無口な女の子とやっちゃうエロSS 七言目

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1名無しさん@ピンキー
無口な女の子をみんなで愛でるスレです。

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無口な女の子とやっちゃうエロSS 六言目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 五言目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 四言目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目
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無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目
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【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155106415/

保管庫
ttp://wiki.livedoor.jp/n18_168/d/FrontPage

・・・次スレは480KBを超えた時点で・・・立ててくれると嬉しい・・・
・・・前スレは無理に・・・消化して欲しく無い・・・かも・・・
・・・ギリギリまでdat落ち・・・して欲しく・・・無い・・・から・・・
2名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 19:33:27 ID:uU/nVeb7
図書室の隅に座り、本を読んでいる眼鏡をかけた少女。
背筋を伸ばし、姿勢良く本をめくる姿はすらりとした花を思わせる。
短い髪や無表情はやや冷たい、無機質な印象がある。
――さしずめ、冬に咲く花といったところか。

静寂に包まれた図書室の中には、頁をめくる、パラリという音が時折り響く。
そして少女の、小さな、儚い息遣いも、幽かながらに空気を震わせていた。
無機質な雰囲気のある少女が、生命と熱を持つ存在だと確認できる一瞬だ。

静かに。ただ静かに本を読み進める少女。

彼女は不意に、パタン、と強い音を立ててハードカバーの本を閉じた。
突然立てられた音は、波紋のように空気を揺らす様子が見えるかのように存在感がある。
その音と、僅かに響いた残響音が、図書室の壁に吸いこまれていき、静寂が帰ってくる。
心なしかより一層深くなったような静寂。
その中で、少女は形の良いおとがいを上げ、眼鏡の縁に指先を当てながら振り向いた。

>>1 お疲れ様です」

単調で、無機質な言葉。
しかし、言葉の後に僅かに浮かべた微笑みには、心から>>1を労う感情が感じられた。
一日に数えるほどしか喋らない、図書室の片隅に座る無口な少女。
その彼女の口から紡がれた言葉は、紛れも無く>>1だけに向けて贈られたものだった。
3前スレ626:2008/12/11(木) 20:11:43 ID:s5qRF3Ut
「……(ニコニコ)…」
「どうしたの?やけに嬉しそうだね」
「…代わりにスレ立ててくれたの」
「そうか。よかったね!」
>>1さん、ありがとう…」
「さぁ前スレも埋めに行かないと」
「…うん!」
4名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 20:33:50 ID:ByXGXD3K
「ほらほら、新スレ立ったんだ。言うことあるでしょ?」
(/////)
「そうやって引っ込んでちゃダメでしょ。>>1がいなくなっちゃうよ。」
(…コクン)







(トントン)

「(スゥ)…いちおちゅ」
「………」
「…………」
「………………」
「………………おつ(ボッ)」

すまん。とにかく>>1
5名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 22:51:20 ID:OU4XKEyE
>>1お……Chu」

 タタタタタタタッ
6名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 23:04:19 ID:v5IIGrCg
次の瞬間、壁をぶち破って巨大な口と太い触手を生やしたモンスターが現れた!
オチュー。モンスターの食べかすを漁る迷宮の掃除人とも言える雑食の怪物だ。

「呼んだ?」

触手をうねらせ、思ったよりフランクな口調で尋ねてくるモンスター。
その身体を金髪を三つ網にした少女騎士は無言で切り捨てた。
光り輝く黄金の剣が、強靭なはずの化物の身体をゼリーのように引き裂いていく。
絶命し、倒れる化物の身体。巻き上がる砂塵。
それらを意に介さず剣を鞘に収めた少女は、その屍骸を一瞥しながら呟いた。

「乙だ」

踵を返し、少女は迷宮を進む。彼女の冒険はまだ始まったばかりだった。
7名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 11:52:00 ID:gIQ1SSjg
無口が極まって、モールス信号で会話する幼馴染み。
8名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 21:51:04 ID:yXA4mkyc
それ、前スレになかったか?
9名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 23:24:51 ID:4wpbQv+R
じゃあ……手旗信号とか。
10名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 00:17:44 ID:gfq68lGq
彼女は言葉で思いを表現するのが苦手だ。
『彼に思いを伝えなくちゃ…
でもどうやって…』
がんばって声にしようとするがうまくできない。
>>1
>>…お…
うまくいかない、彼女は賭けに出た。
一歩間違えば彼に引かれてしまうそんな賭けに。
一か八か、彼女は彼に抱きついて呟いた。とても小さく、緊張でかすれた声で。
>>1…お……っ!」
彼は何事かと彼女の方を向く。
その刹那…
chu…
これが彼女なりの>>1へのねぎらいの言葉だった…

というわけで>>1乙!&即死回避でした。
11名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 05:43:56 ID:BH9bdOMH
>>7,9
Monty Python ですね。
懐かしい。
12「ラヴ・リンク」 1/8:2008/12/13(土) 07:21:00 ID:ffwtjCzw
おまたせしすぎました。
スレ立てありがとうございます



☆「ラヴ・リンク」 五話



 夜、反撃の誓いを立てたふたり――秀一と朋美が‘帰路’につこうとしていた、同時刻のこと。
 その相手のひとりである生徒会長・背川正義は、ある場所で性欲を‘抜いてもらって’いた。
 古ぼけた三階建てアパート「めいりょう荘」の二階、一番端っこの部屋は、「朝花アナ」が一人暮らしをしている場所である。
 彼女は表向きは聖羅高校三年生の会計だが、その実はセーギに身体をうりこんで得た地位なのだ。

「んっ…………む……」

 巨大と形容してもいい正義の陰茎を、あどけない顔立ちの少女――アナが咥え込んでいた。
 一切のあかりを消したこの部屋でもわかる輝かんばかりの金髪を、両頬に垂らしポニーテールにして結っている。
 美しい少女だった。
 ハーフである彼女の瞳は、青玉を思わせるほど透きとおっている。
 宍色の肌を有する均整の取れた肢体は、女性としての魅力を存分に引き出したなまめかしさを感じさせるものだった。
 胸の豊かさでいえば朋美に軍配があがるものの、少しの差でしかない。
 朋美とアナ、どちらも絶世の美少女であることは間違いないが、どちらが美しいかと聞かれればまず即答はできないほどの美貌を持っている。
 人によって好みの差はあれ、一つの高校にこれだけの美姫が二つ揃ったのは奇跡的ともいってよい。

「……むう…………」

 眉間をぴくりとよせ、眼を細める正義。
 病的なまでの遅漏である彼も、アナの舌技には感服せざるをえなかった。
 異常なほど女性の理想が高い彼は、十八年の人生において一度も自慰行為に及んだことがない。
 初経が十六歳と平均から大幅に遅れたが、彼女――アナがいなければ、更に遅れるはめになっていただろう。

「……そろそろ挿入れていいか?」
「……承」

 僅か一語で返答するアナ。
 彼女の素性は、謎だった。
 一人暮らし・日米ハーフ、これだけで相当希少な存在だし、一年生の時からわざわざ正義に言い寄ってきた理由も不明。
 正義がそんな彼女を受け入れた理由はといえば、単純なものだった。
 自分を慕い、支え、性欲処理までしてくれる者を拒否する理由がどこにあろうか?
 心内でどう思っていようと、刃向かう者は切り捨てるし、協力する者は取り入れる。
 去るもの追わず来るもの拒まず。それが彼の信条だった。
13「ラヴ・リンク」 2/8:2008/12/13(土) 07:22:11 ID:ffwtjCzw


「くっ……」
「あっ……は…………」

 欲望のままに腰を振り、少女の秘所を突きこむ正義。
 互いの両手を握り合い、ただただ快楽を貪ろうとしている……わりには、ふたりとも淡白といってよかった。
 微かに顔を歪めているものの、眼は開いているしあえぐこともほとんど無い。
 徐々に息遣いは激しくなっていくものの、あまりにも緩慢で、端から見たら興奮より先に彼らの体力を心配してもおかしくないほどである。

「っっ……――ぐはっ、が……!!」
「うっ……――――あぁぁあぁ…………!!!」

 ふたりが達したのは、意識疎通でもしているのかと勘ぐりたくなるほどに同時であった。
 さすがにこの時は少しばかり嬌声が洩れた。
 少年は歯噛みした精悍な面差しをアナに向け、彼女も可愛い顔をゆがませて正義を虚ろなまなざしで見据える。
 白濁の液がどっぷりと膣内からあふれ出て、寝床をぐしょ濡れによごしてしまう。
 抜け目のない彼らにしては、珍しい話である――コンドームをつけないどころか、中出しまで行うとは。
 性病の危険など鑑みれば、このような事は避けるべきなのだが……
 ふたりはお互いに荒い息を整えてから、淡々と事後処理にいそしみ、着替えた後は何事も無かったようにベッドに腰掛けた。

「アナ……お前に一つ言っておくことがある」

 こくん、と微かに首を傾けるアナ。
 整った人形のような童顔が、無表情で少年を見据えていた。

「明日、オレはある女を手込めにする。恐らく、「成功」である確率が高い。お前の負担を減らせてやれる」

 こくん、と再度うなずくアナ。

「……オレはお前のおかげでここまでこれた。もっと礼をしたい……何か欲しいものはあるか?」

 無機質にすら見える美貌が、ふいにかすかな笑みを浮かべた。
 少女の顔が正義の顔に近寄り、顔の両側に垂れる金髪が揺れる。

「………………愉悦……」

 ほんのひと言、美しい少女は呟いた。
 十八という女性ともとれる年齢の彼女にしては、随分幼い声である。
 ある意味、朋美とは何もかも対照的だった。

「そう……か」
14「ラヴ・リンク」 3/8:2008/12/13(土) 07:24:02 ID:ffwtjCzw


 精悍な少年の方も、アナの言葉を聞き入れ穏やかに破顔した。
 彼女の正体は不明なれど、自分に与する者を邪険に扱うような真似はしない。
 ましてや、学校行事のことから下半身のことまで、様々な分野を彼女に委ねているのだ。

「…………ありがとう……アナ」

 ささやかな謝礼にも、少女は返答をよこさなかった。
 すぐにも、正義の腕が少女の服に伸びてくる。
 シャツをめくると、ピンクのブラとなめらかな肢体がさらされる。
 きめ細かい肌に手を這わせ、艶やかな下着を取り去る。
 発展途上だが小さくはない胸に少年の顔が近づき、淡いべに色の突起に舌が這う。
 少女は微かな途息さえも洩らさないが、間も無く、ちゅぷちゅぷと吸い上げる猥音がはっせられると、ようやく彼女は僅かに悦楽を感じたのだった……

 ―――

「ただい……!」

 玄関のドアを開けるなり、視界に醜い顔がうつし出された。
 父親が勃って――いや、立っていたのである。
 肥えた腹をジャージにランニング姿で覆っているさまは、薄くなった頭皮と相まってだらしない中年オヤジの典型に見える。

「お前……今までどこ行ってたぁ!?」

 怒りからか、声がわなわなと震えている。
 それだけではなく、つい先刻まで酒をあおっていたらしい。
 顔が異様に赤く、足取りも悪い。
 このような男が証券会社の重役なのか……と、人様が見たら懐疑的になりそうな姿である。
 一方、少女――朋美の方はというと……立ちすくんで震えたまま、何も答えられずにいた。
 視界に映る父の姿が大きくなってゆくが、玄関から一歩も動こうとしない。

「……そうか、答えないか! なら犯らせろぉ!」

 濁った声で怒鳴りつけ、無抵抗な美少女の胸ぐらを掴んで、引き倒した。
 仰向けに倒された朋美は歯を食いしばって耐えるが、この男の暴挙には意味を成さない。
 強引に光緑色のワンピースを剥き、胸に手をのばし――

 カシャッ
15「ラヴ・リンク」 4/8:2008/12/13(土) 07:25:52 ID:ffwtjCzw


 突如鳴った異音に、醜男の動きが麻酔でも打たれたかのごとく止まってしまった。
 恐る恐る、聞き覚えがある音の方へと身体を向ける。
 ――黒い格好の少年がいた。
 歳は十代後半だろうか。シックとは言い難いジャケットとズボン、鳥打ち帽を身に付けている。
 異音の正体は間違いなく、彼が持っているデジカメから発された者だろう。

「き、きさま……それをどうするつもりだきさまあぁっ!」

 叫ぶなり、太った巨躯を飛び上がらせて少年のもとへ駆ける醜男。
 それを視認し、少年はすぐさま踵を返して家を出て、玄関のドアを閉め切った。

「ま、待て!! そんな、そんなものを持っていくなぁぁ!」

 娘を手にかけた写真などが出回れば、自分はただじゃ済まない。
 分かっているからこそ、彼はあの少年を捕らえ、カメラを壊さねばならなかった。
 跳ね回る豚のごとし身のこなしで玄関へ走り、ドアを開ける――

「ぶっ……」

 呻きは一瞬だった。
 少年の拳が、打ち合わせでもしたかのように、むくんで膨らんだ男の顔面を打ち据えた。
 嫌な感触を覚えたが、もとより覚悟のうえである。
 走ったいきおいで、たおれざま巨体が浮き、仰向けにぶっころぶ巨漢。
 白目をむき、醜い顔に鼻血とあわを吹かせており、完全に意識を失ったことが判別できた。

「……やべ、本気でやっちまったかもしれない」

 自分が揮ったにも関わらず、男の容態を気にしてやる少年――秀一。
 むしろここ数年喧嘩などしていないのに、いざ実戦で本気の正拳を見舞えるところは、逆に評価に値するところなのだが。

「秀一くん……」

 玄関先に倒れた父と、その父を下した少年をみとめ、服をなおした朋美がやってきた。
 心配そうに父を見つめ、

「…………だいじょぶ……かな?」
「な、何言ってる。こんな奴のことなんか気にすんなよ。……いい今まで朋美にしてきたことからすりゃ何ともないだろ」
16「ラヴ・リンク」 5/8:2008/12/13(土) 07:27:29 ID:ffwtjCzw


 高揚しているらしく、震えをおびた声で朋美に返答する秀一。
 確かにやりすぎるのは良くないが、何しろ歳と体格に相当な差がある。
 この男の脂肪のつき方ならば、加減するのは危険と判断しても過ぎた考えではないかもしれなかった。

「それにしても……あっさり解決、かな? 後々めんどくせーけど……」

 一連の流れから察しはつくが、この行動は事前に朋美とながい相談を経て遂行されたものである。
 この後の朋美の振舞い方について、特に入念に話し合った。
 日常的に娘を乱暴していたという事実が明るみに出れば、彼は暫く陽の元にでることはできないだろう。
 その証拠として、朋美も恥を捨てて提供すると言ったのだ――自らの身体を。
 それだけでは心許ないので、物的証拠となる写真も撮ったが。

「あとは……あいつらだな」
「…………うん」

 お互いに緊張の面持ちで呟いた。
 この後に待ち受ける面倒くささなど、彼らの性質の悪さに比べればましなのかもしれない。
 朋美の父の場合は、こちらが証拠を握っているから良かったものの。
 彼ら――「黒い三連性」や生徒会長の場合は、逆にこちらが不利になる物を握られているのだ。
 勿論なにも考えていないわけではないが、相手が相手、状況が状況なので、極めて不利であることは確かだろう。

「……朋美」

 憂い表情を少女にむけ、呼びかけた。
 悲壮な……いや、悲愴な声色が出てしまうところに、事態の深刻さが浮き出ている。

「…………」
「ごめん、な……朋美にも、やってもらわなきゃならない……」

 暗澹たる雰囲気を漂わせてしまうふたり。
 仕方がないことだった。
 お互いに身を削らないと、事の成就は恐ろしく困難なことなのだ。
 並じゃない覚悟と努力、忍耐が必要になってくる。

「………………大丈夫、だよ……」

 ふと、朋美が重々しく口を開いた。
 優しげな声で言われ、やや安息を覚える秀一。
 彼の性格上(少女の格好にも原因はあるが)、こんな時でもなかなか眼を合わせられないのだが、それでも彼女は続けて言葉をつづった。
17「ラヴ・リンク」 6/8:2008/12/13(土) 07:28:15 ID:ffwtjCzw


「私は……秀一くんのためなら、何だってしてあげたい。…………だって、これは……もとは私の問題なんだもの……
 秀一くんになにを頼まれても、文句なんていわない……だから…………」

 朋美の言葉を聞き入れるうちに、心拍数が上がっていくのを感じる少年。
 彼女は別に色めいた意味で言ったわけではないのだが、男としてはそういったことを告げられると、どうしても意識せざるを得ないのだ。
 だが、朋美もそれを推し量ったのか、すぐにも美しいおもてに微笑をたたえ、秀一に歩み寄った。

「……と、朋美、俺さ…………え?」

 思わず顔を正面に向けると少女と眼が合ってしまい、心臓が大きく跳ね上がった。
 かわいすぎる顔に流れる黒髪を飾り、赤らんだ微笑を浮かべた彼女は、大げさじゃなく「女神さま」のような雰囲気があった。
 そんな朋美が秀一の手を取り、何をするのかと思えば――

「……っ!!」

 両者とも、言葉を失っている。
 突如おこった、普通なら至福の瞬間であるはずの出来事を、少年は直視できなかった。
 朋美によって促された秀一の右手は、豊かに膨らんだ少女の胸におかれていた。
 それも手のひら全体で、包み込むように、少し気を抜くとゆがませてしまうだろう位置におかれている。
 だが彼は、そのにぎりしめたいという衝動に、必死にあらがった。
 なぜかは分からない。
 この場面に於いては揉んでも良いのかもしれないが、やってしまうことによって何か負けた気がするのが嫌だった。
 秀一がどうするかしあぐねている所へ、急に朋美が口を開き始めた。

「秀一くん……どうしてもっていうなら……………………しても、いいよ。……けど、私は――」
「なな何いってんだっ。そんなわけないだろ! おお、俺を他の男と一緒にするなよっ」

 あわてて言うなり朋美の腕を振りほどき、背を向ける。
 私は――その先を言わせたくなかった。
 そして、このまま誘惑に負けてしまいそうな自分がいる。

「それに……朋美は、したくないんだろ? やりたくない相手としようなんて思わないよ、俺は」
「………………ありがとう……」

 小さな声でつむがれたお礼が、秀一にとってはまたなんともいえないものだった。
 本能的には物凄くしたい。けど、朋美の事を考えたら……
 朋美自身も、秀一がそういったことを望んでいるのは分かっている。
 だからといって彼女がそれを望んでいるわけではなく、むしろ出来ることならしたくないとさえ感じているのだ。
 しかし……秀一は肉体を欲している。
 そんな相対する想いも、ふたりを悩ませる種の一つだった……
18「ラヴ・リンク」 7/8:2008/12/13(土) 07:28:52 ID:ffwtjCzw


 ―――

 翌日の昼休み――ついにその時がやってきた。
 定められた時間になると、ふたりは早速いっしょに教室を出た。
 周囲の視線など、もはやどこ吹く風である。
 これから成さなければならぬことに比べれば、なんと些細な事柄か。
 お互いに押し黙ったままいつもの女子トイレへと向かう。
 並んで歩むかれらは容貌こそ対照的なれど、醸し出す雰囲気が似ているのに気付く者はいるだろうか。
 触れると跳ね返されてしまいそうな、鋭い棘のような空気なのだ。

「……朋美」

 女子トイレを視界の奥に認めると、秀一が辛うじて聞き取れる声をかけた。

「無理、すんなよ。危なくなったら俺が出て行ってやるからさ」
「…………うん、大丈夫」

 彼女にしてははっきりとした返答だった。
 心なしかその瞳も、常時の頼りなくはかなげな光より、剛毅な意志さえともっているように見える。
 秀一もそんな彼女を見て安堵していた。
 根拠はないが、負ける気がしないと思わせられて、まさに女神だなどと独り含み笑いを洩らしたほどだった。
 女子トイレの手前で、秀一は入り口から死角となっている階段の方へ進み、ふたりはウインクしあって別れた。
 朋美が入ると、見張りが入り口に立つようになる。
 以前の様に油断してくれればいいが、下手に踏み込んで見つかってしまっては元も子もない。
 女子トイレと階段は薄い壁で仕切られているのである程度聞こえる。
 何かあればすぐにでも駆け込む覚悟だ。
 そして……先ず、意を決して足を運んだのは朋美だった。
 中に入ると、醜く黒い女の三人組が腕を組んで待っていた。
 しかし、なにか様子がおかしいと勘ぐった。
 朋美も平時とは異なる気配を放っているが、今日の彼女らからも、殺気というか、欲火を煮えたぎらせているあの気持ち悪さがない。

「豚、話がある。……ありがたく耳に入れとけ」

 「黒い三連性」のひとり、ウルフカットが低い声で言った。
 相変わらずの酷い扱いだが、やはり何かが違う。

「五時間目――授業の最中だが、生徒会長が直々にお前に用があると仰せだ。屋上に来い――以上だ」
「……………………………………え……?」
19「ラヴ・リンク」 8/8:2008/12/13(土) 07:29:25 ID:ffwtjCzw


 呆然と立ち尽くす朋美だったが、気付いた時には「黒い三連性」は少女を横切り、女子トイレを退出している。
 あまりにも唐突に告げられた内容に、立ちすくんだままこれはどういうことなのかと思考にふけってみた。
 ……といっても、思い当たるふしなど一つしかない。
 あの色を好む生徒会長だ。自分の身体を欲している以外に呼び出す理由はあるのだろうか。

「…………み……朋美……いるかー?」

 「黒い三連性」が去りゆくのを見届けた秀一は、何か異様な予感をおぼえ、女子トイレの中にいるはずの朋美を呼び掛けた。
 これを聞き入れてハッとし、そそくさと女子トイレを退出する朋美。
 すでに入り口で待っていた秀一に落ち合うと、お互い当惑した表情で見つめ合ってから、朋美は彼女らから告げられたことを話した。

「授業中に屋上…………」

 誰にともなくつぶやく秀一。
 彼の頭の中も、この二つの単語で連想するものはあれしかないようだ。

「………………どうしよ――」
「相手が黒豚から変態にかわっただけさ。いこう、朋美。後には引けない」
「……うん。そうね……そうよね…………」

 朋美の表情が陰っている。
 言い知れない、なにか別の不安にさいなまれているようだが、秀一にそれを知る由もない。
 五時間目まで、あと十分。
 運命の刻は、すぐ眼の前にまで迫っていた……

 五話 おわり



いつもより大幅におくれて本当に申し訳ないです
20名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 07:47:43 ID:ya2GskgH
>>19
乙、GJ

21名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 21:25:54 ID:krUpsOV4
>>19
GJだ。親父の問題解決が早えwwいや、笑う内容じゃないんだけどね
できれば前スレに投下して埋めてほしかったかな
22名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 07:45:12 ID:NfsD86HK
ハーフでアナとかコッポラしか浮かばねえwww
23こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/16(火) 18:24:07 ID:t2gNu09U
誰もいない内にこっそり投下。微妙な長さなので前後に分けさせて貰います。
注)今回は姉+α×弟です。好みでない方はスルーで
24こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/16(火) 18:25:02 ID:t2gNu09U
〜無口で世話好きな彼女〜

姉さんとの衝撃的なファーストキスから数日。
禁断の姉弟愛、なんてこともなく今までと変わらぬ生活を送っていた。
気まずくなるかとも思ったけど、意外に冷静な自分がいた。
姉さんも相変わらず世話好きで頭なでなでもする。俺もそれを受け入れている。
でもあのキスは何だったんだろう?やっぱり少し気になるな…
それに姉さんも初めてのキスだったんじゃないか?今まで彼氏がいたことはないし。
というか浮いた話すらないな。あんなに可愛いのに…謎だ。
ある日家に帰ると玄関に見慣れない女性物の靴があった。
「ただいまー」
言い終わる前に奥からパタパタと姉さんが小走りでやってきた。
「……」
姉さんは無言で俺の着ていた上着を脱がしクローゼットに閉まう。これもいつものことだ。
「お客さん?」
気になっていたことを聞いた。我が家にお客さんが来るなんて珍しい。
「……」
振り向いた姉さんは笑みを浮かべただけで俺の質問に答えなかった。
ガチャ
「りくちゃんおかえり〜久しぶり」
釈然としないまま部屋に入ると明るい声が聞こえ、同時に声の主に抱きつかれた。
この人はまさか…
「美空さん?」
「やっほー元気にしてた?」
あぁやっぱりそうだ。
この女性は美空さん。俺と姉さんの従姉にあたる人だ。
我が家は両親が海外赴任中なので、一時俺たち姉弟は叔父さんの家に世話になっていたことがある。
その叔父さんの一人娘が美空さんだ。姉さんよりも年上で本当の姉妹のように仲がいい。
言うならば俺にとってのもう一人の姉みたいなものかな。ちなみに姉さん同様かなりの世話好き。
「それにしてもりくちゃん背伸びたね。海澄より高いじゃない」
そんなことを言っているけど美空さんは俺よりも背が高かったりする。
スラッとしてスタイルも良く、姉さん以上に『大人の女性』の雰囲気を醸し出している。
今も体に当たる胸の感触が…
「…美空ちゃん」
「え?ああゴメンゴメン久しぶりにりくちゃん見たら嬉しくなっちゃって」
優しく姉さんが言うと、俺から離れぺろっと舌を出した。
時折見せる少女のような一面。口から覗く八重歯も相まって小悪魔のような印象を受けた。
「海澄は相変わらずだなぁ。抜け駆けはなしって約束忘れてないでしょうね?」
抜け駆け?約束?はて何のことだか。
「…み、美空ちゃん!!」
俺が聞こうとすると姉さんは慌てて美空さんの口を塞いだ。
25こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/16(火) 18:26:41 ID:t2gNu09U

今のやり取りは一体?
二人が俺に隠し事をしている時は何をしでかすかわからないから注意が必要だ。
昔のバレンタインの時も…思い出したくもない。
「ところで美空さん、何しに来たの?」
「悪いけど、しばらくこの家に世話になるから。よろしく!」
美空さんはピースサインを作るとブイッと目の前につき出した。
「なんで??」
久しぶりに会ったと思ったら何を言い出すんだ、この人。
「新しい職場がこの町になっちゃったの。だから新居が決まるまでね」
なるほど…確かに外泊するよりも安上がりだもんな。この家なら空き部屋もあるし。
「俺は構わないけど姉さんはいいの?」
両親がいない今この家の決定権は姉さんにある。
「……」
姉さんはニコリと微笑む、もちろん肯定の意味。姉さんも美空さんと暮らせるのは嬉しいようだ。
「ありがとう。じゃあしばらくの間よろしく」
美空さんは姉さんとはまたタイプの異なる素敵な笑みを浮かべた。


そしてその日の夕食
「あの〜二人とも?」
「……?」
「な〜に?」
「おかしくない?色々と」
何のことかわかっていないのか二人は顔を見合わせる。
「いやいや、二人が俺の両脇にいるのはおかしいでしょ!」
そこそこ大きいテーブルにも関わらず、俺を挟み右に姉さん、左に美空さんが座っている。
しかも近い。少し腕を動かそうものなら胸に当たってしまう。
「だってりくちゃんにお口にあ〜んしてあげたいじゃない」
「嫌だ!!」
そんな恥ずかしいことされてたまるか。
「むぅ…傷つくなー。昔よくやってあげたじゃない」
いや、それ本当に昔の話だし…
姉さんも何してんだよ。俺の家庭教師を買って出る姉さんもさすがにこれはしなかったのに。
「姉さんも何か言っ――」
「……」
姉さんのほうに向き直ると既に箸で卵焼きを掴み、今か今かと待ち受けていた。
そんなに瞳をキラキラと輝かせるなんて反則だ。
くそ…断れない…。ああもうしょうがない。
「わかったよ。今日だけだから」
俺は観念して口を開けた。
姉さんが口パクでアーンと言い、すかさず卵焼きを口に入れた。
うん、やっぱり美味しい。さすがは姉さんと言ったところか。
「美味しいよ、姉さん」
食べさせてあげたという事実が世話好きな姉さんにとってはよっぽど嬉しかったらしい。
いつも通り言ったはずなのに姉さんはとっても嬉しそうな笑顔を浮かべた。
天使の微笑みの可愛さにドキドキする。
26こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/16(火) 18:28:29 ID:t2gNu09U

「こらー海澄に見とれない。次は私の番だよ、はいあ〜ん」
今度は美空さんに食べさせてもらう。
「うん、これも美味しいよ」
「ほんと?実はこっちは私が作ったんだ」
美空さんも料理が上手い。なんせ姉さんに料理を教えた張本人だから。
歯を見せて幸せそうに美空さんは笑う。でもどこか得意げな表情。
やはり小悪魔の笑顔という表現がピッタリだ。
「…りっくん」
クイクイと俺の袖を引っ張り姉さんが再び食べさせようと主張した。
美空さんもそれを受け入れる。普通なら喧嘩にでもなりそうだけどそこはやはり大人だ。
ただ待っている間ずっと腕に胸を押しつけてくるけれど…
姉さんが終わると再び美空さんの方へ、それが終わるとまた姉さんへと。
こんな美人二人に食べさせてもらっている俺はいったい…深く考えるのはやめよう。
こうして嬉し恥ずかしの夕食は普段の倍以上の時間をかけて終わった。
今二人は仲良く片づけをしている。
喋っているのは美空さんだけ、けれど会話は成立するという不思議な現象。
と言っても俺といる時も同じか。家族だからこそなせる技だろう。
「り〜くちゃんっ」
美空さんが背後から俺の首に手を回しギュッと抱きしめ、甘えた声を出した。
少しは年齢を…可愛いからいいか。
「んーやっぱりりくちゃんは大きくなったね。背中が広くなった」
一人楽しげに何やらブツブツ呟いている。
「ねぇりくちゃん?」
突然、声のトーンを落として美空さんが耳元で囁いた。
「私のこと…女性として好き?」
え…?
「私は好きだよ。ずぅ〜っと前から」
俺が好き?美空さんが?動揺して言葉が浮かばない。
「りくちゃんは?」
昔から姉さん同様に俺を世話してくれた美空さん。
姉のようであり母のような存在にも近かった美空さん。
そして初恋の人でもあった美空さん。
もちろん嬉しい、でも…
「やっぱり海澄が好き?」
核心を突いた一言。
今の俺は姉さんが心の多くを占めていた。
でも正直な話二人の内一人を選ぶなんて出来ない。
ズルいと思われるかもしれない。けど二人とも大切だ。
「わからない…でも二人共大切で大好きな人だよ」
美空さんはクスッと笑い離れた。
「だってさ。りくちゃんらしいね、ねぇ海澄?」
「……うん」
美空さんの問いかけに、いつの間にか後ろにいた姉さんは嬉しそうに答えた。
「それじゃあお楽しみの時間だね」
美空さんが不適な笑みを浮かべる。
「さぁみんなで一緒にお風呂入ろっ!」

27こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/16(火) 18:29:48 ID:t2gNu09U


さっきから夢じゃないかと思って何度も頬をつねった。つねりすぎてヒリヒリする。
「お前は元気でいいね…」
何を期待しているのか、ビンビンになっている愚息を見てため息をついた。
女性というのは何かと準備があるらしく俺が先に湯船に浸かっている。
いつもの世話好きの延長線上だったらそれほど問題ない、でも他にも色々と…
って何考えんだ。相手は親族だぞ。いや、でもこうなった以上はやっぱり?
…まあいいか、もう二人に身を任せよう。何があったらその時はその時だ。
ガラガラガラー
「りくちゃんお待たせ」
二人が入る瞬間にとっさに後ろを向いた。さすがにマジマジと見るわけにはいかない。
「なーに後ろ向いてんの?別に大丈夫だってほら」
その言葉につられて後ろを向いたのがいけなかった。
てっきりタオルとか水着とか着ているのかと思ったのに…思ったのに…
二人の身を隠すものは何もなかった。
「……りっくん?」
「どう…かな?変じゃない?」
変な所なんてどこにもなかった。
女性としての丸みを帯びた見事な曲線美を描きながらも無駄な肉の一切ない姉さん。
長身で手足のスラリとしたモデル体系でありながらも出るところはしっかり出ている美空さん。
二人に違いはあるが、美しい胸から足の間に生える茂りまで全てが素晴らしかった。
二人ともミロのヴィーナスも逃げ出す美しさだった。
見とれてしまって開いた口が塞がらない。今の俺はかなり間抜けな顔をしているに違いない。
「……」
そんな俺の様子が面白かったのか姉さんがいつものように優しく微笑んだ。
「あ、あ、あの、二人ともすごく綺麗だから…」
「ありがとりくちゃん。でもなー海澄の方がおっぱい大きいんだよね」
照れ隠しなのか拗ねたように自分の胸を見ながら美空さんが言う。
確かに胸は姉さんの方が少し大きいかもしれない。
でも美空さんだって決して小さいわけではなく十分すぎるほど魅力溢れる胸だ。二人とも張りがあって形も良い。
「それじゃあ洗ってあげるからここ座って」
「う…うん」
ギンギンのモノを見られるのは抵抗がある、でも二人だけに恥ずかしい思いをさせるわけにはいかないか。
ゆっくりと湯船から立ち上がると二人が息を飲むのが分かった。
「すごい…やっぱりりくちゃんは成長してる。ね?海澄?」
「…うん」
そりゃあ最後にみんなで風呂入ったのは相当前だ。色々成長もするさ。
二人の熱い視線を受けながらイスに座った。
28こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/16(火) 18:31:12 ID:t2gNu09U

心地いい…
正面では姉さん、背中側では美空さんが俺を丁寧に洗っていく。
自分で洗う時の荒さじゃない、女性独特の滑らかなタッチ。
まるで心も洗われているかのようだ。
勃起も自然と治まっていた。
「りくちゃん気持ちよさそう…そうだ、えいっ」
ぷにょん
背中に今までのスポンジとは違う二つの柔らかい感触とそれに混じって少し堅い突起物。
「どうりくちゃん?私のおっぱい」
「っ!!美空さん何してんの!」
「りっくん…また大きくなったよ」
そりゃあ背中に触れてるのが美空さんの胸だと考えたら…当然の結果だ。
「うわっ!ね、姉さん!?」
再び堅く血がみなぎったモノが姉さんの泡まみれの手に握られた。
竿の部分をゆっくりと上下させる度に言いようのない快感が襲う。
泡のヌメリを利用しながら緩急をつけ、時折亀頭の部分を撫でていく。
竿全体に絡ませるようにした白魚のような指がまた様々な刺激を与えていった。
少し動きがぎこちないのがまたいい。自分一人では味わえない快楽が全身を襲った。
「ね、姉さん、くっ」
堪えきれなくなった精液が尿道を駆け抜け勢い良く外へ飛び出た。
姉さんは両手で上手くそれを受け止めた。
手を洗い、シャワーを手に取ると俺の体を覆う全身の泡を流していく。
そして発射したばかりだというのに今なお反り返るペニスも丁寧に洗い流してくれた。
ニコリと微笑む姉さんの顔は、たった今まで淫猥な行為をしていた人とは思えないほど清らかだ。
「すごい…こんな感じなんだ。へぇ〜」
一連の流れを肩越しにずっと見ていた美空さんが感嘆の声を上げる。
そりゃあ初めて見たら誰だって…ん?初めて??
「ねぇ、美空さん。ちなみに今までこういうことは…」
「もちろん初めてよ。りくちゃんのためにずっと純潔を守ってきたんだから」
ぎゅうぎゅうと胸を背中に押し付けながら美空さんが抗議の声を上げた。
「じゃあ姉さんも?」
「………」
激しく頭を上下に振る。やっぱりそうか…そのわりには二人とも落ち着いている、年の差かな。
「あのさ、りくちゃん。ちゅーしても…いい?」
俺の前に回り姉さんの横にくると、若干の恥じらいを持ちながら美空さんが言った。
たった今まで落ち着いていた、姉さんよりも年上の人が少女のように恥じる姿がとても愛らしい。
やっぱり俺はこの人も好きなんだと改めて自覚した。
29こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/16(火) 18:32:34 ID:t2gNu09U

「それじゃあ…するよ」
美空さんの顔が徐々に近づいてきてとうとう唇が重なった。
あの美空さんとのキス、ただ触れるだけのそれでも気持ちが高ぶってくる。
でも重なり合っていた唇はすぐに離れた。
「ふぅ…まずはこれで海澄とおあいこ」
おあいこ?
「この前海澄とチューしたんでしょ?知ってるんだから」
「いや、あれは」
姉さんが勝手にしてきたんだけど…
「だから今のでおあいこなの。でも今度は違うよ」
再び美空さんに唇を奪われる。しかもさっきとは違い舌を絡ませ合う情熱的なキス。
「んっ、ふぅ…ちゅぱ、んん…」
美空さんの熱い吐息が鼻先をかすめた。
「ん、ぷはぁ…りくちゃんと深いチューしちゃった」
嬉しそうに言いながら口の周りについた二人分の唾液を真っ赤な舌で舐めとっている。
その仕草は正に獲物を狙う悪魔のようだ。
「…りっくん、お姉ちゃんもしたい」
頬を赤く染めながらの姉さんからのおねだり。
俺と美空さんのキスを目の当たりにし気持ちが高ぶっているみたいだ。
「うん、いいよ姉さん」
唇を重ねると、激しく口内を犯されていく。
俺が行動する余地を与えずひたすら姉さんの舌が動き回る。世話好きな姉さんらしい。
「ちゅ…はぅ……ん?んんん!…ぷはぅっ、はっはぁっはぁ、けほっ」
「姉さん!」
「海澄!」
キスの時に息を止める癖がある姉さんが蒸せかえってしまった。
「海澄ったら、息し忘れるほど夢中になっちゃったんだ…それだけ嬉しかったんだね」
姉さんの背中をさすりながら美空さんも嬉しそうに呟いた。
「姉さん…」
心配ないよ、と伝えるかのように姉さんは笑みを浮かべながら俺の頭を撫でた。
「さっ、風邪引いちゃうし続きは部屋でしよ」


…落ち着かない
まだ体を洗っていなかった二人を残して先に出たまではいいけど…
よりによって姉さんの部屋で待たされるなんて。
久しぶりに入る姉さんの部屋は一足踏み入れただけで女性特有のいい香りがする。
綺麗に整頓された部屋には既に布団が敷いてあった。ちなみに姉さんは昔から布団派だ。
「ん…これは?」
何気なく机を見るとそこには一冊の雑誌。
『〜月刊無口っ娘通信♪〜』
なんだこれ?姉さんが買ったのか?世の中には色々あるんだな…
「お待たせー」
パジャマに身を包んで二人がやって来た。完全に乾ききってない髪が色っぽい。
「りくちゃん」
「しよ…」
二人は俺を押し倒し、息もピッタリに言い服に手をかけた。

30こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/16(火) 18:35:32 ID:t2gNu09U
今回はとりあえずここまで。
後半も出来てるのでなるべく早く投下します。しばしお待ちを
注)メインはあくまでもお姉ちゃんですよ
31名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 18:44:55 ID:bZY4deJi
GJ!
wkwktktk

……どうでもいいけど前スレがまだ埋まってな(ry
32名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 19:38:37 ID:c+l6KPem
GJ!姉さん、だんまりしながらもやることやってるなw

てか月刊誌www
33名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 11:05:10 ID:w9H6Hrzo
GJ!全裸で待ってるぜ!

ところで何だその雑誌
超読みてぇ
34名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 00:26:39 ID:uXxge5PG
ハーレム! いいよいいよー
35名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 18:25:17 ID:fNVDM/BD
月刊無口っ娘通信買いにちょっくらコンビニ行ってくる
36名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 19:01:51 ID:m+AcFGus
月刊眼鏡っ娘通信と購買層がかぶってそうで怖いな。
37こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/18(木) 21:05:58 ID:gGcpAC0i
投下します>>24-29の続き


着ているものを全て脱ぎ去った二人は俺を押し倒すと顔を近づけた。
「んふ…ちゅちゅ…んぁ」
「ちゅぱ…ふぁ、んふっんはぅ…」
部屋に響く甘美な水音と荒い息づかい。
初めは二人交互に重ねてきた唇も今では同時に重ねてくるので息継ぎもままならない。
三人の唇と舌が複雑に絡み合っていた。
「ぷはぁ…さぁりくちゃん脱ぎ脱ぎしましょうね〜」
ひとまず先に唇を離した美空さんが俺の服を器用に脱がしていく。
その間に姉さんは俺の唇を独占する。
「はい、海澄こーたーい」
全てを脱がし終わると今度は姉さんが手際良く俺の服を畳んでいく。そして俺の唇は美空さんに塞がれる。
世話好きな二人が織り成す見事な連携プレーだ。
姉さんが作業を終えるのを見計らい美空さんが唇を離しすと、ゆっくりと足の間に移動した。
「もっと気持ちよくしてあ・げ・る」
美空さんは小悪魔みたいな笑みを浮かべると反り返る陰茎をパクっとくわえた。
舌と唇を使っての愛撫。
口内にたっぷりと蓄えられた唾液が性器を塗りたくっていく。
頬の内側に先端を擦り付けたり、精を搾り取るかのように吸い上げたりと様々な刺激が与えられた。
「……お姉ちゃんもしてあげる」
しばらく美空さんの行為に見とれていた姉さんも怒張に顔を近づけてくる。
顔を横にすると美空さんの口に含みきれない余った竿の部分にチロチロと舌を這わせた。
「くぅ…あ、」
二人同時のフェラに思わず声が漏れ出てしまった。
二枚の舌が別個の生物のように縦横無尽に剛直を這い回り激しく責め立ててくる。
エラの部分をなぞるようにしたり先端をついばむと、どうしても二人の唇同士が重なることもある。
でもそれすらも見せつけるようにして気に止める様子はなかった。
俺は横たわったまま顔だけを起こして世話好きな二人の奉仕を見続けた。
肉棒を中心に左右から舌を伸ばし根元から先端までじっとりと舐めていく。
二人は競うようにして屹立に唇を絡め、夢中でそれを貪っていた。
つばきが糸を引き、先走りの液と共に肉幹を濡らした。
慈愛に満ちた表情の姉さん、挑発的な鋭い視線を送る美空さん。
本来なら相容れぬ天使と悪魔が仲良く淫猥な共同作業をしている姿は官能的だ。
二回目だという余裕などなく絶頂はあっけなく訪れてしまった。
「きゃっ!」
「……!」
震える肉棒から勢いよく放出された白濁液は二人の顔に降りかかった。
38こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/18(木) 21:07:14 ID:gGcpAC0i

「ご、ごめん。我慢できなくて…」
「……いいよ」
「そうそう、私達はりくちゃんを気持ちよくしてあげられれば、それだけで幸せなの」
顔にかかった精液をお互いに拭き合いっこしながら二人は俺に笑みを送る。
俺こそこんな綺麗な人、しかも二人にここまでしてもらえるなんて幸せ者だ。
「りっくん……」
今なお硬度を失わない剛直をさすりながら姉さんが言う。
それが何を意味するか分からない俺ではない。
「でも、姉さん本当にいいの?俺たち姉弟だよ」
今更になってこんなことを言う自分は最低かもしれない。
でも近親相姦という禁忌を犯すには姉さんの気持ちを確認せずにはいられなかった。
「うん…お姉ちゃんはりっくんが大好きだから…だから…しよ?」
姉さんは優しく微笑んだ。
「はい、海澄これ」
俺達の会話を静かに聞いていた美空さんが暖かい笑みを浮かべながらコンドームを差し出した。
「…つけてあげる」
ピリッと袋を破り中身を取り出し、ぎこちない動きで被せていく。
ある程度予想していたけどこんな時にまで世話好きな一面が出るとは…
確か初めての時は正常位がいいんだっけか?そろそろ俺からも行動を起こさないと。
体を起こそうとしたその時、後ろから美空さんに肩を押さえ込まれ阻まれた。
美空さんの重量感のある双乳が目と鼻の先に…
「だーめ、りくちゃんはじっとしてて。私たちに任せて」
「でも…」
「だいじょーぶ。海澄はもう準備万端なんだから」
ほら、と言われるままに髪と同じで栗色をした茂みが生える姉さんの股関を見てみる。
そこからは既に光の筋が太ももまで垂れていた。
「姉さん、濡れてる?」
「……」
姉さんは赤面しながらただ頷く。
「私たちはりくちゃんを思うだけで感じちゃうの」
美空さんが姉さんの気持ちを代弁するかのように言った。
姉さんは膝立ちになり俺を跨ぐと濡れそぼった秘唇を自分で開き、天を向く猛りに狙いを定め腰を下ろした。
「…んんっ!」
どんなに濡れていても破瓜の痛みは凄まじいと聞く。
けど痛みに顔を歪めながらも、姉さんは一気に肉棒を呑み込んだ。
「……はぁ…んっ、りっく…ん」
酷い痛みのずなのに姉さんは微笑み、右手を俺のを頬に添え残りの手で頭を撫でてくれた。
「…動くよ」
そして両手を俺の胸辺りに置くと姉さんはゆっくりと腰を動かし出した。
39こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/18(木) 21:08:51 ID:gGcpAC0i

「うわぁ、うっ」
腰を動かし出すと、今までただキツく締め付けていた膣内が蠢き始めた。
ペニス全体を一分の隙もなく覆っていた肉壁に擦られる度に快楽が送り込まれる。
「んっ、あ、っ…ふぁっ、りっ、くん」
根元まで深々と呑み込んだかと思うと膣口で雁首を擦り合わせる。そしてまた奥深くへと。
「あッ、あぁ、ひゃあ、お姉ちゃん…もう、んァっ」
腰を上下させるとたぷんたぷん、と豊胸も揺れ視覚にも興奮を植え付けられる。
猛りを咥えこんで離さない蜜壺の中は粘液のとろみが増していく。
童貞だった俺がそんな極上の快感に耐えられるはずもなく絶頂はすぐにやって来た。
「りっくん…ぁんっ、りっ、くん、もうだめぇっや、あぁぁぁーーぁんッ」
俺がイクと同時に姉さんも今日一番の嬌声とともに身体を弓なりにし、俺の胸に倒れ込んだ。
「はぁ…はぁ…りっくん…」
潤んだ目で俺を見つめ自然と唇を重ねる。
互いに絶頂の余韻を味わい終えると姉さんはモノを引き抜いた。
愛蜜と処女血でべとべとになったゴムを外し新しいものを装着する。
「美空ちゃん…」
「…うん」
俺達の痴態を目に焼き付けていた美空さんは自分で慰めていたらしく、蕩けきった表情で俺を跨いだ。
「りくちゃん、じゃあ…入れるね」
ゆっくりと姫割れを雁首の距離を縮めていく。
そこから溢れ出る雫が淫らに肉棒を濡らした。
先端が割れ目に押し当てられ呑み込まれようとすると、スリットに沿いつるりと前に滑ってしまった。
「ひゃっ、ん…ごめんねもう、一回…」
けれども淫蜜でヌメリを帯びた秘唇に入れるのは難しくなかなか入らない。
「やっ、りくちゃんと一つになりたいよぉ…」
そんな美空さんに姉さんは助け舟を出した。
「美空ちゃん、ほら…」
俺の猛りを握り動かないようにする。
美空さんの割れ目に沿うように肉茎の切っ先を滑らし膣口へと導いた。
「やっ、たぁ…入った、あんッ」
ようやく先端がぬかるみの中に入り柔襞を押し開いていく。
途中引っかかるものがあったが美空さんは意を決して腰を落とした。
「いっ、たぁ…」
想像以上の激痛だったのか目から涙がこぼれた。
「美空さん…大丈夫?」
「いたいよぉ…りくちゃん、でも、ぁ、嬉しい…」
美空さんは手を伸ばし俺の手を握る。俺もそれに応えて指を絡ませ合った。
「りくちゃん…気持ちいい?」
「ものスゴく気持ちいいよ…美空さんの中」
「ほんと?よかった…」
美空さんは嬉しそうに笑った。
40こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/18(木) 21:10:39 ID:gGcpAC0i

「ねぇりくちゃん…」
「どうしたの?」
「私変かも…どんどん気持ち良くなってきちゃった。だから…動くね」
快感が痛みに勝ったのか、言い終わるや否や美空さんは腰を振り始めた。
上下運動ではなく回すように動かすと秘泉からとめどなくわき出る愛液が下腹部を浸し、ジュプジュプと音を奏でる。
それが潤滑液となり腰の動きがよりスムーズになった。
「あん、やッ…気持ち、いい、ひゃあぁ!」
引き締まった肢体をくねらせ美空さんが快楽の波に溺れる。
美空さんが感じれば感じるほど膣内にある無数の肉襞が活発に動いた。
姉さんのように締め付けるのではなく、柔らかな襞が隠茎全体を包み込むように刺激する。
比べることなど出来ない、どちらも気持ちいい。
「はぁん、ぁふ…やんっ、奥まできてるの、んっ」
ペニスが最奥まで届き刺激が与えられると、美空さんの俺の手を握る力が強まった。
「あんッ、り、くちゃん…りくちゃんっ、私、イっちゃ、ふぁう」
「美空さん、俺もっ」
咥え込まれた肉棒から伝わった一段と大きな快楽が身体を襲う。
「もぉっイクぅ、や、だめぇえええぇぇっーーー!」
美空さんの身体が大きく震え同時に俺の精がゴム越しに放出された。
「ありがとう…りくちゃん」
美空さんは重そうに体を動かし俺との繋がりを解くと横に倒れ込んだ。
その間に姉さんはゴムの後処理を行い美空さんとは反対側に俺の隣に横になった。
一枚の布団の上に三人寝ころぶのは少し窮屈だけど、その分二人の柔肌が密着してそれはそれで心地いい。
「お礼を言いたいのは俺の方だよ。いつも世話してもらってばっかりでさ」
今も二人に主導権を握られっぱなしだったし…
俺の言葉を聞くと二人は顔を見合わせてクスクスと微笑んだ。
「りくちゃんは余計なこと考えなくていーの。私たちが好きでやってんだから」
「……りっくんはお姉ちゃんたちの可愛い弟だから…」
姉さんが優しく頭を撫でながら囁いた。
「お姉ちゃんはりっくんが好き……」
「私もりくちゃんが大好き。それでいいじゃない」
こんなにまで愛されているなんて…
姉弟であろうと従姉同士であろうと関係ない。俺も二人のことが好きなんだ。
「ありがと…う」
さすがに四回の射精は体力を使うのか、不意に睡魔に襲われた俺はそれだけ言うと意識がそこで途絶えた。
41こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/18(木) 21:12:26 ID:gGcpAC0i

それから数週間。

「ほらりくちゃん早く乗って遅刻するよ!」
漆黒のライダースーツに身を包んだ美空さんがバイクに跨り俺を急かす。
大学の授業が今日はないらしく、玄関ではニコニコしながら姉さんが俺達を見送りに来ている。
あの日以来俺達の生活に大きな変化はなかった…夜以外は。
結局美空さんは我が家に住み着くことなり、毎朝学校まで送ってもらうことになった。
断りたかったけど姉さんが弁当を遅く作ったりして、無理矢理遅刻させようとするので観念した。
「じゃあ、姉さん」
「……」
ヘルメットを被りながら姉さんが手を振るのに応える。
「さぁ行くよ、りくちゃん。ちゃんと掴まっててね」
そんなこと言うけど美空さんにしがみつくのは未だに照れくさい。
学校でも俺に第二の世話好きお姉さんが現れたことで色々言われた。
友人内で姉さん達は天使と小悪魔で通り、不本意ながら人気者となっている。
出発から数分も経たない内に高校へ到着した。さすがはバイク、徒歩とは比べものにならないな。
「ふぅ〜到着っ」
美空さんがヘルメットを外し髪を振り解く。
正門に降り立つと通学中の生徒が声をあげた。
「せんせーおはようございます」
「おはよーみんな」
美空さん…いや、美空先生は片手を上げて返す。
元の性格があれなので生徒から慕われるのに長い時間はかからなかったみたいだ。
「よし、じゃあここまでね。『しっかり』勉強するように」
ニヤリと口の端をあげながら言うと颯爽と歩いていった。


「おい陸斗、また姉ちゃん来てんぞ」
そうクラスメートに声をかけられたのは昼休みが始まってすぐの時だった。
姉さん?何のようだろう、今日は忘れ物してないけど…
というか一々教室まで来るのはやめて欲しい。
「……」
「どうしたの姉さん?何かあった?」
返事をする代わりに姉さんは大きな封筒を手渡してきた。
「……美空ちゃんに」
「…は?」
なんで美空さん宛のものを俺の所に?
「……」
問いただしても無駄そうだな…
「わかった渡しとく、ありがとう」
感謝の意を伝えると姉さんは満面の笑みを浮かべ俺の頭に手を乗せ、クラス中が見守る中で頭なでなでを始めた。
「………」
しばらくして満足すると姉さんは手を離し、再度笑みを浮かべると何も言わずに帰っていった。
ただ学校に来る口実が欲しかっただけか?まさかな…
そして俺はいつものようにハートマークで飾られた弁当を隠れて食べることになる。


終わり
42こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/18(木) 21:14:54 ID:gGcpAC0i
オマケ
それはある日のことだった。
「あの姉さん、聞きたいんだけど…」
「……?」
言葉ね代わりに小首を傾げて姉さんは応えた。無意識にやる動作が可愛い…って今は違う
「姉さんが読んでる雑誌なんだけどさ」
この前姉さんの部屋で見つけた雑誌『月刊無口っ娘通信♪』は一体何なのか?気になる。
「あぁ〜あれね、私が教えてあげたの。とはいってももう何年も前の話だけどね」
授業用のプリントに目を通していた美空さんが代わりに説明した。
なんでも無口な女性でも利用できるレストランや洋服屋、さらには美容院までが紹介されているローカル雑誌らしい。
他にも無口ならではのお悩み相談や恋愛相談のコーナーがあったりと情報満載だという。
かといって女性専用というわけでもなく号によっては無口っ娘を彼女に持つ男性にも役立つ内容、
萌える無口っ娘とは何か?、今週の無口さんのグラビア、さらには無口っ娘とのエッチ特集もあるとのこと。
ただのローカル雑誌にしては凄い売り上げだというから驚きだ。
「海澄が不自由なく暮らせるのもあの雑誌のおかげね」
説明し終えると美空さんは俺の横に密着して座った。
「美空さん?」
「しよっか?」
まるで遊びにでも行くかのように軽い口調。
「いや、ほらまだ早いし明日の宿題とか…」
「宿題なら私がなんとかしてあげるからさ。ね?」
無理やり姿勢を低くして上目遣いに美空さんがのしかかってくる。というか職権乱用はいけないんじゃあ…
「わかった。じゃあ多数決で決めようよ」
は?多数決?
美空さんは小悪魔な笑みを浮かべている。
「今からエッチしたくない人〜」
すかさず俺が手を挙げた。結果は見えているような…
「はい、一人。じゃあ今からエッチしたい人〜」
言いながら美空さんが片手を挙げたかと思うと、姉さんは両手を挙げた。
「はい二人。それでは多数決により今からエッチに決定しました」

「ずるい、民主主義と言う名の暴力だ!」
「ずるくないもん。ねっ海澄ちゃん?」
「………」
姉さんはコクコクと頷いた。だからキラキラした目をするのはやめてくれ。断れないって。
「それにりくちゃんも準備出来てるじゃない」
テントを張ったそこをさすりながら美空が嬉しそうにすると、姉さんは俺と唇を重ねてきた。

結局この日は明け方近くまで二人につき合うことになった。
43こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/18(木) 21:16:01 ID:gGcpAC0i
これにて無口お姉ちゃんはひとまず完結。
何気なしに書いた無口っ娘通信が意外に反響だったので急遽書き足しました。誤字脱字は御勘弁…
ではまた投下することがあったら。
44こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/18(木) 21:22:16 ID:gGcpAC0i
連レス失礼
>>42冒頭
言葉ね代わりに→言葉の代わりに
です。補完お願いします
45名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:24:26 ID:KoDJ1UBe
リアルタイムGJです!

これはもはや月刊無口っ娘通信を発行せざるえないでしょww
46名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 22:08:11 ID:fNVDM/BD
月刊無口っ娘通信近くのコンビニに無かったからちょっくら遠出してくる!
47名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 23:25:08 ID:U0tolCH2
>>46
ちょwwwwおまwwwwまてwwww
密林使えば日曜には来るぉ^−^
48名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 01:07:46 ID:fmRBzC0E
>>47
無口っ娘通信は密林にあるんだな?


俺ちょっと樹海に行ってくる!
49名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 01:50:01 ID:CuzaQ0Fs
またこの流れかww
50名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 09:57:12 ID:5vHgZwhN
〜第2回無口っ娘村探険隊募集のお知らせ〜
51名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 13:42:43 ID:vKYlNViP
>>50
また再結成かな?w

まぁ行くがな
52名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 12:16:04 ID:ECVczED8
無口っ娘と言うか、言語を持たずにボディーランゲージで意思疎通を行なう娘さん達っぽいな。
53名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 21:08:54 ID:8DW4krvi
密林育ちのせいかボディランゲージがやたらとアグレッシブな振付のため、
無口なのに全然無口っぽくない挙動不審な女の子を想像してしまった。
54名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 00:18:55 ID:luL5HL6n
>>53
初めて喋った言葉が男の名前だったり
片言の日本語で愛の告白をしたりする
萌えシチュエーションを妄想した
55名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 14:34:32 ID:8ZH96GdL
ここって純愛系統のSSばっかだけど、それ以外はNG?
56名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 16:02:21 ID:OWF4WSbR
陵辱やらレイプやらは専用スレで頼みたいな
嫌いな人も多いし
57名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 16:36:07 ID:HhHp2etO
>>55
NGってことはないし注意入れれば問題はないだろうが反応は薄いだろうな。
58名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 22:48:37 ID:bcXHzNch
ここは人が多いのか少ないのか分からないスレだな。最近は職人さんの数も減ってるくさいし…
このゆっくりな流れは代えたくない、でももっと活性化してほしいというジレンマ
59名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 02:49:26 ID:prjtXHyZ
職人さん減ってるかなあ?
ネコな彼女シリーズの方にはぜひ戻ってきてもらいたいけど。
60名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 06:51:15 ID:bxg2AZBp
>>59
申し訳ないが、先に素直クールスレに戻ってきて欲しい。
61当人:2008/12/24(水) 23:45:36 ID:OnMEIN70
>>59
スマン、常駐はしているがちょっと手を広げすぎて今手が回らんのだー。
でもやる気はあるから気長にまってもらえると嬉しい。
62こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/25(木) 01:01:38 ID:dX8IspY8
サンタよろしく皆が寝ている隙に投下。需要があるか分かりませんが…
またお前かよ、という方はNG指定を。
63こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/25(木) 01:03:42 ID:dX8IspY8
《無口で甘えん坊な彼女》〜彼女のお願い〜

俺が秋葉と付き合あってから、我が家のクリスマスは毎年秋葉を招いて祝っている。
母親を亡くし、俺の父さんと同様に出張の多い父親を持つ秋葉への贈り物だった。
「秋葉ちゃん、雪春ちょっといい?」
鮮やかに彩られたクリスマスケーキを前にした時母さんが俺達に包みを渡した。
「私からのクリスマスプレゼント、何が欲しいのかわからないから勝手に選んだんだけど…」
「いや、構わないよ。母さんありがとう」
「……ありがと」
「ふふっ、どういたしまして。さぁ開けてみて」
中にはマフラーが入っていた。俺のは藍色、秋葉は大好きな色であるオレンジ色。ふかふかしていて暖かそうだった。
寒いのが苦手な秋葉にもぴったりのプレゼントだ。
「……?」
一方秋葉はというとマフラーを広げしばらく見て首を傾げていた。
「どうしたの秋葉?」
「長くない……?」
よくよく見ると秋葉のマフラーは俺のと比べ二倍近い長さをしていている。
「それね、二人で使うの」
ニコニコしながら母さんが口を開いた。
「ラブラブな二人へのプレゼントです、って言ったらお店の人が持ってきてくれたのよ」
外で何言ってんだこの人…他にも変なこと言ってないだろうな。
母さんは自覚してなく本当に善意でやっている。それが逆に困ったものだが…
「ふふ、これなら二人共あったかくていいじゃない。密着もするし秋葉ちゃんにぴったりだと思ったのよ」
『密着』の言葉に秋葉の目の色が変わった。母さんの言葉にうんうんと頷いている。
まさか登校する時に使おうとか言わないだろうな…。
今でさえ寒さも相まって腕にギュッとしがみついてくるし。
まぁ前までは色々あって手すら繋いだことなかったからそれはそれで嬉しいけどさ。


たった三人のささやかなクリスマスパーティーが終わると、俺は一件挟んで隣の家である秋葉の家に来ていた。
母さんの許可も貰ったし久しぶりに秋葉の家に泊めてもらうのだ。明日は二人で出掛ける予定になっている。
目的の一つはお互いのプレゼントを買うこと。
実際に自分で見て好きなものお互いに買ってあげる。俺と秋葉の毎年の恒例になっていた。
「何か欲しいものある?もしあるならそれに合った店に行こう」

秋葉はしばらく視線を宙に浮かべて考えた。
「……『ずっと雪春と一緒にいられます券』とか…?」
「いや、そんな物必要ないだろ」
64こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/25(木) 01:05:14 ID:dX8IspY8

相変わらず恥ずかしいことを平気で言う。かなり慣れたつもりでもまだまだだ。
大体そんな券があったら俺の方が欲しい。
「まぁ明日また考えよう」
今はもっとしたいことがある。せっかく邪魔も入ることなく秋葉と二人っきりなんだから。
「……変態」
「まだ何も言ってないぞ」
心を読むとはさすがは秋葉と言ったところか…
「……」
突然に秋葉がぎゅっと抱きついてきた。顔をわずかに赤らめこちらを見てくる。
「……いいよ。しよ?」
ここからは余計な会話は必要なかった。
「…ちゅ、んん、はぁ」
服を脱ぎ捨てすぐに唇を合わせると相手の舌を絡めとり、口内に舌を差し込み歯茎や歯そのものを舐めあげる。
一日中していたいと思わせるほど秋葉とのキスは俺を魅了する。もちろんその先を欲しているが。
抱きしめていた腕を胸に持ってきて優しく包み込むと秋葉が体をくねらせた。
「…やっ、んぁ…ぁぁ」
秋葉は胸が特に弱い。小ぶりで掌に収まってしまうけどその分感じやすいらしい。
もち肌という言葉が相応しい白く柔らかい秋葉の綺麗な双乳。
その頂にある桜色をしたは乳首はまだ触れてもいないのにどんどん硬く尖り色を濃くしていく。
「…ぁん、ひゃんッ!」
親指で軽く押すように触ると秋葉の押し殺していた声が数段跳ね上がった。
調子に乗った俺は両手を使って揉みしだいていき固さを増していく乳首を親指と人差し指で摘んだ。
「ぁっ…そこ、ダメ…いゃ」
この時にしか聞くことの出来ない普段無口な秋葉の声。もっと聞きたくてしょうがない。
頃合いを見計らってぷっくりと膨らんだ乳首を口に含み唇で優しくはさんだ。
「ふあぁっ、いゃ、だ…め、ひゃっ…んッ、ぁ、ぁ」
舌で転がすように舐め、、音を立てて思いっきり吸う。もちろん余った胸への愛撫も忘れない。
「ゆき、はるっ…本当に、あ、もう…だめ、んんぁ」
身をよじらせ逃げようとする秋葉だがもちろんそんなことは許さない。
本当は秋葉だって胸をいじられるのが好きなのは承知済みだ。
俺はとどめを与えるべく勃起しきった乳首にそっと歯を添え甘噛みした。
「あっ、ひゃッ、ぁ…んんっー」
くぐもった媚声をあげながら秋葉は達した。
イク時に口を閉じて声を出さないようにするのが秋葉の癖だ。
もっと乱れるように声を出すのも聞いてみたいが今のは今ので俺は大満足だから良しとする。
「はぁ、はぁ…変態」
肩で息をしながら秋葉が呟いた。
65こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/25(木) 01:07:35 ID:dX8IspY8

秋葉が俺に向かって変態と言うときは非難の意味はない。単なる照れ隠しみたいなものだ。
「そう言う秋葉だってほら」
秋葉の股間に手を入れ割れ目に指を這わせると、恥ずかしい液体で溢れとろとろになっていた。
少し指を動かすだけでくちゅ、といやらしい水音を立てた。
「だって…雪春とすると気持ちいいから…」
まったく…潤んだ瞳でそんなことを言われたら我慢出来ないだろ。
「秋葉…もういいか?俺限界なんだけど」
「いいよ…でも、少し待って…」
「どうした?」
ベッドから降りた秋葉は裸のまま鞄から一冊の雑誌を手にした。
たしかあの雑誌は…『月刊無口っ娘通信♪』だよな。母さんが秋葉に紹介したやつだ。
秋葉はあらかじめ折り目の付いたページを開いて見せてきた。
「『愛する人とのエッチ特集〜体位編〜』ってこれは…?」
そこには色々な体位が挿し絵と共に特徴が詳しく書いてある。
「……」
顔を真っ赤にさせた秋葉はその中でもあるものをトントンと指差した。
「こ、これ……」
してみたい、という言葉が微かに聞こえた。
「もしかして今日は対面座位でしたいのか?」
嬉しそうにコクリと頷く秋葉。そういえば今まで正常位でしかしたことがないな。
顔が見えないという理由で秋葉はバックを嫌がる、まぁ俺も秋葉の顔を見られないのは嫌だ。
騎乗位は秋葉が感じすぎて動く所ではなくなりそうだからという理由でしたことがない。
でもこれなら…大方この説明にある相手との密着度大幅アップ、の言葉に惹かれたんだろう。
「いいよ。たまには違うのでしてみよう」
ベッドの縁に腰掛けゴムを着け秋葉を手招きする。
座った状態でいる俺の両肩に手を置いて秋葉は跨った。
「もうちょと前…そうそこ。ゆっくり下ろしてな支えててやるから…」
冷静に指示を与えるが正直それどころじゃなかった。
秋葉が能動的に俺のモノを入れようとしている。
それに加えて目の前に美味しそうな双乳と頬を朱に染めた秋葉の顔があれば誰だって冷静でいられなくなるだろう。
対面座位ってすごくいいかもしれない…ハマりそうだ。
「んはっ、はぁ…」
十分すぎるほどぬかるんだ秘唇に先端が入ると一気に秋葉の中に飲み込まれた。
「あっ、ゃん、ふか、い…んはぅ」
快楽に意識を飛ばされないように秋葉が必死に抱きついてくる。
ただそのせいで間に挟まれた両胸が擦れ合いより大きな快感を秋葉に与えることになった。
「あぁ、やんッ…ひゃうっ、んはっ」
66こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2008/12/25(木) 01:09:49 ID:dX8IspY8

いつも以上に深く繋がっているからなのか、軽く突くだけで秋葉はびくっと痙攣した。
力が抜けそうになる秋葉を抱き返し唇を重ね上も下も繋がると、秋葉と一つになっているという意識が高まる。
もっと秋葉と繋がりたい、同じ快感を共有したい、その一心で舌を絡ませ腰を動かした。
ぎゅうぎゅうと締め付けてくる秋葉の柔肉に包まれ続け俺も限界が近づく。
「悪い、秋葉…もう」
「…私、もっ、ひゃふッ」
強く秋葉を抱き締めながらコツコツと最奥をノックするように腰を突き上げ貫いた。
「ひゃふっ、んは…あ、んんんんんーーーーー」
体を震わせ秋葉が先に達し一際強く膣口を締めつけ射精を促し俺もほとんど同時に吐精した。
薄いゴムを突き破るのではないかと焦らせる勢いで放出し終え息を整える。
「秋葉?大丈夫か?」
全身の力が抜け半ば俺の首にぶら下がるようにしている秋葉に呼びかけた。
「大丈夫…多分…」
「多分ってなんだよ、多分って」
軽くおでこをつついてから頭を撫でてやると秋葉は目を閉じ幸せそうに俺の胸に頬ずりし始めた。
「へへっ……気持ちよかったよ…」
「そいつはよかった。まぁ俺も気持ち良かったし」
「……いつものより好きかも…」
ご満悦の表情からするに秋葉は対面座位がすごく気に入ったようだ。
俺もこんなにいいと思わなかった。多分次からはメインの体位だな。
「雪春……大好き…」
顔を上げてしっかり目を合わせ秋葉が微笑んだ。言われ飽きてるはずなのに何度聞いてもやっぱり嬉しい。
「この状態でそんなこと言うとどうなるか分かってるよな?」
「うん…もう一回しよ…?ひゃっ!」
秋葉の言葉を最後まで聞き終える前に腰を動かし始めた。
「ちょっと…雪春っ…」
ぺしぺしと俺を叩き秋葉が中断を求めた。
「わ、悪い、もう少し待った方がいいか?」
「違う…ゴム代えないと…あと…キスしてからがいい…」
「あ、そうか…了解」
名残惜しいが一旦離れ新しいゴムを着ける。避妊するというは秋葉とつきあう上での母さんとの約束なのだ。
「それと…あのマフラー使おうね」
「今言うことかそれ?」
「…あともっとぎゅってして……」
あぁーもう、なんて可愛いいんだ。そんなこと言ったら一生離さないからな。
今か今かと待ち受ける秋葉の唇に自分のを重ねて行為を再開した。
「んんっ、雪春……大好きだよ…」
快感に悶える中で秋葉は嬉しそうに囁いた。


終わり

小ネタのはずが長くなってしまった…
67名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 01:13:48 ID:wJW+yUN2
うおおぉぉ 素晴らしい
GJ
クリスマスに全裸待機しててよかったぁ
68名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 01:24:20 ID:MT52stPx
うおおおっと、こたみかん氏に先を越されちまったいw
前スレで「ちょっと密林行ってくる」を書いたモノです。
私もクリスマスネタでひとつ書きましたが……
これは明日に回した方が良さそうですね。出直しますデス。
69名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 01:26:48 ID:gyzCl8jn
待ってました!GJ!

