【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 4冊目

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1名無しさん@ピンキー
我が身はあなたの領土。我が心はあなたの奴隷。  
ここは片山憲太郎氏の著作についてのエロパロスレです。
 
過去スレ

【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1150541908/l50
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 2冊目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171037946/
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 3冊目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1207406903/

保管庫
ttp://www35.atwiki.jp/katayama/
2名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 07:11:44 ID:1qeJoZyp
2げと。>>1
3名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 08:16:20 ID:h16Hxwsg
>>1
乙。前スレ>>973もGJ
4名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 09:24:58 ID:xFEbhaha
前スレ>>973乙した!ようやく切彦ちゃんのエロが来たか…
5名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 11:14:48 ID:iSBKuDRZ
おお、やっと切彦ちゃんモノがきたか
6名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 18:45:40 ID:w6Xcutc0
乙たてさまー>>1
7名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 00:42:23 ID:Vvoznc6e
前スレのキリヒコちゃん、ご馳走様でした
8名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 03:54:48 ID:BKV5IMoY
切彦ちゃんもいいな


まあ一番いいのは夕乃さんだけどな!
9名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 22:17:16 ID:Ds4dt88W
>>1


誰かwikiを……
10名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 04:38:59 ID:+qC43OuZ
環さん
11名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 14:51:26 ID:OqN5sRCX
雪姫
12名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 15:58:24 ID:IQEvMGns
環さんのエロは難しい
13名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 19:58:29 ID:T9YPEMaK
エロを書いてくれる方が来るまでのつなぎということで、少しずつ書いてみます。
前スレの「約束」っていうのの続きです。

紫と夕乃に問い詰められた真九郎が部屋から逃げ出した後の話になります。
次レスから投下します。
エロはありません。
14依頼:2009/05/19(火) 19:59:28 ID:T9YPEMaK

仕事の依頼というのは何のこともないただの相談だった。
急ぎの依頼と言ったのは紅香が忘れていたからだ。
本来なら昨日に連絡するところをあまりに忙しく、重要な件ではないので伝え忘れていた、すまんな、と軽く謝っていた。
滅多にない失敗だが、たまにあるのだろうか、と真九郎は考える。
だが、助けてもらったことにはかわりないので一応礼を言っておいた。
紅香は不思議な顔をしたが、理由は聞かずに、気にするな、とだけ声を掛ける。


真九郎が紅香に指示された場所に行くと二人の少女が待っていた。
一人は光。
落ち着きがなく、そわそわしている。

もう一人は見たこともない少女。
元気そうな光とは対照的に落ち着いた清楚な空気を纏っているように感じた。
肩より少し長い黒髪がそよ風で揺れ、その姿勢の良い立ち方のせいか少し大人びて見える。
持っていた鞄には小さなピアノのキーホルダーのようなものが付いていた。
ただの付き添いだろうか。

「私、堕花光といいます。この前は…」

『堕花』という名字に真九郎は少し動揺するが、顔には出さずに自己紹介をする。

「揉め事処理屋の紅真九郎です。こんにちは。
 こんなにすぐに会うことになるなんて思ってなかったよ」

「あ、あのっ、私は、工藤綾です。あの…」

隣にいた少女も自己紹介をした。
どこか話し辛そうにしたまま口をつぐんだ。
代わりにだろうか、光が話しだした。

「すみません。私、『揉め事処理屋』なんて知らなくて。この前もらった名刺をお母さんに見せて相談したらどこかに連絡していたようで。
 何かあるなら相談に乗ってくれる人がいるって。それで今日ここに来るように言われて…」

光の母親が紅香さんに連絡を取ったということになる。
ってことはやっぱりあの『堕花』なのか…?
でもこの娘は何も知らなそうだ。
真九郎の名刺の相談だから紅香は真九郎に話をもってきたのだろうか…。

「相談っていうのは、私、お姉ちゃんがいるんですけど、最近ずっと変な不良に絡まれてて…。
 『私はジュウ様の下僕にしていただいた』とか『前世の強い絆がある』とか言っていて。
 お姉ちゃんがその男にたぶらかされるのを見ていられないんです!
 だから、その男の普段の生活を追ってみようと思って、私ったらあんな行動を…。

 だ、だ、だから!こ、この前のことは誰にも言わないでください!!」
15依頼:2009/05/19(火) 20:00:16 ID:T9YPEMaK

恥ずかしそうに顔を赤く染め、頭を下げながら言い訳をする光。
隣の少女は穏やかな顔をして真九郎のことを不思議そうに眺めている。
何かを思い出しそうとしているようにも見えた。

前に見た光の行動を思い出し、笑いそうになる真九郎。
笑いを誤魔化しながら光に尋ねる。

「もちろん、誰にも言わないよ。
 その話だけ聞くとちょっと危ないね。
 依頼っていうのは、その『ジュウ様』っていう男の人を何とかしてほしいの?」

嫌な予感が頭をよぎったが、無視することにした。
でもこういう時の予感って的中率が凄いんだよな…。

「いえ、どんな人間か見極めて欲しいんです。
 悪い奴ではないのですが、こういう仕事をしている紅さんなら色んな人を見てきていると思うので。
 なぜか私も助けられたことがあって…、私にはあいつの考えがまるでわかりませんでした」

「じゃあ、今知っていること教えてくれる?」

「はい。え〜と、外見は金髪、背は高くて、目つきが悪い。周りからも不良と言われていて恐れられているような…。
 やる気のない態度が全面に出ていて、かなり強いです。それからいつも左手首に高そうな腕時計をしていたと思います。
 名前は柔沢ジュウです」

真九郎は「やっぱりか〜」と心の中で唱えながら光に対応する。
同時に紅香が言っていた言葉を思い出す。
『何も出来ないヘタレな息子』のようなことを言っていたと思うけど…。
彼のどこがヘタレなんだろうと疑問を持つ真九郎。

きっと基準が紅香ということがそもそもの間違いなのだろう。
あの人を基準にしたらヘタレじゃない人間は世界中でどれだけいるのだろうか。

「あ〜、君のお姉さんはきっと大丈夫だよ。安心していいと思う。
 もしその柔沢君が悪いことをするようだったら、誰も逆らえないくらい圧倒的に強くて怖い真っ赤な人がちゃんと止めてくれるはずだし。
 多分、ぐぅの音も出ないくらいコテンパンにやられちゃうよ。
 だから安心していいよ。その人が動いたら大抵の問題は一瞬に解決しちゃうしね。
 まぁ、常識はないけどね。『授業参観』っていう言葉を知らなかったくらいだから」

「知ってるんですか?」

「少しだけね」

依頼を受けそうになっている今の状況でこんなことを言うのはなんだが、真九郎としては紅香の個人情報はあまり触れたくはないというのが本音だ。
紅香のことは知らない方がいい情報があまりに多過ぎる。
それでトラブルになり、殺されかけた経験もある。
16依頼:2009/05/19(火) 20:01:02 ID:T9YPEMaK

ジュウを調べるということは紅香を調べるということに直結する。
だから断るというわけではないが、今回の話では真九郎の力になれることはなさそうだ。
もしかしたら紅香はこの依頼の内容を知っていたのかもしれない。
真九郎に依頼を持ってきたのはそういう理由もあるのかもしれない。
紅香の素性を知っている人間はごく一部だ。
今回の依頼を受け、ジュウのことを調べると、紅香の住んでいる家や環境、家族のことにまで踏み込んでしまう恐れがある。

もし他の揉め事処理屋にこの情報が流れでもしたら…。
きっと莫大な料金で裏で取引されるだろう。
裏の世界で知らない者のいない柔沢紅香だが、その素性は極々一部の人間しか知らない。
もしかして本人は以外に誰も知らないのかもしれない。
きっとジュウにも揉め事処理屋のことは言っていないだろうと思う。

だけどこの話は紅香が持ってきた。
ということはこれは「引き受けろ」と暗に言っているのだろうか?

真九郎と光が接触したことを知って、光の母親が紅香に任せた。
紅香は真九郎と光を会わせるように仕組んだ。

少し考えさせてもらおうか…。

家庭環境のことなど知りたくない。
紅香のことで知りたいと思ったのは、九鳳院蓮杖との関係くらいだろう。

蓮杖との関係は未だ掴めていない。
訊いても笑うだけで教えてくれない。
怪しい関係でもあったのだろうか。
銀子に頼もうとしたことがあったが、以前紫のことを調べてもらったことを思い出し、やめておくことにした。

あの時銀子は目を細め、パソコンに向かってブツブツと呟いていたのをよく覚えている。
「データベースにハックしても手動でどんどん修復されていくのよ」と珍しく愚痴も零していた。
時間が経つのに比例して、機嫌も悪くなっていく。
銀子は真九郎にとって一番長い付き合いだが、そのような姿は見たことなかったし、見たくもなかった。
何より興味本位で人の過去をほじくり返すのは失礼極まりないことだと思う。

「そういえば光ちゃんのお母さんは柔沢くんのこと知ってるの?」
17依頼:2009/05/19(火) 20:01:47 ID:T9YPEMaK

「あ、はい。何度か家に来ているので。
 でも母やおっとりしていて、何の抵抗もなく受け入れてしまいました。
 心配したとこといえば…、柔沢ジュウの髪が痛んでいるかどうかだけです」

「…へぇ、ちょっと変わったお母さんだね。
 でも、うん、やっぱり大丈夫だと思うよ。
 会ったことはないけど光ちゃんのお母さんも、それに柔沢君のお母さんも人を見る目はあると思う。
 その人たちが問題ないと思ってるってことは、きっとそうなんだよ。
 多分、こんな言葉じゃ納得は出来ないだろうけどね…」

さすがに初対面の男にこんなことを言われても納得はできない。
やはり一応は調べてもらいたいものだ。

「そうですか。でも、もしもの…」と光が言いかけたところで、突然綾が真九郎の胸に抱きついた!
油断していた真九郎は何もすることが出来ずに体勢を崩し、よろけてしまう。
綾を良く見てみると真九郎の胸に顔を埋めながら強く抱き締め、肩を震わせていた。
泣いているのだろうか…?
いくら知らない人間だからといって、ここで身体を無理矢理離すような無粋な真似は真九郎にはできない。

どうしたんだろう?と考えたが、落ち着くまではこのままの方が良いだろう。
敵意や悪意や殺気は一切感じない。
初対面のはずなんだけど…。知り合いなのだろうか?

さっきまで紫と夕乃からの攻撃を回避するためだけに使っていた頭を働かせる。
見たことはない…、じゃあ間接的に知っている?
もしかして麻里子さんの知り合いとか?

杉原麻里子さんはあれから何度も知り合いを紹介してくれた。
『絶対信用できる頼れる正義の味方!!』というキャッチコピーをつけて自信満々に言うから、依頼者は期待するんだろうな。
依頼者に会った時、ちょっと残念な顔をされる度にショックを受けていたのを思い出す。
でもこの娘はそんな反応じゃなかった。
やっぱりわからない。
もうしばらく様子見か。

光も友人の突然の行動に驚いていた。
光には仲の良い友達でおしとやかな綾がこんな行動に出るなんて想像も出来ない。
知り合いなのかと訝しい顔を真九郎に向けるが、真九郎は目に見えて困っていた。
18依頼:2009/05/19(火) 20:02:25 ID:T9YPEMaK

光と真九郎は視線が合ったが何も言葉に出来ず、お互い苦笑いのまま綾が落ち着くのを待つ。

まだ「………っ、…ぅ。…ぅっ…」と声を漏らしているが、何とか落ち着いてきたようで息が整い始めた。
「……すみ…ません」とかすれた声で呟いた綾は真九郎を見上げる。
綾の顔は涙に濡れて、真九郎に何かを求めているようにも感じる。
とりあえず綾の頭を撫でながら、ハンカチを取り出し涙を拭ってあげた。
されるがままになっている綾に微笑みかけ、問いかけてみる。

「俺のこと知ってるの?」

「ぁっ、はぃ…。すみません。突然抱きついたりして…」
綾はそう言って紅潮した顔を隠すように両手で覆い、涙を拭っている。

「いや、いいよ。気にしないで。どこかで会ったことあるんだっけ?」

「はい。一度小さな頃に命を助けてもらいました。
 紅さんは制服を着ていたらしいので、多分高校生くらいの頃だと思います」

『高校の頃に命を助けた』か…。全く覚えがないけど。
高校生になって揉め事処理屋を始めてから一年以内に大変な仕事がいくつも入ったのを思い出す。
一流になるためには通らなければならない道なのだろうが、何度も死ぬ覚悟を決めた仕事だ。
『命を賭ける』ではなく、『死ぬ覚悟をする』ということ。
全力を尽くして、手を尽くして、ひたすら前を向いて歩くために『命を賭ける』のではなく、
現実から顔を背け、逃げるために死を選ぶ、生きることを諦めて『死ぬ覚悟をする』といったバカバカしい考え方が頭の中にあった頃の話だ。
早く一流になりたいということを考え、背伸びしようとしていた時期だから余計に危なかったのだろう。
生き残れたのは紫が居てくれたのと、運が良かっただけだろう。

あの頃の仕事といえば、
一つは、紫の護衛。
二つ目は、理津の護衛。
三つ目は、人探し。

どれも瀕死の重傷を負った。

紫の護衛をしていた頃は、麻里子さんから依頼と銀子からの依頼、あと紅香さんからの依頼だけだったと思う。
目の前の綾という少女が真九郎と関わるようなものはなかった。

理津さんの時は切彦ちゃんと会って、刺されて殺されかけて、帰り道に切られて殺されかけて、病院でもビッグフットに殺されかけて…。
…なんで今、生きているんだろうかと強く自問したくなる。

絶奈さんの時の依頼主は確か六歳くらいの女の子だから綾とは同年代のはず。
でも名前は…かりんとうを食べて喜んでいた…、…う〜ん、瀬川、だったと思う。
…あの子は確か瀬川静之だ。
今でも元気だろうか?
姉さんはどうなったのかな?
懐かしい。
でも目の前の少女とは何の関係もないだろう。

話は変わるが、絶奈はあれから何かと絡んでくるようになった。
「私は崩月には負けないよ」と言い出し「右腕も星噛製にしてあげる」とか「なんなら身体全部でもいいよ」とか「家に来なよ」と怪しい笑顔で何度も迫ってきた。
もちろん丁重にお断りしているわけだけど、崩月の角を研究したいのだろうか?

あの事件のせいで紅香の代わりに真九郎が狙われるようになったらしい。
なんとかしたいものだけど、いくらなんでも相手が強すぎる。

『身体を酷使して、角の力を使い力を限界ギリギリまで引き出して、絶奈に全身の力を抜いてもらった状態で一発だけ全力のパンチを頭に打ち込ませてもらう』という有り得ないハンデをもらって、ようやく対等になれる相手だ。
敵対することはさすがにもう二度とないだろう。
今度、本気で闘ったら間違いなく殺されてしまう。
19依頼:2009/05/19(火) 20:03:16 ID:T9YPEMaK

だからいつも適当に流しているわけだけど、相変わらず身体に悪いアルコールを飲んでいるのだけは会うたびに注意する。
すると「そんなこと言うのはキミだけだよ」と顔を綻ばせていた。
こんな顔もできるんだ、と疑ってしまうほど優しい笑顔には毎回見蕩れてしまう。

いつか殺しあった時の狂気に塗れた絶奈のイメージとは全く掛け離れており、甘く柔らかい表情に今では大人の艶やかさも加わり、酔いで顔を赤く染めた無防備な姿は、思わず護りたくなってしまうような、そんな魅力で溢れていた。
もちろん何かあったら絶奈を護るなんて言ってられないし、女性らしさを持った絶奈と殺し合うことなんて真九郎には出来ない。

このことが夕乃に知られたら『崩月の一級戦鬼×星噛製陸戦兵器』の試合を生で見れるのだろうか。
マニアのルーシー・メイなら心を躍らせるだろうが、真九郎としてはあってはいけないことだと考えている。
だから絶対知られてはいけない。
…なんという危ない橋を渡っているのか、と今日になってやっと自覚した。

でも裏十三家の会合には出ているわけだから、きっと知り合いなんだろう。
そうすると切彦ちゃんも絡んでくるわけか…。
『崩月×星噛×斬島』なんてことに…。
ま、有り得ない、とそんな考えはそうそうに捨ててしまう。
『崩月夕乃+星噛絶奈+斬島切彦×紅真九郎』だったらあるだろうか。

有無を言わさず正座をさせられ反論の余地はない。
夕乃に笑顔で迫られ、酔った絶奈にからかわれ、切彦に冷静だが狂った口調で問い詰められる。
『闘う』なんていう選択肢は初めからなかったわけだ。
でも殺される感じはする。
闘ったらどうなるんだろうか。
切彦ちゃんに右腕と首を切断される。
絶奈さんに一発もらって気を失う。
夕乃さんには手も足も出ないことは目に見えるほど明らか。
対戦はまさに刹那の間に終わるだろう。

余計なことを考えていた思考を元に戻す。
綾に目を向けると真九郎がずっと難しい顔で考えていたからか、綾は顔を崩して心配しているようだった。
20依頼:2009/05/19(火) 20:04:39 ID:T9YPEMaK

じゃあこの娘は誰だろう。
他の依頼か?
暴走族に文句を言いに行ったり、落書き犯を捕まえたり…。
泣かれるようなことはしていないはずだけど…。
あぁ、そうか!人違いか!
この娘の為にも間違いは正しておかなければいけない。

「あの人…」

「そうです!小さい頃、人殺しの老人に誘拐されたんです!思い出してもらえましたか!?」

綾は嬉しそうに声を張って期待を込めた目を真九郎へ向ける。
今の世の中、人殺しの老人なんて一杯いるんだけど…。
人違いではなく、確信しているように思える。
さてどうしたものか?

なんか銀子のとこのラーメンが食べたくなってきたな。
そこで話を聞こうか?

「ごめんね。まだちょっと思い出せないかな。話は変わるけどお腹空かない?ラーメンでも食べに行こうか?
 おいしいところがあるからさ」

銀子に問いたださなければいけないことがあったので光と綾を誘ってみる。
二人とも「はい」と言ってついてきた。
良かった、昼ごはんはまだ食べてなかったようだ。

歩きながら改めて綾の顔を良く見てみるがやっぱり心当たりはない。
高校の頃だと何年前だろう。
それに小さい頃と言っていた。
面影はあるはずだと思って見つめるが全然思い出すことはできない。
何かきっかけでもあれば良いのだけど…。

真九郎は光と綾の話に耳を向ける。
名前だけでは国内か国外かはわからないが、ピアノコンクールで良いところまでいったという話が聞こえてきた。
ピアノをやっている幼い子を助けるという依頼された覚えはない。
他は雑談のようで特に目ぼしい情報はなかった。

「ちょっと遅くなったけど、ここでお昼を食べよう。なかなか好評でおいしいんだよ」

「あ、はい。何度かきたことあります。店員さん綺麗だし、ラーメンおいしいですよねっ」

綾は真九郎の言葉に素早く反応してくれる。
初対面だから気を使っているという風ではなく、真九郎に話しかけられたのが嬉しいようだった。
真九郎は二人を連れて風味亭の暖簾をくぐる。
21名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 20:06:00 ID:T9YPEMaK
とりあえずここまでです。
では。
22名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 20:11:01 ID:w2yk/mVj
GJ
やばいぜ、わくわくしてきたぜ
23名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 23:41:46 ID:9Eg5oA0L
GJ
いいぞいいぞ、楽しみに待ってます
24名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 00:57:31 ID:xtfjD8FO
>>21
おお、GJ!
25名無しさん@ピンキー:2009/05/20(水) 04:30:59 ID:l47/dL+b
>>21
乙した
26名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 10:42:22 ID:Zw5LFetS
>>12
弥生さんのエロはもっと難しい
27名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 19:49:17 ID:maPYJpIE
確かにムズイ
28名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 04:55:28 ID:nq5x2WEY
闇絵さんもね
29名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 18:16:25 ID:UMfIBwmD
Wikiいじってる?
30名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 18:19:15 ID:9fBi2FE7
誰かわかる人やってくれ
31名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 22:11:35 ID:pb1G8Hzu
誰か、是非妖艶な絶奈の純愛を…。
自分にはエロは書けないみたいです…。

あとWikiいじってみました。

トップページに四冊目リンクさせたのと
前スレが倉庫に入っていたので誰かが更新してくれてた
「バレンタインネタ」、「美夜救済SS」、「3スレ770」
の目次つけただけですが。


>>20の「依頼」の続きです。

とらドラを読んでいたせいか綾の母親が泰子になりました。

次から投下。
32名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 22:13:34 ID:UMfIBwmD
乙しえ
33楓味亭:2009/05/24(日) 22:15:51 ID:pb1G8Hzu

「らっしゃい!おっ、シンちゃんじゃねぇか!ちょうど席が空いたところだ!そこ座んな!」

男らしく威勢の良い声が店内に響いた。
昼時を過ぎたせいか、客は一杯だがちょうど食べ終わった客がいたらしく、待つことはなかった。
カウンターではなく、端にあるテーブル席に着く。

しばらく待つと女性の店員が水とおしぼりを持ってきた。
眼鏡を掛けたその女性は何も言わず無愛想に真九郎を見つめ、連れの二人には「いらっしゃい」優しく声を掛ける。
真九郎は女性に向けられた目で「ロリコン」と言われた気がしたのは気のせいだろう。

「あっ、銀子。聞きたいことがあるんだけど…」

「何?」

「いや、後で良いや。とりあえず注文な。もやしラーメン大盛りと…」

「私は塩ラーメンをお願いします。光は?」

「じゃ私はチャーシューの醤油ラーメンで」

「はい。もやし大盛りと塩とチャーシューね。あっ、ちゃんとこのお兄さんに奢ってもらうんだよ」

「いえ、そんな…」

「いいよ。元々そのつもりだから。それにここだったらツケもきくしね」

「……あんた、いくら溜まってると思ってるの?
 こないだの料金もまだ振り込まれてないじゃない。
 プロだったらちゃんと期日は守って支払いなさいよ。
 もし今月中に払えなかったらウチでこき使ってあげるからね。
 いつかみたいに怪我して動けないなんてことにはならないでよね」

「あ、あぁ。もちろん」

「じゃ部屋を用意して待ってるわ。ラーメンはすぐ出来るから待っててね」

小さな頃から聞きなれた、冷たいけど温かい口調は相変わらずだ。
姿勢良く背筋は伸び、全体的に細く引き締まり、無駄な脂肪の全くない身体、
手足も綺麗でまるでモデルのようだった。
冷たそうな眼鏡の奥の瞳にはいつも優しさが詰まっていて何度となく助けられている。

「何度見ても惚れ惚れしてしまうくらい綺麗な人。仲良いんですね」

「まあ、長い付き合いだからね」

「どれくらいですか?」

「幼稚園から、だったかな?あいつがいなきゃ俺はこの仕事をやっていけなかっただろうから、すごく感謝しているんだ」
34楓味亭:2009/05/24(日) 22:17:10 ID:pb1G8Hzu

銀子がいなければ真九郎が本当の意味で頼れる情報屋はいなかっただろう。
いつだったか違う情報屋に依頼した時は必要な情報が足りず、結局銀子に依頼したくらいだ。

情報が足りないと仕事も上手く回せない。
情報の価値、というものの重さを知っているし、身に染みている。
どれだけ早く仕事を終えられるかということも情報の質に左右されるし、情報の真偽も大きく関わってくる。
今まで銀子の情報が間違っていたのは九鳳院の件だけだった。
九鳳院は特殊な体質のためどうしようもなかったのだろう。
極少数の人間しか知ることの出来ない奥の院。
噂で耳にすることはあるかもしれないが真実がどうかは九鳳院の人間と
九鳳院に密接に関わった人間にしかわからないことだった。

