアキラだ。
「はは、怖い目見たな、あいつ、カワイソーに」
「可哀相なんかじゃないさ、礼儀も知らない大人が多いね、最近」
訂正。いつもの通りじゃない。ちょっとパワーアップしてるかもな。
とにかく、これなら一人にしても大丈夫そうだ。
そう判断したヒカルは次の駅で、アキラと時間をずらすため、電車を降りた。
958クローバー公園:03/08/27 12:05
(43)
その日の対局相手は格下であったにもかかわらず、アキラは時間をかけ辛勝した。
昨晩、手合のことも忘れてヒカルに溺れてしまったことで
身体を酷使したことが原因に思えた。
前にもそんなことがあった。あれ以来気を付けていたはずだったのに、
昨日はつい忘れてしまっていた。そんな自分を少しだけ反省した。
対局室を見回すと、他は誰も残っていない。控室ももう、空だった。
そういえば、今日の約束も、次の約束も、しなかったな―――
アキラは少し肩を落として、エレベータへ乗り込んだ。次はいつだろう?
溜息と同時にエレベータは一階へ着いて扉が開き、アキラは歩みを進めた。
この後の予定はない。さて、これから何処へ行こうか?
家に帰る気にも、かといって碁会所で人と顔を合わせる気にもなれなかった。

後ろで誰かの声がする。こんなところで、そんな大きな声を出して
一体、何になるのだろう?
アキラはドアを出ると、どうしようもなくて、とりあえず空を見上げた。
空は今日も青いままだ。
「――塔矢!とーおーやっ!」
肩を掴まれ振り向かされて初めて、アキラは、その大きな声が
自分を呼んでいたことに気がついた。
「…進藤、」
アキラは思わず微笑んだ。ヒカルはアキラに並んで歩き始めた。
959クローバー公園:03/08/27 12:06
(44)
「勝っただろ?」
ヒカルは夏の日差しの明るさで、当然とばかりにアキラに聞いた。
内容を考えれば、とてもじゃないが勝ったとは言えない。アキラは口ごもった。
「……勝ったんだろ?」
少し穏やかに、ヒカルは繰り返した。アキラは黙って少しだけ頷いた。
ヒカルは突然立ち止まって、アキラは少しヒカルを置いて歩いてしまった。
慌てて振り向くと、ヒカルは破顔の笑みで、自身の右の腰骨あたりを叩いて見せた。
意味が分からなくて、アキラは首を傾げた。ヒカルは更に続けて叩いた。
何だ?と聞いてもヒカルは笑ってるばかりだ。同じようにしろということだろうか?
アキラは、ヒカルと同じように、左手で同じ辺りをぽんぽんと叩いて返した。
ヒカルは更に嬉しそうに笑って、ぽんぽんと叩いてみせた。
アキラもそれにならった。何度か繰り返して、気がついたアキラは
背広の左ポケットに手を突っ込んだ。
普段は使わないポケットで、何も入っていないはずだったが
中から折り畳まれた小さな紙が出てきた。ヒカルはさらに嬉しそうにアキラを見る。
見覚えのないその紙片を開くと、はらりと何かがこぼれ落ち、アキラは慌てて拾った。

―――四つ葉のクローバー。

ヒカルが歩み寄ってやっと口を開いた。
「今朝入れといたんだ。当たるもんだろ?」
960クローバー公園:03/08/27 12:07
(45)
「今日の組み合わせで、ボクが負けるはずないだろう。実力だよ」
アキラは努めて冷静に答えた。
「ウソつけ!すっげーボロボロだったくせに!………やっぱ今日、つらかった?」
別に、と言おうとしたが、一瞬早くヒカルに背中を擦られ、思わず飛び上がった。
「なっ!何するんだ!?」
「やっぱ痛いんだ?ごめんな、手合の前だったのに」
「…それは別にいいけど、次はイヤだからね」
「ごめん、ごめん。でも、当たっただろ?」
それって、当たった、という問題だろうか?
「オマエもさ、こーゆーのも、たまには大事にしろよ」
「……………………そうだね」
アキラは、もう一度紙片の中に大事にクローバーを挟んだ。
「な、今日これから、ちょっとだけオマエんち行ってもいい?」
「ああ。夕飯はどうする?」
手の中の小さな幸福をポケットに突っ込んで、ヒカルと二人、家路についた。