>>68
小ネタなら前スレに投下して埋めてくれれば……
70名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 11:25:15 ID:R45PLf6e
>>66
GJ!甘すぎるやろ……!


ここからクリスマスネタで投下
8つ消費します

>>68
横入りすいません
今しか暇なタイミングなくて……

NGはトリか『プレゼントは私!』で
71プレゼントは私!1/8 ◆8pqpKZn956 :2008/12/25(木) 11:29:45 ID:R45PLf6e
軽そうなアルミテーブルの上に鎮座する携帯電話のサブ・ディスプレイが、
現時刻を12月23日深夜……正確には24日と伝えている。
一糸纏わぬ姿で冷たい床に横たわる小夜(さや)は、
窓から注ぐ月光に照らされてテラテラと光る陰部を恥ずかしそうに手で隠した。
長い黒いストレートな髪の毛、幼い顔付き、それに似合わぬ扇情的な瞳。
彼女自身の掌ですっぽり隠せそうな可愛い胸。
十人が十人どきりとするであろう美しさを持った彼女は今、
マンションの一室で恋人の帰りを待っている最中である。それも裸で。なぜか?
結論から言うとつまり彼女は、彼氏を誘惑しようとしている訳である。
もちろん性的な意味で。

彼女の恋人である弘樹は立派な社会人で、本来祝日である今日も朝から休日出勤している。
弘樹のいとこであり、恋人であり、ちなみに学生の身分でもある小夜は毎日部活が終わると合鍵を使って彼の家に入り込み、
鼻歌まじりに料理を作って新妻よろしく未来の旦那様(予定)をお出迎えするのが日課になっていた。
しかし、いつものように(23日は祝日だが、部活の練習があった)小夜がマンションへ向かっている最中、
彼女の携帯に彼から着信が入り、弘樹は申し訳なさげに告げた。
『すまん、帰り夜中になっちまいそうだから夕飯いらないわ。今日は小夜、“実家”に帰ってくれ』
刹那、小夜が無言で通話終了ボタンを押したのは、怒ったわけではなく単に彼女が無口だからである。
実家というのは小夜の両親が住んでいる家でマンションから徒歩5分。
法の上では小夜の所在地はこちらなのだが、彼女があんまり弘樹の部屋にお泊りするものだから、
すっかり『たまに帰るべき場所、実家』という扱いになってしまった。
まあ互いの両親公認の上だから問題はない。

さて、一気に予定が無くなった彼女である。買い物に行く前でよかったとは思ったが寂しさも感じた。
今日は、というか今日も抱いてもらう気満々だったのに期待を裏切られた格好である。
実家に帰るつもりはないので、無理矢理夜中まで起きて待っていれば弘樹に会えるには会えるが、
そこから性交渉を迫った所で
『疲れてるから明日な』、と適当にあしらわれてしまうのが目に見えている。
何とかして弘樹を興奮させる方法が必要だ。小夜はうむむ、と指をあごにあてながらマンションへと到着した。

とりあえず部屋を掃除し、ありもので自分用の夕食を作ってかき込み、
暇になったので、所属している吹奏楽部の年明けの演奏会で使う譜面をチェックし、
注意すべきアーティキュレーションの強調を蛍光ペンで終えた時点で時計を見るとやっと夜の10時だったが弘樹はまだ帰らない。
小夜は今日抱いてもらうための方法を考える一人議会を開会した。

72プレゼントは私!2/8 ◆8pqpKZn956 :2008/12/25(木) 11:30:40 ID:R45PLf6e
しばらく考え、小夜は『据え膳食わぬは男の恥作戦』に打って出ることに決めた。
作戦内容はいたってシンプル、ただ裸でターゲットの帰りを待つだけだ。
流石に恋人のヌードを見て冷静になれるほど弘樹は聖人でないはずだし、
万一反応が薄くても
『私がこんな事までしてるのに、弘樹はコーフンしないんだ……私の事、飽きちゃったんだ……』
と目で訴えかければ。
彼も私を抱かないわけにはいくまい、と小夜はほほ笑み、同時に頬を赤く染めた。
しかし……、と小夜は考えた。これではまるで自分が淫乱娘のようではないか!?
実際、まだ日が高くある頃合いに恋人に抱かれる算段をつけている小夜が淫乱でないかどうかというと微妙であるが、
ともかく彼女は恋人にそんな風に思われるのは我慢できなかった。
だって、それが原因で嫌われたりしたら取り返しがつかないもの!と彼女は葛藤する。
エッチな女だと思われたくない、さりとてエッチを我慢するのも嫌だし。
学生の本分から些か脱線した悩みをこね回しているうち、彼女はある重大な事実を思い出す。
夜中になり、日付がかわったら……クリスマス・イヴではないか!

そして話は冒頭に戻る。
『お帰り。今日はクリスマスイヴ、だからプレゼントは私。
普通プレゼントってイヴの夜に渡すのだろうけれど、弘樹には少しでも早く受け取って欲しかったから…………』
なんとまあ、完璧な計画だろう。
裸のいとこの女学生にこう言われてグラッとこない男がいるだろうか。ムードを出すために部屋の明かりも消した。
これで彼にシてもらえるだけでなく、なんとも健気な印象を与えラブラブ度アップに違いない。
あくまで“弘樹の為にわざわざ”裸になって待っていたのだ、淫乱だなんて思われるはずもない。
「……プレゼントはわ・た・し……なんて、ね……」
小夜はクスクス笑い、これから与えられるであろう快感への期待に濡れた花弁を震わせていた。



昨今の不況は日本の大・中・小企業に万遍なく悪影響を与え、
また弘樹の勤める会社もまた例外ではなく、
人件費を減らすため『ノー残業Day』という何とも馬鹿らしい制度ができた。
毎週月曜を残業禁止の日とし、社員にはらう残業手当を減らすというものである。
「もともとサービス残業ばかりだったじゃねーかよ……」
弘樹は愚痴りつつ家路を急いだ。彼にとって、結局この制度は火曜日の仕事量を増やすだけである。
第一、今日は祝日だというのにわざわざ出勤、まさに本末転倒。
彼が腕時計に目をやると、すでに日付がかわっていた。
「小夜のやつ待ってるだろうな……」
弘樹は、電話で実家に帰れとは言ったものの、どうせ小夜は部屋に来ているだろうとふんでいた。
無口で、ちょっとわがままで、それでいて愛らしい恋人のことを思い、弘樹は歩幅を広くした。

73プレゼントは私!3/8 ◆8pqpKZn956 :2008/12/25(木) 11:32:07 ID:R45PLf6e
やっとこマンションへ到着し玄関のノブを回してみると案の定、鍵が開いていた。
「やっぱり来てたか」
弘樹はドアを引き室内に入り……あれ、と首を傾げた。
「電気消えてる?あいつ来てないのかな」
しかし鍵は開けっ放しだった。まさか朝かけ忘れたとも考えにくい。
弘樹は逡巡したが、意外とあっさり結論に達した。
「……ああ、小夜のやつ、もう寝てるのか」
時間的にもだいぶ遅いしおかしくはない。
「ずっと待ってくれただろうに、悪いことしたな」
仕事のせいとはいえ罪悪感がのしかかってくる。
ならば、せめて彼女を起こさないようにしなきゃな、
と弘樹は音をたてずにドアを閉めた。
そろりそろりと短い廊下を歩き、そして静かに寝室の扉を開く。
着替えは寝室にあるので入らないわけにはいかないが、
小夜の睡眠を邪魔しないように、そっと静かに、まずは少しだけ扉を開ける。
当然そこには恋人の可愛い寝顔があるものと弘樹は思っていた。
しかし彼の瞳にうつったものは……
(………………まじか?)
切ない吐息を漏らしながら自らを慰める小夜の姿だった。



74プレゼントは私!4/8 ◆8pqpKZn956 :2008/12/25(木) 11:33:10 ID:R45PLf6e
才子、才に倒れる。
または、策士、策に溺れる。
この言葉は、自分の才能を過信し策を弄した結果、かえって失敗するような者に対して使う。
『弄し』の原形『弄する』はサ変動詞で『ろうする』と読み、『もてあそぶ』という意味を持つ。
『もてあそぶ』を漢字にするとやっぱり『弄ぶ』である。
小夜はそんなどうでもいい解説を頭の中で必死に巡らせたが、
結局欲望は消えず、そして彼女の右手は止まらずに秘部をこねくり回していた。
結局、彼氏との“夜”を裸で夢想するうちにいろいろ堪えられなくなってしまったのだ。
策に溺れ、快感に溺れた彼女の口から控えめな吐息が漏れた。
「ん……ふ、ぁ……」
中指は第一関節まで割れ目の中に潜り込み、優しく膣壁を刺激する。
人差し指は綺麗なピンク色のふちどりをなぞる。
指先がクリトリスに少し触れると、
瞼の裏には愛する弘樹の顔が、甘やかな痺れとともに思い起こされた。
「…………くふ、ん……はぅ、あ……」
小夜は開いた左手で、やや小さめな胸を揉みしだいた。
それは弘樹の『俺は小さいのが好き』という言葉のお陰で、彼女にとって誇りであった。
緩やかなカーブの頂点はすでに硬く、頭をもたげている。
「…………ひろ……、ひろ……あぅっ!」
急だった少し強めの波にピクンと、長い脚が跳ねた。
「ひろぉ…………」
いつもあまり喋らない彼女が、エッチになると途端に
『ああそこ、気持ちいいっ』などと上手に叫べるはずはなかった。
それでは弘樹も盛り下がるだろうと小夜が努力した結果、
快感の波にあっぷあっぷしながらも『ひろ』と名前が呼べるようになった。
実際、ことの最中の彼女の蕩けた表情や、喉から漏れる掠れた矯正だけで弘樹を扇情するには十分だったのだが、
健気に、涙目で、小さな口から紡がれる『ひろ』の二文字に“ひろ”はぶちのめされる事となった。
現在も、少しだけ開いたドアの向こうで彼は大絶賛ぶちのめされ中なのだが、
それに気付くはずもなく小夜は情欲の階段を上りつめていった。
「ひゃっ…………あ……あ……ひろ、ひ、ろぉ…………んああっ!」
人差し指と親指でクリトリスを摘み、中指もより深く差し込む。
左手も胸から股間に移動し、穴の中へもう一本追加した。
「あ、あ……あ、ひろ、ああっ、ひろっ!ひろっ!」
ぷじゅ、ぐじゅ、じゅくっ。いやらしい音が自分の耳に届き、
それが一層指の運動を駆り立てる。目の前には愛する弘樹の幻想。
そうこれはひろの指。
「へは、へあ、あっひろ、ひろっ」
オナニーではなく擬似セックス。“ひろの指”が涙とよだれを垂れ流す小夜にとどめを刺した。
「ひろのゆびいいいぃあああぁ、ああっ!?ひゃふぁああああぁああぁぁぁあああああっ!!?!」
びゅくびゅく!びゅ!びゅく!
透明な液が吹き出す。小夜はガクガクと腰を揺らしながら十数回にわたて潮を吹き出し、やがて目を閉じた。
小夜は背徳感あふれる余韻に浸りながらぼそりと呟く。
「ひろぉ…………淋しい、帰って来て、お願い…………」
彼女にしては長めの台詞だったので居ても立ってもいられなくだろうか。
「あの……ただいま」
「っっ!!!!」
弘樹は躊躇いがちにドアを開いていた。



75プレゼントは私!5/8 ◆8pqpKZn956 :2008/12/25(木) 11:34:24 ID:R45PLf6e
「えと、小夜……どうしたんだよ?」
弘樹は歩み寄りながら、硬直している小夜に問い掛ける。そしてすぐに手が届く位置までやって来た。
「…………あ………ふあ……」
小夜はまだ荒れた息をしつつ、表情をゆっくりと変えてゆく。
真ん丸だった瞳がとろんとしたものになってゆく。
「小夜、お、んぅ」
二倍の残業を終えて帰って来た彼の言葉は、裸でその帰宅を待っていた彼女の唇によって中止させられた。
彼女は彼を押し倒し、彼は近くのアルミテーブルにぶつかった。
上に乗っていた携帯はコトリと音をたて、オーボエ用の楽譜がヒラリと床に落ちる。
A3用紙に印刷されたそれは、しかし今の彼女には何の意味も持たないおたまじゃくしの群れであり、
二人の近くにありながらすぐに存在感を失う。
びちょびちょになった股から零れる愛液がふとももを伝うのも気にせず、
小夜は夢中で本物のひろを貪った。
「んちゅ、ん、んう……くぷ、ぢゅうぅ、んあ、ふぁふ……ちゅう……」
小夜は弘樹の舌を吸い出し、擦り合わせて唾液を交換する。
烏の濡れ羽色をした髪が、さらりと弘樹の顔にかかった。
ねぶるような舌使いに弘樹も答え、手を小夜の背に回して強く抱きしめた。
小夜の上前歯の後ろを舐めるように舌を動かすと、彼女が歓喜に身震いするのがわかった。
負けじと小夜も弘樹に侵入を試み、押し合いへし合った。
二人の舌と舌は拮抗した欲望でもって戦い、やがてゆっくりと口が離れた。
先程より少しだけ位置を高くした月が唾液の橋を青白くライトアップした。
「……小夜、質問にこたえろよ……どうしたんだ?」
「…………プ、」
「ぷ?」
「プレ、ゼント………………ね?」
今日、クリスマスだから、ね。
口より目で語る小夜と長い付き合いの弘樹は言葉をあっさり保管した。
同時に台詞の行間も読んでみる…………小夜が愛しくて堪らなくなった。
「小夜っ」
小夜を思わず抱きしめる、少しで密着しようとする、同化への渇望。
小夜はびっくりしたが、すぐに満面の笑みを浮かべ、チロチロと弘樹の首筋を舐めた。
「お前は猫か」
「………………♪」
ここで不用意に『ニャー』だとか言わないのが小夜である。
弘樹はむず痒い幸せに身をすくませ、小夜を抱く腕に少し力を込めた。
小夜は「きゅっ」、と小さく声を上げ舌の動きをやめた。
ギュッと瞼を下ろし、視覚以外の感覚に集中する。
「んふう…………ひろぉ…………」
くんくんと鼻を鳴らし大好きな匂いをいっぱいに吸い込む。
良い意味で、身体の中からおかされる感じがして、小夜はより一層弘樹が好きになった。
「…………105%、なのぉ」
尻尾をふりながら言った。ラブゲージが限界突破したらしい。恋する乙女は際限なく恋するのだ。
76プレゼントは私!6/8 ◆8pqpKZn956 :2008/12/25(木) 11:35:15 ID:R45PLf6e
「なにが105%なのかわからんが……ありがと」
無口な子猫の頭を撫でてから、そのままその手を濡れそぼったあの場所に宛がう。
「もう、大丈夫みたいだな」
恋人を受け入れるには充分に濡れている。小夜と弘樹は目で頷きあった。
弘樹は小夜を床に優しく横たえる。ベッドに行こうと気が回らない程度には彼らは興奮していた。
弘樹がズボンを下ろすと限界にそそり立つそれが姿を表した。
小夜の小さな口にその先端を近づける。小夜はウットリと軽く口づけ、いきなり奥までくわえ込んだ。
「ん……んぶ……」
ちゅぼっ、ちゅぼっ、ちゅぼっ、ちゅぼっ……
ペニスに満遍なく唾液を塗(まぶ)してゆく。
ちゅぼ、ちゅぱちゅぱ、ぐちゅ、ちゅばっ、ぢゅぶぶぶっ!
小夜は愛おしそうな目で眺め、それを舌で唇で頬肉で磨きあげる。
「う……ちゅ、ん、んん、んあん、んんう」
ぬるぬると摩擦係数の低い擦れあいが続く。
プリプリした小夜の頬肉が亀頭を執拗に責め、緩んだ口角から唾液の飛沫が跳ぶ。
「あふ、ふあ……」
「く、小夜……」
弘樹は低く呻き、口からペニスを抜きだした。
ぬぷっと水気のある音を立てて、
ぬらりと再び外気に触れたそれのいやらしい外見に小夜の下腹部がキュンと縮こまる。
「……………んは、はっ、ひろ……」
入れてとは言わない。しかし、熱を孕んだ視線で、べとべとになった口元が反射する月光で、
愛欲が飽和に溶け込んだ鼻息で、小夜は弘樹に訴えた。
「ん……小夜」
準備完了。
弘樹は新たな湿りを帯び出している割れ目にペニスを押し付け、ゆっくり埋没させていった。
「ひろっ、あ、あうん、あああっ!」
ズブッ!ズズ、ズブズブ!
小夜の膣は恋人をスムーズに受け入れていく。熱い硬いペニスが肉壁をコリコリ擦り、
そのすべてが電気信号となって小夜の脳を直撃した。
「うひゃああ、ああ、わああ!?ひゃああ!」
さんざん待ってやっとの挿入に小夜は絶叫する。
すごい、気持ちいい!気持ちいい!
77プレゼントは私!7/8 ◆8pqpKZn956 :2008/12/25(木) 11:36:06 ID:R45PLf6e
「あああ、あん、ああ、……あ、あ、あはぁ……」
「動くぞっ」
先程の口淫のお陰で、弘樹はいきなりラストスパートである。
しかし、小夜も今夜はずっと限界ギリギリであった。
ズ、ズプ、ぐちゅうっ!ズプン!ぐちゃっ、ぐちゃっ!
角度を変えて下からえぐるようにすると小夜の喘ぎが半音上がった。
「やああ、ひろっ、ああ、ああ、ひゅっ……ぅ、ん、んくああぁっ!」
小夜は壮絶な快感に悶え狂う。すべすべのお腹がうねり上下し、両脚がばたつき、つっぱって、結局弘樹の腰に絡められる。
ストロークを続けながら、ふるふると震える乳首に吸い付くと小夜の身体がビクッと跳ねる。
「やああっ、やああああ、ぅああ、ああ、あああ」
「おっぱい、いいのか?」
「ひろっ!ひろぉおっ!」
肯定の意を込めて、小夜が愛しい名前を呼ぶ。
弘樹も可愛い恋人を悦ばせようと、少し角度を変えて壁をえぐる。乳首を甘がみする。
ぐちゃ、ズポ、ズプ、ズプ、ズプ!
「ひゃふん!あっ、………………」
小夜は一際高く鳴き、息をはっと詰めた。目は見開かれ、真っ直ぐ弘樹を射ぬく。
彼女がイくときの癖だ。小さい頃から目だけで会話してきた二人に、今更言葉はいらない。
いや、空気でない何かが振動して、二人の心に響く。
一緒に…………。
弘樹は最後に思いきり子宮を小突いた。膣がうねり、小夜の裸が良過ぎる快感に泡立つ。
「っっっ!!!」
小夜は限界を向かえ、決壊した。
「っ!くはあっ!ひろぉあ、おあ、あっ!?ああああぁぁああああぁぁあぁああああ!!!!」
ブシュウウウ!!
小夜は今日二度目の潮吹きをした。
同時に放たれた弘樹の精液と混ざりあって広範囲に飛び散り、辺りの床をびちょびちょにする。
「あ…………ああ……あ…………」
「小、夜……」
二人の身体が弛緩し、弘樹は小夜に倒れ込んだ。
「…………ひろ、き」
ふう、ふうと呼吸を整えながら、これでもかというような笑顔で小夜が言った。
「めり……くりすま、す……」
「……まだ、イヴだけど……メリークリスマス」
「…………」
小夜はツンと弘樹をつついて、また笑った。ちなみにこのとき彼女の目は『ば〜か』と語っていた。

††

しばらくしてから二人は一緒に風呂に入った。最初はいちゃいちゃと流しっこをしていたが、
弘樹が小夜の背中をスポンジで擦りつつ思い出したように言った。
「そういや、小夜って意外と……なんというか、すごいな」
「?」
何が?と首を傾げるのを確認してから弘樹が続ける。
「だって、最初に言ったプレゼントって……『クリスマスプレゼントにエッチしてくれ』って意味だろ?」
「!?ち、ちが……」
「やばいって小夜……可愛すぎだろ……」
反論をまたず弘樹が小夜を抱きしめた。
小夜の作戦は、当初もっとも懸念した『弘樹に淫乱と思われる』という結末により失敗となったが、
なんだか弘樹は喜んでいるというかラブラブ度はアップしたからまあいいやと彼女は思った。
「ま、明日……というか今日は、仕事終わったらちゃんと別にプレゼント買ってやるからさ……」
だから今夜は買い物デートな、と目で話し掛けて、小夜もは〜い、と応答する。
ちゅっ、とキスの音が二、三回反響して、小夜はくすぐったく感じた。



78プレゼントは私!8/8 ◆8pqpKZn956 :2008/12/25(木) 11:37:28 ID:R45PLf6e
「小夜ちゃ〜ん!」
作戦失敗の夜が明け24日クリスマスイヴ、学校終業式の日。
学校で制服に身を包み帰り支度をする小夜に明るく少女が話しかけた。
名を恵理といい、小夜と同じく吹奏楽部に所属している。二人は親友だったりする。
「今日も愛しの弘樹さんの所に行くんでしょ?」
コクン、と小夜が頷く。
「じゃ〜今日も途中まで一緒に行こー」
また一つ頷いて小夜は歩き出した。

「う〜ん、やっと冬休みだねえ、小夜ちゃん」
「ん…………うれしい」
弘樹とずっと一緒にいられるから、である。
「冬休み中は部活無いしね〜……だからといって彼氏もいないわたしゃ、暇なだけだけどさ〜」
小夜が苦笑いを作る。
「あ!小夜ちゃん、男いるからってばっかにして〜!
いーよねー小夜ちゃんは!クリスマスだから今日も彼にプレゼント貰っちゃったりすんだろーなー」
ぷうぷうと恵理はひがみをたれた。
「プレゼント、なにおねだりするのか教えなさいよ〜」
小夜は少し困った顔をしてから、ぽつぽつと語った。
「一つは、今日、買いに行く…………」
「一緒に?」
首が縦に振れた。かーっ!うらやましい!と理恵が天を仰ぐ。何と言うか、演技がかった娘である。
「イチャラブ買い物デートキャッキャうふふですかそうですかくそ〜独り者にとっては公害だね公害…………あれ?
一つは、ってことは、もうひとつプレゼント貰えるの?」
「うん…………も一つは……」
ガサガサと小夜はかばんを漁り、これ、と一枚のA3用紙を見せびらかした。
「なあにこれ……あら、年明けのコンサートの一曲目の譜面じゃん。まーまー丁寧に蛍光ペンでポイント強調しちゃって豆だね〜……。
でも、これがプレゼントってどういう意味?」
「…………秘密」
小夜はニヤリとして楽譜しまい込む。
「あ、なによ〜意地悪〜〜」
「ふふ……じゃ、着いたから」
「はいはい。頑張って未来の旦那様をお出迎えなさいな」
笑いながら二人は別れた。
恵理はその楽譜が、一度濡れてふやけてしまっていることには気付いたが、
何故それが濡れたのかについては、特に疑問に思わなかったのだ。

仕事を、前日の努力の甲斐あって、早く切り上げ家へと歩いていた弘樹がくちゅんと一つクシャミをした。
「あれ……風邪かな?」
とにもかくにもマンションに着き、自分の部屋の扉の前で深呼吸する。
弘樹はポケットの中に忍ばせた指輪をコートの上からポンと叩いた。
デートで(良い意味で)適当に洋服でも買ってやって、満足し油断してる所でこいつを渡す。
本当に籍を入れるのはまだ先になりそうだけど、
これはそう、間違いなく、婚約の約束の印。これからの人生を全て捧げるという誓い。
「プレゼントはわ・た・し♪……な〜んてな」
クスクスと笑いながら彼はドアを開けた。
「ただいま!」
ややあって奥からパタパタと、弘樹の無口な恋人が嬉しそうに走ってくる。
「お帰り、なさい……!」
二人のクリスマスは、まだ始まったばかり。

街では微かに溶け残った霜に太陽の日差しが反射し、小夜の笑顔もまたキラキラと輝いていた。




メリークリスマス!
79名無しさん@ピンキー:2008/12/25(木) 15:05:24 ID:e0uW21T8
>>78
GJ!
小夜エロいよ小夜
80「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:28:33 ID:MT52stPx
>70 様
いやあ、メチャクチャ濃厚なエロでした。お腹一杯です。すげえです。

さて季節商品の時期を逸したくないのは、誰しも同じ。私も同じ。
というわけで、昨日ご遠慮させていただいたクリスマスものを投下させて頂きます。
申し訳ありませんがエロは一切ありません。あらかじめご了承ください。
81「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:29:31 ID:MT52stPx
聖夜を間近に控える頃になると、巷には華やいだ空気が一層漂うようになってくる。
有線から聞こえてくるのも、先ほどからずっとクリスマスソングばかりだ。
閉店後の小さな喫茶店の窓越しに見る駅前の夜景も、イルミネーションが瞬くように
なってどことなくウキウキした気分になる。
「ラ〜ストクリッスマ〜ス……ンフフフ〜ン……」
有線に合わせて口ずさみながら、恵介は喫茶店の窓にクリスマスの飾り付けをしていた。
椅子の上で軽く背伸びをし、金色や緑色に光るリボンを波状にたわませながら、窓を
縁取ってゆく。ダウンライトだけの薄暗い店内に、リボンのきらめきが華やぐ。
「うんうん、ケイは意外と手際がいいんだな」
既に照明が落とされたカウンターにもたれ、マスターがタバコに火をつけながら言った。
「ふぅー……。こんな飾りつけは滅多に、というか、ここ数年してなかったからね。
やっぱり女の子チャンのバイトがいると違うやね〜。オジサン、ビックリよ」
ぷかりと煙を浮かべ、マスターはにんまりとした。

「なあ、クリス?」

名前を呼ばれて、恵介と一緒に作業をしていた少女、クリスは少しはにかんだ様子で笑った。
床に置いた大きな紙袋からリボンの続きを取り出す手を止め、長いまつ毛の下に隠れた碧眼を
節目がちにして、ちょっともじもじしている。
クリスはつい2ヶ月前に入ってきたばかりの新人だったが、マスターも恵介も、彼女の事は
良く知っていた。今からちょうど一年前、恵介がこの小さな喫茶店で働き始めたぐらいから、
客としてちょくちょく顔を出していたのだ。
一度見れば忘れられない、160cm前後のすらりとしたスタイル、ゆるいウェーブのかかった
肩までのブロンド、コーヒーの黒とは対照的な白い雪のような肌、窓際の席でペーパーバックの
字を静かに追う優しげな碧眼。そして何より、

「キャラメルモカ、を……ク、クダッサイ?」
いつまでたっても上達しない、おずおずとした可愛らしい日本語。

「いいよねえ?」「実にいいです」
絵に描いたような白人少女が来るたびに、マスターと恵介は、こんな深いメッセージを
目線だけで交していたものだった。そのたびに、マスターは奥さんに耳を引っ張られて
厨房へと姿を消した。恐ろしい女の観察力である。
その奥さんが少し体調を崩し、急きょバイトを追加する事になったのが2ヶ月前の秋口だ。
「ア、あのゥ」
恵介が店のドアに「バイト急募」のポスターを貼った翌日、カランコロンと店のドアを鳴らし、
いつものように彼女は現れた。しかし、普段なら窓際へと足を運ぶはずの彼女がドアの
ところでぴたりと立ち止まり、しげしげとポスターを眺めてから、カウンターにいる恵介と
マスターに向けて控えめな声で言った。

「アノ、ワタシ……名前クリス、でス。『クリスティアナ・マンシッカ』でス。フルネーム。」

いきなりの自己紹介に恵介とマスターは、やれ可愛い名前だぴったりだ、やれ変わった苗字だ
聞いたことねぇと、大げさに頷いて見せた。
「ソれデワタシハ、エート……Yes……Ah……コノタビ……No……」
ちょっと思考時間が必要だったのだろう、口ごもっていた彼女はようやくこう言った。

「ワタシ、ココデ? 働ケ……働ケテテモいぃデスか?」

英語のペーパーバックを胸の辺りできゅっと抱きしめ、何かの判決でも待つように神妙な
面持ちの彼女を見て、男二人は二つ返事だった。
「今すぐ、今日からいいよねえ?」「実に、いいです」

クリスは口数こそ少ないが――そもそも日本語が不得手だったが――良く働くフィンランド系の
少女だった。
白の襟付きシャツに黒のニットベストと膝丈スカート、それにエプロンという飾り気無い
喫茶店の制服も、クリスのようなすらりとした白人が着用すると、それだけで魅力が数十倍に
膨れ上がった。ポニーテールに纏めた癖のある金髪もステキだ。小さめのベストを山なりに
押し上げ、動くたびに揺れる胸も、いい感じに目のやり場に困る。
「本格的に、いいよねえ?」「実ッ……に! いいですッ」
82「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:30:45 ID:MT52stPx
言葉が通じづらいのも何のその、クリスは殆ど毎日店に顔を出した。屈託の無い笑顔と
時々発せられる妙な日本語も、意外と常連さんたちからの評判も良く、すぐにこの小さな
喫茶店に馴染んだ。
「注文お決まりですか」
恵介がオーダー片手にテーブルへ近づくと、ある壮年の常連などはシッシと手を振って、
「お前じゃなくてだ……クリスちゃーん、ブレンドとエビグラタンね!」
と、カウンターの奥にいるクリスに直接オーダーを出す始末だった。
でも、そんなぞんざいな扱いを受けても、恵介は全く気にならなかった。
むしろ、名前を呼ばれるたびにニッコリと微笑んで振り返り、指で「OK!」のサインを
作る彼女の愛らしい仕草が見れたのが嬉しかった。
しょっちゅう注文を間違えても、誰一人として怒る客もいない。
クリスが注文を間違える時は、いつもコーヒーを客のところへ持っていって、そこで
初めて気付く。するとクリスは一瞬ポカンとして、ハっとしてがくーんと肩を落として、
最後にため息混じりにこう言うのだった。
「Ah……ゴメンだったネ」
この愉快な落胆百面相振りを、とろけ切った顔で眺めている輩までいるほどである。
「あ、オジサン思うんだけど」
そうしてペコペコ謝っているクリスの後姿を見ていたマスターがある日、ポンと手を打った。
「全部の客のオーダーを『ハイパーメガナポリタン極盛り』にすり替えても、大丈夫じゃね?」
こんなよからぬ企みを、マスターが思いつくほどである。

「まあ、何だか天使みたいな娘だよなあ、クリスは。彼女そのものも、この店にとっても」
休憩時間になると、マスターは天井に向かうたばこの煙を眺めながらよくそうつぶやく。
「イチゲンさんも増えたしさ。ったく、オジサンが既婚じゃなかったらねえ……」
口ひげ生やした50オトコが何抜かしてんだという言葉を飲み込みつつ、恵介は窓際に置かれた
シクラメンの鉢の手入れをしているクリスを見て、いつしか胸が高鳴るのを覚えていた。

ひなびた喫茶店の常連でさえ、多くの人間を見てきたマスターでさえもゾッコンなのだから、
そんなクリスに対して大学生の恵介が恋をするなという方がムリだったのかもしれない。

陶製の鉢を拭いて、水が足りているかを観察して……というだけの仕草だが、クリスが微笑み
ながらそばにいるだけで、シクラメンの淡い色彩がどんどん蘇っていくようにさえ見える。
てきぱきとカップとソーサーを洗っているときも、奥のキッチンでマスターを手伝って料理の
下ごしらえをしているときも――注文は間違えても、料理は上手だった――、クリスはいつも
笑顔を絶やさず、とても楽しそうに仕事をしていた。
彼女と一緒に働けて、恵介は心底幸せだった。

――もちろん、ポニーテールだからこその真っ白なうなじだとか。
「ケイ」
――テーブル拭きの時に、ボタンの甘い襟の間から少しだけ見え隠れする胸の谷間だとか。
「ケイ?」
――床でちり取りをしているときに、いつもちょっとだけ覗ける下着とかフトモモとか……!
「ケイスk」

「おいッ、ケイ!!」
「へっ、あ、はい?」

めくるめく妄想の世界から一転、マスターの大声で恵介は現実に引き戻された。
見れば、クリスがリボンの続きを手渡そうと、キョトンとした青い目で椅子の上の恵介を
見上げている。
「えっ、あーゴメンゴメン」
「ケイ、ドウシマシタのカ?」
取り繕うとしていたところに、クリスの変な語感の直球が投げ込まれて、恵介の胸が再び
ドキリと跳ねる。
「どうも、しないしない! しないのか? しないのだ! ノープロブレン!」

――言えない! 「アナタの思い出を脳内ロードーショーしてました」だなんて!
83「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:31:22 ID:MT52stPx
身振り手振りとぎこちない笑顔で誤魔化しつつ、恵介はクリスから受け取ったリボンを窓に
取り付けた。
「ホントに何でもないんだよ?」
だが、次のリボンを受け取ろうとして恵介が振り向くと、クリスは手に何も持っていなかった。
代わりにその白い手が、薄暗い店の中でぼんやり光りながら、まっすぐ恵介のおでこに届く。
見た目のとおり、ひんやりと冷たい。
でも触れた瞬間、恵介の内側からはこんこんと熱が湧き出してくる。
「顔が、赤イよネ?」
クリスの真剣な面持ちに、恵介は動くことが出来なかった。もっと顔が赤くなっちゃう
じゃないか、そう思った。そっちではマスターが、「おー」と意味深な棒読みをしている。
黙れオッサン、と思う。
「フム……フム。ケイ?」
自分の額と恵介の額の間を幾度か往復して、クリスは首をかしげつつも、ようやく指で
「OK?」と恵介に意思表示を示してきた。
またしてもぼんやりしかけた頭を振って、すかさず恵介も「OK」を作り、今度こそ
リボンの続きが手渡される。どうやら納得してくれたらしい。クリスに笑顔が戻った。
「ごめんなあ。クリス」
今日の古新聞を片付けながら、マスターが言った。
「ケイな、隠してるけど実は病気なんだよ。『エロガッパ病』っていうんだけどさ」
「エロ……What?」
日本語に疎いクリスが、またも真剣に声色を曇らせたのが、恵介には背中で分かった。
「いや何、美女のオッパイを見るとすぐに治――」
「黙らんかいッ、このセクハラマスター!」
意気揚々と続けようとするマスターの口を、恵介は怒りを込めた靴投げで見事封じた。
パリンカシャンという、どこか清清しくも忌々しいあの音と共に。


※※U※※


セクハラを防ぐ代償は、ティーカップ2つだった。店の飾りつけにカップの破片の片付けが
プラスされ、既に時計は22時を回っている。
恵介は通いに使っているスクーターを押しながら、クリスの最寄り駅への道を急いでいた。
「ごめんね、すっかり遅くなっちゃったね。ソーリー。クリス」
「No Problem!」
街路樹に掛けられた青いイルミネーションの光に浮かび上がるクリスが、ふわふわと
暖かそうな白のマフラーを下げ、ニコリと微笑んだ。本当にいい娘だなあと恵介は思う。
「しかしビックリしたなあ、クリスの持ち物!」
クリスの手にぶら下がる大きな紙袋を指差して、恵介は少し大げさに言った。
「リボンだけじゃなく、クリスマスリースにツリー用の電飾もあるし、ステンシル用の
白いスプレーまで入ってる。それにサンタの帽子まで! 随分と本格的だし、準備イイね?」
「ハイ! デコレーション。大好キよ。ナゼなら、MYグランパは……」
「グランパ? クリスのおじいさん?」
恵介が聞き返した途端、ニコニコしていたクリスが落し物でもしたみたいにぴたりと足を止めた。
まただ、と恵介は心の中で呟いた。いつもはまっすぐなクリスの目が、自分のプライベートを
話すときに限って、一瞬何かを探るようなためらいを見せるのだ。
「どうしたの、クリス?」
「Ah……ケイ、ゴメン。何モナイの」
そしてクリスは決まって赤いダウンジャケットに包まれた肩をオーバーにすくめ、すぐに
また白い歯を見せるのだった。
気持ちの中では引っかかりながらも、その無邪気な表情には恵介も笑顔で応じずにいられない。

――まあ、いっか。

二人は並んで駅へと近づいていく。
84「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:31:58 ID:MT52stPx
クリスはプライベートの事はおろか、普段もあまり喋らない。恵介の学校にいる女の子と比べると、
エネルギー消費量は半分くらいに感じる。だけれど、恵介はクリスが別に退屈しているとか、
怒っているとか、言葉の壁を感じているとか、そういうのでは無い事は分かっていた。
「キレイですネ……ケイ?」
そう小さく呟いた彼女は自分の周り、見るもの全てを楽しそうに受け止めていた。
バイトの時間もそうだが、このクリスマスシーズンに入って、その様子はさらに強まっている。
街路樹も、華やかな音楽も、通りを行き交うカップルも、全てが宝物であるかのように
見つめながら、クリスは柔らかなブロンドを弾ませて駅への道を歩いてゆく。

その斜め後ろでは人知れず、恵介の胸がそのブロンドと同じリズムで、再び鼓動を早めていた。
今日の仕事が終わる頃、クリスが着替えでフロアを離れた時の事だ。もう照明を全て落とした
暗い店内で、マスターが恵介にそっとこう話し始めたのだ。

「ケイよぉ。クリスな、彼氏いないらしいぞ」

マフラーを巻きかけていた恵介は、危うく立ちながらにして絞首自害に至るところだった。
――このオッサン……! あのクリスから、いつどこでどうやってそんな情報を?!
ゴホゴホと咳き込む恵介を尻目に、マスターはギュっと灰皿にタバコを押し付け、レジに
足を向けた。
「クリスマスイブはな、夕方頃からはウチの嫁はんに店に出てもらうからよ」
何を言っているのか飲み込めない恵介を放ったまま、マスターはレジの下にある引き出し
から紙切れを取り出すと、その場にしゃがみこんだままの恵介の目前でちらつかせた。
「ホレ、冬のボーナス。この前、新聞屋に貰ったんだ」
暗がりに浮かぶそれは、人気テーマパークのペアチケットだった。
「オジサンは、若人に道譲るから。こんなチャンス二度とねぇぞ」

――マジ、かよ……?

遠ざかりかけたクリスを慌てて追いかけながら、恵介はポケットを探った。夢ではない。
魔法のチケットが二枚、カサコソと頼りない感触を示している。

恵介はまるで、カンペキな積み込みがなされた雀卓に座っているかのような気持ちだった。
ざわ・・・ざわ・・・と、つい口を突いて出てしまう程である。
なぜなら、マスターはセクハラバカオヤジだが、こと恋愛沙汰についてだけは100発100中
の勘の持ち主だからだ。
スポーツ新聞を開けば、芸能人カップルの破局タイミングを月刻みで言い当てるは序の口。
知り合う気配も無いような若い男と女の客が、そのうち急接近するぞと予言をし、数ヵ月後には
結婚式の写真が店に飾られるなんて事もある。
挙句の果てには、道端の猫に仔猫が生まれる事まで分かってしまう程なのだ。
そんな色ボケ、もとい愛の伝道師に
「ハァお前、クリスに脈無いと思ってんの? 普段からあんなに仲良くしてんのに?!」
何て肩を叩かれて笑われた日には、もう男としては黙ってられない。

――も、もう突貫しか無いぜ!

そうだ、と恵介も自信を取り戻した。この2ヶ月でクリスとは、結構仲良くなったのだ。
クリスは家族の仕事の都合で来日中の、某女子大(これ重要)の留学生だということ。
さらにバイトは喫茶店だけだということ(とても重要)。
趣味は読書に加え何と日曜大工で、特技は世界中の国名や地形を把握していること……。
自分の事をあまり話そうとしないクリスから、恵介は少しずつ少しずつ、それこそ
ドリップコーヒーのように、なんとかどうにかここまで聞き出した。
それだけじゃない。恵介は、バイトが終わってからクリスと一緒に買い物をした事もある。
ハンバーガーを食べながら、クリスの日本語の宿題を手伝った事もある。
手はまだ繋いでいないけれど、映画に誘った事だってあるのだ。

自分の事はあまり話さないクリスも、恵介と遊ぶ時はいつも楽しそうにしてくれた。
別れ際に、彼女は決まって言う。
「マタ、遊ビマショね? ケイ?」
正式に出会って早2ヶ月。奥手な恵介にとってはかなり上出来な成り行きだった。
85「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:35:03 ID:MT52stPx
――ダイジョウブ、ダイジョウブ!

少年恵介はフンと鼻を鳴らし、ずんずんとクリスに近づいて横に並んだ。そこで咳払いを
ひとつ。名前を呼ぶ間でもなく、クリスが恵介に振り向く。キラキラの、とびきりの笑顔で。
恵介がせっかく切り出しかけた言葉が、臆病にも肺へと逃げ込む。
心臓が、バカみたいに血液をぐるぐると身体中に送る。
ポケットに突っ込んだ手が震える。
駅はもうすぐ目の前。彼女も目の前。

いくしかなかった。

「クリスっ!」
暗がりじゃなかったら、きっとさっきよりも顔が赤かったに違いない。通行人が振り返り
そうなぐらいにひっくり返った声を振り絞り、恵介はギリギリ一杯、無理やり笑みを作って
深く息を吸って、切り出した。

「クリスマスイブ、普段どおり、アルバイトでしょ? その、俺も一緒にアルバイトでさ。
それでっ、クリス知ってる? マスターの奥さん最近元気になってさっ、良かったよね?
それであの、イブには仕事に戻れるらしくて、だから夕方からシフトが変わってもらえて、
だから、その後、もし、時間あったら……ぁ」
ここで息が切れた。あるいは勇気が切れたとも言えた。
泳いだ目のまま話を続けちゃいけない、そうも感じていた。
だから恵介は一度息を整えて、しっかりと彼女を見つめ直した。

クリスは相変わらず、恵介ににっこりと微笑んでいた。

でも普段と違って、なんだかすごく、残念そうに。悲しそうに。

細められた目から、瞳と同じブルーの涙がにじみそうなぐらいの、痛切な笑みで。

その顔に呆気にとられた恵介には、「しまった」と思う時間さえ無かった。

「Ah……ゴメンナサイだヨぅ……ケイ?」

ふわりとした白い息と共に、クリスの口から謝罪の言葉が漏れた。
チケットを握りしめ、ポケットから突き出しかけていた恵介の右手から、あっという間に
力が抜けていく。彼女の顔を眺めているだけで、やり場を失いかけていた身体の熱が
音も無く、すーっと地面へと引いていくのが分かった。
クリスはいつも以上にか弱い声で、ぽつりぽつりと呟く。
「クリスマスイヴ、アルバイトモ、ワタシお休みダよ……。マスターニ、まだ言っテナイ」

さっきまでの自分が嘘のように馬鹿に冷静になった頭で、恵介は自分の言葉を巻き戻す。

――俺、確か……。今こう言ったんだ。
『……だからその後、もし、時間があったら』
――なんだ。なあんだ。
――俺、まだ何も本題に触れてないんじゃん。

「そノ、イヴの日ハ……Ah……ソノ……」
「あっ、そうなんだ、別にゴメン。ソーリー。そりゃそうだよ、クリスも忙しいよね!」
まだ何か言おうとしているクリスを、恵介はいきなり、無理矢理に明るい声で遮った。
彼女の表情を、伺う事もせずに。
そそくさとスクーターのスタンドを立てて、恵介はクリスの背中を押すようにして、
いつの間にか到着していた駅の構内へと誘う。
86「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:35:53 ID:MT52stPx
――気のせいだったよな。

またしても、恵介は自分だけの結論を作った。

――悲しそうな顔なんて、してなかったよな。

そうだ。クリスマスイブに用事があるのに、悲しむはずなんて無い。
無理な部分も破綻もどこにも無い、しごく当然の結論、世界の法則だ。
幸せな日なんだから。誰かと過ごすなら、誰にとっても。
当たり前すぎて、何だか虚しくなってくるぐらいだ。

恵介はその後のことは良く覚えていない。自分の言葉も。どうやって帰ったのかも。
幸せそうな笑みに違いなかった――そう決め付けた、クリスの本当の表情も。

ただひとつだけ確実なことは、コートのポケットの中に入っていたチケットがくしゃくしゃに
潰れていた、それだけだった。


※※V※※


何とも言えない日々が始まった。


翌日、恵介がバイトに行くと、いきなりマスターに拳骨で頭を殴られた。クリスからしばらく
バイトを休むという電話があったそうなのだ。ケイお前何しやがった。いきなりラブホに
でも誘ったのか。いい加減にしやがれ。お前に渡したのは紙のコンドームだったか。エロガッパ。
あまりの罵詈雑言に耐え切れず、恵介も腹いせに、しわしわのチケットをカウンターに音を
立てて叩きつけた。かっこ悪い、サイテーの涙が頬を伝って止まらなかった。誤解はすぐ
解かれたが、今度は自己嫌悪に陥ったマスターを立て直すために開店が1時間遅れた。


何とも言えない日々が流れる。あの日に向けて。


クリスマスの素敵な飾り付けをお客は誉めてくれたが、恵介にとっては憂鬱そのものな
眺めだった。
たったひとりの女性が居なくなっただけで、狭いはずの喫茶店が体育館ぐらいに感じられた。
シクラメンの手入れを忘れて、今度は奥さんに怒られた。
この間、恵介は皿洗いで2度も手を滑らせた。


何とも言えないまま、あの日はもう目の前だった。


マスターはアルバイトを休んでも良いと、恵介に告げた。「そんな景気の悪い顔されたら、
お前この店がサブプライムだぜ」と冴えない冗談までつけて、常連にため息をつかせた。
「何だ、クリスちゃん泣かせたのはケイ君なのか」そんな事を言う常連のオヤジのコーヒーに
タバスコを垂らそうとしたのは、意外な事にマスターだった。マスターは奥さんに耳を
引っ張られて店の奥へと消えていった。恵介は何だか、もっと何とも言えない気持ちになった。
87「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:37:11 ID:MT52stPx
そしてクリスマスイブ。何とも言えなかったが、恵介は今日も店に出た。


クリスが用意してくれたサンタ帽を被って、普段どおりに店を掃除し、普段どおりに接客した。
そうする他に無かった。
クリスが恵介のことを知るのは、この日のこの時間、この店に居るという事だけだったからだ。
休憩時間になると、恵介は彼女のいつもいた窓際の席に腰掛けて窓の飾りを眺めた。緑や赤の
リボンで縁取られた真ん中に、クリスお手製のステンシルで描かれたそりに乗ったサンタの
スプレーアートがにっこりと笑っている。
その下にあるのは、マスターと恵介、それからクリスの簡単な似顔絵のステンシルだ。
マスターは手にケーキ、恵介は大きな靴下、クリスはプレゼントの箱を持って、三人で
「ウェルカム!」と言っている。これまたみんな笑顔で、自然とこっちの顔までほころんで
しまう。
親に手を引かれて店の外を通った子供が、似顔絵を指差して可笑しそうに笑っている。
外は寒いはずのなのに、とても暖かな、オレンジ色をした笑顔だった。
恵介ももう、窓の飾りを見て憂鬱な気持ちにはならなかった。むしろ、ずっと見ていたい、
そう思い始めていた。

こんなに素敵な飾りも、明日にはきれいに取り払われてしまうからだ。

「クリス……」
そんな事をしたら、そっと名前を呟いたその人も、もう二度と戻ってこないような……
恵介はそんな気がしていた。

「この飾りよお、せめてこの『ウェルカム』の部分だけでも……しばらく取っておこうや」
ふうっとタバコの煙を吐いて、マスターが言う。恵介の肩を、ポンと叩く。
「あと、バイトの募集もしねえ。オジサン決めたからよ。ケイ、絶対に辞めんなよ」
「それじゃ、いつまでも忘れられないじゃないですか」
今更になって隠す失恋ではない。恵介が素直に答えると、マスターはタバコを灰皿に置いた。
「忘れてもらっちゃ、困るんだよ。彼女もきっとそう思ってる」
もう一度恵介の肩を叩き少し強い口調で言うと、夕方の準備のためにマスターは厨房へと
引っ込んだ。
「何の根拠があって、そんな事……」
穏やかな冬の西日を半分ぐらい吸い込んで光る、使い古した木のテーブルにぐったりとしなびて、
恵介は時間が流れるのに身を任せた。
「俺は、マスターとは違うんだ。クリスのこと、全然分からなかった」
有線からは、あの時と同じ曲が流れている。

「ラーストクリスマス……」

――これ、失恋の曲だよね、確か。
そんな事を思いながら、恵介はいつの間にかまどろみに落ちていた。
いつだったか、クリスがまだお客だった頃、こうしてこの席でうたた寝していたことがあった。
手でペーパーバックのページを支えたまま、こくり、こくりと……。長いまつげを重ねて、
気持ちよさそうに舟を漕いでいた。
しばらく経って、ぱちりと目を覚ましたクリスと目が合った時の表情を、恵介は忘れられない。
どこかバツの悪そうな照れ笑いの表情。
窓際の陽だまりを甘くあまく煮詰めたような、とろけてしまいそうな可愛いらしさ。
恵介はその時、完全に心を奪われてしまったのだった。
でも、心は奪われるだけ奪われて、目下消息不明のままだ。事件解決の糸口さえ無い。
今になって思えば、あまりにも出来すぎな、不思議な出会いだったようにさえ感じられる。

でも、会いたい。恵介は諦め切れなかった。心から会いたいと、そう願っていた。
出来ることなら、恵介はクリスにもう一度会って、ちゃんと自分の手で心を渡したかった。

――目を覚ましたら、そこに居てくれたり……して……さ。

無謀な願いがよぎった胸の奥がきゅうっと苦しくなって、まぶたの内側も熱くなる。
「今夜は所によりィ、雪のちらつくホワイトクリスマスになるでしょお〜!」
浮かれ声の女性DJの言葉がトドメだった。恵介はたまらずテーブルに突っ伏した。
88「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:38:17 ID:MT52stPx
※※W※※


それからどれだけ時間が経ったろうか。

カラン、カラン。

自分のテーブルのすぐ後ろ、店の入り口のドアに吊るされたベルが来客を知らせて、恵介は
条件反射的にがばりと頭を上げた。すっかり眠ってしまっていたらしい。
しかし振り向く前に、恵介の視線はガラス越しの風景の変貌ぶりに釘付けになってしまった。
起き抜けの視界に飛び込んできたのは、夜闇に鮮やかなイルミネーションと粉雪が踊る、
光に彩られた見事な幻想世界だったからだ。
「おぉ……『所によった』わけか……ってそれどころじゃないや」
しばし口を開いたままだった恵介は我に返り、腕時計に目をやる。時間は既に18時。
お客がいても全然おかしくない時間である。
「いらっしゃいま……せ、え?」
恵介は接客モードに頭を切り替え、ドアに佇む人影に向けて挨拶をしたが、その姿を見て
ぎょっとした。カウンターにいたマスターと奥さんも、顔を見合わせている。
恰幅の良すぎる真っ赤な上下に包まれた、太鼓のようなお腹。それを覆わんばかりの白い
フサフサカールの口ひげ。ドアを半ば塞ぐほどの大きさに膨れ上がった、白い袋。
そして、丸メガネの奥でチョボチョボとまばたきする、人懐こい老人の碧眼。

客は、コンビニが急造で用意する貧相なアレとは全く違う、正真正銘のサンタクロースだった。

「ホホーウ! メッリィー……クリッスマース!」

店の奥まで響く陽気な声と、頭の上にちょこんと載ったサンタ帽をうやうやしげに下ろして
お辞儀をするその姿に、店員三名はもはや一切の疑いを捨てていた。
「メ、メリーっ!」
矢面に立たされている恵介など、クリスに貰った帽子を下ろしてぎこちなくお辞儀し返す
始末である。
と、サンタクロースは窓の方をゆっくりと振り返り、クリスの作ったステンシルの似顔絵を
指差した。そしてそのまま、その人差し指をこれまたゆっくり、ぐるーんと恵介の顔に向けて、
目のシワを際立たせて笑う。

「アァーッ ユーッ……ミスタ・ケイスッケ?」

下手すれば幼稚園生でも分かりそうなとっても親切な英語に、恵介はブンブン首を縦に振った。
それを見たサンタクロースはのそり、のそりと店内に足を踏み入れ、おもむろに恵介を抱きしめた。
「わぷっ?」
「ホホ! ナイストゥ ミーチュ……ハジメ、マシテ! サンタックロース でース!」
サンタクロースはとても大きい。口ひげのフサフサと胸の肉に顔が埋もれて、普通の日本人の
恵介は、身動き取れないままじたばたするしかない。
「実ハ今日、サンタクロースカラ、ケイスッケにプレッゼント、ありまス! だから来たノ!」
「っぷは、ハァハァ……プレゼント?」
「そでス!」
恵介をようやく解放したサンタクロースは、ドアを塞いでいた白い袋を両手でよいしょと
抱えると、そっと窓際のテーブルの上に置いた。何やら巨大な物が入っているようだが、
中身は分からない。思い当たる節も無い。
そもそも、何で自分なのかも恵介には分からない。
「ケイスッケ?」
そんな気持ちを見透かしてか、サンタクロースがピコンと恵介にウインクする。
「とりあえず開けてみろ――ってか。 オープン、これ? OK?」
恵介が尋ねると、サンタクロースは右手を挙げて、人差し指と親指でわっかを作った。

その仕草を見た途端、恵介の背中に、電撃が走った。

――OKサイン? クリスマスの周到な準備? MYグランパ? フィンランド人――??
ありとあらゆる情報が、恵介の脳みその中をつむじ風の如く駆け巡った。
89「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:39:28 ID:MT52stPx
「まさか――まさかまさかまさかっ?!」
野に放たれた動物の勢いで、恵介は袋を縛るリボンに手を掛けた。
瞬間、リボンは色とりどりの光を撒き散らしながら自らするりとその縛り口を解いた。
そして白い袋が、魔法のテーブルクロスのように、ふわりとテーブルの上に広がる。

その真ん中には、赤ちゃんのように丸くなって眠る、サンタ姿のクリスが包まれていた。

「あ……あぁ……クリス!」
クリスを起こせばよいのか、サンタクロースに礼を言えばいいのか、それともマスターの
勘の鋭さを喜べばいいのか。
彼女の名を呼びながら、恵介はたっぷり5秒は視線を定められずにいた。
「ケイスッケ……」
そんな恵介をなだめるように、サンタクロースは恵介の頭をそっと撫ぜる。
「クリスティアナネ、ココ数日ズっと眠らズ、今日の準備バカりしてタのデス。ダカラ
寝てマス。本当ハ、コレカラ、世界ジュを回ル仕事アルんダケド……」
サンタクロースはひげをびよんと伸ばして離し、クリスがするように、にっこりと微笑んだ。
「良イ子にプレゼントあげルが、サンタクロース。クリスティアナは、ケイスッケに。
ダカラ、ケイスッケも……」
頭の上に載せられていたサンタクロースの大きな手に、恵介は震える手を重ねた。
「もう、いくらでも包んでください。俺、喜んでクリスのプレゼントになりますから!」

恵介がそう叫ぶや否や、マスターが素っ頓狂な声を上げた。
「ハッハーイ! メリークリスマッス!」

見ればその手にはウィスキーとグラスが握られている。
「もうマジ、オジサン感動しましたから! サンタ、あんたホントにいい仕事してんな!」
「次に生まれる時はサンタ一択!」などと叫びながら、マスターはグラスをぐいっとサンタ
クロースに押し付け、床にこぼれるのも構わずとくとくとウィスキーを注いだ。
サンタクロースも慣れたものだ。ホホウと笑いながら、今度はマスターに注ぎ返す。
「「メッリー、クリスマース!」」
声とグラスを合わせるや否や、ふたりはグラスを思い切り直角に傾け、琥珀色の液体を
あっという間に胃の中に収めてしまった。すぐに二杯目、三杯目。恐ろしいハイペースである。

「ン……」

突然始まった大騒ぎに、ついにクリスがもそりと身体を強張らせ、とろんとした目を開いた。
「クリス、クリス!」
テーブルに顔をこすり付けるようにして、横を向いたクリスの表情を覗き込みながら、
恵介は何度も名前を呼んだ。
まるで雛鳥に、二度と忘れないよう自分を刷り込むかのように。
「ケイ……ス、ケ?」
「クリスっ!」
恵介が再び名前を呼んだ瞬間、クリスの目がぱちりと開き、テーブルの上に半身になって
起き上がった。まだ事態を把握し切れず、それこそ孵ったばかりの雛鳥のようにキョロキョロと
あたりを見回すクリスに、サンタクロースが何やらどこかの言葉で話しかけた。
「グランパ……あ……アァ……!」
するとクリスは一瞬の驚きの表情の後、じわあとその青い瞳に涙を浮かべ、みるみるうちに
顔をくしゃくしゃにして、テーブルから跳ぶようにして恵介に抱きついた。

「ケイ……! ひっく、ゴメンナサイだヨ……ひくっ、とても会イタカっタの……!」
「俺もだよクリス! こんな事情があったなんて、知らなくて……ゴメン!」

ぎゅっと抱き寄せるクリスは、泣き止む様子が無い。
震える身体は、思っていたよりずっと華奢だ。
「ホントハ、嬉シかったダッタ。イヴは、一緒ニ遊ビタかったダッタよお……ケイと!」
「うん、うん……!」
「But、シークレット、ダッタ。ワタシ、サンタクロースだってケイ知っテシマッタラ、
 モウ、会エナイの決マリダッタ……」
「そんな……嘘だろ?」
90「サンタガール」:2008/12/25(木) 23:41:15 ID:MT52stPx
息を飲んだ恵介の首筋に、不意にひやりとした物がくっつけられる。恵介はヒっと飛び上がった。
冷たいものの正体はビールジョッキだ。顔を服と同じぐらい赤くした、サンタクロースの
仕業である。
サンタクロースはひげが泡だらけになるのも構わず、ごくごくと喉を鳴らしてジョッキを
一瞬で空っぽにした。そして、身を寄せ合ったままの二人にウインクする。
「プハ……ホホ。サンタクロース、ドリンク、トゥーマッチ。ふたりのコト、何モ知ラナイ、
覚エテナイ」
「かあああ! サンタマジ男だわ! 見ざっル、言わざっル、聞かざっル。ジャパンの諺!」
もはやじゃれ合う酔っ払いと化したサンタクロースとマスターの言葉を聞いた恵介の顔に、
今度こそ幸せが蘇った。
クリスも涙でせっかくの白い顔が真っ赤だが、もう悲しみの雫が頬を伝うことは無い。

「クリス……」
「ケイスケ! ケイスケ!」

知っている日本語がそれだけのように、クリスが泣き腫らした顔で恵介の名を何度も呼ぶ。
二人は、身体がくっついて二度と離れないぐらいに、もう一度強く抱き合った。
そしておでこをこすりつけ、いたずらっぽく見詰め合うと、自然と唇を重ね合った。

「かああ、てめェケイスケ! オジサンにもチッスさせろおい――ぐぇ」
完璧に出来上がったマスターが飛び掛ろうとして、空中でハエの如く叩き落される。
後ろから現れたのは、マスターを撃墜したフライパンを携えた奥さんだ。マスターを虎の
絨毯の如く踏み敷きながら、ふたりに近づく。
「ほら。もうお店始めるから。コドモはさっさと雪で遊んでらっしゃい!」
呆れ顔の奥さんはエプロンのポケットをまさぐると、いつぞやの紙切れを恵介の手に
丸め込んで握らせた。忘れもしない、テーマパークのチケットだ。
「ったく。ゴミ箱からサルベージしておいたわよ。感謝しなさい?」
「奥さん……!」
「はいはい、開店かいてーん」
感謝をする間も無く、奥さんはカンコンコンとフライパンをノックした。
ついでにサンタクロースを見上げて、冗談ぽくにらみつける。
「ったく、あんたも! これから仕事だってのに、そんなに呑んで大丈夫なワケ!?」
「ホホ、ノンプロブレン、ママさん。平気デス」
でも……と、サンタクロースは指を鳴らして奥さんに言った。
「キャラメルモカ、一杯欲シイですネ。クリスティアナに、美味しィ聞イテマス!」
「ふうん。しっかりとツケとくからね」
「ホホウ、厳シイ!」
「また来なさいってこーと!」

そんなやり取りを見ていた恵介とクリスは、同時にクスクス笑いあった。気持ちまで
通じ合ったかのような心地のまま手を取り合って、店のドアを抜け夜空を眺める。
「キレイ……デすネ」
「うん」
ふたりは冷たい空気を孕んだ夜空から舞い降りる粉雪をしばらく目で追っていたが、
やがてクリスの青い瞳が、恵介へと注がれた。
いつも色々な物を映しては、全てを幸せに変えていったクリスの瞳が、今はじっと恵介
だけに向けられている。そうして幸せになるのは、恵介も一緒だった。

「ケイ……メリークリスマス」
「メリークリスマス。クリスティアナ」

もうこれ以上言葉は要らない。
そんな気持ちを視線で絡み合わせたふたりは顔を赤らめ、もう一度、そっと互いの唇で
生まれたばかりの愛を確かめ合うのだった。


〜おすまい〜
91名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 00:25:59 ID:9NddrL8Z
>>90
なんだかとてもファンタジー!
GJ!
92名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 01:06:32 ID:M7zFMovs
>>90
GJ!
続きも全裸で待ってる!
93名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 18:25:30 ID:C/px3U/3
>>90そして前スレ埋めネタGJ
それにしても保管庫更新されないな…ここのって特定の人しか出来ないんだっけ?
94 ◆6x17cueegc :2008/12/27(土) 06:44:35 ID:wuxjde6Z
逃避エネルギー万歳!ってことでエロ無し小ネタ投下。

注意
・早すぎる正月ネタ
・以前投下した『球春到来』の続き
・この作品はフィクションです。登場する団体名は全て架空のものです。

鬼が俺を笑ってるぜ……
95すとーぶ・りーぐ ◆6x17cueegc :2008/12/27(土) 06:46:40 ID:wuxjde6Z
 ペコペコ、パンパン、ペコリ。
 掌を合わせて静かにお願いをして賽銭箱の前から離れようとするとくいくいと裾を引かれる。
「ゴメン、まだお願いしてたんだ」
 俺の問いには無言のまま、手を合わせている。顔を上げるまで待って、手を繋ぐ。
「とりあえず、後ろの人の邪魔になるから一旦離れるよ?」
 こくりと頷いてくれたのを確認してから歩き出すと、少し大またで歩いて歩調を合わせ俺の隣に並んだ。
「さて、お参りは済ませたしなにをしようかなあ。なにしたい?」
「……甘酒とおみくじ」
「うん。じゃあ……あそこかな、おみくじやってるの」
 辺りを見回すと大きなおみくじの箱をガシャガシャやっている人が何人かいた。そちらへ近づくとちょうどひ
とつ空いたので、それを手に取る。
「はい、お先にどうぞ」
「ありがと」
 勢いよく、がっしゃがっしゃがっしゃと3度振って逆さにすると番号の書いた木の棒が滑り出てくる。番号を
確認したら今度は俺の番だ。

 お互い、結果を巫女さんに告げると1枚のお札を渡される。中身を見ようとすると袖を引かれた。
「何? ――あー、いっせーのーせで見せっこしたいの?」
 こくこくと頭を縦に振ってにこっと笑う。ああもう、俺はこの笑顔に弱いんだよ。
「じゃあいくよ。いっせーのー、せっ!」
 お互いが見易いように水平に開く。
「おっ、俺は吉か。よかった。君は……」
 凶だった。新年だけは縁起よくおみくじから凶の札を抜いておく神社もあるそうだけど、どうやらここは違っ
たみたいだ。
「……凶」
 たかがおみくじひとつでそんなに落ち込まなくても、と言いかけてやめた。吉を出した人間が言っても説得力
は無い。
「えっと……おみくじ、木に結びに行こうか」
「うん」
 また手を繋いで、近くにあったおみくじを巻きつけられている木のほうへ向かう。

 神社の境内にある休憩所でゆっくり腰を落ち着けて、買ってきた甘酒を啜る。冷えた身体に熱々で少しだけア
ルコールの入った甘酒は、実に気持ちよく吸い込まれていった。
「はふぅ……」
 彼女はというと両手で紙コップを持って甘酒を舐めている。鼻の頭を赤くしていて、とてもかわいい。
「たまにはこういう年始もいいんじゃない?」
 今まで年末年始は寝正月で過ごすようにしていた、という話を聞いて、1月1日俺は彼女を無理矢理外に連れ出
した。趣味以外では内にこもりがちな彼女だから、一緒に行きたいと言ったときは嫌な顔をされたのだけど。
「……でも凶だった」
「まだひきずってるの?」
 子供みたいだなあと思って微笑むと睨まれた。彼女の中では結構重要なことだったらしい。
「どうしたの? おみくじでムキになるなんて」
「私の、覚えてる?」
「えーっと……健康運も恋愛運もそこそこ、仕事運が最悪で注意の一文が『最大の希望は達成されない』だった
 かな」
 分かってるじゃない、と彼女は再び紙コップの中に顔を突っ込んだ。非常に不機嫌なご様子だ。仕方がない、
話題を変えるか。
「ところでさ、お願いは何にしたのか訊いてもいい? ――俺? 俺は『今年も一年、2人が健康で幸せに暮ら
 せますように』って」
 彼女はそう言った俺のほうをちらりと見ると、不承不承、言葉を吐きだした。
「トラーズが今年こそペナント奪回しますように」
「…………」
 この回答に思わず頭を抱えてしまう。色々な意味で訊くんじゃなかった。
 年始に神社に来てまでトラの必勝祈願かよとかもっと他にお願いしたいこと無かったのかとかツッコミどころ
はいくらでもある。それでなくても去年、歴史に残る大逆転でラビッツがトラーズから優勝を掻っ攫ったせいで
以前にも増してトラ党への鞍替えを要求されて肩身が狭いのに。
「あのー、もしかしてさっきからおみくじがどうこうで機嫌が悪いのも?」
「優勝しないって言われた」
 ああ、最大の希望はトラーズのペナント奪取ですか。よく分かりました。
96すとーぶ・りーぐ ◆6x17cueegc :2008/12/27(土) 06:48:37 ID:wuxjde6Z
 甘酒を飲み終えて再び神社の参道に出て、露店を冷やかしながら帰り道を歩く。いくつめかの露店の軒を通った
とき、普段無口な彼女には珍しく独り言を呟いた。
「……そっか」
「何が『そっか』?」
「お願い、2番目は叶うかもと思って」
「2番目? お願い、2つしたんだ」
 彼女はそれに首肯で返して言葉を継ぎ足した。
「2つ目は、その……君と仲良く過ごせたら……ってお願いした、から」
 恥ずかしそうに繋いだ手を握り締めてきて顔を逸らす。俺もなんとなくそっぽを向いてしまった。物凄くうれ
しい。
「……帰ろっか」
「……うん」
 顔が熱いのは露店のトウモロコシから上がってくる湯気のせい、だと思う。

 神様、さっきしたお願いにもう一つ追加してもいいでしょうか?
 彼女の中で、俺の存在がトラーズに勝てるのはいつの日になるか教えてください……
97すとーぶ・りーぐ ◆6x17cueegc :2008/12/27(土) 06:49:30 ID:wuxjde6Z
と、以上です。
確かこいつら社会人の設定だったような気がするが、ウブすぎやしねーだろーか。

あと神様的には未来永劫無いとだけ言っておく。
98名無しさん@ピンキー:2008/12/27(土) 07:52:02 ID:cqmG6Rlf
彼女はトラファンの鑑だな!
GJ!



…ところで、フィクションなんだよね?トラが優勝できないなんて嘘だよね!?
99名無しさん@ピンキー:2008/12/27(土) 15:42:38 ID:rhdJQCNb
>>97
GJ!
100名無しさん@ピンキー:2008/12/27(土) 20:41:38 ID:wuxjde6Z
>>98
魔法の呪文「この作品はフィクションです」
真面目な話、来年は鯉が来るんじゃねーかと(ry
101名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 10:56:05 ID:SGN/vjA0
>>97
GJ!!

