無口な女の子とやっちゃうエロSS 九言目

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1名無しさん@ピンキー
無口な女の子をみんなで愛でるスレです。

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【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】
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保管庫
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・・・次スレは480KBを超えた時点で・・・立ててくれると嬉しい・・・
・・・前スレは無理に・・・消化して欲しく無い・・・かも・・・
・・・ギリギリまでdat落ち・・・して欲しく・・・無い・・・から・・・
2名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 18:44:13 ID:waT9n70s
2
3名無しさん@ピンキー:2011/01/09(日) 20:51:30 ID:EeQCPaLa
そぉい!
4名無しさん@ピンキー:2011/01/10(月) 00:03:52 ID:s3jH5Ykg
前のスレでアレな話を書いた物です。
スレ立てありがとうございました。
5名無しさん@ピンキー:2011/01/10(月) 07:44:27 ID:CHM3L7v/
>>1
「……………………いちおつ」
「…………」
「…………」
「…………ふふん(←今度は噛まずに言えたと得意げ)」
「っ!?(←どや顔が可愛過ぎてツボに入った)」
6名無しさん@ピンキー:2011/01/13(木) 10:19:20 ID:IvxnT+gq
おめぇら無口にも程があるぞ
7名無しさん@ピンキー:2011/01/17(月) 08:33:15 ID:97mwShQA
hosyu
8名無しさん@ピンキー:2011/01/19(水) 00:05:15 ID:Ue6rXPz2
「前スレ落ちたな」
「……」
「寂しくないのか?」
「……」
「そうか」
「……さびしい」
9ファントム・ペイン6話 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:25:07 ID:5dVCvFH/
非エロ。今回は長いです。
似非SFな話が出ます。苦手な方はNG指定をお願いします。
10沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:27:19 ID:5dVCvFH/


――――あつい
――――くるしい
――――いたい

――――なにも、みえない
――――なにも、きこえない

――――たすけて

――――おかあさん
――――おとおさん

――――こえを、きかせてよ
――――つな

――――
――――――――

(――――綱!)
「大丈夫か、結」
渡辺結は目を覚ますと、直ぐ間近で兄の綱が心配そうに覗き込んでいる事に気付いた。
総合病院の待合室。ベンチに座ったまま眠り込んでいたらしい。
見回すと辺りは薄暗く、人気も無い。
時計を見るとすでに10時を回っていた。
「うなされてたぞ。悪い夢でも見たか?」
(うん)
この世にたった一人、綱にしか判らない"声"で結は返答した。
発話障害を負う彼女には、この方法が最も簡単なコミュニケーション手段だ。
(ちょっと昔の夢を、ね)
いつも通り笑顔を出そうとするが、顔が強張る。
喉が渇いていた。
「ほれ」
投げて寄越されたオレンジジュースの缶を受け取る。
タブを開けて一口啜った。
疲れた脳に爽やかな酸味が広がる。
(絵麻さんは?)
「さっき連絡来た。無事だってさ」
結は安堵の息を漏らした。
直ぐに緩めた表情を引き締めて呟く。
11沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:29:13 ID:5dVCvFH/
(あの代謝速度、普通じゃなかった。
伊綾の御尊父さん、例の会社の系列だよね。
ひょっとすると絵麻さんも……)
「とすると、俺達のふたつ下だから、もう試作段階に入ってた世代か。
じゃあ、多分ウィルス共生型……殆ど処分されたって聞いたけど。
上のほうがバカなせいで、例のウィルスに感染性が有るなんて信じちゃってさ」
結は缶を置いて俯いた。
「どした?」
(これから、あの娘とどう接していけばいいのかな)
弱々しく笑う結。
「いつも通りでいいんじゃね」
さも当然と言った風に、綱は答えた。
(でも、予想が正しければ、彼女そう長くは……)
「んなの、誰だって同じだ」
綱は力強く断言する。
「俺だってお前だって、明日交通事故で死ぬかもしれないし、今日階段で足滑らせて死ぬかもしれない。
隕石が偶然頭直撃して死ぬかもしんねえし、饅頭5コいっき食いして喉を詰まらせて死ぬかもしんねえ」
(最後ので死ぬのは綱だけだと思うけど)
結は緊張がほぐれて苦笑した。
「まあ、とにかく俺達に出来るのは、車に気をつけたりとか、足元を注意したりとか、そんなことだ。
どうしようもない事はどうしようもないし、まして他人の事ならなおさらさ。
絵麻ちゃんの場合、恐らくそのどうしようもない部分が多いってだけだろ」
(私は綱ほど割りきりが良くないよ)
結はジュースを飲み干すと、立ち上がって伸びをした。
(時を見計らって、一度話をしてみる、絵麻さんと。
一応私達の出自も話しておいたほうが良さそうだし)
「そーだな。今日のとこは帰ろうぜ。
おっと、その前になんか食っていこう。
もうハラがへって背中とくっつきそうだ」
(母さん、夕飯作っておいたと電話で言ってたでしょ。
ちゃんと家に帰ってから食べようね)
傍から見ると片方が一方的に話しかけている奇妙な二人。
缶をくずかごに入れて立ち去った後、照明が完全に落ち、待合室は闇に包まれた。

12沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:31:34 ID:5dVCvFH/
深夜の総合病院。
病室の前で俺はベンチに座る事もせず、絵麻の診療が終わるのを待ち構えていた。
集中治療室ではないが、クリーンルームを丸々一つ貸し切っている。
約20分間の心肺停止。命に関わる程ではないものの、大出血を数点。一部に2度程の火傷。恐らく骨折も多数。
以上を踏まえれば若干物足りない処置では有るが――――。
――――救急車で運ばれて行く直前の彼女の容態を考えれば、余りに物々しい。
そう、あの時点で、彼女は全くの無傷だった。
呼吸停止から救急車がたどり着くまでの間に、全ての症状が回復していた。
脈拍も意識も正常。傷のあった場所には、真新しい皮膚が生え変わっていた。
非常識だ。有り得ない。
プラナリアだか何かなら話は判るが、彼女は人間だ。
人間の、筈だ。
「……判んねえ」
呟いたその直後、病室の扉が横にスライドし、白衣姿の人間が数名廊下に出て来る。
その中に一人、見知った顔がいた。
「親父」
白衣を着た親父は俺の姿に気付くと、一緒に出て来た医者達に頷いて、一人俺の方へ近付いて来る。
「あんた医者だったのか? サラリーマンだとばかり思っていた」
「サラリーマンだよ。製薬会社のね。
医師免許は無いけど、薬剤師の資格ならある」
親父は近くのベンチに座ると、俺にも座る様に促す。
随分と疲れた顔だった。
俺は直ぐには座らずに、ベンチの脇の自動販売機に向かう。
「何か飲むか? 時間があればで良いが」
「ん? ああ、時間なら大丈夫。
そうだね。熱いお茶を頼むよ」
俺は金を入れて、ホットの緑茶と無糖カフェオレを選んだ。
湯気の立つ紙コップの片方を渡す。
「ありがと」
二人少し距離を置いてベンチに腰掛け、飲み物を啜った。
「絵麻は?」
「大丈夫だよ。精神肉体とも平常と変わりない」
予想通りの答えが返って来た。
「……説明、してくれるんだろうな」
今更何を、とは言わない。
親父は溜息を吐いて、手に持っていたクリップファイルを俺に手渡した。
「カルテ……?」
ドイツ語ではなく、有る程度見慣れている英語で書かれたそれには、坊主頭で今より少し幼い絵麻の顔写真が載せられている。
"Patient"の欄に"Ema Kornberg"とあり、その横に"subject No.723"と記されていた。
"実験体第723号"、と。
「実験、動物」
どこかで予想はしていたものの、余りに非現実的で頭の中から閉め出していた可能性。
俺はファイルを握る手に力を込めた。
親父は虚空を眺めながら、話を切り出す。
13沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:33:25 ID:5dVCvFH/
「話は長くなるよ。いい?」
俺は無言で頷いて先を促した。
「優生学ってのは知ってる?」
「名前だけなら。……あれだろ、ナチスか何か」
親父は頷いた。
「簡単に言えば、『金持ち』とか『犯罪者』とか、社会的な価値観で決定される個人の形質を、単純に遺伝子に依るものと仮定して研究する学問のことだね。
これを階級闘争と結び付けて考えたのが社会ダーウィニズム。
そして偏った民族主義と結び付いた果てがホロコーストになる。
かつてはヨーロッパに限らずアメリカでもありふれた考え方だった。
植民地支配を正当化するには都合の良い考え方だったからね。
何より、自然科学とキリスト教的世界観のギャップを埋める矛盾の無い理論が求められていた。
化石の発掘により判明する、救済なく絶滅した数え切れないほどの種。
彼らはより優れた存在へ至るための、意味の有る尊い犠牲者でなければならなかった。
故に、自分達が進化の頂上にあると言う自尊と共に、優生学は浸透していく。
その結果、精神疾患罹患者、同性愛者、被差別階級、少数民族に対する極端な法律が多数採択された。
やがて、第二次世界大戦を経てナチスのユダヤ人虐殺が明るみになると、優生学者たちは軒並み支持を失う。
けれど一部のパトロンは、その後も彼らの強力な支持者であり続けた」
親父はそこで茶を一口啜り、息をついた。
「……1950年代に入り、DNAこそが遺伝物質であると証明された後も、人間に対する遺伝子の研究は禁忌だった。
かつての優生学者たちの一部、優生的遺伝学者とでも言おうか、そして彼らの支持者たちはそれを怠慢であると見なす。
より高次の存在へ、進化の階段を進むという神聖な義務を怠っている、とね。
彼らは独自のコミュニティの中で、秘密裏にヒトを直接対象にした研究を進めた。
ただ、当初その研究で目に見える成果はなく、実際に"より優秀な"人類を創造するレベルからは程遠いと言わざるを得ない。
まあ、当然なんだけどね。彼らの求める"優秀さ"は主に後天的な社会スキルだったし。
何より閉鎖的な狭いコミュニティの中で、設備は不十分、ろくな対称実験もなく、基礎研究を疎かにしている。
そんな中でまともな成果が出せるはずもない。
何千と言う受精卵、胚、胎児、そして数十に及ぶ死児と未熟児を犠牲にして、彼らが得たものは自己満足だけだった。
けれど、20年ほどして状況が変わる。
強力なスポンサーが付いたんだ。
大きいのが製薬会社。
70年代、公害や薬害に対する認識が広まり、臨床試験に対する規制が厳しくなった上に、動物愛護団体が動物実験に反対し始める。
実験を円滑に進めるためにも、地下に潜った優生的遺伝学者たちのラボは利用のし甲斐があり、学者の方も資金や資材が必要だった。
後は軍隊だね。
ベトナム戦争で、先進国における戦死者が後方に与える打撃を痛感した軍の関係者たちは、機械化を急ぐ一方、それまで以上に"死ににくい兵士"の研究に力を注ぐようになった。
まともな研究資材とバックアップ、そして成果を出さなければならないプレッシャー。
これらによって、優生的遺伝学者たちの研究は、一気に加速した。
そして、ついに彼らの理想を体現した、生後数年は生存できるまともなデザイナチャイルドが誕生する。
最初は身体能力の増強、免疫力の強化、そして"無駄な"遺伝子外DNAの削除が課題だった。
けどね、ヒトの細胞システムは元々上手く出来ていて、しかも極めて微妙なバランスの上に成り立っているものだ。
どれかを動かせば、片方のバランスが崩れる。
彼らが望む"優秀な"子供なんて、一朝一夕には生まれてこない。
"実験体"から"試作"に至るまでに、20年の期間と数百の犠牲者を要した。
彼女は、絵麻は、その"試作"の一人で、生存しているものの中では最も新しい、もっとも完成に近い存在だ」
14沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:35:22 ID:5dVCvFH/
現実感がなかった。
遠い国での実験。優秀な子供。ヒトの遺伝子操作。
そんなものが、普段生きていく上で必要になるのか。
「信じられないって顔だね」
「当たり前だ。そんなの。
有り得ない。どう考えたって――――犯罪だろう」
親父は、そうだね、と頷いた。
「でも、この国においてすら、優生保護法が改正されたのはつい最近の1997年なんだよ。
積極的消極的の差はあれ、優生思想そのものは世界中にありふれたものだ。
社会をより良いものにして行こうという情熱を、そういう形で実現する人たちはどこにでもいる」
「……」
親父は先を続けた。
「"試作"に採用された機能は、主に二つ。"生体ユニットの神経胚へのインプラント"と"レトロウィルスによるゲノム最適化"だ」
「生体ユニット?」
ゲノムの話をしていたはずなのに、行き成り別の用語が出てきて混乱する。
こちらから話してしまおうか、と親父は呟いた。
「絵麻って、口下手でしょ?」
「ガイジンだし、当然だろう」
「まあ、それもあるけど」
親父は口ごもる。
「彼女は、決まった相手、同じ世代の"試作"と、えーと、テレパシーみたいなことが出来る」
「テレパシーだぁ?」
取り分け胡散臭い言葉に目をしかめる。
「"物理的媒体に拠らない、直接的なコミュニケーション手段"を別の良い言葉で表現できなかったんだよ。
僕の専門じゃないから詳しくないけれど、用いる手段は別に超能力でもなんでもない。
量子的絡み状態に有る分子を核とする生体ユニットを別々に発生初期の神経胚に移植し、そこからマイクロマシンで決まった神経回路を誘導してやるんだ。
披験体の子供たちは、言葉を思い浮かべ伝えたいと念じるだけで、周囲にいる仲間のウェルニッケ野を直接刺激して概念を伝えることが出来る。
限定的とは言え実際にこの手段での意思伝達が達成されたことはチョムスキーらの提唱する普遍文法論を――――」
「……あんたの言っている事は半分も理解できんぞ」
親父は肩をすくめた。
「だから、テレパシーみたいなものと考えてくれていいよ。
どの道、絵麻と同世代の"試作品"は彼女を除いて皆亡くなっているから、もうその能力の使い道はない。
後に残されたのは、友達との言葉による普通のコミュニケーションにちょっと難の有る普通の女の子、と」
テレパシー、という言葉がどこかで引っかかっていた。
どこか、他で似たような物を見たような気が……。
俺は首を振って、頭を切り替えた。
「遺伝子のほうに話を戻すよ。
何百と言う幼児の生育過程を観察し終えて、その殺処分を終えるころには、学者たちもゲノムのどの部分を動かせばいいのかが大体判ってきた。
何かの機能を得れば、別の何かを失う。
全てを選んでいれば複雑になりすぎてシステムがパンクする。
ならば、周囲の環境に応じてゲノムを書き換えれば良い。
たどり着いた一つの解が、レトロウィルスの変種を寄生させて、都度細胞を生存に最適なシステムに作り変えていく手段だった。
15沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:38:06 ID:5dVCvFH/
彼女の体内で共生している数10種のレトロウィルス。
これら普段は体内にばらばらに分布し、数も知れていて消費するエネルギーは極めて少ない。
そして、環境の変化を感知すると、特定のものが爆発的に増殖し、細胞に入り込んで自身も大量のたんぱく質を合成しながら核のDNAを書き換えるんだ。
例えば、極端に偏った栄養しか取れない状況に置かれても、彼女は健康のままでいられる。
本来人体には合成不可能で体外からの摂取に頼らざるを得ない必須アミノ酸やビタミンなど、これらを合成するよう細胞を作り変えることが出来るからね。
だから、壊血病にも脚気にもならない。
また、今回の様に血中酸素濃度が薄れると細胞が冬眠状態に入り、本来は持ち得ない部位にも無酸素代謝系を作成して最低限のエネルギーを利用し生存を維持する。
そして極浅い呼吸と脈拍を低サイクルで続けて、酸素が戻るのを待つ。
酸素レベルが通常まで回復すると冬眠状態を解除しつつ、幹細胞を発生させて失われた機能を瞬く間に修復。
神経幹細胞まで作り上げるから、普通なら回復しない脳の損傷も、時間さえかければ元に戻る。
実験報告によると、被験者の一人に前頭部から後頭部にかけて拳銃弾を貫通させた所、数ヶ月のリハビリで社会性まで回復したそうだよ。
普通の銃創程度は言わずもがな。
十分なカロリーさえあれば、粉砕骨折だろうが内臓破裂だろうが、どんな怪我でもほぼ1日で元通りになる」
親父は俺の手元に有る資料を捲った。
胸部に大きな傷を負い、胸骨が露出している幼い少女――恐らく昔の絵麻――の白黒写真。
思わず目を顰める。
肺に、多分心臓にも重大な損傷が有るだろう。生きているとは思えない。
その直ぐ隣に同じ少女の白黒写真、こちらは露出している上半身に傷一つ無い。
写真の下には"30 minutes after the wound"と記されていた。
「それは先端を潰した銃弾を直接撃ち込んで、何の処置もせず放置した実験の経過らしいよ。
抵抗力が強いのは、何も怪我に対してだけじゃない。
病原体に対してもいち早く反応し、毒は分解中和され、細菌には抗生物質の分泌、有害なウィルスにはレセプターの不活性化で対応する。
HIVもプリオンも彼女の活動を妨げることは出来ない。
そして特筆すべきは、テロメラーゼが活性であること。
普通の人間の細胞は分裂回数が決まっていてそれ以上は自死を引き起こすけど、"試作品"の細胞分裂には制限がない。
加えて遺伝子異常を修復するウィルスが常に分裂中の細胞の中で働いている。
理論上は、地球上のどんな環境でも適応し、無制限に生きる事が出来る」
相変わらずその話は半分程度しか理解できなかったが。
その話が事実ならば、彼女の体は、余りに違い過ぎる。
「あいつは……」
「ん?」
「絵麻は、死なないのか。永遠に生きる、メトセラなのか」
親父は静かに頭を振った。
「老化のメカニズムについては、まだ判っていないことが多い。
テロメアが修復されても、別の要因で老衰する可能性は十分有り得る。
それに、さっき遺伝子異常を修復できると言ったけど、それは完璧じゃない。
特にレトロウィルスはRNAだからDNAより変異しやすい。二重三重のチェックがあってもいずれは破綻する。
実際破綻したケースも多く、その結果……」
親父は暫し言い淀んだ。
16沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:40:14 ID:5dVCvFH/
「細胞の癌化率が、同年代で平均的な現代人のおよそ千倍。
彼女と同じ"試作"の約7人に1人が、毎年急性の癌で死亡していた。
楽観的要素と悲観的要素を差し引いて、4年後彼女が生きている確率は五分五分と考えられる」
非現実的な話に付いて行けず、ぼんやりとしていた頭に、一気に血が上った。
4年後は、想像も出来ない程遠い未来では無い。
大体、4年と決まっている訳ではなく、明日にもそれは起こり得るのだ。
「一度ウィルスに異常が生じると、癌は瞬く間に全身に転移し、1日も経たずにあらゆる生体機能が停止する。
止める手段は無い。抗がん剤も放射線も、このウィルスの特性故に無意味だ」
「……予防する手段は無いのか」
絞り出すように声を上げる。
温くなったカフェオレを飲み干しても、喉はカラカラのままだ。
「……なくもないよ。
無菌室に閉じこもり、怪我などのリスクを避け、強い抗ウィルス剤を飲み続ければ、癌化の確率は確実に下がる。
けど、絵麻はそれを選ばなかった。
『普通の場所で、普通に生きてみたい』と言ってね」
あいつらしい、少しだけ笑う。
話に区切りが付いたので、俺はさっきから気になっていた事を尋ねた。
「なんであんたはそんな事を知ってるんだ。
元々あいつやその学者達とどんな関係が有った」
「バックにいた製薬会社はウチの系列でね。
一年前内部告発で事が明るみに出かけ、ラボは閉鎖、関係者は殆ど逃亡。
処分を免れたごく一部の実験体の処遇は、系列の会社に任されることになった」
「……それで終わりかよ。
何とか学者達は今も娑婆の空気吸ってて、バックにいた奴等はのうのうと居座ったままか。
裁判で然るべき裁きを受けるのが筋だろうが!」
親父は目を伏せて静かに答えた。
「そんな事をして、誰が得をするの」
「誰って……」
言葉に詰まる。
「訴える人がいなければ、裁判は成立しない。
誰かの損失を引き起こさない限り、誰も訴えることはない。
被験者の子供達は殆どが既に亡くなっていて、それ以外も大方が閉鎖直前に殺処分されている。
もともと戸籍も身よりも社会的身分もない彼らが誰に知られる事もなくいなくなったとしても、警察は関知できないよ。
絵麻には訴える権利が有るけど、境遇を示す証拠は少ないし、彼女自身が奇異の目に晒されるだけだ」
俺はやり場の無い怒りを抑えながら、拳を強く握り締めた。
「大丈夫だよ。
騒がれるのは嫌だからという理由で、関係者にはちゃんと処分が下った。
実験を指示していた上役は退職金を貰った上で職を辞したし、学者達は社会的に抹殺されている。
同様の事件をこのグループが起こす可能性は低い」
その言葉に少しだけ溜飲を下げる。
17沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:42:22 ID:5dVCvFH/
「何で絵麻は殺されなかったんだ」
「美奈子さんが庇った」
突然出てきた名前に面食らう。
俺の記憶が正しければ、親父がこの名で呼ぶ人間は、随分前に失踪したあの人しかいない。
「……母さんの事か」
「美奈子さんは児童心理学者だった。
閉鎖環境での社会性の発育を研究していた彼女は、論文を通じて偶然件のラボの存在を知った。
口封じと、専門家の確保の二重の目的で、美奈子さんは誘拐され、実験体の子供たちの制御を強要されていたそうだよ」
一瞬、疑念が俺の頭を掠めた。
「本当に強制だったのか」
あまり言いたくはなかったが、それでも確認せずにはいられない。
「実際には自分から参加したんじゃないのか」
親父は俺の目を見て、強く否定した。
「それは違う。絶対に、違う。
彼女は、そんな人じゃない。自己満足や独りよがりのために、子供を犠牲にするような人じゃない。
もし自分からあんな所に行ったなら、その前に身の回りを整理しておくはずだ」
俺は納得した振りをした。
実際に母さんがどんな人だったかなど、俺は知らない。
「それで、結局母さんはどうなった」
「死んだよ」
感情を押し殺した声で、親父は淡々と答えた。
「ラボの閉鎖直前に、子供達の殺処分に反対して、銃で撃たれた。
何とか絵麻を連れて逃げたけど、ラボの外はずっと砂漠で、歩き続けて1日後に死んだそうだよ」
半ば答えは予想できていたからだろうか、ショックは小さかった。
同時に、自分の親への情が薄い事に動揺していた。
「葬式は」
「6月に済ませたよ。御義父さんも御義母さんも亡くなっているから、僕一人で荼毘に付した。
……黙っててごめん」
「それと絵麻の事もだ。なんでそっちを含めて俺に話さなかった」
「ああ、それは――」
親父は顎に手を当てた。
「話してたらきみ、絵麻に同情したでしょ」
「……そう、かも知れないな」
「彼女、同情は嫌いだからね」
そんな理由でかと思わなくもなかったが、知っていた所で俺に何が出来た訳でも無い。
精々万が一の事態に対する心構え位は出来たかも知れないが、それは俺の問題でしかない。
絵麻の事を"可哀相な奴"と思ってしまったら、接し方も変わっていたのだろうか。
「…………俺は、あいつの事が知りたい。
絵麻にとって重要な事は、知って置きたい」
例え、知る事には責任が伴うとしても。
「知らない方が、幸せなことだってあるよ」
「危なっかしいんだよ、あいつは。
平気な顔して、大事な事は全部自分の中に溜め込みやがる。
今回の事だって、あんな馬鹿をやりかねんと知っていたら、注意位していた。
まあ、まさか火事場に単身で突っ込むとは流石に想像出来なかっただろうが」
命には別状無いかもしれないが、あんな目に遭って苦しかったろうに。痛かったろうに。
言いたい事を見越してか、親父は新たな事実を告げた。
18沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:44:21 ID:5dVCvFH/
「あの子の痛覚は極めて鈍感だ。
元々は過敏な位だったそうだが、年齢と共に段々と体性痛内臓痛共に痛み刺激に対する反応が低下している。
理由は良くは判っていないけど、多分、体の方が痛覚を"必要ない"と認識してるんじゃないかな。
怪我をしても直ぐ直るんだから、それを忌避するための警告信号も必要なくなる」
「それでか……」
思い当たる節はあった。
絵麻は他人の負傷は大袈裟な位怖がる癖に、自分の怪我に関しては酷く無頓着だ。
「……馬鹿だ、あいつは」
「泰巳……」
「自分が平気なら、どんな目に遭っても良いのかよ。
治るなら、痛く無いなら、どんな怪我しても構わないって言うのかよ。
不死身のハリウッドヒーローにでもなった心算なのかは知らないが、周りがどんな思いで――――」
その時、病室のドアがスライドし、中から看護士らしき男が出て来た。
看護士は親父を見付けると、傍に寄って何事か耳打ちする。
親父が頷くと、男はそのまま部屋とは反対の方向へ去って行く。
「その言葉は、絵麻に直接言うといい」
親父は俺の方へ向き直ると、一寸逡巡してからこう告げた。
「お姫様がお呼びだよ。
きみに会いたいってさ」



クリーンルームの中は、その名の通り清潔で最低限の物しか置かれていない、シンプルな造りだった。
二つのパーティションに分かれ、奥の区画に入るには、防塵服を着込んでエアシャワーを浴びなければならない。
万が一の事態――絵麻の免疫が機能を失ったり、彼女のウィルスが他人への感染能力を得たり――に備えた措置らしい。
大きなガラスの向こう側、絵麻はベッドの上に横たわったままこちらを見ていた。
腕や胸元からチューブとかコードが伸びて、透析装置だの心電計だのに繋がっている。
物々しい医療機器に接続された少女は、しかし元気そうで、俺の姿を認めて微笑んだ。
「体調は如何だ」
『大丈夫』
マイク越しの声。
俺は憮然と頷きながら、部屋の中程、区切りを挟んでベッドと相対する位置に置かれたパイプ椅子に腰掛ける。
そこから上目遣いに絵麻を睨んだ。
少し気圧される絵麻。
『ヤスミ……?
怒って、る?』
「当たり前だ。怒ってるに決まっている。
事情を黙ってた事じゃない。
馬鹿な真似をして、余計な心配を掛けさせた事だ」
行き成り、きつ過ぎる言い方だったかも知れない。
それでも、俺は視線を伏せて繰り返した。
「……心配したんだ」
『…………ごめん』
「お前は別に悪くない。俺が勝手に怒っているだけだ」
我ながら理不尽なことを言っている。
その侭、二人して暫し黙り込んだ。
何故か空気が重い。
19沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:46:01 ID:5dVCvFH/
「お前の体の事は聞いた」
絵麻は無言で俯いた。
「馬鹿だな、お前は。
何を隠す必要が有った。
癌の事は兎も角、お前が昔どうしていたかなんて、今の俺には関係無い」
『ごめん』
同じ言葉を繰り返す彼女に苛立つ。
「だから、何で謝る。
お前は悪くないと言っているだろう」
『お母さんのこと』
俺は一瞬言葉に詰まった。
それが、勿論彼女の生みの親等ではなく、俺の母親を指している事は明白だった。
『あなたの、お母さんのこと。死なせてしまった。
それなのに、ずっと、言え、なくて――――』
時折、絵麻は声を詰まらせる。
『だから、ごめんなさい』
「そんな事……」
どうでも良い、と続け様として、余りの薄情さに自分で呆れる。
「……お前が気に病む事じゃない。母さんが勝手に、やりたいようにやってくたばっただけだ」
絵麻は俯いたまま首を振った。
『あの人、最期まで平気な振りして、笑ってた。
最近、漸くわかった。本当は物凄く痛くて、苦しくて、怖くて、でも我慢して、心配させないようにって』
気付いていれば、何とか出来たのかもしれない。そう言いたいのだろう。
何故、今更そんな事を言うのか。
家族が、少なく共肉親と言う意味に於いては、いた事の無い彼女に、家族の情は実感し難いものだったのかも知れない。
それを理解し始めたからこそ、今になって俺や親父に罪悪感を感じている。それもあるのだろうが。
「――――怖かったんだな」
絵麻は顔を上げ目を瞬かせた。
「怖かったんだろう。周りは火の海で、手元には助けなきゃいけない奴がいるのに、自分の事は誰も助けてくれない。
幾ら体が頑丈でも、頭が瓦礫に押し潰されれば死ぬ。
そう、お前だって死ぬんだ」
それが判ったからこそ、判ったのだろう、母さんの気持ちが。
自分の身を案じるのは一瞬で、結局この少女は他人の心配ばかりしている。
自分の明日すら、定かで無いと言うのに。
俺は苦笑した。
「矢張り馬鹿だな、お前は。
ガキが年上に気を遣うもんじゃない。
ガキはガキらしく、自分の事を考えてりゃ良い。
怖ければ怖かったって、他人に甘えてりゃ良いんだ。
お前は、お人好し過ぎる」
絵麻は困惑した顔で首を振る。
20沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:47:41 ID:5dVCvFH/
『違う、よ』
「何が違う」
もどかしかった。
眼前のガラスが邪魔で仕方が無かった。
今すぐ近寄り、彼女を抱きしめたかった。
『だって、私は、……人の痛みが、わからないから』
そう言って彼女は悲痛な表情で自分の体を抱きしめる。
(――――眼球に針を近づけると、人は痛みを想起して反射的に目を閉じる。
けれど検診の時、絵麻は瞬きすらしなかった。
彼女にとって痛覚は、未知の感覚になりつつあるのかもしれないね)
親父が最後に言っていた言葉を思い出す。
もう彼女は、歯を叩き折っても悲鳴一つ上げないそうだ。
『きっと私、いつか痛覚を全部なくす。
そうしたら、人を傷つけても何も感じなくなる。
だんだん、そんな人間になってるのが、判る』
絵麻が自分の事を、自分の苦しみを吐露するのは、俺が知る限りこれが初めてだった。
だから、直ぐにでも否定したい気を抑え、彼女の途切れがちな言葉を待つ。
きっとそれが、彼女にとっての苦痛であると、俺は知っているから。
『周りで誰かが苦しんでいても、気付いてあげれない。
ヤスミが酷いケガしてもきっと無関心で、死んでしまってもどうでも良くなるかもしれない。
ヤスミが、いなくなっても、気にすら留めなくなる。
そんな風になるのが、――――こわい』
「ならねえよ」
黙っていようと決めていたのに、自然と声が溢れる。
「お前みたいなお人好しの馬鹿が、そんな風になる訳ないだろう。
自分の苦痛が判らないと、他人の苦しみに共感出来なくなるだ?
お前は刻んできたんだろうが。母さんの苦痛と、死んじまった同輩の苦痛を、全部。
それは10年やそこらで風化しちまう程度の物なのかよ。
お前は只、忘れたいだけなんだろうが!」
いつの間にか、俺は立ち上がってガラス窓に詰め寄っていた。
絵麻は僅かにたじろいだが、俺からは逃げない。
その場で弱々しく首を振った。
『……わから、ないよ』
「断言してやる。お前は、忘れない。
忘れたくても、絶対に忘れやしないさ。
もし忘れそうになったら、その時は――――」
一瞬だけの逡巡。
何の保証も無い、根拠も無い事を俺は言おうとしている。
けれど、そうしなければならない。
そうするのだと、俺は決めた。
21沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:49:00 ID:5dVCvFH/
「――――俺が、思い出させてやる」
絵麻は目を丸くした。
無言のまま、秒針の進む音が響く。
「……あー、言って置くが、別に暴力を振るうとか、そう言う事じゃないぞ」
頭を掻き毟って、言葉を選ぶ。
「ただ、俺はお前が苦しんで来た事とか、お前が辛いと感じた事とか、それが何なのか、少しは理解している心算だ。
お前の代わりにそれを感じる事も、それを肩代わりする事も、俺には出来ない。
けれど、お前がもしそれに耐えられなくて、忘れたいと思った時は、取り敢えず俺にぶつけろ。
愚痴位聞いてやるし、ストレスで暴れるんならそれでも良い。
俺が全部受け止める。
俺がいなくなるのが不安になったら、何時でもお前の傍に行く。
だから、もう、一人で抱え込むな」
後で思い出したら、恥ずかしさの余り穴に入りたくなるであろう事は、自分でも容易に想像が付く。
だがそれを自覚しつつも、今の自分は大真面目だった。
(まるでプロポーズみたいだな……)
絵麻は呆気に取られていたが、段々と顔がその顔が赤くなって行った。
『え……う、あ…………、
ほ、ほん、とう?』
「本当だ」
絵麻は相当混乱している様で、首を上げたり下げたり横に振ったり、時折ブツブツと呟いたりと、挙動不審だった。
『で、でも……』
結局、顔を紅くしたまま俯いて、絵麻は呟く。
『私、ヤスミに何もしてあげれないよ』
「そんな事はない。
お前は自覚して無いんだろうが、俺は随分お前に助けられている」
以前の俺は、意味も無く遣り場も無い苛立ちを抱えながら、日々を過ごしていたように思う。
分別の付かない時分では、それを暴力で発散しようと、不良を相手に荒れていた事もあった。
他人に期待されるのが怖くて、周囲に嫌われるような事ばかり言っていた。
今もそうなのかも知れない。
でも、あれから少しでも変われたのだとしたら、それは少なからぬ割合で彼女のお陰なのだと思う。
「俺にはきっと、お前が必要だ。
俺自身の為にも、お前が望む限り、お前の支えになりたい」
『…………』
絵麻は暫く顔を伏せていたが、ゆっくりと俺に向き直った。
『……約束、して』
小さな声で囁く。
22沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:50:18 ID:5dVCvFH/
指きりでもするのか? この状態で。
そう冗談めかして答えようとした俺は、彼女の目を見て息を呑んだ。
微かに上気した頬。潤んだ瞳。薄く戦慄く唇。
それらが、余りに目の近くに存在している。
心臓が何故か高鳴っていた。
顔が熱くて、冷静な判断が出来ない。
何時の間にか、絵麻はガラス窓の間近に寄って来ていた。
何時の間にか、俺もまたガラスの直ぐ近くまで詰め寄っていた。
絵麻が更に身を乗り出して来る。
俺も若干身を屈めて、顔に近付いた。
絵麻がそっと目を閉じる。
異様な雰囲気に呑まれ、俺も釣られて目を瞑った。
ガラス戸越しに、互いの口を寄せる。
近付く熱と熱。
数ミリの距離を隔てて、唇と唇が重なる。
その直前、プチンと何かが切れる音がし、続けて耳障りな警音が響いた。
慌てて目を見開くと、絵麻の襟元から伸びたチューブの一つが外れている。
「あ……」
『……』
二人、呆然と静止したまま。
突然ノブが回る音。
「伊綾さん。面会の時間過ぎてま――――」
看護士が姿を現す迄の僅かの間に、俺と絵麻は脱兎の如く元居た場所に戻った。
「伊綾さん?」
「大丈夫です。判りました」
チューブを付け直す絵麻から目を逸らし、俺は看護士の人に返事を返した。
動揺を押し隠しながら、俺は肩越しに絵麻の姿を確認する。
彼女は背中を向けていたが、その首筋が真っ赤に染まっているのが見えた。
「済まん。先に帰るぞ。
明日も見舞いに行く」
『……』
無難な言葉を掛けるが、返事は無い。
俺は看護士に促され、病室を辞した。

23沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:52:33 ID:5dVCvFH/
それから、家に帰る迄の事は良く憶えていない。
一応真っ直ぐ帰った筈だが、玄関に辿り付く頃には、もう深夜を回っていた。
余りに、考える事が多過ぎた。
真っ暗な我が家に入る。
他には誰もいない。
親父は絵麻の健康状態について調べなければならない事があるらしく、病院に泊り掛けになった。
絵麻本人については言わずもがな。
俺に出来る事は、何も無い。
「……寒いな」
暗闇の中でも、息が白く染まっているのが判る。
ドアを閉め施錠し、電灯を点け、そのまま玄関に倒れ込む。
カラン、と乾いた音が手元から響き、手提げバッグの中からシアンの四角い箱が転がり出て来た。
今日の、否既に昨日の、昼に母さんの部屋から出て来たトイカメラだった。
絵麻がアパートの前に置いて来た荷物を受け取っていた事を、今更思い出す。
カメラを拾い上げる。
結局、こんな物が遺品となってしまった。
バッグの中にカメラを仕舞おうと身を起こすと、他にも何かが入っている事に気付く。
現像済みの写真が、40枚程封筒から覗いている。
「もう現像終わってたのか……」
最初の一枚に目を落とす。
真っ白だった。
電灯にかざして見ても、何も写っていない。
次の一枚。
また一面白。
次も同じ。
一枚一枚確認しながら、俺は写真を捲って行った。
何か写っていないかと、祈るような気持ちで。
24沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:53:58 ID:5dVCvFH/
最後の一枚。
恐らく最初に撮られたものなのだろう。
一番奥にあったから感光を免れたのだろうか。
そこには微かに、誰かの姿が写っていた。
桜の木の下、スーツを着た大人二人と小さな子供一人。
子供は小学校の頃の俺だと直ぐに判った。
着慣れぬ正装姿で、はにかんでいる。
その右隣で、今よりずっと元気そうな親父が笑っていた。
そして、左隣では背の高い長髪の女性が微笑んでいる。
見えるのは口元までで、目より上は白く霞んで見えない。
目を凝らしても、何も見えない。
目を閉じれば、今でも、彼女がどんな顔をしているか頭の中で描くことが出来るのに。
もう、その姿を証明してくれるものは、なにもない。
不意に、目の奥から何かがこみ上げてきた。
再び床に崩れ落ちる。
あたたかい滴が、何も写っていない写真を濡らす。
涙が止められなかった。
玄関の隅で、靴も脱がぬまま、俺は一人嗚咽を抑える。
悲しかった。
母さんはもういない、その事実が悲しかった。
そして、怖ろしかった。
絵麻もやがていなくなる。
4年後、10年後、あるいはもっと早く、きっと俺より先に死んでしまう。
写真の中にしか残らない、想い出になってしまう。
その事がただ、ひたすら怖ろしく、俺は身を震わせた。

俺は、絵麻が好きだ。

25沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:55:38 ID:5dVCvFH/
痛い。
痛い。
いたい。
彼が去り、もう夜を回って大分経つのに。
あれからずっと、胸の奥のどこかが締め付けられている。
とうに失くしたと思っていた場所が。
『絵麻、調子は変わらな……って、
ど、どうしたの!』
様子を見に来たヤスシさんが慌てている。
ベッドの隅でうずくまり、胸を押さえている私を心配しているようだ。
私は無言で首を横に降った。
『……どこか悪いところでもあるのかい?』
只、首を振る。
どこも悪くはない。
悪いのは、きっと私だ。

私は、馬鹿だ。
家族が亡くなれば、誰だって心が痛む。
判り切っていた事だ。
なのに、私は家族を求めた。
事情を知っているヤスシさんは、私と適度な距離を取っていたと思う。
ヤスミは知らなかった。
知って欲しくなかったから、教えなかった。
私の体について知らないのを良い事に、ヤスミの内側に踏み込んでしまった。
家族以上にまで、踏み込もうとした。
彼の寂しさに、付け込んで。

自分が死ぬのは怖くなかった。
私にとって、死は日常の一部だった。
一日一日を精一杯生きていれば後悔なんてない、そう思っていた。
今は、怖い。
こわくてたまらない。
私はきっと、いなくなることで、ヤスミを悲しませてしまう。
彼の心を、傷つけてしまう。
その傷は、酷く痛むことを初めて知った。
私は、馬鹿だ。
26沈黙 / 告白 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/22(土) 23:57:28 ID:5dVCvFH/
胸の奥深く、失くしたと思っていたなにか。
そこがいつまでも、幻痛の様に軋みをあげている。
27 ◆MZ/3G8QnIE :2011/01/23(日) 00:00:22 ID:5dVCvFH/
投下終了です。即死回避にでもなれば

次は間が空きそうです
28名無しさん@ピンキー:2011/01/23(日) 00:08:32 ID:CNCRBUhO
>>27
超GJです!
ヤスミが遂に自覚を……重い恋だ

ところで双子にも何か秘密が
29名無しさん@ピンキー:2011/01/28(金) 00:11:37 ID:EDgmp6Es
「…………」
「…………」(ビクビク)
「…………過ぎたるは猶及ばざるが如しって言葉を知ってるか?」
「…………」(コクコク)
「やりすぎはダメっていう意味だ」
「…………」(コクコク)
「確かにここは無口娘のスレだ。だがな、無口過ぎて書き込みが無くなるのはどうかと思うぞ?」
「…………」(ビクッ!)
「お前、皆に言うことがあるだろ?」
「…………」(コクン)
「よし、言ってみな」


「……………………………………………………ほしゅ」
30名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 06:49:06 ID:1wJFm3x4
無口だとフェラとか出来ねーのか?
31名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 17:34:00 ID:afrwF9jz
「ラヴ・リンク」六話 まだかー!
32名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 03:50:26 ID:8BcTaPXT
それよりもまず保管庫の方を……
33名無しさん@ピンキー:2011/02/04(金) 01:45:27 ID:D3lvinye
……かゆ………うま……………ほしゅ………
34名無しさん@ピンキー:2011/02/04(金) 14:36:09 ID:rQhXlEJh
「……はもはも。……はもはも」
「お? それもしかして恵方巻か? 昨日食ってねえと思ったら今頃食ってんのか」
「!? 鬼は……外……! 鬼は……外!」
「あでっ!? いたたた、コラ止めろ馬鹿っ! 豆投げんな!」
「……………………」
「あ? なになに? 『口いっぱいに恵方巻頬張ってる姿を見せるのが恥ずかしかった』?」
「…………(もじもじ)」
「恥ずかしいって、いやお前いつも俺のを旨そうに頬張って」
「っ! っ!!?(ぽこぽこ)」
35名無しさん@ピンキー:2011/02/05(土) 17:59:00 ID:BVBBWsau
無理して太いの頬張ってたら顎が疲れてしまって
ちょっぴり涙目になっている無口っ子の頭を撫でてやりたい
36名無しさん@ピンキー:2011/02/07(月) 06:12:28 ID:8uDtokK/
アヒルの雛みたいにとてとてついて来る無口幼馴染かわいい
37名無しさん@ピンキー:2011/02/08(火) 14:50:26 ID:tlPznkJb
>>27
GJです。このスレに初めて来ましたが、面白かったです。
しかし、1〜5は読めないのでしょうか?
>>1の保管庫に行っても、過去ログの保管は一昨年と前々スレで止まっているようですし……
38名無しさん@ピンキー:2011/02/08(火) 15:17:03 ID:c3/Z8zSx
過去スレはこういうのがあるのですよ
ttp://mirrorhenkan.g.ribbon.to/
39名無しさん@ピンキー:2011/02/08(火) 15:20:54 ID:yp1OE7Sg
なんだこの素晴らしいスレは
40短編@台詞なし:2011/02/11(金) 17:37:00 ID:LUIiqwGa
静かな図書館に小説のページをめくる微かな音が響く。
本は一冊だが、その本に落ちる影は二つある。
やや大きな影が一つと、小さな影が一つ。
小さな影が少し動き、もう一つに寄り添うようにする。
寒いのかと問うと、小さな少女は微かに否定の動きをする。
彼女は自らの口では滅多に言葉を紡がない。
まるで何かの戒めでもあるかのように。
喜びも、怒りも、哀しみも、楽しさも。
その小顔に合った小さな口からは表現されることはない。
腕を反対側の肩に回して、彼女を優しく抱き寄せる。
彼女は少し擽ったそうに身じろいだが、そのまま大人しくしていた。
長く、艶やかな髪を撫でる。
少し青っぽい色の黒髪は、なんの抵抗もなく指の隙間から抜けて行く。
そうしてしばらくの間楽しんでいると、少女は小説のページを可愛らしい指でつついた。
そろそろ続きを読みたいということだろう。
二人は再び本の上に影を落とす。
小説では丁度主人公がヒロインに告白をする場面で、主人公はヒロインをしっかりと抱きしめ、耳元で愛を囁いていた。
少女の横顔を見遣ると、可愛らしい瞳を輝かせて小説に没頭していた。
少年はそんな少女を見ながら、今日の夜はどんな台詞にするか、密かに心の中で決めたのだった。
41短編@台詞なし:2011/02/11(金) 17:38:29 ID:LUIiqwGa
おわり
もしかしたら続くかも

台詞なしの方がココでは上手く行くみたいだなと思った
42名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 18:20:54 ID:gXGka5l+
台詞なしはGJだがエロなしはどうかと思います!
続き期待してますよー
43名無しさん@ピンキー:2011/02/12(土) 18:16:26 ID:Bs2TNjIr
>>41
おお、上手いな
このまま台詞なしでいくのか気になる
是非続き読ませて下さい
44小ネタ:2011/02/14(月) 20:29:32 ID:fXJ12rE3
朝、目が覚めると姉さんがベッドの横に座っていた。

六時半。まだ早いと言って差し支えない時間だ。
それにいくら家の中でも空気は冷たい。いつからココにいたのか分からないが、風邪などひかないか心配になる。
しかし姉さんは僕の心配も届かぬようでニコニコとこちらを見つめるだけだ。
まあ、何はなくとも。

「姉さん、おはよう」

コックンと大きく頷く姉さん。ご機嫌はすこぶるよろしいらしい。
では本題を。

「で、こんな朝早くにどうしたの?」

すると姉さんは何かを僕に差し出してきた。かわいい包装に小さなリボンのついた箱。
ここでようやく僕のまだ少し寝ぼけていた頭も動き出した。

「バレンタイン、ってこと?」

すると姉さんはコクコクと二回頷いた。ああ、それはとても嬉しそうに。
そして姉さんは携帯の画面を僕に示す。


『一番乗り』


そこには、ただそれだけが書いてあった。
うん、姉さんが満足ならいいんじゃないかな?




以上。
即席なので色々至らぬ点は御容赦を。
45かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/02/15(火) 00:05:39 ID:dEVbzLfh
>>44
GJです。姉さんに取られちゃいましたw

日付変わっちゃいましたが投下します。
46かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/02/15(火) 00:06:57 ID:frPFwR4c
 『彼女の嫉妬』



 ぼくは生まれてこの方、バレンタインデーというものを不思議に思っていた。
 なぜチョコレートなんだろう、と。
 いや、別にチョコが嫌いなわけじゃない。むしろ好きだ。それはもう板チョコ麦チョコチロル
チョコ、どんなものでもおいしくいただける。
 好きなんだけど。
 でも今の状況にはちょっとそぐわない。
 ぼく、日沖耕介は今、ベッドの上で拘束されている。
 万歳の恰好で、両手首をパイプ部分にロープでつながれて、身動きが取れない。
 すぐ脇にはぼくの彼女がいて、ベッドの縁に腰掛けながらこちらの顔を覗き込んでいる。
かわいい顔立ちだけど、無表情極まりないために、間近で見ると結構怖い。
 青川文花はその小さな手をおもむろにぼくの頬に伸ばした。
 ひやりと冷たい感触が走る。
 そして、もう一方の手で、ぼくの口に茶色い物体を運んだ。
 今日は、二月十四日。
 もちろんその物体は、ご多分に漏れずチョコレートである。
 口の中にべたつくような甘さが広がり、ぼくはゆっくりと咀嚼した。
 文花の視線に気圧されるように。
 彼女は、笑っていない。普段の無口加減も手伝って、見ていて非常に圧倒される。
 怒っているのだろうか。
 放課後に彼女の家に寄ったのは、バレンタインのチョコを受け取るためだったんだけど。
 部屋でいきなり押し倒されて、柔術スキルを持つ文花にあっという間に拘束されて、今に
至る。
 まあ、怒っているんだろうな。
 怒らせたつもりはないんだけど。
「ねえ、文花」
 ぼくの呼びかけに文花はチョコレートを取る手をぴたりと止めた。
「このチョコレート、文花の手作り?」
 彼女は答えない。
 ぼくは怯まず、感想を口にした。
「おいしいよ、ありがとう」
 文花は少しだけうろたえたように目を逸らした。
 たぶん照れているのだと思う。
 文花はしばらく迷ったように動きを止めていたけど、やがてチョコレートを手にして再び
ぼくの口元に運んできた。
 ぼくもそれに合わせて口を開ける。おかしな状況だけど、こういうプレイだと考えれば、
まあ。
 馬鹿なことを考えながら、一口サイズのチョコを受け取ろうとして、しかし空振りした。
 チョコを摘んだ手がぼくの口元から離れる。捕まえようと顔を伸ばそうとするも、うまく
いかない。
 焦らしプレイ?
「あのー、文花さん?」
 文花はぼくにじっと剣呑な目を向けてくる。さっきよりも幾分感情がこもった表情だけど、
その理由がわからない。今のも、恋人同士の馴れ合いなどではなく、何か理由があっての
意地悪なのだろう。ぼくはもう一度問い掛けた。
「文花、ぼく何か悪いことしたかな? ちょっと思い当たらないんだけど」
 目がさらに細まった。
 自分の胸に聞けと、そんな顔だ。
 しかし思い当たらない。今日一日を振り返ってみても、特に、
 ん?
「……ひょっとして、今朝のこと?」
 今日何か変わったことがあったとしたら、あれ以外思いつかない。見られていたのだろう
か。
 文花はやっとわかったかとでも言うように、こくりと頷いた。
47かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/02/15(火) 00:08:52 ID:dEVbzLfh
 
      ◇   ◇   ◇



 うちの近所に、同じ学校に通っている一学年上の先輩がいる。
 小学校中学校と同じところに通っており、端から見れば幼馴染みともいえる間柄だ。
 でも学校ではそんなに親しい付き合いはなく、子ども会での付き合いの方が多い。
 つまりはそんなに親しい関係ではない。
 普通の、どこにでもいる先輩後輩の関係だ。
 その先輩から、今朝チョコレートをもらった。
 特別な意味合いは無いと思う。いやホントに。
 なぜならその先輩は、ぼく以外にもチョコを配っているからだ。
 義理チョコではない。彼女が言うには義理などという意識は無いから、どちらかというと
友チョコらしい。
 もう少し正確に言うと、「いつもお世話になってます。これからもよろしく」チョコらしい。
 バレンタインのチョコというより、お歳暮に近い気がする。
 つまりはそんなわけで、先輩は毎年友人知人にチョコをばらまいており、ぼくもその
ご相伴に与ったというわけだ。
「チョコレートはカロリー高いから、非常食に最適だよ。今年の冬は寒さが厳しいから、
遭難した時にでも備えて持ってなさい」
 先輩の言葉である。去年は山にでも持っていきなさいと言っていた。



 ということを、柔らかくかつ丁寧に、誤解の無いように説明した。
 文花の表情は変わらなかった。
「えーと、そういうことで、あのチョコには特別な意味など何も無くてですね」
 なぜか敬語になるぼくに対して、文花は小さくため息をついた。
 少し顔が赤くなっている。
「文花?」
 突然、文花が動いた。
 手にしたチョコを自分の口に放り込むと、ぼくの目前に迫ってきた。
 拘束されている身ではろくに反応することもできず。
 あっという間に唇を奪われた。
「――」
 繋がる口唇。その隙間から甘味が送られてきた。
 口移しで、バレンタインのプレゼントを受け渡される。
「ん……んむ……」
 舌が絡み合う。甘さの中に苦味が入り混じり、唾液と一緒に溶けて、温かく広がっていく。
 ぴちゃりぴちゃりと、いやらしい音が耳を打ち、興奮を高める。
 文花のキスにいつのまにか夢中になっていて、ぼくは頭がくらくらと酔いそうだった。
 別にアルコール入りでもないだろうに。
 たっぷり三十秒はつながっていたぼくらは、離れた途端に苦しげに息を吐いた。
「……おいしい」
 短く感想を伝えると、文花はぼくの体に倒れ込んできた。
「文花」
「……」
 吐息のように小さな声で囁かれた。
 ごめんなさい。でも、
「私だけ……見ててほしい」
 ぼくは安心させるように笑顔を浮かべて頷いた。
48かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/02/15(火) 00:10:58 ID:dEVbzLfh
 
      ◇   ◇   ◇



 拘束は解いてもらえなかった。
 文花はぼくの服を脱がすと、自らも制服を脱ぎ始めた。
 急に目の前で行われるストリップに慌てる。
「ちょ、文花!?」
 彼女はぼくの狼狽などまるで意に介さず、生まれたままの姿になると、口にチョコレートを
含んだ。
 それから妖艶な目で微笑むと、ぼくの剥き出しのお腹に舌を這わせた。両腕は縛られた
ままなので、上半身の制服はボタンを外してはだけられているだけだ。でも下半身はしっかり
脱がされていて、下腹部のモノもすっかり硬直している。
 肌に舌の生温かい感触が生じ、段々と上の方に上ってくる。
 口の中で溶けたチョコレートが、舌先に乗ってぼくの肌に塗りつけられる。
 やがて、舌が胸まで到達した。
 乳首を舐められて、ぞくりと震える。
 手が使えないせいか、いつもとは逆で受けになっているせいか、妙に敏感になっている
自分がいた。
 文花はぼくの反応を見て気をよくしたのか、調子に乗ってどんどん舌使いが大胆になる。
乳首を甘噛みしたり、先端を転がすように舐め回したり、そのかわいい口で次々に攻めて
くる。普段ぼくが彼女にやっているように、ぼくの体をいっぱいなぶる。
 乳首だけじゃない。腹も、首筋も、脇も、腕や脚さえも舐め回された。舌のざらざらした
感触を受けるたびに、ぼくは体を強張らせ、熱い吐息を洩らした。
 口の中のチョコレートはすっかりどろどろの絵の具と化し、舌を使って全身に塗りたくられ
た。それを残さないように、もう一度丁寧に舐め取っていく。
 妙な興奮を覚えながら、ぼくは文花の奉仕を受け続けた。
 最後に残された部位は、天井に向かってそそり立つ逸物だった。そこにはまったく触れ
られず、焦らされるように他の場所を攻められるたびに、びくんびくんと上下に揺れる。
 文花は、うっすらと笑みを浮かべて言った。
「さわって、ほしい?」
 ぼくは激しく首を縦に振った。
「文花……触ってほしい……」
 笑みを深めると、文花は指先で逸物の先端に触れた。
「っ」
 それだけで、ぼくの性器は大きく跳ねた。
 文花は亀頭の真ん中を押し潰すように、指に力を加えていく。
 掌で肉棒全体を包み込んできた。ぼくはそれを見つめながら、下腹部に力を入れる。
 手を上下させて、しごかれた。今までとは比べ物にならないほどの快感が脳天に響いた。
散々焦らされたせいか、急激な射精感に襲われた。なんとか堪えるものの、長くは持ち
そうにない。
 ぼくの余裕の無さがわかっているのか、文花は嬉しそうに手を動かした。
 さらに追い討ちをかけるように、逸物をくわえ込んだ。
「ううっ」
 ぼくは低く喘ぐと同時に、文花の口の中に大量の白濁液を吐き出した。
 文花は少しだけ目を見開いたものの、特に動揺は見せなかった。待ってましたとばかりに
ちゅうちゅう吸い取り始める。
 魂を抜かれるのはこんな感覚なのだろうか。ぼくは射精の気持ちよさに浸りながら、そんな
ことを思った。
 すべてを出し切ると、文花もそれを受けて口を離した。
 それから噛むように口をもぐもぐ動かしてから、精液を少しずつ飲み込んでいった。
「……大丈夫?」
 文花はこくこく頷く。飲んでくれるのは嬉しいけど、心配にもなる。
 しかし文花は特に気にしてはいないようだ。それより半勃ちのそれをいとおしげに擦って
いる。直後の刺激に思わず息を止めた。
49かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/02/15(火) 00:12:03 ID:dEVbzLfh
 文花がまたチョコレートを一口頬張った。
 膝立ちの体勢でぼくの体の真ん中に移動すると、手で逸物を固定して、ゆっくりと腰を
下ろしていく。
 彼女の股間を見ると、もうそこは自身の液で濡れすぼっていて、先っぽが割れ目に触れ
ると、格別の興奮が沸き起こった。
 半勃ちだったそれはあっという間に硬度を取り戻し、愛液のおかげか、抵抗なく中に入って
いった。
「んん……」
 文花の喘ぎが洩れる。桜色に染まったきめの細かい肌が、うっすらとかいた汗で綺麗に
映える。
 文花が腰を動かし始めた。膣内がきゅうきゅう締まり、ぼくの逸物が苦しげに強張った。
 彼女が動くと、形のいい胸も微かに揺れた。巨乳ではないけど、小さめの乳首も相俟って
触りたくなる胸だ。いつもなら迷わず揉みしだいているところだけど、残念ながら両手は
不自由な状態である。
 文花が上体を倒して、顔を近づけてきた。
 つながったままキスをすると、再び口移しをされた。手作りチョコレートの味が舌から舌
へと移され、ぼくは陶酔するように甘いキスを味わった。
 どこかからお叱りを受けそうなくらい、いやらしいバレンタインだ。
 ぼくは高まる興奮を抑え切れず、腰を跳ね上げた。
「ふあっ!?」
 文花の嬌声が響いた。
 そのかわいい声がさらにぼくの興奮を高め、腰を激しく動かしていく。
「や、だめっ、こーすけくんは、うごいちゃだめえ!」
 訴えを無視して、ぼくはひたすら機械のように文花の奥を突き上げた。
 文花の顔が頭の上へと流れる。ぼくの頭を抱きしめることで、快楽に耐えようとしている
のだろう。しかしそれは逆効果だ。なぜならちょうど、ぼくの口元の当たりに、彼女の胸が
降りてくるから。
 ぼくは文花の乳首に、ここぞとばかりにおもいっきり吸い付いた。
「あんっ、やあっ」
 甲高い喘ぎを聞きながら、ひたすら乳首を吸う。口内のチョコレートを飲み込みながら、
とにかく貪った。
 まるで本当に乳を吸ってるみたいだ。ミルクチョコレートの乳はどこまでも甘く、酩酊しそう
だった。
「やん、やあっ、そんなに吸わないでぇ……」
 文花の弱々しい声に反比例するように、腰の動きが加速する。
 もう止まらなかった。ぼくは再び欲望の塊を吐き出すために、全力で肉棒を突き入れた。
 強烈に締め付ける膣内の奥に、硬い先端を無心に打ち込んだ。擦れ合う性器は互いの
液でまみれ、痺れるような刺激に打ち震えた。
 淫らな水音にさらに興奮を高め、ぼくは下から文花を攻め続けた。
「やぁんっ、あん、あっ、いく、いくの、わたし、わたし、」
「文花っ、ううっ」
 二度目の放出は一度目よりも強烈だった。水風船が弾けるように、大量の子種が奥の
奥に向かって飛び出していった。
「あん……はう……」
 文花も絶頂を迎えたようで、噛みしめるように快楽の波の中で意識を揺らしている。
 ぼくはびくびく痙攣するように、断続的に精子を子宮へ向けて放った。
 衝動が収まるころには、文花が体重をぼくに預けて目をつぶっていた。
 余韻に浸っているのだろう。ぼくも心地良い感覚に身を委ねてしまいたかった。
 しかし、ここで眠ってしまうわけにはいかない。家に帰らないといけないし、チョコレートで
体もだいぶ汚してしまった。後始末をしないといけない。文花の両親も帰ってくる。
 なにより、今のこの状況をどうにかしなければならない。
「文花……とりあえず、ロープ解いてくれる?」

50かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/02/15(火) 00:14:29 ID:dEVbzLfh
 
      ◇   ◇   ◇



 バレンタインから三日後。
 朝の登校中に、突然声をかけられた。
「耕介くん」
 振り返ると、先輩がいた。厚手のコートに身を包み、長い髪が緩やかな風に揺れている。
 とりあえずおはようございます、と頭を下げた。
「おはよ。耕介くん、ちょっと訊きたいことがあるのだけど、いいかな?」
 先輩の問いかけにぼくは首を傾げた。
「なんですか?」
「あんなかわいい彼女とどこで知り合ったの?」
「かっ」
 咳き込んだ。
 思わぬ不意打ちに、ぼくはなぜかうろたえる。
「げほっ……えと、誰から聞きました?」
「一昨日、彼女さんから直接会いに来てくれたんだよ」
 妙に楽しそうに先輩は話す。
「教室にやってきてね、いきなり私に言ったの。小さな声だったけど、『負けませんから』
って。事情を聞いてみると、バレンタインにいろいろあったみたいじゃない。で、ちょっと
おもしろかったから、私が申し出たの。『よければおいしいチョコレートの作り方、教えて
あげようか?』って」
「……」
「そしたら案外素直についてきてくれて、一緒にお菓子作っちゃった。闘志メラメラだった
けど、かわいいし言うこと聞いてくれるし手際いいしで、友達になっちゃった」
「……はあ」
 なんと答えていいかわからず、ぼくは曖昧に頷いた。
「で、ものは相談なんだけど、あの子さ、私にちょうだい?」
「……はあ!?」
 ありえない申し出にぼくは叫んだ。
「だってかわいいんだものー。もうずっと愛でていたいくらい。そういうわけで、どうかな?」
51かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/02/15(火) 00:16:20 ID:dEVbzLfh
「お断りします」
 ぼくは即答した。当たり前だ。
「えー、なんでー」
「文花はぼくの大切な恋人だからです。絶対に離しません」
 力強く断言する。先輩のたわごとはともかく、こればっかりは譲れない。
「ふうむ、そっかー。じゃあ仕方ないな」
 案外あっさり引いてくれそうで、ぼくは内心ほっとした。まさかとは思うけど、一応警戒
しておかないと。
 しかし、続けて吐かれた台詞にはさすがに絶句した。
「じゃあ二人とももらっちゃおうかな。二人は恋人のままで、セットでいただくというのは?」
「……!?」
 理解不能だった。
「あ、あの、先輩?」
「ん? なにー?」
「先輩って、失礼ですけど……同性愛の気があるんですか?」
 先輩は首を振った。そうか、そりゃそうだよな。
「違う違う。私は両刀使いなの」
「はああっ!?」
 予想のさらに上だった。
「二人ともかわいいから、一緒にかわいがりたいの。ねえ、悪いようにはしないよ? どう?」
 ぼくはもうどう答えていいかわからず、その場から駆け出した。
「あ、ちょっと」
 どう答えればいいんだ。とてもぼくだけでは対処できない。文花に早く会って相談しないと。
 って、一昨日会った? じゃあもう文花は先輩の毒牙にかかってしまったのか? いや、
まさか、そんな、
「あ、安心して! 青川さんにはまだ手は出してないから!」
 後ろからそんな声が届く。まだって何だ。
「やっぱりまとめていただくのがおいしいと思うの! だから耕介くんと文花ちゃん、いっしょに
味わいたいから、楽しみにしててね! あと、文花ちゃんに伝えて! 今度デートしようって!」
「あんたもう黙れっ!」
 ありえない恋敵の出現に、ぼくは頭が痛くなりそうだった。



 っていうか、ぼく自身も狙われているし!
52かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2011/02/15(火) 00:19:27 ID:dEVbzLfh
以上で投下終了です。後半はギャグ風味。
新キャラ登場ですが、ハーレム要員ではなくギャグ要員です。
今後も書くかどうかはわかりませんが。
それでは。
53名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 01:26:02 ID:N3nU3msd
をちゅー
文花かわいいよ文花
54名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 11:21:46 ID:QUG9DVkP
>>44
GJ
近親アドバンテージのある意味もっとも正しい使い方を見た

>>52
もうなんだかみんないろいろと間違っている感じが非常にGJでした
なんか三人ともたまらんわ……
55名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 00:48:34.55 ID:p+2a43c/
「……………………ちゅー」
56名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 01:31:41.16 ID:5608K0eB
無口っ子のキスおねだりとかたまりません
57名無しさん@ピンキー:2011/02/21(月) 17:18:56.03 ID:OgDeVNxf
>>44
遅ればせながらGJ。
過去話読み返してくるとともに、続き楽しみにしてます

>>56
無口っ子が両手を伸ばしてハグおねだりっていうのもいいと思うんだ
5844:2011/03/02(水) 11:27:38.95 ID:VjFSS77m
>>57
アンカー間違ってるぞー。

そして、まさかのかおるさとーさんとは。なんかもうスイマセン。
GJです。この二人の話はもっと読んでみたいです。


で、今更ながら続きを書いてしまいました。
59名無しさん@ピンキー:2011/03/02(水) 11:30:10.26 ID:VjFSS77m
とは言え。
朝の、ましてや朝食前からチョコを食べるというのも、少しばかりおかしな気もする。それに遅刻ギリギリというわけではないけど、まったりできるほど余裕があるわけでもないし。
食べたい気持ちはもちろんあるのだが。
そうなると、

「姉さん、コレは今日帰ってから二人でゆっくり食べない?」

という選択になる。
姉さんは一瞬驚いたような表情をしたあと、首を傾げて指を二本立てた。

「え?うん、二人で、だね」

その瞬間、姉さんから後光がさした。いや、そんな錯覚がする程の笑顔だった。
ちょっと喜びすぎじゃないかと。

「そんなにチョコが好きなら一人で先に、何なら全部食べちゃっても構わないよ?」



姉さんが、止まった。

キッとこちらを見上げると右手を、人差し指を、まっすぐピンと伸ばして僕の顔に向ける。
コレはマズイ、と思う間もなく、姉さんはそのまま、ふにふにふにふにと僕の鼻を押し始めた。



どうやら、姉さんをひどく怒らせてしまったらしい。なぜなんだろう?