「──あ、進藤、昨日言ってたキングなんとかがどうこう…って、なんだ?」

【クローバー公園・おわり】
961クローバー公園:03/08/27 12:22
このところ、しつこくうpしてすまんかった・・・。
これからは療養生活に戻りつつ、名無しで(;´Д`)ハァハァするよ。
会員の皆さん、ありがとう。
962名無し草:03/08/28 00:29
「ハァッ・・・ハァハァ・・もっと!もっと・・!いやぁぁっ!」
アキラたんのハスキーで色っぽい喘ぎ声にビンビンなヤシロ。
「アンタ・・綺麗な顔しといてホンマに淫乱やなぁ・・・ハァハァハァ」
963名無し草:03/08/28 22:12
   ┌─────――――┐
   │Bar. チチャーイやまねこ│
   └─────――――┘
それでは開店致します!!

   日 凸  ▽ ∇ U
    ≡≡≡≡≡≡≡  /|||||"||ヽ
     U ∩ [] %..   |(*゚▽゚)||
   _________(つ)Uと)_
   ―――――――――――――

      ━┳━   ━┳━
      ̄ ┻  ̄ ̄ ̄┻ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
964pocket size ◆4b.tS/pKHk :03/08/28 23:14
(17)
「初めはゆっくり。右手の親指で皮を押さえながら少しずつ剥いて・・・
そうそう、お上手ですよ」
胸ポケットの中からやししく指導してくれるアキラたんに従って、俺は野菜の皮を
剥いていた。
自分一人なら三食レトルトでもいいが、アキラたんがいるとあってはそうはいかない。
料理の本でも買ったほうがいいのか?と頭を抱えていた時、アキラたんが「料理なら
ボク、少しはお教えできると思うんですけど・・・」と口元に手を当て考え込むような
仕草で言ってくれたので、二つ返事でアキラたんの「生徒」になることにした。
碁が強くて頭が良くてまだ15歳なのに礼儀正しくて料理もできるなんて、
やっぱアキラたんてすげーよ!と俺は惚れ直した。
以来、食事の準備をする時はアキラたんが俺の胸ポケットから色々指導し、俺がそれに
従って実際の調理を行うという習慣ができていた。

