無口な女の子とやっちゃうエロSS 八言目

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1名無しさん@ピンキー
無口な女の子をみんなで愛でるスレです。

前スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 七言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1228989525/

過去スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 六言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218597343/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 五言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1203346690/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 四言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1198426697/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191228499/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179104634/
【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155106415/

保管庫
ttp://wiki.livedoor.jp/n18_168/d/FrontPage

・・・次スレは480KBを超えた時点で・・・立ててくれると嬉しい・・・
・・・前スレは無理に・・・消化して欲しく無い・・・かも・・・
・・・ギリギリまでdat落ち・・・して欲しく・・・無い・・・から・・・
2名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 20:36:03 ID:c0jVyljm
蟹うめー
3名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 23:54:39 ID:UegsAAQQ
>>1、、、、、、、、、ぉっ

かに、、、、、?
、、、、、たべたい、、な
4名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 20:43:11 ID:/cn6dnRQ
乙!

前スレの華麗なる保守はないのか...
5名無しさん@ピンキー:2009/07/25(土) 14:52:59 ID:iHnVhaC+
即死回避
6名無しさん@ピンキー:2009/07/25(土) 22:54:08 ID:f4ZAAj9X
回避ついでに
「無口っ娘通信」?のカメラマンとその助手のお話って保管庫に無いのかな?
探しても見当たらないんだけど
7名無しさん@ピンキー:2009/07/26(日) 14:46:01 ID:UopLxFb4
 ずーり        ∧_∧       ∧_∧
            ω・   丶.    ω・   丶.         ずーり
      ∧_∧   ヽ___丶...  ヽ___丶... ∧_∧
     (・ ω ・ )                     (    丶
     ヽ____丶      ∧_∧    ∧_∧     ヽ___\ 今こそ言える!
   ∧_∧  ずーり   /   ・ω  ./  ・ω         ∧_∧  「>>1乙」と!
  (・ω・ 丶      ∧_∧__ノ...../____ノ ∧_∧   (    丶
  ヽ___\   /    )          /  ・ω・)    ヽ___ヽ
  ∧_∧     ∧_∧ _ノ  ヒ、ヒィー   ...../_∧_∧      ∧_∧
 (・ ω ・ )     (    )   ('A`≡'A`)     ( ・ ω ・ )     (     )
 ヽ___ヽ    ヽ ∧_∧   人ヘ )ヘ  ∧_∧__ノ    ヽ___ヽ
   ∧_∧     (・    ヽ        (・ω・  \      ∧_∧
  ( ・ ω ・ )     ヽ_ ∧_∧   ∧_∧___ノ     (     )
  ノ____ノ        ω・   \ ω・   \       ノ___/
        ∧_∧    ヽ____\ヽ___ノずーり ∧_∧_
      /  ・ω・)                      /    ・)
     ノ____ ノ   ∧_∧      ∧_∧  /___/  ずーり
              /   ・ω    /   ・ω
 ずーり       ...ノ___/   .../____/
8名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 04:31:43 ID:hP5Lrc6i
…………………………………………………………ほしゅ
9名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 12:27:37 ID:gCQtJUJ/
嫁さんと結婚してもう五年か……
そういえば付き合ってるときも言ったことなかったな
まあ両方ともあまりしゃべらないってこともあるんだろうが……
言おう言おうと思っているんだがタイミングが掴めない
みんな、オラに勇気をわけてくれーっ!!!!
10名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 15:05:50 ID:jka+YCXp
ガンガレ!!!

ほれ つ元気ン玉
11名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 23:33:45 ID:EVLqAXq0
>>6
保管庫の更新が滞ってるからね。読みたいなら過去スレ見るしかないよ
12名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 00:14:41 ID:CEpixbCq
無愛想な子が鏡の前で笑顔の練習したり
13名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 00:19:27 ID:Yx8rSgo8
「すまいるっ!」ってやったら客にドン引きされるんだな
146:2009/07/28(火) 22:07:02 ID:wga6p8e6
>>11
ごめん、よく探したら七言目にあったわ・・・
ありがとう
15名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 22:38:13 ID:dTQExtBB
前スレラスト、見事です流石ですGJです。
16名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 00:28:15 ID:BVidwaF0
前スレ768に告ぐ


「・・・」
「なあ、折角家で二人っきりなんだからもっと別な事をやろうぜ」

「・・・・・・」
「なあ、本の虫も良いけどさ〜」

そう言ってベッドで寝そべっている○○の柔らかい頬っぺたを突っつく。
一回突いたが無反応、仕方がないので二回突くが華麗にスルー、三回目は突いたまま指をグリグリしてみる。

「・・・・・・・・・っ」
ちょっと迷惑そうな目でこちらを見たが直ぐに視線を本へ戻した。

―――これなんて放置プレイ?

休日の昼下り、家には二人きり、そして彼女がベッドで寝ている事から導き出される答えは一つしかない。

「・・・」
無言のまま頬っぺたから指を離して耳たぶを摘まむ。
そのまま上や下に引っ張ったり回してみたが手を払い除けられてしまった。

しかしこのままでは終わらない!必ずやこの難攻不落の要塞を攻め落として見せようぞHU-HAHAHA!

いきなり頭部を狙っても回避されてしまう。まずは彼女の動きを止める事が先決だな

そう判断して攻撃目標を脚部へ変更する。ニーソックスに包まれスラリと伸びた脚は美しい。
とりあえず足の裏を弄ってみるとビクッと反応があったが、頭を蹴られるという思わぬ反撃にあった。

・・・気を取り直してふくらはぎを揉んでみると思ったより固かった。
うむ、実に食べごたえがありそうだ。

更に太ももへと侵攻する。ニーソックスに締め付けられた跡が食欲、もとい性欲を掻き立ててとっても美味しそうです。
17名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 00:30:54 ID:BVidwaF0
そして遂にお尻へ辿り着いた。
あのスカートで隠されたデルタ地帯は人類史最大の秘境にして最後の楽園である。
攻める前にじっくりとこの秘境を観察する。多すぎず少なすぎず、程よい肉付きで安産型だと思う。
触れてみるとこれまた極上の弾力性で指を跳ね返す。

天国の義母さん、見えますか?娘さんは大変素晴らしく成長し・・・痛っ!

今度は真っ赤な顔して読み終えた本を投げつけられました。流石ハードカバーの角はダメージが高いです・・・

「・・・スケベ」
「ああそうさ!俺はスケベだよ!スケベで何が悪い!!
雄たるもの皆心の奥底にこうした欲望を秘めているものだ!
雄の本能・・・それは遺伝子を後世へ残す事!
太古より脈々と受け継がれてきたその本能、それを罵倒される筋合いは無いわ〜!」

「・・・声、出てる」

すまん、ついカッとなって叫んだ。今は猛省してる。
彼女は呆れた表情で溜め息を一つ吐くと再び本に没頭し出した。

これ以上お尻に深入りするのは命に関わりそうなので止めておく事にする。
秘境との別れを惜しみながら女体という名の要塞を突き進む。
緩やかな坂を駆け上がっていくと今度は橋が見えてきた。中心部には橋を繋ぎ止める為の金具が設置されている。
敵の退路を断つ為にもここは橋を分断するべきだな!
そうして768は橋の金具をずらして外した。
パチンという音と共に張力を失った橋は左右に別れて崩れてゆく。
きっと橋の上には土台となっていた二つの隆起があるはずだ。そこを制圧すればこの要塞も没落寸前だろう。
768は己の部隊を2チームに分けて隆起を挟み撃ちにする作戦を立て、一気に突撃する。

落下した橋の残骸を潜り抜け、隆起に退避した敵に接近する。
部隊が周囲を包囲し一斉に飛びかかったその瞬間!

「ふがっ・・・」
・・・いい加減にしなさい

鈍い音と共に頭部に痛みが走る。
いくらなんでもブラのホックを外した位でこめかみに肘鉄はやり過ぎじゃないでしょうか?
視界が白くなって来たけど・・・これってヤバいんじゃないの?

薄れゆく意識の中で最後に768は思った。



ああ、おっぱい・・・柔らかいなぁ・・・と。
18名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 04:40:27 ID:tqwzEWmd
気弱な弟を守るために武術を我流マスターした無口な義姉マダー
19名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 12:31:51 ID:gAY0NBDM
前スレラストGJ
エロ無口っ娘かわいい
20名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 20:55:44 ID:f/sPDcjj
おばりよんな無口少女

 学校を出て、僕は普段とは違う道を帰る。
 今日は家に誰もいないので、少し遠足で祖母の家まで行く予定になっている。
 途中、近道をしようと山道を少し外れた竹薮を進むことにした。
 僅かに踏み均された小道をさくさくと歩いていると、突然背中に何かが負ぶさってきた。
「誰?」

 首にさらさらと触れる髪、僅かだが当たる膨らみ、そしてぐるりと回されているのは、細い腕。
 ――女の子?
 軽かった。人間とは思えないくらいに。
 僕は立ち止まって尋ねた。
「何の用なの?」

「……」
 無言のままぴったりと貼り付いて、背中から離れようとしない彼女。
 仕方がないので、また歩き始めた。実害はないんだから、良いや。
 そうしてしばらく歩いていると、急に重くなってきた。
「あの…君は、誰?」

「……」
 答えない。僕は次第に苛立ってきて、体を振って除けようとした。
 だけど、よほど掴まるのが上手いのか、全く背中から落ちる気配がしない。
 これはもしや…おばりよん? 祖母から聞いたことのある妖怪。
「ねぇ、何とか言ってよ」

「……」
 首元に僅かに見える顔は、長い髪に隠れていて表情がはっきりしない。
 僕はまた足を踏み出した。すると、また重くなる。
 やがて、立てなくなって膝を突く。それでも這うように前に進もうとすると――。
「――ううっ!」

 完全に地面に押さえ込まれてしまった。
「何だよ一体!?」
 そう言うと、今度は体がすっと軽くなる。彼女の感触が、背中から退く。
 僕は咄嗟に体を反転させて起こすと、悪戯の犯人を見る。
 やはり女の子だった。

 着物姿で、おかっぱ頭は若干前髪が長く、目が見えない。
「僕にどうしてほしいの」
「……」
 彼女は無言のまま振り返ると、道を戻って行く。
「待ってよ」

 振り返り、僕の方に顔を向ける。今にも消えてしまいそうな、空ろな存在感。
「単なる悪戯なの? それとも何か、用があるの?」
「……」
 彼女は再び向こうを向いて、歩いて行く。
 僕は咄嗟に立ち上がり、その姿を追うように駆け出していた。

 意外にも追いついて、その体を後ろから捕まえた。
「……!?」
 肩を振り解くようにして、振り向いてくる彼女。
 見えない目と、合った気がした。
 僕は、不思議な感覚に囚われて、しばらく身動きが出来なかった。
21名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 20:56:44 ID:f/sPDcjj
「君は…」
 言いかけて、止めた。
 僅かな瞬きの内に、彼女は消えていたからだ。
 忽然と、僕の目の前から。今の今まで触れていた肩が、ない。
 頭が真っ白になる、ということが初めて何となく理解できた。

 僕がしばらく放心していると、頭にこつん――と何かが落ちてきた。
 それは小道の真ん中に落ちて、ころころと転がって、そして止まった。
「どんぐり…」
 僕はそれを拾うと、竹林を見上げた。
 そうだ、ここは竹林。どんぐりなんて、落ちてくるはずがないのに。

 どんぐりは何気なく胸ポケットに入れて、僕は竹薮を抜けた。
 狸に化かされたような思いを抱きながら、やがて祖母の家に到着。
「よく来たねぇ」
「今日はお世話になります」
 後でこの話、してみようかな。

 お腹が苦しい…食べさせ過ぎだよ。あんなにおかわりは? って尋ねられちゃ、結構ですなんて言えない。
 僕は部屋に戻ると、畳にごろんと横になった。手伝いも一通り済んだし、課題でもやろうかな。
 胸ポケットから、どんぐりが転がり落ちる。
「あ…」
 僕はそれを摘むと、じっと眺める。

 艶々していて、綺麗だ。昔は意味もなく集めていたなぁ、なんて。
 ……別のことしよう。
 起きて課題を始める。しばらくすると、祖母がお茶しようと言ってくるので、付き合う。
 また僕の為にお菓子がいっぱいだ。食後にこれは、嬉しいやら悲しいやら…。
 二人で何気なくテレビを見ながら、僕はどんぐりの話をしてみることにした。

「不思議だねぇ」
 嬉しそうに笑う祖母。話の終始にこにこしていて、何だか恥ずかしくなった。
「変な話だったかな」
「いんや。どんぐりまで頂いて――おばりよんにしろ狸にしろ、きっと好かれたんだよ」
 酷い目にも遭ったんだけど、そういうものなのかな?

 僕は課題の続きを終えて、風呂に入った。
 そして涼しい山の夜、布団の上に寝転がると、普段とは比べ物にならないほど気持ちが良い。
 手伝いなどで程好い疲れもあって、僕は心地良く眠りについた。
「……」
 どれほど眠ったのだろうが、ふと目が覚めた。

 体を起こすと、暗い部屋の隅に、何か大きな影。
「!?」
 僕が思わず反応すると、同じように影もびくりと動く。
「誰?」
 目が慣れてきて、徐々にその姿が見えてきた。

 そこにいたのは、膝を抱えた女の子。記憶に新しい外見だった。
 目の隠れたおかっぱに、着物姿。消えたと思ったら、まさか家に出るなんて。
 見ると、近くに置きっ放しにしていたはずの、どんぐりがない。
「……」
 相変わらず、事情を説明してくれそうには見えない。

 僕も黙って、彼女を見ていた。暗い部屋の中で、見つめ合う。
 じっと動かないその体が、時折妖しく見えるのは夜の魔力だろうか。
 立ち上がり、僕は彼女の元へ歩み寄る。
 そっと、手を差し伸べる。理由なんて、考えずに。
 彼女は、応じるように手を取った。
22名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 20:57:30 ID:f/sPDcjj
 手を引いて立ち上がった彼女は、僕の体に、そっと抱きついてきた。
 一瞬驚いたけど、何となくこうなることが予測出来た。
 僕は彼女の前髪を、優しくかき上げる。円らな瞳が、僕の目を真っ直ぐ見ていた。
 綺麗な目だった。そして、不安で仕方がないような――そんな顔だった。
 その感触をまた確かめながら、僕は体に腕を回した。

 抱き締めて数分、僕の胸に埋まった彼女が、やっと顔を離した。
 僕を見上げるその頬には、涙の粒のようなものが光っていた。
 きっと好かれたんだ――よく分からないけど、その言葉を信じてみようと思う。
 そっと腕を放すと、僕は中腰になって目線を合わせてあげる。
 頭を、ゆっくりと撫でてあげる。

 強張っていた口が、柔らかく解れ、そして笑った。
 言葉はなくても、零れる吐息で”嬉しい”と分かった。
 今は隠れて見えない両目だけど、しっかりと感じる。僕を見ていることを。
「……」
 彼女が、顔を寄せてきた。僕の顔の、柔らかい部分へゆっくりと――。

「……っ」
 その唇も、同じように柔らかかった。そして、冷たい。
 心がちくり、ちくりと痛い。切ないという感情が、その体を抱き締めずにいられなくする。
 僕は変かもしれないけど、妖怪でも何でも良い。この子を愛してあげたい。
 そう思うと、感極まって涙まで出てきた。

 唇を離すと、僕はまたぎゅっとした。何かの拍子に、消えてしまうんじゃないかと思うと、怖いから。
「何でも良い。心細いのなら、一緒にいて良いよ」
 強まる腕の力が、その答だった。
 腕を解くと、彼女は僕の涙に触れてきた。僕も、同じように彼女の涙に触れる。
 彼女が笑った。僕も、笑った。

 手を引いて、彼女を布団の上に招き入れた。
 夏だけど、温めてあげたい。ひんやりとしたその体を。
 そっと体を丸くして、彼女を包み込むように抱き締める。
 気持ちが段々と、熱くなる。急にその体から、女を意識するようになる。
 触れる部分に伝わってくる、僅かな温もり。

 僕は横になったまま上着を脱ぐと、彼女の着物に手をかけた。
 既に充分乱れて、細い足が膝まで覗いているけど。
 帯をそっと解き、全身を曝け出す。青白い肌が、鎖骨から爪先まで、綺麗だ。
 袖から腕を抜かせると、彼女は纏う物の何一つない、裸体となった。
 少しだけ怖がってはいるものも、嫌がる素振りは全く見せない。

 裸になるのは恥ずかしくなかった。下着まで脱ぎ捨てると、再び彼女を抱き締めた。
 冷たい。けれど離したくない。片手で髪をかき上げると、瞳が潤んでいた。
 隠れている時も良いけど、目が見えた時の顔は、愛くるしい。
 そんなことを考えていると、その目がぱちりと瞑る。にこりと、笑った。
 僕は思わず唇を寄せ、今度は自分からキスをした。

「くちゅ…ちう…」
 入れた舌に最初は戸惑いながらも、徐々に応じる懸命な動き。
 体を擦るように手を動かすと、小さな手で追ってくる。
 お互いに足を絡めると、触れたそこから段々と湿ったものが伝わり始める。
 僕のものも同じように大きく、そして熱を持ち始めた。

「ぷはぅっ……うぅっ…ん…」
 漏れ出るように彼女の声が、聞こえ始めた。驚くほどに色っぽいそれは、まだ幼い。
 胸を優しく撫で、そして今度は舌で舐める。悶える小さな体。
 手でそこを触り、更に中の状態もそっと確かめる。締め付けてくる壁と、大きくなる喘ぎ声。
 ぴくん、と体が振れたかと思うと、そこから一気に彼女の液が飛び出した。
23名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 20:58:13 ID:f/sPDcjj
「はー、はー…」
 大きく息を吐くその顔は、切なげに崩れていた。乱れた前髪から、片目が覗く。
「挿れても…良い?」
 言葉での返事はなく、代わりに伸ばされる両手。
 美しくさえある小さな体が、僕を求めている。

「う、あぁっ…!」
 小さな中にゆっくりと挿し込んでいく。かなりきつくて、僕も慎重になる。
 妖怪だけど、体は女の子。僕も体格良い訳じゃないけど、彼女はそれ以上に小さい。
 それでも、痛そうにしながらも蕩けそうな表情が切ない。
 今にも吸い込まれそうなほど綺麗な片目が、僕を見つめている。

 体を動かすと、彼女の中が更にきつくなって、痛いくらいになる。
 けれど、絞り出されそうなほどの感触は、妙に気持ちが良い。鋭角的な快感。
「いっ…あ、うっ…!」
 僕はしがみつくように、彼女を抱き締めた。或いは、彼女が先だったかもしれない。
「――出るっ!」

「――ふ、う…ぁんっ…!!」
 僕のものから、熱いものが溢れるのを感じた。
 中はこんなにも温かいのに――そう思うと、腕の力が一層強くなる。
 荒く息を吐きながらも、彼女がすぐに求めてきたのはキスだった。
 僕は望み通りに、それを受け入れる。

 そのまま抱き締めて、眠っていたはずだった。
 どこにも行かないように。せめて、朝までは一緒にいたかった。
 目が覚めると僕は、しっかりと寝巻を着て布団に包まっていた。
 彼女の姿はない。まるで最初からいなかったように、静かな朝。
 夢を見ていたんだ――と、頭で理解して、心で拒む。

 部屋を探してもどんぐりが見つからない。
 僕は途方に暮れた。よく考えたら、確かに変だった。何故あんなに情熱的になれたのか。
 気が触れていたのかな。妖怪に魅入られて――いや、でも……。
 唯一分かるのは、僅かに残る疲労感。寝起きのだるさとはまた違う、少しげんなりとした気持ち。
 網戸から冷たい風が入ってくる。何となく、彼女の体温に似ていた。

 朝もまだ早いので、起きて手伝いをする。祖母はとても喜んでくれた。
 今朝の話は勿論しない。布団が汚れたりしなくて良かったと思う。
 朝食を済ませて準備をすると、祖母が軽トラックで途中まで送ってくれると言う。
 僕はもう一度部屋の中を探してみた。やっぱりあのどんぐりはない。
 諦めて、家を出た。

「ここで良いよ。ありがとう」
 僕はそう言って、トラックを降りた。
「良いのかい? …じゃあ、またいつでもおいで」
 今朝も手伝ったとはいえ上げ膳据え膳。たらふく食べてちょっと苦しい。
 でも、元気にはなった。手を振って別れると、僕は竹薮の小道へと入った。

 わざわざここで降りた理由は、自分でも分かる。
 まだどこか未練があって、もう一度彼女に会ってみたいと思うから。
 僕はただひたすら、前へと進む。
 どれだけ歩いただろうか。そろそろ竹薮を抜けてしまう距離なのに、彼女は出て来ない。
 立ち止まる。大声で呼びたい衝動に駆られる。でも、やめる。

 僕はまた歩き出す。のんびりしているとさすがに学校に遅れる。
 現実に引き戻されるように、早足になる。これで忘れよう。それが良いんだから。
「――わっ!?」
 前を見ていなかった。足元で躓いて、前のめりに扱ける。
 強かに体を打ちつけて、痛い。くらくらしながら前を見ると、視界を何かが掠めていく。
24名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 21:01:26 ID:f/sPDcjj
 それは、僕の胸ポケットから飛び出したものだった。
「…どんぐり」
 妙な気分になって、起き上がると制服を叩いて、そして拾い上げる。
「……」
 何故胸ポケットに入っていたのだろう? 入れた記憶が全くないのに。

 しばらく見つめて、はっと我に返る。そうだ、もう行かないと。
 このどんぐりはどうしよう。もしかしてこれが彼女? でも、どうして姿を現してくれないんだろう。
 ……良いや。このまま持っていても、多分変な記憶として思い出すだけ。
 僕はどんぐりを、小道の隅に置いた。そして歩き出す。
 これで良い。さようなら、おばりよん。

 二、三歩歩いたところで、体を冷たい風が撫でる。
 そしてざわざわと竹林が揺れ、周囲の気配が変わる。
 幻想的だった。ここは元々、そういう神秘的な場所なんだということに気付く。
 足音。僕は立ち止まる。
 ゆっくりと誰かが近付いてくるのを感じた。

「――!?」
 それは僕の背中に、しっかりと負ぶさってきた。
 その感触に、僕は言葉を失った。
 後ろにいて見えなくたって分かる。何から何まで、間違いなく彼女だった。
 僕は彼女の手を、軽く叩く。

 そっと背中から離れる感触。振り返り、確かめるまでもない。
「――っ」
 抱き締めると、彼女の吐息が小さく漏れて、僕に”安心”を教えてくれる。
 やっぱりずっと、一緒にいたんだ。置いて行こうとしたりして、ごめんね。
 声にならず心の中で呟くと、彼女が首元で、ゆっくりと頷いた。

 学校に着いた。僕の胸ポケットには、あのどんぐりが入っている。
 一緒に竹薮を抜けようとしたら、彼女はまたどんぐりに戻ってしまった。
 どういう理由があるのかよく分からないけど、どうしたら会えるのか、何となく分かった。
 彼女は僕と一緒に、いたいみたいだ。無口だけど、それは分かる。
 ――良いよ。いてあげる。

 
おしまい
新スレの記念に失礼しました
25名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 21:37:10 ID:4gWABElz
いえいえとんでもない。gjです。
機会があったらまたお願いします
26名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 22:13:47 ID:c8xz7kGN
ちょっと竹藪行ってくるわ
27名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 00:03:59 ID:thhto5b5
ドングリ拾ってくる
10個……いや、10人ぐらいw
28名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 00:46:52 ID:pT6Pu8gK
子供の頃ドングリを大量に拾っては箱の中に収集していた俺はハーレムだったのか。
29名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 07:37:24 ID:+o7NVhfQ
ぎゃー俺コンクリに擦り付けて穴あけて笛量産してた
30名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 21:02:15 ID:GdePSPBM
素敵な話でした。
31名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 05:36:12 ID:y2WjBFJk
>>29
どゆこと?
32名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 22:49:11 ID:K7s4ce5K
>>30 釣られてあげる。
ドングリに穴を開けて笛にするんだよ。
でもそんなことやってたってことは29氏は相当田舎出の今はおっさんですな。
自分もそうだけど。
33名無しさん@ピンキー:2009/08/01(土) 22:57:04 ID:5Kfj68et
コンクリートに自分の股間を擦りつけて穴を開ける、ということかと一瞬思ったw
34こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/08/02(日) 00:23:58 ID:L0uAvA40
〜無口で夜行性な彼女〜

「起きろ、光」
俺が激しく揺さぶるとようやく彼女は目を覚ました。と言っても瞼が今にも下がりそうだが。
「今から俺は学校に行くからな。って聞いてるか?」
またもや寝入ってしまいそうな彼女の体を再び揺する。
光は目をこすりながら欠伸をすると、コクコクと頷いた。いや、船を漕いだだけかも…
家を出るときに後ろを振り返ると、もう布団の中に入っていた。仕方ないがなんだか悲しい。
親元を離れ、一人暮らしを始めた俺を待ち受けていたのは幽霊の光だった。
俺は自分の名前すら忘れるほど一人ぼっちだった彼女に名前をつけ、一緒に暮らしている。
しかし、幽霊だからか光は昼夜逆転した生活を送っている。日が出ている間には起きない。
…加えて時折淫乱になる。童貞は奪われ、昨晩も相手をさせられた。
おかげで寝不足だ。

学校から帰ってもまだ光は眠っていた。
ここまで深い眠りを覚ますのもなんだし、そっとしておいてあげよう。
結局起きたのは夕食の準備が終わった頃だった。
「悪いな。いつも一人で食べて」
幽霊である光に食事の必要はない。
一人で食べる自分がなんだか気まずかった。
「………」
彼女は静かに首を横に振る。
気にするなということだろうがやはり気になってしまう。
と、光は急に皿の上のある料理を指差した。
「あぁコロッケか?スーパーで買ってきたんだよ」
「………」
コロッケがどうしたんたんだろう?しかし彼女は意味深に頷くだけだった。
……気になる。
光はまるで喋らない。恐らく生死に関係なく無口なのだ。
第一に彼女は幽霊らしくない。足は生えているし、触ることもできる。
もちろん不思議なこともあった。
彼女が身に纏う純白な浴衣、それが汚れているのを見たことが一度もないのだ。
常に同じ服であれだけ真っ白な生地にもかかわらず、いつ見ても綺麗だった。
当たり前だが俺は汚れるので風呂に入らないといけない。
片付けを終え湯船に浸かると鼻歌を歌いたくなる。親父臭いなと思い一人苦笑した。
ガラガラガラ――
突然開く扉。慌てて振り向くと服を着たままの光が立っていた。
「背中…お流しします…」
いきなりの事で意味が分からなかったが、断るわけにもいかず好意を受けることに。
ゴシゴシと洗う力加減はちょうどよく、とても気持ちよかった。
「ありがとう。光もうい――!?」
絶句した。
湿気のせいだろうか。彼女の服が体に卑らしく張り付いていたのだ。
35こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/08/02(日) 00:25:02 ID:L0uAvA40
しかもよく見ると軽く透けている。下着を着けていないのはすぐにわかった。
直接のエロスではないがかえって興奮を煽ってくる。もちろん体の一部も素直に反応した。
「うわっ、光!?」
しまった。勃起した肉棒を見たせいで光にスイッチが入ってしまったらしい。
俺の足の間に体を潜り込ませるとギンギンのそれに手を這わした。
しなやかに巻き付く指は絶妙なリズムで上下にさする。空いた手は先端部を優しく包む。
光は頬を赤く染め、ご馳走を前にした時のように嬉しそうな表情を浮かべていた。
ゆっくり顔を近づけるとピンク色の舌が出てきて竿を下から上へと舐めあげた。
先端へ到達するとチロチロと割れ目をさする。敏感な部位への攻撃に声をあげてしまった。
亀頭の周囲を唾液いっぱいにじゅるじゅると啜る。
ついばむように、または吸いつくように緩急をつけて様々な方向からの攻め。
そしてご馳走を食べるようにパクリと口に含んだ。舌を竿部に巻き付け音を立てて吸い尽く。
頬の内側に亀頭をこすりつけ精液を絞ろうとする。
「光、もうそろそろ」
かなり限界が近付いていた。
彼女を四つん這いにし、裾をめくって秘部を晒す。そこは既に粘りのある液で潤っていた。
「何もしてないのにビショビショだよ?何でだろうね」
耳元であえて加虐的なことを囁く。彼女はその方が喜ぶから。
いやいやをするように揺れる腰を掴み一息に肉棒を突き入れた。
「はぅっ…!ん、はぁ…」
普段は聞くことのない彼女の声。しかも飛び切りの嬌声だ。
魅了された俺は夢中で腰を降り続けた―――
それ以降のことはよく覚えていないが、光と共に何度も絶頂に達したことだけは覚えている。


そして次の日。
腰が痛い、というより全身が痛い。やりすぎた……
光の性欲は底無しだ。たまに淫魔なのではないかと疑う。
休みたくてしょうがなかったが俺は学校に。スヤスヤと眠る彼女が羨ましい。
あまりの眠気に授業はほとんど頭に入らない。あくびなんてかみ殺せなかった。
体は痛いし、先生に注意はされるし踏んだり蹴ったりだ。
沈んだ気持ちで家に帰ると部屋中が良い匂いで充満していた。
「え!?光?」
匂いの発生源である台所に行くとなんと光が料理をしていた。まだこんな時間なのに。
「………」
俺を振り向いただけで何も言わない。若干眠そうだが手つきはしっかりしている。
揚げ物をしているらしく、パチパチと油が跳ねる音がしていた。
36こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/08/02(日) 00:26:51 ID:L0uAvA40
食卓に並んだのはコロッケだった。香ばしい匂いが食欲をそそる。
「得意料理だったんです……コロッケは…」
なるほど、昨日の問いかけの意味が判明した。
彼女に料理で出来たとは驚きだ。
「三十年振りなので…美味しいかわかりませんけど…」
珍しく今日はくよく喋る。そもそもこの時間に起きていること自体珍しいが。
俺は箸を手に取りコロッケに口をつけた。
「あ、あの……どうですか?」
「――…しい」
「……?」
「凄く美味しいよ、光!!」
こんなに美味しいコロッケは初めて食べる、そう言っても過言ではないくらいの味だ。
口に入れた瞬間に広がる香ばしさは何とも形容し難い。
衣のカリッとした食感、じゃがいものホクホク感が見事に合っていた。
ソースなんていらない。そのものの味だけで十二分に楽しめる。
気付けば皿の上のコロッケは全て胃袋へと消えていた。
「ご馳走様。本当に美味しかっ――」
礼の言葉を述べようとしたら光は寝てしまっていた。早起きは辛かったらしい。
静かに片付けを済まし、机に突っ伏した彼女に毛布をかけてやる。
市販のものばかり食べる俺のために、苦手な早起きまでして料理してくれるなんて。
「ありがとう…光」


おわり

――ここまで打ち込んで女はパソコンの電源を切った。
締め切りは来週。今回は時間に追われないと彼女は安堵のため息をついた。
「月刊無口っ娘通信♪」を友人と創刊して以来、彼女は小説の連載をしてきた。
しかし性的な内容を含める内容はこの作品が初めてだ。
友人の頼みでなければまず書くこともなかっただろう。
全年齢対象の雑誌に載せることは問題かと思われたが、PTAから抗議の声はなかった。
たかが十年程度の歴史とはいえ地域に根付いた雑誌の支持率はかなり高かったのだ。
次第にカーテンの向こうが明るみを帯びてきた。
(朝か……)
作品のヒロインであった光と同じく彼女は昼夜逆転した生活を送っている。
寝ようかとベッドに横になると、自然と彼女の手が胸へと伸びていった。
(…だめっ…ん……)
性的な内容を書くことで湧き上がる本能。書く度に抑えきれない興奮が襲う。
(こんなっ…あっ…)
本人の意志とは関係なく彼女の手は自身の胸を揉みしだく。
服の上からでは満足できなくなり次第に上衣を脱ぎ捨てていった。
三十を過ぎたばかりの体は衰えを見せるどころか女らしい艶やかさを持ち始めている。
柔らな双乳に反し、頂だけは勃起し硬度を増していた。
37こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/08/02(日) 00:28:07 ID:L0uAvA40
片腕を胸においたままもう片腕を下ろしていく。
ズボンを脱ぎ捨てるとそれ以上の作業が煩わしくなりショーツの上から指を這わす。
既にそこは大きな染みが出来ていた。
(はぅ……んんんっ)
ショーツを横にずらし秘裂を指でなぞると淫らな液がまとわりつく。
ぬめりを利用し、より滑らかな動きで自身を慰める。
そして秘裂の上にある肉芽に触れた時――
「やっ!!あぁ、あっ、だめ……んっ」
それまで声を我慢していた彼女の口から初めて声が漏れ出た。
「はぁ、あっ、や、んっ、あぁぁ」
一度解き放つともう抑えることはもうできない。指の動きに合わせ声のトーンもあがる。
狭い寝室に響くのは彼女の媚声と秘部から聞こえる水音だけ。
彼女はじわじわと絶頂へと登り詰めていく。
「い、あっあっ、やぁ、だ、んッ、あ、ああぁぁぁぁぁ!!」
足先から頭頂部へと電気が走った。足は内股に力が入り、股関の手が強い力で挟まれた。
「はぁ、はぁっはぁ……ぁ」
取り出した手は愛液でべとつき濡れ光っている。それは彼女の羞恥心と背徳心を誘った。
(何をしているんだか……)
寝るつもりだったのに汗やら汁やらで体中がべとべとだ。
仕方なく彼女は浴室に向かった。
シャワーを浴び、半日ぶりに携帯電話を開くと担当からメールが送られていた。
中身は仕事の内容と体を気遣う一言。
この春に入社したばかりの彼は、いつも彼女の体を気遣ってくれるのだ。
若くて仕事熱心な彼にかわいさを含めた好意を抱いている。
もちろん嬉しい、しかし返信しようとする指はまるで動かなかった。
小説ならスラスラと言葉が浮かぶが、自分のことになるとどうしていいか分からなくなる。
(彼も可哀想に…最初の担当が私なんて)
自分は無口で無愛想、彼としても若くて綺麗な人がよかっただろうに。
とはいえ新米の彼にいきなり嫌われても構わないと思うほど、彼女は強くなかった。
なんとか返信しなくては。しかし考えれば考えるほどいい返事は浮かばない。
気を落ち着かせようと彼女は深呼吸する。
一回――
二回――
三回――
しかし残念ながら繰り返した所で良案は出てこない。
深いため息をつきながら打ったのは「ありがとう。気を付ける」という言葉だった。
もっと違うのにすればよかったと彼女は再びため息をつく。
(最近はため息が増えたな……)
三十歳を過ぎたからだろうかと彼女は一人苦笑した。
38こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/08/02(日) 00:30:01 ID:L0uAvA40
ついでに言うと性欲も前に増している気がした。
(もう、何を考えているんだ……今日は調子が悪いな)
とりあえず明日また何か送ろう。そう考えながら彼女は寝室へと向かった。
しかし、珍しくまともな返信をしたことに彼が喜んでいたことを彼女は知らなかった。


おわり


三十過ぎの無口さんは女の子じゃないんじゃないかと一人悩み中。
では、お目汚し失礼しました
39名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 00:49:00 ID:ob/wIK/Z
GJ!!
さすがだよ、、、、、
「月刊無口っ娘通信♪」の編集の話は
いつかやって欲しいと思っていたけど、
まさか小説家のほうから
せめてくるとは、、、

光カワイイよ光

40名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 04:05:14 ID:8gSP4P7V
GOODJOB!
41名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 15:18:12 ID:jsof6Y+1
保守
42名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 03:39:46 ID:cXDd4lip
補習
43名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 09:07:14 ID:YHDWV4Rm
夏休みはずっと一緒に過ごそうと約束していたのに、男が補習受けなきゃならなくなってご機嫌ななめな無口っ子。
いつも以上に口を訊いてくれなくなりましたとさ。
44名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 22:34:15 ID:Oy/dPfrC
男が補習から解放されてさあ遊ぶぞ! と羽を伸ばそうとしたら、
今後はそういう言うことがないようにと無口っ子が待ち構えて引きずって行って
宿題と勉強を強要されて、男にとっては地獄だけど無口っ子にとっては満更でもない
夏休みですねわかります
45名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 04:04:04 ID:WLSiZDwT
>43-44
ナイスコンビネーションw
46名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 08:39:56 ID:LnY0PAJR
ヤンデレだけとか
ツンデレだけとか
ギャルゲーあるのだから無口だけのゲームあったらいいな
47名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 23:14:04 ID:ieBECXRH
シーマンみたいな感じで無口娘とひたすら向いあうだけのゲーム
48名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 06:52:00 ID:aFkZQAJo
>47
地味すぎてワロタ
49名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 06:54:31 ID:lq5soyw3
俺のシーマンはおしゃべりで食物に強欲だったな…
最後は飛んで行ってしまったがw
50名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 09:31:15 ID:wXjy7gVz
やっぱりさ
誰にも理解されない無口娘のささやかな表情の変化や態度の変化を
読み取って自分だけが意思の疎通ができるって素敵だと思うんだ

独占欲ってレベルじゃねーかw
51名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 16:32:43 ID:C8Bh3GGK
喜怒哀楽が激しくても声帯がおかしくて声が出ない娘とかどうなんだろう
52名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 16:40:40 ID:cs10bZi7
アンパンマンのチーズって喋ることが出来るけど
喋る必要が無いから喋らないらしい
53名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 16:47:54 ID:81nuhDZd
チェインソー常備の死体処理屋さんとか
54名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 20:50:09 ID:2Y6pyJu/
20年位前の邦画SF、ガンヘッドに出てきてた生き残り子供コンビの女の子のほうとか
55名無しさん@ピンキー:2009/08/16(日) 23:10:24 ID:tLhkUJ2y
昔夜の映画番組でしゃべれない女の子がなんか磁石
で書く奴首に下げてる奴あったな。
56名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 19:36:48 ID:2o9FI1X4
とてもおしゃべりな僕の彼女。
ある日突然声が出なくなってしまう。
何を試しても効果なく、諦めかけていた頃、
Hのとき、感じたときだけ小さな喘ぎ声を出すことを発見。
もしかして、もっと感じるようになれば声も出せるようになるかもしれない!
奥手でHもあまり好きではない彼女をなんとか丸め込み、
リハビリという名の元に彼女の開発を試みるが…


というシチュを夢想した。
57名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 22:08:38 ID:hL00SvMX
さぁ、プロットのプロットは完成した
あとは>>56がSSに仕上げるだけだ。
58名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 16:05:08 ID:EL4u0Q1B
>>56が完成するまで全裸で無言待機
59名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 23:02:42 ID:xbk+HxV1
>58
風邪ひくなよw
60名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 23:16:35 ID:yt6EXYSD
>>58
「ブハクション!!…冷えてきたかな……?」
ポンポン
パサッ……
「あぁ、ありがとう。ん?こんな色の生地ウチにあったっけ。
ねぇ、これどこから…………って、うえぇ!?」
ビクッ
「ちょっ、ちょっと!?」
………?
「なんで下着姿なんだよ!!」
ビシッ
「ん?この布が何?……君のワンピースかよ!!」



という無口っ娘を妄想
61名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 11:57:33 ID:Oj4l3J/p
>>56
裸無花果の葉で、林檎かじりながら待ってる。
62名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 15:04:14 ID:B0JP/t7q
>>61
アwwwダwwwムwww
63名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 18:33:19 ID:o+Ge9Xs0
某国のトリプルクロスな無口娘
64名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 06:11:48 ID:tWwfKVHq
無口っ子にすりすりされたい
65名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 01:55:56 ID:aibFoiOr
>>64
んで目を細めてくれるともっといい
66名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 05:08:21 ID:fu6n9E2k
無口にはスク水が似合う
67名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 11:40:03 ID:YBm/gwIe
巨乳スク水無口っ娘に、水泳教えてお礼にセックス。
68名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 14:43:42 ID:7Ig/EV/B
>>67
それは前スレで既に通った道だ
……巨乳ではなかったか
69名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 22:25:49 ID:8ohiyIiI
無口娘と背中合わせで本を読む秋
無口娘と芋が焼けるまで焚き火を見つめる秋
無口娘と蟹を食べる秋
無口娘と……秋
70名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 22:36:24 ID:ZoYYCpAt
無口娘との春は……遠く過ぎてしまったのだね……
71名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 22:56:45 ID:bwQPTXVa
無口娘と読書の秋
無口娘と食欲の秋
無口娘とスポーツの秋

上から順に本を読むふりしてくっつきたい
彼にアーンがしたい
スポーツというなのセックs(ry

こんなトコか
72名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 01:30:24 ID:lVF77fpW
無口っ子のバリエーションって、どれくらいあるだろう?
例えるなら、無口っ子だけを集めたギャルゲーを作るとして、
どれだけキャラ被りさせずにキャラを増やしていけるか

内気系無口っ子:しゃべりたいことはあるけど上手くしゃべれない系
質実剛健系無口っ子:プロ軍人とか武術家とか暗殺者とか、必要最低限しか喋らない系
不思議系無口っ子:のんびりしてるとか電波受信系で、独自のテンポで動いてる系
不可系無口っ子:呪いとか病気とか実は人間じゃないとか、なにかの理由で喋れない系

73名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 06:19:40 ID:LcbzdFW6
普段は超無口
メールでは超長文

そんな無口娘
74名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 10:45:06 ID:xcm/bG99
喋りたい事が多すぎて何を喋ったらいいか迷って結局喋れない無口娘
75名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 12:17:59 ID:futhOydX
以心伝心系無口

言いたいことが分かる通訳(主に従者or幼馴染)がいるため会話の必要がない
あるいはホンモノのエスパー
76名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 13:19:37 ID:6XOprAID
トラウマ系無口

過去に虐められていた経験があり、喋れなくなってしまった無口っ娘
ってか簡単に言うと石津(ry
77名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 13:27:35 ID:I+iVRdBD
喉の病気で喋れなくなった病気無口
78名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 22:58:17 ID:JD6+onPl
喋るより肉体言語で語り合うのが好きな無口っ娘コミック雑誌が集○社より発刊されました。
79名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 01:18:03 ID:LWnLxaNd
ここにいる奴らでゲーム創ってみたい
80名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 01:30:29 ID:iE8eDr3Q
声入れたら女声優が楽そうだな
81名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 03:46:01 ID:iXxI4gDw
>>80
演技は動きがあるより無いほうが、
声を出すより黙るほうが難しいって知り合いの売れない俳優が言ってた
逆に難しすぎたりしてな
82名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 06:37:51 ID:uLvftvx8
>>80
一応役者目指してる人間に言わせてもらうと、
少ない、小さい動作の中で感情や意思を表現するのって、結構難しいんだぜ。
83名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 12:24:27 ID:2o1u94Ak
ドラクエの主人公は、はいといいえだけで全てを表現しなければいけない。
84名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 13:14:56 ID:AUzMqh4G
>>83
メガテンもな…
85名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 15:02:35 ID:8QZEGdF8
モンハンに至ってははいもいいえも無い究極の無口さんなんだぜ
86名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 18:01:46 ID:7DVuNlD1
◆アルプスのしょうじょ○○ジ

   はい →いいえ
87名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 21:20:34 ID:2o1u94Ak
>>86
アルプスの少女医家路
88名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 06:12:35 ID:OdxOcQRo
アルプスの少女カイジ
89名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 06:51:02 ID:xdPymKY1
クララが・・・立った・・・・!?(ざわざわ・・・・
90名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 09:32:10 ID:Wqusq/NL
アルプスのしょうじょ退治
91名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 09:53:13 ID:C65CxHY5
>>88-89
やめろwww電車の中でふいたじゃねーかwwwww
92名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 11:32:11 ID:LdHeDQyM
>>88,89
ttp://choco.2ch.net/comic/kako/1000/10007/1000738457.html
朝目新聞→福本パロディ ミニ特集→未来は僕らの手の中
にもそのネタはある。エロくないが。
93名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 00:20:06 ID:Zs+srGYk
NEEDLESSの梔タンハァハァ
94名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 16:35:29 ID:fsxK4dyk
>>93
スケブ破りたい。
95名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 19:59:57 ID:SXCe6DQn
喋らない女の子をからかって、真っ赤になったその子にバンバン叩かれたい。
96名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 17:14:58 ID:/JsQiDUk
あの・・・ageます・・・
97名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 17:45:01 ID:a6WBFWeb
>>86
むくち、おれたち
98名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 15:58:44 ID:t3P+ybIv
                      
99名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 20:33:14 ID:9aa0kI9u

(…無口って良いよね…)
100名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 08:40:44 ID:2g0eRAqf
そんな事を思いつつ>>99は目の前の彼女のスカートを捲ってみた。
101名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 13:02:29 ID:5rWZgv2O
1.アンダースコートがあるから大丈夫
2.悲鳴をあげられる
3.もっと見てと誘われる
4.物理的に排除される
5.泣かれる
102名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 14:13:29 ID:Q6brRK9L
5で!
103名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 15:56:44 ID:A35cBLUj
6.パンツのような物を履いていたがパンツじゃないから恥ずかしくないもん!と言われる
104名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 18:11:05 ID:YXbAy0Qm
7.相手無言…
いたたまれなくて顔を見合わせてどうしようか悩む
相手もどうしたらいいか悩んでいる様子
105名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 19:08:32 ID:BYbz3Pio
>>104
犯してうやむやにするんだ。
106名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 19:42:06 ID:SDL4t87K
>>105
…来ないの
107名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 20:55:17 ID:BYbz3Pio
>>106
生理がー!?
108名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 21:30:29 ID:tq+eMgR1
>>98に便乗したら盛り上がってるじゃないかwww
109名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 09:16:29 ID:DNdE4wTm
深刻になって来たな
110名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 15:36:30 ID:SdVTqIp2
>>107
無言でコクコク…
111名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 14:14:36 ID:b9usELx2
1.
「……」
何処か勝ち誇った様子、しかし>>99は無言でアンダーもずり下ろす

2.
「きゃ」
から伸びる可愛らしい悲鳴、>>99は集まって来たギャラリーに必死の弁解を

3.
「……」
呆れる訳でも怒る訳でも無く、彼女は自分からスカートを更に捲って来たので>>99は慌ててスカートを元に戻させる

4.
「し――」
ろ、と言い切る前に>>99の顎を、彼女の蹴りが綺麗に捉える、合掌。

5.
「……」
幾ばくかの沈黙の後、彼女の目尻から涙が零れだし、>>99は慌てて謝罪と共に慰めるべく色々な手を

6.
「……ぱ、ぱんつじゃないから恥ずかしく……」
真っ赤な顔、慌てた様子を見せて小さな声で言う彼女に、>>103はならばと容赦なくじっくりなめ回すように眺め続ける

7.
「……」
何も反応が無く、不安になった>>104が顔を上げれば彼女は思案顔、何か動き辛くそのまま待っていれば、来ないの、という声。何がとは言わんが>>104修正されろ
112名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 18:11:11 ID:QHfaosH+
>>111
1か6
113名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 20:14:23 ID:WeLJLTzd
結局俺は顎を蹴られる訳かwww
114名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 23:03:23 ID:Cfib4wBf
ほんの小さな悪戯のつもりだったのに。
「・・・っ・・・ひんっ・・・ぐすっ」
夢花は泣いてしまった。
「ご・・・ごめん・・・」
夢花のスカートを捲った姿勢のまま、呆然とする僕。
ど、どうしよう。
夢花を泣かせてしまった・・・。
僕は必死に彼女を慰める方法を考えた。

「・・・はっ、そうか!」
僕は閃いた。
「夢花、僕のズボンを脱がすんだ!そしたらおあいこだろ!?」

「えっ・・・」
さすがに驚いたのか、泣くことも忘れて呆然とする夢花。
「さあさあ!遠慮なく脱がすんだ、夢花!」
僕はそう言って腰を突き出す。
夢花の頬がゆっくりと紅潮していった。

・・・・・・。
よろしければ誰か続きをお願(ry
115名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 20:34:34 ID:aYVJovND
>>114
よろしければ貴方に続きをお願(ry
116名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 02:47:28 ID:/iI6PdMO
強気無口っ娘
117名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 12:44:35 ID:jkeOwJsD
>>116
悲鳴や泣き声を聴きたい。
118名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 00:03:26 ID:uZPflZfV
くっ

ひゃっ

しかイメージできん
119名無しさん@ピンキー:2009/09/24(木) 01:41:48 ID:AHDHfgrX
………ほ………
120名無しさん@ピンキー:2009/09/24(木) 06:51:58 ID:WJIeF/Aj
>>118
なんだ千早か……と思ったけど、彼女意外と喋るんだよなw

普段は喋らないけど、実はとんでもない美声の持ち主を妄想した。
ところで「美声」ってどんな声なんだろう?
121名無しさん@ピンキー:2009/09/24(木) 07:21:21 ID:HR9haNlp
そりゃ息子が眠れなくなる声だろ
122名無しさん@ピンキー:2009/09/24(木) 17:29:25 ID:8kAr+JqD
どっちのむs(ry
123名無しさん@ピンキー:2009/09/24(木) 17:58:09 ID:TP2qq266
>>120
君が美しいと思った声、それが君の中での美声さキラッ
124 :2009/09/25(金) 18:07:13 ID:++eLvOTY
125黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:20:18 ID:jQ87dfUW
設定とか覚えてらっしゃる方がいるか不安ですが、後編投下します。
8レスくらいです。
126黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:23:16 ID:jQ87dfUW
「ここか……」
プリントされた地図と携帯電話に表示された現在地を見比べ、俺は足を止めた。
興信所に迷い犬飼い主探しの名目で依頼して、たどり着いた住所。
周りは閑静な住宅街。高層の集合住宅は少なく、小奇麗な平立ての一軒家が並ぶ。
目の前には、偽レンガで覆われた新築の洋風2階建て。
敷地面積は100坪程だろうか、庭もそれなりに広い。
請った造りの門の脇に、"鈴木"の表札。
ふと、横を見やると付いて来ている筈の姿が見えない。
「……なにをやってるんだ」
黒いワンピースの上に白いカーディガン姿。
同行者である小柄な少女が、電柱の後ろでしゃがみこんでいた。
ちらりと顔を出しては、すぐに引っ込める。さっきからそれを繰り返している。
「逃げるな」
このままでは通行人の視線が気になる。
少々強引に、少女を物陰から引き出す。
俺に手を拘束された彼女は俯いたまま、鈴木宅の方を直視しようとしない。
「ここで間違いないか?」
少女は目を閉じ、躊躇いつつも顔を上げ、鼻をひくつかせる。
十数秒はそうしていただろうか、彼女はゆっくりと目を開けると、寂しそうな顔で呟いた。
「懐かしいひとの、におい」
握った彼女の小さな手が、俺の指を強く握り返してくる。
微かに震えるその手。
「……行くぞ」
俺はその手を引いて、アール・ヌーヴォー風のアーチ門に向かった。
門の横に呼び鈴を見付け、指を伸ばす。
その時、敷地の中を覗き込んでいた少女が息を呑んだ。
丁度邸宅の扉が開き、小学校中学年くらいの女の子が姿を見せる。
女の子の手にはリード線が握られており、その先には一匹の小型犬が繋がれていた。
女の子は散歩をぐずるヨークシャテリアをあやしながら抱え上げる。
犬の我侭に翻弄されつつも満更ではない、そんな様子。
幸せそうな笑顔。
俺がその様子を眺めていると、傍らの少女は突然踵を返し、元来た道と違う方へ駆け出した。
すぐにその姿が青白い炎に包まれ、黒い犬が飛び出る。
そのまま弾丸の様なスピードで、その場から走り去った。
「おい!」
止める間もなく、あっと言う間に姿が遠ざかる。
それでも追おうと走り出す俺の前を、突然バスが横切った。
クラクションを鳴らしながら一旦停止した市バスが再発進し、排ガスが晴れた向こう側には誰の姿も認められなかった。
「あの」
呼び止められ振り返ると、件の犬を抱えた女の子が怪訝な顔で俺を見上げている。
「ウチになにかご用ですか?」
俺は今すぐにでも少女を追うべきか迷ったが、思い直して少女にお辞儀して見せた。
「鈴木さんの御宅ですね。少々お話が――――――」

     * * *
127黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:24:53 ID:jQ87dfUW
一夜が明けた。
この間まで鮮やかな色を見せていた紅葉もあらかた地に伏し、くすんだ落ち葉と枯れ枝ばかりが辺りを覆う、晩秋の山。
人里離れた、と言うわけでもなく、1キロメートルもしない所に高層住宅も見られる。
それでも、人の行き来は無い。時折車道を車が物凄いスピードで通り過ぎるだけ。
傍らのバス停標識に『長らくのご利用有難うございました』云々と書かれた、まだ真新しい張り紙。
その脇のベンチに腰かけて、俺は彼女を待っていた。
もう、朝から6時間は経過しているだろうか。
真昼を過ぎた空は快晴だった。
冷め切っている缶コーヒーを飲み干し、ゴミ箱に放り投げる。
狙いを逸れ、離れた場所に転がっていく空き缶を拾いに立ち上がった拍子に、こちらに向かってくる人影を認めた。
よたよたと頼りない足取り。少し薄汚れた服。空虚で何も考えていないような表情。
彼女だった。
「早かったな」
少女は俺の姿に気付くと、目を丸くする。
「どう、して」
「鈴木さんのお宅で聞いた。昔の住所とかな」
俺は上着を脱いで、呆然と立ち尽くす彼女の肩にかける。
上着越しに抱きしめた躯は、冷え切っていた。
「腹へってないか」
ふるふる、と首を横に振る。
その拍子に、少女の腹が変な音を立てた。
「……今は菓子パンぐらいしかないが」
鞄の中から定価110円のアンパンを取り出し、彼女に無理矢理持たせる。
「……いただきます」
顔を赤くしながら、彼女は包みを開けて少しずつパンを齧り始めた。
ゆっくりとアンパンを食べる少女をベンチに座らせ、俺もその横に腰かける。
暫く無言で、彼女が落ち着くのを待つ。
「あっちから来たのなら、もう見てきたんだな」
パンが半分ほどになった所で、俺は話を切り出した。
少女の口が動きを止める。
俺は工事中のテープが張られたあの家の、正面に張られていた文言を思い出す。
"区画整備の為取り壊し"。
「帰ったらきっと元通りになってると、知ってる人が待ってくれていると、そう思ったんだろう。
ありえないと判ってるのに、昔には戻れないと知っているのに」
彼女の手が震える。
彼女の唇が戦慄く。
彼女の瞳が揺れる。
「判らなくもないよ。俺もそうだった。
いつかあの人が帰って来てくれるんじゃないかと、心のどこかで期待していたんだ」
俺は惰性であの家に留まっていたから、ずっと夢を見ていられた。
夢を見る場所すら奪われた少女。
その瞳から、涙が零れる。
「うぇ……グっ」
漏れる嗚咽。
次から次へと、滴が頬を伝い、アンパンに滴り湿らせる。
少女は湿った部分を齧るが、涙は止まらない。
彼女は泣きながらパンを食べ続ける。
「泣けばいい。思い切り。
泣き終わるまで、ずっと傍に居るから。
だからもう、黙ったままどっかに行くな」
俺はそれ以上何も言わず、そっとその肩を抱き寄せた。
128黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:27:33 ID:jQ87dfUW
11月の日没は早い。
あれからバスと電車を乗り継いでようやく街に戻ると、すっかり暗くなった家路を急ぐ。
疲れた足に鞭打ってゆっくりと歩を進めている。
不意に背中の荷物がもぞりとうごめいた。
「ん……」
「起きたか」
泣き疲れ眠っていた少女がようやく目を覚ます。
身じろぎした拍子に彼女の体がずれたので、持ち上げて背負い直した。
「疲れただろう。このままにしていろ」
背後でこくんと頷く気配。
疲れを見せないよう足に力を入れる。
そのまま、無言で歩き続けた。
「鈴木さんの家だが」
背中の彼女がびくりと震える。
「見付かったのなら、お前をもう一度引き取りたいと、そう言っていたよ。
お前は、別に捨てられたわけじゃなかった」
口先だけだったのかもしれない。飼い犬を捨てたなんて外聞が悪いことだろうから。
ただ、あそこの娘さんは本気だった様に思える。
俺の他にも、心配してくれる人がいる。
俺の家以外で、生きていくことも出来る。
それだけは伝えたかった。
「まあ、とりあえず今後のことは明日考えよう。
今日はうちでゆっくり休め」
「ダメですか」
か細い声で、少女が問う。
「え?」
「ずっと、ツヨシさんと一緒じゃ、ダメですか」
彼女の言葉を反芻する。
"ずっと"、の意味は軽くない。
お互いに身を委ね合う。
それで相手に裏切られても、自分の責任であることを受け入れる。
それを、どちらかが居なくなるまで続けると言うこと。
一度裏切られた彼女には、それが判っている。判っていて尚、その言葉を口にする。
俺はもう、この少女まで裏切りたくなかった。
「……駄目なんて言うか」
俺は前方に顔を向けた。
今の顔を彼女に見られたくなかった。
「俺からも、頼む。
ずっと、一緒に居て欲しい」
少女は、目を丸くして俺を見た。
「嫌か」
慌てて首を振ると、彼女は俺の背に顔を埋めて、小さく囁いた。
「……います」
「え?」
振り向いた俺の顔に、温かいものがぶつかる。
唇に、やわらかいものが押し付けられる。
「――――」
思考が停止する。
彼女の唇が離れ、ようやく我に返った俺は、唇を押さえて立ち尽くした。
「お前……」
「ありがとう、ございます」
それだけ告げると、彼女は再び俺の背中に顔を埋めてしまう。
彼女の耳は真っ赤だった。俺のもきっとそうなのだろう。
「ええと……」
「……」
両者二の句が告げられず、路上で途方にくれる。
「とりあえず帰るからな」
なるべく動揺を表に出さぬように勤めながら、俺は何事もなかったかのように家に向かった。
心なしか、早足で。
129黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:29:28 ID:jQ87dfUW
「良く考えてみたら、こっちの姿で家まで運べばよかったのか……」
疲労困憊しながらも、どうにか家にたどり着いたは良いが、全身すすまみれの彼女をそのまま家に上げるのは憚られた。
そこで、取り合えず犬になってもらって風呂場へ直行。
現在スポンジで全身をくまなく洗っている最中だ。
黒い犬は大人しく目を瞑ってじっとしている。おかげで随分やりやすい。
泡立てたスポンジで強すぎない程度に毛並みを擦ると、彼女は気持ち良さそうに鼻息を漏らす。
耳の穴やら尻やらまで洗い、ドライヤーをかける頃にはクタクタになっており、ブラッシングまでかけてやる気にはなれなかった。
「すまん、続きは明日だ。
俺も風呂入って寝る」
一方的にそう告げると、ふらふらと風呂場に向かい、汚れて濡れた服を脱ぎ捨てて風呂場に戻る。
(疲れた……)
心中で呟きながら体を軽く流して、ボディーシャンプーでタオルを泡立てる。
体を拭いていると、背後の洗面所に誰かが入ってくる音。
摺りガラスに映る人影。
俺はそれ程驚きはしなかった。
そう来る可能性も、何となくは感じていたから。
「一緒に入るか」
少女がいつまで経っても無言で佇んでいるので、俺から誘いをかける。
「おいで。洗ってあげる」
暫しの間を置いて、衣擦れの音が聴こえて来る。
やがて、そろりと少女がヒトの姿で顔を出した。
顔を真っ赤にして、タオルで前を隠しているのがなんだか可笑しかった。
「犬のときは素裸なのに」
苦笑しながら立ち上り、中々風呂場に踏み入ろうとしない彼女の手を引いてひっくり返した桶の上に座らせる。
「湯、かけるぞ」
まずは普通に、体を流して、シャンプーとリンスで髪を洗う。
掌で泡立てて、頭の皮膚まで縫うように、そっと黒い髪を漉く。
出合った時より少し伸びた髪を、傷めないように解きほぐして行く。
彼女は犬の時の様に、目を瞑って大人しくしている。
「体も洗うぞ」
シャンプーをつけたタオルで背中から肩、腕にかけて満遍なく拭いた。
ちょっとくすぐったそうにしているが、抵抗は無い。
問題はその後だ。
「……前も洗うからな」
そう言うと、肩から鎖骨、更にその下へとゆっくりタオルを滑らせる。
薄い乳房を撫でても、彼女は微かに震えただけで、やはり抵抗しなかった。
泡でまだ堅さが残る膨らみを覆い、タオル越しに揉み次第ていく。
只でさえ紅潮していた彼女の頬は、今や茹蛸の様になっている。
羞恥のためだけではないだろう。
十分に馴らしてから、さらに布地で先端を擦る。
最初は軽く、次第に強く。
「…………はぅ」
彼女の口から熱い吐息が漏れる。
130黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:31:53 ID:jQ87dfUW
「直接触るぞ」
もどかしくてタオルを除け、両の手で直接熱い乳房に触れる。
力を込めると程よく帰ってくるリバウンド。
やわらかすぎず、堅すぎず。大きすぎず小さすぎず。
張りを調整したゴム鞠みたいで、それでいて感触はきめ細かな絹地のよう。
「……すごく、いいなこれ」
思わず漏れた本音。
彼女は恥ずかしそうにうな垂れた。
揉むだけではない、いまやはっきりと屹立している乳頭を、指の腹でしごき、挟んで軽く捻る。
その度に未知の快楽で彼女の躯が小さく跳ねる。
何かを求めるように首を捻り、見上げてきた彼女の顔、その唇を唇で塞ぐ。
乳房を虐めながら、舌を絡め、歯茎を突き、互いの唾液を嚥下する。
ぐちゃぐちゃを水音を立てて彼女の咥内を蹂躙し、侵入してきた彼女の舌に征服された。
そんなことを繰り返しているうちに呼吸困難に陥った彼女を、名残惜しくはあるが開放する。
荒い息を整えている彼女の耳元にそっと口を寄せる。
「エッチなこと、したい」
もうしてるじゃないですか、と声にならない視線による抗議を黙殺し、シャンプーと唾液まみれの体を流してタオルを洗う。
シャンプーを十分落としてタオルを彼女の股間にあてがうと、布地越しに秘部を撫でた。
じわり、と湯以外の何かが染みていく。
「よかった、結構濡れてるな」
耳元で囁く。
「気持ちいい?」
恥ずかしそうに小さく頷く彼女。
「もっと気持ちよくしてあげる」
タオルをそこにあてがったまま、裂け目を探して指をうごめかせる。
探り当てた秘裂に布地を押し込み、壁面をそっと擦った。
ぬめりを持った膣壁は簡単に布をくわえ込み、スムーズに摩擦する。
少女は突然襲ってきた快感に、声もなく仰け反った。
「こうすると、繊維が壁と擦れて気持ち良いだろう」
ぐちゃりぐちゃりとかき回しながら、いちいち言葉に出して彼女の反応を楽しむ。
「つよし……さん、性格、かわって、ま……うぅ!!」
確かに、こういう時だけ妙に積極的になっている自分を自覚する。
苦笑しながら、程よくほぐれた膣口にそろそろと指を近づける。
周りからじらすように指を這わせ、最後にタオルで軽く拭った後、露になった陰唇に直接中指を入れた。
身悶えする彼女の躯を後ろから抱きしめ、落ち着いたところで入れた指をかき回す。
彼女の中は既に熱くたぎっており、指を回すごとに透明な滴が溢れ出た。
液が滴るたび、タオルで拭いつつ周りを弄る。
限界が近いのだろう、熱に浮かされたような顔で、少女がキスをねだる。
首を曲げて唇に吸い付きつつも陰部を弄る指は休めない。
キスの合間に喘ぎつつ、俺の両腕を抱え込んで彼女は絶頂に供えた。
中に捻じ込んだ指を曲げ、膨れた部分に触れる。
膨らみを何度かほぐし、包皮を剥いて核を弾く。
瞬間腕の中の躯が大きく震え、二回三回と痙攣した後、ぐったりと俺の方へもたれかかった。
「イッたか」
肩で息をしながら、潤んだ瞳で少女は何度か頷く。
指を引き抜いた裂け目から、熱い液がだらりと漏れ出て広がる。
力の入らない体を簡単に洗うと、俺は彼女を抱えて立ち上がった。
「あがろう。続きはベッドの上で」
131黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:34:12 ID:jQ87dfUW
ベッドの上に素裸の彼女を横たえると、俺もそれに覆いかぶさるようにベッドに上がる。
少女の頬に手をあてて、一応の確認を取る。
「あー。今から俺は自分の男性器をお前の女性器に挿入して――」
「知ってますそれくらい」
あまり馬鹿にしないで欲しい、と膨れる彼女。
俺はその顔を抱え上げると屈み込んで唇を合わせる。
浅く、長いキス。
唇を離すと、その体を抱きしめる。
この関係は傷の舐め合いかもしれない。
最初は単なる同情だったのかもしれない。
それでも、今、言っておくべき言葉があった。
「好きだ」
少女も嬉しそうに、
「好きです」
と囁く。
少女が微笑む。
吊られて俺も笑った。
緊張がほぐれたところで、彼女の股をそっと押し広げ、裂け目の周囲に軽く触れる。
そこはまだ湿り気を残しており、何より熱い。
「挿れるぞ」
彼女が頷くのを確認して、赤黒く膨れ上がったペニスを彼女のそこにあてがう。
入り口の所で何度か擦り合わせ、互いの愛液で先端を塗りたくると、両手で固定してぐっと腰を押し進めた。
亀頭が狭い膣壁を押し広げ、メリメリと分け入って行く。
未熟ながらも新鮮な女の感覚に、久しく役目を果たせないでいた男根がいきり立つ。
さらに強くなる肉壁の圧迫。
少女は唇を噛み、シーツを掴んでじっと異物感に耐えている。
途中で何かに阻まれるも、勢いを殺さず一気に貫いた。
突然の苦痛に少女は悲鳴を上げて悶えるが、両腕を押さえ腰に重心をかけてしっかり組み敷く。
「ごめん。すぐ終わらせるから」
双眸に浮かぶ涙に罪悪感を駆られながらも、オルガズムの欲求と繋がりたい願望が勝り、腰を止めるには至らない。
ぬめる破瓜の血と分泌液。
なんとか全てを彼女の中に収め、ようやく一息ついた。
132黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:36:12 ID:jQ87dfUW
「大丈夫か」
気丈にも頷きつつ、少女は顔を上げて瞼を閉じ、キスをねだった。
繋がった状態のまま、屈み込んでキス。
何度か啄ばみ合う内に、下半身が更なる熱を帯び始める。
「……!? まだ大きくな――――ッンああああ!!」
彼女は唇を離し悲鳴を上げた。
「すまん。もう、我慢できない」
彼女の膣壁が妖しい蠢きで俺の先端を攻め立てる。
理性はもう、決壊寸前だった。
早く彼女の中にぶちまけたい、本能はそればかり要求してくる。
俺は彼女の肉壁に擦り付けるようにペニスを往復させ、何度も腰を打ち付けた。
「ぐゥっ……くッ!」
「んッ――――! んッ――――! んッ――――! あぁッ!!」
俺が法悦に酔い痴れる一方、少女はまだ快楽より苦痛が上回るのか、痛ましい悲鳴を上げてる。
だが甘く痺れ、理性が麻痺した頭では、もう腰の動きを止めることはできない。
「……行くぞ」
限界を悟った俺は最後に最奥まで押し進めると、ぎゅっと少女の躯を抱きしめた。
弾ける思考。
瞬間、男根が大きく痙攣し、一度二度と精液を彼女の中に吐き出す。
射精は中々収まらず、ようやく収まる頃には溢れ出た血交じりの液で腰周りがぐっしょりになっていた。
全部出し終えてから性器を引き抜くと、更に液が溢れ出してシーツを汚す。
「ごめんな。痛かっただろう」
小さな頬を撫でていると、少女はそっとその手を取り、掌に口付ける。
皺の上を舌が這ってくすぐったい。
俺は力なく倒れ伏す少女を抱え起こして軽くキスをした。
まだ痛むのだろう。時折彼女が目をしかめる。
少女はそれでも俺に笑みを返してくれた。
俺の胸にあたたかいものが広がる。
「それと、ありがとう」
華奢な体を抱きしめながら、そのまま二人してベッドに倒れこむ。
体は疲れきり、事後の処理は後回しとなった。
ぬくもりに包まれながら眠りに落ちる。
彼女と子供は成せるのだろうか。成せるとして、どんな子になるのか。そんな取り止めのない事を考えながら。

     * * *
133黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:38:36 ID:jQ87dfUW
首筋を這う、温かな感触で目が覚める。
窓の外はまだ暗いが、長い間まどろんでいたようだ。
ふと視線を落とすと、美沙の頭がすぐ近くにあった。
「んむ……はむ……はふ……」
俺の胸に顔を押し付けて、何故か肩やら首やらに甘噛みを繰り返している。
「……くすぐったい」
そっと頭を押しのけると、美沙はとろんと焦点の定まらない瞳で俺を見返した。
寝惚けていただけらしい。
「お早う――――ちょっと早すぎるか」
おはようのキスを交わして、再びベッドに転がる。
そのまま仰向けで、緩やかな美沙の髪の先を指で漉きながら、ぼーっと天井を眺めた。
「……どうかしました」
目が覚めてしまったのか、意識を取り戻している美沙が小声で尋ねる。
「ちょっと、な。
昔のことを夢に見た」
そう、彼女と出会ってから、もう3年になる。
あれから、色々な事が変わった。
美沙は名前を得、戸籍を取り、今では学生をやっている。
そして1年前のある日に、突然美沙はこう告げた。
『犬になれないんです』
少なからぬ衝撃。
その事実も偉大なる日常の流れに押し流され、結局あの日以来彼女は人間の姿のまま、つつがなく日々を過ごしている。
今となっては、かつて彼女がヒトでなかったなどど、誰が信じよう。
机の引き出しに仕舞ってある古びた首輪だけが、唯一彼女の生来の思い出となった。
あの黒い犬は、もういない。
果たして、これで良かったのか。
お話で人間になったピノキオは幸せだったのか。
取り留めの無い思考は、美沙が再びキスをねだって来たために中断される。
口の周りは直ぐに涎まみれになってしまう。
もぞりとシーツが蠢く。
美沙はしきりに下半身のほうを気にしていた。
「……すごい」
俺の下腹に手を当てて呟く。
「昨日あんなに出したのに」
「いや、これは生理現象で――――まあいいか」
屹立しているものが白魚のような指に扱かれているのを止める気にはならない。
既に眠気は吹き飛んでいた。
俺も彼女の股に手を伸ばし、体勢を入れ替えて、昨夜散々突き込んだ秘裂に舌を這わせる。
休日の朝の特権として、ゆっくりと爛れた起床時間を愉しんだ。
お互いに一発。疲れつき倒れた二人は再びまどろみの世界へ。
「今度起きたら何をする?」
「そおですねえ……」
ゆるんだ笑顔を抱きしめながら、俺は眠りに落ちていく。
意識が途切れる直前「しあわせですよ」と呟く声が聴こえた。
134黒い犬はもういない ◆MZ/3G8QnIE :2009/09/25(金) 23:45:51 ID:jQ87dfUW
投下終了です。

犬の娘のお話は今回で終わりです。
中編からかなり間を空けてしまい、申し訳ありません。
次に書くとしたら、双子の話の番外かテーマを決めて短い話になると思います。
その時は宜しくお願いします。
135名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 00:57:12 ID:htfQdX13

「犬形態でお尻の穴」に反応した自分に、誰か介錯を頼む
136名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 01:30:31 ID:uf9+m/Kv
最高
137名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 02:15:00 ID:zAMDE6z9
>135と一緒に俺にも介錯をorz
138名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 07:21:54 ID:tTHqxBep
この変態共がぁ!

