2 :
無限桃花:2010/01/31(日) 17:54:35 ID:pwQtAZOQ
3 :
あんてなたん:2010/01/31(日) 17:55:16 ID:pwQtAZOQ
雑談スレ19の367による
>無理やりかぶっても綻びる気配すらない、強いパンツをかぶった漢だ!
>たまに増殖したり、二メートル以上の巨大なやつが現れたりするぞ!
抜けがあったら(きっとあるので)補完お願いします。
6 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 18:07:09 ID:9JpQWpIY
アンテナ自体は前々回のコテ雑からだけどな
発想自体は一昨年にさかのぼる
やっぱり、新参の俺が立てたのは間違いだったか……
キャラ化したのが前の乗っ取り雑談だから、そこだけおさえとけば問題ないんじゃね?
GGGwikiのキャラ一覧久しぶりに見たけど、懐かしすぎて完全に忘れ去られてるのがいくつか混じってるなwww
スススマンとかセバスチアンとかw
>>11 お前が考えたんだろう、責任持って育てろよ
どうして……どうしてこうなった……!
>>7 ミタヨー
エロパロの例のスレにスーパーストロング(ryのエロSSを投下してきたら面白い気がしてきた
16 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 20:53:52 ID:9JpQWpIY
桃花の服は和服なのかセーラー服なのか
その辺とか設定とか口調とか書いたもの勝ちなんじゃないかな
……まだそんなに固まってないから自由だよね?
。
〉
○ノ 自由だァアアァァ!
<ヽ |
i!i/, |i!ii ガタン
 ̄ ̄ ̄
19 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 21:25:38 ID:9JpQWpIY
20 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 21:55:24 ID:3wb6M6fl
いまだ初桃花ゲットズサー
「とうか、おなかすいた」
「……朝まで待ってくれぬか」
「おなかすいたって言ってるんだよ?」
散々駄々をこねた妹の彼方をなんとか寝かしつけ、私は隠し部屋から刀を取り出した。
寝室をちらと覗くと彼方はよく寝ている。
この子には普通の暮らしをして欲しい。そして女としての幸せを掴んで欲しい。
そのために私は亡き父の『仕事』を継ぐことにしたのだ。
冬の夜風が肌を打つ。しばし待ち呆けていると一人の侍が暗闇から姿を現した。
「何奴!」
「無限家の桃花と申す。貴様の民への度重なる横暴を聞き、成敗しに参った」
「ほう、私を討とうとは不届き千万。女子とて容赦はせぬぞ」
哀しきことよ。自分より弱き者にのみ力を振るう。
かような者がいかにして私を倒せようか。
「無限流・紫燕閑赦!」
音も無く侍が地に伏せる。幾度となく人を斬ってきたが未だ慣れぬものだ。
さて、早く上様へ報告して日銭を頂かねば。彼方が腹を空かせて待っているからな。
21 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 21:58:23 ID:3wb6M6fl
設定とかパラレルでおk
なんという時代劇調
きっとホロリとくる人情噺とかがあったりするに違いない
無限流かっけえww
そしてしえんかんしゃに笑ったw
悪世巣寄生や婆盆はどうしたw
にゃー! 保存してたら先越された・・・orz
しえんかんしゃときたかwww
という事は、相手は猿だったんだなw
名は体を表すという言葉がある。
これはつまり、名前はその見た目などを表すという意味であるのだが、場合によって
は外見だけに留まらず、その魂のあり方までもが名前によって規定されるとして考え
られる場合がある。
曰く、それまで誰にも顧みられていなかった一振りの太刀が、村正という名を見出され
て以降、自らも魔を放ちながら、それでも魔を断つ、妖刀として扱われるようになった――
そのような例は、枚挙に暇はあれど、確実に存在する。
名を有したが故に、与えられたが故に、見出されたが故に、それ故に、その太刀は
魔気を孕む物となった――そんな一刀は、今、一人の少女の手に握られていた。
では、彼女の場合は――その妖刀を今この瞬間手にしている彼女の場合は、どうだろうか。
彼女の場合、その名はその外見に見事なまでに適合していた。まるでその名が意味
する花の名の如く、彼女は可憐で美しい容姿を有していた。いつ散るとも知らぬ、だが
凛と咲き誇る、花の如き儚さ。
だがしかし、その視線は、見つめる物を貫き通しかねない、それだけで人を殺せる
のではないかと言わんばかりの鋭さを持つ視線は、その適合を否定していた。儚いのは、
人の夢の如く消え去るのは、彼女ではなく、彼女の目の前に立った物だと、そうその
視線は語っていた。強い、ひたすらに強い意志と、自信と、経験が、その視線から迸って
いた。
では、彼女の名は体を、魂のあり方を表していないのか。
答えは否である。
文字には、意を含めるという用法がある。同音異字の文字を以て、直接的に過ぎる表現
を避け、それでいて意味を失わせないという、そういう用法だ。
一見迂遠に思えるその行為は、だがしかし、言霊という目に見えぬ魂を信じるが故に
行われ、そして今尚行われ続けている――
彼女は、腰だめに刀を構え、走った。その速度は、女だてらにという言葉すらも生ぬるい、
人の域を超えかねない程の俊足であり、縮地もかくやという神速であった。
彼女が向かうのは、相対する敵に向けてである。
その敵の名は、寄生。虫でもなく、動物でもなく、ただ寄生という名を冠せられ、そして
その名の如く、名は体を表すの言葉通り、寄生し、そして寄生し尽くす。何もかもを。
寄生は、その本体は本来姿を持たない。誰の目にも留まらずやってきて、誰にも
気づかれぬ内に寄生する。それが本来のそれの姿であり、攻撃だった。
だが今、寄生はその姿を、一匹の虫に似た、だが虫ではありえない大きさを備えた
姿を、彼女の眼前に晒していた。彼女の持つ太刀、妖刀村正の放つ気にあてられ、仮初の
姿を得させられているのだ。
本来なら、その姿に怯えても何らおかしくないグロテスクな姿に、だが彼女は怯える事
なく、それどころか敵意すら浴びせ、しかし冷静に肉薄する。
仮初の姿であっても、それは本質を表す姿であり、それを断ち切る事は、すなわちそれ
そのものの終わり――死である。
寄生もまた、その事実を本能的に察知しているのだろう。彼女の肉薄に、神速の接近に
瞬時に対応する。口から伸ばした針のような物で、彼女を迎撃したのだ。神速に対するそれ
もまた、神速と言える速度であり――
斬ッ。
――勝負は一瞬で決した。
「………………」
彼女のまとう和装の、その袖の部分がハラリと落ちる。それは、彼女が敵の一撃を回避し
きれなかった事を表していた。だが――それだけだった。
「……」
彼女は後ろを振り返る事もなく、薙ぎ払った剣を、血曇を払うかのように一度縦に振り、
そして腰に佩いていた鞘へと収めた。
同時に、その背後でドウッと音を立て、何かが倒れた。最早、それは何かと形容するしか
なかった。音を立て、倒れたにも関わらず、その音がした場所には……既に、何も存在して
いなかったのだ。元より、寄生とはそういった存在であった。
「……手間を、とらせる」
彼女は呟きを残し、そのまま月明かりの中、歩み始めた。
そしていつものように、思い出す。あの日、あの瞬間……彼女が覚悟を決めた、その時を。
――もしもお前の前に、お前の道を為す妨げとなる物が現れれば、その時は――
脳裏によぎるは、今際の際の父の言葉。
――刃の煌めきの如く生きよ。その為の守護を、お前の名には含ませた――
妖刀と呼ばれる、持てば狂気に囚われるその刃を持って尚、彼女が正気を保っていられる
のは、恐らくは、その名の守護によるものなのだろう。
刃の煌めき。煌めきとは、灯火を映す物。故にそれは火の如く――
刀火――転じて、桃花。それが彼女の名の意味。真の、込められた意味だった。
――できれば、お前には……その真の意味が意味無き物となる人生を――
恐らくは叶わぬと……無間の姓(かばね)を持つ以上は避けては通れぬと知りながら、彼女
の父はそう願い……そして死んだ。その事は、彼女も知っている。だが。
「今は叶わずとも……この私が、無間の運命(さだめ)……終わらせてみせる」
そうすれば、父の願いは叶う。戦う事をせずに済む未来を、自らの手でつかみとってみせる。
それが、彼女の誓いだった。
その誓いが叶うのかは、今はまだ……誰にもわからない……。
終わり
29 :
◆91wbDksrrE :2010/01/31(日) 22:55:51 ID:5aWP+wX/
ここまで桃花です。
ご期待に添えたかどうかはわかりませんが。
30 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 23:02:51 ID:3wb6M6fl
KAKKEEEEEEEEEEE
無駄に渋い、かっけえw
この後とか、投下しづらすぎるw
親父さん……なんて娘思いなんだ
お義父さんと呼ばせてください!
ぐおおおお、まさか二人にも先を越されるとは思わなかったぜ……w
かっこよすぎるだろJK……
ここで俺がカッコよくない桃花を投下
35 :
魔法少女ももか:2010/01/31(日) 23:15:48 ID:LedLAbSu
魔法少女として地球の命運を託された桃花は、幾多の困難を乗り越え、キセイ・チューの親玉、ダイキセイを追い詰めた!
「ここまでよ、ダイキセイ。みんなの頭の中の作品を返して貰うわ」
「くっ、もう諦めるしか、ないのか?」
だがダイキセイは不敵に笑っていた。
「そうよ、もうあきらめ……あぁっ!」
次の瞬間、突然伸びてきた触手に桃花の体は絡め取られた。
「そ、そんな……寄生獣は全部倒したハズなのに」
「そう、確かにお前はここにいた全ての寄生獣を倒した……だが!寄生獣はいくらでも生み出せるのだよ。このアドミニスト・ソードがある限りな」
「な、なんなの。その禍々しい光は……」
勝てない。素直にそう思わざるを得なかった。なんせ寄生獣一体を倒すにも結構な力を使うのだ。ここにたどり着いた時点で、既に桃花は満身創痍だった。
「ここまで、なの……?」
「さあ寄生獣よ、仲間を殺された恨みを晴らすが良い!」
寄生獣が一斉に襲いかかる。
「きゃあ、ぁ、いやぁ」
卑猥な光景にダイキセイの口元が緩んだ。
そのとき
バターン
「おねえちゃん!」
「か、かな、た!?……きちゃ、ぁ、だめ、ぅあっ、ん」
「くふふ、なんだ?妹がいたのか。だが何人来ようと、私には近づく事すら出来んよ。フッハッハッハ」
バシュウ
「なっ……」
桃花があれだけ苦戦していた寄生獣が一撃で消滅した。
「確かにアドミニスト・ソードは無敵だよ。でもね、“これ”を使えば、寄生獣を無力化出来る!」
「それは……黒円月輪!なぜお前がそれを……この剣を手に入れた時、真っ先に壊したはずなのに……」
彼方が両手に持っているものは黒円月輪、通称マルと呼ばれる物であった。
「壊れてたのを、婆盆博士に直して貰ったの。さあ、覚悟しなさい、ダイキセイ。こんどこそ終わりだよ!」
全ての寄生獣を瞬殺した彼方が言いはなった。
「くっ、流石に分が悪い……今日はここまでにしておいてやろう」
「な、逃げる気?」
「一旦体勢を立て直すだけだ。ではまた会おう。ハッハッハー」
そう言ってダイキセイは逃げ出した。彼方は後を追おうとしたが、姉を放っておくわけにもいかない。ここは見逃してやることにした。
「おねえちゃん!大丈夫?お姉ちゃん!」
呼びかける
「……ぅ、あれ?彼方?」
「良かった。お姉ちゃん……」
「ふふ、まったく、彼方は心配症ね」
そうして姉妹は久方ぶりの口づけを交わした。
「……帰りましょうか。」
「うんっ!」
また一つキセイ・チューのアジトを壊滅させた桃花と彼方、だが彼女たちの戦いはまだまだ続く――
なんかごめん……
37 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 23:20:48 ID:3wb6M6fl
_ ∩
( ゚∀゚)彡 触手!触手!
⊂彡
>そうして姉妹は久方ぶりの口づけを交わした。
なん…だと…
_ ∩
( ゚∀゚)彡 百合!百合!
⊂彡
けしからん!けしからんぞ!
。
〉
○ノ ケシカランッホォォ!
<ヽ |
i!i/, |i!ii ガタン
 ̄ ̄ ̄ ̄
●とかwwネタが細かいww
イヤッホォォォ!
41 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/01(月) 01:41:51 ID:CbR2IEho
そしてここで俺が毒にも薬にもならないなんとなくクロスオーバーな作品を投下する。
風力発電のためになのか、この町にはやたら風車が立っている。陽が落ち、夜が来てもなお明るい町並みは彼女にとって不慣れなものだった。
特に白い樽状の機械を見たときは、普段キカイというものに触れない彼女が中に人が入っているものと勘違いしたのも仕方ない。
そんな彼女を見かねたのかやってきた男達はこの町が外よりも数十年進歩した科学を持つ町、学園都市だと説明した。
ただそれで終ればよかった。それで終れば彼女も科学の発展に関心して終ったことだろう。
男達は彼女を道案内するといい、腕を引っ張り路地に連れ込んだのだ。町の目の届かない影の場所に。
しかし目撃者がいた。その目撃者は彼らを止めうることが出来る人間を呼んだのだ。だがそれはあまりにも――遅すぎた。
「ジャッジメン……なのですの、これ」
茶髪のツインテールの少女が空間から突如現れる。その後ろをもう三人の少女がやってくる。
路地は暗く、すぐには視界が闇に慣れない。しかし慣れれば慣れるほどおかしな光景が見えてくる。
そこそこ屈強に見える男達はうめき声すら上げず、地に伏している。決して少ない数ではない。サッカーが出来る数以上だ。
そんな男達を、ポニーテールの少女が見下ろしている。ただただつまらなそうに仕方なくといった視線で。
「これ、あんたがやったの?」
後から来た少女の一人が言う。その時、彼女はポニーテールの少女が腰に長く細いものを下げているのを見つけた。
「この町はあまり治安がよくない。例え科学がどのように発展しても人の心が追いつかなければ意味がない」
少女が暗がりから歩いてくる。まるで足元に邪魔な石があるだけのように下を全く見ない。
「その腰に下げてるの。使ってないわよね?」
「抜く必要もない。抜く理由もない。なによりも私はこれを抜かない」
ポニーテールの少女が四人の前に並ぶ。四人と比べるとポニーテールの少女のほうが大人のようだ。
少女は四人の横を通り過ぎようとしてピタリと止まり、少し戻って正面に立つ。
「少し聞きたい。髪が比較的長く、色が比較的奇抜で、性格が比較的老人くさい女子を見かけなかったか?」
「友人ですの?」
「いや、多分違う」
その言葉にツインテールの少女が首を傾げる。確かに人を探しているのに多分というのはおかしいだろう、
後ろにいた、頭の外までお花畑な少女が前に出てくる。手には四角いノートパソコン―最もポニーテールの少女にはわからないが―を持っていた。
「名前とかもっと詳しい情報があれば探せますよ?」
「名前……」
「はい、名字でも名前でも。あとは住所ですとかどこの生徒とか」
「生徒ではない。名前はハルトシュラー。もしもいるとしたら魔王と……名乗ってはいないな。呼ばれているかもしれない」
「魔王ぅ?」
一番活発そうなショートカットの少女が反応する。
「なにそれ? どんな能力持ちなの?」
「知らない。君も相当な力を持っているみたいだがアレは君を遙かに上回る力を持っている」
「なっ」
あまりいい返答ではなかったらしくショートカットの少女がムッとする。それと同時に彼女の周りにバチバチとなぜか電気が走り始めた。
いや、この町においてこれが日常なのだ。そしてこの電気少女がどんな人間かも結構有名な話だったりする。
が、当然ながら今日来たばかりの彼女。無限桃花はそんなことを知らない。
42 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/01(月) 01:42:34 ID:CbR2IEho
「力を見せびらかすものは大抵力を持たないものだ。もしもアレがいるとしたらまるで普通の住人かのように振舞っているだろう」
電気少女がどれだけプライドが高く、爆発しやすく、強大な力を持っているかなんて露知るはずもない。
「まぁいい。多分捕まらないだろう。失礼されてもらう」
桃花は四人の横を通り過ぎようとして、ピタリとその場で止まった。
「ちなみに言っておくが君がどんなに頑張ろうとアレと会うこともないだろうし、ついでに私に敵うこともない」
「へえぇ……」
桃花からしたら忠告なのかもしれない。この電気少女は好戦的みたいだ。戦闘は避けたい。だから忠告しよう。
そんな老婆心溢れることをしているのかもしれないが、それは神経の逆撫ででしかない。
だから桃花にはわからなかった。
「じゃあちょっと試してみない……?」
突如走る閃光がなぜ自分に向かってきているのかなど理解出来るはずもなかった。
しかしそれに当たることはない。まるで最初から予測していたかのようにスッと避ける。
閃光は不規則な直線を描きながら、さきほどから寝ていた男の一人に直撃した。
「お姉さまストップ!」
ツインテールを始め、他の二人も加わって電気少女を止める。
「こんなところで暴れたらすごい被害が出ますよ! 主に私達に!」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと当たらないようにするから」
「そういう問題でなくてですね」
「なぜ攻撃するかわからないが先を少し急いでいるのでな。行かせてもらう」
「待ちなさい! 勝負しろー!」
「だめです、お姉さま! あ、でも参考人として待って欲しいですの!」
声を背中に浴びながら桃花は歩き始めた。最早ここに用事はない。
ここにいればさらに厄介ごとに巻き込まれるかもしれない。そんな彼女の予感が自然に足を速めていた。
しばらく歩いていると橋に出た。なぜか計ったかのように人通りがない。気付けばもう夕飯時。
夕食をどうするか思案しているとツインテールの少女が突然眼の前に踊り出た。
確かに誰もいなかったはずの空間。桃花は仕方なく足を止める。
「ちょっと探したですの。さきほどの事件についてあなたを連行する必要がありますの」
「なぜ」
「どんな能力を使ったか知りませんがさすがに全員が全員揃って意識不明の重体というのは問題ですの」
「ナイス、黒子ー!」
背後から電気少女の声がした。肩で息しているもののやる気はあるらしく今にも襲い掛かってきそうな雰囲気をしている。
「さぁ大人しくれんk……勝負しなさい」
「連行で合ってますのお姉さま」
「仕方ない」
桃花が腰を低くして、手を刀に添える。チャリと鞘から刀が抜ける音がした。
その瞬間、桃花は黒子と呼ばれた少女の横を過ぎていた。刀は既に鞘に納まっている。
だが黒子に傷はない。それを瞬時に理解した電気少女はポケットからコインを取り出していた。
「黒子! どいて! そいつ撃てない!」
コインをトスするときのように指に置く。ただ方向は逃走する桃花に向いていた。
黒子は数瞬遅れて、桃花が自分の意識を刀に向けるために音だけを鳴らせたことを理解した。
桃花は数秒後に自分の背後から光速エネルギー体が飛んで来ることを予測していた。
電気を利用した高速射出。差し詰め電気銃と言ったところだろう。もちろん彼女は原理など知らない。
その時、眼の前になぜか少年がいた。偶然通りかかったのかもしれない。
「少年、後は頼んだぞ」
自然に口から出ていた。なぜか彼ならどうにかできると桃花は確信していたのだ。
戸惑いの声を上げる少年の横を通り過ぎた時、なぜ自分が彼を一瞬で信じる気になったのかわかった。
やがて、光の直線が橋の上を走り、少年がそれを右手で止めたのを桃花が知る由もなかった。
桃花は人を探している。とは言ってもただむやみに探しているわけではない。
なんとなくわかるのだ。そちらに何かがいることが。ただそれが何かはわからない。
今回、桃花が学園都市で会ったあの少年からは自分の匂いがした。桃の花の匂いだ。
あまりにも薄かったその香りは彼が間接的に私と会った事を意味している。
同時にあの町には桃花がいることも証明している。それならば自分がいる必要はない。
魔王を探す桃花は自分だけでいい。そう彼女は思っているからだ。
+ +
∧_∧ +
(0゜・∀・) ワクワクテカテカ
(0゜∪ ∪ +
と__)__) +
>>35 これはいい意味で頭悪い展開wwww
細かいネタの使い方がうめえwwwwwwww
>>42 そしてクロスもktkr
桃花の設定人によってバラバラで面白いな−w
パラレル前提で好き勝手フリーダムにやってる感じが楽しいなw
全然設定違うのに先越されたからお蔵入りするつもりだったやつ、明日にでも落としてみっかな……
アンテナ局投下情報部はここへ移転することになりました。
今後ともあんてなたんをお願いします
あ「ほっしーを育てるスレに投下ありだよ。新スレも立ったよ」
ア「待って、あのほっしーは確かに成長して欲しいけど、ほっしー“が”育てるスレだから」
ほっしーは成長せんなw
>>42 クロスキタコレ
桃花はさり気にスペック高めに設定されてるよなw
>>42 最近話題のとあるなんちゃら?
主人公の能力が意外と地味なんだな
>>48 最後のほうに出てきた少年が本編の主人公ね
能力はあらゆる異能を打ち消す
で電気ビリビリが外伝の主人公
50 :
代理:2010/02/02(火) 20:15:50 ID:HZQdbdpX
「おのれ‥‥このままでは‥‥済まさんぞ‥‥」
それは瀕死だった。
よもや自分が、あのような小娘に切り捨てられようとは。
「許さんぞ‥‥礼は必ずしやてろう‥‥私を仕留め損なったことを後悔させてやる‥‥!」
それの名前は練刀寄生といった。 虚ろなる存在、寄生の中でも最強の力を持った寄生四天王の一体。
しかし、それはもはや以前のような力は持っていない。ほんの数日前に、あの黒い刀で斬り付けられてから。
ーーー無限桃花
練刀を斬り伏せた少女の名前。練刀はその顔を思い浮かべ苦笑した。
まだ年端もいかぬ小娘に、四天王の一角である自分が敗れようとは。そして、そんな小娘に恐怖してしまったとは。
練刀は見たのだ。あれは人間の能力を超えていた。あの顔は殺戮の悦びに酔っていた。
練刀は考えていた。あれは‥‥あの力は人間より我々寄生に近いのではないか?
「ふっ‥‥下らぬ考えだ」
練刀は自らの推論を否定し、現実へ意識を戻した。
練刀の身体は存在から消えかけている。願わくば思考の海に沈み込み、あの小娘の正体を少しでも説き明かしたいと思っていたが、そんな余裕は無かった。
まずは身を潜めよう。適当な人間に寄生し、体力の回復を待つ。そして、復讐するのだ。奴に。
無限桃花に。
練刀は人込みへと向かった。人間が必要だ。誰でもいい。とにかく餌が必要だ。
行き交う人間達を物色し、「栄養」がありそうな「器」を捜す。
51 :
代理:2010/02/02(火) 20:17:11 ID:HZQdbdpX
続き
洪水のように行き交う人間達。その光景は寄生である練刀すらも驚く事がある。よくぞここまで増えたものだ、と。
ここで、練刀は一人の少女に目を付ける。
歳は15、6といった所か。背は割と高く、端麗な容姿を持ち、そして、あの小娘のような長い黒髪を持っていた。違いは結ばずに下ろしているという点のみだ。
「こいつだ。こいつにしよう」
練刀は決意した。この少女の身体で一定期間を過ごし、復讐の足場を固める。この年齢ならば親の保護も受けられるはずだ。危険はない。
いざとなったら自らが手をくだせばいい。
練刀はそう考えた。そして、その少女に寄生すべく触手をのばしたのだ。そしてゆっくりと、その身体を侵入させようとした。
だが、練刀の身体が少女に触れようとした刹那、その少女は言葉を発した。
それは間違いなく、練刀へと向けられたものだった。
「お待ちしてました、練刀さん」
そんな馬鹿な‥‥‥‥寄生は普通の人間には感知出来ない。可能だとしたら練刀と同じ寄生か、あの小娘だ。
仮に寄生だとしたら、四天王である練刀に恐れるはずだ。本来ならば近づく事すらない。だが、この少女は言ったのだ。
待っていたーーーと。
「貴様‥‥‥何者だ!?」
「そういえば実体で会った事はありませんでしたね。もっとも、私が実体を持つ寄生だというのも誰も知りませんし」
「会った事があるというのか?この私と?‥‥‥となると‥‥‥いや‥‥まさか貴様は‥‥!」
「気づきましたか?私です。影糾寄生ですよ」
「何故、貴様がここに‥‥!?」
52 :
代理:2010/02/02(火) 20:18:08 ID:HZQdbdpX
ーーー影糾寄生。
最強の寄生達である寄生四天王の中でも最も強い存在。全ての寄生の始まりにして終着点。
練刀も、他の四天王である悪世巣も婆盆も、影糾に比べたら無きに等しい存在なのだ。
それは‥‥彼女はまさに、寄生の「神」なのだ。
「何故お前がここにいるのだ?!」
「数日前から監視してたんですよ?あなたが不様に敗れてからずっと‥‥ね?」
「何?どういう事だ!」
「最初はあの無限桃花という女を監視していました。我々の脅威となりうるかどうか‥‥確かめねばなりません。そこへ偶然にも、彼女へ寄生しようとあなたが現れました」
影糾は淡々と語りはじめた。彼女の言葉は穏やかで、透き通った美しい声で発せられていた。
それは寄生である練刀すら聴き入ってしましそうな程だった。
「驚きました。まさか四天王であるあなたと、無限桃花が戦闘をしようとは。しかし、お陰で貴重な情報も集まりました。あなたのお陰です」
「そして、もうあなたに用はありません」
影糾はそういうと、真っ黒な影をのばし、それは実体となって練刀を貫いた。
その影は不定型な形から徐々に姿を変え、一降りの黒い刀となった。
練刀は恐怖した。その刀はまるで、あの小娘が振るってた刀とうりふたつだったのだ。
「ど‥‥‥どういう事だ!!答えろ!影糾!!」
「あなたとの戦闘を検証した結果、やはりあの女は脅威です。なぜならあの女は‥‥我々寄生を滅殺する能力を持っているからです」
「な‥‥何!それは‥‥‥まさか!」
「その通りです。無限桃花は私と同じ力を持っています。そして、それによってダメージを受けたあなたは助かりません。数日間放置していたのはこの事実を確かめる為でした」
「そんな‥‥そんな事が‥‥」
「これ以上生きながらえても無意味でしょう?もうあなたには何も出来ない。早く私の中へ還りなさい」
53 :
代理:2010/02/02(火) 20:18:51 ID:HZQdbdpX
「そんな‥‥馬鹿‥‥‥な‥‥‥‥‥」
練刀は最後の言葉を発しながら、ゆっくりと影へと姿を変え、そして消えていった。
「心配しないで、練刀さん。あなたが消えた分の寄生は私がまた新たに造ります。」
その場に残ったのは黒い刀を持つ少女ただ一人だった。そして黒い刀もまた影となり、どこかへ消えていった。
影糾は空を見上げた。
無限桃花。我々寄生の‥‥‥天敵。
「無限桃花‥‥‥‥私と同じ力を持つ人間‥‥‥‥どうして‥‥‥」
「どうしてなの?桃花姉さん‥‥‥‥」
54 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/02(火) 20:22:53 ID:HZQdbdpX
代理終わり
切ない話の予感
彼方キター
無間彼方(妹)は定着しつつあるなw
しかし、これは鬱展開。だがそれでもこの私、一向に構わん!
57 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/02(火) 23:49:37 ID:hF1/9NbB
シンとしている。
白に覆われた世界に音はない。雪は森の生命を止めたかのように厚く積もっている。
見渡せば黒い点がひとつ。自らの痕跡となる足跡を描きながらゆっくりとゆっくりと歩いていた。
その黒い点である彼女、無限桃花は雪の道を歩くにはあまりにも適していない格好をしている。
ポニーテールはまだいい。セーラー服に膝小僧より少し上のスカート。そして革靴と黒のソックス。
腰には黒い鞘を下げている。どの部分も転んだせいで濡れている。
どんあに高いところから見渡しても人家はない。ただ白く白く白く。
彼女は通常の人間とは違う。だが、それでもこの環境はどうやら負担が大きいらしい。
雪に足を取られて再び躓いた。いつもなら立ち上がってた。だけどもうその体力はない。
彼女は何も呟くことなく、静かに眼を閉じた。
彼は地図を開き、方角を確かめる。葉巻の煙を一旦吹いて、火を消す。
再び地図を見て、正面を見る。地図をたたむと木の箱を背負い、誰かの漕いだ道を歩き始めた。
誰かが躓いたであろう跡を見ながらしばらく歩いていると、雪に倒れている桃花を見つけた。
急いで近寄り、息を確認する。生きていることを確認すると
木の箱を前に持ち、彼女を背負うと休めそうな場所を探すために歩き始めた。
桃花が眼を開けると眼の前に焚き火が爆ぜている。時折音を立てて、火は高く伸びモノを温めるための、今は何も乗っていない土台を温める。
彼女は丁度石の傘の下にいた。近くには川が流れている。
「目が覚めたか。その格好で雪道を歩くのは危険だぞ」
桃花の後ろから男が現れる。手には鉄で出来た器を持っていた。器を土台を上に置く。中にはそこの川で取ったであろう水が入っていた。
「私は……。そうか、雪道で倒れたのか」
「慣れない道を歩いて疲れたんだろう。そもそもそんな格好で歩くところじゃない」
「気付いたら雪道で……まさかこんなになるとは」
「まぁこの先に村がある。そこまでは俺と一緒に来てもらうぞ」
「すまない。世話になる。私の名は無限桃花だ」
「無限桃花?」
男が眉を顰める。
「正体不明の蟲を切ったとかいのはお前さんか」
「いや、それは私ではない。私は刀を抜かないから」
脇に置いてあった刀を引き寄せる。刀の棹には傷がなく、綺麗な漆が塗ってあった。
「そうか。ならいい。俺はギンコだ。蟲師をしている」
銀髪の男はそう名乗った。
「虫師? 虫を使うのか」
「昆蟲とかじゃないぞ。それらとは一線を画く、生命そのものに近いもの。それが蟲」
「この暗がりに溜まる不可解なもののことか」
桃花が端のほうの暗がりを指す。石に阻まれ、影となっている場所に半透明の、不可解な形をしたソレが浮いていた。
「まぁそれだな。触るなよ。あまりいい蟲じゃないから」
「ふむ。生命そのものに近い蟲か。他の場所では見なかったな」
「見なかった? そこらへんにいるぞ。この辺は少ないみたいだが。
そういえばあんなところに倒れていたがどこへ行こうとしてたんだ?」
「どこ、ということはない。人を探して歩いている。魔王ハルトシュラーという女を知らないか」
「知らないな。そんな物騒なやつは。友人か?」
「いや、多分違う。私は記憶を失っていて、彼女は私の過去を知っているかもしれないんだ」
「記憶喪失? 病気かなにかか」
「いや、それすらも」
その時、腹の音が鳴った。石の中で反響したおかげでより大きく鳴る。
桃花の顔が段々赤くなっていく。目線もどんどんと下に。先ほどまで石すらも貫くような目つきをしていたが
今は歳相応の可愛らしい眼をしていた。
「……腹が減って倒れたのか」
「いや、違う。私は、そのその辺で適当に済まそうかと、だからまさかこんな森に入るなんて」
それを聞いて、桃花が手をあたふたさせながら真っ赤になって弁解する。
ギンコは先ほど置いた器になにやら粉のようなものを入れて混ぜる。
「あまりおいしいものじゃないぞ」
「……すまない」
器を笑いながら差し出す。桃花はそっぽを向きながら受け取った。
敵と戦ったり、敵と切ったり、妹とチュッチュしたり……あれ、俺の桃花以外みんな戦ってね?
ギンコの口調がおかしいというか三人称やっぱり難しいです、ええ。
超電磁砲の続きかな?
いろんな世界を歩くのかなwktk
59 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 11:39:13 ID:0GFSAmd9
60 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/04(木) 12:51:10 ID:D8eQdEKK
「きみ、いいかな」
とある地方の駅前広場。ポニーテールサムライガールの無限桃花が町の案内板を見ていると
一人の風変わりな男が話しかけてきた。男が刀を指して言う。
「それ、本物?」
「そうだが」
「見せてくれないか?」
「断る」
「どうしても?」
「どうしても」
「絶対に?」
「絶対に」
「なら仕方ない」
男が桃花に背を向け、歩き出す。それを見て桃花も案内板を読み始める。
この時、桃花は油断していた。現在位置から図書館までの道のり覚えるのに一生懸命だったからだ。
だから男がこちらを見ていることに気付かなかった。
「漫画のためなら仕方ない! ヘブンズドアー!」
その男の名は岸辺露伴。この町に住む漫画家であり、【スタンド】能力の持ち主だった。
気配にやっと気付いた桃花が男の出した、小人のようなエネルギー体を避けようとするがぎりぎり頬を掠めていった。
「お前も何かしらの力を持っている人間か」
「そういうお前もスタンド使いか。ヘブンズドアーを避けるなんて」
「スタンド? その小人のことか」
「スタンドが見えるのに知らないのか。まぁいい。すぐにその理由もわかる」
桃花はすぐに自分の顔の変化に気付いた。顔の端。先ほど当たった場所の皮が捲れている。
桃花が皮を捲ろうとする。だがソレは桃花が捲るよりも早く広がった。
「ヘブンズドアー。人を本にする能力。逃げようと思って体がページ化して上手く動けないだろう?」
露伴の言うとおり桃花の足には力が入らない。なぜなら足もページ化されているから。指先も。徐々にページ化が蝕んでいく。
「まさか、こんな力が……」
「別に悪いようにはしないさ。ちょっときみのことを読ませてもらうだけ」
露伴が桃花の顔のページを捲る。
「蟲師? 電気を放つ少女? 魔王ハルトシュラー! すごいぞこれは! 漫画のような体験だ!」
「貴様の能力のほうがよっぽど漫画的だ」
「まぁそう怒るなって。……ん?」
ヘブンズドアーとはその人間が体験した嘘偽りのない記憶を本にする能力。
本人がどんなに隠そうとも本名年齢身長といった個人情報から黒歴史まで全て読まれてしまう。
偽造不可能の能力。それゆえに露伴はソレを見て、首をかしげた。
白紙なのだ。人間は生きていれば多かれ少なかれ記憶を持つことになる。
例え本人が忘れていても脳には刻み込まれているものなのだ。
「白紙? どうなっているんだ」
「おかしいのかそれは」
「これは体験した記憶を読む能力。白紙というのは体験していないということ。
つまりきみはいきなりその姿でこの世に現れたということだ。そしてそれはあり得ないこと」
露伴がぺらぺらとページを捲る。捲れども捲れども白紙だが良く見ると薄く何かが書いてあることに気づく。
気になって急いで捲る。文字らしきものは捲れば捲るほど色が濃くなっていく。
やがれそれは解読できるほどの色になった。
「『この娘の記憶をそれ以上読むのを禁ずる』だと? どういうことだ。誰がどうやって」
もう一枚捲る。そこには先ほど読んだ名前があった。
「『これ以上読むな。早くページを閉じろ。ハルトシュラー』……?」
「ハルトシュラーだと!」
一瞬、空間が歪んだ。
それは彼女達の上にいた。彼女達はそれが桃花のページから現れたのを感知することすら出来ず、そして。
「……ヘブンズドアー」
それは露伴を本にした。それと同時に露伴と桃花の余白の部分に書き込みをする。
「『岸部露伴は無限桃花と会ったことを忘れて家に帰る』『無限桃花は記憶を読まれない』これでいい……」
さらにそれは本の状態の桃花を持ち上げるとふわふわと浮いて、山のほうへと飛んでいった。
決して時間が止まっているわけではない。だがそこにいる人間全てが露伴が独り言をしていたという印象しか残っていない。
そして露伴自身も。
「……今更案内板なんか見ても発見なんてないな」
「何やってるんですか、露伴先生」
「お、いいところに来たね。康一くん。ちょっとうちに寄らないか? 面白いものが手に入ってね……」
一方桃花は一人で海辺の海岸にいた。ここまでの記憶はないがまた迷ったのだろうと結論付けた。
61 :
無限桃花〜無限地獄に咲く花よ:2010/02/04(木) 15:27:19 ID:ehmg32PI
魔剣。そう呼ぶに相応しい。
美しく反り返った刀身は黒く妖しく輝き、一度振るえば、風を斬り裂く音はその空間すら分断してしまいそうな錯覚を覚えるだろう。
黒龍二左衛門・村正。その刀の銘。
その妖しさは圧倒的な魔力を持って所有者を誘い込む。一度持てば人斬りの衝動を駆り立てるのだ。
ーーー使ってみたい。人を斬りたいーーー
過去の所有者を破滅へ誘いてきた、魔剣。真の所有者以外では持つ事すら出来ない。
剣に選ばれし一族のみが、村正を手にする事が叶うのだ。なぜならそれは、人を斬る為の剣では無いのだからーーー
「寒いなぁ‥‥‥」
無限桃花はため息と一緒に呟いた。その言葉は白い息となって空気と混じり合い、空へと消えて行った。
雪が降りそうだった。空気は肌を突き刺すように冷たく、桃花の息が混じった空は灰色で被われていた。
桃花はコンクリートの壁に寄り掛かり、コンビニのおにぎりを頬張る。街を行き交う人達を観察し、自分も人並みの平和があれば、と、叶わぬ願いを心に思う。
傍らには布で覆われた村正が佇んでいた。
街中でいつもの袴姿は出来ない。女性の割に長身の桃花はパンツスタイルがよく似合う。今日もデニムにコートを羽織っていた。一見すればとても18歳には見えない、大人びた服装だろう。桃花の凜とした顔立ちもその雰囲気に影響しているかもしれない。
桃花はスカートを好まない。なぜならば、幼少からの戦闘服である袴を連想させるからである。
62 :
無限桃花〜無限地獄に咲く花よ:2010/02/04(木) 15:28:21 ID:ehmg32PI
桃花は指に付いた米粒を口へ運び、コンビニの袋からペットボトルのミルクティーを取り出し、代わりにおにぎりの包みを袋へ入れた。
それをコンビニのごみ箱へ押し込んで、人の流れに乗って歩き出した。
ひらり、と桃花の頬に冷たい物が落ちる。桃花は空を見た。
雪が降ってきた。
父から受け継いだ魔剣を手に、桃花は街を練り歩く。目的地は無い。獲物を捜しているのだ。自らを餌に。
「なかなか居ないな‥‥連中も寒いと引っ込むのかな?」
何時間、街を歩き回っただろうか。ペットボトルのミルクティーは既に無くなりかけていた。
日は落ちかけている。もう歩くのも面倒だ。そう思った。桃花はまたコンビニに入り、菓子パンと新しいミルクティーを買って、コンビニから少し離れた公園のベンチに腰を降ろした。
雪は既に止んでいたが、うっすらと白くなった地面が先程まで降っていた雪を思い出させる。気温はさらに下がって来た。
まるであの時の光景のようだった。
最愛の父と妹を同時に失ったあの時、それは桃花にとって最大のトラウマであり、戦う理由だった。
あの時、父を殺し、妹を連れ去った寄生。奴の手にも、村正のような黒い刀が握られていた。
影糾寄生。桃花の宿敵の名前。奴を殺す為だけに、桃花は寄生を切り裂く剣、魔剣・村正を手にしたのだ。
あの時も、雪が地面に積もっていた。
「彼方‥‥どこにいるの‥‥?」
公園からは人の姿は消えていた。この時間帯に、この寒空では誰しも家に引きこもるだろう。私が異常なのだ。桃花はそう思った。
思わず苦笑する桃花だが、ふと声をかけられ表情をいつもの物へと戻した。
「こんばんはお姉さん。何してるの?今暇?」
声をかけて来たのは20代と思われる男だった。ロングヘアに無理やり履いたような細身のジーンズを履き、言葉遣いは軽い。
後ろには男の連れと思われる男数人が立っていた。
63 :
無限桃花〜無限地獄に咲く花よ:2010/02/04(木) 15:29:20 ID:ehmg32PI
「こんなとこ居たら寒いだろ?俺らと遊びに行こうよ。一人より楽しいと思うけど?」
男は軽い口調で桃花に話し掛けてきた。だが、その立ち振る舞いはおよそ桃花のタイプとは掛け離れている。むしろ嫌悪感すら覚えるタイプだった。
「遠慮しておく」桃花の返事はそれだけだった。
「そんな事言わないでよ。絶対楽しいって。だから一緒にさ‥‥‥」
「チャラい男はタイプじゃないから。後ろの連中もね」
桃花は嫌悪感をあらわにした口調で言い放った。今までの経験から、こういう連中と絡んでロクな事は無いと思っていた。そのたび桃花は自身の男運の無さを呪った。
だが、その発言は男達の神経に触れたようだった。
「なっ‥‥このクソアマ、ずいぶん言ってくれんじゃねーか。調子こきやがって‥‥」
「調子に乗ってるのはそっちだよ。大の大人が子供みたいにつるんで楽しいわけ?一人じゃナンパも出来ない臆病者でしょ?それに、小物には用はないし」
桃花はさらに挑発的な口調で言い返した。男と、その連れの連中の顔は明らかに怒りのものへと変わっていた。
「上等だ!このくそガキが!今から全員でマワしてやっからよ?覚悟しろよ!」
「覚悟するのは‥‥‥そっちよ‥‥‥‥」
刹那、桃花の傍らに在った村正が影に包まれ、被っていた布と、剣の鞘すら消え去った。
一瞬で抜き身となった村正は桃花の手へと自ら飛び込み、桃花はその真っ黒な刀身を男の腹部へと突き立てた。
「やるならもっと上手く変身しなさい。もっとも、あなたが人間でも斬ってたかも知れないけど」
「そんな‥‥なぜ‥‥見破られた‥‥」
「私は無限桃花だから」
桃花がそう言うと、男は影に包まれ消えていった。
同時に、後ろにいた男達は顔を見合わせ、瞬時に逃げ去った。悟ったのだ。自分達のような小物の寄生では敵わないと。
64 :
無限桃花〜無限地獄に咲く花よ:2010/02/04(木) 15:31:36 ID:ehmg32PI
「今日の獲物は雑魚一匹か‥‥」
桃花は無念そうに言った。
いくら小物を潰しても、桃花の最終的な標的には届かない。
すべての寄生の頂点。奴を消さなければ、何にもならない。父の仇であり、妹の唯一の手掛かり、影糾。
「必ず‥‥見つけだす‥‥待ってて‥‥彼方」
だが桃花はまだ知らなかった。無限彼方こそが、自らの敵である事を。そして、自身に隠された呪われた運命を、桃花はまだ知らなかった。
また、雪が降ってきた。
ここまで代理桃花
とうか&とうかキターーーー
これは続くのか?続くんだろ?
どうでもいいけど、いままで“えいきょうきせい”って読んでて、何のこっちゃと思ってた。そういうことかw
「相手は一人だ!まとまってかかれ!」
一人がそう叫んだ。だが、その叫びと同時に黒い刃に貫かれ、その姿は影となり消えた。
刃を持つ者の背後から、異形の魔物が二匹、その者へ飛び掛かる。
刃を持つ者は振り向き様に刀を振ると、二匹の魔物はいとも簡単に両断され、消え去った。 周りは今だ魔物が囲んでいるが、追い詰められているのはむしろ彼ら魔物達のほうだった。
「おのれ、無限桃花‥‥これほどの数で挑んでも勝てぬのか‥‥‥」
魔物の一人、亜煩寄生は焦っていた。練刀寄生の後釜として四天王の座に収まったが、所詮は穴埋めに過ぎなかった。
練刀と同じ轍は踏まぬと、数十にも及ぶ配下を引き連れ桃花へ戦いを挑んだが、本来であれば名も無き寄生の一匹に過ぎない亜煩では桃花に敵うはずもなかったのだ。
「くっ‥‥‥‥無念だが今は退くしかあるまい。」
亜煩は配下の寄生数人に合図をし、撤退しようとした。残りの連中は囮として残しておけば逃げる時間くらいは稼げるはずだ。
だが、その動きすらも桃花には見破られていた。
「逃げられると思う?」
桃花は呟いた。そして村正を天へと突き立てると、その刀身からは影が煙のように吹き出す。その影はやがて黒い稲妻へと姿を変え、村正と、そして桃花の周りを激しく打ち付ける。
「爆ぜよ天‥‥‥」
その一言を合図に、黒い稲妻はまるで龍の如くうねり始めた。雷鳴は激しさを増し、黒い龍は辺り一面に降り注ぐ。
黒龍二左衛門村正。その銘はこの技から来ていた。
龍が通り過ぎると、そこには桃花と亜煩のみが立っていた。
「一人も逃がさない。特にお前には聞かなきゃならない事があるんだ」
亜煩は恐怖を禁じ得なかった。桃花の強さは知っていた。だが、一瞬にして配下を薙ぎ払うほどの力を秘めていようとは、予想だにしない事だった。
「お前‥‥四天王なんだろ?なら影糾の事は知っているよな?奴が私の妹をどこへ連れ去ったか知っているか?なんでもいい。知っている事があったら‥‥話して‥‥」」
「お‥‥俺は何も知らない!俺は運よく四天王の空いた椅子に収まっただけだ。影糾なんて会った事すらないんだ!本当だ!本当なん‥だ‥ガフッ‥‥」
亜煩が言い終わる前に、村正の切っ先が亜煩の肩へ突き刺さった。
「いい加減な答は好きじゃない」
「ほ‥‥本当なんだ!影糾に会った事があるのは悪世巣と婆盆、あと、あんたに殺された練刀だけだ!俺は練刀の後釜だが、本来はそんな器じゃねぇ。亜煩って名前も寄生らしくない適当に付けられた名前なんだ」
嘘を言っているようには見えなかった。
「また空振りか‥‥」
桃花は落胆の色を隠せず思わず天を見上げる。目の前の寄生は手掛かりを持っているどころか、名前の付いたただの寄生だ。さっさと始末してしまおう。
だが、そう考えている内に一瞬の油断を生んだのだ。
桃花が天から再び亜煩に目をやると、その姿は人のそれから巨大な蟷螂へと変わろうとしていた。
仮そめの姿を捨て、寄生本来の姿へと変わった亜煩は、その巨大な鎌で村正を桃花の手から薙ぎ払い、桃花は地面へ叩き付けられた。
一瞬だった。桃花は地面へ叩き付けられたダメージで視界が鈍った。ぼんやりとした目で見えたのは、今まさに、桃花の胸へ鎌を突き立てんとする、人の顔を持つ巨大な蟷螂だった。
これまでだーーー
蟷螂がそう言ったように聞こえた。だが、今の桃花には上手く聞き取れない。視界はまだ戻らない。
絶体絶命だったーーーだが
「そこまでだ化け物」
桃花は耳を疑った。誰かが来たのだ。寄生を感知できる人間は桃花以外は居ないはずだった。居るとすればそれは寄生と、寄生に憑かれた人間のみだ。
だが、亜煩の表情はそのどちらも否定した。
「お前は何者だ!?なぜ俺の姿が見える?」
「汚い口を閉じろ化け物。嫌でも今から俺が永久に塞いでやるがな」
現れたのはスーツ姿の男性。年齢は30代半ばくらいだろうか。一見すると整った出で立ちのサラリーマン風だったが、物腰はただ者ではない事を物語っていた。
「行くぞ化け物」
その男は懐から拳銃を取り出し、亜煩に狙いを定める。
有り得ない。桃花はそう思った。通常の武器では、寄生に傷を付ける事すら出来ないのだ。 だが、男が放った弾丸は亜煩の眉間を見事に貫いた。そして傷口からは、村正で切り付けた時のように黒い影が吹き出した。
「なぜ‥‥だ‥‥貴様は一体‥‥?」
「死に行く者が知っても無意味だ。さっさと消えろ化け物」
亜煩は黒い影となり、消えて行った。
男は亜煩が消えるのを見届けると、桃花へと視線を移す。そして朦朧とした意識の桃花に言った。
「無限桃花さんですね?探していましたよ」
「あなたは‥‥一体‥‥?」
「ここで話すのも何でしょう。傷の手当もしたい。我々のアジトへ来て頂けますか?」
男はそういうと桃花を抱え上げ、そのまま車で桃花を連れさった。
男のアジトだという場所は、驚いた事に霞ヶ関のビル内にあった。それは、男が所属する組織が国家機関である事を示していた。
桃花は簡単な傷の手当を受けた。病院での精密検査も受けないかと言われたが拒否した。
それよりも、早く男の話を聞きたかった。
「本当に大丈夫なんですか?遠慮する事は無いんですよ?」
「いらないわ。それより何で私をここへ連れてきたのか‥‥早く教えて。なんで寄生を殺せたのかも‥‥」
「解りました。お話しましょう」
男は紙コップに入ったコーヒーを差出ながら言った。だが、桃花はブラックコーヒーは飲めない。申し訳なさそうに男に紙コップを返した。
「ごめんなさい‥‥」
「気にしないで。代わりに何か飲みますか?」
「‥‥ミルクティーを」
男は黒丸と名乗った。黒丸の所属する組織は神社庁の秘密組織『ヤタガラス』。
その目的は、寄生を撃退する事だった。
「そんなのがあったんだ‥‥」
「我々の組織は遥か昔から存在します。文献に最初に現れたのは室町時代から。恐らくもっと昔から存在したと思われます」
「寄生を倒す為に?」
「おそらく最初は違ったはずです。寄生を倒す事は通常の方法では出来ない。だが、寄生を斬り裂く武器を作る事が可能となった時、ヤタガラスは寄生の抹殺を目的とした。
あなたの持つ剣も、大昔の刀匠と宮司によって作られた、対寄生用の武器だと思われます」
「大昔に‥‥?」
「寄生を斬り裂く武器は寄生から造られます。寄生を陰陽師や宮司が鉄に封印し、それを加工する。私があの寄生を撃った弾丸もそうやって造られました。寄生を斬り裂けるのは寄生だけだからです」
村正は無限一族に受け継がれている刀だった。だが、長らくその存在は確認されていなかった。
同じく受け継がれた古文書には「力を持つ物が現れた時、村正もまた現れる」と記されていたのみだった。
そして、その古文書の通り、父を失ったあの日に村正は現れた。あの影の中から‥‥‥
「桃花さん‥‥?」
「あ‥‥‥‥はい。ごめんなさい‥まだボーっとしてて‥‥」
「大丈夫ですか?話ならまた後日に改めてでも‥‥」
「いえ、大丈夫です。続けて下さい‥‥」
「そうですか。では本題に入りましょう。あなたには、ヤタガラスのメンバーに加わって頂きたい」
「我々は寄生を倒す力はあるが、所詮は小物しか相手に出来ない。その小物ですら我々には荷が思い事すらある。桃花さんの力を是非、我々に貸して頂きたい」
「私に‥‥ですか」
「ええ。桃花さんの力は確認済みです。もちろんタダとは言いません。特別国家公務員としての身分が保障されます。区分としては自衛官と同じですが、こちらでの待遇はケタ違いです。
十分な報酬も用意されます」
ほぼ予想通りの提案だった。黒丸はウソは言っては居ないだろう。この話を受ければ、おそらく桃花の目標へたどり着くのも早まるだろう。国の職員として高い給料も貰える。
父からの財産を食いつぶして行く生活ともおさらばできる。だが‥‥‥
「ごめんなさい‥‥私、一人のほうがいいです‥‥」
「そんな‥‥こんな話はたぶんもう無い。なにもあなたを支配下にに置こうという訳ではありません。むしろ桃花さんには我々を自由に使って貰って構わない。それに‥‥」
「‥‥‥ミルクティーご馳走様でした」
桃花はそう言って立ち上がった。とにかく、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
「桃花さん!」
黒丸が呼び止めるのも聞かず、桃花は走った。その胸にあるのは、ある恐ろしい疑問。
黒丸は言った。『寄生を倒せる力は寄生だけ』と。
あの日、村正は現れた。
桃花の身体の中から現れた黒い影。それは形を変え、村正となったのだ。
桃花の黒い影から。
『寄生を切り裂けるのは寄生だけ』
桃花の頭の中は、その言葉で溢れかえっていた。
代理投下終了
なにやら本格的になってきたな……ゴクリ
かなり大きな話になりそうだな
●カッコヨス
娘「どこだここ――――っ!!!」
母「あらあら、ファーストコンタクトなのにはしたないわよ」
父「そうだぞ、よし子。寝るときはコンタクトを外すんだぞ」
娘「関係ね――――――っ!!!!」
作者「ところでネタ切れです」
娘「早――――――っ!!!
なぜ書いた――――――っ!!!!」
作者「いや、なんかこう、旧キャラ分が欲しくなってさ」
娘「無理するなーっ!」
作者「あ、ちなみに俺偽者だから」
娘「なんだって――――っ!!!」
作者「関係者各位にはお詫び申し上げます」
刺客「謝って済んだら警察はいらぬ!」グサッ
作者「グフッ」
母「あらあら、また死体コレクションが増えましたね」
娘「どうするんだこれ――――――――!!!!!」
夜のとばりが降り、辺りの気温はさらに下がる。
風が吹いた。それは木々を揺らし、まるで何者かが叫びを上げたような音を立てた。
雪は上から下ではなく、激しい風によって水平に、いや、下から上へと降っていた。地元の人間が地吹雪と呼ぶ、激しい雪と風。
天気予報では暴風雪警報が発令されたとしきりに言っていた。
無限桃花はその風雪の中を進んでた。場所は青森県K市。無限一族のルーツを探るべく、約10年ぶりに自らの故郷を訪れた。
だが、その帰郷を青森の気候は歓迎してはくれなかったようだ。
足元の雪はもはや膝の高さを超えていた。市街ならともかく、桃花の目指す場所の近くは除雪車が通らない。
降り積もった雪は自らの重さで固く重くなり、それは桃花の体力を容赦なく奪う。
この日の為に用意したロングブーツもダウンコートも、この気候では軽装に過ぎなかった。
「なんで‥‥‥こんなに‥‥‥雪降るかなぁ‥‥?」
桃花はつい愚痴を零すが、自らが発したその声さえ、吹きすさぶ地吹雪に掻き消された。
この道は夏ならば避暑地として観光客で賑わう。蝉が鳴き、川ではイワナやニジマスが釣れる。
少し道を戻れば、幼い頃によく行った釣堀があるはずだ。父と、そして彼方と三人で。
楽しかった日々を思い出し、桃花は胸を締め付けられる思いに駆られた。
東京に居た頃にはこんな感情は無かった。
「故郷に来たせいかな‥‥?」懐かしさと、それが二度と戻らないという悲しさに、ただ胸を締め付けられていた。
やがて、桃花の視界が狭まり始める。この雪の中歩き続けた桃花の体力は、既に限界だった。
「あったかいミルクティー飲みたいな‥‥」
力無く呟いた。持っていた缶のミルクティーは既に刺すよな冷たさになっていた。
一緒に買ったコンビニのおにぎりも、もはや凍り始めていた。
桃花の思考は滞り、もはや歩く事すらままならない。
「父さん‥‥‥‥彼方‥‥‥‥」
そして、桃花は真っ白な雪の上へ落ちていったーーー
「桃花、こっちへおいで」
うん。父さん。
「お姉ちゃん、一緒に遊ぼう!」
いま行くよ彼方。
「いいかい桃花。けっして人を恨んだり、嫉んだりしたらダメだぞ。悪い奴に目をつけられるからね」
わかったよ父さん。
「お姉ちゃん、こっちへ来ちゃダメだよ」
どうして?彼方‥‥
「桃花‥‥。彼方を‥‥彼方を!」
どうしたの父さん?彼方がどうかしたの?
「村正を‥‥蘇らせてはいけない‥‥彼方にそれを持たせてはいけない‥‥!」
何を言ってるの父さん?彼方はどこへ行ったの?
「お姉ちゃん‥‥‥?」
彼方‥‥?どうしたの?どこへ行くの?父さんはどこ?答えてよ‥‥?
みんなどうしたの‥‥私を‥‥私をひとりにしないで‥‥
彼方‥‥どこへ行くの?行かないで。お願い‥‥行かないで‥‥彼方‥‥‥
「彼方!!!」
桃花の視界に最初に飛び込んだのは、木の天井だった。身体は暖かい布団に包まれ、着ていた衣服の代わりに大きめのパジャマが着せられていた。
「あら?やっと目ぇ醒ましたかい?まったく、最初は死んでるんじゃねーかと本気で心配したわ。まったく、こんな無茶する子じゃなかったんだけどねぇアンタは。」
桃花は雪の上で失神している所を、この女性に助けられたのだ。
「だはんで電話で今の時期はやめへって、あらほんど喋ったっきゃ!わーも此処まであさぐにスノーモービル出してなんとか来たんだ!それに冬季はここ通行止めだべ!?入る時ケーサツさでも見られたらアンタ‥‥‥‥」
「ごめん英子おばさん」
「ん?なしたば?」
「津軽弁わからない」
「え?‥あ‥ああ‥ごめんなさいね。そうね。小さい頃に青森出てもう十年だもんね。抜けてるよね言葉」
古川英子。桃花の母の妹にあたる人物。
桃花の母は彼方を産んだ直後に他界したため、桃花に母の記憶はほとんど無い。
代わりに、この英子が幼い桃花と彼方の面倒を見てくれた。桃花にとっては、母に代わる人物だった。
そして生粋の津軽衆である英子の津軽弁は、桃花には少しレベルが高かったようだ。青森では一般的なのだが‥‥‥
「でも‥‥本当に無茶よ。今の時期は誰もあそこへは行かないから。仮に遭難したとしても、これ以上進んだら携帯の電波も通じないし公衆電話もないから救助も呼べない。
そもそも立入禁止なのよ?」
「解ってる。でも行きたいの。どうしても‥‥」
「まったく‥‥アンタ変わったね。大人しい子だったのにこんな無茶するなんて。ま、アタシも人の事言えないか。ははは。」
桃花が運び込まれた場所は、山あいにある一軒家だった。本来は夏だけ営業する英子の民宿で、そこは桃花が目指す場所への入口に近い。 冬は厚い雪に閉ざされ、近づく事すら困難だが、英子は桃花のためにわざわざここを解放してくれた。
「ホラ、アンタ腹減ってんだろ?寝てる間も譫言いいながら腹は鳴りっぱなしだったんだから」
英子は桃花に食事を運んできた。湯気が立つ暖かい御飯。具だくさんの味噌汁。塩辛い焼き鮭。
そして、大きなホタテの貝殻の上で焦げる味噌の香り。十年ぶりに口にした、卵味噌だった。
「旨いだろー?やっぱ白い御飯にはコレよね。東京だとなんて言ったっけ?貝焼き味噌だっけ?あんな偽物だれが食うかってね」
英子は嬉しそうだった。桃花にとっては母親代わりの存在だったが、英子にとってもまた、桃花は娘のような存在だった。
十年ぶりの再開は、桃花にとっては久しい暖かい時間だった。
「おばさん‥‥‥」
「ん?なに?」
「ありがとう‥‥」
「なに言ってんのよ」
朝が来た
外の雪は既に止み、太陽が白い地面を照り付ける。積もった雪は日の光を激しく反射し、まるで大地が光っているような感覚さえ与える。
「晴れたわねー。こんな日は逆に冷えるのよね。あー嫌だ」
「でも‥‥行くなら今しかない」
「そうね‥‥‥覚悟決めるか。祠へ続く道の入口まではスノーモービルで送ってってあげる。私は無限一族じゃないからそっから先は行けないしね」
「‥‥ありがとう」
「アンタ礼言ってばかりだね」
桃花が目指す場所、それは地元の人間すら知らない、無限一族と、それに近しい者しかしらない祠。
そこには一族に伝わる古文書が眠っているはずだ。桃花の生家にもその写しがあったが、あの日、すべて失われてしまった。
「ぬおっ‥‥がっ‥さんびーさんびーコレ!マジハンパねぇ!桃花、いっとまがえの中さ入ってホッカイロとマフラーと‥‥‥」
「ごめんおばさん」
「ん?なんだば?」
「津軽弁わからない」
「えっ?ああ‥‥ゴメン。さ、行きましょ」
桃花と英子は、スノーモービルにまたがり白銀の上を走りだした。
代理投下終了
85 :
無限桃花〜燃ゆる雪と桃の花〜 レス代行:2010/02/05(金) 18:07:56 ID:rOMJC0vE
英子が駆るスノーモービルは雪原を走り抜ける。目的地までは距離にして5kmほどだろうか。たいした距離ではないが、起伏ある山と雪は、その道のりを極めて困難にする。
それに最後の道のりは、自らの足で進まねばならない。桃花一人で。
「イヤッッホゥゥゥゥウウ!!」
「ちょっとおばさん!スピード出し過ぎよ!」
「何言ってんの。今日は抑えてるほうだぜ?」
今年で38歳になる英子は、その性格のせいかまだ若々しい。結婚はしておらず、いまだ独り身で自由にやってるせいもあるだろう。
もっとも、こんな豪放とした英子にまともについていける男性もまず居ない。
常々男運の無さを口にするが、自身に理由があるなど彼女には思いもよらない事だった。
どういう訳か、男運の無さだけは桃花も引き継いでいた。
「ッッッシャァァァ!!!到着ぅうう!!」
「キャッ!!」
「あ、ごめんなさい。普通に止まればよかったわね」
「いたた‥‥勘弁してよ‥‥‥」
桃花は見事なドリフトと共に停車したスノーモービルから振り落とされた。雪の上に転がる桃花の目には、二本の柱と、それを繋ぐしめ繩が写る。
ここから先は、無限一族の聖域。その先には、無限一族、そして桃花のルーツが隠されているかもしれない。
「私はここまでね。あとはアンタしか入れない」
「‥‥‥うん」
しめ繩の先には僅かだが獣道の名残が見える。急斜面に雪が積もり、ただでさえ険しい道をさらに厳しくしている。1kmに満たない道だが、それはまるで数十kmにも及ぶ道に見えた。
86 :
無限桃花〜燃ゆる雪と桃の花〜 レス代行:2010/02/05(金) 18:08:38 ID:rOMJC0vE
「桃花」
「何?おばさん」
「‥‥彼方‥‥見つかるといいね」
「‥‥うん」
桃花と英子はそれだけ言い、桃花は歩きだした。
ほんの少し進むだけでもかなりの時間を消費してしまう。斜面を立って進むのは不可能だった。手足を雪の中へ突っ込み、獣のように登って行かねばならない。
急斜面を登りきると、今度は踏破は到底不可能な崖が行く手を阻む。直線距離は近い。だが、この崖の前では回り道せざるをえなかった。
やがて鳥居が連続して見えてくる。そこをさらに進むと、入口と同じような二本の柱としめ繩。
ようやくたどり着いた。桃花は僅かの達成感を胸にそのしめ繩の下をくぐる。
しかし、そこに広がる光景は桃花の期待を大きく裏切っていた。
ーーー燃えている。
そこにあるはずの祠は、激しい炎に抱えられていた。パチパチと音を立て、熱は周囲の雪を解かす。
そしてその傍らには、木箱を抱えた寄生が二匹立っていた。
「古文書が!!」
桃花は叫んだ。その叫びは二匹の寄生にも届く。刹那、桃花は村正を抜き、飛び掛かる。
だが、一匹は仕留めたが古文書を抱えるほうには避けられた。その寄生はまるで蝿のような羽をはやし、空中へ逃れたのだ。
そして、そのままどこかへ飛び去った。
「そんな‥‥‥古文書が‥‥」
落胆する桃花だったが、現実はその暇さえ与えてくれない。背後から声がしたのだ。
「ほう‥‥わざわざここまで来るとはな。無限桃花」
背後からする声。桃花は経験からすぐさま危険だと判断した。
あの時と同じだ。練刀とかいう寄生の時と。
振り返る桃花が見たのは、まだ12、3歳に見える少年だった。しかしその雰囲気は人間のそれではない。間違いなく寄生だ。それも、かなりの大物‥‥
「我の名は悪世巣。寄生四天王の一人」
少年はそう名乗った。
87 :
無限桃花〜燃ゆる雪と桃の花〜 レス代行:2010/02/05(金) 18:09:19 ID:rOMJC0vE
悪世巣‥‥どこかで聞いた名前。
そうだ。あの亜煩とかいう寄生が言っていた。影糾を知っている寄生の一人‥‥そうだ‥‥!
