【妖怪】人間以外の女の子とのお話27【幽霊】

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@ピンキー
オカルト・SF・ファンタジー、あらゆる世界の人間以外の女の子にハァハァなお話のスレです。
これまではオリジナルが多いですが、二次創作物も大歓迎!
多少の脱線・雑談も気にしない。他人の苦情を勝手に代弁しない。

<前スレ>【妖怪】人間以外の女の子とのお話26【幽霊】
http://yomi.bbspink.com/eroparo/kako/1234/12340/1234097929.html

<保管庫>
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/
 →「オリジナル・シチュエーションの部屋その5」へどうぞ。
2名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 02:39:45 ID:ZMZqD0vF
【妖怪】人間以外の女の子とのお話25【幽霊】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1212773145/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話24【幽霊】
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1212773145/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話23【幽霊】
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199204809/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話22【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1189137444/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話21【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1175519231/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話20【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1163776989/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話19【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153583027/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話18【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149415855/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話17【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1138894106/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話16【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1136184690/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話15【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1129137625/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話14【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1123248462/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話13【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1118943787/
3名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 02:39:59 ID:ZMZqD0vF
【妖怪】人間以外の女の子とのお話12【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1112711664/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話11【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1105867944/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話10【幽霊】
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1102854728/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話9【幽霊】
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1099739349/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話8【幽霊】
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1093106312/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話7【幽霊】
ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1088018923/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話6【幽霊】
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1084053620/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話5【幽霊】
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1077123189/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話4【幽霊】
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1072/10720/1072019032.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話3【幽霊】
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1065/10657/1065717338.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話U【幽霊】
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1047/10479/1047959652.html
人間じゃない娘のでてくる小説希望(即死)
ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1046/10469/1046994321.html
4名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 02:45:14 ID:ZMZqD0vF
<関連スレ>
かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その13】
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1210258452/
【獣人】亜人の少年少女の絡み8【獣化】
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1225275835/
ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α7
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1196249405/
触手・怪物に犯されるSS 19匹目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1233439018/
猫耳少女と召使いの物語15
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1204637469/
魔法・超能力などの非現実的能力でエロ妄想 その6
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1200565700/
死神萌え
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1156436078/
【シスター】聖なる女を貶める2【女神】
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1203129214/
【妖精】ちっちゃい女の子でエロパロ【小人】2
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205155004/
人外×人間でハァハァするスレ
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1206021464/
5名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 22:20:35 ID:ccGuljLM
これは>>1乙ではなくて、わっちの自慢のしっぽじゃから勘違いをするでないぞ!
              |\       |\
              l lヽ`-‐ '´ ̄ `ヾゝヽ  つ
                 シ~ /" `ヽ ヽ  `、l     つ
             //, '///|! !‖ ヽハ 、_ヽ  つ
             〃 {_{\」」 L|l|/リ l │ |ヽ   つ
  ____.      レ!小l●    ● 从 |、| )
 く  ノ::::::;;;;;;\.     ヽ|l⊃ r‐‐v ⊂⊃ |ノハ´
   ̄ ̄フ;;;;;/ /⌒ヽ__|ヘ  ヽ ノ    j /⌒i !ヽ
    /;;;;/  . \ /ヽ.| l>,、 __, イァ/  ///ハ
  /;;;;∠___ /ヽ./| | ヽヾ、 /,{ヘ、__∧/ハ !
 く:::::::::;'::::::;':::::::;'::::::7ヽ< } /   l丶× / ヾ l l''ハ∨
6名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 21:57:04 ID:JWsnHZgt
>1乙と言っておく!
7名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 23:46:57 ID:ce3bmsZ8
z
8名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 00:08:45 ID:Pzs8IZRQ
ほしゅる
9名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 19:14:46 ID:q2brsNng
妖精スレで一ノ葉出演中
エロ無し狐モードだけど
10名無しさん@ピンキー:2010/03/11(木) 20:08:10 ID:Eslc9Mfb
人外って難しいな
書いてみたら普通に人間相手みたいになった
11名無しさん@ピンキー:2010/03/12(金) 22:05:23 ID:2JLDM821
とりあえず投下してみようか?
12名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 22:23:53 ID:u82eWL4s
なんか前に下半身のない幽霊とのSSがあったと思うんだけど、
どれだったっけ?
そろそろこのスレ専用のまとめがほしい
13名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 22:31:16 ID:M7GhbmtW
内臓ファックするやつか
タイトルは忘れた
14名無しさん@ピンキー:2010/03/13(土) 22:32:49 ID:SII8WYWH
>>12
保管庫じゃ駄目なのか?
15名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 05:27:49 ID:QfsN++gu
>内臓ファックするやつか
>タイトルは忘れた
探してみたけど
てけてけの話か?
16名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 14:57:27 ID:wYrHJeCE
>>12
保管庫に『夏の約束』で入ってるやつだったかな
17名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 14:57:36 ID:XyMEjvoe
18名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 15:55:46 ID:cSUm921p
ふるふる
19名無しさん@ピンキー:2010/03/14(日) 21:19:15 ID:1lXjKEDG
ちなみに >>17 とゴブリン娘は作者が同じ
ソースは「広がれ魔物娘の輪!」の参加者一覧No.48

てけてけさんの話って別にあるん?
20名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 01:47:59 ID:+3MF201G
sage
21名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 03:14:29 ID:v9kGbuPf
          Z^ヾ、               Zヾ
          N ヽヘ             ん'い     ♪
          |:j rヘ : \ ____ _/ :ハ;、i     わ
         ぐ^⌒>=ミ´: : : :": : :`<ヘ∧N: :|  し   っ
         ∠/ : : ヘ: : : : : : : : : : : `ヽ. j: :|   l  ち
            / /: : /: /: : : /: : : : ^\: : :∨: :|  て  わ
        / //: : ∧/: : : :ハ : : \/:ヽ : ',: :ハ  や  っ
         /:イ: |: : :|:/|\: /   : :_/|ヽ: :|: : :l: : l  ん  ち
.        /´ !: :l: : l代ラ心   ヽ:ィ勺千下 : | : :|  よ  に
         |: :|: : |l∧ト::イ|    |ト::::イr'|ノ゙: | : :|   l
         |: :l: :小 弋少  :.  ゞ=‐'/: : ;リ : :|  ♪
         |: :|: : 八""  r‐―  V)"/: : /: : ;.;'   />
            Y : : : |>ーゝ _____,.イ⌒^`ーi : :八  </
          ヽ{: : !: /: : /IW ,(|_;i_;|_j__j: : : : \ に二}
      ,      人: ∨: :/{_幺幺 廴二二ノ: : : : : : ヽ
    _b≒==く: : ヾ:{__;'ノ∠ムム>‐弋 : : : : : : j: : : : '.
    _b≒/竺≧=巛_>''7   |   >、!: : : ハ: : : }
           レ'´|/く二>{__,|x-</}: /  } /∨
             /;∠.___ノレ<〕__'´   ´
         __厂X/XX{ ) ヾ!   \ \ヘヘヘ、_
         {{Zんヘ/XXXXじ   |!     `くxべべイ }
         _∧/ん<Xx厶    |!     r' ̄〈ヽ_!〈
        \ L 辷ヒ二二/   |! _/\「   r┘ーヽ`} ノ}
         `ヘ_`¬ヘxヘxヘxヘル^  xヘ厂: :=-: :(◯)'′
           ~^∀ヘxヘxヘxヘ/∀ー=-一'^ ̄´ ̄
22名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 03:24:08 ID:yIogNKIB
保守
23名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 10:50:44 ID:5BJDQ+i+
可愛い幽霊娘に「ユートピア!」と叫んで、ちんちんぶらぶら露出し、ちんちん見て逃げる幽霊娘を追いかけ回したい。
24名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 10:52:46 ID:5BJDQ+i+
でも、物欲しそうに見つめて来た場合は、「君の未練はこれだね?」と言って触らせて射精まで見せたい。
その後「成仏させてあげる。」と彼女を犯したい。
25名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 04:21:04 ID:vGnqjn/i
よいセンスです。
26幽霊の夕子さん(上):2010/03/29(月) 05:08:33 ID:aJ+ITGxV
ちょいと幽霊ネタを投下します。

----------------------------------------------------------------
 赤。
 真っ赤。
 それが私の色。

 気がついたら、血まみれで私は立っていた。
 顔も手も、体中が真っ赤に染まっている私。
 制服のセーラー服の襟を赤で汚して、プリーツの沢山入った紺のスカートも赤黒く濁っている。

 いつからなのか、わからない。
 ただ覚えてるのは耳をつんざくようなブレーキの音。鈍い音。衝撃。

 気がついたら、私は血まみれでそこにいた。


 私の横を人々が通り過ぎていく。
 私はこんなに苦しいのに。
 私は息ができなくて死にそうなくらい辛いのに。

 だれも気づいてくれない。
 だれも助けてくれない。


 だから、私は呪った。
 だから、私は恨んだ。
 私に気づいてくれない奴らを。
 私を助けてくれない奴らを。


 明るいうちはだめ。
 私の声が聞こえないから。

 薄暗くなってから、一人で通りかかる奴がいい。
 そんな奴の後ろから、耳元で囁く。
「苦しい・・・よぉ・・・助けて」
「なんで助けてくれないの」

 霊感、というのだろう。そういうのを感じる奴が十人に一人くらいはいる。
 たまに、びっくりして辺りを見回す奴がいるのが楽しい。
 霊感が特に強い奴は私の姿を見れるらしく、半狂乱になりながら逃げていくのを見るのは胸のすく思いだった。
 真っ赤に染まった顔で奴らの顔を覗き込んだとき。
 恐怖に歪む顔が楽しい。
 その顔がおかしくて。

 毎日、そんなことばかりやっていた。
27幽霊の夕子さん(上):2010/03/29(月) 05:09:09 ID:aJ+ITGxV
 でも。
 ……頭がおかしくなりそうだ。
 私は怖がらせることしかできない。
 一部の人に、わずかな声を聞かせることしかできないから。
 そして私の姿はほとんどの人には見えない。
 たまに霊感の強い人には見えるらしいが、そんな人は慌ててきびすを返して別の道を行くか、あるいは目をそむけて私を無視しながら歩き去るか、二通りのパターンしかなかった。


 私はこんな毎日を過ごす。
 終わらない毎日を。
 幽霊は死なない。
 だから、永遠にそんな毎日を続けるしかない。
 そしてちょっとづつ、私はおかしくなっていくんだろう。
 ケタケタ笑いながら、永遠に路地をさ迷う、地縛霊になっていくんだ。
 何も考えられず。
 生きているものへの怨恨と呪詛だけを抱きながらさ迷い歩くナニカになってしまうんだ。

 悲しい。
 そして悔しい。
 道を歩いてる人たちは、仲良く笑ったりおしゃべりをしたりして楽しそうにしている。
 私はこんなに孤独なのに。
 それを見ているうちに怒りがこみ上げてきて。
 そんな子たちの耳に呪いの言葉を囁いて。
 怖がらせるのは楽しい。でも、それは一瞬だけ。
 恐怖に駆られて走り去る子たちの後姿を見ていると、虚しさしか残らない。


 夜。
 夜はキライ。
 暗くて、だれもいなくて寂しいから。
 朝。
 朝はキライ。
 人たちがみんな楽しそうに歩いてるから。
 夕方。
 夕方は一番キライ。
 人たちがみな、どこか自分の帰れる場所に帰っていくから。






 いつもと同じような日。その日、夕方頃。私はアイツに出合った。

 夕暮れ時の狭い道。そこを一人で歩いている男の子がいた。
 私はそいつに近づくと、
「苦しい…」
と喉の奥から搾り出すような声を出す。
 聞こえる奴はそれだけでびっくりするから。

「うわあっ」
 返ってきたのは、若い驚いたような声。でも、いつも聴く声とは少し違う。
「ええええ!? ……あ、あの、大丈夫なんですか?」
 と、その男の子は私の姿を見て言った。
 血まみれの私の姿まで見えるらしい。
28幽霊の夕子さん(上):2010/03/29(月) 05:09:30 ID:aJ+ITGxV
「ふふ」
 こんなとぼけた子は珍しい。
「か、顔、血だらけですよ」
「そう?」
 にっこり笑いながらわたしは言う。
「私ね、幽霊だから」
 そう言って私は男の子の胸に指を触れさせる。
 いや、触れない。
 生きているものは私には触れない。
 だから、指先は男の子の制服の胸を透けて通り抜ける。

 さあ、叫べ。
 さあ、怖がって逃げ出せ

 でも、その子の反応は違っていた。
「あの…痛くないんですか?」
 男の子の声は変わらない声でそう問いかけてくる。心配そうな声色のままだ。

「…私が怖くないの?」
 とその顔を覗き込むと、
「いや、だって、その…痛そうだし」
 そう言いながら恥ずかしそうに顔をそらす。
 なんだろう。
 この子、なんなんだろう。

「歩道で話してるのもなんだし、ちょっと座らない?」
 私は廃ビルの入り口の階段に腰掛けると、男の子に手招きをする。
 なぜだろう。
「あの、血、大丈夫なんですか?」
「血? わかんない」
 私はなぜだかスカートのポケットにあったハンカチで顔を拭く。
「取れた?」
「あ、右の眉毛の上がまだちょっと」
 なんでこんな普通に話をしてるんだろう。私、幽霊なのに。

 私は会話の仕方を思い出すのに苦労する。
 なんて言えばいいのか。
 相手の言葉になんと答えたらいいのか。
 言葉を探りながら、私はその子と会話を続けた。

 拓海、とその子は名乗った。
 私よりすこしだけ背が低い。
 年齢は高校一年生。

 ということは、私も死んだときはそれくらいの歳だったのかな。
 そう言ったら、「そのセーラー服は○女のだよ」と拓海君は言った。
 名門のお嬢様学校だそうだ。

 私はそんなことすら忘れていた。知らなかった。

 拓海君と他愛のない話をした。
 私は自分のことがよくわからないのでもっぱら拓海君の話を聞くだけなのだけれど。

 拓海君に母親は居ないけど、でも寂しくはないということ。
 父親が毎晩遅くまで働いているので、家の事は全部拓海君がやっているということ。
 高校の授業は難しくて大変だけど、大好きな父親が褒めてくれるのが嬉しいので頑張って学年で十位くらいの成績をキープしてるということ。
 中学校までは陸上部だったけど、お母さんが死んでから家のこととか弟の世話とかしなきゃならないので高校では部活に入っていないこと。
 背が伸びるように毎日牛乳を一リットルは飲むようにしているということ。
29幽霊の夕子さん(上):2010/03/29(月) 05:09:51 ID:aJ+ITGxV
 私のことを聞いてきても、答えられないのが辛い。
 私には拓海君に、自分の名前すら教えてあげられることができない。

「じゃあ、僕がつけていい? 幽霊だからユウコさんってのはどう?」
「ユウコ…」
「うん。夕焼けの夕じゃダメかな。夕子さん」
「夕子。」
「いい名前だと思うよ。夕子さんは夕日に映えて美人だし」
「…美人?」
「うん。夕子さんはすごく美人だよ」
「…そう」

 なぜだろう。
 口元が勝手に緩んでしまう。
 なにか言おうとしても、もごもごと意味のないつぶやきになってしまう。
「あの、最初ビックリしたのは、あんまりキレイな人だからからかわれてるのかと思って」
 拓海君がそう言うと、なぜだか胸がドキドキした。
 死んでからこんなこと言われたこと無い。生きてるときも言われたことあるのかどうかわからないけど。
 はにかみながらそんなこと言ってくる拓海君はなんだろう。……すごく可愛い。


「あ、もうこんな時間か」
 最初に会った頃は夕焼け時だったのが、今はもうすっかり日が暮れきってる。
 帰ってしまう。
 拓海君が。どれだけぶりか思い出せないけど、私とお話をしてくれる人がいなくなってしまう。
 途端に怖くなった。
 この子がいなくなってしまったら。
 もう二度とおしゃべりができなくなってしまう。
 どうしよう。
 どうやったら引き止められるだろう。
 私は立ち上がる拓海君を見ながら必死に考える。
…なにも思いつかない。
 私は拓海くんに触れられない。行かないでと腕を掴んで引き止めることもできない。

 拓海君は、そんな私に振り返ると、言った。
「…あのさ、夕子さん。ここにまた来てもいい?」
 一瞬、息がつまって言葉が出なかった。
「来てくれるの?」
 やっとそれだけを口にすると、拓海君は顔を伏せながら
「夕子さんが迷惑じゃなかったら」
 と言ってくれた。


 嬉しい。
 嬉しい嬉しい。
 拓海君が。拓海君とまた会える。拓海君がまた来てくれる。
30名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 05:10:14 ID:aJ+ITGxV
今回はこれまで
続きは今週中を予定!
31名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 05:17:57 ID:5TYWOHkH
幽霊→夕子→アムネジアという発想は俺だけでないはず
32名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 17:48:20 ID:oxbNEEV4
GJ
初めからこんなに期待出来る作品に出会えるとは…
行動の動機とか、生前の記憶がないとかってのもリアルでいいな
33名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 19:51:15 ID:0FM9Elr6
なんかこれだけで軽く泣きそうになってる俺が居るんですが
34幽霊の夕子さん(中):2010/03/31(水) 02:44:26 ID:1EQq+uTh
>>29の続きー
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 陽が傾き始めてからずっと待ってた。
 まだかな。拓海君まだかな。
 私は昨日拓海君と会った廃ビルの前で、ずっと待ってる。

「拓海君!」
 私が大きく手を振ると、拓海君はちょっと照れたように笑ってくれる。
 学校帰りの拓海君が、小走りにやってくる。
「こんばんわ」
「あ、こっち来て。この下から入れるから」
 拓海君を廃ビルの中庭に誘う。
 いくらなんでも、人通りのあるところでずっと私が拓海君とお話してたら、拓海君がおかしな人だって思われて
通報されちゃうもんね。

「えへへ。来てくれてありがとう。嬉しいな」
「あ、あの、僕なんかでよかったらいくらでも」
 この廃ビルにはちょっとした中庭がある。
 誰も来ないから、ここでならお話しても大丈夫。


 私と拓海君は、コンクリートの段差に腰掛けて話してる。
 拓海君はコンクリの段差に手を突いて、脚をぶらぶらさせながら話す。
 そしてときどき私のほうをチラッと見る。
「で、夕子さん、やっぱり自分のことなにも思い出せないんですか?」
「うん。なんにも覚えてないんだ」
「でもその制服は○女でしょ?」
「そうなの?」
「そうですよ。名門じゃないですか」
「ごめんね。そういうのも覚えてないんだ」
「……」
 ちょっと寂しそうな拓海君。
 そんな顔をさせたくなくて、私は尋ねてみる。
「ね、○女ってどんな学校?」
「えと、名門のお嬢様学校で、頭よくって、ウチみたいな庶民の学校の生徒は声もかけられないようなとこです」
「じゃあ、私死ぬ前はお嬢様だったのかな?」
「きっとそうですよ。夕子さんいかにもお嬢様っぽいですから」
「ホント?」
 と拓海君の顔を覗き込むと一瞬目を丸くして驚いて、頬を染める。
「……ええ」
 そんな顔が可愛くて、私はさらに訊ねてみる。
「ねえ、私ってどんな格好してるの?」
「え?」
「私、鏡とかあんまり見ないからわかんないんだ」
「えっと…髪は長いです」
「あ、ほんとだ」
 前屈みになってみると、髪がサラサラっと垂れる。結構長い。
「それから、髪は黒くてキレイです」
「そうみたいだね」
 髪を摘んでみると黒いし長い。
「…いまどきは染めてる子のほうが多いよね」
「でも、夕子さんは黒髪がキレイだからいいと思います」
「そうかな」
「そうです!」
 妙に力強くそう言ってくれるのがなぜだか嬉しい。
35幽霊の夕子さん(中):2010/03/31(水) 02:45:22 ID:1EQq+uTh
 妙に力強くそう言ってくれるのがなぜだか嬉しい。
「うれしいな。じゃあ、私この髪型のままでいるよ」
「…幽霊にも美容院とかあるんですか?」
「あるわけないじゃない」
 拓海君は可愛いなあ。
「あ、でももしかして私、大昔に死んじゃった幽霊なのかな?」
 全然記憶にないけど。
「○女は戦前から制服変わってないそうです」
「ってことは私戦前の人なの?」
「でも、話し方とかあんまり僕の世代と変わんないですよね」
「そうなのかな」
「そうですよ」

 そのあとも拓海君といろんな話をした。
 拓海君の弟のタケシ君のこと。岳志君と書くそうだ。拓海君は海で、岳志君は山なんだね。
「小2なんだけどね。バカだけど可愛いんですよ」
 私は拓海君の、コンクリートの段差についた手のひらを見る。
 その手のひらのすぐ横に、手を置いた。
 私もそのすぐ横に座って、脚をブラブラさせながら、ほんのちょっとだけ、小指と小指が
触れ合うくらいの近さまで手を近づける。

 小指の先が触れるか触れないか。
 私は幽霊だから触れられるはずも無いんだけど。
 でも、触れるくらいの距離まで近づけると、なんだか胸がドキドキした。

 拓海君の指。
 どんな感触がするんだろう。
 温かいんだろうな。拓海君は優しくて、心が温かい人だから。
 きっと手も暖かいに決まってる。うん。きっとそう。

 小指が熱い。
 指先が痒い。甘くて、どこか痒くて、蕩けそうな感覚。
 こんな感覚は初めて。
 幽霊になる前のことは覚えてないけど、きっと初めてだ。

「岳志はいつもお兄ちゃん、お兄ちゃん、って言ってくれてね」
 そう言って嬉しそうな顔の拓海君。
 それを見た瞬間。
 心臓がズキン、と跳ねた。
 胸の中で。もう心臓なんてないのに。

 手が熱い。手の甲も。指先も。ズキズキするような熱さを感じてしまう。

 ふと、手に目をやると、そこには。
 拓海君の手が、私の手と完全に重なってる。
 私は手の位置を変えてないから、拓海君が手を動かして、手を握ってくれたんだ。

 なんだろう。
 不思議に、体の中がぽかぽかしてくる。
 春の日を浴びたときみたいに、体の芯からじわじわと暖かくなってしまう。
 それだけじゃない。息が苦しい。
 呼吸なんてしてないはずなのに。
 息を吸っても、なんだか胸の奥になにか詰まってしまったみたいな感じがする。


 拓海君と目が合ってしまう。
36幽霊の夕子さん(中):2010/03/31(水) 02:46:10 ID:1EQq+uTh
 拓海君と目が合ってしまう。

 なんだろう。
 なんなんだろ、この、ヘンな雰囲気は。

 拓海君の顔がびっくりするほど近くにある。
 ズキ、ズキ、と体じゅうの血管が。甘くほどけてくみたいに。

 言葉が途切れる。
 私も拓海君も、何にも言えなくなってしまう。

 拓海君の吐息を感じる。
 触れ合えるはずなんてないのに。

 胸が苦しい。
 夕暮れの空に照らされた拓海君の顔が近い。

 なんだろう。
 なんでこんなに苦しいんだろう。

 拓海君の瞳。男の子の目って、こんなにキレイなんだ。

 どうしよう。何を言おう。なんて言えばいいんだろう。






 そんな瞬間、ナアア゛〜〜〜、というような不気味な音がする。

 あ。猫だ。

 私は慌てて立ち上がると、塀の上を歩いてる猫に近づいていく。

「なー、なー、にゃー」

 猫に猫なで声をしてみるけど、この猫は私を全く無視して廃ビルの中庭に降り立つ。
 なんだよ。

「……夕子さん、猫って幽霊は見えないの?」
「あのね、猫にも霊感のあるのとないのがいるみたいなんだよ」

 この猫は私に目もくれず、拓海君の座ってる段差にしゃなりしゃなりと歩いていく。

「このこには私が見えないみたい」
 猫にはいい人かどうか判るんだろうな。
 この虎猫くんは拓海君にてとてとと歩み寄ると、腰に顔を擦り付けながら、ナオ゛〜、と甘えるように鳴いた。
「ごめんね。なにもあげられるものないんだ」
 拓海君はそう言いながら猫を撫でてる。

 さっきはどうかしてたんだよね。きっと。
 拓海君は生きてるし、私は死んじゃってるし。
 なんかヘンなことになるなんてありえないよ。ありえないよね。
37幽霊の夕子さん(中):2010/03/31(水) 02:46:49 ID:1EQq+uTh
「にゃー」
 そう言いながら、拓海君が撫でてる猫の匂いを嗅ぐ。
「にゃー、にゃー」

「にゃー」
 拓海君もそう言いながら、すっかり素直になった猫を抱えあげると、私に向けてびろーんと伸びた猫を掲げる。

 楽しい。
 楽しいな。
 拓海君と一緒にいると、楽しい。




 拓海君が「あ、スーパーの特売があるんで失礼します」と帰った後で。
 なんだか私はニヤニヤしてる。
 拓海君が去り際に「また明日」って言ってくれたから。

 嬉しい。嬉しいな。また明日、来てくれるって。
 私は拓海君のいなくなった廃ビルの中庭で、丸い月を見上げながら思う。
 拓海君は今頃なにしてるのかな。
 岳志君と晩御飯食べて、お風呂に入れたのかな。
 お父さんのお夜食の準備してから、試験勉強してるのかな。
 窓からこの同じ月を見上げたりしてるのかな。

 拓海君。早くまた会いたいな。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

今日はこれまで
続きはできれば今週中に
38名無しさん@ピンキー:2010/03/31(水) 06:13:20 ID:dIcgOlc5
GJ!
39名無しさん@ピンキー:2010/04/01(木) 01:11:07 ID:leXaRB3f
タメか。タメなのか。こっから何か起きるのかな…
でもなにもおきなかったとしても構わないくらい、
なんだかとても読みやすくて良い雰囲気の会話文。GJ。
40名無しさん@ピンキー:2010/04/01(木) 05:21:32 ID:1yRVYKXa
Gjだ
幽霊好きー
41名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 12:27:59 ID:fMSrparW
歳上かな
おねーさん霊可愛い
42名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 12:41:03 ID:STwbqtFR
sa
43名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 13:12:44 ID:Hn6bMiL/
GJ!
特殊なテーマでありながらも、矛盾が起こらないように、丁寧に書かれているいい作品だ
読ませてくれてありがとうと言いたいね
続き待ってるぜ
44名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 03:44:54 ID:Pjw9eoGc
ジェノサァァァイッ!!!
45幽霊の夕子さん(三):2010/04/03(土) 06:18:36 ID:9mQM5UWy
>>37の続きー
上中下で終わりそうにない気がするので今回の投下分が(三)ってことで。たぶん(五)くらいで完結予定です。
---------------------------------------------------------------------------------------------

「拓海君!拓海君!!」
 私はぴょんぴょん飛び跳ねながら名前を呼ぶ。
 拓海君だ。また来てくれた。拓海君だ!
 通りの向こう側で、照れたような顔で拓海君が小さく手を振ってくる。
 また、中庭で拓海君とお話ができる。
 嬉しいな。楽しいな。


「あ、そういえば」
 いつものように、中庭のコンクリの段差に座りながら拓海君とお話をしてると、
拓海君は何かを思い出したかのように言った。
「え? なに?」
「あの、先輩に聞いたんですけど、○女って、ストッキング可になったのってここ10年くらいなんですって」
「え?」
「夕子さん、黒いストッキングじゃないですか」
「あ、そういえばそうだね」
 私は自分の足を見た。確かに、私は黒いストッキング履いてる。
「だから、きっと夕子さんって……僕と10歳以内の歳の差しかないですよ」
「そっかー。じゃ、もしかしたら私と生きてるときにすれ違ってたかもしれないんだね」
「そうですね。でも、もしすれ違ってたら絶対僕は覚えてると思います」
 マジメな拓海君の顔。
「ん? なんで?」
「だって、夕子さん美人ですから」
 拓海君はときどき真顔でヘンなことを言う。
 困る。だって、顔が赤くなりそうだから。
 体の奥がムズムズして、なんだか体温が上がっちゃいそうな気持ちになる。
 胸の一番奥がほっこりと暖かくなる。
 どうしてだろう。コンクリの段差の上に座ってるはずなのに、雲の上にいるみたいな気持ちになる。

「…あっ、そういえば、昨日スーパーの特売って言ってたけど、拓海君お料理できるんだ?」
 私は慌てて話題を変える。
「家ではいつも僕がやってます」
「へー。昨日はナニ作ったの?」
「昨日はピーマンとひき肉が安かったから、野菜ハンバーグにしました」
「すごいね拓海君。私、お料理とかたぶんできないからすごいと思うよ」

「…岳志は野菜食べたがらないんですけど、肉や魚ばっかり食べてるとすぐ風邪ひいちゃうんで
野菜ハンバーグとか、カレーとかにすると食べてくれるんです」
「すごいねえ。まるでお母さんだね拓海君」
 と、私は言ってしまった。
「母さんが死んでから、僕が家のことは僕がずっとやってますから」
 あ。
 イヤなこと思い出させちゃったかな。
「…ゴメン、拓海君」
「え? どうかしたんですか?」
 拓海君は強い。拓海君はいい子だ。私が悪いことを言った、と思ってしまわないように、気を使ってくれてるんだ。
「母さん、二年前に死んじゃったから。僕がするしかないんです」
 そう言いながら、夕焼け空を見上げてる拓海君。
 その目がとても嬉しそうで。その色がすごく優しくて。
 だから、私はさらに訊いてしまう。

「ねえ、拓海君のお母さんってどんな人だったの?」
46幽霊の夕子さん(三):2010/04/03(土) 06:19:12 ID:9mQM5UWy
「ねえ、拓海君のお母さんってどんな人だったの?」
「えーと。まあその、病弱で、ずっと入院してました。えと、その、優しくて…その…キレイな人でした」
 拓海君はとっても大切な事を話してくれてる。
 その表情からそれが判った。
「……拓海君、お母さんのこと大好きだったんだね」
 私にはそうとしか言えない。
「僕と岳志の名前は母さんがつけてくれたそうです」
「……いい名前だね」
「はい」

 拓海君はお母さんの話をしてくれた。
 もともと身体が弱く、病弱だったこと。
 拓海君と岳志君を産んでさらに体力を失ってしまったということ。
 でも、拓海君と岳志君のことを一番に思ってくれていたということ。
 亡くなるまで、拓海君に料理をいろいろ教えてくれたということ。
 嬉しさと哀しさ、暖かさと寂しさの入り混じった拓海君の声が中庭に響いていた。
 その声色だけで、拓海君がお母さんのことがどれほど大好きだったかというのがわかる。

「…ゴメンね。辛いこと思い出させちゃって」
「ははは。まあ、そんなに悲しくは無いんですけど。もう慣れちゃったし――で…」
 そこで口をつぐむ拓海君。
 まだ何か言いたいっぽい。
「…でも、何?」

「…あ、いや、別になんでもない、です」
「――拓海君」
「なんですか?」

 私は拓海君の前に回って、拓海君の顔を真っ直ぐ見つめながら言う。
「……私、拓海君には絶対ホントのことしか言わないよ。私ね、拓海君には絶対ウソつかない。誓うよ」
「あ、ありがとうございます」
「だからね、拓海君。私には、遠慮とか、そういうのいらないよ」
「え?」
「拓海君が言いたいことは全部素直に言って欲しいんだよ。私、拓海君がどんなことを言っても、
絶対に笑ったり、バカにしたり、怒ったり、嫌ったりすることは絶対絶対ないから!
 だから、言いたいことは何でも言って欲しいんだよ」

「……」
 黙ってしまった拓海君。
「……」
 そんな拓海君は目を伏せると、搾り出すみたいに、言った。
「父さんが……父さんめったにお酒は飲まないんだけど、年に一度くらい、母さんの命日近くになると、
たまに酔っ払って帰ってくるんです」
「…」
「…フラフラになって、玄関のドアをガンガン叩きながら、母さんの名前を呼ぶんです」
 拓海君の切なげな瞳。もう止めて、もういいよ、そう言おうとしても、私は拓海君の声に言葉を差し挟めない。
「『かなえー、カナエー』って言いながら、父さん、玄関マットに突っ伏したまま母さんの名前を呼ぶんだ」

 拓海君は目の前1mくらいの地面を見つめながら言葉を続ける。
「そのままゴロンと仰向けになって、『かなえいないのかー、かなえ死んじゃったのかー』って泣きながら、
そのまま寝ちゃいそうになるんです」
「……」
「僕と岳志で父さんを寝室まで運ぶんだけど、そのとき、父さんが言うんです」
「………」
「『拓海も岳志も、体が丈夫で元気な女を嫁にしろよー』って。
 『先に死なれちまって、俺みたいな悲しい思いをするのは俺だけでたくさんだー』って。
 父さん、母さんのこといまだに大好きだから。でも、ガマンしてガマンして、いつもはそんな事言わないのに」

 拓海君が泣いてる。涙は流してないけど。
47幽霊の夕子さん(三):2010/04/03(土) 06:20:09 ID:9mQM5UWy
 拓海君が泣いてる。涙は流してないけど。
 私にはわかる。目から涙は流してないけど、泣いてるんだ。
 私のすぐ横に座ってる拓海君は、涙を流してはいないけど、泣いてる。


 私の手が空を切る。
 思わず、拓海君の肩を抱こうとしてた。
 私の手は拓海君の肩をすり抜けてしまう。
 胸に抱きしめてあげたい。
 いい子だよって。
 お母さんいなくて寂しいのに、気丈に頑張ってる拓海君を抱きしめてあげたい。

「拓海君。私、嬉しいよ。拓海君がなんでも言ってくれて」
「…僕、ヘンですよね。カッコ悪っ」
「ヘンじゃないよ。拓海君、絶対ヘンじゃない! カッコ悪くなんかないよ!」
「……」
「拓海君が、そういう気持ちを話してくれることでちょっとでも楽になってくれたら私、嬉しい。
 悲しかったり、辛かったら、ちょっとだけでもいいよ。私にもそんな気持ちわけて欲しい。
 私もそんな気持ち、一緒に分かち合ってあげたいよ」
 座ってる拓海君の真っ直ぐ前に立って、拓海君の瞳を覗き込む。
 その目に私が映ってるのが嬉しい。
 拓海君。…拓海君。

 そんな拓海君は急に立ち上がると、私のすぐ前に立った。
 私のすぐ前。顔の前10センチに拓海君の顔がある。

 真っ直ぐな瞳の色が私を見つめている。
 どきん、と胸の中が甘く痛くなる。
 全身にその脈動が広がり、心拍一つごとにその甘い疼きは強さを増していく。
 ズキ、ズキ、という甘い疼きはいつまでも消えない。
「…夕子さん、優しいです」
 拓海君は、私のすぐ前に立って、私の肩に頭を預けるようにしながら言った。
 触れ合えないけど、まるで恋人同士みたいに、私と拓海君は夕暮れの廃ビルの中庭で確かに抱きしめあっていた。

「優しいから……」
 そのあとのつぶやきは小声過ぎてうまく聞き取れなかったけど。





「また明日来ます」
 そう言って拓海君は手を振って帰って行った。
 どうしよう。拓海君。
 私、もっと拓海君の力になりたいよ。
 拓海君を元気付けてあげたい。
 どうすればいいんだろう?
 私に何ができるんだろう?
 ちょっと欠けた月を見ながら、それだけを考えてた。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------
今日はここまで
週明けまでに続きを投下できたらいいな
請うご期待
48名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 07:44:33 ID:q6ssMATX
なんでこうチマチマと細かく投下するのか。とてつもなく長い話ならともかく3、4レスだし
もっとまとめて投下出来ないかなぁ
スレを独占したい気持ちは分からなくはないけど途中じゃ感想も付けられないし、他の書き手が投下し辛くなるぞ
49名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 12:06:59 ID:dvb8ZFCH
GJ
なんでこうも涙腺を攻め立ててくるのかと。ありがとう。続きが楽しみだ
50名無しさん@ピンキー:2010/04/03(土) 13:57:40 ID:/sbP/idd
>>47
切ない……GJ!!
ハッピーエンドは見えてこないけどな……
救われる結末にはなってほしい
51名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 02:20:41 ID:gnsESoo/
>>45-47
GJだ!
涙腺弱い俺はすでに涙目さ!
期待して待ってるぜ!
52名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 02:21:41 ID:LO6HlAta
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) +
53名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 13:33:40 ID:daeto5yq
>>48
元々作品なんて投稿されてなかっただろ豚
いい作品を投稿する作者のやる気を削ぐ発言をする前にてめえが書け
そうやって投稿方法に一々ケチを付ける方が、他の作者が来づらくなるということもわからんのか?
54名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 03:14:04 ID:gr+EuaQ3
GJ!
俺も廃ビルに行って夕子に会いに行きたい。

>>53
他のスレでも>>48らしき奴がいて同じようなこと言ってたぞ。荒らしに一々構うな。
分けて投稿なんてのはエロパロ板ではオーソドックスな方法だし何の問題もない。作者は気にしないで自分のペースで投稿してくれ。
一応名前にトリップとか付けた方がいいかも。
55幽霊の夕子さん(四):2010/04/05(月) 03:41:35 ID:UJhOJADp
>>47の続きー
----------------------------------------------------------------------------------------------

 毎日、夕方が来るのが待ち遠しくなった。
 拓海君が来るのをずっと待っている。

「拓海君、夕焼けがすごいね。明日もきっといいお天気だよ」
「そうですね。でも夕子さん、また暑くなっちゃいますよ。もう10月なのに」
「う……私は暑いとか寒いとか、あんまり気にならないんだよ。幽霊だから」
「そういうもんなんですか」
「拓海君は暑いのと寒いの、どっちが好き?」
「…うーん。寒いと食材が長持ちするから寒いほうがいいかな」
「拓海君、ホントに主婦みたいだね」


 拓海君は毎日、学校帰りに私に会いにきてくれる。

「拓海君、中間テストはそろそろなの?」
「明日からです」
「え。そんな、こんなことしてていいの?」
「なんでですか? 夕子さんに会えないと、僕調子出ないんです」
 どうしよう。
 嬉しい。
 幸せ。
 なんていっていいのかわからない。
 死んでから、こんなに嬉しいのが続いた事なんてなかった。
 人を怖がらせることしかできなかった私が。
 こんなに楽しい気持ちになっていいのかな。







 でも、そのしっぺ返しはまもなく私の上に訪れた。




 日曜日には拓海君と会えなくて、寂しくて、辛くて、気がついたら涙がボロボロとこぼれていた。
 おかしいね。
 私、幽霊なのに。死んじゃってて、身体なんてもうないのに。

 拓海君。
 拓海君。
 もっと会いたいよ。
 もっとたくさんおしゃべりしたいよ。
 拓海君の顔がもっと見たいよ。
 拓海君のことを笑わせてあげたいよ。
 拓海君。
 拓海君拓海君。
 ぎゅっと抱きしめてあげたいよ。
 お母さんがいなくて、たいへんだけど愚痴の一つも言わない拓海君を、ぎゅっと抱きしめてあげたい。
 抱きしめて、頭を撫でてあげて、拓海君は頑張ってるよ、いい子だよって言ってあげたい。

 この身がないのが辛い。
 拓海君に触れないのが呪わしい。
 拓海君の傍にいつも居てあげられないのが苦しくてたまらない。
56幽霊の夕子さん(四):2010/04/05(月) 03:44:22 ID:UJhOJADp





 月曜日。今日は月曜日。拓海君が来てくれる日。
 それなのに、拓海君はいつもの時間に来てくれない。
 拓海君。まだ? まだ? まだなのかな? 拓海君? 来てくれるよね? 拓海君? 拓海君?
 もう暗くなっちゃうよ?

「ねえ、拓海君のこと知らない?」
 私は歩道を通り過ぎていく人に、そう問いかける。届くはずの無い声で。

「拓海君。とってもいい子なんだよ。とっても優しい子なんだよ。私のこと、美人って言ってくれるんだよ」
 誰にも聞こえない、そんな声を道行く人に語りかける。

「拓海君、優しくて、頑張り屋で、温かくて、すごくいい子なんだよ」
 私の言葉はだれにも届かない。まるで遠い砂漠を一人旅してるみたいに。

「拓海君、笑うと可愛いんだよ。ぎゅってしてあげたくなるんだよ」
 通り過ぎていく人はだれも聞いてくれない。まるで分厚いガラス越しに話しかけてるみたいに。
 でも、私は話し続ける。

「拓海君。拓海君。寂しいよ。拓海君とおしゃべりしたいよ。拓海君の笑った顔が見たいよ。
 拓海君。一人じゃ私、笑えないよ。わたし一人じゃ泣くことしかできないよ。
 拓海君。声を聞きたいよ。笑顔を見たいよ。拓海君。拓海君」

 幽霊の涙は尽きないらしい。
 涙の水たまりができるくらい泣いても、拓海君は来てくれなかった。







 いつの間にか夜が明けてる。
 私は誰にも見えない。
 私の声はだれにも届かない。
 涙を流しながら、火曜日が始まる。

 拓海君がいない。
 拓海君が来てくれない。
 私のことなんて、もうどうでもよくなったんだ。
 私が幽霊だからダメなんだ。生きてる子の方がいいんだ。

 火曜日の朝。朝。たくさんの人が歩いていく。でも私は誰にも見えない。
 昼。拓海君の名前を口にする。何百回も。何千回も。何万回も。
 拓海君、と呼ぶたびに。口の中でかすかに甘い味がする。舌の上でその名を転がすだけで、
一瞬の間だけは幸せになれる。

 拓海君。拓海君。
 ごめんね。私が悪かったんだよね。ごめんね。ごめん。だから、会いに来てよ。もう一度だけでいいから。
 謝るよ。なんでも謝るよ。ごめん。拓海君。だから、お願いだから会いに来てよ。お話させてよ。拓海君。

 そして気がつけば夕暮れ時。
 拓海君、来てくれるよね。
 あの角を曲がって、いつもみたいに「夕子さん」って嬉しそうに言ってくれるよね。
57幽霊の夕子さん(四):2010/04/05(月) 03:44:52 ID:UJhOJADp
 空耳を何度も聴いた。
 風の音が「夕子さん」という拓海君の声に聞こえて、思わず振り返ってしまう。
 赤ん坊の泣き声ですら「夕子さん」に聞こえてしまい、そんなベビーカーを押す女を恨みがましく
睨み付けてしまった。


 拓海君。お願い。お願いだから来てよ。顔見せてくれるだけでいいよ。お話してくれなくてもいいよ。
 拓海君の顔が見たいんだよ。声を聞かせてよ。拓海君。


 私、一人ぼっちだ。




 暖かくて、優しい拓海君の存在を知ってしまった今では、もう戻れない。
 あの砂漠みたいな無人の世界はもうイヤだよ。
 冬の雪原みたいな寒い世界ではもう、生きていけないよ。
 拓海君。

 無限とも思えるような呟きの果てに、いつの間にか、夜が明けてる。
 水曜。水曜なのかな。もう実は何日も経ってるんじゃないのかな。
 私の頭がおかしくなって、拓海君っていう幻を見てただけなんじゃないのかな。


 うふ。
 ふふふふふふ。
 夢でもいいよ。幻でもいいよ。
 このまま狂っちゃえば、また拓海君と会えるよね。

 ふらふらと廃ビルの前を行き来する。
 夢でもいい。幻覚でもいい。
 拓海君に会いたいよ。
 このままおかしくなってもいいから。
 世界のすべてにうっすらとした幕がかかってるみたいにぼんやりとしてる。
 このまま。このままおかしくなったら。たくみくんにあえるのかな。



 何千回。何万回も行き来してただろうか。

 ふわっ、と心地よい響きが耳に伝わってきた。
「夕子さん?」
「…………た………拓海君っ!!!!」

 一瞬で目が覚めた。
 世界を覆っていたベールが一瞬でどっかに消えてしまう。
「ごめんなさい。ちょっと風邪引いちゃって、学校二日休んでました」
 息を切らせて拓海君が言う。ちょっとだけやつれた風なのは、言ってるように風邪引いてたからなんだろう。

 拓海君の声を聞いただけで、私は元通りになってしまった。
 あんなに苦しくて辛かったのが、拓海君の一声で元通りに。
「いいよ、全然いいよ。拓海君が会いに来てくれたから全然大丈夫だよ!」
 私に身体があったら抱きつくことができるのに。
 拓海君の身体を何度もすり抜けて嬉しさを表現することしかできない。
58幽霊の夕子さん(四):2010/04/05(月) 03:45:19 ID:UJhOJADp


 ビルの中庭で、座りながら話す。
「夕子さんに会えなくて、寂しかったです」
 拓海君がそう言ってくれただけで。
 それだけで、私は足が地に付かないくらいのふわふわとした幸せの海に漂ってしまう。
「私も、拓海君来てくれなくて寂しかったよ。拓海君が寂しいのよりもずっとずっと、寂しかったんだよ」

 うれしさのあまり、
「もし身体があったら、拓海君の寂しさを消してあげられるのにな」
 と、つい、そうつぶやいてしまう。
「…え?」
 拓海君の怪訝そうな声に、私は答える。
「私が生きてたら、拓海君をぎゅっとしてあげられるのにね。残念」
 そしたら拓海君は、顔を赤くして恥ずかしそうに言った。
「そんな……夕子さん美人だから、もし生きてたら僕なんかかまってくれるわけないですよ」
「そんなことないよ! そんなことない。でも……拓海君こそ、彼女とかいるんでしょ?」
「…そ、そんなのいないです。僕ガキだし、背も低いし、ビンボ臭いし」
「ううん。拓海君は大人だよ。背だってちょうどいいし、家のこと何でもできる拓海君はカッコいいよ。
 そんな拓海君がいいんだよ。私、生きてたら拓海君の恋人になってあげられるのにね」


「…かっ、からかわないでくださいっ」
「からかってなんかないよ。私、拓海君にはホントのことしか言わないもん。
 でも、残念。私、身体がないのがこんなに辛いって思ったことないよ」
 そう言って拓海君を見る。拓海君もなんだか、照れてるけどどことなく嬉しそう。
 だからさらに私は素直な気持ちが口をついて出てしまう。
「嬉しいんだよ。拓海君とお話しするの、楽しいから」
「僕も…夕子さんとお話しするの、楽しいです」
「ホント?」
「ホントです。僕も、夕子さんには絶対ウソ言いませんから」

 ふにゃ、と顔がほころぶ。
 嬉しいなあ。嬉しいなあ。
「嬉しいなあ。嬉しいなあ。私、幽霊になってからこんなに嬉しい気持ちになったの初めてだよ!」
 心の中の呟きが、気がついたら声になって出ていた。
「ホントですか?」
「ホントだよ!」

 秋だからか、夕焼けはすぐ夜になる。
 拓海君、帰らなきゃいけない時間になっちゃうよ。
 寂しいな。
「拓海君に取り付いたりできればいいのにね。そしたらずっと一緒にいられるのに」
「できないんですか?」
「ダメみたい。私、そこの交差点の近くからは離れられないみたいなの」
「じゃあ、僕が毎日会いに来ますから」
 その笑顔が胸に焼きつく。そして別の考えも浮かんできてしまう。
「……」
「夕子さん? ダメですか?」
「だ、ダメなんてとんでもないよ。嬉しい。拓海君が来てくれるのはすごく嬉しいよ」
59幽霊の夕子さん(四) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/05(月) 03:46:25 ID:UJhOJADp

 拓海君の言葉にすぐに答えられなかったのは、私の心に暗い渦が一瞬だけできてしまったから。
 一瞬だけ。
 ほんの一瞬だけ。
 私の中に悪い心が生まれてしまった。
 拓海君は、いつか高校を卒業する。
 そして、ここじゃないどこかの町に行ってしまう。
 私の元から去っていってしまう。

 私のものにならないんだったら。

 拓海君が、私の傍にずっといてくれるために…
 ……拓海君が、ここで死んでくれたら。
 方法はわからない。
 でも、もし、そうできる手段があったら。あったとしたら。
 私はその手段を使わない自信はなかった。

 とんでもないよ!
 そんなこと、できるわけないし。
 できたって絶対やらないよ。
 拓海君は元気で生きてるヒトなんだから。

 私なんかと違って、生きてるんだから!

---------------------------------------

今回はこれまで
あと2〜3回の投下で完結すると思います。
それまでお付き合いくだされば幸いです。
念のためトリップつけます。
60名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 03:55:43 ID:e1quSc9L
はあ夕子さんかわかわ
61名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 12:57:46 ID:wYy5LooV
GJ

エロパロなのに純粋に面白い。w
62名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 15:20:32 ID:xNUe8YTy
>>54
>>48だけど勝手に荒らし扱いすんな
感想言っただけだろ
何もかもマンセーしなくちゃいけないのかよ
63名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 17:08:37 ID:Ez7UPqLP
>>62
串経由で書き込んで置いてよくいうぜw それとな、

>なんでこうチマチマと細かく投下するのか。
これは感想じゃなくてイチャモンって言うんだぜ。それとも、お前の中では
こういうのも感想っていうのか?
64名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 17:21:52 ID:gDzS9Xq+
気に入らなけりゃスルーするのが大人ですよっと
65名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 17:39:31 ID:xNUe8YTy
>>63
普通に感想だろ
何言ってんだ
66名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 20:25:05 ID:WPEUlW97
夕子さんが可愛い。そしていじらしく切ないなー
ハッピーエンドにはならないもんだろうか…
67名無しさん@ピンキー:2010/04/06(火) 01:55:41 ID:HNqKLowC
>>63
内容や表現方法は勿論だが、作品って投下方法や書き込み時間とかも込みじゃね?
例えばどんだけ良作でもコメ欄直書きとか時間がないから一レスだけ〜とか読む気がせんわ
68名無しさん@ピンキー:2010/04/06(火) 02:16:15 ID:gBhcPfLI
ある程度まめてくれてるから問題無いですね。

でもって拓海くんと夕子さんの会話がなんかいいね。
拓海くんがいないときの狂想が痛々しくてたまらんです。
夕子さんが最終的に幸せになんといいなあ。

69名無しさん@ピンキー:2010/04/06(火) 02:24:10 ID:NKBb5vhV
何もかもマンセーしなきゃとか小学生の屁理屈みたいで吹いたw
感想とか言いながら内容に触れてもないし、こうやって引っ張る時点でどう見ても荒らしです。本当にありがとうございました

>>67
少なくともこの作品の場合は読みづらくもないし、スレも汚してないだろ
これでダメなら敷居高杉
70名無しさん@ピンキー:2010/04/06(火) 03:23:39 ID:UJU0NHKg
荒らしに構う人も荒らしですって
かぼちゃパンツを穿いたかぼちゃ姫が言ってた
71名無しさん@ピンキー:2010/04/06(火) 09:52:00 ID:j2soY9u5
>>67
同意
まとめて投下してほしいわ
72名無しさん@ピンキー:2010/04/07(水) 16:49:27 ID:8j0jn8Iv
俺は無理にまとめる必要はないと思うけどな
きっちりしたのがいいなら商業作品読みゃいいし
わざわざスレに粘着して欲しい物ばかり要求する意味がわからん
73名無しさん@ピンキー:2010/04/07(水) 17:31:46 ID:TIFowKOo
他の書き手か、あんましグダグダ騒ぐと今の書き手は勿論他の書き手とやらも投下しにくくなるな。
74名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 22:24:14 ID:3JbnOFz2
だからただの荒らしなんだってば
75名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 11:47:17 ID:K5L73M1L
まとまってるのが読みたいならまとめサイトに行けば良いじゃない(マリー)
76名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:25:36 ID:O4dIigGr
オナニーしてたら裸の女幽霊に覗かれてた夢を見た。
77名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 08:32:09 ID:0bCT4v49
>>74のように少しでも違う意見が出たら荒らし扱いのはこの板の悪い風習だなぁ
78名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 15:12:27 ID:2QnSob0H
実際スレを引っ掻き回して職人来づらくしてんだから荒らしで間違いないだろ
無自覚だろうと荒らしは荒らし
79幽霊の夕子さん(五) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/12(月) 01:35:22 ID:XjcDKYnJ
>>59の続きー
----------------------------------------------------------------------
 拓海君は毎日来てくれる。
 嬉しいな。
 でもその日の拓海君は、ちょっとヘンだった。
「大丈夫? 拓海君顔色悪いよ?」
「あ、いえ、その、大丈夫です。ちょっと試験勉強頑張りすぎちゃって」

 そう言う拓海君の表情が、苦しそうだった。
 その表情を見てしまった瞬間、私は胸の中がいっぱいになってしまった。
 キュンキュンと胸の奥が疼く。
 ズキズキという甘い痛みが体中にひろがっていく。

 だから。
 だから私は、拓海君の唇に近いほっぺたにキスをしてあげた。
 触れあえないから、フリだけだけど。
 触れた気がした唇が熱くなる。その熱が顔に伝わり、私の頬は真っ赤になっていく。

「拓海君は頑張ってるよ! だから、たまには息抜きしなきゃね」
 ドキドキしながら拓海君にそう言うと、拓海君も真っ赤な頬のまま、呆けたように座ってる。
「…」
「ね、拓海君。何か悩みがあるなら聞いてあげるよ」

 拓海君は、まるでのどに何かが詰まったみたいな苦しそうな顔をした。
「…」
「……」
「……ぼ、僕は最低なんです」
 そう言うのは、血を吐くような表情の拓海君。こんな拓海君見たのは初めて。

「どうしたの?」
「…最低なんです。汚いんです。汚れてるんです」
 拓海君のきれいな丸い瞳のふちに、涙が盛り上がってる。
「どうして泣くの? 拓海君は汚くなんかないよ?」

 拓海君はぽつりぽつりと言葉を吐くように言った。
「僕、夕子さんの夢を見るんです」
 うわあ。…嬉しい。拓海君が、私の夢を。
 拓海くんの夢の中に、私が出られるなんて。
 足の裏から嬉しさが湧き上がってくる。
 腰がしびれて、立ち上がれないくらい幸せな気分になれる。

「その…夢の中で夕子さんを抱きしめて、夢の中で夕子さんにキスして、そしたら、なんか温かくなって、
……熱くなって、目が覚めたら、その…出しちゃってたんです」
 拓海君は顔が真っ赤になってる。耳まで真っ赤なのがかわいい。
 抱きしめてあげたくなる。私の全部を捧げてしまいたくなるくらい嬉しい。
「ごめんなさいッ!!」
 拓海君はそう言って私に土下座してる。
 コンクリートの床に両手をついて、赤くなった耳を髪の間から覗かせながら額も床につけてる。

 何を出したのかは、よくわからないけど。
 でも拓海君が、私で気持ちよくなってくれたってことはわかった。

 胸の中が苦しくなる。ズキン、ズキン、という身体が融けそうな甘さが心臓から全身に広がっていく。私もう心臓ないのに。
 息をするたびに、燃えるような熱さと、痺れるような切なさがぐるぐると充満してしまう。息してないのに。

 私はそんな拓海君に問いかける。
「ねえ、拓海君。夢の中の私は、どんなだったの?」
「そ、そんなの、言えませんっ!」
80幽霊の夕子さん(五) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/12(月) 01:35:56 ID:XjcDKYnJ
「…私にも言えないような姿だったの?」
「ち、違うんです。あの、いつもと同じ、○女のセーラー服でしたけど、そ、その、その、すごく温かくて、
いいにおいがして、柔らかくて」
「それで拓海君はどうしたの?」
「その、ぎゅって抱きしめられて、そしたら、気がついたらそ、その、僕も、夕子さんも裸になってて」
 私の裸を想像してくれたんだ。
 足元がふわふわしてくるだけじゃなくて、身体の中心がジンジンしてきてしまう。
 なんだか腰の奥が熱くなってくる。

「僕、夕子さんのこと好きなのに、あんな最低の妄想しちゃうようなダメな奴なんです」
 好きって言われた瞬間。
 体の中心に火がついたみたいに熱くなった。
 身体から体重がなくなったみたいに、ふわふわとするような浮遊感に包まれてしまう。

「拓海君」
 そう言う私の声はどこか上ずってたかもしれない。
「夢の中で、私の裸を見たとき、どう思った?」
「ど、どうって、そ、そんなの」
「醜くて見たくないと思ったの?」
「そんなことないです! 夕子さんは、綺麗です!」
 土下座から顔をあげて、涙であふれてる、とてもきれいな目で私を見ながら、拓海君はそう言った。

 その言葉が私の脳裏に響いた。
 身体の中心が焼けるように熱くなる。
 きれいです、という言葉が耳から離れない。
 体中の骨を甘く溶かしてしまうような響き。

 だから私は、気づいたら、手が勝手に動いてた。
「夢の中の私と、ホントの私、どっちがキレイか確かめてみる?」
 ちー。
 ファスナーを開ける音。
 ち。
 スカートのホックが外れる音。
 気がついたら、私は制服を脱ごうとしてる。

 そして、ぱさ、という音がしてスカートがストンと床に落ちる。
 制服の胸のスカーフを解く。
「ちょっ、そ、そんな、夕子さん」
「見たくないの?」
「ち、違うんです夕子さん」
「ショックだな――拓海君にそんなこと言われるなんて。そうだよね。幽霊の裸なんか気味悪くて見たくなんかないよね」
 私はずるい。こう言ったら拓海君がなんと答えるか判っててこんなこと言ってる。

「そ、そんなことないです夕子さん! 僕見たいです!」
「見たい?」
 胸がドキドキしている。心臓なんてないのに。
「…はい」
 真っ赤な顔で見上げてくる拓海君が可愛い。
「私のハダカ、見たいのね?」
「はい」

 黒ストッキングを脱ぐと、拓海君の口がぽかんと開いてるのに気づいた。
 どうしよう。
 すごく可愛い。可愛すぎる。
「キレイです…」
 拓海君の崇めているような視線が私の肌を刺す。
 私の生足を拓海君が見つめてる。その視線が肌の内側まで刺さってなんだかピリピリする。
「あ、あの、夕子さん、脚長くて、その、すごくキレイです」
 その言葉だけで腰の中が熱くなってしまう。脚の間がなんだか湿ってきてしまう。
81幽霊の夕子さん(五) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/12(月) 01:36:23 ID:XjcDKYnJ
「私、白い下着つけてたんだ。拓海君、白い下着好き?」
 黙ってこくこくと頷く拓海君。すごくかわいい。

 セーラー服の上衣を脱ぐと、その下から白い可愛いブラが現れた。
 私こんなのつけてたんだ。そんなことも知らなかった。
「どう?」
 私はそう言うと、下着姿のまま、くるりとその場で回ってみせる。
 胸の下で腕を組んでるから、胸が強調されてるはず。

 拓海君は魅入られたみたいに私の胸から視線を外せないでいる。
 なんだか嬉しかった。
 拓海君が私のことを見てくれてるだけで。
 私のことを女の子だと思って見てくれてるだけで。
 嬉しくてたまらない。
 拓海君にオンナノコ扱いされてると思っただけで、ゾクゾクとした快感が身体の底から湧きあがってくる。
「あ……そ、その、すごく、キレイです」
「それだけ?」
「あ。あの、と、とても、あの、色っぽいとお、思います」
 拓海君は震える声でそう言ってくれる。

 そんな拓海君に問いかける。
「ね、もっと見たい?」
「み、見たいですけどでも、その」
「私も拓海君好きだから。だから、私のこと見て欲しいな」

 私の言葉で、息を呑む拓海君。
「…って……」
「うん。さっきね、拓海君が私のこと好きだって言ってくれて、初めて判ったの」
 ドキドキが止まらない。どうしよう。
「私も拓海君のことが好き。好きだから、全部見て欲しいんだ。いい?」
 言葉が勝手に出てくる。ホントの気持ちを止められない。
「…」
 無言のまま何度も頷く拓海君。


 背中に手を回して、前かがみのままブラジャーのホックを外す。
 胸元に視線を感じる。ふと顔を上げると、拓海君の目は私の胸の谷間に釘付け。
 嬉しいな。拓海君が。私の身体を見てくれてる。
 嬉しそうに、興奮した目で私のことを見てくれてる。
 それだけで、腰の中が甘い蜜で満たされたみたいに震えが来てしまう。
 そんな拓海君にウインクをしてあげると、拓海君は慌てて顔をそらしてしまう。

 ブラジャーを床に落とすと、私は顔を背けたままの拓海君の傍に行く。
 そしてその耳に囁いた。
「拓海君、見て」

「今まで誰にも見せたことないんだよ」
 拓海君が顔を上げる気配。
 見られてる、と思うだけで身体の奥がざわざわする。
 胸が破裂しそうなくらい、心臓がドキドキしてる。
 胸の肌が焼けそうなくらい、熱い視線を感じている。
 拓海君が、今、私の裸の胸を見てくれてる。

「触って」
「え?」
「フリだけでいいから」
 拓海君が私の胸に手を伸ばす。
 その手のひらに、私は自分の手を重ねる。
82幽霊の夕子さん(五) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/12(月) 01:39:03 ID:XjcDKYnJ
 その手のひらに、私は自分の手を重ねる。

 拓海君の手のひらが、私の胸を掴む。
 この手は拓海君の手。この指は拓海の指。

 胸の先から、心臓を通って、体中に甘くて熱い電流が流れる。

 その電流が気持ちよすぎて。
 ゾクゾクと体中に溢れる魔法みたいな幸せな波に酔ってしまって。
 私は気づいたら、下穿きまで脱いでしまっていた。

 ホントに、生まれたままの格好で。
 胸も。下半身も。みんな、拓海君の目に晒してしまっていた。

 胸の下で腕を組んで、おっぱいも。下半身も。
 全部拓海君の視線に晒してしまってる。

 自分の吐息ひとつで肌がヒリヒリしてしまう。
 そして拓海君の荒い息。
 その真っ直ぐな視線。
 それら全てが、

「じゃあ、拓海君のも見せて」
「えっ?!」
「拓海君が私のハダカを見たいように、私も拓海君のハダカが見たいの」

「…」
 息を呑んでる拓海君。
「だめ?」
 そう言うと、拓海君は私を真っ直ぐに見て、小さく頷いた。


-------------------------------------------------------------------------

今日はここまでー
スイマセンが、自分にとって最適のペースで投下させて頂いております。
まとめてお読みになりたい方はしばしご辛抱くださりまとめサイトに収録された後に一気読みされるとよろしいかと。

水曜くらいまでに次のを投下したいです。
83名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 02:58:49 ID:Gm+07zZn
   n                n
 (ヨ )              ( E)
 / |    _、_     _、_    | ヽ
 \ \/( ,_ノ` )/( <_,` )ヽ/ / good job!!
   \(uu     /     uu)/
    |      ∧     /
84名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 03:56:42 ID:hunevWQr
ここで切るかあああああああああ
待機する連中が風邪を引かないようにしてやってくれ……!
85名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 04:14:23 ID:worZBUky
ツヅキ、キニナル・・・マッテルヨ
86名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 05:25:22 ID:GhKQ3maK
拓海君が
いまどき珍しいほどウブというか童貞丸出しというか……そりゃ夕子さんも萌えちゃうよなあ(^_^;
GJ!!
87名無しさん@ピンキー:2010/04/12(月) 15:11:47 ID:TI+K2JuY
>>82
GJ!
続きが気になります
馬鹿の戯れ言なんて気にせず最後まで頑張ってください^^
88名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 22:11:12 ID:90a7fzsk
オカルト娘スレ落ちてたよ
次も立たないみたいだし、名残惜しいが仕方ないね
今度何か投下する時は、ここを使わせて下さいな
89名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 14:34:00 ID:ODYP39x0
人外だったら幽霊でも妖怪でもなんでもありでしょ
投下お待ちしてます
90名無しさん@ピンキー:2010/04/18(日) 21:34:14 ID:7BEBmnf/
狐耳巫女とキャッキャウフフする話が読みたいです…
91幽霊の夕子さん(六) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/19(月) 00:12:18 ID:VKXTrV/C
>>90俺も読みたいです

というわけで>>82の続きー

--六---------------------------------------------------------------------
 反り返ってる。なんというか、拓海君の隠れた男らしさが全部そこにつまってるみたい。
「すごい…大きいね」
「あ、いや、その、別にそんな大きいってわけでも」
「男らしいよ。私、男の子のソレなんて見たことないはずだけど、拓海君のはすごいと思うよ」

 拓海君の裸は意外に筋肉質で、逞しくて、ドキドキした。
 そして、その股間にそそり立ってるアレ。
 息が荒くなる。
 どうしてなんだろう。こんなの、見たことないはずなのに。

「うわあ…すごいね」
 ぴく、ぴく、と小さく脈動してる拓海君のアレ。
 ほのかにピンク色のかかった赤い肉の塊。

 顔を近づけてみると、ビクン、というようにさらに激しくそそり立ってる。


 私はその硬い(たぶん)肉の棒に指を触れさせる。触れないけど。
「ね、拓海君。触ってみて」
と言うと、拓海君は
「え?!」
驚いた顔。

「一緒に、触ろうよ」
 私の言葉に真っ赤な顔のまま、頷く拓海君。


 私は拓海君のそれに触る。ゆっくりと、手を上下に動かす。
 拓海君の手が私の手に重なってる。
「…きもちいい?」
「きもち、いいです…夕子さんがしてくれてるみたいで」
 拓海君が切なそうな顔をしてる。
 どうしよう。

 胸の中が熱くなる。
 息一つするのだけでもおかしくなってしまいそうだ。

 拓海君の裸の胸が上下してる。
 触りたい。一つになりたい。
 胸がドキドキして止まらない。

「ねえ拓海君、えっちしてみようか?」
 気がついたら、そう言ってしまっていた。
「え?!」
 もう止まらない。とめられない。
「私、拓海君と一つになりたい」
 その言葉は私の喉から勝手に出てきてしまっていた。


 慌てふためいてる拓海君。
「そ、その、僕、したことないからわかんないですけど…」
「大丈夫、私もしたことないから。たぶん。……初めて同士だね」
 なぜだかえへへと笑ってしまう。すると、拓海君もなぜだか照れくさそうに笑ってくれる。
 拓海君が笑ってくれると嬉しい。
92幽霊の夕子さん(六) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/19(月) 00:13:02 ID:VKXTrV/C
「触れないから、ダメだけど、拓海君がいつもするみたいにやってみればいいから」
 私は拓海君の身体を跨ごうとする。
 そんな私に拓海君の声。
「あ、あの、夕子さん」
「…ん?」
 恥ずかしそうに拓海君が言う。
「あ、あの、キス、しちゃダメですか?」
 耳まで真っ赤にしながら、そう言ってくる拓海君。かわいい。ものすごくかわいい。キュンと来た。
「あ、あはははは。そう、だよね。えっちのまえに普通はキスだよね」
 えっちなコだって思わないでほしいな。

 私はその場にストンと腰を下ろすと、拓海君に囁く。
「おねがい」
 目を閉じる。
 床に着いた手に、熱を感じる。
 きっと拓海君が握ってくれてるんだ。
 その暖かさだけで腰の内側がとろとろに蕩けてしまう。
 そして唇に熱い熱い感覚。
 触れられないけど、でも、拓海君の唇が今、私の唇と重なってるんだってことはわかる。
 薄目を開けても、拓海君の肌しか見えない。

 背筋からうなじへと、嬉しい電流がビリビリと流れていく。
 キスが何分続いたかわからない。
 幸せすぎて、時間の感覚がなくなってくる。

「夕子さん」
 上気した頬の拓海君が私に声をかける。
「…うん」

 拓海君の激しく興奮してるアレをまたぐと、ゆっくりと腰を下ろしていく。
 触れないはずなのに、その熱さを感じてしまう。

 そして、私の裸のあそこが、拓海君の肉の棒と触れる。
 いや、ホントは触れ合えないんだけど、そこが重なり合った瞬間、キスの時よりももっと激しい喜びの電流が私の芯を溶かしていく。
 思わず、足から力が抜けて、一番奥まで拓海君を受け入れてしまう。

 なぜだろう。涙がでちゃう。
 涙がでちゃうくらい、嬉しい。

 動悸と荒い息を無理やり収めて、拓海君の身体の上でゆっくりと上下動を始める。
 その動きにあわせて、拓海君も自分の固くなったアレを掴んだ手を動かしてる。

 私はまるで拓海君に膣を掴まれてるみたいな感じになってくる。
 私は自分で胸を掴んで揉む。この手は拓海君の手。この指は拓海君の指。
 そう思いながら、拓海君の堅くなったところに、私の一番中心を押し当てる。
 触れないはずなのに、熱くて堅い感触が伝わってくるみたい。
 幻なのかもしれない。でも、今確かに感じられるその熱さはホンモノ。
 拓海君が、私で気持ちよくなってくれてるってことだけはホントのこと。

 拓海君の手の動きに合わせて、私は腰を動かす。
 それがまるで、私の中で拓海君の堅いソレを愛撫してるみたいな感じがして。
 拓海君が、私の中で気持ちよくなってくれてるみたいで。

 拓海君の大きな手が、私の胸を掴む。
 正確に言うと、私が自分で揉んでいる掌に、拓海君が手を重ねてくれてるんだ。
 それだけで、胸から生まれたジンジンという熱い感覚が身体いっぱいに広がっていく。
93幽霊の夕子さん(六) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/19(月) 00:13:29 ID:VKXTrV/C
「拓海君」「夕子さん」
 お互いに名前を呼び合うだけで気持ちいい。
 拓海君の声が。
 苦しそうに、キモチよさそうに私の名前を呼ぶ声が愛しい。
 胸の中にグルグルと熱い塊が生まれたみたい。

 拓海君のを受け入れてる私の入り口に指を這わせる。
 この中で、拓海君が気持ちよくなってくれてるんだ。
 そう思って、その縁を指でなぞる。
 これは拓海君の指。これは拓海君のアレ。
 私の指はとても比べられないほど細いけど、でも、拓海君のあげる鼻にこもったうめき声とか、
拓海君の筋肉質な胸板に走る汗の粒とかを見てるうちに、ホントに拓海君と繋がってるような気持ちになってくる。

 身体を押す。引く。
 持ち上げる。下ろす。
 拓海君のアレが私の中で暴れてる。
 熱い。身体が溶けそう。身体が燃えちゃいそう。

 拓海君の名前を呼びながら、私は気が遠くなるほどの幸福を感じていた。


 そして。


 熱いほとばしりが私の中を貫いた。
 私の背後で、ぴたぴたっ、と液体が滴る音がする。
 空中に放った精液がコンクリートに落ちる音。
 でも、私にとっては中に出してもらったのと同じこと。
 中に出してもらって、嬉しい。
 拓海君が私のことを好きだといってくれて、嬉しい。

 拓海君の精が私の中を貫いた。
 それは電撃みたいに、私を痺れさせる。
 息も出来ないくらい、激しい情動を引き起こす。
 身体の芯を焼き尽くすみたいな熱さ。








 そして、その熱が私に教える。
 ほんとうのことを。

 私は判った。
 判ってしまった。



 私が、拓海君に相応しくないということが。
 拓海君に必要な女の子は、幽霊なんかじゃなくてホントの女の子なんだってことが。
 ハッキリと判ってしまった。
94幽霊の夕子さん(六) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/19(月) 00:13:54 ID:VKXTrV/C
「夕子さん?」
「拓海君…」

 悔しい。悲しいな。どうしてなんだろう。
 どうして私じゃダメなんだろう。


 泣きながら拓海君の胸に飛び込む。
 拓海君は優しいから、あたかも私の身体があるみたいに、緩く腕で輪を作って抱きしめるようなフリをしてくれる。
「夕子さん…大好きです」

 拓海君は私の耳に囁きかける。
「一目見たときから好きになったんです。だから、夕子さんが幽霊だって言ったときにも
そんなことは全然気にならなくて」
「夕子さんに会えると思って毎日が楽しかったです。僕、今まで生きてきた中で今が一番幸せなんです」


 嬉しいなあ。
 嬉しい。
 私幽霊になってこんなに嬉しい目にあったことはない。たぶん。


「拓海君」
「はい」
「大好き」
「…はい」


 こんなに可愛くてステキで、カッコよくて優しくて大好きな拓海君にこんなことを言うのは辛い。でも、言わなきゃ。
「ごめんね。私、拓海君ともう会えないよ」
「――っ!?」
「私も拓海君の事大好きだよ。でも、拓海君は生きてるんだから。
 ちゃんと生きてる女の子のこと好きにならなきゃダメなんだよ」
「――夕子さん!?」

「ごめんね。私、やっとわかったんだ。生きてるってことがどんなことか。
 生きなきゃいけないってことがどんなことか。
 だから、私、成仏?っていうのかな?こんなカタチで居るのはもう終わりになると思うんだ」
「え? え?? 夕子さん??」
「…成仏なのかな。よくわかんないけど、まもなく私は消えちゃうと思う」
 そう言って拓海君に手を見せる。
 ちょっとだけ透けている。
 その指の透明度はほんのすこしづつ増えていってる。

「泣かないで。ゴメンね。」

「でも、きっとこれでいいんだよ。私幽霊だから。こんなことしてたら、拓海君のこと、きっとそのうち
取り殺しちゃうと思うんだ」
「そんなの全然――」
「構わなくないよ。私、拓海君のことが好きだから。好きだから、拓海くんには生きてて欲しいんだ」
「夕子さん?」
95幽霊の夕子さん(六) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/19(月) 00:14:19 ID:VKXTrV/C
「さよなら。拓海君。好きだよ。大好きだよ」

 体が軽くなるのを感じる。
 なんだか体が透明になっていく感じ。
 意識がだんだん薄れて、頭上にすーっとひっぱられてくような。
 消えちゃうんだ。私。
 そっか。寂しいな。でも、最後に拓海君と会えてよかったな。拓海君。大好き。
 大好き。すごく大好き。泣かないでほしいな。私拓海君のこと大好きだから。

 生まれ変わっても、拓海君のことは覚えていたいな。
 もし生まれ変われたら、できれば拓海君の子供とかになりたいな。
 そしたら、ずっと一緒にいられるから。
 身体があって、拓海君に抱きつけるから。


 大好き。


 だいすき



 だ い す き だ よ


 た   く   み   く   ん



----------------------------------------------------------------

 次回はエピローグの予定。
 水曜くらいまでには。
96名無しさん@ピンキー:2010/04/19(月) 00:25:35 ID:CCvKbTkD
                ∩
                ( ⌒)      ∩_ _グッジョブ !!
               /,. ノ      i .,,E)
              ./ /"      / /"
   _n グッジョブ!!  ./ /_、_    / ノ'
  ( l    _、 _   / / ,_ノ` )/ /_、 _    グッジョブ!!
   \ \ ( <_,` )(      /( ,_ノ` )      n
     ヽ___ ̄ ̄ ノ ヽ     |  ̄     \    ( E)
       /    /   \   ヽフ    / ヽ ヽ_//
97名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 13:51:35 ID:+yLYcS0r
素晴らしい!!
98名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 14:42:12 ID:rRmJ1els
今全部読んだ

切ないなあ
拓海君は夕子さんとえっち(エアセックス?)しなければずっと一緒にいられたのかなあ

エピローグも待ってます
99名無しさん@ピンキー:2010/04/20(火) 22:53:46 ID:NfiAJhJb
GJ!
ラストどうなんのかな。
まってますよ。
100名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 00:20:23 ID:Cz5ZZ1j2
あああ!続きが気になってねむれない!
101名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 01:58:30 ID:0RxUo/F3
GJです。続きが凄く…気になります…
…寝付けないのでちょっと手慰みに書いてみました。レスちょっとお借りします
102名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 01:59:00 ID:0RxUo/F3
「ねえ君。吸血鬼って――居ると思う?」
レストランのバイトの帰り道、同僚の娘がいきなり切り出してきた。

「はぁ? 吸血鬼ったらあれか? 蝙蝠に化けたり人の血吸ったりする…」
「そうそう。それ、実在していると思う?」
駅に向かっての近道である路地。
頭上には丁度中天に差し掛かった三日月がぽっかりと浮かぶ。
真夜中だからか静寂そのもの。
バイトの先輩の言葉を借りれば「イイ雰囲気」とでも言うだろうか。

「…いるっちゃいるんじゃないか?」
俺の実家にゃ尾が割れた猫とか喋るキツネとかいるし。
そう言い掛けて慌てて台詞を噛砕く。
普通の人に知られたら不味い。

「へえ、君はそう思ってるんだ――良かった」
心なしか、娘の声のトーンが変わる。
ギョッとして前方に向けていた視線を彼女に向ける。
真っ直ぐ此方を見ていた娘と視線が重なった。
ぞ、と背筋が泡立つ。

そういえばこの娘、ここ最近は夜間しかバイトに出てきていない。
それに気がついた瞬間、いやな汗が流れるのを感じた。

「おい、お前、まさか……?」
「なぁに?」
103名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 01:59:35 ID:0RxUo/F3
にこり、と首を傾げて笑う彼女の眼が、一瞬赤く染まったのは俺の錯覚だったのだろうか。
そう信じたくなって目をつぶり、開く。
「……?」
すぐ傍に立っていた同僚の娘の姿が掻き消えていた。
それを理解した次の瞬間、真横からの襲い掛かってきた衝撃に押され、路地の壁に叩きつけられる。
「が…!?」
肺から空気が押し出され、呻く。

ぐらぐらと揺れる視界に、同僚の娘が映った。
「……君が悪いんだから、ね……」
ゆっくりと動く彼女の唇が、月明かりの中異様に際立って見える。
艶やかなそれの奥に見える白い輝きは言わずもがな。

女の細腕とは思えないほどの剛力で壁に押し付けられる。
いつの間にか真紅に染まった瞳と同じくらいに頬を赤らめながら、同僚の娘が口角を吊り上げた。
長く伸びた犬歯が、覗く。

その牙が首筋に突き立つのを感じながら、俺は意識を手放した。
―もしこうなったことがばれれば実家の猫と狐に浮気者扱いされて殺されるな―と、のんきな感想を憶えながら。

以上です
お目汚し失礼
104幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:19:30 ID:scCkJ0pM
>>103
おいおいおいおい
GJ過ぎるじゃん!