前スレ見たらかおるさとー氏がきてた、こっちでいいのかわからんがGJ!
102名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 14:49:22 ID:0uuGnlPQ
投下します。

エロなし。
タイトルは『雨と傘と』です。
103名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 14:51:29 ID:0uuGnlPQ
雨の日の出来事だ。
秋から冬への移り変わりで段々冷え込んできたところでの雨でその日は一気に真冬並みの寒さになった。
放課後の部活が終わり、廊下へ出ると外の暗さに驚く。
まだそんなに遅い時間ではないのに冬という時期と分厚い雨雲のせいでもうすっかり暗い。
玄関まで辿り着くと少女が1人、ぽつんと立っていた。
空を見上げ憂鬱そうに溜息をついている。
少女を眺めながら上履きから靴へと履き替えているとその音に反応して少女が振り返る。
見覚えのある顔だった。
クラスメートの滝本沙希さんだ。尤も会話どころか挨拶も交わさぬ間柄だけれども。
別に嫌い合ってる訳ではないのでこうやって顔を合わせれば会話も挨拶もするけど。
「滝本さん。まだ残ってたんだ?」
「…………あ、安藤くん」
僕の名前を呼ぶのに間があったのは彼女が無口だからだ。
決して僕の名前を思い出すのに時間がかかったなどという寂しい理由ではない……よね?
……信じてるよ、滝本さん。
「……保健室で寝てたら、こんな時間になってて」
彼女の言葉でそういえば午後の授業はいなかったな。と今更ながら思い出す。
ていうか起こしてあげなよ、高橋先生。保険医の顔を思いながら心の中で突っ込みを入れる。
「そっか。それじゃまた明日」
「…………うん」
……ん? ちょっと待て、僕。
傘を手に取り、自然と帰ろうするがおかしな事に気付く。
なんで彼女は玄関で立っているんだろうか。
「ねぇ滝本さん」
僕が振り返ると滝本さんは小首を傾げる。
「えーと……今、迎えが来るの待ってるの?」
「…………」
ぷるぷると首を横に振る。
「……もしかして、傘ない?」
「…………」
こくりと頷く。
今日は朝から雨が降っていたので忘れたという事はないはずだ。だとすると……。
「……盗られた?」
「…………」
少し躊躇いながら、こくり。
やっぱり……。
盗られたというより間違えて持っていかれたというほうが正しいのかもしれない。さっきも思ったように雨は朝から降っていたんだし。
まぁどっちにしろ滝本さんの傘がないという事実は変わらない。
104名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 14:53:26 ID:0uuGnlPQ
傘立てを見るとまだ数本、傘が残っている。まだ残っている生徒がいるのかそれとも置き傘なのか。
うん、後者だという事にしよう。
「置き傘あるみたいだから借りていったらどうかな?」
僕に向けられていた視線に少しだけ非難の色が混じった。
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「…………ごめんなさい」
「…………」
「……人の物を勝手に使ったら駄目だよね」
滝本さんはこくこくと頷く。
いや、満足そうに頷いてるけどさ。問題は解決してないんだよ?
とはいえそれが駄目なら残る方法はもう1つしかない。
僕は溜息が出そうになるのを我慢して、右手に掴んでいるものを彼女に差し出す。
「これ使って」
「…………」
「これなら他人のじゃないし、勝手にでもないからいいよね?」
「…………」
そこで首を横に振らないでくれると凄く嬉しかったな、僕。
「僕、折りたたみ傘も持ってるから大丈夫」
このままだと押し問答になりそうだったので無理矢理、滝本さんに傘を押し付ける。
彼女が傘を返してくる前に、僕は忘れ物をしたからと言ってその場から逃げ出した。
勿論忘れ物なんて嘘なので階段まで来たら脚を止め、座りこむ。
携帯電話を弄り、時間を潰す。5分ほど経った所で携帯電話をポケットに直して、再度玄関に向かう。
外に視線を向けると変わらず雨が降っており、やむ気配は無い。
どれだけ急いで帰っても家につく頃にはびしょ濡れになっているだろう。
帰ったらすぐにお風呂に入って身体を温めなければ、と予定を立てる。
もし風邪なんか引いて、明日学校を休む事になりでもしたら滝本さんが自分のせいだと責任を感じてしまうかもしれない。
だから、明日だけは意地でも休めない。
105名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 14:54:21 ID:0uuGnlPQ
玄関に到着し、靴箱の陰から恐る恐る覗き込む。
そこには少女が1人、ぽつんと立っていた。
……見覚えのある顔と言うかさっきも見た顔と言うか…………なにやってるの、滝本さん?
彼女は空を見ていた先程とは違い靴箱の方を――僕が来る方向を見ていた。あ、目が合った。
僕はしぶしぶ彼女に近付く。
「……帰らないの? 滝本さん」
「…………折り畳み傘は?」
僕の質問スルーですか。しかも折り畳み傘持ってないって当然ばれてるよね、これは。
「体調崩してるんなら早く帰った方が良いよ?」
「…………傘は?」
…………意外と我が強いよ、この娘。
話を逸らそうとしても無理みたいなので正直に答える。
「…………ありません」
「……そう、なんだ」
「……そうなんです」
なんだろう。とても悪い事をした気分なんだけど。僕、嘘はついたけど悪い事はしてないよね?
「…………」
滝本さんが無言で僕の傘を差し出す。
返す。という事なんだろうけど受け取れない。体調を崩している女の子を雨に濡らして帰すわけにはいかない。
どうしようかなぁ……。結局押し問答しなくちゃいけないのかな……?
けど、この様子じゃ聞き耳もたなそうだし……ていうか大体、僕は口下手な方で説得とかは苦手なんだ。
だから、さっき傘を押し付けて逃げたのに……居るんだもんなぁ、滝本さん。
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「………………………………」
「…………………………うー」
どう説得するか考えて、それでも浮かばないので無言で向き合っていると痺れを切らしたのか滝本さんが唸った。
自分でも無意識な唸りだったのだろう。滝本さんは傘を持つ手とは逆の手で口元を押さえ、頬は薄っすらと染まっている。
……凄い可愛らしい反応だなぁ。と思いながら僕は笑みが浮かぶのを抑えられなかった。
そんな僕を見て滝本さんは眼つきを鋭くし、差し出す傘を押し付けてくる。
それすらも僕は微笑ましく感じてしまう。
彼女を早く帰す方法を考えていたはずなのにもう少しだけ一緒に居たいと思ってしまった。
だからだと思う。こんな案を口にしたのは。
普段なら思い付いても提案なんかしない。
だって恥ずかしくて仕方ないから。
「滝本さんの家ってどこ? 送っていくよ」
106名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 14:56:13 ID:0uuGnlPQ
☆☆

『相合傘』
僕の提案にすぐその言葉を連想したのだろう、滝本さんは無言で拒絶した。
顔を真っ赤にして首を振る姿が可愛いやら、完璧に拒絶されて落ち込むやらの葛藤はさておき、
『滝本さんが1人で傘を使う』と『僕達2人で傘を使う』の二択を迫り、最終的に彼女は僕の提案を呑んだ
(僕が1人で傘を使うという選択肢を突っ込まれなくて助かった)。
そんな紆余曲折を果たし、僕達はようやく帰路につく。
とはいえ僕達は恋人どころか友人とも言えないクラスメートなので微妙な距離が開いている。
滝本さんは恥ずかしいのか俯いて歩いている。
まぁ僕としては彼女が俯いているのは……僕の方を見ないのは助かる。
会話は無く、沈黙が重く圧し掛かる。
滝本さんは無口だし、僕もさっき言った通り口下手だ。
さっきまで話せていたのは『滝本さんに傘を使ってもらう』というテーマがあったからだ。
しかし、自分から誘っておいてこれは少々情けない。
話題を探していると先に沈黙を破ったのは滝本さんだった。
「安藤くんは……優しいね」
「そうかな? そんな事ないと思うけど」
滝本さんは首を振り、僕の否定を更に否定する。
ムキになって否定する気はないけれど、ここで頷いてしまうと会話が終わってしまいそうな気がした。
せっかく滝本さんの方から話を振ってくれたのにそれはなんだか勿体無い。
だからやっぱり僕もまた否定する。
否定材料は学校の玄関に置いてあった傘。
この時の僕の心情を語るのは自分で自分を貶める話になってしまうが、まぁ一度非難されてる事だし会話を続ける事を優先する。
「あれさ、学校に残ってる生徒の傘かもしれないって思ってたんだ。思ってたのに勝手に置き傘って事にして……。
 滝本さんが止めてくれなかったら……使ってたかもしれない」
滝本さんがまた首を横に振る。これはどんな意味の否定なんだろう。
少しだけ間を開けながらも彼女はその答えをくれる。
「……安藤くんは使わない……と思う」
「……そんな事ないよ」
「安藤くんがああ言ってくれたのは……私の為だもん」
滝本さんは小さく、しかしはっきりと話す。
「……私が濡れないように安藤くんは言ってくれたんだよね?」
「…………まぁ……うん」
「安藤くんは……自分の傘がなかったら……濡れて帰るんじゃないのかな?」
「……買い被りだよ」
否定はしてみたけれど反論は出てこない。
滝本さんに傘を貸すと決めた時、濡れて帰る覚悟もまた決めていた。
そういえば自分が置いてある傘を使うという発想はなかったな。と思い返す。
107名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 14:57:04 ID:0uuGnlPQ
「……実は、ね」
滝本さんを言葉を続ける。
無口な彼女がまだ続けてくれる。
「玄関にいた時……帰ってる人は他にもいたの」
それはそうだろう。
他の部活動だって当然あるし、この時間帯でも下校する生徒はぼちぼちいるはずだ。
「けど……声をかけてくれたのは安藤くんだけだった」
「……そうなんだ」
「うん。……すごく嬉しかった」
滝本さんは俯いていた顔を上げ、僕の顔を見つめて微笑んだ。
「…………ありがとう」
優しくて綺麗な微笑み。
僕は心臓が跳ね上がるのを感じ、思わず顔を背けてしまう。
ちらりと彼女の方を見てみるとまだ彼女は顔を上げ、僕の顔を見ていた。
……いや、視線の先は僕の顔じゃなく肩に移動して……まずい。
やがて彼女は僕から視線を外し、反対側を向く。
自分の肩を見て、そして手でも触れている。多分、濡れてないのを確認しているんだろうなぁ……。
僕の肩は濡れている。
当然だ。傘は1つしかなくて、その傘は小さくはないけれどそんなに大きいものでもない。そして僕達の間には微妙な距離がある。
僕としてはびしょ濡れになる覚悟すら決めていたので、このくらいですむならむしろ僥倖で滝本さんも気にしないでくれて良い。
けど、同時に気にするのが彼女らしいとも思う。だからこそ気付かないでほしかったわけだけど。
そんな事を考えていたら、いつの間にか制服の肘の辺りをくいっと軽く引っ張られていた。
視線を向けると滝本さんが僕の制服を指先だけで摘まんでいた。そして僕達の微妙な距離を詰めてくる。
腕を組んでいるかのように密着してきて、この距離は……まるで恋人だ。
滝本さんは俯いて、更に顔を背けているが耳が赤く染まっているのが見える。これだと顔はきっと真っ赤になっているだろう。
僕だってきっと……絶対、赤くなっている。
「…………」
「…………」
僕も滝本さんも無言だ。
何を話せば良いのか分からないし、話そうと思っても多分上手く話せないと思う。
結局、滝本さんの家に着くまで僕達はお互い無言のままだった。
別れ際にもう一度お礼を言われたが彼女は顔を背けていたのでどんな顔をしているかは分からなかった。
もし、彼女が背けなかったら僕が背けていただろうから、どっちにしろ分からなかったと思う。
108名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 14:57:44 ID:0uuGnlPQ
☆☆

1人での帰路は傘を広々使える代わりにどこか寒々しかった。
どうしてかなんて理由は分かりきっている。
僕は理由の彼女を思い浮かべる。
すぐに浮かんだのは笑顔で、1人でまた赤面する。
動揺する心を落ち着かせると次に思い浮かんだのは腕に残る小さな感触。
顔を真っ赤にしてそれでも身体を寄せてきた。
僕が濡れないように恥ずかしいだろうにそれでも勇気を出してくれて。
それを思うと心が温かくなってくる。
滝本さんは僕を優しいと言ってくれたけれど、彼女こそ本当に優しい娘だと思う。
優しくて意外と頑固な女の子。
無口だけど実は表情豊か。
もっと……もっと色々な彼女を見てみたい。見せて……くれるだろうか。
それは分からないけれど、見る事が出来たら僕はとても嬉しく思うんだろう。
だから少しだけ、頑張ってみよう。
まずは明日、僕から挨拶をしてみよう。
見知らぬクラスメートをやめ、友達になろう。
109名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 15:03:43 ID:0uuGnlPQ
終わりです。

続きものにして前スレの折り紙少女三上さんを友情出演させようと画策してましたが挫折しました。

それでは今年はお世話になりました。
来年もよろしくですよー。
よいお年をっ。
110名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 15:03:52 ID:OBKxTHPE
>>108GJ!
雰囲気が良すぎ!
自分の寂しい学生時代を思い出して死にたくなったよ……
111名無しさん@ピンキー:2008/12/29(月) 21:19:07 ID:YFK2NBb8
>>109
GJ!
学生時代に友達以上恋人未満のクラスメイトと
相合傘をした思い出が蘇ってきてちょっと鬱になったぜ
112名無しさん@ピンキー:2008/12/30(火) 04:31:00 ID:xQ1Bawv9
某雪見は言った
「あいつの身体は血液じゃなくて砂糖が流れてるんだな」
113名無しさん@ピンキー:2008/12/30(火) 21:09:17 ID:Rw3GEWRI
・無口な占い師に新年を見てもらおう
・無口な巫女バイトさんに御神籤を引かせてもらおう
・無口な女神様に恋愛成就を祈ろう
・無口な妹と雑煮を食べよう
114名無しさん@ピンキー:2008/12/31(水) 14:04:17 ID:up5TgXVe
・無口な従姉妹達と新年会
・無口な姪にお年玉
・無口なクラスメイトと初詣でバッタリ
115 【中吉】   【630円】 :2009/01/01(木) 00:49:26 ID:Q+GdTffU
……あ、あけまして……おめでと

……………………今年もよろしくね
116 【大吉】 【1458円】 :2009/01/01(木) 01:04:26 ID:ORz/VFdR
……あけ、おめ。
117omikuji:2009/01/01(木) 02:30:18 ID:g/UKlAiB
あけおめことよろ
118!kuji 【1000円】 :2009/01/01(木) 03:04:36 ID:fgAME5Gb
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…… ……………… ……… ……… ……… … ………………

俺にはセンスがないようだ。
119omikuji:2009/01/01(木) 13:10:58 ID:0cPpa05U
……あけおめ、ことよろ。
120名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 00:43:25 ID:A/VVIXMb
……………………お年玉は?
121名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 01:19:46 ID:McbKg2u3
チュ…

お年玉…あげる…
122名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 16:24:18 ID:ubAG0dQz
ここのスレ住民的に「森田さんは無口」はどうなんだろう。
123名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 17:24:26 ID:LFNLUN9L
単行本なら買ったぞ。
個人的には満足してる。
124名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 20:46:52 ID:7GhQnf06
普段は無口だけど、メールだと明るかったり饒舌だったりする女の子モノはたまにあるけど、
普段はお喋りだけど、メールだと無口(短い、淡々と業務連絡風)の場合はなんか怖いよね。
125名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 21:18:20 ID:McbKg2u3
>>124
前者の方とメールしてるんだが…w
126名無しさん@ピンキー:2009/01/02(金) 21:35:50 ID:EM3IEd1o
>>124
後者の方とメールしてたことあるんだが…

ただ単に「実は嫌われていた」というオチしか思いつかない
127名無しさん@ピンキー:2009/01/03(土) 16:50:26 ID:da/ifn+u
>>125
貴様、kwsk

場合によってはいつぞやのリレーのごt(ry
128名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 04:42:45 ID:3wZTGx3D
「え?」
 洋一くんの言葉に、私は目を丸くした。
「だから、メール嫌いなのかなって」
 少し考えてから聞き返す。
「どうしてそう思うの?」
「いつも内容が短いから」
「……普通、だと思うけど」
「そうですか?」
 洋一くんは携帯を取り出して受信フォルダを開く。
 瞬間、私は顔が紅潮するのを感じた。
「『うん』『ううん』『違う』『いいよ』『待ってて』……さすがにそっけなさすぎると
思いますよ」
「……」
 顔が曇るのが自分でもわかった。
「いや、責めてるわけじゃないです。ただ、舞子さんいつも明るいのに、メールだと
極端にそっけなくなるから何かわけがあるのかな、って」
「……別にない、よ」
「ならいいですけど」
 洋一くんは多少怪訝そうにしつつも、あっさり引き下がった。
「……」
 ちょっと不意打ちな質問だった。
 理由と言うか、まあ少し思うところがあるのは確かなので、やっぱり話すべきなの
だろうか。
 本当になんでもないことなのだけど。
「……あの」
「ん?」
「えっとね、その」
 なかなか言い出せない。踏ん切りがつかないのはちょっと恥ずかしいから。
 彼は特に急き立てることもなく、黙って見つめてくる。
 見つめられると結構言い出しにくいけど、まあ、とにかく。
「……相手にメールが届くじゃない」
「…………ん?」
 言ってから当たり前だと思った。
 洋一くんの顔に「よく解らない」といった色が混じる。
「だ、だから、相手の履歴に残っちゃうじゃない!」
「……嫌なんですか?」
「いやっていうか……」
 私はその場に立ち止まり、思わずうつ向いた。
「……………………恥ずかしい……」
 一瞬の静寂が訪れる。
 洋一くんは小さく吹き出した。
「わ、笑うな!」
「ご、ごめんなさい。で、でも」
「だって、恥ずかしくない!? 相手にずっと履歴が残ってて、たまに開いて読まれたり
するんだよ? 迂濶なこと書けないじゃない!」
 答えてしまった反動か、言い訳にも熱が入る。
 言ってることは何も間違っていないつもりなのだけど、やっぱり変なのだろうか。
129名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 04:44:54 ID:3wZTGx3D
 洋一くんはどう思って、
「ごめんなさい。ちょっと意外だったものだから」
「意外?」
「いつも明るくていろんなことを話すのに、そこにこだわるのが意外」
「会話とメールは違うもん……」
 会話は残らない。でもメールは残る。
 私には二つは全く違うものに思える。
 ああいうことを話した、こういうことを話した、そんな記憶はあってもみんなはっきり
とは思い出せないものだ。
 もちろん深く心に残る言葉はあるけど、誰も機械のように記憶するわけじゃない。
 もし人間があらゆる会話を脳に刻めるなら、きっと私は何も言い出せなくなる。
 なんでもないことさえいつまでも残るというのは、あまりに怖いことじゃないのか。
 内心で密かに震えると、洋一くんが言った。
「でもぼく、舞子さんのことならほとんど全部覚えてますよ」
「え?」
 言っている意味がわからない。
「全部って」
「だから、全部。ぼく、記憶力はいいんです」
「例えば?」
「去年の六月、図書館での会話の内容とか。『身長いくつ?』『本棚高くない?』って」
 固まった。
「そんなこと言ったの? 私が?」
 この一年で一気に背が伸びた(本人曰く15センチ程)洋一くんは、それでも私と同じ
160センチくらいしかない。
「言いました。ちゃんと覚えてますよ」
 慌てて謝る。
「ご、ごめん」
「なんで謝るんですか?」
「だって、失礼じゃない」
「気にしてません。それにそのあと舞子さんはこう言ったんです。『いつか私に本を取って
ほしい』って」
「──」
 私はいよいよ恥ずかしくなって、一歩も歩き出せなくなってしまった。
 なんだ、そのわけわからん台詞は。
 それは確かに好きな相手が自分より小さいというのは、ちょっと気になる問題でもある
けど、だからといってありえない台詞だろう、それは。
 でもきっとそれは、その頃の私たちがまだ付き合ってなくて、私の方は洋一くんに完璧に
惚れてしまっていて、それで不用意に発してしまった一言なのだと思う。覚えてないけど。
 恥ずかしい……。
「頑張って身長伸ばそうと思いましたよ。カルシウムたくさん摂ったおかげかようやく
舞子さんに並べました」
 すぐに追い越しますからね、と洋一くんはにっこり笑った。
 それはなかなか頼もしくも子供っぽくて、ちょっとかわいい笑顔だった。
130名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 04:47:52 ID:3wZTGx3D
「……他にも覚えてるの?」
「もちろん。一学期の終業式の日は『一緒に帰らない?』『雨が降る前に駅に着かないと』
『校長の話長すぎ! 緑化事業の話とかどうでもいいじゃん』『洋一くんは真面目だね……
何しゃべってたか私よく覚えてないよ』『曇ってきた』『降りそうだから走ろっか』『夏は
これだから……」
「ま、待って待って。もういいからっ」
 私は慌てて制止する。
 洋一くんの言葉には偽りもでたらめもないようで、私は恥ずかしがるより先に呆れて
しまった。
「どんな頭してるの?」
「それだけ舞子さんのことが好きってことで」
「……」
「だから」彼は言う。「会話もメールもあんまり関係ないですよ」
「今すぐ忘れて」
「無理です」
「……」
「そんなに嫌ですか?」
 まっすぐ尋ねられて、私は口をつぐんだ。
「舞子さんのことは全部覚えておきたい、ってぼくは思ってます。それは会話もメールも
いっしょで、何も変なことなんてなくて、えっと、『大切にしたい』って思っているん
ですけど……ダメですか?」
 真摯な目はひどく澄んでいて、私は少し怯んだ。
 個人的にはやっぱり恥ずかしいのだけれど、
「……絶対に忘れないの?」
「はい」
「私は忘れるよ?」
「メールは残りますよ」
「……」
 なるほど。記録に残るのも悪いことばかりではないらしい。
 恥ずかしいけど……。
「頑張ってみる」
「ええ、待ってます」
 帰ったら早速打ってみよう。自分からメールすることなんてない私だけど、洋一くんに
ならさらけだせるはず。
 彼にはずっと覚えていてもらいたいから。



「舞子さんからのメールには全部保護かけときますね」
「なっ……」
「そうすれば嫌でも忘れませんよ」

「やっぱり恥ずかしいよー!」
131名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 04:54:13 ID:3wZTGx3D
小ネタですが投下終了です
>>124さんのレスから考えて書いてみましたが、無口っぽさ皆無……
>>126さん、きっと相手にはこんな事情があるのだと思いますよ
132名無しさん@ピンキー:2009/01/04(日) 20:19:43 ID:gtNSoSZz
乙。ネタとしては好きだけどスレ的になんか違う気がする
というか普段喋るのにメールだと無口って最初から無口な女の子じゃな(yr
133保管庫の人:2009/01/05(月) 00:56:02 ID:XkfjQJs4
えと、長らく放置して済みません、保管庫の人です。
誰でも編集可能に設定し直しましたので、余裕のある方は保管を手伝っていただけないでしょうか。
六スレ目から全然保管出来てなくて、申し訳ありません。
どうか、よろしくお願いします。
134名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 13:37:27 ID:YO/eDEIH
>>133
……途中まで、した。……勘違い、しないでね。
135名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 13:38:57 ID:YO/eDEIH
モバイル用ってのはやらなくてもいいんですよね?
136名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 14:05:56 ID:ObFHghXu
>>128
遅れてすまない…

会社で同じ部署に配属されて、最初は先輩の方から電話番号とか聞かれて、流れで聞いてそのままメールしてる。
で彼女は黙々と仕事してる子で、会社じゃあんまりしゃべってる所は見たことなくて、
「そんなに仕事してたら病気になるよ」って送ったら「じゃあ今度食事に連れって」って来て戸惑いながら行ったけど…
食事のときはすごく無口で、帰ってからメールするとバンバン来るような感じだ。
今でもこんな感じだけど少しはしゃべってくれる
137名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 14:06:41 ID:ObFHghXu
ごめん…↑>>128じゃなくて>>127だった…
138名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 17:20:36 ID:ijJOFdpU
wikiの保管、途中までで力尽きた。あと、任せる。
139名無しさん@ピンキー:2009/01/05(月) 21:34:37 ID:jHgzYIXJ
今からwiki編集してみますので、
編集しようと思っていた皆さんはおまちを・・・・・・
140名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 00:42:13 ID:U617YdLB
携帯からすいませんが>>139です

ちょっとパソコン離れるので途中ですが中断します。
朝方には残りを片付けます。
141名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 02:07:29 ID:vgUyUzc+
>>140
乙です!
自分は>>134>>138なんだけど、wikiの編集はやりだしたら他が手につかなくなって、困りますよね。
小ネタも保管はしたつもりですけど、勝手に題名をつけた分も結構あります。気に入らなかったら変えてくださいね。

っていうか、書きかけのssをほったらかして、何やってンだ、俺ort
142名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 08:15:31 ID:eUY1zhNM
>>140>>141
保管庫編集乙!
くそ…力になれない自分が情けない…。やっぱりPC早く直さないと
143 ◆8pqpKZn956 :2009/01/06(火) 09:33:52 ID:U617YdLB
なんどもすいません>>139です
現時点までの全作品保管完了しました
業務連絡的な連投すいませんでした……



次から投下
前・後編の内の前編を投下します
NGはトリか『カウンター』で

五つ貰います
144カウンター ◆8pqpKZn956 :2009/01/06(火) 09:36:54 ID:U617YdLB
「……宮川さん」
突然会長に話し掛けられ、私はビクリと身体を震わせた。
もちろん、それを悟られるようなことはしない。
ファイルを整える振りをして、代わりに心を落ち着ける。
「……なに、会長?」
「いえ……明日は大晦日だというのに仕事を手伝って貰ってすいませんでした、と」
「……そうね。もっと謝って」
「すいませんでした」
「……」
全く冗談が通じない男だ……。
いや、わかっていてズレたボールを返してくるのだ、コイツは。
私だって負けていられない。
「……すぐに謝る男ってみっともない。私は、あなたに仕事を頼まれてもいないのに、勝手に手伝ったのよ?」
長い台詞は苦手だけど、頑張って言ってやる。
「そうですか。では、宮川さんが偶然通りかかった生徒会室の中で雑務処理なんかしていてすいませんでした」
これだ。
ギロリと目の前の男を睨んでやると相変わらずニコニコと目を細めている。
窓から入り込んだ夕日が、この食えない生徒会長の顔をキラキラと輝かせているのに気がつき苛立つ。
「どうかしましたか?」
「いえ…………夕日のおかげで会長の端正なお顔がさらに格好よくなっていらっしゃるので見とれていました」
皮肉だけはスラスラ喋れる私に自己嫌悪する。
「ははは、皮肉ですか」
「ええ」
「…………へぇ?」
彼はニヤリとしながら言って、処理していた書類を棚にしまいだした。
皮肉というのは嘘だ。彼は誠に遺憾だが、私の美的センスによると、
文句なしに格好いい部類に悔しながら、分類される。
顔がかあっと、熱くなる。それが悔しい。
「悔しい……」
「思ったことすぐ口にするの、やめたらどうです?普段は無口のくせに」
「わかってる!」
思わず大声を出す。ハッとして口を塞ぐも、彼はもう、困ったような諦めたような顔をしていた。
「……そうですね、すいません」
「…………私帰るから」
「もう遅いし、家まで送ってほしいですか?」
あくまで、選択権はこちらに委ねた聞き方だ。それがわかるからまた頭に血が上る。
「…………」
「そうですか」
黙って首を横に振ると、彼はまったく少しも食い下がらず、そしてこの話は終わった。
イライラを募らせながら立ち上がり、私は出口へと向かった。
「お疲れ様でした、宮川さん」
「…………」
ドアを開ける、廊下に出る。
「いよいよ今年も明日で終わりですね」
「……なんで、あなたはそれを口に出来る、の……!」
「確認です……もう最後だっていう」
「……」
「宮川さん…………ごめんなさい」
「ばか健二!!」
ピシャン、と扉を閉めた。
ああ腹がたつイライラする、怒りで視界が滲む。今日もとっとと帰るべきだった。
「くっ……」
唇を噛む、血の味がする。思ったことをすぐ喋ってしまう私の口から言葉が零れる。
「……なんなの……私……!」
それは一年前に遡る。
…………
……

145カウンター ◆8pqpKZn956 :2009/01/06(火) 09:38:06 ID:U617YdLB
一年と、もう数カ月前の秋の日。
私は約束の時間を過ぎても現れない相手に苛立っていた。
「…………」
「宮川さ〜ん!」
「……大声出さないで」
冷たく諌め、やっと来た彼を黙らせる。
彼の名前は大嶋健二。私と同じ(当時)二年生であり、家が隣り合わせの幼なじみである。
「遅い」
腰まで伸びるちょっと自慢の栗色の髪をばさりとかきあげながら睨みつけてやる。
シャンプーの匂いでも届いたのだろうか、いやにどぎまぎしながら彼は弁解した。
「あの……急に呼び出されてしまって……」
「誰に?」
「その…………」
「……やっぱり、あなたモテるのね」
彼はこの学園でちょっとした有名人である。
誰にでも優しく、礼儀正しい態度に可愛さとかっこよさを両立させた甘いマスク。
運動は人並みだが成績はかなり優秀と、つまり彼はとにかくモテる。
「……ずいぶん古風な子じゃない?相手」
今、体育館裏から出て来たものね。
言葉にしない部分を視線に乗せて言ってやると彼は首をすくめた。
「……断りましたよ?」
怖ず怖ずと私を見上げてくる。
私と彼は同じ学年だが誕生日の関係で私が11ヶ月年上であった。
小さい頃にお姉さん風を吹かせまくった結果、
彼は今だに私に対して敬語を使う。
少し気分がいいと思うのは私の性格が悪いからなのだろうか。
「私、あなたが断らなくても困らない」
「そ、そんな……宮川さん、僕は」
「…………」
僕は宮川さんが好きなんですよ、だろうきっと。
彼からは中学生時代に告白された。
私はその時『荷物持ちぐらいにはしてあげる』と、なんとも曖昧な返事をしておいた。
それ以来、彼は私の荷物持ちである。今も放課後はこうして待ち合わせして一緒に帰る。
「はい」
ずい、と鞄を押し付ける。
「今日もあなたの家で宿題を片付けるから……」
「あ、はい」
返事を待たずに歩き始める、彼が慌ててついてくるのが気配でわかった。
つねに私の一歩斜め後ろ。
さながら女王さま気分の下校は、私の自尊心を満たしてくれた。



146カウンター ◆8pqpKZn956 :2009/01/06(火) 09:38:34 ID:U617YdLB
「ここは定理利用ですよ……基本なんだけどな〜」
「生意気……」
いちひくタンタン分のタンプラタンだったかしら。
頭に浮かんだ定理の覚え方のマヌケな調子に合わせてペンを走らせる。
「正解です」
健二がニッコリと言った。
私は彼の家のリビングで宿題を進めている。
成績優秀者の解説は非常に解りやすい。
取り組みはじめてまだ30分程度。
彼はとっとと自分の分を片付け、今は私のサポートに徹していた。
「……終わった」
「早いですね。僕のおかげですか?」
「さあ?……お茶」
「はいはい、紅茶でいいですか?」
無言で頷くと彼はキッチンにかけて行った。尻尾を振っているのが見えるようだ。
あいつ、執事なんか向いてるんじゃないかしら。
人に尽くす時にあそこまで嬉しそうなやつはそうそう見つからない。
なぜだか悔しいけど。
何となく居心地が悪くなってスカートの裾を気にしてみる。
「……どうしました?」
お盆を持った彼が帰ってくる。
「関係ないわ」
冷たく突き放した。私が『関係ない』と言えば彼は詮索してこない。
無言のまま彼はティーカップをテーブルに置いた。
「……いただきます」
一口啜る……まあ、及第点の紅茶がそこにはあった。
「……やっぱり、おば様の紅茶には遠く及ばないわ、ね」
「まあ、ねえ……淹れ方を教わる暇さえありませんし」
苦笑しながら彼も一口飲む。
彼の両親は一年中世界を飛び回っていて、滅多に家にいない。
だからこそリビングで好き勝手出来るというものだ。
「そうね。……じゃあ、隆さんは今どこに?」
隆さんは健二の兄で、バリバリの企業家である。
小さなころから健二と私と一緒に遊んでくれた、優しくて明るい人。
これまた仕事で全国を飛び回る隆さんだが、この家の彼の部屋はそのままになっている。
「兄さんは大阪あたりかなあ」
「自分の兄のくせに、アバウト……」
「親なんか北半球にいるのか南半球にいるのかすらわかりませんから」
はは、と健二は笑った。
「ですから……」
すっ、と距離を詰められる。
「二人っきりですね、今日も」
「…………そう」
「くっついていいですか?」
「良くはない……」
「ダメでもないんですね?」
私の返事も待たずに健二は肩に頭を乗せてきた。
「嫌なら突き飛ばしてくれてもいいんですよ?」
「趣味じゃないから」
暴力は、である。
「はは……」
いけない。
頬が熱くなる。
彼の顔を見て『かわいい』などと考えてしまう。
だめだ、だめ。健二を突き放さないと……。
147カウンター ◆8pqpKZn956 :2009/01/06(火) 09:38:59 ID:U617YdLB
「……宮川さん…………」
健二の唇が迫ってくる。
右手にいつの間にかそっと添えられた彼の手から伝わる温もりが私の自制心を覆い隠す。
なんだか今日はやけに暑い気がする。
……私は目を閉じ、考える事を放棄した。
「ん……ふ……」
唇が重なる。健二の腕が背中に回り、優しく抱きしめられる。
自分の鼻息が彼に顔にぶつかるのがわかり頭が熱くなる。
「はふ…………」
ぼんやりとした頭では欲望を押さえられるはずもなく、私も彼の柔らかさを求めた。
キスは麻薬、とはなんの言葉だったろうか?
差し込まれて来た舌を“意識して”無意識に受け入れる。
最後の抵抗として、腕だけは彼の背中に回さないよう努める。
抱きしめてしまえば健二を求めた事になる。彼の思いに答えることになる。
私のつまらない脳みそが、それを許さなかった。
「んん……ぷは」
彼のほうから唇が離される。
自分は今どんな顔なんだろう。
「……宮川さん、いいですか?」
健二が、私の胸に手を置いて尋ねてくる。
キスだけで興奮した淫らな身体が乳首を固く立たせ、思考とは関係なくピリッと快楽が駆ける。
「…………」
私は絶対に言わない。
自分から『してほしい』などとは絶対に言わない。
今までにも何度かこういう雰囲気になった事があったが、その度に私はだんまりを決め込んだ。
しかし、キスは拒まない、拒めない。
キスだけじゃない。
彼が私の返事を待たずにブレザーを引きちぎりブラジャーを押し下げ胸をめちゃくちゃに揉めば。
彼がパンティを脱がし執拗にそこを愛撫して、そしてペニスで私の淫裂をすぼすぼと凌辱すれば。
私は、私は、絶対に抵抗できない……いや、しない。
私は、私が、私の意思と関係なしに犯されることをどこかでは望んでいるのだろう。
「……宮川さん」
しかし、彼はそんな獣とは違う。
「僕は宮川さんが好きです……だから、宮川さんを抱きたいです。いいですか?」
相手が、告白に対する返事をしないうちに処女を奪おうなどということはしない。
「…………」
普通、もう良いはずなのだ。
きちんとした告白をされ―――返事をはぐらかしたとはいえ―――その後一緒に下校する事を許し、
ほぼ毎日自宅にやってきて、キスをされても抵抗しない女。
こんな女を手篭めにしたところで誰が彼を責めるだろう。私でさえ責めない。
だけど、やはり健二は……ゆっくりと身体を離し……言った。
「先走り過ぎました、すいません」
彼は、私なんかの百倍、理性に生きる人なのだ。
「僕、ちょっと買い物に行ってきますね。
今日は解散で……家の鍵は閉めなくていいですから、じゃあ」
健二は早口で言い切ると財布を掴んで玄関を出ていった。
……つまり、これがいつものパターンだった。

148カウンター ◆8pqpKZn956 :2009/01/06(火) 09:40:06 ID:U617YdLB
「私……なにしてるんだろ……」
部屋に一人残され、また自己嫌悪する。
彼を拒絶もせず、ただ心は許さず。
自分は心を許さず、ただ肉欲のために、彼に襲わせて責任転嫁することを望んで。
もう頭では自分が何を望んでいるのかわからなかった。
ただ、身体だけは先程の余韻を放熱出来ずに燻っている。
私は解散と言われたにもかかわらず、玄関ではなく階段に向かい、勝手にそれを上った。
いつものように。

がちゃり、とドアノブを回し部屋に侵入する。
私は、男の部屋とは思えないほどに片付いたその部屋の奥にあるクローゼットへ向かった。
折れ曲がって開くクローゼットの中には当然男物の服が並んでいる。
防虫剤の嫌な臭いが鼻をついたが、私は怯まずにジャケットを一つつかみ取ると、抱きしめて頬ずりした。
ああ、私は最悪だ。いえ、変態かな。
今日もこれから、このジャケットをオカズにオナニーするんだもの。
股間がじゅん、と熱くなりたまらずベッドへと倒れ込む。
ジャケットを鼻にあて一杯に空気を吸い込む。
最近、全く使われていないのであろうそれからは防虫剤の臭いしかしなかったが、
それでも私の興奮を盛り上げるには十分だった。
「すぅ……ふぅ……ふぅ……」
右手がパンティの内側へ伸びる。
すでにしっとりと潤むそこを私は激しく摩擦した。
「あっ……ふ……あん……あ……」
中指を割れ目に埋め、めちゃくちゃに動かす。あまりの気持ちよさに火花が散った。
「あっ……あっ……えっちだぁ……あふ……ふうぅぅぅぅ……」
しないはずの“彼”の匂いを吸い込み、くらくらと視界がぼやけた。
肉芽を摘むように擦りあげ、脚がびくんと跳んだ。
ぐちゅぐちゅ!ぐちょ、ちゅぶ!と卑猥なリズムが耳を打つ。
よ、よし……このまま……最後までイケる。いきたい……。は、はあ。
ああ、いきたい、イきたいイキタイ、イク、イク!
「あ、あ、あ、い、い」
ガチャン!
「っ!!」
迂闊だった。絶頂の間際で全く気付かなかった。
突然、閉めたはずの扉が開いたのだ。
見なくても判る……つまり、そこには健二がいた。
さっと、頭から血が引く。
「……あ……え……宮川、さん?」
彼は柄にもなく狼狽し、目を見開いた。
い、言い訳、なにか……。この期に及んでも私はとことん卑怯な事を考えた。
だめ、ちゃんと思考できない。
まずなにを言えばいい?
混乱しなにも出来ずにいると、健二が諦めきった顔色で小さく笑った。
「は、はは……なるほど……宮川さんは、そうなのか」
健二が廊下から私を見下すように言う。初めて聞く冷たい声だった。
「僕、宮川さんが告白をOKしてくれないのは、照れてるだけだって、
だってほら、だからキスもしてくれるし、一緒に帰ったり……。
だから、待っていれば絶対いつか通じ合えるって……」
いつもからは考えられないぐらいまとまらない文でまくし立てられ、胸が痛む。
「でも……違ったんですね。宮川さんは僕を好きじゃあなかった……じゃあ、じゃあなんでっ!」
なんで僕を拒絶してくれなかったんだ!
健二は叫びながらドアをたたき付けるように閉めた。
ああ、やってしまった。
自分の汚らしい性欲の為に健二を酷く傷つけてしまったのだ。
「…………う、ああ……」
身勝手な涙が零れる。
それはぽとりと下に落ちて……

そして隆さんのジャケットを濡らした。
149 ◆8pqpKZn956 :2009/01/06(火) 09:41:41 ID:U617YdLB
後編は早めに投下します
ちなみにネトラレではないです
150名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 13:50:10 ID:F2mMUsty
やべえ続きが気になりすぎるww
151名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 23:39:34 ID:sv0j0Ivn
しかしこんなビッチが言い訳しても白けるだけだし、もう破局でいいんじゃね?
152名無しさん@ピンキー:2009/01/07(水) 00:16:08 ID:ON8TBI0O
いやいや後ろめたさも程度によっては最高のシチュ萌えに
153名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 12:36:40 ID:90S0nG74
問題は彼女が無口なのかどうかだ。ギリギリ無口だったり・・・するの・・・か・・・?
154名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 13:00:58 ID:djgR5SQ4
俺はこのくらいだったら無口と認める
155名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 13:02:34 ID:IUkOqEWm
無口だろうが萌えたらそれでいい
156名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 17:18:04 ID:kNGhRZHs
てか普通に兄貴と弟のジャケット間違えただけじゃね?
157名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 22:11:23 ID:X3k5AcS/
それなんて凡ミスww
158名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 23:37:09 ID:HK6KjReV
まぁ続きを楽しみに待とうじゃないか
159名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 23:40:34 ID:R/tB5DEz
「早めに投下する」
それが彼の最後の台詞でした

ああああ生殺しすぎる
160名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 02:52:43 ID:X3VW+znB
薬、違法板とかアウトローは固定がいなくなると本気で心配になるだろうな
161 ◆8pqpKZn956 :2009/01/09(金) 04:27:27 ID:7ApjLXPU
>>159
業務連絡だけでは味気無いなと焦って、前編を早く投下しすぎてしまいました。すいません
必ず早めに投下します
162名無しさん@ピンキー:2009/01/09(金) 19:41:20 ID:YQktk8Um
まぁ早くしてくれ。さすがに全裸待機は寒くてかなわんからな
163名無しさん@ピンキー:2009/01/12(月) 12:39:30 ID:aJ4dptAj
老人は喫茶店の主人だった。
豆にこだわった珈琲、それだけが自慢の街角の小さな店。
一人息子と何年も前に喧嘩別れし妻に先立たれた今、男一人、それでもやっていけるほど小さな店。
昔馴染みの常連しか訪れないような小さな店。
しかしその女だけは違っていた。
数年前から店に出入りするようなった、久しぶりの若い新しい客だった。
いつも同じ珈琲を注文し一番端の席で本を読み、時間をかけて一杯の珈琲を飲む。
その間に口を開き老主人と会話することはない。
注文時の「いつもの」と老主人が発する「お待たせしました」だけが二人の会話だった。
素性の知れない美しい女。
そして女が訪れるのは決まって他の客がいない、そんな時だった。
小さな店内に老人と女。
老主人は自分から話しかけることはない。
店内にかかるクラシックだけが聞こえてくる静かな時が流れる。
そんな一時を老主人は楽しみにしていた。
女といる時だけに感じることのできる独特の空気が気に入っていたからだった。
親しみを覚え懐かしささえも感じた。
そんなある日のことだった。
女は同じ時間にやって来て同じように「いつもの」と短く言う。
老主人も同じように自慢の珈琲を煎れて差し出す。
砂糖は少なく牛乳は多め。
二人だけの静かな時間がゆっくりと過ぎていく。
しかしこの日は違った。
「受け取って下さい」
数年ぶりに聞く女のまとまりのある言葉と共に、丁寧に包装された小箱が老主人へと渡された。
目を丸くする老主人をよそに女はいつもと同じように店を出て行った。
小箱の中にはカップが入っていた。
老主人が長年使い続け古びたものと同じカップ。亡き妻が出会った頃に買ってくれたものだった。
カップの内側の一枚のメモを見て老主人は驚く。

「お誕生日おめでとう」

女が書いたのだろうか、美しい文字で綴られていた。
自分でも忘れていた誕生日を何故女が知っているのか。そんな話を女とした覚えはなかった。
親も兄弟も妻もいない老主人の誕生日を知る者は誰もいないはずだった。
喧嘩別れした息子を除いて。
老主人のカップを知る者。
誕生日を知る者。
老主人ははっとした。
懐かしさを覚える若い女、誕生日、カップ、息子。
全てが一本に繋がった。
しかし老主人はそれを言及しようとはしなかった。
そして女はまたいつものように店を訪れる。
小さな店内に老人と女。
以前と変わらぬそこには新しく家族の温もりが溢れていた。


保守
164名無しさん@ピンキー:2009/01/12(月) 15:33:10 ID:lGJZfTkf
良保守
165名無しさん@ピンキー:2009/01/12(月) 21:47:11 ID:4TQyFm8J
???
女の正体って亡き妻の幽霊?
それとも息子がニューハーフになったのか・・・?
166名無しさん@ピンキー:2009/01/12(月) 21:56:10 ID:3NlwEI2j
こういうのを言うのは野暮かも試練が、喧嘩別れした息子の娘(つまり孫)だろ。
血が繋がってるから爺さんの亡くなった嫁さんに似てる。
167名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 23:44:02 ID:F+KgninH
風邪をひきました
全裸は辛いです
168名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 23:54:00 ID:Sg4TZTvF
>>167
紳士ならネクタイくらいしとけ
あとハンカチも忘れずにな
169名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 00:26:08 ID:vfH4jBHs
乳首に絆創膏貼るといいよ。
170名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 01:06:30 ID:wXvoIbgC
もちろん股間にもな。
で、羞恥で潤んだ目で「これでいい?」みたいな感じに見つめてくるのがジャスティス!!



……無口っ娘の話ですよ?
171名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 11:15:15 ID:sk819ig+
なるほど、乳首と股間に絆創膏を貼った無口な女の子か


胸は薄く、割れ目は絆創膏で隠れる程の未成熟な女の子だな?
172名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 17:29:14 ID:a2fBmjyI
あえて薬用湿布では駄目なの?
173名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 22:02:04 ID:90+UXEDb
乳首はともかく股間に貼るのはまずいと思う
174名無しさん@ピンキー:2009/01/14(水) 22:23:05 ID:Z5Y/9d5G
なんだこの流れww
じゃあ俺はこれを無口っ娘に授けよう
つ冷えピタ
175名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 09:04:59 ID:8Ws4x6cK
つ貼るホッカイロ
176名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 17:01:33 ID:m78uNCSC
「・・・・新感覚」
177名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 20:03:17 ID:2lzXM1Ws
「………お股が……熱いの…」
「ホッカイロは肌に直接貼っちゃいけません」
俺の恋人、有紀はもう高校生だというのに小学生のような体型をしている。
人形のように整った顔立ちと、長いストレートの黒髪が印象的な華奢な恋人。
黙っていれば非の打ち所がない(胸などの発達具合以外)美少女だが、
さらに内面まで完璧という男に都合の良い女がそうそういるはずもなく。
有紀は授業で指されても喋らないほどの無口であり、そして天然が入った女の子だった。

くいくい、くいくいくい。

授業が終わると、制服の袖を少し多めに引かれる。
振り返ると有紀がじっとこっちを見上げていた。
多めに袖を引かれること。それは今日は家に来て欲しいという合図だった。
了解を示す首肯を返すと、有紀も真面目な顔つきでコクリと肯く。

帰宅の準備を済ませると、手を繋いで有紀の家に向かうことにする。
ちなみに相手から繋いでくれないので、毎回自分から強引に有紀の手を握ってる。
そして有紀は毎回ビックリしたような顔をわざわざ俺に見せてから、されるがままになる。
な、なんだよそのリアクション。いーじゃん恋人なんだしと、毎回少し慌てているのは秘密だ。

無口な彼女を持つと、二人っきりの時は結構無口になってしまうのだなあ。
それが最近発見した自分への発見だった。
というか喋りすぎると手を思いっきり握られて遺憾の意を表明される。
今では特に必要な会話以外はあまりしない。なんだかちょっと悲しいのは秘密だ。

でも、じゃあ険悪なのかというと、これが案外そうじゃなかった。
ゆっくり歩く彼女のリズムに合わせていると、普段気付かない発見があったりする。
黙って歩いていると周囲の音や景色がクリアになって、新鮮なものに映ったり。
そして、そんな中で彼女の横顔を見ると、なんだかひどくドキドキしてしまったり。
惚れた弱みといえばそれまでなのかも知れないが、なんだか現状に馴染んでしまってもいた。

そんなこんなで有紀の家に到着。
庭で吠えてるペットのゴンザを一瞥してシュンとさせると、有紀は俺をリビングに招いた。
電気ポットとティーバッグと砂糖を指差してから、自分の部屋に着替えに行ってしまう。
お茶菓子が欲しいなァ、と思いながら自分で淹れた紅茶をすする。いつものことだ。ほろり。
空腹に熱い紅茶がしみる。二杯目の紅茶が残り僅かになったとき、スリッパを鳴らして有紀が現れた。

「斬新なスタイルを考えてみた」

ずっと一緒にいたというのに、久しぶりに聞く声。透きとおるような声。くそう心の奥が震えるぜ。
というか彼女の格好は確かに驚きで、ブラを着けない子供が着るような、スリップ一枚だった。
斬新かどうかはさておいて、高校生男子にはエロすぎる格好です。本当にありがとうございました。
キャミソールくらい薄いワンピースみたいな、細い肩紐から太ももの半ばまでの白い袖無し服。
細い手足の肌の白さと、光の輪を浮かばせる黒髪とのコントラストが美しいったらない。

思わず見惚れていると、有紀はサラッとした素材のレース付きのスリップをスルッと脱いだ。
肩紐が左右に外されると、シュルシュルと肌を撫でるようにしてスリッパ履きの素足の上に落ちる。
そこから現れたのは、両方の乳首と、ぴっちりした縦スジに絆創膏を貼っただけの裸体だった。
お腹に両手を当てている有紀は、身体を少し捻るだけのポーズを取り、小首を傾げて見上げてくる。

「……斬新?」

全裸より恥ずかしい姿を晒す恋人に、俺は思わず熊が襲い掛かるときのようなポーズを取ってしまう。
ヤバイ。ナニコレカワイスギル。エロイ。ペタンコ胸ノ絆創膏エロイ。突ツキタイ。連打シタイ。剥ガシタイ。
そんな気持ちをググッと抑えて直立不動になると、天井を見上げながら深く息を吐いてリラックスする。
「うん斬新。すげー可愛い。マジで。でも外で絶対しないでくれ。それと、風邪引くんじゃない?」

辛うじて寸評をすると、挙動不審な行動をツッコまない出来た彼女は、お腹に当てた手を開いた。
大好きなほっそりとしたくびれの中央に、白い小さな四角が張ってある。貼るホッカイロ。

「対策は万全」

エッヘンと、貼るホッカイロと絆創膏しか着て(?)いないお腹をクイッと突き出すように張る。
フフ、と笑う有紀のお腹に貼られた小さめタイプの貼るホッカイロを

「そぉい!!」

俺は慌ててベリッと引き剥がした。短いながらもぺりぺりとした震動が指先に伝わってくる。
ホッカイロを剥がされた締まったお腹の柔肌がぷるるっと震えて、なんともエロかった。
その下にちょこんと鎮座している絆創膏に目が行ってしかたない。もう本当に犯したいんですが。
お腹のあたりが寒くなり、不満げに眉根を寄せて俺を睨む有紀。

「肌に直接貼っちゃダメだ。低温火傷するかもって説明書きがあっただろ?」

小さな四角をヒラヒラさせながら言うと、有紀は少し首を傾げてからポンと手を打った。
どうやら思い出したらしい。まったく、低温火傷は詳しくないけど、痕でも残ったらどーすんだ。
ちょっとシュンとする有紀。励まそうと頭を撫でたら、ペチッと手で振り払われた。軽く傷付く。
頭撫でられるの嫌いなんだよな。今なら行けると思ったんだけど。撫でやすい位置にあるのに勿体無い。

「反省してる?」
「次から注意する」

ちょっとお互いにムッとした口調で言い合う。ちなみに俺は制服姿。有紀は全裸に絆創膏三枚だ。
あーちくしょう可愛い。黒髪をさらっと揺らして表情を隠して横顔を俯かせる姿とか最高すぎる。
俺は有紀の頬に手を当てて自分を見上げさせると、赤くて薄いその唇に吸い付いた。
肩と腰に手を回し、チュパチュパと、なんかこう赤身の刺身みたいな唇の感触を楽しむ。

唇を離すと相変わらずムッとした有紀の表情。そんな顔も可愛いから始末に終えない。
俺は有紀の脇の下からウエストラインまでを両手でゆっくり撫でながら降参した。

「ゴメン、我慢できない。超好きマジで。エッチさせてください」
「……イ」

「ヤ」の言葉をキスで塞いだ。有紀の身体から力が抜けるまでずっとずっと舌を絡める。
有紀が諦めたように舌を絡めはじめ、お互いに求め合うようになるまで三分くらいはかかった。

しかし、その後すんなりセックス出来たかというとそうはならなかった。
むしろ落ち着いた後で怒られて、ぺちぺちしたローキックと膝蹴りと頬っぺたむにむにの刑を食らう。
ごめんなさい。調子こいてました。ジゴロっぽいなし崩しセックスとか無理でした。許してください。
頭を下げると少ししてから撫でられた。頭撫でるの好きなんだよなコイツ。許して貰えたようでなによりです。

全裸絆創膏が気に入った有紀は、暫くその姿で過ごしたいと無言で示し、二人で家の中を散歩した。
なんというか、露出プレイというか、雌犬散歩プレイというか、そんなビジュアルで時を過ごす。
ときどき、絆創膏の上から有紀の小さな乳首を突付いたが、少し感じるだけでそれ以上させてはくれない。

たっぷり一時間くらいだろうか。背徳的な興奮に少しイキイキとした有紀との時間を勃起状態で満喫する。
ベッドの上で剥がす許可が出るまでモヤモヤさせられた俺は、自分が散歩されられた気分になった。
天然って凄いなあ、っていうお話でした。おしまい。


あ、階段上るときはお尻の穴が見えるのが恥ずかしくて俺を先行させてたのが可愛かったです。
お尻を両手で隠す仕草をした時、身体の前が無防備になって、なだらか雪原を見放題でした。おしまい。
以上です。ありがとうございました。
フフフ、やってくれた喃、やってくれた喃>>177
無口娘って難しい。表現力の無さに気付かされて困る。
181名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 20:46:47 ID:pTCgTWqI
ひょえええええええええ
なんたるGJ!!!!!
俺ロリコン趣味ないはずなのに・・・悔しい・・・w
182名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 21:14:00 ID:VFSZ2Qsy
この流れで誰か書いてくれるかなと期待していたが本当に書いてくれたーGJ
でも俺の冷えピタは反映されなかったな…
183名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 23:26:36 ID:Tb4w2mwQ
>>182
とりあえずこれで頭冷やしてろ

つ 冷えピタ
184名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 01:26:12 ID:i3CKXT/d
>>180
あなたはものすごく変態で異常でイカれててイカした天才などえらい奴です。
判りやすく言うとGJです。
185名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 02:18:33 ID:bNO3jhMf
GJ!絆創膏GJ!
186名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 13:00:14 ID:sVOl2HyY
両方採用されてて>>171>>177の俺大歓喜
187名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 18:22:11 ID:f8PbY/Fu
>>175の俺も歓喜。
目頭が熱くなってきたよ……ホッカイロだけに。
188名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 18:25:46 ID:Y0j9jbx+
>>178は天才だな
189アンドリュー家のメイド(無口なドジッ娘):2009/01/16(金) 23:09:25 ID:0Bl7n2cG
それはお風呂に入ろうとしてパンツを脱ごうとした時だった。

――ガゴンッ

(頭、打った……)
頭を押さえて涙ぐむ。

「……痛い」

片足を上げた際にバランスを崩して壁にぶつかったのだ。
(……我ながら何と言うドジ)

――ガラッ

一人反省してると脱衣所の扉が開く。

「どうかしたのですか?」

そこにいたのは先輩のメイドだ。たまたま近くにいた所、私の頭をぶつける音を聞きつけたのだろう。
ぶつけた頭をみせる。

「頭をぶつけたのですか」

コクッと頷く。そして頭を下げる。
(ご心配かけて申し訳ありません)
心の中で謝る。喋るのは苦手だ。

「はい」

先輩が私の顔を上げさせるとバンドエードを出して優しく貼ってくれる。

「これで良し」

ついでに『痛いの痛いの飛んでいけ〜』と頭を撫でてくれる。
(先輩、優しい)
これがメイドの仲間(妹)なんかだと100%笑われてる。

「あっ! よく考えたら湿布のほうがいいかしら?」

バンドエードを剥がし今度は湿布を貼ってくれる。確かに打ち身には湿布のほうがいいかもしれない。
ヒンヤリとした感触が痛みを和らげてくれる。

「……いい感じ」
190アンドリュー家のメイド(無口なドジッ娘):2009/01/16(金) 23:10:33 ID:0Bl7n2cG
――と、そこで気付く。
(私、裸……)
顔が赤くなる。パンツも履いてない上、先輩が脱衣所の扉を開けたままだ。

「? もしかしてのぼせた?」

顔の赤い私を見て先輩がそんなことを言う。
『いえ、まだお風呂に入ってません』とか『恥ずかしいからです』とか言う間もなく今度は冷えピタを出す。

「はい」

冷えピタは火照った顔を冷ましてくれるけど恥ずかしさは消えない。
それになんだか――

「……クシュ……」

くしゃみが出た。いつまでも裸でいた上におでこを冷やしたせいだろうか?

「あら、いけない」

今度はおもむろにホッカイロを貼ってくれる。
どうでもいいけど色々と何処に持ってるんですか?
そう思いながら冷えた身体に直に貼ってくれる。冷えた身体に暖かい、なんか変な感じだ。

「……新感覚」

――でも

「……熱い」

なんかヒリヒリする。
191アンドリュー家のメイド(無口なドジッ娘):2009/01/16(金) 23:11:27 ID:0Bl7n2cG
「というか、ホッカイロは肌に直接貼っちゃいかんだろう」

「!?」

急に横から声を挟まれ、ビックリする。

「あら、ご主人様。どうしたんですか?」

まったく動じない先輩の言う通り、そこに居たのはご主人様だ。

「いや、それはこっちの台詞だ。どうしたんだ」
と、私に視線を向ける。
「裸で」

「!!?」

(……わ、私…今…裸)
今更ながら慌てる。ご主人様には何度も見せたことがあるとはいえ異性の前ではさすがに恥ずかしい。
私はご主人様に会釈すると慌てて浴室に走り――コテッ――転んだ。

「まぁ、大変!?」

慌てて先輩が『大丈夫?』と起こしてくれる。

「気をつけてね」

(な、何度もすみません)
先輩に頭を下げる。
そして、再び逃げるように浴室に駆け込むのだった。
192名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 23:18:54 ID:0Bl7n2cG
私もとりあえず書いてみた。
なんかお題が沢山あると難しい。技量不足です。
193名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 02:38:14 ID:IN5Tesm5
まさかベタベタ貼られるプレイに目覚めてしまうのか
194名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 18:53:06 ID:n7LRuMmQ
いいねいいねGJ
で、もう終わりなのかい?
195名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 22:11:34 ID:h9G6FCaP
GJ!
続きwktk
196名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 00:44:59 ID:juM8GCIB
アンドリューとメイドって言うと、甘えスレの人だろうか?
197名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 05:00:30 ID:9XlXyKOt
そうですよ。なんかメイドネタがまた浮かんだのでタイトルだけで繋げただけですが。


それにしてもお題をいれてメイドがこけただけで自分的に勝手に満足してたんですが、皆さんが物足りない感じなので続きを書いてみますね。
198名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 01:35:35 ID:Oy6E1UVI
ということで続きを投下します。

※アナル注意

題名は変わらず『アンドリュー家のメイド(無口なドジッ娘)』です。
199アンドリュー家のメイド(無口なドジッ娘):2009/01/19(月) 01:36:41 ID:Oy6E1UVI
「ふぅ……」

お湯に浸かり人心地つく。やはり、お風呂は好きだ。気持ちが安らいで身体の冷えを溶かしてくれる……
(ついでにさっきの失敗も溶かしてくれたらいいのに……)
お湯を手でちゃぷちゃぷしながらそう思う。
私のドジはいつものことだがさっきのアレは――

「うぅ〜〜〜」

思わず唸る。恥ずかしい。まあ、転ぶのも裸を見られるのもいつもの事だが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
それに裸に色々と貼っていたのは我ながらどうかと思う。
(ご主人様、変なふうに思ってないといいんだけど……)
心配だ。流されるままにペタペタ貼られていた私が悪いんだけど。

――ガラガラ

そんなこと考えていると浴室の扉が開いた。
(? 誰だろう?)
今、休憩中なのは私だけのはずだが?
(先輩かな?)
まだ仕事中だろうがご主人様もいたし一言断って休憩にしたのかもしれない。かなりマイペースな人だし。
そう思ってると――

「よう。暖ったまってるか?」

予想外の声がした。思わず立ち上がる。

「ご、ごしゅ……ひ…んっ!!」

突然、現れたご主人様に驚いて思わず舌を噛んでしまった。

「っ〜〜〜〜」
「おい、おい、大丈夫か?」

じゃぶじゃぶとお湯を掻き分けてご主人様が近付いてくる。
いや、大丈夫だけど。そんなことより――

「〜〜〜〜!?」
(なんでお風呂に入って来るんですか!? それにここはメイド用ですよ!?)
声にならない声をだし、ジェスチャーで抗議する。
すると私の心の声は伝わったらしく、ご主人様が答えてくれる。

「いや、なんか風呂場でも転びそうで心配だから……」

耳に痛いお言葉だ。
「!……で、でも、」
『でも、お風呂くらい一人で入れます』と言おうとし――ツルッと
「おおっと」

滑った所をご主人様に支えられる。

「…………」

(今日の私はご主人様とお風呂に入る運命にあるらしい……)
そう思うことにする。今の私が何を言っても説得力がない。

「ほら、一緒に入ろう」
200アンドリュー家のメイド(無口なドジッ娘):2009/01/19(月) 01:37:56 ID:Oy6E1UVI
(の、のぼせる……)
僅か数分、私はもう限界だった。
お風呂は適温なんだがご主人様に後ろから抱っこされて膝の上に乗せられいているのがいけない。心臓がバクバクいってる。
(と、とりあえず身体でも洗おう)
このままでは身体がもたない。ご主人様と一時、離れるべきだ。

「か、身体、洗ってきます」

「? もう身体を洗うのか? なら、洗ってやろう」

私がお湯から上がろうとするとそう言われた。
『い、いいです!!』思わずそう言いかけるが咄嗟に止める。ご主人様からメイドにしてくれるというものを断るのは失礼だ。
なすすべもたなく手を引かれていく。

「よいしょ、っと」

そのまま湯舟から出て洗い場の椅子に座らされる。
ご主人様が正面に座り、ボディソープを手の平で泡立てる。
(タオルとか使わないのだろうか?)
そう思いながらご主人様を見るとなんか顔がニヤけていて嬉しそうだ。
ご主人様を見る目をジトッとしたものに変える。

「なんだ?」
「……えっち」

洗うと言うのは名目で本当はエッチなことをしたいのではないか。

「まあな」

『……はぁ』と軽くため息をつく。まあ、ご主人様のご希望ならしかたない。恥ずかしくても我慢しよう。
……ご主人様にされるの気持ちいいし。

「いや、別に無理にとは言わないぞ」

私のため息を別の意味に受け止めたのかそんなことを言う。
ブンブンと首を横に振る。基本的にご主人様のしたいことに逆らうメイドはこの家には居ない。
みんな――私を含めてご主人様のことが大好きだから。
201アンドリュー家のメイド(無口なドジッ娘):2009/01/19(月) 01:42:48 ID:Oy6E1UVI
「いいなら、洗うぞ」

そう言って、泡立てた手を私のお腹にあてる。
ぬるぬるしたご主人様の指はいつもと違う感じがする。

「……んっ」

でも気持ちいいのは変わらない。思わず声がでる。
普段の愛撫と違い、手の先から足の先まで隅々まで優しくゴシゴシされる。

「……あっ……んんっ……」

胸がふにふにと胸を揉まれ、にゅるりとした感覚に包まれる。なんかちょっと変な感じだ。

「こっちも」
「……あぅ!?」

アソコも弄られ、そのまま割れ目をクニクニ洗われる。

「……んんっ」

ご主人様にクニクニと弄られてると私の中から蜜が溢れてくるのがわかる。感じてきたみたいだ。
それで滑りが良くなったのかご主人様の指は更に奥に進みクチャクチャと洗っていく。

「……んっ……ふぁ……あん」

気持ちいい。甘い感覚に身体が支配されていく――
202アンドリュー家のメイド(無口なドジッ娘):2009/01/19(月) 01:43:39 ID:Oy6E1UVI
「!!?」

そのままご主人様に身を任せようとしたらとんでもない所を触られた。
(ご、ご主人様、何処、触って……)
手をわたわたさせてご主人様に抗議する。

「いや、ここも綺麗にしとかないとな」

しれっと言う。ご主人様が触った場所は私の後ろの穴――『アナル』とご主人様には教えられた場所だ。

「……じ、自分で」
「ダメ」

せめてそこは自分で洗いたかったが即座に却下される。
そして皺の一枚つづを擦るように洗われる。
更に泡を沢山塗られて弄られ指を浅く入れられる。

「……やぁ……ん……あぅん」

でも大好きなご主人様に弄られているせいか嫌悪感は薄く、前と一緒に弄られているうちに段々と快感が増してくる。
(……んんっ……気持ち…い…い……かも?)
そのままねっとりと責められる。
ご主人様の左手が前の穴を縦になぞるように右手が後ろ穴を回すように弄りたおす。
そして前後の穴を弄られて高ぶったところで最後に割れ目の中の蕾を摘まれる。

「……ひぅん……あっ……んんうぅっっ!!」

一番感じるソコを弄られ、ビクッと衝撃を受ける。そして甘美な感覚が全身に広がり、一気に脱力していく。

「……はぁ、はぁ」

ご主人様がカクッと力の抜けた私を優しく抱きしめてくれる。

「それじゃあ、続きはお風呂を出てからな?」

ご主人様は私の耳元にそう優しく囁いた。

―――――――――――

私は結局この後、お風呂に入り直すことになる。共にベタベタになった先輩と一緒に……
203名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 01:47:30 ID:Oy6E1UVI
以上、終わり。
204名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 03:09:25 ID:4AQWX20f
GJ!!!!