その上、友人としても大切な存在だ。
保育園では手をとって一緒に遊ぶようになってから、
その後色々あったけど何も言わず、ただずっと傍にいてくれた。
ずっと味方でいてくれた。
今でもちゃんと叱ってくれる。
銀子がいなければ今の真九郎はいなかっただろう。
銀子は相変わらず揉め事処理屋のことをよく思っていないが、
今でも続けていられることだけは評価しているようだった。

綾はいつの間にか母親にメールを打っていた。
綾の携帯が鳴り、電話に出ると綾は真九郎に替わるように促されたようで、
「母と話してもらえませんか?」と小さく言う。
携帯を渡された真九郎が電話に向かって話しかけた。

「あの…」

「こんにちは、綾の母の泰子といいます。
 あの時は、綾を助けていただいて本当にありがとうございました」

「あ、こんにちは。紅です。
 すみません。まだよく思い出せないんですけど、どんな事件だったんですか?」

「えっ、あぁ、そうですね。綾はどんな事件かは説明できませんからね。
 綾が巻き込まれたのは九年くらい前にあった事件です」

「…九年前?」

「老夫婦が幼い子どもの子宮を食べるという事件が全国各地で起きていて…。
 同じマンションにその人たちいたらしくて、綾が誘拐され、部屋に監禁されたそうです。
 なんとか逃げたらしいのですが外で捕まってしまって、そこで紅さんに助けてもらったと聞きました」

「老夫婦…?」

…聞いたことある気がする。
…たしか切彦ちゃんに巻き込まれる前くらいかな。

………。

………。

………。

「あぁ、あの時のっ!?」
35楓味亭:2009/05/24(日) 22:18:46 ID:pb1G8Hzu

やっと思い出すことが出来た。
『揉め事処理屋をやっていけるのか』『自分に向いているのか』『これは適職なのか』『天職なのか』と
将来のことを案じていた時期にあった事件だ。
昼飯を食べに行こうと楓味亭へ向かっている途中に見つけた様子のおかしい老夫婦が傍にいる
幼い少女に殺気を向けていることを感じ、ただ助けた。
真九郎にとってはそれだけのことだが、やはり少女にとっては命の恩人ということになる。

真九郎は綾と光に「ちょっと失礼するね」と声を掛け、足早に席を立ち、店の外へ出た。
もちろん綾に配慮しての行動だ。

「…あの、娘さんは事件のこと覚えているんですか?」

「覚えているというか、覚えていないというか…。
 事件の詳細は覚えていませんけど事件に巻き込まれたという記憶はあるみたいで。
 今でもなんとなく思い出すようで…」

「全部忘れることは出来なかったわけですか…。
 出来れば忘れてしまって、あんな事件なかったことになれば、って思っていたんですけど…。
 やっぱりあんな体験は忘れることは出来ませんよね…」

真九郎は自分の過去と照らし合わせてみる。
家族がいなくなった原因を作ったテロ。

爆音、
悲鳴、
瓦礫、
暗闇、
廃墟、
血の味、
焦げた臭い、
繋いだ手、
死臭、
救助、
絶望。

紫と会うまで誰にも言えないトラウマとなってずっと忘れることは出来なかった。
頭にこびりつき消えることはなかった。
悪夢に何度もうなされた。
全く向き合うことが出来なかった。

綾はそこまで酷い状態でない様子。
あんな酷い事件に巻き込まれた割には随分と良い精神状態のようで安心できた。
36楓味亭:2009/05/24(日) 22:19:39 ID:pb1G8Hzu

「いえ、思い出すのは助けてくれた男の子の部分がほとんどのようです。
 事件自体は思い出さないように話題にはしていませんが、
 綾はずっと助けてくれた高校生に会いたがっていたようで…。
 さっきすごく嬉しそうなメールで『あの人、見つかった!』って私の携帯に入ってきました。
 相当嬉しかったんでしょうね。ふふ。
 もし紅さんさえよければ、たまに会ってやってもらえませんか?」

「あ、はい、俺なんかでよければいつでも。
 でも、俺と関わるとますます忘れられなくなりそうですが」

「それは大丈夫だと思います。
 本来ならトラウマになるような事件のはずが綾が話題にする時はいつも笑顔ですから。
 『あの人に会いたい』って、ずっとそればかり言ってましたし」

本当に大丈夫なのだろうか…。
その後またお礼を言われ、電話を切った。
嘆息し、店に入って行く真九郎。

「はい、携帯。ありがとう。綾ちゃんのこと思い出したよ」

「そうですか。嬉しいです。あ、私のことは呼び捨てにしてください」

「呼び捨てでいいの?」

「はい。ちゃん付けだと嫌な感じがするんです。だから…」

「そっか、わかった。綾、だね」

「はい、お願いします。
 事件のこと、私はあまり覚えてないので説明も出来なくて…。
 でも真九郎さんのことだけは覚えてて。
 助けてくれた後も警察行ってもずっと一緒にいてくれたんですよね。
 それだけで、なんていうか…、すごく救われたんです」

「そう、役に立てて良かったよ」

「役に立てただなんて…。真九郎さんがあの時、
 助けてくれなかったら私は今ここにいることは出来ませんでした。
 私もお母さんも感謝の気持ちで一杯です」

「ありがとう。そんなに言ってもらえるとちょっと照れるね」

「でも本心ですから」

「でも、ま、元気でなによりだね」

「はいっ、真九郎さんのおかげです」
37楓味亭:2009/05/24(日) 22:20:44 ID:pb1G8Hzu

いつになく積極的な綾に驚いている光。
初対面の男の人に名前で呼びかけるなんて光の知っている綾ではありえない。
それほど感謝しているのだろう。
でもそれだけではないような気もする。

「あれはたまたま通りがかっただけだからね。俺の方こそ君に感謝しなきゃいけないな。
 俺が今でも揉め事処理屋なんて仕事やれているのは、君のおかげでもあるんだ」


「…どういうことですか?」

当然の疑問を口にする綾。
真九郎はその疑問に丁寧に答える。

「あの時、迷ってたんだ。このままやっていけるのかって。
 君を助けた後、すぐだったかな。危ない会社に誘われてね。
 将来のことを考えたらそこに入ったほうがいいのか…、とか悩んでいたりしてたんだ。
 で、軽率な行動をとって何度も殺されかけて…」

「…やっぱり大変なお仕事なんですね…」

「まぁね。で、その仕事が終わった後に
 俺が揉め事処理屋を始めるキッカケになった人に偶然出会って相談したんだ。
 そうしたらその人は大声で笑った後、俺に新聞記事を見せて言ったんだよ。
 『偶然で人を救えるなんて最高じゃないか』って。
 それが君の記事だった。
 もちろん俺の名前は書いてなくて一般人だか学生だかが少女を助けたって書いてあったけどね。
 なんか嬉しくなって。
 で、そのまま続けるって決めて今に至るんだけど、俺、要領悪くてその後も何度も死にかけてね」

「それは相手をちゃんと見ないで突っ走って、人の注意もろくに聞かずに、
 いつまで経っても引き際を覚えないからでしょう?
 はい、もやしラーメン大盛りに、塩ラーメンね。
 チャーシューもすぐに持ってくるからちょっと待ってね」

物騒なことを笑って話す真九郎に、タイミング良くラーメンを持ってきた銀子が付け加える。
今の真九郎の説明だけだとバカな揉め事処理屋だと思われるだろうから、
と一応のフォローをしたのだろう。
フォローになっているのかは不明だけど。
相手を見ないで無謀な行動に出たのは事実だから否定できない。
それが恩人である紅香に迷惑がかかりそうになったりもしたから、なお悪い。

銀子は真九郎と綾の前に丼を置いた後、すぐに戻っていった。

綾は動揺しながらも少し感動しているようだ。
自分を護ってくれた人が、自分を助けたことがキッカケで仕事を辞めずに、
もっとたくさんの人を助けていた。
胸が熱くなる。
嬉しくなる。
涙が溢れてくる。
38楓味亭:2009/05/24(日) 22:21:24 ID:pb1G8Hzu

「はい、チャーシューね。…えっ、ちょっと、真九郎。何、女の子泣かせてんのよ?」

銀子は光の前に丼を置いた後、真九郎を睨みつける。
真九郎は胸の前で右手を振り、慌てて否定した。

「俺は何も…」

「すみません。私、ずっとずっと会いたかったんです。私を助けてくれたのに
 連絡先も聞けずにお礼も出来なかったってお母さん言ってました。
 どんな人かって聞いても曖昧にしか覚えてなかったようですし。
 警察の人に聞いても個人情報がどうとかって言って、教えてくれなくて…。
 私が覚えていたのは外見と笑顔と名前の一部で…。
 さっき真九郎さんを見てた時、知ってるような不思議な感じがしたんです」

「そうなんだ。でも凄い偶然だよね。今日は光ちゃんの付き添いで来たの?」

「はい、一人じゃ寂し…、いえ、心配だったらしくて。
 それで少しで良いから時間を作ってほしいって言われて…。ね、光」

「えっ、う、うん!お母さんを通してるけどやっぱり怖くて…。すみません」

「いや、いいよ。当然の行動だと思う。何にも警戒しない方が異常だよ」

三人とも目の前のラーメンに箸を伸ばす。
真九郎はいつも通りに、綾は感動が収まらないようで少し震えていた。
光は何かを真剣に考えているようだった。

ラーメンを食べ終わった頃には客もまばらになっていた。
空になった丼を下げに来た銀子に真九郎は話しかける。

「そうだ、銀子」

「何?」

「お前なにやってんだよ」

「何が?」

「環さんに頼まれてなんかしなかったか」

「…ちょっとお邪魔するわね」

銀子は、光と綾に声を掛けて真九郎の席の隣に座った。
間近にある銀子の冷酷な目が真九郎を射抜いている。
39楓味亭:2009/05/24(日) 22:22:33 ID:pb1G8Hzu

「…聞いた?」

「あぁ、よく引き受けたな」

「…忘れなさい」

「なんで?」

「忘れなさい」

銀子は、長い付き合いの中でも見たことの無いような凄みのある非情な目をして真九郎で睨んでいた。
元々鋭い目つきをする銀子だが、今の目には色んな葛藤が入り混じっているようにも感じる。
真九郎は圧倒され、息苦しささえ覚えた。
改めて意思の強さというモノがどんなに凄いものなのかと実感してしまう。

「そ、そうだ!真九郎さん、携帯の番号を教えてもらっても良いですか?」

「あ、あぁ、いいよ。番号言うから掛けてくれる?
 赤外線とかよく使い方がわからないんだ」

良い娘だ。
話題を変えて、ラーメン屋の隅のテーブル席に突如発生した張り詰めた空気を砕いてくれた。
真九郎は綾に番号を教えて電話を掛けてもらう。
携帯からは…、

『今すぐ死になさい!!』

………。

………。

………。

今までの流れを考えてみたら容易に想像がつくことだった。
色んな人に、個人に専用の着信音が設定してあるなら、設定していない人間から掛かってきたときも
何か特徴ある着信音が使われることくらいは考えておくべきだった。

まずはこの声の感想でも…。

「な、なぁ、なんか気合入ってないか?」

「…そうね」

柄にも無く銀子が顔を朱に染めて目を大きく開いて真九郎を見つめていた。
「死になさい」という言葉を発した自分が恥ずかしいのだろうか。
もっと他に恥ずかしい着信音があった気がするけど…。
40楓味亭:2009/05/24(日) 22:25:03 ID:pb1G8Hzu

いつもなら平然としているか、感情を出して叱りつけるはずだけど、
今日会ったばかりの娘たちの前ではさすがに恥ずかしかったのか?
それとも自分の声に迫力がありすぎて驚いてしまったとか。

何も言わず銀子が真九郎の携帯を取り上げる。
躊躇なくそのままバキッと半分に折り、「はい」と笑顔で真九郎に優しく返してくれた。

その後銀子は席を立って店の奥へ入っていく。
きっと自分の部屋に戻ったのだろう。
こんな状況になったらやっぱり逃げ出したいよな。

でも環さんがマスター音源を確保しているんだからいくらでもコピーできるんだ。
またもらっておこう。
さすがの銀子も焦ったのか。
あとでメールに添付して送ってあげようか。

もしかして情報屋銀子の本領発揮した姿が見れるかも。
環さんのところから音源を探し、無理矢理奪い取る姿は目に浮かばない。
ネットからハックしてデータを壊すのだろうか。
でも環さんは、というか五月雨荘にネット環境なんてなかったと思うけど。
もしかして光でも入ってたりしてないかな。

しばらくすると銀子が戻ってきた。

何も言わず、何もなかったかのように真九郎の隣の席に座る。
感情を出さない平顔はいつもの銀子そのものだ。

興味があったので、なんであんな声を録音したのか、経緯を聞いてみた。


少し前に銀子は環に簡単な仕事の依頼をしたらしい。
環は仕事を終えるとすぐに銀子に連絡し、報酬は違うもので支払ってほしいと要求した。
その報酬が銀子の声の録音だったようだ。
環は、どこからか調達した高感度のマイクを使い、誰もいない静かな道場に銀子を連れて行き、録音したという。
初めは照れていたが、これは仕事の報酬である以上、プロとして開き直った銀子。
「今すぐ死になさい!!」と言ったときには銀子の目は輝いていたんだろうな。
何度か録り直し、使えそうなものを環がチョイスして、真九郎の携帯に入れて設定したようだ。

これは余談だが、闇絵はこれを機に携帯を持とうかと真剣に悩んでいるらしい。
相当気に入ったようだ。
41楓味亭:2009/05/24(日) 22:26:12 ID:pb1G8Hzu

今、目の前では危険と縁の無い話をしている。
けど、ここにいる光以外の三人は死の恐怖を知っている。
死を身近に感じたことがある人間ばかりだ。

今日まで知らなかったけど、綾は小さな頃に何かの事件に巻き込まれたらしい。
真九郎は失敗したら死と隣り合わせの仕事をしている。
銀子は真九郎のことをずっとサポートしているようだった。

今日の会話の話だけで、綾と真九郎は自分が死ぬ恐怖を、銀子は大切な人がいなくなるかも
しれない恐怖を味わったことがある、ということがわかった。

光は知らなかった。
一歩足でも踏み外したら奈落の底に落ちてしまうかもしれない世界があるなんて…。
ほんの小さなのミスで命に危険が及ぶかもしれない世界があるなんて…。
そんなものがこんなにも身近にあるなんて思いもしなかった。
実感も湧かない。
自分の身に何も降りかかっていないのはただの幸運なのだろうか。
当たり前のことが当たり前であるうちは、その大切な価値を感じることが出来ない。
失ってからその価値を感じる人間が大多数だろう。

仲の良い綾の命の恩人で、いかにも優男のような外見をしている目の前の男はそんな世界で何年も生きているらしい。
そんな世界には出来れば関わりたくはない。
でもあるのは事実。
否定は出来ない。

自分一人が否定したところでいつかどこかで巻き込まれるかもしれない。
これから先、自分や周りの人間に何かあったときのため見ておくのも何か勉強になるかもしれない。
危険に対する対処の仕方を学べるかもしれない。

光は一度目を閉じ、決意と覚悟を胸に秘め、真九郎の眼を見た。

「あのっ!私に紅さんの仕事を手伝わさせてもらえませんか?」

「え?さっき言ってた男の子のことがそんなに気になってるの?」

真九郎は光の意外な言葉に戸惑い、光は真九郎の言っている言葉の意味が理解できなかった。
光の思いを知らない真九郎としては当然の反応なんだが…。
思い込みの激しい光にはわかるはずもない。

「えっ!?ちょっ。ち、違います!!」

「でも、顔、真っ赤だよ」

「真っ赤ね」

「光、認めちゃおう」
42楓味亭:2009/05/24(日) 22:27:07 ID:pb1G8Hzu

ちょっと意気込んで顔が赤くなっただけなのに…。
綾まで…。
私、そんなに赤くなってるの?
あれっ、さっきの決意は?
覚悟はどこに行ったの?
かなり重かったよ?
そんなに簡単に流しちゃうの?

「そっか、調べて欲しい一番の理由って、気になる男の人、だからなんだね。
 でもお姉さんも彼のこと好きなんでしょ?
 若いのになかなか難しい恋愛するんだね」

「あ、いえ。えっ!?」

「ん〜、好きになったんだから仕方ないか…。
 でもプライバシーに関わるから一緒には連れて行けないね。
 あ、調べたら報告するんだから関係ないかな」

「で、でもっ」

「好きな人が気になるからっていっても、やっぱりしちゃいけないことがあると思うからさ」

「そ、そういう意味じゃなくて…」

「シンちゃん、そんなこと言わずに連れてってやったらどうだい?
 やっぱり好きな奴のことは気になるもんさ。
 なっ、銀子」

銀正が餃子を持ってきて一言挟んでいった。
餃子はただでサービスしてくれるらしい。
お礼を言い、ありがたく好意に甘える。
なぜ銀子に話を振ったかはわからなかったが…。
銀子はムッとした顔をしていたが、真九郎は特に気にせず話を続ける。

「そうか〜、まぁ危ないことはないだろうから大丈夫だとは思うけど…」

『堕花が揉め事処理屋の手伝いをする』
これはどうなのだろうか。
まぁ、裏十三家の一つ、と言っても何も知らないようなので問題はないか。
でももし何かあってこっちの世界に引きずり込まれたら…。
彼女の人生がめちゃくちゃになってしまう恐れもある。

調査対象は『柔沢ジュウ』。
最悪だ。
『柔沢ジュウ』を調べること自体が大問題だから、もし裏で何かに巻き込まれたら重大なことになる。
命に関わる危険がある。
そういえばこの依頼は引き受けるって決めてないはず…。
43楓味亭:2009/05/24(日) 22:28:01 ID:pb1G8Hzu

「光ちゃんは、今、何年生だっけ?」

「中学三年です」

「ついて来ると危ない目に遭うかもしれないよ。
 まだ中三で命の危険のある場所に望んで行くのはおかしいと思う」

「あんたが人のこと言えんの?」

辛辣な銀子の言葉が真九郎の耳に入った。
いつもの銀子なら揉め事処理屋の手伝いなんてさせるわけがないが、
さっきまでの話を聞いて安全だと判断したのかもしれない。
調べる相手がどんな人物かを知ってたら絶対にこんなことを言わないはずだ。

「はは、言えないかもな。
 あとさっき光ちゃんが言ってた依頼だけどね、
 俺が探偵のようなことをやるよりも、光ちゃんが堂々と調べた方が成功する確率は高いと思うよ。
 俺が調べると、もしかして何も調べられないうちに終わるかもしれないからね」

真九郎が秘密裏にジュウのことを調べると弥生か他の誰かに妨害される恐れもある。
多分警告はしてくれるだろうが、してくれない場合は最悪即死だ。
恩人の息子の素行調査なんてするもんじゃないし、もしするとしたら紅香さんに許可を取ったほうが確実か…。
情けないな…。

隣で銀子が不思議そうにしているが、気にしてはいけない。
依頼の内容も話さないほうが良いだろう。
銀子は紅香さんの息子のことは知ってたんだっけな。
言った覚えはないけど、ま、確認する必要なんて無いか。

「なんでですか?」

「ま、色んなしがらみがあってさ。
 依頼受けるかの返事は保留にして数日以内にその依頼を受けるかどうか連絡するってことで良い?」

「はい、お願いします」

「ありがとう、光ちゃんも一緒に調べられるかはその時に連絡するね」

「は、はいっ」

光は、揉め事処理屋の仕事ぶりが見られる可能性が残ったことに喜んでいた。
その姿をなぜか羨ましそうな目で見ていた綾。

その後は、雑談。
綾が興味を示した真九郎の話や光に聞いた環の話で盛り上がっていた。

しばらく時間が経ち、落ち着いたところで真九郎が支払いを済ませ、楓味亭を後にした。
44名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 22:29:20 ID:pb1G8Hzu
このあとも続いていきます。
45名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 00:36:19 ID:NqQiNVLt
乙した!
46名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 04:04:54 ID:loo91r4I
乙です
47名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 01:20:48 ID:AEH3Qco5
>>44
おお、きてたGJ!
絶奈の純愛も見てみたいわ
48名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 18:35:53 ID:9Q7MPixV
女子高生になった紫が
トウヘンボクの真九郎をいじめる(性的に)SSを希望
49名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 21:07:44 ID:lh6PzRGo
絶 奈:「おひさしぶり、紅くん」
真九郎:「星噛絶奈……。なんの用だ?」
絶 奈:「そう身構えないでよ。今日は戦り合うつもりはないから。
    クリスマスの時のお詫びに、プレゼントを持って来たの」
真九郎:「いらないから、さっさと帰ってくれ」
絶 奈:「ふふふ。コレを見ても同じことが言えるかしら? ジャジャーン!」
真九郎:「自分で効果音出してるし……。なんだ、コレ? バイブ?」
絶 奈:「そんな陳腐なモノと一緒にしないでほしいわね。
    コレは悪宇商会が自信をもっておすすめする夏の新作!
    星噛家が総力をあげてつくりあげた究極にして至高の男根!
    星噛製閨戦壱式百八号、名付けて『無敵砲台』!」
真九郎:「悪宇商会も星噛家もなにやってんだーー!?」
絶 奈:「コレさえあれば、夜の揉め事は万事解決! 包茎早漏短小とは永遠におさらば! 
    外見だけじゃなく、持続力だってモンスター級の超優れモノよ!
    感想は?」
真九郎:「…………すごく、大きいです」
絶 奈:「気にいってくれたようでなによりだわ。
    それじゃあ早速、君の股間の貧相なものと交換しちゃいましょう」
真九郎:「え、ちょっと? どこを握って……、なっ? ぎゃぁぁぁあああッツツツ!!??」
絶 奈:「そうそう。言い忘れたけど、『無敵砲台』は強力過ぎて、並の女のアソコには
    入れられないのよ。受け入れられるとしたら、それは『孤人要塞』たる私だけ。
    もう君は私から離れられない――って、気絶してるじゃない。だらしないわね。
    ……ま、いいか。起きた時には、新しい世界が君を待っているわよ、紅真九郎くん」

50名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 23:53:05 ID:U57UXfKH
     ヽ       j   .す
  大.   ゙,      l.    ご
  き    !      ',     く
  い    ',        ',    :
  で    ト-、,,_    l
  す    !   `ヽ、 ヽ、    _
   ;    /      ヽ、`゙γ'´
      /         \
      !   ト,       ヽ
ヽ__  ___ノ ,!   | | ト,       ゙、
  レ'゙ ,イ ./|!  .リ | リ ! .|! | ト|ト}
 ,イ ,/ ./〃/ / | / .リ/ //イ|.リ
// //ノノ  //゙ ノ'////|.リ/
´彡'゙,∠-‐一彡〃 ト.、,,,,,,,,,,,レ゙
二ニ-‐'''"´      /`二、゙゙7
,,ァ''7;伝 `        {.7ぎ゙`7゙
  ゞ‐゙''  ,. ,. ,.  l`'''゙" ,'
  〃〃"      !   |
              !  l
 !       (....、 ,ノ  !
 j        `'゙´  ,'
     ー--===ァ   /
      _ _   ./
\     ` ̄   ,/
  ` .、       /
   :ミ:ー.、._  /``'''ー-、
    `゙三厂´

51名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 00:14:00 ID:enDJbQZp
>>49
>並の女のアソコには
環さんか夕乃さんならなんとかなりそうな気がせんでもないなw
52名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 02:13:08 ID:w2tGY1JP
>>51
つまり・・・乱入か
53名無しさん@ピンキー:2009/05/29(金) 18:26:45 ID:GJCOFJaE
>>52
何故か知らんが
3人ループで挿入って(ピーに入れまくり的な)意味の乱入
なのか
プレイ中に2人が乱入してくる
のかどっちか分からない