で。実家の猫と狐とのらぶらぶえっちはどこで読めるんだい?


>>95の続きー
これで完結ですよ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――-
 視界は真っ暗。
 ずっと暗い。
 あれ。なんだろ?
 なんだろう。雫。暖かい雨のような雫が私の頬に落ちてくる。
 ぽた、ぽた、ぽた、と。

 暖かい、そして、なんだか塩っぽい。

…ああ、涙なんだ。
 人間がこんなに激しく泣けるのだろうか、と思うくらい沢山の涙が私に降ってくる。

「夕子さん」
 拓海君の声だ。
 拓海君泣き虫だなあ。そんなじゃ女の子にもてないよ。
「夕子さん」
 声大きいよ。聞こえてるよ。温かい。あれ。なんだろ。手の先が温かい。
「夕子さん」
 うん。やっぱり拓海君の声いいね。こう、ビリビリ痺れそうなくらいいい声。
 耳たぶに吹きかかる吐息もなんだかゾクゾクする。
「夕子さん」
 うん。わかってるよ。拓海君でしょ。

 拓海君、泣いてちゃダメだよ。
「・くみ・ん、ないて・ゃらめ・よ」

 あれ。おかしいな。うまく声が出ない。

「た・みく・」
「夕子さん!?」

 目が開いて最初に飛び込んできたのは、拓海君の顔。
 ちょっとだけ痩せて、でもやっぱりクッキリとした目鼻立ちの可愛い、私の大好きな男の子。

「夕子さん…」
 拓海君はそう言って私の肩を掴む。
 ……掴む?

 え?なんで?なんで拓海君が私の身体に触れるの?
 私成仏したはずなのに!?
「たく…くん、な…で」
「夕子さん……」
 私の肩を掴みながら、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくってる拓海君。
 汗のにおい。涙のにおい。そして、アルコール消毒みたいなにおいもする。
 え?
 ここ病院?
105幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:19:57 ID:scCkJ0pM
 ピ、ピ、という電子音。カーテンのざわめき。リノリウムの床にヒールの靴音。
「夕子さん…」
 そう言ってくる拓海君の手の暖かさ。指の力強さ。
 どれも、生きてるモノの感触だ。
 どうしてだろう。
 どうして。拓海君がここにいて、私がベッドで寝てるんだろう。
「たくみ・・・くん」
「夕子さん」
 拓海君はいい匂いがする。
 汗臭いけど、不思議に不快じゃない。
「僕、夕子さんが消えてから、ずっと探してたんです」
「ごめ…ん、ね」
「いいんです。でも、何日も町中さがしても見つからなくて。
 だから、夕子さんのお墓に行ったらまた会えるかもしれないって思って…」

 涙グズグズの顔でそう言う拓海君。可愛いけど、涙はぬぐったほうがいいよ。
 そう思って拓海君の顔を拭いてあげようとしたら、腕が動かない。
 いや、動かないんじゃなくて、手がものすごく重いみたい。
 あれ?なんで?
「あ、ムリしないでください。夕子さんずっと昏睡状態だったんですから」
「え?」
 言葉がすぐには頭に入ってこない。
 そんな私に、拓海君は優しく囁きかける。
「僕、あの交差点の事故の記録を調べたんです。図書館に行って、死亡事故の記録がないか、ずっと。
 でも、新聞の記事を何年もさかのぼったのに、夕子さんくらいの歳の女の子の死亡事故の記録ってなかったんです」
 そして私の顔を真っ直ぐに見る拓海君。
「警察署にも行ったんです。そしたら、女の子の死亡事故はないけど○○女子学院の女の子が事故に遭ったことはある、
って言われて」
 拓海君の涙声。
 かわいいつぶらな瞳に涙をたたえながら、拓海君は言う。
「…事故に遭った女の子は、いまでも植物状態で入院してるって」
「…そ…れ、わた・・し・・・」
「そうです。夕子さん、事故に遭ってからずっと昏睡状態にあったんです。
 幽霊じゃなくて、生霊だったんですね」
 突然。津波のように多すぎる情報が突然頭の中に入ってきて、うまく考えられない。



 ガラッ、と病室の扉が開くと、そこには大人の女の人が立ってた。
 その人は疲れたような顔から、一瞬で表情を変えた。
 口をぽかんと開けて、信じられないような表情。そして涙。
「……………真由!?」
 あ。お母さんだ。
 お母さん。ちょっと痩せちゃったね。
 うん。私のお母さん。名前は由美子。
「目が覚めたのね…真由」
 真由。そう。真由。私の名前。真由って言うんだ。
 いろんなことを思い出した。
 家族のこと。学校のこと。事故のこと。

 泣きながら私のことを抱き締めてくれてるお母さん。
 お母さん。心配かけてごめんね。

 お母さんは私の身体や顔をぺたぺたと叩いて
「真由? ホントに起きたのね? 夢じゃないのね?」
と感激しきりだ。うん。暖かい。熱い。お母さん。お母さん。
106幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:20:34 ID:scCkJ0pM
 何分続いたのかよくわからない。
 お母さんは泣きながら私を抱きしめてくれてる。
 拓海君の掴んでくれてる手は暖かい。

――ああ。そうか。私…私…
 私はいろんなことを思い出した。

 そして、だんだん眠くなってきてしまう。

「ところであなた! いったいどなたなの!?」
 お母さんが拓海君を不審そうな目で見ながら言う。ダメだよそんなこといっちゃ。
「たくみくん、だよ」
 ああ、そうか。鼻からチューブみたいなのが入ってるから喋りにくいんだ。
「真由!?」
「おかあ、さん。わたしね、たくみくんが、よんでくれたから、かえってこれたんだよ」
 うまく言葉が出てこない。
 喉の奥が固くなってるみたいで。
「たくみ、くん、が、おきなさい、って」
 なんだか視界がぼやけてくる。
「いって・・・くれた、から」
 拓海君の顔が二重写しになる。二人いても拓海君かわいいなあ。

「おかあ、さん、わたし、どのくらい、ねむってた、の」
「…二年よ。あなた、二年五ヶ月も眠ってたの」
「…そう」
 ということは、私は今18歳。
「たくみくん、はね。わたしの、はつこいのひとなの」

 ぎょっとするお母さん。
 でもホントなんだよ。
 ふたりいる拓海君は顔を赤くしたまま、私の手を握ってくれてる。

「わたしをずっとさがしてて、きょう、わたしをみつけてくれたの」
 つないだままの重い手を持ち上げる。
 拓海君がその手を握ってくれてる。
 暖かい。熱い。柔らかい、でも筋肉質な手のひら。
 もっとたくさん言いたいことがあるのに、でも、何だか瞼が重くなってきちゃった。
「おねがい。たく、みくん。きっと、あしたもきてね」
 なんだか眠くなっちゃった。
「必ず来ます。だから、明日も目を覚ましてくれますか?」
「うん」

 その夜、なんだかお父さんもきたみたいだったけど、眠くてよく覚えてない。
 ヘンな匂いのする背広を着た大きな男の人が大騒ぎしてたけど、あれがお父さんなのかな。
 ……あ、このヘンな匂いってお父さんのだ。うん。だから眠いから寝かせてよ。
 明日は拓海君がまた来てくれるんだから。
 ちゃんと寝ないと美容の大敵なんだからね。うん。




 目が覚めた。
 お母さんがいる。やっぱり泣いてる。
「真由」
「まゆっ」
 あ、お父さんもいるんだ。ごめんね。
「そんななかない、でよ。もうこれ、からまいにち、おきるんだから」
 まだ上手く言葉がでてこない。
 両親は一時間くらい泣いてた気がする。
 嬉しいな。お父さんもお母さんも喜んでくれてて嬉しい。うん。
107幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:21:00 ID:scCkJ0pM
「あ、そうだ。おかあさん、かがみ、ある?」
 今日は拓海君が来てくれるんだから。
 ちゃんとキレイにしないとダメ。
 顔むくんでないかな。
 寝癖ついてたらどうしよう。

 そんなことを考えながら鏡を覗き込むと。
 そこにはガリガリの血色の悪い貧相な子がいた。

 ショックだった。
 拓海君にこんな顔見せてたなんて。

 驚愕したままの私は、ガラッという扉の開く音を聞いた。
 拓海君。来てくれたんだ。でもダメ!
「だめっ!!!」

 私はシーツを被って拓海君の視線をさえぎる。

「え? あ、あの……夕子さん?」

「だ、だ、だめ、なの! た、たくみ、くん、だめ」
「あ、あの…」
「真由?」
 お母さんが怪訝そうな声で言ってくる。

「あ、あの、わ、私ね、こんな、かお、だから、たくみくんに、顔、み…せられない!」
 シーツの向こうから拓海君の声がする。
「あ、その、夕子さんはキレイですよ!?」
 だめ。だって、拓海君には一番キレイなわたしを見せたいんだから。

「おかあさん、かーてん、しめて」
 と、お母さんに懇願する。こんな顔、拓海君に見せられないよ。
「…真由?」
「だって、はずかしいんだもの」

 私が慌ててるのを見た拓海君は、ちょっと悲しそうな顔をしてる。

「あ、あの、ダメ…ですか?」
 拓海君はそう言ってくるけど。

「…ダメですか?」
 拓海君が、まるで捨てられた子犬みたいな声で言ってくるのを聞くと、胸の奥がキュンキュンと叫ぶような音を立てて切なく鳴ってしまう。

 しゃー、という音とともにカーテンが閉められる。お母さんが閉めてくれた。

「あ、あの…」
「たくみくん、そこ、すわって」

「いいんですか?」
「…うん。わたしいま、こんな、かおだから、恥ずかしくて…」

「たくみくん」
「はい」
「て、だして」

 私は拓海君の手を握る。
 暖かい。柔らかい。肌は乾いてるけど、その芯はしっとりとしてて、触ってるだけでもすごく幸せな気持ちになれる。

 私は途切れがちな声で、拓海君とお話をした。
 いろんなこと。あの後のこと。拓海君のこと。私が思い出したこと。
108幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:21:27 ID:scCkJ0pM
 どれだけ時間があっても足りないくらい。
 夜の面会時間も終わりそうになって、病棟のチャイムが鳴る。

「あの…たくみ、くん…あしたも…きてくれる?」
「もちろんです」

「やくそく」
 小指を伸ばすと、拓海君はその小指と自分の小指を絡ませて、軽く振った。
「約束ですよ」
 どうしてだろう。
 拓海君と触れ合った指が、こんなに幸せ。

 指が蕩けそう。
 指の骨が、甘く疼いて融けてしまいそう。
 全身の身体の骨が、その髄から甘く甘く溶けて、私が私じゃなくなってしまいそう。
 拓海君の力強い指の熱さが、私の身体の芯をとろとろに蕩かしていく。

 私の形が変わってしまいそうなくらい。
 涙が止まらないくらい、甘くて切ない感覚が私の身体に広がっていく。








 それから拓海君は毎日来てくれる。嬉しいな。
 拓海君と会える。それも、今度はちゃんと触れ合える。


 そんな毎日。私は拓海君に、思い出したいろんな事を話す。

 高校二年のあの日。車で迎えに来てくれたお父さんと、つまらないことでケンカして。
 私はお父さんの車から飛び降りるみたいにしてドアから出た。
 お父さんなんて大嫌い、そう言ったのも覚えてる。

 そして、次の瞬間ブレーキの大きな音がして。

 そこから先の記憶はない。

「お父さん、心配なさってたでしょうね」
「…うん。わたし、わるいことしたなって、今はおもうんだ」

「夕子さん…じゃなくて、真由さんのことを思ってくださってるんですよ」
「…夕子、でいいよ」
「え?」
「真由は私だけど、拓海君のことが大好きな私は夕子なんだよ」
 拓海君はカーテンの向こうで驚いてるみたい。
「私のことを真由って言ってくれるひとは何人もいるのかもしれないけど、私が好きな拓海君にとっては夕子だから。
 私のこと、夕子って呼んでくれる人は世界中で一人だけなんだよ」
 拓海君の指の力が抜ける。
 嬉しいのかな。
 拓海君が喜んでくれてたら嬉しいな。

 お母さんにもお父さんにも、私が幽霊だったときのことは話してない。
 拓海君は、私の初恋の人だ、としか教えてない。
……だって、ねえ。信じられないでしょ?
109幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:22:04 ID:scCkJ0pM
 拓海君に、私は言った。
「私ね。リハビリがんばるから」
「ええ、そうですね。二年間も眠ってたから筋肉が衰えてるってお医者さんも言ってました」
「うん。体力つけて、自分で歩けるようになりたいな。
 で、そしたら、春からは拓海君と同じ学校に通いたいの」
「へ?」
 拓海君はびっくりしてるみたい。
「……私の同級生はみんな卒業しちゃったから、元の学校に戻っても誰も友達がいないんだよ」



「私、二年生の六月からずっと休学してるから、今度の四月、二年生の最初から復学すればちょうどいいって。
 拓海君が同級生でいてくれたら、私安心できるんだけどな」
「で、でも、○女ってすごく名門のとこじゃないですか。ウチみたいな、っていうかウチ普通の高校ですし」
 慌ててる拓海君もすごくかわいい。
「お父さんもお母さんも、私がそうしたいっていうんならいいって」
 息を呑む拓海君。私と同級生になってる風景を想像してるのかな?


「拓海君は、私を目覚めさせてくれた……ふふふ。………なんちゃって!」
 はずかしすぎて言えないけど。
 拓海君は私の王子様。私をキスとえっちで目覚めさせてくれた、白馬の王子様なんだよ。
「…拓海君と同級生になれるんだよ。幽霊だった私が。私、それだけで幸せなんだもん」

「夕子さんっ」
 拓海君はそう叫ぶと、とても熱くて固い感覚が私を包んだ。

 気がつくと、拓海君が、カーテンを跳ね除けて、私の身体を両腕で抱きしめてる。


「拓海、くん…」



 どうしよう。
 胸の中がグルグルして訳がわからない。
 心臓が破裂しそう。骨の芯から甘い甘い蜜みたいなものが全身に広がってくる。
 体中のちからがぬけて、拓海君の腕に抱かれたまま蕩けそうになってしまう。

 そんな拓海君は、ちょっとビックリするようなことを言った。
「夕子さん。僕の彼女になってください」
「たくみ、くん」
「僕、夕子さんのことが好きです。大好きです。本気で好きなんです」
 骨のないタコみたいに、抱かれたままの私はくにゅっと全身からちからがぬけてしまう。
「くるしいよ、拓海君」
「あ! ご、ごめんなさい」
「いいんだよ」
 最近ちょっとだけ軽くなった腕で、慌てて腕を解こうとした拓海君の袖を掴む。
「…へへ」
 顔が勝手にほころんでしまう。

「私ずっと、拓海君のカノジョのつもりだったよ」
「あっ…、そ、その……」
「いいんだよ。そういうのハッキリさせようとする拓海君も大好きだから。
 男らしくて、私そういうとこ大好きだよ」

 拓海君の目が、私を真っ直ぐに見てる。恥ずかしくて顔を俯けようとする私のあごを、拓海君の力強い指が押しとどめる。
「夕子さん」
 カーテン越しにしか会ってなかったから、久しぶりに見る拓海君の顔。
 その緊張しつつも嬉しそうな顔を見たら、私はもうなにもできない。
110幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:22:32 ID:scCkJ0pM
 私は拓海君の手を掴む。
 指と指の間に、拓海君の指をはさむ。
 いわゆる「恋人つなぎ」って手のつなぎ方。
 友達のコイバナで聞いたことはあったけど、実際にするのは初めて。
 すごく幸せ。
 拓海君の指が。芯は硬くて太いけど、その表面は拓海君みたいにすべすべで暖かくて柔らかい。
 そんな指が、私の指の一本一本の間に存在してくれてる。実感できる。

 それだけで、私は涙が出ちゃいそうなくらい、幸せな気持ちになれる。

 拓海君。拓海君。
 なんど思っても思いつくせないよ。
 拓海君。
 拓海君。大好き。世界で一番大好き。

 その溢れそうな思いに突き動かされて、私は拓海君に思いを素直に吐露してしまう。
「拓海君の手、暖かいな」
「…そうですか」
「うん。きっと、心が暖かいから手も暖かいんだよ」
「…あ、でも、その、夕子さんも、あの、すごく柔らかい手で、きもちいいです」
「私ね、拓海君に手握られると安心するんだ。拓海君の暖かい心がつながってるみたいで。
 そしてね、胸もなんだかドキドキするんだよ。指が触ってるだけなのにね」
「…僕も、夕子さんの指、すごく好きです。触れ合ってるだけで、気持ちいいです」
「私も………。…ねえ、拓海君。指だけでこんなに気持ちよくなれるんだったら、裸どうしで抱き合ったらどんなことになるのかな?」
 えっちなコだって、思われないかな?
 そんな恐れを抱きつつ、でも私は自分の素直な気持ちを止められない。

「――なっ、そ、そんな、こと、知りませんっ」
 突然慌てる拓海君がかわいい。かわいくて、大好きで。
 だから、私は本心を隠すことができなくなってしまった。

「ふふふ。ね。拓海君。私の身体が元通りになったら、またえっちしようね」
「……!」
「今度こそ、ホントに私の処女あげられるんだね。嬉しいよ」
「ゆ、夕子さん…」

 拓海君の顔がびっくりするくらい近くにある。
 その瞳はすごく真っ直ぐで、ものすごく真摯で、私の目を射抜く。

 ああ。
 そうなんだ。
 うん。
 優しくしてね。

 私はゆっくりとまぶたを閉じ――
111幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:23:12 ID:scCkJ0pM
「あら。拓海くん、来てたの?」
 と、その瞬間にお母さんの声がした。

「あ、あ、はい」
 慌ててカーテンの中から出てく拓海君。

――あああ!もう!お母さん!タイミング最悪!!

 そんな私の心の叫びを無視する見たいに、お母さんは拓海君に話しかけてる。
「あら? ちょっと、拓海くん鼻血出てるわよ」
 最近はお母さんまで拓海君のことを名前で呼ぶようになった。私が拓海君拓海君ってずっと言ってるからだろう。
「あ、す、すいません。ちょとびっくりしちゃって」
「ビックリ?」
「あ、あの、マユ…さんが、僕の高校に通いたいって言ってくれたから」
「あら、真由ったらもう言っちゃったの? 一度拓海くんに相談してからと思ってたんだけど」
「いや、僕は全然かまわないっていうか! むしろ嬉しいんですけど、でも○女よりはウチってだいぶ…」
「いいのよ。真由が拓海くんと同じ学校に行きたいって言ってるんだから」
「そうですか」
「そうよ。……真由ね、拓海くんのこと、白馬の王子様だって言ってるくらいなんだから」
「――お母さん!」
 ああもう! 余計なこと言って!!


「あら。真由起きてたの」
「起きてるわよ! お母さんソレ拓海君には言わないでって言ったでしょ!」
「最初のときはごめんなさいね。見たこともない男の子が、娘のそばにいてビックリしちゃって。
 拓海くんが真由を目覚めさせてくれたってわからなかったから。
 本当ならお礼を言わなきゃいけないところだったのに」
 娘の声を無視してお母さんは拓海君に弁解してる。もう!

「あ、いえ、その、別に気にしてないって言うか、全然かまいません」
 そう言う拓海君に、お母さんは
「でも、真由もつくづく女の子よねえ。二年間毎日、私と夫がずっと『起きなさい』『いつまで寝てるの』って
言い続けてもさっぱり起きなかったのに、好きな男の子がキスしたくらいで目が覚めちゃうなんて、ねえ。
……なんて薄情な眠り姫なのかしら」
と、信じられないことを言う。

「―お母さん!」「―い、いやその、キスとかはまだしてません」
 私の声に拓海君の声が重なる。あーもう、拓海君も!

「……ふーん。『まだ』ねえ…」
「あ、いやその、あの、その…」
「いいのよ。拓海くんは娘を目覚めさせてくれたんですもの。
 植物状態の真由を見てるうちに、もしかしたらこのまま何十年もこのままなのかも、って心のどこかでは思ってたの。
 そんな娘を取り戻してくれた、拓海くんは恩人なんだから」
「…」
「それ考えたら、娘の唇の一つや二つ、安いもんよ」
「お母さん!」
「あ、でも、真由はまだ身体が本調子じゃないから。ちゃんと気遣わなきゃダメよ?
 キス以上のことは、もっと大人になってからしなさいね?」
「あ、あ、いやその」「お母さん!」

「あ、あした、また来ます!」
 そう言うと、拓海君はカーテンをめくって私の耳に口を寄せると
「夕子さん。また明日来ますから」
と、囁いてくれた。
112幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:26:02 ID:scCkJ0pM
 拓海君が病室をでていったあとで、
「ね、今ってキスしてもらったの?」
とカーテンを開けながら、お母さんはそう聞いてきた。
 もう知らない。ホント、デリカシーがないんだから。
 私がむくれてると。
「嬉しいのよ。もう、ずっとこのままかと思ってたから。
 娘がボーイフレンド連れてくるなんてホームドラマみたいなこと、一生できないと思ってたから」
 泣きながらそう言ってるお母さんに頭を撫でられたら。
 何も口答えできなくなっちゃう。




 そんなこんなで、四月。私は拓海君と同じ高校に通い始めた。

 拓海君と同じクラスになれたのは、お父さんが手を回してくれたからかな。
 学校は楽しい。
 ホントは三つ年上なんだけど、私は二年間眠ってたからクラスメイトは実際は一コ下みたいなもので。
 拓海君がいてくれるからってのもあるけど、クラスの子たちもみんな優しくしてくれてる。
 私の眠ってた間にあったいろんなことを教えてくれる。

 拓海君はやっぱり優しい。毎朝私を家まで迎えに来てくれるし、帰りも一緒に帰ってくれる。
 道を歩くときも、いつも私を歩道側にかばってくれてるし、私が転ばないようにいつも手を握ってくれてる。
 私はもうリハビリもすっかり済んで、もとの体力になったんだけど。そんなに優しいところが嬉しい。

 拓海君と一緒に授業を受けるのも嬉しい。
 授業中、当てられた拓海君がみごとに英訳したり、証明を黒板に板書したときなんかはなぜだか誇らしくなる。
 私の拓海君、すごいでしょう?
 胸を張ってそう言いたくなる。


「ね、ね、マユさん、やっぱり拓海っちと付き合ってるんでしょ?」
 女の子がコイバナが大好きなのは女子高でも共学でも同じみたい。
 私と拓海君がどういう関係なのか、興味津々といった顔なのは同じクラスの咲ちゃん。
 咲ちゃんは私に付きまとってきて、しかも私の拓海君のことを名前で呼んでて、最初はどうかなと思ったけど、「マユさんて美人でお姉さんみたい」と言ってくれたからもう許す。可愛い子だしね。

「…咲はアホだね。あんだけベタベタイチャイチャしてて、付き合ってないわけないじゃん」
 と言うのは桜ちゃん。髪はショートでキツ目の顔立ちだけど、ホントはすごく優しくていい子。
「そーか、やっぱそうなの?」
 上目遣いに尋ねてくる咲ちゃん。
 そんな咲ちゃんたちに、私はホントのことを教えてあげる。
「……そうよ。拓海君は私の初恋の人なの。…それにね、私の初めてを捧げた人なのよ」

「「――マジで!?」」
 二人の声がキレイにそろう。

「うわああああ〜〜〜、さっすが真由さん、オットナー!!!」
「あの、その、どうだったんですか? 最初のときって!?」
 咲ちゃんが素直に感心してるのに、桜ちゃんはドギマギしながらその初めてのことを聞いてくる。
 可愛いなあもう。

「…ひ・み・つ♥」
「えー。そんなこといわないで教えてくださいよー」
 と桜ちゃん。

 そんな私に、咲ちゃんが疑問をぶつけてくる。
「ねえ、ところで拓海っちって、なんで真由さんのことを『ユウコさん』って呼ぶの?」

……拓海君。私、これになんて答えたらいいのかしらね?
113幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/22(木) 02:33:52 ID:scCkJ0pM
------------終------------


最後までお付き合い頂きありがとうございます。




ここで一言、謝らなければならないことがあります。

このSSは実はスレッドに合致してないという点です。人間以外じゃないじゃん!
夕子さん人間じゃん!




ホントごめんなさい。

幸せそうな夕子さんに免じて許してやっていただけないもんでしょうか。



夕子さんはイメージ的に黒髪ロング姫カットの濃紺セーラー服な感じで、要するに「黄昏乙女アムネジア」の夕子さんの映像的モチーフを
かなりパク…参考にさせていただいてしまってますごめんなさい。
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/015/787/04/N000/000/001/125110476223216218452_am0_20090824180602.jpg

中島みゆきを聴きながらこのマンガ読んでたらつい妄想が溢れて書かずにいられなかった。スマン。でも反省も後悔もしない。


…でもまさか初投下後七分でネタバレされるとは思わなかったw
114名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 07:23:26 ID:Cz5ZZ1j2
>>113
馬鹿やろう!スレ違いなんかじゃねぇよ!!
電車の中で泣きそうになっちまったじゃねぇか……GJ!GJだよアンタ!

ほんと二人が幸せになれて良かった
文章も読みやすいし楽しめる書き方がされていて最高だったよ!
115名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 12:28:20 ID:ZghKrrUL
スレタイに幽霊もあるからOKだと思われ。

とにかくGJ!!
この数週間で幽霊に洗脳されました。
116名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 12:51:33 ID:v3HLjdQr
GJ!
途中はどうなることかと思ったけどハッピーエンド良かったです
117名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 00:34:28 ID:dSTywN1O
すごく面白かったし、スレ違いなんてことないよ!
やっぱりハッピーエンドはいいよなあ。
超GJ、ありがとう。
118102 ◆gU4sfC4LuL05 :2010/04/23(金) 01:32:43 ID:E0I4O6Rk
GJでした。自分もこれくらいの文章が書けるようになりたいです。
>>102の続き、のようなものが書けたので次から投下します
コテハン付けてみました
1192:猫 ◆gU4sfC4LuL05 :2010/04/23(金) 01:33:51 ID:E0I4O6Rk

思えば、俺がそれに気がついたのは、義務教育も半ばに差し掛かった当たりだったろうか。
物心付いたときには縁側に座る祖母の横でまどろんでいた、猫。
幼い時分はただ『可愛い』とじゃれていただけだった。

だが、小学校も高学年をすぎた辺り、
艶やかな黒の毛並みに陽光を反射させ悠々と過ごすその猫に、まず、僅かな違和感を覚えた。
祖母や祖父、両親が年々衰えていくのに対し、猫はその毛並みにも足取りにも一切の衰えを見せなかったからだ。
人よりも寿命が短い分、人の数倍の速度で老いていくはずの獣にもかかわらず。

ある夏の日、あの猫は何時からいるのか、と山仕事の合間に休憩をとっていた祖父に聞いた。
手ぬぐいで玉の汗を拭い、祖母が淹れた煎茶をぐびりと飲み干した祖父はただ
「よくわからんなぁ……気がついた頃にはいたんじゃなかろうか」と、あいまいに濁した。

祖父が仕事に戻り、ふ、と眩暈を覚えながら後ろを向くと。

いつの間にか、俺の足元に件の猫が座っていた。
ぎょ、と目を見開いた俺に、その猫が金色の目を細めて、「にい」と嗤う。
いや、そのときはただ俺の目にそう見えただけだったのかもしれない。
だがその時の俺からすれば、その猫は得体の知れない何かにしか映らなかった。

俺は、悲鳴を上げながら自分の部屋に向かって遁走した。
1202:猫 ◆gU4sfC4LuL05 :2010/04/23(金) 01:34:22 ID:E0I4O6Rk

祖母が老衰で逝き、後を追うように祖父が倒れた後も我が物顔で縁側を占領していた猫が、
ふ、と姿を消したのは、俺が義務教育を終える直前の冬だった。
可愛がっていた両親は必死になって捜したらしいが、俺は全く手伝わなかった。
高等学校の入学試験が差し迫っていたのもあるし、
丁度そのころ、裏の山の小さな稲荷で少しばかり楽しいことを見つけたのも、それに拍車をかけたのかもしれない。

ただ、恐ろしかった、というのが最も大きな理由だろう。
あの、嗤う金の瞳をもう見なくて済むと、逆に安堵したほどだ。


そのまま年を越し、三箇日を終え、見つからぬまま二月も過ぎようとしていた。
入学試験が終わった当夜、気味が悪意ほど明るい月の晩。
試験の疲れもあったのか、20時を過ぎたあたりにストンと眠りに落ちた俺は、真夜中に便所に立った。
一通り済ませ部屋に足を向けるが、その途中、急に寒さを感じた。
どこかの窓か扉が開いているのか、と思い足を止める。

何故かはわからないが、縁側の戸が開いているような気がした。
―閉めねばなるまい。態々廊下を逸れて、そちらへと向かう。

虫の知らせか何かだったのか。
それは、そこにいた。
1212:猫 ◆gU4sfC4LuL05 :2010/04/23(金) 01:34:51 ID:E0I4O6Rk
嘗ての祖母のように、縁側に座り庭を眺める――黒い着物の女。
ぞ、と背筋が粟立った。
俺がそこで立ちすくんだのに気がついたのか、女が、俺の方を向く。
その垂れたような金眼と白い顔に「にい」と笑みを浮かべながら。
金縛りにでもあったように、身動きが取れない俺。
気がつくと、縁側に引き倒されていた。

「久し振りだねェ、坊。ただいま、って言っとこうかい? 私は寂しかったよ」
俺に覆いかぶさり、耳元に唇を寄せてくつくつと婀娜っぽく、嬉しそうに笑う女。
胸板に押し付けられた柔らかい質量と、最高級の白粉のような甘ったるい、劣情を催すような香りに眩暈がする。
体の一部、俺の牡としての部分が熱を持つのがわかった。

「力抜きなよ。別にとって喰っちまおうってわけじゃあないんだからサ」
まあ、別の意味じゃあ“喰う”けどねェ。 
そう言って笑みを浮かべる女の柔らかい唇が、俺のそれと重なる。
隙間からは侵入ってきた蛇のようなザラついたモノが、俺の咥内を嘗め回す。
「ん、ん…ちゅ…上の初物、頂いたよ。やっぱり坊の口、見立てどおりいいもんだネエ。正直、嬉しいよ」
これで白星二つってとこかねエ、と女が呟く。
呟きながら、俺の下穿きの中にもぐりこむ女の指。
滑々としたそれが、起ち上がり掛けていた俺のモノを掴む。

女がまた、「にい」と嗤った。
1222:猫 ◆gU4sfC4LuL05 :2010/04/23(金) 01:36:08 ID:E0I4O6Rk

気がつくと俺は、雪の降り積もった縁側に寝転んでいた。
夜が明ける寸前。慌てて寝床に戻る。
月明かりのしたのアレは夢か、と思った。

だが。日が昇って、朝餉を食いに居間まで行くと、両親が妙に喜んでいた。
聞くと、いなくなっていた猫が今朝方玄関に丸まっていたのだという。
ぞっと、血の気が引くのがわかった。
台所に向かった母と入れ違いに、件の猫が居間に入ってくる。
そのまま俺の足元までとことこと歩を進め、俺の顔を見上げる。
「にい」と嗤う。黒い尾が、先端から二つに裂ける。

「昨晩のこと。誰にも言うんじゃないよ、坊」
云ったら八つ裂きにして喰っちまうからネェ。
そう言って、二股の尾を持った猫はくつくつと嗤った。

123102 ◆gU4sfC4LuL05 :2010/04/23(金) 01:37:09 ID:E0I4O6Rk
以上になります
あ、昨晩投下したのはタイトルが「1:同僚」になります
124幽霊の夕子さん(七) ◆vI6gRI/4BA :2010/04/23(金) 03:07:17 ID:cDl03xT/
うぉぅ

これは先行きを期待しちまうぜ
125名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 03:07:53 ID:cDl03xT/
名前欄消し忘れてた・・・orz

とにかく続き楽しみにしてます
126名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 13:29:35 ID:ZP0OR+zz
書いてたらいつの間にか普通の人間相手っぽくなったでござる
127名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 20:36:01 ID:amroNALm
GJ
狐さんも期待してます
128名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 20:39:47 ID:2Zdp4Qkh
監視カメラが嫌なら電源切るだけでいいはずなのに、わざわざ32億円かけて撤去。
で、犯罪続出。(←こんなの氷山の一角だろ)

===========================================

郵便局内の監視カメラ撤去 日本郵政「士気失わせる」
2010年4月9日(金)13:07
 日本郵政が、全国約1万8千の郵便局内に設置された監視カメラを約32億円の費用をかけて撤去することが9日、分かった。政府が柿沢未途衆院議員(みんなの党)の質問主意書に対する答弁書で明らかにした。
答弁書は、監視カメラについて「労働の過剰監視につながり職員の士気を失わせるなどの弊害があった」と異例の指摘。撤去は「日本郵政の経営判断」で決めたと説明している。

===========================================

横領など不祥事23億5800万円=08、09年度で95件−郵政3社
ttp://www.jiji.com/jc/zc?key=%cd%b9%c0%af&k=201004/2010042300422

郵政職員の現金絡む犯罪、被害20億円超す
ttp://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100423-OYT1T01203.htm

日本郵政グループ、現預金の横領20億円超 09年度
ttp://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E0E1E2E3868DE0E1E2E6E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL

郵政従業員、昨年度20億円超の犯罪
ttp://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4411317.html

郵政 従業員の犯罪20億円に
ttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20100423/t10014035031000.html
129名無しさん@ピンキー:2010/04/23(金) 20:51:47 ID:QoAahyRQ
>>123
高校受験が一段落つくまで待ってたのかな? 続きが楽しみです。
130名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 12:58:05 ID:DE/mK82g
>>128
ネトウヨ氏ねよ
131名無しさん@ピンキー:2010/04/25(日) 01:10:13 ID:6yJKyr8O
>>128
正論であるが、ここで言うことではないな
132名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 00:02:26 ID:2gcazYdT
一ノ葉とかルクとか
そろそろ書くべきか…?
133名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 00:45:19 ID:nwt2D8cG
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) +
134名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 01:56:11 ID:RMC/+b/k
>>123
亀で申し訳ないが乙
ひとつきになったんだが、「白星二つ」ってのは猫が狐に先手打ったってことでいいんだよな?
135名無しさん@ピンキー:2010/04/26(月) 07:39:49 ID:Py2VbRqj
人外もの書いてたらいつの間にか普通の人間相手っぽくなったでござる
136名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 23:45:13 ID:iyyAc6H9
>>135
よくあること
…かな?
137名無しさん@ピンキー:2010/04/27(火) 23:59:37 ID:W8Y5zN4K
>>135
構わん!うpしたまえというかしてくださいお願いします!
138名無しさん@ピンキー:2010/04/28(水) 23:35:02 ID:8MUOGDXF
>>135
    + 。 *   ワクワクテカテカ  +
ツヤツヤ  ∧_∧  +
 +   _(u☆∀☆) ギトギトヌルヌル
  ⊂ (0゚ ∪ ∪。⊃ +
⊂ ゚̄ と_u _)__)゚  ̄⊃ + ワクワクキラキラ
  ⊂_。+   ゚+_⊃
    ⊂__⊃.  +  * +   ワクテカ  +
139名無しさん@ピンキー:2010/04/29(木) 14:25:32 ID:CxVREQV7
空気人形って映画見てみたらけっこうこのスレの趣旨に合ってた気がする。
ちょっと鬱展開だが個人的には萌えた
140名無しさん@ピンキー:2010/05/05(水) 00:28:24 ID:NFe9USHg
書きたいのに進まないぞ、コンチクショー
141名無しさん@ピンキー:2010/05/05(水) 00:48:45 ID:f1cBq/k4
>>140
しかたがない、俺のオーラパワーを少しだけ分けよう!!
142名無しさん@ピンキー:2010/05/05(水) 06:18:27 ID:Yw8uGX+K
>>113
>>123
GJ!!!!
続き期待してます!!!!







あるよね?後日談的な
143名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 07:11:24 ID:SMuDDs7d
人に破滅をもたらす事で定評があるメリーさん。
油断し悪霊に強姦されそうになってた所を救ってくれた霊媒体質の男の子
男の子に一目惚れしお決まりの電話で私メリーさんアナタの後ろに居るのって電話し住み込む(居候)する
その後に色々あって結ばれ大乱交
144名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 08:42:01 ID:y0CIFseI
最後だけちょっと待てw
145名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 00:53:17 ID:54YOctVu
メリーさんが連れてきた羊も交えた大乱交…。

すまんROMる。
146名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 14:45:26 ID:uVnKU684
最後は全員で「らめぇー」ですね、わかりません!
147名無しさん@ピンキー:2010/05/09(日) 23:20:39 ID:2rsmNLcY
>>146

らメェエ〜
148名無しさん@ピンキー:2010/05/10(月) 09:57:10 ID:wJY2baoZ
松本ドリルっぽい展開だな
149名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 20:03:26 ID:ZpwTqOA4
このスレは、どうにも投下をためらう何かがある。
150名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 20:17:52 ID:jyD3tIxK
狐耳巫女とキャッキャウフフしたい
151名無しさん@ピンキー:2010/05/12(水) 20:34:14 ID:ROdpXPLi
そうかね?
152名無しさん@ピンキー:2010/05/13(木) 00:05:40 ID:dlOW+F6T
…忙しくて続き書けないとか最悪すぎるorz
話はまとまってるのに…書きたいけど時間ないし…死にたい
もしくは妖怪に喰われたい
153名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 12:01:42 ID:wLF++3Gj
仮面を付けた素顔が謎に包まれた悪鬼。全身が筋肉ムキムキ故に醜悪な顔との噂で掛けられた懸賞金の高さから凶悪な化け物
そう判断した勇者が死闘の末に仮面を叩き割り倒すと素顔は息を呑む程の絶世の美女(正体は人間と鬼のハーフ。筋肉質な身体は生まれつきで好きでなったわけではない)
悪い役人が自分を手に入れる為に悪評を流し濡れ衣を着せたとか色々と背景や事情も判明
よりによって良くある掟で素顔を見られたら婚約と言う事実も判明し
姫を選ぼうとする勇者に最初はギスギスで険悪な仲だったが最終的には恋仲に発展しギシアン
154名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 19:39:23 ID:QQ2R8Qw/
私メリー、あなたの後ろにいるなう
155名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 19:47:04 ID:vSx+Mmyq
メリーさんの自作HP
メリーさんのブログ
メリーさんのツイッター
156名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 14:36:27 ID:SGF8XAm0
電話の機能が発達した今の世の中。少し電話しただけで着信拒否される事すら珍しい事では無くなったメリーさん
同じ空気幽霊仲間と思ってたトイレの花子さんや口裂け女ですら結構な本数の映画に出演し
挙げ句、花子さんに関しては子供の味方ポジションを更に変身ヒロイン要素を取り入れ強化しお化け関連の雑誌(ブンブンなど)からオファーが殺到する売れっ子お化けに返り咲き

口裂け女は黙ってれば美人なので言い寄る男が後を絶たず。このままではゴールインも近い

私も生き方や路線の変更を考えるべきのかな?と貞子やお岩さんなど、その筋ではメジャーなご意見番の方々に悩みを打ち明けるメリーさん
157名無しさん@ピンキー:2010/05/19(水) 23:45:33 ID:Kl7Hxfnp
その頃ターボばあさんは峠で若者と元気に遊んでいた
158名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 00:25:55 ID:tD58DQv1
サキュバスたちのマラソン大会は、給水所の代わりに給精所があって、若い男が何人も立たされてるんじゃないかなぁ。
159名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 01:04:27 ID:eEOo8QAs
狐耳巫女とキャッキャウフフしたい…
160名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 08:41:08 ID:SnHnxA75
速報・貞子さん電撃入籍。報われない薄幸の呪い娘で定評があった貞子さん(24歳)ついに春が
お相手は呪う筈だった男性で相手が貞子さんに一目惚れし
アナタが誰であっても関係ない結婚してほしいと告白され
免疫がない貞子さんは怨霊顔からスッピンの顔(かなり美人)に戻り顔を真っ赤に染めて、しどろもどろし
こんな私なんかで良ければと承諾し入籍

お岩さんはアイツの人間を憎む気持ちなんて、その程度だった事よ。私みたいにならないようにせいぜい気をつけなと悪態を付きながらも心配する素振りを見せ

口裂け女や雪女・トイレの花子さん達は末永くお幸せにと祝福のコメント
161名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 08:11:03 ID:uZAMJYx4
>>160
ふたなり美少女嫁にするとかマジ裏山
162名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 08:56:06 ID:vaSVvIuL
そんな中、気付いてもらえなくて半泣きになりながら後を付いていったり。泣きながら開けてよと電話する等の逸話も輝き
怪談話のジョーク(お笑い)担当で、もはや怖くもない可愛らしい物体と化してるメリーさん

メ「何で私には色恋沙汰が無いのかしら。幼女が家に押し掛けるのよ贔屓目で見れば」
テケテケ「根本的に同性の女の子しか狙ってないし。そもそも、お子ちゃま体型で魅力皆無なのが原因では」
周りの仲間「し〜らないっと(蜘蛛の子を散らすように逃げる)」
この後、空気を切るシュって音と
メ「悪かったわね!!お子さま体型で!!好きでなったんじゃないわよ!!」って言う叫びと共に繰り出された伝説の右フックで空高くテケテケが吹っ飛ばされたのは言うまでもなく
163たったひとつの(ry 1/6:2010/05/22(土) 00:52:35 ID:GdRKlob5
投下します。長さは6レス分
人外っぽい描写はあまりないので注意

「ん、む……」
形を持ち始めた俺のモノを口一杯に頬張り、ユキさんが小さく声を漏らす。
柔らかな口腔の感触に先端を包み込まれ、堪え性のない愚息は早速びくびくと震え始めた。
快感に情けない声を上げる俺を見上げて、ユキさんは楽しげに目を細める。

「きもひいい……? しずるくん」
「ぅ……はい、すっげぇ、気持ちいいです」
俺の素直な返答に彼女はふふっと笑い、口にした一物を音を立てて吸い上げた。
不意打ちをまともに食らい、再び呻く俺。やべぇ、イっちまうかと思った。

「ちょっ……ユキさん、今のは…反則……!」
「ん、ろうして? しずるくん、きもちよくなひ?」
「いや、気持ちいいんですけど、気持ち良過ぎて色々やばいというか……ようするに男の面子の危機というかですね……っ」
早漏のレッテルを張られるのだけは勘弁と、必死に射精欲と戦う俺の心情を分かっているのかいないのか。
ユキさんは不思議そうな顔を浮かべたまま、肉棒を舌で唇で愛撫する。
桜色をした可憐な口唇に挟まれて、見る間に硬度を増していく雄の欲望。
口に含まれていない部分には代わりに彼女の指が絡み付き、陰茎全体が目の眩むような刺激に包まれた。
164たったひとつの(ry 2/6:2010/05/22(土) 00:53:34 ID:GdRKlob5
「あ、くっ……」
相変わらず、絶妙な舌使いおよび指使い。
抵抗することが馬鹿らしくなってくる程の気持ち良さに、つまらない男の意地はあっさりと屈服させられた。
荒い息を吐きながら、股間に顔を埋める恋人の表情を窺う。目が合った。
きっと興奮に赤くなっているだろう俺の顔をしばし眺め、彼女はまた笑う。心底嬉しそうに、幸せそうに。
いっそ無邪気でさえあるその笑顔に釣られ、俺の頬も自然と緩んでいた。

――叶わないよなぁ、ホント。
本格的に力が抜けた俺は、大人しく壁にもたれてユキさんの奉仕を受け入れる体勢になった。
ユキさんも俺の態度が従順になったことを察して、竿に絡む舌の動きをより激しく、熱を帯びたものに変えていく。

薄暗い部屋に、舌と肉棒が絡むいやらしい水音が響き渡る。
下を見れば、俺のモノを咥え込み、口唇で扱き上げるように動くユキさんの美妙な面。
そして、間断なく舐められ吸われ続ける、爆発寸前の怒張。
聴覚、視覚、触覚。それら全てで性感を苛まれ、俺はあっけなく限界へと追い込まれた。

「ゆ、きっ……さん」
さらりと流れる金色の髪に、指を絡ませる。
ユキさんは心得たとばかりに肉竿を深く咥え、奥にわだかまる精を絞り出すかのように強く吸い上げた。
直後、性器から脳天までを電流のような感覚が走り抜け、俺はユキさんの口の中に己の欲望を吐き出した。
165たったひとつの(ry 3/6:2010/05/22(土) 00:54:13 ID:GdRKlob5
「ん……!」
精液が喉に当たる感触に驚いたんだろう、ユキさんがかすかに声を上げる。
けれどそれも一瞬のこと。
彼女はすぐさま平静を取り戻すと、まだ射精を続ける肉棒を口腔のより深いところまで咥え込んだ。
普通の女性ならば息苦しさに呻くところ、しかしユキさんは動じない。
喉奥にじかに流し込まれる濁った体液を、苦しげな素振り一つ見せずに受け止め、飲んでいく。
それも当然だ。だって彼女は、端から呼吸なんてものする必要がないのだから。

「う、くぅ……っ!」
とろとろと流れ出る射精の名残を優しく吸われ、俺は心地良い気だるさに身を預ける。
背後の壁にもたれ、肩で大きく息を吐いていると、足元からくすくすと笑い声が聞こえた。
「ふふふっ、しずるくん、今日はたくさんだったね〜。いつもより多かったから、私びっくりしちゃった」
直前までの情事の名残など欠片も感じさせない爽やかな笑顔でそんなことを言われ、
賢者タイム真っ最中の俺はどうにも居た堪れなくなる。

「……久しぶりだからですよ」
「久しぶりだと、たくさん出るの?」
「…………出るんです」
「そうなんだぁ……でも、この間したの、一昨日だよね?」
「………………ユキさんもう勘弁して下さい」
無自覚の言葉責めにライフポイントを削り倒され、俺は力なく天井を仰いだ。
そのまま壁の時計に目線を走らせる。明日の講義は朝一からある、そろそろ寝ておかないとまずい。
俺の視線を追いかけて時計を眺めたユキさんも、「結構遅くなっちゃったねぇ」とのんびり呟いた。
166たったひとつの(ry 4/6:2010/05/22(土) 00:55:34 ID:GdRKlob5
「どうするしずるくん、もう寝ちゃう?」
「や、一応シャワー浴びてからにします。結構汗かいたし」
ティッシュで適当に拭った息子をしまい、俺はのろのろと重い腰を上げる。
それに続いてユキさんも立ち上がると、ぽんと両手を打ち合わせてこう言った。

「分かった。じゃあ、その間に着替え用意しておくね」
「いいですよ、そのぐらい自分でできますし」
「大丈夫。下着はタンスの一段目の左端でしょ? もうちゃんと覚えたんだから」
心持自慢げな笑みを浮かべ、ユキさんはえへんと胸を反らす。
嬉しそうなとこ悪いんですが、左端じゃなくて右端ですユキさん。
あと一段目じゃなくて二段目です。

俺の突っ込みにユキさんは小首を傾げ、「そうだっけ?」と目を瞬かせた。
のんびりとした性格が影響しているのか、彼女はこの手のドジが結構多い。
実際にタンスを開けてみてホントだー、と呟いているユキさんの横顔を、俺はなんとはなしに見つめた。

息が乱れている訳でも、汗をかいている訳でもない、平静そのものの顔付き。
ついさっきまで指や唇に付着していたはずの精液の残滓も、いつの間にか跡形もなく消えてしまっていた。
167たったひとつの(ry 5/6:2010/05/22(土) 00:56:25 ID:GdRKlob5
俺の恋人――ユキさんは人間じゃない。

彼女が一体どういう存在であるのか、詳しいことを俺は知らない。
分かっているのは、俺と同じ人間ではないことと、いわゆる動植物のような生命体ではないということだけ。

それしか、知らない。

外見だけを見るならば、ユキさんの容姿は人間の女性と何一つ変わらないのだ。
美しさの中にも少女のような可憐さを残す、色白の細面。
金色の長い髪は両サイドで結われ、彼女が動くのに合わせていつも軽やかに揺れなびく。
黒を基調にした丈の長いワンピースが、白い肌と細身の肢体をよく引き立てていると思えた。

しかし、衣服も含めてその姿はあくまで擬態でしかなく、仮に欠損したり汚れたりしても
――例えば、精液をかけられたりしても――少し時間が経過すれば自然と元の状態に戻る。
当然生命活動だってしていないから、心臓が鼓動することも、頬が紅潮したりすることも、
恋人と情を交わして性感を得る、ということも、ない。絶対に。
168たったひとつの(ry 6/6:2010/05/22(土) 00:57:12 ID:GdRKlob5
「しずるくん?」
はたと気付いて、いつの間にか俯いていた面を上げる。
形の良い眉を曇らせて、ユキさんがじっと俺の顔を覗き込んでいた。
「どうしたの? なんだかとっても怖い顔になっちゃってるわよ」
「あ、いや、なんでもないですよ。ちょっと考え事してただけで」
心配そうなユキさんに笑って見せ、俺はつまらない考えを頭から追い出す。
正直なことを言ったところで、彼女を悲しませてしまうだけだ。
これ以上、ユキさんにそんな顔をしていてほしくなかったから、俺は笑顔でその場を誤魔化す。

「……そっか」
しばらく俺の顔を見つめ、ユキさんはこくんと頷いた。
何かを考えるような、その間が少し気にかかったが、結局問い質すことはできなかった。
「はい、どうぞ。下着とジャージ。寝る時はいつもこれでしょ?」
「どうも。じゃ、俺シャワー浴びてきますね」
綺麗に畳まれた着替え一式を受け取り、俺はユキさんに背を向けて歩き出す。
ドアを閉める直前、背後から聞こえた「いってらっしゃい」の声に振り返ると、
にこにこ笑顔のユキさんが俺に向かって手を振っていた。
――風呂場に行くだけなんだけどな。
大仰とも言える恋人の行動に、苦さ一割むず痒さ九割の笑みを浮かべながら、俺は今度こそドアを閉める。

その時――。

「――――ごめんね」

扉が閉まる音に紛れて聞こえた声は、いやに鮮明に俺の脳裏に焼き付いた。




――――――――――――
以上です。続けたいとは思っている
169名無しさん@ピンキー:2010/05/22(土) 05:03:36 ID:86ApWSzl
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) +
170名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 13:46:53 ID:7XImeJ/x
既に山神でも巫女でも無いですが……

山神狐巫女 其の五 「一族の血」
1711/12:2010/05/23(日) 13:48:05 ID:7XImeJ/x

 山の中腹に古めかしい屋敷がある。
森の中に忽然と現れる屋敷、普段は人気も無く静まり返っているが、今日は違う。
珍しく二人、いや、二匹の客があった。
二匹とも、黄金色の立派な尻尾が天を仰いでおり、自らが妖狐であることを誇る。
珍しくも母である陽炎から昼餉を呼ばれ、雪風と時雨が屋敷に顔を出していたのであるが、

「……で、なんで譲がここにいるのかしら」
「いや、これには深い事情が、ふあっ、陽炎様、こんな所で」
「ふふっ、そちは余の色子、所有物なのじゃ、いつ、何をしようが、余の自由であろう」

 その場に譲がいることに驚き、あっけに取られる雪風と時雨。
当の譲は、陽炎の隣に鎮座し、その尻尾に優しく包まれながら、愛撫を受けていた。
雪風たちの顔を見て懐かしくもあったが、陽炎の尻尾に包まれては、それどころではない。

「お母様、譲は私が最初に手を付けた人です、初めての人です、それなのに酷いですっ」
「もう別れたのだろう? ならば、わしの色子にしようと、文句は無いはずじゃ」
「そっ、それは私が一人前になるまでの話であって……」
「一人前? 尻尾二本のお前が一人前の九尾になるまでに、譲は年老いて死んでおるわい」
「うっ、むぅぅー」

 頬を膨らませて不満を露にする雪風だが、母である陽炎を目の前にしては、
それ以上の反論もできない。

「と、見せかけて、隙ありっ」
「甘いわ」

 譲を母の魔手から奪還すべく、奇襲を敢行した雪風であったが、無論のこと敵わない。
待ち構えていた陽炎の尻尾に行く手を阻まれると、そのまま尻尾の繭に包まれ、消える。
譲を巻き絞めている以外の尻尾に全身を絡み取られ、雪風の小さな尻尾が二本、
僅かに顔を覗かせている。

 雪風も必死に抵抗をしているらしく、尻尾の繭が内側から突き上げられているが、
しばらくすると、繭から何かが吐き出された。
雪風が着ていたはずの巫女服。それが宙を舞い、譲の前に落ちた。
続けて、小さく可愛らしいパンツが吐き出され、これも譲の前に舞い落ちる。
これで、雪風は全裸になっていることがわかる。

 陽炎が何をしているのか、雪風が何をされているのか、外野にも簡単に理解できる。
普段、譲がされている事を、そのまま雪風に対して行っているのだろう。
譲にとって、尻尾の繭に包まれる愛撫を外から見るのは初めて。
繭の中では、雪風が快楽の坩堝に嵌まり込んでいるだろうか。
 外目には尻尾に大きな動きは無く、雪風の喘ぎも聞こえない。
時折、僅かに脈動を見せるだけ。

 視線を時雨に向けると、「またか」とばかりに溜息を付きつつ、油揚げを口に運んでいる。
陽炎も同様、眉の一つを動かす事も無く、茶を啜る。
実に静かな昼食の光景が流れていた。

「ふむ、そろそろ良かろう」

1722/12:2010/05/23(日) 13:49:29 ID:7XImeJ/x

 ゆっくりと茶を飲み終えた陽炎が湯飲みを置くと、尻尾の繭が解かれた。
蕾が花開くように尻尾の先端が四方に開くと、裸体の雪風が姿を現す。
 着衣のように乱暴な吐き出し方ではなく、尻尾で支えながらゆっくりと。
畳の上に寝かされた雪風、その目は開いているが瞳に色は無く、空を見つめている。

「母様、いたずらにも、限度というものがあるでしょう」
「ふふっ、そうかえ、これでも加減をしたのだがのう、お主はかかってこぬのかえ?」

 相変らずの呆れ顔を見せる時雨に、目を細めてこたえる陽炎。
これが本当に親子なんだろうかと、譲の頭に疑問が浮かぶ。
妖狐一族の独特なスキンシップを見せられ、驚きを隠せない譲であったが、
この後、更なる驚きを覚えることになる。

 畳の上に寝かされていた雪風を介抱すべく、見慣れたお手伝いの女性が
姿を見せたとき、

「まったく、お姉さまも、この淫乱な母上に何か言ってやったらどうなの?」
「時雨、言葉を慎みなさい、おやかた様に対して失礼ではありませんか」

 陽炎の尾に包まれながら、恍惚とした無意識下で黙っていた譲であったが、
この短い会話の中、一つの疑問を得た。

「待てよ、お姉さまって、時雨が長女じゃないのか、お前にも姉がいたのか?」
「今更何を、目の前にいるでしょうが、毎日顔を合わせているはずよ」

 時雨が目顔で示す先には、雪風を介抱する女性の姿が。
そう、譲は知らなかった。
屋敷に招かれた(連行された)際、最初に出迎えたあの女性。
屋敷の中で何時も忙しそうに立ち働いていたあの女性である。

「そういえば、お前に紹介していなかったのう、秋月、近う寄れ」
「はい、おやかた様」

 目の前の女性がその手を休め、譲の前で指をつき、頭を下げた。
普通の人間でないとは思っていたが、雪風や時雨の姉とは考えてもいなかった。
何故かといえば、彼女の立ち振る舞いを見れば分かる。
雪風、時雨、陽炎との出会いの際は、出会いの直後に性交が待っていたが、
彼女の場合は違い、一定の距離を保ちながらも、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
何より、礼儀正しい。

「これが余の一番の娘、“秋月”じゃ、覚えておけよ」
「譲さま、秋月でございます、以後も、お見知りおきを」
「ふふっ、不出来な他の娘達と違って実に優秀、既に7尾になっておるわい」

 すると、秋月の背後から、陽炎達と同じ黄金色の尻尾が姿を見せる。
三女の雪風が二本、次女の時雨でも4本であった尻尾。
妖狐の力の象徴である尻尾が7本とは、相当な実力の持ち主と言える。

「こやつは、気を隠すのが得意でな、お前が気付かなかったのも頷ける事よ」
「はぁ、秋月さん、ですか」

一族の長である陽炎の尻尾も見抜くことが出来た譲も、秋月のそれを
見抜くことは出来ていなかった。つまり、それ程の力を持っているということだ。

1733/12:2010/05/23(日) 13:50:21 ID:7XImeJ/x

 それから数日、秋月との関係に変化があったかといえば、何も無かった。
食事の世話から屋敷内の掃除も一手に引き受け、陽炎との夜伽に疲れ果てたと時などは、
風呂場で身体を拭き清めた後、自室まで運んでくれる。
 意識が混沌とする中、虚ろな瞳で顔を上げると、秋月は優しく微笑み返してくれる。
その笑顔を見ただけでも、譲は体中の疲れが抜け、癒されるように感じていた。
ただ、自分の正体が知れたためか、金色の尻尾を隠す事がなくなったのが、
唯一の変化だろう。

「まさか、あの人も陽炎の血筋だとはなぁ」

 秋月には、陽炎が見せるような、身体に絡みつくような視線も無ければ、
圧倒させるような妖気も無く、彼女の持つ清楚さが好ましかった。

そんなある日の事。

「あっ」

 いつものように夕餉の膳を運んでいた秋月が、胸を押さえると、その場で蹲った。
体を丸め、胸に手のひらを当てながら、苦しみに耐える。
咄嗟に駆け寄り、痛みを和らげるために背中を摩ろうと手を近づけた譲であったが、

「触れるなっ」

 背後から響く陽炎の声に、譲は岩の様に動けなくなってしまう。

「譲、お前が近寄っては逆効果じゃ、離れよ」

 命ぜられるままにその場から退く譲。しばらく見ていると、秋月の呼吸も収まりを見せ、
安堵の表情を見せる譲に対し、秋月を見守る陽炎も溜息を漏らした。

「禁断症状が出たようじゃな、精気溢れる男が傍におっては、しかたもないか。
秋月、今宵はお勤めの用意をせよ、」
「いっ、いえ、おやかた様、この程度のこと、なんでもありません」
「嘘を申せ、これは余の命令じゃ、相手は、ふむ、譲でよかろう」
「へ?」

 わけも分からぬままに己の名を出され、あっけに取られる譲を横目に、
秋月は一礼を残すと、その場から姿を消した。
視線を転じて陽炎を見つめる譲に、陽炎も目顔でその場に座るよう命じた。

「アイツはな、私のせいで少々奥手になってしまったのよ」

再び大きなため息を一つ吐いた陽炎は、ゆっくりと話を始めた。

「私の調教が災いしてな、連れ込んだ男の責めは激しいものばかり。
性交のおり、私がみっちり仕込んだ男をあてがったのだが、それがいかなんだ」

 陽炎によって数々の性技を叩き込まれ、鍛えこまれた男の肉体は、
経験の無い秋月の体を激しく、猛烈に蹂躙してしまう。
激しい責めにあった秋月が感じ取ったのは快感ではなく、痛み、苦痛、そして恐怖。
それ以来、彼女たち一族が最も淫乱となる時期、
満月の光が差し込む発情期となっても、男を求めることが無くなってしまったのだ。
1744/12:2010/05/23(日) 13:51:05 ID:7XImeJ/x

「じゃがな、お前も知っての通り、我等は男無くては欲求不満となり、心を病んでしまう。
あいつにも無理やり男をあてがって、交わらせては見たのだが、回復の兆しが見えん。
私が目をつけ、鍛えこんだどのような男であっても、アイツの心を開かせた者は無い。
お前なら何とかしてくれるような気がする。わしの頼みじゃ、頼む。なぁ、譲よ」

 常に強く、激しく、冷徹な感情を露にし続けている陽炎の口から発せられた、
‘頼む’という思いの込もった言葉。
雪風や時雨の時の様に交わればよいだけと考えていたのが、非常に難しい事態へと急転し、
困惑を隠しきれない。
 譲は真剣な眼差しで見つめる陽炎に対して深く頭を下げると、部屋を後にすべく
陽炎に背後を向けたが、

「なぁ譲、今まで秋月を泣かした男共を、如何にして処分したか、聞きたくは無いかえ」

 強烈なプレッシャーと共に、殺気を含んだ言葉が背中に突き刺さり、
譲は振り返ることはおろか、言葉を発することもできない。

「その答えはのぅ、ふふっ、気が向いたら、裏山の古井戸を覗いてみるとよいぞ」
「……」

 男共をどう処分してきたのか、陽炎の言葉から手段を知る事はできなかったが、
その結果は容易に想像する事ができた。
 強烈な殺気に譲は足元をふらつかせながら部屋を後にし、陽炎の顔を見ることも無く
一礼すると、襖をゆっくりとしめた。

「ふふふっ、ちぃと、脅しが効きすぎたかのぅ」

 譲が去った部屋の中では、一人残った陽炎が、
悪戯を終えた少女のように満足そうな笑みをたたえていた。


▽△▽


「秋月さん、入りますよ」

秋月の自室の前へ赴き、襖越しに尋ねるが、返答が無い。
不安を抱きつつも襖を開くと、秋月の姿が目に留まる。
床に敷き述べられた大き目の布団と、二つの枕。
秋月はその横に正座し、両手を付けて譲を迎えていた。

「譲様、お待ちしておりました、今宵のお勤め、どうかお願いします」

 秋月が立ち上がると同時に、身に着けていた衣服が舞い落ち、
純白の素肌が露になった。
 その姿を見た瞬間に、秋月と交わった他の男たちの心境を知った。
男の身体を知らない生娘のように真っ白な肌、何かを諦めたかのように落ち込んだ瞳。
少し小さめだが引き締まった胸と、天を仰ぎ硬くなった乳首。
一切の無駄を排除したたかのような体のライン。
男の性を吸い取る魔性の穴も、縦筋がわずかに覗く無毛の丘。
背後では、妖狐ならではの尻尾が揺らめく。
どんな男でも、一目見た瞬間に飛び掛り、陵辱の限りを尽くしたくなるような体が、
目の前に晒されていた。
1755/12:2010/05/23(日) 13:52:00 ID:7XImeJ/x

「そんなにジロジロ見ないでください。恥ずかしいです。」

 顔を赤らめながら俯くと、頭の頂点に生えた三角の耳も、同調するように前へ倒れこむ。
実にかわいらしい。

「譲さん、早くしてくださいませ、覚悟はできております」

 秋月は、敷き述べられた布団に寝転がると、股を開いて譲を受け入れる体勢を整える。
今までに遭遇した事の無いシチュエーションに、譲の股間は張り裂けんばかりの興奮を
呈しており、服の上からでもその興奮が見て取れるほど。
 譲も促されるように服を脱ぐと、堅く膨張した一物が露になった。
秋月の柔肌を眼前にして、譲の呼吸は次第に荒くなり、興奮の色は濃くなるばかり。
それを目にした秋月は、過去の凄惨な行為が頭に浮かび、脅える事しかできなかった。

「いくよ、秋月さん」
「んっ、クゥゥンッ」

 裸体を露に、男を迎える体勢を取りながらも、脅えた子狐のような鳴き声をもらす秋月。
己の性欲を持て余す譲は、秋月の身体にゆっくり覆いかぶさると、
僅かに除く白い筋に一物をあてがい、そのまま挿入するかに見えた。
今まで秋月を弄んだ男達の如く……だが、

「んっ、んんっ!?」

 口を真一文字に結び、必死に瞳を閉じて、己の性器に押し寄せるだろう痛みに
備えていた秋月の口を柔らかな感触が包み込み、驚きに思わず瞼を開く。
譲は、秋月の身体に覆いかぶさると、その唇を優しく吸いはじめたのだ。

「恐れる事は無いよ、力を抜いて、僕を受け入れて」

 堅く引き結んでいた秋月の口も次第に綻び、譲の口付けを受け入れるようになると、
譲の舌が口内へ侵入し、やんわりと舐る。
 男からの優しい口付けという初めての感触を受け、驚きで何も出来なかった秋月も、
譲の舌に自らの舌を重ね合わせ、熱い唾液の交換に興奮を高めていく。

「はふっ、ふぅぅんっ、ひゅずる、ひゃまっ」
「んぷっ、秋月さん、口付けは気持ちよかったかい?」

 譲が尋ねても、秋月は答える気配は無い、いや、余裕が無いという方が正しいだろう。
さっきまで緊張で引き締まっていた顔は、譲の口付け一つで綻び、瞳は潤みを増した。
それを見やった譲が、秋月が言葉を発する前に、再びその口を塞ぐと、
譲の下にある秋月の身体も、表情と同じように柔らかく変化するのを感じ取った。

「やめて欲しかったら、そう言って、君が嫌がることは、しないから」
「はいっ、譲さまにお任せします」
「秋月さん、様付けはよめてよ、さん付けで呼んで欲しいな」
「譲……さんっ、ふぅんっ」

 譲は、秋月の口を塞ぐよう唇を重ね、舌の交わりが再開される。
決して無理に責める事は無く、口付けを執拗に繰り返す。
譲が口を離すと、秋月の舌が譲の口を求めて空を泳ぎ、冷やりとした空気を浴びる。
寂しそうに喉を鳴らす秋月の瞳は、快感をねだるかのように潤む。

1766/12:2010/05/23(日) 13:52:53 ID:7XImeJ/x
 譲の手が、秋月の胸に触れた。
手の平で優しく包み込むと、ぴったり収まる程度の大きさであるが、
それでいて女性としての誇りは失わず、たっぷりとした質感と弾力を湛えている。

「これは、時雨と雪風の間くらいの大きさかな、でも、この揉み応えは二人以上だ」
「うっ、嘘を言わないでください、私の胸なんて、たいした事無いんですから」
「そんな事無い、自信を持って良いよ、ほら、その証拠に」
「ふあっ」

 譲の指が乳首を摘むと、秋月の身体が大きく跳ねた。
身体を仰け反らせようとするが、上に乗った譲の身体に抑え付けられてしまう。

「はんっ、乳首なんて、責めないで下さいっ」
「わかった、でも、胸はいいんだよね」
「ちがっ、はうぅうぅっ」

 胸の谷間に顔を埋めつつ、両の手で秋月の可愛らしい胸を愛撫する譲。
身体に吹き付けられる譲の熱い鼻息、谷間に沿わせて動かす舌の感触、
今まで秋月が感じたことの無い、微妙な感触の数々は、秋月の隠れた性欲を暴き出す。

「んんっ、くぅんっ、くぅぅんっ」

 譲の下で時折跳ねる事しか反応を示さなかった秋月の身体。
その身体が左右にゆっくりと揺れ、両の足を擦るような動きを見せる。
呼吸の荒さも、口付けを終えて以来変わらずに、荒く細い息を続けていた。

「はうっ、はううっ、ふぅぅっ」
「どうしたの、両足を擦り付けて、なにか欲しいのかな?」
「へっ、ちがっ、わたしはっ、ふあああっ」

 秋月のしなやかな脚の間に己の脚を滑り込ませる。
その意図を察した秋月が妨げようと股に力を込めたが、時既に遅し。
譲の両脚が秋月の股を裂くように拡げ、つややかな秘所が露となった。
濡れてこそいないが、しっとりと柔らかな秘所が、期待に胸を膨らませている。