以上。
なんかもう、いろいろスイマセン。
60名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 00:34:41.44 ID:ZVxtPAoC
ふにふにふにふに・・・・・・・・
61 忍法帖【Lv=4,xxxP】 :2011/03/04(金) 19:04:22.93 ID:BJ5b77T+
age
62名無しさん@ピンキー:2011/03/09(水) 22:08:43.09 ID:oQPGG7wz
やっぱ無口お姉ちゃんってイイよな・・・・・・
63名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 02:18:50.08 ID:JzX/htao
保管庫更新乙です

「……」
これなしで無口っ子話を作るのって、なかなか難しいな
64名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 05:58:44.87 ID:ds54kA3V
>>63
妙なテンションで挑戦してみた。
やっぱりあった方が楽なのは事実ですね。



目が覚めると僕は一人だ。リビングも冷め切っている。ああ、また何時も通りの朝だ。
たまには誰かリビングでコーヒーでも飲んでいて欲しい。一人きりで食事を取るぐらいならと隣の家に向かう。
まったく、君は一人きりの朝というものを感じた事は無いのだろうね。僕がいるから。
「って、相変わらず勝手に侵入してくんのな」
おや、珍しいな君がもう起きているとは。
「首を傾げてかわいい子ぶっても表情がそれだと意味ないぞ」
何、媚びるとかいうつもりはないから安心したまえ。君との間にはそんなものは不要だろう。
大体、僕が無表情なのが昔からなのは君も知っているはずなのだがな。
「何で不機嫌そうにするんだよ」
まったく、君はズルいよ。
「たく、甘いもんでも飲んで落ち着け」
僕の目の前に置かれたのはペールトーンのコーヒー。口に含めば、苦味より先に蜂蜜の甘みが舌に付く。
僕が君を知る術の多くは言葉だと言うのに。
「少しはマシになったけど相変わらずだな。何か食うか? 腹減ってると機嫌も悪くなるからな」
言いながら食パンを牛乳に浸す。
僕が何も言わずとも君は感じてくれる。例えば、僕が多分に甘党な事とか。
「そうそう、親父また浮気がバレたらしいぜ」
フライパンから上がる甘い匂いが食欲をそそる。
口下手だけど沈黙は苦手な事とか。
「というわけで実家に帰ったオカン呼び戻しに行ってるからしばらくは平気だぞ」
ただ待つのも気まずいからサラダを作ろうと席を立つ。パンは駄目だ。君の方が甘く美味しく作れるからな。
本当はこうして忍び込んで良いものか悩んでいる事。
「なんなら、泊まっていくか?」
一瞬、トマトではない赤で包丁を彩りそうになった。問いかけに首を振る。
ただでさえ、君に溺れてしまいそうなんだ。これ以上一緒にいたら勘違いしてしまうよ。
そうそう、寂しがり屋なのも君にはお見通しなんだな。
「悪い、変な事言ったな」
君は妙に潔いが少しは押してくれても良いと思うぞ。これではまるで社交辞令ではないか。
「何、拗ねてるんだよ」
まったく君くらいだぞ。僕を子供扱い出来るのは。先入観のコーティングのせいでクラスメートの扱いなんかヒドいものだからな。
でも、僕は間違えなく子供だ。一人でいたらガクガクと膝を抱えて震えるだろう。
65名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 05:59:36.91 ID:ds54kA3V
そう、だからかな。君が好きだ。
もっともこんな僕の「好き」なんて、目立たなくておぼろげなもの流石の君も気づいてはくれない。
「何、ぼーとしてるんだよ、ほのか」
そう、僕の名前はほのかだ。多くの人は似合わないと言う。
だけど、「好き」と伝える事さえ覚束ない弱々しい僕にはピッタリだと思う。
君ならあるいは気づいてくれるのだろうけどね。
「ん? どした?」
今ではないどこかでなら、きっとね。
66名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 07:01:58.38 ID:3CQjzwAu
すげえ!
まさか「……」無しで無口っ子を表現出来る猛者がいるなんて思わなかった
GJ
67名無しさん@ピンキー:2011/03/10(木) 17:30:54.53 ID:JzX/htao
>>65
GJ!
なるほど一人称視点か
クールな性格というのもあまり見ない感じで新鮮だ
68黙(0):2011/03/12(土) 20:53:54.52 ID:hZYwX1hp
投下してみます。
本当は1日に書き上げたかったけどダメだった奴。

※(すぐ終わるけど)手を拘束する描写があるので苦手な方はスルーその他で。
69黙(1):2011/03/12(土) 20:54:31.37 ID:hZYwX1hp
 ある休みの日。遅い目覚めを迎えた少年、大滝慎也が起き上がると、
「…………ん?」
 自分の部屋に少女がいた。
 寝ぼけた頭がのんびりと思考をする。
 妹はいない。
 人間そっくりのロボットが届いたわけでもない。
 影を落としたように黒く、長い髪。白の長袖をまとったその少女は、どこか違和感を
漂わせた状態で慎也の部屋にいた。
「……って、沙那か」
 目を擦りながら、正座で待機していた彼女の頭をぽんと叩く。それを合図に振り向い
た少女は、慎也の顔を見上げて笑顔を作った。
 一宮沙那。慎也とは片手で数えられる程度の年齢から同じ時を過ごしており、その関
係は現在では一組の男女。すっかりお互いの両親が認めるほどの仲になっており、とき
たま結婚しないかと茶化される。
「いつからいたんだ?」
 聞くと、沙那は指折り数える。
 一つ、二つ、三つ……八つ。それきり彼女の指は曲がらない。
「二時間前かよ……」
 お互いが幼い時、共働きで両親が家にいない沙那に渡したという、護身用の合鍵を使
ったことは大方想像がつく。それは別にかまわないが、彼女が家にいるのに、二時間も
眠ったままというのは男として何か申し訳なく感じる。
「来るなら言ってくれればな」
 沙那は手をぱたぱたと左右に振った。これは否定、つまり「驚かせるために来た」と
考えているようにも読み取れる。
 ヒトは誰しも欠点がある。他人から見れば、沙那が口を開かないことがそこに当ては
まるだろう。人見知りが激しい上、恥ずかしがりな性格のため、会話らしい会話をする
ことは無い。――幼馴染になる慎也にさえこうなのだから、『ほぼ』とか『ほとんど』
などの言葉が頭につくことはなく、『全く』ない。少し目線がずれているのもそのせい
であり、最近なんとか慎也に対して正面に顔を向けられるようになったくらいだ。そん
な彼女を、昔の慎也は『動物』と比喩することもあった。しかし今では何にも代えがた
い、彼女と呼べる存在である。
「沙……ああ、そうか」
 服に手をかけた途端、慌ただしい足音が響いた。視界は遮られているが、おそらく沙
那が部屋を出たためだろう。
 着替えを済ませて部屋を出ると、彼女は廊下で体を動かしていた。物音に気付いて振
り返り、慎也と目が合うと、途端に両手で顔を隠した。

 遅い朝食には簡単なサラダと目玉焼きが追加されていた。
 そこは幼馴染、勝手知ったる大滝家という事でこの光景は珍しくない。エプロンをつ
けていたが、スカートは学生服のそれであり、まるで沙那の家にいるのではと錯覚させ
る。
 当人はすでに済ませているようで、テーブルの向かい側に座って慎也が食べる様子を
伺っているところだ。
「ものすごく食べ辛いんだ」
 食事の様子をじっと見られて、そう思わないはずはない。もちろん慎也も例外ではな
く、正面からまじまじと見つめている沙那に告げる。
 すると彼女は拳を作って額に当て、何か考える。ほどなくして閃いたようで、慎也の
手から箸を取る。それで刻んだ野菜を一口分ほどまとめ、手を添えて寄越した。
 所謂『あーん』の状態。箸を持つ沙那は笑みを浮かべており、周囲には誰もいないの
に気恥ずかしくなる。どうやら、視線を感じて「食べにくい」のではなく、用意した食
事が「食べにくい」と判断したらしい。
 もちろんそんなことは決してないのだが、言えない。結局、差し出された箸を口に運
んだ。咀嚼している様子を見て、沙那は満足げな顔になった。なんとも可愛らしかった。

 二人でどこかに行く予定もないため、食事の後は居間でテレビを眺めていた。いつも
なら退屈になるところだが、やはり一人より二人、隣に沙那がいるだけで違う。星座別
の占いに対して肩を落としたと思えば、通販の商品紹介に対して頷いてみせたり。どち
らかというとテレビよりも彼女に注目していた。
「ああ、それは御神籤だ」
70黙(2):2011/03/12(土) 20:55:09.03 ID:hZYwX1hp
 ふと、テレビの下に置かれていた箱を彼女は指差していた。それが何か教えると、沙
那はそれを取出し、床に置く。仕事から帰ってきた母がそう言って置いたのだが、それ
きり一度も引いたことはなかった。赤く塗られた六角形の箱、その上部には小さな穴が
あけられている。沙那が軽く揺らすとカラカラと音が響いた。
「引いてみるか?」
 頷く。それから、彼女は真剣な表情で、まるで睨むような眼差しで箱を見つめる。先
程の占いがよっぽど堪えたのだろうか、ガシッという効果音が聞こえそうな勢いで、彼
女は赤い箱を持つ。
 しばらく念を送った箱をついにひっくり返し、その口から一本の棒が吐き出される。
これに運勢が書かれているようだ。

『大凶』

 沙那は何も言わず、ただ慎也にその棒を見せた。白い棒には確かに、赤い字で大凶の
二文字。心なしか彼女の肩は震え、打ちひしがれているようにも見える。なんというか、
その落胆ぶりがこちらにも通じてきた。
 そう気を落とすな……と言うところだが、慎也はそこで少し意地悪をする。
 耳元で囁かれた言葉に、沙那はびくりと体を震わせた。


 自分の部屋で、慎也は悩んでいた。
 右手には小学生の時に使っていた縄跳びの縄。左手には学校で使用しているタイ。得
物を見比べて首を捻っている彼とは対照的に、ベッドの上にいる沙那は追い詰められた
動物のように縮こまっていた。
 問題はいかに彼女の体を傷つけないか、だ。やはり縄では肌に食い込んでしまう可能
性もある。それに普段から締めていて手馴れている分、タイの方が扱いやすさでも勝っ
た。
「さあ、沙那」
 縄を床に置き、タイを持って振り返る。沙那は掛布団をくるんで丸くなっていた。座
ったままの姿勢では掛布団に全身が入りきらず、ソックスに覆われた爪先が出ているこ
とだけはわかる。
 ベッドの中央で丸まっていた彼女の前に座り込み、布団から顔だけ出させる。静電気
で少し乱れた髪を振って、沙那はすぐ目をそらした。
 そんな彼女の頬に軽く触れると、口が正面を向く。慎也は一拍おいてからその唇にキ
スをした。そっとした口づけだが沙那には効果抜群で、布団を掴んでいた手から力が抜
け、その外殻が剥がれ落ちた。
 抵抗をやめた彼女の両腕を重ね、紺色のタイで軽く縛る。それを背の後ろにまわし、
慎也は沙那をもたれさせた。
 ここは自宅。そして日中とはいえ二階の部屋。他に誰もいない状況で彼氏と彼女が揃
えば、やることは一つしかない。今回は少し趣向を変えた変態プレイである。
 テレビでの占いで最下位。それから御神籤で大凶。そんな彼女に意地悪のつもりで両
腕の自由を奪った慎也だったが、沙那は不安そうな顔で眺めてくる。二割増しの威力だ
った。
 耳、首筋と順に舌を這わせると、控えめな吐息が漏れる。いつもは片手で口を押えて
いるが、それができない今はかなり意識して押しとどめているようにさえ感じられる。
指をやると夢中でしゃぶりつき、あっという間に湿らせる。その間もタイで縛られた手
首を窮屈そうに動かし、それがちょうど下腹部に当たってさり気ない刺激を生む。
 首から肩にかけてひとしきりキスを浴びせた後、頭を膝に乗せる形で沙那の姿勢を変
える。それから、彼女が羽織っている長袖に手をかけた。
 ボタンを外すと白の下着。身長と引き換えに成長をやめてしまったのか、小ぶりでわ
ずかな膨らみを覆っているそれを上にずらす。桃色の突起はつんと尖っていて、首や耳
だけでかなり感じていたようだ。
 まずはふくらみの全体に触れる。あまり主張しないが感度はよく、ただ触れているだ
けで体を揺らす。マッサージの要領で包むようにすると、自由な脚をシーツに擦らせて
抵抗した。しかし脚が動く度にスカートが動き、沙那は特に意識していないだろうが意
外と挑発的な行動である。
「大丈夫だからな」
 言葉を聞いて、沙那は強張らせていた体から力を抜いた。手の自由がきかないだけで、
大滝慎也という男の印象が全く変わるから不思議だった。今は咥えている指と背中でし
か、彼を感じられない。
71黙(3):2011/03/12(土) 20:56:02.83 ID:hZYwX1hp
 が、ついにその指も抜き取られた。すっかり唾液をまとったそれを名残惜しそうに見
送る。彼の人差し指は糸を残して視界の外に消えていき、自分の胸にあてられた。
 ぬるりとした感触で、それは胸の突起をはじく。舌とはまた違う感触で突かれ、潰さ
れ、つままれる。さらに、両手が自由な彼はふたつの先端を指で挟み、くいと引く。痛
みが痺れに変わるが、休む間もなく次の刺激に変わる。突起は挟まれ引かれた後、すぐ
に指の腹で押し潰される。肋までたどり着くかというところまで進み、また引っ張られ
る。
 沙那は背を反らせて執拗な責めを受けた。指だけで弄ばれた胸に舌が這うと、唾液の
滲みる感覚に悶える。自由に動いて万遍なく唾液を塗されると、指に代わって彼の舌が
乳首責めを担当した。指にはない独特の凹凸が擦れ、先程までのわずかな痛みが再び疼
く。ぴちゃぴちゃと音を立てて責められ、耳を通じて性感を刺激する。相変わらず片方
は指で責められ、全く異なる二つの刺激に身をよじらせた。
「気持ちいいか?」
 囁くと、沙那は控えめに頷き、顔をそむけた。その頬はすっかり紅潮しており、肩や
胸にも桜の色が滲んでいる。
 学生服のスカートからのびている脚に触れると、沙那はわずかに体を震わせた。こち
らも熱っぽく、それを包んでいるニーソックス越しに体温が伝わる。少しだけ見える素
肌をさすり、次第にカーテンの奥へ手が入る。それが触れたのは一枚の布地のはずだが、
触れた途端にじわりとしたものを感じた。
 慎也は沙那を壁によりかからせ、彼女が閉じた両脚を再び開く。白のショーツからは
肌色が見えるほどに液が出ており、もはや下着として機能していない。それを片足だけ
外すと、光を浴びて輝く糸筋が見えた。そこは熱を帯びた肌よりも鮮やかなピンク。た
だ眺めている間にも小刻みに動き、その度に愛液が揺れる。指を当ててすぐに離すと、
その間に橋が架かり、崩れた。
 十分すぎる濡れ具合で、クレバスは簡単に指を飲み込み、一本どころか二本も咥え、
そのまま往復できるほど滑らかだった。
 奥に進むと“にち”、入り口に戻ると“にち”、と鈍い音。沙那は脚を閉じて手の動きを
止めたいようだが、奥に進んだ状態で指先を動かすと、水音と共に彼女の体がはね、腿
から力が抜ける。抜き取った指に絡みつく液体の量は多く、オーガズムに達したことを
伺わせる。荒い息をしながら、紅潮した顔で慎也を見つめた。
「…………沙那」
 その目が、どこか不安そうな色をしていた――いや、手を結んだ時からその色のまま
だった。
 目が覚めた慎也は沙那の手からタイを外す。自由になった両手を、彼女はぼうっと眺
めた。それから動かせることを確認すると、体を起こして慎也に手を伸ばす。
 肩で息をしながら、彼に抱きついた。まるで最愛の人物と再会したかのように。
「……!?」
 慎也は耳を疑った。
 胸元で嗚咽が聞こえるのだ。鼻をならしながら顔を押し付け、かすかに肩が震えてい
る。彼女は両手を縛られたときから不安でしょうがなかったのだ。
 慎也はそれを興味本位でやってしまった自分を悔やむ。手が動くようになった沙那は、
これでもかとこちらの背中に触れて、その存在を認識していた。その様子が妙にいじら
しかった。
 少しして、顔を上げた沙那は慎也の頬に両手を当て、口をわずかに上げて目を閉じた。
『小動物』と比喩するには背の高すぎる彼女が、彼より下の目線でキスをせがむ機会は
ほとんどない。膝立ちの慎也に、彼女は座ったままの姿勢で。
 やさしい、ほんの一瞬だけの口づけ。沙那は充血して赤くなった目を笑わせると、目
の端から涙が滲んだ。それから、お返しとばかりにキスをする。今度は長く、最初にし
なかった大人のキス。舌に舌が絡み、お互いの唾液を交換。口を離すとすぐに透明な橋
が出来上がり、一瞬のうちに途切れた。
 二人は手を握り合い、沙那はベッドに倒れ、その上に慎也がかぶさる。仕切り直し…
…という訳ではないが、とにかく彼女を可愛がりたかった。
 ぴんと起った胸の突起に触れると、繋いでいる手に力が加えられる。すっかり自由な
手は彼女の口にぴったりと当てられ、彼女の声を遮断する。本人はこれで吐息を抑えて
いるつもりなのだが、何度か経験してから考えてみると、手の中で息がこもって大きな
音になっている。慎也は何となく理解しているが、まだ沙耶はそれに気づいていない。
 そして、彼は自分の口から出る音をわざと大にしてみせ、沙那の耳を経由して性感を
刺激する荒業を会得していた。彼女の胸は片方だけ、中心部分が日光で鈍く光るくらい
に唾液が塗されていた。
72黙(4):2011/03/12(土) 20:56:39.01 ID:hZYwX1hp
 下着を外しただけで残っていたプリーツの内側は、あふれ出る蜜を滲みこませて湿っ
ていた。一部だけに染みができており、その下のシーツまで到達していた。閉じられて
いた丘を広げると、桃色の肉からは汁が溢れ出る。
 そこに指を一本。抵抗もなく飲み込まれ、中で襞が絡みつく。一度絶頂を迎えた体だ、
そう難しく考えなくても準備は万端だろう。慎也は中に入れていた指をゆっくりと抜き、
しばらく動きを止めてから沙那に視線を送る。
 沙那は、こくりと頷いた。

 開かれたジッパーから、反り起つ棒が現れる。もう何度も目にしているが、やっぱり
慣れない沙那はすぐに顔を隠した。それも彼の一部なのだが、何か別の生物に見えてし
ょうがない。
 太腿に手が乗せられ、慎也の腰が沈む。同時に腹を押し上げられるような感覚に見舞
われ、シーツを掴んでいる手に力が加わる。ずんと前に進んだ彼を根元まで飲み込み、
そこでふたりは繋がった。
 奥まで入り込んだものはゆっくりと後退し、また勢いをつけて戻ってくる。自身が分
泌した潤滑油がその動きを助け、何一つ抵抗もなく簡単にぶつかる。繋ぎ直した手には
お互いが汗をにじませ、往復する接合部も含めて熱い。
「沙那、聞こえるか?」
 訊くと、視線が下腹部に移動する。すぐに元の位置に戻り、わからなさそうな顔にな
った。
 慎也の耳には水音がまとわりついていた。粘り気のある鈍い音が動作を追うように聞
こえ、さらに彼女の中が棒を締め付け、感情を昂らせる。しかし、沙那は一瞬だけきょ
とんとした表情になり、込み上げる性感でつないだ手を強く握る。
 進入するその動きを遅くすると、奥の方で鈍い音が響く。それを引き返させると、や
はり耳につく音が発せられた。細かい動作をしばらく続けていると、やがて沙那にも理
解できたのか、既に赤い顔に火が付き、慌てて耳をふさいだ。もう片方の耳が音を拾う
だろうが、彼女は片方を塞ぐのに精一杯のようだった。
 しばらく揺さぶった後、慎也は一度手を離す。繋がったままの状態で沙那を抱き起こ
し、股座に座らせて下から突き上げた。動きに合わせて金属製のベッドが軋み、根本ま
で入り込んだ屹立を彼女の襞がきつく締め付ける。
 片手で肩にしがみつく沙那。慎也の顔はちょうど彼女の胸元に押し付けられる形で、
舌を動かして突起を舐めあげる。するとギシギシと響く金属音に混じって、耳元に甘い
息がかけられる。そんな動きを途中で中断して、舌を絡めるキスの時間。糸を垂らして
から、再び胸元への責めを再開する。沙那の体が揺れると、それに合わせて彼女の黒髪
が乱れて広がっていく。
 度重なる締め付けによって、慎也もいよいよ限界が近くなっていた。膨張して脈を打
つそれは、条件によっては暴発さえしてしまいそう。再びベッドに寝かせて正常位のか
たちになり、勢いよく腰を打ち付ける。
「沙那……っ、好きだ……!」
 ぐっと手を繋いで、一言。未だに涙が乾かない沙那は、泣き顔を笑わせて頷く。
 肌がぶつかって軽い音。二人の足元から聞こえる金属音。結合部の淫靡な水音。それ
に沙那の息が合わさって響き、スパートをかけた慎也の棒が引き抜かれるかというとき、
 脚が、沙那の脚が絡まった。
 引こうとした腰を押し付けられ、必然的に勃起は収まるべき場所に戻る。限界に達し
ていた慎也はこの事態に対応できず、引き上げられた精をその中に放つ。ほぼ同時に沙
那の体が痙攣したように震え、吐精した棒を逃がすまいと押さえつけた。
 慎也が自分でも驚くほどの精を放った長い時間の後、オルガスムスを味わって恍惚の
表情になっていた沙那が、「してやったり」と言いたそうに笑みを浮かべた。ようやく
抜かれた茎には愛液と精液が混じったものが付着し、栓が抜かれた蜜壺からは同様の液
体が溢れだした。
73黙(5):2011/03/12(土) 20:57:12.50 ID:hZYwX1hp
「沙那、ごめんな」
 行為の後、慎也はタイを片手に謝った。
 それに対して沙那の手は左右に振られ、握りこぶしでガッツポーズをしてみせる。あ
まり気にしてはいないようだが、それでも手が動かせない間は不安そうな表情だった。
慎也は少し気が重くなる。
 次にバツ印。もう縛ったりしないように戒めているようで、慎也の頭を小突いた。素
直に詫び、口づけして誠意を見せる。
「昼はどうしようか」
 すると、沙那は拳を握って胸を叩いた。どうやら、腕によりをかけて作るつもりらし
い。頷いて返すと、彼女は実に幸せそうな笑顔になった。
74黙(了):2011/03/12(土) 20:59:16.31 ID:hZYwX1hp
終了です。
彼女はともかく彼も話す機会がないでやんの。
75名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 05:50:38.95 ID:I4HPmO90
おつ
自身に怯える無口っ子
76名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 06:15:48.55 ID:I4HPmO90
ミス
地震に怯える無口っ子
77短編@台詞なし:2011/03/13(日) 07:28:59.05 ID:I4HPmO90
再び投下。
>>40の続きです。
78短編@台詞なし:2011/03/13(日) 07:29:26.07 ID:I4HPmO90
今年はとても寒い。
例年は滅多に雪が降らないこの町でも、それなりの雪が積もった。
我が家でも早々に炬燵を出して、春がやってくるのを今か今かと温もりの中で待つ。
今日も小柄で無口な少女と二人で炬燵で温まって居た。
少女の小さな手が差し出される。
少女の手からオレンジ色を受け取り、丁寧に皮を剥いていく。
やがて丁度いい具合に熟れた果肉が顔を出す。
皮を剥き終えると再び小さな手が差し出され、その上に剥き終えたばかりの蜜柑を乗せてやる。
彼女はそれを口にいれるのかと思いきや、白く残った筋を一本一本丁寧に剥いていく。
丸裸にされたオレンジ色はひとつ、またひとつと解体されていく。
少女の小さな手が差し出される。
手の中には丁寧に解体された蜜柑の一房。
それを受け取ろうとすると、ひょい、と遠ざかる。
少女の顔をみると首をふりふりと横に振り、次に口をぱくぱくとして見せた。
なるほどと思い、口を開けて待つ。
少女の手から解体された果肉が口の中に放り込まれる。
咀嚼すると、確かな甘みと仄かな酸味が口の中に広がる。
嚥下し終わると、再び少女が蜜柑の一房を差し出す。
口を開けると、少女はまた首を横に振った。
訝しんでいると、手首を掴まれ、掌の上に蜜柑の一房を置かれた。
少女を見やると、口を小さく開けて待っている。
79短編@台詞なし:2011/03/13(日) 07:29:42.21 ID:I4HPmO90
少女の口に蜜柑を入れてやる。
それを飲み込み、少女は満足そうに薄く微笑むと、再び蜜柑の一房を差し出してきた。
口を開けると、再び口の中に甘味と酸味が同時に広がる。
4つ目は少女へ。
5つ目は少女から。
6つ目は少女へ。
7つ目は少女から。
8つ目は少女へ。
最後に、一つだけ残った。
少女は何かを考えるような顔をして、それから何故か頬を染める。
少女の考えていることは何となく読めたが、可愛らしく頬を染める彼女を見て、あえて黙っておく。
少女は頬を染めたまま、最後の一つをおずおずと口へ運び、咥えた。
そして、咥えたままこちらへ擦り寄ってくると、潤んだ瞳でこちらを見上げる。
少女の顔が近づき、それにつられてこちらも近づけてしまう。
少女が咥えたままの蜜柑を咥え、軽く押し潰す。
果汁が口の中に広がるが、この甘味は蜜柑だけのものだろうか。
何時の間にか、互いに口の中に舌を差し込み、蜜柑の果汁と、お互いの唾液を啜りあっていた。
名残惜しく口を離すと、ほんの少しの間だけ橋が架かり、途切れる。
少女を抱きしめ、少女に抱きしめられる。
そうして今日も、春がやってくるのを今か今かと待つ。
小さな少女との温もりの中で。
80短編@台詞なし:2011/03/13(日) 07:30:43.15 ID:I4HPmO90
終わり。
自身による被災者の方々の冥福とご無事を祈ります。
81名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 12:42:36.91 ID:tPD9ESQe
>>80
GJ! 雰囲気良いな。
けど本当に人がいないな。



それとも無口なだけ?
82名無しさん@ピンキー:2011/03/17(木) 03:01:38.33 ID:bs7U6BD7
>>68,>>80
Gj!
和ませてもらったぜ
83名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 06:44:43.16 ID:IdAyvvie
無口っ子と無表情の相関関係について
84名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 16:28:21.80 ID:ObgiIn25
無口でも表情豊かな子は居る
よく話すが無表情な子も居る
85名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 20:43:52.68 ID:GJP+V6kt
>>84
上は恥じらい系無口に多く
下は素直クールに多い
かな。
86名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 00:06:16.06 ID:75K9OLl/
>>85
恥じらい系無口とか大好物です
気持ちを伝えたいのになかなか言えなくて、顔赤らめながらモジモジしてるのを見るだけで俺のジョニーはヒャッホォォォォォォォ
87名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 10:27:16.07 ID:qap9stRu
ジョニーって誰だ?彼氏か?
伝えたいことの適当な単語を思い出せなくてモジモジしてたらジョニーがヒャッハーって言うのか?
88名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 10:39:16.33 ID:CZA/OlhY
ジョニー=チ○コの隠語
89名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 16:54:12.63 ID:qap9stRu
女の子視点で書いても良いかもしれんな。
海外旅行中に外人が困っているのか?と言ってくれたが
言葉がわからない+元々無口なので顔を赤くするだけ
そして後ずさりするも間を詰められて下がっていく内に
気づくと路地裏に誘導されている
90名無しさん@ピンキー:2011/03/25(金) 15:37:43.35 ID:auJIwCUK
普段はそっけないけど、用事があるとカリカリ引っ掻いてきたりする猫系無口幼馴染
91 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/03/26(土) 01:09:16.55 ID:pN5/bcKH
犬がいいな……
92名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 01:41:41.34 ID:PdFaSRXj
無口なくせに彼氏を束縛しようとする
でもしゃべるとか彼女の中で問題外
どうしようかと頭かかえて悩み始めて彼氏が心配する
93名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 01:55:01.39 ID:iwfeAlCP
ことあるごとにおめめうるうるさせつつ抱きつくことで物理的に拘束するんですねわかります
94名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 17:27:25.70 ID:/uxzGmWE
投下します。
題名:無口な彼女
語り手(彼氏)が時々、感情表現(暴走)をするときがあります。
無口は初めてなのでどうか温かい目で見てください。
では行きます。
95無口な彼女:2011/03/26(土) 17:28:52.33 ID:/uxzGmWE
「はぁ〜…」
俺の名は淳、今俺はあることに困っている。
好きな娘ができた?そんなんじゃねぇよ…
幼馴染で俺の彼女、渚のことだ。
簡単に話そう、あいつは無口だ、ただそれだけだ。
何も困ることは無い…と思うだろ?あるんだよ…
付き合ってもう3ヶ月は余裕で経っている…
何が言いたいかって?簡単だよ、もうヤっていてもおかしくない時期なんだよ!
じゃあ何でできないかって?タイミングがわかんねぇんだよ!!
と言うわけで俺は今、渚とデートをしている…
「今日も天気いいな〜!」
「…………うん」
「今日はベタに映画でも見に行くか?」
「…………うん」
「……」
「………」
会話にならねぇ!!!なんで?まぁでもそれこいつの可愛いところでもある…
べ、別にやましい気持ちなんてねぇんだからな!か、カン違いするなよ?!
「で、何見んの?」
「……………あれ」
渚が指差した先には今年最恐と噂されているホラー映画のタイトルがあった…
「大丈夫か?3Dだぞ?」
「…………うん」
いざ座席へ行くとほとんどがカップルだった…
上映が始まり、映画の中間、噂の最恐シーンに近づいていた。
そのとき…渚が俺の腕にしがみついてきた…
怖いと言わんばかりに俺の腕を圧迫してきた。
「ふぅぅ…おわった〜…どうだった?」
「…………怖い」
おいおい、お前が見たいって言った(?)映画だぞ?
そんな事を思いながら近くのファーストフード店で飯を食った。
街を二人で歩いてるときふと時計を見ると…
「6時か…いい加減に帰んねぇとな〜…ん?」
渚がいきなり止まりある建物を指差していた…ラブホだ…
「行きたいの?」
「…………(コクリ」
渚の頬が赤みを帯びていた…か、可愛い!!今すぐめちゃくちゃにしてぇ!!!
96無口な彼女:2011/03/26(土) 17:30:35.38 ID:/uxzGmWE
俺達は渚が指差したラブホへ直行し、入室した。
「さ・て・と…」
「………ん」
俺は渚にディープキスをした。
「はぁぁ…本当にいいんだな?」
「…………(コクリ」
さすがに緊張してきた…女子の服を脱がすなんてやったことねぇし。
しかもお互い初体験だぜ?
そんなことを考えながら渚の服を脱がして、下着だけの姿にした。
「キレイだ…」
俺は渚に覆いかぶさるようにベットへ倒れこんだ。
渚は頬を赤らめてガタガタと震えていた。
「怖いか?」
「……………(コクコク」
やべぇ…むちゃくちゃ可愛い!!ってこんなときに何考えてんだ?
俺は自分を制してフロントホックのブラを外し、露わになった胸を揉んだ。
「ふ…んん…!!」
渚の喘ぎ声…すげえ色っぽい…可愛い!
俺はさらに強く揉んだ。
「ぁん!!!つ…よ…い…!!」
「胸はこれくらいにして…」
俺はショーツを脱がし、渚の膣内を指で弄りだした。
「あぁ…!!」
「気持ちいいか?」
「ふあぁん…!!いい…!!」
「ほら…びちゃびちゃになって来た…」
渚は言わないで欲しいかのように首を横に振った。
可愛い!!!もっといじわるてぇな!!!!
けどなんだか締まりがかなりきつくなって来たような…
「ふあ!!…あぁぁぁぁぁぁ…!!!!!」
「うわ!?」
渚は予告無しで絶頂に達した。
「はぁ…はぁ」
「潮噴きやがった…」
「……………ごめん」
「いやそれはかまわない…」
「!」
「むしろそれだけ気持ちよかったって言う事になる…俺はそう思う、うん」
「……………」
「じゃあなんでやっちゃ駄目みたいな顔してるかって?」
「……………(コクリ」
「当たり前だ…イクとか言えよ…」
「?」
渚は俺の言葉にきょとんとしていた…
97無口な彼女:2011/03/26(土) 17:32:02.31 ID:/uxzGmWE
おいおい無口にもほどがあるだろうが…
「まぁしかし、お前ずいぶんと色っぽく喘いでたな?」
「…………(ビクッ!」
あ、顔色変わった…やっぱこいつ分かりやすいな〜。
「まあいいや…渚…」
俺はビンビンになった肉棒を渚の割れ目にあてがった。
「………ぁ…」
「いいよな?」
「…………(コクリ」
俺は一気に腰を押し出した。
「ッ!!!」
渚の処女膜を貫通した。
「痛いか?」
「………(コクリ」
「んじゃ一旦抜くぞ……え?」
渚が俺の腕を掴んできた。
「………痛くない…!!………動いて」
渚は必死に訴えた。
――あ゛ーーーー!!!!めちゃめちゃにしてぇーーー ――
俺は理性を失くし我武者羅に激しく腰を動かした。
「いい…!!あぁ…!…激しいよぉ…!!」
「クゥ!!!出る!!!」
「ふあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!!!!!」
俺は渚の膣内に射精した。
98無口な彼女:2011/03/26(土) 17:33:06.99 ID:/uxzGmWE
「「はぁ…はぁ…」」
「………出したでしょ…」
「え?」
俺は渚の膣内から出る精液を見て冷や汗をたらした。
「………なんで…」
「ほら…お前が可愛いからさぁ…思わず本能のままにさ…こう…」
「…………できる」
渚は頬を赤らめながらの単語言葉を呟いた。
「は!?」
俺はその言葉にド肝を抜かれた。
「なに!?まさか今日…危険日か?」
「…………(コクリ」
やっちまったーーー!!!やっちまったよ俺!!!
どうしよう…マジでやべぇ…
しかもかなり出してるし…
よりによってピル買ってねぇしやっちゃった…
「…………ピル…ポケットに入ってる…」
「マジ!?」
「でも…飲みたくない…」
「え?なんで?できるんだぞ?」
「それでいい……だって……」
「だって?」
「……淳が離れずに…そばに居てくれるから……」
渚は思い詰めたように言った。
「渚!!」
俺は渚を抱きしめた。
「絶対に離れない!!だから心配するな!!」
俺は本音を渚にぶつけた、しかし…
「……………うそ」
「へ?」
渚は悪戯っぽい笑みを浮かべ親指を突きたてた。
「な〜ぎ〜さぁ〜!!!!!」
「きゃ!!!」
俺は渚を押し倒し、再び膣内に肉棒を突き入れた。
「勘弁しねえからな!!!!」
「あぁん!!!…ごめんなさい…!!!!」
こうして俺は渚と初夜を共に楽しく過ごした。
END
99名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 17:33:37.18 ID:/uxzGmWE
以上です。
100名無しさん@ピンキー:2011/03/26(土) 21:17:01.23 ID:ri38gE9T
GJ
101名無しさん@ピンキー:2011/03/27(日) 00:48:48.27 ID:ubbO0C2B
やってる間は性格変えちゃう子っているらしいね
渚かわいいなグッジョブ
102名無しさん@ピンキー:2011/04/01(金) 10:53:34.19 ID:jTtmURjy
「なぁ…」
「………(ビクッ!」
「お前ずっと黙ってるの?」
「………」
「じゃあこれ過去ログに入るな…(ぼそり」
「………(ビクッ!」
「じゃああれ言ったらどうだ?」
「………(コクン」
「いやお前が言うんだよ!」
「………(ビクッ!」
「ほら…なんて言うんだ?んん?」
「…………ほ…」
「ほ?」
「………………………………ほしゅ」
103名無しさん@ピンキー:2011/04/02(土) 15:49:46.62 ID:xtzOp0oK
無口ツンデレの破壊力は凄まじいの一言
104名無しさん@ピンキー:2011/04/02(土) 22:46:11.34 ID:fV+Xr2Xt
無口健気もなかなか
105名無しさん@ピンキー:2011/04/02(土) 23:06:30.36 ID:9ybLzHwW
無口ヤンデレ。
106名無しさん@ピンキー:2011/04/03(日) 02:37:57.90 ID:UMtLIykn
3つまとめて

口下手で好きなあの人にツンツンしちゃって、それを悔やんで裏では彼のために八面六臂。
でも彼は泥棒猫のおかげだって勘違い。彼の告白を聞いて訂正もしない泥棒猫を滅多刺し。
いつか分かってくれるとまた影で支える。

という電波が来たが。
107名無しさん@ピンキー:2011/04/03(日) 19:30:59.76 ID:eLABJbXW
gkbr(; ̄ェ ̄)
108名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 07:04:29.11 ID:WvxvbDkA
無口っ子がダンボール箱の中からじっとこちらを見ています
109名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 09:25:13.69 ID:2xPR1cFn
>>108
そのダンボールを取り上げると…
うる目で返してもらうようにせがむ無口っ子…
110名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 12:17:33.89 ID:sxB8bn5S
>>108
それはスネーク式? シルファ式?
111名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 12:19:31.46 ID:WibqgGHZ
無口でスネークされたら本当に存在がわからんぞw
112名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 12:23:35.62 ID:XqHtkgwX
ダンボール箱に入る無口っ子良いな
捨てられているのか、それとも狭いスペースが落ち着くのか
113名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 12:28:17.21 ID:3/xPZEmG
誰にも気がつかれずに運送屋のトラックで運ばれてしまうわけですね分からんでもないです
114名無しさん@ピンキー:2011/04/04(月) 23:00:47.35 ID:0a0I/Pmy
段ボールを持ち上げようとしたら破れてしまい、きょとんと不思議そうな顔で首をかしげながら見上げてくる様を想像した。
その後、服の裾をくいくいと引っ張ってお姫様抱っこで運ぶように要求するわけですね
115名無しさん@ピンキー:2011/04/05(火) 15:25:46.13 ID:/2GTjUS6
>>106
最後の一行で船●が崖の上でクライマックスになったんだけど
116名無しさん@ピンキー:2011/04/05(火) 16:33:31.31 ID:8gcK96nT
聖母たちのララバイも聞こえる
117名無しさん@ピンキー:2011/04/10(日) 08:29:24.58 ID:TWHJ135h
保守
118名無しさん@ピンキー:2011/04/12(火) 01:50:08.48 ID:csCPwHuw
 ↑現実的
消極的な無口っ子
内気な無口っ子
恐がりな無口っ子
甘えん坊な無口っ子
理解者必須の無口っ子
計算高い無口っ子
活動的な無口っ子
積極的な無口っ子
大胆不敵な無口っ子
喧嘩上等な無口っ子
体育教師の無口っ子
 ↓非現実的

追加・訂正、大いに結構
119名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 01:01:24.01 ID:ld4Wyojd
>>118
ちょい確認。最低24の教室を『っ子』と呼ぶのはあり?
120名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 08:33:52.82 ID:WgVqe2nN
>>119
可愛いければ何でも許されるのだよ
121名無しさん@ピンキー:2011/04/13(水) 21:42:42.63 ID:qJDIm7jg
>>119
子供サイズの教師なら禁書目録の小萌先生が居る
問題は、よく喋るし担当は化学らしい

まぁほかの理由でも子って呼んで良いのは居ると思うよ
122名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 11:09:41.21 ID:fuKR7etJ
無口な女の子と無口な男の子がやっちゃう
待ち合わせもセックス中もナレーション以外ほぼ無言
123名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 22:54:42.48 ID:oSoPV6TU
>>122
でも何故か意志疎通出来る不思議!
124名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 01:38:13.67 ID:EFDzO7sk
 「ぼでぃ らんげーじ」
ある日街角で美女とぶつかる。見とれていると、
手話で謝りながら落とした物拾っているので失語の方かと思う。
手話ヘルパーを目指す俺としては手助けになりたい!(口実)
耳は聞こえるみたいなので口でその旨を説明
彼女は俺にも分かりやすい手話で返して了承してくれた。
そしてアドレス交換してその日は別れた。

最初は生活の手助け(代返とか)をしながら手話を教えて貰っていたが、
彼女の美貌で欲求が溜まっているのが知られる。謝っていると、
私はセックスしても良いとのこと。それを見た瞬間に押し倒してしまう。
するとセックスの最中に喘ぎ声ではない意識的な言葉が小さく聞こえてくる
実は彼女は無口っ娘だった!

後で尋ねるとその手話は口を動かさなくていいから覚えたらしい
何でも、喋ろうとしても緊張して喋れなかったので小5で諦めたとか。
数少ない友達にも訳せる程度には覚えさせたと言う
(もちろん彼氏にも頼んだが、フラれたとも)
更に、「彼女になって上げようか?いえ、手話がわかるなんて
私がお願いするくらいよ!」とか言い始める(と言っても手話だが)
こんな美女を俺が断れるわけがないじゃないか
125名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 01:40:01.90 ID:EFDzO7sk
突然電波を受信した。後悔なんてあるわけない

失礼しました。
126名無しさん@ピンキー:2011/04/23(土) 16:19:22.62 ID:uOquzsR9
多弁ではないけど従順で自己主張もする

でも、「台詞が省略」されて無口扱いになってる女の子
127電波第二波:2011/04/24(日) 23:00:14.40 ID:JHDFmyYp
なんの意味もなく書いちゃうよ


市街と雨粒の雑音の中、二人の男女は道路越しに傘も差さず立っていた。
そして女は口を動かす。しかし、周りの音に掻き消されて男には届かない
ほどなくして信号が青に変わる。二人は駆け出し、横断歩道の真ん中で抱擁して泣きあった。
互いにごめんと言う言葉を胸に抱きながら


雨も上がり、雲も晴れた。二人は手を繋ぎ夕暮れの住宅街を歩いていた。
男が右に寄り添う女に目を向けると、女の顔はにこにことして夕日に照らされていた。
女は視線に気づき男の方を見て不思議そうな顔をした。
男はふと思い出して女に問うた。
−あの時なんて言ってたの?
と。女は立ち止まる。自然と男も立ち止まる。そして女は男の耳に口を近づけこう言った。
−くちぱく
それだけを言った女は顔を離して、二人は向かい合った。
ひとときの時間、二人はその場で笑い合ったのであった。


以上
128名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 23:04:56.76 ID:JHDFmyYp
少し書き方を変えたつもりだったけどあんまり変わってないな
こんな月並み表現の使い回しでよければ、また今度出直すわ
129名無しさん@ピンキー:2011/04/25(月) 11:48:08.18 ID:gkyhSojq
乙です。もうちょっとボリュームがあると良いな
俺も何か書いてみるか
130名無しさん@ピンキー:2011/05/04(水) 09:30:12.25 ID:TVjpiTTe
「保守の朝」
朝から目の前で小柄な体でクリっとした瞳がせわしなくジェスチャーをしている

すまない、口で言ってくれないと分かりかねる
!・・・///・・・・ボソッ
ん?何て?
・・・ボソッ
耳元で言ってくれ聞こえない
・・ほしゅ
その為だけに一生懸命になってたのか可愛いやつめ!
・・・///
頑張った口にご褒美をやろう

そうして俺は濃厚な口づけをしてから彼女をお姫様抱っこしてベットに向かった。
たった一回の口づけで彼女の顔はトロンとしていて、笑みを浮かべている
本当に可愛いやつだ。思いっきり悦ばせてやろう。
まだ朝なのに?気にすることはない今日は二人とも休みだ。
朝もちゃんと食べて何しようか悩んでたところだし。
131名無しさん@ピンキー:2011/05/04(水) 19:40:27.91 ID:TVjpiTTe
いい忘れてたけど電波第三波だよ
よし、投下してみます


Q.無口な女の子だと思ったのにそんな印象を受けないんだが
A.
『ヒトは数多の犠牲の上に立っている生き物である。ヒトという存在は自然に存在する
ありとあらゆるものが犠牲になって生まれたものであり、非常に優れた知能を持つが、
ゆえにヒトからそれを構成するものを奪ってしまえば、劣悪な環境での適応力が低いも
のから順繰りに死滅する。
 こうして残ったヒトを傘下に入れれば、我らの侵略計画も大詰めである――』

「こんな時間に呼び出してどうしたのさ? 今日は休みの日だから校舎には入れないは
ずだけど……」
 背後から聞こえてきた声に、少女は読みかけの本を閉じた。長い間放置されていたた
めか、その拍子に埃が舞う。
 この日の夜、休日で施錠されている校舎が人を受け入れることができるのを彼女は知
っていた。だから、同じ空間に二人がいる。
「今日はママさんバレーの日で、その時間帯になれば校舎に入れるものね」
 納得してみせると、少女は暗がりで頷いた。関係者然としていれば、守衛の目だって
誤魔化すことはできる。
 ここは数多くの本が並ぶ図書室。廊下から離れているこの席は、夜になるとどうして
も電気をつける必要があるが、彼女は机の近くにあった電灯をひとつ点けただけで、少
年が来るまで本を読んでいた。で、今はなぜかそれを消している。
「本当は警備が厳しいから、迂闊に入ると大勢の男に捕まって何されるかわからないん
だよ。ナル、それでも良かったの?」
 ナル、こと三澄成佳は首をぶんぶんと横に振った。冗談のつもりだったが彼女は素直
で、真に受けてしまっている。
「警備員は毎日訓練しているからね、一晩かけても終わらないかもしれない」
 既に小泉宏樹の頭には無断で侵入した彼女が捕えられ、警備員にあんなことやこんな
ことをされている描写が出来上がっていた。担ぎ上げられて密室に連れ込まれた後、鍛
えに鍛えた男たちに囲まれ――
「おぶっ」
 そんな妄想は一発のカドで中断された。体を仰け反らせるのとほぼ同時に、額にぶつ
かった一冊の本が床に落ちる。
 投げたのはもちろん彼女。妄想の被害者にされて我慢ならなかったのか、近くに並ん
でいる本を投げつけたのだ。薄暗い部屋だというのに正確な一投、しっかりとカドが額
に当たるように計算された動きで。
「と、図書委員がそんなことしたらダメじゃないか」
 ズキズキと痛む額を押さえながら抗議する。対して、成佳は自分の肩を抱いて後ずさ
るような姿勢だった。
「……まあ、想像の上だけにしても話としては悪く……ぐはっ」
 呟いただけのつもりが、再び額にカドが襲いかかった。
 ここは図書室。図書委員たる彼女のホームグラウンドというか、その周りには武器が
山のようにある。こと、本の投擲に関しては野球と勘違いしているかのように正確無比
な投本を行う。威力は投げつけた本に依存するが、厚めの単行本は痛くてたまらなかっ
た。『本を大切に』がモットーの図書委員がこんな調子なのは考え物だが。
 身ぐるみを剥がされ、全身を容赦なく触られ、さらに体の中を犯される。鍛えた男た
ちは何度と精を放っても果てず、罰とは名ばかりの終わらない凌辱が始まる――という
ところまでは頭に出ていた。これは宏樹が文芸部の所属で、影ながらそういった活動に
あこがれている節があっての事だ。当然フィクションである。彼女が冗談を真に受ける
純粋な女の子であるから、それが好きでこんなことを口にしているだけ。
「ごめんごめん、そんなことないから。ね?」
 頭を下げて手を差し出すと、成佳はおずおずとそれを握った。それで安心したのかゆ
っくりと歩み寄り、何とか元の距離まで戻った。
 だが、宏樹はその手をくいと引く。突然の事に驚いた小さな顔が、さらに近くなる。
「じゃ、一対一で犯してあげるね」
 耳元で囁く。
 わずかな光しかないのに、言葉の汚さを知らない相手の顔が紅潮している様子がはっ
きりとわかる。とにかく、この少女は愛らしい。
「のわっ」
 しかし、我に返った成佳に頭突きされた。さきほど額に直撃したカドが残した傷二点
を、まとめて攻撃範囲にして。
 頭突きそのものの痛みと、元々あった傷を刺激されて宏樹は悶えた。別におでこが広
い訳ではなく、二点と重なるように最初から計算されていたのだ。

 顔を上げると、成佳は肩で息をしながら自分が読みかけだった本を掴んでいた。トド
メに用意していたのでは、と思うとさすがに恐ろしくなる。
「うん、今のは僕が悪かった。そんなこと言われたらナルじゃなくたって怖いよ」
 手を合わせて謝ると、彼女は掴んでいた本を机に置いた。本当に投げつけられたらど
うしようか、割と真剣に考えていたところだったが一命を取り留めたようだ。
「……あれ、そういえばどうして呼ばれたんだっけ」
 宏樹はふと考えた。
 妄想を始めてから本をぶつけられ、頭突きされただけ。呼び出したのは成佳の方だが、
理由がわからないまま話が進んでいる。
 すると、唐突にパタパタと何かをはたくような音が聞こえた。暗がりでハタキを使っ
て本棚の埃を掃う彼女は、どこか古めかしい本屋の店主にも見えた。
「そうか、休みが続くから本棚の掃除をしたいんだ」
 頷く。それから別のハタキを差し出し、自分は再びその作業へ。
 宏樹はその近くで、彼女の手が届かない高所の埃をはたいた。

 窓を開け放つと、埃が外に吸い出された。視界が徐々に冴えわたる。
 はたして本当に綺麗になったかはわからないが、彼女が満足そうなので宏樹は良しと
した。ひんやりとした風に当たると、どこか心地のよい気分になった。
「お疲れ様、ナル」
 言うと、実に良い顔でうなずいてくれた。顔を伝う汗が輝き、まるでスポーツでもや
った後のように清々しい表情だった。肩まである黒髪が風に揺れる。
「おいで」
 手招きすると、成佳はまるで小動物のようにゆっくりと距離を詰める。宏樹の胸に頭
が当たり、彼の手が向きを反転させる。
 その小さな体を少しだけ強く抱きしめる。鼻の先にある頭髪からはふんわりとした匂
いと、わずかに汗の香りがした。
「言い訳をするとね、労働の対価」宏樹は成佳の体に手をまわして呟く。「本音は、君
が欲しい」
 耳に息を吹きかけると、肩がぴくりと震える。彼女の手に力が入り、わずかに痛い。
「だって、可愛くてしょうがないんだもん」
 小柄な彼女が。素直な彼女が。どれを取っても魅力でしかなく、ここまで昂ぶってく
ると抑えがきかなくなる。言い訳に聞こえても一つひとつ口に出すことで、何とか冷静
になろうとはしているが。
「ナル、ここって図書室だけど……いい?」
「…………うん、ヒロ」
 わずかな沈黙のあと、そこで彼女は少しだけ口にした。

 掃除の時は電灯を全て点けていたのに、やはり終わってしまうと消してしまう。二人
が頼りにしているのは近くの机にあった小さな蛍光灯だけである。
「複数人まとめて、っていうのは出来ないけど、代わりに一回ずつじっくりやるから」
 成佳も先程の宏樹の発言で、少しだけその様子を想像してしまった。大勢の男に群が
られる部分について、彼の妄想は割と具体的で『朝まで終わらないかも』という言葉が
どうしても引っかかった。耐える耐えないの話ではなく耐えられないだろう。
 だが、宏樹と一対一なら悪くない。妄想の巻き添えから抜けだし、モヤモヤした思考
を捨てて制服のボタンを外す手に身を委ねる。さすがに慣れた手つきで、タイも解いて
上着とシャツがぱさりと落ちた。
「おっぱいも可愛いね」
 彼女は下手をすれば鍛えた男よりもふくらみが無い。少し髪が長くて背が低い事以外
で、外見から彼女を女子だと思うには学生服が頼りだ。胸板がすとんと落ちているこれ
を、『わずか』という言葉で表現していいのか迷う。乳房にAカップより下のサイズは
無いだろうか。
 ただし宏樹の好みである。キャミソールの上から触れるだけで、体が震えて返事がく
る。
「夜の校舎で、なんてちょっとロマンがあるじゃない?」
 制服を脱がされ露わになった背中を舐められながら、大きめで熱のある手で全体を触
られる。
 ロマンはあるだろうが、いつ誰が来るのか分からないリスクを背負うのが現実である。
例えそれが休みの日の夜だろうと。
「まだちょっと触っただけなのに……ナル、感じてるの?」
「ん、ぁ……っ!」
 首筋、耳へと舌は移っていくが、胸にある手だけはそのまま。全体に触れながら、存
在を主張してきた突起にも少しだけ刺激を与える。成佳は声こそ少ないが腕を強く掴ん
でいるので、ほとんど宣言通りということで間違いない。
 薄い衣の内側に手を入れると、ひときわ大きく体を反らせて抵抗した。間に何も挟ま
ず直接触ると、肌の熱が直に感じられる。
 成佳に対して揉むという行為は無いに等しく、押すとかつつくという方が正しい表現
だった。柔らかいゼリーのような感触を楽しんだ後、対象的に硬くなって存在を誇示し
ている突起に狙いを定める。
 まず指先で軽く突く。それだけで体が引き気味になり、口から息が漏れていく。
 これを指の腹で押し、こねるように動かすと、成佳は首を横に振って抵抗した。それ
でも宏樹の指は止まらず、奥まで押し込んで振動を与え、さらに責め立てる。
「我慢しなくていいんだよ、皆は体育館にいるんだから」
 口を噤んでも、ぐぐもった声が漏れる。息を殺しても刺激には耐えられずに吐き出さ
れる。耳元で囁かれると熱がさらに上がって、思考が弱くなってくる。
 いつの間にかキャミソールのボタンも外され、流れてくる風に当てられて寒気を覚え
た。
「僕のこと、“おっぱい星人”って言う?」
「言う……っ」
 この小さな胸をいじり倒したい、というのは宏樹の本音である。宣言しておいて自覚
があるため、彼女の返答を待つことなく胸を責める。
 本棚にもたれかかった状態にし、少し屈んで胸元に顔を寄せると、宏樹はその可愛ら
しい突起に舌を這わせた。
「ふぁっ!」
 途端、ぴくりと体が震える。硬くなった乳首を舌先で弾き、もう一方は指で挟む。そ
れぞれ違った感触を味わい、吸いつき、転がすと成佳の息が荒くなった。
 両側をひとしきり弄ると、宏樹は彼女を抱きよせた。片手を背中にまわし、もう片手
はそっとスカートの中に伸びる。
「あ、もうじんわり来てる……」
「っ!」
 指が触れたのは彼女のショーツ。熱っぽさはもとより、わずかな湿り気があった。
「ヒロは、おっぱい星人」
「でも、ナルも色々されるの好きでしょ?」
 指摘されて驚く成佳だが、そこでひとつ毒づく。しかし、反撃され目をぱちくりさせ
て黙ってしまった。
 言葉に詰まった様子の彼女に、おっぱい星人こと宏樹は行動で示す。
「……ほら」
「あ、やぁっ……!」
 背中にあった手を胸に戻し、突起を数回はじく。小さな声だがしっかりと反応して、
宏樹は満足げに頷いた。服をぎゅっと掴んで震える様子が何ともいじらしい。
「いじわる」
「だって、こんなに可愛いから」
 顔を上げた成佳の目は潤んでおり、服を握りっぱなしの様が迷子の少女にさえ見えた。
そんな切なげな表情で意地悪と言われてしまえば、むしろもっと苛めたいと思わせる。
 布越しの恥丘は液体を滲ませ、その範囲が少しずつ広がっていた。そこを往復してい
た指にも湿気が移ったのか、わずかに濡れたような感じだった。
「……だ、だめっ」
 声を上げた時には遅く、宏樹の指はショーツの内側に入り込んだ。少し動く度に電撃
のような刺激に襲われ、脚から力が抜けてわずかに震えだす。
「だめじゃないでしょ。はい、ちゅー」
 宏樹は意地悪っぽい笑みを浮かべて。
 言われるまま口が重なり、次に舌が絡む。窮屈そうに動く指が次第に滑るようになり、
耳元で聞こえる水音はキスによるものだと思わないと、成佳はあまりの恥ずかしさに顔
から火が出そうだった。
「ん、んぅ……っ! んんっ!」
 こもった悲鳴が響く。相手の肩に手を置いて体を支えている成佳に対して、宏樹は両
手を自由に彼女を責める。片方は指先で胸の突起をこねまわし、もう片方はショーツの
内側でぬめりのある液体を塗られながらゆっくりと動く。腰を引こうとして動く成佳の
体に当たって、背後の本がカタカタと揺れる。

 下着の奥でただ往復していただけの中指を曲げると埋まるような感じになり、表面よ
り熱のある部分に指先が入り込んだ。それ以上奥に進むのは無理があったが、少し振動
させると奥から液体が滲みだす。
 舌をからめながら呻くような声を上げ、しかし繋がった口を離そうとはせず、口の端
からお互いの混ざりあった唾液が垂れる。
「ナル、こんなにしちゃって」
 ショーツから手を抜くと、指を閉じて開くたびに糸を引く様子を見せた。成佳は少し
むっとした表情を浮かべ、ぷいと顔をそらした。
 そんな彼女のスカートをまくりあげ、水色の下着に手をかけてそっと下ろす。先程ま
で指で弄っていた恥丘から漏れ出した液が糸を引いて消え、改めて見ると下着の染みつ
きはかなりの範囲に広がっていた。
「指だったら二本くらいいけそうかな」
 そんなことを言いながら、まず人差し指を壺に入れる。あっさりと受け入れられ、二
つ目の関節まで入ったところで指先を締め付けられた。
 次に中指。先に入った指を一度離し、まとめて入口にあてがう。実にゆっくりと沈ん
でいき、先ほどよりも強い締め付けが両側から襲いかかる。
「ねえ聞こえる? すっごいえっちな音……」
 服を鷲掴みにしている彼女の背中を強く抱き、静かに訊く。顔を上げた成佳は指によ
る責めが中断したことで首をひねったが、それからすぐ激しい震動によって瞼を強く閉
じ、質問の意味を知ってかしらずか首を左右に振った。この静かな空間では、指の出し
入れによって水音がいやらしく響く。
「あっ、あう……んあぁ……っ!」
 成佳の喘ぎ声一つごとに、熱い息がふきかけられる。
 羞恥によってか彼女の花弁はよく動き、中では潰さんばかりの圧力がかかる。手のひ
らにも蜜が垂れてきたところで、宏樹はその指を引いた。
「でも指じゃいかせてあげないっ」
 一瞬のキスの後、本当に楽しそうな表情で言ってのけた。体中が熱く、指でかき回さ
れた下腹部が痺れを残す中、片足を上げられショーツを取り払われた。
「ヒ、ヒロ……きたな、あ、あっ」
 汚い、と言い切る前に彼の攻撃が始まった。片足を肩に乗せた状態で、宏樹の舌が蜜
壺を舐め上げる。指とは違った凹凸のある感触で、指で蓋を開けられ、中身をかき出す
ように複雑に動く。
 唾液と愛液が交換され、舌が動くたびにぴちゃぴちゃと音が立つ。指を入れられた時
とは別の音がよく響き、成佳は思わず耳をふさいだ。
「も、だめ……それ、い、じょ――ふあぁぁっ!?」
 それ以上は、と口に出す猶予はまだあったのかもしれない。だが、指で責められた分
も合わさって限界が近づいていたところに、敏感な珠を舐め上げられて、まるで電撃。
 ほんの一回だったような気がするが、唐突に舌を当てられて決壊してしまった。体が
いうことを聞かずに痙攣し、宏樹の顔に壺の中身をぶちまけた。
「うん、いっぱい出たね」
 びっしょりと愛液を浴びた宏樹は、それを少し手にとって口に運ぶと満足そうに目を
細めた。
 それから彼は成佳をまた半周させる。棚に手をかけ、小ぶりな尻がこちらに向くよう
な格好になった。
「大丈夫、怖いことしないから」
 しかし、わずかな明かりでも相手の表情はわかるというか、成佳から発せられるオー
ラのようなものを感じ取ると、彼女の頭を軽くなでる。もう何度かしているはずなのに、
やはり慣れない環境では不安が出てくるものなのか。
 このヒップを目の当たりにしたとき、真っ先に脳裏によぎったのがスパンキングとい
う行為だったが、彼もそう強烈な性癖はなく、
「……僕には出来ないっ」
 言ってすぐ、成佳の視線を感じた。不思議なものを見るような眼差しで、彼は思わず
「なんでもないよ」と返した。これもフィクションに留めなければこんな時だというの
に読本で攻撃されかねない。
 だから、すぐ本題に入った。
「……んくっ」
 ジッパーの奥から繰り出された勃起は少しうろついた後、入り口を見つけてゆっくり
と動いた。挿入する、されるの感覚にふたりが息をのむ。

 最初こそ抵抗もなく頭が入ったが、さらに進むと潰されそうなほどの圧力に見舞われ
た。すっかり奥まで収まったが、まだ動いていないのに成佳の襞はざわざわと蠢いてい
る。
 しかし、動き始めると拘束が解ける。もともと窮屈なのは仕方がないが、締め付ける
程ではなく絡みつくくらいの抵抗になった。中身を出してもまだあるのか、それが滑り
をよくして往復の度に音を立てた。
「んっ、あ、はあぁ……っ」
 成佳は喘ぎながら、時々後ろを振り返る。
 ぐちゅりと音を立てて奥まで入り込み、それからすぐ頭だけ残して引き返して。どろ
どろの液体を纏わせながら出入りする棒は、何か別の生物にさえ見えた。
「ほら、胸がお留守だよ?」
「きゃ……っ!?」
 どこかの悪党みたいな口調で言いながら、揺さぶられていた胸に触れると、それはそ
れは可愛らしい悲鳴を上げた。突然の刺激に背中が大きく反る。
 それから本棚との距離を詰めてほぼ直立の状態にすると、背後から乳首と膣を同時に
責めた。
「あ、すごい締めてきてる」
「や……そんな、ことっ、くっ、ふぁ……!」
 指摘すると、なんだか余計に締め付けが強くなった。
 こりこりとした突起をつまみ、軽く引っ張るようにして弄ぶ。それに合わせて彼女の
肉壺がキュウキュウと縮んで、ストロークを続ける棒を刺激する。
 棚に置こうか迷っていた彼女の手は、そのうち胸に当てていた宏樹の腕をそっと掴ん
だ。ぐにぐにと二本の指でこねまわすと、びくんと背を反らせて反応した。
「ナル、激しい方と優しい方、どっちが好き?」
 ふと、そんなことを訊いた。
 腰を打ち付けて、乳を責めながら。
 三点からの刺激を受け続けている成佳の口からまともな返事が得られないのはわかっ
ているから、宏樹は「激しい方」をグーで、「優しい方」をパーで示して見せた。
 成佳は後ろから突かれながら、掴んでいた片手を開いて返した。

「じゃあ、ここに腰を下ろして」
 床に座り込んだ宏樹が示したのは、それまで下腹部に刺さっていた自分の勃起。
 質問にパーで答えると肉棒が一旦抜かれたが、すぐに指を入れられてかき回され、中
に水たまりでもあるかのような凄い音を立てて液体が垂れた。わずかな物足りなさを覚
えながら、成佳は彼の股座に乗る。
「そういえば自分で、って今までなかったよね。……ちょっと怖かった?」
 頷く。ニスでも塗ったようにギラギラと光っていたそれの先端が自分の入り口に当た
るだけで肩を竦ませ、逡巡の末覚悟を決めて腰を深く下ろしたのだ。恥ずかしさよりも
そちらの方が勝った。
 すると、それ以上続かずに口元を塞がれる。本当はもっと続けていたいのに、なぜか
キスは簡潔に済ませてしまう。成佳は名残惜しそうに離れていった相手の顔を見つめた。
「もう、可愛いなっ」
 言うが早いか、肩をぎゅっと抱いて再びキス。舌が絡むと、相手の唾液がこちらに渡
される。ほとんど無味のはずなのに、こういう時だけはなぜか甘く感じる。
 キスが好き、と指摘されてもいい。指先で首筋や肩のライン、鎖骨までを指先でなぞ
られながら、たっぷりと口を繋ぎ合わせた。
「はぁ……」
 口の端に流れた唾液を拭いながら、成佳は違和感を抱えていた。なんというか、満た
されている気がするのに、何か足りない。
「ひゃうっ!」
 脇から手を通され、そのまま手が胸を覆う。思わず仰け反り、その拍子に中に入り込
んでいた肉棒が膣壁を擦る。
 そのまま胸板を押され、パンの生地みたいにぐりぐりと捏ねられ、決して痛くはない
刺激に思わず腰が動く。
「ナルって結構えっちな子なんじゃない?」
 それがしばらく続いた頃、背後からくすくすと笑い声。乳首をつついていた指が止ま
ってもビリビリと刺激される感覚を覚えながら、意味が解らずに首を傾げる。
「繋がったまま動かなかったら、自分で動いているんだよ?」

 言われて、みるみる顔が赤くなる。それまで無かった空白を埋めたつもりなのに、そ
こから何も得られずに自分で求めていたというのだ。同時に違和感の正体もわかったが、
あらためて言われるとこっぱずかしい。
「それはっ、ヒロがおっぱい星人だから……ん、あっ!」
 指先で突起を弾かれ、反論も上ずった声になる。両側を同時に責められ、それで腰が
動くと結合部が水音をかき鳴らす。
 これも宏樹の思惑なのだと理解するのに大分時間がかかったが、つまりそういう事だ。
他の場所を責めて、反射で身体が動くと繋がった場所が刺激される――と。
 ただ、理解したからといって体を動かすのをすぐには止められない。散々触られて硬
くなってしまった乳首でも指先が当たれば甘い刺激が生まれるし、何より彼は様々な場
所を責めてくる。その全てに対応するのは無理な事で、まさに今も指の間に突起を挟ま
れて引き伸ばされ、体が震えて中の勃起を締めている。
「やっ、ヒロ、それ……あんっ、そんなの、反則……!」
「えっちにルールは無いでしょ。僕はナルに愉しんでほしいんだから」
 首筋に舌が這った。突然のことに驚いて体が左右に動くと、それに合わせてぐちゅ、
ぐちゅと鈍い音が響く。首から肩にかけてゆっくりと移動し、自分の汗を舐められてい
ると思うと体がさらに熱くなる。
「――っ!」
 胸の方でひときわ強い刺激が生まれ、一瞬で頭まで伝達される。実に四点から責めら
れていた成佳は、すっかり込み上げていた性感に任せて体を震わせた。伸ばしたままの
足指がぎゅっと閉じられ、腰がさらに深く沈んで、棒の先端が子宮をつついた拍子にそ
れが決壊し、結合部の隙間から透明な液体が漏れだした。ほぼ前触れなしに襲ってきた
が、それでも意識を飛ばすのには十分で、目を閉じてから開けるまで、ほんの数秒のは
ずなのに長い時間に思えた。
「……いっちゃった?」
 驚いた顔に頷いて返すと、宏樹はふんふんと納得したように頭を振り、それから笑み
を浮かべた。
 正直、それがオーガズムだということ以外は曖昧だった。数個所からの刺激がここま
で導いたのだが、気持ちいいと思う一方でそれぞれ強烈でなかったのがこの微妙な気分
の原因かもしれない。
「いじわる」
「えっち」
 とりあえず思ったことを口に出すと、ちょうど宏樹の言葉に重なった。
 お互い同じような考えだとわかると、成佳は嬉しくなってくすりと笑った。

 二度目の絶頂を迎えた成佳は先程まで繋がっていた勃起に再び跨った。今度は向かい
合う様にして、ためらいなく蓋を開けて銜え込む。
「さっきはごめんね。ナルが可愛いから、つい苛めたくなっちゃう」
 わずかに腰を動かし、相手を下から突き上げる。よっぽど飢えていたのか、少し動か
すだけで根元から締め上げられるような圧力がかけられ、それがさらに欲求を高めた。
「あ、ん、あぅっ!」
 黒髪を揺らして、成佳の口から吐息が漏れる。下はずっと動かずに焦らされたものだ
からか、それまでとは比較にならないほど愛液が分泌されていた。度重なる振動で泡立
ち、大きな音を立てて聴覚を刺激する。
 腰を支えていた手を胸に移すと、背中にまわっていた彼女の腕に力がかかる。突起を
つまんで、下からの振動に任せて上下に揺らし、また複数から責めていく。
「ナル、ここだと本が汚れちゃうね」
 動きながら、ふと訊いた。
 成佳も意味が解っているのか、はっと目を開く。
「だから……ナルの中に出すよ」
 自分でも汚いとは思った。図書室だと分かっていてさんざんやっておきながら、こん
な時にだけ図書委員のモットーを引き合いに出したのだ。……もっとも、本を投げつけ
るイレギュラーな彼女には、普段はあまり関係の無いことかもしれないが。
「ん、ヒロ……あん、ふぁ……っ!」
 しかし、そこは素直な三澄成佳である。こくりと頷いて、またすぐ快楽に身を震わせ
た。三度目のオルガスムスが近いようで、襞が棒を引きずり込むかのように蠕動し、そ
れが宏樹の性感を高揚させる。

「いくよ、ナル――」
 お互い強く抱きしめあって、奥まで入り込んだ肉棒から熱い奔流。同時に絶頂した成
佳の膣はそれを飲み込もうと全体がうごめき、脈打つものを刺激し続けていた。
 精を吐いた後、ふたりはどちらともなく口をつけて、それから笑った。

 さて、終わってみれば床の方にもさまざまな液体が混ざって広がっていた。掃除用具
入れに雑巾があったはずだが、それで拭くと臭いが残って大変なことになりそうで、ト
イレに紙を取りに行くことになった。
 廊下はすっかり暗く非常口を示す緑の光しか頼りになるものはない。差し出された宏
樹の手を握って、ふたり並んで一緒に歩く。
 誰もいないから、と安心しきって。実にちょっとした羞恥を味わいながら。
「――っ」
 ひんやりとした外気が通り抜けるのとは別の感覚に、成佳は思わず繋いでいた手を強
く握る。
「ナル?」宏樹も動きを止め、心配そうな顔になる。
「出てきた」
 ショーツを着けずにむき出しの恥丘を指で開き、どろりと垂れてきた白濁を取る。特
有の臭いと感触で、一緒に出てきた透明な液体と共に粘る。
「今日はいっぱい出た気がする。……かきだしてあげよっか」
 その精液を吐いた宏樹の言葉通り、今日のラストは普段より長く続いた。どれだけ飲
み込んだかは分からないが、その下腹部には小さな水風船でも入れられたような感覚が
残っていて、歩くたびにたぷん、たぷんと揺れるよう。
 成佳の返事も聞かず、彼の指が滑り込む。にちゃ、と鈍い音を立てて、二本が一気に
入り込んだ。
「だめっ、ここじゃ、んぁっ……響くから……っ」
 抵抗している間にも関節を曲げてぐちゃぐちゃにかき回される。暗い廊下に自分の声
と水音が響いて、少し冷めてきた体が再び火照りだす。
「……あんっ」
 それまで見せなかった乱暴な動きに翻弄されたが、やがて指が抜かれる。静まりかけ
てきた性感が、また昂ってきてしまう。だというのに、そこで中断してしまうから彼は
本当に意地悪だ。
 ふたりが混ざった液体を口にすると、宏樹はふっと笑んだ。



 ここは学校。ふたりがなぜ廊下の照明が消えていたかに気が付いたのは、それからし
ばらく後のことであった。
以上です。

普通の女の子しているときが無口、するときはそこそこ口を開く……がスタイルだった
本当に申し訳ない

……
141名無しさん@ピンキー:2011/05/08(日) 22:04:04.02 ID:TUdJvkk0
このスレに人は残っているのだろうかと疑うときがある。
でもみんな無口なだけだと言い聞かせてる

なにはともあれ、投下gj
バレーが終わるまでやってたのか・・・二人ともお疲れだぜ。
142名無しさん@ピンキー:2011/05/09(月) 18:19:59.26 ID:RxhD/PdA
>>140
GJです。良いなあ
143名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 16:48:44.21 ID:7JdhD/Mj
>>140
これはGJ!
反応がいちいちかわいいな
144名無しさん@ピンキー:2011/05/12(木) 04:13:52.69 ID:6QX+6zGt
申し訳がないのならもう一本書けばいいじゃないGJ
145 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:03:25.11 ID:QxO1pgX0
てすと
146 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:04:43.96 ID:QxO1pgX0
こなさんみんばんわ。GW明けから発生した逃避エネルギーを叩き込みに来ました

毎度のごとくエロが薄い・野球談義が長いので注意
嫌な人は鳥で弾いてください
ではどうぞ
147交流戦 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:06:03.81 ID:QxO1pgX0
 家に帰ると彼女が出迎えてくれることもなく、TVに釘付けだった。ただいま、と声を掛けながらソファの隣に
座ると間髪入れずにもたれかかってくる。
 TVの中身は無論トラーズの試合だった。交流戦期間に入り試合間隔が微妙に開いていることもあって、集中度
はいつも以上のようだった。なにせ7日間で4試合しか行われないのだ。試合単位で見れば先発のエースが登板す
る間隔が短くなるから、毎試合が本気の勝負になって楽しい、とは彼女の弁である。
 今日の試合はトラーズ主催のパンジャーズ戦、5回裏の攻撃中でトラーズの2点リードだった。
「今日の先発は誰だっけ? 豊岡?」
 違う、と彼女は首を振ると背番号を口にする。
「あれ? 順番的には豊岡だった気がするんだけど」
「……ずらされた」
「怪我?」
 また首を横に振る。詳しい理由は分からないらしい。今年の開幕投手を任されたくらいに実力がある選手だか
ら、それがずらされるとなると軽い疲労でもあるのかもしれない。
 とりあえずローテーブルに一通り揃えられた観戦グッズの中から選手名鑑を取り上げて、先ほど告げられた番
号を調べる。大きい数字だったから下から上げられてすぐ使われたような若手なのだろう。……名前を聞いたこ
とがない。

 不意にくいくいと袖を引かれる。何かあったのか、とTVを見ると問題の先発、城田が打席に出てきていた。5
回裏の攻撃に参加するということは、それなりに評価のできる投球内容でここまでを切り抜けてきたのだろう。
そうでなければここで代打を出して球界上位の救援陣にバトンを託し、勝利投手の権利を持たせたまま降板させ
るのが普通、いや常識だ。
 プロの選手はたった一つの勝利で大化けすることがある。そうでなくても実績のない若手がこの時期に勝利投
手の権利を得るというのは、シーズン終盤の総力戦を戦い抜くときに計算の出来る駒が生まれるということで、
やはり今年もトラーズは優勝戦線に絡んでくる強敵になるだろう。
 そこまで考えが進んだ辺りでまた隣に引っ張られる。
「何?」
「おなか、すいた」
「まだ何も食ってないの?」
 ん、と肯定する。6時くらいに帰ってきて、そのままTVの電源を入れたら試合が始まっていたのだろう。今ま
でも何度かそういうことがあった。
「何がいい?」
 彼女は少し迷って、それからお腹に溜まるモノがいい、と言った。とりあえずスパゲッティの乾麺とレトルト
ソースがあったからそれで適当に仕上げよう。彼女に了解を取ると俺はソファを立った。
148交流戦 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:07:20.33 ID:QxO1pgX0
 戻ってくるとトラーズが逆転されていた。
「……食べる?」
 テーブルに出来上がったミートソーススパゲッティを置くと、ムスっとした顔のままの彼女がこちらも見ずに
がっつきはじめた。
 ありがとうという言葉を言え、とまで言うつもりはない。しかし、ああ、なり、どうも、なり一言くらい添え
てもよかったのではないか。
「どうしたの?」
「……四球連発、続投」
 わずか11文字の言葉に全てが詰まっていた。未だ続く6回表の攻撃を見ていると、早くも相手の攻撃は打順は
一巡しているらしい。投げている投手も苦しそうだ。
「そんなに急いで食べると……」
 つっかえるのか、と言いたげな目でこちらを見る。口からは数本スパゲッティがぶら下がっていた。
「……トマトソースで服が汚れますよ」
 行儀の悪さを指摘する気力さえ失せ、自分も食べることにした。ズルズルと啜っているとようやくパンジャー
ズの攻撃が終わった。この回のリプレイが流れ始める。

『6回の表、これまで好投を続けていた城田ですが、3巡目となる片平にストレートの四球。さらに続く栗林の打
 席で盗塁が悪送球を誘ってノーアウト3塁となります。これに動揺したのか連続フォアボールを与えてノーア
 ウト満塁。4番の内村を迎えます。
 対するトラーズ、一旦はコーチがマウンドへ向かいますが田中監督は続投の判断です』

 ああ、ダメだこれは。

『初球でした。左中間を真っ二つ、走者一掃の逆転タイムリーツーベース。先発城田、ここでノックアウトとな
 ります』
『この内村の場面でねぇ、ピッチャー代えといたほうがよかったんちゃうかなぁ思いましたねえ、僕なんかは』

 解説者が相槌を打つのを聞きながら隣を見ると、彼女はスパゲッティと格闘していた。TVのほうへ裂く集中力
は全く無いらしい。

『その後を継いだ深草もワンナウト後、6番浅町に一発を許し、更に2アウト満塁まで攻められますが、最後は三
 振で切り抜けました――ここまでの展開、いかがですか』
『監督の、城田君に対する「一皮剥けてほしい」いう親心がアダになりましたねぇ。ベンチもポコーンイかれる
 いう予感あったん違いますか?』
『そういった予感があったにも関わらず続投させたと?』
『まあホンマに予感があったかは分からんけど(笑)
 定石やったら交代のところを引っ張ったんは、成長に期待してるいうことやしね。まあただ、5回まではええ
 投球でしたから今後に期待出来る思います』
『6回表、パンジャーズが逆転に成功、トラーズの3点ビハインドとなりました。この後の攻撃は2番平岡から始
 まります!』

 さっきからやたらトラーズ寄りの実況なのは制作が関西の放送局の中継をCSで観ているからだ。こういう、地
方や放送局ごとの傾向が如実に現れるところなんかは、東京から出たことのない俺からすれば面白いと思う。
 さっきから丹念に皿の底にくっついたスパゲッティをフォークですくい上げている彼女の肩を叩く。
「ちょっとだけ替えてもいい?」
「ダメ」
 即座に返事が来た。この後はCMなのに。
「いや、本当に……」
 ぶんぶんと頭を振る。それから見上げるようにして睨まれた。どうも俺の狙いを的確に見抜いているらしい。
「……ら、ラビッツ戦の途中経過を……何でもない」
 更に眼光が鋭くなった彼女に、俺はさっさと諦めてしまった。ビール取ってくる、と言うと、私も、とだけ
返ってきた。

 缶ビールをトスすると彼女は器用に片手で受け取った。グラスもちらつかせたが、彼女はそれに気がつかない
かのようにプルタブを押し開けて一口啜る。
 気取っても仕方ないかとグラスを手近な本棚の上に置き、自分もビールを喉の奥に放り込む。アルコールより
もまず炭酸で舌が焼けるように感じる。
 期待の上位打線は初球からの積極攻撃が裏目に出たらしく、いきなり1アウトを献上していた。パンジャーズ3
本柱の一角、名取は開幕こそ怪我で出遅れてきたものの、交流戦直前にようやく復帰してきた。確かまだ先発復
帰して2試合目か3試合目だったはずだが、今日のピッチングは流石エースと呼べる貫禄を漂わせていた。
149交流戦 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:08:16.83 ID:QxO1pgX0
 お互い暫く無言でTV画面を眺める。トラーズ打線は名取の緩急の利いたピッチングに翻弄されており、全くタ
イミングが合っていないように見えた。
 これは今日は彼女の機嫌が悪いままだな、とぼんやり考えていると、不意にTV画面の中が沸いた。終盤にきて
疲れが出たのか、名取が制球を乱した。下位に死球を与えたことで、チャンスでそのまま上位打線に回ってきた
のだった。
 勝負所だ、と上半身が自然と前傾姿勢になる。隣も同じ体勢になっていた。応援するチームは違ってもこうい
うところは2人揃うのだから、自分達はなんだかんだでそれなりに相性がいいのだと思う。