という訳で>>135,137を俺ごとぶった斬ってくれ
139名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 08:05:19 ID:rrAQ/MQZ
>>130
GJ
迷惑かけるな。俺にも介錯を頼む。
140名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 18:20:02 ID:9Rz2nh7h
このスレ的には紅の切彦ちゃんはありなのかな
141名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 18:37:43 ID:8xadsIt+
切彦ちゃんはこっちで

【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 4冊目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242246725/
142名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 02:33:15 ID:aFvfVUAd
このスレのおにゃのこが一部素直クールとかぶってる気がする
素クースレの住人の俺にとってはいいことだ
143名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 10:56:12 ID:FEgXjeSl
>>142
俺がいる
144名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 17:54:41 ID:tKHQfLEP
まあツンデレで無口だったりすると、相手どころか周りにすら気付かれない可能性があるからな。
145名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 18:59:18 ID:LG4CgSeK
>>142
ここと素直クールスレの両方に投下してる職人もいるからね

俺も両方のスレの住人だw
146名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 20:13:13 ID:aFvfVUAd
雪子と愁…ゲフンゲフン
147名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 22:43:57 ID:77tkmk7n
>>135,137,138,139



                         えっち、」

148名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 18:32:18 ID:m4IVL0en
もっと言って
149名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 19:23:45 ID:b1trMvBz
無口な女の子がポンと言うと良いね。
もっとエロい事したくなる。
150名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 21:00:53 ID:ZY3o3h66
ぶっちゃけかなり巡回先被ってる奴多いだろ。むしろ俺しかいないだろ。
ツンデレ、姉、妹、素クール、甘娘、無口娘、嫁、とまあ他にもwizスレにエロフ、サキュバススレだの巡回先多いな俺orz
151名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 21:12:14 ID:VvpOp3qG
>>150
ツンデレスレはもうないんだぜ……
152名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 22:23:58 ID:+Ue4h2jx
まあいくつか常駐してるエロパロスレがあるのは普通だよネ

エロフkwsk
153名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 23:19:23 ID:8n9G18o6
>>152
普通に『エルフでエロパロ』スレだと思われます。


>>150
後ろ3つ以外全部被ってるw
あとは依存に人外娘にヤンデレ、キモ姉妹、ハーレム、金の力、ビッチが一途…、
節操なさすぎるな…
154名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 23:24:31 ID:ZY3o3h66
>>151
VIPのツンデレだw
つーかエロパロのツンデレスレは落ちてからそれっきりだがもう立たないんかのう・・・
155名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 23:47:43 ID:MCUIP0t4
>>153
俺はヤンデレ、キモ姉妹のかわりにHRと擬人化した♀動物が入ってるな
あとは被ってる
156名無しさん@ピンキー:2009/09/29(火) 23:56:35 ID:GC9DP1Se
自分も大体被ってるww
こんなに数多くのスレに顔出すのは自分くらいかと思っていたが……知らなかった

>>146
kwsk
157名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 00:37:52 ID:RS0vkCtR
>>156
素直クールスレへGo

俺の場合は姉妹系以外全部巡回先だわ...orz
158名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 01:52:45 ID:jmS7YXVF
俺の巡回先に入ってるのは、ここと素直クール、それから卓ゲエロパロ。
159名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 06:57:49 ID:OWqs1f5m
低血圧な無口な幼馴染みを毎朝起こしに行きたい。
無言で布団を掴んで離さないけど、キスしたら素直に離したりとか。
160名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 07:35:06 ID:PLIrWbIO
幼馴染段階でキス…だと…!?
161名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 09:59:37 ID:jmS7YXVF
幼馴染だから、小さい頃から色々吹き込める(故意か勘違いかは問わない)
無口だから、他の人と整合性を取ることもなくいつまでも信じてしまう

ならば、二人の間でおはようのチューが習慣化されていてもおかしくはない!!
162名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 11:36:16 ID:4ECbstSd
今のところ見てるのはボーイッシュとロボット、人外スレ以外全部被ってるな
というかシチュスレ住人は被っているのがデフォじゃないのか?
163名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 19:50:35 ID:ZzGcAWNG
むしろ、こことほのぼのしか行ってない俺みたいなのが少数派なのか
なんかショックだ

>>150氏を参考に巡回するか
164名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 06:43:14 ID:6Lytatf+
住人も書き手も被っているよ
ホウケイかどうかはしらんけど
165名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 13:39:03 ID:+ONSEacr
皆結構巡回してると。
勿論俺も。
166名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 04:17:37 ID:cp5IZhdf
結構巡回してるけどここの住人と全然被ってなかった
167名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 10:52:17 ID:hIFQa7tC
「ぶっちゃけ他人が巡回してるスレなんて興味ありません。
貴方がたは私達無口っ娘を愛でる為にこのスレに居るんじゃないんですか。
「俺○○スレも見てるんだぜー」とか言われても、結局それに乗るのはごく一部だけ。興味無い人達は一部で盛り上がってるのを眺めてなきゃいけないんです。
せっかく>>159-161さん達が流れを戻してくれたのに、また一部の内輪話に戻るとか何考えてるんですか?
もっと私達を愛してください。他の人なんて見ないで。私達も貴方達を愛しますから。だからお願…い、しま……す……」





「………………あー」
 マジ絶句するしか無かったね。佳奈とは赤ん坊時代の公園デビューからもう十六年近い付き合いになるけど、その俺ですらコイツがこんなに喋ったのは見たことがない。
 そもそも俺達は、揃って進学校に入学しちまったせいで月に二回しか無い休日を有意義に過ごすべく、二人して街に繰り出してた訳なんだが。

 ジーザス。幼馴染みが突然電波を受信しやがりました。

「………………………………あぅ」
 しかも何か自分もダメージ受けてるっぽい。顔凄い真っ赤だし。
 まさか恥ずかしいのか。こんな街中で突然立ち止まった挙げ句、「ワタシマシンガントークケイムクチッココンゴトモヨロシク」みたいな真似した癖に恥ずかしがってるのか。
 だとしたらヤバい。あいつもヤバいが俺もヤバい。
 ただでさえ人が多い駅前通り。道行く人みんな「なになに喧嘩? 痴話喧嘩?」みたいな微妙にわくわくした目でこっち見てる。
 ああもう完全に訳分かんねえ。何でこんな街中で目立たにゃならんのだ。てかお前ら こ っ ち 見 ん な ! この暇人共が!!
 睨み付けると華麗に目を逸らしやがる野次馬共にガンを飛ばしつつ、内心嫌な予感を感じながらも佳奈の方に向き直ってみる。
「………………………………うぅ、みーくん」
 そこには案の定パニクって目に涙を溜めた佳奈の姿が……ってここで泣くな抱き付くなしがみ付くなー!!



結局、俺は暇人共の生温かい視線に晒されつつ、泣きじゃくる佳奈を横抱き(俗称:お姫様抱っこ)してその場を走り去ったのだった。

もう二度と駅前行けねー!!!
168名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 11:08:10 ID:8Ogo6/xo
>>167
がんばって長台詞喋る無口っ娘可愛い。
169名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 18:01:28 ID:I6q0xs8i
人前でお姫様抱っこの方がハズカシス

甘娘kwsk
170名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 19:16:04 ID:TmaP4QND
>>167
なんたるメタ電波www
そして恥ずかしがり屋良いねえ。GJ
171名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 00:34:07 ID:TwbFPsUa
散々焦らして「入れて・・・」と彼女が言わないと入れない、しかし相手もなかなかの
無口っ娘なのでこちらもかなりの我慢をしいられる
172名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 08:45:17 ID:/7vmxS3t
>>171
我慢対決いいね。
173名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 10:18:36 ID:tEdhZQMs
ふ、元々無口の上、恥ずかしくてそんなことはとてもいえない無口っ子が、
情欲と期待と不安と焦らすことへの非難と羞恥に揺れる潤んだ瞳でじっと
無言で見上げてきたら、俺の我慢など一瞬で消し飛ぶね!
174名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 17:01:39 ID:/7vmxS3t
無口っ娘の嬌声を聴くのが夢です。
175名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 20:52:02 ID:+YPew7qH
マグロをマグロじゃなくすのが萌える
176名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 00:21:52 ID:90744aWS
むしろ男としての使命じゃね?
177名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 16:46:58 ID:QQA+n5pI
保守
178 :2009/10/08(木) 12:56:39 ID:+jAfQ/+P
             
179名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 00:30:46 ID:YjvcberX
>>178
なぁ、お前それ面白いと思ってやってんの?
言っておくけど全然面白くないよ。
確かにここは、無口っ子のスレだ。
だがな?なにも喋らなければ良いってもんじゃない。
動きがなければ、ただの人形と同じだ。
お前は人形じゃないだろ?
人間だろ?
だからさそこでずっと寝てないで起きてくれよ。
息の音ひとつ聞こえない寝方って、お前誰だよwww
なぁ、聞こえてるんだろ?
早く起きろよ。
いつまで、、、寝てるんだよ、、、
180名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 06:37:40 ID:Z2PlLvzw
>>179
うわあああああ!?
181名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 08:36:04 ID:+FLeGLL+
衛生兵っ! 衛生兵はどこだっ!
182名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 13:05:37 ID:0KezNjMq
ごがっ


…確かわたし、寝てたんだっけ?少し、息が苦しい。

…そうか。またか。

何時だろう?わずかに目を開き目覚まし時計に手を伸ばそうとするけど腕が重い





「症状」を一番知られたくなかった人がわたしの手を握っていたからだ…
183名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 16:22:20 ID:ja3auVYs
睡眠時無呼吸症候群?
184名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 17:37:32 ID:WyjBKdVE
>>179
普段から静かだから、気付いたら死んでましたな無口っ娘なんて
185名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 23:06:06 ID:kLMSkj8i
「……へーき? ………痛く…ない?」
186名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 19:07:08 ID:3h6Xxu8q
>>185
何が?
俺の息子の事だったら、お前の握力50kの手から息子を解放してもらえれば助かる。
187名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 20:07:13 ID:gqcOcvyk
>>186は不能になりましたとさ、ナンマイダブ…
188名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 19:08:59 ID:L2iM00Z4
これで避妊を気にせずヤり放題だな。
189名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 19:14:56 ID:T619s2tR
もはや存在がないのだからやれないのではないか
190名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 19:27:46 ID:1EwnSrDk
不能男×無口っ娘か。
191名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 07:18:10 ID:QFJ92kLL
『・・・・・だいじょうぶ』

『・・・・・おにいちゃんだったら・・・・・いいよ』
192名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 12:17:39 ID:W5Os/3RW
妹が無口なのを良いことに、悪戯しちゃう兄。
193名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 15:28:12 ID:0i6r9ZwC
兄を拘束してひたすら悪戯し続ける無口な妹
194名無しさん@ピンキー:2009/10/18(日) 23:02:42 ID:fj5W+VOL
「んー、今年もインフルエンザが流行しそうだってなぁ」
「…………?」
「ああ、確かに毎年言われてるけどw
でも今年は従来型に加えて新型まで流行るって言うからな」
「…………!」
「そんなに怯えるなってw
ちゃんと栄養とって、規則正しい生活して、外出中は出来たらマスクして、
外から帰ったら手洗いうがいして、あとは予防接種受けとけば大丈夫だって」
「…………」
「……ん? もしかしてお前……?」
「…………;;」
「こら、目を逸らすな。さてはお前、まだ予防接種受けてないな?
早めに行っとけよー? 新型との兼ね合いがあって、ワクチンも品薄って言うから」
「…………」
「まったく、相変わらず注射嫌いなのなw
 小さい頃はお前に予防接種受けさせるの大変だったよなー」
「…………?」
「あ? 覚えてないのか? まぁ仕方ないか、小さかったし
ホント大変だったんだぞー、俺が痛そうにするとお前が怯えて泣き出すから、空元気で
痛くない振りしてさ」
「…………」
「それでも受けたがらないから、手を握ってやって励ますんだけど、それでもダメでさ」
「…………」
「お? だんだん思い出してきたか? 仕方ないからこんこんと注射受けると風邪引かなくなるだぜー、
って言っても、いままで引いてないから大丈夫!とか言い出すしw」
「…………」
「いやだからそれは去年の予防接種のおかげだって言っても聞かないしよw
最後には注射受けないと風邪引いちゃって寝込んじゃって遊べなくなるぞって脅す羽目になるしw」
「…………!」
「お、思い出したっぽいな? でも、それでもまだダメだったのは覚えてるか?」
「…………?」
「そこまではまだかw くっくっく、いや、そのあとが傑作でさw」
「??」
「それでもダメならってんで、お兄ちゃんは最後の切り札を切ることにしたのですよ。
『……もし風邪引いて寝込んじゃったら、兄ちゃんお前置いて一人で遊びに行っちゃうからな』って」
「!!!!」
「そしたらお前、いきなり泣きながらお注射我慢するから置いてかないでって……
お前は昔っからお兄ちゃんっ子だったよなぁw」
「――――!!」
「あ、こら、痛、やめろって! やーめーろーよーw」
「!!!!」
195名無しさん@ピンキー:2009/10/19(月) 19:42:46 ID:j8L0dQgF
>>>194
すみません遅れましたGJです。

で、今年も結局お兄ちゃんと予防接種にいくのですね。

196名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 19:15:44 ID:2qU25h+K
今年はお兄ちゃんのを注射されちゃうんですね。
197名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 07:16:42 ID:qkxLPeaq
>>196
その前に、ぐじぐじ泣いている妹にケーキをおごって、妹はデート気分で
〔ニンマリ〕があるのですよ。




・・・お兄ちゃんの注射はみんなが寝た後で………
198名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 17:29:05 ID:lVDdRU5i
ポケモンHGSSで4番道路に無口さんがいたのに番号交換できなかったorz

何故だゲーフリ!
199名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 19:21:55 ID:rMPsS0kO
>>198
無口っ娘から簡単に情報を引き出せると思ったら大間違いだ。
200名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 20:01:45 ID:xFaWFPQh
表情で何が言いたいか読み取れないとな。
201名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 07:33:33 ID:Oeoz0z6M
愛コンタクトってやつやね
202名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 09:20:38 ID:e6PA8rBC
>>198
サファリにも無口さんはいるジャマイカ
203名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 18:06:31 ID:O1ExImWp
主人公を女にすれば操作キャラが無口っ娘なんだぜ!
204名無しさん@ピンキー:2009/10/23(金) 18:35:23 ID:lkDusGdk
お前頭良いな
205名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 12:09:08 ID:0pk+uzXp
鬼才現る
206名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 12:21:11 ID:AKjkmb6f
>>203
気付かなかった。
これからは、RPGは女の子の主人公を選ぶよ。
207名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 19:23:27 ID:BEpKp7qb
>>202
無口&熟女キラーか・・・できるな
208名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 16:01:14 ID:+3KBBHve
すごく無口で無表情な従妹だけど



たまに会った時は常に後ろをちょこちょこ付いて来ます
209名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 17:35:24 ID:nrnkaJ1S
>>208
人気の無い所に誘導するんですね。
210名無しさん@ピンキー:2009/10/29(木) 22:34:42 ID:MdWC7w9C
とりあえず膝の上に乗せて頭を撫で回すところから始めようか
211名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 11:53:05 ID:QuYfK4uT
>>210
いつの間にか胸を撫でてるんですね。
212名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 12:15:31 ID:JB3ESu1v
>>211
一度だけこっちを振り向くんだけど、「心配ないよ」って感じで微笑み返したら黙ってされるがままになるんですね?
その後悪戯は次第にエスカレート。散々胸を弄られたせいかトロトロになった下着の中に手を入れられて、終いには陰芽を軽く擦られただけで生まれて初めての絶頂を経験しちゃったりするんですね?
荒い息の中、紅潮させた顔と潤んだ瞳でじっと従兄を見つめちゃうんですね?



たまらん!
213名無しさん@ピンキー:2009/10/31(土) 20:51:29 ID:TVykh7mc

「・・・・・・これ・・・・・・すき」

「・・・・・・もっと・・・・・・して」
214名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 00:21:13 ID:S4WK6ugL
>>212
そこまで妄想しておいて何故(ry
215名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 07:06:13 ID:NMNSedzY
無口な分きっと口と尻使いと腰使いが凄いんだな
絶頂時は目に見えるくらいビクビクッってなったり。
216名無しさん@ピンキー:2009/11/01(日) 10:38:26 ID:Xy6e17h7
>>213
珍しく喋ったと思ったら変態おねだりとか、止められなくなっちゃう。
217名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 00:57:54 ID:lbR+CAD4
このいやらしさんめ!
218名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 02:31:20 ID:Kugg7d3w
エロもいいけど>>210のシチュは普通に和む感じの方が好き
219名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 16:09:31 ID:4x7TKf06
 木枯らしも吹き始めた秋の土曜。
 俺は一日、従妹の糸麻の相手を頼まれた。
「糸麻はお前によく懐いているからな」
 だそうだ。そんな叔父夫婦は仕事が忙しいとのこと。
 一人家でのんびりも良かったのだが、従妹直々の指名とあっては断れまい。

「……ときお」
 小声で下の名前を呼ばれる。糸麻は結構、無口で大人しい子だ。
 それに比べ、両親は随分と開放的な性格。俺なんかに全面的に信頼寄せてくれちゃってる。
 返事の代わりに頭を撫でてやると、時めいたような表情で見てくる。
 はっきり言って、懐かれてるなんてもんじゃない。

 ああ、悪気はあるとも。でも、最近寒くなったので許してほしい。
「…」
 ここは俺の家のより、断然広い浴槽。そう、今日はこちらにお邪魔している。
 そして温かいお湯の中に、俺と糸麻。二人一緒に入っても問題ない。
 そう――お風呂に入っている訳で。

 少し寒くなったから――と前日に誘ってみると、意外にもOKを貰った。
 ただ恥ずかしいのか、糸麻は一応、黒に黄色いラインの入った競泳水着を着ている。
 俺も一応、水着は着ているんだけど…うん、変態も良いところだね。
 しかし、目の前で可愛い顔して見つめてくれると、何か萌えてしまって仕方ない。
「乗る?」

 そして膝の上に、華奢な体を乗っけた。上半身から下半身にかけて、その感触が応える。
「……温かい」
 強要しているみたいだが、糸麻って俺の言うことだけは、何故か何でも素直に聞いてくれるんだよな…。
 俺はそっと両腕を後から回して、糸麻を抱き締める。
 でも、ぴく、と反応はしても、拒否しない。されるがままというか、されたがっている感じ。

「糸麻…」
「……?」
 向けてくる横顔は、とろんと緩んでいて、のぼせたように赤い。
「このまま、良い?」
「……うん」

 糸麻の小振りな胸に手を置き、そっと揉む。
「っ…」
 ぞくぞくする感覚が、ついその動きをエスカレートさせていく。
「…んっ…!」
 漏れる息遣い。二人きりの時は度々、こうして――弄ぶ。

 上からが物足りなくなり、肩から水着を擦り下げる。
「…ひゃっ…!」
 直に触れる膨らみと、突起。幼いそれに興奮する俺は、多分ロリコン。
 でも、切なく喘ぎ続けながらも、嫌がらない。本当に、従順で可愛い。
 気づけば片手は、糸麻のハイレグラインをなぞっていた。

 正直に言おう。水着姿が見たかった。そしてそれはとてもフィットしていて、俺を駄目にしてくれた。
 もう、止まらない。その成長途上の下に触れ、くにくにと擦る。
「…き、おっ――!」
 やがて俺の名前と共に、果てる糸麻。すぐにぎゅっと包んで、切なさを共有する。
 と、くたびれたはずが、すぐに手首をくいくいしてくる。

 体ごと振り返る糸麻。小さな顔、その目に涙を溜めて、求めるような女の表情。
「……まだ、して」
 我慢のしようがない。俺は、迷わず唇にキスをする。
「ふ…うむ…ん…」
 舌を絡めるキスも、思えば随分と上手くなった。
220名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 16:11:39 ID:4x7TKf06
 少しずつHなことを繰り返してきて、その度に糸麻の可愛い部分を、見つけていく。
 湯船に半分浸かりながら、俺は張り裂けそうだった自分の竿を、ようやく解放した。
 そして水着をずらして糸麻の小さな入口へと、挿し込む。
「あっ…う…!」
 キスと愛撫で充分に解してから中に、そして徐々に摩擦を始める。

 風呂の中でやるのは、独特の感覚がある。ただやっぱり、気持ち良い。
「んっ…くぅ…うっ…!」
 しっかりと支えにされて、求められる。自分の性感にもどかしく流されながらも、俺と繋がる気でいる。
 最初から、ずっと。そんなにも俺のことが好きなのかと思うと、何か誇れて幸せで、更に熱くなれる。
「…出るっ!」
 
「――ううっ……!!」
 射精の勢いは凄まじかった。それが中にたっぷりと……。
 しかし、もうこうなったら右も左もない。そのまま糸麻の気力が尽きるまで、俺は体を貸す。
「あ…あぁっ……!!」
 変な話だが、最近は俺よりも糸麻の方が、無口なりにだが、積極的にも見える。

「…はっ…はぁ…」
 水着を脱がせ裸にした糸麻の肢体が、行為を終えても絡みついてくる。
 その好意を独占出来る俺は、同じように糸麻だけに全てを許して、糸麻だけを愛す。
「…ときお…だい、すき…っ」
 同意の代わりに、素肌のまま抱き締める。もう一度、優しくキスをしながら――。

 風呂から上がると、体はすっかりほかほかしてしまっていた。
「……」
 糸麻の、程よく濡れた髪が、どことなく色っぽい。
 それに俺の使ったタオルを受け取り、じっと見つめたかと思うと自分の顔に埋めたりして、口数は少ない割にたまにこう、大胆なことをする。
 ただ着替えた姿を見ると、改めてまだ幼い女の子なんだと分かる。

「遅くなったが、昼飯でも食いに行くか?」
「……うん」
 頷く糸麻の仕草から、少し控えめな態度まで、全てが愛らしい。
 家でのんびりしたいなんて、本当は嘘。
 二人きりでいられる時は、いつでもこうして過ごしたい――最近はそう、思うようになった。


おしまい
最近の流れがついツボに入って、こんなの書いてしまいました
221名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 16:12:58 ID:m1qXN07S
あなたが神か
222名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 20:31:18 ID:QGp68dgl
入信します。
空中浮遊中の愛撫を教えてください。

あれ?
223名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 22:01:34 ID:28TW2Tf5

>>219 GJ!!
無口だから好き勝手じゃなくて、好きだからってところが良いですね。





でっ、出来れば続きを・・・。

過去の話を・・・。
224名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 00:46:15 ID:UUUbm7xl
あなたがかみか
GJッ!
225名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 18:12:16 ID:MkZJV2Ax
>>219
GJ
226名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 14:59:38 ID:uHvDfMQN
………………………だいすき。
227名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 00:17:47 ID:26lSvrYv
俺もだよ
228名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 15:07:31 ID:+aOdRvLO
>>226
昔、日本テレビでやってた深夜番組を思い出したよ・・・
229名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 17:58:26 ID:YJgXMgmW
cmに入るときのアイドルとかの一言か。
230228:2009/11/15(日) 08:16:36 ID:5ynkETXV
>>229
よーおっさん!!
俺もだけど・・・

木立から振り返って
・・・・・だ・い・す・き
231名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 02:33:57 ID:0wvYZkCy
ある夕方のショッピングセンターのフードコートの光景
制服がかわいいと評判の高校の制服を着たカップルが話していた

「で真白、本日相談したいことって何だ?」
もじもじ
「・・・。」
「制服のスカートを長くしたいのか?」
こくり
「そんなことしたら生活指導の鬼の木村に目をつけられるぞ。」
ふるふる
「・・・。」
「スカートがちょっと短いのを入るまで知らなかった?そんなの先に知っておけよ。」
「・・・。」
「わかったわかった、でもな書道部目当てで受験勉強に集中するのはいいがもうちょっと調べろよ。」
「・・・。」
「別に怒ってなんてないぞ。ところで体操着や水着は恥ずかしくないのか?」
「・・・・・・。」
「運動するための服だと割り切っても疑問なあるのだが。」
「・・・、・・・。」
「わかったわかった。」
「・・・。」
「さすがに手伝えんが、呼び出されたらついて行って説明する。」
こくり
「まあ、がんばれ。」
なでなで

後日、ほぼ同時刻に同じフードコートで
「・・・。」
「お礼でぶっかけうどんをおごってもらっていいのか?」
「・・・。」
ずずず
「いいんだな。」
こくり
「あの木村ですら校則違反だが短くされるよりましって言ってほめたぐらいだからな。」
「・・・。」
「まあな。俺もちょっと絞られたけどな。」
「・・・。」
「なんだ?」
「・・・・・・・。」
「俺は真由がかわいければどんなスカートでもいいさ。」
「・・・?」
「本当だ。」
「・・・・・・」(赤面)
「ただし俺の家の中だけだぞ、改造前ですら廊下を歩いてるだけで恥ずかしがってたくせに。」
「・・・。」
232名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 17:47:46 ID:ZRMOIikh
全く、無口っ娘は行動が大胆だぜ。
233名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 21:35:28 ID:hromEjqh
無口だけど甘えんぼうな従妹とスキンシップ
234名無しさん@ピンキー:2009/11/22(日) 15:37:48 ID:Agxl3NLo
萌えた
235名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 15:02:18 ID:WxA4Gdl4
「ん」
「ああはいはい、すぐにメシできるから待ってなー」

「……ん」
「今レポート追い込みだからごめんなー。終わったら遊んでやるから」

「…………ん」
「だからごめんってー。何でも言うこと聞くからそんなに拗ねないでくれよー」

「ん……」
「……ん、っと。相変わらずキス待ちの顔可愛いなー、お前……って痛い痛い!」
236名無しさん@ピンキー:2009/11/24(火) 16:57:03 ID:ehptpCXA
>>235
短いくせに・・・





萌えました

GJ
237名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 03:08:12 ID:zz/c2C6/
>>235
無口っ子の微妙なニュアンスの差がコミュニケーションのキモなんですねわかりますw
238名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 15:36:06 ID:bXE+ShFt
エロなしで投下します
239名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 15:36:36 ID:bXE+ShFt
 僕が隣のおばさんの家に呼ばれたのは、十分前。
 適当に準備をして徒歩約二十秒。
 ぴんぽーん。
「あら、いらっしゃい。助かるわ」
 そう言っておばさんは僕を歓迎する。
 用件はこう――”あの子、また引き篭もっちゃって”。
 別に学校にはちゃんと行っているし、外から見れば問題はないように見える。
 けど、雪花菜(きらず)は日常生活によくストレスが溜まるらしく、そんな時は部屋に篭る。
 彼女の部屋の前まで来て、いつもの掛札。

 どぅ のっと でぃすたーぶ

 平仮名でお茶目に書かれているけど、一日中この状態がザラでは体が心配だ。
「じゃあ私は買い物に出かけてくるから、あとはよろしく」
 昔から家族ぐるみで付き合いがあるからと言っても、おばさんも調子良いなあ。
 確かに、頼まれるのも分からないでもない。
 とん、とん。
「夕尾(ゆうび)だけど、雪花菜ちゃん?」
 …とた、とた、とた。
 がちゃり。
「……ぁ」
 やや小柄な雪花菜が、僕の目に映った。
 長い髪をツインテールにしている彼女は、いつ見ても可愛いと思う。
 そう、こういう状態の時も、僕とだけはコンタクトをしてくれる。
「――っ」
 無言のまま、抱き着いてきた。
 僕も抱き締め返すと、その体は温かくてふかふかしている。
「おはよう」
 言ってみれば、僕は彼女の精神安定剤みたいなもの…かな?

 手を引かれて部屋の中に入った僕。
 雪花菜が何をしていたのか、分かった。テレビゲームだ。
 それもどうやら、今日は彼女の大好きなレースゲームを一緒にしたい――ということらしい。
 彼女は、こういう時に用意して、今ではすっかりお馴染みになった僕用の座布団を敷く。
 ぽんぽん、と合図をして僕を待つ姿が、健気で愛くるしい。
 ありがたく座らせてもらうと、すぐに彼女も隣に座ってコントローラーを握らせてくる。
 嬉しそうな顔。一緒に遊びたかったんだと、言わなくても滲み出るくらいに。
「……じゃ」
 そして、一転して画面に釘づけになる視線。
 ボタンを押す。設定を決めて、使う車種を決めて、コースを決める。

 なう ろーでぃんぐ

 すぐにレーススタート。
 雪花菜は普段からこれをやっている。なのでそこそこ速い。
 ただ僕もたまに付き合ってあげている訳で、完全な初心者って訳じゃない。
「――!」
 白熱する展開。横目でちらっと彼女を見ると、真剣そのものなのが少しおかしい。
 彼女は意外とよくいるタイプだけど、加速の時は身を乗り出す。カーブの時は自分も一緒に体を傾ける。
 ――のめり込んでいる、って言うのかな。他のゲームでもそう。
 やっぱり、見ているとおかしい。そして、見ていて飽きない。
「あー…負けちゃった」
 僅差で競り勝つと、僕の方を見て、零れそうなほどの笑顔。
 彼女は意外と負けず嫌いで、時には適度に手を抜いてあげることが要求される。
 本気になって対抗は大人気ない…けど、したこともあって、そこでムキになる姿は可愛かった。
 でも、彼女のストレスになっては元も子もない。
 それに、年下の子をいじめるような感覚で、ちょっと気が引ける。
「……えへ」
 にっこりしてもう一度、と人差し指を立てる彼女。
 僕と彼女は同い年。けど、彼女の方が少し、子どもっぽい。
240名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 15:38:19 ID:bXE+ShFt
 しばらく遊んで、休憩。
 一時間置きに休む。その辺は几帳面なのか、雪花菜は徹底している。
「今日は、ご飯は食べた?」
「……」
 途端に俯いて、首を横に振る彼女。
「ダメだよ。ほら、おばさんがお弁当作ってくれてるから、食べないと」
 そう言って、来た時に手渡された弁当箱を掌に。
 すると彼女は、しゅんとしつつも頷いてくれた。僕は頭を撫でてあげる。
「――ぅ」
 表情はまたすぐに明るくなった。それどころか、気持ち良さそうに目を薄く閉じて、声を漏らす。

 らんち たいむ

 そんな可愛いフォントで描かれた弁当箱を開けると、中にはとても彩りが良く、美味しそうなおかずが並んでいた。
 おばさんこんなに料理が上手なのに、普段あまり食べないなんて勿体無いなあ……。
 とん、とん。
「何?」
「……」
 雪花菜は必要な時以外は、言葉を紡がない。特に、僕と一緒の時は。
 何故なら、一つ一つ口にしなくたって、分かり合えるから。
 元々、彼女は体はそれほど強くなくて大人しい子。
 それで篭りがちで、話し相手もいなくて…そんな要因が重なって、無口になってしまった。
「…一緒に食べてほしいの?」
 こくり。
 でも、一緒にいる時間が長いと、こういうことも自然と感じ取れるようになってくる。
 小さなケース入りのお箸を手にとって、まずは彼女が一口。
 ごくん。
 そして僕に、箸を渡してくる。
 交互のやりとりは、そのまま何度か続く。これもいつものこと。

 食事が終わると、雪花菜は少し元気になったのか、部屋を出てお茶を用意してくれた。
 ただし、僕も手伝ったけど。
 こく、こく。
 部屋で二人、お茶を飲む。
 ゆっくりと、流れる時間まで遅くなるくらい、少しずつ飲んでいく彼女。
 どうしてこんなに可愛いんだろう――って思いながら見つめていると、異変。
「! …けほっ、げほ」
「大丈夫?」
 むせた彼女に寄り添うと、心配いらない――そんな表情で笑ってくれた。
 安心して視線を外すと、テーブルの上に写真立てと、添えられた青色の造花。

 ふぉーげっと みー のっと

 勿忘草。
 直訳”私を忘れないで”。
 僕と雪花菜、二人で写った写真には、小さくその言葉が書かれてある。
「…」
 彼女を、時には放り出したくなることだってある。
 頼られすぎていて、逆に恐いとも思う。僕がもしいなくなったら……。
「――っ!」
 僕の余所見が過ぎたのか、彼女は不機嫌そうに、腕を回してきた。
「雪花菜?」
「……」
 温もりが少し、熱っぽいように感じ始めて、彼女の顔も少しだけ、赤い。
 求めに応じて、そのまま抱き合う。
「……ふぁ」
 吐息と一緒に、体が寄りかかってくる。僕に、全て委ねるようにして。
 包み込んで、支える。頬擦りされると、少しくすぐったい。
 大丈夫。心配しなくても、きっと上手くいく。僕も、彼女も――。
「ただいまー」
241名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 15:39:21 ID:bXE+ShFt
 びくっ!
 そんな反応と共に、慌てて僕の体から離れる彼女。
 でも、どんなに平静を装っても、顔が赤いよ? 僕もだけど。
 
 僕は隅に縮こまる雪花菜に近づいて、手を差し出す。
「一緒に、居間に出よう?」
「……」
 こくり。
 手を繋いで、立ち上がる。さあ、ドアを開けて。
 するとちょうど、買い物バッグをいっぱいにしたおばさんが、そこにいた。
「あら、夕尾くん…それに、雪花菜?」
「……」
 おばさんは、申し訳無さそうにしている彼女を見て、安心したように笑った。
「ありがとう」
 そして僕と手を握ったままの彼女に、近づいて――。
「夕尾くんと、仲良くね」
 …こくり。

 からめる ぷでぃんぐ
 
「美味しい」
 おばさんと雪花菜が作ってくれた、手作りプリン。
 僕も少し手伝ったけど、これは癖になりそう。レシピメモしようかな。
 るるるるる、るるるるる。
「私が出るわ」
 おばさんは席を立って、棚の電話を取る。
「……?」
 話が終わる。何やら、楽しそうな雰囲気だった。
 がちゃん。
「――ごめんなさい、安永さんからのお誘いだわ。少し出かけるわね」
 こく、と雪花菜が頷くと、おばさんはすぐに準備を始める。
 プリンを食べ終えた時には、軽いお洒落が出来上がっていた。
「行ってきます。夕尾くん、良かったらもう少しだけ…雪花菜の相手をしてあげてくれないかな?」
 …本当に、調子良いなあ。でも、了解です。
「……」
 そして再び、僕と雪花菜は家に二人きりになる。
 不意に彼女の方に目が行く。彼女も、僕を見ていた。
 笑った。こちらも思わず、顔が綻ぶ。
「……ゆー、び?」
 何に気づいたのか、ぱた、と椅子から下りると、彼女は僕の元に。
 手には、新しいプリンを持って。
「……はい」
 自分のスプーンで表面を掬うと、僕に食べさせてくれた。
 おかわりは、二人で分けっこということ。

 しかし最後の一口に、暗黙の駆け引き。
 僕は雪花菜にあげたいし、彼女は僕に食べさせたそうにしている。
「……!」
 何かを思いついたように、彼女は嬉しそうにそれを、自分で食べた。
 ホッとした僕――そのタイミングを見計らっていたのだろうか。体を寄せて、頬に触れてくる手。
 顎をそっと下げられたかと思うと、彼女は目を閉じて、キスしてきた。
「ちゅ……」
 甘く絡みついてくる舌。凄く積極的なアピールに、思わず腕が、その体をしっかりと抱き締める。
 切ないくらいに気持ちが昂って、熱はキスをより扇情的にする。
「ぷ、はぁ……」

 すうぃーと きす

 そっと顔を離して、どきどきしながら余韻に浸る。雪花菜もまた、同じように。
 可愛い顔が、僕を見上げてきた。
242名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 15:41:02 ID:bXE+ShFt
「美味しかったよ、雪花菜」
 そう言うと、彼女はご機嫌な笑顔を見せて、僕の胸に埋まる。
 高鳴る心臓の音が、感情から心の奥底まで、全てを彼女に筒抜けにしてしまいそう。
 でも、凄く温かくてふかふかで気持ち良くて、愛しくて切なくて、苦しいのに止まらない。
 ただ優しくその体を抱いて、無心に抱いて、時間を止めたい。
 そうしたいだけ。
「……ありがとう」
 彼女が胸の中で、そう言った。消え入るような声だけど、優しかった。
 僕と会う日、どんな些細な用事でも必ずこう言う彼女。
「そんなこと、言わなくて良いよ」
 当たり前だから。本当はずっと、傍にいてやりたいくらいなのに。
 そしてまた、顔を覗かせてきた彼女の唇を、奪う。
 僕は雪花菜が好き。どうしようもないほどに。
 可愛い人を守りたい、という気持ちを、こうやって理解していく。
「……は、ぅ」
 キスを終えた僕らは、部屋に戻る。
 そしてベッドに二人で、横になる。限りある時間の中で、幸せに包まれて。
 向き合って、丸くなって、互いに指を絡ませる。額をくっつけて、目を閉じる。
『……』
 無言のまま儀式のように、心を落ち着けて意識を休める。
 安らかに、彼女だけを感じられるように。

 そのまま少しお昼寝をして、起きた。
 少しだけ早く目が覚めた僕を、追うように意識を取り戻す雪花菜。
「元気に、なった?」
 横になったまま、こく、と彼女は頷いた。
 体を起こして、もう一度抱き締める。
「……ふ」
 その意識が、僕の頭の中に流れ込んでくるようだ。
 ”ここにいてくれて、うれしい”――と。

 …… あい らぶ ゆー

 その後、二人でもう一度ゲームをして、少し遅くなりそうなおばさんの為に、家事と夕飯作りを手伝った。
 ほとんど雪花菜が自発的にやったんだけど、おばさんはとても喜んでくれた。
 一緒に食事をして、それから僕は、やっと任を解かれる。
「……ばいばい」
「うん。また明日」
 名残惜しそうな顔をされると、ちょっと辛い。家は隣なんだけどね。
 そして人前だとべたべた出来ないのは、僕も彼女も同じ。だから、思う。
 次、また呼ばれるのはいつだろう? 勿論、気兼ねなく来て良いとは言われている。
 でも、彼女が元気のない今日みたいな日でもないと、二人で気兼ねなく、触れ合えない気もする。
 看病してもらう優しさが、たまに恋しくなるような、そんな感覚と少し似ている?
「ただいま」
 家に戻り、簡単に親と話をして、部屋に戻る。
 とりあえず、元気になって良かった――部屋に置いたままにしていた携帯に、そう打ち込んでメールする。
 すぐに返事が返ってきた。
 ”だいすき”。
 
 僕たちはストイックな恋愛をしていると、仲の良い友達に言われる。
 体も、たまに欲を払えずに熱くなることがある。男と女だから、仕方ないかもしれない。
 けれど、雪花菜は特別。恋人であり、家族のような存在でもある。
 関係に波が出来る時もあるけど、とても大事な人であることに変わりはない。
 だから、今現在の制約ある中で、精一杯愛し合いたい。徳に背かず、慎ましい仲で良い。
 それでも見出せる幸せに満足出来るほど、彼女が好きだから。
 ”僕も大好きだよ”。
 短い中に、思いを込めて。


おしまい
243名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 16:19:00 ID:AERF1RJE
ものすごくGJ!!!
244名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 16:56:23 ID:7QFD2mbS
>>241
GJ
245名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 17:39:21 ID:QpkhxlS7
>>242
GJなんだぜ 
246名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 21:51:15 ID:dEMJGYvS
>>246
GJ!
美味しいプリンと一緒で、甘さの中にほんの少しほろ苦さが・・・

247246:2009/11/27(金) 21:56:31 ID:dEMJGYvS
まちがいた・・・
>>242
とにかくGJです
248名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 19:05:44 ID:dnOESaRJ
普段はお喋りなんだけど、セックスのときは恥ずかしくて無口になっちゃう女の子。
249名無しさん@ピンキー:2009/11/28(土) 20:22:33 ID:1DI9FKOZ
そ、それは・・・!?
マグロフラグですよお兄さん
250名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 11:40:11 ID:u6bKIvuF
必死に声を殺してフーだのハーだの言ってるのが良い
251名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 15:13:07 ID:7Kd0o0Ns
何か咥えて声我慢してるのとかいい
252名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 17:46:48 ID:4KfYJ7tZ
>>251
女の子自身の髪とか。
253名無しさん@ピンキー:2009/11/30(月) 20:31:37 ID:7EF2o6+j
手とか肩とか枕とか
254名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 02:04:10 ID:bEF1Gww9
スカートの裾とか……
255名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 17:42:03 ID:MEX59daA
ずっーと、キスしてる
256名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 18:06:35 ID:Gf+JcV0F
ブルマと巻物を即座に連想しない貴様らに絶望した!
257名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 06:09:27 ID:f9dPnS+9
勢いで書いたので投下します

エロ無しなのと、完成度に一切期待しないで下さい
258深夜の通い子・1:2009/12/03(木) 06:10:45 ID:f9dPnS+9
 深夜二時くらいだろうか。俺は徹夜の作業で腹が減ったので、コンビニに買い物に出ていた。
 ま、ちょっとした創作の合間の、息抜きだ。顔に受ける冷たい風が、気持ち良い。
 今は帰り道。暗い街路を歩いている。人気はなく、静かな場所。
 昼間はしっかりと動いている信号機が、点滅していた。
 この辺りは飲み屋がある訳でもなし、出歩く人がいないのも頷ける。

 と、そんな闇に紛れて、街灯の光が照らす妙な姿。
 団地暮らしの俺の家は二階の一号。そこまで上る階段横の影に、蹲るようにしているのは、人だ。
 膝を抱えて、迷子で困るほど小さい子にも見えないが、じゃあ家出の類かな…。
「おい、どうかしたのか?」
 こんな言葉かけるだけでも最近は痴漢呼ばわりされたりするから、恐いんだが。

 瞳がその姿をしっかり映し始める。
「…」
 何と言うか、擬態のように闇に隠れている感じだ。
 無意識に通り過ぎたら多分、気づかなくても不思議はない。
 着ている服がまたどうも全身黒尽くめっぽく、顔まで隠してたらそりゃね。

「もしもし? 何だ、親と喧嘩でもしたのか?」
 尋ねてみるが、返事なし。
 俺は興味本位に近づいて、ものの試しにちょんと触れてみた。
「!!」
 その瞬間、まるで凍りつくような恐怖を覚えた。

 思わず後退った。その視線に入ってきたのは、見開かれた鋭い眼。
 俺は睨まれた。まるで、野生を帯びたような目だ。そして同時に、少女の顔立ちを見た。
「ごめん、な」
 危険を感じた俺は手で詫びつつ、もう一歩引き下がる。
「……」

 彼女は再び、俯いて顔を隠してしまった。
 だが、可愛い顔をしていた。それがこんなに気の立て方するなんて、一体どういう目にあったと言うのか。
 訊きたいが、今度は本当に噛みつかれでもするかもしれないと思うと、少し恐い。
「……」
 黙る相手に、黙って俺は……家に帰ることにした。

 朝、外を見ると彼女の姿はなかった。
 いくらこの辺は温かいにしたって、深夜に黒の、それも薄着っぽい格好はありえない。
 帰るべき場所に帰ったと、そう思ってこの話は終わりだな。
 丑三つ時――見たのは現実か幻かは不明だが、徹夜なんてするもんじゃない。
 そう思いつつも、つい居心地が良くて仕事も捗るからなぁ。

 そして夜は前の日と同じように、深夜に買い物。
 この前の場所に、彼女はいなかった。てか、あんなややじめじめした所に座り込むって、やっぱりありえない。
 ドラッグストアにでも行ってみるか? 幻覚が見えるとか言えばまず医者にかかれ、って返ってきそうだが。
 で、いつものように買い物をして、暗い団地内に戻って来る。
 人気がないのは相変わらずで、嫌なものに遭遇しそうな雰囲気ではある。

 嫌なものと言っても、妖怪とかそういう系とは限らない。
 むしろ不良どころか悪化した若い連中がここ最近問題になっていて、そっちの方が恐い。
 ラクガキ、花火、果ては通行人狩りまでし始めたとかいう噂もある、困り果てた子らだ。
 一時期警察の巡回で見かけなくなったのだが、どうもまた不穏な動きがあるらしく……。
 大きな公園を通るのと、コンビニという溜まり場に通うのも本気で考えものと言える。

 長くなったが、そんな訳で今の夜の散歩もいつまで続けられるのやら。
 こういう――って、あれ?
 昨日とは違うが似たような影溜まりに、似たような人影。
「……」
 しばらく見つめてから、確信した。まただ、と。
259深夜の通い子・2:2009/12/03(木) 06:11:51 ID:f9dPnS+9
 何? 虐待でも受けてるのか? 通報すべきなのか俺は。
「なぁおい…冗談だろ?」
「……」
 ダメだこりゃ。関わり合いにならない方が、良さそうなんだが…。
 とりあえずもうしばらく様子を見つめていたが、一向に動こうとしなかった。

 また諦めてその場を離れて、翌朝。
 ――やはりいない。
 そして深夜。徘徊と思われたらあれなので、控えめに似たような場所を探す。
 ――いた。
 夜にだけ現れる、黒尽くめの謎の少女。

 それから何度か俺は深夜、会う度に彼女に挨拶をした。
 彼女はずっと無言だったが、声をかけるたびに、こちらを見てくるようにはなった。
 正体不明だが、深入りはしない。ただ軽く「おっす」なり、「また会ったな」なり。
 自分は何やってんだか。ただ、徐々に興味を持たれてきたのか、会う場所も最初と同じ、俺の部屋に一番近い位置に固定され始めた。
 そして不思議と、他に嫌な遭遇はしないで済んでいる。

 十数日経った。二日ほど家を空けていたので、やや気にはなっていた。
 深夜二時頃、用事はないがそこまで出てくる。少しどきどきしながら、階段横を覗く。
「……」
 いた。じゃ、ちと挨拶してみよう。
「よっ!」

 目の前に現れた俺に、びくりと反応してくれたいつもの少女。
 こっちを見ると、いつもはそれ以上の興味を示さないのに、立ち上がって近づいてきた。
「……何処、行ってた」
 初めて聞いた声と、その言葉が心にすっと、差し込むように響いた。
 見れば顔をむくれさせて、まるで心配していたんだぞとでも言うように、不機嫌に俯いている。

「仕事」
 俺は簡潔に答えた。可愛いとこあるなと思う反面、まだどこか(こいつが?)って気持ちがある。
「……」
 黙ったまま、時間が過ぎる。お互い、こんな場所で立ち尽くしても良くない。
「家に来るか?」

 こう付き合いが増えてくると、あまり気負いを感じなくなるもので、俺は大胆にもそんな言葉を口にしていた。
 そして、え? という表情で固まっていた彼女もまた、しばらく考えた末に頷いた。
 さすがに何だ、人の子としては扱いが行き過ぎている。親がまともとは思えないし、今更だが悪い判断じゃないはず。
 それにご近所さんにやんわりと訊いてみても、心当たりの人物さえ浮かんでこない訳で。
 どうするか。一応、こうするしか思い浮かばないよ。

 とりあえず部屋に上げて、とそのまえにやや汚れた服を簡単に叩いてあげて、バスタオル巻いた座布団に座らせてやる。
「何もない家だが、何か食うか飲むか?」
「……」
 緊張しているのか、不安そうにしている少女。
 その緊張を解してやろうと思って、近づいて訊いてみた。

「ん? ――て、わっ!!」
 顔をぐっと近づけたのが、まず間違い。
 驚いた。また威嚇してくるなんて思ってなくて、尻餅突きかけた。
 恐い顔をして、俺を睨む彼女。何で? 俺は一応そのつもりだったけど、優しさが足りなかったの?
 しかし中学生くらいの身長に華奢な体格、素は可愛い顔して大人ビビらせるって…やっぱり只者じゃない。

 その日は結局会話にならず、更に数日経過。
 ただ、徐々にだが関係はエスカレートしつつあった。
 夜九時。ぴんぽん、と来客を告げる音がしたので、俺は玄関に行き、ドアを開ける。
「……」
 目の前に、そんな少女が、立っている。
260深夜の通い子・3:2009/12/03(木) 06:13:10 ID:f9dPnS+9
 彼女は、日が暮れてから家にやってきて、夜明け前に帰って行く。
 正体がウワバミとかでないことを祈っているが、未だ素性を明かしてくれない。
「俺は岸上洋人と言います」
「……」
 食べるものは食べ、飲むものは飲む。しかし、無口だ。

 ちらちら俺は、彼女の様子を見る。どういうことを考えているのか、ってことで。
「……」
 大抵無言で、俺の方を見ている。ただ一定距離以上に接近すると、以前よりはましになったが、ぎろりと睨んでくる。
 さて、この先どうしたもんだろ。誰かに相談……しようがないし。
 家に入れたのは、いろいろと迂闊だったかもしれない。甘く見てた。

 しかしこういう子が身近にいると、悪戯心が湧いてくる。
 もう少し興味を引こうと、俺は今日、彼女に構うのをやめてみることにした。
 てか普段は作業してる時間だが、目の前で横になってみよう。
 という訳で、どうやら好きっぽいチキンフライを二、三本作ってあげた後、俺は布団に入る。
 眠くないが、寝たふり。

 数分して、場所を移動するような物音が聞こえる。
 まるでペット観察だなこりゃ、とか思いつつ、じっと目を瞑ってどう出るかを見る。
「……」
 数十分。何か、きつい。しかし面と向かって尋ねるのも、今更どうなのか自信がない。
「……」

 もう数十分経った頃だろうか。さすがに本気で眠くなり始めてきた時のこと。
「……洋人?」
 俺の名前を呼ぶ。これって初めてだろうか。
 更に少し経って、近くに寄ってきたのが分かった。畳の軋む音が、すぐ近くまで。
 よし、もう少し粘ろう。鬼が出るのか蛇が出るのか、楽しみだ。

「……勝手に、寝るな」
 体を揺すってくる。何か…面白い。
 しかし反応しないのが分かると、止まる。さぁどうする?
「……」
 離れていった。薄目を開けて見ると、いつもの座布団の上。

 つまらなさそうにしているのが、分かった。
「おはよ」
 呼びかけると、すかさず振り向く。
「……」
 そして俺が起きているのを確認してから、ぷい、とそっぽを向いてしまった。

「どうかしたか?」
 無視されてる。構ってほしい時に構ってくれないもんだから、拗ねたのか。
 普段存分に喋らない癖に、俺がやるとダメとか、とんだへそ曲がりだ。
「なぁ」
 しかしそんな部分も含めて、気になる。

 唐突に、古内東子の曲を思い出した。
 何か彼女から感じるのって、”裏腹”っぽいんだよな。
「言いたいことがあるなら、ちゃんと言ってくれた方が、俺は嬉しいんだが」
 反応なし。もう少し、やんわりと優しく言った方が良いのか?
「…一応あれだ。もっと上手くお前のことを、分かってやりたいと思ってる。それは、ダメか?」

 彼女は黙って立ち上がると、俺を一瞥して、部屋から出て行った。
 そして玄関のドアが開いて閉まる音がする。
 ……嫌われた? 何だそれ。
 発言が拙かったのか、それとも本気で怒ったのか?
 俺は訳が分からず、彼女の座っていた座布団を見つめていた。
261深夜の通い子・4:2009/12/03(木) 06:14:15 ID:f9dPnS+9
 次の夜。寝不足の続いていた俺は、遂に倒れた。
 気づいたら、もう昼に近い朝だった。付けっ放しの照明の下で、呆然としてしまう。
 創作より何より心配なのは、彼女が来たかどうかだ。俺は呼び出しを無視してしまったかもしれない。
 最悪のタイミングだ。家の前で放置なんて想像するだけで顔が青ざめる。
 相手が普通の人なら、電話なりメールなりでせめてもの弁明の余地もあろうが、彼女は言わずもがな。

 それから丸一日、俺は罪悪感に苛まれた。
 あのまま愛想尽かして来ていなかったら、その方がまだ良い。
 ”最も”と言って良いかもしれない。やってはいけないことを、やってしまった。
 そして取り返しがつかない。彼女はもう来ない――そんな気がした。
 こんな時に寝過ごしてしまった、俺は救いようのない阿呆だ。

 夜九時。いつもの音は、鳴らない。
 十時になっても、十一時になっても、日付が変わっても。
 僅かな望みが、段々と失われていく。時間が経つのは早く、そして落ち着かない。
 俺はいてもたってもいられなくなり、家を出た。
 静かな夜。

 最初に出会った場所に、勿論彼女はいない。
 俺は階段に腰を下ろして、真夜中の外で、更に待った。
 来なくて当然。ただ、自分への罪滅ぼしの意味も込めて、ただひたすら待つ。
 寒かった。こんな時期一人で、あんな薄着で通っている。
 風呂にでもいれてやりゃ良かった。嫌がっても、もう少し俺が積極的なら、違ったのかもしれない。

 二時を回り、さすがに段々と気持ちに諦めが出てきた。
 一旦、何か熱い物でも飲もう。そしてもう少しだけ、外で待つかどうか――。
 俺は一人でいつものコンビニに行き、缶コーヒーを買った。
 チキンフライが目に留まった時、気持ちがぐらついたが、もう今日は買わない。
 外でコーヒーを飲み干し、空き缶入れに投げ込んで、道を戻る。

 行きと、空気が何となく違っていた。第六感が、その辺は不思議と働く。
 家の少し前に、青年が数人、固まっていた。
「へへ…お子様が深夜出歩いちゃダメだろ。なぁ?」
「お灸据えてやらねーとな」
 誰かが絡まれている。

 相手が数人。しかも相当に柄が悪い。
 下手に入ればこちらの身の安全が保障されない。携帯で警察呼んで、俺は迂回して帰るか。
「…!」
 しかし、囲まれた先にある姿を見ると、そんな考えは消し飛んだ。
 感情が反射的に、彼女を助け出そうと体を動かしていた。

「やめろ!」
 今にも危害が加えられそうだった。迷わず制止する。
「あぁ?」
「何だぁ、連れか?」
 三人が、俺を睨んでくる。

「どっちにしてもダメじゃん。こんな場所に置き去りにしてよぉ」
「……あうっ!」
 小さな悲鳴が、何をされてのものか。
「やめろっつってんだろうがよ!!」
 宣戦布告。脇目も振らずそいつに、殴りかかった。

 多勢に無勢だった。自分の力のなさを痛感する。
 一発与える前に、三発どころじゃない。殴る蹴るで一方的にやられる。
「ばーか」
「ぷっ…人間サンドバッグだな」
 もう、壁にもたれるのが精一杯だった。酷いやられようだ。
262深夜の通い子・5:2009/12/03(木) 06:15:24 ID:f9dPnS+9
 持ち物物色されて、無様な姿。
「こいつが持ってんの、小銭だけだぜ」
「使えねーでやんの。じゃ、代わりにカノジョ、貰ってっか」
 体のあちこち痛くて、重い。口元に温かいものを感じる。
「……洋人!」

 彼女が呼んでいる。けど、もう助けられない。
 温かいものに触れると、それは血だった。鼻、強打したせいか?
「心配すんなって、大事にしてやっからよ?」
「それとも、ここで返してやろうか? 目の前で遊んじゃうけどさ」
 ……そんなことしたら、ぶっ殺してやる。

 彼女に向かって、手を伸ばす。こっちに来い。
 しかし、目の前に立ったまま、動かない。俺をじっと、見つめている。
「弱い奴は嫌いだってよ。賢いなー」
 へらへら笑いながら見ている三人。
 と、俺の手に、ゆっくりと触れてきた。

「おっと、ダメだぜ。お前は今から、こいつの目の前で可愛がることに決めたからよ」
 肩を掴んで、引き戻される彼女。
「良いねー、ぞくぞくするわ」
 しかし、そんな言葉に動じていない。と言うより、耳にすら入っていないようだった。
 ただ触れた際に指に付いた俺の血を、凝視。

 凍りつくような恐怖――何故か今、それを感じた。
 初めて会った時のそれと似ていて、しかしより強い。
 彼女の表情が、変わった。静かに、落ち着いた……怒り。
 焦点すら曖昧に空を睨み、そして口を開く。
「――洋人、こんなにして、許さない…!」

 その刹那、ぱん! と何かが破裂する音。
 不動の彼女を取り囲んでいた三人だけが、爆発でも受けたように跳ね飛ばされる。
「うおぁっ!?」
 その衝撃は、俺にも届いた。突風のような圧力。
 人の力じゃない。やっぱり彼女は――。

 それでも立ち上がり、集まる三人組。
「ち、くしょ…っ!」
 と、静かな場所に、微かに聞こえてくる音。
「! …おい! これ、サイレンじゃねーか?」
「…やべっ、逃げるぞ!」

 誰かがきっと、通報してくれたんだろう。
 すぐに駆けつけた警察。面倒事は嫌だが、体が動かなかった。
 彼女は、いつの間にか姿を消していた。という訳でそのまま俺だけ、警察と病院を梯子することになる。
 あれこれ訊かれたが、俺なりに脚色して答えておいた。
 ややこしくなるので、とりあえず彼女の存在はないものとして。

 青あざに擦り傷など、軽い怪我ばかりだったのは不幸中の幸い。
 財布取られたが、小銭だけしか入っていないがま口だから、これも運が良かった。
 しかし、まぁ当然だが怒られた。こんな時間にふらふら出歩くなと。
 あーあ、これから事ある毎に何か言われる訳ね。しばらく深夜の外出も止めざるを得ない。
 それでもやっと家に帰って来られると、安心から気が抜けてしまった。

 俺は疲れからそのまま眠り、昼過ぎに起きた。
 狂いに狂った生活リズム。睡眠時間を削ってまで、創作に入れ込むのは無理がある。
 一段落ついたら、元に戻そうか。昼間の生活もあることだし。
 ただ、目が覚めた俺の頭に最初に浮かんだのは、未だ名前すら分からない彼女だった。
 多分…会いに来てくれていたんじゃないか?
263深夜の通い子・6:2009/12/03(木) 06:17:54 ID:f9dPnS+9
 夜九時、俺はいつものように、待っていた。いろいろと、心を決めて。
 そして来た。ぴんぽん、と普段のように鳴らして。
 玄関のドアを開けると、確かに彼女がいた。
「……」
 何て言えば良いか、というより何とも言えない気持ちになった。

 その顔は、不安そうに見えた。
「……洋人」
 だが視線を逸らそうとしない。胸が少し、苦しい。
「……洋人?」
 何だか、今にも泣き出しそうな気がした。

 俺は近づいて、その体を包み込んだ。
「ごめんな…」
 そうしていると、浮ついて散り散りだった感情が、全部収束されていくようだった。
「……洋人」
 腕が、俺を受け止めてきた。何も考えられず、ただ心地が良い。

 彼女を、俺の部屋に入れた。今日はしっかりと、入れた。
 いつもの座布団に座らせて、いつものチキンフライをあげて。
「今夜は寝ないで、何だって聞いてやる」
 少し気が緩んだような表情をした彼女は、俺を見てくる。
「…ありがとうな」

 彼女は目の前でもくもくと、好物を平らげた。
 見ているだけで、心が穏やかになった。退屈しない。
「……?」
 食事を終えた彼女が、何かに注目する。俺の手の甲の、湿布だった。
 ずい、と膝を突いて、体を俺の方に乗り出してくる。

「……痛い?」
 俺の手を取って、そして俺の顔を見て、尋ねてきた。
「ああ。でも、自業自得だ。そもそも一昨日お前を、多分無視してしまった俺が悪い」
 ぺらぺらと本音が出てしまう。彼女への気持ちが、そうさせる。
 それに相手が無口なら、まずは俺が正直に、そのままに感情を見せよう。

「……ずっと、鳴らしてた」
 その言葉を言い終わらない内に、抱く。不安で悲しい顔をされる前に。
 彼女の体は小さく温かい。安心させるつもりが、逆に自分の方が頼もしく、心強く感じてしまう。
「お前がもう来なかったら、どうかしてたと思う。本当に、ごめんな」
 もう一々考えて喋っていない。俺は多分、今の勢いならこのまま、告白までしてしまいそうだ。

「……勝手に帰って、怒ったと思った。嫌われたと、思った」
 至近距離で俺の顔を、見上げる。なんて切ない顔するんだ。
「怒ってない。嫌いじゃない。…もう、絶対しない」
「……分かった……ひっく…」
 くそ、きつく抱いてやる以外に、どうしたら良いか分からない。

 取り留めなく泣きながら、彼女はたどたどしい言葉で、教えてくれた。
 素直になれなかった。嬉しいのに、きちんと自覚出来なかった。
 心の中で、俺が占める割合がどんどん大きくなって、それに戸惑って。
 一人で居たくて、誰の同情もいらなかったのに、勝手に入って来て、突き放されると不安になって。
 だから、我慢していたけどやっぱり、会いに行くことにした。

 自分を助けようと体を張って、流した血。
 それを見た瞬間、怒りで我を忘れた。それほどの感情は、誰の為か。誰を思うが故か。
「……ひろ、と」
 …洋人。
 言葉が焼きついている。確かに、俺の為だった。
264深夜の通い子・7:2009/12/03(木) 06:19:08 ID:f9dPnS+9
 優しく、頭を撫でる。彼女は俺の体にきつく密着して、涙で服を湿らせてくる。
 こんなに異性が可愛いと思ったのは、多分初めてだ。
 そして俺を理解したから、彼女は今日、ここに来た。俺と同じように、心を決めて。
 やっと、分かり合えた気がする。嬉しいというか、感動してしまった。
 目を閉じると、何時間でもそのままでいられそうな気がした。

 顔を離した彼女が、俺に一度だけ、笑いかけてくれた。
「――名前を教えてくれ」
「? ……ない」
「じゃ、”椎”で良いか?」
「……しい? ……分かった」

 俺もまた彼女を見つめて、笑いかけた。そして、感じるままに――。
「……」
 口づけた。軽く、唇に唇で触れる。
 彼女はやや呆然と、しかし徐々に目を閉じて、受け止めた。
 その感触は柔らかく、少しだけ彼女の食べた、チキンフライの味がした。

「俺は、椎のことが好き」
 唇を解放すると、今度はそう言って、勝手に抱き締める。
「……言い、過ぎ」
 ああ、言っちまった。でも、こんな状態で何を憚れる?
 それに彼女はやっぱり、抵抗してこない。それどころか腕をしっかりと俺に、回してきた。

 時間は過ぎ、彼女と一緒にいられるのも、残り僅か。
 今度は、お風呂に入れてやる――そう、約束した。
 多分、今日とは違う覚悟が必要になるような、熱っぽい妄想に一人気まずくなる。
 別の服か何か、着せてやるのも良い。スカートなんて、似合うかもしれない。
 考え出すと、尽きない。

 本当は、夜出歩かせるのは恐い。柄の悪い連中が、あれで懲りるとは思わない。
 家にいても良い――そう言ったが、無言で首を横に振られた。
 彼女は俺の腕を離れて、これまでと同じように、何処かへと帰って行く。
 でも、いつかは俺の知らないことも、教えてくれる日が来るはず。
 そして、いつかはずっと一緒にいてくれる日が、来るはず。

 心配しなくたって、昨日までとは違う。
 今はその日が分からなくとも、明日からも付き合いは続いていくのだから――。
 玄関を出て見送りながら、そう思っていた。
 そして冷静になって、すっかり自分の世界に入り込んでしまっていたことに気づく。
 こっ恥ずかしくなって、俺はそのまま家に引っ込み、布団を被った。

 暗くなってからが楽しみになって、何度目か考える。
 夜型愛人、いや通い人? ――変な言い方をすれば、そんな存在だ。
 多分、生活リズムは元に戻せそうにない。
 ……。
 俺はそう、思っていた。