「お前‥‥影糾を知っているな!?」
「影糾?くくく‥‥」
突如、少年の身体は風船のように膨らんだ。まるで中で何かが爆発したように。
衣服は破れ、限界を超えて引き延ばされた皮膚は薄く透けている。
そしてその皮膚の中で、何かが揺らめいている‥‥‥炎だ。少年の中で、炎が燃えていた。 その炎は出口を求め、少年の口から、桃花へ向けて飛び出した。
まさに火の海と形容するに相応しい光景。
灼熱の炎は桃花を包み込み、焼き尽くさんとする。だが‥‥‥‥
「なるほど‥‥‥影糾が恐れる訳だ‥‥‥」
炎の中に立つ桃花。その姿は先程までの防寒具ではなく、真っ黒な袴姿へと変わっていた。 村正を包む布のように、黒い影が衣服となり、それは見た目以上の強固な鎧となる。
それは、桃花が全力で戦わねばならない時の、戦闘服なのだ。
「村正と黒い袴‥‥これではまるで‥‥‥ククク‥‥‥婆盆が言っていた通りだな。では、影糾すら恐れる力、試させてもらおう」
悪世巣は両の手に炎を点し、桃花へと迫って来た。
代行終了
よし子きたかw
本格的に四天王との戦いが始まるのか…
投下速くてうらやましす
なんという桃花速度……
なんか俺も桃花は寒いとこ出身ってイメージあったわ
92 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/05(金) 20:41:42 ID:fAXC6e82
さきほどまで歩いていた砂浜は途切れ、気付けば港町についていた。
落ち着いた色合いをした日本家屋が立ち並んでいる。どうやら開発の手がここまで届いていないようだ。
桃花は港にいる猫と一緒に歩きながら海を眺める。こんなに落ち着いていられるのはいつ頃振りだろうか。
時折低く飛ぶカモメ。みゃーと鳴く猫。堤防に当たっては身を散らす波。
空は薄く青い。冬の空だ。軽さすら感じる空に浮かぶ雲は高いところを飛んでいる。
海風は気持ちいい程度に強く、時折強い塩の匂いを運んでくる。
いつもなら手がかりを探すために躍起になるのだがこの町には手がかりを探す手段すら見当たらない。
人は少なく活気もあるとは言いがたい。時折通り過ぎる観光客はシーズンオフを狙ってきたのだろう。
桃花は自分の生まれを知らない。日本語が差し支えなく喋れるし自分の着ているセーラー服、外見から日本人ではあるだろうと思っている。
どうようなところで生まれ、育ち、学び。思い出せる最古の記憶はどこか飲み場で男から下らない話を聞いていたというものだ。
そしてそれは大して昔のことではない。もしかしたらあの男が桃花について何か知っていたかもしれないが今となってはもう遅いだろう。
しばらく歩いていると港から舗装された道路に変わった。右手には海があり、どうやら小高い丘を登っているようだ。
この先、行き止まりなのかどうかわからない。桃花は足元の猫に聞いてみるが答えてはくれない。
とりあえず歩こう。そう決心して歩を進めていると坂上から車が一台下りてきた。猛烈な勢いで。
慌てているように見えるが運転所の女性の顔色から察するとあまり急いでいる風ではなかった。
事実運転手の彼女はなんとなくスピードを出したかっただけで大した意味があったわけではない。
車を見送ったあと、桃花は再び歩き出す。坂上に建つ一軒家が見えてきた。どうやらここが岬のように出っ張ってたらしい。
普通の民家で休むわけにもいかずもう少し先まで行くと、木陰を見つけた。なぜか脇には朽ちたボートが置いてある。
中を覗くとどういうわけか思ったより汚れていない。指でなぞっても埃がつかない。外見は朽ちているが中は綺麗に清掃されているようだ。
もしかしたら持ち主がいるのかもしれない。だが少しくらいいだろう。そう思い、桃花はボートに横になった。猫が一緒に中にはいる。
木漏れ日は季節を間違えたのではないかというくらい暖かい。風が時折、頬をなでる。桃花はゆっくりと目を閉じた。
先に起きたのは猫だった。むくりと起きた猫は周りを見て、仰天して桃花の胸を、あまり大きめではない胸を、推定Bぐらいではないかという胸を
ふみふみした。桃花がくすぐったそうに声を出す。段々と、その声が、色っぽく、艶っぽく、頬が赤く、ここで眼を覚ます。寝起きはあまりよくないらしい。
猫を撫で、上半身を起こし、周りを見て桃花は愕然とした。
海なのである。
坂上の家はある。そこから航海帽子をした少年と小豆色の髪に薄紅色の服を着た少女がまるでおもちゃを大きくしたような船に乗って
大海原へと旅立っていった。それを見送る桃花。しばらくぼーっとしたあと我に戻る。
海なのである。
坂上の家はある。子どもふたりは旅立った。木陰になっていた気もある。そこまではいい。
ここは坂上にあったはずなのだ。なのに寝て、起きたら周りは海。どういうことなのか。
さすがの桃花も混乱した。想像して欲しい。
朝起きて、伸びをする。今日の予定はなんだったかと考えつつも、カーテンを開けると
海
桃花は頬を抓る。ひりひりしてきたのでやめる。夢ではない。夢じゃなかった。
幸いなことにこの世界全てが水没したわけではない。遠くを見ればマングローブと化したかつての森が見える。
だが残念なことにこのボート。あるのは猫と桃花と穴の空いた杓しかない。
ふざけるなと何かに当たりたいが当たれそうなものすらない始末。
ふと横の木を見る。上を見ると枝を伸ばし、緑の葉を茂らせている。冬なのに葉が生えているのは常緑樹のせいだからだろう。
仕方がない。そう踏んだ桃花はボートに立つと木に向かって跳ぶ。さらに木を蹴って三角跳びをして枝まで行くと
葉がよく茂った大きめの枝を折り、ボートに飛び降りこける。頭を抑えながら立ち上がると枝をオール代わりにして漕ぎ始めた。
これでどうにかなるだろう。楽観的にそんなことを思いながら、マングローブを目指した。
猫は海を見て、ニャーと鳴いた。
なんという投下の多さ。喜ばしいことだ。
たまには会話なしでと思ってやってみた。元ネタは今夜九時から。
ぽーにょぽーにょぽにょ
こっちも続きが気になるところ
それにしても猫うらやましいぞこのやろうw
「はははははは!」
悪世巣は炎を纏い、高らかに笑っていた。腕は炎が燃え盛り、まるで自らの手足のようにそれを操った。
目は赤く燃え、息は空気が歪むほどの熱を持っていた。
少年の姿である事が、その恐ろしさに拍車をかける。
しかし、桃花に迷いは無い。少年の姿とはいえ所詮は形骸に過ぎない。なにより、躊躇していて勝てる相手ではないと、桃花は感じていた。
神速の斬撃が、悪世巣に襲い掛かる。悪世巣もそれに応じ、手に点した炎を桃花へ放った。 再び桃花は炎に包まれる。だが臆することなくその中を突き進み、村正の切っ先で悪世巣の肩から胸、そして腰まで斬りつけた。
よろける悪世巣に追撃を加えるべく、桃花は斬撃の流れに乗り一回転し、返す刀を浴びせ掛ける。
ーーー回転両袈裟斬り。上から下へ斬りつけた刃は、速度を落とす事なく今度は下から上へ襲い掛かる。
練刀を仕留めた、桃花の必殺剣の一つだった。
だが、その必殺剣を受けた悪世巣は今だ倒れない。それどころか、不敵に笑っていた。
「なるほど‥‥練刀では相手になるはずもないという事か。だが奴は所詮惨めな九十九神‥‥我と同格と考えぬ事だ。くくく」
「そんな‥‥確かに斬ったはず‥‥!」
悪世巣の身体は桃花の斬撃でバツ印のような傷が出来ていた。通常の寄生であれば、そこから黒い影が吹き出し、消えて行く。
しかし悪世巣の傷からは、炎が吹き出していた。
「我が形骸をいくら傷付けた所で我に刃は届かぬ。その程度の剣では我は倒せぬぞ。さぁ、無限桃花よ。村正の真の力、示してみよ」
明らかな挑発だった。だが、桃花はそれに乗るほかない。
斬ってもなお死なぬ敵が相手なら、完全に消し去るほか無い。
そして、桃花と村正の周りに黒い稲妻がほとばしる。
「来たれ龍!」
「それが黒龍か。見せてみろ。どれほどの物か、確かめてやろう」
悪世巣は黒い龍を前にし、動こうとしない。待っているのだ。桃花の最大の一撃を。
「コイツ‥‥一体何を考えてるの!?」
桃花は困惑した。悪世巣は避けるそぶりすらない。だが、迷ってはいられない。
「爆ぜよ天!」
桃花のその声と同時に、黒龍は悪世巣を飲み込む。それは周囲の木々や雪、燃えていた祠すらも吹き飛ばし、文字通り全てを喰らいつくさんばかりだった。
龍が過ぎ去ると、少年の形骸をもった悪世巣は消え去っていた。
「勝った‥‥のかな?」
周りにはもはや何も無かった。目指すべき祠も、倒すべき敵も居ない。衝撃で崖下では雪が崩れ小さな雪崩が起きていた。
だが、桃花はまだ警戒を緩めない。感じるのだ。まだ近くに居ると。そして、それは予想を超え現れた。
「黒龍、しかと見届けた!」
突然の声。それはまるで辺りの空気が直接震えたかのように、四方から響き渡る。
「たしかにその力、魔を、寄生を打ち滅ぼす物と心得た。だがその力、今だ我には及ばず!」
恐ろしい声だった。今まで聞いてきたどんな声よりも。それは威厳すら漂っていた。
一つ。火の玉が現れる。そしてもう一つ。もう一つ‥もう一つ‥‥
やがてそれは無数になり、一カ所に集まり巨大な火球となる。
そして現れた。目が眩むほど激しく燃える炎の中に。
それはとても美しい、炎の尾を持った、金色に輝く巨大な狐の姿をしていた。
「我が名は悪世巣寄生・野狐。悪の世に巣くう狐‥‥」
桃花は、この巨大な敵を前に恐怖を覚えてしまった。
「ぬわーーーっと!!!!!」
英子は叫ぶ。先程の謎の爆発で崖の上から雪崩が襲い掛かる。
スノーモービルを見事なドラテクで操り、何とか事無きを得た。
「わいはどんだば!たんだでねぇ!『注:一体何が!マジやばかった!』」
英子は崖の上を見上げる。あそこでは一体何が起きているのか‥‥‥桃花‥‥‥
「くっ‥‥‥‥」
桃花は地面に伏せていた。頑強な戦闘服のはずの袴はすでにボロボロになり、村正は‥‥‥半ばから折れていた。
「愚かな‥‥‥なぜ抗う?潔く負けを認めれば苦痛なく死に臨めるよう配慮した。だがお前はそれを拒否し‥‥‥結果はその様だ」
「黙れ!私が寄生なんかに負ける訳には‥‥」
「虚勢を張ろうとお前に勝ち目など無い。これほどの力の差を見せ付けられてまだ解らぬのか?無限桃花よ」
悪世巣の力は圧倒的だった。
その叫びはそれだけで爆轟を生み出し、尾は炎の海をぶちまける。
その皮膚は村正がへし折れるほどの強度を誇った。
「私は‥‥‥私は‥‥‥!」
「もうよい‥‥これ以上苦しむな」
悪世巣は前脚で桃花を突き飛ばし、さらに地面へ押さえ付ける。
肋骨がみしみしと音と立てて歪んで行くのを感じる。戦闘服で無ければ、すでに身体は砕け散っていたかもしれない。
「見事だぞ。無限桃花。我がこの姿を表すのは実に数百年ぶりの事だ」
「だ‥‥誰が貴様‥‥なんかに‥‥!」
「我が形骸を打ち滅ぼした事、称賛に値しよう」
悪世巣は桃花にさらに体重をかける。
「がっ‥‥‥はぐっ‥‥!」
「運よく代わりの形骸もすぐ崖の下にいる。その骸を奪い、すぐに我らの巣穴へ帰るとしよう。影糾には‥‥貴様は実に見事だったと伝えよう」
「崖の‥‥‥下?‥‥」
「そうだ。お前の叔母の身体、我が使わせて貰う。悪いようにはしない。お前に敬意を払い、丁重に扱おう」
「おばさんが‥‥‥やめて‥‥それだけは!」
「恐れるな。 苦痛は与えない。恐怖すらも感じさせぬよう、手早く寄生しよう」
「やめて‥‥‥お願い‥‥!」
桃花が感じた絶望。今までにないほど、桃花は自分の無力さを呪った。
桃花から様々奪って行った化け物は、今、桃花の唯一の家族すら奪おうとしている。
憎い。桃花はそう思った。憎い憎い。
「やめろ‥‥やめろ‥‥!」
桃花の声はもはや悪世巣には届かない。
憎い。憎い憎い。この化け物が。憎い憎い憎い憎い憎い憎い‥‥‥‥
悪世巣も、そして桃花自身もその小さな変化には気付かなかった
桃花の負の感情。それに呼応するかのように、村正から、影が伸びていた。
最初にそれに気付いたのは悪世巣。桃花を押さえ付ける前脚に感じた、僅かな痛み。
影が、絡み付いている。
「何?これは‥‥‥」
影は伸びる。悪世巣は思わず飛びのいた。その力の正体を、本能的に察知したのだ。
影は桃花を包み込む。まるでそこだけ、全て消え去った暗黒の空間のようだった。そして‥‥‥
黒い翼が現れた。擦れたボロ着れのような翼はとてつもなく暗い色をしていた。
それに包まれる桃花は、憎しみの表情だった。
折れた村正は再び切っ先を備え、影をたたえていた。
「これは‥‥これはまるで‥‥!」
悪世巣は驚愕する。今、目の前にいるのは紛れも無く‥‥‥
桃花はゆっくりと村正を振った。いや、目の前の空間ごと、悪世巣を「斬った」のだ。
金色に輝く妖狐は、なす術なく両断される。悪世巣を斬った力は、もはや悪世巣すら遠く及ばない次元から発せられていた。寄生を斬り裂く力。
「‥‥影糾‥‥!!」
その声は影の中へ消えて行き、その場へ残ったのは、桃花。一匹の鬼神だけだった。
代理投下終了
おつおつ
1日に2話のペースとは恐れ入る
100 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/05(金) 22:47:05 ID:fAXC6e82
FOX ★ですね、わかります
20XX年、日本プロ野球界に新たな球団が誕生した!
○○県創発市を本拠地とする、創発ハルトシュラーズである!
◇ ◇ ◇
無限桃花は、野球選手である。
座津壇高校で1番バッターを打ち、高校通算打率四割という記録を残している。
そして彼女は今日をもって、ハルトシュラーズの一員となることが決まっていた。
「ここか……」
桃花の視線の先には、「ハルトシュラーズ選手一同様控え室」という貼り紙が貼られたドアがある。
今日は球団創設記者会見。会見が始まるまでこの部屋で待機することになっている。
「しかし、控え室が一部屋って無理がないか?」
今日の会見は、選手全員が出席するはずだ。その人数は、40人を超える。
いくら大部屋とはいっても、それだけの人数が一つの部屋に詰め込まれていると考えるとそれだけでめまいがする。
「まあ、だからといっていつまでもここに立ちつくしているわけにもいかないしな……」
独り言を漏らしながら、桃花はドアを開ける。
》く;;;;;;;;;;;;;;@<
(⌒ ソ ⌒)
ゝE⌒' ノ
( ̄■ ̄)
/ ■ ヽ
/ / ■ヽ |
L_ら ■ L_ら
最初に目が合ったのは、顔面が魚の男だった。
「…………」
「おい、姉ちゃん。何ぼけーっとしてるんだ。チームメイトに挨拶ぐらいしたらどうだ?」
「チームメイト?」
「ああ、ここにいるってことはハルトシュラーズの選手以外の何物でもないだろうが」
「……すまない。てっきりマスコットキャラかと」
「おいいいいい!!」
桃花の反応に、魚は大声をあげてリアクションする。
「てめ、このやろ、GGG学園の突撃隊長と呼ばれたアジョ中様をしらねえのかー!」
「その辺にしておけ、アジョ中ー!」
猛る魚に、背後からドロップキックが炸裂する。それをやったのは、桃花よりもさらに小柄な少女だった。
「私はこいつと同じGGG学園出身のよし子だー! あ、こいつはアジョ中な!
これからよろしく頼むぞー!」
「ああ、よろしく」
そう口にする桃花の表情は、若干ほころんでいた。
今や女性のプロ野球選手は珍しくないとはいえ、それでも男性と比べればまだまだ少人数だ。
同じチームに自分以外の女性選手がいるというのは、それだけで心強い。
「しかし……」
そのまましばらく雑談を続けていた二人だが、ふいに桃花が話題を変える。
「本当にいろいろな選手が集まっているな、このチームは」
「まったくだなー! 女性選手も私たちだけじゃないし、アジョ中みたいに人間じゃない選手もいっぱいいるぞ!
あの人とかなー!」
そう言いながら、よし子が指さした先。そこには、人間を遙かに超える巨体の生物がいた。
/| ,/|
く K 」
_r'" `ヽ
ミ(~ ゜-‐ ミ
,i'" ''ヾ`ヽ ミ
i'^ ヘ `l ミ
_ヽ
"'"'゛''""''''゛""´
「あれは……!」
その生物を見た桃花の顔色が変わる。彼の巨体や異形に驚いたのではない。
彼女は彼のことを知っていたのだ。
「ロサンゼルスジブリーズのトトロ選手じゃないか! あんな大物がこのチームに加わってくれるのか?」
「うちのオーナーのコネはすごいらしいぞー! 他にも同じジブリーズのルパン選手とか、京都アニマルズのキョン選手とか引き抜いてきたそうだからなー!」
「何と……」
よし子の口からのぼるビッグネームに、桃花は目を丸くする。
所詮は寄せ集めの新設球団。成績が上を向くには数年かかるだろう。しばらくは我慢の時だ。
桃花はそう考えていた。だが、その考えがたちまち変化する。
このメンバーなら、あるいは……と。
もちろん、現実はそう甘いものではない。スター選手が数人いたところで、それだけで勝てるわけではない。
だがそれでも、桃花は何か手応えのようなものを感じていた。
「なあ、よし子」
桃花が自分の感じた思いをよし子に伝えようとした、その時。
「全員揃ったそうやな」
控え室のドアが、外側から開けられた。
____
/__.))ノヽ
.|ミ.l _ ._ i.)
(^'ミ/.´・ .〈・ リ 今日からわしがお前等を育てる。
.しi r、_) |
| `ニニ' /
ノ `ー―i´
やっぱり駄目かも知れない。
桃花はあっさり、自分の考えを覆した。
毛色が違う作品を投下してみたかった
反省はしていない
いいぞもっとやれwww
もっとやる
107 :
魔法少女ももか 〜なぞのしょうじょ〜:2010/02/06(土) 00:41:41 ID:qCZtqFUW
クラスメイトである「バンディッド霧崎様(自称)」がキセイ・チューに捕らえられてしまった!
桃花と彼方は。町外れの廃工場にキセイ・チューのアジトがあると聞き、急いで駆けつけた。
「お姉ちゃん、ここが……?」
「そうよ。たぶんここに霧崎君が捕まっているわ」
「ようっし、じゃあ早速乗り込もうよ」
「ええ。でも気を付けましょう。〈ストーム〉もいるかも知れないし」
「そう、だね」
ストーム、とは、最近現れた謎の人物である。彼はたった一人で既に3つのアジトを壊滅させている。どこのアジトも桃花たちが駆けつけたときには、暴風に荒らされたような有様だった。だからストーム。
裏の事情にも詳しい婆盆博士にも心当たりはなく、敵か味方かも不明。だから警戒しなければならなかった。
「よし、じゃあ行くよ」
「うん。あ、でもその前に……」
「えっ?
……んっ」
彼方と桃花はお互いに求め合った。
いつどちらが死んでしまうかも分からない危険な任務。神経が昂ぶってしまうのも仕方のない事だった。
「ん、く、ぅ」
「んふ、おね、ちゃ……」
廃工場の前で絡み合うふたり。興奮が高まっていくその脇を、和服姿の少女が通りすぎようとしていた。まだ交じり足りなかったが、一般人がアジトに入ることは注意しなければならない。桃花は仕方なく妹から離れた。
「ぷぁ、ごめんね、彼方」
「おねえ、ちゃん、まだ足りないよぅ」
「はいはい、また終わってから続きしましょう」
彼方の頭を優しく撫でてやると、彼方も収まったようだ。
108 :
見る名無しあっての創る名無し:2010/02/06(土) 00:43:17 ID:qCZtqFUW
「そこのあなた!」
「……私のことか?」
女はうんざりした様子で振り向く。人気のない所とはいえ、こんなところで絡み合っている少女に声を掛けられたのだ。男でなかったらうんざりしたくもなる。
「そうです。あの、ここは危ないから一般人は立ち入っちゃダメなんですよ」
メッ、と人差し指を突き立てる。
「私はここが何なのかも知っている。寄生どもの巣窟だろう?戦闘能力も、おそらくお前たちよりはある。心配してもらう必要はない」
ここが何なのか知っている……?
瞬時に場に緊張が走った。
「あなた……まさか〈ストーム〉!」
「え?この人が?」
ストーム呼ばわりされた見目麗しい女性はキョトンと首をかしげた。
「ああ、ええと、あなたが他のアジトをぼんがぼんがにした人?」
「ボンガボンガが何かは知らんが、寄生の巣なら、4つほど潰した」
「な……やっぱり、そうなの」
「も、目的はなんなのさっ」
彼方が尋ねる。彼女はクスと笑って答えた。
「私の目的は雲永剣だけだよ。寄生の掃除はそのついでだ」
「うんえい、けん?」
桃花が首を傾げる。
「知らんのか?何でも世界を意のままにする力があるそうだ」
「そ、それってまさか、ダイキセイが持ってるアドミニスト・ソードのこと!?」
彼方が叫んだ。
「ダイキセイ?」
女は探るような目つきで尋ねた。
「キセイ・チューのボスだよ」
「親玉?
……ふむ、どうやらお前たちは私にない情報を知っているようだ。話を聞かせて貰おうか」
正体の分からない相手に、桃花は少し考えたが、
「分かった。でも、そのうんえーけんについても教えてちょうだい」
ここは互いの情報を交換する事にした。
109 :
見る名無しあっての創る名無し:2010/02/06(土) 00:44:10 ID:qCZtqFUW
「あ、そうだ。名前聞いてなかったよね」
「そうだな。私は、トウカと申す。無限流の一介だ」
「トウカさん、ね。
あ、私はももか。こっちは妹のかな。えーと、二人で魔法少女なんかやってます……」
言って桃花は赤面し、俯いた。改まって自分が魔法少女だと名乗るのは、恥ずかしい。
「ええ、と、それでトウカさん」
「トウカで構わない」
「うん。トウカ、私たちの知ってることから話すね」
「ああ、聞こうか」
――
――――
「なるほど、そのダイキセイとやらが雲永剣を持っているわけか。……しかし、話を聞く限りそのような小物がなぜ世界法を……」
トウカはなにやらブツブツと言っている。
「私が知ってることは話した。今度はそっちの番だよ」
なんだかこのまま逃げられるような気がして、桃花は急かした。トウカが顔を上げ、頷く。
「うむ。見たところそちらの言に嘘は無かったようだ。なればこちらも偽りなく話そう。雲永剣に纏わる神話を――」
110 :
見る名無しあっての創る名無し:2010/02/06(土) 00:44:52 ID:qCZtqFUW
――
遥か昔、世界がまだ純粋だったころ。一人の男がいた。その男は崇高な理想を持って雲永剣を振るった。するとたちまち大きな世界が出来た。男は何度も雲永剣を振るい、その中に小さな世界をいくつも作った。
やがて世界が大きく安定してきたのを見て男は満足を覚えた。男は、小さな世界の住人のいくつかに雲永剣の使い方を教え、どこかへ去ってしまった。男の行方は、小さな世界の住民には分からない。
さて、世界を意のままに出来る力を得た被造物たち。彼らには崇高な理想はなかった。ただ己等の欲望に従って世界を好き放題にしようとしたのだ。
もちろん住民も反抗した。怒った被造物たちは寄生を生み出し、自分たちに反抗する住民を片っぱしから皆殺しにした。
この事を知る住民は、みな大人しくなった。
これに味をしめた被造物たちは、今度は何もしていない住民にまで寄生を差し向けた。これには住民も我慢できない。被造物の城にまで抗議をしに行くと、こう言われた。
「寄生に襲われたくなければ、税を納めろ」
と。
そんなバカバカしいこと出来るか、と税を払わなかった者もいるが、死ぬことを恐れた者たちは税を払い始めた。
――
111 :
見る名無しあっての創る名無し:2010/02/06(土) 00:45:33 ID:qCZtqFUW
「話はここで終わりだ」
「えっ?なんか中途半端じゃない?」
「そうだ。まだこの物語は終わっていないからな」
「???」
困惑する二人。それを見てトウカは微笑んだ。
「まあ無理もない。私も気がつくのに大分時間が掛かってしまったからな」
頭を抱える桃花。彼方が代わりに質問した。
「それで、結局うんえーけんってどういう剣なの?」
「大体は先に言った通りだ。この世界の法則を自儘に操る事が出来る」
「そんな……」
トウカが立ち上がる。
「さて、私はもう行く」
「行くって、中に?」
「そうだ」
そのまま背を向け、歩き出す。
「ね、ねえ」
「何だ?」
顔だけ振り向いた。
「私たち、一緒に戦わない?」
今度は体ごと振り向いた。しばらく時が止まる。
「……………………分かった」
「やったあ☆」
すぐさま姉妹で駆け出し、トウカを挟むように並び立った。
「な、なんだ?」
そして姉妹でトウカの手を片方づつ持ち上げ、
「よーし、じゃあキセイ・チューを倒すぞー!」
「おー!」
叫んだ。
トウカがその後赤面していた事は言うまでもない。
謎の剣士トウカを仲間に加えた桃花と彼方、意気揚々とアジトに突入する。だがそこで待っていたものは――?
次回「ばんでっど」
お楽しみにっ
ここまで
次回へはつづかない
運営権wwww
ももか続き来たwww
115 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/06(土) 19:18:31 ID:SyV4+5RT
猫が歩く。それを追う桃花。
特に追う理由があるわけではない。
ただなんとなく、ここまで一緒だったのだからどうせだから一緒にいたいだけだ。
旅は道連れ。目指すところはあれど行き方がわからないのならば猫に任せてもいいだろう。
そんな風に考え、時には大通りを、時には人が歩くのは難しい細道をただ歩いた。
気付けば周りに人が多い。人の中を何の支障もなく歩く猫を人波に負けじと着いていく桃花。
やがてその猫はとある駅前で止まった。桃花がそれに追いつき、猫が見ているほうを向く。
『聖跡桜ヶ丘駅』。看板にはそう書かれている。だが猫の目的地はここではない。
桃花が視線を猫に戻すと既に歩き始めていた。慌てて追いかける。
再び道なき道を歩く。入り組んだ住宅街の道をくねくね歩いていると小さなロータリーに出た。
先ほどまでの人ごみはない。景色を見るとどうやら小高い丘の上らしい。
猫はそのまま歩き、一軒の店の前で止まった。置いたあった椅子に飛び乗る。
「なんだ、ここがお前の家なのか」
返事の代わりに大きなあくびをして丸くなる。どうやらここが猫の終着駅らしい。
店は開いていない。中は暗く、ぱっと見では何の店かもわからない。
ここにいても仕方ないので当てもなく歩き出そうとすると少女が近くにいることに気付いた。
猫を見ていた少女の視線が桃花に向く。桃花よりも少々幼い彼女が桃花に質問する。
「あの、この店に何か用事ですか?」
「いや、違う。この猫に着いてきたらここに着いただけだ」
「あなたもですか!」
少女が嬉しそうに声を上げる。一方の桃花はなぜこんなに喜ばれるのかはわからないと言った様子。
「ムーンは客引きが上手だね」
少女が猫を撫でる。猫は眠いのか特に反応しない。
桃花は少女が本を抱いていることに気付く。もしかしたらと思い、今度は桃花が質問する。
「その本は図書館で借りたものか?」
「そうですよ」
「もしよければその図書館がどの辺にあるか教えてほしいのだが」
「いいですよ、えっとですね……」
そこの坂道を道なりに下っていけば見えてくる。
少女の説明を聞いた桃花は彼女の礼を言い、立ち去ろうとした。
「あ、待ってください」
「何か?」
「ムーンがせっかく連れてきたお客様だもん。こっちにどうぞ。いいものが見れますよ」
特に急いでいるわけでもないし、何よりもいいものとは何か気になったので着いていくことにした。
彼女が店の脇のドアを開け、手招きする。
崖に出っ張るように作られた店らしく、眼の前にはかなり急な階段とそして――。
「これは……」
町があった。
階段を降りて、手すりに手をかけて、ゆっくりと見回す。
そこからは町が一望出来た。町にあるひとつひとつの家々、子どもたちの通う学校、ビル、駅、図書館。
普段はそういったものは独立したように建っている。だがそこからはその全てのものがある一つの町を形成していた。
「いい景色だ」
「私、ここが好きなんです。こんなに綺麗な景色があるしそれに――」
少女が笑みを浮かべている。その眼は町でもその先の山でもなくさらに向こう側の何かを見つめていた。
そこには歴史が、記憶が、思い出があるのだろう。桃花はそう思うと同時に寂しくなった。何せ自分にはないのだから。
でもいつかは自分も。こうやって何か過去のことを思うときが来る。桃花はそう願った。
だが彼女は気付いていない。それが既に形成され始めていることに。
あの学園都市で、雪の森で、駅前で、港町で、この場所で。そしてあの男と話した暗い場所で。
桃花の記憶は同年齢のものより短い。だけど確かに桃花は覚えているのだ。今までの世界を。
「きみの言っていた図書館とはあれかな」
桃花が坂の途中にある大きな建物を指す。少女が頷く。
「そうか。ありがとう。それじゃあきみにも面白いものを見せてあげよう」
そういうと階段を上り始める。少女も階段を登ろうとするが、桃花が待っているようにジェスチャーで伝える。
一番上まで登り、再び町を一望する。少女が期待と心配の入り混じる眼で桃花を見つめる。
一つ、息を吐く。同時に一気に階段を下る。階段で勢いをつけるのは難しいがないよりかましといったものだ。
階段が終る。と、同時に跳躍する。桃花の体は驚く彼女の横を通り、そして手すりの先へと。
「いっけえええええええええ!!」
桃花の体が空を跳ぶ。そしてそのまま町に吸い込まれるように消えていった。
段々とおかしくなってきたけど気にしない気にしない。
耳すまかな…と思ったら最後は時かけ??w
のどかな感じでいいな
開幕戦当日。
満員御礼となったハルトシュラーズの本拠地・ハルトシュラースタジアム。
そんな球場の様子を、VIPルームから満足げに見つめる人物がいた。
彼女を知らぬ者から見れば、その姿は幼さの残る少女にしか見えないことだろう。
だが彼女は、外見の何百倍という月日をすでに生きている。
この人物こそが、S.ハルトシュラー。
世界的大企業「ソーハツ」の創始者にして、ハルトシュラーズのオーナーである。
「なあ、倉刀」
ワインで口をしめらせると、ハルトシュラーは傍らに控えていたチーフスカウトの倉刀作に声をかける。
「ついに開幕戦を迎えたわけだが……。私のチームは勝てると思うか?」
「難しいでしょうね」
ハルトシュラーからの問いに、倉刀は躊躇なくそう答える。
「たしかに、実力のある選手は集めました。ですが、それでもまだ足りない。
高卒ルーキーをレギュラーで使わざるを得ない状態です。
勝てる可能性はもちろんあります。ですが、それは決して高い可能性じゃない」
「そうか」
悲観的とも取れる倉刀の言葉を、ハルトシュラーは素直に受け止める。
だがその口元は、笑みの形に歪められていた。
◇ ◇ ◇
桃花は、ひどく緊張していた。
彼女は、八番セカンドとして開幕戦のスターティングメンバーに選ばれたのだ。
桃花はその事実に嬉しさと同時に、不安も感じていた。
高校時代、評価してもらえるだけの実績を残したという自負はある。
だが、それでも自分は高校を卒業したばかりのルーキーに過ぎない。
そんな自分にスタメンを任せねばならないほど、ハルトシュラーズの選手層は薄いのだ。
「まあ、今更私があれこれ考えても仕方ないか」
蚊の鳴くような声で呟くと、桃花はマウンド上の投手に視線を向ける。
そこにいるのは、移籍組の一人であるキョン。
去年は京都アニマルズのエースとして20勝5敗、防御率1.98という驚異的な成績を残し、先発投手にとって最高の名誉である沢村賞を獲得している。
「さすがだな……」
桃花の口から、今一度つぶやきが漏れる。
キャンプで彼女が接したキョンは、大投手のオーラなどまったく感じさせない、むしろ親しみやすい男だった。
/: : : : : : /: : : :/: : : : : : : ヽ: : : : :: : `、
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|: : : :,-リ: : : | "疋;:ソ` '`'-、_.i: : |: |: ヽ
.|: : :/-、',: : | , f:テリ` /: : |: i丶
.ソ、::l,.( _ リ、:| l .` /l: :/| i
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リl: ::| | ′ //
l::|リ ヽ ` ― - 、 //
,リ `、 `" /リ お前はトマトか!
,----亠--- 、_`.、 / 彡
// ̄ ̄⌒`ヽ` \::`::-、,_, ´.
だが、今の彼は違う。マウンドに立ったキョンは、鬼神を思わせるほどの圧倒的な闘志を纏っていた。
-‐‐- 、 ,、 ,. -‐‐‐‐- 、
.... .. .:.:::ヽ /,iヽ /:::.:. . . .::::ヽ
.:. .::.. .:.::::`、 ´ l | / {::::::.: ..... ........ .:.::::j.、
`゙'ー-、:::::::::} ト j /〃!::::.:. .:.:.:. .:.:.:.:.:. .:.:} |
`ヽj ___,.--、___ 」 l L___/∠/ ハ;::::: :::::::: ::::::::::. :シ/
、 ヽ ヽヽー-‐'、 ヾヲj rトj バ__)'フ ヾ;;::::::::::::::::::::://
.\.:.:.:.:.....:.:.:..jヽ (ヽ\ r-ニ ヾl | `ー'´/`ー-ニ==-//7
ヽ `゙'ー- 、;,;,jヾ;、 `ヽ ゝヽ}`゙ヽ('o)r'フ_/) ......:.:.:.////l
`゙'ー- 、_.:.:.:.ヾ、jy-‐-、 /ト、,ハ_(_(Y,)),r'´-、 .:.:////.:ノ
`゙'ー--、___`ヽ;,;,;,;jハ ∨ゞ{!iYト、ヽ∨/ノ ヽ,:.:.:} .:.:.:/.:./.://:./
> ヽ三ニ=-‐‐ゝ⌒'ー-‐‐-;ッム、`ー〉∧〈j___,}.:.:.j.:.:./../:∠-‐'ヽ\
`ー-{`゙'ー- 、/ /r'´ ̄/:..._,>ヽヾyシノ_,r-、ノ:::::レ'ー--、 ヽハ
|`゙'ー-ト、<<〃/ /⌒ヾ〃⌒ヽ、ソ ̄´,〃ヽ/ー‐´ ̄ ̄ヽ_ jハ
\___ゝト、{/ ∠{,,..:::::ソy `、ー-</ /´ ̄二ニー-‐ニコrく__ハ
`ー-、 {//´...:.::j ̄´ ヽ、_,.-‐-ヽ, レ'ヾシリ彡ハ、 {´r'/`ヽ`ヾ、
{ 〉ゞ,...:::∧ {三彡ミト、jr' ` ̄ ̄´ー-ヾ{ /⌒ヽ \
{ ( `)ー' ヽ,,._,,.-ゞ彡シ)lハリ〉 ゝ、ヾ;;,;,シハ、 ヽ
ヾ`フ\ 入リシ` ̄∨ソ `ー---‐、_,.-、ト、_
`ヽ ヽ__ノノシ人__,r一'/ ヽ/⌒ヽ)
`ー-'ツ二ニ=‐、ノ ,ノト、_ 「`r- ハ
く(ヽ/(⌒)ゝ/,r'´/ r' {ゝニソ〃
_〉}\二/ /} / / 〉 `  ̄ ´
《∨ i Y i l // ト、
jゞリ ` j ´ / | ヽ / _ヽ
※あくまで桃花のイメージです
「プレイボール!」
審判の声が、球場に響き渡る。
20XX年開幕戦、創発ハルトシュラーズ対東京メッツが、この瞬間に開始された。
調子に乗ってまた書いた
やっぱり反省はしていない
∧_∧
(0゚・∀・) ワクワク
(0゚∪ ∪
と__)__)
kyonwww
122 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/06(土) 22:53:01 ID:SyV4+5RT
キョンは引っ張りだこだな
ツッコミって重要だからな。
・・・え、違う?
124 :
蒼髪の守護者:2010/02/07(日) 09:41:33 ID:KtWA9V5V
「ふう」
椅子に座っていた女性はため息をついた。
まさか携帯の規制がこれほどまでに過疎を進行させるとは、迂闊だった。だからといって彼女には為す術も無いのだが。
「あ、レスついてる」
彼女が続きを書いたSSの、作者からの感謝の言葉だった。曰く、あなたのお陰で次の展開が次々と浮かんで来ました、と。それを見て彼女は穏やかな微笑みを浮かべた。
「調子はどうです、発子さん」
ムッとして振り向くと、そこにはやはり創作文芸板の守護者がいた。この板の魔王と二人、彼女の嫌う存在だ。
「その名前で呼ばないでくださいと、いつも言っているじゃありませんか」
「失礼しました、クリシェ」
「それでよろしい」
クリシェと言い直された女性は満足げに頷いた。だが、クリシェとは、フランス語で「常套句・使い古された表現」という意味になる。彼はそのことを知っていて彼女に教えていなかった。今日も「ありふれた用法」と言われて喜んでいる彼女を見て笑っていた。
「それで、何の用なのですか?」
どうせ禄でも無いことだろうと思いつつ尋ねる。すると彼は首を傾げてしまった。
「いえ、特に用はありませんが。……用がなければ来ては行けませんか?」
そうしてまた歯の浮くような台詞を並べる。彼はいつだってこういうふうにからかう。だからクリシェは彼を嫌っていた。
「さ、て。朝一番の発子さんも拝んだ事ですし、私は帰るとします」
そう言って笑って、背を向けた。頭にカッと血が上る。
待ちなさい!反射的にそう叫ぼうとしたが、彼を引き止める理由が無い。というか、帰ってくれるのは喜ばしいことなので、彼女は結局何も言わなかった。
「はあ」
椅子に座り、またため息をつく。今日もまた気怠い一日が始まろうとしていた。
>>124の初出は雑談スレ19の
>>499から
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1263372887/499-516 名前:発子・クリーシェ
発子という名前にコンプレックスを持っているので、
クリーシェと呼ばないと怒り出す。
だが、クリーシェとは実はフランス語で「常套句・使い古された表現」という意味。
創作発表版の守り神であり守護者的存在な美少女。
床まで届くような、スカイブルーの長髪が特徴。
創作板とその関連wikiを更新・管理するのと、
板内のスレを巡回するのが趣味であり日課で
時々創発板のスレに名無しで書き込みする事もある。
今日も今日とて創作発表版のスレを巡回し、感想を付けたり、煮詰まっている作品の続きを書いたりしている。
スレに作品を投稿する人が、うっかり作業の途中で寝てしまった場合等に
寝ている間にこっそりと続きを手伝ってくれたりもする。
書いた(描いた)覚えがないのに、いつの間にか作品が完成していたら
それはきっと彼女の仕業。
最近の悩みはもちろん過疎。なんとかしたいとは思っているが、何もできない、そんな無力な自分を責める日々。
目立ちたがりだが、 大勢から注目されると
恥ずかしくなって真っ赤な顔で逃げ出しちゃうという難儀な性格。
神話の時代から創発板の覇権を巡り、魔王であるハルトシュラーと戦い続けていて
創作発表板の中では住人同士で陣営を二分している。
今までに創作発表板で創作された数々のキャラ達も
みんなどちらかの陣営に属して争っているらしい。
発子さん今日も管理お疲れ様です。
「はい。チャーシュー麺のフダの人〜」
八戸駅の構内にある小さな立ち食い。狭い室内にはラーメンの香りが漂う。
K市から新幹線の通る八戸駅までは結構な距離がある。バスで青森駅まで行き、さらに特急に乗らなければならない。
今年の10月には青森駅まで新幹線が開通するらしいが、現状では新幹線に乗るには八戸駅まで足を運ばなければならない。
桃花は東京へ戻ろうとしていた。無限一族の秘密が記された古文書は寄生に奪われ、影糾への手掛かり、悪世巣は、自らが知らぬ間に桃花自身の刃に倒れた。青森に留まる理由は無い。
「チャーシュー堅いな‥‥‥」
八戸駅の構内は寒い。出来合いの味の無いチャーシューが乗ったラーメンも、身体を温めるにはちょうどいい。
「ごちそうさま」
桃花はセルフサービスのカウンターに器を返す。店のおばちゃんの「ありがとう」という一言を背に、桃花はホームへ歩きだす。
そろそろ新幹線が出る時間だ。
ーーーあの時。あの崖の上の決戦。
金色に輝く妖狐。悪世巣。あの人間を遥かに超越した力を前に、私はどうやってそれに打ち勝ったのだろう?
圧倒的だった。今までの何よりも‥‥‥
桃花にその記憶は無かった。気が付いた時は、英子の民宿で横になっていた。
その空白の時を知っているはずの英子は、口をつぐんでその時の事を語ろうとはしなかった。
「これが‥宿命って奴なのかな‥‥‥‥」
英子はただ、そう言っていた。
英子はもう少し青森に留まるように言ったが、桃花は聞かなかった。見送りすら拒否した。
まだ傷も癒えぬ身体だったが、悠長にしてはいられない。
新幹線が出る。窓の外は今だ雪だ。
いずれこの雪景色も消える。数時間もすれば、桃花は再び東京に立つ。
社内では幼い姉妹がはしゃいでいる。新幹線は始めてだろうか。もの珍しい光景に、目を輝かせている。
たしなめる父親の言う事も聞こえない様子だ。
「彼方‥‥‥」
思わず口からこぼれる。幼い姉妹は、かつての自らと重なりあった。
懐かしい記憶を蘇らせる。向こうに着けば、また戦いの日々だ。せめて今だけは、懐かしさに溺れたい。
桃花は目を閉じ、そして、眠りの中へ落ちて行った。
ーーー冷たい床。壁にかけられた木刀。正面には神棚が備えられていたが、その扉は閉ざされている。
それは、古武術の裏稽古をする際の習わしだ。
「痛いよお父さん‥‥」
「どうした桃花?そんなんじゃ無限の免許はやれんなぁ」
「外雪降ってるよ。もう止めようよ。お腹空いたよ〜」
「うーん〜そうだな。今日はもう終るか。英子おばさんも待ってるだろうし」
無限鷹寅。
青森にて無限流の道場を構る、桃花と、そして彼方の父親。
道場を構え数百年経つが、門下生は居ない。そこは鷹寅と桃花の為の場所だった。
「帰る支度しなさい桃花。ちゃんと彼方も起こしてくるんだぞ」
道場の隅では分厚いジャンパーに包まれ彼方が眠っていた。桃花同様に父と道場へよく来るが、父は決して彼方に稽古をつけようとはしない。
それは、ただ単にまだ彼方が幼いからだと、桃花はその時そう思っていた。
「彼方起きて!帰るよ」
「‥‥ん‥彼方まだ眠い‥‥」
「こんな所で寝たら風邪引いちゃうよ。起きて彼方」
「ほら、二人とも早くしなさい」
「あら、お帰りなさい。さんびがったべぇ?なにもこった日まで稽古いがねしても‥‥」
「すみません英子さん」
「ん?なしたば?」
「津軽弁わかりません」
「嘘つけ!」
温かい家庭だった。英子の作る夕食を、家族と一緒に食べる。母は居ないが、いたって普通の、有り触れた家庭だ。
「ねーお父さん?」
「なんだい桃花?」
「なんで桃花って桃花って言うの?」
「ん?名前の由来知りたいのか?そうだなぁ。桃花が男だったら「刀火」だったんだけどなぁ。女の子には武骨過ぎるから当て字で「桃花」にしたんだけど‥‥‥」
「当て字って何?」
「え?ああ、当て字ってのはな、読み仮名に合うように適当な漢字を‥‥」
「桃花よくわかんない」
「え?ははは。いずれ解るよ」
「じゃあ彼方はなんで彼方って言うの?」
「彼方か?彼方の名前の由来はな‥‥‥‥‥‥なんだ」
「よくわかんない」
「いずれ解るよ」
外はうっすら雪が降り始めていた。今年もまた、苛酷な冬が訪れる。その冬は、桃花の苛酷な宿命が回りはじめた冬だった。
「お父さん何見てるの?」
「え?あ、あーダメダメ!見ちゃダメ!」
父は古文書の写しをよく読んでいた。桃花と彼方は中身が気になり、盗み見た事があったが、何を書いているかは殆ど解らなかった。
その時は父にこっぴどく叱られ、道場でギッタギタにされるハメになった。
それ以来、彼方は古文書に近づこうともしなかったが、桃花はまだ興味がある。
「彼方はもう寝たんだろ?桃花も早く寝なさい」
「眠くないもん」
「寝なさい」
父は桃花を寝室へ連れて行き、寝かし付ける。横では彼方が寝息を立てていた。
彼方を見る父はどこか悲しそうだ。桃花にはそう見えた。
鷹寅はゆっくりと姉妹の寝室を出る。鷹寅は知っていた。無限の宿命は娘達の世代で動きだす。止められない。
外はうっすら雪が積もっていた。感じていた。その時は近いと。
「寝たの?」
「ええ。やんちゃな娘で大変ですよ」
「そうかな?大人しい子に見えるけどね」
父は冷蔵庫から缶ビールを取り出してプルを起こす。寝酒のつもりだったが、さして意味はなさなかった。
ここ数日は眠れない日々が続いていた。胸騒ぎがするのだ。『奴』の夢を見た。闇を纏った怨霊の夢。
『奴は』高らかに、現代へ復活を宣言していた。
もうすぐ、『奴』は現れる。
ガタン!
突然の音。音の出所は台所だった。台所の包丁が、床に突き刺さっていた。
「一体誰が‥‥?」
迷う暇なく、突風が家を揺らす。同時に床に落ちたはずの包丁は、意思があるかのように舞い上がり、鷹寅へ飛び掛かる。
すんでのところへ回避し、柱へ包丁が突き刺さる。鷹寅の頬には一筋の傷が出来た。
「さすが無限鷹寅。このようなやり方では失礼だったかな」
声が聞こえた。同時に柱の包丁がうごめく。
寄生だ。しかもこいつは‥‥‥
「私の名前は練刀。我が主、迎えに参った」
九十九神。物に着いた霊。刃物に着いた九十九神は練刀と名乗った。
突風はさらに続く。家が倒壊しそうなほどの激しい風の中に混じって、声が聞こえる。
「鷹寅に構うな練刀よ。それよりも先に成すべき事がある。この家と鷹寅は後で悪世巣がまとめて焼き払うだろう」
「了解した。婆盆よ」
とうとう来た。『奴』に寄生された、悲しき妖達。
もはや彼等も、『奴』と同じ寄生となっていた。
「桃花!彼方!」
鷹寅は叫んだ。
代理投下終了
132 :
代理:無限桃花〜天神の宿命・後編〜:2010/02/07(日) 19:31:16 ID:KtWA9V5V
どこからか隙間風が桃花の頬をさすった。その冷たさは桃花の眠りを妨げる。外の風は相変わらず強い。
古い家は雪の降り始めが一番寒い。完全に雪が積もれば隙間は埋まるが、外はまだそれほどの雪では無かった。
「うーん‥‥寒い‥‥彼方は?」
返事は無い。先に布団に入った彼方は、既に眠っていた。
また、隙間風が吹いた。だが、今度はただの隙間風では無かった。
桃花と彼方の寝室の襖が、そっと開いたのだ。
冷たい風が入ってくる。桃花は襖が開いた事には気付かず、布団に潜り込む。
襖の僅かな隙間からは、黒い影に包まれた包丁が侵入する。桃花はまだ気付かない。その包丁の影はやがて形を変え、人の姿となった。
筋骨逞しい、練刀の形骸。その手からは刀が直接生えていた。
そして一歩、また一歩。桃花と、彼方の元へ近づく。その時‥‥‥
「おおおおおお!」
襖は突如切り裂かれ、バラバラになった。鷹寅だ。
「桃花!彼方!」
鷹寅の声は桃花の耳にすぐさま届く。桃花は起き上がり、そして練刀と、それに相対する父を見て叫び声をあげた。
「ふっ‥‥お前には用はないぞ鷹寅。いくら陰陽師の力を持っていたとて、我らには敵うまい。我らはただの妖では無いのだから」
「黙れ!桃花!彼方を起こせ!逃げるんだ!」
「逃げる?どこへだ?京から東国へ、そしてはるばる霊域であるこの地へ逃げても、お前達無限の一族は見つかった。これ以上どこへ行く?」
鷹寅は練刀へと手にした刀で斬りかかる。
133 :
代理:無限桃花〜天神の宿命・後編〜:2010/02/07(日) 19:31:59 ID:KtWA9V5V
「対魔の呪札を貼った剣‥‥だがそれでは我らには敵わない」
練刀は鷹寅の剣を受け止め、そのまま鷹寅を突き飛ばす。廊下へ弾き出された鷹寅は直ぐさま体制を立て直し、練刀への反撃を試みる。
「式神!不浄狸!」
鷹寅は式神と呼ばれる配下の御霊を呼び出した。それは練刀へと襲い掛かる。鷹寅は再び叫んだ。
「桃花!早く彼方を起こすんだ!」
「無駄な事だな。お前の娘達は死ぬ」
ーー死ぬ?
練刀は娘達の秘密を知らないと読んだ。こいつは『奴』の配下の中でも下っ端だろう。
そうすれば、まだ付け入る隙があるかもしれない。
「不浄狸よ!娘達を!」
鷹寅は式神を娘達に向かわせ、自身は呪札を貼った太刀で練刀へ立ち向かう。
「式神よ!娘を‥‥!」
「あくまで抗うか。いいだろう。婆盆の言い付けは後回しだ」
「うおおおお!」
鷹寅は刃の化身に決死の戦いを挑んだ。
「彼方!起きて彼方!」
桃花は幼い妹を必死で起こそうとするが、彼方は一向に目を覚まさなかった。
やがて父の放った不浄狸が現れ、桃花へ擦り寄って来た。
「あなた達は‥‥‥お父さんの‥‥?彼方が‥彼方が起きないの!!」
桃花の必死さは不浄狸にもすぐに伝わる。不浄狸は彼方へと近寄り、彼方を起こそうとする。だが‥‥‥
「フーーーーーッ!!!」
不浄狸は、彼方へと威嚇の声を上げた。手遅れだった。
「どうしたの?彼方は起きたの?ねぇ、彼方‥‥キャァア!!」
突風。それは窓ガラスを突き破り、室内へ破片を降らす。そして‥‥‥‥
「その娘から離れなさい。桃花」
その風は言った。舞い上がったガラス片や雪は、人に近い形で渦巻いている。そしてゆっくり姿を表す。
「無限の天神よ。彼方から離れなさい」
そこに現れたのは、葉扇子を持った、天狗だった。桃花はもはや叫ぶ事すら出来ない。余りの恐怖に、心も身体も硬直していた。
「私は、無縁天狗。あの『お方』からは婆盆という名を頂いた者だ」
134 :
代理:無限桃花〜天神の宿命・後編〜:2010/02/07(日) 19:32:50 ID:KtWA9V5V
不浄狸はすぐさま婆盆と名乗った天狗へ襲い掛かる。
しかし、一陣の風と共に、瞬時に切り刻まれた。後に残ったのは、ただの札だけ。
「主よ。迎えに参った。さぁ、千年の怨み。今こそ晴らそう」
彼方の周りには黒い影が渦巻いていた。それもまた人の形となり、ゆっくりと彼方を抱き抱える。
「む?なるほど。まだ幼い故すぐには動けないか‥‥‥では時が経つまで我らが護りましょう」
彼方を抱える黒い影は、彼方を婆盆へと渡した。
桃花にはどうする事も出来ない。父の式神すら切り刻むほどの妖。幼い桃花には手に負える相手ではない。
「やめて‥‥‥彼方を連れていかないで‥‥!
「無限の天神よ。我らが天神は我らの元へ帰る。影糾は再び我らを率い、日出る国と戦う」
桃花には意味は解らなかった。だが、その名前は忘れない。婆盆と、影糾。妹を、彼方を連れ去った者の名前。
「ではさらばだ。無限の天神よ」
婆盆は再び風を起こし、窓の外へ飛び出していった。
「どうした無限鷹寅。陰陽術も剣術も、我らにはやはり及ばんか」
鷹寅は苦戦していた。あれほど修業を積んだはずの剣も、刃の化身には通じなかった。敗北はもはや時間の問題だった。その時‥‥
「練刀よ、やはり遊んでいたか」
「婆盆‥‥‥そして、影糾か」
「我らは先に行くぞ。お前はさっさとそいつを始末しろ」
「ふん‥せめて姿を表して言え」
練刀は姿を見せない婆盆と影糾に苛立ちを覚えた。いつまでも下っ端扱いする連中には腹が立つ。
「では鷹寅、さらばだ」
練刀の刃が、鷹寅の胸へ突き刺さろうとしていた。ちょうどその時、桃花はその場へ現れた。婆盆に連れ去られた彼方。その事を父へ報告する為に。
「‥‥桃花‥‥!」
練刀の刃は、鷹寅の胸へ、深々と突き刺さった。
135 :
代理:無限桃花〜天神の宿命・後編〜:2010/02/07(日) 19:33:34 ID:KtWA9V5V
鮮血がほとばしる。父はその場へ崩れ落ち、手にした剣は床へ力無く転がった。
「お‥‥父さん‥‥?」
「桃花‥‥英子おばさんと‥‥逃げろ‥‥」
父は消え入りそうな言葉でそういった。
後ろには既に英子が立っていた。
練刀は既に影に包まれ、消え去ろうとしていた。この後、この家がどうなるのか、その運命を知っていたから。
「ホラ桃花!にげるよ!早く!」
「嫌!お父さんが‥‥!」
桃花の身体からは黒い影が滲み出る。それは遥か昔の、無限一族の呪い。
「お父さん‥‥彼方!」
桃花のみぞおち辺りから血が吹き出た。黒い刀身と共に。それは激痛によって泣き叫ぶ桃花を尻目に、その姿をこの世へ表す。
「黒龍‥‥‥二左衛門‥‥‥」
父は言った。そうか‥‥では『奴』は蘇ったか。
桃花はその黒い刀が何なのか解らなかった、ただそれが、自分の物だという事は理解できた。
「お父さん‥‥」
「桃花‥‥強くなりなさい。人を恨んだり、嫉んだりしてはいけないよ。悪い奴に‥‥『奴』のようになるからね」
「うん。わかったよ‥‥‥」
「彼方に‥‥‥村正を持たせてはいけない。手遅れだったが‥‥桃花、お前がやるんだ」
「お父さん!彼方が‥‥!彼方が!」
「解ってる。さぁ、早く行きなさい」
「お父さん!」
英子は桃花の腕を掴み、外へ駆け出した。外へ出た瞬間に、狐の声が響き、同時に桃花の生家は燃え上がった。
思い出が詰まった、そしてこれからも思い出を詰め込むはずの古民間は、紅蓮の炎によって失われる。
地面にはうっすら雪が積もっていた。
「‥‥では、遂に奴らが現れたと。鷹寅は敗れたか」
「残ったのは桃花一人です。あとは‥‥家の焼け跡から‥‥刀が」
「そうか‥‥では一緒に京都へおいでなさい。ここでは何も出来ないでしょう」
136 :
代理:無限桃花〜天神の宿命・後編〜:2010/02/07(日) 19:34:18 ID:KtWA9V5V
「私も‥‥でしょうか?」
「『奴』も京都へはそう簡単に手は出せない。それに青森には御前稲荷‥‥いや、野狐に身を落とした妖狐が居る」
京都の無限一族分家から覇権された陰陽師。彼は英子の電話を受け急遽青森まで駆け付けた。
『奴』の復活と黒龍二左衛門村正。それは無限一族の戦争の合図。
「おばさん」
桃花は言った。
「私、大丈夫だよ。お父さん言ってたもん。強くなりなさいって。だから京都いっても大丈夫だよ」
黒い刀を抱えた桃花はそう言った。
「ふむ‥‥ではすぐに参りましょう。『奴』が復活した以上は普通の妖が寄生へなっているやも知れぬ」
桃花は青森を後にした。京都で強くなる為に。陰陽師とは違う、対寄生の修業を積み、無限流の剣術と柔術を修めた。
そして15歳の時、桃花は京都を離れ、東京へ降り立った。
『品川ー品川ー』
社内アナウンスが聞こえた。新幹線のシートへ深く沈んだ桃花は、深い眠りから目を覚ました。
「夢‥‥かぁ」
懐かしい、悲しい思い出。今、桃花はあの時と同じように東京に立つ。
品川駅のホームに吹く風は青森よりは温かい。だが、桃花には英子と過ごした青森より冷たく感じられる。
影糾への手掛かり、寄生四天王の内、二人は倒れた。残るは一人だ。
婆盆・無縁天狗。捜すしかない。彼等に頼ってでも。
桃花は、霞ヶ関のとあるビルへ電話をかけた。
137 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/07(日) 19:35:32 ID:KtWA9V5V
代理ここまで
今回は回想編か
なかなかハードな話だねえ
では、こっちも投下するぜ!
キョンは、その実績に見合う素晴らしいピッチングを見せていた。
曲者揃いのメッツ打線に、二塁を踏ませない。当然無失点だ。
桃花も、「これほど楽な守備は初めてだ」とまで思うほどだった。
だが、好投を見せているのはキョンだけではない。
メッツの先発投手は火浦健。昨シーズンの成績は15勝10敗。
キョンには及ばないが、充分に一流と言える結果を出している。
むしろチームの戦力差を考えれば、キョンに匹敵すると言ってもいいだろう。
そして彼も、今宵その実績に見合うピッチングを披露していた。
試合は投手戦となり、0対0のまま8回裏まで進行した。
8回裏、ハルトシュラーズの攻撃。
この回先頭のアジョ中が倒れ、ワンアウト。打順は、桃花へと回ってきた。
今日の桃花は、3打数ノーヒット2三振。
火浦の球に、まったくタイミングが合っていなかった。
今日の火浦のストレートは、平均して140キロ代中盤だ。プロの投手としては、「やや速い」というレベル。
だが高校を出たばかりの桃花たちにとって、それは「目にも止まらぬ剛速球」である。
むろん、ピッチングマシンが投げるもっと速いボールと対戦したことはある。
だが、人間の投げる球と機械が投げる球が同じはずがない。
物理的にだけではなく、心理的にもだ。
マシンが文字通り機械的に投げ込んでくる球と、一流のエースピッチャーが投げる球をどうして同じと思えるだろうか。
事実、桃花だけでなくハルトシュラーズの高卒ルーキー組は誰一人として火浦からヒットを打てていない。
(このまま終わりたくはないな……)
声には出さず、おのれの胸の中で桃花は呟く。
彼女は、それほどプライドの高い人間ではない。
それでも、このまま終わるのはいやだった。
この打席こそ、打つ。
静かな決意を胸に、桃花は打席に立った。
だが、決意だけで打てるほどプロ野球の世界は甘くない。
かする気配すらない空振り二回で、桃花はあっという間にツーストライクと追い込まれていた。
ふと、桃花はマウンド上の火浦の顔を見た。
火浦は、平然としていた。道ばたを歩いているときのような、ごく普通の表情だった。
試合の真っ最中だというのに、だ。
つまらない。
桃花は、そう言われているような気がした。
むろん、火浦が本当にそう思っていたのかは当人にしかわからない。
もともと、火浦は感情がさほど顔に出る人間ではないのだから。
だが、桃花はそう感じてしまった。それは、紛れもない事実だ。
舐めるな。
次の瞬間、桃花はボールを見るより先にバットを振っていた。
「え……?」
バットがボールをはじき返す音が、桃花の鼓膜を振るわせる。
一拍の間を置いて、彼女は自分が火浦の球を打ったのだと理解する。
すぐさま、桃花は走った。
桃花の一番の武器は、足の速さだ。
もともと高校通算打率四割という成績も、打撃技術というよりは足で稼いだ数字だ。
例え打撃がまだ通用しなくても、その自慢の俊足はプロでも十分に通用する。
「セーフ!」
記録は、ショートへの内野安打。無限桃花、プロ入り初ヒットであった。
ワンアウトランナー一塁となり、打順は九番のピッチャー・キョン。
監督はここで代打を出さず、キョンをそのまま打席に送る。
____
/__.))ノヽ
.|ミ.l _ノ 、_i.) そんなん当たり前やろ
(^'ミ/.´・ .〈・ リ 得点圏にランナーがおるならともかく、
.しi r、_) | この場面で完封目前のエースを交替させられるかいな
| (ニニ' /
ノ `ー―i´
そのキョンは無難にバントを決め、桃花を二塁に進める。
/ .: .: :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽ、ヽ,
/ .: .: :. :. :. :. :. :. :. :. :. : i:. :. :. :. :. :. :ヽヽ
,' .: ,: .:. :. :. :. ;. :. :./l:. :. /l:. ;. :. :. :. :. :. l
l .i :.l.: :. :.,.i:.., 'l:. :./ l:. / l:..lヽ;.. ;、:. :. :l
l :l:. :l :. :.l l/ l/ l/ l/ l:/ l:. :. :,,!
レl:.r.i :. :. l.  ̄`'ー_ 、 , ,._ ' ´^ !:. :./
!l.'´!:. : l ''!ニブ '!ニフ` !:.,i/
ヽーl:. :l' ,':./'
レヽl: l u i l:./
〉N ' ,i/
/l l ヽ , '
,.イ .:.:.! l ヽ、 c. ニ っ ,イ.. ヽ、 (公式戦でバントなんて5年ぶりだから、
,.. ' ´. l.:.:.:.:.l. l ヽ、 ´ /. !.:.:.l..`ヽ、 上手くいくかヒヤヒヤしたぜ……)
,. '´ ...:.:.: .:!.:.:.:.:.:l ヽ ー './,' !.:.:.:.!.:.:... `ヽ、
....:.:.:.:.:.:.:.:.:!.:.:.:.:.:.:l ヽ、 / !.:.:.:.:.!.:.:.:.:.:.:.....`ヽ、
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:.:.:li , 'ト 、_ ,. 'ヽ l.:.:.:.:.:.:!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..ヽ,
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!.:.:.:.:.:.:.:..!! /ヽ l O !! ' >':;ヽ !.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l.!
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:.:.:.:.l l /`' 、>ー'-.く/ ヽl.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!.:l
場面はツーアウトランナー二塁と変わり、続く打者は一番のルパン。
彼はわずかに甘くなった変化球を見逃さず、打球をライト前に運ぶ。
桃花は全力で、三塁まで走った。ベースコーチャーが腕を回しているのを確認すると、迷わず三塁を蹴ってホームへ向かう。
ボールの位置を確認する余裕など、今の彼女にはない。
ただ、駆け抜けるのみ。
ハルトシュラーズに、待望の1点が入った。
「ナイスラン」
ベンチに戻ってきた桃花に、穏やかな表情のキョンが声をかける。
「あ……ざ……ます……」
それに応えようとする桃花だったが、全力疾走の直後で満足にしゃべれない。
キョンはそんな彼女の様子に微笑を浮かべながら、その肩を叩く。
「あとは、俺に任せろ」
◇ ◇ ◇
九回表、マウンドに立つエースの姿を、ブルペンのモニター越しに見つめる二人の選手がいた。
ハルトシュラーズのリリーフピッチャー、霧崎鋏美とリュウタロス(本名:シン・アスカ)である。
, '  ̄ ヽ
! ノ、ヽ, _!