「こ、こんなもんかなぁ。アキラたん」
慣れない手つきで剥きあげたニンジンは、皮と一緒に身まで落としてしまった部分があり
デコボコしている。
だがアキラたんはポケットの中から微笑み、力強く頷いてくれた。
「とってもお上手です!」
こんなボコボコのニンジン、お世辞にも上手とは言えないだろうに・・・
(俺が初心者だから、気を遣って励ましてくれてるんだろうなあ・・・)
アキラたんの優しさへの感動と申し訳なさで、俺は目頭が熱くなってしまった。
「アキラたん、やししいんだね。ほんと言うと俺、アキラたんの教え方ってもっと
スパルタかと思ってドキドキしてたんだ」
「えっ、スパルタ?・・・ボクがですか?」
アキラたんが驚いたようにポケットの中からあのネコ目で見上げてきた。
こんなにちさーいアキラたんなのに、キラキラした強い光を放つ大きなネコ目は
そんじょそこらの目薬CMのタレント美少女なんかでは到底敵わないくらいの目力で
俺を痺れさせる。
965pocket size ◆4b.tS/pKHk :03/08/28 23:15
(18)
「いやー、たとえばさ、教えている間は先生と呼んでもらおうか!とか、同じことを
3日前にも注意した!やる気がないのかっ!とか、もっと色々厳しく言われるかなって」
軽い気持ちでそう口にした俺の頭にあったのは当然、越智の指導碁の時のスパルタ
アキラ先生だった。
「え・・・」
後で思うとアキラたんはその時何か言いかけたのだが、ちょうど鍋が吹きこぼれたので
お流れとなってしまった。
「わ、うわ、うわっ、」
「あ、大丈夫です。落ち着いて布巾を被せて蓋を取って、弱火にして・・・」
アキラたんの冷静な指導でなんとか被害を最小限に抑え、額の汗を拭う俺に
アキラたんが言った。
「ボクは確かに少し短気な所があって、相手によってはたまにきついことも言って
しまいますけど・・・一生懸命上手くなろうとしている人に必要以上に厳しくしたり
しません。それに、英治さんは本当に上手ですよ!普段ほとんど料理をしないなんて
信じられないくらい」
にっこり笑いかけてくれるその笑顔は、営業スマイルではなく本当に優しさ溢れる
温かいものだった。
「アキラたん・・・」
感動のあまり俺がその場に立ち尽くしていると、アキラたんはまた口元に手を当てた
考え込む仕草で、まな板の上のデコボコのニンジンをまじまじと見つめシリアスな声で
言った。
「本当に・・・どうやったらこんな風に上手に・・・」
「あ、いやアキラたん、いくらなんでもそこまで・・・」
「でも、ボクが皮を剥くと・・・この3分の2くらいの大きさになってしまいますし・・・」
「え」
966pocket size ◆4b.tS/pKHk :03/08/28 23:15
(19)
「お母さんや芦原さんに教われば、手順は一回で覚えられるんですが・・・いざボクが
一人でご飯を作ると、教わった通りにしているはずなのに同じ味にならないのは・・・
何故なんでしょう・・・」
「・・・・・・」
「でもボクが教えた通りに英治さんが作ると、ちゃんと美味しいものができるという
ことは・・・手順は間違っていないということですよね。同じことをしていて何故ボクだと
違うものができてしまうのか・・・」
「アキラたん・・・」
アキラたん・・・君はもしかして頭はいいけどすごく不器用な子なのかい?
(それでも、俺の愛は変わらないよ・・・)

深刻な表情でブツブツ呟きながらず、ずっとポケットの中に身を沈めてすっぽり姿を
隠してしまったアキラたんに、俺はニンジンを持ち上げて明るく言った。
「アキラたん、俺が上手いとしたらアキラたんの教え方がいいせいだよ!このニンジン
だってさ、皮は剥けたけどどうやって切ったらいいか俺一人じゃわかんねーし。
これこの後、どうしたらいい?教えてくれよ!」
「・・・・・・」
「なっ、アキラたん!いやアキラ先生!」
「・・・ボク、そんなに教えるの上手いでしょうか?」
ポケットの中からアキラたんが小さな声で呟く。
「・・・うん!やししいしわかりやすいし、もう最っ高!俺の先生はもうアキラたん以外
考えられないよ!」
すると胸ポケットの中がもそもそ動いて、少しおかっぱを乱したアキラたんの小さな顔が
すぽんと現れた。
平静を装っているが頬が綺麗なピンク色に輝き、シリアスな声が心なしか弾んでいる。
967pocket size ◆4b.tS/pKHk :03/08/28 23:16
(20)
「そんな・・・ボク、料理に関しては本当に素人で、先生なんて言われると恥ずかしい
ですが・・・でも、そうですね、それじゃこのニンジンは、乱切りにしてみましょうか」
「らんぎり?」
「こう、形は適当でいいですから大きさが一定になるように・・・慣れないうちは
大きさが揃わなくて大変ですが、練習しているうちにきっと上手くなります。
大丈夫です、ボクも最初は苦労しましたから」
アキラたんがピンク色のほっぺで微笑んでくれる。
俺はゴクリと唾を呑み込んで、不慣れな手つきで包丁を握り直した。
「う、うん。やってみるよ、アキラたん」