 彼女はこの日、来なかった。外が明るくなってくるまで待って、諦めた。
 何か理由があるに違いない。だが、俺には待つしか出来ない。
 次の日も、来なかった。座布団もフライドチキンも、用意してあるのに。
 三日、四日、五日――それでも、信じて、待つ。
 しかしその繰り返しで、時間ばかりが流れて行く。

 とある日、ふと思った。
 俺は、何してるんだ? 何してたんだ? こんな真夜中に。
 ついに頭の中で接触が切れてしまったのだろうか。
 会った日が遠くなるにつれ、現実で起きたことが、まるで夢か幻だったかのように、感じてくる。
 何で、こんなことになったんだ?
265深夜の通い子・8:2009/12/03(木) 06:20:09 ID:f9dPnS+9
 薄々感じ続けてきたが、限界だった。信じたくなかったが、彼女はもう来ない。
 気持ちに整理をつけないといけない。もう、あれから既に一ヶ月。
 体がもう、保たない。精神的にも、ぼろぼろだった。
 俺は脆い。でも、こんなのって、ないだろ――。
 そう心に問いかけても、誰も答えてくれない。

 三ヶ月経った。ショックも段々と和らぎ、薄らいだ。
 俺に集団リンチかけた奴らも漸く捕まり、普段のつまらない日常を取り戻した。
 今更言うのも何だが、深夜の創作というのは小説のことだ。
 毎年の募集の時期だけ、俺は夜に時間を取って、書いて送る。
 今年は出せなかった。まぁ、それでも良いかなと思ってるが。

 昼夜逆転生活は、もうしていない。昼働いて、夜はきっちり眠る。
 誰かが何かの間違いで尋ねてきても、多分俺は気づかないし、相手もそのことを理解してくれているはずだ。
 ただ不意に、思い出すこともある。たまに癖が移ったかのように、無言になる。
「……」
 そういや、スパークスゴーゴーの曲に、印象深い奴があったな。

 俺の中の、エピローグ。
 古いCDを求めて、休日外に出かける。
 例のコンビニより少し先の、県道沿い。古めかしく小さい店だが、楽器なんかも置いてある。
 久々に来たが、変わらない。近くに小さな山があって、長い階段とその先に社。
 日頃運動不足なので、少しここを登ってみよう。

 社を潜り、質素な宮を目の前にする。木々に囲まれて昼なのに薄暗い。
 何気なく賽銭箱に十円を放り込んで、適当に礼をする。
「?」
 物音。何だろうと思って、振り返った。
「…椎?」

 一瞬、彼女が見えたような感覚に陥った。
 しかし、目の前には誰もいない。そんなことは、ない。
 ふと、もう一度宮の方を見る。すると足元に、白い蛇がいた。
 珍しい、純白の蛇。爬虫類は特に好きでもない俺でも、思わず見惚れてしまう。
 そういえば彼女もまた、髪と服装によるコントラストが際立つが、綺麗な白い肌だった。

 蛇は何故か俺に懐いたように、なかなか離れようとしなかった。
 家に帰ってからも、気になって忘れられない。御利益でもあるんじゃなかろうかと、少し期待する。
 その夜。夕食を終えて、テレビを見て、風呂に入ったら九時過ぎ。
 ぴんぽん、と鳴ったので、新聞の集金か何かかと玄関に出る。
 開けて、目の前に立っていたのは――。

「……洋人」
 俺の顔を見て、笑った。
「椎……どうして」
「……会えて、嬉しかった。…私が消えてしまうって、言えなかったけど…好きだった、から」
 そしてふわりと風が吹き、俺の顔を、撫でる。

 夢心地が覚め、はっと我に返る。
 目の前に立っていたのは――よく似ているが、椎じゃなかった。
 身長は高く、外見もより大人っぽく――高校生くらいになったらこんな風なのかもしれないが、違った。
「受け取って下さい」
 彼女は、俺に蛇の抜け殻をくれた。

 両手に受け取ると、それが俺に、何か語りかけてくる。
「……」
「私の一部に残っている彼女の意識が、ここに導いてくれました」
「……」
「私たちは脱皮する毎に、生まれ変わります。彼女はそれが嫌で、毎晩抜け出して…」
266深夜の通い子・9:2009/12/03(木) 06:25:25 ID:f9dPnS+9
 涙が、零れていた。
「日が落ちている時だけは、人の姿になれるから…」
 彼女は、あの白蛇だった。抜け殻からも、伝わってくる意識。
 最後の夜の後、彼女は死んだ。黙って――俺に心配をかけまいとして。
「でも私に引き継ぐ時、彼女は、幸せだった、と言っていました。そして、それをいつか、伝えることが出来たらと」

 漸く再会出来たのに…悲しくて、言葉も出ない。
 こんな気持ち、知らずに済むならその方が良かったかもしれない。
 でも、感情が洗い流されるように、涙として出て行く。
「今だけ、私――椎として……こうさせて下さい」
 彼女に抱き締められ、心は更にきつく絞られて……ただ、泣けた。

 名も無き白蛇は、俺に別れを告げた。
 自分は椎の一部を継いでいても、椎じゃないと。
 それを一番理解しているのは、俺だと――その通りだった。
 幸い涙も尽き、楽になった。全て元に戻そう、今度こそ。
「でも、大事にして下さい。きっとあなたは、幸せになれますから」

 数日後、俺はふとしたことから知り合った女性と、恋に落ちた。
 運命と言って良いかもしれない。何もかも出来過ぎたような、完璧な出会いだった。
 意気投合し、時間をかけて付き合って、プロポーズをして。
「ね、その蛇の抜け殻、ずっと大事そうに持ってるけど、何なの?」
 彼女が訊いてきた。

「これは、な――」
 俺は、ここまでの長い話を、全部正直に聞かせる。
「――からかってるんでしょ?」
「白い蛇はこの前見せに連れてっただろ」
「本当ね。誰も知らないみたいだし、びっくりしちゃった」

「先に言っとくが、妬くなよ」
「正直に話したので良し。…それに、ロマンチストな君の話、私はとても好き」
 そう言って、後から抱き締めてくる。そんな彼女が、俺も好きだ。
 だが、俺はお前を忘れない。椎――ありがとう。
 真夜中に見た夢は、お前が俺に、大事なものを与えてくれた時間だった。


おしまい
最初は微エロの軽いノリで書くつもりだったのに、何じゃこりゃ
ちょっと後悔してます。それでは
267名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 15:29:31 ID:f9dPnS+9
 無口っ子の妹をカラオケに連れて行きました。
 さて、どうなったか?
 答え:まぁ、元気に歌ってくれた。
 私が普段聴かせまくってるドラフォとかレッチリとか。
 ――は、勿論無理だけど、アニソン辺りは恥ずかしがりながらも。
 カルナバルバベルでデュエットまでしてくれた。お兄さんちょっと感動。
 今度来る時はオールナイトでちょっとエッチな趣向を取り入れてみよう、なんて考えてたら、見透かされて蹴飛ばされましたはい。

 で、面白いのは実はその後。
 次の日、声が枯れてました。
「…う、が」
 普段はあまり喋らないんだけど、妹はとても綺麗な声をしてる。
 昨日も存分に堪能してきたんだけど、夜が明けてこれは驚いた。
「どうしたの?」
「……ぐ」
 私を見るなり口を真一文字にして、しっしとジェスチャー。
「もしかしてカラオケで、喉やられたのかな?」
「――!」
 図星突かれて癇癪を起こさないで下さい。
 まぁ、そう涙目になりなさんな。全く、何しても可愛いんだから。

 だから、今日の妹はいつも以上に無口です。
 そして、強がりな性格の為、いつも以上に不機嫌です。
 兄には弱みを見せたくないらしくて、頑張る姿は毎度のことながら萌えます。
 普段喋らないから、カラオケ三時間くらいで声枯れちゃうんだね、とからかったら、体当たりされました。
『兄いの馬鹿、意地悪、変態』
 チラシの裏にでかでかと書いて表示するのは良いけど、肝心の私のことを”兄い”だなんて。
 どんな時でも兄い呼ばわりされると、怒るに怒れないよね。いじめたくはなるけど。
 そんな愛い妹を、仕方ないのでデレさせてあげましょう。
 ぎゅー。
「…!」
 ちゅー。
「…!!」
 なでなで。
「#$%&@?!」
 三点セットで体の力は抜けて、私にもたれかかってくる。
 掠れた声で唸って抵抗しても、顔は既に紅潮している訳で。

「うぐ…か…っ!」
 トレーナーの隙間から手を入れて、ちょっと悪戯気味に撫で回し。
 私の手は温かいから心配無用。それに妹の服の中も、ぽかぽかしてる。
「かは…っ…!」
「声出しちゃダメだよ。治るのが遅くなるから、ね?」
「ぐ……う〜っ!!」
 涙目で怒る妹。そんな顔されたら、益々胸がきゅんとなる…。
 私は妹をゆっくりとベッドまで連れて行って、押し倒した。
 二つ結びのリボンを解いて、長い髪をベッドに散らす。
 トレーナーと付け始めたばかりのブラを捲し上げて、小振りな胸を晒す。
 上に乗りかかって、優しく揉んであげる。
「…っ…っ!」
 声を出すのを、我慢してるんだ……本当に、可愛い。
 じゃあ、ここならどうかな?
「ふ…く…!」
 ミニスカートの中の器を、ロングタイツと下着越しに、擦ってみた。
 相変わらず、良い感触だな――って、え? あの?
「がうっ!!」
268名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 15:31:01 ID:f9dPnS+9
 ビンタ痛い。ちょっとやりすぎた?
 私は体をゆっくり離して、妹を見つめる。
「……」
 切ない顔をして、妹も私を見つめる。
「何?」
「……!」
 手を伸ばして、私の手首を掴んで、引っ張ってくる。
「えーでもー、嫌なんじゃないの?」
 白々しく、そんなこと言ってみるともさ。
「…!!」
 言葉の上手く出ない妹は、強引に私を引きずり込んできた。
 ベッドの上に重なり合って見つめていると、自然とキスになる。
「くちゅ…じゅ、く」
 焦らした反動なのか、妹は積極的に私を愛しにきた。

 キスを体中に拡散させて、邪魔な衣服は全て退かす。
 トレーナーはバンザイして、ブラは私が背中に手を回して、外してあげる。
 乳首がつんと主張しているのは、確かに感じていることを示している。
 タイツを下ろして、足の一部一部にもキスをする。
 徐々に付け根に近づいて、白い下着の中心に小さく染みが出来ているのが、見えた。
「もうこんなにしちゃったんだ……エッチなんだね」
 また怒り出しそうな妹。その前に、触れてあげる。
「んんぅっ……!」
 遠慮なく擦る。筋に沿って指を這わせて、反応を楽しむ。
 でも、既に声と息が漏れに漏れてる。このままじゃ可哀想だな……。

 とりあえず妹に枕を咥えさせて、喘ぎを抑える。
 よがる体に愛撫を尽くし、ぐしょぐしょに濡れた下着から下半身を解放し、舐めて拭き取る。
 胸も弱いし、ここも弱い。困ったもんだ――って、本人の前で言ったらグーで殴られました。
 でも今は、私だけの女の子。まだまだ、気持ち良くしてあげるからね?
 そして何度もイかせて、何度も愛して、妹はすっかりとろけちゃった。
 そろそろ、良いかな?
 私は固くした竿を、器に挿入する。
「――っ!」
 機嫌の良い時は、私のもしてくれることもあるんだけど、今日は可愛がるだけ。
 体の相性は抜群で、適度な締まりが私の竿を、強く包み込んでくる。
 腰を動かす。妹は目を瞑って、枕に齧りついて小さく唸っている。
 まだ幼い体だけど、私には充分。これからもずっと愛してあげる。
 普段は恥ずかしがっても、体はいつも正直。だから、止められない。
「出すよっ」
「…うーっ!」
 ――きたっ!
「!!」

 妹がやっと口を離した枕は、涎がしっかり染みていて、何だか淫らに映る。
「ぜぇ…ぜぇ…」
 我慢した御褒美に、キスをあげましょう。
「…ん…ふ…」
 気持ち良いので、また体同士を存分に擦り付ける。
 好きじゃなきゃ、こんなに大きくはならないんだよ?
 キスも、体も、声も、性格も、全部好きだから、これだけ愛し尽くせるんだよ?
 そしてまたぎゅー。
 妹も顔を緩ませて、ゆっくり目を閉じていくのが分かった。

「…兄いは変態。…近親相姦。…中出しして、赤ちゃん出来ても知らないから」
 次の日、同じベッドの中で、妹は元の強気っ子に戻ってた。
「……喋れなくて、欲求不満だった」
「じゃ、またカラオケ行って慣らそう。歌も、エッチも」
 ――肘鉄食らいました。何でこう、口で言うと素直に返してくれないんだろう?
 まぁ良いや。代わりにまたぎゅーして、お返しするだけ。
269名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 20:38:55 ID:nkiouoMR
なんという乙
270名無しさん@ピンキー:2009/12/03(木) 21:13:53 ID:ZJ0ywIKV
二作連続だと……乙!
271名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 02:04:08 ID:Na7L0IxF
272名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 19:30:16 ID:SLPJLm9P
>>268
GJ
273名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 22:55:52 ID:gNBtXhAf
ごどじょぶ
274名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 00:33:17 ID:yyaNuwdY
表情は豊かだけど無口っ子
275名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 20:41:25 ID:Hfd0euMK
276名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 02:39:52 ID:MddyXdYo
ふと初犬を思い出した
277名無しさん@ピンキー:2009/12/09(水) 22:04:17 ID:g315f/VE
カルナバル・バベルってまた懐かしいなおい・・・


278名無しさん@ピンキー:2009/12/10(木) 13:23:49 ID:H1REq9rS
ふじのん・・・
279名無しさん@ピンキー:2009/12/12(土) 16:29:22 ID:DQ9QLhOb
いつも音楽聴いてる無口っ娘が、イヤホン片っ方貸してくれて聴いたらエロドラマCDだった、というエロ漫画があった。
280名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 01:04:16 ID:2van/Djn
>>279
そして俺はそれに萌えた
281ファントム・ペイン 1話 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/13(日) 21:55:30 ID:uqgQhZ6g
新シリーズです。
今回は軽い人物紹介だけ。
非エロ 5レス
282少女 / 傘 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/13(日) 21:56:54 ID:uqgQhZ6g
飛行場から足を踏み出すと、むわりとした湿気が私を出迎えた。
聞いてはいたが、確かに蒸し暑い。
これから8月にかけて、更に暑くなるのだという。
すこし、憂鬱だ。
ふと、冷たいものが私の顔を撫でる。
見上げると、糸の様に細い雨粒が疎らに降り注ぐ。
スコールのような激しさはない、やさしい雨。
この国、この地方には良くあることらしい。
あの人が生まれた場所。
私がこれから生きる場所。

283少女 / 傘 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/13(日) 21:58:58 ID:uqgQhZ6g
雨が降っていた。
土砂降りと言うほどでもないが、小雨とも呼び難い、梅雨時の雨。
「いつになったら止むんだよ。……ちっ、鬱陶しぃ」
十キロの米袋と買い物袋を右手に抱え込み、左手で通学鞄をさげつつ何とか傘を支えている、明らかに無理のある状態。
正直な所傘は役に立っておらず、背中はもうぐっしょりと濡れている。
更に眼鏡が曇って前が見辛い。
重い足取りで家路を急ぎつつ、俺は一人毒づいた。
夕食の為の米がもうない。
今、自宅には誰もいない。
親父も夜遅くにしか帰ってこない。
故に何としてでも白米を持ち帰らねばならないのだが、欲を張って宅配も頼まず特売品の大袋を買ってしまったのが運の尽き。
さらに安売り品を色々と買い込んでしまったのも不味かったのだろう。
突然降ってきた雨に邪魔され、帰路の半ば、俺は既に疲労の極地にあった。
自然に背が丸まり、俯き気味の姿勢で歩いてしまう。
溜息をついて視線を上げ、目の前の光景に俺は唖然とした。
傘もささず、子供が路上に佇んでいた。
すぐ脇には商店の軒先もあると言うのに、歩道の真ん中で何の抵抗もなく、只雨に濡れていた。
「おい」
関わらないほうが良い、普段なら絶対にそう考える状況。
何故か、いつの間にか俺は眼前の人物に声をかけていた。
「何やってんだ、こんな所で」
その人物は無言で顔だけこちらに向ける。
生え際の覗く短い髪、黒いシャツとベージュの短パン姿。
黒目がちな視線が俺に向けられた。
暫し両者とも無言で見詰め合う。
つ、とその子供は視線を再び逸らした。
「聞こえてんのか」
今度は視線すら動かさず、一つ頷く。
はあ、と俺は再び溜息をついた。
本当にコミュニケーションが取れているのかどうか、自信が持てない。
「濡れるぞ。そんな所に居ると。
それと邪魔だ」
その子は再びこちらに顔を向ける。
その小さな唇がゆっくりと開いた。
「雨」
「あ?」
どこか掠れた様な、乾いた不思議な声音。
不覚にも少しどきりとしてしまった。
「冷たい?」
「……俺に聞くな」
何故疑問系なんだ。
284少女 / 傘 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/13(日) 22:00:19 ID:uqgQhZ6g
「風邪引くぞ。とっとと家に帰れ」
返事はない。
暖簾に腕押しと言った感に俺は苛立ちを感じざるを得ない。
さっさと退いて貰う心算でいたのに、いつのまにやらずるずると会話を長引かせている。
もう放って置いて立ち去るべき状況だった。
見ず知らずの人間の身を案じるほど、俺はお節介な性質ではない。
それなのに、俺は目の前の子供を無視することが出来ずにいた。
「家出か? それとも追い出された方か?」
「確かめたいことがある」
重ねる問いにも答えず、彼、あるいは彼女は只そこを退かぬと言う意思だけを示す。
「だから、ここにいる」
通行の邪魔をする心算はない、と言うことか、そいつは一歩脇に身をずらした。
もう、語ることはない。
目の前の人は雨の領域に居る。
濡れるものと、濡れざるもの。
傘持たぬ人と、傘差す人。
両者の壁が、そいつへの理解を阻んでいた。
だが。
実のところ、双方に大した違いなどない。
傘を差していようがいまいが、俺は既に濡れ鼠だった。
濡れることを拒まなければ、容易にその壁は乗り越えられる。
だからなのか。
自分でも意識しない内に、いつの間にか俺は雨を見上げるその子に傘を差し出していた。
「百均の安物だ。やる。俺は――」
言いつつ抱え込んだ米袋を掲げてみせる。
「この成りだからな。傘は役に立たん。あんたが使え」
俺は呆然とする子供に半ば強引に傘を握らせると、ようやくその脇を通り過ぎた。
何をやっているのだろう。
傘が役に立たないのは、既に濡れているこの子も同じ事だろうに。
だが、荷物を一つ減らした体は心なしか軽やかだった。
「じゃあな」
振り返らずに俺はそう告げると、今度こそ自宅への道を急いだ。
呼び止める声は無い。
「……変な奴だったな」
憂鬱な雨の日のひとこま。偶然の出逢い。
ただ傘を取り交わしただけで、理解し合うこともなく、すれ違った。
もう、会う事もないだろう。
そう思っていた。
285少女 / 傘 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/13(日) 22:02:15 ID:uqgQhZ6g
「今日から我々の家族になる。エマ、伊綾絵麻だ。ほらほら、ご挨拶ごあいさつ」
「……」
「……」
夜九時。
夕飯とトレーニング、入浴を終え居間で寛いでいた時、帰宅した親父が連れてきた子供を見て、俺は固まった。
「何であんたが……」
「傘の人」
「二人はもう知り合いのようだね」
親父は何故か嬉しそうにうんうんと頷いている。
黒目がちの目にベリーショートの短髪、俺も通うミッション系校の女子の制服。
そこにいたのは服装こそ違えど間違いなく今日帰宅途中で見かけた変な子供であった。
服装からすると女であったらしい。
こんな偶然もあるのか。
俺は暫く呆気に取られていたが、頭を振ってそういうものだと現状を受け入れた。
それよりも今は問い質さねばならないことがある。
あれやこれやと少女に間取りの説明をしている親父の襟を掴んで引っ張っていく。
彼女に聞こえぬよう、小声で詰問。
「どう言う心算だ」
「どういうもこういうも、僕の娘として引き取るつもりだけど。
亡くなった友人に縁深い娘でね。断じて路頭に迷わすわけにはいかない」
悪びれもしない返答に呆れる。
「誰が面倒を見る。母親も居ない男所帯で、大人のあんたは大抵残業だろうが」
「意外にしっかりしてるよ、あの娘は。彼女に必要なのは、帰る家と同年代の子との触れ合いなんだ」
同年代の子供とは俺の事らしい。
「なら女の子供がいる家庭に預けろ。思春期の男と女二人一つ屋根の下なんて非常識にも程がある」
「つまり君はあの娘をそういう目で見ている、と」
「世間一般の常識と世間体の問題だ」
溜息を付く。
少女、絵麻は特に所在無げな様子も見せず、椅子に腰掛けてボーッとしていた。
「あいつの意見は訊いたのか?」
「どうせ迷惑をかけるなら、信頼できるおじさんの所に行きたい、だと」
俺の方の意見を聞かないのは毎度の事なので諦めている。
一応扶養される身なので文句の言える筋合いではない。
それに行き場のない少女の前で、お前と一緒になるのは嫌だと駄々をこねるのは気が引ける。
俺は親父を押し退けて絵麻に歩み寄った。
286少女 / 傘 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/13(日) 22:05:55 ID:uqgQhZ6g
「おい」
視線が向けられる。
俺に向き直って、突然ぺこりと一礼。
「何だ」
「傘、ありがとう」
どうでも良い事だった。
あの時既に、彼女も濡れていたのだし。
「自己紹介がまだだった。
あんたが構わないなら今日から一緒に暮らす事になる。伊綾泰巳だ」
手を差し出すと、絵麻はあっけなくそれに応じた。
「私はエマ」
初めての握手。
以外に少女の手はしっかりと握り返してきた。
「ここは今まで長い間男所帯でな。
気が利かない点があったら遠慮せず言ってくれ。
一応、あんたにも節度は守ってもらう」
首肯だけ帰ってくる。
少し言い方が無遠慮だったかもしれない。
親父はそわそわして俺達のやり取りを見ている。
絵麻の方は気にする風でもなく淡々と相槌を打つ。
「正直、急に新しい家族だなんて言われても納得出来ない。
あんたも無理して親父に調子を合わせる必要は無いぞ。
だが、いつまでになるかは判らないが、一緒に暮らす訳だ。
出来れば仲良くやって行こう。宜しく頼む」
再び首肯。
人形の様だった絵麻の表情が少し和らぐ。
とりあえずは問題なく自己紹介を終えて、見守っていた親父は安心したようだ。
「絵麻は長いことオーストラリアで暮らしていてね。
日本の環境にはまだ慣れていないから、フォローをよろしく頼むよ」
「……帰国子女かよ。ますますなんでウチなんかに来たんだ」
言われて見ると、確かに顔立ちがバタ臭い気がする。
とは言え、注視しないと判らない位なので、日系あたりだろう。
何にせよ、共同生活への懸念が一つ増えた。
俺の不安を察知したのか、絵麻は持参したリュックをごそごそと探りはじめる。
中からプラスチックフィルムを取り出すと、それを俺に手渡した。
「……何だ」
「引越し土産の定番」
何故か偉そうに胸を張る絵麻。
自分は日本文化に精通している、と主張しているらしい。
俺は1キログラム入りの高級蕎麦粉パックを手に、半眼でうめいた。
「粉を渡してどうする。普通乾麺だ。
それに渡す相手は隣近所だぞ」
「ふむ」
絵麻は己の失敗を悟り、唸る。
親父は愉快そうに笑っていた。
287少女 / 傘 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/13(日) 22:07:37 ID:uqgQhZ6g
一話投下終了です。
この話は家族がテーマらしいので、エロはおろか恋愛話になるのも結構先です。
よろしければ気長にお付き合いいただきたいです。
288名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 00:56:00 ID:GeiyUbI4
>>287
GJです!
今回のは結構な長編になりそうですね
続きwktk
289名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 11:24:53 ID:VpE9QfuM
>>279
題名を教えてください
>>287
GJ。気長にまつ
290名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 03:26:11 ID:/cKdYjkn
無口っ子がサンタコスでケーキ配り
291名無しさん@ピンキー:2009/12/18(金) 20:11:05 ID:usuNCIfg
ドンタコスに見えた俺の夢を返せw
292名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 08:33:49 ID:u4vzApqb
無口っ娘がゴンタコスで工作
293名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 13:02:06 ID:R7LkaB5I
>>290
適当に作ったので置いときます
294名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 13:02:52 ID:R7LkaB5I
 とんとんとんのとん。
 寒さも際立つ夜に、ドアを叩く音。
 こんな時間に誰だろう、と白崎右一は玄関に出る。
「はい」
 がちゃ。
「!?」
 三太は目を丸くして、訪ねてきた人物を見つめた。
 意外な顔と装い。そして、両手にリボンで包装された、小さな箱を持って。
「……これ」
「えと、誰?」
 目の前に立っているのは、見知らぬ女性だった。
 赤と白が目立つサンタクロースのコスチュームは、膝上のミニスカート。
 そこから覗く細い足は、思わず視線を釘付けにするような肌色。
 その先に鮮やかなソックス、そしてブーツ。全体で見ると、身長は結構低め。
 しかし、可愛らしさが全面に窺える。
「…」
 見惚れて立ち尽くす右一に、彼女は照れながらも困った顔をする。
「あ…あの、人違いじゃ、ないですか?」
 右一は我に返り、そう尋ねた。
「……私は、サンタ、だから…これ、あげる」
 彼女は言うなり、小さな箱を差し出してきた。
「サンタ?」
「…」
「――やっぱり、人違いだと思うよ?」
「……違う。あなたへの、プレゼント」
 人見知りしながらも、何故か食い下がる。
「何で俺なんかに?」
「……一年間、良い人にしていたから」
 サンタさんの常套文句。しかし”子”ではなく、”人”。
「別にそんなことないよ。可もなく不可もなく。嬉しいけど、本当に貰って良いの?」
 こくり。
 純粋に、温かくなる心。
「ありがとう」
 そう言って見つめると、彼女が若干、震えているのが分かった。
「あ、とりあえず中に入って。そんな寒そうな格好…」
 本当は寒さからではなく、緊張から。
 しかし彼女は少し動揺するも、もう一度、こくりと頷いた。

 温かい部屋に、少し体の冷たいサンタの少女。
 右一は彼女を労わるようにこたつに入れて、貰ったプレゼントを開けてみる。
 しゅるる、かぱ。
「!」
 そこには、小さなムースケーキがあった。
 スポンジの土台に、上は苺のムースと生クリームで赤と白のコントラスト。
 中央に楕円のチョコプレートが飾られ、白字で”メリークリスマス”と書かれている。
「夢…みたいだ」
 右一にとって、クリスマスケーキなんてここ何年も無縁の物だった。
 予期せぬ粋な計らいに、感動してしまう。
「ありがとう。…君、名前は?」
「……サンタ」
 それ以上は分からなかった。
 しかし、こんな良いムードの中、変に問い詰めるのも野暮というものだろう。
「サンタさん、もし良かったら…一緒に食べよう」
「…?」
 彼女は意外な顔をして、右一を見た。
「……それは、あなたの物」
「俺独り占めじゃ、勿体無い。それに折角だから紅茶でも煎れるよ」
 そんな親切に、ぼうっと心を奪われるサンタ少女。
「…」
 不思議な彼女のそんな表情に、右一もまた、惹かれてしまう。
295名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 13:04:34 ID:R7LkaB5I
 二人で割って口にする、甘いプレゼント。
 独りで買って食べる物よりも格段に美味しい――そんな風に思う右一。
 目の前には、ぎこちない表情からやっと僅かながら、笑顔を見せ始めたサンタ少女がいるからだ。
 充実感のある一時はゆっくりと、そして温かく過ぎた。
「ごちそうさま」
 そして紅茶を飲む。
 と、何故だか彼女は少し悲しそうな顔をした。
「……私は、これで」
「行くのか」
 黙って頷くと、こたつから体を出す。
 しかし、その場で見つめられると、彼女は動かなくなった。
「…」
「……」
 互いに、相手を意識する。
「――楽しかった。ありがとうな」
 止まりかけていた時間が、再び動き出す。
 彼女は軽い足音を立てて、部屋を横切る。そして玄関の方へ。
「本当のことは聞かない。サンタなんだから、多分ソリに乗って、別の所に行くんだろ?」
「…」
 後姿に話しかけても、返事はない。
 遠ざかるような、感覚。
「…」
 最後にブーツまで履いた彼女は、振り返って礼をした。
「サンタさん…」
「……プレゼント、これで良かった?」
 その表情に、何故だか胸が切なくなる。
「ああ。けど…良い人にしてるから――また、来てほしいな。来年なら、来年でも」
 そう言いながらも、引っ込みも送り出しも出来ず、立ちっ放しの右一。
 彼女は、無言のまま背を向けた。ドアノブを握り、開ける。
「!」
 外は雪だった。
 天からゆっくり、風に揺られて舞い落ちる、白。
 この地方では珍しくなった、ホワイトクリスマスだ。
「寒くないか?」
「……大丈夫、ありがと」
 そして、玄関から出て行く。剥き出しの足で、躊躇いもせず。

 目の前から彼女が姿を消して、少しの間。
 ぼんやりとしていた右一は、我に返る。
「サンタさん!?」
 慌てて外に飛び出してみたが、彼女の姿はなかった。
「……」
 右一は一旦部屋に戻り、コートを羽織る。
 そして、彼女を追いかけて寒空の下に繰り出す。
 あの格好で何処に行くと言うのだろうか。
 現実的に考えれば、サンタなんてものは存在しないはず。
 近くで見かける子でもなく、そもそも面識がないのに、プレゼントとは?
「…はぁ…」
 右一はそんなことを考えながら辺りを探してみたが、彼女の姿は見つからなかった。
 まるで、雪のように溶けて消えてしまったように。
「もっと、言えることあったはずだよな」
 誰も歩いていない、雪の降る道の真ん中で、そんなことを呟く。
 空を見上げる。薄暗い上から、雪が無数に降り注いでくる。
 幻想的で、思わず見入ってしまう。
 息が、白い。
 冷気に煽られ、心は冷静に、澄んでいく。
「……」
 今日はもう、会えない。それを右一は空気で感じ、理解した。
 しかし、信じたくなった――サンタの存在と、そして再会を。
「だから、サンタさん。また、会おうな」
296名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 14:14:52 ID:rI4fikT2
>>293
GJだ
適当と言わずまた書いておくれ
297名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 17:33:37 ID:xGBVQiSH
>>294
来年のプレゼントは是非「サンタ」で。
やっぱミニスカサンタは生足だよね。
298ファントム・ペイン 2話 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:03:40 ID:rI4fikT2
2話、投下いたします
13レスほど、非エロ
299ファントム・ペイン 2話 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:04:43 ID:w+7GdsqC
その人は私に何も言わなかった。
その人は私に何も求めなかった。
その人は私の方を見ようとはしなかった。
私は、その人について何も知らなかった。

でも、私は――――
――――ただ、彼の冷たい瞳の奥にある寂しさを、溶かしてあげたかった。

300ファントム・ペイン 2話 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:06:09 ID:rI4fikT2
世の中の兄弟姉妹というものがどういう関係を指すのか、俺には判らない。
きっとその家族ごとに全く違う形の兄弟関係があるのだろう。
仲が良かったり悪かったり、密接だったり疎遠だったり、複雑だったり単純だったり。
だが少なくとも、彼ら彼女らの間には、長い時を一緒に過ごし成長してきた絆が、相互理解という形で多かれ少なかれ存在するはずだ。
そう考えると、俺と絵麻は到底兄弟と呼べる関係ではないのだろう。
彼女は俺にとって、突然振って沸いてきた奇妙な同居人に過ぎない。
そして俺は彼女について何も知らない。
彼女を理解できない。
そんな事を考えてしまうのも、大部分は目の前の二人の所為だ。
「そっち付け終わったかー? うし、んじゃ今度は左な」
肩車をしている男子生徒とされている女子生徒。
実験室の蛍光灯の付け替えをしている女子を男子が支えている形。
女の方はてきぱきと仕事をこなしてはいるものの、下の男に対して一言も指示を出していない。
にも拘らず、背負う男子は極めて的確に移動し、女子を照明具の前に導いている。
「渡辺、仕事はそれだけで終わりだ」
「おう。じゃ、下ろすぞ結」
活発そうな少年、渡辺綱がしゃがみこむと、その妹である大人しそうな少女、渡辺結はその背からすとんと床に降り立った。
綱が肩や腰を難儀そうに回している間に、結の方はてきぱきと使用済みの蛍光灯を片付けている。
妹が紐で一つに結んだ蛍光灯の束を肩に担ぐと、兄は一足先に室の扉に手をかける。
「じゃ、俺はこれ出してから部活行くわ。また明日な、伊綾」
「ああ」
「結も雨降らん内に帰れよー」
後ろ手に手を振りながら廊下を駆け抜けていく綱。
結は小さく手を振ってそれを見送っている。
ふと外を見ると、すでに小雨がぱらついていた。
「忙しい奴だな、荷物も忘れてやがる」
机には彼の通学鞄が放置されたままだ。
結は自分の鞄から折り畳み傘を取り出すと机の上に置いた。
部活の後彼が荷物を取りに戻るかどうかなど、俺は知らない。
だが、そう言う事なのだろう。
「渡辺妹はどうするんだ?」
彼女はもう一度自分の鞄の中を探ると、さっきのものと同じ折り畳みをもう一本取り出した。
用意が良い事だ。
「成る程な。下駄箱まで一緒に行くか」
結は微笑んで見せると、一足先に実験室を出た。
301傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:08:28 ID:w+7GdsqC
渡辺の兄弟との付き合いは小学校の頃からだ。
交友が出来たのは習い事で顔を合わせてからだが、それ以前も、界隈では有名人である彼らの噂は耳にしていた。
あの兄弟は、嫌が応に目立つ。
行動力に溢れ、過剰な程自己主張をする綱と、黙して語らず、一歩引いて物事を見極める能力に長けた結。
陽気で表情豊かな兄と、落ち着いた笑みを常に顔に浮かべている妹。
男と女、快活さと冷静さ、陽と陰、全く違っている様でどことなく良く似ている双子のきょうだい。
語らずとも常にお互いの意図を理解し合い、至らぬ部分を補い合う。
さながら一心同体、比翼連理の絆。
俺の兄弟という概念に対する先入観は、かなり彼らの影響を受けていた。
大抵の兄弟は、特に異性の場合は、成長するに従い疎遠になって行くと言う事を頭では理解している。
だが、俺にとって兄弟がいる友人は彼らくらいで、毎日の様に以心伝心ぶりを見せ付けられては、固定観念も出来ようというものだ。
あるいは俺は、俺には無いきょうだいという存在に、幻想を持ちたかったのかもしれない。

「無い」
傘が、無い。
朝来た時、傘立てに突き刺しておいた蝙蝠傘が無い。
既に靴を履き終えた結が不思議そうな目でこちらを見ている。
念の為もう一度傘立てを漁った。
矢張り無い。
置く場所を間違えたか、盗まれたか。
どちらかを断定できるほど自信過剰ではないし、性善説を信じてもいない。
まあ、似たようなデザインのものが多いので、誰かが自分のものと間違えて持っていったというのが妥当な線だろう。
思わず溜息が零れる。
外を見ると雨脚は遠ざかる所か勢いを増していて、じきに本降りになろうとしていた。
濡れて帰るしかないか。
昨日今日と雨には碌な縁がないと頭を抱えていると、いつの間にか再び上履きに履き替えた結が目の前に立っていた。
先程の折り畳み傘を俺に差し出している。
訝しげな視線で見やると、何時もの笑顔で頷き返してきた。
使えという事か。
「いらん。第一お前はどうする」
結は素早い指遣いで携帯電話を操作すると、液晶を俺の目の前に示した。
『兄と一緒に帰るので』
成る程、彼女を家まで送ったり、俺が彼女に送ってもらうよりは現実的だが。
腕を組んで唸る。
「……ひょっとして、渡辺兄と一つ傘の下になる為の口実か?」
無論冗談だ。
結は鷹揚に肩を竦めた。
「有り難いが、どちらにせよ受け取れん。渡辺兄は何時も遅いだろう。
貸し借り云々を言う心算はないが、お前を置いてきぼりにして俺だけ帰ったら、後であのシスコン野郎に何を言われるか判ら――」
302傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:09:58 ID:w+7GdsqC
下駄箱の向こう、玄関に佇む人影を目に付け俺の言葉が途切れる。
ここの制服に昨日俺が渡したビニル傘。
少年と見紛う程の短い髪のせいか、実際の年齢より幼く見える。
昨日突然家に住み着くこととなった少女がそこにいた。
「あんたか」
俺の姿を認めた絵麻がとてとてと歩み寄ってくる。
「何の用だ。登校は来週からだろう。
しかもこっちは高等部だぞ」
「見学」
左様か。
結は絵麻にぺこりと一礼すると、何か尋ねる様に俺に向けて首を傾げて見せた。
「あー。こいつは新しい同居人と言うか――――訳あって家に住むことになった奴だ。絵麻って言う。
絵麻、こっちは知り合いの妹で……」
俺が説明するより早く、結は懐から名刺を取り出して絵麻に手渡した。
『     渡辺 結
   私立北原高校一年生
 住所:??県某市○○区××町――――
 電話番号:090-○○○○-××××
   注:私は喋れません』
毎度思うのだが、喋れないと書きながらメールアドレスより先に電話番号を表記しても、普通の人は面食らうだけだろう。
前に掛けてみて、録音されている兄の棒読みボイスが帰って来た時は吃驚したが。
名刺を渡され、きょとんとしたような目で見つめ返す絵麻に右手を差し出す結。
絵麻は握手に応じた。
お互いにぶんぶんと握り合った手を振っている。
「何をやってるんだ……」
俺には感じ取れない方法で、何がしかの意思疎通を行っているようだ。
綱以外の人間が、結と筆談も手話も無しでここまで円滑にコミュニケートするのを始めてみたような気がする。
何と無く疎外感を感じた。
「いっしょに帰ろう」
長い握手を終えた後、俺に向き直った絵麻はそう告げる。
「悪いが俺は傘を――――」
傘を俺の頭上に掲げて見せる絵麻。
まさか相合傘でもする心算だろうか。
気付くと貸し傘を申し出てくれていた結は、既に隣におらず、玄関の外から手を振って見せている。
後はどうぞ、お二人でごゆっくり、そんな風に。
その右手には俺に貸そうとしていた折り畳みが。
お前らじゃあるまいし、俺には女と一つの傘を共有するような趣味はない、そう視線に込めて睨み返すが、結は相変わらずの笑顔を返して来るだけだ。
踵を返し、雨の中一人去っていく結。
残される二人。
彼女の姿が消えると、その後ろ姿に手を振っていた絵麻は俺を上目遣いに見上げてきた。
早く帰ろう、そう急かされている様だ。
時折通り掛る帰宅生達の奇異の視線が痛い。
俺は溜息を突くと、元々俺のものであったビニル傘を奪い返した。
「行くぞ」
絵麻はこくんと頷いて見せた。
303傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:11:42 ID:w+7GdsqC
左手を歩く絵麻に傘を傾けながらの下校。
小さいビニル傘では雨を防ぎきれず、右半身がぐっしょり濡れている。
彼女には掛からぬよう配慮しつつ、適度な距離を取るには仕方の無い事なのだが。
横を歩く絵麻は一言も喋らない。
(喧しく喋り掛けられるよりは、余程良いがな……)
それでも、間が持たない。
適当な話題を探す。
「学校、どう思った」
絵麻、首を傾げる。
「あんたもあそこに通うんだろ。
生徒としてやって行く上で、気に入らない所でもあったかと聞いている」
絵麻はぶんぶんと首を振った。
「いい所。
いい人にも会えたし」
「渡辺妹か」
俺は鼻を鳴らした。
「初対面で人柄なぞ判る物か?
まあ、実際悪い奴では無いが」
また首を傾げる絵麻。
「お友達?」
「只の腐れ縁だ。
兄貴の方の迷惑に巻き込まれている内に、したくも無い付き合いをする破目になった。
因みに、その兄貴と言うのが救い様の無い馬鹿で……」
ふと隣を見ると、絵麻は口を押さえて小さく笑っている。
「……何だ」
「仲、良いんだ。
話してるヤスミ、楽しそう」
楽しくなんてない。全く。
顔に手を当てても、皺は眉間にしか出来ていない。
冗談言うな、そう言おうとして彼女に向き直り、口を閉じる。
絵麻の笑顔に、僅かな寂しさが垣間見えたから。
(お友達……ね)
彼女の故郷は遠い。
どんな事情でこちらに来たのかは知らないが、この少女は置いてきたのだろう。
家族を、友人を、縁あるもののほとんどを。
要するに、ムービングブルー。
俺には理解出来ないが、彼女には大きな問題なのだろう。
「あんたにも直ぐに出来るさ、友達位」
気休めにしかならない言葉。
少し恥ずかしいが、溜息混じりにこう付け加える。
「俺も、じきにそうなるかも知れん」
304傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:13:11 ID:w+7GdsqC
その言葉を聞いた絵麻は、一瞬目を丸くし、顔を伏せた。
表情は更に暗い。
俺は彼女との認識の差に、ようやく気付いた。
絵麻の思考では、俺はとっくに友達と言うカテゴリーに入っていたのだろう。
否、それ以前に――――
「まさか、俺の事をすでに家族だとか考えていないか」
絵麻は小さく頷いた。
失笑しそうになるのを堪える。
「すまないが、その認識は誤謬だ。
俺とあんたは単なる同居人同士でしかない」
家族には責任がある。
家族が困っていたら助けなければならないし、家族が罪を犯したら共に背負わなければならない。
俺には絵麻に対してそれをする覚悟は無いし、そうしたいとも思わない。
覚悟無しに安易に家族を名乗るのは、無責任だ。
「余りこう言う事は言いたくないが、俺はあんたのことを信用できない。
逆にあんたに信用されても、それに応える事は出来ない。
時間が経てば友人位にはなれるかも知れん。
でも、家族にはなれない。
それはあんたの本当の家族に期待するべきだ」
自分でも冷たい言葉だとは思う。
しかし、事をはっきりさせぬまま結論を先延ばすのは馬鹿のすることだ。
絵麻ははっきりと傷付いた顔で、俺を見返していた。
その瞳から涙が零れたとしても、俺は慰めの言葉を掛けないだろう。
「……でもっ」
絵麻の体が揺れる。
周りは雨。
雨音の中に、僅かな車輪の音。
顔を音の方に向けると、傘を左手に片手運転の自転車が結構な速度で近付いていた。
不意にタイヤがスリップ。
折り悪く、バランスを崩した絵麻と衝突コースへ。
「――ッ!」
ビニル傘を放り投げた。
少女の体を抱きしめ、横に倒れこみながら背中で突進を受け止める。
激突。吹っ飛ぶ。
305傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:14:25 ID:w+7GdsqC
絵麻を胸にしっかりと抱えたまま、右手で地面を叩いて横受身で着地。
右腕が擦り切れるが衝撃は少ない。
濡れた路面を滑って、体がガードレールにぶつかり止まる。
のろのろと身を起こすと、俺とさほど歳も違いそうに無い少年が、尻餅をついたまま引き攣った顔でこちらを見ていた。
少年は立ち上がるや、傍に倒れていた自転車を引き起こして跨り、脱兎の如くその場から走り去った。
「……ちっ」
背後から石でも投げてやろうかと思ったが、面倒なので止める。
「怪我無いか」
無意識ながらまだ抱き留めていた絵麻から手を離し、その顔を伺うと俺はぎょっとした。
絵麻は真っ青な顔で小刻みに震えていた。
彼女がここまで激しい感情を発露するのを初めて目にした。
「おい、幾らなんでも怯えすぎだろう。
自転車に轢かれる位、頭打たなけりゃどうってこと……」
絵麻は口を戦慄かせながら、袖が破れ血が滲んでいる俺の右腕を指差した。
動脈には達していないので、時折血の滴が滴る程度の怪我。
じきに出血も止まるだろう。
「……や、ヤス、み。ち、血、が。……血出、て――――。
あ、え、ほ、骨と、か……お、折れてる、かも。
病い、病院、行かなきゃ――――びょう。早く、はや、く」
うわ言の様に繰り返しつつ、俺の左手を引いてふらふらと歩き出す。
言葉からすると病院に向かう心算らしいが、土地勘の無い彼女に場所が判るとも思えない。
「おい、待て。一体何を言ってるんだ。
俺の怪我は大した事無い。放って置いて良い範囲だ。
聞いているのか。おい。…………おい!」
大声を出すと、絵麻は怯えた様に体を硬直させて立ち止まった。
「……すまん」
どうあれ、俺の事を心配しての行動であったのは事実だろう。
「だが、本当にこの程度の怪我は問題ない。家で消毒して包帯を巻けば、化膿も防げる。
痛みも殆ど無いし、受身も取れたから打撲は避けられた。
あんたの心配する事じゃない。余計なお節介だ」
そう言って傘を拾い上げる俺の袖を、絵麻は泣きそうな顔で握り締めていた。
「……だめ」
俺は溜息を吐いて傘を広げ、絵麻の上に掲げる。
「問題無いと言っているだろう」
「だめ……。病院、行って。お願い……」
苛立ちよりも戸惑いの方が大きかった。
どうしてこいつは、つい先日まで見ず知らずだった他人にここまでかかずらう。
どうして彼女はそんなに不安そうな顔をする。
理解出来ない。
306傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:15:45 ID:w+7GdsqC
昔から、他人に干渉されるのが嫌いだった。
他人の意思を押し付けられるのが大嫌いだった。
要するに、子供っぽい見栄と虚栄心。
だから、他人に謗られる謂れの無い人間に成りたかった。
少なくとも、自己管理は心掛けた心算だ。
そうする内に、段々と他人のお節介は気にならなくなった。
耳従の境地には程遠いが、役に立つアドバイスだけ聞いて置き、後は無視。
自然に他人の言葉など、どうでも良くなっていた。
他人は所詮、他人の都合で動いているのだから。
だから、彼女の言葉も適当にあしらえる、筈だった。

「……」
鬱陶しい、そう冷たく突き放せば良い。
けれど、彼女の瞳が余りに真摯で。
単純に俺の事を心配しているのが判ったから。
俺は踵を返し、絵麻を置いて来た道を戻り始めた。
「……病院はこっちだぞ」
慌てて追いかけて来る絵麻。
歩きながら俺の頭上に傘を掲げようとするが、いかんせんビニル傘の短い柄では中々身長差を埋められない。
必死に腕を伸ばして俺に寄り添ってくる絵麻の手から傘を奪い、彼女の方に傾けてやる。
不満そうな視線を受けて、仕方なく代わりに通学鞄を預けた。
道すがら、絵麻は俺の鞄を大事そうに抱え込んでいた。


「失礼します」
学校の程近く。
『整形・形成・接骨 救急指定 内藤外科』との看板を掲げたビルの二階。
自動扉を潜ると消毒液の匂いが出迎えてくれた。
絵麻も続けて入って来ると、受付に向かってぺこりと一礼する。
「こんにちは、診察券をお持……なんだ、伊綾くんじゃない」
受付の女性は俺の姿を見ると途端にフランクな態度になった。
「ちょっと待ってね、今他に患者さんいないから。
すぐに先生診れると思う」
女性は何事か紙に書き込んで奥に引っ込む。
その間に俺はスリッパに履き替え、絵麻と共に待合室のソファに腰かけた。
平日の午後は暇なのか、他に客の姿も無い。
一分もしない内に扉が開き、初老の男が出てくる。
307傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:17:14 ID:w+7GdsqC
「最近顔を見せんから安心しておったが、またお前か小僧。
全く、いつまで親御さんに余計な心配をさせる気だ?」
「お久しぶりです。内藤さん」
俺は立ち上がって軽く会釈した。
「で、今日は何だ。また喧嘩だろう。
骨でも折れたか? 爪でも剥がれたか?」
「いや、今日は……」
俺は擦り切れた右腕を掲げて見せる。
「転んだだけで、単なる擦り傷です」
内藤医師は暫し絶句した。
「……その程度の怪我でお前が診察を受けに来るとは。
普通、家に帰って応急処置で済ますだろう」
医者の言う台詞じゃないな、と心の中で毒づく。
「俺もその心算だったんですが、こいつが医者に診せろと煩くて」
隣の少女が恥ずかしそうに顔を伏せた。
内藤医師は見慣れぬ存在をいぶかしむ。
「彼女は?」
俺は逡巡した後、最も無難な解答を選んだ。
「……親戚、みたいなものです」


「昔はもうね、伊綾くんそうとうな悪ガキだったんだから。
千人切り(男女問わず)、とか言われたらしいけど。
毎月の様にワルをぶちのめしては、相手ともどもウチに送られてきてたわ。
そのたんびに、なんて言ってたと思う?
『売り上げに貢献してやってる。有り難く思え』よ。
本当、進級できたのは奇跡ね」
簡単に傷口を洗浄・消毒し、湿布と包帯で処置を受けて診察室を辞する。
待合室に戻ると、受付係が絵麻を捕まえて、身に憶えの有る事無い事をべらべらと喋繰っていた。
「……勝手に人の黒歴史を晒さないで下さいよ」
俺の姿を認めるや、受付係から一方的に話しかけられていた絵麻が勢い良く顔を上げ、近付いて来た。
そっと包帯が巻かれた俺の右腕に手を伸ばし、それに触れることなく只心配そうに見詰める。
「……大丈夫?」
「問題ないと何度言えば判る。内藤さんも呆れてたぞ」
ふと見上げると、受付係がニヤニヤと笑いながら俺達の様子を見ていた。
「いいコじゃない、彼女。いつの間に捕まえたの?
いいわねー、若いって」
"彼女"のイントネーションが若干、有り得ない方の意味を匂わせていたが、無視。
受け取ったレシートから診察料を確認してげんなりしつつ、記載された金額をレジに差し出す。
「帰るぞ、今度こそ」
俺は絵麻の肩を叩いて、病院を後にした。
308傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:18:18 ID:w+7GdsqC
「……ありがとう」
帰り道、ぽつりと絵麻が呟く。
何が? と問い直しそうになって、途中で自転車の件と気付いた。
俺は目をしかめる。
「誰かを庇う事は単なる反射行動だ。あくまで人間の本能であって、俺の意図とは関係無い」
「それでも、ありがとう」
絵麻を無視して歩みを速める。
彼女は、俺が照れていると思ったかもしれない。実際それもあったのだろう。
だが俺は何故だか、どことなく不愉快だった。


「おいしい」
「手抜き料理だ、大層なもんじゃない」
忙しい時、複数人に食事を供する場合には鍋が一番だ。
豚肉とキャベツを出汁で炊いたものを突付きながら、俺は絵麻の感想へ適当に相槌を打った。
帰宅する頃には日も暮れており、こんな簡単なものしか用意できなかった。
豚肉とキャベツを交互に重ね、鍋に火を入れるだけ。手伝おうとうろつく絵麻を追い払う方が大変だった。
これに白飯、後分葱と油揚げのぬただけのメニューだが、絵麻は満足しているようだ。
正直、油揚げは酢味噌と然程合わない様に思う。時間があれば浅蜊を買って帰れたのだが。
皿によそってやった分に大量の一味を振り掛けている絵麻を見て俺はげんなりとした。
この様子では彼女には何を出しても旨いとしか言いそうに無い。
和食は食えん等と駄々を捏ねられるよりは余程マシだが。
親父もそうなのだが、ある程度は食に五月蝿くないと料理の作り甲斐が無い。
俺はふと壁に掛けられている時計を見上げた。
「……遅いな。毎度の事だが」
扶養者が増えたばかりだと言うのに何やってんだか、と一人ごちる。
俺は慣れているが、絵麻は心細いのかも知れない。
親父の帰宅は、大抵夜遅くになる。
だから、殆ど夕食は一人で取っていたのだが。
二人は、慣れない。
「…………」
「…………」
会話のねたが見付からず、間が持たない。
309傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:19:31 ID:w+7GdsqC
それだけならまだしも、絵麻がしょっちゅうこちらの方にちらちらと視線を向けて来るものだから気まずさが倍増する。
「怪我ならもう何とも無いぞ」
「……」
彼女の視線の先にあった俺の右腕を掲げ、軽く振って見せるがその眼差しは尚も疑わしげだ。
俺は無視する事に決めて、ご飯を掻き込む。
「ヤスミ」
やがて、ぽつりと絵麻が言葉を漏らす。
「よく、喧嘩するんだ」
病院で何を吹き込まれたのやら。
少々恥ずかしい過去を掘り返され、俺は溜息を吐いた。
「昔の話だ。高校に上がってからは足を洗った。
以前にしたって、仕掛けてくるのは専ら相手の方だった。
その都度返り討ちにしてやってたら、いつの間にか噂に尾鰭が付いただけだ」
こちらから仕掛けたことも無い訳ではないが、うちの学校生にちょっかいをかける輩に対して相応の対応を取ったに過ぎない。
だが、絵麻は相変わらず不安げ。
俺の素行の悪さを咎めていると言うよりは、俺の身を案じているのだろう。
そのことが、人から心配されると言う状態が、気に食わない。
不慣れで、どこかくすぐったく、居心地が悪い。
「なあ」
俺は皿を空けると箸を置いて絵麻に向き直った。
「余り俺にかかずらうな。
あれやこれや気を遣われた所で、却って迷惑だ。
それに、俺からは何かしてやる心算は無いしな」
俺は一方的に言葉を告げると、空になった皿を重ねて席を立った。
「食い終わったら食器は流しに入れて置け。後で洗う」
逃げる様にリビングを後にし、洗面所で歯を磨いてから玄関に向かう。
薄手の上着に腕を通して靴を履き、ドアノブに手をかけると、誰かが背後から裾を引っ張った。
「何をする」
絵麻は悲しそうな、どこか怯えたような顔で俺を見詰めていた。
俺は今日何度目になるかも判らない溜息を吐く。
「夜の街に遊びに出掛けるとか、悪い仲間とつるみに行くとか、そんな所を想像して居るんだろうが。
ただの散歩だ。軽く走って置かないと体が鈍るんだよ」
俺は少女の手を振り払うと、今度こそドアを開けて外に出た。
「行って来ます」
返事を待たずにドアを閉める。
言い馴れない言葉が自然に口から出た事に、軽い驚きと恥ずかしさを感じながら。
310傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:21:10 ID:w+7GdsqC
マンションから出て軽く準備体操で身を解し、住宅地を周りを駆け足で数週する。
体力を保つ為の日課の一つ。
一応医者からは安静を言い渡されているが、習慣と化しているのでやらないと不安だった。
6月の夜の空気はまだ涼しいが、湿気も手伝ってすぐに汗ばんで来る。
全速力と小走りを何回か繰り返す内に息も上がり、マンションの前の公園で一息ついた。
塗装の剥げた遊具にもたれ掛かって、空を見上げる。
星は見えない。
雨は上がってはいたが、夜光に照らされた雲が低く垂れ込め、再び降り出しても可笑しく無い天気だった。
「……早めに切り上げるか」
上げた顔を戻す拍子、視界の隅に見覚えのある姿を認める。
6階にある我が家のベランダから、小さな少女が俺の方を見下ろしていた。
突然、頬に冷たい感触。
掌をかざすと、水滴が疎らに落ちる。
また降り出したらしい。
再びベランダを見上げると、少女の姿は既になかった。

それからまた何週か近所を走った後、本格的に降り出して来て漸く家に戻る。
「……何の有様だこれは」
ドアを開けると、玄関に突っ伏した男を前に、絵麻が途方に暮れていた。
どうしよう、と俺の方に縋る様な視線を向ける。
俺は今日最後にしたい溜息を吐いて、靴を脱いで倒れ伏している親父の肩を揺すった。
「おい、起きろ」
「――――ごめん、肩貸して」
声が酒臭い。
俺は目をしかめながら親父に肩を貸すと、居間のソファに座らせる。
「飯は食えそうか? 鍋だが」
「食欲はないよ。
悪いね、無駄にしちゃって」
「強くないのに、酒なんか呑むからだ」
とりあえず湯だけでも飲ませようと、台所に向かう。
と、後ろから付いて来る絵麻を振り返る。
「あんたは邪魔だ。もう遅いから寝てろ」
「でも」
「邪魔だと言った」
絵麻は一瞬悲しそうな顔を見せると、素直に引き下がった。
保護者の醜態など見せるものじゃない。
俺が冷たいと思われようと知った事ではなかった。
311傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:22:18 ID:w+7GdsqC
彼女が自室に退散するのを見届けると、コンロで薬缶を沸かす。
ぬるま湯を茶碗に入れ、万一戻された場合に備えてたらいを用意し、リビングに戻る。
親父は既に眠り込んでいた。
起こすのも気が引けたので、毛布だけ掛けて置く。
不意に、寝言が耳に入った。
「――――さん、美奈子さん。……どうして、どうして、僕を、置いて行って――――」
親父は、まだ未練があるのだ。
10年前に失踪した母さんに。

一時期の彼は酷い状態だった。
暴食と拒食を交互に繰り返す日々。成人病にかからなかったのは奇跡だ。
そして段々と、衰えて行った。
子供の前では気丈に振舞っていたものの、やつれ生気の失せた顔を見れば幼心に心配もする。
俺が料理を覚え、絶望的に不器用な親父に代わり台所を担う様になるまで、彼は数回病院送りになった。
俺は幸運だったのかもしれない。
そんな状態の親父を気にかけている間は、母さんの事を忘れていられたのだから。
授業参観も、一人きりの食卓も、じきに慣れた。
母さんに対するあらぬ噂も、杳として知れぬ安否を待つことも、慣れた。
けれども、親父はまだ忘れることが出来ていない。
酔うと時折、こうして地を見せる。

年甲斐もなく、みっともない格好で涙を流す親父を見ながら、俺は思う。
こんなにも悲しむのなら。
またあんな思いをするくらいなら。
例えぬくもりがもう得られずとも。
俺はもう家族なんて、これ以上いらない。
312傘 / 包帯 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/21(月) 00:26:38 ID:w+7GdsqC
投下終了です
主人公は俗に言うツン期です。デレるのはいつになるやら
313名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 13:39:01 ID:B/WjpiEl
なにこの投下ラッシュ 
GJ!!
314名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 23:48:31 ID:Y/86swi8
渡辺兄妹とやらに見覚えがあるんだが、もしかしてシリーズもの?
315名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 21:13:26 ID:QH1RQPxt
保管庫にあったな。
まあ何はともあれGJだ。
続きwktk
316名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 23:35:00 ID:/G3xFXqW
GJ
ツンデレの醍醐味のデレ移行期が楽しみだ

>>289 『最終バスの彼女』 でクグれ
317ファントム・ペイン 3話 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:02:14 ID:/aBjkW0X
投下いたします
非エロ。8レスほど
318包帯/掌 3話 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:04:59 ID:/aBjkW0X
真夜中の3時。白熱光の灯る洗面所。
誰にも言えない確認作業がはじまる。
翻るカミソリの刃。
切り刻まれる薬指。
肉を切り裂く感触。
合間に見える骨の白。
剥れる爪の断面。
滴り落ちる鮮血。
なのに、そこにあるべきものがぽっかりと抜け落ちている。
それがどんなものだったか、どんどんわからなくなっていく。
徐々に失われる情感
助長される無感動。
排水溝へ向かう紅い渦をぼんやりと眺める。
私はいつまでまともでいられるのだろう。
朱は水の中に拡散し、やがて完全に消えうせた。
それを見届けてから一人で包帯を巻き、血を洗い流してその場を離れる。
自室に戻る途中、彼の部屋の前を通り過ぎた。
暫しの逡巡。
マナー違反とわかってはいたけれど、私は扉をそっと押し開けた。
ベッドの上で静かに寝息を立てている彼。
毛布から出ている右腕に、私はそっと指を這わせる。
包帯の巻かれたその腕は、すこしだけ、熱を帯びていた。

すこしだけ、忘れていたものを思いだせた。

319包帯/掌 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:06:40 ID:/aBjkW0X
風邪を引いた。
一昨日昨日と連続して雨に打たれた所為だろう。
体温38度。
流石に体がだるい。
「ついてねえな……」
布団に包まれて一人ごちる。
氷枕と季節外れの分厚い掛け布団が、はっきり言って鬱陶しい。
「僕は会社に行くけど、何かあったらすぐ電話するんだよ。
必要なものがあったらメールでもしてくれれば帰りに買って帰るから。
ああ、お昼の用意はどうしようか。学校に連絡は済ませたよね。着替えは十分用意してる?」
「……良いからあんたはさっさと働きに行け」
何時もは子供を放任し気味な反動なのか、過剰に世話を焼きたがる親父を追い立てる。
親父は後ろ髪を引かれる様にちらちらと振り返りながら、渋々俺の部屋から出て行く。
「それじゃあ絵麻、留守番はよろしく頼むよ。泰巳はこの通り、病気だから安静にさせてあげて。
何か困ったことがあったら僕に電話してね。電話番号は……」
ドアが閉まる音と同時に親父の声も聞こえなくなり、部屋は静寂を取り戻す。
俺は溜息を突いて、さっきから邪魔で仕方が無かった氷枕と掛け布団を横に退けると、毛布に包まって大人しく眠ることにした。
ふと、横合いから視線を感じる。
寝返りを打つと、開きっ放しの扉の向こうからこちらを伺っている絵麻の姿が視界に入った。
「何か用か?」
昨日の一件以来、彼女とどう接して良いか判らず、まともに話せていなかった。
気まずい空気を怖れていたのだが、取り越し苦労だったようだ。
絵麻はとてとてと俺の部屋に入って来ると、ベッドの脇に椅子を持って来て腰掛けた。
「……何だ」
無言で見詰めて来る絵麻の意図をいぶかしむ。
「看病」
「要らねえよ」
つっけんどんな調子で拒絶されても、絵麻はめげる様子はない。
「病気のとき、ひとりだと寂しいよ」
「却って鬱陶しい。移るから離れてろ」
「……ふむ」
絵麻はしょぼくれたような表情を見せるが、俺は構わず反対側に寝返りを打って無視する。
暫くすると立ち去る足音と扉が閉まる音が響く。
俺は安心して目を閉じると、浅い眠りに就いた。
320包帯/掌 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:08:05 ID:/aBjkW0X

――――ねえ、おとうさん。

――――なんだ?

――――おかあさんはいつ帰ってくるの?

――――さあ、なあ。
――――お父さんや泰巳がいい子にしてたら、きっとはやくに戻って来てくれるんじゃないかな。

――――だから、それっていつ?
――――朝、ぼくがめざましよりさきにおきれるようになったら?
――――自転車にひとりで乗れるようになったら?