「あっ、譲さんっ、そこはダメッ」

 秋月の視界に飛び込んできたのは、己の胸から離れる譲の片腕。
それが、己の胸の股に迫る様であった。
秋月のヘソに着地した腕が周囲を撫でるように一回りすると、さらに下半身へと進む。
脳裏に浮かぶのは、過去の恐怖と、快感への淡い期待。
だが、譲の腕が股の間に消えた直後に訪れた感覚は、秋月の想像以上であった。

「ひっ、ヒィィィィッ」

 叫び声と共に、秋月の身体が一段と大きく飛び跳ねる。
少し触れただけというのに、この反応。触った方の譲も驚き、動きを硬直させる。
片胸だけで秋月の身体を押さえつけているという事もあったが、
尻に敷かれた尻尾たちが硬直で大きく伸びたのが、体の跳ねた理由だったようである。
恐る恐る、再び秋月の秘所に指を添えるが、今度は僅かに跳ねるだけ。
尻尾のひとつが譲の行為を妨害しようと腕に絡まってくるが、その力も弱弱しい。

 秋月の様子を見つつ、己の指を穴の奥へと導いていく譲であったが、
指先に異様な感覚を感じ、思わず問いかけた。
1777/12:2010/05/23(日) 13:53:33 ID:7XImeJ/x

「あの、秋月さん」
「はいっ、ゆずるさんっ、ふぅんっ」
「その、言いにくいんだけど、入り口近くにある処女膜みたいなものはナニかな?」
「それはっ、おっしゃるとおりの、処女膜ですっ」

 譲も後に知る事となるのだが、秋月の如く力の強い妖狐は身体の再生能力も高く、
長期に渡り挿入を避け続けていると、処女膜すら再生してしまうのである。
今まで調子に乗って攻め立てていた譲も、思わず手を止めて考え込むが、
先に行動を起こしたのは、秋月であった。

「譲さん、欲しい、ですっ」

か細い声が譲の耳に止まるが、考え込んでいた譲は聞き逃す。

「秋月さん、今、何て?」
「欲しい、ですぅ」

 今度は聞き逃さない。
譲は止めていた指の動きを再開し、わずかに愛液の染み出す入り口をゆっくりと弄る。

「欲しいって、何が欲しいの」
「譲さん、イジワルですうっ」

 秋月は、既に涙目。
自ら快感を願う己への哀れみか、新たな境地を迎える期待か、
潤んだ瞳が見つめる先には、自らを弄ぶ譲の顔が、なぜか優しげに写っていた。

「ほら、何がどこに欲しいのか、はっきり言ってごらん」
「譲さんのっ、譲さんのモノをっ、私の、中にっ……ヒィィィィンッ」

 譲のモノが秋月を貫く。
薄い膜を突き破り、膣の奥深くまで一気に挿入され、そこで止まる。

「かっ、はっ、ううぅぅ」

 処女膜を貫いた先にあったのは、男を何度も咥えこんだ肉壺と、絡みつく幾多の肉襞。
奥手で経験が浅いとは思えない、陽炎一族の血を引いた、粘液のからみつく肉壺。

「駄目ですっ、譲さんっ、私の中で、これ以上大きくしないでくださいっ」
「ゴメン、でも、君が膣をヒクヒク動かすから、萎えようがないんだ」
「それは、譲さんが気持ちよくするから……んあっ」

 やわやわと適度に竿を締め付ける膣圧は、萎えさせる事を許さず微妙な刺激を続ける。
苦痛と快感が入り混じった表情を見せる秋月を気遣い、腰を引いて抜こうとする譲だが、

「いっ、痛いっ」

 譲をきっちりと咥えこんだ秋月の口は、それすら許さなかった。
膣の刺激だけでは射精に至れず、抜こうと腰を引けば秋月が苦しむ。
進む事も引く事もできず、そのまま考え込む譲であったが、

(もっと気持ちよくさせて、絶頂してくれれば抜けるかも)
1788/12:2010/05/23(日) 13:54:23 ID:7XImeJ/x
 秋月をイかせて脱力させるしかないと判断した譲は、ゆっくりと手を伸ばす。
最初から触りたかったが、触ったらいけないと必死に我慢していた妖狐の象徴。
かすかに揺れる黄金の固まり。快感を生み出す最高の性感帯。ふさふさの尻尾である。

「ふっ、ふっぅぅぅぅぅっ」
「どう、尻尾に触られる感触は、胸なんかと比べ物にならないだろう」
「は、ふっ、しっぽぉ、すごいぃぃ」

 普段は滅多に見せる事の無い秋月の尻尾。
どんな動物の毛皮でも出す事のできない最高の肌触りは、譲のお気に入り。
陽炎の尻尾に幾度と無く包み込まれている譲であったが、この質感だけは飽きが来ない。

「ほら、気持ちいいだろ、イっていいよ、我慢する必要はないんだからね」

 呟きつつ、譲は手指を巧みに動かし、尻尾を責め立てる。
責めるたびに秋月の身体が跳ね上がり、膣の締め付けが僅かに強くなる。

「はぅ、譲さん、尻尾をイジルのがお上手なんですね」
「愛撫の仕方は君のお母さんにたっぷり仕込まれたし、それに……」
「それに?」
「僕は、尻尾が大好きなのさ」

 譲は、自分の手を櫛のようにして、尻尾を優しく撫で上げる。
尾の根元から先端に向け、髪を梳かすように触れてゆく、優しい愛撫。
 秋月の身体は、譲の奏でるやさしいテンポに慣らされ、
荒げていた息も次第に落ち着きを見せていたのだが、それはあっけなく壊された。

「ヒィィィィィッ」
 
 尻尾の根元を鷲掴みされ、絶頂の雄叫びを上げる秋月。
柔らかな心地よい感覚から、脳天へ突き抜ける激しい電流へと変化した快感の波、
衝撃に秋月の身体は対応し切れず、絶頂を迎えた。
 譲を咥え込んでいた膣も激しく脈動し、竿を絞る激しい動きに耐えられなかった譲も
同時に達し、焦らされた仕返しとばかりに、秋月の膣を白濁で汚してゆく。

「あっ、うぅぅ」

 絶頂の衝撃で腰を浮かしていた秋月が、脱力して腰を落とすと、膣も同時に緩んだのか、
譲のモノが膣から抜け落ちた。
 譲を咥え込んでいた穴は、そのままの形でぽっかりと穴を空け、奥に噴出された精液が
漏れ出し、尻尾を白く汚していた。

「秋月さん、大丈夫ですか?」
「はう、ふぅぅぅ」

 まだまだ、といった感じの譲に対し、秋月は息を荒げ、未だに余韻から帰ってこない。
譲の作戦通りに結合を解くことができたのはいいが、秋月の身体はこれ以上の行為に
耐え切れそうも無いように見える。
1799/12:2010/05/23(日) 13:55:55 ID:7XImeJ/x
「これだけイけば、お勤めには十分だよな、この程度なら陽炎様も許してくれるだろう」

 己の下で仰向けに動かない秋月。
余韻に浸りながら目を瞑っていると、荒い息も静かになり、静かな吐息が聞こえきた。
優しげな瞳で見守っていた譲は、その額に優しい口付けを残すと、
眠りを妨げぬようにゆっくり立ち上がる。
そのまま背を向け、部屋の端に放ってあった着物を拾い上げた譲であったが、

「譲さん、お勤めはまだ、終わっていませんよ」

 振り替えると、四つん這いになった秋月が、尻をこちらに向けている。
巨大な複数の尻尾は先端を天に向け、扇型に広がっていた。
尻尾の付け根のさらに下では、さっきまで譲を咥え込んでいた穴が、
そのままの大きさで穴を開け、譲を待ちわびる。

「私のココ、譲さんの大きさに広がっちゃいました、セキニン、とってくれますよね」

 ふと、天を向いていた尻尾の先端が、譲に矛先を向ける。
獲物を眼前にした蛇の頭の如く、譲を見据え、狙い定める7本の尻尾。
さっきの仕返しに譲を弄ぼうと、狙いを定める尻尾。
 譲はそれすら意に介さず、四つん這いに尻を突き出す秋月の尻に手を添えると、
一気に挿入した。

「きゃうんっ」
「くあっ」

 挿入するや、秋月の尻尾が譲の身体を抱え込んだ。
獲物を捉えるハエトリ草のように俊敏な動きで、7本の尾が譲の身体に絡みつき、
ざわめく。
 尾が譲の体面を撫でるたびに、譲と同様、秋月も激しい快感を受け、
膣を貫く肉棒の感覚と相まって、今まで以上の高みへと昇っていく。

「はうぅ、尻尾同士が擦れて、いいぃ」
「秋月さん、一人で楽しむなんて酷いな、これはどう?」
「ふあぁ、もっといいですぅ」

 秋月の尾に身体を拘束されながらも、譲が腰を僅かにスライドさせると、
歓喜の声が漏れる。
譲の大きさに開いた穴は窮屈であったが、溢れる愛液が潤滑剤となり、
腰を動かす余裕を辛うじて残していた。

「譲さんっ、もっともっと、動いて下さい」
「痛くは、ないかい?」
「いいえ、今は、気持ちいいだけです」

 腰を僅かに引き、一気に突き上げる。
同時に秋月の身体が震え、尻尾は更に強く譲を巻き絞めた。
相手が陽炎であったらば、尻尾は譲の性感帯を犯し尽し、陵辱の限りを尽くすだろうが、
対人経験の浅い秋月の純情ともいえる尻尾の抱擁に、譲は心を落ち着かせた。

 秋月の尻に手を載せていた譲は、その手を腰へ、肩へとスライドさせ、
肉棒を更に奥へ突き込もうと力を込めるが、秋月はそれ以上の快感を求めているように思えた。
18010/12:2010/05/23(日) 13:56:41 ID:7XImeJ/x

「秋月さん、ちょっと激しい事をするけど、我慢してね」
「え……ふはぁ」

 耳の先端を摘み上げられ、秋月の膣が僅かに収縮する。軽くイッたようだ。
譲は手を休めず、秋月の耳を優しく擦りあげていく。

「はううっ、みみぃ、しっぽぉ、アソコもぉ……」

 敏感な所を同時に責め上げられ、喘ぎながらも更なる快感を求める。
そんな自分に気が付き、今まで苦痛としか感じていなかった行為で、
凄まじい快感を貪っていることに驚く。
 途端に、それを教えてくれた者が愛おしく、愛らしく、
お返しに、さらなる快感を与えてあげたくなった。

「ふああっ」

 次に喘ぎを漏らしたのは、譲であった。
身体を巻き絞めていた尻尾の力が緩んだかと思うと、先端が譲の背筋を摩ったのである。
今は4本の尻尾が譲の首、腰、両足を固定し、残る3本が譲の身体を撫で回した。

「ちょっと、秋月さん、ソコは駄目っ」
「ふふふ、気持ちいでしょう、知ってるんですよ、譲さんの性感帯」

 陽炎によって開発され尽くした譲の身体は、まさに全身性感帯。
普段の生活で表に出てくることは無いが、尻尾の先端が性感帯に触れるとスイッチが入り、
触れるたびに感度が上昇する。

「秋月さん、背中ばっかりそんなにっ、何度もっ」
「ふふっ、やめてあげませんよ、今までの分、たっぷりお返ししてあげちゃいます」

 尻尾の反撃に譲はなすすべも無く、両手は空を泳ぎ、逃げようにも尻尾に巻きつかれ
動きようが無い。

「譲さん、腰が止まっていますよ、私の耳も、もっと弄って下さいませ」

 首を巻き絞める尻尾の先端が、譲の頬を優しく撫でる。
背中の尻尾も先端で背中を掃くような動きを見せ、敏感な神経を容赦なく攻め立てた。

「譲さんが気持ちよくなると、私も嬉しい、二人でもっと、気持ちよくなりましょう」

 二本の尻尾が、空を泳いでいた譲の両手に巻きつき、秋月の頭上へと導く。
耳を弄れと催促しているのだ。
今は秋月が自分で腰を振り、尻尾が譲の身体を揺すり、ピストンを繰り返す。
いつの間にか立場が逆転している事に呆然としながらも、譲は秋月の耳をつかんだ。

「あうっ、みみぃ、お耳ぃぃ、こんなの初めてですぅ」

 舌を出し、涎を垂らしながら快感を貪る秋月。
まるで、耳を擦るたびに淫乱になっていくようだが、
譲は己の身体に注がれる快感に手一杯となり、それに気付く余裕は無い。

 尻尾の責め苦に身体を捩らせ、快感で頭が壊されそうになる譲であったが、
経験の浅い秋月の方が、既に根を上げていた。

18111/12:2010/05/23(日) 13:57:25 ID:7XImeJ/x

「譲さんっ、もうらめぇ、イクっ、また、イッちゃいますうぅ」
「いいよ、僕も我慢できない、今度は一緒にっ」

 秋月が身体を捻り、体勢を変え、再び二人が向き合う。
最初は弄ばれるだけだった尻尾も、今では立派に働き、二人の身体を巻き絞めて離さない。
秋月自身も自らの腕で譲の身体を抱きしめ、必死の思いでしがみ付く。
身体を密着させ、共に高め合い、互いに堰が切れる瞬間を探りあう。
そして、二人の視線が交差した瞬間、

『はぁぁぁぁぁんっ』

 激しい痙攣と共に、二人は今宵最後の、最高の絶交を迎えた。
膣に締め付けられる温もり、放出された精の熱さ、二人が絡み合い、蕩け合う。
脱力した二人は尻尾の布団に包まれたまま倒れこみ、必死に息を落ち着かせる。
再び見つめ合った時には、清清しさだけが残り、秋月の身体と心に刻まれていた古傷は、
欠片も残らずに消え去っていた。

「今まで男たちから受けた数々の苦しみも、今日、あなたの愛を知るためにあったのなら、
決して無駄では無かったのですねっ」
「秋月さん」
「譲さぁん」

 激しい交わりに疲労を覚えたのか、秋月はそのまま深い眠りに落ちたが、
尻尾だけは、譲を放すまいと身体を包み込み、優しく脈動を繰り返す。
秋月の寝顔を覗きながら、頭を優しく撫でていた譲も、その心地よさに、
いつの間にか眠りに付いていた。

18212/12:2010/05/23(日) 13:58:43 ID:7XImeJ/x
▽△▽

「譲や、ようやってくれた、ワシが見込んだだけはある」
「自分もこんな事になるとは予想外で、しかし、あれから離れてくれないんですが」

 明くる日、陽炎へと報告いで向いた譲であったが、その隣には秋月が寄り添っている。
秋月は、譲の身体を自らの尻尾で優しく包み込みながら、顔を身体に擦り付け、
満足そうな笑みを浮かべていた。

「譲さんっ、譲さーんっ」
「秋月、惚気るのは構わんが、朝食の用意はできているのだろうな?」
「おやかた様っ、申し訳ありません、今すぐに支度を……待っててくださいね、譲さんっ」

 言うや、秋月は一瞬で姿を消した。例の瞬間移動だろう。
色気に迷っても、母であり、主人でもある陽炎の言葉が絶対であるのは、変わらぬらしい。
一方の譲といえば、度重なる陽炎との交合で慣れているせいか、疲労の色は濃くない。

(ふふっ、譲め、満足そうな顔をしおって)

 得意の透視で一晩中覗いていた陽炎は、昨夜の行為を思い出しながら、笑いをかみ殺す。
当の譲も、一方的に責める陽炎の時とは違う、満ち足りた余韻に顔を綻ばせていたが、
陽炎の刺す様な視線に気が付き、背を丸めて顔を俯かせた。

「譲や、そんなに脅えることは無い、ワシは、お主に感謝しておるのだ」
「感謝……ですか?」
「うむっ、あの男嫌いな秋月をあそこまで手懐けるお主の技、ワシが見込んだだけはある」

 そう言うと、陽炎の背後に鎮座していた尻尾が怪しく蠢いた。
譲の視界には、自分の身体を犯そうと、先端を向ける9本の尻尾だけが写り、
これから自分の身に降りかかる事態に覚悟を決めたのだが、

「おやかた様、朝食をお持ちしました」
「むっ、そうか、いいところだったのに、残念であったな」
「譲様のお食事は、お部屋のほうへお持ちしますので、そちらでお持ちくださいませ」

そう言って頭を下げつつ、

(譲さまっ、あとで直接食べさせて差し上げますから、お部屋で待っていてくださいね)
「へっ?」

 そっと耳打ちを残すと、再びその場から姿を消す。
一瞬の出来事であったが、無論のこと、陽炎が見逃すはずはなく、

「まったく、貴様というやつは、ワシが見込んだ以上の事をしてくれたようじゃな」
「ははっ、申し訳ないばかりで」
「ほれ、何を呆けておる、さっさと部屋に戻らぬか、秋月が首を長くして待っておるぞ」

 譲は、足早にその場を立ち去ったのだが、その後姿を見つめ、

「そうじゃ、せっかくなら、譲を秋月の婿に迎えてもいいのぅ」

 いつもの怪しげな微笑ではなく、慈愛に満ちた優しげな笑みを見せる陽炎。
それは、滅多に見せる事の無い、陽炎の“母”としての顔だったのかもしれない。
一方で、

「しかし、余のお気に入りを取られては、欲求不満が……また男漁りをせなばなぁ」

 舌なめずりをする陽炎の顔が、再び元の淫乱な女狐へと戻る。
陽炎の新たな犠牲者、それは、あなたかもしれない。
【終】
18312/12:2010/05/23(日) 14:02:05 ID:7XImeJ/x
久々に失礼しました。
184名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 14:14:21 ID:NJlZ64S2
なんで自虐すんの?
185名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 16:04:18 ID:tj7rHUKT
山神狐巫女キター
186名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 22:06:49 ID:DVTFb4T2
>>183
GJ
187名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 07:04:40 ID:yb68hmnh
>>183
GJ
188式神馴らし:2010/06/01(火) 18:40:38 ID:YvcUcdof
投下します
189式神馴らし 1/5:2010/06/01(火) 18:41:21 ID:YvcUcdof
  式神馴らし 6話 一ノ葉の再調教
  前編 反抗期?


 小太刀を右手に持ち、初馬は林を走る。
 葉の散った木々の並ぶ明るい林。整備されたグラウンドなどとは比べられないが、真冬
のため下草もほとんど枯れていて、走りやすい。

 空気は冷たいが、身体は熱かった。

 左目を閉じ、左手で小さな印を結ぶ。目蓋に浮かんでくる、一ノ葉の見ている視界。術に
よって一ノ葉との視覚の共有を行っていた。常時共有ではなく、特定の合図をした時のみ
共有する仕組みである。
 一ノ葉が地面を走りながら、標的を追っていた。

「思ったより、使い勝手悪いな……」

 一人で二種類の景色を見るというのは、思考に強い負担がかかる。二種類の景色を同
時に脳で処理する必要があるため、他の部分に向ける注意が大幅に削られてしまうのだ。
周りに敵がいない状況でないと使えないだろう。

 左目を開け、右方向に向き直る。

 林の中を走ってきたのは、大きな黒い犬だった。ただ、その身体は墨で塗ったように黒く、
体毛も無い。顔の形はあるものの、眼や鼻などは分からない。死んだ犬に邪気が取り憑い
た魔物だった。この魔物の退治が今回の仕事である。

「ガァ……ッ」

 短い唸りから飛び掛かってくる魔物めがけ、初馬は左手を突き出した。
 魔物が手に噛みつく瞬間、手から作り出した泥でその口を塞ぐ。粘性を持った泥を作り
出し、相手を捕らえる粘泥の術。さらに、右手に持った小太刀で魔物の胴体を貫いた。

 正面から飛び出してくる大きな狐、一ノ葉。

「一ノ葉、やれ!」
「言われずとも!」

 一ノ葉が飛び上がり、身体を大きく一回転させながら前足の爪を閃かせる。
 爪から放たれた高圧高速の空気の刃が、魔物の身体を斬り裂き――

「え?」

 ついでに、初馬の身体も斬り裂いていた。


   − − − −


190式神馴らし 2/5:2010/06/01(火) 18:41:48 ID:YvcUcdof
 左腕と左胸に刻まれた傷跡。
 上半身裸のままベッドに腰掛け、初馬は治癒の術を傷口にかけていた。病院で治療を
してから、後は自分での治療。軽傷への対応としては普通である。

「災難だったな」

 座布団の上に寝そべったまま、一ノ葉が尻尾を動かしていた。組んだ前足の上に頭を
のせ、目蓋を下ろしている。反省している気配は欠片も無かった。

 新品のエアコンが暖気を吐き出しているため、部屋は適度に暖かい。

 初馬は救急箱から治療湿布を取り出し、傷口に貼っていく。

「お前のせいだろ……。あの時点で何で俺まで一緒に攻撃するんだよ。初収入の半分が
治療費に消えるって先行き不安だぞ……」

 林にいた犬の魔物。凶暴な野良犬くらいの強さなので、決して厄介な相手ではない。初
馬一人でも無傷で倒せる相手だ。今回は一ノ葉を使役する式神使いとしての練習のよう
な仕事である。しかし、結果は予想外の負傷。

「鎌鼬は一度撃ったら制御から外れるのは貴様も知っているだろう。あの時は、貴様がさ
っさとあの犬から手を離せばよかったのだ」
「俺が捕まえてお前が仕留めるって打ち合わせしたんだから、標的だけを攻撃する術を使
って欲しかったんだが……」

 傷口に貼られたテープを撫でながら、初馬は一ノ葉の尻尾を眺めた。
 相手が敵を捕まえている時は、相手を巻き込まない集中系の術で仕留める。常識以前
のことだった。巻き添えにする場合は、相手が防御を固めていることを前提である。

 一ノ葉は前足で耳の後ろをかきつつ、

「あいにくと、ワシはそういう一点集中系の術は苦手だ」
「まったく、お前は……使える術のバランス無茶苦茶なんだよな」

 初馬は首を振った。

 火力は凄まじいが、制御が不得手な一ノ葉。基礎的な術と中級レベルの術は使えるの
だが、その中間の初級術がきれいに抜け落ちている。変化の術も使えず、変化は初馬の
使う式神変化に頼りっぱなしだった。

「男が細かいことを気にするな」

 片目を開け、一ノ葉が断言する。
191式神馴らし 3/5:2010/06/01(火) 18:42:15 ID:YvcUcdof
「元々あんまり従順じゃなかったけど、最近特に反抗的じゃないか……?」

 初馬は包帯を身体に巻き付けながら、一ノ葉を見下ろした。
 一ノ葉の首に巻かれた赤いチョーカー。知合いの術具職人に頼んで作って貰った特別
製である。式神使いと式神という上下関係の証明として付けさせていた。他の式神使いの
家は知らないが、白砂家では式神にそのような証しを付けさせることが多い。

「ワシは元からこういう性格だ。貴様のことも主とは認めているが、完全服従しているわけ
でもない。そもそも、こういう性格と分かってワシを式神にしたのだろう?」

 そこはかとなく上から目線で告げてくる一ノ葉。
 包帯を巻き終わり、初馬はその端をテープで留める。傷自体はそれほど深くもないため、
一週間ほどで跡形も無く消えるだろう。冬のため包帯を露出させることもない。

「やっぱり、アレか……」

 シャツを着込みながら、初馬は顔をしかめた。

 初馬から借りた金を返すために行った年末年始の巫女さんのアルバイト。それが終わ
った頃から態度が大きくなっている。アルバイトの給料で初馬からの借金を全て返済し、さ
らに多額の貯金ができたせいだろう。

 初馬はジト眼で尋ねる。単刀直入に。

「俺より金持ちになったからか?」
「使役する式神よりも貧乏な主というのは、情けないものだ……」

 一ノ葉は目を瞑り、これ見よがしにため息をついてみせた。年始が終わった後も、土日
などはまだ巫女さんのアルバイトをしている。神主に続けてくれと頼まれたらしい。
 初馬と一ノ葉の現在の貯金額を比べると、五倍近い開きがある。

「アルバイト式神が……」

 救急箱をベッドの下にしまいながら、初馬は呻いた。
 一時期は借金式神と呼ばれ、最近はアルバイト式神と呼ばれている。実家では話題性
に事欠かない面白式神として立ち位置が定着しているようだった。

「何とでも言え」

 あくまで余裕を崩さない一ノ葉。
 座布団から起き上がり、寝床であるバスケットへと潜り込んだ。大型ペット用電子マット
の電源を入れてから、タオルケットを咥えて器用に自分の身体へと乗せる。

「では、ワシは寝る。明日は神社でアルバイトの予定があるからな。週末前だからといって
貴様もあまり夜更かしはしない方がいい」
192式神馴らし 4/5:2010/06/01(火) 18:42:53 ID:YvcUcdof
 そう言って、眼を閉じた。ほどなく寝息が聞こえてくる。一ノ葉は寝るのが早い。
 初馬は腕組みして天井の蛍光灯を見上げる。

「……。これは、一回躾け直した方がいいかな?」

 声に出さずにそう呟いた。


   − − − −


 一ノ葉が神社に出かけてから。

 初馬は一ノ葉の寝床から毛を拾い上げた。狐色の細い毛。食事もせず新陳代謝もほと
んど無いため、普通の動物ほど抜け毛は多くない。式神なので当然だが、他の住人に気
付かれずに部屋で大きな狐を飼っていられるのはありがたかった。

 加えて、防音結界も作ってあるので、まず一ノ葉の存在がバレることはない。

「さて――と」

 一ノ葉の毛を持ったまま、卓袱台の前に腰を下ろす。
 卓袱台の上に置かれたのは、人型に切り抜いた和紙数枚と、古い本。白砂宗家の式神
術の教科書のようなものだった。ぺらぺらとページをめくり、目的の術を見つける。

「式神分身、と……」


   − − − −


 夕方六時過ぎ。外はもう暗い。
 暖房の効いた部屋は暖かかった。

「ただいま」
「おかえりー」

 玄関から部屋に入ってきた一ノ葉。人間の少女の姿で、冬用のコートとマフラーを身に
つけている。コートとマフラーは変化の術で作ったものではなく、自前で買ったものだった。
コートとマフラーをクローゼットに片付けてから。

「貴様……何をしている?」
193式神馴らし 5/5:2010/06/01(火) 18:43:22 ID:YvcUcdof
「新しい術の見当。大体終わったところ」

 初馬はそう答えた。卓袱台の上に広げられた本と、ノート。中途半端な術式が込められ
た、即席の術符が多数散らばっている。昼食に食べたカップ麺の空カップと箸が、そのま
ま置かれていた。

「非常に嫌な予感がするのだが……」
「嫌な予感は当たるものだと、大昔から相場が決まっているらしい」

 答えながら、初馬は散らかった卓袱台の即席術符を丸めてゴミ箱に放り込む。中途半
端な術式は、霊力の装填もされてなく、動き出すことはない。術式も一時間程度で完全に
壊れるため、おかしな作用を起こすこともなく、普通に燃えるゴミだ。

「何をする気だ……?」

 その問いに答えるように、初馬は二枚の人型の紙を見せる。

 人型を見つめ、一ノ葉が顔を強張らせ、頬に冷や汗を流していた。経験的にそれが禄で
もないものだと分かるのだろう。
 初馬は人型を軽く空中に放り、印を結んだ。

「式神分身・改」

 ポンと軽い音を立てて、二体の分身が床に降りる。

 一ノ葉をそのまま複写したような分身だった。シャツとハーフパンツという簡素な格好。
片方は狐耳も髪も尻尾も服も白く、もう片方は狐耳も髪も尻尾も服も黒い。両者とも首に
赤いチョーカーをはめている。
 ふたつの分身は床に直立したまま、感情の無い表情を見せていた。

「成功かな?」

 白分身と黒分身を眺めながら、初馬は顎に手を当てる。
194名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 18:43:44 ID:YvcUcdof
以上です

続きは週末辺り
195名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 18:53:37 ID:YvcUcdof
196名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 22:38:49 ID:B4LruTR7
文もイラストもGJ!
続きはエロエロになりそうで期待してます。
197名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 07:57:23 ID:F1M4yllY
GJGJ
198式神馴らし:2010/06/05(土) 19:53:59 ID:9VDKj8YJ
投下します
199式神馴らし:2010/06/05(土) 19:54:20 ID:9VDKj8YJ
  式神馴らし 6話
  中編 分身の術

「分身の術……?」

 二体の分身を見ながら、一ノ葉が警戒している。
 髪や服などの色遣い以外、一ノ葉と変わらぬ分身。瞳に意志の光は見られず、立ってい
るだけで手足も脱力している。狐耳も尻尾も垂らしたままだった。

「ただの分身じゃないんだよ。だから、改だ」

 含みを持った笑みを見せながら、初馬は白分身の尻尾を無造作に握った。一ノ葉と同じ
柔らかな毛に包まれた尻尾。先端が灰色である。

「ッ!」

 一ノ葉が自分の後ろ腰を押さえた。

 完全に人間の姿のため尻尾はない。だが、尻尾を触られている感覚を得ているのだ。
感覚全共有分身。分身の感じるものは、本体に伝わるようになっている。

「貴様は……他に考えることないのか! いちいちワシにエロいことするために新しい術を
使うな! 式神術とはそういうために使うものではない!」

 無遠慮に尻尾を撫でられる感覚に震えながら、一ノ葉が人差し指を向けてきた。
 初馬は両手で印を結びながら、

「どちらかというと、一ノ葉をいぢめるのが主目的かな。エロい……というか、お前がそうい
う事に妙に敏感だから、俺が取る手段はそうなる。三重式操りの術――」
「阿呆が……!」

 叫び返す一ノ葉が、その場にぺたりと腰を下ろした。式神に加えて、その分身二体の感
覚を掌握する。簡単なように見えて、かなりの集中力と術式構成力が必要だ。

 初馬は卓袱台を片付け、カップ麺の空カップをゴミ箱に放り込んでから、一ノ葉をその場
に立たせた。身体を操り、自分の所まで歩かせてから、その身体を抱えベッドに腰を下ろ
す。初馬の膝の上に座った一ノ葉。

「今度はどんな変態的なこと思いついた――」

 身体の操作権を奪われつつも、威嚇の声を向けてくる。
 初馬は右手で一ノ葉の頭を撫でつつ、分身に指示を送った。一度に操れるのは一ノ葉含
めて二体まで。分身を動かしている状態では、一ノ葉本人を動かすことはできない。だが、
術の効果で満足に動くことはできないので、暴れられたりすり心配もない。
200式神馴らし:2010/06/05(土) 19:54:41 ID:9VDKj8YJ
 白分身と黒分身が顔を上げ、お互いに向き直る。

「待て、貴様……! お前らも……」

 一ノ葉が必死に何とかしようとしているが、無意味な抵抗だった。
 分身二体がお互いの身体に腕を回し、唇を重ね合わせる。二人の少女がお互いに口付
けを交わすという艶っぽい姿。白と黒の尻尾が揺れていた。

「おッ、は……!」

 力の入らない両手で、一ノ葉は自分の口を押さえる。
 分身二体の感覚は、まとめて一ノ葉に還元されていた。白分身と黒分身双方の感覚が
本体である一ノ葉に送られている。単純計算で二倍の感覚。逆に、一ノ葉の感覚も分身に
送られ、その反応として現れていた。

「んっ……」

 両手で口を押さえて、一ノ葉が声を呑み込んでいる。
 暖房の効いた暖かい部屋。外はもう暗くなり、カーテンも閉めてあった。一人暮らしの静
かな部屋。場違いな二人の少女が、唇と舌を絡ませている。

 二体の分身が右手と左手の指を組み、お互いに唇を重ねていた。お互いの咥内を舌で
味わうような、濃く深くイヤらしいキス。小さな湿った水音が、妙に大きく響いていた。一ノ葉
の興奮が伝わっているのか、二体の分身の頬が赤く染まっている。

 分身二体を動かしている初馬は、人形を弄っているような感覚だった。

「うぅ――ぅ……」

 身体を震わせながら、一ノ葉が両手で口を押さえている。いくら口を押さえても、自分の
感覚ではないため、それを拒否することができない。分身の術を使えないため、分身の感
覚を遮断できないという欠点が露骨に現れていた。

「貴様……」

 肩越しに睨んでくるが、初馬は眼を逸らして視線を受け流す。
 白分身が開いている手で黒分身の胸に触れた。二体の分身が身体を跳ねさせる。

「ン!」

 一ノ葉が右手で胸を押さえるが、それも無駄な抵抗だった。
201式神馴らし:2010/06/05(土) 19:55:09 ID:9VDKj8YJ
 黒いシャツの上から胸の撫で、先端の突起を転がすように指先で弄る。細く滑らかな手
の動きに形を変える胸の膨らみ。白分身は黒分身の両乳房を優しく、そして舐るように触
っていた。微かに身体を捩っている黒分身。
 濃厚な口付けは終わっていない。

「……ッ」

 意識とは関係なく還元される感覚に、一ノ葉が歯を食い縛っている。力の入らない手を握
り必死に耐えるその姿は、酷く嗜虐心をそそった。
 白分身の頭と腰の後ろに、黒分身が両手を伸ばす。

「待、てッ!」

 一ノ葉が鋭く声を上げるが、分身は止まらない。止まる理由がない。完全に初馬の制御
下にある二体の分身。ただ、その感覚は一方的に一ノ葉に送られる。
 黒分身の手が白い狐耳と尻尾を掴んだ。

「……!」

 敏感な器官を触られ、分身が身体を強張らせるのが分かった。狐耳と尻尾を掴まれた感
覚が一ノ葉に伝わり、その反応が分身に送られた結果だろう。

 だが、一ノ葉が分身を動かすことはできない。

 初馬の操る黒分身が、白分身の狐耳と尻尾をほぐすようにこねている。その感覚は遮る
ものものなく、一ノ葉本人に伝わっていた。
 二体の分身の感覚をひとつの身体で受け止め、一ノ葉が擦れた声を絞り出す。

「やめろ、貴様……!」
「止めると思う?」

 初馬は両手で細い身体を抱きしめた。
 細い身体から伝わってくる、一ノ葉の疼き。

「何して、る……!」
「なんか、可愛いから」

 左手で一ノ葉の身体を抱きしめつつ、右手で頭を撫でる。
 生々しい口付けを交しながら、白分身は黒分身の胸を触り、黒分身は白分身の狐耳と尻
尾を触っている。全身を無遠慮にまさぐられる感覚は、全て一ノ葉に伝わっていた。自分
の身体は一切触られていないのに。

「黙れ……! 変態が……ッ……!」

 初馬に喉元を撫でられながら、一ノ葉が毒づく。身体はまともに動かせず、ただ首を動か
して睨んでくるだけ。目元からうっすらと涙を流している。
202式神馴らし:2010/06/05(土) 19:55:30 ID:9VDKj8YJ
 白分身が空いている右手をハーフパンツの中に差し込んだ。
 そっとショーツの上から秘部を撫でる。

「ぅ、ひッ!」

 一ノ葉の喉が引きつった。スカートの上から両手で下腹部を押さえる。
 その反応に構わず、白分身は指で秘部を撫で続ける。そもそも一ノ葉の意志では動か
せないので、止めることはできない。指で割れ目を開きながら、ショーツの上から淫核や膣
口へと中指を這わせた。その感覚は一ノ葉に全て伝わっている。

「んっ……ン……! いい加減に、しろ……。ん?」

 肩越しに初馬を睨んでた一ノ葉が、正面に眼を戻した。
 すぐ目の前に黒分身が立っている。白分身から離れ、一ノ葉の前まで移動していた。白
分身は両手で自分の胸と秘部を弄り、自慰を続けている。

「貴様……。何する気だ……」

 分身を睨み付けるが、反応は無い。
 無表情のまま、黒分身は一ノ葉の唇を重ねた。

「ン――! むゥ……ッ」

 突然の行動に逃れようと身体を捩る一ノ葉。しかし元々力が入らないことに加え、初馬が
後ろから抱き締めて両手を封じているため、何もできない。

 黒分身は黒い狐耳と尻尾を動かしながら、一ノ葉の背に左手を回し、その口を自分の唇
と舌で犯し始めた。舌に舌を絡ませ、咥内を嘗めるように舌を蠢かせる。粘りけのある水
音とともに、一ノ葉と分身の頬が真っ赤に染まっていた。

 口付けを続けたまま、黒分身が右手で自分の胸を揉み始めた。

「ぅぅ……」

 荒い呼吸を繰り返しながら、一ノ葉は分身の攻めを甘受していた。自分の感覚に加えて、
分身の感覚も伝わってくる。それは、自分で自分を犯しているようなものだった。

 白分身が黒分身の狐耳に噛み付く。

「!」

 狐耳を甘噛みされる感覚に、一ノ葉が大きく身体を跳ねさせた。

 白分身は黒分身の狐耳を口に咥えながら、左手で尻尾を弄り始めた。付け根から中程
まで、ゆっくりと扱きつつ黒い毛の奥へと白い指を潜らせる。
203式神馴らし:2010/06/05(土) 19:55:51 ID:9VDKj8YJ
「ンン……」

 敏感な狐耳と尻尾を攻められる感覚まで加わり、一ノ葉は抵抗の意志すら残っていない
ようだった。幾重にも身体を貫く快感を、無抵抗に甘受している。

 白分身が右手を黒分身のハーフパンツへと差し込んだ。

 細い指が下腹部へと伸び、黒いショーツへと忍び込む。

「待……っ」

 微かに離れた口から拒否の言葉を発するも、黒分身の唇に塞がれまともに喋ることもで
きない。一ノ葉の右手の指が微かに動いていた。白分身が黒分身に伸ばした手の感覚も、
伝わっている。尻尾を撫でる手の感触も同様。

 白分身は黒分身のショーツへと、右手を滑り込ませた。一ノ葉本人とは違い、分身は抵
抗もしない。逆に両足を開いて、弄りやすい体勢を作っている。人差し指と中指を濡れた膣
口から体内へと侵入させた。

「ンン、ンッ――!」

 体内に異物を挿れられる感触に、一ノ葉が太股をきつく閉じる。しかし、自分に直接行わ
れていることではないので、自分の身体をどう動かしても感覚は遮断できない。
 左手で一ノ葉の身体を抱え、右手で猫をあやすように喉元を撫でながら、初馬は小さく声
をかけた。一ノ葉の身体が熱く火照っているのが分かる。

「どうだ、面白いだろ?」
「貴様……ッ!」

 されるがままだった身体に、抵抗の意志が現われた。しかし、抵抗の意志があっても、何
もできない。分身二体の感覚は、意志とは無関係に流れ込んでくる。分身の術を使えない
一ノ葉では、感覚を遮断することもできない。

 だが、初馬が行ったことは意識を現実に引き戻すことだった。

「ん!」

 一ノ葉が手足の筋肉を伸縮させる。

 白分身が黒分身の秘部に触れさせた手を動かし始めた。親指で淫核を撫でながら、二
本の指でゆっくりと膣内をかき回す。

「んッ……くっ、ぅ……!」

 一ノ葉の目から涙がこぼれていた。
204式神馴らし:2010/06/05(土) 19:56:11 ID:9VDKj8YJ
 絡ませ合う舌の感覚、無遠慮に撫でられ揉まれる胸の感覚、歯で甘噛みされ舌で嘗めら
れる狐耳の感覚、根本から扱かれ五指でこねられる尻尾の感覚、右手で掻き回される秘
部の感触。そして、それらを行う手や口の感覚。

 全てが一人の身体に襲いかかる。

「ううっ、……んんッ――! はっ、ぁぁ……!」

 三人分の感覚を全て受け止め、一ノ葉の身体が震えていた。口元から垂れる涎、目元
から流れ落ちる涙。意識はあるが、思考は止まっているようだった。酔っぱらったかのよう
に頬が赤く染まり、悩ましげな息が喉を動かしている。

 思考の許容量を超えた快感が、一ノ葉の身体を駆け巡る。身体は熱く火照り、眼から思
考の光が消えていた。自分の意志とは無関係に発生する大量が、身体を蝕んでいく。一ノ
葉はそう遠くないうちに絶頂を迎えるだろう。

 だが。

「解除」

 初馬は両手で印を結んだ。

 それで式神分身の術が解除され、二体の分身が一瞬にして消えた。霊力を込められた
人型の紙が二枚、音もなく床に落ちる。

 快感の根源が消え、一ノ葉はそのまま脱力した。

「あ……ぅぅ……」

 肩で息をしながら、一ノ葉が虚ろな眼を床に向けている。

 初馬はポケットから新しい人型紙を取り出した。それを一ノ葉の目の前に持ってくる。そ
れを見て、一ノ葉が息を止めるのが知れた。

「分かっていると思うけど、まだ終わってないぞ?」

 左手の指で一ノ葉の喉元をくすぐりながら、初馬は告げる。
205名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 19:56:33 ID:9VDKj8YJ
以上です

続きは来週を予定しています
206名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 20:41:04 ID:0lewWACz
すごく……エロスです……
wktkしながらお待ちしております
207名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 08:38:08 ID:sGuF/3kh
エロいし上手いGJ!!
208名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 08:53:27 ID:U/Iw7xNW
GJです
文章上手いですねwどこに住んでるんですか?
あと…なんかもうしばらく他の書き手は必要ないかもw
209名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 11:28:19 ID:W6Yd9TAz
>>208
はいはい荒らし荒らし
210名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 11:30:46 ID:U/Iw7xNW
そうやってレッテル貼るのはやめてください
211名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 22:36:22 ID:/w+uOG3r
エローい。GJ!
21218スレの314:2010/06/08(火) 15:35:40 ID:UitN5XBS
お久しぶりです。18スレの314です。
ドラゴンをネタにして久しぶりに一本書いてみました。
約35レスほどお借りします。一括投下には多すぎるので、前後編に分けさせて頂きます。

エロは後編のみ。属性はロリババァ、人外要素は低めとなっています。
その手の属性が苦手な方はスルー、若しくは『Little Big Dragon』をNG登録するようお願い致します。
213Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:36:45 ID:UitN5XBS
――1――

 今や歴史書の中に記録を留めるばかりとなった血と炎に彩られた混沌の時代。
 理由すら定かでない対立の末、自分達の手で己の住む大陸をも沈めんとしていた戦いも遥かな昔となった時代。
 その数多の命を飲み込んだ人と魔の対立も、僅かな手勢と共に魔王の城に乗り込んだ勇者と女魔王の七日間に渡る壮絶な一騎打ちと取っ組み合いと口喧嘩の果て、お互いに愛が芽生えてしまいグダグダで有耶無耶の内に終わった。
 それから幾星霜。
 かつては神や魔王に匹敵する存在として畏敬と恐怖を集めてきた竜が、人と共に暮らしていてもおかしくないくらいに人魔の垣根の下がった、そんな時代。
214Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:37:24 ID:UitN5XBS
――2――

 ざざざ……ざざざ……。
 草原を吹き抜けていく風が、辺りにぽつぽつと生えている潅木を揺らす。
 その度に、慌てて振り返る。
 何もなく、誰もいない。
 ごくり。
 おどおどと落ち着かない様子で周りを見回す。しばらくそうして誰もいないと納得したのか、唾を飲み下そうとして、思わずむせた。
 全力疾走で喉はカラカラ。そんな事にすら気づけないほど焦っていた。そして焼けるように痛む喉に気が付いてしまって咳がこぼれそうになり、慌てて手で口を塞ぐ。
 風に紛れてしまうような咳でも誰かに聞きつけられてしまいそうな気がして、その場から逃げるように、再び小道を駆け始めた。
 想像が生む恐怖に背を押されて、走る。
 今にも辺りの草むらから、盗賊達が現れて、追いつかれて、捕まってしまうのではないか。
 そんな恐怖を振り払うかのように、必死に前を向く。
 なだらかにうねる丘と丘の合間を縫うように走っている、手入れの悪い石ころだらけの小道を、何度も躓きながら転がるように進む。
215Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:38:35 ID:UitN5XBS
 この時代、盗賊山賊の類はさして珍しくない。それどころか、ありふれている。
 この手のゴロツキどもは、少しばかりリーダーシップがあったり、腕っ節が強い人物がいると、芋づる式に簡単に群れる。
 そして徒党を組んで集団が大きくなると、街道を独行する行商人や森を行く旅人を襲ったところで大した稼ぎにならないので、近隣の町や村までも獲物にするようになってくる。防備の手薄な寒村や町が襲われるのは、それほど珍しい事ではない。
 治安維持に熱心な――盗賊の財を没収する狙いも多分にあるが――領主であれば情報収集を怠らず定期的に討伐隊を繰り出すし、土地の支配者にそこまでの軍事力がなければ依頼された冒険者達が代行する場合もある。
 しかし、どれだけ叩いても叩いても、どこからか沸いてくるのが現実だ。
 たまたま一人で市壁――"壁"と言うよりは"板"に近い代物ではあるが――の外に出かけていた少年は難を逃れえた。彼は、近くの川まで夕飯のオカズを釣りに出かけようとしていたのだ。毎日の食材を確保する手伝いは、子供達の重要な仕事である。
 釣果が運に味方されたかどうかは既に永遠の謎だが、幸運の女神は彼の命そのものに対して微笑んだ。
 子供でも盗賊がどういうものかくらい、知っている。町を襲うまでに集まったならず者が具体的にどういう行動に及ぶかまでは教えてもらっていなかったが、大人達の口調から子供心でもそれがもたらすモノは何とはなしに想像が付く。
 彼がその場でへたり込んで、声を殺して泣き始めたとしても誰が責められようか。なにせ市壁の向こうには、彼が戻るべき家と家族があるのだから。
 だが、それが彼の命を救った。
 しゃがんだお陰で、小柄な体は草原に生える一面の草に紛れて見えなくなった。ひとしきり泣いていたお陰で、町から逃走する者がいないか見張る殿の警戒が緩んでから動く事が出来た。
 涙と一緒に恐怖を洗い流した少年はおっかなびっくり立ち上がり、ある方角に向けて、涙と鼻水を袖口で拭いながら歩み始めた。
 彼のみならず、町に住む子供達は常日頃から親に教えられていたからだ。何かあれば、そこへ行き助けを求めろと。
 近在の他の村や町にではない。
 少年はそこまでの道を知らないし、仮に知っていても彼の足では優に半日はかかってしまう。
 このカーメラと言う町には、そのちっぽけな規模に不釣り合いな守護者がいる。
 丘を覆う丈の低い草と灌木の向こうにやっと見えてきた、貧相と言っても過言ではない小屋に住む、守護者が。
 大きく開け放たれた両開きの戸から、小屋に飛び込む。
「ルヴァさま!たすけて……助けてください!
 盗賊がきて!町にっ…みて、それで、ぼく、はしって!!」
 走ってきた勢いもそのまま、一息にまくしたてる。
 呂律の回っていない少年を、二人の人物が出迎えた。
 一人はいきなり飛び込んで来た少年に随分と驚いた様子で、もう一人はまったく表情を変えずに。
216Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:39:54 ID:UitN5XBS
――3――

 木炭、石炭、溶けたタール、焼けた鉄。
 入った途端、色々な残り香が入り混じり、ツンと鼻の奥を刺激する。
 小屋の中は一見して鍛冶屋のようだった。地面むき出しの土間には炉が組まれ、脇には炉内に空気を送り込む手こぎ式のフイゴが据え付けられている。
 ただ本職の鍛冶屋というには違和感を禁じえない。
 小屋の中は本職に比べれば何もかも規模が小さく、まるで遊びのように見える。一通りの仕事は出来るようだが、多量の注文を捌く工房には見えない。
 実際、忙しい筈の昼間なのに炉に火は入っておらず、小屋の中で一番年かさに見える男にしても、鍛冶屋を営む親方と言うにしては若すぎる。
 ブ厚い前掛けに、飛び散る火の粉を弾く為の皮パッチを当てたズボンなど格好はいかにも職人だ。それでも普通であれば、見習いとまではいかないがハンマーを振るう親方の周りで相方を務める助手が精々だろう。
 そして騒々しい槌音と怒声がつきものの工房には、あまりに場違いな人物がいる。
 少女。
 そんじょそこらの鼻たれ餓鬼ではない。どこか神秘的な雰囲気をまとった、美しい少女。
 年は十をわずかに過ぎた頃。肢体に丸みは少なく、子を産める準備はまだ整っていなさそうだ。
 鮮やかな緋色の髪。後ろと左右になめらかに流して、つるりとした綺麗なおでこを露出させている。襟足辺りで切り揃えられた髪型自体は幼さを感じさせる類のものだが、少女自身の落ち着き払った態度は老成した者のよう。
 背もさほど高くない。薄っぺたい体に赤い単衣を纏って、背もたれのない丸椅子に座って地面に届かない足をブラブラさせている。
 体に巻きつけるようにして前身頃を打合せて帯や縄で締める着物は、上半身と下半身を一枚で覆えてズボンなどを穿く必要のないタイプの衣服なので、体の構造が人間と異なり"筒状の何かを穿く"という行為の苦手な種族に愛用する者が多い。
 人間だって着用するが、単衣はこの地方の衣服ではない。この辺りでは、たいてい青年のようにズボンとシャツなど上下で分かれているタイプの衣服を着用する。
「お?はえぇな、坊主」
 簡素な椅子に座り、地面に設けた炉とは別の、小さな移動式の炉に向かって屈みこんでいた青年が顔を上げる。煤と油と汗に汚れてはいるが、ちょいと拭えば飄とした感じの人好きのする顔になるだろう。
 鋳掛け途中の注文の品、穴の開いた鉄鍋を軽く振る。
「注文の日はもうちょい先じゃなかったか?今来ても、まだ穴開いたままで使い物にならねぇぞ?」
「ちっ……ちが、う!の!まちに、とうぞく、きて!それ、を、しら……せに!」
 乾ききった喉から言葉を絞り出すのに苦労している少年の前に、すっと木のコップが差し出される。
 中には綺麗な水。
 たった一杯の水がまさしく天の恵みにも思える。見目麗しい少女の手からコップを渡してもらえた事も含めて。
 頭を大きくのけぞらせて一気に中身を干す少年の前で、青年は考えていた。
 要領を得ない少年の言葉からでも、推測出来る状況は限られている。
「おかしいな?近くに住みつきやがった連中はこの間、追い払ったはずなんだがな…」
 首を捻る。
「…まぁ、いいさ。行ってぶっちめてからナニモンか聞きゃあいいだけか」
 少年の不安を吹き飛ばすように、にっかりと笑いかける。
 仕事道具をひょいひょいと手際よく片付ける。
 流れる仕事の汗を、半分がた汚れたままのボロ布で拭いて、それで片付けは終わり。
217Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:40:32 ID:UitN5XBS
 物騒な言葉の割りには、それ以外は何ら支度らしい支度もせずに表に歩いて行った。その後ろを、それがさも当然それ以外あり得ないという風情で少女も付いていく。
「んっ」
 その両腕が、水平より少し上に向くくらいに揃えて差し出される。
 背負え。
 と言いたいらしい。
「自分で歩けんだろうが……しかたねぇなぁ。ほらよ」
 口調も台詞も気が向かない事甚だしいのを如実に物語っていたが、行動自体は素直だった。
 背を向けて腰を落としてやり、少女がおぶさりやすいような高さにしっかりと合わせているのを見ると、この男、口ほど悪びれられる性質ではないらしい。
 見かけよりも筋肉のついた背に重みがかかるのを確認すると、男は左右の手で少女の太股それぞれに手を回して立ち上がった。
 体に巻きつけて着るという単衣の構造上、股を割り広げると裾が捲くれあがる。
 加えて、ただでさえ裾が短い事もあって、柔らかい曲線を描くふくらはぎから尻たぶが見えるぎりぎり直前までがすっかり露わになり、細く生白い太股が見えてしまっていた。まぁ、少女はそれを気にするほど女としての羞恥心が育っている年齢には見えなかったが。
 むしろ、視点が低いせいで普段は隠されている柔肌をまともに見てしまった少年の方が顔を真っ赤にしている。
 男は、もぞもぞと小さく体を左右に振って背負い具合を直しながら、開けっ放しの引き戸を閉めるでもなくそのまま外に出た。
 屋内で鋳鉄鍛鉄を相手にしていた所為で、焼けた鉄の臭いがこびりついた鼻を、清々しい風が洗っていく。
 いまだ開拓されず荒野同然の草原の真ん中に建つ、二棟の木造の家。母屋というのも憚られるサイズの小屋に、これまた小さな作業場。煙突はかなり煤に汚れ、屋根や壁の具合からも長く風雨に曝されてきた様子が窺える。
 こじんまりとした畑が取り巻き、風除けの大きな木が何本か植えられているが、視線を遮る塀は無い。
 お陰で、距離のあるここからでもカーメラの町は視界に入る。目を眇めて町の方を見やれば、幾筋も細い白煙が立ちのぼっているのが目に入るが、それはあちこちの煙突から出る煙で普段どおりだ。焼き討ちされているような気配はない。少なくとも、今のところは。
「言っとくが、追いかけてくるなよ?俺達が帰ってくるまでウチん中に隠れてな」
 口調こそ軽いが、真剣な目つきで少年に釘を指した。伸ばした指の示す先では、開け放したドアの向こうで携帯炉の火が揺れている。
 なにせ見つかれば命がない状況下であっても、町の一大事を知らせに来た勇気の持ち主なのだ。付いてくると言い出しかねない。
 機先を制された少年が、口を開きかけて、言葉を詰まらせていた。
 その口から出る予定だった台詞も大体見当が付こうというもの。
「あのな、勇気は確かに大切なモンだが、それも奮う時と場所によるんだよ。
 そいつはどこかの誰かにいつか使う為にとっといて、とりあえず今日は大事にしまっとけ」
 すがりつくような視線は、一所に留まらず青年と少女の間をさ迷う。
 ふと、背にいる少女と視線が合う。
 静かな瞳。不可思議な威厳を備えた眼差しに、云い募ろうとする意志は絡めとられ、すっかり大人しくなってしまった。
 こくり。
 我知らず、少年の首は縦に振られていた。
「よぉし、いい子だ」
218Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:41:03 ID:UitN5XBS
――4――

 青年が道を駆ける。
 耳元では風が唸り、短く刈った髪が風圧に玩ばれるほどで、さきほどの少年とは比べ物にならない。それどころか軍馬にも匹敵する速度だ。
 彼は正真正銘、ただの人間だ。
 ハーピーのように羽根もなければ、ケンタウロスのように下半身が馬になったりもしない。
 ただその足は凄まじいほどの力で大地を蹴り、他種族にも負けないほどの速さで駆けっている。
 それを可能たらしめているのは、武術による技だ。それもかなりの修練を積まねば出来ない。
 体の中を巡る、命を命たらしめている力を活性化させ、さらには天と地の間に普遍的に存在する生命の原型、存在力ともいうべき不可視の力を借りて、常人には奇跡にも思える業を成す。
 魔術師風に言えば、身体強化魔術<フィジカル・エンチャント>というやつだ。
 基本的に、魔術も武術も変わらない。
 魔術とは、世界に満ちる魔素<エーテル>を媒介として己の求めるように世界を改変する業だ。無限に編まれ続ける世界という名のタペストリーに、紡いだ魔素で己の意思という糸を捻じ込む行為に他ならない。
 武術もまた同じ。ただ、使う力の源は魔素ではなくて勁(けい)と呼ぶ。もっとも、こちらは魔術ほど体系的に整えられて定義付けされている訳ではないので、流派や人により様々に呼ばれてはいたが。
 言葉も修練の方法もまるで違うが、それぞれが求める何がしかの高みを目指す為のアプローチが異なるだけにすぎない。
 そして今、青年が求めるように強化された二本の足は、彼の求める速度を出して応えていた。
 町外れ、と言ってもこの青年にとっては大した距離ではない。
 練り上げられた勁力の篭められた両足は、地を踏む度に恐ろしい勢いで、少女を背負ったままの体を前方に撃ちだす。それは走るというより、低く這うように飛ぶと言った様子で、草を掻き分け、畑や用水路などを文字通りに一足飛びに超えていく。
「おい、ババァ」
 飛ぶように走りながら、背に向かって呼びかけた。少女相手にしては、随分と奇妙な呼び方で。
 と、男の顔の左右からヒョイと一対の小さな手が伸ばされ、走る男の口を押さえて、鼻を摘まんだ。
 思わず足が乱れ、見る見るうちに速度が落ちる。
 彼女を振り落とす訳にもいかず抵抗できないのをいい事に、両手は優に数分、口と鼻を塞いでからようやく青年を開放した。
「っぷぁ!あっぶねえな!何しやがる!このババ……ルヴァ様」
 目の前でわきわきと開閉される小さな掌に、言葉が途中から変わる。
「ふん、精進が足りぬわ、未熟者が。
 呼吸を乱されたくらいで勁力に乱れが生ずるなど、普段からの内勁が足りぬ証拠よ」
 その声音は容姿同様にあどけなく、それこそ鈴を転がすようなというのがぴったり似合うほど可愛らしい。
 しかし若々しい声に反して口調は古めかしく、かなりの年を経た者のように喋る。
219Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:42:46 ID:UitN5XBS
「いきなりやられりゃ、誰でも焦るっての」
「それこそ精進が足りとらん何よりの証拠じゃ。ワシに鼻摘ままれたくらいで焦るのは心が弛んでおるのよ」
 まるで悪びれていない、すまし顔。ついでに、丸まった拳がポコと後頭部を打つ。
「くそ…油断したぜ。
 で、ルヴァ様におかれましては、この後は如何いたしましょうか?」
「やめい。気持ち悪いわ」
 またポコと後頭部を叩かれた。
 少年が助けを求めた者の名と、爺むさい口調の少女の名は同じ。
 そう、この一見して幼女然とした者こそが、カーメラの町と契約を結んだ守護者だ。
 そのルヴァを背負う青年は、名をエルクという。
「坊主は盗賊と言っておったがの。実際、町に入ったのは傭兵どもじゃ。
 まぁ、あやつが間違えるのも無理はないがの」
 見る者が見れば一目瞭然だが、遠目に加えて、少年の知識ではどちらも同じような武装集団にしか見えない。
「剣呑な気配と鉄臭さがしたんでの。それも街道の方からではなく、森の中からじゃ。
 遠隔視覚<リモート・ビューイング>を使こうて見たが、連中、軍旗を持っておったわ」
 貧相じゃったがの。
 そう言って、ルヴァはコロコロと笑った。
 旗は戦場に於いて、自部隊の位置を示す重要な存在だ。狂騒する戦場ではいくら大声を張り上げても無力であり、反して風にひるがえる軍旗はそこに部隊がいる事を誇示する。故に軍旗を持つような武装集団が、盗賊なのはあり得ない。
 また、作戦時以外に正規軍がわざわざ森の中の間道を行軍するのもそうそうあり得ない。ピカピカの鎧姿で誇らしげに行軍して、支配者の威厳を民衆に知らしめるのも、軍隊の持つ役割の一つだからだ。
 正規部隊で無い軍事集団となると、傭兵団しかない事になる。
 傭兵団は、その名の通り、契約に基づいて国や地方領主などに雇われ、金で己の腕を売る傭兵達で構成される部隊である。
 常備軍というものは恐ろしく金を喰う。それはもう、まさに国を傾けかねないほどに。
 財政面に余裕がなく、大規模な常備軍を確保不可能な国などに傭兵は重宝される。しかも、その需要は大きい。なにせ、傭兵によるギルドまであるほどなのだ。
 もっとも質はピンからキリまでだが。騎兵や戦闘工兵、ドワーフ製の重砲だけを扱う砲兵団もいれば、ゴロツキの寄せ集め当然のランクの低いのまで様々。
 腕が良かったり、専門性が高い部隊は雇い主が手放さないのでほとんど常備軍扱いだが、食いっぱぐれた連中は戦から戦を求めて各地を渡り歩く。あまり大きな戦争のない時代ではあったが、百や二百が死ぬような小競り合い程度ならどこにでもあった。
 正規軍であれば移動中でも経費や物資は全て国庫から賄われるが、傭兵ではそうもいかない。彼らにとっては非雇用期間は出費そのものに当たる。
 その損出を見込んで雇用時は出来るだけ吹っ掛けるのだが、それ以外にも出費を抑える方法があり、それが傭兵団の悪名を一際高めていた。
 進行ルート上に存在する、必要な物資を蓄えている所から分捕ればよいのだ。しかも自分達は腕で相手に言う事を聞かせたり、異議を唱える者を永久に黙らせるのは、これ以上ないほどに慣れているときた。
 結果、その存在は、街道を行く者、町に住む者にとって盗賊とあまり差はなくなる。
220Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:44:19 ID:UitN5XBS
 今回のように、猫のように相手の視界から外れたところからこっそり忍び寄るのは狩人の行動であり、無論、その意図は明白。
 歴戦の狩猟者であるルヴァからしてみれば、まだまだ甘いと言わざるを得なかったが。
「今頃はダンとアッシュが冷や汗をバケツ一杯ほどもかいておろうて」
 町長と、町一番の商店の三代目当主の若者の名を挙げる。重要な交渉事では責任者とそのブレーンとして必ず顔を出す。
 盗賊と傭兵の大きな違いの一つに、後者は交渉と契約が成り立つ事がある。
「カーメラを守れず、契約を反故にしてはワシの名に傷がつくし、業も増す。
 かと言って、危機に直面もさせないほどに面倒を見てやっても安く見られるじゃろうし、腑抜ける」
 今も必死に免焼金の交渉を行いつつ、ルヴァが来るのを待っているだろう。
 ダンとアッシュの二人はどちらも適度に善人で、適度に腹黒い。つまりは自分だけ助かろうと姑息な真似はしないし、町を守る為なら多少の違法には目をつぶる覚悟も度量も持っている。
 ルヴァに頼りすぎない、と言う意味も含んでいるが、そこはルヴァの好むところでもあった。自分以外の何かにただ縋りつくだけで、すべき努力をしない者をルヴァは嫌う。
「それにな、何事につけても演出や箔付けは重要じゃ。
 ピンチを颯爽と救ってやれば、同じ結果であっても感謝のされ具合は段違いじゃろう?無論、契約金もな」
「非道だねぇ。その為に、あんな少年の純情弄ぶだなんて」
 あの少年が、独り、勇気だけを支えに助けを求めて走ったのではない事は、誰の目にも明らかだった。
 ルヴァ様の役に立ちたい。ルヴァ様の前で格好良く振舞いたい。男の子ならば誰しもヒーローや、女の子のナイト役に憧れるものだろう。
 エルク自身にだって心当たりはある。若さゆえの痛々しさを多分に含むので、積極的に思い返したくはないけれど。
「非道とは心外じゃな。ワシはあの坊主が望む役を演じさせてやっただけよ」
 悪戯が成功した子供のように愉快そうに笑う。
 魔術で視ていた事に加えて、常人離れした感覚を持つルヴァが少年の存在に気づかない訳がない。これで問題なく事が片付けば、少年は町の一大事を知らせた小さな勇者となるだろう。そしてルヴァも株を上げられる。彼への報酬はルヴァの笑顔と賞賛の言葉が最も適当だろうか。
 言葉の中身と口調はともかく、その様子だけはルヴァの見た目にぴったりと合っていた。
「ところでの、今も市壁の中を遠隔視覚で見とるんじゃがな。
 カーメラを襲った奴らはあまり行儀が良くないのう。ダンの交渉も上手くいっとらんように見えるわ」
「おいおい、ヤバいじゃねえかよ!そういう事はもっと早く言えってんだよ、ババァ!」
「……その言葉、後で後悔させてやるからな」
「ま、覚えてたらな。急ぐぜ、振り落とされんなよ?!」
 勁力が急増。
 エルクの踏みしめた地面が抉れ、爆発したように後方に飛ばされていった。
221Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:47:22 ID:UitN5XBS
――5――

 禿かけた額から吹き出す汗をハンカチで拭いながら、カーメラ町長ダニエル=モルダーは懸命に言葉を紡いでいた。
 やや小太りな体は、前を向いたり横を向いたりと忙しい。
 ダンと向き合う形で傭兵団の副官がいやらしい笑みを浮かべており、ダンの傍らには若くして町一番の商店を継いだ若者アッシュ=セレブリタスが、これまた顔面を汗だくにして居た。
 二人の後方からは浴びせられるのは、物理的な圧力を伴いそうなほどの無数の視線。
 教会とこじんまりとした町役場に面した町の中央広場は人で埋まっていた。普段なら、そこを埋めるのは色とりどりの天幕を張った行商人のワゴンや屋台なのだが、それらは全て広場の縁にどかされ、一部は街路上にひっくり返されて逃走を阻むバリケードにされていた。
 そうして大きく空いた広場の中央には、町の住人達が一同に集められ、座らされている。
 座る人々の顔はどれもこれもが不安、恐怖、怒り、絶望に染まっていた。様々な顔が様々な表情を浮かべていたが、少なくとも明るい表情は一つも見当たらない。
 いくつも子供の泣き声がし、そこに傭兵の怒鳴り声と親が子を宥めようとする必死な声が重なる。
 集められた住人のさらに外に大きな円を描くように、傭兵達がまばらに包囲網を敷いている。数こそ少ないが揃って手にはクロスボウを構えており、戦を知らない人間が逃げ出したら良い的になるのが関の山だろう。
 そもそも、一人で逃げた場合、居残った者達がどうなるかが容易に想像が付くため逃げ出せない。
 見張り以外の傭兵達は、少し離れたところで一塊になっている。
 カーメラの町を襲撃した傭兵団はおよそ百人ほど。戦場での識別の為に大抵は衣装を統一しようとするのだが、いい加減で、部隊紋章の入ったサーコートを羽織っている者も少ない。
 人やエルフやゴブリンなど雑多な種族で構成され、得物もバラバラで統率も悪いところから質は推して知るべしといったところか。
 一個中隊にも満たない数だが、武装した連中がそれだけ集まれば慣れない人間にとって威圧感は計り知れない。
 実際、今も獲物を威圧するべく、野卑な声で笑い声と共に野次や罵声がいくつも投げつけられている。数こそ多いが中身を要約すれば、殺すぞ犯すぞ燃やすぞの三つで終わる。
 四方からのプレッシャーで、気の弱い者なら吐いてしまいそうな状況の中。ダン町長とアッシュの二人は頑張っていた。希望が訪れるまで、傭兵団が町に手を出さないように交渉を長引かせようと。万が一、彼らの希望が来なかった時、出来る限り被害を抑えようと。
 免焼金として貯めた財産が奪われるのは多大な損害だが、町そのものが燃えて消えたり、住人に被害が及ぶのに比べれば遥かにマシだ。
 と、その時、ついに待ち望んだ声がした。
「よくぞ踏ん張ったぞ、二人とも!そして待たせたな、皆の者!後は任せておけい!」
 勇ましくも、可憐な少女の声が。
 思いも寄らない方向。
 頭上から。
222Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:50:04 ID:UitN5XBS
 カーメラが属するのは、ブリークランド王国コルモネン子爵領。
 その子爵からカーメラの町と周辺域の治安維持に派遣されていたのは、十人ほどの衛兵であった。数少ない軍人である彼らでも数の暴力には抗えず、とっくの昔に縛り上げられてしまっていた。
 全員が何らかの傷を負い、致命傷とはなっていないがまだ血の止まっていない者も数名いる。
 町といっても市壁があるから町と呼べるだけで、カーメラ自体は重要な拠点でもなければ規模も大きくない。さらに領地持ちとは言え交通の要所でもなければ、大きな産業が発展している訳でもない一地方の貧乏貴族に、万全を期待するのは荷が重過ぎる。
 そんな小さな町なので、市壁とは言っても石積みのしっかりした造りの壁を拵えられる訳がなく、木造であった。
 高さもせいぜいが数メートル。
 鍛錬を積んだエルクの足ならば、なんとか飛び越えられる。
 市壁を超えて町に入っても、馬鹿正直に住人を囲む傭兵団の包囲網を外から破ろうとすれば、絶対に中にいる住人を人質に取られる。
 人質に取られるのを避けるには一撃で包囲網を破らねばならなくなるが、そうすると攻撃が外から内に向かうので流れ弾の可能性が非常に高かった。それだけは避けねばならない。
 結果、ルヴァとエルクは包囲網の中に一度入り、その後に再び包囲網を蹴散らすという迂遠な方法を取る事になった。
 傭兵団の中に空を飛べる連中や、魔術師がいないのは幸いだった。
 市壁によじ登ったエルクは、そのまま手近な家に力いっぱい飛び移る。が、飛ぶ先にはただ壁があるばかり。力加減を誤ったのか、ぶつかって転がり落ちるだけ。と見えたが、エルクがぴたりと家壁に張り付いた。
 壁とは言え豊富にある出っ張りに指と足先をわずかに引っ掛けて、勁力の助けも借りてヤモリの如くへばりつく。
 そんな不安定な体勢も彼にとっては何ら障害とならない。ふん!と気合一閃、曲芸師もかくやの軽い身のこなしで、トンボを切りながら隣の屋根の上まで跳躍する。
 エルクの体術もかなりの業だが、彼が体術を駆使している間、延々と背負われたままでいるルヴァも大したものだ、ちょっと意味は変わるかもしれないが。
 とりあえず登ってしまえば、あとは簡単。
 並の修練では実現出来ない体術を武器に、多少の段差――並の人間にはけして多少では済まないが――など物ともせずに町役場まで一直線だった。
223Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:50:43 ID:UitN5XBS
 それはまるで東の地平から差す朝日が夜霧を吹き払うようだった。
 囚われて沈み込んだ顔が次々と明るくなっていく。
 いくつもの口が、いくつもの声でルヴァの名を呼ぶ。
 プレッシャーの反動で腰と膝から力が抜けて、今にもその場にへたり込みそうなほど憔悴しているダンとアッシュの気持ちも住人と同じだった。
 緊張に強張った顔面をほころばせて見上げれば、町役場の屋根の上にはルヴァを背負ったエルクの姿。
 役場の上に立つ、そのエルクがこちらを見て、手を振っている。
 そう、まるで何かを追い払うような仕草で……。
 喜んだのも束の間。二人揃って、はっとした顔になり、慌てて飛び退く。
 数瞬遅れて、起きている事態に脳が追いついた副官が、これまた泡を食って飛び退く。
 そこに少女を背負った青年が、ズドンと降ってきた。
 ご丁寧に空中でくるりと水平方向に半回転して、飛んだ勢いを後ろ向きに滑る形で殺しながら着陸する。この高さから飛び下りれば、さすがのエルクと言えどタダでは済まないのでルヴァの魔術で落下速度を適度に緩めつつ。
 日の光をバックに高い所から現れ、盛大に砂埃を巻き上げながらの登場だった。
 とん、と軽やかにエルクの背から小柄な人影が降り立つ。
 あまりに唐突かつ予想外の登場の仕方に、敵も味方も呆気に取られて放心状態。
 ルヴァがその空隙を突く。
「ワシの名はルヴァ。縁と故あってこの町の者と契約し、約定に従いこの町を守護しとる。
 今退けば、お前らの罪は見逃そう。だが、聞けないとあれば実力で退けるまでじゃ」
 腕を組み、仁王立ちで名乗る。
 けして大きくはないが、不思議と良く通る声。
 ぱっちりとした釣り目は強固な意志と自信に満ちていて、吊りあがり気味のくっきりとした太めの眉がルヴァの負けん気の強そうな外見をさらに強調している。
「予め忠告しておくが、ワシに人質は無意味じゃ。一人二人の為に大勢を危険に晒すような真似はせん。
 試したくば試せばよいが、手を上げた者の顔はこの眼にしかと焼き付けておくぞ。
 しかる後に、見つけ出し、生かしたまま四肢を砕き、残された家族の前に突き出してくれる」
 無論、殺させるつもりなど毛頭ないが。
 世の中、はったりも重要だ。相手がビビって動き辛くなってくれれば、それで良し。
 ルヴァの言葉が、静まり返った広場に木霊する。町と起源を同じくする中央広場は、その名前の通りに常に町の中心であり続けている。この広場が出来て以来、こんな静けさがここを支配した事があっただろうか。
「今はかような形をしておるが、ワシはこれでもドラゴンじゃ。
 痛い目に会いたくなくば、即刻この町を立ち去るがよい。返答やいかに?」
 しんと静まり返った空間。
224Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:51:20 ID:UitN5XBS
 そこに、プッと吹き出す音が響く。
 それが切っ掛けとなった。あとは誰ともなく、雪崩を打つように加速していく。
 最初は細波のように、次第に大海のうねりのように。広場中を嘲りをたっぷり含んだ笑い声が埋める。
 傭兵団の罵声の混じった嘲笑の嵐を聞き流しながら、エルクが顔をげんなりさせていた。彼の横でルヴァがどうなっているか見なくてもわかるし、ついでにこの先の展開も大体わかる。
 事実、青年の傍らでは、小さい体からゆらゆらと湯気のように怒気が噴き出し始めていた。
「ドラゴン?あんなちっこいのが、ドラゴンだぁ?」
 彼女の言葉に対して、傭兵達の間からは様々な大きさの声で諸々の物騒な言葉が湧き上がっていたが、一際大きなだみ声が投げつけられた。
 声の主はざんばら髪のトロールで、その罵声に比例して体躯も大きい。周囲から頭一つどころか、上半身一つ近く抜き出ている。
 鍛冶屋が使う金床に大人の背丈ほどの長さの金属製の柄をぶっ刺したような、巨大なハンマーを軽々と肩に担いでいる。
「あんな小便臭そうなメスガキがドラゴン様だってよぉ!
 笑っちまうがあんなドラゴンならいつでも大歓迎だぜぇ。オレ様のドラゴンスレイヤーで串刺しにしてやるよ!」
 そう笑いながら、大袈裟な仕草で腰をかくかくと前後に振る。
 彼の言う"ドラゴンスレイヤー"が何を指しているのかは、言うまでもないだろう。
 下品なジョークに周りからもゲラゲラと笑いが起こる。
 声も身体もでかいが、ただ、頭の中身もセンスも身体のサイズとは反比例しているようだった。
 その野卑なジェスチャーに、当のドラゴンの太いが形の良い眉が危険な角度に吊りあがっていくのに気づいてもいない。
「ドラゴンさんよぉ、オレ様のドラゴンスレイヤーと一騎打ちしねえかあ?
 気持ちよく天国に行かせてやるぜぇ!」
 ふざけるな。お前は最後だ。ガバガバになっちまうだろうが。また、いきなり壊す気かよ。
 周囲の傭兵達から上がる下劣な野次に、ゲハハとトロールが一層下品な笑いで応える。
 その下卑た笑い声が、途中から絶叫に変わった。
 身の毛もよだつ絶叫と共に、手を振り乱して奇怪な踊りを踊る。
 トロールが燃えていた。
 彼の獲物のハンマーが放り投げられてズシンと落ち、そこでもいくつかの悲鳴が上がる。どうやら誰かの上に落ちて手足を砕いたらしいが、投げた本人も周りも気にする余裕は無い。
 トロールの体が、まるでよく乾かした松の小枝かなにかのように派手に燃え盛っては、盛大に火を噴き上げている。
 辺りはにわかに騒然となる。火の気など全くなかったのだ。仮にあったとしても、こうもいきなり燃える訳がない。魔術によるものなら有り得なくもないが、広場に集められた住人にはそれらしい者もいなければ、術を行使していたような雰囲気もない。
 歩き回る巨大な松明と化したトロールだが、誰も彼を助けようとする者はいない。トロールを取り巻いていた連中も、炎と熱気を避けようと我先に逃げ回る。
 と、燃え盛る人影が腕を伸ばし、自分の喉元と思しき辺りを押さえて苦しみ始めた。水中で溺れた者がするような仕草だが、まさにその通り。炎熱が空気を追い散らし、同時に喉そのものが焼けて呼吸ができなくなっているのだ。
 死のダンスを踊り狂うトロールの体が、唐突に弛緩すると、そのまま切り倒された樹木のように倒れる。そして、動かなくなった。
 絶叫が消え去り、辺りを再び静寂が支配する。
 聞こえるのは、いまだに体に纏わり付く炎が肉と脂肪を焼く音だけ。
225Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:52:31 ID:UitN5XBS
 さすがに傭兵だけあって死体は見慣れている。これで浮き足立つような者はいなかったが、いきなりの事態に誰しもが言葉を失っていた。
「ワシを侮辱しようとするならば、命懸けですることじゃ」
 ざぁ、っと無数の視線がある一方向に集まる。
 剣呑な殺気を含み始めたいくつもの視線に怯える素振りなど欠片も見せず、幼女の形をしたドラゴンは悠然と腕を組みながら言った。
 そのルヴァに、ついさっきまで無かった物が増えている。
 つるりとしたおでこの両端、こめかみの少し上辺りからは太い角が生えている。石炭のように真っ黒で、左右に向けて張り出してから前方に向かって大きく湾曲し、鋭い切っ先は天を指す。
 単衣の裾から伸びる剥き出しの両足の後ろ側では、しなやかな尻尾が振られている。長さは踵につくかつかないかといった程度。トカゲのように先端は細く、上に行くに従い太くなる。鱗はまばらで赤銅色の地肌が見えている。
 こうやって尾が生えた時にスカートの類は着づらいし邪魔なので、ルヴァは単衣を好んで着る。
 そして、不機嫌そうに吊りあがった口の端からは一筋の赤い火線が延び、ルヴァの呼吸にあわせてチロチロと伸び縮みしている。
 ドラゴンブレス。
 赤竜種であるルヴァのそれは強烈な熱を伴う火炎だ。他に被害が及ばぬように、細く絞りこんだブレスがトロールを焼いたのだ。
 戦いでは巨躯とそこから繰り出される怪力はアドバンテージとなるが、今回ばかりはトロールのその巨体が災いしたと言える。
 彼の上半身が他の傭兵達の頭よりも上に出ていた為、とても当てやすかったのだ。
 自分が焼いたトロールに一瞥すらくれず、いまや明確な殺意の塊となった傭兵達に臆す事無く、悠然と言い放つ。
「もう一度、言うてやろう。この町に仇なす者はワシが許さん。
 今すぐ失せればそれで良し。さもなくば歯向かう者悉く、ワシの善行の糧となれ」
 撤退を勧めているのか、挑発しているのか分からない言葉。
 彼女に応える言葉はない。
 代わりに、次々に鞘を払う音が応じる。
「ふん、愚か者どもが」
 簡単に予測が付く単純な行動という意味でも、引き際を知らないという意味でも。
 ルヴァの雰囲気に、事態が決定的な方向に転がっていったのを察してダンとアッシュが住人達の方へ慌てて逃げていく。
「さてさて、アレを見ても向かってくる勇気と度胸は褒めてやろう。逃げたくなれば、さっさと逃げるがよいぞ?」
 くくっと戦意に満ちた微笑み。
 外見に騙されるな。自分をただの子供と思うな。
 ルヴァは、そう教えていた。言葉を伴わないが極めて説得力のある教え方で。授業料は、馬鹿の命が一個。
 徐々に異形の相を持ち始めた少女は、人外の力を、それもとびっきり凶悪な力を持っている。
 どんな事でも起こりうる戦場に身を置く為に、傭兵と言うのは誰も彼もリアリストだ。それが何であるかは追求せず、ただ目の前の事態にのみ対処する。
 舐めてかかれば、奪うどころか逆に己の命がもぎ取られる。不用意な行動は命取りになると肌で知った傭兵達の動きに、にわかに慎重さが増していく。
 それは異様な光景だった。
 不敵に微笑む少女がゆっくりと歩を進めると、武装して敵意剥き出しのいかつい男達が倍の速さで退がるのだ。
 一歩進めば、二歩退がる。
 二歩進めば、四歩。
 四、八、十六……。
 いつの間にか、傭兵団と町の住人達の間には大きな空間が形成されていた。その隔たりは、彼らの警戒心そのものであり、また存分に武器を振り回す為の戦支度でもある。
226Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:53:36 ID:UitN5XBS
 前進したのはルヴァのみで、エルクは町の住人達を背負う形のまま動いていない。
 自然、包囲網が二個出来上がった。片方は小さく厚く、もう片方は大きいがごく薄い。それぞれの中心にはルヴァと、住人達とエルク。
 どちらをどれだけの脅威と見なしていたかの表れだった。
 まぁ、こっちは楽になるからいいけどよ。
 エルクは、ちょいと周りを見回すような素振りをしながら、間接をほぐしていた。弱いと見なされるのはあまり面白くはないが、ルヴァと違ってこっちに余裕が無いのは確かだったので素直に受け入れる。
 こちらを向いて今にも斬りかかってきそうな、抜剣済みの傭兵達を出来るだけ満遍なく視界に入れようとする。
 またぞろボロが出るから、あんまり楽しむなよな。
 気取られぬようにゆっくりと調息しながら、鉄の垣根の向こうに見えなくなったルヴァの後ろ姿に口の中だけで、そう呟いた。