俺の人生初の乱切りニンジンは、アキラ先生の目から見てとても良い出来だったらしい。
「アキラたーん、出てきてくれよー」
「・・・・・・」
「頼むよー」
「・・・・・・」
ショックを受けたのか再びポケットの中に隠れてしまったアキラたんを引っ張り出して、
やっと二人で夕飯にできたのはいつもより1時間ほど遅い時刻だった。
「ごめんなさい・・・英治さん」
「ん?」
野菜の煮物を頬張りながら俺は聞き返した。苦労の甲斐あってなかなかに美味い。
「毎日お世話になっているのに。英治さんがお料理してくれるのも、ボクのためなのに・・・
我儘で困らせて」
専用のちさーい座布団に座りお猪口のお碗を持ったアキラたんが申し訳なさそうに
上目遣いで見上げてくる。
アキラたんには最初のうち、折りたたんだハンドタオルを座布団代わりにしてもらって
いたのだが、三省堂のステーショナリーコーナーでアキラたんぴったりなちさーい座布団が売られているのを偶然見つけ、以後はそれに座ってもらっている。
本来は招き猫や十二支など縁起物の置物を置くためのものなのだろうか?
水色の地に金魚と出目金の模様が夏らしく、アキラたんも気に入ってくれているようだ。
968pocket size ◆4b.tS/pKHk :03/08/28 23:52
(21)
「そんなの全然いいよ。俺一人暮らしだし、アキラたんと話しながらメシ作ったりするのすごく楽しいよ!生活に張りが出たっていうかさ」
「そう・・・ですか?」
「うん。それに最近アキラたんに合わせて早寝早起きで、野菜も食ってるだろ?なんか
体調いいんだ。部屋もアキラたんがいてくれると掃除する気になるし・・・アキラたんが
うちに来てくれて、俺にとってはすごく良かったよ」
「・・・・・・」
「アキラたん?食べないの?」
「あっいえ、ごめんなさい。美味しいです。英治さんの料理」
「先生の教え方がいいからね」
「そんな・・・」
頬をピンクに染めたアキラたんが可愛くて、アキラたんと一緒に作った煮物が美味くて、
幸せで、俺はその時かなり浮かれていた。

夜になるとアキラたんは俺が作った縮小版詰碁集を手に取って、いつまでもじっと眺めていた。
「アキラたん、まだ寝ない?」
「あ、今寝ます」
アキラたんはお菓子なんかを入れるための丸い籠の中に、柔らかいクッションと布を
敷いたベッドで眠る。
本当はアキラたんと一緒のベッドで寄り添って眠れたらと思うが、「南君の恋人」と違って
アキラたんの彼氏でもない俺がそんなことを言い出すのはいかにも不自然だ。
それでも、ベッドと机の上と離れ離れでもアキラたんの小さな寝息を同じ部屋で聞けると
いうだけで、たとえようもない幸福感が湧き上がってくる。
「おやすみ、アキラたん!」
「おやすみなさい、英治さん・・・」
いつも寝付きのいいアキラたんが、その夜は珍しく何度も寝返りを打っていた。
969追憶 ◆dolce/987s :03/08/29 00:49
「それでも、欲しいと思うのはキミだけだ。」
温かい体温。キミの匂い。キミの肌触り。
何もかもが愛おしくて、大切で。
キミの髪を、目、頬を、唇を、顎を、両方の耳を、一つ一つ確かめるように指で触れ、唇で触れる。
そうしてもう一度柔らかなキミの唇にくちづけながら、キミの身体を抱き寄せると、キミは空いた手で
カーテンを閉め、そのまま折り重なるように抱き合ったまま床に倒れこんだ。
重なり合った胸から、キミの鼓動を感じる。そしてキミもきっと、ボクの心臓の音を感じている。
こうしてキミと二人でいつまでも抱き合っていられたらいいのに。
今キミは当たり前のようにボクの傍にいて、ボクは当たり前のようにキミの体温を感じていて、それ
だけでボクは幸せで、こうしているとずっとこんな時が続くような気がする。
夢と現実の境が無くなってくるような気がする。
キミとの諍いも、昔にあったことも、それはボクの身におきたことでなく、遠いどこか別の誰かの出来
事のように感じてしまう。