何を いって るんだ おれは 
5449:2009/05/30(土) 01:49:23 ID:7keyS6MB
>>49の続き


 天国であり、地獄であった。
 それが星噛絶奈との睦み合いを終えた紅真九郎の正直な感想だった。
 二人で繰り広げた物理的かつ性的な応酬については、殆ど記憶していない。
 気がつけば、豪奢な寝台に仰向けに転がり天井を見上げていた。かたわらには一糸まとわぬ絶奈の姿が。
 むせかえるほどに濃厚な性臭と、全身に広がる粘っこい倦怠感。
 真九郎は理解した。自分が新しい世界へと足を踏み入れてしまったことを。
 はたして、これは哀しむべきことなのだろうか。それとも、喜ぶべきことなのだろうか。
 少年の思考は自問の迷宮を彷徨う。
 不意に、絶奈が真九郎の胸板についと指を滑らせた。
 酒を飲んだわけでもないのに、彼女の頬は朱に染まっている。先程までの情交の残り火だ。
 鉄板をも貫く凶器と同義の指先が、文字を書くように、または蜘蛛が這うように動く。
「本当に素敵だったわ、紅くん。ね、もう一回シよ?」
「……勘弁してくれ」
 普段の絶奈からは想像できない、とろけるような甘い声音。だが、真九郎はにべもなく断った。
「ええー? 私はまだ満足してないわよ。あと一回だけでいいからがんばってよ。
 ほら、口ではそういっても股間の大砲はビッキビキじゃない」
「……無理なものは無理だ。いくらモノが勃っても、体力がもう限界なんだよ」
 喉奥から搾り出された拒絶は、もはや哀願に近かった。
 星噛製の男性器の威力は確かに凄まじい。コレで貫かれれば、貞淑な修道女さえも淫奔な娼婦に変えてしまうだろう。
 しかし、それだけのモノを使いこなすには、真九郎の経験値があまりにも不足しているのだ。
 崩月で鍛えた体は決して脆弱ではない。それでも、根こそぎの体力気力を持っていかれた。
 たとえるなら、原付の免許をとったばかりの人間が、いきなりF1マシンを操縦させられたようなものだ。
「ふ〜ん。そうなの」
 興醒めだといわんばかりの絶奈の口ぶりだが、今の真九郎にそれを気にかける余裕はない。
「……とにかく、今は休ませてくれよ」
 もそもそと穴兎のように布団にもぐりこむ真九郎。今日は色々なことがありすぎた。心身ともに休息を欲している。
 だが、「はい、そうですか」とそれを認める星噛絶奈ではない。
「こうなったらあとはもう、逆レイプしかないわね」
「なんでそうなる!?」
 真九郎が抵抗する暇もあればこそ。
 がばっと一息に毛布を剥いだ絶奈は、次の瞬間には真九郎の上に馬乗りになっていた。
「私は和姦のほうが好きなんだけど、こっちのほうが君の好みだっていうんなら、お応えするのもやぶさかではないわ」
「そんなわけないだろ、バカ野郎!」
 なけなしの体力を振り絞った真九郎の抵抗をものともせず、絶奈は易々と少年の四肢を布団に縫い留めた。
 もはや真九郎に為す術はない。ただ蹂躙される時を待つだけの哀れな犠牲獣。
 絶奈は怯える真九郎に猫科の肉食獣のような笑みを浴びせると、ゆっくり自分の腰を移動させた。
 散々に男の精を貪った後でありながら、彼女の性器はいささかの形崩れも見せていない。
 割り開かれた陰唇が、真九郎の逸物を咥え込まんと厳かに花開く。
 淫靡に蠢く肉襞が、すっかり観念して大人しくなった真九郎のモノの先端に触れた刹那、
「真九郎さん、無事ですかッ!?」
 非自然的な轟音と共に寝室の扉が爆砕され、立ち上る粉塵の中から一人の女が姿を現した。
5549:2009/05/30(土) 01:50:09 ID:7keyS6MB
「なッ!? 核爆発にも耐える超合金製の扉が」
「ひょっとして……」
「崩月夕乃、推して参りました!」
 黒曜石よりも黒く輝く長い髪。服の上からでもはっきりとわかるたわわに実った乳房。
 他の追随を許さない圧倒的なまでに美しい白皙の顔貌。双眸に宿す紅蓮の業火。
 間違いなく、裏十三家が一、崩月家の現当主崩月法泉の孫娘、崩月夕乃その人であった。
「夕乃さん!」
 これで助かると喜色満面に姉弟子の名を叫ぶ真九郎。応えてにっこりと微笑む夕乃。ただし、目は笑っていなかった。
 真九郎の頬がわずかに引き攣った。
「いろいろと聞きたいことも言いたいこともありますが、とりあえず後回しにしてあげます。
 今はそこの淫売さんから真九郎さんを取り戻すことが最優先です」
 敢然と夕乃は絶奈と相対する。流麗な立ち姿には、なんの気負いも不安も感じ取れない。
 対する、絶奈の表情は険しい。
 ここは悪宇商会のセーフハウスの一つ。登記簿に載らず、警察も手が出せない闇の聖域。
 それがこうも早く発見された上、突破されてしまったとあっては、最高顧問として腹立たしいことこの上なかった。
 見れば、粉塵の向こうでは警護の任に当てていた黒服の男たちが、ダース単位で地に伏し呻いている。
 男たちは皆、有能な戦闘屋だった。裏十三家の人間が相手でなければという但し書きはつくが。
 もっとも、絶奈にとって彼らはいくらでも替えのきく駒。信頼を置くに値しない。
 彼女が真に信頼し、自分の寝室を預けていたのは同じく裏十三家の――
「切彦はどうしたのかしら? あとで紅くんを貸してあげるって条件で見張りにつかせていたはずだけど」
「切彦? なんです、それ? 美味しいんですか?
 ――ああ。そういえば、途中で刃物を振り回す狂犬と逢ったので、ちょっと躾てあげましたっけ」
 しれっと言い放つ夕乃。ますます顔をしかめる絶奈。
「さて、星噛さん。うちの真九郎さんを返してもらいましょうか」
 もちろん、そのあとは全殺しです。そういって、夕乃は悠然とした足取りで寝台へと歩を進めた。
 絶奈は忌々しそうに舌打ちをする。
 崩月の戦鬼。比類なき暴力の具現。その猛威はキリングフロアで身をもって味わった。
 生まれついての戦鬼ではない真九郎でさえ、あそこまで絶奈を追い込んだのだ。
 ならば、純血の戦鬼たる崩月夕乃の戦闘力はどれほどのものか。
 状況を打破すべく思索をめぐらせていた絶奈は、ややあってなにかを思いついたようににやりと笑った。
「無駄よ、崩月の」
 夕乃の足が止まった。
5649:2009/05/30(土) 01:51:07 ID:7keyS6MB
ここまで。つづきは後日。
57名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 02:25:15 ID:HRIS9+oQ
おおっ、本当に絶奈で描いてくれる方がいるとは!?
ありがとうございます!
GJです!
続きも楽しみにしてます!
58名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 03:03:29 ID:j4W01SIP
GJ! 楽しみにしてるぜ!
59名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 10:01:06 ID:ZUrNF6iU
乙!なんか楽しみだw
60名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 19:08:58 ID:58EX9CyS

だれかWikiいじってくれたみたいだね 現行スレ更新されてた
61名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 23:48:26 ID:8JS0GemA
>>56
乙した!
62名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 03:00:17 ID:jkjJdVMD
保守
63名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 04:14:17 ID:f1C9fFfy
保志
6449:2009/06/04(木) 02:31:27 ID:y/Tt28BK
wiki編集してくれた方、ありがとうございます。
>>55の続きです。

「紅くんはあなたたちのところへは帰らないわ。私と一緒に悪宇商会で人でなしな日々を送るんだから」
「は? え? ちょっと? せめて人間らしく……」
 絶奈の言葉に、夕乃よりも早く真九郎が反応した。
 このサイボーグ娘はいったいなにを血迷ったことを言っているのか。
 駆け出しとはいえ、紅真九郎は揉め事処理屋。悪宇商会とは敵対することこそあれ、手を組むことなどありない。
 商会の所業や構成員には少なからず含むところもある。所属するなど言語道断だ。
 それについては夕乃も同意見だったようで、
「なにを言い出すかと思えば、そのような世迷言を。
 いいですか? 真九郎さんは高校を卒業したら、私と結婚して崩月流を継ぐんです。
 悪宇商会に与するなど、断じてありえません!」
「もしもし、夕乃さん? 前半おかしくない? そんなの初耳なんだけど……」
 訂正。どうやら、夕乃と真九郎とでは、その考えに大きな隔たりがあったようだ。
 夕乃の力説を受けても、絶奈はどこ吹く風と不敵な笑みを崩さない。
 二人の美少女の視線が中空で衝突する。間に光った稲妻は真九郎が見た幻影だったか。
 睨み合うこと十数秒。先に相手から目線を切ったのは意外にも絶奈だった。
「もう一度言うわ、崩月の。耳穴かっぽじってよく聞きなさい。
 紅くんは、帰らない」
 幼い子どもを諭すような、ゆっくりとした口調。
「ふざけるのも大概にしなさい!」
 夕乃の一喝は真九郎を萎縮させただけに終わり、絶奈の毛筋一本揺らすことができなかった。
 絶奈は不気味なほど優しい笑みを浮かべると、持ち上げた真九郎の右掌をそっと己の下腹部に押し当て、
「紅くんは帰らない。だって、私のお腹には紅くんの赤ちゃんがいるんだもの!」
 爆弾を投下した。
 今この場において、その台詞は爆弾発言どころの騒ぎではなかった。正真正銘、爆弾そのもの。
 広い室内からあらゆる音源が消滅し、絶対の静寂が空間を満たす。
 まるで、この部屋だけ世界の理から弾き出されたようだった。それほどのデッドサイレンス。
 そして、きっかり一分が経過したところで、
「なんだってぇぇええッツ!?」
 真九郎が絶叫した。間髪入れず夕乃が続く。
「ど、どういうことですか、真九郎さん!? 赤ちゃんってなんですか、ベイビーですか!?
 一昨日、『オレが好きなのは夕乃さんだけ。夕乃さん以外の女なんてメスブタも同然だ』って言ってくれたじゃないですか!」
「落ち着いて、夕乃さん! オレはそんなこと言ってないよ!
 おい、アンタ! 赤ちゃんってどういうことだ!?」
 くつくつと笑いを零しながら絶奈が答えた。
「あら? あれだけ膣内に射精しておいて、覚えがないとは言わせないわよ。
 君も知ってのとおり、星噛の人工臓器は超高性能。妊娠や出産もできるし、受精したらすぐにわかる機能もついているの。
 君のおちんちんも星噛製でしょう? 抜群に相性がよかったみたいでね。当たっちゃったってわけ。
 やだ、思い出したら、また濡れてきちゃった」
 真九郎がうっと呻く。
 ノイズ混じりだが、確かに記憶がある。
 もぎとられた逸物。嗤う絶奈。覚醒する意識。異形の男根。にじり寄る豊満な肢体。昂る欲求。吹き飛ぶ理性。味わった至上の肉悦。
 間違いなく、真九郎は絶奈を抱いた。ならば、行為の先に妊娠という結果があるのは当然のこと。
「…………やっちまった」
 油断した自分が間抜けだった。避妊を忘れていた自分が愚かだった。
 どんなに後悔してももはや手遅れ。純然たる事実を覆すことなど、神ならぬ人の身でできようはずもない。
 これから先、紅真九郎の人生は大幅な制約を課されることだろう。星噛絶奈の望むままに。
 突きつけられたあまりにも衝撃的な事実に、真九郎の意識が肉体から乖離しかける。
 だが、蛇のように絡みついてきた絶奈の体の感触がそれを阻んだ。
「ねえ、紅くん。これからは家族三人で悪事に邁進しましょうね。
 そういうわけだから、崩月の。紅くんのことは、きれいさっぱり諦めてちょうだい」
「あ、あああ、そんな、まさか……。嘘です、真九郎さんが…………」
 絶奈の声が耳に入っていないのか、夕乃は呆けたように意味のないことをぶつぶつと呟いている。
 常の大和撫子然とした彼女からは、遠くかけ離れた姿だった。
6549:2009/06/04(木) 02:31:58 ID:y/Tt28BK
 真九郎から見えない位置で、絶奈はしてやったりとほくそ笑んだ。
 実のところ、絶奈は妊娠などしていない。
 ≪星噛製陸戦壱式百四号≫の子宮には特殊な仕掛けがある。それは望まぬ妊娠を避けるための防御装置。
 絶奈自身の意志でそれを解除しない限り、受精確率は絶無である。
 正攻法では怒れる夕乃に抗し切れないと踏んだ絶奈は、弁舌の刃で活路を開こうとしたのだ。
 正面から勝てない相手には搦め手を用いるのが定石。
 少しばかり希望的観測も入っていたが、結果として絶奈の狙いは的中した。
 真九郎は沈黙。夕乃は自失。絶奈の一人勝ち。
 真九郎が手玉に取りやすいことは既知だったが、あの崩月の娘までこうも呆気ないとは、正直言って拍子抜けだった。
 裏を返せば、崩月夕乃にとって紅真九郎がそこまでの存在だったということか。
 こんな戦鬼化以外になんの取り得もないような少年が。
「真九郎さん…………。うちの真九郎さん、私の真九郎さん……」
 夕乃はまだ立ち直っていない。この隙に痛撃を加えて、とっとと姿を消すのが上策。
 ちらりと絶奈が夕乃に目を向ける。その目には多分に侮蔑の感情が含まれていた。
 裏十三家の次期当主ともあろう者が、男一人のことで醜態をさらすな。
 だが、夕乃の姿を視界に捕らえた途端、絶奈の顔色が変わった。全身の産毛がぞわりと逆立つ。
 目に映るのは先程までと変わらぬ茫然となった女の姿。だというのに、この違和感はなんだ。
 アレは危険。極めて危険。
 数多の修羅場を潜り抜けてきた絶奈の第六感が、大音量で警鐘を鳴らしていた。
「夕乃、さん……?」
 絶奈に遅れること暫し。真九郎も姉弟子が纏う空気の変質に気がついたようだ。
 直後、爆音が響く。
 それまで夕乃が立っていた床が醜くひしゃげる。
 なにが起きたか、真九郎と絶奈が理解するよりも速く寝台を衝撃が襲う。続く、ぼふっというくぐもった音。
 衝撃と音の正体は確認するまでもなく崩月夕乃。
 黒真珠のような夕乃の瞳が真九郎の顔を覗き込んだ。
「真九郎さん」
 優しい声だった。八年に渡って、真九郎を叱咤激励してきた少女の声。
 夕乃は崇高な聖母のごとく慈愛に満ちた笑みをつくると、
「私も真九郎さんの赤ちゃんを妊娠します!」
 断固たる決意でそう宣言した。
「「――――は?」」
 真九郎と絶奈の声が重なる。
6649:2009/06/04(木) 02:32:32 ID:y/Tt28BK
「嗚呼。なんて可哀想な、真九郎さん。
 私がえっちなことをさせてあげなかったから、こんな女の姦計に嵌ってしまったんですね。
 でも、もう安心してください。すぐにお姉さんが可愛がってあげますから」
 あまりに飛躍しすぎている夕乃の論理。真九郎は咄嗟に言葉が出ない。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、崩月の!」
 どうにか正気を取り戻した絶奈が夕乃に食ってかかった。
「なんですか、お妾さん」
「は? 妾ってなによ?」
「私が真九郎さんの奥さんで、あなたはお妾さんです。
 本当はすぐにでもぶち殺してあげたいんですけど、お腹の赤ちゃんに罪はありませんから。
 まるで生きるに値しない外道が母親だとしても。
 あ、ちゃんとお手当ては出してあげますから安心してくださいね」
「…………いい度胸してるわね、妄想電波女」
 静かなる殺気をこめた絶奈の視線を、夕乃は涼やかな笑顔で受け流す。
 その笑顔がたまらなく癇に障った。
 と同時に、冷静さを取り戻す。敵のペースに飲まれるな。戦うのは常に自分の土俵で。
 二人の決定的な差を見せつけてやる必要があった。絶奈はなにを思ったか、自身の淫唇をくぱあと広げ、
「これを見なさい、崩月の。
 私のココは星噛の技術を駆使して珠玉の一品に仕立ててあるのよ。ミミズ千匹にして数の子天井。
 この味を知ってしまった紅くんが、あなたの貧弱なマンコで満足できると思って?」
 自信満々の絶奈に向けて、夕乃は誰が見てもそれとわかる嘲笑を口元に浮かべた。
「愛液のかわりに機械油を垂れ流すようなそそで真九郎さんが満足できるわけありません。
 私の綺麗で未使用な天然モノでこそ、真九郎さんは本当の快楽を得られるんです。
 それこそが私と真九郎さんの愛の力!
 わかったら、さっさと消えなさい、淫乱ポンコツガラクタ痴女」
 怒りと屈辱のあまり、絶奈の顔面がその頭髪よりも赤くなる。
 二人が放つ殺気は瘴気へと変じ、室内を隙間なく満たした。それにあてられた真九郎は息をするのがやっとだった。
「ここまでコケにされたのは、紅くんに強奪戦を申し込まれて以来よ。
 あなたといい、柔沢紅香といい、紅くんの周りにはこういう女が集るフェロモンでも出ているのかしら。
 いいわ。そこまで言うんなら、一つ勝負といこうじゃない」
「勝負、ですか?」
「そう。私とあなた、どっちが紅くんを気持ちよくしてあげられるかの勝負。
 あなたが言う愛の力が勝つか。それともやっぱり、私のこの体が勝つか。白黒つけましょう」
 絶奈はどかっと真九郎の左側に腰を下ろす。
「望むところです! その勝負、受けて立ちましょう」
 夕乃は流れるような動きで真九郎の右側に陣取る。
 髪の色から生き方まで、全てが正反対の二人の美少女が、真九郎を挟んで相対した。
6749:2009/06/04(木) 02:33:28 ID:y/Tt28BK
ここまで。なんか全員おかしくなってしまったorz
次回はちゃんとエロ入れます。
68名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 02:42:02 ID:bO/yfXKy
夕乃さんぶっ飛び杉wwww

いいな
もっとやれ!!!
69名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 04:03:43 ID:cKbk/w/0
乙!なんかいろいろカオスw
70名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 16:10:17 ID:gKs790DZ
乙です!
原作のキャラが出てて面白いっす。
続き待ってます。
71名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 21:26:17 ID:Nc5fbgbb
>>67
おつ!エロに期待
72名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 23:05:43 ID:IZCZsXPU
おつした!
73名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 18:55:09 ID:mVmofSwL
なんだ貴方が神か・・・乙!
74名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 13:32:56 ID:HBGhirXi
保志
75名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 00:45:38 ID:Xn0QNgYu
総一郎
76名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 12:44:02 ID:5npzRG4J
うな
77名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 12:47:01 ID:jrVF11Ix
ジュウ
78名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 21:54:02 ID:tG/fyjyt
>>77で不覚にもww

>>67
gj!!!
79名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 19:46:46 ID:QOVy2u4D
denpa

今日も朝が来る

ゆっくりとした鼓動にやさしく包み込まれながら○○○は目蓋を開けた
大きく切れ長の黒目がちな瞳は困惑に染まっている。まるで初めて世界を見るような。

だがその震える視点が、光沢の無いパサパサの金色の何かに止まった時
瞳は焦点を取り戻し、先ほどまであった透明な緊張感は薄らぐ。

何も分からない。把握できていない。

しかし○○○はまどろみの中に戻る。真っ白いシーツに裸体を絡め、握っていたあたたかいものを掴みなおす。


大好きな姉の寝姿を見に来た妹の絶叫がとどろくまで
80名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 23:34:50 ID:7ucHxFHl
保守
81名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 19:48:57 ID:hRLZtSsw
つずきマダー
82名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 19:58:10 ID:PW3qYMqT
>>31のリクエストにお応えして絶奈の純愛モノを書こう



としてた時期が俺にもあった
83 ◆JI6GRfrLos :2009/06/15(月) 02:29:43 ID:gaX8ORt0
「またか…」
ジュウは新品になっている歯ブラシを見て溜め息をついた。
最近、家の消耗品が何時の間にかに補充されている事が多い。
ひげ剃りや洗剤。ティッシュや歯ブラシにいたるまで。
そしてそれらのゴミが何故かなくなっている。
細かい事だが、部屋が片付ける前に綺麗になっていたりするのは不気味だ。
…どうせ紅香が気紛れにやっているのだろう。
適当な理由で納得し、ジュウは考えるのをやめた。

――――――――

「はぁはぁ…ジュウ様の…ジュウ様の使用済み歯ブラシ…使用済みの…歯ブラシ…」
荒い息を尽きながら、堕花雨は帰路についていた。
「これで…歯を磨いても宜しいのでしょうか?いいですよね。全然問題ないですよね?」
自問自答する声は艶を帯び、明瞭な意志が感じられる。
歌うように雨は続ける。
「何故ならジュウ様とわたしには前世の絆がありますから。
使用済みの歯ブラシで歯を磨くことなど当然です。当たり前です。真理であります。
オリハルコンより強固な絆で結ばれいるのですから。
従者として、下部として主の使用品を受け取るは最大の名誉です。
そしてジュウ様はわたしを愛してくださってます。
50音最初の二文字は伊達ではありません。
従って問題ありません」
無茶苦茶な理論だが、それを咎めるものはいない。
足を止め、歯ブラシを構え、ひと息つく
「堕花雨。参ります」
はむ。とかぶりつき、口内全体で歯ブラシをなめあげる。
「あぁ…飲んでしまいました…
わかります。ジュウ様の成分がわたしの細胞と溶け合い混じり合い一つになっていくのが…
身も心もジュウ様に染まっていくのがわかります…
この思い出があれば冥界の王ハ・デスさえも打ち取り天上天下をジュウ様に献上することさえ造作もないでしょう…」
月を見上げ、涙さえ浮かべながら雨はひとり言葉を紡ぐ。
「ジュウ様…ジュウ様の全ては何人たりとも犯させは致しません…
全ての私品はわたくしが責任をもって管理いたします。御安心下さい」

――――――
ほのぼの純愛ってこんな感じだよね?
84名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 06:43:35 ID:0V/HoWUs
怖いよ…
85名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 18:26:30 ID:wwBUJXTm
なぜか違和感感じないんだが
86名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 19:43:13 ID:0cXxbC9c
実は雨の前に弥生さんがこっそり摩り替えて(ry
87名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 20:16:20 ID:UPgbHl5P
>>83
どっかのドラマCDサンプルにインスパイアされた?
ともあれ乙

ふと、夕乃さんバージョンも出来そうだと思った。
88名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 20:28:36 ID:zx1Gaxgj
やはり雨はいいなぁ…このスレの変態雨を見るのが大好きです。
89名無しさん@ピンキー:2009/06/15(月) 23:57:23 ID:gaX8ORt0
>>87
他スレで聞いて、すぐ書いた。
夕乃さんバージョンね…真九郎のオナニーティッシュをコレクションしてる夕乃さんとか?
90 ◆JI6GRfrLos :2009/06/16(火) 00:29:36 ID:52b2djzH
「観念したら?真九郎くん?」
「くっ…だれがっ!」
どん。と衝撃を受け、壁にぶつかり、自分が殴られた事に気付く。
血と胃液がせり上がり、強烈な吐き気とめまい。
絶奈との戦力差は歴然だった。
「今ので気絶してればよかったのに…頑丈なのも考え物ね。まぁたっぷり苦しんで…」
「お待ちなさいっ!」
コンクリートの壁を突き破り、そのまま絶奈を吹き飛ばす。
立つ影は2つ。
「真九郎さんをいぢめる人は許さない!おねぇちゃんホワイト!」
「同じく、おねぇちゃんレッド…」
「「2人はプリプリ!!」」
どっごん。とカラフルな煙幕が立ち込める。
「夕乃さん!…紅香さん?!何をしてるんですか?」
「真九郎さん。わたしはおねぇちゃんホワイトです。おねぇちゃん、と呼んで下さい」
「いや、でも」
「呼んで下さい」
「あの…」
「呼んで下さい」
「…おねぇちゃん」
「なんですか?真九郎さん?」
聞きたい事はいくらでもあるが、とりあえずは…
「…その格好は?」
おねぇちゃんホワイト(夕乃さん)はフリフリのレースをふんだんに使ったドレス。
青いリボンがアクセントになっている。
頭にはヘルメット。色つきのカバーガラスで顔の上半分を伺う事は出来ない。
おねぇちゃんレッド(紅香さん)は赤い皮のスーツに赤いサングラス。
いつもの拳銃片手に佇んでいる。
…紅香さんって年齢的におねぇちゃんは…
「真九郎。考えた事を口にだしてみろ」
「…スーツ。よくお似合いですね」
危なかった。
「真九郎さんっ!わたしはどうですか?」
「…夕乃さんも可愛いですよ?」
「今はおねぇちゃんです」
「…おねぇちゃんかわいい」
プライドよりも、命は大事だ。考えるんじゃない。感じよう。
「もうっ真九郎さんったら。年増なんて目でもないなんて大胆過ぎですよ?」