「囲え!正面からあたるな!」
 周りの傭兵達より、少しだけ派手で豪華な鎧と兜をつけた兵――兜の天辺についている房飾りの色からして兵卒を指揮する士官だ――が声を張り上げる。
「焦るな!敵は二人ぽっちだ!包囲して叩けえ!!」
 指揮に応じ、傭兵達が陣形を作る。
 少なくとも彼らは戦で食っているのだ。装備と士気と統率はともかく、そこら辺の衛兵などより、よほど反応は早い。それに様々な戦いに慣れている。
 がしゃがしゃと忙しなく鳴る鎧の音をルヴァは悠然と聞いていた。それは相手の出方を見ると言うより、次はどんな出し物を見せてくれるのだろうか、と言った風情で剣闘劇でも見物するような態度だ。
 無論、包囲される当の本人がそんな態度なので、包囲網はあっという間に形成される。
 包囲する兵は互いに距離を取り、一見すると包囲の網の目は荒い。が、たとえ一列目を抜けられても、その後ろには更なる円陣が組まれている。それこそ飛び込んだが最後、身動きの取れない中で四方から串刺しにされる死地に他ならない。
「…よし、いけぇ!!」
 陣が出来たと見た士官の号令一過、剣の林が一斉に閃いた。
 ただし、声に応じて切りかかったのはルヴァの前面にいる者だけだ。
 別に臆病風に吹かれたのではない。
 第一手はいわば勢子だ。追い込み、体勢が崩れれば、目標の背後に陣取る兵らが止めを刺す。よしんば、なんとかかわし続けたところでいずれは体力なり集中力なりが切れて、避け切れなくなる時が来る。
 その筈だった。
 ルヴァの選択肢に退却などという文字はない。
 真っ向から受けて立つ。この分からず屋どもに灸をすえてやらねばならないし、なによりもそうでなくては面白くないからだ。
 傭兵にとっては竜が守護する町を襲ったのも不幸だが、竜族の旺盛な闘争心を完全に制御できるほどルヴァは歳を食っておらず、それがさらなる不幸をもたらした。
 不敵な微笑みを、可愛らしい顔に乗せ、ルヴァが動く。
 それはまるでダンス。
 踊る少女にいくつもエスコートの手が、振られ、突かれ、払われる。しかし、そのどれもがルヴァには届かない。
 柳が風に撓うかの如く、無数の武器の巻き起こす風に吹かれても、ただ剣風と踊るのみで全てを優雅に受け流していく。
 まさしく達人の業であった。
 どんな者にも、それこそ草花や動物にも内部を駆け巡る勁や魔素の流れがある。ルヴァは周囲の勁を感じ取り、その流れを把握する事で視覚や聴覚に頼らずに、周囲の事物を知覚することが出来る。ある特定の時点での流れが観えれば、一瞬後を予測するのはさほど難しくない。
 加えて、彼女は持ちえる時間軸が人間とは異なる。経験や鍛錬に注ぎ込んだ時間が、文字通りの意味で桁が違う。
「くくく……楽しいのぅ」
 踊るにつれて、体の奥底から熱いものが這い上がってくる。
227Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:54:59 ID:UitN5XBS
 右手が閃き、打ちかけてきた剣を払いのけ、そのまま持ち主のエルフの五指を砕きながら剣をもぎ取り、彼方に弾き飛ばす。
「くふふ、戦は楽しいのぅ。そうは思わぬか?」
 元より言葉が返ってくるとは思っていない。
 右手を振った勢いを殺さず、くるりとターン。
 裏拳気味に奔った左掌が片手ハンマーと盾をまとめて叩き、肘の間接を砕いて携えた武器ごと腕を明後日の方向に向かせる。
 少女に見えても仮初めの姿。本性が秘めた膂力は凄まじい。
 肉の潰れる感触と悲鳴に、狩猟者としての本能が歓喜の声を張り上げる。体内で血が煮えるような、心地よい感覚がルヴァを襲う。
「あぁ…大勢を相手するのも久しぶりじゃ。猛る男どもに群れられ迫られるのも悪くないのう」
 怒号の輪のど真ん中で優雅とさえ言えるような体捌きで踊りつつ、遊ぶように人体を壊していく。
 手が、足が翻るたびに一人、また一人。
 一つ壊すたび、火口でふつふつと煮え立つ溶岩のような熱く粘っこい殺戮快感に理性が溶かされていく。
 はふ、と年恰好に似合わぬ艶っぽい吐息が炎と一緒に漏れる。
 あっという間に、十人以上が再起不能な傷を負わされて、地に沈められていた。
「しかし、どいつもこいつも今ひとつ歯応えがないのが興醒めじゃな……」
 そう呟きながらも、振り下ろされる刃の群れをやすやすと掻い潜っては、思案する。
 発奮してくれれば、もっと楽しめるかも知れない。少し気合を入れてやるとするか。
 ルヴァは適当に目に付いた傭兵の一人の懐に、するりと入り込む。
「よっこいしょ、と」
 爺むさい掛け声と共に、ルヴァは運の悪い犠牲者の腹に、指先を揃えて貫手の形にした右手を無造作に刺しこんだ。
 またしても喉が裂けんばかりの叫びが上がる。
 戦場には付き物ではある。だが、それを上げさせているのがただの一人。それも幼女と来ては、異常極まる。
 しかも金属の一枚板で出来た腹当を軽々とぶち抜いて、中身ごと頭上に持ち上げるような相手だ。
 いつの間にか、ルヴァのほっそりとした腕は岩石を思わせるごつごつとした鱗に覆われて、二回り以上も大きくなっていた。桜貝のように艶やかだった爪はすっかり黒ずみ、ねじくれながら前に大きく伸びている。
「ひぃっ…ぎぃぃぃっ!あ、ひ…た、だすけ……デェ!熱いぃ、あつひぃぃぃ!!」
 涙と涎を垂れ流しながら、傭兵がルヴァの頭上でじたばたと手足を振って暴れる。
 貫通した鎧ごと肉を鷲掴みにされているのだが、血が流れてこない。どう見ても鮮血が零れ落ちてもいい傷の筈だが、それがない。代わりに、じゅうじゅうとナニカが焼ける音と、ドス黒い煙が漂い始める。
 ルヴァの体内には人間などと比べるのも馬鹿らしくなるほどの力で満ちている。魔力、気、勁力など様々に呼ばれるその力をルヴァは普段、意識して押し込めている。
 が、押し込めているのだから、彼女の体内を駆け巡る高圧の勁力は精神のタガが緩むと自然と溢れだす。そして赤竜種であるルヴァの勁力は、高温の熱や炎として顕れる。
 体の内側にまで食い込んだルヴァの爪先が高熱を発し、傷が焼き塞がれているのだ。
 戦場を知らぬ一般人が見たら卒倒しそうな――実際、悲鳴だけでパタパタと面白いようにカーメラの人々が倒れていっているのだが――酸鼻を極める状況。
 哀れな傭兵を持ち上げたまま、ルヴァは軽く震脚する。
 腰を落とし、とん、と右足が大地を踏みしめる。
228Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:55:59 ID:UitN5XBS
 体内に蓄積された勁力を呼び水にして、大地深くを走る気脈から勁力を吸い上げる。
 一瞬、ルヴァの右肩から先がぶるりと滲むように震え。
 握っているのが熟れた果実だとでも言わんばかりの気軽さで、ブンと投げつけ。
 投げつけられて仲間達の所に戻った傭兵が、熟れきって腐った果実を地面に落としたかの如く、パンと弾けた。
「ふはははは!どうしたのじゃ、顔が青いぞ?もっと腕の立つ者はおらんのか?!
 もっとしっかり気張ってワシの相手をせねば、揃ってこうじゃぞ!」
 血と臓物の発する、むせ返るような生臭さが辺り一面に立ち込める。
 両手の十指に、否、いまや十本の鉤爪と化した爪先に小さな炎を纏わせながら、もうどちらが悪人か分からないような台詞を吐きながら、ルヴァが哄笑する。
 数秒前までは仲間だったモノを、砕けた鎧と鮮血の入り混じった肉片を浴びせられた傭兵達が、ようやく事の重大さを悟り、顔面に恐怖を浮かべ始めた。
「だ、だめだぁ、隊長!抑えらんねえよぉ!!」
「クソッタレが、たった二人になんて様だ。仕方ねぇ、人質を使え!何人か連れてこい!!」
 唯一騎乗している傭兵の必死の叫びを、ルヴァが耳聡く聞きつけた。
「町の者に手を出すのは許さんと…」
 釣りあがった目が怒りと殺気にギラリと光る。
 すぅっと息を吸う。
 喉元がぷくっと膨らむ。
「言ったのがわからんか、この愚か者があ!!」
 瞬間、地獄の業火が出現した。
 一息で五人ほどと馬一頭が断末魔も許されず、まとめて消し炭と化す。
 直撃はされなかったが射線近くにいたせいで余熱でひどい火傷を負ってのた打ち回っているのが、その倍ほど。
 見れば、ルヴァ自身も火に包まれている。
 ドラゴンブレスの輻射熱に耐え切れず、単衣に火が付いている。が、火を吐く赤竜がそんなちゃちな火で傷を負う訳も無い。意に介さないどころか、自分の服が燃えている事に気づきもしないで、燃え落ちるに任せている。
 薄い単衣はあっという間に服としての意味を失い、無数の燃えるボロ切れになって、はらはらと落ちていく。熱に煽られたのか、にわかに吹き始めた風がボロを払って、ルヴァの裸身を露わにする。
 わずかに膨らんで、かろうじて緩やかな曲線を描く胸。
 細いけれど、上も下も細い所為で括れの小さい腰。
 きゅっと締まった肉付きの薄い尻。
 丘の頂上で薄ピンクに色づく突起から、翳りの全くないツルリとした下腹まで。可愛らしい少女の姿態にいくつもの異形の相が入り混じっている。
 獣のように裂け始めた口の両端を吊り上げた獰猛な笑み。
 唇の間からは既に牙と呼ぶ方が相応しいまでに伸びた犬歯を見せつけ、歪めた唇からは呼気が炎と化して漏れる。
 自分に向けられる恐怖の叫びに、喉の奥から自然と小さな笑いが漏れる。蹂躙の喜びに、目の奥と股ぐらが熱くなる。
 歓喜に酔い痴れるルヴァの頭の中から、本来の目的は既に抜け落ちていた。
「おやぁ、なかなか面白い物が転がっておるではないか」
 と、ルヴァが何かを見つけた。無造作に近寄ると、進行方向にいる傭兵達の輪が、ずざざっと大きく外に歪む。
229Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:57:13 ID:UitN5XBS
 地面に半ばめり込むようにして転がっているのは、最初に燃やされたトロールの得物だ。
 とてつもない不吉さを感じ取った傭兵達が回れ右して逃げようとするが、多重の包囲網を形成してしまっていた為に互いが邪魔になりなかなか上手く後退できない。
 ルヴァが腰を落として半身になり、初めて構えらしい格好を取る。
「ふんっ!」
 気合と共に震脚。静かな水面に小石を投げ込んだ時のように、足元から土埃がぶわっと波紋を描いて同心円状に吹き払われる。
 ズシンと大地を踏みしめた次の瞬間。
 重厚なハンマーが、ぴょこんとバネ細工の玩具のように宙に放り上げられた。地面に打ち込んだ勁力を衝撃と化してハンマーに伝えたのだ。
 放り上げられたハンマーが放物線を描いて落ちて行く先には、ルヴァの姿。
 その拳は火炎を纏わりつかせ、爪は赤熱を通り越して、白く輝く。
 練り上げられた力を宿す竜の拳が、大気とハンマーを爆裂させた。
 ズガン!!
 ただの一撃。たったの一発。
 それで傭兵団の半数は、死ぬか、大小様々な傷を負った。
 ルヴァが殴ったハンマーは、怪力と拳に篭められた勁力魔力によって微塵に砕かれながら、溶鉄の散弾と化して襲いかかったのだ。射程距離こそ零に等しいが、その威力は攻城砲にも匹敵する。
 圧倒的な破壊の前に、辺り一面、あっとう言う間に悲鳴と絶叫で満ち溢れる。
 悲鳴を上げられなかった連中はまだしも幸運だったかもしれない。腕をもがれ、足を千切られ、胸や腹に穴を開けられ、運悪くも生き延びてしまったが故に緩慢に死んでいくしかない傭兵達が異口同音に苦痛の呻き声を合唱している。
 小さな地獄絵図を描いたルヴァは、一撃を放った位置で佇んでいた。それはまるで自分の描いた絵の出来具合を検分するかのよう。
 目は燃える石炭のように火を吹き上げて爛々と輝き、その肌には四肢と言わず身体と言わず不規則に光の線が無数に走っている。呼吸に合わせて、ゆっくりと熾火のように明滅している不気味な光。
 ルヴァの齢、二百と少し。
 その力は、並の兵士が相手ならば文字どおりの意味で一騎当千である。今のカーメラでの戦いがそうであるように。
 しかしながら二百の歳月をもってしても、竜族としては若輩者である。強大な力、豊富な知識と経験、幼さが未だ残る精神性が形成するアンバランスがルヴァを支配していた。彼女が武術を修めているのも、精神修養を目的としている面が多分にある。
 今回は、一番最初に侮辱され、怒りで頭に血が上っていたのが悪かった。硬い一枚岩だってヒビが入れば、割れるようになる。しかもその一枚岩は硬くはあるがまだ薄い所為で、小さなひび割れでも大きな影響になりやすいと来ている。
 その理性の糸の切れたルヴァが、全身から禍々しさを発散しながら、次はどの獲物にしようかと緩やかに頭を巡らす。
 と、頭がぴたりと止まる。
 その視線が見つめる先には、わらわらと潰走する敗残兵達。彼らの一番後方には中隊行李や兵站資材を積んだ馬車がいたのだが、命あっての物種とばかり我先に逃げる兵は目もくれない。
 なんだ。まだまだ楽しめるではないか。
 にぃぃぃ、と唇を吊り上げて悪魔のように笑う。
「いい加減に目ぇ覚ましやがれ、このバカ野郎が!!」
 すぱーんと小気味のいい音が、ルヴァの耳に響いた。
 じんわりと頬から痛みが伝わるにつれ、頭の中を赤く暗く染め上げていた霧が晴れていく。
 ぱちくりと目を瞬かせる。
 にわかにクリアになっていく視界。
 そうして目に入ったのは。
 今を好機と見て一目散に逃げ去る傭兵の生き残り達と。
 渾身の勁力を篭めたビンタを放ち終え、力なく地面に崩れ落ちていくエルクの姿だった。
230Little Big Dragon:2010/06/08(火) 15:58:35 ID:UitN5XBS
『Little Big Dragon』 後編へ続く。

前編はここまでです。
後編は明日か明後日に投下します。
231名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 21:00:31 ID:ugH8Mzs6


とりあえず、長ッ!
232名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 01:04:27 ID:eTV9nH0Q
>>230
乙〜!
長いけど上手い文章だし一気に読めたよ

ところで最初はロリババアスレに投下しようとしてた?(笑
233名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 01:20:32 ID:LlVmmq56
まずはGJ。

武侠系の描写とは、また新たな切り口で来られましたな。
文字数は多くても、読みやすいリズムでした。

後はエロに期待して待ちます。
ところで、フルハシのケルベロスっぽいフレーバーを感じたけど、錯覚?
234名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 01:23:50 ID:eBM+zl75

どれも文章のレベルが高すぎる。俺のなんて駄目だ下手すぎる
お蔵入りにします
235名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 12:31:20 ID:EhDRxg63
そうですか、さようなら
236名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 18:52:02 ID:EqJF55nq
それにしてもこのスレのレベルが高いことは確か。
ウデだめしとかの気構えで投下したら、痛い目を見るかも。

でも、そんなこと考えずにとにかく投下してみよう。
すべての住民が、レベル高いモノだけを求めてるわけじゃないんだから。
かたく考えず、気楽に構えていいんだよ。

さんざんこきおろされたって、別にいいじゃない。
読んでもらえてレスしてもらえるのって、書き手冥利に尽きると思うんだけど。

うまく書けた作品には、それ相応の評価がもらえるスレなんだよ、ここは。
名無し住民の質だって、投下される作品に劣らないくらい高いんだよ。



ラストでラブラブから一転、寝取られ鬱エンドとか不意打ちでやらかさない限り、みんな温厚だと思うよ?
237名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 20:07:40 ID:aA6dfmzr
逆にプレッシャー与えてないか…?
238名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 20:13:36 ID:0xQh6amI
NTRを投下したいなら事前に注意書きを入れることだわな
まあ人外ヒロインかつNTRって読者を選びそうだけど

……そういや某中古品みたいな神様ネタも
人間以外の女の子に入れていいんだよな
23918スレの314:2010/06/09(水) 21:03:17 ID:m/1E6P8w
『Little Big Dragon』 後編を投下します。
後編はエロ有りです。
240Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:04:58 ID:m/1E6P8w
――6――

 ぐんにゃりとした赤っぽい物体がテーブルに突っ伏している。
 使い込まれて滑らかになった木の天板には、緋色の髪が四方八方に広がって、まるで血の池のようになっている。
 既に陽はとっぷりと暮れている。窓も戸も全て閉められ、天井付近には魔術で作られた白い光源を仕込んだランプが下がり、壁には獣脂を用いたランプが掛けられている。時折、油の吸いが悪くなるのか、ランプの火が不意に揺れる。
 揺らめく明かりに合わせて、散らばったルヴァの髪も色合いを変化させる。
「うー」
「そんなに唸ったって今更しかたねぇだろう、やっちまったんだから」
「ぬー」
 ルヴァの対面。椅子に浅く腰掛けて、背もたれに体重を預けたエルクがぼやく。
 テーブルの真ん中、ルヴァとエルクの二人の間には、麻で出来た質素な巾着袋が一個。
 ルヴァ同様に力なくテーブルの上で平べったくなっている。本当に空っぽかと勘違いしてしまうほど薄いが、空ではない。
 袋の中には、金貨が一枚。
 普通に暮らしていればなかなか拝めない貨幣だが、これでも本来の報酬には遠く及ばない。今回の規模の襲撃ならば、この四か五倍は期待しても罰は当たらないだろう。
 ルヴァが契約を結んだ当時のカーメラの行政と財政に関わる人間に、馬鹿はいなかった。ルヴァが結んだ契約の報酬は固定制ではなくて歩合制、しかもその時々の状況と事後交渉によって金額が変動するようになっている。
 契約を結んだ当の相手は隠居しているか墓の下かで、今の交渉相手はダンもアッシュになる。どちらも適度に善人で、適度に腹黒い。
 町を救ってくれたルヴァに対して感謝も敬意も払うが、かと言ってそれで諸手を挙げて全てを承諾してくれるようなお人好しには程遠い。
 ドラゴンが神などと同列視されて無条件で崇敬されていた時代ならともかく、カーメラの住人にとって彼女はただの――若干、風変わりではあるが――隣人なのだ。契約は見えない鎖となって、たとえ竜と言えども縛りつける。
 それはそれ、これはこれ。
 と言う訳で、しっかりと賃金交渉が行われ、がっちりと値切られて今に至る。家に帰ってくるのがこんなに遅くなったのは、熱を帯びたままのルヴァの体が冷めるまで時間がかかり、なかなか交渉に入れなかったと言うのもあるが。
 彼女は、二つの意味でやり過ぎたのだ。
 一つ目は、赤竜としての力、つまり炎熱を使い過ぎた事。
 町に住む者は殊のほか火災を嫌う。それも当然だろう。こんな田舎では魔術による消火は期待できず、火災に対処するには防火帯を築くのが最も効果的となる。密集した街中では、それは取りも直さず家屋を破壊する事を意味する。
 つまらない火の不始末から焼け野原となった町や村だってある。ブリークランド王国の王都でさえも、大火に見舞われて市街の三割が灰と消えた過去を持つ。したがってこの時代、どんな理由があろうとも放火は死罪である。
 彼女の放った高熱散弾は幸いにして流れ弾で火事を引きこすような事にはならなかった。だが下手をすれば、ルヴァ自身がカーメラを地図上から消し去っていたかもしれないと言うリスクに対しての制裁とも言えた。
 二つ目は単純。
 よりにもよって町中の、それも中央広場を血の海にしてしまった後始末の代金だ。
 どっちにせよ、ルヴァが余計な色目を出して、戦場を町中に設定してしまった事に起因する。さすがにそこまでバレてはいないようだったが、若干の後ろめたさがある故に値切ってきたダンに対して強く抗弁できなかったのも事実である。
 生えたままのルヴァの尾が椅子の足を叩き、ペタリ、ペタリと気の抜けた音を漂わせる。
241Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:05:48 ID:m/1E6P8w
 はふぅ、と溜め息一つ吐いてからルヴァが口を開いた。
「ワシの本性は知っておるよな?」
「そりゃ、まぁな。結構長い事、お前と一緒にいるし」
 エルクが肩をすくめる。
「人であるぬしが、こうした時と…」
 テーブルの下に消えていた腕が上がってきて、頭の上で合わさり、へこませた手のひらを合わせて杯を形作る。
 いまだに額がテーブルにくっついたままなので、どことなく一神教徒が教会で司祭に額づいて杯に聖水を賜る仕草に似ていなくもない。もっともルヴァは一神教の唱える教義なんぞ、これっぽっちも信じちゃいないが。
「本来の姿のワシがこうした時、どちらがより大きな器ができると思う?」
「そんなの、答えるまでもないぜ」
 今は人に交じって生活しやすいように人間の少女をベースにした姿に変身してはいるが、本来のルヴァは見上げるほどの巨体をしたドラゴンである。
 エルクの答えに、ルヴァが突っ伏したままでもぞもぞ動く。角が下を向いたから、首肯したのだろう。
「まぁ、その通りじゃな。人よりもドラゴンの方が体は大きい」
 解けた杯は再び机の下に戻っていく。
「ワシらドラゴンは、人やその他の種族にはない力を持っておる。似たような能力を持つ者らもおるが、概ねそやつらよりも強い。
 と同時に、ワシらドラゴンは体や力に比例するかのように欲望や本能もまた強いのじゃ。
 人とドラゴン、それぞれが両の手で掴めるだけの物で満足すると仮定した上で量を比べてみれば…ま、答えるまでもないのぅ」
 ドラゴンが満足するに足る量は半端ではなくなる。掌で出来た杯がそれぞれの欲求の強さ、という事らしい。
「ルヴァは随分と自制してる方だと思うぜ?他のドラゴンを見た事ないから、確かかどうかは知らんが」
「おぬしに偉そうに言うてはおるが、血の疼きに負けるとはワシもまだまだ未熟、と言う事よ……」
 世の中に邪竜悪竜の類が尽きない理由が、ここにある。年若いドラゴン達はその欲求を抑えられず、無軌道に暴走するからだ。人と魔が相争っていた混沌とした時代ならいざ知らず、それは今では許されざる行為である。
 ルヴァがようやく顔を上げ、天板に顎を乗せた行儀の悪い恰好になる。
 ふぅ、と溜め息を吐く。
「ついでにワシらの一族は、殊の外、血の気が多いからのぅ…」
 それはお前を見ていればよく分かる。とエルクが目だけで語っている。
 普段ならばすぐさま反撃が飛んできそうなものだが、今回ばかりはばつが悪いのか、すねた視線がエルクを一瞥したのみ。
 プイと顔を逸らして、テーブルと仲良しに戻る。
「……まぁ、こうまで惨めな思いをしておるのは、単に我を忘れてしもうたからだけではないがの」
 まるで自分に言い聞かせるような小さな呟き。
242Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:06:44 ID:m/1E6P8w
「ん、何か言ったか?」
 返事はない。
 しばし、ふわりと静かな空気が流れる。
「とりあえず、だ。稼ぎが少なかったから今回はこいつも売るぞ」
 ちゃらり、ちゃらり、と手の中で玩んでいる物をエルクが目線で示した。
 手品師がそうするように、指の間と間を行ったり来たりしているのは白く尖った数センチほどの円錐状の物体だ。ドラゴンの牙である。戦いの最中に伸びたルヴァの牙は抜け落ちて、既に普通の可愛らしい八重歯に戻っている。
 本来のドラゴン形態から抜け落ちた牙ではないので僅かでしかないが、それでも魔力を帯びている。この手の物は魔術師や錬金術師達が様々な術や合成の素材に使うので、需要は無くならない。
 金貨四枚とは、ルヴァとエルクが二ヶ月は働かずに食っていけるだけの額である。
 が、それが四分の一では先が見えている。少しでも足しにしておきたいのが現状だ。
「のぉ、エルク。その、なんじゃ、ワシとしてはあまり売りたくはないのじゃが…」
 もともと魔素との親和性が高い種族は、身の内に魔力を貯めやすい。貯まった魔力は体の一部に宿り、そのまま新陳代謝で自然と剥がれるなり、誰かにむしり取られるなりすると、魔力を帯びたアイテムと化す。
 高位の竜族ともなれば小水が万病に効く、とも言われる。同じ体積の黄金に等しい価値があると言われ、まさしく黄金水である。もっともルヴァは霊格が低いので、そこまでの魔力はない。あったとしても仮にもルヴァは女の子、絶対に許さなかっただろうが。
 しかし問題はそこではない。羞恥もあるが、彼女が渋る理由はもっと別の所にある。
「自分が羊や豚のように切り売りされとるみたいで、ちょっとのう…」
 彼女にしては珍しく歯切れが悪い。
 自らの能力が評価されて金品で購われるのは、分かる。むしろそれは正常な事だ。しかし鍛えた技や力など関係なく、ただそこに在るだけでよく、努力の対価としてではなく金になるとなれば、努力と鍛練を是とするルヴァとしては少なからずプライドが疼く。
「だぁめだ、さすがに今回は売るぞ。自分の食費を考えろってーの」
「ぐぅ…それを言われると弱いの」
 とは言え、美味い肉をたらふく食うのは捨てがたいし、上等な酒を潰れるまで飲むのは止められない。
 当然、それには金が要る。
 善行を重ねて現世での業のツケを支払い、霊格を上げていけば、やがては天地を還流する魔素の流れから直にエネルギーを摂る事も可能な身と成る。
 だが、それはルヴァでさえ、どれほどの生の果てに成るのかさっぱり分からない。その段階へ至るのはルヴァの夢の一つだけれども、夢で心は膨れるが、腹はちっとも膨れない。
 心意気を保ちたくもあるが、胃と舌の喜びの前には決意も萎えがち。
 天秤の如く、心がゆらりゆらりと揺れ動く。
 結果、己の未熟な有り様をこれでもかと突き付けられ、一層と憂鬱さが増してしまう。
 ゆらぁりと上体を起こして、ルヴァは椅子から下りた。
 その様は、ドラゴンというよりは幽鬼のようだ。
「どうした?」
「ちぃと一風呂浴びてくるわ……」
243Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:08:14 ID:m/1E6P8w
――7――

 ルヴァとエルクの家にある風呂の豪華さは、ちょっとしたものだ。
 別に最高級陶器のバスタブが金銀宝石で飾られている訳ではない。むしろそれとは正反対の質素な湯船だ。ただし、湯船だけでも数メートル四方の広さがあるが。
 水と燃料を大量消費する風呂を個人の家に設けるのはかなりの贅沢にあたるので、これだけの広さの風呂を個人で持っているのはそうそういない。
 カーメラの町は言うに及ばず、ここら一帯の領主であるコルモネン子爵の屋敷でもこれほどの規模では備わっていないだろう。
 普通は公衆浴場があればそちらを使い、なければ川で水浴びか、ポット一杯の湯で体を拭き清めるくらいである。
 その贅沢品がどうしてあるのかと言えば、ひとえにルヴァのお陰である。
 風呂をあらかた作ったのも彼女ならば、沸かすのも彼女だからだ。
 湯船は地面を掘り下げてから適当に拾ってきた岩で囲って組まれた野趣溢れる作りで、岩の隙間をセメントで目止めして水を貯められるようになっている。
 水源は近くの川で、揚水用の小型水車を回して水を汲み、そこから風呂まで続く樋を伝って湯船に流し入れると言う凝った造りになっている。使い終わった湯は排水用の水路を伝い、川の下流で合流するようになっている。
 屋根と言えるほどの立派な覆いはなく、四方に建つ柱が大雑把に井桁に組まれた細い梁を支え、その上に麦わらで編まれたゴザが被せられている。おかげで湯に浸かりながら月や、瞬く星明かりが眺められる。
 母屋に寄り添うように作られているので三方が開けており、視界は広く、月を眺める頭を下げてやれば黒々とした夜闇に沈んだ丘の連なりが見える。
 静かな夜風が草原を吹き抜けてゆく度に、丘一面に茂った穂先が風に合わせて揺れて、大きな丘のうねりの上を月光を照り返す細波がざざざ…と走り抜けていく。
 まるで夜の海に船で漕ぎ出したかのような風情。
 カーメラにも公衆浴場が数軒あるが、ルヴァの風呂は景色がよいので、しばしば見知った顔が連れ立って入りに来る。
 湯を沸かす熱源はルヴァの魔術か、ドラゴンとしての力による。今は人差し指と親指で作った輪っかくらいの直径をしたガラス球が給水樋に紐でぶら下げられて、ちょろちょろと流れる水の中でひっきりなしに泡と湯気を吹き上げている。
 面倒くさいとドラゴンブレスを直に吹き込むのだが、爆発的に湯気が出て間欠泉のようになるので、町の子供達が来た時にやるとなかなかウケる。
 ルヴァは胸元辺りまで湯に浸かりながら、ふう、と大きく溜め息を吐いた。
 その拍子に、湯船一面から立ち上る湯気がランプの灯りに照らされて、妖しく揺らめく。
 組み合わせた手のひらにクッと力を篭ると、お湯がぴゅっと飛んで、たぱたぱっと波紋を重ね描く。
 と、ガタゴトと音を立ててルヴァの背後で引き戸が開いた。
「おーい、なんか呼んだか?」
 開いた戸の向こう側から声だけが来る。
 さすがに二人暮しとは言え、エルクも女身一人が入る風呂場に迂闊に顔を突っ込む気はないらしい。それが純粋に慎み深さによるものかは疑問であったが。
 ただ幼女が戯れているだけにも見えるが、今もピュ、ピュと湯を飛ばしているルヴァの水鉄砲は、ひとたび勁力が篭ると並みの大人の拳よりも威力が出る。
「うむ、呼んだぞ。肩を揉め」
 何か言う前に畳み掛ける。
「ワシは昼の戦いで疲れておる。弟子なら弟子らしく、師の体を気遣ってはどうじゃ?
 それとじゃ、風呂に服着て入ってくるアホがおるか。ちゃんと脱いでこんかい」
 ちらりとも見ていないが、気配を察知して行動を読むくらい、ルヴァにとってはお手の物。
 洗い場にそのまま踏む込もうとしたエルクの足を叱責が止めて、回れ右させた。
244Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:09:01 ID:m/1E6P8w
「そんじゃ、あらためて失礼するぜ」
「うむ」
 湯船の縁、荒く削った岩に腰掛けてルヴァがエルクを待っていた。
 膝から下はまだ湯につけて、水面の向こう側で揺らめく自分のつま先でも見ているのか、わずかに下を向いている。
 しっとりと水気を含んだ緋色の髪からは、ポタリポタリと雨だれのように滴が落ちてはレンガとモルタル敷きの床を濡らし、あるいはルヴァ自身を濡らす。
 流れ落ちる水滴を追いかけて濡れ髪から目を下にやれば、良く鍛えられていて贅肉とは無縁のしなやかな肢体。しかし鍛えられてはいるが、そこに固く筋張ったような印象は微塵もない。
 まだ幼さを感じさせる直線のようでいて直線など全くない絶妙な曲線の中に、肩甲骨と背骨のコツコツとした出っ張りが混ざる。
 水滴は華奢なうなじから背筋を滑り降り、尻の谷間へと吸い込まれる前に、尾てい骨の辺りから生えたしなやかな太い尻尾に阻まれて散り散りに消えていく。前に回すと岩に当たって嫌なのだろう、尻尾は洗い場へとまっすぐ伸ばしている。
 いつもは健康的に白い肌は、今は上気してほんのりと朱に染まっている。
 ごくり、と思わずエルクの喉が鳴った。
 ルヴァと交わった回数は両手足の指を全て使っても数え切れない。それどころか、自分の指が何人分あれば足りるのかも覚えていないくらいに彼女とは身体を重ねている。
 ルヴァの身体は何度となく見ているし、隅から隅まで、それこそ奥深くまで知っている。目をつぶってでも、彼女の体のどこに何があるのか正確に辿れるだろう。
 それでもなお。この先、たとえ一生見ても、見飽きる事なんてない。
「どうした?はようせい」
 どうやら思わず見惚れてしまっていたらしい。
 催促の言葉に我に返り、慌ててルヴァに近寄った。彼女から伸びている尾を踏まないように、立て膝を突いて跨ぐ格好になる。
 目の前にある緋色の髪から、ヴァンパイアでなくても顔を埋めて舌を這わせたくなるような形の良い首筋が覗き、柔らかい曲線を描いて両肩へと続いている。
 この小さな体のどこにあんな怪力が、と首を捻りたくなるような細い肩。
 エルクもあまり大柄ではないが、それでも片手で包めてしまいそうなほどだ。
「優しく…しておくれ?」
 笑みを含んだ言葉からルヴァがふざけているのは分かるが、シチュエーションがシチュエーションだけにその台詞だけで頭に血が上りそうになる。
「お、おう…」
 上擦りそうになる声を無理やり押し殺し、どうにかバレないようにしながら、エルクは肩を揉み始めた。
 風呂で温まった体はほどよく熱を持っている。
 撫で肩を半ば以上まで掌中に収め、ムニムニと手だけを動かす感じで、本格的に揉む前にまずは解していく。
 緋色の向こうから満足げな鼻息が漏れるの聞きつつ、しばしムニムニ。
 程よく解れたと見たエルクは、親指の腹で肩甲骨と背骨の合間を下から上へとを指圧していく。
245Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:10:00 ID:m/1E6P8w
 豊満な柔らかさとは無縁だが、しなやかで張りのある肌は、指先に心地よい弾力を伝える。
「ふ……ぁ、気持ちよい、のぉ」
 ルヴァに意図的なものが有るか無いかはさておき、触覚に加えて聴覚も参戦して煩悩をこれでもかと刺激する。腰にまわしたタオル一枚が下から突き上げられて、ともすれば脱げてしまいそうなので、意識を出来るだけ指だけに集中して無心になろうとする。
 しかし枯れていない男ならば誰もが分かるだろう。そんな事は無駄な抵抗でしかない。
 ルヴァの肩は解れていくが、エルクの方はどんどん凝り固まっていく。
 腕の良い武術家は、按摩の腕も良い。それは、如何に効率よく人体を破壊するか、という命題は肉体の構造について深く知る事でもあるからだ。
 どこをどうすればより簡単により深刻な破壊を引き起こせるか、と言うのを知るのは逆も成り立つ。どうすれば壊れた関節を上手く直せるか、どうやれば筋肉の凝りを元に戻せるかを知る事でもある。エルクもしばしばカーメラの住人に骨接ぎを頼まれる事があった。
 そんな極上の手に背を預けていると、ルヴァはまるで肩や腕が溶けていくような心地になる。
 水面にぷかりと漂ってうたた寝しているような、性的な意味とはまた違う気持ちよさ。
 しばらくその快感の水面を味わっていたが、やがてルヴァはそこから自らを引き剥がした。
「もうよいぞ」
「そうかい?そんじゃ、俺はそろそろ…」
 引っ込ませてもらうぜ、と最後まで言わせずにルヴァが遮った。
「待たぬか。誰か終わりじゃと言ったか。後ろはもうよいと言うたのよ」
 固まっているエルクの手に、そっと小さなルヴァの手が重ねられる。
「次は、前、じゃ」
 ルヴァはそのまま手を自分の方に引き戻した。
 二本の小さな手が一本の大きな腕を抱きしめ、それが絶対に失いたくない大切なものであるかのように、胸のうちに掻き抱くようにして引き寄せる。
「どうした?続きをしてはくれぬのか?」
 いいのか、とはエルクは聞かない。
 彼はそこまで無粋ではない。同時に、ここで下半身を引っ込められるほど聖人でもない。
 それに口も上手いとは思っていない。女ったらしならば、ここで耳触りの良い歯の浮くようなセリフでも出るところだが、彼は言葉よりも行動で示す。
 重ねられたルヴァの手をそっと解いて、水気を含んで普段より滑らかさの増している柔肌へと這わしていく。
 いきなり薄桃色の突起に触れたりはしない。
 彼女に「揉め」と言われた通り、ゆっくりと時間を掛けて二つの丘の裾野から揉んでいく。もっとも、揉むという行為が出来るほどの肉付きはルヴァにはなかったけれど。
 ふに、と柔らかい少女の体に指が沈む。が、すぐに締まった肉に行き当たる。
 まるで降ったばかりの雪を冠した初冬の山肌のよう。白く美しいが、まだまだ雪は薄い。
 性の未分化な幼い肉体が羽化を始め、うっすらと女の柔肉を纏い始めた頃しか味わえない絶妙な感触。
 硬いのに、柔らかいという矛盾。
 それは嫌な矛盾ではない。むしろ、この相反する筈の触感が同居しているのは心地よい。
246Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:10:41 ID:m/1E6P8w
 肋骨の浮き出た脇腹から、まるで胸に足りない分を余所から持ってこようとでも言いたげに、乳房の下までを撫でる。
 つぅっ、と下から上へエルクの指が痩せぎすの体を這いあがる度、
「あ…は、んっ……ふ、ぁ…っはぁ……んん…」
 ぞくりした甘い痺れがルヴァの背をも這いあがって来る。
 下から上に撫でる掌がそのまま乳房を下から掌で包み込み、ゆっくりと揉まれると、腰に力が入らなくなってくる。
 いつの間にか、ルヴァは後ろにいるエルクに身体を預けていた。
 後頭部と背中に伝わってくる、しっかりと締まった筋肉の感触と鼓動。包み込まれるような安心感が心の垣根を取り払い、エルクが与えてくれる感覚と彼自身の感触に心を委ねていく。
 湯とは別の火照りを帯びた吐息が、胸の奥から漏れていく。
 激しさとは縁遠い、ぬるま湯のような快感。肩を揉まれていた時と似た、しかし異なる種類の快感。もどかしいぐらいの刺激だが、いつまでも浸っていたくなる。
 もっとこの感触と熱を感じてもいたかったが、それ以上にもっと違う感触も欲しい。より激しく、より多く欲しい。
 上半身を捻って半ば振り返り、頭だけエルクの方を向く。
「のぅ……?」
 そっと、開きかけた花びらのような小さな唇を突き出した。
 ふぅ、ふぅ、と熱い吐息が漏れている。
 常ならば強い意志を感じさせる大きな目は半ば伏せられ、睫毛は儚げに震え、しっとりと潤んだ瞳の中には女の艶が宿っている。老成した幼女という、二つの貌を一つの身に持つルヴァだからこそ醸しだせる、独特の淫靡さ。
「なんだ、そいつは?」
「この鈍感が……」
 噛み合わされた歯がギリと鳴る。
 わざと言っている事ぐらい分かる。ニヤついたエルクの顔が何よりも雄弁に物語っている。同時に、自分に言わせたがっている事も分かる。
 そして、それを口にするのは悪い気はしない。
「ちゅー、をせい」
 優しくするのじゃぞ。
 と、続けようとした言葉は途中から、ルヴァに体ごと覆いかぶさってきたエルクの唇に飲み込まれた。
 風呂の湯がたゆたう水音に、別の水音が加わる。
 ちゅ。ちゅく。ちゅぷ……。
 初めは短く、断続的に。次第に長く、粘っこくなっていく。
 体相応に小さなルヴァの唇を割ってエルクの舌が口腔に滑り込み、天井と言わず歯茎と言わず、ぬるり、ぬるりと舐め回す。
 相手にされていないのに焦れたのか、そっと突き出された舌を、待っていましたとばかりにエルクの唇が甘く食む。
 始めはデリカシーのない唐突なディープキスに吊りあがっていたルヴァの眼も、水音が激しくなるにつれてうっとりを目尻を下げ、舌での抱擁を楽しむ。
247Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:11:54 ID:m/1E6P8w
「ん、ちゅ、んう…んむ…っは……あ、は……む……ぷふぁっ!」
 離れた唇と唇の合間を細い唾液の橋がつないで、二人が息継ぎ一つする間に、プツリと切れては肌を濡らす。
「このぉバカ者がぁ…優しく、チューをせいと……んんっ!」
 ポコと小さな拳が力なく胸を叩く。形だけの文句はつい先ほど同様、またしても唇に遮られた。しかし少し違ってもいた。
「ん、ふぅ……んむぅ、んんーーっ!」
 濡れた瞳で舌を絡めていたルヴァが、陸に打ち上げられた魚のように、エルクの腕の中でビクンビクンと跳ねる。
 見れば、エルクの指がルヴァの乳首にかかり、ころころと転がしている。
 下から腹を撫で上げて、胸元を掌で包み込み、何喰わぬ顔で人差し指の関節の内側でルヴァの敏感な突起を刺激しているのだ。
 キスの息継ぎをすると悪戯な手は脇へと戻るのだが、再び上がってきてはツンと起き始めた突起をさらに充血させようと円を描いては、ルヴァにぴりぴりとした快感を味わわせる。
 地肌とほとんど同じ色合いの、色素の薄い乳輪の頂点がエルクの指使いに従って徐々に隆起し、ピンクに染まっていく。それはまるでルヴァの身体が『ココを押して』と彼にさらなる刺激をねだっているようだ。
 だが、ルヴァもやられっぱなしで黙っているような性格はしていない。少なくとも、まだ負けず嫌いな性格は快感に隷従していない。
 きゅ、と眉が上がる。
「うく、おぉっ?!」
 今度、体を跳ねさせたのはエルクの方だった。
 不意打ちを食らって無様に踊る姿に、してやったり、とルヴァの目が笑っている。びくびく震えるエルクの股間では、ルヴァの尾が彼の内腿を撫でている。
 太く筋肉質のルヴァの尾では、タオルの下で天を突いている怒張に巻きつくのは不可能だ。しかし、撫でる擽るには十分。しかも彼女は手と同じくらい自由自在に動かせて、先端に行くにつれ細くなっているので手が入り辛い所でも難なく分け入れる。
 ルヴァからのお返しの愛撫はけして肝心のペニスには触れない。
 陰嚢と肛門の間、蟻の戸渡りに尾の先でちょんと触れてから、そのままツツーッと袋の脇を撫でて過ぎ、太腿の付け根をくるくると気まぐれに擽っては、またスタートに戻る。
 触れるか触れないかギリギリの軽やかなタッチ。
 むず痒いような快感が腰から走っては、エルクの上下の頭にじりじりと炙るような切ない疼きを貯めていく。
 互いに静かに愛撫し合いながら、唇を重ね続ける。
 粘膜の絡み合う粘ついた水音に、荒くなった鼻息が混ざる。時折、どちらかが息を詰まらせるのは、愛撫に加えたアクセントの所為だ。
 エルクは、親指の腹で乳首を扱きたてる。ルヴァは、尾の側面で袋の付け根をそっと擦ってやる。
 互いに互いを求め、長い長い口付け。
 やがてどちらともなく、身体を離す。
 深い海の底から浮き上がってきた人魚のように、二人して大きく息を吸った。
248Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:12:36 ID:m/1E6P8w
――8――

 荒い呼吸もようやく収まった頃、
「まったく拳の腕はさっぱり上がらぬ癖に、夜の組み手のほうばかり腕を上げおって…」
 頭をエルクの胸元に預けたルヴァがポツリと呟いた。
「まぁな、なにせ、とっても良い練習台がいてくれるもんでね」
 型どおりに悔しがるルヴァを、エルクが肩をすくめて受け流す。
 無論、そこに本気など一欠けらも混じっている筈が無い。エルクが色々な意味で腕を上げるのはルヴァにとって喜びであるし、回りまわって悦びにもなる。
 寄り添いあう二人を、心地よい空気が包む。
 それをエルクがあえて破る。
「なあ」
 どうしても、この魚の小骨が喉に引っ掛かったような違和感の原因を、取り除いておきたい。
「お前が落ち込む理由は分かるんだが、今日は落ち込みっぷりが妙すぎるぞ。どうかしたのか?」
「ぬしが己の命を削ってワシの頭を冷まさせてくれたかと思うと、の…」
「……気づかれてたか」
「愚か者が。ワシが気づいておらんとでも思うたか」
 ぴしゃりと言う。
「なにせ…」
 ゆるりと身体を起こしてエルクの胸板に、とん、と人差し指を突き立てる。
「この胸の奥で燃えとる命の火の半分がたは、ワシがくれてやったものじゃろうが」
 生物とはすべからく炉であり、命とはすなわち炉の中で燃える火である。と言うのが竜族の命の概念である。炉が壊れれば火を維持する事は叶わず、火が燃え尽きて二度と点かないのであればそれは炉と呼ぶには値しない。
 昼間の戦いの最中、傭兵一人をその尋常でない勁力でもって爆裂させた辺りから、エルクは自らの師匠の異変に気づいていた。
 血の臭いと戦いその物に昂り、彼女が我を忘れるのはこれが初めてではない。同時に、人間に化けている時なら渾身の勁力を篭めて引っぱたけば正気に戻せるのも分かっていた。
 だが本性を現し始めたルヴァに近づくのは容易ではない。
 何かしらのレトリックではなく、言葉そのままの意味である。本気を出し始めた――暴走でも同じだが――ルヴァには純粋に近づきがたい。
 それはルヴァ自身が熱を発し、また彼女の放つドラゴンブレスが強烈な輻射熱を発するからだ。
 火炎や高熱への耐性がなければ、人間など数メートルまで近付くだけで全身に大やけどを負ってしまうだろう。
 防ぐ方法は色々と有るが、スタンダードな防御方法は魔術によるものである。それも術の行使にかかる手間や効果など、色々と制限がある。
 最も効果的な防御法は、竜の加護を得る事だ。
 とりわけ赤竜の加護があれば火はほぼ無効化できる。それも加護となる力の源泉が熱を発する当の本人と同じであれば、最大級の効き目が期待できよう。それもそうだ。自分の炎で焼け死ぬドラゴンがいる訳がない。
 そして、エルクの体内深くには、ドラゴンから見れば少量ではあるもののルヴァの命の火が灯っている。
249Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:13:08 ID:m/1E6P8w
 もうだいぶ昔になるが、エルクは竜族が言うところの炉と火の両方を、ルヴァ自身に半ば以上まで踏み潰された事がある。
 彼がまだルヴァの見た目と同じ程度の歳だった頃、彼の故郷は戦火に焼かれた。亡びつつある国を捨てて、一家は険しい山脈を越えて逃げた。
 慣れていてさえ山は時として魔物と化す。慣れぬ者など言わずもがな。熊の餌が精々。
 と、思われた一家の前に、深い山中に似合わぬ姿格好の幼女が現れた。彼女は言った。守ってやろうか、と。そしてドラゴンが変身しているとも。今よりもずっと勝ち気で負けず嫌いで向こう見ずで自分を知らず、その癖、一丁前に格好だけはつけたがる若いルヴァである。
 だが慣れぬ道行きである。一家の歩みは遅々として進まなかった。ルヴァにしてもドラゴン形態になって背に誰かを乗せる気など無い。
 落ち武者狩りの手は一家にも伸び、遂に理性の弱いドラゴンが力を奮う時が来てしまった。
 次にルヴァが気がついた時。その眼に映ったのは、焼き払われて燃える森と敵、そして敵と一緒に血の海に沈んでいる守るべき者達だった。
 守るべき者を守れなかった。約束を破り、生かさなければいけない命を死なせてしまった。
 母親の胸に抱かれ守られていたお陰でただ一人生き残り、しかし死につつある子供を前にして狂ったように取り乱すルヴァを、彼女の母が助けた。
 ルヴァの母にとって人間の命などどうでも良かったが、娘が無意に邪業を積んで悪竜に堕ちるのを見たくはなかったのだろう。
 失われつつある命を、手にかけた者の命で贖わせた。
 強力無比な治癒魔術で炉を修復し、ついでドラゴンに伝わる秘術でルヴァの火の一部を死にかけの人間の子供に注いだ。すなわち、まだ幼かったエルクへと。
 それにより、エルクは死の女王が治める国へと旅立たずにすんだ。
 と同時に、彼は人族の時の流れから弾き出されもした。一見すれば青年のエルクだが、とうに四十を超えている。もっとも、エルフのようにやたら長命な種族もいるので寿命の長短はあまり気にはされないが。

 かつて継ぎ足された命の火は、継ぎ足した事により外部からアクセスするルートが構築されてしまい、本人の鍛錬もあって自らの意思である程度引き出せるようになってしまっている。
 だが、それは諸刃の剣だ。
 一時的とはいえ強力な赤竜の加護を得られるが、寿命を削る事と同義である。しかも彼は"火"自体を知覚できない。箱の中から目隠しして掴み出している状態に近い。下手をすれば、その場で寿命を使い切って事切れる可能性すらある。
 それを使わせてしまったのだから、ルヴァの落胆が推し量れようというものだろう。
「忘れるもんかい、お陰でお前と一緒にいられるんだからな」
「ふむ、上出来じゃ。ならば、その火を使わせてしまったワシがぬしにしてやれる事、一つしかないのも忘れてはおらぬな?」
 同時に、本来ならば触れえざる場所から力を引き出せるルートがあるという事は、逆に使った分を補充できるという事でもある。
 半ば以上もルヴァのと等質化した火が燃えている炉に少しばかり――器に余る激しすぎる火は炉自体を溶かしてしまうので――火を継ぎ足すのは、ドラゴンとして若輩なルヴァでも行える。
 ルヴァ自身の寿命が幾らか削れてしまうが、彼女にとっては「たかがそんな事」だ。
 まさしく身を挺してくれた者に等しく応えないなど、何よりも彼女のプライドが許さない。
「よいしょっと」
「ひゃっ?!」
 エルクは少女の両脇に手を入れてヒョイと抱え上げた。自らは床に胡坐をかいて座りなおし、抱えたままの小柄な身体を両太腿の上に降ろす。
 あっという間に、ルヴァは横向きに抱き抱えられていた。
「忘れちゃいないさ。だから、しっかり濡らしておかないとな?」
250Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:13:53 ID:m/1E6P8w
 ごく。
 我知らず喉が鳴る。これから襲ってくるであろう感覚への期待に、ルヴァの背筋がぞくぞくと震える。
「そ、そうじゃ。忘れておらねばそれでよい。
 ぬしのチンポは太いからな。ワシのマンコでは窮屈すぎてぬしが痛いかもしれん。
 ワシは痛がるぬしを見とうない。じゃから……その、よぉく濡らすのじゃぞ?」
 口調も台詞もそれらしく勿体ぶってはいるが、中身は女から男へのおねだりに他ならない。それも、とてつもなくはしたない種類の。
 自分の無毛の股間へと伸びていく手を、どろりと情欲に溺れ始めた瞳が追いかける。
 しなやかだが、女らしく熟れた円やかさが不足しているルヴァの身体。だが、そこだけは極上の柔らかさでエルクの指を迎えた。
 ふっくらとした幼い秘裂はまさしく縦筋と言うのがぴったりのシンプルな造形。どれだけ交わっても形は少しも崩れず、色合いも初めての時からずっと変わらず淡い桃色のままだ。
 細い腿の合間に差し込まれた手が、性器全体を掌で包み込むようにして揉むように撫でる。
 ぴっちりと閉じた亀裂から溢れるほどではないが、そこは既に潤いを帯びていた。
「んっ、ふぁ……」
 指先を、そっと曲げる。
 人差し指に生温かく濡れた感触。かまわずに指先を亀裂の間に押し込む。
 ちぷ、と言う粘ついた水音と、微かな声がルヴァの口から漏れた。
 ぬるぬるした感触をしばし楽しんでから、エルクは指を抜いた。関節を真っすぐにしただけで、引き抜くという動作にも当たらない。
 指先の愛液を擦りつけながら、我が子の頭を撫でるようにしてゆっくりと円を描いて、閉じ合わさった入口を撫でる。
 エルクを掴むルヴァの手に、くっと力が入り、腰から角の先端まで何かが走り抜けたみたいにピクンと震える。
 指先が幼肉を掻き分けて、また先端を中に埋める。
 同じように漏れる水音と喘ぎ。
 また引き抜く。つぅ、と指の腹と秘裂の間に透明な粘液の糸がかかる。
 ルヴァの秘裂は赤子が無心に乳を吸うように、第一関節までも入っていない指先を愛おしそうに咥え、出ていかないでと引き止めようとする如く柔らかい肉で指先を食む。
 埋めては、引き抜く。何度も、何度も。
 その度にルヴァは喘ぎを漏らす。吐息とほとんど同じように微かな、しかし確実に快感の熱を孕んだ喘ぎ声。
「んっ……あッ……あッ……あッ…ひん…っ!!」
 控えめだった粘液の水音は大きくなり、くちゅくちゅといやらしく響いては二人の耳を打つ。
 指先を埋めては抜くリズムに合わせて、鼻にかかった喘ぎ声がとめどなく漏れる。しかし、まだまだ嬌声は密やかだ。
 もっと派手に啼かせてやりたいとエルクの雄が囁き、それに指が従う。
 ねとりと指先に纏わりついた愛液を花弁の縁に丁寧に塗りつけていく。ぽってりと丸みを帯びた肉の上を指が通り過ぎると、まるで蛞蝓が這い回った跡みたいにテラテラと濡れ光る。
251Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:14:29 ID:m/1E6P8w
 丁寧に愛液を塗り広げる指の悪戯は止まらない。楚々とした花弁の片方の縁をそっと外側へ押してやる。
 途端、くちぃっと粘っこい音を立てて、蕾がわずかにほころんだ。
 エルクからは見えなかったが、隙間からは粘液に塗れたピンクの肉壁が、恐ろしく淫猥な姿を覗かせていた。
「あっ…んんっ…あんッ、やふっ…やめ、い…広げるなぁ…」
「いやだっつー割りにゃあ、弄られて随分とおもらししてるじゃねえか。俺の指がふやけちまいそうだぜ?」
「そ、それは…ぬしが痛く、ならぬよう、頑張っ…あふぅぅ…って、おるから、じゃ」
「確かにルヴァは頑張ってるよなぁ。こんなになってるし」
 言うなりエルクの手は、痛みがないように気をつけながら、人差し指と薬指でぷにぷにした大陰唇を指一本分の幅だけ割り広げた。
 残る中指が遊んでいる訳がない。
 幼い肉壺に溜まった蜜をわざとらしく音をさせて掻きだしていく。
「ひぃぃ……んっ!」
 ちょんとピンクの真ん中に浅く爪先を埋めては、下から上に撫でるように掻いて、何度も指が往復する。
 岩清水の如く細い亀裂から流れる愛液は、あとからあとから溢れて途切れる気配はまるでない。
 尻の谷間へと伝い流れては、ルヴァが座っているエルクの腿を濡らしていく。
 唐突に、荒く息を吐くルヴァの小柄な身体が跳ね上がった。
「ひゃあぁぁっ!!あっ!あっ!ひぃ…んんっっ!!」
 たっぷりと愛液を絡みつかせた指先が、ルヴァの秘裂の一番上、クリトリスをくりくりと撫で回している。
 薄桃を通り越して赤く充血していてもサイズはごく小さい。しかし感度は十分。
 無骨なエルクの指がルヴァに鋭い快感を送り込む。修行や鍛冶でタコだらけの癖に、驚くほど繊細に蠢いては小さな淫核を優しくこね回す。その度にキュンキュンとルヴァの胎から頭の天辺まで電撃に似た快感が飛んでくる。
「やめ、バカも、の、おぉぉっ!!や、あぁぁんっ!あっ!んっ…そこ、よわ…」
 意味の有りそうな言葉を吐けたのはそこまで。
 ルヴァが快感に全身を戦慄かせているうちに、熟練のエルクの指は肉真珠を守る包皮までつるんと剥いてしまう。
「ーーーーっっ!!!」
 剥き出しになったクリトリスをグリッと乱暴に潰されると、もう堪らない。
 全身がきゅんと引き攣る。視界に白い閃光が飛び跳ねる。細い喉からは声にならない嬌声が迸る。唇の端からは涎が零れるが、もうそんな事なんて気にならない。
 エルクの手指が動くたびに、ルヴァの尾はピンと天を向いてブルブル震えたり、限界を訴えるようにパンパンと床を叩く。
 しなやかな尾の先から、真っ黒い角の先端まで余すところ無く悦びに満たされて快感に打ち震える。
 エルクの指がルヴァを開放したのは、何かに耐えるようにぎゅーっと丸められていた足先から、力が抜けた後だった。
252Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:15:13 ID:m/1E6P8w
「よく濡れたかい?」
「う…うむ、ほどほどに、の」
「イった?」
「ま、軽く、の」
「…軽く?」
「……これ以上なにを言わせる気じゃ、バカ」
 丸まった拳がポコと胸板を打つ。甘く愛撫するような拳と言葉には、羽虫一匹殺せるほどの威力も無い。
「さ、これからはぬしも楽しむ番じゃ」
 その両腕が、エルクに向かって揃えて差し出される。
「それでの、ワシはいつもの格好がよいぞ」
「へいへい」
 口では不承不承という感じだが、手慣れた様子で体勢を変えるエルク。
 横抱きで足の上に置いていたルヴァをお姫様抱っこにして抱えて、立ち上がる。鍛えた体にとって子供一人くらいなど羽毛も同然。
 そのままクルリと腕の中で回して向かい合わせにすれば、ルヴァも慣れたもの。
 差し出した両腕を男の首にしどけなく回し、はしたなく両脚を大きく開いてたくましい腰に絡みつける。すっと膝から先を伸ばして優雅に男を股ぐらに挟みこむ仕草は娼婦のようで、少女の形と相まって異様な背徳感を醸しだす。
 肉付きの薄い左右の尻肉をエルクの手が鷲掴んで支える、いわゆる前面立位になる。
「前から思ってたけど、お前、この体位が好きだよな」
「む?ああ、なに、この格好ならば、ぬしにぎゅーっとして貰いながら繋がれるじゃろ?」
 しまった、と思った時にはもう遅い。
 真正面から真顔でそんな事を言われて照れない男がいるだろうか。
「う、あ、くそ……っ、反則だろ、それ」
 耳の先がどんどん熱くなる。鏡を見なくたって、自分が初心な少年のように真っ赤になっていくのが手に取るように分かる。
 年甲斐もなく赤くなったのを見られたくないので、顔を背けようとして。
 ルヴァの手により阻止された。
 頤に掛かった、ほっそりとした指一本。たったのそれだけで、くい、とルヴァと真正面から向き合わさせられる。
「嘘は言うとらんよ。なにせ、ぬしの間抜け面もまとめてたっぷりと堪能できる。それに尾があるからワシが下になるのは、ちとやり辛くての」
 右に、左に、と所在なげにエルクの視線が泳ぐ。
 視界の端で、悪戯が成功した子供のようにルヴァがころころと笑っているのが見える。
「それにな、いつも小生意気な口を利くワシの体を自由に出来るこの格好は、ぬしも好きじゃろうが?」
 媚びるような、請うような口調。
253Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:22:50 ID:m/1E6P8w
 あどけない顔の下には、老獪な淫蕩さがちらちらと見え隠れしている。エルクを見つめる瞳はいまだ収まらない肉欲にとろりと潤んでいる。
 確かに、抱き抱えられる姿勢のこの体位ではルヴァは動きにくく、エルクにほぼ全ての主導権がある。
 突く速さも、抉る深さも彼の胸三寸。
「さ、体を捻るのもままならんこの哀れな体を、ぬしは一体全体どうしようと言うのじゃ?
 その猛ったチンポで乱暴に突くのか?それとも小さなマンコに気遣って優しく擦ってくれるのか?」
 普段の気高さなど欠片も無く、躊躇せずに性器の卑称を口にして男を誘うルヴァ。いつ頃からかは既に忘却の彼方だが、ドラゴンとしてのプライドも強さも何も関係なく彼に玩具のように扱われるのは、すばらしい快感を呼ぶようになっていた。
「如何ようにでもすればよいぞ。ワシはぬしの全てを受け入れるしか……きゃふっ!」
 トロトロと蜜を滴らせる熱い入り口に亀頭があてがわれ、
「くっ!は…ぁっ、はいってくるうぅ…!エルクのチンポがぁ…」
 ズンと容赦なく突きこまれた。
「あがっ!」
 太い穂先がみっちりと閉じ合わさった媚肉の筒を押し広げて、中から溢れる滑りの助けも借りてグリッと貫く。
 これが本当に人間の少女であったならば裂けていても不思議はないだろう。だがルヴァは見た目通りではない。彼女の秘裂は驚くほどの柔軟性を見せ、真っ赤に熟れた亀頭を受け入れていた。
 柔軟性に富んでいる癖に弾力も素晴らしい。ルヴァの秘肉はその小ささでもって締め付け、責めているはずのエルクのペニスを逆に責める。
 亀頭表面に満遍なく触れる膣肉が、鈴口から張り出した雁首までを全方位から舐めあげる。
 これがフェラチオであれば唇の輪が通り過ぎれば少しは緩むのだろうが、それがない。どこもかしこも密着して、粘液で蕩けた柔襞で撫でられてしまう。思わず太腿が戦慄くほどの灼熱した快感がエルクの全身に広がっていく。
 腕の力を抜いていくと、ペニスが秘裂にずぶずぶと飲み込まれていく。
 快感の輪がエルクの竿を搾りあげていく。しっかりしていないと今にも放ってしまいそうな快感。噛み締めた歯の隙間から、苦しそうな呼気が漏れる。
 ペニスの半ばまでがルヴァの秘裂に消えたところで方向が反転。
 雁首で膣肉を抉るように引っ掻かれ、あるいは柔襞で裏筋から雁の括れからあらゆる敏感な部分をヌルリと撫でられ、異口同音に喘ぐ。
 限界まで開ききった幼い淫唇から猛った雄が徐々に姿を見せるという、とても背徳感に満ちた淫靡な光景。
「なんじゃ…?急に黙りおって…まさか、ワシの尻を持つ手を離そう、というのではなかろうな?
 そんな事、されたら、ぬしのチンポでワシが串刺しにされてしまうじゃろうが…。
 せぬよな?そのような乱暴……されたら、ワシは、耐えられぬ…」
 無論、そんな彼女のお願いを聞いてやらない理由はない。
 ずん。
「くああぁぁっ!あぁーー!!……は、んー…ん!くうぅぅっ!」
 さっき以上の深さまで一気にペニスが柔肉を犯し貫く。ルヴァ自身の体重が、彼女を胎の底まで犯していく。
 びくんっ、とルヴァが上半身を海老のように仰け反らせる。様々な衝撃に角がふるふると震え、焦点の合わない瞳は天井を向いたままで何も見ていない。口からは涎と半ば意味をなさない言葉がとろとろ零れる。
「入っておるぅ…おくまで、おくのおくまでぇ…んふう…えるく、で、いっぱい……」
254Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:24:03 ID:m/1E6P8w
 根元が無毛の丘に触れるぐらいまで深く、秘裂を抉っている肉槍。見れば、ルヴァの下腹がぽこりと内側から何かに押されて膨らんでいる。
 溢れかえった粘液が幾筋も濡れた線を肌に描いては、粘った水滴となって落ちていく。
 小刻みに震える尻にエルクの手がかかり、ゆっくり持ち上げていく。下腹部の膨らみが入り口に向かって移動するにつれ、淫液を纏わりつかせ凶悪な姿をした肉棒が、ずるずると姿を現していく。
 一番太い雁首までも引き出され、ほとんど亀頭を宛がっているだけのような所まで来る。
 また落とす。
「あはあぁぁっ!!ふっ…ふと、ぃぃ…イイ!…これが、ぁっ!イイのじゃあ…」
 掬うようにして尻が持ちあげられ、
「あっ!あっ!あっー!はぁっ…ごりごり、し、て、エルクの…チンポがナカ、こすっとるぅ…うあああぁっっ!」
 落ちる。
 押される内臓や骨が悲鳴に近い嬌声をあげる。身体も心もエルクに翻弄されるのがこの上ない快楽となる。
 身体が落下して一気に肉串に貫かれると顔は上を向き、口からはあられもない卑猥な叫びが迸り、持ち上げられ胎一杯に咥えこんだ肉串を無理やり引きずりだされると身体がきゅっと丸まり顔が下を向く。
 次第にルヴァの叫ぶ間隔が短くなっていく。
 それは、エルクの我慢の限界も示していた。
 掬い上げて落とすだけの速度で得られる快感ではもう足りない。もっと刺激が欲しい。もっと高みにイきたい。
 尻たぶをすっぽりと包むように掌で支え、汗と愛液で濡れた肉に指を食い込ませて、腕力に任せて上下に振りたくる。
 ルヴァとエルクの腿同士がぶつかり合い、パンパンと肉の打ち合う音、ジュプッジュプッと粘液の絡み合う音が嬌声を彩る。
 抜ける直前まで持ち上げて、子宮まで届けとばかりにルヴァをぎゅっと抱きしめるようにして楔を打ち込む。
「あっ!あっ!イイっ!ひ、ぃ…えるくの、イイ……んっ!あっ!はぁぁんっ!」
 がしがしと豪快に責めたてているようでいて、エルクには余裕などまるで無い。
 極上の媚肉は甘く強烈に締めつけて腰が痺れるほどの快感を与え、加えてルヴァが大きく喘ぐたびに壁が不規則にうねってペニスを揉みしだく。
 ぱんぱんに張り詰めた先端から、充血して血管の浮き出た茎の根元まで。小さなドラゴンの淫らな肉壺で満遍なく扱かれる。
 一扱きごとに背筋から後頭部まで舐めるように快美電流が走り抜ける。
 脳を揺さぶった快楽が戻ってきて、ペニスの根元で強烈な疼きの渦となる。
「ルヴァ…」
 短く名を呼ぶ。余計な言葉は不要。それだけで意思は通じる。
「ん、あっ!よい、ぞっ!あっ…!ワシの、なか、白くて、あついの!だすが、あぁっ、よい…っんく!」
 物も言わずに、腕の中で可愛らしくのたうち回るドラゴンを抱きしめる。
「あっ!ぎっ!お、ふぅっ!おく、きつ、い…いイ、イイ、くうぅぅ……あーーっ!!」
 きつく、かたく、抱いて、彼女の奥に射精した。
255Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:26:17 ID:m/1E6P8w
――9――

 どくり、どくりと恍惚を呼ぶ熱が胎内に注がれていく。
 ああ、やはり自分は強欲なのかもしれない。
 腰から下が蕩けて消えてしまいそうな恍惚に浸りながらも、ルヴァは頭の片隅で思う。
 もっと欲しい。自分以外の熱が胎内深くで爆ぜる、この感覚を。
 もっと欲しい。甘美な感覚をもたらしてくれる、この液体を。
 それこそ、内臓の全てが白く染まり、口から零れるくらいに。
 もっと、もっとと体も心も訴えている。これが強欲でなくてなんだと言うのだ。
 とりとめもない思考が浮かんでは消え、本来の目的まで流れて消えそうになりかけて、ようやく理性が働く。
 ともすれば、次の迸りを求めて動いてしまいそうになる腰を押さえつける。
「あ、ふぅ、ほれ……エルクよ。呼吸をあわせい…ゆくぞ」
 純粋に肉の交わりを愉しむのは、もう少し後だ。
 気力を振り絞り、思考を支配しかける本能を無理やりに押し出して、理性を取り戻す。
「昂った気を散じるでないぞ。
 ぬしの放った精液にワシの"火"を乗せて送り返すぞ」
 血液や精液は、魔と関わりの深い者にとって普通とはまた違った意味を持つ。
 彼らにとって、それは通貨のようなものだ。
 生命力と呼ばれる、この世に生を受け活動するあらゆる生命体が内包するエネルギー。それをやり取りする為の媒介物。
 故にヴァンパイアやサキュバスは血や精を啜り、魔女達は命の萌芽であり可能性の塊であるそれらを媒介にして魔力を高めようとする。
 頷き返すエルクをルヴァは見ていない。
 既に瞑目して、精神は己の内を向いて深く集中を始めている。
 突然、ルヴァのお腹一面に複雑な紋様が浮かんだ。青白く光る極細の線で描かれた精緻な魔法陣で、一見して高度な魔術によるものだと分かる。
 現れたのが一瞬なら消えるのも一瞬。ひゅん、と渦を巻いてルヴァの臍から中に吸い込まれるようにして消える。
「ぐっ!!」
 次の瞬間、歯を喰いしばって耐えねばらないほどの、脳を焼くような強烈な快感がエルクを襲った。
 ルヴァの胎の中で、どろどろの液体が渦を巻いているイメージ。
 それはイメージだけはない。実際に、射精したばかりで敏感になっている亀頭が粘度の高い液体に包まれていて、それがぐるぐると粘膜を擦りながら旋回している。
 射精したばかりで達する事が出来ず、強烈すぎる快感は痛みと等しい。エルクの顔面に、今までとは違う種類の汗がにじむ。
 ぐるぐると回る粘液が、不意に熱を帯びていく。出したばかりなのだから体温程度に熱いのは当然だが、火にかけられたように温度が上がっていく。だが、嫌な熱ではない。肉を焼くような激しい熱さではなく、母親の腕に抱かれているような温かさ。命を内包したルヴァの熱だ。
 熱い粘液のリングが回りながらゆっくりと雁の括れから亀頭を這いあがり、そして鈴口を割って、蠢く熱い粘液塊が管へと逆流してくる。
「ぐぅ、おおぉぉぉっ…!!」
256Little Big Dragon:2010/06/09(水) 21:29:27 ID:m/1E6P8w
 反射的にルヴァの体を放り出さなかったのは、半分くらいは彼女が首と腰に手足を絡めていてくれたお陰だろう。
 本来ならば一方通行の筒を逆流される恐ろしい違和感に、がくがくと壊れたように腰が震える。
 ふっ、とペニスの内側を掻き毟るような、痛痒感にも似た激烈な快感が消えた。
 どれほどかかったのだろうか。一瞬のような気もするし、随分と長く叫んでいたような気もする。激痛に近い快感は時間感覚を吹き飛ばしていた。
 同時にエルクの腕の中で、ルヴァが失敗の許されない集中から解放されて、長い長い息を吐いた。
「終わった……のか?」
 エルクは拷問から解放された囚人の気分が今なら分かる気がした。
「ああ、終わったぞ」
「そうか…」
 その安堵の心を勝手に体が代弁していたのだろう。思わずこぼれていた溜め息一つを、ルヴァが聞き咎める。
「何を呆けておる。今までのはワシがしでかした事の後始末に過ぎぬ。
 これからは違うぞ……お楽しみの時間じゃ」
 言いざま、顔を寄せ、舌を伸ばしてエルクの頬にネロリと這わす。
 喉の奥では、くふふ、と挑戦的な笑み。
「後悔させてやると言ったはずじゃ……ぬしがババァと呼んだ体で、な。
 ワシが存分に楽しむまでは煙しか出んようになっても終わらんからな、覚悟せい」
「……へっ、上等だ。そっちこそ泣いて謝ったって突くの止めてやんね…んぷ」
 それ以上の言葉をキスが止めた。
 いつもいつも余計な一言を吐き出す舌を、ルヴァの舌が絡め取る。チュプチュプと吸い取るようにして、エルクが目を白黒させている様子と甘いキスをまとめて味わう。
 たっぷりと嬲ってからようやく解放。
 とろり、と二人の口腔から溢れた唾液が肌に零れ落ち、すぐに汗と混じって見分けがつかなくなる。
「言葉など無粋じゃ。そうじゃろう?ぬしのその言葉に偽りが無いか、行動で示して見せい。
 ワシは嘘が嫌いで、ついでに嘘吐きを弟子にした覚えもない……そうじゃな?エルクよ」
 しなやかな尾が、エルクの尻たぶの谷間から陰嚢までをゆるりと撫でる。全身に甘い痺れが走り、体中を走り回った挙句、下腹の一箇所に集まってくる。
 参れ、と貴人が手招きするように優雅に尾がうねり、触れるか触れないかのフェザータッチで何度も撫でる。
 その招きに応じない理由など無い。
 再び、ゆっくり近づく唇と唇。そして距離が零になる。
 すべすべした小ぶりな尻肉を掴む腕に、ぐっと力が入る。
 ごつごつした筋肉質の体に絡めた肢体と尾に、そっと力が入る。
 招かれた肉の竿が蜜を滴らせる狭間を押し広げる。
 招く肉襞がきゅうきゅうと抱きしめる。
 頭を白く染め始めた快楽を二人して求め、もっと二人の距離を縮めようと動く。
 そうして再び漏れはじめた二つの嬌声は、再びゼロ距離となったお互いの唇の中に溶けて、消えた。
25718スレの314:2010/06/09(水) 21:32:34 ID:m/1E6P8w
『Little Big Dragon』了

以上、長文乱文失礼致しました。
人外要素少なめの為にロリババアスレと悩みましたが、こちらに投下させて頂きました。
>>232で言われているのはロリババアスレの585氏だと思いますが、別の方です。同テーマで違うアプローチが見れそうで楽しみですw

もとはWakfuと言う仏アニメに登場したドラゴンが格好良かったのが、書くきっかけになりました。
そこにロリと駅弁という電波が飛んできて、このように。さらに古橋秀之のケルベロスに影響をかなり受けました。
厨二設定山盛りで書いてて楽しかったですが、人外要素をエロに上手く絡められなかったのが心残りです。
駅弁状態から尻尾の先でアナルツプツプして強制勃起させて挿入されたままのが中で大きく、とか考えたのですが結局ボツにしました。
258名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 21:39:34 ID:aA6dfmzr
GJ
259名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 21:44:43 ID:eBM+zl75
>>257
GJ!やっぱレベル高いわぁ・・・

>>236
ごめん、やっぱ無理
恥晒すのも嫌なんで消すことにする。スマソ
260名無しさん@ピンキー:2010/06/09(水) 22:19:47 ID:1GdnSZN3
.
261式神馴らし:2010/06/10(木) 19:21:52 ID:e5NH6RSt
投下します
262式神馴らし:2010/06/10(木) 19:22:18 ID:e5NH6RSt
  式神馴らし 6話 一ノ葉の再調教
  後編 自分で自分を?