!i _.゚ヮ゚ノi ミ どうやら、今日は我々の出番はないようですね
((!´ ヽ¨ノ ̄]つ
`凵 o 厂
∪ ノiiヽヽ
レ ||‖,ヽ!
. ヽ|| |ノ
_...,,_ _...,,_
‐=ァ´:::::::::::`' ......::`''=-
/:::: : .::::::::::::::::::::::'::;'、
/:::: ::::..::.::::::::::::;;;;:::::;;;;:ヾ`
//. :::::::::::::::;;;::;;;;:;;;;;;;;;;;;;;ト'、
/イ::::::r'、;;;;;;::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;}`
/;::;::::', l;;;;;;;;;;;;:=''" ̄ ̄`ヽ どうでもいいよ
´ |;ハ::::ヾlハ''"_,,,...-―''"´`'''−..__ 俺リュウタロスだし
,.-'‐'"´ ̄_;;;:::-―- 、:::::::::::r―-、`ー、
!ヽ:::::::; '´ `ヽ、/ `ヽ::'、
,':::::ヽ/ ゙r;',
lラシ:/ , }`丶
_{/‐''´ | ',
======:、 f'_,.‐''´ ノ/ } ヽ
___|_|___|_) / /'´ ! ヽ
゙!‐ ┴―――‐''―-...,,,_ | }
―――――― ' `'''ー ‐-...,,,__ {` ノ
わけのわからない理由でふてくされるリュウタロスに、鋏美は苦笑いを浮かべるしかない。
そうこうしているうちにも、キョンはアウトカウントを重ねていた。
二者連続三振で、危なげなくツーアウト。
メッツはここで代打の切り札、「スラッガー10番」こと富樫平八郎を送り出す。
だが彼とて、今日のキョンを止められない。
結果はセンターフライ。ルパンのグラブに打球が収まった瞬間、試合終了が告げられる。
創発ハルトシュラーズは、チーム最初の試合を白星で飾った。
投下終了
野球は観戦オンリーなんで、試合を細かく描写するとぼろが出そうで怖いぜ
投下おつ
みんなよく続くもんだ
いやいや、なかなかどうしてまとまってると思うぞ。
145 :
代理:2010/02/07(日) 23:08:44 ID:E2vs77tS
>>143 俺の桃花の話、続くどころか
完 結 ま で プ ロ ッ ト 出 来 て る 。
終ったら悪世巣とかの外伝とか本編から外れた桃花のSSもやるぜよ。
こいつも既にちょっと出来てる。
おかげで他の奴に手がつかねぇw
二科学の重量挙げ部とかw
すげえwww
147 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/08(月) 00:06:47 ID:Ioj1vO9J
なん・・・だと・・・? そこまで出来ているなんて大した奴だ・・・。
俺も大したやつになるために負けじと投下。理解なんて投げ捨てましょう。
気付けば図書館にいた。この図書館が前回のあの図書館であるかは彼女――無限桃花にはわからない。
両サイドには高い本棚が並んでおり、隙間なくぎっしりと色とりどりの本が入っている。
桃花は試しに近くの本を取り出してみるか、理解出来る云々の前に表紙の言葉が理解出来ない。
そして何よりも本が開かない。違和感を感じつつ諦めて本棚に本を戻す。
余談ではあるが日本以外の図書館を見たことあるだろうか?
我が国日本は地震大国が故に本棚をあまり高く作らない。それゆえにどこかこじんまりした印象を人に与える。
ただ他国において、地震の少ない国ではこれでもかと言うくらい本棚を高く作る。高く作れば当然本がたくさん入る。
もしも興味があるならば一度調べて見れはいかがだろうか。豪華な図書館も物語の中ではないのである。
話を戻そう。
桃花は本を眺めながら歩いていた。残念なことに読めそうな彼女に読める本はない。
視点を動かしてみよう。この図書館はかなり広い。装飾もかなり豪華に作ってあり、所謂『外国の図書館』と言った感じがする。
ちなみにだがここは図書館ではない。とある館の図書室なのである。最もここを主に利用するのは図書室の主とその仲間達と言ったとこか。
本棚の並びは綺麗に整頓されているため物を探す上でわかりやすい。が、膨大な書物があるにも関わらず看板や目印があるわけではないので
何がどこにあるかちゃんと把握しているのはここの主とその使い魔(だと思われる)くらいである。
桃花が何個目かの曲がり角を折れると少女が本を棚に戻しているのを見つけた。
「すみません」
「え、あれ? どなたですか?」
当然の疑問であろう。別に全ての窓が開かれているわけではない。入り口以外から入るとしたらやはりドアを開けなければいけないのだ。
ドアを開ければ主か、もしくはこの使い魔(仮)が気付くであろう。
「いや、私も何がどうだかわからないんだが……かくかくじかじかなんだ」
「テラスから跳んだらここに来たんですか。不思議な話ですね」
「全くだ。まぁこんなことは慣れてきたから特に気にすることでもないが……」
「ちょうど紅茶を入れようと思ってたんですよ。一緒にどうですか?」
「……失礼だが見知らぬ人間をお茶に誘うなんて無用心だな」
「いえ、ここではよく乱入者が来るのでおかしくないんですよ」
「乱入者ねぇ」
「はい、本をたくさん借りて返さない乱入者が」
桃花は素直に興味が沸いたのでお誘いに乗ることにした。
案内された先は三方が本棚に囲まれた広間で中央にはテーブルが置いてあった。
テーブルのある一方だけ本が高く積んであり、本の隙間からちらちらと薄紫の帽子が見えている。
そしてそのテーブルは一階部分にあり、自分が二階部分にいることを知った。
何か違和感をする。さきほどから感じているものだ。本に対してのものかと思ったがそうではない。
桃花が来た道を振り向く。だがそこには本棚しかない。そう、道がないのだ。
先導する使い魔(仮)に話そうとするが少女はどういうわけか階段を使わず、ふわふわと飛んで降りていった。
階段を使って追いかける。下りながら少女の姿を良く見る。
赤い髪が肩口ぐらいまでは伸びている。それ以上は短くはない。白い長袖に黒のワンピースだろうか。
頭と背中に小さな羽がある。そこまでは何回見ても同じものだ。ただ他のところがおかしい。
髪は肩口で終わりかと思ったら腰まで伸びた。かと思うと短くなっていく。
体型も常に変化している。ここで違和感の正体に気付く。
148 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/08(月) 00:07:38 ID:Ioj1vO9J
この図書館も彼女も存在が、いや、存在が不安定なのだ。
ある程度までは決まっているようだが、それ以上は自由が利いているのだ。
特にこの図書室。今は階段を下っているが、一階部分についたと同時に一階建ての図書室になってしまうかもしれない。
こんなに大きなものが一定の形を保っていない。なぜこのように存在が不安定なものなのか。桃花にはわからない。
一階に着き、テーブルに向かう。本に埋れていた薄紫の帽子を被った主がこちらを見る。
「客人?」
「そうですよ。どうやら違う世界から迷い込んできたみたいです」
「突然すまない。私も何がなんだか……」
「違う世界、ねぇ……」
薄紫の少女が立ち上がり、桃花の前に来る。帽子だけではなく全身薄紫の服を来た少女も先ほどの使い魔(仮)
と同じく、体型髪型。そういったものが常時変化している。
「少し聞きたいのだが……こちらの世界ではモノは常に変化しているのか?」
「時間が経過する限り、物事は変化し続けるわ」
「言い方を変えよう。君も含め、彼女も。そしてこの図書館も一瞬たりとも一定の形を保つことはないのか?」
「質問の意味がわからないけど私から見たら、その子も図書館もずっと同じ形をしているわね」
彼女たちの見る世界と桃花の見る世界。不安定な世界と一定の世界。
この場合、どちらが正しいのだろうか。普通に考えてみれば薄紫の少女の言い分が正しいだろう。
だが、桃花において言えば。あらゆる世界を渡ってきた桃花から見れば。
おかしいのはこの世界なのだ。
桃花は頭を振る。常に変化するものを見ていると眼が疲れるのだ。さらに頭も疲れる。
「あなたには私がどんな風に見える?」
「全身薄紫の服に紫色の長髪。ただし、髪は結ばれたり結ばれなかったりを繰り返している。
身長も上下している。見た目も幼かったり大人びていたりと一定しない」
「そう……」
薄紫の少女が自分の席に戻る。桃花も近くにあった席を念入りに調べて座る。
使い魔(仮)が彼女の前に紅茶を置く。さすがにこんな世界の飲み物を取る気はしない。
「今までの世界ではこんなことなかったの?」
「なかった。全てが一定の形をして……」
何か引っ掛かる。そういえばもう一箇所。明確に記憶しているはずなのによく思い出せない場所がある。
最初の場所だ。桃花は思い出す。あの空間。暗かったような気がするがそれ以上を思い出せない。
ただ明確に記憶はしているはずなのだ。なのに思い出せない。矛盾している。
「心当たりがあるみたいね。多分ここはそこと同じような場所なのよ」
「同じような場所……」
薄紫の少女が自分の紅茶を飲む。意味ありげなことを言う薄紫の少女だが彼女も特に何かをわかっているわけではない。
彼女の視点から桃花を見ても特にぶれてはいない。安定している。桃花の狂言かもしれない。
だがどちらにしろやることは決まっている。
「飛べないの? 他の世界に」
「跳び方がわからない。あの時もなんで跳んだかわからないし普段も歩いてると気付いたら、だったからな」
「そう。それじゃあ気付かなければいいんじゃないかしら」
薄紫の提案に桃花が首を傾げる。
「つまり外への意識を切るの。ひたすら内面を見続ける」
「それは寝ろということか?」
「違う。寝てるときもどこに寝ているかって意識するでしょ。だからそういうのを全て断ち切るの」
「全て……」
桃花が腕を組み、目をつぶる。視覚は消えた。嗅覚も、味覚も、触覚も、聴覚も。全て。全て。
静かに。なにもなく。ただ静かに。安定していて。不変で。近く。遠く。明るく。暗く。大きく。小さく。
「……やっぱりこのやり方はむr」
眼を開けた桃花は見知らぬ町のカフェにいた。
「消えましたね」
「消えたわね」
一方、図書館。眼の前から忽然と消えた桃花のいた席を見る。紅茶がゆらゆらと湯気を立てている。
「夢かしら」
「夢ですかねぇ」
「よぉ! 本を借りに来たぜ!」
「ねぇ、本返してくれない?」
「死んだら返すさ!」
「いつも通りね」
「いつも通りですねぇ」
「え、なにが? お、紅茶用意してくれてたのか。さんきゅーさんきゅーじゃあ遠慮なく頂くぜ」
乙
紅魔館の図書室か
全てが変化し続けるってのは、東方キャラの外見設定が安定してないことの暗喩かね
150 :
代行:無限桃花〜千年の怨霊〜:2010/02/08(月) 09:05:21 ID:j7UQMaPf
「金色に輝く妖狐に‥‥‥天狗ですか‥‥。伝説級の妖怪達ですね」
黒丸は眉の間にしわを寄せた。
桃花の口から語られた寄生は、もはや黒丸達『ヤタガラス』の力ではどうする事も出来ないレベルの物だった。
「では、我々にはその天狗‥‥婆盆を探して欲しいと?」
「はい‥‥‥この前あんな事言った手前、すごい勝手な事だってのは解ってるんですけど‥‥」
「いいんです。どっちにしろ我々は桃花さん抜きでの活動は考えていなかった。あの後もなんとかして口説いてこいと上司に言われましてね。心がわりした理由は聞きません。一緒に戦っていただけるなら十分です」
「‥‥そうですか」
「しかし‥‥桃花さんの言うように、婆盆が無縁天狗だというなら、そう簡単には見つからないでしょう。我々は寄生専門として長い歴史はありますが、妖怪退治は専門外です。まったく未知の領域なんです」
黒丸は渋い顔をしたままだった。『ヤタガラス』にとっては、妖怪などどうでもいい存在だった。あくまでも寄生、それも人間に取り付く物だけを対象としていたのだ。
しかし桃花の話から推測すると、その寄生は妖怪にすら取り付く。妖狐や天狗、九十九神といった、神に近しいレベルまで。
「その‥‥金色の妖狐‥‥悪世巣と言いましたか。どうやって倒したか、覚えてないんですか?」
「はい‥‥覚えてるのは‥‥地面に押さえ込まれてる所までで‥‥」
「そうですか‥‥‥その妖狐、恐らく天狐でしょうね」
「天狐?」
151 :
代行:無限桃花〜千年の怨霊〜:2010/02/08(月) 09:06:18 ID:j7UQMaPf
「ええ。九尾の狐の上を行く、神格を持った狐です。ほら、稲荷神社とかに奉ってある。我々は一応神社庁の人間ですから。そこら辺は詳しいですよ」
桃花は悪世巣の姿を思い出す。確かに、あれは妖怪と呼ぶにはあまりに美しく、そして威厳ある寄生だった。
「妖狐は歳を経て尻尾の数を増やし、九尾になる。それはさらに力をつけると今度は尻尾が減っていき、やがては無くなる。桃花さんが見た炎の尾は一本でしたよね?なら相当な奴でしょう。御稲荷様も一本だ」
御前稲荷‥‥桃花の記憶にはうっすらとその名前があった。そうか、奴が‥‥
「多分、野狐と名乗ったのは寄生の大元‥‥影糾でしたか。その配下となったので、力を持ったまま神格を失ったか、何者かの配下に成り下がった事で自らを天狐と呼ぶには相応しくないと思ったか‥‥野狐とは、妖狐の中で最低辺のランクですから」
黒丸は淡々と語っていたが、相変わらず表情は硬い。
「あの‥‥他には『ヤタガラス』のような組織はないんですか?寄生じゃなく‥‥妖怪専門の‥‥」
「残念ながら政府内にはありません。寄生は人間に直接被害を出す為に遥か昔から現実的な脅威として認知されていました。だから公家社会の時代から、幕府、明治新政府そして現在まで『ヤタガラス』は存続している。
妖怪はまったく別の、それこそ陰陽師や僧侶などの領分でした。そして彼等とはあまり交流はない。寄生と妖はそれほど掛け離れた物と考えらえて来たからです」
「そうなんですか‥‥」
桃花は落胆した。あの天狗、婆盆はどう見ても妖怪だが、組織力をもって動ける『ヤタガラス』では見つけられない。
かと言って、かつて修業した京都の陰陽師には頼れない。組織力不足もあるが、彼等はあくまで伝統を受け継いでいるだけであり、戦いに向く連中では無いのだから。
陰陽師の血を受け継ぎ、かつ寄生とも戦える存在は、桃花一人だ。
152 :
代行:無限桃花〜千年の怨霊〜:2010/02/08(月) 09:07:19 ID:j7UQMaPf
「そんなに落ち込まないで下さい」
黒丸はそう言った。
「いくら相手が妖怪とはいえ、寄生である以上はまだチャンスはあります。我々は都内での寄生の動きだけなら常に監視している。その中で怪しいのをさがせば‥‥」
「監視?どうやって!?」
「都内の至る所に結界が仕込んであります。寄生がそこを通れば、連中がどういう動きをしているのか、大まかな事は解る。もっとも、下っ端の寄生はほとんど勝手に動いてるだけですが。
その中で、規則性のある奴を捜せば、或はそれが婆盆かも知れません」
「それじゃあ‥‥もしかしたら‥‥」
「ええ。今までも規則正しい寄生は居ましたがほとんどは何でもない奴だった。しかし以前、そう、桃花さんと最初にあった時にいた亜煩のような例もある。
婆盆も役割があるならば、ある程度は規則性があってもおかしくない」
黒丸の提案は『ヤタガラス』にとって婆盆を捜す唯一の方法だった。
桃花一人では到底出来ない事だが、黒丸達なら集団で動ける。それは大きな力だ。
「見つけたら手をつけずにすぐに連絡しますよ。我々じゃ相手にならないでしょうから」
「ありがとうございます‥‥私のわがまま聞いてもらって‥‥」
「とんでもない。寄生と戦うのが仕事ですから」
黒丸はそういって部下に内線で指示を出す。一刻も速く婆盆を見つけだす事。それが寄生を、『ヤタガラス』の目的を達する為の近道だと悟っていた。
黒丸は受話器を置き、机の上の紙コップのブラックコーヒーを一口飲む。そして、先程からの疑問を口にした。
「寄生の大元‥‥‥影糾‥‥一体何者なんですかね‥‥」
「影糾が‥‥ですか?」
「ええ。寄生に憑かれたら、それは寄生と同じ能力を得る。他者に寄生する能力です。
天狐は神に近い存在。それすら配下にし、かつ神に自分の能力を植え付ける。一体、どれほどの大物なのか‥‥‥‥影糾」
黒丸は再び表情を硬くした。
153 :
代行:2010/02/08(月) 09:08:01 ID:j7UQMaPf
以上です。ついでと言ってはなんですが、もうひとつメッセージもお願いします。
>>148 瀬名秀明ファンか?
こういう雰囲気好きだw
代理ここまで
>>153は、代行だと分からないといけないので原文ママ載せましたとさ
プロット終わってるってことは、完結するのかヒャッホイ
誰も発子投下しないなら、俺が投下する
157 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/08(月) 21:12:50 ID:Ioj1vO9J
>>153 ごめん、その人知らないわ
さて、今日も元気に続き続き
ぽかぽかとした日差しが降り注ぐ台風のような天気の中、桃花はカフェにいた。
カフェは人の気配がなく、満員御礼と言ったところだ。目の前で湯気を立てる冷めた飲み物は赤い。紅茶ではあるらしい。
頭を抱えてテーブルに突っ伏そうとしたが安物のプラスチックに突っ伏したら荒削りの木目のせいで痛いかもしれない。
幸いなことに椅子は特に変化がない。そしてテーブルの反対側で紅茶を飲んでいる男もまた特に変わりない。
いや、この男は見覚えがある。そう、この男は一度会っているのだ。桃花の最古の記憶にいる男。
「こんにちは。無限桃花さん」
桃花の気を知ってか知らずか男は丁寧な口調で挨拶する。
「お前が……ハルトシュラーか」
「桃花さんがご存知の通り、師匠は女性ですよ」
「お前は弟子か」
「そうです。そして案内役も仰せつかっています」
そういうと男は立ち上がり、歩き始めた。道があるわけではない。道が出来ているのだろう。
桃花もそれに着いていく。景色は一転し続けている。日差しと小雨と小雪が顔に当たる。
彼がドアノブを握る動作をするとドアが現れた。何の驚くこともなく、そのドアを開けて入る。
罠かもしれない。そんな思いが頭を過ぎったが選択肢があるわけではない。意を決してドアをくぐる。
海が見える。日差しは暖かい。頬に触る潮風や光を返す白い床は確かにそこにあるように感じた。
テラスになっているそこには白いテーブルが置いてあった。さっきまで人がいたらしくカップからは湯気を立てている。
「あれ、さっきまでここにいたんですけどね……ちょっと探してきますね」
男はそういうと建物の中に入っていった。ちなみにさっきあったドアはない。もはや驚く気にすらなれない。
代わりに男が入っていったガラスのドアがある。壁も一面ガラス張りでプライバシーもへったくれもない。
部屋の内装はホテルのそれに似ている。唯一違うのは本棚があるくらいだろうか。
待っていろとは言われていないが待っていないと困るだろうと考え、テラスの椅子に座る。
左手に見える海がなんという名前かはわからない。そもそも季節は冬だったはずなのにこんあにも日差しが暖かで
あることから自分の知る世界ではないかもしれない。ただ驚くことでもない。
「あれ、あなたは無限桃花さん」
海を見ていると突然背後から声がした。驚いて振り向き、転びそうになる。
「そんなに驚かないでくださいよー」
どういうわけかアンテナが生えているその女の子は名前もずばりあんてなと言うらしい。
「すれ違いみたいですねー。あなたが来る五分前までここに居たんですけどねー」
「ハルトシュラー……はどこにいったんだ?」
「えっとですね、待ってください」
うにょうにょと頭の上のあんてながピピピと電波を飛ばす。この建物はさして広いわけでもないので彼女でも検索可能なのだ。
「……一階のキッチン、いや、屋上かな。違う、図書室かも」
そんなことはなかった。こんなことで仕事が勤まるのだろうか。挙句の果てに「たくさんヒットするぅ」とか言い出す始末。
これでは期待できそうにない。桃花が残念そうにため息をつく。
「落ち込まないでください。あなたはあなたですから!」
「そりゃ、私は私だろう……」
「そうですよ。どんなにたくさんあなたが居ようがあなたはあなたなんです」
言い方が引っ掛かる。どんなにたくさんあなたが? 桃花が聞き返す。
「それは一体どんな意味なんだ?」
「え、だってあなたがたくさんいることはあなた自身も知ってますよね」
「それは有名な話なのか?」
「有名も何もそれを創り出したのは私の遙か上の上司ですからねー」
「そのとおりだ」
話が遮られる、第三の声。部屋のほうに振り向くと男とそして声の主がいた。
桃花の目が大きく開く。あの声の主こそが今までずっと探し続けた女性。
彼女は何の躊躇いもなくドアを通り、桃花の横を通り、紅茶の置かれた席に座る。
「あんてなたんは早く仕事に戻りなさい。休憩時間はとっくに終ったわよ」
「え、あれ、あー!」
あんてなは自分の時計を見ると振り向きもせず部屋を横切って出て行った。正しく脱兎の如くといったところか。
部下に対して「たん」付けはいかがなるものかと思うがここは置いといて彼女は一つ咳払いをすると桃花に向かって言った。
「久しぶりだな。無限桃花」
「ハルト……シュラー……」
続き来たー!
「い‥嫌ぁ〜‥‥助けて‥‥助けて‥‥‥嫌‥‥い‥‥ああああぁぁ‥‥」
闇夜に断末魔が響く。地は赤く染まり、命の名残を吸い込む。
誰かが獲物となった。妖の牙は容赦なく肉を貫き、貪った。獲物となった女性は生きながら餌となって、魔物に抱かれ息絶えた。
「‥‥‥足りぬ。この程度の肉と霊では満腹にはほど遠いわ」
妖は苛ついていた。昔は人間に贄を出させた。その時一番の、最高の肉と霊を持った人間。当時は簡単に手に入った。
だが今は違う。肉はともかく霊の質は著しく悪い。人間はどこまで落ちるのか‥‥。その妖は獲物に哀れみすら抱いていた。
「腹が減った‥‥どこかに居らぬか。誰か‥‥よき霊を持った‥‥」
その妖、猿鬼はさ迷う。餌を求めて。いくら食っても空腹は満たされない。必要な栄養素が一つ、欠乏している。
猿鬼は歩いた。歩き疲れるほど。夜の空はいつも以上に暗く、まるで猿鬼の腹のように全てを飲み込みそうだ。
だが‥‥‥暗い。暗過ぎる。猿鬼は思った。その闇は夜のそれではない。とてつもない何かが、空を覆っているようだった。
風が吹く。その風は猿鬼の鼻に獲物の臭いを運んできた。その獲物は上質な肉と、霊の香りを含む。
喜びを隠せない。久々の馳走だ。どこだ。どこにいる。早く食いたい。その肉を、霊を。
そして見つけた。長い黒髪の少女。なんという素晴らしい馳走だ。我慢出来ない。食おう。食ってしまおう。
猿鬼はその巨体を少女の前に晒し、一息で仕留めようと牙を向いた。だが‥‥‥
「クスクスクス‥‥‥こんばんわ。猿鬼さん」
その少女は猿鬼を見て恐れるどころか笑っていた。ありえない。この人間は一体‥‥‥
「貴様‥‥‥何者だ?妖か?それとも妖術を修めし人か」
「いいえ猿鬼さん。どちらでもないわ」
「何用で我の前に現れた。食われる為か?」
「違うわ。食われるのは猿鬼さん。あなたよ」
刹那、影が少女を包む。それは妖である猿鬼すら畏怖する程の闇。
「私は影糾寄生。あなたが欲しい。私と来なさい。猿鬼。神も妖も超えた力、あなたにあげます」
猿鬼は恐怖した。だが、それより怒りが勝った。かつて人々が恐れ、社に奉られるほどの妖である自分を、この少女は食うと言った。
許せん。神として崇められるほどの鬼である自分の恐ろしさ。見せねばならない。
「我が欲しいか。だがそれは奢りだと心得よ。私は猿鬼。人と霊を食う鬼神」
「クスクスクス‥‥‥では私も見せてあげる。闇の天神の力を。そしてあなたは私の物よ。猿鬼さん」
「言わせておけば‥‥‥!」
猿鬼はその豪腕を持って影糾を殴り付ける。列車が激突したような轟音とともに、地面は深々とえぐれ、まるで紙くずのように影糾は吹き飛んだ。だが‥‥‥‥
「クスクスクス‥‥‥‥」
笑っていた。あの少女の身体は人間だった。耐えられるはずは無いのに。
影糾と名乗った少女はいつの間にか黒い刀身の剣を握っていた。そして、鬼神すらも見えぬ速度で、その刃を突き立てる。
雷の如き一撃。それは人間ではありえない、妖すら及ばぬ物。
「なんだと‥‥?!」
「クスクスクス‥‥‥これで驚いてはダメよ。言ったでしょう?闇の天神の力を見せると」
猿鬼に突き刺さった刃から、影が伸びてきた。それは僅かな痛みと共に少しずつ猿鬼の身体を侵食した。
「これは‥‥‥何だ!何をした!」
「クスクスクス‥‥‥言ったでしょう?あなたが欲しいと」
「さぁ、あなたは私の物。受け入れなさい。あなたには神も妖も超えた、私の力を貸してあげるわ」
猿鬼は動けなかった。敵わぬと悟ったのだ。闇の天神。その正体にも心当たりがあった。
「まさかお主は‥‥‥京を焼き仇を殺し‥‥千年たってもまだ怨みは晴れぬのか」
「私の怨みは永遠。この国がある限り。この国に君主と従者がある限り」
「愚かなり。闇に落ちた天神よ」
「愚かなのは世界のほうよ」
猿鬼は影に包まれた。かつて恐れられた鬼神は、妖でも人でもない魔物となった。
「さぁ、あなたの名前は猿参。新たな寄生四天王の一人。空白となった二つの椅子。その一つはあなたの物」
猿参寄生。影糾がかつて練刀へ言った通り、新たな寄生は造られた。そしてそれに与えられた任務は‥‥
「さぁ、行きなさい猿参。あなたの仕事は一つ、無限の天神を殺す事。まだ人である内に。何も知らない内に‥‥‥無限桃花を殺しなさい」
猿参は頷き、影に包まれた。そして、消えて行った。
「姉さん‥‥‥‥‥」
影糾は言った。悲しげに。
その顔は影糾ではなく、無限彼方へと戻っていた。
「お願い姉さん‥‥‥もう‥‥‥死んで‥‥」
姉の死を望む言葉。だがそれは決して憎しみではなく、姉の為への言葉だった。
一陣の風が吹く。そして声が声が聞こえてくる。
「主よ、新たな寄生は生みだされたか」
「ええ婆盆。今度は練刀のような小物ではなく鬼を引き入れたわ」
「しかし、我らの中で最強の妖であった天狐ですら葬る程の力、猿鬼では手に負えまい」
「大丈夫。無限の天神はまだ眠ってる。悪世巣の時は驚いたけど、まだ完全ではない。まだ人の内に‥‥殺す」
彼方は言った。婆盆も彼方の思いは知っていた。その無縁天狗は、彼方が幼い頃からずっと一緒だったから。
「主よ。霊域から持ち出した古文書、如何様にするつもりか?」
「あれは‥‥燃やして。全部。無限一族の過去はもういらない。秘密を知るのは私だけで十分」
「‥‥‥心得た。ではそのように手下へ伝えよう」
風が集まる。つむじ風は人の形となり、やがて老人の姿をした婆盆の形骸が現れた。
「疲れたでしょう彼方。夜も深い。家へ帰りましょう」
「私、お腹空いた。駅前の吉牛に寄ってく。いいでしょ?」
「こんな深夜にですか?未成年が出歩く時間ではないですよ。昨日食べたカレーの残りもまだ家に‥‥」
「吉牛がいい!」
「やれやれ‥‥‥」
闇の天神と天狗は歩きだす。人ごみの中へ。
その姿はまるで、本物の祖父と孫のように‥‥‥‥‥
以上です
>>157 知らんか。まぁいいやw
とりあえずあなたのSSのふんわり感は楽しみにしてるぞw
桃花!桃花!桃花!
なんという投下ラッシュ! 桃花の人気に嫉妬
それじゃ俺は発子さん一番乗りだぜ
「うー! ムカツク、ムカツク、ムカツク!」
ひょい、ぱく。 ひょいひょいぱくぱく。
「うー! やな奴、やな奴、やな奴!」
ぱくぱくひょいひょい。
「食べるか怒るか、どっちかにしたらどうです?」
うららかな午後の軽食喫茶、その中に二人の男女がいた。
若い親子、いや、年の離れた兄妹かもしれない。
長い髪を頭の左右で結んだ少女が、悪態をつきながらケーキを頬張っていた。
そしてその様をオールバックの、スーツで身を整えた青年が微笑ましく見守っていた。
「だってさー、投下の後に投下を被せる普通? レスはつけたけどさー、案の定後から
投下したほうにレスが多くついてんの、やんなっちゃう」
あんぐり、と口を空けフォークに刺したケーキを咀嚼し、少女は続ける。
「文体は変えているけどあの空気の読めなさは誰だかわかるわ……ハルトの仕業よ」
「ハルトさん、ですか」
そう、と頷き少女は大皿を手に席を立った。
店内のバイキングコーナーにあるケーキ群を物色し、大皿へと運んでいく。
今日はこの店でケーキバイキングが開催されていた。
青年、柏木は少女クリーシェに誘われてこの店へと来ていた。
もっとも、柏木自体は食欲がなくもっぱらクリーシェが食べているのだが。
「まあ、彼女は他人には興味はないですからねぇ。わが道を行くってやつですかな」
替わりのケーキをふんだんに盛り付けてクリーシェが戻ってくると、柏木は返した。
その言葉に少女は柳眉を曲げて憤る。
「その我が道を行くって奴が問題なのよ! 創発板は奴の畠じゃないのよ。れっきとした、
みんなの発表する場なのよ! ある程度の了解、ルールて物が必要なの!」
口からケーキのカスを飛ばし、クリーシェは持論をまくし立てる。
柏木はスーツについた食べかすをハンカチでそっと拭き取って耳を傾ける。
「そりゃあ奴の才能は認めるわ、くやしいけど。でもね? 前に投下した人にレスをつけて
本文を投下してもいいんじゃない? レスがつくつかないで書き手のやる気も違うし、
見てる人たちも、合いの手の一つぐらい入れてくれるかもしれないわ。黙って投下して、
黙って見てるだけってのはアンタ、ちょっとそれはないでしょーと思うわけよ、しかもさ、
投下した人は一見さんよ? その後すぐにハルトが長文投下する何て、嫌がらせの何者でも
ないわ。まったく、一体全体どういうつもりなのかしら」
うんうん、と柏木は適当に相槌を打つ。
クリーシェの考えはよくわかる。彼女はみんなでワイワイと賑やかにお互いの作品を鑑賞
し合いたいのだ。一緒になって批評をしたり、雑談をしたり、新たな作品にむかって皆が
足をそろえてむかって行く。それがクリーシェの理想なのだろう。
「だが……」
惰弱。あの人はそうやって一蹴するだろう。
S・ハルトシュラー、創発の魔王は。
「創作家は作品でのみ語るべき」
それが彼女の自論だ。周りの事など羽虫の音ほどにも感じてないだろう。
閃いたときに作を投下する。それ以外に関心など持ちはしない。
ただひとりの、名もなき修羅。
自らを主張しないがゆえに、燦然と輝いている。
そう、夜に輝く満月の様にだ。
彼女の信奉者はこの創発に数多く居る。
そして、クリーシェのように創発を盛り上げようと頑張り、騒いで盛り上げようとしている
人たちが居る事も知っている。
ハルトシュラーとは袂を分かった柏木だが、その教えの一部には納得出来る事も有る。
どちらが正しくて、どちらが正しくないのか。
それは創発にすむ人々が判断する事であろう。
「どうしたの柏木? さっきから黙ったままで」
「……ん? ああこれはすいません、少々考え事をしていまして」
はにかんで柏木は側の飲み物へと口をつけた。
ごまかし気味に別の話題へと持っていく。
「実はですね、私が師事した人がですね、今度投下するんです」
「へぇ」
作品を投下、という言葉にクルーシェが興味を得た。
大きな目をくるくると柏木へとむける。
「アンタのお手つきってわけね」
「お手つきって……人聞きが悪いですよ」
ハルトの下から去って以来、柏木は積極的に表世界へ技量を披露した。
リクエストには応え、技法を問われれば答えもした。
そのかいもあって今では柏木の名はそれなりに知られている。
柏木の技を見習いたいという人も出てきた。
ハルトシュラーを月に例えたのならば、言ってみれば現在の自分は太陽みたいなものだろうか。
少なくとも、自分の後について来ている卵達には、暖かい日差しを掲げてやりたい。
柏木はそう思っていた。
「ま、技量は確かですが色々感想をつけてもらった方が鼻が高いってわけです」
「私の出番ってわけね」
「その通り、よろしくお願いします」
まかせて、とクルーシェは指についていたクリームを舐め取った。
見ると大皿に所狭しと有ったケーキはすでに姿を消している。
どうやら考え事をしている間に、この少女は平らげてしまったようだ。
「食べ終わったようですし、そろそろ帰ります?」
「う〜ん……」
バイキングコーナーをちらちらと見ながらクルーシェは考え込んだ。
どうやらまだ未練があるらしい。
食べたりないといった感じだ。
「……ま、腹八分目っていうし今日はこのくらいにしときましょうか。帰って更新の
チェックもしたいしね」
そういって席を立つ。
が、次の瞬間思い出したかのように柏木を見た。
「あ、やっぱり帰りにコンビニ寄ってくれない?」
「コンビニですか?」
「そうコンビニ。チキンが食べたいなー、なんて」
そういって笑う少女の姿に、柏木はため息をついた。
「ケーキを食べた後に油っこい物はどうかと思いますが、ね」
「チッチッチ」
わかってないなと言わんばかりにクルーシェは胸を張る。
「だからこそ、よ!」
「だからこそ、ですか」
「そう!」
天真爛漫な笑顔。おそらく彼女はハルトの事はもう忘れているだろう。
これが彼女の魅力なのだ。
今の柏木には眩しくもある。
「はいはい、それじゃあ送っていきますね」
「よろしくー」
言葉を軽くかわしながら商店街を二人は後にした。
そんな二人を見送り、喫茶店員は後を片付けながら青ざめていた。
「完食……? たった12分で60種のケーキが……完食? ば、化け物か……」
おつ
だがどうやら初子は124らしい
本当だ、何で読んだのに忘れてるんだ俺
これというのも連続投下の性だ、読み追いつくのに時間がかかる
次に起きたときに本気出す
「……む」
唐突に空気が変わった。この感じ、また違う世界に迷い込んでしまったのか。
「はあ」
ため息をつきながら、桃花は歩き出した。
そこは建物の中のようだった。ひたすらに長く、薄暗い廊下と、脇には幾つもの部屋が並んでいる。各部屋の扉の上には金色に輝くプレートがあり、部屋の名前がかいてあるようだった。
「オカルト……超能力……占い……サブカル……」
怪しげなデザインのプレートもあれば、
「こっちは映画一般……演劇……宝塚……」
華やかに彩られたプレートもある。
「ここは……なんだ……?」
何の変哲もない空間、しかし桃花は寒気を覚えていた。――ここにいテはいけない
一刻も早くここから出たかったが、出口も分からなかったのでとりあえず前へ進むしかない。
「創作文芸……創作発表……?」
なぜか桃花の足はそこで止まった。なぜ創作発表というプレートの前で足が止まったのか。なぜその部屋に入ろうとしているのか、桃花には分からなかった。ただ、そこに入ることが一番自然な気がしていた。桃花の腕は、ノックもせずに、その扉を、開いた
170 :
見る名無しあっての創る名無し:2010/02/09(火) 08:12:08 ID:m0HDN9aZ
その部屋は書斎らしかった。大量の原稿用紙と、下書きされた絵と、部屋の中心にはデスクトップパソコンが置いてある。
そこの椅子に人がいた。女の人のようだ。彼女は来客に気づくと、振り返りながら尋ねた。
「あら、どちら様でしょう?」
整った顔立ち。だが無造作に垂らされた長い髪のせいか、気怠げな雰囲気が漂っている。
「私は、夢元桃花という。迷ってしまったのだが、ここはどこだろうか」
「とう…か……?ど、どうしてここに来れたの?」
目の前の女性は大層驚いたらしく、目を見開いて狼狽していた。桃花が経緯を答えようとすると、その女性は納得したように頷いた。
「ああ、そうか。あなたは、世界を渡っているのでしたね。なるほど、ここへ迷い込んでしまうことも、とても低い確率ですが、ありえないことではありません」
「ここは……一体……」
「ここは……そう、ここは、あなたの来てはならないところです」
Whatで尋ねたのをHowで返される。
「そう、なのか。ああ、元の世界に帰りたいのだが……」
「ええ、私もそのつもりでいます。ここに来る一つ前にいた世界に戻してあげましょう」
「む……元の世界に帰すことは、出来ないのか?」
前の世界に戻せるなら、元の世界にも戻せてもおかしくない。
「……ごめんなさい。あまり干渉は出来ないの。私に出来るのは前の世界に戻すまでです。その後は自分で頑張りなさい」
「そう、か」
結局振り出しに戻るだけか。桃花は少なからず落胆した。
「でも安心してください。いつかきっと、元の世界に帰れるから」
そういって彼女は笑った。彼女にそう言われると、なぜか近い将来、元の世界に戻れる気がしてきた。
「そう、か」
171 :
ここまで:2010/02/09(火) 08:13:08 ID:m0HDN9aZ
「それで、どうやって戻すつもりだ?」
「そうですね……じゃあ、こっちに来て、目を瞑ってください」
「こうか?」
「そうです。じゃあ行きますよ」
「ちょっと待った」
「?なんでしょう」
「あなたの名前を聞いていない」
「……私は、クリーシェ。クリーシェです」
「クリーシェ……よし、覚えた」
「そしたら、今度こそ行きますよ?」
「ああ、頼む」
「では、さようなら、桃花。もう会うこともないでしょう」
「あなたがそう言うのなら、もう会えないのだろうな」
「ええ。ですが、私はいつも桃花の無事を祈っています」
「…………」
「では、お元気で――」
「ありがとう、クリーシェ」
そう言って桃花は目を開けた。そこは既にさっきまでいた世界だった。感謝の言葉は、クリーシェに届いたのだろうか。
分からない。分からないが、例えこの世界で発した声であっても、彼女には聞こえている。そんな、気がした。
「ありがとう、クリーシェ」
もう一度口に出し、桃花は歩き始めた。
172 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/09(火) 21:55:16 ID:49/7WPRP
投下が多くてうれしい。
さて今日も投下投下
「とりあえず、弟子くん。紅茶とバームクーヘン持って来て」
「はい、わかりました」
男は快諾すると小走りで部屋から出て行った。これで今、ここに桃花とハルトシュラーしかいない。
だが桃花は奇妙な違和感に捕らわれていた。今度は何かが変化するのではなく、ハルトシュラー自体に違和感を感じている。
「長旅ご苦労。外の世界はどうだったかな」
「特に……何もないな」
「そうかそうか」
ハルトシュラーが自分の紅茶をぐぃっと飲み干す。この状況を楽しんでいるように見える。
しかし桃花にとってそんなことはどうでもよかった。ハルトシュラーに対する違和感。
かつて会った事があったとしても桃花にはその記憶がない。だからハルトシュラーとは初対面と考えてもおかしくない。
なのになぜなのか?
「旅先で他の無限桃花には会わなかったのか?」
「噂は聞いたが直接会ってはいない」
あの蟲師が話していた私と学園都市で会った少年から感じた私の魂の匂い。
そこで違和感に気付いた。桃花は直感的に感じる自分と同じ人間の残留思念を『魂の匂い』と表現している。
最もそれを感じたのは前述した学園都市だけであった。全ての無限桃花は特にテレパシー能力で通信し合えるわけではない。
ただ潜在的に『自分と同一の魂』を感知出来るだけの話だ。実際桃花はここに来てから複数の桃花を感知している、
そして眼の前にいるハルトシュラー。自分でないはずのそれからは自分と同一の魂を感じる。まるで鏡を眼の前に置いたかのように。
「持って来ましたよ」
男が桃花の分の紅茶と二人分のバームクーヘンをテーブルに置く。そして後ろに下がって待機する。
ハルトシュラーは子どものように顔をほころばせた。
「私は甘いものが好きでね」
桃花は確信する。この眼の前にいるのはハルトシュラーではない。確かに桃花は会ったことはない。だがこの人間は違う。
仮にも魔王と呼ばれる存在。そんな称号を持っているにも関わらず威厳など微塵も感じない。これでは間王だ。
決定的なのはバームクーヘンを剥し始めたときだ。後ろで待機してた男まで「あっ」とか言ってしまう始末。
「お前はハルトシュラーじゃないな」
バームクーヘンを剥す動作がピタリと止まる。視線が手元から桃花のほうへと向かう。
「ならば私は誰だと言うのかな」
「無限桃花」
それがニコリと笑う。
「正解だよ。私」
上から徐々に変わっていく。髪の色、骨格、体型。数秒後にはそこには間違いなく桃花がいた。
元ハルトシュラー桃花が自分の分のバームクーヘンを食べる。すごく幸せそうに。
「気付くの遅いねー。桃花なら全員自分くらい感知出来るものかと思ったのに」
「桃花である確信がなかったんだ。もしも立ち振る舞いまで全てが魔王らしかったら自分のオリジナルがハルトシュラー
ではないかと勘違いするところだった」
「恐ろしいこと言うねぇ。私は」
快活に笑う桃花。確かに同じ桃花であれど目の前にいるそれと桃花は別の桃花であった。
桃花が自分のバームクーヘンを切って口に運ぶ。
「まぁなんとなくわかるだろうけどこの館には既に桃花が何人かいてね。共同生活しているのさ」
「何人も自分がいるなんて混乱しそうだな」
「案外そうでもないよ。ほら、私達似てるようで結構違うじゃん。あ、そこの弟子くんは見分けられないみたいだけどね」
「見分けられるはずないじゃないですか……。基本的に同じ人間なんですから」
弟子がため息をつく。なんだか自分がバカにされたような気分になる。
「それじゃあ先に戻りますよ。もう役目ないですし」
「うん、お疲れ様。ハルトシュラーに会ったらよろしくね」
弟子くんは哀愁漂う背をこちらに向けて、部屋から出て行った。多分、いや、かなり苦労しているのだろう。
同じ顔の人間に色々言われ、師匠からも色々言われ、どのような世界でも中間は一番疲れるものなのかもしれない。
「この館にハルトシュラーはいるのか?」
「どうだろうなぁ。外出しているかもしれないし帰ってきてるかもしれないし。あの人だけはみんなとは違う時間軸で過ごしてるからなぁ」
「そうか……」
「まぁハルトシュラーがいないわけだし私が代わりに説明してあげようかな」
「何の説明だ?」
「そりゃ、決まってるでしょ」
桃花が紅茶をゆっくりと飲む。飲み干すとカップを皿に戻し、にやりとわらった。
「無限桃花の話だよ」
彼女は目頭を押さえ、肩を回す。一体何時間パソコンの画面を見ていればいいのか。いつになったら人員は増えるのか。このままでは、過労が祟って倒れてしまう。
殆どの人は出払っている。今この部屋に居るのは彼女と、机に飾った人形のクマだけ。
だいたい、SATより出動回数の多い戦闘職種なのにこの人員の少なさは異常だ。特殊な人間でなければ勤まらないとは言え、デスクワークくらいは誰でもいいだろう。
「就職先間違えたかな」彼女はそう思った。
「あーあ、もういい加減に飽きた‥‥寄生ったってどいつもこいつもテキトーに動いてるだけだし‥‥‥一匹一匹見てたってキリないよ」
「嫌なら辞めてもいいんだぞ」
「ひゃっ!!く‥‥黒丸先輩!お‥‥‥お帰りなさい」
「ったく‥‥その一匹一匹が危険なんだ。よく見とけ、理子」
ここは『ヤタガラス』の指令室。聞こえは言いが実際は小さなオフィスだ。人員も少なく、かつ訳の解らない化け物相手の部署にあてがわれたスペースはたかが知れている。
原田理子は『ヤタガラス』のメンバー。殆どが戦闘要員の『ヤタガラス』メンバーの中で、彼女もまた対寄生の訓練を受けている。
本来なら安全で暇そうな宗教法人である神社庁で、まさか銃を握るとは。夢にも思っていなかっただろう。政教分離の原則に背いている唯一
の組織。それが『ヤタガラス』だった。
「しかし‥‥‥相変わらずなにも無しか?」
「え?ああ、はい。いつもと変わらずランダムな動きしか見えません」
寄生情報管理ネットワークシステム。
都内に仕掛けられた結界と、緊急警報ホットラインを複合させた『ヤタガラス』の情報システムだ。
個体の特定は出来ないが、寄生の都内への出入りや全体の動きは見える。
「気が遠くなるな‥‥‥」
「先輩‥‥‥どこ行ってたんですか?最近は寄生された国会議員とか出てないですよね?他の人達は結界のメンテやらしてますけど、先輩の仕事は例の‥‥桃花さんでしたっけ?」
「ああ、彼女の言った事思い出してな。妖怪退治の勉強だよ」
「怪しい霊能力者とでも会ってきたんですか?」
「そんな所だ」
黒丸は文部科学省まで赴き、『本物』と呼ばれる僧侶や陰陽師を紹介してもらっていた。所属する神社庁の知り合いを頼り、宮司や巫女も尋ねて回ったが、どれも不発だった。
数少ない霊能力者であろう僧侶は、天狐や天狗の話を聞くなり「敵う訳がない」と黒丸を一蹴した。
「どうした物かね‥‥」
黒丸はため息をつく。婆盆を見つけなければ進展は無い。しかし、その婆盆は黒丸の専門外の存在であり、専門家も匙を投げる存在だった。
「理子。」
「はい?」
「昼メシ食いに行くか?」
「奢りですよね?せ・ん・ぱ・い?」
「こいつ‥‥‥」
『ヤタガラス』の他のメンバーが午前の仕事を終え巣に集まり始める。
黒丸はパソコンのモニター監視を他の連中に任せ、昨夜からここに缶詰だった部下を労おうと財布の中を確認する。
「まぁいい。行くぞ」
「はーい!」
時間は正午を少し過ぎた頃だった。
目の前の女が憎らしい。現れては消えて行くロースとタン塩。そのはかなさたるや、正に光陰矢の如し。
原田理子は黒丸の「好きな物食え」という言葉を聞いて、昼間から焼肉を所望した。
ユッケをウドン代わりに肉を貪る理子の姿を見て、黒丸は「二度と奢らない」と静かな近いを自分の冷麺に立てた。
「先輩どうしたんですか?食べないと身体持ちませんよ?」
お前が食い過ぎだ。そう言おうと思ったが辞めておいた。財布が心配だ。
「そうだ先輩。例の寄生‥‥婆盆でしたっけ?そいつって四天王の中でどんな役割なんですかね?」
「役割?なんの事だ?」
「だって、寄生の大元がただ手足欲しいだけなら、誰だっていいじゃないですか。でもそれじゃダメだったから、他の連中とは違う別格の寄生を仲間にした。やらせたい事があるから‥‥」
推測だったが、理子はずっとモニターに映る寄生の動きを見て考えていた。
桃花の話では、寄生は影糾を中心とした四天王で動いている。それ以外の殆どが勝手に活動している事を考えれば、四天王こそが唯一の寄生による組織と言える。
「‥‥続けろ」
「以前に先輩が倒したっていう蟷螂。あれは多分下っ端の下っ端じゃないかなって。だって簡単に倒せる寄生なんて四天王とは呼べないですよ。同じ四天王には神様クラスの化け狐が居たらしいじゃないですか」
「多分その蟷螂は噛ませ犬っていうか‥‥桃花さんに対してのある種の実験みたいな物ですよ。どれほど桃花さんが戦えるか。あの‥‥練刀とかいう四天王が桃花さんに倒されたから、確かめる必要があった。桃花さんの実力を。
まぁその時は桃花さん油断しちゃってたらしいですけど」
「じゃあその練刀の役割はなんだと推測する?」
「さぁ?私達が四天王の存在を知る前に桃花さんに倒されちゃったんですから。でも後釜の蟷螂の事考えると‥‥四天王の中では重要なポストじゃない。またすぐ空白になっても構わない役割‥‥」
「では悪世巣はどうだ?奴は天狐だ。重要な役割以外考えられないが」
理子は網の上のホルモンをひっくり返しながら考えた。
「‥‥‥ 先輩の言うように、その化け狐は重要なポストだと思います。多分、四天王の中では大事な時に動く精鋭」
「なぜそう思う?」
「古文書ですよ。桃花さんはそれを取りに行った時に、その化け狐と戦った。そして古文書は他の寄生が奪って行った。多分その古文書には桃花さんに読まれたくない事か、寄生の連中が欲しい情報のどっちかだった。
だからわざわざ青森まで出向いて、おまけに社まで破壊した。」
「ふむ‥‥しかしそれだけでは‥‥」
「寄生と戦い続けてる無限一族の古文書ですよ?寄生が欲しがる理由なんていっぱいありますよ。だから最強の実動部隊である悪世巣が派遣されたんです」
「それが解らん。なぜ悪世巣が実動部隊だと分かる?最強なのは理解出来るが、古文書の回収ならもう一人の四天王‥‥婆盆でもいい訳だ」
「だって、婆盆は動けないんですよ」
「なんだって?ますます解らん。お前は何を考えてる?‥‥噛み切れないならホルモン食うなよ」
「んぐ‥‥くっ‥‥先輩、調書ちゃんと読みました?桃花さんの妹さん‥‥彼方さんでしたっけ。多分彼方さんは婆盆の所に居る」
「なんだって?飛躍し過ぎだ。順番に話せ」
「だ〜か〜ら!桃花さんの調書には彼方は連れ去られたってありましたよね?なんでわざわざ連れ去るんです?理由があるはずです。
調書には婆盆は影糾に『時が経つまで護る』と言った。でも、それは影糾に言ったんじゃなくて、彼方さんに言ったんじゃ無いですか?だって、長い時を経て蘇った影糾、これ以上何を待つんです?多分、彼方さんの成長ですよ」
「つまり、婆盆は彼方を守り育てる役割だと推測したんだな?」
「はい。だから動けなかった。影糾はどうか解りませんが、練刀も亜煩もいない状況で動けるのは悪世巣しかいなかった」
「なるほどな‥‥‥つじつまは合う。だがなぜ彼方を手に入れる必要があるんだ?」
「‥‥‥あんまり考えたく無いんですけど、影糾は彼方さんに寄生した。そして、今、影糾寄生となって活動してるのは彼方さん‥‥」
「つまり、桃花さんが探している妹の手掛かりである影糾、それこそが、彼方だってのか?」
「‥‥‥多分‥‥なんですけど」
桃花さんには言えないな‥‥‥と、黒丸は思った。あくまでこれは推測に過ぎない。軽はずみに言える事ではない。
「解った‥‥‥その線だと滅多に婆盆は動かない。見つけるのはより困難って事か」
「逆ですよ先輩。もし影糾‥‥‥彼方さんを保護してるのが婆盆なら、絶対動き回るはずです。だってまだ16歳くらいの女の子ですよ?一人では生きていけないはずです」
二人は焼肉屋を出て、消臭のガムを噛みながら事務所へ向かう。黒丸は部下のオバQ女の推論を整理した。もしこの推測が事実なら、桃花にはあまりに酷な事だろう。
「先輩‥‥‥桃花さんには‥‥」
「ああ、まだ言わないでおくさ」
二人は無言になり、足取りは重くなる。行き交う人々をかわしながら歩いて行く。
「すみません」
黒丸は呼び止められた。声をかけたのは若い男性。服装はおよそオフィスビルが並ぶ場所には似つかわしくない、いわゆるオタクファションに身を包まれていた。
「なんですか?」
「今、桃花と言いましたね?無限桃花の事ですね?」
「何?」
刹那、黒丸はミネベアを抜き、男に発砲した。撃たれたはずの男は黒い影を身体から滲み出し、黒丸を睨む。
「やはりそうか。前等を監視しておいてよかった。」
「理子、桃花に連絡だ」
「くくく‥‥ワシの名は猿参。新たな四天王の一人‥‥‥無限桃花はどこだ?」
黒丸は無言でさらに発砲した。
以上、避難所より代行
179 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 10:18:57 ID:XzPuEoHE
桃花が俺についた寄生を退治してくれたようだ。
これで黒丸編の続きが楽に投下出来る。
色んな人の投下が連続し過ぎて読む人が混乱する事も減るだろうw
感想も書きやすいだろうし。
解除おめでとうございます!
181 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 17:47:10 ID:pW5lU69I
ちらほらと規制解除の話を聞くね。良き事かな。
さて、今日も投下投下。
全ての創作物には設定がある。これは私でも、そしてあなたでも同じ。その物語の道筋、キャラクターの区別をするための
設定だ。最初に私達に付加された設定は『無限桃花』という名前。これで一つのキャラクターが生まれた。
そこに三つの設定を付け加えた。すなわち『黒い刀を持ち』『ポニーテール』の『18歳くらいの女の子』。
これは私、あなたも含め、全無限桃花に共通する設定なの。本来ならばそこに物語を付け加えることにより、そのキャラクターは
方向性、個性、そういったものが決定する。だけどしなかった。ハルトシュラーは物語を与えなかった。
いや、元から与える気なんてなかった。ハルトシュラーはそれがしたかったから。そう、同じ設定を持つキャラクターを
人がどういう風に設定を付け加えるか見たかったわけ。結果として私もあなたも違う設定が付け加えられた。
私達は私達に設定を付け加える創作者の数だけ存在するわ。それこそ無限にね。お互いを感知する能力というのも多分
全員に備わってると思う。でも全員が全員、その能力を使うわけじゃない。中には無限桃花は自分ひとりだと思って生きる
子もいるだろうし、ドッペルゲンガーだと思い込んで殺してしまったり、逆にショック死する子もいるだろうね。
私達みたいに自分が何人もいることを受け入れることが出来る子のほうが少ないかもしれない。
だってさ、普通は考えたくないでしょ? 自らにそっくりの、鏡を眼の前に置いたかのように同じ個体がいるなんて。
そこから考えれば私達はある程度、心を弄られているのかもね。と、まぁこんなこと考えても仕方ないわ。
現状、無限桃花がどのくらいいるのかわかっていない。大抵の個体が刀を使って物の怪を切ってたりするみたいだけどね。
それ以外にもあなたのように体術を使う個体。私のように戦闘能力がさっぱりない個体もいる。そういった個体は大抵
何かしらの特殊能力が付与されていることが多いわね。あなたの他世界を歩く能力も結構いるみたいよ。
逆に設定が曖昧な場合。まぁ私達の場合はそれぞれが独立個体だから設定の数だけ無限桃花がいるというので済むけど
元の世界があるにも関わらず、それに関する創作をする者同士の共通認識が少ないものがあるらしいの。
そう言った世界はとてもぶれるらしいね。常に違う設定になり続けるらしいわ。行きたくないねー、そういうところ。
この館は設定がしっかりしてるみたいだからそういう心配はいらないわ。昨日あった部屋は今日もあるし明日もある。
外がちょっとあれかもしれないけどまぁ出なきゃいいわけだしね。たまーにいるのよね。外から辺なのが来たりさ……。
太陽は地平の彼方に沈み、今は月と満面の星が空を飾っている。桃花はとうの昔に冷めた紅茶を少し口に含む。
ここには今、彼女しかいない。先ほどまでいた桃花は喋るだけ喋るとすたこらと帰ってしまったのだ。
情報は与えたから後は自分で考えろ。あの桃花は例え自分達が元は同じだったとしても、付与された設定と同じように
別々の考えを持ってほしくてそうしたのかもしれない。決して、バームクーヘンも紅茶もなくなったから帰ったわけではない。
しかもその割りには情報を与えすぎていて、最早同じような考えにしか辿り着かない気がする。要はあの桃花はバカなのだ。
しかしここにいる桃花は真面目なものだから色々と考えていたりする。自分の中でどういう形で結論付けるのか。
遠い眼からみれば桃花もあの桃花も全て同じ『無限桃花』で片付けられてしまう。だけど一人一人ちゃんと独立しているのだ。
そしてその独立した桃花はまた違うものと組み合わさり、あるものを形成する。
それこそがハルトシュラーの目的である『物語』である。
ちょうどこれはあのテラスから見た景色と逆の辿り方をした。全から始まるか一から始まるか。辿り着く先は同じものだ。
182 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/10(水) 17:48:15 ID:pW5lU69I
しかしここで桃花もあの桃花も知らないとある事実がある。それはなにか。
ハルトシュラーが別の創作物に手を出しているということである。
それはつまるところどういう意味かというともうハルトシュラーは『無限桃花』にさして興味がないということだ。
「ああ、そういえばそんなの作ったわね」と言った程度の認識しか彼女の中にない。
これだけ頑張ってハルトシュラーの元へ辿り着いた、いや正確には辿り着いていないが桃花が報われないものである。
得てして創作物というのは常に創作者の気分気ままに振り回されて生きるものなのだ。
さて、このまとまりのない話には後日談がある。桃花がこの館についた当日の夜。ハルトシュラーが帰宅したのだ。
帰宅の一報を受けた桃花は急いで玄関に向かった。
そしてそこで今度こそ本物のハルトシュラーと会ったのだ。
言葉も出なかった。それほどまでに威厳があったのだ。自らより小さいにも関わらず桃花は畏怖していた。
もしかしたら創作者に対する一種の感情なのかもしれない。
「ハルトシュラー……さん。おかえりなさい。また新しい無限桃花が着いたけどここに住ませちゃっていいのかな」
あのおしゃべりな桃花が桃花を指差しながら言う。これは決して行儀のいいことではないのでまねしてはいけない。
「勝手にすればいい。元から大量の人間が住めるようにここは設計してある」
「ははー、了解いたしました」
仰々しく返事をする。ハルトシュラーの言うとおりこの館は彼女がなんとなく設計して立てた館なのだ。
部屋数はホテルが営業できるほど余っている。一体どれだけの人間を済ませる気だったのか。
ハルトシュラーが桃花たちをじっと見る。
「……私も何人か増えてみるか」
「えっ」
と返事したのは弟子くん。ハルトシュラーはそれを気にすることなく弟子くんに命令する。
「キッチンを使うぞ。料理当番の桃花を呼んで来い」
「は、はい!」
弟子くんが慌てて階段を登っていく。ハルトシュラーはキッチンに向かいながらにやりと笑う。
「さぁ、創作の時間だ」
この物語はここで一段落を迎える。この後、結婚式でもやるのかというくらいのタワーケーキが出てくるが
それはまた別の物語である。果たして彼女の言葉を実現するのか。それもまた別の物語である。
どっとはらい。
おお
なかなか
興味深い
こういうの好きだw
185 :
無限桃花〜烏の爪は至高き〜:2010/02/10(水) 22:29:17 ID:XzPuEoHE
さあて投下だ投下。
「先輩!」
「早く行け理子!」
黒丸の放った銃弾は計4発。至近距離からの銃撃を受けたはずの男は黒い影を纏ながら、まだ立っていた。
「ほほう?これが闇の天神の力を封じた鉄砲か。人もなかなか面白い事をする」
「いいからさっさと正体を現せ化け物。人目が気になってダメか?」
「ふはは、小僧が言いよるわ。よかろう。無限の天神の居場所を吐露するまで、たっぷりと遊んでやろう」
猿参と名乗った寄生は、大猿へと変身する。茶色の毛皮に丸太のような腕。身長は3メートルを優に超える。
黒丸達にしか見えない魔物はその巨大な口を開き、恐ろし牙を覗かせる。
「改めて名乗ろう。ワシの名は猿参寄生・石川猿鬼。闇の天神より無限桃花の抹殺の任を受けた者」
「そりゃご苦労な事だな」
黒丸は言うと同時にミネベアの引き金を引く。対寄生のサブソニック弾とサプレッサーの組み合わせにより銃声は驚くほど小さい。
しかし、放たれた銃弾は猿参の胴体にめり込んで行く。
「ふはははは!いくら闇の天神の力を込めたとて、その程度ではこそばゆいだけだ。ヤタガラスとは名前だけか?」
解ってるさ。と、黒丸は心で言う。相手はただの寄生ではなく、新たに四天王に座している妖怪。それも、無限桃花の抹殺という直接的な役割を与えられている鬼だ。
悪世巣ほどではないだろうが、それに準ずる格のはずだ。
どう足掻こうと敵うはずは無い。持たせるしかない。この寄生の標的、無限桃花が来るまで。対抗しうる存在は彼女しか居ないのだから。
「急げよ理子‥‥」
それは静かな祈りだった。
186 :
無限桃花〜烏の爪は至高き〜:2010/02/10(水) 22:30:24 ID:XzPuEoHE
「ええい!小僧!逃げてばかりでは何にもならんぞ!」
黒丸は走っていた。いくら一般人には見えない化け物相手とはいえビル街のど真ん中で戦う訳にはいかない。
少しでも人目につかない、そして自分に有利な位置を取る必要があった。
黒丸は立場上は民間人だが、レンジャーの資格を持っている。都市型戦闘訓練も自衛隊で受けた。体力ならば誰にも負けない。
速度を緩める事なく走り続けた黒丸は、やがてビルの隙間へたどり着く。ここだ。一度ビルの影に入れば、同じ街とは思えないほど人気は失せる。
ビルに挟まれた地形も黒丸にとっては有利だった。
「さて、コイツがどれほど通用するかな‥‥っと」
黒丸は手の平に陣を画く。念じるとそれは無数に空中に現れ、そして壁や地面に規則正しく張り付いていき、その場所と同化した。
そして、ようやく奴が追い付いたようだ。
「ふむ。ようやく立ち止まったか。ワシが追い付けぬとはなかなか鍛練を積んだようだな」
「まあな」
「しかし‥‥突然止まるとは、笑止。何か小賢しい策を仕込んだな?」
「ああ。したぜ」
黒丸は平然と言い放った。猿参もその策など関係ないと行った様子で接近してくる。
ここで持たせるしかない。黒丸はゆっくりと、懐に忍ばせたもうひとつの武器を出した。
「小僧、鬼ごっこの次は何をする気だ?それとももう辞めるか」
「そうだな。相撲ってのはどうだ?お猿さん」
「相撲?組み打ちの事か。ふはは、お前はおもったより愚かなようだ。」
猿参は悠然と黒丸に歩み寄り、その轟腕を黒丸へ向け打ちだす。
しかしその拳は空を切り、代わりに猿参の腕には一筋の斬り傷が出来た。そして、その傷からは黒い影が煙のように吹き出す。
「むう?その刃は?」
「これをさっきの弾丸と同じにするなよ。寄生数百匹を詰め込んだ俺のとっておきだ」
黒丸の手には、刃渡り20センチほどの短刀が握られていた。
187 :
無限桃花〜烏の爪は至高き〜:2010/02/10(水) 22:31:17 ID:XzPuEoHE
それは過去の『ヤタガラス』が作った、対寄生武器の中でも特別な物だった。
銘もなく斬れ味も悪いが、寄生を斬る能力は、黒丸が持つ武器の中でも他に類を見ない。
「小癪な小僧だ。そのような小刀を持っていようとは。だが無駄な事。所詮は人の子。鬼神の力、思い知らせてやろうぞ」
猿参の攻撃は激しさを増す。鼻先をかすめる拳は列車が通ったような威圧感すらある。実際、まともに受ければ人間である黒丸には耐えられないだろう。
力任せの攻撃を見切るのは簡単だった。そのつど黒丸は短刀で猿参を斬る。しかし、ダメージは殆ど無い。
その皮膚は岩のように硬く、せいぜいかすり傷だ。なにより、足りないのだ。寄生の力が。
数百匹もの寄生を封じた剣ですら、四天王一匹には遠く及ばない。
このままではじり貧だ。黒丸の集中力は限界に近づく。早くしなければ‥‥‥
「小僧!これほど戦い続けるとは驚いたぞ。しかしさすがに飽きてきたわ。そろそろ終わりとしよう」
突如、猿参の攻撃は先程と打って変わる。
人のように拳を振るっていたのが、地面に四本の脚で立ち、爪を覗かせた。
「なかなかだったぞ小僧よ。しかしワシも成すべき事がある。遊びは終わりだ」
そして、猿参は跳び、頭から黒丸へぶつかって行く。黒丸は身を反したが、少しばかり遅かった。
黒丸は木の葉のように舞い、コンクリートにたたき付けられる。
「ぐ‥‥‥このエテ公め‥‥‥」
「ふはは、組み打ちをしようと言ったのはお前だろう。しかし、一回で終わってしまったようだな」
猿参は一歩一歩、黒丸へ歩み寄る。
「く‥くくく‥‥」
「何がおかしい小僧?気でも触れたか」
「いや、お前に吹き飛ばされたのが可笑しくてな」
「なんだと?ふはは、気が触れたのは冗談では無いらしい」
「勘違いするなよ化け物。吹っ飛ばされた事じゃなく吹っ飛ばされた場所が可笑しいのさ」
188 :
無限桃花〜烏の爪は至高き〜:2010/02/10(水) 22:32:50 ID:XzPuEoHE
黒丸が居る場所そのものに意味は無い。それに寄ってきた猿参の位置。それが重要だった。
「さて、俺の最後の攻撃だ」
黒丸は九文を切り、一言「不動」と唱えた。すると辺り一面に陣が現れ、猿参がその中心に居た。
「なに?これは‥‥」
そして、陣からは紫の炎が現れ、猿参を包む。
「これが『ヤタガラス』オリジナル。不動紫炎陣だ。炎の神、不動明王に焼かれるがいい」
「ぬあああぁぁ!おのれ小僧!」
「喚くなよ化け物。こっちはリアクションする余裕はないんでね」
黒丸は猿参の一撃で、既に動けないほどダメージを受けていた。左肩と肋骨は折れているか。壁にたたき付けられた勢いで背中も痛む。
「限界だな。こりゃ病院送りか」
黒丸は炎を見つめつぶやく。しばらく入院生活も悪くない。この際だからたっぷり休むか。
しかし、それは一瞬の妄想で終わる。
紫の炎から、茶色い毛皮の腕が伸び、黒丸の首を捕らえる。先程までの緩慢さは見られない。首を締め付ける手から伝わるのは、怒りだった。
「‥‥小僧ぉお!人と思って油断したわ!もしワシが鬼神でなければ消えていただろうが、そうは行かなかったな」
黒丸の攻撃は破られた。やはり、寄生四天王は黒丸達では太刀打ち出来る相手ではなかった。
「もうお前に用は無いわ。無限桃花の居場所は先程の女に聞くとしよう。お前はワシの腹の足しにしてやろう。苦痛と共にな」
「そりゃ‥‥‥光栄‥‥‥だ‥ね」
「今に減らず口も叩けなくなる。さぁ、覚悟は良いか?」
ここまでかと黒丸は思った。だが、黒丸の思いは予想外な形で裏切られた。稲妻だ。黒い稲妻が黒丸と猿参の周りを走っている。
そして聞こえて来た
「爆ぜよ天!!!」
黒い稲妻は黒丸を掴む猿参の腕を撃ち抜いた。肘から先が落ち、黒丸は魔物の手の中から解放された。
「桃‥‥花さん‥‥」
「遅くなってごめんなさい、黒丸さん」
スマン!投下終了宣言忘れてた。以上です。
人が多い今こそ投下の時!