 * * * * * *

 ビールはワインになり、焼酎に変わった。彼女の希望だった。
「惜しかったね」
 結局終盤のチャンスを生かすことが出来ず、晩酌は残念会の会場となった。冷蔵庫から出してきた酒のツマミ
になりそうなものを一通り食い散らかした。酒量も当然多くなっている。
 彼女は相当酔っぱらっていた。言葉では乱れた様子を見せなかったが、顔がこんなに真っ赤では酔っていない
というアピールも意味がなかった。
「大丈夫? 水、飲む?」
 大丈夫に決まってるじゃない、と彼女は更に手に持った焼酎のロックを口にする。これまでの経験上、そろそ
ろ彼女は危険水域だと思うのだが。
 顔にハテナマークを貼りつけながら焼酎の入った瓶をこちらへ向けてくる。俺のほうが酒に弱いのを承知でこ
んなことをするのだから、彼女はもう完全に酔っぱらっていて自制を失っているか、もしくは俺にも酔ってほし
いかのどちらかだろう。
「……どっち?」
「……ん?」
 とぼけた顔をしながら問答無用でこちらのグラスを満たしてくる。照れ隠しの表情だ。
「分かったよ、付き合うよ」
 そう言うと彼女は相好を崩し、更にドボドボと酒を注ぐ。無論溢れた分はこぼれる。
「あーあー何やってんだよ、もう」
 拭くものを持ってこようと立ち上がると、座る様に目で制される。いったいどうしろと言うのだ。
「きれいにして」
 ……まさか、机にこぼれた酒を舐めろと言うのだろうか。きちんと掃除をしているから不衛生ということはな
いが。
「もっと?」
 彼女が物理的にこれ以上入らないグラスへ更に焼酎を入れ込もうとするのを見て、諦めた。満タンに入ってい
るグラスを机の上に置いたまま縁から啜り上げ、多少の余裕を作ってから持ち上げる。
 やっぱり蒸留酒はキツい。ワインまでなら普通に飲めるが、アルコール度数が20度を越えた辺りから身体が受
け付けなくなる。
 縁から垂れたしずくを舐めあげてまだ酒で汚れていない辺りに避難させ、机に薄く広がりつつあった焼酎へ口
を付けた。吸い込みつつ机の表面を舐める。
 アルコールが頭に回っていなければ、自分は何故こんなことをしているのだろうという素朴な疑問が頭をもた
げているのだろう。しかしあいにく、現在の俺は半分くらい理性がすっ飛んでいるただの酔っぱらいでしかな
かった。
150交流戦 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:09:37.28 ID:QxO1pgX0
 一心に机を掃除していると、とぷん、と焼酎の中身が鳴る。またどこかに酒をこぼしたのだろうか。ソファな
んかだと掃除が大変だ。選択が出来ないから、暫くの間酒臭いソファで野球観戦するハメになる。そう思って頭
を上げると、彼女は自分の胸元にたらりと酒を流していた。
 同じソファで隣あって座っている位置関係からいって、塗れた場所は一番アルコールを感じさせる場所だっ
た。彼女の体温がアルコールを揮発させ、真下から立ち昇ってくる。
「濡らし、ちゃった」
 わざとに決まっている。やってしまったと言っている割りに濡れているのは胸の周囲だけだ。ちなみに彼女は
使い古して裾の辺りが少しだらしなくなったワンピースを部屋着代わりに着込んでいた。多少汚しても問題ない
からというばかりに、焼酎の染み込んだ辺りを手のひらで包み込むようにして温めていた。
「お酒の匂い……」
 すぅ、と鼻で深呼吸する。うっとりとした様子で、何度も何度も深呼吸を繰り返す。
「寒く、ないか?」
 もう夏の直前ではあるが日が落ちればまだ少し肌寒い。日中との温度差で余計に冷えるように感じる。
 胸元を濡らした彼女はアルコールに酔って寒さを感じていないように見える。しかし放っておけば風邪を引く
のは間違いない。
 彼女は静かに首を横に振った。
「……寒くない、じゃねえよ」
 体調を崩したら誰が面倒を見ると思っているんだ。風邪を引きやすい虚弱体質のくせに。
 ほら脱げよ、と手にしっかりと握った焼酎瓶を取り上げて、ワンピースを脱がせる。万歳の格好から上着を抜
き取ると、彼女は上下の下着だけの姿になった。
「……これも濡れてる?」
 上の下着を指差すと彼女は黙って頷いた。なら脱がせるよ、と声をかけるとジロリとこちらを見遣る。
「変態」
 その発言には異議を申し立てたい。これはあくまであなたの健康を気遣った結果であって、別に変態的な行為
の前振りのつもりはなかったのだ。きれいに胸の辺りだけを濡らした奴が悪い。

 肌の表面にも焼酎がついている。べたべたと乾き始めていた。
「きれいにする?」
 ん、と彼女は胸を張った。俺は一言断ってソファの隣の彼女に覆い被さる。自己申告でCカップ。着痩せする
タイプだと思う。
 鎖骨に舌を降ろしてぬらりと頂点に向かって進む。突起に辿り着いて唇で包み込み、唾液をまぶしてから吸い
込む。
「んっ……」
「どうしたの?」
 白々しく訊くと、予想通り馬鹿だのなんだのと罵られた。馬鹿はどっっちだ、誘われたからそれに乗っただけ
だ。
「……う、まいから、きらい」
 彼女は顔を真っ赤にしてそう呟く。アルコールが効いているのか、それともただ恥ずかしがっているだけなの
か分かりゃしない。
「ひどいなあ、一生懸命に頑張っているのに、嫌いだなんて」
「そ、じゃなっ……!」
 突起を舌で弾く。声が途切れたのを確認しないままに更に波状攻撃を仕掛ける。胸の中身を絞り出すように手
で掴み、先端だけ暫く吸い続けてやると、そこもずいぶん硬くなってきた。
「感じてるんだ?」
「……ばか」
 もじもじし始めていた太腿に手をかける。
「こっちも、濡れてるけど」
「……よっぱらい。エロ魔神」
「誰が酔わせたんだよ」
「…………」
 ここで真っ赤な顔で押し黙るのはズルいと思う。
151交流戦 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:10:34.06 ID:QxO1pgX0
「うー……」
 ベッドに放り込んでやると早速掛け布団を身体に巻き付けて丸くなった。やっぱり寒かったんじゃないか。
「パンツ1枚だから、寒い」
「俺が脱がしたせいって?」
 もぞもぞと布団の塊が肯定の意志を伝えてくる。失礼な、極めて紳士的に同意の元、コトに及んだではない
か。
 俺もベッドの上に進み、布団の塊ごと抱きしめる。
「寒い?」
 もぞもぞと肯定。
「一緒に寝る?」
 もぞもぞと否定。
 俺達は同棲こそしているが、お互いが持ち込んだベッドがもったいないからと寝室は別にしていた。ちなみに
ここは彼女の部屋。男女のアレコレをするときは(何故か)俺の部屋と決まっていたから予想していた答えでは
ある。
「……じゃあ、片付けしてくるから」
 俺がこれ以上この部屋にいても仕方がない。あとは布団を被って寝るだけだ……というのに、彼女は俺のこと
を行かせてくれなかった。布団に取り込まれるようにして抱きつかれる。
「なに? 身体、鎮まらない?」
「……ばか」
 鎮まらないほど可愛がったのはお前だ、とばかりに彼女が反攻に出た。脇の下へ腕を通して後ろから俺の本体
へ手を伸ばしてくる。スラックスの前を開けて指を突っ込んでガチガチのそれを引っ張り出す。
「……変態」
「だってさっきまでおっぱい吸ってたし。……まあミルクじゃなくて酒臭かったけど」
 ぎゅ、と握られる。心臓が縮みあがった。嫌がらせにしたって、していいことと悪いことがあるぞ。
「……おもちゃ」
「最近流行のおもちゃは、乱暴にしたら壊れます」
 最近の変身ベルトなんかは、もう完全に精密電子機器だ。俺の子供の頃はボタンを押してなにかしらの音が鳴
ればそれでいいほうだったのに、差し込んだカードやフィギュアによって音声が切り替わるなんておもちゃの域
を越えている。そのうち、おもちゃを支配して世界征服、というのも夢物語ではなくなるのかもしれない。
「じゃあ、これ電動?」
 自分で言っておいてなんだが、電動のそれを想像して気分が悪くなった。
「違うなら、乱暴する」
 彼女がゆっくりと擦り始めた。ひんやりとした指が気持ちいい。自然と腰が浮く。
「ここで、っく、するのか? いつもは俺のベッドなのに」
「いい、ここで」
 アルコールで投げ遣りになっているのか、刺激を与える手は止まらない。
「……それとも」
「なに?」
「このまま、リビング通りたいの?」
 ボカン、とこちらの頭が沸騰する。
「おちんちんサれながらなんて……ホント、変態」
「ま、待て! それは言いがかりだ!」
 言いがかり、と理性は言っているが、下半身は素直だった。もう爆発寸前でカウントダウンに入っている。そ
れを察知したのか、彼女が無言で裏筋に爪を立てて射精感を押し止める。
「?」
「……ダメ。まだ」
 彼女は今度は腹側に回り込み、いつの間にか唯一身につけていたパンツを脱ぎ捨てて解放されていた入り口
に、俺のそれの先端を擦りつけていた。
152交流戦 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:12:11.76 ID:QxO1pgX0
「私も……よくなりたい」
 二度目の沸騰。付き合ってから約3年半、彼女がこんなに積極的になったことがあっただろうか。
「……アレな日だけど」
「お、おい!?」
 ならゴムを着けないと、と慌てるが、彼女はそんなことはお構いなしといった様子で身体を密着させてくる。
「……無い」
「なら俺の部屋」
「ヤだ」
 ずるり、と先端が肉に包まれる。入ってしまった。
「も……いいでしょ?」
 同棲を始めて1年以上になる。お互いあと数年で三十路だ。
「こんなときに言わなくても……」
「お酒の力?」
「俺に訊くな」
 先端だけで止まっていたのを押し進める。根元まですっかり入ってしまった。
「態度、はっきりしなかった俺が悪い、ってことで」
 彼女は満足そうに酒臭い息を吐き出した。

 上になった彼女は自分から腰を振り出した。それなりの頻度でシているが、いきなり動かれるのはまだ痛いら
しい。こうして自分で慣らさないと不快なのだとか。
「自分で動くと気持ちいいんだ?」
「んっ……うん」
 顔を真っ赤にしているのは息を詰めて動いているからだろうか。それともアルコールが抜けきっていないから
だろうか。繋がっている部分の少し上、肉のしこりへ指を置く。
「んぅっ!?」
 軽く押し込むようにして皮の合わせ目をこすって緩めていく。中身がすぐに出てきたらしく彼女の反応もすぐ
に大きくなる。
「い、あ……やぁ……」
 俺がクリトリスをいじっている手を彼女は両手で抑えつけ、顎を少し引いてうらめしいといった目で睨みつけ
てくる。普段はそんなことをしないじゃないか、と抗議を受ける。
 たまにはそういうのもいいじゃないか、と一度突き上げる。不満顔がすぐに苦しそうなものに変わる。まだ辛
かったか。
「ばか……」
 さっきよりも強く身体を寄せてくる。
「……感じ、ちゃうでしょ」
「感じてたんだ?」
「バカ」
 さっきより幾分硬い声でそう罵倒される。ちょっとカンに障ったようだ。
「ゴメン。けど感じててくれるんならよかった」
 もう一度突き上げる。彼女は下唇を噛みしめて衝撃を耐える。
「もう、出したい」
「早い、ね」
「そりゃ、自分の嫁が相手だから、ね。ちょっと興奮してる」
「……嫁」
 それも断言するのは早すぎる、と彼女はまた文句を言う。
「責任取るよ。だから間違いなく嫁になる」
 言ってから気づいた。こうじゃなかった。
「……俺の嫁になってくれない?」
「……軽い」
 彼女が苦笑する。酒の力を借りてこんなシチュエーションに持ち込むお前に言われたくない。
「お互い様だろ」
「だね」
 再度突き上げると、彼女は控えめに喘いでみせた。
153交流戦 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:12:44.03 ID:QxO1pgX0
 * * * * * *

「焦る、とか、あったんだなぁ……」
 初めて目の当たりにした30前女の本気を思い出して思わず呟く。何のことか、と彼女がこちらを見つめてく
る。
「いや、俺が待たせすぎたのかな、なんてね」
 ふるふると彼女がかぶりを振ると、ベッドサイドの引き出しから1枚のチラシを引きずり出した。

『トラーズ応援セール! 〜あなたも家族でトラーズを応援しませんか?
 今、強虎倶楽部にご入会いただくともれなく特製トラーズグッズをプレゼント!』

 ……こんな理由で結婚をせっつかれたのかと思うと目眩がする。
「……冗談だよ?」
「嘘吐け! ……さっきのプロポーズやっぱ無しって無し?」
「無し」
 俺は、こんな調子の妻を娶ることになりそうです。
154交流戦 ◆6x17cueegc :2011/05/15(日) 03:16:59.12 ID:QxO1pgX0
と以上です
時期的にはちょっと先走った感じがしたけど、いつも遅刻上等だったからたまにはいいかなと


以下本当にどうでもいい話

・パンジャーズはどこがモチーフなのか
 ライオンズ。『ジャングル大帝レオ』のレオのお父さんがパンジャ
 ライオンズのトレードマークは、レオじゃなくてパンジャがモチーフだとかなんとか

・結婚するのにタイトル【交流戦】で大丈夫か?
 問題ない。投下時期に合わせていく

・続くのか? 続くとしたらいつになるか?
 そら(逃避エネルギーが溜まれば)そう(書き上げる)よ
 (いつになるかという質問に対して)
 おお、もう……ちょっと(いつになるかは)分からん。それやのに……オマエ……
155名無しさん@ピンキー:2011/05/15(日) 19:10:14.07 ID:a+avRqq2
GJです
野球ネタごちそうさま
156名無しさん@ピンキー:2011/05/15(日) 19:33:57.32 ID:nWBw52zD
兎ファンと虎ファンが交流か。
三リーグ制なんて予定にあったかな(ぇ
157名無しさん@ピンキー:2011/05/18(水) 13:49:43.80 ID:hV275r03
おつ
158名無しさん@ピンキー:2011/05/22(日) 21:04:19.72 ID:QfEnalRH
ひさしぶりにきたら、トラーズ娘シリーズ(勝手に命名)が更新されているではなイカー!!
前回(>>133-139)と同じ組み合わせで投下してみます。

Q.痴漢プレイ(もどき)とか前代未聞なんだが
A.酉その他で弾いてほしい

Q前回同様、.無口っ娘の印象がないんだが
A.

『まもなく、一番線に電車がまいります。白線の内側に下がって、お待ちください……』
 アナウンスから間もなく、ホームにステンレス製の車両が入場する。ゆっくりと減速
して、やがて停止してドアが開く。
 車内から大勢の乗客が吐き出され、三澄成佳はそちらに流されそうになった。他線と
接続しているこの駅では、乗客の入れ替わりがとても激しい。半ば強引に車内の奥まで
進むと、後ろ髪が背広や制服に引っかかってわずかに痛む。
 ベルの音と共に駅員の声が響き、続いてドアが閉められる。扉近くのバーにつかまっ
て、小柄な彼女は揺られないように踏みとどまった。
「ナル、おはよ」
 ふと、背後から聞きなれた声がして成佳は首だけ動かした。自分と同じ学校の制服を
着た小泉弘樹が、少し窮屈そうに体を動かしていた。
 周囲に「すいません」と数回呟いた後、宏樹は成佳の背に立った。後頭部が胸板に当
たって、わずかに熱っぽい。
 混雑時はドアの多い車両を選ぶようにしているが、ここで入ってきたのは通常の車両
だった。どちらにしても座ることはできないし、立つ分には窮屈なのも変わらないが。
『まもなく兎祖――お出口は右側です……』
 しばらくは反対側のドアが開く。しかし付近の客は降りることもなく、混雑率は変化
しない。すぐにベルが鳴って扉が閉められ、再び密室になると、電車は加速を始めた。
「ほとんど毎日乗ってるけど、いつもこんな感じだよ」
 車輪の音に混じって、宏樹がつぶやく。周囲を見ると立ちっぱなしで眠っているよう
な客さえあった。人の向きがそれぞれバラバラなせいか、特定の場所を注意深く見る、
というのは不可能そうに感じる。
「フィクションでは、こんなとき複数で一人の女の子に触るの」
 いきなり言われて、成佳は肩を震わせる。どうせ頭ではその他大勢で女子――という
か自分――を弄ぶような光景を広げているのだろう。いくら宏樹とはいえ妄想の被害者
にされるのはやはりいい気分ではないので、肘で軽く突いた。
 服を脱がさずさり気なく、しかし激しく刺激され、触るだけでは絶対に終わらないノ
ンストップ。――普段から話を聞いているせいか、どこか影響されてしまったようだ。
 さて、こんなことを言うくらいだから、この通学時間で何かしようというのだろう。
しかし、頭では理解していても宏樹の言葉と行動は予想しきれない。
『まもなく本戸――お出口は右側です……』
 列車が停止し、背後の扉が開く。しかし周辺から人は失せず、むしろぎゅう詰めにな
る圧迫感を覚えた。成佳はバーをしっかりと握って、宏樹は近くのつり革を掴んで離れ
ないように耐え、ほどなくして発車した。

「……じゃ、通学時間のお楽しみと行きますか?」
 わざわざ疑問形にしてくるあたりがいやらしい。断ると彼の意思で、受ければこちら
の意思で始まることになる。成佳は少しためらったが頷いて返した。断ると彼の意地の
悪さに拍車をかけてしまうから。
 惰性で走っていた車両が減速を始めた。宏樹は何か考えたのか肩に手をやって、成佳
の向きを反転させる。ふたりが向き合う格好になったとき、車体がぐっと傾いた。
「んぅ……っ!?」
 宏樹は他の乗客がそうなったように、体を大きく傾かせ、その進路上にいた成佳にキ
スした。あまりにも突然すぎて息苦しささえ覚えたが、カーブを抜けるまでの時間で、
しかしたっぷりと口づけしたような気分だった。
 一見、カーブを抜けたのに傾いたままでは不自然に見えるが、宏樹の荷物は彼の足元
にあった。その中身を探るように見せて、膝を落とした彼に抱かれてキスをする。電車
はのんびりと走っていて、まだ次駅へのアナウンスも聞こえない。
 舌先をつんと突いて、それから絡めあった。まだ気づかれてはいないがこんな公衆の
面前でディープキスするとは到底思っておらず、二人だけでする何倍かに感情が増幅し
ているのが分かる。
 口が離れると、かけられた透明な橋が朝の日差しで煌めいた。
『まもなく一三――お出口は右側です……』
 ドアが開く。自分たちの周囲で降りる者がいないかと周囲を確認する姿もちらほらあ
るが、相変わらずの混雑率を維持している。成佳は宏樹の腕におさまっていて、彼の真
後ろに立っていても姿を確認するのは難しい位置になった。
「ね、ちょっと普通とは違うでしょ」
 頷く。普通じゃないどころか軽く異常に感じる。宏樹の言うフィクションならともか
く、今のこれを自分たちの降車駅まで貫き通すことができるか……否である。
 そんな成佳の思いをよそに、彼はまた肩に手を置いてくるりと反転させた。別の車両
が二つ先のレールを走り抜けるのを眺めながら、電車が動き出す。
『この電車は急行です。次は柚味に停まります……』
 いつも乗っている電車だが、成佳はつい真上に掲げられている路線図を見た。次の停
車駅まで五つほど通過するようで、車両も勢いよく加速している。
「んっ」
 突然のことに、成佳は思わず身を固くした。
 最初に触れたのは頭だった。手のひらで撫でるようにした後、髪を少しとって指先で
つまんでいる。まるで頭をマッサージされているようにこそばゆい。
 さすがにここでは後ろ髪に触れるのは難しいとわかると、肩の方に移動させて首筋を
なぞった。
 これには体が反応する。人差し指以外でも軽く触れられ、ゆっくりと後頭部へ移って
いく。普段の行為でも触られることはあるが、首だけ責められるのはかつてない。舌が
這うのと指でなぞるのとは全然違って、くすぐられている感じがした。それに何とか耐
えようとすると汗がふきだし、じわりと制服の下の肌を蒸らす。
 次は手と手が触れあった。されるがまま握りを解いて、指のそれぞれ、掌、手首を揉
まれる。触られた場所にも汗が残って、じわりと湿っぽい。
「タイ取っちゃうね」
 学生服のアクセントになっている翡翠色のタイを、器用にするりと外してしまう。宏
樹の鞄に落とされたのか帰ってこないまま、その手はついに胸へ当てられた。制服の上
着にシャツ、それから下着で三層も重なっているが、大きな手で触れられただけで心臓
がバクバク高鳴っている。布三枚の上でも手を通じて宏樹に聞こえてしまいそう。
 しかし、彼女の不安などお構いなしに宏樹の手は胸をさするように微動する。ガラス
にうっすらとその様子が映って、成佳はあらためて自分が電車内で盛っているんだと認
識した。
「ふ、ぅ……ぁっ」
 息が漏れ、咄嗟に口を塞ぐ。空調や走行の音など無関係で、とにかく息を殺して声を
出さないようにしていたのだが、ホンモノの甘い刺激には耐えられなかった。
 それからすぐ、上着のボタンが外され、続けて下のシャツも同様にして左右に分けら
れた。インナーが陽にさらされ、肌がじりじりと熱い。
 宏樹の手は胸を覆っていた層の二つをどかして、交差させた状態でそれぞれに触れた。
彼の左手は成佳の右胸に、右手は左胸に置かれて、傍から見ると少し変な抱きつき方に
見えるような姿勢。少し腕が動くたび、一番近くで聞こえる衣擦れの音が気になって仕
方がない。
 初めはマットのようにぐいぐいと押すだけだったが、そのうち突起を探し当てて下着
越しに擦られ、ぐっと腰を引く。三層ある最後のひとつだが、薄いキャミソールでは直
接触られているのとほとんど変わらない。しかし厄介なのは硬くなった乳首をいつまで
も擦られると痛いのに、布一枚挟むだけでそれがほとんど無くなるところだ。往復して
弾く指に抵抗するまでもなく、ごしごしと上から擦られるだけで心地の良い刺激となっ
て身体を駆け巡る。
 彼女の頭は、
 こんなところでしてしまって異常じゃないか、という尤もな疑問と、
 ばれないか、という一抹の不安と、
 なぜ気持ちがいいのか、という葛藤が大部分を占めていた。全部ない交ぜにされてし
まって、こんなのおかしいとか、やっぱりやめようだなんて口に出せない。
 いつしか成佳は窓にぺたりと手をついて、吐き出す息でその一部を曇らせていた。
「――っ!?」
 二つ目の駅を通過してすぐ、体が熱くなってぼんやりしていた視界が急に冴えわたっ
た。
 急行を冠するこの車両が高速で走行しているのは分かる。その車両が隣の線路を並走
していた別の車両に速度で勝り、成佳の目の前に人の姿が映った。
 制服とシャツのボタンを外され、男に後ろから抱きつかれているような構図があちら
に見えているような気がして。
「は……あ、ふ……んんっ!」
 しかし、宏樹の手はそれを知ってかしらずか、無慈悲にも乳首をくりくりと弄ぶ。こ
の手がなくなると下着と胸が丸見えになってしまうが、指が動いているのはどうしよう
もなく、そこは彼の優しさが憎い。

 同じ方向へ走っているのだから、当然最後列から最前列まで相手方の列車にもドアが
ある。それぞれほんの数秒足らずだが、その間中ずっと動揺と羞恥で鼓動が速くなり、
脂汗をどっと噴いた。しかし、息を殺すのに精一杯。徐々に追い抜いて行く途中で、突
起を指先でつままれ、つぶされ、蕩けた表情が向こう側のサラリーマンや女学生に映っ
てしまう。
 4ドア十両編成の先頭車を見送り、視界から他の電車が失せると、成佳はようやく緊
張から解放された。
「いや、ちょっとどきどきしたね」
 宏樹の声はどこか楽しそう。しかし成佳の方はどきどきしたどころではなく、恨みの
こもった眼差しで彼を睨んだ。相手が誰であろうと、見られた方はその事実が抜けない。
 しかし、宏樹は柔和な笑みを浮かべて耳元で囁く。
「降りる駅まで、あと五駅くらいだよ」
 成佳もこの路線の利用者だから、その数くらいは理解している。そこまで、この電車
が通過する駅があと三駅、柚味に停まって四駅、その次で降りるから五駅。距離はそこ
そこあり、つまりその間はこの羞恥プレイを続けなければならない。しかし、散々責め
られて性感が昂ってきて、そんな状態で中断するなんてとてもできなかった。
 胸から手が離れ、ぎゅっと背後から抱きしめられる。制服がはだけて下着が見えてい
る妙な格好なのに、どこか不思議な安心感。
 このまま続けばいいのにと思っていた矢先、片方の腕が離れて視界から消えた。
「あっ……」
 その片手を認識したのはそれからすぐ。プリーツの内側、ヒップを撫でつけ、内腿に
指を滑らせる。くすぐったさに甘さが混じった刺激で、体から力が抜けそうになる。姿
勢を崩しそうになると胸にある彼の腕がそれを防いでくれた。
 が、宏樹が下の方を触れなければ、成佳もショーツが液まみれになっている事に気が
付くことも無かったかもしれない。さっきまでは全部胸の方に集中していたから、他の
事を考えていて意識していなかったのだ。太腿には汗が滲んでいるが、下着のこれを汗
染みと言うにはちょっと苦しい。
 キスと上半身の愛撫でかなり感じていたことを、それはあらためて成佳に認識させた。
プリーツをそっとタッチされながら、顔から火が出そうになる。
「は、ぁ、っく……!」
 太腿を背後から触られる間隔に、成佳は笑いが漏れそうになるのを必死に堪える。普
段あまり触られないせいか、指が通り抜けるたびにくすぐったく、その上むず痒い。
「……あ……っ!」
 粉末を掴むような細かい指の動きが必要以上にいやらしく、その指が股の方までくる
と、そこで初めて濡れそぼったショーツと触れあった。
 だが、それきり宏樹の手は腿や尻に触れるだけ。確かに刺激されているのに、ずっと
焦らされている気がしてたまらない。もう下着は役割を果たしておらず、穿いていても
気持ち悪いだけ。
「ナル、内股になってるよ」
 不意に指摘される。痒いところを直接触らず、遠くから刺激されたままでどうしよう
もなかった。下半身の刺激から逃れようとして、それで脚を閉じてしまったのだ。
「ふぅぅっ」
 水浸しになった肉筋をなぞられ、成佳は身震いする。ほんの数回の往復で、脚がガタ
ガタ震えて腕から力が抜けていく。宏樹が支えていなければ、そのまま倒れてしまいそ
うだった。
 が、それで様子が分かったのか彼の手はクロッチをずらし、今度は直に触れてきた。
突然のことに驚いて仰け反り、ぬるぬると指を動かされて瞼をぎゅっと閉じる。ようや
く本命にたどり着いたのに、それまでの過程で極限に近くなっていて、
「――……っ! ……ん、ぁ……」
 指の一本がクレバスの内側に入り始めた時、声もなく果ててしまった。ずぶりと入れ
込まれたそれを押し流す勢いで粘液があふれ出し、宏樹の手首を伝って内腿に垂れてい
く。窓に映った自分の顔を見て、成佳は紅潮した。
 いつものように、それで責めが中断されるならまだ良かった。今は痴漢で通っている
彼が普段の小泉宏樹と同様にすることはなく、入れた指でさらに中身をかき回し始め、
体を通じてその音が聞こえてくる。ぐちゅぐちゅ、にちゃにちゃと水音が聴覚を刺激し、
立っているのがだんだん辛くなる。
 急激に襲ってくるそれに思考を支配され、他のことを考える余裕がなくなる。追い打
ちにまた果てそうで、なぜこうも込み上がってくるのか不思議で仕方ないまま、成佳は
二度目のオルガスムスを味わった。

 激しく蹂躙されて体がびくびくと痙攣する中、駄目だダメだと考えてももう遅い。車
両の床に直に落としてしまいそうなほど、成佳の恥丘は蜜を滲ませ、たっぷりかいた汗
のにおいに混じってミルク臭を漂わせていた。未だに収まっている宏樹の指は電車が揺
れる度に刺激を与え、短時間で二度も絶頂した成佳から愛液を分泌させる。
「ふぁ、あ、んう……っ!」
 ショーツを少しだけ下ろされ、車内の空調でわずかに冷たい空気が恥丘を撫でる。そ
の直後、指を抜かれたかと思うと二本まとめて挿入され、その異物感に朦朧としていた
意識が回復する。しかし、連続したオーガズムの直後で力が入らない体ではその侵入に
抵抗できるはずもなく、あっさりと受け入れてしまう。
 耳にふっと息を吹きかけられ、成佳は悲鳴を上げそうになった。さまざまなことに神
経を使っているせいで、他の場所を責められたときは弱い。首筋に伝染して、背筋に寒
気を覚えた。
 二本の指は根元まで入り込み、それから出ていく。あたかも宏樹の分身を挿入されて
いる様なゆっくりとした出入りに、感覚を取り戻した成佳の膣はそれをぎゅっと締めつ
ける。
 下腹部から奏でられる鈍い音は、もう周囲に聞こえているのではないかと不安になる
が、ふとその動きが止まって壺から抜かれた。それまで息を止めていたかのように、成
佳は肩で荒い息をつく。こんな時ばっかり、口をついて出る声が鬱陶しい。
「あ……や、はぁっ!」
 ただ、それで終わりなはずがなかった。今度はそれまで留守だった方の腕も加わり、
再びインナー越しに突起を擦った。硬さを失っていた乳首は再びピンと上を向き、薄い
布地を持ち上げて存在を主張する。そのうち片方だけ、自分が垂らした蜜で濡らされ、
布を透かして薄桃色を露わにしていた。
 責められながら、背後からじわじわと押され、窓がさらに近くなる。視線を脇に向け
ると周囲の乗客がわずかに動いており、宏樹もそれによって動いていたようだ。
「ナル、次の駅で降りるからね」
 距離が近いからか、やけに鮮明に聞こえた宏樹の声で、成佳は俯きがちだった頭を上
げて――あげてしまい、それから言葉を失った。
 宏樹の言葉通り、電車が停まっていたのだ。そこは相対式で、開かなかったこちら側
のドアから、反対側のホームが見えてしまう。停車したことに気が付かないでいた方が
まだマシだと思えるくらい、あちら側にも大勢の利用者が位置していた。その最前列の
客と目が合いそうな微妙な距離で、敏感になった突起をつままれ、強張っていた表情が
蕩けてしまう。
 幸いすぐに対向列車が到着し、ほぼ同時にこちらも発車したため、すれ違う車両から
の視線を気にする必要はなかったが、宏樹に指摘されるまで気付かなかった時間がどれ
ほどあったか、そんなことが心配になった。
『まもなく柚味、お出口は左側です。お忘れ物などなさいませんよう、お気を付けくだ
さい――』
 無遠慮な愛撫に息を弾ませながら、成佳はその放送を耳に入れた。突起をひとつまみ
された後、宏樹の手はボタンの外れたシャツと制服の上着を戻しにかかり、丁寧にタイ
を締め直した。
 しかし、下はショーツがそのままだ。一通りの処理を終えた彼の手は、再び後ろから
べったりと触れてきて、今度は指を入れずにゆっくりと往復する。
「んく……は、あぁっ」
 アナウンスひとつで緊張が解れかかった状態で、いきなり責められてつい声が出る。
 窓の外を流れる景色も動きが少なくなり、明らかに減速していて、
「ナル、降りるよ」
 その声で恥丘を触れていたものが離れ、代わりに腿の半ばで引っかかっていたショー
ツを当てられた。体中の熱っぽさはそのまま、成佳は座席と自分の片足で挟んでいた鞄
を拾い上げ、抱えて降車の体勢になった。

 ドアが開くと、先に行った宏樹に引かれる形でホームに降りた。
 周囲は階段に殺到する利用者であふれ、その真ん中で立ち止まっているふたりを迷惑
そうに避けていく。
「ごめんね、ちょっと調子に乗っちゃった」
 宏樹は謝罪から始まった。用意していたタオルで両手を拭くと、手を合わせて頭を下
げた。
「どんな感じだった?」
 一転、今度は感想を求めてくる。確かにその最中は声を抑えるだの息を殺すだのと神
経をすり減らしていたが、本来はこう口数の少ない少女だ。まだ落ち着いてもいないの
に質問されても答えが出せず、成佳はむっとした表情でぷいとそっぽを向く。
「やっぱりフィクションみたいにはいかないよね。僕の後ろにいた人、もしかしたら感
づいてたかも」
 考えるような表情の宏樹を見て、成佳もどきりとした。いくら電車の走行音があって
も、耳に近ければ気になるものはきになる。実際、衣擦れの音はかなり大きな気がした
し、中身をかき回された時の水音なんかは本当に危なかったと思っている。
「……怖かった」
 何とか現実に戻ってきた感じの中、成佳はつぶやく。
 まずこの行為自体が異常で、怖い。
 それから責められて流されたが、周囲に知られてしまいそうで、怖い。
 なにより、普段と違って宏樹が話しかけてこず、その顔も見られないのが一番怖かっ
た。これでは相手が誰なのか分からないのも同然だったからだ。
 もちろん、そこまで口をついて出てこない。だから一言だけ。
「……うん、そうだよね」
 しかし、宏樹は察したように頷き、頭にポンと手を置く。
 撫でられて、成佳はあらためて現実を実感した。目の前にいるのは間違いなく小泉宏
樹だ、と思うと安心する。
 ちょっとやりきれない部分があったが。
「……ナル?」
 ひとつ怪訝そうな顔になると、宏樹は気まずそうな表情になった。自分が降りる直前
まで何をしていたのか思い出したのか、照れたように頬を指で掻いている。
 車内で二度の絶頂を迎えた後、さらに責められた成佳の性感はどうしようもないくら
いに高まっていた。しかし、あの後降車までに再び達することはなく、中途半端なまま
ホームに降りてしまって。
 愛液をたっぷりと染みださせた恥丘を覆っているショーツは、べっとりとしていても
う下着とは言えず、外気に冷やされてわずかに寒く、しかし下腹部は物足りなさそうに
疼いている。
「…………なま、ごろし」
「ど、どこで覚えてきたの……」
 確かこんな状態の事を指すんじゃなかったか、と思いながら呟いた言葉に、宏樹は心
底驚いた表情を見せた。いつもそういう話をする割に、こんなところで意外な反応が見
られて、ちょっと楽しい。
 しかし、またいつもの意地悪そうな笑いを浮かべて、
「もう、本当にえっちなんだから」
 と、前触れなくキスをした。
 それから宏樹は踵を返して階段に向かっていく。残された成佳はほどなくして我に返
り、肩をわなわなと震わせながら、周囲の視線などお構いなしに鞄の中身を探って得物
を掴み取る。
「おぐっ!」
 野球のボールと同じくらいの速度で飛んだそれは、先を行く彼の後頭部にクリーンヒ
ット。ブレの無い投本で羞恥を代弁してくれた。
以上です。
15回声が出るうち、13回が行為の最中という成佳さんは無口スレに合うんだろうか

慣れないことはするもんじゃない
166名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 15:01:18.87 ID:ZiP49eoM
GGGGGGGGGJ!
やっていくうちに慣れていくので、この後の鎮まらなかった身体を的な展開を書くんだ
167名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 23:30:32.36 ID:jX79qsQp
喘ぎ声は話すものじゃないから口数にはノーカンじゃないの?
168名無しさん@ピンキー:2011/05/29(日) 21:24:38.00 ID:qiz7jW2W
暇な時間を見繕って保管庫に過去スレの作品をアップしている者なんだが

作者さんがスレチと判断して他スレに引越ししたシリーズについては、アップしないほうが良いんだろうか
野生児の人とか、まだスレを見てるなら意見をうかがえないでしょうか

アップのほうはタイトル間違えたり、関連付け忘れたり、遅かったり、不手際が多くて申し訳ない。
169名無しさん@ピンキー:2011/05/29(日) 22:41:48.61 ID:2fjrxezX
いつも乙です

野生の子なら、トリを付けてなかったんですよね
うpろだ代わりスレの保管庫に半分入っているようですが
判断はそちらにお任せしても良いですか?
170名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 16:20:53.33 ID:3Ub1qMVg
保管庫の人ありがとう

無口っ子よ永遠なれ!
171 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/06/03(金) 09:05:31.83 ID:p3UcIbqT
>>168
移動した先のスレの保管庫URLを貼るとか?

移動したなら、無口スレの作品ではなくなるからなぁ
172いわゆる、ベンリなトコロ(1) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 12:58:17.33 ID:UK7wgd2D
連投規制とたたかいながら投下してみます。

Q.今回はトイレでするって聞いたんだが
A.実質>>160-164の続き。トイレは便利な所って意味で汚い言葉じゃ(ry
173いわゆる、ベンリなトコロ(2) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:01:12.69 ID:UK7wgd2D

 周辺はほとんどが桃色を基調にした、いわゆる可愛い感じの装飾。
 暖色の灯りを受けながら、三澄成佳は穴のあいた椅子に座っていた。
 宏樹に促されてコンコースのトイレに駆け込み、分泌液が乾き始めてべたべたになっ
ている腿のあたりを拭き取るところだった。ペーパーを手に、落ち着きを取り戻して息
をつく。
 個室とはいえ周辺の喧騒は聞こえて、現実に戻ってきた頭が思考を始める。普段は騒
音でしかないそれも、今回ばかりは冷静さを取り戻す要因になった。
 電車内で盛ってしまった。
 その中で二度も絶頂した身で言うのもなんだが、やはりあれは異常だった。体を触ら
れ、意識がそちらに行ってしまって、周辺の状況を把握するのが困難になって。その後、
宏樹が『感づいていたかも』などと言った時には恐ろしささえ覚えたくらい。
 その場で謝られ、キスの応酬まであったが、それならいっそ妄想の被害者でいた方が
幾分マシに思えてきた。
「んっ……」
 内腿を紙が通る。汗と一緒になって膝の方にまでべたつきを覚え、いろいろ限界だっ
たのも含め、宏樹の提案は実に都合が良かった。そうでなくても一直線に向かうつもり
だったが、そこは体を心配してくれていると分かる。
 指でなぞられた時とは感覚こそ違うが、どこかくすぐったくて声が出てしまう。姿勢
を崩しそうになり、壁に手をつくと、水の流れる音が響いた。
 続けて驚くが、真下には水が溜まって揺れている。ちょうど手をついた先に長方形の
箱があり、それが発した音のようだった。この水洗を流すような音色で、外から聞こえ
る様々なものが聞こえなくなる。
 成佳はこの箱に見覚えがあった。学校のトイレにも似たようなものが設置されていて、
手をかざすと音を出す。……かといって積極的に使うことはなく、耳に挟んだ程度の話
だが。
 水の音、というだけで心が洗われた気分だった。少し涼しげで、落ち着かせてくれる。
 くすぐったさに耐えながら、何とか腿の周辺は付着した液体を取り除いた。しかし、
その源泉に直接触れていたショーツは相変わらず湿っていて、それが湧きだす恥丘も同
じくらいに濡れていた。
174いわゆる、ベンリなトコロ(3) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:03:14.75 ID:UK7wgd2D

 だが、直前まで宏樹の手が触れ、中に入ったその場所を拭くのに、普段の排泄と同じ
意識で紙を置けない。少し移動するだけで身体に電撃が走り、紙を濡らすことはあって
も拭きとれてはいなかった。
 その範囲がじわじわと広がり、手の肌色が透けて使えないとわかると、成佳はそれを
便器に落とした。
 ぴったりと閉じられた蓋の部分は、そこだけ油をひいたように電灯の光を反射してい
た。ここに来る前よりも状態がひどくなっているのは、成佳の目から見ても明らか。紙
も無しに指で触れると、水を含んだスポンジのように愛液が滲んで、指の間で糸を引く。
「は、あ……!」
 乾いた紙ではこすれないのに、不思議と指では触れた。だが、それで解決しないこと
を頭でわかっていても、成佳の手は丘から帰れない。
 いつしか表面に滲み出た分だけでも、指との間にあった抵抗を無くして、ぬるぬると
滑るくらいになっていた。
 ――えっちなんだから。
 装置の出す音に混じって、どこかから宏樹の声が聞こえた気がした。成佳はハッとし
て指を止めるが、ここはトイレの個室。彼の姿はない。
「やだっ、ちが……っ!」
 誰に対してでもなく、思わず声に出してしまった。その場には誰もいないけれど、成
佳の一番近くにいる『宏樹』に。
 この手は宏樹の手。そう考えることで、気持ちがだいぶ変わってくる。その実、恥丘
はまだ表面しか触れていないのに、手の平まで濡らしてしまうほどの量を滲ませ、震え
るように動いている。
 しかし、優しく触れて激しく責めるような、宏樹のようには動かせない。蓋を開ける
ところまでは出来ても、指を入れる段階を踏めない。
 ――公衆のトイレでそんなことして、ナルは本当にえっちなんだね。
 見透かされているような言葉をかけられるが、成佳の頭には宏樹の顔がぼんやりと映
った。意地悪そうな笑みを浮かべて囁いてくる。
175いわゆる、ベンリなトコロ(4) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:05:16.48 ID:UK7wgd2D

 しばらく一緒にいるうち、成佳も彼の言うフィクションを想像するようになっていた。
元々あった想像力に少し添えるだけで、何とも具体的で、性質の悪い妄想に発展してい
く。
「こんなの、んあっ、私じゃ……」
 中途半端なままホームに降りなければ。そもそも電車内であんなことをしていなけれ
ば。どろどろの液体をまとった指の先が、いよいよ壺に向かって進んでいく。
 口に出しながら、しかし逡巡するが、ほんの一瞬だけ言葉通りに『別の誰か』になっ
てしまうと、その指がゆっくりと蓋を割っていく。
 一つ目の関節が入り込み、成佳は背を反らした。溶けそうなほど熱を持った壺は、少
しだけの侵入に対しても動きを見せ、飲み込もうとしてざわつく。
 意外と強烈な締め付けで、抜こうとしてぬけない程の圧力だった。自分の体なのに、
入れた指をちぎられそう。
「ん、くぅ……」
 それでも何とか抜け出し、意を決して二本目の指を追加する。ふたつ一緒になって太
さは増えるが、何か入ってくるという異物感は最初だけ。指が細いからか第一関節まで
難なく入り込み、やはり全体を押されるように圧迫された。
 きつく締められながらも指を引き出す。膣壁の動きにあわせていくと、二つ目の間接
よりも奥まで入り込んだ。意外性よりも深みまで進んだことの充足が強く、刺激に貪欲
な一部が成佳の思考に割り込んでくる。
 指は抵抗を振りきって往復していく。にちゃ、にちゃ、と壺の中身が音を立て、手を
伝って伝達される。
「違うっ、わた、し……いん、らん、じゃっ、ないっ……!」
 繰り広げられる妄想は幻聴もかくや。普段の宏樹なら絶対に言わないような、とんで
もない言葉で罵られ、途切れとぎれでも何とか反論して自我を保っている。しかし、そ
れも蜜壺に指を二本も突っ込みかきまわしながらで、思考の奥で抵抗している『冷静な
成佳』の存在が危うい。
176いわゆる、ベンリなトコロ(5) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:07:17.66 ID:UK7wgd2D

「……ヒロの、せい、だから……!」
 ついにこの場にいない宏樹を責め、行為の正当性を主張する。変に昂ぶってしまった
のを自分で鎮めるのは仕方のない事。途中で止めなかった自身もいけないが、やはり元
を辿ると彼だ。宣言すると四方の壁に反響して、暗示のように重なっていく。
 快楽に流されて、抗っていた理性がどこかへ失せる。熱気が体中から発せられ、制服
の下から汗が噴き出す。こうなると着直した上着とシャツが鬱陶しくなり、成佳はその
ボタンを外していった。
「ふぁ、あっ」
 すっかり固くなっていた胸の突起に指を乗せる。それだけで腕伝いに電気が走り、声
が漏れる。
 キャミソールの上から擦ると、やはり甘い刺激が伝わる。いくら続けても痛みのない
その動作で、成佳は両手を使って自身を愛撫していた。
 もう立派に自慰を完成させてしまっているのもかまわず、成佳はその指を止めない。
体が疼いて、掻き毟りたくなるようなむず痒さが走っている。
 片方ずつ触れている乳首は、それぞれがインナーを持ち上げて存在を主張し、放置さ
れた側がじわじわと熱い。
 壺をかき回す指は根元まで入り込み、奥に進めばぐちゃぐちゃと音を立て、引き出せ
ばどろりとした粘液を漏らしていく。指から手の甲まで伝うほど、多量の愛液を滲ませ
ていた。
 今だけは全てをかなぐり捨てて、ただ刺激だけが欲しかった。そんな一面でも認めな
いと、とても絶頂までたどり着けないから。
「あんっ……ん、あぁ――っ!」
 硬くなった乳首を強くつまむと、遅れて下半身が痙攣した。三度目の絶頂に、クレバ
スを出入りする指はそれまで以上に締め付けられ、奥から噴き出した粘液の洗礼を受け
る。指が入ったままの蜜壺から愛液が溢れだし、ぽたぽたと便器に垂れて水面に波紋を
作った。
177いわゆる、ベンリなトコロ(6) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:09:19.20 ID:UK7wgd2D

 途中で止められていた分が一気に吐き出され、その反動で胸に置かれた手が力なく下
がる。便器に体を預けた状態の成佳は、肩で息をしたまま体が起こせない。まだ小刻み
に震えている股の部分から指を抜くと、たっぷりと愛液が塗られて鈍く光っていた。少
し動かすだけで糸を引き、手首まで垂れていくが、それを拭き取る余力はない。
 いくらか時間が経った後、ようやく立ち上がるまでになった成佳は身支度を整えた。
まだ恥丘は愛液を滲ませているが、いくら拭いてもきりが無く、紙をショーツとの間に
挟んで対処した。その場で全て取り除けなくても、これ以上下着が濡れるのは回避でき
るはずだ。
「……ヒロ、ごめん」
 自身を犯していた左の手を眺めて、成佳はふと呟いた。
 一人でいると、抑えていた感情が込み上がってくる。壁に取り付けられた装置が発す
る水音を理由に、思いをぽつぽつと口に出してしまった。それを止めるものが無いから、
今日は妄想まで際限がなかった。
 それでも、妄想の相手に選んでしまった事に対して罪悪感が生まれて。
 謝罪の言葉を口にして、水洗を流す。勢いのよい水流を眺めていると、なんだかすっ
きりとした気分になった。
 しかし、疲労は残ったまま、少し重い足取りで個室を後にした。

「ナル、大丈夫?」
 人込みを少し探すと、宏樹の姿があった。本人を目の前にして表れたこの感情は安心
か、それとも恥じらいか。すぐに理解が追い付かないが、とりあえず問題ない事をアピ
ールする。
「完全に遅刻だね、もう」
 言われて初めて、成佳は右手につけていた時計を確認した。この時間では走っても間
に合わない。そもそも走るほど体力に余裕はないが、とにかく時間内に到着することは
不可能だと理解した。
178いわゆる、ベンリなトコロ(7) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:11:21.78 ID:UK7wgd2D

「ごめんね」
 頭を軽く撫でられる。それから、その手を差し出された。
 ちょっぴり胸が痛む思いで、手を握り返し、繋ぐ。あらためて安心した気分で、ふた
りは駅舎を後にした。

 本来より数十分と遅れた周辺の景色は、学生の姿が見えないだけで道を間違えた気分
にさせた。歩道が気持ち広いが、すれ違うスーツの女性に背広の男性、それぞれの足は
慌ただしく、のんびり並んで歩いていると邪魔に思われるらしい。
「……ナル?」
 呼びかけると、成佳はハッと顔を上げた。三回目にしてようやく気付いたのか、空い
ている右手で自分の頬をひっぱたく。
 少し力を入れすぎたのか痛そうな表情になり、すぐ元に戻った。
「ぼーっとしてると危ないよ」
 手はつないだまま。転ぶことはないだろうが、万一のことがあっては遅い。
 指摘すると、成佳はまた右の手で頬を叩いた。
「僕たちは学生だから、学校をさぼるわけにはいかないよね」
 成佳は頷く。宏樹もそんな経験はないが、今日は引き返そうかと考えたほど。主に彼
女の心配をしてだが、それぞれ口に出さずに学校へと向かっている。
 信号が青になると、周囲と一緒になって歩き始める。成佳の歩幅が小さく、彼女を引
くかたちで横断した。
「ナル、ちょっと言い訳させてくれる?」
 後は一方通行の路地を進めば目的地だが、ゆっくり歩きながら口にする。成佳はきょ
とんとした顔を宏樹に向けた。
 宏樹は軽く息を吸って整え、落ち着かせてから。
「電車でするフィクションって、たいてい車内で最後までするの」
 自室の本棚に置かれている本を思い出しながら、説明する。
 単独でも、集団でも、触るだけでは済まずに挿入から発射まで済ませてしまう。普通
の恋愛がテーマだと思っていたところにこの描写が入ることもあるから、それは宏樹も
意外だったことだ。
179いわゆる、ベンリなトコロ(8) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:13:24.83 ID:UK7wgd2D

 話を聞いていた成佳は、それを朝の行為に当てはめたのか複雑そうな表情を返した。
「うん、ホントは最後までやろうと思った」
 それらの本を参考にして、車内で最後までしてしまおうかと考えていた。しかし、立
ったままではどうしても挿入しにくいのと、そのために姿勢を変えるためにより一層、
周囲に気付かれるリスクを背負う必要があった。混雑率とは関係なしに、挿入によって
発覚する危険性は高い。
 だから、最後まで行かなかった。しかし愛撫を重ねすぎたせいで成佳は短時間で絶頂
してしまい、降車までの残り距離では間に合わず、後味の悪いプレイになってしまった。
「中途半端で終わって悪いな、とは思うけど。学校だと時間を気にしちゃうかな、って」
 校舎はすぐそこまで見えているが、そこで足を止め、横を示す。いくつかの遊具が見
えているその場所こそ、こんな状況には相応しい。
「どうせ遅刻だし、開き直っても……ね」
 成佳は手を離さなかった。ふたりで周囲を見回して人気がないのを確かめると、少し
早足で公園の砂を踏んでいった。

 やってきたのは女子便所。こじんまりとした公園だがトイレは立派で、しかもきれい
に整備されていた。個室の一つを借りて閉じこもると、なにか隔離されたような気分に
なる。宏樹もあまり利用する方ではないが、同じ公衆トイレでも男子便所の個室より広
い印象を受けた。
 ドアとは反対側の壁に背中を預けている成佳と向き合うと、これから何をしようとす
るのか改めて認識させる。
「本音はさ、僕も興奮しちゃってて、解消したいってところだけど」
「……えっち」
 ややあって、反論。至極正論だが、ここまで来てしまっては抑えがきかない。
 成佳の顎をくいと持ち上げて、唇だけのキス。柔らかい感触は離れるのを躊躇わせる。
「だって、ナルが可愛いから」
 次のキスは舌を絡めて。それぞれの乾いた唇に唾液が塗され、余った分は口の端から
垂れていく。
180いわゆる、ベンリなトコロ(9) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:15:25.84 ID:UK7wgd2D

 結局、宏樹も成佳を責めることで性欲をかき立てられ、血液が下半身に集中していた
わけで。それを発散せずにいたものだから、彼女の言った生殺しとさして変わらない状
況に陥っていた。それで時間を理由に公衆のトイレで続きをするとは、自分で考えてい
る以上に汚い真似だと思いながら。
 服の上から胸板に触れると、ガサガサと衣擦れの音がした。電車と違って他の目立つ
音がないため、必要以上に耳に残る。
 宏樹はそこで胸を探ることはせず、太腿を撫でつけて、やがて指がショーツに触れた。
愛液を吸いすぎたせいでべっとりと濡れていて、生暖かさが残る。
「ナル、これ……」
 そこでわずかに違和感。触れている指に返されるのは、柔らかい肉の質感ではなく、
なにか硬いもののような。プリーツの擦れる音とは別に、彼女の内側からカサカサと聞
こえてくる。
 腿を持ち上げて片足ずつ下着を外すと、一緒に紙切れが続いていた。半ばから破れて、
本来は露わになるはずの恥丘が白で覆われていた。
「気にしてたんだ、ずっと」
 見上げると、成佳は顔を赤くしてそっぽを向いた。
 ショーツの方にあった紙はまだ乾いていて、反対側はうっすらと湿っている。下着が
それ以上濡れてしまわないように、という処置なのはなんとなくわかるが、同時にここ
に来るまで成佳の歩幅が小さかったのも合点が行った。
 紙を注意深くはがしていく。痛めてしまわないよう、ゆっくりとした動作でいるが、
それでもわずかに残って留まった。わずかに汗をにじませる太腿と、恥丘の周辺にこび
り付いている。
「う、あっ」
 柔肌に爪をたてる訳にはいかない。宏樹は成佳の右足を便器に置き、濡らしてから取
り除こうと内腿に舌を這わせた。控えめな喘ぎ声が頭上でするが、頭を押さえている彼
女の手からは拒絶の意思を感じない。
 十分に唾液で濡らしてから、指でこすると簡単に剥がれ落ちた。白の斑点が数を減ら
していき、無事に残り粕を全て取り除いた。
181いわゆる、ベンリなトコロ(10) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:17:26.88 ID:UK7wgd2D

 はあはあと息をついているところに、
「気持ちいいんだ?」
 などと訊くと、成佳はハッと目を開いて顔を横にぶんぶん振った。しかし、少しして
再び問いかけると、ややあってから頷いた。
 宏樹はそんな可愛らしい彼女の体を軽く抱き、それから小さな唇にキスした。
「これじゃ掃除が終わらないよ」
「いじ、わる……っ」
 わざとらしく言って、今度は右の腿を肩に担ぐ。すぐ近くに迫った恥丘は、表面をコ
ーティングされた様につやつやと光って、いやらしい。
「ひ、はっ! あぁっ!」
 今度は舌で直に触れる。ひときわ高い声を上げ、成佳は身体を仰け反らせた。
 先に塗されていた愛液を舌が取り払い、代わりに唾液を塗りつける。それでも奥から
熱っぽい液が溢れだし、混ざり合って口元と壺の蓋、両方を汚していく。
 指先で蓋をこじ開け、鮮やかな桃色をさらけ出す。その内側を舌でこすって、勢いよ
く啜り上げると、背中に彼女の踵がぶつかり、同時に多量の液体が口元に襲い掛かった。
 なおも密着させていると、腿が痙攣してぴくりと動き、そこではじめて彼女が達した
ことを理解した。
「もう、一人で何度もいっちゃうなんてズルい」
 言いながら手の甲で拭うと、成佳の手が頬に当たって、ぺち、と音を立てた。数回の
オーガズムに体が堪えているのか、ちょっと力なかった。しかし抗議の視線はそのまま、
誰のせいだと言外に訴えている。
「キス、しよっか」
 しかし宏樹は気付かないふりをし、返事をする間さえ与えない。
 最初は唇だけ当てて、それから舌を出し合って触れ合う。動作のそれぞれが奏でる音
は、壁に反響して二重、三重になって耳に入る。そんな音の効果は凄まじく、キスに夢
中にさせて他の事を考える余裕がなくなってくる。
 こんな時ばかりは成佳の方が積極的だった。普段こそ大人しくて控えめ、口数の少な
い女子であるところだが、キスするときだけはあちらから唇や舌を求めて動いてくる。
182いわゆる、ベンリなトコロ(11) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:19:29.75 ID:UK7wgd2D

 くちゃ、くちゃ、と粘りつく音をさせながら唾液を交換した後、液まみれになった宏
樹の口を、成佳は舌の先で舐め取っていった。
 満足げにしている彼女に再びキスして、制服の上着、その下のシャツと順にボタンを
外し、最後にキャミソールを左右に分けた。熱のこもった黒髪を撫でると、くすぐったそ
うに肩を揺らした。
「ナル、すごく可愛いよ」
 頭を撫でると、控えめに息を漏らした。
 成佳は便器をまたいでプリーツを向ける格好になった。スカートをまくりあげ、ぷり
ぷりとした尻肉を鷲掴みにして揉み込む。
 ひとしきり感触を堪能した後、宏樹はズボンを内側から破りそうな勃起をようやく解
放した。入り口を探して成佳の恥丘にあてがうと、にじみ出る愛液をもらって表面が鈍
く光り、ぬるりと滑る。
「はっ、あ、うぅ……っ!」
 わずかな窪みから先端が入り込む。挿入にうめき声が混じるが、あわせて肉襞がざわ
つき、からみつく。
 その拘束に宏樹は思わず上りつめてしまいそうになるが、そこは堪える。実にゆっ
くりと動いて、閉じこまれた壁を押し分けていく。
 根元まで入ると、その全てに膣肉が喰いついた。たっぷりの潤滑油を纏わせても、締
め付けに慣れない最初のうちは抜け出すのが難しい。
 暴発しないよう慎重に戻ると、接合部の付近に数条の糸を引いていた。
「ん、あ……ふぁっ!」
 勢いをつけて一気に進入する。往復をスムーズに行える様になると、出し入れの度に
水音がにちゃ、にちゃ、と響く。
 成佳の胸はがら空きだった。両手を壁についた状態で、留守になっていたそこへ手を
やり、腰の動きに任せて全体を押し込む。ほとんど触れていなかった乳首があっという
間に硬くなり、手の平をつんと突き返した。
183いわゆる、ベンリなトコロ(12) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:21:30.85 ID:UK7wgd2D

「すっ……ごい、締めてきてる……。ナル、感じてるの?」
「あ……い、言っちゃ、やだ……っ!」
 ストレートな指摘に、成佳は首を横に振る。主張する突起をそれぞれつまんで捏ねま
わすと、桃色の個室に可愛らしい嬌声が響く。胸を責めると、肉棒が入り込んだ膣はさ
らにキュッと締まって、宏樹の動きを鈍らせた。
 そんなのんびりとした挙動でも、中身は淫らな粘っこい音を出す。乳首責めに移行す
ると、そちらの刺激に合わせて成佳の腰が引け、膣肉が追いすがってくるような感覚さ
え覚えた。
 まだ続けていたいと思って薄桃色の蕾を押しているのに、勃起は全体に圧力がかかっ
て中身を吐き出してしまいそう。
「きゃ……あ、あぁっ!」
 尻を突き出す格好で後ずさりしていた成佳の姿勢を元に戻す。繋がったまま数歩進む
と、中に入った先端が最奥をこつんと叩く。
 しかし、振り返った彼女の顔は不安そうだった。それを見てようやく、宏樹は自分に
余裕が無い事を思い知った。
「ごめん、ナルのこと、考えてなくって……」
 わずかに動いていた体が完全に止まる。とりつかれたような気分だった。申し訳無さ
で低い声になるが、口に出すと頭の熱が引いて、元の小泉宏樹が戻ってくる。
 胸から手を外し、背中から抱いた。呼吸だけが聞こえて、朝の公衆トイレには他の音
が一切しない。
「ひ、ぁ、あんっ!」
 落ち着きを取り戻し、抽送が再開される。ぐにぐにと指先で突起を弄りながら、溶け
そうなほど熱い壺をかき回している棒は、水飴の付いた箸みたいにたくさんの粘液を絡
ませていた。宏樹はその根元から、成佳は壺口から、それぞれが分泌して混ざり合った
液体をこぼしている。
「ふ、あっ」
 奥まで進んで、いちど完全に抜き取る。キスの後みたいな糸を引き、しかし上を向い
たままの勃起は、蓄えた中身を放出したそうに脈打っていた。
184いわゆる、ベンリなトコロ(13) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:23:35.74 ID:UK7wgd2D

 今度は壁に背中を預けて、成佳と向き合った状態。真っ赤に染まった切なそうな顔に
軽くキスして、右の腿を腕で支える。
 蜜の溢れている入口に向かって、ずぶりと頭が入り込む。すぐに反応して締め付けが
始まり、進入を助長するように顫動した。
 半分程度が入ったところで、宏樹は腰を引く。ぬっと糸を引いて後頭部があらわれ、
またすぐ戻る。
「はあ、あっ! あっ、あ……んんっ!」
 背中に細い腕が絡む。追いすがってくる襞の動きから逃げるように往復すると、自然
と運動が速くなる。しがみついた成佳の息が首筋をくすぐり、密着した熱で額から汗が
噴き出す。
 宏樹はここが公園の公衆トイレ、それも女子便所であることすらどうでもよくなって
いた。接合部の鈍い音、打ちつける肌の軽い音が混ざり、耳から侵入して思考を奪う。
 だが、普段とは違う感覚に限界が近くて、いつものように口を開けない。
「ナル……僕、もうっ……!」
 苦し紛れに声をひり出す。最後の方は――途中からも――成佳に届いているかはわか
らない。それくらい必死だった。
 ぬちゅ、ぬちゅ、と水音。泡立つ接合部。棒に与えられた圧力もあわせて快楽に流さ
れそうになる。
「ん、く……っ、あんっ、は、ぁ――っ!」
 途中、成佳の指に力が加わった。それと一緒に膣肉がギュッと締まり、ふと考えてい
た事が消し飛びそうになった。
 それでも強烈な締め付けから抜けだし、露わになった勃起は、持ち上げられていた成
佳の右腿に白濁を放つ。振りすぎた炭酸のようにとめどなく放出され、すぐには収まら
ない。プリーツにもかかって染みを作り、いくつも重なって肌を流れ落ちると、ぼたぼ
たと床に飛び散った。
185いわゆる、ベンリなトコロ(14) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:25:37.65 ID:UK7wgd2D

「……うわ、たくさん」
 ものすごい喪失感と疲労を覚え、肩で息をしながら、宏樹は自身が吐き出した精液の
量に驚く。電車の中で引き上げられた分、この行為の最中にあらわれた分、実に二回分
相当を一度に放出し、それが成佳を汚していた。
 泡の残った恥丘と、愛液と先走りが混じった液、さらに白濁を垂らしている太腿がひ
どくなまめかしい。
 気だるさが残る腕を動かし、シングルのペーパーで拭き取っていく。腿を持ちあげて
紙を滑らせると、くすぐったいのかぴくりと動いた。

 それぞれの後始末を済ませて水洗を流すと、この場所がトイレであると再認識させた。
発覚すること覚悟……どころか、全く声を殺そうとしなかったことに、今頃になってふ
たりで驚く。どちらともなく、くすりと笑った。
「拭き残しはない、よね」
 外の様子を成佳に調べてもらい、宏樹はその間に自分たちが行為に耽った個室から、
その証拠がなくなっている事を確認する。壁、床、便器と、隅々までその目でしっかりと。
 携帯が一瞬だけ振動する。何もないと分かると、ひとつ水洗を流した。それから、小
走りで女子便所から出ていく。
「はい、おまたせ」
 日差しがやけに眩しく感じる屋外で、成佳は鞄を両手に待っていた。火照った体には
少し冷たいそよ風が、肩まである彼女の黒髪を揺らす。
 今度は二人とも同じくらいの歩幅で、車の通りが少ない一本道を並んで歩く。とはい
え、授業をふたつくらい消化した時間だからか、とてものんびりと。
「まだ、ちょっと気になる?」
 訊くと、成佳は恥ずかしそうに頷いた。せっかく応急処置をしたのに、さっきの行為
でさらに絶頂を迎えて、その恥丘にショーツがあてられている。確かに後始末はしたの
だが、それでもどこか落ち着かないような仕草を見せた。
186いわゆる、ベンリなトコロ(15) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:27:40.32 ID:UK7wgd2D
 その後始末を、成佳が自分ですると主張したのに進行する気配がないから、手を貸し
たのがいけないのかもしれないが。
「でも、学校に着いたら体操着のパンツでも穿いておけば、見かけでバレる事はないん
じゃないかな」
 スカートを身につける女学生の常套手段。何気なく口にしたが、対して成佳がハッと
顔を上げたものだから驚いた。
 その表情は驚きと関心が混じっていて。
「もしかして考えてなかっ――だっ!」
 言い切る前に垂直方向から本のカドをぶつけられ、宏樹は地面にめり込む思いをした。
187いわゆる、ベンリなトコロ(16) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/09(木) 13:29:45.78 ID:UK7wgd2D
以上です。
120秒の規制と一緒にやってきた、本文への制限が憎い……
188名無しさん@ピンキー:2011/06/09(木) 17:25:58.88 ID:LZL+KuD7
GJ!!!
成佳可愛いな
189名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/10(金) 13:23:45.89 ID:R3hddunT
遅せながら、GJー

ほのぼのと背徳いいね
190とり始めました→ ◆xNDlZiuark :2011/06/19(日) 01:45:21.31 ID:pPoAJGL4
自己管理用にとり付け始めます。基本は保守代わりの1レス小説です。各スレでやってます。

夕方、人が少なくなってきた大学図書館。
今、彼女と一緒に黙り込んでかりかりと宿題にとりくんでいる。
二人とも取っている教科は宿題が多いという以外ほとんど違う。
お互いにあまり教えあうことはない。というか教えられない。

ふと、彼女が紙を一枚渡してくる
「ん?なになに?」
『時間。』
はぁ、さいですか。
「じゃあそろそろ帰る?」
『うん。あと静かに』
誰も気にしてないだろうけどな・・・
まぁ彼女が無口なのだ。
+この雰囲気では絶対に言えだろう。
『そーですか 片づけますか』俺は殴り書く。
『うん』
『久々にアレしたいな』
彼女の顔が真っ赤になってくる。小さな体を強ばらせて、反論すら書き込めないようだ。
『本当に可愛いな』
ワナワナと震えている。しかしゆっくり手をのばすと
『フフフ』いきなりどうした。
俺が疑問に思っているのを二つの瞳で確認して次を書き始める
『甘いのだよワトソン君』
『君の言動は予測済み』
言動といえば語弊がないか?
『もしかしてアレしてくれるの』
そうして彼女は紙を裏返す。
191 ◆xNDlZiuark :2011/06/19(日) 01:58:23.25 ID:pPoAJGL4
『保
 守』
でけぇよ・・・しかも保守ってなにを保守したいんだよ
『何を予測したんだ。何を』
『なにも話してないからそろそろって言うと…』
それは確かにそうではあるが・・・
『それはスレで使うものだよ?』
『スレも書かれてないよ?』

くそっ!返しが見つからないっ!
『帰りにホテル寄らない?明日休みだし』


彼女は紙を裏返しさっきの会話の1単語に線を引く
“うん”

メールとか筆記でやりとりするのも俺はぐっと来るのだが
このスレ的にはどうなの?
192 忍法帖【Lv=4,xxxP】 :2011/06/19(日) 12:30:36.12 ID:rhgEYuce
素晴らしいと思う
193 忍法帖【Lv=3,xxxP】 :2011/06/20(月) 00:38:25.28 ID:6xUCVkDH
>>191楽しみにしてる
194短編@台詞なし:2011/06/21(火) 11:21:18.69 ID:n1fh3vrh
放課後の教室。
携帯電話で時間を確認すれば、すでに午後五時を過ぎている。
もうそろそろ来てもいい頃だけれど、言っていたよりも作業が大変なのかもしれない。
暇潰しに作り始めた折り紙の鶴は、もう20個になる。机の上のカラフルな折り鶴。どれも綺麗にできている。
次を作ろうと、鞄から折り紙の束を出す。私は昔から折り紙が好きで、いつも鞄に忍ばせている。
彼は私が何かしらを作るのを微笑ましそうに眺めて、私ができたものをプレゼントすると、いちいち家に持って帰って部屋に飾っているらしい。
彼の嬉しそうな姿が瞼の裏に映るようで、私はなんだか可笑しくなる。
優しい彼。可愛い彼。格好良い彼。
いろんな彼を思い浮かべる。
声を出さない私を理解してくれる、優しい彼。
些細なコトで大げさに喜ぶ、可愛い彼。
私が困った時は助けに駆けつけてくれる、格好良い彼。
……彼のコトばかり考えていたら、なんだか顔が熱くなってきた。
目の前に居ないのに、なんだか照れてしまう。
彼がここに来るのはまだまだ先の時間かもしれない。
けど、待つのは嫌いじゃない。彼を待つのは。
彼の顔を思い浮かべながら、鶴を折る。
優しい彼。
可愛い彼。
格好良い彼。
愛しい彼。
大好きな彼。
彼を待ちながら、鶴を折る。
195短編@台詞なし:2011/06/21(火) 11:22:54.40 ID:n1fh3vrh
折り紙って無口っ子に似合うと思うんだ
そんな話
196 忍法帖【Lv=19,xxxPT】 :2011/06/21(火) 13:12:06.63 ID:T1PPP98T
>>195
GJ
197名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/21(火) 14:38:32.82 ID:0Mi8u70i
>>195
GJ
台詞なしで表現できるなんて素晴らしい
198名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/21(火) 21:55:16.15 ID:l4Pmjju4
うぉぉぉぉgj!!
199自分が嫌いな声  ◆xNDlZiuark :2011/06/28(火) 01:12:41.29 ID:slpWedAp
自分の声に自信がない
だから誰にも聞かれたくない
小脇に抱えた児童用のお絵かきボードとの付き合いも8年ほどになる。
両親も6年前に説き伏せた。
友達も理解し、優しくしてくれる
ただ、友達は「笑い声はすごく可愛いんだけどなぁ」と言う
そんなはずがない。どうせ口を開けば私の声を笑うつもりだ。
自分が一番知っている。
はずだ。
たぶん。
・・・
自分で聞かなくなった自分の声・・・
自分の事が分からないなんて情けない。
そうだ、久々に自分の声を聞いてやろう
今は教室に私一人だから誰にも聞こえないはずだ。

辞書を引く。なんせ、久々だから何か変わった言葉を言ってやろう
短くてあまり言わなくていい言葉。
できるだけ簡単そうな。
あった。
まず喉の用意だ。
「っ!んっん・・・んーーー」
よし。
…緊張する
「……ほ……ほしゅ」
はぁ…
やっぱりあの声だ…
 ガタッ
何の音!?扉をみるとクラスの男子が倒れている
聞かれたの?!
「星…さん?」
あぁ私の努力がこんな簡単に…
「…綺麗な声」
え?彼は何を言っているの?

