【創作】お題創作スレ【発表】

このエントリーをはてなブックマークに追加
29創る名無しに見る名無し
彼女は樹の前でたたずんでいた。
風が彼女の袴の袖を撫でると、同調するかのように頭の上で結んだ長い黒髪がゆらゆら揺れる。
腰に差す一本の刀。それは彼女の美しい姿にとても似合っているようでもあり、まったく似合っていないようでもある。
「花がお好きなんですか?」
僕は恐る恐る話しかけてみた。
「この花は私の名前の由来なんだ。」
交わした言葉はそれだけだった。
それからどうしたのかまったく覚えていない。
いつの間にか僕は去ってゆく彼女の後姿を眺めていた。
ただ鮮明に残っているのは、この桃の花と同じ色をした、綺麗な彼女の唇。