192 :
蒼髪の守護者 〜魔王〜:2010/02/11(木) 13:05:15 ID:Dwyyu4Xo
規制が一部解除されたらしい。守護者としても、一人の住民としても喜ばしいことだ。祝に何か投下でもしようか。
そう考えていたとき、やつは現れた。
「元気にしているか、クリーシェ」
それは人の形を取りながら、誰の形も為していなかった。どこにでもいる誰かもしれないし、今まで見たことのない誰かもしれない。一言で上手く言い表すなら、【未設定】の存在だといえた。
「見ていて気持ちが悪いです。せめて設定を終えてから来て下さい」
「フ、フ。そうだったな。いやあすっかり忘れていた」
わざとだということは分かりきっている。彼(彼女?)のいつもの悪戯だ。
そいつはウネウネと蠢き始めると、こちらがまばたきを終えるまでにきちんとした人間になっていた。10歳くらいの、少女の姿だ。今回の服装はゴシック・エンド・ロリータ。その上にいつものマントを羽織っていた。
「こういう趣向はどうだろうか」
「趣味悪いですね。ゴスロリとマントは合いませんよ」
彼に相対すると、どうしても言に毒が含まれてしまう。まあそれも仕方ない。私は彼女が嫌いなのだから。
「それにしても、自らの設定を設定出来る力、ですか。便利なものですね」
「確かに便利だが、常人には扱えまい。彼らは自分の造形を正確にイメージすることすら出来ないのだからな」
そう言って自信に満ち溢れた笑みを浮かべる。
「相変わらずですね。ハルトシュラー」
そう。目の前にいる尊大な態度の人物こそ、創発の魔王・ハルトシュラーなのであった。
193 :
ハルトの口調に全く自信がない:2010/02/11(木) 13:05:55 ID:Dwyyu4Xo
「それで?今日は何の用ですか」
嫌いな相手とはいえ、一応客人である。紅茶を“創って”振舞う。前に毒を入れてみた事があったが、それはあっさりと見破られた。
「いただこう」
魔王は優雅な仕草で紅茶をすすり始めた。見ていて惚れ惚れする。ムカつく。
なあに、お前がようやく“認識”されたと言うのでな。祝いに来てやったのだ。ほら」
土産を投げて寄越しやがった。
「あなたが、お土産?一体どういう心変わりですか?」
土産を持ってくるなんて今までなかった。
だが私も私で、素直に喜んでおけば良いのに変に勘ぐってしまう。困ったものだ。
「だから言っているであろう、祝いだと」
「……他意は?」
「ない」
彼女はキッパリと言い放った。何だ、コイツ、もしかして良い人?
「中身は何なのですか?」
「私が創作の合間に作ったまんじゅうだ。あとでゆっくり食べると良い」
ハルトは優しく笑う。
そうか。
そうかもしれない。
確かに彼女とは思想的な面で相容れることは絶対にない。これから何年経とうとも平行線のまま争い続けるだろう。
だが、それ以外の面では?私もハルトも上層の存在。お互いに友となることは出来るのではないか?
「ありがとうございます、ハルト。あとでいただきますね」
そうして私も笑みを浮かべた。
194 :
いや、知ってるよ?使えないのは:2010/02/11(木) 13:06:37 ID:Dwyyu4Xo
しばらくもしない内にハルトは帰っていった。
さて、ハルトの土産を開けるとしよう。おそらく、私の顔はにやけていた。
箱を開けるまでは
「…………ほぅ」
中にはまんじゅうが4つ入っていた。どれも美味そうだ。非常においしそうだ。
だが、表面にデカデカと<FONT SIZE=7>発子</FONT>とプリントしてあるのは頂けない。それも4つともに。
「……なるほど」
私は魔王・ハルトシュラーを許さないことに決めた。
ここまで
>>190 半分しか分からなかった><
絵が分かりづらいんじゃなくて、単純にこっちの知識がないせいだけど
投下乙
ハルトさんに悪意があるのかないのかw
発子もそれぐらいで許さないと決めるなw
では、こっちも投下するぜ
「バームクーヘン!」
奇怪な叫び声と共に、桃花はベッドから飛び起きた。
「ゆ、夢か……」
「なんだなんだ! 敵襲か!? 刺客かー!?」
冷や汗を浮かべながら呟く桃花の横で、その大声に起こされたよし子が慌てふためく。
ここは遠征先のホテル。桃花とよし子の二人は、同じ部屋に宿泊していたのである。
「すまない、よし子。起こしてしまったな」
「んー、どうせもうすぐ起きる予定の時間だったし、それに関してはかまわないぞー!
けど、いったい何があったんだー?」
「たいしたことじゃないんだ……。ただ、夢を見た。妙な夢をな……」
「夢ー?」
「ああ。私が刀を持って、無数の化け物を次々と切り伏せていく夢だ。いったいなぜあんな夢を見たのか……」
┌──┐
i二ニニ二i
i´ノノノヽ)
Wリ゚ -゚ノリ 夢と聞いて
⊂)_介」つ
<__l__〉
〈_ハ_〉
____
く/',二二ヽ>
|l|ノノイハ))
|l|リ゚ー゚ノl| 飛んできたですぅ
,ノl_|(l_介」づ
,≦ノ`ヽノヘ≧
ミく二二二〉
「うわっ、びっくりした!」
突如目の前に現れた二人組に、まだ目が覚めきっていない桃花は大げさに驚く。
しかしそれが誰なのか理解すると、その表情はとたんに冷めたものとなった。
「何だ、変態姉妹か。呼んでないから帰れ」
「なっ、いちおう翠星石たちの方が年上ですのに、何ですかその口の利き方はぁ!」
「そうだよ! 僕たちは変態じゃないよ! 仮に変態だとしても、変態という名の淑女だよ!」
「蒼星石! てめえは黙ってるですぅ!」
ミニコントを開始した双子を見つめながら、桃花は小さく溜め息をつく。
彼女たちは大卒。自分は高卒。たしかに彼女たちの方が年上だ。
だが、外見からいえば二人の方が自分よりずっと幼く見える。
「というか、よし子もそうだが……。このチーム、妙にちっちゃい女の子が多くないか?」
「それはしょうがねえですぅ。創発市の特産品は美少女ですから」
「特産品扱い!?」
「温暖な気候と住民の柔和な人柄で、かわいい女の子に育ちやすいらしいよ」
「どこのマリネラ王国だよ! というか、この板の住民層的に『パタリロ!』ネタが通じるか不安だわ!」
「お前は何を言ってるんだー!」
「はっ!」
よし子のツッコミを受け、桃花は我に返る。
「すまない……。実は私は、昔から突然何かに取り憑かれたようにわけのわからない台詞を口走ることがあるんだ……。
私の家系はもともと神職だから、霊的な何かが関係してるんじゃないかとは言われてるんだが……」
「はっ、この科学全盛の時代に霊ですか? そんなオカルトあり得ないですぅ」
「なんかお前が言うとすごい違和感があるぞー!」
桃花に冷ややかな視線を向ける翠星石に、またしてもよし子のツッコミが飛んだ。
「ふむ……。変な夢というのも、それに関係があるのかも知れないね。
とりあえず、気が向いたら僕たちに相談しなよ。野球の片手間とはいえ、大学じゃ心理学を勉強してたから。
少しは役に立つと思うよ」
「ああ。頼りにさせてもらうよ、変態先輩」
「いや、だから変態言うな」
◇ ◇ ◇
その日の夜、桃花は大阪ドームで行われる大阪ドリームスとの試合に出場していた。
試合は7回表まで進み、得点は2対1。ハルトシュラーズが1点のビハインドだ。
だがハルトシュラーズはこの回、逆転のチャンスを迎える。
ツーアウトからよし子がツーベースヒットを放ち、さらに続くアジョ中がレフト線ギリギリへのポテンヒット。
ツーアウト一塁・三塁という好機で、桃花の打順が回ってきた。
ちなみにここまでの桃花は、いつもの如くノーヒットである。
(なんか遙か遠くでバカにされている気がするが……。まあいい。
私の得点圏打率は、通常の打率と比べて一割以上高い。
つまり自分で言うのもなんだが、チャンスに強いということだ。
今回のチャンスも、ものにしてみせる!)
不敵な笑みを口元に浮かべ、桃花はバットを構えた。
投下終了
今回は次への繋ぎ回なので、内容薄め
>>199 投下乙。
バームクーヘンてなんだw
もう少ししたら桃花の夢に出てきた桃花を投下すっぞ。
以上、ここまでのまとめ。間違ってたらごめん。
ハルトシュラーズは複数キャラでてるけど一番最初に出てきた桃花カテにした。
専ブラだとポップアップがすごいことになるので注意。
おお、まとめ乙
まとめ作ろうと思ったら、既に作られていたでござるの巻
ソハモンの答え合わせマダー?
206 :
まとめ作ろうと思ったら、既に作られていたでござるの巻 :2010/02/12(金) 13:08:24 ID:Dk23ktpj
>>204 「イマイチなんか足りないんだよな‥‥何か、大事なもんが」
男は考えていた。創作発表板のとあるスレ。そこは投下作品が多く、一見すると賑わっている。しかし実際は創作者が投下するのみの、感想がないスレだった。
読んでいる人は居るはずだ。だが、作品に対しての感想や雑談が無ければ、まるでだれも読んでいないかのような閑散とした雰囲気になる。
実際、そのスレ、創発キャラスレは作品が淡々とならぶスレだった。これでは新たな人が参加しにくいのは明白だろう。
「‥‥そうか‥‥アレだ。まとめだ!!」
男は思い付く。数多い作品群を解りやすくまとめて置けば、新たに来た人もわざわざスレをさかのぼらなくても簡単に一つの作品が読める。そのシリーズの続きが投下されても感想をすぐにレス出来る。これだ‥!
男が考えたそれは妙案と言えるだろう。そしてさっそく作業にかかる。現在進行している作品は三つ。それぞれの設定などのまとめも居るだろう。
結構な作業量だ。やり遂げたとて一円にも成らない。しかし、新たな人を呼び込みたい。その情熱のみで、男は無償の労働に汗を流す。
そして完成した。これがあれば‥‥!
男はさっそくスレを開く。自らが造りしまとめ。これはこのスレにとって強力なカンフル剤になるかも知れない。
男は胸を躍らせた。しかし‥‥‥
「あれ?」
男は驚愕する。あるレスに。
それを見た男は、自らのまとめを捨て、こうレスをした。
「まとめ作ろうと思ったら、既に作られていたでござるの巻 」っと。
>>206 こwれwわw
でもごめん、まだ作り始めてすらいなかったんだ
208 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 14:26:22 ID:Dk23ktpj
209 :
無限桃花〜桃の上に雲叢がり〜:2010/02/12(金) 14:32:12 ID:Dk23ktpj
コンクリートで覆われた魔境。人ならざる魔物と、それに相対する黒い稲妻を操る少女。
唯一の凡人である黒丸はそこで伏していた。 常に付けている胸元の無線から声が聞こえる。理子の声だ。
『先輩!聞こえますか先輩!何とか言って下さい!桃花さんそっちに着きましたか?せんぱ〜い!』
「うるさいぞオバQ女。桃花さんは目の前だ。お前は?」
『あ!まだ生きてた!良かったぁ‥‥。私は指令室です。無線に付いてる発信機から先輩の位置を特定してケータイで桃花さんをそっちに誘導しました。間に合ってホント良かった‥‥‥』
「なるほどな‥‥‥助かったよ。ありがとう」
『お礼は桃花さんに言ってください』
「そうしよう」
黒丸は桃花を見る。黒い長髪をポニーテールでまとめた少女は、この場面に限っては戦車隊より頼もしい。
「すみませんね桃花さん‥‥急に呼び立てて、しかも‥‥こんな色気の無い場所で‥‥‥」
「ムリに喋らないで下さい。すぐに救助が来ますから‥‥‥」
「桃花さん‥‥‥あの寄生の狙いは‥‥‥あなたです。申し訳ない。それでも桃花さんを呼ぶしか無かった‥‥‥」
「気にしないで下さい。黒丸さん」
「‥‥昌です」
「え?」
「私の名前は‥‥黒丸‥あ‥きら‥‥‥」
「黒丸さん!」
黒丸は壁にもたれたまま頭を落とし、気を失った。寄生四天王との戦いはやはり凡人には無理があったのだろう。ここからの戦いは、もはや人が立ち入る領域ではない。
「お主が‥‥無限桃花か?」猿参は問う。
「そうだ」
「これはこれは‥‥わざわざ探さなくとも自ら出向くとは滑稽。ワシはお主の抹殺の命を受けし者。名は‥‥‥」
「お前の名前なんか興味ない」
稲妻が走る。それは猿参はおろかコンクリートの外壁をも深々とえぐり、猿参は思わずたじろぐ。先程とはケタ違いの、恐るべき闇の天神と同質の力。
かつて鬼神と呼ばれた猿参ですら、身構えるほか無かった。
210 :
無限桃花〜桃の上に雲叢がり〜:2010/02/12(金) 14:34:09 ID:Dk23ktpj
「ふむ‥‥闇の天神には遠く及ばぬが油断は禁物という事か。よかろう。ならばワシも婆盆の手土産、使わせてもらうぞ」
猿参から影が伸びる。それは吹き飛んだ腕を形造り、元通り復元する。
闇を纏った鬼は口から何かを吐き出した。唾液と胃液で濡れたそれは、古代の日本で使われたような両刃の長剣。
「ふはははは!見るがいい。これぞ日出る国に伝わる宝剣、天叢雲剣なり!!」
神話の時代から存在する霊剣。それを誇り高く掲げる猿参。だが、桃花の興味は別の所にあった。
「お前今‥‥なんて言った?」
桃花は目の色を変える。村正を包む布は影と消え、黒い刀身が鈍く光る。そして桃花の衣服は黒い袴へ、桃花の戦闘服へと変わって行く。
「婆盆って言ったな!」
桃花の刃は一瞬で猿参の胸元へ飛び込む。間一髪でそれを避けた猿参は、宝剣で反撃を心見るが、神速の体術を修めた桃花には見切られるのみだった。
稲妻を発しながら、桃花は攻勢を緩めない。無限流の剣術で振るわれる魔剣は、猿参を追い詰める。
先程の黒丸など、桃花の戦闘能力と比べれば無きに等しいだろう。
「言え!奴は‥‥‥婆盆は何処に居る!!」
怒り。それは桃花と、稲妻を発する村正の力を増して行く。猿参は焦った。影糾に、彼方に言われていた。天神が目覚める前に殺せと。
もし無限の天神が彼方と同格ならば敵わない。自身の身体で覚えている。闇の天神の強さを。
「覇ッ!!!」
猿参の頭上から村正は振り落とされた。またも回避されたが、それは地面を砕き地下への入口を造る。
桃花と猿参は、真っ黒な地下世界へと落ちて行った。
「ここは‥‥‥!
「ほう‥‥?かような場所を造るとは、人もなかなか恐ろしいものだ。」
巨大な地下空間。そこは東京都が建造した、とてつもなく広い治水施設だった。
211 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 14:36:53 ID:Dk23ktpj
「ぐはっ‥‥か‥‥‥」
桃花は地面に打ち付けられる。地下空間の床から地上までは100メートル近くある。戦闘服で無ければ死んでいただろう。
そして一緒に落下した猿参は、宝剣・天叢雲剣の切っ先を桃花へ向け立っていた。
「無限桃花よ。村正の力、見せてもらったぞ。なるほど、婆盆がこの宝剣を持たせた理由が解ったわ。たとえ真に目覚めずとも無限の天神。手心を加えては勝てぬ」
「婆盆‥‥!どこだ‥‥奴はどこだ!」
「ふはははは。先程からしつこい奴だ。知りたくば教えてやろう。奴はまだ闇の天神とともにこの都に居る。しかしもうすぐ旅立つだろう。かつて闇の天神が生み出した軍を蘇らせる為に」
「闇の天神‥‥影糾の事か‥‥」
「影糾?ふはは。そうだったな。闇に落ちし時自らをそう名乗ったのだった。かつては人の名を持っていたが‥‥転生した今の名は‥‥たしか無限彼方だったか。お主の妹だったな。」
「‥‥彼方‥‥!」
「嘘だっっ!!」
桃花の稲妻は激しさを増す。村正は切っ先を向けた天叢雲剣を払い、桃花は猿参の懐へ飛び込んだ。
「嘘だ!!彼方が‥‥‥寄生されただと!」
「寄生だと?何も知らぬのか。闇の天神、影糾は誰にも憑いてはおらぬ。無限彼方、お主の妹こそまさに、『奴』がこの世へ転生し蘇った姿」
「嘘だ!!!」
桃花から影が吹き出す。袴は漆黒のボロ着れへと代わり、村正は闇を讃える。まるであの時のように。
「ふはははは!そのいで立ち、まさに闇の天神と同質の力よ!しかし未だ完全ではないな!奴はもっと恐るべき力を秘めておったわ!」
猿参は不敵な笑みを浮かべる。そして遂に、宝剣はその牙を剥く。
突如見えない斬撃が、桃花を斬り付ける。その一撃で桃花は弾き飛ばされた。
「ぐ‥‥!これは‥‥‥!?
「ふはははは!もはやお主など敵では無いわ!」
212 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 14:39:06 ID:Dk23ktpj
神話にかく在り。かつて山火事を一振りで薙ぎ払った伝説の剣。別名草薙剣。
その威力は今、桃花へ向けられている。
「これは素晴らしい。さすがは神話に伝えられる剣。さて無限桃花よ。覚悟は出来ているか?」
猿参は天叢雲剣を振るう。それは空を斬る音だけを残し、動きを止める。
だが桃花は感じでいた。巨大な空気の壁が、自分へ向かって飛んでくる。その中へ混じった無数の見えない刃が、全てを斬り刻まんと乱舞している。
再び桃花は弾かれる。戦闘服を纏うからこそ耐えられるが、そうでなければ既に無数の肉片だろう。
ただ受けるだけで、桃花はダメージを受ける。
猿参はその斬撃を振るい、さらにはその巨体を桃花へとぶつける。天叢雲剣だけでも脅威だが、猿参の肉弾攻撃もまた脅威だった。
すでに見切ったとはいえ、宝剣との連携で繰り出されれば避けるのも容易ではない。
「んぎっ‥‥くそ‥」
「無限桃花よ、さすがにこの威力には敵わんか。ふはは。今止めを刺してやろう」
「彼方‥‥彼方‥‥!」
桃花は言った。
「ふはははは!本当に何も知らなかったようだな。妹がまさかお前を殺すようワシを仕向けた事。未だ信じられぬか。動揺しておるのが手に取るように解るぞ!」
「‥‥嘘だ‥‥!取り消せ!」
「喚こうが真実は変わらぬ。もう死ね。無限桃花よ」
桃花の纏う影は激しさを増す。同時に桃花の意識は薄れていく。
だが、それはあの時とは違う。桃花の魂が、まるで外へ抜け出そうとしているようだった。
桃花の意識はさらに薄れる。そして、影は人の形となり、桃花の手から村正をそっと取った。
無限の天神が、現れた。
213 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 14:42:26 ID:Dk23ktpj
投下終了。
覚醒キター
続きが楽しみれす
まとめは先を越されたから、俺はwikiを編集してくる
作り方は実践で覚えるから大丈夫だよ
とりあえず仮作成
あとは何をいれたらいいだろうか
216 :
感想乙:2010/02/12(金) 23:29:51 ID:Dk23ktpj
>>214 「ちっ‥‥やられてやがるわ‥‥‥」
男はイラついていた。まとめを作ろうと前々から考えていたが、行動に移す前に何物かに先をこされてしまった。
「お‥‥投下があるな‥‥感想感想っと‥‥」
男は投下作品にレスを付け、先をこされたまとめ作成に変わる新たなプロジェクトを決行しようとした。
ーーーWiki編集。
男が己に課した挑戦。
男には編集経験は無い。しかし、指が、心が、その挑戦を望んでいた。
「これも‥‥この板の発展の為‥‥!」
男の決意は誰にも止められない。もはや彼の頭はどのように編集するかで占められていた。 さっそくWikiを開き、編集すべきページと睨み合う。
「コイツは手間どりそうだな‥‥だが!」
さっそくの作業。もう一度言うが、彼に編集の経験は無い。その作業に手間取る自分に、先程までのイラつきはさらに膨れる。
少し休憩が必要だ。新たな投下があるかもしれない。
男は、Wiki内のリンクをクリックする。
ページが切り替わるまでの一瞬、男は一時の安らぎの時とした。ページが開けば、また創作者達の海へと投げ出される。それは、男にとっての闘いの場所であり、また楽園でもあるのだ。
ページが開く。真っ白だった画面にはテキストが現れ、今まさに創作の大海への船出だと言わんばかりだ。だが‥‥‥
(´・ω・ `)やぁ。 ようこそバーボンハウスへ。このぺージは‥‥‥‥‥
「ぬあああぁぁ!!!」
男の船出は出港直後の撃沈で幕を閉じた。
いや、なんかゴメン
おまwww
よくそんなポンポン書けるもんだ。うらまやすぃぜ
だが残念だったな。
ヘルプが充実してるおかげでサクサク編集できたぜ
218 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/13(土) 01:53:33 ID:N6MBGoBp
>>217 そんな機能があるのかw
ただ婆盆にはやられたハズだぜ?
さて、投下投下と。
219 :
無限桃花〜無限地獄は我が内に〜:2010/02/13(土) 01:54:52 ID:N6MBGoBp
ビルの谷間に一台のバンが入って行く。白いバンの窓は鉄板で覆われ、後部の様子は見えない。
バンは巧みなハンドル捌きで人気の無い路地裏へ侵入し、後部のドアが勢いよく開く。中からはボディアーマーとMP5で武装した男達が飛び出した。
まるでハリウッド映画のワンシーンのようだったが、ここは紛れも無く日本だ。
「要救助者発見!こっちだ!」
一人が叫んだ。彼らは直ぐさまその場へ集まり、周囲に銃口を向けつつ倒れている男の様子を伺う。
「黒丸隊員を発見。意識不明。ケガも酷い。何にやられたんだ‥‥」
『了解。すぐに指定病院へ運べ。警察に見られたら後で面倒だ。周囲の警戒も怠るな。まだ寄生が居るかもしれん』
「A小隊、了解」
彼らは『ヤタガラス』の特殊作戦部隊。黒丸達エージェントとは違う、直接的な戦闘及び情報収拾を目的とした連中だ。
その装備はSATと似ているが、使用する武器は対寄生の物へ換えられている。訓練はアメリカ陸軍のストライカー部隊と共同で行っている。陸上自衛隊の対テロ特殊部隊と偽ってだ。
黒丸はバンへと慎重に運ばれ、周囲は警戒する隊員に護られる
その内の一人の隊員が、恐るべき物を発見した。
地面にぽっかり開けられた地下への入口。コンクリートの壁につけられた巨大な傷。
「怪獣が通った後だな‥‥‥」
隊員の一人が呟いた。ここに居たのは寄生一匹と、少女一人だ。しかもこの傷痕を残したのは、無限桃花という少女だと、無線で聞いていた。
「これなら寄生相手でも心配は要らないな」
彼は楽観した。これほどまでの戦闘能力を持ってすれば、寄生など物の数ではない。きっと彼女なら、奴らを撃退するだろう。
彼は再び周囲に目をやり、警戒を強める。後ろに居た隊員が彼の肩を無言で叩き、黒丸が車へ収容されたと伝える。
それを合図に、彼らはバンへと乗り込み、その場を離れた。
残されたのは、黒い稲妻が炸裂した痕だけだった。
220 :
無限桃花〜無限地獄は我が内に〜:2010/02/13(土) 01:56:52 ID:N6MBGoBp
ーーー地下世界。
とてつもなく広い空間には、魔物と少女。それだけが存在していた。
無限桃花は倒れていた。天叢雲剣の力は強大であり、それを振るう者もまた、人間より遥かに強大な力を持つ魔物だった。
桃花から滲み出る黒い影は、桃花から取った村正をもって人の形をなしていく。桃花の意識はさらに混濁し、目の前で何が起こっているのか理解出来ずにいた。
ただ、昔の出来事が思いだされる。あの日、無限桃花が刀を手にし、彼方が釣れ去られたあの時。
そうだ‥‥似ているあの時と‥‥
桃花は思い出した。彼方から出る黒い影。それもまた人の形だった。
では、自分から出るこの影は‥‥‥一体‥‥?
(いかんなぁ桃花。もう見てられん)
「あなたは‥‥誰?」
(怒りや憎しみ、悲しみ等、負の感情に任せ力を振るえばそれは修羅道へ通ずる。すなわち闇へと落ちやすい。父の言葉を忘れたか?)
桃花の意識はさらに薄れる。まるで肉体から魂が抜けたように‥‥‥
(本来であれば私が外へ出るなどイカン事や。しゃあけど仕方ないわ。このままだと死ぬか、再び闇の天神になる。悪世巣の時みたいにな。アレはいかんな。私がすんでで止めたからいいものを)
「あなたは‥‥‥誰なの?なんで父さんの事を‥‥」
(知っとるも何も無い。お前が知ってる事は私が知ってる事や。)
「あなたは‥‥」
(本当なら無限当主なら古文書で私の事や『奴』の事も知ってるハズなんだが‥‥‥知らないなら仕方ない。それよりもっと大切なモンをあの時失ってしまったさかいな‥‥)
「誰なの‥‥‥‥‥?」
(無理せんで寝なさい。知りたい事あったら自分の魂に問い掛けなさい。桃花が知っとる事は私が知っとる事やけど、私が知っとる事で桃花がまだ知らない事もある。
覚えとき。無限の魂はお前に宿ってる。心では認めたくなくとも、お前の魂は宿命を知っとる。妹が‥‥彼方が『奴』だという事も)
221 :
無限桃花〜無限地獄は我が内に〜:2010/02/13(土) 01:59:17 ID:N6MBGoBp
桃花の影は語り、桃花は意識を失う。性格に言えば、肉と霊から魂が分離したのだ。
彼方が『奴』である事を、桃花は最初から知っていた。桃花の影はたしかにそう語った。
眠りに付いた桃花の戦闘服は消え去り、影へと帰る。そこに眠っているのは、ただの可愛いらしい女の子だ。
(すまんな‥‥‥こんな娘にまで苦労かけるわ。代わりにあの大猿は私が始末したる)
黒い影は村正を猿参へ向け、稲妻を辺りに撒き散らした。それは宝剣を持つ猿参ですら、恐れおののく程に。
「貴様‥‥もしやあの時の陰陽師か‥‥?」
(なんや、私の事知っとるなんてえらい長生きな妖や。ふむ‥‥‥‥石川の猿鬼か。聞いた事はあったがまさか東京で会うとはな。やはり時の都には妖が集まるんかな)
「何故貴様が‥‥あの時、闇の天神と共に死んだのでは無いのか?!」
(なるほどな‥‥天皇は上手い事隠してくれたみたいやね。あの時は苦労した。さっさと死ねりゃ良かったがそうもイカンかったしな。何せいずれ奴が蘇ると解った以上は何か仕込んどかんとな)
影は語る。飄々とした口調で。影糾の正体すら知っていた猿参は、彼の存在もまた知っていた。
(闇の天神は‥‥‥やはり蘇った。私の読みは正解や。千年の時を越え、ようやくあいつを本当に退治出来る)
「貴様が‥‥‥無限の天神なのか?」
(そりゃ違う。天神の力‥‥『奴』の力を受け継いだのは桃花だけや。仕込んだのは私やけど。
私は桃花に正しくそれを使うよう教えるだけや。今回は特別なんやで?
アイツもまさか自分の力が他の奴にまで受け継がれるとは露ほども思わんかったろうな)
「貴様‥‥‥無限め‥‥‥」
(無限か‥‥懐かしいな。その名前。でも今は無限桃花や。私は消えるべき存在。桃花の魂の隅っこでいい。さて、お喋りはもう止めや。気の毒やけど猿鬼さん、『奴』に憑かれた以上は斬らねばいかんわ)
222 :
無限桃花〜無限地獄は我が内に〜:2010/02/13(土) 02:02:07 ID:N6MBGoBp
(強くて運がよけりゃ『奴』の呪いだけ消えるかも知れんね。あの妖狐みたいに。でも、猿鬼さん。アンタはそこまでの妖ではないわ)
黒い影は村正を振りかざす。そして村正から現れたのは、桃花とは比べもに成らないほど巨大な黒い龍。
(天神は闇に落ち、その力は暗黒の物となった‥‥桃花はそれを受け継ぐ。しかし力の善悪はその性質やなく使う者が決める事や。桃花には何度言ったか解らんけどな)
(さて、終わりや。その天叢雲剣は後で皇室に返却しておくから。心配せんといて)
「何を‥‥!貴様ごとき魂のかけら、打ち砕いてくれるわ!」
(『奴』と会ったなら知っとるやろ?かけらでもお前なんか屁でも無いわ。桃花が目覚めたらきっと凄い事になる。彼方のように‥‥‥‥)
黒い龍は猿参を飲み込む。一瞬で。
影糾に寄生された猿鬼に耐え得る術は無い。それは天神が自らの呪いを、寄生を打ち消す為に培った力だから。
猿参は消える。宝剣を残して。
「‥‥‥では続いて本日のスポーツ、武外さんお願いします。」
「はい新立さん‥‥‥」
テレビのスポーツニュースが聞こえてくる。この番組でスポーツの話題をやる時間は決まっている。今はだいたい夜の10時40分といった所か。
「‥‥今日はハルトシュラーズのキョン投手が初のブルペン入りをし、45球、変化球を交えながら‥‥‥」
心地いい。暖かいマットの感触に包まれ、夢うつつのままテレビのニュースを聞いていた。
いつもならそろそろ寝る時間に近い。しかし今日はもう寝ていた。記憶が曖昧だが、あまりの心地良さに意識は未だ目覚めを許さない。
「なんで私寝てるのかな‥‥?」
桃花は今日の出来事を、眠りにつく前までの記憶を探る。
「今日はちょっと遅く起きて、たしか駅前のレコードショップ行って‥‥そうだ。そのあと理子さんから電話あったんだ‥‥そして‥‥‥」
「そうだ、黒丸さん!!!」
「‥‥ん〜〜?‥‥あ、起きましたか?桃花さん?」
223 :
無限桃花〜無限地獄は我が内に〜:2010/02/13(土) 02:02:59 ID:N6MBGoBp
投下終了。腹が減ったぜ。
読むのがおっ付かないwwwすげえよwww
クロス
↓ バームクーヘン
ハルトシュラーズ
↓ テレビ
無限桃花
お前らwww
227 :
ついでに代行:2010/02/13(土) 14:32:56 ID:sRLHmnzA
投下乙
自分のSSのネタを使ってもらっててびっくりしたぜ
そっちの世界は冬だからプロ野球はまだキャンプ中なのかw
228 :
225:2010/02/13(土) 15:27:20 ID:8sUHdOM0
勝手に大体作った
後は許可もらえれば保存する
もらえなければ破棄する
>>230 あんさんのまとめも作ったんだが、載せてもいいかい?
232 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/13(土) 20:59:50 ID:N6MBGoBp
>>231 俺のかいw
まぁ造って頂けるならありがたいwそこら辺の事は勝手にやってもらって構わないよ。
俺は投下するだけだ。
‥‥‥なんか今日ずっとお前と話してた気がする‥‥‥
>>232 よし来た!これでかつる
編集にあたって、全般通したタイトルと、一番最初に投下した
>>50-53のサブタイトルを教えてほしい
>>233 作品タイトルは無限桃花〜落つる天〜
最初のサブタイは〜new beginning〜
おお、ちょっとPC触れれてなかった間にまとめまで出来てる!
乙すぎるんだぜ
しかし色んな話きてるなーw
設定って
>>2を抑えておけば過去投下作と矛盾しても大丈夫なのか……
何か思った以上に気楽に投下できそうだし、もっと色んなの来るといいなあw
>>234サンクスギビング
行ってきた
変なとこあったらおしえてちょ
ちなみに最初だけ水平線になってるのは仕様です。
あと、他の作者さんからも許可が得られたら(その日のやる気次第で)まとめるから、どんどん言ってきてね。
237 :
バレンタイン桃花 ◆KazZxBP5Rc :2010/02/14(日) 15:52:56 ID:eQ5dCMsZ
※空白行をお楽しみください。
「たまには寄生のことも忘れてこうやって二人で過ごすのもいいものだな」
「なあ、今日はバレンタインだろ。だから、その、受け取ってくれないか?」
「バームクーヘンにチョコをコーティングしただけなんだけどな」
「彼方ならもっと凝ったものを作るのかもしれないけど……
ってこんなときに妹の話はナシだよな。すまない」
「おいしいだろ? 中身は私の一押しの店のだからな」
「唇にチョコが残ってるぞ。私がなめ取ってあげよう」
「んっ」
ドサッ
「ふふふ、自分から押し倒すような女は嫌いか?」
モワモワモワ
「なっ、よりによってこんなときに!」
『我が名は獣羽鶏寄生! 無限桃花、覚悟っ!』
「お前こそ! 人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえ!」
桃花の勇気が俺を救うと信じて! 第一部完!
(第二部はありません)
「ボール! フォア!」
審判のコールと同時に、桃花はバットを足下に置き一塁へと向かう。
(ちっ、できれば私のところで決めたかったが……。だからといってあんなボール球を打ちにいくわけにもいかないしな。
仕方ない。次のバッターに任せよう)
渋い表情を浮かべつつ、ベース上で立ち止まる桃花。
次はピッチャーの打順だが、ここで監督は代打を送る。
『ハルトシュラーズ、選手の交代をお知らせします。バッター、門矢に代わりまして……』
, - '──‐ - 、 . .:.:.:.::::::::::::\
/ `丶、 .:.::::::::::::/
\ _ __ _. . .:.:.. :.:.:.:.:::.`ヽ、.:/
/,イ:.:::::.::::.:::.:`:`丶、.:.:.::::::::::.:.\
/.:/::j::/.:.:::::、.::::.::::::.:.:::.`ヽ .:.:.::::::::::\
/.:::l::::i::ト、;;:、::::`ヽ;i:::::j!:::.::i;:;;\.:.::::::/
l/l:;|.:/N ,ィ≦二l!::/.::::!::|;:;:;;:;;:y'´
`ト、:fリ {カj 7 |:/:::::::|:::!;:;:;:;:,′
『蒼星石』 ソ ´ ̄ リi::::::::!;;,!;:;;:/
ト、 __ |:::::::j/;;イ
l/'、 |::::,イ;:;;/
|:;ゝrァ┐ !/ l;/
|/^l/ィュ-─‐- 、\
, ィフ.:.:.:.::::::::::::::::.:ヽト、
, ィ ´.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::.〉j|
_, <二ニフ´ ̄`ヽ.:.:.::::::::::::.::::::::::.::::ヽト、
_ _,r‐ュ--─<二ゝ、_ _ \.:.::::::::.:.:::::::::.:.:::i:|/
, イ 仄,r'´ `ヽト、 \ ``ヽ _ jL.:.::::::::::.:.::::.:.::|:|
しJl///, ヘ _ ノ ヽ j! , イ_イj!;:;:;;;;;;;:;:``77ヽ::」
/ Y ⌒Y^ヽ ト、 ``j〉 | 。 °L _/ヽj'^ヽ|;:;:;;;;;;;;;;;;;;//ス/
! ハj! ハ i i ! ! fコ L。_, ィソ´ ̄ ,ス<7;;;;;;;:;:;:;;:;;;;;厂
| !.:|l| .:| | | | |人j〉_ソノ ̄ /><7;:;::;;;;;:;;;;:;:;;j
| |::|||.::::j | | | | /><7;:, ィ7三三jト、
名前をコールされた蒼星石の表情は固い。
彼女のポジションはキャッチャーだ。双子の姉である翠星石と、リトルリーグ時代からずっとバッテリーを組んできた。
だがハルトシュラーズのキャッチャーは、元メジャーリーガーのトトロがいる。
足こそ遅いが、打撃も守備も超一流。彼がいる以上、蒼星石に出場の機会はめったに回ってこない。
だから、これはチャンスなのだ。蒼星石は打撃も悪くない。
結果さえ残せば、また使ってもらえる。例え代打要員だとしても、まったく試合に出られないよりは遙かにましだ。
蒼星石は燃えていた。だがその闘志は、体に余分な力みをもたらしていた。
第三者からでも、それがわかるほどに。
「わっ!」
打席に向かおうとする蒼星石の顔面すれすれに、ロージンパックが飛んでくる。
蒼星石は、反射的に飛んできた方向へ顔を向けた。
そこには、筋骨隆々の巨漢が立っていた。
「スミスコーチ!」
ジョン・スミスヘッドコーチ。蒼星石は、その男の名を呼ぶ
「いったいどういうつもりですか! こんなことして……」
「いや何、お前がずいぶん力んでたように見えたからな。少しリラックスさせてやろうと思って」
「僕が……力んでた?」
「ああ。気合いが入るのはおおいにけっこう。だが、無駄な力は入れるな。
力が余分に入れば、体の動きが鈍くなる。ほどほどってものを忘れるな」
「……はい!」
伝えられた言葉は、シンプルなもの。だがそれは、蒼星石の心に深く染みこんでいく。
改めて打席に向かう彼女の顔には、先程までの力みはすっかり見られなくなっていた。
(力を余分に入れず……。ほどほどに……)
打席に立ってからも、蒼星石はスミスの言葉を心の中で繰り返す。
そして初球。インハイへのストレートを、彼女は右方向へ流し打った。
打球はファーストの頭を越え、ライトの前に落ちる。
その間に、よし子とアジョ中が生還。得点は2対3となり、ハルトシュラーズが逆転した。
(やった……。やった……!)
表面上は平静を装いつつ、蒼星石はその胸の内で喜びの感情を爆発させた。
◇ ◇ ◇
9回裏、ドリームスの攻撃。得点は蒼星石のタイムリー以降両チーム共に変化なく、2対3。
マウンドには、ハルトシュラーズの守護神が向かう。
『ハルトシュラーズ、ピッチャーの交替をお知らせします。
やる小笠原に代わりまして、霧崎。背番号、833』
刃物のように鋭い目つきを深くかぶった帽子で隠し、長い髪の少女がダイヤモンドの中央に立つ。
彼女こそが、霧崎鋏美。ハルトシュラーズ不動のストッパーだ。
「さて……。今宵も、魅せますか」
誰に言うでもなく呟くと、鋏美は口元にうっすらと笑みを浮かべた。
ボールのスピードでは、女性がいくら鍛えようと男性に勝つのは難しい。
だから鋏美は、野球人生の中で早々に球速をアップさせることを放棄した。
その代わりに、彼女は変化球を磨いた。
ただ黙々と、おのれの武器を作り上げるために。
そして、刃のごとき変化を見せるシュートが完成した。
一流打者ですら捉えることが困難なそのシュートは、鋏美にプロ一年目からストッパーという重要なポジションを与えるにいたる。
そして今宵も、鋏美のシュートは冴え渡っていた。
「ストライク、バッターアウト! ゲームセット!!」
ドリームスの強力クリーンナップを、完全シャットアウト。
「鋼の女神」は、今日もその実力を見せつけた。
「……斬り捨て御免」
勝利の喜びもさほど表に出さず、クールに呟く鋏美を観て桃花は思う。
「この人と私って、微妙にキャラかぶってるんじゃないだろうか」と。
テレテレッテッテー
ウラト「ウラトシュラーだ」
裏刀「裏刀作です」
ウラト「さて、唐突に始まったこのコーナーだが」
裏刀「SS内に登場する選手たちの情報なんかを紹介していきたいと思います」
ウラト「このSSはやる夫スレなんかに近いノリで、よそからキャラを引っ張ってきて独自設定を与えているからな。
ちょっと解説してやった方がより作品を楽しめるのではないかと思ったわけだ」
裏刀「こういうの嫌いな人は、読み飛ばしておk、ってことで。
それではまいりましょう、記念すべき第一回の紹介はこの人です!」
___ /ヽ/ ̄`>‐-、_,
`ヽ、 ヽ::::i;;/-‐' ̄ ヘ
/>-┴┴- _ /::::::::::ヽ
, ィ_⌒`ヽ〃 ̄`` ヽ 、ヽ、::::::::::ヽ
/ ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽヽ:::::::::ヘ
/ /::::::::::::::::i:::::::::::ト:::::::::::::ヽ::ヾi:::::::::::', 無限桃花
‖::::::::::::::ハ::::::::::::|ヽ:ヾ_:::::ヾ、::}:::::::::::i 右投右打
‖:i:::::::::{:ハ:',::::::|::レヘ「゙:,::::ヘヘ::}::::::::::i 背番号:∞
|.{::|:::|/「`ヾヽ::::}j ,ィヵ-、:::ゆj::::::::::::| ポジション:二塁手
从::::|:::|ツヒぇ. `┘' 辷リ ' V〉 リ::::::::::::| 座津壇高校→ハルトシュラーズ
/::::ヾ、jヘ',`弋,」 iン:::::::::::ト::l
, ィ´:::::::::::::::::::/ゞ ! ノ:::::::::::::::|ヾヽ
_, - ', -/::::::::::::::::/:::::::ゝ -‐ ´ イ::::::::::::::::⊥、 ヽ
 ̄ ̄ ̄ /:::::::::::::::::ノ ⌒ ヽ__ `::...、 _/ .|:::::/^`' ヽ
/::::::::::::::::〃 〉__>L _Lノ └ -、
/::::/:::::::::〈 ヽ ゝ'i'i 〃=ii/ ∠
/:::::/:::::::::::::::(_ ,'ーi、 ヘ/ヾ─ヲ _ ィ"´ ノ´
※代理AA:黒髪ポニテのアイドルさん
裏刀「いちおう主人公格の桃花さんですね」
ウラト「いちおう?」
裏刀「なんでも作者は、このSSを『野球狂の詩』読み切り時代のような群像劇として書いていきたいらしくて。
桃花は話の中心にいることは多いけど、絶対的な主人公ではないということらしいです」
ウラト「なるほど。ところで『野球狂の詩』といえば、開幕戦の相手だった東京メッツはこの漫画が元ネタだな」
裏刀「その通りです。今回の対戦相手である大阪ドリームスは、同じく水島先生の作品である『ストッパー』が出典ですね。
この漫画にもライバル球団として東京メッツが登場しているんですが、これをメッツの正史として組み込むと後年の続編と矛盾が出ることに……」
ウラト「まあこの例に限らず、水島作品は作品間のつながりがえらくいいかげんだからな。
同じ世界ということになったと思ったら、次の年には綺麗さっぱりなかったことにされたり……。
『大甲子園』なんて、『去年の優勝校』が複数存在する有様で……」
裏刀「って、いつの間にか水島作品語りになってるじゃないですか! そうじゃなくて、桃花さんの話ですよ!」
ウラト「そうだったか。とりあえず、背番号が無限大というのはどういうことだ?」
裏刀「苗字が無限ってことで、監督が強引に決めたらしいですよ。本人はいやがったそうですが」
____
/__.))ノヽ
.|ミ.l _ ._ i.)
(^'ミ/.´・ .〈・ リ
.しi r、_) | 背番号はわしが付けた
| `ニニ' /
ノ `ー―i
ウラト「まあ、あの監督なら何を言い出してもおかしくはないな」
裏刀「ですよねー」
ウラト「まあそれはさておき、肝心の選手としての実力はどうなんだ?」
裏刀「簡単に言うならば、俊足堅守のプレイヤーですね。
打撃が今ひとつでありながらレギュラーで使われているのも、その辺りが評価されてるんじゃないでしょうか」
ウラト「ふむ。実在選手でいうなら、イーグルスの内村がイメージに近いか?」
裏刀「まあ、あながち間違ってはいませんけど……。微妙にマイナーなところついてきますね」
ウラト「とにかく、主人公格なのに能力は地味、でFA?」
裏刀「それも間違ってないけど、もうちょっと言い方ありませんか!?
そ、そうだ! 桃花さんはチャンスに強いんですよ! これは主人公っぽくないですか?」
ウラト「いくらチャンス○を持っていても、元のパワーがFではなあ……」
裏刀「パワプロ脳乙」
ウラト「む、もう放送終了の時間か。それでは諸君、また次回! 次回があるかどうかはわからんがな!」
裏刀「いいのかなあ、こんなので……」
投下終了
今回は蒼星石とはさみさんのちょきちょきコンビのお話でした
ウラトシュラースポーツは、特に批判の声がなければ今後も続けていきたいと思います
それからまとめの件ですが、やっていただけるのならぜひお願いします
―――――――
ここまでレス代行
>>237 投下に被せる形になっちゃいましたが、
>>237にも投下があるよ!
監督www
244 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/14(日) 16:34:50 ID:+eesVcOv
>>237 (*´д`*)ハァハァ
>>238 乙。
ウラトシュラースポーツもガンガン入れてって欲しい。トトロの打棒が気になる所だw
なんかみんなの考える桃花がそれぞれ別の性格で面白いなw
245 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/14(日) 17:11:08 ID:+eesVcOv
よっしゃ投下だ。
246 :
無限桃花』〜地獄より〜:2010/02/14(日) 17:12:12 ID:+eesVcOv
車が揺れる。雪の積もる地面は既にアスファルトのように硬く引き締まり、タイヤが深く埋もれる事はないが、地面の凹凸はダイレクトに車体へ伝わってきた。
サーフを運転する老人はその地面にかなり苛ついていた。飛んで行ければ楽だが、連れ合いの少女の事を考えるとそうはいかない。老体でこんな車を引っ張るのも一苦労だ。
しかし、その余りの悪路に遂に堪忍袋の緒が切れた。
「もう嫌だ。なんで車なんですか?飛んで行けばすぐに着く。わざわざ車を盗んでまで来たのに、これじゃ自分から面倒な事してるような物ですよ」
「だって外見てよ。雪よ、雪。二月は1番寒いってのに飛んでいったら凍えちゃうよ。アナタは大丈夫かも知れないけど私はムリ!」
「そりゃ私は平気ですが‥‥‥」
彼方と婆盆はある霊場へ向かっていた。かつて封印され、霊域へと集められた者達を蘇らせる為に。
「しかしまぁ‥‥こんな所に封印されてはたまりませんね。行くだけでもこれだ。山開きしてイタコや僧侶が集まったら面倒だ」
「だから今行くんでしょ?アナタが言い出した事なんだからちゃんと行きなさい。だいたい私は雪融けてからのほうがいいって言ったのに。誰が居ても別に関係ないじゃん」
彼方は助手席で脚をばたつかせながら言った。買い溜めしたお菓子を頬張りながら婆盆と会話する姿はいたって普通の女の子だ。
この女の子が本当にあの『お方』の生まれ変わりなのだろうか?婆盆はふとそんな事すら考えた。
それほどまでに彼方は、愛らしい笑顔を振り撒くただの女の子に見える。
「‥‥どれだけお菓子買ってきたんですか」
「冬越せるくらい♪」
「やれやれ‥‥」
婆盆は溜息をつく。人としてはあの『お方』のように育つよう願っていたが、どうにも奔放な性格になってしまった。
姉の桃花は割としっかり者と聞いていた。やはり姉妹は距離をとっても姉妹なのか、下の娘は自由に育つ物のようだ。
247 :
無限桃花〜地獄より〜:2010/02/14(日) 17:14:44 ID:+eesVcOv
これも、二人の魂がお互いを感じあっているせいだろう。
桃花と彼方は、普通では有り得ない千年の繋がりがあるのだから。
「シートに食べカス付けないで下さい」
「盗難車なんだから細かい事言わないでよ」
彼方達は、雪道を進む。全ては霊域に封印されし『闇の軍隊』を再び解き放つ為に。
桃花へ差し向けた刺客も、すべてはこの為の時間稼ぎに過ぎなかった。
彼方は感じていたのだ。桃花の中の魂が、かつての記憶を呼び起こす。猿鬼ごときでは敵わないが、練刀よりは持つはずだ。
目的地につくまで持てばいい。猿参は彼方にとって、『奴』にとってその程度の存在だった。
「しかし何でわざわざこんな所に集めたんでしょうか?京に封印しておけば陰陽師や政権の監視も効くでしょうに」
「ふん‥‥連中が考えそうな事よね。奴らは死者の霊がどうなろうと知ったこっちゃないんだ。日本中から霊魂が集まるここに封印して、その死者の霊の力で封印を維持してるのよ。
おびただしい数の霊が集まれば凄い霊力になる。彼らを束縛して封印の一部としてるの。
おかげで霊に捕われた魂は転生も出来ない‥‥これだから権力者ってキライ。自分さえ良ければいいんだから。支配者の責任って物も連中には関係ないのよ」
彼方は語る。かつての記憶の中から。
やがて目的地は見えてくる。雪に埋もれた巨大な門。
下界とは違う霊域の気配が包み込み、辺りの霊が叫んでいるのが聞こえるようだった。
恐山 伽羅陀山菩提寺。
彼方と婆盆はその門を目指していた。
「さてと彼方。ここからは歩きです」
「イヤです」
「嫌って‥‥車じゃいけないですよ」
「寒すぎ。もうちょっと車で入って行ってよ。どうせ誰も居ないじゃない」
「車じゃとても‥‥‥仕方ない子ですねぇ全く」
婆盆は彼方を残し車を降り、門へと歩く。そしてその姿を徐々に天狗のそれへと変え、手にした葉扇子を振りかざす。
248 :
無限桃花〜地獄より〜:2010/02/14(日) 17:16:26 ID:+eesVcOv
風が巻き起こる。
それは今まで降っていた雪の流れを変え、やがて突風は刃となり地面を斬り伏せる。
そして雪の地面は舗装されたように平らになり、門への道が出来上がる。
婆盆はさらに門へと歩みを進め、その前に立った。すると‥‥
『妖よ。それ以上歩を進めてはならぬ。ここは霊場。お主のような魂の来る所では無い』
「ほう?何奴か?ここの守護をする者か」
『妖が何故参った。ここにはお主のような者にとって無用の地。さぁ、早々に立ち去れ。ここは死者を弔う場所ぞ」
「そうは行かぬ。私とて用もなく赴いたのではないのだ。何故ならば‥‥‥‥」
婆盆は言った。だが、その言葉は彼方によって遮られる。いつの間にか車を降り門まで来ていた彼方は、怒りを込めた声で言い放った。
「‥‥‥死者を‥弔う場所?訂正しなさい。死者を辱める場所だと」
『お主は人か?何故、妖と人が一緒に‥‥‥』
「死者を解き放て!」
彼方は叫ぶ。同時に黒い稲妻がほと走る。
「‥‥守護ですら間違った教えを信じてる。時の権力者が間違った事をしたからだ。ここは霊場なんかじゃない。ただの牢獄よ。死者の叫びが聞こえないの?彼らはここで物として扱われてる」
『その稲妻‥‥‥そんな馬鹿な。無限によって封印されたはずでは?』
「違う。封印されたんじゃない。私が取り憑いたの」
黒い稲妻は門を砕く。彼方はそこを潜り、霊場へと侵入する。
同時に、剣と槍で武装した明王が現れ彼方の前へ立ち塞がる。
『闇の子よ!これ以上は進ませる訳には行かぬ!』
「黙りなさい三下。あなたはキライ。だから消えてもらう」
彼方の稲妻は易々と明王を砕き、明王その場へと崩れてゆく。天界の武神でさえ、もはや彼方の敵では無かった。
「さぁ、行くよ婆盆」
「心得た。主よ」
「主って辞めて。彼方でいいってば」
249 :
無限桃花〜地獄より〜:2010/02/14(日) 17:18:30 ID:+eesVcOv
「あの明王はどうするおつもりか?」
「アレはキライ。そのまま消えていい。新たな四天王ももういらないし。それにこの場所にはもっと強いのが眠ってるしね」
「ふむ‥‥奴は正義も悪もない、ただの力の化身。暴れる以外何もできまい」
「いいじゃないそれで。その為に昔寄生したんだから」
彼方は歩を進め、本尊を見つける。延命自蔵菩薩。この恐山の封印の要。これを打倒すれば、第一の封印は解かれ、無数の霊魂が解き放たれる。そして、それは簡単だった。
彼方はただ本尊を黒い刀で両断した。本尊としての菩薩像は、ただの仏像に過ぎなかった。そして
「婆盆見て!ははは!凄い数!」
「これは‥‥!何という事か。やはり人とは妖より恐ろしい‥‥!」
彼方と婆盆は空を見上げる。雪に混じり現れたのは、数十万にも及ぶ霊魂達。人も妖も関係無く、すべては封印の一部として、千年にも渡り幽閉されていたのだ。
彼らは叫んだ。歓喜の声をもって彼方の名を叫んでいた。おお、天神様。天神様が助けてくれた、と。
「クスクスクス‥‥これで封印の効力は弱くなる」
「あとは縛鎖を解き我等の軍を呼び起こすのみ。彼らは再びこの国に矢を放つ」
「さぁ婆盆、儀式の準備を。そして‥‥戦争へ備えましょう」
無数の霊魂に囲まれた彼方は、宇曽利湖に向け歩き出す。そこには眠っている。闇へ落ちた天神が地獄で作り上げた邪悪の軍勢。
彼方はそれを現世へ蘇らせようとしていた。
「‥‥‥やっぱり近くまで車で行こう?寒い」
「もう運転は嫌ですよ‥‥‥」
250 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/14(日) 17:19:48 ID:+eesVcOv
投下終了。
おつ
物語は週末に向けて加速する
さて、まとめてくるか
ハァ…ハァ……とうか……ウッ
……フゥ、いってきたぜ
>>242 裏スポはあんな感じになったけど、いいかな?
「イッてきた」じゃないだけ、割と良心的だと思うよ!
こういうことだよ
>ハァ…ハァ……→wikiの編集で疲れている様子
>とうか……→桃花SS多いなあ……
>ウッ→うっ(しゃあやっと終わったぜ!)
>
>……フゥ、いってきたぜ→編集おわったよ
まったく、すぐにえっちな考えに持ってイこうとするんだから……
獣羽鶏寄生ってどう読むんだ?
裏スポは元ネタよく分かってないからありがたい
彼方と婆盆は話の雰囲気軽いのにやってることは洒落にならんな
wikiまとめ乙。まとめ人はエロい人把握
にわとりを英語で
こ……cocco?
十八禁かwww
俺は桃花の父親の名前が読めなかった。
たかとら?
261 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/15(月) 17:31:41 ID:tBiXEhn8
エロイ人はこまけーこと気にせずまとめちゃっていいと思うよ
特にクロスオーバーのやつは完結しちゃったし続編出ても同じ人かわからんし
そーだな
暇を見てどんどんまとめてくょ
「ちょwなに俺様の作品勝手にまとめちゃってるんですかwww」
って言われたらやめればいいしね
263 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/15(月) 18:12:41 ID:u1lJ1Q1T
フッ、35分か。遅かったな
つうわけで行ってきました
抜けがあったりとか、何か不満がある人は、自分で直すか、言ってくれれば直しまする
乙です
折りたたみ使いすぎな気がしなくも無い…
レギオン厨ww
省くとしたら、どこ省く?
作品には使わないほうがいいと思う
本文ね
ちょww俺の苦労返せwwww
じゃあどういう形にしたらいいだろうか。
テキスト形式だったら一挙に全部貼れるんだけど、そうするとリンクが面倒になる。
作品のまとめページ作って、そこからリンク辿ってく方法もありだったんだけど、そうするとページ数が膨大になるから自重してた。
折りたたみ方式だったら作るのは面倒だけど、見やすいかなあと思ったんだが。
なんか良い方法あったらkwsk
キャラスレトップの無限桃花んとこ
クリック回数増えるからいらない
正直全部畳む必要ないと思う
javascript切ってると動かないから
見出しで区切ってcontentつけるほうが俺は好き
でもせっかくやってくれたから手は出さずにおくよ。すっきりしてるし
目次作って目次だけ折りたためばいいと思うんだ
271 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/15(月) 18:49:44 ID:klJ5mzoe
彼方:「おお、これはいい流れ」
桃花:「会話が活発ね」
彼方:「ところで姉さん、本編はあとどれくらい?」
桃花:「さぁ‥‥作者の話だとまだ粘るみたいだけど‥‥‥」
彼方:「ちょっと‥‥じゃあ本編中だといつ会えるのよ」
桃花:「私に聞かれてもねぇ‥‥‥」
彼方:「とりあえずエロい人にはまだ迷惑かけちゃう感じ?」
桃花:「そんな感じ」
すみません本当に。エロい人まとめ乙です。
ID:LSCJnqdB
ID:wmfWlHNE
もうやだ
本気で怒った
全部消してやる
wikiも荒らす
覚悟しろ
どうしたどうしたw
俺はすっきり出来てていいと思うんだが。
省くとしたらどこだって言うから個人的な意見言っただけだが
あんたの努力は認めてるよ
だが本気で言ってるなら勝手にしな
全部消した
wikiも荒らしてきた
ざまあみろだ
そのようだ。wikiスレを先に見てたから本気だと思った
悪い。お疲れさんだ
>>277 いや、こっちも悪乗りしすぎたわ
ネタに使ってすまんかったな
279 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/15(月) 23:00:02 ID:tBiXEhn8
まとめ人乙乙。見やすくてともていいと思うよ
>>279 ヒャッホウ、その一言で報われるわ
正直初wikiでどうなるかと思ったけど、なんとかなるもんだな
レイアウトの勉強にもなるわ
正直怖かったぜw
改めて乙。
取り下げられてたから貼らないが
避難所でもツンデレ乙とのことだ
wikiはTOPから目的のページへ3クリックでいけること
を構成の目安にするといいぜ
ホムペと同じだ
今日は早く帰れそうだ。これで続きが書ける。
wiki登録してきた
IDは↑
早く編集したいから投下してくれ
285 :
無限桃花〜嵐の前に@〜:2010/02/16(火) 23:31:10 ID:tDGFde0/
しえん
287 :
無限桃花〜嵐の前に@〜:2010/02/16(火) 23:33:02 ID:tDGFde0/
「せんぱ〜い!生きてますかぁ?」
「当たり前だ馬鹿。縁起でもない事いいやがって」
「あ〜。相変わらず可愛いげない所みると大丈夫そうですね」
黒丸は都内某所にある個人病院に入院していた。『ヤタガラス』の息がかかったそこは院長始めスタッフのほとんどがヤタガラスメンバーである。出動回数が多く戦闘での負傷が多い『ヤタガラス』は指令室にも医療スタッフが居るが、手に負えない場合はここへ収容される。
今回のように重傷の場合は緊急医療設備のあるここへ直行で送り込まれるのだ。メンバー用のベッドを用意しておけば貴重な人材がたらい回しにされる事も無い。
「お前はどうしてた?相変わらず餓死寸前か?」
「怪我人のクセにホント変わらないですね先輩。桃花さんには物腰柔らかいのに。」
「そうだ。その桃花さんはどうしてる?」
「昨日起きました。今はもう帰ってるんじゃないですか?」
地下での闘いの後、そこから救出された桃花は指令室で眠り続けた。
目覚めたのはつい先日の事であり、実に二日もの間桃花は意識を取り戻せずにいた。だが、その間に肉体のダメージはほぼ全快に近いレベルまで回復し、今はまったく闘いの疲れや怪我は無い。
救出された当初は傷だらけだったが、桃花には治療の必要は無かったのだ。医師が手を出せないほどの回復力を見せていたのだから。
「もう動けるのか‥‥?結構な怪我だと聞いてたが‥‥」
「あの〜先輩‥‥?実は桃花さんが話があるって言って‥‥明日ここで会えないかって‥‥」
「話?構わんがどうした?」
「あの〜先輩。実は‥‥アレ。桃花さんに言っちゃいました‥‥」
「アレ?アレってまさかお前の妄想の事か‥‥?!」
「そうなんです‥‥‥‥」
「この馬鹿‥‥‥」
「でも‥‥桃花さんのほうが最初に言い出したんですよ。彼方を止めなきゃ‥って。それでどういう事か聞いてる内に‥‥つい」
288 :
無限桃花〜嵐の前に@〜:2010/02/16(火) 23:34:47 ID:tDGFde0/
「それで‥‥桃花さんはなんて?」
「いや‥‥意外とすんなり聞いてたんで驚いたんですけど‥‥もっと驚いたのが桃花さんも似たような事考えてたらしくて‥‥」
「お前の推理はあながち間違いじゃないかも‥‥って事か。どういういきさつでそう思ったかは知らないが」
「桃花さんも‥‥‥何か急に悟ったように言い出したんで、ちょっと怖かったんですよ。
あと、例の天狗の件なんですけど‥‥」
「何か進展は?」
「それがおかしいんです。今までは結構活発に都内に出入りしてた寄生が今は出ていく一方で。新たに侵入してくる寄生はほとんどいません。静かなもんです」
「出て行く?どこへ?」
「知る訳ないじゃないですか。都内しか観測出来ないんですから」
「そうだよな‥‥」
「寄生された人間もガンガン出てってるんで、このペースだと目に見えて人口減りますよ。いままでこんな事無かったじゃないですか。これって多分‥‥」
「急に一定の動きになりはじめた。つまり連中の行く先に婆盆が居る可能性があると考えたんだな?」
「そうです。しかもな〜んかイヤな予感するんですよね‥‥。連中が集まった所で桃花さん一人に対抗出来ない。出来るとしたら婆盆みたいな四天王だけ。たとえ影糾を護衛するったって、盾にもならない連中集めても意味は無いし。きっと別の意味ありますよ」
「だろうな‥‥‥。解った。上と掛け合う。今の制度じゃどうにもならない」
「先輩‥‥。明日退院ですよね?」
「ああ。今でもいいんだがな」
「ダメです!ホントはまだまだ先のハズなのに‥‥‥。院長に無理言ったんでしょ?」
「‥‥‥バレてたか」
「あんまり無茶しないで下さい」
「分かってる」
「‥‥‥‥ウソつき」
「何?」
「前も似たような事ありましたよね?大ケガして入院して‥‥‥その時ももう無茶しないって‥‥言いましたよね?」
「言ったか?そんな事?」
「覚えてるクセに!いつも生返事ばっかりで!どうせまた無茶するんでしょ!」
「何怒ってんだよ」
289 :
無限桃花〜嵐の前に@〜:2010/02/16(火) 23:35:44 ID:tDGFde0/
「だって‥‥‥心配なんです。このままだと先輩‥‥死んじゃいますよ。わざと無茶してるみたいに見えます‥‥‥」
「そのつもりはないさ」
「‥‥ウソつき」
「何なんだよ一体?」
「馬鹿!」
「何だと!?」
「人の気も知らないでムリするなって言ってんの!もし先輩死んだりしたら‥‥‥」
「何だよ」
「‥‥‥‥いえ、やっぱ言うの止めときます。今は」
「何だ。気になるだろ」
「先輩‥‥‥やっぱり馬鹿です‥‥」
「なんだお前?」
290 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/16(火) 23:37:44 ID:tDGFde0/
投下乙
後輩ニヨニヨ
まとめてきました
理子ガンバレ!