だがベタベタになった経緯もkwsk!w
205名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 23:20:45 ID:E6UH35vr
先輩も一緒にとはご主人様もなかなかやりますねww
206名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 17:55:51 ID:MY4JJ4BR
661 :仕様書無しさん:2009/01/15(木) 23:06:22
会社の飲み会の時に、すごい美人なんだけどどうしようもないほど無口な女が、俺の前にあった唐揚げを
「一個ちょうだい」って言ってきたので、
酔ってたこともあってふざけて唐揚げを俺の口に挟んで
「はい」
って差し出したら、その女が無言で顔寄せて口で受け取っていって(唇は触れていない)
俺含めその場にいる奴全員固まった。

だいぶ間があって、上司が開口一番
「お前らデキてたのかよ!ぜんっぜん気付かなかった!」と言ったら、
どわーっと全員大盛り上がりで話題独占。
その後俺も2次会に行こうとしたのに、「若い二人の邪魔しちゃなんねえからw」とか言われて、二人で放り出される始末。

その女に「ごめん、どうする?」って聞いたら、
「どうするって?さっきのは求愛行動でしょ?わたしはちゃんとOKの意思表示したわよ。」
って言われてビックリした。今年はたぶんこういうことがある気がしてしょうがない。



これはwww
207名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 01:29:13 ID:/V/yaQhM
ヴェルタースオリジナルのコピペ思い出した
208名無しさん@ピンキー:2009/01/21(水) 02:29:06 ID:mdIOdT0M
>>206
無口素クールwwww
209名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 22:38:19 ID:ExoAfIKM
う、羨ましいよ〜。
210名無しさん@ピンキー:2009/01/23(金) 08:14:05 ID:1VVtvc+4
無口
無愛想
無乳
211名無しさん@ピンキー:2009/01/23(金) 09:08:26 ID:KqK37y9p
無口な子のほっぺをむにゅーって引っ張って、「………………なに?」とかジト目で言われたい。
212名無しさん@ピンキー:2009/01/23(金) 09:31:11 ID:QaQZOTPu
>>211
彼女の頬を摘まむ。柔らかな頬の感触は手に心地良いが、浸ることなくそのまま無造作に横に引っ張る。
彼女の頬はとても良く延びた、例えるならそう。お餅くらい……は言い過ぎか。
>>211はどこか満足そうな表情を浮かべながら、誰に向けるでもない頷きを見せる
「……なに?」
しかしだ、読書の途中で邪魔をされた彼女は相当ご立腹のようだ、まるで敵を見るかのような目でジトリ睨み付けてくる。


ここから先は紙が破れて読めない
213名無しさん@ピンキー:2009/01/23(金) 09:33:23 ID:Jndf5TZT
きっと引っ張られたせいで口の端からよだれが垂れてしまって真っ赤になったんだな。
それでキッと睨んでビンタ。紙を破ってスタスタと立ち去ったに違いない。ハァハァ。
214名無しさん@ピンキー:2009/01/23(金) 21:48:01 ID:l6DW71NN
>>211
ほっぺと二の腕の柔らかさはおっぱいに通じるものがある。

さあさあ、むにむにと摘んで揉んでさすってみたまえ、そしてなm
215名無しさん@ピンキー:2009/01/25(日) 00:14:19 ID:D8BkVIw2
ふにふに
「…………」
ぷにぷに
「……むぅ…」
もにょもにょ
「……い、やっ…」
ぺろぺろ
「………あッ、ん…」
216名無しさん@ピンキー:2009/01/25(日) 01:10:01 ID:betooKON
「…顔……ベタベタ……どうしてくれるの…?」
217名無しさん@ピンキー:2009/01/25(日) 09:44:26 ID:WYVEm8OF
焦ると饒舌になる無口っ娘にバレンタインデーについて質問してみたい
218名無しさん@ピンキー:2009/01/26(月) 00:42:35 ID:O4e/xmpR
無口っ娘は猫が似合う。
219名無しさん@ピンキー:2009/01/26(月) 00:48:58 ID:N436EUqP
ところで俺がまだネクタイとハンカチ以外全裸な理由誰か知らない?
俺なにか大切なものを待ってた気がするんだ…
220名無しさん@ピンキー:2009/01/26(月) 20:25:49 ID:BX1VEdQ7
>>219
ハンカチを結びつけると思い出すかもしれないよ
どこにかは言わないけど
221名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 00:29:26 ID:bjDWzL6N
手…無口娘に傷を手当てしてもらった事実
首…浮気がばれて無口娘に締められた失敗談
髪…昼寝しているときに無口娘にいたずらで髪を結ばれた思い出
足…隣の席の無口娘と二人三脚で仲が深まった過去
ちn(ry)…Sな無口娘に発射を我慢させられた体験


うん身に覚えはないが、心当たりはこんなもん。
222名無しさん@ピンキー:2009/01/29(木) 00:21:58 ID:jH7lyLMd
無口な子の耳たぶをはむはむして、悩ましげな声で悶えさせたい。
223名無しさん@ピンキー:2009/01/29(木) 22:40:15 ID:wmrAre6q
何で、無口な女の子とメールすると、普通…を使わないところで…使うんだろうな…

これが普通の無口な女の子なのか?
224名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 09:18:26 ID:X3G91tOs
何…だと…
225名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 19:10:18 ID:ZQncmZ0d
どう…して… とかも?
226名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 19:26:08 ID:xNdoEVOE
>>225
それは最初の方にあったけど、今じゃないな
227名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 00:01:21 ID:GRMJsGGX
無口さんとメールしてるとはなんて裏山…
228名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 02:04:11 ID:cGXOjPQJ
てへっ☆あなたの雪ちゃんだよー☆
「あなたの」だなんてキャー恥ずかしー(*//////////////ー//////////////*)ボッ
今日はダーリンに手繋いでもらえて雪超ハッピー☆
ちょっと濡れちゃった!あのまま手を引っ張られて怪しいとこにつれてかれても
きっとたぶん全然抵抗できなかったよー^^v
でもダーリンはそんなことする人じゃないもんね☆ちょっとだけ残念カモー(*^^*)ポッ






というメールが来たのだが
普段無口で無表情でおとなしいアイツのメールで間違いないだろうか
アドレスはたしかに雪のなのだが、正直ギャップがありすぎて腰が抜けそうだ
229名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 16:33:39 ID:pyu0NFBy
>>228
詳しく話を聴こうじゃないか
230名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 22:24:35 ID:0CD5ip7D
昔、百鬼夜行というテーブルトークRPGがあって、そのメディア展開のなかに小説があってな。

そこに登場する文庫妖妃っつー妖怪が、まさにそんな感じの「普段は内気系無口、ネットだと
超ハイテンション」だった。
231名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 22:58:10 ID:+JoIavVs
ココの住人に「森田さんは無口」(佐野妙・作)という4コマを勧めたい
232名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 23:03:42 ID:h0TJ88+z
連載開始から時々話題にのぼってたような…森田さん
233名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 01:44:28 ID:r2j8Z+D4
つか>>148の続きはまだッスか。
234これでデレたら素直クールなのだが:2009/02/01(日) 17:25:32 ID:WaQYH6lx
>>148ではありませんが……
時節ネタのラッシュに備え、一番乗りさせていただきます。非エロ


黒褐色の生地にナイフが入り、丁度良い大きさに切り分けられて行く。
漂うアーモンドの甘い香り。
湯気が立ち上る焼きたてのスポンジが、添えられたホイップクリームと共に、先輩の口元に運ばれる。
ちなみに生クリームでなくホイップクリームなのは予算の都合もあるが、何より濃厚なケーキ本体のしつこさを中和するためだ。
ゆっくりと噛み締め、味わう彼女。
その単純な作業を延々と繰り返す。
俺はその様子を眺めながら、ぬるくなりかけているコーヒーを喉に流した。
手持ちぶさた故の倦怠感と、評価を待つ間の緊張感。
先輩はいつもと変わりない。
俺の無遠慮な視線をものともせず、黙々と口を動かす。
長い黒髪を一つにまとめた鋭い美貌の美少女。
背筋をピンと伸ばし、寸分の隙もなく、上品ながら凄まじい健啖振りを見せる。
たっぷり15分かけ、6カット=17cm型の半ホール分のケーキを平らげた先輩は、ナプキンで口元を拭いながら、こう言い放った。
「70点」
2月某日。
休日を一日潰して作った苦心の作品に下された判決は、無情なものだった。
「自信、あったんですがね」
苦笑しながら俺も一切れ食べてみる。
自慢ではないが、専門店のそれには及ばないものの、そこらの量産品よりはよほど出来が良いと思う。
正直、何が彼女のお気に召さないのかが判らない。
伺うような視線を投げかけても、先輩はすまし顔で冷めたコーヒーをすするばかり。
いつもそうだ。
時々ふらりと家を訪ねては、俺にお菓子の注文をして、その殆どを胃袋に収め、点数だけ付けて帰っていく。
彼女の評価は信用している。
先輩の焼いた菓子を何度かご馳走になったこともあるが、俺に厳しい評価を下すだけのことはあり、かなりの出来ばえだった。
どうせ殆ど食べるのだから、彼女が作ったほうが早いとも思う。
個人的に先輩には日ごろお世話になっているので、見返り云々を言うつもりはない。材料費は向こう持ちだし。
しかし、今後の精進の為にも、数字以外の具体的なアドバイスがあってもいいんじゃないか。
空になったカップに、サイフォンからあがった新しいコーヒーを注いでやりながら、俺はそんな事を考えていた。
俺の胸中を悟ったのか、彼女は突然傍らに置いてあった野暮ったい男物の鞄の中を探ると、アルミホイルの包みを取り出す。
先輩が包みを解くと、中から黒褐色の塊が出てきた。
235これでデレたら素直クールなのだが:2009/02/01(日) 17:26:53 ID:WaQYH6lx
「これは?」
差し出されたそれを受け取って、戸惑う。
「80点の作例だ」
食ってみろ、ということか。
俺が先程焼いたのと同じもの、南仏風ガトーショコラを皿に据える。
外観は俺のものと殆ど差は無い。
当然のことながら冷め切っているケーキを一口大に切り分ける。
香りは悪くない。
「フム」
問題は味だ。
俺は一塊を口に入れる。
瞬間、口の中が爆発した。
「これは……ッ!」
生地が口の中でとろける。
それでいて噛み応え、食い応えがあり、軽さは感じられない。
濃厚ながら甘過ぎずしつこ過ぎず、これだけで満足できる様になっている。
咥内に広がる香ばしいアーモンドの風味。
真空パックの既成アーモンドパウダーでなく、丸ごとのアーモンドを挽いて作らない限り出せない味わいだ。
そして、気泡のきめが細かい割にしっかりしているので、底部でも自重に潰されておらず、上部と均一になっている。
「なんと言う美味……! 柔らかくしっとりとしていながら、フォークを入れても崩れず、表層はサクサク……!
アーモンド粉の新鮮さと香ばしさを両立させる絶妙の焼き加減……! パーフェクトだ……ッ!
これはまさに頬が落ちる美味しさ……ッ!!」
思わず、俺は席を立ち頬を押さえて絶叫を上げていた。
我に返ると先輩の冷ややかな視線を意識し、顔を赤らめつつ席に戻って残りを頂く。
うん、やはり美味しい。
これ一切れで、今日がんばった分に十分見合う。
「マジで旨いですよ、これ。俺的には100点満点です。
これと比べると俺のなんて豚の餌……は、言い過ぎにしても、明らかに見劣りがするのは判ります。
配合、泡立て、焼成の全部、文句の付けようがありません。
材料同じなんでしょう? 先輩ん家オーヴン普通のだし、何が違うんでしょうね。
やっぱり腕か。腕の違いか。
俺ももっと精進しないとなー」
「そうか」
俺の長い感想を一言で切って捨てると、先輩はコーヒーカップを傾ける。
いつもの仏頂面が、ほんの少しだけ崩れているような気がした。

結局。
それが先輩からのバレンタインチョコであったのに気が付いたのは、彼女が帰ってから2時間後のことだった。
236これでデレたら素直クールなのだが:2009/02/01(日) 17:37:51 ID:WaQYH6lx
以上です。短いです。
長いの書こうとしたら無口娘が殺っちゃう話を書いていました。特撮系板にブチ込みました。
男さんにデレる素直な無口娘の話を書くにはどうしたらよいのでしょう。
237名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 19:06:48 ID:FtTn+37H
>>236
gj

これ見たらチョコケーキ食いたくなって買ってきてしまったよ…
238名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 22:35:15 ID:ePaqLEIa
うん
239名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 01:21:48 ID:FQPeXVXH
>>236
gj
男になにかを要求したりさせればデレてるように見えるんじゃないかなー
抱擁、なでなで、キス、明日も会うこと、ずっと傍にいること、etc
240名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 01:35:42 ID:Ts4WZPrH
>>236
とりあえず、無言で男の裾をぎゅっとつまむ無口娘をイメージしろ。
イメージできたか?
あとは、二人はどういう関係なのかとか裾をつかんで娘は何を男求めてるのか
とか、そのイメージを膨らませろ。
241名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 01:37:00 ID:MYaleYDr
>>236
GJ!!!
なんだが>>234の一行目はもしや14日以前に続きがこないということだろうか
ずっと全裸にネクタイとハンカチとなんだけど・・・
242名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 01:40:37 ID:ia293nU3
いや、本人じゃないっていう断りだろw
243名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 02:24:01 ID:6q8xP1lD
>>236
この無口さんの場合は無理にデレさせるより彼にしか分からない範囲という限定付で普段の無口さんとは違う部分の描写を増やす方が自分には最強。
244名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 12:56:43 ID:FHgDPXuo
>>236
GJ
締めの文がとても良い
245名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 23:56:50 ID:ppw4vX2W
無口さんからチョコをもらうなら?
1ちゃんと向かい合って渡される
2手紙付きでポストに入っている
3気付いたら自分のポケットに入っている
4無口さんの家でチョコレートフォンデュ
5無口さんの体がチョコレートコーティング
246名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 01:58:09 ID:xbPPtfKA
>>245の無口さんが野口さんに見えたせいで
ちびまる子のあのキャラしか浮かんでこないw
247名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 06:15:27 ID:1WimwvMF
おっぱい型チョコを公衆の面前で天然系無口に渡されたい
248名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 07:04:30 ID:0V3QZj7i
残念! ぺったんこだった!
249名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 09:35:08 ID:6PgLJmsA
「……これ」
「ん? あぁ、チョコ? ありがと。 大事に食べるよ」
「(顔を真っ赤にしながら)…………私だと……思って食べて」
「??」

家に帰って

「あれ? なんだろ、妙に薄い上に、へんな突起があるんだけど……。
 ん? これは、メッセージカード?」
『私のおっぱいで型どりしてみました。
 私だと思って存分にむしゃぶりついて下さい』
「なんじゃそりゃぁぁぁ!」

結局、突起部分をなめなめしながらおいしく頂きました。
後日、あのチョコをくれた幼なじみもおいしく(ry

ていう電波ゆんゆん
まだ早い! まだ早い!
すまん、まだ早い!
250名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 10:54:19 ID:mjongScz
>>247
俺が想像したのは、むき出しで渡して

男「……あの……これ……(大汗)」
周囲「( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` ) 」
女「おっぱいが好きって……言ってたから……」
周囲「( `д)ヒソ(`д´)ヒソ(д´ )!」
男「ちょwwwwwwwおまwwwwwwwww」

少ない口数が悪意なくピンポイントで男を追い込む、みたいなー。。
251名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 19:51:03 ID:Qt+mHFp5
超亀レスだけど懐かしさのあまり

文車妖妃のふみちゃんか
本気で怒らせるとヤバい、メールがヒドい
しかし対面すると喋るどころか目も合わせられない
あれはいいキャラだった・・・
252名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 19:52:04 ID:AAl00g+P
二回目のヒソヒソから殺意を感じるんだがwwww
253名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 19:52:20 ID:l72A0Qzw
妖という字とその後の文章でマリオに出てくるテレサを連想したのはきっと俺だけ
254名無しさん@ピンキー:2009/02/08(日) 18:09:40 ID:+IfPU/zP
……ほしゅ
255名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 02:08:41 ID:SjJOOTUr
…ほしゅ
256名無しさん@ピンキー:2009/02/09(月) 17:02:04 ID:Gi02Se1F
たまには上げるか
257名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 06:28:59 ID:/FwXzkMZ
・熱血系無口
・お嬢様系無口
・高飛車系無口
258名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 10:50:40 ID:g5Dx65wv
>>257
全部想像できん。
具体例を挙げてくれ(´・ω・`)
259名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 16:01:37 ID:xeBOO8SH
ツイ
「はい、鞄ですね。お持ちします」
「……」
「ああすみません、椅子、おひきします」
スッ
「……」
「手?エスコートしろと?……はい、かしこまりました…」

「何やってんだ?あいつら」
「今朝寝坊したから罰として一日執事だとよ」




お嬢様系無口と聞いてこんな電波を受信
260名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 19:15:01 ID:aMbgsDvW
このスレって病気とかで先天的な無口、
喋りたくても喋れない娘ってあんまり出てこないよな?
ONEの上月澪みたいな
やっぱり無口な娘がたまに喋ることの方が萌えるのか
261名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 20:16:01 ID:YE4VtJt5
>>260みたいなのもいいけど
本当になにもしゃべってくれないより
時間かかってもいいから応えてくれるとうれしいよな

主観的な意見で悪かったかも
262名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 20:45:29 ID:sLuXxglr
なんとなく書きにくいな〜って感じだな。病気とかだとやっぱり無責任なことも書けないし。
気にする必要ないって思われるかもしれないけど私的に気にしてしまう。
263名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 01:42:05 ID:n1q0AIb5
>>258
熱血系無口:黙って俺について来い! な寡黙な姉御肌
お嬢様系無口:いつも口元を扇子で隠して、他者との会話は付き人に耳打ちして行なう
高飛車系無口:傲岸不遜、顎を振るだけで他人を命令したり、無言でグラス差し出して酌させたり
264名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 09:24:08 ID:CjllfswZ
>>263
真ん中だけツボかな。なんかエロイ。扇子で隠すのって。
265名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 10:27:16 ID:CeZA7KOf
>>263
真ん中はアイゼナッハを思い出したw

男だけど…
266名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 10:42:26 ID:00ftbNr1
>>265
耳打ちする時点でアイゼナッハではない希ガス
267名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 18:10:15 ID:qykjLbsT
>>263
マイナーだがれでぃばとに真ん中みたいなキャラがいたような
268名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 20:13:35 ID:d/AIRGQq
>>265
1杯のコーヒーと2杯のコーヒーを飲まないか?
269名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 21:29:00 ID:vJJdCuQc
話をぶち切ってすいません。
>>236ではありませんが>>240のシチュで書いてみました。
短いですけど。

投下します。
270名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 21:29:50 ID:vJJdCuQc
突然裾を引っ張られ、僕は一緒に歩いている少女を振り返る。
「どうしたの? 麻耶ちゃん」
僕の問い掛けに彼女は裾を掴んだまま僕の顔をじっと見る事で答える。
潤んだ瞳が何かを求めているとは分かるけど何を求めているのかまでは分からない。
「喉が渇いたのかな?」
麻耶ちゃんはぷるぷると顔を振り、否定する。
「なら……どこか寄り道したいところでも出来た?」
これもまたぷるぷる。
麻耶ちゃんと付き合いだしてまだ日が浅い僕は表情だけでは彼女が何を求めているのかが分からない。
直也なら簡単に分かるんだろうな、とそんな事を思う。
僕の親友にして彼女の幼馴染み。
赤ん坊の頃から麻耶ちゃんと一緒にいる彼は何時だって彼女の心の内を知り尽くしている。
ちょっとした表情で、何気ない仕草で、彼女が求めるものに簡単に気付いてしまう。
僕と麻耶ちゃんが付き合うと知った時「これからはお前の役目だな」と彼は笑っていたけれど、僕はその役割を果たせていない。
それが歯痒く、悔しい。
裾を引っ張る力が僅かに強くなる。
察する事の出来ない鈍感な僕に焦れたのか麻耶ちゃんの口が開き――言葉を発する事なく再び閉じる。
僕が察する事が出来ないように麻耶ちゃんもどう伝えれば良いのか分からないのかもしれない。
今までなら――直也なら言葉にせずとも伝わるから。
それは僕よりも直也の方が彼女の事を知っているという事で……正直、嫉妬してしまう。
2人が仲が良いのは良い事だし、麻耶ちゃんを理解している直也を尊敬すらしているのに、こんな感情を抱く自分が……情けない。
くだらない感情を胸の奥に押し隠しながら、直也のように気持ちを察そうと彼女の顔を見つめる。
潤んだ瞳。よく見れば頬も若干赤く染まっている。
…………恥ずかしがってる、のかな?
恥ずかしい……お願い事?
って、あれ? なんだかいきなり真っ赤になっちゃったんだけど……。
麻耶ちゃんは俯いて、僕の裾を引っ張りながら早足で歩き出した。
一体どうしたのかと困惑する僕だったけど、周りを見てようやく気付く。
ここは天下の往来で僕達はそこで突然立ち止まり、見つめ合っていた。
そりゃぁ通行人の皆様方は僕達を見るだろうし、恥ずかしがり屋の麻耶ちゃんがそれに耐えれるはずもない。
……僕だって今更ながら顔が熱くなるのを感じている。
それにしてもよっぽど恥ずかしかったんだな、麻耶ちゃん。
いつもと違ってきびきびと歩く姿からもそれが窺える。
そんな彼女の背中を眺めているとなんだか無性に可笑しくなって、僕は気付かれないように少しだけ笑いを漏らした。
271名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 21:30:36 ID:vJJdCuQc
☆☆

麻耶ちゃんに引っ張られ辿り着いたのは小さな公園。
寒さのせいか、それとも少子化で元々子供がいないのか公園の中は無人だった。
歩みを止め、麻耶ちゃんが振り返る。
向かい合う格好になったけれど、麻耶ちゃんはまだ恥ずかしいのか俯いたままだ。
「…………さ、寒いから……」
続く言葉は口の中でごにょごにょ呟いているせいで聞き取れず、なんだろうと思っていると彼女は突然抱きついて来た。
「……寒いから…………ぎ、ぎゅって……して?」
甘いお願いに頭がくらり、とした。
そんなの断る理由がない。というかこっちからお願いしたいくらいだよ。
麻耶ちゃんの背中に腕を回し、軽く力を込める。
腕の中に収まる彼女の温もり。
身体だけじゃなく心まで温まってくる。
……麻耶ちゃんには敵わないなぁ…………。
彼女の温かさが、言葉が、色んな事に気付かせてくれる。
「……かず君」
彼女の呼びかけに少しだけ離れ、距離を取る。
上目遣いで僕を見る彼女の瞳はやっぱり潤んでいた。
僕はもうこの表情の意味を理解している。
彼女が教えてくれた。
麻耶ちゃんは潤んだ瞳をそっと閉じ、僕も同じように目を閉じて顔を近づけていく。
「…………んっ……」
麻耶ちゃんの事をなんでも知っている直也に僕は嫉妬している。
鈍い僕は麻耶ちゃんが考える事をすぐに察する事が出来ない。
けど大丈夫だ。それは麻耶ちゃんが補ってくれる。
恥ずかしがりながらも一生懸命、自分の気持ちを伝えてくれる。
そうやって知っていこう。憶えていこう。
重なり合う小さな温もりを離し、目を開く。
今日知ったばかりの、憶えたばかりのものがそこにある。
これは誰も知らない、直也さえも知らない。
彼女が僕に見せる、僕だけに見せてくれる。

潤んだ瞳。
赤く染まった頬。

麻耶ちゃんが僕に甘えたい時に見せる甘い甘い表情――――。
272名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 21:33:05 ID:vJJdCuQc
終わりです。

ちぃ、おぼえた! 一言で言えばこんな話かなって思ってみたり。

それでは、また。
273名無しさん@ピンキー:2009/02/11(水) 22:18:43 ID:8wcufXaG
萌えた
一瞬NTRかと思ったけどな
274名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 00:02:56 ID:kf0L0g8v
「無口な女の子が言いたいことが分かる親友(この場合女でも男でもいい)」がいて
それに嫉妬、だけどそんな自分が情けない、ってシチュ好きだわー
275名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 03:18:40 ID:Qwigti0a
>>263の熱血系無口を見て

寡黙な姉御肌でちょっと逞しい大工の棟梁の娘さん、
無口だが仕事の腕は一人前で周りのおっちゃん達の信頼も厚い。
仕事が一段落ついた夜の飲み会で、バイトの青年の隣で
呑んでいた姉御が珍しく泥酔。
おっちゃん達の命令で青年が姉御を家まで送り届けることに。
だが家に着いた途端、青年は姉御に押し倒される。
泥酔は嘘でおっちゃん達もグル。
そうして襲われた青年はあれよあれよという内に大工の跡継ぎに。

という妄想をしたが誰かSSにしてください
276名無しさん@ピンキー:2009/02/13(金) 00:18:19 ID:QiW28lZo
>>275
あらすじできてるなら自分で書きなはれ。
277名無しさん@ピンキー:2009/02/14(土) 00:16:12 ID:af30JYsC
>>275

姐御スレにそれに近い話が・・・
278 ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:07:52 ID:viYep37N
時期は丁度終わりましたが、時節ネタをやらせていただきます。

11レスほど。非エロ。軽度の近親相姦あり。
279じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:09:53 ID:KJSIgY1k
私は馬鹿だ。
夕方のキッチン、半日かけて作ったそれを前にして、滝口睦月は自分の愚かしさに愕然としていた。
大きなハート型。
純白の地の上に黒いイタリックで"I Love You"。
仕上げにピンク色のリボン、後は小奇麗な包装紙に包み、更にリボンを結べば完成。
凄まじい馬鹿馬鹿しさであった。
正しく阿呆の所業であった。
どこのラブコメだ、今時少女漫画でもこんな愚挙は見られない。
これを冗談でもなんでもなく、大真面目で想い人に渡そうとしている自分は、きっと病気なのだろう。
恋と言う精神疾患だ。
睦月は溜息をつくと、それに丁寧なラッピングを施し、リボンをかけた。
それを手に取り、睦月はしばし躊躇う。
後は簡単だ。一時の気の迷いと言うことにして、ゴミ箱に放り込むなり、自分の胃に収めるなりすればいい。
これを渡してしまえば、もう後戻りはできない。
いくら彼が鈍感とは言え、表面に書かれた文字の意を取り違えるのは無理だ。
断られれば良い。
暫くは気まずいかもしれないが、数日で忘れ、元の友人の関係に戻れる。
だが、ひょっとして、万が一、受け入れられる様なことがあれば。
ちくりと胸が痛む。
睦月は己の躊躇する理由が何であるか、自覚している。
そしてそれが"彼ら"にとって失礼極まりない勘繰りであることも、判っている。
睦月は深呼吸し、目を閉じると、意を決してチョコレートを鞄の中に収めた。


滝口睦月という少女は、渡辺綱という少年に恋愛感情を抱いている。
この事実は同学年の間では周知であった。
彼女本人は明確に好意を否定するが、「べ、別に私は綱のことどうとか……ゴニョゴニョ」などとテンプレの様な回答では説得力がない。
睦月は昼休みや放課後、暇を見付けてはクラスの違う綱の周りに居座り始める。
また、綱と他の女子が親しげにしているだけで、途端に挙動不振に陥り、ジトリとした視線で彼の様子を注視し始めるのだから、一目瞭然であった。
誕生日、修学旅行、長期休暇。
睦月はイベントの度に、遠回しでありながら周囲には見え透いたアプローチを綱にかける。
こんな関係を、この二人はもう3年近く続けているが、その間彼らの間には進展も破局も全く見られていない。
その理由は主に3つ。
一つは二人が通う学校、中高一貫の北原学園はミッション系であり、不純異性交遊が禁じられていること。
ただ、これはあくまで建前上。
北原学園はどちらかといえば地方の数少ない進学校としての側面が重要視され、この手の学校としては法外といっていいほど規律が緩い。
男女はクラス別とは言え、共学で男女の垣根は低く、行き来は自由である。
故に、これを理由としてあげるのは不適当かもしれない。
もう一つ、睦月が綱に対し好意を明確にできない主たる理由は、渡辺綱という少年が絵に描いたような朴念仁であること。
部活、スポーツ、旅行、ゲーム、試験一日前限定で勉強も。
何事にも全力でぶつかり青春を謳歌する綱だが、こと恋愛に関しては思考の隅にすら入っていない。
もともと人心の機微に疎い方ではあり、まして乙女心など理解の範疇外。
文武両道、成績優秀、眉目秀麗…と言う程でもないが、顔かたちは整っている部類に入り、女性に好かれる要素が少なくはない筈だが、浮名を流した女子は殆どいない。
彼の鈍感さや"ガキっぽい"性格を知りつつ近付く物好きは、睦月以外にいなかったのである。
そしてもう一つ、これが最大の問題なのだが、それが――――。
280じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:11:13 ID:KJSIgY1k
「結?」
昼休みの時間。
睦月の目の前には、穏やかな微笑を浮かべた、すらりとした長身でセミショートの同級生。
何時もの面子と共にサロンで弁当をつついている睦月に、その少女が何がしかを差し出す。
カラーフィルムに包まれラッピングされた、指二本分くらいの長さ太さの物体。
目線でその意図を問い返すが、少女、渡辺結は微笑み返してくるだけで返答は無い。
「バレンタインのプレゼントだ。友チョコってやつ。チョコじゃないが」
睦月の向かい側で弁当にがっついている少年が結の意図を代弁。
彼は結の兄である渡辺綱、睦月の想い人その人である。
「あ、ありがとう」
結から菓子を受け取りフィルムを開けると、飴がけのアーモンドクッキーが出てきた。
漂うほのかな柑橘の香り。
一口齧ると、キャラメルの香ばしさとナッツの旨みが口に広がる。
「おいしい……」
「そうだろう、そうだろう」
何故か満足そうに頷く綱。
「俺も手伝ったからな。結の愛情は勿論、俺の愛情も入っている」
睦月は思わず喉を詰まらせ、むせる。
「あ、ワリィ。キモかったか?
でも別に余計なモンは入れないぞ。ちゃんとレシピ通り作った。
愛情云々は冗談だから気にすんな」
「べ、別に愛情が入ってても……」
顔を赤らめモゴモゴと口ごもる睦月だが、例によって綱は少女の態度に気付かない。
(逆チョコって考えてもいいのかな。この場で食べずに取って置けばよかったかも……。
でも日持ちするものじゃないし……)
だが一口齧ったまま、顔を真っ赤にして、クッキーを手に固まっている睦月の様子がヘンであること位は、判る。
「滝口? おーい滝口。聞いてるかー?」
綱は睦月の目の前に手をかざして左右に振るが、反応は無い。
「滝口の奴はどうしてしまったのだろう」
「さあねえ」
「俺が知るか」
睦月の横でサンドイッチを頬張っているぼさぼさ髪を一くくりにした女子が肩をすくめ、少し離れた所で弁当を黙々と口に運んでいる眼鏡の男子がつっけんどんに返した。
兄の隣に座りなおした結は苦笑している。
綱は釈然としないまま、弁当箱に残っているミニトマトをヘタごと口に放り込んだ。
281じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:12:57 ID:KJSIgY1k
むぐむぐと咀嚼しながら、綱は未だトリップしている睦月の傍らに置かれた小さな箱に目を止める。
綺麗にラッピングされ、リボンを掛けられた何か。
「おお、これは」
時期的に考えて、チョコレートしかありえない。
さらに、どう見ても本名。
綱はしげしげと睦月のチョコレートを眺める。
「意外だなー。滝口がバレンタインでチョコレートなんぞ持ち出すとは。
市販じゃないっぽいし、まさか手製か?
滝口も乙女であったと言うことだな、うんうん。
で、相手は誰よ」
「え!? え、う、あ……」
我に返った途端、興味津々の綱に詰め寄られ、睦月は動揺する。
折角向こうの関心が向いているのだから、チョコレート渡すなら今しかない。
そう思いつつも踏ん切りがつかない睦月。
「何でさっさと渡さんのだ、滝口は」
「昼食前に渡そうとしたは良いけど、公衆の面前で恥ずかしくなり、タイミングを伺いながらずるずると先延ばし。
そんなところじゃないのかねえ」
外野の三人は小声で話しながらその様子を眺めていた。
「いや、喋りたくないなら良いんだが。
だったらそれ、しまっといた方が良いぞ。
一応本校ではバレンタインにおける生徒間での物品贈答は禁じられている。
建前だけだが、うるさい先生もいるし」
綱は話題を打ち切り、元の席に戻ろうとする。
「綱っ!」
「な、何だ?」
睦月は思わず綱の腕を掴んでいた。
綱は突然の大声にたじろぐ。
一方の睦月も、何も考えず呼び止めてしまったので、未だ動揺の最中にあった。
それでもなんとかぐるぐると回る思考をまとめ、意を決して口を開く。
「放課後、屋上に、来て欲しい。大事な、話がある」
「お、おう」
頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、頷く綱。
「でも一体何の用だ? まさか果し合いとか」
だが、相変わらずその思考は的を外れていた。
282じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:14:39 ID:KJSIgY1k
「そのシチュエーションを提示されて、何も思い当たる所がないのかねえ」
「阿呆だな。救い難い」
結も苦笑いのまま頷いて同意。
「何だよ。だったらお前らは何か判るのか――――って」
二人が結からヌガークッキーを受け取り、包みを開いている。
「伊綾、何故、お前までそれを貰っている?」
「義理だろう。何の問題がある」
綱はクッキーを口に放り込もうとした男子、伊綾泰巳の腕をがしと掴む。
「結が誰と付き合おうが、俺が口を挟むべき問題じゃねえ。
だが、俺を"お義兄さん"と呼ぶ男は、俺よりも強くなければならんのだ」
「はあ? どこをどう解釈すれば、そう話が飛躍するんだ。
脳まで爛れたか、このシスコン」
伊綾は掴まれた手を振り解き、綱の顔面に裏拳を飛ばす。
綱がその拳を受け止め、両者そのまま腕に圧力を込め、力比べに入る。
腕が離れたのは同時。
その勢いで距離を取ると、二人は互いに腰を落とし、構えを取った。
「別に俺は渡辺妹に懸想している訳では無いんだがな」
「俺の妹に魅力がないと言いたいのか!」
「どう答えろって言うんだ!」
伊綾は素早く距離を詰めながら姿勢を低くすると、地面すれすれのローキックを放つ。
綱は跳び上がってそれを回避、伊綾の頭部に跳び蹴りで迎え撃つ。
伊綾はキックの勢いを利用して体を捻りながら、綱のつま先を避ける。
位置を交代し、再び離れる両者。
「どうしても結と付き合おうと言うなら、俺の屍を超えて行け。
付き合わんと言うなら結を侮辱したものと見なす。一発殴らせろ」
「丁度良い。渡辺妹等どうでも良いが、お前とは一度決着を付け様と思っていた」
右腕を引き左腕を突き出し、手を開いて掌打の構えに入る綱。
伊綾は指をポキポキと鳴らすと、全身の力を抜き、両手をそっと握って顔の前まで上げる。
一触即発の空気が漂う。
ごくり、と唾を飲む音が響く。
「こ、これはやばいんでないの?」
「いつものこと」
睦月は比較的落ち着いていた。
怪我でもしたらと心配ではあるが、二人ともそれなりに喧嘩慣れしているので大事にはならないだろう。第一、自分では止めようがない。
283じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:16:21 ID:KJSIgY1k
ポニーテール少女の心配を余所に、間合いを計りながら互いに隙をうかがう男二人。
やがて、両者の足が同時に地を蹴った。
そして、同時に足を払われ、もんどりうって倒れ伏せる。
彼らの中間に、箒を腰溜めに構えた結が佇んでいた。
結は口をへの字に曲げ、腰に拳をあてると、腰をしたたかに打ち痛がっている兄の前に仁王立ち。
「結? あ、いや、そうじゃなくて、俺は……。
え、義理チョコ一つでむきになるな? 身内として見苦しい?
でも、俺は――、俺は…………。
はい、俺が悪かったです。ごめんなさい」
妹の前で正座させられ、しゅんとうな垂れる綱。
睦月は二人の様子を呆気にとられながら眺めていた。
「……怒ってる結、初めて見た」
「そうか? 兄貴の前では結構表情豊かだぞ、あいつ」
腰を抑えながら説明する伊綾。
「伊綾ー! 結はお前も悪いって言っとるぞ。
お前もここになおって、お叱りを受けろ」
「何で俺まで」
『先に仕掛けたのは伊綾です。故に兄と同罪です』
携帯電話の液晶に文字を打ち込み、伊綾に突きつける結。
伊綾は手をひらひらと振る。
「悪いが俺はお前の言ってる事が判らん。後で兄の方から聞いて遣るから、今は遠慮させて貰う」
『判りました。兄を二人分叱っておきます』
「何故ッ」
二人とも綱の抗議に耳を貸さない。
再び説教が始まる。
相変わらず結の口は動いていない。声も聞こえない。
にも拘らず、綱はあたかも彼女に叱られてるように振舞う。
否、実際に叱られているのだろう。
彼にしか聞き取れない声で。
睦月は寂しげな視線で、二人のきょうだいを見詰める。
結の"お説教"は数分に及んだが、その間ずっと、睦月の胸の小さなモヤモヤは晴れなかった。
284じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:17:30 ID:KJSIgY1k
一足先に箒をしまいに戻った結に遅れて、弁当を片付け校舎に戻る。
綱の後ろをついて来る睦月は、何だか元気がなかった。
「どした? 滝口?」
綱も、こう言う事だけは妙に気が回る。
睦月はそれが少しだけ嬉しかった。
「綱は」
口ごもる睦月。
「綱は、結のことは何でも判るんだね」
「んな事もねーよ」
憮然と反論する綱。
「なんとなく言いたいことが判るってだけだ。
心ン中全部お見通しってわけにゃ行かない」
「でも、綱は結が言いたいことは全部理解してる。
結が怪我とかしたら、飛んで来る」
彼らきょうだいは感覚、感情をも共有している節がある。
睦月と綱らとの付き合いは数年でしかないが、その間二人が言葉もなく通じ合っているのを、幾度となく目にしていた。
街中で金を持ち忘れ困っている綱に、家にいた結が財布を届けに着たり。
結の教室で力仕事が必要になるといつも、どこからともなく綱が手伝いに着たり。
綱が腹をすかせていると、食料を携えた結がひょっこり顔を出したり。
結が交通事故に会った際、転んだだけで平気そうにしているので大事無いかと楽観していたら、血相を変えてやって来た綱に病院に担ぎ込まれ、実は骨折していたことが判明したこともあった。
双子の神秘なのかは知らないが、彼らほどの絆で結ばれたきょうだいを、睦月は知らない。
だが当の綱は、これを特別なものと考えてはいないようだ。
「結に伝えようって意図があれば、ある程度は、な。
なんでか知らんが、痛い暑いの感覚が伝わったりもする。
それでも理解できることに限界はある。
例えば俺が股間をしこたまぶつけても、結は平気だ。
逆にあいつが生理痛で苦しんでても、俺はその痛みを判ってやれない。
肉体的な感覚だけじゃねえ。
好き嫌いの違い、ものの感じ方、考え方にしたってそうだ。
俺の経験したことを結が経験するわけじゃないし、あいつの記憶はあいつ自身のもんでしかない。
記憶が違うって事は、何か新しい事態に直面した際、判断基準となるものさし、記憶の中の比較対象も違ってくる。
周りが善人ばっかの環境で育ったら、簡単なサギにも引っかかるだろうし、一回騙されりゃ疑り深くなるわな。
そんな感じで、例え最初に互いの感覚や記憶を同一に揃えたとしても、その差異は時間が経てば指数関数的に広がっていく。
だから、結がどう行動するか完璧に予測しろって言われても、不可能に決まってる。
クオリアにない概念を共有することはできないんだ。
俺たちは結局、別の人間なんだよ」
時々、綱は妙に知的っぽい喋り方をする。
普段の体育会系な綱とはギャップがあり、睦月にはそれがなんだか可笑しかった。
「そうだとしても、結は綱のこと信頼してる。
それはきっと、綱が結のこと大切にしてるからだと思う」
綱はさらりと、なんでもないように答える。
「当たり前だろ。俺はあいつのことが好きだからな」
その言葉を聞いて、睦月はガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
勿論、彼の言う"好き"に家族としての感情以外の意味が無いのは判る。
それでも、彼から"好き"と言う言葉は聞きたくなかった。
285じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:20:03 ID:KJSIgY1k
綱と結は、もうとっくに一線を越えてしまっているのではないか。
たまにそんな馬鹿馬鹿しい考えが頭に浮かぶ。
そしてその度に、睦月は深い自己嫌悪にとらわれる。
有り得ない話だ。
結は常識人だし、二人とも倫理観はちゃんとしている。
何より、彼らがお互いの将来を破滅させるような選択を取るはずがない。
判ってはいるのだが、嫌な想像を止めることができない。
そんな下卑た妄想をしてしまう自分が酷く惨めに思えた。
何より、その可能性を怖れる本当の理由は、倫理などではなく、単なる嫉妬に過ぎないと自覚しているから。

不意に瞼からぽろぽろと滴を零す睦月を見て、綱は大いに慌てる。
「たっ滝口! なんで泣く!」
「泣いてない」
目をぐしぐしと袖で拭うと、睦月はそっぽを向く。
綱は睦月の頭を抑えると、ハンカチを取り出して無理矢理顔に押し付けた。
「泣いとるだろーが。さっさと拭け。
ああもう、こんなとこ誰かに見られたら身の破滅だ」
綱は周りを見回しながら、軽く睦月の肩を抱き寄せた。
背の低い睦月の体は、がっしりした綱の腕にすっぽり収まってしまう。
彼女の背をさすりながら、綱は睦月が落ち着くのを待った。
「俺、なんか拙いこと言ったのか」
睦月は首を振った。
「綱は悪くない」
「男は女の子を泣かせちゃいかんのだ。とにかく、話してみろよ」
「本当に、なんでもないから」
睦月は綱の腕を解くと、彼から身を離す。
少年のぬくもりが、名残惜しかった。
「綱」
「ん?」
「何があっても、結を大切にしてあげて」
何を今さら、と綱は鼻を鳴らした。
「当然だろ」
睦月は微笑む。
それでいい、それでいいのだ。
彼らはいつまでも共に歩めば良い。
その隣を歩むことは、自分にはできないかも知れない。
それでも、彼らが幸せなら構わない。
綱には結の事を一番に思っていて欲しい。
睦月が好きになったのは、そんな綱なのだから。

時計を見ると、もうすぐ昼の休憩時間も終わりだった。
睦月は綱に別れを告げる。
立ち去る睦月を見送りながら、綱は暫く立ち尽くしていた。
心のどこかに引っ掛かりを感じる。
さしもの人心の機微に疎い綱とは言え、睦月の態度の違和感に気付きつつあった。
「まさか、あいつ……」
286じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:21:00 ID:KJSIgY1k
終業のベルが鳴る。
教科書をまとめ、足早に教室を出ようとする睦月の肩を誰かが叩いた。
「結」
相変わらない微笑を浮かべた結は、すっと上方を指差す。
屋上に行って来い、そう言うことだろう。
だが睦月は俯いたまま動かなかった。
「私は、行けない」
ぽつりと弱音を零れる。
それを聞くと、結の笑みが若干堅くなった。
睦月の腕を掴み、ずんずんと歩き始める。
「ちょ、ちょ……っ。む、結っ」
結は聞く耳を持たない。
どんな意図があれ、約束を破るのは許さない。普段より堅い表情がそう語っていた。
そのまま睦月を階段まで引っ張っていく。
「結は……。結は、それで良いの?」
二人の足が止まる。
結は首を傾げた。
「ひょっとしたら、綱は私の、告白を、受けるかもしれない。
そしたら、結でない他の女が、綱の一番近くに居座ることになる。
綱はいつか、結の所から離れて行っちゃうかも知れない」
結は睦月の腕を掴んだまま、じっと耳を傾けている。
「それとも、余裕なの?
綱が私を振るって知ってるから。
私でなくても、他の女性が綱と付き合うなんてこと、永遠にないと判っているから」
結はゆっくりと頭を振った。
その間に素早く携帯電話のボタンを打ち込む。
『兄が睦月を男としてどう見るかは、私にも判りません』
液晶に表示された文字を見て、睦月は綱の言葉を思い返した。
結局は別の人間。故にクオリアの無い概念を共有できない。
綱には女としての結を、結には男としての綱を理解することはできないのかもしれない。
結は更に続けて文字を打ち込む。
『私は、誰かをお義姉さんと呼ぶなら、睦月が良いです』
不覚にも涙がこみ上げる。
「でも、私は……っ!
綱とあなたの関係を、勘繰ったり。
勝手に勘違いして、結に嫉妬したり。
こんな私、知られたら、きっと、つ、綱はっ」
結はそっと睦月を抱き寄せた。
暖かい。
日ごろ鍛えている結の体は、少女のものにしてはしっかりしていた。
きょうだいだからだろう、なんとなく、綱の感触と似ている。睦月はそんな事を考えていた。
暫くして、睦月は結の腕から抜けると、瞼を拭って無理矢理笑顔を作った。
「ありがとう、いろいろ。
それじゃ、玉砕してくる」
そう言うと、睦月は身を翻し、上りの階段へと向かう。
結びは苦笑しつつ、その背中にサムズアップを送った。
287じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:22:49 ID:KJSIgY1k
夕暮れ時の屋上。
特に立ち入り禁止指定はされていないものの、冬の風が強いせいか、この時期に人影は少ない。
睦月が扉を開けた時も、人影は見当たらなかった。
一人所在なげに誰かを待つ少年一人を除いて。
綱は睦月の姿に気付くと、軽く手を上げた。
「おう」
睦月はこくんと頷き、傍に歩み寄る。
静かだった。
運動部員の掛け声が遠くから聞こえる程度。
睦月は高鳴る胸を必死に押さえていた。
「綱」
「ん」
「用件、何か、気付いてる?」
「まあ、なんとなくは、な」
少年は顔を赤らめて頬をかいた。
「その、チョコレートだろ」
睦月の脈拍数が一気に増大する。
足ががくがくと震える。
顔はもう、これ以上無いくらい真っ赤になっていた。
震える指で鞄の中のチョコレートを取り出す。
体温で溶けてしまわないか心配だった。
「変、かな、やっぱり」
「かもしれん。だが、少なくとも俺はありだと思う」
「綱と結の仲に割り込むみたいで……」
「いつかは別れる日も来るだろ。きょうだいなんだし」
沈黙が降りる。
会話が続かない。
「その中身。チョコレート、だよな」
「ホワイトチョコ。は、ハート型の」
「普通のチョコレートより好きなんだ。よく知ってたな」
ふと、違和感を感じる。
何か、会話が微妙にかみ合っていないような。
睦月は頭を振ると、なけなしの勇気を振り絞ってチョコレートの包みを差し出した。
288じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:25:08 ID:KJSIgY1k
「これ!」
「ああ」
綱が手を伸ばす。
「渡しとくぜ。結に」
綱、全くの真顔。
風がむなしく吹いた。
「は……」
「いやー、たまに結が女子から告られてるのは知ってたけど、まさか滝口までとはなー。
何か日ごろ仲よさげだったのは、そう言うことだったんだな」
確かに結は、一部で妙な人気があったりする。
その特異性から毛嫌いする教師や生徒もいないわけではない。
だが、気遣いのできる性格と中性的で整った容貌から、好かれることが多いのも事実。
「女同士ってのはお勧めできんが、真っ向から否定はせん。俺は認める。
うちはミッション系ではあるが、度が過ぎん限りは大丈夫だろ。
だが」
綱は掌底を作り、睦月に対して構えを取った。
「それが女であれ、結の伴侶が俺より強くあらねばならんことに変わりはない。
女を殴るのは気がひけるが、結のためならば仕方あるまい。
相手が滝口とは言え、容赦はせん。
さあ! 俺を"お義兄さん"と呼びたくば、俺を斃してからにするがいい!」
「……」
睦月、無言。
俯いたその表情を伺うことは出来ない。
「滝口?」
綱はいつまでも硬直している睦月の様子をいぶかしみ、構えを解く。
「ば……」
「罵?」
綱は睦月の顔を覗き込む。
睦月の拳がプルプルと震えていた。
「ばかああぁぁ――――ッ!」
「ぶうぉおはああああああ!?」
地平線に沈む夕日をバックに、睦月のアッパーカットが綱の顎を直撃した。
289じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:28:25 ID:KJSIgY1k
夜。
マンションのベランダで夜景を眺めながら、綱は未だに痛む顎をさすっていた。
「おーいて。
滝口のやつ、一体なんだったんだ? 決着付けずに先に帰っちまうし」
ぶつぶつと一人ごちる綱。
「ま、良いか。結の事は勘違いだったみたいだし。
滝口、この所変だったけど、結局いつも通りだった」
窓が開き、結が姿を現す。
風呂上りの彼女は、既に寝巻きに着替え、厚手のセーターを羽織っている。
その手には湯気立ち上るカップが二つ。
「なにやってんだ結。
はよ戻れ。体冷やすぞ」
結からカップを受け取り、カプチーノをすする。
「上にかかってんの、ココアか」
頷く結。
バレンタインだからね。
そう目で語って微笑み、自身も一口すすった。
しばし、二人で夜空を眺める。
星が綺麗だった。
ふと、綱の視線が結の方へ向く。
「結、ついてる、ひげ」
口の端に牛乳の泡が残っていた。
綱は自分の口の左端を指差す。
結は指で口の右側を拭った。
「違う違う。反対」
綱の指がすっと結の唇へ伸びる。
その左端を拭くと、綱は付着した泡を自分の口に含んだ。
綱はにっと笑うと、先に部屋の方に戻る。
「ごちそーさま、な。風呂入ってくる」
綱が立ち去った後、結は暫く立ち尽くしていた。
その指が唇を撫でる。
胸が僅かに鼓動した後、酷く痛んだ。
その痛みを、綱はまだ知らない。
290じぇみに。に ◆MZ/3G8QnIE :2009/02/15(日) 00:37:13 ID:KJSIgY1k
投下終了

具体的な近親相姦はありません。これ以上進んだら別スレ行きになる。
しかしこの話はエロが書きにくいです。
おむすびとくっつけばモロに話が重くなりますし、
睦月とくっついたところで、この主人公では手を出すところまで持って行きにくいです。

まあ、当分はその鈍感さで、ムッキーのアプローチを尽くスルーすることでしょう。
291名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 01:08:48 ID:yMmptM6o
久しぶり!そしてGJ!
無口スレ的には結を応援すべきなのかもしれんが、睦月がかわいすぎる……
この微妙な関係がたまらないです。兄はホント鈍いなw
292名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 07:19:52 ID:pL7y1cZb
GJ
ハーレムにすれば問題ない。自分はどっちも好きだ。
293名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 22:22:54 ID:3zAURImr
>>290
GJ
結にしろ睦月にしろどっちも応援してあげたくなるな
294名無しさん@ピンキー:2009/02/18(水) 00:59:49 ID:tYnCW73W
新ジャンル「七歳くらい年下の無口幼馴染みっ娘」
295名無しさん@ピンキー:2009/02/18(水) 01:58:18 ID:bT+b9bee
今日、試し読み用が置いてあった「flat」(青桐 ナツ)って漫画を立ち読みしてきたが、
そんな感じだったぜ。もうちょっと年齢差は開いてるけど。

ゆるめのマイペースで自己中な高校生が、無口で引っ込み思案でついついなんでも
我慢しちゃう4〜5歳くらい?のいとこに懐かれて、高校生のほうは周りに気を配るように、
いとこの方はだんだん心を開いて我慢せずに正直になっていく、ってなお話。


嘘は言ってない。
296名無しさん@ピンキー:2009/02/18(水) 22:57:38 ID:aeYhgvTZ
いくらなんでもその年齢は…ってあと十年も経てば問題ないか。
ああ無口な子に好かれたいなぁ。
気づいたら後ろにちょこんといたら可愛い。
無言で頭をコクコク振る仕草が可愛い。
黙って袖をギュッと引っ張る仕草が(ry
297名無しさん@ピンキー:2009/02/19(木) 21:12:18 ID:mdA1j3UH
>>296とはいい友達になれそうだ
298名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 00:20:26 ID:x0rW1dE4
>>296
うたた寝した時に目を覚ますと、何故か隣で丸くなって寝ていたり
他の場所で寝直そうと起きると、手を強く握られていて
動くに動けなかったりするんだろ?
299名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 01:32:05 ID:TOmwBNbo
上目使い+涙目でギュっと裾を掴んでるのですね、分かります。
300名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 07:48:28 ID:XZvQNv74
・無口生徒会長
・無口図書委員
・無口保健委員
301名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 10:42:31 ID:zeTkliIf
あえて無口風紀委員
風紀を取り締まるときは制服の裾をクイクイって引っ張て上目遣い。
302名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 13:11:29 ID:T/v+Re/I
>>301
敢えて無口グーパンチ風紀委員
303名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 15:25:53 ID:OhEc9EUw
気がついたら生徒指導室に運ばれて2人きりなんだな
304名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 21:02:20 ID:DIXhWE3k
あえて無口放送委員
305名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 21:25:19 ID:dygJ1v53
プレネールさん
306名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 22:06:26 ID:zeTkliIf
>>303
それは無口生活指導担当の先生だな! きっとそうだと脳みそで解釈!
主人公とは実は幼馴染なんだ。そして恋人なんだ。
男は普通に友人達と語らってただけなのに、特に悪いことしていないのに
裾をクイクイ引っ張られて生徒指導室に連れて行かれるんだ。
そして鍵をかけられたと思ったら突然ちゅーされるんだ。
「どうしたんだよ一体」
って聞いたら
「……私以外の女の子と……楽しそうに話してた」
とかちょっと目を潤ませながら上目遣いで嫉妬気味に言うんだ。
そんで唖然とする男を見ながら
「……私、高校生じゃないし……どうして私、こんなに早く生まれて来ちゃったんだろう……
 こんなに……年が離れてる……男が……ほかの子に取られちゃう……」
って言ってマジ泣きし始めるんだ!
そこでやさしく抱きしめて突入するわけなんだ!
って書いててハァハァしてきた。
307名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 23:20:02 ID:mkus1Lsr
・茶道部の無口っ娘
・美術部の無口っ娘
・ソフト部の無口っ娘
・吹奏楽部の無口っ娘

308名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 07:42:45 ID:sEcv01PQ
演劇部の無口っ娘
309名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 09:43:27 ID:D8YOIE+9
セクシーコマンドー部の無口娘
310名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 09:45:02 ID:inA7NJr8
無口だからどうしたのかと近づいた隙を狙って殴りかかってくるのか
311名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 14:33:47 ID:mTOGCDUF
ズボンをいきなり下ろして、ひよこ走りで突っ込んでくるのか
312名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 14:47:20 ID:37wNOabP
それはよいファーストセクシーですね
無口娘がズボンおろしてひよこ歩きで近づいてくる……
ごめ、喫茶店でハナヂ吹いた
313名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 17:18:25 ID:VSA+3rpu
ひよこ歩きで付いてくる
314名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 20:46:58 ID:Gp4g6MDS
>>308
主に役どころが植物とか建造物だな。
315名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 21:28:02 ID:aDTZQKzr
>>314
「あの子、完璧に木になりきっている……恐ろしい子…!」
316名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 22:18:07 ID:PvKQ9awX
いや待ちたまえ。

普段は無口なのに、舞台に上がるとよく通る美しい声でセリフはバッチリ、というのには萌えないのか?


オレは萌える!
317名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 22:22:03 ID:9s/N/6zV
>>316
それいいね
文化祭の劇で人目を集めちゃって困惑してる無口っ子とかいい
318名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 22:47:00 ID:kanIF2Qn
化粧して衣装を着ると堂々と演技できる無口っ子
普段はおどおどしてる無口っ子
「あの主演女優は誰だ?」と話題になってるが、とても名乗り出られない
でもそれをあっさり見抜いちゃう男が空気読まず「お前スゲーな!」とか
いっちゃって無口っ子は真っ赤になって、慌てて男の袖を引いて
物陰に引っ張っていって、「お願い……秘密にして……」と
上目遣いで頼み込んできて、それが縁で交際が始まるわけですね判ります
319名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 23:30:55 ID:IJWmSnY6
>>318
それを書くんだ
320名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 00:58:05 ID:RKoD4ap9
>>316
「ひとひら」の麦ですか?
321名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 06:37:49 ID:ykC9I7EO
麦チョコはあがり症だが無口ではないぞ
322名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 18:21:02 ID:m8cn1Nrv
無口吹奏楽部員か……。
こくこくふるふるで意思疎通する後輩(吹奏楽未経験)に、不器用ながらも手解きする先輩(楽器一年目)。

良いかも。
323こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/02/23(月) 21:08:28 ID:GKeFlF1R
ちょっくら投下します。
〜無口でツンツンな彼女〜

「あのさぁ〜何度も聞くけど僕のこと嫌いでしょ?」
「…いいえ」
参ったな…そんなつっけんどんな言い方されたら疑うって。
「だったらこの美味しくないコーヒーをいい加減別のメーカーのに代えてくれたっていいじゃない」
「贅沢は敵です…」
「戦時中じゃないんだから…冷たい言い方しないでよ可愛い顔が台無しだ」
「……」
他にも言ようとしたら思いっきり睨まれた、怖い怖い。
彼女ーー三谷黒美は僕の…なんて言えばいいかなアシスタントだ。
一応僕はプロのカメラマン。今は『月刊無口っ娘通信♪』っていう雑誌のグラビア撮影を受け持っている。
僕が言うのもなんだけど結構売れてる雑誌なんだ。この町は土地柄なのか無口な人が多いらしいからね。
グラビアとはいえヌードはおろか水着すらない清楚なものなんだけど。
黒美ちゃんはそこの編集長(僕の知り合い)から紹介されたんだ。
最初は断ろうと思ったけどとりあえず会うだけ会ってみたら気が変わった。
それくらい彼女は綺麗な人だったから。
ただねぇ…黒美ちゃんは口数の少ない人でね。口を開いたと思うと僕を叱責する。
「やっぱり嫌われてるのかねぇ」
「…無駄口叩いてないで仕事して下さい」
「はいはい…って言っても今することないし」
「………」
また睨まれた。多分今までのファイルの整理なりなんなりしろってことなんだろうな。
最近怒られてばっかりだ。僕の方が年上のはずなんだけど…
黒美ちゃんは器量よし、容姿よし、僕以外の人にはそれなりに親切で優しい。
僕みたいなしがないカメラマンの所にいるべき人じゃないと思う。
しかも実を言うとこの僕の家、黒美ちゃんも一緒に住んでるんだよ。
住み込みで僕が仕事をちゃんとしているか見張っているらしい。
最初はドキドキだったし理性が持つか不安だった。
この態度でそんな気起きなくなっちゃったけどさ。僕は犯罪者にならずに済んだわけだ。そこは感謝しないと。
「………」
「ん?どうしたの黒美ちゃん?僕の顔じっと見ちゃって。惚れちゃった?」
「違います」
そんな即答しなくても…いくら僕でも傷つくよ。
「まぁ僕は黒美ちゃんのこと好きだから待ってるよ、一人身だし。そういえば黒美ちゃん彼氏とかは?」
「……」
「いや…ゴメンよ。今の忘れていいから」
なんかこの先上手くやっていけるか不安になってきた。
324こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/02/23(月) 21:09:57 ID:GKeFlF1R
そんなやりとりからしばらくして黒美ちゃんが口を開いた。
「…いませんから」
「ん?何が?」
「…さっきの話です。今はいませんから」
さっきの話って彼氏がいるかいないかだよね。今は、っていうからには昔はいたんだろうな。
全然不思議じゃないけど。
そのことを聞こうかとも思ったけどまた睨まれそうだからやめた。
「そっか…じゃあ僕もまだチャンスがあるわけだ」
「………」
僕がそう言うと珍しく睨むことなく仕事に戻った。


翌日、僕達はとある公園に来ていた。
今日はここで撮影をする予定、のはずなんだけど…
「ねえ約束の時間っていつだっけ?」
黒美ちゃんは肩にかけていた鞄から出した手帳と時計を見比べた。
「…過ぎてますね」
「やっぱりそうだよね。よし、ちょっと電話してみようか。彼女の連絡先教えてよ」
でもそんな僕の言葉は無視された。
「もしもし――」
それにしても不思議だ。電話だと普通に喋るんだよね。まぁそれでも必要最低限しか話さないけど。
ものの数十秒で黒美ちゃんは電話を切った。
「…風邪だそうです」
「風邪?そりゃあお気の毒に…」
ってことは今日仕事なし?やった。
「……」
うわ、なんか冷たい視線…
「まぁとりあえず帰ろっか。それともデートでもする?って黒美ちゃん!?」
「……」
既に黒美ちゃんははるか前をスタスタと歩いていた。
なんかすごい怒ってない?いつもより怒りのオーラが背中から出てるよ。
そんな怒らせることしたかな…仕方なく僕もとぼとぼと家に向かった。
「…嫌いなんですか?」
家に着くなり聞かれた。
いつもと違う様子に思わず後ずさりしてしまう。
「…写真撮るの本当は嫌いなんですか?」
「いや、写真は好きだよ。でも人を撮るのはあんまり好きじゃない。風景の方がずっと好きなだけ」
「…何故ですか」
うわ、痛い所突かれたな…
「はぁ…もう昔の話だよ。当時付き合ってた彼女をどうしても上手く撮れなかったんだ」
「……」
くだらない、口に出さなくとも目が物語っていた。
「まぁ単に昔から風景を撮るのが好きなんだよ。この仕事も風景を撮りたくて始めたくらいだからね」
すると微かに黒美ちゃんの表情が和らいだ。そんな気がした。
「それにしてもなんでそんなこと聞いたの?」
僕に興味を示してくるなんて珍しい。
325こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/02/23(月) 21:11:08 ID:GKeFlF1R

「…仕事止められたら私も困りますから、それだけです。気にしないで下さい」
いつもならこれで終わりだけど僕は引かなかった。
「ウソでしょ、なんか今の黒美ちゃんらしくない」
しばらく対峙していたけど観念したのか、溜め息をつくと机から古びた雑誌の切れ端を差し出した。
それは見覚えのある写真だった。当たり前だ…僕が撮ったやつなんだから。
この仕事を始めてすぐの頃、仕事のない僕に舞い込んだ仕事。
それは雑誌の余った空白に載せるための小さな写真を撮ることだった。
「……この写真は失恋した私を救ってくれました」
「救ってくれた?」
「…男に捨てられた私に希望を与えてくれました」
驚いた。
黒美ちゃんを捨てる男がいることはもちろん、僕の写真が思わぬ活躍をしていたことに。
「……ですから写真を嫌いになられると困るんです。好きですから」
「好き?僕が?」
「……写真の方です」
「じゃあ憧れの写真を撮った張本人に出会ってどうだった?」
「……幻滅――」
やっぱりそうだよね…世の中期待通りにはいかないもんだ。
「したはずでした…」
「えぇ!?」
「…勘違いしないで下さい。でもその気があるなら私も考えます。私は居候の身ですから」
これはどう取ればいいんだろう?下手なことしたら本当に嫌われちゃうよね…
一か八かまずは抱き締めてみよう、それで反応を見ればいいか。
色々な意味でドキドキしながら正面から優しく抱き締めてみた。
「……」
何も言ってこない。
これはオッケーってことかな?
「黒美ちゃん…キスしてもいい?」
「す、好きにすればいいじゃないですか……」
珍しく黒美ちゃんは明らかに焦った声を出した。
こんな風な口調初めて聞いた。やっぱり僕のことが…自惚れてもいいのかな?
そんなことを考えながら僕はそっと口を奪った。
「……んむ…ん」
最初は重ねるだけ。それからゆっくり口を割っていき内側に侵入していく。
僕の動きに翻弄されているのか黒美ちゃんは何もしてこなかった。でも息が上がっているのがよく分かる。
ひとしきりキスを堪能し僕が離れるとつばきが糸を引いた。
「…お上手なんですね」
やや非難めいた口調で黒美ちゃんが言う。
「そう?こんなもんだって、僕もかなりご無沙汰だしね。何?もしかしてやきもち?」
「…ありえません。安心して下さい、他人の過去は追求しませんから」
326こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/02/23(月) 21:12:23 ID:GKeFlF1R
そういう割には複雑そうな顔してるけど…変なこと言っておしまいにされるのもなんだから、今は続けよう。
「本当にいい?」
「…一々確認取らなくて結構ですから。好きにして下さ…っ!!?」
突然黒美ちゃんが声にならない悲鳴をあげる。
好きにして下さいなど大胆なこと言われ我慢の限界に達した僕が、寝室に運ぼうとしたからだ。
もちろんお姫様抱っこで。
「お、おろして下さい…」
「何言ってんの。黒美ちゃんはベット以外の場所でしたいの?まぁ僕はそれでもいいけど」
この一言が効いたのか僕の腕の中で悔しそうに睨むけどもうあまり迫力がない。
そのまま優しくベッドに横たわらせると僕は服を脱がしにかかった。
「綺麗だ…うん凄く綺麗だよ」
僕の期待を裏切ることなく黒美ちゃんのヌードは綺麗だった。
おっぱいはまるでないけど…それがかえって全体の印象をいやらしくさせずに清楚にしている。
「……小さいですよね」
小さいなんてもんじゃない。かろうじて起伏が確認出来るくらいだ。
横になっているからだと思いたいけど、こうも現実を見せつけられるとね…
とはいえ僕はおっぱい第一主義者でもないからそこまで気にならなかった。
「僕はこれくらいでも好きだけど」
「……嘘です」
疑うような、不思議そうなどちらともつかない目。瞳がほんの少しだけ潤んでいた。
「……男は胸の大きい女性がいいんです」
抑揚のない冷たい声。
暗い表情。
「黒美ちゃん…昔の恋人となんかあったでしょ?」
隠そうとしても何があったか大方の予想はついた。
「大丈夫…僕は黒美ちゃんを裏切るようなことはしない。信じてよ」
「………………」
「僕は黒美ちゃんの色々な所が好きなんだよ、いつも言ってるでしょ。女性の魅力が胸だけなんてありえないんだからさ」
身を守るようにシーツで体を隠し、俯きながら僕の言葉を聞いていた黒美ちゃんが顔を上げた。
「……馬鹿じゃないですか?」
「は??」
「言葉でならいくらでも言えます。だから――早く態度で示したらどうですか?」
僕に隠すように溜まった涙を拭ったことは見なかったことにした。
「今のは反則だって。そこまで言われたらもうブレーキかからないからね」
シーツを剥ぎ取ると僕は抱きかかえるように覆い被さった。
327こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/02/23(月) 21:13:45 ID:GKeFlF1R
うなじから始め首筋、鎖骨へとキスの雨を降らせていく。
キスマークを付けたかったけど後が恐いからやめた。
黒美ちゃんはさっきからずっと黙りっぱなし。顔を背けているからどんな表情かもわからない。
でもいよいよ対象をおっぱいへと移していくと体が強張るのが感じ取れた。
僕は気付かないふりをして薄っぺらなおっぱいに舌を這わせるとそれに併せて揉む…いや撫でていく。
女性のおっぱいというのは不思議なものだ。
どんなに薄くなだらかな起伏でもなんだかんだで他の部分に比べ感触が違いフニフニとしている。
そこにちょこんと乗っかるように存在する桜色をした乳首がまた可愛い。
舌でつついたり指で挟むと小さいながらも一生懸命に自己主張をしてくる。
夢中になっておっぱいをいじっていると、くぐもった媚声が静かな部屋に響いた。
「……んん」
あれ?今の声は?
「黒美ちゃん?」
慌てて口を塞ぐ黒美ちゃんは自分が声を出してしまったことに驚いているようだった。
「……喉を鳴らしただけですから」
「ふ〜ん」
「…な、なんですか」
「いいや、それならいいけど。無理に我慢しなくてもいいよ」
口を開きかけた黒美ちゃんを無視して再びおっぱいだけをひたすらいじっていく。
他の、特に触りたい場所があるけど我慢しよう。
今僕がやらなければいけないのはコンプクレックスを解消してあげることだから。
まったく…こんなに魅力溢れるにいいおっぱいなのに。元彼さんは何を考えていたんだか。
大きさを抜きにすれば色合いといい乳首とのバランスといい完璧だというのに。
「あ、あの……」
黒美ちゃんが急に僕の腕を掴んで動きを中断させてきた。目を凝らして見ると顔も桜色に染まっている。
「………こ、ここも」
短く言うと僕の手を下に下ろしていく。
到着地点は恐らく黒美ちゃんの体でもっとも他人の侵入を許していない場所。
まさか相手からお願いされるとは思っていなかったから驚きだ。
意外におっぱいが性感帯なのかもしれないな。
「……勘違いしないでください…触りたいんじゃないかと思って…」
おっぱいから僕の手が離れて冷静さを取り戻したのか口調が元に戻っている。
でもそんな所がまた可愛くて思わず頬が緩んだ。
「やっぱり可愛いなぁ〜黒美ちゃんは」
「……可愛くありません」
「いいや可愛い」
「可愛くありません」
やれやれ…素直じゃないねえ。
328こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/02/23(月) 21:15:29 ID:GKeFlF1R
僕は問答を終わらせるために黒美ちゃんの股関にあてがった指を動かした。
「……っ!」
不意をついたせいか黒美ちゃんが目を見開く。
探るように割れ目に沿って中指を優しく上下させる。
次第にぴったりと閉じられたアソコからは粘りのある愛液が少しずつ滲み出てきた。
「……ん」
小鳥のさえずりにも聞こえるほど小さい声が、でも認識するには十分な声が漏れ出た。
いつもの鋭い眼差しはどこへやら、まぶたを下げトロンとした目をしながら僕を見つめてくる。
まるで誘っているかのように艶やかな表情は僕の思考力を奪うのに十分すぎた。
引きちぎるように着ている服を脱ぎ捨てると、痛いほどに勃起した息子をあてがう。
「ごめん、僕もう余裕ないから」
「……」
一瞬睨まれた気もしたけど黒美ちゃんは足を開いて僕を受け入れる準備をしてくれた。
ぬめぬめと光る小さな入り口に向かって腰を押し出す。
僕のが大きいのかは知らないけどその中は明らかに狭すぎた。
「……っ!」
黒美ちゃんが苦痛に顔を歪める。
「痛くない?」
「…久しぶりで驚いただけです」
「いや、でも」
「続けて下さい…」
人のこと言えないけどやっぱり初めてじゃないのか…残念だ。
せめて痛みを和らげようと空いた手で乳首を摘む。
びくっと体が震えた隙を見て一気に貫いた。
黒美ちゃんの中は侵入を決して許さないよう拒むようにキツい。
気持ちいいのは確かだけど締め付けが強すぎて動くことも出来なかった。
僕に離れてほしくないのか又はこのまま息子を締め殺すつもりなのか…
「………」
ぎゅっと目を閉じて痛みに耐えている黒美ちゃんに僕が何を言っても効果はないだろう。
生殺しだけど落ち着くまでこのまま待つしかない。
手持ち無沙汰になった僕は射精感を紛らわすために黒美ちゃんの体をイジリ始めた。
「……ちょっ、と何して…」
「だってこうでもしないと僕もうすぐいきそうだし。黒美ちゃんの中気持ちよすぎだからね」
「……よ、余計な事言わなくて結構です」
黒美ちゃんが顔を反らした時、突然に締め付ける力が弱まり奥から愛液がどろりとわき出た。。
これなら動けるかも…
「………ぁ、…んん」
腰を揺らすと部屋に甲高い声が響いた。
慌てて口を閉じる姿を見ながら続けてもう一度腰を動かす。
「ああっ…んんぁ…」
一突きするごとに必死に閉じた口から甘美な媚声が漏れ出てた。
329こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/02/23(月) 21:17:35 ID:GKeFlF1R
その声に僕は我を忘れて快楽を求めた。
「…い、や…ちょっ、とんっん…」
きつく締め付けてきた中は徐々にほぐれ僕の動きを邪魔するほどではない。
襞の感触に頭をくらくらさせながら僕が唇を奪い舌を差し込むと黒美ちゃんも応えてくれる。
相手の唾液を吸い自分の唾液を流し込む。
口を離すと混ざりあった二人の唾液がお互いの唇でいやらしく糸を引いた。
「どう気持ちいい?」
「はい、き、気持ち、いいで…あああっもっ、と、…た、くさん…あぅんっっ」
快楽への欲が理性を上回ったのか今までとは考えられないほど素直だ。
普段無口なのが嘘みたいに次々と言葉が紡ぎ出される。
もっと、もっとこの時を味わいたい…けど久しぶりのセックスに僕も限界だった。
「ごめん、そろそろいきそう」
「わ…私もっ、です、んあッ…いっしょに、ん」
とはいえ中に出すのはまずいので離れないと…
「うわっ黒美ちゃん!?く、出るっ」
でも僕の腰にしなやかな脚がしっかりと絡みついていてそれは叶わず、勢いよく白濁液が最奥へと吐き出された。
「はあッん…いっ、ぱい中に…きて、はぁ、んんん」
絶頂に喜ぶ黒美ちゃんに見とれながら僕は朦朧としてきた。
「好きだよ…黒美ちゃ…ん…」
なんとかそこまで言い終えると僕は意識を手放した。
「…私も…です、しろう…さん」
最後に見たのは温かい笑顔で僕の名前を呼ぶ姿だった。