それでも、いつか終わりが来るのかもしれない。
いつまでもこんな日が続くなんて保証はどこにも無い。

自分にとってはどんなに当たり前で自然な事であっても、端から見れば不自然で異常な事だって事
くらい、いくらなんでもそれくらいはわかってる。
人に言えることではないし、いつまでも許される事ではないのかもしれない。
そうしたら、もう一緒にはいられないのかもしれない。
そんな日が万が一にでも来るかもしれないなんて、考えるだけでも嫌だけれど、それでももしかしたら
そんな日が来てしまうのかもしれない。
970追憶 ◆dolce/987s :03/08/29 00:49
それでも。
それでもボクらは離れられない。
ボクはキミからは逃げられないし、キミはボクからは逃げられない。
例え取り巻く状況がどんなに変わってしまったとしても。
碁とキミと、ボクはその二つから逃れられない。

ボクは何があっても一生碁打ちだ。碁打ちとしてしか生きられない。それ以外にボクの生きる世界は
無い。ボクから碁を取り去ってしまったらボクの中に残るものは何も無い。
そしてその世界の中に、キミも、否も応も無く飲み込まれてしまっている。
だからボクが打ち続ける限り、キミが打ち続ける限り、ボクらの意思や状況なんてものとは無関係に、
ボクとキミとは向かい合う。

ボクが生きていく上で必要なものは二つある。
一つは碁を打つこと。そしてもう一つはキミと共にあること。
ボクにとってそれがないと生きていけないと思うものは二つあって、でもそれは一つしかないのと同じ
事だ。

周り中から甘やかされて、多分必要以上に大切に育てられた我儘なボクは、我慢するという事を知ら
ない。欲しいと思うことを、欲しいと思う気持ちだけで済ませておく事が出来ない。
望むもの全てを望むままに欲しいと思うことは、とてつもなく強欲な事なのだろうけれど、けれどボクは
それを抑えることが出来ない。その欲を抑える必要性すら感じない。
971追憶 ◆dolce/987s :03/08/29 00:50
子供の浅墓な考えなのかもしれない。
ボクは何もわかっていないのかもしれない。
それでもボクは思ってしまう。
ボクがキミを好きで何が悪い?と。
ボクはキミが好きで、キミもボクが好きで、ボクたちは男同士だけど愛し合っていて、それのどこが悪い?
何を恥ずべき事がある?男だろうと女だろうと、そんな事、どうでもいい事じゃないか。
もしも詫びる事があるとすればたった一つ両親に、彼らの血を引く子孫を残してやれない事。それだけだ。

ボクが生きていくために必要な事。
碁を打ちつづけること。キミと共にある事。
必要なのはたった二つ。それだけあればいい。それ以外には何も要らない。
それさえあれば、ボクは生きていける。
逆に、それが無ければきっとボクはボクでいられない。

例えばもしもボクが碁を失ったら?
けれどボクの頭の中にはいつも十九路の世界があって、例えどんな状況におかれても、ボクがそれを思
わずにいる事はできないし、誰もそれを奪う事はできない。例え実際の盤や石が無くてもボクはボクの頭
さえあればボクは打つ事ができる。

ではもしもボクが彼を失ったら?
972追憶(11) ◆dolce/987s :03/08/29 00:51
あまり考えたくは無いことだけれど、それでもいつか確実に別れはやって来るのだろう。
彼の意思によって。ボクの意思によって。
または個人の意思では抗いがたい状況によって。
それとも、彼かボクかの寿命によって。