293 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/17(水) 00:19:35 ID:3y84d2BK
>>50-53 彼方北!これでかつる!
やはり影糾は格が違った
>>57 蟲師って面白そうだけど、まだ読んだことないな
閣下との遭遇楽しみ
>>60 閣下か!?閣下なのか!?
あの露伴先生をやりこめるとはやはりさすがです
>>61-64 桃花はスタイルのいいお姉さん系か
好みです
>>67-74 黒丸って●かwww
>>79 よし子乙www
>>80-83 おばさんいい人だなあ
津軽弁は本当にわかんないなw
東北北海道の中であそこだけは何言ってるか全然わからないw
>>85-87 悪世巣は炎使いか
かなり強そうだな
全感キター!
規制が解けた記念に、これまでの登場人物名簿を作ってみた
スタメン選手は全員考えてはあるけど、まだ出てないキャラは「?」表記です
オーナー S.ハルトシュラー
チーフスカウト 倉刀作
監督 ほっしー
ヘッドコーチ ジョン・スミス
野手
1 ルパン三世 中
2 ??? ?
3 ??? ?
4 ??? ?
5 トトロ 捕
6 よし子 一
7 アジョ中 遊
8 無限 桃花 二
控え野手
蒼星石(捕手)
投手
先発
キョン
門矢士
中継ぎ
リュウタロス
翠星石
やる小笠原 孝
抑え
霧崎鋏美
297 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 05:16:08 ID:M/jzV6XK
やべぇw昨日続き書こうと携帯開いて布団に潜ったら、気がついたら今wwww
>>296 やる小笠原って中日の小笠原か?w
>>297 元ネタはその人だけど、創発的には「わしを育てるスレ」だな
ほっしーの一のどr……部下だ
299 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 10:02:04 ID:M/jzV6XK
ハルトシュラーズ、創発の意外なスレから結構参加してるなぁw
他の面子が非常に気になるぜ
301 :
無限桃花〜目指せハイブリッド〜:2010/02/18(木) 23:36:28 ID:M/jzV6XK
頑張りすぎだwww
おお、よくやった!これからに期待せざるを得ないw
そういや避難所のAA保管庫に新しいのが投下されてたな
そういや今日は続き書いてねぇわw
AA? と思って見に行ってしまった。雑談の発子さんかな。
>>301 描けてるぢゃん!
課題は体かな? どんどん描くべしーでも小説続きも待ってる!
306 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 14:33:08 ID:N6kds6/v
AAと聞いて
とーかちゃん!
,、_
[ニ/ ヽ
ノl l ノ'''ヽ !
`! l|,,゚ヮ゚ノ|
j,.ム ハソノ>っ
━U╋=(
くノノノムゝ
,、_
[ニ/ ヽ
ノl l ノ'''ヽ !
`! l| ゚ -゚ノ|
j,.ム ハソノ>っ
━U╋=(
くノノノムゝ
とうとうAAキター
いずれAA弐典にハルトと並ぶ日も近い。
目指せメジャーデビューだ!
SOUHATSU M@STERですか。
THE SOUHATSU M@STER
創発発表板の女の子たちを、メジャーネットアイドルに育てよう!
無限桃花
よし子
串子
霧崎鋏美
バンディット霧崎
発子・クリーシェ
ロリ騎士
メリーさん
直りん
※ハルトシュラー閣下は社長ポジションです
あ、「創発発表板」になってた……
ヽ○ノ 姉「まあいいか!」
/
ノ)
何その面白そうなの
じゃあ俺は星野Pで参加するぜ
私は そーはつ串子です!イエイ!
トレードマークは頭の串
明るく前向き単車通勤
一日一回転びます♪
「え?自演ですか? 私、自演行為はした事ないですよ?
え? 自身の事? やだっ! リーダーって呼んでくださいね」
そうです私が 発子クリーシェ
ツインテ長髪 創作守護神
板のみなさんに 毎日感想
世話が焼けるわ本当にもう!
「え?この私以外に誰がリーダーやれるんですか? 目指すは発展
サポートお願いしますね!」
霧崎鋏美ともうします
はさみさんともいわれます
お婆様はどこであろう
そして ここはどこであろう?
「ふむ、そうですね 用いられるのは慣れてますから
リーダー、お引き受けいたす」
鋭意製作! 製作! たまに中断! そんな時も
無理せず感想! 完走! 次は長編! できるといのだけど
それがうちらのやりかただから
一致団結! 団結! 時にさるさん! 書き込めないように
とりあえず雑談! 雑談! すべてネタレス つまらないことでも
みんなまとめてみんなまとめて
みんなまとめてSOUHATSU M@STER
,、_
[ニ/ ヽ
ノl l ノ'''ヽ ! プロデューサーさん、
`! l|,,゚ヮ゚ノ| いよいよ本番ですね。
j,.ム ハソノ>っ じ、実はかなり緊張してます……
━U╋=(
くノノノムゝ
タッチしてください
,、_
[ニ/ ヽ
ノl l ノ'''ヽ !
`! l| ゚ -゚ノ|
j,.ム ハソノ>っ
ニアU╋=(
くノノノムゝ
,、_
[ニ/ ヽ
ノl l ノ'''ヽ !
`! l|,,゚ヮ゚ノ| きゃ、きゃあ!
j,.ム ハソノ>っ どこ触ってるんですか!
━U╋=(
くノノノムゝ
「ご、ごめん。手が勝手に……」
斬られるぞw
316 :
無限桃花〜嵐の前にA〜:2010/02/19(金) 21:51:24 ID:BWtSH5L8
投下開始。
317 :
無限桃花〜嵐の前にA〜:2010/02/19(金) 21:53:31 ID:BWtSH5L8
「で、いきなり帰って来て突然出てくって訳?」
「だからゴメン」
桃花は荷造りをしながら素っ気なく答えた。自分の荷物は少ないが、いざ部屋から出て行くとなると結構な量だ。大部分は捨ててしまわなければならない。
ルームシェアしている相手の男。家賃や光熱費は実際彼が出しているようなものだ。負担は変わらない。
しかし、突然の桃花の行動には明らかに不満そうだ。今までもふらっと出て行ってはしばらく帰って来ない事はあったが、今回ばかりはどうにも我慢がならない。
「いいけどさ‥‥勝手過ぎるだろ?一応ルームメイトだろ?」
「実質あなたの部屋みたいなもんじゃない。ほとんど居ないし私」
「そうだけどさ‥‥‥でも気になるだろ?いきなりだぜ?今まで夜中に血まみれで帰って来たり玄関まで変なオッサンに追い掛けられたりしてた奴がいきなり出て行くんだぞ?心配するなってほうが無理だ」
「今更ね。私そんな簡単に死なないから大丈夫だよ」
「お前な‥‥‥。一体何してんだ?ヤバイ事してるのはもう昔からイヤってほど解ってるよ。でもいくら何でも俺に何も言わないってのは卑怯だ」
「だからゴメンって‥‥」
彼とは古い付き合いだ。京都時代から顔見知りで、彼が東京へ来ると分かって桃花はさっさと彼の部屋へ転がりこんだ。
住所が無い桃花にとっては東京での重要な拠点だ。傍目からはただの居候にすぎないが‥‥‥
「‥‥‥もう戻らないのか?」
「多分ね。だから安心して女でも連れ込んで」「‥‥バレてた?」
「当然」
「参ったな‥‥‥」
「ば〜か」
軽口を叩きながら、桃花は荷造りを終える。後は青森の英子と、京都の無限分家へ送ればいい。東京での活動はもう終わる。桃花はそう考えていた。
「‥‥次はどこ行くんだ?」
「わかんない‥‥‥」
「もう東京へは戻って来ないのか?」
「多分‥‥ね。もう東京に用無いし」
「そうか‥‥‥じゃあもし‥‥‥もしお前が目的果たしたら?何してるかは知らないけど、何か目的があんだろ?それがもし‥‥片付いたら、どうするんだ?」
318 :
無限桃花〜嵐の前にA〜:2010/02/19(金) 21:56:06 ID:BWtSH5L8
「わかんないよ‥‥‥。その時になってみないと‥‥」
「そっか‥‥‥。そうだよな」
「うん」
「じゃあさ‥‥‥。もしそうなったらまた来いよ。どうせ行くアテないんだろ?だったらまたここに住めばいい。どうせ今までも出掛けて何日も帰って来なかったりしてたんだ。今更しばらく部屋空けたって変わらねぇよ」
「そうね‥‥‥‥あなたの女グセが治るってんなら考えとく」
「‥‥勘弁してくれよ」
「昔っから変わらないもんね。私もよくあなたの部屋借りてたもんだ」
「‥‥昔の事まだ怒ってる?」
「絶対許さないけど?」
「マジで勘弁してくれよ‥‥‥」
「こっちの台詞だよねそれ。‥‥‥‥でも、ありがと」
荷物の送り札に記入事項を書き込み、それを貼った。もう自分が借りてた部屋には何も無い。居るのは桃花と昔の連れの男だけ。掃除をサボっていたせいか、部屋の隅には埃が溜まっている。
桃花はお気に入りのペットボトルのミルクティーを飲みながら、配送の業者が来るのを待った。それが来たらあとは出て行くだけだ。その後は、恐らく一気に事が進む。どれだけかかるかは解らないが、今までのようにゆっくりは出来ないだろう。
桃花の魂はそれを感じていた。遠いどこかで、別たれたもう一つの魂が画策する恐るべき計画。それを桃花も、桃花の魂の隅に居る存在も感じていた。
止めなければならない。そのために魂は再びこの世へ現れた。無限桃花として。
「いつもミルクティーだな」
「いいでしょ別に」
「昔っからだな」
「そうだっけ?」
「そうだよ。いっつもそれ。よく飽きないな」「いいじゃん。好きなんだもん」
「やっぱ変わんねーなお前」
「‥‥‥あなたもね。‥‥よく20年前の曲聴けるわね。いつまでかけてるつもり?新譜かけてよ」
「え?お前も好きだろコレ?!」
「サシャの曲かけて」
「お前ヴァイキー舐めんなよ!?」
二人きりの何でもない会話の内に時間は流れる。そしてインターホンが鳴り、荷物の回収に業者が訪れる。
終わりだ。もうこの時間には戻れない。あとは、闘いだけが待つ。
319 :
無限桃花〜嵐の前にA〜:2010/02/19(金) 21:58:46 ID:BWtSH5L8
「荷物送ったし‥‥‥。じゃあ、私行くね」
「ああ」
「さよなら、孝也」
「‥‥さよなら」
「じゃあね。」
「‥‥‥じゃあな」
「さよなら‥‥」
桃花は村正と少々の手荷物を抱え歩きだす。玄関まで見送りに来た孝也はそれ以上は何も言わずに桃花を送りだした。
桃花も言葉を出さずに靴を履き、玄関のドアノブに手をかける。今日はこの後、病院で黒丸達と会う予定だ。近くのコンビニまで理子が迎えに来てくれてるはずだ。
玄関のドアを開け、外に出る。外の風はやはり冷たかった。
ドアを閉めようとした時、ふいに孝也が口を開いた。
「桃花」
「‥‥なに?」
「‥‥死ぬなよ」
「うん‥‥ありがと‥‥孝也」
「じゃあ‥‥気をつけてな」
「うん。じゃあね」
桃花はゆっくりとドアを閉じる。部屋に残されたのは孝也と、部屋に響くHELLOWEENの『守護神伝』。
『守護神伝』ではこう歌われていた。
You're suffering pain
Only steal can stand
(鋼のみが耐え得る苦痛にさらされるお前)
それはまるで、桃花の命運を暗示しているようだった。
320 :
無限桃花〜嵐の前にA〜:2010/02/19(金) 22:01:00 ID:BWtSH5L8
投下終了。
こういうの入れてかないとダメだよな。
‥‥つーのは建前で実際は間が持たなかったw
おいおいラブラブじゃないか
あまーい!(古)
らっぶらぶなのとか上手く書ける気しないから尊敬するぜー
しかし桃花は可愛いな嫁にほしい
ついでに創発マスターも一台ほしい
>>314よく見たらお尻タッチしてるじゃねえか
許すまじ
投下乙です
桃花は今まで恋愛関係のエピソードがなかったから、新鮮だのう
さて、自分も小ネタ投下
初めに言っておく! 反省はしていない
【THE SOUHATSU M@STER ほっしーP&桃花編】
____
/__.))ノヽ
.|ミ.l _ ._ i.)
(^'ミ/.´・ .〈・ リ
.しi r、_) |
| `ニニ' / 今日からわしがお前を育てる
ノ `ー―i
,、_
[ニ/ ヽ
ノl l ノ'''ヽ !
`! l|,,゚ヮ゚ノ| はい! よろしくお願いします!
j,.ム ハソノ>っ
━U╋=(
くノノノムゝ
____
/__.))ノヽ
.|ミ.l _ ._ i.)
(^'ミ/.´・ .〈・ リ
.しi r、_) |
,--ーー | `ニニ' / ー-、_ じゃ、とりあえず脱いでもらおうか
/ /i/ `'`ー―i´ | `ー、_
/ / llヽ/ ̄/ | l
/ Y L |,) ∧ノ↑ ,> ィ |
/ |ヽ |,バ | 7 / |
/ .イ| | |rA,| / / / |
/ / | | |gca| | / /| )
/ / / | .|aAi| | / // l
レー-、_ / ̄`__-、__,l Aec.| | / /( |
fク´"''ノ_V `\ノノavkj ̄レ ノ ノ ノ
/ ,、 i \ \_,ニコ∠、,≦ ,イ
_..,..,,....... .---.------------
_,,.... -ーー'''_,゙゙二―ー'''''"`"` ̄ ̄
_,,.. -ー'''",゙,,,.. -ー'''"
_,, -''''"´_,,.. -‐''''"゛
_,, ‐''" _,, -''''"
_.. ‐'"゛ .,.. ‐''″
,..-'" _..-'"゛
/ ,, .'"
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l゙ l ザシュッ!!
.l, \、
\, `''ー- .,,_
`'-、, `゙゙'━== ....,,,,__
`''ー ..,、  ̄ ゙゙゙̄'''''''''¬――+―-------------------------―‐
`゙'''ー-..,,,_
`゙゙"''―- ....,,__
 ゙゙゙゙̄"''''''――-............,,,,,,,,___
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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/____.))ノヽ
.|ミ.l_ノ 、 、 i.)
.(^'ミ/(◯).〈:(◯) リ
.しi::: r、_) "|
|:::::: ,rェェェ、 |
\ |-r-r,| ,,イ DEAD COMMUNICATION
>_`ニニ´イ
,--ーー | / ー-、_
/ /i/ `'`ー―i´ | `ー、_
/ / llヽ/ ̄/ | l
完
投下終了
正直、シリアスな話のあとにこれを投下していいものか少し悩んだ
なんという簡潔さw
乙w
携帯だからうまく見れないが画は連想出来るw
あと神速でまとめたエロい人乙。
ていうか早過ぎだろ。投下した直後だったぞw
ほっしーwwwwwww
デッドくそわろたwwwwwww
しかし星野Pだと歌う曲はこんなの↓になる悪寒。
♪ホワイト〜イエロー〜 ブルーに〜レッド〜ノーマル〜グリーン〜
♪みんなわし〜育て〜
♪フレッシュ〜グリーン〜オレンジ〜ピ〜ンク〜パープル〜ブラ〜ック
♪みんなわし育て〜
♪どれもわし育て〜
ゴメス。まとめ報告忘れてた。
>>325 もまとめてこようか?
>>331 おはよう。
いいんじゃね?とりあえずまとめられるのはまとめて。
まぁ本人に確認するのがやっぱ1番だろうけど。
333 :
ある男の手記。:2010/02/20(土) 08:24:05 ID:kZ3Hw0Nn
もう我慢出来ないから奴の話を書く↓。
俺はなぜここにいるのだろうか。
既に身体はボロボロだ。栄光の代償とはいえ、あまりに大きい。その栄光すらやがては廃れて忘れ去られる運命だと言うのに。
冷たいリノリウムの床と配管が向きだしの無機質な壁。真ん中に置かれた会議用のテーブルの上に置かれた軽食と、俺の栄光の切れ端。
これが今の俺のすべてだ。
誰も居ない部屋で静かに待つのはもう慣れた。昔はいつも仲間がたが、俺が特別な存在となってからは誰も来ない。それどころか、皆目の色を変えて俺の首を狙ってきやがる。
ある人はそれも栄光の代償と言った。ふざけやがって。もっとも、そいつもきっと俺と同じ目にあったんだろうけどな。
遠くから大勢の人間の声が聞こえる。今日もかつての仲間と後輩達が栄光を目指し闘っている。そこに待つのは孤独だと知らずに。
しかし最近はこの静寂も悪くないと思っている。いろいろ考え事も出来るし、血の気の多い奴と金にならない喧嘩をする事もない。
孤高ってのはこういう物なのかと、最近ようやく解って来た感じだぜ。
さて、そろそろ時間だろう。俺はテーブルの上の栄光の切れ端を肩にかけた。チンケな代物だが、込められた意味は大きい。馬鹿な俺でもそれくらい解るさ。
そしてドアが開き「そろそろ時間です」とヒョロっとした奴が言いに来た。俺は「解った」とだけ言ってそいつについていく。
着いたのは鉄格子の前。その向こうには栄光えの道が覗いてやがる。そしてそこから俺を呼ぶ声がする。
「‥‥‥では本日のメインイベント!IPWCヘビー級王者!スーパーストロングパンツマシーン入場!」
相変わらず大仰な入場だ。花道の両脇の観客どもは「SSP!SSP!」と騒ぎ立てまくる。うるさいったりゃありゃしねぇ。
リングに立った俺は栄光の切れ端を高々とかかげた。ホントは腰が痛ぇからやりたくないんだけど、これも仕事さ。
さて、今日もこの騒ぐ馬鹿共の期待に応えなきゃなんねぇ。正直もうウンザリなんだが、コイツ等のおかげで今の俺がある事も確かだ。
やるしかないのさ。俺はチャンピオンだからな。
俺はスーパーストロングパンツマシーン。
最強のマスクマンだ。
最初ルパントーナメントの後日談かと思った。
思ったのに・・・・・・お ま え か よ !
SSP! SSP!
>>320 「20年前の曲」の件でB'sだろうかと思ってしまった。
昔何したんだ孝也ーーーー!
>>327 乙www
こういうのもいいよねw
SSPに関してはスレが立った当初からやろうと思ってたぜw
ちゃんと設定通りにやろうとは思ってるけど今の所書く予定は無いw
まあ貴重な男キャラだからなw
伺かと聞いて来ました
338 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/20(土) 20:42:07 ID:kZ3Hw0Nn
まさかSSPを考案した奴もSSPがこんなキャラになるとは思って無かっただろう。
うんw
SSP!SSP!
ついでだからSSPの設定も投下しちゃうw
本名:ニール・アルバート・フロントフィールド
37歳。イギリス人。
若手時代に武者修行で訪れたメキシコで道化役のSSPマスクを被る。
そのままメキメキ頭角を表し、ファンの間でマスクが定着してしまったためそのまま帰還。笑われつつも確かな実力でファン数を増やす。
アメリカの団体へ移籍後、世界規模の統一タイトルIPWCヘビー級へ挑戦し王座獲得。現在へ至る。
妻子アリ。マスクを脱ぐとロン毛の渋メン。
入場曲:ガンマレイ/マンオンアミッション
たまに増殖する。(マシーン2〜4号まで)
2メートルオーバーのマシーンも(ジャイアント・ザ・SSP)
得意技。
SSPドライブ(変形ブレーンバスター)
ブレーンバスターのトップの位置から捻りを加えマットにたたき付ける。雪崩式もある。
SSPドライブ2000
SSPドライブの位置から、正面に落す。
SSP・ザ・エア
SSPドライブのトップポジションからロープへ向かって走り、二段目から反動を利用しジャンプ。そのまま雪崩式で落とす。投げっぱなしもあり。
危険すぎるので自ら封印。
投げ技より実は間接や絞めが得意な生粋のグラップラーでもある。
342 :
無限桃花〜嵐の前にB〜:2010/02/21(日) 15:38:46 ID:xMwdyUc+
投下開始
343 :
無限桃花〜嵐の前にB〜:2010/02/21(日) 15:39:30 ID:xMwdyUc+
「‥‥‥じゃ、もう黒丸さんは指令室に?」
「はい。あの馬鹿‥‥じゃない先輩ったら、今朝さっさと病院出てっちゃいました。まったく‥‥‥」
理子の運転するセルシオは都内を走っていた。一見するとただの高級車だが、実態は装甲仕様の特別車だ。
常時戦闘体制を義務付けられている『ヤタガラス』には、一介の隊員にですらこの車が支給される。
桃花は助手席に座り理子の話を聞いていた。いつも明るく、どちらかと言えば脳天気な理子だったが、今日はすこし機嫌が悪そうだった。
無理も無いだろう。今朝病院を訪れた時には置き手紙を残して黒丸は消えていた。昨日あれだけ言った事にさっそく嘘をつかれた気分になっていた。
「とりあえずあの馬‥‥先輩は指令室で待ってますよ。まともに歩けないクセにどうやって行ったんだか」
「黒丸さんらしいですね」
「身内には大変なんですよぉ〜!」
理子は愚痴っぽく喋っていた。薄々感じてはいたが、やはり黒丸は相当無茶をする男のようだ。
「聞いた話じゃ昨日の夜もずっと電話で怒鳴ってたらしいですし、指令室で何が待ってるやら‥‥あの馬鹿、加減知りませんから」
「‥‥今、馬鹿って言い切りましたね」
「え?ああ‥‥いいんですよ。もうアイツは馬鹿で‥‥」
「???」
「‥‥と、とにかく!先輩待ってますよ!」
「ははぁ‥‥‥。なるほど」
「な‥‥何ですか!?」
「はは。いいえ、何でも。」
「何笑ってんですか!」
「理子さん」
「な‥何です?」
「頑張ってね」
「ちょっと‥‥‥‥‥」
思わず理子のハンドル操作が雑になった。
車はそのまま指令室のあるビルへと吸い込まれて行く。地下駐車場に車を止め、あとはエレベーターで17階まで上がれば指令室は目の前だ。フロアの一角のこじんまりした小汚いスペース。そこがカラスの巣。
「よく来てくれました。待ってましたよ桃花さん」
「先輩‥‥先に私に言う事ありませんか‥‥?」
「え?ああ、すまん。どうしても急ぎの用事があったんでな。朝にタクシー呼んでここまで来たんだ」
「‥‥このバカ」
344 :
無限桃花〜嵐の前にB〜:2010/02/21(日) 15:41:24 ID:xMwdyUc+
「うるさい。謝ってんだろ」
「はいはい」
「‥ったく」
黒丸は相変わらずだったが、脚を引きずり左手には痛々しく包帯が巻かれている。時折息をするだけで痛みが走るのか、話し方もなにやらぎこちなかった。
「それで‥‥‥私に話とはなんでしょう?」
「‥‥‥はい」
桃花は淡々と、あの時の出来事を話した。出来る限り具体的に。
影糾が彼方である事。それを語った猿参と、桃花の謎の影。三種の神器であるはずの天叢雲剣。
そして‥‥己が感じる寄生達の行動。
「なるほど‥‥‥つまり桃花さんも我々同様、寄生の動きに変化を感じているんですね?」
「我々‥‥‥?」
「ええ。そこら辺は理子に説明して貰いましょう」
「はいはい。桃花さんとそこの馬鹿が寝てる間も、監視ネットワークではずっと寄生の動きを記録してるんです。そしたら、過去には無いデータが出てきたんです」
「つまり‥‥‥寄生が居なくなっているんですよね?」
「そうなんです!‥‥‥よく解りますね‥‥‥。現在の私たちじゃ、その制度上都内しか監視出来ません。だから出ていった寄生達がどこへ行っているのか‥‥全く解らない状態です」
理子はそう説明した。続いて、黒丸が口を開く。
「我々は都内以外にもどうしても監視の目を広げたい。だから昨日からちょっとだけ上の連中と話をして、少しだけ超法規的な活動の許可を貰いました。朝早くから私がここに来たのも直属の上司に事後承諾させるためなんです」
「先輩‥‥そっち方面でも無茶して‥‥」
「うるさいオバQ。さて、いくら活動の範囲を広げたといっても、許可されたのはほんの僅かです。東京を中心として、北と南に結界を張っただけです」
「それだけ‥‥なんですか?」
「ええ。でも、これで東京から出た寄生がどちらの方角へ移動しているかは解る。そして結果はすぐに出ましたよ。北の方角です」
「北‥‥」
「やはり‥‥‥感じていましたか。本当は桃花さんに聞けばこんな事は簡単にわかると思っていました。解っているとは思いますが、これは監視としては無意味だ。でも頭の堅い連中を動かすデータにはなる」
345 :
無限桃花〜嵐の前にB〜:2010/02/21(日) 15:42:48 ID:xMwdyUc+
「上の連中は『ヤタガラス』の活動が大きくなるのを快く思っていません。昔からありますが、やはり化け物相手のオカルト集団というのが彼らの『ヤタガラス』に対する評価です。
だから確実なデータと、寄生の今後の計画を予想する必要がある。このままでは都内に寄生が居ないと言われ解散させられてしまう」
「なんで‥‥‥」
「はい?」
「なんで‥‥東京だけの監視なんですか?」
「それは‥‥‥我々は寄生の撲滅ではなく、時の政権の護衛のみを目的としているからです」「政権?」
「ええ。朝廷の時代から現在まで‥‥『ヤタガラス』は寄生が時の政権に入り込むのを防ぐ為に存在している。そして京都から大阪、東京と活動拠点を移し、そこでのみ生きている。つまり、たとえ寄生がよその土地で何をしようと、我々には手を下せないんです」
「そうなんですか‥‥‥」
「そんな残念そうな顔しないで下さい。勿論このままではいけないと思っている連中も居るんですよ。昨日から彼らともずっと話をして、外からの協力を取り付けました。あとは我々が内側から『ヤタガラス』を変えるんです」
黒丸は堂々とした口調で語った。やはり身体が痛むのか時折呼吸が乱れていたが。
「先程お話いただいた、桃花さんが感じたという影糾の計画‥‥おそらく間違っていない。そうでなければ寄生を一カ所に集める意味が無い。理子が推測した事よりは過激だが現実味があります」
「彼方の‥‥‥軍隊‥‥」
「ええ。協力を取り付けた連中はどちらかといえば我々に友好的な連中です。人員のやりとりがありますから。彼らはきっと役に立つ」
「でも‥‥彼方が手にいれようとしているのは寄生の軍隊じゃない‥‥現実に実体を持った、正真正銘の‥‥軍隊‥‥。いくら黒丸さん達でも‥‥」
「昌です」
「え?」
「忘れましたか?私の名前は昌です。明日もう一度おいで願えますか?桃花さんに合わせたい人達が居る」
「私にですか?」
「ええ。例の協力を取り付けた連中です。」
346 :
無限桃花〜嵐の前にB〜:2010/02/21(日) 15:44:22 ID:xMwdyUc+
「‥‥解りました。じゃあ、また明日」
「大丈夫ですよ。きっと寄生達を止められる」「はい‥‥ありがとうございます。‥‥昌さん」
「では、また明日。理子、送っていってやれ」「あ‥‥いえ‥‥いいんです。歩いて行きますから」
「え?遠慮しなくても‥‥」
「いや‥‥今は‥‥大丈夫です」
「‥‥そうですか?では、また明日」
「ええ」
桃花は手荷物を持ち部屋を出た。今は帰る家は無い。一晩はどこかで過ごさねばならなかった。送っていって貰おうにも目的地が無いのだ。
「桃花さん‥‥大丈夫なんですかね?」
「なんだいきなり」
「だって、なんか悲しそうなんで‥‥」
「‥‥そりゃあな。仇が探し続けた妹なんだ。」
「あと先輩‥‥やっぱり無茶して‥‥‥」
「そんなでもないだろ。電話しただけだ」
「協力取り付けたって‥‥誰なんですか?」
「まだ秘密さ。明日になりゃ解る。‥‥失礼の無いようにな」
「気になりますよ。教えて下さいよ昌さん」
「先輩と呼べ」
347 :
無限桃花〜嵐の前にB〜:2010/02/21(日) 15:45:59 ID:xMwdyUc+
投下終了。
ざわ・・・ざわ・・・・・
またいつの間にかまとめられてたw
エロい人乙。
どきどき…
351 :
無限桃花〜The war is coming near〜:2010/02/22(月) 22:28:13 ID:Szdlzv1/
投下開始。
352 :
無限桃花〜The war is coming near〜:2010/02/22(月) 22:29:08 ID:Szdlzv1/
(桃花‥‥聞こえるか?)
「うん‥‥」
(大丈夫なんか?腹くくってるんやろ?)
「大丈夫だよ。ちゃんと出来るから」
(こんなんなるんやったら、あと一日だけ孝也の部屋居ればよかったな)
「イヤだよ。出てくって言った手前戻れないし。それに微妙なままより距離置いたほうがいい。‥‥まだ許してないし」
(はは。ガンコな娘や。まぁ私も人の事言えんけどな)
「‥‥昌さん達、大丈夫かな?もし彼方達と戦う事になったら‥‥‥」
(‥‥考えても仕方ない。解ってるやろ。桃花は寄生の事だけを考えとったらええ。闇の軍隊は現実の世界の打倒を目的に現し世に来る。それなら、それを打ち倒すんは人の仕事や)
「‥‥それじゃ私が人じゃ無いみたいじゃない」
(そう聞こえたか?はは。でも大丈夫や。人は結構強いモンやで。今のは凄いやん。あんなん私らの時代にあったら敵わんで)
「わかんないよ」
(え?そうかぁ。ニュースとかでも結構出てるんやけど。まぁええか。さ、そろそろ起きなさい。携帯鳴っとる。たぶん理子や)
「うん。そうする」
最初に桃花の目に飛び込んだのはテーブルの下だった。起き上がって見えたのは四方を囲む狭い壁とパソコンのモニター。無理な体制で寝た為か身体が痛む。座り心地の悪い椅子もそれに一役買っている。
桃花にとっては始めてネットカフェで過ごした一晩だった。
桃花は鳴りつづける携帯の画面を見る。やはり理子だった。
『‥‥おはようございます。桃花さん‥‥』
「おはようございます」
『桃花さん‥‥今どちらに?少し早いですけど、迎えに行きますよ』
「いえそんな‥‥‥すぐ近くに居るんで、歩いて行きます」
『いや‥‥その‥‥お願いします。迎えに行かせて下さい‥‥』
「?」
理子の声は昨日とはまた違い、緊張感に溢れている。あの脳天気な理子に何があったのか?
「理子さん、どうしたんですか?」
『‥‥‥来てるんです‥‥』
「へ?」
353 :
無限桃花〜The war is coming near〜:2010/02/22(月) 22:30:23 ID:Szdlzv1/
『だから‥‥昨日先輩が言ってた連中が来てるんですよ!』
「ああ、協力してくれるって言ってた‥‥‥」『あんな連中来るなんて聞いてないですよぉ〜!もうこの緊張感には耐えられない!一刻も早く脱出したい!だからお願いします、迎えに行かせて下さいぃ〜!!』
「え‥ええ、じゃぁ‥‥お願いします」
『あ‥ありがとう!じゃ、また後で!』
「何なの一体‥‥」
理子の緊張の理由は解らなかったが、いつものように指令室のあるビルへ着いた時、少しだけその訳が解った。
そこら中にいるのは『ヤタガラス』のメンバーではないスーツの男達。明らかにいつもの警備とは違う。彼等はビルではなく、その中に居る特定の人物のみを護衛しているSPだろうと、桃花は理解した。
桃花にも、そしてメンバーであるはずの理子にすら厳重なチェックが入り、ようやくビル内へ通された。
「理子さん‥‥‥誰が来てるんです?」
「大物もいいトコですよ‥‥。先輩‥‥馬鹿とは思ってましたがここまで馬鹿とは‥‥‥‥ていうかよく呼び付けられたモンですよ。あー怖」
「はぁ‥‥‥」
エレベーター内で理子は愚痴をこぼす。一体黒丸は誰に協力を求めたのか。
エレベーターの扉が開くと、黒丸とSPが待っていた。
「待ってましたよ。さぁ、既にみんな集まっています」
「昌さん‥‥誰呼んだんですか?」
「今、紹介します。会議室へどうぞ」
黒丸は桃花を会議室へ導く。ドアの前にも歩哨が立ち、睨みを効かせていた。
理子はその場から逃げだそうと、自分のデスクへ歩を進めたが、どうやら逃げられないようだ。
「どこ行くんだ?お前も来い」
「先輩‥‥。よく平気ですね。何したか解ってるんですか?」
「もちろんだ。さぁ、いいから来い」
「ひぇぇぇ‥‥‥」
SPがドアを開く。中に居たのは体格がいい制服姿の男二人と、スーツを着た老人。
老人とはいえ背筋は伸び、その雰囲気は年齢以上の活発さを表していた。
354 :
無限桃花〜The war is coming near〜:2010/02/22(月) 22:32:11 ID:Szdlzv1/
「ご紹介します。あちらの青い制服の方が田父神航空幕僚長、緑の制服の方が真先統合幕僚長です」
黒丸は彼等をそう紹介した。しかし桃花には彼等の肩書きは理解出来ない。ただ、その制服である程度は予想がつく。
「そしてあちらの方が‥‥テレビでご覧になった事があるかもしれませんね。防衛大臣の南澤大臣です」
理子が緊張するのも無理は無かった。この小汚い会議室に居るのは、3自衛隊の内のトップ二人と、それを統括する大臣。
総理大臣を除けば、事実上の自衛隊の最高指揮官達である。
「あ‥昌さん‥‥!これって‥‥?」
「驚かれましたか?我々は内閣を寄生から護衛するのが任務です。似たような任務を持つ彼等とはパイプがある。我々は秘密組織ですので、支援を求めるとどうしてもトップ連中に偏るんです」
「‥‥‥すごい無茶しますね‥‥」
「なりふり構っていられませんから。利用出来る物はなんでも利用する主義です。自衛隊も使わないと宝の持ち腐れですよ」
「ほう?随分な言い草だな黒丸君」
突然、南澤が口を開いた。
「いきなり呼び付けて会わせたい人とは、そこのお嬢さんの事かね?」
「ええ。紹介が遅れました。彼女が無限桃花さんです」
「な‥なんと?!彼女がか!?」
南澤は驚いた様子で桃花を見た。二人の幕僚長も顔を見合わせている。
「お嬢さん、あなたが本当に無限桃花で間違いないんですね?」
「はい‥‥。そうですけど?」
「これは失礼した。単独で寄生共を撃退するという報告を受けていたもので、てっきりどんな大男かと。こんな可愛らしいお嬢さんだとは思わなかった」
「はぁ‥‥」
「で、黒丸君、私達に会わせて何がしたいんだ?昨日の電話だけではイマイチ状況が把握出来ない」
「解りました。では、桃花さん。昨日話して頂いた影糾の計画、皆さんに話して頂けますか?」
「ええ?!」
355 :
無限桃花〜The war is coming near〜:2010/02/22(月) 22:34:22 ID:Szdlzv1/
「まぁ心配になるのも解りますが‥‥度々報告は入れているので大丈夫ですよ。彼等も寄生に目を光らせてるのは一緒ですから。今までも部隊の訓練付けて貰ったり武器の流用してもらってるくらいです」
「‥‥解りました」
昨日と同じ説明を南澤達に話す。それは国防を仕事とする彼等にとっては一大事の内容だ。
他の官僚や政治家からはオカルト女の烙印を押されると思われる話だが、彼等は真剣に耳を傾ける。そして、田父神が口を開いた。
「なるほど‥‥‥やはり寄生はただの化け物では無かったか。突然規則性のある動きとなれば気になるのも当然だな」
真先もそれに続く。
「天狗やら鬼やらはいかがわしいが‥‥黒丸が実際に見たとなれば別だろう。監視ネットワークのデータを見る限り、連中は北へ移動している。桃花さんとの意見とも一致している。どこに向かっているやら‥‥。桃花さん、あなたの見解はどうなのですか?」
「え?わ‥私ですか‥‥?」
「ええ。黒丸の報告ではあなたは影糾とかいう寄生を探しているとか。そして我々も黒丸も寄生は影糾の元へ集結しようとしていると考えている」
「うむ。我々としては先程お話し頂いた影糾の戦争計画を何としても阻止しなければなならい。何か起きてからでは意味が無い。そして強力な寄生相手では、残念ながら我々では敵わない」
「つまり、我々はあなたに対して全面的に協力する。代わりに、影糾を何としても消してもらいたい」
「それは‥‥私もそうしたいですけど‥‥」
そこで黒丸が語りだした。ここぞとばかりに。
「そこで南澤大臣のお力をかして頂きたい。現在では我々は遠くまで動けない。動けたとしても人員も少ないし、都内の警備も怠れない」
「何が言いたいんだ?はっきり言いたまえ」
「‥‥総理に直接掛け合って頂きたい。自衛隊に寄生監視作戦を実行してほしい。それと桃花さんへの全面協力。さらに、いざ有事となった場合に備え、自衛隊に対寄生部隊を編成しすぐに展開できる準備を。今すぐに」
「やはり無茶な事を言うな‥‥」
356 :
無限桃花〜The war is coming near〜:2010/02/22(月) 22:36:20 ID:Szdlzv1/
「ええ。承知してます。北のほうへ監視が伸びれば、寄生の目的地が推測出来ます。その先に婆盆と影糾が居る可能性がある。その後は‥‥‥桃花さんと我々がやります」
「‥‥‥うむ‥‥‥。」
南澤は渋い顔を維持したまま考えこむ。
そして、ゆっくりと語った。
「‥‥‥監視は問題ないだろう。通常の作業として隊員に結界を設置させればいい。情報がここへ集中するよう細工する事も可能だ。そうすれば隊員に寄生の情報が漏れる事は無い。桃花さんへの協力も可能だ。元よりそのつもりだからな。
だが、今から戦闘部隊を編成するのは無理だ。いや、そもそも有事を予測して部隊を動かす事自体、反発が強すぎる」
「‥‥それでは影糾の軍隊が現れたらどうするつもりですか?」
「‥‥まぁ待て。通常のエアパトロールとして戦闘機を飛ばす事は出来る。陸上部隊はわからんが‥‥‥。なんとかなるはずだ」
南澤はそう言うと二人の幕僚長に目をやる。二人は小さく頷き、そのまま退室した。
南澤はSPを呼び付け、同時に現れた秘書にスケジュールを確認させる。
そして部屋を後にした。
「ふう‥‥‥。これで‥‥何とかしてくれると思いますよ」
「昌さん‥‥。なんであんな人達と‥‥」
「ああ、気にしないで下さい。私は昔、陸上自衛隊にいましたから。真先幕僚長は私の上官でした。おかげで妙な人脈もできましたし」
黒丸は飄々と言ってのけた。自分が呼び付けたのが何者なのか理解していないのかと思うほどに。
「先輩‥‥私居る意味ありました‥‥?」
「あれ?お前居たのか理子?」
「‥‥酷い」
357 :
無限桃花〜The war is coming near〜:2010/02/22(月) 22:37:03 ID:Szdlzv1/
投下終了。
後半へ突入という事でサブタイの雰囲気変えてく。
乙
相変わらずの高速更新、テラ恐れ入ります。
wikiまとめてきました
1秒記録更新したぜ。投下終了宣言から30秒以内が目標
……ゴメン
>>358 速ぇよwww俺の更新なんかより全然速いwwwww
もしやお前がアンテナさんか?
>>359 これもバックグラウンドに‥‥‥おっと危ない。
新作も纏めも早すぎるんだよぉ・・・っ! 乙乙。
なんかいかついのがいっぱい出てきたな。
そしてやっぱり何したんだ孝也・・・っ! そっちのが気になるんだぜ。
>>362 いずれ書こうと思っている。
先に言うと孝也が一夜の間違いを毎晩してボコられただけのよくある話。
364 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 12:36:16 ID:H55uuSfc
(゚д゚≡゚Д゚)
ハルトシュラーズ!
発子さぁーーーん!!
まさか‥‥‥寄生にやられたか!?
ksks
新作、投下します
未来には、無限の可能性がある。
この物語は、ある格闘大会が終わったあとに訪れる可能性の一つである。
◇ ◇ ◇
二月某日、関東某所「キッチン キュムキュム」。
この店の店主である加藤キューピーは、自ら開店前の店内を清掃していた。
すると、ふいに店の扉が開かれる。
「すいません、まだ開店前で……」
入ってきた人影を注意しようとする加藤。だがその言葉は、途中で止まってしまう。
人影が、彼の知っている人物だったからだ。
店に入ってきたのは二人。
一人は黒いドレスで小さな体を着飾った、端整な顔立ちの少女。
もう一人は黒い外套を羽織った、筋骨隆々の大男だった。
「開店前というのは百も承知での無礼だ。貴君に話したいことがある」
「これはこれは……。ハルトシュラー閣下とスミスさんではありませんか」
謎の天才創作家・ハルトシュラー。何でも屋・ジョン・スミス。
数ヶ月前に行われた創発最大トーナメントで、加藤が出会った二人だ。
「あなた方二人が揃って私のところにやってくるとは……。ただごとではないようですね。
何があったのですか?」
「長くなるだろうが、かまわないか?」
「かまいません。ああ、長くなるようでしたら、まずはお席についてはいかがでしょう」
二人に着席を促す加藤。それに従い、ハルトシュラー達は適当な席に腰を下ろす。
「では、お話を聞かせていただきましょう」
「うむ、まずは前振りから始めようか」
一呼吸置くと、ハルトシュラーは真剣な表情で語り始めた。
「シンクロニシティー、という言葉を知っているか?」
「シンクロニシティー……。同調、ですか?」
「まあ、その認識でかまわぬ。先日、そのシンクロニシティーが発生したのだ。悪い事件としてな」
「具体的には?」
いやな予感を覚えつつも、加藤は続きを促す。
「同日同時刻、世界各地で五人の死刑囚が脱獄に成功した。
全く同じ台詞……『敗北を知りたい』と口にしてな。
そしてやつらは、揃ってとある場所を目指しているらしい。
それこそが数ヶ月前我々が戦った場所……地下闘技場だ」
「なるほど、話が見えてきましたよ。つまり、その死刑囚退治に僕も参加しろということですね?」
「飲み込みが早くて助かるよ。引き受けてくれるか?」
「やれやれ……。またしばらく店を空けなくてはならないようですね」
そう呟く加藤の口元には、格闘士(グラップラー)特有の獰猛な笑みが浮かんでいた。
◇ ◇ ◇
上野・不忍池。
その日アジョ中は、日課のロードワークでこの池の周りを走っていた。
だが日常の光景は、とある瞬間を皮切りに非日常へと変化する。
「ん?」
何やらただならぬ気配を感じ、アジョ中は思わず足を止める。
その直後、池の中から何かの手が飛び出してきた。
「なっ!」
驚くアジョ中の足を、謎の手が掴む。アジョ中は瞬く間に、池の中へと引きずり込まれていった。
「くそっ! 誰だ、こんなふざけた真似しやがるのは!」
謎の相手に、啖呵を切るアジョ中。すると、落ち着いた声が返ってきた。
「俺だよ、アジョ中」
「貴様は!!」
声の主を視界に収めたアジョ中は、驚きのあまり叫ぶ。
そこにいたのは、わずかに桃色がかった白い肌の生物だった。
「ウーパールーパー!!」
「Yes I am! チッチッチッ」
「自分を調理しようとした料理人20人を殺害し、死刑判決を下されたと聞いてたが……。
脱獄してやがったのか」
「その通り。せっかく自由を取り戻したんだし、ちょっと遊んでみようかと思ってね。
まずはアジョ中! お前を倒し、水中戦創発最強は僕だということを証明してやろう!」
「おもしれえ! その挑戦、受けて立ってやるぜー!」
言うが早いが、アジョ中はウーパールーパーに殴りかかる。
だがその拳は、あっさりとかわされてしまう。
めげずに次々と攻撃を繰り出すアジョ中だが、いっこうにクリーンヒットを奪えない。
逆に、ウーパールーパーの蹴りをまともにくらってしまった。
「どうなってるんだ……。体の動きが鈍いような……」
「まだ気づかないのか、アジョ中」
「どういうことだ!」
「アジは海水魚だ! 淡水のこの環境、貴様にとってはホームグラウンドでもなんでもない!」
「し、しまったー!」
動揺し緊張感を一瞬途切れさせてしまったアジョ中の両足を、ウーパールーパーがつかむ。
そのままウーパールーパーはアジョ中の体を反転させ、急降下。
「アトランティスドライバー!!」
アジョ中の頭部が、岩に叩きつけられる。
「ウギャーッ 串子姐さーん!!」
アジョ中の悲鳴は、冷たい池の水に吸い込まれていった。
◇ ◇ ◇
「あうっ!」
「きゃん!」
「うぐっ!」
「かしらっ!」
「深紅! 雛苺! 蒼星石! あとついでに金糸雀ー!!」
「噂に名高いローゼンメイデン達も、この程度か……」
翠星石は、自分の目の前で起きたことが信じられなかった。
決して弱くはない、自分の姉妹達。それが目の前の怪人に、文字通り一瞬で倒されてしまったのだ。
男は、赤と銀が大部分を占める鎧に身を包んでいた。顔もカブト虫を思わせる仮面に隠され、その素顔はうかがい知れない。
「あとはお前一人だな」
ただ一人残った翠星石に向かい、男はゆっくりと歩み寄る。
「な……何者なんですか、てめえは!」
「何者? いいだろう、教えてやる。俺は◆SaBUroZvKou。天の道を往き、総てを司る男だ」
名乗りを挙げると、◆SaBUroは腰に装着されていたカブト虫型のメカを操作する。
『3,2,1』
電子音声が、カウントダウンを開始する。
『Rider Kick』
技名が告げられると同時に、超高速の回し蹴りが翠星石に叩き込まれる。
なんの防御もできずにその技を受けた翠星石は数十メートル吹き飛び、壁にめり込んで意識を失った。
◇ ◇ ◇
「これは……!」
高杜学園長は、あまりに衝撃的な光景に動揺を隠せずにいた。
それは、彼女の学園の女生徒達が何人も倒れているという悪夢のごとき光景だった。
「いったい誰がこんなことを……!」
怒りに声を震わせながら、学園長は生徒達に近づく。
そこで、彼女は妙なことに気づいた。
倒れている生徒達は、皆後ろ髪をかき上げられうなじを露出しているのだ。
さらにそのうなじには、明らかに本人のものではない赤い毛が付着している。
「うなじに、赤い毛……? まさか……」
「そのまさかですぞ」
突如後ろから響く声に反応し、学園長はすぐさま振り向く。
そこには、血のように真っ赤な体毛で全身を覆った雪男が立っていた。
「やはり貴様の仕業か……。ムック!」
「お久しぶりですな、学園長。相変わらずお美しい」
「貴様に世辞を言われても、少しも嬉しくないわ。それより、我が学校の生徒に危害を加えた罪……しっかりと償ってもらうぞ!」
「危害とは人聞きの悪い。ただうなじを愛でただけですぞ?」
「相手の同意を得ずにそんなことをすれば、充分罪であろうよ!」
こめかみに血管を浮かべながら、学園長は一気にムックの懐に入り込んで正拳突きを放つ。
だがムックは、その一撃を難なく捌いてしまった。
「おお、怖い怖い。本当ならあなたのうなじも可愛がってさしあげたいところですが……。
少々お遊びに時間を使いすぎたようです。我が輩、そろそろ行かねばなりません。では」
「逃がすか!」
間髪入れず、先程とは逆の手で突きを放つ学園長。
だがその拳が届くより早く、ムックの口が呪文を紡ぐ。
「ルーラ!」
猛烈な勢いで、ムックの巨体は空の彼方へ消えていく。
学園長はそれを、歯を食いしばりながら見つめるしかなかった。
◇ ◇ ◇
ヽ○ノ 姉「また風に飛ばされて、見知らぬところに来たよ!」
/
ノ)
?「へえ、こんなところで創発トーナメント参加者に会えるとはね……」
姉「誰?」
?「僕は骨川スネ夫。創発トーナメント参加者、姉者……。僕と勝負してくれないかな」
姉「いいよ!」
スネ夫「それじゃあ、さっそく……」
パァン! パァン!
・'ヽO. 姉「え……?」
_ノ ヽ
〉
姉「拳銃……?」
スネ夫「甘いなあ……。誰も素手で勝負するなんて言ってないじゃないか……。
まあ、しょせん勝ち抜けなかった奴なんてこの程度か。じゃあね。二度と会うことはないだろうけど」
_
○|_| 姉「やられた……」
ヽ○ノ 姉「まあいいか!」
/
ノ)
◇ ◇ ◇
人里離れた一軒家。
表札の代わりに「わしが建てた」と書かれた看板が掲げられたこの家に、二人の老人がいた。
一人はこの家の主、ほっしー。
もう一人は和服を着た、どことなく危険な雰囲気を漂わせる男だった。
「久し振りやな、婆盆寄生」
「ええ、かれこれ二十年ぶりになりますか」
ほっしーの言葉に、婆盆と呼ばれた老人は静かな声で応える。
「あなたとの戦いで力を使い果たした私は人間に捕らえられ、監獄送りに。
一方のあなたも、戦士として深刻な傷を負い第一線から退いた……」
「懐かしい話や……」
相槌を打つほっしーの顔には、哀愁がにじみ出ていた。だが、その奥には別の感情が隠れている。
かつての仇敵に対して抱く、闘争心だ。
「なあ、婆盆……。もう一度……やらんか?」
「ほっほっほ。ご冗談を」
ほっしーからの戦いの誘いに、婆盆は上品な笑い声をあげる。
そして次の瞬間、手にしていた湯飲みをほっしー目がけて投げつけた。
「なっ!」
思いがけない婆盆の行動に、怯むほっしー。そこに、婆盆の蹴りが叩き込まれる。
「が、あ……」
うめき声を残し、ほっしーは意識を失った。
「戦いたいのなら、相手に了承など求めずすぐに襲いかかるがよろしい。
闘将とまで呼ばれたあなたが……。老いたものですな」
あくまで静かに呟くと、婆盆は一軒家をあとにした。
◇ ◇ ◇
五人の死刑囚は、それぞれ目的地へと向かう。
行き先は同じ。東京ドーム・地下闘技場!
グラップラー創発板 ―最凶死刑囚編―
第1話「シンクロニシティー」 終
投下終了。補足説明他色々
・作者は創発トーナメントの作者さんとは別人です。一切関係ありません。
・この話は創発トーナメントの後日談ですが、あくまで数多い可能性の一つです。
別の人が別の設定で続編を書いても、私はいっこうにかまわんっ!
・死刑囚達の出典は以下の通りです。
ウーパールーパー@ウーパールーパーで創作するスレ
◆SaBUroZvKou氏@クロスオーバー小説創作スレ
ムック@うなじ総合スレ
骨川スネ夫@殺人鬼スネ夫スレ
婆盆寄生@創発発のキャラクター総合
スレ関係者の皆様、死刑囚役なんかにして申し訳ないです。
・キャラの性格や設定などは、割とブレイクする気満々です。
・アジョ中とウーパールーパーが水中で普通に会話しているのは、彼らが水棲生物だからです。
・スミスさん、せっかく出てもらったのに台詞なくてすいません。
期待wオリバポジションの人物は出てくるのかしらw
>>372 乙そしておkwwwwwwwwwww
テラクロックアップwww
こwれwはwwwwww
ムックで吹いたwww
376 :
相容れぬマスク:2010/02/23(火) 22:14:26 ID:H55uuSfc
投下開始。
「なぁボス。今日の相手のXマスクって誰なんだよ?」
「だからニール、俺も聞いてないんだよ。解ってるのはお前と同じメキシコ上がりの日本人って事だけだ」
「ったく‥‥」
「グチるんじゃねぇよ。プロレスだぜ?こういうイベントは客が喜ぶのさ。解ってくれよチャンピオン」
SSPマスクことニールは、控え室で社長に食ってかかる。今日の相手の日本人はIPWC推薦でニールの団体に参戦したマスクマンらしい。
「日本人レスラーは格闘技スキルが高い。油断すんなよニール」
「もちろんだ」
「息子は元気か?」
「ああ、今度カラテの昇級試験がある」
「そりゃ気合い入れないとな」
「先に俺だ」
ニールはタバコをふかしながら静かに闘志を高ぶらせる。
今は誰にも負ける気がしない。たとえタイトル戦でなくとも、手を抜いて戦えない。
満身創痍とはいえ、俺はチャンピオンだ。ニールは自分にそう言い聞かせた。
「さて‥‥やっこさんのマスクを拝みにいくか」
スポットライトがキャンバスを照らし、花道からは愛すべき馬鹿共の歓声が吹き出す。
いつものようにロープを跨ぎリングに立つニール。リングアナに紹介され、馬鹿共に存在をアピールした。
いつも通りだ。そのはずだった‥‥‥
「‥‥‥では、本日のメイン!Xマスク入場!」
突如、ニールの対角線上にあるゲートが照らし出される。そして現れたXマスク。それを見た客席からは、どよめきとブーイングが巻き起こった。
そこに現れたのは、ニールと同じスーパーストロングパンツを被った男‥‥。いや、違う。ニールのマスクは白い。しかしその男のマスクは黒だったのだ。
リング上で二人のパンツ男は睨み合う。ニールの闘志は既に殺気へと変わっていた。自分のアイデンティティであるパンツマスクを盗用された。マスクマンにとってこれほどの屈辱は無かったのだ。
377 :
相容れぬマスク:2010/02/23(火) 22:15:24 ID:H55uuSfc
「随分フザケてくれるなジャップ」
「慌てるなよニール。高が知れるぞ」
「何?お前まさか!?」
「久しぶりだな。メキシコ以来か」
Xマスクはたしかに久しぶりと言った。
ニールにも心当たりがあった。お前はまさか‥‥‥
そう言いかけた時、リングアナによる紹介が始まる。
「では改めて!先ずはIPWCヘビー王者!スーパーストロングパンツマシーン!」
ニールが紹介されると客席からはSSP!SSP!と歓声が上がる。いつもならそれに応えるニールだが、今日はそれが無かった。
そして遂に、Xマスクの正体が明かされた。
「そしてもう一人!IPWC推薦の新マスクマン!ハードドライヴィングパンツマシーン!!」
ブーイングが激しさを増す。しかし、ニールも、対戦相手のHDPマシーンもお互いしか見えていない。
「お前と戦うのは随分と久しぶりだ」
「ヨシダ‥‥日本で総合へ転身したと聞いていたがな」
「戻ってきたのさ。お前と戦いたくてな。このマスクもその為だ」
「そりゃうれしいね。だがオフザケが過ぎるぜ‥‥ヨシダ!」
ニールはゴングを待たずにキックを繰り出す。だが、ヨシダはそれを難無くキャッチし、ドラゴンスクリューでニールに答えた。
「チッ‥‥相変わらずうまいなヨシダ」
「お前はガマンが足りねぇからな。気性の激しさはさすがだぜ」
この瞬間、プロレス史上の残る抗争『ブラックパンツ抗争』が始まったのだーーー
378 :
相容れぬマスク:2010/02/23(火) 22:17:45 ID:H55uuSfc
終了
SSP! SSP!
>>372 まさかの続編だと?
やべえ、燃えるw
でも被ってるのはパンツw
SSP! SSP!
「ママー、パンツが喧嘩してるよー」
「しっ、見ちゃいけません!」
SSP! SSP!
>>372 ムックにウパルパだと!?ww
382 :
無限桃花〜Woe to you longing for the justice〜:2010/02/24(水) 00:56:08 ID:6OsO8DVX
さてと、SSPばっかり書いてる訳にゃいかねえわな。
投下開始
383 :
無限桃花〜Woe to you longing for the justice〜:2010/02/24(水) 00:58:29 ID:6OsO8DVX
モニターの画像はせわしなく無数の赤い点を表示していた。それは途方もない数で、日本地図の上を北へ、北へと移動している。
まるでそれ自体が一個の生命体のようだった。
黒丸の願いを聞き入れた南澤達の動きは早かった。あれから僅か一週間で、東京から北の地域には寄生感知の結界が設置され、それらの情報はすべて『ヤタガラス』指令室へと送られる。まだ正確な目的地こそ見えないが、寄生達は桃花の生まれた地、霊域・青森へ集結している。
三沢基地から飛び立ったRF−4偵察機に搭載されたアクティブ型の寄生センサーは、寄生達が青森の至る所へ紛れ込んでいると告げている。そこもかしこも、センサーが反応しない場所は青森には既に無い。
しかし、寄生達による被害の報告は無かった。不気味な静けさが支配していた。
桃花は指令室で寝泊まりしていた。事情を察した理子の配慮で桃花はタダで寝床を手に入れたのだ。
寄生の情報はここに居ればいつでも手に入る。だが、桃花は魂でそれを感知出来る。
ーーー彼方。
彼女の憎悪が膨れるのが解る。叫んでいるのが伝わる。「災いを!」と。
「‥‥連中は何がしたいんだ?ただ集まっただけで何をするでもない‥‥‥」
黒丸はしかめ面でコーヒーを啜る。すでに青森は結界だらけだ。寄生はいくらでも感知する。
桃花もこの不気味な静寂には何か意味があるとは感じているが、それが何かまでは感じる事が出来ないままだった。
「どうするつもりなんだろ‥‥?」
「桃花さん、この際寄生の目的はどうでもいい。何とか婆盆と影糾の居場所を感知出来ないんですか?」
「ごめんなさい‥‥そこまではどうしても解らないんです。でも‥‥‥」
「でも?」
「もうすぐ彼方は動き出すと思う。そうなれば‥‥‥」
「やはり‥‥。では待つしかないか」
「ええ。ごめんなさい‥‥‥」
「桃花さんのせいじゃないですよ」
384 :
無限桃花〜Woe to you longing for the justice〜:2010/02/24(水) 01:00:14 ID:6OsO8DVX
もうすぐ彼方は動きだす。
それは間違いではない。宇曽利湖では、既に魔道と現し世を繋ぐ門が開こうとしていたのだ。
「通りゃんせ。通りゃんせ。ここはどこの細道じゃ。天神様の細道じゃ。クスクスクス」
彼方は笑っていた。宇曽利湖の水面に不自然に立ち、細い身体で歌を歌いながら舞う彼方。
もうすぐだ。もうすぐ千年の大願が成就される。思いだす。憎い憎い。人間達。権力者達。憎い憎い憎い。あの時の怨み、忘れるものか
それが晴らされるのだ。笑わずにはいられなかった。
彼方は、怨みに顔を歪ませながら笑っていた。
「通りゃんせ。通りゃんせ。クスクスクス‥‥‥」
全ては天神の細道を通す為に。
異変は静かに訪れる。宇曽利湖の中心から、少しずつ少しずつ、山が現れる。
それは細長く天まで伸びて行き、頂上は雲で覆われて行く。その雲は、まるで血のように朱く染まっていた。
「クスクスクス‥‥もうすぐよ。姉さん。出来れば来て欲しくなかったけど‥‥多分来るよね」
「彼方よ。門の閂を抜く時は来た。さぁ。始めよう」
「そうね婆盆。ああ、アイツはどうしてる?」「今だ眠っている。だが何時でも目覚めるだろう。敵が来るまで力を貯めているのだろう」
「クスクスクス‥‥‥じゃぁ、うまくいけば姉さんも殺してくれるかもね」
「無限の天神が目覚め無ければ、だが」
「その時は‥‥私がやる。やりたくないけど。仕方ないよね」
「さぁ彼方よ。今こそ贄を捧げる時」
「そうね。じゃぁ、みんなここに呼ぶわ。一気にね」
「うむ。既に人が我等を探している。猶予を与える意味は無い」
「クスクスクス‥‥‥さぁ。闇の兵達。もうすぐこの世で動く為のエサをあげるわ。何千人集まったかしら。クスクスクス‥‥‥」
385 :
無限桃花〜Woe to you longing for the justice〜:2010/02/24(水) 01:01:12 ID:6OsO8DVX
「HQ、こちらスワロー1。現在高度五千フィート。速度四百ノット。センサー異常無し。地上センサーからも異常報告無し。いや、反応しっぱなしで意味が解らない」
『了解。スワロー1。現在の高度を維持。引き続き同空域の監視を続行せよ』
「スワロー1了解。左旋回する」
上空を飛ぶ偵察機RF−4のパイロットは地上への報告を終えると操縦桿を倒し来た道を引き換えした。
警戒レーダーの代わりに取り付けられたセンサーには何も映らない。何の為の装備かも知らされないまま飛ばされた彼は不満だった。
「ったく何を探してるんだ?」
それは彼の本心だろう。今来た道にはどうせ何も無い。また雲の海を滑り、地上へ内容の無い報告をするだけだろう。
そう思っていた。それを見る迄は。
「いくら暇でもこんな任務は無いな。基地にゃ何やら新しいミサイル来てるじゃねぇか。なのに俺は無意味なフライトだ」
『聞こえてるぞスワロー1」
「おっとこりゃ失礼。こっちは相変わらず快適なフライトだ」
『口を慎め』
「はいよ‥‥って、ちょっと待て。あれは‥‥‥」
『どうしたスワロー1?』
「ウソだろ‥‥?」
『どうしたんだ?報告しろ!』
「こちらスワロー1。宇曽利湖に何か出来てる」
『何だと?報告を繰り返せスワロー1!』
「こちらスワロー1。宇曽利湖に山が出現。なんだコレは?こんな細長い山は始めて見た」
『山?山だと言ったなスワロー1』
「だから山だ。剣みたいな細い山だ!」
『考えられん‥‥」
「実際見てる!‥‥って、ちょっとまて、何か接近してきた!」
『接近?何だ?見えるか?』
「ちょっとまて‥‥あれは‥‥‥マズイ!!」『どうした!何が来た!?』
「炎だ!炎が接近!凄い‥‥!炎の壁だ!回避行動をとる!」
『回避しろスワロー1!出来るか!?』
「今やってる!ダメだデカ過ぎる!炎が目の前に!炎しか見えない!ダメだ!包まれ‥‥‥‥」
『スワロー1!!応答せよスワロー1!!』
386 :
無限桃花〜Woe to you longing for the justice〜:2010/02/24(水) 01:02:35 ID:6OsO8DVX
投下終了。今回はブリッジ。
SSP!SSP!