 初馬の膝の上に乗ったまま、紙人形を見つめる一ノ葉。
「今度は……何を、する気だ……!」
「式神分身・改」
 紙人形を持ったまま、初馬は両手で印を結んだ。
 ポンと軽い音を立てて、紙人形が霊力を纏い実体を作り上げる。身長三十センチほどの
一ノ葉の姿を模した人形を。狐色の紙、狐耳と尻尾を生やしている。服装は白いシャツとス
カートだった。

「何だ……?」

 変化した自分そっくりの人形を見つめ、一ノ葉が訝る。すぐにはその意味が理解できな
かったらしい。分かったのに思考がそれを受け入れないのかもしれない。
 初馬はその答えを示すように、人形の頬を撫でた。

「ッ」

 一ノ葉が自分の頬を押さえる。

「貴様、何を考えてるんだ……!」

 ほぼ同時に、その人形が意味するものを理解したようだった。さきほどの分身と同様、こ
の人形は一ノ葉の分身であり、触れられた感覚を本体へと還元する。
 初馬はそっと人形の胸を撫でた。

「あっ!」

 一ノ葉が声を漏らす。

 一ノ葉を膝に乗せたまま、初馬は左手で人形を緩く握り、その身体に指先をなぞらせて
いた。大きめのフィギュアサイズだが、肌は柔らかくうっすらと暖かさもある。

「うっ、くっっ……」

 両手で自分の胸を覆う一ノ葉。

 構わず、初馬は人形の胸を人差し指でつついていた。身体のサイズに合わせて胸の膨
らみも小さなものだが、触った感触は一ノ葉と同じように柔らかく弾力のあるもの。指先の
動きに合わせて、ふにふにと形を変えるのが分かる。

「んんっ、ぅぅ……」
263式神馴らし:2010/06/10(木) 19:22:39 ID:e5NH6RSt
 胸を抱えたまま、小刻みに過多を震わせていた。人形を触ると、一ノ葉が感じる。それは
奇妙な淫猥さを醸し出していた。

「ううっ……。変態的なこと、ぅっ、考える才能だけは――んんっ、達者だな……!」

 荒い呼吸をしながら、一ノ葉が気丈に言い返してくる。

 初馬は人形を触っていた右手を離し、一ノ葉の頭に乗せた。艶やかな黒髪の感触が手
に伝わってくる。元が狐なので人間の髪とは少し質が違った。

「褒めるなよ」
「褒めてないッ!」

 即座に言い返してくる一ノ葉。
 その頭を右手で撫でながら、初馬は囁くように告げる。

「式操りの術はまだ解いていないことは、理解してるよな?」
「!」

 一ノ葉が息を呑み、身体を硬直させる。忘れていた、というよりも意識する余裕が無かっ
たと表現するのが正しいか。だが、今の言葉で自分の状態を理解したようである。

 だが、理解したからといって何かが変わるわけでもない。
 操る相手が一ノ葉だけなので、初馬はその感覚全てを掌握できる。

「待て……!」

 一ノ葉の両手が動き、初馬の左手に握っていた人形を掴み上げた。無論、自分の意志
ではなく、初馬が一ノ葉の身体を動かしそうさせているのである。

 左手で人形を持ったまま、一ノ葉の右手が人形の身体をイヤらしく撫で始めた。

「あっ……。んんっ……。この下衆がァ!」

 涙声になりつつ、罵ってくる。

 初馬は左手で一ノ葉のお腹を抱え、右手を頭に乗せたまま、乾いた唇を嘗めた。式操り
の術を用い、一ノ葉の動きは完全に掌握している。

 一ノ葉は自分の手で、自分の分身人形を弄っていた。

「うぅぅ……、やめろ……」

 身体を震わせながら、抵抗の言葉を吐く。
264式神馴らし:2010/06/10(木) 19:22:59 ID:e5NH6RSt
 しかし、人形から伝わってくる快感に、身体は正直に反応していた。自分で自分自身の
分身人形を弄り、快感を得る。分身の術をある程度使えるものなら可能な遊びだが、まと
もな神経を持っているなら実行はしないだろう。

 一ノ葉はそのまともでない快感を味わっていた。

「んっ、はぁッ……」 

 あまりに非常識な状況に、一ノ葉はただその快感を甘受するしかない。顎を持ち上げ、
熱い息を吐き出している。頬は真っ赤に染まり、瞳からは理性の光が欠け落ちていた。思
考の半分はどこかへ消えているだろう。

 初馬は一ノ葉の頭を撫でつつ、声を掛ける。耳元に囁くように。

「先に言っておくけど、今回は『お願いします、ご主人様』って言っても止める気はないから。
俺が気の済むまで続ける」
「誰が言う、か……!」

 怒りで意識を引き戻し、言い返してくる。
 その左が動き、人形をひっくり返した。手の平の上で、仰向けの体勢からうつ伏せの体
勢へと。一ノ葉の意志ではなく、初馬がそうさせたのだが。

「?」

 疑問符を浮かべる一ノ葉。
 その疑問は次の瞬間に解決していた。
 一ノ葉の左手が口元に移動する。

「待て待て、貴様……! うぅッ!」

 一ノ葉の口が、分身人形の尻尾を咥えた。ぞくりと全身が泡立つ。尻尾を丸ごと他人に
咥えられることなど、普通は無いだろう。分身を介したものとはいえ、それは常識の外の出
来事。一ノ葉はその非常識を、身を以て体感していた。

 式操りの術によって一ノ葉の口が動き、人形の尻尾を下や歯で優しく転がし始める。

「っ……! ぐぅ……ッ」

 意志とは関係なく手足の筋肉が強張り、喉からくぐもった声が漏れていた。

 人形の尻尾を口で攻めれば、それは一ノ葉に直接還元される。他人に操られているとは
いえ、自分の尻尾を自分自身の口で愛撫するという状況。その無茶苦茶さに、一ノ葉はあ
り得ないほどの混乱と興奮を覚えているようだった。

 一ノ葉の手が動き、人形の身体を跳ね始める。
265式神馴らし:2010/06/10(木) 19:23:20 ID:e5NH6RSt
「ンン――!」

 喉が大きく動いた。

 白く細い指が、人形の胸や狐耳を撫で、スカートの中に差し入れられた指がショーツの上
から秘部を撫でる。口による尻尾攻めは続いていた。そして、人形が得る感覚は、術式を
介して一ノ葉へと全て還元される。

「うッ、んん……? ぐぅッ……!」

 一ノ葉は何度も身体を痙攣させていた。さきほどの白分身と黒分身による攻めによって
絶頂寸前まで行った身体。そこへ、理解の外の快感を味合わされ、何度も小さく達してい
るようだった。

「感じてるのか?」

 頭を撫でつつ、初馬はそう尋ねる。
 しかし、一ノ葉は小さく首を左右に振るだけだった。

「なら、もう少しやってみよう」
「な!」

 初馬の言葉とともに、一ノ葉が口から自分の人形を離す。その尻尾は唾液に濡れて、イ
ヤらしく湿っていた。身体をまさぐっていた指の動きも一時止まる。
 一ノ葉が人形を仰向けにひっくり返し、その両足を開いた。

「まさか……!」

 スカートの奥には、白いショーツが見える。一ノ葉の身体構造をそのまま複写する分身の
術なので、細部まで本人と変わらない。ショーツがしっとりと湿っていた。一ノ葉本人の秘部
も濡れているのだろう。

「待て――それは、やめ……。もう止めてください、ご主人様ッ!」
「イヤだ」

 懇願を一蹴し、初馬は式操りの術で一ノ葉を動かした。術の構造上、一ノ葉の意志では
初馬の操作に逆らうことはできない。無理矢理逆らうことは出来るはずだが、一ノ葉が本
気で式操りの術に拒否を示したことはない。単に術の制御ができないのか、はたまた他の
理由なのかは分からない。

 両足を開いた人形の秘部、一ノ葉が自分の口へと含む。

「ッ、ッッ……!」

 それだけで、細い身体が大きく痙攣した。
266式神馴らし:2010/06/10(木) 19:23:44 ID:e5NH6RSt
 一ノ葉の舌を動かし、人形の秘部を愛撫する。文字通り嘗めるような攻め。唾液を絡ま
せた舌をショーツの上に這わせ、その隙間から舌先を直接秘部へと触れさせる。
 その感覚は全て一ノ葉に還元されていた。

「うッ――、ぐぐッ……ん、おおぁっ――」

 くぐもった呻きを漏らしながら、一ノ葉が太股を擦り合わせる。激しく絶頂を迎える身体と
は対照的に、人形を攻める口の動きは止まらない。意志とは関係なく、初馬が動かしてい
るからだった。

 さらに、人形の尻尾や狐耳、胸やお腹などに一ノ葉の手を走らせる。

「んんっ……。はっ、ひっ――!」

 横隔膜を痙攣させながら、一ノ葉は引きつった声を発していた。顔を真っ赤に染め、きつ
く閉じた両目から涙を流している。手足の筋肉を何度も伸縮させながら、押し寄せる快感を
受け止めている。

 自分の手と口で人形を愛撫し、その感覚を味わうという、普通なら考えもしないようなな
自慰行為。それに対する戸惑いと背徳感が逆に興奮を高め、普段では考えられないような
強い性感を作り出していく。

「む」

 初馬は口を引き締める。一ノ葉の中で何かが切れるのが分かった。
 式操りの術と分身との感覚共有を素早く解除した、その瞬間。

「ンッ……、はっ、ふあぁ、あああああ――ッ!」

 人形から口を離し、一ノ葉が大きく仰け反った。跳ねるほどに身体を動かしながら、顔を
真上に向けて舌を突き出している。頬を真っ赤に染め、口元からだらしなく涎を垂らし、両
目から涙を溢れさせながら。一番強い絶頂感を味わっていた。

 ぽとりと人形が床に落ち、人型の紙に戻る

 一ノ葉は後ろに倒れるように初馬の身体に寄りかかった。思考や感覚が限界を超えてし
まい、身体の制御ができていない。初馬がいなかったら、仰向けに倒れていただろう。

 その身体を抱きしめ、初馬は優しく頭を撫でる。

「あっ……はは、ふあぁ……ァ――」

 糸が切れたように脱力したまま、一ノ葉はしばらく力無く痙攣を続けていた。
267式神馴らし:2010/06/10(木) 19:24:05 ID:e5NH6RSt
  エピローグ


「さすがに痛いんだけど……」

 右手にくっきりと付いた歯形に治癒の術をかけつつ、初馬は一ノ葉を見下ろした。出血は
止まったが、傷が消えるのには数日かかるだろう。

 暖房の効いた部屋は暖かい。外はすっかり暗くなり、天井の蛍光灯が部屋を白く照らし
ていた。テレビは点いていない。

 狐の姿に戻った一ノ葉は、寝床であるバスケット潜り込み、初馬を睨んでいる。

「噛まれただけで済んだのはありがたいと思え……。貴様がワシの主でなかったら、八つ
裂きの微塵切りにしてたところだ」
「俺も少しやり過ぎたと反省してるよ」

 初馬は傷口に薬用湿布を貼り、包帯を巻き付けた。湿布は抗生物質を含んだもので、傷
の化膿防止になる。野良犬や野良猫などとは違い、一ノ葉は雑菌を持っていないが、それ
でも噛まれた傷を放置するのは危ない。

「反省するなら最初からやるな」

 大きくため息をついている一ノ葉。その声には強い諦めが見えた。とりあえず実行、とい
う初馬の性格は理解しているらしい。
 初馬はベッドに置いてあった本を手に取り、

「でも、もういくつか試してみたい術あるけどね」
「や、め、ろ……!」

 恐怖に顔を引きつらせながら、一ノ葉が声を上げた。

 式神術を試す場合、その実験台となるのはまず使役する式神である。初馬が術を試す
場合は、ほぼ確実に一ノ葉が実験台として選ばれるのだ。その実験台としてどう使われる
のかは、身を以て知っているだろう。

「まあ、残った術はそれほど必要性あるものじゃないから。気が向かない限り試すことはな
いと思うけど……。それでも、試してみたいのが、俺の本音だ」

 初馬は本を開きながら、そう告げた。

 白砂家には式神術が多数存在している。普通のものから他の式神使いが使わないよう
なものまで。しかし、実戦で使えるものは多くなく、あくまでも技術的なものだ。

 一ノ葉はジト眼で見上げてくる。

「ワシは貴様の好奇心を危険と見ている……」
「単刀直入に言おう」

 初馬は本を閉じて、快活に微笑んで見せた。

「今後お前が無意味に反抗的だったりしたら、術の実験台になってもらう」
「マッドサイエンティストの目付きだぞ、貴様……」

 一ノ葉の返事は短かった。
268名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 19:24:26 ID:e5NH6RSt
以上です
269名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 19:38:55 ID:/Sw0NT5Y
>>259
はいはい、もう分かったから。さようなら

>>268
GJ!良かったよ


まぁなんだ
レベル低いなら相応の場所でレベル上げてから投下してくれ
270名無しさん@ピンキー:2010/06/10(木) 22:15:15 ID:oBtoV23T
今後このスレは、自称高レベル職人しか投下できないスレになりました。
271名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 02:46:46 ID:umpqb06x
>>268
なにこの快楽拷問やられてみたいGJ
272名無しさん@ピンキー:2010/06/11(金) 18:49:36 ID:I2oxLZLu
>>271
マゾめ
273名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 12:50:45 ID:H+kUipVp
>>257
いま後編をまとめて読んだ
長かったけど引きつけられて一気に読んだよGJ!!

>>268
面白い主従関係やね(^_^;
一ノ葉は(主に目先の快楽拷問から逃れるために)ごく稀に従順になるけど
決してデレない……
彼らの関係はこの先どうなることやらwktk
274名無しさん@ピンキー:2010/06/18(金) 11:51:47 ID:mspbB/aL
>>270
俺はそっちの方がいい
高レベルだけの方が安心だから
275梅雨入り保守:2010/06/18(金) 17:30:45 ID:QZOi4vvS
  妖怪図鑑 其の百三十六

         _,,..i'"':,     妖怪 箱ティッシュ
         |\`、: i'、
            \ \`_',..-i   オナニーして逝きそうになると
           \|_,. -┘    ティッシュが手元に無い。
  タタタッ    _ノ )  ノ    それは妖怪箱ティッシュの仕業です。
        ノ ///
       _//  | (_      弱点は水に濡れると死ぬ。
        .. レ´  ー`
276名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 11:45:01 ID:CknhYMuH
高レベルSS職人はともかく、それ以外を追い出そうとする高レベル読み手様はいらないな。
277名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 14:59:32 ID:72bMDGIf
>>276
同意。
馬鹿な批評家もどきがどれだけ多くのスレをつぶしたことやら
278名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 07:53:21 ID:BEB5KQpz
>>276
別に追い出そうとはしてないと思うが
279名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 18:42:41 ID:6xMjS39/
そんなことよりフェアリーサークル探そうぜ!!
280名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 23:53:05 ID:y353qFzt
>276
>それ以外を追い出そうとする高レベル読み手様
この手のスレには、昔っから多いんだわ。
実際、自分も体験した。
なんつーか、そういう読み手様(wは、自分の首を絞めてるって事を理解できないんだろうな。
281名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 00:19:54 ID:uYh3zRte
自分のレベルがどのへんにいるかは不明だが、投下したあとに、

「相応の場所でレベル上げてから投下してくれ」

っていわれたら、以後のSS書く人の目安にされたりしそうでいやだ。
282名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 12:07:40 ID:qVi/m1cW
>フェアリーサークル
フェアリー達の創作文芸サークルとか浮かんだ。

「これはないわー、今さら妖精と人間の純愛とか古すぎー」
「そんな事ありません!古からの伝統ある不変のテーマです!」
「時代はエロよエロー。捻じ込みーの注ぎ込みーので腹ボコでヒギィが受けんのよー」
「ふふふふ不潔ですっ!だいたい、それは貴女の願望じゃないですか!」
「それ言ったらあんたのだって自分の願望じゃなーい。『いつまでも一緒です』って手ぇ繋いで終わり?
 ありえないってー。年頃のヤローならむしろ繋がりたいのは下半身が普通よー」
「いいえ、じゅうぶんアリです!皆、貴女みたいじゃありません!愛さえあれば大丈夫です!」
「あー、いったなー。よーし、んじゃ試してみようじゃんかー。
 こんなこともあろうかと、ここに拉致っておいた若い人間の男がいるんだよねー」

「お前らの話はどうでもいいから、とりあえず俺を元いた所に戻せ」
283名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 06:37:50 ID:+HLPdrYi
>>282
続きまだー?チンチンチン
AA(ry
284名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 10:36:24 ID:+Rzyt+IL
>>282
拉致られた割りに冷静過ぎる男に吹いたw
285名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 09:32:42 ID:XpMq/eKq
>>281
別に間違った事じゃない
目安は必要
286名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 21:26:08 ID:EZzjJL00
>>285
えー?そう? 
別にどういうレベルのSSが来てもいいんじゃないかな 
レベルが高い方が好ましくはあるけど 
保守
287名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 03:35:08 ID:YP5L5bqi
無駄にハードル上げって荒らしの常套手段だし、解ってんなら構うなよ…
288名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 22:14:57 ID:X7qbcchL
とある怪談での笑い話だが、独身男一人がホラー映画を見てて、クライマックス時に後ろに何か気配感じて振り返ると映画を見てたのか、恐怖の悲鳴を上げ気絶し、ゆっくり後ろに倒れる女幽霊を見たとか。
289名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 22:47:46 ID:/qrg8w7X
笑い話のドジだったり臆病な幽霊とか見てると、
彼ら彼女らも元々人間なんだよなあって何か和む。
290名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 23:24:34 ID:pROFhbXH
男を金縛りにして、背後でオナニーしながら実況中継してくれる幽霊のSSなら知っている。
291名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 23:41:27 ID:X7qbcchL
も一つ和む幽霊話

ある晩の事、飼ってる猫が誰も居ないのに何故か腹を見せて何も無い空間を見ながらゴロゴロ甘えた声で鳴くので、翌日霊感ある友人を呼んで見たら果たして…
やはり昨日と同じ様に猫が何も無い所で甘える仕種をしているが、友人が猫の側を見ながら「萌え〜」と笑ってる。

聞いたら、ワンピース姿の可愛くて若い女幽霊がしゃがんで猫に「可愛いにゃ〜可愛いにゃ〜」と猫を撫でてる光景を見たとか。
292名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 01:23:54 ID:+UlVXpeX
風呂場にて視線を感じて振り向けば、そこには全裸の若い女幽霊が、その女幽霊の大きな乳房と逆三角形の茂みに覆われた女性器を見た俺の興奮し、最大限いきり立つ股間を見た女幽霊は、恐怖の悲鳴を上げる。

おいおい立場逆だろと呆れながら俺は、いきり立つ一物を扱き彼女目掛けて射精した。

その後、気絶した後思い出したのか、自らは自慰をしながら俺の射精を見るのが好きになった女幽霊は、責任取れと言う名目で、彼女の前でオナニーする毎日となる。

…こんな夢を見た
293名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 08:27:38 ID:py2oF5gu
なんで最後までしなかった!!
294名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 22:24:00 ID:+UlVXpeX
お互いやろうとした筈何だが、触れられない為に結局諦めた気がするw
295名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 02:32:45 ID:2aRtZngN
新聞のエロ小説にろくろ首の一人クンニの図があって笑えた。
296名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 02:52:53 ID:HSO/1vvI
うp
297名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 12:34:56 ID:HiChtEf2
お互いに例え報われない恋でも・・・と覚悟を決めた矢先に
悪霊に凌辱され消滅の危機に瀕する幽霊少女
出来るなら。願わくば来世は恋人同士で巡り会いたいと言い残して消失し悲恋に終わった初恋
の筈が幽霊少女はクイーンズブレイドのメローナ並のミニマムサイズになって生き延びていて
最後は何とか小学校低学年のサイズまでになった幽霊少女との喜びの大乱交

なんて悪夢を見た
298名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 05:08:32 ID:hxXvClhx
>>142
夕子さんの後日談が書けたのですが

夕子さんもう人間だし、このスレにはそぐわないと思うので他スレに投下しました

素直クールでエロパロPART13
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266626964/n637-639
こちらでドゾー
299名無しさん@ピンキー:2010/07/13(火) 04:23:59 ID:+rqLVDOw
>>298
まさかの続編。まさかのクロスオーバー。
てか、夕子さん素直クールだったのか……
GJ。
300名無しさん@ピンキー:2010/07/13(火) 11:01:17 ID:ifMTlvCw
それよりも夕子さんの人が長野会長の人だったってことにびっくらこいた
301名無しさん@ピンキー:2010/07/13(火) 14:05:06 ID:ZU4a+oy8
長野会長ってなんだ?
302名無しさん@ピンキー:2010/07/14(水) 03:35:41 ID:MLhGZfY1
>301
http://red.ribbon.to/~hachiwords/scool/series_index.html
ここの「生徒会長な素直クール」シリーズを読むんだ
303名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 15:49:29 ID:fP87Igb3
ああ…妖怪の恋人が欲しい…
304名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 17:44:39 ID:8IFjtJ9o
憑喪神の恋人がいるから問題ない
305名無しさん@ピンキー:2010/07/18(日) 01:21:31 ID:Tg7kOACS
       ヽ --- 、 ヽ ..、         i、
        ヽ:::::::::`'::`:::::\       ri,})
. 、ノ{.   _,,-'':::::::::::::::::::::::::::::)      `j {ノi
.  }, レ   .ノィ:::/_!::::l`:!_!、l::i::ヽ     ) r'",
.  )(,,ィ.    !::i',,、ヽ:、!,,、!i:/:::::l    (  `(
 (  j.    `il{ lj  lj }'l:|'i::::::l,    ヽ,,ノ
  '-"     |l, '、_   |::|':::::::::.、
.         |::|`' ,、 /!|:::|r''''''''ヽ::.、
         |::|'''" ii:: /l:::| // ヽ:::..、
.        |:::| l || //l:::l !/    l::::::::..、
        |:::|  ` レ"/:::l /    .|7''ヽ::::ヽ
.        |::::|ヽ  / /:::ノ l  \  |ヽ,__ jヽ::i   _
       /:::ノ '、 i i ̄  l \ \ .|:.:.:.:.:.:.:`、}}}}}}::::::.ヽ
.        ̄|,/  `''ー!,,,,,,,,l   \   |/:.:.:.:.:.:',  `ヽ;;;;;ゝ
         /       /    \  l''":.:.:.:.:.:l
        /       /        \:.:.:.:.:.|
        /       /           |:.:.:.:.:.|
       ,/       /           |:.:.:.:.:.:.l
      /       /           |:.:.:.:.:.:.:.`'' ̄ ̄ヽ
      /       /           .|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i
     /       /            |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
     (       {             l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..l、
.     '`丶,、    \          /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ iiヽ
         '` ヽ,、_,/\      /ヽ;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/、=|| |
              ヽ:.:`''''--'''":.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/  `'`゙
                `ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`'''-:,;、_;,;、-'''`
306名無しさん@ピンキー:2010/07/19(月) 13:47:10 ID:gnjT80dT
おキヌちゃんか。
懐かしいな。


307名無しさん@ピンキー:2010/07/20(火) 09:18:31 ID:hOcrEQXo
GS美神は人外ヒロインがたくさんいて楽しかったなぁw
おキヌちゃん、シロ、タマモ、グーラー、小竜姫さま、ワルキューレ、ルシオラ・・・
308名無しさん@ピンキー:2010/07/21(水) 12:20:44 ID:dB64TyQX
ぬ〜べ〜も人外多かったな
ゆきめ萌えだったわ
309名無しさん@ピンキー:2010/07/21(水) 16:45:25 ID:Qi/LCzXu
口裂け女三姉妹とかあほの人魚か…
あほの人魚の生き胆食ったあほの八百比丘尼は人外なんだろうか
310名無しさん@ピンキー:2010/07/21(水) 20:11:36 ID:jagj8lPH
人外好きにはぬーべーは最高の漫画だった
挙げるとキリがないくらいかわいい人外キャラいたし
濡れ女、蜘蛛女、ハマグリ女、OSたん、両性具有の淫魔……植物動物妖怪機械と人外バラエティーも盛りだくさん
濡れ女に取り憑かれたオタ男が羨ましいw
でもやっぱゆきめが一番だな
311名無しさん@ピンキー:2010/07/28(水) 01:22:03 ID:RhXKFh5z
暑い……

雪女さんいないかな
312名無しさん@ピンキー:2010/07/28(水) 01:37:45 ID:Gh+Xjz6R
メチャクチャ仲が悪い花子さんと闇子さん

ご意見番にしてまとめ役である意味で、一番マトモな紫ババア

人見知りだけどマスコットであるメリーさん

熱中症で倒れた主人公を救って一目惚れした本作?ヒロイン雪女

さすらいの人攫いセイレーン&人魚の漫才コンビ

そして、引き籠もりで根暗なメデューサ

を筆頭に様々な美しい女性(全員、がお化け・魔物の類)が住まう主人公の下宿先けん民宿・魔化魍。果たして主人公が選ぶ運命の女性は誰なのか

なんて夢を見た
313名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 19:03:17 ID:yh9OOLE7
その夢は、実はあなたに恋した夢魔の類が
「いい夢を見させてあげよう」と思って見せてくれたのかもしれないぞ
314名無しさん@ピンキー:2010/08/01(日) 21:00:28 ID:xGVqodcF
>>312
何か昔好きだったエロマンガを彷彿とさせる話だな…
風鈴先生…
また書かないかなぁ…
315名無しさん@ピンキー:2010/08/06(金) 09:35:02 ID:3eKhy+TH
ちょっと保守っとこう。
316名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 23:24:03 ID:kBHWvfpG
保守
317名無しさん@ピンキー:2010/08/09(月) 22:09:56 ID:PYqcGjhy
某番組でひきこさんを知ったんだが
着物の帯を引っ張ってみたい
318名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 05:38:22 ID:NZF6UkyN
保守
319名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 06:07:45 ID:wePUhpCe
          Z^ヾ、               Zヾ
          N ヽヘ             ん'い     ♪
          |:j rヘ : \ ____ _/ :ハ;、i     わ
         ぐ^⌒>=ミ´: : : :": : :`<ヘ∧N: :|  し   っ
         ∠/ : : ヘ: : : : : : : : : : : `ヽ. j: :|   l  ち
            / /: : /: /: : : /: : : : ^\: : :∨: :|  て  わ
        / //: : ∧/: : : :ハ : : \/:ヽ : ',: :ハ  や  っ
         /:イ: |: : :|:/|\: /   : :_/|ヽ: :|: : :l: : l  ん  ち
.        /´ !: :l: : l代ラ心   ヽ:ィ勺千下 : | : :|  よ  に
         |: :|: : |l∧ト::イ|    |ト::::イr'|ノ゙: | : :|   l
         |: :l: :小 弋少  :.  ゞ=‐'/: : ;リ : :|  ♪
         |: :|: : 八""  r‐―  V)"/: : /: : ;.;'   />
            Y : : : |>ーゝ _____,.イ⌒^`ーi : :八  </
          ヽ{: : !: /: : /IW ,(|_;i_;|_j__j: : : : \ に二}
      ,      人: ∨: :/{_幺幺 廴二二ノ: : : : : : ヽ
    _b≒==く: : ヾ:{__;'ノ∠ムム>‐弋 : : : : : : j: : : : '.
    _b≒/竺≧=巛_>''7   |   >、!: : : ハ: : : }
           レ'´|/く二>{__,|x-</}: /  } /∨
             /;∠.___ノレ<〕__'´   ´
         __厂X/XX{ ) ヾ!   \ \ヘヘヘ、_
         {{Zんヘ/XXXXじ   |!     `くxべべイ }
         _∧/ん<Xx厶    |!     r' ̄〈ヽ_!〈
        \ L 辷ヒ二二/   |! _/\「   r┘ーヽ`} ノ}
         `ヘ_`¬ヘxヘxヘxヘル^  xヘ厂: :=-: :(◯)'′
           ~^∀ヘxヘxヘxヘ/∀ー=-一'^ ̄´ ̄
320名無しさん@ピンキー:2010/08/10(火) 07:28:10 ID:48WITtSt
1999年7月から恐怖の大王♀の侵攻を六畳一間のアパート内だけで防いでいる。
てな電波を受信した。
321名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 16:25:07 ID:YbUi9L45
何その美味しすぎる設定
322名無しさん@ピンキー:2010/08/17(火) 12:13:00 ID:5Qdlgp9u
人外娘を書いてたつもりが

いつの間にか人外になりかけ娘になってしまったでござる
323名無しさん@ピンキー:2010/08/17(火) 14:57:17 ID:YvtAv29u
いいから貼るんだ。

貼って下さいお願いします。
324名無しさん@ピンキー:2010/08/18(水) 13:22:50 ID:ATMoT4Qf
山神狐巫女って完結したの?
325名無しさん@ピンキー:2010/08/21(土) 12:07:22 ID:OVxTymCR
コマネコの続きマダー
326名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 05:35:11 ID:fK6hkXuS
――――――――――――――――――――――――――
「あのね、拓海君、ヒミツ守れる?」

人間になった夕子さんのヒミツとは?
ダダ甘な二人の上に訪れるヒミツの暗い影。
拓海はそれを払拭できるのか?
夕子さんシリーズ最新作
――――――――――――――――――――――――――

素直クールでエロパロPART13
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266626964/n811-815
にて投下中



(一部ウソ)
327名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 07:56:59 ID:x3Xdt6Jq
保守
328名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 13:56:06 ID:+6E7yMfR
保守age
329名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 19:38:39 ID:nsslcCtB
狐耳巫女とキャッキャウフフしたい
330名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 21:06:29 ID:bxHTJ8/s
うひ
331名無しさん@ピンキー:2010/09/14(火) 17:18:32 ID:bm0B+ZQ7
テスト
332名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:41:32 ID:Zg03zNWU
微妙にスレチだけど暇だったら読んでくれ


 彼がいわゆる(縁故物件)に住んで1週間になる。
今のところ変わったことは何もない。
前の住人は確か女の一人暮らしで、自殺で亡くなったらしいが
詳しい事情は知らない。別に知りたくもない。
彼がこの部屋に住んだのには訳がある。
一つは保証人が要らなかったこと。
もう一つは会社の近くにあるということ。そして最後に東京にしてみれば破格の2DKで5万円と駐車場で1万という安さから。勿論、これは縁故物件という関係もあるだろうが、それでも彼はこの広さでこの家賃には十分満足している。
友永航平は26歳。ある大手のネット系会社のサービスエンジニアをしている。
仕事柄帰りは深夜になったりすることもあるので、ほとんど部屋には(寝に帰っている)みたいなもんである。
だから部屋を借りる時も、特に幽霊だとかそんなものに対しては恐怖も何もなかった。
彼自身はそういうたぐいのものは一切信じないタイプであり、大学時代の友人曰く
「お前は物事に対してドライすぎる」というくらいだ。
今まで住んでいたマンションが急に取り壊しになったため、急きょ探して見つけた部屋だが
広さも家賃も今までの部屋よりも彼は満足している。
航平はあまり人と話したりするのは苦手で、どちらかというと仕事人間であり、友人も果たして友人と呼べるのか?というような関係であった。
昔からどこか冷めている。大学時代には(あいつが笑ったところをみたことがない)などと噂されるほどだった。今でも付き合いがあるのは同じ会社に勤める飯沼洋二だけ。
それもほとんど表面的な付き合いしかない。
(人間なんて信用できないものだ)
彼は常々そう考えていた。小さい頃からずっとそう思ってきた。
333名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:43:12 ID:Zg03zNWU
いつも通り残業を終えて10時過ぎに家に戻る。
途中コンビニで買った弁当とビールや発泡酒で夕飯を済ませ、簡単にシャワーを浴びて、しばらくダラダラとパソコンで得意先からのメールチエックや仕事関連の書類作成をし、ネットサーフインをして深夜1時にはベッドに横になる。
そのままぐっすり熟睡するのが彼の日課だった。
その日もベッドに入り、しばらくすると眠っていた。だが、その日だけは何かが違った。
引っ越してから8日目のことである。
深夜2時半ごろ、彼はその気配で目を覚ました。
部屋に誰かいる。誰かが歩き回っている気配がする。
本能的に(目を開けるな)と感じていたが、彼はそれに反するように目を開けてしまった。
女だ。髪の長い、顔ははっきりと分からない、白っぽいワンピースを着た若い女が彼の寝室をうろうろと彷徨っている。
足は素足だが、まるで軽やかに飛び回るように部屋から部屋をふわりふわりと床スレスレに飛んでいる。
顔ははっきりとは分からないが、女はキョロキョロあたりを見回し、困惑しているようにも見える。
航平の心臓はバクバクと音を立て、思いっきり瞼を閉じたが、でも目を開けて彼女の動きを追ってしまう。
(頼むから消えてくれ!南無阿弥陀仏・・・)
航平は心の中で念じながらも女を目で追う。と、彼女がふわりと向きを変えてこちらにやってきた。
(!?)
驚きのあまり慌てて眼を閉じる。どうか気づかれていませんようにと思いながら寝た振りをする。
彼女はどうやら彼の顔を覗き込んでいるようだ。しばらく見つめられている感がした後、彼女の気配が再び消えた。
(なんとかしないと!)
航平はうっすら目を開けて彼女がいないことを確認すると、そろりとベッドから降りた。
(台所に塩があったはず)
恐怖心を抑えながら、航平は台所へ忍び足で向かう。
台所にはいないようだ。よかった。航平は安堵のため息をつき、ほとんど使ったことのない味塩を手に取った。
(・・・味塩で大丈夫なんだろうか?)
ふと疑念が沸いたがこれも塩には変わらない。とりあえず撒くだけ撒いてみよう。
航平は再び忍び足で寝室へと向かう。
(!!!!!)
寝室のドアを開けようとした時だった。居間のドアをすり抜けて女がこちらにやってきた。
「うわあああああああ!!!!!!」
恐怖のあまり声を上げ、その場にへたり込んでしまう。だが、意外なことに
「きゃあああああああ!!!!!!!」
同時になぜか幽霊であるはずの本人も悲鳴を上げ、後ろに飛んだ。
(・・・・え?)
航平は恐怖よりも幽霊が悲鳴を上げたことに驚き、唖然と彼女を見つめる。
彼女はあまり航平と変わらない年齢のようだ。肌は幽霊だからかもしれないが白く、透き通るようで形の良いはっきりした眼鼻立ちをしている。
なかなかの美人のようだ。
黒髪ではなく、濃い茶色の髪の毛は背中まであり、白と思っていたワンピースはよく見るときなりに近い麻で夏物にみえた。
(・・・・そうだ!塩!)
一瞬のことであっけにとられていた航平だが、慌てて手にした味塩の蓋を開け、幽霊目がけて振りかけた。
「え?・・・・きゃああああああ!?」
彼女はびっくりしたようにふわりと飛びあがり、驚いた顔をした。
「消えろ!怨霊!南無阿弥陀仏!」
航平は味塩を振り回しながらひたすら南無阿弥陀仏と唱える。その先を知らないので繰り返すしかないのだ。
「・・・ちょ、ちょっと何するんですか?」
彼は驚いて彼女を見る。幽霊が声を出したのだ。
「いきなり塩を振りかけるなんて、ひどいじゃないですか!」
「・・・・な?喋った!?」
「失礼ね!私だって話しますよ!」
彼女は腰に手をあてて、ちょっとムスッとした顔をした。怒っているようだ。
「あなた私の部屋で何してるの!?」
「・・・私の部屋?」
なるほど、この部屋のもとの主なのだろうか?航平はそう思った。
「・・・悪いけど、ここはもう俺が住んでる。あんたは死んだんだ」
航平は恐怖を抑え、精いっぱいの声を出した。
「・・・私はまだ死んでないわ。一応はまだ生きてるもの」
「え・・・?」
「私は生霊よ」

334名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:44:15 ID:Zg03zNWU
恐怖を感じつつも航平は幽霊の方に向き直った。心臓はまだバクバクと鼓動を打っている。
彼女はふわりと下に降りると床スレスレで止まった。
「・・・私はここの部屋の住人で今井瑠奈といいます。あなたは?」
幽霊に自己紹介されて、彼も思わず自己紹介する。
「俺は友永航平といいます。ここに住んで8日目です」
「じゃあ、私が意識不明になってからここに来たのね?なんて大家かしら。もう私が死んだと思って部屋を賃貸に出したんだわ!」
彼女は憤慨した様子で腕を組んだ。何だが思っていた幽霊像と違うので航平は恐怖というよりも違和感を感じていた。
「・・・今月分の家賃も納めてあるのに!私が身内がいないことをいいことに勝手にして!」
「あの、死んでないって、どういう」
「今、意識不明の重体なんです。ここにいるのは私の意識体」
彼女はそういうとふわりと一回転した。
「まあ、もうすぐ本当に霊体になっちゃうんだけど」
「・・・はあ・・・」
彼は何がなんだか分からない。彼女を見つめながら頭がこんがらがっておかしくなりそうになっている。
だが、ハッとして彼女に言った。
「とりあえずここは今俺が住んでる。アンタは出て行ってくれないか」
「・・・そうよね。もうここには私のものは何もないし。大家がリサイクルにでも出したのね」
彼女は悲しげな顔を浮かべた。
航平は一瞬彼女が気の毒に感じた。でも、こうなってしまっては仕方ない。
「大変申し訳ありませんが・・・」
「ねえ!」
彼女は航平ににこやかな笑顔を向けた。
「・・・は?」
「お願いがあるんです!」
彼女はにっこりして彼に言った。

335名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:45:10 ID:Zg03zNWU
「冗談じゃない!!」
航平はごめんこうむるという感じで両手を顔の前でブンブン振った。
「成仏するまでの6日間同居させてくれって!?」
「・・・お願いよ、私、行くところがないんです」
「どこへなりとも飛んでいけばいいじゃないですか!」
「だって外には怖い幽霊が一杯いるんですもの。あんな真っ青な顔した人たちや顔が潰れてる人たち怖くて近づけやしないわ。第一、私まだ死んでもないのに(なんで死んだの?自殺?)とかやたらしつこく死亡原因聞いてくるし」
(何か近所の井戸端会議みたいだな)
航平はふとそう思った。お孫さんいくつ?とか子供さんどこの学校?とか聞いてるようなものか。
「とにかく、ここから出て行ってくれ」
「嫌よ!」
彼女は不意に強気になり、プイとむこうを向いた。
「1週間くらいいいじゃない!あなたの邪魔はしないわ。昼間も夜も別に何も食べないし、場所だって取らないし、あなたに迷惑かけることもない、理想的な同居人じゃない!」
「!?昼間?昼間もアンタはいるのか?幽霊って夜だけじゃないのか?」
「昼間だって幽霊はいるわ。私は生霊でもうすぐ死ぬから死ぬまでの1週間、悔いのないように過ごすように昼間も動けるようになってるの。そういうルールなの」
「へ・・・へえ・・・・」
「とにかく、私、ここにいるから」
彼女はそういうと床から少し浮いて正座した。
「こっちが困るんだよ。幽霊と同居なんて何が起こるか分かったもんじゃない。アンタにとり殺される可能性もあるしな」
「失礼ね!私、そんなことしないわ」
「幽霊の言ってることなんて信用できない」
「私はまだ幽霊じゃないわ!生霊、です」
「どっちも同じじゃないか。心霊写真として扱われてるし」
「同じじゃないわ!」
そんなやりとりを繰り返しているうちに夜が明けてしまった。

336名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:45:53 ID:Zg03zNWU
「今日はなんだか辛そうだな、友永」
朝、あくびをこらえながらデスクについた航平に声を掛けてきたのは飯沼だ。
会社で唯一、航平が親しく(表面上)している大学の同期である。
「ああ・・いろいろあってな」
「へえ?まさか女関係?彼女できたのか?」
「・・・そんなんじゃないけど、まあいろいろ」
「ふうん」
飯沼は航平に書類の束を渡した。
「おとついの納品分、あっちのオペレータのバイトがポカやらかして誤作動が一つあったのに気付かなかったらしいぞ。今日やり直しで帰ってきた」
「・・・こっちも朝からついてないな」
航平はふうとため息をついた。起ちあがってセルフのコーヒーメーカからブラックコーヒーをなみなみと注ぐ。
「いるか?」
「いや、俺はいい」
「そうか」
航平は椅子に腰かけるとデスクの上のパソコンを起動させた。
「なあ、友永」
「うん?」
「お前、今度の金曜空いてるか?」
「なんでだよ?」
「合コン。A社の総務の子がしませんかって」
「・・・俺はやめとく」
「なんで?彼女いるのか?」
「居ないけど、女なんて正直、今、めんどくさい。家に昨日から変なのいるし」
「え?昨日?」
「・・・いや、独り言。どっちにしろ、やれどこかつれてけだの、誕生日とかクリスマスに会えないのはおかしいだの、休日もゆっくり休めやしないし」
「そらそうだけど、やっぱ一人身は辛くない?」
「・・・別に。人間死ぬときは一人だし」
「・・・お前ってさ・・・何か、変に冷めてるよな」
「そうか?」
「なんていうの?妙に冷静つーか・・・大学の時もサークルにも入らなかったし、教授主催の飲み会にも来なかった。卒業式の後の飲み会も来なかったし。なあ?なんでそんなに人と付き合うの避けるんだ?大学ん時もほとんど他の奴とつるんでるのみたことなかったぞ」
航平はキーボードを打ちながら、飯沼に言った。
「・・・別に意識してねーよ。あんま人と付き合うのが好きじゃないだけだ」
「・・・そうか。でも、お前だってもう少し出会いの場を広げろよ」
「・・・ああ、努力してみる」
言いながら航平は心の中で(いらない世話だ)と小さく呟いた。

337名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:48:46 ID:Zg03zNWU
正直、家に帰るのは辛かった。何のかんの理由を付けて会社に泊りこもうとしたが
予想外に仕事のペースがはかどり、やり直し分と本日分の仕事までスイスイこなしてしまった。
お陰さまで夜の10時には自宅前の玄関に立っていた。
「おかえりなさい」
悪夢だ。ドアを開けたら玄関で彼女がにっこり笑って浮いている。
彼はため息をついてドアを閉めた。
「お疲れ様♪」
「あなたの顔みたらまた疲れました。いい加減出てって下さい」
「まあまあ、そんな意地悪なこと言わないで。ホラ、私のことは空気と思ってくれていいですから」
「残念ですが、そんなに存在感のある空気はいません」
「そんなこと言ってると女性にモテませんよ?女の子には優しくしろって小さい頃言われませんでしたか?」
「言われてません。ともかく出てって下さい」
航平は背広を脱ぐと居間のフローリングの床にポイと投げ出した。
「ちょっと!背広クシャクシャになっちゃいますよ!ちゃんとハンガーにかけないと」
「疲れてるし、元から皺あるからいいよ。ちょっと静かにして」
「元からあるからって・・・」
航平はソファに足を投げ出すと買ってきたコンビニ袋から発泡酒を出して飲みだした。
瑠奈は航平の傍でふわふわ浮いている。
「だらしないですね」
「ほっといてくれ。幽霊のアンタに言われたくない」
彼はしばらくソファにねっ転がってテレビを見ていたが、気づけば瑠奈がいない。
(どっかとんで行ったのか?)
338名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:49:13 ID:Zg03zNWU
ふと視線をさっきの背広に戻すと、彼女は必死になって背広を掴もうと両手で抱えるポーズをしている。
だが、悲しいかな、背広は彼女の手をするっとすり抜ける。
彼女はちょっとムキになってまた同じように繰り返す。また背広がするっとすり抜ける。
(・・・霊体が物体を掴むことはできないのか。それにしてはしつこくやってるな)
思わず苦笑してしまい、ふと我に帰る。
仕方ないなとため息をつき、瑠奈の横をすり抜けると背広を拾ってハンガーに掛けた。
「元からそうすればいいんですよ」
瑠奈はしてやったりという顔で航平に笑いかける。
彼は彼女を無視してソファに戻ると買ってきたコンビニ弁当を開けた。
「いつもコンビニで買ってるの?」
彼女はいつの間にか航平の足元に浮いている。
「・・・まあ・・・」
「駄目ですよ。これ、思いっきり野菜不足じゃないですか」
瑠奈はコンビニ弁当をマジマジとみて言った。
「・・・ほっといて下さい」
「少しは野菜を取った方がいいですよ」
「なんで幽霊のアンタに言われなきゃならないんだ」
「私、前は管理栄養士やってたんで」
「・・・へえ」
「ともかくもう少しバランスよく食べないと」
「ちょっと黙っててくれる?いちいちうるさいんだけど」
少しいらついて航平は言った。
「これが俺の生活だし、アンタにいちいち干渉されるいわれはないし」
「そりゃそうですけど・・・」
瑠奈は何か言いたそうに口の中でもごもご言っている。
「・・・何?」
「いえ、一応、私同居人ですし、やっぱり住まわせてもらってる分には
あなたの健康管理もしてあげたいかな、と」
「結構です。とにかくどっか行ってください」
「あなたって・・・」
「・・・は?」
「人の親切とかアドバイスとか素直に聞かないタイプ?」
「悪かったな」
「野菜とらないともっとイライラしますよ。身体にも影響するし」
「取れるときに取るんでほっといて下さい」
航平はプイと横むくと、空になった弁当を乱暴にコンビニ袋に突っ込み
その場でYシャツ、ネクタイ、ズボンを脱ぎだした。
「ちょっと?なんですか?」
瑠奈は慌てて後ろを向く。霊体でも恥ずかしいようだ。
「・・・シャワー浴びてくる」
「だからってここで脱がなくても」
彼女の顔が心なしか赤くなっている。
「ここは俺んちなんだからどこで脱ごうが勝手だろ!」
トランクス1枚になった航平は乱暴に言い放つと部屋を出て行った。

339名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:49:49 ID:Zg03zNWU
(・・・私って、いらないことばっかしてるかな?)
彼が出て行った後、瑠奈は脱ぎ散らかされた衣類を見つめてため息をついた。
(うるさいでしょうね、きっと。私だって人にあれこれ干渉されるのは嫌だし)
そう思いながら瑠奈はちらりと外を見る。
やっぱり出て行くべきなんだろうか?顔や胴体のない霊体をみるのにも慣れ始めているが、やはり彼女はここに居たかった。
今はもうない、彼女のお気に入りの家具のあった居間。
大好きだったお気に入りの藤のチェストのあった場所。
そして、大好きだったあの人。
彼女の頬を涙を伝う。本当は泣いていない。泣けないのだ。
だけど辛くて仕方ない。あの時のことを思い出しては悲しくて苦しくて。
「・・・早く本当の霊体になっちゃえばいいのに。私・・・」
瑠奈は呟いた。1週間がとても長く感じられた。
340名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:50:27 ID:Zg03zNWU
シャワーから帰って居間に戻ってみると、瑠奈はいなかった。
(どっか行ったのか?)
航平は頭を拭きながら遠慮なしに下半身のバスタオルを取った。
一応、下半身を見せるのには霊体とはいえ、女性の瑠奈には抵抗があった。
「俺の家なのになにに遠慮してるんだか・・・」
呟きながら居間に繋がる寝室のドアをガラッと開ける。
「!?きゃあああああああ!?」
ベッドに腰かけていた瑠奈が飛びあがった。
「おわっ!?」
慌てて航平は下半身をタオルで隠す。
「なんでそんなとこにいんだよ!?」
「だ、だって、私の顔見たくないだろうし」
「とりあえず、着替え、そこのクローゼットにあるから、こっからでてって下さい」
瑠奈はいそいそと彼の横をすり抜けると居間へと戻って行った。
「・・・なんなんだよ、もう」
航平は呟いて着替える。なんだか厄介なことになった気がした。
(おせっかいな女だな。しかし、なんで死んだんだろ?)
ふとそんな疑問が航平の頭に浮かんだ。正確には(まだ生霊)だが
不動産屋から聞いた話は(自殺)大量の睡眠薬を飲んで海に飛び込んだらしい。
けれど彼女はそんなことするんだろうか?だったら原因はなんでなのか?
(下手に関わらないでおこう)
彼はクローゼットの扉を閉めるとベッドに横になった。
341名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:51:01 ID:Zg03zNWU
翌朝、眼が冷めて居間に行くと、相変わらず居間は脱ぎ散らかした服が散らばっていた。
そしてもっと悲惨なことに
「なんだ!?これ!?」
台所で航平は声を上げた。瑠奈が隅っこで小さくなっている。
「・・・朝ごはんくらい作ろうと・・・」
どうやら彼女なりに苦戦したらしい。必死になって物を動かそうとしていたらしく
フライパンやら鍋やらがあちこちに散らばっており、割れた皿が床に落ちていた。
いわゆるポルターガイスト現象だ。幸い?なことに重たい冷蔵庫の扉は開けられなかったらしく卵などは割れてはいなかったが。
「もう何もしないでくれ。頼むから」
彼は乱暴に言い放つと簡単に台所をかたずけ、会社へと向かった。
342名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:51:37 ID:Zg03zNWU
(全くどうにかしてる。幽霊に生活を滅茶苦茶にされるなんて)
イライラしながら航平はデスクで仕事をしていた。キーボードを叩く音がいつもにもましてカタカタと激しく響いている。
(あああっ!クソッ!腹が立つ!霊媒師でも頼むべきか?)
頭を掻きむしりながら、いつもより濃く入れたブラックコーヒーを流し込む。
パソコン画面の言語文字が反転している。
「あのう、友永さん」
遠慮がちに事務員の女の子が話しかけてきた。
「え、何?」
かなりぶっきらぼうだったのか、彼女がビクンと肩を震わす。
「あ、あのっ、お電話が入っています。ご実家の方といわれる方から」
「悪いけど用事あるから後にしてっていっといて」
「・・・それが今朝から3回ほど掛って来てたみたいで、丁度友永さんがDK社に行かれてる時にも伝言があったようです」
航平は大きくため息を吐く。
「・・・分かった。こっちの電話に転送して」
「あ、はい」
事務員が戻った後、彼は受話器をとり(内線)と(303)と書かれている番号を押す。
「・・・航平か?」
一瞬、心臓がドキリと音を立てる。彼がこの世で一番憎んでいる男の声だ。
「・・・元気か?」
彼は黙っている。話したくない。胸の奥から憎しみの炎が沸いてきてくる。
早く電話を切りたい。声を聞きたくない。
「・・・会社には電話してくるな。あんたとは縁を切ったんだ。もう話すことはない」
彼は乱暴に言い放つとそのまま受話器を置いた。
343名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:53:36 ID:Zg03zNWU
やはり、というべきか昨夜から何回かに掛けて航平の携帯にも見慣れた番号の留守電が入っていた。あの男の病はかなり進行しているのだろう。
(知るかよ!あんな男!あいつは俺たちを、母さんを!)
彼は憎々しげにコンビニのフードコーナーを睨みつける。店員がちょっとギョッとした顔で彼を見ている。
仕事を終え、彼は夕飯の買い物に帰宅途中のコンビニに寄っている。
弁当を手に取ろうとして、彼はその手をふと下に置いた。
(あの女の顔みるのもむかつくし、今日はどっかで食って行こうか)
彼女が言う(6日間で霊体になり成仏する)が本当なら後3日間我慢すれば彼女は居なくなるということだ。
だったらその間彼女を空気のように扱えばいい。
(でも、今朝みたいにまた変な気遣いして家をグチャグチャにされてたら)
そう思うとぞっとした。今朝の台所も簡単に片づけたのでまだ割れた皿の後始末が残っている。
彼はため息をつくと弁当を手に取った。
ふと棚の横をみると、なるほど、弁当以外にも野菜が取れるようにサラダがパックに入って何種類か売っている。
OLの一人暮らしにはちょうどいいのだろう。
(しょうがないな、あいつが居るまでの間だけだ)
彼はぶつくさ言いながら(グリーンサラダ)を手に取るとそれも一緒に籠に放り込んだ。

玄関のドアを開けると、やっぱり彼女はふわふわとドアの前で立っている。
けれど今朝のこともあるのか少し端によって遠慮がちに飛んでいる。
「あ・・・あの、お帰りなさい・・・」
彼は彼女を無視すると、ドアを閉めた。居間に入ると朝の状態のままだ。どうやら彼女は本当に何もしなかったらしい。
念の為、台所と寝室も見てみたが特に今朝と変わった様子はない。変な安堵感で安心すると彼はいつも通り背広を床にポイと投げた。
今日は彼女は何も言ってこない。ただ、昨日と同じく再び背広の前に座り、すくおうとしては通り抜けを繰り返している。
(・・・全く!犬っころかよ!)
彼は少しいらついて彼女の身体を乱暴に通り抜けた。
「ちょ!?何するんですか?気持ち悪いんですけど」
彼は彼女を無視して背広を拾うと(やればいいんだろ)という風にハンガーに掛けた。
「・・・今日は昨日にもまして機嫌が悪いのね。ごめんなさい。私のせいね」
瑠奈は航平の近くによると少し頭を下げた。
「・・・わかってんなら出て行ってくれ。顔も見たくない」
その言葉に彼女は少し傷ついた表情を浮かべた。その時だった。
彼の携帯が曲を奏でた。電話が入ってきたのだ。航平はいつもの仕事の癖でつい電話に出てしまう。
普段なら番号を確認してから出るのだが、今日は瑠奈とのやりとりでそれを忘れてしまった。
344名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:55:04 ID:Zg03zNWU
「・・・航平か?」
あの声だ。彼はイライラして電話を切ろうとする。だが、今日はそのイライラをぶつけたかった。
「二度と掛けてくるなって言ったはずだ!アンタはもう俺の親父じゃない!」
その言葉に瑠奈がびくりと肩を震わせた。彼の方を見る。
「・・・俺と母さんを捨てるようなマネしといてよくゆうぜ!母さんが死んだ時は葬式にも来なかった癖に!」
「悪かった・・・悪かったよ・・・航平。本当にすまないことをした・・・」
「悪かったと思ってるんなら電話してくるな!アンタのもう一つの家庭がなくなったからって・・・」
そこで彼は息をのみ、憎しみを込めて言った。
「・・・俺はアンタのもう一人の息子の代わりじゃねえ!あんな奴、義弟ともおもってない!もう二度と掛けてくるな!」
「・・・航平、父さんな・・・もう半年の命なんだそうだ・・・だから・・・店のことも含めて・・・」
「知るかよ!いらねえよ!あんな古い店!勝手につぶしちまえ!」
勢いで怒鳴った後、彼は電話を切った。そのまま携帯を床に放り投げる。瑠奈は静かにそこでたたずんでいた。
「・・・馬鹿にしやがって!」
航平は言い放つとソファに乱暴に横になり、Yシャツのボタンをはずし、ネクタイを緩めた。瑠奈がそっと彼に近づく。
「・・・今の」
彼は彼女の言葉を無視する。彼女は再び続けた。
「・・・お父さん?からの電話?」
航平は無視を決め込む。だが、彼女は一方的に話している。
345名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:57:05 ID:Zg03zNWU
「・・・どうしてあんな言い方するの?身内でしょう?」
「黙ってくれ!アンタに関係ない」
「・・・でも、あんなに怒鳴ることないじゃない」
「あんな奴身内じゃない!」
瑠奈は一瞬ハッとした顔になり、彼を見つめた。
そして茶色の瞳でジッと彼を見ながら続ける。
「何があったのかも知らないけれど、けど、親って永遠じゃないの。いつかは別れの時がくるのよ。
その時、あなたはさっきみたいな言葉でお父さんを送り出すの?」
彼は無視を決め込む。内心(おせっかいな女だ)と心で呟く。
「・・・私は今、普通の人間じゃない。だから空気が話してると思って、よかったら少し聞いて・・・」
そういうと彼女は語りだした。
「・・・私、公園のごみ箱に捨てられてたの。まだ生後3カ月の頃だった。本当の親は顔も知らない」
「・・・・・」
「でも、私、そんなこと知らなかった。1歳の頃ある家に養子として引き取られたの。
そこは年配のご夫婦がずっと子供ができなくてまだ幼児だった私を養子として迎えたの。本当の子供みたいに育てられたわ。
何不自由なく、幸せだった。二人とも本当の両親みたいだったわ。少なくとも高校まではね。
ある時、戸籍が必要になって自分で取り寄せたら、私の戸籍欄に(養女)と書かれていたの。私、ショックだったわ。なんで黙ってたのかって。
それからは事あるごとに両親に反抗した。
別に欲しくもないのにスーパーで万引きしたり、夜、ずっと帰らなかったり、そのたびに両親は私を怒って、心配して、泣いて、でも、私にはそれが(煩わしいことだ)としか思えなかった。
ほっといてくれって思ってた」
彼は聞くとはなしに彼女の話しに耳を傾けていた。
「本当の親じゃないから、そんな風に(子供を愛してる)みたいな振りしてるんだろうって。けど、ある晩、出歩いていた私をつれ戻すため、両親が車で迎えに来たの。
私はいやいや車に乗せられ、家に帰る途中だった。酔っ払いの運転手の乗ったトラックが反対車線から猛スピードでこっちの車に突っ込んできたのよ。私は後ろのシートに母親と座ってた。
気が付いたら病院にいた。両親は即死だった。けど、母親は、お母さんは、私をとっさにかばおうとして私に覆いかぶさるような感じで亡くなってたらしいの。お母さんが衝撃から守ってくれたおかげで私は少しの怪我ですんだ。お母さんは命がけで私を守ってくれたのよ」
航平はちらりと横目で瑠奈を見る。彼女はその時のことを思い出しているようだ。
「すごく後悔したわ。後で分かったんだけど私は小さい頃激しい喘息があって、そのことから死に掛けたことも何回もあったみたいなの。最初、養子に迎えるときに両親には(この子は病弱の為、いろいろ大変ですがいいんですか?)みたいなことを話してたらしいの。
両親はそれでもいいからって私を引き取ってくれた。
なのに私が最後に両親と交わした言葉は(ほっといて!うっとおしいんだから!)だったんだよ。なんで、最後の最後まで親に優しい言葉一つ掛けてあげられなかったんだろうって」
そういうと彼女はふっと息を吐いた。
「大学に行って、資格をとって、初めて給料をもらっても、私はお母さんにもお父さんにも何もしてあげられない。たくさん受けてきた愛情の一つも返せてない。
この年になって初めて親がどんなにおおきな存在だったかって分かったの。
どれだけ謝っても許されるものじゃない。
血の繋がりはなくても私にとっては大切な両親だった。私、もし向こうの世界で二人にあったら土下座して謝ろうと思ってる。許してもらえないかもしれないけど」
彼女はそういうと彼をちらりと見た。
「あなたの家庭のことは知らないけれど、でも、あなたがお父さんのことを許せない事情があるみたいだけど、本当にそれでいいの?」
「・・・いいんだよ」
「ねえ、私の存在は(空気)って言ったでしょ?だったら話してみて。気が楽になるかもしれないし・・・私は何も言わない・・・」
彼は彼女を一瞥した。航平はずっと家庭の話を誰にもしてこなかった。同情されるのも嫌だったし、変な感情を持たれるのも嫌だったからだ。けど、ここに居るのは(人間)ではない。(空気)と話してると思えばいい。
「・・・俺はある経営者の息子として生まれたんだ」
346名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:59:28 ID:Zg03zNWU
「・・・・」
「そこは代々続く和菓子屋で、俺は跡取りとして生まれた。小さい頃から(後を継ぐもの)として厳しく技術を教えこまれた。俺はそれを当たり前だと思っていたし、苦しいとも思わなかった。
俺が10歳の時だった。
店にバイトの女が入ってきたんだ。そいつは舞台女優崩れで、こともあろうにその女、親父に色目を使いだしたんだ。親父はいい年をしてその女に骨抜きにされて、家に戻らなくなった。
ある時、その女が家に怒鳴りこんできたんだ。親父を連れて。
俺と母さんにこの家から出ていけ、自分の腹の中に子供がいるんだって」
その時のことを思い出して、航平は顔を歪ませた。あの時の母親の悲しみは未だに脳裏に焼き付いている。
「女は地元でも有名な代議士の家系で、腹の子はもう臨月に近かった。結局、天涯孤独な母親は俺を連れて家を出た。弟ができたのはその後だ。親父はそいつを後継者にしようとしてたらしい。
俺と母親は小さなアパートで暮らして、母親は昼も夜も働いて、必死になって俺を養ってくれてたけど、ある日、仕事場で倒れて、そのまま息を引き取った。俺が中学生の時だった。
俺は親戚中をたらいまわしにされた。誰も俺を引き取ろうとはしなかった。結局、俺は親父のところに行くことになったんだ」
そういうと航平は少し青ざめた顔をした。
「最初、女は俺に嫌がらせをした。俺の飯だけなかったり、服がビリビリに破かれてたり、風呂に入れてもらえなかったり、苦しかった。家族のなかで俺だけが違う人間のような気がした。
でも、まだ、それだけで我慢すればよかった。親父はあの女に骨抜きだったから何を言っても聞いてはくれなかったけど、でも、俺は中学を出るまでは耐えようと思ったんだ。
弟とはあきらかに差をつけられてたけど、それでも良かったんだ。あの晩までは」
彼はそういうと苦々しい顔をした。
「あの晩、俺は寝苦しくて、夜中に目が覚めた。あの女がおれの前に立ってた。一瞬、何が起こったか分からなかった。女は全裸だった。
あいつは(あんたの父さんでは満足できない。だから代わりになれ)そういって俺の布団に入ってきたんだ。俺は必死に抵抗した。
だけど、女は俺の下半身を弄び(本当はしたいんでしょう)っていうと俺の上に乗ろうとしたんだ・・・」
航平は顔を手で覆った。このことはだれにも言いたくなかった。思い出すたびに苦しくて、嫌な記憶しか残っていない。
「・・・俺は女を突き飛ばして逃げた。きのみ着のままで、家を飛び出した。しばらく公園で野宿して、ごみ箱の求人誌を拾って、汚いかっこのままで面接に行った。
幸運なことにすぐに採用してもらって、年をごまかして、工場の住み込みバイトを始めた。
しばらくして、そこの工場主に俺が中学生だということがバレて、事情を話して、そこに住まわせてもらいながら中学と高校に通った。
工業関係に興味を持ってプログラミングを勉強したいと思って、大学には推薦で行った。
昼間は大学で勉強して、夜は工場で夜勤のバイトをした。卒業して、そこを出て、一人で東京で暮らすようになって、それでアンタのマンションを借りた」
347名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:00:16 ID:Zg03zNWU
瑠奈は黙って話しを聞いていた。
「就職してからしばらくして、あの女が弟と事故にあって死んだって聞いた。清々した。同じころ親父にガンが見つかって、あいつはすっかり憔悴しちまって、なんとか今俺を呼び戻そうとしてるって訳だ」
「・・・大変だったんだね・・・」
「別に・・・大したことない。だけど、もうあの家には関わりあいになりたくない」
「・・・それで、いいの?」
「は?」
瑠奈は彼の眼をジッと見つめる。茶色の瞳に吸い込まれそうで、彼は慌てて視線をそらした。
「確かに辛くて嫌な思い出かもしれないけど、一回ぐらいはお父さんに会った方がいい。私はそう思う。今のあなたならきっと、きちんとお父さんと話しもできるはずよ」
「・・・アンタ俺の話し聞いてなかったのかよ?」
「聞いてた。だからこそそう思う。きっとあなたのお母さんが生きていたら同じことをいったと思う」
「・・・別にあんな奴どうでもいいよ」
航平はそういうとソファにゴロリと横になった。心なしか、気が楽になったような気がした。今まで背負っていた重たい荷物をはずしたような、そんな気分だった。彼女は彼をしばらくジッと見ていたが、ふと彼の足元に投げ出されたコンビニ袋に眼をやった。
「・・・あ、今日はサラダも買って来たんですね」
「アンタがうるさいからな。一応な」
「・・・本当は素直なところもあるんですね、あなたって」
「俺はりっぱな社会人なんで子供みたいな言い方は辞めてください」
「私よりも2歳も年下のくせに」
そういうと瑠奈はクスクス笑った。
「え?なんで?」
「今日、寝室の本棚で高校の卒業アルバムの表紙、みたから。平成14年卒業って書いてた」
「アンタ、28歳なのか?」
「そ、これからもずーっとね」
「28歳にしては落ち着きがない女だな。どうせなら女子高生の幽霊とかならよかったのに。よりにもよっておばさんかよ」
「失礼ね!誰がおばさんよ!」
「四捨五入すると30歳じゃないですか。それとちょっと静かにしてください。これから飯、食いますんで」
「あ、ごめんなさい・・・」
瑠奈は床から少し浮いて正座する。
「・・・でも、私、少し嬉しかったです」
「・・・は?」
「あなたがなんとなく気が楽になったみたいだったから」
348名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:00:49 ID:Zg03zNWU
見透かされて少しドキリとしたが、彼はそっぽを向いて言った。
「別に楽になってません。とりあえず成仏してください」
その時、床に放り投げた携帯から再びメロディーが鳴った。一瞬、父親かと思ったが、ディスプレイには(飯沼)と表示してある。
「・・・よう、お疲れさん」
「おお、すまん。こんな夜中に。実はさ、さっきDK社のSEから電話あって、明日の朝一の会議中止になったらしいわ。だから、明日はいつも通り出社してくれ」
「ああ、分かった」
「それとさ、こないだの合コンの話しなんだけど、やっぱ無理か?男の数が足んなくて」
「悪いけど、やっぱ辞めとくわ」
「そうか、じゃあまた都合のいいときにメールくれや」
「おう、分かった」
「じゃあな、お疲れさん」
「ああ・・・」
そういうと電話は切れた。傍で瑠奈がニヤニヤ笑っている。
「・・・何?」
「聞きましたよ、合コン、行って来ればいいじゃないですか?彼女とかいないんでしょ?」
「アンタには関係ないです」
「でも、優しい人なんですね、電話の人」
「はあ?」
「あなたの話し方、ぶっきらぼうだし、聞いてるとすごく腹が立つことがあるんですけど、電話の人はあなたを誘ってたでしょう?あなたの性格からすると会社でも浮いてそうだし」
「アンタ、失礼だな」
「気を使ってくれてるんでしょうね。ありがたい友達じゃないですか。大切にしないと駄目ですよ」
「はいはい、そーですか」
「そうですよ」
そういうと彼女はにっこり笑った。