 続かない
200名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 01:37:21.55 ID:slpWedAp
思いのほか心の中は多言になりました。
途中まで書いて思った。
「このままだと無口っ子じゃなくなってしまう」
ダメじゃん…
しかも性格を暗くし過ぎた気がする。

と言うような事を思いながら保守したよ。
201名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 23:33:04.15 ID:fkVsLvQJ
心の中では多弁だけど口に出すことばは少ないのが好物だ
202浴室はキケンがいっぱい(0) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:19:40.12 ID:v+KXQNZY
よし、投下してみます。

Q.6月って雨降ったっけ
A.行為の場所なんかはタイトルでお察しください
203浴室はキケンがいっぱい(1) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:21:40.32 ID:v+KXQNZY

 号令と共に、この日の授業はすべて終わった。がたがたと音を立て、生徒たちが教室
から少しずつ出ていく。
 自分も帰り支度をしながら、小泉宏樹は引き戸から覗き見るようにしている女生徒の
姿を認めた。
「ナル、お待たせ」
 呼ばれて、三澄成佳はひとつ頷いた。宏樹が歩き始めると、隣に並んで歩幅を合わせ
る。少し小走りで、揺れた髪からわずかに花のような匂いが漂った。
 四階から階段を下りて、下駄箱で靴を履きかえて。入り口で落ち合うと、また横並び
で校舎を出る。
「おはなし、しない?」
 成佳は首を傾げた。何をあらたまって、という風な視線を、宏樹は真っ向から受ける。
 近くにあった自販機で紙パックの飲料を二つ買うと、一つを彼女に持たせた。説明を
求める視線に変わったが、それをを軽く流して、そのまま校門を出ていく。
「ちょっとのんびりしたいな、って」
 学校からほど近い位置の公園。ベンチが空いていて、ふたりはそこに座していた。遊
具では子供たちが遊んでいて、その声が騒がしくも聞こえてくる。
 会って話をする分には、学校でも昼や放課後にできる。ただ、ちょっと寄り道という
かたちで、一緒に過ごしたかった。
「今日は重い曇り空。目の前では子供が遊んでる。……ちょっとスズメに見えるかな」
 すぐ目の前に広がる光景をぱっと見て、そのまま口に出す。空は灰色で、気持ち暗い。
それでも、数人の少年少女が無邪気に走り回っている。時々ジャンプが混ざり、何人か
がスキップに見える動きで、それを雀に当てはめた。
 そんな様子を、成佳は不思議そうな目で見ていた。視線を感じて、宏樹は顔を彼女の
方に少しだけ向ける。
「あ、飲んでいいんだよ」
 渡したはずの紙パックは、ストローも刺さずに手に持たれていた。言うと、思い出し
たように突き立て、両手で支えて、ちゅうっと一口。
 ブランコは勢いをつけて加速している。まるで一回転しそうな速度で、金属を軋ませ
ている……そう口に出そうとしたが、視界に映ったげっ歯類のような仕草をする少女に
見とれて、言葉が出てこない。成佳のことだが、どんぐりを持ったリスのようにみえて
仕方がなかった。
「やっぱり、ナルは可愛いって言葉が一番似合う」
 いきなり対象が自分になったからか、遊んでいた子供たちを眺めていた成佳がびくり
と肩を震わせ、随分ゆっくりとした動作で振り返った。驚きに満ちた表情を作って目を
ぱちくりさせ、白かった頬がほんのりと赤く染まる。
「表現の仕方を考えていたの。可愛い以外で言ったこと無いような気がしたから」
 驚いた表情。髪をかき上げる仕草。本を投げつける攻撃的な動作さえ、宏樹は可愛い
という言葉を当てはめてきた。出会ってから発展して、いつしか男女の組み合わせにな
る前から変わらず、それでふと考えていた。
 成佳はさっぱりわからない様子で、視線を泳がせて黙っている。
「髪が肩まで長くて、腕が細くて、肌が柔らかい。すっごい、可愛いよ」
 ボッ!と音が出そうなくらい、成佳の顔が赤くなった。しかし、視線を合わせようと
はせず、反撃はまるでない。鞄から本が飛ぶ……と思ったところだが、両手がふさがっ
ていて咄嗟に行動できなかったようだ。
 ぱくぱくと口を動かしたまま、しかし言葉が出ない様子に、宏樹はくすりと笑った。
「たぶん、初めて会った時からそうだった様な気がする。……」
 頭に冷たさを覚え、途中で言葉が途切れる。動揺が残ったままの成佳もさすがに気付
いた様子で、すぐに制服の上に染みを作った。それはすぐに、ぽつ、ぽつ、と増えて。
 暗く重い雲から雫が落ち、砂に斑点をつくる。瞬く間に勢いが強くなり、ふたりは鞄
を頭に乗せて、逃げるように走った。
 ばしゃばしゃと水を踏み、最寄の駅で息をつく。髪の先から雨水が垂れ落ち、視界を
滲ませる。タオルを取り出し、軽く拭ってみると、外はまさしく大雨の状態となってい
た。
「引き止めなかったら濡れずに帰れたよね。ごめん」
 すっかり濡れ鼠になってしまったが、成佳は気にしていないという風に、首を横に振
った。同じくタオルで拭って、乱れた髪を手で押さえつけている。
 促して、改札を通過する。同じ路線の利用者である二人は、降雨激しいホームで電車
を待つ。
204浴室はキケンがいっぱい(2) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:23:40.45 ID:v+KXQNZY

 ふと、ポケットの携帯が振動した。一通のメールが届いていることを、待ち受け画面
に知らせている。
「ナル?」
 轟音とざわめきで声がはぐれると思ったのだろう。隣に並んでいた少女に視線をやる
と、メールの送信者は頷いて返事をくれる。
 ほどなくして、アナウンスの後でホームに車両が入線した。

 降車した駅から、ふたりとも走りっぱなしだった。滝のような勢いの水を浴び続けて、
頭に乗せた鞄すら役目をなさない。
 足の先までびっしょりと濡らして、やっとの思いで屋内に入ると、なんだか救われた
ような安心感があらわれた。
「あ、ありがと」
 先に奥へ進んだ成佳が戻ってきて、バスタオルを受け取る。顔から水を吸っても、未
だ四肢から垂れ落ちる水分を拭ききれない。
 落ち着かない足で彼女についていくと、湯気の立ち上る風呂場を案内された。
「着られそうなの、取ってくる、から」
 それだけ言って、成佳はぺたぺたと脱衣所を出ていく。
 宏樹は浴槽を覗いた。強い勢いで湯を溜めていて、少し時間をおけば浸かれるくらい
にはなるだろう。
 脱水していない洗濯物のようになってしまった制服を脱ぎ、タオルを拝借。扉を閉め
ると、シャワーの音だけが耳に入ってくる。椅子に腰かけ、雨の冷たさを流す。
 壁際に立ち並ぶは幾多の化粧品。なんというか、息子を抱える家庭とは事情が違って、
一瞬ひるむ。それでも、ボディウォッシュと銘打たれたそれを一押しし、体中にのばし
ていった。
「おじゃま、します」
 しばらくして、控えめに開けられた扉から成佳が顔を出した。ぺた、と歩んだ彼女は、
タオルの一つも纏わない生まれたままの姿だった。
 声に気づいて振り返った宏樹は、彼女のそんな姿を見て恥ずかしくなる。桶に溜めて
おいた湯を頭からかぶって、体につけた泡を流し、椅子を空けた。
 まだ浴槽は十分な湯量ではない。このままふちに腰かけたままでいる訳にもいかず、
タオルで拭いきれなかった湿気を流す成佳の背に近寄る。
「洗ってもいいかな?」
 訊くと、成佳は肩越しに振り向き、頷いた。
 シャワーに打たれたままの髪を手にかけ、まとめる。指定されたシャンプーを手に取
り、頭のてっぺんを手指で泡立て、後頭部から肩にかけては指に絡めて通り抜けていく。
普段はさらさらとした感触だが、濡らすとつるつる滑って、やはり引っかからない。
 正面の鏡に、成佳の表情が写る。目を細めて眠っているように見え、少しほほえまし
くなった。シャワーの湯を浴びせて泡を取り除くと、同じ手順でもう一度洗い、最後に
コンディショナーを与えて、雨にやられた頭髪を綺麗にした。
 ぶるるっ、と頭を揺らし、しぶきを飛ばすと、照れたような表情が向けられた。

「じゃ、次は体ね」
 シャワーが止まり、続いた宏樹の言葉に、成佳はふと不安になった。
 ボディソープが手に塗られ、腕から肩にのばされていく。右が終われば左へ、同様に
宏樹の指が滑って、わずかにくすぐったい。
「ひゃ、っく」
 さらに首筋をなぞられ、しゃっくりみたいな声が出た。動きが優しく、意識しなくて
も体が反応してしまう。
 背中に手のひらが触れ、全体的にのばしたかと思うと、どこからか温かいタオルで擦
られる。決して痛くはなく、ごしごしと往復して、やがて頭から湯がかけられた。
 タオルを絞る音を背後に、成佳は別の布を手にしようとしたが、
「あと、前やるよ」
 その声で動きが止まった。目をぱちぱちさせている間に宏樹の手にはソープが盛られ、
両手にわけて肩に乗った。びくりと大きく肩が揺れる。
「いい、よっ、自分で……ひゃ、あんっ!」
 じたばた抵抗しても空しかった。ぬるりと滑り込んで、脇から胸へ。突起を触られて
息が漏れ、すぐ甘い声になってしまう。
205浴室はキケンがいっぱい(3) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:25:40.94 ID:v+KXQNZY

 手の全体で捏ねられていくうち、乳首がぷっくりと硬くなったのはすぐにわかった。
それに感づいた指の腹が真上で動いて、押し潰そうと触れてくる。しかし滑って狙いが
定まらないのか、押されたと思うとすぐに離れてつつかれ、不規則な責め方に対応しき
れない。
「んむっ……」
 途中、顎をくいと動かされ、不意に唇が触れた。一度離れて、差し出された舌にすが
りつく。その間、体を洗うという建前に従ってか、胸に塗られた泡をのばして、腹に与
えていく。胸への感触そのままだからか、脇腹付近の刺激にまで身体が反応して、くす
ぐったさなんかは微塵もなかった。
「シャワー貸してもらったから、そのお礼」
 唾液の橋がかかって、ぼんやりしているところに宏樹が話しかける。ぴんと立った突
起をつつかれ、ぴくりと肩が震える。
「そんな、のっ、あぅ……今、じゃな、くたって……っ、は、ぁっ!」
 脇をいくら閉じても、塗ったくられたボディソープのせいで腕を止められない。それ
ばかりか、二の腕を動かすたびにぐちゃぐちゃと音が出て、なんだか下腹部を責め立て
られているよう。そちらに一杯で無防備な乳首を指先でつんと押され、挟まれ、やりた
い放題だった。
 声を封じるように唇が触れる。帰ってきて早々、別にすぐする理由もないのに、なん
て思っていたのはもう昔。再度のキスで冷静な思考が失せていく。その速効性はすさま
じかった。
「だって、可愛いから」
「だからって、あ、ん……えっちな、こと、するのっ! っ、はん、そく……!」
 宏樹の声が耳に入るが、責められながらで、変な所で声が上ずってしまう。もはや理
由づけにさえならないのに、それで納得してしまうほど弱くなっていた。くらくらして、
まるで酔っているよう。
「ナル、膝立ちになれる?」
 言われてから、しかし訳が分からないまま姿勢を変える。タイル地に膝をつくと、腰
かけていた椅子がどかされ、背中に宏樹の体がくっつく。
 背から抱かれて安堵の息をつくが、指が首筋、肩となぞって再び胸に当てられると、
寒気からはじまって体中が熱くなる。
「ここも綺麗にしないと」
「きゃ、あっ……!?」
 と、そこへ宏樹の手が当てられた。首でも胸でもなく、下半身は割れ目のあたりに、
これまた無造作に。後ろから不意を突かれて、少し高い声が出た。
 ソープを持った滑りのいい肌が、ゆっくりと往復する。胸だけで疼きが始まっていた
下腹部に刺激が伝達され、成佳は思わず浴槽のふちに手を置いた。にゅる、にゅる、と
遅い動きで、恥丘のあたりに泡が立つ。
 性的な刺激をもらってから、汗は止むことを忘れている。胸に塗られた泡を流してし
まいそうな程、首筋から滲ませて体を流れている。
「ひゃあぁっ!」
 しばらく往復を続けていた指の部分が、唐突にクレバスの奥に入り込んだ。宣言あっ
ての挿入とは違って、本当に前触れなく侵入してきた。とぷん、と潜るような形で、喉
の奥から高い声が出て、背中が反る。
 積み重なった感覚からすると一本だけのようだが、そのままスムーズに出入りをはじ
め、膣肉がキュッと締まる。こんなとき、聴覚はわずかに奏でる水音を聞き逃さない。
「ナル、簡単に入っちゃったよ?」
「ん、は……、ヒロが、触るからっ……んあぁっ」
 羞恥で顔がボッと熱くなった。
 ソープを纏った指だから簡単に入ったのか、それとも既に受け入れの準備が整ってい
たのか。どちらにしてもまだ入るはずないと思っていたから、なおさら驚きを隠せない。
 そんな成佳の思いをよそに、宏樹の指は奥まで進んでいく。中で曲がって膣壁を引っ
掻くと、快楽の痺れが一瞬で頭に届く。タイル地を膝で踏んでいてちょっぴり痛いとか、
他のことを押し流すような勢いで、次第に脚から力が抜けそうになる。
 やがて指が抜かれるが、すぐに仲間を従えて戻ってきた。しかし、緩んだ膣肉はそれ
をあっさりと受け入れ、ずぶりと銜え込んでしまった。いきなりあらわれた挿入感に体
は強張るが、対して膣襞はそれを逃がさないように締め付けている。
206浴室はキケンがいっぱい(4) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:27:41.15 ID:v+KXQNZY

 圧迫の中を、少し進むだけで鈍い音が生まれる。それが身体を通じて否応なしに耳に
入れられ、成佳は喘いだ。胸の責めも終わることはなく、突起を弾かれてピリッとした
刺激が頭に入る。片方しか触られていないのに敏感だった。
「指、溶けそうだよ」
 宏樹の声に、違うちがうと首を振って応えるしかできない。しかし、スピードの速く
なった二本の指は、ぐちゅぐちゅと音を立てて肉の間を進んでいく。
 ――溶けそうだよ。こんなに濡らしちゃって。
 言葉には後が続いていそうな気がしてならなかった。覗き込んだ宏樹は意地悪そうな
笑みになって、なおも胸と蜜壺を同時に責め立てている。
 事実、この下腹部だけは一段上くらいの熱量になっていて、あきらかに愛液を滲ませ
ているのが分かった。それだけに、指摘されると羞恥が膨れ上がって、拒否反応が出て
しまう。
「はっ、あっ! ……ふあぁぁっ!」
 耳に纏わりつく音と共に、体がはねた。爪の跡が付きそうなほど浴槽を力いっぱい掴
み、奥から何かが染み出すような感覚を覚えた。達した後もしばらく往復をやめなかっ
た指が引き抜かれ、その動きに肩が震える。
「……いっ――!?」
 さらに襲ってきた突然の感覚に、成佳は息を呑む。
 絶頂の直後で頭がうまく働かず、発生した物音など知る由はなかった。
 蛇口がひねられ、そこで鳴った金属音。遅れて浴びせかけられた四十一度の湯で、シ
ャワーの背がタイルに当たった音だと理解する。
 ソープの泡を洗う手段と思うのが正解だろうが、オルガスムスを味わった体には性感
を刺激されているようにしか認識されなかった。強めの水流が、恥丘と指でほぐされた
膣肉にいくつも当てられる。
 すぐ後ろに宏樹がいるものだから、シャワーから逃げようにも難しい。それどころか、
壺から抜け出し自由になった手が、さも当然のように胸に触れていて、両側から指の腹
で突起を擦る。
 抵抗しようにも使えるのは片手だけ。それでは引き剥がすのに力が足りず、むしろ責
める彼の手を押さえつけて、要求しているような格好になって。
「ん、あ……っ! や、んっ!」
 もはや胸からはつるつるとした感触がなくなっていた。普段とほとんど変わらないペ
ースで両乳首を弾かれ、さらに下の方では丁度良い位置に構えたシャワーが湯を浴びせ
ている。
 その口から出る数条かが、肉真珠とその付近に触れている。加減を知らない一定の勢
いで、刺激に過敏な部分を責め続けた。
「くっ、ヒロ、ふぁっ、とめ、て……あっ!」
「ダメだよ、ちゃんと洗わないと」
 息を切らしながら懇願したのに、ほんの数秒で打ち砕かれた。
 二本の指で突起をつままれ、こねられ、まともな言葉が出てこない。胸からは甘い刺
激が与えられるが、秘肉と芽から来るのは過剰な電撃のようだった。それを延々と受け
ていて、成佳はただ喘ぐしかできなかった。
「きゃ、ふ……あっ、ん、ああぁ――っ!」
 とどめに耳を舐められたのが引き金になった。浴室中に声を響かせて、シャワーの水
に負けない勢いで、体の奥から粘液が溢れる。続けざまのオーガズムに意識が飛ばされ、
眼前でいくつものフラッシュを焚かれたように視界が白くなる。平衡感覚が無くなり、
浴槽の方に体が倒れ、ずるずると腰が落ちていく。惰性で手足が投げ出された。
 腿のあたりから宏樹の手を感じると、そこでようやく目が覚めたような気分になった。
ボディソープを塗りながら足指の方まで丁寧に通って、最後は全身に湯の雨が降りかか
る。
 大量にかいた汗を流され、頭はすっきりしているが体が動かせない。
 何とか焦点を合わせると、宏樹の顔は正面にあった。古くなった機械のように、ゆら
りと左手を上げると、その顔面でぺち、と軽い音がした。
「いじわる」
 こんな平仮名四文字でも、小泉宏樹を表現するのは簡単だった。彼は「ごめんね」と
囁き、ふっと笑んで、それが成佳に安心を与える。
207浴室はキケンがいっぱい(5) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:29:41.43 ID:v+KXQNZY

「でもね、ナルは可愛いの」
 シャワーを操りながら口を開いた。行為以外でもさんざん聞いてきた言葉だが、この
フレーズを宏樹の口から言われると、どうしても恥ずかしくなってしまう。右腕に、そ
して頭に湯をかけられながら、成佳は話を始めたところに耳を傾ける。
「髪は黒くてさらさら。肩まで長くて、肌は白い」宏樹は指折りで特徴を数える。「す
べすべだけど、触ると柔らかくて、抱きしめると温かいんだ」
 途端、顔が熱くなるのが分かった。体に触れている宏樹だからこそ、そういう感覚も
知っているのだが。いざ口に出されると今まで以上に恥ずかしさが露わになった。高鳴
りだした胸を手で覆うこともできず、聞こえていないかと動揺が生まれる。
 細い指が濡れた髪をすくいあげ、つうと滑らせる。頭を撫でられて、触れた部分が熱
っぽい。
「あんっ……ん、あ、あっ」
 いきなり乳首をつままれ、瞼を閉じる。くりくりとこねられ、絶頂した後の体がわず
かに震えた。反射で責めた彼の手を掴むが、どうにも力が入らない。
「いつものナルも、えっちな時のナルも、全部ひっくるめて可愛いから」
 反応に困った。認めたくないことを指摘されて湧きあがる羞恥と違って、どうしよう
もなく直球な意見だったから。そんな『えっちな時の顔』をまじまじと見られてしまっ
ては、唸るだけで言葉なんか返せない。
「うん、やっぱり『可愛い』が一番似合う。他の言葉で表現なんて出来ないよ」
 そう言う宏樹の顔は、考えがまとまったような、すっきりとしたものだった。
 腿から足まで湯を当てられ、再び噴き出した汗を洗い流していく。その湯すらぬるい
と感じるほど、体の隅まで熱を帯びてしまっていた。
「ナルが可愛いから、もっと可愛い姿を見たくなって。それでいじめたくなっちゃう」
 そんなに連呼されると、いよいよのぼせてしまいそうになる。肩や腕に触れられる宏
樹の手も熱く、体を冷やす手段がまるでない。
 ふと、湿った空間に高い電子音が響いた。聞きなれた給湯完了の音で、浴槽に十分な
量の湯が溜まったことを知らせる。
「ね、もう少し、いじめさせて……」
 途切れた意識を引き戻すように、宏樹の手が肩に乗った。
 普段は上側にはねている髪が、いまは濡れて垂れ下がっている。女の子みたいな顔が
眼前に迫って、唇が軽く触れる。
「んっ……っく、う、うん……」
 両手を合わせて十本の指が絡む。舌が絡んで唾液をそれぞれに塗りつけるが、水分を
奪われ乾いた喉は、それさえ嚥下しようといつも以上に動く。キスで唾液を分泌して、
こくこくと飲み込む。
 それでも途切れることなく唾液は作り続けられ、口の端から垂れるまでの量になり、
舌が離れると糸を引いた。
 キスは首筋から胸にまで及んだ。その度にちゅっ、ちゅっ、と音を立てられ、耳から
も性感を刺激される。湯が流れたばかりの胸はすっかり汗をかいていて、じわじわと熱
気がのぼってくるような感覚になった。
「ふ、あぁ、あっ!」
 硬いままの乳首に吸いつかれ、その吸引に声を上げた。唾液を塗されるとわずかにあ
った痛みが引いて、ちろちろと舐められて快感に変わる。もう片方は指でしきりにつつ
かれ、異なる二種類の刺激が襲う。
「うん、大丈夫そう」
 乳首責めの後、具合を確かめるように恥丘へ当てられた手から、くちゃりと鈍い音が
立てられ、成佳はふいと視線をはずした。
 ぎゅっと抱き合ってから、疲れが残る体は、宏樹に手を引かれて立ち上がった。腰巻
が外れ、露わになった彼の分身は、熱のせいかいつも以上に赤みが増して見える。
 仰向けになった宏樹を跨ぎ、背を向けた状態からしゃがみ込む。わずかな逡巡のあと、
屹立を自身の入り口に導いた。
「ん、あ……くうぅ……」
 ゆっくりと腰を落とすと、いきりは膣肉を割って進み、挿入感に背筋が震える。膝と
つま先で体を支えると、ほとんど根元まで収まった。呼吸の間にも中で脈打ち、膣はそ
れを締め付ける。キュッと絞られる感覚に、成佳は落ち着くどころか息を荒くしていた。
208浴室はキケンがいっぱい(6) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:31:41.45 ID:v+KXQNZY

「は……あ、んっ!」
 突き上げられ、がくんと首が揺れる。腰に触れている手を握って、そこに宏樹の存在
を感じながら、成佳は肩越しに振り返る。目が合うと彼は照れくさそうな笑みになった。
 出入りにあわせて鈍い音を出し、そのつど先端が最奥をノックする。コツン、とした
震動と一緒になって、刺激が一直線にやってくる。
「ナル、鏡があるよ」
 手をほどいて、宏樹の体が起きる。耳元で聞こえた声にしたがって正面の鏡を眺めて
いると、シャワーの湯で曇りが落とされた。
 わずかに揺さぶられ、いきりが体の中で動く。向こう側にいるのは、とろんとした目
でそれを受け入れている、肩まである黒髪の少女だった。
「あ……あんっ、やぁ……っ!」
 声こそないが、同じ調子で口を開いて、鏡面が少しずつ曇っていく。
 膝立ちのまま体に収まっている勃起が往復して、くちゃ、くちゃ、と音を出す。恥丘
はニスでも塗ったように光って、照明を反射する。
 それは三澄成佳そのものなのに、頭の中ではそれを認めない。愛液を垂らして肉棒を
咥えている、鏡の向こうにいる少女も、同じように瞼を閉じて首を振った。下から揺ら
れて髪が乱れ、首筋にはりつく。
 さらに、胸に手が触れる。全体を押しこむように動くと、一緒に突起も沈んで刺激が
増えた。やがて乳首だけをピンポイントで責めるようになり、成佳はその手をぐっと握
った。
 いつしか湯気と吐息で鏡は映らなくなり、風呂場はふたりだけの空間に戻った。あの
少女が見せた表情こそ、つまり『えっちな顔』なのだろう。今まではっきりと映ったこ
とがないから、あらためて思うと顔から火が出そうだった。
「きゃ……っ!」
 ほとんど悲鳴に近い声が出た。結合部に突然あらわれた刺激に、少しだけ視線を落と
す。いくつもの穴を持った長いホースが、宏樹の手に持たれて湯をぶつけていた。
 往復はそのまま、肉をえぐって子宮口を叩く。それだけでも十分なのに、加勢したシ
ャワーが秘芽に湯を浴びせてくる。
「や、だっ、シャワー、とめてっ……! は、あっ、あぁっ!」
 息を切らしながら声に出す。表情はないはずなのに、ヘッドに凶悪な形相が映ったよ
うに見え、怯えに近い感情があった。
 ただでさえ抽送が続いて体の中から振動されているのに、それが何倍にも増幅されて
頭に響く。性感に間違いないはずだが、ガン、と殴られたような衝撃から始まった。
 頭の中にだけある痛みは、遅れてきた痺れで誤魔化される。それでも容赦のない刺激
はあまりにも強烈で、成佳はいつになく大きな声になった。膨れ上がる愉悦にひとつ、
ふたつだけの音が口から出ていく。
「いいよ、いっぱい感じて」
 そんな宏樹の言葉を聞いたと思うと、硬さを失っていない勃起が膣肉を割って進み、
一番奥に先端をぶつける。ふたりが繋がっている部分にはいくつもの水流が当てられて、
恥丘と剥き出しになった下腹部の尖りから、電撃のような刺激を与えてくる。
「ふぁっ、わ、けっ、わからな……あん、っは、やあぁぁっ!」
 とても優しい言葉は、成佳からなにかを外した。いよいよ許容を超えた性感が爆発し、
固まった身体はびくん、と痙攣する。視界は白の一色だけで塗りつぶされた。
 ほんの一瞬、束縛から解放されたような気分だった。意識が戻ってきたとき、体はタ
イル地に仰向けにされていた。
「ちから、抜いて」
 言われたところで、弛緩しているのか緊張しているのか、自分ではわからない。宏樹
の手が腿に当てられたかと思うと、少し開かれてボディソープが塗られていく。まだ快
感に対して貪欲な部分が、わずかに触れていった指を物欲しそうにざわついた。
 手をついて、宏樹がのしかかった。顔が一気に近くなり、不意にキスされて溶けそう
になる。
 脚を閉じている状態で、出来あがった三角地帯に勃起の先端が当たった。宏樹が腰を
落とすと、一緒になって潜り込み、わずかにくすぐったい。
「……追い打ちかけちゃうと悪い気が、して」
 熱を帯びて真っ赤になっている宏樹は、少し息が荒かった。勃起を挿入されるのかと
思っていたが、意外な行動にハテナが浮かんでしまう。
209浴室はキケンがいっぱい(7) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:33:41.67 ID:v+KXQNZY

 だが、いきりが動くと成佳は手を握って応えた。腿に挟まれた肉棒はボディソープや
愛液によって、ぬるぬると激しく往復する。一緒に当てられている恥丘のあたりがむず
痒くなるのと同時に、痛みを覚えている箇所があった。
「あっ、は、あぅ……っ!」
 出入りにあわせて、その部分が擦られる。散々シャワーで湯をあてられた陰核は、抽
送を繰りかえす宏樹の分身に削り取られそうだった。奥へ進むときは頭の部分で押し付
けられ、出ていくときはくびれた部分ですくいあげられる。そんな摩擦の連続で、すり
減っていないかと思うほど。
 三角形の窪みは、それまでに持っていた愛液とボディソープの泡、いきりが分泌した
粘液で水たまりのようになっていた。鈍い水音に泡の破裂が後を引いて、淫靡な響きが
全身を伝う。
「ナルの肌……つるつるで、なんか不思議……」
 ぬちゃぬちゃと音を立て、泡立った肉棒は、太腿の間をしきりに往復する。腰の動き
が挿入を連想させて、膣に入ってくるのを見ているような、そんな光景。
 未知の感覚なのは宏樹も同じらしかった。一方で、成佳は腿に触れられるこそばゆさ、
割れ目を往復して生まれる甘い痺れ、敏感すぎる小さな突起を擦られる痛みが全部一緒
に送られて、どう捉えていいのか分からなくなる。それでも、快楽の方が勝って声を漏
らしてしまう。
「ん、やっ、あ……!」
 ふとした想像をきっかけに、何も入っていないはずの膣肉がざわつき、下腹部が疼い
てどうしようもなくなった。始まってしまったそれを止めることはできるはずもなく、
懇願する涙の代わりに粘液が溢れだす。
 それを知ってかしらずか、宏樹はさらに動きが速くなっていく。勃起の硬さと熱がひ
とまわり大きく感じて、マッチのごとく火がつきそう。
「――くっ……!」
 短く息を吐いた直後、いきりが抜かれて激しく脈打ち、白濁をよこした。最初の数発
が胸に、残りは腹に付着する。熱を持っている以外は、ぱっと見てソープと判別が付か
ない。ゆっくりと肌をつたって床に垂れていく。
 腿から硬さが完全に無くなると、宏樹と唇が重なった。キスが鎮静剤みたいで、次第
に心が落ち着いてくる。
 勢いよく噴きだしたシャワーが白濁を洗い流し、身体から行為の痕跡を消していった。
210浴室はキケンがいっぱい(8) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:35:42.45 ID:v+KXQNZY

 湯船に浸かると、身体の芯まで温まって心地よくなってきた。成佳は宏樹の胸に体を
預けて、やんわりと抱かれている。
「ほら、こんな時じゃないと、ナルと一緒にお風呂なんて無い……って考えたら、ね」
 申し訳なさそうな顔が映る。
 行為が終わって、抗議の視線を向けてから、宏樹の『言い訳』が遅れてやってきた。
ボディソープはともかく、やたらとシャワーを使っていたのも、あまりない機会だから
という理由があってのことだった。
 湯を噴きだして恥部を蹂躙してきた件の一品は、ホルダーに収まって水滴を垂らして
いた。普段こそ役立ててきたが、二度も絶頂させられ、今日ほどそれを憎らしいと思う
ことは今後一切ないだろう。
「でも、すっごい可愛かったよ。いっちゃう時、『わけわからない』って」
 言われて、成佳は顔が赤くなった。散々責められて、あられもない声を上げてしまっ
たところが蘇る。挿入にシャワーが加勢して、体の一番奥と陰核を同時に責められたと
き、本当におかしくなりそうだった。それくらい頭の中が空っぽで、わけがわからなく
なって。現に、行為の前半なんかはもう曖昧で、そもそもなぜ風呂場でえっちをしてい
たのか、それが思い出せない。
 最後にこれでもかと扱かれた下の突起は、未だにぴりぴりと痺れていた。ここからの
刺激は、とうぶん痛みと認識されて覆らなさそうだった。
「……お風呂に入れなく、なったら、ヒロのせいにする……」
 鏡に映った黒髪の少女が脳裏をよぎる。邂逅はほんの少しだけとはいえ、快楽の味に
顔を蕩けさせて、体を揺さぶられ、髪を乱していた。そんな淫らな姿を映した鏡まで、
成佳のバスライフに影響を与えそうだった。……ソープもそこに加わっていたが、いち
いち挙げだしたらきりがない。
 言葉と一緒に肘で小突くが、しかし宏樹はちっとも気にしていない様子で。
「風呂場と銘打ったそこは、いたいけな少女を辱める性感のアワ地獄……。大丈夫だよ、
もしナルがそんな体になったら、僕が責任取るから」
 抱きしめる手が少しだけ強くなり、すぐに離れて視界から消える。
「時間をかけて、じっくり、ねっとり洗ってあげる」
「ひゃ、ん……っ」
 無防備だった胸に両手が当てられ、成佳はぴくりと肩を震わせた。少しだけ突起をい
じくられ、かすかに甘い息が漏れていく。
「ヒロ、えっち、だよ……」
 ちらと振り返るが、宏樹はくすりと笑って、唇を重ねてきた。
 一瞬だけのキスなのに、発散されたはずの性欲が揺らめいてしまって。ふたりでは落
ち着いて入浴できないことがわかった。
211浴室はキケンがいっぱい(9) ◆q2XBEzJ0GE :2011/06/30(木) 23:37:46.95 ID:v+KXQNZY
以上です。大雨の季節って6月から7月に移ったのかしら
212 忍法帖【Lv=27,xxxPT】 :2011/07/01(金) 11:14:22.51 ID:+EcWuUbd
>>211
GJ
213名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/07/01(金) 12:18:04.33 ID:rsWsR6tX
成佳えろかわいいよ成佳
gj!!
214名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 23:22:05.15 ID:p2akC9s2
遅れたがGJ


お風呂でえっちっていつもよりエロスを感じるよね!
215名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 22:42:23.83 ID:B5wY5QG+
無口っ子は短冊になんて書くの?
短冊も言葉少ななの?それともびっしり?


そして、森田さんは無口支援
216名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 22:52:29.62 ID:KrVrSy12
>>215
森田さんなら何を書くか悩みそう。
花ちゃんの短冊は見たくない
217名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:09:30.06 ID:UNaNPnli
言葉じゃなくて、敢えて短冊に絵を描く無口っ子
218名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 01:16:40.64 ID:OwwwQ08A
言葉の壁を越えたのか・・・いいな。
219名無しさん@ピンキー:2011/07/12(火) 20:49:40.16 ID:it6+X1qm
あまりの暑さを調整するような夕立を受け、男は雨宿りがてら、とある甘味処にいた。
大きな柳の木の下の、小さいが情緒と風情のある店。
出てきたのは浴衣姿の若い娘で、思わず目を奪われるほど、可愛らしい。
男は冷たいものを食べたかったので、餡蜜を注文した。
言葉少なに対応し、娘は冷たい緑茶を出し、奥に下がる。
グラスに透き通った薄緑が、氷を溶かす。
男が一口、口をつけると、渇いた喉を潤すような涼。
風鈴の音色。
静かに、川のせせらぎが聞こえてくるような座敷。
お待たせしました、と声がして、娘が男の隣に、両膝を突く。

甘くて、冷たい餡蜜。
男は居心地の良さに時間を忘れて、その味を堪能した。
周囲に客はおらず、男一人。
食べ終えても、自然と畳に足が伸びる。
少し恥を捨てて、男はその場に、横になった。
男には懐かしい、どこかで見たことのある木の天井だった。
呆然とそうしていると、視界に娘の顔が覗く。
さすがに行儀が悪かったか、と、男は起き上がろうとした。
すると娘は表情を変えず、手で押すように制止した。
覗き込む顔は乗り出すように相手の顔に近づき、男が戸惑う間に、事を達した。

動けなくなった男の唇を、娘は丁寧に舐めていた。
周りも舌に濡らされて、されど不愉快な湿りではない。
やっと顔を離すと、今度はそこに、冷たい御手拭を当てる。
男は顔を熱くしたまま、再び呆然と、自分を覗き込む娘を見上げていた。
娘は構わず、優しく汚れを拭い取り、そして奉仕を終えた。
口周りに若干の冷たさが残り、視線は尚も、互いに逸れない。
これは、一体何のつもり? と男が尋ねる。
すると娘は短く、こう言った。
「保守」
220名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 00:52:27.25 ID:ewU/TiZu
よい保守であった
221行き先不定のまま199の続き  ◆xNDlZiuark :2011/07/15(金) 00:46:07.74 ID:YABH98WW
私は机のボードを手早く取って言葉を書く
しかし、一番のコンプレックスを覗かれた上に
いきなり彼はそれを褒めたのだ
動揺が止まらない
ペンとボードの境ががガタガタと鳴っている
『いつから!!?』
「辞書が中腹を過ぎた辺りから?」
私はそんな前から気づかなかったというのか
いや…そんなはずはない。【保守】にしようと決めてから5回は周囲確認をした
彼が居た辺りも3回は目線が通ったはずだ

しかし今はそれも些細なことだ、保守もどうでもいい、己の保身だ
深呼吸をして今度は落ち着いて書いていく
『どうすれば誰にもしゃべらない?』
「えっ駄目なの?何で?」
『汚い声だから』
彼は顎に手をあてて考えている
「僕はそうは思わなかったけど?そんなに嫌い?」
《ハイ》
気に入っている機能にクスッと私は笑う。
「いつ聞いても可愛い笑い声」
笑うことが好きな私は、笑い声まで嫌いとは言わないが
汚いと思っているのに変わりはない
微妙だが大切な住み分けがある
『人に聞かせられるものじゃ』
「そんなことないよ!」
いきなり叫ばれて体がビクリと震える
緊張が一線を越えてその場にへたりこんでしまう
「星さん大丈夫っ!?」
彼が走り寄ってくる…
222名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 01:16:26.03 ID:YABH98WW
最近誰にも大声で叫ばれていない
自然と私の周りは私の書き終わりを待つほど穏やかな人だけになった
そんな優しい人たちが、叫ぶことなどほとんどない
またそんなことになるような話題は私に持ち込まないのだ。
久々の強い刺激に聴覚は驚き、めまいがした私は気まで失ってしまった。

どうしよう
-------
ひとまず前回に発覚した無口っ子解消エンドを回避するために
内容無いまま迷走してしまいました。

褒められて気が動転→倒れる で↑レスが2行に収まってしまうくらい内容がない。

今後何回か、修正工事の間、ご迷惑をおかけします。

  追記
結局、書き投げの即興の文なのでこのストーリーの流れが嫌な場合
言っていただければ開発中止して、別の保守物語を考えてみます。

以上
223名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 01:39:31.65 ID:lMy+/Eqy
[保守]
224名無しさん@ピンキー:2011/07/24(日) 22:41:17.51 ID:njnBM9CV
・・・
225名無しさん@ピンキー:2011/07/24(日) 23:35:55.97 ID:SzbAbF5I
「そろそろ何か喋ってはいかがかと・・・」
「・・・」コクリ
「いやだからね。うなずいてるだけで全部わかるほど俺もエスパーじゃないしね?」
「・・・!!」
「そんな驚いた顔されてもね?自分から何か発信してくれないと。」
「・・・う〜ん」
(ワクワク)
「大好き」
「悩んでソレっすか・・・」
「・・・キミは?」
「そりゃあもちろん」
そういって彼女を押し倒す。明日は寝不足かな・・・
226短編@台詞なし:2011/07/25(月) 00:08:35.56 ID:h+nmR8Xz
彼と一緒に寝る夢を見た。
彼は私の髪を優しく撫でて。おでこにキスをする。
私はくすぐったくて、でも心地良いから、彼から離れない。
彼はまた私の髪を撫でて、綺麗だと言う。
彼の顔を見上げると、優しい瞳に見つめられた。
なんだか照れ臭くて背中を向けると、彼は後ろから優しく抱きしめてくれる。
私は彼の手に自分の手を重ねて、唇だけ動かす。
彼は気付かないけれど、それでも音もなくもう一度呟く。
それに重なって、彼が私と同じコトを言う。
私は嬉しくて、でもなんだか照れ臭くて、彼の手をぎゅっと握る。
彼はどうしたの? なんて優しく訊ねてくるから、また嬉しくなって、身体の向きを戻して、ぎゅっと抱きしめる。
彼の匂いがして、眠くなる。
安心する匂い。
彼の匂い。
大好きな匂い。
大好きな彼の匂い。
大好きな彼の匂いと胸に抱かれて、幸せが満ちている。
そして、彼の胸の中で、私は音も無く。
彼に耳に届かない声が、私の唇を小さく揺らす。
227短編@台詞なし:2011/07/25(月) 00:09:11.54 ID:h+nmR8Xz
『だいすき』
228短編@台詞なし:2011/07/25(月) 00:09:45.15 ID:h+nmR8Xz
おーわーり
229名無しさん@ピンキー:2011/07/25(月) 08:12:32.50 ID:Jv4Q1PLt
おっ、GJ
230サ変動詞+尊敬・受身の助動詞:2011/07/26(火) 00:46:38.75 ID:YUKkun0f
(はぁはぁ…恋敵ながらgjだわ…でも彼は私が貰ってあげるんだから)
つんつん
(ふふふ、あなたの悲しむ顔が目に浮かぶわっ!)
「あの〜この辺りに鼻血を流しながら双眼鏡を覗く不審者がいると通報を受けたのですが…」
(なっ不審者ですって?もしかして私を狙って!?)
「あなたですよね?通報された方は」
(へ?私は通報なんかしてないわよ?)
「ちょっと交番まで来てもらえますか」
(なんで関係のない私が連れていかれるの?いやっぁ)首を横に振る
「可愛い顔してもダメですからね?おとなしく交番行きましょ?」
(もしかしてこの人が不審者!?)
以下泥沼化
231名無しさん@ピンキー:2011/07/26(火) 17:12:30.79 ID:xDes3/aC
>>230
ごめんちょっとよくわからない
232名無しさん@ピンキー:2011/07/26(火) 23:46:56.48 ID:YUKkun0f
今後善処します。
233名無しさん@ピンキー:2011/07/27(水) 07:19:30.00 ID:GG67O3Ru
>>232
煽りみたいになっちゃってごめん
頑張ってくれ
234名無しさん@ピンキー:2011/07/27(水) 22:58:08.24 ID:Igv1gXLa
>>233
自分もわかりにくい文章書いてしまったと思ってる。
自己満足って面が強いから、俺も反省すべき点があると思ってる。

まぁ今週・来週は優先的に無口っ子ネタを考えてみる。
235筆234・展開が暗いので注意・1レス:2011/08/02(火) 00:33:19.75 ID:1rQg6rnf
とある民宿に泊まった。

起きたら何故か女の子が股の間にいる。
しかも俺のモノを熱心にくわえこんで、
なんとも言えない水音を響かせている。
「えっちょっ!なんでっ!?」
しかし彼女は行為を止めようとしない。
「やばい、やばいよ。本格的にヤバいよ」
自分でも何を言っているのか分かっていない。

とにかく今の俺は、目だか頭だかを白黒させながら、
彼女を汚してしまわないように必死に耐えるしかない
しかし、股間で小さな女の子が健気にモノを嘗めるのを
見ていて、耐え続けられる男が居るだろうか(反語)
「くっ・・・あぁ・・・うっ」限界が刻一刻と迫る。
男ながら情けない声が出たと思ってしまう。

そして無情にも時は訪れる。
「うっ出ちまうっ!!」とだけ言った。
そのとき俺はパッと明るくなる彼女の顔を見た。
モノからドクドクと白濁が噴き上がる中、その顔に
俺は釘付けになっていた。

そこで意識を手放した。次に起きると彼女は居なかった。

女将曰く、10年前にここでフェラを要求されたが、
上手くできなかったために喉を掻き切られて死んだ女の霊だそうだ。
俺を満足させて、彼女は成仏できたのか…
慰霊碑に手を合わせながらそう思った
236名無しさん@ピンキー:2011/08/02(火) 09:09:32.61 ID:1rQg6rnf
今のところ気づいた推敲不足
・喋れなかった理由が、喉を切られているせいっていう描写が後半の1行の事件説明しかない
・まず喉笛掻き切られてたらフェラで吸う動作ができない気がする
・各文末が単調で情景に広がりが出てこない

もうちょっと考えるべきだった。延々とスレ汚しして申し訳ない。
237『目隠し』ではじまるふたり(0) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 22:56:25.66 ID:l8KmBDwv
夜分遅くに投下してみます。

Q.下着をつけないことの必要性は
A.表向きは普段着だから恥ずかしくないです
238『目隠し』ではじまるふたり(1) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 22:58:26.11 ID:l8KmBDwv

「…………えっ」
 珍しく電話を寄越してきたのに、三澄成佳は一方的に話を聞いているだけだった。
 相手はこちらが口数の少ない事を理解している。実に丁寧に話を進めてくれたが、最
後のさいごで思わず「ばかっ」と言いかけた。それくらい驚きの内容だった。
 じゃあよろしくね、と通話が途絶え、後に残ったのはテンポの良い電子音。
 高鳴る胸を押さえながら、話の内容を復唱するように、すかさず携帯でメールを打つ。
 待ち合わせ場所と時間だけの、簡素な本文で送信した。

 駅前の広場にある、よく目立つ時計塔の下。
 ここで会うことを約束したはずだが、一向にその姿は見えない。
 あまり名の知られていないアーティストのシャツと、黒のジーンズを身につけ、成佳
はスニーカーの爪先をトントンと鳴らす。
 開校記念日で平日に休みをもらえて、あまりない光景。しかし一人でこの場所に固ま
っていると、どうも不安になってくる。
 スーツと制服が行き交う中、ただひとりを見つけようとするのは困難だ。まして、ふ
だん私服を見る機会が無いので、どんな格好でいるのかも分からない。
 成佳も、この格好では一人でいるのが辛い。周囲を見回してみるが、それらしい姿は
やはりない。
 手元の時計を確認して、待ち合わせの時間から五分近くが過ぎているのを見ると、ふ
うと息をついた。
 その時、
「だーれだっ」
 視界を遮られ、悲鳴を上げそうになった。少し硬めの手が顔に触れ、その感触で相手
が誰だか理解する。
 振り向くと、柔和な笑みを浮かべた少年の姿があった。着衣の黒が、日焼けしていな
い肌を目立たせている。
 挨拶代わりに、その顔へ手を当てた。ぺち、と乾いた音。
 小泉宏樹は頭に手をやりながら、
「ごめんね、一度やってみたくて」
 そんな風に謝った。
 普段は髪が上に跳ねているが、今日は下向きになっていた。稲妻が描かれた青と黒の
カットソーに、同じ黒系統のスキニーを穿きこなしている。
 五分遅れたことも重ねて、宏樹は手をあわせる。続けて、白の肩掛け鞄から缶ジュー
スを取り出し、その一つを成佳に渡した。
「いろいろ考えてたら、昨日は眠れなかったんだ」
 オレンジの果汁を口にしつつ、なぜ遅れたかの説明。
 彼が昨日の自分と全く同じ状態だったことが分かり、成佳はどきりとした。
 彼女の場合は、昨日の話に対して『何を着ていくか』と思考を巡らせていたからだ。
 結局、シャツとパンツのスタイルで来てしまったが。
「私服は見たことなかったけど、やっぱり可愛いね」
 宏樹は飲み終えた缶を鞄に戻しながら、呟く。
 言われて、成佳は顔が熱くなった。ついでに頭を撫でられ、うーっと唸る。
 彼女も相手の私服を見るのは初めてのことで、学生服とはまた違った雰囲気を醸し出
している。男子にしては体が細めで、今日は一段と可愛らしく――分からない人が見れ
ば、それこそオンナノコに見えなくもない。
「思わず抱きしめたくなっちゃうよ」
 言いながら体を寄せられ、宏樹と密着する。彼のにおいが鼻を抜けて、背にまわった
腕から熱が伝染する。
 声を上げる間もなく抱かれて、成佳は口をぱくぱくする他になかった。
「ちょっと驚いたんだ」
 宏樹は少女の耳に口を寄せた。
 彼女の『表面』は自然に見えて、その中身が気になるところ。
 驚いたのはこっちだ――と、成佳は思う。いきなり抱きしめられ、途端に落ち着かな
くなる。声として出ていかないが、恥ずかしさがあらわれ、じたばたと抵抗してしまう。
 耳元で囁く、その声がくすぐったい。
「大丈夫。みんな忙しいから誰も注目しないよ」
 なおも腕の中に抱えたまま、宏樹は彼女に告げる。実際、通勤している人々は目的地
に向かって移動しているので、日中に抱き合っている男女の事など目もくれていない。
 成佳は一瞬納得しかけたが、そんなことはないと身じろぎをした。
239『目隠し』ではじまるふたり(2) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 23:00:26.54 ID:l8KmBDwv

 拘束が解けると、すっかり熱くなった体を手であおぐ。
 息を落ち着かせてから、平手を宏樹の頬にヒットさせた。軽い音の後、しかし彼はま
た笑顔になる。
「キス、しよっか」
 それでいて突拍子もない。せっかく会ったし、なんて付け足されても、成佳は肩を震
わせて後ずさった。
 宏樹はこちらの反応さえ楽しむように、軽く手首を掴んで時計塔の裏に連れて行く。
ガードレールの向こう側にはバスが並んで停車して、表に比べて道幅は狭いが、だから
と言って人通りがないかと聞かれれば、そうでもない。
「……っ」
 二人で周囲を確認して、あまり人がいないうちに唇を重ねた。触れあったのはほんの
数秒だけだが、体温を上げるには十分すぎる。
 えへへ、と笑う宏樹からは、嬉しさがあふれ出ている。彼の口を名残惜しげに眺めて
いると、手を引かれて移動のかたちになった。

 向かった先は大きめの書店。宏樹ともども本が好きなので、その共通点に見合った場
所。百貨店の階層一つを全て占めている、有数の本屋だ。
 ここまで自然に手を繋いで歩いてきたが、入口に立ったところで妙に意識して、はず
してしまった。
「ちょっと付き合ってくれる?」
 少し残念そうだったが、かごを片手に宏樹は先を行く。その背中についていくと、さ
まざまな本に囲まれて、タイトルや表紙に視線が向かう。
 図鑑や単行本のコーナーを抜けて、新書・文庫の文字が目立ってきた。
 その一角で立ち止まると、早速、手にした籠へ二冊、三冊と本が入れられる。それを
見て成佳はぎょっとした。
 くい、と彼の服を引く。宏樹は振り向いたと同時に首を傾げて、こちらの意図を汲み
取ってくれた。
「ああ、えっちな本だけど」
 これを買いに来たんだ、と言ってのけた。堂々としすぎて、かける言葉が出てこない。
普段の自分がその類の本を手にとってレジに運ぶ時、かなり周囲を見ているのが嘘みた
いに思えてくる。
 合わせて四冊がかごに収まり、それぞれの表紙を眺めて再確認していた。
「ナルは何か買うもの、ある?」
 今度は成佳が首を傾げた。最近あまり書店を訪れていないので、興味があるのは事実。
 そこは彼の気遣いに感謝し、一番上の棚からタイトルを眺める。目的地は同じだった
ので、特別どこかに移動することはない。
 棚の高い場所から、本のタイトルに集中する。
 左から右へ目で追っていき、下の段に移ろうというときに、隣に立っていた宏樹と目
が合った。
 どちらともなく、くすりと笑う。
 だが、ほんの一瞬で顎を取られ、熱を含んだものが唇に当たった。
「っ!?」
 いきなりのキスに、成佳は目を見開いた。感触は柔らかいのに、どこか強引で、しか
し憎めない。体のどこかが口付けを待っていたかの様にざわついて、動悸がひどくなる。
 頭がくらくらして、指が首筋をなぞっても抵抗できず、こそばゆさに息が漏れる。冷
房が効いているはずの店内でも汗が浮かび、顔から垂れた。
「ひ、ヒロ……」
 口づけされただけでも驚きなのに、さらに体を触られている。そのうち胸に移って、
片方を覆い、沈んで刺激を与えてくる。
 しばらく感触を楽しんでいた宏樹が、ついに指の腹で胸の突起を捉え、つついた。途
端にピリッと電撃めいたものが体を駆け、いつの間にか繋いでいた手がなければ、姿勢
を崩しそう。
「ここ、で……?」
 人差し指がゆっくりと動いて、服の上からニップルを押している。布越しに触れてい
て、直接の接触でないから痛みを感じることは全く無く、成佳は思わず出そうになる高
い声を堪えている。
 しかし思考は乗りきれておらず、戸惑いながらも少年に視線を送った。
240『目隠し』ではじまるふたり(3) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 23:02:27.07 ID:l8KmBDwv

「ううん、ここではしないよ」
 不安の色を見せた少女に、宏樹は首を振って答えた。平日で客もまばら、百貨店の中
でもとりわけ静かな場所だが、さすがに此処ではコトに及ばない。
 彼女の黒い髪をそっと撫でてから、周囲に人がいない事を確認して、もう一度キスを
した。
「もうちょっと見ていく?」
 顔を赤くしているところに訊くと、成佳は気を取り直して本棚に視線を向けた。
 特定のタイトルを探している様子で、ややあってから棚から一冊の本を取り出す。
 持ち直した買い物かごに、それは置かれた。
 一冊だけでいいのか確認して、レジを通ると、彼女は不思議なものを見るような顔で
横を歩いていた。
「……僕も、結構はずかしいよ」
 堂々と並んだように見えたが、そう口にした宏樹の額には汗が滲んでいて。
 照れた笑みがちょっと可愛らしかった。

 書店から出ると、別の階層を移動することになった。
 洋服屋、靴屋、様々な店を眺めながら、宏樹と並んで歩いている。
 成佳はその手の感触を覚えつつ、ときどき握っては彼の注意を引いた。その度、反応
して握り返してくる。
「ふふっ」
 笑みを漏らす宏樹は本当に楽しそう。学生をしている時より、いっそう柔らかい雰囲
気で、成佳もつられて表情が緩む。
 すれ違う人も次第に気にならなくなり、自動階段を上っている間も、彼と手を繋いだ
まま。
 だが、フロアをのんびりと歩いている中で、楽しさだけで頭を埋められないのが複雑
だった。
「ナル?」
 思わず宏樹の手を強く握ってしまって、彼が振り向く。
 成佳は首を横に振って返したが、それでなんでもない風にするのは無理があった。
「……っ」
 移動中、ずっと纏わりついている痺れに成佳は息を漏らした。
 一人でいる間はあまり意識しなかったが、本屋で宏樹に触れられてから――もっと言
えば、最初に彼からキスをもらってから、体の奥が疼いてしまって。
 地肌を覆っているシャツが体にあわせて動くと、バストの先端を布が擦っていく。は
じめは僅かだった刺激が、つられて盛り上がった反対側からも送られて、とつぜん二倍
に跳ね上がる。性の味を知ってしまった身体のどこかから、汗ではない何かがじわりと
漏れた。
「もう少しだから、ね?」
 心配そうにしている宏樹も、前日に自分から言ってきたのだから分かっているはずだ。
 そんな台詞を聞いてからでは、こうして各階を適当に歩いているのも、彼の意図なの
ではと疑ってしまう。
 手を繋いだまま、成佳はぷいとそっぽを向いた。

 上昇するエスカレーターからすぐ、ふたりは開放されている建物の屋上に出た。
 自販機、テーブル、椅子と、休憩するための最低限な設備があり、全体を金網が囲って
いる。
 フェンスに寄ると、普段利用している鉄道が真下に見え、まさに駅を出ようとしてい
るところだった。
「はい、これ」
 宏樹から、彼の買い物と一緒に会計を終えた本が渡される。何も言わずにレジに置い
ていたが、成佳は財布を取り出した。
「いいよ。ナルが喜んでくれたなら、それで」
「あ、あり、がと……」
 代行してくれたのかと思えば、そのまま買ってくれた。本の代金を支払おうとした財
布は、開きかけたまま、購入済みの商品と一緒に鞄へ戻る。
 お礼すら上手く続かない。そこで、宏樹の頭に手を伸ばす。
「わ、なんか意外だ」
 いつもは撫でる側の宏樹も、これには驚いた。くしゃくしゃと髪をほぐされ、朝に整
えた癖毛が広がっていく。
241『目隠し』ではじまるふたり(4) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 23:04:28.00 ID:l8KmBDwv

 思いのほか気持ちが良くて、そのまましばらく成佳に撫でられ続けた。
「……跳ねてる?」
 手櫛で元に戻そうとするが、少女からは頷きが返ってくる。どうやら、普段と同じよ
うに上へ伸びてしまったようだ。水だけでは直せないので、もう仕方なし。
 面白くなって無造作に手を動かしていた成佳は、髪の状態を諦めた宏樹から撫でられ
るかたちになり、その最中に体を寄せられた。
「ナル、撫でられるのは好き?」
 肩まである成佳の黒い髪を触れながら、宏樹は訊く。
 大きな手が頭の上を好きに移動して、てっぺんだけではなく横や後ろも満遍なくさす
っていく。少し落ち着いてきたのに、また胸が鳴り出した。
 成佳は首を縦に振り、宏樹の体に軽くぶつける。
 頭突きされる格好になっても、彼は一向に手を止めない。
「じゃあ、キスは?」
 訊かれて、言葉に詰まる。抱き寄せられたことに対する恥ずかしさが一緒に出てきて、
優しく撫でられながらも成佳は唸った。
「…………すき」
 ややあって、小さな声で返した。
「うん、大正解」
 うーっと唸り声が聞こえたあたりから、ほぼ予想通りの返事になって、宏樹は満足げ
に笑って見せた。
 頭を撫でていた手が止まって、顎を持ち上げられる。すかさず、成佳は口を塞がれた。
 唇で音が立ち、すぐに彼は離れていく。
「どうしようか。僕は本を買いに行くつもりだったから、これで済んじゃったけど」
 言いながら、宏樹の目は周囲に向けられる。
 さすがは平日、早い時間というのも手伝って、人の姿は無い。
 あらためて唇を重ねると、少女は赤い顔で視線をくれた。
 しかし、しばらく見つめ合っていた成佳も、首を傾げるだけ。本屋に行くことは事前
に聞いていても、それ以外の行先は特に示されなかった。普段から外出に対して積極的
でないので、彼についていく方が気が楽だった。
「ナル、おいで」
 そのため、何か見つけたように歩いて行った宏樹の手招きに、彼女は素直に応じた。

 百貨店の屋上には、実に都合よく物影があって。
 大型の室外機が幾つも並んで壁を作っている一画は、休憩に来るような客ならまず立
ち入らない、そんな場所。
 頭上に青空が広がるのに、宏樹と二人きりでちょっぴり照れくさい。
 彼の腕におさまると、成佳も相手の体を強めに抱いて密着した。
「……んっ」
 これから何をするのか分かれば、キスをされても驚かなくなる。やさしい最初の口付
けを終えると、今度はそれぞれが舌を口腔で触れ合わせた。
 くちゅ、くちゅ、と粘っこい音を聞いていると、次第に雑念が消えていく。ようやっと
人目から解放された気がして、刺激されたまま膨れ上がる性欲を認めた。
「さっき、本屋さんでしたのは、確認」
 宏樹は指を首筋から胸へと移し、全体を使って覆う。押し込むように動かし、控えめ
な膨らみを確認する。
「や……っ」
 シャツの下にはキャミソールをつけておらず、移動で布が擦れて、既に内側ではニッ
プルが膨れている。
 手が布地越しにそれを押して、成佳は小さく息を漏らした。
 やがて、宏樹の手は腹へ下りると、着衣をめくって布の内側に入り込む。
 胸の両方を直に触れて、その熱が伝わってきた。
「んぁっ! あ、あっ……」
 無造作につつかれ、成佳はひとつ高い音。
 場所を理解した指の腹がスイッチを扱うように押して、次からは甘い声になってしま
う。上下するたびに刺激が体を痺れさせ、痛みとは認識させない。
「ホントに、このカッコで来たんだね」
「だ……ん、あんっ!」
 だって、ヒロがそう言ったから……と口は動くが、言葉が出なかった。
242『目隠し』ではじまるふたり(5) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 23:06:28.39 ID:l8KmBDwv

 一度に両側の突起をこねくり回され、簡単な音が優先されて反論できない。成佳は肩
を震わせながらも宏樹を睨むが、乳首から与えられる快感で力が抜けていき、同じ表情
を保てず、目を開けたり閉じたり。
「本気だったら、僕はナルが着替える一部始終を見届けるよ」
 宏樹は刺激に喘いでいる少女の耳元で呟いた。声と息を当てていた耳に舌を這わせる
と、一際高い悲鳴が上がった。
「だけど、ナルは素直でいい子だから」
「うー……」
 始めから終わりまでを宏樹に見られると聞いて、成佳は複雑な面持ちになるが、同時
に彼ならそうするな、と理解もできる。
 だが、聞いているうちに納得がいかなくなってきた。責められ続けて息が上がったま
ま、彼を睨む。
 いま、その指は敏感な突起ではなく、バストをふにふにと押している。何か口にする
機会をくれているように見えて、本当にいじわる。
 それに乗ってしまう成佳もまた、どうしようもなかった。
「ヒロは、えっちだ」
「も、じゃないの?」
 せっかくの反撃も、程なくして無意味に終わる。意地の悪い笑みを浮かべたその顔が、
言葉に詰まった口を塞ぎにかかった。
「ん、んっ……」
 入り込んだ舌を受け止め、それを舐めるように対応する。
 少年の軟体を擦る行為が、成佳を興奮させる要因だった。夢中になると、唾液が絡ん
で鈍い音を出すようになり、自然と鼻息が荒くなる。
 唇が離れたとき、宏樹の顔はすっかり赤くなっていて、成佳はちょっぴり勝ったよう
な気分になった。
「や、あ……あっ!」
 そんな優越感も束の間、言葉のやり取りを終えたところで、宏樹の指はニップルを捉
える。指の腹でくりくりと捏ねまわし、二点からの刺激に成佳は喘ぐ。
 シャツはそのまま、しかし下着で守られていない乳首を責められる光景は、やけにい
やらしかった。距離が詰まっているから胸元が膨れているように見えて、仮想のバスト
が突起をもてあそんでいる。
「ほら、油断してると……」
 胸から手が下がって、腹をなぞる。日光にさらされて汗が滲んでいる肌を指先が滑り、
成佳はくすぐったさに身をよじった。
「うぁっ!」
 宏樹の手はそのまま、ズボンの股に当てられた。いきなり強烈な刺激に襲われ、思わ
ず仰け反る。不安定な姿勢から立ち直るため、一歩、二歩と後ずさりした。彼に腰を支
えられたまま、先行していた背中が壁にぶつかった。
 濡れた生地と恥丘が触れ合い、温度差に肌が粟立つ。その状態で撫でさすられ、じわ
じわと熱が上がっていく。
 首筋に舌が這い、かいた汗を舐め取っている。同時に、下の方ではジッパーを鳴らし
て、やがて空気の通り道が出来上がった。
「すごい、熱くてベトベトだ」
「あ、ち、ちがっ……」
 逃げ場がなく蒸れてしまった部分を、開かれた部分から入った指がなぞっている。ぬ
るぬると動いて、それが汗染みでは無い事を否応なしに理解させる。最初は窮屈そうだっ
たのが、次第に出し入れを容易に行うまでになった。
「下着もつけてないんだ。……ナルの、えっち」
 そう提案――というか指示――してきた少年に言われて、成佳の顔はかっと熱くなる。
 シャツにパンツ、表面こそ普段着に見えるが、その下で肌を守るものは一切なく、今
日は朝から緊張した状態が続いていた。
 胸を擦る状態が続いて蜜壺が中身を垂らし、普段はショーツが受け止めるところをズ
ボンに広げてしまって、変に張りついては不規則に離れ、ただ歩くだけでも性感を刺激
された。
 そのうえフロアを歩き回ったものだから、汗より愛液の方が多いかもしれない。宏樹
の指をすんなりと表面で滑らせ、ひどく濡れているのが自分でも分かる。
「こういうのって、上は白系統の服で、下はスカートにするんだ」
 わずかな動きでまさぐりながら、宏樹は話を始めた。
 甘い痺れのなかで、成佳は耳を傾ける。
243『目隠し』ではじまるふたり(6) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 23:08:29.04 ID:l8KmBDwv

「この季節だと汗で透けるし、スカートはいつ捲れるか分からない。そんな中で下着を
つけないなんて、スリルばっかりだね」
 ふと想像して、成佳はわずかに恐怖した。そんな格好で街中に居ようものなら、移動
するだけでも体力を使いそうだ。――というか、明確に宣言されては断るしかない。表
面は好きにして、あくまで下着を付けないように言ったのは、宏樹なりの優しさだろう。
 ただ、それすら自由意志だったらしいから、こんな場所でえっちな事をしている以外
に、成佳は自分が少し恥ずかしかった。
 などと思考している間に、彼の片手が胸の方に戻ってきた。それまで腰を支えてくれ
たのが、室外機に背中を付けているから不要に見えたらしく、
「ひゃ……あんっ、ぁ……あっ」
 シャツの内側で乳首をきゅっと摘ままれて、成佳は喘いだ。
「ナルは真逆の方向だったけど、えっちで可愛いから満点っ」
 言いながら二箇所を責め続けられ、成佳は即座に言葉を返す余裕がない。突起を転が
し、恥丘を擦られて、息を漏らすだけ。
 ただ分かったのは、あまり褒められている気がしないことだった。
「んぁ、あっ……ヒロ、やだ……やらし……っ!」
 次第にスリットをなぞる指の動きが速くなる。それが侵入しているのはズボンの腰回
りからではなく股のジッパーで、少し変わった光景が成佳にそう言わせた。
 秘部から生えていた手が抜けると、指には多量の液が塗さっている様子がわかり、陽
にさらされてまぶしく光った。
「……うん、ナルの味だ」
 纏わりついた粘液を口に含み、ぺろりと舌舐めずり。男子なのに仕草が可愛げで、く
すりと笑う様を見て、成佳はどきどきしている。
 未だに胸を触っている手はそのまま、もう片方が髪を撫でていく。こそばゆさにピリ
ピリした刺激が混じって、小さな声が出ていく。
「はい、ちゅー」
 宏樹は少女の口元に近づく。
 宣言からキスの流れになり、少年と唇が重なった。舌が入り込み、口腔を探る。
 お互いが舐めあって唾液を交換している最中も、汗を含んだ指先がニップルを刺激し
て、ぴくりと肩を震わせた。喉を鳴らす音さえ、ぐぐもった悲鳴に変える。
「ナル、ズボン脱ごうか」
 可愛らしいふくらみの先端をいじっていた手は、それを最後に一度だけ強く摘まみ上
げた。成佳はひとつ高い声になって、恨めしそうな視線を送ってきた。
 それを受けながらも、宏樹は膝を曲げた状態でベルトをカチャカチャとはずし、汗が
染みた黒のジーンズをゆっくりと下ろす。履いていたスニーカーごと片方ずつ抜いて、
細くしなやかな脚を露わにした。
 跡地にショーツは無く、愛液にまみれた恥丘が外気にさらされていた。
「……いや、えっちな眺めだな、って」
 しばらく見上げたままだった宏樹が、ふと呟いた。
 刺さる様な視線が一点に向けられ、成佳は恥ずかしくなって顔をそむけるが、下腹部
が疼いて愛液が垂れる。
 こもっていた熱を発散させた脚を持ち上げ、彼は肩に担いだ。股のスリットと口が一
気に近くなり、吐息が触れて身体の奥がざわめき始めた。
「ひぁ……っ!」
 ザラザラしたものが恥肉を這い、成佳は顎を上げた。ぴちゃ、ぴちゃ、と滲んだ液体
を舐め取るように、宏樹の舌はゆっくりと動き回る。
 表面だけではなく陰唇を広げ、蓋の内側を不規則に舌先でつつく。胸とは比べ物にな
らない愉悦が体を巡って、手は握りっぱなしで室外機とぶつかり、ゴツンと派手な音を
たてた。
「あっ! あ……んうっ」
 上がった声は、目の前に広がる風景に吸い込まれる。
 それまでは宏樹が視界を遮っていたが、彼が屈んでいる今、成佳の視界にはフェンス
越しの街並みが映っていた。室外機が壁を作っているところで安心しきって、反対側の
事など気にもかけておらず、ここが百貨店の屋上であることを再認識させた。
「ん、ぁ……くうぅ……!」
 成佳は自身の手で口を押さえた。
244『目隠し』ではじまるふたり(7) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 23:10:29.41 ID:l8KmBDwv

 その場で見えるのは背の低い建物ばかり。しかし、淫行に耽っていると、それらの屋
上からこちらを発見するのでは、とか、声に気付いて誰かが来るのでは、とかを考えて
しまう。そもそもこの場所だって、休憩に来た客が立ち入らなさそうなだけで、可能性
はゼロではないのだ。
 それでも、宏樹は声を引き出させようとして責めの手を緩めない。ぴちゃぴちゃと秘
肉を舐めていた舌が膣口を捉え、ゆっくりと奥へ進んできた。
「あ、んっ! あ、あう……っ」
 声が抑えきれずに漏れ出ていく。膣肉を広げて入り込んだ軟体は、特有のザラザラを
擦りつけて往復する。それに対して体がキュッと窄まる感覚になるが、侵入者を止める
ことは出来ず、数度の出入りで膝から力を抜いていく。
 最中、宏樹の手が下から伸びてきた。内腿を探って脇腹をくすぐり、指先が招くよう
に動く。
 壁を叩いた手とは反対側にある辺り、その意図はなんとなく掴める。だが、脚が震え
て姿勢を崩してしまいそうで、成佳は彼にすがった。
「あっ、ぁ……あんっ!」
 直後、膣を犯していた舌が暴れ始めた。浅く出入りしていたのが好き放題に動いて、
蜜壺をかき回していく。
 手には指が絡まり、お互いが磁力を持っているように繋がったまま離れない。室外機
についたもう片方を外すと背を滑らせてしまいそうで、鉄板をへこませそうな力を加え
て姿勢の維持に努めている。
「あんっ、ヒ、ロ、あっ、だめ……ぁ、んあぁぁっ――!」
 なおも激しく動いて、下腹部から伝わる水音を耳に入れながら、宏樹の吐息さえ刺激
として受け止め、むき出しの声を抑えることもしない。道中でさんざん引き上げられた
快楽に身を任せて、成佳は体を震わせた。
 荒い息をついていると、両足が地面についた。腿を指でなぞりながら、立ち上がった
少年と視線がぶつかる。
「んっ……」
 口づけをひとつ。ちゅ、と音を鳴らして、すかさず舌の先をつつきあう。
 次第に接近して、お互いの唾液を混ぜあっていたが、宏樹はオーガズム後の体に休み
を与えてはくれなかった。
「うぅっ……! ん、く……っ!」
 彼の指が蜜壺に突っ込まれていた。絶頂した直後で意識が回らず、動き始めた今のい
ままで気付かずにいた。
 それでも、成佳は舌どうしの接触を続けた。しかし、責められながらで不規則に息が
漏れてしまい、軟体をうまく操れない。
「ぷぁっ……ぁ、あっ!」
 刺激に耐えかねて、口を離してしまう。舌よりも深い位置で襞をひっかき、彼にしが
みついている手の力が自然と強くなる。
「さっきは、僕の考えてる事がわかったんだね」
 指の出入りが、にちゃ、にちゃ、と鈍い音を発している。
 キスの直後で顔を突き合わせたまま、赤く染まった宏樹が嬉しそうに笑みを漏らした。
「……いじわる」
 それなりの速さで動いていたのに、直前でスローペース。喘ぐだけだった成佳は、書
き溜められていた内の一枚を、喉奥から引っ張り出した。
 もちろん、彼の返事は決まって「ごめんね」で。
「ナルのえっちな声、いっぱい聞かせてほしいから」
 姿勢を崩しそうだったから、とかは一切言わなかったが、宏樹はすべて分かっている
風だった。彼はそれ以上訊かず、指の動きを再開する。
「ん、あっ、あ……っ」
 痺れていた膣肉が感覚を取り戻し、愉悦を濁りなく体に伝える。指は舌よりも容赦な
く動いて、体内をかき混ぜていく。
 腰が引けて変な姿勢になっているが、宏樹は片手で背中を支えてくれた。
「――――っ!」
 一度発散させたはずの性感が再びあらわれて、襞を擦って粘液を鳴らす指になすすべ
もなく、成佳は二度目の絶頂を迎えた。
 数回、身体が震えた。四肢がピリピリ痺れて、宏樹を掴んでいる手に力があるのか分
からない。
 彼は掬ってきた壺の中身を口に含むと、指先を舌で拭った。
245『目隠し』ではじまるふたり(8) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 23:12:30.06 ID:l8KmBDwv

 体勢を立て直し、あらためて成佳は抱き寄せられた。腕におさまって、ゆるく触れる。
軽い口づけをした後も胸はトクンと鳴ったままだが、しかし落ち着くあたたかさだった。
「僕、もうぱんぱんなんだ」
 その言葉で、成佳は下腹部に接触している硬いものの存在を意識した。スキニーを盛
り上げ、主張しているそれは、紛れもなく彼の分身で。
「いっしょに……きもちよく、なろう?」
 言い回しがなんだかとっても可愛らしかったので、成佳は恥ずかしくなって宏樹の頬
を手で鳴らした。
 お返しとばかりにキスのかたちになり、粘っこい音に混じって小さな金属音が耳に
入ってきた。
 それぞれの口唇に唾液が塗られ、舌が動きあう。一度離れた硬い物が下腹に再びぶつ
かり、その熱量が成佳を驚かせた。
「立ったまま、するよ」
 器用に片手だけでベルトとジッパーを操り、いつの間にか宏樹のモノは表に出ていた。
そそり立つ先端がまっすぐに顔を捉えているようで、成佳は思わず視線を外す。
 二回も達して、愛液が垂れる太腿を持ち上げられた。陰唇が震えたところに指で触れ、
具合を確認するように何度も滑る。
「ナル、可愛い顔してる」
 刺激に瞼を閉じてしまったが、彼はそれを可愛いと言う。片足立ちの不安定な状態ゆ
え両手は宏樹の首にかかっている。なおもスリットをなぞられて口からは息が漏れ、成
佳は一度向き合った状態から、ぷいとそっぽを向いた。
「う…………あぁっ」
 入口にあてがわれた屹立が体に入り込み、成佳は挿入感にうめく。
 宏樹は膝を曲げて、やや下方向から肉を割っていき、肌が合わさる頃には根元まで咥
えていた。
「あんっ!」
 いちど奥まで入ったいきりが引き返し、あらためて進入した。勢いをつけて奥を叩き、
衝撃と快楽が混じって顎が上を向く。
 舌と指で責められ、ほぐされた膣肉は、それらよりも大きな宏樹の分身を難なく収め
て、押さえつけようとして成佳の意思とは無関係に動く。この窄まる感覚は、まるで彼
を待ちわびていたような、そんなざわつき。舌や指では直接触れない、秘密の場所を屹
立が擦って、無意識に肩が震えた。
「あっ、あ、ん……! んあっ、は、っ……!」
 顔がすれ違っていて、すぐ脇に宏樹の耳がある。自分の嬌声がうるさいくらいに入って
いるはずだが、しがみついたままで声をどうにもできず、成佳は連続した突き上げに
ただ喘ぐ。
「くっ、ナルのなか……熱い……」
 対して、宏樹の声も間近に伝わってくる。運動をつづけながら、彼の吐く息が耳をく
すぐり、やはり性感を刺激する。
 平均して三十六度前後の体温だが、結合部だけは往復するいきりごと溶かしてしまい
そうに熱い。連なる室外機に混じって、体内をかき混ぜる淫猥な音が響いた。
「ん、んっ……あ、ふぁっ」
 膣肉は勃起の全体を囲んでいる。それでも、絶えず動くものを押さえつけるのは難し
く、捕まえようとして逃げられ、狭まった部分を往復で広げられる。
 成佳は自分が手をまわしている部分から、汗が多量に噴き出すのを感じていた。宏樹
の首と接触している方も熱が高くなって、ふたりして発汗しているのが簡単に分かる。
「あ……ん、あぁっ……あっ!」
 甘い声を聞きながら、腰を動かす宏樹も必死だった。成佳の中では襞がいきりに絡み
つき、その場で吐きださせようと締め付けてくる。だが、下着も無しに往来を歩いてき
た少女に、体内で精を放っては酷だ。
 その気は最初から無いにしても、もう少し彼女と愉しみたいという矛盾した思考がう
まれて、ぐちゅ、ぐちゅ、と水音をかき鳴らす。
「ナル、そろそろ、いいかな……!」
 途切れとぎれで、成佳に伝える。膨大な熱に包まれたいきりは膨れ、陰嚢が縮んで限
界を示していた。
「ん……あん、う……んっ……んあっ!」
 大きさと勢いを増した宏樹の分身で膣がいっぱいになり、ぎゅう詰めにされながらも
成佳は声を振り絞った。
246『目隠し』ではじまるふたり(9) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 23:14:30.50 ID:l8KmBDwv

 最後の方で彼と声が重なり、ぐっと腰を引いたところで体内のつめ物が外れた。
 遅れて赤黒い肉棒が脈打ち、白濁を放つ。シャツの裾や太腿に注がれ、のんびりと体
を伝う。
 持ち上げられていた足が地面に触れ、安定した状態で宏樹と唇を重ねる。手を握り
合って指が絡み、昂っていた感情が次第に落ち着きを取り戻した。