――――。
――――お父さんにも、判らないや。

――――もう、いいよ。
――――ほんとうはもう、わかってるんだ。

母さんはもう、帰って来ないって。
321包帯/掌 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:09:25 ID:/aBjkW0X
「――――、 ――――♪」
懐かしい歌が聞こえる。
俺はゆっくりと瞼を開いた。
髪の短い少女が傍の椅子に腰掛けて、本を眺めながら古い歌を口ずさんでいる。
「絵麻?」
絵麻は歌を止めて俺の方を振り返った。
俺はくらくらする頭を振りながら身を起こす。
壁に掛けられた時計を見やると、もう昼になろうとしていた。
体を動かすと、関節が鈍い痛みを訴える。
「あんた、何時からこの部屋に居た」
「ずっと」
意味が判らず暫く彼女と見詰め合う。
「扉閉めただけで、朝からほとんど部屋出てなかったり」
「出て行く動作はフェイントかよ」
俺は半眼で呻く。
病気とは言え、こんなに近くに居座られて気配一つ感じられなかった。
物音を立てず、今まで只管俺の事を見守っていたのだろう。
「……済まなかったな」
首を傾げる絵麻。
「暇なのに、付き合ってやれない。こんな所に居たって退屈だろう」
彼女は首を振ると、手のハードカバーを広げて見せた。
俺の本棚にあった小説だ。平易とは言えない日本語なのに、読みこなせている様子。
無断で持ち出した事を咎め様として、止める。面倒臭い。
俺は再び布団を被ると、彼女から目を逸らした。
「それと、朝、邪険に扱って、悪かった」
絵麻のほっそりとした指が、包帯の巻かれた俺の手に当てられる。
その指を握り返す。
「寂しいよな。見知らぬ外国、他人の家で独りきり。
縋るべき過去はすごく遠くて、明日は漠然として見通せない。
部屋に篭って外界を拒んでも、時間は有限で、何れは必ず外の方から入り込んで来る。
心細くて泣いても、自分が情けなく思えるだけ」
誰に向けての言葉なのか、俺自身判らなかった。
少女の手は、暖かかった。
「あんたは凄いよ。物怖じしない。
完全なアウェーで、訳の判らない他人と向き合って居られる。
それ所か、お節介焼く余裕すらあるんだからな」
彼女はゆっくりと首を振り、俺の言葉を訂正した。
「家族だから」
「家族、か」
322包帯/掌 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:11:12 ID:/aBjkW0X
どうしてこいつは、縁も所縁も無い他人を身内と認める事が出来るのだろうか。
俺には出来ない。
独りで居る事に慣れたのと引き換えに、何時の間にか他者を一定の距離から内側に入れない様になっていた。
誰かに傷付けられるのが怖い。
誰かを傷付けるのが怖い。
誰か無しでは生きて行けなくなるのが、こわい。
それはきっと臆病なのだろう。
「前も言ったがな。俺はあんたを家族として見ちゃいないよ。
別にあんたの何が悪い訳じゃない。
単に、納得出来ないだけだ」
「それでも」
目を上げると、つと彼女の腕が伸びて来る。
「私は、ヤスミの家族になりたい」
細い指が優しく俺の髪を梳く。
俺は抵抗しない。
人の手はあたたかいことを、久しぶりに思い出した。
「だって、ヤスミはいい人だから」
そう言って、絵麻は笑う。
その言葉は相変わらず少し不愉快だけれど、胸の奥に抵抗なくすとんと収まった。
俺は気恥ずかしくなって、再び顔を背ける。
「何馬鹿な事を……。珍しく良く喋ると思ったら」
絵麻は笑いながら、俺の頭を撫でる。
くすぐったい。
俺は彼女の手を退けると、腹筋に力を込め上体を起こした。
多少頭がくらくらするが、朝よりは大分体調も良くなっている。
「そろそろ昼か。腹もすいたろう。
簡単なものしか無理だが、適当な食えるものを……」
起き上がろうとする俺を押し止める絵麻。
「作るよ」
「は?」
「私が、作る」
まじまじと少女の顔を見る。
絵麻は、どうやら大真面目だった。
「だが、ここに来てからあんた、一度も調理して無いだろう。
本当に料理できるのか?」
大丈夫、とでも言うように、力強くガッツポーズをとる絵麻。
何故だか、凄まじく不安だった。
323包帯/掌 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:13:08 ID:/aBjkW0X
二時間後。
余りの遅さに痺れを切らし、ふら付きながらも部屋を出た俺を出迎えたのは、顔中ススだらけで涙目を浮かべた絵麻と、洗い場に積み上げられている焦げ付いた調理具の山だった。
思わず目眩が倍増したような気分になる。
「やはり、な」
「……めんなさい」
溜息をついて、目を伏せる絵麻の頭に手を乗せる。
「どいてろ。俺がやる」
冷凍しておいた白飯を電子レンジにセットし、温めている間に昨日の鍋の残りを火にかける。
本来なら米の状態から作る方が良いのだが、時間が惜しい。
鍋に酒醤油を足して軽く煮立て、白飯を入れた後溶き卵を投入し火を止める。
二人分の器に分け、刻んだ白髪葱を添え、完成。
出来上がった粥と言うよりおじやを、俯いたまま椅子に座り込んでいる絵麻の前に置く。
「冷めるぞ。早く食え」
俺も自分の席に着くと、スプーンを手繰る。
朝食を抜いた所為か食欲はあった。
俺が無心に食べているのを見て、絵麻もおずおずとスプーンに手を伸ばす。
ふと、その細い左の薬指に包帯が巻かれているのに気付く。
(料理の際に切ったのか……?)
昨日はあんなに血を見るのを嫌がっていたのに。
「その傷、どうしたんだ」
目を丸くして顔を上げる絵麻。
「薬指だ」
今さら気付いたかのように、その指をまじまじと見詰めると、絵麻は急いで包帯を取り外しにかかった。
剥き出した手を掲げて、何かを誤魔化す様に微笑む。
「だいじょうぶ」
その指には傷一つ見えない。
(……大方、包丁で少し引っ掛けた挙句、パニクって大げさに処置しようとしたんだろうが)
こんな奴に台所を任せて置ける訳が無い。
早く風邪を治さなければと、改めて俺は痛感した。
324包帯/掌 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:14:47 ID:/aBjkW0X
……
…………
瞼を撫でる、微かな光に目を覚ます。
身を起こし、カーテンの隙間から窓の外を見ると空が僅かに赤く染まっていた。
もう、雨は止んだらしい。
体調は悪くなかった。
昼からずっと眠り続けていた甲斐もあるのだろう。
寝巻きから簡単な部屋着に着替え、若干重い体を引き摺って居間に出る。
「そーじゃねえよ。テトリスと違って下にブロック無いと落ちるんだって。
4つ繋げりゃいいの4つ。縦横関係ない。
げ、結タンマタンマ! まだこの子なれてない……って今度はCPUかよ!
このタイミングで3連鎖!? まてまて、今度は俺がヤバイ! 終わる終わる!!
――――ふう、何とか乗り切ったか。んで続きだけど、この透明なヤツは周りの消すと一緒になくなるから。
これ利用して連鎖を繋げるのもありだぜ」
「…………こう?」
「しょっぱなから5連鎖!? 俺を裏切ったんですか!? この子初心者のふりしてハメてませんか!?
ぎゃー! 死ぬー! 死ぬー! 死んだ――!!」
テレビの前で騒いでいる見知った顔3つ(実際に騒いでいるのは1つだけだが)を見て、俺は頭を抱えた。
「何をやってるんだ、渡辺二人」
「おー、伊綾。おはようさん」
おそらく勝手にゲーム機を引っ張り出して来たであろう張本人、渡辺綱が悪びれもせず手を上げた。
その隣の渡辺結も苦笑しながらコントローラから手を離して丁寧にお辞儀をする。
二人とも学校帰りなのだろう、制服姿だ。
「何をしに来たと訊いている。
俺は呼んだ覚えは無いぞ。大方絵麻の奴が勝手に上げたんだろうが。
家の防音が悪ければ即刻追い出していた所だ」
「ん――――。ゲームしに?」
「帰れ!」
すっと、二人の間に割って入った結が紙の立体包装袋を差し出す。
近所の菓子屋のロゴ入り。
一応、見舞いと言う名目らしい。
「……何故俺が風邪だと?」
「今日欠席だったからさ、電話してみたらこの子が出て。
もしもし言っても無言だから心配になって、直接事情を聞きに駆けつけたわけだけど」
留守番すら満足に出来ないのかと俺は一時呆れる。
「電話の応対位しろ」
絵麻に文句を言いながら、ふと気になって固定電話の再生ボタンを押す。
雑音交じりで綱の声が。
『あー、もしもし伊綾。おれおれー。
何か今日がっこ来とらんかったけど平気か生きてるかー?
んー? もしもし聴こえてますー? もしもしもしもし。
そーか留守かー。留守なら仕方ないな――、ってじゃ誰が出てんだこれ。
おい、誰だてめー! 伊綾んちで何やってる。おい、返事しろよ!
空き巣か強盗か誘拐犯か。ちょっと待ってろ今そっち行くからな!
伊綾待ってろよ今助け――、あ結丁度良いところに……え、あ、ちょっと結さん何を構えて。うああああああ――――』
325包帯/掌 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:16:44 ID:/aBjkW0X
プツッ。ツ――。ツ――。ツ――。
……全くの濡れ衣だった。
「全く渡辺が悪い」
「伊綾も悪いと思うぜ。なんでこの子紹介してくんねーんだよ」
気安げに絵麻の頭に手を置く綱。
見上げる彼女の視線は少し鬱陶し気だ。
「別に紹介するほどの事じゃない」
さり気無く絵麻を引き剥がしつつ、包装紙の中身を確認する。
シャロット型から切り分けられた形のプリンが4つ、綺麗にラッピングされていた。
「絵麻。皿を4人分用意してくれるか。
俺は茶を淹れる」
俺を制して綱が立ち上がる。
「病人は大人しくしてろって。俺がやってやる」
「頼むから止めてくれ。お前に任せたら、一杯入れている間に日が暮れる」
「でもここIHじゃねーから結には――――」
と、結が綱の肩に手を置く。
「――――ん、そーだな。あんまり長居しちゃ悪いか。
俺たち、そろそろお暇するわ」
絵麻ちゃんの顔も見れたし、等と言いながら渡辺兄弟は荷物を纏めて立ち上がる。
俺に無断で使用されていたゲーム機は、既に所定の場所に仕舞われていた。
相変わらず妹の方は手際が良い。
「折角来てくれたのに、何も構えず悪いな」
「いいってことよ。あれこれしてるうちに風邪移ってもいかんし」
「大丈夫だ。お前は風邪を引かない」
「どどどういう意味だろう」
一応礼儀として玄関まで見送りに行く。
二人は靴に履き替えてノブに手をかけた。
「んじゃ、邪魔したな。ゆっくり養生しておくれ。
絵麻ちゃんもまた――――っとそうだ。今度絵麻ちゃんの歓迎会しねーか?
知り合いに声かけてさ」
良い考えだ、とでも言うように結が手を合わせる。
「勝手に決めるな。ウチの家庭の問題だし、こいつ自身にしたって……」
言いかけて、ふと絵麻と視線が合う。
何かを期待しているような瞳。
……まあ、そう言うのも良いかも知れない。
「……やるなら小規模にしろ。周りが年上ばかりだと萎縮させ兼ねん。
あと、くれぐれも酒とか持ち込みそうな連中は呼ぶんじゃない」
「おう、期待しててくれ」
後ろ手を振る綱とお辞儀する結がドアの向こうに消えた。
嵐の様な兄弟が過ぎ去った後、部屋は異様に静かになる。
けれど、それはもう大して気まずくなかった。
二人並んでソファに腰掛け、何と無しにベランダの方を眺める。
窓の外はもう夕暮れ。
眠り続けて堅くなっていた四肢を大きく伸ばしながら解す。
「さて、飯でも作るか。
もう材料も少ないが、何が良い?」
「私が作……」
俺は溜息を吐いて、絵麻の頭に手を置いた。
「お前には十年早い」
326包帯/掌 ◆MZ/3G8QnIE :2009/12/27(日) 15:19:18 ID:/aBjkW0X
投下終了です。
これまではどちらかと言うと主人公サイドのお話でした。
これ以降ようやくヒロインがストーリーの中心になりますが、次回の投下まで結構時間が空くと思われます。
次回のお目見えまで憶えて頂けると幸いです。
>>314
"じぇみに。"に出てきた二人と同一人物ですが、一応こちらは別シリーズという扱いです。
"じぇみに。"でも一回だけ泰巳が顔を出しています。
あっちはコメディ寄りで、こっちは若干シリアス寄りです。
でも綱を出した途端ギャグになってしまうのはどうしてでしょう。
327名無しさん@ピンキー:2009/12/27(日) 19:35:40 ID:0uRPNXES
GJです!
冒頭から不穏な空気……
IHの件はじぇみに。の方と繋がるのかな?

絵麻が努力して料理の腕を少しずつ上げていったら萌えるw
328名無しさん@ピンキー:2009/12/31(木) 01:29:49 ID:KSNbvnya
とある高校の昼下がり、教室の一角は静かな雰囲気を醸し出していた

七資蛇雄と無口御菜は最近付き合いだしたらしく、教室中が二人のやり取りに注視していた…のだが

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

〜中略〜

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

この長い沈黙を見ていられなかった一人が、七資に質問をぶつけた

「なぁ七資、黙って無口の顔ガン見して、その…楽しいか?」

「ん?あぁ…………無口は表情ころころ変わって面白いからな、つい見とれてたんだ」

教室に居た全員『何時表情変わってたんだよ!?』

無口「………///」

ここで昼休みが終わりを告げ、一足早く教室に来ていた教師がこう言った

「あー、お前等。バカップル眺めるのもいいが、保守の時間だぞー?」
329名無しさん@ピンキー:2010/01/01(金) 18:28:56 ID:Zel4q2NS
330名無しさん@ピンキー:2010/01/02(土) 19:44:46 ID:wszWXsS7
GJ
331名無しさん@ピンキー:2010/01/04(月) 04:25:06 ID:gvKJgv8O
GJ
332やっと亀:2010/01/09(土) 07:59:20 ID:8xd/jhq0
>266ウィ-!!

>>267-268おー連続投稿おつ
333名無しさん@ピンキー:2010/01/10(日) 22:04:51 ID:+iXlUow/
明日は世間一般でいう成人式だな
334名無しさん@ピンキー:2010/01/15(金) 02:04:56 ID:qA6ZJzFX
>>333を見ていたらなんとなく、晴れ着を着ていたら彼氏に芸者ごっこで
帯引いて回転させられてたら、無口ゆえに「もうやめて、もう限界」の
一言が言えず、限界突破してリバースしてしまい、部屋の隅で体育ずわり
しくしく泣いてる無口っ子と平謝りしながら雑巾で床拭いてる彼氏の光景が
思い浮かんだ
335名無しさん@ピンキー:2010/01/17(日) 21:40:18 ID:npK0TerY
無口っ子従妹をなでなで
336名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 21:39:37 ID:vKxAHq01
334と335にキュン
337名無しさん@ピンキー:2010/01/18(月) 22:36:51 ID:E7NoY5n7
無口っ子が口の周りにクリームをつけて、それをふわふわした子が指でぬぐってぺろってやって、それを見て赤くなって照れる無口っ子
338名無しさん@ピンキー:2010/01/21(木) 20:10:04 ID:w8aHicHI
 寒いので体の温まる飲み物が欲しい。
 俺は一階の台所に下りて、何かないか探していた。
 と、鏡餅に使うような橙があったので、早速それを絞って水と砂糖を足して温める。
 完成。盆に乗せて二階の自分の部屋まで運ぶ。
 部屋には、無口な幼馴染が一人。今日は二人でゲームをして遊んでいる。
 小さな体をこたつに突っ込んで、やっているのはコナミの夢大陸アドベンチャー。
 この辺でMSXを実機でやれるのは、俺ん家くらいのものだ。
「はい、ホットドリンク」
 目の前にカップを置くと、「ピロリ」とポーズがかかる。
「……」
 湯気の立つ橙ジュースを見て、そして俺を見る。
 彼女は寒がりだ。今も上半身が冷えるのか、マフラーを巻いている。
「ポッカのホットはちみつレモンだ(大嘘)」
「……果肉、入ってる」
「黙って飲め」
 そう言って俺が口を付けると、彼女も気乗りしない風だけど、真似して口を付ける。
 ごく。
「……」
「……酸い」
 手製はやっぱり苦味とか渋みが残る感じだな。
 まぁ良いや。変な顔をしながら熱いところを啜る。
 そして温くなる前に、きゅーっと一気。
「ぷはぁー」
「……う゛う」
 唸り声に気づいて目をやると、彼女も一気飲みをしていた。
「ちょ、無理すんなって」
「……げふ」
 微妙に表情を歪ませて、それでも俺に対抗するような目で見ている。
「あ〜俺が悪かったから! よしよし」
 悪気は半分あった。宥めるつもりで、頭を撫でてあげる。
 すると彼女は一応溜飲が下がったのか、コントローラーを持ち直しゲームを再開した。

「……」
 テレビの中で、ペンギンが元気良く跳ねている。
 そして彼女は、そんな映像を無表情気味に見つめながら、がちゃがちゃと手を動かしている。
「寒がり、温まったか?」
 目線は愚か、聞こえていないといった風だ。
 じゃ、触診してみる。後から、おでこの辺りに――。
「……!!」
 びくっと凄まじい反応をして、固まる。
 温かかった。と言うより、俺の手がまだ冷たい?
「ん? どうした?」
 テレビを見ると、黒画面に白字で「GAME OVER」と出ている。
 ひょっとして、脅かしたせいでミスったのか? 残機も無かったのか。
「あ…悪ぃ、邪魔した」
「……ペンギン…死んだ……うぅ」
 やばい、泣かした。悪ふざけが過ぎた。
「あーほら、今度は二人でやれるゲームでもしようぜ? な?」
「……ペンギン…」
 彼女はペンギンが大好きらしい。真ん丸で可愛いシルエットとか、効果音の「ピィ」って鳴き声とか。
「分かったよ。お前がやってたとこまで進めてやっから、ほい、足入れるぞ」
 半ベソかいて黙っている。勿論、それで許してくれるらしい。
 何故なら、バトンタッチの代わりに、こたつの中の足が、俺を蹴ってきたから。
「……」
 プレイ中、ちらちらと彼女の表情を確かめる。
 画面を真剣に見つめていた。そんな様子がまるで子どものようで、いつも以上に可愛く思えた。
 地味な二人の時間だが、こういうのも悪くない。


おしまい
339名無しさん@ピンキー:2010/01/24(日) 16:40:17 ID:/3W4Up+y
かわいいな(*´Д`)ハァハァ
340名無しさん@ピンキー:2010/01/25(月) 22:26:32 ID:PPL8hplB
日常の1ページ
バンザーイ!!
341名無しさん@ピンキー:2010/01/27(水) 22:29:03 ID:unfWNHzN
GJ
342名無しさん@ピンキー:2010/01/29(金) 04:10:31 ID:zuGEuMcB
常にべったりな無口幼馴染みを言葉と寸止めで調教
343名無しさん@ピンキー:2010/01/30(土) 20:49:12 ID:iVPvOn1c
お前ら本屋行ったらMFコミック「高杉さん家のおべんとう」買ってこい
344名無しさん@ピンキー:2010/01/31(日) 07:17:10 ID:45iY8ggt
>>342
無口っ子からおねだりして来たらせいこうですねわかります。
345名無しさん@ピンキー:2010/02/01(月) 05:08:48 ID:6UQ+Q2//
>>344
「………………………………クスッ」
「!? お前今もしかして笑った!? 初めて見た笑顔が下ネタに反応した笑顔って……orz」
「…………笑ってない」
346名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 16:35:51 ID:WGj/z/ZL
わ ら え よ 
347名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 22:51:45 ID:ZkC3erNU
笑え…、笑えよ…。
348名無しさん@ピンキー:2010/02/07(日) 18:21:06 ID:snMxmY/u
かといって笑い上戸な無口っ子も困るが
349名無しさん@ピンキー:2010/02/07(日) 21:12:24 ID:QTkFpKq2
「ねえ、何で笑ってくれないの?」
「……」
「笑ってよねえ笑って。笑ってくれなきゃお前のことなんか」
「……」
「笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え笑え」
「……」
「笑えっつってんだ! オイ笑え!! 笑ってくれ、頼むからこの通りだ。後生だからどうか! どうか笑って! でないと俺! ああっ! 笑え!!」
「……」
「ぐえへへへへ…笑え…う、う…わるぅうわえぇぇぇぇっっっ!!?」
「……」
「ひょおおおおおおっ! おっおおほほっふあっへあえぇへぇぇえええっ!!」
「……」
「ふぐひぇへへ…ああぁっははHA!? QOFNFHRGWVUHFOFWH!!」
「……」
「%’&#&$+Kok:pw;ro!!っぉrぴおps!」
「……」
「はぁ…はぁ…うぉ、ヲマエゑヱ江慧ェぇ……ぐぴょぉぉぉおおおおっっっ!!」
「……死ね」
「へあっ? あう…あ…」
「……脳味噌撒き散らして死ねっ!」

 ぐきゃっ

「……くす…」
350名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 15:30:01 ID:6D1o+Bkp


                    /:::::::::::::::::::::::::::::::::;イ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::、
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                     ,':::/ / :::::::::::::::::|ア"て`ヽ、、ヽ.!| !::::::::::::::: |! |:::::::::::::::::: : : : : : : :.、
                 i::/ / ::::::::/!::::::::lヽ.{:::い:リY   ! ヽ::::::::::ム!,,__!:::::::::::::::: : : : : : : : :.、
                  i/ /:::::::::人|::::::::i. ´ ー'       \://__|:/|::::::::: : : : : : : : : : 、
                / / :::::::::::::::|::::::::ト、             ,イ::い リ`ヽイ:::: : :./:: : : |\: :、
                / :::::::::::::::: \::::l ',              ゝ=シ, 、'" ':::: : :/|:::: : :,   \
                 /::::::::::::::::::::::ハ \          /            /::: : :/: !:::::::,'
                  / :::::::::::::::::::::::::ハ                    /:::: : /:::',|:::::/  こんな時どういう顔をすればいいか
                  / :::::::::::::::::::::::::::: ヘ.     マ_ー_、         <'::::.: /::::::::|:::ハ   わからないの…
              ―= ――|::::::::::::::::「 ̄:|.\     -          .イ:/::::.∠-==|/ ̄`丶
       /:. :. :. :. :. :. :. :. : !::::::::::::::::|:.:..λ  ヽ       _...:ァ'´:. /ィ":. :. :. :. :/ :. :. :. :. :. \
      / :. :. :. :. \ :. :. :. :. |::::::::::::::::|:.:.:.:.:}.   丶--‐  ´/:.:.:.:.:.:.:.:./ :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. : ヽ
     /:. :. :. :. :. :. :. :ヽ :. :. :. ヽ::::::::::::::!:.:.:.: !',          /:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:. :./:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽ
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351名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 03:36:17 ID:8BXLRdkz
病んに走るとアレだが、実際無口っ子の笑顔は最高だと思う。
352名無しさん@ピンキー:2010/02/12(金) 21:19:44 ID:bgdZYRjw
やべ、萌えた
353名無しさん@ピンキー:2010/02/13(土) 16:02:06 ID:JphDVf/q
ここの保管庫ってずっと滞ってるのか?
354名無しさん@ピンキー:2010/02/14(日) 03:39:25 ID:QH9gZ8vG
 高校は今現在、昼休みの時間。
 男子も女子も、教室でじっとするにはまだ元気を持て余す年頃だ。
 人は散り散りで、ここには幼馴染同士の男女を除き、誰もいなかった。
 ちょきん、ちょきん、と、テンポよくハサミの音がする。
 手を添えながら、無精な彼の、若白髪を切っているのだ。
「なぁ?」
 返事の代わりに、物音がしん、と停止する。
「お前まめだな」
 そう言うと、受け流すように作業は再開された。
「白髪なんて放っといて良いのに」
 背中で呟く相手を、彼女は気に留めない。
 ちょきん、ちょきん。
 無言の散髪は、続く。

 真後ろにイスを付けて、やや前のめりに白髪を切る彼女。
 やがて目立つ部分は無くなったのか、席を立つ。
 隣を通る際、その手に包まれた物を、彼は見せてもらった。
「うわ、俺相当病んでるな」
 その少なくなさに、感想をつける。
 彼女はそれだけ聞くと、教室の右端にあるゴミ箱に、物を捨てに行った。
 そして戻ってくると、また彼の背中側に。
「とりあえず、ありがとさん。で、何企んでる?」
 と訊くと、彼の首周りに細い腕が、伸びてきた。
 息遣いが至近距離になり、確認出来る特別な感情。
「便宜を、はかりたい」
 繊細で透き通るような声。
 それはどこか悪戯っぽい響きで、彼の耳に届いた。

 彼は手さげに手を突っ込むと、巾着を取り出した。
「ほれ、見返り」
 黙って受け取る彼女だったが、表情は見る見るうちに、明るく染まる。
「昔っからそうやって、チョコ催促好きだよな」
 バレンタインも近づく週末。
 今年は当日が日曜なので、一日早めのプレゼント。
 傍から見ればやや図々しい逆チョコにも見えるが、以前から二人には、習慣着いていたものだ。
「!」
 彼女が袋を開くと、中には銀紙に包まれた、如何にも手作りといった感じの物が四つ。
「ま、普段金かけることなんて、お前に何かしてやるくらいだし?」
 照れ臭そうな、しかしどこか陰のある皮肉にも聞こえる台詞。
 包み紙を開くと、香りもデザインも上品で手の込んだ、一口サイズのチョコレートが顔を出す。
「この間スイスのチョコレートショップ特集やってたから、それ参考にな」
 
 一つを、味わうように小さくぱくり。
 どちらも顔が思わず綻んで、和んでしまう。
「ん? 俺にも半分?」
 彼女は是非にと言わんばかりに頷く。
 そして、その手から直接、チョコレートを口に運んでもらう。
「美味いな。手前味噌だけど」
 柔らかく溶けていく甘さを、二人で共有する。
 そんな発想が出来る関係は、単なる幼馴染に留まらない。
「あ、その丸い奴の中は、レーズンソースな。コニャックの代わり」
 随分と凝っているものである。
 これ? と目で訊く彼女に、彼はそうと答えた。
 ぱくり。
「美味いか?」
 やはり半分だけ齧った彼女。
 と、中のソースが流れ出て、唇に少しだけ付いた。
 その部分だけ、てかてかとまるでルージュを塗ったように、光る。
「零れたぞ」
 彼は手を差し伸べて、相手の下唇を、指で軽く拭った。
355名無しさん@ピンキー:2010/02/14(日) 03:46:24 ID:QH9gZ8vG
「ん?」
 彼女は思わず、手首を掴んでいた。
 そしてその先の、ソースが付着した指にそっと、顔を近づけた。
 ぺろ、と舌で舐めとる。
「そんな勿体無がんな。まだ家にたくさんあっから」
 しかし、直向に口数は少ない。
 何を考えているかを表情の、微妙な動きで察しなければいけない。
 だからその度、まじまじと見つめ合って、そして我に返るように恥らってしまう。
 今もまた、そんな風にして視線が流れる二人。
 どきどきと胸が興奮を告げ、顔は薄らと赤くなる。
「悪ぃ」
 しかし健気に、首を横に振る。

 初心な模様に痺れを切らしてか、彼女は欠片をまた、彼の口に。
「あーん」
 半ば押し込むように、そして深く、手先まで咥えさせるように入れる。
 指が唾で、しっとりと濡れる。
「何か、甘いな。って、当たり前か」
 濡れた指を見つめ、彼女を見つめる。
 言葉はないが、笑っている。温かな含みに、何重にも救われるような、心地。
 友人のいない彼の、たった一人の理解者。
 白髪を育むほどに日常にストレスを溜めて、それでも彼女がいる。
 いや、彼女しかいない、のかもしれない。
「せっかく作ったんだから、全部食べて良いのに」
 それでも強がってしまう、男の性。
 しかし彼女も、例え無口でもそんな彼を理解し、支え、癒している存在である。
 気丈に受け止めて、笑う。

「で、お前、指」
 え? と間の抜けた表情。
「ったく、何してんだか。汚ねえだろ」
 そう言って、ポケットからハンカチを取り出す。
 しかし彼女は、それをぼんやりと見つめると、自分の口元にやった。
 ちゅ。
「おいおい」
 どこか甘ったるい仕草に、彼は呆れながらも、愛しさを覚える。
 しかしハッとして、彼女の指をハンカチで、やや乱暴に拭いだす。
「あーあやり辛い。やっぱお前はずるい。俺ばっか喋らせて」
 本音を吐露するように、言った。
「たまにで良いから、何か言ってくれよ。不安になるから」
「じゃあ、好き」
 簡潔な一言が、的確に心を貫く。
 緩んだ時間の上で、彼は短く溜息を吐いた。
 嫌なのではなく妙に嬉しくて、もどかしいような切ないような感情に、少しだけ苛立っているのだ。

 やがて、彼は切り出した。
「馬鹿」
 一言で返し、後は体を抱き寄せ、自ら包み込むだけ。
 どちらが男で女かよく分からない関係だが、それでも絆に隙間はない。
 瞬く間に、冬場の羽毛布団みたいに温かく柔らかで、心落ち着く空間が作り上げられた。
 彼の胸の中にそれは小さく収まって、何故かとても貴く思えて、力がこもる。
 そしてチョコレートの余韻を、ほんの僅かだが受け取る。
「う、ん」
 彼女からの、バレンタインデー・キス。
 目を瞑ると、時間は二人だけのものになる。
 甘く、そしてほんの少し苦い味に誘われて強く、しっかりと認識し合う。
 他にはいない、これからもずっと、大事な人だと。


おしまい
356名無しさん@ピンキー:2010/02/14(日) 05:54:31 ID:inxMGetv
GJ

あああああああああああああああああああああああああああああああ
俺もチョコ欲しいいいいいいいいい
357名無しさん@ピンキー:2010/02/14(日) 10:07:34 ID:TOee3drk
直接的な行為はないのに、なんとエロい雰囲気
すヴぁらしい
358名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 00:04:41 ID:a9dUiew4
凄くイイ!!
無口彼女かわいすぎる
359名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 05:16:33 ID:VyO4LqHt
ああ、この雰囲気がなんともたまらん……。
360名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 01:39:04 ID:YXwwz8li
GJ
いいよいいよー
361名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 07:53:18 ID:UvcrQjkO
手を差し出したら指を甘噛みしてくる無口っ子
362名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 13:07:17 ID:N1Iqpk7k
>>343
よい。ヤナハラー的に
363名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 21:33:09 ID:tRDgtMdt
GJです
364名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 22:14:33 ID:eGKLHKK9
GJなんだぜ
それと>>361
そいつで一本糖化してくれ
365名無しさん@ピンキー:2010/02/19(金) 23:12:38 ID:vFhrZ+WX
GJ
366名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 01:02:22 ID:picFX91O
オリンピックも中盤だが、無口っ娘が観戦してる様を想像するだけで萌える
一言も口に出さないのに表情と動きは饒舌だとなお良し

>>364
お兄さん甘えスレの住人だろw
367名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 03:33:41 ID:hPo8rTEj
>>361
「――っ!?」
びたん
「んなっ!? ……何も無いところで転ぶなよ、心臓に悪い」
「……………………いたい」
「大丈夫か? ほれ」
すっ
「…………はむっ」
かぷっ
「…………何故俺の指を食う」
「あむあむ、あむあむ…………いひゃい」
「なら掴まれよ!!」
368名無しさん@ピンキー:2010/02/25(木) 06:40:09 ID:WzdhsTyQ
なにこれかわいい
369名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 06:44:41 ID:OtDp5cml
370名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 04:48:37 ID:McDMpTJf
「……………………ゆび、おいしい」
371名無しさん@ピンキー:2010/02/27(土) 23:59:46 ID:UFOaWLNQ
「指を舐めたいの?」
こくりと頷く
「はい、どうぞ」
人差し指をしゃぶる
「!」
目を見開く
”知覚と快楽の螺旋”が流れる
脳内に数式が展開する
物語の断片が一つ一つ繋ぎ合わされていく
全てを集約した答が天才的に導かれる
「――!!」
「何か閃いたのかね」
しゃぶるのを止める
そっと口を離し唾で濡れた指を見る
そして彼の顔を見る
「……そう、これはつまり、君のことが、好き」
彼の体を抱き締めてキスをする
「ぷは」
舌と舌との間に白いアーチがこさえられる
「……私の唾液が、こんなにも、粘っこい」
「意味が分からない…」
「……つまり(ry
372名無しさん@ピンキー:2010/03/01(月) 00:34:32 ID:JAHWFcoh
萌えた
373名無しさん@ピンキー:2010/03/02(火) 21:07:30 ID:JUT8mjif
投下したい
でも
勇気が出ないんだ・・・
374名無しさん@ピンキー:2010/03/02(火) 21:48:06 ID:86p6X/g5
いいから投下しろ。話しはそれからだ。
375名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 03:05:57 ID:iZv3U2u2
書いてくれたら、功労賞あげる
376雨が降るころに・・・:2010/03/03(水) 18:18:34 ID:cJFxuP2l
 >>374
 >>375
タイトルはこんな感じです。
377名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 18:47:22 ID:qaMGqw11
374
375
ではないが、投下するんだ! このスレに新しい風を!
378雨が降るころに・・・:2010/03/03(水) 19:34:37 ID:cJFxuP2l
投下してみます
379名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 19:44:20 ID:4TbWqFEJ
一応下げた方がいいかも
メル欄に半角で「sage」って入れればおk
380雨が降るころに・・・:2010/03/03(水) 20:03:20 ID:cJFxuP2l
人気がない、暗い通り道
そこに潜む影二つ
「・・・いいか、しくじるなよ?」
「え〜っと・・ターゲットは誰でしたっけ?」
「土田霙(つちだみぞれ)。朝倉高校ではなかなかの美人ってウワサだ。」
「へぇ〜、そいつをレイプするんスか・・・」
「おっと・・来たぜ・・・」
2人に気づかずに、いかにもおとなしそうな少女が歩いて来る
(すっかりと遅くなってしまった・・最近物騒になってきたから早く帰らないと・・・)
「・・・いくぞ。」
その手には、ナイフが握られていた・・・
そして、
何も知らない少女に毒牙を向ける・・・
381雨が降るころに・・・:2010/03/03(水) 20:06:43 ID:cJFxuP2l
今日はここまで、土田さんは、
レイプされない予定です。
382名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 11:42:05 ID:fkLGezat
「……………」
「ん?今日も外は寒そうだって?」
「………(こくり)」
「天気予報であったかいって言ってたぞ。もう春だな」
「……………」
「え、おまえ花粉症だっけ?初耳だぞ?」
「………(こくこく)」
「皮膚まで痒いから少しでも外気に触れる部分を減らしたい?」
「………(こくり)」
「もっとくっついてもいいか?」
「………(じー)」
「まずは服を着ろ」
「……………」

くっつく理由を必死で捏造する無口っ子
383名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 22:42:53 ID:uVKHOFnj
ふにふにほっぺたを突くと、「なによう?」って言いたそうに無言で睨んでくる従妹。
でも止めたら止めたでチラチラこっち見てくる。可愛い。
384名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 21:49:52 ID:cbvSjgY+
無口な幼女は良いな
385名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 17:44:14 ID:VWE9fFz0
無口な小学生の女の子
386名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 18:51:02 ID:NMKdK5S2
机向かって仕事してると、静かに扉開けてトテトテと近寄ってきて、
机の下に潜り込んでそこからぐりぐり身をねじりながら登ってきて
膝の上に収まり無言で見上げてきて、微笑んであげると安心したように
笑って絵本を読み出す無口幼女と申されたか
387名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 20:23:12 ID:oR5bm2Vi
かわいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
388名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 22:21:06 ID:VWE9fFz0
>>386
可愛い過ぎるw
389名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 01:46:58 ID:vc5oHm89
 今日も従妹が遊びに来た。
 はいはい、今日は何ですか?
 お膝に乗っけて? しょうがないなぁ。
 軽い体を抱っこして、よいしょ、と。
 組んだ膝の上に座らせると、彼女は背中から体を預けてくる。
 僕はその体に、シートベルトのように腕をかけながら、タンスに持たれかかる。
 あ、背中痛くしないようにクッション一枚。

 彼女は本を持っていた。
 ”やさしい落語・千両みかん”
 ちなみに昨日は”時そば”だった。
 読み聞かせには些か、易しくない題目だけど、まぁ良いや。
 それじゃあ、読みますよ?
 僕は彼女の頭越しに、そんな落語の本を開いて、朗読を始めた。
 
 彼女は時々、姿勢を整えようと体を動かす。
 その度、黒い髪が首の辺りを触る。
 くすぐったいよ? と、読むのを中断して言ってみる。
 ふふ、と小さく笑う彼女。
 気を取り直して、話を続ける。
 読み進めていくと、少し喉が渇いてきた。
 みかんでも食べたいなって思うけど、まぁここは我慢。

 最後に三袋のみかんを持ってドロン、というオチ。
 これで終わり。面白かった?
 横顔を向けて、彼女は頷いた。
 そうだよね。換金出来ないのにね。
 本を閉じ、一息吐く。
 え? まだ何か、本があるの?
 ”まんじゅうこわい”

 読んでいる内に、彼女の体がかく、かく、と振れだした。
 呼びかけても反応は薄い。
 やがて、穏やかな寝息が漏れ始めると、僕も読むのを止めて目を瞑った。
 本を置いて、もう一度腕をシートベルトして、柔らかな幸せを独り占め。
 夕食を作らないといけない時間だけど、もう少しだけ。
 もう少しだけ。

 手首を揺すられて、目が覚めた。
 何? 放して?
 あら残念。もうお帰りですか。
 いや、違った。
 彼女は体を返すと、重そうな目蓋のまま、前から僕に乗っかかってきた。
 反るような格好で、くっつく。

 器用だけど、これじゃかわいそう。
 しょうがないので僕は、タンスを諦める。
 彼女の体を抱いたまま、徐々に仰向けになるように、体を倒す。
 お昼寝準備完了。
 ん? なーに?
 もぞもぞと、よじ登ってきた。
 眠たげな顔がにゅっと登場し、僕を見下ろす。
 彼女は目を閉じると、そのまま首元に顔を埋めて、力尽きた。
 ただし、一度だけ、僕の唇を奪った後に。
 全く、あまり物は言わない癖に、どうしてこうも、愛しくさせてくれるのか。 
 でも、ありがとう。
 おやすみ。


おしまい
390名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 13:11:13 ID:INEvvk3h
| 三_二 / ト⊥-((`⌒)、_i  | |
 〉―_,. -‐='\ '‐<'´\/´、ヲ _/、 |
 |,.ノ_, '´,.-ニ三-_\ヽ 川 〉レ'>/ ノ 
〈´//´| `'t-t_ゥ=、i |:: :::,.-‐'''ノヘ|
. r´`ヽ /   `"""`j/ | |くゞ'フ/i/
. |〈:ヽ, Y      ::::: ,. ┴:〉:  |/
. \ヾ( l        ヾ::::ノ  |、   素晴らしいGJだ
 j .>,、l      _,-ニ-ニ、,  |))
 ! >ニ<:|      、;;;;;;;;;;;;;,. /|       ___,. -、
 |  |  !、           .| |       ( ヽ-ゝ _i,.>-t--、
ヽ|  |  ヽ\    _,..:::::::. / .|       `''''フく _,. -ゝ┴-r-、
..|.|  |    :::::ヽ<::::::::::::::::>゛ |_   _,.-''"´ / ̄,./´ ゝ_'ヲ
..| |  |    _;;;;;;;_ ̄ ̄   |   ̄ ̄ / _,. く  / ゝ_/ ̄|
:.ヽ‐'''!-‐''"´::::::::::::::::: ̄ ̄`~''‐-、_    / にニ'/,.、-t‐┴―'''''ヽ
  \_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ /  /  .(_ヽ-'__,.⊥--t-⊥,,_
\    ̄\―-- 、 _::::::::::::::::::::__::/  /  /   ̄   )  ノ__'-ノ
  \    \::::::::::::::`''‐--‐''´::::::::::/  / / / ̄ rt‐ラ' ̄ ̄ヽヽ
ヽ  ヽ\   \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/      /   ゝニ--‐、‐   |
 l   ヽヽ   \:::::::::::::::::::::::::::::::/           /‐<_  ヽ  |ヽ
391名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 14:43:39 ID:vc5oHm89
 おまけ・裏

 首筋に舌を這わす従妹。
 上から落ちないように体を支えているつもりが、僕の手は彼女の腰に。
 そこ、弱いんだって。
 知ってて、やってるの?
 顔に尋ねると、悪戯っぽく笑う。
 このう、と頭を押さえると、や、と小さく抵抗する。
 知っててやってるなら、容赦しない。

 一旦は優しく、細やかな髪を撫でる。
 けれどすぐ彼女を横に寝かし直し、ぐっと顔を寄せる。
 口を唇で強引に塞ぐ。最初はつつくように、そして徐々に長いキスへ。
 左腕を枕にして、右手で彼女の小さな顔や上半身を、撫で回す。
 息が少し荒くなって、それでも息継ぎの後に、今度は舌を入れる。
 熱い。そして、背徳感。
 思わず気持ち半ばに、口内を犯すのを止めた。

 仰向きに戻って、呆然と天井を見つめる。
 そんな僕の手を、動かす二つの小さな手。
 人差し指の先に濡れたものが触れる。
 それは触れては離れを繰り返し、そして段々と、触れる時間が長くなる。
 やがて、まるで味わうように絡みだすのは、彼女の舌。
 物足りないの? 何も言わない。
 ただ、目が合わさった時、彼女の求めていることは、避けられない気持ちだと、気付く。

 僕は彼女をきつく抱き締めた。
 もう一度満足のいくまでキスをして、舌を湿らせる。
 自分と相手の興奮が、同じ方向へと向いていると知った時、二人は体を、肌を探り合い、またより深い心の奥を探り合う。
 トレーナーの中に手を突っ込むだけでは満足出来なくて、密着しながら脱がす。
 ひらひらのミニスカートはそのままに、今度は下半身へ。
 ゆっくり付け根の辺りに手を這わせ、そして筋をなぞる。
 息は荒い。
 トーンの高い息遣いが彼女。低いのが僕。

 カラータイツと下着を順に取り去り、僕もまた、服を脱ぐ。
 嫌? もう、止めてほしい?
 彼女は首を、健気に横に振るだけ。
 剥き出しの竿は見境無くも真上を差して、”繋がり”を待っている。
 まずは指で、少しだけ慣らす。
 直に触れる彼女の秘部は小さく、そして滑らか。
 徐々に感じ始めていたのか、切ない声が途切れ途切れ、漏れる。

 彼女もまた、本能からか僕の竿を手に取っていた。
 弄られる下半身に感じながら、包んで捏ねるような両手使い。
 若干の震え。
 抑えられない欲情が液となって先から零れて、竿をぬるぬると覆っていくのが分かる。
 それは彼女の手を汚しつつ、満遍なく塗り広げられていく。
 発作のような吐息。
 びくん、と彼女の体が痙攣し、そして脱力した。

 手前まで指を入れたところで、果てた彼女。
 大丈夫?
 しかし、僕を見る目は潤んでいて、それが絶対的に、やるせない。
 好きだよ。
 そして全部、自分のものに、してしまいたい。
 外から中まで、きっと、ずっと、好きになれる。
392名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 14:44:39 ID:vc5oHm89
 きつい痛みは、どこか現実味がない。
 貫く時、彼女の声にならない悲鳴が、僕を責めた。
 けれど引き返す道は、もうない。
 愛撫をしながら、好きを囁きながら、何度も中を広げて、そこに挿す。
 無茶なことに必死になって、後がどうなるかも知らず、また顧みることも出来ない。
 それなりに入った辺りで、今度は上下に扱く。
 押し潰されそうな、竿と心。
 確かな快感と不確かに渦巻くたくさんの感情で飽和した、息苦しさ。

 やがて、込み上げてくるものを感じた。
 止めない。
 来い。
 !!
 熱い。
 何かが、弾けた。
 自分の竿から彼女の中に、熱は全てそこに奪われていくかのよう。

 ぐちゃぐちゃのままに、僕は彼女を抱き締める。
 何一つ拒否しないで、そして今も、彼女は僕を抱き締め返してくれている。
 もしかして? いや、違うよね。
 僕は、彼女の名前を呼ぶ。
 呼び捨てにされ、一瞬戸惑う。
 しかし、彼女は言葉の変わりに、僕の体を強く、ぎゅっと締める。
 好きだよ。
 もう一度、ぎゅっとされる。
 好きだよ。
 ぎゅっ。
 好き。
 ぎゅっ。
 好き。
 ぎゅっ。

 改めて彼女の顔を見ると、涙で汚れながらも、口元は緩んでいた。
 嬉しいの? どうして?
 しかし答は、唇で返してくる。
 短いキスと、嬉しそうな吐息。
 何故こんなにも、大人を知っているんだろう。
 え? まだしばらくこうしていてほしい?
 勿論良いよ。僕も、そう思っていたから。
 そしてまた、抱き締める。

 愛らしい彼女は、今僕にとっては絶対無二の、子。
 けれど唯一、足りないものがある。
 どうしても、その言葉を聞きたい。
 僕には全てを受け入れて、体を許してくれる彼女。
 何度も確認したけど、偽りはないようにしか見えない。
 ただ言葉では、まだ彼女の本当の気持ちを、聞いていない。
 どうしたら?
 僕は、すべすべの肌を余さず、小さな胸も自分にしっかり押し付けて、足を絡めた。
 そして、これ以上ないくらいの思いをぶつけるように、強く抱いてみた。

 思わず気持ちが詰まって、軽く溜息が出た。
 すると彼女は、涙が出そうな僕の目元から頬に、撫で下ろすように触れた。
 視線が合わさって、それは何故か今更ピュアな、甘酸っぱい感情を呼び起こす。
 何?
 その時、彼女は僕に、どんな幸せよりも幸せなものをくれた。
「すき」


おしまい
393名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 17:03:44 ID:zzjUE1DF
すばらしすぎてなんと言ったらいいのかわかんないぜ・・・

乙!
394名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 20:31:48 ID:JV2W0Msq
エロいな…
なんというGJ
395名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 18:15:56 ID:fq4uG+Vg
更なる投下期待
396名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 05:12:04 ID:IbST7vno
無口なキス魔っ子
397名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 05:17:00 ID:n0hCbNS+
あまみか
398名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 17:43:59 ID:G7IYP65z
お前らってコリラックマみたいな女が好きなんだよな?
399名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 20:17:23 ID:J//3nnir
朝起きたらベッドに姉が潜り込んでいた
まあいつものことだけど
400名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 16:35:54 ID:snjjXWIQ
………ほしゅ
401名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 22:36:50 ID:pLdbr2Fv
400
sageましょう


でもどっか抜けてて
無口な君が好き
402名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 11:18:27 ID:3j0c+rcy
 
403名無しさん@ピンキー:2010/03/21(日) 04:47:03 ID:LUdOlx0I
無口ツンデレ幼馴染み
404名無しさん@ピンキー:2010/03/21(日) 10:36:25 ID:eW0p5HVN
>>403
「紅」を読んで銀子に萌えて来るんだ
405名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 00:18:36 ID:AXoL0EQ6
銀子は無口かな?小言キャラな気が(笑)
無口ツンデレと言えば……

ちょんちょん
男「ん、なに?」
女「…………」
男「……?手がどうかした?」
ぶんぶん
男「……あぁ!なんだ、そゆこと?」
女「…………」
男「まだここらは寒いからねー」
女「…………」そわそわ
ぎゅっ
男「はい、これで二人ともぬくぬくだ」
女「………………………………ぷいっ」


こんな感じ?
406名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 20:35:20 ID:mlCJxiO8
リメンバー醜悪祭
絶対に許さないよ

どちらかと言えば漫画版の切彦じゃね
407名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 19:39:49 ID:SmvTJkUC
キリヒコと聞くと
仮面ライダーを思い出す俺


何故か日曜は早起き君
408名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 20:55:05 ID:SBgtx4a3
>>403
とりあえずお前は落ち着け
そんでこれ貼っとくから息抜きに使っとけ
http://www.deliv-stage.com/
409名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 01:43:39 ID:OqBMQYEh
>>407
俺は最低野郎の方かな
410 ◆6x17cueegc :2010/03/27(土) 03:16:11 ID:d8x2H1ST
こなさんみんばんわ。新年度を迎える前にありったけの逃避エネルギーをブチ込みに来ました

注意点は特に無し
ではどうぞ
411オープン戦 ◆6x17cueegc :2010/03/27(土) 03:16:50 ID:d8x2H1ST
 寒い。こんな時期にわざわざ屋外球場までオープン戦を観戦しに来なくてもいいではないか。
「……?」
 寒い寒いと股に手を差し込んで身体を揺らしている俺と対照的に、彼女はグラウンドを注視していた。毛糸の
帽子で耳まで隠し、異様に長いマフラーをきっちり巻いて、手袋をはめて、持ち込んだ魔法瓶から湯気の立つ中
身をコップに注いでいた。
「……野球場って持ち込み禁止なんじゃないの?」
 それくらい分かっている、といった素振りでコップの中身を啜る。漂ってくる香りからしてミルクティーらし
い。
「寒くて、風邪引くから」
 今年は季節外れの寒気のお陰で、オープン戦終盤の今の時期でも雪が降りそうな気温だった。
「ところでそれを俺にくれたりしな……ダメですかそうですか」
 つーんとそっぽを向かれたので諦める。仕方がないので売店にでも行くか、と立ち上がると、コートの裾を捕
まれた。
「売店で飲み物買ってくるだけだから」
「ほんと?」
「本当本当」
「……煙草吸ってきたら、怒る」
 うぐ、と喉を鳴らしてしまう。彼女は喉が弱いとかで俺にも禁煙を頼むのだ。最初のうちは俺もヘビースモー
カーというわけではないので何ともなかったのだが、こう常日頃から一緒にいると……我慢も結構辛いものだ。
 ちなみに、一本くらいバレないと思うのは喫煙者の思い上がり、とは嫌煙者である彼女の言い分である。
「分かりました、買ったらすぐに戻ってくるから。俺も新戦力見たいしね」
 そう言って俺は人もまばらな観客席を抜け、熱心な応援団を横目に見ながら売店へ駆け込んだ。

 試合も終盤、両軍の選手は既に半数ほどが入れ替わっていた。
 お目当ての大物移籍選手やベテランはとっくの昔にベンチに引っ込んでいるし、目を引く新人も分からない俺
は手持ち無沙汰だった。
 一方の彼女は急に吹き出した海沿いの風に飛ばされそうな最新の選手名鑑とにらめっこをしている。代打で出
てきた若手のデータを調べているらしい。
「どんな選手?」
「……ウエスタンはこっちじゃ滅多に見れないから」
 要するに分からないわけか。こういう冊子には数字しか載っていないからな。
「打つと思う?」
「当然」
 伝統あるトラーズの一員なのだから打ってくれないと困る、という意味だ。付き合ってからもうすぐ3年、こ
れくらいのことは分かるようになってきた。阿吽の呼吸、ツーカーの関係という奴だ。俺は彼女のいい嫁になれ
る自信がある。
「どんな選手なの?」
「えっと――」
 また膝に置いた分厚い名鑑に目を落とす彼女の肩を抱き寄せる。
「よく聞こえない」
「……んっとね?」
 俺に見えるように持ち上げると、名鑑のページを指さす。
「なになに、『50m5秒台の走力と意外性のあるバッティング』? なんかよく見る文言だなあ」
「だね」
 未だ活躍の見られない選手につけられがちなコメントだった。あとは『300kgを誇る背筋』『ベンチプレスで
120kgを軽々と上げる肉体』『最速148km/hのストレート』あたりがよくあるか。実績がないので目に見える数字
以外に書くことがないのだ。
 これが次第に『二軍ではレギュラー』や『一軍定着を目指す』になり、『レギュラー候補』『不動のレギュ
ラー』『チームの顔』『タイトルを狙う』と推移していく。当然『未完の大器も後が無くなった』となる選手の
ほうが圧倒的に多いのだが。
 そんな風に名鑑を眺めているとスタンドが沸いた。慌てて辺りを見回すと、さっきの若手がダイヤモンドを小
走りで駆け抜けていた。どうも向こうの外野スタンドに叩き込んだらしい。
「……まさに意外性だね」
「……うん」
 彼女はいい場面に出会えなかったことに疲れたのか、俺のほうへ体重を預けてまた名鑑に集中し始めた。
412オープン戦 ◆6x17cueegc :2010/03/27(土) 03:18:10 ID:d8x2H1ST
 * * * * * *

「何か食べて帰る? ……ああ、ここまで来たんだし、ちょっと寄ってみようか」
 街灯に掲げられた中華料理の看板を指さす彼女にそう返すと、また袖を引かれる。何か間違えたのだろうか。
「……持って帰る」
「テイクアウトしなくても食べて帰ればよくない?」
「おウチで食べよ?」
 驚いて彼女の目を覗き込むと視線を逸らされた。
「……その、あの」
「テイクアウトだけじゃ足りないかもなあ」
「え?」
「食べちゃうぞ? なんちゃって」
 彼女は一瞬息を呑んで、それから俺の手を握った。

 * * * * * *

 彼女は俺の家にやって来ると、一番最初にTVの前のソファに腰を落ち着けた。間髪入れずにリモコンを手に取
り何か操作している。
 一応俺の部屋なんだけどな、と苦笑しながら持って帰ってきた料理を適当に皿に出し、順番にレンジに放り込
んでいく。音から察するに、彼女の見ているのはどうやら野球専門チャンネルのようだった。
「おーい、どれくらい食べる?」
 彼女は無言のまま頭の上に両手で丸を作る。『いっぱい』の意味だ。冷蔵庫からタッパーに詰めた冷飯も出し
てきて、茶碗も用意する。
 チン、といういい音が響く。中身を入れ替えて、熱々のほうをソファ前のローテーブルへ持っていくと、彼女
はちらりとこちらへ視線を遣って、一つ向こうへずれた。
「まだ残ってるからいいよ」
「……手伝う?」
「いやいいよ。レンジは一つだけだから、手伝ってくれてもそんなに変わらないしね」
 言いながらTV画面を見る。野球ニュースの時間のようで、ちょうどさっき観てきた試合の順番が回ってきた。

『オープン戦も終盤になって、この季節外れの寒さには観客も辟易しているのか、人肌恋しと寄り添っています
 ――』

 一瞬の出来事ではあったが間違いなく俺達だった。思わず皿を取り落としそうになる。
「……録画」
「いや、恥ずかしいから」
 彼女はテーブルに置いた酢豚のようなものの塊をひょいっと持ち上げて口に運ぶ。もぐもぐやりながら自分の
隣を軽く叩いた。この試合だけでも一緒に観よう、という意思表示だった。
「はいはい」
 その場所へ腰を下ろすともたれてくる。さっき画面に映ったそれと同じ格好だった。

『――しかしそんな寒さをよそに、開幕一軍枠を巡った争いは日に日に激しさを増しています。スタメンをほぼ
 手中にしている選手達は軽い調整を意識してか、5回までに殆どがその打席を終え――』

「そういやトラーズのクリンナップって、オープン戦になかなか顔出さないよね」
「その……腰痛持ちだから、冷やすのは、ダメ、なのかも」
 彼女はさっき塊をつまんだ指を舐めながら身体を縮める。
「寒い?」
 ふるふると首を振る。
「……でもくっついてないとこ、冷たい」
 一旦立ち上がり、それからわざわざ俺の股間の前のスペースに腰掛けた。ずり落ちないかこっちが心配になっ
てしまう。
「……抱っこ」
「はいはい」
 落ちるか心配するくらいなら腕で押さえておいてほしい。そういうことなのだろう。肩の上から腕を伸ばし、
お腹の前で繋ぐ。
413オープン戦 ◆6x17cueegc :2010/03/27(土) 03:18:32 ID:d8x2H1ST
『――目を引いたのは新入団の選手達。特にトラーズのリードオフマンとセンターのポジションを狙う柴山選
 手。8回、代走出場から回ってきた打席でこの一発――』

「見逃したの、これだね」
 彼女は返事をする代わりに手を握ってきた。ついでに背もたれの扱いを受けて腹が押される。
「それにしてもすごい一発だね。大卒1年目の選手とは思えない」
「……意外性」
「確かに」
 だんだんずり下がってきていた彼女を抱き直して、俺も酢豚のようなものをつまむ。行儀は悪いが料理は旨
かった。

『――この一発で試合も決まりました。トラーズはオープン戦、久しぶりの勝ち星です』

 口の中をごくりと飲み込むと遠くのほうでレンジが鳴った。取りに行こうと腰を浮かすと、彼女は更にこちら
側に体重を預けてきた。あからさまに邪魔をしている。
「……行っちゃヤだ」
「ヤだって言われてもな」
 そりゃ俺だって面倒くさいけど、まだいくつか皿が残っているのにそういうわけにもいかないだろう、と苦笑
する。ついでに料理をつまんだ指も拭きたい。
「というわけだから、ちょっとだけ我慢しててください」
 子猫をあやすように、汚れていないほうの手で喉のところをさすってやるが、返ってそれが癪に障ったよう
だった。汚れているほうの腕を捕まれて指に噛みつかれる。
 痛い、と反射的に顔をしかめてしまうがそれは早とちりだった。噛みつかれたのではなく、舐め回されている
のだと気付くまでにそんなに時間はかからなかった。
「……くちゅ、くちゃ……これで、きれい?」
 不安そうにこちらを見上げてくる彼女を、俺は無言で押し倒した。
「ど、したの?」
「……分かっててやってるだろ」
「……ちょっとだけ?」
 ちょっとでも分かってれば十分だ。食べちゃうぞ、と囁いてその唇を塞いだ。

『見事なホームラン、柴山選手のインタビューです。<ええ、打ったのはストレートだと思います……>』

 キスをしながら、そちらに意識を取られているのを感じる。短い吐息は聞こえてくるものの、どうにも気が
入っていない。
「一旦、待ったほうがいい?」
「……ごめんね?」
「いいよ。明日も休みだし、がっつく必要もないだろ?」
 そうは言いながらも、俺は彼女の身体をまさぐる手を止めない。肌着代わりに来ていたTシャツの下へ手を伸
ばし、すべすべとしたお腹を撫でる。

『……続いてはラビッツとベアーズの対戦をお送りします。くしくも昨年の日本一を争った――』

 気が逸れるのは今度は俺の番だった。思わず手を止めてしまうと、彼女の顔色が途端に曇る。
「……ヤ」
 彼女はリモコンへ手を伸ばしてTVの電源を消してしまった。
「私だけ、見てくれなきゃ、ヤ」
 我侭な要求であることは彼女自身も分かっていたらしい。顔を赤く染め、逸らしてしまう。
「見るよ」
 ほんのり染まった頬へ指を這わせこちらを向かせる。
「そういう子だって知ってて付き合ってるんだから。……好きなんだから」
 彼女は小さく頷いて、汗を流したい、と言った。
414オープン戦 ◆6x17cueegc :2010/03/27(土) 03:19:11 ID:d8x2H1ST
 シャワーヘッドを彼女の頭の真上に持っていくと抱きつかれた。
「……あったかい」
 それはシャワーのお湯が温かいのか、俺の体温がそうなのか。
 お湯をかけながらじっと彼女のことを眺めていると、不思議そうにこちらを見上げてくる。お前は浴びないの
か、と目が語っていた。
「かわいいな、と思ってさ」
「…………?」
「水も滴るいい女?」
 俺の胸に埋めるようにして顔を隠してしまう。お互い素っ裸なのにまだ何か恥ずかしいのか、とからかうと、
憮然とした顔で睨まれた。
「どれだけ言っても言い足りないくらいかわいいと思ってるんだけどなぁ」
 シャワーヘッドを金具にひっかけて、両腕で彼女を抱きしめる。腕の中でくすぐったそうに身を捩るのを、逃
がさないように優しく身体を密着させる。
「……俺、もうこんなだ」
 勃起したそれを相手の臍に押しつけて認識させる。ガチガチの棒が臍の溝を抉ったからか、彼女は少し驚いた
顔をして見せた。
「このまま……食べちゃおうかな」
「……ここで?」
「うん」
 おでこに口づけて胸を軽く揺する。人差し指で先端を弄ると顔を歪め、喉の奥で呻いた。そんなことを言わな
いでほしい、と目で訴えかけてくる。
「何か困るの?」
「……困らない。けど、がっつかないって言ってたから」
「それは、アレだ、ごめんなさい」
 彼女の両腕ごと抱きしめて動きを封じる。
「……どっちの意味?」
「嘘ついてました。今すぐ挿れたいです」
「……ばか」
 さっきの言葉信じてたのに、と半ば呆れた様子で詰られる。
 ここまで来たらこうなったって仕方ないじゃないか。そう囁き返すと彼女は一瞬戸惑った表情を見せた。なん
でそうなるのか、といった様子だ。
「君がかわいいから、こうなるんだよ?」
 彼女は顔を赤くして口を閉ざしてしまった。その代わりにおずおずと手をこちらの――分身の先端へ伸ばして
きた。
415オープン戦 ◆6x17cueegc :2010/03/27(土) 03:19:33 ID:d8x2H1ST
 今まで何度もそうしてくれたのに、彼女はまだ恥ずかしいようだった。頬を染め、おっかなびっくりといった
様子で、掌に取ったボディソープを先端の出口で捏ねる。快感で喉の奥が鳴る。
 お返しに胸へ手指を這わせた。柔らかい。撫でるだけでなくて掴んで軽く揉む。
「ん、ばか」
 今は私が責める番なのだから止めてほしい。そう視線で抗議してくるのと同時に、手の動きが変わった。皮の
内側に指を入れてぐるりと回していく。
「……きれいに、しないとね?」
 ボディソープを泡立てながら亀頭をマッサージする。刺激が強すぎて奥歯を噛みしめて耐えるが、どうしても
声が出てしまう。
 彼女はそういう反応を横目に見ながら、根元のほうへ泡を伸ばしていく。全体をぬるぬるにしてそれをまた刷
り込んでいく。
「おっきくなってきたね」
「そりゃ、気持ちいいからね」
「……えっち。こんなに、火傷しそうなくらい熱くしちゃって」
 裏筋を中指と人差し指でくすぐりながら親指を鈴口へ強く押しつけ、挑発するような目つきで俺をまた詰る。
 こういうときだけ見られる、珍しい彼女の一面だった。こう強気になるのは、他にはトラーズに関係した話題
くらいなので、少しは俺の存在も彼女の中での優先順位が高くはなっているのだろう。
「……今すぐしたいんだ?」
「したいよ、見ての通り」
「えっち」
「ごめんなさい」
 一方の俺はというと、強気に出る彼女への対応がまだよく分かっていない。基本的に言われるがままだ。それ
はそれで気持ちいいから構わないのだけど、機嫌を損ねるのも面倒なもので。
「こんなに熱いの、私の中に入れちゃうんだ」
「ごめんなさい」
「……悪いと思ってる?」
「思ってます」
 その返答に彼女は満足したらしく、口の端を軽く持ち上げて鼻を鳴らした。今回はどうやら成功したらしい。
「……なら、許す」
「ありがとうございます」
 恭しく一礼すると、彼女はむー、なんて声にならない声をあげながら抱きつかれる。
「……ばか」
 今度はやりすぎたらしい。……どうもツボが分からないなあ。

 お詫びにと背中から下半身へ手を伸ばす。弾力のあるお尻の肉を掴んで揉みながら、少しずつ本命に向けて進
んでいく。後ろの穴に指を引っかけてこじる。
「う、あ……?」
 彼女が戸惑っているうちにシャワーで自分自身の泡を洗い流し、用の済んだシャワーヘッドはそのまま彼女自
身に押し当てる。
「……んぅ!?」
 敏感なところへ押しつけられて彼女は腰を引いた。恨みがましい涙目で睨みつけられたが、さっきの彼女の言
葉を借りるなら今度は俺の番なわけで。
「きれいにしないといけないでしょ?」
「でも、くすぐったい……」
 足腰に力が入らないのか、体重をこちらに倒してしがみついてくる。お尻に回した腕で支えながらシャワーで
いじめるのは止めない。
「くすぐったいだけなら我慢しようか」
「ば、ばかぁ……」
「聞こえないなあ」
 更に腰を引いて逃げようとするので壁に押しつけて逃げ場をなくす。さっきまでの強気が嘘のようだ。
「やめて……?」
「どうして?」
「……シャワーより、直接、してほしい、から」
「そんなことしたらがっついちゃうよ?」
 胸も唇も俺のものにさせてくれてるのに、これ以上なんて歯止めが利かなくなる。それは今までに何度もして
分かっているだろうに。
「もう、がっついてる、よぉ……」
 弱々しく言葉を吐き出して視線を合わせてくる。俺はごめんな、と呟いてシャワーヘッドを所定の位置に据え
付けると、彼女の唇を貪った。
416オープン戦 ◆6x17cueegc :2010/03/27(土) 03:20:20 ID:d8x2H1ST
「挿れるよ」
 向き合って立った姿勢のまま、張りつめっぱなしの俺と、とろとろにとろけた彼女を合わせる。一瞬視線を合
わせると首肯が返ってきた。それを合図に腰を入れ込む。
「んっく……」
 彼女が整った眉を歪める。さっきの、悪いと思っているのか、という問いは半分本音なのだろう。まだ異物感
に慣れずにいるのが伝わってくる。
「大丈夫?」
 無言ではあったがこくりと一度頭が揺れる。
「痛いなら、今からでも我慢するぞ?」
「……ばか」
 えっちなことしたいって、我慢出来ないって言ったくせに。そう瞳が責める。
「ごめんな」
 少しでも楽な体勢にしてやろうと両足を抱えて持ち上げて、壁に押しつけるようにして身体を支えてやる。胸
が押されるほどくっついて、柔らかい彼女のほうだけが潰れる。
 何事か言いたそうな目に吸い込まれるようにして顔が近寄る。興奮で息が上がる。
「……ケダモノ」
「……ごめん」
「……許すけど」
「……ごめん!」
 お湯を張り始めたバスタブに押し込むようにして更に深く繋がった。

 彼女がいとおしくて、たまらなくて、無我夢中で腰を降る。中の一番奥を小突く。かき回す。派手に出入りさ
せる。いろんな方法で彼女を愉しみたい。
 そんな欲望に突き動かされている俺を、彼女は罵倒する。言葉で、視線で、態度でバカにして、それでも受け
入れてくれるのだからまだ一応は愛想を尽かされていないのだと、そこで再確認をする。きっと彼女の俺に対す
る評価は一時期の『ダメ虎』に通じるものがあるのだろう。
「……ね、今日」
 抱きついて肩に顔を埋めていた彼女が呟く。
「……んっあぁっ……中で、いいよ?」
 それを聞いた俺は、更にピッチを早めた。
417オープン戦 ◆6x17cueegc :2010/03/27(土) 03:20:47 ID:d8x2H1ST
 * * * * * *

 翌朝。
 昨晩は一緒のベッドで二つの意味で寝た。そのため何か朝早くからゴソゴソやっていることに気がついてはい
たのだが。
「……おはよう」
「おはよ」
 我が家のソファにちょこんと座った彼女は、液晶TVに釘付けだった。見ていたのは昨日の夜にも見ていた野球
専門チャンネルである。
「朝メシ、何がいい? 食パンと牛乳くらいしかないけど」
 近所に喫茶店もあるからそこで済まそうか、などとの提案も全くの上の空。
「……もしもし?」
「なに?」
 視線はTVに留まったままだから、邪魔をするなという態度のつもりなのだろう。
「お前、ケーブルが目的でウチに来ただろ」
 ソファの後ろに立って頭の上に手を置くと、ようやく視線がこちらへ向いた。
「バレた?」
「バレてた」
 彼女のアパートは大家がしみったれなのか立地条件が悪いのか、BS放送こそ受信できるものの未だにTVはアナ
ログしか観られない、というのは彼女が以前に言っていたことだ。更に言えば、毎週末ウチに来てTVにかじりつ
いていれば、バカバカ言われる俺だって気がつく。
「……ごめんね」
「いいよ、気にしてない」
 頭の上に置いたままだった手で撫でる。
「……ウチに住む?」
 俺の言葉に、流石に彼女も驚いたらしい。
「毎週末が毎日になるだけだし、幸いなことにここ、使ってない部屋もあるし」
 一応ルームシェアになるんだろうか。そう言うと彼女はソファを立ち上がり、こちらへ振り向いた。
「いいの?」
「君が気に入れば、だけど」
 ソファを飛び越えて俺へダイブしてきた彼女を受け止めると、気に入らないはずがない、と耳元で囁かれた。
418オープン戦 ◆6x17cueegc :2010/03/27(土) 03:24:15 ID:d8x2H1ST
と以上です。
投下目標がパ・リーグ開幕までに→セ・リーグ開幕までに
とどんどん推移していくのを他人事のように楽しんでたらすっかり両リーグ開幕。ご覧の有様だよにならなくてよかった


以下本当にどうでもいい話

・途中で「ウエスタンはよく分からない」と言わせている件について
 このお話は東京23区内っぽい街が舞台なので、中京以西で行われている二軍戦(ウエスタンリーグ)は分からないという意味です
 筋金入りのファンになると昼は二軍戦を観に行き、夜は一軍戦を観に行くなんて猛者もいますが、
 流石に関西っぽい場所に本拠地があるだろうトラーズの二軍戦は観に行けないのです
 ラビッツとトラーズだけはケーブルで二軍戦をたまにやってますが、女のアパートにそんなものはありません

・野球専門チャンネル
 そんなもんあったら真っ先に加入してますがなにか

・柴山選手
 モチーフは骨折しちゃった2年目のあの人。書き始めたときは元気だったのに……

何が言いたいかっつーと、現実をもじったフィクションだから、変な描写があっても許してくださいってこと
419名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 04:09:12 ID:lKAqRBPf
>>418
うふふふ GJでございます
420名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 08:10:14 ID:ZZ4ZBiD4
かわいいいいい!!!
421名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 09:47:41 ID:lBZPCHB1
鳥肌が立つバカップル、GJ!
422名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 18:19:29 ID:pdXulve4
今まで付き合ってきたのがオープン戦で、同居始めるのが開幕戦なのかなーとか思った
となるとCSと日本シリーズは・・・
423名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 18:35:19 ID:786Oz5LC
流石のGJです。

しかし昨シーズンよく別れなかったなあw
424名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 18:41:01 ID:lBZPCHB1
>>422いや、その前に地獄のロードが待ってるぞ!
425名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 00:08:18 ID:df/zU6mi
>>423
ぶっちぎりで突っ走ってた巨人と唯一互角だったのが阪神じゃなかったか
まあフィクションと言ってるし、もしかしたら去年もデッドヒートを演じた世界なのかもw
426名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 04:16:43 ID:MrZ8Gac5
某投手のメジャー行きのときは、荒れたんだろうな…。
427名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 07:27:23 ID:0RZAXyzE
長年ファンだったベテランキャッチャーが
メジャー帰りのキャッチャーに退けられたのは心苦しく思ってるんだろうな