―――――――
あれ…おかしいな…俺、夕乃さんバージョン書こうとしてたのにな…まぁいっか。
91名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 03:07:38 ID:mLXgrPj1
>>90
久々に声出して笑ったじゃねえか

っていうかプリプリ同士を戦わせてどーするw
92名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 04:09:32 ID:A2hBT+Cj
>>90
夕乃さん!…紅香さん?!
の部分ワラタw

あと細かいことだけど絶奈は真九郎のこと名字で呼ぶぞ
93名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 04:29:50 ID:d731uI0r
環さんのことも忘れないでいてあげてください
94 ◆JI6GRfrLos :2009/06/16(火) 07:32:28 ID:52b2djzH
環さんね…環さんか…
―――――
「よく、たどり着いたな…」
ぎぃと軋む音を立て、男たちがこちらを向く。
数はおおよそ20。
その目は一様に濁り、常軌を逸したものたちだとわかる。
「ジュウ様。おさがり下さい…」
「いや…雨は下がってろ。俺はコイツらの目的を聞きたい…」
くつくつと笑いが木霊し、狭い部屋に嘲笑が響く。
「…何がおかしい?」
「くっくっく…我等の目的を聞きたいのだろう?教えてやろう…我等の目的はっ」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「この世の女の貧乳化ぁぁぁっ!我等こそが貧乳教祖っ!
つるぺたはすてぇぇぇぇぇたぁぁぁぁぁっす!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
怒号の後に蔓延した沈黙が痛い。
こんな人間に振り回されたのか…
「…早く帰りたくなってきた。終わらせてくれ」
「御意…あの見苦しいもの達を成敗してきます」
「ほざけっ!貧乳普及率66%のお前らに我等の野望は打ち砕けぬわっ!」
「…もしかしてわたしもカウントされてるのかしら?」
「気にするな円。着痩せするだけだと思え」
「今、明確にわたし達を線引きしましたね?雪姫?」
「落ち着けよ。おまえら…」
「そうです。発展的素養がないと育乳が出来ないではないですか。
髪の一本から爪の先までジュウ様のものです。胸もジュウ様が大きくして下さいます。今は小さくとも…」
「雨。おまえが一番落ち着け…授乳の役割を果たせればいいとかだろ。そこは」
「…ジュウ様が吸ってくださるのですか?」

――――――

あれ…環さんいないな…そして何かが違う。
95銀子のショットガン:2009/06/16(火) 14:11:23 ID:PM3Jh/jL
使いまわしのネタだけど……

「ちょっと真九郎」
「なんだ銀子どうした」

「アンタは今日誕生日なんでしょ」
「あぁそうだな、俺も十八か、まぁ18才になったからって特に何もかわらないけどさ」
「そう? 結構大事なことが出来るようになるんじゃないの」
「そうかぁ? 酒タバコ選挙権は二十歳だろ、ギャンブルだって18才でも学生は入場禁止だろ? あとなにが……」
「……あら、もうこんな所ね、誕生日祝いにそこの自販機でジュースおごってあげるからここで待ってて」
「わるいな、銀子」

「はい、サービスで開けておいてあげたわよ」
「そうかありがとな、どれ………、あれ? なんだか味が変な気が…」
「なに…私が買ってきたものにケチつけるわけ?」
「いや……すまん…(でもなんかおかしいな、……なんだか急に眠くなって……Zzz…Zzz)」

「……あれっ……そうだ……ジュースを飲んでたら急に眠気が……ここは一体どこだ? って銀子! なぜ俺と一緒のベッドに?!」
「ここは保健室のベットよ」
「ちょっと待て銀子、俺たちなんで服着てないんだ?」

「あたしの両親達がもうすぐここにくるわ、そしたら皆で市役所に行くわよ」
「だから……なんで市役所なんだよ……」
「婚姻届に決まってるじゃない。アンタは18才になったんだから問題ないわよね。とりあえず入籍だけでいいわよ。お式や新居は卒業してからね。いいこと、ちゃんと責任とってもらうわよ!」
「……orz」

96名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 19:30:00 ID:y+7wSVFI
で、>>66の続きはまだですか?
97名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 21:12:10 ID:1+6mbndd
このスレに舞い降りる壊れたキャラたちが大好きですたい。 みんなGJだー!
98名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 23:36:37 ID:7v7cL+Xo
>>93
環さん書いてるけどエロで糞詰まり
文才ある人が羨ましい…
99名無しさん@ピンキー:2009/06/16(火) 23:59:44 ID:52b2djzH
>>98
ぶっちゃけオープンエロなキャラでエロは難しいよな。
かえってキャラを崩しにくいから。
100名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 15:47:42 ID:ej7bFhxk
環さん…実は処女…とか?
101名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 18:49:12 ID:J6M/Crvh
ちょっとご無沙汰してたら何というGJ!
どれもこれもナイスです
102名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 23:44:02 ID:bLC+byud
>>100
環さんが処女?うん、ありえる!
103名無しさん@ピンキー:2009/06/18(木) 11:09:19 ID:WPFHRAjj
まさかここでのたもうたスレの住人と会うとは
104名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 02:16:06 ID:WspvkyId
環さんは処女
105名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 08:20:22 ID:VibWuAh1
環さんは処女!
106名無しさん@ピンキー:2009/06/21(日) 10:47:31 ID:d1hz4sKi
環さんは処女!!
107名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 00:11:58 ID:BXEiuDus
ちょい抑えような
ありえるけど
108名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 17:22:10 ID:kb8kz5DS
すいませんでした。
109名無しさん@ピンキー:2009/06/22(月) 23:57:52 ID:xZAhIOUb
         / ̄ ̄ ̄ \
      /   :::::\:::/\  
     /    。<一>:::::<ー>。 
     |    .:::。゚~(__人__)~゚j すいません…!
     \、   ゜ ` ⌒´,;/゜    
        ⌒ヽ゚  '"'"´;゚ 
     /     ┌─┐
     i   丶 ヽ{ .毒 }ヽ
     r     ヽ、__)一(_丿
     ヽ、___   ヽ ヽ 
     と_____ノ_ノ
110名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 21:40:12 ID:E+pgf9mx
ジュウを描きたくなったから描いてみたんだが酷すぎる(笑)
http://imepita.jp/20090624/778240
111名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 13:38:27 ID:JWCd2jd7
>>66の続きずっと待ってるよ。絶奈と夕乃さんとの3Pモノなんて容易じゃないだろうけど
112名無しさん@ピンキー:2009/06/26(金) 18:11:47 ID:Jt90SSMd
>>106
禿同
113名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 06:57:36 ID:hcipoNXb
>>111
禿げ上がる程同意
114名無しさん@ピンキー:2009/06/29(月) 15:26:22 ID:zaI1oFRm
保守
115ぬたきっち:2009/06/29(月) 23:24:34 ID:zLckaP0U
保守
116名無しさん@ピンキー:2009/07/01(水) 16:30:45 ID:9NrUSinK
保守
117名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 03:56:24 ID:EDtHIktw
環と絶奈は良い友達になれると予想。

真九郎をおもちゃにするという意味で。
118名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 04:26:42 ID:Df5Xur7M
真九郎におもちゃにされる、の間違いだな
119名無しさん@ピンキー:2009/07/03(金) 23:37:15 ID:7Ey5FHaq
真九郎がおもちゃにされる、だろjk
120名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 07:10:41 ID:HYWBnore
真九郎におもちゃにされる、の方がいいわ
純愛が一番だけど
121名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 23:58:19 ID:4z2woZ7B
禿同
122 ◆WsILX6i4pM :2009/07/06(月) 15:15:24 ID:6MYV7NxO
久々にSS書きたくなったから書くわ。
次のレスの内容をそのレスが書かれた時点から一週間以内に書く。
123名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 15:31:13 ID:WUXYce0u
真九郎と夕乃さんのらぶらぶえっち
紫に嫉妬した夕乃が強引に迫るというノリからで
124 ◆WsILX6i4pM :2009/07/06(月) 15:51:29 ID:6MYV7NxO
把握
締め切りは13日の15時。これより早くなることはあっても遅くならないようにする。
125名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 23:47:48 ID:G8wFJ6MI
待ってます!
126名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 23:59:06 ID:tXNrLwSX
頑張って下さい
127名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 03:56:25 ID:rvOUgRLT
>>124
ガンバレ、めっさガンバレ
128 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:19:00 ID:BVPyjrJx
一週間どころか一晩でジェバンニしてしまった。
つうわけで投下。
129 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:21:17 ID:BVPyjrJx
「し〜んくろ〜っ!」
 放課後、買い物を済ませて五月雨荘へと帰って来た真九郎を迎えたのは五月雨の門に寄りかかるように立つ九鳳院紫の明るい声だった。
「紫?」
 小走りに駆け寄ると、紫は嬉しそうな笑顔を浮かべて真九郎にすり寄って来る。
「どうしたんだよいきなり」
 約束はしていない。携帯にもやってくると告げるような連絡は入っていなかったはずだが。
「急に会いたくなってな。せっかくだから驚かせてやろうと待ち構えていたのだ!」
「なんだよそりゃ……」
 大人びた口調とは裏腹に、やることは年相応に子供じみた紫に少しだけ呆れながら、歩き出す。
「ちょっと待ってて。今部屋を開けるから」
 言って鍵を取り出す為に、両手をふさぐ内、片手の買い物袋を下ろす。
「ふむ。部屋まで私が持つぞ!」
 鍵を取り出す間に、買い物袋を両手で持ち上げた紫が勝手に歩き出す。
 五月雨荘の門から部屋までならば心配するような距離でもないし、下ろした袋には卵や豆腐のような落としていけないような物は入っていない。
「じゃあ、折角だからお願いしようかな?」
 頼られた事が嬉しいのか、満面の笑みで紫が頷いてみせる。
 扉の前に立った紫に遅れて真九郎は鍵をノブに差し込む。カチャリと小気味良い音をさせて鍵が開く。
「それではどうぞ、姫?」
「んむ」
 ちょっとだけふざけながら部屋へと二人で入る。
「そういえば紫?」
 冷蔵庫を開けて買ったものをしまいながら問う。
 自分の分を持ってきた紫が首を傾げて「なんだ?」と返した。
「今日は晩御飯食べてくのか?」
「あぁ。屋敷のご飯も美味しいが真九郎のご飯が恋しくなってきていたしな」
「あはは。一流シェフと並べなれると肩身が狭いな」
 苦笑しながら、今一度冷蔵庫の中身を確かめる。
「う〜ん……。急だったしあんまりスゴいのは作れないかな……それでも良い?」
「はんばーぐはっ!?」
「無理」
 む〜っ、とむくれる紫だったが、すぐに気を取り直したようで、むくれ顔を正した。
「まぁ真九郎のご飯ならなんでも良いぞ。私は寛大なのだ」
 真九郎はそんな紫の頭を撫でてやるとせめて少しでも喜んでくれる献立は何かと頭を捻らせ始めた。
130 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:22:33 ID:BVPyjrJx
 † † †

 真九郎の部屋のチャイムが慣らされたのは夕飯もそろそろ出来上がろうかという頃だった。
 さしずめ夕飯の匂いに釣られて環さんが来たのではないかと判断し、ちょうど良い塩梅になった味噌汁の火を止める。
「はい、今出ます!」
 扉の向こうの客人に声をかけながら、扉を開く。
「こんばんは。真九郎さん」
「あ……夕乃さん」
 想定していなかった相手に一瞬呆気に取られていると、夕乃が手にしたタッパーを掲げて見せた。
「家のお夕飯なんですけど、作り過ぎちゃって」
「それでわざわざ家まで?」
「ええ……ご迷惑でしたか?」
「いや、そんな事はないよ。上がってよ夕乃さん」
「はい」
 笑みを浮かべる夕乃を招き入れ、自分は台所に向かう。受け取ったタッパーの中身を暖めようと蓋を開こうとして――
「なぜお前が!」
「む、紫ちゃん!?」
 二人の大声に溜め息を吐くことになった。
「二人ともどうしたのさ? 会うなり大声上げて」
「だって真九郎!」
「せっかく二人きりだと思ったのに!」
「はいはい、とりあえず落ち着こうよ。夕乃さんはご飯食べた?」
「いえ、まだ」
「じゃあ食べていかない?」
「真九郎!」
 抗議の声を上げる紫を無視して台所に戻る。出来上がった料理を盛り付けていく。その間にタッパーの中身――煮付けを鍋で暖めてそれもよそる。
「さぁ、出来たから食べよう」
「し・ん・く・ろ・う!」
「うるさくするとご飯食べさせないよ?」
「……う〜っ」
 ふんっ、と鼻を鳴らして紫が席に着く。
「全く、あんま家の事は……」
「家は関係ない」
「は?」
「一人の女として敵なのだ」
 溜め息ひとつ。確かに紫が夕乃を嫌う素振りを見せるのは家云々よりは人間としての部分が理由のようだ。
 もっとも、人間として夕乃が嫌われる理由までは分からないが。別に子供受けが悪いわけでもないのだが。
「仕方ありませんね……?」
 夕乃が苦笑を向けるのに苦笑で返す。
「そうだね。とりあえずは夕飯かな?」
「ええ」
「真九郎、はやく“いただきます”をするぞ!」
「はいはい」
 紫に急かされて真九郎は手を合わせる。
「じゃ、いただきます」
「「いただきます」」
 紫と夕乃も返して、夕食が始まった。

 † † †

 それを紫が言い出したのは夕飯が半分も減った頃だったろうか。
「真九郎、口移しをしてくれ」
「……はい?」
131 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:24:26 ID:BVPyjrJx
 思わず箸を取り落としそうになりながら真九郎は問いを返した。
「……なんで?」
「環が言っていたのだ。親しい男女はあ〜んをして食べさせあう。そして更に親密になると口移しをするのだと」
 あんの害悪女子大生!
「……真九郎さん。ちょっと環さんにご挨拶してきますね?」
「ちょっと待った! 良いから! 俺から言っておくから!」
 確かに環には苦情というか報復が必要だが、それをこの一流の武闘家にやらせるわけにはいかない。
 相手も一流だけにお互いただでは済まなそうだし。厳しい夕乃だから本当に洒落にならないだろう。
「で、真九郎。口移しは?」
「しない!」
「何故だ! 私達は親密な男女だろう。それこそ口移しするくらいには親密ではないのか!?」
「親密だからって口移しするなんて話は聞いたことがない! 紫は環さんに騙されてるんだよ!」
「……そうなのか?」
「そう」
 ふむ、と頷いて紫が引き下がる。
「だから学校のみんなは知らなかったのか」
 いやそりゃ知らないだろう。口移しが常識の小学生なんて嫌すぎる。
「と、とりあえずご飯は自分で食べたら? 紫ちゃん」
 夕乃が促すが、紫はまた考え込んでしまう。
「……あ〜んはどうなのだ?」
「「え?」」
 思わず真九郎と夕乃の声が重なる。
「口移しが駄目なのは分かった。しかしあ〜んはどうなのだ?」
 ……確かに親密な男女はあ〜んくらいするだろう。しかしそれをしていいものやら。
「駄目か?」
「……駄目じゃないけどさ」
「駄目です!」
「あ〜んはおかしいのか?」
「いやおかしくはないですけど。……私だってしたいですし……」
「そうか!」
 言うが早いか紫は真九郎の隣にすり寄ると口を開いた。
「あ〜ん」
「う……」
 安易に応えてしまったものだと思う。心の準備もままならない内に相対してしまうとやはり照れが先行してしまい、躊躇いが生まれる。
「……あ?」
 動かない真九郎に「どうした?」と視線を投げ掛ける紫。こうなっては仕方ないと腹を括るしかないだろう。
 おかずの煮付けを取り、紫の口にそっと入れてやる。
「はむ」
 むぐむぐと咀嚼する様子を見ながら溜め息を吐く。
「ありがとう真九郎!」
「どういたしまして」
 笑いかけて、紫はまた普通の食事に戻っていく。
「……甘やかしすぎなんじゃないですか?」
「はは、そうかな?」
132 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:25:41 ID:BVPyjrJx
 夕乃の言葉に苦笑で返して真九郎もまた箸を進める。
 しばらく和やかな夕餉が過ぎていく。自分のような者には身に余る幸せだろう。そう感じる。
 緩やかな時の流れだった。
「ごちそうさま!」
 紫の声にはっと我に返る。気が付けば箸が止まっていた。
「お粗末様。紫迎えは?」
「ん、ちょっと待て」
 言って紫は懐から携帯を取り出す。
「……もうすぐ来るな」
「そうなの?」
「ああ」
 紫が応えると、部屋のチャイムが鳴らされた。
「来たようだ」
 ……この完璧すぎるタイミング。監視されてるって事だよな……。
「見送りはいいからな。……そうだ真九郎」
「ん?」
 一度玄関に向けた足を戻して紫が歩み寄ってくる。
「んーっ!」
 そのまま抱きつかれた。数秒そうしてから紫は、またな、と言い残して玄関から出て行った。
 まるで一連の動作が幻だったんじゃないかと思うほどあっさりと。
「行っちゃいましたね」
「……うん」
「真九郎さん」
「ん?」
「さっきも言いましたけど、紫ちゃんを甘やかし過ぎなんじゃないですか?」
「……甘やかしてるというか一方的に甘えられてる気がするけど」
「大して変わりませんよ。……正直、少し羨ましいですけど」
 ふと零した夕乃の言葉に、真九郎は思い当たる事があった。
 学校でも、家でも頼られる事の多い彼女は、甘えられる相手がいないのではないかと。
 生徒会長として、法月家次期当主として、責任ばかりを被って、誰にも頼れないのではないか。
「……夕乃さん」
「はい?」
「俺で良かったら、甘えてよ」
「え……?」
「年下で、夕乃さんより弱くいし……でも、少しでも気が楽になるんだったら……」
「ふふ」
「……笑うことないでしょう? 確かに頼もしくないだろうけどさ」
「いえ、ごめんなさい。違うんです。真九郎さんは頼もしいです。……嬉しくて」
「……」
「本当に甘えていいんですか?」
「勿論」
「じゃあ」
 夕乃が悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「あ〜ん」
「え!?」
 驚き固まる真九郎に、夕乃はむくれた表情を作ってみせる。
「紫ちゃんには出来て、私には出来ないんですか?」
「いやその……」
「甘えさせて……くれないんですか?」
 ……その上目遣いは反則だろう。
「分かりました」
 緊張しながら、先に紫にしたように煮付けを箸で掴んで差し出す。
「……あ、あ〜ん」
「あ〜ん」
133 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:27:06 ID:BVPyjrJx
 箸が夕乃の口に含まれた瞬間、舌の動きすら箸に伝いに手に感じられ心臓が跳ねる。
 紫の時と違うのは、やはり異性として認識しているからだろうか。
「美味しいです」
「作り手が良いからね?」
「お母さんの料理だからじゃないですよ? 真九郎さんが食べさせてくれたからです」
 そう言って照れくさそうに笑う夕乃に、真九郎の胸が高鳴る。
「それじゃ、真九郎さん。……あ〜ん」
「え?」
 差し出された箸に真九郎が硬直する。
 食べろと、そう言うのだろうか。
「あ〜ん」
「いや、その今は夕乃さんが甘えるんでしょ?」
「あ〜ん」
「……」
 仕方なく口を開いて少しだけ頭を前に出す。差し込まれた箸が料理を舌に乗せるが正直味など分からないくらいに緊張している。
「美味しいですか?」
「う、うん」
「そう言えば間接キスですよね?」
「んぶふっ!」
 危うく吹き出す所をなんとか堪える。
「ゆ、夕乃さん?」
「だって、さっき真九郎さんが使ったのも、今私が使ったのも、自分の箸じゃないですか」
 ……そうだった。と言うことは先に間接キスをしたのは自分が原因か。
「なんなら口移しもしてみますか?」
「なっ!? ちょっと夕乃さん冗談にも」
「私なら……いいですよ?」
 ――二の句が継げない。
 いやちょっと待て。口移しって。間接キスどころか直接のキス吹っ飛ばして口移しって。
「真九郎さんは嫌……ですか?」
 いや、いやいやいや。
 嫌じゃないけど。そういう問題か?
「口移しで食べさせてくれないですか?」
 本気なのか? 何も分からなくなってくる。視界が狭くなる。ただ狭くなった視界には夕乃の唇だけが映って――。
「もっと甘えさせてくれませんか?」
「いいの?」
「はい」
「いや、その口移しがじゃないよ? その……俺が、好きなの?」
「――はい」
 言い逃れは出来ない。言い逃れして行為を避けたとして、それは結局夕乃の想いを受け取れないと応えるのと同じだ。
 夕乃は行為を盾に聞いているのだ。私の想いを受け取ってくれるかと。
 だとしたら――。
「夕乃さん……一度食べさせて」
「……はい」
 再び箸が差し出される。それを口に含み、真九郎は夕乃に身体を近付ける。
 意志は固まった。覚悟も決めた。
 紅真九郎は、法月夕乃を――受け入れる。
 そうして、薄く開かれた夕乃の唇に、自分のそれを重ねた。
134 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:28:35 ID:BVPyjrJx
「……ふ」
 微かに漏れる吐息を塞いで、軽く咀嚼した料理を流し込む。
 少しずつ、少しずつ。それを夕乃が改めて咀嚼し、嚥下する。
 夕乃から舌で差し出された分を舌で絡めとり、また咀嚼して真九郎も飲み込む。
「んく、ん」
 じわりと滲む唾液を互いの舌で混ぜながらそれも飲み下す。
 とうに口の中に料理はない。それでも、貪るように唇を重ね舌を絡める。
 熱に浮かされたように一心に互いを求める。
「んぁ……ちゅ。んむっ、ちゅぱ」
 時折微かに零れる甘い声と吐息。それすらも吸い取るかのように尚も舌を絡め合う。
 気が付けば真九郎は夕乃を押し倒していた。
 夕乃を抱き締めながら身体ごと触れあわせる。
「ん……ちゅ。んぁ……」
 背中に夕乃の腕が回され、更に密着が深まる。伝わる体温の暖かさが更に真九郎を煽る。
「夕乃さ……」
 腕を夕乃の服の中に滑らせる。素肌を伝い、行き着いた先の下着に包まれた夕乃の膨らみを手のひらで包む。
 片手には収まりきらないサイズのそれを揉みしだくと、夕乃が切なげな声を漏らして身を捩った。
「ごめん……ちゅ、痛かった?」
「や……違うん……ん、です」
 口付けを交わしながら夕乃は答える。
「その……ちゅ、気持ちよくて」
 かっ、と頭の中が熱くなった。自分の行為で夕乃が感じてくれている。そう考えると、もっと感じさせたいと思うようになる。
「夕乃さん……ん、もっと……」
 抱き寄せて夕乃の身体を浮かし、背に回した手でホックを探り当て外す。そのまま下着の間に出来た隙間に手を差し込む。
「は……ぁ、真九郎さ……ちゅ、しんくろ……ぅんっ、さん」
 胸元の膨らみ。それを包む布地の下で自分の手が夕乃に直接触れている。
 手のひらにはどこまでも沈み込みそうな柔らかさと心地よい弾力が伝わってきて、真九郎の興奮を更に煽る。
「夕乃さん……下、いい?」
 真九郎の問いに頷いて応える。了解を得た真九郎は夕乃の下半身に手を滑らせた。
 胸とはまた違う柔らかさの太股を撫でるとくすぐったそうに脚が震える。掌を内股に触れさせるとその震えは一層大きくなった。
「は……ぁ、真九郎さん……ちゅ、んちゅ……」
 するすると内股から付け根へと近付けていく。
 やがて、下着に包まれた中心に指先が触れる。
「ふ……っんぅ」
 夕乃の身体が跳ねる。
「大丈夫?」
「……はい」
135 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:29:33 ID:BVPyjrJx
 返事を受けて真九郎は再び夕乃に指先を触れさせる。再び夕乃の身体がびくりと震える。
「ふく……っ、んん……」
「……夕乃さん。我慢しないでいいから」
 身体の震えと声を押し殺そうと必死に耐える夕乃の耳元で囁いてやる。
「は……あ……やっ、だって……やぁっ!」
 大きく身体を捩りながら、真九郎にしがみついて夕乃が声を上げる。
「はず……か……しいです……っ」
「大丈夫。可愛いよ、夕乃さん」
「あ、やっ、だめっ! そんな……言われたら……っ、ん、んぅうう!」
 一際大きく夕乃が身体を跳ねさせる。そのまま深い息を吐いて夕乃が脱力する。しばらく痙攣が止まず、呼吸も荒い夕乃をそっとしておいてやる。
 やがて落ち着いた夕乃が、真九郎を抱き締めてきた。
「大好きです。真九郎さん」
「俺も……大好きだよ夕乃さん」
 そっと口付けを交わす。優しく、永いキスを終えて唇が離れていく。
「真九郎さん。して……くれますか?」
「うん……」
 深いキスを重ねながら、真九郎は自身の硬直した下半身を晒し、それをそっと夕乃の入り口にあてがう。
「……いくよ?」
「はい」
 腰を前に押し出す。きつい抵抗を押し分けながら進んでいく。
「夕乃……さ……っ」
 熱い。その熱が夕乃の体温だと思うだけで快感は際限なく高まり、剛直は更に硬く、敏感になっていく。
 ず、と肉同士が擦れる。潤みきった夕乃のそこでさえ拒絶するように締め付けられる。
「しんくろ……さんが、っはぁ……入って……っ」
 互いを強く抱き締め合いながら繋がりを深くしていく。ある所まで進むと抵抗が一気に緩み、根元まで入り込んだ。
「……入った」
「はい……っ、真九郎さんの……奥まで……」
 ゆっくりと引き抜いて再び挿入する。先までの抵抗感が嘘のようにスムーズに動く。
「ん……っうぅ」
「……痛い?」
「痛い……です。でも、大丈夫ですから……」
 健気に笑う夕乃に、ざわざわとした感情が込み上げてくる。
 刷毛で撫でられるような擽ったさ。胸を締め付けるような切なさ。
 心の底から愛しかった。
「ごめん……でも、我慢できない」
 腰の動きを再開させる。一度奥まで貫く度に達してしまいそうな快感を耐えながら動く。
「夕乃さん……」
「ふ……っ、んぅ、く……っ」
 蕩けるような熱さと柔らかい圧迫。絡めとるような肉の動き。
 交歓の悦びに身を振るわせながら更に貪欲に貪る。
136 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:30:52 ID:BVPyjrJx
 突き上げる度に揺れる胸元を指先で捉え、その柔らかさに陶然となる。
 重ねた唇の端から涎が垂れれば舌先ですくい取りまた口内を行き来させる。
 全てが溶け合いそうな中で、下半身の脈動が大きくなり限界が近いことを告げる。
「夕乃さん……もう少しだから」
 未だ苦痛に耐える夕乃に、頭を撫でながら囁きかける。こくこくと頷くのを見て真九郎は抽送を早めた。
「あ……っ、あくっ! んぅっ!」
「夕乃さん……っ!」
 ――爆ぜる。身体の奥から熱が奔流となって溢れ出す。
 とっさに引き抜いて、真九郎は白濁を夕乃の腹上に撒き散らす。
 今までにないほど強く脈動して、大量の精液が夕乃の腹を白く染める。
「……終わったんですか?」
「うん……」
 自らに降りかかった精液を指先ですくい取り、弄ぶ。
「これが……真九郎さんの……」
「……そうだよ」
「なんだか不思議。これが赤ちゃんの元なんですよね」
 夕乃がくすっと笑う。真九郎もつられて笑って、どちらからともなく口付けた。
 抱き締め合いながら、夕乃が真九郎の耳元で囁く。
「いつかは……中に下さいね?」
「うん」
 満たされる。どうしようもなく。
 身に余る程に幸せだった。諦めていた幸せがここにあった。愛している人がいて、愛してくれる人がいる。
 それのどんなにかけがえのないことか。
「大好きだよ、夕乃さん。愛してる」
「……私も、です」
 失いたくない。そう願って抱き締める。互いが互いを捕らえるかのように、抱き締め合う。
 この幸せよいつまでも、そう願って。