 相変わらず頭上には青空が広がっていた。雲が流れて、しかし太陽は隠れることなく
日差しを提供している。
 身なりを整えると、成佳は慎重な足取りで進んだ。特にパンツと触れる部分は入念に
拭いたが、直前まで責められていた事を思い出すと、また奥の方で液体が垂れる感じが
して。
「えっちな事したら、あつくなっちゃったね」
 フェンスから風景を眺めていた宏樹に並ぶと、彼は気づいて言葉をくれた。
 ふたりとも汗だく、今も額から粒を噴き出している。シャツも肌にべったり張り付い
て、お世辞にも快適とは言えない。
「冷たいもの、食べに行こうか?」
 きつい運動をした後のような疲労があった。体が冷たくて甘いものを欲している。
 その提案に、成佳はひとつ頷き、差し出された手を取った。
247『目隠し』ではじまるふたり(10) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/02(火) 23:16:30.91 ID:l8KmBDwv
以上です。
ゲーセンとかも屋内に移って、今や屋上ってあんまり解放されてるイメージないけど、
そういう場所だと思ってください
248名無しさん@ピンキー:2011/08/04(木) 11:40:06.68 ID:YhnSypep
おーつ
249名無しさん@ピンキー:2011/08/04(木) 13:31:28.72 ID:b97E0qcm
乙!!!
250名無しさん@ピンキー:2011/08/07(日) 09:52:47.68 ID:6UAE1QEA
>>247
乙である。いつも良いエロをありがとう。
彼女同伴でエロ本買うとか…MO☆GE☆RO

タイトルから目隠しプレイを期待したのは俺だけじゃないはず

しかし、少し辛口めに言えば、
ナルの意思表示が増えてる?今回は多く感じた。
251名無しさん@ピンキー:2011/08/12(金) 21:46:32.86 ID:PwG9tWyQ
ほ?
252名無しさん@ピンキー:2011/08/13(土) 10:49:01.39 ID:JEQ9GcSB
…保守
253名無しさん@ピンキー:2011/08/15(月) 07:24:46.37 ID:Pkp7nWgn
一人の時は普通以上に独り言を喋る少女
というそろそろ無口っ子が関係ない

って電波を受信した
254名無しさん@ピンキー:2011/08/15(月) 14:25:57.56 ID://HRWzDY
藤林丈司は裏切り者
255名無しさん@ピンキー:2011/08/21(日) 21:04:34.40 ID:yMQJIY1Z
藤林って何者?なんかあったの?
256名無しさん@ピンキー:2011/08/26(金) 06:32:33.25 ID:3HPfT26I
保管庫更新乙です
257名無しさん@ピンキー:2011/08/26(金) 16:53:58.34 ID:3HPfT26I
「お、つ……」
「お、無口なお前が珍しく自分から喋った」
「!」
「って、何か目の前で書き始めたな」
 さっ。
「無粋に差し出して、何々? ”これはO2つまり酸素がある、呼吸を表してるのであって、別に誉めてる訳じゃない”?」
 こくこく。
「無理にツンデレキャラ作らなくて良いぞ」
「……フッ」
「いや、ニヒルに笑わなくても良いから」
 ぺたん、あ〜あ。
「うつ伏せで膝折り曲げながら不貞腐れないで!」

 かりかり。
「ほい。今度は、えー”私は個性が薄いから、空気になるのが恐い”か」
 こく。
「大丈夫だよ。無口なのも立派な個性。例えるなら小動物のような可愛さ、お前は隠れた正義、守るべき存在(以下略」
 ぴこーん、ばちゅーん。
「聞いてないし! てかいつの間に携帯ゲーム始めた」
 かりかり。
「三枚目ね。”言葉では何とでも言える、言葉はまやかし”って酷いな」
 じーっ。
「……」
「……」

「じゃあ、態度で表せば良いんだろ? 行くぞ! それっ」
「っ!?」
「ぎゅっと、こうして抱き締めるの、嫌がるフリして好きだろ?」
 ぱたぱたぱた。
「どうしたきつい? あっ、すまん」
 ふるふる。
「でも、そう簡単に、言葉に失望するなよ。俺はお前の、どんな言葉でも聞きたいんだ」
「……」
「いや、例え保守ネタでも、台詞が三点リーダしか無くても良い。無口なお前を、出来る限りずっと、見ていたい」
「……あり、がとう」
「はは、お前のそういうとこ、大好きなんだよな」
 ぽっ。

「保守ついでに、じゃあもう少し頑張ってみるか?」
「?」
「ここ、”やっちゃうエロSS”スレだしな」
 ……がぶっ。
「あいたたたた!!」
 がぶがぶがぶ。
「やっちゃわないから許して」
 ……ぎゅっ。
「ふう。でも、キスくらいは良いだろ?」
「……」
「んん?」
 ……こく。
「良い顔だ。じゃあ――」
「んっ……」
「ふ。しっかし、馬鹿みたいに可愛いよなお前」
 くいくい。
「お? そうか、もう60行だな。じゃあ、しっかり締めろよ」
 こく。
「せーの」
「ほ、しゅ……」
「よく出来ました。なでなで、な」
「……うん」
258知識だけじゃダメだから(0) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:05:58.36 ID:1TTaxMo5
いろいろ不安だけど投下してみます。

Q.何を注意すれば
A.普通の事ってすごく難しいということを注意してもらえると
259知識だけじゃダメだから(1) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:08:00.66 ID:1TTaxMo5

 チャイムが鳴り、小泉宏樹は食器を洗っていた手を止めた。
 玄関扉につけられた小窓を覗くと、少女の姿が歪んで映っていた。
「おはよう。さ、入って」
 ドアを開けて少女を招き入れた。黒髪が一歩ごとに揺れて、彼女を特徴づける。
 手には大きめの鞄。ちょっぴり重そうな荷物を置いて靴を脱ぎ終わると、そこに二人
だけの空間がうまれた。
「ナル、つかまえたっ」
 手ぶらになったところで、宏樹は少女を捕獲した――ぎゅっと抱いた。
 柔らかい体の感触がいっぱいに広がり、ほんのり良い香りがする。
 少しして密着の姿勢を解くが、その三澄成佳からはいきなり何をするんだ、と言いた
げな目を向けられた。
 ここは玄関。まだ入ってきたばかりだから無理もないなと納得する。
「嬉しいんだ、来てくれたから」
 言って、その頭に軽く触れる。反射で瞼を閉じる様子が可愛らしい。
 本当はキスもしたいところだったが、そっと奥にしまう。宏樹が階段を示すと、少女
は静かに上っていった。

 グラスの水を喉に通すと、成佳は額をタオルで拭った。
「もう一杯飲む?」
 問いに、彼女は首を横に振る。残った氷をひとつ口に入れると、噛まずに口腔でとど
まらせているようだ。ガラス容器はその手でも収まるくらいしかなかったが、両手で支
えてリスの様。
 膨れたほっぺを指先でつつくと、氷を反対側に移動させた。
 面白くなって交互に繰り返していたが、やがてその手を止められた。成佳は喉を鳴ら
して、お返しに平手を一発くれた。
 ぺち、と軽い音がして、あまり痛くない。
 しかし、おまけにもう一発飛んできたので、宏樹は手を合わせて謝る。すると少女は
ひとつ頷き、自分の鞄から本を取り出した。
「あ、この前の本だね」
 気が済んだ、という風な彼女から、三冊重なった本を受け取る宏樹。自分が数日前に
貸したものが、机の脇に置かれた本棚へ戻っていく。
「また持っていく?」
 声をかけると、成佳はベッドに寄りかかっていた状態から立ち上がり、本棚の前に座
り込んだ。短めのズボンとソックスに挟まれた、ちょっと焼けた肌が目を引く。
 新書サイズが縦に七冊並ぶサイズの本棚は、机と肩を並べるほど。それを下段から探
す少女を、宏樹は隣で眺めていた。
 ときどき手にとっては、表裏をざっと見る。タイトルの書かれた表面で七割、あらす
じの書かれた裏面で三割程度の基準をとっている少年は、成佳がどんな本を選ぶかが楽
しみでしょうがない。既に開封済みだが中身を一切確認しない模様で、さながら書店に
いるような気分だった。
 上の方なんかは手が届かないので、間近で見ようと近くの踏み台を引っ張り出す。
 七段すべてに目をやった後、成佳はあわせて四冊を選びとった。
「それで全部かな」
 頷きが返ってくる。ふたりとも立ち上がって、なんだか会計待ちのような恰好。
 だが、別に実費を請求するようなことはなく、宏樹は同じ読書好きとして、自分の所
有物を読もうとする彼女を歓迎していた。
 彼は本を抱えた仲間の背に手をまわして、その体を抱き寄せた。
「大事に読んでね、ナル」
 貸し出しが始まった時から、今までずっと続いてきた『貸出料』が、数秒のハグ。
 別に彼女の両手が塞がっていたからとかではなく、最初は思わずしてしまったこと。
しかし、過去を遡っても成佳は一度も拒絶せず、二回目から交換条件に提示したところ、
それを呑んでくれたのだ。
 彼女も最初は照れ臭くしていたのに、現在の関係では少しだけ羞恥も薄まってきて、
「免疫ついたね」
 宏樹にそう言わせた。
 初めは所謂えっちな本には全く手を付けず、同じ恋愛でもキスが最上位の認識でいた。
 彼女がいつその類を読むようになったか、きっかけは宏樹も知りかねるが、少しずつ
射程距離が伸びていった印象がある。
260知識だけじゃダメだから(2) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:09:56.84 ID:1TTaxMo5

 成佳は恥ずかしそうにそそくさと自分の鞄に借り物を入れ、棚からまたひとつ手に取
った。

 部屋の主なアクセサリと言えば、机にベッド、後は小さなテーブルや箪笥くらいしか
ない。ここは独立した宏樹の世界で、そこに少女がひとり、ベッドに寄りかかって本を
開いている。
 成佳にならって、少年も本棚から取り出した一冊に目を通す。
 快適なのは弱めに設定したエアコンのおかげだ。二人とも読書に集中して口を開くこ
とはないが、宏樹は本から目を外して、近くにいる黒髪の少女に視線を投げた。
 彼女はあまり話さないが、表情はころころ変わる。ハッと目を開き、くすりと笑い、
眉根を寄せて首を傾げ――いつしか成佳の観察にシフトしている。
 活字に戻ってしばらく、パタンと本を閉じる音が耳に入った。気付いた宏樹が顔を上
げると、少女はテーブルに読み終えたものを置き、ふうと息をついた。
「面白かった?」
 返答は頷きがひとつ。感想を聞いているわけではないので、お互いにそれ以上は何も
言わない。
 棚へ戻しに向かった成佳の背を眺めつつ、宏樹も読みかけの本を静かに閉じた。
「ナル」
 呼びかけに、少女は振り返る。大きめの瞳が瞬きして、続きを求めるように首が傾く。
「もうちょっと、読書の時間?」
 訊かずとも、彼女の目が読みたそうにしている。いちおう確認の意を込めたが、やは
り成佳は頷いて返し、本棚に視線を戻した。
 その背中に近付き、片手の持ち物を元の場所に置く。
「えっちな本を読むなんて、えっちだね」
 指摘に、成佳はビクッと肩を動かし固まった。しかし、既に宏樹は彼女の背中から手
をまわして軽く抱いているので、縦横に並ぶえっちな書物の前から動けない。
 否定するつもりなのか腕を何度もはたかれるが、解放はしない。
「表情が変わるから、どんな場面なのか何となくわかったよ」
 読書の最中、自分が何をしていたかをそれとなく告げる。第三者として物語を見てい
るのではなく、登場人物の誰かに感情移入している風にさえ見えた、彼女の姿勢。
「でも、えっちな所はまだ顔が赤くなってる」
 抱いている片手を使って首筋から鎖骨までを指が滑り、少女はかすかに息を漏らした。
 腕をつねっていたのが、それと同時に離れて床に落ち、コツン、と鳴る。
「ナル、キスしよう?」
 少しだけ乗りだし、彼女の顎を取る。本を読もうとしていたのはどこへやら、抵抗す
る様子もなく唇が触れた。
 薄く赤に染まったそこは、よっぽど集中していた様で乾燥していた。しかし柔らかさ
は残っていて、軽いキスでも感触が残り、もう一回したいと宏樹の裡がざわつく。
 再び、ちゅ、と音を立てて口をつけ、質感を味わった。
「前の日にメールで教えたけど……ごめんね、いきなりで」
 ちゃんと宣言したとかではなく、わずかな時間でコトに及ぼうとしている事を謝る。
 だが、成佳はこの突拍子の無さを理解している風に、小さく首を振った。
「また私服が見られて嬉しいな。髪も伸びて、ちょっと雰囲気が変わってる」
 そんな風に、宏樹は彼女の格好を褒める。
 キスの直後で赤くなっていた頬をさらに色濃くして、成佳は少し照れくさそう。
 今日は短いパンツに膝上のソックスといういでたちで、当然だが上半身に比べると布
が少ない。露出そのものは大した事ないが、細い脚とわずかに見える素肌が目を引く。
 綺麗な黒い髪は、切らずにいたために肩までの長さからさらに進んで、背中に到達す
るまでとなっていた。
「でも、そんなに可愛いと襲っちゃうよ?」
 冗談めかした言葉に、少女はぷいとそっぽを向いた。もう襲っているような状態なの
で、時期ずれなのは明らかだ。
 腿のあたりを撫でつけると、息を呑む音。
 細くやわらかい体をぎゅっと抱きしめ、宏樹は昂ぶっている気持ちを少しだけ落ち着
かせた。
「じゃ、始めるね」
 合図と同時に成佳の頭に触れ、髪を撫でる。よく手入れされていて電灯の明かりが少
し眩しく、途中から着ている黒のシャツに溶け込んでいる。
261知識だけじゃダメだから(3) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:11:52.59 ID:1TTaxMo5

 日焼けを意識して長袖のワイシャツが肌を守っていたが、さすがに室内では袖がまく
られている。彼女の黒髪は白地に対してはとても目立った。
「んっ……」
 肩や腕をそれぞれ触ってから、いったん腹の方を経由して、少女のバストを両手で覆
う。
 途端にぴくりと体が震え、床についていた手が握られた。その反応を見ながら、宏樹
は確認できる布の上から胸を押していく。
「ナル、そこの赤い本、なんてタイトルだか言ってみて」
 推定三枚の着衣ごしに刺激を与えつつ、ふと彼女の前にそびえる本棚のから一冊を示
した。周辺のものでは一番目立つ色なので、成佳も見失わないはずだ。
「こ、『恋の形』……」
 シャツ二枚をもみくちゃにされながら、成佳はそのタイトルを捉え、口にした。わず
かに与えられる刺激に息が漏れるが、赤字に黒のそれを読み上げる。
「うん、正解」
 目印にもなる最初の問題を解き、宏樹は正解者にキスを与えた。最初にしたものとは
違って、次は舌を差出し、舐めあう。
 同時に、彼女の黒いカットソーをまくり上げ、胸より上側にしてしまう。かくして、
白が表を多く占めることとなった。
「次は、右に三つ進んだやつにしようか」
 バストを触れる手はワイシャツの上。衣擦れの音に混じって、成佳の息遣いが聞こえ
てくる。
 一問目から右方向に移動する。ふくらみの柔らかさを認識して、宏樹は彼女の耳にさ
さやいた。
「……っ、『花に、恋する、三姉妹』……」
 少年の手が動くたび、ガサ、とワイシャツが鳴る。ときどき指がニップルを探して移
動し、思わぬところで声が出ていく。衣擦れとどちらが大きいか不安だったが、成佳は
途切れとぎれで答えを導いた。
「正解だよ」
 次第に宏樹の声にも嬉しさが滲む。つぎつぎと正解した少女の耳たぶを甘噛みし、複
雑な形状をした器官に舌を当てた。
「ひゃ……! あっ!」
 そこではじめて、成佳は高い声になった。生温かくてザラザラしたものが耳を這い、
寒気で身体が強張る。
 唾液を塗り付け、てっぺんを唇で挟まれる。ちゅ、ぴちゃ、ずるる……と、間近で粘
っこい音をたてられ、聴覚を犯されている気分になった。
 宏樹は手探りでボタンを見つけ、一個ずつ外していく。シャツに隠れた分と合わせて
三個ほどを取り、やがて左右に分けた。
「ナル、これで最後にしようか。一段上のは、なんて名前かな」
 素肌を覆う薄い布を触れながら、次の問題は意地悪になった。それまで視線が下がっ
たままでも確認できたところを、今度はひとつ上の場所を示したからだ。
 キャミソール越しにふくらみの頂点を探し、宏樹の指は胸を滑った。
「んぁっ、ぁ……し、た……!」
 突起を擦られ、成佳は特定の言葉を口にしにくい。指の動きがちょっと乱暴でも、乳
首にかけられた布が痛みをなくし、ほぼ快感だけになっている。
 その刺激は既に両側から送られて、腰が引けるのと同時に対象から視線が外れてしま
う。いくら近い場所だからと言っても、集中していなければ表題すら頭に残らない。
「は、あんっ……て、のっ」
 甘い声を出しながら体を震わせる、小柄な少女がひどく可愛らしかった。もう答えて
くれなくてもいいから、とにかく彼女の声を聞きたくて、宏樹は二つの突起を摘まみあ
げた。
「あぁっ! ん、ふ、あっ!」
 とたんに、成佳の体がビクンとはねた。しかし、ニップルを布地ごとつまんでいる指
はそのまま、先端をくりくりと捏ねるように動く。
「もう少しだよ、言ってごらん?」
 実際、残すはカタカナ数文字だけだ。問題自体はどうでもよくて、しかし彼女が上ず
った声で答えを紡ぐのが可愛くて楽しい。
 からかうような言葉に対して成佳は少し唸ったが、またすぐ息を漏らして小さくあえ
いだ。
262知識だけじゃダメだから(4) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:14:03.55 ID:1TTaxMo5

「ん……ぅ、んあっ、らんっ、じぇ……っ!」
 流されまいと必死になっていても、強弱のある責めには耐えられない。捏ねくった後
は指の腹が押しつぶしにかかって、幼いふくらみに埋まってしまった。
 それでも、成佳が何とか言い切ったのを確認して、宏樹は指を止めた。
「『明日明後日のフランジェ』……すごいね、よく言えた」
 背後から手をまわして抱くようにしているが、少女からは肘で小突かれている。意地
悪の応酬なので、宏樹は特にやめさせない。
 気持ちが昂って心臓が高鳴り、それを押し付けている成佳の背中を通じて聞こえてし
まいそう。その体を抱きしめても治まらず、むしろ加速させるだけだった。
「本当は図書室でしたかったんだ」
 場所によっては本当に長いタイトルの書物が置かれているはず。そう思うと、この部
屋よりも楽しめそうではある。だが、そもそも誰もいない図書室に入るのは容易なこと
ではなく、もし上手くいっても時間を気にしないと大変な事になってしまう。
 口にしてすぐ、宏樹は自身の考えを否定してしまった。
「これで許してくれないかな」
 言って、少女の顎を取る。
 音の立つような軽いキスを一回するが、それでも成佳の視線は複雑な感情を送ってい
て。
「んむ……っ!」
 彼女からの反撃は猛烈で、口が合わさったと同時に舌がねじ込まれ、暴れまわった。
対応する暇もくれずに動き続ける様子に、宏樹は言外に感じ取る。
 分泌する唾液をさらい、歯の上を擦って、軟体どうしがぶつかる。ゆっくり舐めあっ
ている時よりも激しい粘着音が響き、耳を刺激する。
 結局、成佳が離れるまで宏樹はろくに動けず、一方的に口を塞がれた反動で息が荒く
なった。
「ごめんね。でも、可愛かった」
 背後をとっていた所から移動し、気持ち横側から成佳の顔を覗きこむ。溜飲が下がっ
たのか、直前までのむっとした表情は無くなっていた。
 もう一度、こちらからキスする。下唇に吸いつき、音を立てて、楽しげな口付けを数
回続けた。
「ナル、ここに座って」
 指示して、宏樹は自分の膝を示した。成佳は左右に曲げていた足を放って後ろに下が
り、やがて臀部を乗せて落ち着いた。
 その背に手をやって支え、宏樹は彼女の唇に近付き、ちゅ、と触れた。それと同時に
自由なもう片方を使って、膝上のソックスに覆われた脚を撫でていく。
 成佳と舌を擦り合いながら、靴下から素肌へと指を移した。途端に隙間のあった太腿
がぴたりと閉じて、柔らかな感触に挟まれる。
「あっ」
 拘束する気の全くない、すべすべの肌から抜け出た手でワイシャツをはらう。バスト
にかぶさった黒のヴェールは、彼女の敏感な部分をうっすらと透かして、わずかに盛り
上がっていた。
「は、ふ……」
 ふくらみに触れて、成佳からは艶っぽい吐息が漏れる。足は床を踏んでいるが、あま
り安定しない姿勢なので、宏樹も使う手は片方だけに絞っている。
 布越しに突き返している部分を確認して、責める役目を手のひらから指にバトンタッ
チ。
「ふぁっ」
 ひと突きだけで、成佳は声と共に体を震わせた。もちろん一回だけでは終わらず、指
の腹で押し込み、乳房にうずめてから、円を描くような動きに巻き込む。
「あ、ん……っ、んぁ、あっ!」
 少年は随分と手馴れている。キャミソール越しでも突起を責める動きは的確で、胸か
ら刺激が伝わってくる。
 ちっとも滑らずに押しつぶして、振動に成佳は喘いだ。
「ナル、おっぱい気持ちいい?」
 先端を撫でながら、そんな事を訊いた。キスした直後の体勢でいるので、顔がとても
近い。とうぜん少女の反応を間近で見る訳で、うっすら開いている瞳が視線だけで抗議
している。
263知識だけじゃダメだから(5) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:15:48.45 ID:1TTaxMo5

「ん、あっ、あん、はぁ……」
 宏樹のワイシャツを強く掴み、爪先を擦り合わせて、反応で分からないかと言ってい
るよう。
 しかし、細かい動きで何度も触れ、言葉での反撃をさせない。ぴく、ぴく、と揺れて
愉悦に崩れた表情に萌え、宏樹はくすりと笑んだ。
 それに気づいたのか唇を尖らせ、むっとした表情を向けられる。だが、頬が赤くて怒
っている風には捉えられず、可愛いと思ってしまう。
 成佳にシャツをくいと引かれたので、それに応じて宏樹は彼女と唇を合わせた。
「んくっ、ん……うんっ」
 意図を汲み取ってくれる少年と触れて、成佳は相手の熱を感じ取った。胸からの弱電
流を伴ったキスの最中、空いている手を使って彼の体をタッチする。
 背中にまわした手で少女を抱き寄せ、密着したまま離さない。宏樹は一緒に乳首を転
がして、要求された以上に愉しみを与えた。
「じゃ、こっちもしようね」
 長い口付けを終えて、胸から手を下ろし、成佳の太腿を撫でつける。クーラーが冷や
した素肌に触れて、きめ細かさにうっとりとしてしまう。
「ひゃ……!」
 内腿をくすぐって、その手がパンツに触れた。じわじわと送られていた電流がとつぜ
ん強くなり、驚いて少年のシャツを思い切り引いた。
 足を閉じられるが、もう遅い。股に張り付いた宏樹の手は、それ自体が動かずとも指
を使って、成佳の秘肉を探っていく。
「ナル、もっと触りたいな」
 腿に挟まれたまま、宏樹はお願いする。少女は一瞬きょとんとした顔になったが、
「ベルトを外して、ジッパーを下ろしてほしい」
 途端に真っ赤になった。効果音を添えるなら、ボン!と爆発めいたものが似合う。
 成佳は小声で唸り、微妙な表情をくれる。だが、宏樹はその間も指先で生地を押し、
絶えず性感を刺激した。
「うー……っ」
 見つめあったまま、相手に送る視線には何通りかの意味がある。脱がすのは宏樹のす
ることではとか、自分からはすごく恥ずかしいとか。
 だが、宏樹の言葉はそれ以外に、この体勢だから片手しか使えない事を暗にアピール
している。
 遠くから恥丘を触れているのに身体の奥が反応して、さらなる刺激を求めているのは
自分が一番わかっていた。
「……それだけ、だから」
 かなりの時間を要した後、小さくつぶやいて。成佳はおずおずと自身のベルトに手を
かけた。金具が穴から出て、帯が抜ける。続いてズボンの留め具を外し、ジッパーを下
ろして、隙間からショーツが垣間見えた。
 少しだけのぞく彼女の耳も赤く染まり、ちらりと目を向けたところで、かなり恥じら
っているのが理解できた。
「うん、ありがとう」
 両手が拳になって固まっているその体を緩く抱き、緊張を解く。強張っていたのが柔
らかくなり、成佳の手がぺたぺたと腕を触れてきた。
「んあっ」
 ズボンの内側に入り込み、熱を含んだ肌を滑る。冷房の効いた部屋とはいえ、ずっと
着衣の下にあった部分はやはりあつい。
「あ、すごく熱い」
 それを口に出して、羞恥を煽る。ショーツの付近は太腿より熱を帯びて、手に汗をに
じませた。
「は、ん……あっ」
 乙女の秘密をゆっくりとなぞっていく。成佳の嬌声を聞きながら、どこからか発され
る熱気で手首から先を蒸されそう。
 指が何か濡れたものを触れていて、往復の最中に彼女の状態をなんとなく察する。
「や、はぁっ!」
 下着をくぐって、ついに生の恥丘にたどり着いた。強い痺れが襲いかかり、成佳は姿
勢を崩しそうになった。
 弾力のある肉は、表面がわずかに湿っていた。おかげでショーツに押さえられている
状態でもよく滑り、動くのは容易だった。
264知識だけじゃダメだから(6) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:16:51.79 ID:1TTaxMo5

「ナル、汗っかきなんだ」
 そこにあるのはもちろん別のものだが、他の場所が汗をかいているので指摘する。
「あ、あんっ! ……ん、いじ、わる……っ!」
 顔がかっと熱くなるのを覚えながら、成佳は喘ぎあえぎで口にした。
 しかし、宏樹の手はもぞもぞと蠢いて、足を閉じても止めることができない。上下の
動きはかわらず、愉悦にじわりと滲むものがあった。
 スリットを擦る指には、湧き出た愛液がまとわりつく。往復によって恥丘へ広がり、
ほとんど摩擦のない滑らかな移動を可能にした。
 やがて粘ついた音を奏で、指を操る宏樹も興奮を隠しきれない。だが慎重に、滑る動
作から切り替わる。
「ん、あ……んん……っ!」
 突き立てられた細い棒が入り口を探り当て、ゆっくりとした挿入に成佳は呻いた。し
かし、ざわめき続けていた体は差し出された餌を喜び、既に喰いついている。
 先端が蓋を割ってすぐ、宏樹は引きずられるような感覚になった。まるで壺の中に何
かが潜んでいて、噛まれたような痛みと共に奥へと導かれる。指を包んでいる壁も手伝
って、関節の二つ分までは簡単に入ってしまった。
「入っちゃった」
 言うと、成佳はショーツに潜り込んだ腕の先を眺め、あさっての方向をむいた。
 少しの余裕を持たせながら、来た道を引き返す。それだけでも襞が絡みつき、簡単に
は逆らえない。
 そのくせ、再び奥を目指すときは助けてくれる。くちゅり、と体内の分泌液が音を立
て、まるで歓迎しているようだった。
「あ、あっ、んぁっ」
 下着も含めて三方向以上から押さえられているため、往復はそれほど速くできない。
だが、少女は甘い声を上げ、シャツを掴んで刺激と闘っている。
 ふと向けられた潤んだ瞳に、宏樹の心臓は高鳴るばかり。蜜壺をかき回す指をその中
で曲げて、砂利を敷いたような粒々を引っ掻く。
「く、あぁっ! ん……っ!」
 成佳は襲い掛かる愉悦に耐えかね、両手でしがみついている。背を支えている宏樹の
手もすっかり汗ばんで、体温の上昇を伝えた。
 黒のソックスに包まれた爪先は重なって、指先が丸まっていた。曲げては移動する指
によって、快感を導いているのは紛れもない。
「あ――っ!」
 すがる少女を片手で抱き寄せる。聞こえた声は途中で途切れ、瞼をきゅっと閉じて、
彼女の身体は何度か揺れた。
 振動が伝わって、それまで以上の締め付けを味わう。やがて痙攣が治まっても拘束は
強いまま、宏樹はなんとか蜜壺から指を引き抜いた。中に入れていた一本以外も、あふ
れ出た液を塗り付けて鈍く光っている。
 襞を引っ掻いたものを口に含んで、舌で拭った。それから、オーガズムの余韻で息を
荒くしている成佳の膝裏に腕を入れる。
「楽にしていいよ」
 横抱きの状態で、すぐ近くのベッドに成佳を寝かせた。小柄な彼女は宏樹でも抱えら
れる程度には軽く、それでいて可愛らしい。
 ワイシャツ以外、成佳の着衣は黒い。そこに挟まれている少し焼けた肌が特徴的で、
髪を広げた背景のシーツが、そのスタイルを目立たせていた。
 両膝をついて彼女の体を跨ぎ、手をついて顔を近づける。ようやく安定した姿勢をと
れて、絶頂を迎えた少女の息遣いも整ってきた。
「じゃあ、最後は指より大きいので、ナルを犯してあげる」
 すごい台詞だな……と、宏樹は口にしておきながら裡でつぶやいた。
 それに対する成佳の反応はというと、
「ぐっ」
 頭突きだった。
 至近距離なのはもちろんだが、動作が少ない割に痛みがひどい。額どうしがぶつかり、
鈍痛が襲い掛かった。
「……でも、それだけの環境は整ってる」
 宏樹は額をさすりながら、
「今日、ここにいるのは僕とナルだけ。泣いても喚いても助けは来ないよ」
 仰向けにしている少女の不安を煽った。
265知識だけじゃダメだから(7) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:18:03.51 ID:1TTaxMo5

 しかし、途中から笑みがこぼれて、言葉の現実性が失われてしまう。そのせいか二度
目の頭突きはなく、代わりに平手が頬にぶつかり、ぺち、と軽く鳴った。
「……いじわるだ」
 視線を外したまま、成佳は小声で呟いた。
 頬に触れた手を剥がして、宏樹は彼女の顎を動かす。目を合わせてから言葉に対して
頷きを返し、薄桃色の唇に迫って、一瞬だけ重ねた。
「大丈夫、ひどいことはしないから」
 今度は成佳のほっぺたを指でつついて、ぷにぷにとした感触の中に埋める。
 いじめると言っても、苦痛を伴う様な真似はしない。ふたりだけの空間で、身体を触
って、口にして刺激するだけ。愛でるとか可愛がるの方が、ニュアンスとしては近しい。
 だが、乱暴な単語ほどかわいらしい少女に使いたいものはない。覆いかぶさって最初
の言葉で、成佳は片手で自分の肩を抱いたのだ。そんな反応を見せてくれるから、宏樹
は彼女をいじめたくなってしまう。
「気持ちいいことはするけど、ね」
 前髪を持ち上げ、おでこにキス。立て続けに唇で触れたからか、成佳の表情が緩んで
いる気がした。
「キス、しようか」
 頭を撫でて、安心した様子で目を細めていた少女に、宏樹は合図を送る。瞬きをした
ところに、成佳の唇と接触した。
 触れるだけの口付けをして、それから舌を突き出す。まるで思考を読んでいるみたい
に、成佳も全く同じタイミングで舌先をつついた。
 ザラザラの表面を擦り、唾液が伝って口唇をぬめらせる。軟体が踊ると粘着音が聞こ
えて、性的なこと以外は陸に考えられなくなってしまう。
「んっ、く……」
 最中、成佳をくすぐっていく。耳、首、だんだんと下降していく指が胸元に置かれて
いた手を払いのけ、薄い布に覆われたボタンを押した。
 とたんに彼女の舌が引っ込む。いきなりの刺激に対応できなかったのか、動きにあわ
せて息を漏らした。
 閉じてしまった瞼を開けて、非常にゆっくりと舌があらわれ、宏樹は再びキスを要求
した口を塞いだ。
「ふぅ、んっ、んんっ!」
 ぐぐもった悲鳴が口腔で響く。
 狙いをつけてから、宏樹の指はニップルを撫でまわした。キャミソール越しとはいえ、
ほとんど直接触れているようなもので、硬くなっているのはすぐに分かった。
 いつしか両手が肩を掴んで、ぐっと引き寄せてくる。それだけに強く密着して、宏樹
は懸命に鼻で息を続ける。
 苦しかったのは少女も同じ模様で、口が離れたときにはお互いの呼吸が重なっていた。
唾液を塗った唇はもとより、頬や額も汗を滲ませて、冷房の効き目を疑ってしまいそう。
「んぁっ」
 乳首を軽く摘まんで終わりにし、宏樹は体ごと後退して成佳の恥部に迫る。革製の重
たそうなベルトと留め具が外れ、ジッパーも下りている彼女のパンツは、体操着のズボ
ンよりも短い。生足でないから肌の露出は少ないものの、少年にはちょっぴり刺激的だ
った。ワイシャツがはだけているこの姿を、デジカメで撮影して残しておきたいくらい。
 思考が逸れかかったが、ヒップを持ち上げて片足ずつ抜いていき、ショーツを残して
ベッドの片隅に置く。同じ手順を踏むのがもどかしくなって、宏樹はクロッチの部分を
ずらし、そこから入り口を探って指を立てた。
「あっ、ん、あぁっ!」
 恥丘の表面は少しべたつく程度だったが、その奥は相変わらずの熱量を持っていた。
すぐに襞が絡みついて指を締め付け、二本分の関節をひとつ、ふたつと飲みこんでいく。
「は、あん……っ!」
 視線の先で、成佳はシーツを握りしめている。もう片方の手が口元にあるが、嬌声は
留まることなく発されていた。
 外に漏れださないだけで、中には多量の液体が含まれているようだった。喰われたも
のを一度抜き、また差し込んで、彼女の具合を確かめる。
「ナル、お邪魔するね」
 さらってきた愛液を蓋に塗り付け、宏樹は既に露出していた屹立を手で支えながら、
指が出入りした場所に近づける。
 下着をどけて、先端につけられた肉の実を膣口に差し出し、ゆっくりと咥えさせた。
266知識だけじゃダメだから(8) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:19:00.83 ID:1TTaxMo5

「く、ぁ……」
 押し込まれるような挿入感に、成佳は体を強張らせた。直前の言葉通りで、指よりも
大きなものが入り込んでくる。
 少女の腰を支えて、確実な動作で身体を合わせる。入口をくぐってすぐ、強烈な電撃
が背筋を走っていった。うねる様な動きでいる膣肉は、彼女とひとつになることを助け
ているのか妨げているのか分からない。下手にすればこの刺激だけで達してしまいそう
で、宏樹は額から汗を垂らしていた。
「よ、しっ」
 この言葉を出すまで、どれほどの時間が経ったのかを知りたくはなかった。
 ぴく、と震えた成佳に軽くキスして、襞が絡まっている肉棒を後退させる。
 引き抜くときから、鈍い音が立てられた。最後まで残っている先端から愉悦が伝達さ
れ、宏樹はちっとも気がぬけない。
 二度目はスムーズに奥を目指すが、それで締め付けがなくなる訳ではない。奥を叩い
てから引き返すまでの時間が短くなり、自然とテンポの良い往復へと変わっていく。
「あ、っ……はっ!」
 ズン、と衝撃が抜けて、成佳の身体は本人の意思とは無関係に反り返る。下腹部を何
度もノックし、体内をかき混ぜて水音をかき鳴らす。
 しっかりと繋がった状態で一時停止し、宏樹は少女の体を起こした。
「ふぁっ……! ん、んっ……」
 勃起の上に座る様な姿勢にして、成佳を下から突き上げる。ふたり分の体重が集中し
て、金属のばねが同じ数だけ軋む。
 動作に加えてキスまでするので、あらゆることに集中していなければならない。読書
のそれとは異なるが、宏樹はただ応じて軟体を舐めあった。
「や、ん……あんっ!」
 嬌声がすれ違って聞こえる。しがみついている少女の背と腰を支えてバランスを崩さ
ないようにし、尚もいきりを上下させる。
 吐息の熱も体温もなかなかだが、接合部はその何倍も熱いと印象付ける。宏樹の分身
は先端から根元まで、これでもかと言う程に絡み、締め付ける膣肉に包まれていた。
「んあぁ……」
 ひとしきり揺さぶった末、宏樹は再び成佳を寝かせた。いきりは蓄えた熱を放出した
そうに彼女の体内で脈打ち、妙な寒気を寄越してくる。ここまで来てしまうと、抱き合
っても口付けしても、昂った気持ちを落ち着かせられない。
「きゃっ! ん、あっ!」
 片手で乳首をこねくると、いきなり締め付けが強くなった。真っ赤に染まった顔は快
楽に喘いで、シーツをくしゃくしゃにしている様子が愛らしい。
 抽送に追いすがる襞の動きは、ここに蓄えを置いて行けと言わんばかりで、もみくち
ゃにされている勃起がいよいよ限界を訴えている。
「んあっ! あ、あっ! ふあぁっ!」
 脱がさずに残したままのショーツは、顫動する襞から出てきた部分をさりげなく擦っ
ていた。愛液でぬるついたとはいえ刺激に敏感ないきりは、絶えずどこかから快楽をも
たらされて、それが宏樹の加速につながる。
 腰を打ち付ける音と成佳の蜜壺をかき回す水音、ついでにベッドの軋む音が耳に入っ
て、少女の声と合わさった四重奏に聴覚が麻痺してしまいそう。
「んっ、ヒロ……っ!」
 ぽつんと名前を呼ばれた気がしたのと、屹立が彼女の身体から抜け出たのは同時だっ
た。宏樹は言葉を発する余裕すら失って、脈動と共に出来上がった熱の塊を放出した。
勢いのいい一発が成佳の腹に、続いてショーツや腿に降り注ぎ、最後の方はシーツを汚
した。
 収まりがついてから、息を荒げている少女の横に寝転がった。とろけた顔がのんびり
と動き、やがて視線がぶつかる。
「僕ばっかり、だったかな」
 宏樹は自分ばかりが快楽を求めていたのではと不安になったが、成佳は首を左右に振
って否定した。
「そっか。よかった……」
「……ん、あっ」
 ふうと安堵の息をつき、手近にあった彼女の突起を触れて、最後にキスを添えた。
267知識だけじゃダメだから(9) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:19:34.26 ID:1TTaxMo5

 後始末を済ませたころには、時計がレの字を描いていた。短針が縦棒なので少し形が
悪いが、ちょうど昼時だ。
 成佳には休んでいてと伝えて部屋に残し、宏樹は台所に立っていた。
 窓から細い道路が見えるが、それだけ。空はすっきりと青いが、こんな日にも本の虫
は外に出たりしない。
 交換したワイシャツの袖をまくって、表面を水で流した野菜と向き合う。野菜を生の
まま使うか、火にかけるかでしばし一考。
 と、背後に足音を認めて宏樹は振り返った。
「あれ、降りてきたの?」
 成佳だった。家には二人しかいないので当然といえばとうぜんだ。一番上に着ていた
黒いカットソーがなく、彼女のワイシャツは裾が出っぱなしで、それ一枚で歩いている
ように見えてしまう。
「手伝ってくれるのは嬉しいよ」
 少女はこく、と頷くが、宏樹は「でも……」と続ける。
「そんな恰好じゃ、火加減よりナルの方に意識がいっちゃいそう」
 言われて、成佳はハッとした顔で慌てて着衣の裾をパンツに押し込んだ。下着でない
ことに安心はしたが、穿き直したそれは長さとしては少ししか変わっておらず、どうし
ても目が引かれてしまう。
 宏樹は手招きして彼女を呼び、その体を緩く抱いた。
「シャワー浴びておいで。下着も汚しちゃったし、洗濯機も使っていいから」
 耳元で囁き、さらに「ね?」と確認をとると、黒髪の少女は小さく頭を縦に振った。
「さっぱりしたら、冷たいものもおいしいよ」
 昼食は素麺にするつもりだ。その前に、誤って成佳を料理しないように、宏樹は彼女
への気持ちを押しとどめる。
 ややあって、成佳はゆっくりと離れていった。
 少女の背中を見送って、宏樹はあらためて包丁を手に、視線をまな板に戻す。

 この玉葱は、サラダにしよう。
268知識だけじゃダメだから(10) ◆q2XBEzJ0GE :2011/08/30(火) 21:20:48.51 ID:1TTaxMo5
以上になります。
作中で色々と出てきますが、実在するものとは一切関係ありません。
269名無しさん@ピンキー:2011/08/30(火) 22:02:19.16 ID:gisLvsYL
GJ
270名無しさん@ピンキー:2011/08/31(水) 16:51:53.30 ID:KbjjuFLg
ナル、かわええの〜!!
271名無しさん@ピンキー:2011/09/02(金) 09:10:27.51 ID:IF7vyq//
限りなく宏樹もげろ
272名無しさん@ピンキー:2011/09/09(金) 00:25:28.26 ID:eSbWuszR
はひふへ
273名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 21:40:17.79 ID:B9pGHpYs
投下します。
題名:どうしてこうなった
>>94-98
と同じキャラで投下します。
語り手の感情が時々暴走。
ではいきます。
274どうしてこうなった:2011/09/10(土) 21:41:24.54 ID:B9pGHpYs
残暑がきつい九月上旬の昼、12時。
ある日の土曜日親が両方とも海外出張だった。
「…暇だ…しかも暑い…何すっかな〜?」
なんて考えていた時、来客を知らせるチャイムが鳴った。
「は〜い!どちら様?」
「…私……」
鳴らしたのは渚だった。
「こんな時間から珍しいな?どうした?」
「……上がりたい……」
俺は渚を家のリビングに招いた。
「そんで、どうした?」
「…親…居ない……」
と渚は書置きを俺に見せてきた。
『渚へ、ごめーん!!言うの忘れてたけど、今日から4日ほど夫婦で海外旅行券当たっちゃったから、行って来ます。
追申、お金置いておくから自分で作って食べること。母より』
「むちゃくちゃだ…んでなんで俺んとこに?」
「………(ウルウル」
渚は上目遣いで俺を見つめてきた。
つまりこいつは料理が出来なく俺に作ってもらおうと考えていたのだった。
「おまえまさか…家事…できないの?」
「………(コクリ」
マジかよーーー!!!!!!
いやいやいやいや、待て!俺は渚に何を期待しているんだ?
べ、べつに俺は渚の裸エプロンを期待してたわけじゃないからな!?
「……淳…真っ赤………」
「え!?裸エプロン期待してるわけじゃねぇからな!!」
「!?」
「あ…(やべぇ思ったことを俺は…いっちまったぁぁぁぁ)」
「……淳………」
渚は顔を真っ赤にして俺を睨んでいた。
さっきまで無かった何かを握りながら…
ん?何かって?あ〜あれは…キッチンにあった切れ味抜群の包丁だ…ん?ちょっと待てよ?包丁?あぁ包丁ね、包丁…って包丁!?
しかもウル目!?プルプル震えてる!?ま、まさか!?
「え〜っと…渚さん…?まさかあなたはこの包丁で俺を血祭に?」
「………淳のバカ!!!!」
「おわーーーーー!!!!!」
渚は、俺に向かって問答無用と言わんばかりに包丁を振りかざしてきた。
「な、渚さん!!それは食べ物を切る為にあるものであって、決して人に向かって振り回すものでは!!」
「……バカ!!」
「ひぃぃぃぃぃ!!!!」
午後1時…
俺はあれから包丁を振り回して荒ぶる渚を必死で説得し何とか怒りを納めさせた。
もちろん包丁は台所に返しておいた。
「わ、悪かった…」
「………………」
反応なし。
しょうがねぇ…
「なぁ渚…腹減らないか?」
「……(コクリ」
「じゃあ…」
「…ん…」
俺は渚にキスをした。
「飯食う前に運動しとくか」
俺は渚を押し倒した。
275どうしてこうなった:2011/09/10(土) 21:42:08.75 ID:B9pGHpYs
「…淳…ずるい…」
「そうか?」
可愛いやつめ!!そんな目で睨んだらもう俺は手加減できねぇぞ?
と内心そう思いながら渚の上に覆いかぶさった。
「ちゅ…っと」
「ひゃ…ぁん」
俺は渚の首筋に吸い付き跡を残した。
「渚、可愛いよ」
「………!!」
渚の頬がさらに赤くなった。
俺は渚の服を脱し、胸を揉んだ。
「ぁ…ん…」
「声、ガマンすんな?出したいときは思いっきり出せよ?」
「……(フルフル」
「真っ昼間だから恥ずかしいって?」
「……(コクリ」
そりゃそうだよな〜…でも俺は動じない!!
「じゃあココをこうしたら?」
俺は渚のホットパンツを脱がし、ショーツの布地をずらしてクレバスに指で触れた。
「んあぁ!!」
「ほらな?」
「あ、あ!!!…ダメ!!」
第一間接まで指を膣内に進入させ、浅く指をスライドさせると渚は首を横に弱く振り始めた。
「ココが気持ち好い?それとも…」
俺は渚の膣内から指を抜き、ショーツを脱がした。
「こうされるのが好いのか?」
俺は、渚のクレバスに顔を近づけ、舌で膣内を舐め始めた。
「ひゃ!!あぁぁぁん!!らめぇ…!!!」
「渚のココおいしいな」
「…ぁん…!…バカぁ…!!」
「渚…そろそろいいよな?」
「………(コクリ」
俺は勃った肉棒を渚の膣内に挿れた。
「あ、あ…!」
「渚のナカ、すっげぇとろっとろ」
「ふあぁん!!らめぇ!」
俺は次第に限界に近づいていた。
「渚ッ!!俺!!」
「外…!そとぉ!!」
「分かったッ!!クッ!!!」
俺は渚の顔に射精した。
「「はぁ…はぁ…」」
俺も渚もへとへとだ。
「メシ…食うか?」
「うん…」
結局俺と渚は食事をとった後、互いが壊れるまで楽しくて激しい1日を過ごした。
END
276名無しさん@ピンキー:2011/09/10(土) 21:42:42.35 ID:B9pGHpYs
以上です。
277 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/09/11(日) 00:57:34.15 ID:I288eEjw
>>276
GJ
278名無しさん@ピンキー:2011/09/11(日) 01:01:41.51 ID:AzK7CzYx
GJ
裸エプロンを期待してたのにどうしてこうなった
279名無しさん@ピンキー:2011/09/14(水) 01:00:59.86 ID:06bJ0pLL
裸エプロンがない……だと……!?
280名無しさん@ピンキー:2011/09/14(水) 01:41:44.12 ID:D6TtWu89
無口+一人称「僕(ボク)」
281名無しさん@ピンキー:2011/09/15(木) 06:15:06.59 ID:yuVj458l
表情豊かな無口っ子
282名無しさん@ピンキー:2011/09/20(火) 23:31:21.50 ID:nIx89B+h
イク時だけ人一倍大きな声を出す無口っ子

詰まるところが取り扱い注意
283名無しさん@ピンキー:2011/09/25(日) 00:19:29.87 ID:J0kVcV79
言葉なんていらない。ただ抱きしめてキスをすれば良い。
あるいは手を握り隣を歩くだけでも良い。
ぎゅーぎゅっぎゅーぎゅっぎゅー。
決まったリズムで彼の手を握ればどうしたのかと振り向いてくれる。
私が好きになったのがこの人で良かったと思う。
ぎゅっぎゅっ、少し開けて、ぎゅっぎゅーぎゅっぎゅっ、ぎゅーぎゅーぎゅー、ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅー、ぎゅっ、もう一度、少し開けて、ぎゅーぎゅっぎゅーぎゅーぎゅー、ぎゅーぎゅーぎゅー、ぎゅっぎゅっぎゅー。
ドキドキしながら彼を見つめ、思わず手を握る。ぎゅーぎゅっぎゅー。
彼の手に力が入るのが分かる。
ぎゅーぎゅー、ぎゅっ、少し空いて、この時点で彼の答えは分かってる。だから唱和するように、私もリズムを合わせて、ぎゅーと握られれば一度長いキスを。ぎゅーぎゅーぎゅーと握られば三回キスを繰り返す、これを二回。
私たちの愛の確かめ方には、言葉なんていらないんだ。
それといつまでも隣を歩きたいから、通信終了の合図もいらない。
284名無しさん@ピンキー:2011/09/29(木) 23:46:28.16 ID:iCqxU9PE
保守
285名無しさん@ピンキー:2011/10/01(土) 09:35:03.07 ID:VD1yTUOw
>>284
少しヤンデレ風味なのか…すこし恐怖すら感じる
286短編@台詞なし:2011/10/03(月) 21:20:02.36 ID:pnmlD4tm
ぽつ、ぽつ、ぽつ。雨が降る。
一人きりの雨は嫌い。いつもの外の騒がしい音が聴こえなくて、余計に寂しくなる。
お出かけもできないし、退屈だ。
びゅー、びゅーびゅー。風が吹く。
窓が揺れていて、ちょっと怖い。
そこそこ古い家だから、壊れるかもしれない。
そういえば、網戸をまだ外していなかった。今度晴れた日にやっておこう。
ごろ、ごろ、ごろ。雷が鳴る。
ときどき遠くに落ちて、大きな音が聴こえる。
おかげで停電だし、ご飯も作れない。
雨も、風も、雷も、嫌い、嫌い、嫌い。
でも一番嫌いなのは、自分の声。
暗くて、怖くて、歪で、不快な声。
だから喋らない。
人の前では喋らない。
何も言わない。
人の言葉に逆らわない。
布団にもぐって耳を塞ぐと、何も聴こえなくなる。
雨が屋根を叩く音も、風が窓を揺らす音も、雷が落ちる音も。
自分の声も。
でも、何か聴こえる。
ドアの外。
こん、こん、こん。誰かが扉を叩く音。
優しく、優しく、私が驚かないように、扉を叩く音。
その後に、扉の向こうから聴こえる、大好きな声。
ぽつ、ぽつ、ぽつ。
雨が、大好きな彼を運んでくる。
287短編@台詞なし:2011/10/03(月) 21:21:09.42 ID:pnmlD4tm
おわり
エロなし
無口っ子はネガティブな印象
288名無しさん@ピンキー:2011/10/04(火) 23:54:09.56 ID:06SgaOak


スイッチが入ると妙な方向にだけポジる無口っ子も好きだな
289名無しさん@ピンキー:2011/10/05(水) 00:18:24.83 ID:VRK0hf9R
無口っ子が無口になった理由はなんだったのか…
そんなことを想像すると…
290名無しさん@ピンキー:2011/10/05(水) 08:03:28.06 ID:Kla5vqRn
言葉が話せない頃から一緒にいた幼馴染
言語を解するコミュニケーションは必要最低限で済んでしまう
291名無しさん@ピンキー:2011/10/13(木) 00:47:28.25 ID:mLCMm6KT
結局、森田さんは心の中はつぶやきまくってるな。
292名無しさん@ピンキー:2011/10/22(土) 02:38:07.62 ID:AvgidulC
無口っ子と無表情っ子はどうしても一緒になるよな
293名無しさん@ピンキー:2011/10/24(月) 13:42:56.79 ID:7WtsNKaY
口の無い女の子
294名無しさん@ピンキー:2011/10/25(火) 15:25:11.41 ID:8s4555WR
こえーよ
295名無しさん@ピンキー:2011/10/25(火) 20:33:05.37 ID:kMz9E/Tt
のっぺらぼうとな?
296名無しさん@ピンキー:2011/10/26(水) 00:40:19.24 ID:t231N37m
のっぺらぼうだと全部無いじゃないかwww

……のっぺらぼうって確かむじな(たぬき?)が化けた妖怪だったよな?
「無口っ子狸の恩返し」という言葉が(r
297名無しさん@ピンキー:2011/10/26(水) 00:49:32.21 ID:nd9R0REL
無口じゃフェラできねーじゃん>そういう問題ではない
298名無しさん@ピンキー:2011/10/26(水) 19:17:21.52 ID:qoWcUgut
>>296
ごん、お前だったのか!ってこれキツネじゃねぇか
狸さんより狐さんのほうが無口っぽいのは何でだろうか…
299名無しさん@ピンキー:2011/10/27(木) 23:16:16.75 ID:5Mnjw4Lj
平成狸合戦とかで狸が喋り続けるからとか?

狐は人間に長時間化けてるイメージだし、
一度化けられるとほぼイヌ耳って言う
300名無しさん@ピンキー:2011/10/29(土) 00:04:18.36 ID:lOw09/iB
スレチなんだけど女の子と二人きりになるっていうスレなくなっちゃった?
301名無しさん@ピンキー:2011/10/31(月) 00:02:07.21 ID:kBIN4Tfv
無口っ子に好物のバウムクーヘンをあげる代わりに
後から周りこんでちょっとぎゅっとして、さらさら髪は良い匂い
食べながら「何?」と言われたから、お菓子あげたからいたずらする
と耳元で囁くと、ぞく、と少し恥ずかしそうに反応する。可愛い

無口っ子が着ているのは黒のタートルネック、露出はどちらかと言えば少ないけど
腕とか胴を細く見せると共に、胸の膨らみが強調されていて
肌に近い感触と手触りも柔らかくて、抱き締めながら手が動く
「やっ」
煽るような反応をしながら尚ももくもく、お菓子を味わう無口っ子

小さな体の中に、甘いお菓子
お腹を擦って、それから斜面を上るようにそっと撫で上げていって
本当は揉みしだきたいけど、そのまま指先を谷間に、皺を作るように更に上に沿って
顎の先から一度指を離すと、今度は頬に掌を
温かくて多分薄ら赤くて、咀嚼でむにむに動くのが面白い
「もうっ」
こくん、と飲み込んでから、ようやく玩具にされたことに難色を示す

普段はべったりでも、お菓子がある時はそっちが優先
そんな時こそ手を出したくなるのが性。お菓子より、こっちを見てほしい
「……」
じっと目を見つめる。無口っ子も手を止めて、視線に釘づけになっている
綺麗な瞳。目蓋がやや下がって、がさ、と音がして
体を捩って腕を取ってきた。引き寄せられて、唇が触れ合った

きみがくれたもの、いちばんだいじにしたいとおもう
でも、きみのほうがもっとだいじだって、わかってる
おかし、わけっこしよ?

キスの息継ぎや頬擦りの度に少しずつ、そんな言葉を完成させて
こっちも悪かったと謝って、お詫びに優しく熱を交換する
キスだけでも口の中はお菓子の甘さがいっぱいに広がって、でもひとまずおしまい
本当は甘い物、無口っこほど好きな訳じゃないけど
「あーん」
細かくちぎった甘い欠片を、口の中に入れてもらう

食べさせ合い、少し小さめのバウムクーヘンは少しずつなくなっていって
最後の一切れは、無口っ子がこっちの手首を受け止めて、摘んだ指先から貰う
これまで以上にじっくり味わって、やがて喉を通り過ぎて
でも名残惜しいのか、今度は残った甘さを求めて、おもむろに指先を舐めてきて
そしてそのまま、離れなくなる

キスをもう一度、今度はもっと激しく
お菓子よりも癖になるような愛を、無口っ子にあげよう
空の袋を放って、横たえる。上からまた被さって、吸うようにキス
今度はしっかり胸を、幸せを掌に収めて、じっくり愛撫する
下から服を捲し上げてブラをずらすと、今度は素の感触を
片手は濡れた指先のままに、彼女のデニムのボタンを外し、チャックを下ろして
隙間から薄い下着の中に手を潜りこませると、茂みに
「みやこー、お菓子いるか?」
がたっ!
「ん? どうしt(筆箱直撃)」

「……ってーな。勝手に入ったのが悪かったのか? ごめん」
「べつに」
「なら良いけど。で、友達からハロウィン分のお裾分け――ん? ネットで何か見てんのか?」
「! ちがっ、みないで」
「冗談だよ。あとでこっち来いよ」ぱたん
「……ふぅ」
302名無しさん@ピンキー:2011/10/31(月) 00:10:15.39 ID:JBGLPU5A
GJをあげるので悪戯させてください
303踏まれた記念日……?(0) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:07:23.98 ID:F01EjkYk
投下してみます。

Q.「やられちゃうSS」な件
A.後半で攻守交代します。……ちょっと心配

(作品自体が)長くなって申し訳ないです。
304踏まれた記念日……?(1) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:08:47.62 ID:F01EjkYk

 他人の髪を触るのは、とても信頼された関係の象徴ではないかと思う。それが好きな
異性であるなら尚更のことで、背を向けている少女の黒髪を触れて、少年はふうと息を
ついた。
 部屋の天井にある電灯でわずかに光る流れへ指を入れ、下方向に滑らせる。肩まであ
ったものは月日が経って背まで伸び、もう三カ月もすれば腰にまで届きそうだ。
 最初に着ていた一式は洗濯機を経由して天日に干され、少女は代わりの衣服を身につ
けている。しかし、カットソーが無い以外はほとんど同じ格好で、ワイシャツに真逆の
色がとても目立ち、少し分ければ下着がうっすらと透けてしまう。
 トクンと胸が鳴るが、少年はその気持ちを押さえつける。撫で梳くのは終わりにして、
髪を左右に少しだけ持っていく。
 長い白色のリボンで括り、気持ち強めに結ぶ。もう片方も同様に作って、細いツイン
テールができあがった。
「よし、これでいいかな」
 小泉宏樹はちょっとした達成感と共に、三澄成佳の頭をぽん、と軽く叩いた。それか
ら、部屋の隅に立てかけてあった鏡を引っ張り出し、座った状態の体を写す。
「髪が長いのって羨ましい」
 言葉は向こう側でリボンの具合を確かめている成佳へ。この帯は宏樹が使っていたも
ので、こちらも伸びすぎた時にまとめる程度の使用はしている。深い意味はないが、扱
いに慣れているのはそのせいだ。
 横側の髪を持ち上げては下ろし、手の中からするりと抜けていく。この感触を維持す
るのに、普段は黒髪の手入れにどれだけの時間を割いているのか、少しだけ気になった。
「そうだ、眼鏡なんかかけてみる?」
 言うが、返事を聞かない。宏樹はすぐ机の引き出しを開けにかかり、フレームだけの
眼鏡を渡す。
 成佳はレンズが無いのを不思議そうに眺めていたが、やがて装着した。
「わ、図書館の人みたい」
 歓喜の声と共に両手を鳴らし、宏樹は眼鏡を掛けた少女に図書館のイメージを与える。
もともと読書好きの図書委員であるところの成佳が、どこかレベルアップしたような、
知的な姿をしていた。図書室を出て、もっと大きな場所で貸し出し受付けをしていそう
だ。
「すてき。よく似合ってるよ」
 自分の所有物を身につけ、それが似合うというのも中々無い話だ。宏樹は純粋に嬉し
く、鏡で姿を確認している少女を緩く抱いた。
 ただでさえ照れて頬が赤くなっていた成佳は、より一層色濃くなって俯いてしまった。
「ナル、ちょっと相談なんだけど……」
 宏樹は真っ赤になった彼女の耳に近付いて、小声でごにょごにょと話を始めた。

 それは意外な提案だったかもしれない。
 普段は『いじめっ子』なのが、突然『いじめられっ子』になるのは、なんだか不思議
でならなかった。
 宏樹によって作られた髪形と眼鏡をそのままに、成佳は読書をしていたが、直前の話
が脳裏をよぎって活字への集中が途切れてしまう。
「ナルから責めるのはどうかなって」なんて言った少年は、今は本を手にして同様にペ
ージをめくっている。その様子を探って、機会を窺う。
 何しろ、受け攻めが変わることは今まで無かった。女子は受け身であるという考えは、
実際に異性と体を重ねるようになっても変わらずにいる。だから、自分が上になった場
合に何をすればいいのか、どうも分からない。普段と同じように――彼からされること
を――すればいいだろうか。
 宏樹は『妹ハイキック!』なる本を読んでいる模様で、それが発言に影響しているよ
うだった。内容としては双子の兄が妹にいじめられるもので、行為は基本的に女性上位
で行われている。一度や二度、目を通したことがあるから、詳細もわからない訳ではな
い。
 ぱらぱらとページを捲る以外は、二十五度に設定された冷房の動作音くらいしか無く、
部屋がただ広いだけの空間に思えてしまう。手にしている新書もえっちなシーンに差し
掛かっているが、物語とは違う意味で心拍数が上がっていった。
 頬が熱くなるのを感じながら、男女が交わる部分を目で追っていく。何となく選んだ
一冊だが、やはり男子がリードしている。
 表情の変化、というか顔が赤いのを分かって宏樹はああ言ったのかと、成佳はここに
至って納得がいった。だが、いくら文章でも慣れるものではない。
305踏まれた記念日……?(2) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:09:47.33 ID:F01EjkYk

 戸惑ったまま読み進めても、本を閉じるのは少年より早かった。開いてから一時間ほ
ど過ぎたところで、新人募集と書かれたページを過ぎたそれを、机と同じくらいの高さ
になる本棚に戻す。
 先程は座り込んだ状態で背後をとってきたが、肩越しに振り返っても宏樹は動きを見
せない。
 彼のいる、ガラスを張ったテーブルまでがどうも長く思えて、じわりと不安の色が滲
んできた。
 さっきまで構ってくれたのに、活字を読んでいる最中は一度も視線を感じず、いきな
り突き放されたようで、成佳は縦書きのタイトルを選ぶ所ではなくなってしまう。
「…………ナル?」
 足を崩した状態から立ち上がるでもなく、四つん這いになって移動し、まだ読書中の
宏樹のもとへ寄る。部屋着らしいズボンを少し触れて、そこに彼の体温を認めた。
 少年はすぐに本を閉じて、頭を撫でてくれた。それだけで安心して、自然と笑みがこ
ぼれていく。見上げれば、あちらも顔が綻んでいた。
「もう、甘えたさんなんだから」
 まるで迷子のような顔だった。
 相談事の後だったので、なるべく成佳の方から動いてもらおうと、彼女に目をやるの
を止めていた。言葉の後でわざとらしく溜息をついてみせるが、何か意外なものを見た
気がして、くすくす笑いになってしまう。
 態度の割には全然、仕方なさそうとかは感じられない。宏樹の手で起こされ膝立ちに
なると、床を鳴らして距離を詰め、彼の首に手をまわした。
 一瞬でも寂しいと思ったからなのか、これが恥ずかしいとかは一切なく、むしろほっ
とした気分で、成佳は宏樹と抱き合った。体が暖かくなって、ふうと息が漏れる。
「じゃあ、さっき言ったように、してほしいな」
 そっと撫でられて、発生していた眠気が一気に失せる。宏樹の相談を忘れかけていた
成佳は、言葉と同時に思いだし、ハッと目を見開いた。
 密着から解放されるが、けっきょく結論が出ずにハテナを量産してしまう。
「んー……触る、とか。ナルの好きなようにしていいよ」
 首を傾げて、少女の視線は助けを求めているようだった。ひとつ提案すると、まだ悩
んだ表情のまま、肩に乗っていた手が動く。
 好きなようにと言われたものの、成佳はされてばっかりの立場だったため、いまいち
勝手がわからない。その場に座り込み、ワイシャツに包まれた宏樹の腕をぺたぺた触る
にとどまった。衣服も冷房の影響を受けて、熱のある手を冷やす。
 やがて部屋着の袖をまくり、肌を露出させる。少年は手指を揉んだ時に身じろぎをし
たくらいで、完全にされるがまま。
「力加減がいい感じだね」
 これでいいのかと言いたげな目に、宏樹はそう答えた。ちょうど昼食を作る際に使っ
た部分を揉み解され、気持ちがいい。
 成佳は安堵の表情を浮かべた後、一生懸命にしてくれるが、マッサージを頼んだわけ
ではないので、このままずっと、という風にはいかない。
 少し悪い気はするが、彼女の行動を促すため、言葉にする。
「ナル、えっちな事するときって、何から始めてた?」
 とつぜん言われて、成佳はまた首を傾げてしまった。二の腕を揉んでいる指をそのま
ま、少年と見つめ合う。
 空いている彼の手が髪に乗って、ゆっくりと動く。思い出して、とのメッセージを間
接的に送られて、成佳は数刻前の出来事を頭に浮かべた。
 再び膝立ちになり、二の腕から手を外す。答えが導かれると、それに従うのは意外と
簡単だった。
 背中に腕をまわして、宏樹の体に密着する。思いっきり力を入れるのとは対照的に、
彼は優しくしてくれる。体温が上昇して、額に汗が滲んできた。
 いくら言い聞かせても、それに反して鼓動が速くなる。抱きついて動かずにいても、
道がわかると落ち着かなくなって。
「んっ」
 至近距離から宏樹の唇を奪う。最初は一瞬だけ、柔らかい感触を覚えてから、続けざ
まにもう一度、口を繋ぎ合わせた。
 二度目のキスはさらに強くして、成佳は舌先でノックし、口腔に侵入した。
306踏まれた記念日……?(3) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:10:58.48 ID:F01EjkYk

「く、ん……っ」
 無造作に動いている舌に対応しようと、宏樹も必死になった。しかし、頬の裏側や歯
の表面をザラザラしたものが擦って、上手く触れあえない。それでいて強い拘束で、息
をするには鼻で何とかするしかなかった。
 成佳は一心不乱に少年の口を蹂躙した。今は抱きついたまま体を触られることもない
ので、舌の動きに集中して、唾液をさらっていく。
「ん、うんっ」
 宏樹の呻く声を聞きながら、動きが少し落ち着いてきた。なめらかに軟体を擦りあっ
て、唾液による音が耳に入る。どちらの口腔で鳴っているのか分からないが、それが聴
覚を刺激して、どこかに設置されているスイッチを押していく。
 粘ついた音がいつまでも反響し、成佳は自身の頬が熱っぽくなるのを感じた。
 口付けの後、密着を解いて彼の頭を撫でた。上にはねている癖毛はふんわりしていて、
同じ髪なのに不思議な触り心地。さらに首筋をくすぐって、体温の上昇を確認する。
 それから、ベッドに移動して腰かけ、傍らを数回たたいて示した。
「寝ればいいんだね」
 細い腕が物を押しのけるような動作をし、宏樹は思い至った。少女が頷いたのを見て、
取り替えたばかりのシーツへ仰向けになる。
 成佳は彼を跨ぎ、ベッドを軋ませながら両手膝をつく。あまりない上下が逆の格好で、
宏樹の顔がシーツに乗っている。
「う、くっ」
 それにしたって間が持たない。普段なら話しかけてくる側が受け身になっているので、
成佳は言葉が出ずに口付けに至った。
 軽いキスから舌の触れ合いに移動し、軟体を操って宏樹の口腔に入り込む。甘くも苦
くもない彼の味を堪能して、運んできた分を嚥下した。
「どう? えっちな気分になってきた?」
 鼻だけでは足りない分を口で補い、宏樹は積極的なキスを仕掛けた少女に訊く。
 荒い息をついている少年の顔はすっかり赤く染まっていた。成佳は思考を読まれてい
る気がして恥ずかしくなったが、頷くと笑みが返ってきた。
 実際、最初の口付けで思考が切り替わっていた。責められている時は意識していなか
ったが、今も頭の中では資料の整理が行われている。次にどうするべきか、えっちな知
識が引き出された。
「わっ」
 バストを触れたのと同時に、宏樹が驚いたような声を上げた。体が動いて、成佳も手
を引っ込めてしまう。
 あらためて手を伸ばし、片手だけを使い、ワイシャツに隠れているボタンを探る。衣
擦れの中に、彼が息を漏らす音が聞こえた。
 しかし、いくらまさぐった所で乳首の存在を認められない。白い布の上を指が滑るも
のの――そもそも比較対象にするのもおかしな話だが――胸は平らで盛り上がりに欠け
る。
 体を起こし、腰を下ろせば、成佳の臀部は宏樹の下腹部と接触する。その状態で、近
い方から彼の部屋着を分けていった。
「な、なんか恥ずかしい」
 計五つのボタンを外して、胸元を開く。休みに入る前よりかは幾分か日に焼けた肌が
露出し、顔から腹までは素肌が続いた。下着に当たるものがないので、少し触れたバス
トも、中心に位置する色の濃い部分も、全てがさらけ出される。
「ひゃ、う……っ!」
 唇だけの口付けを数秒、それから首筋へと舌を這わせ、僅かな塩味とともに産毛を舐
めていく。
「うわっ……ナルっ」
 鎖骨を経由した生温かい軟体が乳首を踏みつけ、宏樹は思わず眼鏡の少女を呼んだ。
突然の事にびくりとするが、しかしザラザラした感触の物体は唾液を塗り付けて動きま
わっている。
 成佳は彼にちらと視線をやったが、それから先を聞かない。ちろちろと舌先で突起を
つついては、口に溜まる液を塗って鈍く光らせた。
 小ぶりだが宏樹のニップルは確かに硬く、舐める動きにあわせて彼の身体が小刻みに
揺れるが、成佳はそれを逃がさない。
 唾液で濡らした場所に吸い付くと、「んーっ!」と口を塞いで呻く声が上がった。
307踏まれた記念日……?(4) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:12:05.72 ID:F01EjkYk

「うぅ、ナルが意地悪する」
 少年の頬は林檎に喩えられそうなほど赤く、小声で抗議する様子に、普段の小泉宏樹
が重ならない。癖毛と伸ばしっぱなしの髪がシーツに広がり、分かれたシャツから覗く
肌や、細い体が女子のよう。
 顔を離した成佳だったが、今度は手を伸ばして、主張している突起へ触れた。
「んぅっ!」
 閉じたままの口から、声が漏れていく。そっと当てられた指先から電流が走り、肩が
跳ねた。間を空けて何度も押されるが、送られる刺激に体が慣れる様子はなかった。
 指の持ち主は新しいおもちゃを見つけて、興味を持った子供のように接している。そ
の顔は紅潮して、フレームの奥で目が笑っていた。かなり興奮しているのは間違いない。
「ヒロ、敏感なんだ」
 意外だと思いながら、成佳はぽつりと呟いた。
「ぅ、あ、そんなことっ」
 宏樹は首を左右に振って否定する。しかし、女子の細い指で触られた乳首は硬くなっ
ており、言葉とは一致しない。
「ちょっと……くすぐったい、だけ、っ……!」
 それは陰茎から与えられる刺激に比べて甘ったるく、片方だけだというのに体の痺れ
は増す一方で。何度も押され、その度に肩が揺れたが、眼鏡の少女は変わらず、赤い顔
で視線を向けている。
「んぁっ!」
 押しボタンのように扱っていた少年の突起を、成佳は指の腹で捏ねまわした。
 くすぐったい、などと言う割に、宏樹の反応は性的なものだった。当初は大仰に笑う
か、最悪無反応かと考えていた側としては予想外で、キスをきっかけにえっちな気分に
なった成佳を過熱させた。
『男の人でも、こんな声出すんだ』
 ニップルをつまんで微動させていた成佳の頭に、ふと一文が浮かんだ。先ほど宏樹が
読んでいた『妹ハイキック!』の登場人物、“咲森未来”が、兄の“咲森修一”を責める場
面で口にした言葉だ。触れている箇所は彼のそれと重なる。
 この後、さらに『……気持ちいいの?』と問いかけるのだが、成佳はさすがに出来な
かった。
 いちど手を止め、悶えている少年と唇を合わせた。あらためて癖毛を撫でて、耳や首
筋をくすぐりながら舌を差し出す。
 キスの最中、宏樹の体は小刻みに動き、振動が背中にまわった腕を伝ってくる。成佳
は負担をかけないように注意しながら、両膝と片手で体を支えた。
 湧き出す粘液が狭い空間でかき混ぜられ、粘っこい音が発せられた。軟体は表面のザ
ラザラでその一部をさらって、自然と交換するように発展する。あまりに高い温度が口
腔から四肢を火照らせ、冷房が効いているとはいえ汗が垂れてきた。
 口が離れれば、足りなくなった酸素を補給するために息が荒くなる。普段は覆い被さ
る側の宏樹は、なんだか息苦しそうだった。
 同じく肩で呼吸をしながら、成佳は上体を起こして彼の腹に腰を下ろした。体を跨い
だ膝で体重を分散させつつ、赤い顔をした少年に視線を送る。
 じ……と見つめあってしばらく、珍しく宏樹の方から視線が逸らされた。やはり『す
る側』と『される側』には意識の違いがあるようで、逆に成佳は彼の顔を見たいという
思考が、恥ずかしさよりも前に出ていた。
 そっぽを向かれてしまったが、無防備になったバストへと手を伸ばし、触れる。
「は……」
 冷風にさらされた胸を覆われ、宏樹の体はぴくりと震えた。丁寧な動きが意識を集中
させ、ゆっくり揉むようにして送られる刺激に、どうしても反応してしまう。
「んっ! ……っ!」
 吐き出される息の間隔は短く、どこか甘い響き。たびたび感じていた女子のような印
象をそのまま、シーツをひっかく音が耳につく。
 上から見下ろすような格好になったのにも訳がある。成佳は弾力のある胸を押してい
た手を止め、中央で突き返してくる突起へと狙いを変えた。同時にふたつ、指の腹で何
度も擦る。
「ひゃ、ふっ」
 次第に動きが速まり、意図せず上ずった声が漏れていく。バストの全体を触れるより
も強烈な電流が渡され、上半身が何度も跳ねる。
 片手で口をふさいで、宏樹は声を堪えているようだ。それでも熱のこもった息や小さ
な喘ぎは聞こえて、成佳は彼の反応見たさに様々な動作を行った。
308踏まれた記念日……?(5) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:13:03.99 ID:F01EjkYk