でも勝てば嬉しいからさらに複雑に

ああ無口っこ可愛いよ無口っこー
428名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 17:16:12 ID:9jHilBAP
かっ飛ばせ、夜のホムーラン(
429ファントム・ペイン 番外編 ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 17:56:28 ID:iQRekVa7
流れ仏陀切ですが、投下いたします。
非エロ、9レス程度
430出汁巻き / 厚焼き ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:00:17 ID:iQRekVa7
「珍しいやん」
「何がだ」
昼休みの、学園の中ほどに設置されているサロン。
昼食を取る高校生、中学生が散見される中、その一員である北大路侑子は同級生である伊綾泰巳の弁口箱を見て感嘆の声を上げた。
小奇麗なミニおにぎり、鮭の塩焼き、卵焼き、ピーマンのおかか和え、ズッキーニとナスのグリル、プチトマト、そして彩にバジルの葉。
「カラフル。いっつもはじみーな茶色のもんばっかしやのに」
「親父がメタボだからだ。俺の趣味じゃない」
「飯もいつもはべたーって広げてるだろ。今日は手ぇこんでるじゃん」
同席していた快活そうな男子、渡辺綱も侑子に同意する。
泰巳は弁当箱を二人の視線から庇うように横を向いた。
「そういや、今週からずっとだよな。みょーに伊綾の弁当が豪華になったの」
「さては……」
侑子はにやりと笑って泰巳の隣で黙々と箸を運んでいる少女に目を向けた。
短髪の小柄な少女、面々で唯一の中学生、が目を瞬かせる。
侑子のニヤニヤ笑いに半眼を向ける泰巳。
「何が言いたい」
「べっつにー? ただ、ヤスミンも随分絵麻嬢のことが可愛いと見える」
綱は合点がいったと言う風に手を打った。
「ああ、絵麻ちゃんがっこ通い始めたの、月曜だったな」
泰巳はフンと鼻を鳴らす。
「他人の弁当の中身に口出しする馬鹿もいるからな。俺は構わんが、こいつが変な注目を浴びるのは敵わん。
派手な弁当の方が目立たないと言うのも理不尽だとは思うが」
「ヤスミ」
と、黙って弁当を口に運んでいた短髪の少女、伊綾絵麻が口を開いた。
「お弁当、大変だったり?」
「……大した手間じゃない。どれも手抜きだ」
泰巳は憮然としておにぎりを齧った。
「でも旨そうだよなー。伊綾の弁当も。
どれ、一つ味見をば……」
伸びてきた綱の腕を、泰巳の左手が掴んだ。
「ここを血塗られた戦場にしたいか?」
「……トレードでお願いします」
泰巳の卵焼きと綱の豚生姜焼きが交換される。
泰巳は齧ってぼそりと一言。
「……味が濃いな」
『夏場だと傷みやすいですから』
綱の隣で聞き役に回っていた大人しそうな女子、渡辺結が携帯電話に文字を打ち込んで示して見せた。
どうやら生姜焼きは彼女の手によるものらしい。
綱も綺麗に巻かれた出し巻き卵を口に放り込んだ。
431出汁巻き / 厚焼き ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:02:36 ID:iQRekVa7
「ん――。塩っ辛いんだな、伊綾ん家の卵焼き」
「お前は何を言っている。塩辛くない卵焼きなどあるものか」
綱は目を丸くする。
「え……。卵焼きって普通甘いじゃん」
「甘い……?」
今度は泰巳の方が目を丸くする番であった。
「真逆、お前の家では卵焼きに砂糖でも入れるのか?」
「当たり前だろう?」
「は――!? 何でや。ありえへん!」
今度は侑子までもが声を上げた。
「卵焼きゆうたら、醤油塩だし汁以外調味料としてありえんやろ!」
「こいつと同意権と言うのは不本意だが、全く同感だ。
菓子以外で卵液に砂糖を入れる等、牛乳とレモン汁を混ぜるのと大差無い。
排水溝に流すのと同じ事だ」
「おおお、お前らおかしいぞ!
卵焼きのふんわりした食感を生かすためにも、砂糖はぜってー必要不可欠だ!」
二対一で旗色が悪い綱は、妹の方に助けを求めた。
「結! お前もなんか言ってやれよ!
卵焼きには砂糖入れるよな普通!?」
掌を上に向けて、肩をすくめる結。
人それぞれ。そう言うこと。
「お前は俺の味方じゃなかったんですかー!」



それは正しく、起きて然るべき必然の争いであった。
そもそも江戸における卵焼きは、主にデザートに分類されるべきものである。
こちらの卵焼きは砂糖や味醂などで味付けし、しっかり火を入れる事でボリュームを出してふわりとした軽い食感を出す。
白身の加熱による膨張を利用する甘い卵料理はカステラやケーキの概念に通じ、これがデザートと定義されることへの証左となっている。
"甘い"を"旨い"と同一視する当時の江戸庶民にとって、甘く味付けした卵焼きは花見の供や寿司のしめとして重宝すべきものであった。
関東から越してきた江戸っ子の渡辺綱に"卵焼きは甘いもの"と言う固定観念があったとして、誰にそれを責められよう。
対して、上方の卵焼きはオムレツ同様あくまでおかずであり、ご飯と共に食するものとして発達したものである。
半熟の状態で供されるべきこの卵焼きは冷めると当然不味くなり、あまり弁当に向くとは言えない。
夏場故に仕方なく固めに火を入れた泰巳の遣る瀬無い心中は察して余りあるが、別のメニューを選ばなかった彼の落ち度でもあろう。
関西の卵焼きには出し汁による旨みを凝固によって纏め上げつつ、かつ黄身のとろみを生かす絶妙な火加減が要求される。
この火加減を極めるべく血の滲む研鑽を積み上げてきた伊綾泰巳にとって、卵液に砂糖を加えるのは卵焼きに対する冒涜に等しい。
二人にとって互いの見解は全く許容し難いものであり、調理法を巡り相争うことは避け難い宿命であった。
誰も報われる事無い戦いが始まる。
嗚呼、卵焼きを愛する想いは、二人とも同じはずなのに――――。

432出汁巻き / 厚焼き ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:05:40 ID:iQRekVa7
「お前は味覚消失者か? それともゲテモノ好きか。
目玉焼きに蜂蜜をぶちまけるのを想像して見ろ。
別に醤油をかけようがソースをかけようが塩胡椒で味付けしようが個人の勝手だが。
甘い物を上にかけるのは些かマイノリティという言葉で片付けられない程の異常な趣向であると言わざるを得んな」
「目玉焼きは目玉焼き、卵焼きは卵焼きだ! 全く別モンだ!」
「宿屋の朝食で出て来る卵料理の仲間やないか!
卵焼き目玉焼きゆで卵、ついでにオムレツがご飯の供の定番や!
もしここでゆで卵に砂糖添えられてたり、オムレツにイチゴジャムかかってたらわたしその宿出てくで!」
「気色悪ィもん想像させんな!」
「あんたも良くそんな変態的なメニューを思いつくな……。食欲が無くなって来る」
「元はと言えば渡辺の兄貴のせいやないか!」
「俺のせいかよ!」
なおも生産性のない言い争いが続く中。
絵麻は結の弁当箱を物珍しそうに眺めていた。
結は箸を伸ばし、少し焦げ目の付いた卵焼きを一切れ絵麻の弁当箱に添える。
お辞儀をして、先ほど口にしたものと微妙に違う卵焼きを噛み締める絵麻。
「……ふむ」



続けてやって来た同級生もまた卵焼きは塩辛くあるべきとの意見で、すっかり打ちひしがれた綱は昼食を終えた後咽び泣くようにその場を去って行った。
ここ某市(なにがしし)は関西の中心地であり、物心付くまで関東に在住していた彼にとって完全なアウェーである。
負け戦になるのは必然であった。
「……虚しい戦いだった」
泰巳は一人呟きながら弁当箱を片付け始める。
つと、絵麻が自分の弁当箱を泰巳に差し出す。
「お願いします」
ぺこりと一礼。
「……預かれ、と?」
「遊びに行く。いい?」
やれやれと首を振りつつも、泰巳はその弁当箱を預かった。
彼としても、絵麻の交友関係が良好であることは望ましいことである。
「夕飯にまでは戻れるのか」
『7時半までにはガード付きでそちらにお送りします』
結が携帯電話を差し出す。
「……遊びに行くって、行き先は渡辺家か」
半眼でうめく泰巳に構わず、絵麻は一礼すると一足先に中学女子棟に戻っていった。
その後姿を見送りながら泰巳は目を細める。
433出汁巻き / 厚焼き ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:08:54 ID:iQRekVa7
「あいつ……大丈夫だろうか」
何が? と疑問げに泰巳を見る結。
「友人と言えば俺の関係者ばかりだ。
同級生とつるんでいる所を見た事が無い。
クラスで浮いてたりしないだろうな」
結は笑いながら再び携帯電話に文字を打ち込む。
『伊綾が心配性だから、それに甘えているだけでしょう。
彼女も一人のときは、上手くやれてると思います』
液晶を見て、泰巳は目をしかめた。
「俺が絵麻を依存させていると?」
あるいは、その逆か。
結は肩をすくめて見せる。
彼女は彼女で兄への依存が強いことを自覚している。
泰巳は溜息をついて立ち上がった。
「判ったよ」
尻を払い、二人分の弁当箱を手に取る。
「俺は見守って居れば良いんだろ。
取り敢えずは、あいつの好きな様にさせてやるさ。
尻拭いは後でも出来る」
後ろ手に手を振りつつ、泰巳は一人男子校舎へと向かった。
「絵麻の面倒は頼んだ。
くれぐれも兄貴の方の馬鹿が移らんよう注意して置いてくれ」



「では! これより伊綾絵麻訓練生に卵焼き調理特別訓練を授ける!」
時所変わって渡辺宅。
制服の上にエプロンをかけて菜箸を手に仁王立ちする綱を、絵麻は凄まじく不安げな表情で眺めていた。
「ん? 反抗的な目だな絵麻上等兵。
だが、俺の作る卵焼きは三ツ星レベルを凌駕する旨さだ。
見ていろ、俺の究極至高ハイパージャパニーズオムレツを……」
『大丈夫ですよ。兄は凝り性なだけで、時間さえかければちゃんと食べられるものが作れます』
自信満々な綱を余所に、結がラップトップPCのテキストエディタで釈明している。
綱は決して料理がヘタという訳ではないが、手を抜くことを知らず細部に拘るため、一品作るだけで異様に時間がかかるのである。
おまけに料理漫画や料亭のレシピを読んで簡単に影響を受けるため、一般家庭では実現不可能なものにまで手を出そうとする。
以前、デュマの料理本に触発され「ちょっとウミガメ獲りに行ってくる!」などとワシントン条約を畏れぬ台詞を放ったこともあった。
勿論、泰巳に張り倒され結に関節を極められ未遂に終わったのだが。
ともあれ、あらかじめ材料を取り揃え、結が監督して置けば、綱も美味しい料理を作ることが出来るのである。
434出汁巻き / 厚焼き ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:10:46 ID:iQRekVa7
結は兄に向けてそっと目配せ。
頼むから余計なことは何もやってくれるなと目で訴える。
綱は自信満々で頷き、卵のパックを取り上げた。
「えーと、まず材料だけど。卵と砂糖塩みりんは基本として、ダシには冬枯と昆布、炒り子に鰹節これらを適量ずつブレンドし……」
結はにっこりと笑って、保存していたものを凍した即席ダシのパックを差し出した。
「えー、作り置きー? どうせなら直前に一から取り直した方が……」
結はことさらにっこりと、パックを指し示す。
「い、いやだから折角お客様に出すわけだから、俺としても最高のものを作ってやりたいと……」
結は若干笑顔を引きつらせつつ、パックを綱の眼前に押し付けた。
渡辺家の母親が夕飯の支度を始める時間まで、そう長くはない。
「……作り置きでいいです。はい」
折れる綱。
結、鷹揚に頷く。
上手く兄をコントロールしている。絵麻は密かに感心した。
「まあ、材料はこんなとこか。
んじゃ、タマゴ割ってみてくれ」
Mサイズの鶏卵が一つ、綱から絵麻の手に渡される。
絵麻はボールの上でそれをおもむろに握りつぶした。
指の間から滴る卵液。
「割ったよ」
「……なんとお約束な。ひょっとしてこういうのから教えんとあかんのか」
極めて珍しい事に、普段他人を困らせる立場にいる綱が頭を抱えていた。
苦笑する結。
絵麻は何が問題か判らず、首を傾げる。
「これは……長い戦いになりそうだな」

……

「いいか! 油はよーく熱してからタマゴ入れるんだぞ!
そこ! 言ってるそばから別のモン入れようとすんな! それはダシ汁だ!
どけ絵麻ちゃん! ぎゃー! 撥ねる撥ねる! あちー!」

「どーして目玉焼きが出来るんだ! 最初に解きほぐしといただろ!
結! そっちの監視頼む!
なにぃ!? そっちはゆで卵になっただと!? 湯もないのにどーやったんだ!?
しょーがねえ、予備のパックだ!」

「どわー! タマゴが! タマゴが爆発した!」

……………………

435出汁巻き / 厚焼き ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:13:58 ID:iQRekVa7
「……遅いな」
夕飯の支度を終え、泰巳はテーブルの前に腰掛けて頬杖をつきながら、壁に掛かった時計を睨んでいた。
7時27分。
約束の時間が迫る。
勿論、彼が待っているのは普段から9時前の帰宅が極稀な父親のことではない。
「先に食べるか」
一瞬感じた寂しさを誤魔化すように、泰巳は溜息を吐いて立ち上がった。
見計らったかのよなタイミングで鳴る呼び鈴。
泰巳はドアスコープ越しに訪問者を確認すると、ドアを開ける。
「遅かったな」
「ただいま」
走ったのだろうか、絵麻は少し汗ばんだ様子だった。
普段より少し彼女のテンションが高めな事に気付いたが、それより泰巳には気になることがあった。
「送迎は有難いが、妹の方が来るとは思わなかった。兄貴の方はどうした」
絵麻を伊綾家まで送って来た結は、少し疲れた様子で携帯の液晶を示した。
『兄は疲れて伏してます。KO状態です』
「何?」
泰巳は眼鏡を抑えて目を凝らす。
「渡辺兄が? あの万年アドレナリン異常分泌男が? 疲れてる?
有りえんだろう。一体何があった」
結は苦笑しながら一礼すると、踵を返す。
「待て、近くとは言え一人で帰る気か」
頷いて申し出を押し留めようとする結を制し、泰巳は薄手のパーカーを掴んで靴を履き始めた。
「送って行く。夕飯の準備は済んでるからな」
「それ、私が――」
「お前は先にシャワー浴びてろ。行ってくる」
絵麻が本末転倒なアイデアを出す前に、泰巳は立ち上がって結の肩を叩いた。
結は肩をすくめて、携帯電話に何事か打ち込む。
『人の厚意は碌に受け入れないくせに、他人には勝手に自分のルールを押し付ける。
伊綾の悪い癖です』
俺は無視を決め込んで先に進んだ。

436出汁巻き / 厚焼き ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:17:35 ID:iQRekVa7
西の空はまだ僅かに明るいが、茹だる様な暑さはなりを潜め、涼しげな風が首元を流れる。
泰巳は先を行く結の後姿をぼんやりと眺めていた。
シノワズリな刺繍の入ったシャツにサブリナパンツの私服姿は、見慣れない分新鮮だ。
夏の夜、若き男女が二人きり連れ立って歩く。
甘酸いものを連想させなくもなかったが、泰巳は特に気にする様子もなかった。
(そう言えば、俺の初恋はこいつだったな)
とうに昔の話だった。
ふと、結が振り返る。
口を示して、何度か唇を動かす。
泰巳は首を振った。
この暗がりでは、良く見えない。
結は携帯に切り替えた。
『絵麻さん、普段はどんな感じですか?』
「感じ……?」
何を訊きたいのか判らず、いぶかしむ。
「まあ、概ね大人しい方じゃないか?
洗濯やらプライベートの線引きやら難しい所は在るが、苦労してるのは向こうも同じだろう。
それよりも慣れもしない家事を手伝おうとして、あちこちうろつかれるのは迷惑だが」
結は得心が行ったと言う風に頷いた。
「何だ。何が言いたい」
結はただ笑って携帯電話に文字を打ち込む。
『楽しいですよね。誰かにご飯を作ってあげたり、面倒を見たりするのは』
「……」
泰巳は無言だった。
楽しい。
確かにそうかも知れない。
父親に、絵麻に世話を焼くことで、泰巳は寂しさを紛らわし、己の存在意義を見出しているのだろう。
『でも偶には、他人の厚意も受け入れないと駄目ですよ?』
「……今日はやけに説教臭いんだな」
いつの間にか渡辺家の前までたどり着いていた。
結は悪戯っぽく笑いながら一礼して、アーチ門の向こうに消えて行く。
泰巳はその後姿を見送りながら、一人目を顰めた。
「何時も何時も、自分の本心は見せない癖に、人の事は見透かしやがる。
だからあいつは苦手なんだ」

437出汁巻き / 厚焼き ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:20:57 ID:iQRekVa7
翌朝、何時もより僅かに早い時間、自然と泰巳は目を覚ました。
目覚ましはまだ鳴っていない。
寝巻きを着替えながら、泰巳は僅かな異臭に鼻をひく付かせた。
焦げ臭い。
泰巳は嫌な予感に目を顰めると、自室の扉を開けて真っ直ぐと台所へ向かった。
臭いが強くなる。
まだほの暗い朝日を掻き消す様にこうこうと蛍光灯の灯る中、ガスコンロの前で短髪の少女がフライパンを手に悪戦苦闘していた。
テーブルの上の大皿には、焦げ付いた黄色っぽいカタマリが山ほど積み上げられている。
「――――何をしている」
絵麻は目を丸くして振り返った。
「……おはよう?」
「ああ、早いな。今何時だと思っている。
それで、お前は一体何をしているんだ」
「もう、ちょっと、待って」
絵麻は再びコンロに向き直ると、一心不乱にフライパンを振り始めた。
「……おい」
呼び止める間もなく、絵麻は最後に一振りして中の物体をひっくり返すと、そのまま平皿にそれを移した。
そしてその皿を泰巳の目の前のテーブル上に置く。
少し不恰好だが、程よい焦げ目の付いた楕円筒型の黄色いそれは間違いなく――――
「卵焼きか」
絵麻は頷いただけ、何かを期待するような眼差しで泰巳をじっと見詰めた。
食べてみろと、そう言うことなのだろう。
「一体何の心算……」
(――偶には他人の厚意も受け入れないと駄目ですよ――)
ふと脳裏に、昨日言われた言葉、ならぬ書かれた文章が脳裏をよぎった。
泰巳は勝手に台所を使ったことを咎めるのも真意を問い質すのも後回しにし、箸を取って手を合わせた。
「頂こう」
箸で一部を裂いて、断面から湯気の上るそれを口に運ぶ。
「……」
「……」
甘かった。
半熟ではなく、中まで火が通っていた。
今まで口にしたことの無い食感だった。
けれど、
「悪くない、な」
半熟のとろりとした出汁巻きが好みではあるが、ふんわりした優しい甘さの厚焼きも、偶には良い。
少女は恥ずかしそうにはにかむ。
綻びかけた蕾のような笑顔。
普段感情を押さえ気味の彼女が、初めて見せる表情だった。
その笑顔を、若干の驚きをもって見詰めながら、泰巳もまた僅かに微笑んだ。
「ああ」
自然と手が少女の頭に伸びる。
出合った頃と比べると少し長くなった髪を撫でながら、泰巳は繰り返してやった。
絵麻はくすぐったそうに目を細める。
「悪くない」
438出汁巻き / 厚焼き ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:23:05 ID:iQRekVa7
…………

「で」
約一時間後。
普段伊綾家が朝食を取る時間。
所帯主の伊綾靖士はテーブルの上に置かれた大量の黄色とこげ茶色のペーストを前に息を呑んだ。
「どうして今日の朝食は卵焼きだけなの?
主食は卵焼きでおかずも卵焼き、デザートは言うまでもなく卵焼き?」
「煩え。黙って食え」
泰巳は殊更うんざりした様な顔で、先程の完成品に至るまでに発生した大量の失敗作を口に運んでいた。
「……ごめんなさい」
絵麻もしょげたような表情で、黙々と焦げたスクランブルエッグを咀嚼している。
「ううう。カロリーが体脂肪率がコレステロールが……」
靖士も仕方なく卵焼きを食べ始める。
残りは弁当に詰めて、夕食にも使おう。
頭の中で処分する算段を組み立てながら、泰巳は深々と溜息をついた。
「もう二度と、こいつを一人で台所に立たせる愚は犯さんからな」
439 ◆MZ/3G8QnIE :2010/03/28(日) 18:25:40 ID:iQRekVa7
投下終了です
>>343とかに触発されて弁当の話が書きたくなり、本編に関係ない話が出来てしまった
本筋の方は遅々として進みませんが、少しずつでも進めていく予定です
440名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 20:39:50 ID:EkZkS2tF
>>439
GJです。甘いのも塩辛いのも好きな自分には、今回の争いは不毛にしか見えないw
441名無しさん@ピンキー:2010/03/28(日) 22:15:59 ID:PR2rwOQ1
卵焼きは辛いモノだと思ってる関西人からもGJ!

しかし、某チョコ菓子のきのこたけのこ論争を真っ先に思い浮かべた俺は甘えスレにでも行って糖尿になるべき。



まあ、たけのこだよね。
442名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 08:58:01 ID:b15vl2Vv
保管庫が7スレの最初の方で止まってるんだよな……
443名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 11:37:07 ID:3Jgs5dzu
>>429-439
絵麻ちゃん可愛いね
444名無しさん@ピンキー:2010/03/29(月) 23:10:26 ID:rSfTJZwJ


関西だと、寿司屋の卵焼きもしょっぱいのん?
445名無しさん@ピンキー:2010/03/30(火) 20:51:34 ID:SKKs0F3m
>>444
ネタが卵の江戸前寿司の事?
ならしょっぱくはないけど甘くもないにょ
446名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 00:02:04 ID:pULTVkrV
GJ!
447名無しさん@ピンキー:2010/04/04(日) 20:15:23 ID:hwQ66X25
無口っ子とにらめっこ
448名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 01:36:42 ID:fcZZPQB0
『あっちこっち』のつみきさんはいい感じに無口
449名無しさん@ピンキー:2010/04/07(水) 04:02:26 ID:fNWn6FxI
良いのかい、ツンネコ様だぜ?
450名無しさん@ピンキー:2010/04/08(木) 22:46:59 ID:XOI5Y5Fr
ファミ通文庫の「BAD」二巻の白雪さんがとてもとても萌えたのだが、
無口キャラと言うにはちょっと壮絶で悩む
451名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 00:03:58 ID:URpmzAZc
何せ物理的に舌切り取られてる娘だもんな。
452名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 22:09:33 ID:SBKM3O7i
BADの女性キャラは皆結構饒舌だしなぁw
453名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 13:10:08 ID:zBr+2Tl4
無口な女の子をイメージすると、何故か動物に近くなってしまう

犬バージョン
男「ただいまー」
駆け寄ってきて嬉しそうに微笑む女の子
頭をなでてやると身をすり寄せてきて、男を台所へと促す
男「どうした?…すげえ、ごちそうじゃん!」
褒められて顔を赤らめながらもさらにニコニコと男を見上げる女の子

猫バージョン
男「ただいまー…ってよく寝るなお前」
ソファーでうたた寝してる女の子
撫でてやるとうっすらと目をあけ、もっと撫でろと言わんばかりに頬を手にすり付けてくる。
男「わかったわかった。…言ってる側からまた寝るし」
至福を満喫するかのような微笑みを浮かべて寝息をたてる女の子

こんな感じ
454名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 19:39:07 ID:8suG5OV9
猫…、素晴らしい。
455名無しさん@ピンキー:2010/04/13(火) 23:50:01 ID:dXl5NSyH
便乗して兎バージョン

男「ただいまー……ってうおっ!?」
走ってきて男にダイブする女の子
そのままとろんとした目で男を見つめながら、待ちきれないとでも言う風に男の股間をまさぐり、飛び出した人参を嬉しそうに咥え



ああ、性欲強いのは雄の兎だったか。
寂しいと死んじゃう? やだなあ都市伝説ですよw
456名無しさん@ピンキー:2010/04/14(水) 15:13:23 ID:CqclAPdw
便乗の虎バージョン

男「ただいまー…って酒臭っ!」
虎「……………………」
男「これはマズい、避難しよう…あ」
目が合う、酔っぱらいの目が獲物を見る目に変わる
虎「………………遅い」
男「いつもより早い位じゃゲフッ!」
のしかかられゴロゴロされる、響きはいいが190cmオーバーの彼女は正直重
男「いえ、何でもないです」
…喰われるかと思った、性的な意味でなしに。
457名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 00:44:33 ID:uJijd5Gm
巨無口はちょっと…
458名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 09:20:05 ID:RLGnxbAf
全然あり
459名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 12:10:46 ID:r1FLdZ6w
自分より頭一つ大きいのに態度は自分より遥かに小さくて奥ゆかしい恥ずかしがり屋とか最高だす
460名無しさん@ピンキー:2010/04/15(木) 23:00:51 ID:H/ZiZr3b
男「ん? どうしたんだ無口子? 壁に向かって座り込んで」
無「………………」
男「?? なんだ、一体……?  ん? 書置き?」
無「………………」
男「えーと……『今日、嫌な事があったのでスネてます。再起動させるためには、私が世界で一番喜ぶ
  言葉をかけてあげてください』、か」
無「………………」
男「えーと………………」
無「………………」
男「今日も可愛いなっ!」
無「………………」
男「い、いや可愛いというか美しい!」
無「………………」
男「しかも、料理上手だし! 美人の彼女の手料理が毎日食えるなんて俺って勝ち組だね!」
無「………………」

………
……


男「こ、こんだけ褒めつくしてもだめか……」
無「………………」
男「く……ほかに、ほかに後は……くそ、俺の無口子への愛はこんなものなのか?!」
無「………………(ぴく)」
男「(ん? 今反応した?)」
無「………………」
男「………………あー」
無「………………」
男「無口子……愛してる」

無「………………(にこ)」
461名無しさん@ピンキー:2010/04/17(土) 02:53:57 ID:xl3hu5ns
ちくしょーいちゃいちゃしゃーがって!
462名無しさん@ピンキー:2010/04/18(日) 04:45:30 ID:diMd2HKz
何も言わずにそっと男の背中にもたれ掛かる無口っ子
463名無しさん@ピンキー:2010/04/19(月) 07:10:11 ID:bhPvthWB
「ああ〜、だりぃ」
(ゆう、くん)
「どした?」
(んしょ)
「何だよ」
(眠いの。だから、背中、貸してね)
「やめれ。この姿勢はきつい」
(温かい、な)
「〜〜」

(あのねゆうくん。私しばらく、ここに来られなくなるかもしれないんだ)
「はぁ。相変わらずベタベタすんの好きだな」
(そうだね。でも、ひょっとしてひょっとしたら、これが最後なんだよ?)
「少しは遠慮しろよ。そして言いたいことははっきり言え」
(ごめんね。けどやっぱり、直接言い出すには、強さと広さと勇気が足りない)
「お前はそうやっていつも無言だ。肝心な時に、肝心なことを言わないのな」
(うん、分かってるよ)
「ったく。ほら、離れろ。眠いんならベッドで寝とけ」
(ゆう、くん)
「っておい。未練がましく抱きつくな」

「どうしてほしいんだ? なぁ」
(ゆう、くん)
「はぁ、する気もないのに世話焼かす奴だな」
(ごめんね。でも、でも好きだって、分かってほしいよ)
「子どもじゃあるめぇし、もっと分別ってものをな、」
(何言ったって良いから、その代わりに少しでも長く、このままでいさせて?)
「それに都合さえあればいつだって会えるだろ。一週間空いたり一ヶ月空いたりが、当たり前じゃねぇか」
(でも、でもねゆうくん、)
「って、俺も何言ってんだか。疲れてるんだな」
(ゆうくん)

「帰るのか」
(うん)
「そっか。何か、悪ぃな。せっかく来てくれたのに」
(ううん)
「一ヶ月ぶりか。こんな体がだるくなけりゃな。でも、また近い内に来いよ」
(そうだね)
「付き合ってもう一年くらいだし、そん時は今日の埋め合わせも兼ねて、何かしてやるよ」
(そっか。嬉しいな)
「しっかし、相変わらずお前何も喋らねぇのな。加えて無表情だし」
(そうかな? うん、ごめんね)
「心配すんなよ。捨てたりなんて、しねぇよ」
(うん。分かってる)
「で、一々抱きつかなくても良いよ。変わった奴。よしよし」

「じゃな、気をつけて帰れよ」
(さよなら)

(ゆうくんは手を振ると、いつものようにゆっくりドアを閉じた)

(何だか、不安で泣きたくなった。独りぼっちになったみたいで)

(独りの時は独りでいても平気なのに、ゆうくん、こんなのって、変かな?)

(もう二度と開かないかもしれないドア)
(ごめんね。さよなら、ゆうくん)


それではまた、いつか
464名無しさん@ピンキー:2010/04/19(月) 10:48:11 ID:I59Hmvqh
もちろん続くんだよな…?
465名無しさん@ピンキー:2010/04/19(月) 19:53:42 ID:SMd6uIJn
せつなすぎる……
466名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 00:57:56 ID:DkHipJKx
弟「姉さんただいま」
姉「………遅い」
弟「ごめん、友達と遊んでたら楽しくてつい」
姉「……嘘」
弟「えっ」
姉「…あの女とデート」
弟「どうして」
姉「……楽しかった?」
弟「ち、違うよ、買い物に付き合っただけって。
どうしてそんなに怒ってるの?」
姉「………」
弟「大体、僕が誰と付き合おうと勝手だろう?
門限に少し遅れたのは悪かったけどさ。そんなに怒らないでよ。」
姉「………」
467名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 01:34:01 ID:DkHipJKx
弟「姉さん?」
姉「……に……ない……」
弟「姉さん何言って」
姉「別に、怒ってなんかないっ……!
あんな女に、やきもちなんか妬いてないっ……!」
弟(姉さん、泣いてる…)
姉「グスッ……私には……関係ないもん……」
弟「違うよ」
姉「………?」
弟「僕が大切な人は、姉さんだけだよ」
姉「………」
弟「今日は本当に女友達の買い物に付き合っただけなんだ。
その帰りに、告白されたけど、断わったよ」
姉「………」
弟「さっきは意地悪言ってごめん。でも僕は、姉さんが一番大切なんだ。
だから、泣かないで、ってうわあ」
姉「…………(ギュッ」
弟「姉さん、苦しいよ」
姉「弟くんの………ばか………大好き……」
弟「胸当たってるって」
姉「もう……離さないから………(ちゅっ」


どうしよう無口にならなかったごめんなさい。
失礼しました
468人間は難しい:2010/04/22(木) 03:06:33 ID:IXFldx/O
 高校から自宅に帰ると、玄関の前に身長160cmくらいの綺麗な女性が立っていた。
 うちの玄関の扉に背を向け『ボーーー』と空を眺めている。
 何してるんだろ……、ちょっと怖いな……。
「あのー、うちに何か御用でも……?」
 僕が尋ねると、その美人さんは眠そうな目をこちらに向け、
「……………」
 向けただけだった。無言。超無言。
 整った表情から滲み出す『無口』オーラがハンパない。
 美人に見つめられるのは決して悪い気はしない。が、このまま見つめ合っていても話が進まない。
「ひょっとして訪問販売か何かですか?」
 美人さんが足下に置いている大きなバッグを指差しながら聞く。
 すると美人さんは僕の指先をチラッと見て、すぐに視線を僕の目に戻した。
 うわっ、気まずい!何この人!
「あの……?僕の顔に何かついています?」
 僕が言うと、『ハッ!』と何か重要な事を思い出したかのような顔をした美人さんは、唐突に地面に座り込むと大きなバッグをゴソゴソやり始める。
 そしてバッグの中からスケッチブックのようなものと黒のマジックペンを取り出すと、
『やっほー、おにいちゃん』
 スケッチブックにペンで大きくそう書いた。
 ……あぁ、そうか。この娘は喋れないのか。気まずいとか思ってしまって申し訳ない……。
 ……ん?おにいちゃん?
『私、15才になりましたので。おにいちゃんと結婚をしにきました』
 15才?結婚?……確か結婚って女性は16才からじゃ……。
『16才までの1年間は花嫁修行期間です』
 あ、そうなんだ。……凄いな、どちらも一言も声を出していないのに話がテンポよく進んでいく。
『えへへ、きっと私たち、相性がすっごく良いんだね』
「おいおい、極々自然に人の心を読むなよ」
「…………顔を見てたら、わかる」
 平坦な声で言う美人さん。
「喋れたの!?」
 今までの筆談は何!?
「…………これでもう、今日の事を、おにいちゃんは忘れない」
「へ?」
「…………おにいちゃん、結婚の約束。忘れてた」
「結婚の、……約束?」
「…………私の顔見ても、気付いてくれなかった」
 顔。顔。……うーん、こんな美人の知り合いなんて僕には……、僕よりも年下なら僕の物心の付く前って事も無いだろうし。
「…………おにいちゃん、昔、私を助けてくれた」
 助けた……?余計にわからん……?
「…………近所の、怖い子供たちから。凄く、嬉しかった」
 それ本当に僕か……?人違いなんじゃ……。
「…………人違い、じゃない。ずっと近くで、おにいちゃんの事、見てた」
「やっぱり心読んでるだろ」
「…………うん。読んでる」
「まさかの肯定!?」
 なにその特殊能力!
「…………私は、あの日、公園でおにいちゃんに助けられた」
 公園……?
「…………猫です」
469人間は難しい:2010/04/22(木) 03:07:41 ID:IXFldx/O
 
「猫!?」
 猫ってお前そりゃないわー。あ、もしかしてこの娘、ネコって名前なのか?
 ……でもネコなんて名前に覚えは無いよなぁ。
「えーと、ネコちゃん?ごめんね、全然思い出せないや」
「…………名前はルキ」
「え?じゃあネコは名字?」
「…………名字は無い。猫は種族名」
「……種族名?」
「…………猫は猫でも、猫又だけど」
「猫又って、……化け物の?」
「…………その言い方は、ひどい」
「あ、あぁ、ごめん」
「…………わかってくれた?」
「何を?」
「…………私、猫。猫又。」
「自分を猫だと主張していることはわかった」
「…………信じてくれた?」
「僕の心が読めるんだろ?」
 信じてないです。
「…………変身」
 突然、目の前からルキが消えた。
「にゃーん」
 消えた彼女の場所には何故か、銀色の毛をした綺麗な猫。
「……イリュージョン?」
「いや、いい加減信じろにゃ」
「猫が喋った!」
 うわ!よく躾られた猫だなぁ!
「躾で喋れるようになると本気で思うのかにゃ?」
「いえまったく」
 そりゃそうですよね。
「やっと私の事を信じてくれたかにゃ」
「……はい」
「変身!にゃ!」
 耳に馴染むかけ声の後、銀色猫から黒髪美人へと変わるルキ。
「…………おにいちゃん、大好き」
 そういうと僕に抱きついてくるルキ。猫とは思えない甘い香り。
「…………ずっとずっと、こうしたかった」
 ルキは二重の目を細め、僕の胸に顎をこすりつける。
「少し気になったことがあるんだけどさ」 
「…………何?」
 鼻をひくつかせながら上目遣いのルキ。
「猫の時の方が流暢に話せているよね?何で?」
「…………人間は、まだ慣れない」
 言いつつ僕の背中に両腕を回すと、僕の胸に左頬をペタリとつけ『…………ほー』と安心したような息を吐く彼女。
 とりあえず僕はそんな彼女の顎を指先で軽く撫でてやった。……猫だし。
470名無しさん@ピンキー:2010/04/22(木) 03:18:40 ID:scCkJ0pM
> うわ!よく躾られた猫だなぁ!
>「躾で喋れるようになると本気で思うのかにゃ?」

思わず吹いたww
471名無しさん@ピンキー:2010/04/24(土) 22:00:02 ID:JWK1DYyG
久しぶりに来てみれば
何と言う糖化ラッシュ
472名無しさん@ピンキー:2010/04/25(日) 01:20:28 ID:tSdFf/eZ
GJ! リバーシブルを楽しむかどちらか一方を愛でるか……
個人的には猫耳娘姿で語尾が「にゃ」で饒舌が究極状態かな。
つばさキャットは可愛かった。
473名無しさん@ピンキー:2010/04/29(木) 01:16:34 ID:gJH+q6OE
犬属性無口っ子と猫属性無口っ子にすりすりごろごろされたい
474人間は難しい:2010/04/29(木) 23:12:34 ID:EGh9Np2X
 高校から自宅に帰ると、玄関の前に身長160cmくらいの美少女と身長140cm程の美幼女二人組が立っていた。
 ああ、またこの展開か。
 呆然と二人――いや、たぶん二匹――の非常に端正な顔を眺める僕。
「犬」
「…………カラスです」
 まだ何も言ってないのに……。
 やはりこの二人も人の心を読むことが出来るらしい。
 ちなみに身長160cmの白髪が『犬』、身長140cmの金髪が『カラス』であるそうだ。
「で、何の用?」と、僕。
「兄さん、良い匂い」犬。
「…………お兄様に一目惚れです」カラス。
 どうやらこの二人もルキと似たような理由で来ちゃったみたいだ。
「あー……、名前は?」
「サヤ」
「…………キャルです」
 犬がサヤ。カラスがキャル。
「で、……うちで暮らす気?」
「はい」
「…………暮らしたいです」
 うーん。生活費は十分に足りるだろうし、部屋数的にも問題は無いんだよなぁ……。
「まぁ、いいや。とりあえず家に入ろっか」
 
 二人(二匹?)を背中に玄関の扉を開く、と、
「…………おかえり、おにいちゃん」
 すぐさまリビングから飛び出してきて僕に抱きつくルキ。
 初めの数日はドキドキしたものだが、もうさすがに慣れた。
「ただいま、ルキ」
 言うと、僕の胸に顔を必死で擦り付けていたルキが顔を上げ――固まる。
「…………おにいちゃん、この人たちは……」
 ルキの眼に今まで見たこともない殺気が宿る。
「犬。サヤ」
「…………わたしはカラスです。キャルといいます」
 そんな殺気立つルキを物ともせずに淡々と自己紹介をする両名。
「…………私は猫、名前はルキ」
 こんな表情をしながらもちゃんと律儀に返事をするルキはいい子だと思う。
 
 自己紹介の後は無言のままリビングへと向かい、四人掛けのソファーに腰掛けた僕たち。
 並びは左からサヤ、キャル、僕、ルキ。
 右側のルキはいつもに増して僕に身体をスリ寄せてくるし、左側のキャルは僕の左手の小指と薬指を『キュッ』と包むように握っている。
 そしてキャルの向こうのサヤは優しい微笑みで僕の顔を凝視していた。
 誰も喋らない。無言。ただただ無言。
 一人くらいお喋りな娘がいたって罰は当たらないだろうに……。
――ルキの身体の柔らかさ、キャルの手の温かさ、サヤの視線の恥ずかしさに耐えること一時間。
「そ、そろそろ夕食の準備でもしようかなぁー」
そう僕が言うと、
「…………おにいちゃん、私、魚食べたい」
「肉」
「…………わたしは割となんでも食べられます」
「はいはい、わかったわかった」
 言いながら僕は一人、キッチンへと向かった。
475名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 00:41:49 ID:fXE6tXd3
全力でwktk
476名無しさん@ピンキー:2010/04/30(金) 03:37:16 ID:R0KIF9vK
無口娘達による修羅場空間…空気が、空気がッ
477名無しさん@ピンキー:2010/05/02(日) 20:19:17 ID:eYDChmwp
スケッチブックっ子は可愛い
478名無しさん@ピンキー:2010/05/03(月) 23:07:30 ID:HKevCP4r
エロ無し、投下します。
479人間は難しい:2010/05/03(月) 23:08:44 ID:HKevCP4r
 夕食を終えると満腹になったルキが、リビングの床にあぐらをかいた僕の脚の上でゴロゴロし始める。
 僕が顎の下を撫でてやると、目を細めて口をモゴモゴと動かす。満足そうに。
「かまって」
 横で寝そべっていたサヤはそう言いながら僕のシャツをずり上げ脇腹を露出させると、剥き出しになった僕の脇腹に軽く噛みつく。
 何度か『ハモハモ』と脇腹をくわえたまま口を動かしたサヤは、脇腹から口を離し床に仰向けに寝転がると、
「撫でて」
 少し甘えたような声で言った。
 恐る恐るサヤのお腹を服の上から手の平で撫でてやると、サヤはだらしなく口を開いて綺麗なピンク色の舌を出す。
 ダラーーーンと出す。
 おい、涎たれてるぞ、涎。
 しばらくの間、左手でルキ、右手でサヤを撫でていると後ろから「グワアアアア!」という凄い鳴き声が聞こえ慌てて振り返る。
 そこには無表情ながらも機嫌の悪そうなオーラを出しているキャル。
 この不機嫌オーラは比喩的な表現ではなく、実際にどす黒い炎のようなものがこの目に見えている。
「…………弛んでいます」
「はい?」
 キャルが小声で何かを呟いたがよく聞こえなかった。
「…………お兄様は弛んでいます」
「……弛んでる?僕が?」
 みんなの分も夕飯を作ったり、今だって二人にご奉仕したりそこそこに頑張っていると思うけど。
「…………よくわからない女の子を三人も家にあげておいて何を今更です」
「えっ!?そこ突っ込んじゃうの!?」
 な、なんかこの娘、理不尽だな。見た目も10歳くらいだし、頭もやっぱり見た目相応なんだろうか?
「…………とにかく、お兄様は弛んでいます。……これは教育が必要ですね」
 そう言いながらキャルは黒いオーラを大きな手のような形にして、それを使い僕の身体を持ち上げる。
「ちょっ、何これ何これ!」
 大きな黒い手に掴まれグググっと天井近くまで持ち上げられる僕。
「…………鳥類がその程度の高さで何をビクビクしているんですか」
「いや!僕、鳥類じゃないから!人類!人類だから!」
「…………あぁ、そういえばそうでした」
 依然として僕を掴んだままではあるものの、足が床に付く所まで下ろしてくれる黒い手、というかキャル。
「…………つい、同族のノリで接してしまいました」
 軽く頭を下げるキャル。
「…………そうそう、それ、私もよくある」
 横から話に入ってくるルキ。
「…………おにいちゃんからは、どこか、私と似た匂いを感じる」
 カラスや猫に親近感を持たれるって人としてどうなんだろうか。
「…………まぁ、それはひとまず置いておきましょう」
 自分の立っている食卓の近くまで黒い手で僕を引き寄せるキャル。
 すると突然、食卓の上、チラシの裏の白い面にマジックペンで何かを書き始める。
 カキカキカキキュッキュッカキカキカキ。
「…………出来ました」
 何かを書いたチラシの裏を僕の眼前に掲げるキャル。
 それには『月火水木金土日』と、そのそれぞれの文字を区切るように縦線が引かれていた。
「…………イチャイチャ予定表です」
「イチャイチャ予定表!?」
 凄い言葉のセンスしてるなこの娘。
480人間は難しい:2010/05/03(月) 23:09:44 ID:HKevCP4r
「…………はい、こういった事は最初に決めておかなければいけません」
「なぜ?というかどういう事?」
 そもそもイチャイチャって予定を組んでするものなのか?
「…………先程のお兄様の行動を思い出してください」
「先程って、……鳥類のくだり?」
「…………もう少し前です」
「床であぐらをかいてた」
「…………何をしながらでしたか?」
「ルキとサヤを撫でながら……」
「…………はい、ストップ。そこです」
 ビシッと人差し指を立てるキャル。
「…………猫の人と犬の人を撫でながら、わたしの事は無視です。あれには思わず叫んでしまいましたよ」
 叫んだって、『グワアアアア!』って鳴き声の事か。
「いや、ルキはいつもの事だったし。サヤには撫でてと言われたから撫でただけで……」
 僕が言うと、僕の身体を覆うように掴んでいる黒い手に『グッ』と力が入る。痛い痛い痛い痛い。
「…………わたしは控えめな性格なので、猫の人や犬の人がお兄様にベタベタイチャイチャしているところには、どうしても入っていく事が出来ないのです」
 ひ、控えめ……?どこが……?あッ痛い痛い痛い痛い!あぁそういえばこの娘も人の心が読めるんだった!
「で……でもさ、夕食の前は僕の手を握ったり積極的だったじゃない」
「…………あれは勢いで何とか。冷静になると難しいのです」
「そ、そうなんだ」
「…………なので初めから、誰が、どの日にお兄様に甘えて良いのかを決めておく必要があるのです」
 と、そこまでは黙って話を聞いていたサヤが口を開く。
「サヤは甘えたい時に甘える」
 ムクリと床から起き上がりながらサヤは繰り返す。
「食べたい時に食べ、眠りたい時に眠り、甘えたい時に甘える」
 口の端から顎にかけての涎の跡とあわせて、とても頭が悪そうに見えるサヤ。
「…………私も、おにいちゃんには毎日甘える、だから却下」
 ルキも、サヤに同調する。
「…………お兄様はどうなんですか?」
 上目遣いで(身長差ゆえ)僕を見ながら尋ねてくるキャル。心なしかその眼は潤んでいるようにも見える。
「ぼ、僕は……」
 正直どっちでも良いのだけれど、確かにその日その日で懐いてくる相手が決まっていた方が楽な気もするし……。
 うーーーん。
「予定表……、あった方がいい……、かな?」
 それを聞くと、スッと僕からルキとサヤへ視線を動かすキャル。
「…………ほれみたことですか、犬猫の意見など聞く価値もありません」
 ベッと舌を出すキャル。こいつ性格悪いな。
「…………と、お兄様も言っています」
「そこまでは言ってないから」
「…………おにいちゃんは、そんなこと言ってない」
「言ってない」
 三人から一斉に否定されるも、それを軽く鼻で笑うとキャルは、
「…………まぁ、いいじゃあないですか。とにかくそれぞれの担当日を決めましょう」
 それに対しルキとサヤは、
「…………やだ」
「断る」
481人間は難しい:2010/05/03(月) 23:11:04 ID:HKevCP4r
「…………それじゃあ話が進まないです、バカ犬猫」
「進めなくて良い」
「…………そうだそうだー」
「…………うるっさいです糞共、このままではわたしは納得しませんよ」
「なら帰れ」
「…………帰れ帰れー」
 サヤの後ろに隠れてサヤの言葉を繰り返すルキ。
 これではまるでサヤの下っ端である。ルキは基本的に争えない子なのだ。
 ……それにしてもキャルは儚そうな見た目に騙されていたけど、実際はかなり性格がひど痛たたたたたた!
「…………あと、ずっと言いたかったんですけど、……おいダメ猫」
 ズビシッとルキを指差すキャル。
「…………な、なに?」
 サヤの後ろに隠れビクビクと震えながらルキ。
「…………お前、わたしと喋り方が被ってるんですよ」
 確かに、声質と話の間がよく似ている。でも口の悪さが全然違イタタタタタタタタタっ!
「…………か、被って、ない」
 涙声で反論するルキ。
「…………被っています。モロ被りです。この無個性アホ猫」
 ここぞとばかりに声をわずかに大きくするキャル。
「…………か、かぶって、ないっ」
 今にも泣きそうな顔でルキ。
「…………超被りまくりですボケ猫ォ、わたしの真似はいい加減やめてもらえませんかぁー?」
 仕留めにかかるキャル。
「…………かぁ、かぁぶっ、へぇ……、かぶっへ、……ふぇぇ」
 ついにはシクシクと泣き出してしまうルキ。ビジュアルだけだと小学四年生に泣かされる中学三年生である。無性に悲しい。
「こらこら、もうそこら辺でやめとけ」
 さすがにこれ以上はいたたまれないので止めに入る。
 黒い手に掴まれていて動けないから口だけでだが。
「…………はーい、この腐れ無個性をいじるのにも飽きましたし止めまーす」
 一言も二言も多いキャル。
「…………ひぐぅ、ひっひぅぅ」
 ほら、ルキも涙ボロボロ流しちゃってるよ。キャルとサヤに出会った時の強気な殺気が嘘のようだよ。
「あー……、そういえばルキ、僕の家に初めて来た時にスケッチブックで会話してたじゃない。あれなんか結構個性的だったんじゃ――」
 「ない?」と僕が言い終わる前に物凄いスピードで二階に駆け上がり、そして駆け戻ってくるルキ。
『おにいちゃん、これだね!』
 自信満々な顔で文字の書かれたスケッチブックを掲げるルキ。感情の切り替えが素晴らしく早い。
『ふふん!この高速文字書きはお子様カラスちゃんには真似出来ないでしょ!』
 ルキは紙の上ではやたらと強気だ。……ちょっと情けない。
「…………ええ、確かにわたしには真似出来ません」
 そう肯定したキャルは僕の身体を掴んでいた黒い手を消す。
 そしてトテトテと僕の方に歩み寄り。
 『ヒシッ』両手を僕の腰に回し、力強く抱きついてきた。
「…………ですが、スケッチブックを使って会話をしていたら、両手が使えませんよね?」
 更にキャルは僕の胸の下のあたりにペタリと寄せていた頬をスリスリと上下に動かしながら、
「…………それでは抱きつくことも、こうやって甘えることも出来ませんよ?バカ猫さん」
 その言葉に愕然とした顔でルキは、
『そ、それは盲点だったよ……!』
 と、スケッチブックに書いた。
 やっぱりこの娘はキャルの言うとおりでバカなのかも知れない。
482名無しさん@ピンキー:2010/05/03(月) 23:14:15 ID:HKevCP4r
とりあえず投下終了。
なんか全然無口じゃないですよね。
483名無しさん@ピンキー:2010/05/03(月) 23:55:56 ID:9r6T/TD8
ヒャッハーGJだぜ!
曜日制か…まさかこれ以上増えたりしないよな?
484名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 00:13:52 ID:VYYsg/UL
一週間は7日だから数合わせであと4人…あ、いや4匹か。
485名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 01:17:33 ID:YETpm4qy
ならば大和撫子な狐無口娘と、シルエットのエロいキス上手な蛇無口娘は確定だな
486名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 16:43:41 ID:dhngpwVK
決して無口っ子=無表情っ子ではないのだよ
487名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 19:33:06 ID:RZT46Rwx
エロ無し、投下します
488人間は難しい:2010/05/06(木) 19:34:06 ID:RZT46Rwx
【月曜日担当決め】
 
 
「…………はい、ではまずは月曜日から決めていきます」
 ソファーとテレビの間に立ち、『月よう日!』と大きく書かれたチラシの裏を掲げるキャル。
 チラシの無駄遣いだと思う。
 ソファーに座っている僕たち三人はこれ以上長引くのも嫌なので、適当に拍手をした。
「で、どうやって決めるの?クジ?じゃんけん?」
 僕が聞いてみるとキャルは無い胸を張って、
「…………料理です」
 と、言った。
「料理って……、もう今日は僕たち夕飯食べたでしょ」
「…………それはそうなのですが、軽い食事ならまだまだ入りますよね?それに……」
 少しの間をおくと、若干恥ずかしそうにキャルが、
「…………ス、スーパーというものを生で見てみたいですし」
 つまり食材を買うという名目でスーパー見物に行きたいという訳か。
「…………スーパー、私も、入ったことないから興味ある」
「サヤも行きたい」
 ルキとサヤも期待するような目で僕を見つめてくる。
「わかったわかった、じゃあちょっと財布を取ってくるから、玄関で待ってて」
 ソファーから腰を上げ、財布の置いてある二階の自室へと向かう僕。
 部屋に入ると財布をポケットに突っ込み、階段を下りて玄関に。
 そして三人と一緒に玄関から外に出て、歩いて7分のところにあるスーパーへと足を進める。
 僕の右手を握るキャル、左手を握るルキ、そして後ろから僕の首に腕をまわし、ダルーンとぶら下がるようにしているサヤ。
 凄く息が苦しい。そして歩きにくい。更にサヤの大きな胸が背中に当たって気持ちいい。
 すれ違う人達からの視線もある、……まぁそれは別にいいや。
 スーパーにたどり着き中に入ると、ルキがキョロキョロと周りを見回しながら声をあげる。
「…………凄い、野菜と果物、いっぱい」
 ルキは僕の手を引きながら安売りされているシメジの前で立ち止まる。
「…………シメジ、98円」
 僕と握っていない方の手で値札を指差すルキ。
「そうだね。安いね」
「…………安いの?」
「物凄く安いって程では無いけど、まぁほどほどに安いよ」
「…………買うの?」
「ルキが料理に使いたいなら買っても良いよ」
「…………使わない」
「……そっか」
「…………お兄様、お兄様」
 キャルが僕の手をグイグイと引っ張る。
「…………エノキも98円です」
「うん。98円だね」
「…………でも、こっちのエノキは128円です。何故ですか?」
 98円のエノキの隣に置かれている別のエノキに指を向け、僕の目を見つめるキャル。
「あー、詳しくはわからないけど。作っている場所だとか細かな品種の違いだとか、量の多い少ないで値段が変わってくるんだよ」
「…………そうなんですか」
 キャルは『うんうん』と頭を上下に動かし納得した様子だ。
「兄さん」
 耳元にサヤの言葉と吐息がかかる。
「そこのエリンギも98円」
「よし。もうキノコから離れようか」
489人間は難しい:2010/05/06(木) 19:35:21 ID:RZT46Rwx
 言うと、僕は三人に身体を離してもらい、買い物かごを手に持った。
「じゃあ、それぞれ料理に使いたい食材を持ってきて。基本的な調味料は家にあるから無しで。金額は一人600円くらいまでね」
「…………わかった」
「了解」
「…………わかりました」
 僕の言葉を受けて思い思いの売り場へと向かう三人。
 さて、僕はこの間に人参やら玉ねぎやら、人数が二人増えて足りなくなった分の食材を買い増しておく。
 小松菜、ピーマン、ニラも安かったので買い物かごに入れる。
 鮮魚コーナーに行くと、そこには真剣な目をして魚の切り身を眺めているルキがいた。
「鮭とカレイ?」
 後ろから僕は声をかける。
「…………うん、でも、どっちも三枚入りしか無い。一パックだと足りないし、二パックだと余る」
「一パックでいいんじゃない?味を見るだけなんだからさ」
「…………うん、わかった。ところで、おにいちゃんは、鮭とカレイどっちが好き?」
「あー……。どちらかと言えばカレイかなぁ」
「…………なら、カレイにする」
 僕の持つ買い物かごにカレイを入れるルキ。
「…………ねぇ、おにいちゃん」
「ん?何?」
「…………なんで、ここの棚、少ししか魚が置いてないの?……スカスカだよ?」
 ルキはポツリポツリと商品が並ぶ棚を指しながら聞いてくる。
「もう夜の8時だからねぇ、スーパーは遅い時間になると魚とかは置かなくなっちゃうんだ」
「…………そうなんだ。でも、ジュースはたくさん置いてあったよ?なんで?」
「ジュースはすぐには腐らないからじゃないかな?」
「…………腐らないの?」
「まぁ、モノによっては腐りやすいかも知れないけど。基本的には」
「…………腐らないのかぁ」
 ジュースの置いてあるコーナーの方に目を向けるルキ。
 どこか哀愁を感じさせる顔だ。
「ジュースが欲しいの?」
 答えはわかっているが一応聞いてみる。
「…………ちょっとだけ、ジュース欲しい」
 『ちょっとだけ』とはとても思えない顔でルキは頷く。
「じゃあ好きなのを一本だけ選んでおいで」
「…………ありがとう、おにいちゃん」
 早歩きで飲料コーナーへと向かうルキを見送り、僕は精肉コーナーでボケッと突っ立っているサヤの隣に立つ。
「何を買うか決まった?」
 僕が話しかけると、
「これ」
 サヤの指差した先にあるのは一枚2780円の国産牛のステーキ。
 半額シールは貼ってあるものの、それでも1390円。高い。
「うーん、これはさすがに高すぎるから……」
 僕はステーキの隣に置かれた国産牛の薄切り(半額シール付き)1000円を手に取り、
「こっちはどう?半額で500円だし、見た感じも悪くなさそうだよ」
 サヤは、僕の手の上の薄切り肉を『ポケー』っと眺め、
「兄さんはこれが食べたい?」
 僕は笑顔を作り答える。
「うん、食べたいな。あぁそうだ、サヤもルキと一緒にジュースを選んでおいでよ。好きなのを一本買ってあげるから」
490人間は難しい:2010/05/06(木) 19:36:33 ID:RZT46Rwx
「了解だ」
 サヤはペコリと僕に頭を下げると、「ジュースジュース」と口ずさみながら歩き出す。
 僕は半額の薄切り肉と半額の合い挽きミンチを買い物かごに入れ、ブラブラと適当に商品を見ていく。
 切れかかっていたガーリックパウダーをかごに追加し、僕はお菓子コーナーに足を向ける。
 そこには、座り込んで熱心に何かを眺めているキャルがいた。
「何見てるの?」
 僕が尋ねると、キャルは勢いよくこちらに振り向く。
 キャルの目はキラッキラに輝いていた。
 その両手には、
「……アニメの、カード?」
「…………はい、プリキュアのカードです」
 僕から自分の手元のカードに視線を戻し、ニコニコしながら肯定するキャル。
「…………プリキュア。テレビで見てるんです。こんな商品があるとは知りませんでしたが」
「そ、そうなんだ……」
「…………しかも見てください。このカード、きらきら光るオシャレなカードって書いてます。こっちはメタリックですって。これなんか商品名に『キラキラ』が入っていますよ」
 別々の三つの商品を僕に見せながら説明を始めだすキャル。
 やたらと『キラキラ』を強調している。カラスだから光り物に弱いんだろうか?
「でもさ。今回はおもちゃじゃなくて料理の為の食材を買いにきたんでしょ?」
「…………料理は家にあるもので作ります。それなら予算的に問題は無いはずです」
「食料品を買うのとおもちゃを買うのは違うんだよ?」
「…………でも、これとこれ。ガムとグミが付いてますよ。だからこれはお菓子です、食料品です」
「……そんなに欲しいの?」
「…………欲しいです」
「はぁ……、わかった。でも三つはダメ。二つにしなさい」
「…………え?…………え?え?」
 キャルは不安そうな表情でこちらの顔を見上げてくる。
「…………三つ欲しいです」
 僕の目を見つめながらおねだりをするキャル。う……うぐぅ、可愛いな。
 で、でも、だ。ここで買ってしまうと、今後も似たような調子でおもちゃをねだってくるだろう。
 それは良くない。
「ダメ。二つ。残りはまた今度ね」
 僕の言葉を聞くと、キャルはうなだれ、床に視線を落とすと細い肩を小刻みに揺らし始め――
「…………うぅぅ、ぅああああ、ひっ、ぐっ、うっうっ、やぁぁぁ……」
 泣いた。
「…………スーパー、ひぐっ、初めてっ、きてっ、きたのにっ、……初めてなのにっ、ふうぅ、プリキュア、ほしっ、欲しいっ……」
 キャルの泣き声はとても小さく、か細い。涙が涙腺からふっくらとした頬を通って丸みのある顎から落ちる。
「あっ、ああ、ごめん、ごめんね。買おうね。三つとも買おうね。スーパー初めてだもんね。買おう買おう」
 僕は買い物かごを一度床に置き、キャルのサラサラとした長い金色の髪を撫でながら涙を拭ってやり、ゆっくりとキャルを立たせると、
「ほ、ほら、あっちでジュースも買おうね。キャルはどんなのが好きかなー?」
 再び買い物かごを手に取り、歌のお兄さんを意識したような声を出しながら、キャルの商品を持っていない方の手を握り飲料コーナーまで連れて行く。
 飲料コーナーではいまだにルキとサヤがどれにするかを悩んでいた。
「…………オレンジ、りんご、……ぶどう、うむむむ」
「カフェオレ、コーヒー牛乳、ココア、どうしよう」
 僕はひとまずルキ、サヤ両名を放っておき、目と鼻を赤くししゃくりあげているキャルに優しく話しかける。
「キャルはどれが飲みたいかなぁ?」
 濡れた瞳を一度棚に向け、すぐに戻し僕の顔を見上げるとキャルは、
「…………わからない……難しい……」
491人間は難しい:2010/05/06(木) 19:37:43 ID:RZT46Rwx
 言いながらキャルは僕と繋いでいる手に『ギュッ』っと力を入れてくる。
 ……なんか幼児みたいになっちゃったなこの娘。
「キャルはオレンジジュース飲める?」 
 キャルの目を見つめ返しながら僕は尋ねた。
「…………飲める」
 キャルが頷いたので僕はオレンジジュースを買い物かごの中に入れ、ルキ、サヤをせかす。
「ほらほら、どうせまたすぐに来るんだから適当に選んじゃってよ」
 それを聞くと二人は、
「…………なら、私は、ポカリ」
「サヤもポカリ」
「りんごとかコーヒー牛乳で悩んでいたんじゃないのかよ」
 
 レジのおばちゃんに「あらお兄さんモテモテね」などと言われながら料金を支払い、トボトボと来た道を戻る。
 僕の右手にはキャルの左手、左手には買い物袋。
 少し後ろをルキとサヤが無言でついて来る。
 やや重たい空気の中、家にたどり着き、冷蔵庫に買ってきたものを詰めていると、キャルが、
「…………では、さっさと調理を始めますよ猫と犬。あと、お兄様は何があっても口出し禁止です」
 どうやら立ち直ったらしい。
「…………うん、やれるだけ、やってみる」
「料理初体験」
 ルキとサヤの言葉に不安を覚えながらの料理対決が始まった。
 
「肉を焼く」
 生肉をパックから取り出して何の味付けもせずにフライパンの上にのせるとサヤは、
「ほっほっほっほっ」
 中華の料理人っぽくフライパンを振り始めた。
 火も何もついていない。フライパンは冷たいままである。
 当然だが何回振っても肉は生のまま変化はしない。
「おかしい。テレビで見たのと違う」
 サヤは何を思ったのか、フライパンの中に水道の蛇口から直接に水を入れ、肉を洗い始めた。
 薄切り肉は蛇口からの水の勢いとサヤの手に揉まれボロボロと崩れていく。
「こんなはずでは」
 水で満たされたフライパンには切れ切れになった生肉が浮かんでいる。
 僕はサヤに失格を告げると、フライパンをそのままの状態で火にかけ、肉を煮てからポン酢で食べた。ボソボソとしていて不味かった。
「…………次は私が」
 ルキはカレイの切り身三枚をパックから取り出すと、まな板の上に並べ、調味料を振りかけていく。
 塩、コショウ、ガーリックパウダー、オレガノ、イタリアンパセリ、一味唐辛子、七味唐辛子、シナモン、ナツメグ、オールスパイス、
パプリカ、ターメリック、クミン、コリアンダー、フェヌグリーク、カルダモン、ガラムマサラ、味の素、顆粒ほんだし、顆粒中華あじ――
「…………ふんふふーん」
 鼻歌まじりで調味料まみれになったカレイをごま油を敷いたフライパンで焼き始めるルキ。
 そして焼きあがったカレイを皿に移すと、その皿を僕に差し出してきた。
「…………食べて、おにいちゃん」
 僕は箸を震わせながらこんがりと焼けたカレイの身をちぎり、それを口に入れ、
「マズッ!クサッ!」
 即、吐き出した。
 ルキ、失格。
492人間は難しい:2010/05/06(木) 19:39:17 ID:RZT46Rwx
「…………ふふ、ついにわたしの番ですね」
 キャルは床の上に寝そべり落ち込んでいるルキ、サヤを尻目に調理を開始した。
 まずは食パンを取り出し、その上に冷蔵庫にあったとろけるチーズをのせ、そこにコショウを軽く振る。
 最後にそれをオーブントースターで3分焼いて出来上がり。
「なんかズルくない!?」
 僕は思わず叫んでしまった。これも料理と言えば料理だが、どこか納得がいかない。
「…………肉や魚を焼くか、パンを焼くかの違いだけです。さぁ、食べてみてください」
「う、……うん」
 僕はとても良い匂いのするチーズのせトーストにかぶりついた。当たり前だけど、……美味い。
「…………わたしの勝ちですね」
 こうして月曜日担当はキャルに決まった。
 
「――さて、と。そろそろ僕はお風呂にでも入ってこようかな」
 料理対決を終え、リビングでダラダラすること30分。
 僕はソファーから腰をあげると浴室に向かう為、リビングのドアを開け――
「…………ちょっと待ってください」
 キャルに呼び止められた。
「何?あ、もしかして先に入りたい?」
 彼女たちは猫、犬、カラスではあるものの、歴とした女の子でもあるのだ。
 入る順番の確認もせずに勝手に入ろうとしたのはマナー違反だったか。
「…………いえ、そうではありません。……お風呂、一緒に入りましょう」
「一緒に?お風呂?」
「…………はい」
 キャルは僕の側まで歩いてくると僕の手を取り、
「…………さ、行きましょう」
 無邪気な笑顔で言った。
「待て、カラス」
 サヤが床から立ち上がりこちらへ歩いてくる。
「サヤもお風呂だ」
 サヤが僕の右腕に抱きついてきた。サヤの大きな胸が僕の腕でふにょりと形を変える。
「…………待って」
 ルキも慌てて走り寄り、僕の腰にすがりつく。
「…………私は、何日も我慢してたのに。二人は、すぐ、おにいちゃんと、一緒に入るなんてズルい」
 左にキャル、右にサヤ、腰にルキ。
「いやいやいや、僕は誰とも一緒には入らないから」
 僕がそう言うと、
「…………ダメです、入ります」
「サヤも入る」
「…………私だって、入りたい」
 三人の意志は固そうだ。目がギラギラと光っている。
 ……まぁ、いいか。一緒にお風呂に入るくらい。
「わかったわかった、じゃあみんなで入ろっか」
 僕は三人を連れて浴室へと向かった。
493名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 19:41:17 ID:RZT46Rwx
投下終了です。
ルキの影が薄くなってきました。
494名無しさん@ピンキー:2010/05/06(木) 19:47:12 ID:y1l5xkX5
GJ
ニヤニヤし過ぎてほほが元に戻らないんだが
495名無しさん@ピンキー:2010/05/14(金) 03:12:59 ID:n788oKnH
おいおい、喋っても良いんだぜ?
496名無しさん@ピンキー:2010/05/16(日) 19:04:11 ID:mUyyDwis
「………………ダッシュ」
497名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 20:39:23 ID:UsTkw17X
無口っ子をヘッドロック
498名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 20:58:25 ID:ASwH5CEb
「………………ぎぶ」
499名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 01:41:04 ID:PFR9gruj
無垢痴っ娘
500名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 06:55:33 ID:taGKRr53
エロい……。
501無垢痴っ娘ってこうですかわかりません:2010/05/20(木) 14:47:35 ID:oa1Ib/L8
「……ぅぅ…ひぁ!」クニクニ
「おはよ」
「あっ、むーちゃんおはよ。ってそーじゃなくてなんでぼくのちんちん、あしでくすぐるの」
「あんま」サス…
「だ〜か〜らなんでぼくにあんますんのさ」
「………」グニィ

「ひゃゎ、ねー、なん、で。むーひゃッ!」
「あんま」ブブブブブ
「ひゃぃぃいいい!!」
ブブブブ
「あはははははは」
ブブブ
「はははは」
「………」ブブ…

「はは……はぁ…」


「………せー」
「な、なにむーちゃん?」
「どしてげらげら?」
「…だって、くすぐったいんだもん」
「………せー、むーきらい?」
「えっ?」
「…かかととと、あいしあてるから、あんましたって。むー、せーのことあいしてるから、した。
なのにせーととと、ぜんぜんちがた。……せー、むーがきらいだから?」…スン
502無垢痴っ娘ってこうですかわかりません:2010/05/20(木) 14:57:37 ID:oa1Ib/L8
「そんなことない!ぼくむーちゃんがすき!あいじでる゛!!」グス
「うぞ!」
「ほんど!!」
「じゃ゛、だい゛どでじめ゛じで!!!」

ブッチゥゥゥ!