 了
137 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 15:34:21 ID:BVPyjrJx
以上夕乃さん甘々を目指した何か。SS書くの久しぶり過ぎて勝手が分からなかったんで粗かったりする部分はお目零しを。
次はレス下3つ目の内容で書きます。一週間ルールも同じ。でわでわ。
138名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 19:15:28 ID:zhDCc78g
GJ!!
139名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 19:28:06 ID:NEG7qIQ8
乙でした!
140名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 19:38:08 ID:D5ItWqWt
>>137
乙!
真九郎が彼氏が出来なくて嘆いている環さん(処女)を慰めるんだが、
酒の力もあいまってヤッちゃうお話を希望
141 ◆WsILX6i4pM :2009/07/07(火) 20:42:50 ID:BVPyjrJx
>>140
把握。14日19時締め切りでがんばります。
142名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 22:56:06 ID:TrSGyiNF
GJ!次回作も期待
143名無しさん@ピンキー:2009/07/07(火) 23:59:18 ID:KySxqIj3
乙した!次も期待!
144名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 03:00:37 ID:PqUPkUzR
もう来てたw>>137GJ!
145名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 03:12:04 ID:L4/Qs8UY
ダメだ…
夕乃さんラヴの一員としてこれだけは言わせておくれ…

夕乃さんの名字は『崩月』だッ!
146 ◆WsILX6i4pM :2009/07/08(水) 11:52:46 ID:oNrufxs3
>>145
申し訳ない。久しぶり過ぎて色々忘れてた法泉の名前とごっちゃになってたみたいだ。
147名無しさん@ピンキー:2009/07/08(水) 23:49:31 ID:S/FbJdSs
そんくらいの誤字は気にすることないって
148名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 02:25:15 ID:I8/U9eB7
>>137
リクエストした123です。

一週間後と思ったらもう来てたw

で、読み終えてもニヤニヤが止まりません
どうしてくれますか

本当にありがとうございました
149名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 03:59:05 ID:g8c0cG1C
期待age
150 ◆WsILX6i4pM :2009/07/12(日) 16:36:34 ID:yJN2EyoQ
流石に連続ジェバンニは出来なかった。
とりあえず出来たので投下します。
151 ◆WsILX6i4pM :2009/07/12(日) 16:37:33 ID:yJN2EyoQ
 深夜、真九郎の部屋。普段なら布団に入ろうかという時間だが、未だにそれは叶わない。
 部屋には未だ煌々とした灯りが灯され食卓を照らしている。その理由はというと――。
「あたしのな〜にが不満だってのさ〜」
 ――傍迷惑な隣人がつまみを作るのを強要したあげく居座って管を巻いているからだ。
「顔良いから声掛けてみたけど中身オッサンで萎えた。とかさ〜! 言葉選びなさいよ」
 個人的には実に真っ当な評価だと思うので真九郎としてはフォローのしようもなく、苦笑いを浮かべるより他ない。
 今にしたってジャージで酒を呑みながら愚痴る行為は中年男性そのものだ。
 そもそも酔っ払った彼女に下手な言葉を返すと無駄に長引いてしまうから受け流すのが一番なのだと判断して、真九郎は返答を頷くに止めておく。
 絡み上戸の環の扱いにすっかり慣れてしまったのはそれだけ親しく鳴ったからと言うことか。
 それが酔っ払いのあしらい方が巧くなっただけと思うと多少悲しいが。
「……」
 不意に黙り込んでしまった環に視線を送ると、真面目な顔になった彼女がぽつりと零した。
「……そんなに魅力ないかな?」
「そんな事はないと……思いますけど」
「う〜ん……」
 環がテーブルの上にだらりと身を崩して、横目で真九郎を伺う。
「じゃあさ、例えば私とちゅ〜したいとか思う?」
 言われてどきりとする。普段意識しないが、基本的に環は美人なのだ。
 それを意識してしまうと薄く開かれた薄桃色の唇が妙に艶めかしく見えて、無意識にそれに近付いて――。
 ってだめだ。なにやってるんだ。
 ふらつく頭を左右に降り、目前のグラスを呷る。
「――はぁっ」
「お〜、いいねぇ真九郎くんいい呑みっぷり」
「どういたしまして……」
 ――微かに喉を灼くのはアルコール。呑んでいるのは真九郎とて同じだった。
 初めは、余りに呑め呑めとうるさいから仕方無くだった。しかし始めてみるとこれがなかなか止まらない。
 結局勧められるままに呑んで、今やすっかり真九郎も酔いが回っていた。
「で、ちゅ〜は?」
 悪戯っぽく顔を覗き込む環から目を少しだけ逸らす。
「……少なくとも酒臭いのは嫌です」
「がーん!」
 わざとらしく叫んで、環は頭を抱えて仰け反る。
「……わ〜るかったわよ〜。どうせ酒臭い中身オッサン女ですよ〜」
「ちょっとそんな環さん……」
152 ◆WsILX6i4pM :2009/07/12(日) 16:38:35 ID:yJN2EyoQ
 ぶつくさいって拗ねる環を宥めようと必死に頭を巡らせる。しかし気の利いた言葉など真九郎から出よう筈もない。
 その事を自覚しているから、真九郎は素直な言葉で応えることにした。
「いやその、環さんの気取らない所とかは一緒にいて楽って言うか、変に気を使わないで良いし良いところだと思いますよ?」
「む〜……」
「それに実際美人じゃないですか。さっきの話だと顔良いって言われたんでしょう? 少なくともそこは自信持って良いですよ」
「でもさ……」
「確かにフランク過ぎたりお酒呑み過ぎだったりだらしなかったりですけど……」
「……言い過ぎじゃない?」
「いや、そういう事じゃなくて……そういうのを差し引いても――いや、ひっくるめて素敵な女性だと思いますよ?」
「……」
 沈黙が流れる。
 失敗したか――そう思われた瞬間、ふんわりとした重みとも言えないような重みが降ってきた。
 驚いた真九郎が硬直していると追い討ちをかけるように唇に柔らかい感触が伝わった。
 それがキスだと気付いた瞬間、頭にかっと血が昇るのを感じた。
「な、ちょ……なにしてるんですか環さんっ!」
「ん〜、欲情」
 顔を真っ赤に染めながら真九郎が叫ぶ。払いのけられた環は瞼を半目に、口元をにんまりと釣り上げて応える。
「な、なにを……っ」
「真九郎くんってさ、天然たらしだよね」
 言われた意味が分からなくて言葉に詰まる。
「結構さらっと甘い台詞を言うよね。純情な乙女ならイチコロだよ?」
「純情な乙女ならって……」
「例えば……あたしとかね」
 そう言って再び環が唇を重ねる。先のように軽く触れさせるだけではない、擦り付けるような、甘さを含んだキス。
 微かに口元から吐息が漏れてそのくすぐったさに頭が痺れる。体の芯が熱くなって、目の前の女性が欲しくて堪らなくなる。
「ん……」
 気が付けば無意識に環の胸元に掌を押し当てていた。環はそれを嫌がるでもなく受け入れ唇を重ね続ける。
 拒否がない事で遠慮がなくなっていく。更に大胆に掌を押し当て、膨らみを指先で弄る。
 互いの息が荒くなる。アルコールと行為への酔いに思考が茫洋としていく。
 ただ行為だけがより深く相手を求めたもの変わり、激しくなっていく。
 密着させた体そのものを擦り付け合う。環の脚を割開くように真九郎の脚が滑り込めば、待っていたと言わんばかりにそこに腰が押し付けられる。
153 ◆WsILX6i4pM :2009/07/12(日) 16:41:03 ID:yJN2EyoQ
「んん……」
「……どこが純情な乙女ですか」
「真九郎くんこそ……酒臭いキスは嫌だったんじゃないの?」
「環さんからキスしてきたんでしょう」
「真九郎くんが悪いんじゃん」
「……知りませんよ」
 言葉を交わしながらも行為は止めず、むしろ加速していく。
 ジャージの胸元のジッパーを下げ、Tシャツを捲り上げる。
「ん、待って」
 言って環が自らの背に腕を回す。ぷつんという音がしてブラのホックが外された。
「……はい」
 Tシャツと一緒に捲り上げて素肌のまま胸元を真九郎の目の前に晒す。
「ん……」
 唇を重ね、掌を直に触れさせる。
 掌でやわやわと揉み、乳首をくすぐる。
 その間にも真九郎の太股で秘部を擦り付けて自らを慰める。下着からは愛液が染み出し、くちゅくちゅと音を立てる。
「環さん……」
 猛った感情のまま押し倒す。胸元を弄り、膝で下着越に環の中心をぐりぐりと刺激する。
「んっ、んん……」
「環さん……、環……さん」
 脳髄が痺れるような感覚。ただ熱情が押し寄せそれに従うしか考えられなくなる。
「ぅあ……っ、真九郎……くん」
 衝動が募る。貫きたい、中に身を沈めたい、繋がりたい。
「環さ……んっ」
「ちょ、ちょっと待って!」
 身を乗り出しベルトを緩めようとした所に制止を掛けられる。
「環さん?」
 ここまで煽っておいて何故止めるのかと訴えかける。
「や、その……聞いて欲しいんだけど」
「……はい」
「実はその…………だったり」
「え?」
「だからその、初めて……だったり?」
「……」
 え〜と、なんだ。
 普段からセクハラしてきて、男漁りを日常的にしていて、その事を隠そうともしなくて、今も逆レイプみたいな流れで迫ってきて――。
 そんな人が……ぶっちゃけ処女?
「オッケーです」
「何が!?」
 ここまで来て止まれる筈もない。
 首筋にキスを降らせて真九郎は今度こそベルトを緩めた。
「ひゃ……ちょ、真九郎くん?」
「環さんの初めて……下さい」
「……引いてない」
「だからむしろオッケーですって」
「……しょうがないなぁ」
 そっと首筋に腕が回される。優しい抱擁を受けて真九郎は更に体を密着させる。
「……おいで?」
 それが合図だった。環の下着を一息に下ろして自らを押し当てる。
154 ◆WsILX6i4pM :2009/07/12(日) 16:42:32 ID:yJN2EyoQ
 そのまま力を込めて、真九郎は環の中に身を沈めていった。
「あ……あく……っ!」
 痛がる姿に心を痛めながら、しかし本能は更なる結合を求める。
「環さん……っ!」
 一息に根元までを沈め、最奥を突く。
「や……っ、あくっ……」
 苦痛に顔を歪める環の為にぴったりと動きを止め、呼吸の安定を待つ。
「あ、はは……すご、奥まで入ってるよ」
「……入れましたから」
「うん……動く?」
「良いんですか?」
「……いいよ」
 応えを得て真九郎は動き出す。
 緩やかに出し入れするが、環の内がぎゅっと締め付けてきてそれだけで堪らない快感に見舞われる。
 その快感で自らが更に硬さを増していくのを感じながら抽送を繰り返す。
「真九郎くん……中で動いてるの分かるよ……」
 痛みに震えながらも甘さを含んだ声音が耳朶をくすぐり、真九郎の本能を溶かしていく。
 気を緩めれば欲望のままに激しく責め立ててしまいそうになるのを必死で御する。
「く……っ、環さ……ん」
 剛直が跳ねる。今すぐにだって果ててしまいそうな快楽に溺れながらそれでもより長く繋がっていたくて耐える。
「真九郎くん……我慢してるでしょ」
 環が囁いて、腰をくねらせた。
「うわ……っ」
 唐突な動きに危うく達してしまいそうになるのをなんとか堪える。
「ふふ……、我慢しなけていいのに」
 更に腰をくねらせ真九郎を翻弄する。
「環さん、痛いんじゃ……」
「へーき。だからね真九郎くん……」
 ――滅茶苦茶にしちゃっていいよ。
 その言葉で限界だった。
 一瞬で限界まで高まった射精感をそれでも抑える。それすらも環の言葉に崩された。
「イっちゃえ」
 刹那、一際強く締め付けられ途方もない官能が頭を真っ白にそもる。
「環……さ……っ!」
 ガクガクと体を振るわせながら真九郎は環の中に精液をぶちまける。
 今までにない時間をかけて吐き出される白濁は環の中を満たし、更には溢れ出す。
「ぅあ……っ、あぁ……っ」
 ようやくそれが止んだ時には環の膣中から溢れ出した精液と血液が床にピンク色のシミをこぼしていた。
「あはは……しちゃったねぇ……」
 耳元で囁く声が妙に遠い。
「ねえ真九郎くん…………だよ」
 ろくに返事も返せないまま、真九郎の意識は眠気に浚われた。

 † † †

 ――意識が覚醒する。
「……酒臭」
 部屋中に充満するアルコール臭に顔をしかめながら起きあがろうとして――。
155 ◆WsILX6i4pM :2009/07/12(日) 16:43:20 ID:yJN2EyoQ
「重……」
 胸元にのし掛かる重さに手を伸ばす。
 柔らかく温かいそれに視線を向けると、真九郎に抱きつきながら眠る環があった。
「……そっか」
 昨夜の顛末を一気に思い出す。
 勢いでやってしまった上に、まして環は初めてだった。
 自分はいい……だが果たして環はどうだったのだろうか。
 思考が暗く沈みかけたところで環が小さく呟いた。
「真九郎くん……好きだよ」
「…………」
 はっとさせられた。
 何を考えていたのだ自分は。彼女は自分を選んでその初めてを捧げてくれたのではないか。
 そう思うと、胸の奥に熱が灯るのを感じた。熱いような、暖かいような思い。
 伝えよう――そう思った。
 彼女の想いに応えたいと、自分に根付いた想いを伝えたいと。
 真九郎はそっと環の頬に手を添えて耳元に囁きかける。想いを伝えるために。

「――起きてください環さん」


 了
156 ◆WsILX6i4pM :2009/07/12(日) 16:46:06 ID:yJN2EyoQ
以上環さんの初セクロス話でした。
次はどうしようかちと考え中。
前書いた長編の新ネタがあるんだけどまだプロット固まってないので。
まあ適当にシチュとかリクして貰えばそれで書くかも。
ではでは。
157名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 17:47:23 ID:gC0FliMp
>>156
GJです!余裕があれば>>31の人も御所望のように真九郎と絶奈の純愛を…
158名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 18:09:00 ID:goFdau3p
>>157
いやムリだろ。ファンブック読んでみ?
159名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 18:21:48 ID:PHl2Os9W
>>156
GJ!

>>158
別に無理じゃないだろ。あの結末からどういう話に持ってくかなんて創作者次第だ
160名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 19:05:58 ID:6vlrsGjI
絶奈の純愛は弥生さんや闇絵さんのエロに比べれば難易度低い方だよ

>>156
いや、しかしGJ!!環さんのエロまでいけるとは・・・
161名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 23:20:39 ID:OhTs4FPx
GJ!!だだ

ここで良作紅モノ出る度に原作読んでみようとするんだが
そのたびに挫折するwwww
162名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 03:04:43 ID:ZzcYocel
>>156
GJ!!!!
おもろかった!!!!
163名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 14:27:14 ID:QwPyojyh
>>156
GJ超GJ!久しぶりに来たけど良作品に出会えて感激!続編に期待します!

……リクエスト?紫とちーちゃんの三人で誰もいない銭湯に入って過激な少女マンガの知識で真九郎に二人で悪戯したら、真九郎がロリに目覚めて二人一緒に頂いちゃう話を希望です
164名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 15:13:38 ID:8upUxxXv
>>163
そしてそのマンガの持ち主は環ですね
わかりますw
165名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 17:22:10 ID:qvkgu7+I
>>156
リクに応えてくれてマジ感謝!!
他にリクっていったら俺も絶奈モノかな・・・処女設定で・・・・・・・・・
上の夕乃さん、環さんの続編でもいいけど

まあ、リクエストを受けて書くのは大変だから無理せず自分の好きなのを書いて下さい
166名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 23:20:21 ID:pz+OrYc9
>>156
GJ!俺も>>165に同意。そして>>165が処女大好き人間ということがわかった
167伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2009/07/14(火) 19:00:28 ID:F8/Z4f3F
やぁみんな◆WsILX6i4pMだよ。コテハン付きに戻してみたんだ。
というわけで軽くアナウンスしていた長編について。
今ネタが2つあって一方はRadio head Reincarnation新作。もう一方は――

http://imepita.jp/20090714/678820

って感じの某ゲームパロネタ(作者はアトラス信者)