彼を失ってしまったらボクはどうなるだろう。

きっと、どうもならない。
キミがボクの隣からいなくなってしまったら。
多分、ボクは泣いて、キミなしで、独りでなんか生きていけないって、泣いて、何もできずに、動く事もでき
ずに立ち止まって、うずくまって、でもいつかまた、時がきたらボクは立ち上がり、また歩き始める。
そうしてボクはまた一人になって生きていく。
キミが愛した、キミが憑かれた白と黒の石を手に、例えキミがいなくてもボクは生き続ける。
それでも。
ああ、それでもきっと、打つたびに、ボクはキミを思い出してしまうだろう。
キミならば、もしも相手がキミだったなら、ボクの今の一手にどう応えただろう、とか。
ああ、そういえばいつかキミがこんな風に打ってた、とか、キミだったらきっとこう打つだろうな、とか。
そして盤の向こうに誰もいない時にはキミとの一局を頭に描き、盤上に並べ、ボクはキミを思い出すだろう。
つまり結局は、ボクがボクである限り、ボクは常にキミと共にあり、キミから離れる事はできない。
キミと碁と、その二つと共にある事。
きっとそれはボクにとって「生きる」という事と同義だ。
ボクがこの世にあり、ボクがボクとして生きているという事は、それは即ち碁を打つことであり、キミと共に
あることだ。
どんな事が起きようと、何がどう変わろうと、きっとそれだけは変わらない。
ボクがボクである限り。
973名無し草:03/08/29 10:50
age
974追憶(12) ◆dolce/987s :03/08/30 01:34
なら、キミは?
もしもボクとキミが一緒にいられなくなってしまったら、そうしたらキミはどうする?
もしボクがそんな事を口にしたら、そんな事考えんな馬鹿野郎、とキミは怒るだろうか。
考えたくも無いからやめてくれといって泣くだろうか。

かつてキミは何かを――誰かを失くしている。
時々キミがどこか遠くを見詰めるのに、ボクは気付いてないわけじゃない。
多分それはボクの持っているパズルのピースの一つ。
だからその事についてはボクは何も聞かない。

何かを得る事は何かを失う事なのかもしれない。
全ての出会いは、けれど必ず別れで終わるのだと、いつかどこかで耳にしたように思う。
それでも、何を失くしても、例え碁を奪われてもキミを失っても、それでもボクは生きていく。
這いつくばってでも、石にかじりついてでも。人から罵られようと、見捨てられようと、かえりみる人が
一人もいなくなっても、それでも生きている限り、ボクはしがみ付いてでも生きていくだろう。
だってボクは何かを諦めるなんて言葉を知らないんだ。
得たものは全て失いたくないんだ。失うつもりなんて無いんだ。
キミと碁と、それだけは何者もボクから奪う事は出来ない。
ならばボクは生きている限り、ボクである限り、ボクは何も失わない。

だから、どうかキミも。
できる事ならキミにもそうして欲しいと望む事は、きっととてつもなく我儘な事なんだろう。
そうして例え自分がキミの前から消えてしまっても、キミには死ぬまでボクを思いつづけていて欲し
いと思うほど、ボクは強欲で傲慢だ。
975追憶(13) ◆dolce/987s :03/08/30 01:35
キミを得た事で失ったものが無いわけじゃないだろうけれど、そんなもの、一つも惜しくはない。
例えば穏やかで平凡な家庭だとか、誰にでも祝福される結婚だとか、かわいい子供だとか。
あの人の優しい手も、もしかしたら両親の信頼も、周囲の人々の好意的な目も、キミのご両親の夢
や希望や、そういったものを全て壊してしまったとしても、それでもそれよりもキミが欲しい。
例え何を失ったって、キミに勝るものはない。
キミを愛してる。
それだけでもういい。他には何も要らない。

そうして全てを引き換えにして得たキミさえ、いつかボクは失ってしまうのかもしれないけれど、でも
今は、今はまだキミはここにいる。温かいこの身体は現実だ。

「進藤、」
そっとキミの名を呼ぶ。
「…なに…?塔矢……」
ぼやけたような声が返ってくる。
こんな時間にやっと起きたと思ったのに、もしかして、まだ寝たりないのかい?キミは。
多分無意識のうちにキミの手がボクの髪を撫でていて、馴染んだその感覚が心地良くて、だから、
ボクはその温かな身体をぎゅっと抱いて、自然にその言葉を口にした。
「愛してるよ。」
「……何だよ、いきなり。」
一瞬の間の後にキミは答え、そして可笑しそうにクスクス笑う。まるで半分寝惚けてるみたいに。
だから、目が覚めて、日常が戻ってきたら忘れてくれて構わないから、もう一言だけ言わせてくれ。
976名無し草:03/08/31 01:40