349名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:01:34 ID:Zg03zNWU
翌朝、出社して紙コップになみなみコーヒーを淹れていると、飯沼がやってきた。
「おはよう。昨日すまなかったな」
「いや、こっちこそ」
「何か取り込み中だったのか?誰かいるような気がしたけど」
瑠奈の気配が分かったんだろうか?ふとそんな気がしたが、すぐにあり得ないと思った。
「誰もいねーよ、悲しき一人身だし」
「そうか。あ、DK社の会議日程な、来週の月曜に変更だそうだ。麻生さんからメールと電話来てたわ」
「分かった」
そういってコーヒーを持って自分の席に着こうとした航平だが、ふと、昨日の瑠奈の言葉を思い出した。
「あのさ、飯沼」
「あん?」
「いつもありがとな。大学の時からお前にはいろいろ世話になって」
飯沼はしばらく穴があいたように彼をマジマジと見つめた。
「・・・友永、お前、何か変だわ」
「あ?」
「やっぱ、彼女とかできたんだろ?そうとしか思えない。急にそんなこと言い出すなんてよ」
「いや、いつもありがたいと思ってたし・・・」
飯沼はじろっと疑り深い目で航平を見つめた後
「今日は昼飯付き合え。そこでゲロ吐かせてやる」
とにんまりと笑った。

会社近くの旨いと評判の定食屋で二人は昼食を取っていた。航平は本当は行くつもりではなかったのだが、無理やり飯沼に連れ出されたのだ。
「さあ、吐いてもらおうか、友永。ほんとは女、いるんだろ?」
「だからいないつーの」
「ほんとにいないのかよ?おかしいぞお前。最近、イライラしたり、急にありがとうなんていいだしたり、熱があるとしか思えん」
そういうと飯沼は腕を組んで、航平を見た。
「私生活でなんかあったんだろ?そういや、お前、激安物件に引っ越したとか言ってなかったか?」
「ああ、今のマンションな。自殺した女が住んでた」
飯沼にいっても信用されないかもしれないが、思い切っていってみようかとふと頭に考えがよぎる。
「・・・まさか、お前、幽霊に取り疲れてるんじゃ・・・?」
飯沼が笑いを含んだ声で彼に投げかけた。
「だからそういうとこは辞めとけっていったのに・・・まあ、冗談だがな」
「・・・あのさ、飯沼」
「あん?」
「お前、幽霊、信じる?」
「げ?まさか、本当に出たのかよ?」
「ああ・・・」
350名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:03:50 ID:Zg03zNWU
飯沼は机に身体を乗り出した。好奇心と恐怖が入り混じった顔で、彼をジッと見つめる。
「どんな?血まみれの長い髪の女か?それとも頭がない男とかか?」
「女だよ。初対面でいきなり俺にビビって悲鳴上げた」
「はあ!?幽霊がか?」
飯沼は拍子抜けした顔で航平をみる。
「正式にはまだ死んでないから(生霊)らしい。俺が勝手に自分の部屋に住んでるってえらいムカついてた。
その後成仏するまでの6日間、今日で後2日間だけ家に居させてくれって」
「それで・・・」
飯沼はごくりと唾を飲み込んだ。
「お前が寝てる間に首締められたり、呪い殺すぞとか言われたりしたわけ?」
「俺が寝てるときはなんかそこらをふわふわ飛んでるみたいだぞ。
時々うちのベランダに野良猫がくるんだけど、その猫にちょっかい出してるみたいだ。
何か、彼女の方は猫が好きなのに猫の方が嫌がって逃げるらしいってえらいめげてたな。
ああ、後、野菜不足だ、サラダとか食えとかうるさく言うな。栄養バランスが悪いって。
元栄養士らしいわ。一回、フリチンで部屋で鉢合わせした時はえらい顔真っ赤っかにしてぎゃーぎゃー叫んでたぞ」
「・・・それ、本当に幽霊なのか?」
飯沼は呆れたように言う。
「ああ、うん。まあ、一応わな。本人ももうすぐ(霊体)になるって言ってたし。
後、お前のことも褒めてたぞ。いい友達持ったから感謝しろって」
「・・・人間臭い幽霊だな、て、いうかお前、それ作り話だろ?」
「違うっての。ほんとの話し」
「ああ・・はいはい、猫好きの元栄養士の彼女ができたってことね。一回紹介しろよ」
「だーかーらー」
「お前の話が本当なら、世の中の幽霊がみんな怖い話じゃなくて面白い話になっちまう」
飯沼は半信半疑な眼で笑いながら箸を進めた。

その日はコンビニ弁当が売り切れだったので、帰りにはカップラーメンを買った。
だが、また瑠奈に怒られそうな気がしたのでサラダも一緒に買った。
(それにしても・・・)
航平は片手にもったビニール袋をちらっとみる。今日の昼、飯沼が定食屋の帰りに
「彼女さんにプレゼントしてくれ」そういって定食屋の隣にある花屋で買ってきた小さな鉢植えを渡されたからだ。
正直、彼女はいない、さっきの話は本当だと言っても、はいはいで返されてしまった。
あげくの果てに「友永って意外と面白い奴だったんだな。なんか天然入ってる感じ」
などと半分馬鹿にされてしまった。瑠奈は相変わらず玄関で浮いて彼の帰りを待っていたが、鉢植えを見ると大喜びした。
「可愛い!やっぱり優しい人なのね。飯沼さんって人」
触ろうとしても触れないので、瑠奈にも見えやすいようにテーブルの上に置いてやる。
彼女は楽しげに床から少し浮いて膝を崩して座り、ご機嫌で鉢植えを眺めている。その様子を見ていると、なんだか航平も少し嬉しくなった。
「ねえ、ずっと思ってたんですけど」
「何?」
「そこに藤のチェストとかおいたらどうかしら?」
瑠奈はそういうとテレビの横の空きスペースを指差した。
「私の部屋、そこに藤のチェストがあったんです。この部屋殺風景だし。観葉植物なんかもおいたら可愛いのに」
「結構です。男の一人暮らしの部屋にそんなもんあったら気持ち悪いし」
「素敵だと思うけど」
「それはアンタの考えでしょう」
航平はそういうと立ち上がって湯を沸かそうと台所へ向かった。
瑠奈が後ろからついてくる。
351名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:05:25 ID:Zg03zNWU
「ちょっと、駄目ですよ!カップラーメンなんて。お弁当もバランス悪いのに」
「相変わらずうるさいな」
「一応、ここに居る間はうるさくいいます。明日土曜ですよね?」
「え?ああ、うん」
「だったら買いだしに行きましょう!この近くに24時間スーパーがあるんです。
今日は自炊しましょう。私が料理教えてあげます」
彼女は胸を張って言った。
「断る。疲れてるし、料理なんてめんどくさい」
「駄目です!もし、あなたが結婚して、奥さんが妊娠でもしたら家事くらい手伝わないと三行半突き付けられますよ!
今時は男子だって料理くらい作れるようにならなくちゃ!」
そういうと瑠奈は航平の腕を取ろうとする。だが、相変わらずするりと抜ける。それでも彼女は何回もするり、するりを繰り返す。
(しょうがないな・・・)
航平は苦笑した。
「今日だけですよ」
彼女の顔がパアッと明るくなった。

「懐かしいなあ、ここでよく買い物してたんですよ」
彼女は心なしかうきうきしたような足取りで、スーパーの中をふわふわ浮いている。
ここは24時間営業の激安スーパーで車で5分ほどのところにあるのだが、航平はここに来たことは一度もなく、今日が初めてだった。
店内は広く、夜も11時を過ぎているのにもかかわらず、子供を連れた主婦がちらほら目立ち、籠に山盛り食材を買っている。
サラリーマン風の男や、若いカップルなども居て、店内は結構にぎわっている。
「コンビニと比べて安いでしょう?」
「まあ、スーパーだから・・・」
「ほら!これ、豚こま切れが100グラム100円ですよ!300買ったらカレーや肉じゃがにも使えるし」
「何がそんなに楽しいんですか?ちっとも面白くない」
「意外と料理は楽しいですよ。洗いものとか後かたずけは大変だけど、初めて作ってそれこそすごく美味しかったら、もう」
「アンタ、食い意地張ってそうだもんな」
「失礼ね!一般論を言ってるんです。私だって結婚して、毎日家族に美味しいご飯作ってあげたいじゃないですか!」
「・・・それ、もう無理な話なんでしょう?」
「う・・・それは・・・そうですけど・・・」
瑠奈は言葉に詰まってこぶしを握っている。二人の間を年配の老婦人がジロジロと珍しいものでもみるようにすれ違った。
352名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:05:59 ID:Zg03zNWU
「何か、俺、変なこと言ったかな?」
その目線が気になって航平はキョロキョロする。
「・・・そりゃそーですよ。私の姿、あなた以外には見えないんですから。傍からみたら独り言言ってるあやしい男ですよ」
「そりゃどーも。さっさと買い物してここをでよう」
「じゃあ、せっかくですから豚コマ買いましょう。後、玉ねぎとキャベツと・・・」
彼女は買うべきものを次々口にしていき、そのたび、彼は売り場を回って食材を揃えていく。
「これで何を作るんですか?」
「まあ、作ってからのお楽しみです」
「・・・とんでもないものができるんじゃないだろうな」
「失礼ね!これでもずっと自炊してたんですよ!彼だっていつも美味しいって・・・」
言いかけて瑠奈ははっと口をつぐんだ。航平は瑠奈を見た。
「・・・彼氏、居たんだ?」
「あ・・・まあ、昔の話です・・・」
そういうと瑠奈は黙った。航平は彼女を見ながらわずかに心の中でざわつく気持ちになった。自分でもなんでかも分からなかったが、それでもむかつきにもにた気持ちが少し起こった。
「・・・とにかく、今はいいじゃないですか。別れたんだし・・・」
「・・・そう・・・」
二人はしばらく黙って買いものを続けた。

瑠奈の指導のもと、彼はぎこちないながらもほとんど使ったことのないフライパンや包丁を駆使し、夜も12時を回った頃、やっと遅めの夕食にありつけた。
初めて作ったそれは豚の生姜焼きとキャベツのコールスローサラダ、豆腐の味噌汁だったが
なかなかうまくできていた。
「・・・俺にしては結構旨いな。味付けもなかなか旨いし」
「先生がいいからですよ」
胸を張って瑠奈は言った。
「まあ、そういうことにしておきましょう」
食べ終わると食器を洗い、簡単にシャワーを浴びて、買っておいたビールを航平は開けた。
「・・・そういえばアンタは彼氏に会いにいかないのか?」
「え?」
瑠奈は顔をあげて彼を見つめる。
「一番会いたいんじゃないの?好きだった相手だろ?」
言いながらも航平は胸がムカムカした。話している自分を殴りたくなるような気分だった。
「・・・いいんだ。彼は。終わったことだから。彼はもう、私のことなんて忘れてる」
「そうなのか・・・」
「うん・・・だからいいんだ。ここに居るだけで私、幸せだから」
瑠奈は笑顔を航平に向けた。彼の心臓がトクンと胸打った。
353名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:07:15 ID:Zg03zNWU
その夜はベッドに横になってもなかなか寝付けなかった。水でも飲もうと起き上がり、台所に行くと瑠奈が居間の窓の傍でぼんやり立っていた。窓からうっすらと差し込む月の明かりが彼女を照らし、瑠奈の茶色の髪の毛が光で輝いていた。
端正な横顔はどことなくおぼろげではかなそうに見えた。彼はしばらく彼女を見つめた。生きているときはきっと綺麗な人だったんだろうなと思った。昔の瑠奈に会ってみたかった。
もし、肉体がある彼女とならどんなことを話し、彼女はどんな風に笑うんだろうか、仕事のこと、今までどんな風に暮らしてきたか、何が好きなのか、そして彼氏はどんな奴だったのか。瑠奈がこちらに気がついて顔を向けた。
「・・・眠れないの?」
「・・・ああ・・・」
彼はペットボトルの水を持つと彼女の傍のソファに腰を下ろした。キャップを外し一口飲む。
「・・・なあ、アンタさ?」
「うん?」
「この部屋で長いこと住んでたの?」
「うん。大学は寮に入ってたけどね。卒業してすぐここに来た。だから6年ぐらいかな?亡くなった両親の家は賃貸だったから今はもうないんだ」
「・・・そっか・・・」
彼は水をもう一口飲んだ。いつの間にか瑠奈がソファの航平の横に少し間をおいて座る形で少し浮いている。
「・・・明日さ、どっか行こうか?アンタの行きたいところ」
彼女は彼の方に顔を向けた。驚いて、そして嬉しそうな顔をした。
「本当?」
「・・・ああ。どこ行きたい?アンタどうせ昼間は家にこもりきりなんだろ?俺のいろんな(秘密)もしってそうだしな」
「・・・だって知らない霊体に話しかけられたら怖いじゃないですか。もし誘拐でもされたら」
「いい歳のおばさんを誘拐しないつーの」
「おばさんじゃないです!今は28歳でも十分若いんです!」
「・・・ああ、はいはい」
「ご心配なく。もし知らない霊体にあなたのことを聞かれてもエッチなDVDを5枚くらいクローゼットに隠し持ってることや、夜中にこっそりテレビのエッチなチャンネル見てるのも黙っておきます。
こないだトイレに行ってしばらく帰ってこなくて、しばらくしてトイレからエッチな本を持って帰って来て、すっきりした顔だったのも黙っておきます」
「・・・どこまで知ってるんだよ!?アンタの前で抜いてるわけじゃないから別にいいだろ。これでも遠慮してるんだから」
「私の前で変なことしたらそこらへんの霊体に言いふらしますよ。て、いうかそれこそ(変態)ってののしってやります」
「・・・なんか(おかん)と同居してるみたいだなあ。とりあえずどこがいいか考えといてよ」
「ふふふっ。明日は行きたいところいっぱいあるんです。たーっぷり付き合ってもらいますからね」
そういうと彼女は嬉しそうに少し笑った。
354名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:09:11 ID:Zg03zNWU
朝11時ごろ二人は車に乗って家を出た。助手席で瑠奈は(もっと可愛い服で出かけたかったなあ)とずっと自分の服についてぼやいていた。彼女は重体になったときの服のままなのだ。最初に二人がむかった先は意外にも近所にある墓地だった。
瑠奈に頼まれて航平はお供えの花と線香セットを買った。彼女の後についていくとそこには彼女の亡くなった義理の両親の墓があった。二人の名前と没年月日が書いてある。汲んできた水でお墓を清め、花を供え、線香を立てて、両手を合わせる。
いつの間にか瑠奈も同じように航平にならんで手を合わせていた。
「・・・ありがとう。お父さんとお母さんも喜んでる。最後にどうしてもここに来たかったんだ。本当なら(お父さん、お母さん、この人が私の旦那さんよ)っていうんだろうけどね」
「・・・縁起でもないこというなよな」
「あら、本当は嬉しいんじゃないの?」
「誰が。第一幽霊の嫁さんなんて聞いたこともない」
「私はまだ(霊体)です!」
「ああ・・・はいはい。次、どこ行こうか?」
次に二人が向かったのは渋谷。車を臨時駐車場に預けて街を歩く。土曜日の街は様々な人が楽しげに行ききしている。
彼も休日を誰かとすごすのは久しぶりだった。いろんな店を見て回った。雑貨屋や服屋では瑠奈は嬉しそうにふわふわあっちへいったりこっちへいったり、楽しげに飛び回っている。
正直、女性の店では航平は入りづらかったが、彼女が楽しそうにしているのを見ると、なんだか恥ずかしいのもバカバカしくなった。
結構、カップルも来ているのではたから見れば航平の姿は(服を選んでいる彼女を待っている彼氏)としか見えなかっただろう。
中でも彼女はある店のワンピースに釘付けになっていた。可愛いギンガムチェックで瑠奈が着ればなかなか似合いそうな柄であった。
「・・・欲しいなあ。今頃夏のボーナスが出てたら買ってたのにな。悔しいなあ」
「買っても着れないじゃないですか」
「だから悔しいんです!あーあー、こういうの欲しかったのになあ。」
彼女はちょっと悲しそうにため息を吐いた。店をでて二人は近くの喫茶店で昼食を取った。彼女は食べることができないので彼が食べているのを正面で眺めているような感じなのだが
「・・・何かそんなにみられると食べづらいなあ・・・」
彼女はジーッと頬杖をついて航平を見ている。
「だってうらやましいんですもの。お腹は空かないけど、食べたいなあ、美味しそうだなって思いますよ」
「へへへー!うらやましいだろ」
そういうと航平はわざと美味しそうにハンバーグをパクつく。
「あああ!もう腹が立つ!呪ってやるんだから!取りついて耳元で(うらめしやあ)って言ってやる!」
そういうと手をダランと下におろして横目で航平を睨む。
「何かアンタが言っても怖いって思わないんだよな。何の冗談?って思っちまう」
「ああああ!ムカつく!」
そういうと瑠奈は頬を膨らませた。彼は思わず苦笑した。昼食後はほかにもいろいろ店を見て回ったり、花屋に行ったりした。航平は瑠奈が可愛いと言っていた観葉植物を数個買った。
彼女は喜んでさっそく部屋に飾ろう!とウキウキしながら言った。
「こんなのすぐに枯らしちゃいそうだけどな」
「大丈夫ですよ。水やりさえちゃんとして日向においとけば長持ちしますよ。でも、あなたが観葉植物買うなんて意外だったなあ。あ、ひょっとして私の為?」
そういうと瑠奈はニヤニヤしながら航平をのぞきこんだ。
「違うっての。ただ、こういうのが欲しかっただけです」
「ふーん。そう?へえー?」
「・・・あのねえ、うぬぼれすぎですよ。俺だって選ぶ権利があります」
「どーいう意味ですか?」
あっと言う間に時間が立った。航平がトイレに行くといい、しばらく離れた後、二人はファッションビルの屋上にある観覧車に向かった。瑠奈が乗りたいと言ったのだ。
「・・・幽霊でも高いところが好きなんだな」
「何か気持ちいいじゃないですか、高いとこって。あ、あの降りてきたカップル、透けてるわ、死んで間もないのかな?」
「・・・さりげなく怖いこと言わないで下さい。でも、男が一人で観覧車乗るって何か虚しいな」
「・・・今度は彼女と来ることができればいいですね」
そういうと彼女は寂しそうに笑った。観覧車はゆっくりゆっくりと上に登っていく。瑠奈は楽しそうに窓から外の景色を見ている。
355名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:09:48 ID:Zg03zNWU
「・・・こうやってみると東京の街が小さく見えるわね」
「ああ・・・」
航平も窓の景色を眺める。明かりがつきだした街はまるで宝石のように綺麗だった。
(こんな風に東京を見下ろすことなんてなかった)
時間がゆっくりゆっくり流れていくような気がした。彼はとても穏やかな気持ちになれた。
彼女は正面の席に座って(浮いて)ぼんやりと窓の外を眺めている。その姿は昨夜にもましておぼろげに見えた。
「・・・カップルなら頂上でキスとかやるんでしょうね」
彼女はクスクス笑いながら航平に窓の外を見るように指差した。丁度入れ替わりに降りてきたカップルらしき男女が熱烈なキスをしている。
「見られてるのわかんねーのかな?」
「多分、二人きりの世界なんですよ」
二人は顔を見合すと小さく笑った。
「ねえ・・・」
不意に瑠奈がからかい半分の様子で口を開いた。
「もし、私が生身の身体ならキスしてました?」
その言葉に航平の心臓がドキドキと高鳴った。顔が赤くなる。瑠奈は本当に冗談で言ったようだが、なんだか彼にはそれが冗談に聞こえなかった。
「・・・だから俺には選ぶ権利がありますので」
「あっ?そーですか。年増で悪かったですね」
彼女はプイと横を向いた。
356名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:11:55 ID:Zg03zNWU
二人は10時過ぎごろにマンションに帰りついた。
「ああー!楽しかった!今日はありがとう」
瑠奈はソファで横になっている航平ににこやかに言った。彼は一日出歩いていて疲れたが、気持ちのいい疲れだった。なんだか充実した一日だった。
「そっか。よかった。喜んでもらえて」
彼はそういうとソファから起き上がった。買ってきた荷物の中から一つの紙袋を出す。瑠奈にぶっきらぼうに渡そうとした。
「これ・・・」
「え?」
「プレゼント、ってもアンタは開けられないか」
彼はそういうと彼女の代わりに紙袋を開ける。中から彼女がずっと見ていたあのワンピースが出てきた。
「買う時ちょっと恥ずかしかったけど・・・サイズは分かんなかったけどMにした・・・」
「・・・・」
彼女は唖然とし、そして顔をあげて彼を見た。
「ありがとう・・・すごく嬉しい。けど、私着ることができないのに何で?」
「すごく気に入ってるみたいであそこでずっと張り付いてたからさ。見るだけでもいいかなって」
「・・・ありがとう」
彼女は本当に嬉しそうにしみじみとワンピースを眺めた。ソファに腰かけた航平の横に間を開けて座るような形でふわりと浮き上がる。
「本当にありがとう。私、あなたに会えてよかった。死ぬ前にこんな嬉しいことはないわ」
彼女はワンピースを眺めながら、感情のこもった声で言った。
「・・・あなたは本当に優しくて、素敵な人。本当に会えてよかった。私、ここにきてよかった」
その言葉に航平の中で何かが溶けた。
357名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:12:15 ID:Zg03zNWU
「・・・瑠奈」
不意に名前で呼ばれて彼女はビクリと身体を震わせた。彼が彼女を名前で呼んだのは初めてだった。
驚いて彼の方を振り返る。彼もジッと彼女を見つめる。まっすぐに彼女を見つめ、思った言葉を口にする。
「・・・俺は、アンタが好きだ」
彼女は驚いた顔を一瞬浮かべ、戸惑い、顔を赤らめた。
「俺は瑠奈が好きだ。ここに居て欲しい。これからもずっと」
彼はまっすぐに彼女に自分の思いを告げる。
「・・・私は普通の身体じゃない。それに明日には死んで消えてしまう」
彼女は震える瞳で視線を下に落とす。
「・・・私・・・」
「・・・・・」
「私も・・・・あなたが・・・・航平くんのことが・・・・好き・・・」
瑠奈も顔を上げ、彼をまっすぐに見つめた。彼の心臓がドクドクと大きく音を立てて響いた。
「・・・本当はすごく嬉しい。これが本当の身体だったらどんなに良かったか・・・もっと前にあなたに出会いたかった・・・」
瑠奈の瞳から涙が零れおちた。涙は出ていないが、その両目からは本当に水滴がポロポロと落ちているように彼には見えた。
彼は手を伸ばし、そっと彼女の顔に触れた。
触れることはできない。透き通っているが、それでも彼には彼女の温度を感じられるような気がした。
両手でそっと彼女の顔を包み込み、顔を近づける。瑠奈はそっと眼を閉じた。
唇と唇が触れ合うように二人は顔をあわせた。皮膚が触れる感覚はなかったが、それでも二人はお互いの温度を感じていた。
心臓の鼓動が響き、お互いに顔が赤く染まる。瑠奈の瞳は少し潤んでいた。
「・・・今日はずっと瑠奈の傍に居る」
そういうと彼は手を彼女の手に重ねた。
「・・・駄目。ちゃんと寝ないと・・・」
「眼が覚めたら瑠奈が居なくなってそうで怖いんだ」
航平はそういうと再び彼女を両手で抱き締める。彼女はされるがまま彼に身をゆだねているような様子を見せた。
「・・・どこにも行かないでくれ、瑠奈」
「・・・駄目だよ・・・もう」
「・・・諦めないでくれ、頼む」
そういうと彼はもっと彼女をギュッと抱きしめた。
「・・・俺と一緒に生きてくれ・・・」
どれぐらいそうしていただろうか。夜が更け、次第に朝日が二人を照らしていた。
瑠奈の姿は昨日よりもぼんやりとしていて、それは彼女の命が燃え尽きようとしているようにも見えた。
彼女はずっと眼を閉じて航平の温度を感じていた。触れることはできない。けれど、彼女はずっとそうしていたかった。
彼の温度、匂い、全てを感じられる気がしていた。
「・・・・あのね、私・・・」
瑠奈が口を開いた。
「・・・うん?」
「私ね・・・」
彼女は口を開いた。
「私・・・愛していた人に・・・殺されかけたの・・・・」

358名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:16:17 ID:Zg03zNWU
彼女は航平の胸に顔をうずめるようにすると、そっと話しだした。
「・・・私、両親が亡くなってから奨学金を借りて大学に進学したの。バイトしながら大学に通って、亡くなった母が料理が好きだったから、私もそういうことを勉強したいって思って。
それで大学の管理栄養士科に入学した。バイトと勉強の両立は大変だった。ある時、バイト先に医大生の男の子が入ってきたの。その人は私よりも4つも年上だったけど、留年して勉強して医大に合格したの。
彼も働きながら勉強してた。
そして私は彼から(付き合って欲しい)って告白された。
その頃になると私も彼にひかれ始めていたから嬉しかった。お互いの部屋で勉強しながら一緒に過ごした。苦労しながら二人ともなんとか無事に卒業できて、就職もすぐに決まった。
だけど、彼は少しずつ変わってきた。医者というだけでいろんな女性が寄ってきた。
就職して一年もたたないうちに彼は(遊び)を覚えて、いろんな女性と関係を持つようになった。私は怒って泣いて、何度別れようっていったか分からない。
けど、そのたびにはぐらかされたりして辛かった。でも、結局、彼は最後には私のマンションに帰って来てくれた。
私はそれでも彼が好きだった。
いつかは彼と一緒になりたい、そう思ってた。彼は優しかった。優柔不断なところもあったけど、そういうところも含めて大好きだった。だからこそ彼を信じたかった。
付き合いだして6年たって、彼からの(結婚)の言葉をずっと待っていたのだけれど、風の噂で彼がある病院の理事長の娘さんと結婚を決めたって聞いたの。私は彼に問いただした。でも、彼はまたはぐらかした」
彼女はそういうとフッと息を吐いた。
359名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:18:37 ID:Zg03zNWU
「・・・その時思ったの・・・もう彼は昔の彼じゃないんだ・・・別れようって。丁度その夜のことだった。
マンションに一人の若い女の子が訪ねてきたの。彼女は妊娠してて、かなりお腹が大きかった。彼女は私に(自分は彼のもう一人の恋人だ。
彼は二股をずっとしてた。この子は彼の子だ)そういったのよ。
そして彼女は言ったの(彼がある病院の理事長の娘と婚約したと聞いた。お腹の中の子は絶対に認知してもらう。
認知してもらえなかったら慰謝料を請求してやる。だから手を組まないか?)って。私は断った。彼女にも第三者を交えて彼と話をしたほうがいい、そう言った。
でも、彼女の怒りは治まらなくて(絶対に許さない!あの男を破滅させてやる!)
そう息まいていたの。その日はそれで終わったんだけど、次の日に彼から電話が掛ってきた。仕事帰りに会わないか?って。多分、別れ話かなってそう思った。
夜、彼が車で迎えに来てくれた。そのまま彼の運転で初めてデートした海に行った。(すごく懐かしいよね、ここ。覚えてる?)彼はそういって笑った。
そして彼は近くのコンビニで缶コーヒーを買ってきてくれた。二人で初めてデートした時みたいにいろんな話をした。
コーヒーは何か変わった味がした。多分・・・何か薬が入ってたんでしょうね。
しばらくすると私は意識を失った。次に気がついたら私は病院の集中治療室で上から下の自分の身体を見下ろしてた。
自分でも何が起きたか分からなかった。
戸惑ってる私の傍に一人のおじいさんが来たの。
そして私にこう言った。(自分は死神の使いだ。アンタは薬を飲まされて、夜の海に重しを付けられて沈められた。偶然、重しが切れて漁師に発見された。でも、もう虫の息になっている)と。
そして(あの夜、私を訪ねてきた女の子も彼に殺された)と。
私、何がなんだか分からなくて、彼が私を殺そうとしたって聞いてあまりにもショックで胸が苦しかった。その人は言った。(お前はこれから死ぬ運命にある。でも、今は息をしている。
6日間だけ時間をやる。その間に思い残しのないようにしておけ、その間にもし生きたいと思うのであればもう一度聞きいれる。
ただ、その時はほぼ寝たきりで一生ベッドでの生活になる可能性がある)そう言った。
とっさに、私は(もう生きたくない、死んでもいいです)そう答えた。
その人は(ならばお前の望み通りにしてやろう)そう言って消えて行った。
その瞬間、目の前がパアッとあかるくなって私はこのマンションの前に立ってた。正確には浮いてた・・・かな?
そして、あの夜あなたと出会ったの。だから、その人がいうように、もし、生きていたいと願ったとしても一生寝たきりになるかもしれない。
そんな状態であなたの傍には居たくない」
航平は瑠奈をしっかりと抱きしめる。好きだった相手に殺されかけた瑠奈が可哀そうで仕方なかった。
360名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:19:33 ID:Zg03zNWU
「・・・それでもいいよ。俺が瑠奈の面倒をみる。ずっと傍に居る。瑠奈が俺の前から居なくなるよりずっとマシだ」
「・・・でも意識が無くなって、あなたのことも忘れるかもしれないのよ?普通に話すこともできなくなるかもしれない。日常のことが全部、自分ではできなくなるかもしれない。そんなの私は嫌。航平くんを私の為に縛りつけたくない・・・」
瑠奈はかすかに震えていた。
「・・・なあ、瑠奈・・・俺は今までずっと虚勢を張って生きてきた。ずっと自分一人だと思って生きてきた。でも、アンタと会って、俺は実はいろんな人間に助けられてきたってそう思ったんだ。だから居てくれるだけで、俺は救われるんだ」
「・・・でも、もう無理よ。私は死をえらんでしまったから」
「・・・もう一回その人に頼むことはできないのか?どうしても生き返らせてほしいって」
「・・・おそらく無理だと思う。その人がどこに居るのかさえ、私は分からないから・・・ただ、6日後、迎えに来るとだけ言っていた・・・」
「・・・どこなんだ?瑠奈のいる病院は?」
「・・・それは・・・」
彼女が言いかけた時、不意に部屋の中がパアッと明るくなった。そして、彼女の周りを光の渦が取り囲んだ。彼女が顔を上げる。
「・・・駄目みたい・・・私・・・もう行かなくちゃ・・・」
「・・・瑠奈!?」
「・・・約束の時間がきたみたい・・・ごめんなさい・・・航平くん」
瑠奈は悲しげな顔を浮かべ、立ちあがった。彼女の足元を光が包み込み、瑠奈の姿が光でかき消されていく。
「・・・本当にありがとう・・・お願い・・・お父さんと話をしてあげてね・・・」
「行くな!瑠奈!」
彼は手を伸ばして彼女を掴もうとするが、彼女の姿はだんだん消えていく。
「行くな!瑠奈!俺と生きてくれ!頼む!」
彼は声を限りにして叫ぶ。ほとんど見えなくなった彼女の顔がわずかにほほ笑んだ。
「瑠奈!愛してるんだ!もう一度生きてくれ!」
「・・・私は・・・鄭和病院の集中治療室にいる・・・・私も愛してる・・・・さよなら・・・どうか幸せになって・・・」
そういうと彼女の姿はかき消され、後には静寂が残った。

361名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:20:30 ID:Zg03zNWU
すぐに航平はキーケースを掴むと、マンションの5階の階段を一気に駆け下りて、駐車場に向かった。車に乗り込んでエンジンを掛けるとカーナビで地図を検索する。(鄭和病院)はこの付近にあった。
(瑠奈!死なないでくれ!)
祈るような気持ちで車を走らせ、病院へと向かう。鄭和病院は大学付属の大きな建物であった。
車を停め、病院受付へと走って向かう。受付で名前を書き、集中治療室のある2階まで階段で駆け上がる。
ガランとした広い廊下を走り抜け、つきあたりの治療室の前にはだれもいないが、おそらく部屋の中で瑠奈の身体に何か異常が起こっているのだろうか。
彼は壁の横に備え付けられているソファに座りこむ。
(どうか、瑠奈を助けてください・・・・神様・・・どうか・・・)
眼を閉じて必死に祈る。どうか、彼女を助けてくれ、心はそれだけで一杯だった。

362名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:21:12 ID:Zg03zNWU
「・・・退院指導はもう受けた?」
年配の看護師がベッドの傍で荷物の整理をしている彼女に声を掛けた。
「・・・あ、はい。どうもお世話になりました」
そういって彼女は深く頭を下げる。
「しかし、あなたの生命力には驚いたわ。一時は危篤状態だったのに持ち直して、一般病棟に移って、あっと言う間に退院ですものね。大したものね」
彼女はその言葉に照れたように笑う。
「生命力が強いんですね。私」
「そうね、頑張って生きなさいって神様が言ってるのかもね」
看護師はクスッと笑う。
「彼氏さんの為にも生きなきゃね。それにしてもいい彼氏さんね。仕事帰りに毎日あなたのところへ来て、意識が戻らないときはずっとベッドの傍であなたの名前を呼んでたのよ」
彼女は顔を赤くして少しうつむく。
「ああ・・・そういえばね・・・あなた、心霊とか幽霊とか信じる?」
看護師はいたずらっぽい眼で彼女を見る。
「え?」
「あなたが一時、危なかった時にね、救命処置を取ってるときに、あなたの周りを何か白い靄みたいなものがグルグル包んでたって、そのときの看護師が言ってたの。先生もそれを見たんだって」
「・・・・」
「・・・そしたらね、その靄がでてからしばらくして、あなたの呼吸が持ち直して、バイタルが戻ってきたらしいの。もしかしたらあなたの大切な人があなたを守ってくれたのかもしれないわね」
「・・・そんなことが・・・」
「・・・ええ・・・あ・・・この話はするなって言われてたけど・・・内緒にしてね」
「あ・・・はい・・・」
「・・・そのワンピースすごく似合ってるわ。とっても素敵ね・・・」
看護師は眼を細めて彼女を見つめる。
「・・・彼が買ってくれたんです・・・」
彼女は嬉しそうにワンピースの裾を少し持ち上げる。
「あら、うらやましいわ。いいわねえ〜、うちなんて旦那はなーんにも買ってくれないし、私の誕生日すら忘れてるのよ。全くやんなっちゃう」
「・・・あ、でも、その時私は着れなかったんですけど・・・事情があって」
彼女はいたずらっぽく笑う。
「え?着れないのに服をくれたの?彼氏が?」
看護師は少し困惑した様子で考え込む。

363名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:22:19 ID:WvnYNwH6
これでエロなしとか続きはまた今度とかだったら最低だな
364名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:22:37 ID:Zg03zNWU
「・・・瑠奈、用意できた?」
そういうと航平は病室に入ってきた。
「・・・ええ、もうできてる」
瑠奈はそういうと紙袋を掲げ、にっこり笑った。
「どうも、瑠奈がお世話になりました。ありがとうございました」
そう言うと彼は深く看護師に頭を下げる。
「いえいえ、今井さんの生きる力が強かったんですよ。良かったですね」
その言葉に航平と瑠奈は顔を合わせて少し苦笑した。
「後、先生からお話があるからそれを聞いてから帰ってね。もう、ここに来ることになっちゃ駄目よ」
「あ・・・はい。本当にお世話になりました」
「あ、でも今度来るときは(産婦人科)のほうの受診かもしれないわね」
そういうと看護師は肩をすくめて笑った。

365名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:24:00 ID:Zg03zNWU
「懐かしいなあ・・・帰ってきたんだ、私」
瑠奈はマンションの505号室の前でしんみりとした。
「何やってんだよ?開けるぞ」
「あ・・・ちょ、ちょっと待ってよ。今、ちょっとたそがれてたのにい〜」
「あほらし・・・外でやらずに中でたそがれろよな」
そういうと彼はくくっと笑った。
「・・・ほら・・・早く入って」
そういうと玄関を開ける。
彼女は恐る恐る靴を脱いで部屋に入る。
「お邪魔しまーす・・・なんか緊張するなあ・・・でも、何か不思議」
「・・・何が?」
「うん・・・何ていうの?昔、(霊体)でここに来た時は(どうして私の部屋じゃなくなっちゃったの?)って感じだったんだけど、今は航平くんの部屋が懐かしく感じるのよね」
「そりゃしばらく住んでたからな」
「・・・そうね・・・それもあるかも・・・あ!」
居間にはいると彼女は嬌声を上げた。嬉しそうにテレビの横のチェストを指差す。
「どうしたの?あれ?可愛い!どうしてここに?」
藤の白いチェストがテレビの横に置いてある。
「買うとき恥ずかしかったんだぞ、あれ。アンタが喜ぶと思ってさ。服とか入れるのに丁度いいだろ」
「本当に素敵・・あ!観葉植物もちゃんと育ってる・・・」
「枯らすと誰かさんがうるさいから・・・でも、水やってるだけでもちゃんと成長するんだな・・・」
瑠奈は楽しげに観葉植物を眺める。彼はそんな彼女を少し嬉しそうに見つめる。
「・・・よかったよ・・・」
「・・・え?」
「瑠奈が戻って来てくれて・・・」
そういうと彼はそっと彼女を包み込む。
「・・・お帰り・・・瑠奈・・・」
彼女は航平の胸に深く顔を埋めた。
「・・・ただいま・・・」
「本当に・・・よかった・・・瑠奈・・・生きてて・・・元気になってくれて・・・」
「・・・意識が朦朧としてるとき・・・声がしたの・・・帰ってこい・・・・戻ってこいって・・・あなたの声がした・・・その時・・・私・・・生きたいって思った・・・」
「・・・こうして瑠奈を抱きしめてるなんて、何か夢みたいだ・・・」
「・・・私もまだ夢を見てるみたい・・・足、地面についてる?」
彼は顔を上げ、クスクス笑った。
「着いてるよ。しっかりと」
「よかった・・・」
彼女はそういうと再び顔を彼の胸に顔を埋める。
「・・・生きてるのがすごく嬉しい・・・航平くんの身体にこうして触れてるのがすごく嬉しい。こうしてここにまた戻ってこれたのが嬉しい・・・」
彼はそっと彼女の顔を覗き込むようにして口づける。柔らかい唇の感触。瑠奈の身体に触れている。
それがたまらなく嬉しかった。何度も何度も確かめるかのように唇を覆う。
何度目かの口づけで、彼はそっと彼女の口に舌を侵入させる。彼女は少し驚いた顔をして、彼の舌を受け入れる。お互いに舌と舌を絡ませ今までよりもずっと深く、ピチャピチャと音がするぐらいに。
「・・・瑠奈・・・どうしょう・・・ごめん・・・俺、我慢出来なくなってきた」
航平の硬くなったモノが瑠奈の下腹部に当たっている。ジーンズ越しでもそれははっきりと分かるくらいに勃起している。
「・・・大丈夫だよ・・・・私も・・・したい・・・・」
「・・・退院したばっかなのに・・・大丈夫なのか?」
「・・・平気・・・」
彼女は悪戯っぽく笑うと彼の首筋に抱きついた。

366名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:25:19 ID:Zg03zNWU
瑠奈は航平の愛撫に必死に耐えている。感じやすいようで服の上からでも彼女の息は荒くなり、フラフラと立ってもいられないほどになっている。
「あん・・・あ・・・」
頬を染めて、悩ましげな嬌声を挙げる瑠奈の姿は、航平から理性を奪った。できるだけ、退院まもない彼女を気遣うように優しくワンピースを下に脱がし、露わになった可愛いブラジャーをたくしあげて、ぷりんと音がしそうなくらい、白い乳房をゆっくり揉みしだく。
「・・・胸・・・結構大きいんだ・・・ラッキーだな・・・」
「もう・・・バカあ・・・あ!」
航平は乳房の頂のピンク色の突起にむしゃぶりつく。彼女は声にならない声をあげて、より一層顔を赤らめる。
「・・・胸だけでこんなんじゃ・・・ここは・・・すごいことになってる・・・」
そういうと彼は彼女のワンピースの下から、手を入れて下着越しに瑠奈のソコを愛撫した。
ショーツもグショグショになるくらい、彼女のソコは濡れて淫媚な音を立てている。
「あ・・・そこ・・・駄目っ!あ・・・駄目駄目・・・・!」
瑠奈の割れ目にそっと指で刺激を与え、彼女の反応を楽しむ。彼女は二人が抱き合っている航平のベッドのシーツを堅く握って、彼の意地悪な攻撃に必死に耐えている。
「・・・すごい・・・洪水みたいになってるよ・・・瑠奈・・・ホラ」
そういうと彼は彼女の膣から音を立てて指を引き抜き、彼女に見せつけるかのようにその指を視線の先に持っていく。それはヌルヌルとして、指から滴り落ちていきそうだった。
「・・・やあ・・・やめ・・・見せないで・・・」
彼女は恥ずかしそうに下を向く。その反応が愛しくて、可愛くて航平はもっと意地悪をしたくなる。
「・・・すごく美味しいよ・・・」
彼は指をそっと口に含む。瑠奈の顔が益々上気していく。
「・・・瑠奈の・・・全部舐め取ってあげる・・・」
そういうと彼女の下半身へと身体を降ろし、濡れたショーツを引き下げて、女性器を露わにする。
「・・・や・・・やだ・・・やだ・・・見ないで・・・やだ!」
「瑠奈のクリトリス・・・可愛いよ・・・ほら・・・」
そういうと彼は指で突起をいじくり、舌で刺激を与える。瑠奈は身体をくねらせ、彼の舌から逃れようとするが、航平はしっかりと彼女の腰を抱きしめ、逃さない。
「や・・・そんな・・・やめ・・・・そこ・・・汚い・・・・」
「・・・瑠奈のは汚くなんかないよ・・・こうすると中まで丸見えだ・・・」
彼は彼女の足をガバッと開き、膣の中を覗き込むように指で広げる。
「・・・・!!!!やめて!やめて!恥ずかしい・・・!見ないで!」
「・・・奥からいっぱい水が流れてくるよ・・・美味しい・・・」
「あ・・・・ああ・・・はあん・・・・っ!」
航平は彼女の膣に舌を入れ、上目越しに彼女を攻める。彼女の身体は上気して赤くなり、なんともいえない淫らな表情で瑠奈が切なそうに航平を見つめる。
・・・俺ってサドの気もあるのかな・・・?
航平はふと我に帰り、思わずそんなことを考えてしまう。瑠奈の反応がいちいち可愛くてつい言葉攻めをしてしまった。
「・・・すごく可愛いよ・・・」
思わず呟く。彼女はもう涙目になってこちらを潤んだ瞳で見つめる。
367名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:26:15 ID:Zg03zNWU
痛いくらい勃起しているのが自分でも分かる。早く彼女の中に入れたい。
彼は一気に彼女の服をはぎ取り、自分も全部服を脱ぎすてた。生まれたままの姿で二人とも抱き合う。
瑠奈はもう乱れに乱れ、可愛い喘ぎ声をあげている。彼の理性はもう持たなかった。
「・・・瑠奈・・・・もう我慢出来ない・・・入れるよ・・・」
「あ・・・・・・!・・・そのまま・・・?」
「・・・駄目?」
彼はそう言うと勃起したモノを濡れぼそっている彼女の膣へとあてがう。クチュ・・・と音を立てるくらい入口に当て、上下に動かす。
「・・・あ・・・あ・・・!」
瑠奈はもう堪らないと言ったように、身体をくねらせ、航平の胸に顔を埋める。
「・・・・駄目じゃ・・・ない・・・けど・・・」
「・・・妊娠させたい・・・瑠奈・・・」
彼女は顔をあげて、彼を見つめた。
「・・・俺の子供・・・産むのは・・・嫌・・・・?」
「ちが・・・でも・・・あ・・・っ!」
彼のモノがゆっくりと少しだけ深く彼女の中に沈む。瑠奈も限界に達していた。
「・・・欲しい・・・頂戴・・・・航平君の・・・」
「俺の・・・?」
「・・・あ・・・恥ずかしくて・・・そんな・・・言えない・・・」
彼女は真っ赤になって俯く。彼の悪戯心が膨らんだ。
「俺の・・・何・・・?」
そういうとあてがっていたモノをそっと引き抜く。ちゅぽと水音がした。
「あ・・・や・・・?ね・・・ね・・・お願い・・・・」
瑠奈は少しだけ涙を溜めて哀願する。
「俺の・・・何が欲しいの?言ってみて・・・瑠奈・・・」
「・・・・頂戴・・・・おちんちん・・・」
彼女は真っ赤になって彼に抱きつく。彼のわずかな理性は吹き飛んだ。
できるだけ体重を掛けないように彼女にのしかかり、一気に奥まで肉棒で突き入れる。ヌルヌルの膣はたやすく彼を受け入れた。
「ああああああっ!!!!」
瑠奈は身体をのけ反らせ、航平の身体にしがみつく。中はまるで生き物のように航平の肉棒に絡みつき、グチュグチュと卑猥な音を立てる。その音と彼の下半身と瑠奈の下半身のぶつかる音が混ざりあう。
「・・・ああ・・・瑠奈・・・気持ち・・・いいよ・・・」
優しくゆっくりと抜き差しを繰り返す。彼女は恍惚とした表情で彼の唇を塞いだ。
「ああ・・・・」
だらりと一筋涎が垂れる。瑠奈の顔は上気して半開きの口からは吐息に似た喘ぎ声が漏れる。
感じているのだ。
「・・・・いい?気持ちいい・・・?瑠奈・・・?」
「・・・うん・・・気持ち・・・いいよお・・・あ・・・あっ・・・中に・・・あたっ・・・て・・・・ああ・・・・おっきい・・・あ・・・・」
彼女の蕩けそうな膣の感触と乱れる姿に耐えきれず、航平はもっと奥へと子宮を激しく突き上げる。
「・・・あ!あ!・・・・っ!あ・・・!激しく・・・しないでっ・・・・!ひゃ・・・」
彼の激しいピストンに瑠奈は息も絶え絶えに答える。乳房に舌を這わせ、腰に当てていた片手でそっと彼女の敏感な突起をいじくる。もう瑠奈はあ・・・っあっ!とビクビク涙を流しながら痙攣していて、我慢出来ないように上目で彼に訴えかける。イきたいのだ。
それに合わせてもっと激しくピストン運動をする。瑠奈の泣くような喘ぎ声が一層高くなる。
彼ももう限界だった。肉棒からは先走り汁が漏れている。
「・・・あ・・・いっちゃ・・・いっちゃう!・・・・あ・・・・一緒に・・・・きて・・・あっ・・・・あ」
「・・・瑠奈・・・・・・一緒に・・・・・う・・・あ・・・も・・・・出そう・・・・!」
「・・・っ・・・あ・・・中に・・・出して・・・・・・・欲しいの・・・」
「あ・・・瑠奈・・・瑠奈っ!もう・・・俺・・・イく・・・!」
航平は彼女の身体を抱きしめ一層激しく腰を打ち付ける。彼女もビクン!ビクン!と身体を震わせる。
「瑠奈・・・・っ!瑠奈!・・・もう・・・離さない・・・」
「あ・・・中に・・・あ・・・あっ・・・出て・・・いっぱい・・・あああ!!!!」
瑠奈は航平の身体にだきついて彼の精子を受け止める。激しく、そして沢山の彼のモノが彼女の膣を満たしていく。
「・・・んっ・・・・航平く・・・・・・好き・・・・」
彼女は涙声で彼に囁く。航平もギュッと彼女を抱きしめた。
「・・・愛してる・・・瑠奈・・・大好きだよ・・・」

368名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:27:09 ID:Zg03zNWU
瑠奈と暮らし始めて何十回目かの平凡な土曜日の朝。ベッドの中で航平はまどろみつつ、軽くあくびをする。台所からいいにおいが漂っている。おそらく11時は過ぎているだろう。のそりとベッドからでて、居間に向かう。
「・・・おはよう。航平くん」
エプロン姿の瑠奈が食卓に朝食兼昼食を並べている。昨日も何回も愛し合っていたので、二人とも眠ったのは明け方に近かった。おそらく、瑠奈も少し前に起きたのだろう。
彼女の手にしたお盆には、湯気のたった大根とネギの味噌汁、ケチャップの掛ったオムレツ、ツナサラダ。皆、航平の好きなものばかりだ。瑠奈と暮らして、航平は初めて手料理の美味しさを知った。
彼女の作る料理はみんな美味しかった。
「・・・顔洗って、ご飯食べよ」
そういうと瑠奈は笑う。そこにある愛しい人の笑顔。
「ああ・・・運ぶの手伝うよ・・・」
・・・今、俺は幸せなんだ・・・
そう航平は思った。
「・・・なあ、瑠奈」
「・・・なあに?」
「・・・今日、午後から親父に会いに行く。一緒に来てくれないか?」
彼女は大きな瞳を見開いて、彼を見つめた。
「・・・ホントに!?よかった・・・お父さん、きっと航平君に会いたがってる」
瑠奈は笑顔を深くした。彼女の笑顔は航平を優しい気持ちにしてくれる。
「・・・瑠奈と会って、考えが変わったんだ。きちんと親父にあっておきたい。・・・そして、瑠奈をちゃんと紹介したい。・・・俺の結婚する人だって・・・」
コホン、軽く咳払いをして航平はあちらを向く。顔が真っ赤になっている。
「・・・今・・・俺・・・何気に・・・プロポーズしたんだけど・・・分かった?」
「・・・うん・・・分かった・・・」
彼女も顔を赤らめて、にっこりと笑った。世界一の笑顔だ。
改めて彼はそう思った。
369名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:28:55 ID:Zg03zNWU
以上です。長くてごめんなさい。
純愛スレのほうに投稿しようと思ったけどスレチなのにこっちにしてしまった。
お目汚しいたしました。
370名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 19:20:09 ID:E/s0ifIm
>>369
大作乙!
いろいろ言いたいことはあるけれどとりあえずGJと。
371名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 21:42:21 ID:27qsTaZX
>>369
確かに、純愛スレの方が合ってるかもな…

でも… 嫌いじゃないぜ、こういう話!
372名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 23:05:42 ID:dZXPNbGA
>>369
乙、よかったぁハッピーエンドで…
もう終盤鬱エンドフラグがゾロゾロ出てきてどうしようかとw
373369です:2010/09/26(日) 00:30:08 ID:2skdE7Gd
感想ありがとうございます。あまりにも長くて一部カットしましたw
自分的には死んで別れるって言うのがなんか駄目で・・・考えてたら
生霊になりました。今、夕子さんの話を読んできて「パクリやん自分」と
憂鬱な気分に浸っているところでございますw作者さんごめんなさい。
374名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 12:33:27 ID:24NInw7K
ええ話や・・・。
ありがちっちゃ、ありがちだが、綺麗にまとまってよかったw

瑠奈も航平もかわええwww
375名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 08:51:29 ID:i5wOuloN
保守
376名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 09:00:47 ID:T3R7q6vy
今はなき「かーいい幽霊」スレの職人さんはこちらに合流してるんだろうか?
377名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:30:14 ID:JJDdTfjK
ここは普通の人間だったけどある事情で人間じゃなくなってきてる娘はありですか?
378名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:37:32 ID:HCV/DZ38
ありだと思います
379名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 03:00:09 ID:/Y0EwQKm
「アタシ人間をやめるわジョジョにィーッ!!」

なんか間違えた。
380名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 23:06:29 ID:5K0yb5n8
幽体離脱少女とか? 眠ってる間に意中の相手にエロエロで迫るんだけど、
本体のほうは処女で奥手。テクとかは全部官能小説とかティーン雑誌の知識。
381名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:25:15 ID:EvFFfnJF
投下します
尻尾などが生えてるけど、ほぼ人間じゃね?な娘です
スレチだったらごめんなさい。スルーしてください
382名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:28:57 ID:EvFFfnJF
「では頼んだぞ勇者ユウリ・スペリア。そして賢者アベル・レイセスよ。魔王を倒し平和を取り戻すのだ!!」
「はっ、必ず」
「がんばりまぁす」

 旅立ちの日、町を出る前にこの国の王に挨拶しろと言われたのでさっさと行ってきたところだ。
 あのクソジジイ、この期に及んでケチりやがった。ゴミみたいな装備と50Gで旅に出ろというのだ。
 50Gで何ができる、せめて俺にも鋼の剣でもよこしやがれ。
 初日早々、なんか不安でいっぱいだ。
 魔王は魔物を統べる強敵中の強敵。簡単に倒せるとは思っていない。
 ただ、それよりも大きな不安要素が、目の前に……

「……」

 いない。城を出たところまでは一緒だったはずだが。
 ひとまず城まで引き返してみると、やっぱりいた。
 大きな門の入り口で、しゃがんで何かをやっている。

「にゃーんにゃん、いたっ! イタタタっ!」
「何やってるんだ?」
「あ、アベルちゃぁん、たすけて、あぅっ!」

 小さな黒い猫に襲われていた。
 さっさと離せばいいと思ったが、本人は混乱しているようだ。
 猫の首を摘んで持ち上げる。

「アベルちゃん、ありがとう」
「……勇者が猫ぐらいで混乱してどうする。顔見せろ」
「うん」

 ユウリから離れた猫は瞬時に大人しくなった。
 目の前で顔にひっかき傷を残し、涙目になっている勇者に回復魔法をかける。
 一応俺は賢者だから回復魔法も覚えている。
 顔の傷は見る見るうちに消えていく。

「ほら、終わったぞ」
「きもちよかったぁ」
「きもちよかったぁ、じゃない。ほら行くぞユウリ」

 のん気に笑ってるユウリを見て、反射的にため息が出る。
 猫を逃がし、ユウリの手を取ってさっさと城を後にする。
 横を見ると楽しそうに笑っているユウリの横顔。まるで遠足にでも行く子供のようだ。
 旅の目的をわかっているのかも怪しくなってきたゾ。

「アベルちゃん、魔王ってどこにいるのかな?」
「さぁな。旅をしてれば手がかりくらい見つかるだろ」

 これからの事を話しながら町を歩く。
 俺が密かに貯めていたお金で道具や装備を買い、町の入り口の前まで来た。
 しばらく帰ることない故郷を目に焼き付けて、俺達は町を出た。
 目指すは、この城下町から一番近くにある村だ。
383名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:29:29 ID:EvFFfnJF


「ふわあああ!!」

 勇者が青い透明の半液体状のモンスターに襲われている。
 いわゆるスライムという魔物。あのにやけ面を見ていると腹が立つ。
 俺も俺で同じ魔物に襲われている。

「おいユウリ、剣使え! 背中の剣!」
「え、えぇい!」

 1体1体の戦闘力はたいした事ないが、こいつ等はとにかく数で攻めてくる。
 俺は銅製の剣を使っている。斬ると言うより殴るといった感じの武器。
 一方ユウリは一応勇者、鋼製の剣を使っている。
 ただ、本人は見事なまでに使いこなしてない。
 スライム達はユウリの攻撃を軽々と避けている。

「剣をよこしてお前は伏せろ! ぶるぁっ!」

 俺に纏わりついてた最後の1匹を殴り飛ばし、勇者の救助に向かう。
 ユウリから剣を受け取り、スライム達をまとめてぶった斬った。
 真っ二つになって液状化したスライム達がユウリの上に落ちていく。

「あぅぅ、べとべとぉ」
「助けてやったんだ、我慢しろ」
「う、うん、ごめんね」

 頭から青い液体を被ったユウリは半分泣いてる。
 液体はユウリの顔や豊かな胸を汚している。
 とりあえず涙のついでに、顔や頭に付着しているのも拭き取っておく。
 胸は……あとで自分でやらせよう。
 にしても相変わらずの大きさだ。逃げ回ってる最中も揺れていた。
 しかもユウリの年齢を考えると、これがまだ発展途上だというのだから更に驚きだ。
 スライムの影響か、いつもより官能的でもある。

「アベルちゃんどうしたの?」
「……ハッ!」

 ユウリの声で我に返る。つい見入ってしまった。
 そして即効で起き上がって背を向ける。

「そろそろ行くぞ。あと何処から魔物が出てくるかわからないからお前は後ろを警戒してろ。絶対に俺の前に出るなよ、絶対だぞ!」
「え、うん。わかった」
「よし、じゃあ出発するぞ。俺の前に出るなよ、絶対に出るなよ!」

 しばらくユウリに背を向けざる負えなくなった。

 股間的な意味で……
384名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:30:01 ID:EvFFfnJF


「うぅ〜、寒いねぇ」
「そりゃお前は裸だからな」

 風が吹き、周りの木々がガサガサと音を立て、ユウリがくしゃみをする。
 今日は森の中で野宿をすることにした。
 この森はそんなに深くはない、本当ならさっさと抜けて宿屋のベッドの上で寝るはずだったんだが……
 まるで俺達を妨害するかのように、魔物たちが次から次へと襲ってきた。
 それも、スライムばかり。倒すのは簡単だったが、何故かどいつもユウリの上で倒されていった。
 そのおかげで、今も焚き火で服を乾かしている最中である。
 予備の服は胸のせいでサイズが合わなかった。よって今のユウリは、裸体に予備のマントだけというよく分からない格好をしている。

「薪が少し足りないな、ちょっと集めてくる」
「あれ? 薪ならここにいっぱいあるよ?」

 くそ、言い返せない。
 ユウリの言うとおり、薪は十分あるし火も弱くなってない。
 正直、また俺の股間が勇者になりそうなのだ。
 ムラムラ感がすごい。
 もうここは、一発放出するしかないと考えたというわけだ。

「……ほら服乾いたみたいだぞ。俺は向こうに言ってるから着替えとけよ」
「あ、ほんとだぁ」

 本当はまだ少し湿ってる感じがするが、ユウリは気づいていないようだ。
 いいタイミングである。
 早速、草を掻き分け真っ暗な森の中を進んでいく。
 適当な木の下に座り、パンツごとズボンを脱ぎ捨てる。
 その時、

「きゃああ!!」

 急にユウリの悲鳴が聞こえた。
 まさか魔物にでも襲われたか、それとも変質者か。
 どちらにしろ、急いでパンツをズボンを穿き直し元の場所に急行した。

「ユウリ、どうした!!」
「あ、アベルちゃん……」

 ユウリは焚き火から少し離れた所で蹲っていた。
 彼女の元に寄ると、俺は目に映った光景に驚いた。
 ユウリはまだ服にも着替えず、背中を見せながらこちらを見ている。
 珍しく戸惑っている様子。
 それはそうだろう。いきなり自分の体から翼と尻尾が生えてきたら誰だって戸惑う。

「アベルちゃん、これ、なに……?」
「……ジッとしてろ」

 ユウリの背中の前でしゃがみ、マントを捲りあげる。
 腰から生えている悪魔のような翼が揺れている。俺の目線はその上へといく。
 予想していたけど、やっぱり封印の魔法陣が消えかけていた。
 何とか封印を試みる。その最中、俺はあの時の事を思い出した。
385名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:31:28 ID:EvFFfnJF


 今から10年以上も前のこと
 まだほんの子供だったユウリから、今みたいに翼や尻尾などがが生えてきたことがあった。
 その時は、旅をしていた通りすがり賢者様が一時的に封印してくれた。
 賢者様は言った。これは前魔王の呪いだと。
 この呪いはユウリの成長と共に力を増していくらしい。このままだとユウリは身も心も悪魔になってしまう。
 呪いを完全に解くまでは、定期的に封印していくしかない。だから俺は賢者になった。


「……ちっ、だめか……」

 しかし、俺はまだ賢者としては未熟だった。
 呪いがこれ以上進行しないようにするのが精一杯だった。
 翼と尻尾だけならまだ獣人だと言えばいいと思うが、俺もこの旅でもっと修行する必要があるようだ。

「アベルちゃん……」

 ユウリが戸惑いの表情でこちらを見ている。
 きっと何かを知っている俺に、この事について聞きたいのだろう。
 もう隠す意味もないので、洗い浚いユウリに話した。
 俺の予想に反してユウリは大して驚きもせず、ぼんやりと話を聞いていた。

「……と、いうわけだ」
「つまり、ボクはこのままだと悪魔になっちゃうの?」
「そうだ」
「悪魔になっちゃったら、アベルちゃんやお母さんやお父さんの事も忘れちゃうのかな?」
「多分な」
「そっかぁ。でもボクにはお父さんの血が流れてるし、アベルちゃんと一緒だからきっと大丈夫だよ」
「……そうだな」

 ユウリの表情がいつもどおりになった。
 賢者様はこうも言っていた。
 呪われた者を何人か見てきたが、皆絶望していた、と。
 しかしユウリは大丈夫の一言で片付けてしまった。
 正直、ホッとした。呪いの事を話すのが少し怖かったが、いらぬ心配だったようだ。

「それにほら、尻尾だってよく見たらちょっとかわいいよ?」
「……」

 いきなり、ユウリが背を向けマントを捲り上げる。
 尻が丸見えである。
 それに細長くて黒くて先の方がハートみたいな形した、典型的な悪魔尻尾も見える。
 かわいいかどうかは置いといて、細長いものが目の前で揺れている。
 握りたくなった。無性に握りたくなった。
386名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:32:29 ID:EvFFfnJF

「……ていっ!」
「ひゃぁんっ!」
「……え?」

 もしかしたら尻尾を握られると力が抜けるとか、そういう弱点が追加されかもしれない。
 そう、これはあくまで実験である。
 自分にそう言い聞かせて、少し力を入れて尻尾を握った。
 そうしたら、ユウリが変な声をあげるではないか。
 少し驚いてしまったが、そのまま自分の尻尾を扱うようにしごいてみた。

「ひっ! あっ、ぁ……あぅっ、あ、アベルちゃ、ンっ、や、らめ……」
「……」

 まさかと思ったが、妙な声をあげ、じっとして身震いしているユウリを見て確信した。
 動物の尻尾は敏感な部分と聞いたことあるが、悪魔も例外ではないということだろうか。
 それはともかく、さっきから治まりかけていた衝動が俺を襲っている。
 股間が痛いほど、肉剣が完全覚醒してしまっていた。
 欲のまま目の前に娘に手を出すか、ライトハンドで我慢するか……

「んうぅ……あ、アベルちゃぁん……に、にぎらないでぇ……」
「……」
 
 いつのまにか尻尾を握る手に力が入っていたようだ。
 こちらを振り向き、蒼い瞳を潤ませながら震えた声で訴えるユウリ。
 それを見て、俺の中で、何かがこう理性という名の種がパリーンと弾けた。
 
387名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:33:22 ID:EvFFfnJF


「あッ、あっ、あうぅッ……んッ」

 薪が燃えるだけが聞こえる静かな森の中に甘い声が響く。
 その声は確実に俺の興奮を高め、理性を失わせる。
 思わず押し倒した時に気づいたが、下の口の方はすでに前戯が不要なくらい濡れていた。
 きっと尻尾の握ってシコシコしたせいだろうと思いつつ、上半身を重点的に責める事にした。
 俺の興奮を高める主な原因となっている、2つの大きな肉塊を乱暴にわしづかみ、その先端にしゃぶりつく。

「んッ、アっ、ひぁ……ッ!」

 先端を夢中で吸う俺は赤ん坊みたいだ。
 放置されてるもう片方の胸を揉みしだく。
 ユウリが時折わずかに痛そうな声をあげるが、動きをとめてあげない。
 触っていて気持ちいい。柔らかくて弾力がある、ずっと揉んでいたい。
 掴みながら回してみたり、軽く押し込んでみたりした後、胸の先端を指で摘む。
 少しだけ力を入れ、くりくりと先端を転がすと、なんか徐々に硬くなっていった。

「はぅ……あ、アベルちゃ……おっぱい、ばっかり……ひっ……ッ」
「んむ……じゃあ、どうしてほしいのか言ってみな」
「ぁ……、お、おちんちん、ほしい……ちょうだい、アベルちゃん……」
「わかった」

 ユウリは勇者で俺より偉い立場だ、その命令は絶対なのだ。
 というか立場云々の前に、潤んだ瞳でお願いされたら引き受けるしかないだろう。
 草の上にユウリを寝かし、俺はその上に乗る。
 肉剣を取り出し、ユウリの胸の間に埋めた。

「こ、こっちじゃないよぉ」
「どこに欲しいかは言ってなかっただろ?」
「ぅ……いじわる」
 
 本当はユウリが望むとおりにしてもよかったんだが、それじゃ面白くない。
 正直、挟みたかったというのが本音だが、彼女には黙っておく。
 掌で両脇から乳房をすくい上げ、わしづかんだ。

「ぁッ……ひぁッ……ん……ッ」

 汗でじっとりと濡れた胸は、俺の肉剣に吸い付き包み込む。
 襲いかかる乳圧は、右手なんぞ遥かに上回る快感を与えてくる。
 膣を扱うように腰を動かす。
 肉剣の先端から出る汁で滑りがよくなり、肉剣が擦れる度にユウリが小刻みに声を上げる
 そして次第に、俺の中で絶頂感が、風船のように膨らんでいくのを感じた。

「……ッッ!」
「ひゃあぁッ!!」

 その絶頂感という名の風船は一気に爆発した。
 肉剣の先から白濁液が放出され、ユウリの顔や綺麗な黒髪を汚していく。
 放出し終え、手を離し胸を解放する。

「あぅ、またべとべと……」

 息を荒くしながら汚れたユウリを見ると、昼間と同じような事になっていた。
 ただ、スライムの時と比べるとなんかエロさが増している。
 頬や鼻の上に付着している白濁液を、指で掬って舐める仕草はやばい。
 そんな彼女を見たおかげで興奮が静まらず、放出させた肉剣も未だ完全覚醒状態のままだった。
388名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:34:02 ID:EvFFfnJF
「アベルちゃん、今度は間違えないでね?」
「……わかってるよ」

 また胸でしたいと思ったが、先にユウリに釘を刺されてしまった。
 ここはユウリの望みどおりにしようと思い、彼女を四つん這いにさせる。
 ねだるように尻を振り、尻尾を揺らし、ユウリが物欲しそうにこっちを見る。
 尻尾があるせいか、なんか犬みたいだ。
 そう思いながら片手で尻の動きを止め、肉剣を小さな入り口にあてがった。
 そして……

「んッ、あッんああぁぁッ!」

 ほぼ根元まで一気に突き入れた。
 相変わらず締め付けがすごい。まるで手で力強く握られているかのようだ。
 それでいて偶にしごくように動く。
 ジッと動かなくても、絶頂感が徐々に膨らんでいくのを感じる。
 俺は一度深呼吸をした後、肉剣が抜けるくらいまで腰を引き、そしてまた一気に突き入れた。

「あぁッ、あッアぁッ、はあぁっ、あぁンッ!」

 リズムの良い卑猥な水音と肌がぶつかり合う音が聞こえる。

「はんッ! ンっ、あ、アベルちゃ……ッ、きもち、いいよ……ッ!」
「俺もだッ、ユウリ……」
「あッ! んああぁ……お、ちんちん……い、いいの、ンッ、もっと……あぁッ、もっとちょうだい……ッ!!」

 普段のほほんとしている天然娘の口から出る、猥らな言葉と嬌声。
 それを聞くたびに興奮が高まり、腰の動きにも力が入る。
 そんな中、ふと目の前でゆらゆら揺れてる物体が目に映った。
 ユウリと交わる状況を作った原因、彼女の尻尾である。

「きゃんッ!!」

 さっき握った時のユウリの反応を思い出し、再び尻尾を強く握る。
 ユウリが本当に犬みたいな声で鳴いた。
 それと同時に、膣の締め付けもより一層きつくなった。
 いかん、これはいかん!
 絶頂感が一気に高まってきた、しかもきつくて肉剣が抜けない。

「うおっ!」
「んっ! あぅ……っ!!」

 ……間に合わなかった。
389名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:46:30 ID:F5ltucvK
支援
390名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:48:41 ID:F5ltucvK
支援 
391名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:48:54 ID:EvFFfnJF

 二回目だと言うのに、かなりの量の白濁液が出るのを感じる。
 中に出すのだけは避けたかった……やるなら世界が平和になってユウリの呪いもなくしてから、
 昨日そう決めたばかりだというのに……
 なんという失態だ……万死に値するぞ、俺。
 快感と後悔が渦巻いている。まぁ元はと言えば、我慢できずに襲ってしまった俺の自業自得なんだけどね。

「アベルちゃん、早いよぉ。ボクはまだなのにぃ」
「あ、いや中に出しちまったんだけど……」
「それはいいよ、ボク、アベルちゃんとの赤ちゃんほしいもん。それよりボクもイキたいよ」

 さらにユウリが追い討ちをかけてくる。
 なんだかさり気なくすごい事を言われたような気がするけど、今はその事は置いておこう。
 その前に、女の子に早いとか言われたら男として情けない。
 男としてのプライドを取り戻すべく、ユウリのお願いを叶えるとしよう。
 一度引き抜いた肉剣はまた硬くなってきている、再び完全覚醒するのも時間の問題だ。
 それに極薄のバリアをかける、これで先ほどのようなことにはならないはずだ。
 最初からこうすればよかったんだな。

「今度は正面がいいな。キスをしながら、がいい」
「はいよ、勇者殿」

 俺は尻尾をいじりながらがよかったんだが、ここはユウリの希望を優先する。
 以前ユウリが、キスをしながらは一番好きだと言っていたし。
 正面を向かせると、赤面し、瞳を潤ませこちらを見るユウリが目に映る。
 可愛い、何だかすごい可愛い。股間の肉剣も一気に完全覚醒せざるおえない。
 彼女と繋がる時、ふと焚き火の炎が小さくなっているのに気づいた。
 薪を追加してなかったからだろう。
 俺は魔法で焚き火の炎を大きくしておく。大きくしすぎたのかちょっと暑い。
 恐らく夜が明けるまで燃え続けているであろう炎の魔法、これで魔物に襲われる心配もない。

「アベルちゃん、早くぅ」
「あぁ、悪い」

 どうやら勇者様を待たせてしまったようだ。
 炎の大きさを程よく調整し、俺とユウリは再び一つに繋がった。
 

 この日の夜、俺たちは炎のごとく燃え上がり一晩中お互いを求め続けた。
 こんな感じで旅の1日目は終了した。
 必ずユウリの呪いを解いてみせる、ついでに魔王も倒してやろう。
 
 そう……俺たちの戦いは、これからだ!!