「「う゛あ゛ぁ゛ぁn
「やかましい!!!」ズギャン!
「にぃ!」「義兄さん!」
「こんのマセガキ共、ディープチッスなんぞ20年早いわッ!!」
「チッs「夢雨ッ!勝手に出てったと思えばあのバカ夫婦の真似なぞしおって!向こうで大人しく待ってろ!!」
「ひぅ…」
「義兄さん、チッスはふr「静也ァ!何時だと思ってやがる!姉ちゃん居ねぇからってチンタラしやがってッ!!さっさと顔洗って朝飯食え!!もうすぐお迎えのバスが来ちまうぞッッ!!!」
「はいぃ!」

「…んのバカ親ァ、いい歳して盛りやがって。それも幼い娘にさらりとたらしこむとか…」

〜〜〜〜〜

「あらあら。二人を小脇に抱えて、お説教したの?」
「いやいやお恥ずかしい。『また』夢雨がやらかしたもので。」ヒョイヒョイ
「あらあら。仲のよろしいこと。そういえば夢雨ちゃん、
この前も園庭の真ん中で静くんと指を絡ませあって…」ダブルキャッチ!
「止めてください。二人の将来が本気で心配です。」
「いやぁ、私もまた刺激的な恋愛を…」
「年甲斐もなくそんなこと言うから、貴女を恩師と仰げないんだよ。」
「あらあら、ホント可愛げが無くなって」ギリギリ
「「あばばば」」

ど完


とりあえず全員18歳以上ということにしといて下さい

カオスなのは徹夜明けテンションのせいです。ホンマすいません
503名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 15:05:07 ID:0UNoBJ27
とりあえず日本語でおk
504名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 01:05:05 ID:dR53iF3a
人間環境が読み取れん、誰が誰の何だか
505名無しさん@ピンキー:2010/05/21(金) 22:37:00 ID:S+Hs4+5r
無口っ子を抱きしめてむぎゅむぎゅしてなでなでしてすりすりしたらどうなるのっと。
506名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 00:11:46 ID:tnI6Cupj
ぐしゃぐしゃになった髪をムスっとした顔で直しながら、時折にへっと笑います。
507名無しさん@ピンキー:2010/05/25(火) 12:28:28 ID:jUdNz7t5
にへっ
508名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 09:19:16 ID:35Nk/Y7H
>>556の無口っ子は可愛い。
そのまま不機嫌を装って家に帰って、ベッドに飛び込んでにやけた顔を枕に埋めてばたばたしてたらもっと可愛い。
509名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 20:34:46 ID:E4QPsUG3
>>556
俺が今まで見たみた中でも指折りの可愛さだなこの無口っ子は
510名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 20:59:35 ID:+aSGVC/i
>>556は責任重大
511名無しさん@ピンキー:2010/05/26(水) 22:17:18 ID:fKvKCLHV
>>556
GJ過ぎて鼻血出たわ。
不機嫌を装う無口っ娘の可愛さといったらもう!
512名無しさん@ピンキー:2010/05/29(土) 02:04:37 ID:i660OTXu
あれ・・・期待したのにまだまだ先のことじゃね?
513名無しさん@ピンキー:2010/05/30(日) 07:10:00 ID:bongxKw/
………………かそく
514名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 00:43:18 ID:P/RrSdqO
…………けいえすけい
515名無しさん@ピンキー:2010/05/31(月) 08:43:27 ID:gHf2eSD0
口を尖らして「むー」とか拗ねてる無口っ子は可愛い
516名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 00:41:44 ID:fqMk+b/5
常に後ろをついて来る雛系無口っ子
517こんな感じ?:2010/06/02(水) 01:30:20 ID:iytOWlCf
 俺が叔父貴の家の縁側でぼーっとタバコを吸ってると、隣にちょこんと従姉妹のお子様が座り込んだ。
 何か用でもあるのかそちらを見やるが、従姉妹殿は手元の絵本を熱心に覗き込むばかりで、
こちらを見ようともしない。
 子供にタバコの煙を吸わせるのもどうかと思い、俺は3mばかり移動して、従姉妹殿から離れた。
 ……すると従姉妹殿は何を思ったのか、絵本から顔を上げてこちらを無言でじっと見詰めた後で、
絵本を片手にとてとてとこちらに歩いてくると、またぽすんと俺の隣に座り込んで……
それで何を言うわけでもなく何をしてくるでなく、また絵本に視線を落とす。
 俺は無言で空を見上げて、タバコを深く吸い込む。

 ……ははぁ、これはあれか。ここはいつもの自分のお気に入りの場所だから、タバコくさい余所者は
どっか行けと言う、無言のアピールか。
 まったく、喫煙家でいい歳した独身で手土産一つ持たずお邪魔した身の、なんと肩身の狭い世の中か。
 俺は最後にもう一息タバコの煙を深く吸い込んで味わうと、半分以上残ったそれを携帯灰皿でもみ消すと、
縁側から立ち上がって居間に引っ込む。
 ソファーに深く腰掛け、リモコンを手にTVの電源を入れる。なにか適当に暇が潰せる番組でもないかと
チャンネルをいじっていると……三度ぽすんと、俺の脚にもたれかかるようにして従姉妹殿が座り込み、
また無言で絵本を覗き込み始める。
 この期に及んでも従姉妹殿は、こちらを見ようともしない。
 てしてしと、無意味に首筋を叩きながら、しばし視線を宙にさまよわせる。
「……あー」
 意味もなく声を上げて、俺は足元に陣取る従姉妹殿を見下ろす。そしてTVを消すと、恐る恐る従姉妹殿に
声をかける。
「……来るかい?」
 ぽんぽんと自分の膝を叩きながら問いかけると、反応は劇的だった。
 従姉妹殿は弾かれたように顔を上げてこちらを見やると、にぱっと満面の笑みを浮かべる。そして、勢いよく
立ち上がると、その勢いのままに飛び込むように俺の膝の上に腰を下ろす。
 それからまた絵本を読み出すのだが……足はぶらぶらさせるわ、かすかに鼻歌はもれるは、明らかに
上機嫌である。
「……あー」
 俺はまた意味もなく声を上げ……観念して、従姉妹殿のソファー役を謹んで務めることとした。
 そんな、ある日の昼下がり。
518名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 02:28:14 ID:RsOIpnAo
>>517
やだ、何これ…
凄く萌えます
とても素晴らしかった
519名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 12:20:42 ID:U9F5J2rB
無口親戚ロリ!!!
520名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 20:12:25 ID:ZzXO97tO
>>517
絵本は読まんが、うちの猫そっくり。6`雄だけど。胡坐でも足がしびれる。
521名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 21:07:03 ID:P0kKRpO/
>>517
GJ!
ぜひ続きを!
522名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 00:50:51 ID:1CjMlh3I
何このかわいい生き物すごく萌えるんだけど
523調子に乗ってみますた:2010/06/03(木) 22:58:31 ID:PoGhk2Fz
 俺の目の前で、従姉妹殿が苦悩している。
 眉根を寄せて、握りこぶしを震わせて、そのつぶらな瞳を今は険しくして、問題を見据えて動かない。
 俺も、少しだけ後悔する。
 悪気は無かった。むしろ善意のつもりだった。それが、この子をこんなにも苦しめるなんて……。
 ああ、できうることなら俺は時間を遡り、この子を苦しめる原因を取り去ってしまいたい……!
 ……などと気分を盛り上げてモノロってみたが、まぁいつまでも従姉妹殿にむーむー唸らせておくわけ
にも行かないので、こちらか水を向けてみる。
「なぁ……ショートケーキとレアチーズケーキ、どっちがいいか決まったか?」
 ……従姉妹殿はじっと見詰めていた二種類のケーキから顔上げると、泣きそうな顔でふるふると首を
振るのだった。
 こんなに悩まれるなら、どっちか片方にしておくんだったなぁ。

 叔父貴に留守番を命じられるに当たり、俺が思ったのは従姉妹殿のことだった。何がいいかは知らないが、
どうやら俺はあの子に懐かれたらしい。らしい、と曖昧なのはどうにも無口な従姉妹殿の口から、その
あたりを明言されてないからであるが、まぁ間違いはないだろう。
 で、懐かれて悪い気もしないし、たまには手土産の一つもぶら下げていくかとケーキ屋に立ち寄ったのは
いいが……あの子の好みを知らないのでと、安全策に走って二種類のケーキを注文してしまったのが
この無間地獄の入り口であった。

 結局、大人の知恵を駆使することにした。要するに「半分こ」である。もちろん、ショートケーキの
イチゴ搭載部分は従姉妹殿に進呈した。
 そして従姉妹殿は、両方のケーキを代わりばんこに食べて、ご満悦だ。
 どちらも半分以上残してる彼女に対し、俺の方はといえばすでに平らげている。
 食後の一服が欲しいところだが、まぁ従姉妹殿の手前、コーヒーで我慢することとする。
 口の中に残る甘ったるさを苦味で洗い流しながら、俺は見るとはなしにテーブル向かいの従姉妹殿の
奮闘を見物した。
 どこか危なっかしい手つきでフォークを駆使し、口の周りを派手に白くしながら、しかし幸せそうにケーキを
頬張っている。 まぁここまでおいしそうに食べてもらえるなら、ケーキも本望と言うものであろう。
 そのまま俺が、おいしく召し上がられて天国にいけたケーキに対し、粗末に扱われて闇の世界に堕ちた
ケーキたちが宣戦布告する大河ドラマを妄想していると、ハタを顔を上げた従姉妹殿と目があった。
 俺の方は、闇の反逆ケーキ軍に王都を包囲された光の神聖ケーキ軍の、その最後の力を振り絞った
無謀な反抗作戦そのものを囮とした、王族脱出作戦の顛末を妄想しながらぼーっと従姉妹殿を眺めて
いたが、従姉妹殿の方は急に挙動不審になった。
 さっきまでの彼女のように眉根を寄せながら、俺の顔とケーキを何度も見比べている。
524調子に乗ってみますた:2010/06/03(木) 23:01:03 ID:PoGhk2Fz
「……?」
 そして俺の脳内で、主人公が母と思っていた人物の死に際に、彼女は王妃の侍女であり自分は神聖
ケーキ軍の王族の血を引く最後の一人であると打ち明けられ祖国復興のための旅立ちを決意する所まで
妄想が進んだあたりで、ようやく従姉妹殿に動きがあった。
 意を決したような表情でケーキをひとかけらフォークに刺すと、
「……ん!」
 それを俺に差し出してきた。
 ……どうやら、そちらをぼんやり見ていたのを、「ははん自分のケーキは食い終わっちまったぜでも
そっちにはケーキまだ残ってるなぁいいなぁいいなぁ欲しいなぁ分けてくんねーかなー」とでも思っていた
モノと考えられたようだ。
 とんでもない誤解である。俺が今考えていたのは、王子の旅立ちに同行を申し出た幼馴染兄妹の、
妹の方のツンデレ台詞だ。
 いやそうでなくて。
「いや、そりゃお前の分だ。気を使わなくていいから食え」
 俺は努めて寛容な大人の態度を装って丁重にお断りしたのだが。
「……んっ!」
 従姉妹殿はテーブルの上に身を乗り出し、ますます強い調子でフォークを突き出すばかりだ。
「……あー」
 これは、断れんか。
 仕方なく俺は身を乗り出し、従姉妹殿の手ずからのケーキを頂戴する。
「うまかったよ、ごっそさん」
 口の中の甘みを我慢しながら笑顔でこう言えた俺を、自分で褒めてやりたい。
 しかしまぁその甲斐はあったようで。
「…………♪」
 従姉妹殿は、にぱっと明るい笑顔を浮かべてくれたのである。


 まぁ、そんな俺の献身に対し、叔父貴夫妻の帰宅後「不規則な時間に余計なおやつは与えないように」
と遠回しに叱られる、と言う形で報われたのは、まぁいいオチがついたというべきだろう。

 そうそう、余談だが。



 王子はその後、救援を求めて和菓子の国に向かうそうだが、まぁ関係ない話だよな。
525名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 23:18:07 ID:ObbaAsMV
いいねえ
526名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 01:42:04 ID:X8xW6jsx
いいね。
闇のケーキ軍の指揮官が大人の色気をむんむんに醸し出すザッハトルテで
神聖ケーキ軍のお姫様は順当に甘甘なショートケーキで
ザッハトルテに追い詰められたショートケーキが主人公といちゃいちゃしてるのをみて
嫉妬から涙目になってるところを想像したけど
設定を見落としていたことに気づいて落ち込んだ俺の心が癒された。

ケーキの擬人化ってどうしても体型がふかふかボディーになるのは何でなんだろう
527名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 01:56:57 ID:i3CEIUXq
俺、ケーキそのままに目と口と線の手足がついてる想像してた
528名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 23:17:59 ID:0my5mcCj
俺は顔がケーキになってるのを想像してた
そーすると、口がないから無口になってスレタイに合ってるし
529名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 10:20:19 ID:hfryP//F
GJ
ケーキの国の王子様、か
パスタの国の王子様をなんとなく思い出してしまった
530名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 21:25:39 ID:Lh6NZKPr
みんなケーキの話しかしてねぇ!w
531名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 01:41:51 ID:gcYyFA0i
ダラダラ7レス エロはありません
口下手&スロウ系無口
532名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 01:43:06 ID:gcYyFA0i
 ピンポン。
<ラグ>
 ガチャ。
「……」
「お、おう。話って、何だ?」
「……あ、」
「?」
「…いらっしゃい」
 ガクッ。
「とりあえず、上がって良いのか?」
 ……こくり。

「……もうすぐ、ポトフ…出来る」
(この時期にポトフかぁ、ちょっと遅れてる気がしないでもない)
「で、俺が呼ばれた理由なんだけど」
「…ポトフは、好き?」
(話が進んでないのね)
「ああ、好きだよ」
 ……ぽぅっ。
(目を見て言ったのに、そっぽ向いちまった)
「でさ、良い?」
「…あ……お風呂も、入る?」
(何で自宅の風呂に誘うんだよ…)

「川根さん、俺も手伝おうか」
「……?」
「?」
「…手伝うの?」
 ずるっ。
(――反応が遅くて、ちょっとイライラする。けど、態度に出しちゃダメだな。絶対傷つく)
「はい。じゃ、お皿並べるから」
「……お皿は、ここ」
(分かってる分かってる)
「……」
(垂れ目の彼女が、台所でエプロン姿でお玉を片手にぼうっとしている様子は、何だかほのぼのする)
「川根さん?」
「……?」
「テーブルセッティングは完了したけど」

「あ、ポトフ、そろそろ良いんじゃないの?」
「……あ…そろそろ、良さそう」
(言わなきゃいつまでも突っ立ってたんだろうな)
「どれどれ――う熱ちっ!」
「……」
(思わず手を引っ込めた俺を背に、彼女は素手で両手鍋の取っ手を掴んだ)
「おい、大丈夫か?」
「……うーん…よい、しょ」
(テーブルの真ん中の、鍋敷の上に置く)
「……あ、」
「ん?」
「……熱い」
「だから言わんこっちゃない!」
533名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 01:44:25 ID:gcYyFA0i
(とりあえず流水で冷やす)
「しかし、不注意以前の問題だろこれ。鈍すぎる」
「……っ!」
「あっ! ――悪い、ごめん」
「……っ、……くすん」
(ああ〜俺の馬鹿! でも、こんな調子じゃ普段の生活なんて生傷絶えないだろうに)
「……う、あぁ…」
「俺が悪かった。だってほら、こんな綺麗な手してんのに、もし火傷でもしたら台無しだろ」
 どん!
(彼女はいきなり俺を突き飛ばすと、リビングを飛び出して行った)
「ちょっと、待て!」

 ピシャ!
(洗面所の先の風呂場に入って、締め切られた)
「川根さん!」
 ぷしゅああ―――――。
「へ?」
(何でシャワー? 服着たままで?)
「……あぁ……あぁぁー」
(そして声を上げて泣き出した。どうにも理解に困る人だ)
「あぁぁぁー」
(びちゃびちゃ濡れる音が、止まらない)
「――あーもうっ!」
 ガラッ!
(躊躇うより先に中に入って、シャワーを止めた)
「川根さん、まずは落ち着いて」
「あぁぁぁぁー」

(何て、弱くて脆い泣き方なんだろうと思った)
(赤ん坊は周囲の子が泣いていると、つられて泣き出すとよく言う)
(俺も、昔から何だかそうだ。近所の子どもの泣き声が聞こえると、こう、心の底からやるせなくなる)
(差し出がましいかもしれない。だけど、目の前でこうも無力に泣かれると、俺は、自分の無力さも浮き彫りにされるようで、それが嫌で、何とかしたい)
(軽く抱き締める)
(ポンポン、と背中を叩いて慰める)
(すると彼女は、俺の体を支えに受け入れて、胸に顔を埋めて、泣いた)
(篭った泣き声。こっちの服までじんわりと濡れてくる)
(不思議と、気持ちが透く。些細なことで大袈裟に泣きやがってとも思うが、愛しくさえ感じる)
(泣き止むまで、十分)

「……くすん、くすん」
「――悪かった。本当に、ごめん」
(鈍いのはもう少し改善させてほしいのが本音だけど)
「……」
(泣き止んでも、俺から離れようとしない)
「川根さん? ポトフ、温め直さないと」
「……八尾、くん」
「何?」
「……嫌いに、ならないで」
(彼女は消え入るような声で、呟いた――必死に俺の洋服を、捕まえたままで)
「嫌わないから、安心して」
「……」
「な?」
 ……こくり。
534名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 01:45:41 ID:gcYyFA0i
(彼女は泣き疲れたのか、大人しい)
「川根さんが着替えるまで、俺は外で待つよ」
「……」
(風呂場から出ようとする――)
 がしっ!
「川根さん?」
 イヤイヤ。
「びしょ濡れのままじゃ、風邪引くだろ」
(洋服がべったり貼り付いている。さぞ気持ち悪かろう)
「……」
(何かを懇願するような目。顔をほんのり赤くして、俺を見上げる)
「ここに居なきゃ、ダメなのか?」
 …こくり。

(モーションを起こせず膠着状態)
(彼女はただ目を瞑って、俺に体を預けている)
(さっきの妙にドキッとくるような表情といい、一体何のつもりだ?)
(一旦退散して、立て直したい。調子狂う)
「あのー…川根さん」
「……?」
「このままずっと、こうしているつもり?」
 ……こくり。
(ダメだ、鈍いどころかこれじゃ思考停止。どんな反応されるか恐いけど、無理に離れるしかない)
「もう、良いだろ?」
「……やだ…八尾、くん」
「バスタオルで体吹いて、着替えて、そしてポトフ食べよう」
「……っ!」

(強情にも、俺を離してくれない)
「言いたいことがあるなら、言葉にしてくれないと分からない」
「……っ!」
「川根さん。な? 俺を困らせたくないんだったら、離れて」
「……っ!!」
「川根さん!」
「……っ、……わた、し…私、八尾、くん…あの…」
(乾いたというか、震えているというか、変な語調)
「聞いてる。じゃあ最後まで聞くから、ゆっくりで良いから、言葉にしてくれ」
「……本当、は、用事…なんて、なかった。でも、八尾くん、と…私、一緒にいたら、凄く、安心、するの。ずっと、いつでも、安心したいから…でも、それは、八尾くんには、多分……だ、だから、でも、嫌だから、せめて、嘘ついてでも、一緒に、いられるような…私……っ!」
「……」
「……ごめんなさい」

(それから彼女はずっと、”ごめんなさい”を繰り返した)
「――落ち着いて。川根さんが悪いことをした訳じゃない」
「でも……八尾、くん……うっ…」
(彼女が潰れそうな、壊れそうな心の中から、助けを求めている)
「川根さん」
「でも…きっと、のろまな私のことは……っ! 本当は……うぅっ! ……キライカモ、ッテ――!」
 がたん!
(彼女は地面に膝を突いた。自らを抱き締めて、項垂れて震えている)
(張り裂けそうになった)
(被害妄想かもしれない)
(だが鈍いの一言が、後ろめたい思いを引きずっていた彼女を、追い詰めた)
「……」
(はらはらと、彼女は声すら出せずに涙を溢した)
535名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 01:46:26 ID:gcYyFA0i
「嫌わないよ」
「じゃあっ! どうしてぇ、…行くのっ? ……一緒にいてぇ、…くれないと、私ぃ、独りぼっち…だからぁ…っ」
「立てる? 体、触っても良いか?」
「……」
「なら、俺も座る」
(そして、抱き締める。力いっぱいに、もう一度彼女を安心させてやる)
「川根さんは、こんなに可愛いだろ? 頼りないけど、細くて、綺麗で、良い匂いがして――それはお世辞でも、愛想で言ってる訳でもないよ」
「……ごめん、なさい」
「寂しくても独りだなんて、言わないこと。俺が絶対に力になるから」
「……嫌わない?」
「俺は川根さんのこと、好きだし、これからももっと、好きになりたい」
「…!! ……嘘」
「本当。嫌いじゃなくて、好き」
「……ぁ」
 ふっ――。

(彼女は何かの糸が切れたように、意識を失った)
(倒れかけた体を、俺の方に抱え直す)
(困った人だ。本当に、どうしようもないくらいに困った人)
(そんな彼女を、俺はずっと好きだった。こうして欠点もあるけど、そういう部分もひっくるめて、可愛い人)
(悲愴なくらいに一途な思慕を、俺は上手く気づいてやれなかった。鈍かったのは俺の方だった)
(濡れた髪を、二度三度撫でる)
(溜息)
(情緒不安定な彼女を、上手く支えてやれるようになりたい)
(素っ気無く逃げ出そうとしたせいで、拍車をかけた)
(俺の馬鹿)

<長い、長いラグ>
「……ぅ」
「川根さん?」
「……?」
(目が、ゆっくり時間をかけて開いていく)
「……八尾、くん…?」
「良かった。いきなり気絶するもんだから、どうして良いか…」
「……っ!」
(彼女は俺の背中まで、きつく腕を回してきた)
「……ごめん…なさい」
「許すよ。だから、川根さんのこと、分かってやれなかった俺のことも、許して、な」
「……好き」
「?」
「……恐くて、言えなかったけど、八尾くん…大好き」

(見つめ合う)
 ……ぽぉー。
「なぁ」
「……」
「もしもし?」
「……あっ、え?」
(よく停止する子だ。まぁ、良いや)
「一つ、確かなことを言う。俺は川根さんに遠慮してた」
「……はい」
「だから、これからはもっと単純に接して、そして優しくする。川根さんがそれで良いなら、の話だけど」
「……っ」
(零れ落ちるような笑顔)
「よし。じゃもう一度、いらっしゃい」
536名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 01:47:23 ID:gcYyFA0i
(愛しい人を、ぎゅっと抱き締めた)
「そして大事なことだけでも、なるべく主張すること。声でなくても、態度でも筆談でも良い」
「……」
「もう一度言うけど、川根さんは独りじゃない」
「……う…ん」
(これで、良いことにしよう。何か、とても温かい)
「水浸しだけどどうする? 判断は任せた」
(すると彼女は、じっと黙って、俯いて、ブラウスのボタンを外し始めた)
「俺は――」
 ……きゅっ。
(手首を掴まれた)
「……一緒に、お風呂、入りたい」

(彼女の誘い、もといお願いを聞くことにした)
(背中合わせに洋服を脱ぎ、タオルを貰って先に風呂場に入る)
(体を流して、湯船に浸かる。壁の方を向いたまま、声をかける)
「大丈夫だ」
 ……がらり。
(彼女が入ってきた)
(緊張、そして妙な親近感)
(平静を保てと自分に言い聞かせながら、その時を待つ)
「……」
(お湯を掬い、体を流す)
(洗面器が少しだけ背中に当たり、滴る水音が聞こえすぎるほどによく聞こえる)

 ……ちゃぷ。
(小さな湯船に二人)
(彼女の前の感触が、背中に密着する)
(首に顔が当たって、胸元のバスタオルと素肌の境目まで、分かる)
「――今更だが、どうしてここで泣いたんだ?」
「……」
(しばらく考えたかと思うと、背中に指で、文字を書き始めた)
(くすぐったい)
『せんめんき つかいたかった』
「なるほど。水を張って、ね」
(泣きたいけど、ぐっと気持ちを抑えたい時、声を出さないようにしたい時、そうするのかな)
「で、間違ってシャワーの方を捻ったのか」
『うん』

『あの』
「何?」
『こっちむいて いいよ?』
(そうか、良いのか)
「…川根、さん」
(体を回転させると、彼女の真っ赤な顔が、俺を見つめてきた)
(俺は座高から見える小さな谷間に、少し目が行く)
(いけない。自制しないと)
「……」
(ただひたすら、見つめ合う)
(お風呂が、ずいぶん熱く感じられる)
「…川根さんの、したいようにして。俺がそうしたら多分、歯止めが利かなくなると思うから」
「……したい、ように?」
(頷くと、彼女はしばらく考えて、行動に移した)
 ……ぎゅっ。
537名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 01:49:15 ID:gcYyFA0i
(下手なことをすれば、体と頭丸ごと逆上せあがっていただろう)
(湯船の中で要望に応え、彼女と抱き締め合った)
(…少しだけ腰が引けたものの、これは内緒)
(柔らかくて、落ち着く)
(ずっと昔からいた姉か妹のような、感覚も与えてくれる)
(likeとlove、どちらも心の中にある)
「……はふ…」
(肩に乗った彼女の顔が、息を漏らした)
(安堵と共に、その腕の力が抜けていく)
「ずっとこうしているのも、悪くないかもな」
「……うん……好き」

(そのまま何もなく、時間は過ぎた)
「……上がるね」
「おう」
(彼女はそう言って先に出ると、バスタオルを外した――ところで、慌てて俺は背を向けた)
(結んだ髪の下、綺麗なうなじに開けた背中から、腰に至る線が、一瞬見えた)
(悶々としている間に、彼女は体を拭き、そして風呂場を出た)
「ふう…」
(俺は何でこう、単純なんだろうな)
(少し落ち着こう。深呼吸深呼吸)
「すー…、はー…」
(そうこうしている内に、もう良いよと彼女の声がした)
(俺も上がるか)

「……」
(ドアの隙間から彼女は、俺にバスタオルを差し出してきた)
(洗面所で待っていてくれるのは、嬉しい反面少し恥ずかしい)
「出ます」
(開ける)
「……?」
「あの」
 ……かぁっ。
(慌てて後を向く彼女)
(パッと閃く花柄のスカートに、少し見惚れた)
(バスタオル巻いてるんだけどね)

(服を着直して、それから温め直したポトフを食べた)
(美味しかった)
(会話は少ないものの、ずっとにこにこしている彼女と、安心して過ごした)
「可愛いなぁ、川根さんは」
 ……がちゃこっ!
(こういうこと言うと、ウブに動揺するところとか)
(人のこと言えないけどね)
「最後にコーヒーまで、ご馳走様でした」
(また火傷するといけないから、煎れる時は付いてやっていたが)
「……」
(俺の顔を、じっと見つめてくる)
「何だ?」
「……もう、帰る?」

「――おし、じゃあせーので同時に、正直な答をYESかNOで」
「……?」
「俺に遠慮して帰したいならYES、まだ一緒にいてほしいならNO。俺も迷惑かけないよう帰るか、まだ一緒にいたいか、率直に答える」
 ……こく。
「いくぞ。せーのっ、」
『……』
(やっぱりな)
『……”NO”』
538名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 01:51:34 ID:gcYyFA0i
 がさ、ごそ。
(彼女が着替えている)
(俺はベッドの上で、腕で目隠し中)
 ――くいくい。
「ん…あ、それ…」
(半袖の寝巻は、少女が着るような柄と色)
(もこもこの半丈ズボンは、膝から下が涼しそう)
「川根さんらしいな」
 ……ぺこり。
(彼女はお願いしますと言うように頭を下げ、そうして俺の隣に、横になった)
「……あの」
「ん?」
「……私、馬鹿で、ドジで、口下手、だから…でも、ちゃんと、言う」
「おう」
「……このまま、ぎゅって、してて」

「ぎゅっと、か」
 ……こく、こく。
「俺も今は、それが良いと思う」
「……?」
「本当は、いつかは――川根さんと、痛いことしたいって考えちまう」
「……あ…わっ」
「でも今は、ただ優しく接したい。川根さんは、それでも良い?」
「……え、と…」
(自分の言葉が、些細に意味不明)
(けれども、好き)
「好きだよ、川根さん」

(腕の中に彼女の体を収めて、灯りを落とすともう一方の手も、絡め合う)
「……八尾、くん」
「?」
「……私も、優しいのが、良い」
(幸福感が沸々と、俺の何かを緩みに緩ませる)
(触れる肌は妙に冷たくて、こうして温めてやりたくなる存在)
(小細工や本能に任せる必要もなくて、こうして――ずっとこうして)
「分かった。じゃ…おやすみ」
「……おやすみ」

 ……ぴくん。
「どうした?」
「……あ…私も、好き」
(全くこの子は。何でこう、意識させてくれるんだ)
(遅くて頼りなくて、つい守ってやりたくなる、全部抱き締めたくなる)
(それはまるで他人じゃないかのような、大切さ)
「分かってるから、安心して寝ろ」
「……う、ん」
 ぎゅっ。
(やがて彼女は、寝息を立て始めた)
(俺の胸元に顔を、体に体を重ねて、手もしっかりと握ったまま)
(好きな子に必要とされることの嬉しさを感じながら、俺もこのまま一緒に……おやすみ)





長文失礼しました

よく考えたら、洗面器に顔を突っ込んで泣く、よりは
蛇口をフルに捻って水音に掻き消させるようにして泣く、のが正しいのかな
分からなくなった私は無口っ子好きで泣きシーン好き
539名無しさん@ピンキー:2010/06/08(火) 06:08:30 ID:yk+j4Pfi
GJ!
甘々な依存っ娘は大好きですw
エロい続編希望
540名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 07:02:21 ID:6oZdtDhl
ハイテンション無口っ子
541名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 08:52:52 ID:S4QLNrvD
※実は書き込みがないだけで、>>539-540の間には大量の無口っ娘がいました。
542名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 02:20:42 ID:st41dCB3
>>541
なにその石田ばりのサイレントマジョリティwwwwwww
543名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 01:40:23 ID:S6rppRRQ
デュラララのセルティさんは多弁な無口っ娘
544名無しさん@ピンキー:2010/06/15(火) 12:33:46 ID:mcFope4N
>>540>>541のせいで悪の戦闘員の如くわらわらと群がってくる無口っ娘を想像してしまった
545名無しさん@ピンキー:2010/06/17(木) 03:34:12 ID:IsDb2FTt
>>429-439の続きは…
546名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 22:48:04 ID:qSojHLMk
保守
547名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 01:55:49 ID:RpbCpS2J
もっと大きな声で! 「保守ッッッ!!!」。これくらいの声を出せっていつも言ってるだろ!?
548名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 02:04:18 ID:YU1CvGcv
………………燃え尽きるからダメ
549名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 07:40:20 ID:snruBuBM
熱血系無口と言うのもアリかもしれない
550名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 13:42:08 ID:VjLLWmyV
勉強中なのに遊ぼうと言い出す男に鉄拳を食らわせるとかか
551名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 11:42:19 ID:8N2vMO4a
むしろ勉強してる男の服の裾をくいくい引っ張って遊ぼうアピールするも無視されて寂しい無口っ子
552名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 23:05:06 ID:j0N0JGD+
よしわかった、絵本を持ってきて背中合わせに座って読み出すんだな
553名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 23:56:00 ID:+hMRvhmI
無口っ子が書斎にやって来て構ってほしがるけど、男は仕事中
退屈そうにしながらも帰らないものだから
つい悪戯半分で本棚にある官能小説を渡してみる

壁に寄りかかって静かに読んでいる

やっと一段落ついたのでコーヒーでも煎れようかと席を立つ男
ほんの微かな吐息が、甘く漏れ聞こえてくる
見てみると、無口っ子がショートパンツの股座をもじもじさせながら
やらしい気に取り憑かれたような表情をしつつ、官能小説を読み耽っている
声をかけると、びくっ! と反応して色々自覚し、顔を羞恥に染める

しばらく見つめると、切なげに近づいてきて洋服の裾を掴んでくるので
どうしたのと尋ねて頭を撫でてあげるけど、真っ赤な顔して俯いたままの無口っ子可愛い

その後寝室で、男は少し濡れた大事な所を指で簡単に可愛がってあげて
無口っ子はもうそれは切なくよがるものだから、つい本気になりかけるけど
理性で食い止めて最後にキスをして、続きはもう少し大人になってからね
と言うとこくこく素直に頷いたから、じゃあおやつにしようか
554名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 02:15:57 ID:bFzV80c5
ぐっじょぶ
555名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 04:41:36 ID:kBViDkhR
>>553
紳士なロリコンだな
いや既に犯罪か…
続きに凄く期待したいw
556名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 22:24:34 ID:TGN4XTCj
「森田さんは無口」二巻発売記念age
557名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 17:41:12 ID:8xEU0KVY
確かに可愛いが……















逃げたな
558名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 19:32:45 ID:eRgnV6X3
新ジャンル「無口セガサターン、シロ!娘」
559名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 20:12:05 ID:uUVfyLmh
>>558
部屋の中で胴衣着て、伝説のコントローラー両手にやりこんでるんですね
で、ある日物凄く悲しそうな顔してるので何事かと思ったら
パワーメモリーの接触不良でデータが破損してて、いたたまれず慰めてあげる立場に

「また二人で出来る奴は一緒に進めてあげるから」
「……(しょんぼり)」
「消えたらまたやり直せば良いんだよ。ほら」
「……」
「…こほん。あー、心配するな。ずっとそばにいるから。俺はデータみたいに消えたりしないから」
「……(じわぁ)」
「って、こんな時に卑怯だな俺。悪い」
「……(ぶんぶんっ!)」
「よしよし。じゃあほら、もっとぎゅっとしてやるよ」
「……う…ぐす、ぐす…」
「ゲームやってるお前が好きだからさ、元気出せよ」
「……(こく)」

そんな彼女は見た目の割に根性がないので
シャイニング・ウィズダム(知らないよな)をやる時はいつも連打役の男なのでした
560名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 20:58:57 ID:GxuGK8ch
ファイターズメガミックスかバトルバで対戦してくれよ
561名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 00:59:31 ID:6P2QXqFR
男「ハードは任天堂だろjk」
無口「!!?」
562名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 02:16:37 ID:oVqHUZDE
妊娠に妊娠させられるんですね
563名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 03:51:15 ID:25mCxXV9
………………ぱわーぐろーぶ
564名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 05:08:51 ID:ZwTuYexs
高杉さんちのおべんとう
565名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 15:21:06 ID:jNJ5/+6a
BGMにホットバターのポップコーンが流れてそうな
コミカルな動きをする無口っ子
566名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 06:51:10 ID:+vb+Xaz/
メールでは饒舌な無口っ子
王道です
567名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 20:52:11 ID:ROFmpz5I
メルちゃんですねわかります
568名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:06:23 ID:iebmyVR0
七月に入り汗ばむ陽気の今日この頃
無口っ子が麦わら帽子を被って、外に出かける

ちりりりん
ちりりりん

涼しげな音に立ち止まり眺めた塀は、ちょうど目的地の家
門を通って、いつもなら合鍵を使って中に入るけど、今日は庭の方に回って行く
男はちょうど、縁側に座って扇風機に当たっている
簾を下ろして、辺りには簡単な打ち水がされて、吊るされた風鈴が心地良く響く
男が気づいて、いらっしゃいと歓迎し手招きするので、無口っ子はそれに従う

無口っ子は隣に座ると麦わら帽子を取って、ふぅ、と溜息を吐く
見ると薄く綺麗な肌には、汗が玉になって流れていて
暑かった? と尋ねるとこくりと頷いて、じゃあ何で男の家まで来たのかと言うと、それは構ってほしさ
そんな姿が従順で愛おしいので、肩を抱いてやると暑いのに当然のように寄り添ってきて
キャミソールに膝丈オーバーオールという夏真っ盛りの格好がとても映える

でもやっぱり暑いので、男は庭にまた水を撒いてみようかと誘ってみると
無口っ子も賛成のようなので、外の水道からホースを伸ばしてくる
そしてシャワーノズルを付けた先を持たせてもう一度蛇口の前に行って
出すよ、と声をかけて少しだけあれ? と思わせるような間を置いて、派手に捻ると奇襲成功
相手は想像通りホースに振り回されてびしょ濡れ状態になって
水を緩めてから出て行ってわざとらしく謝る男だけど、涙目で怒り出す無口っ子
報復と言わんばかりにノズルの先を向けられ、一瞬でびしょ濡れ返しにされる

男がぽかんとしていると、無口っ子は良い気味、と悪戯したくなるような笑顔を見せるので
このうやったな? で本格開戦となりホースの取り合い水の掛け合いになる
二人は水遊びに後先考えられない程に熱中して、もう辺りや体は水浸し
無口っ子の髪もキャミソールもしっとり貼りついて、ふと目を止めて見るとそれは幼い女神のようで
胸がくっきり透けたり水が滴ったり、を見とれていたらその隙に派手にやられる

風邪をひかせてはいけないので、男はそろそろ放水を止めて終戦宣言
そして縁側に取り込みかけだったバスタオルを一枚広げておいでおいでしたら
ばふ、と飛び込んで来たのでついでにそのまま抱き締めてもう逃がさんぞ
するとさっきまであんなにはしゃいでいたのに、途端に大人しくなる無口っ子可愛い

その後バスタオルで隠しながら服も下着も全部脱ぎはしたけど、着替えがないことに気づいて
仕方ないから男が自分の大きめのタンクトップを渡して、乾くまで着てなさいと言う
しかし着てはみたものの、恥ずかしいのか裾を押さえる仕草が尚も可愛くて
男はそんな無口っ子の頭をもう一度がしがし拭いてあげると、真っ赤な顔を優しく見つめて、そしてキスをした

二人で洗濯物類を干して、やっとのことで縁側の席に帰還
水に触れて涼みはしたものの、すっかり疲れてしまったまだ暑いお昼回り
お昼まだ? と訊くと無口っ子はやや拗ねたのか顔をつーんと背けるけど、そうみたい
なので男は連れて中に入って網戸を閉め、扇風機かけながら昼食準備
さあ出来た、と氷で冷たくした冷麦を出すと、無口っ子は少し機嫌が良くなって
でもまだ許した訳じゃないんだから、って顔をして強がる

食後はゴザを敷いて、二人でお昼寝
男が着ている甚平の肌触りが好きなのか、無口っ子ちゃっかり密着
でも扇風機の風と外から入って来る微風が涼しくて、風鈴の音色が眠気を誘う
それはクーラー利かせた部屋よりも気持ちの良い昼下がりで
すぅ、すぅ、と聞こえてくる寝息は幸せの子守歌で
その時、庭には小さな虹がかかっていたけれど、二人は気づかずに夢の中
569名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:13:07 ID:iebmyVR0
お昼寝の後は、男の得意な言葉遊びで時間を潰していると、あっという間に三時過ぎ
スイカ食べようか? と訊くと無口っ子の瞳は純粋なくらいに輝いて
じゃあ早速、と切り分けて、お盆に載せてお待ちどうさま
冷蔵庫で冷やしたスイカはとても美味しくて、誰かと一緒に食べるのがまた美味しい

男が何気に無口っ子をぼうっと見ると、タンクトップから覗く肩とか鎖骨
更には隙間からまだ平べったな胸が見えて
短い裾からは今にも大事な所が見えそうで見えない絶対領域を作り出しながら
そこから伸びた細い足は曲線を描いて、ぷらぷらと子どもらしく触れている
乾いて艶を取り戻した髪は柔らかそうで、と、そんな視線に気づかれて
何よぉ? と言いたげな顔をするんだけど、ほっぺにスイカの種が付いててあまりにも憎めない
男は手を伸ばして取ってあげると一言、好きだよって呟く
無口っ子は一気にぽぉ、って顔になって視線をパッと背けると、黙って食べかけのスイカを、見ている

スイカを食べ終えて片付けたら洗濯物も乾いていたので、取り込む
ほんのり温かいタオルや衣類の山に、無口っ子は体を埋めて気持ち良さそうに唸っている
男が名前を呼ぶと、? といった表情で振り返るので、隣に座る

これから夏休みに入ったら、一緒に海に泳ぎに行ったり、浴衣着て花火を見に行こうね

無口っ子は男をじっと見つめると、そっと寄り添っていって
二の腕をぎゅっと抱き締めて、こくりと擦りつくように頷く
華奢な体は期待と嬉しさでいっぱいになって、苦しそうでさえある
だから今日も男は、無口っ子を優しく可愛がる

服の上から愛撫の後、タンクトップの下から手を突っ込んで
いつものように大事な所を指でしていると、少しずつ無口っ子のそれは濡れてきて
きゅんとするほど愛おしく悶える姿に、男は顔を覗き込みながら名前を呼ぶ
恥らうも逆らえない快感、そして溢れ出る”好き”という感情を隠すことが出来なくて
幼く純な嬌声は続き、そのまま遂に、果てる

無口っ子はしばらく脱力に体を動かすことさえ出来なかったけれど
それでも、心配する男に両手を伸ばして、来て? とアピールする
何をされても良い、こんなにも好きだから、全てを預けたい
けれど男は一歩踏み止まって、終わりの合図であるキスをする
それはいつもより少しだけ長かったけど、やっぱり続きは”もう少し大人になってから”
でも約束する――そう言うと、無口っ子の目尻からは、涙が零れた

シャワーの準備をすると、無口っ子は甚平の裾を掴む
普段は俯いたままだけど、今日はじっと目を見ている
無言の”行かないで”に、仕方ないな一緒に浴びようか、と男

親子のように和んだ雰囲気でシャワーを浴びる二人
それ以上の関係は、多分お互いにとって今は辛い
けれども無口っ子は、思う
自分はまだ、子どもだから、だから、早く大人になりたい、と


そんな無口っ子は、やっぱりどうしようもなく可愛い
570名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 19:21:47 ID:Kr1psadg
GJ!!!!!!!!

結構年は離れてる設定かな
571名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 22:46:35 ID:+C+nLHEg
くそっ、悶えてたら暑さが増したぜ
572名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 03:34:30 ID:P8vv0Hwb
今日は七夕だな
573名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 05:46:52 ID:1hpTIdmf
「…………え? 七夕、終わり……?」
574名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 19:38:18 ID:pNRiMBhw
時間を忘れるほどに星に魅入ってたんだ。そうに違いない
575名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 20:23:27 ID:Qyz5839B
黙って星を見上げている無口っ子は絵になるな


夏でも涼しい高原の夜、無口っ子は一人ベンチに座って、空を眺めていた
その姿は絵本の一頁のようで、けれど何だか心細そうで
男はそっと後から寄って行って、ぽん、と肩を叩いてあげると
びくっ! と驚かれるけど、顔を見たら安心してくれて
隣に座って良い? と訊いたら少しだけ端に寄ってくれる優しさ

寒いだろうからと肩に上着をかけてあげると、それを大事そうに纏う
天の川の幻想的な空は何時間見ていても飽きなくて、そのまま

と、無口っ子が急にくしゅん、とくしゃみをしたので、男は訊く
そろそろ帰ろうか?
けれども無口っ子はもう少しだけ、このままでいたいようなので
仕方ない、と男はその体を抱き上げると、自分の膝上に
両手をクロスさせて抱き締めると、無口っ子も何も言わず背を預けてきて
柔らかい髪が肌にさらさらと当たって少しくすぐったいけど
そんな温かな二人の夜は、星が綺麗だね
576名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 00:59:39 ID:h2CZRFrq
GJ
577名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:20:25 ID:5qsu2Zxt
細目のイケメンがイメージできてしまう
578名無しさん@ピンキー:2010/07/14(水) 13:00:07 ID:P+eCDTiW
ボディランゲージでマシンガントークな無口っ子
579名無しさん@ピンキー:2010/07/16(金) 14:34:11 ID:Ah2hL0PD
わたわたしてるようにしか見えん
580名無しさん@ピンキー:2010/07/16(金) 19:09:23 ID:/+aUBBYt
泳ぎのジェスチャーで海水浴デートを猛アピール
581名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 01:24:43 ID:BVN3hfYY
名は体を表すとはよく言ったのものだ。
だが我が幼馴染、むーちゃんの「む」は睦美の「む」であって無口の「む」ではない。
そんな彼女が体を倒して腕で前方を掻くような仕草をしている。
「モグラ?」
ふるふると首を振る。
「違うのか、じゃあモゲラ?」
何それ、と睦美は首を傾げる。
知らないのか?ミステリアンの誇る土木作業ロボットを。
彼女は、今度は腕を水平にして前方を掻き出した。
「ああ、今度こそモグラだ」
さっきよりも大きく首を横に振る。
その度に彼女の肩口まで伸びた髪がサラサラを音を立てる。
「じゃあ冬のローカル線? エレベーター? 天岩戸?」
彼女はまた小首を傾げてから、今度は仰け反って腕を上に上げては下ろし始めた。
小学校中学年からプラザ合意以降の日本の経済の如くふくらんだ彼女の胸も揺れ動く。
むーちゃんの「む」はムチムチの「ム」でもない。
いつの間にか姿勢を戻した睦美にすごく睨まれてました。
いいじゃないか、減るもんでなし。とはさすがに言えず、
「エクソシスト? 寝ぼけて目覚まし時計を探す仰向けで寝てる人?」
がっくりと項垂れてから、彼女は片手で大きく円を描いてからそれを掴み、腰の辺りで手を止めた。
「フラフープ? じゃあ貴族の令嬢? ほら、スカート摘んでご機嫌麗しゅう」
肩で息を切る彼女の目に涙が浮かんでいる。
疲労のせい、ではないだろう。困る睦美の表情も堪能したことだし、そろそろ頃合だろう。
関西人ではないので、ボケの引き出しも少ないし。
しかし、今の彼女のジェスチャーを見て自分の答えがあっているのか自信をなくす。
鉢巻締めて、上段の構えでふらふらと足踏みしている。水泳からいつの間に剣道になったんだ?
それを振り下ろして、何かが裂けて――
「スイカ割りか!」
ぶんぶんと首を縦に振る。
「スイカが食べたいのか?」
胸を凝視した時以上に睨まれる。はいはい分ってますよ。
「海行きたいんだろ? 再来週の日曜でいいか? 7時に駅前な」
睦美は嬉しそうに携帯にスケジュールを打ち込んでいたが、急に真面目な顔つきになると、
携帯の液晶を向けて再来週の日曜日、来週の日曜日、今日の日付を順番に指差した。
「なんで再来週かって? 新しい水着がいるだろうが」
必要ない、と彼女は首を横に振る。去年のものを使いまわすような真似は彼女にはできないだろう。
すでに新調してから俺を誘ったわけだ。準備のいい事で。だが、その努力は無駄かもしれない。
「一昨年みたいにスクール水着も駄目だ。去年の紐を寄り合わせたようなのも駄目だ」
図星だったらしく、彼女は「う」と一声発して困ったような表情を見せた。

腕を振って門扉をくぐる彼女を見送ってから、俺は首をかしげた。
再来週の予定を決めたのに、どうして来週の予定も埋まったんだろう。



>>580の期待にこたえたかったものの、猛アピールしているようにみえない事を遺憾に思う。
582名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 01:30:55 ID:xjXyMNoe
無口っ子をいじめると可愛いなあw

ところで

>去年の紐を寄り合わせたようなのも駄目だ

超kwsk
583名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 05:29:27 ID:I61Bjv86
>>581 ほうー
584名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 07:16:57 ID:Tnh7o7yR
ほんわかしたGJ
俺としては紐より巨乳スク水に反応したいとこだが
585名無しさん@ピンキー:2010/07/17(土) 18:13:46 ID:X7Nh7H2O
こりゃデパート水着売り場の試着室で一悶着編に期待するしかあるめぇ
586名無しさん@ピンキー:2010/07/19(月) 06:56:38 ID:iygKfAit
無口っ子の乳首を押すとどうなるの、っと
587名無しさん@ピンキー:2010/07/19(月) 11:24:38 ID:QVuiGxQE
最初は「……やめて」とかいって
手を払いのけてくるんだけど
そのうち無視するようになって
それでもいじり続けながら耳元で愛をささやく
そうすると無口っ子も頬がだんだん上気してきて
「気持ちいの?」って訊きながら首筋を舐めあげると
ビクビク感じちゃってるのに小さく「そん、な……わけ、な……い」とか言っちゃって
「じゃあやめるか」といって離れると
「ぁ……」とかものほしそうな顔でこっちを見上げてきて
「ん?どうしたの?」って耳元で訊くと
「ゃ……うそ……ホントは、もっと、いじって……ほしい……」とか上目づかいで
懇願してきて「しょうがないなあ」と言って再開するんだけど
さっきと違って乳首自体は触らずにまわりをゆっくりじらすように触っていくと
「ゃぁ……いぢわ、る……しないでぇ……」って涙目で見上げてくる
そしたら無口っ子にそっとキスをして
「いじわるなんて心外だな」っていいつつ服を





ふぅ……
588名無しさん@ピンキー:2010/07/19(月) 11:45:10 ID:saI4Q2dG
はえーよw
589名無しさん@ピンキー:2010/07/20(火) 23:33:57 ID:SLM9yrLC
お見事w
590名無しさん@ピンキー:2010/07/22(木) 17:46:03 ID:WEB/YsLJ
すごい今更だが、某斬魄刀の擬人化編見てて
花天狂骨の無口な方良いなって思った。一緒に花を眺めていたい
あの手の無口キャラ好みだ
591名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 05:50:40 ID:7hqDZWRt
九十九神的な無口っ子か。ふむ……
592名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 18:05:51 ID:eW9D56vA
何の付喪神が一番無口ぽいだろうか
593名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 22:13:26 ID:UuahY0aM
>>592
日光東照宮
見ざる言わざる聞かざる
594名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 10:39:32 ID:eU89fAJc
でもタヌキの化身だぜ?w
595名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 12:04:39 ID:tmvBv9ES
冷蔵庫はクールで無口そう。よく食べるけどw
596名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 14:59:22 ID:oeOjQzQ5
で、実は結構熱い所もあると
597名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 17:41:22 ID:CETMuuh4
無口な化け狸少女なんて単語が浮かんできた
598名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 18:07:35 ID:HG959ext
狸賽を連想した。
無口娘は狐より狸っぽいのかね
599名無しさん@ピンキー:2010/07/24(土) 18:44:46 ID:LPXtDdXb
同じおっとり系でも狐は饒舌で狡賢く
狸は寡黙で抜けたところがある、という印象
ぽんぽことかの影響かな
600名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 01:12:09 ID:mNrwKsbo
狸といえば大きな金○。女の子なら胸だろう。
つまり無口狸っ子が巨乳なのは確定的に明らか。
601名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 04:42:44 ID:0Rmg6iIK
狛犬の付喪神でお喋りな「阿」と無口な「吽」とか
602名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 15:24:44 ID:Jc4QVWmi
>>601
何故か真っ先に頭を過ぎったのが、おじゃる丸の狛犬兄弟だった…、なぜだ。
603名無しさん@ピンキー:2010/07/25(日) 22:59:27 ID:q0tphpHE
……あにさん…うち、なでなで、してほしい……

お賽銭くれよ〜的な化け無口っ子良いね
604ヨーグルト  :2010/07/26(月) 22:04:17 ID:yddN1qlS
始めまして。
無口娘メインではないですが、こんな話はいかがでしょう。


「クフッー! 夏はやっぱりコレよねぇ〜!」
ベットの上に寝っころがり、少女はアイスをぱくつきながら足をパタパタさせている。
足をパタパタさせながら‘シッポ,もパタパタさせていた。


彼女の名前はデビるん。
病気で倒れた父親である『デビル元帥』よりこの世界の制圧を任され半年。
就任当初より負けに負けて、『全世界完全制圧』まで後一歩のところが、
今や日本の、一地方都市の、街外れの、おんぼろビルの、狭い一室が唯一の領土となっていた。
ピンク色のワンピースを見に付け、
お尻から生えた魚を思わせる黒びかりした尻尾は足の動きに合わせてプラプラ揺れている。


何処からどう見ても、三下悪魔っ娘であった。


今は世界征服そっちのけで、アイスをパクつくのに夢中である。
「このチョコちょっと苦いなぁ甘くするようにお願いしなきゃだわ……」
『大人っぽくビターな味』と言って買った事などすっかり忘れてる。


何時もならベットの上でアイスなどぱくついていたら、戦闘要員兼、雑用の少年
『アルス』にめちゃめちゃ叱られるが、今日は打ち合わせに出て、帰るのは遅くなるらしい。

口いっぱいにアイスをほう張りながら思う存分ベットでだらだらしていた。

「ふふふ愚民どもめ、このアイスを食べ終わった時がお前達の――」

ピンポ―ン。

「はぇ? 誰か来た」
ベットから降りると、パタパタと玄関に走っていく。

「はーい、だれ?」
ガチャリ。
ドアを開けると、一人の少女が立っていた。
605ヨーグルト  :2010/07/26(月) 22:05:04 ID:yddN1qlS
(ふわぁお人形さんみたい)
その少女を見た時の第一印象であった。
人形のように真っ白な肌をして、銀色の髪を腰まで伸ばし、
全身はフリルのたくさん付いた派手な虹色の、所謂ゴスロリ服を着ていた。

「あれ? アンタもしかして私と同じ魔界から来た子?」
尋ねるデビるんに対し、その娘は少し首をかしげると、
フルフルと首を振った。

「ふーん、まあいいわ、暇だったし、入って入って」
手を引くとグイグイと部屋へ引っ張ると、わたわたしながら少女も家に上がりこんだ。




「でね、私が来たのはこの魔界の中のイチばーん深い‘くきゅーとす,ってとこ」
寝っころがりながらスケッチブックにグリグリと絵を書いていく。

「生きてた時に人形とかイラストとかちっちゃい娘しか好きになれなかった変態がくるのよ」
きもいよね、と、少女に同意を求めると、少女も『それは凄くキモくて最低』
と言う顔をしてコクリと頷く。
「あんたもコレに自分が来たとこ描いてみなさいよ」
スケッチブックのクレヨンを手渡すと、コクリと頷きグリグリと何やら書き始める。

ソレは‘名状しがたき何か,であった。

「そっかぁ苦労してんのねアンタ」
よく分からないが大変そうな所であるのだろう、分かったフリをして、刻々と頷くと、
少女も『凄く大変』と言う顔をして、コクリと頷いた。


「で、あんたなんて名前なの?」
デビるんが訊くと少女はしばらく何事か考える素振りをすると、ごそごそと
持っていた鞄に手を入れ、ヨーグルトのかかったサラダを取り出した。
「サラダ? なるほどね、よろしくね、サラダ」
ニッコリと微笑むと、握手を求め片手を差し出す。
606ヨーグルト  :2010/07/26(月) 22:05:43 ID:yddN1qlS
デビるんに言われ‘サラダ,は
『えっ!? 違うよ、サラダじゃないよ、良く見て!』
と言う顔をしたが屈託のない顔でにっこり微笑まれ、仕方なくコクリ頷き、
おずおずとデビるんの手をにぎる。
「サラダの手って凄いキレイ! それに凄く冷たいね」
サラダの手を握ったデビるんは驚きの声を上げペタペタと擦る。
サラダは『デビるんの手あったかくて柔らかい』と言う顔をするが、
ペタペタと手を触るデビるんはもちろん見ていない。
「ふにゃ〜、ほっぺたも冷たくて気持ちいいのよ〜」
フニフニとデビるんは自分のほっぺたを擦り付ける。
『デビるんのほっぺた温かくてフニフニして気持ちいい』と言う顔をしているが、
無論デビるんはほっぺをふにふにするのに夢中で全く見てない。
「ふわぁ〜気持ちいい〜」ペットリと抱きつくと全体を擦り付ける。
すっかりとサラダで涼を取るデビるん。
と、
ペロリ。
「ふにゃん」
デビるんの口から悲鳴が上がる。
急にサラダがデビるんのほっぺたを舐めたのだ。
頬を首筋を、サラダはペロペロと舐めていく。
「にゃーん、な、何するの!?」
逃れようと身体をくぎゅらせるが、その動きを見越していたかのように
ガッチリとサラダはデビるんを押さえつける。
『デビるん甘くておいしい』と言う顔をしているが、舐められてるデビるんには無論見えない。
「う、うう、イ、イイ加減にしなさいよ!」
デビるんはお返しにサラダの身体をくすぐろうとするが、その動きも先読みされ、手をが
しりと掴まれて、そのまま床に押し倒される。
「きゃん」
其のままスルスルとデビるんの着ている服を脱がしていく。

ペタンとした胸と、ツルンとした下半身が露わになる。

「ちょ、ちょっと! はなしなさいよ、馬鹿ぁ! ――っ!?」
ペロン。
「うにゃあぁ」
ビクンと大きく腰を動かし反応するデビるん。
サラダがデビるんの小さな胸をペロリと舐めるたびに、デビるんの身体がピクピクと反応
し、胸の突起がピクンと反応し続ける。
607ヨーグルト  :2010/07/26(月) 22:06:29 ID:yddN1qlS
片手でデビるんの両腕を押さえ、ペロペロと胸を舐めながら、もう片手で胸の突起をクリ
クリと弄る。
「あ、あううん」 ハアハアとデビるんの息がだんだんと荒くなっていき始める。
(このままじゃ、おっぱいだけで逝かされちゃう)
首をイヤイヤと振りながら、抵抗を続けるが、クリクリと先っぽを弄る指先や、
ペロペロと先端を舐めていく舌使いは相当な物で、デビるんの小柄な白い身体全
体が赤みを帯び、気がつくと、少しづつ下半身も感じ始めている。
冷たい指先はソレ一つが立派な凶器であった。
(うう、このまま手も足も出せないなんて)
まけづ嫌いなデビるんとしては幾ら気持ちよくっても、このまま一方的に生かされるのは
尺であった。
と言って、手は押さえつけられ、身体からは力が抜け、抵抗するほどの力は残ってない。
と、突然すっとサラダは身体を起こすと、鞄より何かを取り出す。
ソレはヨーグルトであった。
「ど、如何する気?」
ビクビクと怯えながらソレを見守っていると、
ポトリ。
「ニャあン」
それをデビるんの身体に垂らす。
冷たいヨーグルトが身体にかかり、ピクピクとからだをデビるんは揺する。
其の様子をじっと見つめていたサラダは身につけていた物を脱ぐと、自分の身体を、
デビるんに擦り付ける。
「ひゃ、ひゃわーん!!」
白く冷たい肉体がデビるんの身体を往復するたびに、デビるんの口から悲鳴が上がる。
胸だけでなく、ポッコリ膨らんだおへそ周りや、あばら骨辺りにも容赦なくヨーグルトを
塗りこんでいく。
自分に馬乗りになっている少女は無表情で、何を考えているか分からない顔をしているが、
どうやらこのまま自分のことをいじめる気満々のようだ。
脱いで分かった事だが、全体的にほっそりした体つきだが、白く透き通る肉体は神秘的とすら言える。
其の肉体に、白いヨーグルトがどろりと付き、神々しくも、禍々しくかつ、エロティックに感じる。
608ヨーグルト  :2010/07/26(月) 22:07:12 ID:yddN1qlS
(むぅ、サラダのぶんざいでぇ)
半泣きでジロリとデビるんが睨むと、びくりと一瞬サラダは怯えた顔をするが、
またもとの無表情な顔に戻ると、胸を揉み始める。
「う、ううう」
膨らみの殆どない胸をペタペタと擦りクリクリ突起を摘んでくる。
「こ、この! この!」
下から反撃を試みるが、巧みに身体を動かしポイントをずらして、デビるんの反撃を許さない。
その間も的確に、サラダはデビるんを責め挙げていく。
(な、何とか反撃しないと……そうだ!)
ニュルン。

チュプリ。

『!?』

サラダの身体がビクンと跳ね上がる。
デビるんの尻尾がサラダの膣口の擦っている。
『ズルイ!』と言う顔でじっとデビるんを見つめフルフルと首を横に振るサラダ。
だがデビるんは意に返さず、チュプチュプとサラダの下半身を責め立てる。
「今まで散々苛めてくれたお返しよ、覚悟しなさい」
イヤイヤをするサラダの下半身をデビるんの尻尾が責め立てる。
サラダの身体が大きく動いたところで素早く抜け出すと、そのまま床に倒しつけ、完全に攻守が逆転させる。
「フフフ、よくもやってくれたわね」
意地悪な笑みを浮かべジッと恐怖の色が浮かぶサラダを見つめると、身体を撫で回し始める。
もぞもぞと激しく身体を動かすが、それでもサラダは声一つ上げない。

「ふーん、頑張るじゃないでもどれだけ耐えられるかな?」
さらに意地悪く言いながら、先ほど自分がやられたように胸に手を当てると、右手で優し
く愛撫をしながら、左手はきつくつねり挙げる。
ビクン!
大きく身体を仰け反らせるが、それでもサラダは声を上げることなかった。
「もしかして、サラダって喋れなかったりする?」
少し心配になったデビるんが訊くと、涙をにじませながらサラダはフルフルと首を横に振る。
609ヨーグルト  :2010/07/26(月) 22:07:52 ID:yddN1qlS
「何だ、喋れるんじゃん、じゃあ、手加減するのやめた」
そう言うと、シコシコと激しく両の突起を擦り上げる。
ソレと同時に尻尾がサラダの小さな割れ目をグイグイと押し広げようとする。シッポ全体はヌルヌルと割目や陰核を擦り上げ、尻尾の先はグイグイと割れ目をこじ開けるテクニックに、サラダの細く真っ白な身体は見る見る紅く染まっていく。
両方の目に涙を浮かべ、それでも尚、全身に力を込め、歯を食いしばり、サラダは声を上げないよう必死に努力している。
「……ねえ、もしかしてあんた、喋っちゃだめってパパか、ママに言われてるの?」
そう尋ねると、少し考える素振りを見せ、ゆっくりと頷いた。
「な、なによ! そういう事は早く言いなさいよ!」
そう言うと、泣いているサラダの突起から手を離す。
「う〜、悪かったわね、ゴメン」
まだ泣いてるサラダの頭をなでなでと頭を撫でる。

『別にいいよ、平気』と言う顔をしてコクコクと頷いてみせる。
「ねえ、じゃあお詫びに、意地悪じゃない気持ち良い事する?」
そう訊かれて、サラダは少し顔を紅くして、
コクリと小さく頷く。


ペチャペチャ。
二人は身体をペッタリとくっつけあいながら唇を舐めあう。
「ふふ、サラダの口の中、ヨーグルトの味がする」
ペロペロと、舌先がサラダの口の中を舐め取っていく。
やがて二人は、互いの頬、首筋、肩とゆっくり身体の下へと舌先をはわし、デビるんが下になると、身体の向きを互い違いにし、お互いの大事な部分をペロペロと舐めあう。
自分の顔に向けられたお尻の、割目部分を指先でつんつん突きながら、ゆっくりと舐めていく。
「さっきココを私の尻尾が苛めてたんだぁ」
舐めるのを止めて指でつんつん突くたびにピクン、ピクンと腰が痙攣するの楽しみながら、
ゆっくりと可愛い割目を指でなぞっていく。
「ほら、サラダ、手が止まってるよ」
そう言われると、慌てて、サラダがデビるんの可愛い割目を舐めはじめ、其の心地いい感覚を味わいながら、
「ね、ねえサラダ……コレも舐めてくれる?」
と言い、シッポを顔の前にちらつかせた。
610ヨーグルト  :2010/07/26(月) 22:08:46 ID:yddN1qlS
しばらく反応がなかったが、
パクリ。
サラダがシッポを甘かみした。
「くぎゅぅう」
シッポの先端を甘噛みされ、思わず変な悲鳴が上がる。
尻尾全体を手で擦りながら先の部分をパクパクと舐めていく。
「ふにゃー、し、しっぽ、シッポ、サラダに食べられちゃう!」
パタパタと身体を動かすデビるん。
『デビるん、手と指止まってる』と言う顔をサラダはするが、無論、デビるんは見えない。
「ま、負けないんだから!」
パクリ。
サラダの割目に口を持って行き甘噛みをしながら、舌の先を奥深くに入れる。
唇にサラダのクリトリスが触れる、片手で、お尻を鷲掴みにし、もう片手でお尻の穴を
クニクニと弄り回す。
どちらの少女も割目からは蜜を大量に垂らし、全身に汗をびっしょりかいている。

「サ、サラダ、わ、私もうだめ! もう我慢できない!」
やがて耐え切れなくなったデビるんの口から悲鳴が上がる。
顔は見えないがきっとサラダも同じ顔をしている事だろう。
サラダが激しく手を擦り、シッポを舐める速さが増して行き、
デビるんを絶頂に導こうとしているのが分かる。

「あ、ああん! も、もれちゃう! もうダメ! 漏れちゃうよ!!」

ブシュウウウウ!