日 凸  ▽ ∇ U.   
≡≡≡≡≡≡≡ /|||||"||ヽ
 U ∩ [] %..  |(゚ぺ*)||
_______(⌒l⊃⊂l⌒)
――――――――――――

 ━┳━   ━┳━
 ̄ ┻  ̄ ̄ ̄┻ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(1)
「今日はここまでにしておこう」
「ああ。そーだな」
ジャラジャラと碁石を片付けあって碁笥に蓋を嵌めてから、ヒカルは「うーん」と
大きく伸びをしフローリングの上に仰向けに倒れ込んだ。
「・・・進藤、どうしたんだ。具合でも悪いのか?」
ヒカルは薄目を開けて声のするほうを見た。
碁盤を挟んだ向こう側から、片手で碁笥を押さえ片手で蓋を閉めた体勢のままのアキラが
心配そうに首を傾けてこちらを見ている。
「別にそーいうんじゃないけど・・・昼過ぎから、何時間碁盤の前に座ってたと
思ってんだよ・・・」
「今までだって、対局や棋譜研究でこれくらいの長さになることはあったじゃないか?」
「そーだけどさぁ。オレここ何日か、あんま寝てないの!」
思わず苛ついた声をぶつけてしまった。が、アキラは声の調子より言葉の内容のほうに
ショックを受けたらしい。
座布団の横に手をつき眉根を寄せて、ますます心配そうな顔で覗き込んでくる。
「寝てない?何をやっていたんだ進藤。眠れなかったのか?」
「んー」
曖昧に返事をしてヒカルは一気に上体を起こした。胡坐をかいて、ポリポリと頭を掻く。
「おい、しんど・・・ウッ」
アキラの言葉は途中で止まった。ヒカルが両手を伸ばしてアキラの頬の肉を鷲掴みにし、
両側に強く引っ張ったのだ。
「ひっ、ひんどぉ?」
(2)
「う〜ん・・・」
ヒカルは何か考え込むような表情でしばらく横に引っ張られたアキラの顔を眺めていたが、
やがて頬の肉から手を離し、アキラがほっとする暇もなく今度はアキラの口唇を親指と
人差し指で上下からぐぐっと挟みあげ、アヒルの嘴のように横に長く押しつぶした。
「ンー、・・・ンーっ?」
抗議の言葉を紡ごうとするアキラの唇はヒカルの指にがっちりと捉えられてしまい
本来の機能を果たすことができない。
初め当惑の色を浮かべていた切れ長の瞳は、やがて訳もわからず弄られることへの心外さ
と怒りに潤み、アキラはぶんぶんと首を振ってこの辱めを与える指から逃れようとした。
それでもヒカルは容赦なく指に力を込め、真剣な眼差しでアヒル口になったアキラの顔を
眺める。
「ンー・・・」
悔しげに潤んで光っていた瞳がとうとう降参したように閉じられ、哀願するような
細い声が白い喉の奥から洩れた時、ヒカルは漸くアキラの唇を捉えていた指を離した。