どっちもオリジナル要素とか他作品パクリ要素ががっつり濃いので書くかどうか迷い中なんだ。
そこでみんなに意見を聞きたいと思ったんだ。
読みたかったり書いてもいいよって人と、いやダメだろうって人がどれくらいいるのかで判断しようと思うんだ。
なんでみんなには忌憚無い意見をお願いしたいんだ。
ある程度レスが付いたら書くかどうか報告しに来ますんで。
ではでは。
168名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 20:55:41 ID:ZeHW6oBO
>>167
コテつけてオリジナルの強いもん書きたいなら、自分のサイトでやったらどうか
169名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 21:42:13 ID:yqZZPj2c
俺は読みたいね
投下時に警告つければ問題ないんじゃね?
170名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 23:01:47 ID:ZeHW6oBO
>>169
そうだね
警告をしっかりしてくれれば、別にいいや
171名無しさん@ピンキー:2009/07/14(火) 23:15:04 ID:s1xJAHxa
まあ、人少ないし好きなモノを書けばいいあ
172名無しさん@ピンキー:2009/07/15(水) 23:40:31 ID:x97EXtk2
Radio head Reincarnationの新作、読んでみたいです。
173伊南屋 ◆WsILX6i4pM :2009/07/16(木) 02:44:50 ID:6153/Qs9
ちとまだレス少ないかもですが自分なりの結論。
書くのはRadio head Reincarnation新作のみ。
ゲームパロは流石に違うよな常識的に考えて。
つうわけで次回以降はRR主体で書きながら普通の短編を間に挟む感じにしようかなと思います。
引き続き雑談からネタ拾って書くつもりなんでみんなはリビドーを語ると良いと思うよ。
っつわけで次は作品引っさげてきます。ではでは。
174名無しさん@ピンキー:2009/07/16(木) 04:59:18 ID:Jih4MSQR
http://skm.vip2ch.com/-/hirame/hirame045833.jpg
夕乃さんかわいいよ夕乃さん
175名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 07:21:06 ID:Jw8UgHhP
だkら、夕乃さんは真九朗の髪の毛とか爪とかおふろの残り湯とか
収集してるんだよ
176名無しさん@ピンキー:2009/07/17(金) 08:05:20 ID:NYePOcJo
>>173
頑張ってください
177名無しさん@ピンキー:2009/07/20(月) 09:59:54 ID:03OhplR9
>>173ガンバレ
178名無しさん@ピンキー:2009/07/22(水) 03:07:26 ID:IsExXcpN
保守
179名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 02:00:12 ID:lAdr8R2U
ジュウは思った、俺が悪かった、と。
いつまでも泣きやまない雨にキスをしたのはジュウだし、ずっと一緒に居てやる的なことを言ったのも自分だ。
二度とこの少女を泣かせたくないと思ったら、自然と口から出てきた。
あぁ確かに言った、「こんな悲しいときだけじゃなく、嬉しい時も、楽しい時も、寂しい時もしてやる。あと百万回はキスする」と。
別にその場限りの言葉のつもりなんて少しもなかった。本気で彼女の涙を止めたいと思ったのだ。
しかしなぁ……。
「昨日の帰宅時に一回、夕食の調理中に首筋と頬に一回づつ……」
頼むからキスの回数を事細かに日記に付けて、百万回までカウントするのは勘弁してくれ。
「その後、お布団の中で合計31回、今朝の目覚めと出掛けに一回づつ。それと以前に光ちゃんにした分と、今日のお昼に雪姫に不意打ちで奪われた分をマイナス200として……」
先は長そうだった……。
180名無しさん@ピンキー:2009/07/23(木) 03:55:11 ID:72pX04Ur
例の冊子の短編に触発されて誰か書くかと思ったけど、意外とまだ誰も反応してないんだな
181名無しさん@ピンキー:2009/07/24(金) 21:06:08 ID:70THGUj3
冊子見かけないけどもう無くなったかな
182名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 03:35:22 ID:4c7usQT0
久々にきてみれば夕乃さんとか環さんとかナイス!
183名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 06:59:27 ID:yLT4JhXI
あとは弥生さんがくれば文句無し
184名無しさん@ピンキー:2009/07/28(火) 23:20:37 ID:DFk4b288
ルーシーやリンといったマニアックなのも捨て難い
185名無しさん@ピンキー:2009/07/29(水) 04:29:46 ID:SGxN9jWp
リンって…死ぬじゃん
186名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 03:57:02 ID:dYI/pIKi
死ななければ良い女だった、リンは
187名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 23:03:08 ID:U4N78/zp
今月のSQを読んでから原作読んでorzな俺が通りますよ
リン…
188名無しさん@ピンキー:2009/07/30(木) 23:09:40 ID:6xhQhXeT
大丈夫だ!
漫画じゃ死なないから。まだ
189名無しさん@ピンキー:2009/08/02(日) 10:31:43 ID:23h+WFqa
上の環さんモノの続編見たいわ
190名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 04:09:33 ID:Ei62ul8H
水着満載でした
191名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 18:03:09 ID:XqqcWCPo
水着祭だったな
192名無しさん@ピンキー:2009/08/04(火) 23:35:21 ID:OYCa2jy6
水着だらけだったよ
193名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 03:33:41 ID:cKkHG5d5
水着祭りを見た限りでは

夕乃さん>環さん>リン>切彦ちゃん>銀子>紫

って感じでいいのかな
闇絵さんはわかんないや
194名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 18:19:49 ID:S/3WIvz+
>>193
とりあえず、ルーシーは夕乃さんと環さんの間で
195名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 21:44:07 ID:RY/z663J
ルーシーの水着は一コマだけだけど、イマイチ大きさが解り辛い…
196名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 22:42:39 ID:vTlJvxrY
ルーシーはド貧乳で相手によって大きさ変えるとか
197名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 23:22:52 ID:lSQDHB/F
サイズを変えるなら分厚いコートなんて着ないと思うけど…
分厚いコート着てるから隠れ巨乳かと思ったけど別段巨乳ってわけでもなかったな
198名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 04:23:32 ID:b/dnZYYZ
環さんとリンもどっちがデカいかよくわからん…
199名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 17:21:02 ID:2PZbvs+T
闇絵さんは未知数だな
200名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 16:42:26 ID:lenWVtPi
>>200だったら夕乃さんは俺の嫁
201名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 16:44:38 ID:754gfnZN
>>201だったら却下
202名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 17:15:51 ID:gNdI3YYP
冥理さん>絶奈>夕乃さん>紅香さん>闇絵さん

巨乳組はこんな感じかな。個人的には
闇絵さんはわかりづらいし、紅香さんも漫画で見ると夕乃さん以上でもないのかな
とりあえずは冥理さんが女神ということで
203名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 22:45:48 ID:un7SvmRX
だが待って欲しい
冥理さんがスーパー級ということは
夕乃さんも今後成長するに従ってそこまで達するという可能性があるというわけであり
辛苦労はなにはなくとも夕乃さんを選ぶべき
204名無しさん@ピンキー:2009/08/07(金) 23:49:27 ID:smvEce5O
真面目な話、冥理さんが巨乳とは限らない
205名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 02:31:33 ID:E3FYfKZ9
夕乃さんがジャンプした時の胸の3次元的捻れにはこだわりを感じた。



てかルーシーって男なんじゃなかったっけ?と思った。
206名無しさん@ピンキー:2009/08/09(日) 16:08:45 ID:FT/3UzXH
疑心暗鬼に捕らわれすぎかな、かな
207名無しさん@ピンキー:2009/08/10(月) 03:53:26 ID:r7fPf2Sy
ひぐらしネタ自重。俺は別にルーシーが男とか思ったことはなかった
208名無しさん@ピンキー:2009/08/10(月) 23:05:35 ID:MtxtosQJ
>>202
闇絵さんは肌の露出が少なすぎる…
209名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 21:55:32 ID:jiWoDFEd
真九郎×闇絵さんの同人誌が出れば買うのに
210名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 22:53:01 ID:7RXOvES5
ルーシー「私、脱いだら凄いんですよ」
紫「ウソだな」
211名無しさん@ピンキー:2009/08/11(火) 23:15:55 ID:8e3GWdsV
>>202
巨乳組では闇絵さんがNO1だと信じてやまない俺
212名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 06:51:14 ID:u2WPKkC0
>>210
つまり、脱がなくても凄いと
213名無しさん@ピンキー:2009/08/13(木) 23:40:10 ID:X8+21Bj+
寝取られスレになんかきてた
214名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 04:54:24 ID:NGIW+UnS
真九郎×ルーシーもありかな…
215名無しさん@ピンキー:2009/08/14(金) 09:12:15 ID:xNSbRhyK
>>214
ただし逆鬼畜に限る
216名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 05:58:51 ID:bedk9pJl
>>211
脱げば凄いと
217名無しさん@ピンキー:2009/08/15(土) 23:47:54 ID:xg2e9bB/
凄いのだよ、少年
218名無しさん@ピンキー:2009/08/17(月) 05:28:38 ID:gk+Yvg25
闇絵さんは早く脱ぐべき
219名無しさん@ピンキー:2009/08/17(月) 13:02:58 ID:PLt60MFM
闇絵さんはノーブラノーパン
220名無しさん@ピンキー:2009/08/17(月) 23:43:34 ID:aa8KHD2m
黒ブラ黒パンだろ
221名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 04:28:36 ID:HLKP/OFO
黒のTバック
222名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 07:34:57 ID:KtfWmJ7B
え? 黒皮ボンテージじゃないの?
223名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 15:00:25 ID:fJjEeh58
皮は蒸れるでしょ
224名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 21:47:32 ID:VWktOlSW
じゃあ、意外性をとって白のレースとか?
個人的には黒のガーター付が・・・
225名無しさん@ピンキー:2009/08/19(水) 23:04:09 ID:j6xnrua8
>>217
>>223

蒸れて凄いと・・・
226名無しさん@ピンキー:2009/08/20(木) 23:20:02 ID:ON10ZgLH
>>224
黒のガーターベルトはありそう
227名無しさん@ピンキー:2009/08/21(金) 03:16:16 ID:DDWgb7KU
>>225-226
の流れで、夏場にむれむれになったガーターをはいた闇絵さんが足コキしているのを想像した。
228名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 01:02:48 ID:3LxKjvfv
闇絵さんとルーシーはガーターベルト着用してそう
229名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 03:56:10 ID:WrqW2eHT
それを知った夕乃さんが

「真九郎さん!? 真苦労さんはこういうのがお好きなんですね…言ってくださればよかったのに!」

と制服の下に黒ストッキングとガーターベルトを着用してスカートを自分でめくってみせる









それを横目に銀子「……最低ね」
230名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 07:35:48 ID:cxKRQL9Z
もっと罵ってください
231名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 08:23:46 ID:x0aoRehp
>>228
闇絵さんとルーシーは黒タイツ、夕乃さんは白タイツ
232名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 08:32:03 ID:iVNqemY7
闇絵さんもルーシーも夕乃さんもタイツは合わん
233名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 09:45:21 ID:McjLXPpG
闇絵さんはこうかな…っと

ブラ:肩紐ナシの1/4カップの黒いレースブラ
ショーツ:ヒモタイプの黒い股の浅めなTバック
234名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 12:43:14 ID:xi/4UTXm
やっぱTバックかw
235名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 15:11:46 ID:ih+/sXTA
下着はわからんが闇絵さんはきっと寂しがりや
なぜなら泳ぐでも水着を着るでもないのにプールについていったから
きっと一人で留守番が寂しかったんだよ!
236名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 15:13:33 ID:Y2399Xwa
騎馬×リンってアリ?
一応(紫護衛)初代と二代目だし
237名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 23:50:00 ID:2TY+L9fB
>>235
闇絵さんは中途半端な寂しがり屋なんだよ。群れるのも嫌だけど一人きりってのも嫌っていう
238名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 03:19:12 ID:H4N6Dz7+
>>237
つまりあれだな?
仕事ばかりになった真九朗がたまに帰ってくると、寄り添うみたいにずっとそばに居るんだな?
まるで飼い主に長らく頬って置かれた猫のごとく。
・・・というのを想像したが、エロにできない俺の未熟さを許してくれ。
239名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 03:59:21 ID:d6SkPl2w
あつっ
240名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 22:51:13 ID:q5NoHcQi
最近の闇絵さん関連の書き込みは素敵だなぁ
なんかきゅんとする
誰かエロいの書いて!
241名無しさん@ピンキー:2009/08/24(月) 23:25:06 ID:pPBHyAiO
真九朗が帰ってきた時「少年、最近は忙しいのだな」とか言って出迎える。
いつも通りクールなんだけどなぜか目は潤んでいる(もちろん嬉しさから)。
真九朗が夜、寝ていると喘ぎ声が聞こえて悶々とする。
その声は「少年」とか言ってて、闇絵さんの部屋の方から聞こえる。
我慢ができなくなって一人でしようとしたところで突然環さんが現れて襲われる。

闇絵さんが一人でし終わって落ち着いた後、隣の部屋から喘ぎ声が……。
口を押さえて涙を流す闇絵さん。

って感じか。
242名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 15:57:52 ID:dy0jSf9X
闇絵さんかわいいよ闇絵さん

>>241
闇絵さんかわいいよ闇絵さん
243名無しさん@ピンキー:2009/08/25(火) 23:36:20 ID:ECwNWiUA
>>238
そういう闇絵さんもありかな
244名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 19:27:05 ID:nlK7s8pa
闇絵「少年。遅かったな」
真九朗「えぇ、まぁ、ちょっと仕事がもたつきましてね・・・闇絵さんこそ、どうしたんですか?」
闇絵「いや、特にこれといってはないがね。にしても少年」
真九朗「はい?」
闇絵「最近忙しそうだな」
真九朗「えぇ、ようやく紅香さんからちょっと認めてもらえましたから。
  まぁ、おかげでまわされる仕事も大変ですけどね」
闇絵「そうか・・・ところで、少年。再度尋ねるが」
真九朗「はい」
闇絵「・・・家に帰ってくるのはどれくらいぶりだ?」
真九朗「あー・・・結構世界中飛び回っていましたからね・・・二、三ヶ月ぶりですか?」
闇絵「正確には、79日と18時間といったところかな」
真九朗「なんだ、しってるなら聞かないでくださいよ。というか、どうかしたんですか?」
闇絵「・・・私はその間寂しかったんだ」
真九朗「はい?」
闇絵「だから・・・甘えさせてくれ」
真九朗「ちょ!闇絵さん!?」
闇絵「かまわないだろう。たまには、な・・・それとも。年上の女が甘えさせてほしいなど・・・嫌か?」
真九朗「・・・そんな台詞、ずるいですよ?」
闇絵「おや、知らなかったのか?少年」
真九朗「いつも、俺のこと環さんと一緒にからかってたじゃないですか」
闇絵「女心は難しいのだよ・・・これからも精進したまえ」
真九朗「闇絵さん」
闇絵「ん?どうした?今の私は絶賛充電中だぞ」
真九朗「・・・遅くなりましたけど・・・ただいま」
闇絵「おかえり、真九朗」

とりあえずこんな感じかと妄想を垂れ流してみる。
エロスが、無くて、すまない・・・
245名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 21:34:42 ID:neWcYysO
GJだが「」の前に名前は要らんぜよ、あと誤字
246名無しさん@ピンキー:2009/08/26(水) 23:37:38 ID:S6EJHL1s
>>244
そういう感じも良いな
247名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 03:50:38 ID:xwYn6fGG
真九郎×闇絵さんってのもいいもんだな
248名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 21:56:51 ID:vrNrZmql
闇絵さんは処女
249名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 23:09:36 ID:ptbs6t+U
なんだって!?素晴らしい!
250名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 04:49:36 ID:6w3ZeQ3C
「ん…くっ…!」
闇絵は苦しそうに顔を歪ませる。
「闇絵さん?だ、大丈夫ですか」
結合部からは僅かに鮮血が滴り落ちている。
「も…もしかして」
「ああ、私も初めてだ。少年…」
「そ、そうだったんですか…じゃあ、一旦抜いたほうが…」
闇絵は僅かに微笑み首を横に振る。
「いや、大丈夫だ。このまま続けてくれ…」
「けど…」
「少年を感じていたいんだ…」
「……闇絵さん…。…わかりました、その代わりめいっぱい優しくしますから」
「ふふ…有難う、少年。……ぅん…むぅ」
真九郎は闇絵に唇を重ね、ゆっくりと腰を動かし始めた。
251名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 12:10:03 ID:THRJ5T5X
そういう感じのをフルで書いてくれれば…
252名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 19:38:23 ID:zx3Sz0r9
真九郎が闇絵さんのねっとり濃厚フェラでビクンビクン!みたいな
253名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 21:59:04 ID:2hcucgrk
「闇絵さん、もう出ないよ…」
「クセになってしまったぞ、少年」
254名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 23:16:57 ID:Xu7u3b2H
疼いてくるぜ…
255名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 23:40:26 ID:BHUH1AQN
闇絵さん最高
256名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 20:23:30 ID:UYE53HEZ
仕事帰りで疲れた真九郎にご奉仕フェラしてあげる闇絵さん
それを覗いて自慰に励む環さん
257名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 20:28:23 ID:2U73wCJq
そして翌日の朝、我慢出来ずに
寝ている真九郎の布団に潜り込み真九郎のちんぽをしゃぶる環さん
258名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 23:36:49 ID:oMauRmeq
もう同人誌で出して欲しいわ
259名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 02:56:08 ID:ZLdMlsbs
急に下半身が熱くなる流れになってきたぜ…!
260名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 06:42:46 ID:hx8vDTaE
>>256>>257
ちんしゃぶ好きだなオイw
261名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:34:29 ID:RUngwOF4
環さん「ちんちんしゃぶしゃぶ」
262名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 23:58:48 ID:O8FmBmZI
環さんエロす
263名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 01:47:03 ID:x5wgoOpj
絶奈の同人誌があって俺、歓喜
虎の穴だと残り僅かだったな
264名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 03:28:53 ID:oGmkmBvS
まさか絶奈の同人誌があるとは…最高だ
265名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 04:24:05 ID:nky9LxBx
絵に関しては…まあ許容範囲
266名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 08:55:12 ID:ExB1ms73
真九郎×絶奈の同人誌…出ただけでもよしとしないとな
267名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 10:50:20 ID:ETjq3JX0
セックスしてくれなきゃ死んでやるー!!!
268名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 11:07:46 ID:4afY7MmK
絶奈とのセックス中に戦鬼化する真九郎
なんてのがpixivにあったが、本に載ってそうだw

269名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 18:15:03 ID:pxFc9PoY
辛抱たまらん…
270名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 22:10:26 ID:0d9aYRxC
>>263
真九郎の上で腰を振る絶奈…たまらん
271名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 22:00:29 ID:LNyk3mfn
届くの楽しみだ
272名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 23:20:05 ID:OF1ZZYca
騎乗位とはすばらしい
273名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 19:56:06 ID:LtpSeB53
>>263
マジですか…
274名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 22:51:06 ID:AJ0dktOk
マジだよ…気は抜けん
275名無しさん@ピンキー:2009/09/02(水) 23:02:36 ID:9KQk36M2
昨日の昼には売り切れてたぞ
276名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 00:41:47 ID:pN88O8MP
>>275
売り切れたか、月曜に注文しといてよかった…
277名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 19:36:03 ID:Zl0M16Vu
月曜秋葉原虎の穴に行ったのに
見つけられなかった俺涙目
278名無しさん@ピンキー:2009/09/03(木) 22:51:53 ID:k9PFZ2eu
明日があるさ
279名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 01:56:27 ID:W6mak8S7
夕乃さんメイン本だとどんなのがあるんだい?
280名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 14:34:41 ID:v/dM7BKl
露に艶へるとかいうやつがでてたな
281名無しさん@ピンキー:2009/09/04(金) 19:01:36 ID:jPBFvx56
どうせアニメ版じゃないのか。
282名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 01:00:15 ID:WFjG2rEb
絶奈本、咲いてで通販してたな。

買ったぜ。
283名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 01:53:34 ID:+4fSU8uv
フェラ好きの俺にとっては絶奈のフェラシーンがあっただけで満足だ
284名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 04:28:12 ID:XYjBX5gI
たまんねぇ…
285名無しさん@ピンキー:2009/09/05(土) 20:36:08 ID:oG4EYEGf
アキヅキさん、今度は闇絵さん本お願いします
286名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 04:13:35 ID:KK0kHYUH
アキヅキっていうのか
287名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 04:46:20 ID:VFUfloTC
個人的には最後のページの続きが読みたいな・・・真九郎は大変かもしれないが・・・
288名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 07:50:56 ID:uUue1UZz
戦鬼化の真価が試されるとき…!
289名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 17:57:35 ID:B0tiv5ny
>>287
作者が大変w
290名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 21:55:15 ID:IB4alSn0
作者の所へ松岡修造を派遣するしかないな
291名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 22:25:11 ID:XP+ceIv/
もっと熱くなれよ!
292名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 23:29:48 ID:eC26yWd6
作者がんばれよ!
293名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 00:49:59 ID:aatutwRa
環さんが真九郎の上で腰を振る
294名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 02:12:40 ID:6IGApHN0
個人的には夕乃さんでも上に載りそうだな。
というか、真九郎は、主要メンバーの誰に乗られていても想像がたやすいということだがww
295名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 03:52:17 ID:TzifZsbP
騎乗位最高
296名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 04:15:47 ID:PfYlQZDG
立ちバックも映える。
297名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 05:06:55 ID:kbhk0wTt
ttp://sukima.vip2ch.com/up/sukima066960.jpg
よく見たら紫だった
298名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 08:46:36 ID:iUezxJK0
夕乃さんは誘い受けだから下だとおもう
299名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 10:02:10 ID:tbd50GrW
>>298
なぜか不破圓明流の神威を思い出した
300名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 13:03:24 ID:eDdFujlq
>>263
やっと読んだ…作者GJ
漫画で出るまで絶奈本なんて出ないと思ったが…あるもんだ
301名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 13:35:48 ID:QVS3KTr+
確かに、漫画に登場するまで絶奈本はないだろうな…と俺も思ってた。
作者はよくやってくれたよ。今回の絶奈本、俺は大変満足だ…
是非とも闇絵さんや夕乃さんの同人誌も描いてほしいもんだよ、環さんも捨てがたいけど
302名無しさん@ピンキー:2009/09/07(月) 23:31:41 ID:mEkZH6uq
アキヅキさんの次回作に期待
303名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 02:41:03 ID:GUBAQSx8
闇絵さん本を…
304名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 02:54:56 ID:VDHBVauO
環さんに幸あらんことを…
305名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 03:59:16 ID:DS/upGPE
次回作があるなら最後にあの場にいた5人のうちの誰かだろうな
306名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 04:44:44 ID:2nZ5dL+D
とりあえず誰か切彦ちゃんの同人誌描いてくれ
307名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 05:47:17 ID:Yt3rIrCw
切彦ちゃんは漫画でプッシュされた分、知名度が上がったな
308名無しさん@ピンキー:2009/09/08(火) 23:01:35 ID:F6F3mAX3
切彦ちゃんの同人誌欲しい…
309名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 04:03:27 ID:vh+qvAMD
コミック版は猛プッシュだな>切彦ちゃん
310名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 11:26:06 ID:LqImfrO+
>>308
俺も欲しい・・・
311名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 20:08:32 ID:3ma6V84g
切彦ちゃんはマンガで扱いが良かったから、出てもおかしくはないと思うんだが…。
312名無しさん@ピンキー:2009/09/09(水) 23:07:08 ID:m/bNZhb6
ヤマト絵は真似するの難しいとか小耳に挟んだことがあるような…
313名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 03:03:57 ID:cvAdsTzX
絵は似てるほうが当然いい
314名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 04:11:26 ID:sYiJgsS1
切彦ちゃんでも闇絵さんでもいい、誰か…
315名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 19:35:33 ID:U5FXqG+x
闇絵さんキボンヌ
316名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 23:02:25 ID:heGQL2qE
環さんキボンヌ
317名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 04:12:06 ID:KFPPhxQX
闇絵さんが脱いだ姿を一目…
318名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 04:19:55 ID:8+cobUaj
むしろウェディングドレス(ベアトップで谷間がいい感じに見えててミニスカガーターで絶対領域がステキに見える)を着て
真九郎の部屋に夜這いをかける夕乃さんでヨロシク
319名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 08:01:13 ID:WnO3n9CL
もう、いっそのことリンの同人誌を
320名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 14:24:15 ID:/F3160uw
ていうかリンは漫画版だとどうなるんだろうね
あんだけお茶目に活躍させてるんだから生存でもいいと思うけど……
321名無しさん@ピンキー:2009/09/11(金) 22:47:16 ID:wO2p+vZA
どうだろうな
322名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 02:14:36 ID:yj8MpoDq
>>317
闇絵さんの生まれたての姿を一目…
323名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 03:31:12 ID:9Hm2QPz/
だが、タイツは脱がしてはならない
324名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 04:55:43 ID:JFAC5UFW
魅惑の
黒タイツ
325名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 14:36:35 ID:cmgE2dn9
生まれたての姿で絡み合う真九郎と闇絵さん
326名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 16:46:20 ID:Ft/UO0OL
だが、ガーターベルトは外してはならない
327名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 22:44:43 ID:QHaSK+yX
Tバックを横にずらして挿入、これ基本
328名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 22:58:33 ID:q4YAgYCj
>>327
んなことないんなことない
やはり基本は互いに一糸纏わぬ姿で
329名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 23:56:30 ID:tsD1W4l2
着衣でないと分かりづらい
330名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 01:23:23 ID:vKBb3S7i
闇絵さんはやはり黒い下着を着用したままで
331名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 02:46:21 ID:ZeOXzeEb
黒ブラや黒パンツをずらすのがイインダヨ…
332名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 04:03:41 ID:sFg7bxjd
体位は騎乗位でお願いします
333名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 14:15:09 ID:uBgW8TrR
絶奈本……そんなものまであるのか
334名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 22:23:30 ID:mkKpfb/3
>>331
うーん……スマン、いまいちわからんOTL
やはりお互いに一枚一枚脱がしあっていってやがて全裸にする方が
妙な征服感があってステップアップ的にエロいのだが
335名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 01:44:15 ID:L+sGTZyJ
感性なんて人それぞれだ。闇絵さんの下着の色は白という人もいるだろう
336名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 02:56:58 ID:9Nm1lVbC
闇絵ノーパンツ
337名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 21:50:04 ID:vZdHj5cb
ヤる時はノーパン
338名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 21:57:03 ID:AzGbuRk7
ヤーパン忍法とか言い出しそうだ
339名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 02:40:34 ID:xh8Wcyc9
ノーパンで絡み合う真九郎と弥生さん
340名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 02:55:35 ID:iIcACIsR
闇絵の下着か…何となく紫かな…
341名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 04:05:21 ID:8+8jA2MB
>>339
騎乗位で主導権を握る弥生さん
342名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 18:17:06 ID:oZp3E2lV
真九郎より早くイッてしまう弥生さん
343名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 22:51:13 ID:aQ3Oew2h
そ れ は な い
344名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 01:43:57 ID:0cZjii/9
>>335
黒で…横にずらして挿入
345名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 02:42:27 ID:cMZ6aFre
>>332
闇絵さんに関してはして貰う側のイメージ。
346名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 04:26:40 ID:mGoTmp06
闇絵さんの場合はバック
347名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 04:51:31 ID:QBOuBhMd
正常位で真九郎にまかせっきりな感じだな、闇絵さんは。
348名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 14:16:33 ID:jJJpkBvs
着衣でぶっかけ
連続でして黒尽くめの闇絵さんを白く染めてやる!的なのでw
349名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 23:09:01 ID:o4buRumV
「出しすぎだぞ、少年…服が真っ白だ」
「す、すいみません。気持ち良過ぎてつい…」
「次からは全て中で出すように心掛けたまえ」

こうですか、わかりません
350名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 00:10:02 ID:MYp/2c4y
そうですよ、わかります
351名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 00:30:45 ID:CkG8O0v4
真九郎くんと闇絵さんってそんな関係だったの……?
変な声が聞こえてきたからちょっと覗きに来てみたらこんなことになってるなんてねえ……。

真九郎くんって意外と冒険するんだなあ。
真九郎くんの周りにはあんなに綺麗な面子が揃ってるのに、
枠の外に出ていそうな闇絵さんを選ぶなんて思わなかったわ。

私の役目は今から部屋に入っていって3Pに持ち込むことかなあ。
でも私には経験ないからどうしたらいいかわからないから……。

よしっ、夕乃ちゃんを呼ぼう!
あの娘ならきっと色んなことをしてくれる。
ほんのちょっとだけ落ち込んでから逆上して楽しめそうだしね。
でもあの娘は携帯持ってないんだよね〜。

じゃあ、やっぱり銀子ちゃんかな?
真九郎君の胸に穴を開けそうな勢いで言葉だけで追い込む姿は面白そうだなあ。
よしっ、じゃあ電話しよっ!