サラダの顔に掛かるほど激しく体液を噴射させながら、デビるんはぐったりと力を抜く。
サラダもデビるんの足の間に顔を埋める様にガクリとうな垂れる。
少女二人は折り重なりながら、床の上でゆっくりと意識を失っていった。
611ヨーグルト  :2010/07/26(月) 22:09:43 ID:yddN1qlS



「デビるん様、デビるん様、起きて下さい」
ペシペシと頬を叩かれて、
「ん……ふぅ……うにゅぅ、あ、あれ!? アルス!?」
ガバリ、とデビるんは起き上がりキョロキョロと辺りを見回す。
いつの間にやらベットの上で寝ていたデビるんの傍らには戻ってきた彼女の雑用権、
戦闘要員であるアルスが立っていた。
「ほら、お腹丸出しで、風邪引きますよ」
やれやれと言う顔をするアルスを見て。
「あ、あれ? ねえ、サラダは?」
「サラダ? ああ、テーブルに出しっぱなしですよ」
「違う! コウ、こんな感じの女の子!」
ワタワタと身振り手振りで少女の特徴を説明する。
「いえ、僕が帰ってきた時にはそんな子をいませんでしたが」
「そう、じゃあ、私が寝てる間に帰っちゃたんだ」
気が付くと真っ裸だったので、ワタワタとデビるんは普段着に着替え始める。

「サラダ、か」
ふう、とアルスはため息をつく。

今魔界では人間界のハケンをカけ、魔界の住人と、『古きモノ達』と呼ばれる勢力が争っているのだ。
そんな大事な時に、うちのお嬢様と来たら、アイス食べてごろごろして、
魔界の最高責任者である『デビル元帥』は風邪で倒れ、その娘は、人間界で見ず知らずの
少女と遊んでいる。

「まったく、困った物です……ん? まてよ?」

はっと、アルスはテーブルの上のサラダに目を向ける。
聞けば、名前を聞かれてその少女はコレを出したとか。

ヨーグルト・ソースの掛かったサラダ。

もしコレがサラダの方ではヨーグルトソースのほうが言いたかったのだとしたら。

「ヨーグルト……ヨーグルト……ヨーグト」
ごくりと喉を鳴らし、じぶんの怖い考えを振り払うと、
「まさか、ね」
ハハ、と笑い。
「ねえ、アルスお腹減ったー! ごはん!」
と、叫ぶ少女のために台所へと向かった。
612名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 22:13:26 ID:yddN1qlS
以上です。
別のところで、この二人のネタを書いてますが、何となく無口(?)娘
が出てきたのでココに書いてみました。
気に入っていただければ幸いです。

それでは
613名無しさん@ピンキー:2010/07/26(月) 22:34:59 ID:mkUUHu4Z
>>612

くぎゅううう でワロタ
614名無しさん@ピンキー:2010/07/27(火) 00:21:51 ID:GKTbeuQo
何かどこかで見たことあるんだよな……どこだったっけ?
そしてサラダちゃん(仮)かわええw 彼女の正体は一体何なんだろうなー(棒読み)
615名無しさん@ピンキー:2010/07/28(水) 07:43:39 ID:ZsutsQvD
俺の中のクトゥルー神話といえば、「窓に! 窓に!!」










張り付いてこっち見てる幼馴染み無口っ子
616名無しさん@ピンキー:2010/07/28(水) 15:41:48 ID:vW/ZF5b2
>>606 よいw
617名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 02:36:47 ID:rn2UOPgo
“あぶほーす”さん
618名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 07:48:15 ID:JN9GphD+
エセ黒魔術にはまる無口っ子
619名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 16:35:01 ID:nDmtx8Ui
トゥーハートの先輩を思い出したがあの人はマジモンだった気がするしな…
620名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 22:40:28 ID:98k7xcbc
 ワンピースの上に黒マントを付けた彼女に、公園に呼び出された。
「え? 面白いことをするから見ろって?」
「……(こく)」
 彼女は樫の杖らしきものを地面に立てた。
「……」
 ○描いて。
「……」
 中に△を描いて。
「……」
 二辺に\ /とツノを付けて。
「……っ!」
 最後に中心を突きました――。
「……」
「……で?」
「……??」
「いや、おかしいな? って顔してるけど、とかげのしっぽにはならないから!」

「……(しゅん)」
 お、諦めたか?
「……」
 おや、今度は縦線を一本描き足した。
「……っ!」
「ツチヘビ、か。懐かしいけど無理だってば」
「……」
「何故首を捻るの? え? さっきは、出来た? 嫌だなお前、冗談なんていうタイプじゃ……」
「?」
「あれ、地面に微かに地割れが走って…何だろう、この嫌な汗。はは、まさか俺が標的なんてな…」
「!」
「!?」
「!!」
「(ry」

(尺八の音)
 ギラン!
 ――スパッ! シャシャシャッ!!
「……またつまらぬ物を…斬ってしまった」
 …キン。

 気づいたら俺は、火傷もなく無事でした。ホッと一息。
 しかし、ふと体がすーすーするので、何事かと思えば――服が、ない。
「ちょっ!」
 真っ裸です。何ですかこれは。
「……」
 しかもそんな俺を凝視しないで!
「…お前」
「!(びくっ)」
「上着で良いから服貸して」
「……(ぽ)」
「何でも良いから貸してくれー! これじゃ俺は変質者だ!」

 あれ? 鼻から温かい液体が滴っている。
 拭って見てみると、これは血ですね。魔法の後遺症か?
 いや、どう考えても原因は目の前の彼女にある。
 俺はマントを貸してもらうつもりだったのに、何故かマントを付けたまま、着ていたワンピースを脱――。
「どうしろと? …これを腰に巻けって?」
「……(こく)」
 そして彼女はマントに下着姿で、困惑気味に視線を泳がせている。
 困惑してるのは俺の方だ! けれど仕方なく装着。
「事情を説明してくれ」
「……(こく)」
621名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 22:43:41 ID:98k7xcbc
 ツチヘビ命中→火達磨はヤバい→杖は実は仕込み刀→火の付いた洋服だけ切除→変態露出狂の完成

「よく分かりました」
 一度に二つもの別系統の特技を披露するとは、さすが俺の彼女だ格が違う。
「で、俺は某ktktおやじと一緒で魔法に敵と見なされたのか」
「……くす」
「笑うなー。こっちゃ立派な被害者なんだからな」
「うっ……(しゅん)」
「迷惑なんで魔法と斬鉄剣はしばらく禁止!」
「……ぅぅ」
 あ、これ彼女のアイデンティティを傷つけたか?
「…じょ、冗談だよ。好きに使って良いから、な?」
「……(ぷい)」

 そうだよな。俺を楽しませようと思って、してくれたことなのに。
 俺は背を向けたままの彼女を、後から抱き締めた。
「…!?」
「ごめんな」
「……(こく)」
 良かった。安心すると、何だか気持ち良くなってきた。
 洋服を隔てていない感触は、柔らかい。
「……やっ」
 突然、俺の腕から逃れようとする彼女。
 …やば! つい調子に乗って勃起したアレが当たってた。
「……」
「……」
 そのまま無言を保っていると、彼女は抵抗しなくなった。
 俺の手の甲を押さえて、少し息を乱し始める。
「ベンチに、座ろう」

 彼女はベンチに座った俺の膝に、背中向きに跨った。
 体を預けられると、そっと胸に手を差し伸べる。
「んっ…」
 そこから可愛い彼女の体を、堪能するように弄る。
 こっちのワンピースの腰巻は、既にもっこり捲れ上がっていた。
 これはあれだ、スカート的な変態。
「はぁ……ひゃっ…!」
 ブラから乳房を解放し、体の線に指を這わす。
「魔法使いの割に、ずいぶん素直だな」
「やっ…あっ…」
 構わず下着の中に手を突っ込む。
 指で縦筋をなぞり、小さな突起を捏ね回す。
 すぐに熱さと湿気に溢れ出したので、有無を言わさず、イかせた。
「…! …っ!」

「ちゅ…つりゅ…」
 ベンチの前に中腰になった彼女は、俺の一物を咥えている。
「優しく、な」
 切ない顔して食んだり舐めたり、そして口に含んでぬるぬる扱く。
 徐々に、くる。唾液に冒されて、我慢汁で汚れる。
 必死に抜こうと頑張る彼女は、まるで精気を求める魔女のようだ。
「そのままいく」
「…んぐ?」
「くっ」
 口内で、栓は抜かれた。のた打ち回るような、熱い射精。
「……ん、ぅぅ…」
 出しきったのを確認すると、彼女は両手を受け皿に吐き出した。
「……うぇぇ」
 うん、まぁよく分かる。敢行してくれる気持ちだけでも嬉しいよ。
622名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 22:46:24 ID:98k7xcbc
「それ(精子)、魔法に使えないか?」
「……?」
「冗談だよ。変態通り越して軽く頭おかしいんだな俺は」
「……くす」
「何だよ」
「……こども、つくれる」
「それは魔法とは言わない」
「……」
「……でも成功するか、試してみるか?」
「……うん……して」

 抱き合わせになって、ディープキス。
 精子のよく分からない味のこもった彼女の舌だが、魅了されるには充分だった。
 まだ収まらずにしまえなかった一物を、今度は中に挿入する。
「動くぞ、しっかりな」
「……っ!」
 彼女を下にして、胎内に突き込む。
 もどかしいのに居心地が良い。痒い所に手が届きそうなのを、わざと焦らすような気分だ。
 出したい気持ちで逸りながらも、夢中で腰を動かす。
「……んっ」
 手で口を押さえて、声を出すまいとしている彼女。
「上と下、入れ替わるか?」

「はぁっ…はぁ…」
 彼女は器用に俺の一物に跨り、上下に体を動かし始めた。
 目の前で、どちらかと言えば貧相な体型がダイナミックに揺れる。
 俺はそんな腰を支えるように抱いて、負担のかからないバランスを保つ。
「ああっ…あー…」
 快感に意識を追いやられて、蕩けた表情。
「そろそろ、いくか?」
「…あっ…い、くっ…!」
 確認して、最後の高速ピストン。
「――んっ!」
「…っ!! はあぁ…っ!」
 そして、精子は彼女の膣内に送られていった。


 尚も繋がったまま、最後にキスしている途中で目が覚めた。
(ここ、公園じゃん!)
「……ふ、…?」
 すごい視線を感じる。彼女を制して、恐る恐るその方向を、見る。
「ハッハッハッ」
「……は、はは…はぁ…何だ犬かよ」
 犬だけど、凄い凝視してるよ気まずい。
「おい」
「……?」
「そろそろ、急いで俺ん家に帰るぞ」
「……?」
「ああーそんな顔すんな! 物足りなきゃそれからいくらでも付き合うから、ほれ!」
「……(にこ)」
623名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 22:49:42 ID:98k7xcbc
 それから俺たちに、スリル満点な帰宅劇が待っていたのは言うまでもない。
 これが本当の火遊びって奴か。禁止には出来ないが、もう完璧に懲りた。
「お前、すごく恥ずかしかったんだからな」
「……(こく)」
「こく、じゃねーよ。それも俺が貸してほしかったのはマントの方だ」
「……ええっ?」
「当たり前だろ。おかげさまで野外プレイに発展して至れり尽くせり――じゃない、踏んだり蹴ったりだコノヤロー」
「……?」
「自分は気持ち良かったよ? なんて顔するな! 全く、お前はやっぱり魔女だ。魔法使いならぬ魔女」
「……くすくす」
「はいはい笑えよ。あんな格好で外徘徊したら、俺はもう婿に行けねえ」
「……(ぎゅっ)」
「何だよ」
「……じゃ…わたしが、もらう」


おわる
624名無しさん@ピンキー:2010/07/30(金) 23:22:42 ID:EHFivWVU
>>617
懐かしい匂いがする……
625名無しさん@ピンキー:2010/07/31(土) 13:12:27 ID:1J1g6uQ1
誕生日に手作りのタペストリーをプレゼントしてくれる無口っ子
626名無しさん@ピンキー:2010/08/02(月) 20:15:28 ID:7GQWC6kB
言葉の代わりに煙草やキセルの煙で感情表現する無口っ子
ハートマークになったり、アルファベットを作ったり

いや、煙草吸う無口っ子は異端か
627名無しさん@ピンキー:2010/08/03(火) 05:58:30 ID:TV6NkE5Z
「…………(すぱー)」
「……」
「…………(すぱー)」
「……」
「…………(すぱー)」
「……ココアシガレット美味いのか?」
「…………(こくん)」
628名無しさん@ピンキー:2010/08/03(火) 14:54:32 ID:1KF830C/
>>627
アレはたしかに美味しい
小学校の遠足では弁当の後にみんな咥えてたなw
629名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 05:31:38 ID:3M9gQzVL
不良系無口っ子とか
630名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 15:01:11 ID:Qn1Ogn4E
>>629
と見せかけて目つきのキツさと人見知りな性格で誤解されてる
心優しい無口っ子とか
631名無しさん@ピンキー:2010/08/06(金) 01:16:12 ID:OgTMgPYY
道端の猫を無言のままずっと眺め続ける
しかし猫と目が合うと目つきの鋭さに怯えて逃げ出す(猫が
632名無しさん@ピンキー:2010/08/06(金) 10:58:17 ID:+4ib43t2
無口ちゃんマジ天使、伝説級の天使

こうですか分かりません
633名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 18:53:53 ID:+ViXZ2ph
>>439
絵麻ちゃんマダー?
634名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 04:31:24 ID:8zHipDwZ
無口っ子とにらめっこ
635名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 21:47:44 ID:FldRUrJU
変顔で全戦全勝余裕でした
636名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 06:00:55 ID:d/yNqQ44
無表情無口っ子を笑わせたら勝ち
637名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 06:10:17 ID:JI4+XkRE
無表情で無口な幼馴染を笑わせるためにずっと努力を続けてきた男。
・・・いつしかコメディアンとしてデビュー。すっかり売れっ子に。なぜだ。


でも舞台には無口っ子は必ず来てくれて、観客が大爆笑しても唇の端を0.数ミリしか歪ませないのだった。

・・・彼にとってはそれが最高の賞賛なのだった。
638名無しさん@ピンキー:2010/08/19(木) 11:09:56 ID:SP3pGn8X
いいなそれ
639名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 01:12:12 ID:AebWA51q
素直クールに無口っ子発見
640名無しさん@ピンキー:2010/08/20(金) 11:54:03 ID:Wz3SNSBk
急行します!
641名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 06:34:06 ID:kJNJHaqx
無口少女とお化け屋敷
642名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 06:40:58 ID:ZXJL2CkR
むしろ男の方が怖がって、それを「しょうがないなあ」って苦笑しながら手を引いてくれる年下(←重要)無口っ子
この手のシチュは年上だと当然過ぎだと思うんだ
643名無しさん@ピンキー:2010/08/26(木) 06:49:06 ID:QYokxg1d
しっかり者の年下無口っ子
のんびりした年上無口っ子
644名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 06:43:27 ID:RlYRa5fP
無口っ子な住人ばっかなスレだな
645名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 12:41:51 ID:HBHUOGY9
>>641-642
ちと使わせてもらいます
646名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 12:47:36 ID:HBHUOGY9
 暑いので、扇風機に当たりながら昼寝をしていた。
 そこに物音がしたので、薄目を開けて見てみると、妹の姿。
 眠そうな顔だ。
 彼女はのそのそとこっちまでやってくると、俺を少し退けて隣に横になった。
 特等席を取られた。
「……」
 茶髪ロングはぼさぼさで、上下ジャージはヤンキーっぽい普段着の妹。
 寡黙で恐い印象を受けるけど、兄である俺には割と優しい。
 というか身長や大人っぽさを考えたら、兄妹逆なんじゃないかって思う。
「……?」
 目を瞑ったまま、眉間にしわを寄せる彼女。
 俺が体――二の腕に触ったからだ。
 手に収まる安心感のようなものが、伝わってくる。
 そのままにしていると彼女の硬直も解けて、まあ良いか、って具合に力が抜ける。
 そして俺の方に体を倒して、無防備な寝顔を見せてきた。
 綺麗で、何となく頼もしい。

 俺はどうも妹に甘えてしまう体質らしい。
 この前もあれだ、家族で遊園地のお化け屋敷に行った時、驚いて思わず手を握ってしまった。
 彼女は涼しい顔で俺を見て、そして少し笑って、出口まで手を引いてくれた。
 傍目には情けないんだろうな男として。
 でも、彼女の包容力というか、それにずっと惹かれてきた。
「……すー」
 風で、髪の毛がさわさわ揺れる。
 呼吸は小さく、僅かに振れる体を俺は、ぼんやり見つめている。
「杏(あん)ちゃん?」
「……すー」
 俺が二の腕に手を置いたままなのに、相変わらず安心した顔してやんの。
 揺れる髪の毛を、少し手に取ってみた。
 そして思わず自分の顔に当ててみると、くすぐったいような感覚が広がる。
 頬擦りして、匂いを嗅ぐ。
 昔から妹が寝てるのを見つけた時は、こんな悪戯をする。
 変な趣味とかでなく本能なのか、じゃれるように自然と、すりすりしたくなる。
 起きてる時にやろうとすると、それとなく嫌がられるけど。

 何か幸せな感じがして、溜息が出た。
 髪の毛を離すと、また扇風機の風でさわさわ揺れ始める。
 気になるかなと思って、後に掻き分ける。
「……ん」
 膝を曲げて丸くなるように、少し寝相を変える妹。
 すっかり寝入ってしまったみたいだ。
 俺も彼女が隣にいても、安心して眠れる。
 子どもの頃ずっと隣で寝てたんだ、今更何が変わる訳じゃない。
 でも、出来れば俺、暑苦しくない程度で良いから、優しさが欲しい。
「……すー」
 俺は静かに彼女の近くまで寄ると、仰向けになった。
 片手を借りて腹の上に案内し、そこで俺の手で包む。
 軽く、抱かれるような感じだ。
 そして扇風機の風が、相変わらず気持ち良い。
 ふわあ――。


 1.目が覚めた時、妹はそこにいなかった。
 2.目が覚めた時、妹は相変わらずすやすや寝入っていた。
 3.目が覚めた時、妹は起きていた。
647名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 13:05:15 ID:HBHUOGY9
 →目が覚めた時、妹はそこにいなかった。

 俺はゆっくり、寝起きの余韻に浸る。
 彼女は俺のこと、どう思っているんだろう。
 兄貴ながら甘える俺を、口数少なに受け入れてくれるけど。
 少し前まで、隣で一緒に寝ていたんだな――俺に手を貸して。
 さて。
 喉が渇いたんで何か飲もうと、起き上がって台所に行く。
 と、冷蔵庫にメモ。
『スポーツドリンク、半分飲んでいいよ』
 開けてみると、確かに冷やしてある。
 暑い夏の必需品を俺にくれるなんて、珍しいこともあるもんだ。
 じゃあ、いただきます。
 きんと冷たくて、すごく美味しい。
 と、シャワーを浴びたらしい彼女が、首にタオルをかけて出てきた。
「……」
 ちょうど良い、残り半分頂戴――そんな風に手を差し出す。
 渡すと、すぐにくいっと飲み干してしまった。
 杏ちゃん。
「……?」
 何となく長生きしてね、俺も長生きするからさ。
「……ふっ」
 彼女は穏やかに笑いながら、俺の頭を撫でてくれた。
 そんな優しい、妹がいる生活。


 →目が覚めた時、妹は相変わらずすやすや寝入っていた。

 左手は俺の腹の上にしっかり置かれて、もう片方の手も横っ腹に添えられている。
 いつの間にか、軽く抱き枕にされていたらしい。
 稀に無意識の中に見せる、こういう妹らしい甘えるような一面もあるのが好きだ。
 マイペースで落ち着いていて、何を考えているか分からないところはあるけど、やっぱり俺と同じ腹の子だもんな。
 じゃれたり甘えたり、ってのは兄妹の本質だと思う。
 喧嘩したりで存在を疎ましくなる時もあるし、何もない時は空気のような関係だったり。
 でもたまに、求めてしまう何かがある。
「……すー」
 少しだけ、近くに寄る。
 すると彼女は釣り針を垂らされた魚のように、誘われて腕が伸びる。
 俺よりデカいくらいの身長で抱き寄せられると、甘えられているのか蹂躙されているのか分からない。
 けど、ふかふかだ。
 胸は普段も不意に押し当てられることはあって、そこそこ大きくて弾む。
 それが今は、顔の辺りに。
「……んん」
 ま、年頃の兄弟でこういうの想像するとちょっと気持ち悪いんだよな。
 姉か妹だから、母性本能とかそんなのが交錯して……んー、分からん。
 でも、幸せだから良いや。
「……ふふ」
 密着していても、涼しげに笑う奴。
「…私の…かぁくん……」
 そして寝言で人の名前を呼ぶなんて、一体どんな夢を見てるんだろう。
 俺をこうやって、優しく抱いたまま。
648名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 13:09:57 ID:HBHUOGY9
 →目が覚めた時、妹は起きていた。

 二の腕に息がかかるくらい、横になった顔が近い。
 そして熱くて、漏れてくるテンポの速い呼吸。
 妹がごそごそと手を動かしていることに気づいて、それから少し思考が停止した。
「……っ」
 杏ちゃん?
「…!!」
 いけないことをしているのを家族に見られた時、咄嗟に隠すか硬直してしまうか。
 彼女の場合は後者だと思う。
 見ると、短パンは膝まで下りて、太腿と下着があらわになっている。
 ジャージは前面のファスナーを開放して、はだけた胸からずれたブラジャー。
 俺のTシャツを握り締めて、微妙な空気の中、黙っている。
 そっと、顔を見る。
「……!」
 意外とうろたえた様子はなくて、上気した顔がぼんやりと、俺を見つめ返す。
 そして視線を逸らすと、少し恥ずかしそうにしながら溜息を吐く。
 …杏ちゃん。
「……かぁくん」
 異性の感触や匂いが近くにある時、ふとムラムラするものなのかもしれない。
 それを多分、妹としたらぼんやりとした自分の理想の男子像を、身近な俺で代用して……?
 溜まっているとか、そんなことは俺には想像がつかないし。
 でも不思議と兄妹だからとかってジレンマみたいなものは感じない。
 こんな状況でさえ、俺は彼女を何となく、信頼している。
「……」
 無言の両手で、俺の手を握ってきた。

 誘導された手が、妹の胸に直に収まる。
 俺の意思でない掌が、ぎこちなくそこをぐにぐに揉んでいる。
 昔から見てきた裸に特別な興味を持つことなんて、普段はない。
 一方で他所の女子のそれには、いつからか無性に興奮するようになった。
 同じものを前にして触れて、何かが疼く。
 なのに、例えば恋人と初めて、こんなことをするような機会があったとしたら――多分感じることはないような、変な安心感。
「……うっ」
 杏ちゃん、俺の思うように、して良い?
「……」
 返事の代わりに、心配ないよと言いたげに、笑ってくれた。
 反射的に俺は、横から覆い被さるようにキスをしていた。
「…ん…んっ」
 遊びのような本気のような、はっきりしない気持ちで繰り返す。
 もう一度掌で胸を揺さぶって、そこから腰まで、線を入れるように指を這わす。
 そしてへそら辺を何度か焦らすように撫でた後、下着の中に手を入れる。
 まっすぐ、柔らかな筋の通った場所に、指を食い込ませて、擦る。
「ん…かぁ、くんっ」
 半開きに緩んだ口元から、艶っぽい声。
 彼女の手がゆっくり俺の腰を惑わせながら、急所に触れる。
 俺には…しなくていいよ。
「…あっ…」
 でも首を横に振って、尚も俺のを優しく扱う。
 もどかしそうに踊る手に、妹ということも忘れてそこが膨らむ。
 やっと下を脱がされた時には、もう朝の起床時ってくらいに勃起していた。
 本当は自分で抜くはずの大きいそこを、今は妹が握っている。
 で代わりに俺が彼女のを刺激してあげていて、何か変なの。
649名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 13:19:40 ID:HBHUOGY9
「…っ」
 指が先からどんどん濡れていく。
 俺のもどんどん固くなって、先からおかしくなっていく。
 早く最後まで行きたくてスピードを上げると、もう自制が利かない。
「っ…あっ…」
 妹も同じように、俺のを手で包んで扱く。
 掠れるような声の連続が、そして人にしてもらうのが、こんなに快感だなんて思わなかった。
 腕と腕が体の間で絡まるのも、気にならない。
「……ああっ!」
 俺の空きの手首を掴んでいた、彼女の同じ空きの手が、急に握力を強める。
 体に力が入って呼吸が困難になる感覚は、俺にもすぐに来た。
 もうそろそろ、抜ける。
「…あ、あ…あっ――」
 出来たら、一緒に……っ!?
「あっ――!!」
 うっ…。
 ああ――。
「……」
 …抜けていった。
 いつもの独りでする時のように、ベタベタだ。
 喪失感で冷めて、放心状態になる。
「……かぁくん」
 妹が俺の名前を呼んだ。
 酷いことしちまったと思ったけど、見ると何だか穏やかな顔だ。
 だからとりあえず安心して、俺も見つめ返した。

「……かぁくん?」
 何?
「……」
 妹は寡黙で、気持ちを態度に、少しは出してもほとんど言葉にはしてくれない。
 一応俺の感じる範囲では、慕っていると言うか、慕わせてくれていると言うか。
 そんな彼女を、信じている。
 …杏ちゃん。
「……ふっ」
 彼女は軽く息を吐いた。
 よし、この辺で切り替えて、起きるか。
 ティッシュで体と辺りを拭いて、とりあえず一時凌ぎ。
「……?」
 立ち上がった俺の手首を、掴まれる。
 はいはい、なら俺も引っ張って起こしてやるくらい、しないとな。
 それっ。
「…よっ」
 腕にかかる体重は、軽い。
 反動をつけるようにして彼女も立ち上がると、屈んで扇風機のスイッチを切る。
 日が落ちて、気温はもうずいぶんと涼しくなっていた。
「……」
 ジャージの首元を正す仕草。
 胴の辺りをぽんぽんと払って、そして俺の方を見る。
 いつものように少し笑って、彼女は手を差し出してきた。
 俺はそれを、喜んで握らせてもらう。
 杏ちゃん、ありがとう。
「……ふふ」

 
おしまい
650名無しさん@ピンキー:2010/08/31(火) 20:18:01 ID:XEu79Jgs
パーフェクトだ >>646-649
651名無しさん@ピンキー:2010/09/04(土) 22:01:31 ID:Z2IGa290
「…………」(がぶがぶ)
652名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 04:58:16 ID:he4nA61d
ほら沙夜さん甘スレに帰りますよ
653ファントム・ペイン番外編2 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 13:28:49 ID:DPvrt8Dm
今回も番外編ですが、8レスとちょっと頂きます。非エロ
654男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 13:31:17 ID:DPvrt8Dm
爽やかな朝であった。
開け放たれた窓から適度な風がそよぐ。
太陽はまだ地平線近く、日差しも穏やか。
今なら蝉の声すら心地よく聞こえる。
日中大地が溜め込んだ熱もあらかた宇宙空間に吹き飛び、関西地方の夏場としては格別に涼しい。
着替え終えた伊綾泰巳は大きく伸びをして自室を出ると、台所へ向かう。
何時もより少し早い時間。
弁当を用意した後は、朝食に何か一品付け加えても良い。
普段はご飯に味噌汁と簡単な卵料理だけだが、これではビタミンが足りない。
果物のヨーグルト和えでも良いし、生野菜をサラダにしても良い。
――――さあ、何を作ろうか。
直後、泰巳は足に何かを引っ掛け、盛大に転倒した。
寝起きでまだ覚束ない足取りであった故、受身も取れず床に顔面を打ち付ける。
爽やかな朝が、爽やかでなくなる。
身を起こして背後を見やると、見慣れた少女が寝巻き姿のまま床の上で身を丸め、すやすやと眠っていた。
「…………」
思わず頭を抱えながら、流石にそのまま放置するのも憚られたので、泰巳は少女を揺り起こす。
「起きろ、絵麻」
「――――――ン」
泰巳は身じろぎする絵麻の左中指に、昨日は見なかった包帯が巻かれているのに気付いた。
一瞬いぶかしむが、直ぐに少女の瞼が蠢き始めたのでそちらに気を取られてしまう。
イモリの様にタイル床に頬をくっ付けていた絵麻は黒目がちな瞳を薄く開けた。
「ぅ――……、おはよう?」
「ああ、御早うだな。それより何でこんな所で寝ている」
絵麻は開けかけた眼を再び閉じると、そのまま床に突っ伏した。
「タイル……冷たい」
「ベッドで寝ろ」
返事が無い。
少女は再び夢の中。
泰巳は溜息をつくと、絵麻を肩に抱え上げ、彼女の部屋まで運んでベッドの上に放り込んだ。
日本の夏にばて気味の絵麻は、この所涼しい場所を探しては勝手に眠り込むことが多い。
「……犬猫かあいつは」
ドアを閉じ漸く食事の準備に取り掛かろうとしたその時、ポケットの中の携帯電話が小刻みに振動を始める。
相手を確認してから通話ボタンを押すと、耳慣れた溌剌とした声が響いてくる。
『もしもしー。おはようさん。伊綾起きてんかー』
「寝ていたら出ていない。こんな朝早くから何だ渡辺」
マイクの向こうの友人、渡辺綱はここ数日泊り掛けの旅行に赴いているはずだ。
不慮の事故でもあったのか、それにしては声が呑気過ぎる。そんな事を考えながら泰巳は少し不安に駆られる。
「何か遭ったのか」
『あー違う違う。スー(削除)ーヒー(検閲)ータイムの録画忘れただけ。
ウチに今父さんいないし母さん機械音痴だし、悪りぃけど録画お願――――』
「……俺は特撮など見んし、家のテレビに記録機能は無い」
こめかみを押さえて早口にそれだけ告げると、二の句も告げさせず一方的に通話を切った。
「―――― 一瞬でも不安に思った俺が馬鹿だった」
泰巳、再び溜息。
今となっては外の蝉の声も只喧しいだけだ。
爽やかな朝は、完全に破綻していた。
東側の窓からさんさんと差し込む日光にうんざりしながら、泰巳は予約しておいた炊飯ジャーを開けて飯を解し始める。
「今日も、先が思い遣られるな」

655男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 13:33:50 ID:DPvrt8Dm
事の発端は、一週間ほど前の夕飯の時であった。
「だめ」
例によって夜遅くに帰宅した伊綾家世帯主の靖士は、子供達から夏休み旅行の計画を聞くなり却下した。
茹で鳥のバンバンジー風と鶏がらで作ったモロヘイヤとオクラの冷製スープを父親の前に出しながら、泰巳は目をしかめた。
「何が駄目だ。ガキだけで旅行に行くのがか」
「それだけならいいんだけど」
何も言いはせずとも見るからに気落ちしている絵麻の姿を気まずそうに眺めながら、靖士は続ける。
「絵麻の健康診断の結果が出たんだよ。
特に問題は無かったんだけど、"強い紫外線を浴びる事は出来る限り避ける"旨の注意がついてね。
真夏の浜辺なんてもっての外だよ」
泰巳は目を細める。
「紫外線? こいつの色が白いからか?」
気をつけて見ないと判らない程度だが、絵麻は標準的な日本人からすると若干肌の色が白い。
「まあ、そんなところ」
ずるずるとスープを啜りながら靖士は話を打ち切ろうとする。
「とにかく、梅雨も開けたしこれからは強い日差しは避けること。
旅行に行くんなら屋内メインじゃないと認められないよ」
「……わかった」
普段通り簡潔に受け答えする絵麻だが、明らかにしょげている。
「医者の言う事だ。諦めろ。渡辺達には俺が連絡して置く」
ソファクッションを抱きしめて体操座りする絵麻の肩を叩きながら、泰巳は携帯電話に友人の電話番号を打ち込む。
「……もしもし、渡辺か。伊綾だ。
すまんが旅行は行けなくなった。絵麻もだ。……ああ。二人分キャンセルで頼む。
――――判っている。そっちは楽しんで来い。じゃあな」
通話ボタンを切って振り返った泰巳は、不思議そうにこちらを見ている二人に気が付いた。
「何だ」
「いや……いいんだけど」
目を泳がせる靖士。
「泰巳は別に旅行行ってもよかったんだよ」
同調して頷く絵馬。
「…………」
言われてみれば、それもそうか。
いつの間にか自分も旅行を取りやめて当然と考えていた自分の思考に、泰巳は戸惑う。
「まあ、親父も絵麻も自炊が出来んからな。
二人も家にいて外食ばかりなのは問題だろう」
半分自分に言い訳しながら、泰巳はカレンダーの予定日につけた赤丸を削除し始めた。
「良かったのかい」
「今からなら宿のキャンセル料金は取られない。無駄は無い」
父親からの確認に泰巳はぶっきらぼうに応える。
「水着、無駄になったけど」
口元をクッションに埋めながら、絵馬は何処となく嬉しそうに呟いた。
「ヤスミがいてくれるなら、ちょっと嬉しい」
「甘えるな。さっさと自分で自炊を憶えろ」
泰巳は絵麻の言葉に僅かに動揺するが、それをおくびにも出さず突き放す。
残ったスープを小鍋ごと冷蔵庫に仕舞いながら、泰巳は急に予定が空いた日程をどうしようかと思案した。
塾の夏期講習もあるし、今から別の旅行先を考えるのは難しい。
「仕方が無い。屋内のプールでも探すか」

656男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 13:36:26 ID:DPvrt8Dm
と、言うわけで夏休みのしょっぱなから、泰巳は早起きして二人分の弁当を用意し、8時過ぎには絵麻を叩き起こして、ヒートアイランドな夏場の街中に赴く羽目になったのであった。
とは言え、一度電車に乗り込んでしまえば、後はクーラーの聞いた車内で待っていれば良い。
目的のプールは駅から地下道で直通となっている。
折り良く駅に入ると同時に到着した地下鉄に乗り込んで、泰巳は大きく息をついた。
「家から徒歩で20分程度だが、あの炎天下だときついな。
お前は大丈夫か?」
横でクーラーの風に当たっている少女は、暑さに辟易はしていたものの、特に体調を崩している様子はない。
今日の絵麻は白いサマードレスに麦藁帽、オプションに真っ白な日傘と、何処となく深窓の令嬢を思わせる格好であった。
が、帽子を団扇代わりにパタパタ扇いでいる姿は全くお嬢様っぽくない。
泰巳はポケットから百円の扇子を取り出した。
「……使え」
扇子を渡された絵麻はしばらくきょとんとしていたが、何を思ったか腕を伸ばして泰巳の首元を扇ぎ始めた。
「誰が仰いでくれと頼んだ。お前が、お前の為に使えと言ったんだ」
ケラケラと、二人ものでない笑い声が近付いてきた。
「相変わらずやな、お二人。見てて飽きんわー」
髪を後ろで一つに縛った、縁なし眼鏡の少女が気安げに手を上げる。
「絵麻嬢ヤスミン、おひさー。ちゅうても3日やそこらやけど」
「何であんたがここにいる、北大路」
丁寧にお辞儀を返している絵麻を尻目に、泰巳は車両を跨いでやって来た少女、北大路侑子を睨んだ。
「メールで絵麻嬢に誘われたんやけど――――、色々ばたばたしとって返事せえへんかったからなあ」
「旅行行ったと思ってた。渡辺さん達と一緒に」
呟く絵麻に対して若干気まずそうに侑子は釈明した。
「身内でちょっとあってな、昨日まで忙しかったんよ。すまへんね。
てな訳でいまから飛び入りでご随伴、あかんかね?」
「歓迎」
「別に構わんが」
嬉しそうな絵麻の横でむっつりと同意する泰巳を見て侑子はにやりと笑った。
「もしかして、デートのお邪魔だったかねえ」
「あんたは何を言っている。
こいつは単に水場で涼みたいだけで、俺はどこかで泳ぎたいだけ。
目的が一致したから一緒に行くに過ぎん。
逢引き等では無い」
「はいはい」
侑子は笑いながら、素早く絵麻の隣に回り込んで顔を覗き込んだ。
「絵麻嬢はヤスミンと一緒ならどこでもええんやろ?」
「……ん」
絵麻は少しはにかみながら、素直に肯定する。
ほれみい、と勝ち誇ったように泰巳をからかう侑子。
「でも」
と絵麻は続ける。
「みんなと海、行きたかったかな」
「海位お前の里にもあったろう」
絵麻の出身はオーストラリアらしいが、日本人の泰巳にはグレートバリアリーフのイメージが強い。
だが、絵麻は首を振った。
「じゃあ、絵馬嬢おったんは南ん方かえ? シドニー?」
尚も首を振る。
「ずっと砂漠にいた。赤い土と岩ばっかりのところ」
「ふうん。それて、エアーズロックとか、ウーメラとか、そういうの?」
「どっちも聖地だろう、先住民の」
簡単に住める物か――――泰巳がそう続けようとした所でブザーが鳴り、アナウンスが目的地への到着を告げる。
結局、二人とも絵麻の故郷の具体的な場所は聞きそびれた。

657男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 13:39:10 ID:DPvrt8Dm
その郊外にある某プールは、ショッピングモールに隣接し、流れるプールや遊園地、温泉まで備えた総合レジャー施設である。
人ごみが嫌いな泰巳としては乗り気ではなかったが、一部テラスを除けば殆どの施設を屋内に収容し、天井はUVカットガラスで覆われていると聞いて、止む無くここを選んだのだった。
ボクサータイプの水着に着替え終え、プールに出た泰巳は慣れないコンタクトレンズの調子を確かめながら辺りを見回した。
人の少ない午前中を狙ったのだが、それでも家族連れや健康目的の老人で結構な人出が見られる。
「まあ、どうせ俺は水深の深い所しか行かねえしな……」
これが午後を回ると、若者やカップルで溢れ返るらしい。
泰巳としてはそうなる前にさっさと帰りたいのだが、連れの女二人は中々脱衣所から出てこない。
騒がしく走り回る小学生達を無視し、苛立ちを表に出さぬ様努め待つこと10分、最初に出てきたのは侑子だった。
ツーピース水着らしいが、パーカーを羽織っているのでビキニかタンキニかは判別できない。
「やっほー。ヤスミンお待たせ」
「遅い」
手を振りながら近付いて来る侑子に文句を言いながら、泰巳はその背後を見回した。
「絵麻はどうした」
「サンスクリーン塗っとる。私も塗るの手伝っとって遅れたんやけど」
何時もの如くにやにやと笑いつつ、侑子は泰巳を突付いた。
「絵麻嬢、どんな水着か気になるやろ?」
「渡辺妹が選んだらしいから、奇異でない普通のものを期待している」
絵麻とも仲の良いらしい綱の双子の妹は、泰巳の知る限り極めて常識人であった。
侑子の指を避けつつ泰巳は鬱陶しげに掌を振る。
「そんなこと言うて、実のとこマイクロビキニやらスクール水着やらを期待しとるんやろ、このムッツリ」
「もしそんな物を着て来ようものなら、俺は他人の振りをさせて貰――――」
脱衣所から見慣れた少女が見慣れぬ姿で現れる。
ホルターネックの黒いビキニ。
布の量が多くパレオを付けている為露出度は低めだが、それでもヘソが出ている事に変わりはない。
てっきり大人しめのワンピースだと思っていた泰巳には少し意外だった。
「どない? 意外にムネあるやろあの子?」
「着痩せするんだな、あいつ」
「ハラのほうは締まっとるけどな。まだまだAやけど、そろそろBに……って知らんかったんかい」
実に意外そうに侑子は泰巳を見詰める。
「ほら、あるやろ。二人全裸のまま風呂場でばったりとか、うっかり部屋に入ったら着替え中とか。そういうラブコメした展開。
1ヶ月以上一つ屋根の下なんやし、視姦する機会はいくらでもあったんやないか?」
「有り得ん。馬鹿馬鹿しい。それ位双方共気を遣うに決まっているだろう」
二人の姿に気が付いた絵麻が近付いて来る。
「ごめん」
「別に待っていない」
泰巳は遅れて来たことを詫びる絵麻から微妙に視線を逸らした。
少年の羞恥心など判らない絵麻は不思議そうに自分から目を逸らす泰巳を見詰める。
「なんか、私の時とずいぶん態度違うな……」
「知らん。取り合えず揃った事だし、後は集合時間まで解散だ」
言うが早いか一人で泳ぎに行こうと背を向ける泰巳の腕を、絵麻が掴む。
「何だ」
つと指差した方向には、やたらと全高の高いウォータースライダーがとぐろを巻いて鎮座していた。
看板の説明文には、やたらと大層なネーミングの固有名詞の下に、"ゴムボート二人乗り限定"と書かれている。
何かを期待するような眼差しで泰巳を見詰める絵麻。
658男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 13:41:24 ID:DPvrt8Dm
「……まさか俺と乗りたい等と言い出す気じゃ無いだろうな」
「ええやんか、二人っきりでひっつきもっつきできるチャンスやで」
茶化すように言う侑子を半眼で睨みつつ、泰巳はそちらの方に顎をしゃくった。
「あの女と行け。女同士の方が問題も少ないだろう」
「冗談やないで! 絶叫マシンとか、わたし全然ムリムリ、無理や。心が繊細やからな。
あんな高いとこから滑り落ちたら死んでまう。
おふたりで、どうぞ気兼ねなく、楽しんできてください♪」
「……」
案外ビビリなんだな等と心中で呆れる泰巳。
その腕を、絵麻は尚も引っ張る。
「おい」
「行こう。きっと、楽しいよ」
にこやかに誘う絵麻。
この少女にしては珍しい事に、いやに積極的だ。
泰巳は溜息をついて絵麻の手を振り解いた。
「1回だけ付き合ってやる。準備体操が終わってるなら、さっさと行くぞ」
先に大型スライダーに向かって行く泰巳を眺めつつ、侑子は呟いた。
「……何だかんだ言いつつ、楽しそうやん」



1回だけでは済まされなかった。
それから小一時間、泰巳はジェットコースターにアスレチックに迷路に、散々連れ回される羽目になった。
「…………だりィ」
最後にもう一度別のスライダーにつき合わされた後、出口付近のプールで仰向けに浮かんだまま、泰巳はぐったりと呟いた。
その腹に突然の衝撃。
負荷された運動量で水中に沈み込んだ泰巳は、訳が判らないまま水面を目指す。
何とか空気中に顔を上げ、呼吸を荒げながら周りを見回すと、眼前で見慣れた少女が悪戯っぽそうに笑っている。
遅れて落ちてきた絵麻が、勢いそのままに泰巳に抱きついて来たのだ。
「お前なぁ……」
束の間反撃してやろうかと考えるものの、大人気ないので止める。
それよりも、少し気になることがあった。
「お前、何か今日テンション高くないか?」
そのまま泰巳と並んで仰向けに流されながら、絵麻は小さく頷いた。
「水の感触、好きだから」
目を閉じて呟く少女。
「自分の境界が溶けて、拡散していくみたいで、不思議」
水を吸って首筋に張り付く、少し長くなった髪の毛とか。
女らしさが垣間見える華奢な骨格とか。
普段は出来るだけ気にしないようにしている胸や尻の膨らみとか。
水滴が流れる滑らかな白い肌とレースのあしらわれた黒い布地のコントラストとか。
先程までの行動が幾分幼稚であった分、静かに水を感じる少女の横顔は、どこか大人びて見えた。
背筋にゾクゾクと未知の感覚が走る。
並んで流されて行く少女に妙な色気を感じた泰巳は、思わずそこから目を逸らした。
「恥ずかしいポエムだな」
恥ずかしさを誤魔化すように泰巳は言い捨てると、体の向きを変えてプールサイドに向かう。
「俺は疲れた。少し休ませて貰う。
お前も適当な所で休憩を入れろ」
頷きながらも残念そうな表情で見送る絵麻はやはり歳相応には子供っぽい。
泰巳は首を振って先程受けた少女への印象を忘れることにした。

659男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 13:43:17 ID:DPvrt8Dm
『背中に押し付けられる柔らかな双球の感触。平静を装いつつ、彼は全身の血が情欲に滾るのを感じていた。
――――あのふくらみを、昨晩は心行くまで吸い尽くしたのだ。
臀部に密着する股間部の熱。平然としながらも、彼は全身の血が己が一極に集中するのを隠そうと必死だった。
――――あそこにおれは、昨晩何度も何度も己を突き入れたのだ。
昨日あれほど果てたにも拘らず、彼はもう既に臨戦態勢に入っているのを自覚する。
――――夜までだ、夜になるまで我慢してやる。さあ、今晩もこいつを散々に可愛がってやろう……』
「……あんたは一体何を書いているんだ」
「おー、ヤスミンおつかれさん」
一人ベンチに座って音読しつつ携帯電話に何事か打ち込んでいた侑子は、顔を上げて近付いて来た泰巳に手を振った。
「退屈しのぎに、ちょっくら妄想私小説でっちあげとったんよ」
「何でも良いが、声で読み上げるのは止めろ。
詳しい内容等聞きたくも無いが、とても子供には聞かせられない様なモノなのは判る」
携帯を折りたたんで、侑子はベンチから立ち上がった。
「で、どないやった?」
「何がだ」
「背中に押し付けられるムネの感触と、臀部に密着する下半身の感想や! 決まっとるやろ!」
泰巳は殊更深々と溜息をつく。
「あんたは、俺が気まずい思いをしている事を判って茶化しているのか」
「あ、気にしてるん?」
泰巳は憮然と頷いた。
「俺はな。あいつは全く頓着しない。俺を男とも思っていない様だ。
それならそれで距離を取れば良いのに」
「でも本心では嬉しいんやろー。気になるあの娘の肉体とひっつき放題。いちゃいちゃし放題。
向こうが気にしないのに付け込んでこっそりお触りしたりも……」
泰巳はこめかみを押さえつつ、プールの方で泳ぐでもなく水と戯れている絵麻の方を振り返った。
「絵麻! 今度は北大路がスライダー相乗りに付き合ってくれるそうだ!」
「なぬ!」
寝耳に水と目を剥く侑子。
絵麻は聞くや否やプールから飛び出て、期待に満ちた眼差しで侑子を見上げる。
「いや、だからわたし高いところあか……」
目を輝かせて上目遣いで見詰めてくる少女に言葉を失う。
謀ってくれたなと侑子は泰巳を睨んだ。
「楽しんで来たらどうだ。胸の感触とやらを」
半ば引き摺られるようにスライダーへ連行されて行く侑子を見送りながら、泰巳はそう嘯いた。
そのままベンチに座り、2人の帰還を待つ。
上の方から、ギャーだの、高いのいややーだの、こわい助けてーだの。悲鳴を聞き流しながら、泰巳は購入した缶ウーロン茶をすすった。
「……悲鳴を肴に飲む茶の香りは格別だ」
所詮缶だが。
やがてドップラー効果を引き摺りながら段々と悲鳴の発生源が降りて来る。
最後には人影が凄い勢いで排出口からプールに飲み込まれて、悲鳴は途切れた。
侑子のぐったりとした顔が水面から浮上する。
660男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 13:46:08 ID:DPvrt8Dm
「大丈夫か」
「……大丈夫やないで。マジで死ぬか思っ――――ぶぎゃああ!!」
女の子っぽくない悲鳴を上げながら侑子が再び水中に潜る。
泰巳は咄嗟にプールに駆け寄った。
「おい! 何があった!」
「ななななな! 何でもあらへん!
心配無用やから、ヤスミンあっち行っといて!」
「何でもないって、どう見てもそうは――――」
侑子を庇うように立ちふさがる絵麻を見て、言葉が途切れる。
侑子の妙に前かがみな姿勢と腕を体の前で交差させている様子から、泰巳は何となく状況を察した。
「誰か来ないか警戒して置く」
背を向ける泰巳。
侑子は人気のない方に移動して、何かストライプ模様の布地を携えて来た絵麻に背中を向けた。
「すまへん、おねがいするわ」
絵麻は頷いて侑子が付けていた三角ビキニの紐を結び始めた。
「ごめんなさい」
「絵麻嬢のせいやあらへん。パーカー脱いだわたしの失敗や」
スライダーに無理に付き合わせたことを謝る絵麻に、苦笑しながら答える侑子。
「にしても……見られてへんとは思うが、まさかあの鬼畜眼鏡の前で恥かかされるとは。
ああああ、お先真っ暗や。もう嫁に行けん。
まあ、ヤスミンが貰おてくれるゆうても真っ平ごめん、絶対にお断りやが」
暫し見詰め合う侑子と絵麻。
「ゆうとくけどツンデレやないからな」
「詰んで?」
「恥ずかしさが先にたって、本心で好きなモンを言葉では嫌いやゆう手合いのことや……ええと、違ったかも。
とにかく、ヤスミンみたいな連中と憶えとき」
絵麻は素直に頷いて再び作業に取り掛かった。
「侑子さんは」
慣れない手つきで出来るだけ固く紐を結びなおしながら、絵麻は呟いた。
「私だと見られても、恥ずかしくない?」
「え? あ、うーん。まあ、恥ずかしいっちゃ恥ずかしいけど……。同性やし」
同性でも同級生のクラスメートともなれば話は別だろう。
だが絵麻の様に無頓着な少女を前にすると、思春期にありがちな体型へのコンプレックスなどは抱くのが馬鹿らしくなってくる。
侑子は思わず苦笑した。
「絵麻嬢はホンマ、水着姿でも堂々としとるからなぁ」
「医者とかに体見せるの、慣れてるから」
侑子は一瞬言葉を詰まらせた。
少女が初めて語った己が過去の燐辺に、立ち入って良いものか判断できなかったからだ。
結局侑子は、その件から話を逸らした。
「まあ女の子なんやし、少しは気にした方がええで。
ヤスミンも男の子や。あいつも意識しとるし」
絵麻は首をかしげた。
良く判らないらしい。
661男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 13:51:10 ID:DPvrt8Dm
「おうい、ヤスミン。終わったでー」
紐を結び終えた侑子はプールサイドに上がりながら、背を向けている泰巳に声をかけた。
泰巳もプールから出て、ベンチにかけてあった侑子のパーカーを持って近付いて来る。
「で、どうする。まだ泳ぐか」
侑子にパーカーを手渡しながら二人に尋ねる泰巳。
「わたし、もうこりごりや。けどアトラクションの方はまだ行ってみたいとこがちょこっと」
「私も、まだ……」
絵麻がプールサイドに足を置いて、身を引き上げようとした瞬間だった。
突然少女の全身から力が抜け、中途半端に背中側に置かれていた重心が重力に従って下へ沈む。
絵麻の体はそのままプールの水面に吸い込まれ――――。
「と」
泰巳は素早く身を乗り出して、腕を伸ばし背中から絵麻の体を支え上げた。
「大丈夫か」
絵麻は呆然と泰巳を眺める。
眼鏡がなく焦点が合い辛いせいか、泰巳は顔を近づけても平然としていた。
「あ、ありが……」
「燃料切れだな。昼食を取って一度休憩したほうが良い。
まだ遊ぶか帰るかはそれから――――」
少女の耳に言葉はあまり入っていない。
普段眼鏡に遮られている少年の素顔が。
少女のそれよりがっしりと厚い胸板が。
少女の体を支えるしなやかな腕が。
少年の体温が少女の意識の中に一気に雪崩れ込み。
絵麻の顔は一瞬で真っ赤に燃え上がった。
「〜〜〜〜ッ!!」
少女は突然暴れだし、泰巳の腕をかいくぐってプールの中に跳び込んだ。
「な、何だ!?」
慌ててプールを覗き込む泰巳を余所に、絵麻は背中を向けて先程の侑子の様に体を縮めて水の中に沈み込んだ。
「おい、何の心算だ」
「……だって」
突然の奇行に面食らう泰巳を横目に、口元まで水面に沈みながら絵麻は呟いた。
「だって、何だ」
「ヤスミの体、がっしりしてて、温かくて、……私のと全然違うし」
ぶくぶくと時折水面下に沈みつつ、ぽつぽつと心中を吐露する。
「それに、眼鏡ないから、直接顔が見えて、……その……、はずか、しい」
「…………」
顔を含羞の色に染める絵麻を見て、泰巳は絶句した。
「んな事、今更言っても……俺だって恥ずかしいわ、あほ」
シャッター音にふと横を見ると、侑子がにやにやと笑いながら携帯電話を向けている。
「スポットライトを当ててあげましょうかい? おふたりさん」
「……勘弁してくれ」
思春期の新たな段階に入った少女と、どう距離を取ればいいかなど泰巳には判らない。
茶化してくる外野の存在が、今はひたすら鬱陶しいだけだ。
何にせよ。
泰巳にとって絵麻と言う少女に対する懸念事項が、また一つ増えた事は事実だった。

…………

帰りの地下鉄で、自分の肩に頭を寄せて眠りこける絵麻を見て、先程見せた羞恥心は一体なんだったのかと泰巳が呆れたのはまた別の話。
662 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/05(日) 14:00:57 ID:DPvrt8Dm
投下終了です。

漸く規制が終わった思ったら、夏休みも終わっていた。
時節的に1ヶ月ばかり遅いですね。
663名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 19:14:15 ID:JaFcc80l
GJ! 絵麻がかわいすぎて悶えるw
664名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 05:01:54 ID:aWuOxJfR
>>662
乙です
うは、絵麻ちゃん可愛い過ぎるw
自傷癖に鬼畜眼鏡が気付く展開はまだ先か?
665名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 10:28:03 ID:asGM2Ao5
村の少女がある日、里山に出かけた時
道に迷って家に帰れなくなってしまい、空腹で倒れそうになって
川の源流、清水が流れる不思議な場所に咲いていた、綺麗な花を口にしてしまう

気がついたら村人に介抱されていて、布団の上
山の出口で倒れていたところを、発見されたらしい
少女は言葉が出なくなっていた。村人は何か恐い物でも見たのではないかと噂した
そして少女は、あの花の味が忘れられず、何を食べても美味しいと感じなくなってしまった

山に度々、一人で足を運ぶようになった少女
体の渇きに落ち着くことが出来ず、何度も奥に入っては意識を失って
いつの間にか村に戻って来ている。「あの花のあった場所」が分からない

少女は花を食べるようになった。道端に咲いているものや、頂いた花
洗って、そのまま食む。それだけで渇きは収まって、何も要らない
段々と変わっていく少女を、村人は恐れ始める
感情は希薄になり、物を食べず痩せ細っていき、虚ろな瞳には、人には見えない何かが映っているかのよう

少女は今日もまたふらりと、山の中へ消えていく


といった蟲が憑いたような無口っ子を書きたいが、雰囲気出すの難しいな
段々自然に埋もれるようにして心を忘れていく少女を、一度だけこちらに引き戻して抱きたい
666名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 01:04:51 ID:FeEkqWWq
無口っ子と背中合わせで読書
667名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 18:41:44 ID:4VdoRa/9
場所は木陰だな
668名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 19:08:31 ID:usQzO7sj
むしろ無口っ子を膝の上に乗せて読書したい
669名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 22:52:04 ID:eU4ZH6s7
寝転びながら隣で一緒に読書の方がいい
670名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 22:27:17 ID:GNxjX/oy
こんな感じはどうでしょう?

タイトル 『カシマシィ!』

とある図書館。
二人の男女のパラパラと本を捲る音だけが静かに流れる。

と、

「ねえ、ねえ、智‘コレ,なんて意味?」
向かいに座る少女が、少年に質問をした。
「? ああ、‘ツンデレ,ってのは『ア、アンタなんか別にスキとかそういうんじゃないんだからね! 馬鹿!』とか言う女の子の事」
「へえ……じゃあサ、智はそういう風な女の子の事好き?」
質問され、少年は軽く首を捻ると。
「ん〜、あんまりにぎやかな女の子はちょっと苦手かな」
「そうなんだ、智ってにぎやかな娘が苦手だったんだ……あ、ねえねえ、これは?」
「ん? どれどれ? ‘無口っ娘, ああ、それは……」
少女から再び質問を受けて一瞬目の前の少女の顔を見た後。

『七瀬明菜』と、

‘無口っ娘て何? と、質問の書かれた紙,に名前を書き込み目の前の少女を指差す。
「私の事?」 と、言う顔をして少女は自分を指差し。
‘ふ〜ん,と言う顔になり、
‘先ほどまで質問を書いていた紙,を自分の下に寄せ、また目の前の本に視線を戻した。

二人の男女の本を捲る音。
そして時折ペンを滑らせる音だけが流れる。

加嶋市市立図書館。
671名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 00:37:17 ID:EAWPArAQ
無口っ子が自己主張するのはどんな時か
672名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 20:35:04 ID:/xul6FnP
>>671
巨乳無口っ娘とな
673ファントム・ペイン 4話 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:37:38 ID:47jMAnZI
本編です
13レスほど頂きます
674掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:39:34 ID:47jMAnZI
お腹から?
そんな所から出て来るんだ、ヒトって。
「そう。人間は普通ここから生まれてくるの」
彼女はそう言って笑いながら下腹を叩いた。
「これぐらいの小さい赤ちゃんとしてね。
それまではずっとお母さんのお腹の中で、十分な大きさになるまで眠っているわ」
教科書に書いてはあったけど、何だか信じられない、そんな風に言うと
「女の子のコメントじゃないわねー」
彼女は深々と溜息を吐く。
「何にせよ、本当のことよ。実際に生んだことがあるから間違いない」
彼女の子供。
もう15歳になるのだと彼女は言う。
「すごく長い間ほったらかしにしちゃった。
きっと恨まれているんだろうな」
自嘲交じりの悲しげな顔。
でも大丈夫、と彼女は笑う。
「あの人に預けてきたから。きっといい子に成長してるって、そう信じてる」
私も、その子に会ってみたい。
そして、できるなら友達になってみたい。
「きっとなれるわよ」

675掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:41:52 ID:47jMAnZI
「精密検査だと?」
南瓜のそぼろ餡掛けを突付きながら、俺は親父の唐突な依頼を訊き返した。
「うん、僕は明日出勤日だから。代わりに絵麻の付き添い、病院まで頼むよ」
「それは構わんが……」
ちらりと絵麻の方を見遣る。
青菜煮付けの汁を啜ったまま、ショートカットの小柄な少女も目を瞬かせている。
器から口を離して、掠れがちの声でボソリと呟く。
「……一人で大丈夫だよ」
「お医者様の日本語、専門用語が多いから。
きみの語学力なら問題ないとは思うけど、念のため、ね。
それとも――」
親父はにやりと笑う。
「泰巳と一緒はいやかい?」
絵麻は勢い良く首を振った。
「じゃ、決まりだ」
診察の予約の時間、出発の時間、病院のアクセスを確認する。
そこはかと無く嬉しそうな様子で、絵麻は小さく御馳走様を告げてから食卓を離れた。
彼女が洗面所に引っ込んだのを確認してから、俺は親父に詰め寄る。
「どう言う事だ」
「泰巳はいやなのかい? 絵麻とお出かけ」
俺は親父の戯言を遮る。
「精密検査だ。先月もだったろう。
何でこんなに頻繁なんだ」
親父は黙って肩をすくめる。
「先月、あんたは言ったよな。あいつの健康状態に問題はないと」
「そうだったっけ」
「なら何故こんな立て続けに検査を受ける必要がある。
持病があるのか? どうして治療を受けていない」
「泰巳」
静かに親父は俺の言葉を遮る。
「彼女は普通の健常者と変わりはないよ。
普通の生活が出来るし、切羽詰った問題があるわけでもない」
「あいつの塗り薬、相当強力な紫外線防護剤らしいな」
それ位の事は、ネットで検索すれば簡単に判る。
676掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:43:33 ID:47jMAnZI
「まさか色素性乾皮症とか言う奴なのか」
「それなら夏の真っ盛りに昼出歩けるわけないでしょ。
個人差もあるけど、XPは簡単な処置で済ませられる病気じゃないよ」
「なら何だって言うんだ」
親父は小さく溜息を吐いた。
「絵麻本人に聞いたのかい?」
「……大丈夫の一点張りだ。話にならん」
「なら、僕からも話すことはないよ」
俺は拳を握り締めて苛立ちを抑えた。
「……俺が事情を知ることが、誰かの不利益になると言う事か」
「絵麻は少し辛い思いをするかもね。これだけしか言えない」
「俺が事情を知っても、何の役にも立たないんだな」
「……何をそんなにイライラしてるんだい?」
俺は出来るだけ深く溜息を吐いて気を静める。
要は部外者であると、当然の事実を指摘されただけだ。
俺はまだ子供だと自覚し、自然に唇が吊り上がる。
「ガキがガキだと言われて、不愉快にならないと思うか?」
「そうかもね。けど、きみはそれだけじゃないだろう。
どうして泰巳は、この件でそんなにムキになるの?」
一瞬、答えに詰まる。
「それは――――
あいつが、絵麻が、身内だから」
「まあ、合格点かな」
親父は満足そうに笑った。
「できれば、家族、とストレートに言って欲しかったね」
「そう簡単に割り切れるか」
親父は話を打ち切るべく席から立ち上がった。
「絵麻は健康だし、何らかのハンデを負っている訳でもない。これは本当だよ。
きみは何の心配もする必要はない」
リビングに戻って来た絵麻が不思議そうな顔で二人を見ている。
親父は入れ違いで洗面所に向かい際、俺の肩を叩いた。
「傍にいてあげてくれ。それだけであの子の力になる」

677掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:45:00 ID:47jMAnZI
「問題なし、か……」
早朝から午前中一杯かけての検診が終わり、俺と絵麻は病院内の食堂で軽食を突付いていた。
絵麻は検診の直後と言う事で重い物は食べられず、小サイズのうどんを黙々と啜っている。
前回より随分軽めの検査だったせいか、食はそれなりに進んでいる様だ。
出汁が辛子で真っ赤に染まっている様だが、見なかった事にしよう。
何にせよ、向こうは温かい分まだマシだ。
俺が頼んだ定食メニューは燦々たる有様だった。
衣が湿気た魚のフライ、火が通っていない肉じゃが、正体不明の茸、煮溶けたほうれん草、間違えてソースの掛かった杏仁豆腐。
大方のおかずが冷め切っており、白飯に至っては完全な中米で食えた物では無い。
そこそこの値段で栄養バランスが取れている事だけが救いだった。
上目遣いで俺の箸が進まない様子を伺う絵麻。
「……おいしい?」
「旨そうに見えるか」
俺は溜息を吐いて、手元の資料に目を落とす。
血液成分、代謝機能、MRI、レントゲン写真、等々。
専門用語が多くて判り辛いが、健康的な範囲に収まっている事は理解出来た。
目を上げて絵麻の様子を眺める。
するすると器用にうどんを手繰る彼女の挙動からも、特に不健康の色は見えない。
「全く、何の為に態々こんな面倒を……。
血液検査に身体機能テスト、先月は胃カメラまであったな。
俺だったら絶対にボイコットするぞ」
絵麻は箸を止め、真っ直ぐ俺の方を見る。
「ヤスミは、怖くないの」
「何がだ」
絵麻は自分の胸にそっと手を当てる。
「病気」
まあ、確かに。
現代人にとって最も高い死のリスクは、病によっている。
感染症や癌、精神疾患に機械的損傷、遺伝子欠損。
自覚症状が無くとも、常にその危険は誰にでも付いて回る。
けれど。
「限が無いだろう、そんな物。
四六時中考えていても、頭が可笑しくなるだけ。適度に無視するのが良い。
"気晴らしによってそれを忘れる"と言う奴だ」
絵麻は首を傾げる。
「……パンセ?」
正解だ。
678掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:46:26 ID:47jMAnZI
「まあ、お前が何をそんなに怖がっているのか、俺は知らん。
無理に訊こうとは思わんが、少なく共身内の事だ、知って置きたいとは思う。
病気であろうと、何であろうと。
吐き出せる時に吐き出して置いた方が良いぞ」
絵麻は一瞬目を瞬かせた。
再び首を傾げる。
「お前の事だよ。
この御大層な人間ドックは何の為で、一体何を隠し事しているのかと訊いているんだ」
絵麻は口を開きかけるも、すぐに閉じる。
「言う心算が無いなら、別に良い」
「……聞いても、詰らないよ」
「詰まらなかろうが、知って置く必要があるかも知れん」
「…………知っても、何にもならない」
「俺が知りたいだけだ」
「………………」
ばつの悪そうな瞳から目を逸らし、昼食の続きに取り掛かる。
かちゃかちゃかちゃかちゃ。
食器を動かす微かな音が、やたらと耳に響く。
絵麻は尚も逡巡していた。
「……麺、伸びるぞ」
微妙な沈黙。
それを押し破ったのは、想定外の闖入者だった。
「あれ? 伊綾じゃね?」
聞き覚えの有る声に視線を上げると、食堂のすぐ外から活発そうな少年の見知った顔がこちらを伺っていた。
その後ろには彼の妹である穏やかな少女の姿も見える。
「渡辺か?」
手を上げながら近付いて来る少年の手には、百日草や百合の花束が。
休日なのに制服姿なのを見ると、誰かの見舞いだろうか。
「やっぱ伊綾じゃん、絵麻ちゃんも。奇遇だなあ。
なにしとるんだ、こんなとこで」
さしもの傍若無人な渡辺綱も病院内では大声は上げず、結と共に態々目の前まで寄って来る。
友人と出会えたからだろう、小さく手を振る絵麻の顔も僅かに綻んでいた。
お辞儀して来る結に会釈を返しつつ、質問に答える。
「絵麻の健康診断だ。俺は付き添い」
「ふーん。絵麻ちゃんどっか悪いの?」
「……さあな」
俺も良く判っていなかった。
679掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:48:15 ID:47jMAnZI
話題を切り替える。
「そう言うお前らは何の用だ」
「あ、うん。俺らは――」
「何やってるの結。そっち食堂よ」
不意に前方から聴こえて来た声。
綱の肩越しに小柄な少女が三ツ編を揺らしながら早歩きでやって来るのが見える。
少女は俺の姿を認めるや、一瞬目を顰めた。
俺にも見覚えの有る顔だ。
「滝口も一緒か。珍しい組み合わせだな。
揃って誰かの見舞いか」
「おう! 聞いて驚け」
綱は小柄な少女、滝口睦月の肩を気安げに叩きながら、屈託なく笑った。
「滝口、お姉ちゃんになるんだぜ!」
「ほう」
要するに、滝口の母親が新しく子供を産んだ、と言う事だろう。
少し意外だった。
滝口は15か16の筈。
彼女の家庭事情は知らないが、これだけ歳が離れたきょうだいも珍しい。
「おめでとう」
「……有難う」
形式的かつ機械的な遣り取り。
滝口は若干気まずそうに付け足した。
「折角だから、伊綾君と、絵麻――さん、だったっけ、二人もお見舞い来る?
母子の様態安定したから、赤ちゃんも抱けるけど」
「いや――――」
それは単なる社交辞令に過ぎなかったのだろう。
俺はすかさず辞退しようと口を開きかけて、閉じた。
絵麻が実に興味津々と言った風に、滝口を見詰めている。
普段感情が表に出ない彼女。
顔の筋肉に動きはなかったが、目の輝きが違う。
「……そうだな、お願いできるか」
結局俺は、申し出を受ける事にした。

680掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:49:50 ID:47jMAnZI
「ご出産、おめでとうございまーす!」
昼下がりの総合病院。産婦人科の一角。
綱が満面の笑みで女性に花束を渡している。
「ふふ、有難う」
滝口の母親は産後の疲れも見せず、結構若く見える。
20台と言われても不思議ではない。
柔和そうな、ふくよかで柔らかな笑顔。無愛想で痩せっぽちな滝口とは似ても似つかない。
「赤ちゃん、抱っこさせてもらってもいいっすか?」
「どうぞ。ここから、こう、こうやって優しく、ね」
「おおお! 小っちぇー! お肌ぷにぷにー!
ほうれ高い高――すみません冗談です」
結に窘められている。相変わらずだ。
俺は個室から離れた廊下の壁にもたれ掛り、その様子をぼんやりと眺めていた。
外は快晴。布団を干して来れば良かった。
折角の土曜日にこんな所で、一体俺は何をやっているのだろう。
「あんたはあっちに行かないのか」
他にする事も無かったので、仕方なく俺は3メートルほど右でベンチに座っている少女に話しかけた。
髪を三ツ編にした身長の低い同級生は、先程の俺と同じくぼーっと病室の方を眺めている。
「別に」
どことなく詰まらなそうに滝口が応える。
「あんたの妹だろう」
「半分だけよ。お母さんが違うもの」
継母との確執、か。
「妹には関係ないだろうが」
「……」
滝口、無言で俯く。
その肩を、誰かがそっと叩いた。
「結」
いつの間にかこちらに来ていた渡辺結が、何時もの笑顔で病室の方を指差す。
「でも……」
「おうい! 滝口ー!」
妹に続いてやって来た綱が割り込み、未だに渋っている滝口の腕を強引に引っ張った。
「ちょ……っ! つ、綱っ。ま、待って!」
「お前もこっち来いよ。お姉ちゃんじゃねーか。
お見舞いの代表が席開けてちゃサマにならんだろ」
「……行くわよ。行くから!
手、離し――――、……引っ張らないで」
顔を真っ赤にしながら病室へ連行されて行く滝口を見送る。
「……やれやれだ」
全くです。そんな感じで結も頷いた。
赤子を受け取る滝口は若干ぎこちない。
でも母親の方は気にした風でもなく自然だ。
赤ん坊は姉の方を見て笑い声を上げた。
「あ……」
「おー! 笑っとるわらっとる」
「あはは、お姉ちゃんがわかるのね」
681掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:51:10 ID:47jMAnZI
はしゃぐ連中を遠くから眺めながら、俺は小声で毒吐いた。
「馬鹿馬鹿しい。不随意運動だろうが」
ふと横を見ると、結が俺に苦笑を向けていた。
「……すまん」
少し無神経な意見だった。
でも、俺はあそこに混じれそうに無い。
素直に生命の誕生を祝う気持ちが起こらない。
(生まれ出た時、人は皆悲しいと泣き叫んでいる。この世には馬鹿しかいないからさ)
どこぞの小説の一節が思い浮かんだ。
それでも、社会を維持するには子供は生まれなければならない。
祝福されようとされまいと。
人生が素晴らしいものであろうがなかろうが。
盲目的に生を賛美しなければ人は生きて行けない。
生殖を忌避するグノーシス主義やカタリ派は、"産めよ増やせよ"と唱えるローマに滅ぼされる。
別にどちらが正しい訳でもない。
必要だから生産される、そんな存在。
幸せを掴んだものが生を声高らかに肯定し、不運なものは死の間際か細い呻きで生を厭う。
だから世間には、生命の賛歌が溢れ返る。
大多数の報われぬ亡骸を踏み躙りながら。
(まぁ、どちらかと言えば恵まれている俺が言うのも何だがな)
こんなのは、生死の境に立たされた人間の考えるべき事だ。
平和に日々を過ごせる人間は、綱の様に馬鹿笑いをしていれば良い。
そうは思うのだが、それでも矢張り俺個人の感情は、結局赤ん坊の事を好きになれないのであった。
俺は異常なのだろうか。
鬱屈した思考を切り替えようと横を見ると、隣では結が飽きもせず赤ん坊を囲む兄達を眺めていた。
寂しさの混じった、羨望の眼差し。
決して手の届かないものを、羨む様な視線。
眩しそうな。
(……女って奴は)
矢張り俺には理解出来ない。
女。
俺はさっきからずっと病院の隅で物欲しげに赤子を眺めている絵麻に目を向けた。
彼女も一応、女か。
「滝口のお母さん、絵麻ちゃんにもいいっすかね?」
それを聞いて上目遣いでおずおずと近付いて行く絵麻。
「もちろんよ。睦月ちゃん、お願い」
滝口の手から絵麻に、赤ん坊が手渡される。
腫れぼったい眼、ぶよぶよとした贅肉。
俺の目にはとても可愛らしいとは思えない。
腹が減ったら泣き喚き、排泄物は垂れ流すだけ。
他者の存在を意識せず、善悪の判断も出来ない、劣った存在。
醜い肉のカタマリ。
自分の遺伝子を増やす為の、生殖と言う利己的なシステムの産物。
しっかりと、落とさない様に、それを抱えあげる少女。
赤ん坊が目を見開いて、眼前の絵麻を見詰めた。
小さな掌が、少女の頬を撫でる。
おっかなびっくり、そんな感じの顔が、見る見る内に綻んで行く。
俺が見たことも無い様な、素敵な笑顔。
俺は彼女との間に、決して乗り越えられない絶望的な隔たりを感じた。

682掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 21:53:27 ID:47jMAnZI
「今日はありがとな、滝口。お母さんと妹さんにも礼言っといてくれ」
秋の日没は正に釣瓶落とし。日に日に早くなる。
朱に染まる空の下、一同は揃って病院から出た。
滝口には玄関口で車が待っている。
「みんなも、今日は……その、ありがとう」
滝口は若干目を逸らしながらそう呟くと、後部座席に乗り込んだ。
「親父さんにもよろしくなー」
別れを告げる綱と、その横で手を振る結。小さくお辞儀する絵麻。
頷く滝口を乗せて、黒い車は静かに走り出した。
じっと見送る俺を振り返ると、絵麻は首を傾げる。
「ヤスミ」
「何だ」
「滝口さん、ニガテだったり?」
「……どうしてそうなる」
半ば図星ではあったが、平静を装う。
結は苦笑して携帯電話に文字を打ち込んだ。
『似たもの同士ですからね。ちょっと近親憎悪もあるんでしょう』
「そうそう。二人ともアレだよ。なんつったっけ。
ピンチの主人公助けて、『勘違いするな! 貴様を倒すのはこのオレだからだ!』とか言うヤツ。
いわゆる――――えーっと? ……そう! ツンデレ!」
鬼の首を取った様に同意する綱のピント外れな発言に、俺は頭を抱えた。
「……くだらん。人を勝手に訳の判らないカテゴリーに分類するな。阿呆か。
あとそこ、メモらんで良い」
メモ帳を開き『泰巳はツンデ――』等と書き込もうとしている絵麻を止めて置く。
実際、俺と滝口は反りが合わない。
以前の彼女は、今よりももっと排他的だった事も有る。
気に入らない物事に対し、文句を口に出さない癖に態度には出る滝口と、口が悪い俺とでは、それで無くとも相性が悪かった。
最近は互いに丸くなったものと思っていたが、絵麻には微妙に険悪な関係をあっさり看破されている。
妙に鋭い観察眼に驚きつつ、俺は話を打ち切るべく先を歩き始めた。
「そんな事より、もう行くぞ。日が暮れる前には帰りたいからな」

683掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 22:07:26 ID:47jMAnZI
「可愛かったなー。赤ちゃん」
道すがら綱はそんな事ばかり連呼していた。
頻りに頷く絵麻。
俺は溜息を吐いた。
「ならさっさと相手を見つけて結婚してしまえ」
「俺?」
意外そうに綱は自分を指差す。
「無理無理。結婚なんて当分むーり。
だって俺、やりたいことあるし」
古生物学者か考古学者。
それが綱の夢だ。
言う迄も無く漫画の影響。
現在の綱も、部活に遊びに忙しい。
実に充実した青春だ。
「それに、さ」
綱は少し恥ずかしそうに笑った。
「恋愛とか結婚とか、相手の子のこと一番大切に出来ない奴に、する資格ないだろ。
俺にはまだ、無理だ」
今の綱にとって、最も大切な存在。
先を行く結の表情は伺えない。
少年に手を握られ、顔を赤らめる滝口の姿が脳裏に過る。
「お前は……残酷だな」
「ん?」
「……何でも無い」
綱は、例え滝口が泣いたとしても、結のことを優先するだろう。
だが、きっと滝口が好きなのは、そんな渡辺綱だった。
俺は話題を変える。
「あの赤ん坊も、すぐに可愛げのないクソガキになるだろう。
可愛い可愛い言っていられるのは今だけだ」
そして、何れは死ぬ。
「だからさ」
俺のネガティブな意見にも構わず、綱は笑顔で答える。
「今大事に思えるものを、それが出来るうちに精一杯抱きしめてやりたい。
だって、確実に生きていられるのは今だけだから」
だろ? と綱が笑い掛けて来る。
「刹那的な生き方だな」
「宵越しの金は持たねえ主義だし」
ふと、絵麻の方を振り返る。
何を思ってか、絵麻は微笑んで俺達を眺めていた。
結も苦笑している。
俺だけが、笑えなかった。

684掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 22:09:21 ID:47jMAnZI
「あ、俺たちはここまでだから」
渡辺家への分岐点に当たる交差点に差し掛かり、黙礼する結の横で綱は手を上げた。
「また明後日だな、伊綾、絵麻ちゃん」
「ああ、お前らも寄り道せずにさっさと帰れ」
ふと、耳を澄ますと、遠くの方からサイレンの音が聴こえる。
一瞬、結の顔が強張った。
音は段々と近付き、交差点の向かい側から真っ赤な消防車が救急車を伴って走り抜けて行く。
「火事かな。最近多いけど」
「あっちは来た方だろう。滝口の親御さん達は大丈夫か」
気になって携帯電話を開く。ネットから火事の速報を確認。
直ぐに近場で火事があった場所が見付かった。
病院からは大分離れている。その近辺に知り合いもいない。
不謹慎ながらも、少し安心する。
まだその場に留まっていた綱が、液晶を覗き込んで来た。
「ん、滝口んとこは無事か」
「らしいな」
携帯を閉じる。
綱は笑いながら俺の肩を叩いた。
「やっぱ、なんだかんだ言いながら、伊綾っていい奴じゃん」
「何?」
突拍子も無い言葉に目を顰める。
「赤ちゃんのこと、心配だったんだろ?」
じゃーな、と言い残して、結を伴い綱は去っていった。
俺は呆然と見送る。
赤ん坊が心配だった?――――そんな訳、あるか。
「ヤスミ」
心配そうな顔で、俺を見上げる絵麻。
「どこか、痛いの?」
「……違う」
俺は肺から無理矢理声を絞り出した。
自分でもぞっとするような、無機質な音。
「どこも、痛くない。それどころか何も感じないんだ。
あの赤ん坊を見ても、あれが笑う所を見ても、何の感情も湧き上がらない。
否、敢えて言うなら、憎悪とか、嫉妬とか、嫌な感情ばかり感じる」
彼女は言う。
『ヤスミは、いいひとだから』
違う、違うのだ。
俺はお前が思う様な人間じゃない。
「俺には、母親に愛されていたか、確証が持てない。
母さんが傍にいたのは、ずっと前の事だったから。
だからやっかみと言うのもあると思うけれど」
俺は、胸に溜め込んでいた澱を少しずつ吐き出して行く。
685掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 22:10:40 ID:47jMAnZI
「俺には生命の尊さが、理解出来ない。
生きる事が無条件で良い事だなんて、思えない。
俺はお前達から見れば、血の通っていない冷血漢なんだよ」
絵麻はそれを聞いて一瞬目を丸くしたが、直ぐに笑顔に戻る。
そしてゆっくりと、俺に近付いて来た。
俺は僅かに後退る。
直ぐに商店の壁にぶつかった。
一瞬気を取られた隙に、絵麻は俺の目前まで歩み寄っている。
戸惑う俺に構わず、そっと手を伸ばす。
そして顔を横向きに、俺の胸に押し当てて来た。
「何、を……」
じっとしてて。
そう囁かれた気がした。
成す術も無く、二人寄り添ったまま。
とくんとくん。
左胸に当てられた、彼女の耳に。
とくんとくん。
心臓の、おと。
とくんとくん。
「……だいじょうぶ」
目を瞑って微笑む彼女。
「ヤスミの心、あったかいよ」
「それは――――、恒温動物だからな。
それに、そこには心なんて無い。
心臓は、只の血液のポンプだ」
辛うじて、そう応える。
絵麻は頬を擦りながら首を振る。
「ブリキの木こりの胸には、とっくに心が入っている」
気付いていないだけ、そう付け加える。
「ヤスミは色々なこと知っているから、色々なこと考えちゃうから、素直に笑えないのかも。
でも、何が大切かなんて、難しく考える必要ない。
目を閉じて、抱きしめてあげれば、きっと判るよ。
赤ちゃんのことも、きっと」
「お前は――――」
俺は彼女を押し退けようと手を伸ばして、結局止める。
通行人の奇異の目が気にはなったが、勘違いさせて置けば良い。
苦笑しながら、伸ばしかけたその手で彼女の髪を撫でる。
「偶に口を開けば、何時も、何時も。
お目出度いことばかり言うんだな」

686掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 22:12:03 ID:47jMAnZI
絵麻は、自分の出自について語らない。
彼女の母親がどんな人間だったのかも、俺は知らない。
でも、一つ言える事は。
彼女がうまれて来て、よかったと思う。
仕合せでなければ生を肯定出来ないとするなら。
彼女には、しあわせでいて欲しい。
そしていつかは、彼女が望むならば、幸せな母親になって欲しい。
そう、願った。
687掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE :2010/09/23(木) 22:13:12 ID:47jMAnZI
投下終了です。

投下前に非エロ注意を忘れていて、申し訳ありません
688名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 22:14:37 ID:LAz9cP7P
gj!

いや、エロとか関係なくいい作品だー
689名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 06:20:17 ID:bz30v7zQ
GJ!
すごい引き込まれるな……。これ程続きが気になる作品も珍しい。
一つだけ残念なのは、渡辺兄妹とかの前作や今作の前話が保管庫に収録されてないせいで、キャラが掴みにくいってとこだ。
690名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 06:57:34 ID:pfTSgzE0
GJです。ヤスミンはマザコンなのか
しかし絵馬ちゃんホントかわいいな
691名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 10:31:50 ID:v9eexgBK
GJです
続き期待してます!

関西弁無口とかどうでしょうか
692名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 06:40:51 ID:wHj9fqnf
>>691
なでなで
「…………なに?」
「や、丁度良いところに頭があったもんで」
「…………」
「…………」
「…………何でやめるん?」
「へ? 何か嫌そうな気がしたから」
「嫌やない」
「!」
「…………い、嫌やないから、もっと、撫でて欲しいん、やけ、ど……」
「…………」
「…………」
「あーもう可愛いなコイツはー!!!」
「っ!? あかん、そんな強したら髪乱れっ、ん……駄目や言うとるのにぃ……」



こんな感じでしょうか>関西弁無口っ子
693名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 10:10:19 ID:Ofv4Ber/
いいねぇ GJ
期待通りだ
続き期待!
694名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 06:40:36 ID:/Bsg7M+y
関西弁無口っ子が来たなら……はんなり京都弁無口っ子が来ても良いはず……!
695名無しさん@ピンキー:2010/10/11(月) 18:20:47 ID:sVRpGahK
せやな
696名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 02:07:45 ID:ER73A0+3
せやろか
697名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 02:44:53 ID:mmfzp1OI
…んなごたないべさ
698名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 02:11:31 ID:iipUXuM1
…そう…なんだぎゃー……
699名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 17:05:06 ID:qJwE5+u8
FEに方言が恥ずかしくて人と話すのが苦っててキャラがいましたよ。
イベントが進むと話せるようになりますけど。


……同じ故郷のおっさんとだけですけど。
700名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 22:40:25 ID:FmKj6/cN
ネフェニーだな
魔道士オバお姉さんとか道化師ともあるぞ
701名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 00:00:28 ID:uw5BSpxc
むくち おれたち…
702名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 00:55:46 ID:GjpG/pEr
………?

…!

///
703名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 01:05:07 ID:GjpG/pEr
age……すまん
704名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 03:30:50 ID:2stbig/Y
何故かライブアライブ原始編を思い出した
705名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 08:46:16 ID:xu/rOlTz
ぽん
「無口すぎるぞ、少しは自己主張しろ」
706名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 17:26:17 ID:4bWRfE3I
「…………(だって恥ずかしいの……)」
707名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 19:47:42 ID:YAqcMnEp
森田さんは無口が流行れば……きっと書き手も増えるはずや……
708名無しさん@ピンキー:2010/10/23(土) 14:08:23 ID:6doGvnJZ
保管庫乙です
709名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 21:25:05 ID:x64IjJGw
>>707
既に俺の中では大流行中だぜ。
710名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 01:04:02 ID:PcsVJxto
>>707
キョージュ、師匠、つみきさん、なにげさん、山田のり子……
何気に4コマ界は無口っ子が豊富

あと、まんがぱれっとに大型新人が参戦したとか
711名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 02:27:28 ID:rvwdqA9c
>>709
ナカーマ

>>710
ぱれっとチェックしてみるわ
サンクス
712名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 03:03:47 ID:UTB8NnS7
無口にも程があるな
713名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 21:13:55 ID:lhT/n+qe
たまに喋るっていうレアさが欲しいな
714名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 20:43:04 ID:72+O490N
心の中ではマシンガントークな無口っ子

別名をパニクっ子とも言う
715名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 23:12:13 ID:5//hoRr9
神のみぞ知るセカイの栞も無口っ子だよね?
716名無しさん@ピンキー:2010/11/11(木) 02:28:15 ID:RBntV/lR
派遣戦士山田のり子でエロパロはキツいな
有閑みわさんならともかく
717名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 01:11:52 ID:hr0rvN7p
>>716よ一つ言っておくことがある
お前は山田のり子のエロパロは無理だと考えているようだが…

4コマエロパロスレで既に存在している。
718名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 08:08:04 ID:1oLiDJay
無口っ子が必死のアプローチ
719名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 15:09:38 ID:vVyKZSio
すりすり
720名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 14:40:42 ID:JfP5Zf0N
裾を掴んでもじもじが限界でした
721名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 15:09:23 ID:Z8sVjOb/
森田さんは無口がOVAになるとかなんとか。今から楽しみだ。
722名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 15:10:09 ID:Z8sVjOb/
森田さんは無口がOVAになるらしい。今から楽しみだ。
723名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 15:14:13 ID:oQVs2S1I
クイックイッ(…大事な事なので二度(ry)
724名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 17:20:27 ID:PRECWhy5
特装版のオマケなのか

予約しなくちゃ
725名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 15:15:00 ID:jQYHPZVf
コリラックマみたいな無口な女の子がいいな
726名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 18:40:30 ID:2NAsBs4b
いきなり股間のチャックをおろしてくるんだな。
それでこらこらといいながらも、触り返すとか。
727名無しさん@ピンキー:2010/11/28(日) 22:46:11 ID:jQYHPZVf
>>726
いいわあ、無口でイタズラ好き
それとコスプレが好きで、得意げに披露
728名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 00:36:01 ID:HsGW6gDM
上目遣いで裾を握りしめながら
「どう……?」みたいなことされたら
吐血必至。
729名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 01:56:43 ID:R0I7m3TL
「……」
「ん。財布は持った」
「……」
「ケータイもハンカチも持ったよ」
「……」
「忘れ物はない。じゃあ行ってくるよ」
「……」
「あ…ごめん、一番大事なの忘れてたね」
チュッ
「じゃあ行ってきます!」
「……(ヒラヒラ)」



新婚無口嫁を妄想しようとしたのに、パワーが足りない
730名無しさん@ピンキー:2010/11/29(月) 07:24:17 ID:lQ1lQI4V
馬鹿な、パワー不足でこの威力だと!?
731名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 08:02:08 ID:vFNlEOLX
732名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 10:04:44 ID:Hd4GWu2c
>>731
女「あ」

女「あー」

女「あ、あーあー」

男「……何してんの?」
女「…………(かぁぁ)」

とてとてとて……

男「あ!待ってよ!」




愛しの男くんとちゃんと会話するために発声練習していたところ、それを男くんに見られて逃げ出してしまう無口女ちゃんを妄想した。
733名無しさん@ピンキー:2010/12/16(木) 10:53:53 ID:HK2M1rZ8
女「…」
男「え?うんうん…」
女「…」
男「って、エアロスミスは、関係ないだろ」
734名無しさん@ピンキー:2010/12/16(木) 19:59:55 ID:mGERS8h7
>>733
ビー○ルワロタ
735名無しさん@ピンキー:2010/12/19(日) 14:11:22 ID:rSRsylVj
無口っ娘大統領とかどうか。
演説下手だがたまにぽつりともらす心に沁みるフレーズで権力の座へ。
可憐な容姿と確かなビジョン、超人的な政務能力で国民には人気だが、
ぽつりぽつりとでも会話をするのは幼馴染の秘書官だけとか。

もちろん5時になったら秘書官の手をくいくい引いて官邸の奥へと姿を消すのです。
736名無しさん@ピンキー:2010/12/20(月) 16:26:54 ID:f7xwNK0f
淑女なのは五時までだ!!
737名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 11:06:46 ID:DEFhDhfM
感情を表に出さない無口っ子
恥ずかしくてテンパるせいで喋れない無口っ子

無口っ子は個性的だな
738名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 18:34:12 ID:Rv/41L0S
もうすぐクリスマス
無口っ子と過ごす聖なる夜
まさにサイレントナイト

何も言わずにケーキをあーんさせようとする無口っ子かわいいよね
739名無しさん@ピンキー:2010/12/22(水) 18:52:22 ID:QOBXyWfr
何も言わずに横から差し出したフォークに気が付かず、振り向いたときにほっぺにぷすっと……




無言でパニックになる無口娘と頬からフォークを生やしてニヤリと笑う男
740名無しさん@ピンキー:2010/12/24(金) 19:04:30 ID:7c888mqF
しばらく書かなかったんでノリを完全に忘れた


何度も頼んでも、外泊許可は下りない
普段は忙しい両親も、今夜ばかりは娘の為にと思ってのこと
プレゼントを買って、レストランで食事をして、ケーキを食べて
そんな風に過ごす、今日はクリスマス・イブ

小さな町のイルミネーションは古臭くも綺麗で
中央広場には大きなツリー、電飾が赤青黄色に緑紫白と光り
子ども心を賑わすような、星やプレゼントや珠がたくさん飾られている
家に置いたリースには金色の松ぼっくり、町内会で配られたたくさんの飴やキャラメル
それはいつになってもわくわくするし幸せなのに、今は肝心な人がいない寂しさ

男はその日、仕事で遠方まで出ていた
夜には帰れると聞いていた無口っ子は、それから会いに行きたい
だけど、いくら普段お世話になっている人でも、それは迷惑だし奔放が過ぎる
心配する両親に無口っ子は、分かった、と気持ちを収める
強がって笑って、我慢する
自分はもう子どもなんかじゃないんだから、大人になるんだから

雪がちらついて寒いけれど、温かい家の中の、温かい夜
レストランで厳かな食事の後は、家でケーキを食べながら
親戚や一人暮らしの姉とかから届いたクリスマスレターやプレゼントに目を通す
一番気に入ったのは、愛らしいウサギのぬいぐるみ
今日渡せないかもしれないからと、昨日男が両親に先に渡しておいたもので
ふかふかな感触を抱き締めていると、少しだけ男のことが頭を過ぎる
そんな一人切なそうにウサギの目を見つめる無口っ子可愛い

夜、両親に挟まれて布団の中で目を閉じる
久々の家族団らんの一日を、少しずつ反芻しながら夢の中へ
それでも心残りなことはどこか心の奥で消えないままで
無口っ子は布団と両親の腕の中からそっと抜け出す
上着を何枚も羽織って温かくしてから、カーテンからそっと外を覗くと
そこにはちらほら雪が降っていて、思わず無口っ子は見惚れてしまい、こっそり庭へと下りる

……
……

空からふわふわと舞い落ちてくる雪は、無口っ子の顔に触れて冷たく溶ける
薄く涙のように頬を伝って、そんな姿は幻想的な佇まい
でもこんなことしてると風邪を引いちゃうから、くすんと鼻をすすって中に戻ろう
と、そう思った時に玄関に変わった格好の人が立っていて、それは赤と白が目印
サンタクロースなんてもう信じていない無口っ子だけど、その姿に釘付けになる
プレゼントを届けに来たよ
その声にははっきりと聞き覚えがあって、無口っ子は迷わず駆け寄る
ぎゅうっとサンタクロースに抱き締められると、体よりも早く心がぽっと温かくなって
夢中で抱き着いたまま胸に頬擦りをして、もうずっと離れたくないようなそんな心地

冷たい顔を擦り合わせながら、二人はキスをした
柔らかな付け髭がくすぐったくても、何度もその熱源を求めて触れ合わせて
聖夜に一時でも大好きな人と会えたことが嬉しくて、我慢していた気持ちが溢れ出して
ただただひたすらに、あなたのことが好きです
サンタクロースはにっこりと笑って、もう一度無口っ子を抱き締める
今はサンタクロースだから、何も言わずにプレゼントを渡すだけ
無口っ子が幸せであれば、それが一番の喜び
741名無しさん@ピンキー:2010/12/24(金) 19:07:53 ID:7c888mqF
さあ、そろそろお布団に戻らないと、お父さんとお母さんが心配するよ
何も言わずに頷いたので、サンタクロースは体を引き離す
メリー・クリスマス!
無口っ子の両手にもう一つプレゼントを残して、サンタクロースは帰っていった
心も体もぼうっとなったままの無口っ子は、熱を冷ますような余韻に一人
でもいけない、見つかったらどうしようと思うと、慌てて家の中に戻る
布団に入ると、安心したからかすぐに眠くなって、今度こそ夢の中へ
ぬいぐるみとサンタクロースからのプレゼントは、しっかり胸に抱いて

次の日の朝、プレゼントを開けるとそこには指輪と手紙が入っていて
”大人になるまでの約束”
というメッセージが、綺麗な筆跡で書かれていて
無口っ子は指輪をそっと、自分の薬指にはめてみる
何か温かいものに守られてるような感じがして、心強い

今日は男の家に遊びに行く約束をしている無口っ子
朝食を食べて両親を見送ると、早速自分も出かけるしたくをする
少しだけ背伸びしたお洒落をして、雪化粧をした外へ
男の家はすぐ近く、いつものようにインターホンを鳴らす
がちゃ、とドアが開いて、男が無口っ子を出迎える
その顔を見て安心して、お邪魔します

二人は今日も仲良く一日を過ごしていく
ちなみに、男の薬指にも無口っ子がしている物と、お揃いの指輪があるんだけど
それに気づいた時の顔を想像してみよう

そんな無口っ子は、多分何物にも変え難いほど可愛い
742名無しさん@ピンキー:2010/12/24(金) 19:38:30 ID:SD7cZkiz
>>741 GJ!

ちょっとサンタの衣装と指輪買ってくる
非エロ、若干超展開注意
9レスほど頂きます
744鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/26(日) 23:44:01 ID:tINOsocC
"おはよう"

ある日の朝。
窓の無い、真っ白な部屋。
時計の短針が真下を指し、いつも通り目を覚ます。

"おはよう"
"おはよう"

朝の挨拶を、同室の子供達と交わす。

"おはよう"
"おはよう"

いつも通りの日課。

"おはよう"
"……"

その日は、一人だけ返事を返さなかった。
ベッドの上を覗き込む。
異変は直ぐに見て取れた。
露出している顔面全体を覆い尽くす腫瘍。
見開いた瞼。
濁った眼球。
痙攣する唇。
腫瘍が全身に広がっているのは明らかだった。
先生を呼ぶ。
やがて、彼女は横たわったまま、ストレッチャーで運ばれていった。
廊下の奥に消えていく彼女を、同室の皆と見送る。

"――――"

最後に、一度だけ彼女の名前を呼んだ。
返事はなく、ただ一言。

"…………。
………………ママ"

私達には意味の判らない言葉。
その一言を残して、彼女はいなくなった。
苦痛も、絶望も、悔恨も、なにもない。

次の朝、目を覚ますとあの子のベッドがなくなっていた。
部屋が少し広くなった。
私達は、23人から22人になった。
それ以外は、何も変わらなかった。

私にとって、死はその程度の意味しかなかった。
その時は、まだ。

745鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/26(日) 23:46:05 ID:tINOsocC
ある日、家族が一人増えた。
それ以来、家が少し狭くなった。
それ以外でも多くの事が変わってしまったのだろうが、今重要なのはその点だ。
3DKの部屋割りに、入居者以外の為のスペースは存在しない。
「悪く思うなよ……」
誰に向かってか謝りながら、中身の入っていない小奇麗な千代紙の小物入れを握り潰した。
用途不明のガラクタを次々と、容赦無くゴミ袋へと放り投げて行く。
俺がせっせと働いているその横で、一番新しい入居者である所の少女が、目ぼしい物を拾い上げてしげしげと眺めていた。
「お前も手を動かせ」
絵麻は慌てて作業を再開するが、何か彼女の関心を引く物を見付ける度、物惜しそうに俺の方へ目を向けて来る。
「捨てろ。どうせゴミだ」
「……」
「良いから捨てろ。資本主義社会に於いてあらゆる商品は即物的に、刹那的に消費されるべきだ」
捨てられた子犬の様な視線から目を逸らし、俺は自分の作業を黙々と進めた。
小さな人形の首を圧し折り、ビーズ玉を袋に纏め上げ、変色した雑誌を縛り上げる。
太った黒猫の縫いぐるみを引き裂こうと力を込めたその時、細っこい腕が伸びて来てそれを押し留めた。
「捨てると言ってるだろうが」
絵麻は俺の手を掴んだまま、睨むでもなくじっと俺を見詰めて来る。
何秒間見詰め合っただろうか。
俺は溜息を吐いた。
「……あんまり物を増やすなよ」
とは言え、彼女の持ち物は同年代の少女の平均から見れば随分少ない方だし、俺に兎や角言われる謂れは無いかも知れない。
絵麻は一寸微笑んで、大事そうに縫いぐるみを"残すものエリア"に置いた。

休日の昼過ぎ。
俺はずっと前に居なくなった母親の私物を整理していた。
絵麻の夏服を仕舞うスペースを確保すると言う名目が無ければ、ここはずっと手付かずのままでいたのだろう。
親父にも恐らく判っている筈だ、この部屋の嘗ての主が戻らぬであろう事は。
整理を子供に押し付けたまま、彼がこの場にいないのは、それを認めてしまうのが嫌だからだろうか。
(……形見分けになるかも知れないってのにな)
片や、俺にとって彼女は既に遠い記憶の存在に過ぎない。
こうして部屋を片付けていても感慨深い物は見付からないし、粗方ゴミに出してしまっても特に抵抗を覚えない。
世間一般からすれば親不孝なのだろうなと考えつつ、ぞんざいに衣装ケースを引っ繰り返して行く。
あらかた片付け終わり、最後のケースを引っ張り出した所、古びた衣類に紛れて、中から堅い物が床に転がり落ちた。
派手なシアンのプラスチック製長方体、ダイヤルやらボタンが上部数箇所に付き、前面には小さなレンズが。
「トイカメラか?」
かなり古い、少なく共10年以上前の物だ。
勿論デジカメ等ではなくフィルム式で、フォーカス・露出調整は目測頼りの、文字通り玩具同然の代物。
フィルム巻上げダイヤルは回り切っており、どうやらフィルムを使い果たした状態のようだ。
どうせこんなアナログな代物、俺には使いこなせそうも無いが。
俺はこれも不燃物のゴミ袋に投げ入れる。
「――――あ」
さっきから俺の手元を覗き込んでいた絵麻が小さく声を上げた。
「何だ。これも欲しいって言う心算か。
デジカメで十分だろう」
絵麻は首を振る。
「……中、確認しなくていいの?」
746鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/26(日) 23:47:40 ID:tINOsocC
「時間が経ち過ぎている。
今更現像した所で、フィルムが感光し切って何も写っていない筈だ。
何なら、今ここで開けて見るか?」
絵麻は冗談に受け合わず、暫く俺の顔を見詰めていた。
睨むでもなく、黙り込んだまま、只じっと。
やがてふと視線を落とすと、小さく呟く。
「私は、知りたい」
拾い上げたカメラを撫でながら。
「あなたのお母さんが、何を残したのか」
「……知らなくとも、別に困りはしないだろ」
突然、絵麻はカメラを手に立ち上がると、コートを羽織って玄関に向かった。
「おい! 何処に行く気だ」
「写真屋」
「おいまさか本気で……」
頷いた。現像しに行くらしい。
「金の無駄遣いだろう、どう考えても」
絵麻は俺の文句に耳を貸さず、もう靴まで履き替えている。
俺は溜息を吐いた。
「……後で半分現像代を出す。
それと、親父には暫く黙ってろ。
もし母さんの浮気相手か何かが写ってたら、絶望の余り身投げしかねん」
絵麻は苦笑して頷き、外へ飛び出して行った。

絵麻が出て行った後、既に殆ど終わっていた作業を続けることにした。
必要な物や貴重品、書類は段ボール箱に押し込み、残りのゴミを袋に纏める。
雑誌の束を紐で括りながら、俺は一人呟いた。
「それにしても……あいつはどうしてあんなに拘るかね」
絵麻の事だ。
何故知りたい等と言うのか。
あいつが、伊綾家の想い出に執着する理由は無い。
絵麻が伊綾の一員になったのは、極最近の話。
例え俺や親父が彼女の"家族"なのだとしても、ずっと前からここにいない俺の母親とは、何の縁も無い筈だ。
(家族、か)
俺は絵麻の嘗ての家族について何も知らない。
だが、そう言ったコミュニティとは遠い位置にいたであろう事は、容易に想像が付く。
一般的な、密接でウエットな"家族"と言うものに、何らしかの憧れがあるのかも知れない。
(そう言うものを俺に期待するのは、見当外れも良い所だがな)
出たゴミを一纏めにして置こうと、俺は台所へ向かった。
玄関に近いタイルの上に、ガラクタや古着が詰まった袋を無造作に落とす。
拍子に、シンクの上の棚から一杯の茶碗が転がり落ちた。
拾い上げると、年季の入った小さ目の陶器には皹が入っていた。
俺のお下がりで、今は絵麻が使っているものだ。
漠然と、理由も無しに、得体の知れない不安が頭を過る。
虫の知らせ? 馬鹿馬鹿しい。
ふと小窓を見上げると、ついさっきまで雲一つなかった空に、低く雲が垂れ込めている。
携帯電話の天気予報サービスを確認。
夕方よりにわか雨の降る所も。
「傘、持って無いよな、あいつ」

747鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/26(日) 23:49:20 ID:tINOsocC
最寄の写真屋迄の道を急ぐ。
空が雲に覆われてはいる物の、空気はまだ乾燥しており、そう直ぐには降り出しそうも無い。
それなのに、俺は一体何を急いでいるのか。
第一、相手は自転車だ。追い付ける訳がないのに。
自分でも訳が判らない。
只、嫌な予感がする。
(こう言う時あいつらなら、理由なんて判らなくても、迷わず行動出来るんだろうな)
友人のきょうだい二人を思い浮かべ苦笑した瞬間、
『ひの〜よ〜うじんっ マッチいっぽ――ん かじの――もとっ』
件の二人、その兄の方の間の抜けた声がご近所一帯に響き渡り、俺は盛大にバランスを崩した。
見上げると、一ブロック向こうの十字路で法被姿の見慣れた顔連れが、一人は拡声器を、もう一人は拍子木を手に練り歩いている。
二人も俺の姿に気付いた様で、俺は仕方なく近くまで駆け寄った。
拡声器を持った兄の方、渡辺綱が気安げに手を上げる。
「おう、奇遇だな伊綾。どしたそんなに急いで」
「野暮用だ。そう言うお前らこそ一体何の真似だ?」
丁寧にお辞儀する妹の方、渡辺結に会釈を返しつつ、俺は二人の法被姿を頭から爪先まで眺める。
結の方は何だか無理矢理着せられたみたいで、フェミンな刺繍の有る普段着とアンバランスだ。
一方、ご丁寧に鉢巻まで付けた綱は妙に様になっていた。
「ん――? 消防団の見回り」
「ご苦労な事だ」
実の所、今まで消防団の存在すら知らなかった。
少しだけ興味が無くもなかったが、仕事中の彼らに油を売らせるのも拙い。
「悪いが急いでいる。俺はここで失礼させて貰うぞ」
「何かあったんか? さっきそこで絵麻ちゃんも見たけど」
意外な所で目撃証言に出くわし、俺は再び走り出そうとしていた足を止める。
「ほう。どこでだ」
「えーと。ずっと北行って一ブロック東にずれるから。あっちのほ……」
振り返り指差した先、比較的古い住居が密集している方向から、もうもうと黒い煙が揚がっていた。
その方向には銭湯も工場も無いし、焚き火をするような空き地も無い。
しかも、煙の量が明らかに焚き火のレベルではなかった。
暫し、三人で凍り付く。
「かっ……火事だ――――!!」
拡声器越しに叫ぶ綱と素早く携帯電話に119番を入力する(通話は綱にやらせるのだろう)結。
二人を尻目に、俺は煙の方角へ向けて全力で走り始めた。
748鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/26(日) 23:51:12 ID:tINOsocC
曲がりくねった小道を駆け抜ける。高低差の有る階段を段跳飛ばしで急ぐ。
煙を出しているのは古い鉄筋のアパートの様だった。
他人の住居。
そんな所に、絵麻がいる筈は無い。
そう頭では考えているのに、足が止まらない。
道に迷いかけながら、やっとの思いで辿り着くと、そこには既に避難して来た住民や野次馬らしき人々が群がっていた。
風上なので然程煙は漂っていないが、全力疾走した後なので息苦しい。
息を切らしながら、集団の中に見慣れた少女の姿を探す。
呆然と黒煙を上げるアパートを見上げる夫婦と、不安そうに彼らを見詰める小学生位の少年。
肩を落として項垂れる中年男性。
駆け付けて来たらしき家族に介抱されている老人。
野次馬の中にも、見知った少女の姿など無い。
息をついて踵を返した俺は、背後の路肩に放置して有る我が家共用のママチャリを発見して凍り付いた。
「済みません……!」
俺は直ぐ近くで物珍しそうにアパートを眺めている大学生位の男を捕まえて、自転車を指差して見せる。
「これに乗っていた、中学生の女の子を見ませんでしたか。髪はショートカットで灰色のピーコートを着た」
「え? ええ? あ――」
男は一瞬面食らった物の、直ぐに得心が行った様に頷いた。
「うん、見た見た。さっき燃えてるアパートに入ってった」
俺は一瞬で血が凍り付くのを感じた。
「馬鹿なッ……! 何でそんな馬鹿なことを!」
「ほら、あそこの女の人」
男は地面に座り込んでいる若い主婦らしき女を指差した。
「さっきまで『まだ赤ちゃんが中にー』とか騒いでて。
見かねたのかあの女の子、自販機で水のペットボトル買いこんで中に突っ込んでったよ。
そういや、まだ戻ってこないねえ」
呑気そうに嘯く男に、何故止めなかったのかと怒鳴りたくなるのを抑える。
「何で止めなかったんだよ!」
振り向くと、いつの間にか追い付いて来ていた綱が血相を変えて男に詰め寄っている。
まだ何事か言いながら食って掛かっているが、そんなことはどうでも良い。
脇を見ると、都合良く直ぐ傍に飲料水の自動販売機が設置して有った。
俺は駆け寄り、急く気持ちを抑えつつ千円札を入れ、ミネラルウォータを3本買い込み、鞄に詰め込んだ。
1本の蓋を開けて水を頭から被りながら、真っ直ぐ燃え上がるアパートに向かう。
「……ッ! 伊綾、お前何してんだ!」
腕を掴んで止めて来る綱を睨み返す。
「離せ」
「離せねえよ。今助けに行ったって、二重遭難になるだけだ。
仮に絵麻ちゃんが中で倒れてても、助け出すまでにお前も倒れる。
今は無事を信じて待つしか……」
と、綱が突然愕然と、視線を俺の背後へと向ける。
釣られて振り返ると、結が呆然と燃えるアパートを見上げていた。
常に笑顔を維持し、小さい頃からそうあろうと努力して来た彼女。
その時に限っては恐怖に目を見開き、小刻みに体を震わせていた。
額に脂汗がびっしりと浮かび、顔色は蒼白。
「結ッ! 何でこっち来てんだ!」
綱は咄嗟に駆け寄ろうとするが、俺を放置する事も出来ず一瞬逡巡する。
俺は大きく息を吸い込んで、綱に諭された言葉を反芻した。
絵麻は確かに馬鹿で、今回の事を考えると大馬鹿者と言って差し支えない。
だが、頭が悪い訳ではない。
彼女一人でこの場を切り抜けられないならば、恐らく俺が傍に付いていても同じ事だ。
「……大丈夫だ。判っている。
行き成り飛び込んだりはしない。少し周りから様子を伺うだけだ」
「すまね。無茶するなよ」
言うが早いか、綱は今にも倒れそうな結を介抱しに飛んで行った。
結は、火が苦手だ。否、恐怖症と言った方が良いだろう。
俺はアパートに向き直ると頭を切り替え、中を覗き込めないかと建物の反対側に回り込んだ。
749鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/26(日) 23:53:01 ID:tINOsocC
「糞っ! 煙が酷いな……」
口を覆いながら、窓ガラスが並ぶコンクリートの絶壁を見上げる。
気のせいか、若干傾いて来ている様な気がする。
ベランダは無く、窓には羽目殺しの格子が付いており、隙間から飛び降りる程の余裕もなさそうだ。
仮にネットや防災マットを用意しても、これでは意味が無い。
(無駄足か……。もう後はあいつが自力で戻るのを待つか、あるいは――)
再び正面玄関の方に戻りかけた瞬間、直ぐ頭上からガラスが割れる音が響いた。
2度3度、重量の有る何かを叩き付ける音と共にガラスの破片が舞い散り、ぬっと黒い人影が姿を現す。
「絵麻!」
顔を煤で真っ黒にした少女の名前を叫ぶ。
絵麻は眼下に俺の姿を認めると、再び部屋に引っ込む。
再び響く打撃音。
ぱらぱらと格子の隙間から木片が散らばる。
どうやら内側から鉄格子を破壊するべく、椅子か何かを叩き付けているらしい。
5回程打ち付けても、窓枠はびくともしない。
「絵麻! こっちは無理だ! 玄関に回れ!」
打撃音が止んだかと思うと、今度は格子の隙間から何かを差し出そうとしている。
「阿呆! 何をしている、さっさと……」
抱きかかえられたそれを見て、俺は愕然とした。
隙間をやっと潜れる程の大きさのそれは、煤で汚れ疲れ果て泣く事すら出来ずにいたが、紛れも無く人間の赤ん坊だった。
絵麻は腕を伸ばし、2階からそれを手渡そうとしている。
俺は咄嗟に、それを受け止めようと腕を上げていた。
背を伸ばしてぎりぎり届くか届かないか。
彼女の伸ばした両手から、俺が延ばした両手まで、それが手渡された瞬間。
窓越しに見た絵麻は、笑った様な気がした。
それも、一瞬。
突然の、重い爆発音。
ガスに引火したのだろうかといぶかしむ間もなく、重量物が拉げる嫌な音が響き渡り。
絵麻の姿が瓦礫に飲み込まれる。
赤ん坊を抱きかかえながら、俺は反射的に後方へ跳躍した。
手が自由だったなら、絵麻の腕を掴む事が出来たのかも知れない。
俺に勇気が有れば、瓦礫の中を突き進んで彼女を庇う事が出来たのかも知れない。
仮定など無意味。
絵麻を残して、必死に瓦礫を避けながら、生存本能に従って後ろに下がる。
俺の目の前で、あっと言う間にアパートは崩壊した。

750鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/26(日) 23:55:28 ID:tINOsocC
泣き始めた赤ん坊を野次馬の誰かに押し付けてからの事は良く憶えていない。
只、無我夢中で瓦礫の山を素手で引っ繰り返していた。
まだ燃えている、危険だとか、誰かが叫んでいた様な気がすが、どうでも良い。
何時の間にかシャベルを持った綱が横で瓦礫を掘り返していた。
そんな事も気に留めず、淡々と作業に没頭する。
漸く意識がはっきりして来た頃、分厚い割りに鉄骨の少ないコンクリートの壁を押し退けたその奥に、煤で汚れたコートの切れ端が覗いた。
細かい破片を取り除いて行くと、背中が、腕が、顔が順番に現れる。
ぼろぼろの少女を、そっと抱え上げた。
絵麻は瞼を閉じたまま、ぐったりとして身じろぎすらしない。
ゆっくりと路肩まで運び、上着を脱いでその上に寝かせる。
体のあちこちに木片が刺さったり、擦過傷が出来たり、出血もしている。
骨も折れているだろうが、それよりも確認せねばならない事が有る。
「絵麻」
呼びかけるが、反応は無い。
「絵麻!」
今度は強く、耳元で声を出すが、同じ。
口元にも喉元にも、目立った動きが見えない。
首筋に指を当てても、何の脈動も無い。
胸に耳を当ててみても、何も聴こえない。
血の気が引いた。
「呼吸が、ない」
「――ッ! AEDだ! AEDはっ!」
綱が周囲に呼びかけるが、誰からの反応も無い。
辺りは古い住宅地ばかりだ。そう都合良く置いてはいない。
「くそッ! しゃあねえ、探して来る」
「頼む」
走り去って行く綱を尻目に、体育の実習で教わった内容を思い出しながら、仰向けに顎を引かせて気道を確保する。
「……悪いな」
一言だけ、謝った。
鼻を摘んで、口に直接息をゆっくりと吹き込む。
胸が沈むのを待ってから、更にもう一度。
何の反応も無い。
体の位置を変え、胸の中心に掌を重ねて押し当てて、垂直に力を込める。
抵抗なく胸骨が沈み込む。
矢張り何の反応も無い。
構わず何度も周期的に力を込め、心臓マッサージを続けた。
751鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/26(日) 23:57:30 ID:tINOsocC
やがて人ごみを掻き分けて、若干ふら付きながら結が近付いて来る。
「手伝えるか」
結は未だ調子が悪そうで顔色が真っ青だったが、気丈に頷いて絵麻の枕元に陣取った。
心臓マッサージの合間を縫って、結が息を吹き込む。
マッサージ30回につき人工呼吸2回のサイクル。
何回繰り返した頃だろうか、綱がAEDを持って駆け寄って来る。
「絵麻ちゃんは!?」
「まだ駄目だ」
綱は手早く絵麻の上着を剥いでシャツのボタンを外し、AEDの電極パッドを決められた位置に貼り付ける。
相変わらずデリカシーに欠ける男だ。が、そんな事を言っている場合では無い。
心電図はフラット。
直ぐに電気ショックを求める人口音声が響き、綱がマニュアルに従ってショックボタンを押した。
絵麻の全身が操り人形の様に痙攣する。
だが心電図はフラットのまま。
「まだか……!」
再び心臓マッサージに取り掛かる。
回数を数えながら、強く、何度でも。
30を数えた後、結が息を吹き込む。
変化は無い。
それでもマッサージを続ける。
綱が腕時計を見て真っ青になっていた。
「伊綾、もう……助け出してから、10分過ぎて――――」
「だから何だ」
呼吸停止から10分経てば、蘇生の見込みは薄い。
そんな事は判っている。
「こいつが、死ぬ訳、ない、だろう」
そんな事は考えない。
それ以外の事も、何も考えたくない。
只無心に、腕に力を込める。
「……ッ! 電気ショック! もう一回だ!」
綱がもう一度AEDの準備を始める。
こう言う時ばかりは、綱の愚直な前向きさ、諦めを知らずひたむきな性格が有り難い。
例え結果に結び付く見込みが薄かろうが、自分に出来る事は全力で遂げる。
「身内の俺が、あいつより先に諦める訳には行かないよな……」
二度目の電気ショックを受けても未だ反応が無い絵麻の様子に絶望しそうになる自分を叱咤し、三度心臓マッサージに移る。
「……畜生、目を、覚ませ、――――――――目をッ! 目を覚ませ!」
必死に、何度でも呼びかけた。
752鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/26(日) 23:59:24 ID:tINOsocC
汗が額を伝って流れ落ちる。
腕に力を込めた瞬間、ぐらりと体の重心が傾いた。
倒れ掛けた所を、綱が後ろから支えて来る。
「おい! 無理すんな!」
疲労の所為か、大分煙を吸い込んだ為か、体の自由が利かない。
それでも自分を叱咤し、身を起こして再び絵麻の傍に戻る。
しかし直ぐに綱に肩を掴まれた。
「無理すんなって言ってんだろ! 俺が代わるから、伊綾はちょっと休んでろ」
こんな時に休んでいられるか、そう言い掛けるが、この場合は綱の方が正論だ。
それでも、今は体を動かしていないと、気が狂いそうになる。
「もう良い、大丈――――」
綱の手を振り払い、絵麻に向き直った瞬間、俺は息を呑んだ。
絵麻の体が小刻みに痙攣している。
最初は小さく、やがて大きく体が跳び跳ね、そして横隔膜の蠢きと同時に大きく咳き込んだ。
宙に浮いた頭を地面にぶつける直前、手を伸ばして下から抱え上げる。
腕の中の少女の顔、閉ざされた瞼が震え、黒目がちな瞳が薄く覗いた。
「……やす、み?」
掠れがちな、けれどはっきりとした声。
喜びよりも、驚愕の方が大きかった。
何故、そんなに早く、呼吸だけでなく意識まで取り戻すのだ。
さっきまで、心肺停止の危篤状態だったのに。
視線を落とし、彼女の体を見て再び凍り付く。
突き刺さっていた木片が、ゆっくりと、だが確実に体から押し出されている。
10分前出血していた擦り傷に至っては完全に塞がり、代わりに真新しい皮膚が生え代わっていた。
まるで、性質の悪いスプラッタ映画で、蜂の巣にされても再生して立ち上がって来るモンスターの様だ。
「な…………」
言葉が出ない。
途方に暮れて周りを見回す。
綱も結も、周囲の野次馬も、呆気に取られていた。
遠くから聞こえるサイレンの音。
絵麻は大人しく俺に抱きかかえられたまま、哀しそうに微笑んでいた。
ああ、ばれちゃった。そんな事を悔やむ様に。
その複雑な表情を見て、俺は何となく悟った。
彼女の命が助かったのは、偶然でも奇跡でもなく、絵麻にとって決まり切った必然であった事を。

ふと、額に冷たいものを感じて空を見上げた。
雲が低く垂れ込めている。
雨が降ろうとしていた。
753鼓動 / 沈黙 ◆MZ/3G8QnIE :2010/12/27(月) 00:00:49 ID:tINOsocC
投下終了です
次回で一応伏線晴らしの予定です
754名無しさん@ピンキー:2010/12/27(月) 23:30:41 ID:T4GR8CZi
>>753
GJです!
これは予想外な展開だ……続き待ってます
755名無しさん@ピンキー:2010/12/28(火) 14:31:26 ID:nMiV1xoV
(今年こそはもっとたくさんしゃべれるようになって、男くんといっぱいいっぱい楽しいお話をして、そして勇気を持って男くんに、す、す、好きって言えますように!)
みたいな願い事を初詣で力一杯念じてて、
一緒に来ていた男くんに「そんな真剣になにお願いしてるの?」とか聞かれてあたふたする無口っ子
756名無しさん@ピンキー:2010/12/28(火) 19:06:58 ID:XHiawQU1
なるほど、超展開。
だが、GJ!
757名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 10:14:18 ID:/NRVufg1
「明けましておめでとう!!」
「…………(ズーン)」
「……そう落ち込むなよ。ここ無口っ娘スレだし、元旦に書き込みが無いのも不思議じゃないだろ?」
「…………(ムスッ)」
「拗ねるなよ。お前には俺がいるだろ?」
「…………///」
「元気出たか?よしっ、ちょっと遅くなったけど初詣行こうぜ」
「…………!!(コクコク)」

というわけで、明けましておめでとうございます
今年も無口っ娘スレが賑わいますように
758名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 17:15:13 ID:jWfWyA1s
昨日姉と初詣に行ってね
一緒におみくじを引いたんだけど、俺は吉だった
姉も何だか不満そうな顔をしながら、木の枝に括りつけた

自宅に帰ると、姉は紙を取り出してそこにペンで何やら書き始めた
覗こうとするとしっしと追いやられたので、俺はテレビでも見ていよう
しばらくして姉は背後から現れて、いきなり俺の手を取る
そして、横に細く折り畳まれてまるでおみくじのようになった紙を、指に括りつけてきた
何なんだって訊こうとしたけど、姉は笑って台所に行ってしまった

こっそり開いて見てみたら、「大吉」
恋愛成就、意中の人と結ばれるといった理想的なことが書かれていた
今年の運勢を捏造するのは構わないけど、何も俺を木の枝の変わりにしなくてもな

これさ、と訊きに行くと姉は何か怒り出してさ
自作おみくじひったくるなり、もう一度俺の手を捕まえて括り直して、それからじっと睨まれるんだ
ああ、外すな付けておけってことか

で、一日経ったら飽きたみたいで、自分から外してくれたんだけど
俺がこれを付けてる間はずっと優しくて、上機嫌だったんだよね
何か、女の子のおまじないみたいなもんなのかな
759名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 21:26:13 ID:CGfabgCc
>>758
お姉さん大好きスレと誤爆?
760名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 21:28:22 ID:+vMO809T
姉が喋ってないからここでいいんじゃないの?
GJだぜ
761るるの家   /8:2011/01/06(木) 22:42:33 ID:Y1Nk0RnX
久しぶりに少し書かせてもらいます。


762るるの家   1/8:2011/01/06(木) 22:43:39 ID:Y1Nk0RnX
「……ん、あイたた……あれ?」
仄暗い洞窟のような場所で気絶していた少年―― 船越正一 ――は、
ハッと意識を取り戻しキョロキョロと辺りを見回した。
「何だろう、僕は確か……」 考えようとした瞬間。
ズキリ。
頭の後ろが酷く痛み出す。
「イタたたた……ダメだ思い出せない」
正一はとりあえず考えるのをやめ立ち上がり辺りを見回した。
意識をハッキリ取り戻した少年が視たモノは。
「? 何だろう、ええと……ルルの……家?」

ぼんやりと薄暗い中僅かに見える明かり。
其れは小さな建物だった。
建物の看板に書かれた文字は、汚い文字で

『ルルの家』

と、‘読め,た。

兎に角入ってみようと思った正一は、ゆっくりと中に入る。
と、薄暗い店内から。
「イラッシャアイ」
独特のイントネーションで声がした。
一瞬びくりとし、キョロキョロと店内を見回すと、
「アイテルセキニすわってね」

話しかけてきたのは鳥かごの中のオウムであった。
狭い店内、天井から吊るされた鳥かごの中のオウム。
そして、厨房の所には大きな人がもぞもぞと動いており。

そして、此方をじっと無言で見つめる少女がいた。

「あ、あのおぉ……」
店内の異様な雰囲気に圧倒されながら質問しようと口を開いたまさに其の時。
ぐうう〜。
小さくお腹がなった。
「オナカガヘッタナ、ナニガタベタイ?」
「え? でも僕お金持ってないんですけど……」
『フルフル』
正一の言葉を聴き少女は首を左右に振った。
763るるの家   2/8:2011/01/06(木) 22:44:24 ID:Y1Nk0RnX
「ココハオカネナンテいらない」
オウムの言葉に少女は『コクコク』と頷いた。
「如何いうことですか?」
誰にとも無く質問し。
「コウイウコトダ」
オウムが喋り。
コトン。
少女が少年の目の前に料理を置いた。
‘タコのマリネ,に‘タコのスープ,それに良く解らない物と、
ヨーグルトの掛かったサラダを。
「メシアガレ」
「えっ? あ、は、ハイ、すいません頂きます」
言われるまま正一は恐る恐る料理を口へと運ぶ。
と、
「美味しい!」
思わず感嘆の声を上げた。
其の途端、今まで無表情だった少女の顔がパァッと明るくなる。
その顔に正一はどきりとなった。
まじまじと見つめると、まるで人形のような少女だ。
地毛なのだろうか? 美しい銀色の髪を生やし殆ど感情を見せない瞳で此方をじっと見つめてくる。
「しゃべれるぞ、シャベレナイダケデ」
意味が解らなかった。
不可解な事を‘インコ,が喋った。
「オナカハ、フクレタか?」
混乱する正一に対し‘インコ,が話しかけてくる。
さっきまでは確かに‘オウム,だったそれが。
「オナカガふくれたらツギハコレダ」
其の途端少女が恥ずかしそうに俯きチロリと鳥かごを見つめる。
『本当にこんなことして大丈夫なんでしょうか?』
そんな顔をしていた。
「ヘイキダ、ヤッチマエ」
インコが喋り、少女はおずおずと近づいて来ると申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
「え? 一体何を……うわぁ!」
其の瞬間少年は大きな悲鳴を上げた。
764るるの家   3/8:2011/01/06(木) 22:45:05 ID:Y1Nk0RnX
「チカラヲぬケ‘ヌイテ,やるカラ」
‘九官鳥,が卑猥な言葉を投げかけゲゲゲと笑う。
スルスルと少女が正一のズボンを脱がし始めゆっくりと下着に手をかける。
「な、なにを!?」
頭が混乱の極みに達するが体は動く事ができず少女のなすがままであった。
たどたどしい手つきで、だがテキパキと、少年を丸裸にしてゆく。
照れているのか少女は耳まで真っ赤だ。

少年の服を全て剥ぎ取ると少女は自分自身の服に手をかける。
少年の眼を気にしながら、だが意を喫したように衣服を脱ぎ捨てると、
服の下の白い肌は生き物としての生命力を何一つ感じさせないが、
其れは逆に神秘的なものを感じさせるものであった。
「オイ、ショタやろう、マズハソイツニしゃぶってもらえ」
九官鳥が下品な言葉を口にし、

はむり。

少女は少年の物をそっと優しく口に咥えた。

「ふわあああ!」
其の感覚のために正一は大きな悲鳴をあげてしまう。
歯を立てずにペロペロと柔らかく、温かい舌が少年の感じやすい大事な部分を嘗め回す。
ゆっくりとした舌使いで自分の物を嘗め回されるたびに正一は諤諤と体を震わせる。
「ちょ、ちょっと待って! だ、ダメだよ!」
バタバタと暴れ少女の頭を押さえつけると、
『ごめん……私のこと嫌い?』
と、言う目で正一の顔をじっと見つめる。
「あ、ち、ちがう、その、い、いきなりだから……」
「グズグズイウナ! オマエモそいつのムネヲもんだりしろ!」
九官鳥に促され少女は自分の胸をそっと両手で寄せる。
精一杯寄せようと努力しながら、
『ワタシの胸ちっちゃくてゴメンね』
という表情で正一の顔をチラリと見つめる。

「あ、い、いや、そんな顔されても……」
顔を真っ赤にしながら正一は少女をジッと視る。
少女の方も顔を真っ赤に染めながら見つめ返した。
765るるの家   4/8:2011/01/06(木) 22:45:57 ID:Y1Nk0RnX
「ハヤクシロ!!」
鳥に急かされてビクリとした後、恐る恐る胸に手を伸ばした。
やわらかな感触が指に触れた後、ビクンと体を震わせた。
「い、痛い?」
フルフル。
少女が首を横に振るのを見て、小さく柔らかい胸を触る手に力を込めていく。
其のたびに、真っ白な肌は薄いピンク色に染まり、手を動かすたびに、
ピクリ、ピクリと反応を示し、ぷっくりと小さな乳首が膨れ上がっていくが、
少女は口は堅く閉ざしたまま決して喘ぎ声一つ漏らさない。

「ぎゃぎゃ、ソウトウかんジテるナ? マッタク、いんランナヤツダゼ」
鳥の言葉に、少女は更に顔を真っ赤にして、下を向く。
「そ、そんな事無いよ、ちっともHじゃないし、可愛いよ」
慌てて、少年がフォローを入れると、少女の顔がパアーっと明るくなり、だが再び、
『照れます』という顔で下を向いた。

「ナニをやッテンダ? さっさとヨコにナリナサイ」
鳥がバタバタと鳥かごの中で暴れる。
正一は仕方なく、ゆっくりと床の上に寝る。
「おい、そのマンジルでベトベトのきたネエシリヲナメるんだ!」
其の言葉にビクリと少女は反応すると、じっと正一の顔を見つめる。
正一は何も言えず只コクリと頷いた。
少女はそっと少年に逆さまに跨ると、顔の所に来るようにお尻を近づける。
可愛らしい、小ぶりの真っ白なお尻は確かに少年の目の前に来ると濡れているのがハッキリと見て取れた。
少年に胸を弄られて余程感じていたのだろう。

(こ、コレが女の子の……)
少年はつばをごくりと飲み込む。
愛液に蒸れた少女の秘所は、少年の鼻と心をくすぐった。
好奇心にあふれた指先がゆっくりと、少女の花弁を撫でていく。
其のたびにビクリビクリと背中を反らせ、少女が反応を繰り返す。
766るるの家   5/8:2011/01/06(木) 22:46:49 ID:Y1Nk0RnX
「オイオイ、オボッチャン、ウチノコガシャベラナイノヲいいことに、サワリタイホウダイジャノウ?」
鳥かごの中の‘それ,はもう鳥ではなかった。
得体の知れない生き物が‘くち,を動かす。

「ご、ごめん! いやだった?」
恐る恐る正一が聞くと、返答の代わりにフルフルとお尻を振って少女が答える。
「よ、良かった、じゃあ、ごめん」
ちゅぽ。 
意を決した様に正一が、少女の秘所に顔を埋める。
「…………!!! ……!?」
「クソ、オシイィ―――!」
少女は片手で自分の口を押さえると、必死に少年の愛撫に耐えるため、体を固くする。
そして、自分からグイグイと正一に秘所を押し付けて、せがんでいった。
正一は両手でゆっくりとお尻を掴み撫で回しながら、周りから、穴の奥にいたるまで、
舌を差込、ねじ回し、只、興奮のまま少女を責めたてる。
少女の方もまた、ソレに答えるように、其の唇を、少年の物に近づけると、舌と唇を使い、
ゆっくりと撫で回す。
唾液と、舌先が少年の一番感じやすい部分を攻め立て、少女の口いっぱいに、
‘その物,は膨らんでいく。
ソレと同時に唾液と愛液が入り混じり、少年の顔を濡らしていく。
「あ、あああ、ぼ、く、僕もうダメ! オカシクなる!」
「―――――――――――!!!」
突然、少女は大きく仰け反ると、ビクビクと痙攣を始める。
ソレと同時に少女の口の中一杯に‘少年の味,が広がっていく。
「ははは、ガキニクチノナかにセイシをださレナガラ、いきやがった!!」
‘得たいの知れない物,に下品な言葉を投げかけられながら、
正一の体の上で、ハアハアと荒い息を吐く少女。
「グズグズスルナ! マダガキのチンポハゲンキジャねえか」
籠の中の声を聞き、少女は正一の物を確かめるようによろよろと、体を起こす。
「だ、大丈夫なの? 無理しない方が……」
正一に言われて、『まだ大丈夫』という顔をして、フルフルと首を振る少女。
優しく少年の物を掴むと、ゆっくりと、腰を下ろしていく。
やがて、少年の物に温かく柔らかな、肉ひだの感触が触れていった。
「あ、あああうう!」
少年の喘ぎと、少女が体を仰け反らせたのはほぼ同時だった。
やがて、少女はリズミカルに体を上下させ始める。
少年の上で、小さな胸がぷるん、プルンと可愛く揺れて、声を出さないように必死に手で口を押さえている。

愛液に染まった体内は柔らかく湿り、少年の物をぐいぐいと締め付け続けた。
767るるの家   7/8:2011/01/06(木) 22:47:47 ID:Y1Nk0RnX
「あ、ああ、で、でちゃう! 来ちゃうよ!」
少年に取り、始めての経験はあっという間に少年を射精へと導いていく。
と、突然、少女が首をフルフルと横に振ると、少年の物をグッと握る。
「ふわぁ! な、何!?」
驚きの声を上げる正一に、少女はきつく目を閉じながらプルプルと首を激しく振る。

『我がまま言ってゴメン、でも、いっしょにイキタイ』
という顔をしながら、正一の顔をジッと見つめる。
「う、う、うん、わ、わかった……」
その返答に、少女は嬉しそうにニッコリと微笑むと、いっしょに昇り詰めるべく、
一生懸命に体を動かす。
やがて薄桃色だった身体が、汗に濡れながら真っ赤に染まり、
ハアハアと吐く息の音が強くなっていく。
少女自身の肉体も限界に近づいていた。
「あ、ね、ねえ、ぼ、僕、僕、もうダメ!」
正一が大きく叫ぶと、少女は握っていた手をどかし、大きく体を動かした後、
ガクガクと震え、精を体の中に受けながら大きく体を仰け反らせた。

やがて、二人は折り重なるように体を合わせながら、ハアハアと荒い息の中、
ゆっくりとお互いの顔を見つめあった。
少女は正一の顔を見つめた後、自分のした事を思い出し、顔を真っ赤にしながら、
恥ずかしそうに顔をあさっての方に向ける。

「す、すごく、気持ちよかった……」
正一が荒い息を吐きながら、独り言のようにポツリと漏らす。
「……うん」
耳を真っ赤にした少女がコクリと頷いた。

と、

「ぎゃがやああぎゃああ!! 喋った! 口を聞いたぞオオオオオオ!! 」
大きな叫び声を挙げて ‘気持ちの悪い何か,が‘鳥籠だった物,のなかで暴れた。
それに合わせるようにキッチンにいた得体の知れない何か、も、なにやら呻き声を出している。
768るるの家   7/8:2011/01/06(木) 22:49:10 ID:Y1Nk0RnX
「オイ、糞がき!! よくやった! そのメス豚が何時までも喋ねえから困ってたんだ!」
何事か意味が解らず少女の方を向くと、彼女は驚きで目を見開いたまま口を手で押さえている。
「そいつはそんなナリヲしているが ‘門,を開ける存在だ」
‘籠の中の物, は言葉を続ける。
「門の鍵はそいつが‘喋る事,どういうわけかそいつは喋るのを嫌がってたんだ」
『ぎゃぎゃがやあやがや』君の悪い声が聞こえる。
其れは笑い声とも取れた。
少女は真っ青な顔をして振るえている。
「だが一度喋れば十分だ、感謝するぞ糞がき! 外なる者達をこの地に呼び集めよう!!」
「ぐほおおおおおお!!」
‘籠の中の物,と、‘キッチンに立つ物,は大きな声で叫び始める。
『るるるるる・ウ・んグいル・ラグル―――』

‘二つ,が何かを叫び始める。

正一は只呆然とその‘この世の終わりの光景,を見つめていた。
空気が激しく震えているのがわかる。
地面はぐにゃぐにゃとゆがみ、どちらが下でどちらが上かもわからない。
恐ろしい混沌の中、だが、後ろから聞こえてきた物が。

「ヨーグルト・サラダ」

少女のポソリと言った言葉だった。

ピタリ。
全ての物が止まった瞬間だった。
「はい? 今なんと?」
‘カゴのなかの者,が不思議そうな‘貌,をする。
「私の……名前」
「え!? ち、ちがうよね? ソンナ間抜けな名前じゃないよね!?」
いつの間にやらキッチンに立つ物まで、先ほどの勢いをなくし瞬と小さくなっている。
だがソンナ抗議を無視するかのようにスッと右手を挙げると。
「おいで」
少女は‘キッチンに立つ物,を指差して‘呼ぶ,と、其れはドンドン小さくなっていき、
やがては小さな‘タコ,のような物となった。
其れはチョコチョコと小女に近づき、肩に飛び乗った。
769るるの家   8/8:2011/01/06(木) 22:49:50 ID:Y1Nk0RnX
「だが、お前が喋った事でこの星に何らかの影響は出たはずだ!!」

‘籠の中のもの,がギャアギャアと叫んだとき、店の奥より、
奇妙な服を着た一団が遣ってくると耳障りな太鼓を叩きながらそのまま鳥かごを持って店の外へと出て行った。

「な、何だったの今の?」
あまりの事の成り行きに正一は暫く呆然とした後、『サラダ』と名乗った少女を見つめるが。
モタモタとパンツを履きながら、
『聞かないで』
サラダの目がそう訴えたので、聞くのを辞めた。
何にせよ、彼女はあの薄気味悪い連中から自分達を守る為に、
ずっと喋らないように我慢してたのだ。

全然解らない事だらけではあるが、
「だ、大丈夫、僕こそ守ってもらって御礼を言わなきゃ」
そう言って正一が頭を下げたまさにそのときだった。
ズキン。
また、後頭部が鋭く痛んだ。
「い、痛い! あっ……!」
自分が何故ここに来たか思い出した。
自分達の乗っていた船が突然襲われて、海洋学者だった父が棒で殴られて海に突き落とされたのを。
そして自分もまた同じく海に落とされたのだ。
『パパに会いたい?』
サラダはじっと正一を見つめた。
「う、うん」
正一は思わず口ごもった、尋ねてきたサラダの目が凄く悲しそうだったからだ。
「君、父さんの事知ってるの? 父さんは何処にいるの?」
正一に見つめられて、サラダは困惑するように視線を外すと、スッと店の奥を指差した。
嫌な感覚を覚えながら正一は店の奥へと足を運び、

そして、

気が付くと、砂浜に倒れていた。
「大丈夫か正一」
ハッと目を開けると、口の中にジャリとしたいやな感触が広がり慌てて吐き出す。
見上げた正一の目の前には自分の父親が立っていた。
「あんまりはしゃぎすぎるから転ぶんだぞ」
父親の笑顔がそこにあり、
自分でも解らないが

少年はそんな当たり前の光景に、
涙を流して喜んだ。
770名無しさん@ピンキー:2011/01/06(木) 22:52:43 ID:Y1Nk0RnX
スイマセン
頭の所、途中で投稿したり、7が二つあったりして失礼しました。

以上です、どうもありがとうございました。
771名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 15:23:30 ID:cXKYCSjK
不思議なお話だ
772名無しさん@ピンキー:2011/01/08(土) 23:41:28 ID:YYrY9fRR
クトゥルー系はゾクゾクして良いな
773名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 02:43:46 ID:EeQCPaLa
妙な話の流れでよく理解できんかったが、
ヨーグルトサラダでやっと理解したわw
るるの家もそれでルルイエのもじりって気づいた。
774名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 15:48:39 ID:nsCuXCjj
乙代わりにスレたていたしました

無口な女の子とやっちゃうエロSS 九言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1294555443/
775名無しさん@ピンキー
>>774
「……………………おちゅ」
「…………」
「…………」
「……噛んだ?」
「…………噛んでない」
「噛んだよな?」
「……………………噛んでないもん」