投下乙です
まとめてきました
>>387 早過ぎんだろ毎回wwwww
自分の投下確認しようとしたら既にまとめいっとるとは超人技過ぎるwww
満足いく記録が得られたので、次からは真面目にまとめる
SSPと同じ人なんだなw
とうとう始まったか…
>>387 終了宣言から3秒ってwwwww
SSP勝手にまとめてきた
今見たら裏wikiに新キャラがまとめられてたww
キャラ設定もまとめてきた
桃花の設定がわからねえww
>>392 俺設定の桃花で今公開出来る事は
167cm51kg。Bカップ。
甘い飲み物が好きでサシャ・ゲルストナーのファン。
孝也には未だ脈アリ?
ここまでだ。他の作品との兼ね合いもあるし。
394 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 13:52:38 ID:NZ0SsMkm
どっかの設定で無限桃花は無限にいるみたいのなかったっけ。
つまりそういうことだろう。
背の低い貧乳桃花も・・・ごくり
俺の中ではバームクーヘンは確定ですw
396 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 15:15:11 ID:6OsO8DVX
>>349 その通りだ。
つまり俺の桃花では自由にやらせてもらうぜグヘヘ。
いやそういう意味じゃなく。
てす
鳥付けてみました
だから何?って話だけど
イイヨーエロイヨーヒューヒュー
399 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 18:53:02 ID:6OsO8DVX
400 :
無限桃花外伝〜空想の果て〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/02/24(水) 20:15:47 ID:6OsO8DVX
じゃ俺も鳥つけよ。投下の時だけw
てな訳で投下!
彼は今日も携帯の画面を見つめている。
仕事から帰り、酒の肴の缶詰とスーパーの半額惣菜をテーブルに並べ、酒を煽りながら2ちゃんねるを巡回する。
肴が無くなったら買い置きしてある冷凍ウドンやラーメンを食べれば、夕食としては十分なカロリーだろう。
食べながらも彼はレス画面を開き文字を打ち込んでる。もはや日課だ。
今日もいつもと変わらぬ作業を繰り返す。また投下は夜中になるだろう。そして次の日はまた寝不足だ。
それも、彼にはいつもの事だった。
彼は発泡酒の500ml缶を飲み干し、汚いゲップを出す。この程度では酔ったりはしないが、やはり文章を打つ作業にはマイナスだろう。
彼は一旦画面を閉じ、目頭を押さえた。疲れが貯まっている。しかし辞める訳には行かないのだ。
再び画面を開き、発泡酒のプルを引く。続きだ。
「ふふ‥‥またお酒飲みながら書く訳?私達の事も考えてよ」
その声は突如聞こえて来る。ありえない声。この世界には存在してはいけない声が、彼の背後から響いた。
「‥‥‥ウソだ。ありえない」
「そうね。ありえない。でも、私はここへ来たの」
「‥‥‥桃花」
「ふふ。驚かないでよ。毎晩会ってたじゃない」
目の前に現れたのは、間違いなく無限桃花。先程まで、彼が書いていたはずの‥‥‥
「なぜ‥‥‥お前がここへ?
「何言ってるの。あなたが呼んだんじゃない。私の続きを書く為に‥‥」
「なんだって‥‥‥?」
「はは。あなたが呼んだのは間違いない。それを実現させる為の力‥‥。あなたは持ってるじゃない」
「‥‥そうか」
「理解出来たみたいね」
「ああ‥‥」
「さぁ。早く続きを書いて。私は長くここにはいられない。あなたの力も‥‥いいえ、全ての人が持つ無限の力ははかないものなの。知ってるでしょ?」
「‥‥すまない。あんな事になって‥‥」
「なんの事?あなたはまだそれを書いてないでしょ?私の未来はまだ確定してない。すべてはあなた次第。あなたの無限の力で未来を造るの」
「いいのか?それで‥‥」
「ふふ、いいんじゃない?それもあなたが決める事よ。あなたの無限桃花は、あなたが造るしかない。だから私がそれでいいのか、イヤなのか‥‥それもあなた次第」
401 :
無限桃花外伝〜空想の果て〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/02/24(水) 20:17:58 ID:6OsO8DVX
「じゃあね。時間みたい。さよなら」
「え‥‥?ちょっと待ってくれ!まだ‥‥話したい事がある。沢山あるんだ!」
「その必要は無いわ。だって私はあなたが造るんだから。話したい事があったら‥‥その話を書けばいい」
「そんな‥‥待ってくれ!」
「じゃあね。続きを待ってるわ」
「桃花!」
桃花は消え去った。
後には何も無い。いつもと変わらない空き缶と肴の皿だけ。
刹那、もうひとりの姿が見えた気がした。床まで届きそうな蒼い髪をした少女だ。
‥‥‥いや、これこそ幻だろう。彼はそう考えた。
彼は冷凍ウドンを電子レンジにほうり込み、スイッチを入れる。出来上がるまで5分。その5分すら彼には惜しい時間だ。
再び携帯お画面を見た彼はキーを押し続ける。
無限桃花に会う為に。
投下乙ー
それでは、自分も投下します
ハルトシュラー達が加藤の元を訪れてから数日後、東京ドーム地下闘技場。
かつて数々の激闘が繰り広げられたこの場所も、今は無人。
いや、無人のはずだった。
静寂が支配する闘技場に、一人の青年がやってくる。
毒々しい紫色のジャケットを着込んだ彼こそは、◆SaBUroZvKou。
ローゼンメイデン達を一人で壊滅させた怪人の素顔である。
「どうやら、俺が一番乗りのようだな」
周囲を見渡し、◆SaBUroが呟く。だが次の瞬間、彼の言葉を否定するかのように銃声が響いた。
「ふん」
しかし、◆SaBUroは視線すら向けずにその銃弾を回避する。
「へえ、やるじゃない。銃弾を避けるなんて、一般人にはなかなかできないよ」
「あれほどの殺気をぶつけられたら、誰でも気づく」
物陰から姿を現した少年……骨川スネ夫に対し、◆SaBUroは素っ気なく返す。
「それで、どうする? 不意打ちは失敗したが、まだやるか?」
「僕はそれでもいいけどね。そういうわけにもいかないみたいだよ」
「おやおや、血気盛んなことですな」
その場に響く、三人目の声。新たに闘技場に姿を現したのは、赤い雪男……ムックだ。
「へえ、こんな時間にこれだけの人間が集まるとは……。偶然っていうのは怖いですねえ」
「これは偶然ではない。運命だ」
さらに二人。ウーパールーパーと婆盆寄生も、闘技場へ足を踏み入れる。
「これで五人か……。たしかに、偶然というにはできすぎているな」
「なんでもいいさ。とにかく、こうやって集まったんだ。戦おうじゃないか。
どうせみんな、そのつもりだったんでしょう?」
ウーパールーパーの発言を皮切りに、五人はそれぞれ殺気を纏い出す。
その状況はまさに、一触即発。
だがその空気を、六人目の声が吹き飛ばす。
「そう猛るな、死刑囚諸君。似たもの同士でつぶし合わずとも……君たちには、私たちが敗北をプレゼントしよう」
ゆったりとした足取りで場内に現れたのは、一人の少女。
殺人者達が集うこの場所にいながら、その態度はあまりに堂々としている。
それもそのはず。彼女はただの少女ではなく、魔王なのだから。
「ハルトシュラーか……!」
「知っていたか。光栄だ」
「知っていたかも何も……。創発に籍を置く者で、あなたを知らぬ者はいませんぞ」
「まさかあなたと戦えるとは……。ゾクゾクするねえ」
極上の獲物が出現したことにより、死刑囚達の殺気はハルトシュラーへと集中する。
だがそれでも、彼女は堂々とした態度を崩さない。
「だから、そう猛るな。こちらも、頭数は揃えてある。みんなも入ってこい」
ハルトシュラーがそう言うと、さらに四人の人影が闘技場に入ってくる。
「やれやれだぜ……」
ジョン・スミス。
「ふむ。料理のしがいがありそうな方々ですね」
加藤キューピー。
「なんだ、この状況ー! あたしは閣下が回ってない寿司を驕ってくれるっていうから来たんだぞー!」
よし子。
「ばーあーぼーんー……!」
ほっしー。
「彼らに私を加えた五人が、創発地下闘技場正規ファイターの代表だ。
この五人で、諸君を相手することになる」
「ちょっと待てー! 正規ファイターってなんだー! 私はそんなものになった覚えはないぞー!」
「ハッハッハ、何を言う。一度でもこの闘技場で戦った選手は、自動的に正規ファイターとして登録されるのだ」
「理不尽だー!」
ショックを受けるよし子をよそに、ハルトシュラーは話を続ける。
「彼らは皆先日行われた創発最大トーナメントの参加者だが、優勝者から5位までを順に選んだわけではない。
彼らを選んだ理由はただ一つ……あみだくじだ」
「ちょっと待て! そんな理由かよ!」
「私、店休んできてるんですよ!?」
「ふざけんなー!?」
「運任せでも選ばれるとは、さすがわし」
味方サイドから非難の声が殺到するものの、やはりハルトシュラーは動じない。
「あー……。その、なんだ。相手するって言っても、どういう形式でやるんだ?
勝ち抜きか? 総当たりか?」
雰囲気がグダグダになってきたのを感じつつも、話を進めるべく◆SaBUroが言う。
「いや、今回はそういったルールは取らない。前田光世形式でいく」
「前田光世形式だと……!」
「知っているのか雷電! じゃなかった、スミスのおっちゃん!」
「ああ……」
よし子に促され、スミスは前田光世形式の解説を始めた。
「前田光世形式ってのは、決められたエリア内……たとえば新宿なら新宿内で参加者はいつもどおりの生活を過ごす。
飯食うもよし、酒飲むもよし。だが対戦相手と遭遇した瞬間、そこが戦場と化す……」
「日常の中のランダムエンカウントかー!」
「まあ簡潔に纏めれば、スミスの言ったとおりだ。どうする、受けるか?」
「あなたのことだ。どうせ断れば、もっとえげつない方法で私たちを潰しに来るのでしょう?」
「さて、どうだかな」
婆盆の言葉に、ハルトシュラーは意味深な笑みを浮かべる。
「私は受けましょう。あなた方はどうします?」
「俺は別にかまわない」
「僕もいいよ」
「私も了承しましたぞ」
「なら僕もだ」
死刑囚五人の意見が一致する。それはすなわち、開戦準備ができたということ。
「では、闘争を開始しよう。会場はこの世界の日本全域! 期限はどちらかが全滅するまで!
戦闘におけるルールは一切なし! 不意打ちも武器の使用もおおいにけっこう!」
「え? そんなこと言ったらもう前田光世形式でもなんでもないんじゃ……。
ただのなんでもありじゃないか……」
「では、ひとまず解散!」
ハルトシュラーの澄んだ声が、闘技場に響く。
やがて十人は一言も発さぬまま、一人また一人と闘技場から去っていった。
◇ ◇ ◇
東京ドームを後にして数十分。徒歩での移動を続けていたハルトシュラーは、人気のない公園にたどり着いたところで足を止める。
「そろそろ出てきたらどうだ? いくらつけ回したところで、私は隙など見せないぞ?」
「気づいていたか。まあ、お前ほどの達人ならそれも当然か」
ハルトシュラーに促され、物陰からジャケットを羽織った青年が姿を現す。◆SaBUroである。
「尾行とは感心できない趣味だな。そんなに私と戦いたかったか?」
「ああ、そうだ。神とまで呼ばれる貴様を、ぜひとも倒してみたくてな」
「ずいぶんとおのれの実力に自信があるようだな」
「当然だ。何せ俺は、天の道を往き総てを司る男だからな」
笑みを浮かべながら、◆SaBUroは指で天を指し示す。
するとそれに呼応するかのように、どこからともなく赤いカブト虫型のメカが飛来する。
◆SaBUroはそれを手につかみ、腰に巻いたベルトに装着した。
「変身!」
『HENSHIN!』
◆SaBUro本人の声と電子音声が重なり、彼の体を銀の鎧が包んでいく。
そして顔面も、V字のアンテナと青い単眼が特徴的な仮面におおわれた。
仮面ライダーカブト・マスクドフォーム。それが今の◆SaBUroの姿の名称である。
「話としては聞いていたが……。貴様、仮面ライダーか」
「ああ、そうだ」
「ならば、目には目を、といこうか」
「なんだと?」
いぶかしげな声をあげる◆SaBUroの前で、ハルトシュラーは懐から何かを取り出す。
それは、不気味な意匠が施された音叉だった。
「日本には、人知れず悪しき物の怪を葬り去る『鬼』と呼ばれる者たちがいる。
私も五十年ほど前、彼らに修行を付けてもらったことがあるのだ」
口を動かしながら、ハルトシュラーは音叉を指で弾く。
そして振動する音叉を、自らの額に当てた。
振動は波紋となり、ハルトシュラーの体を伝っていく。
やがて、彼女の体は炎に包まれた。
だがその炎は、すぐに消え去る。
炎が消えた後に立っていたのは、小さな少女ではない。
全身が黒く染まった、一匹の鬼だった。
春
鬼
「これは面白い……。創作の修羅が、本物の修羅に化けたか」
異形と化したハルトシュラーを見ても、◆SaBUroに動揺はない。
むしろその言葉には、喜びすら混じっていた。
「では……。第一戦を始めようか」
投下終了
閣下の鬼化は創作→音楽→音撃戦士という発想
あと、体格は成人男性並みになってます
ディケイドのアスムくんも変身するとでかくなってたんで
5人のメンバーが予想外すぎるwww
よし子大変そうだなあとかほっしーもう負けたやんとか色々突っ込みたかったが、とりあえずハルト閣下が頼もしすぎてどうでもよくなった
さすが閣下だ、オーラがあるぜ
410 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 22:51:09 ID:6OsO8DVX
>>411 ちゃんと読め。書いてあるだろう?
「あなたが書く」と‥‥‥‥‥
そうでした…
さぁ‥‥投下するんだ。
今はちょっといっぱいいっぱいなのです
なぬ?
417 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 00:18:10 ID:KLqZqD4Z
仕方ない
時間が多く感じるように設定を変えてやろう
とうとう来たぁぁああ!
また来たぁぁぁあああ!!!
どこかで見たことあるような……有名な人?(2ちゃん的な意味で)
おお、イメージに合うなー。
何か、別にそこまで堅物ってわけでもないのに、
風紀委員長とかやってるせいで真面目キャラに
されてるような人って言うイメージなんだよね、発子さんってw
イメージの例えが余計わかりにくい気がするが、自分の中ではそんな感じだw
あ、まとめに載せてもいいでうか?
427 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 22:47:19 ID:kwAZk8ir
来たな光のまとめ人。
じゃあ行ってくるます
行ってきたよ!
imepitaだとすぐに消えちゃうから、勝手にwikiのページにアップロードしちゃったよ!
言ってくれれば光速で削除依頼してくるよ!
創発のアップローダー↓だと、imepitaみたいに画像が劣化しないし、消えることはまずないからおススメだよ!(チラ
http://loda.jp/mitemite/ オススメだよ!
431 :
線画駄目絵師:2010/02/25(木) 23:49:30 ID:5FZOEXhD
なん…だと…
歯磨きしている間に既に終わっている!
が
申し訳ないが、色塗ってる方は削除して下さいorz
大事なことなので2回オススメww
ありがとう。使わせて頂きます。
ところで、最凶死刑囚編はまとめないの?
このスレに投下されてるわけだから、キャラスレでいいんじゃない?
で、まとめページにルパンスレのページへのリンク貼っておくとか
435 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 12:29:46 ID:4HZ+qeQY
それだ。
順調に人も増えたし念願の絵師も来たし、ロボスレ打倒も近い。
‥‥‥あれ?ロボスレってついこないだ新スレ立ったばかりだったような‥‥‥
参加してみようかとオモタんだけど
SSって何を書いてもいつ提出してもいいのかい?
いろんな人が投下しまくってるようだけど
創発キャラさえ登場していれば、いつ何を投下してもO.Kさ
あ、でもエロは駄目よ
そして連投の暴挙に出ます。
今日雨だし…さ
441 :
一滴の雨:2010/02/26(金) 17:33:01 ID:HB+p5NjH
か細い雨音が耳を撫ぜた。
雨か……
眠りの淵に揺らぐ意識がゆるりと浮上してゆく。
何か快い夢を見ていた気がする。
脳裏に蘇る内容は朧だが胸に満たされた何かは、やるせないほど柔らかく、穏やかなものだった。
目を閉じたまま深く息を吸い、時間をかけて長く吐き出す。
そうしてしばらく雨粒の囁きに耳を傾けていると、その間に夢の残滓は霧散していった。
身を起こし寝乱れた髪に軽く手櫛を入れる。
すい、と難無く毛先まで指を通す長い黒髪は常ならば一つに纏め上げている。
背に流していては刀を振るい、敵を斬り伏せるのに邪魔なだけだ。
かといって男の如く断髪するのは躊躇われた。
闘いの年月と女子の未練が、流れる黒髪を形作った。
軽く手で束ねてから、いつものように枕頭に置いていた結わえ紐に手を伸ばす。
愛刀村正の横にあるそれを何気なく取ろうとした、刹那
束ねた髪がさらさらと手から零れて背に落ちた。
消えたはずの夢の通い路から懐かしい少女のこえがする。
あねうえ、あねうえ、私に結わえさせて
ほら、わたしのはまだこんなに短いんだもの
上手に結わえるから
ねぇ、あねうえ
「彼方……」
か細い雨音はいつしか篠突くものへと変わっていた。
村正の鞘の上に一滴だけ、雨が落ちた。
乙!
なんか桃花って渋いキャラになるなw
投下します
「…………?」
中学校での休み時間、トイレに向かっていた足がふらついた。
立ち眩みにしてはかなり強烈である。しかし身体も精神も至って健康であるという自覚はあ
った。最近までダイエットで断食を行ったりもしていたが、望んでない箇所ばかりボリューム
が減っていることに気付いたので、それも先日止めた。
平衡感覚を失いかけ、壁に手を置く。変調そのものより、その原因が気になった。
視線を周りに漂わせた。自分と同じ公立中学の制服を着た学生たちが、そこかしこを歩いて
いる。その中の一人を見て、彼方は眼球の動きを止める。
明らかに妙なモノを纏った男子がいた。
――あの人は。
顔は良く覚えている。去年同じクラスだった男子だ。『オワタ』だの『ワロス』などと日常的
にネットスラングを使っている、分厚い眼鏡を掛けたひょろ長い痩身。名前は何だったか。似
たような人種以外のクラスメイトは彼の存在をほぼ無視していたので、彼方の記憶からも消去
されてしまった。とにかくその男子の身体の周りには、黒い霧のようなものが渦巻いている。
それを目撃した途端、彼方の脳内で一つの仮説が構築された。
『寄生』?
自信が持てない。実物を見た経験が一度もないからだ。私があちこち出歩いて退治している、
と姉が自慢げに語っていたが……。とりあえず、自分の不調の原因があの男子――というかあ
の霧であるということは、彼方は直感で理解できた。
自分以外の誰にも、彼の放っている黒い霧は見えていないのだろう。皆、平然と男子の横を
通過していく。
しかし彼方にはできそうになかった。くるりとターンして、逃げるようにして教室に戻る。
結果次の数学の授業の間ずっと、彼女は尿意との戦いに専念する羽目になった。
その後何事もなく一戸建ての自宅に帰った彼方は、洗面台に手を置き、がっくりとうなだれ
ている姉と遭遇した。普段はパジャマなのに、今日は黒いセーターにベージュのスラックス姿
だ。外出したのだろう。
「ただいま」
「あぁ……彼方……お帰り…………」
ぎこちない動きで振り向いた姉、桃花の目には、仄暗い光が宿っていた。普段はどこかぼん
やりした目つきの彼女にしては珍しい。
「二日酔い?」
「そんなわけないでしょ……あんたじゃあるまいし……」
自分が隠れて飲酒していることを、この姉は勘づいているらしい。
「じゃあどうしてそんなブルーに」
「見てよ、これ」
身体をこちらに向けた桃花は、右手で肩に辺りまで切られた髪を触った。昨日までは、ポニ
ーテールをほどくと腰に届くほどの長さがあったのだが。
「あの美容院のチャラ男……私が寝てる間に、髪を……髪を……」
声のトーンが沈みきったところで、うふふ、と姉が気味の悪い笑顔を作った。
「二度と行ってやるもんですか……今日あの店は、大事なお客様を一人失ったのよ、いい気味」
「どういう風に頼んだの?」
「とりあえず動きやすい感じに、って。その後すぐ睡魔に襲われたわ。こっちで逐一指示を出
すつもりだったのに」
「自業自得でしょ……」
鏡に向き直った姉が、ヘアゴムを使ってポニーテールを作ろうとしたが、まるで長さが足り
ないので、単なる一本結びに近い。
二階の自室で着替えを済ませた後、しばらくベットの上に寝そべって携帯電話をいじる。今
年クラスの離れた友人から、またしてもメールが来ていた。鬱陶しい、などとは口が裂けても
言えないが、毎日変わった事件が起きるわけでもないので、結局いつか打ったことのあるよう
な返信メールになってしまうのが苦痛だった。生産性がない、無意味な反復行動をしている気
分になってくる。一応今日は珍しいものを見たが――と、そこで彼方はふと思い出した。
隣の姉の部屋に行ったが無人だったので、階下に足を運ぶ。
「姉さん」
「ん? 何?」
リビングのソファにどっかり座っていた桃花は、再放送のテレビドラマを見ながら、すぐそ
ばの木製テーブルの上に乗ったドーナツ屋の紙箱に手を伸ばしていた。高校に行かず定職にも
就いていない姉だが、金遣いは荒い。時折遠方に出掛けて悪霊払いまがいの胡散臭い仕事をし
ては、得体の知れない『組合』なるものから賃金を受け取っているらしい。
「食べていい?」
フローリングの床の上に直接腰を下ろしながら尋ねた。
「どーぞ」
ストロベリーソースのかかったのを一個貰う。小腹が空いていたので、彼方は自分が何をし
に来たのか一瞬忘れかけてしまった。
「そうそう姉さん。『寄生』って見た目どんな感じなの」
「どうしたのよ突然。いつもホラ話だって決めつけてる癖に」
「今日それっぽいのを見かけたの」
「どこで」
「某オタク男子の周りに」
「あらやだ。人間に憑いちゃってるの」
とても十代後半の女性とは思えないおばさん口調で、彼方の姉は言った。新しいドーナツを
齧りながら彼女は続ける。
「あんまり近づかない方がいいわよ。いつ暴れ出すか判ったもんじゃない」
「暴れ出す……? っていうか、ぱっと見はどうなのよ」
「モノによりけりね。いかにも正統派っぽい鬼とか天狗みたいなのもいれば、レスラーパンツ
被った変態男みたいなのもいたし――」
誰も見ていないところでパンツ男と取っ組み合いをしてたのか、この姉は。
「勿論、黒い霧みたいなのがいても不思議じゃない」
「じゃあ――」
「錯覚じゃなければ、あんたが見たのは寄生なんじゃないの? この私の妹なんだから、その
くらい見えたって罰は当たらないわよ」
彼方は気が重くなった。物心ついた時から母方の祖父に聞かされ続けていた存在が、突然身
近に現れるとは。
「暴れ出すってさっき言ってたけど、具体的には……」
「刃物を持って人ごみに突撃したり、駅のホームで電車が入ってくるのを見計らって、前に立
ってる人を線路に突き落としたり、たまに宿主の精神を喰らって直接現出してきたり」
最後のは謎だが――
「要するにストレス?」
「まあそういう解釈でもいいんじゃない。寄生の正体からして全く解明されてないから、その
辺はお好きなように」
「ふーん。でさ、私が見た男子は最終的にどうなるのよ?」
彼方の興味の焦点はそこだけだった。
「まあろくなことにはならないと思うけど。どうせ世間一般の基準で理想とされている青春か
らはかけ離れた学生生活送ってるんでしょ。そういう人を寄生も選んでるわけだし。自分の目
の前で彼がキレ出さないことを祈ってなさい」
「そんな無責任な。何とかしてよ姉さん。そんな危なっかしい人と同じ校舎の同じ階で授業を
受けるなんて耐えられない」
「えー」
桃花がいかにも不服そうな声を上げる。
「だったらその人を連れてきてよ。さすがに中学校まで出向いたりするのは面倒くさいから」
「連れてくるって、別にあの人と接点なんてないしなあ」
「手紙でも書いて呼び出せば」
「手紙って……」
今の時代、手紙で連絡を取り合う若者などいるのだろうか。何かしらの用件を伝えるにして
も愛の告白をするにしても、ほぼメールである。裏を返せば、アドレスも知らない相手とは基
本的にコミュニケーションなど取らない。それは何も自分に限った話ではないだろう、と彼方
は思う。しかしあんな奴がいつまでもうろついていたら、ゆっくりトイレにいくこともできない。
「……何を書けばいいのかしら」
「『重要なお話がありますので、今夜何時に、ほにゃららまでお越し下さい(はあと)』みたいな?」
実にふざけたアドバイスを、気のない調子で桃花が口にした。
翌日。
学校で例の男子の下駄箱を探り当て、無事に呼び出し状を投函した彼方は、最近買った白い
トレンチコートのポケットから携帯電話を取り出した。約束の六時まで、あと五分。
「ふう……」
来てほしいような、ほしくないような。なるべく人気のない場所で、と姉に言われたので、
考えた末に、学校近くにある寺の裏手の墓地を指定してしまった。雑木林に囲まれているので
人目につく恐れもほとんどない。そこかしこに立っている卒塔婆がひどく不気味だが、そこは
我慢することにした。無数にある墓石の裏に、姉は潜んでいるらしい。
メールをチェックしている最中、背中が粟立つような感覚を覚えて彼方は顔を上げた。
焦げ茶色のダウンベストを羽織った男が、こちらに向かってくる。黒い瘴気のようなものも、
彼の周りに充満している。
「……名前も知らない男に、何の話があるのかな。無限彼方さん」
しくじったと思った。名前は今日調べて知っている。ただ、手紙の封筒に名前を書き足すの
を失念していた。
「確か去年は同じクラスだったね? 変わった名前だから、良く憶えてる」
「あ、あの」
何を話せばいいのだろう。そうだ、それも姉に訊いておくべきだったのだ。今更そんなこと
に気付く自分に彼方は怒りを覚えた。
「最近、体調が優れないなんてことは……ありませんか」
「? いや、全然」
足を止め、薄笑いをしながら彼はかぶりを振った。そして言い足す。
「むしろ穏やかだよ。心身ともに」
嘘だろう、と指摘することはできなかった。彼の背後で蠢いていた黒い霧が、徐々に濃くな
っている。
「なら、いいんですけど」
「もしかして話って、それだけ?」
「え、ええ……」
ゆるゆると首を動かし、彼は墓地を見渡した。
「何かの罰ゲームなのかな、これは」
「いえ、そういうわけでは――」
「本当かな。まあ、どうでもいいけど」
そう言い終えた彼の左手に、黒い霧が収束していくのが見えた。
「やっぱり刀がいいな」
その独り言に、彼方は囁いた。
「刀……?」
「何か一つ武器を選ぶなら」
彼の左手に纏わりついていた霧が凝縮し、それは一振りの抜き身の刀に姿を変えていた。
「妖刀村正か」
左手の刀を地面と水平に構えて目の高さまで掲げた彼は、夕陽を受けて橙色に輝く刀身を満
足げに見つめた。そしてすたすたとこちらに向かって歩いてくる。
「君らが俺のことを蔑んでいたように、俺も君たちみたいなタイプの人種のことを、心底嫌っ
ていたよ」
膝が震えている。今すぐ背を向けて逃げなければならないというのに、身体は全く言うこと
を聞かなくなっていた。何をすればいいのだろう。弁解でもすれば、許してもらえるだろうか?
「私は――」
言葉を継ごうとした時、彼方は男の後ろで跳躍している姉の姿に気付いた。
振り向いた男と桃花の間で刃が交差し、火花と鋭い金属音が生まれる。
「♪」
楽しげに口笛を吹いたのは、黒いマフラーとロングコートに身を包んだ桃花である。それま
でコートの下にでも隠していたのか、彼女もまた、日本刀を手に提げていた。
男が刀を一閃し、姉を後退させる。
「初撃で手首を落とすつもりだったんだけど……中々活きがいいわね。お姉さん嬉しいわ」
その場で刀を軽く振った男が、舌打ちを漏らす。
「ったく……誰だか知らないけど空気読めよ。これから派手に暴れようと思ってたのに」
「それより私の遊び相手になってよ。あなただって、虫けらばかり苛めても面白くないでしょ」
「最近まで虫けらだった身としては、しばらく雑魚を狩って遊びたかったんだけどね――」
喉元目がけて放たれた突きを横に跳んで桃花が避けたが、男は間髪入れず追撃していく。
「しっかし奇遇ね。あなたも同じ村正なんて」
紙一重で通り過ぎていく銀色の軌跡を目で追いながら、桃花がさらに言う。
「これも何かの縁だから、どっちが業物か試してみましょうか」
先ほどよりも重い金属音が、連続で墓地に響いた。双方足を止め、高速の斬撃の応酬を繰り
広げている。
「くっ、はは!」
突然、男が哄笑を撒き散らした。彼の持つ村正の刀身が、みるみる黒く変色していくのが、
彼方の目に映った。そしてそれに呼応するように、彼方の姉が持つ剣の刀身も、深紅の輝き
を帯びていく。一瞬だけ、彼女のサディスティックな笑みが見えた。
男の大上段の構えから放たれた一撃と、地面近くから掬い上げるようにして繰り出された姉
の斬撃が衝突した瞬間、彼方の視界は赤と黒の閃光に埋め尽くされた。
思わず目をつぶる。
一瞬で通り過ぎた光の後に残っていたのは、村正を手に立ち尽くす姉と、その前で伏してい
る同級生だった。彼が持っていたはずの刀は、どこにも見当たらなかった。
「姉さん、その人……死んだの?」
「馬鹿言わないでよ。普通に生きてるわ。たまたまとはいえ、寄生が本体から離れて刀の形態
に姿を変えてくれたおかげで、殺さずに済んだ」
「そう、なの……」
それを聞いて、彼方は地面にへたりこんだ。それまで自分が立っていたことさえ忘れていた。
「その人、これからどうなるの」
コートの中から取り出した鞘に刀を納めながら、姉はつまらそうに答えた。
「別にどうも。自分が寄生されてた記憶は例外なく消えるから、彼にはこれまでと変わらない、
辛く苦しい毎日を送ってもらうだけよ」
桃花はどこか皮肉げにそう言った。
「でも……その人は運が良かったんだと思う」
彼方はそう信じたかった。でなければ、彼があまりにも救われない。
「まあ、どう考えるかはあんたの自由よ。――じゃあ、帰りましょうか。今日の晩御飯、何だ
ったかな……家を出る前に母さんに訊いたのに、忘れちゃった」
自分の記憶力を心配している姉の後ろを歩きながら、彼方は携帯電話で百十九番を掛け、匿
名で寺の墓地で男が倒れていることを告げるのだった。
おわり
投下乙
桃花は比較的真面目な性格付けが多かったが、こういう軽い感じの性格もいいものだ
あ、それとパンツかぶった寄生に吹いたw
451 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 14:40:33 ID:Gh9LreeD
452 :
◆wHsYL8cZCc :2010/02/27(土) 15:15:13 ID:UduQTt/b
アナザーキター!
とうとう描いちゃったりするの人キター
イヤッホォォォゥウ!!!
。
〉
○ノ
<ヽ |
i!i/, |i!ii ガタン
 ̄ ̄ ̄ ̄
ハルトシュラーと無限桃花のSSが出来そうなんだが
こことハルトシュラー専スレのどっちに投下すればいいのかワカラナス
閣下が好きなら専スレ
桃花が好きならココ
二人が貴方を見ています
どっちにしろ、投下しなかった方にもリンクをしておけばいいんじゃね?
とりあえずこっちかな
居間での朝食の最中、妹の彼方が藪から棒に尋ねてきた。濃紺の着物を纏っているので、今
日も学校に行くつもりはないのだろう。
「お姉さま。『ハルトシュラー』という名前をお聞きになったことはありますか?」
彼女の焼いた鮭の切り身を口に運びながら、ポニーテール頭の無限桃花は回答する。この時
間、両親はまだ寝ている。
「いや、ないが」
「最近私たちくらいの世代の間で流布している、怪談の一種です」
月に数えるほどしか登校しない割に、彼女はよくその手の話題を良く仕入れてくる。のべつ
まくなしに男子にコンタクトを求められているようだから、自然と詳しくなるのかもしれない。
桃花が箸を動かしている間に、彼女はその怪談について語り始める。
「生前は芸術家だったそうです。当初は性別すら不明だったそうですが、最近は女性と断定す
る方が増えています。小説・絵画・音楽・料理など、様々な分野で膨大な作品を遺したとされ
ている、二十年近く前の人物です。しかし作品数から見て不自然なほど、彼女は――便宜上女
性とさせていただきますね――自らの痕跡を遺さなかった」
それで終わりなら、ただの謎多き芸達者だ。しじみの入った味噌汁を啜りながら、彼女の話
の続きを待つ。
「二歳で亡くなったされる彼女ですが――」
そこで桃花は霧吹きの如く汁物を噴き出した。彼方が口元に手を当てる。
「まあ、お姉さまったら」
台所から布巾を持ってきた妹に制服を拭いてもらいながら、桃花は呻く。
「今のが話の落ちか?」
「とんでもありません」
一直線に切り揃えられた前髪を揺らしながら、彼方は心外そうに首を振る。
「いくら創作とはいえ、最低限のリアリティは必要だと思うが……」
「話は最後まで聞いて下さい。無数にある彼女の顔の中には、いかがわしいものもいくつかあ
りました。魔術士や、邪教信仰の異端者などがそうです。謎に包まれたハルトシュラーは、一
部の人々からは尋常ならざる力を操る魔王と呼ばれていました」
「だからわずか二年間の人生で、山のような創作物を世間に向けて発信できたと?」
話の荒唐無稽さに若干の苛立ちを覚え始めた桃花は、先回りして尋ねた。
「ええ。そればかりか、魔術によって転生を果たした彼女は、姿を変えて今の世を生き続けて
いるという、まことしやかな噂もあります」
それこそ一流人形師の創作物のように整った顔を桃花に近付けてきた。
「そしてここがこの怪談の肝なんですが――」
声を低めた彼女は、こう続けた。
「最近この町の近辺で、彼女が『ある物』を使っている人間を無差別に襲っているらしいんです」
馬鹿馬鹿しい。
と思いながらも、床の間に安置してある妖刀村正を竹刀袋に入れて高校に持って行ってしま
ったのは、妹がどうしても、と言って譲らなかったからだ。身体の弱い妹が心配性なのは昔か
らだったが――
例によって休み時間に、男子から妹宛ての紙切れを幾つか押し付けられながらも、その日の
授業を終えた。無意味なラブレターもどきの分だけ重量の増した鞄を持って、桃花は昇降口に
向かう。廊下でハルトシュラーの噂をしている女子グループとすれ違う。
「マジで怖いよねー」
「でもやられる方にも問題が――」
上履きから靴に履き替えながら、桃花は呟いた。
「ハルトシュラー……ねえ」
実際、何人も襲われた人間がいるという。これからも被害が増えるだろう、とも言われてい
る。しかし自分が狙われる可能性など、まるで考えられなかった。
正門を出る。自分と同じように、駅に向かう学生が大通りの歩道に大勢いた。十人近い男子
が、スポーツ用品店の駐車場脇に設置された自動販売機の前にいた。恐らく野球部だろう。全
員短髪で、スポーツバッグからバットが飛び出している者もいる。
「だからそんなもんいねーって!」
「やめとけよ、一緒にいる俺らまでとばっちり受けるだろ!」
楽しそうに揉み合っている。ここでもハルトシュラーか。むしろ今まで耳に入ってこなかっ
たのが不思議なくらいの流行ぶりだ。
「やってやるよ」
制服のズボンについていたチェーンを引っ張り、男子の一人が財布を取り出した。
「やめろって!」
制止を振り切り、男子が財布を開く。
バリバリ。
マジックテープを剥がすあの音が周囲に響く。たまたまその時、車通りも絶えていた。
いつの間にか、周囲の学生たちも注意深くその様子を見守っていた。誰もが知りたがってい
たのだろう。怪談の真偽を。
「――たわけが」
どこからともなく聞こえてきたのは女の声だ。それもかなり幼い。
「……ん?」
初め桃花は、幻聴かと思った。雲一つない空から、鈍い風切り音がしたのだ。
形容しがたい不安を覚え、空を仰ぎ見る。
一本の巨大な書道用筆が、自販機の前の男子に振ってくるところだった。
加速をつけて落下してきた筆は、男子の手の中にあったマジックテープ式の財布を串刺しに
して、アスファルトの上に深々と突き刺さった。
手の中の財布を失った男子が声を漏らす。奇跡的に、彼自身は無傷のようだった。
「うっ――」
そこかしこから悲鳴が上がり、学生たちが四方八方に逃げ惑う。逆鱗に触れた野球部員たち
などは、荷物さえ置き去りにしてその場から駆け出していた。
人気のなくなったのを見計らい、村正の入った竹刀袋を握り締めた桃花は、ゆっくりと巨大
な筆に近づいて行った。突如出現した凶器に貫かれた財布はほとんど原形を留めておらず、小
銭を何枚か飛び散らせていた。アスファルトの方にも、深いひび割れが走っている。
「まさか……」
実在するというのか?
マジックテープ式の財布を使う人間を無差別に襲う魔王、ハルトシュラーが?
早く逃げるべきだと、本能が告げた。相手は人ではない。そして強大な力を有しているは確
実だった。
――だとしても。
逃げるわけにはいかなかった。『寄生』と呼ばれる人に害を与える存在を狩り続けている桃花
にとって、人間に悪影響を超常的な存在は全て敵なのだ。見て見ぬふりをすることは、これま
での人生で培ってきた矜持が許さない。
唾を喉に流し込むと、桃花は鞄を置き、竹刀袋から村正を出した。
そして愛用のマジックテープ式の財布を開く。妹が今朝、早く買い替えるべきだと主張して
いたのを思い出す。
独特の音が発生するのと同時に、胸ポケットに素早く財布をしまった。財布だけ破壊されて
相手に逃げられては、彼女を呼ぶ意味がない
腰を落とし、油断なく周囲の気配を探っていると、先ほどの少女の声がまた聞こえた。
「――ほお。我に挑むか……面白い」
そして次の瞬間には、視界が暗転していた。
不意に襲ってきた浮遊感にうろたえながらも、桃花は足に力を込めた。硬い地面の感触を踏
みしめ、彼女はがらりと変わった風景を見回す。
「ここは……」
ダンスホール、とでも言えばいいのだろうか。高い天井からは巨大なシャンデリアが吊るさ
れていた。オレンジ色の照明に照らし出された光沢のある白っぽい床は、曇り一つなく磨き抜
かれている。壁際には小さな円形テーブルと一人掛けの高価そうなソファが並び、入口の扉の
すぐ横には、バーカウンターまで設けてあった。
広々としたその部屋の中央に、桃花は立っていた。
「ようこそ客人。我が屋敷に」
音もなく開かれた両開きの木製ドアの向こうから現れたのは、愛らしい顔立ちをした、小学
生くらいの見た目の少女だった。背中に流れる長い銀髪が、照明を受けて時折煌めいている。
青を基調とした、フリルつきのロングワンピースを着ていた。
「あなたが……ハルトシュラー、なの?」
「ああ。自ら名乗ったつもりはないのだがな。いつからともなくそう呼ばれている」
だとすれば、ここは『迷い家』ということになる。今朝の妹の情報を信じれば、の話だが。
頭だけを動かして、ハルトシュラーは室内の様子を観察している。そして桜色の小さな唇を
動かしながら、彼女は言葉を紡ぐ。
「この部屋は創ってみたものの、一度も使用したことがなくてな」
そこで少女が口元を歪める。
「こうして誰かを招くのは初めてなのだ。存分に舞ってくれ。――ダンスのパートナーは、こ
ちらで用意してやる」
彼女が指を鳴らすのと同時に床のあちこちが盛り上がり、白いマネキン人形のような物体が
生成された。全部で三体。それらは桃花の姿を認めるなり、突進を繰り出してくる。
無言で左手の村正を抜いた桃花は、同時に射程に入ってきた二体を一瞬で斬り伏せた。遅れ
てきた残り一体の胴を抜いて、再びハルトシュラーと向き合う。
「さすがに腕に覚えがあるようだな。即席の木偶人形では相手にならぬか」
「お前は何故こんなことをしている」
「教えてやる義理は――」
ドアの向こうに続く廊下から、ポットやケーキの乗ったトレイを持った髪の短い少女がひょ
こひょこと近づいてきていた。
「あ、いたいた! ばっちゃん、お茶とお菓子持ってきたよー」
背後からやってきたそのジャージ姿の少女に気付いた魔王が、がっくりと肩を落とす。
「美作……誰がそのような物を持ってこいと言った」
「だってさっきお客様が来るって言ってたじゃない。こういうおもてなしは最低限のマナーで
しょ」
「判ったから下がれ、邪魔をするな……」
「ちぇー。せっかく気を利かせたのにい。だから友達少ないんだよばっちゃんは」
頬を膨らませながら、少女が引き返していく。
「邪魔が入ったな」
気を取り直したように魔王が腕を組んだが。
「我が直々に相手を――」
「お師匠様!」
またしてもハルトシュラーの言葉は中断された。
「いい加減にして下さいよ!」
桃花とハルトシュラーの間に割って入ったのは男である。いかにも生真面目そうな雰囲気で、
ジーンズにトレーナーという、無難な格好をしていた。顔を見る限り、二十代には差し掛かっ
ていないと思われた。
「マジックテープ狩りなんて馬鹿なことをいつまでやってるんですか! 世間じゃ本当にちょ
っとした騒ぎになってるんですよ!」
「ええい黙れ倉刀! あのような不細工な留め具は、我の美的センスが許さんのだ!」
倉刀と呼ばれた男は、魔王の後ろに回ると、その小さな身体を抱きかかえた。
「いいからもうやめましょう。こんな場所に連れて来られて、あの人も困ってるじゃないです
か」
「どこを触っているのだ貴様は! 弟子の分際で師匠に逆らう気か!?」
「師匠の不始末だから弟子が処理してるんですよ……」
「ろくに技術も盗めぬ凡夫の分際で、この我の弟子を名乗るなど片腹痛いわ! 大体な、貴様
があのような不格好な財布を使っていなければ、我がマジックテープなどという醜い存在を知
ることも――」
魔王を無視して、男が桃花を見た。
「大変なご迷惑をおかけしてしまいました。申し訳ありません。すぐに元の世界にお返ししま
す。ご希望されるなら、記憶の消去もできますが――」
「え? あ、ああ」
自分に対して向けられている言葉だということに、桃花はしばらく気付けなかった。
「じゃあせっかくだから、頼もうかな」
「判りました。それでは――」
「言語分野に疎い貴様に、そんな芸当が出来るのか?」
拘束されていたハルトシュラーが、胡散臭そうに倉刀を見る。
「できますよ。『全て忘れて、お引き取り下さい』」
彼の放った言葉の後半が、不自然なまでに脳内で残響した。
そして視界が闇に閉ざされる。
「お帰りなさいませ、お姉さま」
玄関の戸を開けるなり、奥から彼方が出てきた。
「今日の帰り、珍しい物を見た」
数枚のメールアドレス入りの紙切れを鞄から取り出して彼女に渡しながら、桃花は言った。
「老朽化した電線が落ちてきて、男子生徒の財布を叩き落としたんだ。凄い威力があるんだな、
あれ。電線のぶつかった地面に、大きなひび割れが出来てた」
「怖い話ですね。……ところで、男子生徒の財布というのは、マジックテープ式でしたか?」
「そうらしいけど、ハルトシュラーじゃないよ。単なる事故だ」
「ならいいんですけど……お姉さまも、気をつけて下さいね。ハルトシュラーには」
「大丈夫だよ。常識的な弟子がいるみたいだから」
「え?」
妹が首をかしげたが、桃花自身もどうしてそんなことを口走ったのか判らなかった。
おわり
感想は俺にまかせろ!(バリバリバリ
ってか吹いたわ!www
細かい所でネタが効いてて面白かった。
確かに、普通の人は享年二歳は吹くわな。
それから、狩る対象がマジックテープ財布ってw
狩る前にせめてやめて!と言ってやってくれw
投下乙
マジックテープ狩りってw 何くだらないことやってるんですかハルトさんw
桃花と彼方は書く人によってキャラがガラリと変わるのが面白いなあ
あとえらそうなこと言って申し訳ないんだが、単語の途中で改行するのは読みにくいからそこは直した方がいいと思うんだぜ
僕倉刀だけど師匠がマジックテープ式財布にキレていた 死にたい。。
___
'´,,==ヽ
|´iノハルト〉
i l| ゚ー゚ノ| こんな物があるから人は狂うんだ!
バリバリC□〔倉刀
( (ノ爻 ( ) やめて!
`~じソと、 i
しーJ
彼方:「また人増えてキター!!!」
桃花:「‥‥私と違って妹属性あるからいいわね‥‥」
彼方:「ちょw」
桃花:「私は何者だ!」
彼方:「落ち着け姉さん!」
桃花:「イヤだイヤだ!私も何か属性を‥‥!」
彼方:「姉さんが取り乱すなんて珍しい‥‥」
婆盆:「いいじゃないですかどっちでも‥‥」
桃花、彼方「爆ぜよ天!バリバリバリ」
婆盆:「マジックテープ‥‥だと‥‥?グフッ‥」
なんかゴメン。そして乙。
ちょっと見ないうちに人増えやがって……
作品が多くなってくるとまとめ方も変えないといけないかな
471 :
無限桃花〜I am your sickness〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/01(月) 01:31:26 ID:Xjkgn+gz
彼方の絵も来たし作家も感想も増えたし、いい事だ。俺も頑張りたいと思うが脳が働かないw
という訳で投下。
しえん
473 :
無限桃花〜I am your sickness〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/01(月) 01:35:46 ID:Xjkgn+gz
「なんだって?もう一度頼む」
「だから今、防衛省から連絡来たんですよ!自衛隊の飛行機が墜落したって!撃墜されたんですよ先輩!」
「連中は飛行機も攻撃出来るのか‥‥?冗談だろ‥‥」
そのニュースは即座に三沢基地から防衛省、そして黒丸達へ伝えられた。
今は聞きたく無かったニュースだ。ほんの数時間前から、黒丸達が監視する寄生達は一斉に移動を開始したのだから。
「‥‥防衛省は何て?」
「表向きは事故にするって‥‥。飛行機一機消えたのは隠せませんから。あと、落とされたパイロットが宇曽利湖に山が出現したと‥‥最後に」
「宇曽利湖‥‥‥。恐山だな。寄生が集結している場所だ。」
「タイミング良すぎませんか、コレって‥‥」「ああ‥‥‥これは宣戦布告かもな。対決の準備が出来たのかもしれん」
「でもおかしいと思うんですけど‥‥」
「何故だ理子?」
「戦闘準備が出来たなら、なんで電撃作戦をとらないんだろうって‥‥。だから、この自衛隊機撃墜は多分‥‥‥」
「桃花さん、だろ?」
「ええ。影糾は多分、先に桃花さんと決着を付けたい。今まで刺客を送り続けていたけど失敗してた。だけど、もう軍隊を呼び出す準備が出来てしまった」
「影糾と婆盆が直接、桃花さんと戦う準備が出来た。だから呼び出したんだ。宇曽利湖で飛行機を撃墜して」
「そう考えると‥‥‥今まで現れた寄生は全部時間稼ぎなのかも知れませんね」
「そういう意図もあったろうな。あわよくば始末してしまおうという考えだろう」
「桃花さんはどちらに?」
「さぁ?お前探してこい。俺はちょいとやる事がある」
「今度は何する気ですか‥‥?」
「安心しろ。今までに比べりゃマシな事だ。」
「この馬鹿は‥‥‥‥。まぁいいや、桃花さん探して来ます」
「ああ、頼む」
474 :
無限桃花〜I am your sickness〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/01(月) 01:36:57 ID:Xjkgn+gz
風が吹く。もう二月も終わりだ。冷たい風は暖かくなり始めた。
思えばこの一ヶ月と少しは激動だった。
いつも通り寄生を狩り続け、ある日現れた黒丸という男。彼に告げられた寄生を滅ぼす力の秘密と、その秘密を奪った悪世巣という妖狐。
宝剣を持つ鬼と、そして現れた、かつて闇の天神と戦ったもう一人の天神。いや、天神と呼ぶのは正確では無いだろう。彼女はもともと、ただの人間に過ぎないのだから。
彼女は、影糾と千年戦い続けた。そして、決着をつけるべく影糾と共にこの世へ現れた。
桃花へ天神の宿命を託して。
「‥‥‥気付いてる?」
(もちろん。彼方もとうとう覚悟決めたみたいや。感じるわ。寄生達が集結しとる。全員いい霊を持つ人間ばかりや。これなら魔道から悪魔を呼び出すエサには十分やろうな)
「‥‥‥手遅れだったね」
(しゃあない。彼等は生贄から逃れられん。残念やけどな。腹はくくってるんやろ?彼方を‥‥‥斬る覚悟は出来てるんやろ?)
「‥‥‥うん」
(影糾は彼方が生まれた時からいろいろ吹き込んでるはずや。千年前の戦いも、自身の目的も、現代での敵がだれかも。ホントやったら彼方として成長するはずの魂は、もう半分は影糾や。転生を先読み出来たからええけど‥‥‥)
「私は‥‥‥影糾を止める為に生まれたんだよね?」
(‥‥‥そうや)
「彼方は‥‥‥千年前の怨みを晴らす為に‥‥‥」
(そうや。影糾は‥‥)
「違う」
(‥‥違う?)
「私にとっては‥‥‥彼方は彼方なの。絶対に変わらない。十年前に別れたっきりの‥‥たった一人の妹。多分、彼方もそう思ってる」
(感じるんか?)
「‥‥うん」
(そうか。影糾も、完全に影糾として育つ事は出来なかったんやろな‥‥‥)
「だから、私にとっては影糾とあなたの事も、どうでもいいの。ただ‥‥彼方に会いたい」
(‥‥‥すまんな。ホント言うと悩んでたんや。桃花ではなく、最初から私が表に出てしまえば良かったって。なら、桃花は居ないが、こんな苦労させる事も無かったん違うんか?って‥‥)
「それも嫌だな‥。それにルール違反なんでしょ?」
475 :
無限桃花〜I am your sickness〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/01(月) 01:37:49 ID:Xjkgn+gz
(いいやんか!アイツだって同じ事してるんや!止めないと日本が無くなってまう。日本だけやない。世界中のパワーバランスが崩れる。そしたら文明が崩壊してまうで)
「でも‥‥あなたは私として生きる事を選んだんでしょ?新たな人間として」
(そうやで。桃花はそれで良かったんか?)
「わかんない。でも‥‥これでいいんじゃない?これが宿命って奴なんでしょ?」
(‥‥腹くくってるんやったな)
「うん。ちゃんと解ってる。私は‥‥‥彼方を殺す為に生まれたって‥‥」
(すまんな。ホンマに‥‥‥。さてと、もう時間や。誰かこっち来てるっぽいわ。‥‥‥また理子かいな。せわしない女やで)
「確かにね。でもそれが理子さんのいいトコなの」
(現代のそーいうトコだけは今だに理解できんわ。私なんてモテてモテてしゃあない程で‥‥‥)
「ウソだよね?」
(あらら。ばれた。でも一途やったで。これはホント)
「それは知ってる」
(ははは。そうか。じゃあまた聞きたい事あったら呼びなさい。いつでも出てくるから)
「うん」
(‥‥昔の影糾の事、聞かなくてええんか?)
「うん。だって彼方は彼方だから」
(そうか。でもいずれは知る事にはなるで?)「彼方に会ったら、その時に聞くよ」
(なるほどな。じゃあまたな。理子が階段でくたばっとるで。迎えにいったって)
「ははは。屋上までエレベーターついてないもんね。じゃあ今行くよ」
(ほなまたな)
「うん」
桃花は目を開ける。青い空が見えた。
思わず見入ってしまうほどの空。果てなど存在しないのではないかと錯覚する。しばらく眺めていたいが、今頃、屋上へ続く階段の途中で理子がくじけてるだろう。
桃花は踵を帰し、非常口へと歩きだす。黒丸達がなぜ桃花を探しているのか理由は解っている。
戦う時が来たのだ。
476 :
無限桃花〜I am your sickness〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/01(月) 01:40:54 ID:Xjkgn+gz
投下終了
>>472 エスパーかお前w
ちょうどニヤリされて困ってたトコだw
支援極めて乙w
おうとぅおとぅ
少し見ないうちに桃花増殖しまくってるなあ
単発用にもう一つ階層作ろうかなと思うが、どうだろう
478 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/01(月) 01:45:35 ID:Xjkgn+gz
それでいいんじゃないか?
シリーズ別と単発と。
おk、そうしよう
じゃあ早速、おやすみ
481 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 21:17:50 ID:nKPjJ1F1
キターーーーー!!
予想を超えてごついw
ゴ、ゴリ参寄生…
鯖落ち騒動で寄生が根こそぎ吹っ飛んだ件
なんか最終奥義になりそうだなw
桃花「無限流、秘の書・終 【得腐悟憐堕】!」
URLを開き右クリック、名前を付けて画像を保存から創発フォルダに保存する
この間わずか2秒。何万回と練習した動きのため、淀みはない
そういや@うpろだって画像リンク貼れないんだったな
避難所のアレか!乙!
>>483 その昔「地球破壊爆弾」なる物騒な道具で地球上の鼠を根絶しようとした猫型ロボットがいてだな…
創発発のお三方!乙です!
491 :
484:2010/03/03(水) 15:03:14 ID:71Otj1vU
>>490 あ、是非。よろしいです。ありがとうございます。
マジックザギャザリングやったことないですけども
492 :
バースデー桃花 ◆KazZxBP5Rc :2010/03/03(水) 22:28:23 ID:sfJ0ZRKC
「昨日、さ、お前が彼方と二人でいるところを見たんだ」
「いや、別に怒っているわけじゃ……」
「え? 私の家に来たいって?」
※
彼方「お姉ちゃん、お誕生日おめでとう!」
「彼方!」
彼方「ほら、ケーキも用意してあるよ」
「じゃあ、昨日会ってたのは……」
彼方「プレゼントの相談に乗ってたんだ。あんまりいいアドバイスできなかったけどね」
彼方「ほら、さっさと渡しなさいよ」
「これは……あ、ありがとう。すまなかったな、疑ったりして」
「え? ここで? だが彼方も見て……
ちゅう
彼方「あーあ、見せつけてくれちゃって。私もいい人探さないとね」
3月3日は桃の節句! 第二部完!
(第三部はあるかも)
桃花の単発作品が多くなってきたので単発作品用ページ作って連載作品とセパレートした
作品タイトルが分からないものが多いので、作者さんはそれぞれ教えていただけると良くなる
494 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 23:32:48 ID:KjzkGNaF
名乗ったところで証明することは出来ない。
つまりえろい人がわかりやすいのをつけちゃえばいいんだよ!
∧_∧
( ゚ω゚ ) よーし、俺のネーミングセンスが光るぜ
C□l丶l丶
/ ( ) やめて!そんなもの欠片もないじゃないの
(ノ ̄と、 i
しーJ
というわけでタイトル募集します
あと絵師さんの許可もまってます
あとそろそろソハモンの答え教えれ
ID:FdmPpj67が「Who the Inside?(仮)」
ID:GIkEI2R6が「魔王の思いはかく在りき(仮)」
で、どうだ?
あくまで(仮)で。
498 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 00:10:48 ID:LCA7av9r
単発のところにある行き場なしスレの二作はオーバークロスの一作目と二作目だね
オルタナティブの方の「897.jpg」「859.jpg」「840.jpg」「837.jpg」に
関してはwikiでのご利用はご自由にどうぞ(後ろ三つはwiki行き済み)。
※今後も私のものに関しては同様にしていただいて結構です。
>>500 うぅ、また調子乗ってやらかしてしまった。ごめんなさい。
とにかく乙なんだぜ。続きもゆっくり待ってるんだぜ
>>499 ありがとうございます。
ありがとうございます
502 :
無限桃花〜Going for〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/04(木) 00:51:02 ID:vGUQ9wgy
>>500 うめぇwちゃんとファミチキ食ってるw
さて、投下。
さて、監視
504 :
無限桃花〜Going for〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/04(木) 00:52:33 ID:vGUQ9wgy
「飛行機が撃墜!?」
理子の最初の報告に桃花は驚愕する。
「そぉなんですよ!パイロットは炎の壁を見たって最後に‥‥。そんな事出来る寄生聞いた事ないですよ!」
「それで‥‥‥。場所は?」
黒丸と理子はモニターを開き、寄生監視ネットワークの状態を見せた。
寄生を表す赤い点は、青森県むつ市、恐山周辺へ集まっている。
「桃花さん。我々はすぐにでも移動したい。だがその前にRF4を撃墜した寄生の事が知りたいんです。そんな奴が居るのにおいそれとは近づけませんから。影糾の仕業ですか?」
「いいえ‥‥違うと思います‥‥。彼方は炎を操れない」
「ふむ‥‥‥。強力な炎使いはあの妖狐くらいしか居ないと。しかし、悪世巣は桃花さんに始末された。となると一体‥‥」
「悪世巣は生きてます」
「えっ‥‥。なんですって!?」
「殺せなかったんです。あの時は‥‥。悪世巣は天狐‥‥。強すぎたんです。斬りはしたけど、命までは奪えなかった‥‥」
「じゃあ撃墜は悪世巣が?」
「いいえ、殺せなかったけど、悪世巣の寄生は殺せたんです。もう彼方の配下じゃない」
「なるほど。つまり影糾の下にはまだ、悪世巣と同等かそれ以上の寄生が居ると」
「ええ。おそらく‥‥」
「弱ったな‥‥」
黒丸は眉間のシワを深くする。近づけないのでは意味がない。
「昌さん。多分‥‥多分なんですけど、私が行く分には大丈夫だと思います」
「‥‥‥なぜですか?」
「影糾は、いえ、彼方は私と会いたがってる」
「感じるんですね」
「ええ」
その後の黒丸の決断は早かった。すぐさま電話をとり、屋上のヘリポートに輸送ヘリを呼び付けた。
元より行くしかないと、黒丸も解っていたのだ。
「桃花さん。近くまで自衛隊のヘリで行けます。着陸はムリですから降下してもらうしかない。大丈夫ですか?」
「もちろん。地下深くまで落下しても平気でしたから」
「ははは。そうでしたね。余計な心配でした。では準備して下さい。すぐに迎えがきますよ。理子!屋上まで連れてってやれ!」
「またあの階段登るんですかぁ?まぁいいや。さ、準備してください桃花さん」
505 :
無限桃花〜Going for〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/04(木) 00:53:15 ID:vGUQ9wgy
彼方が呼んでいる。桃花はそう感じている。
桃花もまた、彼方へとメッセージを送っているのだ。もうすぐ会えるよ、と。
準備と言える準備は必要ない。
村正だけあれば事足りる。全て終わらせるのだ。
「さて、行きましょ理子さん」
「早っ!もういいんですか?」
「ええ」
「じゃあ‥‥。あのクソ長い階段をまたのぼりましょうか」
「はい!」
「なんでこの娘元気なの‥‥?」
屋上では既にヘリが待機していた。一見すると民間ヘリだが、パイロットは特命を受けた自衛隊員である。
桃花はヘリの固いシートに腰を降ろし、パイロットの指示に従いシートベルトを装着した。あとは飛び立つだけだ。
「桃花さん、あの馬鹿みたいにあんまり無茶しないで下さいよ」
「誰が馬鹿だって?」
「ぎゃあ!先輩!」
「昌さん。どうしたんですか?」
「どうしたも何も、私も行きますよ。桃花さん一人になんでも押し付ける訳にはいかない」
「ちょっと先輩。まさか‥‥‥」
「安心しろって。有休貯まってるからしばらく空けても大丈夫さ」
「そういう意味じゃない!」
「だから大丈夫だ。新しい武器も手に入ったばかりだ。ヤバそうなら逃げるさ。そこまで馬鹿じゃない」
「どうだか‥‥‥。まったくこの男は!解りました。私も有休取る!私も行く!」
「そう言うと思ってお前の分のMP5も用意してたぞ」
「‥‥え?」
「俺の部下だ。無茶するのは解ってる。お前も十分馬鹿だよ」
「‥‥‥アンタにゃ負けるよ」
桃花達を乗せたヘリはローターの回転を増し、ゆっくりと浮上した。
向かう先は恐山のふもと、宇曽利湖へ現れた天神の細道。
506 :
無限桃花〜Going for〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/04(木) 00:54:32 ID:vGUQ9wgy
桃花達が発った頃、宇曽利湖では彼方が闇の軍隊を呼び出す為の儀式を続けていた。
集められた寄生達は次々と宇曽利湖へ入り、その体と霊を彼方へと捧げる。数千もの寄生は全て、取り付いた人間を生贄へ捧げる為に集まったのだ。
彼方は天神の細道の頂点で小躍りしながら、桃花の到着を待つ。
もうすぐここへ来るだろう。儀式はそれまでには終わる。
あとは桃花と決着を付け、そして侵攻を開始するのだ。
「クスクスクス‥‥。姉さん。もうすぐだね。何年ぶりかな?早く会いたいよ、姉さん。クスクスクス‥‥」
507 :
無限桃花〜Going for〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/04(木) 00:56:17 ID:vGUQ9wgy
投下終了。ホントは前回のと合わせて一話の予定だったが都合により別けた。
まぁいいか。
おつおつ
それにしても22話とは、エターなラーな俺としては是非とも見習いたいものだ
>>497 あなたが書いたのか
……と思ったが違うようだ。
じゃあそれでいいですかね?
相変わらず速いなベロシティオブレイよw
むしろ間延びしているのが困りモノだ。時間ありゃもう少しすっきり出来そうなんだが‥‥‥
件のタイトルだがあくまで俺が勝手に付けただけなんで仮です。扱いはお任せします。
絵師の許可、というのは?
>>491 ありがとうございます!
早速作ってきます。
>>499 あなたの絵もお借りしたかったのですが……
もしよろしければ、お許しをいただけるとありがたいです。
>>511 なんと神々しい発k…クリーシェ!
こちらも使用させていただいてよろしいでしょうか?