 指先で軽くつつき、真上から押し、摘まんだ状態から軽く引く。いずれにしても、首
を左右に振り、手足がじたばた動いて、可愛らしく抵抗した。動作を続けているせいで、
少年の髪は普段以上に広がっている。
「……んっ」
 成佳はふと、呼吸とは違う調子の息が出た。
 ニップルを刺激する行為は、成佳自身にも影響を与えていた。ふれているのは宏樹の
体だが、彼の突起を指で弄る度、こちらも弱めの力加減で触られている気分になる。実
際には何もされていないのに、下着とワイシャツの内側で痺れるような感覚を認めた。
 最初こそ不安だったこの行動も宏樹の反応を見る限り正解らしく、彼がすることをヒ
ントに乳首を責める。
 参考に選んだ一冊の本と、今の状況は似ていた。“修一”は中性的な顔つきをしていて、
体が細い。癖毛ではないが他の男子よりも声が高く、眼下で喘いでいる少年と重なる要
素が多かった。そのせいだからか、『もっと彼を鳴かせたい』――“未来”の思考と合致
し、硬く尖っている宏樹の突起を弄ぶ。
「は、ぁ……ふ、くぁっ」
 口を手で覆っても、後からあとから声が出ていく。眼鏡の少女が体を跨いでいるので
逃れることができず、乳首を捏ねまわされて体が跳ね、言うことを聞かない。
 むき出しの胴体に汗を噴き出し、宏樹は抑えきれない音を発しながら身じろぎした。
「……ヒロ」
 二本の指を動かしながら、成佳は呟く。こちらも適当なところで熱を含んだ息を吐き、
相手の感覚とシンクロするように、ふたつの突起が刺激される。
 悶えている様子があんまり可愛く、くすりと笑みを漏らした。本当に別の誰かに思う
前に、名前を口に出すことで認識する事ができた。
 手を止めて、少し進んでから上体を倒す。顔を突き合わせ、熱のこもった息を間近で
受ける。
「かわいい……」
 少し悔しいが、そう口にせざるを得なかった。普通なら男子を相手にかわいいなどと
は、言えたものではないと理解している。しかし、乳首を触られて喘ぐ様子や、何より
女子と見間違えそうな顔は、それを褒め言葉へと変えていた。
「んむ……っ!」
 責めの手が緩くなり、何か言いたそうにしていた宏樹の口をふさぐ。口付けの間にも
彼の髪を撫でて、どこかで接触した状態を保つ。
 口唇をぺろりと舐め、成佳は体を起こした。バランスを取ろうと膝で動き、少しずつ
腹から股の方へ下がる。
「ひゃっ」
 そこで、真下から唐突に刺激を受けた。不意打ちに上ずった声が出て、後退していた
途中で仰け反ってしまう。
 目を向ければ、宏樹も複雑そうな顔。初めはちっとも意識していなかったが、彼の部
屋着と自分のパンツ越しにも、その盛り上がりは感じられて。
「……えっち」
 危なく、一人で倒錯的だと感じる所だった。そそり立った勃起はまさしく男子の証拠
になって、何やら安心する。
 いつまでも上に乗ったままという訳にもいかないので、成佳は宏樹の脇に移った。そ
れこそ、女の子のようにぴったりと閉じられた脚を、余裕のあるズボンから抜く。
 これまた見る機会の少ない青基調の下着から、小山を作っていた器官を露わにした。
「わっ……」
 驚いたような声が宏樹から出たのと同時に、成佳もこく、と息を呑んだ。
 先端に肉の実をつけた棒と、その付近は肌の色が濃い目で、血管が浮かんで見える。
なんというか凶暴そうな印象で、およそ柔らかく笑う少年には相応しくない。きょうの
今日までハッキリと目の当たりにしたことは無かったが、あらためると相手を間違えた
のではとさえ思う。
 電灯の灯りを受けて光り、頭から何かを滲ませているのが分かった。
「は、うっ」
 根元の当たりを掴み、手の中に収める。どくん、どくん、と鼓動するのが伝わり、不
規則に全体が脈打つ。
 赤く染まった宏樹に視線を送るが、数秒もしないうちに逃げられてしまった。
309踏まれた記念日……?(6) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:13:57.75 ID:F01EjkYk

 ふと、成佳はこの高熱を自分の体と比較する。上半身を触られ、特に刺激されなくて
も下腹部は熱くなる。表面に液体を滲ませるのも似て、彼も先程までの行動でこのよう
な状態になったのだろう。共通点めいたものを見つけて、ふしぎと口角が持ち上がった。
 不安要素は上半身の愛撫だけで、ここを責める手段は――本で見た程度には――心得
ている成佳。一度も経験していないが、既に思考は何をしようかと盛り上がっている。
 手で扱く、口に咥えるにしても、宏樹から提案されたことは無かった。そのくせ、新
書や文庫で活字から取りこんでいて、方法はなんとなく分かる。
 受けにまわった彼を相手になら、確かにどうにでも出来そうだ。しかし、参考図書に
『妹ハイキック!』を選んだ成佳は、今まで数多く見てきた二つとは違う、別の手段を
採った。
「な、ナル?」
 宏樹は妙な声を出した。
 いきりから手を離した黒髪の少女は、こちらの脚を開いたと思うと、そこに生まれた
空間に座り込んだ。視線の先に小さな山が二つ現れ、短いパンツと同じ黒のニーハイに
挟まれた、わずかに見える素肌が眩しい。
 体育座りの様な格好で、彼女は眼鏡を整えた。
『じゃあ、足でしてあげる』
 成佳の頭に、“未来”の言葉が浮かんだ。
 普段は“修一”に従順な妹だが、えっちの時には決まって主導権を握るようになる。成
佳がしたように兄を責め立て、勃起に気付いた後の台詞だ。今は口にしなかったが、こ
の体勢で宏樹も察しただろう。
 彼女に倣って、片足だけ浮かせる。
 そのまま、反り返っている肉の棒に迫った。
「くぁっ!」
 ボディをつついた途端、遠くで高い音が上がった。同時にその体が跳ね、成佳はびっ
くりしてシーツを踏みつけた。
 あらためて持ち上げた脚を近づけ、爪先で接触する。指に大きな一文字を感じて、動
かずにいると脈動が伝わってくる。
「あ、うっ……うぅっ」
 押し当てられたままの足が上下に動いて、宏樹は呻いた。ニーソックスが陰茎の裏側
を持ち上げ、擦り、引きずる。さすがに二十三センチ以上の起伏には収まりきらず、先
端だけが布ごしに触れている。
 活字で繰り広げられる責めの様子を思い出しながら、成佳はぎこちなく彼の勃起を踏
みにじった。男性の急所なのだから、これ以上力を加えてはいけないような、心配の念
も現れる。
 だが、短い距離でも上下することで、宏樹に快楽を与えているような気がした。その
証拠に、指に湿り気を感じている。
「つ……はっ!」
 敏感な赤い先端を擦られ、強烈な刺激が体を駆ける。宏樹は鈍い声を上げるが、それ
に構わず少女の足はゆっくりと下方向に動いて、棒の部分をなぞり、引き返す。
 屹立から液体をもらうのと同時に蒸れて、履いている膝上のソックスは自然と濡れて
いく。すると滑りも良くなり、成佳の動きを加速させた。
 そうして宏樹をいじめていると、胸が高鳴り出す。トクトクと小刻みに全身を伝って、
息が熱い。
 現場のすぐ直線状に位置する、パンツとショーツに覆われた部分は、彼から触られた
わけでもないのに、じわりと滲むものがあった。
「うぁ、あ……!」
 細やかな繊維が肌を擦る様は、まるで濡らしたスポンジで洗われているような光景に
似ていた。天を仰いでいた先端は少女に踏まれ、赤く熟れた肉の実は鈍く光って、そこ
から湧きだした液体は成佳の靴下に吸い込まれていく。
『お兄ちゃん、これが気持ちいいの?』
 レンズの入っていない眼鏡を元の位置に戻して、成佳は刺激に喘ぐ少年を見やった。
顔は別の場所を向いているが、頬の赤みは隠れていない。勃起はびくびく動き、滲んだ
液はソックスに染みて、前後の運動で少しずつ伸ばされる。
 ゴシゴシという音が聞こえそうなほど、足裏で扱く。履いている繊維が体温と摩擦で
破けてしまいそうだ。
「あぅっ! ……っ」
 あんまり強烈な刺激に、宏樹は少女の名前を呼べなかった。口はその形に動くのに、
なぜだか声が出ていかない。
310踏まれた記念日……?(7) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:14:53.44 ID:F01EjkYk

 爪先で屹立を踏みつける黒髪の娘は、掛けた眼鏡を何度も指で整え、すっかり上気し
た顔でいる。その真剣な眼差しが耐えられなくて、彼女と目を合わせられずに左右の壁
を行ったり来たりしている。
 本当は暴れないでほしいのだが、踏まれてもなお宏樹の分身は反発する。成佳はその
後頭部を突いて、張り詰めた皮ごと引きまわした。
『そっか。妹に踏まれてこんな風になるんだもんね』
 何しろ、この硬い棒を責めるのは初めてのことだ。いつもは意地悪な少年の反応が、
痛いのか気持ちが良いのか判別がつかずにいた。いま一度、“修一”と照らし合わせて、
“未来”の言葉で成佳は納得する。
『お兄ちゃんって、』
「……へんたい」
『……なんじゃない?』
 頭に浮かべるだけでなく、ついに口から声になった。実際、足蹴にしている部分は熱
を増して、何度も脈を打っている。言葉の対象としても間違いはなく、成佳は一言で罵
った。
 ぽつんと呟いた言葉は、摩擦やシーツを引っ掻く等、様々な音が飛び交っていても耳
に届いた。瞬間、ビシィ! と衝撃が駆け抜け、宏樹は手の先から固まってしまう。
 少女は新しい煽り文句を小声で連呼して、混乱した頭に何度も響く。いつものひらが
な四文字より、よほど酷い言われ様だ。
 意外もいがいな足での責めは驚きばかりが先行してしまって、屈辱的とかそういうこ
とは考えずにいた。だが、「へんたい、へんたい」などと言われて、いじめられる側の
羞恥がどんどん大きくなっていく。
 既に宏樹の中では、裏筋を摩擦されてやってくる容赦のない電撃が、痛みから愉悦に
変わろうとしていた。しかし、恥ずかしさがそれを認めさせず、変に呻くような声を上
げて抵抗する。
「ナル……っ」
 どこか辛そうな印象の音。それでも、えっちな知識で溢れている成佳の意思は、宏樹
を愉しませたいという考えが突っ走っている。真っ赤な顔を一瞥して、山を作って傍観
していたもう片方の足を持ち上げ、腰を浮かせて逃げようとする肉棒の動きを封じるた
めに加勢させた。
「うわっ、あっ」
 前進して距離を詰め、勃起を手で起き上がらせてから、二本の足で挟む。まるで土踏
まずの窪みから生えているように見えて、ニーソックスの黒に相手の肌と赤色が際立つ。
手に馴染みのない液体は微妙な臭いで、空気に触れてベタベタになった。
 先程より明らかに振動が伝わり、爪先ではなく足裏の中央に来るのでくすぐったい。
だが、いつまでも同じ状態でいる訳にいかず、両脇に構えたふたつをゆっくりと下降し
た。
「く……ぁ」
 予想していた、痛みを伴った刺激と違い、宏樹は意に反して高い声になった。分身の
頭を踏まれないだけで、ほとんど軽減されて愉悦ばかりがやってくる。成佳の足がスロ
ーペースで動くのもあり、純粋に気持ちが良い。
 眼鏡の少女は脚を開いているので、生の太腿がしっかりと映る。すぐ内側には彼女の
秘所があるわけで、どんな状態かと想像をめぐらせ、血液が集中していく。
『……あ、びくびく動いてる』
 “未来”が、さも楽しそうに口にする様子が描かれる。
 やはり両サイドから挟み込むのは正解だったようだ。少年は顔をしかめたりもせず、
むしろ勃起がバネ仕掛けの玩具みたいに跳ね起きようとする。近くの電灯を反射する先
端部分もよく見え、止めどなく溢れる液体が乾いている方のソックスにも染み渡った。
 しゅ、しゅ、と、足を上下することで分泌液を塗り、肌色の蛇口をスムーズに擦りあ
げていく。その間にも持ち主は顔を左右させて、両手が敷かれた布を掴んでいる。
「な、ナルっ、だめ……!」
 いよいよ痛覚への刺激が無くなったところで、細い脚を操っている少女に懇願した。
 しかし、視線に映るのは首をちょこんと傾げ、またも眼鏡を整える様子だけ。白いリ
ボンとツインテールが揺れて、唇に添えた手で笑いかけてくる。言葉こそないが、よう
やく口から出た願いも叶わない。
『お兄ちゃん、もう限界? 白いの、出ちゃう?』
 “未来”の言葉は、未だにえっちな本に慣れない成佳にはインパクトが強い。自分で頭
から引き出しておいて、ボッと顔が熱くなった。
311踏まれた記念日……?(8) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:27:18.69 ID:F01EjkYk

 宏樹が苦しそうに発した言葉を聞き入れず、全体にニスを塗ったような輝きを見せる
肉棒を、さらに扱きあげる。左右からの圧力も強くして、もはや急所がどうとかは思考
から抜けていた。
「あっ、くぅ……」
 ダメだと言ってしまうと、なぜだか『刺激に耐えなければ』という考えが現れる。だ
が、腰は浮いて、いきりを左右から揉みこむ足に敵うはずがない。
 歯を食いしばっても背筋を走る寒気は消えず、
「うあぁっ! く、は……っ!」
 押し寄せるだけの悦楽に、わずかに残って抵抗していた羞恥が白旗を上げた。
 赤の中から白が現れたかと思うと、いきなり飛び出し、成佳は驚いた。それはもう噴
水の様で、宙に浮いた後は重力に従って落ちる。ソックスに乗ったほとんどは消えて、
砕いたゼリー状のものが足裏に残った。
 どくん、どくんと荒々しく脈を打つ肉棒を足で挟み、それでもなお上下に引きずる。
最初ほどの勢いはないが、白濁はまだこぼれて靴下を汚した。
「あ……う……」
 胸を上下させる少年は、放心したように静かな息でいる。
 黒い器から生えていた肉茎は、役目を終えてぐったり曲がった状態になった。
 成佳は靴下に白く残る物体を指で掬う。鼻に近付けると首を傾げたくなるにおいで、
躊躇のすえ口に含むと、表現しにくい味と感触に、飲み込むまでに少々の時間を要した。
二倍以上の唾液と一緒にしても喉にこびりついた様な気がして、けほけほっと咳込んだ。
 ほとんど滲みこんだ後だが、精液で汚れたソックスで床を踏んでしまう。成佳はティ
ッシュの箱を手に、まだ起き上がらない宏樹に寄った。
「んっ!」
 ふにゃりと柔らかくなった宏樹の分身は、自ら噴き出した液体を纏ってべとべとにな
っていた。勢いよくぶちまけた子種は各地に散らばったが、それも紙に吸わせる。最中、
彼は何度か体を微動させた。
 丹念に拭き取った後は不思議と満足した気分になり、成佳はむふーっと鼻で息をした。

 ベッドをギシギシ鳴らして宏樹の顔に近づくと、その息遣いが耳に入る。
 なかなか体勢を変えられないのは何とも不便だった。勃起を足で扱いている間、一度
も出来なかったキスが、なんだか久しく感じて。
「んぅっ……」
 舌先を口に差し出すと、彼はそれに応じて食んだ。柔らかい唇に挟まれ、さらに吸引
されて、成佳の軟体は引き込まれていく。
「じゃあ、今度は僕がしても……いい?」
 しばらく見つめ合った後、少年はそう口にした。
 どうやって終わりを切り出そうか模索していた成佳は、彼の言葉に手掛かりを見つけ
て、小さく頷いた。
 重たそうにゆっくりと上体を起こし、部屋着に急所が隠れる。
 正座を崩した様な格好の宏樹と、目線は同じくらいに。
「……んっ」
 そっと触れた手が体を傾かせて、宏樹から口づけされる。一瞬で離れるが、すぐにま
た戻ってきた。
 接続した口腔で舌がぶつかり、表面を擦り合う。白濁を飲み下すのに使ったはずの唾
液は途切れることを知らず、ぴちゃぴちゃと音を立てて響かせた。
「……すごく言いにくいんだけどね」
 ふと、耳に小さな声が入った。
 続けて宏樹の口から出た言葉に、成佳は思わず口角を上げた。話し終わった彼もくす
くす笑んでいて、
「もう、可愛いなっ」
 とつぜん抱き寄せられた。抵抗する暇もなく、少し強めにホールドされる。
 解放された時、成佳は宏樹から目を外した。相手が可愛らしかっただなんて、まさか
同じ事を考えていたと知ったら、何と言われることか。
 照れ隠しに、眼鏡をくいっと元の位置に戻した。
「眼鏡、取ろうか?」
 レンズの無いフレームだが、その存在感は抜群だった。宏樹は自分で言っておいて何
だが、真面目そうな印象の少女に足で一物を踏まれ、罵られた時の威力が増加した気が
する。少女が眼鏡をかけているのを目にしたことがないので、変わった姿を見られて良
かったと思う部分もあるが。
312踏まれた記念日……?(9) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:28:56.19 ID:F01EjkYk

 成佳はひとつ頷いて、耳と鼻に掛かっていたものを外した。
「うん、いつものナルだ」
 一瞬ぼやけた視界に少年の笑顔が映って、成佳は恥ずかしくなった。視線は逸らすも
のの、顎を取られてキスが始まる。ただただ熱いだけの場所で舌が触れ、小さく呻く。
 軟体が引っ込み、唇だけ接触したまま、腰に添えられた手と僅かな力で体が仰向けに
なった。ギッ……と金属のばねが軋み、宏樹の顔が上にある。
 頭を撫でられたからか、いつもの図式だからか、ベッドに沈んでちょっぴり落ち着い
た。
「あ……!」
 その手がワイシャツのバストへ移り、全体を覆って押し込む。ここに至るまで全く触
られていなかった部分だが、ひとりでに電気を作っていた。初めて刺激された時に体が
跳ねて、過剰な反応をしたのではと心配になる。
 薄い布を二枚重ねただけでは、探る様に動く両手から胸の突起を守れない。上を通過
するたびに甘い声が漏れてしまう。
 指先で服をなぞった後、宏樹は特に脱がすこともせず、上半身から離れていく。
 上下の運動で疲労してしまった脚の方まで下がり、包みに手をかけた。
「綺麗な脚……」
 少女の下肢は黒色の視覚効果でそう感じる訳ではない。僅かに焦げた肌はシーツに映
え、その細さに見とれてしまう。
 何度かに分けて宏樹の精液を浴びたソックスが下降しながら左右に伸び、足首に集ま
って爪先から抜けた。床に置かれたのか視界から消えて、ちょっとした開放感を味わう。
 しかし、脹脛から膝までを撫でて目を細めている様子の宏樹は、どこか変態的だった。
「ひゃっ」
 顔を近づけたかと思うと、おもむろに舐められ、成佳は驚く。そのまま撫でる動作と
同じように、進んでは戻りを繰り返して膝上に迫る。
 なぜか、舌が這うとくすぐったさが弱まり、代わりに痺れが体を伝う。宏樹は唾液を
塗った場所に口付けもして、だんだんと音が近づいてきた。
「や、あっ!」
 口を付けるために持ち上げられていた膝の裏側に、熱を持った軟体がやってきた。表
面とは感じ方が全く違い、足指が丸くなる。横から這いずって、先の行為でかいた汗を
舐め取られている気分だ。成佳は羞恥に体温が上昇するのを認めた。
 やがて元通りにベッドを踏むが、片足は山を作ったまま、それ以上は崩させてくれな
い。
「あぅ……」
 さらに腿へ。ここまで来ると舐める動作に反応して、何もされていない下腹部が疼き
だす。宏樹も、わざとなのか音を大きく聞かせてくる。時に吸引を混ぜた舌使いに、成
佳は脚の震えを感じた。
「下の方、脱がすからね」
 そう宣言するために戻ってきたようだ。だが、言葉より先にされたキスを、成佳も仕
掛ける。
 宏樹はバストに手を伸ばし、少しでも刺激するのを途切れさせない。体を揺らして思
わず閉じた目を開いたころには、彼はもう先程の位置まで動いていた。
 短めのパンツに巻かれていたベルトと留め具を外し、舌が這った下肢を越えてシーツ
に落ちる。下着を残したまま両脚を少し開かれ、冷風が通り過ぎた。
「んあ、あっ」
 ショーツに指が触れ、上下する。その度に押し付けられる布は肌より冷たく、奥のス
リットをなぞられて成佳は喘いだ。
 見れば、宏樹は意地悪っぽく笑んでいた。ふふっ、と声を漏らして、手が止まる。
「……やっぱり、僕の事いじめて楽しんでた」
 横にいるのは変わらず、少年は語りかけてくる。やがて身を乗り出し、顔が真上にか
さなった。
「何もしてないのに、こんなにしてる」
 というのは間違いな気もした。だが、否定するための要素としては少し足りない。
 話の最中に指を下着に押し付けられ、成佳は短く息を漏らす。しわが目立つシーツを
掴んでいた手を、ぐっと引いた。
 顔はかげっているが、こう近距離だと彼の拗ねたような表情もはっきり映る。
 宏樹は秘所の濡れ具合を分からせるため、指の往復を続けた。自分が触れる前、成佳
が責めにまわっている時、ショーツを湿らせるまでに至ったのだ。知らないだけで、意
外といじめっ子の素質があるのかもしれない。
313踏まれた記念日……?(10) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:29:59.19 ID:F01EjkYk

「ん……うっ」
 送られてくる刺激に開いていた口が、宏樹によって塞がる。恥丘にあった手が戻って
きて、ワイシャツをまさぐりだした。
「うんっ……!」
 胸は、まるで触られるのを待ちわびていたように電流を送ってくる。無作為な動きは
却って意識を集中させて、少し擦っただけでも乳首がちりちりと熱い。
 衣ずれの音で身体を震わせながら、成佳は少年の手を追っていく。脇腹を通り抜け、
下着まで到達した。
 同じようにスリットを往復しているはずなのに、愉悦は一味違った。脚は曲げるべき
か、伸ばしておくかで落ち着かず、次第に痺れが強くなって力が抜けていく。
「……ふぁっ!」
 長めの口付けが終わり、生の声が飛んでいった。甲高い音を間近で聞かれ、成佳は明
後日の方を向く。
 が、宏樹は追いかけて、ちゅ、と唇で触れた。
「今度は、僕がナルを気持ちよくさせる番だから、ね」
 さらに、そんなことを言ってのけた。成佳はふらりと手に勢いをつけて、彼の赤いほ
っぺたを軽く鳴らした。
 その後、宏樹の姿は遠くなる。横についたまま忙しなく動き、しかし手際はよかった。
両足からショーツも脱げ、シャツもキャミソールも残っている上半身に比べて下半身が
寂しい。
「力、抜いてて」
 指示されるが、既に成佳は下肢から力が抜けてしまっている。両足をぐっと持ち上げ
られたときも、すんなりと進んで直角に、それ以上に体が反れる。
 わけがわからずに瞬きが始まったのは、斜めにそびえる脚がふたつに開いた時だった。
「あ、あっ……」
 頭より高い位置に爪先が上がり、下着を失った恥丘が天井を向いている。開脚された
中央に宏樹の顔が見え、彼はからだを使って姿勢を維持しようとし、自由になった両手
が内腿をくすぐる。
「ほら、ナルのえっちなところが丸見えだよ」
 置いた指が左右に動き、上蓋を割られる様子が映る。冷房の風がつめたすぎると感じ
る内側の部分、そこに少年の視線が刺さっている。恥ずかしいことこの上ない格好に、
顔が熱を帯びてきた。
 宏樹は胴を支えにして、成佳の体勢を保つ。スリットを作っていた肉を指で開くと、
鮮やかな色の肉が現れた。表面にまで汁が染み出すほどだ、中身は当然のように濡れて、
眩しく光っている。
「ん、うぁ……あっ!」
 突き立てられた指が埋まっていく。同時に体には異物感があらわれ、宏樹の指を喰っ
たと分かった。底なし沼に踏み込んでしまったかのように関節がひとつずつ消え、付け
根のぎりぎりで止まる。
 それが引き上げられ、また埋まり、深く入り込む度に音を立てる。にち、にち、と粘
っこく、次第に大きなものになっていく。
「あ、はっ、あんっ!」
 音の大きさは指の出入りが激しい事を意味していた。どれも長さをいっぱいに使って、
決して浅く往復したりしない。
 侵入者を捕まえようとして膣肉が縮こまり、その存在が鮮明に感じられた。それでも
取り押さえるまでには至らず、くちゅくちゅと水音を響かせるだけ。
 激しいピストンを終えた宏樹の手指は鈍く輝き、抜き取る時には尾を引いていった。
「……は……っ」
 荒い息をつく口の先で、少年は液まみれになった指を舌で拭った。直後にくすりと笑
ったのは、二人で同じことに注目していたからだろう。
 胸や腋に汗をかいて、せめてワイシャツだけでも脱ぎたくなるが、そんな暇は与えて
くれなかった。
「ナル、僕がすること、見てて……」
 いちいち宣言するところが羞恥を煽る。手で顔を隠そうとした成佳だったが、シーツ
を掴んだまま言う事を聞いてくれない。
 両手が蜜壺の蓋を開け、その内側に宏樹の顔が迫る。
314踏まれた記念日……?(11) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:31:04.66 ID:F01EjkYk

「やあっ、ぁ……」
 吹きかけられた息でさえ、体を強張らせるには十分だ。その口から、百貨店のエスカ
レーターばりにゆっくりと舌が繰り出され、身構えてしまう。まだ接触していないのに、
経験の上で刺激を覚えた秘部が震えを寄越した。
「は、あん……あ、あっ!」
 ややあって触れた途端、予想通りに電撃が走る。
 さらに、広げた蓋の内側を先端でちろちろと舐め上げられ、成佳は不規則な呼吸に胸
を上下させた。
「あ……んぁっ……」
 宏樹は何度も口付けして、唾液と愛液が混ざった汁を飲みこんでいく。吸引されると
き、一緒に体が持ち上がりそうな感覚に陥った。
 与えられる愉悦と一緒に、反射で瞼が落ちる。目を開けると少し離れた彼の視線とぶ
つかり、羞恥が込み上がる一方で、しかし釘付けになってしまう。
「ん、あぁっ!」
 恥丘に埋まった顔から、さらに奥まで侵入しようと軟体が肉を分けた。ザラザラした
ものが襞と擦り合って、成佳はぞくりと寒気を覚えた。
 短く前後移動を繰り返し、指には真似できないうねりで蜜壺を舐る。表面にぶつかる
息も熱く、掬ってきた液をすする音が耳に入って、性感の刺激からは逃れることができ
ない。
「あん……っ、はっ、く、ふぁ……」
 体の中をかき回され、その光景が目の当たりになって、成佳の鼓動は速まるばかり。
 ようやく手が顔までやってきて、それで視界を覆うはずが、指の隙間から淫らな行為
を覗き見てしまう。膣でうごめく宏樹の舌は前触れなく引っ込み、じゅ、ずず……と強
く吸い付いて啜る。
「ひぁっ、あ……ひ、ろ、ヒロ……っ!」
 容赦ない宏樹の攻撃は、昂る性感を吸い取ってはくれない。ただ上昇するだけのそれ
が臨界点に達しようという寸前、成佳は顔に乗せていた手を彼の方へ伸ばし、がしぃっ、
と思い切り掴んだ。
「――っ! あ、あぁ……」
 いっしゅん視界が白くなり、身体が硬くなった。伸ばした手がぴんと張り、オーガズ
ムの振動を少年にも伝える。
「ん、おいし……」
 可愛らしい少女が蜜壺から溢れさせた汁を口に含んで、宏樹はぽつんと呟いた。
 痙攣を終え、すっかり脱力した下肢をベッドに乗せる。
「は、ふ……」
 激しく責め立てた宏樹の口が優しく触れて、ぼんやりしていた成佳の意識を引き戻す。
舌を迎えて二回目、ちょっぴりえっちなキスがこの時間を締めくくった。

「もう少ししたら家まで送るよ」
 絶頂の後、横に座っている少年がそう言った。
 その手に頭を撫でられながら、成佳はのんびりと目を動かす。
 くすっとはにかんだ顔が、やはり女子みたいだった。
「……ん、どうしたの?」
 触れている箇所を掴んで、宏樹の注意を引く。顔が近寄り、声の射程圏内。
 簡単な音ばかり出していた口を色々な形にして、耳に届ける。彼が驚いた表情から回
復して、「わかった」と口にするまで、話し終えてから少しかかった。
「待ってて。お風呂の用意するから」
 言い残して、宏樹はベッドから降りる。部屋を出る直前に一度振り返り、ドアが閉ま
った。
 成佳は重たい体を起こすと、脱げたショーツをあてがった。舐められ、かき回され、
液の滲む恥丘にとっては気休めにしかならないが、布ひとつない下半身には無いよりマ
シだ。
 取り替えたはずのシーツは、先に宏樹が飛ばした白濁と、今しがた自分が噴き出した
膣汁の跡があって、とても使い物にはならなかった。ひとつ溜息をつく。
『気持ち良かった。……すごく恥ずかしかったけど』
 得も言われぬ達成感。成佳はひとりだけの部屋で、言いにくそうにしていた宏樹の言
葉を噛みしめた。
315踏まれた記念日……?(12) ◆q2XBEzJ0GE :2011/11/01(火) 16:32:15.02 ID:F01EjkYk
以上になります。
待機時間が無くなったと思ったら連投規制だってさ、参った
316名無しさん@ピンキー:2011/11/03(木) 04:20:53.37 ID:y7SwBXIB
GJ
317名無しさん@ピンキー:2011/11/03(木) 15:25:24.49 ID:8Pr9QhkG
G・J!
どことなく初々しいのがつぼった
318名無しさん@ピンキー:2011/11/07(月) 15:47:20.31 ID:ZsutsQvD
キス魔な無口幼馴染み
319名無しさん@ピンキー:2011/11/10(木) 18:20:29.41 ID:C2GSV2oP
>>318
無口のキス魔だと…ゴクリ…
320名無しさん@ピンキー:2011/11/15(火) 01:16:01.76 ID:dJYL+JyJ
キス魔な無口幼馴染み+酒=
321名無しさん@ピンキー:2011/11/19(土) 18:12:16.02 ID:qSxhjL0z
逆にものすごく奥手になるんじゃね?
322名無しさん@ピンキー:2011/11/19(土) 20:54:29.14 ID:/ibIcvWI
>>321
どっちにしても最高じゃないか
323名無しさん@ピンキー:2011/11/20(日) 03:52:52.34 ID:GvnQkZ4f
目を閉じて「んーっ」て唇を差し出してくる無口っ子可愛い
324名無しさん@ピンキー:2011/11/24(木) 06:42:07.04 ID:Wu3DpSIm
325名無しさん@ピンキー:2011/11/26(土) 23:19:59.90 ID:6r50/U6Q
gj…限りなくgjだ。攻め無口とか…最高じゃないか…

しかし男性の胸を"バスト"と表現することについてはすごい違和感
それとも俺が無知なだけで、バストでもいいの?
326名無しさん@ピンキー:2011/11/27(日) 14:06:24.27 ID:dk3DEad0
まあ、チェストだろうな
327名無しさん@ピンキー:2011/11/27(日) 16:16:08.83 ID:0G2w7GHA
「…………………………………………ちぇすとっ!」

示現流剣士の無口っ子
328名無しさん@ピンキー:2011/12/14(水) 15:04:05.06 ID:w138woCo
329名無しさん@ピンキー:2011/12/23(金) 00:57:05.84 ID:lSQxJPBg
フォッシュ
330名無しさん@ピンキー:2011/12/29(木) 01:39:08.38 ID:GlWUr2NI
無口幼馴染みに愛の告白をしてみる
331名無しさん@ピンキー:2011/12/30(金) 03:09:13.42 ID:Mq7fI0LP
>>330
「君が好きだ!」
「・・・・・・!/////(真っ赤)」

こうなると思う
332名無しさん@ピンキー:2012/01/01(日) 05:27:26.41 ID:bKJG1fYO
無口っ子は年賀状になんて書いてくるの?
333名無しさん@ピンキー:2012/01/01(日) 07:50:00.54 ID:cRBUhDsG
年賀状は文字だし普通に書いてくると思う
ただ、あけましておめでとうを言ってくるかどうかだ
334やみ:2012/01/01(日) 18:57:46.02 ID:ZR+NFiIC
初です。まったりよろしく。
誤字脱字めんご。改行は携帯で書いてた時に区切りやすくしてたままなんでめんご。


「んふぁー」

ベッドから身体を起こし携帯のメールを確認する。内容は毎朝大体同じ。

件名:おはよう
本文:今日も大好きです

家内の隣部屋にいる彼女からのメール。
直接言ってほしいんだけど彼女は極端に無口だからほとんど口に出してくれない。
そんなことを考えていたら彼女が僕の部屋に入ってきた。胸元が開いた白のワンピースと雪色の肌。まるで銀世界の妖精だ。
そして黒髪無造作ショート。僕の好みにファイナルストライク。

彼女が僕の目の前にちょこんと座る。
無口な彼女だけど可愛さなら誰にも負けない。そのギャップがまたいいんだ。
この位置取りはキスをねだる体制。なんだけど今日はなんとなくいぢわるなことをしてみることにした。

「んーとさ、キスしたかったら口に出しておねだりしてほしいんだけど」

僕の言葉で、一瞬きょとんとした彼女の表情がみるみる赤く変わる。別に恥ずかしいことじゃないのに。

「だめかな?」

僕が見つめると彼女は俯いてしまった。赤くなった顔を見られるのが恥ずかしいみたいだけどそこがまた可愛い。

「じゃあ今日はキス無しだね」

もちろん本心じゃない。彼女の反応が気になるからいぢわるをしてるだけだ。
そんなことを考えていたら、彼女は顔を上げて僕に不意打ちキスを強行してきた。
僕はそれを間一髪でかわす。可愛いやつめ。怒ったような顔で見つめても可愛いだけだよ。

335やみ:2012/01/01(日) 18:58:22.67 ID:ZR+NFiIC
そこで僕は一旦折れることにした。

「はいはい。わかったから目つぶって」

僕はなでなでしながら彼女に囁いた。
彼女は嬉しそうに笑顔で頷き、そっと目を閉じる。

ちゅっ

僕は彼女の髪をかき分け、おでこにキスをした。目をぱちくりさせる彼女。誰も口にするなんて言ってないもんね。
彼女は多少ふてくされた目で僕を見つめてきた。僕がこれ以上キスしないと分かったみたいだけど、僕は笑顔で見つめ返すだけ。

「はい。キスおしまい」

そう告げると、ようやく彼女が俯きながら口をもしょもしょと動かし始める。そこで僕はわざと聞こえないふりをして焦らしモードに入ることにした。

「なーに? あ、そっか、もうキス終わりでいいんだ? ご飯食べなきゃだし」

ふりふるふると彼女は頭を横に振った。
ちょっと怒ったような顔で威嚇してるみたいだけどそんな可愛い顔じゃ逆効果だよ。

「じゃあキスしたいの?」
こくこくくっと頷く姿が僕の今日の朝ごはん。

「じゃおねだりして?」
彼女はふるるーと頭を全力激振。

「じゃキスしなーいっと」
ぎゅうっと僕の腕を掴み、彼女は恥ずかしそうに僕を見つめる。

そんなやりとりが何度も続き、結局僕が折れることになった。初めからキスするつもりだったからいいんだけど。愛くるしい声でおねだりさせたかったから少し残念。

「うぅーわかったから、目つぶって」
彼女は嬉しそうに目を閉じる。そしておでこを両手で守るように覆った。

「ははっ、今度はおでこじゃないってば」
おでこを覆ってキスを待つ彼女の姿が可笑しくてつい微笑んでしまった。

ちゅっ

「おはよう。僕の大事なお姫様」

彼女は顔を真っ赤にして僕の胸をぽてぽてと叩いた。


おわり。
336名無しさん@ピンキー:2012/01/01(日) 19:04:26.29 ID:+qVitUJ6
新年早々gjだ!
恥ずかしくて無口になっちゃうのっていいね
337名無しさん@ピンキー:2012/01/01(日) 21:30:28.20 ID:rcQXm4Ob
GJ
メールの時点で強烈すぎる
338名無しさん@ピンキー:2012/01/04(水) 19:23:01.03 ID:+J91rKlC
たまりませんなぁ
339名無しさん@ピンキー:2012/01/13(金) 11:52:34.25 ID:RlhcP89M
ゼル伝の夢をみる島に出てくる幽霊とか、雰囲気的に好きな典型の無口キャラだな
男なのか女なのか知らないけどね
340名無しさん@ピンキー:2012/01/20(金) 20:40:27.08 ID:M+sVk+HF
「……ほしゅ」
「ん、どしたの?」
彼女がぽしょっと呟いた。
「べ、べつに…」
「そういえばさ」
ふといぢわるな考えが浮かんだので彼女をからかってみることにした。

「スレの保守ってあるよね?」
「……っ!?」
僕の言葉に彼女がびくっと跳ねた。さっきの可愛い呟きは聞き逃していないのさ。
「あれさ、好きな人とイチャイチャしながら言わないと意味無いんだってね」
「……!?」
彼女の目が忙しくパチクリする。
「ん、どうしたの?」
わざとらしく彼女に聞いてみる。
「じゃ、じゃあ……ふたりでほしゅ…しよ…?」
耳まで真っ赤にした彼女が手をもじもじしながら誘ってきた。大成功だ。

「まー嘘だけどね」
さらっと僕が受け流す。
「……えっ!?」
直後、目を潤ませたりんご姫が僕の胸をぽてぽてと叩いた。
「……ばかばかばかばかばかばかっ…」
「僕は大好きだけどね」
本音と微笑みを彼女に送る。
「…っ!?ば、ばかっ…!」
この後りんご姫をおいしく頂きました。

おわり。


もっと盛り上がってほしいです。
またのんびり投下しますにゃー
341名無しさん@ピンキー:2012/01/23(月) 23:14:46.02 ID:JLEKM08S
投下します。
題名:私の彼氏
・今回は渚目線のため、感情的になるかもしれませんが、暴走等はしません。
では行きます。
342私の彼氏:2012/01/23(月) 23:16:55.79 ID:JLEKM08S
やることがない、冬の休日…
ふと気付くと、私の足は彼の家の玄関前で、止まっていました。
「…淳…」
私は、一人寂しく彼の名前を呼びました。
そんなとき…
「呼んだか?」
「…!?(ビクッ」
私の背後から私の彼氏…淳の声が聞こえました。
「入るのか?」
「…え?…」
淳の言葉で、完全に停止した思考が回復した。
「…うん…」
私は、淳の家に上がり、淳の部屋のベットに座わりました。
「あー!!!」
「!?(ビクっ!」
やっと落ち着いたと思ったら、淳は何かを思い出したように大声を上げていました。
「買い忘れたものがあったんだ!悪い!渚!!お楽しみは後でな?」
――まったく、本当に淳はどこか抜けてるんだから――
と、心の中で毒づきながらも、私は、淳にやさしく微笑みました。
「んじゃいってくるわ」
「…行ってらっしゃい」
私は、敦に優しく言い、敦が出て行くと、少しゆっくりしようと思い、敦のベットの上に寝転びました。
すると間もなく身体から、ドクン、ドクン、と、不思議な感覚が湧き上がってきました。
それは、痛みでも、寂しさでも、嬉しさでもありません。
ただ気持ちが好くて、何かを求めるような疼きに近いものでした。
「熱い…よ…」
次第に疼きは、熱さに変わり、身体がクネクネと、勝手に動き始めました。
「淳…」
淳の名前を呼ぶと、私の身体はさらに熱くなり、押さえ切れない感情が膨れ上がりました。
私の意識もボーっとなって、頭の中も、夜に淳と交わした感覚がよぎり、身体の芯から、じわり、と、生暖かい何かが、私のショーツに広がって来ました。
「うそ…」
私は、恐る恐る中指を、何かが広がって行くところに置きました。
「ひゃ!!」
するとそこは、ボーっとなってる私でも、はっきり分るくらいになるまで濡れていました。
「ぁ…ダメ…なのに…」
ここは淳の部屋なのに、私は、ガマンしきれず、そのままショーツをずらし、直接、秘部をなぞり始めました。
弄っているうちに、下だけでは、物足りなくなった私は、空いているほうの手で、ブラウスのボタンを外し、ブラをずらして、胸を揉み始めました。
「ぁ!ぁ!!…淳!!感じちゃう!!」
――淳は、私のこの小さい胸を、褒めてくれた――
それでも私は、この小さい胸がいやだでした。
私は、淳やみんなから、スタイルが良いと、言われていますが、まだ幼さが残るほどしか膨れていない胸に触れると虚しくなります。
でも淳は、そんな私の胸をいつも丁寧に愛撫でしてくれます。
「淳…そんなに舐めちゃ…ぁ!!」
――軽くイっちゃった…――
そのとき、私の中で罪悪感がありましたが、身体は私の意思に背くかのように、自慰行為を継続していました。
「らめぇ!!ろまらないよぉ〜!!あ、また…」
次第に両手の指の動きが速くなり、さっきの絶頂よりも、もっと快楽的な快感が、私の芯に溢れてきました。
そして私のナカから、指の隙間を通って愛液が溢れ、グジュグジュといやらしい音を立てながらシーツにこぼれていきました。
「あ!あ!もうダメ!!イク…「なにしてんだ渚?」
「!?(ビクンッ!!」
私は気付いたときには遅く、一人で絶頂に達した姿を敦に見られてしまいました。
343私の彼氏:2012/01/23(月) 23:21:53.58 ID:JLEKM08S
「ふ〜ん…」
「あの…その…」
もう言い逃れはできない状態でした。
はだけたブラウス、ずれたブラ、そして秘部を隠すはずの白いショーツは、大量の愛蜜を吸って私の秘部の形が露になっていて、そしてトドメと言うかのように、絶頂に達したばかりの秘部からは、大量の愛蜜が溢れ、ショーツから漏れ出し、シーツに大きな染みを作っていました。
「スッキリしたか?…人のベットの上で…」
「…ごめんなさい!!…」
「あー!!!もうガマンできねぇ!!!!」
「あつ…ん!!」
怒られるのかと思いましたが、淳は、私の上に飛び掛るとそのまま、むさぼるように、キスをしてくれました。
「はぁぁ…ガマンできなかったのか?」
「…(プイッ」
――淳は余計な一言が多い!!――
私はそう思い少し怒った振りをしました。
でも…
「渚、それ!可愛いな!!」
「え?きゃ!!」
私は淳に抱きつかれました。
「あ、あん!あつしぃ〜らめぇ!!」
「って、言ってる割に、乳首はビンビンだな?」
「んあ!」
淳は、私の片方の乳首を指でつまみ、もう片方の乳首を、舐めていました。
「はぁん!!」
「ん?片方の手が空いてるけど…どこの『穴』を弄って欲しいんだ?」
知っているくせに、と思いながらも、私は頬を赤らめてしまい、淳はそんな姿の私を見て、ただニヤニヤとしていました。
「下の…穴…」
「ここか?」
「ぁ…違う!」
淳は、私のへその穴の縁を人差し指でいやらしく撫で始めました。
344私の彼氏:2012/01/23(月) 23:23:24.07 ID:JLEKM08S
私はここも弱いけど、疼いてる場所からは遠い場所でした。
「違うのか?結構感じてるみたいだけど?」
「ぁん!!ばかぁ…」
「バカだぜ?だから聞いてんだろ?…どこが好いんだ?」
私は、自分でも分るほど無口です。
でも、淳とえっちぃ事をしているときは、そこそこ声が出ています…それでも秘部の名前を言うなんて、恥ずかしいです。
それも幼馴染の淳なら理解してくれてるはずです。
楽しまれているんです…私の反応がおかしいから…
「ほら!速く言わねぇと触らないぜ?」
「お…」
「お?」
「…んこ」
「なんて言うんだ?」
「…(フリフリ!」
――無理!!言えないよ!――
私は恥ずかしくなり、全力で首を、横に振りました。
「へ〜言えないんだ…」
「おまんこ!…」
私の顔は真っ赤になっていました。
「渚…それサイコー!!!」
「ふあ!あ!いい!」
淳は、私のショーツの中に手を入れると、そのまま秘部のナカに指を二本も挿れました。
「渚のナカすっげぇ濡れてる…いやらしい…」
「あぁん!!言わないで!!!」
淳が指を動かすと、ぬちゃぬちゃ、と、言う、卑猥な音で、私のナカがどれくらい濡れているのかが、解りました。
「淳!!私…ああん!もう…ダメ!!」
「イけよ…一人のときよりも、もっと気持ちよくさせてやる!!」
「あ!!あぁ!!!」
淳の指の動きが、一段と速くなり、私もイキたくなりました。
「あ!あ!淳!!イク!!あぁぁぁぁ!!!」
私は、尿道から透明な液体を鯨の潮吹きのような勢いで、シーツに噴き散らし、さっきよりも気持ち好い絶頂に達しました。
「あん!!」
するとイったばかりなのに、生暖かくねっとりした物が、私の一番敏感な部分に沿わされていました。
「渚はココも弱いんだよな?」
そこは、クリトリスでした。
私は淳に、丹念な舌使いでそこを舐められたり、吸い付かれたり、歯で優しく噛まれたりされました。
「そろそろこっちも味見するか…」
「ふあ!!」
今度は、私のナカに、舌が入ってきました。
「あ!そんなに舐めないで!!…」
「なんで?甘くてうまいぞ?渚の蜜」
「…ばかぁ…」
私は恥ずかしくなり、目を強く、瞑りました。
「渚、俺のも…気持ちよくしてくれないか?」
目を開けると、淳はベットに仰向けで倒れました。
「!!(ビクッ」
――こ、こんなにおっきくなってる…――
淳のパンツを脱がすと、大きくグロテスクなモノが反り立っていました。
何回見ても、淳のグロテスクなモノは、慣れることはありません。
「…ヘンタイ!!」
と言いつつも、私は淳のモノを口で咥えて、しごき始めました。
「そのヘンタイのチンコ舐めてる渚さん、あなたはなんですか?…」
「…ふん…」
私はそれでも淳のモノを一生懸命に舐めていました。
「…ん、んん…ひもひひ?(気持ち好い?)」
「あぁ!気持ち好い…渚は口も最高だなぁ!」
淳は、私の髪を優しく撫でてくれました。
――べ、別に頭ナデナデなんてしてほしい為なんかじゃないんだからね!ただお口が暇だから咥えてるだけなんだからね!!…でも、気持ち好いって、言ってくれてありがとう!――
と、私には似合わないツンデレを心の中で演じてしまうほど、嬉しかったです。
345私の彼氏:2012/01/23(月) 23:26:05.49 ID:JLEKM08S
「渚…俺、もう挿れたい…」
「…私も…」
「じゃあ…渚から誘ってくれ」
私は、一瞬戸惑いながらも、仰向けになって、脚をM字に開き、脚の内側から腕を伸ばし、自分の秘部のヒダを両手で開いて見せました。
「お、いいね!そのまんま開けたり閉じたりしてみろ?」
私は、言われたとおり、ヒダを開けたり閉じたりすると、くちゃくちゃ、と、粘着質な音が聞こえてきました。
「エロい!!エロいぞ渚!!!お前いつからそんなイケナイ娘になったんだ?」
私は淳にからかわれ、頬を赤くしました。
「じゃあ…挿れるぞ?」
「うん…あ…」
淳のモノが、私の中に入ってきました。
「あ!あぁぁ!!」
「全部入ったぞ」
「動いて…いいよ…」
「今日はずいぶん積極的だな?」
「あ!!ふあぁん!!!」
淳は、私のナカを突くたびに、私が一番感じる所に触れてくれます。
私は、それが気持ちよくて、溜まりませんでした。
「あ、あ!!イクッ!!あ!!」
私は、簡単にイってしまいました。
「イクの早いぞ、渚…」
「あぁぁん!!だってぇ!!…」
「そんなに気持ち好いのか?」
私は、首を縦に弱く振った。
「あ!またイク!!」
「イクのか?じゃあこれはどうだ!!」
「あぁ!!クリはダメェ!!!」
淳は私のクリトリスを、指でコロコロ転がしたり、強く摘まんだりしました。
346私の彼氏:2012/01/23(月) 23:27:39.34 ID:JLEKM08S
「あ!!イっちゃう!!!あ!!!!」
私はイってしまい、愛蜜が、連結部から、シーツに垂れてしまいました。
それでも、淳は、腰に動きを止めることなく、振っていました。
そして、奥を突かれる度に、愛蜜が、ビシャ、ビシャ、と音を立て、飛び跳ねていました。
次第に、淳の腰に動きもペースが上がり、限界が近いことがわかりました。
「渚!俺!!出そうだ!!」
「あ、あん!ナカに出して…」
「良いのか?できるかもしんないぞ?」
「良いの!!もっと私をめちゃくちゃにして!!!壊れても良いから!!!私を犯して!!!!」
私は、精一杯の本音を、淳にぶつけました。
――淳と一緒に気持ち好くなりたい!!――
ただその想いだけで私は、淳を求めていました。
そして…
「渚!!イクぞ!!!」
「いいよ!!いっぱいちょうだい!!私の身体を淳でいっぱいにして!!!」
「射精る!!クッ!!!」
「ふあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
私と淳は、同時に絶頂へ達しました。
それと同時に、私のナカで、淳の遺伝子が弾けて、満たされるように、広がって行きました。
「抜くぞ…」
「ぁ…」
淳のモノがナカから引き抜かれると、私は名残惜しそうな声を出していました。
すると、あまった淳の遺伝子が、白い精液と私の愛蜜と混ざって、私の秘部口からドロリと垂れました。
「いっぱい出たな?」
「淳のなら…嬉しい…」
「渚…」
「ねぇ…淳…」
「ん?」
「もう一回…シよ?」
淳は無言で私にキスをしてくれました。
それが『良いよ』の合図だからです。
この後、私は何回淳と抱き合ったのか解らないくらい愛し合い、気がついたら朝になっていて、私のナカは精液でいっぱいになり、精液の逆流が起きていました。
END
347名無しさん@ピンキー:2012/01/23(月) 23:28:29.70 ID:JLEKM08S
以上です。
348名無しさん@ピンキー:2012/01/24(火) 09:17:03.27 ID:CjU+Ew5e
GJ
個人的には女の子はもうちょい無口なほうが良かったな
349名無しさん@ピンキー:2012/01/27(金) 12:31:47.58 ID:uGu4BH/i
無口さん「……ぐっじょぶ」
350名無しさん@ピンキー:2012/01/31(火) 19:58:39.62 ID:GwhUcdsn
ロリむくちじょ
351名無しさん@ピンキー:2012/02/01(水) 16:16:32.29 ID:m3apu0Yk
無口無垢痴女?
352名無しさん@ピンキー:2012/02/08(水) 12:09:41.51 ID:qGHx72AH
ふぉっしゅ
353名無しさん@ピンキー:2012/02/11(土) 22:00:14.14 ID:RBMCBdfK
無口
354かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 00:48:24.18 ID:BwZp1c6Y
お久しぶりです。
以下に投下します。
今日はバレンタインですが、バレンタインネタではありません。正月ネタです。
355かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 00:50:19.46 ID:BwZp1c6Y
『彼女の元日』



 彼女と顔を合わせたのは、年が明けて大体5時間後のことだった。
 新年の空はまだ闇に覆われていて、日の光の気配はまるで感じられない。
「あけましておめでとう、文花」
 そう言って笑いかけると、青川文花はにっこりと微笑んだ。
「あけましておめでとう、耕介くん」
 正直、意外だった。
 この青川文花という女の子は、普段から言葉数が少なく、会話というものをあまり成立させることがない。だから今みたいに、はっきりと挨拶を返してくれるとは思わなかった。やはり新年の挨拶というものは、文花にとっても特別なものなのだろうか。ぼくは驚き
ながらもうれしく思い、彼女に手を差し出した。
 文花はうれしげな様子で、ぼくの横に並ぶ。
 振袖姿の文花は手に小さなバッグを提げ、赤い道行コートを羽織っていた。ぼくが今
着ているコートに比べると、布地は薄く見える。着物の防寒効果は果たしてどの程度の
ものなのだろう。つないだ手のひらはひどく冷たかった。
「寒くない?」
 文花はぶんぶんと首を振る。今度は言葉はなかった。
 その代わり、手をぎゅっと握ってきた。
 つないでいるから温かいよ――たぶんそう言いたいんだろう。
 ちょっと気恥ずかしい。
「……いつもなら寝てる時間だけど、文花は眠くない?」
 ぼくの方は少し眠い。一応4時間くらいは寝たので、そこまで辛くはないけど。
 文花は、一つ大きなあくびをした。
「眠いんだ?」
 はっとなって慌てて口を閉じる。
 ぶんぶんと首を振るものの、説得力は皆無だった。
「どうせ昨日の格闘技、録画したやつをもう一度観てたんでしょ」
 文花はこくりとうなずくと、やや顔を曇らせた。
 昨日のイベントには、どうも満足できなかったらしい。ぼくもネットで中継を観ていたけど、確かにちょっと残念な興行だった。去年と比べてもさらにスケールダウンした印象があった。
 国内の格闘技人気は下火である。需要がなければ供給も減るのが資本主義の宿命。
ファンには辛い現実だ。
 不満げな彼女に、ぼくは提案する。
「帰りに家に寄ってもいい?」
 文花はきょとんとした目でぼくを見る。
「昨日の録画、ぼくにも焼いてくれる? ネットで観たんだけど、保存の仕方がよく
わからなかったんだよね」
 文花は一瞬虚を突かれたようにはっとなって、それからこくこくとうなずいた。
 もちろん、それは方便だったりするんだけど。
 彼女の家で新年を過ごすのは、初めてのことだから。
356かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 00:53:52.42 ID:BwZp1c6Y
失礼。ちょっと改行を失敗してしまったので、もう一度。
357かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 00:56:00.76 ID:BwZp1c6Y
『彼女の元日』



 彼女と顔を合わせたのは、年が明けて大体5時間後のことだった。
 新年の空はまだ闇に覆われていて、日の光の気配はまるで感じられない。
「あけましておめでとう、文花」
 そう言って笑いかけると、青川文花はにっこりと微笑んだ。
「あけましておめでとう、耕介くん」
 正直、意外だった。
 この青川文花という女の子は、普段から言葉数が少なく、会話というものをあまり成立
させることがない。だから今みたいに、はっきりと挨拶を返してくれるとは思わなかった。
やはり新年の挨拶というものは、文花にとっても特別なものなのだろうか。ぼくは驚き
ながらもうれしく思い、彼女に手を差し出した。
 文花はうれしげな様子で、ぼくの横に並ぶ。
 振袖姿の文花は手に小さなバッグを提げ、赤い道行コートを羽織っていた。ぼくが今
着ているコートに比べると、布地は薄く見える。着物の防寒効果は果たしてどの程度の
ものなのだろう。つないだ手のひらはひどく冷たかった。
「寒くない?」
 文花はぶんぶんと首を振る。今度は言葉はなかった。
 その代わり、手をぎゅっと握ってきた。
 つないでいるから温かいよ――たぶんそう言いたいんだろう。
 ちょっと気恥ずかしい。
「……いつもなら寝てる時間だけど、文花は眠くない?」
 ぼくの方は少し眠い。一応4時間くらいは寝たので、そこまで辛くはないけど。
 文花は、一つ大きなあくびをした。
「眠いんだ?」
 はっとなって慌てて口を閉じる。
 ぶんぶんと首を振るものの、説得力は皆無だった。
「どうせ昨日の格闘技、録画したやつをもう一度観てたんでしょ」
 文花はこくりとうなずくと、やや顔を曇らせた。
 昨日のイベントには、どうも満足できなかったらしい。ぼくもネットで中継を観ていた
けど、確かにちょっと残念な興行だった。去年と比べてもさらにスケールダウンした印象
があった。
 国内の格闘技人気は下火である。需要がなければ供給も減るのが資本主義の宿命。
ファンには辛い現実だ。
 不満げな彼女に、ぼくは提案する。
「帰りに家に寄ってもいい?」
 文花はきょとんとした目でぼくを見る。
「昨日の録画、ぼくにも焼いてくれる? ネットで観たんだけど、保存の仕方がよく
わからなかったんだよね」
 文花は一瞬虚を突かれたようにはっとなって、それからこくこくとうなずいた。
 もちろん、それは方便だったりするんだけど。
 彼女の家で新年を過ごすのは、初めてのことだから。
358かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 00:57:46.74 ID:BwZp1c6Y
 
      ◇   ◇   ◇

 境内は大勢の参拝客でごった返していた。
 奥の方に向かって、すでに何百もの数が並んでいる。ぼくらもその列に加わって、
少しずつ前へと進んだ。
 30分以上かけてようやく拝殿にたどり着いた。賽銭箱に5円玉を放り込み、鈴緒を
引いて鈴を鳴らす。何を祈ろうか。やっぱりこれかな。今年も文花と仲良く過ごせます
ように。
 顔を上げると文花もちょうど済んだみたいだった。後ろから次の人波が押し寄せてきて
いる。ぼくらは足早に列から離れた。
 拝殿脇にはお守りやお札、破魔矢などを売っている販売所があった。ちょっと覗いて
みると、金運厄除学業成就と型どおりのものが揃っているのが見えた。文花がなぜか安産
祈願のお守りをじっと見つめていて、ちょっと怖い。端っこにはおみくじの箱もあり、
せっかくなので引いてみることにした。
 番号棒を一本抜き出して、売り子さんから同じ番号のおみくじをもらう。渡された紙を
開いてみると、吉だった。
 中吉や小吉と比べてどちらがいいのかはっきりしない。中吉よりは下なんだっけ。まあ
凶や大凶を引かなければなんだっていいけど。いや、そっちを引いた方がむしろおもしろ
かったかもしれない。
 文花は大吉だった。淡々とした反応だったけど、ちょっとだけ唇の端が釣り上がった
ので、きっとうれしかったのだろう。ぼくもちょっとうれしくなる。
 境内の外にはたくさんの出店が並んでいる。元日からがんばるなあと思ったところで
お腹が鳴った。そういえば昨日の夜に年越しそばを食べてから何も口にしていない。
おいしそうな匂いが漂ってきたせいだろうか、強い空腹感に襲われた。
 文花が袖を引いて注意を促してくる。彼女が指差す方向にたこ焼き屋が見えた。その
両隣には、りんご飴屋とフランクフルト屋がそれぞれ陣取っている。ぼくはうなずいて
それらを順に買っていった。たこ焼き12個入り1パック、フランクフルト1本、りんご
飴1本。
 歩きながら文花がりんご飴をなめている。ぼくは右手にたこ焼きパックの入った
ビニール袋を提げて、左手に持ったフランクフルトにかじりつく。思っていた以上に
お腹が空いていたみたいで、あっという間に食べきってしまった。味はコンビニで
売ってるものとあまり変わらなかったけど、この寒さの中、熱い食べ物はそれだけで
ありがたかった。胃の中が少しだけ満たされた。
 文花がりんご飴を、小さな舌で掬い取るようになめている。振袖にりんご飴はあわ
ないような、そうでもないような。ただ、日の出前の澄みきった空気の中で、彼女の舌の
赤色は、着物の朱よりも、りんご飴よりも赤く鮮やかに映り、ぼくはごくりと唾を飲み
込んだ。
 湧き上がった劣情をごまかすように、ビニール袋に目を向ける。たこ焼きパックを取り
出そうと持ち上げると、それを察して文花の手が袖を離した。手首に提げられたバッグが
ゆらゆらと揺れる。
 代わりに少しだけ身を寄せてきて、その小さくも柔らかい体を、ぼくはつい意識して
しまう。この振袖の下に隠れた体をこれまで何度も味わってきたけど、決して飽きる
ことはなかった。今だって、こんなにも彼女を欲しがっている。
 抱きしめたい。押し倒したい。その赤い唇に口付けしたい。
 なんでだろう。いつもより彼女を強く欲している自分がいる。
「まだだめ」
 小さく、文花がたしなめるように言った。
 ぼくははっとなって、彼女を見つめる。
 文花は、ゆるゆると首を振った。なんだか姉に怒られているような気持ちになった。
いや、ぼくは一人っ子だけど。
「そうだね。まだ、初日の出も見てないし」
 でも、そのあとは。
 文花は視線を前に戻す。
 表情は特に変わらない。でもぼくには少しだけその内面が見えるような気がした。
「『まだ』、ね」
 わざとらしくつぶやくと、文花は赤面しながら、ぼくの腕をおもいっきりつねるの
だった。
359かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 01:08:21.23 ID:BwZp1c6Y
 
      ◇   ◇   ◇

 神社の近くの県道は、北北東に海岸沿いに伸びていて、絶好の初日の出スポットである。
歩道の幅も広く、見通しもいい。神社よりは少ないけど、それでもけっこうな人ごみの
中で、ぼくたちはたこ焼きを食べながら今年最初の太陽の姿を拝んだ。
 正直、初日の出には集中できなかったことをここに告白しておこう。隣にかわいい
彼女がいて、今から彼女の自宅に行くことを考えると、そっちに意識が行って仕方が
なかった。もちろん文花の家にはご両親がいて、その、不埒な真似はできないと思うけど
(特に彼女のお父さんは、ぼくのことを快く思っていない節がある)、部屋で二人っきり
なら、ちょっといちゃつくくらいは許してもらえるんじゃないだろうか。
 着物だし。
 文花の、振袖姿。
 明るくなった空の下で改めて彼女を見てみると、振袖の鮮やかさが目に付いた。桃色を
基調に桜をあしらえたデザインで、明るい場所だとよく映える。桜の色が白っぽいのも
よかった。なんというか、すごくかわいらしい。思わず見とれてしまった。
 ぼくの反応に気づいて、文花が破顔した。何がツボに入ったのかはわからないけど、
つられて笑ってしまう自分は、笑われても仕方がないのかもしれない。楽しそうだから
いいかな。
 文花はご機嫌だった。口を開かなくても、その振る舞いや態度で内心はすぐにわかった。
ぼくも上機嫌だ。好きな人と一緒に過ごせるというのは、やっぱり特別なことだと思う。
 初日の出を見た後、ぼくたちは文花の家に向かった。
 家に着くと、文花のご両親に挨拶をした。文花のお父さんの目が妙に厳しくて、背中に
汗が吹き出るのを感じた。何度か顔を合わせているのだから、もう少し気を許してくれて
もいいんじゃないかと思うけど、そこはぼくの努力が足りないのだろう。たぶん。
 それでも追い出されたりすることはなく、ぼくは青川家の面々と一緒にこたつを囲む
ことを許された。雑煮をご馳走になって、そのあとおせちもいただいた。お母さんの作る
料理は絶品で、その味にぼくは感激した。そういえば文花が以前、おいしいカレーを
作ってくれたことがあったけど、あれはひょっとしたらお母さん直伝のカレーだったの
かもしれない。他の料理も食べてみたくなった。
 最初は厳しい顔をしていたお父さんも、だんだん赤ら顔を崩して上機嫌になっていった。
お酒の力は偉大だ。あっという間に舟をこぎ始めて、そのまま後ろに倒れて眠り込んで
しまった。
 隣に座る文花がぼくの袖を軽く引っ張り、催促した。うなずきを返すと、文花は立ち
上がってお母さんを見やる。お母さんはにっこり笑った。
「片付けはいいから、二人とも部屋に行っていいよ」
 その言葉に文花は満面の笑みを浮かべる。なんだろう。その笑顔にはかわいさより
ちょっと怖さを覚える。
 ぼくらはお父さんを起こさないよう、静かに二階へと上がった。
360かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 01:09:58.14 ID:BwZp1c6Y
 
      ◇   ◇   ◇

 部屋にたどり着くと、自然とため息が漏れた。
「ちょっと、緊張したよ」
 文花は道行をハンガーにかけて、ぼくのため息に反応するようにこちらを振り向いた。
小さな首をかわいらしく傾ける。
「ご両親とは何度かお会いしてるけど、今日みたいにきちんと挨拶して食事をしたのは
初めてだったからね。でも料理はおいしかったし、とても良くしてもらったから、うん、
良かったよ」
 斜めになっていた顔が元に戻る。
 それからくるりと体を反転させて、ぼくの隣に腰掛けた。ちょっとした所作でも様に
なっているのは、着ている服のせいだろうか。それとも彼女自身の動きの良さからくる
のか。両方かもしれない。
「文花、昨日録ったやつを、」
 ちょん、と。
 彼女の指が、ぼくの唇を優しく押した。
 彼女の目が、あっけにとられたぼくの顔を捉えている。
 彼女の口が、呪文を唱えるように微かに開かれる。
「おまたせ」
 耳元でいたずらっぽく囁かれて、ぼくは息を呑んだ。
 吐息が耳たぶを撫でる。
 両腕をのろのろと上げて、彼女の肩に乗せた。
「文花」
 顔を寄せると、ほのかな花の香りに包まれた。淡い香水の匂いが心地良い。
 薄い紅をさした彼女の唇に、そっと口付けた。
 小さな体がうれしげに震える。
「ん……」
 二度、三度と何度も口付けを交わすうちに、相手を深く求めてしまう。愛しさに突き
動かされるように、互いに口唇を強く押し付けあった。
 口腔内で文花の舌を捕まえる。唾液を交換するように舌同士が絡み合って、ぼくはその
いやらしさにぞくぞくした。耳の奥に響く液の音がそれをさらに助長させる。
 唇を離すと、少し息が上がって発熱したように顔を赤くした彼女がいた。
 ぼくはその小さな体をぎゅっと抱きしめる。
 振袖の感触は、もっと硬くてごわごわしているイメージだったんだけど、実際に触れて
みると意外と柔らかかった。布なんだから、当たり前といえば当たり前か。
 文花がぼくの肩にあごを乗せて、ほう、と息を吐いた。
 心臓がとくん、とくんとリズムを刻んでいる。キスをしているときはものすごく興奮
して心臓も早鐘を打っていたんだけど、こうしてお互いに抱き合っているときは興奮より
心地良さの方を強く覚えた。文花の存在を腕の中に確かなものとして感じられると、
不思議なくらいに安心した。
 このまま押し倒して、抱いてもいいかな。
 抱きたい。
361かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 01:11:52.06 ID:BwZp1c6Y
「……」
 性欲が振り切れそうになる直前、そこではっと思い出した。下にはお母さんがいる。
それなりに激しく動くと、当然気づかれてしまうだろう。特に文花とするときは、夢中に
なって周りに配慮なんてできなくなるし。
「あー、文花」
 肩に乗っかっている頭が少し身じろいだ。
「下に文花のお母さんがいるから、今日はちょっと……」
 文花が顔を離して、じっとぼくを見つめた。
 その目には弱いんだけどさ。
「さすがに家族がいると、やりにくくない?」
 すると、文花はどこか挑戦的な目つきで、にやりと笑った。
「お母さんは、しばらくお出かけ」
 小さな声で、そう言った。
 お出かけ?
「……今いないの? お母さん」
 微笑とともにうなずく。
 本当だろうか。元日から一人でどこに出かけるのか、謎だ。
 いや、だとしても、お父さんが、
 ……酔いつぶれてましたね、そういえば。
「……ひょっとして、計算どおり?」
 文花の微笑がよりはっきりと深くなる。
 ぼくは苦笑いするしかない。
「じゃあ、遠慮の必要はないんだね」
「遠慮なんかしたら、許さない」
 大丈夫。こちらももうそんなつもりはない。
 ぼくは文花の小さな体を、そっとベッドに押し倒した。
 そのまま覆いかぶさって、再びキスをする。
 その唇の感触は何度味わっても飽きない。唇だけじゃない。何度触っても、何度
抱いても、彼女の魅力は尽きることなく、ぼくをどこまでも虜にする。
 しばらく堪能してから顔を離すと、文花はなぜか不思議そうな顔をしていた。
「どうしたの?」
 文花は無言で、腰に巻かれている朱の帯をつまんでみせた。
「……何?」
 なんのことだかわからず、ぼくは訊き返した。
 文花はきょとんとした目で一言。
「くるくるーって、しないの?」
 それを聞いてもまだわからない。
 くるくる?
 しばらく考えて、そして理解した。
「ひょっとして、あの帯を回すやつ?」
 時代劇とかで、女の人の帯を悪代官が回してほとく、あれだ。それとも今はあまり
やらないのかな。時代劇自体、最近テレビで放映してないから、よくわからない。
「うーん、あまり興味はないかな」
 そこまで興奮を掻き立てられない。第一、それを行うにはこの部屋は狭すぎる。
 すると文花はあからさまに残念な顔をした。
「……ひょっとして、やりたかったの?」
 こくりとうなずく。
 少しだけ想像してみた。ぼくが文花の帯を荒々しく引っ張り、回す。ご無体な振る
舞いに翻弄されて、くるくる回される文花。
 何のコントだろうね。楽しそうだけど。
「まあ、それはまたの機会にということで……」
 不満げな様子をなだめるように、頬に口付けを送る。
362名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 01:12:34.32 ID:fwu4rPJ2
支援
363かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 01:14:16.81 ID:BwZp1c6Y
 文花が少しだけ身をよじらせた。仰向けだと帯が気になるのかもしれない。
「苦しくない?」
 首を振られた。それでもあまり具合は良くないと思うので、早急に帯をほどきに
かかろう。しかし、外し方がよくわからない。
 文花が上体を起こして、ぼくの手を導いた。帯を留めている紐を外し、それから帯の
結び目を前に回して、蝶結びになっている帯をほどく。振袖がはだけて白い長襦袢が
はっきり表れた。こうして脱がしていくと、着物というものは振袖や帯以外にもいろんな
もので構成されていて、一目見ただけではとてもその構造を理解することはできない。
文花は手馴れた手つきで、しかし決して自分だけで外そうとはせず、子供にやり方を
教えるようにゆっくりとぼくの手を誘導していく。ぼくも導かれるままに彼女の服を
脱がしていく。
 紐やら帯やらを何本もほどいて、ようやく彼女の素肌が覗けた。
 下にはタンクトップのような下着を着けていた。和装ブラというやつだろうか。後ろに
ホックがついていて、普通のブラジャーと同じように外すことができた。
 文花が胸元を両手で隠す。
 ここまで積極的に脱いできたのに、急にどうしたんだろう。ぼくは彼女の表情を窺った。
わずかに顔を赤くしている。どうやら素肌をさらしたところで恥ずかしくなったらしい。
 いや、それにしてもちょっとおかしい。文花はこういうことに割りと積極的で、
これまでぼくの方が引っ張られることも多々あった。そんな彼女がどうして急に
縮こまったりして、
「……ああ」
 素肌を見ていて気づいた。
 おそらく、匂いを気にしているのだ。朝から振袖で過ごして、多少なりとも汗ばんだり
しているだろうから。
 ぼくは気にせず彼女の首筋に顔を埋めた。
「……っ!」
 文花が慌てたように身じろいだ。でもそんなの、何の障害にもならない。胸元から
首筋に舌を這わせて、味を確かめるようになめとっていく。
 文花の肌からはとてもいい匂いがした。確かに若干汗ばんではいたけど、それ以上に
甘い香りが鼻腔をくすぐって、ぼくの興奮を掻き立てる。
 文花の手を胸元からどかして、二つの膨らみを露にする。
 強張る体をほぐすように、優しく揉み込んだ。
 着物を着るときは、体の凸凹を極力少なくするというのを聞いたことがある。寸胴型の
方が見映えがするからだ。だけど、一旦こうして衣を剥いてしまえば、やっぱり女の子
らしい体のラインが見えた方が綺麗だとぼくは思う。実際目の前にさらされている恋人の
体は、半裸でありながらすごく色っぽいと感じた。むしろ半裸だからこそ、そうした
膨らみや丸みが長襦袢越しに強調されて、美しく思えた。
 綺麗な胸も、滑らかな脚も、半脱ぎのせいでなんだか妙に扇情的に映る。
 要するに、すごくいい。
364かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 01:15:28.89 ID:BwZp1c6Y
「……えっち」
 ぼくの思考を呼んだのか、文花がぼそりとつぶやいた。
 反射的に目が泳ぐ。後ろめたいわけじゃないんだけど、まあ、その、
「……文花がかわいすぎるのがいけない」
「……」
 言ってしまえばそれに尽きるのだ。
 半脱ぎ状態の彼女を、胸元に引き寄せた。
 小さな体を抱きしめると、充足感に包まれた。
 こうしてくっついて、彼女の存在を確かめられるのが、すごく好きだったりする。
 こうしていると落ち着く。もちろん性欲はあるけど、それとは別に、安らかな気持ちに
なれる。
「こうやっているだけでも、すごく幸せだったりするんだ」
 愛しい人の息遣いを感じられるからだろうか。それもあるかもしれない。けど、特に
理由はない気がする。
 ただ抱き合うだけで、うれしくなるんだ。
「あのさ」
 文花がうなずく。
「好きだよ」
 うなずく。
「文花は?」
 うなずいて、顔を上げる。
 うれしげに頬を染めながら、彼女は小さくささやいた。
「……愛してる」
 おっと。
 ぼくは虚を突かれて、一瞬言葉が出ない。
 文花はそんなぼくの様子の隙を突くように、さらに続けた。
「だから……今日はいっぱい愛し合おうね」
 無口な彼女が情熱たっぷりに宣言するのを見て、ぼくはついにやけてしまった。
 それは、ぼくだけに囁かれる言葉。
 ぼくのために、囁かれる言葉。
 その言葉にうなずいて、ぼくも囁きを返す。
「ぼくも、愛してるよ」
 彼女はにっこり微笑んだ。
365かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 01:17:56.15 ID:BwZp1c6Y
 