次の日、僕は頬を思いっきり抓られて目を覚ました。
「おはよう、黒美ちゃん。あのさぁすごく痛いんだけど」
「……離れてください」
気づけば僕はまだ黒美ちゃんと繋がり覆い被さったままだった。
さすがに息子はおとなしくなっていたけど。
「最低」
「ごめんごめん…今どくから」
「その事じゃありません」
何?まさか自分から誘っておいて僕の責任にするつもりなの?
「……避妊」
「それは黒美ちゃんが離してくれなかったから…」
「………」
「あの…」
「ケダモノ」
「すいませんでした…」
「……他の人には同じ真似しないでください」
ベットに僕を一人残し、シャワーを浴びに行く途中冷たく言い放つ。
すっかり元通りになっちゃったねえ。昨日のが夢みたいだ。
でも今の言葉はなんか意味深だった。少しは黒美ちゃんも変わったのかな?
黒美ちゃんが出た後に僕もシャワーを浴びる。
綺麗さっぱりとして戻り僕は声をかけた。
「ねえ黒美ちゃん、ちょっと行きたい場所があるんだけど付き合ってくれないかな?」
330こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/02/23(月) 21:18:47 ID:GKeFlF1R


「ここも随分と開けちゃったなあ〜自動販売機があるよ」
「………」
電車を乗り継ぎようやくたどり着いた田舎町。すでに太陽が空を茜色に染めていた。
家を出てからずっと黙りっぱなしの黒美ちゃんをよそに僕は一人進んでいく。肩にカメラをぶら下げながら。
「もうちょっとだから我慢してよ。あの山の上だからさ。」
「……」
前方に見える小山を指さすと一瞬だけ眉をひそめまたいつもの冷たい表情に戻った。
でも後少し、もう少しで見せたいものを見せてあげられる。
「…霊園?」
頂上付近に近づき看板を見た黒美ちゃんが一言呟く。
「そう。でも本当の目的地はもう少し先」
広い園内を通り越し林を抜けていく。
「さあ着いたよ。見てみて」
「…!?これって……」
そう。僕が連れてきたのは黒美ちゃんが気に入っていた写真の場所。
小山から見下ろす目の前には雄大な自然が広がり地平線が続いている。
夕焼けの空も相まってあの写真よりも幻想的で美しかった。
でも…景色は確かに綺麗だけどそれを見る黒美ちゃんの方がずっと綺麗に見えた。
「よし、黒美ちゃんこっち向いてよ。一枚撮りたくなった」
「…人は嫌いなのでは?」
「でもなんかすごくいいのが撮れそうだから…」
「……」
「嫌そうな顔しないでよ。お願いだからさ」
「……」
僕の思いが通じたのか黒美ちゃんは手で髪をとかし体裁を整え始めた。
「…人を撮るのが好きになったら仕事もはかどりますから」
これって本気で言ってるのかな…
「じゃあ撮るよはいチーズ!」
被写体がよかったからか、または単に黒美ちゃんだったからか。言い出来になるとシャッターを押した段階で確信した。
「さあ帰ろう。現像が楽しみだ」
僕たちは来た道を並んで歩く。途中手を繋ごうとしたらひっぱたかれた。
「そうだ、遅くなったから泊まって帰ろうよ。近くにいい旅館があるんだ」
「お一人でどうぞ」
「ええ!?冷たいな〜」
「お金がもったいないです…」
僕を見向きもせずに、しかも淡々とした口調。
「別に黒美ちゃんが心配することじゃないでしょ?」
「……破産されたら私の居場所がなくなります」
「ん?今のってどういう意味…って黒美ちゃん!待ってよ」
急に速く歩き出した黒美ちゃんを僕は慌てて追いかけていく。
ちなみにこの日の写真は今までで一番の出来だったけど、黒美ちゃんの猛反対で飾ることは出来なかった。


おわり
331名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:54:34 ID:ZWGLe8AN
GJ!!
ところでその雑誌はどこでk(ry
332名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 22:25:32 ID:b6GWWU2t
スレが投下される度に、月刊無口っ娘通信の売り上げが伸びていくw

で、無口っ娘通信の売っている書店h(ry
333名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 22:55:57 ID:KMje9JMI
密林行け
…と言いたいところだが、売ってなかったんだよな

近場の大型書店で無口っ子店員さんを探して、聞いてくるのが一番いいかもしれない
334名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 12:56:34 ID:OfreAvvv
>>330
GJ!
結婚指輪を渡した時の反応が見てみたいです
335名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 23:56:37 ID:Sd6GUJx7
>>305
プレネールさんが赤面しながら
無口っ娘通信買ってたぞ。
336名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 02:02:06 ID:GNq/eEVo
無口剣道娘
337名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 06:51:19 ID:/IJLozDB
>>336

> 無口剣道娘

バンブーのたまちゃんはどうだ
338名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 08:38:47 ID:4aID95KB
>>335
プレネールさんが
森田さんは無口を買って行ったぞ。
バイトしてるとき見た。
339名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 06:51:37 ID:BErl06ic
ハリセン必携ツッコミ係系無口
340名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 15:08:55 ID:LmDckOdr
タマちゃんは以外と喋る子だからなぁ〜
341名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 17:13:33 ID:m4II61lM
じゃあタマちゃんのライバル候補であるウラ様はどうだ?
ここぞという時以外は、要点くらいしか口にしないぞ。
342名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 18:40:27 ID:FHCnW6wk
>>341
無口以前に、ウラ様は人としてヤバいレベルにいるぞw
343名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 23:30:49 ID:BuApyAv/
潜伏しすぎwww
そんな自分はアビスのアリエッタを推したいけど。
344名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 00:27:24 ID:KEnR2kiC
アリエッタはなー……無口と言うか気弱と言うかヤンギレと言うか……。
最後まで生き残って欲しかったな……。
345名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 00:31:27 ID:qHM+/lzg
まあ六神将は全員死んでナンボの連中だし。
アリエッタは声優の本気と敵に回したときの異常な固さしか記憶に無いや。
346名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 02:30:38 ID:ZIrKtmIY
>>336
無口で眼鏡で剣道やってる高校生ならここにいるよ
オトコだが
347名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 03:33:08 ID:ocB6mABl
>>346
高校生…の頃って事ですね?わかります

ここは18歳未満は来れませんしね?
348名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 12:30:49 ID:fX1x0dRI
お前は黙ってればカッコイイのにと友人によく言われるのと
無口娘に憧れて
暫くあまり喋らず頑張ってみたが

奥が深いな、無口道
349名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 13:02:10 ID:+ggjKc/s
無口なキャラ作りは最初が肝心だ


いきなり無口になっても不気味なだけですにょ?
350名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 14:28:01 ID:iRC790AH
学生時代、クラスで最初のうちは周りと話すが、徐々に無口キャラになっていった俺
351名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 15:00:12 ID:ZIrKtmIY
>>346
永遠の18歳って事にしといてくれ
352名無しさん@ピンキー:2009/03/01(日) 23:05:12 ID:utHUfSMx
高校生でも18越えてりゃいいんじゃない?
353名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 00:21:44 ID:LOAPAfci
18以上の高校生なんておかしくもなんともないからな。
ひょっこり転入してきたワケあり年上同学年無口さんを希望
354名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 10:30:17 ID:Z4ejUfxc
まぁ、こっそりここに来てる18歳未満居るだろ多分
おじさん怒らんから挙手してみぃ
355名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 10:31:29 ID:Z4ejUfxc
まあ、こっそりここ来てる18歳未満居るだろ多分
おじさん怒らんから挙手してみィ
356名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 11:27:35 ID:Au8Fj+BI
>>354-355
当のおじさんが18歳未満なんですねわかります。
357名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 12:29:19 ID:lvDL9+6o
いけない子にはおしおき
358名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 13:26:07 ID:n99AdibX
小ネタを投下させてもらいます
エロなし、乱文スマンです。NGはIDにて


 どうやら彼女は逡巡している様だった。
彼女の目の前で、友達とだろうか、談笑している彼の、
いや背負ったバックをじっと見つめては
口を開きかけ、何か発するのかと思えばそのまま閉ざし俯きがちにリュックを見る。
 なんて事はない、ただバックのジッパーが開いているだけなのだ。
それを彼女は伝えたい、それだけなんだろう。ただそれだけの事を彼女は迷っている。
何度かそんな事を繰り返した後、何か決意めいたものを顔に浮かべてまっすぐ彼を見た。
追い詰められた鼠は猫を噛む、の格言通り彼女は実力行使に出たのだ。
いきなり、それも乱暴にリュックの取っ手を引っ張って手繰り寄せ、
ジッパーを閉め始めた。
 された男の子は始めこそ驚いた様子だったもののすぐに彼女がしている事に気付き
彼女が閉め終わるまで大人しくしている。
「開いてたか、すまねえな」
 向直って礼を言う彼に、彼女はただ首を振って少し笑うだけだった。
「もう食い終わったろ、行こうぜ」
 周りの仲間に声をかけ、そのまま彼等はたこ焼き屋の前から歩き出す。
彼女はまたも彼の後ろに付け、今度は彼の赤くなった耳を見ているみたいだ、
そうして見ている彼女の頬もまた赤い。
彼が彼女の視線に気付くのはいつになるのかな、なんて他人事ながらそんな風に思った。
 思ったところでふと、自分の彼女は如何しているのかと振り返る。
果たして、いつも通りか想像通りか、こっちを見ている顔に会った。
 漠然と、そう本当に、何となく嬉しかった。
 そんな照れ隠しに彼等が歩いていった方を見て、
「いや、初々しいと思ってね」
 何に言い訳しているかわからないそんな言葉をはいた。
いつも通り彼女は何も言いはしなかったけれど、多分、頷いてくれているのだろう。
見てはいない、でも雰囲気で判る、そう思いたい。
まあ、どちらにせよ大した問題ではない。
彼女がこうして傍にいて、自分を見ていてくれるなら。
 それから彼女に向直って、手を差し出した。
少し笑いながら手をとってくれた彼女と歩き出す。
「あったかいね」
 久しぶりに顔を出した太陽を手で透かしながら彼女は言った。
 僕はその横顔を見ていた。


投下終了します
ただ単に女の子の科白があまり無い文章になっているだけの様な気もします
陽気に当てられたという事で、失礼しました
359名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 13:26:34 ID:Tc47xIuK
「!!………………」
360名無しさん@ピンキー:2009/03/02(月) 16:53:02 ID:LOAPAfci
>>358
初々しくていいね〜。GJ
361名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 01:26:56 ID:vTGMoYjd
…ほしゅ
362名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 02:06:49 ID:ncBInHec
>>358
あ、バックのジッパーだったのかw
一昨日読んだ時なんか変だと思ったw
363名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 03:36:05 ID:pbcwJ260
>>362
ナニを想像したのやら
もしオレの思った通りだったら初々しいなんt(ry
364名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 03:47:16 ID:aEZJzoLu
そもそもバッグだと突っ込ませていただく

バックパックならかろうじて通じるけどなー
365名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 20:43:40 ID:3ViDMtp9
>そもそもバッグだと突っ込ませていただく
四つんばいになった無口っ娘が後ろから……
という図を想像したやつ、挙手


366名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 23:30:34 ID:6I85TT/5
367名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 01:43:40 ID:CqdFM1pW
言葉はいらない! ただぎゅってさえすれば全て解決する!
368名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 22:36:15 ID:7xrOA4ND
馬鹿なキサマよもや、「こくこく」と「ぶんぶん」と「なでなで」と「もじもじ」を否定するのかっ?!
369名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 22:56:14 ID:BwiVuTE0
貴様まさか「くいくい」や「すりすり」さえも否定するのか…!
370名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 00:33:37 ID:tf8qo84e
いやいやいや!
諸兄におかれては「ぷいっ」や「ちょんちょん」なども忘れてはなりませぬぞ!!
371名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 02:26:04 ID:03QQYwCb
ぽんぽん
ほじほじ
くりくり
ふ〜
くるっ
ほじほじ
くりくり
ふ〜
ぺちぺち
なでなで
ぐいっ
ちゅ
ちゅ〜〜
ちゅ…ちゅ…くちゅ…ちゅ…
さわ
さわ…
にぎっ
くりくり
こすこす
こすこすこす
こすこすこすこす
ぺろっ
れろ…
れろ…れろ…
ぱくっ
じゅぽっ
じゅぽっじゅぽっ
じゅぽっじゅぽっじゅぽっ
…………ごくん…こく………こくん…


無口な娘による耳掻きからキス手コキフェラを経て飲むまでの流れ
372名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 00:23:56 ID:vxIa7TZJ
ぱふぱふ
はないんですか?

個人的に無口娘は巨乳でも貧乳でもない気がする。
373名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 08:28:43 ID:E+BhiftN
『にこっ』を忘れるな
基本だぞ
374名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 09:43:39 ID:Ly+ce5qe
ぷくぅっ


















ぱんっ!

ガムを膨らませていたみたいです。
375名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 10:02:38 ID:NaBfDvPM
>>374
どっちかと言うと、

ぷ〜っ
つんっ
ぽひゅっ
〜〜〜っ

の方が萌えるかもしれない。どんな状況か分かりづらいかもしれんが。
376名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 11:42:32 ID:8IeeVK//
擬音だけで萌えられる素晴らしいスレなんて
ここくらいしかありませんよね
377名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 12:30:06 ID:dQo/wm2T
ちょっと前に甘スレであったな
378名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 19:11:34 ID:Ck+nYDPs
>>375
無口っ子が一生懸命に膨らませたガム風船を、横からチャチャ入れて割ってしまい、
今度は頬を膨らませた無口っ子に無言で睨まれるわけですね判ります。
379名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 03:20:20 ID:3JATmBy7
ガムを膨らませられないで悪戦苦闘してる無口さん
380名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 09:46:16 ID:QkwIKTgv
>>379
「ふーっ! ふーっ!」
「……お前、さっきからほっぺたリスみたいにして何やってるんだ?」
「………………(T_T)」
「いや、涙目でこっち見られても。あー……状況的に、ガムで風船を作りたいわけか」
「………………(こくこくこく(>_<))」
「で、お前が今噛んでるのは手に持ってるそのガムで良いんだな?」
「(・_・)?」
「……これ、フーセンガムじゃなくてチューインガムみたいなんだが」
「Σ(T▽T;)」
381名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 12:35:52 ID:RVPY9BpQ
>>380
「おっ、またガム噛んでるのか?今日もチューインガムなんてオチじゃ」
「(ぶんぶん)」
「はは。流石に違うか。でもやっぱ膨らませられない…と」
「(ちっちっち)」
「ん?俺が来るのを待っていた?」
「(こくり)」
「味が無くなっ…えっ味なんて元からしない?」
「(すぅ…ぷぅー!!)」
「ちょ!!!!おま!!!!それガムじゃのうてゴm」



無口な娘が男にエッチをねだるシーンで。
382名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 12:43:40 ID:xFspaI2Y
ガムみたいに噛んでたら穴だらけじゃねーかw
383名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 16:23:05 ID:3JATmBy7
>>382
つまりそういうことを望んでいるという意思表示なんだな
384名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 22:42:23 ID:TKKs5eZs
まあいやらしい
385名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 17:56:06 ID:Mb9Nk8Yr
無口さんのほっぺたは常人のよりもつっつきたくなるのは俺だけだろうか
386名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 00:19:23 ID:XCUaDCdx
>>385
俺もつっつきたくなるぜ。
・「?」という顔をして見つめてくる
・齧ろうとする
・「う゛ー」と切なげにうなる
どれも最高。
387名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 12:40:58 ID:j38xjLfD
>>386
・ぱくんと咥えてちゅぱちゅぱれろれろとしゃぶってくる

が抜けてるぞ
388名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 16:07:45 ID:PbWKHIkx
かおるさとー氏最近見ないけどどうしたんだろ?
389名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 22:07:58 ID:+uUzdqf4
まあそう言うな。誰にだって事情はある。
ところで無口っ娘探検隊の召集はまだか?
390名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 22:31:05 ID:LfwPVfzs
>>388
ちょくちょく他スレで見かけるが
391名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 01:03:41 ID:5t9ATwK2
>>389
第1次が密林へ旅立ってから何の連絡もない…

第2次探検隊は何処へ向かうべきなのか?
392名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 01:39:31 ID:eAd0VxC8
密林なんかに行かなくても、無口っ子は君の側にいるよきっと。
393名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 01:52:33 ID:FJgSMF81
>>392
天井裏で常に監視している無口なストーカーが思い浮かんだw
394名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 08:26:04 ID:IAafxEab
俺は主の影と同化して場所を問わずあらゆる敵から主を守る忍びが思い浮かんだが
そういえば忍びや暗殺者って基本的に無口だよね
395名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 22:54:52 ID:ot+owkh/
>>394
つブラック☆スター
396名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 23:59:29 ID:+g35nJvt
>>395
おいww
397名無しさん@ピンキー:2009/03/15(日) 01:12:13 ID:VD0XqtUT
サモンナイトの忍べてない忍とかもよーしゃべるなw
398名無しさん@ピンキー:2009/03/15(日) 01:21:52 ID:k4Kf/Yo9
俺、通りすがりのニンジャだけどパピーに指示出すために喋る必要はあると思う
399名無しさん@ピンキー:2009/03/15(日) 01:31:54 ID:UY+UIsZS
>>398
ガルフォード乙
400名無しさん@ピンキー:2009/03/16(月) 00:51:00 ID:S5E/jXaJ
無口っ子を抱き締めて眠りたい。
抱き締められて発情しちゃってもじもじしてるのをニヤニヤしながら眺めたい。
401名無しさん@ピンキー:2009/03/16(月) 19:16:49 ID:51V5oX/C





「じゃ、行ってきます」



ぴとっ
家を出てしばらく歩いてたらいきなりなんかがひっついてきた
「こら、気配消してくんな。心臓麻痺したらどうすんだ」
「ん…………(すりすり)」
いつものことなので慣れたが隣に住むこのちみっこは何故か俺だけに懐いていてことあるごとに憑いてくる(断じて誤字じゃないぞ?)
「なぁ、美霧(みき)。俺、今日は隣の県に行くんだからさ。おとなしく留守番してくれないか?」
「…………(ふるふるふる)」
可愛いからつい許したくなるが此処は心を鬼にして言わねばなるまい
しかも美霧はもう中一だ。
「だから、今日は構ってるひmっだあぁっ!噛むな噛むな!?」
「…………っ(むすー)」
いかん、実力行使モードに入りやがった。早くなんとかしないと…………
「わかった、帰ってきたら構ってやるから、遊ぶから!!」
「…………!!(にぱー)」
いい笑顔で解放された。いかん、謀られたか
「はぁ、なるべく早く帰ってくるから、ちゃんと留守番するんだぞ?俺の部屋に入るのも禁止。いいな?」
「(ちっ)…………(こくん)」
入る気満々かよ。帰ったらすぐにエロ本保守しないとでいんじゃらすじゃねぇか
「じゃ、行ってくるからな」
「…………って…っ…ゃい…………(ぽっ)」
美霧はめったに出さないか細い声で言うと走り去って行った
…………可愛い奴め





という保守なんだ
402名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 02:27:51 ID:H6yFmLyE
>>401
うほっ、いい保守!

関係ないが、たった今、声にできずに尻文字で言いたい事を表現する無口っ娘という電波を受信した。
403名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 00:28:34 ID:qy+YAb3z
尻文字は美しくないなあ……。
やっぱ手のひらとか背中に指で文字を書いて伝えるシチュエーションが燃える。
萌えるじゃなくて燃える。
404名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 10:01:29 ID:PJVwhM7V
熱血派無口
ボディーランゲージが上手く、
また筆談にも長けており
熱いハートの持ち主だが
しゃべり下手で無口
405名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 16:51:20 ID:/nZsyHVw
>>404
熱血無口見てみたいな
照れ隠しに無言で男をぶん殴るとかありそうだw
406名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 22:27:07 ID:l54udPSH
無言で胸ぐら掴まれてそのまま体育倉庫に連れ込まれ、まさかフルボッコか?俺が一体何をした?と混乱してたら逆レイプされた
そんなイメージが浮かんできた>熱血無口
407名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 14:49:33 ID:m1x4BRBy
>>406
無口な女ヤンキーとか面白そう
隠れて捨て犬の世話をしてる所を男に見られて顔真っ赤にしながら照れ隠しに男をぶん殴るみたいなw
408名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 21:05:12 ID:RX+l6RKO
ポーカーフェイスな無口ディーラー
無口ハスラー
409名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 21:28:36 ID:KLfvo4ah
無口キャバ嬢
410名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 23:41:00 ID:FbTOo2Qs
無口秘書

非常に有能な完璧超人だが会話は一切無い
移動の際も目的地を告げることは無いが、手を繋いで連れていってくれる
411かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:00:18 ID:HFSygprM
こんにちは。

今回は少し毛色の違う作品を投下します。
一年前に連載していた「縁シリーズ」のスピンオフです。
ただ、戦闘描写・オカルト要素があり、多少グロ要素もあってスレ違いかもしれません。
グロと言っても女性キャラに何かあるわけではありませんが。
一応、そういう要素の苦手な方はスルーしてください。

今回は前編です。後編はまたのちほど。
それでは投下します。
412かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:01:39 ID:HFSygprM
『矛盾邂逅(むじゅんかいこう)』



 一ノ瀬由樹(いちのせゆき)は二十歳の大学三年生である。
 女の子みたいな名前だが男だ。細身で女顔のため、たまに女に間違えられることもある。
 出身は神守(かみもり)市で、地元の明宝(めいほう)大学に通っている。今はちょうど
就職活動中で、由樹はそのことで悩んでいた。
 自分のやりたいこととは何だろう。何が自分に合っているのだろう。
 説明会にも何度か行ったが、由樹にはピンとこなかった。
 十二月に入っても、由樹の心はあまり晴れなかった。



 そんなとき、彼が通う武術道場の師範が言った。
「そういうときは旅をしよう」
 普段は週一でしか顔を出さない師範の言葉に、由樹は目を細めた。
「は?」
「いや、お前に頼みごとをしようと思ってな。大自然に触れてくる気はないか?」
「……どこかに行けと?」
「温泉もあるいい場所だぞ。お遣いついでに頼みたいんだが、どうだ?」
 師範はにっこり笑って詰め寄ってくる。
 由樹はその笑顔を見て何か嫌な予感がしたが、特に断る気もせず頷いた。
「よし。旅費は出してやるからお前は荷物だけ用意しろ。場所は……」
 どんどん話を進める師を見ながら、まあいいかな、と由樹は苦笑した。この師範は無茶な
人だが、考えなしにことを進める人ではない。それだけは確かだ。
 クリスマスも近い。彼女もいない現在、旅行も悪くないと思った。
413かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:05:03 ID:HFSygprM
      ◇   ◇   ◇

 クリスマス二日前。
 由樹は荷物の入ったリュックとともに、山奥の小さな村を訪れていた。
 岩塚村という、神守市から北へ三百キロ程上った場所だ。
 名物は温泉だが、交通の便の悪さから観光客を集めるには至らない。過疎化も進み、
寂れているといっていい村である。
 新幹線から電車、バスと乗り継いでようやく着いた時、既に太陽は南中を過ぎていた。
「……でも、空気はおいしいな」
 山道を歩きながら由樹は一人ごちた。都会より遥かに澄んでいる空気は、息をする度に
体内を隅々まで清めてくれそうなくらいだ。
 針葉樹林に挟まれた道を抜けると、ようやく視線の先に家屋が現れた。田畑に囲まれた
民家がぽつぽつと建ち並び、その向こうには集落地が見える。
 いかにも田舎という風景に由樹の心は不思議と落ち着く。これが癒しというやつなの
だろうか。今時流行りもしないが。
 彼女にも見せたかったなあ、と由樹はため息をついた。
 一年前に別れた彼女。そういえば旅行とかは一度もしなかった。本気で好きだったのに、
そういう思い出はあまり作らなかった。
 今ではほとんど吹っ切ったつもりだが、たまに思い出してしまう。それは別れた時の
彼女の言葉が効いたからだろう。
『あなたはいい人だけど――どこまでもいい人なのね』
 意味はわからなかったが、その言葉は由樹の胸に響いた。
 由樹はその彼女にひたすら合わせていた。自分のことは二の次で、全て彼女優先だったのだ。
 それが本当の自分を見せていないように彼女には映ったのかもしれない。
 しかし自分は『そういうもの』なのだ。由樹は、いつだって誰かの役に立ちたいと
思っている。
 だからこの旅行の話も受けた。人からの申し出や頼み事は断れない、否、断りたくない
性格だから。
(……あ、警察官とかいいかも。人のために役立つ仕事だし)
 道を歩きながら、由樹はぼんやり考える。
 しかし、そんなのんびり気分はすぐに薄れていった。
 集落地を目指してひたすら進んでいく中、なぜか誰にも出会わないのだ。
 過疎が理由ではない気がした。人の気配自体がない。
 田畑はよく手入れがされているので、廃村というわけではないだろう。庭の整頓ぶりから、
民家にもそれなりに人の暮らしている様子が見られた。
 しばらく歩いても、やはり誰にも会わない。昼間なのだから農作業中の人間くらい
いそうなものだが。
 由樹は近くの民家を訪ねることにした。ちょうど左手に木造の平屋が見えたので、そこに
向かってみる。
 家の横にあるガレージには大きなワゴン車が停まっていた。誰かは住んでいるのだろう。
 由樹は玄関ドア前まで行くと、横についているベルを鳴らした。りーん、と奥から音が
聴こえた。
「…………」
 反応はない。
 もう何度か鳴らしてみるが、まったく反応はなかった。
 仕方ない、と由樹は諦めてその場をあとにする。別の家を訪ねよう。
 空に大きな雲が現れ始めた。山間部では夜から雪が降るでしょう、と天気予報は言っていた。
 山奥の澄んだ空気の中、冷たい風が青年の体を強く凪いだ。
414かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:08:37 ID:HFSygprM
      ◇   ◇   ◇

 集落地まで来ても、人っ子一人現れなかった。
 どの家を訪ねても何の反応もなく、そもそも人の気配がなかった。マリー・セレスト号
みたいだ、と由樹は思った。
 ……不謹慎な例えに少し反省する。
 集落地の一番奥まで行くと、一際大きな屋敷が建っていた。
 表札を見ると『火浦』と刻まれている。
(じゃあここが村長さんの家かな)
 師範からここにお遣いを頼まれている。由樹は一つ頷くと玄関まで進み、インターホンを
押した。
 ひょっとしたらここにも誰もいないかも、と思った瞬間反応が返ってきた。
『――はい。どちら様ですか?』
 多少しわがれたような男の声。由樹はほっとすると、言葉を返した。
「あの、神守市から参りました一ノ瀬と申します。村長さんは御在宅でしょうか?」
『村長は私ですが』
「すみません、こちらに神守依澄さんという方はいらっしゃいますか?」
 すると、不自然な間が一瞬生まれた。
『……少々お待ち下さい』
 声が途切れる。どこか警戒するような声に聞こえたのは気のせいだろうか。
 扉の向こうから足音が響いてきた。足音は扉の前で止まり、
「――!?」
 その瞬間、由樹は奇妙な気配を感じ取り、思わず後方に飛び退った。
 鼓動が速まる。今の気配は、
「どうされました?」
 扉が開き、中から初老の男が出てきた。
 男性は茶色のセーターにGパン姿で、特に変わったところはない。
 由樹は慌てて姿勢を正し、頭を下げた。
「こ、こんにちは」
「こんにちは。この村の村長をやってます火浦敬造(ひうらけいぞう)です」
 そう名乗った男はどうぞ上がって下さい、と柔和な笑みを浮かべた。
 さっきの気配はどこにもない。
 由樹は戸惑いつつもリュックを背負い直し、再び頭を下げた。
415かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:11:29 ID:HFSygprM
 屋敷の中は広かった。
 長い廊下を挟んでいくつもの部屋があり、手前の方に洋室、奥の方に和室と分かれていた。
 火浦が言うにはこの村には旅館やホテルがなく、外から来た人間にはこの村で一番大きい
この家が、宿代わりに部屋を貸しているという。
 由樹は奥の応接室に通された。来客用のソファーを勧められると、由樹は荷物を横に
下ろしてから、遠慮気味に浅く腰掛ける。
 火浦は向かいのソファーに座ると、おもむろに尋ねてきた。
「ここにはどのような御用で?」
「あ、ある人から神守依澄さんという方に手紙を渡すよう頼まれまして、こちらを訪ねれば
会えると言われたんですが……」
「……そうでしたか。他には何か?」
「いえ、それだけです。こちらには温泉があると聞いたので、しばらくゆっくりしようかと」
「それはそれは。この村は御覧の通り何もないところですが、温泉だけは自信を持って
おすすめできますよ」
「楽しみです。それで、神守さんはどちらに……?」
「そのことなんですが……」
 火浦の顔が曇る。
「どうかしましたか?」
「いえ……実は神守さんという方はこの村にはいません。神守依澄さんという方は、今日
こちらにいらっしゃる予定のお客様なのですよ」
「……え?」
 由樹はわけがわからず、つい目を見開いた。
「一ノ瀬さんがお探しの方はおそらくその方ではないかと」
「……その方はいつ?」
「夕方頃にはこちらに着くかと思われますが」
「しばらく待たせてもらえますか?」
「どうぞどうぞ。お部屋を御用意いたしますから、そちらでゆっくりなさっていて下さい。
神守さんがお着き次第、連絡いたしますので」
「すみません、急な申し出で」
「いえいえ。村長として当然のことですよ。この村は人が少ないですから、お客様は大歓迎
なんですよ」
 そう言って火浦は笑った。
 丁寧で柔らかい物腰は好感が持てた。由樹もつられて笑う。
 そこで思い出した。もう一つ訊きたいことがあったのだ。
「あの、来るとき誰にも会わなかったんですけど、村の人はどちらに……?」
 一番の疑問をぶつけてみると、火浦はあっさり答えた。
「旅行です」
「は?」
「先日、村の者が団体旅行券をくじ引きで当てまして、皆で九州へ旅行中なんですよ」
 飛行機が苦手なので、私一人だけ留守番です。火浦はそう言って照れくさそうに頭を
掻いた。
 旅行。わかってしまえばなんということはない。
 由樹は内心で納得とともに安心した。
416かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:14:26 ID:HFSygprM
 和室に通されると、由樹は荷物を置いて畳に腰を下ろした。
 待ち人が来たら知らせるということなので、それまでゆっくり待つつもりだ。
(しかし、なんで先生は俺に手紙を持たせたのだろう)
 畳に寝転がりながら、由樹は疑問を抱く。
 手紙なら直接相手に送ればいいし、電話の方が確実だ。なのになぜこんな回りくどい
ことを。
(でも、あの人が無意味なことをするとも思えないし)
 多分訊いてもろくに答えてくれないだろう。容易に答えを明かさず、こちらに考える
ことを常に要求してくる人だ。
 連絡を取ろうかとも思ったが、そもそも携帯は圏外で使えない。わざわざ火浦に電話を
借りるのもどうかと思う。
 まあいいか。由樹はそのまま目をつぶり、意識を闇の中に投げ放そうとした。



「――!」
 不意に生じた気配に、由樹は反射的に跳ね起きた。
 さっき玄関で感じたものと同じ気配だ。入り口の襖に素早く視線をやり、身構える。
 身構えてしまう程に嫌な気配。これはまるで――
 気配が消えた。
「……」
 由樹は襖を鋭く睨む。拡散するように気配は消えたが、警戒を解く気にはなれなかった。
 今の不快な感触。この感触はどう考えても――殺気だった。
 しかし誰が?
 該当するのは一人しかいない。
 火浦敬造。
(でも、なんで火浦さんが?)
 わけがわからなかった。しかし、わからなくても危害を加えられる可能性はある。
 用心しておこう。由樹はもう横にはならず、壁際にも近付かなかった。
 広い十二畳部屋の真ん中で、由樹は静かに時間が過ぎるのを待った。
417かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:18:43 ID:HFSygprM
      ◇   ◇   ◇

 日が沈む少し前。
 玄関先に人の気配を感じた。
 由樹の鋭敏な感覚は屋敷全体を知覚するまでに広がっていた。
(ちょっと警戒しすぎたかな)
 由樹は注意を解き、立ち上がった。誰かが来たみたいだ。おそらく待ち人だろう。そのまま
部屋を出て玄関に向かう。
「おや、一ノ瀬さん」
 玄関には既に火浦が迎えに出て来ていた。
「今ちょうど神守さんが到着されたところですよ」
 玄関口を見ると、和服姿の女性が立っていた。
 その姿を見た瞬間、由樹は放心してしまった。
 その女性は、由樹が今まで見たことがないほどに美しかった。
 人形のように整った目鼻立ちも、眩しいくらいに白い肌も、全てが幻想的なまでに美しい。
 漆黒の髪は闇の中でも映えそうなくらい輝いて見え、真っ直ぐで綺麗な姿勢は全身に
凛とした空気を纏わせている。
 存在自体が夢のようで、由樹はぼう、と見惚れたまま固まってしまった。
「一ノ瀬さん?」
 火浦の言葉に由樹ははっ、と正気に戻る。
「あ、す、すみません。ついぼんやりしてしまって」
 言ってから後悔した。何がついだ。
 しかし女性は特に気にした風でもなく、ぺこりと一礼してきた。
 その所作でさえ華麗に映り、由樹は心底感動した。
(こんなに綺麗な人がいるんだ……)
「では神守さん、どうぞこちらへ。一ノ瀬さんもどうぞ」
 火浦に促されるままに由樹は奥へと向かう。
 女性――神守依澄も流麗な動作で屋敷に上がると、静々と後ろをついてきた。
418かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:21:31 ID:HFSygprM
 応接室に入ったところで火浦が依澄に言う。
「神守さん。こちらの一ノ瀬さんはあなたに用があってこの村にいらしたそうです」
「……」
 依澄の目が由樹を見据える。
 彼女は無表情だった。さらに口も開かず、ますます人形のように思える。
 しかし、冷たさは意外と感じられなかった。
「一ノ瀬由樹です。遠藤火梁から手紙を預かってきました」
「……」
 依澄の顔が怪訝なものに変わる。
 だが由樹にも師匠――火梁の意図はわからないのだ。手紙の中身ももちろん知らない。
 てっきり依澄がそのことを知っていると思っていたのだが、その様子は見られなかった。
 とりあえず由樹は封をされた手紙を渡す。依澄は何も言わずに受け取り、その場で封筒を
開けた。
 中に入っていたのは、二枚の便箋。
 依澄は三つ折にされたそれらの片方を開くと、中身を黙読し始めた。
「…………」
 読んでいくうちに依澄の顔が徐々に曇っていった。
 何が書かれているのだろう。ひどく気になる。
 もう片方の便箋にも目を通す。
 依澄の目が再び由樹に向いた。
 その視線は何かこちらを試すような、探るような感じがした。一枚目の手紙の文をもう
一度なぞりながら、比べるように依澄は青年を見つめる。
 由樹はますます手紙の中身を知りたくなった。まさか自分のことが書かれているんじゃ……。
 やがて依澄は困ったような表情を浮かべた。
(ん?)
 しかしそれは一瞬で、一つ頷くと同時に元の無表情に戻った。
 そして、
「一ノ瀬さん」
 初めて依澄の口が開かれた。
 由樹はその綺麗な声音にびっくりしたが、すぐに返事をする。
「はい」
 依澄は二枚目の便箋をこちらに差し出してきた。由樹はそれを受け取る。読めということ
だろうか。
419かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:23:24 ID:HFSygprM
 手紙にはこう書かれていた。

『依澄ちゃんへ

 こっちの手紙は今あんたの目の前にいるだろう一ノ瀬由樹に対してのものだから、軽く
流し読みしたら渡してやってくれ。

 さて由樹。これから温泉にでも入ってゆっくりしようとしているところ悪いが、頼みがある。
 依澄ちゃんの仕事を手伝ってほしい。
 依澄ちゃんは俗に言う霊能者ってやつだ。別に信じなくていいが、そういう仕事を生業と
している。
 なんであんたに頼むのかと言うと、あんたの力を買ってのことだ。
 依澄ちゃんの仕事には妙なトラブルが絶えなくてね。彼女に危害が加えられる可能性がある。
 別に今回の件は特別なものではないみたいだが、ちょいと心配でね。ボディガードをして
やってくれ。
 本来その任を負うのは私の兄貴なんだが、ちょっと怪我をしてしまった。
 私も用事があって代わってやれない。
 勝手な頼みだとは思うが、お前が一番の適任者なんだ。よろしく。

P.S.そこの温泉は混浴だ。ついでに依澄ちゃんとゆっくり楽しんでこい。依澄ちゃんは
無口だがいい娘だぞ』

 読み終えて、由樹は自分の目が自然と細まるのを自覚した。
 いろいろ突っ込みたい点はあるが、なんでこんな回りくどいことを。直接言ってくれれば
いいのに。
 由樹は人からの頼みごとを断らないのだから。
 とはいえ少しばかり困ったのも事実である。ボディガードと言われても一体どうすれば、
「……すみません、一ノ瀬さん」
 依澄の声が由樹をはっとさせた。
「い、いや、神守さんが謝ることじゃないですよ。先生の無茶には慣れてるし、大丈夫。
問題なし」
 依澄は申し訳なさそうに目を伏せる。
 こういう所作に由樹は非常に弱い。
「大丈夫。ちゃんと手伝います。いや、手伝わせて下さい」
「……?」
 依澄は顔を上げて不思議そうに由樹を見やる。
 自分でも変だとは思う。しかし、仕方ないじゃないかとも思っていた。
 由樹はいつだって、誰かのためにしか動けないのだから。
420かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:26:50 ID:HFSygprM
        ◇   ◇   ◇

 依頼の内容は実に単純なものだった。
 村内にある刀を処分すること。それだけだ。
 その刀は戦国時代に実際に使われていた実戦用で、持ち主を魅了する妖刀だという。
 戦がなくなってもなお人を魅了し、人を殺め続けたために、この村のどこかに封印された
らしい。
(でも……)
 由樹は歩きながら首を傾げる。
 三人が歩いているのは、ちょうど火浦の屋敷の裏山に続く道だった。舗装されていない
山道は、夕方の暗がりも重なって少々歩きづらい。
 由樹はいまいち納得がいかなかった。封印しているなら放っておけばいい。なぜわざわざ
処分する必要がある。
 しかも処分にあたるのは若い女性一人だ。
「……」
 依澄は静々と由樹の前を歩いている。
 先導する火浦の背中を追う依澄の後ろ姿は、実に絵になった。夕暮れの中、おぼろげに
見える和服姿は幻想的だ。
 霊能者だという。確かに浮き世離れした印象を抱かせるが、しかし特別な力を持っている
ようには見えない。
「あの……神守さん」
 由樹は依澄の横に並ぶと、とりあえず話しかけてみた。
「……」
 無言で首を傾げられる。由樹は一瞬詰まるが、
「あー、大丈夫ですか? 歩くの疲れたりとか」
「……」
 依澄は無言のまま首を振った。
「そ、そう。足下危ないから気を付けてくださいね」
 言った瞬間、依澄の体ががくんとつんのめった。
「!」
 依澄が微かに目を見開く。そのまま転びそうになって、
「おっ、と」
 慌てて由樹がその体を支えた。
 腹辺りに右手を差し込み、左手で腰の帯を掴む。着物と体の柔らかい感触に少しどきりとする。
「ほら、気を付けないと」
 すると、依澄が顔を上げて言った。
「ありがとうございます」
 頭を下げるその動作も美しい。由樹は妙に気恥ずかしくなってつい顔を逸らした。
 どこをどうしたらこんなに美しい振る舞いができるのだろう。依澄の一挙手一投足は
あまりに整っていた。
 そのとき、先導していた火浦がぴたりと足を止めた。
「この辺りです」
 そこはちょうど道の終わりで、先にはただ林だけが広がっていた。
「? 何もないですけど」
 周囲を見回すが、特に変わったものはない。
「そう、何もないんです」
「は?」
「だから神守さんをお呼びしたんですよ。普通の人にはこの先の結界を破れないので」
 由樹には意味がわからない。
 依澄はしばらく無反応だった。
「さあ、神守さん。お願いします」
「……」
 火浦の言うことも依澄のやることも由樹にはわからない。
 ただ、彼女が危ないときは自分が全力で守らなければならない。由樹が確信しているのは
それだけだ。
421かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:28:52 ID:HFSygprM
 依澄は──首を振った。
 火浦の目が見開かれた。
「……な、何のつもりですか」
「……あなたから、人以外の気配がします」
「な……!」
 火浦はうろたえた声を洩らした。
 依澄はそんな彼を鋭く見据える。
「な、何を言い出すのですか。私は依頼人ですよ? 妙なことを言わないで下さい」
「……」
 しかし、依澄の目は変わらない。変わらず、疑いの目を向けている。
 由樹は突然の展開に驚いたが、何を言っていいかわからず黙っていた。
 火浦は抗弁を続ける。
「何を疑っているのかわかりませんが、私にやましいことなどありませんよ。だいたい、
あなたを騙して私に何の得があるのですか」
「……」
 依澄の表情は変わらない。
 その目に気圧されたか、火浦は声を荒げた。
「い、言うことを聞け! さっさと結界を解くんだ! 早く!」
「……」
「頼む……言う通りにしてくれ。でないと」
 そのとき、依澄の眉が微かに跳ね上がった。
 火浦は頭を抱えてうずくまる。
「俺は……俺は……」
 ぶつぶつと何かを呟く火浦は、理性を失っていくかのように挙動不審になっていく。
 まるで、人ではなくなるかのように。
 依澄は何も答えない。何かを待っているかのように、和服姿の麗女は美しく男を見つめ
続ける。
422かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:31:57 ID:HFSygprM
 火浦は落ち着きなく身じろいで──

「じゃあ……もういい」

 次の瞬間、身を起こすや目の前の依澄に飛びかかった。
「!」
 由樹が動いたのは同時だった。
 いや、火浦の体に「タメ」ができた瞬間には動いていたので、正確には同時ではない。
ここでいう同時とは行動の起点ではなく、攻撃のことを指していた。
 火浦が動いたときには既に由樹は彼に攻撃をしていた。
 だから火浦が10センチも前進できずに由樹の横蹴りに吹っ飛ばされたのも、由樹の
凄まじい反応の速さを考えれば仕方のないことであった。
 確かな手応え──いや、足応えを靴の裏から感じ取った。
 由樹は反動を利用して、綺麗に構えを戻す。
 火浦の体は3メートル先まで吹っ飛んだ。
 相手の動きの「起こり」に合わせた完璧なカウンターだった。由樹は心配になる。相手の
年齢を考えると、今の一撃はやりすぎにも程が、
 三秒と間を置かずに、火浦はすぐさま跳ね起きた。
 由樹は小さく息を呑む。
 手加減のない一撃だったのだ。相手の胸元に骨も砕けよとばかりに放った渾身の横蹴り。
しかも正中線の『胸尖』を貫いた一撃だ。大の男でものたうち回る急所を突いたというのに、
相手は平然と立ち上がっている。胸骨さえ砕けているかもしれないというのに。
 火浦は無表情に立ち尽くしている。その顔からは何の感情も見えてこない。
 そして、その無表情のまま、火浦は自身の右手を頭上に掲げた。
 何を意味する行為かわからず、由樹は思わず身構える。
 由樹は掲げられた右手を注視する。その右手から、何かが「生えた」。
 それは、刀だった。
 まるで木が天に向かって伸びるように、鈍色の刀が掌から生えてきた。
「……!」
 心だけは決して揺れないと思っていた由樹も、あまりの事態に一瞬呑まれた。
 その隙を突くかのように、火浦が突進してきた。己の体から出した刀を握り、由樹に
斬りかかってくる。その動きは実年齢から三十年は若返ったかのような鋭さだった。
 由樹は呑まれながらもすかさず反応した。
 袈裟斬りを寸前でかわす。刀が下に振り切られた瞬間は狙わない。しかし懐に入ろうと
するフェイントは微かに見せておく。
 逆袈裟に斬りつけてきた。
 由樹はそれもしゃがみ込むようにかわし、刀が上に跳ね上がると同時に相手の膝に
目がけて低空の足刀蹴りを放った。
 右膝が逆方向に折れ、火浦はバランスを崩す。間を置かずに左膝にも蹴りを打ち込み、
火浦は糸の切れた人形のように、力なく崩れ落ちた。
「……」
 由樹は後ろに下がって間合いを取る。そして火浦から目を離さずに依澄に注意を呼び
掛けた。
「神守さん。下がっててください」
「……」
「早く」
 依澄は由樹の言う通りに下がる。
423かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:39:04 ID:HFSygprM
 普通ならもう問題はない。左膝を完璧に壊すことはできなかったが、それでも両膝の
破壊で歩行は困難なはずだった。
 破壊したのだ。由樹は、手加減なく。
 だが、なぜか一向に安心することができない。
 胸骨と膝関節を壊し、ひょっとしたら再起不能かもしれない程のダメージを与えたと
いうのに。
 嫌な感じが、気持ちの悪い印象が拭えない。
(……俺は何をやってしまってるんだろう)
 相手は刀を持っているとはいえ一般人だ。なのに自分は、あまり手加減ということを
考えずに技を使った。
 普段の由樹ならそんなことは絶対にしないはずなのに。
 由樹は火浦を見つめる。
 地に倒れ伏した男は、なんとか立ち上がろうともがいているが、力が入らないのか
どうしても体を持ち上げられないでいる。
「無理に立とうとすると、まともな体に戻れなくなるよ」
「……」
 火浦は応えない。
 もう何もできないはずだ。由樹は内心でそう思う。
 しかし、どうしても警戒を解くことができない──
 火浦は右手の刀を見つめている。
(大体、あの刀はなんなんだ。体の中から出すなんて)
 さっきからわけのわからないことばかりだ。結界がどうとかいう話になって、依澄が
火浦の頼みを断って、火浦が逆上して、由樹はそれを返り討って、火浦が体から刀を出して、
 刀。
(……ひょっとして、刀ってあれのこと?)
 火浦の手にある日本刀。あれが火浦の話していた妖刀なのだろうか。
 ということは、火浦は嘘をついていたことになる。
 刀は封印などされてなくて、既に火浦の手元にあった。ということは、
424かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:40:45 ID:HFSygprM
 火浦の手が動いた。
 由樹はその動作を注視する。
 だが、火浦が次に起こした行動には、さすがの由樹も驚愕した。
 火浦は刀を逆手に持つと、自らの腹に向けて思い切り突き刺したのだ。
「なっ!?」
 貫いた箇所から一気に血が溢れ出してくる。見た目にも凄絶で凄惨な光景にも関わらず、
火浦は呻き声一つ上げようとしない。まるでそこに自分の意識がないかのようだ。
 理解不能の行動だった。自らを傷つけることに何の意味があるのだろう。
 その答えはすぐに出た。
 火浦の出血が止まらない。赤い血が湧き水のように漏れ出て、刀身を伝っていく。
 その赤い血が、次々と刀に吸い込まれていった。
 水がスポンジに染み込むように、血が刀に解け込んでいく。
 それと同時に火浦の体が急速に萎んでいった。
『いけません!』
 叫んだのは依澄だった。
 声量自体はさほど大きなものではなかった。しかしなぜかその声の響きに由樹はたじろぐ。
 彼女がいけないというなら、それは本当にいけないんだろう。なぜかそんな考えが脳に
侵蝕してくる。いや、それだけじゃなく、彼女の言葉には逆らえないと感じた。
 何の作用か、火浦の肉体の異変が止まった。
「!」
 だがそれも一瞬のことで、再び吸収が始まる。
「……こ、こんな」
 由樹は思わず後ずさった。
 初老の男性の体がしなびた野菜のように枯れていく。まるで刀が生きていて、火浦の
生命力を吸い取っているかのようだ。
 心なしか、刀が先程よりも輝いて見える。
 ──妖刀、という言葉が頭に浮かんだ。
 本当なのかもしれない。目の前で起こっていることを考えると、最早刀とは呼べない。
 助けなくては。そう由樹は思った。しかしあまりの光景に体が動かなかった。
 全身の水分が蒸発したかのように枯渇し、火浦の体はまるっきりミイラになってしまった。
 いや、ミイラよりなおひどい。なぜなら全身の体液を吸われてなお、吸収が止まらない
からだ。
 火浦の体が胴体部から溶けるように消失していく。
 質量保存の法則などまるで無視するかのように、刃部分に染み込み、溶けていく火浦の
肉体。
 皮膚も、肉も、骨も、液も、およそ人間の構成要素の全てを、刀は飲み込んでいく。
(飲み込むとか……発想が既に毒されている)
 しかし目の前で起こっていることは現実だ。
 血と内臓と体液の臭いが入り混じり、強烈な悪臭がこちらに漂ってくる。
 由樹は嫌悪を隅に追いやって、思考を巡らせる。助からない。手遅れ。なぜ動かなかった。
戦慄。後悔。
425かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:42:35 ID:HFSygprM
 火浦の体を完全に呑み込むと、刀が急に浮き上がった。
「な……」
 由樹はその光景に目を疑ったが、驚いている暇はなかった。
 空中でぴたりと静止したかと思うと、刀はそのまま切っ先を依澄へと向けたからだ。
 その時になって、ようやく由樹は依澄をかばうように前に出た。
 予感通り、刀は真っ直ぐ矢のように襲いかかってきた。
 何かに操られるように飛んでくる刀を、由樹は手でいなしながら蹴り落とした。
 が、すぐに刀は体勢を立て直して襲ってくる。
 突きを辛うじて左手で捌く。掌に微かな傷ができるが気にしない。再び蹴り倒そうと
右脚を、
「!」
 カウンターの剣撃を寸前でかわす。靴裏を真っ二つに斬られて、靴下が露出した。咄嗟に
蹴りを止めてなかったら、右足を甲から落とされていただろう。
 まずい。由樹は不利を悟る。この妖刀の剣撃を、由樹は読み切れない。
 人が操る剣筋ならば対処できる。しかし刀そのものが相手となると、人の手によるもの
ではないため予測がつかない。
 ある程度の「型」はあるように見えるが、即座の対応は難しいように感じた。
 どうする、という逡巡さえ与えてくれずに、刀は鋭く斬りつけてくる。頭部への斬撃を
髪の毛数本と引き換えになんとかかわし、後方に飛び退って距離を取る。
 すぐ真後ろには、依澄の影。
 由樹は決意を固める。
「神守さん!」
「逃げるのですね」
 呼び掛けるやすぐさま返事が返ってきたので、由樹は思わず振り返りそうになった。
相手から目を逸らすなんて、そんな危険な真似はしないが。
「……私が隙を作ります」
「君が?」
 刀が中空に躍り、迫ってくる。
 そんな凶器に向かって、依澄が何かを投げた。
 石のようなものが複数ばらまかれた。刀ではなく、その周囲を取り囲むように投じられた。
 すると、刀は空中で突然止まった。
 そしてしばらくゆらゆらと刃先を揺らし、周囲を無茶苦茶に斬り裂き始めた。
 まるで混乱しているかのように、周りの空間を斬りまくっている。狙いが定まらないのか、
何もない空間を空振りしている。
 何が起こったのかまるでわからなかったが、由樹はすかさず動いた。依澄を抱き上げると、
元来た道を全力で駆け出した。
「あ、あの」
 急に抱き上げたためか、依澄が戸惑いの声を上げる。
「ごめん、黙って!」
 断りもなく女性を抱き上げるのは失礼かとも思ったが、そんなことは言ってられない。
着物姿の依澄はうまく走れないだろうし、由樹の運動神経を持ってすればこの方が断然速い。
 刀は追ってこない。由樹は振り返らずにただ走る。
 夕暮れの朱が闇に変わりゆく中、スピードを落とさずに山道を走り抜ける。
426かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:44:34 ID:HFSygprM
      ◇   ◇   ◇

 依澄の体が想像以上に軽かったため、思った程負担はなかった。
 それでも火浦の屋敷に戻ってくる頃には、さすがの由樹も息を切らしていた。
 家の中に駆け込み、玄関で依澄を下ろすと、由樹は盛大に息を吐いた。
「か、神守さん……大丈夫?」
「……」
 依澄はきょとんとなって由樹を見やる。
 あなたこそ大丈夫なのか。言葉はなかったがそう言いたげで、由樹は思わず苦笑いした。
 すると、依澄もそれにつられるように笑った。
 綺麗な笑い声だった。おかしそうにくすくす笑う依澄を見て、由樹もまた笑う。
 こんなときではあったが、この娘もこんな風に笑うんだ、と思うとなんだか嬉しくなった。
 しかし、そんな和やかな雰囲気も続かない。すぐに笑いを収めると、依澄は懐からまた
さっきのものを取り出した。
 明かりの下でようやく由樹はそれが何なのか確認する。
 それは、ビー玉だった。
 本当に何の変哲もないガラス玉で、由樹は少し拍子抜けした。
 依澄はそれを玄関下にばらまく。五、六個のビー玉が音を立てて転がった。
 さらに依澄は帯の内側から一枚の紙札を抜き出した。草書体で何か書かれていたが、
由樹には読めなかった。その札を扉に貼りつける。
「あの……それは何? 何をやってるの?」
 依澄は答える。
「結界です」
「……それは君の、力?」
「……」
 由樹にはよくわからなかった。
 疑問はたくさんある。刀のこと。火浦のこと。結界のこと。依澄のこと。
 何よりこれからどうするか。
 あの刀をどうにかするにしても、対策が必要だ。依澄に何ができるのかはわからないが、
由樹一人ではあれに対抗できない。
 まだ息が整わない。稽古不足かもしれない。技はともかく、スタミナが切れるとは。
 緊張状態のせいか、動悸がやたらに激しい。
 こんなところで考え込んでいてもらちがあかない。由樹は靴を脱いで屋敷に上がろうとした。
 ところが、
「え……」
 由樹の体が急に傾いだ。
 廊下に足をかけた瞬間だった。体を支えきれずに、由樹はそのまま横に倒れた。
「…………ぇ?」
 口から洩れた言葉は囁き程度で、空気さえろくに震わせられない。
 体に力が入らなかった。気付いた時には意識さえ朦朧としていて、由樹は横になった
世界を茫然としながら見る。
 天井が高い。部屋が遠い。床が冷たい。
 凛とした声が上から聞こえる。
 意識を失う前に由樹が見たのは、心配そうに自分の名を呼ぶ依澄の姿だった。
427かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:47:23 ID:HFSygprM
      ◇   ◇   ◇

「一ノ瀬……さん?」
 いきなりその場に倒れ込んだ由樹に、依澄はひどく驚いた。
 慌てて呼び掛けるが、由樹は気絶したまま動かない。
 このままにはしておけない。依澄は由樹の体を奥の和室まで運ぶことにした。由樹の体は
依澄には重く、半ば引きずる形になってしまったが、それでもどうにか運び込む。
 押し入れから布団を引っ張り出し、ゆっくりと寝かせる。すぐに看病といきたいところだが、
依澄にはまだやるべきことがあった。
 広い屋敷内をくまなく調べて、出入口に札を貼る。玄関の札と霊石で屋敷に結界を張りは
したが、他の箇所にも貼って強化する必要がある。今あの妖刀に侵入されたら対処の術が
ない。
 合計五カ所に札を貼ると、依澄は家中をあさり始めた。救急箱に数枚のタオル、洗面器に
沸かしたお湯を張って由樹のいる部屋へと戻る。
 由樹は呻きもせずに、布団の上で固まっていた。意識はない。
 依澄は息を呑んだ。
 由樹の体に大きな傷はない。掌と足に微かな切り傷があるだけだ。
 が、それは肉体に限った話である。依澄の目には由樹の魂が傷付き、その傷口から霊力が
漏れ出している光景がはっきりと見える。
 明らかにあの妖刀の持つ力のせいだった。内に凄まじい霊力を秘めたあの刀は、対象を
物理的に破壊するのと同時に霊的にもダメージを与えるのだろう。
 由樹は物理的ダメージはなんとか防いだが、霊的ダメージまでは防げなかったのだ。
 このままでは由樹は死ぬ。まずは魂の傷を治さなければならない。依澄は由樹の魂に
直接触れると、自身の霊力を使って傷口を塞ぎ始めた。
 刀で斬られたせいか、歪みのない綺麗な傷口だった。これならなんとか元通りにできる。
皮肉だが、敵の日本刀のキレに感謝しなければならない。
 丁寧に魂を治すと、今度は体の方を手当てする。かすり傷とはいえ怪我は怪我だ。掌と
足、両方を消毒し、ガーゼを当てる。
 治療を終えても由樹は目を覚まさなかった。
 霊力が足りない。魂の傷は治したが、そこから溢れ落ちた霊力は結構な量だった。
 命を取り留めはしたが、このままでは目を覚まさないだろう。霊力を補充する必要がある。
(……私の霊力を、いくらか彼に分け与えれば)
 方法はある。ならば迷うことはない。
 ふと依澄は腕に鼻を近付けて、自分の体臭をかいだ。
「……」
 顔を赤くする。できればお風呂に入ってからの方がいいかな、と思った。
 しかしそうも言ってられない。依澄はため息をつくと、着物の帯を解き始めた。
 しゅるしゅると音を立てて着物を脱いでいき、やがて完全な裸になる。
 それから由樹に寄り添うように近付くと、目を瞑りキスをした。
 由樹の唇は、思ったよりもずっと柔らかかった。
428かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:48:41 ID:HFSygprM
      ◇   ◇   ◇

 目が覚めた瞬間、由樹は何が起こっているのかまるでわからなかった。
 依澄が自分にキスをしている。
 なぜ? どうして? 混乱する頭に、しかし心地よい異性の感触が響いてくる。
 夢でも見ているのか。まさか人工呼吸とか?
 腕を動かそうとしたが、痺れたように動かない。全身が鉛のように重く、由樹は抵抗
できない。
 依澄はその間も深く唇を重ねてくる。
 舌が口内に入ってきた。ねっとりと柔らかく温かい感触は、不思議と安心できた。
 体の重みが取れていく。視界も明瞭になっていき、由樹は現状を把握する。
 広い和室の真ん中、敷かれた布団の上で由樹は横になっている。
 依澄はなぜか裸だった。真っ白な柔肌を隠そうともせず、由樹の上にかぶさってくる。
 唇がようやく離れた。のぼせたように赤く上気した依澄の顔が色っぽい。
「神守さん……これは」
「依澄、と……そうお呼び下さい」
「な……いや、そうじゃなくて」
「動かないで」
 静かな声で囁かれて、由樹は身じろぐのをやめる。
 少し恥ずかしそうにしているのを見ると、つまりそういう意味なのだろうか。
「どうして?」
「……」
 依澄は答えない。
 意味がわからない。
 由樹は身を起こそうとした。しかし依澄に両肩を押さえ付けられる。
「神……依澄さん」
「……」
 依澄は微かに逡巡した様子を見せた。それが何を意味するのか由樹にはわからないが、
それでも彼女が真剣だということはわかった。
 だからといって納得したわけではない。
 再度起き上がろうと力を込めると、依澄が先に口を開いた。

『動かないで』

 瞬間、由樹の体は金縛りに遭ったように動かなくなった。
「!?」
 由樹は突然の出来事に慌てた。
 重くはない。ただ、意識の奥に強迫観念のような感覚が生まれて、体を動かそうと
思えなくなっていることに気付いた。
 体を動かすことから意識を遠ざけるような、そんな彼女の言葉。
 どうすればいいのだろう。このまま身を委ねていいものかどうか。
 そのとき、依澄が言った。
「あなたを、助けたいのです……。どうか信じてください」
 小さな細々とした声だった。しかし彼女の真剣な眼差しが拒絶をさせなかった。
429かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:50:23 ID:HFSygprM
「……助ける?」
 依澄は頷くと、由樹の股間を撫でさすった。
 くすぐったい感触に由樹は体を震わせる。
 ボタンが外され、ジッパーが下ろされる。由樹は身動きできない。
 ジーンズをトランクスごと脱がされると、軽く勃起した逸物が現れた。
 依澄はそれを確認すると、その部分にゆっくり顔を近付けた。
「い、依澄さん」
 由樹は慌てる。こんな綺麗な人がまさか、
「ううっ」
 柔らかい手指が根本を握り、美しい唇が先っぽをそっとくわえた。由樹は思わず声を
洩らした。
 そのまま口の中で亀頭を舐められる。鈴口に舌のぬめった感触が広がる。
「ん……」
 依澄は目をつぶり、行為に没頭する。舌を細かく動かし、唾液を塗りたくるように
逸物をなぶった。
 ちろちろと舐められる感触に由樹は呻くことしかできない。
「うぅ……」
 依澄の口が徐々に由樹を呑み込んでいく。まるで蛇のように、大きく膨れた肉棒を
口腔の奥へと送り込んでいく。
 軽く歯が当たり由樹は痛みを覚えた。気付いた依澄はすぐに口使いを修正する。
 決して巧くはない。おそらくほとんど経験はないのだろう。ひょっとしたら初めてかも
しれない。そう思うとここまでしてくれる依澄に罪悪感と、同時に興奮を覚えた。
 肉棒が完全に口内に呑み込まれた。
 依澄はそこで小さく息を整えると、口を上下に動かし始めた。
 すぼまった唇が男性器を愛撫する。
 唾液と口内の熱が焼くように下腹部を刺激する。加えて唇と舌がまとわりつくように
なぶって、疲労感のある体にひどく気持ちいい。
 由樹は荒い息を吐き出しながら快感に身を委ねる。
「は、ぁ……い、依澄さん、すごく、いい、よ」
「んむ、ん……ん……」
 先走る液と唾液が混じり合い、ぬめりが増していく。
 まるで溶かされるような、『食べられる』心地だった。
 次第に高まっていく快感。男根はさっきからがちがちに硬くなっている。由樹はもうすぐ
来るであろう絶頂を強く意識する。
 が、達する前に依澄の口が逸物を放した。
「うあ……?」
 唐突に快感が途切れて由樹は呆けた声を出す。
 依澄は口から垂れた唾を指ですくい、舐め取った。それから濡れた指を自身の股間に
伸ばし、弄り始めた。
 くちゅ、くちゅ、と卑隈な音を立てながら、依澄は頬を赤く染める。
 その姿はひどくなまめかしく、由樹は酔いそうになった。いや、既にもう酔っているの
かもしれない。さっきからまばたきもできずに目を奪われてしまっているのだから。
430かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:52:08 ID:HFSygprM
 依澄は秘所から指を離すと、由樹の上にまたがった。
 本当にするのだろうか。股間を硬くしながらも、由樹はまだどこかで迷っていた。
 だが、もう止められない。
 どれだけ疑問に思っても、心はもう、彼女の美しさに囚われているから。
 依澄がゆっくり腰を下ろしてくる。性器同士が直接触れ合う。
 そして由樹は、彼女の中に包まれた。
「はあ……っ」
 依澄の表情が苦しげに歪んだ。
 依澄の中はとてもきつかった。入ったのが不思議なくらい狭く、由樹は痛みにも近い
強烈な圧力を受けた。
(初めて……なのかな)
 血は出ていない。
 それでも依澄の様子を見るに、快感より苦痛の方が強いのは確かなようだ。明らかに
経験不足である。
(なのに……なんでこんなに気持ちいいんだ?)
 申し訳なく思いながらも、由樹の逸物は依澄の感触に歓喜していた。まだ入っているだけ
なのに、膣が全体を程よく締め付けてくるのだ。
 これで動いたらどうなるのだろう。下半身がうずく。
 もっと快感を得たい。快楽に溺れたい。由樹は自分でも不思議なくらい欲望に呑まれていく。
 いつの間にか体が動かせるようになっていた。由樹は依澄の腰を掴むと、奥に向かって
勢いよく肉棒を突き上げた。
「あぁあっ!」
 依澄の口から嬌声が溢れた。
 痛み以外の感覚がそこには見えた。人形のように無機質な顔に、はっきりと感情が
表れている。由樹は嬉しくなって体を激しく動かした。
「ああっ、やっ、あっ、んん……きゃうっ、ふああ!」
 長い髪を振り乱して声を上げる依澄。
 由樹は目の前の真っ白な胸に手を伸ばした。柔らかい感触を味わいながら、腰をぐいぐい
動かす。押し付けるように逸物を奥にぶつけると、膣が収縮して締め上げてくる。
 こんなに快楽に陶酔したことがあっただろうか。
 由樹の中で弾けそうなほど性感が高まっていく。
 愛液が繋がりの隙間から漏れ出てくる。由樹の体液も混じっているだろう。激しくぶつかる
体に合わせてぱちゅん、ぱちゅん、と音が響く。
 擦れ合う性器は互いの温もりだけを求めるかのようにひたすら絡み合った。
「依澄さん……もう」
 由樹が絶頂間近であることを訴えると、依澄は小さく頷き、腰の動きを速めた。
「ちょ、駄目だって……そんなにされると……中に」
「出して……ください。いっぱい、私の中に……んっ」
 由樹は躊躇する。しかし快感は圧倒的でろくに考える暇さえ与えてくれない。
 抜かなければ。でも抜きたくない。
 自分の上で乱れ動く依澄の美しい姿に、由樹はもう流されるしかなかった。
 彼女の膣内に出したい。
「ごめんっ、もうイク」
「はいっ、中に……あああっ!」
 ペニスがびくっ、びくっと脈打ち、ありったけの力で精液を放出する。
 するとそれに合わせるように、女陰が肉棒を締め付けた。まるで液を絞り取るかのように
由樹に圧力をかけてくる。
「うわ……」
 それに応えてさらに子種を発射する下腹部。雌の奥に欲望をぶちまける快楽に、由樹は
思わず呼気を漏らした。
431かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:53:49 ID:HFSygprM
 射精はしばらく続き、すべてを出し切るのに数十秒を要した。
 ようやく波が収まると、依澄は糸が切れたように由樹の胸元に倒れ込んだ。
「い、依澄さん!?」
 慌てて由樹は受け止める。抱き止めた体は柔らかく、細かった。
 依澄は眠っていた。
 疲れたのか、小さな寝息を立てている。その様子はまるで普通の女の子のようで、由樹は
初めて彼女のことを『かわいい』と思った。
 不意に眠気に襲われた。激しく依澄を抱いたせいだろうか。
 由樹はいまだ繋がったままであることに気付き、依澄を起こさないように中から引き抜いた。
それから横に寝かせて布団を掛けてやる。幸い目を覚ます様子はなかった。
 依澄の隣で息遣いを感じながら、由樹は穏やかな気分で目を閉じた。
 心地よい気分だった。
432かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/03/20(金) 21:55:03 ID:HFSygprM
前編投下終了です。
後編は……できるだけ早く投下したいです。
それでは。
433名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 01:00:14 ID:JigH3N62
乙です!!
434名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 01:35:25 ID:+k54dRuY
 
435名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 10:36:28 ID:tT/Yde5A
GJ!!
あえて注文を出すならば…………

エロをMOTTO!!MOTTO!!
次回は妖剣とやりあってるうちにエロハプニングが発生するんだよな?(
436黒い犬は吠えない ◆MZ/3G8QnIE :2009/03/22(日) 22:57:39 ID:LgNpU6E/
かおるさとー氏乙。アクションが書ける人は羨ましい……

新しいシリーズ物の前編、投下いたします。非エロ
437黒い犬は吠えない ◆MZ/3G8QnIE :2009/03/22(日) 22:59:17 ID:LgNpU6E/
アパートの敷地の前で、レトリーバー系の中大型犬が死んでいた。
否、まだ死んではいない。息はしている。
ただ、車に撥ねられたのだろう、右後足があらぬ方向に折れ曲がっている。
加えて、腹にあばらが浮き出るほどに痩せ細っていた。
首輪はしているが、汚れきったなりを見るに、恐らくは捨てられて日が浅い元飼い犬だろう。
さて、どうしたものだろうか。
俺は買い物袋を提げたまま、玄関の前で途方にくれていた。
折角の休日、まず買い物を済ませ、その後はゆっくり茶でも飲みながら読書と決め込もう。
優雅なプランは、その初端から水を差されてしまった。
最善の対処法は、無視し放置すること。
だが、そうすると帰りもこの犬と対面する羽目になる。
いつまでも軒先に犬の死体が転がっている状態は、流石に好ましくない。
他のアパートの住民にも迷惑だろう。
次善は保健所への連絡。
手を汚すのはプロの方々に任せる。
どの道じきに衰弱して死ぬのは目に見えているのだ。遅いか早いかの違い。
ならば、一思いに殺してやる方がましだ。
問題は、電話をする俺まで罪悪感を感じる羽目になること。
毎日豚や牛を食べている身分で"かわいそう"などと思うのは矛盾しているだろうが、目の前にいるかいないかは大きな違いだ。
人間だって、地球の裏側で何人非業の死を遂げても、関わりがなければ痛みは感じない。
だが、この犬は、確かに俺の目の前で生きている。
今さら見なかったことには出来ない。
最悪の策はこの場でラクにしてやることだろうか。ハンマーか何かで。
俺は溜息を吐いて膝をつくと、死に掛けの犬をそっと抱え上げた。
それは軽いが、温かかった。
「……動物病院ってどこにあるんだ?」