ぷはっと息をついて何か抗議しようと開きかけたアキラの唇に、ヒカルはすかさず
チュッと音を立てて軽いキスをした。
「・・・・・・!?」
抗議の言葉も引っ込んでしまったのか、アキラは目を大きく見開いたまま信じられないと
いう顔でヒカルを見た。その頬が、見る見る生き生きとした赤い色に染まっていく。
(朝焼けの空みたいだな)
そう思いながらヒカルはもう一度アキラの頬を指でむにーっと引っ張り、ぱっと離すと
勢いよく立ち上がった。
「・・・おいっ、進藤!?」
「座ってろよ。飲み物持ってくるから、ちょっと休もうぜ」
首や肩をコキコキ言わせてキッチンに向かうヒカルの背中を、アキラはヒリヒリする
頬を押さえながら釈然としない表情で見送った。
(3)
一方、冷蔵庫や戸棚を漁って飲み物とコップを取り出すヒカルの表情は明るかった。
(なーんだ・・・全然大丈夫そうじゃん!悩んで損したかもな)
アキラが関西から帰ってきて三日後。今日の自主研究会を提案したのはヒカルのほう
だった。
向こうで社と会うと聞いた時から嫌な予感はしていたが、帰京するはずだった日の
夕方になってアキラの携帯から帰るのを一日遅らせると連絡が入った。
社に引き留められているのか、アキラが自分から残りたいと思ったのか。
今頃二人は何を話しどんな風に過ごしているのかと、気になって気になって
その夜は一睡もできなかった。
社がアキラの心を捉えてしまったらどうしようと、思った。
北斗杯前後の対局や交流を通して、ヒカルは社の実力や人柄をだいたいは把握した
つもりだった。
アキラが小学生の頃出会った自分に強く執着し、今も彼にとって特別な存在として
自分を遇してくれているのと同じように、社はアキラの興味を引くのに十分な資格を
備えているように思えた。
もしアキラに、自分と同じかそれ以上に特別な存在ができたら。
その時自分とアキラの関係はどう変わってしまうのだろう?

だが今日自分のアパートを訪れたアキラは何ら変わった素振りもなく、
相変わらず全身全霊で自分との碁に打ち込んできた。
石を打ちながら、検討を重ねながら、見つめてくる熱の籠もった眼差し。
魂まで焼き尽くされてしまうようなその眼差しは自分たちがまだ出会ったばかりの頃、
二度目の対戦の時から、変わらずアキラが自分に向け続けているものだ。
(4)
(・・・あの頃はまだ、アイツの視線はオレ自身に向けられたものじゃなかったけど・・・)
それでもあの眼差しが忘れられなかった。あの熱にもう一度じりじり焦がされたかった。
「真剣」なんて知らなかった自分が努力して、走って走って走り続けて、
そうしてやっとあの眼差しを自分に向けさせた。
それのみか、肌を重ねて一緒に眠る関係にすらなった。
肉親よりも近く魂の寄り添う相手を、もう一度手に入れた。
その間に、死ぬほど悲しい思いもしたけれど――
(もう、アイツだけは絶対、・・・失くしたくない)
苦労してやっと手に入れたものを失いたくないと思っているだけなのか、何かを失うと
いう事態そのものを自分が恐れているのか、ヒカルにもよくわからなかった。
ただこの数日間、アキラが自分以外の人間と共に過ごしていると考えるだけで
不安と焦燥と、何だかよくわからないどす黒い衝動が渦巻いて胸がくるしかった。
アキラが社と。あの、北斗杯予選で自分と渡り合った相手と。

(でも、今日のアイツ見てると――オレが心配しすぎだったかな?アイツいつもと全然
変わんないし。相変わらず暑っ苦しい目でオレのこと見てくるし。それに――)
さっきキスをした時、朝焼けの空が光の色に染まっていくように見る見る赤く頬を染めた
アキラを思い出して、ヒカルは無意識のうちににっこり微笑んでいた。
(塔矢・・・)
安堵と共に、優しい思いが甘く胸を満たしていく。
「――さーてとっ」
気合いを入れるように一人呟いて、ヒカルは調理台に並べた複数の壜とコップを一度に
抱え込み、アキラのいるリビングへそろそろと歩を進めた。

両手両腕両脇を最大限に駆使して、同じような形状の壜を何本も運んできたヒカルを見て
アキラは驚いた顔をした。
「進藤?・・・それはなんだ」
「カルピス。オマエさー、見てないで手伝ってよ。この脇のやつ、抜いてくんない?」
ヒカルの両脇からずり落ちそうになったそれを、アキラは慌てて受け止めた。
981名無し草
マッサージ妄想とリンク。
>976
アキラたん、キメッコして寂しかったのかい?(*´Д`*)ハァハァ
この間会った時俺の携帯教えたろ?
寂しい時はいつでもかけて来なさい。