      ◇   ◇   ◇

 柔らかいベッドの上で、彼女とつながって一つになる。ショーツの内側を探ってみたら、
もう前戯の必要もないくらい濡れすぼっていて、ぼくは文花の脚を持ち上げてその下着を
剥ぎ取った。それから急いで自分の服を脱いで、膝立ちで彼女に近づく。そのまま腰を
抱えて挿入を試みると、狭い割りに簡単に呑み込まれた。
「は……ああ……」
 文花が大きく息を吐き出した。ぼくも呼応するように息をつく。
 振袖はほとんど脱げて、羽のように大きく広げられている。長襦袢も体の半分くらい
しか隠していない。
 体全体で密着するようにかぶさると、文花の温もりが直に伝わってきて、たまらなく
気持ちよかった。下半身を揺さぶるように動かすと、しびれるような快感が脳にまで
響いてきた。
 彼女の形のいい口から漏れる小さな喘ぎ声が、高まりを助長する。
 普段はなかなか開かれないその口から、快楽に翻弄される声が出ると、それだけで
うれしい。
 顔の表情もとろけ、余裕なんかとっくに失われている。かくいうぼくの方も、あまり
もたないような気がした。
 彼女の腰を持ち上げて体位を変える。文花の体を横向きにさせて、股間が交差する
ようにつながりあう。側位はより深く入るような感じがして、お気に入りの姿勢だ。
 ゆっくりと味わうように腰を前後させる。中の襞々がぼくのものに絡み付いてきて、
締め付けも強くなった。文花が少し辛そうにぎゅっと目をつぶる。刺激が強いせいだろう。
正常位とはまた違ったこすれ方をするため、さっきまでのペースに慣れているとだいぶ
具合が変わってくる。
 左手でおしりから太ももにかけて撫で回しながら、ぼくは腰のスピードを速めていく。
右手で形のいい胸の先を弄ると、文花は敏感に反応した。「んっ……んっ……」と声を
押し殺そうとしているところを激しく突いてやると、「あっ!、あっ……!」と喉を
震わせてかわいらしく鳴いた。
 もっと気持ちよくなりたい。もっと気持ちよくなってほしい。
 文花の上体を抱き上げる。脚をうまく内側に入れて、対面座位の体勢に変化した。
文花は力がうまく入らないのか、ぼくの体にもたれかかった。
 腰を上に突き上げるように動かす。
「んんっ……ああっ」
 動きに合わせて響く嬌声に、我慢が利かなくなる。さらに激しく動いて、ぼくは彼女の
中をひたすらに犯した。中での往復を何度も何度も繰り返して、入り口から奥の方まで
容赦なく蹂躙した。
 達するまでそれほど時間はかからなかった。射精感がこみ上げてきて、ぼくは彼女の
体を両腕で閉じ込めるように抱きしめた。
 下腹部にしびれるような刺激が一際強く走った。密着したままおもいっきり中に出して、
ぼくはしばらく射精の快感に酔いしれた。
 文花がぼくの体にしがみついて、何かに耐えるように身を強張らせている。呼吸を
止めていたのか、やがて苦しげに大きなため息をついた。
366名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 01:19:36.52 ID:E8c+nz35
支援
367かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 01:20:48.83 ID:BwZp1c6Y
「……きつかった?」
 ちょっと急すぎただろうか。最後はやや乱暴になってしまったかもしれない。痛くして
しまったんじゃないかと心配になった。
 文花は何度か深呼吸を繰り返した。
「文花?」
「……大丈夫」
 まだ少し乱れた呼吸をしながらも、文花は答えた。
「しばらくこのままでいようか」
 ぼくの提案に文花はこくりとうなずく。
 抱き合いながら、そっとキスをする。激しくはない、愛情を確かめ合うような軽めの
キス。
 キスだけじゃなく、髪を梳いたり、頬をくっつけたり、背中を撫でてやったり。
つながったまま、抱き合ったまま、ちょっとしたスキンシップを繰り返した。それだけで
十分心地良かった。
「振袖、汚れてないよね」
 汗はともかく、精液や愛液がつくのはちょっとまずい気がする。
 幸い付着はしていなかった。肌襦袢に少したれ落ちてしまっていたけど、文花は特に
気にしてはいないようだ。洗濯自体は難しくないのかもしれない。でも今度からは
きちんと脱がせることにしよう。
 文花の息も整ったようなので、ぼくは離れようとした。
 しかし、
「……文花?」
 背中に回した手を、放してくれない。
 文花は、ぼくの顔をじっと見つめてくる。
「次は、優しくしてね」
 締め付けが強くなる。
 ぼくのものもあっという間に硬さを取り戻す。
「……了解」
 言われるがままに、ぼくは行為を再開した。彼女がうれしそうにぼくの頬に口付けを
した。
 今度は激しさのない、穏やかな交わりだった。

      ◇   ◇   ◇

 その後、ぼくらは二度求め合った。
 終わってから、そのまま眠ってしまいたい気持ちもあったけど、文花のお父さんがいつ
目覚めるか心配だったので、眠気をこらえて二人で後始末をした。
 帰り支度を済ませたところで、文花が約束のDVDを渡してきた。ありがとうと受け
取ると、ぼくの彼女は綺麗な笑顔を浮かべた。
 青川家を出てしばらくしてから、携帯が鳴った。
 確認してみると、短い言葉がつづられた、文花からのメールだった。

『今年もよろしくお願いします。耕介くん。』

 ぼくはその、一見なんでもない文面に、文花の心からの愛情が込められている気がして、
急いでメールを返した。

『こちらこそよろしく!』
368名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 01:22:47.00 ID:fwu4rPJ2
GJ! 悪代官ごっこ?したがる文花ちゃん可愛いw
369名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 01:26:29.42 ID:E8c+nz35
GJ!悪代官ごっこは裸エプロンに勝るとも劣らない男の夢だと思ってたのに……。バレンタイン?なにそれ。
370かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2012/02/14(火) 01:27:09.59 ID:BwZp1c6Y
以上で投下終了です。バレンタインネタじゃなくてごめんなさい。

振袖の各部位や道具にはもちろん名前がついていますが、
耕介くんにその知識はないので割愛しました。
詳しく知りたい方は、どうぞ検索してみてください。
371名無しさん@ピンキー:2012/02/14(火) 01:33:08.53 ID:77HDKtpu
GJ
つまり和服はバレンタインに勝るということか
372チョコレート色に乗せて(0) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:10:11.50 ID:fznDqrxc
投下してみます。

Q.やられちゃうSSな件(二回目)
A.バレンタインは女の子の日だと思うんです(独断と偏見)
373チョコレート色に乗せて(1) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:10:39.46 ID:fznDqrxc

 しんと降る雪で路面は白く染まり、スニーカーの内側が冷える。
 道中で濡れてしまった靴下を気持ち悪いと思いつつも、少年――小泉宏樹は上履きに
はき替えた。
 取り替えるのは後回しでもいい。彼にはそれよりも重要な事があって、自然と階段を
駆け足で上るようになる。始業時間よりも大幅に早い今はすれ違う生徒もおらず、まる
で休日に来てしまったように錯覚させる。
 通り過ぎる教室の扉が全て閉まって、寂しげな廊下を歩くのも一人。宏樹は自分の教
室につくと、引き戸を開けるよりも先に自分の目を疑ってしまった。
「お、おはよう」
 小窓の先に人影が見えたのだ。
 ドアを開ける音に気が付いて、既に着席していた女生徒が振り向いた。その視線を受
けながら、宏樹は彼女のもとへ行く。
 電気を一切点けず、雪を降らす雲のせいで薄暗い部屋の中に少女はひとり、取り残さ
れたような印象を抱かせる。しかし、これが三澄成佳。宏樹の恋人とも言える人物だ。
 彼女が座っているのは宏樹の座席で、見上げている口元が笑っていた。
「ざんねん。もう少し早く来れば良かったかな」
 言葉にこそしていないが、成佳は先に着いた事を嬉しがっている……そんな気がした。
にこにこと笑んでいるのではなく、口を持ち上げて表現しているから大方合っているは
ずだ。
 とはいえ、競争するにも宏樹は距離の面で不利だった。鈍行で四駅、乗り換えて急行
をつかまえないことには時間が伸びる一方だからだ。それでもまだ始業より一時間は前
で、教室には成佳とふたりしかいない。
「ありがとう、ナル」
 少女が机の中から取り出した包みを受け取る。赤い長方形を白いリボンで飾っていて、
見ているだけで温かい。
 それを開けずに鞄へ入れると、宏樹は自分も同じような色の包み紙を成佳に渡した。
「学校で開けるのは恥ずかしいから、後でにしようね」
 成佳はひとつ頷いて了解の合図をくれた。
 二月十四日。女性から男性にチョコを贈るイベントだが、男性から女性にという逆の
パターンも少なからず存在する。しかし、今は周囲に誰もいないとはいえ、宏樹は学校
内で開封されるのが恥ずかしくて、そう告げた。放課後――するべき事を済ませてから
――それぞれの包みを開けるように約束し、本日のために仕掛けた勝負は宏樹の敗北に
終わった。
「……いつからいたの?」
 三十分前くらい? と訊く。小さくくしゃみをした少女はコートを羽織ったままで、
膝丈のハイソックスを履いている足元が寒そうだった。この学校も例に漏れず女子の制
服はスカートで、その下にジャージを穿くのは校則違反。せめてもの防護策はタイツに
なり、冬場は腿まで黒く染まる生徒が増える。だが、彼女は違うようだった。
 受け取った包みとは違う小袋を手にして、宏樹は成佳により近づいた。
「はい、チョコレート。甘いもの食べるといい気分になるよ」
 通学途中に食べていた一口大のチョコをひとつ、袋から取り出して少女の手に乗せる。
 手のひらに唇を寄せてそれを含むと、彼女は口の中で何度も移動させ、ミルク味を楽
しんでいるようだった。
 やがて喉を鳴らし、宏樹の目には笑顔が映る。訊かなくても、感想が聞こえてくる表
情だ。
「ナル、もっと温かくなろうか」
 言って、宏樹は窓際に移動する。チョコの入った小袋だけを手に、降雪の様子が背に
まわる。
 少女のきょとんと首を傾げる様子もまた愛らしく、それを目にしながら茶色の固形を
一口含んだ。
「誰もいないから大丈夫。こっち、おいで」
 溶かした残りを飲み込み、手招き。すると成佳は周囲を確認してから席を立ち、ゆっ
くりと寄ってくる。正面から受け止めて腕の中に収めると、温かさが着衣越しに伝わっ
てきた。
 その後、片手だけ繋ぐ。荷物を持っていない彼女の手はとても冷たく、ほんの少し前
に教室入りした宏樹の方が熱を持っていた。軽く握ると力を入れ返してきて、ちょっと
面白い。
374チョコレート色に乗せて(2) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:11:32.56 ID:fznDqrxc

「んっ」
 肩まである黒髪には何も飾られていないが、乗せた手に絡まらず流れていく。後頭部
から首の方まで撫でてあげると、見上げている成佳の目が細くなった。ふわふわと花の
ような香りが漂って、宏樹も気分が良くなってくる。
「キス、しようか」
 今度は驚きが表情のほとんどを占めて、少女は視線をあらゆる方向に泳がせた。ふた
りとも教室に来たままの格好だが、鞄とは距離があって武器を出せない。宏樹は頭突き
さえ覚悟していたものの、握り合っている手の力が少し強まる程度だった。
 体温を上げるなら他にも方法はある。しかし、始業の一時間も前とあって人気はまる
でなく、せっかく二人だけの状態なら最良の手段と言えた。
 そんな建前で以って成佳の唇を指で一押しする。乾燥した様子もなく綺麗な桃色で、
頬の白さがそれを目立たせる材料になった。
「……っ」
 特に抵抗しなかった少女と唇どうしで触れる。ついばむ様なキスを一瞬だけして、そ
の次はしっかりと繋ぎ合わせる。
 空いていた成佳の手は腰と窓の隙間に入り込んで、密着を強めようと力をかけてきた。
宏樹も応じて、彼女の腰を抱き寄せる。
「こんな日だから、チョコ味のちゅーもいいよね」
 黒髪の少女はひとつ頷いて返した。かすかに息の音が聞こえ、白かったほっぺたがほ
んのり赤い。
 宏樹は彼女の唇に舌を当てた。いちど閉じた扉はそれによって上下に分かれ、空間か
ら軟体があらわれる。
「っ……ん、んっ」
 先端を擦り合い、そのうち口の距離が縮む。ふたりは唾液の音を響かせながら、それ
ぞれ口内に残したミルクチョコをさらっていく。
「ふぅ、う、ん……」
 ぬちゃ、ぬちゃ、と粘っこい音が耳に纏わりついて、成佳は周辺の状況が分からなく
なってきた。少年とのキスはそれだけ強烈なもので、ふたりで食べた固形物が普段以上
の甘さを演出している。
「んぅ、ふっ、っ」
 チョコの味がだんだん薄まっても、舌はまだ甘いと認識している。宏樹は少女を抱い
ていた手でセミロングの髪に触れ、コートでも隠しきれなかった首筋や耳の辺りをなぞ
った。
「ん……っ! むぅっ!」
 途端、少女の体がびくびくと震えだす。しかし、繋いだ手はどちらともなく指が絡ま
って、振りほどくのはとても難しい。それでも舌を使ったキスを続行するあたり、この
娘は欲求に対して素直なのだと思った。
 呼吸はほとんど鼻で行い、唇に吐息がふりかかる。宏樹は成佳をくすぐりながら、実
は苦しいのを堪えていた。
「……は、ぁっ、っ……」
 ようやく口が離れた後、肩を揺らす宏樹。成佳は大きく深呼吸をして、ふと見た彼女
の目は何かを訴えかけていた。
 とはいえ言葉を出すには空気が足りない。小柄な少女を腕の中に収め、後頭部をゆっ
くりと撫でてあげる。
 落ち着いてきたころ、口に出した。
「えっちなのはナシ。途中でやめられないもの」
 ここは教室。座席は全て空いているが、いつ誰が来るか分からない。どこか人目に付
かないところでもそれは同じだ。始業のチャイムが鳴ったからといって中断できるもの
ではないし、ふたりして大幅な遅刻をした身なので気を付けているというのもある。
「……ナル、えっちなんだから」
 お返しは握った手の力が強まるのと、脇腹をつままれる同時攻撃。どちらもじわじわ
と痛みがやってくる。
 しかし、言わずにはいられなかった。黒髪の少女は「ん」を二回だけで否定してくれ
たが、おそらく頭の中には続きを繰り広げている光景が浮かんでいたのではないだろう
か。
「じゃあ、もう一回ちゅーする?」
 宏樹も、抱きしめて撫でるだけでは収まらなくなってきていた。キスなら適当なとこ
ろで止められる。そう言い聞かせて、彼女の胸や脚を触ろうとした自身の衝動を押さえ
つけた。
375チョコレート色に乗せて(3) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:12:20.53 ID:fznDqrxc

 成佳が頷いたのを確認して、コートのポケットに突っ込んだ小袋の中身をひとつ、ま
た口に放り込む。
「ふ、っ……」
 チョコを溶かしながら、やはり最初は軽く触れるだけの口付け。合図を送って少女の
口腔が見えると、宏樹はそこに接触して舌を送る。
「んむ、んんっ……!」
 やってきた異性の軟体は土産を持っていた。その様子を目の当たりにしていたとはい
え、いきなり広がった甘い味に成佳は困惑する。しかし、すぐに自分の口で溶かしにか
かり、唾液と混ざった汁を相手に塗りつける。
 食物を口に含んだ時、咀嚼しやすくするために唾液が多く分泌される。宏樹は成佳に
チョコレートを渡し、それが溶けた液体をもらっていた。にちゃ、にちゃ、と音を立て
て舌に絡みつき、今ならどこかで見た『恋人とするキスは甘い』というフレーズを肯定
できる。
「ぅ、うんっ、ん……!」
 口付けの間は、成佳もされるがままではない。送られたチョコを少年の舌に持たせよ
うと操り、ふたりの間で立つ音が一層はげしくなっていく。
 しかし、あと一歩というところで相手の口に入れることはできず、軟体を擦り合う動
作が大きくなるだけに留まっていた。
「く、ふぅ、っ」
 今度は抱き合ったままキスを続けている。成佳は少年の腰を思い切り寄せているが、
彼は変わらず緩い力で応えてくれて、体がほんのりと温かくなる。その代わりにもう片
方は指まで絡めてしっかりと握り合っており、簡単には解けない。
「んっ、う……んふっ、ぅん……っ」
 固形だったものはどこかに失せたようだった。成佳は溜まった唾液を少しずつ嚥下し
て、なるべく少年にも甘い味を渡そうとする。
 結合が解かれたのは味が薄まってきた頃で、口が寒気に触れて冷え込んだ。
「あはっ……キスって、おいしいね」
 ミルクチョコレート二つ分のキスを終えて、宏樹はコートの内側に汗をかくまでにな
った。少女と繋いでいる手も蒸れて、彼女を抱いていたところまで万遍なく熱っぽい。
 離れる間際にかかった唾液の橋は宏樹の方に崩れ、それを舌で拭う。なおも甘くて、
口付けの余韻が残っていた。
 曇り空は一向に晴れず、しかし薄暗い教室でも成佳の顔が真っ赤に染まっているのは
分かった。そのままじっと見つめられて、宏樹の鼓動は慌ただしくなる。
 視線を逸らす振りをして黒板の時計に注目すると、まだ平気そうな気がした。
「ナル、もうちょっとだけ……いい?」
 目を戻して問いかける。遅れて時計を確認したのだろうか、少女は腕の中で笑みを浮
かべた。仕方ないとか、そんな風でもない。
 そんな柔らかい体を気持ち強めに抱きしめてから、ふたりは両手とも握り合い、チョ
コレートなしでのキスを始めた。


 放課後になると、男女を問わずどこか落ち着きがなくなる。
 宏樹は図書室前の廊下で、やけに早足の生徒を何人と見ていた。人数は両手では利か
ず、それでいて戻ってくるときは女子が駆け足、男子はのんびりとしていて、もしくは
男女並んで歩いている。
 実にさまざまな様子は目を飽きさせなかったが、コートを羽織っているとはいえ寒い。
すっかり雪は降りやんでいたものの、ここで吐く息が白くなるようで、宏樹は手をすり
合わせた。
「あ、お疲れ様」
 掃除を終えて部屋から出てきた少女に声をかけ、並ぶ。地味な紺色のコートを着て、
帰り支度も済んでいる成佳と、近くの階段から降りていった。
 教室の並んでいる側と比べて狭く、人気の少ない階段。上履きの音が反響し、静かな
ことが分かる。
「……これ、聞くとドキドキするよね」
 思わず小声になった宏樹の隣で、成佳はひとつ頷いた。
 地上一階に差し掛かると、壁と同じ色に塗られた非常口の向こうから声が聞こえたの
だ。この先は校舎の裏側で、生徒が愛の告白をする際によく指定される場所という噂。
何か理由があるのかもしれないが、宏樹にはわかりかねた。
376チョコレート色に乗せて(4) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:13:12.19 ID:fznDqrxc

「もう、気にしちゃダメだよ」
 そこから遠ざかる程に、黒髪の少女はちらちらと背後を確認していた。今まさに告白
をした女子の恋愛が成就するか気になってきているらしい。なにしろ扉一枚だけ、メイ
ンとなる階段の方に人通りが集中するので、外からの音もわかってしまう。
 彼女の肩に手を乗せて注意を引くと、成佳は赤面して俯いてしまった。下駄箱に集ま
る生徒たちのざわめきに混じって、うーっと唸る様な声が発せられる。
 違うクラスなので一度別れ、靴を履き替えてから落ち合う。
「さ、行こう」
 見上げてきた成佳の頬はまだ赤く、意識があちらに向かっていたようだったが宏樹は
触れずにおいた。


 やってきた各駅停車に揺られ、下車して歩けば二十五分。宏樹は成佳と共に三澄家に
到着した。大雨の季節にずぶ濡れで入った時とは違い、今は慌てることもない。
 リビングで少女が用意した、膜の張ったホットミルクを一口。体が内側から温まって
いく。
「落ち着くね」
 呟きに、対面に座していた黒髪の少女も頷いた。
 宏樹は再びミルクを啜る。レンジではなく鍋で加熱したためか程よい具合で、特別あ
ついと思うことなく喉に通すことができた。白い液体はほんのり甘く、寒空の下を歩い
てきた体を言葉通りに落ち着かせてくれる。
 ことん、と容器をテーブルに置いたのは成佳と同じタイミングで、口元に牛乳をつけ
たままの顔がうっすら笑みを浮かべた。
 飲み終わって空になった両方のカップを手に少女は席を立ち、戻ってくるとテレビ付
近の床面に座り込んだ。
 眺めていると、彼女は肩越しに振り向いて視線をくれた。
「……ええと」
 暖房を操作したような電子音を聞いてから、宏樹はこのまま彼女のところに向かって
いいのか、少し悩みながら椅子を離れた。上着を残して学生服姿の少女に一歩、二歩と
近づき、
「えいっ」
 その体をつかまえた。頬を寄せると表情を綻ばせて可愛らしいので、さらさらの黒髪
を撫でてあげる。
 ホットミルクを飲んだばかりだからか、少女は湯たんぽのように温かく、宏樹は不思
議と腕を緩めることが出来なくなってしまう。
 成佳がおとなしくしているのも合わせて、そのまましばらく抱きしめては撫でてを繰
り返し、ある時ハッと思い出した。
「これじゃ、いつもの図式だよ……」
 どちらが先に学校につくか――どちらが先に相手にチョコを渡すか、その軍配は少女
に上がっている。いつも自分からしているだけではパターンが単純になってしまうから、
少年は例によって『主導権』を賭けていた。それに従うなら、本当はこの構図ではいけ
ない。
 しかし、髪をくしゃくしゃに広げたまま、少女はうーっと唸る。
「ナル」言う間も、宏樹は腕を解かない。「このままじゃ、僕がナルの体を触っちゃう
よ?」
 それでもいいの? と続ける。すると、成佳は俯き加減からちらりと視線をくれて、
困った様な表情を作った。
「……可愛いっ」
 むぎゅ、と宏樹は少女を抱きしめた。何か想像していたのかもしれないが、ちょっぴ
り朱に染まっていた上での眼遣いは高得点の要素になった。
 せっかく思い出したことを忘れて、腕に強弱をつけて体を揺らす。彼女の抱き心地は
世界中の何にも勝ると断言できる。そのくらい、解放するのが惜しい柔らかさと温度な
のだ。
「――って、違う……」
 再び意識を取り戻して、宏樹はセミロングの少女を解放する。脚を崩した姿勢から動
いて、彼女は正面に向かい合った。
 さて、成佳の頭に手が伸びたのは自然というか当然というか、少年は無意識のうちに
撫でる動作を実行してしまっていた。
377チョコレート色に乗せて(5) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:13:52.51 ID:fznDqrxc

「もう、気にしちゃダメだよ」
 そこから遠ざかる程に、黒髪の少女はちらちらと背後を確認していた。今まさに告白
をした女子の恋愛が成就するか気になってきているらしい。なにしろ扉一枚だけ、メイ
ンとなる階段の方に人通りが集中するので、外からの音もわかってしまう。
 彼女の肩に手を乗せて注意を引くと、成佳は赤面して俯いてしまった。下駄箱に集ま
る生徒たちのざわめきに混じって、うーっと唸る様な声が発せられる。
 違うクラスなので一度別れ、靴を履き替えてから落ち合う。
「さ、行こう」
 見上げてきた成佳の頬はまだ赤く、意識があちらに向かっていたようだったが宏樹は
触れずにおいた。


 やってきた各駅停車に揺られ、下車して歩けば二十五分。宏樹は成佳と共に三澄家に
到着した。大雨の季節にずぶ濡れで入った時とは違い、今は慌てることもない。
 リビングで少女が用意した、膜の張ったホットミルクを一口。体が内側から温まって
いく。
「落ち着くね」
 呟きに、対面に座していた黒髪の少女も頷いた。
 宏樹は再びミルクを啜る。レンジではなく鍋で加熱したためか程よい具合で、特別あ
ついと思うことなく喉に通すことができた。白い液体はほんのり甘く、寒空の下を歩い
てきた体を言葉通りに落ち着かせてくれる。
 ことん、と容器をテーブルに置いたのは成佳と同じタイミングで、口元に牛乳をつけ
たままの顔がうっすら笑みを浮かべた。
 飲み終わって空になった両方のカップを手に少女は席を立ち、戻ってくるとテレビ付
近の床面に座り込んだ。
 眺めていると、彼女は肩越しに振り向いて視線をくれた。
「……ええと」
 暖房を操作したような電子音を聞いてから、宏樹はこのまま彼女のところに向かって
いいのか、少し悩みながら椅子を離れた。上着を残して学生服姿の少女に一歩、二歩と
近づき、
「えいっ」
 その体をつかまえた。頬を寄せると表情を綻ばせて可愛らしいので、さらさらの黒髪
を撫でてあげる。
 ホットミルクを飲んだばかりだからか、少女は湯たんぽのように温かく、宏樹は不思
議と腕を緩めることが出来なくなってしまう。
 成佳がおとなしくしているのも合わせて、そのまましばらく抱きしめては撫でてを繰
り返し、ある時ハッと思い出した。
「これじゃ、いつもの図式だよ……」
 どちらが先に学校につくか――どちらが先に相手にチョコを渡すか、その軍配は少女
に上がっている。いつも自分からしているだけではパターンが単純になってしまうから、
少年は例によって『主導権』を賭けていた。それに従うなら、本当はこの構図ではいけ
ない。
 しかし、髪をくしゃくしゃに広げたまま、少女はうーっと唸る。
「ナル」言う間も、宏樹は腕を解かない。「このままじゃ、僕がナルの体を触っちゃう
よ?」
 それでもいいの? と続ける。すると、成佳は俯き加減からちらりと視線をくれて、
困った様な表情を作った。
「……可愛いっ」
 むぎゅ、と宏樹は少女を抱きしめた。何か想像していたのかもしれないが、ちょっぴ
り朱に染まっていた上での眼遣いは高得点の要素になった。
 せっかく思い出したことを忘れて、腕に強弱をつけて体を揺らす。彼女の抱き心地は
世界中の何にも勝ると断言できる。そのくらい、解放するのが惜しい柔らかさと温度な
のだ。
「――って、違う……」
 再び意識を取り戻して、宏樹はセミロングの少女を解放する。脚を崩した姿勢から動
いて、彼女は正面に向かい合った。
 さて、成佳の頭に手が伸びたのは自然というか当然というか、少年は無意識のうちに
撫でる動作を実行してしまっていた。
378チョコレート色に乗せて(6) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:14:40.26 ID:fznDqrxc

「今日は特別な日だからさ」こく、と頷いた少女の耳に、ふっと近付く。「ナルの好き
なようにしても……いいんだよ?」
 バレンタインは女の子の日――チョコを渡したのは自分だって同じだが、こんな日だ
からこそ普段とは違うパターンでいたいと思った宏樹。すぐ元の位置に戻って正面から
眺めてみると、少女の顔は今日でいちばん赤くなっていた。
 癖毛が特徴の少年は、頬が真っ赤だった。瞬きの回数が多くなり、言葉にしなくても
恥ずかしそうなのは伝わってきた。
 成佳は口を閉じたまま小さく唸る。高さの違う「ん」ばかりが出ていき、考えがまと
まらない。
「……うっ」
 とりあえず、成佳も恥ずかしいので床についていた手で彼の頬を鳴らした。暖房のお
かげでどちらも熱を持って、その差はあまりない。
「っ!」
 少女の驚きが混じった音。触りたくてうずうずしていた両手が成佳の肩に乗り、体を
引き寄せてキスをするかたちになる。
 一瞬で離れたが、手が吸いついたように離れない。
「あ、えっちな顔」
 正面にあったのは、そんな顔。指摘してすぐ、成佳は自身の頬をひっぱたき、とろん
とした目を瞬きさせた。
「んくっ……」
 だが、今度は成佳の方から口付けが見舞われる。またも少しのうちに離れて、紅潮し
た様子の少女はくすりと笑んだ。せっかく直した表情が元通りになっている。
「ん、ふっ」
 舌を出したのを見て、宏樹も応じる。口とくちの間で触れ合っていた軟体が、次第に
口内を探るようになるまで時間はかからない。成佳の肩にあった手を離し、後は彼女の
動きを妨げないように心掛ける。粘っこい音を立てながら、器用に舌を操る少女の手首
を緩く掴んだ。
「ふぅ、うっ、んん……」
 ひとたび大人のキスが始まると、少女はなかなか解放してくれない。あちらが夢中な
のは背にまわった腕の強さで理解し、宏樹は懸命に鼻を使って息を継ぐ。
「んっ、うぅ……っ、んくぅ……」
 しかし、彼女との口付けは呼吸すら忘れそうになる中毒性があった。唇が柔らかくて、
その中で軟体を擦り合っていると心地よくて。
 普段はちょっかいをかけてくる少年が大人しいから、成佳はキスに専念できた。やは
り口付けはスイッチで、朝も色々な事を思考してしまっていた。先程もえっちだと指摘
されて、その仕返しとばかりに舌の動きが激しさを増す。こうして発される音もまた、
いくつもの本を読んで得た知識を頭の中で広げさせた。
「ぷあっ……あ、はぁ……っ」
 呼吸が自由になり、宏樹は肩で息をした。一方で黒髪の少女は自分が着ている学生服
を脱いでいて、上着とその下にある深緑のカーディガンからボタンが外れ、床に積る。
 ブラウスの留め具に手をかけた時、ようやく彼女は視線に気づいて、胸元を片手で隠
した。
「僕も、脱いだ方がいい?」
 正直なところ、途方もなく熱かった。暖房が効いている部屋で学生服を着たまま、異
性とキスして体温がかなり上昇している。額の汗とともに意識がぼんやりしそうで、宏
樹は少女の頷きをもらって着衣を外しにかかった。
 アンダーシャツと、その首に巻かれた翡翠色のタイも無くなり、お互い何度か相手に
視線を送りながらも上半身の脱衣を完了して、宏樹は一番下に着ていた白シャツ、成佳
は茶系統のキャミソールになるまで衣類を積もらせた。彼女は下着からうっすらと胸を
透かしているが、双方とも似たような格好なので気にしていないようだ。
「……んっ」
 空間はキスで埋める。ふたりで同じ事をして、宏樹は少し嬉しくなった。少女は唇を
ついばんで遊び、彼女に押されるような形で徐々に姿勢が変わり、床に寝転がる格好に
落ち着く。
 脚の間に膝をひとつ入れた成佳も熱を含んだ息を吐いて、どこか艶めかしい雰囲気を
醸し出す。普段は幼さが残っていて可愛らしいのだが、こんな仕草も魅力的だった。
379チョコレート色に乗せて(7) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:15:35.71 ID:fznDqrxc

 残ったシャツをくるくる巻きながら持ち上げられ、宏樹は胸まで露出した。少女に責
められた経験が過去にあったものの、今また何をされるのかと心拍数が増している。
「わっ……」
 火照った体には少し冷たい感触。成佳の指ではなく、いつの間にか彼女の手に持たれ
ていた容器から何かが出たようだった。そこに、舌が近付いていって、ぺろりと舐める。
 茶色が大部分を占めているチューブは、飾り付けに使うような小さなものではなく、
パンに塗るような大きめのサイズ。肋骨のあたりを細かく動く軟体がくすぐったくて、
宏樹は身じろぎした。
「くぅ、っ」
 その舌が口に入り込む。瞬間、甘味が広がり、少年は容器の中身を理解した。
「ふ……ぅむっ」
 ザラザラの表面を擦り合うごとに、チョコレートの味が唾液と絡む。上から口撃を繰
り出す成佳に対して、宏樹は寝転がっている姿勢なので、それを嚥下しないと苦しくな
る一方だった。こく、と喉を鳴らすが、途中で変に呻くような声が上がってしまう。
「……んぅっ! ん、んんっ!」
 そのうえで胸に手を伸ばしてくるから堪らない。チョコを舐めた方とは反対の部分を
指で押され、すぐに中央を責めてきた。
 キスの最中、びくびくと体を震わせた少年の様子に、成佳は裡で微笑んだ。弾力のあ
る乳の部分、その中央にある小さな突起、どれをとっても女の子のような反応をする。
 唇を離した後、チューブの中身と同じ色を残した方の胸に、再びチョコレートソース
を乗せた。
「は、く……!」
 味付けをされた場所に舌が這い、宏樹に痺れが襲いかかった。六角形の口から出てき
た茶色は冷蔵庫に入れられていたのだろう、少女の体温であまり冷たくはなかったが、
胸の突起に塗られて性的な刺激を送ってくる。そして、それを拭う動きは愉悦となって
思考を狂わせた。
「んっ……ぁ、っ」
 同じクラスにいる男子生徒よりも幾分か高い声が控えめに喘いで、空調の動作音くら
いしか無い部屋に伝わる。ちろちろと味付けを掬っていると胸が上下して逃げられてし
まうが、そんな体の動きでさえ成佳の行動をエスカレートさせた。
「……ヒロ」
 あらかた茶色のソースを片付け、真っ赤な顔をしている少年の名前を呼ぶ。彼は口元
を押さえて声を殺そうとしていたみたいで、しかし簡単に外すことができた。
 近付くと熱っぽい息の音も耳に入る。掴んだ手首も細く、癖毛の女の子と戯れている
ような気分。そんな倒錯的な感覚に支配されないように、彼の名は暗示にもなった。
「んっ」
 ほんの一瞬だけ唇で触れて、離れる。次は桃色のそこに付着した茶色を舌で取り除い
て、成佳は宏樹の口内に侵入した。
「ふ、くぅ、んっ、んん……」
 甘味が唾液と混じって口腔に広がっていく。朝の教室では市販のミルクチョコ、いま
少女としているキスも苦味の一切ないチョコレートソースがアクセントになって、長く
続けたいという中毒じみた思考が強まってくる。甘い液を纏っている軟体は右に左に動
き、宏樹はそれを追う形で自分の舌を操った。
 ぴちゃぴちゃと液体の放つ音が口の中で大きく響き、お互いを舐めあう動作は続いた。
少年の舌はどこまでも付いてきて、彼の体から舐め取った茶色のソースを表面から奪う。
ザラザラした表面も余さず、ふたりの間で混ざった唾液も甘かった。
 だいぶ薄まった汁を飲み込み、成佳は再び体を下げた。この状態での口付けはどこか
楽しいが、すこし我慢して責めにかかる。指の動きだけで蓋を閉めたチューブの中身が、
握っていた手に付着していた。
「くぁっ!」
 ぼんやりしていた意識に、自分の体が味付けされているというのはなかなか衝撃的だ。
露わになっている乳首とその周辺にチョコレートがかけられ、鼻を動かすと匂いが認め
られる。
 その上を砂糖菓子みたいな白い指が滑り、突起を踏みつけて宏樹の体は震えた。
「は、っ……うぅ、んっ」
 ただ置いていただけの手には強張り、ソースを舐め取る舌が与える電撃に耐えようと
する。背は床と接しているはずなのに体が沈むような感覚になって、相手をどかそうと
して落ち着かない。
380チョコレート色に乗せて(8) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:24:56.72 ID:fznDqrxc

「んっ、く、ぅあっ!」
 ゆっくりと舐めていた少女が、とつぜん乳首に吸いついた。吸引する音が耳にまとわ
りついて、少年の内側で抵抗していた部分を消していく。ちゅうちゅうと飲料でも吸う
ようにしている一方で、反対側の中心部をいじくられ、足裏をフローリングに擦りつけ
た。
 胸にキスした状態で、宏樹の体がびくびくと動くのを感じる成佳。音というのは図ら
ずとも武器になるというか、こういうときは味方してくれる。ニップルを指の腹で転が
すと、彼はまた可愛らしい声を上げた。
「ひっ、くぅ……」
 顔が熱い。宏樹は自分でも不思議なくらい高い声を漏らして、その羞恥に悶えた。口
を押さえようにも両手が床にはり付いてしまって叶わない。
 少女は舌を細かく動かし、多方向から乳首を擦りあげてきた。途切れたと思うとソー
スがかかり、強く吸い付いて刺激してくる。
「う、ぅ……んっ! ふ、あっ……」
 成佳は捲り上げたシャツに付けないよう注意しながら、トッピングを失った胸の中心
に再びチョコを塗る。あずき色が茶色に変わり、一舐めごとに上下した。
 少年の喘ぎ声が興奮をより高めて、彼への責めが一層ねちっこくなる。自分が普段さ
れている事をそのまま、それだけに触られてもいない成佳の胸も少々の痺れを訴えてい
た。
「…………うぅ」
 少女のにやついた笑みを直視できない。目に滲むものがあって視界が歪み、瞼を閉じ
ると流れていった。
 視線を逸らした宏樹の口に、成佳が迫る。柔らかい唇を押し付けられた瞬間、彼女が
舐め取ったチョコの味と香りが体に入り込む。
「くん、ぅ……っ」
 それから、たっぷりの甘みを含んだ舌が口腔を探る。同時に胸もまさぐられ、少年は
呻くような声を上げつつも動きに応じ、混ぜこぜになった唾液を少しずつ喉に通してい
った。
 連結を解いて、しかし近距離にいる少女。その顔は紅潮して、眼鏡をかけていたなら
ズレを直しただろう。宏樹の目に映ったのはいつかと同じ、意地悪そうな表情だった。
「んぅっ!?」
 何かがせり上がる様な感覚になり、宏樹は驚きの声を上げた。
 膝だ。腿の間に入っている少女の膝が急所を圧迫してきたのだ。僅かとはいえ陰嚢が
体の内側に進む様な気分で、じんと鈍い痛みが直線的に駆け上がる。だが、それを不思
議そうにしている彼女に伝えられない。
 成佳は少年にキスをもうひとつ与え、体を下げた。甘い香りを放つ彼の胸を触れて、
硬い突起をくりっ、くりっと捏ねまわす。
 べつだん激しい動きではないのに、自分の胸を覆っている薄いヴェールが擦れて、少
年と一緒に微かな息を吐いた。
 脱ぎ散らかしたのは上半身だけ。ベルトもそのまま、窮屈そうにズボンを持ち上げて
いる宏樹のシンボルを解放するため、成佳は彼の下半身も露わにした。
「……もう、ナル……!」
 意識していなかった訳ではない。そそり立った勃起と自分の顔に視線を感じて、宏樹
は抗議した。体中が熱を帯びるが、少女は黒髪をかき上げ、口を笑わせるだけ。
 以前は彼女の足に踏まれ、挟まれた。その時の光景が浮かんで、屹立が二回ほど揺れ
る。どう扱われるのかと、期待と怯えの相反する感情が渦巻いた。
 それにしても――と、成佳は二度目にして改まる。
 腕や脚は細く、女の子みたいな少年だが、可愛らしい顔とは対照的に股座に生えるも
のは何というか……しっかり男だ。先端から放たれるにおいが鼻を突き、手にしている
チョコの香りでは打ち消せなかった。
「っ、くっ……」
 肉茎を掴まれ、少年はいっしゅん息が詰まった。だだ上がりの心拍数は勃起を通じて
黒髪の少女にも伝わる。指がやさしく巻きつき、揉む様な動作に反応して、そこはビク
ンと振動した。
 宏樹が身をよじるので面白がっていた成佳だったが、その手から彼の分身が逃げてし
まう。熱を持った棒は天井に赤黒い実を向けて、やはり振動する。
 黙って眺めていても反り起ったまま変わらず、少年が言う『特別な日』にちなんだ味
付けの愛撫に反応してくれたと分かって、嬉しさがこみあげてきた。
381チョコレート色に乗せて(9) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:26:17.41 ID:fznDqrxc

「ん、あうっ!」
 再度、勃起をつかむ。成佳は頭の中に広げた知識を辿るが、ここは急所、チョコレー
ト味のソースを垂らしていいものではない。また、いつぞやの様に特定の参考図書を用
意していなかった事もあり、行動がぎこちなくなる。
 しかし、少年の声を聞きながら棒の部分を握っている手を上下させると、ひときわ強
い振動が掌に伝わった。
「あ、あっ……んうっ……!」
 ゆっくりとした動作。その光景に、宏樹は不思議と興奮を覚えた。なにしろ繋いだり
握ったりした時の感触がそのまま、少女の手が自分の勃起を扱いているのだ。上に進ん
で先端部分を隠し、下に戻って茎を揉む。しかし、声ばっかりはどうにかしようと口を
閉ざす。
 音を出さないようにしているのは分かるが、少年は瞼も閉じて、成佳の目には彼が顔
をしかめている様にも感じられた。
 手で扱くのがいけなかったか、本当は具合が分からず指示を仰ぎたいのに、なぜか体
が言う事を聞かない。自分よりも熱を持っている棒を握って、そこから離れないのだ。
 遅めの上下運動をそのまま、耳にはり付いて邪魔になった髪を後ろにやり、成佳は膝
だけで移動する。
 彼女は、視界に少年の胸を捉えていた。
「ふあぁっ!」
 突然、上半身からぴりりと電気が走って、宏樹は鳴いた。ぼんやりした視界に黒髪の
少女が映り、先程はチョコを塗り付けていたニップルを触れている。
「くっ、ん、うあ……っ!」
 口にほど近い場所で刺激され、甘い痺れが出口を開かせる。最初の愛撫から床にはり
付いて動かない手では役に立たず、抑えるものの無い生の声を成佳に聞かせることとな
った。
 胸の中心にある小さな突起を捏ねる、これが成佳なりの答えだった。小泉宏樹のおか
げでこれまで多数の本を読んできたものの、こうも状況が限定されるとヒントになり得
るものは少なかった。ぐるぐると思考して、その末に取った行動も、自分が二箇所を同
時に責められた事を、彼にそっくり返しているに過ぎない。だが、高い声を上げて体を
震わせ、効果はある様に見える。
「な、ナル……! く、ぁ……っ」
 名前を呼んだ少年の脚は山を作って、崩し、落ち着かない。そんな中、彼の分身とも
言える肉棒はまたもビクンと脈動し、成佳は手の内側に汁気を感じた。
「ん、ぁ、っ……!」
 何か口にしたような気がして、しかし宏樹は自身の息が少女の声を妨げた。チョコレ
ートと同じ色のヴェールを纏っただけの体がだんだんと迫り、あわせて乳首を弄ってい
た手が離れていく。
 やがて、彼女の息が近づき、
「きもち、いいんだ?」
「っ! ……ひ、くぅ、うぅ……っ!」
 唇が、分かるように問いかけてきた。
 その間も屹立は扱かれたままで、先端を触られる直接的な刺激と、棒の部分から来る
痺れによって、少年は喘ぎを抵抗するような響きに変えるくらいしかできなかった。言
葉を作るよりも先に単純な音が出て行き、足りない酸素を補うためには呼吸もしなけれ
ばならず、まともな返事には至らない。
 成佳は頬、ひいては顔中が熱く、額から汗を噴いていた。レンズ越しに見ていると思
うほど視界がぼやけて、なぜ暖房をつけたのだろうかと自問する。下着とスカートくら
いしかないが、とにかく着衣が鬱陶しかった。
 たったいま発したこの言葉、宏樹なら顔色一つ変えず、何気なく言ってのけたろうか。
前回できなかった事を実行に移したが、どうしようもなく緊張して心臓がバクバク鳴っ
ている。その代わり、悔しそうな少年の顔を見られたので収穫はあったと言えた。
「……んくっ」
 唇どうし、息の音ばかりが交差する。訊いておいて羞恥が表にあらわれ、少女は少年
の口を塞いだ。
「んっ、ん、ふ、っ……」
 キスに次いでいきなり舌を突っ込まれたものだから、宏樹は対応できずに呻いた。し
ばらく蹂躙されてから成佳に追いつき、ぬめつく軟体を擦る。ただでさえ口内は熱いの
に、唾液も吐く息もこの空間を溶かしそう。
382チョコレート色に乗せて(10) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:27:05.77 ID:fznDqrxc

「んうぅっ、うんっ……!」
 そのうえ、成佳は勃起を手に包みこんで弄んでいる。いきりから染み出した汁が彼女
を助けて、よりスムーズにしてしまっているから、上下の動きが止まるはずはなかった。
 手を移動するたび、みちゅ、みちゅ、と粘つく音がするまでになった。熟れたように
赤い肉の実は全体が光沢を持ち、何カ所かで細かな泡が立っては弾ける。成佳は少年の
屹立から滲んだ液体を手に、それを扱いている全体に広げて、次第に速度が上がってい
く。
 口付けを終え、成佳は息を漏らした。この水音が、喘ぐ少年の姿が普段の淫らな行為
に重なり、胸に続いて陰部を疼かせ、ショーツの染みを広げる。それだけ興奮して、し
かし体重を支えるために手の空きは無く、認識しただけに留まった。
 かわりに、不自然に腰を引く宏樹をもっと愉しませようという行動に出る。もっと気
持ちよくしてあげる――彼が言いそうなフレーズはやはり恥ずかしいので口にせず、裡
で呟くだけにして。
「は、ぁっ! く、ふっ、うぁっ!」
 音を塞いでいた詰め物が取れて、あられもない声を上げる宏樹。黒髪の少女はその口
で胸に吸い付き、刺激を増やしてきた。
 突起をちゅうぅっと吸引し、さらに舌のザラザラが幾度も擦り上げる。半身をよじる
が、彼女は追いすがって舐った。
「う、ぅ……ナル、っ! ナル……っ!」
 激しい手淫と舌による乳首責め。二つはそれぞれ異なるかたちで愉悦を寄越して、と
ても宏樹は対応できなかった。どこかで抵抗していた部分も空しく、両脚が山を作って
足指は丸まり、腰が勝手に動く。
 もうやめて、という意思を含んだ悲痛そのものの声が名前を呼んだが、成佳は構わず
宏樹のニップルを吸い上げた。彼の勃起を握っている手も今さら止められず、粘着質な
音も大きく上下を続ける。
「んぅっ、く、ああぁっ!」
 限界近くまで溜まっていた何かが終盤でとつぜん増大し、一気にボーダーラインを踏
み越えた。刹那、だっと駆け上がるものを感じた宏樹は長い音とともに全身を震わせ、
さんざん扱かれた肉棒から熱流を吐きだした。
 手に付けていた透明な液とは違う、白いゼリーがあらわれた。すぐに指の外側まで溢
れて、とびきり熱いドロドロがふたりの体を汚す。
 成佳は少年が痙攣を始めても勃起への刺激を続け、ここが何度も脈動するのを肌で受
け取っていた。白濁は最初の一発が勢いよく、後は固体と液体の中間めいたものを流し
ていた。
 握ったままの手は内外ともに精液でまみれ、成佳は先に『犯された』と認識して下腹
部がきゅんとなり、次に『宏樹を果てさせた』という事実による達成感を覚えた。
「…………っ」
 傍に横たわる癖毛の少年が分泌した、発酵乳も真似できないような質感のものを少し
口に含むと、それは妙な味だった。おまけに喉に引っかかり、思わず咳込む。少女は彼
に隠れて苦い顔になった。
「ナル」
 背を向けたセミロングの少女を呼ぶと、彼女はすぐに振り向いた。すぐに起き上がる
力を持ち合わせていない宏樹は視線だけで訴え、肉棒を扱いていた方の手を浮かせたま
ま近寄ってきた。ギラリと光って、吐き出した子種やカウパーを付着させているのが理
解できる。
 テーブルの上に残したままのティッシュ箱を取りに行こうともせず、成佳は未だに紅
い頬で覗きこむ。
「本当に、ほんとうに、いじめっこだよ」
 彼女にいじわると評価される側でも、言えた。
 責め口は勝手の分かる女の子らしいというか、的確でねちっこい。今回は二度目とい
うのもあって、特に胸へと仕掛けた攻撃は宏樹にそう思わせた。チョコを塗されたこと
でも、思い出すだけでニップルが震えるような気分になってしまう。
「……ヒロのせいっ」
 思考が行為の終わりを意識すると、繰り広げた内容が恥ずかしくなってしまう成佳。
首や肩から汗を垂らしながら、本当はもっと言いたい事があったがそれだけに留めた。
 それから、湧いてくる羞恥と口に含んだ微妙な味を誤魔化すように、真っ赤な顔をし
ている少年の唇にチョコレートソースをぶちまける。
383チョコレート色に乗せて(11) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:27:39.93 ID:fznDqrxc

「ふ、むぅっ……んく、う……!」
 突然かかったものを拭うように口元を舐められ、その舌が唇を割って入る。宏樹は甘
味を堪能する余裕もなく、少女とキスをするまでになった。
 軟体が動き回り、くちゅ、くちゅ、と水音が発される。自然とチョコの味を求めて、
むしろ動作を激しくさせていた。
「ぷあっ……は、あは……っ」
 少女の満足そうな笑みにつられて口角が上がるが、唾液による音が淫らに聞こえて、
宏樹はちっとも落ち着かなかった。


 ことん、と二杯目のホットミルクが置かれ、カップふたつの間には赤い長方形が並ぶ。
ひとつは白いリボン、もうひとつは茶色のリボンを飾っていた。
 対面に座っている黒髪の少女を見ていると、宏樹の顔から笑みがこぼれる。つられて、
彼女もちょっぴり笑んだ。
 本来は学校の授業を終えたところで丁度いい時間帯だが、ふたりは帰宅してすぐにえ
っちな行為へと走り、適度にカロリーを消費し、遅れて間食の時間をむかえた。時計の
針が差す数字を乗算すると四十四程度で、雪は無いものの相変わらずの曇り空、外は少
し暗い。
「じゃあ、最初にナルがくれたのを開けちゃおうかな」
 体外に出た分泌液などをしっかり始末して、少年はそれ以前の格好に戻っていた。と
はいえ直前の激しい運動が学生服の上着を着るまでにはさせず、けっきょく暖房もつけ
っ放しなのでワイシャツまでとなっている。セミロングの少女もブラウス姿で、さすが
にタイは締め直していないため、お互い似たような簡素な服装でいた。
「……うん、こういうのって改めて嬉しくなるね」
 率直な気持ちに、少女はこくりと頷いた。
 その後、柔らかく結ばれた帯をほどき、セロハンが貼られていた包み紙を剥がす。そ
れらを真剣な眼差しで実行する宏樹と、彼の手元をじっと眺める成佳、いつしか二人と
も無言になっていた。
 彼はおそらく包み紙まで保存する気だろうな、と、成佳は途中とちゅうで視線をくれ
る少年の様子で悟った。表面をかなり簡素にしたのはそういった意図ではないにしても、
なんだか嬉しい。
「わ、食べるのがもったいないな」
 宏樹は箱の中身を手作りか市販品か、断定するのに迷った。きれいに整った茶色が、
周りに敷かれた白い紙のおかげで目立っている。
 向かい側にいる送り主はちょっと得意げで、なるほど前者だと思い至った。
「ねえ、ナルも開けてみて?」
 食べる時も一緒。そう決めて、少女を促した。
 成佳は少し悩んだ。先にあれだけ丁寧な開封ぶりを見せられては、包み紙を無造作に
破るような真似ができないではないか。
 しかし、なるべく失敗しないようにと慎重な手つきで、少年からの気持ちを解きにか
かった。
「頑張って作ったよ。ナルにちゃんと伝わるように、って」
 渡すものの内容については特に提案しなかった。しかし、多少いびつでもその方が思
いのこもった作品になるから、宏樹も湯煎から始めた。
 十字状に交差した細い紐と、少女からもらったものと同色の紙が剥がれ、いよいよ箱
が開く。
 形に関して伝えられるのは、ハート型ではないということ。万策を尽くしてもヒビが
入る可能性があるからだ。それでは見栄えが悪い。
「ん?」
 蓋を開けてからしばらく、硬直していた少女に手首の動きで招かれ、宏樹は机に身を
乗り出した。
 遅れて対岸から彼女がやってきて、
「……こちらこそ、ね」
 耳打ちでもするように、ぽそっと四文字。ふたりしかいないのに小声で礼を言われて、
お返しにと成佳の顎をとった。
 触れた唇は柔らかく、お互いチョコは手つかずなのに、とっても甘いキスだった。
384チョコレート色に乗せて(12) ◆q2XBEzJ0GE :2012/02/15(水) 06:29:51.43 ID:fznDqrxc
以上になります。
(4)と(5)が重複になってしまい申し訳ありませんでした。
385名無しさん@ピンキー:2012/02/16(木) 00:32:37.18 ID:awaIlnm3
グッジョブ!
386名無しさん@ピンキー:2012/02/22(水) 00:04:44.74 ID:U6z16/wQ
保守
387名無しさん@ピンキー:2012/03/06(火) 16:21:36.37 ID:zySDoEyr
ほしゅ
388名無しさん@ピンキー:2012/03/06(火) 16:43:16.69 ID:2I/oX9+q
m
389名無しさん@ピンキー:2012/03/12(月) 00:02:00.26 ID:nvx3skw+
390名無しさん@ピンキー:2012/03/13(火) 04:32:07.76 ID:QGOP6gdL
…………(そわそわ)

無口っ子はホワイトデーが待ち遠しいようです
391名無しさん@ピンキー:2012/03/14(水) 18:28:04.16 ID:UNMS2dis
まったりらぶ。顔ぶっかけ。ぼくっ娘。
あんまり無口じゃないです。

「そうだ、莉己。バレンタインのお返し」
「え……?」
 莉己が帰宅の最中に彼から渡されたのは、コンビニやスーパーで売られている20円の一口チョコ。
「あ、ありがと……」
 バレンタインには自分自身にリボンを巻いてプレゼントしたため、ホワイトデーに多少なりとも期待していた。
「不満?」
「べつに……」
 莉己の頭にバレンタインの夜に甘々でラブラブしながら過ごした記憶が浮かぶ。
「っ!? あ、わわっ、にぁっ」
 思わず情けない声が漏れた。
「ははっ帰ったら食べさせてやるよ」
「え? へ……っ!?」
 彼の言葉でチョコバナナの絵が莉己の思考を埋め尽くす。
「ぼ、ぼくっ……は、そ、そのっ……」
「バレンタインの時みたいにさ、チョコみたいに甘い声出しながらフェラしてほしいんだけどな」
 耳元で彼が囁く。家まで距離はまだあるため発情してはまずい状況だ。
「あ、ぅ……そんな、の……」
「チンポほしいんだよな?」
 その言葉に莉己の理性はとろりととけてしまった。
「んぁっ! ふぁ、ぁぁっ……だ、めぇっ……」
392名無しさん@ピンキー:2012/03/14(水) 18:32:16.44 ID:UNMS2dis
途中にある公園のトイレに二人で入り、濃厚なキスを交わす。
「んっ、ちゅっ……ぷぁっ! んんっ、ひゃふぁっ……」
「さっきのチョコさ、口に含んで」
 とろけた思考で彼の言葉に従う。
「ふぁあぃっ、んくっ」
「じゃあ口ん中で溶かしながらチンポ舐めて」
 本来変態な行為なのだがとろけた頭では理性が働かない。便座に座った彼の足の間にしゃがみ込み、発情した表情でモノをくわえた。
「ふぁむっ……んちゅっ、はへぁっ……」
 莉己は普段から物静かで、クールに見られがちだ。だが今は完全に女の子の顔で、彼のモノに舌を絡めている。
「んむっ、ひもひいい? はひゅっ、ぷぁ、んちゅっ……ふぇあぁぁ……」
 彼を見つめながら、口元がチョコと涎で汚れるのも構わず甘い声を漏らす。
「上手上手。じゃあそろそろかけるよ」
 莉己は彼の言葉に合わせ両手で受け皿を作り、舌を突き出しながら射精に期待を膨らませた。
 チョコと涎と先走りの汁が混ざった変態カクテルが莉己の口からとろとろ零れる。
「んぁあぇぇっ……はひゃふっ、へーひっほひぃいぃっ……!!」
 莉己は誰にも知られていない雌の顔を浮かべながら彼の精液を懇願する。
「焦んなくていいって、はいご褒美」
 瞬間、莉己の顔、口、髪を精液が染めた。
「ひぁふぁぁあぁっ!?」
 叩き付けられた精液で莉己は達してしまった。
「んあぁあっ……せーしっ、いっ、ぱいぃ……ぼくっ、せー、し……ふぁあぁぁっ」
 大好きな彼の精液臭を顔中で感じながら莉己は幸福に包まれた。

 その後。とろけて動けなくなった精液まみれの莉己を、彼はお姫様抱っこで家まで運んだ。
「ばか……」
ぎゅっ!と彼の腕をおもいっきりつねる。
「あだだだっ! 莉己だって喜んでただろー?」
「し、しらないっ……!」
 莉己自身嬉しかったのは事実だが、恥ずかしさのあまりそっぽを向いた。
「夜はやさしくするからさ」
 彼が耳元で囁く。
「……っ! ぼ、ぼくっ、べ、べ、べつに……」
「ははっ大好きな莉己と一緒にいれて嬉しいよ」
 莉己のおでこにキスが降る。
「にぁっ……!! ば、ば、ばかっ……」
 莉己は林檎色に染まった顔を彼の胸に埋めた。
「ぼくもだいすき……」
 彼に聞こえないように莉己はぽしょっと呟いた。


おわり。
393白い日の恋人(0) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:47:06.76 ID:d83ioffs
投下させてください。

Q.色的な意味でもホワイトデーは男の日なんですね?
A.それは考えすぎです
394白い日の恋人(1) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:47:51.11 ID:d83ioffs

 曇り空を映す窓の付近に、最後列の座席から周囲を眺める少女が一人。
 無人の机が並ぶ教室の入り口付近にかけられた時計は、まだ始業の一時間三十分以上
も前を指している。この部屋はもとより、引き戸で隔たれた廊下にも明かりは点いてい
ない。
 生徒の側で操作できない空調はだんまりで、そんな無音の空間で三澄成佳はひとつ息
を吐いた。ここは学校、仮にも屋内だというのに白いものが吐き出されて、視覚からも
寒さを取り入れてしまう。
 学生服をスカートまで隠すほどの大きなコートに、床に置かれた肩掛けの鞄。来たま
まの格好でも流石に冷え込み、成佳は両腕を抱いて身を震わせた。
 彼女が本来座るべきなのは、この列の出入り口に近い側の席。それも二つ隣の教室で
の話であって、ここは小泉宏樹という男子生徒の座席であった。
 とはいえ少年の気配を察知しようと神経を使うのは疲れるので、おとなしく本を読む
ことに決める。先月はそういったことを考えずにいたので、彼とやり取りをした後で眠
くなってしまった。
 鞄から取り出したのは文庫本。座席の主である宏樹から借りたものの一つで、もう数
冊が一緒に入っている。受け取って数日のうちに読み終えてはいたが、こうして繰り返
し目にすることで頭の中にある引き出しへと取り込んでいた。
 もちろん、書店で手に入れた黒いラバーで表紙を隠してある。通学時の電車はぎゅう
詰めで開く余地さえなく、学校で眺めるのが成佳のスタイルだった。早めの登校で消化
するのが普通で、ときどき日中の教室や昼休みの図書室など、宏樹以外の誰かがいるよ
うな所で少しずつ読み進めるのもまた――えっちな書籍なので尚更――刺激的な味わい
が面白い。
 どんより灰色の光を頼りに、黒塗りの表紙を開く。簡単な登場人物の紹介を省いた、
あらすじだけのページを通り、話の始めから文章を追った。

 引き戸の開く音が耳に入り、成佳は本から顔を上げた。
 女生徒が入室してきて、教卓近くの座席に荷物を置くと、着席して動かなくなるまで
に時間はかからなかった。
 窮屈なレの字が点対称に描かれた時計を見て、おおよそ一時間前だと理解する。前方
の生徒をすこし気にしたが、再び二章目へと入った文庫に目を戻した。
 物語の中で少年と少女が出会い、その関わりが描かれていくうち、教室には生徒の数
が増えていく。いつの間にか電灯も点けられ、談笑が聞こえてくるようになり、成佳は
人目を意識して本を閉じた。
 特定の時間になると動作するのだろうか、天井から温風が流れてくる。人の出入りと
通りが騒がしく、十分毎に入室するのが五分、三分と狭まっていく。あわせて話し声も
大きくなって、普段通りの光景があらわれた。
 途中、何人かに挨拶をされたので頭だけを動かして返した成佳。しかし、男女ともに
別クラスの生徒がいることに対して無関心というか、そもそもここが男子生徒の席であ
ることをどうこう言う訳でもない。
 いつの間にか隣に座っていた女生徒は読書に耽って、その手にふと目に恋愛小説めい
たタイトルが映って成佳は驚愕する。――さすがに、おおっぴらに性行為までする本で
はないだろうと、なぜか安堵のため息が出た。
 ラバーを鞄に戻すと、隣席のそれとは別に気がかりなことが一つ。
 小泉宏樹が来ていない。これは彼女にとって重大な出来事で、普段もこのくらいの時
間までにはいる筈なのだが。
 先月にした彼とのやり取りを少し、ほんのすこしだけ期待していて、既に短針は八を
指している。
 通学に使う鉄道は途中から同じ路線に合流するが、その電車が遅れているのか、何か
事故に遭ったのではないかと、もやもやした思いが浮かぶ。
 考えがまとまらないまま五分、十分と経過し、長針が四を指したところで、少女は荷
物を手に教室を出た。


「あっ」
 人の増える廊下でも、見つかるものはみつかる。
 癖毛の少年とセミロングの少女が、お互いを指差して同じ音を発した。
 三月十四日。俗にホワイトデーと呼ばれ二月十四日の『お返し』をする日となってい
て、主に女性から受け取った男性が行うようになっている。
395白い日の恋人(2) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:48:49.76 ID:d83ioffs

 成佳は少年に渡して、さらに受け取っていたので、いわゆる逆のパターンに当てはま
る。彼女は先月同様に教室で待ち伏せをしていた訳だが、肝心の相手がこの時間まで現
れなかった。
「おはよう……」
 苦笑した様子の宏樹も、学校に来たばかりという風な衣装に身を包んでいた。その姿
を見られて安心する一方、彼が反対側からやってきた事を疑問に思ってしまう。
 しかし、始業前の予鈴に反応して、それ以上の言葉を交わさずにすれ違っていく。
 二度目だから彼も同じ事をしていたのでは――と、一緒に歩く生徒たちに混じって、
成佳は朝から頬が緩んでしまった。


 昼食を終え、残った時間で図書室へ行くと、本棚とにらめっこしている女の子を見つ
けた。宏樹はそれだけで、静粛を取り決めている空間に騒がしい鼓動が聞こえそうにな
る。
 朝、ろくに話をしなかったのも含めて嬉しさが滲む。少し考えてから歩を進めて、そ
の途中で振り向いた少女に発見された。
「ナル」
 俯き加減だった顔は、名前を呼んだ途端にパッと明るくなった。真上にある電灯が白
い肌を強調している。
 その腕には本が抱えられて、宏樹は彼女の空いている手を取って軽く握った。
 細い指に柔らかい手の平。力を入れるとやり返してきて、二度、三度と続いていく。
 一頻りぎゅうぎゅうし合った後、ふたりで教室と同じ木目調の床を踏み進む。図書室
の入口、本を開くための机からはだいぶ遠ざかり、図鑑や分厚い辞書などが立ち並ぶ区
画にまで差し掛かった。
 通ってきた両脇、そして眼前の壁いっぱいに置かれた本の数々。この広さはもともと、
第一と第二、図書室の名前でふたつの部屋があった名残で、人気のなさに対して蛍光灯
が主張している。
「そういえば、椅子が温かかったよ」
 たどりついた先はやはり窓際。どこか隅の方が落ち着くというか、気を配るべき方向
がひとつ減るのは見逃せない。そして、実に自然な流れでやってきていた。
 一緒に歩いてきた少女は頷く。先月の十四日も同様に座席が冷たくなかったので、宏
樹は彼女の仕業だと確信して訊いたのだった。
 ところで、宏樹は成佳の座席を知らない。廊下で出くわすまで何をしていたかという
と、教室の窓側で本を立ち読みしていた。異なるクラスの生徒が紛れていても、意外と
何も言われないものだ。
「……んっ」
 繋いだままの手に力をかけると、少女から返事がきた。まっすぐに見つめてくる顔に
視線を送って、指先でほんのり赤いほっぺたを突きたくなってしまう。宏樹はつい伸び
そうになった片手をなんとか抑えた。
 おさえたが、目の前にいるのは何とも可愛らしい女の子。頬に触れることは無くとも、
中空で止まった手が疼く。
 ほどなくして、彼は欲望に負けてしまった。
 成佳は何かを察知して肩を竦ませ目を閉じ、それもまた可愛い。掌を乗せた頭頂部か
ら、髪の毛越しに熱が伝わる。
「ごめんね」
 しかし、少女は黒髪を撫でられながら、分からなそうに小首を傾げた。少し身構えた
風だったのも、手が頭の上で動いているだけだと理解して元通り、大きめの瞳で視線を
くれる。
 談笑が盛んな教室とはまるで正反対の空間に、肌と髪が摩擦する音がやたらと大きく
聞こえる。それさえ騒音だと思ってしまうほど、図書室は静かだ。
 そのうち、後頭部の方まで撫でさするようになる。指に絡まない黒髪は肩のあたりま
で続いて、さらりと滑る。
 成佳は次第に俯き加減になり、それは宏樹にとって頭を触りやすい姿勢だ。止めよう
という意識はどこへやら、全体の二割ほどを彼女のせいにして続けてしまう。
「……っ!」
 途中、少女の身体が震えた。無意識のうちに耳の裏側や首筋をくすぐっていたようで、
その度に彼女の手が強く握られる。
 どうしても息が漏れてしまう。成佳は本を抱えているせいで手の空きが無く、声を出
さないようにする代わりに呼吸の音が目立つようになっていた。
396白い日の恋人(3) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:49:48.67 ID:d83ioffs

 少年は片手しか使っていないのに、攻撃は的確だ。髪を分けた指が耳や首を這い、ゆ
っくりした動きが却って意識を集中させる。
 その末、バタバタッ!と、床で乾いた音が発せられ、周りの棚や窓にぶつかって反響
する。成佳は愛撫も同然の行動に脱力して、まだ手続きを済ませていない書籍を落とし
てしまった。
「ナル、平気?」
 驚いた様子で、少年は訊く。自由になった両手で二冊を拾い集め、また腕に抱える。
 黒髪の少女は少々むっとした表情を作っていた。しかし、頬が朱に染まって迫力を感
じられない。
 再度、ぽんぽんと頭を軽く叩いて宥める宏樹。まさかこんな音くらいで誰かがやって
くることは無いだろうが、早めに移動した方が良さそうだ。
 そう考えていたのに、じっと見つめる少女は目で何かを訴えている。色の戻らない顔
でいられて、宏樹はふうと息をつく。
 手を引くと、成佳は少しも抵抗しないで応じてくれた。
「結局、しちゃうんだよね」
 唇にくちびるで、ふわりと触れた。潤いのある桃色を軽く押すような軽いキスを一回
だけ、少年は自身をわらった。
 対して、黒髪の少女は満足げに綻び、
「……あ、予鈴」
 少年が反応したのと一緒に、ハッとして普段の顔つきに戻る。その手にはまだ貸出し
手続きが完了していない本が二冊。
 学校で口付けを交わした余韻を味わっている暇もない。仮にも図書委員の筈なのに駆
けだそうとした成佳を引きとめ、なんとか受付を済ませて教室へ急ぐ宏樹だった。


「どうぞ、上がって」
 数日前まで暖かかったのに、急に冬に逆戻りしたような寒気の中を歩き、帰宅した宏
樹は成佳を招いた。だが、家には誰もいないので空調が効いている訳でもなく、ひんや
りした空気が上着の隙間から体を冷やす。
 そのまま台所まで、温かい飲み物を調達するために成佳と一緒に歩く。
「ああっ、手の感覚がなくなりそうっ」
 シンクに向かって宏樹は唸った。
 給湯装置だって温めるには時間がかかる。蛇口をひねってすぐに出た冷水が手にぶつ
かり、耐えがたいものが背筋を抜けた。それでも、早々に手洗いを済ませてしまう。口
もゆすいで流行りの風邪を予防した後、ミルクパンで牛乳を火にかける。
「ん……あ、温かい」
 すすぎを終えた成佳の手から、じわりと温かさが伝わってきた。湯に切り替わった後
で洗ったために高温で、宏樹は彼女と繋いだ部分が熱に包まれた気がした。
 煮えた様子の白色に少量の砂糖を加え、混ぜる。湯気をもくもくと放っている液体を
マグカップに流し入れ、ステンレスのスプーンを放って完成。
 肩掛けの鞄と足もとに注意しながら、熱々のカップを手にふたりは二階へ上がった。
 宏樹は自室に入ってすぐ、熱を小さなテーブルに押しつける。少女も倣って、二人分
のホットミルクが置かれた。
「さて、今日は三月十四日だね」
 付近に座って鞄に手を突っ込んでいた成佳が振り向き、こく、と頷いた。ジッパーの
隙間から覗いていたのは本の角に見えたが、再びガサガサと音を立てた後、箱のような
ものを掴んでいた気がした。
 実際、宏樹も彼女への『お返し』は持参していた。だが、朝は機会がなく昼は話の間
に予鈴を耳に入れてしまって、先月と同様にはいかなかった。放課後まで鞄の中で温め
たまま、箱の中身がどんな風になっているかは最早不明だ。
 ミルクを一口。後でにしようか、という話に従ってくれた少女は、あらためてバッグ
から本を現した。その数は三冊、四冊と増え、図書室で借りた数よりも多い。
「面白かった?」
 再度、成佳はひとつ頷いた。何か思い出したのだろうか、頬に赤みが見られて、ちょ
っと可愛い。
 平たく積まれた書籍を受け取ると、宏樹は机の脇にそびえる本棚へそれらを収めた。
実に二週間ぶりの帰着、戻るべき空間に入ったことで四列目の隙間がなくなる。
 その後、脚を崩してちょこんと座している女の子に近付く。
397白い日の恋人(4) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:50:48.25 ID:d83ioffs