「何でこんなことになったんだか」
半日後、俺の部屋で毛布に包まれすやすやと眠る黒い犬を前に、俺は頭を抱えていた。
その右足には包帯と固定ギプス。
獣医は彼女、どうやら雌らしい、の怪我を処置し、世話の見方を教えてはくれたが、里親までは紹介してくれなかった。
首輪の電子タグは壊れており、飼い主の所在は不明。
一応それらしい迷い犬を探しては貰えるようだが、故意に捨てられた可能性は高く、望み薄らしい。
幸か不幸か、俺の住むアパートはペット可である。
兎に角、飼い主が見つかるまでは俺が面倒を見るしかない。
ホームページを利用して里親募集でもしてみようかとも思ったが、ネットに繋いではいるもののメーラーの立ち上げすら覚束ないアナログ人間にはいささか難易度が高い。
取り合えず、里親探しは後回しだ。
今日はこいつの世話やらペット用品の用意やらで疲れてしまった。
明日は仕事がある。早く寝てしまおう。
俺は眠る黒犬に毛布を掛け直すと、電灯を消した。
438黒い犬は吠えない ◆MZ/3G8QnIE :2009/03/22(日) 23:01:49 ID:LgNpU6E/
頬を撫でる奇妙な感触に目を覚ます。
目を開けると俺の眼前で、黒い獣が大口を開けていた。
(食われる!?)
慌てて身を起こし、部屋の隅まで一足で跳び退く。
そのケダモノは俺の奇行を不思議そうな目で眺めていた。
意識が覚醒してくるにつれ、昨日の顛末を段々と思い出していく。
「ああ、確か犬を飼う羽目になったんだな……」
目覚まし時計を見ると、タイマーが鳴る丁度二分前を差していた。
「怪我は大丈夫か?」
相変わらず彼女は後ろ足を引きずっている。
俺は溜息を吐き、犬を抱えて台所に向かうと、買ったばかりの餌を皿に盛ってやった。
前に皿を置くが、彼女は動こうとしない。
「食欲が無いのか?」
それを"食って良い"の合図と受け取ったのか、犬は漸く餌を食べ始めた。
彼女が食べている間に洗面所で洗顔を済ませると、部屋で着替える。
台所に戻る頃には皿の中は綺麗になっていた。
ふと、放置しておいたペット用簡易トイレを見る。
驚くべき事に、きちんと用が足してあった。
本来は外で飼うことの方が多い犬種の筈だが、躾が良かったのだろうか。
「……慣れてるんだな。俺としては非常に助かるが」
頭を撫でてやると、犬は僅かに尾を振る。
この分だと留守にしても、暫くは大丈夫だろう。
俺はコートに袖を通し、革靴を履くとノブに手をかける。
「じゃあ、行って来る」
口慣れない言葉に違和感を感じながら、ドアを閉めた。


仕事は楽しいかと問われれば、俺は素直に頷けない。
楽しいものではなく、辛いことは多い。
でも、やりがいはある。
元々技術職が性に合ってはいたし、功績が認められれば嬉しくはあった。
だから、と言うわけでもないが、仕事は真面目にやっている。
進んで残業もこなしている。
仕事に打ち込んでいる間は、煩わしいプライベートな人間関係を忘れられた。
だが、今現在部屋にいる懸念事項は忘れたからといって存在しなくなる訳ではなく、今日は仕事を早めに切り上げ帰宅することにする。
午後7時、いつもよりずっと早い時間に俺は自宅の鍵を開いた。
「ただいま」
返事を期待しているわけではないが、あの犬がよたよたと出迎えてくれる場面を想像してはいた。
だが、電灯のスイッチを入れても、台所には誰もいない。
部屋に上がり、個室とユニットバスを覗いてみるが、誰もいない。
クローゼットやたんすを開け放つが、やはり誰もいない。
俺は外に飛び出すと、隣近所で足を引きずった黒い犬を見なかったか訊いてまわった。
向かいの主婦が昼ごろ姿を見たと言うだけで、どこに向かったかは見当もつかない。
それから深夜まで探し回ったが、どこにもいなかった。
あの犬は、もう居ない。
彼女は去った。
439黒い犬は吠えない ◆MZ/3G8QnIE :2009/03/22(日) 23:05:00 ID:LgNpU6E/
不思議なことが一つあった。
あれから各部屋のドアを調べてみたのだが、どれもきちんと施錠されていたのだ。
玄関のドアも、俺が開けるまで鍵がかかっていたのは確かだ。
完全な密室。
あの犬はどうやって逃げ出したのだろうか。
後一つ、下駄箱の上に置いてあったはずの部屋の鍵が無くなっていた。
まるであの犬が鍵を持って玄関のドアを開け、わざわざ施錠して出て行ったみたいだった。
馬鹿馬鹿しい。
鍵は無意識にどこか別の場所に置いて忘れてしまったのだ。


それから数日、いつも通りの日々が流れた。
朝目を覚まし、出勤して、夜遅く帰宅する。
その繰り返し。
保健所にはそれらしい犬を見たら保護して貰うよう連絡したが、それだけ。
もう、自分からは探しに行っていない。
だが、真新しいペット用品は捨てられなかった。
どこかであの犬が帰って来てくれることを期待していた。
440黒い犬は吠えない ◆MZ/3G8QnIE :2009/03/22(日) 23:07:02 ID:LgNpU6E/
その金曜日は、雨が降っていた。
いつもの様に夜遅くアパートにたどり着いた俺は、自宅を前にして固まった。
見知らぬ少女が俺の部屋の前に立っていた。
ミドルティーンくらいの、黒い地味なワンピースを着たショートカットの少女。
何故か濡れ鼠の上、裸足だった。そして右の素足には包帯。
異様で、関わりたくない存在だ。
少女は俺の存在に気付くと、そっと右手を差し出した。
握られた何かを、思わず受け取ってしまう。
それは、先日なくしたものと良く似た鍵だった。
まさかと思いながら、ドアの鍵穴に差し込み捻ると、開錠される。
「失くしたんだと思ってたよ、ありがとう。……これをどこで?」
この鍵を持っていると言うことは、あの犬の場所を知っているかもしれない。
少女は何がしか言おうとして口を開くが、すぐにうな垂れて口を閉じてしまう。
「犬」
少女の肩がぴくりと震える。
「黒い犬で、足に怪我をしてるんだ。知っているのか」
頷く少女。肯定。
「あの犬の飼い主なのか?」
今度は頭を振る。
「どこにいるのか知ってるのか。いまあいつはどこに――――」
思わず少女の肩を掴んで、詰め寄っていた。
困惑している少女の顔を見て、手を離す。
「……教えてくれないか」
だが少女は、何か言おうとしては、それを旨く言葉に出来ず黙り込んでしまう。
雨音に紛れるか細い声。
俺は気長に待った。
何十秒、何分そこに立ち尽くしていただろうか。
少女が目を閉じ、両手を握る。
ふっと雨音が止んだ。
突然、彼女の体が青白い炎に包まれた。
「――――ッ!?」
俺は慌てて飛び退く。
人体発火と言う超常現象を前にして、完全に動転していた。
なんとか消火器を手繰り寄せ、どう操作するか手間取っている内に、いつの間にか炎は止んでいる。
少女が立っていた場所に、足を引き摺った黒い犬が佇んでいた。
441黒い犬は吠えない ◆MZ/3G8QnIE :2009/03/22(日) 23:10:09 ID:LgNpU6E/
「成る程、そう言うことか」
などと簡単に納得できた訳ではないが、俺は濡れ鼠少女=黒犬を自宅に招き入れた。
今は人間の姿でシャワーを浴びている。
一応、水道の使い方は理解しているようだ。
うら若い乙女が壁一枚向こうで入浴している状況に居心地の悪さを覚えなくもなかったが、乙女以前に彼女はヒト科ですらない訳で、色々と悩むのは馬鹿馬鹿しく思えた。
レトルトのご飯とカレーを温めていると、例の少女が風呂場から出てきた。
濡れていた元の服は洗濯機の中に放り込んであり、今は俺の服の内から出来るだけ小さめのサイズを見繕ったものを身につけている。
それでもぶかぶかで、裾と足を引き摺り、歩きにくそうだった。
「飯、人間ので良かったか?
玉葱入ってるカレーだが」
頷く少女。
カレーなんぞ刺激物の塊だが、本来は犬である彼女に消化できるのだろうか。
温めた後気付いても後の祭りだが。
取り合えず皿に盛った白飯の上にかけると、テーブルについている彼女の前に置く。
俺も彼女の向かい側に座ると、早速スプーンを手繰った。
「やはり食えないのか?」
手をつけようとしない少女を見ると、不安になる。
その時、彼女の腹から気の抜けたような音が漏れた。
少なくとも腹は減っているらしい。
少女は赤くなって顔を伏せる。
「食えないなら犬用のを用意するが」
彼女はふるふると首を振ると、以外にも器用にスプーンでご飯をすくった。
どうやら食器の扱いも不自由しないらしい。
少女はそのまま湯気を立てるご飯に、何度も息を吹きかけた。
(……単なる猫舌か)
冷ましたカレーを問題なく口に運んでいるのを見て安心する。
二人はそのまま無言で食事を続けた。
「この5日間、何してた」
少女はスプーンを手繰る手を休め、暫く口を開けたり閉じたりしていた。
「喋れないのか?」
首を振ると少女は漸く重い口を開いた。
「ミチを、探してました」
大人びた、それでいて柔らかい声だった。
「ミチ?」
「飼い主」
成る程。
「俺に拾われた後、人間の姿で部屋を出て、それからずっと探し回ってたのか」
首肯。
「いつから人間の姿に化けれるようになった?」
判らないらしく、首を振る。
「気付いたのは、最近、です」
どうやら他の犬に化け方を教わった訳でも、悪の組織に改造された訳でもないようだ。
何にせよ、生物学上珍種中の珍種、その手の学会に発表すればセンセーションは間違い無しだろう。
否、彼女一匹を調べた所で系統立った種としての分析は出来ないわけだから、研究対象としては成り立たないか。
それでも、ワイドショーの主役にはなれそうだ。
(……アホらしい)
俺は馬鹿げた考えを一瞬で消去すると、残りのカレーをかき込んだ。
丁度彼女も食べ終わったので、俺は二人分の食器をまとめて席を立つ。
442黒い犬は吠えない ◆MZ/3G8QnIE :2009/03/22(日) 23:13:05 ID:LgNpU6E/
「あの」
流しに向かう途中で呼び止められる。
黒犬の彼女はぺこりと頭を下げた。
「お世話に、なりました」
そのまま足を引き摺って玄関に向かおうとする少女の首根っこを捕まえる。
「待て、どこへ行く気だ」
彼女は困ったような顔でうな垂れる。
「また飼い主を探しにいくのか。靴も無いのに」
当然の様に頷く少女。
「それなら、まず足を直せ。直るまで家でじっとしてろ。
あと探すにしてもねぐらは必要だろう。ここを拠点にすれば良い」
少女は俺に捕まったまま、逡巡していた。
「……ひょっとして、俺に襲われると危惧してるのか?」
きょとんとした顔で見返される。
「食べるん、ですか?」
食べるの意味が違う。
文明機器を扱えるので安心していたが、こういう面では全く世間摺れしていない様だ。
「例えだ。安心して良い。襲いやしない」
それを聞いても、少女はまだ迷っているようだった。
ぽつりと、呟く。
「迷惑、かけます」
「今頃空腹で倒れてるんじゃないかと心配させられる方が迷惑だ」
少女は気まずそうに顔を伏せる。
そのまま暫く悩んだ後、彼女は漸く俺の厚意を受けてくれた。
「お世話に、なります」


「お前の部屋だ。好きに使うと良い」
と言っても、今は布団と夏物や不用品を込めたダンボール以外何も無い。
前の主の荷物は、もう無い。
四畳半がやたらと広く見える。
「必需品は買い揃えるべきだな。
明日は俺も休日だし、買いに行くか。医者に足を見てもらう必要もある」
いつまで彼女がこの家に居るかは判らないが、二日三日で本来の飼い主が見つかるとも思えない。
彼女はすまなさそうに顔を伏せた。
「取り合えず今日は遅いから寝たほうが良い、布団の使い方とかも判るか?」
少女は頷くと、自分から布団を敷き始める。
意外にしっかりしている。人間に成り立てとは思えない。
「色々と気になることも多いだろうが、今はゆっくり休め。
おやすみ――――、そういえばまだお前の名前を知らなかった。
俺は小川毅(ツヨシ)と言う。オガワでも、ツヨシでも、好きに呼べ。
お前は何て呼べば良い?」
「ミチと家族には、パトラッシュと」
「……別の名前を考えた方が良さそうだな」
勿論、女の子の。
443黒い犬は吠えない ◆MZ/3G8QnIE :2009/03/22(日) 23:18:24 ID:LgNpU6E/
投下終了です。
後編の投下はかなり間が開きそうです。その前に双子の話が入るかも。
それでも完結はさせる予定です。


こんな話を書いといて何ですが、実は俺……無口猫娘も好きなんだ
444名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 23:20:16 ID:2IvD/q3x
>>443
りあたいぐっじょぶ。
これはよい正統派無口娘。
さてさて、まずはお名前が気になるところです。
445名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 00:00:33 ID:cY6ATKan
>>443
グッジョブです!
パトラッシュ(仮)可愛いよパトラッシュ(仮)……って呼びにくいわwww!!
良い名前考えてもらえるといいな。次も楽しみにしてます。
446名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 00:23:47 ID:3pkJMSN/
GJ!
名前はやっぱりクドリャフカですかね。
なんとなく無口な気がする。
447名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 02:52:36 ID:r5LS07pq
GJ いいねいいね

>>446
クドリャフカ可愛いよクドリャフカ・・・呼びにくさあんま変わらねえぇぇ!
448名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 02:56:41 ID:Rx95Mmbv
じゃあ『カッコニジュウイチカッコトジ』……ごめんなんでもない

>>443
すげーGJなんだけどレトリーバーなのにショートカットってのが納得いかない俺長髪フェチ
449名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 03:19:14 ID:4nP1vya7
カレーはともかく、玉葱はダメだろ・・・
450名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 06:08:02 ID:+ZCWphhs
つライカ
451名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 07:13:47 ID:LMZIkuEF
>>443
GJっす
しかし正直冒頭を読んで恩返しで逆レクルー?
とか思った俺がいるw
452名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 14:19:07 ID:GEKCZrEN
>>447
省略してクドと呼べばいいじゃないか
そしてクドカンを連想する

>>451
水島ーホームに帰ろー
453名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 14:24:31 ID:+ZCWphhs
クドと言うと「和風ドレッシングをかけましょう。わふー」を思い出す…
454名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 22:10:04 ID:Wz+SB/6Y
高く飛ぶわふーな子はわりと賑やかだけどな

GJ!
レトリーバーってだけで途中まで勝手に金だと思ってたw
455名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 22:24:11 ID:8yrTMTvj
GJです
次はエロに期待しても?

かおるさとー氏の続きも気になる
456くどりゃふか:2009/03/23(月) 22:50:24 ID:NjZJPYuZ
ttp://blog.psychoblue.com/2007/10/05/1528.html
こっちのつもりでしたw
457名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 00:26:32 ID:i0ATHlZy
なんというワイルドハーフ
458名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 06:03:10 ID:cfZzLt76
>>456
読んできたがヤメレ、縁起でもねえw
459名無しさん@ピンキー:2009/03/24(火) 09:51:17 ID:P318V3N8
>>457
公園のベンチが事務所の謎の探偵に飼い主捜しを依頼するんですねわかります。
460名無しさん@ピンキー:2009/03/26(木) 23:14:15 ID:6puBeeZE
…ほしゅ…
461名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 00:29:41 ID:6PhWC6Fm
生意気系無口っ子。

想像できんな。
462名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 02:13:26 ID:zRfjUgsm
上から目線
いたずらっ子
叱ると舌を出して逃げる

こんなイメージ>生意気
463名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 18:56:47 ID:sE1oT4Km
わんことくらそう思い出して涙目

無口系内科医
無口系外科医
464名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 00:06:34 ID:vyw/8LA+
無口カウンセラー
465名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 00:27:44 ID:asuYpyzl
無口系歯科医

口を思いきり開けられるわ無言で診るわ…怖い
でも終わったら「歯…大事にしてね…」と優しい笑みを浮かべて言ってくれる
466名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 05:20:37 ID:MZUnuQHI
>>465
そんな歯医者じゃ何度でも虫歯になっちゃうぜ
そしてリピーター大量でケラケラ笑う無口っ娘
467名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 13:44:03 ID:SsmpmK8z
>>466
つ毎日の定期検診
468名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 13:51:28 ID:Y2qOY/6p
マジレスすると毎日器具で弄り回すと歯の表面が削れて虫歯になるんじゃあるまいか
最近は虫歯の検診でコツコツやらないのは、
虫歯になりかかって弱いところに止めを刺さないようにするためだって話だし

ハッΣ(゚д゚ )
でーぷちっすで口の中を探ればいいんじゃ(ry
469名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 15:53:41 ID:SsmpmK8z
>>4688
虫歯になったら堂々と通院できるじゃないか
470名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 16:00:43 ID:qMkOFTCT
>>469
えらいロングパスだなw
471名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 18:31:32 ID:4lxDpCTB
>>469
幻のレス番か・・・まるで無口っ子のようだ
472名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 21:11:11 ID:duT5M//G
とてつもないロングパスでも的確にシュートを決める無口さん
473名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 21:29:58 ID:2NmyOq2y
サッカー部無口「・・・・・・・・・・・・・・・(彼を発見したけど遠くて呼び止められない)」
サッカー部無口「・・・・・・シューッ」

474名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 23:06:39 ID:cDFQT3fq
(……さっきから>>469さんがこっちを見てる……
 あの目は「きっと彼女ならなんとかしてくれる」って目だ……
 ……どうしよう……>>4688なんて踏めないよ……
 それに歯医者さん怖いし、虫歯になりたくないよ……
 ……あっ、私ココア飲んでた……! 見られてる><
 違うよ、虫歯になんてならないよ、歯磨きするもん……
 苦い顔してコーヒーだって見せかけたらどうかな……
 ……そんな演技、なんだか恥ずかしくてヤだよ……
 どうしよう……>>4688踏むしかないのかな……
 ……頑張ったら出来るかな……って出来ないよ!><;
 ううう……悩んでたらお腹痛くなってきちゃった……
 ……ココア美味しい……おトイレ行きたいよぅ……)
475名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 12:53:27 ID:+PCV5vWI
おトイレ行きたいって最強だろ・・・グハッ
476469:2009/03/31(火) 21:05:25 ID:cOVKsk2D
1日経ってココのぞいてみたらオレのミスレスがつながってて焦った

>>474
ありがとう幸せだ
477名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 18:07:09 ID:RTQ9100g
そういえば昨日はエイプリルフールだったんだな
なんとか嘘をついて驚かせようとするが、相手にうまく伝えられなくて悪戦苦闘する無口っ娘…ゴクリ
478名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 19:36:22 ID:VphASt4H
そして、ついた嘘が一言
「……できちゃった。」
479名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 19:59:16 ID:BN8a0nI2
そう…嘘のつもりだったんです…っ
480名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 21:36:30 ID:MNOdh532
思いの外喜ばれていよいよ何も言えなくなりそうだ
481名無しさん@ピンキー:2009/04/02(木) 22:24:05 ID:uj/0aIUO
そして密かに決意する。
(……ならばウソを真とすればよい……)
482名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 00:08:55 ID:CrQIY3bo
だが、優しい男は
「体に負担掛けちゃダメだろ?」
と。
483名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 02:15:05 ID:NqXES2yP
騎乗位なら母胎に負担が掛かりにくいとばっちゃが言ってた

だけど妊娠しづらいとねえやが言ってた
484名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 02:18:08 ID:aA3+2VwO
手を絡めて騎乗位
いつのまにか対面座位に
485名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 02:19:25 ID:WF7M48+9
それなんて俺の好物パターン?
書いても書いてもそればっかりだから困る
4861/4 ◆CSZ6G0yP9Q :2009/04/03(金) 06:06:28 ID:xUQcWL92
規制で遅れましたが、投下します
NGはトリップで

今日はエイプリルフール
彼女は彼の家に向かいます
彼女にはある考えがありました
『…今日は待ちに待ったエイプリルフール…彼にあの嘘を…』

しかし彼はお見通しで、
『今日はエイプリルフールか、どうせあいつは嘘ついてくるだろうから…
…カレンダーどこだったっけ?』

ピンポーン
「はーい…瞳か、まぁ入れ」
「おじゃまします…」

「今昼飯だけど昨日の残りのカレーで良い?」
「ん」
「今温めてるから、あと2分くらいかな」
「ん」
4872/4 ◆CSZ6G0yP9Q :2009/04/03(金) 06:07:16 ID:xUQcWL92
2人はカレーを食べ終わって
「ごっそさん」
「…ごちそうさま」

「さて、今日は何して過ごす?」
「…話しがあるの」
「ん、どした?何の話し?」
「…私…あなたが嫌いになったの…」
「…」
「だから…別れよ…?」
「…んー…そっか」
「…」
「瞳が言うなら…別れよう」「…」
「しかしこれが昨日ならなぁ…
…エイプリルフールで嘘だと思えるのに」
「…へ?」
「今日は4月2日だし
…嘘じゃ…ないんだろ?」
4883/4 ◆CSZ6G0yP9Q :2009/04/03(金) 06:07:57 ID:xUQcWL92
瞳は彼の部屋のカレンダーを見た
そこには

「…!!」

4月2日
間違いなくそう書いてあった

「…じゃ俺コンビニ行ってっから
その間に荷物持って部屋出な?
…好きだったよ」

震える瞳を横目に
彼は部屋を出ようとドアノブを回し…

…ギュッ

「…いや…行かないで…っ…嫌いになんて…グスッ…なってないから…っ…」
「瞳?」
「…私今日がエイプリルフールだと思ってて…っ…
嫌いになったって嘘…つこうと思っただけだから…グスッ…
行かないでよ…っ…」

「バーカ」
4894/4 ◆CSZ6G0yP9Q :2009/04/03(金) 06:08:46 ID:xUQcWL92
「…?」
「自分の携帯のカレンダー見てみ?」

そこにはもちろん
「…4月…1日…!?」
と書いてあった

「いやーエイプリルフールだしさ
嘘ついてやろうと思ってね
…どした?」
「…っく……ひっく…ぅう…」
「な、泣くなよ
その…悪かったって!!
な?だから「………して……ない」へ?」
「…いっぱい…愛してくれなきゃ…許さないから…」
そのあと2人があんなことやこんなことをしたのは…
…別のお話



終わりです
いやぁ難しいですねぇ
特に泣きのシーンはうまくいかなかった気が…
490名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 08:31:27 ID:3fn+r5sN
>>489
こ、この彼氏……やりおる!!
491名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 23:44:31 ID:mmZ/8g64
GJ
ああやっぱり無口さんは可愛いな
492名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 02:11:50 ID:5NFtEjC7
>>489
GJ
彼氏の先読みすげぇw
493名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 15:36:49 ID:YOKNSIqo
無口っ娘が「むーっ……」ってふくれてる光景は至高。
494名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 20:11:19 ID:3XvMh3N5
自分のエロイ身体を自覚しないで甘えてくるのが一番やばい。
495名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 20:11:46 ID:3XvMh3N5
誤爆
496名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 22:03:43 ID:QJG9tZuL
エロエロな体で無言でスリスリ甘えてくるとな?!



497名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 06:47:03 ID:c+Gl7BY4
ロリロリな体で無言でスリスリ甘えてくる方が良いです。
498名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 10:02:22 ID:0fXd88Nn
>>496,497
甘えてくるだけなら後者、肉感を堪能してコトに及ぶなら前者が良いです。
499名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 11:13:07 ID:yHLndHXD
胡座で本を読んでいると、無言で背中を預けてきて本を読み出すような子がいいです
いいよね、背中合わせ
500名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 11:16:08 ID:+ite8W9y
むしろ胡坐の中に納まってほしい
501名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 11:57:46 ID:D1fX3iDn
ちょくちょく甘スレと区別がつかなくなるなw
502名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 12:37:34 ID:o8Lm8NkJ
>>501
エロパロ板の住人特に属性系はあちこちのスレを渡り歩いている感があるからなー
503名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 18:37:14 ID:zienwCVZ
巡回してて、「あれ、さっきも無口スレなかった?」とおもったら、そっちは素直クールスレだった。
504名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 19:18:02 ID:+ite8W9y
俺も時々素直スレと無口スレ混同して誤爆しそうになるw
505名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 19:29:56 ID:7/B3B7oj
泣き虫無口
おこりんぼ無口

どっちがいい?俺は泣き虫だ
506名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 19:38:38 ID:ZvyR8g7Z
おこりんぼ無口だな
507名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 22:41:04 ID:KI754ydW
意志が伝わらなくてぐすんと涙目になる泣き虫無口。
意志が伝わらなくてむーっと頬を膨らませるおこりんぼ無口

どっちも可愛いじゃないか
508名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 22:46:42 ID:Klbp7+Q6
伝わらなくて涙目になって、やっと意思が通じたら何で直ぐに気づいてくれないの!的な意味でむーっと頬を膨らませてくれればいい
509名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 03:41:16 ID:V56JTeWE
俺は照れ屋無口が良い
510名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 17:49:34 ID:BisKoDP3
初めて来たんだが
おまいらのオススメのssとかある?
511名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 00:14:30 ID:SbWE3gWu
>>510
どれも好きだから難しいな…まあ好きだからここ常駐してるんだけど
時間かけてでも保管庫読み漁ると気に入ったのに出会えるよ
512名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 00:18:05 ID:b2wpOC1V
>>511
thx 読んでみるよ
ここの保管庫は作者別とかあって親切だな
513名無しさん@ピンキー:2009/04/10(金) 20:32:20 ID:gHZa3i0A
キスだけで無口なロリっ娘をいかせたい
514名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 02:19:34 ID:yNfAf/zK
あげてんのよ
515名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 11:04:05 ID:Iq8ITAi1
>>513
それだけでおっきした。
516名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 12:55:01 ID:KFS+f7LL
色々と属性系スレを巡回してる俺様が颯爽と登場。
517名無しさん@ピンキー:2009/04/12(日) 23:01:19 ID:+K3ckRjc
無口なお姉さんに淫語を喋らせたい
518こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/04/13(月) 00:41:41 ID:/4iSeZJH
《無口で甘えん坊な彼女》〜彼女と雑誌〜

いつものように秋葉の部屋で俺達は思い思いに過ごしていた。
二人の間に会話が無いのは別に喧嘩しているからではない。これもいつものことだ。
ここ数年で口数が増えたものの秋葉は無口だし、俺自身も騒ぐのは好きじゃない。
俺は教科書を、秋葉はお気に入りの雑誌『月刊無口っ娘通信♪』を読んで過ごしていた。
「ん、どうした?」
ふと気付くと秋葉が後ろからのぞきこんでいた。
背中から抱きつき俺の肩にあごを乗せている格好だ。真横に秋葉の顔があるとドキドキする。
「………」
柔らかいほっぺたを少しだけ膨らまし、とても小さい声でむーむー唸っていた。
どうやら分からないらしい。無理もない、文系の秋葉には何がなんだかさっぱりのはずだ。
「あの、秋葉。お願いだから今は頬ずりしないでくれないか、もう少しで読み終わるから」
これ以上密着されると勉強どころではなくなる。
不満そうに唸る秋葉を無視し急いで読み終えた。内容が頭に入ったかは不明だが。
そうする間も秋葉は俺の背中にしがみつきながら、首筋に顔を埋め頬ずりしていた。
今日はいつも以上に甘えてくる。普段から甘え上手な秋葉だがいつも以上だ。
「あ、そうか。そんな時期なんだもんな」
「……うん」
秋葉は母親を亡くしている。
だから母親の誕生日など思い出に関わる日が近づくと甘え具合があがるのだ。
前に回ってきた秋葉は胡座をかいた俺の中に収まった。ポニーテールがくすぐったい。
手には例の雑誌。一緒に読もうということらしい。
「…読んで」
「え?いやそんなの」
「だめ……?」
俺は秋葉には勝てない気がする…この時期の超甘えモードなら特に。
「へへ…ありがと」
いつも以上に言動が幼いのは仕方ないのかもしれない。まるで子供に絵本を読み聞かせるようだ。
「…昔、お母さんがやってくれたの」
そんなことを呟きながら俺の胸に頭を倒してきた。
さて、どこを読めばいいかな。確か秋葉の好きな作家さんが書いた小説がどこかに…
「ってこれは………秋葉、本当に読まないとダメか?」
こくこくと頭を縦に振る。
「あのさ…今回内容がエッチなんだけど」
「…嘘つき、変態」
「いやいやほらよく見ろ」
雑誌を読んでいた秋葉だったがしばらくすると顔が真っ赤になった。
「…前は違った」
それは俺も知っている。
少なくともこの雑誌は全年齢が対象のはず。PTAに言われないか心配だ。
519こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/04/13(月) 00:43:29 ID:/4iSeZJH
「どうする?読む?」
「……後で一人で読む」
たとえ内容がなんであろうと好きな作家さんのだけあってちゃんと読むのか。
パタンと雑誌を閉じた秋葉は俺の腕を自らのお腹に回し、より体を密着させた。
身長は大して変わらないはずなのに腕の中に入ってしまうのは何故だろう。
「…雪春の匂いがする」
心底落ち着いているのは幼き頃の母親との思い出がよぎっているからだろうか。
しっかりもののようで甘えん坊な秋葉。その全てが愛おしい。これからも守ってやりたい。
そんなことを考えていると急に秋葉が振り向く。
「雪春…大好き…」
大好きという言葉は秋葉の口癖。でも言われ慣れることなんて未だになかった。
愛してるとか大人っぽい言葉は使わない。大好きというのは本人の素直な気持ちなんだろう。
「秋葉?」
動かなくなったと思ったらリズムよく寝息を立てていた。
母親を思いだしリラックス仕切ったのだろうか。
時計を一瞥する。まだ帰らなくても大丈夫だ。もう少しこのままでいよう。
一体どんな夢を見ているのか。幸せそうな寝顔はこっちまで幸せな気分になる。
共に俺も眠ることにした。腕に秋葉を抱きながら眠れるなんて贅沢だから。
おやすみ、秋葉。


おわり
520こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/04/13(月) 00:45:37 ID:/4iSeZJH
おまけで無口っ娘通信の中の今回エッチだった小説。

無口で夜行性な彼女

それはつい昨日の出来事だった。
通っている高校が遠いので俺は家を出て学校の近くのアパートで一人暮らしをすることに。
四畳半が一部屋だがトイレ、風呂、台所付きという恵まれた環境でさらに格安。
訳ありというのはあらかじめ聞いていたが、住めれさえすればよかったので気にしなかった。
そして初めて部屋へ訪れた時のこと。
「あの…どちら様で?」
部屋の隅に何故か一人の女の子が体育座りしながら眠っていた。
同い年くらいか?肩まで伸ばした真っ直ぐな黒髪、夏でもないのに浴衣に身を包んでいる。
そしてそこそこ可愛い。
「………!!」
起きるなり俺を見て驚いている。驚きたいのはこっちの方だというのに。
いくら訳ありとはいえ女の子と相部屋なんて有り得ない。慌てて大家の元へと向かった。
「女の子?まさか…君には見えるのかい?」
見えるも何も部屋にいる。見えるのか?と聞き返すのは意味がわからない。
「それは多分幽霊だよ。アタシには見えないけど、噂によるといるらしいね。まあ嫌なら出ていっておくれ」
なんて婆さんだ。
かなり腹が立ったがここに住む以外どうしようもなく、部屋に戻った。
淡い期待も虚しくやはり中には眠そうにする一人の女の子。
今まで幽霊が見えたことなんて一度もない。そもそも幽霊だという保証はどこにもない。
「あの〜君は幽霊なのか?」
初対面でこんなことを聞くのは失礼かもしれないし、逆に俺が変な奴と思われる可能性もある。
だがそう思われてもいいから否定して欲しかった。
「……」
彼女はゆっくりと首を縦に振る。生死に関係なくそれは肯定の意味だろう。
「あのさ…俺は山本影児、今日からここに住むんだけど…」
俺の言うことを黙って聞く彼女、思えば彼女の声を聞いていない。幽霊は喋れないのか?
「とりあえず…よろしく」
手を差し出すと彼女も答える。冷たい手だが俺達は触れ合ることができ握手を交わした。
そして一夜明けた今日。
昨日の出来事は夢ではないかと思ったが横を見ると幽霊女が。
幽霊なんて信じていなかった俺も流石に認めざる得ない。
「……ていうか何で君は人の布団で寝てんだよ!!」
驚き飛び上がって叫ぶと目をこすり眠そうにしながら彼女が目を覚ました。
欠伸をする仕草が可愛い…って違う違う。この子は幽霊だ、危険かもしれないのだ。
521こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/04/13(月) 00:47:13 ID:/4iSeZJH
一応警戒しながら昨日と同じように風呂場で着替える。せめてものエチケットだ。
「ご飯食べる?」
念のため聞く。幽霊だから必要ないと思うが、触れることが出来た彼女だからもしももありえる。
「………」
首を横に振ったということは食べなくても大丈夫なようだ。
しばらく眠そうな顔をしていた彼女は再び俺の布団に潜り込み寝てしまう。夜になるまで全く起きなかったので幽霊は夜行性なんだと判断した。
人間とはすごいもので俺はしばらく日数が経つ内に彼女と暮らすことに慣れていた。日中は彼女が寝ていたのも理由だが。
彼女が喋ることのないため俺が一方的に話すと頷いて反応してくれる。
何を考えているのかわからないが嫌われてはないらしかった。
そんな日々のある夜のことだった。
普段通り彼女より先に寝た俺は妙な気配を感じて目を覚ました。
「…ンッ…ハァ…アッ」
耳を澄ましてようやく聞こえる程の小さい声だが確かに聞こえる喘ぎ声。
まさかと思い横を見ると俺に背を向けるようにして彼女が自慰行為にはげんでいた。
「…ハァ…アン、ヤッ…アアン」
吐息にも聞こえる彼女の声はとても扇状的で俺は目が離せない。
両手を股間にあてがっているらしくいやらしい水音が狭い部屋に響き渡る。
たとえ背中越しでも目の前で可愛い女の子が自慰に耽っているという場面は刺激が強すぎた。
「ぁ、ぁ、あ、はあぁぁんんんッ」
抑えていた声も大きくなったと思うと彼女はぐったりと動かなくなった。
しばらくじっとしていた彼女だがもぞもぞ動きこちらを振り返ると――
「〆£%☆¥!!!!??」
「あ…いや…ごめん」
俺と目が合ってしまった。
余程の衝撃だったらしく彼女は布団から飛び出し後ずさりする。
口をただパクパクとさせる程に混乱していて、いつもの浴衣がはだけているのにも気付いていない。
「あの、浴衣…」
俺が言って漸く気付き顔を真っ赤にしながら腕を胸の前で組み裾を合わせた。
「本当にごめん、忘れるから」
正直自信はない。ことあるごとに思い出しそうだ。
「ごめんなさい……」
「え??」
彼女が喋れることに驚きたかったがそれは叶わなかった。
急に押し倒されたから、もちろん他でもない、彼女にだ。
女の子とは思えない強力な力で抑えられ俺は全く動くことが出来ない。
「あの〜これは?」
しかし質問の答えはなく代わりに彼女の唇が降ってきた。
522こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/04/13(月) 00:49:01 ID:/4iSeZJH
初めて触れる他人の唇は想像以上に柔らかく魅了されてしまう。
ねっとりと絡みつく彼女の舌はどこかひんやりしているが動きは情熱的だった。
「…ぷはっ……お願いがあります…」
お願いとは何だろうか?まさか魂とか取られたりしないだろうか。
「…抱いてください」
「は?」
彼女は混乱している俺の手を取り自らの胸へと導くと揉みしだかせた。
大きいわけではないがそれは服の上からでもとても柔らかく指が食い込んでいく。
「んぁ…はぁ…あんっ」
誘われるままに裾を開き肌を露出させるとその艶やかな姿に目を奪われた。
首から鎖骨からの線、肩から落ちかけかろうじて引っかかっている浴衣。
見えそうで見えない胸の頂がより興奮を煽ってきた。
今度は逆に俺が彼女を押し倒し、両手首を頭の上で押さえつけ胸に顔を埋めた。
浴衣をめくりすでに勃起した乳首を口に含んで転がすと黄色い悲鳴が上がる。
口の動きをそのままに空いている手で胸からわき腹を撫で下ろし股間に指を這わせた。
浴衣の下には何も身につけていなかったらしく早くも指には粘液がまとわりつく。
自慰に耽っていたのだから当たり前ではあるが。
「すごい、こんなに濡れてる」
目の前で愛液が糸を引く様子を物珍しげに眺めていると彼女は恥ずかしそうに顔をそらした。
自分から抱いてほしいと言っておいて今更何を恥ずかしがるのか。
試しに指を膣内に侵入させると難なく受け入れるどころか離すまいと強い圧力をかけてくる。
指の本数を増やし卑猥な音を聞かせると肉襞が収縮した。
女体のことはよく知らないが感じている反応だろう。
「すごい、どんどん溢れてくる」
さらにもう一本、つまり計三本の指を差し込み内壁を引っかくと彼女の体が弓なりに弾んだ。
どうやら俺の投げかける言葉に反応して彼女の体は悦びに浸るらしい。

それならば――
「幽霊ってみんなこんなにエッチなの?それとも君だけ?」
普段では絶対に言えない恥ずかしい言葉を囁く。耳元で息を吹きかけながら。
「ち、ちが……いやっ、あぁん…はぁ」
「多分君だけがエッチなんだろうね。人が寝てる横でオナニーするくらいだしさ」
とどめに秘裂の上にある突起を押すと声にならない悲鳴を上げて体から力が抜けていった。
523こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/04/13(月) 00:50:37 ID:/4iSeZJH
肩で息をする彼女の目尻は下がり顔は上気していたが、何か物足りなさそうに見えた。
「どうしたの?」
「………」
しばらく黙り込んでいた彼女だが恥ずかしそうにして口を開いた。
「……ぃれて…くださぃ」
小さな声で呟かれる。
もっとおねだりをさせてみたかったが俺にも余裕はなかった。
小動物のような印象を与える潤んだ瞳を向けられれば誰だって言いなりになってしまう。
服を脱ぎ捨て最大限に勃起した肉茎を彼女の目の前に晒すと恥ずかしがりながらも嬉しそうな表情を浮かべた。
「じゃあ…入れるよ」
抑えていた両腕を解放してやり代わりに腰を掴む。ぬかるんだ秘裂に肉茎をあてがうと一気に貫いた。
「………はぅんっ!!」
初めてではないらしくソコはすんなりと受け入れると、無数の肉襞が言いようのない快楽を与えてくる。
あまりに気持ちよさに動くこともままならない。すぐにでも訪れる射精感をじっと耐えるのは厳しい。
「う、動くよ」
童貞の俺なり考えた挙げ句、いち早く彼女をイカせることにした。
「……ぁあッ、あ、あ」
作戦は成功。
俺の拙い腰の動きでも甘い声が口から漏れ出る。その声は聞く者を虜にするものだった。
腕を広げた彼女に抱きつかれるとそのまま押し倒され馬乗りにされる。
「はんっ…あ…ぅ、あッん、もっ、とっ」
一心不乱に腰を振り汗と淫らな蜜をまき散らしたために二人とも汁まみれだ。
体の激しい動きに比例して肉茎を包み込む柔肉も活発に動く。
肉襞一枚一枚が絡みつくがために相手と一体化している錯覚に襲われた。
「ごめん、もうっ無理」
「はぁッ…いい、ですよ…このままっ、で、んんあぁ」
幽霊相手には妊娠させられないなどを考える余裕はない。気付けば奥深くで吐精していた。
それに併せたように彼女も思い切り体を反らしながら絶頂を迎えた。
「はぁ…はぁ…」
一回の行為にここまで体力を使うとは知らなかった。全身の力が抜けまるで動けない。
しかし俺に跨る彼女は違ったらしい。
「もう一回…しません?」
うっとりとしながら呟く彼女は普段より大人びていて危ない色気を放っていた。
意志とは関係なく思わず股間に力がみなぎる。本能へ直接に訴えてくる色香だ。
自身の中で大きくなるソレを感じ取り彼女は嬉しそうに不適な笑みを浮かべた。
「…抜かずの三発ですよね?」
最終的にはその言葉にさらに二回足した数となった。
524こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/04/13(月) 00:51:48 ID:/4iSeZJH
次の日、聞きたいことがあったが日中彼女が起き出すことはなく、結局また夜になってしまった。
「君はなんなの?昨日のは一体?」
問いただすと片手で頭を掻きながら小さく口を開いた。
「私は…幽霊です。ただ…たまに自分が押さえられなくて…」
それであんなことになってしまった訳か。
「なんで黙っていたの?」
「人と話すのも…久しぶりで…あの、見える人なんていませんでしたから。言葉なんて忘れていたんです…」
言葉を忘れる程一人ぼっちだった彼女が気の毒に思えた。はたしてどれほどの期間か。
「……三十年ぶりですか」
「さ、三十年!?ってことは俺よりもずっと年上?」
「そうなりますね…気使わないでください。大して成長してませんから…一人だったので…」
やはり彼女は気の毒な人だ。三十年もの間一人でいるなんて俺には考えられない。
「そういえば君の名前は?」
今更になって彼女の名前も知らないことに気付いた。
「…なんでしたっけ?」
再び彼女は頭を掻きながら宙を見上げた。
「だったらさ…光じゃだめかな?思い出すまでの間だけど」
「光…?」
自分の名前に影がつくから光。
単純だし幽霊には合わないかもしれない。
しかし気に入ってくれたらしく、満面の笑みを浮かべながら抱きついてきた。
「…嬉しいです、影児さん」
こうして俺と光、人間と幽霊の二人暮らしは始まった。


おわり
525名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 01:05:17 ID:Bw7D7ULM
他スレへのssを書いている途中、気分転換に覗いてみれば……GJだコノヤロー!
無口っ娘通信の通販希望!!
526名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 01:11:55 ID:JIgVHn7b
続編キター! GJ!

全年齢のクセにエロSSでしかも無口っ子とな?
まったくもってけしかr(ry
まいどのコトだがその雑誌はどk(ry
527名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 11:53:27 ID:IE/fpqta
また密林に向けて旅立つ人が……
528名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 12:34:10 ID:aWCXJoea
いってらっしゃい
529526:2009/04/13(月) 19:23:17 ID:JIgVHn7b
チクショウ
雑誌どころか密林も見つからないぜ
530名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 21:49:07 ID:9TUSAd+m
買えないなら作ればいい
531名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 08:16:13 ID:E0k5GBHQ
ちょww
532名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 10:18:29 ID:tebvxOYb
その発想はなかった
533名無しさん@ピンキー:2009/04/14(火) 16:26:43 ID:inLEywO1
>>524
>>背中から抱きつき俺の肩にあごを乗せている格好だ。
>>柔らかいほっぺたを少しだけ膨らまし、とても小さい声でむーむー唸っていた。

秋葉かわいすぐるGJ。
二人が住む地域に行けば雑誌が買えるんだな?
534名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 04:04:09 ID:cGslSREY
>>530
夏コミ…は間に合わないから冬コミに出品ですね。   …メロンか虎あたりに委託してくれw
535名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 00:41:49 ID:9oi98s9t
無口っ娘といえば猫
536名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 00:44:32 ID:gz3sb1rL
無口無表情だけど猫の前だと幼げな笑顔を見せる娘と付き合いたい
537名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 00:59:33 ID:69k8xv0f
パワポケの芹沢真央じゃないか!
538名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 09:59:58 ID:KJdW0pIz
黒猫を頭に乗せてる無口娘。
猫が彼女の代わりに喋るが、口が悪い。
そして声が渋い。
539名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 22:27:49 ID:SSQTAnjz
某憂鬱のアニメ第1話かよw
あれは三毛猫だった気がしないでもないが
540名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 00:15:48 ID:35thaMiZ
>>539
俺はナーサリィライムのクルルとアズかと思ったw
でもよく考えたらアズは渋くないな
541名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 12:32:08 ID:DH28yIXH
きしめえええええええええええええええええええええええええええん
542名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 00:21:05 ID:3E6uh/wM
>>522
GJ
543名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 00:28:44 ID:P0TK8r6p
動物キャラが無口っ子の代弁する例は結構あるな

マルドゥックのウフコックとかDODのアンヘルとか
一応声が渋い
544名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 18:41:03 ID:3E6uh/wM
ハンドペット
545名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 09:13:12 ID:DKkoCB1p
無口長女(ボケ)
長女の通訳兼ツンデレ次女(ツッコミ)
天然三女(みなみはるおでございます)

なトリオ漫才姉妹
546名無しさん@ピンキー:2009/04/20(月) 21:07:23 ID:jGwcObzD
無口だけど積極的
甘えたいけど我慢してる双子
547名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 00:47:29 ID:iuDHUvkI
家への帰り道学生諸君を見て電波きた。

俺は守人光(もりとひかる)。
親父が突然「まだ見ぬ無口っ娘を探しに密林まで行ってくる」などとほざき姿を消した。
それにより俺は半ば強制的に従姉の家に預けられることになってしまう。
突然の転校、ぎこちない団欒風景、問題は山積みだ。
気が重い反面、俺は新たな出会いに思いを馳せつつこれから母校となる学園の門をくぐったのだった…
――――――――――
主人公、守人光を待っていた学園生活は無口っ娘ばかりのパラダイス!?
授業で部活で学校行事で気になるあの子のハートをつかめ!!
無口っ娘の心の機微を読むもあえて読まないもあなた次第、無口っ娘たちとのスクールライフを満喫しよう!!
○心で繋がる学園恋愛ADV「Taciturnity」20xx年 発売未定


この辺で電波がきれた。
ヒロインは、
従姉の教師(天然)
クラスメイトの図書委員(生真面目)
隣のクラスの妙につかかってくる娘(ツンデレ)
部活の先輩(クール)
途中で引っ越してくる従姉の妹(甘えっ子)
と考えてみた。もちろん全員無口。男友達も無口。ヒロインも友人も名前は考えたけれど苗字で撃沈。名前を考えるのは難しいな…
ちなみに守人光は読み方変えると「しゅじんこう」

さてと、俺好みの無口っ娘を探しに密林まで行ってくるかな!
548名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 02:05:23 ID:qf7u7lPs
エロゲーのあらすじじゃねーか
しかも親父涙目

さてと、密林はどこにあるのかな?
549名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 19:24:10 ID:bFCIfjCI
>>538
パペット使った腹話術の方が現実味あるんじゃないかな!

と電波を振りまいてみる
550名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 20:02:41 ID:FtxNsvXe
それ保管庫になかったか?エロ無しで短かったけど
あれの続き待ってんだけどなぁ…
551名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 00:07:27 ID:aw+0bz30
そーいやきしめんのクルルとかダメーポPCのアリスとか・・・・・
552名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 12:52:17 ID:FyEAH6Rv
パペットと聞いて“いごーろなく”さんを思い出す俺は異端
553名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 15:49:19 ID:rLrs4EBl
>>552
このスレ的には“あぶほーす”さんなんだろうけどなーw
554名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 21:29:17 ID:RTPhapjU
懐かしい話だw
なつかしいあなたへ
555名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 06:40:52 ID:cUBxshIO
とてとて
ちょこん
じー
じーー
じーーー
じーーーー
(なでなで)
にへらっ
556名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 07:59:54 ID:iPm44BZm
さっき甘えスレでも擬音モノを見たからフイタwwww
557名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 16:24:11 ID:3DLL0avI
ってか同じ方ですな


ところで>>555だけなら一見普通の甘え無口だが
「目の前にアレ」というノイズを加えることによって
558名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 21:05:22 ID:/l/lPvSF
>>557
なんかエロい、不思議!
559名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 23:01:15 ID:cUBxshIO
ふしぎ! えろい!
560じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:20:27 ID:Ro2I7o3O
犬の話の前に、双子の話が出来てしまいました。投下します。
相変わらずエロがないです。
561じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:22:47 ID:Ro2I7o3O
「妹、さん?」
少年の後ろに立つ、彼とどことなく似た風貌の、しかし確実に女性である少女。
睦月の通う中学の制服を纏った、すらりとした体つき。
ハネ毛気味の兄と比べると落ち着いた流れでセミショートの髪が首元にかかっている。
少年からその娘を紹介されて、睦月は呆気に取られていた。
「ああ、結。渡辺結。俺の双子の片割れ。
ちょいと事情があって数年別に暮らしてたけど、明日から同じ学校に通うことになった。
よろしくな」
少年はにっと笑って、一歩横にずれる。
少女はにこりと微笑んで歩み出ると、一礼してから睦月に名刺を手渡した。
『     渡辺 結
   私立北原中学二年生
 住所:某県某市○○区××町――――
 電話番号:090-○○○○-××××
   注:私は喋れません』
最後の注意書きに驚き、思わず彼女の顔を見る。
少女は相変わらず微笑んだまま、睦月に手を差し伸べた。
初対面の相手に物怖じせず、愛想も良い。
かと言って過度に自己主張せず、相手のペースに合わせる術を心得ている。
睦月は穏やかに微笑む少女の手を握り返しながら、思った。
自分はこの子とは仲良く出来そうに無い、と。

     * * *
562じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:25:34 ID:Ro2I7o3O
渡辺結と言う少女は、滝口睦月にとって一種憧れの対象である。
事故の後遺症で言葉を喋れないというハンディキャップを背負う彼女の、一体何が羨ましいのか。
まず165cm程度の程よい長身、対する睦月は150cmにすら達していない。
余計な脂の少ないバランスの取れた体躯は、同性から見ても美しいと思う。
胸の方も脂肪の付きがいささか悪いが、それはまあ別の問題。
二人の学業成績は同程度だが、自分を座学しか取り柄のない人物と考える睦月にとって、努力を苦ともせずムラなくコンスタントに好成績を収める結はやはり眩しく見える存在だった。
加えて結は運動神経にも優れる。
反射神経、平衡感覚、スタミナ。筋力以外の殆どの要素で成年男子と引けを取らない。
特定の部活動には属していないが、どの競技をやらせてもそつなくこなし、チームプレーを乱すことなく仲間のフォローも出来るので、運動部の助っ人として呼ばれることも多い。
どちらかと言えば中性的な相貌も相まって、宝塚の男役の様な、所謂"王子さま"などと見なされることもあるが、穏やかでやわらかい物腰からは確かな女性らしさがにじみ出ている。
男性的な格好の良さも、女性的な物腰も、睦月には持ち合わせていないものだった。
何より羨ましく思えるのは、結が彼女の兄の愛情を独占していることである。

渡辺綱、結の双子の兄にして、睦月の想い人。
妹に負けず劣らずハイスペックだが、行動力と自己主張が過剰で陽気に過ぎる性格が災いし、周囲に"バカ"と認定されている少年だ。
自他共に認めるシスターコンプレックスぶりもそれに拍車をかけている。
暇さえあらば妹の周りをたむろし、己の無謀かつ無計画な冒険に彼女を連れまわす。それでいて結への気遣いも忘れない。
その日一日を楽しむ事と妹のことしか頭にない彼にとっては、女子との恋愛など頭の片隅にも入っていない。
それでも、睦月は綱のことが好きだった。
幸いと言うべきか、睦月と同様に綱へ好意を寄せる女子は、他にいないであろうと思われる。"バカ"故に。

反対に、妹の結は同性によくもてる。
主に後輩の女子から、大半は冗談交じりとは言え、ラブレターを受け取ったのも一度や二度ではない。
男子から告白を受けたこともあった。
そのいずれも、結は断っている。
この少女にとっては、意図を汲んでくれる兄の傍が何より心休まる場所であり、わざわざ恋色沙汰に関わって神経を磨り減らすのは馬鹿げているのだろう。
結の方もまた、相当なブラコンなのであった。
当然、睦月は面白くない。
綱はどうしてこの歳になって、未だに妹離れできないのかと不満にも思う。
睦月にとって渡辺結は憧れの対象であると同時に嫉妬の対象でもあった。
思春期特有の複雑な、苦い感情を抱かせる存在。
故に、同じクラスになった当初、睦月は結のことが苦手だった。

     * * *
563じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:27:38 ID:Ro2I7o3O
それは進級して間もない、ある火曜日の午後の話だった。
昼休みを終えて、古文の授業が始まる。
担当の教師は年配の男性で、比較的厳格である以外の目だった特徴はない人物だった。
教師は教壇に付くと、教科書を置いて教室をぐるりと見回す。
その視線がある一点で止まった。
「飯田、制服はどうした」
クラス中の視線がその生徒に集まる。
他の皆が制服でいる中、一人だけ前の授業で使った体育のジャージを着ていた。
彼女は居心地が悪そうに体を縮める。
「……お昼用事があって、着替え逃しました」
その青ざめた顔色を見れば、明らかに嘘とわかる。
睦月も、更衣室でロッカーを前に途方にくれる彼女の姿を目撃していた。
何より、周囲より時折くすくすと嘲笑う声が漏れているのが証拠だ。
(……最低)
高レベルとは言えないが一応進学校である北原でも、こんなことがあるのか。
睦月は机の下で、ぐっと拳を握った。
飯田とは特に親しい仲ではない。
それでも、育ちが良く世間擦れしていない睦月にとって、特定の個人を集団で寄ってたかって攻撃するのは軽蔑すべき行為であった。
だがこういう状況で苛められる方に味方することがどういう事態を招くか、判らないほど物知らずではない。
睦月は自己嫌悪を感じながらも、俯いてじっとしていた。
古文の教師は事情を知ってか知らずか、それ以上追求しない。
「そうか、今度から早めに着替えておけ。それでは授業を――――」
その時、すっと隣の席の人物が挙手をした。
渡辺結であった。
少女はそのまま立ち上がると、黒板に向かって歩く。
「渡辺、一体何の用だ」
結は微笑んで一礼し、チョークを取って手早く黒板に文章を書いて見せた。
『飯田さんは体育の時間中に制服を隠されました』
教室中がざわめく。
睦月は小さく馬鹿、と呻いた。
虐めの中心人物は恐らく藤枝と言う生徒だ。
彼女の母親は北原学園に絶大な影響力を持つOB会の会長で、教師達も彼女には強く出られないと聞いている。
案の定、古文教師は一瞬苦虫を噛み潰したような顔をした。
余計な騒ぎを起こすな、そう言いたいのだろう。
「ち、違います」
突然、顔を真っ青にした飯田が声を上げた。
「着替えるの、忘れただけです、本当に。せ、制服は、ちゃんとあります。ありますから」
教師はそれを聞いて密かに安堵したようだった。
「ほら、そう言うことだ。きっと渡辺の勘違いだろう。
次の休みにでも、更衣室のロッカーとかをちゃんと確かめてみろ」
『"偶々"次の時間、なくした筈の制服が戻っていたとしても』
結は尚も黒板に文字を連ねた。
『制服を隠されれば、誰でも不安で不愉快な思いをします。
明確な証拠がなくても、今後似たようなことがあれば、虐めと判断すべきです』
成る程、と睦月は思った。
確かに皆の面前で虐めの存在を訴えれば、教師であれ一部の生徒であれ、握りつぶすのは難しくなるだろう。
だが、訴え出る結のリスクが大きすぎる。
睦月は不安で仕方がなかった。
教室がざわめく。
教師の顔が苦々しそうに歪む。
飯田は青い顔のまま俯く。
一部の女子が敵意の篭った目で結を睨む。
渡辺結は黒板の前で、毅然と全ての視線を受けていた。
564じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:31:27 ID:Ro2I7o3O
放課後、帰る準備の途中で数人の女子に呼び止められた結は、そのまま女子トイレに連れ込まれた。
今はトイレの前に例の女子グループのメンバーが陣取って人払いをしている。
その一部始終を、睦月は後ろから見守ることしか出来なかった。
無力だ。
廊下の隅で突っ立ったままの睦月は、拳を握り締めて歯噛みしていた。
その手には結の通学鞄がある。
彼女が席を空けている間、悪戯されることを恐れて持ち出しておいたものだ。
自分にはそんなことしか出来ない。
今頃、結は藤枝らから私刑を受けているだろう。
痣等の証拠が残るような真似はしないだろうが、逆に言えば証拠が残らない行為ならば何でもやる連中だ。
睦月は意を決すると、生活指導の教師を呼ぶべく、踵を返した。
「滝口? なにやってんだ?」
突然、能天気な声に呼び止められる。
「……渡辺!」
今一番会いたくもあり、それでいて一番顔を合わせたくなかった少年がそこにいた。
綱がこの状況を知れば、真っ先に女子トイレに突撃するのが目に見えている。
知恵が回る藤枝らのことだ、誰かが乱入して来ても対処する手は打ってあるだろう。
かえって、結と綱にとって悪い状況を生み出しかねない。
ただそれでも、形振り構えない状態であることは判っている。
睦月は意を決すると綱に駆け寄った。
「渡辺、わ、渡辺さんが――妹さんが、大変……」
「あー、なんか、面倒ごとに巻き込まれてるみてーだな」
綱は携帯電話をいじくりながら、慌てるでもなくあっけらかんと返答する。
その態度が信じられなくて、睦月は呆然とした。
「何、呑気なこと言ってるの? 妹さん、酷い目にあってるかも知れないのに……っ!」
「滝口」
必死に詰め寄る睦月を制しながら、綱は慣れた手つきで携帯電話を耳に当てる。
そのまま睦月に向けて、にやりと不敵な笑みを見せた。
「ウチの妹は、あんな連中に負けやしねーよ」


「どう言うことかしら、渡辺さん?」
現在、結の四方を五人のクラスメイトが取り囲んでいる。
結の正面に立つ、長髪で垂れ目の、優しげな雰囲気を纏った少女がリーダーなのだろう。
彼女だけが結に語りかけていた。
「私達にとって貴女はどうでも良い存在。お互いに無干渉でいれば何も問題は起きないのよ?
それなのに、どうしてわざわざ、貴女の方から私達の調和を乱すような行為に及ぶのかしらね?
百歩譲って飯田さんの制服の件に私達が関わっていたとしても、これは私達と飯田さんの問題なの。
貴女が口を挟むべきじゃない。判ってるの?」
結は臆した風でもなく、曖昧に微笑んだまま答えない。
リーダーの少女は結の肩を掴んだ。
「何とか仰いなさいよ」
「藤枝さん、無駄だよ。こいつ(放送禁止用語)だって」
リーダーである藤枝の右正面の、髪をひっつめにした小柄な少女が退屈そうに呟く。
藤枝の左隣にいる、短髪でいささか痩せ気味な少女が続ける。
「紙とペンくらい与えてやったらどうかな。
手を一切使わせず、ペン咥えて口だけで千回"ごめんなさい"を書かせるとか、面白そう」
「だまらっしゃい」
藤枝はぴしゃりと黙らせた。
彼女は改めて結を睨みつける。
「何笑ってるのかしら?」
その微笑が気に食わなかったのか、藤枝は手の甲で結の頬を叩いた。
結は顔を逸らしただけで、一歩も引かない。
頬に手を当てながらも、相変わらずの柔らかい表情で藤枝らを見返す。
若干気圧され気味なリーダーをよそに、右隣にいる脱色した(校則違反だ)セミロングの少女は嘲笑を浮かべる。
「殴られてもへらへらと、気持ち悪ィ。こいつ、頭可笑しいんじゃない?
それともマゾ?」
「どうでもいいわ」
565じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:38:30 ID:Ro2I7o3O
藤枝が合図を送ると、結の右後ろに控えていたガタイの良い少女が無言で結の腕を捕まえた。
「貴女にはこれから、便器から水を飲んで貰うわ。
私達はしっかりその様子を撮影してあげる。
勿論、他所様にこれを漏らすことは無いわ。
だけど、もし今後、また貴女が私達に不当な言いがかりを付けるような真似をすれば――――、おわかりでしょう?」
茶髪がそれを聞いてはしゃぐ。
「パシリ2号決定?」
痩せっぽちはくつくつと低い笑みを漏らした。
「面白いねえ。こいつ、学校に来れなくなるんじゃないかな?」
「それならそれで、都合良いよ」
ひっつめ髪は、どうでも良さげに呟く。
そのまま個室へと引っ張っていかれる前に、結は懐から取り出したメモ帳に手早くボールペンを走らせ、藤枝らに掲げて見せた。
『飯田さんにもこれを?』
藤枝は満足げに頷いた。
「ええ、飲ませてあげたわ、トイレの水。
あの娘ったら、無様に泣きながら何度も『止めて下さい』と頼んでくれたの。
本当、滑稽で、可笑しくって。
心行くまで堪能させてもらったわ。
その時の画像がまだあるんだけど、貴女も見る?」
瞬間、結の貌から一切の表情が消えた。
結の肩を掴んでいる体格の良い少女の方へ、一歩後ろに下がりながら、左手でその肩を掴む。
そのまま肩を前方に引き、足と腰を使って一気に相手の股間を跳ね上げた。
屈強な少女は空中でひっくり返りながら、凄まじい勢いで肩から堅いトイレのタイルに叩きつけられ、うっと呻いたまま動かなくなる。
鼻先を投げられた少女の足がかすめ、藤枝は呆気に取られて尻餅をついた。
結は投げた勢いで身を翻し、左後ろのひっつめ髪に相対すると、左腕を引きながら左足を払う。
バランスを崩されたひっつめ髪は、防御する間もなく肝臓を膝で打ち抜かれ、くの字に曲がりながら崩れ落ちた。
「な――ッ! あんた――!」
藤枝の両隣にいた少女らは呆然と立ち尽くしていたが、ようやく状況を理解すると、同時に結に掴みかかる。
結は振り向きながら素早く左に移動。
痩せっぽちは茶髪の背に阻まれ、結に襲い掛かるタイミングを逃す。
茶髪の我武者羅な右拳を難なく潜り抜け、結は彼女の襟を掴んで強く押し出しながら内側から足を払った。
後方に倒れこむ茶髪に足を取られ、つんのめる痩せっぽち。
その手を横に払いつつ、顎を掌で打ち上げる。
「グがッ!」
手に伝わる嫌な感触に、結は目をしかめた。
それでもまだ終わらない。
倒れた茶髪の無防備な腹を踏みつける。
茶髪は蛙が潰れた様な悲鳴を上げながらのたうち回り、タイルに吐瀉物をぶちまけた。
十秒にも満たない間に、四人が結の下に倒れ伏している。
藤枝は呆気に取られたまま、一部始終を眺めていた。
「う……」
いつになく真剣な表情で睨んで来る結を見上げながら、少女は懐から細長い箱のようなものを取り出した。
震える指でロックを外すと、藤枝は箱を振りかざして結に突撃する。
「うあぁあ――――――ッ!」
結はとっさに跳び退き、壁に立てかけてあったモップを掴む。
そのままモップをくるりと回し、柄を藤枝の手首に打ち付けた。
改造スタンガンが火花を上げながら手から離れ、タイルに転がる。
手を押さえてうずくまろうとする藤枝。
結は彼女のタイを掴んで無理矢理立たせると、壁際に押しやり喉元すれすれにモップの柄を突きつけた。
「こ、こんなこと……、こんな事をしてただで済むと……ッ!」
結は無表情の一瞥で悪罵を止めると、ポケットから携帯電話を取り出し、ボタンを操作した。
雑音交じりの中、女の声が再生される。
『貴女にはこれから、便器から水を飲んで貰うわ。私達はしっかりその様子を撮影して――――』
藤枝の顔から血の気が引く。
566じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:41:46 ID:Ro2I7o3O
『――――ええ、飲ませてあげたわ、トイレの水。あの娘ったら、無様に泣きながら何度も『止めて下さい』と頼んでくれたの』
「脅迫するつもりッ!?」
藤枝は目を血走らせて食い掛かる。
結は彼女の喉をモップで押さえたまま、片手で携帯電話に文字を打ち込んで藤枝に掲げて見せた。
『データは既に他所に転送済みです。
飯田さんの写真を含め、今まで脅迫材料全て。
漏らせばこの録音を公開します』


「く……ッ、どきなさい!」
よろよろとふら付きながら、藤枝ら五人は、這う這うの態で女子トイレから出てきた。
出会い頭に、退屈げに立ち尽くしていた男子にぶつかり、藤枝は苛々しながら目を上げる。
少年は能天気に手を上げて挨拶を返した。
「よ」
「渡辺……! そう、貴方もグルだったのね……!」
呪い殺さんばかりに睨み付けて来る視線を受け流しながら、綱は携帯電話を耳に当てる。
先程のトイレでのやり取りを聞きながら、少年は目をしかめた。
「言いがかりつけてリンチの挙句、脅迫して使いっぱしりかよ。
やり方がエグィな。陰湿だし、気に入らねー」
「黙れッ! 貴方が言えた身かッ!」
藤枝は壊れたスタンガンを投げ付けるが、綱は難なく片手で受け止めた。
何を言った所で、負け犬の遠吠えにしかならない。
藤枝は奥噛みすると、少年を押しのけた。
「覚えていらっしゃい。妹さんはきっと、後悔することになるわ……」
「基本的には結が買った喧嘩だ。
度が過ぎん限り俺は関わんねーよ。けど……」
綱の右手に握られたスタンガンが、ミシミシと音を立てる。
「もし影で妙な噂立てたり、教師に手回して上から追い詰めたりしてみろ。
俺は回りくどい真似はしねえ。
そん時ゃ、問答無用で、骨格変わるまでぶん殴る」
スタンガンは握り潰され、バラバラに砕けて床に零れた。
少年の顔は背後から伺うことは出来ない。
藤枝らは青白い顔で、すごすごと退散した。


「あいつらもこれで、少しは反省すると良いんだけどなー」
尻尾を巻いて逃げて行く少女達の背中を見送りながら、綱は呑気に呟く。
物陰から様子を伺っていた睦月は呆気に取られてその様子を見ていた。
「ええっと……。渡辺、さんは……」
少女が心配するまでもなく、結が何時も通りの風体で、女子トイレから悠々と姿を現した。
「おー、結。おつかれさん」
結は兄の姿を認めると、微笑みながら小さく手を振って歩み寄る。
「怪我、ないか?」
首肯。
ふと、結の視線が綱の背後の睦月に送られる。
首を傾げる結。
「あの……、鞄」
勝手に持ち出した意図を勘繰られたりしないだろうか。
持ち主に鞄を手渡しながら、睦月は気まずい思いにとらわれる。
だが、結は右手を拝むように掲げながら、笑顔でぺこりとお辞儀をした。
「鞄、持ってくれてありがとな。
じゃ、また明日」
少年は妹を代弁するとその肩を叩いて、踵を返す。
結はもう一度だけ睦月に一礼してから、兄の後ろを追った。
二人の後姿を見送りながら、少女は呟く。
「あの兄にして、ね……」
567じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:44:56 ID:Ro2I7o3O
夕暮れの歩道。
綱と結は、並んで家路を歩いていた。
「今日火曜だよな。週刊ダッシュ、コンビニに置いてっかなー。
しかし今月の小遣いも残り少ない。ウウム、どーしたもんか」
綱は今日発売の漫画雑誌を買うか否かで、道すがら頭を悩ましている。
「結ー。お前も読むだろ?」
少年が左の少女に同意を求める。
だが、結は俯くだけで反応が鈍い。
「結?」
兄に呼びかけられて、結はようやく顔を上げた。
その笑顔には、なんとなく何時もの覇気が無い。
「お前、素人に手、上げたこと気にしてんのか」
少女は図星を突かれて苦笑した。
「気にすんなって。あの状況じゃ逃げられなかったし、相手は5人がかりなんだから、技使っても問題ねーよ。
先生も許してくれるって。
それに、殴られなきゃ判んねえ事もある。
あいつらにも良い薬になったろう」
綱はそう言いながら、結の頭に手を置いた。
「大丈夫だって。ほら、スマイルスマイル」
そう言って、にっと口の端を吊り上げる。
結も釣られて笑いながら、乱暴に髪をかき回す兄の手を除けた。
あからさまに残念がる綱。
「なでなでしたいんだけどなー。
兄としては傷心の妹を慰めてあげたいんだけど。
……何? 余計なお世話?」
結はそっぽを向くと、兄を置いて先に行ってしまう。
少しだけ、名残惜しそうな顔で。