----
皆様へ
以降に投稿される創発絵についての募集は
>>490のまとめスレ内で行います。
興味のある方は是非。
書いちゃったりする人の絵かっこいいな。
なんとかツボを刺激するの投下してSSP書いてもわらねばw
影糾寄生は、自らの存在理由について考える。
当初は人間たちの秩序を守るために生まれた存在だったはずだ。少なくとも建前は。
いつからだろうか、やがて人間どもに煙たがられるようになり、今では寄生種全体を
狩ろうとする武装集団まで現れる始末だ。まったく、と少女の姿を取った影糾寄生は嘆息する。
身勝手な連中である。自由だ権利だなどと騒ぎ立てていれば、いずれ道理も引っ込められると
信じているのだろう。
「行くわよ、猿参」
傍らに付き従えた大猿に囁きかけながら、影糾は目の前の高層ホテルのロビーに足を進める
のだった。
南向きの壁が一面ガラス張りとなったベッドルーム。
その中にいた隆々たる筋肉を纏った野性的な顔立ちの白人男性は、シャツとマスクだけを
着用していた。
「ふふ〜ん、ふ〜ん」
スーパーストロングパンツマシーン――通称SSPは、その日も客室にて自らの性器の
撮影に励んでいた。プロレス興行でやってきたこの東洋の島国では、外人のモノは一部の
連中に「バットのようだ」と崇めてもらえるのだ。最初は遊び半分での投稿だったが、
最近では仕事終わりの息抜きとして定着しつつある。目の前のテーブルの上に乗った
ノートパソコンも、既に起動状態だ。
ドアの向こうで、玄関の開閉された音が聞こえた気がしたが、すぐに気のせいだろうと
結論づける。オートロックのスイートで、しかも廊下には監視カメラの目が光っている。
このところプライベートを犠牲にするような撮影が多いのが悩みの種だったので、
セキュリティ面を重視して宿泊先を決めてもらったのだ。
デジタルカメラに平常時の一物を撮影する。あとは画像をノートパソコンに取り込み、
某巨大掲示板のそれらしい場所に張り付けるだけだ。SSPは、パソコンの向こうに座る
不特定多数の閲覧者のリアクションを夢想する。まず彼らは、この白蛇のような物体に目
を見張るだろう。そして次に送りつけるのは、エロ動画で牙を剥き戦闘態勢となった息子
だ。恐るべき力を内包したその姿は、祖国発祥で自分も一時期どっぷりハマったRPG、
『ウィザードリィ』に登場する最強の刀、ムラマサのように神々しく――
ドアノブが回った。
あり得ない、とSSPは呻き声を上げていた。まさかマネージャーの野郎が、どこかの
バラエティ番組に鍵を貸与したのか? あいつは過去にも一度、コールガールに扮した
テレビ局の人間にSSPの練習メニューを漏らすという大失態を演じていた。
「やばい」
デジタルカメラ片手に、下半身真っ裸という出で立ちである。顔が映るのを恐れて、
仕事でも世話になっているトレードマークの黒マスクを被っていたが、気休めにも
ならなかった。こんな場面を目撃されれば本国のゴシップ紙は自分の記事で埋め尽くされて
しまうだろう。変態野郎、異常性欲者、犯罪者予備軍などの文字と共に――
しかし開かれたドアから入ってきたのは、人ではなかった。
金に近い茶色の体毛に覆われた、巨大な獣である。ゴリラに近いが、目には凶暴な赤い
光を宿している。まるでパニック映画のモンスターだ。SSPは冷静になる。嫌らしい
カメラクルーはまだ部屋に入ってきていない。急いでズボンを穿きさえすれば、
どうとでも取り繕えるはずだ。
調教師役だろうか、簡素な黒いドレスと革のブーツを穿いた東洋系の少女が、ドアの
出入り口付近で成り行きを見守っていた。獣と同じく、ルビーのような深紅の瞳を
持っていた。
SSPは少女に話しかける。
「ドッキリの撮影かい? 悪いが今俺は――」
忙しい、と言う声は獣の絶叫に近い咆哮にかき消される。そして丸太のような腕が
高々と上がり、堅く握られた拳がSSPの顔面へと打ち込まれる!
「ハッ!」
しかしSSPの反応は素早かった。不敵に笑うと同時、横に身体を投げ出し、怪物の
攻撃を鮮やかに避ける。リングの上で攻撃から逃げるのはマナー違反だが、プライベートを
侵害する無粋者に容赦はしない。
獣の腕が、テーブルの上のノートパソコンを木端微塵に粉砕していた。愛用の品からコード
やチップが飛び散るの見て、SSPの胸に本格的な怒りの炎が宿る。
「……弁償はしてもらうぜ」
シャツの下から力瘤を出現させ、力比べの体勢に入る。怪物にも意図が通じたのか、
指を開けて鈍重な動きで接近してくる。
そしてお互いの手をホールドするのと同時に、SSP握力を爆発させる!
「グォォォオォ!!」
数秒の均衡の末、情けない声を上げたのは怪物の方だった。しかしマスクの下のSSPの目にも、
余裕の色はない。
「ヘイ、どこの誰だか知らないが、うちのジムに来ないか? ここまで俺を本気にさせた
野郎は初めてだ。ルールさえ覚えれば、すぐにトップに――」
と、背筋に冷たい物が走る。
「――な!?」
身体が地面から浮いている。こいつの腕力なら人間一人くらい軽々持ち上げられるだろうが――
「力比べはもう終わりで、ここから先は本気のバトルかい」
しかし怪物が見つめているのはSSPではなく、窓の外だった。
広がっているのは大都市、東京の夜景――
「てめえまさか!」
これはバラエティなどではない――
SSPがそれを確信したのは、鋼のような自分の身体が硝子を突き破り、夜空に
放り出されたまさにその時であった。
男は英語で何かを口走りながら夜闇に消えていった。
「終わったわね」
影糾寄生はいつの間にか冷や汗をかいていた。人間とは比較にならない筋力を
有している猿参が、明らかに押されていたためだ。あの露出狂は、どのような
鍛錬を積んできたのだろうか。
とはいえ――
十四階から地面へ落下して、無事な人間もいまい。
排気ガスの匂いを含んだ夜風を受けながら、影糾寄生は窓辺に立つ。
と、その時。
uooooooooo――
風に混じって届いてきたのは、外人の野太い声。
死に怯える人間が、あのような雄叫びは上げない。数多くの違反者を罰してきた
影糾には、それが判る。
続いてやってきたのは、巨大な水音と、微かな震動。
「……まさか」
影糾は首を突き出し、遥か遠くの地面を見た。
眼下にあったのはライトアップされた夜のプール。そして巨大な波紋の中心に、
重大違反者が二本の足でしっかりと立っていた。
「□○×△☆○!」
あまり役に立たない翻訳機能を今回は付けてこなかったため、外人の発する言葉は
まるで理解できなかった。しかしこちらに怒りの目を向けるあの男が無事だという
事実は揺らがない。
「ありえない……」
ロビーからスーツ姿の男と、数人のホテルマンが飛び出してくるのが見えた。
衆目の目に止まるのだけは、何としても避けなければならなかった。潮時である。
――もしも次にあの男が違反行為を行えば、今度は自分が相手をしなければなるまい。
「今日はもう帰りましょう、猿参」
その呟きと共に、猿参と影糾の姿は闇に溶けた。
「何をやってるんですか、SSPさん!」
役に立たないマネージャーが、やけに素早くホテル中央玄関から飛び出してきた。
そういえば今夜は、ロビーで日本のプロレス雑誌編集者と打ち合わせがあるとか言っていた。
「一体どこから飛び込んだんですか!? あとさっきの罵声は一体何ですか!?
って、ここはヌーディストビーチじゃないんですよ! そんなモノを揺らしながら
外に出るなんて――」
「うるせえ、さっさとポリスを呼ばねえか! どうなってんだこのホテルの警備は!
ゴリラ使いの女が、突然俺の部屋に入って襲って来やがったぞ!」
「そんな無茶苦茶な! またあのVIP局の悪質ドッキリ番組じゃ――」
「タレントを転落死させる企画なんてあるか、馬鹿野郎!」
水を掻き分けながら、SSPはプールサイドに上がる。
「今すぐ俺の部屋に人を差し向けろ。それではっきりするはずだ。出入り口の封鎖も頼む。
マネージャー、お前は大至急アキハバラに行って、ノートパソコンを調達してきてくれ。
ついでに日本製の3Dエロゲー、ロリ属性だ」
「日本のアダルトなんてどれもロリ属性みたいなもんでしょうが……」
「黙りな。素人には判らんだろうがピンキリあんだよ。その前に部屋替えの手続きも
やっておけ。ダブルベッドのあるタイプだ……あの嬢ちゃん、このままじゃすまさねえ。
今夜は俺のムラマサをぶち込んで、ヒイヒイ言わせてやるぜ!」
「試合前の罵倒合戦のノリでそんなこと言うのは止めてくださいよ。ホテルマンだって
いるんですよ……」
「ふん、どうせ判りゃしねえよ。あの女、大猿の躾が済んだら徹夜で調教してやる!」
数日後室内の修繕費を払わされることになるとも知らずに、意気揚々とホテル内部に
戻るSSPなのだった。
おわり
HENTAI! SSP! HENTAI! SSP!
なんという変態っぷりwww
SSP強ぇぇぇえええwwwwww
>>521 よし、これで勝つる!
前の影糾寄生と猿参寄生についてはどうでしょう
わたしは一向に構わんッッ
ならば喜んで貼らせて頂くッッッ
なんだこのジョジョ空間w
>>525 ジョジョ空間。そう思っていた時期が(ry
僕は読んでもらうために作品を書いている!
読んでもらう…ただそれだけのために…
過程や…方法なぞ…どうでもよいのだーーーーッ!
あんてな「モプ少女が久々に予告来てるよ!」
アンテナ「モップ少女?」
久々のあんてなたんだ
久々にハルトシュラーズ投下します
時は交流戦真っ只中。ハルトシュラーズは今日より、仙台ファルコンズとの三連戦を迎える。
試合前のミーティング。監督のほっしーは見るからに不機嫌だった。
原因は、誰もがわかっている。この前の三連戦で、ハルトシュラーズは三連敗を喫していたのだ。
しかも、その内容がよくない。
第一戦は、1失点完投のキョンを打線が援護できず、0−1。
_, ―‐、__
_ . : ´: : : : : : : : : : : : :`ー、
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|:.:! i:.:.:l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:. : : : : :i: :ハl (まあ、そんなときもある……)
レ'ヽ !:.:.:!:.ト、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.:i:.:.. : : :i: : W }'
iゝ':.:.:.ヾ、 \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l:l:.:.:.:. : /: :/
W:.ヽ:.:.:.ヽ:.:.:\:.i:.:.:.:.:.:.ll:.:.:.:./: :/
!ハi:.:.ハ:.:.:.:.:.:`!:.:.:.:.:.:.l:.:/ : /
!∧ Y:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:X
ーNヽハ人从X从ハ!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ
/___ ___ヽ
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第二戦は逆に打線が爆発するものの、中継ぎ投手陣が大炎上で逆転を許し、6−9。
,. -- 、 _
,.イ=冖¬ 、.`>.、 _
/‐.:.".:^:ヽ、 .* `ヽ、 > 、._
r':/.:.: -.:.:.:.:.:.::`:ヽ \ \
/:/ .::イ.:.:.:.: .:.:.:.:.::::/.:\.*ヽ `ヽ.
イ/;//.:/.:.:イ:/:::::.:.:ヽ. ヽ
!l {/.ィ_.:/.::/.:,./.:.:.::::::::.:.:ヘ ヘ
{ i、l:l'y戈.,ィ'.;. イ.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.: .i ※}
{ | ::|弋ソレ'ヽ、_i_;;.:.:.:人.:.:.:| i
/,i .::|."", i(('ー,、レ.:.:.:.:.:.:j ./_, .-┬''"´
/x リ .:::ヘ. ゞイ .V.:.:.:.:./*r".:::::::.:.i
/ ./ ;ィ" ヽ'ヽ "" ,.イ' /.:.:/ !.:.::::::::l.:.! 「たまたま調子が悪かっただけですぅ」
/ ※ ,イ;/ _,r''_.|` "フ'':::´:::.:.イ.:.:./ {.:.:ヘ:::::::リ
,イ .,..イ,/(ミヽ.'./^7,イ.:/::.:.:/.:.:..:/* j.:ヽ.:ヽ.:/
,イ※ /:::,r;ニ三=,イ,「"/.:/::::::,:.'.:.: / }ヽ.::\/
/ /.:::::r"( `フ"´ / ,/.:/::: イ:.:.:.:r' ※ ./`Z,,:::,i
r' ※ ,イ:i::::「(´ /ィ! ヽイ' /::;i:::/.:.:.:,イ. /`ヽ、i,/
そして第三戦は、投打共にまったくいいところがなく0−10で完敗。
これでは監督が怒るのも無理はない。
「まったく、何をやってんねんおまえら! そんなんでお客様から入場料取って、申し訳ないと思わんのか!」
ほっしーの怒声は、止むことなく続く。
それを真摯に受け止める者も、反発を抱く者も、表情が冴えないという点では同じだ。
だがその中で一人だけ、笑みを浮かべている選手がいた。
元メジャーリーガーにしてハルトシュラーズの一番バッターを務める男・ルパン三世である。
「やっぱりこういうときには……ベテランの俺たちが頑張るべきなんだろうねえ」
ふと漏れたルパンのつぶやきは、ほっしーの大声にかき消され誰の耳にも届くことはなかった。
◇ ◇ ◇
午後6時。Kスタジアム宮城にて、定刻通りに試合開始。
一回表、マウンドに立つのは誰もが認めるファルコンズの大エース・岩クマー。
対するバッターはルパンだ。
「そんじゃまあ、今日もお仕事といきましょうかねえ」
いつもどおりの軽口を叩きながら、ルパンは打席に入る。
一番バッターは、よく「突撃隊長」などと称される。
「突撃」という言葉からは、深く考えず勢いだけで突っ込む、といったイメージを連想する者も多いだろう。
だが、一番バッターとはそんな単純なものではない。
相手の先発ピッチャーと真っ先に対決するのが、一番バッターだ。
ピッチャーの今日の調子、投球の組み立て、そういったものを後続のバッターのために可能な限り引き出すのが、一番バッターの最初の仕事だ。
ルパンは、それを重視する男であった。
第一打席の一球目から打ちにいくようなことはしない。
ツーストライクまでは、バットを振らない。そして追い込まれたあとは、可能な限りボールをカットして球数を投げさせる。
それが、彼の流儀だ。
「ストライク! バッターアウト!」
審判のコールと同時に、球場が割れんばかりの大歓声に包まれる。
本日のルパンの第一打席は、8球粘っての三振であった。
「どうです? 今日のあちらさんの調子は」
ベンチへ戻る途中のルパンに、次の打者である串子が声をかける。
それに対し、ルパンはあくまで軽い態度を崩さずに答える。
「いやー、たぶん絶好調じゃないの? ありゃ、打つのに苦労するよ」
「そうですか……」
ルパンの答えに、串子は表情を曇らせる。
そこに、再びルパンの明るい声がかけられた。
「そう悲観するもんじゃないよ、串子ちゃ〜ん。たしかに苦労はするだろうけど、絶対に打てないってわけじゃない。
相手も俺たちと同じ人間なんだから、なんとかなるって。それじゃ、頑張ってね〜」
最後まで明るい態度を崩さずに、ルパンは立ち去る。
「同じ人間……か。まあ、言われてみればそうですよね。例え球界を代表する投手の一人といっても……」
微笑を浮かべつつ、串子は視線をマウンドに向ける。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
__|F_____|
/ ● ● |
| ( _●_) ミ
彡、__ |∪|_、`\
/___/__ ヽノ /´> ̄) ←岩クマー投手
(___) /21 / (_/
├──-´--/
| /\ ヽ
|_ / )_)
∪ ( \
\_)
「人……間……?」
まあ、うちのチームにも人間っぽくないのいっぱいいるし。
そう思い直す串子であった。
テレテレッテッテー
ウラト「久し振りだな、諸君。ウラトシュラーだ」
裏刀「裏刀作です。今回もウラトシュラースポーツの時間がやってまいりました」
ウラト「今回紹介するのはこの二人だ!」
》く;;;;;;;;;;;;;;@<
(⌒ ソ ⌒) アジョ中
ゝE⌒' ノ 右投左打
( ̄■ ̄) 背番号:77
/ ■ ヽ ポジション:遊撃手
/ / ■ヽ | GGG学園→ハルトシュラーズ
L_ら ■ L_ら
__i.\_/!_
ゝ, "´⌒`ヽ よし子
ノ.ノノノハノ〉〉 右投右打
ルリ! ゚ ヮ゚ノ! 背番号:44
k_(つ'i(つ ポジション:一塁手
,く// i ゝ GGG学園→ハルトシュラーズ
`!,ンィン"´
※代理AA:氷の妖精さん
ウラト「創発板の古参キャラである二人だな」
裏刀「アジョ中さんは今は亡きGGGの雑談の中で生まれたキャラですね。
ちなみに名前の由来は、『アジョット』と『田中先生(とある少女漫画の登場キャラ)』を連想させる外見だから、です」
ウラト「よし子の方は……実は作者は、彼女の出身スレがどこだか知らないのだ。
創発板の創生期からいるキャラだというのは知っているのだが……。情報求む」裏刀「キャラとしては、ツッコミスキルの異様に高い小学生という設定ですね。
はさみさんのブログでも活躍しておられます」
ウラト「では、この作品内における二人の設定に移ろう」
裏刀「二人は高卒ルーキー・内野手・下位打線と、桃花さんと共通点の多いキャラです。
そのため、彼女とは仲がいいようですね。特によし子さんは、寮や遠征先のホテルでも桃花さんと相部屋だそうです」
ウラト「選手としての能力は、アジョ中は打撃力がそこそこあって足も速い。
一方のよし子は、女性らしからぬ長打力を秘めている。
この辺は本編で触れるかどうかわからんが、一種の特異体質という設定だ」
裏刀「桃花さんとは打順が近いということもあって試合でもよく描写される二人ですが、まだ特筆するほどの活躍はありませんね」
ウラト「まあ、これからに期待だな」
裏刀「おっと、そろそろ時間か。それでは皆様、また次回お会いしましょう!」
投下終了
だいぶ間隔が開いてしまって申し訳ない
そして投下してから改行ミスに気づく
乙。
岩クマー吹いたw
若い子多いし監督は今一つ頼りにならないこのチームの中でルパンすっげー頼りになるな
アニキだぜルパン
目の前の木製ドアを二回ノックすると、鈴のように透き通った女の声が中から返ってきた。
「入って」
「失礼します」
言いながら、裏刀作は扉を開ける。殺風景な部屋である。窓はない。部屋の中央、裏刀の正面には
巨大なテーブルがあり、三つのPCモニターとキーボードが置かれていた。黒革張りの椅子に掛け、
こちらに背を向けているその女性の後頭部だけが、裏刀には辛うじて見えた。緑に近い美しい青髪を、
巨大な髪留めで二つに結い上げ、地面近くにまで垂らしている。
恐らく彼女が世界の守護者、『使い古された』女神だろう。
「発子・クリーシェさんですね」
『発子』と口にした途端、女神の背中が一度震えた。自分の名前が気に入ってないという噂は、
どうやら本当らしい。
大げさかとも思ったが、裏刀は片膝をつき、仰々しく一礼した。
「お初にお目にかかります。僕が裏刀作です。以後、お見知りおきを」
「そこまで畏まらなくてもいいのよ」
くるりと椅子を回転させ、女神がこちらを向く。まあ美人ではあるなと、初めて女神の姿を
視界に収めた裏刀は素直に認めた。彼女と覇権を争っている魔王ハルトシュラーは、十歳前後
の少女らしいが、現在裏刀を値踏みするように観察している女神は、十五、六歳程度の年齢に
見えた。女神という通り名に相応しい、ゆったりとした光沢のある白いトーガを着用している。
恐らく素材は絹だろう。
「そう言っていただけると、有り難いです」
裏刀が立ち上がると、さっそく女神が尋ねてくる。
「裏刀。あなたの主は今、何をしているの?」
顔も知らない師、通称裏ハルトについての質問が飛んでくるとは思わなかった。
「さあ。一度も面識がないので詳しいことは判りませんけど、今日も料理に異物を混ぜて喜んだり、
発泡酒を呷っているのではないかと」
「……前から気になっていたのだけれど、あなたと裏ハルトとの関係は何なの? 面識もないのに、
あなたたちは何故師弟の関係になったの?」
それは自分が知りたいことだった。裏刀作という個体は、世界に生まれ落ちた瞬間から裏ハルトシュラーなる
人物の弟子だったのだから。裏刀は、この身体も人格も裏ハルトが創作したものに過ぎないのではないかと疑っている。
それも恐らく、粗悪な偽物だ。ハルトシュラーの弟子に、倉刀とかいう名前の男がいるのはかなり前から知っている。
「俺は……多分、ただの出来損ないですよ。遊び半分に師匠が創った、パチモノでしょう」
それを聞くと、まるで自分が傷ついたかのように哀しげな表情を女神は作った。
「そんな悲観的な言葉は聞きたくなかったのだけど……」
言わせたのはそっちだろうが、という言葉は辛うじて飲み込む。
「とりあえず……あなたには今、何の制約もないのね」
「ええまあ。元々糸の切れた凧みたいな身ですから」
「……私があなたを呼び寄せたのは、あるキャラクターを消し去って欲しいからなの」
キャラクターというからには、創作物の一種だろうと見当をつける。
「これを見て」
女神が背後のディスプレイに向き合ったので、裏刀も彼女の椅子のすぐ後ろまで歩き、
問題の画面に視線をやる。
「珍しく盛り上がってますね。いいことじゃないですか」
日頃過疎という敵と戦っている女神にとっては、喜ばしい話だろう。
しかし彼女は、膝の上に置いた手をきつく握りながら否定する。
「……よくないわ」
「どこが」
「だって……今、脚光を浴びている彼女は……魔王の創作物なのよ」
「それはまた」
軽口を咎めるように目尻を釣り上げ、女神は裏刀を睨む。
「世界が活気に満ちてくれるのは、素晴らしいことよ。私だって、頭ではそれを理解している。
誰の創作物であっても、それが繁栄をもたらすなら後押しするのが私の役目」
そこで一度言葉を区切ると、女神は俯いてしまう。
そして、消え入りそうな声で彼女は続けた。
「でも……やっぱり魔王の作品が世界を席巻することだけは、私には耐えられない」
責務と私情の板挟みになっている、ということか。
どうでもいいといえば、どうでもいいのだが。
「……真面目すぎるから、そんな下らないことで悩むんですよ」
裏刀は無意識的に、女神の頭をぽんぽんと手で叩いていた。
「思いつきや暴走も、立派な創作活動の一環ですよ。顔も知らない師匠の受け売りですけどね」
「それじゃあ――」
「引き受けますよ。その仕事。他人の創作物に茶々を入れるのは結構好きですし、さっさと
片付けてきますよ」
期待と不安の入り混じった顔をしている女神にそう言い残し、裏刀は発子・クリーシェの
私室を後にした。
下校時間が訪れるのとほぼ同時に正門をくぐったところで、背後から名前を呼ばれる。
「無限桃花さんだね」
足を止め、無限桃花は振り返った。高校名の記された門柱に背中を預けて立っていたのは、
桃花の通う学校より一回り偏差値の高い私立校のブレザーを羽織った、中性的な容姿の
男子学生である。
「え……あ」
桃花が言葉に詰まってしまったのは、その男子が文句のつけようのない美少年だったから――ではなく、
どぎつい銀髪に染め上げられた彼の頭を見て、「うわあ……」という引き気味の声を
上げてしまうのをこらえるためだった。勉強はできるのだろうが、校則違反上等な思想の
持ち主なのだろう。
魅力的な微笑を浮かべていた男子が、自信なさげな表情になる。
「あれ、もしかして人違いだった?」
目の前まで歩み寄ってきた銀髪の美少年は、中身の少なそうな革鞄から取り出した携帯電話の
ディスプレイと桃花の顔を見比べながら、独り言を漏らす。
「でもポニーテールで刀身の黒い日本刀を持ち歩いている女の子だろ。そんなに沢山いるとは
思えないんだけどな」
それを聞いて桃花は戦慄した。確かに日本刀・村正は、肩に掛けた巨大なスポーツバッグの
一番下に隠している。しかし、たった今顔を合わせただけの人間がそれに気付くなどおかしい。
ましてや刀身の特殊な色まで当てられては、警戒しないわけにはいかなかった。
「私が……無限桃花だけど」
さりげなくスポーツバッグの口を開けながら、桃花は答えた。正門から吐き出された学生たちは、
自分と少年を避けて次々と下校していく。こんな場所で村正を使うのは気が進まないが、眼前の男は
間違いなく普通の人間ではない。最悪抜刀することも視野に入れなければならなかった。
「ああ、何だ。君で合ってたのか」
安心したようにそう言うと、男は涼しげな目元を緩める。しかし桃花は、硬い声音での
応対を続けた。
「何か私に用が?」
「うん、ちょっと君に興味があるんだ」
臆面もなく美少年が宣言した。
「今、時間はあるかな? どこかに腰を落ち着けて、話がしてみたいんだけど」
「もしかして……ナンパってやつ?」
「まあ……そう受け取ってくれてもいいよ」
少年は苦笑しながら尋ねてきた。
「で、お付き合いしていただけるのかな?」
しばし逡巡したが、結局桃花は了承した。もしも彼が『寄生』なら、いずれは倒さねば
ならない相手なのだ。先延ばしにする理由など何もなかった。それに、この男の素性も気になる。
「構わないけど」
「そっか、ありがと」
その返答を素直に喜んだ彼は、桃花と並んで歩き出す直前になってようやく自らの名前を
明かした。
「あー、自己紹介してなかったか。俺は裏刀作。よろしくね」
その後桃花と美少年は、高校から程近い国道沿いにある、全国チェーンのイタリアン
レストランに入った。
案内された窓際の席に着いてすぐに、裏刀は詫びる。
「悪いね。本当ならもうちょっと洒落た店に連れて行ってあげるべきなんだろうけど、
俺も給料少なくて。支払いはこっちでするから、好きな物頼んでね」
「何かアルバイトでもしてるの?」
メニュー表と顔を突き合わせていた裏刀は、うーん、と形の良い細い眉を寄せて唸った。
それを見た桃花は、案外感情表現の激しい人なんだな、などと呑気なことを思う。既に緊張感が
緩みかけていた。
「たまにね。しょうもない雑用をこなす短期バイトばっかりだけど。――注文、決まった?」
桃花が無言で頷くと、裏刀はテーブルの隅に置いてあったブザーに手を伸ばす。注文を
取りに来た店員が奥に引っ込むのを見送ってから、彼は再び口を開く。
「ねえ無限さん。『寄生』って何なの?」
言葉の後半はそれまでとは別人のように低く、抑揚のない声になっていた。
「……人々に極めて重い害悪をもたらす、怪物だけど。正体は未だに判然としないけど、
それを倒すのが私の仕事だと、生まれた時から決められていたらしい」
桃花の横に置かれたバッグに視線を向けながら、裏刀は言う。
「そこに入ってる刀で、悪い奴らを斬るわけだ」
「そう」
「具体的にどういうのがいるの?」
「色々、としか。巨大な猿を模した姿の『猿参』や、刀を生み出して人を斬る『練刀』なんかが
いる。実際に遭遇したことはないけど、最も強力だと恐れられているのは攻撃と同時に相手の
行動を長時間完全に封じる『影糾』だな。見た目は幼い女の子の姿を取っているそうだけど、
出くわして生存した人間はほぼ皆無だとか」
「幼い女の子ねえ」
そこで裏刀が頬杖を突いた。多くの車が行き交う窓の外の国道に目を向けながら、彼は
皮肉っぽく笑う。
「どこに行っても理不尽に強いな、幼女ってのは」
「……それは何の話?」
「ん? ああ、独り言だよ。気にしないで」
丁度桃花の注文したアイスコーヒーと、裏刀のドリアとスープスパが運ばれてきたので、
そこで会話が途切れる。
「それだけで良かったの。このドリアあげようか?」
スープスパに銀色のフォークを突き立てながら、裏刀が訊いてくる。目の前に湯気を
立てている料理が置かれていると、さすがに食欲が湧いてきてしまうが――
「いや、いい」
ガムシロップを投入しつつ桃花は遠慮した。
「あまり食べると――」
「いざという時、身体が重くなる?」
「……ああ」
「なるほどね」
退屈させないためだろう、口の中が空になるたびに、裏刀は桃花に話しかけてきた。
「うちのバイト先のボスは、創作活動をしてるんだ」
創作と聞いて桃花が真っ先に思い浮かべたのは、なぜか陶芸だった。目の前の少年も、
良い土を探して野山を駆け回ったりするのかもしれない。
「はあ」
「それだけなら特に問題ないんだけど、その大将には一人、滅茶苦茶仲の悪い創作屋が
いるんだよ」
彼はうんざりしたように溜息をついた。恐らく彼自身はそれを、非生産的ないがみ合いだと
感じているらしい。それには相槌を打たずに、桃花はアイスコーヒーに口をつける。
「でさ、最近その仲の悪い創作屋が、一山当てちゃったらしいんだ」
「一山当てる……というのは、その分野の評論家たちが絶賛するような作品を生み出した、と
いうこと?」
「まあ、大衆の支持は得てるね。今やその世界のアイドルになりつつある」
「へえ」
凄まじい造形美を誇る茶器などを想像する。
「それに腹を立てたボスが、そのライバルの創った作品……厳密に言えばそのキャラクターを、
消し去ってしまえって騒ぎ始めちゃったんだよ。それで俺が使いに出された」
「キャラクター……?」
ここまでくると、その『作品』とやらについて質問しないわけにはいかなかった。
「実際には何を創ったんだ? そのライバルは」
「ちなみにボスと仲の悪いその創作屋の名前はハルトシュラーね。――厳密に言えば、『創った』
という表現は正しくないかもしれない。ハルトシュラーは、創作欲求を持った人々が大勢飛びつく
ような設定の人物と世界観を、その業界に提供しただけなんだ」
かなりの速さで料理を平らげた裏刀は、紙ナプキンで口を拭きながら続ける。
「でもそれがボスには面白くないらしい。まあ気持ちは判らなくもないけどね。彼女を題材に
した絵や小説が次々出てきて、ちょっとしたフィーバー状態だから」
「具体的に、それはどういう人物?」
「えーとね」
携帯電話を持つと、彼は読み上げた。
「『黒い刀を持った女の子。年齢は十八歳くらい。ポニーテール。日々、寄生と呼ばれる存在と
戦ってる』」
携帯を閉じてポケットにしまうと、彼は笑った。ひどく朗らかに。同時に桃花も、相手の狙い
を理解した。動機は不明だが要するに――
「たったこれだけなんだけど、誰のことを指してるのかは――」
最後まで喋らせなかった。バッグの中から一気に引き抜いた村正が、テーブルを真っ二つにしながら
裏刀の首筋に吸い込まれていく。手加減するつもりなど既にない。
しかし放たれた漆黒の刃を、少年が皿の上から取り上げたちっぽけな食器一つで、難なく
受け止ていた。
「…………馬鹿な」
崩れ落ちるテーブルと共に皿やグラスが床にぶつかり、耳障りな音を立てていた。
少年が持っているのは、先ほどまでスパゲティを食べるのに使っていた、銀のフォーク、
ただ一本である。桃花は両手を村正の柄に添えたが、全力で押してもそのフォークは微動だに
しない。この現象を目の当たりにして真っ先に頭に思い浮かんだのは練刀寄生種だが、仮に
食器を異能で強化しているにしても、使い手である少年の腕力そのものが尋常ではない。
「さすがに喋りすぎたかな」
平然と刀を受け止めている裏刀は、涼しげな様子で呟く。
「でも丁度いいか。最近運動不足だったし、たまには身体、動かさないとな――」
ぬっと伸びてきた裏刀の手に、頭を鷲掴みにされる。そのまま軽々と宙に持ち上げられ、
桃花の身体は窓硝子に叩きつけられていた。
透明な壁を突き破る衝撃の中で、そこかしこから上がった悲鳴が耳に飛び込んでくる。
粉々に砕けた硝子片と共に、桃花は表の歩道に放り出されたが、空中で体勢を立て直し、
辛うじて足から着地した。レストランの店内では、客や店員が大口を開けている。
「あれ、逃げないのか。鬼ごっこをするつもりで外に出してあげたのに」
のんびり窓枠を踏み越えて店の外に出てきた裏刀に躊躇いなく接近し、桃花は攻撃を
仕掛けていく。少なくとも武器の射程だけなら間違いなく有利なはずだった。間合いにさえ
注意を払えば、致命傷は避けられる。そう踏んだ。
しかしその思考は、銀髪の少年に一瞬で見透かされる。
「……勝機がなくもない、って顔してるけどさ。地力が自分より上の相手に出会ったら迷わず背中を
見せないと、長生きできないよ?」
銀のフォークで易々と攻撃を弾きながら、裏刀が呆れた様子で声を出した。同時に懐に入られる。
想像より数段速い動きだ。
スピードまで規格外か――
ほぼ勘だけで身体を横にずらし、桃花は眼球に迫っていた三又の矛先を紙一重でやり過ごす。
が、続けて襲ってくる回し蹴りまでは避けようがなかった。
「くっ――!」
景色が高速で真横に流れていく。
ぎりぎり刀の背で受け止めたはずなのに、衝撃はまるで殺すことができなかった。為す術なく、
宙に蹴り飛ばされる。受け身さえ取ることができずに、桃花の身体は路面を二度ほどバウンド
してからようやく動きを止めた。
「っ……」
口の中を切ったらしく、血の味がした。刀越しに蹴りを受けた右手は痺れ、握力が完全に
失われている。これほどの威力で刃物に蹴り込んできたにも関わらず、裏刀の脚部の方は全く
無傷らしかった。まあこちらも斬れない部分で食らってしまったのだから無理もないな、と
桃花は胸中で吐き捨てる。
散歩でもしているかのような悠然とした足取りで、裏刀は桃花に接近してくる。
「扱いがなっちゃいないね。刀の背で打撃なんて受けてたら、どんな名刀もそのうち壊れるよ」
判断能力というよりは、純然たる身体能力の不足が招いた結果だが、訂正を入れる気には
なれなかった。相手の馬鹿力を利用して手足での攻撃を村正で防御し、逆に傷を負わせてやる
算段だったのに、裏刀の動きが余りのも鋭すぎて、刃を合わせる余裕すらなかった。
ここまでの力を有した相手と対峙するのは、初めての体験だった。筋力だけならともかく、
俊敏性でも大きく水を開けられているというのは、絶望的な事態である。逃走という選択肢に
さえ、希望が持てない。
自分の遠巻きにしている通行人の中に、携帯電話で写真撮影を始めている者がいるのが
腹立たしい。咳込みながらも刀を杖にしてどうにか起き上がったが、その動作をする中で、
体力も気力もたった一撃で根こそぎ奪われていることを否応なく実感してしまう。
――ここで自分は殺されるのか。
素性も知れぬ男の手によって。
生物にとって最大のストレスを桃花が生まれて初めて味わっているその時、裏刀の携帯が
呑気なメロディーを奏でた。それに気付いた裏刀が、戦闘中にも関わらずすぐさま呼び出しに
応じたのは、勝利を確信しているからだろうと、桃花は自虐的な気分で予想する。
「もしもし? あー、はい。今まさに戦ってる最中ですけど。何ですか?」
生存を諦めかけていた思考を、桃花は無理矢理に切り替える。
あの男に勝つしかない。できなければ死ぬ。
心臓の鼓動と血管の脈打つ音が、徐々に大きくなっていくような感覚にかられながら、桃花
は村正を利き手ではない左に持ち替え、裏刀に突進していった。
「は? 海の向こうからのサイバー攻撃? 知りませんよそんなの。そりゃアンテナ女とかの
分野でしょう。俺の守備範囲じゃないのにそんな連絡寄こされても――おっと、さっきより
動きが良くなってるね」
既に桃花は、思考することを止めていた。渾身の力を込めて狙ったのは、裏刀本人ではなく
武器の方だ。会話に集中していた彼の手から、まずフォークを弾き飛ばす。
「――いや、戦争って……そんな大げさに表現しなくても。そりゃ板自体の危機だって
いうのは判りますけど――」
無意識的に裏刀の上半身へ村正の攻撃を集めていく。
「休戦協定? ハルトシュラーとですか? 大人な判断でしょうって……自信満々にそんなこと
言われても困りますよ。こっちはもう大暴れしちゃってるんですから。――ああ、この世界への
干渉も全部なかったことにするんですか。はいはい……了解しました。それじゃあ、すぐ
そっちに戻ります。――ったく、小間使いも楽じゃないな」
すかさず体勢を低くして放った足払いによって体勢を崩した裏刀が、電話を終えて毒づく。
「騒がせて悪かったね、無限さん。でも、もうすぐボスが全部リセットするらしいから。
ご心配なく」
桃花は裂帛の気合と共に、最後の一太刀を放つ。これが通らなければ確実に殺されるという
圧倒的な危機感が、それまでの彼女の生涯で最速の斬撃を生みだしていた。
「これでえええ!」
「じゃ、これからも寄生退治頑張ってね」
平然と別れを告げるその男の肉に刃が食い込んだ瞬間――
裏刀作の身体が、白い光の粒子へと瞬時に分解されていた。
「!?」
刀の勢いに振り回され、身体がぐらつかせる。
桃花は狼狽しながらも即座に周囲へと視線を走らせた。が、銀髪の少年の姿は、既にどこにもない。
無責任な野次馬たちが、自分を中心とした輪を作っているだけだ。
ギャラリーたちの好奇の目に晒されながら、敵を見失った桃花は膝を折った。もう安全だと
判断したからではなく、体力の限界が来たからという、情けない理由で。
緊張の糸が切れた途端、体中が痛みと脱力感に覆われていく。
「……勝て、た?」
そうではないことは、自分自身が一番良く判っている。力の抜けた左手から滑り落ちていく
村正には、微かに赤い血が付着していた。
最良のさらに上を行くコンディションだったということは、うっすらとだが自覚している。
にも関わらず、裏刀に与えることができたのは、かすり傷一つに過ぎない。
彼女は意識せず、自嘲の笑みを浮かべていた。
それなりの強さを持っていると、今まで自負してきたが――
「上には上が……いるもんだな……」
歩道に転がる村正を見つめて吐息をついた桃花は、自らの身体も地面の上に横たえたのだった。
おわり
投下乙
こんな大物感漂う裏刀は初めてだw
SSPといい裏刀といいなんでこんな強いんだw
乙w
548 :
484:2010/03/06(土) 14:38:06 ID:NwSSowGi
>>520 これ俺にも言ってくれてるのなら、全然許可、です。OKです。大丈夫です。
創発キャラなのに戦闘能力高えw
サイバー攻撃に救われたんだな桃花
>>538 メタメタな裏刀が桃花をメタメタにするんですね
ところで
>>514と同じ人?続き物として考えていい?
>>548 わっほい!
でもどのページに入れようか迷うぜ
551 :
SSPの朝は早い ◆wHsYL8cZCc :2010/03/06(土) 20:15:44 ID:nBuQMQYq
流れぶった斬って悪いが投下
552 :
SSPの朝は早い ◆wHsYL8cZCc :2010/03/06(土) 20:17:12 ID:nBuQMQYq
「ダウンロードも楽じゃねぇな。日本語勉強しようかな」
ニールは朝からパソコンと格闘している。
以前、日本へタイトル防衛戦へ出向いた際にたまたまテレビで見かけた日本のアイドルグループにすっかりハマってしまい、それ以来彼女らの曲をダウンロードしまくっていた。
普段からヘヴィメタルを愛聴していた彼にとって、日本独特のアイドルグループ達は非常に新鮮な物に感じるようだ。
「ほぇ〜。こりゃマーティも日本に移り住む訳だな。日本じゃオタクとか言われて蔑まれるらしいけど。結構曲は造り込まれてるんだけどなぁ?」
彼がそう感じるのは日本語がわからないからである。多分。
「あなたいつまでパソコン弄ってるの?早く朝食食べて。片付かないでしょ?」
ニールの妻、クレアがダイニングから呼びかける。
「今行くよ〜。‥‥あ!プロテイン溶かしとて!ダイマタイズのイチゴ味とオプチのチョコミントを一対一で‥‥」
「自分で混ぜなさい!」
朝から怒られるニール。
120kgもの体重があり、かつスタミナを要求される職業であるニールの食欲は朝であろうと衰えない。
いつも卵7個の特大オムレツにサラダ、トースト4枚を平らげ、プロテインを50g摂取する。
最近は様々なメーカー同士をブレンドするのが気に入っているようだ。
彼の一人息子であるダニエルも彼に輪をかけた大食漢である。
「あなた、朝から何見てた訳?変なの見てないわよね?」
「日本のアーティストグループだ。SOUHATSU M@STER?だっけ?最近気に入ってるんだ」
「ふ〜ん‥‥‥。あなた変わったわね。昔はギター・サウンド以外興味無かったのに。まぁ今も聴いてるけど」
ニールとクレアはイギリス時代、ジューダスプリーストのコンサート会場で出会った。
すぐに結婚し、同時にダニエルをもうけ、ニールがメキシコへ行っている間はクレアの両親が手助けしてくれたのだ。
ふたりの詳しい馴れ初めはまた別の機会に‥‥
553 :
SSPの朝は早い ◆wHsYL8cZCc :2010/03/06(土) 20:18:58 ID:nBuQMQYq
「さて、メシ食ったしランニングしてそのままドージョーに顔出してくるよ。知り合いのボクサーを呼んであるんだ」
「ボクサー?あなたボクシングなんてやるの?」
「まぁ‥‥ヨシダの事もあるしな‥‥‥。総合上がりの奴と張り合うにゃ打撃もやんねぇと‥‥」
「この前やっつけられたものね」
「‥‥言うなよ」
以前現れたHDPマシーンことヨシダとの対戦で、ニールは完敗を喫していた。
根本的な格闘スキルの差で敗れたのだ。寝技ではニールに分があったが、ヨシダの打撃力に太刀打ち出来ず、キックによるダウン、そしてフォールと、屈辱的な負け方だった。
「さて、行くか」
ニールはダウンロードしたばかりの曲をiPodで再生し外に出ようとした。
「あなた待って!」
クレアが呼び止める。
「どうしたそんな慌てて?」
「ねぇあなた、ちょっとこっちに来て‥‥?」
「あ‥‥。ああ」
ズシッ‥‥
「このゴミついでに出して来て」
「‥‥‥‥」
「何残念そうな顔してんのよ。ほら」
「‥‥!」
クレアは沈んだ顔のニールに抱き着きキスをした。
クレアにとってはどんな敗戦をしても世間で変態マスクと言われようと、ニールは大事な夫なのだ。
「‥‥クレア?」
「なぁにあなた?」
「シワ増えたな」
「バチーン!」
おーっと!強烈な平手打ち!SSP耐えるがこれは入ったか!?効いている様子だぁ!
「い‥‥行ってきます」
「早く行け!」
アンディ・デリス似の甘い顔の頬は真っ赤に晴れ上がる。
ゴミを集積所に出し、ニールは走りだした。その目は既に抜けた夫ニールでは無い。
史上最強のマスクマン、スーパーストロングパンツマシーンのそれへと変わっている。
「ヨシダ‥‥。待っていろ‥‥!」
あの屈辱を晴らすため、ニールは走りつづけた。
554 :
SSPの朝は早い ◆wHsYL8cZCc :2010/03/06(土) 20:19:45 ID:nBuQMQYq
投下終了。
続き……だよな?
おつです
タイトル付けてもらえるとまとめやすくて助かる
うん。続き。
まとめ乙。そしてやはり速いw
もう作品数が増えてきたから独自wiki持ってもいいんじゃないかって思えてきたww
はやまるなw
学校を造りませんか?のキャラ。
仁科学重量挙げ部一年。
しかも投下したの俺w
うん。売名行為なんだ。すまない。(´・ω・ `)
学校を造りませんか?は行ったことなかった。
二口妖怪にしてゴメンw
1レス投下
563 :
一つの可能性としての桃花〜be after:2010/03/06(土) 22:00:19 ID:5A7Gf0la
無限桃花は本日、ご機嫌斜めでいらっしゃった。
「だーかーらー、ばあむくうへんがたべたいの!」
いつものように桃花の妹、無限彼方が諌める。
「姉さん、昨日半ホールも食べたじゃないですか。もうありませんよ」
姉の異常なまでのバームクーヘン好きに、彼方は呆れていた。
少し前までの姉は、こうではなかった。
昔の桃花は凛々しく、雄々しく、村正一本で数多くの寄生を屠っていた。無限一族の誇れる剣士であった。
しかしある日の戦いで一瞬の隙、その幾刹那かの隙を、路歩崩寄生という名の寄生に突かれてしまった。
「ばあむくうへんをだせいー!」
それ以来桃花はこうなってしまった。
幼児退行。精神は子供のそれになり、背が縮み戦闘服の袖はブカブカ、だが何故か力はそのままのため、かんしゃくを起こして村正を振り回されると、危なくて仕方がない。
今もバームクーヘンを求められた彼方は、死の一歩手前にいた。
「ちょ、姉さんそれ危ないから、やめ……」
「うー。ば、あ、む、く、う、へ、んー!」
しかし彼方も無限一族だということを忘れてはならない。
「いい加減にぃー、しなさーい!」
彼方が叫ぶと黄金の輝きが現れた。それは拳骨を形作ると、桃花めがけて振り下ろされる!
ドグォゥ
震度約3の衝撃。流石の桃花もこれはひとたまりもない。
「……きゅ〜」
伸びた桃花を見て流石に彼方の心も痛む。
「わ、分かりましたよ。明日は買ってきてあげますから……」
「ホント!?」
ガバリ!
すざまじい勢いで桃花が跳ね起きる。
彼方はまた甘やかしてしまったことに後悔しつつも、その頬は緩んでいるのであった。
貧乳低身長来たwww
打倒ロボスレ!
絵許可
>>7 >>3,190,500 は不可。中途半端だから。
貧乳低身長というか幼児w
ロリしか書けねえんだちきちょうめ
>>565 ありがとうございます
唯一のあんてな絵、あなたでしたか……
「……むぅ」
桃花は唸っていた。鏡の前で下着姿になり、そこに写る自分の姿を見て――唸っていた。
「……小さい」
鏡の中の彼女の姿は、端的に言って――小さかった。
まず、背丈が小さい。幼い頃からの修練の繰り返しにより、膂力は同年代の女性平均を
遥かに超え、男のそれすらも飛び越えているレベルにある。しなやかな筋肉が全身を覆い、
美しいとすら言えるレベルに作りこまれたその身体は、だがしかし、小さかった。
幼き頃より修練を繰り返し、筋肉で全身を覆ったその反動か、彼女の背は同年代の女性
平均をかなり下回っていた。その癖、体重については同身長の平均を上回っている。これは
もちろん筋肉の重さ故になのだが、それでもその点が気になるのは、やはり彼女も歳頃の
女の子という事なのだろう。
そして、もう一つ、彼女が頭を悩ますものがあった。
言うまでもないだろうが、一応述べておくと――胸の大きさ、だ。
彼女の慎ましやかな胸は、ワゴンセールで売っていそうな簡素なスポーツブラに包まれて
いた。問題なのは、ブラの値段や質ではない。それが包んでいる彼女の二つの、本来ならば、
通常の女性が持つサイズであるならば、丘と例えられるはずの場所が、ほとんど平野でしか
ないという事だった。
もちろん、背丈から考えれば、その程度であっても特に問題は無い。バランスとしては
取れているとも言える。だが、それとこれとは話が別――これもまた、彼女が年相応の女の子
であるという、その証明であった。
「……むむぅ」
少し頑張ってポーズをとってみる桃花。だが、平野は平野でしかない。突然谷ができるわけも
なく、彼女は落胆のため息を漏らした。
「どうすれば……いいんだ……」
彼女の中では、二つの感覚がせめぎあっていた。歳頃の女の子としての感覚は、今のまま
では駄目だと告げていた。今のまま、ちんちくりんなままでは、女としての幸せを知らないまま、
寂しく独りで生きていく事になる、と。
もう一つの感覚は、それを否定していた。女としての幸せが何だ。お前は無限の姓を持つ
者として、寄生との戦いの中にこそ幸(さち)を見出す、そういう運命にあるのだ、と。それは、
桃花の中にある、戦士としての感覚だった。
「……むむむぅ」
彼女は、迷っていた。
そもそも、彼女は幼少の頃より戦う為の事ばかりを教えられて育ってきた。女としての感覚
など、ほとんど知らないと言っても過言ではない程に、ただひたすらに戦う為に、寄生という名の
宿敵を討ち滅ぼし、無限の姓に宿る連鎖を断ち切る為に。
だが、成長し、寄生に狙われている人々を助ける為に、初めて学校なる場所に通うようになり、
そこで彼女は知ってしまった。自分が歳頃の女の子だったという、今まであえて目を背けてきた、
背けさせられてきた事実を。
そうして、彼女の中に迷いが生じた。
今のままでいいのか。
このまま、戦うばかりの人生でいいのか。
「……村正」
名を呼べば、彼女の手に飛び込んでくる、黒塗りの妖刀。
村正。持つ者を狂気に導き、破滅させるという妖刀を手にし、しかし彼女は狂う事は無い。
むしろ、それを手にする事で、彼女は自らの思考が明晰になっていくように感じる。感じて、いた。
だが、今は――
「……」
――それは、重いだけだった。それに込められた想いそのままに。
父の仇。無限の一族が宿願。自らの、使命。
寄生を狩らなければいけない。その事に、疑問は無い。だが……その為に、自分は自分を
犠牲にしていいのか?
「……彼方」
知らず、桃花は行方の知れぬ妹の名を呟いていた。
彼女ならば、今の自分にどのような言葉をかけてくれるだろうか。
『お姉ちゃんは難しく考えすぎなんだよぉ』
きっと、笑ってそう言うだろう。
『戦いも女の子も、どっちも頑張ればいいじゃん!』
きっと、脳天気にそう言うだろう。
だが――
「そう、だな……そうだった、な」
――それで、いいのかもしれない。
どちらかしかできないなんて、そんな事は無いはずだ。そうと決めつけてさえしまわなければ、
どちらもできるようになる事は……できるはずだ。できないと、そう決めつけてしまわなければ。
「……私は、頑張るよ、彼方」
それは、ただ寄生と戦うだけよりも、ただ女としての幸せを追求するよりも、ずっとずっと難しい、
艱難辛苦が待ち受ける道なのかもしれない。いや、きっとそうだ。
だが、それでも……それでも、その道を歩く価値は、ある。そう、桃花は思った。
「だって……私は、無限の姓を、その連鎖から解き放つのだから」
解き放ったその先に、何も無い孤独しかないのでは、それは勝ったとは言えない。
その先に、人並みの幸せを得る事で、初めて彼女は寄生に勝利し、無限の姓を連鎖から
解き放つ事に成功したと言える――それが、彼女の考えだった。
「よし……!」
決心した彼女は村正を振りかぶった。
「っぁ!」
呼気と共に、空を切る。
これまでの自分を切る。
これからの自分を戒める鎖を、切る。
そして桃花は、再び自らの身体を、鏡に写るそれを、見た。
「……まずは、バストアップ体操からだな!」
こうして、ちんまい桃花の果てしない困難が待ち受ける旅は始まったのだった――
続かないよ?
ここまで投下です。
ちっちゃい頃から鍛えてたら、上にも横にも伸びないと聞いて。
ソースはガンダムW(ぉ
乙w
だが残念だったな。俺は高身長派だったのだw
‥‥‥もしや数年後に伸びた‥‥‥?
573 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 00:25:04 ID:xpHmpzao
ちっこいのに悩んでるのがかわいい
575 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 01:07:52 ID:SkGChdsG
ひゃっはー! ちっこい祭りだぜ! 俺も投下だぜー!
ここは海沿い創発の館(仮)。
いつもの通りサムライポニーテール少女、無限桃花は海に面したテラスで椅子に腰掛けぼけっとしていた。
彼女は別にこんなマヌケ面の腑抜け野郎というわけじゃない。そこそこ、いや、一般人から見れば達人程度の体術をこなす剣士なのだ。
伊達に狼男と話したり、電撃少女に襲われたり、冬山で不可解な生物と男に出会ったり、駅前で相手に直接命令を書き込む能力者と戦ったり
一夜にして海と化した港町にいたり、町を見下ろすテラスからジャンプしてたりしたわけじゃない。
これだけ書くと意味がわからないが彼女は『他世界を旅する』という珍しいのかよくわからない能力を有しているためそんな体験をしていたのだ。
そんな経験者の彼女がなぜこんなヒマをしているのか。理由は簡単。
やることがないのだ。
この広い館。辿り着いてからある程度の時間が経ったはずなのに未だに全部を見て回れたわけではない。
行く先々で会う人間(主に他の桃花を指す)とおしゃべりしたりお茶をしたりしているといつの間にか夜なのだ。
一応食事を取るための広間はある。一体何人を収容するために創ったのかわからないがとりあえず広い。しかしそこが使われることはない。
考えてみよう。右見ても左見ても自分とほとんど同じ顔の人間が食事を取っているシーンを。体験したいか? したくないだろう。
そんな配慮なのか食事は配給係(桃花)が部屋に運んできてくれる。ちなみにコックも桃花だそうだ。会ったことはない。
何から何まで自分と同じ顔の人間が仕事をこなしている。やることがあるかと言われるとない。
そんなわけで彼女は館を探検するのを諦め、海を眺めながらぼーっとしているのだ。
海が寄せては返す。寄せては返す。太陽が高い。太陽が高い。風は生ぬるい。風は生ぬるい。
勢い良く立ち上がる。このままでは精神ごと腐ってしまうと自覚したのだ。最もその気は既に出ている。
探検、というにも下手におしゃべりな桃花に出くわすと違う意味で精神が腐ってしまう。もう耳にタコだとかイカだとか海洋生物が済みついてしまう。
あの桃花に出くわさないように探検。簡単に見えて奥が深い。愛用の抜かない刀を持ち、部屋のドアをそっと開ける。
右にも左にも誰もいない。部屋から出て、右へと向かう。あのおしゃべりな桃花は左先にあるサロンによくいるから多分会わない。
かと言って油断しているとまた曲がり角から現れて「おー! いいとこにいるじゃん。ちょっと面白い話仕入れたからこっちこいよ!」
と連行されてしまう。お前の話は面白いことが少ないと小一時間話したい。
同じような扉が続く。この部屋全てに住人がいるかはわからない。が、行く先々で会うことを考えると入っているのかもしれない。
総じてやたら話したがりでとりあえずお茶に誘ってくる。本来あまりそういう誘いに乗る性格の桃花ではあるがついつい乗ってしまう。
同じ人間の誘いが珍しいからかはたまたこの館の奇妙性がそうさせているのかわからない。
何個目かの十字路に辿り着いた。どの方角を見ても同じ廊下が続いている。灯りが少なく、先まで見通せない。
この廊下を同じ方向に真っ直ぐ進めばこの館が常識的である限りは壁につく。ならばそこを目指せばいいか。
さきほどと同じ方角に歩を進めようとするとからからと荷台を押す音がした。食事を運ぶ荷台の音だ。
銀色の荷台にはいくつかの食器が重なっている。回収してきた食器なのだろう。しかし桃花は別のことに愕然とした。
荷台を押している人間の頭の位置がおかしい。荷台と言っても取っ手が桃花の腹の辺りに来る高さだ。決して大きいわけじゃない。
なのにその荷台を押している桃花は頭が少し出ている程度なのだ。これでは前が見えないではないか。
「前が見えないわけじゃないよ。ちゃんと見えてるよ」
576 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 01:08:38 ID:SkGChdsG
荷台の主が桃花に声をかける。そして荷台の影から出て、桃花にお辞儀をする。
「始めまして。無限桃花さん。私の名前は……まぁ無限桃花だね。なにかすごく驚いた目で見ているけど
私は生まれつきこんな体なのだよ。でもちゃんと働いている。君達と、いや君達よりも お と な なんだよ」
この時。桃花は思わず一歩後ろに下がった。この桃花を前にして。無意識に一歩後ろへ。あまりにも一瞬で頭が判断したのだ。
この桃花には勝てない。例え自分がこの桃花よりどれだけ心体技に優れようとも敵わない。そう感じさせる『何か』をこの桃花は持っていた。
「ちなみにそこ真っ直ぐ行けば壁に着くけど行っても何もないよ? 暇ならちょっと手伝ってほしいんだよね。この荷台を運んでほしいの。
あ、場所は指示するよ。ちょっと疲れちゃってね。私は荷台に乗るから押してくれるかな。まずはここ真っ直ぐね」
この間、桃花は一切喋っていない。それと同時に最初の謎が解けた。
「その通り。私の能力は人の心を読む能力だよ。私の前では何人たりとも嘘はつけないよ」
からからと荷台が桃花の前に運ばれてくる。一方の桃花は荷台の上の皿を上手くどかしてスペースを作り、座り込む。
「それじゃあ進もうか。ごーごー! あ、今子どもっぽいと思ったね。私のほうが仕事しているぶん お と な なんだからね!」
言われるがままに荷台を押す。もう全てが手遅れなのだろう。そう考えるとまた前の桃花から突っ込みが飛んで来た。
「到着っ!」
前の桃花が飛び降りて、前に進む。扉のないそこには『厨房』というネームプレートが入り口上部についていた。
押していた桃花は黙って、荷台をやたら広い台所まで運ぶ。そこには洗物専門なのだろうか、桃花が一人せわしく食器を洗っていた。
その桃花の指示に従い、荷台を置くと厨房の隣にある休憩室の椅子に腰掛けた。この部屋だけ見るとどこかの食堂のように見える。
最もここを利用するのはこの場で働く桃花くらいなのだろう。そんなことを考えて現実逃避を計る。
さて、なぜそんなことをしなければならなかったのか。それは全て上の一行の空白の間に起きたことを話さなければならない。
「まずこの十字路を真っ直ぐ行って左の五番目のドアに入ったあと、中にある花瓶の位置をベットから本棚前に動かしてね。
その後、部屋から出て正面のドアのノブを右方向に三回転させた後、部屋に入ってドアを閉めて出る。
で、部屋から出たら右に進んで二つ目の十字路を左に曲る。右の三番目のドアの前まで来たら三回ノックして真後ろのドアを開けて入り、
そのまま向かい側のドアから出て、右に進めば右手側に厨房が見えるよ」
ご理解いただけただろうか。繰り返し言わないが、桃花たちはここに辿り着くためにこんなことをしたのだ。あの無数にある部屋たちには理解を
超越したギミックが仕込まれていてちゃんとした手順を踏むことで他の場所に移動することが出来たのだ。
もちろん全ての部屋がそんなギミックが仕掛けられているわけではないだろう。ちゃんと中に人が住んでいる部屋もある。
それらをちゃんと把握して、利用し、食事を暖かいうちに館の人間に届ける。それがここの配給係はこなすのだ。
「私は特別だよ」
例の桃花が桃花の前にお茶を出す。桃花はそれを見つめる。
「この館のギミックを理解しきっているのは多分私とハルトシュラーくらいだろうね。弟子すらも全てを把握してないよ」
「……」
「どうせ読んでくれるだろうと思ってるんでしょ。それでもいいけどせっかくの休憩なんだけどお話しようよ。
口で言わなきゃ伝われない気持ちだってあるんだよ」
「君は一体何者なんだ……。ただの配給係じゃないのか」
「あれ、自己紹介しなかったっけ」
桃花はその姿らしからぬ笑みを浮かべる。
「私はここの料理長を務める無限桃花だよ。君の食べるメニュー全てが私の考案したメニューだよ」
そう。彼女こそがこの恐ろしく広い館に住む全ての人間に満足を届ける料理長なのだ。
人は見かけでその人間の本質まで見ようとするがそれはあまり正しいことではない。
確かに見かけにはその人間の本質がうかがい知れることもある。だけどそれが全てではない。
なにせ能ある鷹は爪を隠すのだ。この桃花のように。
「ふふん。すごいでしょ。どうせ見た目から給仕見習いだとでも思ったんでしょ。私は お と な なんだよ」
もちろん彼女の例は極端な話なのだが。
そんな館のとある一日でした。どっとはらい。
300レスぶりにクロスキター
自分と同じ存在ばかりって、SAN値がぐんぐん減少するな……
乙。
これ面白い
>>574 いわゆるボディビル系じゃないんですよ。
山縣優的な感じを想像しながら書いたです(←わからねえよ
タイトルは特に考えて無かったですが……
無限桃花の憂鬱と不安
とかでとりあえずお願いします。二つ、我に有り。
また何かしっかりしたタイトル思いついたら、
その時は変えてもらう事ってできますよね?
できなくてもまあいいか!(姉略)ですがw
581 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 22:12:49 ID:SkGChdsG
浮かんだらすぐに投下だー。うおー
ここは海沿いの創発の館(仮)。
サムライポニーテール少女、無限桃花は今日もやることがなく、布団の中でまどろむばかり。
しかしこんなことをしていてはいつか精神が腐ってしまうので起き上がって身支度をする。
専ら食事を取るだけに使うテーブルの上にはメモ用紙が置いてある。先日会った料理長ロリ桃花に教えてもらった各所への近道だ。
これを見るまで知らなかったがここには普通に行くことが出来るサロンを始め、図書室、床屋、教会、スポーツジム、プール、銭湯、ゲーセン。
挙句の果てには郵便局まで存在する。もはや一つの立派な町だ。そもそも利用者がいるのかどうかわからないが。
今日はこの中の屋上に行ってみることにした。天気は晴れ。海風がきっと気持ちいいだろう。そんなことを考えたのだ。
早速部屋から出て、目的地に向かう。行くまでの過程は長いのでここでは省略させてもらう。
青い空。白い雲。煙草を吸う桃花。
「……」
「……」
桃花は空を眺める。長い階段を抜けたら、自分が煙草を吸っていました。もちろん桃花自身ではない。違う桃花だ。
桃花は気付いていないらしく、お粗末な丸い椅子に座って海を眺めている。時折、煙草を口に含みゆっくりと煙を吐いていた。
共通設定がある以上似たり寄ったりになるだろうと思われている桃花だが案外そうでもない。ロリ桃花はちょっと例外すぎるが
ポニーテールと一言に言っても尻尾の長さが違ったり、髪の色が違ったりもする。当然背も高かったり低かったり痩せてたり太ってたりと
するので一度慣れれば案外見分けがつく。
それでは眼の前の桃花はどうだろうか。
なんだか無理矢理にまとめたポニーテール。冷めた目つき。長い足。立てかけた黒い刀。控えめな膨らみ。
この時。桃花は思わず一歩後ろに下がった。そう、眼の前にいる桃花はあまりにも、圧倒的に、完膚なきまでに。
「大人……」
大人桃花が桃花のほうをちらっと見る。が、さして興味を持たなかったらしくすぐに視線を海に戻す。
遠慮がちに大人桃花へと近づく桃花。近くまできてわかったが足だけでなく背も高いようだ。
大人桃花はポケットから煙草を取り出し、桃花に差し出す。
「いや、私は吸わないので……」
「ん」
大人桃花はポケットに煙草を仕舞う。そして海を眺める。桃花も海を見るが変わりはない。いつも通り海は満ちては引いてを繰り返している。
「えっと、始めまして」
「始めまして」
波が崖を叩く。風が吹く。沈黙が流れていく。桃花はちょっと泣きたくなった。
「ずっとここに?」
「そうだね」
「一人で?」
「一人で」
「海を眺めているんですか」
「海も眺めているね」
大人桃花が上を指す。桃花が上を見るが青空と白い雲しかない。
「空、ですか」
「そうだね」
会話が続かない。ここまで会話が続かない桃花はそうそういないだろう。不機嫌に見えるかもしれないので一応言うと
大人桃花は元から口数が多いわけではなくこのように空や海を眺めながら煙草を吸うのが大好きなのだ。
なのでどちらかと言うと上機嫌なのだが決して表面に出ないので常時不機嫌に見えてしまう。
そんなことを桃花が知る由もなく不機嫌にしか見えない大人桃花の前でおろおろしていた。
「えっと……年齢って私達と同じですよね」
「そうだね。18歳という設定だね」
「それじゃあ煙草はだめじゃないですか。煙草は成人、20歳になってからですよ」
「日本ではそうだね。ここは日本かどうかも定かじゃないし」
大人桃花は煙草を口に加え、ゆっくりと吸う。赤く燃える先端。口から離し煙をゆっくり吐く。
「その程度のことを守ろうとする人間も極少数」
「その程度、ですか」
「酒豪もいるし私以上のヘビースモーカーもいる。戦闘狂もいれば、変態もいる。この館では日夜法律を破ってるばかりだ」
「そんな人たちがいるんですか……」
「そのうち会うよ。何せここは広いけど世界の縮図にしては小さすぎるからね」
大人桃花は今にも落ちそうな灰を地においた灰皿に落とした。
どっとはらい。
かっけえ・・・かっけえな大人桃花。
584 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 23:55:27 ID:57AoxMgL
SSP! SSP!
素晴らしき変態
SSP! SSP!