「……えっちなんだから」
 口にしてすぐ、成佳の顔が真っ赤に染まった。カップに手を伸ばそうとしていた動き
が止まり、代わりに反対側が忙しない。
 すぐに頭上から叩きつけられるような強い衝撃が襲い掛かり、宏樹は短い悲鳴を上げ
て彼女の膝と同じ高さまで崩れ落ちた。
 なんとか起き上がると、未だ高温の液体に息を吹きかけている少女の姿が映った。容
器の縁に口を付け、実に慎重な動作で含もうとしている。
 成佳はミルクを少し啜って、すぐにテーブルの上に置き直した。
 その名前を呼んで注意を引く。熱々のカップは片手で持てないようで、図書室で借り
てきた獲物は鞄の中に戻っていた。回復が早かったのは平たい表紙で叩かれたからで、
文庫本サイズだからとは言っても背や角の部分だと痛い。
「でも、そう思われても仕方ないよ」
 鞄に近い方の手を握って、少女の温度を感じる宏樹。図書委員なんだからもっと本を
大切に……と思ったが、考えてみれば自分の所有物で叩かれた記憶は無かった。それで
良いのかと聞かれると返答に困ってしまうが。
「僕はその本が自分のだから分かるけど、他の人が見たら、ね」
 成佳の視線が泳ぐ。時々こちらを見ては床に移ってを繰り返し、なんだか困っている
ようだ。
「きっと皆、『こんなものを読んでいるなんて、なんてえっちな娘なんだ』って。何さ
れるかわからないよ?」
 などと言いながら、少年は頭を撫でてくる。事情を理解しているだけに深刻そうな表
情もしていないし、むしろ笑っていてどこか矛盾していた。
 確かに借りていくのはこの部屋だが、返却するときはほとんど学校で行っていた。ま
たここに戻ってくるにしても、彼女の持ち物にそういった書籍が含まれているのは変わ
らない。それは宏樹にとっては別段驚くようなものではないが、発覚した場合のリスク
をお互いに抱えていて、特におとなしい少女があらぬ誤解を受ける可能性だってある。
……あるのだが、そこは文芸部に所属する故か、自分の恋人なのに桃色の過激な想像が
膨らんで仕方がない。
 女の子・みんなで犯せば・気持ちいい――目の前にいる黒髪の少女と同じ姿をした子
が、何人かの男たちに囲まれている。たまに浮かぶ一対多数の光景は――自分は傍観者
として全体のビジョンを見ているだけだからか――身ぐるみを剥がされた女の子が、胸
といわず恥部といわず体のあらゆる所を一斉に触られて悶える様子が情欲をかき立てる。
しかし、それを文章にするのは難しそうだ。
「っ、ごめん、ごめんっ」
 頬をぺちぺち鳴らされ、宏樹は現実に帰ってきた。なるほど、ここは自分の部屋。学
生服に身を包んだ成佳と二人きりで、彼女の頭を撫でると暴走していた部分が落ち着き
を取り戻してきた。
 だが、妄想に耽っていた事でほったらかしにされたせいか、少女の顔はむっとしてい
た。じっと眺める様子も図書室の時と同じで、言外に訴えかけている。
「ナル、可愛いから……色んなこと考えちゃうな」
 一メートルでは多すぎる距離を詰めていって、成佳の顎をとる。あとは近付けた磁石
が引き合ってひとりでに動くように、どちらともなく唇で触れた。
 ほんの一瞬、それでも彼女への気持ちは伝わったようで、離れた時には表情が元に戻
っていた。
「じゃあ、ちゅー、しちゃったし……」
 ここまで来ると、いろいろと抑えが利かなくなってしまう。小さな体を抱きしめるま
で時間はかからなかった。
「ナルのこと味付けして、食べちゃおうかな」
 しかし、少女は腕の中でびくりと身体を震わせた。その手が抵抗するように叩いてき
て、宏樹は誤解を招いたのだと認識する。
 そういった趣味はまるで無いのだが、一番近い位置にあった彼女の耳を軽く食み、脱
力させた上で説明に入る。
「ほら、この前はナルがそうしたじゃない」
 二月十四日。宏樹の頭からは体にチョコレートソースをかけられた記憶が引き出され
る。あの日はやたらと甘いキスを経験できたが、それに関連した行為はどことなく苦い。
 今回は先月のお返しだ。成佳の気持ちと、彼女がしたことに対するものでもある。た
だ、白いチョコレートソースは見つからなかったので、代わりの甘いトッピングを用い
ることになったが。
398白い日の恋人(5) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:51:56.42 ID:d83ioffs

「さっきより甘いよ、きっと」
 もはや色と味さえ合っていれば良いような気がしてきた。
 赤と白の小さなチューブ――練乳の容器を見せると、少女は安心したように息をつい
た。こういった何気ない仕草も、また宏樹の鼓動を速めていく。
「それとも、本、読みたかった?」
 意外にも冷静な部分が、成佳に選択肢を与える。しかし、彼女は首を傾げてみせ、問
いかけとは違ってマグカップに入ったミルクを一口飲んだ。
 喉を鳴らした後の赤い頬を指先で押す。少し埋まるくらいの柔らかさと弾力が癖にな
りそう。
「ナル、おいで」
 右側の方だけを何度かつついてから宏樹はベッドに膝立ちで乗り、両手を広げた。少
女は動きを目で追った後、こくりと頷いて腰を上げ、体重をかけてばねを軋ませる。
 同じく膝で移動してきた黒髪の娘を抱きしめて、その後頭部に手をやる宏樹。整った
さらさらの髪を梳いて肩のラインをなぞる。
「ん……っ」
 目配せくらいで理解してくれる恋人を、彼は素直に凄いと思った。視線が合わさると
唇を寄せてきて、そのままキス。口で繋がったまま成佳の手は腕や背をしきりに触れて、
宏樹は彼女の姿勢を支えるように腰のあたりへ片手を置く。
 お互いの熱が伝染して、感触が残ったままの部分があつい。この近距離では息の音も
しっかり聞こえ、鼓動さえ判りそうだ。
「汚しちゃいけないから、脱いじゃおうね」
 ほぼ無音の空間なのに、自然と囁く風になってしまう。だが、それで伝わるのには変
わりなく、成佳は頷いて返してくれた。
「っ、んっ」
 唇を合わせ、触れあったまま少女の着衣を外しにかかる。脇腹に手をやってから、探
る様にしてボタンを取っていく。
 つなぎ目が二つ、三つと左右に分かれて、校章がデザインされた学生服がその場に落
ちた。
「はっ、ぅん、うぅ……」
 ブラウスの留め具を取る前に、宏樹は少女の首筋をくすぐって刺激した。ぴく、と体
を震わせ悲鳴が口腔で響く。
 脱がし慣れているというのは妙だが、キスを続けながらでも着衣のボタンを外す動き
は鈍らなかった。小さな丸を細い隙間にくぐらせる。上側までやってきたところで翡翠
色のタイも取り、解けた一本が取り除かれた。
 口を離してから、冬用の制服より薄い白は自分で片腕ずつ抜くように告げる。成佳は
少し考えた風だったが、するり、するりと肌色を露わにした。
「あ、白なんだね」
 ふと口にした色とは逆に、下着を晒した少女の顔は真っ赤に染まっている。
 両肩に一筋ずつ掛けて、上半身に最後まで残っていたのは白。何かと黒系統のインナ
ーを目にしていた宏樹には、どこか珍しいものだった。薄いヴェールが胸から臍の付近
までに被さり、少女を飾っている。
「可愛いっ」
 間もなく、宏樹は成佳を腕におさめた。
 シャツを脱ぐので膝立ちではいられなくなり、ぺたんと座っている女の子は行き場の
ない手で胸元を隠す。その状態で視線をくれるのだから、抱きしめる他になかった。
「ひゃ、あぁっ!」
 とつぜん耳に熱いものが触れ、成佳は肩を竦ませた。舌だとすぐに理解するが、ザラ
ザラした物体の舐める動作と少年の息はそれぞれ違って、思わず悲鳴が上がってしまう。
 倒れ込まないように彼の体を掴むも、胸にあった手がゆっくりと払われ、そちらにも
刺激が走って力が抜ける。
「あっ、は……っ」
 聴覚のすぐ近くで粘ついた音を立てられ、くすぐったいやらむず痒いやら様々な感覚
がやってくる。キャミソールの上から肌をなぞる指にも意識が向かって、どちらに対応
すれば良いのか不明になった。
 宏樹は震える少女の首から肩にかけて舌を這わせた。すべすべの肌は吸い付きたくも
なるというか、ちゅ、と軽い音のキスを数回して、下着の紐を飛び越える。
「んむっ……」
 それから、再び口で繋がるふたり。複雑な形の器官を這いずった軟体があらわれ、相
手を探して細かく動く。
399白い日の恋人(6) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:52:52.24 ID:d83ioffs

 黒髪の少女も僅かな隙間から舌を繰り出し、先端どうしを擦り合うに至る。途端に唾
液が絡んで鈍く弾けるような音が生まれ、纏った液体を交換しようとうねった。
「……っ! ん、んぅっ!」
 最中、彼女の後頭部や髪の毛を撫でていた宏樹の手は、やがて胸にたどり着く。前か
らはもちろんのこと、横から見てもほぼ平坦と言えるそこだが、触ってみるとふわふわ
している。すぐに反応して、成佳はぴくりと動いた。
「はぁっ、あ、あっ」
 結合が解けて声が出口を見つけると、その口からは可愛らしい音が飛んでいく。頬と
は違う感触を楽しむように、宏樹は手の全体を使って押していった。
「……んぁっ!」
 凝った部分を触られたような、強い刺激に大きな声。胸の方には少しだけ、ぴりりと
痺れるものがあった。
「硬く、してるね」
 言ってすぐ、ぺち、と頬が鳴った。変化を指摘した応酬はちょっぴり暴力的だ。しか
し、少女の羞恥を煽るのも楽しく、怒ったような顔さえ魅力的だ。
 その可愛い唇を塞ぐ。宏樹は謝罪も詫びも礼も全てがキスで、成佳が要求してくる。
最初こそ一瞬だけだった触れ合いは長引き、いつしか舌を使うまでになった。
「うん……むぅ、うぅっ……!」
 そうして愛撫を再開すると、長い間を空ける粘着質な音に少女のぐぐもった声が混ざ
る。幼いふくらみは全体を包んでいるうちに中心が硬くなり、今度は主張する部分だけ
を指で擦る。キャミソール越しの変化は分かりやすく、首に巻きついていた成佳の腕に
はかなりの力が加わっていた。
 顔を向い合せて尚ニップルを刺激すると、彼女はまた震えた。
 成佳が可愛いのは既知の事実だ。それでも、つい口にしてしまう。頭に手を乗せて動
かしてあげると、嬉しそうに目を細めた。
「さ、楽にして」
 腰を支え、少女の体をゆっくり倒す。シーツの上に黒い髪が広がり、次いで不健康そ
うな肌が横たわる。直前までベッドに沈んでいた両脚が自由に動き、翻ったスカートに
視線が動く。
 ひとつ口付けして間を埋めた後、宏樹は少女の胸を覆っているヴェールを持ち上げた。
霧が晴れ、ぼんやりしていた突起が鮮やかに映る。中心はピンクに色づき、尖っている
様にも捉えられる。
 ここで練乳の出番が訪れた。台所でホットミルクを作る時に冷蔵庫から出したものの、
ポケットの中ですっかり人肌に温まってしまっている。容器は柔らかく、内側の銀紙を
剥がした途端に飛び散りそうだ。
「っ!」
 キャップの外れたチューブから、白い液体が垂れる。見せびらかすように高所からや
ってきたものに成佳は身構えたが、胸に付着したそれは思いのほか温かかった。
 すぐさま少年の舌が練乳を拭う。彼は肌の部分を舐め取ったのに、既に硬くなってい
る突起が勝手に反応して、小さく息が漏れた。
「んく……っ」
 牛乳よりも甘い味と香りがキスと同時に広がった。昼食にしたのは三時間以上も前の
話、食物の気配を勘違いした口内には唾液が溜まる。
 そして、差し込まれた舌から練乳を奪おうとして絡んでいく。成佳も軟体で応じ、甘
い汁を少しずつ嚥下した。
「ぅ……うぅっ! むうぅっ、ん……!」
 味付きのキスをしながら、宏樹は少女のニップルをつまんだ。すぐさま体が跳ね、感
度の良さを窺わせる。
「ん、は……! あっ!」
 十分な量の空気を吸い込むと、反動で大きな声が生まれる。部屋には暖房が効いてい
るが、その他に音を出す要素がないので、成佳は自身の喘ぎで羞恥を煽ってしまう。
 しかし、突起を左右から指に挟まれ、捏ねられては堪らない。絶え間ない刺激に脚が
落ち着かなくなり、シーツと摩擦した。
「ふぁっ!」
 宏樹は弄っていた乳首の周囲にコンデンスミルクを垂らし、いよいよ本格的に責めか
かった。何度も唾液を交換した軟体を這わせて白濁を拭き取ると、その味を含んだまま
突起に吸い付く。
400白い日の恋人(7) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:54:00.26 ID:d83ioffs

 唇の間でさらに硬さを増した様な、そんな気さえする。数倍に薄まった液体を喉に通
して気配を無くし、あらためて容器の蓋を外す。毎回この動作を挟む必要があったが、
温くなった練乳が見当違いの方向に飛んでも厄介なので致し方ない。
「あ、んっ! はぁっ、あ、あっ」
 桃色の部分にかけたものを舐め取り、ニップルを吸引して、成佳が身じろぎするのが
直に感じられる。だが、肩を掴んでいる彼女の手は、どちらかといえば引きはがそうと
しているよりも密着を強めている風にも思える。宏樹は鼻の先が柔肌に接触して、なん
だか不思議な気分になった。
 しかし、動きを止めて彼女を振りほどく。手の甲に口を付けると、練乳の匂いが漂っ
てきた。
 体勢を変える度に、ギシ、と金属のばねが軋む。
「ナルのおっぱい、おいしい」
 呼吸を整えていた少女が、器官に何かを詰まらせたように口をつぐんだ。背景が白い
から、その顔が紅潮しているのは見て明らかだ。
 ぷいとそっぽを向いてしまった唇に、宏樹は練乳を乗せた指を与えた。最初に舌が絡
みつき、彼女の手で口の中に導かれる。唇で固定され、自分がしたような舐める動作と
吸引で甘味を奪っていった。
 解放された部分であらためて乳首を転がし、感触を確かめてからキャップに手を付け
た。とろみのある白濁が細く糸を引き、妙な気持ちにさせる。
 出来上がった料理にトッピングをするように、宏樹はチューブを操った。
「ほら、おいしそう」
「……ばか、ぁ……あっ、あぅっ!」
 生温かい液を上半身にかけられた成佳は、それをニップルに塗り付けられて喘いだ。
唾液ではすぐ乾いてしまうが、練乳のぬるりとした感触はすぐには失せない。単純な指
の移動に抗議もままならず、シーツを掴んで身じろぎする。
「んくっ、うぅ……! ぅんっ、ん……」
 そこに、キスを追加される。体に乗っている練乳を下に敷いてしまわないようにと働
きかける思考のせいで、少女はどちらからも逃げられない。くちゅ、と口で鈍い音を立
て、弄られている突起から来る刺激に爪先が落ち着かなくなった。
「ひ、あぁ、あっ、ぁ……!」
 胸だけといわず、鎖骨や臍の方までザラザラした物体を這いまわす。体温が上昇した
ことで少女の肌には汗が滲み、コンデンスミルクの甘さに塩味が混ざっていた。スカー
トに近づくにつれ、可愛らしい声がくすぐったそうに腹を上下させる。
「あ、あんっ! んぅ……あっ!」
 一方、白濁を擦り込むようにしたニップルの周辺は、舌で触れた途端にその味が広が
った。吸い付きやすい形に尖った部分を唇で挟み、ストローで飲むように窄めて引き出
す。宏樹は過程を自分でしていたのに、成佳が乳の出る体になってしまったと錯覚しか
けた。
「ん、あ……あん、っ、はぁ……」
 一仕事終えた容器は少年の手から離れて、成佳を襲っているのは胸からの刺激だった。
練乳で味付けした乳首を口の中で転がす舌と、反対側の突起に触れる指、それぞれが的
確に狙って動く。腹にまで広がった液は片付いたものの、胸で主張するふたつを同時に
責められ、呼吸が不規則になるばかり。
 あるとき、舐める捏ねるが入れ替わり、また違った攻撃に体がベッドに沈む。かいた
汗はシーツに染みて背中に冷たさを覚え、しかし大きく移動できない。
「う、ん……っ」
 ひゅうひゅうと息していた少女に口付け。頭を左右に振って、周りに散らばった髪を
整えてあげる。
 宏樹は最初、一瞬だけ触れてから彼女の唇を舐めた。すると、すぐに応じて向こうか
らも赤い物体が現れ、擦り合う。
「っ、くぅ、んんっ」
 少年の舌から、拭ったコンデンスミルクの味がわずかに伝わる。キスは愛撫とは違っ
た気持ち良さがあって、今はちょっかいもかけられていないから、成佳は安心感さえ覚
えた。
 たっぷりの唾液をくねらせた後、ふたりの間には透明な橋が架かって消えた。くすっ
と笑んだ少年につられて、口角が持ち上がる。
 指先は肩に、胸に、脇腹にと滑って、宏樹はふと少女のスカートに触れる。山を作っ
ている脚は膝から下が黒のソックスにくるまれ、プリーツの布地から近いところは白い
肌がのぞく。
401白い日の恋人(8) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:55:12.89 ID:d83ioffs

 それにしても暑い。すぐに暖房を入れたのは間違いだったと、寒いさむいと言いなが
ら帰宅した時とはまるで矛盾した考えが浮かぶ。
 黒髪の少女が上半身に滲ませた汗を吸い取っていたワイシャツを脱ぎ、ちり紙でも扱
う様に軽く放った。いきなり室温にさらされた両腕がスゥッとする。
「本当は無くなるまでしたかったんだけど」
 赤と白の模様と乳牛が描かれたチューブをちらつかせて言う。成佳は全身を舐められ
ると思って不安がよぎったが、少年の口からは笑いが漏れて、本気ではなさそう。
 しかし、次に下腹からやってきた刺激に、彼女はぴくりと震えて小さく鳴いた。
「こんなふうにしてるの、分かっちゃうんだもん」
 明るい色の下着は、何というか分かりやすかった。黒や紺などの布地を多く目にして
いた身には、ハッキリと見える楕円形の染みが新しい。ふしぎと冷たく感じる部分をゆ
っくり擦ると、少女の目が細くなり、眉が垂れていく。
「気持ち良かった?」
 数回の往復で指に湿り気を感じた宏樹は、ふと訊いた。肩のあたりを揺らした彼女が
次にする事は平手打ちだと思ってばかりいたせいで、たったの一文字で頷くとは予想外
もよそうがいで。
 頑なに否定するのも嗜虐心めいたものをそそってよろしいが、また強烈な攻撃を覚え
たものだと認識している。実際、ぽかんとして言葉が出ていかなかっただけでなく心臓
がやかましい。
「ナル、えっちだ」
 ちょっと嬉しくなって彼女をからかってみれば、
「……いじわるだ」
 ぺち、と乾いた音。やっぱり左の手が頬を鳴らした。
「んぅっ……」
 今度は練乳を含まないキス。しかし、どちらの口に残っているのか、ほんのり甘い味
が舌に乗っては消えていく。
 長らく触れていなかった胸と腹をなぞり、少女の状態を示す下着に到達する。クロッ
チを手で覆う様にしてから、指の先を使って染みを広げる。
「ん、んっ……む、ぅ……!」
 布越しに恥丘を擦られ、ずっと強烈な刺激を受けながらも舌を使う成佳。喉を焼くよ
うな唾液を嚥下しては、次からつぎへと口腔に溜まる。
 まるで濡れ具合を思い知らせているような手つきに、顔が熱を帯びる。頬を流れてい
るのは涙か汗か、それもどちらのだか判別がつかない。
 口付けを終えた少年はそっと離れてから、ちょっぴり意地悪そうな笑みを作った。
「すこし、乱暴にするからね」
 そういった言葉に対して表情を変える少女が可愛かった。
 宏樹は短い動作でショーツの内側に手を入れると、それはもう液体が滲んでいた。肌
どうしの摩擦による抵抗もなく、ぬるりと滑る。
「……あ、ひぁ、あっ!」 
 肌に合わさっていた布が空気を取り込み、冷えた感じに息を呑んだのも束の間、それ
を声と一緒に吐き出す羽目になった。下着に染みを作っていた液も手伝い、直線的に駆
けてくる悦楽に成佳は喘ぐ。
 彼は指を蜜壺に入れた訳ではなく、蓋の部分を激しく擦ってきている。その無造作な
責め方を乱暴と言うならそうかもしれないが、彼女はとくべつ思っていなかった。
「あん、あっ……く、ふぁ……っ!」
 脚を閉じたところで、その手が止まる訳ではない。股のスペースに収まって、振動に
も似た感覚が下腹部を襲う。成佳は丸くなった爪先を擦り合わせ、体中の痺れを解消し
ようとする。
「ぐしょぐしょ、だよ……」
 入れ物を外側から揺すっている宏樹の指は、べったりと付着した愛液を感じていた。
後から溢れ出てきて、そこを覆っている布さえ役に立っていない。
 そして腕伝いに、にちゅ、にちゅ、という音を聞いていた。証拠としては十分で、そ
れでも認めないように首を振る少女に、解らせてあげようという思いが止まらなかった。
「ん、くっ、ふぅっ! ……んぅ、んっ!」
 この期に及んで声を殺しにかかり、いじらしさが彼をときめかせた。酷使して疲労を
覚えている右手が成佳のショーツで暴れるように動き、責め立てる。彼女とは肩にしが
みつかれて強い力で密着しており、無理な姿勢ともいえる状態で攻撃し続け、やがて浴
びるように液体をぶつけられた。
402白い日の恋人(9) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:56:33.98 ID:d83ioffs

「ふ……ん、はぁ、ぁ……っ」
 びくびくっと全身を震わせたと思えば、力のかかっていた部分から痛みが引いていく。
 シーツの上に落ちた少女の手は、指先が不自然に動いて絶頂の余韻を思わせた。
 さらりとした液は宏樹の指に沈むことなく、大きな珠を作って落ち、肌の上で崩れる。
電灯の光で輝いている様子を示すと、やはり少女はぷいとそっぽを向いてしまった。
 ティッシュもタオルも近場にはない。どうせ交換するからと、浴びた愛液を敷いてい
る布になすりつけ、気配を誤魔化す。
 お互い息を整えるのに余念がない。成佳と視線を合わせたまではいいが、口をつける
までには至らなかった。代わりに繋いだ手が不思議と安心させてくれ、乱れた鼓動が末
端でぶつかり合っているような気分になる。
「っ……!」
 目と口を閉じた黒髪の少女は、たったいまオーガズムを迎えたばかり。濡れて張り付
いた下着がどういう意味か分からない筈がない。
 汗を含んだ脚を開くと、宏樹はズボンの内側で窮屈そうにしていた分身を解放した。
同時に熱気が放出され、室温に冷却される。
 特に自分で触れた訳でもないのに先端が鈍く光って、宏樹はそちらの意思に従うよう
に体が動いた。
「んん、あっ……んあぁ、っ……」
 ゆっくりと、しかし確実に体の内側を広げられる感覚に成佳は呻いた。指でも舌でも
ない、少年そのものがやってきて、肉の洞は彼を捕まえようと縮んでいる。
 残った着衣を脱がす時間さえ惜しかった。クロッチ部分を横にずらし、露わになった
スリットと擦り合わせて、頭から咥えさせる。肌の白さとは正反対の鮮やかな赤に包ま
れた途端、電撃めいたものが宏樹に襲い掛かった。
 少女をさんざん愛撫した興奮が溜まっている肉茎は、膣の襞に絡みつかれただけで中
身を吐きだしそうになってしまい、根元まで入り込むには大分かかった。
「う、んっ……んくっ」
 さらに、唇でもつながる。この間もぐるぐると動く膣肉に刺激され、成佳に反撃され
ているような、そんな風にも思った宏樹。
 逃れるように腰を引くと、彼女の口から出ていけない悲鳴が伝わる。細い糸を引くま
でキスして間を埋め、あらためて行動を再開した。
「あ、あっ! は……あんっ!」
 一度は開いた道も、引き返してくると元に戻っている。おかげで出入りの度にいきり
の全体を締め付けられ、宏樹の口からは無意識のうちに息が漏れていく。
 仰向けになっている少女は黒髪を散らかし、投げ出していた手でシーツを思い切り掴
んでめちゃくちゃにしていた。鈍い水音と金属音の混ざる行為がどれだけの愉悦を生む
のか理解させる。
「はぁ……あ、ひっ! んあっ……!」
 体の一番奥を擦られるのは、どこよりも強い刺激を寄越す。絶頂して脱力していたは
ずがそれを求めて、成佳はむしろ意識がしっかりしていた。中心で繋がっている部分と
腿を押さえる手、それぞれから少年の体温を感じている。
「んあ、あっ、あん……っ、ふぁっ!」
 抽送と一緒に、成佳の声も弾んでいく。発される水音はぐちゅ、ぐちゅ、と大きく激
しくなり、純粋に快楽を味わおうとして動く宏樹は短く呻くだけで言葉を出す余裕がで
きない。
 もう数回の往復をして、彼は少女の腰を浮かせて抱き寄せた。
「……あんっ」
 股ぐらに座る格好に変わって、体への入り込み具合が一層深くなる。少年の耳元で鳴
いてしまった成佳だったが、羞恥よりも先に髪を撫でられたことで安心を覚えた。
 ゆっくりと姿勢を直し、それぞれ反対側に脚を出す風に落ち着く。だが、動きが止ま
っていると穴を塞いでいる棒の存在が気になって仕方がない。
「く、あ、ぁっ」
 ベッドのばねを縮め、反動をつけて揺さぶる。遅れて跳ね上がった少女からは高い声
が出ていき、しがみつく力が強くなる。屹立は体内で少しずつ前後するが、包み込む襞
の動きはいつも容赦ない。
 しかし、ひとたび動き出すと止まらなくなる。がくん、がくんと上下して少女の身体
を味わっていると、気持ち良さに溶けてしまいそう。
403白い日の恋人(10) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:57:39.89 ID:d83ioffs

「きゃ、あっ! んあっ!」
 抱きしめると柔らかい体だが、宏樹は手を彼女の胸元に移し、さらに責めかかる。運
動して落ちてきたキャミソールの上からニップルに手を当て、揺する動きに任せて捏ね
まわす。
 三点ほどを同時に攻撃され、成佳は喘ぐしかなくなってしまう。少年の首に手をまわ
して姿勢を維持しなくてはいけないのに、乳首からも電流を寄越されて甘い刺激と強い
衝撃がまとまったものが頭にぶつかる。
「あん、んっ……あ、あぁっ!」
 溢れる声をどうにも出来ず、下腹を突かれながら宏樹の指がくりくりと突起を転がし
て、またも性感を引き上げられる。
 下から発される金属音を聞きながら、白いシーツが顔面に飛びかかってきたように錯
覚した一瞬の後、手足の先から力が抜けるような感覚に陥った。
「――は……っ!」
 ずっ、と体の中で動いた少年の分身によって、成佳は意識を取り戻した。滲んだ汗の
しょっぱいにおいが鼻を通り抜け、彼と繋がってしがみ付いたままだと思い出す。
「平気?」
 訊くと、頷きが返ってきた。
 荒い息をついている少女の後頭部を撫でてあげると、次第に静かに整ってくる。肉棒
で繋がったまま向き合い、宏樹はなんだか恥ずかしくなった。
「んうっ!」
 今度は彼女の方が攻勢に出た。いきなり口を塞がれ、続けざまに舌を突っ込まれ、対
応が遅れる。しかし胸から背中に移った腕で密着を強め、懸命に鼻で呼吸しながらキス
を続けた。
「あぅ……っ」
 唇が離れた後、成佳は元通りの表情に戻っていた風だったが、体に入ったままの屹立
を押しつけるとすぐに崩れた。目がとろんとして、普段のおとなしい様子からは想像も
出来ないような顔になっている。しかし、視線を感じたのか彼女は頭を寄せるようにし
て逃げてしまった。
 それも可愛らしくて、二人分の体重によるばねの軋みが大きくなっていく。
「んぁ……あっ、くぅ……!」
 体を沈めては持ち上げ、肉襞をひっかく。単純な動作でも密着している為に体温は上
昇する一方で、成佳の蜜壺は消化液でも分泌しているのか、そこを前後する肉棒は特に
熱い。
 ぐねぐねと複雑に絡みつく部分に刺激され、さらに間近で淫靡な声を聞いている宏樹
の興奮は冷めることを知らない。せっかく少し落ち着いたのに、彼もまた息を荒くして
酸素を欲していた。
「っ! や、あんっ! あっ!」
 何度も体を揺さぶられて、肩まである成佳の黒髪がはばたく。先に二回も絶頂させて
からに、少年は尚もピストンを続けている。分泌液と一緒になって溶けているんじゃな
いか、あられもない声を上げていながら、そんな事を考える程度には下腹部が痺れてい
た。
「ナル……っ」
 ばねの軋む音が間延びし始める。急停止するのではなく、減速してゆっくりと動きを
止めた。
 妙な寒気が背筋を抜けて、宏樹はそれを堪えるように下肢に力を込めた。
 いくつも喘いだ少女は髪の毛を顔にはりつかせ、白いはずの肌はどこも色づいている。
するりと細い腕が動いて向きあう格好になると、下着姿が気持ちを煽って仕方がない。
 だが、押し流されないようにひとつ深呼吸して、それから口を開いた。
「このまま、出してもいい?」
 びく、と成佳の肩が震えた。こういった間柄でも、やたらと彼女の体内には欲望を吐
き出さなかったのだから――別にそうでなくとも――当然と言えばとうぜんだ。それか、
いま言われるとは思わなかったのだろう。
 汗と愛液を染みさせたシーツの処遇はとうに決まっている。ならば寝かせて外に出せ
ばいいではないか……と、成佳が瞳をぐるんと一周させて訴えかけているようにも見え
た。
「ほら、今日は三月十四日だし……」
 通称になぞらえた行為……という訳ではないが、いろいろな白色にかかっている。我
ながら理由としては弱いなと思っていた時、
404白い日の恋人(11) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:58:22.33 ID:d83ioffs

「……いいんだ」
 たった一音だけで頷いてくれた。なぜか訊いた側が不安を覚えてしまうが、そこは彼
女が成佳だという事で決着がついた。――素直な女の子ほど可愛いものはない。
「んっ……」
 ありがとう、という意味での口付けを交わす。唇の周りを汚しているのは誰の唾液か、
そんな事がどうでも良くなるくらいに触れて、宏樹は彼女の体を寄せた。
「く、は……あっ!」
 全身がいっしゅん沈んで、ぐっと跳ね上がる。肉の洞から出ていくことを放棄した屹
立は、何度となく少女の一番奥を目指す。
 すれ違った顔は窺えないが、代わりに声が教えてくれた。
「あんっ、ん……は、あぁ……!」
 お互いに強く抱きしめるしか腕の使いようがなかった。宏樹の全身を駆けていた悦楽
が出口を見つけ、あらゆる意思で制御できなくなり、もはや揺するような動きしかとれ
なくなってしまう。
「ん、あ、あぁっ!」
 どちらの声だったのだろう。判別する間もなく熱に包まれたものが熱を吐き出し、今
度こそ溶けてしまいそうな感覚に陥りながら、ふたりは体を震わせた。


 ちょっぴり痛い――宏樹は頭をさすりながら、服を着直している女の子を眺める。
 スカートの内側が汚れてしまったらしいのだ。確かに結合する寸前まで何度も捲って
いたが、それからは抱き合って揺するばかりだ、様々な液体が付着していてもおかしく
はない。
 何か言ってくれれば、というのは二人の間には存在しない。汲み取れなかった自分が
悪いのだと理解し、ぽかぽかと打撃を受けることになった。読本で攻撃されるのに比べ
れば可愛いものだが、何しろ頭なので痛みが残る。
「寒いね、ナル」
 ひとつ、頷きが返ってきた。
 成佳はそれまで赤く染まっていた頬が嘘のように元通り、白くなっている。だが、後
始末をしている最中に体が冷え込み始め、小気味のいい電子音を何度も鳴らし、暖房の
設定温度を三度も上げたくらいだ。
 宏樹もガタガタ震えて、急ぎ学生服の上着を羽織る。ホットミルクのはずだったもの
は、既にただのミルクとなって冷たい。
「それでも飲んだナルをすごいと思うよ」
 隣でちびちび飲んでいる少年になぜか褒められたが、成佳は喉が渇いていた。ぐいー
っと一気飲みして水分を補給したものの、寒さは相変わらずで体が縮こまる。
「温かいのにしようか。甘いものも食べたいし」
 そこで思い出したのか、黒髪の少女はハッとして鞄を探り始めた。宏樹も一緒になっ
て取り出したが、室温を上げた状態では中身の話はしたくない。
 二人ともテーブルに小箱を置くと、宏樹はマグカップをふたつ持って階段を下りた。
後にはちょっとちいさな成佳が付いてくる。

 三月十四日。先月のお返しも甘い味が締めくくった。
405白い日の恋人(12) ◆q2XBEzJ0GE :2012/03/14(水) 22:59:45.57 ID:d83ioffs
以上になります。
重複無し、多分オッケー
406名無しさん@ピンキー:2012/03/15(木) 10:02:17.79 ID:XhB+XhbC
なんか大作来てたGJ!
407名無しさん@ピンキー:2012/03/15(木) 22:01:18.44 ID:orz53r/f
GJ
408名無しさん@ピンキー:2012/03/16(金) 00:37:02.50 ID:giNIw30D
GJー

ホワイトデーなんかありましたねとか思いながら見てましたが末永く爆発しやがれ
409名無しさん@ピンキー:2012/03/16(金) 10:03:52.66 ID:wt+JEGk/
ちくしょう朝から悶々とさせやがって…
gj
410名無しさん@ピンキー:2012/03/24(土) 06:48:29.46 ID:wPWRnwA8
無口っ子が無言で尻を振ってる……
411名無しさん@ピンキー:2012/04/02(月) 20:41:54.15 ID:7HiYIbXE
ほす
412名無しさん@ピンキー:2012/04/03(火) 16:47:12.35 ID:ukfBLLot
「あ、の……」
「ん?」
「キ、ス……」
「だめ」
「……ひ、っく……」
「泣いてもだめだかんね」
「〜♪」
「ごまかせてないんですが」
「……ほ、ほしゅ」
「そーそ。よく出来ました」
 ちゅっ
「……う、にゃ、う……」
「夜のほしゅうしよっか?」
「……っ!!」
 ぽこぽこちゅっちゅ

「……ほ、ほしゅ(う)、です……」
413名無しさん@ピンキー:2012/04/06(金) 14:15:22.59 ID:Ne746wNL
妄想を実現しよう

http://heroin-pinch.ldblog.jp:80/
414ファントム・ペイン7話(前) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 15:58:51.16 ID:JwcrJQzP
1年以上のブランクですが、>>10の続きです

ちょっと長いので前後編に分けると思います
今回も非エロです
415告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:02:19.58 ID:JwcrJQzP
『出かけてきます。昼食はいりません。夕飯までには戻ります』
俺はテーブルの上に置かれていた書置きを握り潰すと、深々と溜息を吐いた。
「あいつ……」
土曜日の朝8時。
普段なら、彼女はまだベッドの中にいるか、寝惚け眼で朝食の準備を試みている時間。
食パンをトースタでなく電子レンジに放り込む類の愚挙を犯す前に止められれば十分と高を括って、今まで鼾を掻いていたのだが、先を越されたらしい。
「逃げたな」
あいつは、絵麻は、余所余所しくなった。
彼女が大怪我をした日、彼女の体について俺が教えられた日から。
元々口数が少なく、口を開いても二言三言しか呟かない奴だったが、最近はそれに輪を掛けて喋らなくなった。
俺の事を避けるようになった。
俺が彼女の事を気味悪がるとでも思っているのだろうか――――多分それはない。
が、それ以外でも心当たりは多過ぎる位にある。
今迄黙っていた、母さんと絵麻との関係。
極端に高い癌の発症率。
そして、あの日のキス未遂の事。
ガラス越しに一瞬触れかけた唇の温度を思い出しそうになり、俺は頭を振った。
俺だって気まずいんだ。
気まずかろうが何れは彼女と向き合う必要がある。
だが、向き合った所で如何すれば良い。
この漠然とした彼女への恋情を伝える? それであわよくば恋人にでもなるのか?
彼女が後10年以上生きる見込みが薄い事を判っていながら? 何時発症するかも判らない癌に怯えながら生きる事を選ぶのか?
絵麻の考えている事も判らない。
気まずいのは判るが、それだけでここまで俺を避ける必要は無い。
俺に彼女への同情心が全く無いかと言えば、それは嘘になる。同情を嫌う彼女がそれを察してしまったのか?
そもそも、あの時俺にキスをせがんだのは、どういう心算だったのか。
恋愛感情か、単なる家族としての親愛の情か、それとも心細さから手近にいた相手に縋っただけか。
判らない。俺には理解出来ない。
あいつの隠し事を知ったばかりなのに、もう判らない事の方が増えてしまった。
全く、ままならない。
再び壁に掛けられている時計を眺める。
昨晩、最後に絵麻の姿を見てから12時間も経っていない。
それなのに、もう漠然とした不安が頭の片隅に圧し掛かっている。
四六時中視界に納めていないと安心出来ない。
彼女の無事な姿が見たいと痛切に願望している。
416告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:04:17.80 ID:JwcrJQzP
焦燥を抑えるべく、いつも通り朝食の準備に取り掛かった。
冷蔵庫から卵を3個取り出して、割り、解き解す。
熱したフライパンに流し入れて、漸く間違いに気付いた。3人分は要らない。2つで十分だ。
すっかり、あいつが要るのが当然の生活が染み付いている。
仕方が無いのでそのまま大きめの卵焼きをフライパンの上で畳みながら、俺は一人ぼやいた。
「あいつが死んだら、俺はどうなるんだろうな……」
泣き喚くか、腑抜けてしまうか、今迄よりずっと頑なに心を閉ざしてしまうか。
想像も付かない、が、変えられてしまうのだろう、概ね悪い方向に。
どうも成りたくなかったから、無関心でいたかったから、他人と距離を取っていたのに。
何時の間にか、俺の中の絵麻と言う少女は、心の奥深くに入り込み、血肉と同化して、無理に引き剥がせば激痛を伴う程に、必要不可欠の存在となっていた。
何れ俺の前からいなくなると、判っているのに。
『出会わなければ良かった』等と言う、ラブソングで使い古された言葉がふと頭を過った。
良い訳ない。
良い訳がない。
絵麻と出会ったことは、俺にとっての幸福だ。
それだけは、嘘じゃない。
鍋の中で煮立つ直前の味噌汁を一杯だけ椀によそいながら、俺はふと思い至った。
(……まさか、あいつ、俺にこれ以上情を移されない内に距離を取ろうとか、そんな事考えてるんじゃないだろうな。
これ以上親しくならなければ、いざ絵麻が居なくなっても俺が傷付かずに済む、だとか)
十分、有り得る。
もし彼女がそんな事を思っているなら、思い違いも良い所だ。
俺は憮然としながら、出来上がった朝食をテーブルに並べた。
炊き立ての白飯、出汁巻き卵、白菜の漬物に大根と油揚げの味噌汁。
一人テーブルに付き、手を合わせた。
半ば作業的に朝食を胃袋に詰め込む。
何時からだろう。一人きりの食事がこんなにも味気無くなったのは。
もそもそと米を咀嚼していると、寝室の方から親父がのろのろと這い出て来た。
「……お早う、泰巳」
「確かに、あんたにしては早いな」
「これから休日出勤だからね」
欠伸交じりに挨拶して来る親父に適当に返事をしながら、俺は自分の分の食事を終えた。
汚れた食器をシンクに沈めてから、洗面所で歯を磨いて、自室に戻り着替えて玄関に出る。
用意してあった朝食にありついていた親父が顔を上げる。
「あれ? もうお出かけ? そう言えば絵麻は?」
「さあな……。戸締りは頼む」
特に当てが有る訳でも無いし、見つけた所で何をするかも全く考えていなかったのだが。
アパートを出て空を見上げると、まっさらな冬の空が眼に痛かった。

417告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:05:48.20 ID:JwcrJQzP
川縁を遊んでいた水鳥が、数羽一斉に飛び立った。
あたたかな陽光を反射して、きらきらと揺らめく波紋。
周期的に変化する光。
紫、青、シアン、緑、黄緑、黄、オレンジ、赤、再び紫。
太陽の光は単なる黄色といわれるけれど、今目に映る光に一つとして同じ色はない。
水面の下、魚の姿が踊る。
その対岸では、浅瀬で男の子とその父親らしき人が、こんな低い気温の中でも楽しそうに戯れていた。
ここからでも楽しそうな笑い声が聞こえて来る。
私は、この町が好きだ。
ここはこんなにも穏やかで、あたたかくて、生き生きとしていて、光に満ち溢れている。
見ているだけでよかった。
遠くから眺めているだけで、満足できたのに。
自分もその中に入りたいと、そう思ってしまったのが、間違いだったのだろうか。
私のせいで、大切な人が苦しんでいる。
私の存在が、あの人の笑顔を曇らせる。

目を伏せると、橋の袂を流れる暗い水面がとぐろを巻いている。
ごうごうと唸りを上げる低い音。
こちら側の水深は深く、流れも急だ。
いっそこのまま身を投じれば、全てが上手く行くのではないか、一瞬そんなことを考えてしまう。
馬鹿なことだ。
そんな事をしても、私は死なない。
きっと彼に余計な心配をさせてしまうだけ。
皆に迷惑をかけてしまうだけ。

私はどうすればいいのだろう。
どうすれば、誰の迷惑もかけず、誰も悲しませることなく、消えることが出来るのだろう。
私が生まれた意味は、もう無くなってしまっているのに。
私は、どうして生きているのだろう。
418告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:08:58.46 ID:JwcrJQzP
「それは絵麻ちゃんが自分で決めるしかないんじゃね」
唐突に聴こえて来た声で、顔を右方に向ける。
何時の間にか、見知った少年が歩道際のポールに腰掛け、先程の私の様に川の方を眺めていた。
どうして、と口に出かけるが、それを察したのか、
「いや、なんか"生きる意味"とか、そんな仰々しいこと悩んでそうに見えたから――――って、結が」
指差したほうを見ると、直ぐ近くで少年とどこか似た風貌の少女が会釈をしていた。
双子のきょうだい、渡辺の結さんと綱さん。
二人とも学校指定された海老茶色のジャージ姿。
この寒さにもかかわらず少し汗ばんで見える所を見ると、運動でもしていたようだ。
二人に会釈を返しながら、私は先程の言葉になんと答えるべきか迷っていた。
その通りです、悩んでいますと肯定すべきか、否定すべきか、それとも立ち入って欲しくないとはぐらかすべきか。
それ以前にこう言う時は挨拶がまず先のような気もする。
今は10時前だから……お早うございますと、こんにちはと、どちらが正しいのだろう?
「おはよう?」
「おう。おっはよう」
たっぷり十数秒は思案した後やっと出てきた挨拶に、にっと笑って律儀に返事をする綱さん。
結さんのほうは喋れないらしいので、再びお辞儀している。
「で、絵麻ちゃんは散歩? さっき伊綾のやつから絵麻ちゃん見なかったかって連絡あったんだけど。
……ひょっとすると、家出?」
私はまたも答えに窮する。
家出と言うほど大げさなものでは無いけれど、出来れば今ヤスミと顔を合わせたくないのも事実だった。
俯く私を見て、綱さんは呟く。
「……伊綾とケンカでもしたんか?」
私は慌てて首を振った。
私が一方的に避けているだけだ。ヤスミは何も悪くない。
彼は、そっか、とだけ呟いて、それ以上追求しなかった。
二人はそのまま、黙って川辺を眺めている。
私は一礼して、その場を後にしようと踵を返した。
と、その前に肩を叩かれて振り向くと、結さんが携帯電話の液晶に文章を表示させていた。
『朝ごはん、ご一緒しませんか?』
まだでしょう?と目で問いかけてくる。
確かに朝起きてから何も口にしていない。
とは言え、余所の家の厄介になるのも悪い気がする。
私は戸惑いつつも、首を横に振ろうとした。
唐突に、私の胃の方から、気の抜けたような変な音が漏れ出す。
恥ずかしくなって、思わず顔を伏せた。
綱さんがお腹を抱えて笑っている。なんだか屈辱的だ。
結さんは苦笑しながら、私の手を取った。
「伊綾とケンカするにしてもさ、"ハラが減っては戦はできん"っちゅーだろ。
エンリョせんで食ってけって。俺らも朝メシまだだしさ」
結さんは兄の言葉に頷きながら、意外に強く私を引っ張る。
私は抵抗を諦め、ずるずると渡辺家の方へ引き摺られていった。

419告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:13:06.90 ID:JwcrJQzP
「よーうし、んじゃ、ウデにヨリかけて作るぜ。
どうせ伊綾のやつ和食しかやらんだろうし、パンとかもあったほうが良いよな。
まずは生地の仕込から……」
台所に入るや強力粉やらドライイーストやらを取り出そうとする兄の頭にチョップしつつ、結さんは広告の裏紙に殴り書きしたメニューを指し示した。
 ・パンはもう買って来た
 ・おかずはベーコンエッグとサラダのみ
 ・余計なものは作らない
一番下に赤丸とアンダーラインがしてある。
「えー。1から作ろうぜ、パン。
折角お客さん来てるんだし。
バターロールとクロワッサンとバゲットと……。
え、生地作るだけで半日かかる?」
なんだか不満そうだが、綱さんはしぶしぶと妹の指示に従って簡単な卵料理を始めた。
だが、彼がこっそり取り出している薄力粉とベーキングパウダは、卵料理には必要の無いものだと思う。
物事にのめり込むと際限なく時間をかけてしまうのが綱さんの悪癖であると聞いたことがあった。
結さんは溜息をつきながら私に向き直ると
『当分かかりそうです。一旦お茶にしましょう』
とタブレットPCに表示させて示して見せた。



ガラスのティーポットに勢い良く湯が注がれ、萎れていた茶葉が一気に膨らむ。
漂って来る甘い香り。
たちまち琥珀色に染まる湯の中で、山吹色、鶯色、錆色、色とりどりの茶葉が踊る。
彼女はポットから溢れる位注いだ後素早く蓋をし、ポットの周りから更に湯を回しかけた。
それほど間を置かずポットから茶海にお茶を移し替え、更に茶海から細長い茶杯に注ぐ。
『一煎目は飲まないで下さい』
茶杯を差し出しつつ、彼女は傍らのタブレットPCに表示されている文章を指差す。
彼女は自分の分の茶杯に鼻を近づけ、香りを楽しんだ後中身をたらいの中に空けた。
ちょっと勿体ないと感じつつも、それに倣う。
いい香りだけど、少し物足りない。
台湾式茶道、らしい。
茶船の代わりとしてタライの中にポットを置いている辺り、かなり好い加減だが。
結さんは手馴れた手つきで二煎目を丸っぽい小さな茶杯に注ぎ、私に差し出した。
私は小さくお辞儀してそれを受け取った。
ひとしきり香りを嗅いだ後、一口啜る。
果実のような爽やかな香りが口いっぱいに広がった。
いやな渋みは全くなく、甘さと苦さが程よく調和している。
おいしい。
直ぐに二煎目を飲み干すと、結さんがすかさず三煎目を注いでくれる。
煎れ立ては熱い。
お茶の熱さに少し舌が痺れていたので、思わず息を吹きかけてしまう。
ふと目を上げると、結さんが苦笑していた。
私は恥ずかしくなって、目線を下げた。
そんな事をする前に、する事があるだろうに。
『おいしいです』とか『結構なオテマエで』とか、自然なタイミングで言えればいいのに。
口に出して言うのは、やっぱりニガテだ。
「お――――」
言葉にする前に、結さんが掌で押し留めるジェスチャを見せた。
"判ってますよ"と言う様に、微笑んでいる。
「…………おい、しいです」
それでも、その厚意に甘えたくはなかった。
結さんは頷いて、お茶請けの乾燥棗を摘んだ。
420告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:16:16.31 ID:JwcrJQzP
穏やかな、休日の午前。
お茶を啜りながら、微妙な緊張感に、私は寛げないでいた。
朝食に呼ばれては来たものの、本当の用件は別なのかもしれない。
彼らは知っている。
私の体が、普通とは違うことを。



私の体には、人工的に調整された数十種類のレトロウィルスが寄生している。
ウィルスは宿主の健康状態に応じて特定のものだけが増殖し、体細胞を根本から作り変えてしまう。
どんな怪我でも瞬く間に治癒するし、病気らしい病気にもかからない。
環境適応の理想形、自然選択を必要としない進化の再現。
だが、所詮はちっぽけな人間のさかしらに過ぎない。
代償は、実験台となった何千もの生贄。
そして、極端に高い癌の発症率。
私と同時期に生まれた健康な新生児67人の内、10歳の誕生日を迎えられたのは11人だけだった。
私も、遠く無い未来、ひょっとしたら数時間後に、急速に進行する悪性腫瘍に侵され死んでしまうのだろう。
それを怖いと思ったことはなかった。
周囲では、同い年の子供達が毎年次から次へと姿を消していて行く。
自分もそうなるのは当然、早いか遅いかの違い。
ラボの四角い壁に囲まれた世界。無味乾燥な毎日。無意味な人生。
診療データと細胞サンプルだけが、私の生きた意味となるはずだった。
けれど。
「なら、ここから出たらまず、貴方の生きる意味を探さないとね」
いつかラボから出られる日が来る、それを当然の様に言う人がいた。
イアヤ ミナコと言うその女性から、私は色々なことを学んだ。
「小麦粉をバターで炒めて、焦げてきたら少しずつ牛乳を加え溶かしていく。
ある程度柔らかくなったら、白ワインで割って好みの堅さに調整するの」
そこは台所じゃなくて、コンロも鍋も材料もなかったけれど。
あの人は言葉を尽くして、ままごとをしたこともない私に、料理というものを教えてくれた。
「具は、豚もも肉玉ねぎにんじんじゃが芋白かぶ。それとマッシュルームが我が家の定番よ。
特別な何かをする必要なんてない。
ただ、食べる人の笑顔を思い浮かべるだけで、すっごく美味しくなるの。
あなたも、いつか大切な人に作ってあげて」
大仰な人生訓だったり、些細な料理のレシピだったり。
それは今でも私の中で息づいている。

そして。
「やりたいことを、見つけなさい」
最後に、ラボから逃げ出した後、砂漠の真ん中で。
「やりたいことを、やりなさい」
笑顔のまま、美奈子さんは死んだ。
もっとも、死んだと判ったのはそれから3日後、最寄の町にたどり着いた後のことだった。
人があんな風に死ぬと言うことを、私は知らなかったから。
眠っているのだと思い込んだまま、3日間、私は彼女の亡骸を引き摺って歩いた。
亡骸は干からびてボロボロになっていた。
421告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:18:37.60 ID:JwcrJQzP
町の病院から連絡を受け、日本から彼女の旦那さんが賭け付けて来た時も、私は彼女が死んだという事をきちんと理解してはいなかった。
けれど、完全に変色し、萎れて見る影もなくなった美奈子さんの躯を前に、号泣する靖士さんを見て、私は初めて知った。
普通、人はこんな風に死ぬんだと。
誰かに惜しまれ、誰かに想い出を、楽しいものであれ悲しいものであれ、残して逝くのだと。
小説の中でしか知らなかった"常識"。
羨ましいと思った。
その時から、私は渇望したのだ。
私も、誰かの死を惜しみ、己が死ぬときは惜しまれるようになりたい。
理由なんて、ない。
ただ、空虚な自分を満たしたかっただけなのだろう。
誰でもない、"試作体723号"ではなく、人間である"エマ"になりたかった。
だから。
「きみを養女として引き取りたいと思う。どうかな?」
そこには複雑な思いもあったのだろう。
美奈子さんを殺したのは私の無思慮でもあったのだから。
でも、その時の私はそんな事に気を回すこともできず、ただ自分の欲に従って靖士さんの提案を受け入れた。

判ってはいた。
形ばかりの家族を得たところで、自分がまともな人間になれる訳ではないという事ぐらい。
私には人の苦痛が理解できない。
そもそも、痛覚自体が極めて希薄なのだ。
度重なる機能再生と刺激反応へのテスト、要するに"試作体"をあの手この手で傷付けてその回復を観察すると言うもの、が原因だろうか。
肌の一部を焼かれ、劇薬を投与され、銃で体の隅々を撃たれるたびに、私たちの体は苦痛を感じなくなっていった。
それと共に薄れていく他人への共感。
磔刑の像を眺めても、今の私には何も感じられない。

ならば、せめて。
せめて、痛み以外の感覚くらいは保っていたい。
冷覚だけでもあれば、凍える誰かにぬくもりを分け与えることは出来るはずだから。
あの時、ぱらぱらと降りかかる雨粒に濡れながら、私はそんな事を考えていた。
曇天の下、見知らぬコンクリートの町並み。
砂漠の夜も寒かったけれど、肌をつたう水滴は確実に体温を奪う。
大丈夫、冷たい。
冷たいことは、わかる。
「おい」
唐突に投げかけられる声。
降りかかっていた水滴が途切れ、顔を上げる。
眼鏡越しに、やや剣呑に吊り上がった眼が、私を見下ろしていた。
「濡れるぞ。そんな所に居ると」

422告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:21:48.61 ID:JwcrJQzP
鼻腔に流れる優しい香りで、私は追憶から醒めた。
結さんが四煎目をそっと差し出している。
私はお辞儀してそれを受け取った。
時計を見上げると、渡辺邸に上がってからもう1時間が経とうとしている。
これまで何をしていたかと言うと、のんびりとお茶を飲みながら、ただぼーっとしていただけだ。
特に急ぎの用があるわけではないが、本題に移らなくていいのだろうか?
結さんは結さんで片手間に針仕事を始めるし。
このままでは、ただお茶をしただけで一日が終わってしまう。
「…………えと」
端切れを丹念に縫い合わせていた結さんが視線を上げる。
声をかけてから、何を言うべきか全く考えていなかったことに気付く。
「結さんて――――、おにいさんのこと好きだったり?」
…………私は何を言っているんだ。
恥ずかしくなって顔を伏せる。
目線だけ上げてみると、結さんは苦笑しながら肩をすくめていた。
"どうでしょう?"とでも言う風に。
相変わらず、掴み所がない。
彼女は滅多に自分の本音を表にしない。
けれど、彼女は双子の兄である綱さんに結構強い執着がある、と私は思っている。
納得していない私に、結さんはタブレットPCの画面を向けた。
『家族をそういう対象とするのは、簡単じゃないとは思います』
『いつも一緒にいる分、適切な距離が図り辛いですから』
それは私も良く判っているけれど。
私が知りたいのは結さん自身の考えなのに。
私は――――同じ家族を好きになるということが、どういうものかを知りたかった。
私の言いたいことを察してか、結さんは僅かに唇を動かした。

――――ずっと傍で、見守っていれたらいいのにね――――

ほんの僅かな唇の動きが、そう呟いているのを私は見逃さなかった。
それは何とはなしに漏れでた言葉だったのだろう。
諦めと羨望に満ちた言葉。
ありえない仮定の話。
結さんは諦めている。
綱さんと寄り添う未来を。
理由は単純だ。
綱さんに、幸せになってもらいたいから。
綱さんに、社会的に認められて、自分の夢をかなえて欲しいから。
幸せに――――
423告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:24:48.77 ID:JwcrJQzP
私はヤスミの幸せを考えたことがあっただろうか。
母親を亡くし、心のどこかに寂しさを抱えたまま生きるヤスミにとっての、幸せ。

私はヤスミの家族になれない。
私では、ヤスミに家族を喪う悲しみを再び味あわせてしまうだけだ。
私はヤスミの恋人になれない。
私では、例えいつか結婚したとしても、彼を看取ってあげることが出来ない。子供を生むことさえ出来ない。
私は、ヤスミの何にもなれない。
なってはいけない。
そう考えた瞬間、私の瞼の奥から、熱い何かがこみ上げてきた。
ヤスミの幸せを願っているのに。その筈なのに。
私は彼にとっての大切な何かになりたがっている。
大切であればあるほど、私が死ぬときヤスミは嘆くだろう。
その嘆きが深ければ深いほどいいと考えている自分がいる。
「――わっ、わたし……ッ」
言葉が喉につかえて、声にならない。
「――むすび、さん、みたいに、なれない。
そ、そんなに、長く、いきて……いられないのに、や、ヤスミに……大切だって、おもって、もらいた……、
……自分勝手でっ――――ヤスミ自身の幸せ、なんにも考えて……ッ!」
支離滅裂な思いを口にしながら、私は自覚した。
私は、ヤスミのことが、好きなんだ――――

――――私は、ヤスミのことを、好きにならなければよかった。
彼の笑顔が見たかったのに、彼に辛い顔をさせてばかりいる。
こんなことにしかならないのなら、私はヤスミと出会わなければ良かった。
そんなネガティブなことしか考えられない自分が嫌いで――――

結さんは、ちょっと困ったような顔で苦笑している。
そのまま、ぐちゃぐちゃの思考でしゃくりあげる私を、そっと抱きしめてくれた。
身を離そうと暴れても、簡単に押さえ込まれてしまう。
……なさけない。
自分が惨めだった。
「おーい、できたぞー。
ちょっと遅くなったけど、さっそく今からブランチと洒落込――――」
焼けた生地のいい匂いとともに、お盆に山ほど食べ物を満載した綱さんがリビングに姿を現した。
お盆を掲げたまま、密着している私たちを見て固まっている。
4、5秒ほど経っただろうか、綱さんは神妙な顔で、
「ごゆっくり」
などと言うと、珍妙な姿勢のまま音も立てず横方向に退散して行った。
なんだか物凄く失礼な勘違いをしているようだ。
結さんは疲れた顔で立ち上がると、綱さんを引き戻すべくその跡を追った。
424告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:27:09.35 ID:JwcrJQzP
結さんが綱さんに経緯を説明している間、私はずっと俯いたままでいた。
説明といっても筆談か手話だろうが、綱さんがしきりに相槌をうっているのは聴こえる。
皿の上で湯気を立てているマフィンを見ても食欲はわかない。
新しく淹れられた紅茶の水面に映っている自分の顔を眺める。
そこからでも、自分の目が真っ赤になっているのが見て取れた。
「う――ん」
もぐもぐと、まさしくそんな擬音が似合いそうな感じでマフィンを頬張りながら、綱さんは呟いた。
「んーなにムリしてまで、幸せである必要ってあんのかな」
私は伏せていた顔を上げる。
指に付いたジャムを舐め取りつつ、綱さんは続けた。
「承認欲求とか難しいことは別にしてさ、ドラッグでハイになってエンドルフィン脳内でドバドバ出てても幸福っちゃ幸福じゃん?
でも、伊綾にそうなって欲しいわけじゃねーんだろ。
絵麻ちゃんが目指してるもの、成し遂げたいもの。
伊綾にして欲しいこと、絵麻ちゃんがやりたいことってなんなのさ」
私のしたい事。私の望むもの。
ヤスミを愛したい。そしてヤスミに愛して欲しい。
けれど同時に、ヤスミに幸せになってほしい。
ヤスミの幸せとはなんだろうか。
綱さんの言う薬物とかそういうものではなく、きっとそれは私の望みと同じく、誰かと愛し愛されること、なのだと思う。
命の短い私には、それは与えることができない。
だから、私の望みは矛盾している。
だいたい私はヤスミにとって"親戚のようなもの"でしかない。
愛されたいなんて、傲慢だ。
それを見透かしたかのように、綱さんは口を開いた。
「伊綾は、そんなヤワな奴じゃねえよ。
そりゃ、絵麻ちゃんいなくなったらすげえ悲しむだろうけど、1年もありゃきっと立ち直るさ。
そんで、絵麻ちゃんとの想い出をコヤシにして強くなる」
結さんも隣で頷いている。
ヤスミと彼らとの付き合いは、私とのそれよりもずっと長い事を思い出した。
一応一緒に住んでいる私よりも、友達である綱さんたちの方がずっとヤスミのことを理解できている。
なんだか悔しかった。
綱さんは4つ目のマフィンに手を伸ばし、言葉を続ける。
「だから、絵麻ちゃんは自分のしたいこと優先すりゃいいんじゃねーの?
あいつにエンリョして言いたいことも言えずギスギスするより、思い切って自分の感情ぶつけた方が、双方納得できると思うんだけどな。
まして好きって感情ならなおさら、さ」
それでも、私は迷っている。
自分の感情を優先して、自分の死後遺される人のことを考えないのは、無思慮であり無責任ではないのか。
綱さんは尚も俯いている私を見て、強情だなと呆れたように呟く。
425告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:29:31.44 ID:JwcrJQzP
「あいつさ、伊綾のことだけど」
「?」
「前はもっと乱暴で、今よりもずっとつっけんどんな感じで、すっげー愛想なかったんだぜ」
前のヤスミと言われても、あまり想像がつかない。
今でも確かに無愛想だとは思うが、誰かに暴力を振るったところを見たことは一度もなかった。
「絵麻ちゃん来てから、なんっつうの? やわらかくなった?」
『柔和になりました』
「そう、それ」
結さんがタブレットPCに表示した文字に、綱さんも同意する。
「伊綾の奴を他人が良いふうに変えていけるとしたら、それができるのは多分絵麻ちゃんだけだぜ。
本当にあいつのことを想うなら、少しでも長い間あいつの傍にいてやるべきだと俺は思う。
それが結果的に伊綾の幸せにもつながるんじゃねーの?」
綱さんの言う通りなのだろうか。
私が知るヤスミは、いつも優しい。
そんな彼が、私は好きだ。いつまでもそんなヤスミであって欲しいと思う。
けれどヤスミが優しいのは、ヤスミが優しいからであって、私が影響しているとは思えない。
「でも、ヤスミは別に……私のこと好きって訳じゃ――――」
言いかけて、病室で触れそうになった唇を思い出し、私は顔を伏せた。
あれは――――どう考えれば良いんだろう?
自分でも何のつもりだったのか判らない。ヤスミがどういう意図でキスに応えようとしたのかも判らない。
今、自分の顔が熱くなっているのは判る。
一拍置いて顔を上げると、双子二人が呆れたような顔をしていた。
「――――いや、俺の勘違いじゃなけりゃ、伊綾のやつそうとう絵麻ちゃんのこと大切に想ってるぞ。
まあ、俺には"好き"の種類が何なのかはようわからんが」
結さんも頷きながらタブレットPCを掲げる。
『ウチの兄に恋愛の助言を受けるようでは終わりですよ。
お二人はとっととつきあっちゃえば良いと思います』
"つきあう"とはなんだろう。
良く判らない。
恋愛映画のカップルのように、手を繋いだり、デートしたり、店でディナーを共にしたりすればよいのだろうか。
ハリウッド的カップル像への憧れはピンと来ないけれど、相手がヤスミと考えると、悪くないと思う自分もいる。
ヤスミはどうなのだろうか。
私と、手を繋いだり、デートしたり、ディナーを共にしたりしたいと思ってくれるだろうか。
べつにそう思ってもらえなくてもいい。
友人としてか、家族としてか、恋人としてか、そのどれであろうとも、命が続く限りヤスミに寄り添っていられたら。
私が死んだ後、ヤスミがほんのたまに私のことを思い出す時、涙でなく微笑みを見せてくれるなら。
私は、すごく、うれしい。

426告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:31:22.76 ID:JwcrJQzP
河原の辺りを捜索する事に、特に深い理由がある訳ではない。
強いて言うならば、あいつが水を好む性質だからだろう。
とは言え、それ以外に手がかりが無いことに変わりはない。
目ぼしい友人にメールはしてみた。
『ウチのチビを見なかったか』
結果は芳しくない。
つい先程も、渡辺結から『見てません』との返信があった。
当てにならない返信を待ちつつ、取り敢えずは川を遡上するコースで左手に対岸の人々をチェックして行く。
ジョギング中の中年男性、親子連れ、犬の散歩をしている小学生、ママチャリに乗った主婦……。
探し人は見付からない。
「ワタナベーズみたいにテレパシー使えりゃこんな苦労は――――」
溜息を吐きつつ正面に向き直ると、20メートル程前方で、当の渡辺ブラザーズが対岸の街路樹を眺めていた。
そして、何故か二人に挟まれる位置で、探していた少女が二人の(喋っているのは片方だけだが)話に耳を傾けている。
「あれ全部ソメイヨシノの木でな。春になると数日だけいっせいにピンク色の――――」
渡辺兄の言葉が途切れた。
1、2、3と1拍置きに結、綱、絵麻の順番で左方に首を向ける。
「あ」
果して、それは誰の声だったのか。
数秒の沈黙。
絵麻の顔の色が徐々に赤く染まって行く。
後、彼女は踵を返すと、脱兎の如く川上へと駆け出した。
「あ! 逃げた!
おっかけろ伊綾――!!」
言われる迄も無い。
「ぅわぁーたなべいもうとぉ――――!
裏切りやがったなあぁぁぁ――――!!」
済まなそうな表情で合掌し一礼している結を横目に。
俺は呪詛の言葉を投げながら二人の横を駆け抜けると、遥か前方を逃げる絵麻への猛追を開始した。



「浜辺で追いかけっこ……。青春だなー。うんうん」
(川辺だよ、綱。しかも真冬だし)

427告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:33:03.00 ID:JwcrJQzP
「絵麻――! 待てやコラァ、絵麻――――ッ!」
「〜〜〜〜ッ!!」
数分程、ほぼ全速力で追い駆けているのに、絵麻との距離は殆ど縮まらない。
(糞ッ! あいつ足速えな!)
こちらは同年代では脚が速い方で、向こうは2歳年下の女。
条件を考えると、絵麻は相当な健脚の持ち主と言って良い。
一応遺伝子操作を受けたデザイナチャイルドである事も関係しているのだろうか。
(とは言え、このまま行けば……)
後200メートル程で川は二手に分かれ、三角州を形成する。
今走っている遊歩道は一旦途切れ、そこから先は堤防を上る為の急勾配な階段が続く。
向こうのペースが落ちれば、その分距離は縮まる筈。
そう考えてスパートを切ったその時、絵麻は突然左折し、そのまま川の中へと突き進んだ。
水飛沫を上げながら、絵麻の下半身が水面に沈んで行く。
「マジかよ!?」
一瞬だけ躊躇するが、俺は即座に迷いを振り切り、絵麻を追って水の流れに突入した。
最初は靴が、進むにつれてズボンまで水浸しになる。
真冬の水の冷たさに、脚の感覚が奪われて行く。
だが、それでも脚はまだ動く。前に進める。
痺れる神経を叱咤して、流れに脚を取られている絵麻と少しずつ距離を詰めて行く。
もう、彼女は目前にいた。
必死に手を伸ばす。
肩に掛かった手を手繰り寄せる。
凍て付く冷たさの中、確かなぬくもりが腕の中に納まる。
川の中程、腰まで水に浸かりながら、俺は絵麻の背中を抱きしめていた。
「つかまえた」
流石に全力疾走の後、息も絶え絶え、そんな中でその言葉だけどうにかひねり出す。
絵麻は俺の腕の中で弱々しく身を捩っていたが、直ぐに大人しくなった。
「逃げんな、この馬鹿」
徐々に荒い呼吸も静まり、耳の奥で鳴り響く脈拍も収まり、辺りは静寂に包まれる。
二人の足元を流れる水の音、遠くの車道から聞こえて来る排気音、遥か上空を行く鳥の声。
そして、二人分の鼓動。
そんなものが、やけに良く聞き取れる。
「私は」
ぽつり、と絵麻が口を開いた。
「長くは生きられない。
中途半端に一緒にいても、別れが辛くなるだけ。だから……」
「だからもう、傍に居ない方が良いと、そう言いたいのか」
絵麻は小さく頷く。
428告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:35:18.33 ID:JwcrJQzP
俺は思わず空を仰いだ。
概ね、想像していた通りだった。
思わず、溜息。
「手遅れだ」
絵麻は体を捻って俺の顔を見上げる。
「手遅れだよ。
俺はもう、お前がいないと――――」
俺は、絵麻の瞳を眺める。
黒目がちで、少し色が薄く、綺麗な目だ。
その両瞳いっぱいに、俺の顔が映っている。
「俺は、お前が好きだ。
お前の時間がもう限られているのなら、その半分だけでも俺にくれ」
絵麻は、吃驚した様に目を見開いた。
その丸い瞳の端に、じわりと涙が滲む。
戦慄く唇で、絵麻は俺の告白に応えようとする。
「私も――――私も、ヤスミのことが――――」
少女は首を振って言葉を切った。
「駄目だよ」
絵麻は震える声で拒絶する。
「私はヤスミに、ぬくもりをあげられない」
「もう、貰った」
「ヤスミが辛いとき、わかってあげられない」
「俺も、お前の苦しみを理解してやれなかった。お互い様だ」
「それに……」
絵麻は顔を伏せて、小さく呟いた。
「私は、ヤスミの家族になれない」
俺は、自分が以前彼女に投げ掛けた言葉を思い起こした。
――――俺はあんたの、家族にはなれない――――
あれから、もう半年以上が経った。
今現在、俺にとって絵麻は何なのだろうか。
家族?
友達?
今はそのどちらも、中途半端に当てはまってしまう気がする。
けど、これからどんな関係になるかは、まだ判らない。
きっと、お互いが望むならば、望む形に変えていける。
俺は絵麻の正面に回り込み、その華奢な両肩に手を置いた。
「じゃあ、結婚しないか」
絵麻の瞳は、再び丸くなる。
429告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:37:28.74 ID:JwcrJQzP
「結婚しよう。
もう何年かして、俺が独立して、その時お互いに生きていれば。
そうすれば、俺達は家族だ。
勿論、お前も俺の事を好いてくれるなら」
まだ自活も出来ていない、子供の戯言かも知れない。
それ以前に、その歳まで彼女が生きている可能性は高くない。
それでも、俺は本気だった。
俺は、本気で絵麻にプロポーズをした。
一方の絵麻は、何と言うか、混乱していた。
顔を真っ赤に染めて、ぐるぐると視線を彷徨わせながら、言葉にならない何事かを呟いている。
さっき俺が「好きだ」と言った事も、家族として、と勘違いしていたのかも知れない。
「…………そ」
頬を朱に染めたまま、絵麻はぼそぼそと呟く。
「そんなこと、急に、言われても――――
どうしたらいいか」
わからない。
俺達二人は、そればかりだ。
絵麻が何時まで生きていられるか判らない。
俺は絵麻の抱える苦悩を知らない。
絵麻は俺の痛みを理解できない。
お互いの気持ちも、上手には通じ合えない。
けれど
「急ぐ必要は無いぞ」
俺は肩に置いていた手を、彼女の頭の上に持って行きながら、言う。
「今は判らなくても、時間をかけて、ゆっくり答えを探して行けば良い」
願わくば、それ迄の時間が、彼女に残されているよう、願いながら。
「まあ、一先ず今日の所は――――」
俺は彼女の足に手を回して、一気に絵麻の体を抱きかかえた。
濡れたボトムの先端から、水滴が落ちる。
「帰ろう。このままじゃ風邪を引いちまう」
……ああ、そう言えばこいつは風邪も引かないんだったっけ。
けど、寒いのは判る筈だし、水浸しにはしておけないから、矢張りこれで良い。
そんな事を考えながら、俺はそのまま川岸に向けて歩き始めた。
絵麻は最初面食らっていたものの、特に抵抗することもなく、大人しく俺に体を預けている。
暫くして、何を思ったか、抱えられたまま身を乗り出す。
そのまま俺の首に手を回すと、自分のマフラーをそっと巻きつけた。

430告白 / 星宿(ほとほり) ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:39:32.50 ID:JwcrJQzP
未来のことは、わからない。
明日のことも、わからない。
私が何時まで生きていられるか、それは誰にもわからない。
けれど、私は信じる。
ヤスミは生きる。
私が死んだ後も、強く生きていく。
だって彼には、いつか来る別離への不安や恐怖から逃げず、立ち向かえる勇気があるのだから。
だから、きっと、ヤスミは大丈夫だ。

いずれ来る死の瞬間まで、彼に寄り添っていよう。
そして、その前に良い時期が来て、その時は彼にお嫁として貰ってもらえたら。
そんな未来を、私は夢見る。

でも。
その時まで、私はまともな人間でいられるのだろうか。

431 ◆MZ/3G8QnIE :2012/04/15(日) 16:41:57.29 ID:JwcrJQzP
前編は以上です。

前回から大きく間を開けてしまい、申し訳ありません。
後編は近いうちにアップできたらと思います。
432名無しさん@ピンキー:2012/04/16(月) 09:06:14.27 ID:qbOy24S7
続ききてたGJ!



ところで容量が500KB近いので次スレ立てた

無口な女の子とやっちゃうエロSS 十言目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1334534669/
433名無しさん@ピンキー:2012/04/16(月) 11:53:12.60 ID:0963wTF/
無口な女の子をみんなで愛でるスレです。

前スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 八言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1248348530/

過去スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 七言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1228989525/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 六言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218597343/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 五言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1203346690/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 四言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1198426697/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191228499/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179104634/
【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155106415/

保管庫
ttp://wiki.livedoor.jp/n18_168/d/FrontPage

・・・次スレは480KBを超えた時点で・・・立ててくれると嬉しい・・・
・・・前スレは無理に・・・消化して欲しく無い・・・かも・・・
・・・ギリギリまでdat落ち・・・して欲しく・・・無い・・・から・・・
434名無しさん@ピンキー:2012/04/16(月) 11:53:31.58 ID:0963wTF/
無口な女の子をみんなで愛でるスレです。

前スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 八言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1248348530/

過去スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 七言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1228989525/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 六言目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 五言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1203346690/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 四言目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目
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【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155106415/

保管庫
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・・・次スレは480KBを超えた時点で・・・立ててくれると嬉しい・・・
・・・前スレは無理に・・・消化して欲しく無い・・・かも・・・
・・・ギリギリまでdat落ち・・・して欲しく・・・無い・・・から・・・
435名無しさん@ピンキー
無口な女の子をみんなで愛でるスレです。

前スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 八言目
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過去スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 七言目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 六言目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 五言目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目
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保管庫
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・・・前スレは無理に・・・消化して欲しく無い・・・かも・・・
・・・ギリギリまでdat落ち・・・して欲しく・・・無い・・・から・・・