処女の環さん。
環さんの喋り方、完全に忘れてしまった。
352名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 02:37:45 ID:V3aWR8c4
やはり環さんは処女なのか…



まあ、当然だけど
353名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 03:08:03 ID:1goH+gYe
環さんは知識が豊富だから一発やればそれでたちまちテクニシャンだ
354名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 07:45:15 ID:PQZJ0b/2
気になったので横で寝てたのを起こして「処女なの」って聞いてみたら
「知ってるくせに」って言ってました、うちの環が。
355名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 07:51:23 ID:rhMzekEb
俺って環だったんだ…
356名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 23:10:48 ID:onI4raZ2
>>353
真九郎と環さんがセクロスした。真九郎のレベルが1上がった。環さんのレベルが10上がった。
こんくらい違う。
357名無しさん@ピンキー:2009/09/17(木) 23:23:24 ID:Yz9OReuD
むしろそれは吸い取ってないか
358名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 02:28:41 ID:0fFO15PW
「残さず吸い取ってあげるね、真九郎くん♪」

「くああ…も、もう出ない…」
359名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 03:30:09 ID:hvg4Z/VV
ノリノリでしゃぶりつく環さんが浮かぶ
360名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 11:17:12 ID:DK+7M9kn
ちんしゃぶ環さん
361名無しさん@ピンキー:2009/09/18(金) 18:48:33 ID:OzaAkF0j
環さんなら騎乗位だな
362名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 00:58:18 ID:Kex/eQ5a
逆襲の真九郎、立ちバックで環さんにリベンジ
363名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 01:08:07 ID:Vrky67t5
真九郎のレベルが1吸い取られた。環さんのレベルが1上がった。
364名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 01:34:18 ID:FJmKEomw
真九郎は闇絵さんを立ちバックで突き上げた。
右手て乳房を揉みしだき左手でクリを刺激する。
闇絵さんはただ喘ぐことしかできない。
365名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 03:03:54 ID:/iI6PdMO
混沌として来たな。

ここは原点に帰ってジュウ様×雨を……。
366名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 05:13:35 ID:EbIDW1ob
>>364
闇絵さんはMだな
367名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 06:56:02 ID:aPQCciQS
>>364の続きはこんな感じ?
真九郎が腰を突き上げる度に大きくなっていく闇絵の嬌声は妖しい艶を孕んでいた。
その声が耳の中に入ってくる。
徐々にだが、真九郎は自我を失ったように快楽を貪ることしか出来なくなっていた。
パンパンと音が部屋の中に響くほど強く激しく腰を打ちつける。
闇絵の膣からどくどくと流れ出てくる愛液が真九郎に絡まり、さらに思考を奪っていった。
闇絵の太ももに纏わり付いたヌメりのある液体は止まることがなく床を汚していく。

その間に真九郎も攻められていた。
真九郎の背中に密着した環の裸体。
武術で鍛え、無駄のない白く綺麗な身体は実に魅力的だった。
胸はそれほど大きくないが密着し、擦り付けるように動いていることで環の乳首が真九郎の背中を刺激する。
その両手は真九郎の身体を這い回り、闇絵のことしか考えられなくなっていた真九郎の集中を妨げた。
それ自体が目的のようにいやらしい手つき。
後ろを見なくてもニヤニヤした環の顔が思い浮かぶ。

闇絵の嬌声が一際高鳴り、小さく痙攣する。
真九郎を締め付ける闇絵の膣圧は尋常じゃない。
白濁した液体を本能のままに膣に吐き出し、ちょっとした征服感を味わった。
闇絵は満足げに微笑みを浮かべながら息を整えている。

まだ繋がっていた二人を無理矢理引き離し、まだ硬さを保っているモノに環の顔が近づいていった。
唇を窄めた環の中に入っていく。
無遠慮に口の中に含まれた肉棒。
高級料理を味わった時のように唇と舌で咀嚼する。

しばらく刺激を続け、上目遣いで真九郎の様子を窺う環は微笑しながら眺めていた。
隙間から入ってくる月明かりはほとんどなく、暗闇に慣れている状態の今でもほとんど見えない。
だから身体はより敏感になった。

さっき出したばかりだというのに力がみなぎってきたソレを確認すると環は壁に手を突き、臀部を擦り付ける。
真九郎は、口でしている間に興奮したらしい環のナカに肉棒を少しづつ入れていった。

「真九郎くん、ゆっくり……」
いつになく緊張した環の声。
真九郎が少し入れただけで「痛っ」と可愛い声が聞こえた。


なぜか目がさえて寝れんから書いてみた……
368名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 09:05:00 ID:Uzs1hx21
朝から大興奮だぜ……超乙!
369名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 19:34:50 ID:RyPSCAFn
乙、完成度高ぇw
370名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 05:48:10 ID:xTF/eCi+
3Pか、まあいいけど
371名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 07:11:51 ID:Nk34fO4H
保守
372名無しさん@ピンキー:2009/09/25(金) 07:15:31 ID:Glg4/R7A
いい感じの3Pの後だからか書き込みが止まってるな
という訳で話題(つか個人的な疑問)投下
『絶奈は処女か否か』
自分は処女だと思う。知ってる人間なら手をだそうなんて思えないだろうし
373名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 00:03:41 ID:Ju06ruLZ
なんとなく男は知らないけど非処女みたいな感じがあるな。
星噛の身体改造とかで。
もしくは様々な男を食いまくっているのかのどちらかだと思う。

後者ならば大人の余裕で真九郎を手玉に取るお姉さまキャラ。
前者ならば真九郎に対してお姉さまぶろうとするけれどもぶっちゃけ未経験なお姉さまキャラ。
皆はどちらが好みだろう?
374名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 00:08:14 ID:52vInlXl
>>373
ファンブックからして
真九朗と絶奈がくっつく確率は
絶望的な気がする
375名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 03:08:54 ID:0t56Psg2
まあそりゃフェミニストのしんくろうが
女でも人でもない敵だと認識する鬼畜外道だから原作に忠実に考えれば0%でしょ
376名無しさん@ピンキー:2009/09/30(水) 23:17:08 ID:sX+S22EC
本日電波DVD予約締め切り
あとは12月4日を待つのみ
377名無しさん@ピンキー:2009/10/01(木) 00:06:08 ID:R23M5f6n

「ジュウ様、おはようございます」
「……お前、なんでここにいるんだ?」
「ジュウ様に呼ばれたような気がしました。その予感は当たったようです」
「呼んでねえよ」
「ですが身体の方は私を必要としているようです。失礼かとは思いましたが、眠っている間に確認させていただきました」
「何を確認したんだ?」
「お疲れのようでしたのでマッサージをしていたのですが……。身体の一部がすごく硬くなっていて……。
 今も揉み解そうとしているのですが、どんどん硬くなっていくようで……。私のマッサージの仕方が間違っていたのかもしれません」
「お前! どこ触ってんだよ!」
「股です。ここに凄く大きなコリがありまして……。私一人ではどうしようもないかもしれません。
 ですのでもう雪姫を呼んであります。先ほど相談したら『まかせて!』と自信に満ちた声で言われましたから、症状も治し方もわかっているようです。
 私も協力するように言われましたので、今は雪姫を待っているところです。ジュウ様は心配せずに私達に任せてください」
「そ、それ――」
「おはようっ! 玄関開けといてくれたんだね。ありがとっ!
 雨、もう心配しないでいいから、私の言うとおりにするんだよっ!」

ジュウは起きようとするが、一瞬で雪姫に拘束されてしまう。
ジュウがいくら力を入れても雪姫を跳ね除けることは出来なかった。
この華奢な体にこんなにも力があるのか?
真剣に悩む暇などなく、ジュウのズボンは雪姫によって下ろされた。
378名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 01:28:39 ID:9ItbTgSm
さて、絶奈は腰回りもムッチムチだと判明した訳だが
379名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 02:47:55 ID:pCbvuGhn
http://www.nigauri.sakura.ne.jp/src/up13298.jpg
ぜなパイがボリューミーで最高
380名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 17:02:56 ID:5sX8bQTb
アキヅキさんの新絶奈絵も出たぜぃ。絶奈かわいい

ttp://gundogs39.img.jugem.jp/20091004_879726.jpg
381名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 21:22:52 ID:mun5AHYx
個人的な感想だけど漫画版のより挿絵の時の絵の方が絶奈は好きだ
なんか漫画のは眼が怖い。いや優しいキャラじゃないしそれでいいのかも知れないけど
382名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 17:43:10 ID:apGqJE3Z
漫画版は眼から色々出るんだろ。
383名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 00:53:04 ID:Z/LEi5pT
>>382
本当にいろいろ出しそうだからこまるなあの人。
特に漫画版だと小説ではできない奇天烈なこととかしでかしてくれそうでこわくてかしちまうよ。
384名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 15:12:45 ID:l0o5TuSs
>こわくてかしちまうよ
怖くて貸しちまうよ?
小wktkしちまうよ?
385名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 21:17:19 ID:Z/LEi5pT
>>384
すまない。
怖いけどわくわくしちまうよ。
というような意味で言ったが・・・今読むと俺は一体なにを表現したかったんだ?
386名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 22:52:27 ID:4P/snk9W
387名無しさん@ピンキー:2009/10/11(日) 20:10:41 ID:7BmZHvzU
>>385
そういうことあるあるwwwww
そして新キャラには誰もふれないのな
388名無しさん@ピンキー:2009/10/12(月) 08:19:09 ID:SUSd6Z+J
アキヅキさんイラリク募集してるぞ
389名無しさん@ピンキー:2009/10/17(土) 00:40:21 ID:k170RB/W
390名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 22:51:20 ID:v1VQWs4F
391名無しさん@ピンキー:2009/10/20(火) 23:05:25 ID:z1zcO7u5
絶奈さんの純愛、というのではないが、なんとなく考えてみた。

暗く、日の光など欠片も通さない闇の中、彼女は居た。
「好き、嫌い、好き、嫌い」
闇に包まれ一寸先ですら見通せぬ部屋の中で、しかし彼女はまるで全てが見えているようにその『作業』を続けていく。
裏十三家が一角、身体改造を主とした星噛の陸戦壱式百四号にして悪宇商会最高顧問。
その身は全てを打ち砕き、そして耐え切る孤人要塞。
たとえ一度敗北しようともその真性の悪をゆるがせることなど無かった文字通りの人外。
星噛絶奈。
ゆえに彼女にとって、この程度のことが障害になるようなことはありえない。
そんな暗闇の中、彼女の声と。
「好き、嫌い、好き、嫌い」
ぷつり、と何かをちぎる音それが連続して響いている。
そしてまるで永劫のように続くと思われていたそれは唐突に終わりを告げる
「好き、嫌い、好き、嫌い、好き、嫌い、好き・・・・」
そして、彼女は見た。
無論、闇に閉ざされた部屋の中でそれを見ることができるのは彼女唯一人だけ。
腕が震える。
彼女は持っていた茎をへし折り
「なんでよーーーー!?」
そのまま人とは思えぬ速さで立ち上がり、己の拳を壁に打ち付けた。
壁は人知を超えた衝撃に一瞬だけ耐えた後に急速にその結合を解き放ち自らが壁であることを放棄した。
音を立てて壁が崩れさり、人工的な光が閉ざされた部屋に差し込まれる。
赤い髪を振り乱し、肩を怒らせた彼女。
周囲にある年代物の家具はその全てが見る影もなく主の手によって破壊されつくしその姿を無残にさらしている。
そして、その部屋の中にある夥しいまでの花びらのない無数の花と、その周囲に散らばるその花びら。
「なんで・・・好きってでないのよーーー!!?占いでくらい夢見せてくれたっていいでしょう!!?」
常人ならばそばに居るだけで鼓膜が割れてしまうような声量で叫び、彼女は頭をうなだれてからその場にへたり込んだ。
冷たいコンクリートの床が、今だけは心地よい。
彼女は床の一点を空ろに見続ける。
「これだけやってるんだから、一回くらいは好きってでたっていいでしょう・・・」
その姿には彼女が畏れられる要因は微塵も無く、まるで年相応の少女を思わせた。
そっと、己の左手に持っていたはな占いに使った最後の一本を見つめる。
「・・・真九郎くん・・・」
ある一言を呟くと同時に頭にとある少年が思い浮かんだ。
つい先日自分を打ち倒した少年。
392391:2009/10/20(火) 23:06:34 ID:z1zcO7u5
小柄で、純血の崩月でもないくせに、己を打ち倒したその少年。
今まで受けたどんな衝撃よりも激しく、己の体を貫いたその彼を。
怒りを秘めたまっすぐな瞳。
薄汚れた服に手入れなどほとんどしていないような髪。
銃弾の嵐に打たれようとも、列車に吹き飛ばされようとも、どんな強い酒であろうとも、柔沢紅香と戦ったとき以上に、
彼女に衝撃を与えたその少年を・・・
そこまで思い出して、体が熱を放つ。
腹のやや下の奥から来たその熱は瞬時に全身を侵し、耳まで真っ赤にする。
その寒気すら感じるような熱にうなされて、彼女はそのまま床に頭を打ち付けると、鉄筋コンクリートの床にひびが入った。
彼女はそんなことに逡巡することなく、さらに連続して打ちつける。
しばらく続け、ひびが床はおろか壁にすら到達してからようやく彼女は頭を打ち付けるのをやめた。
「なんでよぉ・・・・」
血液型占いでは相性は最悪、誕生日占いでは付き合うべきではない、タロットカードでは『死』のカード、
最後の頼みの綱といわんばかりの花占いはどういうわけか最終的に『嫌い』になってしまう摩訶不思議。
ここまで同じ結果が出るのはある意味すさまじいのだが、そんなものは今の彼女にとって逆鱗に触れる以外の何物でもない。
「なんで、こんなに・・・」
呟き、ごろりと上を向く。
「どんな酒を飲んでも酔えないし」
横浜基地に惜しいってジェット機燃料をドラム缶で一気飲みしてもこの衝撃を打ち消せず。
「東京タワーの天辺から飛び降りても駄目だったし」
最初はエッフェル塔にしようとしたが、遠かったし東京タワーのほうが高いということで飛び降りてみたが、
それでも打ち消せず、むしろその後の事後処理によってさらに衝撃が響くようになってしまっていた。
「うぅう・・・こんなの私じゃないよぉ・・・」
まるで恋する乙女のような。
否、自覚はある。
己を打ち倒した男、柔沢紅香の弟子にして崩月の戦鬼である彼に、自分が恋をしているのも、惚れたのも。
それら全てに自覚はあるし、なんとなく納得はしている。
あの、どこまでも自分の人生観を侵しつくすような甘い暴力の塊が愛しいのも理解している。
彼が今、自分以外の女と一緒に居るかもしれないと思うだけで心が荒んでしまう。
しかし
「なんで、こんなに、動けないんだろう・・・」
彼女は動けないで居た。
世界最強の軍隊の基地に喧嘩を売り、最高の塔から飛び降りても、人類にとっての悪行を全て行うその強さを、
そしてその強さ(我侭)を押し通す強さ(暴力)を持っていながらも。
たった一人の、惚れた男の前に立つことが、できない。
ゆえに、部屋に篭り、そしてその心を発散させるために暴力と声を上げる。
「なんでなのよーーー!!!」

彼女の名前は星噛絶奈。
裏十三家が一角、身体改造を主とした星噛の陸戦壱式百四号にして悪宇商会最高顧問。
その身は全てを打ち砕き、目からはビームさえも放とうとも誰も驚かないような、天蓋魔境にして全てに耐え切る孤人要塞。
たとえ一度敗北しようともその真性の悪をゆるがせることなど無かく、別の感情に溺れた文字通りの人外。
そして、自分を叩き伏せた男に恋をした一人の女の子。
393391:2009/10/20(火) 23:07:34 ID:z1zcO7u5
うん、書いててこれはないなと思ってしまった。
そんな生娘な、乙女な、絶奈さん。
394名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 06:27:31 ID:bWeXaW4W
>>393
普通にありだと思う
395名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 10:38:05 ID:s0fH0Mhi
>>393
最高です。
396名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 23:08:14 ID:MrL/Y7sA
>>393
GJ
そしてタロットは「塔」じゃなくてよかったじゃないかwww
アレだと正も逆も最悪だけど「死」なら逆だったらやり直しとか再スタートのいい意味あるしwww
397名無しさん@ピンキー:2009/10/22(木) 00:10:34 ID:OxilE4Cm
>>393
ぜひ続きを!
398名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 22:56:08 ID:Jg7kg+Tz
今回DVDの配信ってやんないんかな
399名無しさん@ピンキー:2009/10/30(金) 10:46:14 ID:8eMU/EI1
保守
400名無しさん@ピンキー:2009/11/04(水) 12:48:14 ID:PijC+TKF
堕ちる
401名無しさん@ピンキー:2009/11/06(金) 17:45:54 ID:xP4iqlO9
規制解除保守
402名無しさん@ピンキー:2009/11/08(日) 14:11:52 ID:qsNt0Ewg
403名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 00:48:28 ID:7+JI27O/
なんとなしにイメージできた
404名無しさん@ピンキー:2009/11/11(水) 03:03:58 ID:uO3vdsDH
明らかに誘ってるのに
肝心の本人にまったく気づかれてないところとかな
405名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 16:40:01 ID:GEdsi02Z
ビキニを着ればいいじゃない
406名無しさん@ピンキー:2009/11/14(土) 21:29:39 ID:A+pJGzwg
紅香物は無いんですかね
407名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 15:50:40 ID:ZCm54HhC
ho
408名無しさん@ピンキー:2009/11/18(水) 17:25:54 ID:Jmi7uUZT
保守
409名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 02:28:14 ID:btLNNXM8
だれか絶奈のらぶいのかいてくれ・・・
410名無しさん@ピンキー:2009/11/21(土) 11:16:21 ID:vvzkJkYN
アキヅキさんの次の本に期待するしかない
次はエロじゃないらしいが…
411名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 01:40:25 ID:0XDfe+iq
DVD楽しみです
412名無しさん@ピンキー:2009/11/27(金) 13:46:20 ID:uu+79M2g
413名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 21:32:17 ID:FuGujHtK
紅コミック版4巻が12/4
414名無しさん@ピンキー:2009/12/02(水) 20:27:05 ID:PTJni7ha
発売
DVD付きは前日には本屋にありそうだけど
415名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 13:58:41 ID:JeeHl+/3
DVD付きコミックは昨日発売だぜ。
416名無しさん@ピンキー:2009/12/04(金) 15:55:39 ID:QM6MGe6C
コミックス表紙が切彦ちゃん
417名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 13:18:40 ID:ZTplubmG
痴漢冤罪の女のマンションに乗り込むシーンで
4人並んでると雨の小ささがよく分かった
418名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 14:50:37 ID:ZxfnSggu
アニメの雨の目がエロくてヤバい
419名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 11:02:51 ID:/yi9jhVh
つーかジュウ様がでかすぎ
円と光なんて170超えてんのに頭一つ分くらいでかい
420名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 19:20:29 ID:maauyEH5
DVD面白かったな。あの尺でよくやったと思うよ。
一緒に見ていた弟は母親のシーンあたりビビってたわ
421名無しさん@ピンキー:2009/12/13(日) 22:20:12 ID:EoswDL0N
保守
422名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 22:33:20 ID:dAhN2sBM
落とす訳にはいかん
423名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 04:37:48 ID:6mIREGTx
今年の冬コミで、サークル「八王子海パン突撃騎兵隊」が電波的な彼女の本を出すっぽいです。
絵師は一部で「きゅうんきゅうん」でお馴染みの十八禁漫画家、巻田佳春さん。
三十一日木曜日、東Z-48abだそうです(コミケ詳しくないんで最後の「ab」が合ってるか分からん)。
興味があれば足を運ぶなり通販するなりしてみては如何でしょうか。
424名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 05:01:13 ID:6mIREGTx
調べて来ました。「Z-48b」でした。
425名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 06:32:13 ID:V81U7jxP
面倒なんで遡らないけど、本スレで既出じゃなかった?
426名無しさん@ピンキー:2009/12/24(木) 22:56:02 ID:hHUBjgTK
保守
427ai:2009/12/25(金) 22:39:23 ID:rir9ZFI7
マンガ四巻の表紙が可愛すぎて、
前にちょっと書いてたやつを仕上げてみました

万が一にも重ならないように、五分後にレスします

※自慰モノなので、嫌いな人はスルーしてください
428ai:2009/12/25(金) 22:40:31 ID:rir9ZFI7
 頭が無い。
 首から真一文字に切られたように、そこから上だけが無かった。
 ――なのに、動く。
 わたしは切りつけた。剣をふるい、確実に心臓を突き、足を切った。
 ――なのに、動く。
 心臓が体外に出ても、足が取れても、そいつらは這ってでも襲ってくる。血飛沫が頬を濡らし、その茶髪を真紅に染め上げた。
 ――わたしは逃げた。
 仕事で逃げることはまず無い。それが、プロの殺し屋を称している《ギロチン》に恥じるべき行為だということは、十分承知している。
 ――でも、逃げた。
 武器なんか放り投げて、必死に足を動かす。そうしている間にも、プライドが崩れ落ちていることがわかる。でも。
 やつらは体の動きと全く比例しないスピードで追いかけてくる。
 恐怖。殺しても、それはわたしの『勝利』ではなく、ただ戦いが続くのだ。それは先の見えないトンネルのようにわたしを蝕み、恐怖を与える。
――死なない。
逃げる以外ない、と自分をなだめるように叫ぶ。でも、崩壊は止まらない。
――でも……。でも……。
「あっ……!」
 足をつかまれて、地面に盛大に倒れた。足首にまとわりつく、生暖かいぬるぬるとした感触。そして、
「………っ!」
見てしまった。
涙ぐんだ視界の先、わたしの足を掴んではっていたのは。