     * * *

「相席、いい?」
明くる日の昼休み。
サロンで一人、不恰好なサンドイッチをつつく渡辺結を見付けると、睦月は彼女の前の席に陣取った。
結が頷くのを確認し、持参した弁当の包みを広げる。
梅干と昆布佃煮のおにぎりにアスパラ牛肉巻き、菜の花辛し和え、出汁巻き、蕗煮しめ等々。
彩り良くバランスの取れたメニュー。
手を合わせ黙祷してから箸を手に取ると、睦月も食事を始める。
暫くは、二人して言葉もなく黙々と口を動かしていた。
半分ほど弁当箱を開けて、一息ついてから、睦月はようやく口を開いた。
「昨日は、……その、ごめんなさい」
何が? と尋ねる様に、結は首を傾げる。
「私、見てるだけで、何も出来なかったから」
結は首を振ると、傍らの鞄を持ち上げて示し、右手の平を拝むように上げた。
元は自分が撒いた火種。鞄の件を感謝こそすれ、恨む理由はどこにもない。
そう言いたいのだろう。
再びサンドイッチに手を伸ばす結を眺めながら、睦月は思った。
(……不思議な子)
あれから藤枝のグループは大人しくしている。
綱の脅しが効いたのか、結が手を回したのか。
ともあれ、飯田の件は解決したらしく、彼女の制服は無事戻り、藤枝らからの干渉もなくなっていた。
何とも、鮮やかな手際。
大人しいだけの娘だとばかり思っていた。
だが、その行動力、成すべきと思ったことを成し遂げる意思は、兄譲りのようだ。
何となく、綱が妹を可愛がる理由が、少し判ったような気がする。
陽と陰。快活と冷静。男と女。
二人は全く違っているようで、その心の奥深い部分を共有しているのだろう。
羨ましいな。
睦月はそんなことを思った。
568じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:47:11 ID:Ro2I7o3O
「やっほー、ムッキー。お昼かえ?
おや、渡辺の妹さんもご一緒?」
不意にかかる能天気な声。
振り向くとぼさぼさの髪を頭の後ろで纏めている少女が手を振っていた。
少女は無遠慮に睦月の横の椅子に陣取ると、ずいと身を乗り出して結の顔を凝視する。
「うーむ、確かに渡辺に似とるな。
アレを女にして、ガキ臭さ抜いて、思いっきり可愛くしたら、こんな感じやね。
おっと、失礼。私は北大路侑子。D組。ムッキーの友達よ。
よろしゅう」
二人は互いにお辞儀。
すかさず結は名刺を差し出す。
「これはどうも、ご丁寧に」
持ち慣れないものを渡され、神妙にする侑子。
「それじゃ貰っとくわ、渡辺さん――――兄貴の方と混同して、ややこしいな。
うーん、渡辺、結、結さん、むすび……。
"おむすび"って、呼んでええ?」
苦笑しながらも頷く結。
睦月は半眼で警告した。
「渡辺さん、こいつ馴れ馴れしいから、嫌なら嫌と言って――書いてやった方が良いわ」
「そんなこと言って。ムッキーやて、名前で呼びたいん違う?」
からかうような、口調の侑子。
「何でそうなるのよ」
「兄貴の方にも名前使う口実が出来るやろ?
愛しの渡辺くんを、"綱かっこはーとまーく"と愛情込めて呼んでやることが――へぶッ!?」
睦月、侑子の脇腹に肘を打ち込む。
結は目を丸くして、携帯電話に文字を打ち込んで掲げて見せる。
『滝口さん、兄のことを?』
「そそそそ、そんなわけないでしょ!
あんな、あんな、無神経でバカでお調子者で――――」
紅潮しながら、しどろもどろに反論する睦月。
「やーん、もう。ムッキーったら。このツ・ン・デ……ごぎゅ!
うう……そ、そんな暴力的やから、いつまで経っても渡辺にデレデレオーラをスルーされ……うごッ!?」
平常での睦月の態度を暴露するたび、侑子に拳が打ち込まれていく。
結は二人の様子を眺めながら、どこか安心したように笑っていた。
どこか寂しそうに。
569じぇみに。酸 ◆MZ/3G8QnIE :2009/04/23(木) 23:54:03 ID:Ro2I7o3O
投下終了です
今までの前日談ですね。次以降はもっとさかのぼる予定

この話はどんどんエロから遠ざかっていきます
エロをひねり出そうとしても、自慰して自己嫌悪に陥る睦月さん位しか考え付かない……
代わりに犬の子に頑張ってもらいましょうか
570名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 23:57:09 ID:kROHiY+w
GJ! いったいどっちとのエロになることやら。
571名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 01:40:55 ID:lv7j9n7u
結かっこいい…でもちょっと損な性格かも。だがそれがいい
睦月かわいいよ睦月
兄貴はかっこいいバカだね

GJ!この関係決着つくのかな
572名無しさん@ピンキー:2009/04/24(金) 22:17:05 ID:pFNAddSB
話題に乗り遅れたが、スケブ・看板使いって無口っ娘の定番だよな?
何となくイメージ出来る俺は、似たようなネタをどこかで見たのかもしれん
573名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:11:48 ID:xI5ITbyp
看板と聞いて乱馬のオヤジ(パンダ)を思い出すのはオレだけではないはず
574名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:34:51 ID:QnqwtrJs
看板と聞いてプレネールさんが思い浮かぶのは俺だけではないはず
575名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:56:31 ID:RRADtZwN
>>572
看板は微妙だが、まんまONEの上月澪では
576名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 18:10:53 ID:gwn2VLrF
オッペケテンムッキー



ごめんなんでもない
577572:2009/04/25(土) 19:20:00 ID:YxDao1vZ
パンダは分かったが下二つが分からん
とりあえず書いた。以下注意書き

・甘めだったり寸止めだったり複数テーマに跨っています
・例によって酷く荒っぽい展開です。空気ネタに寛容である方にオススメします
・結構長いです。書いてる途中でダレました
・最後はもう、締め切らずgdgdです。どうか許して下さい

では、壮大な自爆を投下
5781:2009/04/25(土) 19:23:16 ID:YxDao1vZ
『私を拾って下さい』
 そういう看板と共に、道端に何やら捨て……娘がいる。
 何かの冗談――でなければ世も末だな。
「今日びこんなネタは流行らないよ」
 それだけ言って立ち去るつもりだった。
 が、少女は何やらスケッチブックを取り出し、太ペンで何やら書き始めた。
『私は至ってまじめ』
 あーそうきたか。

 そのまま放っておいても見知らぬ人に何されるか分かったものではない。
 首を突っ込んでしまったが運の尽き、とりあえず看板を下ろしてもらって後は話し合い。
「で、親は何処?」
 そう尋ねると、少女はまた何やら書き始めた。
『いない』
 やる気満々かよ。
 そもそも何で筆談なんだ? 難聴だとかそういう訳じゃないみたいだし。

「じゃ、行くべき先はお役所しかないな」
 ややこしくなりそうなので、手っ取り早く決断を下す。
 嘘なら嘘で良いし、本当であってもそれはそれで仕方がない。
『どっか行け』
 うわ嫌われた。お互い結論出すの早い。
「ごめんごめん。じゃあ何? 本気で誰かに連れて帰ってもらいたいってこと?」
 今度は少女、首を縦に振って答える。

 とりあえず公園まで来た。ここなら少し話もし易いだろう。
 二人でベンチに座る。さて、どうしたものかな……と、とんとんと少女が肩を叩く。
「ん?」
『ここに住めってこと?』
 いや、一々気が早いなこの子は。
「誰もそんなことは言ってない。これからどうするか考えるよ」
 ホッとしているよ参ったな。このまま逃げるのも可哀想だし、どうも俺の性格からしてドツボにはまった気がする。

「本当に親いないの?」
 こく。
「世話してくれてる人とかは?」
『いない』
 先ほどの奴、使い回しとは大したエコだ。
「じゃあ、今までどうやって生きてきたの?」
 考え込む少女。が、意外とすぐにペンが動き出す。
『なんとなく』
 おいおい。

 時間をかけて真面目に訊いたところ、どうやらこの少女の世話をしてくれていた人が自殺したらしく、住んでいた所を追い出されたとのこと。
 素性は本人も分からん部分が多いようだし、それ以上は話したくない様子でもある。まぁまだ子どもだし当然だよな。よくここまで話してくれた方――。
 ――しかしここまで話してくれた以上、こちらも後には引けなくなった。つくづく俺は良い人だ。こんな赤の他人にそんなこと話す方も話す方なら、訊く方も訊く方だよね。
「良い考えが浮かぶまで、預かってやる」
 それを聞いて少女は少し驚いた。が、すぐに表情を明るくした。
 控えめだが、初めての笑顔。
 ええダメ人間です俺は。

 少女の名前を訊いていなかった。
『五色草』
 ごしきくさ――と読むらしい。変わった名だ。
『俺の名は浅葉英。あさばすぐる』
 試しにスケッチブックに書いて返事をしてやったら、結構喜んでくれた。
 しかし何故筆談なのか、それも訊いてみたかったのだが……。
『もう少ししたら話す』
 といって表情を曇らせた辺り、浅からぬ事情がありそうなので今は追求しないでおく。
5792:2009/04/25(土) 19:25:51 ID:YxDao1vZ
 俺がこうもコロッと行ってしまうには、ちゃんと訳もある。
 可愛いんだなこの子は。本能を擽られるというか――まさか俺は根っからのロリコンなのか?
 特に顔立ちが整っていて今は今なりの良さがあるし、成長したら美人になるかも? とも思わせる。
 髪型はセミロングで、やややつれた感じなのは事情が事情か。
 服装は胸元にプリントの入ったTシャツに、デニムのショートパンツ、肩掛けのサスペンダーを腰元にぶら下げている。
 結構ラフで、まだまだ感覚が幼い。
『何?』
 ぼーっと見ていたらそんなことを書かれた。

 しかし、事が事だ。ひょっとすると……。
「おなか空いてないか?」
 暫く考えて、草はやや恥ずかしそうに頷いた。
 そうだろうな。そうじゃないかと思った。
「よし。じゃあ好きな物を食べさせてやるよ。何が良い?」
 しかしこれ――まるで兄か、でなけりゃ誘拐犯だわ。
 彼女はまた暫く考えて、答を出した。
『なんでもいい』
 健気な奴。

 俺は草を連れて喫茶店へ行くことに決めた。一応、オムライスなんて発想が出来る人間ではある。
「よし、じゃあ行こう」
 ベンチからぴょん、と飛び降りる姿を見て、心が和まない俺はいない。
 さて、二人でいるのに何が一番自然で良いかと考える。通報でもされたらたまったもんじゃない。
 一番無難なのは……とりあえず、絶えず会話をしながら歩くことか。
「あーそうだ。俺、お前のことは何て呼べば良い? 俺のことは英で良いよ」
『草でいい』
「分かった。じゃあ草、これからよろしく」
 俺たちは会話の流れで、そのまま握手を交わした。

 公園の時よりも、草は何となくリラックスしているようだった。
「草の好きな物って何だ? 俺は猫かなぁ」
 訊くたびに、彼女は歩きながらスケッチブックに文字を書く。
『ふとん』
「布団? そうか、寝るのが好きなんだな」
『温かいからすき』
 割と無愛想で人見知りが強そうに見えるが、書く内容は正直なんだよな。
 そんなやり取りを繰り返しながら、俺たちは歩いた。

「いらっしゃいませ」
 喫茶店には割と常連で、マスターともそれなりに仲は良い。
「やぁ、マスター」
「――これはお久しぶりです。今日はまた、素敵な女性をお連れで……こちらへどうぞ」
 そしてこのマスターという人種は、決まって空気を読むのが上手い。一種の必須技能なのだろうか。
 テーブル席に座ると、俺はオムライスとコーヒーを注文した。
 向かいに座った草は、これまでとは一転、何やら表情が硬い。
 ――ひょっとして、ここは好きじゃなかったのか?
「どうした?」
『こんな所初めてきた』
 ああ、緊張していたのか。

「お待たせ致しました、オムライスでございます」
 デミグラスソースの香りがテーブルを包み込む。
 ? という顔つきでそれを見つめる草。まさか、食べたことがないのか。
『いいにおいがする』
 律儀に感想を書かれ、思わず苦笑してしまった。
「そんなことは良いから食べてみなって。美味いから」
 草は暫く俺を見つめていたが、やがてスプーンを手に取る。
 そして恐る恐るその山の一角を崩すと、それを口へと持っていく。
 ぱくっ。
5803:2009/04/25(土) 19:26:49 ID:YxDao1vZ
「……」
 いかん、俺まで一緒に口を動かそうとしていた。危ない危ない。
 自分に対する照れ隠しで、先に来ていたコーヒーを一口。
 しかし、何かまた感想を言ってくるかとも思ったが――。
 ぱくぱく。
 ――意外に食べ始めたな。やっぱり相当おなかが空いていたのだろうか。
 俺がそれを見守っていても、草はまるで気にしない。黙々とオムライスを食べ続けている。

 半分ほど食べたところで、スプーンが置かれる。
 そしてまたスケッチブックとペン。
『残りは英の分』
 そうきたか。予想外だった。
 どうやら俺がコーヒーだけ飲んでいるのを見て、気を使ってくれたんだな。
「それは草に注文したんだから、みんな食べて良いよ」
 すると納得したのか、またスプーンを取って食べ始める。
 何かもう、相当懐かれてない?

『ごちそうさまでした。とてもおいしかったです』
 そう書いてから、水をこくこくと飲む草。
 仕草が一々俺の父性本能なのか何なのか、よく分からない部分を刺激する。
 これって萌えなの? 何なの?
「そろそろ行こうか」
 そう言って席を立つと、草は慌ててコップを置いて付いて来る。
「急がなくて良いって。水、まだ飲む?」
 首を横に振る。
「じゃあ会計済ますから、外で待っていて」
 草は頷いて、先に店を出た。

 外に出た時に、草の姿はなかった。
 おかしいと思って周囲を見渡しても、やっぱりいない。
 俺は急に不安になった。
「草?」
 返事はない。
 ……
 ……
 ……
 暫く探したが、その姿は見つからなかった。

 俺は何がしたかったんだろう。
 単に性質の悪い悪戯だったかもしれないじゃないか。
 それにあんな子をこの先預かっていけるとでも、思っていたのか。
 本気で思っていたなら、この短時間に相当逆上せたも良いところだ。
 全て嘘で、家に帰ったんだったらそれが一番良い。
 それで良いはずなのに……何だこの気持ち。

 公園に来た。ベンチに座った。
 変に未練は持ちたくないのに、何故かここに。
 暫くぼーっとしたまま、俺はそこにいた。
「……」
 とんとん、誰かが肩を叩いた。
 振り返ると、草がいた。
5814:2009/04/25(土) 19:29:06 ID:YxDao1vZ
『ごめんなさい』
 スケッチブックに書かれた文字が、やけに懐かしい。
「……」
『おじさんに似た人がいたから、追いかけた』
 自殺した人か。
『生きているんだと思ったけど、人違いだった』
「……」
『どうしたらいいのか分からない』
 俺もだよ。何か無性に腹が立って仕方ない。理不尽だけどさ。
 だけど、草の顔を見ると怒れない。
「何でそんな顔するんだよ」

 怒るつもりじゃなかったのに、加減が出来ず思わず強い語調になってしまった。
 ビクッと反応した草の表情は、益々悲しげに沈む。
「……悪い」
 もう何か滅茶苦茶だ。高ぶった気持ちだけがまだ燻る。
 草はじっと俺を見ている。俺はどんな顔で草を見ているのだろうか。非難の目か?
 振り返る草。それは明らかに、交わった線が離れようとする光景。
「行くな、草!」

 とにかく何を繕うでもない、思ったことを考えずに口に出した。
 このまま無言なら、草は去って行ってしまう。それが良いのか悪いのか――俺にとっては良くない。
 草は後を向いて、その場に静止したままだ。
「……突然、いなくなって心配した……バカだな俺は。本音とか建前とか、いろんなことがごちゃ混ぜになってさ――草を、俺が、どうしたいのかが分からなくなってた」
 自分が何を言っているのか、もう完全に分からない。
「――どこにも行かないでくれ」
「!」

 出会って半日立たずのプロポーズかよ俺は。何という……。
 俺たちは暫く無言のままだった。落ち着くまではその方が良かったかもしれない。
 俺はその間、草は何故そういう行動に出たのか、考えた。
 恐らくおじさん――とやらが死んだことにまだ納得が出来ていない、というか気持ちのどこかで受け入れられていないのだろう。
 帰れる家が、もしかしたらまだ残っているのかもしれないと……よく考えればこんな年の子には辛い話だ。
 一方で大人びているというか、気を使える子だ。だから俺を恐らく探しに来てくれたんだろうし、何も言わずに姿を消したことを謝った。
 しかしどうしたら良いか、分からないのだ。俺を頼って良いものか、頼るべきなのか……。
 ――つまり、俺が可能な限り、分かってやるしかない。時間をかけてでも。

「草」
 隣に座り、じっと地面を見つめていた草に、俺は声をかけた。
 恐らく、ショックだったのだろう。顔もペンも動かない。
「俺は草のことを、今日話で聞いた限りのことしか知らない。だからおじさんが生きているのか、死んでいるのかも分からない」
「……」
「でも今日一緒に過ごして、草の力になってやりたくなった。だから、少しずつで良い――遠慮なく俺を頼ってくれ」
 草はやっとペンを持ち、弱々しくスケッチブックへと言葉を書いた。
『英にはあんなに酷いことしたのに、赤の他人なのに、なんで?』
「草が好きだからだ」
「……!」
 そう、まずはこれで良い。
 そして俺は、初めて草の声を聞いた。
 心の柵を解放されたのか、止め処ない嗚咽。
 受け止めるかのように抱き締めたその身体は細く、今にも壊れそうだった。

 公園から家へ――草は俺の手をずっと握ったままだ。
 つくづく懐かれたというか、行ける所まで行ってしまった状態だな。
『責任とれ』
 泣き止んだかと思うとこれだもの。やっぱりどこか大人びている。
 しかし、気持ちは晴れた。支えが取れた、って言うのかな。
 あまり先のことは考えていなかったが、これから大変になるのかもしれない。
 いろいろと考えている間に、自宅へと到着した。
5825:2009/04/25(土) 19:31:02 ID:YxDao1vZ
 はっきり言って狭い家だ。一人身の俺にはちょうど良いが、草を入れるとそれが顕著になる。
 だが草は喜んだ。たいして片付いてもいない部屋で、無邪気にはしゃぐ。
 あれは何? これは何? と一々訊いてくるものだから、その都度答えたり使わせたりしていたら、すっかり日が暮れた。
「お風呂を沸かすよ」
 そう言って俺は居間に草を残し、風呂場に来た。
 そして、変なことを考えてしまうのである。
「……うわわ、何考えているんだ俺は!」
 正直、最もやってはいけないことだ。考えてもいけないこと
 だが、この感情が本当の意味での”好き”だとしたら――その辺俺はまだはっきりと自信が持てなかったが――ごく自然な気持ちとなる。
 ――つまり、草と繋がりたい、と。

 しかし、最低限に自制心は働かせないと、例え勘違いでもとんでもないことになる。
 風呂に水を入れ、台所で夕飯の支度をし、水を止めて火を付ける。
 考えないようにする。恐らく、俺が手を出さなきゃ何も起こりはしない。
 草は今、楽しそうにテレビを見ている。たまにごろごろと転がったり、ぺたんと座ってみたり――その一挙一動が可愛くて仕方ない。
「夕飯出来たぞ」
 今まで言うことなどなかった台詞。
『はい』
 そう書いてスケッチブックを掲げる。やっぱり普段は筆談。
 普段喋ろうとしない理由――もう少ししたら話す、と言っていたが俺からはもう訊かない。
 自分から言い出す時を待つ。時間はたっぷりとあるんだから。

『ごちそうさまでした。とてもおいしかったです』
 と、ここでまたエコですか? と思ったら何やら書き加えてあった。
『英と同じなのがうれしい』
 やめろ、悶絶してしまう。
 解説すると、オムライスの時はやっぱり引け目があった訳だ。俺も何か注文するべきだったんだな。
「ありがとう。じゃあ、風呂に入るか?」
『はい』
 あ、そういえば今日に関しては着替えがないな。明日以降買いに行くとして、さてどうしたものか。
 ――俺の服でも着せておくしかないよなぁ。でもそれってあれな意味でよくあるシチュエーション……。

 風呂上りの草は、俺の寝巻きを上だけスッポリ被っている。まぁブカブカだし下穿くのは身長的に無理なのは分かっていたが、何この目の保養。
 俺も風呂に入り、そして今日は寝ることにする。何かこう、短くまとめるなら「疲れた」。
 何かぼうっとしたまま風呂に入り、それから出てきたら、草はテレビの前で身体を丸くして寝息を立てていた。
 まるで小動物のようだ。何度も言うが、可愛い。
 しかしこのままでは良くないので、そっとその軽い身体をだき抱え、隅のベッドの上へと預ける。
 そして俺はテレビの前のスペースに腰を下ろし、ゆっくりと横になる。
「おやすみ、草」
 さぁ、寝よう。
5836・ラスト:2009/04/25(土) 19:33:22 ID:YxDao1vZ
 ――と思ったら、がさっと音がしてベッドの上の姫が目覚める。
 つかつかとこっちに歩いて来たかと思うと、スケッチブックとペンを拾い上げ、何やら大きく文字を書く。
『一緒にねて』
 頭が痛い。応じるべきなのかそうではないのか――そもそも草が何をどこまで望んでいるのか。
 俺は困った顔をしていたのだろう、草は不満げな表情を露にする。
 あそこまで言ったんだし、仕方ないな――と俺は変なテンションでそれに応じることにした。
 ここまで来て、この夜――平穏には終わらないかもしれない。

 小さなベッドの上に、俺と草が二人。
 俺は仰向けに、草はそれに抱きつくようにして今の体勢を作っている。
 今、何か話し掛けても恐らく答えはくれない。スケッチブックとペンはベッドの下にある。
 ――いらんこと考えないで、早く寝よう。
 しかし草はしがみ付くようにして、俺の肩に胸を密着させる。控えめな二つの膨らみが、心を休ませてくれない。
 胸がバクバクしつつも、何とか目を閉じて眠りに落ちるのを待っていたが、残念なことに草は相応のことを考えていたようだ。
 一旦肩から離れたかと思うと、その華奢な身体は俺の上に四つん這いになってきた――どうなるかは皆目見当が付く。

 彼女からの、長いキス。やり方をよく知らないのか、唇と唇を触れ合わせただけの、簡単なもの。
 理性が飛びそうになったが、その唇が若干、震えていることに気付く。
 ふと草の身体に触れると、ビクッ――と大袈裟にすらある反応が返ってくる。
「……草」
 ゆっくりとその顔を離し、俺は声を出した。
 暗い部屋だが、彼女の表情は何となく見えた。動揺しながらも、決意を滲ませた顔。でも……。
「俺は草のことが好きだ。そう言ったからな。だからどうにかなっても良い。だが、本当にお前はそれで良いのか?」
 大人びているから、どこかでこういう発想になってしまうのかもしれない。
 草は困惑したような表情で、俺を見つめている。
「お前が本当に俺のことが好きだと――思えた時でも遅くはないんじゃないか?」
「……」
 俺はそのまま、草を抱き締めた。包み込むように、じゃないが壊れやすい物を、壊さないように。
 草はただそれを、じっと受け入れていた。瞳に薄っすらと光るものを見せて。

 長い一日は終わり、朝が来た。
 草は俺の隣で気持ち良さそうに寝ている。我ながらよく理性を抑えきれたものだ、と感心する。
 と、同時に本当に好きだからこその自制心……とか格好付けたことを思うが、実際どうなのかまだはっきりしない。
 いずれは身体を重ねる日も来るのだろうが、草が無理をしていると感じた今、その必要はない。
 俺の独断だが、今の草を見る限りそれで良かったのだろう。

 本当に、気が付いたらこんな所まで来てしまっていた。だが、後悔はしない。
 大事なものが何なのか、自分でもそれなりに分かっているつもり。
 それに最初は良い考えが浮かぶまで、俺が預かるとのことだった。が、もう良い考えはとっくにある。
 ……このまま一緒に暮らしていく、ということ。

『おしまい』
584名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 19:39:42 ID:YxDao1vZ
あとがき
書いていて草のシルエットがはっきりしていないことに気付く
一応小5〜中2辺りをイメージしながら書いたんだが、もっと精神年齢低い感じがする
児ポ? そんなの関係ないもんね!
585名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 23:15:39 ID:sHlcns/u
586名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 23:33:07 ID:IQbBU7xB
>>584
GJ!!
でも明らかに児ど……おや?誰か来たようだ
587名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 01:19:12 ID:3bxEid9P
糞っ!サーバーエラーで見れねぇ
588名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 05:02:33 ID:2CxHJCFf
>>584
ブラボー…oh…ブラボー…!

年齢が18歳以上なら大丈夫だ
589名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 21:50:57 ID:Un9Vjw1A
gj!自殺したおじさんは何者か気になるw
590名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 10:26:55 ID:p+Qp1i/q
俺はこういう素性が分からない系の無口娘SSが好きだということが分かってしまった。
続きを待ち続けているあのSSもそういえばそうだな。
591名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 15:21:22 ID:bSb9jsTY
アリスとか彼女の事情とか名前すらはっきりしない娘の作品とかあるよね

ちょっと読みたくなってきた
592名無しさん@ピンキー:2009/04/29(水) 22:31:50 ID:AxIFwxCX
ほし
593名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 16:50:02 ID:PP0s654j
ネコなカノジョの続きをwktkしているのはオレだけなのであろーか
594名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 06:36:41 ID:Tfx9eKqj
心配するな、俺もだ。
595名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 18:03:20 ID:zT7LufMc
そして俺は姫荻さんの話が読みたいスレ違い野郎だ
596名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:19:54 ID:XOsR3qvA
>>595
姫萩……だれ??……kwsk
597名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:31:56 ID:pChnDfbn
保管庫行こうぜ
SS一覧からネコなカノジョの観察日記なんだぜ
598名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:46:08 ID:XOsR3qvA
見てきた、ありがとう!
599名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 00:35:07 ID:V220unKG
保守
600名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 04:32:10 ID:IMEQ0p+Y
保守ついでに電車のつり革に手が届かなくて毎朝主人公の男の子の袖を
掴んでる無口っ子ss誰か知りませんか?保管庫にあった気がしたんだけど…
601名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 04:50:34 ID:QLy336Dk
>>600 それは素直クールスレの作品ではないかと
3の467文庫の無口系素直クール

ところでツンデレ無口娘ってどんな感じなんだろう?
602名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 06:46:00 ID:/HEyJIdO
>>601
……馬鹿
そんな、ことも……できないの?
いい加減に……して
別に、あなたのため、じゃない……けど

orz
603名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 07:21:58 ID:/ZNdKD3d
>>601
寡黙なスケ番とかいけそうじゃね?
604名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 13:02:41 ID:/PtMoQWi
>>601
無口な裏番とか……


違うか……やっぱり
605名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 13:37:38 ID:gwhyhqPa
無言でヨーヨー突き出してカパッ、と。
606名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 13:38:21 ID:gwhyhqPa
スマソ
607名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 16:00:11 ID:DfRkd1Lv
>>601
あ…弁当忘れちまった……腹減ったなぁ……。

ドンッ

何これ?弁当?…ってなんでそんな顔で睨んでんだよ…。

プイッ

なんだよ……あ、ひょっとして…もらっていいの?

…………コクリ…スタスタスタ…

あ…行っちまった。……ん?そういえばこの弁当箱、女の子用の大きさじゃ…
おい、ちょっと待てよ!お前の分の弁当は!?

ダダダダダダ……

おぉぉぉい、なんで逃げんだよぉぉぉぉ!

ダダダダダダダダ……




こうですか?
608名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 17:20:29 ID://jZPX3I
>>601
つVIPの某partスレ
609名無しさん@ピンキー:2009/05/06(水) 17:34:56 ID:I5WlhOL6
>>601
某4コマのツンネコ様とか
610名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 02:17:35 ID:MuiMfU5u
>>601
3の467文庫にありましたサンクス。
611名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 02:47:31 ID:bxh+nZ6/
ツマンネ
612名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 07:10:30 ID:f3soajjs
上げるとこういうのが来るからsageろとあれほど
613名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 07:46:08 ID:h6oEzzP/
無口と猫属性はいい組み合わせだと思う
614名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 14:02:17 ID:dA6A6T5V
無口っ娘の看病物を書くと、どうしても綾波さんになってしまう件
615保守ネタ:2009/05/07(木) 20:37:57 ID:sLu9n28p
無口ドジっ娘の看病という天恵が降りてきたのでへぼいなりに投下してみる。ちなみにエロくないよ?





目が覚めると頭が痛い、というか寝汗が凄いことになっていた
「うー……?」
起き上がり額に触れると濡れ布が……若干絞りが足りなくて滴っている。
と、くいくいと袖がひっぱられた
「…………。」
「あー、静奈か……看病してくれたのか?」
「…………(こくこく)」
隣の静奈が来ていた。こいつは普段まったくといっていい程喋らない。まぁ長い付き合いがあるから意志疎通に難はないのだが……あいにく静奈はドジだった。
どん位ドジかというと……週に一本以上シャーペンを無くし、何もないところで転び……とまぁお約束な感じだ
そんな奴の相手をしているがために俺の尻拭いスキルは家庭的な女子に引けを取らないレベルに達していた

「ありがと……でもな。これ、ちゃんと絞んないとあんま意味ないんだが……」「…………??」
……はぁ、風邪なんざひくもんじゃないな
「まぁいいや。乾いたタオル無いか?汗拭きたいんだが。」
「…………。」
▼静奈はシーツを取り出した!
「……ふぅ、それタオルじゃないから。上から二段目の引き出しに色付いたのが入ってるから。」
「…………。(こくこく)」
静奈は俺限定だが指示を出せばちゃんとできる。
今度はちゃんとしたタオルを出してくれた
「ん、ありがと……ところで、これは?」

汗を拭いながら静奈の隣にある土鍋(らしき黒い物体)について尋ねる。なんだか別な汗が出てきたのは気のせいだろう
616保守ネタ:2009/05/07(木) 20:42:49 ID:sLu9n28p
「…………。(ずいっ)」
静奈は土鍋(らしき物体)の蓋をあけ、俺に差し出した
「あー、もしかして、静奈が作ったのか?」
「(こくこくこくこく)」
力いっぱい頷く、土鍋にはお粥、いや、おじやか……それらしき物体が入っていた。意外といい匂いもする
「わざわざありがとな。茶碗は?」
ちゃんと準備していたらしく、土鍋から茶碗におじや?をよそってくれる。ぎこちない動きについては目を瞑ろう
「まずはその位でいいよ。じゃ、よこして?」
「…………。(こくっ)」
静奈は蓮華でおじやを掬って俺に差し出した
「…………。」
「…………。」
「…………?…………!!(ふぅふぅ!)」
静奈は蓮華に息を吹き掛けて再び俺に差し出した
「いや、自分で食うから……あの、静奈?」
「…………。(じぃっ)」
「静奈さーん?」
「…………。(じぃーっ)」
「マジでコレで食わなきゃダメか?」
「…………。(こくこく!)」
力強く頷きやがった
「はぁ、仕方ない。んじゃ、好きに食わせてくれ」
「…………。(ぱぁっ)」
あぁ、満面の笑みだよ……
というわけで手ずから食わせてもらう
「ん……(むぐむぐ)」
「…………。(わくわくわくわく)」
…………、………、……、…。ふう。
「静奈、食ってみ?」
「……?……。(ぱくっもぐもぐも……)」
あぁ、俺の味覚が変になったわけじゃないようだ
「…………ぐぅ;」
今日最初に聞く静奈の言葉は、悶絶の呻き声だった。
「砂糖と塩間違えてたな……珍しくいい線いってたのに、惜しかったな」
「…………。(うるうる)」
「ま、せっかくだし。最後まで食わせてくれや、な?」
静奈の頭を撫でて食事の続きを促す
「…………!(ぱぁっ)」
こうして甘い食事は和気靄々とした雰囲気で進んだのだった


「……で。」
「…………;(がくがくぶるぶる)」
「コレ、ちゃんと元に戻せな?」
「…………はうぅ;(しぶしぶ)」
大分良くなった俺が台所に行くと
……うん、巧く言葉にできない光景が広がってたんだ。
617名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 01:45:49 ID:Z03PS5DF
GJ!
静奈かわいよ静奈
618名無しさん@ピンキー:2009/05/08(金) 03:58:25 ID:rjev2zPZ
GJ!
甘えんぼうスレ住人でもある俺にとっては、甘いお粥くらいなんともないぜ!
よくある、炭になってたり生米だったりするのに比べれば楽勝だなw
619名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 10:33:54 ID:/1CbuoVT
甘い米粥て北欧の料理であったな・・・
620名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 10:17:11 ID:GbY33FpT
あれは牛乳と砂糖で煮るものでは?<甘いかゆ・・・うま・・・
621名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 10:35:57 ID:bIwVge/o
テケリ・リ
622名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 18:03:10 ID:D/LIBgBo
スジャータさんに弟子入りするといいよ
623名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 23:19:54 ID:wsuxAxtt
オートミールなら煮てから砂糖と牛乳をかける麦粥だと思うが。

イギリスのモントゴメリー将軍は、何もかけないのが好きだったとか。
624名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 00:32:11 ID:iZMn94iF
『臨時ニュースをお伝えします。皆様、落ち着いてお聞きください。あと、1週間ほどで、確実にこの地球に隕石が衝突します』
「……は?」
朝、朝食を食べ切り、テレビを点けた途端、聞こえてきたニュースは、朝、微妙に回転の鈍い頭……。
いや、どんなときだろうと素直に受け入れられるはずがない、とても素っ頓狂なものだった。
『〜の見解によりますと、このサイズの隕石が地球にぶつかった場合、地球上の生物に生き残るすべはなく……』
思わず日付を確認する。残念ながら……エイプリルフールでは無かったようだ。
「いやいやいやいや」
いきなり1週間後に死ぬよ!的なことを言われてもそう素直に頭に入るか。
『残念ながら、これは嘘や、性質の悪いドッキリでもありません。正真正銘の……』
ここで俺はテレビを切った。いやだってさ、こんなこと言われてるんだ。一度学校に行き友人たちとちょーっと話し合うべきだろう?
思えば即行動、ささと通学カバンを手に取り、玄関に行き靴を履いて扉を開けた瞬間……開けた扉の向こうから突撃してきた何かに、俺は家の中に押し戻された。
もちろん、咄嗟のことで受け身など取れるはずもなく、鈍い音をたてて、俺の後頭部と床がご挨拶をした。
無言でぶつけた個所を抑えて悶える。一通り悶えた後、静かに半身起こした俺は、突撃してきたものを確認する。
「……何してる」
ぶつかってきたのは、お隣に住む幼馴染という名の腐れ縁である、少女であった。
彼女は涙眼でこちらを見上げて、首を横に振った後に強く俺にしがみ付いてくる。
「要件は……って、あれか」
どうせあのニュースでパニクって、というのが妥当なとこだろう。ともかく、宥めるように彼女の頭をやさしく撫でる。
このままでは遅刻する、ああ、台風だろうとインフルエンザ大流行だろうと無遅刻無欠席だった俺の記録をここで絶やすわけには……!
ふと、気付けば彼女がこちらをまた見上げていた。その瞳は何か尋ねるような色を含んでいる。
「ん……まぁ、怖くはないな、というか実感が沸かないだけだ」
俺の言葉に、きょとんとした表情になった彼女は、おかしそうに笑み浮かべて小さく笑い声を零す、
「はいはい、鈍くて悪かったな。というかお前が危機感を感じすぎなだけだろう」
今度は頬を膨らまして抗議してくる、とりあえず、答えるのが億劫なので黙らせるために自分から抱きしめる。
少しの間もがく様に体を動かしていた彼女は、直ぐに大人しくなった。
そのまま、ただ時間が過ぎていく。彼女から香るどこか甘い匂いに、朝っぱらからどうにかなりそうなのをこらえて一度彼女を離し、
「ほら、そろそろ学校行くぞ」
思いっきり首を横に振られた。嫌か、そんなに学校行くのが嫌か。
ものすごい勢いで頷かれた。勝手に人の心を読むんじゃない。
「じゃぁ、どうしろと」
訪ねた、すると彼女は一度立ち上がると、玄関の鍵を閉めると、こちらにもたれかかって
「……ずっと、世界が終わるまで、一緒に保守してくれる?」


だれー?この電波送ってきたのだれー?
625名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 02:35:32 ID:Fmbb0IP9
>>624
626名無しさん@ピンキー:2009/05/12(火) 09:19:54 ID:JN5+RgWd
助けて!
エスケープトゥザスカイマン!
627名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 01:23:12 ID:llAgslrX
Sけて〜
……ってこれ滅亡フラグじゃねえか!

しかし、この板でその名前を見る事になるとは思わなかったw
628 :2009/05/16(土) 10:35:51 ID:frmD1wXi
629こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/05/17(日) 01:53:40 ID:p10i9CRo
《無口で甘えん坊な彼女》〜彼女の自己紹介〜

真新しい少し大きめの制服に身を包み、俺達は教室で各々の座席に座っていた。
中には小、中学校からの腐れ縁もいるが他は知らない人だ。
秋葉は大丈夫だろうか?
ちらりと後ろを振り返る。俺に気付いた秋葉は優しく微笑み返してきた。
これなら心配なさそうだ。秋葉は無口なだけで人見知りするタイプではないし。
それに何かあったらすぐに助けてやれるわけでもない。
俺達が付き合っているなんて周りに知られたら冷やかしの対象になってしまうから。
そう時が経たない内に担任が姿を現した。性別は女性、妙齢だが二十代前半だろう。
担任は自分の名前だけ告げると徐に文庫本を取り出した。
「後ろの人から自己紹介してもらおう。えー……よし、結城、お前からだ」
本を開きながら思い出したように自己紹介を促す。なぜか出席番号の後ろから。
「早くしてくれ」
そう言う担任の目は本から離れることはなかった。
俺はひとまず名前と趣味くらい言って次の人へと回す。どうせ一回では覚えきれない。
自己紹介なんてそんなものだ。
軽い気持ちで聞き流しているといよいよ秋葉の番がやって来た。
秋葉は静かに椅子から立ち上がる。
「……桐山秋葉です」
澄んだ声で一言。
不思議と教室は静寂になり皆が次の言葉を待っていた。
「…………」
秋葉は何も言わない。何を言えばいいのか困っているようだった。
「そう緊張するな。自分の趣味や好きなことでも言えばいい」
相変わらず本に視線を向けている担任が面倒くさそうに口を開いた。
「好きな……」
小さく呟いた秋葉が俺を見て微笑んだ。そんな気がした。
「結城雪春が……大好きです」
突然の一言に教室中が今度は俺に向き直った。全員の視線が集まるのを感じる。
しばらくは秘密にしようと思ったのに……秋葉、何てことをしてくれるんだ。
すっきりした表情で席に座る秋葉が恨めしい。
「そうか、桐山と結城はラブラブと。問題ない私は男女交際は大歓迎だ」
この時になって初めて担任は視線を俺達に移し、楽しそうな表情を浮かべた。


「それにしても何度思い出しても笑っちゃうね」
昼休み。俺と秋葉と友人である茜は屋上で昔話をしていた。
茜もあの時教室にいた一人で『自己紹介事件』として言いふらしている。
お陰で俺達は校内で最も有名な二人になってしまった。
「うるさい、茜。それにしても秋葉は何であんなこと言ったんだ?」
630こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/05/17(日) 01:55:14 ID:p10i9CRo
平然と箸を進めていた秋葉は突然の振りについて行けず、ただ首を傾げた。
「だからさ、あの時に何であんなこといったのかなと思って」
目をぱちぱちさせたかと思うと嬉しそうな笑みを浮かべて答えてくれた。
「………好きだから…ダメ?」
この顔は反則だ。ただでさえ俺は秋葉に弱いんだから。
否定することなんて出来ない。
「はいはい、そこまでー。二人の世界に入らない」
パンパンと手を叩き茜が空気を元に戻す。しかし笑いを堪えるのに必死なようだ。
あの事件以来、茜にとって俺達は面白い対象らしく何かと笑われる。こっちはいい迷惑だ。
秋葉も眉を潜めたがすぐに元に戻ると俺の袖をクイクイ引っ張り出した。
俺を見つめるその瞳は何かよからぬことを望んでいるのが読みとれた。
視線を俺の弁当に移し卵焼きの一つを指さす。次に俺の箸を見ると今度は己の唇を指さした。
「まさか……食べさせてほしいとか?」
嬉しそうに頭をコクコクと縦に振り急かすように口を開いた。
ちらりと横を見ると茜がわざとらしく深いため息をついていた。
こうなったらやるしかない。もし断ったらどうなるかわからない。「ほらよ」
雛鳥の餌付けのごとく口に卵焼きを放り込む。
小さいそれを時間をかけてもぐもぐと食べ終えた秋葉は納得したように頷いた。
「……やっぱり雪香さんのは美味しいね」
そんなに美味しいだろうか?この味に慣れてしまっている俺には分からない。
それにここだけの話、秋葉の作る卵焼きもかなりの味だ。
秋葉の料理は俺の母さん仕込みだから当然とも言えるが。
そんなことを思っていると茜の笑い声が耳に入ってきた。
「ほんっと、二人にはかなわないね。私の目の付け所は間違ってなかったわ」
俺達は茜に振り回されっぱなしだ。茜が再建した部活にもいつの間にか入れられてたし。
文化祭の時も……思い出すのはやめよう。
茜によって命名された『文化祭事件』は『自己紹介事件』以上に有名になってしまっている。
「じゃあそろそろ私は行くね。秋葉、教室で待ってる」
そう言い残すと、相変わらず人より少し短いスカートを翻して茜は去っていった。
「やれやれ…茜は出会ってから変わらないな」
「……そこがいいんだよ…それに雪春も」
弁当箱を片づけながらポツリと秋葉が呟いた。秋葉にとって茜は高校で初めての友人だ。
お互いに波長が合うのだろう。
631こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/05/17(日) 01:56:19 ID:p10i9CRo
茜との友人関係、それは秋葉自身も何も変わらないことを示している。
「それにしても…俺もそんなに変わってないか?」
それはそれで少し残念な気がしないでもない。秋葉と出会ってから成長したつもりだ。
しかし秋葉は頭を上下に振った。
「……私の大好きな雪春のまま変わってないよ」
優しく微笑みながら言ってきたそのセリフに何も言い返せない。
とっさに顔を伏せると秋葉が抱きついてきた。
「へへ…大好き」
俺に出来るのはせいぜい頭をなでてやることくらいだった。


思ったより長くなってしまったが保守
632名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 03:35:40 ID:w4kYk7A8
保守にGJなんて言わないんだからねっ!
633名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 10:15:40 ID:MNkboBaR
なんちゅう保守を見せてくれるんじゃ…
634名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 12:30:22 ID:bXdVP5As
ほしゅ
635名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 22:05:48 ID:+EMTaq8M
胸にすりすりしてくる無口っ子が可愛いと思います。
636名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 23:08:38 ID:MAtReEzG
背中合わせで本を読む眼鏡無口娘が大好きだ
637名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 23:25:34 ID:h12W2aVX
胸のすかすかな無口っ娘がだいs
638名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 04:41:09 ID:36lKJlAL
袖をクイクイしてくる無口っ娘がだい(ry
639名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 17:07:25 ID:Y6WonHws
着流しを着こなし爪楊枝をくわえた流しの博徒な無口っ子が、
袖をくいくいとすると袂からダイスが転がり出て、それで
なんでもサイコロ勝負に持ち込むのですね判ります
640名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 17:13:22 ID:pShdmj18
あぐらをかいた膝の上に乗っかってる無口っ娘が大ry
641名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 18:33:19 ID:36lKJlAL
ここは俺がいっぱいいるインターネットですね
642名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 18:33:52 ID:s3q9h7xa
 朝起きると、奈々実が僕の体にしがみついていた
 どうやら怖い夢を見たらしく、どきどきして寝付けなかったようだ
 本人は、手で何度も僕を起こそうとしていたようだけど

 簡単に朝食の支度などをして、部屋に戻ると奈々実は寝入っていた
 可哀想だし、今日は朝寝坊させてあげましょう
 僕は一人でテレビを見ながら、朝食を取っていた

 すると、ばたんとドアが開いて、奈々実が僕の元に駆け寄ってきた
 半ベソを掻いているところを見ると、また怖い夢を見たらしい
 しばらく僕にくっ付いていたが、やがてまたウトウトとし始める

 添い寝してくれと袖を引っ張るので、付き合ってあげることにした
 静かに寝息を立て始める奈々実。僕は隣で小説を読む
 すると、やがて苦しそうにごろごろと寝返りを打ち始めた

「¥&%$#!?」
 突拍子もなく目を覚まし、起き上がる奈々実
 僕は息を荒らげて不安そうにしている彼女を、よしよしと撫でてあげる
 いろいろあるんだな――と、同情してばかりもいられない

 汗もびっしょり。まずはシャワーを浴びてきたらどうかと提案した
 え、一緒に入れ? 怖くて片時も離れたくないのは分かるけど……ね
 そして眠るのは怖い一方目蓋は重いらしく、服さえ上手く脱げずにいる

 仕方なく手伝ってやり、僕も一緒に入ってやることにした
 しかし相変わらずぴったり密着してくるものだから、理性を保つのがきつい
 もっとも奈々実は眠気と戦うのに精一杯で、他に全く気が回っていないようだ

 体を拭いて新しい服を着せてやると、僕も着替えて居間に出る
 相変わらず一緒にいてほしいようで、離れようとしない
 しかし布団を引くと彼女は倒れ込むように埋まり、すぐ眠りに落ちた

 寝た後もずっと手を握ってやっていたが、布団や着替えの洗濯もしたい
 枕元を離れようと手を放すと、すぐにまた奈々実が起きてきた
 今度は本気で泣き出した。僕の胸を貸してやっても、なかなか止まない

 抱き締めてどれほど経ったか知らないけど、静かになった
 するといきなり、奈々実は僕にキスをしてきた。普段よりも強く、そして激しく
 さっきの燻りもあり、スイッチの入った僕はそのまま彼女を押し倒した

 朝から行為に及ぶこと数分を経て、僕の胸の中で奈々実はやっと眠った
 隔てる物なく裸と裸。それでもしっかりと体を寄せ、抱きついたままの彼女
 少しして、一度だけ声が漏れた。どこにも行かないで――と

 寝言? それとも起きた? でも僕の答なんて初めから決まっている
 行かないよ――と答えた。絶対どこにも行かない、大好きだよ奈々実
 彼女は満足そうな表情を浮かべて、今度こそ眠りについた
643名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 21:22:41 ID:ydIJzwA0
無口姉妹コンペ

焼酎の肴に塩VSワインに野菜スティック
クリームたい焼きVSチョコたい焼き
644名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 21:35:32 ID:/YL6UpvT
>>642
ありがとう。萌えた


ここの住人的にナルキッソスのセツミはどうなんだ?

俺はど真ん中ストライクだ
645名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 01:41:58 ID:wXSrBRGj
h保守
646名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 02:30:55 ID:DWHGn6LK
無口っ娘と電波系や不思議ちゃんは非常に相性が良いと思うのだがどうだろう
647名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 09:28:43 ID:77lqIUBB
お目汚し失礼します
下手な妄想乱文を投下させて下さい
6481:2009/05/29(金) 09:31:49 ID:77lqIUBB
 高校一年の一学期終業式。
 僕は麦藁帽なんて被り、アスファルトの道を下校する。
 とても、暑い日だった。
 しかしここは山ばかりの、田舎。道を逸れれば草木と、そして川がある。
 少し涼んで帰ろうか……いや、母さんが待ってる。寄り道はしない。

 家に帰り着いた僕は、居間に向かう。
 ――懐かしい香りがする。
「お帰り、光。お腹空かして帰って来るだろうと思って、たくさん作っておいたからね」
 醤油の甘い匂い――みたらし団子だった。
 台所に母さんが立っていた。

「駄目だよ母さん。ちゃんと寝てないと」
「何かやっていないと、落ち着かないのよ」
 僕の好物を、誰よりも知っている母さん。
 しかし、医者から不治の病――と言われ、普段は床に臥している。
 たまに元気だと、こうして世話を焼いてくれる。

 今は三時半。
 恥ずかしながら、水泳の補習を受けて、帰宅が遅くなった。
 名誉の為に言うと、決して泳げない訳じゃない。授業が嫌でサボり気味だったツケが来た。
 僕はとりあえず、団子を食べる。
 美味しい。無理にせがむのは悪いと思うけど、母さんの作る団子が一番好きだ。

 しかし今日はやけに多かった。一緒に食べても全然減らない。
「作りすぎちゃったかしら」
「とりあえず父さんが帰って来たら、食べさせてあげようよ」
 僕は一通り話をした後、夕飯の買出しに出ることにした。
「行って来ます」

 僕の家は山側に位置している。周囲は農家ばかりだ。
 だから学校に行くにも買い物するにも、町に下りて行く必要がある。
 さっき通ったばかりの道を、僕は自転車で颯爽と飛ばす。
 道端を流れる川は人の手がほとんど加えられていない。
 受ける風がそんな流れも受けてか、気持ち良いくらいに冷たい。

 町に下りるとすぐ、町営のプールがある。
 見ればこの暑さからか、泳ぎに来ている人で溢れていた。
 金網の向こう、水着姿ではしゃぐ女性。不意に頭を過ぎる、今日の光景。
 同じクラスの途ヶ原要の……スクール水着姿。
 僕は密かに、彼女のことが気になっている。

 クラスでは無口だけど優等生で通っている彼女が、何と補習に参加していた。
 無表情で無関心、冷たい印象を受けるのに、気が付けば見惚れてしまう。
 ましてや水着姿なんか見てしまっては、胸の高鳴りがしばらく収まらなかった。
 露出された肌と、細くてもしっかりと分かる体のライン――疚しいのは分かっている。
 けど多分、好きなんだと思う。

 町で買い物を終え、僕は自転車を押して、山道を戻る。
 途中、自転車が一台、道端に止まっていた。
 辺りは草に覆われているが、そこだけ川に下りる小さな道がある。
 子どもの頃は、そこで水遊びをしていた。どうやら誰か遊びに来ているらしい。
 大概暑くなった僕も、少しは涼みたくなって自転車を止めた。

 草を掻き分けて下りて行くと、辺りは開ける。
 木に囲まれている為、明るくはないが、避暑にはもってこいの穴場。
 水の流れる音が、ステレオではっきりと聞こえてくる。
 小さい川だけど、水はきれいで冷たくて、とても心地が良い。
 僕は適当な大きさの石を見つけて座る。
6492:2009/05/29(金) 09:33:28 ID:77lqIUBB
 川の水をぼんやりと眺めていると、じゃぶじゃぶと音がして、誰かが近付いてきた。
「誰?」
 女性の声。何か聞き覚えのあるような、そんな――。
「!」
 そこにいたのは事もあろうに、途ヶ原要。それもさっきと同じ、スクール水着姿。

「え…あ、あ、ごめんっ!」
 僕は思わず謝ってしまった。
 しかし彼女は何も言わず、ただ無表情気味に僕を見つめていた。
 水で濡れた長い髪が、顔にしっとりと張りついている。
 心臓が、爆発しそうなほど色っぽい。

「あなた……誰だっけ?」
 目を細めて首を傾げられ、僕は拍子抜けしてしまった。
「ぼ、僕…同じクラスの、木守光…なんだけど」
「そう…どうでも良い」
 どうでも良い、って――それはちょっと傷付く。

 でも、動揺一つ見せないし、ひょっとして見られていても全く気にしないのかな?
「み、途ヶ原さん」
 返事をせずに、顔だけこちらに向ける。
「その…ここで何をしているんですか?」
 涼んでいたはずが、僕の頭はいつの間にか熱くなっていた。

 彼女は何も言わず、歩いて行った。
 自分一人気まずい空気を感じながらも、目で追う。
 すると小柄な体がゆっくりと水に浸かり、腰まで沈んでいく。
 そして、徐に顔を水に――。
 ばしゃ。

 僕は咄嗟に彼女の元に駆け寄っていた。
 そうだ、補習を受けに来ていた理由だ。見ていて何となく想像が付いていた。
 ――彼女は泳げないんじゃないかと。
 今もばしゃばしゃと音を立て、泳いでいるとももがいているとも分からない。
 僕は思わず手を貸した。

「はっ…はうっ……!」
 彼女が練習の場にしていたここは、深さのある水溜り。
 浴槽程度の広さしかないけど、彼女の体格なら潜る程度は出来る。
「はぁ……ううっ――!」
 突然彼女は僕を睨み付けてきた。

 何も言わず、ただ僕を睨む彼女。
 目が潤んでいるように見えるのは、滴のせい?
 彼女はぷいっと顔を背けると、そのまままた歩いて行く。
「あ、ちょっと――」
 僕は追いかけ、その手を掴んでいた。

「…帰る」
「何か…ごめん。僕――」
 鬱陶しいといった表情ながらも、じっと動かない彼女。
「……」
「……」

 次の言葉すら出ずに二人して、そのままの状態が続いた。
「……は、は」
 彼女に異変。
「は? は…はくちゅっ!」
 彼女が突然、くしゃみをした。またも拍子抜けする僕。
6503:2009/05/29(金) 09:39:22 ID:77lqIUBB
「ふふ…あははは」
 つい笑うと、一層恐い顔で睨まれた。でも、止まらない。
「……はあ、は…ごめん。途ヶ原さん、何か可愛くて」
「!!」
 僕を突き飛ばすようにして、彼女は逃げて行った。

 でも一瞬見せた表情が、脳裏に焼きついてしまった。
 僕の思考はもう、どうにかなっていたらしい。
 高校生同士でこんな所で何やってるんだと、冷静になればそんな考えも出来た。
 でも、いろいろとチャンスなんだ――。
 気持ちが抑えられない。

 彼女は石の影でちょこんと膝を抱えていた。
「途ヶ原さん、見たからにはちゃんと責任取ります」
「!」
 思わず驚いて仰け反る彼女が、小動物のようで愛らしい。
「だから、付き合って下さい」

 顔を真っ赤にして、彼女は俯いている。
 笑ったことで、逆に気が楽になった。全部正直に気持ちを吐き出せそうだ。
「途ヶ原さんのこと、ずっと前から好きでした」
「……」
 こくり、と彼女は頷いた。

 僕らは大きめの石の上に二人で座った。
 彼女は学校帰りに直でここに来たようで、僕が思っていた通り、泳ぎの練習をしていたようだ。
 本当は恥ずかしくて、すぐにでも追い返したかったようだけど、自分の印象が崩れそうで嫌だったらしい。
「でも無理してあんなところ見せるから……」
 また睨まれた。

 彼女は今、体にバスタオルを巻いている。
 だけどそこから覗く細い足が、どこか非日常的で、甘酸っぱい。
「泳ぎ……教えて」
 彼女はゆっくりと、そう言った。
 何だか彼女のことが、段々良く分かってきた気がした。

「今は買い物途中だからね…そうだ、水着取ってくるよ」
 と、立ち上がろうとした僕の腕を、彼女が掴む。
 首を横に振る。小さな手が、ひんやりと冷たい。
 震えていた。目で強く訴えかけられると、身動きが取れなくなった。
「……誰にも言わないで」

 すると何を思ったか、彼女は立ち上がり、背を伸ばして僕に――。
「――!?」
「ん……」
 一瞬だった。何が何だか分からない内に、彼女の唇の感触が、僕のそれに残っていた。
「誰にも言わないで」

 胸が締め付けられるような思いを、僕は何とかしたかった。
 彼女を抱き締めていた。それ以外に、方法は考えつかなかった。
 悶々と思い描いていた光景。それが、こんなにも呆気なく……。
「言わないから」
 すると、彼女も僕の背中に手を回してきた。

 するりとバスタオルが下に落ちる。
 まだ少し濡れた水着が、強く密着してくる。いろいろと、当たっている。
 彼女はもう一度僕にキスをしてきた。今後は舌を入れて。
「んん……ぷは――」
 頭が真っ白というか真っピンクにでもなったかのようだった。
6514:2009/05/29(金) 09:43:29 ID:77lqIUBB
 彼女の手が、僕の服のボタンに手をかける。
「ちょ…な、何を――!?」
 何も言わない。葛藤している間に胸元がはだける。
「う…わ……!?」
 彼女が僕の突起を舐めた。

 体から力が抜けるようだった。
 ちゅ、れろ――と彼女は絶妙な下の動きで、僕を高揚させる。
「……」
 やっと解放したかと思うと、僕を上目遣いに見てくる彼女。
 切ない顔が、僕の思考をぐちゃぐちゃにする。

「…何で、いきなりこんな――」
 残る僅かな理性で、僕は訊いた。
「あなたは…はぁ、私を…好き……私も、あなたが…好きになりたい」
 気付けば彼女は、片手を自分の器に宛がっていた。
 水音とは異なった、湿った音。彼女から漏れる吐息。

 ――駄目だ、ここまでされて逃げるなんて出来ない。
 僕の緊張の糸は切れた。彼女を抱き締め、キスをした。
 何の躊躇も、遠慮も、加減もしない。絡ませる舌が、止まらない。
「ん…んん……!」
 映画のように狂おしく、激しいキスを僕が今、している――。

 キスが終わると彼女は浅い川辺にそっと横になり、両手を僕に向けた。
 飛び込んで来い――まるでそう言っているかのようだった。
 僕は洋服を全部脱ぐと、誘い込まれるようにその上からそっと覆い被さった。
「んっ……」
 さっきよりも強く近く生々しく感じる、彼女の感触。

 僕のモノが彼女の太腿に、そして膨らみへと小突くように当たる。
 熱く今にも暴発しそうなそれを、川の水が気持ち良く冷やしていく。
「途ヶ原さんっ――!」
 次の行動を考える間もなく、僕は彼女の水着に手をかけていた。
 彼女は薄目を潤ませながら、じっと僕を見つめている。

 そっと水着を肩からずらし、そして引き下ろしていく。
 自分のやっていることに罪深さを感じる。けど、手が止まらない。もっと見たい。
 彼女の胸の谷間。小振りだけど、高校生らしい成長具合。
 更に下ろすと、抵抗と共に現れる突起の部分。思わず僕も、舌を伸ばす。
「んあっ――!」

 その声が、僕を更に深みへと連れて行く。
 舌で舐め、吸い、手で触れ、摘み、揉む。
 一つ一つが体を疼かせ、モノを更に更にと硬く大きくさせていく。
 愛撫が終わると、それだけで僕も彼女も、呼吸はかなり激しかった。
 でも、息をつくのすら勿体無い。僕は再び水着を下げる。

 露になっていく肌と、そして下半身。独占したような、誇らしい気持ちになる。
 誰も見たことがない、彼女の水着の中を、僕が見て、触れて、感じることが出来ると。
 そして見るたびに、強くなっていく愛しさ。苦しくて、悶絶しそう。
「はぁっ……はぁっ……」
 水着を足まで脱がし、近くに放り投げる。彼女は完全に生まれたままの姿になった。

 裸と裸で、人目の付かない川の流れに身を置いての行為――。
 そんなのに興奮するとか僕はなんて背徳な性格をしているのだろう。
 でも、誰かに見てほしい訳じゃない。二人だけだから、良い。
 僕は器に自らを挿し込んだ。うっすらと流れていく、血。
 お互いの初めてを、絶対に失敗なんてさせない。
6525:2009/05/29(金) 09:47:27 ID:77lqIUBB
「ああっ…はあっ…あんっ…!」
 こんなきれいな声で喘ぐなんて――僕は思わず腰に力が入る。
 普段とは百八十度違う彼女の姿。髪がまた水に濡れ、普段のふんわりした癖っ毛の可愛らしい雰囲気がない。
 ただ、色っぽくて妖艶で、勿論可愛くもある。
「…好きだ…あっ…!」

「……いくっ!!」
 抑えていたものの限界。全てがぶちまけられた。
「――はあ…あぁぁ……!!」
 僕の体をしっかりと抱いて、溢れ出るものを受け止める彼女。
 夢みたいだった。こんな達成感、生まれて初めて感じた。

「――!!」
 ……おかしいとは思ったんだ。何か上手く行きすぎているし、早すぎる。
 僕はベッドの中にいた。そして下は酷いことになっている。
 でも、リアルな夢だった。まだ胸がどきどきして、動悸が激しい。
 そして凄い罪悪感。何よりも、彼女に対して。

 今日は、終業式の日。
 僕はまた、一日をやり直すはめになってしまった。
 母さんに気付かれないように洗濯し、出かける準備も済んだ。最後に――。
「……母さん、今日はちょっと遅くなるかもしれないから」
 夢の続きに、根拠のない期待をして。

 だけど、一日は夢と同じ流れで経過していった。
 そして、補習。プールサイドに、途ヶ原要の姿があった。
 ――もしかして、予知夢だったのかな……。
 ぼんやりと考えていると、彼女と目が合った。
「……」

 普段の性格からすれば、何の反応もなく終わり。
 だけど、彼女は僕に近付いて来た。
「…訳が…分からない――」
 何を言われるかと思えば、顔だけ一瞥して、すれ違い様に一言だった。
 ――訳が分からないって?

 また同じようにその後は時間が過ぎ、補習も終わって僕はプールを出た。
 彼女を何気なく待ってみたが、結局会えなかった。
 仕方なしに僕はやっぱり麦藁帽を被り、荷物を持って下校した。
 今日はやっぱりとても暑い。
 そして、夢で見たあの場所に通りかかる。

 まだ自転車は止まっていなかった。けど僕は、川に下りて来た。
 そこは夢と全く同じ光景だった――彼女がいないことを除いて。
 僕は昨日のように適当な大きさの石を見つけて、そこに座る。
 川の水をぼんやりと眺める。誰も来ない。
 あの謎めいた言葉は、何を意味していたのだろう?

 しばらくして、がさがさと物音が聞こえた。
 顔を上げてみると、そこにいたのは――途ヶ原要、間違いなく彼女だった。
「途ヶ原さん」
 制服姿の彼女は、黙って僕の元まで来ると、隣の石に座った。
「……あなたも…同じ夢を?」

 僕が頷くと、彼女は顔を赤らめた。
「……嫌になる…」
「でも、夢だよね……」
 そう。それで次の瞬間、話は終わることでもある。
「……仕方ないから…泳ぎ…教えて」
6536:2009/05/29(金) 09:54:24 ID:77lqIUBB
 僕らはそのまま、付き合うことになった。
 勿論すぐに夢であったようなことは愚か、キスすら出来もしない。
 だけど、夏休み中も何度か一緒に練習すると約束した。
 そして泳げるようになったら、プールか海にでも行こう――と。
 接点がまるでなかった相手との、まさかの出来事に僕は舞い上がった。

 彼女は僕について、これまでは何の関心もなかったらしい。それが突然夢に出てきて驚いたようだ。
 だけど、泳げなかったり印象を崩したくなかったりするのは事実らしく、それを知られてしまったことを意識していた。
 僕は弱みを握ったりしない――とは言ったけど、それでも付き合ってと言い出したのは、実は彼女の方。
 どうも夢でのこともあり、付き合うこと自体に抵抗はないらしい。果たして喜んで良いものやら……。
 二人で水着に着替えると、僕は彼女と練習を始めた。

 でも、結局この夢って僕が見せたもの? 僕の願望が――いや、よく分からない。
 けれど、こんな幸せなことはなかった。夢のようにトントン拍子にはいかなくたって、凄く嬉しい。
 そして勇気を出してくれた彼女に、今度は僕が報いていく番だ。
「――今日はこれくらいにしよう。そうだ。ここ、僕の家が近いから寄って行きなよ」
「……良いの…?」

「お帰り、光――まあ、あなたがガールフレンドを連れて来るなんて…いらっしゃい」
「途ヶ原…要です」
 夢とは違う台詞。けれど、やっぱりみたらし団子の香りがする。
 そして、あの夢はやっぱり予知夢だったんだな、と何となく再認識した。
 同じ量だけど、三人で食べるとちょうど良い――。

「――じゃあ、僕はこれで帰るね」
 頷いて、彼女は小さく手を振る。
「……もし…これも夢だったら…」
「その時はまた、あそこで待ってる」
「……うん」


おしまい
654名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 14:07:40 ID:Q+xT6Gro
>>653
GJ。みたらし団子うまそうだな
でも泳いだ後はやっぱり冷たい飲み物がほしいです

ところでラストの「帰るね」は帰りを送ったってことでいいのかな?
655名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 14:33:57 ID:77lqIUBB
>>654
そうです。上手く書けなかった
656名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 14:34:15 ID:s06qn4Vb
>>653
gj
自分も最後の「帰るね」がちょっと理解しづらかったが面白かったぜ
657名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 06:39:39 ID:jiYSpQ40
>>653
GJ
スク水無口娘とはなかなかなものを考えたな
658名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 07:13:59 ID:1etjiieZ
ダウナー系無口少女
659名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 10:00:16 ID:gB6uvIqW
ならば、ハイテンションに世界征服を狙う無口っ娘
660名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 18:45:09 ID:wpxaiVhP
夜の校舎で、人知れず魔を祓う無口少女
661名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 00:04:35 ID:IaZzGWt7
旧校舎に度々現れる無口少女
662名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 08:16:10 ID:KcKIMKZR
無口なマッサージ士
無口なエステティシャン
手から伝わる温もりが素敵
663名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 22:55:51 ID:qoj356xJ
無口っ子が絶叫マシン乗ったらどうなるんだ?
664名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 23:37:30 ID:3LBHvKlO
>>663
がたんごとん(上昇中)
「………」(ドキドキ)
ごぉーーーーー(下降中)
「〜〜〜〜っ!!」(思考停止)

みたいな感じか?
665名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 00:17:21 ID:EVnhSeiZ
「――――――――」
「どうした、虚空を虚ろな瞳で見つめて」
「――っ、―――」
「何? 次のレスが>>666だから、悪魔を召喚しているだと?」
「――、――――。――!」
「最近俺が冷たい気がするから、悪魔に魂を売ってでももう一度振り向かせてみせるだと? …………このばかちーん!!」
「!?」
「俺が冷たくなったんじゃない、気温が暑くなったんだ! 俺汗っかきだからな、今まで通りだとお前が汚れちまう」
「―――! ――――!
「何、良いのか? だったら何も遠慮しなくて良いんだな? ぎゅー!」
「――――ぎゅ♪」
666名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 00:34:04 ID:808eUbaY
「呼ばれてみた…………のに………、お呼びじゃない……の……?」
667名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 08:47:42 ID:y3zcC+8c
保管庫落ちた?
見れないのだが…
668名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 09:33:49 ID:CTkwMSq9
うお、本当だ。なんかあったか?
669保管庫の人:2009/06/03(水) 11:09:59 ID:eW8zjNRo
全く連絡が無い状態からいきなり消されたので、livedoorに連絡を取りました
何がどうなっているのか、こちらもまったく解らないので、暫くお待ち下さい
ご迷惑をおかけしてすみません
670名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 21:51:21 ID:CTkwMSq9
>>669
おつかれさまです
今見てみたら復旧してるみたいですね
原因はわかりませんが
671名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 06:25:57 ID:BWRSvhEr
同居している無口少女(血縁無し)に一日の苦労を労ってもらいたい。
672名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 12:18:27 ID:DwTF27zQ
>>671
じゃあ、ちょっとアレげな引用があるが、俺=>>671
-----------------
「つ・・・つかれたー」
六畳一間の古びたアパートに夜勤から帰宅した俺

言いたかないが、俺はびんぼうだ。

何で貧乏かって?聞くなよ。人間いろいろあるんだよ。
いい大学出て、商社に就職して、適当にリーマン生活して、そんなことを考えてた時期もあったけど、
気がつけば大学1年の夏に引きこもり、そこからすばらしきニート生活。
変な美少女と出会ったり、隣の部屋に後輩が引っ越してきたり、
……まあ、いろいろあったんだよ。

コンビニ弁当を二個ぶら下げてアパートのドアを開けた。
軋む音とともに、暗くカーテンのしまった部屋に朝の光が差す。

「……」
丸太のように重くなった身体をなんとか動かして、
部屋の真ん中に敷かれた布団に倒れこむ俺。

「疲れた〜」

声に出してみると、なおさら疲れる。わかってるのに、つい、な。
床に敷いた布団がもぞもぞ動く。やべ、起こしたかな?

気だるそうに、パジャマ姿の少女が目を覚ました。
布団の中から身を起こして、俺を優しい目でみおろしている。
こいつは、本当に、天使みたいな……悪魔なのか?答えはわからないが。

ふ、と、少女は俺の頭を抱きかかえる。ちょうど膝枕をしてくれるような感じで。

何も言わず、
ぎゅっと。

少女の柔らかい胸とふとももの感触が心地良い。
甘い女の匂いに、俺の全身の力が抜け、睡魔が襲う。そして眠りに落ちる。

俺が眠ったのを確認して、少女は俺にキスをして、一緒の布団にもぐりこみ、また、眠る。

おしまい。
673名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 12:28:18 ID:DwTF27zQ
適当に書いてみたんだけど、なんか違うな。
>>671の期待に添えてなかったらすまない。
674名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 15:31:51 ID:NItGScKa
いっひっひ
675名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 01:28:06 ID:WL5+1VrK
流れをきってなんだが、「幼馴染みは口が悪い」の続編を待ってるのは俺だけか?
676名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 19:44:49 ID:NQBdVpeU
ってか職人様マダー?