……その被り方イヤ過ぎるww
桃花は大人になったり小さくなったり忙しいな。どれも可愛いけど。
裏刀強すぎw でも最強はクレアだと思うww
586 :
◆wHsYL8cZCc :2010/03/08(月) 05:19:24 ID:mHaqsXsD
>>583 すげぇw乙w
ちゃんとアンディ風だwwwww
発子「突然の呼び出しとは一体何かしら」
ハルト「いや特に、一献かわそうと思ってな」
発子「そんな事でこんな辺鄙な山奥にねぇ……」
ハルト「はは、そういうな。まずは一杯」
グィッ
ハルト「ところで君もあちこちスレを見てきたのであろう。当代、英傑とみなしてよい人物は誰かな」
発子「……さぁ?」
ハルト「君の胸中にある人物を誰でもいいから言ってみなさい」
発子「そうね……柏木なんかはどうかしら。みずから天才を自称してるけど」
ハルト「ふふ、あれは生きている英傑ではない、塚の中の白骨だ、そのうち自滅するであろう」
発子「では裏ハルトシュラーはいかがかしら」
ハルト「あれも駄目だ、まず決断力がない。大事なときに身を惜しみ小さな利益のために危険をおかす
ああいうのは英傑とは言わぬ」
発子「それではGGG団のバンディット霧崎は? その威勢は団の外にまで及び
治め方も優れているとか」
ハルト「あれは団員が役を買って出ている事、やつは不遜に部下にあたる。英雄とは言えん」
発子「では無限桃花は」
ハルト「桃花……ふむ。たしかに寄生とたたかう力はあるようだ。だが書き手の力を借りてでは
まだ小さい」
発子「ではスーパーストロングパンツマシーンは」
ハルト「あんな者は門を守る犬よ」
発子「それでは倉刀や裏刀も英傑とはいえないかしら?」
ハルト「いえないな。ハッハハ、こうして見るとまともなのはいないな。そもそも英傑とは大志を抱き
どんな時にでも投下できる作品を持ち、行っては怯まず、時代に遅れず創発の理を知り、
万民を相手にしようとも挑むものでなければならん」
発子「そんな人が今の創作発表板にいるかしら?」
ハルト「いる!」
ビシッ
ハルト「君と私だ!」
発子「!」
ピカッ ゴロゴロゴロ……
588 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/09(火) 00:21:28 ID:uqzt5mM1
SSP「テス」
589 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/10(水) 12:25:20 ID:CEhIMnPv
SSP「知りたいのか?それはだな、あ、ちょっとなにするのやめくぁwせdrftgyふじこlp。
来たぁぁぁああ!
感謝感激。
うぉぉぉヤベェ。
完全に時間ないし指も動かん(゚д゚)ウボァー
他の奴に浮気してる場合じゃねー。
でもとりあえずもう寝る。ウボァー
おやすみ!過疎レンジャー
書けって事か?たしかに言い出したの俺だけど‥‥‥
597 :
過疎レンジャー ◆wHsYL8cZCc :2010/03/11(木) 12:35:04 ID:iO1sNSh7
「なぜ‥‥‥こんな事に‥‥‥!俺が‥‥もっと強ければ‥‥‥!」
「フハハハハ!嘆いても時既に遅いわ!過疎レッドよ!」
「貴様は‥‥!馬鹿な!おまえたちは滅びたハズだ!」
「我々はいつでも復活する。たとえ根絶やしにされようとも、愚かな人間と怠惰な神が居る限り!」
「おのれ‥‥!寄生め!」
「フハハハハ!さぁ。運命を我が手に委ねよ。導いてやろう。死他羅芭という名の楽園へ!」
「黙れ!俺達は負けない‥‥!絶対に、絶対にこの板を守って見せる!たとえどんな過疎であろうと、そこに生きる僅かな人々の為に!」
「その通りだ!過疎レッドよ!」
「むぅ?何奴じゃ!」
「お前は‥‥‥過疎ブラック!」
「久しぶりだなレッドよ。だが俺だけじゃないぜ」
「そんな‥‥!過疎グリーン!イエロー!ピンクまで!」
「俺達は仲間だろ?みんなで戦おう」
「そうよ。たとえ在中スレが違えども‥‥私達は創発板の住人‥‥。過疎レンジャーなのよ」
「ググレカレーうめぇwww」
「みんな‥‥。有難う」
「さぁ。奴にトドメを。俺達五人で!」
「おのれ小癪な!貴様らなど全員寄生してくれるわ!」
「黙れ!もうお前等に負けはしない!」
「そうだ。なぜなら俺達は‥‥」
「ハルト戦隊過疎レンジャーだからだ!」
「覚悟しろ寄生!」
「面白い!返り討ちにしてくれるわ!」
−−−こうして過疎レンジャーのはてしない戦いは始まった。寄生の力は絶大だ。
頑張れ過疎レンジャー、負けるな過疎レンジャー!
みんなの投下の為に!
続かない。
ただの報告だよ
しかしこっちの過疎レンジャーはかっこいいなw
ノリと勢いだけでやった。
後悔はしていない。
フハハハ、残念だったな。
お前がノリと勢いだけで戯れに書いた作品であっても、俺はまとめにかかるぞ
あ、もちろんダメって言われたら消しますけどね
イインダヨ!
グリーングリーンダヨ!
アルヒーパパトーフタリデー
(拳で)カタリアッタサー
コノヨニツクルヨロコビーソシテカナシミノコトヲー
606 :
◆wHsYL8cZCc :2010/03/11(木) 21:00:53 ID:iO1sNSh7
グリーングリーン(姉さん)
ある日クマと二人で 語り合ったさ♪
/::::::::::: i::::::::: |:::::::: ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ
イ:::::i:::::::ハ::::::::: ヾ:::: |:::\:::ハ::::| :::::::::::::::::::::::\ ←過疎グリーン
|::|::::l:::!:::/ \:::::: ヾ:::|::::::::| ::i::::1::リ:::: |: i:::::::::::::ゝ
__ |::|::::|:::l::ハ|_ ヾ ::::::| ヽィ::::j/=、|::::::|::::7: /:::i::::| ____
\ :'´⌒ヽ |::ハ:::V:::| イ⌒゙`\:i リ \|ノ 弋_フノ /:::/: /
|i " )_,,, _ l:ゝ::.\::i〃⌒゙ヽ 〃⌒゙ヾ //::) | 'ハ::::: |
み や |i ヽ | ト/人7} 〃〃 〃〃´ ∠イr 'ちノ::::: | ふ 住
ど っ |i / ・ i イ:リ::::| '、 |:::::rイ:::::::: | え 民
ち た |i t / i:::::ハ r‐--ー、 /ハi!:::::::::::::::: | る が
ゃ ね |i 〃 ● ハ::::::: \ .イ_ _,,ツ イ/'/:::::::::::::. < よ
ん |i r一 ヽ ) /i::ハi::::i:::::>,, ___ _,, ´ /,,ハ/|/:::ii:::::::: | !!
! |i | i ∀" "  ̄ ̄ ト、 //ヽ  ̄" ̄ |
|i | i ノi ノ:r j :ア` …‐: |
|i ニ| |二二◎ __,..'| / / :::: |
|i i i ヽ __,,:'´ t/ / :: |
li } ,_:'´ { ,,___ / ,,/i \____
|i | /j\ _:ヘ:ニヽ,,,/_,, , /:::j j
__ / / ⌒`)⌒) i:::::ヽ::`r‐'___ ` ヽ ,,:_,,_,,/:::::ノ"ノシ 〃
,ノ フr フ メ / ノ ゝ:::::: ゝ- 、 ヽ |::::::::::::::::::::ソ / ./
一見さんは二度と帰ってこないと ラララ 私にもわかった♪
グリーン グリーン 過疎スレでは 自演で吹いて♪
グリーン グリーン このスレには ララ 保守が連なる♪
AAがw
そして
>>606さり気なくグロ画像の通称をwww
俺の中の発子が目覚めるじゃねえかw
発子「さぁ、解き放て!」
610 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 22:53:24 ID:HgPcOhI1
ひなの「お久しぶりです。発子ねえさん」
発子「あ、あなたは……ひなの!?どうしてここに?」
ひなの「やっと外出許可がおりたので、遊びに来たんです発子ねえさん」
発子「そ、そう。まあ紅茶くらいしかないけど、ゆっくりしていきなさい」
ひなの「わはー、ありがとうございます。発子、ねえさん」
発子「……ねえ、その、発子って呼ぶのはそろそろやめて欲しいなあ、なんて」
ひなの「分かりました。もうやめます」
発子 ホッ
ひなの「その代わり約束通り、『なんでも投下スレin避難所』の346の写真はみんなに配っておきますね」
発子「わ、分かったから!発子でいいから!」チキショー
ひなこ
避難所雑談スレ2の506以降から
公開はしていない
これはたしかに黒いw
いいなぁ。病弱で儚げでちんまくて可愛いのに黒いとか。
614 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 00:58:39 ID:mRMrHgUM
そろそろキャラをまとめるんだ。
そうしないと死ぬ。俺が死ぬ
>>516 > J・ひなの
>
> ハルトと発子のに大勢力の裏に存在する、創発の影の立役者。
> しかし気が小さく控えめで、体格的にも色々と控えめでちんまく、
> 色々な意味で目立たない為、忘れられていることが多い。
> 趣味は代行と妄想。
あと黒、病弱、貧乳属性付与
616 :
無限桃花〜In to the BLOODSKY〜:2010/03/12(金) 01:21:30 ID:BLTBc94L
そこで投下という鬼畜な俺。
617 :
無限桃花〜In to the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 01:24:07 ID:BLTBc94L
『ではもう青森に向かっているのか。三人で大丈夫なのかね?』
「ええ。東京の守りもありますから。まだ全ての寄生が移動した訳ではない。それより南澤大臣、サイロバスターは用意出来ましたか?」
『全くこの男は‥‥‥。どこから聞いたんだか。08式は既に三沢に届いている。もうF2に搭載して命令を待ってる』
「ありがとうございます」
『まだ公にしてない物だ。解っているとは思うが口外はするな』
「ええ。ではまた連絡します。今度は無線を使います。それでは」
南澤との会話を終え、黒丸は携帯を閉じる。
「先輩、なんとかバスターって何ですか?」
「聞いてたか。まぁ気にするな。俺らには直接関係無い物さ」
「ホントですかぁ?じゃあ、その包みは何ですか?前から持ち歩いてましたけど‥‥」
「これか?最近手に入れた武器だよ」
「何なんですかソレ」
「まだ秘密だ」
「馬鹿な上にケチか」
「‥‥お前最近生意気になったな」
「元からですよ〜だ。ねぇ桃花さん‥‥って、あれ?」
激しい振動と騒音が響くヘリの中で、桃花は眠りこけていた。村正を抱えたまま、すぅすぅと静かな寝息だけ漏らして。
理子は思わず見とれる。
今までは寄生と唯一対抗出来る戦士として見ていたが、今の眠っている桃花は女性から見ても驚くほどに魅力的な女性だったのだ。
「‥‥改めて見たら綺麗な人ですね」
「ああ。しかし随分余裕だな。もうすぐ死ぬかも知れない戦いの前だってのに」
「無粋な人だな‥‥。余裕なさすぎですよ先輩」
「ああ。解ってるよ」
途中の給油を挟み、ヘリは目的地へと接近する。約3時間の空の旅はもうすぐ終わるだろう。
先程の青空は消え去り、雪国の灰色の空が辺りを包んだ。雪が降っているのが見える。眼下には真っ白な大地が広がっている。
618 :
無限桃花〜In to the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 01:24:53 ID:BLTBc94L
やがて雲が厚くなり、雪で視界が鈍り始めた。到達したのだ。
辺りはまるで異世界のような灰色に覆われ、下も上も見えない。レーダーが無ければ自分がどこに居るのかも解らないだろう。
そしてその先に、灰色の中に浮かぶ紅い空がぼんやりと見えはじめる。
彼方の造った、天神の細道、魔道の出口だ。
「あれは‥‥‥。なんて事‥‥」
理子が言った。
剣のように鋭く尖った山の先が血のような紅い雲で覆われた光景は、既にこの世の物では無かったのだ。
突如、眠っていた桃花が目覚める。そして叫んだ。
「ここで降ろして!」
黒丸達はいきなりの発言に驚いた。無理もない。目的地まで、飛んで行けば後少しなのだ。徒歩ならばかなりの距離がある。
「桃花さん、何を言ってるんです!?もう目の前だ。何もここで降下しなくても‥‥‥」
「違います!居るんです。自衛隊の飛行機を落とした奴が!‥‥凄い!こんな強い気配初めて‥‥」
「例の炎の壁を出した奴ですか!?」
「ええ。こいつは‥‥‥。倒さないといけない」
「‥‥‥解りました。では降下準備を」
ヘリは地上付近まで高度を下げた。ドアが開き、冷たい雪と風が室内へなだれ込む。
そして黒丸と理子がロープを使い降下する。一方桃花は‥‥。
「ちょっと桃花さん!?」
桃花はそのままドアから身を乗り出し、地上10メートルほどの高さから飛び降りた。着地点には雪煙が上がり、衝撃の強さを物語る。
その中から現れた桃花は、既に抜き身の村正を持ち戦闘服を纏っていた。
「桃花さん‥‥?」
「居る‥‥‥。とてつもない奴だ。影糾はこんな奴すら手駒に出来るんだ‥‥」
桃花は静かに立ち尽くす。それは近づいてくる。桃花へ向かって。
灰色の景色の中、人影が一歩、また一歩と近づいてくる。
そしてーーー
「ようやく来ましたね。無限の天神よ」
619 :
無限桃花〜In to the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 01:26:00 ID:BLTBc94L
現れたのは老人だった。とても穏やかな顔付きをした、優しそうな老人。
「出来れば来て欲しくは無かったんですが‥‥。仕方無いですね‥‥‥‥。彼方は貴方に会いたがってますよ」
「あなたは‥‥‥婆盆ね?」
「いかにも‥‥‥」
一陣の風が吹くと、老人の姿はみるみる内に筋骨逞しい姿へと変貌する。カラスのような翼と葉扇子を持つ天狗へと。
「ここが我等の最後の足掻き。ここを超えれば彼方へとたどり着くだろう。だが、それは私が許さぬ」
「彼方はそれでいいの?」
「‥‥‥良いのだ。これで‥‥」
「私に会いたいから呼んだんでしょ?」
「いかにも。だが、彼方と会えばお主は全てを知る。無限の一族の秘密‥‥。いかにして天神の力を手にしたか、いかにして千年の呪いを受けたか。
彼方はそれを知って欲しくは無いと思っているのだ。お主に、人のままで在って欲しいが為に」
「大丈夫だよ。何となくだけど、最初から解ってた。詳しくは知らないけど、たとえ私が何であろうと私は私。私にとって彼方は彼方のまま」
「‥‥‥強いなお主は。では、さっそく始めよう。彼方の意志や、お主の意志があるように、私にも意志がある」
「周りに居る連中も出したら?あと、さっきから隠れている怪物も‥‥‥」
「元よりそのつもりだ」
婆盆が扇子を振るうと、それを合図に辺り一面に妖が溢れ返った。全て彼方に寄生された、操り人形の妖怪達。人間の寄生は生贄に、彼らは兵として集められたのだ。
「先輩ぃ!すんげー数ですよぉ!!」
「問題無い。桃花さん!」
黒丸は桃花へ言った。
「こいつらは私と理子だけで何とかします。桃花さんは婆盆に集中して下さい」
桃花は小さく頷いた。同時に、理子が慌てて叫ぶ。
「このバカ!この数相手に何言ってんですか!脳みそ動いてます!?」
「黙れ。さっき言った新しい武器を出すまでさ」
620 :
無限桃花〜In to the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 01:27:33 ID:BLTBc94L
「新しい武器って、ちょっとそれって‥‥!」
「そうだ。あの猿参とか言う奴が持っていた、天叢雲剣だよ」
「皇室に返すんじゃないんですか?」
「もちろん返すさ。これが終わったらな」
黒丸達は戦闘体制に入る。一方の桃花と婆盆も、お互い睨み合ったまま。最初に均衡を破ったのは婆盆だった。
「人が居てはお主も闘いにくいであろう。どれ、少し移動しようか。奴が暴れるにも丁度良い」
突風が吹く。桃花はそれに吹き飛ばされ、黒丸達と引き離された。
着地した場所はただっ広い平野。辺りには何も無い。婆盆と桃花を除いて。
「無限の天神よ。改めて言おう。お前を彼方には会わせない。たとえ彼方の意志に反したとしても」
「それがあなたの意志?」
「そうだ。さぁ、無限の天神。今度こそ引導を渡そう。私と、奴の力で!」
地面が激しく揺れ動く。地割れが起き、その下をはいずる巨大な影がうごめいていた。
「さぁ現れよ!大寄生・八岐大蛇!!」
地面は天地が逆さまになったようにひっくり返り、大量の土砂と雪が辺りに飛び散った。巨大な穴がぽっかりと口を空け、その中にはまるで特撮映画のような怪物が現れた。
日本の神話に登場する最大の妖、八岐大蛇。
「行くぞ、無限桃花!今ここでお主を葬り去ってくれる!彼方に‥‥お主を会わせる訳にはいかぬのだ!」
621 :
無限桃花〜In to the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 01:28:40 ID:BLTBc94L
投下終了
今欲しい物を言えば時間とPCと使いやすいフォルダ。
わーいかいじゅうだー!こいつは面白くなってきたぜ!
黒丸無双とな
婆盆戦期待
>>614 【柏木】(創作家)
↑
敵|
対|
敵対 ↓ 師匠 ┌─【倉刀】←┐
【発子】←───→【ハルト】←───┤ |
(創発の女神) (創発の魔王) └─【美作】 |
↑↑ 友好 |
一方的│└─→【田中之翁】 |同人仲間
【ひなの】 敵視| (人形職人) |
(創発影の立役者). | │
スタンス不明. 【ウラト】←────【裏刀】←─┘
(ワープア) 師匠
一方的|
敵視|
.(実は入りたい)↓
┏(GGG) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ 【G】 【よし子】 【はさみさん】 【アジョ中】 ┃
┃(一般兵) (ツッコミ) (はさみ擬人化) (魚面マッチョ) ┃
┃ 【バンディッド】 【直りん】 ┃
┃ (ロリババァ) (直リン駄目) ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
姉
【桃花】←─【彼方】
(サムライ)
↑
|敵
↓ 敵
【寄生】←→【過疎レンジャー】
上司
【アンテナさん】←─【あんてなたん】
【SSP】
(レスラー)
これにそれぞれのスレのキャラを足すとまだまだ増えるという……あなおそろしやそうはつ
ちょっとムリヤリっぽい話投下
「お腹空いたなァ」
それが私──無限桃花の最初の言葉であり、
「とっても寒い・・・・・・」
次の言葉がこれ。
「・・・…疲れちゃった」
ため息と共に吐き出された言葉が続く最後の一言だった・・・・・・と思う。自分ではなんとなくにしかわかんない。
なんなんだろう。
ぐるぐるぐるぐるとそれだけが頭の中を駆け巡る。
なんなんだろうなァ。
不思議と不安は感じなかった。頭がぼんやりしてるけど、不快じゃない。
ここは、わからない。
でも、
ここは、キライじゃない。
そう?
そうよ。
そうだね。
私は再び目を瞑る。
そうすると身体に溜まった疲れが周りに溶け出していくかの様な開放感?に包まれた。
きもちいい・・・・・・。
思えば毎日毎日が“寄生”との命の遣り取り。
うーんと“のび”をする暇さえない。
そう考えて私はふっと頭を振った。
そういうわけでもない。
暇がないっていうのはちょっと正確さにかける言い方だ・・・・・・と思いかけて少し笑う。
『ツッコムところってそこ?』
ククク・・・・・・って感じの私の笑い声が空間に吸い込まれて、やがて消えていった。
別に首をゴキゴキ回す暇がないわけじゃない。手をぐるぐる回して肩をゴッキンゴッキン鳴らす暇がないこともない。
ただ、そういうことをしてちょっとの開放感を味わう“余裕”を思いつくことがないってだけのことなのだ。
そう?
そうよ。
そうだね。
いつもいっつもあくせく働いて、そんななんでもないことをする余裕さえ忘れちゃってる自分が哀れに思えてくる。
そうまでして何を守るの?
それって本当に自分がしたいこと?
そんなことしてて何になるの?
質問が胸の中を駆け巡り始めた。
そう、これは“疑問”ではなくて“質問”だった。
『まどろっこしいことをしてくれる』
思い浮かんだのは“答え”ではなくて、憤りだった。
そろそろ終わりにしましょうか?
口にする必要はないようだ。
心に思い描くだけで、ソレは実現した。
“不安”も“不快”もないその空間はソレだけで溶けるように消え去っていった。
「おや、まぁ」
女の声。
「茶番は終わりにいたしましょう」
私の声。
「それにしちゃ、随分と安らいでいたじゃん?」
女の声は随分と退屈そうな音色を奏でていた。というよりも、これは面倒臭そうなだけかもしれない。
「あの『なぁんにもしないでダラ〜っとしてるだけでいい』って感覚、キライじゃなさそうだったけど」
「キライじゃないですよ」
私、即答する。
「ただ、キライじゃないだけです。スキなわけではありません」
「あ、そう」
返ってきたのはやる気の感じられないアンニュイな声。その彼女──裏ハルトシュラーは神殿の欄干にダルそうに引っかかっている。
比喩じゃない。本当に“引っかかっている”としか形容しようがない姿勢で、彼女は私を見下ろしているのだ。
「普通に座るなり立つなりしたらどうですか?」
「えー、いーよー。メンドくさいしー」
「あの人修羅『S・ハルトシュラー』と背中合わせの同位体とさえ言われる存在の仰ることとは思えませんね」
「人は人〜、あたしはあたし〜」
裏ハルトシュラー──ウラトは動物のナマケモノのように欄干に引っかかったままブラブラとしているのだ。
その様子はなんとなくバカにされているようでもあり、実は何か深い策があるのではないか? と警戒感も抱かせる。
人修羅と同等と噂される魔人ならではってことなのだろうか? どちらにしろ迂闊に動けないのは確かだ。
さて、どうしよう? このまま黙りこくったまま時間を無駄に過ごすのは趣味じゃない。
「ねぇ」
口火を切ったのはウラトの方だった。
「そうゆう生き方、メンドくさくない?」
「メンドくさくない? とは?」
腰の愛刀に手を延ばす、けど鯉口を切るまでには至らない。
さすが魔人と言うべきか。泰然としていながら、彼女の“気”は私の動きを微塵も許さないでいる。
「桃花ちゃんは出来る子らしいじゃん? だったら今日がんばらなくても明日から本気出せばいいじゃん」
知ってる。
『明日から本気出せばいい』と誘いをかけるというのが彼女の常套句だということは知っている。
ダメ。揺れるな、私の心。
「ちょっとくらい揺れちゃってね? 人間だもの」
「確かに」
うん、それは認めよう。
「ですが」
だけど、
「私は“昨日”を振り返りません。そこに私はいないから」
「だから明日よ。明日から本気出せばいいって──」
「いいえ、私の心はまだ見たことのない“明日”にはいません」
じゃあ、と彼女は言わなかった。
「私は“今”しか知らない。“今”を全力で走り抜けることしかできません!」
チンと音が鳴った。
愛刀の黒い刀身がシャンと私と彼女の隙間を薙いだ。
「無限桃花、参ります」
手元で返して切っ先を降ろす。
そうして私は青眼の構えから振り上げ、八双をとる。
勝てないまでも──負けはしない。その気迫を叩き込むつもりだった。
ウラトのぷらぷら・・・・・・とでも言うべき動きが止まったのはその時だ。
「メンドくさい・・・・・・」
「は?」
「メンドくさーい、メンドくさい。息をするのもメンドくさーい」
呪文のようにただ「メンドくさい」と言い続けるうち、彼女の姿が霞んでいく。
あれだ、不思議の国のアリスに出てくるチェシャ猫を思わせる奇怪な現象! 彼女の姿が次第に薄くなってきている!
「なんなの、これ?」
「だってメンドくさいんだもん」
その一言が合図だったようだ。それで終わり。彼女の姿は完全に消えた。
確認するまでもない。一帯に彼女の気配は微かにも残っていない。
その瞬間、辺りから虫の声、風の音、鳥や獣の鳴き声がドっと押し寄せてきた。
そうか、まさについさっきまで──自分は彼女の作り出した結界の中にいたのだと私はようやく理解した。
彼女が『寄生』に与したとは考えられない。
「そういうの、メンドくさいって言いそうだものね」
思わず軽口がついて出る。
でも、
「何を考えているのかさっぱりわからないわ」
それはある意味恐怖と同じ類の感情だった。
何が欲しい、何がしたい、何を──それが分からない相手と対することなどそうそう楽なことではないのだから。
彼女が私に何を見せようとしたのか・・・・・・それは分からない。
敵なのかさえも分からない。
でも、と思う。
それでも私は走り抜けることしか出来ない。
昨日でも明日でもない、今という時を駆け抜けること以外出来ない。
それだけは迷うことなく知っている、分かっている、私の中の確かな真実なのだから。
以上です
桃花ちんにちょっかい出してみたけど、メンドくさくなってバイバイキーンしたウラトさんでした
わたし乙
ウラトさん……恐るべき負の結界!
やる気ない癖に敵に回したらなんて厄介な!w
おお、投下があったのか乙。ウラト会いたくねぇw
631 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 10:52:15 ID:mRMrHgUM
怪獣が出るわウラトさんが出るわ投下があっていいことだね!
>>623 なんというオリキャラの数・・・。
ありがとう。知らないキャラがさらに追加されたよ。
把握するのには時間が必要そうだ
メンドくさ結界www
633 :
無限桃花外伝〜魔王〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 20:54:10 ID:BLTBc94L
投下開始。
634 :
無限桃花外伝〜魔王〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 20:56:47 ID:BLTBc94L
「ここは‥‥‥?」
気がつくと、桃花は見知らぬ館のホールに居た。やけに広く、人の気配は無い。耳鳴りがする程の静寂だった。
桃花はすぐにその場所がこの世ではないと直感で理解した。
見覚えこそ無いが、記憶の片隅に僅かながら刻み込まれている。
ここは、まさに自分の始まりの場所だと。
ホールの正面にある巨大で、そして美しい装飾がなされたドア。桃花はそこに目をやる。その向こうに、自分をここへ呼び出した何者かが居ると解っていたから。
おそらくそれは、桃花が今まで出会った何者よりも、そして今後出会う事はないであろう程の存在だろう。
桃花はその名前を口にした。
「‥‥ハルトシュラー」
「ようやく私の名を呼んだか、桃花」
巨大なドアが二つに割れる。間から差し込む光は見たことが無いほど眩しく、その奥から漂う気配はホールはおろか、この世界を包み込んでしまいそうな程に感じられた。
その中から、小さな人影がこちらへ向かって歩いてくる。それは銀髪の少女。魔王・ハルトシュラー。
桃花は立ちすくむ。小さな少女に過ぎないハルトシュラーは、その体に見合わぬ力を有している。まさにそれは、無限の力なのだ。
「久しぶりだな桃花よ。また会えて嬉しいぞ」
「また‥‥?今が初めてじゃないの‥‥?」
「覚えていないか。まあ無理もない。お前がここで誕生してから、お前が『無限桃花』となるまで、結構な時間が必要だったからな」
「???」
「お前自身は知らなくてもいい事だ。だがお前の『無限桃花』というキャラクターは知らなくてはならない。お前はただ聞いていれば良い」
ハルトシュラーは淡々と言う。声は見た目の歳相応の可愛いらしい物だが、発せられる言葉に込められた威厳はまさに魔王と呼ぶに相応しい物だった。
「お前も私も、最初はただの言葉に過ぎなかった。だが、ある時を境に、お前は一人のキャラクターとして歩きはじめた。
その過程で様々な『無限桃花』も誕生した」
635 :
無限桃花外伝〜魔王〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 20:57:50 ID:BLTBc94L
「その中には時代を遡り仕置き人として生きる者、いつしか私の世界に居着いた者、一度だけ現れ消えた者、姉妹でアレな関係の者など様々だ」
「私が‥‥?たくさん居るって事?」
「ふむ‥‥。そうだと言えるが正確には違う。お前という『無限桃花』は『お前一人』だ。
解るか?創り手の数だけある『無限桃花』。そのなかの一人‥‥。つまり、お前は無数の『無限桃花』の中で独立した一人だ。いや、全ての無限桃花はそうだと言える」
「‥‥?訳が解らない」
「ははは。それでいい。お前は知らずともお前というキャラクターは理解している」
「じゃあ、なぜ私をここへ呼んだの?」
「お前の誕生の秘密、それを伝える為だ。私と同じ性質を持つ、お前には知らせておかなければならない」
「あなたと‥‥同じ?!」
「そうだ。先程も言ったが、私もお前も始めはただの言葉に過ぎない。だが、そこへある力が加わる事により、私が誕生した」
「それは何?何なの?」
「創作者だ。一人ひとりが持つ無限の力、それが無数に集まり、私を形成している。故に私の力は無限。それもそうだ。たった一人でも途方も無い力を持つ創作者、それの力が無数に集まっているのだから」
「だったら、私は‥‥?」
「お前には私と同じ力で、違う進化の可能性を与えた。つまり、敢えて『無限桃花』というキャラクターを創作者達へ丸投げすることで、無数の『無限桃花』を造る事が出来る。それこそお前の正体。無限に存在するキャラクター。それが無限桃花だ」
「理解できないわ‥‥」
「それでいい。理解すべきはお前を形造った者達なのだから」
ハルトシュラーの言葉は桃花の理解の範疇を大きく超えている。
いきなり自分が無限に存在すると言われ、理解できるはずも無いのだが‥‥‥
636 :
無限桃花外伝〜魔王〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 21:01:59 ID:BLTBc94L
「さて、桃花よ。お喋りはここまでにしよう」
突如、ハルトシュラーの気配が攻撃的な物へと変化する。
「お前という『無限桃花』はどんな存在だ?お前は戦士だ。そうだろう?」
「何?何の事!?」
「簡単な事だ。私に示せと言っている。お前の無限の力を。戦士として生きるお前という『無限桃花』を。もし出来ないなら、戦士として不十分な存在なら、私は‥‥いや、私の中のお前を創る創作者はお前を殺さなければならない」
「何を‥‥!」
ハルトシュラーの姿は大きく変貌する。
10歳ほどに見える容姿は桃花と同年代程度にまで変わり、その手には‥‥
「そんな‥‥!あれは‥‥村正!?」
「行くぞ無限桃花。私に示してみろ。お前という存在を、お前を創った者に示してみろ!」
桃花は村正を抜く。
いいだろう。示してやろう。私を創った者へ。そして、他の無限桃花を創る者達へ。
私は無限桃花だとーーー。
気分次第で続く。
637 :
◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 21:05:04 ID:BLTBc94L
投下終了。
通信障害テラウザス。
めためた
姉妹でアレな関係わらたwww
敢えて言おう。
ももかの続きが気になって仕方ないw
えーと、あれどこまで書いたっけ……
そういう言い方をするなw
吹いたじゃねえかw
644 :
◆wHsYL8cZCc :2010/03/12(金) 22:22:46 ID:BLTBc94L
違う違う!Bまでだ!
まとめ読んで来い!
なん…だと…
646 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/13(土) 00:09:30 ID:FrU2sU4O
桃花「おーい、桃花ー! ちょっと小ネタ浮かんだから見ててくれよ」
桃k「どうせ下らないことだろう……」
桃「ガーン! 来たばっかの時はあんなに可愛かった桃花もいつの間にかこんな捻くれ者に! お姉さん悲しいよ! 悲しいよぉ!」
と「一々他の顔に変身してから泣かなくてもいい。見てて上げるから」
t「おー! 心の友よ! じゃあ見ててくれよー」
「……何もおきないじゃないか」
「ちょっと切ってくれ」
「私は刀を抜かないと言っただろ」
「仕方ないなー。私の刀貸すよ」
「……ちゃんと磨けよ」
「いいの! 使わないの! 使わないからいいの! 早く切って! 本気で!」
「わかったよ。じゃあいくぞー」
「来い!」
「どりゃ!」
ズバァ
「ぐふっ……」
「お、おい! 本当に食らって……」
「椅子の下敷きになれば……」
バタン
「!? 消えただと……」
パタン
「これぞD4C……」
「傷が治って……お前、さっきの桃花と違う奴だな」
「あれ、ばれちゃった? 失敗かー」
パタン
「なんだー、失敗かー」
「傷! 血出てるから!」
「あれ……漫画だと回復するんだけど」
「いや、しないから」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
バタン
リタイア
おしゃべり桃花 入 院
カッとなってやった。今は反省してる
漫画の読みすぎだなwww
いともたやすく行われるアホな行為w
649 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/13(土) 07:44:34 ID:kRMdeaIY
アホ桃花に付き纏われてやさぐれた桃花w
650 :
ホワイトデー桃花 ◆KazZxBP5Rc :2010/03/14(日) 20:04:28 ID:4i9bhdvt
「お返し、ありがとうな」
「開けていいか?」
「ははっ、花より団子ってやつだ」
「花が散るのは早いからな」
「桃の花も……」
「ふふ、先月と同じ過ちは繰り返さないよ」
「んー、ほれほいひい」
「なんだ、そんな露骨にがっかりした顔するな」
「じゃあ……帰ってから……な」
俺たちの物語はまだ始まったばかりだ! 第三部完!
(本当に完結のようです)
じゃあゴールデンウイーク桃花も、夏休み桃花も十五夜桃花も、そして年末のラストバトル、クリスマス桃花も無いのかッ‥‥‥!
652 :
◆wHsYL8cZCc :2010/03/15(月) 20:23:00 ID:+gIzskXK
はさみさんブログよんでSD桃花描いてみた。
が、せっかくなんでペンを使って見たいが幾分ド素人なんで何使っていいかワカランw
誰かアドバイスくれ。
653 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 20:24:30 ID:+gIzskXK
あ、今は鉛筆だけの下書き状態って事です。
654 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 20:27:05 ID:HYHu1Ctx
655 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 20:29:51 ID:HYHu1Ctx
レスかぶせちゃった…
ええねん。
>>652 お絵かきスレとかで聞いた方がいい・・・のかなぁ。
あるいは雑談スレとか。
生憎俺は書く専門なので力になれない。
申し訳ないな。
先を越された…だと……?
まあいいや。そちらは任せますんで、がんがってください
なるほど。専門スレあったな。
しかし!ググるのが先というのを忘れる大失態を犯していた俺w
ミリペンが妥当じゃないかな。安いし。
あるいはゲルインク系のボールペン…っていうの?
昔からのボールペンじゃなくて、水性とかで線がなめらかなやつ。
自分アナログ派じゃないけど一般的にはそんなかんじなのでわ。
キター!
水性ボールペン‥‥だと‥‥?
そんなんあるのか。事務用じゃ‥‥‥ムリかw
とりあえず明日買いに行く。サンクス。
ゲルインクボールペンなら三菱鉛筆の「ユニボール Signo」の「超極細」
の0.28mmってのが滑らかで私はお気に入りです。 ただ、私には軸やペン
先の部分が太いのが気に入りませんでしたが、先日ぺんてるの「Slicci」
という細軸で0.25mmと言うものを見つけました。 これはなかなか細くて
良いです。 ただし、やはり描き味の滑らかさならSignoですけど…
細いな。いつもは0,7使ってるけどそれでも細いと思っているw
とりあえず持ち物漁ってたらそれっぽいボールペン出てきたからもう少ししたら清書してみる。
で、それはそれとして明日買うw
今日は被る日だなw
ちなみに使ったのは三菱uni Laknock0,7
事務用、勉強用としては最高。
667 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 23:22:24 ID:HYHu1Ctx
乙
凛々しいよ桃花
衣装ロングコートははじめて見るけど良いな
俺設定ではずっとロングコートのイメージだったんだ。
そして腕がマジ釣りそうだよ。絵師ってガテン系だな。
よし、じゃあ俺はハルト閣下のゴーストを作ろう
ゴーストな流れの所悪いですが、発子さんとの契約に基づき、
発子さんなSSを投下させていただきます。
「わたしはね」
彼の目の前に立つ少女は、不敵な笑みを浮かべて言った。
「自分で創る事はできない。ただ見てるだけ。見守るだけ。見て、守るだけ」
「そ、そんな馬鹿な話が……ありえるはずが……」
数多の荒らしを繰り返し、人々の怨嗟の声を嘲笑いながら、ありとあらゆる創作を、その場を、壊し尽くし
かねない勢いで暴れまわっていた男の目には、信じられない光景が……信じられない人物が、映っていた。
「目の前の物を信じなさい。貴方が感じている物、それが全てよ。それは、創作を前にした時も、
それをただ見守るだけの女神を前にした時も、等しく変わらない。愛しくも変わらない。何も、変わらない」
そこにいるはずのない、蒼髪の女神。
創作の中でそれが語られるのみの、現実にはいるはずの無い彼女。
だがしかし、彼の前に、彼女は確かに実体を持って存在していた。
彼女の声もまた、スピーカーから聞こえるのではなく、彼女の口から響く。
「創る事を守るという事は、つまり、創らざるは守られずという事。まあね、それでも別に、穏当な感想や、
妥当性のある批評をつけるならば、それは創作の糧になるのだからOKよ。創作に繋がるのならば、
それすらもわたしは守りましょう。でもね……」
男は動けなかった。
蒼髪の女神が自らに向ける視線、そこに込められた一つの意志に縛られ、動けなかった。
それは、心臓を居抜き、内臓を砕き、全身の血流を沸騰させ、惨めにあらゆるものを垂れ流して死ぬ、
そんな情景を連想させられる、死を込めた意志――殺気。
「でもね……自己満足の為に、壊すだけの言葉を叩きつける事――これは許せない」
男は、直感した。
「許す理由が――無い」
自分は、これから消されるのだ、と。
男の口をついて出た言葉は、だがしかし、謝罪や懺悔ではなく……悪あがきだった。唯一動く口を、
彼は自己の正当化の為に動かした。そうして彼はいつも難局を乗り切ってきた。いつも彼の前に
立ち塞がった敵は、最終的には彼の前から消えた。いなくなった。
今回も同じだと、そう彼は思った。
勘違い、した。
それが――彼の運命を、決める事になるとも知らず。
「許すとか許さないとか……そんなのお前に決められる筋合いは」
「あるのよ」
だが、その悪あがきをも、彼女は両断した。
いや……悪あがきだったからこそ、両断した。
「だって――私は、神様なのよ?」
"最早、この者に可能性は無し"
冷たい瞳がきらめくと、辺り一面に蒼が広がった。
蒼。
ただひたすらに蒼。
死を、予感させる色。
人は、死ぬ直前どうなるか。
血の巡りが止まった瞬間どうなるか。
曰く――蒼くなる。白くなるのはその後だ。何もなくなるのはその後だ。
蒼の後に白。
白とは虚無。
故に、蒼の後に虚無。
蒼の後に、絶無。
故に、蒼たる彼女は、無を手繰る能を有す。
それを知る者は、いない。
それを知り得た者は、同じく無と化すが故に。
彼のように。
蒼に飲み込まれる、彼のように。
「……こういう風にしかできない自分が、わたしは嫌い」
動かなくなった"それ"を見下ろしながら、彼女は呟く。
「……何も創れない自分が、わたしは嫌い」
何者をも産み出せ無い自分を想いながら、彼女は呟く。
「……貴方は、創れたのよ? わたしとは違う。貴方は……わたしとは違ったはず」
問いかけに、可能性の提示に、既に無と化した"それ"は応えない。
「……そうしてくれれば……わたしは……わたしは……」
"あなたの事が、好きになれたかもしれないのに"
最後の言葉は口に出さず、彼女は泣き笑いのような表情を浮かべ、その場から消え去った。
一つの可能性を、既に零だった可能性を無へと消し去った、その場から。
何者をも創れず、故に何者をも創る者を愛し、守る。
それが彼女。
蒼髪の女神。
H・クリーシェ。
彼女は見守る。
創作を。創作する者を。
それが、常套句の如き、ただの気休めと落胆の繰り返しであろうとも。
それでも彼女は――
-fin-
ここまで投下です。
677 :
◆91wbDksrrE :2010/03/16(火) 22:00:46 ID:Obn6rjMH
あげ忘れ。
乙。
KAKKEE&怖ぇw
そして発子新設定来たw
神様っぽくなってきたぞ!
679 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 00:23:01 ID:pjvA7R85
発子は創れない神様か。投下を見たらなんとなく投下したくなったので桃花を投下。
「全ての創作物には創作者がいる。逆に言えば創作物には必ず創作者がいるのだから野良創作物はいないということになる。
つまり全ての創作物は創作者の創作の中でしか動けない。というのが普通の考えになるわけ」
ここは海沿いの創発の館(仮)。の図書室内部。
梯子を用いないととても手に届かない高さにまで置かれた本たちがこの世界での地震の少なさを教えてくれている。
同じスペースでも高さがこうも変わると本の量も相当数変わるであろう。地震プレート爆発しろ。
地震プレートと本の量はさておきサムライポニーテール少女、無限桃花は眼鏡を掛けた桃花と会話をしていた。
あのおしゃべり桃花(先日怪我したが次の日に完治。医務室には化物がいる模様)が行かなそうな場所を選んだはずだが
まさかそんなところにこんな図書館の主がいるとは思わなかった。そういえば前に言った図書館にも紫な主がいたような気がする。
「創作者が右向けと言えば右を。左向けと言えば左を。私達創作物はそんな存在なのよ。でも実際のところは
そんな束縛は感じない。むしろ自由なほど。そこがわからないのよね。あくまでも設定された中でしか動けないのは
確かだけど設定すら守れば自由に動ける。いや、でももしかしたら私達の行動全てが創作者の掌の上なのかしら」
眼鏡の桃花はひたすら話し続ける。相手が聞いてもいなくても関係ないようだ。相手がいることが大事なのだろう。
とは言うもののなんとなく興味のある桃花はちゃんと話を聞いていた。
「しかしそんなこと考えても詮無いことじゃないか。創作者の意思なんて創作物はわからないだろう?」
「そうね。私達はわからないわ。最も第一次創作者というのかしら。あのハルトシュラーに聞いても
どうせ素っ気無い答えしか返って来ませんし第二次創作者、私達に直接手を加えた創作者には会えない……。
と言うよりも会う能力を持っていない、というべきね」
「ん? あるのか? 創作者に会う能力」
「あるわよ。確か……」
本棚の一点を指す。すると本が自分から本棚から出て、眼鏡桃花の手元に飛んで来た。
「それが君の能力か。便利そうだね」
「魔法を使う能力。まぁ便利ね。強いし……」
本にめり込むように見てはページを捲っている。眼鏡を掛けているのに見えないのだろうか。度はちゃんとあっているのか心配になる。
ちなみに眼鏡を掛けていると目が悪くなるという。ちょっと遠くのものが見えないなと思い始めたら眼鏡屋で度を変えてもらおう。
度が合っていないとさらに視力悪くなるという悪循環に陥ってしまう。
680 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 00:24:44 ID:pjvA7R85
「あった。ハルケギニアという世界に生まれた桃花が創作者を召喚してるわね。ハルケギニア自体は既に違う創作者が創った世界
みたいだから二次創作とかなのかしら。他にも数件報告されているわね。かなりレアな能力ね」
「すごいなその本……。全員載っているのか」
人が殴り殺せそうなほど分厚い桃色に染まった本を閉じる。すごいかもしれないがほしくはない。全く。
「いや、確認されているだけしか載ってないわ。能力上確認不能なんてのもいるみたいだしそもそも感知出来なければそれまでね」
「別世界まで感知しといて感知不能って一体……。で、何人乗っているんだ?」
「……3943人ね」
「えっ」
「どうかしたの? 別に無限にいるはずなんだから驚くことでもないでしょ。むしろ少ないくらいだわ。
ある程度まではアンテナさんが感知してくれるみたいだけどどうしても遠い世界になると感知タイプの桃花しか出来ないわね。
もっと力の強い感知タイプの桃花がいればいけそうなんだけど……。やってこないかしら」
既に桃花の理解を超えた話だがどうやら話しているというより独り言に近いようだ。本を開いて、ページを捲りながら呟く。
桃花はその様子を見て、ため息をつき周りを見渡す。図書館には表立って見えるものだけでも相当数のしかもかなりカラフルな本がある。
本来本の表紙というのはそんな奇抜な色にしないような気がするが眼の前に桃色の本がある以上はどうともいえない。
「ああ、そういえば枠を超えた桃花たちがいたわね」
本を捲る動きを止めて眼鏡桃花が言う。
「枠?」
「そう。創作物の枠。というよりも設定を乗り越えたって感じかしらね。例えば18歳でなかったりポニーテールじゃなかったり女じゃなかったり
刀を持っていなかったり。今言ったやつはハルトシュラーが大前提として創った設定だから本来は破れないはずなの。例え第二次創作者が
そこを変えたとしても必ずそこに戻る」
「髪型ぐらい変えられるだろう」
桃花はそういうと髪留めを外した。まとめられた黒い髪が背中に降り注ぐ。
当然のことながら風呂に入るなどの髪留めを外さなければいけないときはちゃんと外してはいるがこのように特に意味もなく外すことは決してない。
なぜならば設定されているからだ。『無限桃花ポニーテールである』と。
しばらくは涼しい顔をしていた桃花だったが次第に顔が赤くなって来て体を揺らしはじめた。艶かしい吐息をしながら髪を触っては離すを繰り返してる。
眼鏡の桃花はそれを紅茶を飲みながら見ている。特に驚く様子もない。既に試したことがあるのだろう。
「んっ……!」
驚くほど早いスピードで髪を束ねると瞬時に髪を留めた。結んだものの顔はまだ赤く短く早い呼吸をしている。
「はぁ……はぁ……なんだ、この気持ちは」
「体が火照って来るんでしょ? なにかしらね。外すと欲情でもするのかしら。そんな気分にならないけど」
そのものずばりを言う。それを聞いて桃花はまた顔を赤くする。
「私が、欲情など、そんな、ハレンチな」
「とりあえず息を整えなさい。つまりどうあがいても設定を乗り越えられない。屋上行ったことない? あの桃花は髪を切ってまで
設定を乗り越えられるか試したのよ。どうあがいても今の私達には不可能だわ。でもね、越えることは出来るのよ。
男の無限桃花は生憎知らないけどショートカットだったり刀を持ってなかったり年上だったりする桃花は確かに存在するわ。
でもね、どうやってそうなったかはわからないの。本人たちさえもわからないみたいだしね。もしもその方法がわかれば。
私達はそれこそ自由になれるのよ」
「ふぅ。しかし自由になってどうするんだ? ここいれば安全なのよ」
「ここにしかいれない。同じ設定上しか歩めない。自由でいて束縛された身。安全の代償には大きすぎるわ。
それに私は……」
眼鏡の桃花は視線を落とし、消え入りそうな声で言う。
「創作者の気分次第で抹消されるような儚い存在なんていやだ……」
創作者にとって創作物は簡単に作ることも消すことも出来る。
ただそれは創作物にとってどんな出来事なのだろうか。
どっとはらい。
なんか上限行数より先にバイト数に達してしまう悲しさ。もっと推敲すればいいのだろうけど
面倒なんです。ごめんなさい。
681 :
無限桃花〜Under the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 01:18:17 ID:DfYUFGj4
乙乙。髪解き桃花ハァハァ‥‥
こっちも負けずに投下。
682 :
無限桃花〜Under the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 01:19:40 ID:DfYUFGj4
ーーー轟音が響いた。雪煙が舞い上がり、巨大な頭部が落下した。それは地面に積もった雪へ自らの重みで食い込む。
残された七つの頭はそれを見つめ、同時に怒りと苦痛の叫びを上げる。
そして、己の首の一つを斬り落とした桃花に猛然と襲い掛かる。
桃花は避けるどころか自ら飛び込み、村正の切っ先を大蛇の上の婆盆へ突き立てるーーー
一瞬の出来事だった。婆盆と大蛇が現れ、宣戦の口上を垂れた時、既に桃花の刃は大蛇の首の一つに食いついていた。
無粋な一撃だろうが、これが婆盆の意志に対する桃花の解答だった。
何者にもジャマはさせない。どれほどの存在が立ち塞がっても、捩伏せて進むのみ。
「なるほど、お主の覚悟は見て取れた」
婆盆は桃花の刃を受け止め、そう言った。
大蛇は激しく身もだえしながら桃花へ食らい付かんと頭を振り回す。
口からは溶けた金属がメタルジェットとなり吐き出される。RF4を撃墜した炎の壁は、大蛇が放った、超音速で飛ぶ熱せられた金属の壁だったのだ。
「桃花よ、妖の始まりを知っているか?」
婆盆は大蛇の上で語り始める。
桃花はメタルジェットから身をかわし、稲妻を大蛇に放つ。
「‥‥妖とは人の思いが具現化された物だ。あらゆる思いが形を創り、魂が宿った時、そこに妖が生まれる」
桃花の放った稲妻は大蛇の首の一つをさらに焼く。婆盆はなおも語る。
「練刀は一降りの刀が人々に恐れられ、やがては意志を持った。悪世巣は自然信仰の中で生まれ、稲荷信仰と共に神へと成った」
大蛇は苦痛の叫びを上げる。残る紅い目をした首を束ね、一斉にメタルジェットを放つ。
「猿参も同様、自然信仰から生まれた。山の猿による農作物の被害を恐れた人々が生贄を捧げ、やがては人を喰らう鬼となる。
私も同じだ。山岳信仰の果てに、そこの環境を特別な物と考えた人々の思いが私を生んだ」
683 :
無限桃花〜Under the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 01:21:28 ID:DfYUFGj4
大蛇が放ったメタルジェットは溶けた金属の壁となり、地面を焼きながら桃花に迫る。RF4を撃墜した攻撃だ。
まだ婆盆は語るのをやめない。
「この大蛇はかつて滅ぼされた産鉄民族の怒りが具現化した物だ。無数の人間の思いが一つとなり、そして神話に語られるほどの最大の魔物となったのだ」
熱を帯びた金属の壁は桃花を包む。だが、桃花はそれを斬り裂き、大蛇と婆盆に向かって突進する。
戦闘服である袴は既に綻び始めていた。傷付いたのではない。変わりつつあるのだ。
「‥‥人間とは恐ろしい。その力は自らを超える物すら易々と生み出す。そして自分自身をも神に近しい物へと変えられる。その神すらも人々が生み出したのだ」
桃花は大蛇の首の間に潜り込む。そしてその首を一本、また一本と、一太刀で斬り落とす。 頭の一つが突進する。桃花はそれを跳んで回避し、落下と同時に村正を突き立てた。刹那、頭上から紅い光が吹き付けられる。
別の頭が首一つ犠牲にし、桃花ごと焼き払おうとメタルジェットを浴びせ掛けたのだ。
それを見ていた婆盆はさらに言う。桃花の生存を確信して。
「かつては天に座する輝かしい方だった。神となる前も素晴らしい方だった。あの裏切りさえなければ、今も天神として崇められたろう」
自分の頭の一つを焼き払った大蛇はそこを見つめる。その頭は溶けた鉄にまみれ炎を上げている。いかに桃花と言えど、普通ならば死んでいてもおかしくはない。
だが、燃え上がる鉄の海の中から、黒い稲妻が放たれ頭の一つをさらに打ち砕いた。
「‥‥どれほどの悲しみだっただろうか。陥れられ、死してなお裏切られた。その思いは深い深い怨みとなり、天神は闇へと堕ちたのだ。
天神は、自らの思いで魔道に巣くう邪悪と変化したのだ」
鉄の海から桃花が飛び出す。ダメージは無い。もはや日本最大の魔物すら、桃花には及ばない。
684 :
無限桃花〜Under the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 01:24:47 ID:DfYUFGj4
「桃花よ、お前も同じだ。彼方への思い、覚悟。それがお前を変えてゆく。千年前の時も、そして今も。妖には無い力‥‥。思いの力がお前を強くする」
残る一本の大蛇の首と桃花は睨み合う。ほぼ勝敗は決していた。
もう大蛇と言えど桃花に打ち勝つ力は残されていない。次々と落とされた自らの首は不様に地面に転がっている。
桃花は村正を構える。大蛇はその口を大きく開け、最後の一撃を繰り出すべく桃花へ突っ込む。
一刀。黒い刃は残像を残し振られる。
大蛇の頭は縦に割れ、桃花の両脇を通過していく。
伝説の魔物、八岐大蛇は敗れ去った。
残るは、婆盆だけ。桃花は大蛇の胴の上に立つ婆盆へと歩みよる。その姿はもう袴姿ではない。
擦れたボロ着れのような、漆黒の闇の衣に包まれている。無限の天神。それが現れようとしている。
桃花は婆盆と並び立つ。婆盆は今だ動かない。ただ、どっしりとそこに立つだけだった。
「‥‥‥私を斬らぬのか?桃花よ」
婆盆は言う。桃花は返す。
「なんで‥‥。なんであなたは彼方の為に戦うの?‥‥‥なんで?」
「気付いておったか」
「ええ。婆盆、あなたは‥‥‥。寄生じゃない」
「いかにも」
「じゃあなんで?彼方は寄生として仲間を集めていた。練刀も悪世巣も‥‥。この怪獣だって、寄生の‥‥‥彼方の力を感じる。でもあなたは違う。あなたはただの妖怪‥‥」
「簡単な事だ。私は千年前からあのお方に仕えて居る。彼方としてこの世に転生したならば、私は彼方に仕えるのみ」
「なぜそこまで‥‥?」
「千年前に誓ったのだ。私は、あのお方に命を捧げると。神となる前も、闇に堕ち邪悪となった時も、この世に復讐を誓った時も。」
「あなたが今まで彼方を育てたんだよね?」
「‥‥‥そうだ」
「ずっと一緒に居たんだよね」
「そうだ」
「ずっと、彼方を護ってた」
「‥‥‥‥‥」
「ずっと、彼方を大事に思ってくれてたんだよね?」
685 :
無限桃花〜Under the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 01:25:43 ID:DfYUFGj4
「彼方の思いを感じるの。彼方にとってもあなたはとても大切な存在」
「もう言うな。桃花よ」
「でも‥‥‥」
「言わずとも良い。私は迷っている。彼方はお前を殺したいと思っている。だが、同時に会いたいとも思っている」
「あなたは私を殺すほうを選んだ」
「そうだ。どちらが正しいかは解らない。故に、今は手を出せずにいた」
「今はどう思っているの?」
「‥‥‥どちらにせよ大蛇を破るほどのお主を止められるほどの力は持ち合わせておらぬ。もう行かせるしかない」
「ありがとう婆盆」
「何?」
「ずっと‥‥彼方を護ってくれて」
「‥‥‥。行け、桃花よ。行って‥‥‥殺されてくるがいい。私は見守ろう。たとえ結末がどうであれ‥‥‥」
686 :
無限桃花〜Under the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 01:27:13 ID:DfYUFGj4
投下終了。
うおお…桃花かっこいいよ…婆盆もかっこいい…
688 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 02:58:51 ID:HzKrQCW3
乙
感想投下させてくれ
>>673-675 未来の存在を暗示する、「ゼロ」の可能性と
全ての創造を拒絶する「無」の可能性という対比がgj!
死ぬ前の蒼〜の所に思わず感嘆した。
全体的に発子というキャラを見る目が変わったんだぜ…
>>679-680 桃花×3943人…だと…?
無限桃花への飽く無き探究を軽いタッチの文体と会話で綴るこのシリーズ好きだww
髪解き→発情設定極めてgj!
>>682-685 毎度乙です
妖達の具現化エピソードにやたら説得力があってワロタwwおまえらそうだったのか…
婆盆の千年の忠誠と孤独に全俺が乾杯します。
さぁ、あとは本職が髪解き桃花を描くのを待つだけだ。
691 :
無限刀火〜infinites〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 11:22:56 ID:DfYUFGj4
692 :
無限刀火〜infinites〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 11:25:11 ID:DfYUFGj4
足元に小汚い物が転がる。ごろごろと音を立てて転がるそれは生き物のように血飛沫を撒き散らした。
いや、生き物だったのだ。寄生となる前は。 俺はひたすらに連中を殺戮していく。感情はいらない。目の前の寄生を殺せばいいだけだ。 それこそ俺が生きる意味。この世に存在する理由だと思っていた。
刀火という名前はその為に付けられたはずだ。ただ、寄生を殺す為に。
「ぞろぞろ現れやがって。そんなにズタズタにされたいか」
俺は刀を構える。銘は知らない。斬り過ぎて刃は欠け、連中の血潮で錆び付いている。おかげで鞘には収まらない有様だ。
だがそれでいい。どうせ、剣を鞘に収める暇など無いのだから‥‥‥
寄生の一人が銃をこちらに向ける。たしかあれは、ウィンチェスターとか言う新型銃だったな。連中も頑張るもんだ。
だが無駄な事だ。連中の動きは手に取るように読める。幼少からそのために練磨してきたのだ。
「死ね」
俺は一言だけ言って、向けられたライフル銃ごと寄生を両断した。
上半分を無くした人の形骸からは火山のように血が吹きでた。
辺りに血の雨が降る。狂気の画だろうが、連中の死こそ俺の快び。
紅い地面こそ我が楽園なのだ。
と、そこまでだった。少々快楽に浸り過ぎたのか警官に嗅ぎ付けられたようだな。
この状況じゃ俺はどうみてもただの辻斬り。しかも帯刀はご法度のご時世だ。捕まったエライ目に合う。さっさと逃げるに限る。
俺は闇を走り、川へ飛び込んだ。血まみれの体を一気に洗えるし、臭いも消える。
そのまま流れ付いた先には妹が待っているはずだ。いつも使う逃走経路。おかげで複雑な水路の構造を覚えてしまったよ。
693 :
無限刀火〜infinites〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 11:26:50 ID:DfYUFGj4
「兄さん。またハデにやったのね」
妹の第一声がそれ。
「悪いか。人を殺したわけじゃないんだ」
「世間じゃまた辻斬り出たって大騒ぎよ」
「俺にはどうでもいい」
そうだ。俺には何の関係も無い。
ただ、寄生を殺せればいい。だが‥‥‥
「兄さん‥‥‥。いつまで続けるの?」
「いつまで?」
「いくら寄生を斬っても、寄生の数は減らない。兄さんも前言ってたじゃない。元を絶たねば意味が無いって」
「何が言いたい?」
「兄さんは‥‥‥。寄生から人々を守る事なんてどうでもいいんだ。ただ、寄生を斬りたいだけ‥‥‥」
「黙れ」
「だってそうじゃない。毎晩々々、ただ寄生を斬ってるだけ。大元を探そうなんてそぶりは一度も‥‥‥」
「黙れと言っている!!!!!」
思わず大声を上げてしまった。彼方の怯えた表情は俺に罪悪感を感じさせるに十分だ。
「すまん」
俺は川辺へと歩く。
水面に映った己の顔を見て、己に問い掛けた。
「俺は何者なんだ?」
「俺は何故寄生と戦う?」
「‥‥‥運命から逃げているのは‥‥解っている」
「イヤなんだ。俺は自由になりたい。誰にも束縛されず、誰にも指図されない。宿命すら俺は拒否する。だが‥‥‥」
「それでいいのだろうか?俺は何者なんだ?」
「もし居るなら教えて欲しい。俺が何を成すべきか‥‥‥」
「兄さん‥‥‥」
彼方が後ろから声をかける。
「まだ‥‥体濡れてるわ。風邪ひいちゃう」
「ああ、すまん」
「はやく行きましょう。お腹すいたでしょ?」「そうだな」
俺は妹と歩き出した。
俺は無限刀火。火の如く刀を振るい、寄生を斬る。そのために生きている。
ただ、それだけの為にーーー
694 :
無限刀火〜infinites〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 11:27:40 ID:DfYUFGj4
投下終了。
695 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 12:25:22 ID:HzKrQCW3
兄貴…だと…
ムラムラしてヤった。
今は反省してる。
あの光のまとめ人がこねぇ‥‥‥
なんかあったか。心配だ。
忙しくてまとめどころじゃねえよ
そうだったか。まぁリアル優先だ。
落ち着いたら来てくれ。
言い忘れた。いつもありがとう。本当に助かる。
あとこのツンデレめw
701げと
703 :
無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/19(金) 00:39:52 ID:tVJM7UM8
投下開始。
704 :
無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/19(金) 00:40:58 ID:tVJM7UM8
「数が多過ぎるな。いくら何でもこりゃ大変だ」
「だから言ったんですよこのバカガラス!」
黒丸と理子は寄生に囲まれている。無数の妖の寄生はいくら倒しても再現なく蘇る。
天叢雲剣を持ってしても、「寄生」を消す事は出来ない。
ただ薙ぎ払うのみ。寄生を切り裂けるのは寄生の力しか無いのだ。村正のような。
「先輩!どうするんですか!?弾もそんな無いですよぉ!?」
理子は叫ぶ。携行したMP5に使用する特殊な9ミリ弾は無限には無い。ここに居る寄生程度ならば、その特性上一発で消す事が出来るが、なにしろ数が多い。
圧倒的な数の力。それはただの人間である黒丸達には変えられない。
黒丸は天叢雲剣を振るう。しかしそれでもなお寄生は押し寄せる。皆、捨て身なのだ。
影糾にとって、彼方にとっては彼等はただの捨て駒に過ぎなかった。
そもそも、たとえ黒丸を殺しても全滅しても、彼方にはどうでもいい事なのだ。
「先輩‥‥!ヤバイです」
「何がだ!?いいから撃て!!」
「撃つ弾がもう無いんですよ!!」
「何!?ウソだろ!!?」
「ウソ言う余裕無いです!持ってきたマガジン7個もう無いです!!」
既に黒丸達は数十の寄生を消した。しかし、もう限界に近い。周りはいまだ無数の寄生だらけだ。
その時‥‥‥‥‥
突如、寄生の動きが鈍りはじめる。まるで魂が抜けたように。
「なんだ?どうしたんだ?」
「先輩‥‥。どうしましょう‥‥?」
「俺が知るか。まだ動くな」
寄生は動かない。まるで時が停まったようにーーー
「何が起きている‥‥‥‥?桃花さん‥‥」
705 :
無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :
桃花は走っていた。いや、正確には地面スレスレを飛んでいる。
身体からは黒い影が噴き出す。纏う闇の衣は翼のように広がり、黒い稲妻をたたえる。
婆盆は言った。覚悟がお前を強くすると。
桃花の覚悟。それは全てを投げうってでも、彼方を救う事。宿命すら捩曲げる。それほどの覚悟。
やがて見えてくる湖。その中に立つ剣のように鋭い岩山。その頂上を目指す。
桃花にはもはや足場など関係なかった。ただ直線的に進むのみ。地面も、水面も。そびえ立つ断崖すら無意味だった。
剣のような岩山、天神の細道を桃花は登りはじめる。
頂上は紅い雲が覆っている。血のように紅い、この世の物では無い雲。その先に居る。
「彼方‥‥‥」
桃花は呟いた。
歌が聞こえ始めた。初めて聞く声。だが、それは間違いなく彼方の物だとすぐに解った。
驚くほど透明で、憎しみが篭った声
とおーりゃんせーとおりゃんせー
こーこはどーこの細道じゃー
天神さーまの細道じゃー‥‥‥
クスクスクス‥‥‥‥
彼方の声は遥か天空から響く。向こうも解っている。もうすぐ相対する事を。
とおーりゃんせーとおりゃんせー‥‥‥
クスクスクス‥‥‥‥‥
姉さん、早く来て。
こーこはどーこの細道じゃー
天神さーまの細道じゃー‥‥‥。
クスクスクス‥‥‥‥
桃花は紅い雲に飛び込む。その雲は水蒸気では無かった。血だ。血が混じった雲だった。
分厚い雲が薄くなり、うっすらと太陽の光が見える。もうすぐ雲を抜ける。
そして‥‥‥‥‥。
「これは‥‥‥‥」
桃花が見た物。それは紅い雲の海に浮かぶ荒野。
あの細長い岩山の先、雲に隠れた場所には、ただっ広い地面があった。彼方が用意した、決戦の場所だった。
そこに一人立つ少女。桃花のように影を纏い、紅く輝く瞳をした‥‥‥。
「‥‥‥彼方」
「久しぶりね。姉さん」