<終>
392名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 13:52:55 ID:EvFFfnJF
どこに投下しようか迷った結果、ここに投下させていただきました
色々すまん。では失礼します
393名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 02:51:42 ID:RFLurYbS
394名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 19:44:46 ID:JAu0Vbsh
また来てくれ
395名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 13:22:19 ID:/XjHMdlu
396名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 18:45:16 ID:dx3NiPgN
このスレじゃないな
397名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 19:00:27 ID:/XjHMdlu
『猫の話』
398名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 22:43:10 ID:wWKXYKqc
>>395
どのキャラ?
399名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 03:29:01 ID:jiG6qLll
人外娘とキャッキャウフフなエロゲを教えてください

とっぱらとタユタマと天神乱漫はプレイしました
400名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 18:19:01 ID:MR+klDgU
>>399
「魔物娘との性活」とかどう?
401名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 01:42:49 ID:7Lx4AcCe
>>399
ttp://www.asobell.jp/product/miko/miko.html
人外成分は若干薄いが悪くないと思う。ちょっと古いけど。
402名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 13:33:41 ID:KZGQEFx5
>>399
古すぎだが、俺の中では「恋姫」が未だに最高の人外ゲー。人外ゲーだよね?
403名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 21:12:45 ID:nKqLGWMT
>>402
恋姫やるなら、黒大将もやらないとな
えーと、…恋姫無双じゃないよ!
404名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 23:12:08 ID:/hEnG+zW
>403
恋姫やってからじゃないと、黒大将の恋姫パートは意味分からんだろうけどな!
405名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 08:05:10 ID:VXJuy9u3
おまいらエルフ好きだな
406名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 14:46:11 ID:Q8NqUPJn
今度こんなん出るのな
ヒロイン全員人外と言いつつ
公開されてるグラ見ると人外っぽさは薄め?だけど…

体験版もあるそうなのでよろしければ
(俺はWin7 64bitなんで遊べないけどな ( ̄ー ̄))

ttp://whale.bz/oretsure/index.html
407名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 14:51:03 ID:0rWXiVCK
少し前アキバの祖父の壁のエロゲ広告がそれだった。
その絵には獣耳キャラがいたと記憶している。
408名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 15:04:19 ID:MKaJYRoQ
空気って人外だったのか…
409名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 15:08:12 ID:Vx0eKMGb
普通ならそういうのは風や大気の精霊とかなんだろうけど、
空気、ねえ・・・
410名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 15:21:59 ID:0rWXiVCK
>>406
とりあえず体験版は特段の設定もなくWin7 64bitで起動した。

てかそれよりも何よりも…
キョンwwwwwwwwww
411名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 07:55:46 ID:5sS8xGNe
結構前に、映画のキューブみたいな感じで部屋を進んで行って
その部屋毎に人外娘さんに搾られるSSがあったと思うんだけど‥‥なんてタイトルだっけ?
412ほしゅがわりの小ネタ:2010/11/06(土) 08:49:11 ID:DXX9rojR
『日本鬼子は俺の嫁ッ!』

 あ……ありのまま、昨晩起こったことを話すぜ!
「節分の豆まきをしていたと思ったら、いつの間にか嫁が出来ていた」
 な、何を言ってるのかわからねーと思うが、
 俺も何が起こったのかわからなかった。
 頭……より先にチンコが、現在進行形でどうにかなりそうだ。

 「おや、婿殿、少しは回復してきたようじゃな。どれ……(ハムッ)」

 ちょ、や、ヤメロぉ〜ジョ○カー!
 あ、タンマ、当たってる、牙がアレに当たってる!
 
 「おぉ、申し訳ない。なにぶん女子(おなご)になったばかりで、不調法でな。許してたもれ」ペロッ!
 
 くはっ、ソコは……くっ、さすが元男だけあって、ツボを心得てやがる。
 俺の精子(ライフ)はもうゼロのはずなんだが、早くも再起の予感が。

 「それは重畳。フフフ……さぁ、婿殿、心ゆくまで愛し合おうぞ」

 ボスケテ〜!

 * * * 

 マイ・ワイフがマイ・サンを「元気づけて」いる間に、もう少しだけ詳しいことをお話ししよう。
 昨日は2月3日。いわゆる節分の日だ。
 とは言え、子供のいる家庭と違って、寂しい30歳独身男にとっては、せいぜい「恵方巻きを売ってる時期」くらいの認識しかなかった。
413日本鬼子:2010/11/06(土) 08:49:57 ID:DXX9rojR
 ところが、今年はたまたま近所の商店街で買い物したら、炒った大豆をオマケにくれたんだ。
 「せっかくもらったんだし、30個食ってもまだ余るから、久しぶりに豆撒きでもしてみっか」
 ……と考えた俺のことを誰も責められないと思う。
 だが、そこでふと、一時期ネットで話題になった擬人化イラストのことが頭を過ったのは、まぁ、魔がさしたと言うべきか。
 「鬼は萌え〜! 萌えは嫁!」
 などというフザケたフレーズを連呼しながら豆撒きをしたのは少々大人げなかったと、今は反省している。
 とりあえず、小袋に残った豆を萌えヲタにふさわしい台詞で撒き散らかして満足した俺は、掃除は明日にすることにして、そのまま布団に入ったんだ。
 ところが。
 電灯を消して15分程した頃か。うつらうつらしていた俺の視界がいきなり明るくなった。
 「んぁ!? なんだ、いったい……」
 眠い目を擦りながら、起き上がった俺の目の前……ってか、すぐそばの畳の上には、ちょこんと正座して三つ指ついてる、着物美人の姿が!
 「へ?」
 「おぅ、起きていただけたか」
 腰どころかほとんど膝まで届きそうな長さの黒髪を揺らして、美人さんが笑う。
 「美人の微笑」なんて男にとっては嬉しいはずの代物が、この時ばかりは何とも物騒なモノに見えたのは……まぁ、勘が働いたのかねぇ。
 「だ、だだ……」
 「──ダダ星人?」
 「ちがーーーう! 誰だ、アンタ!? ついでにいつの生まれだよッ?」
 そんなレトロなボケする奴ァ、初めて見たよ!
 「ふむ。生まれは……正確には覚えておらぬが、おおよそ千年くらい前かの。そして、誰だと聞かれたなら……そうだな、お主の嫁だ、と言っておこうか」
 「…………はァ!?」
414名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 08:54:55 ID:xTYaLxyX
>>413
wktk
415日本鬼子:2010/11/06(土) 08:56:39 ID:DXX9rojR
 とりあえず、このままではラチがあかないと見た俺は、起き上がってこの不法侵入者らしき女性とコタツをはさんで対峙し、話を聞くことにした。
 で、和服美人が言うには、彼女はつい先程──小一時間程前までは、いわゆる「鬼」と呼ばれる存在だったらしい。
 「鬼って……筋肉ムキムキで、角があって、金棒持って、虎縞のパンツ履いたアレ?」
 「うむ。ホレホレ」
 と彼女が指差す頭部には、艶やかな黒髪の合間から確かに牛みたいな角が伸びている。
 「節分コスプレじゃないの?」
 まぁ、どうせ鬼娘やるならラムちゃんのほうが、わかりやすくていい気もするけど
 「疑い深いのぅ。では、触ってみりゃれ」
 本人のお許しをいただいたので、彼女の頭部に手を伸ばし、恐る恐る角らしきモノに触ってみる。
 「──本物だ」
 「角」はしっかり彼女の頭から直接生えていた。
 好奇心の赴くままにペタペタ触っていると、彼女が甘い吐息を漏らした。
 「あン……そ、そこは敏感ゆえ、もそっと優しゅうしてくりゃれ」
 「あわわわ、ご、ごめん!!」
 慌てて手を離し、改めて座り直す。
 「あ〜、その……嫁入り前の娘サンに、大変失礼いたしました」
 「なに、構わぬよ。どうせ、じきにお主とは他人ではなくなるのじゃからな」
 艶っぽい流し目を送られても、その、なんだ……困る。
 「し、しかし、また、なんでそんな姿なの?」
 いかにも大和撫子然とした、小造りで端整な顔立ち。
 やや小柄な身長と華奢でたおやかな肢体。
 一般的な鬼というイメージからは、いずれも程遠い。
 「おそらく……いや、間違いなく、お主のせいじゃ」
 「へ? 俺?」
 「そうじゃ。お主、今夜の豆撒きで、妙な咒(まじない)を唱えたじゃろ?」
 鬼娘が言うには、アレ──「鬼は萌え、萌えは嫁」のおかげで、本来「外」に祓われるべき「ケガレの象徴たる鬼」であったその存在が捻じ曲げられて、今の姿に具現化したのだと言う。
416日本鬼子:2010/11/06(土) 08:58:26 ID:DXX9rojR
 「えーーと、それはまた申し訳ないコトを……」
 再び深々と土下座する俺。部屋主なのに立場よぇーな、おい。
 「フフフ……謝らいでもよいわえ。むくつけき鬼と生まれて幾星霜。人に恐れられ、豆や刀もて追われる暮らしには飽き飽きしておったトコロじゃ。
 それが、偶然とは言え、このような麗しき人間の女子に生まれ変われたとは、もっけの幸い。むしろお主には感謝しておるのじゃ」
 はぁ、そういうモンすか。
 「うむ。じゃなが故に……」
 故に?
 「恩返しをさせていただこう。今日から我がお主の嫁じゃ、婿殿!」

#以上。某所に投下したネタを、こちら向けに一部改変させていただきました。
417名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 09:54:16 ID:xqwPi97u
日本鬼子ネタktkr
418名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 18:22:41 ID:InyJvsay
性転換スキーの俺にとって激しくご褒美です
419名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 00:07:19 ID:ku68CFoE
鬼っ娘か、うん
420名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 00:24:10 ID:uc+DXQzd
やっと本物のSSが来たって感じだな
421名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 00:31:45 ID:wvYy3adh
投下します。
普段は文なんか書かないのに思い付きと妄想で書いているので、おかしい・矛盾・つまらない等は御容赦お願いします。
推敲?そんなの関係ねぇ!
422ハイテク?雪女1:2010/11/11(木) 00:33:09 ID:wvYy3adh
日本には四季があり、その時々によって自然はガラリと様相を変える。特に山の変化は街や海に比べて激しい。
山は夏の緑色から秋の紅色へ色を変え、今は12月で白色だ。あんなに聴こえた鳥の囀りも聴こえない。俺はそんな静かな冬山が好きだった。
俺の名前は川崎忍、大学生だ。今はN県に登山をしに来ている。大手製菓メーカーの子会社に就職を決めた俺は残りの学生生活を趣味に使いまくっている。

今日の天気予報は晴れだったが、冬山の天気はすぐに変わり、今俺は軽い吹雪に襲われて進退出来ない状態だ。
幸い風を凌げる岩影を見つけられたし、一応食料も持ってる。しかし油断は出来ない、この吹雪はいつ止むかもわからないからな。視界が確保出来ない以上迂闊に動くのは危険だからしばらく障害物で風避けをしていた。
「やっぱり寒いな……早く吹雪止んでくれないと困るな〜」
423ハイテク?雪女2:2010/11/11(木) 00:34:27 ID:wvYy3adh
そう予想外の吹雪にぼやいていると、遠くから何か大きな音が鳴りながらこっちに向かって来る。
「ん?エンジン音?こんな山の中、しかも吹雪で?」
けたたましい爆音を響かせながら走っている何かはスノーモービルだった。
スノーモービルは俺が風をしのいでいる岩陰にくると操縦者が話し掛けてきた。
「人?こんな山奥に珍しいね。」
ゴーグルをして帽子を被っているから顔はわからないが、声からして女性のようだ。
どうして岩陰にいる俺に気付いたのかと疑問に思っていると「ここにいると凍死するよ。小屋まで連れていってあげようか?」と聞いてきたので、渡りに船だと思い俺は「お願いします」と答えた。いつまでもここにいるわけにはいかないからな。

そこから小屋に着くまでは一瞬だった。文明は凄いな。デカルチャー。
スノーモービルの音でちょっと耳が痛いのは内緒だ。エンジンがうるさすぎる。

小屋に入り、スノーモービルの女性にお礼を伝える。「すいません、ありがとうございます。助かりました。急な吹雪だったから困っちゃいまして。あ、俺は川崎忍っていいます」
424ハイテク?雪女3:2010/11/11(木) 00:36:00 ID:wvYy3adh
「たまたま通り掛かっただけだよ。遭難者が出て、山狩りになったら大変でしょ。」
と、女性は答えながら手袋・帽子・ゴーグルと装備を解く。
さっきはわからなかったが、もの凄く可愛い女性だ。年齢は17、8くらいで若そうだ。こうやって並んでみると随分小柄で、肌も白い。街中ですれ違ったら男は誰もが振り向くだろう。
装備を解くだけでなく、「ふい〜、暑い暑い」と言いながら防寒ウェアを脱いでインナーだけになり、華奢な身体を見せ付けて来る。「暑いか?むしろ寒いくらいだ」と思うが、感覚は人それぞれだ。
「あたしは雪花。この山の冬の管理人さね。管理人っていっても大したことしてないけどね。まあ、よろしく。」
インナー姿は多少目のやり場に困るので目線を合わせないように話す。
「管理人?地主さんの娘さんかな?」
俺は小屋の囲炉裏を使ってお湯を沸かしながらそう質問する。
425名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 00:38:25 ID:wvYy3adh
「ああ〜、違う違う。あたし雪女なんだよね。だから冬の間はこの山を管理してるの。面倒臭がりだから歩かないでモービル使ってるけどね。」
「へ〜、大変だね」と返しながら沸かしたお湯で香味焙煎を作り、一息つく。
俺の友達にも自称火喰い鳥や自称がんがんトンネル魔人という妖怪や(ロジカル)モンスターがいる。こんな女性がいても不思議じゃあるまい。一応助けてもらったから邪険には扱えない。しかし相手にしてたらキリがない。
「信じてないな〜。証拠見せれば信じる?」
「そらまあ実際に目で見れば……」
そう答えながら熱いコーヒーを啜ると、彼女が後ろから抱き着いてきた。
柔らかい感触が背中に当たり一瞬ドキッとしたが、体温が異様に冷たい。まさか……起き上がりか!?
「忍さんのコーヒー熱そうだからあたしがフーフーして冷ましてあげるよ」
そういうと、彼女は後ろから俺のコーヒーに息を吹き掛ける。一瞬でホットコーヒーはアイスコーヒーならぬコーヒーアイスになってしまった。
悪戯っぽい笑みを浮かべながら雪女は「ど、信じた?まだ信じられないなら更に凄いことしてあげるけど。」と言う。
426名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 00:41:36 ID:wvYy3adh
とりあえずこんくらいで許してください。四つ目タイトル入力忘れましたw
今はエロシーン頑張っているのですが、如何せん進まなくて……
続きが完成次第また投下に来ます。
427名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 08:48:11 ID:5/Um+qU3
積極的で可愛いですね
続きに期待
428名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 09:30:31 ID:+If2wUMh
    + 。 *   ワクワクテカテカ  +
ツヤツヤ  ∧_∧  +
 +   _(u☆∀☆) ギトギトヌルヌル
  ⊂ (0゚ ∪ ∪。⊃ +
⊂ ゚̄ と_u _)__)゚  ̄⊃ + ワクワクキラキラ
  ⊂_。+   ゚+_⊃
    ⊂__⊃.  +  * +   ワクテカ  +
429名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 23:19:49 ID:q/LWy5uo
>>426の続き、投下します。
当方ケータイからの投稿なので細かいことは御容赦お願いします。
430ハイテク雪女、4飛んで5:2010/11/12(金) 23:20:51 ID:q/LWy5uo
「にわかには信じられないけど、本当みたいだな……更に凄いことって、何が出来るんだ?雪女ってのは(倒置方)」
少し興味が沸いて俺が聞くと。この雪女はじゃあ教えてあげると言って軽くキスをしてきた。
「フフーフ、知ってる?雪女に魅力された人間は魂を抜かれて死んじゃうんだってさ。」
「!?」なんだ、この流れ。ヤバい気がする。
命の危険を感じて雪女から逃げようともがくが、上手く身体が動かない。
「大人しくして、逃げようとしても無駄よ。キスしたときに魅力の呪いを掛けさしてもらったからね。」
「な、なにをするだぁー!!」と叫ぼうと思ったが、雪女に口を塞がれた。
二度目のキス。今回唇を重ね、舌を入れてきた。お互いのの唾液が口の中で混ざる。雪女の唾液は富士の雪解け水のように冷たい。本当に体温が無いようだ。
431ハイテク雪女6:2010/11/12(金) 23:23:11 ID:q/LWy5uo
命が吸われるような長い接吻が終わり、二人の唇が離れるときに唾液が糸を引いてから切れる。
「ふふ、大人しくなったね、忍くん。でも忍くんのココは全然大人しくないよ。」
そう言いながら俺のズボンを脱がし、下半身をあらわにする。そしてヘソまで反り返った俺様のピー(誇張表現)を見て雪女は驚く。
「すごく……おおきいね……化け物みたい。あたしにこんなことされてそんなに嬉しいの?ん?」
「う、うるさいぞ雪女、生理現象だ。」
「やあねぇ、こんな状況なんだから雪女なんて他人行儀?で呼ばないで雪花って呼んでよ。」
雪女はヘソまで反り返った(以下略)を一舐めして更に続ける。
「それに、そんなに生意気な口を聞くんだったら本当に凍り漬けにしちゃうゾ。それが嫌なら口はこう使いなさい。」
言い終えると雪花(凍り漬けは嫌だ)は俺を押し倒し、性器を俺の顔の前に持ってきた。俗に言うシックスナインの体勢だ。
432ハイテク雪女7:2010/11/12(金) 23:24:24 ID:q/LWy5uo
いくら身体の自由が利かなくても舐めたり腰動かしたりは出来る。一方的にやられるのは癪だからこのさい思いっ切り抵抗してやる。
「ひゃん!ちょっと、嫌だ嫌だ言いながらもちゃんとやることやろうとしてるじゃない。」
雪花の秘部を舐めたらそう言われたが、この際プライドは捨てることにする。
「ん、ふぅ……」
秘部を弄るたびに何かしらの反応がある。そんな雪花は一生懸命に俺のS&WM500マグナムを口で頬張る。まるで冷蔵庫でギンギンに冷やした海草由来のエキスで出来た潤滑液(ローション)でいじられてるみたいだ。たまらなく気持ちいい。
こちらはもうイキそうなくらいに気持ちがいいので、雪花にもその気持ち良さをおすそ分けする。
「ふわぁあああ!」
ポツリと出てた小さな豆を激しく刺激すると、雪花の身体に電氣が流れたように痙攣した。どうやら果ててしまったようだ。今回は俺の勝ちだ。
「あ、あうぅ…いきなりそんなに激しくするなんて反則よぉ…」
肩で息をしながらそう呟いた。
433ハイテク雪女8:2010/11/12(金) 23:26:27 ID:q/LWy5uo
俺の方はというと、雪花を先にイカしたことでどうやら魅力の呪いとやらも解けたようだ。これからは俺のターン。
「人を襲うような狂暴な妖怪はやはり退治しないとな」
「え?」
どうやら呪いが解けている事に気がついていなかったようだ。
先程とは逆に、今度は俺がこのマヌケな雪女を押し倒す。そして雪女の体液でびしょ濡れの冷蔵庫に俺のボロニアソーセージを収納する。
「は、はうぅぅん!くぅ…ふ、太いぃ…」
「ちゃんと、はぁ、中も冷たいんだな。」
俺は腰を揺らしながら雪女の中を楽しむ。少し楽しくなってきたぞ。
「ん…はぁ…あ、あたし、雪女だって…言った…じゃ、ない…ひぅ……。」
「ああ、本物だ。雪花の中、冷たくて気持ちがいい。それに可愛いよ。」
そういいながら、雪花の首筋にキスをする。するとより一層膣が締まる。
「あ、ダメだ。俺もう出そう。」
さっき射精出来なかった俺のスカイツリーは既に限界に差し掛かっていた。
「忍、中は駄目よ。ちゃんと外に出してね。って、あっ!こら中で出したな!」
そう、出そうと言った時点で既に出ていたのだ。決して早撃ちマックではない。
434ハイテク雪女9:2010/11/12(金) 23:28:33 ID:q/LWy5uo
「あ…熱いぃ……お腹の中が焼けちゃう…」
実際焼けるなんて事は無いのだろうが、命の重さは雪花にはそう感じるのだろう。
「……スマン、あまりにも具合が良かったから我慢出来なくて。」
「う〜、自己管理も出来ないなんて社会人として最低よ。」
妙に現実的な事を言う奴だ。
「ははは!雪女さんに社会人を語られちゃったな。」
「それはそうと、途中で止めちゃったからアタシまだイッてないんだけど、どうしてくれるの?忍くん。」
そういうと雪花は俺の首に手を回して唇を奪ってきた。第2ラウンドの開始だ……


結局そのあと次の日の朝までお互いの身体を楽しみあった。当然とっくに吹雪も止んでいたし、雲一つ無い快晴になっていた。
雪花曰く命を奪うと言うのは冗談だったらしい。中には本当に奪う雪女もいるらしいが、雪花はそんなことはしない自称・良い雪女らしかった。
その後、スノーモービルで山の麓まで送ってもらい再開を約束した。
435ハイテク雪女10:2010/11/12(金) 23:29:23 ID:q/LWy5uo
「じゃあ俺はもう帰るよ。」
「ねぇ…近いうちにまたあたしに会いに来てよ。」
そういい、雪花はまた俺の唇を奪った。
「ああ、いいよ。また来るさ。」
と俺が答える。嘘だ。俺は社員研修が始まるから今回が最後の旅行。社会人になったらなかなか山になんか来られなくなる。雪花を悲しませないための言い訳。俺だってまた会いたいさ。
そんな事も知らず、雪花は軽く手を振り、微笑んでからスノーモービルのエンジンを吹かして、また山に消えて行った。
雪花がいなくなった後、嘘をついてしまったことを後悔したが、もうどすることも出来ない。
社会人として落ち着いたらまた来よう。そう自分に言い聞かせて帰路についた。


436後日談?:2010/11/12(金) 23:30:14 ID:q/LWy5uo
俺は今、新入社員研修で就職先の研修センターにいる。今日から研修だ。子会社とはいえ流石は大手、俺と同じ新入社員が沢山いるな。
研修を始めるにあたって、これから社長の挨拶がある。だが俺は今だに雪花についた嘘を引きずっていた。
「え〜、これからあなた達新入……」
社長の話すら頭に残らない。
「専務の私の前フリが長くなりましたが、社長からのご挨拶があります」
俺はこんなんで社会人としてやっていけるのだろうか?雪花の「自己管理もできないようじゃ社会人として最低」という言葉が響く。
雪女に魅力された人は死ぬというのもあながち嘘じゃないかもな。これじゃあ死んでるも同然か。
「新入社員の皆さん初めまして、社長の雪花といいます。これからは社会人として責任持って行動してください。ましてや性交為だけして逃げるような真似は許しません。」
回りからは「社長面白いね」だの「社長若くて綺麗」だの聞こえるが、あまりにも驚き過ぎて俺は倒れて医務室に運ばれてしまった。
俺は騙されたのだろうか……まったくをもって散々な研修になりそうだ。
437名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 23:39:35 ID:q/LWy5uo
以上で終わりです。お目汚し、失礼しました。
言い訳をさせてください。
どこがハイテクかというと、本当は人間社会にバリバリに慣れまくってて
LEDアク〇スとかマック〇ックとかの最新家電が置いてある山小屋で暮らしてたり、iP〇d持ってたり、着ているものがユニ〇ロのヒ〇トテックだったりとか、世間の雪女のイメージから掛け離れたの書こうと思ったんです。失敗してこうなりましたw
モービルにしか活かされていませんw
更に、本当は九尾の狐と雪女のハーフ(狐耳・尻尾の雪女)という自分の好み100%を書こうと思ったんですが、ネタが出てこないのでこんなのに変わっちゃいましたw
以上言い訳終わりです。
この後の話も考えてあるって言えば考えてあるんで、機会があれば書かしていただこうと思います。
438名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 11:15:11 ID:gNoV3jC8
おつかれさま、GJよ
やっぱハッピーでないとねw
439おちゃめ君:2010/11/16(火) 17:09:55 ID:q+eM+Hsj
 午前二時頃になって栗本時雄の病室へ顔色の悪い看護婦が現れ、
「栗本さん、退院ですよ」
と言った。
「はあ」
 あまりにも唐突だった為、冗談とも思ったが、書類を持っていたので本当の事だと
分かった。
「しかし、こんな時間に…まあ、いいか」
 手続きをする間、そんな事を考えていたが、一ヶ月前、交通事故に遭って入院していた
時雄にとって、退院は何よりも嬉しい知らせである。
 実際、それほど大した怪我でもないのに、入院の期間が長すぎると時雄自身も思って
いたのだ。

 事故時に頭を強く打ったため、様子を見る期間を長く取ると医師は言い、入院中は
親族や友人たちが毎日のように見舞いに来てくれた。
 おかげでさほど退屈はしなかったが、やはり学校へは行きたかった。
 看護婦にいざなわれ、安置所の前を通って裏口を抜けると外界である。
 あいにく霧が出て、初秋というのにやたらと寒かった。
「迎えは…いる訳ないか」
 自宅までは約二キロ。
 病み上がりとはいえ、高校生の足なら三十分もかからない距離だ。
 時雄は元気良く歩き出した…と、その時である。

「時雄」
 そう言って足音もなく暗闇からすっと現れたのは、クラスメイトの大里由里だった。
「由里。迎えに来てくれたのか?」
「うん、看護婦さんから電話をもらったから。心配してたんだよ」
 由里は女性が特別な異性にだけ向ける微笑で時雄を見つめた。
 時雄は退院を告げに来たあの看護婦の顔を思い浮かべつつ、由里を抱きしめる。
「ずっと会いたかった」
「私も」
 看護婦の粋な計らいであろうか、ガールフレンドが迎えに来てくれた事は、
時雄を喜ばせた。

「話したい事が一杯あるんだ」
「私もよ。時雄、会いたかった」
 時雄はもう一回、由里を抱きしめた。
 もともと華奢な体だが、久しぶりに触れた彼女は、だいぶん痩せたように思える。
 それだけ心配をかけたのだと時雄は理解した。
「行こう」
 由里は時雄の手をつなぎ、病院裏の坂道をゆっくりと下りだした。
 二人が歩き出すと夜空の雲がわずかに切れ、月が顔をのぞかせたが、
またすぐに隠れてしまった。
 人気のない道をいくらか歩くと公園に出て、二人は人工池のほとりで腰を下ろす。
 
440おちゃめ君:2010/11/16(火) 17:14:25 ID:P9JuKHMM
「退院祝いしなくちゃね」
 そう言うと由里は唇をぎゅっと時雄に押し付けてきた。
 霧のせいか、随分と冷たい口づけに感じた。
 由里が押す形で二人は芝の上に寝転び、細い手が時雄の胸の上で
もどかしそうに円を描く。
「ねえ、入院中、ずっと私の事を考えてくれてた?」
「そりゃ、もう…」
 当たり前だと答えようとして、時雄の思考は止まった。
 先ほど顔をあわせた時、自分の口からはずっと会いたかったという言葉が出た。
 記憶をゆっくり辿ると、見舞い客の中に何故か彼女の姿が無い。
 しかも、思い出そうとすると、頭が締め付けられるように痛むのだ。

「うっ」
 顔をしかめた時雄を、由里が心配そうに見た。
「大丈夫?」
「なに、頭が少し痛くなっただけさ」
「無理をしないでね」
 少し間を置いてから、胸元にあった彼女の手が時雄の下半身に及んだ。
「ここ、エッチな看護婦さんとかが触ったりしなかった?」
「しないよ」
「入院中はどうしてたの?」
「トイレ行って、一人でやったり…」
 ここでまた、不安に似た感情に時雄は襲われた。
 やはり入院中の記憶には一切、由里の姿が無いのである。

 恋人関係にあった彼女が、一度たりとも見舞いに来ないという事は変である。
 つき合っている事は誰もが知っていたし、親公認の間柄であったので、
遠慮は必要ない。
 どれだけ考えても答えが出なかったので、時雄はもしかしたらこれが事故の
後遺症なのかもしれないと思った。
「怖い顔してる」
「ちょっと考え事をしてたんだ」
 由里の手が時雄の陰茎を握っていた。
 
「口でしてあげようか?」
「うん」
 野外という事もあり、少し戸惑いはあったが、時雄は由里の申し出をありがたく
受け入れた。
 躊躇よりも恋人の肌に少しでも触れたいという願望が優先されたのである。
 また、先ほどから付きまとっている暗雲のような不安も払拭させたかったのだ。
 由里は陰茎を頬張ると、頭をゆっくり上下させた。
 時雄の手は彼女の胸元に伸び、ふくよかな乳房を下から支えるような形で揉む。
 しかし、良く知る恋人の体は、まるで初めて触れるかのような新鮮味に溢れていた。
(やっぱり、頭を打ったせいだな)
 一応の納得ができると、時雄は由里の胸をいっそう強く揉んだ。
441おちゃめ君:2010/11/16(火) 17:18:32 ID:P9JuKHMM
 ブラジャーのパット越しにでも分かる突起を指でつまむと、興奮で陰茎に痛みに似た
刺激が走る。
 記憶は曖昧だが、以前にもこうして彼女を弄んでいたのだと思うと、気持ちが妙に
高ぶった。
「どうしよう?私、上になって…する?」
「うん」
 こんな真夜中にまさか病院近くの公園へ来る酔狂な者もいないだろうという事で、
由里はスカートの中にさっと手を入れると、ショーツを片足だけ残して脱いでしまった。
 さすがに素っ裸にはなれないので、時雄が寝転んだままの状態で、由里がその上に
跨るという方式を取る。

「うっ」
 由里は唇を噛みながら、スカートの下で陰茎を女穴に飲み込んだ。
 誰も来ない筈だが万が一の事もあるので、二人は互いに声を出そうとはせず、
性器と性器がこすれ合う音ばかりがした。
 たまにカエルでもはねたのか池に水音がすると、二人はそちらに目をやり、
何事も無いと分かると顔をあわせて苦笑いをする。
 そんな事を何度か繰り返すと次第に慣れ、もう後は由里が体を揺らしているだけで
あった。

 久しぶりに味わう恋人の体を時雄は堪能した。
 陰茎は痺れるような快楽を得て、はちきれんばかりである。
 また、服を半分だけ脱いだ由里の姿は官能的で、見た目にも興奮する。
 そのうちに時雄は由里を這わせ、後ろから覆いかぶさった。
 闇の中でこのような行為に耽っているせいか、時雄は五分もしないうちに大量の
子種を由里の女壷の中へ放ち、彼女の背中へ崩れるように倒れこんだ。
「はあ、はあ」
「良かった?時雄」
「ああ…」
「嬉しいわ」
 二人は体を入れ替えて抱き合うと、深く濃厚な口付けをした。
 
 公園を出て再び小道をいくらか歩くと、不意に由里が妙な事を言い出した。
「あの道…」
「あの道がどうした?」
 そこは駅に繋がる大通りで、由里も時雄も通学路として利用していた。
 また明日からはそこを通るのだろうと、時雄が漠然と考えていると、
「…割と最近、事故が遭ったんだよ」
と、放心したように由里は言うのである。
「へえ、知らなかったな」
 入院していたので近頃の事を、時雄は知らない。
 それ故、曖昧な返事しか出来なかった。 
442おちゃめ君:2010/11/16(火) 17:23:44 ID:P9JuKHMM
 大通りへ出ても霧は晴れず、そのせいか車の往来も無い。
 少し寂しい気もするが、由里と一緒にいるので、時雄はむしろ静かな方が
ありがたかった。
「あそこ…」
 由里が指を差す方向に花束とお菓子などが置いてある。
 そこが事故現場なのか、手紙のような物も捧げられていた。
「ああ、あれが今、由里の言っていた…」
 ここで時雄は殴られたかのように頭が痛んだ。
 誰かが思い出すな、引き返せと叫んでいる。
 その声は時雄自身だった。

「う、ううっ!」
 脳裏にぼんやりと浮かぶのは、由里の姿である。
 場所は今と同じ──だが、時刻は昼間だった。
「時雄、危ないよ」
「平気だって。ほら、由里も早く来いよ」
 視界には行き交う車、そして自分が走っている事を感じる。
 通学時、足の速い時雄は歩道橋を渡るのを億劫がって、往来の激しい車道を
走って横切る癖がついていた。
 いつも一緒にいる由里も、いきおいそれについていくのだが、時々、ひやっと
する場面があった。

 そういう場合、大概は車の方でよけてくれて、大事には至らない。
 そして、この時もそうなる筈だった──
「キャーッ!」
 その叫びと同時に耳を劈くようなブレーキ音を時雄は聞く。
 大通りを走ってきたのは制動距離の長いミキサー車だった。
 由里──と叫ぶ間も無く、恋人の体は時雄の視界から消えた。
 後の記憶は、何か人のような物体が凄まじい勢いで横っ飛びし、自分がそれに
すがろうとして車道へ慌てて飛び出した際に聞いた、後続車のブレーキの音だった。

(思い出せないんじゃない)
 時雄の足はすくんだ。
 隣にいる由里は青白い顔をしたまま、微動だにしない。
 花束や供物と一緒に置かれている手紙の宛名は、幸い読めなかった。
 しかし、読んだらきっと自分は発狂すると時雄は思っている。
(思い出さなかったんだ)
 霧はますます濃くなっていき、時雄は頭の中に四十九日という文字が浮かんだ。

おちまい
443名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 21:41:32 ID:zSNssua1
こえー
444名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 00:48:07 ID:7g6VBXKz
これはいいじわ怖オチ……
445名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 01:27:06 ID:qEOoDAuy
はい次の方どうぞ〜
446名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 02:03:02 ID:JfQFlW4s
山神狐巫女続編まだあああああああ
447名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 13:29:48 ID:9V0IoJkr
ちょっ……ゲーム誌見たら次の「風来のシレン5」に狐っ子の美人姉妹(巫女風)が仲間に……だと!?
やべー、「シレン」は3まででストップしてたけど、妄想補助のためにも買っちゃうかも。
448名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 15:21:58 ID:1LFouQEu
温感スライム娘にズブズブ包まれて昼寝するとか言う
めちゃめちゃマニアックな夢を見ちまったorz
449名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 09:59:36 ID:x8JaHIiL
>>446
いい加減そういう催促が過疎った原因だって気づけ
450名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 21:16:18 ID:PUYtRYQ/
ただ待つことしかできないのか・・・・
451名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 02:05:07 ID:Au8+VpJw
>>450
違うな、スレが落ちないようにしつつ待つんだ。
452名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 03:19:20 ID:+ul6QSsK
>>450
君も、待たせる側に回ってみないかね?
なぁに大したことじゃないさ
さぁ、こちら側へ来るんだ・・・
453名無しさん@ピンキー:2010/11/24(水) 03:39:22 ID:sZn90OP7
ゴブリンまだー?
454名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 20:31:15 ID:NvAJ9eTn
黄昏乙女アムネジアの展開に(*´Д`)ハァハァ
455名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 01:34:36 ID:epxH6DJt
保守しとくか
456名無しさん@ピンキー:2010/12/06(月) 18:06:27 ID:UucTuI6L
どうにも濡れ場書くのが難しい
457若旦那:2010/12/06(月) 21:05:33 ID:kvIMWfSC
保守代わりに昔のを投下。
ちなみに続きません。
458若旦那:2010/12/06(月) 21:05:58 ID:kvIMWfSC
保守代わりに昔のを投下。
ちなみに続きません。
459雪女 A面:2010/12/06(月) 21:08:32 ID:kvIMWfSC
雪女 A面

「あぁ、やっちまったな」

白い、白い、視界にあるもの全てが白い。
目の前に広がるのは真っ白な世界、真冬の吹雪の山の中で、俺は絶望的な状況下にいる。
知識もあった、経験もあった、今まで培ってきた自信が仇となり、油断を生んだ。
今まさに、俺は極寒の雪山で遭難しているのだ。

「ははっ、俺の運もここまでか」

独身で、両親はいるが今は1人暮らし中。この山に来ることは誰にも話していない。
もちろん携帯もつながらない。
春に遺体が発見されて新聞の3面記事に載る惨めな自分のことを考えると、
情けなさで思わず笑いがこみ上げてきた。
だが、往生際の悪い俺は、残った僅かな体力でゆっくりゆっくりと歩みを進める。
視界は相変わらずゼロ、冷たい雪が強風と共に体に叩きつけられ、体力と体温を削ってゆく。
‘ドサッ’
大いなる自然に対する僅かな抵抗もむなしく、ついには力尽きて倒れ、雪の冷たい感覚が顔を刺激する。
うつ伏せで雪の中に倒れこんだ体の上にも容赦なく雪が降り注ぐ。
まるで、俺を覆い隠そうとしているようだ。
このまま目を閉じれば、眠ってしまえば楽になれる、これ以上苦しまなくてすむ。
そんな消極的なことを考えつつも、死を望まぬ本能が前へ進めと俺を急かす。

「!!」

最後の力を振り絞って起きようとした時、吹雪の切れ間に人影が見えた気がした。
突然のことに目を見開いて確認するが、再び吹雪が全てを覆い隠す。

「ついには幻覚まで見るようになったか……もう長くは無いな」

愛用のピッケルを杖代わりに立ち上がると、再び歩みを進める。
一歩、二歩、三歩……
だが、三歩目を踏み込んだところで、再び倒れこんでしまった。


死を望まなくとも、知識と経験が絶望的な状況、それも助かる確率が無いことを導き出してしまう。
(もういいや、山で死ねるなら本望だ)
それからはもう動くことをやめ、体の上に降り積もる雪を払おうともしなかった。
数分もすると体の半分近くが雪に覆われ、その姿は山の景色に融けてゆく。
自分の意識が遠のくのを感じながらゆっくりと目を閉じ、
死んだ後はどこへいくのだろうなどと考えていたが。

「今はまだ、死んでもらっては困る」

幻聴ではない、人の、それも女の声が聞こえた。
閉じていた目を開けようとしたが、もう力が残っていないせいか、瞼を完全に開ける事すらできない。
残された僅かな視界で声の主を確認すると、そこには確かに“人”が立っていた。
「雪、女?」
この世の物とは思えない姿を見た直後、意識は周りの雪のように真っ白になった。
460雪女 A面:2010/12/06(月) 21:09:38 ID:kvIMWfSC

生きることを諦めて眠った人間の男、その体に近づくのは人の形をした別の存在。
真っ白な肌、真っ白な髪、そして真っ白な着物を身にまとった存在がそこにあった。
その白い存在に映える紅い瞳だけが異様な雰囲気をかもし出しており、
“雪女”と呼ばれるモノに酷似している。
また、細いウエストと胸の大きなふくらみは、その存在が“女”であることを強調していた。
女は身を屈め眠る男の首筋に手を触れると、まだ暖かい血の流れを感じ取った。
男の命がこの世にあることを確かめると、その華奢な体で楽々と男の体を持ち上げ、天を仰いだ。
そして、女の紅い瞳に光が燈ると、目の前には白い景色と対照的な真っ暗な空間が現れた。
それは、薄っぺらな扉のようなもので、中は漆黒の闇で何も見えない。
女が男を抱きかかえたままその空間に入り込むと、その扉は消えてしまった。
山は、何事も無かったかのように吹雪いていた。
461雪女 B面:2010/12/06(月) 21:10:41 ID:kvIMWfSC
雪女 B面


「誰かが……死ぬ?」

ある雪山で、人の命が尽きるのを感じた。
正確にはまだ尽きていないが、吹雪の山の真ん中にいるこの人物に宿る灯火は段々と小さくなる。
おそらく生きて下山する事ができないのが瞬時に分かった。なぜなら私は“雪女”だから。
どこで生まれたのか、どこへ消えるのか分からない。気が付いたら存在していた自分。
その自分が雪女だということは、なぜか認識できた。
今まで何度も人の命が尽きるのを感じてきたが、生きているうちに自分で何かすることは無い。
人は雪山で死ぬと心の灯火が消え、魂は凍えたまま山に束縛される。
私の仕事はその凍えた魂を救い上げ、天に返すことだから。
存在したときからずっとそうしてきた事で、今まで何の疑問も持ったことは無かった。
だが、ある時疑問が生じた。
(私は幾つもの魂を天に還してきた、でも、私はいつになったら天に還れるのだろう?)
自分と言う存在への疑問、“人”という存在への関心……いや、興味といったところか。
人を知れば自分が天に還る方法も見つかるかもしれないと考えたとき、消えそうな灯火を見つけたのだ。

「行こう、行けば、何かが変わるかもしれない」

今まで本能的に行う事のなかった、生きた人間との接触。
意を決してその山へ行くと、人が倒れていた。
残された僅かな命を振り絞って立ち上がろうとしているのを吹雪の合間に眺める。

「!!」

ふと、目が合った。
目が合った瞬間、今まで感じた事の無い不思議な感覚が心の中に流れ込んできた。
人が立ち上がり、一歩、二歩とこちらへ近寄ってくると、心の中から何かが沸きあがってくる。
人という存在に接触しようとしている自分への警鐘、いや、“恐怖”に近い感情かもしれない。
自分も退くことを考えたが、人は三歩目を踏み込んだ直後に再び倒れこんでしまった。
見ると、人は生きることを止めようとしているのが分かる。
462雪女 B面:2010/12/06(月) 21:11:19 ID:kvIMWfSC

「今はまだ、死んでもらっては困る」

せっかく人を知る機会にめぐり合えたというのに、目の前の人は死のうとしている。
人は目を少し開いてこちらを見たが、すぐに力尽きてしまった。
倒れた人のそばによると、首筋に手を伸ばし、触れた。
だが、肌に触れた瞬間にビクッと反応するとすぐに手を離してしまう。

「今の、何?」

今まで感じた事の無い“何か”を感じ、不思議そうに自分の手を眺める。
それは人間の“温もり”というものだが、それが何か分からないのだ。
それが何かは分からなかったが、なぜか、人の生きている証拠だということは認識できた

「連れて行ってあげる、私の家へ……」

天を仰ぐと、眼前に“扉”を出現させる。自分の住処への入り口だ。
そのまま吸い込まれるように扉に入ると、その空間はすぐに閉じてしまった。
山は、何事も無かったかのように吹雪いていた。
463名無しさん@ピンキー:2010/12/07(火) 00:28:58 ID:+FTUDbXF
エロシーンマダー
464名無しさん@ピンキー:2010/12/07(火) 23:00:03 ID:dAHuHTyk
俺の好きな雪女物ktkr!
全裸で正座して待ってます。
465名無しさん@ピンキー:2010/12/10(金) 07:16:32 ID:ptq7AgMu
ニャル子さんってクトゥルー萌えらしいがどうなんだろう
466名無しさん@ピンキー:2010/12/10(金) 08:32:21 ID:f3r6Iaqa
× クトゥルー萌え
○ 萌えクトゥルー
467名無しさん@ピンキー:2010/12/11(土) 21:11:02 ID:h/Z0t0vI
クトゥルー神話はこのスレで7年ぐらい前に通った道だなー
468名無しさん@ピンキー:2010/12/11(土) 22:13:50 ID:GqsO75C7
懐かしくなってまた会いに行ってしまった
469名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 02:27:47 ID:immKdsgC
ほっしゅ
470名無しさん@ピンキー:2010/12/17(金) 01:36:00 ID:vFNTnXmx
元気にしているだろうか
『G』さえも懐かしい
471猫が恩返し:2010/12/18(土) 01:05:27 ID:eARdPm5d
投下します
472猫が恩返し 1/4:2010/12/18(土) 01:05:55 ID:eARdPm5d
猫が恩返し 3話 雪の日の話
前編 買い物帰り


 自動ドアが閉じる。
 頬を撫でる空気に、正博は一度目を閉じた。皮膚に刺さるような冷たさである。トレーナ
ーの上にジャンパーも着込んでいるが、それでも寒い。右手には手提げの買い物袋。中
身は買ってきた野菜や肉である。
 いつも買い物に来ているスーパーマーケット。

「ご主人様……」

 隣には人の姿をした猫又のシロがいた。

「寒いですねぇ」

 外見は十代後半くらいの少女。背中の中程まである白い髪と黄色い目、頭には猫耳が
生え、腰の辺りから尻尾が二本生えている。厚手のダッフルコートを着込んで、首には赤
いマフラーを巻き付けていた。服は全て人間のものである。

「天気予報じゃ今夜から雪が降るって言ってたからね」
「雪はあんまり好きじゃないです」

 シロが猫耳を垂らす。
 空には灰色の雲。朝からずっとこの曇り空で、気温も下がってきている。今は五度くらい
らしい。天気予報では、低気圧の影響によって晩から明日の夕方にかけて雪が降ると言
っていた。積もるようである。
 正博は近くの屋台を指差した。

「鯛焼き買って行こうか?」
「はい」

 笑顔で頷くシロ。
 シロと一緒に鯛焼きの屋台へ行き、正博は中のおじさんに声をかけた。

「すみません。鯛焼き下さい」
「あい、いらっしゃい。何にしましょう?」

 計算機から目を離し、笑顔を見せるおじさん。軽トラックを改造した移動式屋台で、暖房
もあるため、周りは暖かかった。品書きの写真には、小倉や抹茶餡、クリーム、チョコ、チ
ーズ、黒胡麻、ジャーマンポテトなど色々な鯛焼きが並んでいる。
 人差し指を咥え、品書き写真を眺めて尻尾を動かしているシロ。
 正博は財布を取り出しながら、

「何がいい?」
「うーん、お肉の鯛焼きがあったら、それを頼みたいんですけど……無いですよね」
 期待するように、シロがおじさんを見る。
「はは、残念だけど肉は無いねぇ。ごめんね」

 と、おじさんが笑った。
 正博は苦笑しながら、その様子を見る。
 白い髪に黄色い瞳、猫耳や尻尾を付けた女の子。シロから自分の容姿を言い出さない
限り、他人がそれに気を留めることはない。そういう仕組みのようだった。曰く、猫の神様
に姿眩ましのお守りを貰ったらしい。
473猫が恩返し 2/4:2010/12/18(土) 01:06:31 ID:eARdPm5d
「う〜ん……。ん……」

 尻尾を揺らしながら、指を咥えて、目を移動させる。
 だが、結局何を頼むのか決まらず、尻尾を垂らしながら振り向いてきた。自分の代わり
に選んで欲しいという合図だろう。

「じゃ、小倉とチーズをお願いします」
「はい。二百二十円になります」

 正博は財布から百円玉二枚と十円玉二枚を取り出し、受け皿に乗せた。
 おじさんが紙袋に鯛焼きを入れ、差し出してくる。

「ありがとうございます」

 正博が紙袋を受け取るのを眺めながら、シロが笑顔で礼を言った。
 鯛焼きは保温機の中に入っていたおかげで暖かい。
 スーパーマーケットからアパートまでは徒歩で十分ほど。遠くもなく近くもない距離。シロと
一緒に歩いていると、すぐに着いてしまう印象がある。
 鯛焼き屋を振り返りながら、シロが難しそうな顔をする。

「最近じゃ、チーズとかクリームとかチョコレートとか、黒胡麻とか。随分種類あるんですね。
昔は黒餡と白餡くらいだけだったのに」

 シロの言う昔がどれくらい昔を指しているかは分からないが、確かに最近は鯛焼きの種
類も増えた気がする。ジャーマンポテトやピザ鯛焼きなど、もう鯛焼きではない。
 買い物袋を肘にずらし、正博は紙袋から鯛焼きをひとつ取り出した。

「はい。チーズ鯛焼き。シロが好きそうな味だから」
「ありがとうございます、ご主人様、さっそくいただきます」

 両手で鯛焼きを受け取るシロ。嬉しそうに尻尾を動かしている。
 口をあけて、それを食べようとしてから――ふと動きを止めた。

「ところで、ご主人様。ご主人様は鯛焼きはどこから食べるんです? 頭ですか、背中です
か、お腹ですか、尻尾ですか? それとも丸呑みとか」

 最後の言葉が引っかかったが、それは聞かないことにする。
 正博は普通に答えた。

「俺は頭からかな?」
「じゃ、わたしもそうします」

 素直に頷き、シロは鯛焼きの頭に噛み付いた。よく焼けた小麦粉の生地と中のチーズを
口に入れ、満面の笑顔で味わっている。しばらく口を動かしてから、呑み込んだ。
 口から白い息を吐き出し、嬉しそうに猫耳を動かすシロ。

「美味しいです〜。ご主人様も一口どうですか?」

 チーズの見える鯛焼きを差し出してくる。

「お言葉に甘えて」

 一言断ってから、正博はシロが持っている鯛焼きに噛み付いた。前歯で小さく噛み千切
ってから、もごもごと口を動かす。口に広がる生地の甘味と、チーズの塩味との独特な調
和。鯛焼きとしては不思議な味だが、決して不味くはない。
474猫が恩返し 3/4:2010/12/18(土) 01:07:16 ID:eARdPm5d
 ふぅと息を吐き出し、正博は笑った。

「美味いな。ありがとう」
「へへ。あとでご主人様の鯛焼きも一口下さいね♪」

 シロは再びチーズ鯛焼きを食べ始める。
 瞬く間に全部食べてしまい、シロは満足げに吐息した。

「チーズ鯛焼き美味しかったです。また食べたいですね」

 自分の指を舐めながら、シロが笑う。猫耳を動かし、尻尾を揺らしながら。子供のように
無邪気な笑顔だった。
 正博は買い物袋に目を落とす。

「そういえば、晩ご飯何にしようか?」
「ステーキが食べたいです」

 シロが即答する。人差し指を立てて、黄色い目の瞳孔を大きく開いていた。きらきらと瞳
の中で輝く星。猫耳と尻尾も自己主張をするように、ぴんと伸びている。

「ステーキって……」
「わたしが普通の猫だった頃から、このよく焼けたお肉は美味しいんだろなぁと思っていま
した。それに、猫は肉食動物ですから、お肉が好きなんですよ」

 尻尾を振りながら、シロが両手で正博の左腕を掴む。
 元々肉食動物だけあって、シロは肉が好きだった。猫は魚を好むとも言うが、それは魚
をよく食べる日本での話であり、実際には肉の方が好きらしい。しかし、人間になるには、
食事も人間的なものに切り替える必要がある。
 左手に持っていた鯛焼きを買い物袋に入れ、正博はシロの頭に左手を置いた。

「駄目だよ。野菜も食べなさい」
「うぅ。野菜は苦手ですぅ」

 イヤそうな顔をするシロ。
 正博は今日買ったものと家にあるものを頭に思い浮かべ、

「今日はうどんでも作ろうかな」
「肉うどんですね!」

 ぱっと表情を輝かせるシロに、正博は曖昧な笑みを返した。

「考えておくよ」


  ― ― ― ―
475猫が恩返し 4/4:2010/12/18(土) 01:07:43 ID:eARdPm5d
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした!」

 こたつに向かって、二人揃って頭を下げる。
 買ってきた野菜と肉を刻んで入れた肉野菜うどん。しかし、今はどんぶりの底に僅かに
残るつゆだけとなっていた。薬味の効いた熱いうどんを食べ、腹も膨れて身体も暖かい。
こたつと暖房が付いているため、室温も過ごしやすい。
 しかし、染み込むような冷たさがある。

「んー。寒いですね?」

 シロが視線を動かす。
 正博は両手を突いて座布団から立ち上がり、室内サンダルを穿いて窓の横に移動した。
空気が冷たく、サンダルを穿いた足に微かな空気の流れが触れている。
 カーテンを開けると、予想通り雪が降っていた。

「冷えるわけだよ、かなり本降りになってる。もう少し積もってる……」

 ぱたぱたと傍らまで歩いてきたシロ。
 感心や驚きが入り交じった、間の抜けた表情で窓の外を見つめている。

「うわぁ、降ってますね」
「天気予報で言ってた通りだよ」

 音もなく降ってくる白い氷の結晶。近くの民家の屋根や、木などにうっすらと積もっていた。
黒い夜の色に雪が白く浮き上がり、なんとも幻想的な光景である。
 身体を震わせ、シロが窓辺から離れた。

「うー、寒いですね。じゃあ、ご主人様は先にお風呂に入っちゃって下さい。わたしは食器
の片付けとかをしておきますから」
「お言葉に甘えさせてもらうよ」

 窓から離れ、正博は頷いた。
476名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 01:08:04 ID:eARdPm5d
以上です

続きはそのうち
477名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 01:50:27 ID:dPfEkbAS
GJ、ふたりの日常に和んだ!
478名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 02:05:08 ID:vKuMCJML
ああ…俺も猫耳美少女の嫁が欲しい…
479名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 04:07:48 ID:MBtr/Xlo
ほのぼのGJ!!
480名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 13:09:04 ID:DXuJzwy8
まずキャラがあざとい。−
次に分割投下。−
次に人間以外じゃなくてもいい。−
最後にエロがない。−

今のとこ15点
481名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 17:47:27 ID:Vzidnts2
>>478
俺でよければ
482名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 17:50:24 ID:vKuMCJML
オレっ娘なら大歓迎ですが男の娘なら結構です
483猫が恩返し:2010/12/18(土) 19:48:40 ID:XbuB5fPB
投下します
484猫が恩返し 1/4:2010/12/18(土) 19:49:15 ID:XbuB5fPB
猫が恩返し 3話 雪の日のお話
中編 雪の夜


 しんしんと雪の結晶が降りてきている。
 窓辺の壁によりかかり、正博は外の景色を眺めていた。フローリングの床に座布団を敷
いて、両足を伸ばして座り、毛布を身体に巻き付けている。足から伝わってくる冷たさも、
不思議と心地よい。
 夜の闇に白い雪の結晶が浮かび上がり、幻想的な色合いを見せていた。

「何してるんですか、ご主人様?」

 振り向くと、シロが立っている。
 丁度風呂から出たところらしい。身体にバスタオルを巻いただけの恰好だった。猫耳や
白い髪の毛、尻尾が微かに湿り気を帯びている。
 正博は毛布から手を出して、窓の外を指差した。

「こうやってぼーっと雪を眺めてると、なんというか、心が落ち着く」
「そうなんですか。風流ですねぇ」

 納得したように頷くシロ。何か思いついたらしく、ぴんと猫耳が伸びた。
 身体の向きを入れ替え、壁に付いているスイッチを押す。部屋を明るくする蛍光灯が消
えた。明るかった部屋から、一瞬で光が消える。さらにリモコンを掴み、暖房を消した。シ
ロは座布団を一枚持ってから窓辺へ行き、いきなり窓を全開にする。
 外から流れ込んでくる冷たい空気。

「うなぁ、寒い……!」

 身体を撫でる冷気に、シロは猫耳と尻尾を伏せて目を閉じる。
 慌てて正博の前までやってくると、

「ご主人様、入れて下さい! 想定外に寒いです!」
「あ、ああ」

 正博は頷いて、毛布の前を開けた。
 シロは正博の両足の間に座布団を置く。なんとなく足を動かし座りやすい場所を作ると、
シロは迷わずそこに腰を下ろして、体育座りをした。バスタオル一枚のまま。
 その意図を大体察し、正博は素直に毛布の前を閉じる。毛布を手で掴んだまま、優しく
抱きしめるように。シロも毛布の縁を掴む。

「……で、何してるの?」

 同じ毛布にくるまった正博とシロ。二人で首だけだしたような恰好である。

「こういうのってなんかいいですよねー」

 シロが楽しそうに笑いながら、猫耳を動かした。
 雪の日の夜。電気を消し、暖房を消し、窓を開ける。部屋と外を隔てるものは無くなって
いた。内と外の境をあえて取り払い、雪の寒さと美しさ楽しむ。

「風流だな」

 正博は少し強くシロを抱きしめた。
 微かなシャンプーの匂い。
 外から流れてくる冷たい空気と、シロの暖かな身体。部屋に灯りはない。窓の外では夜
の闇に、小さな氷の結晶が無数に降っていた。ちらほらと民家の灯りが見える。道路や屋
根や植木などに積もった雪が白く浮き上がっていた。
485猫が恩返し 2/4:2010/12/18(土) 19:50:20 ID:GqPUeELO
「なんだか不思議な感じですね」
「だね」

 シロの呟きに、正博は頷く。

「このまま吸い込まれそう……」

 静謐な空気に、思わず声が小さくなってしまう。
 年に何度も見られない雪の夜。それは、日常とは違う異界だった。自分たちがそこにい
るのが、場違いなようで、気を抜くと向こう側に連れて行かれてしまうような、淡い恐怖を感
じる。だが、その恐怖も心地よい。
 正博は右手を毛布から出し、そっとシロの頭を撫でた。

「シロはやっぱり、"シロ"なんだよな」
「何ですか、急に」

 首を傾げるシロ。
 すぐには答えず、正博は丁寧にシロの頭を撫でる。人間に化けているとはいえ、元々は
猫。人間とは髪の毛の手触りが少し違っていた。猫を撫でるように手を動かしていると、シ
ロが心地よさそうに目を細めるのが分かった。
 ゆらゆらと揺れる二本の尻尾が、正博のお腹を撫でている。

「ぅー」

 指で顎の辺りを撫でると、小さく声を漏らした。尻尾をゆったりと動かしているのがわかる。
身体から余計な力を抜いて、正博の手にその身を預けていた。
 シロをじゃらしながら、正博は口を開く。

「大切に飼っていた老白猫が姿消して、しばらくたってその猫が人間の少女になって恩返
しにやってきたって話。実はまだ完全に信じているわけじゃないんだ」

 毛布の縁から見える、色白の滑らかな肌。艶やかな曲線を描くその肢体は、紛れもなく
人間の少女そのものだ。しかし、シロは人間ではない。

「うーん。わたしも時々これが夢なんじゃないかって思う事ありますから」

 正面を向いたまま、シロがそう呟く。
 普通の飼い猫として生きて、猫又になって、人間に化けて飼い主の元にやってきて、さら
に人間になって生涯の伴侶になろうとしている。一介の猫としては、相当に規格外の一生
を送っているだろう。

「でも、シロが来てくれて、僕は嬉しいよ」

 正博は両手でシロを抱きしめた。
 小さく細い身体だが、それは紛れもなくシロの身体だった。人間のようで人間ではない、
猫のようで猫でもない、まだ中途半端な猫又のシロ。

「わたしも、正博さんとこうして一緒になれて、とっても嬉しいです」

 正博の腕に頬摺りしながら、シロが囁く。
 その微かな声が、冷たい空気と降り積もる雪に吸い込まれて消えていった。何も言わぬ
まま、シロが正博の腕に頬を寄せている。静かに雪は降り、二人を邪魔するものはない。
冷たい空気が頬を撫でる。
486猫が恩返し 3/4:2010/12/18(土) 19:50:54 ID:GqPUeELO
 白い雪の降る漆黒の夜。静謐な時間。
 ふと思いつき、正博は口を開いた。以前にも同じような事を言った記憶があるが、

「そういえば、いつまでも『シロ』じゃまずいかな」
「まだ人間の名前を貰っちゃ駄目なんです。色々と順番があるんです」

 腕から頬を離して、シロが答える。やや残念そうな声だった。
 しかし、明るい声で続ける。

「でも、先に決めておくのは大丈夫と言われました」

 正博は少し考えてから、シロの白い髪の毛を撫でた。人間ではまず見られない生まれつ
いての白い髪の毛。白猫のシロは髪の毛も白い。

「じゃ、ユキだな」

 そう告げる。
 シロが肩越しに振り向き瞬きをした。

「雪が降っているから雪ですか?」
「それもあるけど」

 頷いてから、正博は苦笑を見せる。

「親の話だと、シロがうちに来た時に"シロ"にするか"ユキ"にするかもめたらしい。シロっ
て名前の女の子はいないと思うけど、ユキって女の子はいるからね」
「どっちも安直な名前ですね。変に気取った名前付けられても困りますけど」

 呆れたように猫耳を伏せるシロ。
 ガラス戸ががたりと音を立てる。
 風が吹き、冷たい空気が部屋の中に吹き込んできた。白い雪の結晶がフローリングの
床に落ち、溶ける。風はすぐに止まったが部屋の寒さは消えない。

「にゃぁ……」

 シロが猫耳を伏せる。
 正博は口から出る白い息を見つめた。

「さすがに冷えてきたかな?」

 外の気温は零度近い。ついさっきまで暖房の効いていた部屋の空気も、外の冷気に触
れて温度が下がっている。壁に預けた背中からも、冷気が伝わってきた。骨の髄に届くよ
うな寒さ。雪の日の寒さを遮るのに毛布一枚はさすがに心許ない。
 風流に雪を眺めて風邪を引いてしまったのでは、笑い話にしかならない。

「そろそろ……」

 言いかけた正博の言葉を遮り。
 シロがおもむろに口を開いた。何故か得意げに。

「こういう時は身体と身体で暖め合うものですよ、ご主人様?」
「そういう知識ってどこで手に入れてくるんだ?」

 シロの頭を押さえながら、ジト眼で訊く。
487猫が恩返し 4/4:2010/12/18(土) 19:51:49 ID:GqPUeELO
 元が猫だからなのか単純にそういう性格なのか――おそらく後者だろう。シロは性的な
方向に好奇心旺盛だった。言動を見る限り、既に純粋な猫だった頃からそのような知識は
あったように思える。
 白い眉毛を内側に傾け、シロは言い切った。

「乙女の秘密です」
「………」

 無言のまま。
 正博は握った両手を、シロのこめかみに押し付けた。

「にゃ……」

 ぐりぐりぐり。

「にあ゙あ゙あ゙あ゙! 痛いッ、痛いです、痛いです! ご主人さま、待って! 本当に痛いん
ですよ、これ! ンにあああ! ごめんなさい うにゃあああ!」

 十秒ほどお仕置きしてから、手を離す。
 目尻に涙を浮かべ、ぐったりとうなだれるシロ。猫耳と尻尾を垂らして、小さく痙攣してい
る。たった十秒だが、それで体力の大半を奪われてしまったような有様だった。
 しばらくして、復活したシロが振り向いてくる。

「それに、男の人は可愛い女の子の誘いを断っちゃ駄目です」
「まったく、この猫又は……」

 乾いた笑みを浮かべ、正博はシロの頭を撫でた。
488名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 19:52:20 ID:GqPUeELO
以上です。

回線事情により、
続きは一週間後くらい
489名無しさん@ピンキー:2010/12/18(土) 21:09:20 ID:dqI779YT
ちっちゃいスレともども待ってますよん(^_^)ノ
490名無しさん@ピンキー:2010/12/19(日) 03:39:07 ID:emwM/rVc
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) +
491名無しさん@ピンキー:2010/12/19(日) 08:29:51 ID:TgfHfm5F
またエロがない。−
無駄な分割投下。−
マルチ行為。−

今のとこ20点
492名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 15:32:25 ID:7ekAovSq
>>488
ここはお前の落書き帳じゃないんだけど・・・
スレを私物化するつもりならそれ相応の対応をするが
493名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 15:57:17 ID:CnC/u1Wa
最終的にちゃんと完結して
ちゃんとエロいシーンがあればok
臆することなくガンガン投下してくれ
494名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 22:20:32 ID:SoXBlzP9
ちゃんとエロ書いてくれる人なんだけどなあ…。
せめて1、2話も読んだ上で評価して貰えんものか。

>>488
ゆっくり続きをお待ちしてます。
495名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 23:49:07 ID:+ZBhNlXY
>>488
不平をいうヤツは無視して
ご自分のペースで書いてください。
続き楽しみにしてますんで
496名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 11:55:26 ID:hXKCf3cu
日常の話も好きだけどな
続き待ってます
497猫が恩返し:2010/12/21(火) 18:40:26 ID:hgGwVV7S
回線復帰したので
投下します
498猫が恩返し 1/6:2010/12/21(火) 18:40:57 ID:hgGwVV7S
猫が恩返し 3話 雪の日の話
後編 シロの提案


 右手をシロの肌に触れさせる。
 湯上がりで少し熱を帯び、部屋の空気に触れて少し冷たくなったきれいな肌。猫ではあ
るのに、肌の感覚は人間と何ら変わりがない。肩から、背中を通り、一度髪の毛を指で梳
いてから、バスタオルの縁を指でなぞった。

「ん」

 二本の尻尾が小さく動く。指から逃れるように、シロが身体を捻った。
 しかし、動きを止めることはない。正博はバルタオルの上から、人差し指をシロの胸に走
らせた。きれいな曲線を描く胸の膨らみ。
 指を押し込むと、その分を押し返してくる。

「んー……」

 シロは両手で毛布を掴んでいた。猫耳が不安げに動いている。
 縁を軽く引っ張ると、バスタオルがあっさりと解けた。シロの肌を落ちる衣擦れの微かな
音が、無音の部屋に妙に大きく響く。

「大丈夫、力抜いて」

 正博はそう告げて、左手でシロの肩を抱きしめた。
 安心したのか、ふっとシロから力が抜けるのが分かる。覆うものの無くなったシロの肌に、
正博は再び右手を触れさせた。胸の膨らみの縁を下からなぞるように。そして、腋の下を
くすぐり、脇腹の辺りへと。

「ん……。ご主人様……」
「あまり、声出さないでね」

 一度宥めるようにシロの頭を撫でながら、正博は指でシロの腋をくすぐる。指の動きにあ
わせて、産毛もないような肌が微かに粟立ち、猫耳が細かく動いていた。二本の尻尾が落
ち着き無く揺れている。

「くすぐったいですよ……」

 小声で言ってくるシロ。
 腋を撫でる指の動きはそのままに、正博はそっと猫耳に息を吹きかけた。

「にゃ!」

 身体を小さく跳ねさせる。尻尾がぴんと伸びた。
 困ったような顔で、シロが振り向いてくる。

「ご主人様ぁ……」
「ごめんごめん」

 謝りながら、正博はシロの胸に右手を触れさせた。
 手の平よりも少しだけ大きな丸い膨らみに、優しく指を押し込む。張りのある弾力が、指
を押し返してきた。五指の動きに合わせて、形を変えていく乳房。

「うんっ……」

 シロが肩を竦ませる。
499猫が恩返し 2/6:2010/12/21(火) 18:41:28 ID:hgGwVV7S
 欲望に任せて蹂躙したくなる衝動を抑えつつ、正博はあくまでも優しく丁寧にシロの胸を
愛撫していく。指先で縁をなぞるように撫で、円を描くように手の平を動かし、先端の突起
を人差し指の腹で転がすように弄った。

「はぅっ、んん……ぁぁぁあぁ……」

 微かに背筋を逸らして顎を持ち上げ、シロが喉から甘い声を絞り出していく。毛布を握る
両手に力がこもった。猫耳を動かし、二本の尻尾を伸ばしている。
 目の前で小刻みに向きを変える猫耳。
 正博は白い猫耳に優しく噛み付いた。

「んにゃ!」

 シロの身体が一度大きく跳ねる。
 猫耳の甘噛みはやめぬまま、右手を下ろしていく。胸から、お腹へと。緩やかな曲線を
描いているお腹を撫でてから、脇腹の辺りを手の平で軽くくすぐった
 シロは手から逃れようと身体を捻るが、毛布の中では逃げ場はない。

「あっ、ん……なぁぁ……」

 口からこぼれる、悩ましげな声音。
 冷たく暗い部屋に、シロの声が大きく響いている。自分の声を聞きながら、シロは興奮を
高めているようだった。肌が火照り、うっすらと汗が滲む。
 猫耳から口を放し、正博は小声で言った。

「あんまり、大声出さないでね?」
「だって……ご主人様が……」

 言い返してくるが、構わず首筋に舌を這わせる。

「ぅなぁああ」

 猫のような鳴き声。
 うなじから肩の辺りを舐めながら、今度は両手でシロの全身を撫でていく。胸やお腹から、
腕や太股、背中まで。手の平で皮膚の形を写し取るように。

「あっ……」

 滑らかな肌を正博の手が撫でるたびに、シロの身体が震え、猫耳と尻尾が跳ねる。手か
ら逃げるように、手を受け入れるように、身体をくねらせていた。

「にゃぁ……」

 敏感な部分に触れるたび、シロが小さく声を漏らす。
 灯りの無い冷たい部屋。窓の外では、音もなく白い雪が降っていた。微かな空気の動き
が、雪の結晶を部屋に舞入れている。白い結晶は、フローリングの床に落ち、音もなく溶
けて水となっていた。空気は冷たく、暗い。

「あっ、ふにゃ……」

 部屋に響くのは、シロの甘い声のみ。
 正博はシロを撫でていた手を一度止めた。

「ご主人さま……ぁ……」

 気の抜けた声をかけてくるシロ。肩越しに振り向いてくる。黄色い瞳にはうっすらと涙が
滲み、荒い呼吸が空中に白い霞を映していた。
500猫が恩返し 3/6:2010/12/21(火) 18:42:01 ID:hgGwVV7S
「こっち向いて、シロ」

 正博はシロの身体を持ち上げ、その前後を入れ替えた。
 シロが掴んでいた毛布が落ちる。
 雪明かりに照らされたシロの肢体。やや乱れた白い髪と、惚けたような黄色い瞳、だらし
なく緩んだ頬、白い肌、細い手足、きれいな半球系の乳房、細いお腹、何も生えていない
下腹部。それらが、淡い雪光に浮き上がっていた。
 妖艶で、どこか畏怖すら覚える姿。

「シロ」
「ご主人様」

 お互いに小さく呟き、正博とシロは唇を合わせた。
 柔らかな唇を合わせ、舌を絡ませる。唾液を交換するような、濃厚な口付け。お互いに
相手の背中に両手を伸ばし、身体を抱きしめる。
 淫猥な唾液の音が、頭の中に大きく響いた。
 舌を舐めあい、じっとりと相手を味わってから、どちらからとなく口を放す。
 唾液で濡れた唇を人差し指でそっと撫でから、シロが微笑んだ。無邪気なようで、艶めか
しい笑み。それは、まさに猫のようである。

「ご主人様、もういいですよ」

 開いた右手で、すっと秘部を撫でた。
 持ち上げた指は、透明な液体で濡れている。
 正博は息を呑み込んだ。胸の奥が焼けるように熱い。伸ばしていた足を一度折り曲げ、
緩い正座の姿勢を作る。寝間着の前を開くと、大きく勃ったものが姿を現した。
 シロが一度息を呑んでから、腰を持ち上げた。
 右手でそっと正彰のものに触れ、自分の膣口をその先端に触れさせる。

「……」

 ぞくりを背中を走る痺れに、正博は右手を握り締めた。一度息を吸い込んでから、シロ
の腰に両手を添える。緊張しているのか、少し震えているようだった。
 シロが腰を沈ませていく。

「あっ、ふあぁ……」

 甘い声とともに、猫耳と尻尾がぴんと立った。
 正彰は両手でシロの身体を抱え、挿入を助ける。シロが腰を落とすに従い、正彰のもの
が、シロの体内に呑み込まれていった。暖かく湿った肉の壁をかき分ける。思わず射精し
てしまうかと思うほどの快感だった。
 そうして、正彰のものが完全にシロの膣に呑み込まれる。
 少し苦しげに片目を閉じながら、シロが呻いた。

「ご主人様の、大きいですよ……」
「普通だって」

 シロの頭を撫でながら、正博は苦笑する。
 下腹を撫でながら、シロが嬉しそうに笑った。

「ここに、ご主人様のが入ってるんですねぇ」
「だなぁ」
「じゃ、動きますよ」

 そう言ってから、シロはゆっくりと腰を動かし始めた。熱を帯びた肉の凹凸が、正博のも
のを上下に扱く、と同時に正博のものがシロの膣内を掻き回している。
501猫が恩返し 4/6:2010/12/21(火) 18:42:32 ID:hgGwVV7S
 無音の部屋に響く淫らな水音。

「ん……ああっ……。気持ちいいです……!」

 シロが両手で口を押さえるが、声を抑えることはできない。
 腰から背骨を駆け上がる痺れに身を震わせつつ、正博は左手でシロの身体を支えてい
た。後ろに倒れないように。二本の尻尾が揺れていた。

「ご主人様のものが……わたしの中を……」

 腰の上下運動を加速させながら、シロが恍惚とした表情を見せる。だらしなく口を開け、
身体を逸らして、ただ下半身から全身に広がる快感を貪っていた。
 後ろに流れた白い髪、丸い乳房が無防備に晒されている。
 正博は左手でシロの身体を支えたまま、その身体に右手を触れさせた。
 胸の膨らみや、腋やお腹、お尻を丁寧に愛撫していく。冷たい空気に晒されながら、そ
れでも熱を帯びたシロの肢体。

「ンにゃぁ……」

 手の動きに、シロが切なげな声を出す。その間も、腰の動きは止まらない。シロの快感
が、絶頂に向かって登っていくのが分かる。それは正博も同様だった。

「ふあぁ、ご主人様ぁ……気持ちいいですぅ……」

 シロが両手で自分の身体を抱きしめる。

「じゃ、もっと気持ちよくなってね」

 そう告げて、開いた右手をシロの後ろ腰に回した。猫又の証明である、二本に分かれた
白い尻尾。個人差があるらしいが、シロはほぼ根元から二股に分かれている。
 迷わず、揺れる尻尾の付け根を摘んだ。

「うなぁ!」

 シロの喉から漏れる、猫のような声。
 そこは猫又のシロにとって、最も敏感な部分である。正博はシロの反応に満足しながら、
尻尾の付け根を攻め始めた。右手の人差し指と中指でとんとんと叩きながら、左手で尻尾
の一本を丁寧に扱く。あくまで優しく丁寧に。

「あっ。ふあ、はっ、はっはぅ、尻尾……だめ……」

 腰の動きはそのままに、新たに加わった別方向からの快感に、シロはぱくぱくと口を動
かすだけだった。無防備状態になった神経に、快楽が染み込んでいく。

「ご主人……さま……? あっ、ああああっ!」

 融けたような黄色い目を向けてくるシロ。その性感が戻らぬところまで行くのを確認して
から、正博は尻尾から手を放し、両手をシロの背中に回した。

「シロ、好きだよ」
「!」

 お互いに抱き合い、深い口付けを交す。
502猫が恩返し 5/6:2010/12/21(火) 18:43:03 ID:hgGwVV7S
 同時にシロと正博は絶頂を迎えていた。深く身体と心に染み渡るような一体感。何度も
小刻みに身体を震わせるシロ。正博は締め付けてくる膣内へと、ありったけの精を解き放っ
ていた。びりびりと背筋が痺れる。
 舌の絡め合う淫猥な音。
 一度口を放し、頬を紅潮させながら、シロが笑った。目元に涙を滲ませ。

「わたしも……ご主人様が大好きです! んっ」

 そして、再び唇を合わせる。
 正博とシロはその余韻を味わうように、繋がったまま無言の口付けを続けていた。

 窓の外では、変わらずに雪が降っている。
503猫が恩返し 6/6:2010/12/21(火) 18:43:34 ID:hgGwVV7S
エピローグ


「こたつは暖かいですねー」

 肩までこたつに入ったまま、シロが嬉しそうに笑っていた。
 電気を付け、窓を閉め、エアコンとこたつを再開する。冷えた部屋の空気が、温度を上
げていた。しばらくすれば、元の暖かい部屋に戻るだろう。

「風邪引いたら元も子もないからね」

 正博はシロの頭を撫でながら、苦笑した。

「にゃぁ」

 シロが心地よさそうに目を閉じて頬を緩めている。
 ふと目を開けて、窓を見た。今はカーテンが閉じているが、外では雪が降り続いている。
もう二、三センチくらい積もっているようだった。

「たくさん積もりますかね?」
「天気予報じゃ積もるって言ってたけど」

 猫耳の縁を指でくすぐりながら、正博は答えた。
 明日の朝までに十センチほどの積雪があるらしい。朝起きたら、一面銀世界になってい
るだろう。晴れるのは、明日の夕方のようだった。
 窓に指を向け、尋ねる。

「積もったら、雪合戦でもする?」
「いえ――!」

 黄色い目を見開き、シロは断言した。

「一日中おこたで丸くなってます」
504名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 18:44:06 ID:hgGwVV7S
以上です
505名無しさん@ピンキー:2010/12/21(火) 18:55:12 ID:z74zyj/m
GJ!