まぁ催促したとこでどうにかなる訳じゃないがな!!
677名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 21:45:54 ID:P7WyXcpy
作りかけをだらだら引き延ばしているんだが
せっかくだからキリの良いところまで投下してみることにする

無口っ子とは微妙に違うかもしれないが、気にしないで
678名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 21:46:37 ID:P7WyXcpy
 朝の散歩の時のこと。
 民家のブロック塀の上に、女の子が立っていた。
 彼女は季節違いのコートに、頭にはフードまでしっかりと被っている。
 その割に煽りの体勢から見えるのは、太腿とその先。どうやら下着にコートという奇妙な組み合わせだ。
 そしてフードから僅かに覗く眼で、きょろきょろと辺りを観察している。
 不思議な光景、と眺めていると、目が合った。
 小さな顔と対照的に、丸く大きな目。愛嬌はあるが、視線は鋭い。
 ばっ!
 両手を大きく広げたかと思うと、塀から私の方に向かって、飛び掛かってきた。
 がばっ。

 滑空を受け止めた割に、その衝撃は軽かった。
 女の子の体が、私の胸の中にすっぽりと収まっている。
 私はどうしたのかと尋ねようとしたが、その前に彼女が動いた。
「がうっ!」
「つ、うっ!?」
 肩に噛み付いてきたのだ。私は思わず彼女を跳ね除けようとするが、食い込みが深い。
 それでも、何とか無理矢理引き離した。
「くっ…」
「――おまえ…くう…」
 たどたどしい言葉は明らかに、私を攻撃対象と見なしていた。

 とりあえず私は家まで逃げることにした。
 野良の犬猫ですらここまで凶暴でないというのに、何だって女の子が?
 事情はともかく、この肩の痛みは本気だ。
 走りに走り、家へと辿り着いた。すぐさま中に入り、鍵をかける。
 確認はしなかったが、追いかけられている気配が確かにした。
 どんっ!
 ドアを叩く音。覗き穴を見ると、やはり彼女が立っていた。
 恐ろしい。一体全体何だというのだろうか。
 彼女はドアの前を徘徊し始めた。気になって目を離すことが出来ない。
 と、しばらくするといきなりばったりと倒れてしまった。

 放っておく訳にもいかず、私は女の子を部屋に入れた。
 抱える私に向かって弱々しく唸る彼女から、腹の虫の音が聞こえた。
 空腹なのだろうと思った私は、部屋に彼女を横たえ、台所に立った。
 食パンにバターを塗ってトースターで焼き、その間ベーコンを炒めレタスを洗う。
 子どもの頃使っていたカップに牛乳を注ぎ、同時に自分の分も準備をする。
 予め作っておいたゆで卵をボウルに入れて、食卓に並べた。
 良い匂いに反応したのか、彼女は起き上がる。
「とりあえず、食べなさい」
 その言葉を言い終わらない内に、彼女はサンドに齧りついていた。
 凄い食欲だった。食べようと思っていた自分の分までも、気が付いたらあげていた。

 ばりっ。
 何かと思えば、玉子を殻のまま食べようとしていた。
 私は思わず手を出す。
「これは、こうやって食べるんだよ」
 違和感を感じたのか、女の子はぺっと殻を吐き出し、私を怪訝そうに見た。
 私は殻を剥いてやると、彼女の手に握らせた。
 彼女は玉子と私を見比べて、黙ったままだ。
 私はボウルから新しい玉子を取ると、同じように剥いて、そして食べて見せた。
 彼女は真似をするようにして、恐る恐る口に入れる。
 ぱくっ。
679名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 21:48:02 ID:P7WyXcpy
 美味しそうに食べた。
 そして牛乳のカップに手をかけるが――。
 がちゃっ。
 今度はひっくり返された。
 コートと畳がびちゃびちゃになり、私は慌ててタオルを持って来る。
 周りを拭いてあげる私を、女の子は呆然と見つめている。
 もう一度やり直し。
「よく見ているんだよ?」
 私はコップに注いだ牛乳を、ゆっくりと飲んで見せた。
「やってごらん」

 やはり女の子は真似をするようにして、牛乳を飲んだ。
 手つきが危なっかしいので、手伝ってはあげたが。
 とりあえず、これで食事は終了。敵意を向けてくることもないだろう。
 しかし、コートが汚れてしまった。私の不注意とはいえ、果たして脱がせて良いものだろうか?
 そんなことを考えていると、彼女は立ち上がった。
 そして私の周囲を二度三度、子どものようにくるくると回ると、玄関の方へと走って行った。
 後を追うと、そこで立ち止まっていた。ドアの開け方が分からないらしい。
「外に出たい?」
 彼女は不安げな表情で私を見た。
「コート、良かったら洗濯しようか?」

 日本語が通じていないのか、女の子はただじっと私を見つめている。
 ならば、どうやって意思を伝えれば良いのだろうか。
 それにはまず、彼女を引き止めなくてはならない。
 その場から動かない彼女を、安心させる方法――私なりに考えた。
「おいで」
 中腰になり、手を広げた。気持ちを穏やかに、まるで子どもを――愛しいものを迎えるように、見つめる。
 しばらく私の様子を見ていた彼女だったが、やがてゆっくりと近付いて来た。
 私は彼女の体を、体で受け止めた。やはり胸の中に収まるその体は、小さい。
「良い子だ」
 そしてしっかりと、包み込む。

 硬直していた女の子の体が、段々と柔らかくなる。
 腕を緩めると、彼女は手をそっと、私の肩に置いてきた。
 噛まれた痛みが残っており、思わず顔を引きつらせてしまう。
 神妙な面持ちでその様子を見ていた彼女は、しばらく考えて口を開いた。
「……よ、く? みて、いる…だよ?」
 先程の私の台詞を、真似しているようだ。そして、彼女はフードを取った。
 髪はショートヘアでややぼさぼさ。だが少女らしい、愛らしい顔だ。
 彼女は両手でコートの裾を持つと、それを捲し上げる。
 下着を、腰を、腹を、そして覆う物のない胸までも、平然と露出する。
 そう、上からコートを脱ごうとしていた。

 女の子はそのまま体を捩ってコートから顔を、そして袖から手を引き抜く。
 ばさっ。
 裏返ったコートが下に落ちる。下着一枚姿を、私に晒す彼女。
 彼女は幼い胸元に、ぺたりと手を置く。
「や…て、ごら…ん?」
 上着を脱げ――と、そう言いたいのだろうか。
 私は黙ってそれに従った。
「……これで、良いかい?」
 彼女は私の体に近付くと、肩にそっと顔を寄せた。
 ぺろ。
680名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 21:50:02 ID:P7WyXcpy
「――っ!?」
 思わず身震いしてしまった。
 女の子が肩の噛み痕を舐めてきたのだ。
 私の反応に彼女は少し驚いたが、すぐに再び――まるで犬か猫のように、傷を舐め始めた。
 ぺろ…ぺろ。
 止めることなく、私はされるがままだった。
 動物的に考えると、恐らく彼女は私を認めてくれたのだろう。
 それが僅かに染みるような痛みと、こそばゆさと共に、妙に嬉しかった。
「ありがとう」
 私はそう言って、舐めてあげることは出来ないが、代わりに頭を撫でた。

「――おまえ、すき」
 女の子は、今度は私に頬擦りをしてきた。
「よしよし」
 私はただ、撫でてやる以外に何も考えられなかった。
 彼女は私の体から離れようとしない。甘えるように擦りついてくる。
 だが、このままでは身動きが取れない。どうしたものか――。
 私は彼女の体を抱き上げた。
「?」
 それはある意味で、使い古された陳腐な台詞かもしれない。
「コートが乾くまで、ここにいなさい」


とりあえず以上です
681名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 22:28:59 ID:WL5+1VrK
乙!!
682名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 23:46:55 ID:OcwC7GEY
野生児とは新しい
683名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 21:43:06 ID:JCLWlFeF
続き期待
684ふみお ◆dP9C8cY6Kw :2009/06/09(火) 12:57:08 ID:YUoEvwIp
突然、スミマセン。
以前投下させていただいた、ふみおというものです。

至急、まとめサイトの管理人さんと連絡を取りたいのですが
誰かメールアドレスなど知っていらっしゃいませんでしょうか。
教えていただけると大変助かります。

身勝手かつ無礼な行いであることは重々承知しておりますが、
何卒、よろしくお願いいたします。
685保管庫の人:2009/06/10(水) 11:04:41 ID:IwUtRWzq
n18_168 livedoor.com(空白に@マークをお願いします)がアドになっています。
686名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 22:46:19 ID:nuTT5oER
687名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 02:58:38 ID:h8koPGJ7
野生の子その2を投下してみます
容量足りるだろうか……とりあえず、見事にだらだら長引いています
688名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 03:00:21 ID:h8koPGJ7
 私はコートを洗濯し、ベランダに干した。
「くしゅんっ!」
 女の子はどうやら寒がりらしい。私はタオルケットを貸した。
 だが、私が動くと絶えずくっ付いてくるので、すぐに脱げてしまう。
 仕方がないので少しの間、二人で大人しくしていることにした。
 彼女は私の伸ばした膝を枕にし、気持ち良さそうに目を細めている。
 名前を尋ねようかと、ふと思った。
「……」
 やめておこう。コートが乾くまでのこと。無粋だ。
 しばらくして、インターホンが鳴った。応援の到着だ。

「お早う、山県」
 そう言って合鍵で入って来た、一人の女性。
 彼女の名前は篠原凪子。私の幼馴染で、腐れ縁とでも言うべき仲だ。
 容姿に秀でている訳でもなければ、取り立てて頭が良い訳でも、運動神経万能という訳でもない。
 ただ、非常に理解力がある。つまり物分かりが良い。おまけに心が広い。
「可愛い子だね。随分と懐いているようじゃないか」
 事情を話したとはいえ、普通は連れ込みか何かかと誤解されてもおかしくない。
 だが、落ち着いた様子で篠原は紙袋を下に置いた。
「女児用の衣類を、一通り持って来たよ。服はお古ですまないが」
 そして、何でも話せる間柄なのが、篠原のもう一つの長所であり短所でもある、世話焼きを高じさせている。

「構わないよ。休日の朝から、こちらこそすまないくらいだ」
 それを聞いて篠原は笑う。
 一方、女の子の方は何やら私の体を庇うようにして相手を睨んでいた。
「じゃあ荷物だけ置いて私は退散するとしようか」
「気にしなくて良い。私も最初は獲物にされかけた口だ」
 だが篠原は肩を竦め、溜息をつく。
「君という奴は、昔も今も色恋沙汰にはてんで疎い」
「……なるほど、妬いていると」
 最近は私も随分物分かりが良くなった。
「私が? それも悪くないね」

 率直な意味で返したのだが、篠原はどうやら皮肉と受け取ったらしい。
「はは、冗談だよ」
 それなら良い、とも言っていられない。
「うう……!」
 突然現れた女と目の前で、仲睦まじそうに語られては立場がないのは確か。
 彼女は私の方にも非難の視線を向けてくる。
 暴れられても困るので、私は彼女を引っ掴むと胸元に抱き寄せる。
「篠原」
「少し、からかってみた。心配しなくても、面倒はちゃんと見てあげるよ」
 そう言って、自分の眼鏡を外す。ああ、どうやらやる気充分らしい。

「しかし、本当に裸だね。見る人が見れば通報ものだ」
 私が女の子を押さえている間に、篠原は紙袋から服を出す。
「信用しているから君を呼んだ」
「ありがとう。…さて、本題から入るが、これからどうするんだ? 君のことだから、用が済んだらきっぱり別れる?」
 腕の中の彼女は大人しいが、よく見ると拗ねたような表情でそっぽを向いていた。
 私は怒りを宥めようと、若干髪の逆立った髪を撫でてやる。
「――いや、言わなくて良い。だが、自分の判断に後悔だけはするなよ」
 そう言うと、私の腕から彼女を抱き上げた。
 僅かな重みだが、他へと移ることで覚えたのは、確かな喪失感だった。
 理解していたが、情は移るものだ。
689名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 03:01:16 ID:h8koPGJ7
 女の子は篠原に噛み付かんばかりの形相だった。
 が、その腕に包まれると、波が引くように大人しくなった。
「いいこいいこ」
 子どもを抱く母親のようだった。
「よいしょ…じゃ、これに着替えようか」
 しかし下に降ろすと、空気が再びピリピリとし始める。
「ううう……」
「…とりあえず、敵でないと認めてもらえたら結構だよ。ほら」
 篠原は彼女に服を着せる。抵抗こそしないが、嬉しそうとはとても言えない。
 そんなことを思っている間に、ごく一般的な格好をした少女が出来上がった。

 Tシャツとデニムのミニスカート。サイズはちょうど良いようだ。
「どうだ? 似合うか?」
 女の子の肩に手を置き、体を向ける。
「とても」
 篠原が手を離すと、彼女は脇目も振らず、私に抱きついてきた。
「やうっ!」
 彼女が肩を噛んできた。痛くはない。服の上から、じゃれに近い甘噛み。
「本当に、君のことが好きみたいだね」
 恐らくそうなのだろう。私が私のやりたいようにした――その因果応報ということだ。
「山県のそんなに嬉しそうな顔、久しぶりに見たよ」

「嬉しい……」
 そうなのか? こうしていることが、私にとって――。
「うれ…しい?」
 女の子の一言が、私の思考を中断する。
 彼女は言葉を理解していないように見えて、実は理解している気がしてならない。
「――ああ、嬉しいよ」
 彼女は安心したように、また頬擦りをしてくる。
「……」
「篠原?」
「ん? あぁ、すまん。何かボーっとしていた」

「そうだ山県、その子の名前は何なんだ?」
「……」
 私の意思を、今ここで言ってしまって良いのだろうか。
 一時のことと割り切っている。だから名前なんて、訊く気も付ける気もない――と。
「……君は昔から変わらないな。そうやって、いつも自分が傷付かないように、予防線を張る」
 つくづく、嘘がつけない相手と言える。図星だった。
 それが最も無難な選択であり、すべきである選択だが……。
「例え少しの付き合いだとしても、確かな絆があるんじゃないのか? 少なくとも私にはそう見える」
「……」
「どんな判断を下すにしても、私が力になる。安心して君は、その時まで過ごせば良い」

 女の子には、やはり名前がなかった。
 名前は、紫陽花に決めた。今は亡き母が好んだ花の名。
「あ…じ、さい?」
「そう、紫陽花」
「おまえ…は? やま…がた?」
「そう、山県完」
「やま、がた…たも、つ?」
「完で良い。そして彼女が篠原凪子」
「しの…はら…なぎ、こ…? たもつ…なぎこ…」
 何度か復唱している内に、彼女は名前を覚えた。
690名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 03:05:49 ID:h8koPGJ7
「あり、がと…?」
 紫陽花はいつ覚えたのか、感謝の言葉を口にした。
「どういたしまして」
 そう言って、髪を撫でてあげた。これが何故か、一番しっくりくる。
「君は頭を撫でてもらうのが好きだな」
 篠原が言った。
 私の膝に乗り、胸に寄りかかるようにして、それを気持ち良さそうに受ける彼女。
「山県、君はもしかして、紫陽花を女の子として見ていないんじゃないか?」
「? 意味が分からないのだが」
「はは、まぁ良いよ。それは後のお楽しみということにしよう」

 篠原はたまにこういう訳の分からないことを言い出す。
「先はぼんやりとしていたし、熱でもあるのでは?」
 そう言って、隣に座る篠原の額に手を当てた。
「やーっ!」
 紫陽花が私の服を掴んで抗議の眼差しを向ける。
「そういう君こそ、らしくないな。ほら、紫陽花が嫉妬しているよ?」
 嫉妬……そう、彼女は女だ。そして私は男。
「……」
 考え過ぎか。このままで、何も問題はないはず。
 もう一度篠原の顔を見ると、口元が僅かだが、笑っていた。

 私たちはそのまま半日近く過ごした。
 紫陽花に言葉を教えたり、遊んだり
 そして彼女は寝てしまった。私の手を握ったまま、すやすやと。
「おや、そろそろ正午だ。昼は私が作ろうか」
 そうしてもらえると助かった。よく考えたら、朝からろくに食べていない。
 篠原は台所に行くと、これまでもしばしば世話になったその腕を、存分に振るってくれた。
 私よりも遥かに手際の良い動きで、見る見る内に昼食が出来上がる。
「美味しい?」
「おい…しい?」
 即席ラタトゥイユらしい。発想からしてまるで真似出来ない。そんな材料どこにあったのかがまず疑問だ。

「おい、し…かた?」
 紫陽花の食欲は旺盛だったが、スプーンやフォークの使い方を教えれば、その通りに真似をした。
 覚えがとても早い。どんな知識でも貪欲に吸収し、そして順応していく。
 篠原は、ややソースで汚れた彼女の口元を、ナプキンで拭いてやっている。
 見ていると、まるで母子のようだと錯覚を起こしてしまう。
「ご馳走様でした。美味しかった」
「おいしか…た!」
 私の言葉を笑顔で復唱する彼女に、堪らず笑ってしまった。
 漠然と先を見据えているよりも、気持ちは楽だった。
 こんなに安心感で満ち足りたのは、篠原が言ったように、久々だ。


独り言:今、紫陽花の季節だっけ
691名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 03:12:09 ID:h8koPGJ7
あ、途中で書き込んじゃった
以上です
692名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 18:19:23 ID:BATnbUIB
男と女の台詞の区別が結構わかりにくい...
693名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 07:00:14 ID:9VRTI+7P
非常に可愛くて良いんだが……無口っ子かなぁ?
694名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 01:15:37 ID:N5ZiLxEV
無口っ娘は疲れる
きちんと話してくれないと先生質問に答えられないぞ、そこがいいんだけどな
塾講師のバイトは楽しいのう
695名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 01:26:54 ID:6sYapEj+
>>694
ヘトヘトになって帰ろうと思った塾講師の先生を
無口っ子が塾の裏口で待ち伏せてるんですね

アパートにつれてく訳にも行かないのでファミレスに連れてって
小一時間かけて話を聞きだすと「母親の再婚相手に暴力を振るわれてる」
「母親はDVに耐えかねて自分を置いて逃げていってしまった」
「あの父親と二人きりだとえっちなことをされそうになるのでこわい」

と、言葉すくなに言って来る訳で

眼鏡の奥の奇麗な瞳のふちに涙を湛えながら
「・・・たすけて」
と声にならない声で言われてしまった>>694の行動やいかに
696名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 23:38:00 ID:N5ZiLxEV
>>695
そんな家庭が子ども塾に行かせるかw
まー授業終わったあとに来ることは多いのは事実、あと喋る内容がヘビーなのも事実w学校でいじめられてるとかな。無口な子はいい子すぎて、同世代の子には受けが悪いんだと思うが、俺に言われてものう
697名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 00:54:50 ID:pwz9h78E
私のクラスに無口っ娘がいる
ほんとに何にも喋らなくて友達もいないみたい
休み時間はいつも本読んでる
こないだ体育の時間にペアでバレーボールをしたんだけど微笑むくらいの笑いはしてた
悪い子じゃないんだ
いい子だと思うんだけどな・・・
698名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 03:20:25 ID:iu6ytLP9
>>697
何だかミステリアスで良いなあ

外出先で「野生の子」一応書き上げたんだが、やっぱりこれスレチだよな
容量も微妙だし、どうしよう
699名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 08:58:05 ID:RvTx+hVo
スレ違いで別のスレに投下するなら、そのスレの名前を教えて貰えれば読みに行きまっせ。
このスレで、って事ならアプロダにUPできるようになってからとかもありかと。
700名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 22:25:29 ID:rYqL6z5c
>>698
こんなのがあるぜ
【うpろだ】専用スレのないSS その2【代わり】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1240477403/
701698:2009/06/19(金) 06:28:37 ID:Nsqinal6
>>700
そちらのスレに投下させていただきました
702名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 19:27:35 ID:u7QR0xKN
残り少ない
703名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 13:51:11 ID:CpTytv27
一緒の時間を
704名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 17:58:00 ID:jCMk++SH
君といつまでも
705名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 19:26:06 ID:U69YRj8B
そしてどこまでも
706名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 20:31:00 ID:xxrXKx6d
言葉なんてなくても、キミといるこの時間はかけがえのないものだから
707名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 22:22:58 ID:aYZPqjVc
ゲホッ
708名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 23:18:57 ID:PMcQx32U
……大丈夫、心配かけてごめん。
709名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 02:00:33 ID:ZIcbnyiU
だから
710名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 08:24:47 ID:0Al+dULm
一緒に……逝きましょう
711名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 08:38:25 ID:QKUucbyH
そう言って、彼女は悪戯っ気を感じる笑みを見せて、小さく舌を出す。
それは、どこか今にも消えてしまいそうな儚い物で――僕は、彼女が言葉を言い切る前に、思わず抱き締めた。目の前で消えていかれないように。
いきなりの事で慌てたのか、腕の中でもがいている彼女の動きを止めるように更に強く抱き締める。

「全く……それは先の話だ先の。とりあえずジジババまでいきたいよなぁ」

苦笑混じりに答える、まさかちゃんとした返答が来るとは思って無かったのか、少し驚いたような気配が伝わってきて

「――ありがとう」

小さく、しかしはっきりとした嬉しそうな声で。そして彼女もおずおずとこちらの背中に手を回して抱き締めてくる。
静けさが部屋を包む、心地よい静けさだが、何か勿体無い。
ふと、窓の外を見ればはとてもいい天気だ。それを見てふいに思う。

「……治ったら、一緒に海とか行ってみない?」
「……うん」

短い肯定の返事、多分――叶わない約束が結ばれる。
――ああ、神様、もし居るのなら願いを聞いてください。
別に何かを信仰している訳でもない自分が頼むのは都合のいいことかもしれません。けどお願いします。
もっと、もっと、この腕の中にいる彼女と一緒に居るために時間をください。彼女にも――僕にも
712名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 14:08:39 ID:b5LgxkVa
なんという連携
濡れた
713名無しさん@ピンキー:2009/06/23(火) 22:21:43 ID:jNOxKhrX
なみだで?もしや,こk(ry
714名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 21:00:55 ID:ddRY1P/9
・・・
715名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 21:37:22 ID:fM7i5Oln
てす
716名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 00:29:02 ID:Ok/1UCH3
>>714何が不満なの?口にだしていってごらん
717名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 11:41:46 ID:HVCl0me+
一瞬、「ナルキッソス」を思い浮かべた
718名無しさん@ピンキー:2009/06/27(土) 14:40:35 ID:LfXPARj2
>>710でヴァルキリープロファイル思い出した
719名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 01:12:00 ID:5C7qMQH6
テレパシー系無口っ子
720埋めネタ:2009/06/28(日) 12:27:32 ID:xH0wTH73
ジィ……
「ホレ」
無言の要求に屈し、木のヘラに一口ぶん掬ったアイスを差し出す
パクっ
ム〜〜〜〜……
「一味足りない?
人の分、ねだっておいて贅沢ぬかすな」
ジィ……
「……」
ジィィ……
「……」
ジィィィィィ…………
「ああ!もう
わかったよ」
バクっ
一口掬ったアイスを、今度は自分の口に含む
ンッ
目顔で促すと彼女は、アゴを少しあげた姿勢で目を閉じた
チゥゥゥ……
照れくささをこらえながら、口移し
冷たいアイスと交換に、熱い舌をたっぷり味わせてもらった
721海にて。:2009/06/28(日) 19:21:14 ID:mKUml1hI
男「バナナボート乗ろう、バナナボート!」
女「?」
男「バナナボート知らない? 長い棒状のバルーンに、並んでまたがって乗るんだ」
女「(なにやらほんわかとした表情をしたあと、頷く)」
男「よし決まり!」

男「それじゃ願いします」
スタッフ「はい、じゃあしっかり掴まっててくださいねー」
女「………?!」
男「あれ? どうしたの?」
女「(必死に、バナナボートとロープで結んだジェットスキーを指差す)」
男「うん、あれで引っ張ってもらうんだけど……言わなかったっけ?」
女「(涙目で何度も頷く)」
スタッフ「じゃあ、行きますねー!」
女「〜〜!!」
男「いやっほーーー!!」
女「〜〜〜〜〜〜っ!!(涙目で必死にハンドルにしがみついてる)」
男「楽しいねー!!」
女「〜〜〜〜〜っ!!(返事も出来ない)」
男「あれ? もしかして怖い?」
女「!!(必死に何度も頷く)」
男「大丈夫だって、そのためにライフジャケットも付けてるんだし」
女「(必死に首を横に振る)」
男「仕方ないなぁ……(イタズラっぽく)どうしてもつらかったら、スタッフさんに向けて両手を挙げて
  降参ポーズをすると止めてもらえるよ?」
女「(すかさずハンドルを離して両手を挙げる)」
男「なーんて……え?」
女「?!」

   ばしゃーーーーーーーん!

………
……


男「あー、ゴメンねぇ、本気にするとは思わなかったというか(苦笑)」
女「………………………(えぐえぐ)」
男「悪かったって、二人で海にこられたから、ついはしゃぎすぎちゃったよ」
女「………………………(えぐえぐ)」
男「本当にゴメン、お願いだから機嫌直してよー?」
女「………………………」
男「ほら、せっかく二人で海に来たんだし、いろいろ楽しい思い出を作りたいんだ」
女「………………………」
男「今度はそっちの好きなことに付き合うよ。なんでもするから、機嫌直して、何でも言ってよ、ね?」
女「………………………ない」
男「え? なに?」
女「……もう、絶対離さないから……(男の袖をぎゅっと握る)」
722名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 20:21:06 ID:NvpgRtG+
>>721
えぐえぐに萌えた
723名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 20:23:52 ID:JTaC9PHi
簡単に騙されるところに萌えた
724名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 23:56:54 ID:GkosZKEA
可愛い
725名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 05:52:31 ID:1CWVet7e
>>721 はあああああああん

ところで男も女も無口って小説なかったよね?さすがに難しいか・・・
726名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 21:50:46 ID:3b4ilcv9
保管庫になかった?
727名無しさん@ピンキー:2009/07/04(土) 01:55:55 ID:KDnaPTJn
>>726
ざっと見たら小ネタならあった。
728名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 15:51:01 ID:qwM5jDfg
るくるくとかも無口だな
729名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 18:54:37 ID:4Y5YBbqx
最初は無口で何考えてるのかもわからないんだけど
主人公に惚れて色ボケ的な発言かましていくうちに
段々自己表現が増え、主人公も理解できるようになり・・・

あれ、これって昔のガンダムにあったな

730名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 20:08:14 ID:uFoOHTTZ
強面で無口だけど、可愛い物の前では頬が緩む
それを見られちゃって顔が赤くなっちゃったり
731名無しさん@ピンキー:2009/07/10(金) 00:26:14 ID:UVD53f6w
さっき初めてこのスレに来て保管庫読み漁ったけど良作ばっかりだな。
ところで保管庫の作品の更新が滞ってるのは何か意味があるのか?
このスレのことはよくわからないんだが
732名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 00:44:19 ID:9u48Vrfv
このスレのヒト
みんなダイスキ♥
733名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 12:41:47 ID:P7NIS4Iu
>>732を見て、日本語が難しくて誰とも喋れない留学生の女の子も良いと思った。
734名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 15:35:21 ID:gDgHFgKS
>>733
それ!イィ!!
735名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 20:41:16 ID:aG3Z7qxI
>>732おめー無口っ娘っじゃねーな。

何ッ!?


敵かッ!敵かッ!バキッドガッ
736名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 22:49:25 ID:fj/BTjuc
>>729
ティファのことか
737名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 03:28:21 ID:TsNVfbjl
上山道郎のゾイドにも
そんな感じの子がいたな
738名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 08:59:21 ID:3NSQR+IW
>>737
フィーネだったか?
739名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 17:57:22 ID:Is5K86UD
長門かわいいよ長門
740黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 18:46:01 ID:wr+Ezf7r
お久しぶりです。
9レスほど頂きます。エロは寸止め。
741黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 18:47:45 ID:wr+Ezf7r
この所、仕事の帰りが早い。
今までは2、3時間の残業は当たり前だったが、最近は効率を上げ、業務時間中に仕事を終わらせるようにしている。
女でも出来たか、などと同僚に揶揄されてしまった。
女。
成る程そうかもしれない。
確かに女性であるにはある。
俺は苦笑しながら、窓から電灯の光が漏れているのを確認して、我が家のドアノブを捻った。
「ただいま」
「あ、……おかえりなさい」
フライパンと菜箸を操りながら、ツーピースの部屋着にエプロン姿で、ショートカットの少女が俺の方に笑顔を向ける。
「夕飯まだなんだが、俺の分も用意できるか」
頷く少女。
最初からその心算だったのだろう、皿は二人分用意してある。
まるで新婚の夫婦のようなやり取り。
相手は中高生くらいの外見で、厳密では人間ですらないと言う奇妙な状況ではあるが。
「デザートを買ってきた。食後に食おう」
俺はネクタイを解きながら、持参したビニル袋をテーブルの上に置いた。
中からまだ温かい紙の包みを取り出す。
「?」
「胡麻団子だ。屋台で売っていた。
まだ早いが、冷めない内に一つ食うか?」
火を扱っている最中の彼女は手を離せない。
一つ摘み上げ、少女の口元に運んでやる。
彼女は暫し躊躇っていたが、おずおずと口を開いた。
咥内に団子を放り込む。
そのまま口を閉じ、ゆっくりと咀嚼する、その度に彼女の表情に変化が生じた。
まずその熱さに驚き、目に涙を浮かべながら、口を開けるのを耐える。
やがて熱さに慣れると、餡の甘さに目を見開き、胡麻の香りに目を細め、それら全ての味に目を輝かせた。
見ていて飽きない。
「どうだ?」
口を片手で抑えたまま、ぱたぱたと身振り手振りで感想を伝えようと慌てる彼女を止め、俺は紙の包みを元に戻した。
「残りは食後。先ずは飯だ」
うがいと着替えを済ませ台所に戻ると、既にテーブルには出来上がった料理が配膳されていた。
炊き立ての白飯に浅漬け、麻婆豆腐と筑前煮に隠元の胡麻和え。
俺は椅子に座ると、少女も席に着くのを待って手を合わせた。
742黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 18:49:03 ID:wr+Ezf7r
「頂きます」
「いただきます」
俺はまず筑前煮から頂くことにした。
里芋を一口齧る。
旨い、昆布出汁が芯まで染みていて、火の通り具合も程よい。
若干塩味が薄い気がしたが、許容範囲だろう。
ふと顔を上げると、少女が何かを期待するような目でこちらを伺っていた
「美味しい」
素直に感想を伝えると、少女の顔がぱっと輝いた。
彼女も麻婆豆腐のレンゲに口をつけるが、すぐに目をしかめて口を離し、慎重に息を吹きかけ始める。
猫舌なのに、冷めにくい料理を作るからだ。
だがそれは俺の好みに合わせた結果であり、なんだか申し訳ない気分になった。
「お前も随分料理が上手くなった。最初の頃は塩と小麦粉間違えてたってのに」
返って来る、はにかんだような笑顔。
見ていると、何だか毛恥ずかしくなる。
俺はとっさに別の話題を探した。
「今日も探してたのか、飼い主」
途端に残念そうな顔になり、少女は頷く。
その様子だと、今日も見付からなかったようだ。
残念なような、ほっとしたような、複雑な気分にさせられる。
もし見付かったなら、俺は彼女がどうすることを望んでいるのだろうか。

彼女がここに住み着いてから、大体1ヶ月が経つ。
急に始まった同居生活も、大分落ち着いて来た。
彼女は大分変わったと思う。
傷も癒え、臆病ながらも多少は行動的になった。
家事を色々とこなすようになった。
よく笑うようになった。
ただ、その笑顔にも時折拭いがたい影がさしている。
住民登録していない、戸籍も無い、俺意外に知る人もいない、存在しないはずの人間。
先行きの見えない不安。見知らぬ世界に一人放り投げられる孤独。
そもそも、彼女は人間ですらない。
そして、本来の家族の行方は、杳として知れない。
743黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 18:51:09 ID:wr+Ezf7r

「スズキミチ、か……」
それが、引越しの際はぐれてしまった"彼女"の飼い主の名前。
俺は流しで食器を洗っている少女を眺めながら、シンプルな黒皮の首輪をもてあそんだ。
判っているのは、この名前の人物が小学生の女の子で、その家族と共に、約1ヶ月前このH県Y市に越してきているであろうと言うことのみ。
30万を超える人口の中から、かの人物を探し出すのは至難だろう。
興信所に頼むのが一番手っ取り早いが、事情をどう説明すれば良いか判らない。
プライバシー保護に煩い昨今、あいまいな理由だけでは人探しを頼まれてくれないだろう。
他に手が無いわけでもないが……。
溜息を吐いて、首輪をテーブルに置く。
顔を上げると、洗い物を終えた少女が、冷蔵庫の前で思案顔をしていた。
「どうした?」
彼女はぱたぱたと俺の方へ近寄ってから、ゆっくりと口を開いた。
「えと……牛乳、が」
「切れてたか?」
少女は首を縦に振り、買い物かごを手に掲げた。
買い物に行って来ると言うことだろう。
「今からか? 女の夜道は危険だ。
俺が買ってくる」
少女は首を振って俺を押しとどめ、エプロンを外すと、上着を羽織って靴に履き替える。
直後、少女の体が青白い炎に包まれ、数秒後に黒い犬が炎の中から姿を現した。
彼女の"変化"はもう何度も目にしているが、未だに信じ難く、不可思議であり、理解不能だった。
「毎度の事ながら心臓に悪いな……。質量保存則とかはどうなっているんだ」
首を傾げる彼女の前に買い物かごを置いてから、その首に首輪をつけてやる。
「何でもない。
スーパーに入る前には人間になるんだろうが、人目に付かないよう気をつけろ。
"手袋を買いに"の二の舞は御免だ。
財布は持ったな?」
鍵を外し扉を開けてやると、かごを咥えた黒いフラットコーテッドレトリーバーは、隙間を抜けて夜の街へと消えていった。
744黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 18:53:13 ID:wr+Ezf7r

30分もしない内に、インターホンが鳴り、俺は鍵を外して少女を出迎えた。
「ただいま」
「ああ、おかえ……」
ビニル袋を携えた彼女の姿を見て、ぎょっとする。
今は人間の姿、行きと同じツーピースにカーディガンの家庭的な格好。
ただ、その首には犬の首輪が掛けられたままだった。
「お前……まさか、それしたままスーパーに入ったんじゃ――」
「?」
何が問題かわからず、首を傾げる少女。
俺は溜息をつきながら、首輪を外した。
「……いや、いい。今度から、人間になる時は首輪を外せ」
でないと、彼女と一緒の所を見られたら、間違いなく俺が性犯罪者扱いされる。
そこら辺の事情はおいおい話すとして。
「お疲れ様、だ。
一足先に風呂を頂いた。お前も入って来い」


静かな排気音とともに、熱風が濡れた髪を揺らす。
買い物から帰り人間の姿に戻ってシャワーを浴びた後、黒犬の彼女は俺の膝の上でドライヤーを受けていた。
少し伸びた髪を傷めないよう、そっと頭を撫でると、少女は気持ち良さそうに目を細める。
その仕種に、何やら形容し難い衝動を感じてしまう。
首を振ってそれを振り払いつつ、俺は適当な話題を探した。
「お前の名前、考えてみたんだけどな」
なされるがままに風を受けていた少女は、きょとんとした顔で俺を見返す。
「いつまでも"お前"呼ばわりだと不便だろう。例の"パトラッシュ"は問題外だし。
幾つか人間向きの名前を用意してみた」
俺はメモ帳を取り出すと、開いて彼女の目の前に掲げてやった。
新生児の名前ランキングの上位から、彼女のイメージに合いそうなものを順に並べてある。
「文字は読めるんだよな。
幾つか、お前に似合ってそうな名前を抜粋した。
気に入ったのがあれば良いけど」
だが彼女はメモを見ようとせず、困ったような顔で俺の顔を見返してくる。
「俺、センスないか?」
彼女は静かに首を振ると、そっとメモ帳を押しのけた。
「貰った、大切な、名前ですから」
大事なものを抱え込むように、胸に手を当てて、一言ずつ呟く少女。
「どんなに、奇妙で、今の姿に、合っていなくても」
「例のパトラッシュが、か?」
彼女は、こくんと首を縦に振った。

ぬるま湯に浸っているような、曖昧な関係を続けている内に、忘れていた。
いや、気付いていない振りをしていた。
彼女は、いつまでもここに居る訳ではない。
帰るべき場所があるのだ。
それを見付けたら、きっとこの家を去って行く。
あの人みたいに。
745黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 18:54:42 ID:wr+Ezf7r
ぬるま湯に浸っているような、曖昧な関係を続けている内に、忘れていた。
いや、気付いていない振りをしていた。
彼女は、いつまでもここに居る訳ではない。
帰るべき場所があるのだ。
それを見付けたら、きっとこの家を去って行く。
あの人みたいに。

「……?」
「何でもない」
俺はドライヤーを切り最後に髪を一撫ですると、不安げに見上げてくる彼女を膝の上から床に下ろした。
「俺は寝る。お前も夜更かしは止めておけ」
メモ帳を放り投げ、ドライヤーを仕舞いに椅子を離れる。
戸惑うような彼女の視線を背に感じながら。


『どうして、何も言ってくれないの』
彼女が泣いている。
もうその顔もはっきりと思い出せないけれど、艶やかな長い髪ははっきりと覚えている。
顔を埋めると良い香りがしたことも、記憶の底から離れない。
笑顔がまぶしい、明るい太陽のような女だった。
その彼女が、その時は声を枯らして泣いていた。
『毎日、残業ばかり。偶に帰ってきても、疲れた顔で自分の部屋に引きこもってしまう。
そんなので、一緒に暮らしてる意味、ないじゃない』
けして激しくはない、けれど積もり積もった悲しみが込められたその声。
テーブルの上には冷め切った二人分の料理。
『お金なら、私の稼ぎもあるじゃない。
貴方の職場だって業績は安定してるし、貴方の成績も悪くない。
貴方の誕生日くらい、一緒に祝って何が悪いの』
伏せた瞼から滴が零れる。
『付き合ってから、もう4年も経つのに、籍も入れてくれない。
同じ家に住んでいても、会話する日の方が珍しい。
子供なんか出来そうもないし、私達を繋ぐものなんて、何もないんだね』
自嘲気味に呟く彼女。
その指を握りたくて、その背中を抱きしめたくて、手を伸ばすのに。
『触らないで!』
宙をさまよう手の平を見て、彼女は悲しげに呟いた。
『言われただけで、引き下がっちゃうんだ。
本当に触れて欲しいときには、傍にもいてくれないのに』
そのまま床に崩れ落ち、泣き伏せる彼女。
その背中に掛けてやる言葉を、俺は知らなかった。
何もかもが無意味に感じられた。

あの時、どうして俺は、手を引いてしまったのだろう。
あのときには戻れないけど、やり直すことは出来ないけれど、今度こそ俺は――――。
746黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 18:56:11 ID:wr+Ezf7r


「行かないで、くれ」
「――っ」
宙に伸ばした手が、何かを掴み取る。
それを離したくなくて、強く引き寄せた。
何かが俺の上に覆いかぶさる。
温かな体温。
その衝撃で、夢の中にあった意識が急速に覚醒する。
「……あれ?」
暗闇の中、目の前に少女の顔があった。
彼女は、俺に引き倒された格好で、俺の奇怪な行動に戸惑っている。
訳がわからず、傍らの時計を見た。
午前1時。
二人とも、いつもならとっくに寝静まっている時間だ。
「お前、どうしてここにいる?」
取りあえずは彼女を上から除けるのが先だろうが、頭が上手く働かない。
彼女はそんな俺のもの抜けた質問に、律儀に答えた。
「あ……寒くて」
唖然。
確かに彼女の布団は未だに夏用だった気がする。
「夜這いじゃないのか」
「?」
きょとんとした表情。
言葉の意味が判らないらしい。
「本当に、ただ単に寒いから、二人で布団にはいれば暖かいと思って、一緒に寝ようと、そう言ってるのか」
曖昧に頷く少女は、暫く躊躇った後、口を開く。
「ツヨシさん、さびしそうでした」
寝る前の挙動について言っているようだ。
どうやら、余計な気を遣われているらしい。
747黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 18:57:28 ID:wr+Ezf7r
俺は溜息を吐いて起き上がると、電灯をつけた。
「少し早いが、電気ストーブを出す。
明日布団を換えてやるから、今晩はそれで我慢しろ」
少女は不満げな様子。
「何か問題あるか」
「一緒に寝れば、さびしくないですよ」
寝込みを襲われたことで苛立っていたのだろう、直前に変な夢を見たこともある。
俺は彼女の胸倉を掴むと、ベッドの上に押し倒していた。
「おい」
低い声で呼びかけられ、ビクンと震える少女。
俺はそのTシャツの裾から、滑らかな素肌に手を伸ばした。
「人間の女が、人間の男と寝るって意味、判って言ってるんだろうな」
久しぶりに触れる、滑らかな女の肌の感触に、衝動が止められない。
俺は彼女の薄い乳房を掴むと、強すぎない程度の力で圧迫する。
「――――!」
途端、少女は顔を真っ赤にして反応した。
俺は構わず、掴んだ塊を上下に揉みしだき、先端を指先でいじくる。
恐らく成長途上であろうそれには、未熟な果実同様に堅さがあり、反発の力が独特な感触を生む。
彼女は動揺はしているものの、抵抗はしなかった。
空いている左の膨らみも服の上から掴みあげると、先端を親指と人差し指で挟んでつねる。
そうして両の乳房を弄んでいる内に、少女は目を強く瞑りながらも、微かに熱い吐息を漏らし始めた。
俺はそのまま、右手を下ろして行き、下腹を伝って、薄い下着に覆われた熱い谷間にそっと触れる。
「ッ――――!! ……ゃぁ」
初めて見せた拒絶に、俺の頭は一気にクリアになった。
組み敷かれた少女は瞼を強くつむり、微かに震えている。
俺は胸と下腹にかけていた手を離すと、彼女の上から退き、背を向けてベッドに腰かけた。
「すまん」
少女は小刻みに喘ぎながら、戸惑ったような目線で俺を見てくる。
のしかかる気まずさと自己嫌悪。
「"寝る"ってのは、こう言う意味だ。
判ったなら、自分の部屋に戻れ。ストーブは出してやるから」
748黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 18:58:48 ID:wr+Ezf7r
すっと少女が立ち上がる気配。
そのまま出て行くのかと思いきや、俺の背中に倒れこんでくる。
俺の腹を抱きしめる両手。
「おい、離れ――」
「うれしかったんです」
引き剥がそうとする、その前に彼女がぽつりと呟く。
「名前をくれるって、言ってもらえて。女の子として、見てもらえて。
だけど、私は、まだ、あの家の飼い犬で。ここにいても、迷惑ばかりで」
一言一言、必死に言葉を紡ぐ少女。
その肩は小さく震え、言葉は涙でくぐもっている。
ああ、こいつは。
この小さな少女は、不安なのだ。
家族とはぐれ、一人見知らぬ街に、自分のものでない姿で放り出され。
野良犬として生きる術も持たず、人として生きる道も知らない。
「お前は」
俺は腹の前で結ばれた彼女の指に、そっと手を重ねた。
「帰りたいか。昔の家に、家族と、一匹の犬に戻って」
背後で彼女が頷く気配。
でも、と少女は続けた。
「ここにも、いたいんです」
俺はその言葉を、期待していたのだろう。
同時に怖れてもいた。
ここにいてほしい。
でも、いつか出て行ってしまうかもしれない。
執着しなければ、いずれはいなくなるものと諦めていれば、楽になれる。
寂しさを埋め合わせるための、一時的な家族ごっこ、そう考えればいい。
けれどそれ以上の衝動、情欲かもしれないし支配欲なのかもしれない、そう言ったものが俺の腹の中でふつふつと煮えたぎり。
気が付くと俺は少女の両肩を掴み、再びベッドの上に押し倒していた。
749黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 19:00:10 ID:wr+Ezf7r
「何をヌルい事言ってる。
本当は判ってるんだろう? 認めたくないなら、俺が言ってやる」
それは禁句。彼女を傷つける醜い言葉。
言ってはならないと知っていたから、今まで黙っていた。
彼女も恐らくは気付いている。
けれど、お互い口にしないことで表向きの平穏を保っていた。
もう、口が止められなかった。
「捨てられたんだよ、お前は!
飼うのが面倒になったからなのか、新しい家に場所が無かったのかは知らないけど。
他にどんな理由があって、引越しと同時にはぐれるなんて事がありえる。
今さら飼い主探したって、何の意味もない。
ご主人様のお家には、お前の居場所なんかとっくに無くなってるんだ!」
彼女は、ただ呆然と、俺の言葉を聞いていた。
大きく見開かれた目に、じわりと滴が浮かぶ。
不意に少女の顔が歪み、堰を切った様に瞼から涙が零れ落ちた。
口から漏れ出る微かな嗚咽。
ベッドの上、仰向けで、声もなく、少女はこの姿で初めて泣いた。
「……ごめん」
痛々しくて、俺は目を逸らした。
捨てられたと、決まっている訳ではない。
ひょっとしたら、飼い主は今でも彼女の帰りを待ってるかもしれない。
「けど、どんなに望んでも、なくしたものは取り戻せない。
少なくとも、昔の家には帰れないんだ。
だから、どうせなら……」
この言葉は、俺の願望。
弱っている彼女につけこみ、自分の都合の良いように、彼女を誘導しようとしている。
罪悪感に、ちくりと胸が痛んだ。
「どうせなら、ずっとここに、いないか」
彼女が泣き腫らした目で俺を見上げる。
俺は上からその瞳を見下ろした。
黒目がちなその瞳が、そっと閉じられて行く。
顔と顔が近付く。
唇は温かかった。
750黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE :2009/07/12(日) 19:01:57 ID:wr+Ezf7r
投下終了です。
前回からかなり間が開いてしまい、申し訳ない。
リアル事情で後編も時間がかかりそうですが、憶えていて頂けると幸いです。

……犬耳カチューシャとかしっぽとか首輪プレイとかは一切期待なさらないで下さい。
751名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 20:07:48 ID:Xkjy+k5+
>>750
GJ! 結局新しい名前はもらえるのかな
ところで犬っ娘ということは舌技に定評(ry
752名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 01:25:51 ID:TVQpifwV
GJ!!

葛藤感がなかなかどうして
胸に沁みる!!
753名無しさん@ピンキー:2009/07/16(木) 13:38:31 ID:WouI1QRs
保守
754名無しさん@ピンキー:2009/07/16(木) 18:24:52 ID:r+r/Y/fU
…そろそろ次スレの時期?
755名無しさん@ピンキー:2009/07/16(木) 19:17:01 ID:Wg+N7t1d
気付けばもう481KBか早いもんだな
756名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 19:15:06 ID:wgnNdcZu
誰かヒマならかけよっ
757名無しさん@ピンキー:2009/07/18(土) 22:33:40 ID:p4bKyNIA
まずは次スレ立てが先じゃないか?
758名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 17:45:17 ID:sfweYIsV
>>749の続きはまだか?
759名無しさん@ピンキー:2009/07/22(水) 14:38:29 ID:P1CwykqB
ほし
760名無しさん@ピンキー:2009/07/22(水) 18:02:27 ID:0L8WELxU
>>753>>759
さげ保守は無意味だよww
761名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 11:36:26 ID:9MOrwnlU
>>760
判定基準は書き込みの有無だからsageでいいんよ
762名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 19:23:48 ID:UsQ64fJc
すまん、スレ立て行ってみたが規制でアウトorz

誰か代わりに頼む
763名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 20:30:12 ID:JCpOZu7D
764名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 21:53:58 ID:A9VCTPPy
>>750
続きに期待
765名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 23:28:34 ID:9MOrwnlU
>>763
乙です、IDが女子中学生ですね
766こたみかん ◆8rF3W6POd6 :2009/07/23(木) 23:30:13 ID:H1061n4Z
無口でツンツンな彼女〜次スレ移動埋めネタ〜
「黒美ちゃん、どうしたの?そんなに多くの荷物かかえて」
「………」
「あぁ、もうそんな時期かぁ」
「………」
「僕?まだ時間はありそうだし、もう少しのんびりしていこうかなぁ…なんて」
「………」
「冗談だよ、そんなに睨まなくてもいいじゃない。可愛い顔が台無しだ」
「………」
「やれやれ…それはそうとして、すぐ追いつくから先に行ってていいよ」
「………」
「何?待っててくれるの?嬉しいなぁ」
「忘れ物しないように見張っているだけです…勘違いしないで下さい」
「素直じゃないなぁ。昨日の夜、ベッドではあんなに素直だったのに」
「………」
「あれ?黒美ちゃん、耳が赤くなってるんじゃない?」
「……先に行きます。後は自分でお好きにどうぞ」
「わっ、ごめんごめん。ちょっと!?黒美ちゃん行かないで、待ってよ」


おわり
そして>>763乙です
767名無しさん@ピンキー:2009/07/25(土) 05:58:29 ID:k3JHX88Y
ふと思いついたネタ。ファンキー無口。……難しいな
768名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 01:17:02 ID:LHn4mBn4
寝転んで本読んでる無口っ子にセクハラしたい
769名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 01:37:39 ID:Xj6vGt6u
>>767 デジタル大辞泉より
ファンキー【funky】

[名・形動]
1 ジャズ・ソウルなどの音楽にファンクの要素が含まれること。また、その演奏や、そのさま。ポップスやロックの、野性的で躍動感のあるリズム・演奏などの形容にもいう。「―なボーカル」「―ミュージック」
2 服装などが原色を多用していて、けばけばしいこと。また、そのさま。「―なファッション」


服は紫、髪は緑でサングラスかけていて、メタル大好きな無口さん
の電波を受信した。 ・・・あれ、なんかファンキーと違う・・・
770名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 09:42:45 ID:SPP7D+ve
ファンキーってより格好いいクールビューティー系が浮かぶな
いや無口なだけで性格も相当ファンキーなのか?
言葉の分、身振り手振り多用とか
771かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/07/28(火) 17:19:02 ID:dkv93zDj
こんにちは。埋めネタ投下します。
保管庫の『彼女の趣味』『彼女の不安』の続編。
エロあり。というかエロばかり。
主人公の男の子がだいぶ欲望に忠実になってます。
772かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/07/28(火) 17:20:27 ID:dkv93zDj
『彼女の至福』



「泊まり?」
 学校からの帰り道、一緒にいた彼女の言葉にぼく、日沖耕介は思わず訊き返した。
 青川文花はこくりと頷くと、こちらの様子を窺うようにどう?という目を向けてきた。
 上目遣いに見つめられてぼくはどきりとする。
 青川が言うには今週末、両親が泊まりがけで祖父の家に行くらしい。
 青川も一緒に行く予定だったらしいけど、土曜の夜にテレビで格闘技中継があるために
断念したのだそうだ。祖父の家は山奥で、テレビの映りが悪いという。
 ぼくは青川の小柄な体を見やる。
 百五十センチくらいしかない背丈にセミロングの艶やかな髪。
 そのかわいらしい容姿にはまるで似合わないけど、青川は格闘技マニアだ。
 それもそこらのミーハーなファンとは一線を画す程重度のマニアで、自身も柔術を
やっている。彼女の部屋には地上波ではまず流れないくらいマイナーな大会のDVDが棚に
並んでいるのだ。
 そんな彼女だから、テレビの格闘技中継を優先するのは当然といえた。
 録画すればいいのではと思わないでもないけど、そんな意見は通用しない。結果を遅れて
知ることに耐えられないと青川の目が言う。いや、実際にそう言ってるわけじゃないけど
そう見える。
 で、せっかく親が出掛けるのだから、うちに来ないかと言うのが青川の提案だった。
 青川の家にお泊まり。それも、二人っきりで。
 反対するわけがない。
 ぼくは喜んで青川に頷いてみせた。
 青川もほっとしたのか安心したように微笑み、頷いた。
773かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/07/28(火) 17:23:39 ID:dkv93zDj
      ◇   ◇   ◇

 そして土曜日。
 ぼくが青川の家に着いたのは夕方も近い時間だった。泊まりに行くならせめて行く前に
手伝えと、ずっと家の掃除をさせられていたのだ。
 煉瓦色の大きな家に着いて呼び鈴を鳴らすと、青川はすぐに出迎えてくれた。
「ごめん、遅くなって」
 青川は軽く首を振ると、急かすように中へと招いた。
 そっけない態度に怒ってるのかと一瞬思ったけど、そうではないらしい。なんだか急いで
いる感じだ。訝しく思いながらも靴を脱いで中に上がる。
 玄関からすぐ左。ドアを開けると灰色の絨毯に三つのソファーが鎮座するリビングが
現れる。壁際のプラズマテレビがCMを流している。
 青川は手早くお茶とお茶受けを出すと、ぼくの方には見向きもせずにリモコンで操作を
始めた。録画の準備をしているのだろうか。確か格闘技中継は夜九時からだったと思うけど。
 と思っていたらいきなりテレビの画面が切り換わった。
 アリーナだ。今日のイベントの会場だけど、今はまだ夕方の四時。放送までまだ五時間
あるはずなのにどうしてテレビに、
 ……いや、リアルタイム放送はありうる。
「衛星専門か!」
 地上波放送は夜九時からだけど、PPVの衛星専門チャンネルならリアルタイムで大会が
視られる。
 なるほど、と納得した。さっき急いでいたのはこれに間に合いたかったのか。
 衛星専門チャンネルでリアルタイム、しかもプラズマテレビの大画面で視る。これって
なかなかに贅沢なことだと思う。
 青川……君はどんだけ格闘技好きなんだ。さすがにちょっと呆れますよ。
 ぼくは思わず肩をすくめたけど、青川は意に介さない。ソファーに座ってじっと画面を
見つめている。まだオープニングセレモニーで試合始まってないんだから、もう少し肩の
力を抜こうよ。
 とはいえ、ぼくも格闘技ファンの端くれ。一瞬たりとも見逃したくないという青川の
気持ちは十分わかる。リアルタイムで視れるなら尚更。ぼくは苦笑しながら青川の隣に
腰掛けた。
 青川は何も言わなかった。無言のまま画面を注視している。
 ただ、そっと左手をぼくの右手に重ねてきた。
 柔らかく温かい、小さな手。
 ぼくは嬉しくなって、甲に乗せられた青川の手を握り直した。掌を合わせて指同士を
絡めると、無表情だった青川の顔に僅かに赤みが差した。
 それからぼくらは何も言わず、ただテレビ画面を見つめていた。
774かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/07/28(火) 17:27:29 ID:dkv93zDj
      ◇   ◇   ◇

 五時間後。
 全十二試合の熱戦が終わり、ぼくらはようやく一息ついた。
 途中の休憩時間に雉撃ちと花摘みを済ませた以外は、ソファーから一歩も動かなかった。
お茶受けの煎餅がまるで減っていない。
 イベントは大当たりだった。第一試合から好勝負の連続で、メインの試合など判定決着
ながら手に汗握る名勝負で、終わった瞬間には深い溜め息が洩れる程だった。
 さすがに五時間ぶっ続けで視ると疲れる。ぼくはんんー、と伸びをして体をほぐした。
 青川が地上波放送に切り換えている。あ、そっちも見るんですか。さすがです。
 が、さすがの青川も今度はしっかりかっちり固まって視聴、ということはしなかった。
台所からお皿を運んでくる。食事をしながら適当に流し視るつもりのようだ。手伝いを
申し出ると小さく首を振って断られた。
 仕方なく座って待っていると、すぐに青川が料理を持ってきた。あらかじめ作っていた
らしい。シーフードカレーにグリーンサラダだ。カレーに盛った福神漬けが嬉しい。
 烏龍茶をグラスに注ぎ直し、ぼくらは少し遅い夕食をとり始めた。
 シーフードカレーはやや甘口。でもエビやイカの味がしっかり効いている。辛すぎると
魚介類の味が負けてしまうだろうから、これくらいが丁度いいのかもしれない。
「おいしい。これ作ったの?」
 尋ねると青川は小さく頷いた。
「へえ、料理得意なんだ」
「……初めて」
「へ?」
 青川の言葉にぼくは目を丸くした。
「ひとりで作ったのは、初めて」
「……じゃあ普段は料理しないの?」
 再び頷く。
「ひょっとして、ぼくのため?」
 青川は顔を伏せて呟いた。
「耕介くんに、作りたかったの」
 ぼくのために。
 嬉しくないわけがない。普段料理をしないという彼女が、わざわざ泊まりに来る彼氏の
ために腕をふるったというのだから。しかもうまい。
「ありがとう、青川。とってもおいしいよ」
 ぼくは感謝の念を込めて礼を言った。
775かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/07/28(火) 17:34:38 ID:dkv93zDj
 しかし彼女はその言葉を聞くや眉をひそめた。
 じっとこちらを見つめてくる。というかはっきり睨んでいる。
 ぼくは慌てた。あ、あれ、何かまずいこと言ったかな?
「あ、青川?」
 青川の目がさらに険を増した。
 な、なんでだ。ただ名前を呼んだだけなのに、なぜそんな冷たい視線を向けてくるんだ。
仮にも恋人にそんな目を向けるなんて、ぼくには君の名前を呼ぶ権利さえ、
 名前。
「……」
 それが原因なのでしょうか。
「えっと……文花?」
 改めて下の名前で呼ぶと、文花はようやく気付いたかとばかりに重々しく頷いた。
 ぼくはしばらく前まで青川を苗字で呼んでいた。
 ところがある時、ふとした際に下の名前で呼んでやったら、彼女はこれをいたく気に入り、
以来二人っきりの時は名前呼びを義務付けてくるようになった。
 もちろん異論はない。しかしあの時はなんというか雰囲気で呼べたわけで、普段から
慣れている苗字の方が呼びやすいのも確かなわけで。
 まあでもとりあえず謝ろう。
「ごめん文花。まだ慣れてないみたいだ」
 青川は軽く溜め息をつくと、小さな声で言った。
「ゆるさない」
 すねたように呟く青川。
 困った。さて、どうすれば機嫌を直してくれるだろう。
「どうすれば許してくれる?」
 青川は言った。
「……いっぱい気持ちよくしてくれたら、いいよ」
 耳元で囁くように。
 その言葉に正直くらりときた。頭が酔いそうなくらい揺れる。
「……えー、……つまりその、」
「罰、なんだから」
 楽しそうな声で言う。
 からかいの意味もあるのだろうけど、青川はえっちなことに積極的だ。
 だからよく主導権を握られてしまうのだけれど、やっぱり男としては巧くリードしたい。
「精一杯ご奉仕させていただきます、お姫様」
 ぼくはにやりと笑みを見せる。
 青川はぼくの芝居がかった台詞に目を見開いた。いや、似合わないのはわかってるん
だけどね。
 青川は面白そうに微笑んだ。
「楽しみ」
776かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/07/28(火) 17:39:10 ID:dkv93zDj
      ◇   ◇   ◇

 食事を済ませるとぼくらはお風呂に入った。
 まずは体を洗ってほしいとお姫様が言うので、ぼくは素直に従う。というかむしろ洗わせて。
 小さな体に似合わず、青川は出るところは出てる。巨乳とまでは行かなくても形の整った
美乳はとても揉み心地がいい。お尻の柔らかな感触はいつまでも撫でていたいくらいで
病み付きになる。
 そうした感触を楽しもうと念入りに泡立てたスポンジを這わせると、青川はくすぐった
そうに身をよじった。
 もちろんきちんと洗ってやる。いろいろ弄りたいところはあるけど、まずはちゃんと
綺麗にしてやりたい。ご奉仕するのだから。
 青川は体の力を抜いてだいぶリラックスしていた。いやらしい意味じゃなく気持ちよく
なっているのだろう。
「気持ちいい? 青川」
 言ってからはっと気付く。苗字呼び。
 青川の手がぼくの股間を握り込んだ。
「ちょっ」
 一瞬力を込められてぞくりとする。快感じゃなく不安感で。
「ごめん文花」
「……」
 途端に優しくマッサージされる。青川の小さな手に逸物をしごかれて、ぼくは快感に
呼気を洩らした。
 性欲が高まっていく。ぼくは青川の背後に回り込んでぎゅっと抱き締めた。
「文花……」
 青川──文花が体を微かに震わせた。
 もうご奉仕とか考えてられない。
 首筋に舌を這わせながら両胸をほぐすように揉み込む。泡まみれの胸が指先に従うように
形を変える様はひどくいやらしい。
(柔らかいなあ……)
 何度触ってもこの柔らかさは飽きない。もう一日中揉みまくりたい。
「んん……んぅ」
 苦しげに息を溢す文花。悩ましげな声はこちらの興奮をいっそう煽る。
 乳首を指で丁寧にこねる。柔らかさの中で唯一こりこりと固い部分は、あっという間に
勃起してしまう。
777かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/07/28(火) 17:41:36 ID:dkv93zDj
 ぼくはシャワーを手に取り、文花の体に付いた泡を洗い流した。間を置かずに左の乳首に
吸い付く。
「あぁ、あんっ」
 ちゅううっ、と乱暴に吸い上げる。ミルクが出ないのは仕方ないけど、唾液の立てる
音は十分それっぽい。
 今度は舌先で舐め回す。傷口を癒すように念入りに唾液を塗り込んでいくと、充血した
乳首が透明な液で艶やかに光った。
 ぼくはしばらく胸を吸うのに没頭した。
「こーすけ、くん……だめ、だめぇ……」
 荒い息を吐きながら文花は悶える。
「んむ、気持ちいいでしょ?」
「……んっ、いい……きもちいい……」
「下も弄ってあげるね」
 乳首を吸いながら右手を文花の下腹部に伸ばす。
 ずっと胸ばかり弄って下には触っていなかったけど、そこはもうすっかり濡れきっていた。
今すぐ挿入してもすんなり男を受け入れてしまうだろう。
 欲望に従うならさっさと勃起したペニスをあてがって打ち込みたいところだけど、そんな
乱暴な真似をしても早撃ちするだけでもったいない。もっとたっぷり文花を味わいたい。
 ぼくは中指でかき出すように内襞を擦った。びくん、と文花が体を強張らせる。
 くちゅ、じゅぷ、と浴室に卑猥な音が響く。
「やらしい音だね」
「……」
「文花のおまんこぐちょぐちょだよ。おもらししてるみたい」
「……」
 文花は応えない。
 はあはあと荒い息を吐くのが精一杯で、ぼくの言葉もろくに聞いていないのかもしれない。
 指をあっさりくわえ込みながらも秘部の締め付けは強烈で、かき回す度にぎゅうぎゅうと
圧が指にかかる。
 親指でクリトリスを撫で擦ると文花が体をくの字に曲げた。
「だめ……もう」
 潤んだ目で懇願するように見つめられて、ぼくは息を呑んだ。
 駄目だ。そんな目で訴えられたら我慢が利かない。
 挿れたい。中に入りたい。
 先程までの余裕なんて一瞬で吹き飛び、ぼくは文花を正面から強く抱き締めた。
 唇をむさぼるように重ねる。舌を絡め、唾液を交換し合い、息がかすれる程長い長い
キスを交わした。
778かおるさとー ◆F7/9W.nqNY :2009/07/28(火) 17:43:28 ID:dkv93zDj
 浴槽の縁に手をつかせて、お尻を突き出させる。
 女陰から垂れる愛液がひどく淫靡に映る。何度も見ているはずなのに、何度見ても興奮する。
 ぼくは文花の腰をがっちり掴むと、すっかり硬くなったペニスを一息に突き入れた。
「あああっ!」
 学校では普段まったくの平静を保って表情一つ変えることのない文花が、繋がった瞬間に
嬌声を上げた。
 愛液のおかげでスムーズに入れたものの、直後万力のような締め付けが襲ってきた。
 下半身から脳天に快感が電流のように走る。
 思わず射精しそうになって、慌てて下腹部に力を込めてこらえた。
 文花も耐えるように身を強張らせている。
 リラックスさせたいところだけど、ちょっと余裕がない。ぼくはとりあえず動く方に
専念することにした。
「ふああ!」
 ずん、と力強く一突きすると、文花が鳴いた。
 内襞がペニスのエラに引っ掛かって、たまらない快感が波のように襲ってくる。奥に
突き入れれば狭い膣穴が進入を拒むように締め付けを増し、腰を引くと今度は離すまいと
襞々がぴったり絡んでくる。
 とろけそうな快楽に頭が染めあげられていく。ぼくは文花の背中に覆い被さると、美乳を
鷲掴みにしながら体を密着させて、小刻みに何度も何度も肉棒を突き入れた。
「あ、あ、あんっ、あっ、んんうっ、あっあっあっ、だめ、たって、られな……あうっ」
 子宮に響くように奥までガンガンに突きまくった。ふっくらと柔らかい胸を両手で
手加減なく揉みしだきながら、背中から首筋にかけてキスの雨を降らせる。ボディソープの
優しい香りが文花の体を包んでいて、こちらの情欲をさらに引き立てた。
 逸物はますます硬度を高め、互いの液でぐちゃぐちゃになった膣内を果てしなく蹂躙した。
 ずっとこうやって繋がっていたい。もう一生これだけやっていたい。
 こんなに気持ちのいいこと、終わってほしくない。
 しかし終わりはくる。そしてその終わりの瞬間が一番気持ちよくて、ぼくはそこを目指して
高まっていく。
 文花も自ら腰を振って快楽をむさぼっていた。
「文花、もういくよ」
「わ、わたしも、ああっ、もういっちゃう、いく、いくの」
「精液出すよ、奥にいっぱい、文花の子宮にたくさん出すよ!」
「うん、だして、だしてえ、いっぱいかけてえ」
 いつもの文花ならありえないくらいの言葉の数。たがが外れたように淫らな言葉を吐き
出して、文花は乱れに乱れる。
 体の奥から快感が迫り上がってきて、陰嚢が飛び出そうな程ペニスの奥が痺れる。
 腰の動きがまるで衰えないまま、ぼくらは互いを高め合い、そして、
「うう!!」
 文花の一番奥でぼくの性欲が弾けた。
「ひあっ、ああ、あああああっっ!!」
 同時に文花も甲高い嬌声を上げて絶頂を迎えた。
 溜めに溜めた精液が精巣から次々と外に飛び出していき、文花の膣内をどろどろに
満たしていく。
 びくびくと痙攣するように震える文花の体を抱えながら、ぼくはどすんとタイルの上に
腰を落とす。
「きゃっ、んっ!」
 ぼくに抱えられて依然繋がったままの文花は、後ろに倒れ込むように座った衝撃でまた
ちょっと感じたようだ。不意の衝撃に振り向いてぼくを睨む。
「いや、腰が抜けてさ」
 そう弁解しながら入れっぱなしのペニスをぐりぐり動かすと、文花は弱い声を洩らした。
「や、うごかないで」
「ちゃんと最後まで出したいんだ」
「も、もう……」
 戸惑う文花の体を抱き締めながら、ぼくは最後の一滴まで絞り出す。
 すべてを出し切ると強烈な虚脱感に襲われた。とは言えそれはなかなかに心地好い感覚で、
ぼくはしばらくそれに浸った。
 文花が振り向いて、もの欲しげにぼくを見る。
 ぼくはにっこり微笑むと、文花の期待に応える。
 体を正対して抱き直すと、ぼくは文花と口付けを交わした。
 浅いタッチのそれは、しかし互いの想いを伝え合うには十分だった。
779かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
 お風呂から上がり、ぼくらは文花の部屋でまったりと過ごした。
 ベッドに並んで横になりながら、何を話すわけでもなく軽いスキンシップを繰り返す。
髪を撫でたり、頬を触ったり、キスをしたり。
 文花はまったく口を開かず、でもとても楽しそうに微笑んでいる。
 幸せそうな笑顔にぼくもつられてはにかんだ。
 文花が体を寄せてくっついてきた。小さな頭をぼくの胸に押し当てると、一言だけ呟いた。
「大好き」
 真っ直ぐ放たれた言葉にぼくの心臓が大きく跳ねた。
 ぼくにだけ向けられる、彼女の想い。
 ぼくだけの彼女。
 嬉しさで胸がいっぱいになる。
「…………」
 と、嬉しさだけで済めばいいのだけれど、
 あいにくこっちは欲望に忠実な高校生なわけで、
「文花」
 ぼくは文花にのしかかると、有無を言わせず唇を奪った。
 驚いた目を向けてくるが無視。強引に舌をねじ込み、相手の口内をねっとりとなぶる。
 たっぷり十秒は味わって唇を離すと、細い透明な糸が繋がっていて、すぐに重さに耐え
かねて滴り落ちていく。
 文花が小首を傾げて言った。
「火、つけちゃった?」
 ぼくは首を振る。文花、それは違うよ。
「文花を好きになった時から、火はもうずっとつきっぱなし」
「っ」
 文花は赤くなった顔を逸らした。
 ぼくはそんな文花のパジャマを脱がしにかかる。
 文花もぼくの服に手をかけて、お互いに脱がし合う。
 中途半端に脱がしたところで我慢できなくなって、漲った性器を腰に押し当てると、
文花は呆れたように肩をすくめた。

      ◇   ◇   ◇

 それから明け方近くまでひたすら快楽を求め合った。
 最初は正常位で一回。それからバックと側位で達した後、シックスナインで互いをイカせ
合って、対面座位でさらに二度の回数を重ねた。
 そのあと疲労と快感に包まれながら昼過ぎまで眠りこけていたのだけど──
「もうこのまま文花を軟禁していたいな」
「……ふぇ?」
 昨日から数えて都合七回目のセックスに耽りながら、ぽつりと呟く。
 起きたらなんとなくまた熱が高まって押し倒してしまったわけだけど……客観的に見て
さすがにヤリ過ぎだよね。
 文花はとろんとした目でぼんやりぼくを見つめてくる。
「軟禁して、朝から晩までずっと文花とえっちなことをして過ごしたい」
「……」
 いや本当に一生これだけヤっていたいくらいです。
 文花はくすりと笑った。
「ケダモノ」
 さらりと毒を吐かれた。今の状況では何も言い返せないので、ぼくは軽く落ち込む。
「でも」文花が続けて言った。「それもいいかも」
 この子はどうしていつもこちらが喜ぶことばかり言うのか。
 文花は息を弾ませながら嬉しげに言った。
「耕介くんと一緒なら、私はずっと幸せだから」
 それはぼくも同じだ。
 文花を抱きながら、ぼくは幸せを噛み締めた。



 そのあと文花の両親が帰ってくる前に、急いで身支度を整えて家を飛び出したために、
ほとんどゆっくりした時間を過ごせなかったのは自業自得だったけど。