…なんだが
やっぱり今までのことを考えると100点はあげられない
55点で
506名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 01:09:06 ID:UfbGeFuE
ねこカワユス!

あーもー、たまらんですよ。
GJ!>504
507名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 13:14:01 ID:+FWUVqIW
おこたで丸くカワユスGJ!!
508名無しさん@ピンキー:2010/12/28(火) 08:24:44 ID:l9qaAplG
…10点減点

45点で
509Blue Liquid:2010/12/30(木) 18:32:27 ID:JUDq3fBU
投下します
510Blue Liquid 1/4:2010/12/30(木) 18:32:58 ID:JUDq3fBU
Blue Liquid 第3話 ルクの空腹
前編 美味しそう?


 街外れに使われなくなった見張り台がある。

 その東向きに一部屋。床や壁、天井も頑丈な圧縮煉瓦で作られている。元々、兵士の
詰め所として造られた建物だ。その役目を終えた今は、一人の作家が居着いている。
 雨期にしては珍しく晴れた朝。窓から朝日が差し込んでいた。
 部屋の隅に、大きな鍋が置かれている。直径五十センチ、高さ五十センチほどの寸胴
鍋だった。主に、スープを取ったり、長時間の煮込みなどに使われる円筒形の鍋。

 その蓋が、横にずらされた。

 が、落ちることはなく、内側に取り付けられた鈎が鍋の縁に引っかかる。
 鍋の中身は、青色で透明な液体だった。
 その液体が縦に伸び上がる。一度人間の背丈ほどの高さになってから、さらに人型へと
近づいていく。横に伸びていく二本の腕。そのまま足が別れ、顔立ちが作られ、平坦な身
体に凹凸が生まれ、十秒ほどで人間に近い形状へと変化した。

「朝になりましたネ。今日は晴れデスカ」

 緑色の瞳を窓の外に向けて、頷く。
 それは、青い女だった。見た目の年齢は二十歳ほどだろう。身長は百六十センチ強で、
背中の中程まで伸びた髪と、女性特有の凹凸のある身体。もっとも、マネキンのようで作
り物っぽい。全身が透明な青い液体でできていて、うっすらと向こう側が透けて見える。髪
の部分は青緑で色合いが濃い。
 胸の奥には、核である赤い球体が浮かんでいる。
 わきわきと右手を握って開く。その手が、だらりと溶けた。

「最近、少し固まりが悪いデスね……?」

 皮膚筋肉織部分だけでなく、腕の内部骨格もいまいち柔らかい。全身の固定力が弱まっ
ているようだった。雨期で湿気が多いせいかもしれない。

「えイ」

 溶けた組織を引き寄せ、右手を強引に固形化させる。
 人と同じような形になった右手を、握って開く。今度は問題無い。

「これで大丈夫デス」

 スライムの少女――ルクは鍋を跨いで外に出た。今まで寝床にしていた鍋を見下ろす。
主であるサジムと一緒に金物屋で買ってきたのだ。

「それにしてモ、なかなかよさげな寝床デス。本来はこのように使うものではないと思いま
すけド、便利なのでヨシとしまス。やはり、料理器具って侮れませんネェ」

 無感情に感心してから、ルクは近くに置いてあったサンダルに足を通した。
 それから、クローゼットを開ける。中には、サジムに買って貰った服や、自分で買った服
などが何着かしまわれていた。服が無くとも別に困らないが、普通に行動する時はなるべ
く人間のように振る舞うようにしている。

「今日は何を着ましょウ?」

 手短に考えてから、ルクは白いワンピースを取り出した。
511Blue Liquid 2/4:2010/12/30(木) 18:33:29 ID:JUDq3fBU
 袖と襟口に両手と頭を通してから裾を下ろし、髪の部分を外に出す。これで、人間の少
女っぽい見た目になった。髪や皮膚などを人間と同じように組み替えるのは、食事の支度
を終えてからである。

「ご主人サマは下着付けろト言うんですけどネ……」

 両手で胸を掴みながら、呟く。
 ブラジャーやショーツなど、人間の付けるような下着は肌に合わない。付けていると妙に
違和感があるのだ。半液状魔術生命体だからだろう。幸い外から見て分かるわけでもな
いので、ルクは下着は着けていなかった。
 さておき。
 時計を見ると、六時十五分。

「朝ご飯の準備を始めましょウ」

 そう頷き、ルクはクローゼットから取り出した白いエプロンに腕を通した。


   ◆ ◇ ◆ ◇


 朝食を作り終え、ルクはサジムの部屋の前までやってきた。

 トントン。

 とノックをしてから、ドアを開ける。

「失礼しまス」

 そう断りを入れてから、部屋へと入った。
 返事は無い。返事があること自体が珍しかった。
 それなりに広い部屋である。しかし、置いてあるものは、本棚と机とベッドだけだった。窓
から朝の光が差し込んでいる。時計を見ると、朝の七時二十分。

「ご主人サマ、朝ですヨ。起きて下さイ」

 ルクは眠っているサジムに近付き、声を掛ける。
 ベッドの上で、布団を半分はだけて寝ている寝間着姿の赤い髪の青年。ルクの主人であ
るノート・サジムだった。金銭的理由から粗食なため、身体は細い。しかし、ルクが栄養管
理をしっかり行っているので、血色は良好である。
 目を閉じて、幸せそうに寝息を立てていた。

「ご主人サマー?」

 ルクはそう声を掛けながら、ふと視線を下ろした。
 ベッドから外に放り出されている右手。
 ルクは両手を伸ばして、サジムの右手を持ち上げた。余り外に出る事もなく、肌は色白
である。日々ペンを動かしているため、腕の筋肉が微妙に発達していた。
 サジムは未だに寝息を立てている。

「………」

 サジムの右手を眺めてから――
 ルクはその右手を口に含んだ。
 サジムの手と指を味わうように、歯と舌を動かす。
 微かな汗の味と、サジムという人間の味を味覚が捉える。甘いしょっぱいという通常の味
覚とは違うが、それは不思議なほど美味しかった。


   ◆ ◇ ◆ ◇
512Blue Liquid 3/4:2010/12/30(木) 18:33:59 ID:JUDq3fBU
「……うん?」

 ぼんやりと目を開け、サジムは疑問符を浮かべた。
 ベッドの傍らに立ったルク。飾り気のない白いワンピースという恰好で、上から白いエプ
ロンを付けている。朝食を作ったので起こしにきたのだろう。それはすぐに分かった。
 しかし、分からないことがひとつ。

「ルク、何してるんだ?」

 サジムの右手を、ルクが口に咥えていた。お菓子でも食べるような気楽さで、手を口に
入れている。甘噛みしつつ、舌で舐めているのか、指先がくすぐったい。

「むー」

 瞬きをするルク。
 手を咥えた状態では返事もできないだろう。
 サジムは右腕を引っ張った。案外あっさりとルクの口から抜ける。

「何なんだ?」

 ベッドの上にあぐらをかき、ルクが咥えていた右手を眺めた。これといって変わった所は
無く、いつもの右手。ルクの口の中にあったためか、少し湿っている。

「何で、いきなりぼくの手を咥えてたんだ? 手に何か付いてた?」
「うーン、何でしょウ」

 ルクは右手で口元を撫でながら、首を傾げる。青緑色の髪の毛が揺れた。
 どうやら、自分でも自分の行動の意味を理解していないようだった。人差し指で頬をかい
てから、サジムの手を見つめ、答える。

「ナンとなく、ご主人様が美味しそうに見えましタので」
「怖い事言うなぁ……」

 手を眺めながら、サジムは眉毛を下げた。
 本人曰く、自分が作る消化液はかなり強力で、有機物なら大抵のものを消化できる。実
際、野菜の皮や魚の骨なども気にせず食べたりしていた。人間の身体を消化することも、
難しいことではないだろう。
 ルクが緑色の瞳で、サジムの右手を見つめる。

「もう少し咥えさせてほしいのですケド、ダメですか?」
「駄目」

 即座に首を振るサジム。
 下手に口に入れたら、そのまま食べられそうな気がした。今までルクはサジムに危害を
加えることは無かったが、だからといって完全に安全とは思えない。いきなり美味しそうと
言われればなおさらである。
 残念そうに自分の指を咥えるルク。
 ふと思いついたように、壁のカレンダーに目を向けた。

「ご主人サマ。今日は何か用事があるようですケド、何があるんでス?」

 今日の日付に赤丸が付けてある。
 サジムはベッドから足を下ろし、近くにあったサンダルに足を通した。

「先生が来るから挨拶しに行くんだよ」
「センセイ?」
513Blue Liquid 4/4:2010/12/30(木) 18:34:30 ID:JUDq3fBU
「ナナ・フリアル先生」

 晴れた窓の外を眺めながら、そう告げる。
 五年前、孤児院で数学を教えていた老魔術師だった。ルクの制作者でもある。本職は研
究者らしいが、副業で教師もしていた。気質が合ったのか、サジムはよく面倒を見て貰っ
た記憶がある。
 娘夫婦がこの街にいるらしく、会い来ているらしい。
 サジムはそのついでに挨拶に行く予定だった。
 納得したのかルクが頷く。

「フリアル先生ですカ。会ったら、ワタシのことをよろしく言っておいて下さイ」
「ついでに、その変な行動の事も訊いてくるよ」

 サジムはそう告げた。
514名無しさん@ピンキー:2010/12/30(木) 18:36:34 ID:JUDq3fBU
以上です
続きはそのうち
515名無しさん@ピンキー:2010/12/30(木) 22:38:04 ID:EbAvr30c
GJ! 続きに期待です。
516Blue Liquid:2011/01/05(水) 18:27:46 ID:CkN5bRcS
投下します
517Blue Liquid 1/3:2011/01/05(水) 18:28:17 ID:CkN5bRcS
Blue Liquid 第3話 ルクの空腹
中編 空腹の理由


 街外れにある喫茶店。
 白いテーブルの向かい席に座っているナナ・フリアル。見た目六十過ぎの老人だった。
年相応に白くなった髪の毛とヒゲ。着ているのは、落ち着いた朽葉色の服である。胸には
魔術師協会の紋章を付けていた。

「話を聞く限り、あの子は元気にしているようだな」

 コーヒーを一口すすってから、フリアルは頷いた。
 ミルクティーをスプーンでかき混ぜながら、サジムは周囲に目を泳がせる。
 白と茶色を基調とした清潔感ある店内。あまり喫茶店などには行かないため、微妙に居
心地が悪い。正面の師に目を戻す。

「元気ですよ。料理だけじゃなくて、掃除や洗濯もしてくれますし、アルバイトもして家計の
助けにもなってくれますし。本当にありがたいです」

 家事全般をこなすだけでなく、自分の食費のためと近所の食堂兼居酒屋でアルバイトま
でしている。素直で真面目な性格のためか、店主夫婦に気に入られていた。

「甲斐性の無いお前には、少々過ぎた子かもしれん」

 直球なフリアルに、サジムは空笑いを見せる。返す言葉も無い。
 それを誤魔化すように、尋ねた。

「ルクって結局何者なんですか? 半液体魔術生命体って言ってましたけど」
「うん。素体は治療用の魔術薬だ。半ゼリー状の塗り薬」

 あっさり答えてから、フリアルはコーヒーカップを空にした。
 治療用魔術薬。サジムが思い浮かべたのは、容器に入った青いゼリーだった。ルクから
そのまま切り出したような半透明の塗り薬。さほど間違っていないだろう。

「そこに、使わなくなったり余ったりした魔術道具や薬品やら色々突っ込んで、術式を調整
してみたら、思ったより面白いものができた。しかし、私の所に置いておいても使い道ない
し、処分するにも惜しいから、生活力無さそうなお前の所に送ってみたわけだ」
「そうですか……」

 他に言う事がない。
 昔からその場の思いつきで行動する事の多い人だったが、ルクもその乗りで作られたよ
うだ。手元に置いておくには性能不足で、売るほどのものでもなく、捨てるには惜しい。そ
こで、家政婦としてサジムの所に送りつけたようである。
 さておき。サジムは本題を口にした。

「それはそれとして、今朝起きたらルクがぼくの右手咥えてたんですけど、その行動に心
当たりありますか? 美味しそうに見えたって、怖い事言ってましたけど」
「ふーむ」

 フリアルは周囲を眺め、壁に「禁煙」の張り紙が貼ってあるのを見て吐息する。手持ちぶ
さたに右手を振ってから、近くのウエイトレスに声をかける。

「すまない、お嬢さん。コーヒーひとつ追加で頼む」
「はい。かしこまりました」
518Blue Liquid 1/3:2011/01/05(水) 18:28:48 ID:CkN5bRcS
 手短に用件を聞き、会計伝票に注文を書き込んでから、ウエイトレスの女の子が席から
離れていった。厨房に注文を届けに行くのだろう。
 揺れる白と黒のスカートを見送ってから、視線を戻してくる。

「何だっけ? っと、ルクか。それは放っておくと、本当に食われるぞ、お前」
「え?」

 さらっと言われた物騒な言葉に、サジムは瞬きした。
 食われる、という表現はそのままの意味だろう。美味しそうと口にし、サジムの手を咥え
ていたルク。何かの比喩ではなく、本気で食べるつもりのようだった。
 ヒゲを撫でながら、フリアルが続ける。

「ルクは人間の情報を取り込んで、体型や人格、思考を維持してるんだ。ようするに、血や
肉だな。時間とともに、その情報は消耗していく。それで、情報が足りなくなると、物理的に
情報を取り込んで自分を維持しようとする。そういう仕組みだ。ンで、その対象は一番身近
にいる人間、つまりお前だ」

 と、人差し指をサジムに向けた。

「怖い事言わないで下さいよ……」

 サジムは乾いた笑みを作りながら、言い返す。情報の消耗。それ自体は既にルクの構
造として織り込み済みのようだった。解決法も知っているだろう。

「それでぼくは、どうすればいいんですか?」
「血でも肉でも少し取り込めば、情報は最装填できる。一番手っ取り早い方法は、手でも
斬って血でも飲ませてやれ。それがイヤなら、お前が抱いてやることだな」
「だ……?」

 こともなく放たれた台詞に、サジムは再び目を点にした。

「お前も子供じゃないんだから意味は分かるだろ?」

 口元に薄い笑みを浮かべて、目を細めるフリアル。普段見せる事はないが、エロジジィと
しての顔だった。

「むっつりスケベのお前には合ってるんじゃないか?」
「先生に言われたくないです」

 ジト眼でサジムはそう言い返した。


  ◇ ◆ ◇ ◆
519Blue Liquid 3/3:2011/01/05(水) 18:29:18 ID:CkN5bRcS
「――大体こういう訳だ」

 風呂から上がり夕食を食べた後、サジムはフリアルとの話を手短に話した。
 テーブルに並んだ空の器。サジムが食べてしまったが、ルクが作った野菜と魚の炒め物
が盛られていた。店の残り物を貰ってきてそれを調理したらしい。食堂で働くようになって
から、料理の腕も上がったような気がする。

「なるほド。そういうことでしたカ」

 話を聞き終わり、ルクが神妙な顔を見せる。
 右手を持ち上げて握った。半袖のワンピースから伸びた、半透明の青いゼリーのような
腕。向こう側が透けて見える。その手が、だらりと溶けて崩れた。

「最近、身体を硬く維持するのが大変でしタ。てっきり、湿気のせいトばかり考えていたの
ですガ、そういう理由だったのですネ。人間の情報……」

 ジェル状に溶けた右手を眺めながら、頷く。
 本人も自分の身体の仕組みを完全に理解しているようではないようだった。今日、フリア
ルに尋ねなければ、そのままルクに食べられていたかもしれない。丸ごと消化されるわけ
ではないだろうが、あまりぞっとしない事になるのは想像が付いた。
 コップの水を飲んでから、サジムは右手を振った。

「だから、少し血を飲ませるよ。痛いのはイヤだけど、食われるのはもっとイヤだから。ル
ク、ちょっとナイフ貸してくれ」
「いえ――」

 ルクは首を振ってから、近付いてきた。溶けた右手はそのままで。

「ご主人サマの血はいりません」

 その表情はいつも通り淡々としていて、何を考えているのはか分からない。青い肌に緑
色の瞳と、青緑色の髪の毛のような部分。見た目は人間の女だった。しかし、厳密に性別
という概念はなく、あくまでも人間の女のような容姿と性格なだけらしい。

「ソノ代わり、ワタシを抱いて下さい」

 左手で器用にエプロンを脱ぎ、ルクはそう言う。
 差し出された右手を、サジムは左手で受け止めた。ほとんど手の形を残していない、人
肌の半液体。サジムの指を包み込み、緩慢に前腕へと流れていく。

「言うと思ったよ」

 サジムはため息混じりに答えた。
520名無しさん@ピンキー:2011/01/05(水) 18:29:50 ID:CkN5bRcS
以上です
続きはそのうち
521名無しさん@ピンキー:2011/01/07(金) 01:33:33 ID:+7MC8If0
GJ
続き待ってるよ
522Blue Liquid:2011/01/09(日) 15:40:27 ID:VsUj8cCy
投下します
523Blue Liquid 1/6:2011/01/09(日) 15:40:58 ID:VsUj8cCy
Blue Liquid 3話 ルクの空腹
後編 いただきマス


 サジムの左手と溶けた右手を絡ませながら、ルクが左手を自分の胸に当てた。誘うよう
な仕草とともに、淡々と言ってくる。

「どうゾ、ご主人サマ。ぐわっと襲っちゃって下さイ」
「なんか違うような……」

 多少疑問に思いつつも、サジムは右手を伸ばした。
 ワンピースの生地を押し上げる胸の膨らみに触れる。丸く大きく、指を押すとゼリーのよ
うな弾力で押し返してくる。人間とはおそらく違う感触だが、触り心地は決して悪いもので
はなかった。
 ルクがサジムの膝の上に腰を下ろす。左手を絡ませたまま、右向きに。
 自分の胸を揉んでいる手を見下ろしてから、

「ご主人サマ、手つきがエッチですね」
「お前が言うなって」

 一度反論してから、サジムはルクの首筋に噛み付いた。

「ふぁ」

 ルクが吐息を漏らす。
 青く透明な身体に歯が食い込んでいく。表面の結合が弱くなっているのか、あっさりとサ
ジムの口を受け入れる。口の中へと流れ込んでくる、ルクの身体。ほんのりと甘いゼリー
のような舌触りだった。

「あっ。ご主人サマ……」

 ルクが切なげな声を漏らした。
 サジムの左手に絡まる溶けた右腕が、その快感を教えていた。
 右手でルクの胸を弄りながら、その首筋を味わう。サジムの手と舌が動くたびに、ルクの
身体が震えていた。手や顔など、容姿を構成している部分がゆっくりと崩れていく。

「あぅ、壊れちゃいそうデス」

 ルクの首筋から口を離し、サジムはルクの唇に自分の唇を会わせた。
 右手で肩を抱きしめながら、ルクの咥内に舌を差し入れる。応じるようにルクの舌が動
いていた。固まりかけのゼリーのような舌触りと、ほのかな甘さ。

「ぅぅ……」

 ルクが惚けたように目蓋を下ろす。
524Blue Liquid 2/6:2011/01/09(日) 15:41:20 ID:VsUj8cCy
 一度サジムから口を放し、手で唇を撫でた。

「ご主人サマのお口、美味しいでス」

 口元に微かな笑みを浮かべ、緑色の瞳を指先に向ける。溶けかけた指先から唇まで、
青い液体が糸を引いていた。それは、奇妙に艶やかな仕草だった。

「本気で消化はするなよ」

 一応釘を刺しておく。
 サジムは左手を持ち上げた。ルクの袖口から伸びる青い液体の絡みついた左手。その
指先を、ルクの首筋に触れさせた。指を押し込むと、指が緩くなった表面を突き抜け体内
へと潜り込んでいく。

「うんン?」

 ルクが戸惑ったような声を上げた。
 ぬるい水を進むような感触とともに、手がルクの身体を進んでいく。

「うぅ、ふあぁ……。やっぱリ、んァ、変な感じデス……んっ」

 体内を直接弄られ、ルクが身を捩らせる。
 ルクを構成する青い半液体。その中にサジムは手を入れ、ルクの身体を内側から触っ
ていく。人間の骨格のような部分はあるが、触れるだけて溶けてしまう。
 サジムは前腕半ばまでルクの首筋に差し込み、手を動かした。

「あぅ、あ……っ」

 溶けかけた手で、サジムの肩に掴まりながら、ルクが甘い呟きをこぼす。
 肩や腋、胸を膨らみを、内側から撫でていくサジム。手の動きに合わせて、ワンピースの
生地が動いていた。身体を外からではなく中から弄られるという、まともな生物では不可能
な芸当である。
 指の動きに合わせて、ルクが口をぱくぱくと動かしていた。

「ご主人……サマぁ……。そんな、胸ばっかリ……」
「分かった、分かった」

 サジムは右手でワンピースの裾を摘んだ。裾を持ち上げ、脚に触れる。膝から下は液状
になって、床に垂れていた。脚の結合も弱くなっているらしい。
 無論、左手の動きは止めていない。
 指先を太股の内側を何度か撫でてから、サジムはルクの身体に指を差し込む。

「んっ」

 体内に指を入れられる感触に、ルクが声を呑む。
525Blue Liquid 3/6:2011/01/09(日) 15:41:43 ID:VsUj8cCy
 サジムはルクの太股を指で辿りながら、脚の付け根へと手を動かしていく。反射的に、
ルクが両足が取じた。しかし、サジムの手がルクの太股に呑まれただけで、動きを妨げる
ことはできない。

「あぁ、ご主人サマ……」

 擦れた声をともに、ルクがサジムに抱きついてくる。
 サジムは右手の指を脚の付け根から、下腹部に移動させた。人間でいう膣の辺りへと指
を差し込んだまま、そこをかき混ぜるように指を動かす。

「あっ! ふあっ、ご主人サマ、そこは……! そんなに弄っちゃ、ダメでス!」

 悩ましげな声で、ルクが言ってきた。そこか性感神経の集まった場所なのだろう。指の動
きに合わせ、ルクの快感が見る間に高まっていく。どういう原理か、ルクの頬は赤く染まっ
ていた。目も虚ろで、口元から溶けた青い液体が垂れている。

「もう前技は終わりかな?」

 サジムは右手を引き、ズボンのベルトを外して自分のものを取り出した。
 溶けた手で口元を覆い、サジムのものをルクが凝視する。

「早く、来て下さイ……ご主人サマ……」
「ああ。行くよ、ルク」

 サジムは溶けかけたルクの身体を持ち上げた。
 その身体はよ軽かった。太股から下は液体状になっていて、脚の意味をなしていない。
他にも、固定化できずに液体になって床に垂れている箇所が多い。
 ゆっくりとルクの身体を、自分のものの上に下ろしていく。
 先端が触れた。

「ふあっ!」

 ルクが両手で口を押さえる。
 しかし、止まらない。サジムのものが、ルクの下腹部へと呑み込まれていく。青い半液体
を引き裂くように、奥へと進む。律儀にも、ルクの下腹部は生物の膣を模した構造になっ
ているようだった。
 数秒で、サジムのものが根元まで呑み込まれる。

「うんッ。ご主人サマの、全部入りましタ……」

 嬉しそうに微笑み、溶けかけた右手で生地の上からお腹を撫でる。サジムのものがルク
に呑み込まれている。しかし、その接合部分は白いワンピースによって隠れていた。

「ここからは、ワタシに任せて下さイ」

 ぎこちなく、笑う。
526Blue Liquid 4/6:2011/01/09(日) 15:42:04 ID:VsUj8cCy
 途端、サジムのものを包む周囲が動き始めた。ルクの仮初の膣が、まるで意志を持った
かのように淫猥に蠢き、サジムに強い快感を与えていく。

「ルク……これって……?」

 背筋を駆け上がる痺れに、思わず尋ねた。
 しかし、ルクは答えない。

「んっ……」

 切なげな声を漏らし、全身を小さく跳ねさせる。サジムのものを包み込む、生き物のよう
な動き。それを行うために、色々な神経を集めたのだろう。そこには快感神経も含まれて
いるようだった。

「ふぁ。思ったよりモ、凄いでス」

 ルクの動きは勢いを増していく。
 前後左右に渦巻くように動くルクの胎内。それは、生物としての常識を越えた刺激をサジ
ムに与えていた。快感はあっという間に限界を突き抜ける。

「う……うぁっ!」

 身体を強張らせ、サジムはルクの中に精を解き放っていた。
 蠢く半液体の組織によって、半ば搾り取られるような射精。普段の数倍以上を吐き出し
たのかと錯覚するような、強烈な絶頂だった。痛みさえ感じるほどの。
 一度身体を強張らせてから、脱力する。
 ルクが溶けた両腕でサジムを抱きしめた。

「ああ……っ。ご主人サマが、ワタシの中に入って来ます……」

 どういう仕組みか、恍惚とした表情で頬を赤く染めている。サジムと同時にルクも達した
ようである。やはり膣に当たる部分に、性感神経を集めていたのだろう。

「なら――」

 サジムは、右手をルクのスカートの中に入れた。
 ずぶりと水に手を突っ込むように、手をルクの腰に押し込んだ。固まり掛けたゼリーのよ
うな身体をかき分け、自分のものを掴む。周囲ごと。人間で言うならば、膣を外側から鷲
掴みにされたようなものだろう。

「ふあっ……?」

 性感神経を集めていた部分を直接掴まれ、ルクが戸惑ったように声を出す。
 左手でルクの身体を抱きしめたまま、サジムは右手を動かした。性感神経の塊と化した
膣部分ごと。ヌルヌルとした半液体が、サジムのものを上下に扱く。
527Blue Liquid 5/6:2011/01/09(日) 15:42:44 ID:VsUj8cCy
 想定外の動きに、ルクが悲鳴を上げた。

「あああッ! ふあっ――。ごしゅ、ご主人サマッ……! はああっ、ふあぁあぁ、いきなり
ダメで……それ、ダメ、駄目でス! ふあああっ」

 もぞもぞと手足を動かそうとしているが、ほとんど液体になっているため、まともに動かす
ことができない。体内の性感神経が集まった場所を、内側と外側から攻められているのだ。
全身に走る痺れは、さっきの比では無いだろう。

「ルク、こっちに顔を向けて」
「ご主人サマ……うん!」

 サジムは左手をルクの頭に回し、思い切り口付けをした。

「うン……むっ……!」

 薄い唇に自分の唇を会わせ、無遠慮にルクの咥内へと舌を差し入れる。ルクもそれに
応じるように、自分の舌を絡ませてきた。固まりきれずに溶けたルクの組織が、味覚を刺
激する。文字通り相手を食べるような口付け。

「ごしゅ……ジんサ――あっ!」

 右手で掴んでいた膣部分が大きく痙攣する。と同時にサジムは二度目の精を放っていた。
身体の奥から全て撃ち出すような射精が、ルクの胎内を強く叩く。
 内側と外側からの快感の中心を攻められ、ルクが大きく絶頂を迎えた。

「ふあああ……あぁ――あっ、ご主人サ――マ……!」

 何度か身体を大きく痙攣させ、口を意味もなく開いて閉じる。出そうとした声が出なかっ
たらしい。それから、糸が切れたようにサジムにもたれかかってきた。
 椅子に座ったまま、サジムはルクを受け止める。

「ルク、大丈夫か?」

 袖から伸びる両腕と裾から伸びる両足は、形を保てず床に垂れていた。身体もかなりぐ
にゃぐにゃに溶けているようである。人間ならば腰が抜けたと表現するだろう。ルクは芯が
抜けてしまい、まともに身体を構成できなくなっていた。

「すみませン。少ししたら落ち着くのデ、しばらくこのままでいさせて下さイ」

 ルクがそう言ってきた。
528Blue Liquid 6/6:2011/01/09(日) 15:43:05 ID:VsUj8cCy
 エピローグ



 ルクの身体でべたべたになった身体を洗い、台所へと戻る。

「どうだ?」

 寝間着姿のまま、ルクを見る。
 元の形状に戻ったルクが、食器の片付けをしていた。

「もう大丈夫でス。どこにも問題ありまセン」

 左手を動かしながら、そう言ってくる。
 半分溶けた状態からとりあえず人型に戻り、身体を再構成したようだった。左手はどこも
問題なく繋がっている。握って開いてみても、その動きに支障はない。

「ご主人サマの精液取り込んだラ、最近固まり悪かったのも直りましタ。人間の情報の再
装填は無事に成功したようデす」

 一度左手を液状にしてから、再び手の形に戻してみせる。人間の情報を取り込んだおか
げで、液化と固化の切り替えがやりやすくなったらしい。
 予想以上の速効性だった。

「それはよかったな」

 サジムは椅子に座って、近くに置いてあったコップを手に取る。中身は普通の水。
 中の水を二口飲んでから、一度コップを置く。
 流しから取り出した皿を、布巾で拭きながら、ルクが緑色の目を向けてくる。

「では、ご主人サマ。また、ワタシの固まりが悪くなってきタラ、その時はさっきみたいにワ
タシを抱いて下さいネ?」
「分かってるって」

 適当に手を振って、サジムは頷いた。
 ふとルクが皿を拭く手を止める。

「……? 以前だったラ、こういう時は拒否してましたケド」
「あー」

 サジムは呻いた。
 血を飲ませるから身体を重ねるのは拒否。以前ならそのような態度を取っただろう。ル
クもそこを疑問に思ったようだった。
 吐息してから、コップの水を全部飲み干す。
 窓の外の夜の闇に目を移し、サジムは小さく呟いた。

「やっぱり、ぼくもむっつりスケベか……」
529名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 15:43:39 ID:VsUj8cCy
以上です
530名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 18:03:14 ID:zOWMFNKf
GJ!
このふたりの話は和むなぁ。
531名無しさん@ピンキー:2011/01/17(月) 12:28:14 ID:FrMCU/eO
#保守代わり。消えた某所に投下したネタのリメイクです。

大神の恩返し

 「鶴の恩返し」という民話を知らない日本人は、まずいないだろう。
 あるいは新美南吉の「ごんぎつね」あたりも有名な話だ。アレは泣ける……。
 「こりゃ! 吾輩はキツネではない。オオカミじゃ!」
 「あーハイハイ、知ってますよ」
 何せ、アパートのドアをドンドン叩くヤツがいるから、何かと思って開けてみたら、ドアの前に大きなわんこが偉そうにふんぞり返ってたんだから。
 「イヌでもない! オオカミじゃと言うに……」
 ま、確かに、シェパードや秋田犬なんかより、ふた回り以上大きかったがね。
 「でも、日本狼って明治時代に絶滅したんじゃなかったっけ?」
 「ふむ、確かに、ただの狼であれば、な。じゃが、我らは大神(おおかみ)。人の手ごときで易々と滅ぼされるはずもなかろう?」
 そーいうモンかねぇ。
 俺は、先々月に嫁に行った姉ちゃんの現役女子高生時代のセーラー服を着て、畳の上にちょこんと座っている少女(獣耳&尻尾付き)の全身をマジマジと見つめた。
532大神の恩返し:2011/01/17(月) 12:29:17 ID:FrMCU/eO
 玄関先にいたわんこ(本人いわくオオカミ)が、「うむ、微かな匂いを辿ってココまで来たのじゃが、確かに本人じゃのぅ。さすが吾輩の鼻は確かよ!」って某弓兵っぽい声でしゃべった時は、流石にべっくらこいたさ。
 あまりに驚いてたせいか、その「人語をしゃべるイヌ」(オオカミじゃ!)から、意外にも礼儀正しく、「立ち話もなんじゃ。ヌシの住処へ、入らせてもらってよいかの?」と言われて、つい部屋にあげちゃったんだよなぁ。
 そうして、予期せぬ訪問者を四畳半和室の居間に通して、卓袱台を間に向かい合った時のシュールさは、筆舌に尽くし難かった。
 俺が戸惑っているコトを感じとったのだろう。
 オオカミ様(自称)は、ぐるりと部屋を見回すと、戸棚の上の写真立てに着目した。
 「ヌシよ、すまぬが、その肖像をよく見せてはくれぬか?」
 まだ茫然自失状態が多分に残ってた俺は「あ、ああ、いいですよ」と簡単に安請け合いして、手にした写真立てをオオカミの鼻先に突きつけた。
 「ふむ……左側は、数年前のおヌシのようじゃな。右のおなごは?」
 「3つ違いの俺の姉さんですよ。もっとも、嫁に行ったから今この家にはいないけど」
 「ほほぅ、それは丁度良い」
 オオカミはニンマリ(犬面だけど人の悪い笑みを浮かべていることは如実にわかった)笑うと、口の中で何かをつぶやく……と、次の瞬間!
 ボムッ! という軽い破裂音とともに、彼(?)の体は煙に包まれ、その煙が晴れたときには、写真の中の姉ちゃんと同年代で、顔立ちも「姉妹? それとも従姉妹?」と思う程度にはよく似た女の子が畳の上にゴロンと寝ころんでいた。
 ──全裸(マッパ)で。
 「ちょ……おま……ふく……」
 一瞬呼吸困難に陥った俺が途切れ途切れに絞り出した言葉を、幸いにして相手は理解してくれたようだ。
 「ん? おお、すまぬ。吾輩の変化は狐狸やムジナのソレとは少々性質が違うのでな。生憎と着物まで出すことは叶わぬのじゃ」
 可憐な少女の唇から、某魔法会社所属の陰陽師みたいな声が出ている様子はかなりシュールだったが、そのおかげで俺は「こいつ、本当は男(雄)か?」と認識して、逆に少し落ち着くことができた。
533大神の恩返し:2011/01/17(月) 12:29:57 ID:FrMCU/eO
 「と、とりあえず、ほれ、Tシャツ貸すから」
 なるべく「少女」の方を見ないようにしてタンスから出した俺のシャツを渡す。
 「ふむ。これは、こう……かぶればよいのか?」
 しばし試行錯誤していたようだが、さすがにTシャツをかぶって手と頭を出すくらいのことはできたようだ。
 「おお、これは、夏場の甚平みたいで悪くないのぅ」
 とりあえず、相手が服を着たことを確認してから、俺は再びヤツの正面に座って正座する。
 「話の前に、まずは自己紹介しておこうか。吾輩の名は穂浪(ほなみ)。先刻言ったとおり、由緒正しきオオカミの末裔じゃ」
 「ああ、コイツはどうもご丁寧に……」
 未だ落ち着きを取り戻していない脳味噌をフル回転させながら、俺は日本人的習慣に従って頭を下げていた。
 察するに、彼(?)の言うオオカミとは真口大神──日本狼を神格化した存在か、その眷属ってヤツなんだろう。こないだ中古で買ったゲームで、そんな話があったような気がするし。
 まぁ、とりあえず、「人語で会話し、人間に化けられる狼」的な解釈で、問題なさそうだ。
 「俺の名前は楼蘭工人(ろうらん・かねひと)。御大層な名前はしてるものの、とりたてて名家の出でもなければ、面妖な特技の類いも持ってない、ごくごく普通の高校生だ」
 「知っておるよ。工人、吾輩はお主を、お主ひとりを追い求めて、此処に来たのじゃからな」
 ──もし、相手が見かけ通りの可愛い女の子で、その唇から漏れたのが白スーツの伊達男っぽい声でなければ、俺も嬉しかったんだが。
 「その様子では覚えておらぬようじゃな。吾輩とお主は以前面識があるのじゃぞ?」
 えぇっ!? そう言われても……。
 相手の正体がオオカミである以上、町中ですれ違ったとかは考えにくい。とは言え、あまり裕福でもないウチの家族は旅行とか頻繁に行ってりもしなかったから、自然と接触しそうな場所も限られる。
 「──もしかして、玄じぃのトコ……月夜野か?」
 「うむ」
 唯一それらしい祖父の家のある村の名前を挙げると、穂浪は頷いた。
534大神の恩返し:2011/01/17(月) 12:30:25 ID:FrMCU/eO
 祖父の家は、俺から見れば名実ともに「田舎」ではあったが、同時に居心地の良い場所で、両親が存命中から俺たち姉弟は夏休みには1週間ほど滞在するのが常だった。
 村に何人かいる年の近い子らと友達になって、俺も近くの山や森に遊びに行った経験は多いし、その途中でイタチやキツネ、サルなどの動物を目にしたことは何度もあった。
 もっとも、それは単に「見かけた」というレベルで、昔話とかにあるように、そいつらを助けた記憶なんて……。
 「……あったな、そう言えば」
 激しい夕立ちの日、親とはぐれたのかキュンキュン泣いてる子犬だか子狐だかを、爺さんの家に連れ帰ってミルクを飲ましてやった記憶が微かに残っている。
 「じゃーかーらー、吾輩はオオカミじゃと言うに」
 へいへい。
 で、翌朝、俺が目を覚ます前にその子狼は、玄じぃの家を抜け出していた。
 当時存命中だった祖母の話では、土間で朝飯の支度をしている婆さんにペコリと一礼してから、開け放しの勝手口から出ていったらしいから、一応恩義には感じていたのだろう。
 俺としては、当時、ぜひ犬を飼いたいと思ってたので、少なからず残念ではあったのだが……。
 「それは本当(まこと)かえ!?」
 「へ? な、何のこと?」
 ええっと、「犬を飼いたい」?
 「えぇい、そこではない。いや、それも関連してはいるのじゃが……」
 もしかして、「少なからず残念」ってトコか?
 「そう、ソコぢゃ!」
 途端にご機嫌になる穂浪。
 「そうかそうか。そんなに吾輩と暮らしたかったのか。ふむ、それならそうと、素直に言えばよいものを……」
 ──あのぅ、もしもし?
 「いや、あくまで、「当時」の話ですよ?」
 「またまた……遠慮せずともよい。あぁ、それともコレが、昨今流行りの「つんでれ」と言う奴なのかの?」
 「絶対違う!」
 てか、山奥に住んでた自称神様の末裔が、よく「ツンデレ」なんて言葉知ってたな。
 「ふむ。この姿になる時、その「しゃしん」から対象となった女子の知識や記憶なども多少読み取れたでな。コレで吾輩も「じょしこーせー」として暮らすのに不自由はないぞ」
 え……。
 たかだか一枚の写真から、人間ひとりの記憶その他を読み取るという力の凄さはさておき。
 何だか、すっごくイヤな予感がするんですけど……。
535大神の恩返し:2011/01/17(月) 12:31:08 ID:FrMCU/eO
 「コホン! それで、穂浪はどうして俺に会いに来たんだ?」
 できれば有耶無耶にしてそのままお引き取り願おうと思ってたんだが、こと此処に至っては、聞かないわけにもいかない。
 精神的に下手に出るのもマズい気がするので、敬語もヤメだ。
 「無論、お主へ恩返しするためよ」
 嗚呼、やっぱり……。
 「昔語りなぞで、犬はもちろん狐や狸などが義理堅い生き物じゃということは、お主も知っておろう?」
 まぁ、犬は確かにそういうイメージあるよね。
 狐は、例のごんぎつねとか安倍晴明の母親の話とかかな。
 狸……? ああ、ぶんぶく茶釜のコトか!
 「彼奴(かやつ)らの上位に位置する狗族の総領たるオオカミが、人より受けし恩を返せぬとあっては、示しがつかぬからな」
 「そんな、牛乳一杯くらいで大げさな……しかも、アレ、爺さん家のだし」
 ん? 待てよ?
 「にしても、なんで今頃? 俺、あれから何度も爺さん家に行ってたはずだけど」
 そう、俺が中三の時の冬に風邪をこじらせて婆さんが、その半年後に脳溢血で爺さんが亡くなるまでは、俺達姉弟は「田舎」には毎年通っていたのだ。
 特に、5年前に両親が交通事故で亡くなってからは、遺された俺たちのことを心配して、頻繁に祖父母のどちらかが訪ねて来てくれたし、俺達も夏だけでなく年末年始にも「田舎」へ帰省するようになっていた。
 その間にいくらでも「恩返し」とやらの機会はあったはずなんだが……。
 「──ふぅ、ここで誤魔化すのは得策ではないかの。正直に言おう、吾輩が通力を自在に操れるようになったのは、ここ1年くらいの話でな」
 あの時の見かけ通り、この穂浪はオオカミとしてもかなり若い(むしろ幼い?)部類に入るらしい。なので、神通力的なモノを使いこなすのが、まだあまり上手くはないとのこと。
 それでも、人間に化けるなど幾つかの術を、ようやく完全に習得したので、さっそく俺に会いに来たんだとか。
 いや、それにしたってなぁ……。
 俺は、「恩返しに来た」と言う割には、この家に居座る気満々な穂浪の態度が気になった。
 「まさかと思うけど……山の暮らしは退屈なので、刺激を求めて、家出同然に俺を頼って都会に来た、とかじゃないよな?」
 「──ギクリ」
 非常にわかりやすい態度を示す穂浪に対して、俺はニッコリと微笑み、こう言ってやった。
 「人間ナメんな。山ァ帰れ!」
 「そ、そんな殺生な! お主、物事はもぅちと遠回しな言い方をしたほうがよいぞ」
 「ぶぶ漬けでも、いかがどす?」
 「はぅ! 確かに婉曲じゃがわかりやすい!? 京都人でもないのに、それを使うのは反則じゃろうが!」
 やかましい! 縁もゆかりもほんのちょっとしかない赤の他人ン家に押しかけ居候しようとするケダモノに、言われる筋合いはねぇ!
 ……と、声を荒げようとしたところで、玄関のチャイムが鳴る。
536大神の恩返し:2011/01/17(月) 12:31:46 ID:FrMCU/eO
 やむなく応対に出た俺は、一通の郵便書簡を受け取っていた。
 「なになに……宛名は「楼蘭工人様」、俺か。で、差出人は……「穂浪の父」だと!?」
 その言葉を聞いた途端、穂浪の頭にピンと犬耳が飛び出し、同様に尻から出た尻尾を抱えてブルブル震えだす。
 「あわわわわ……な、何故、吾輩の居場所がバレたんじゃろう?」
 察するに、コイツの親父さんは、かなり厳しい人なのだろう。
 人間に例えると、親に反発した女子中学生が、プチ家出して友達の家に転がり込んだ矢先に、その家に親から電話がかかって来たようなモンか。
 同情しないではないが、まぁ、自業自得だな。
 俺は書簡の封を開けて中身を読み始めたのだが……読み進めるにつれて苦い表情になっていくのが、自分でもわかった。
 
 「えっと……どうか、したのかえ?」
 ようやっと多少は落ち着いたのか、穂浪が恐る恐るといった風に聞いてくる。
 「──字は読めるのか?」
 「馬鹿にするでないわ。里で覚えたわえ。それに、先ほども言うた通り、この姿の基となった女子の知識も、ある程度読みとったでな」
 なるほど。そう言えばそうか。
 俺は、穂浪の親父さんからの手紙を本人に差し出した。
 受け取った手紙を読んでいくにつれ、穂浪の表情が百面相のように変わっていく。
 最初は驚き、次に喜び、そして懐疑、悲哀、最後にやや希望を取り戻した、といったところか。
 「は…はは……つまり、吾輩は当分里へは帰れぬと」
 「ま、ある意味自業自得だな。巻き込まれた俺としてはいい迷惑だが」

 長い手紙の内容を要約すると、こうだ。
 ──かつてはこの国の片隅でひっそり生き、人間とある時は争い、ある時は共存してきた我らオオカミの一族だが、近世以降、年々先細り傾向にある。
 我らの里で現在一番若いのが生まれたばかりの穂浪の妹で、その次が穂浪。その上となると30歳を超えた中年男性となる。
 (ちなみに、穂浪の実年齢も俺と同じ17歳らしい)
 我ら以外の里の多くは、あるいは同胞を求めて異国へ渡り、あるいは人の世に交じり、その血を拡散させた。
 この里の者も、いま重大な岐路に立たされている。
 そこで、今回、妹の誕生騒ぎに紛れて穂浪が抜け出すのをあえて(監視つきで)見逃した。
 穂浪には、里の動向の指針とするため、人の世を見定める役目を任せる。
 それに伴い、まことに申し訳ないが、貴殿(俺のことだ)に人の世における穂浪の保護者になってもらいたい。
 監視からの情報をもとに貴殿の情報を調べたところ、人ひとりが一緒に暮らす程度の余裕は十分にあると思われる。
 (確かに、ついこないだまで姉ちゃんと同居してたのだから、当然だ)
 穂浪の当座の生活費兼支度金として、取り急ぎ100万円分の小切手を同封するし、来月からは毎月10万円を仕送りする。
 また、戸籍や住民票、転校届などの必要書類も、当方で用意するので、学校にも通わせてやってほしい。
 事後承諾になって本当に申し訳ないが、どうか引き受けてもらえないだろうか?
 (ここまでお膳を整え、礼を尽くして頼まれたら、断れねーじゃねぇか!
537大神の恩返し:2011/01/17(月) 12:32:21 ID:FrMCU/eO
 そして穂浪へ。
 お主なりの理由があり、里にも利があるとは言え、掟を破ったこともまた事実。
 本来、里抜けは永久追放だが、諸般の事情を鑑みて追放期間を3年に限定する。
 ただし、その3年間は里に足を踏み入れることはまかりならん。
 人の間に紛れて暮らしつつ、現在の人の良きところを学び、悪しきところを見定めて生きるように。勉学は元より、様々な経験を積むことをゆめゆめ怠るな。
 また、工人殿を師とも兄とも仰ぎ、人としての先達である彼の言うことを、よくきくこと。工人殿も至らぬ我が娘を厳しく指導してやってほしい。

 「ふぅ……オーケイ、事情はわかった。もし、ここで俺が頑なに「出てけ!」と言えば、お前さん、実家にも帰れず、路頭に迷うことになるワケだな」
 静かな声で俺がそう言うと、穂浪はビクリと身を震わせた。
 「ま、まさか……」
 「安心しろ。いくら何でも、そんな非道なことはしねぇって」
 「ほ、ホントかえ!?」
 「ああ……」
 ただし……と言葉を続ける前に、感極まった穂浪のヤツが抱きついてきて、俺は畳の上に押し倒された。
 「ありがとう! やっぱり、ヌシは吾輩の命の恩人じゃ!!」
 先方の気分的には、大きな犬が飼い主にじゃれてるような感覚なのだろうが、俺のほうから見れば裸にTシャツ1枚着た同年代の女の子にタックルされたようなモンだ。
 加えて言うと、今のコイツの容姿は、俺の好みのタイプにストライクど真中でもある(悪かったなシスコンで)。
 いかに相手が雄(オス)だと頭でわかっていても……ん? 何か引っかかるな。
 「む! おヌシ、また吾輩のことを犬扱いせなんだか?」
 幸い、穂浪が首を傾げて身を起こしたので、かろうじて俺も落ち着きを取り戻した。
 「いや、そーゆーコトするからイヌ扱いされるんだって」
 ヘニョと眉をしかめたものの、自覚はあるのか、おとなしくなった。
 「まずは落ち着け。それと、いつまでもシャツ1枚ってワケにもいかねぇだろうから、隣りの姉ちゃんの部屋で適当に着替えて来い……着替えの場所とかやり方は、わかるんだろ?」
 「う、うむ。大方は、な」
 微妙に自信なさそうだったが、さすがに女の着替えを手伝うわけにもいかない(でないと、俺の方がオオカミになりかねん──性的な意味で)し、そこはコイツの記憶読み取り能力に優秀さに期待するしかないだろう。
 立ち上がり、襖(ふすま)を開けて隣の部屋に移動する穂浪。
 「覗いちゃやーよ、コウちゃん……」
 ご丁寧にも、姉ちゃんの口調と声色を真似つつ、そんな台詞を残して。
 「ばっ……誰が覗くか!」
 俺の怒声は、ヤツが閉めた襖に遮られたのだった。
538大神の恩返し:2011/01/17(月) 12:33:03 ID:FrMCU/eO
 以上のような経過の末に、冒頭のやりとりがあったワケだ。
 ……何? メタなことを言うな? この作者のSSでは今さらだ。あきらめろ。
 「ところで、今後姉ちゃんが着るアテはないだろうから、別段構わんが……なぜに、わざわざ制服なんだ?」
 「う、うむ。確かに、お主の姉御の記憶の概要は読み取ったのじゃが……正直、女子高生のふぁっしょんせんすなんぞ、サッパリでな。とりあえず無難な学校の制服にしてみたのよ」
 ああ、そりゃそうか。服のコーディネートとかは、やっぱり知識以上に経験と感性がものをいうからな。
 もっとも、女の子の服装については、あまり俺も協力できそうにないなぁ。
 「それと……さっきから言おう言おうと思ってたんだが、その姿で渋いイケメン声でしゃべるのはやめれ。正直見た目とのギャップで頭がクラクラする。
 お前さんがいくら牡(オス)でも、見かけは妙齢の女の子なんだから……」
 と俺が苦情を申し立てようとすると、穂浪が眉をしかめた。
 「お主……何か勘違いしとりゃせんか? 吾輩はレッキとした牝(メス)じゃぞ」

 …………ハイ?
 「いや、だってその声……」
 「これは、父上の人間形態時の声を参考にしているのじゃが」
 や、ややこしいコトすんなぁ!!
 それじゃあナニか? 俺はコレから同い年の女の子と、最長3年間も同棲生活しないといけないのか!?
 マズい。いくら姿が美少女でも、コイツが本当は男(オス)だと思ってたから、自制が効いたのに……。
 いや、落ち着け。KOOLになれ、工人。コイツは、本当はオオカミだ。ケダモノなんだ。獣姦趣味は、自分にはないはずだろう?
 ──というような葛藤が、一瞬にして俺の脳内を駆け巡ったと思いねい。
 結局俺は、そのコトに関しては心の棚にしまって、深く考えるのを放棄した。
 「まぁ、ソレはさておき。さっき、姉ちゃんの声色使ってた以上、ほかの声が出せないというワケでもないんだろ?」
 「ふむ……確かに年若い女子としては少々威厳があり過ぎるか。
 ──では、コレでどうじゃ?」
 先ほどと同じく、穂浪は姉ちゃんの声色を出してみせた。
 「うーん、姉ちゃんとまったく同じってのも混乱の元だからやめてくれ。お手本があれば、わりかし自由に変えられるのか?」
 「まぁ、得手不得手はあるがの」
539大神の恩返し:2011/01/17(月) 12:33:32 ID:FrMCU/eO
 てなワケで、ふたり並んでアニメDVDを鑑賞中。ツッコミは不許可だ。
 「ふむ……この「盲目の少年」や「魔法使いの少年」の声なら、吾輩の地声に近いゆえ、簡単じゃが」
 「それだとショタ声だからなぁ……こっちの「日本刀使いの化猫少女」は?」
 「可能じゃが、オオカミとして猫の物真似をするのはのぅ……こちらの「内気な図書委員」で手を打たぬか?」
 「いや、それ、姉ちゃんと大差ないだろ。ん? そーだ」
 DVDを再生してたPS2を止めて、別のDVD-ROMと入れ替える。
 「これならどうだ?」
 「ふむ……高過ぎず低過ぎず。なおかつ、しゃべり方も十分女らしいか。よし、この「黒いせーらー服の女子」にしておくかの」
 コホコホと、2、3回空咳をしてみせる穂浪。
 「ん、んっ……どう、これでよろしいかしら?」
 穏やかで落ち着いた耳に心地よいアルトボイスのお嬢様言葉が、穂浪の口からこぼれる。
 「おぉぉーーーーっ! すげぇ、ソックリ! バッチリだ」
 思わずパチパチパチと拍手してしまう。
 「フフフ……このくらい、吾輩にかかれば朝飯前よ」
 と、しゃべり方はこれまで通りに戻ったものの、声は先程のアルトボイスを維持している。
 「その物真似状態は、常時維持できるのか? 無理してたり、とっさにボロが出たりとかは大丈夫?」
 「まぁ、そもそも人の言葉をしゃべること自体が、吾輩らオオカミにとって、不自然と言えば不自然なのじゃが。
 ただ、容姿とともに一度固定してしまえば、少なくとも人の姿をとる時は、コレが基本となる」
 そういうことなら、当面はこれで問題ないだろう。
 「容姿」についても別の姿に変更してもらうことも一瞬頭をよぎったが、「親戚」という触れ込みで同居させるなら、姉ちゃんと似ている方が説得力はあるだろう。
 ……断じて、女子高生時代の姉ちゃん似の姿を堪能したいからではないぞ?
540大神の恩返し:2011/01/17(月) 12:33:53 ID:FrMCU/eO
#以上。エロがカケラもない上、ネタ満載でお目汚し失礼。まぁ、保守ネタということでご勘弁。
#ちなみに、穂浪が参考にしようとしたのは、順に「弘瀬琢磨」「羽瀬川拓人」「野井原緋鞠」「星乃結美」、そして最後は「森泉晴音」に決定しました。まぁ、中の人はみんな某狼と同じなのですが(笑)
#ちなみに、主人公の姉は「原村和の声で塚本天満っぽいしゃべり方」をする女性です。やっぱり小○水……。
541名無しさん@ピンキー:2011/01/18(火) 06:04:06 ID:nTQGwOom
こりゃ続きが期待できるのう グッジョブと言う奴だのう
542名無しさん@ピンキー:2011/01/18(火) 18:23:12 ID:E/O4c3Nx
狼かー
狐や猫はいたけど
狼はひさしぶりかな
543名無しさん@ピンキー:2011/01/18(火) 22:58:19 ID:1r0KAzAE
age
544名無しさん@ピンキー:2011/01/22(土) 14:51:07 ID:UV8aJF7s
うおおおもっふもっふもっふもっふ
545梅雨入り保守:2011/01/22(土) 19:41:02 ID:HQnRpFCO
     もそもそ
        ,、ッ.ィ,  
      ,:'゙    '; 
    (( ミ,;:.   ,ッ )))
       ゙"'''''"゙
   もふっ
       ハ,_,ハ
      ,:' ´∀` ';
      ミ,;:.   ,ッ  ノノ
       ゙"'''''"゙
   ポィン 
       ハ,_,ハ  ポィン
      ,: ´∀` ';
      ミ,;:.   ,ッ
       ゙"'''''"゙ 
      ヽ  ili / 
     -      -

           スタッ
       ハ,_,ハ,
      n' ´∀`,n,
      ミ,;:.   ,ッ
       `'u゛-u'

            ズビシッ
       ハ,_,ハ
      ,:' ´∀`';9m <GJ!!
      ミ,;.っ ,,ッ
      ι''"゙''u
546名無しさん@ピンキー:2011/01/24(月) 02:11:42 ID:hdCbgX55
続編まだああああああああああ
ってかそろそろ500KBだな
547名無しさん@ピンキー:2011/01/25(火) 07:36:41 ID:YPyTT5kK
【妖怪】人間以外の女の子とのお話28【幽霊】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1295907957/

関連スレ更新しといた
548名無しさん@ピンキー:2011/01/26(水) 03:33:34 ID:35VF5YKC
もっふもふ狼さんの続編まだああああああああああ
549540:2011/01/27(木) 01:15:41 ID:7Ez0jP9Z
あれ、微妙な反応(好意的中立?)だったのでのんびりしてたんですが、もしかして続き希望されてる?
失礼しました。週末にでも28板に投下させていただきます。
550名無しさん@ピンキー:2011/01/27(木) 01:22:32 ID:TOtDBSiz
    + 。 *   ワクワクテカテカ  +
ツヤツヤ  ∧_∧  +
 +   _(u☆∀☆) ギトギトヌルヌル
  ⊂ (0゚ ∪ ∪。⊃ +
⊂ ゚̄ と_u _)__)゚  ̄⊃ + ワクワクキラキラ
  ⊂_。+   ゚+_⊃
    ⊂__⊃.  +  * +   ワクテカ  +
551大神の恩返し2:2011/01/29(土) 23:54:03 ID:2Cvqyppx
 春はあけぼの……もとい、春眠暁を覚えずとはよく言ったもので、4月半ばの日曜の朝なんてのは、気持ち良く布団で惰眠を貪るのに一番うってつけの季節と相場が決まっている。
 「……こ…ゃん……」
 いや、そのはずなんだが……なぜか俺を起こそうと呼ぶ声が聞こえる
 「…コウち…ん……お…て……」
 どこかで聞いたような──と言うより、この世で一番聞き慣れた声。
 「コウちゃん、もう朝よ。起きなさい?」
 お願い、と言うか字面的には命令形のはずなのに、この妙にポワポワした印象を与える声は……愛海(あみ)姉ちゃん!?
 「んん〜」
 とりあえず、うめき声で聞こえていることは示す。
 「もぅ、お寝坊さんなんだから。よーし……」
 突然、顔にかかる息遣い……って!

 ──ガバッ! ガツッ!! 「あつッ!」

 俺が慌てて布団の上に起き上がるのと、額に何か衝撃を受けるのと、女の子の悲鳴。
 その3つがほぼ同時に発生した。
 「ひ、ヒドいではないか! せっかく吾輩が起こしに来てやったと言うのに」
 無論、俺の石頭の直撃を受けた鼻を押さえて涙目になっている少女は、穂浪(ほなみ)。昨日からよんどころない事情で同居(断じて同棲じゃないぞ!)するコトになった、「オオカミ」と自称する人外の存在だ。
 ……いや、まぁ、単なるイタイ人の厨二的自称(笑)ではなく、本当に人狼というかライカンスロープというか、とにかく「本体は獣形態で人型にもなれる」種族なのは確かなんだが(目の前で変身するトコも見たし)。
 「るさい。ワザワザ姉ちゃんの声色まで使いやがって。あのあと、いったい何するつもりだった?」
 何せ妖力だか神通力だかで人型──それも俺の姉ちゃんによく似た姿に「化けて」いるだけあって、姉ちゃんの声真似もかなり器用にこなしやがるのだ。
 「いや、声をかけただけで起きぬなら、つぎは主殿の頬を舐めて進ぜようかと」
 ──まぁ、犬科の動物ならデフォの起こし方かもしれんが、今のお前は、俺と同年代の女の子にしか見えないんだ。自重しろ。
552大神の恩返し2:2011/01/29(土) 23:54:36 ID:2Cvqyppx
 「しすこんな弟殿へのさぁびすのつもりなのじゃが……」
 「! そんなサービス精神、ドブに捨ててしまえ!」
 たかだか一枚の写真から、姉ちゃんの姿形は元より記憶の概要すら読みとるその能力はたいしたモンだと思うが、こんな風にソレを悪用されちゃたまらん。
 「むぅ……つれないのぅ」
 ──俺が欲望に流されて過ちを犯さぬよう、節度ある態度をとってるってのに、コイツは……。
 とは言え、おそらくは人間における男女関係の機微なぞロクに理解してないだろうこのわんこ娘に手を出すワケにはいかんだろう。
 それに、もし万が一押し倒そうモンなら、例の「監視」とやらを介してコイツの親父に即伝わるだろうし、そしたらそのまま「娘を傷物にした不届き者」として大神の里とやらへ拉致→DEADENDな予感がひしひしするしな。

 「で? 今日はまだ日曜──休日だぞ。こんな朝早くから何だ、いったい?」
 平日と休日の区別といった、現代日本の基礎的な常識は、一応コイツも呑み込んでいるはずだ。まさか、朝のサンポに連れてけとか言うんじゃねーだろうな?
 「吾輩は犬ではないと言うに。朝餉の支度が出来たので、呼びに来たまでじゃ」
 !!
 「ま、マジで?」
 「うむ。この家の世話になる以上、家事の一部を分担するのは当然じゃろう?」
 おどれーた! まさか、そんな殊勝な心がけをコヤツが持っていたとは……。
 言われてみれば、穂浪のヤツ、Vネックの長袖カットーソー&スリムジーンズという格好の上に、ヒヨコのプリントされたエプロンを着けてやがるな。「管理人さん」とか「若妻モード」いう言葉が脳裏を過ったが、サラリと無視する。
 「人の子の料理なぞ初めてじゃが、存外上手く出来た……と思うのじゃが」
 待て、今すごく不穏な台詞を言わなかったか !?
 ──そう、そうだよな。このテの「善意」には、そういうオチが付きものだよな。
 まぁ、それでも「女の子が頑張って作った初めての手料理」だ。多少味や見栄えが悪くても、我慢して食べてやるのが男の甲斐性ってヤツだろう。
 (せめて、水で胃に流しこめるレベルの「失敗」でありますよーに)
 俺は、密かに天に祈りつつ、覚悟を決めて居間へと向かったんだが……。
 事態は俺の予想を120度ばかり斜め上を空中遊泳していく代物だった。
553大神の恩返し2:2011/01/29(土) 23:56:54 ID:2Cvqyppx
 「──なぁ」
 「何か?」
 「説明して欲しいんだが」
 俺は卓袱台の上に所狭しと並べられた料理に視線を投げる。
 「おお、なるほど」
 ポンと手を打つ狼娘。
 「まずは、主から見て右手の端にあるのが、ミラノ風仔牛肉のステーキじゃ。
 その隣りの皿がローストポーク&ルッコラのサラダ。ソースのはあえて和風にしてみたぞえ。
 真ん中の大皿がミートローフのマッシュポテト添え。好きなだけ切り分けて食べるがよい。
 左から二番目が若鶏のモモ肉の龍田揚げ。唐揚げより米飯に合うかと思ぅてな」
 意外と言っては失礼だが、穂浪の作った料理はどれも至極真っ当に見えた。
 おそるおそる箸をつけてみたが、味の方も、天下一品とは言わないまでも、十分「美味い」と評せるレベルだ。
 「ふ、吾輩にかかればコレくらい朝飯前……と言いたいトコロじゃが、調理技術(コレ)は愛海殿の記憶の賜物じゃからな。ココは謙虚に主の姉者に感謝して……」
 ──いや、確かに美味いことは美味いよ。
 でも……どう考えても朝っぱらから食べる料理と量じゃねーだろ、コレ!!
 「??? そう、なのか?」
 朝から4種類の大皿肉料理のコンボって、イジメかよ! アメリカ人だって、そこまでヘビィな朝飯はそうそう食わんぞ。
 どうもコイツ、中途半端に常識がインストールされてるクセに、こういう「当り前の人間の感覚」がズレてるらしい。
 「何か問題でも」といった表情でキョトンとしている穂浪の顔を見て、コレから同種のトラブルに悩まされそうな予感で、朝から胃が痛くなってきた俺だった。

-つづく-

#翌朝のひとコマ。穂浪は、ヘッポコではない(その大半は元にした愛海さんのおかげ)けど、ズレてるタイプの子です。
念のため宣言しておくと、エロにたどり着くのはかなり先になりそうです。
554名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 00:18:59 ID:5rMsBjiR
GJ
555名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 00:32:02 ID:dpLDx30o
愛があれば朝からその量でも・・・ごめんなさい無理ですorz
556名無しさん@ピンキー:2011/01/30(日) 10:28:00 ID:Mz+7Vipg
>>553
GS美神のシロ思い出したwGJ!
557名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 01:13:49 ID:R8ROqSpE
あれ? おかしいな??
俺が書きたいことが全部>>556に書かれてる。
558名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 11:12:41 ID:wc9k7avH
「俺ツレ」なるオール人外ヒロインのエロゲをコンプしたばかりなんで、
上の狼娘で美作アリスを連想したが、一般的には556みたくシロか、
あるいは「香辛料」のホロを思い浮かべるのかね。
559名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 15:59:01 ID:zl+yZ1aq
(・∀・)人(・∀・)
560大神の人:2011/02/01(火) 01:19:03 ID:b/mD9oV4
>>556、558
あ〜、シロもホロもアリスも全員確かに意識はしてます。て言うか、彼女たちの誰ともかぶらんキャラ造形は、私には無理っス。
無論、そのまんまにはならないよう、気をつけるつもりですががが。
自分の他のSSの狐娘が完璧超人なんで、ソレともかぶらないようにしないといけないんで……けっこう悩みどころです。
次回はお買い物編の予定。
561名無しさん@ピンキー:2011/02/01(火) 02:40:38 ID:WS+l68WZ
狐娘kwsk
562大神:2011/02/01(火) 18:44:24 ID:5IDBFArZ
>>561
以前ココに投下して、保管庫にもある「夫婦神善哉」に登場する(てか、本来の主役コンビである)ふたり組の片割れ、葛城葉子さん。
銀色の髪をポニテにしたグラマーなツリ目の20代半ばの美女。一人称は「我(われ)」。ただし、公的な場では「私」。プロポーションは抜群だが、相方の安倍乃橋青月が巨乳信者なので本人的にはもう少しバストがほしい様子。
某著名短大を優秀な成績で卒業した才媛で、青月の幼馴染……というかほとんど姉弟同然に育った仲で、現在は恋人と言うより、ほぼ内縁の妻状態。ちなみに姉さん女房(公式には2歳年上)。
その正体は、安倍乃橋家の初代に命を救われ、以後数百年にわたって同家に仕えてきたた七尾の妖狐──の転生。
初代が転生した青月と今度こそ結ばれるために、7本の尾の内3本を切断&封印し、力を封じて無力な幼女の姿に化生し、以後は「遠縁の娘」として安倍乃橋家で青月とともに仲睦まじく育った、ある意味究極の純愛ストーカー。
15、6歳ぐらいから妖力(と過去の記憶)も取り戻し始めたが、それ以前にも浄化術や陰陽術・体術を真面目に修練していたため、巫女としての霊力・各種陰陽系の術・さらに妖狐としての妖術が使えるチートキャラ。
クールでクレバー、時にシビアな"デキる女"……なのは表向き。身内(とくに青月)にはダダ甘々な世話焼きお姉さん。
──正直、自分のSSの主人公に嫉妬したくなる完璧超人なヒロインDEATH
563名無しさん@ピンキー
微妙に容量残ってるな
埋めとくか

          Z^ヾ、               Zヾ
          N ヽヘ             ん'い     ♪
          |:j rヘ : \ ____ _/ :ハ;、i     わ
         ぐ^⌒>=ミ´: : : :": : :`<ヘ∧N: :|  し   っ
         ∠/ : : ヘ: : : : : : : : : : : `ヽ. j: :|   l  ち
            / /: : /: /: : : /: : : : ^\: : :∨: :|  て  わ
        / //: : ∧/: : : :ハ : : \/:ヽ : ',: :ハ  や  っ
         /:イ: |: : :|:/|\: /   : :_/|ヽ: :|: : :l: : l  ん  ち
.        /´ !: :l: : l代ラ心   ヽ:ィ勺千下 : | : :|  よ  に
         |: :|: : |l∧ト::イ|    |ト::::イr'|ノ゙: | : :|   l
         |: :l: :小 弋少  :.  ゞ=‐'/: : ;リ : :|  ♪
         |: :|: : 八""  r‐―  V)"/: : /: : ;.;'   />
            Y : : : |>ーゝ _____,.イ⌒^`ーi : :八  </
          ヽ{: : !: /: : /IW ,(|_;i_;|_j__j: : : : \ に二}
      ,      人: ∨: :/{_幺幺 廴二二ノ: : : : : : ヽ
    _b≒==く: : ヾ:{__;'ノ∠ムム>‐弋 : : : : : : j: : : : '.
    _b≒/竺≧=巛_>''7   |   >、!: : : ハ: : : }
           レ'´|/く二>{__,|x-</}: /  } /∨
             /;∠.___ノレ<〕__'´   ´
         __厂X/XX{ ) ヾ!   \ \ヘヘヘ、_
         {{Zんヘ/XXXXじ   |!     `くxべべイ }
         _∧/ん<Xx厶    |!     r' ̄〈ヽ_!〈
        \ L 辷ヒ二二/   |! _/\「   r┘ーヽ`} ノ}
         `ヘ_`¬ヘxヘxヘxヘル^  xヘ厂: :=-: :(◯)'′
           ~^∀ヘxヘxヘxヘ/∀ー=-一'^ ̄´ ̄