血で全身を朱に染めた、わたし自身だった。

 ぞろぞろと後から追ってくる大群のすべてがわたしの顔だった――右手のないわたし。目のえぐられたわたし。腹に穴を空けたわたし。
「あぁぁぁぁああああああ!」
 わたしは叫んだ。
 足を力任せにむちゃくちゃに振り払う。でも、その生ぬるい手の感触は一向に離れそうに無い。
 そうしている間に、やつらはどんどん群がってくる。
 わたしは叫んだ。
 プライドなんかもう、頭に無かった。誰か。誰か、助けて……。
そう、私は無我夢中で叫んだ――
429ai:2009/12/25(金) 22:44:08 ID:rir9ZFI7
 ガバッ、と音を立てながら、わたしは起き上がる。
 薄暗い中、状況を確認。視線を這わせたそこは、まぎれも無い自宅の寝室。安堵の息をつくも、胸に当てた手からは激しい脈拍が伝わってくる。嫌な動悸だ。 
 斬島切彦は、手に掻いた汗を、着ている寝巻きに押し付ける。
 最近、悪夢が続いていた。殺しからくるストレスが原因だとは思うのだが、しかしそればっかりは職業柄、どうしようもないこと。
「はぁ……」
 切彦はそっと溜息を吐いた。本当にどうしてしまったんだろうか、わたしは……。前はこんなことなんて、一切無かったのに。
傍らにあったペットボトルに口をつけ、切彦は薄暗い室内を見回した。カーテンの隙間から差し込む街灯の光。空色のカバーをかけた布団。無愛想なカレンダーに、洗濯物を吊るしたハンガー………。
 いつも通り。大丈夫。
 部屋の中を手繰る切彦の目は、やがて、衣類の入った、少し背丈の低い箪笥に留まる――正確にはその上に置かれた一枚の写真に止まった。
 それは、自分の所属する悪宇商会の幹部から渡された、指名手配の写真。今は額縁に入れられていて見えないが、その裏面には乱雑にこう記されている。
 ――紅真九郎――揉め事処理屋――五月雨荘――崩月の角を所持。
 つまり、彼の情報。
「………」
 無言でベットから出て、切彦は箪笥に近寄った。カタ、と軽い音と共に、それを手にとる。
 写真は、隠し撮りを合成したものだった。横顔と、そして真正面からの構図のものが半分に切りわけて左右に並べられている、といったレイアウトで、画質も良く、彼の表情がまじまじと伝わってくる。
 でも、そういうことが分かるからこそ、隣に誰か写っていたことは明確だった。彼の表情が緩んでいるのだから、かなり親しい誰かがいるのだろう、とそう憶測出来てしまう。
 ……誰だろ……あの情報屋かな。それか九鳳院の令嬢……? それとも崩月の長女か……。
 ――ギリ、とそんな音がしてわたしは思考を中断させた。
「………?」
 何かがきしむような、そんな音。なんの音だろう、そう考え――その瞬間、はっと思い当たり、自答する。
 ――わたしが歯噛みする音。
 嫉……妬?
 瞬間、切彦の頭に浮かんだのは、そんな二文字だった。
 切彦はあわてて頭を振り、否定する。
 嫉妬? いや、そんなはずは無い。別に彼が誰かと愉しげ話していたって、なんとも……。
 ――刹那、胸がきゅっ、と締まった。
「紅……真九郎」
 そっと彼の名をつぶやく。
 わたしはのそのそとベットに戻った。無論、額縁を握り締めたまま。そして、布団に倒れこむ。
 あの事件のあと、一回だけ彼の姿を見たことがあった。
 ――それはスクランブル交差点と称される、巨大な十字路の西側一角を担う大きな薬局店と、古風な雰囲気の団子屋の間にある、木製の無愛想なベンチだった。そこに、彼がいた。
 わたしは気がつくと仕事の帰りの、横断歩道を渡っていたその足を、思わず止めてしまっていた。
 話しかけてみようかな……。
 なんてぼんやり思った。
 一応、友人とは見てくれてはいるはずだ。それに、彼は……。
「―――!」
430ai:2009/12/25(金) 22:45:55 ID:rir9ZFI7
 自分を納得させ、彼のほうへ向か――わせようとした足が、瞬間、止まった。
 静止したわたしの横を、中年のサラリーマンが迷惑そうに避けて通っていく。
 ――少女がいた。
 ベンチの、人垣で見えなかった部位。つまり、彼の横で、その少女は楽しそうに笑っていたのだった。
 誰……?
 黒くて長い、ここから見ても綺麗な髪。脇には赤いランドセル。そしてなにかを頬張り、幸せそうに笑っていたのだった。
「………」
 彼のほうはというと、なにやら小さな小瓶を手に持って隣で待機。少女の咀嚼が完了するのを見ると、それを手渡した。
 ラムネらしきそれを笑顔で受け取り、少女は瓶を少し傾けて喉に流し込むと、また幸せそうに笑った。
 そして、クイクイと彼に向かって手招きをし、
「………!」
 近寄ってきた彼の頬に、少女は唇を寄せたのだった。

 ――その瞬間、切彦は駆け出していた。

 もう、見ていられなかったのだ。
 人ごみを掻き分け、ただただ走る。途中、誰かとぶつかって罵声が飛んだが、そんなものまったく気にならない。
 切彦は無我夢中で走った。
 今思うと、もしかしたら、わたしは日常に焦がれていたんじゃないかと思える。幼い頃から剣技を学び毎日を満たしてきた切彦にとって、俗に言う『青春』と呼ばれるものはいっさい無かったのだ。だから……。
 倒れこんでいる布団がやけにあったかかくて、思わず掛け布団を手繰り寄せて、抱きかかえる。
 こんなふうに彼を抱きしめられたら……。
「―――!」
 自分で言って、自分で驚いた。
 わたしが彼を……?
 ………いや――
「……そんなことない」
 彼女の中で一番脆い部分ヒビが入った。こうして、口に出さないと、自分が壊れてしまいそうだった。
 そう、そんなことないのだ。
 ――彼はわたしを覚えてすらいないのかもしれない。会話だって、ほんの微々たるのものだし……。
 ……それに、彼には親しそうに離していたこの前のあの少女だっている。
 だから、忘れよう。彼のことは。
 それがいい。それがいいんだ……それが――
 胸が、チクリと痛んだ。今まで仕事で負ってきた、どの傷よりも痛かった。
「紅……真九郎」
 口にする。
 音が出るくらい、顔が火照った。体が燃え上がるように、熱くなる。
「紅、真九郎」
 わたしは知らず知らずのうちに、自らの股間へと手を伸ばしていた。
 恥部を擦ると、甘い刺激と、卑しい水音が神経を伝わってきて、よりいっそう体を火照らせた。
「……紅真九郎」
 綺麗に口から滑り出たその言葉で、それがヒビから一気に崩落したのがわかった。
 もう、どうでも良かった。
431ai:2009/12/25(金) 22:49:08 ID:rir9ZFI7
 淫らに反響する水音。響く甘くて柔らかい快感。収まったはずの鼓動が、再び早くなっていく――ただ今回の鼓動は、そこか心地よいような気持ちになる。
 切彦の手は、知らず知らずのうちに、股間に伸びていた。
 ――おそらく、破壊されたのは、理性だろう。
 下着越しに陰核を捏ね、膣口をぐりぐりと押す。
「ぁ……あっ」
 ――物心ついてから、理性の抑制なんて、してこなかった。
 瞼を閉じると、網膜に蘇るは、彼の顔。
 ――ただ人が疎ましければ、殺したし、好きなものも、自力で手に入れた。
「あ……。はぁ……」
 ――だから、もう、とまらない。
 下着の中に手を滑り込ませ、直接そこを刺激した。
「あっ……ぅうッ!」
 さっきとは比べ物なら無いくらい強い快感に、自然と声が大きくなる。
 包皮の上から陰核をこねながら、切彦のもう一方の手は、自らの胸へと到達。その先端は、服の上から触っただけで、勃っているのがわかった。
 ――紅、真九……郎っ!
 布を乗り越え、突起をつまむ。
「んはぁっ……んっ!」
 切彦の頭は、ピンク色に塗りつぶされていった。
『切彦ちゃん、もうこんなにしちゃって……。感じやすいんだね』
 妄想の中、真九郎は優しい声でささやくのだ。
『気持ちいい?』
 切彦は陰核をキュっとつまむ。
「ンっ……!」
『ここがいいの? エッチな切彦ちゃん?』
 指で転がすように、堅くしこったそれを刺激する。
「んっ……んっ……」
『ほら、声、我慢しなくたっていいんだよ? 二人だけ、なんだから』
 目を閉じ、自分の手を、真九郎の手に連想した。
「ンあっ! ふぅっ……」
『すごく可愛いよ……、切彦ちゃん』
 もう自分でとめることなんて、出来ないくらいに暴走していた。
 手が、想像が、止まらない。
『切彦ちゃん、いい? ……いれるよ?』
「ふっ……んくっ! ……き、きて………ふあッ!」
 淫らな口に指をそっと入れ、かき混ぜる。
『……気持ち良いよ、切彦ちゃんのナカ』
「んっ! はぁっ!」
 指を二本に増やし、大きく出し入れする。
『切彦ちゃんも、……気持ちいい?』
 真九朗が、笑顔で、微笑んだ。
 と同時に指の出し入れを加速させる。
432ai:2009/12/25(金) 22:55:18 ID:rir9ZFI7
「あッ……き、きもちぃ……んぅっ!」
『ごめん、俺、……はぁっ、止まれないかも……』
 妄想内で、真九郎の腰と自分臀部のぶつかる音が響き続けた。
「あッ! あッ! あッッ!」
 ジュブジュブとやらしい水音が切彦の性感を後押しし、
 ――刹那。
『切彦ちゃん……くっ! ……大好きだよ……んッッ』
「―――んぁぁああああああ!」
 クる、とそう思うと同時に、切彦は絶頂に達した。
 しばらくは余韻に浸り、そして荒い息をつく。
「はぁ……はぁ……」
 でもぜんぜん苦しくなんかなく、切彦の心はふわふわとしたものが漂っていた。
 ――紅……真九郎。
 写真立ての薄いガラス越しに、笑う彼の顔。隣にだれがいようと、気にしない。だからわたしも……、
「わたしも、大好き……」
 そうつぶやくと、切彦は、いつの間にか睡眠の世界へと、静かに落ちていくのだった。
 ――今度は、悪夢なんて見なかった。


 次の日の朝、布団もかけずに寝てしまったせいで、くしゃみが止まらないのは、言うまでもないだろう。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

終了です

五分後とか言ってたのに、ミスりましたorz

あと、マンガのほうとは少し設定が違うかも知れませんが、ご了承を


お目汚し、失礼しました
433名無しさん@ピンキー:2009/12/26(土) 00:42:46 ID:1iModseO
乙!
434名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 01:00:44 ID:tI7rovGO
おおっ、きてた。
乙です。

今更ながら紅のドラマCD聴いた。
キャラの壊れっぷりがもう気持ち良いな。
435名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 13:51:23 ID:O3rPANJC
紅にドラマCDなんて存在しませんよ?
何か、間違ったものを認識していませんか?
436名無しさん@ピンキー:2009/12/28(月) 17:30:48 ID:tI7rovGO
密林で検索したら二つ出てきますよ。
俺が聴いたのはTVアニメーション版のドラマCDです。
原作が好きな人には、そんなものなかったってことになっとるんかな。
437名無しさん@ピンキー:2010/01/06(水) 23:16:37 ID:4P9pAkkw
電波的な彼女のアニメは本当に出来がよかったな。
これで電波熱が上がって、職人が書いてくれればと願ったのだが…
438名無しさん@ピンキー:2010/01/07(木) 10:26:07 ID:OVTuQ84r
雨もっとデレろ!
439名無しさん@ピンキー:2010/01/08(金) 01:58:58 ID:iknavLaR
「ジュウ様」
「ん、なんだ?」
(無造作に雨の頭の上に手を置く)
「…………」
「おい、雨?」
「あっ、も、もう少し、このままで……」
「? あ、ああ」
と言いつつ、そのまま雨を撫でるジュウであった。


デレってこういうことですか? わかりません!
440名無しさん@ピンキー:2010/01/13(水) 01:19:29 ID:D51SEy4G
>>432
亀だがGJ

しかし2010年になってしまったけど片山先生が新刊を出すのはいつになるんだろうな・・・
441sage:2010/01/19(火) 21:26:02 ID:CwjYFp85
>>440
恥を知る人間なら、もう二度と書かんだろ。
442名無しさん@ピンキー:2010/01/22(金) 01:05:30 ID:1ScStqqR
醜悪祭(下)があんな出来になったのは編集部の責任だろ
443名無しさん@ピンキー:2010/01/22(金) 02:08:20 ID:cxLZPDis
編集部の責任でも、何事も無かったように次回作は書けんと思うがなぁ。いや、書いて欲しいとは思ってるよ。
444名無しさん@ピンキー:2010/01/23(土) 10:50:53 ID:ZfeXptSs
エロゲ表現規制 政治系対策本部17
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1256523578/

エロゲ表現規制対策本部302
http://qiufen.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1264075615/
445名無しさん@ピンキー:2010/01/23(土) 14:34:30 ID:xaVy8jbW
電車に跳ね飛ばされても平気で起き上がった敵と戦った次はどんな敵にすりゃいいんだ
446名無しさん@ピンキー:2010/01/23(土) 15:54:39 ID:BxQjN47r
打たれ強くはないけれど、攻撃を当てれない、
ブアカーオみたいな敵。
剛力だけでは対処できない。

だが、本当にいつになることか。
編集部のバカ!!
447名無しさん@ピンキー:2010/01/25(月) 16:35:04 ID:8OaNpmW+
片山やる気無くしちゃったの?
紅が無理なら電波の続き書いてくれ
448名無しさん@ピンキー:2010/02/01(月) 19:08:13 ID:alMkeMDQ
保守
449名無しさん@ピンキー:2010/02/01(月) 21:24:07 ID:5CBmsGeM
>>447
全くだ
450名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 02:01:47 ID:45YWZ8kj
451名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 06:42:52 ID:SPRo6GOS
>>450
上の画像がシュールすぎるw
452名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 19:20:37 ID:zVo+KfR5
えらく新キャラがいっぱい出てたな。
この号の広告で、紅の5巻は紅のDVDが付くらしいな。
ヤマト絵の新作で。
453名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 19:33:58 ID:e22Ct5pI
新作って?
監督変わるの?
454名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 22:22:10 ID:zVo+KfR5
監督等の情報は書いてない。
「山本ヤマト先生の画風を再現した新キャラデザイン」
となってる。声優はTV版と一緒。
電波の監督であることを祈る。
455名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 22:48:24 ID:45YWZ8kj
前回のアニメは「なかったこと」になるの?
456名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 22:54:52 ID:zVo+KfR5
そうとも限らんみたい。
切彦ちゃんも出るらしいから、
時系列的には続編になりそう。
まあでもTV版だと、『ギロチン』に
話が続くようには思えんしな。
457名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 08:59:12 ID:HwrjBlEx
ギロチンでも原作設定か漫画版設定かで色々変わらないか?
原作設定で人気出たら片山もやる気出してくれるかな
458名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 10:41:39 ID:4GHGoZ/G
だよな。漫画版はすでに一人歩き状態だよな。
まあ漫画版の特典DVDだから漫画版準拠の話なんだろな。
漫画の最近の改変ぷりを見てると、片山が小説再開することが
金輪際ないことを前提としてる気がするな。
459名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 20:39:19 ID:5POxHpC+
そりゃあれだけ叩かれれば書く気無くなるでしょ
正直漫画が終わるまでに復活しなければもう無理かもね
460名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 21:53:38 ID:HwrjBlEx
つーか集英社的には漫画版の方を正史にしたいんじゃないのか?
それなら少なくとも紅の新刊は絶望的だな
461名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 22:13:00 ID:8LrBA7LS
だな。
なら今は電波の続編をちゃくちゃくと書いている…ハズはないか。
462名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 22:15:53 ID:TQMwA0xm
もう紅は漫画に任せて電波書いて欲しいな
463名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 00:04:57 ID:xIQLxzZT
原作読んだことないけど、そんなに酷いのか
464名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 01:49:31 ID:ZU5oHlQq
原作がひどいのは醜悪祭だけ
一巻とギロチンは普通に面白い
いや醜悪祭もストーリー自体は微妙だけどそこまで叩かれるレベルでもない
問題なのは薄さ
本自体は薄い文庫本並だけど物語が書いてあるページは半分だけという詐欺
465名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 08:21:50 ID:NGB5zveI
醜悪際は上下巻で、下巻では完結せず。その1月くらい後に発売の
『紅 公式ファンブック』で後日談というかオチを掲載。3冊全部
の小説部分をたしても『ギロチン』1冊分にならないくらい。でも
3冊分だからお値段も3倍弱という…。詐欺とは言わんでも読者を
馬鹿にしきってたよな。
466名無しさん@ピンキー:2010/02/06(土) 17:59:14 ID:DjTooh+w
集英社が悪い
467 [―{}@{}@{}-] 名無しさん@ピンキー:2010/02/08(月) 15:32:57 ID:5vqKnQQn
本スレで話題になってるけど片山、2009年7月に電波の読みきりを1つ書いてたんだな
生きてて嬉しい
468名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 03:40:30 ID:KepAzh4I
読み切りっていうかショートショートだけどな…
469名無しさん@ピンキー:2010/02/09(火) 08:47:02 ID:W3BHG/m7
そうそう。しかもここのスレの人が書いたんじゃね?て
感じの内容だね。そのままここに貼り出しても違和感
ないような。
470名無しさん@ピンキー:2010/02/12(金) 23:38:47 ID:bNYe9vMr
保守
471名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 16:22:26 ID:kAxygsTs
紅真九郎を検索してて思ったのはサクランボの名前に似てるってこと。
紅真珠とか紅香って品種があるんだけどチェリーってなんかの隠語だったよね。
あとがきとか読んでてうけたんだけどどう思う?
472名無しさん@ピンキー:2010/02/16(火) 00:29:37 ID:TLP7UH1z
アニメとかマンガとかニ次創作になる度に元設定が大改変される様は、傍で見てて
気の毒になる。あれは原作の穴をフォローしてるというより、無視する形での改変
だよなあ。

まあ小説に穴が多いのは確かだが、もう少し尊重しても罰は当らないだろうに。
473名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 17:55:45 ID:IbDBjZys
そんなの原作者が脚本書かない限り無理だろ
474名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 22:19:07 ID:rOGcV1e0
別に脚本までやらんでも、設定くらい何とでもなると思うが。
475名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 22:21:57 ID:1ALRC0Fq
>>472
>アニメとかマンガとかニ次創作になる度に
二次創作じゃないだろ。「アニメ化」「マンガ化」だ
476名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 03:12:53 ID:VkM8Ev9T
アニメ
漫画
その他二次創作
ってことじゃん?
477名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 14:41:39 ID:rOxPVqyK
まあ、アニメや漫画も二次創作の一種ではあるから、どちらの意味的にも、別に間違ってないんじゃね?
478名無しさん@ピンキー:2010/02/21(日) 22:47:37 ID:q1+7V3Sh
で、何が言いたいんだい
479名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 05:09:49 ID:msnf5A29
上読めば?
480名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 04:25:32 ID:VcsgzTEG
雨を純愛調教
481名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 00:21:01 ID:JFZ0JTbT
いやらしい
482名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 21:31:20 ID:awbJn9F3
純愛調教って何だ?
てか雨はデフォルトで調教完了してるようなもんだろw
483名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 16:32:03 ID:uVKHOFnj
調教したかのようにジュウ様に従順だが、だからこそ調教そのものを楽しめないとも言える。
てか、ジュウ様にせよ真九郎にせよ、周りにいる女性には基本的に距離が近いんだよな。やろうと思えば落とすのは簡単と言うか。
恋人になるのに苦労するようなキャラって、ジュウ様で言えば円、真九郎で言えばリンと絶奈くらいじゃないか?
484名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 20:28:17 ID:uXY1FWeb
リンは難しいというか……
485名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 22:32:40 ID:ru/iGGNT
原作じゃ死んでるしな。
486名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 12:30:21 ID:xBdR8H5+
だが待ってほしい。
もし首チョンパが無かった場合、腕が無くなって絶望するリンが真九郎に依存すると言う素敵展開も可能ではないか。
487名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 12:48:04 ID:Ht9J2CeK
す、素敵か?それ? 俺的には相当ダメだ。
488名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 14:06:38 ID:MzBPQpnA
あ、足コkいやなんでもない忘れてくれ
489名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 14:39:13 ID:oR5bm2Vi
足コキより拙いながらも手コキでがんばるリンのほうがカワイターン
490名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 01:48:54 ID:73HwNIS0
一年後、そこには真九郎(と紫)の献身的な介護を受け、驚異の足技で近衛隊長に上り詰めたリンの姿が!
491名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 07:09:38 ID:eL+NcTMz
フフフ・・・俺は南斗白鷺拳のリン。
492名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 18:56:17 ID:wWQ/CtQ5
>>491
俺もそれ思い浮かんだけど腕なしじゃあ逆立ち出来ないじゃないか・・・
やはり腕チョンパじゃなくて腱切られる位でリハビリしつつ愛のパワーで(ry
493名無しさん@ピンキー:2010/03/08(月) 20:55:10 ID:2oEZ4v/g
ここはブロッケンの帰還で
494名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 04:16:22 ID:fbmjqP/y
だがデレたリンってのも想像できないよな。
「ふふ、紅は可愛いな」とか笑顔で言っちゃうのか。
495名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 17:04:38 ID:Z505pFci
やっぱ肉体改造で「我がぁああああ九鳳院近衛隊の科学力はぁあああ!!!
世界イチィイイイイイイ!!」な方向で。
496名無しさん@ピンキー:2010/03/16(火) 05:17:38 ID:IbST7vno
切彦ちゃんと純愛
497名無しさん@ピンキー:2010/03/18(木) 13:51:22 ID:vcvp6jtn
小説版だと、ただのキチ○イじゃね? >切彦ちゃん

まあ、リンがほぼ嬲り殺しされる様を見た後でも“ちゃん”付けできる真九郎の
センスは大概狂ってるから無問題かもしれんが・・・一般的な純愛は無理っぽい。
498 [―{}@{}@{}-] 名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 14:22:26 ID:wGqsLb9e
あのキチガイ具合がいいんじゃないか
499名無しさん@ピンキー:2010/03/19(金) 16:45:57 ID:E0ZPBEVO
スラム育ちの壊れ女子のインタビューを見て以降、ビッチ萌えとかありえねーと
思う様になった。出てたヤツが物凄えゲスだったんで。

なぶり殺しにした人の、その時の様子をゲスに笑いながら話す年若い人間の顔を
見てると、それがそこそこ整った顔の人間でも、萌えとかそういう部分にはホント
掠りもしないわ。ただキモいだけ。

まあ・・・スレ違いだったかな。スマン。
500名無しさん@ピンキー:2010/03/22(月) 21:27:14 ID:uFnAItfU
漫画版のほうが広まりそうな気がする<切彦ちゃん
小説版のおかしい切彦ちゃんのエロとかあったら、
かなりマニアックで却っていいかもしれない。
501名無しさん@ピンキー:2010/03/24(水) 23:38:13 ID:9bYGg0e1
だが、刃物の有り無しに関わらず切彦ちゃんは受けだと思う。
マイペース受けと強気受け。
502名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 05:01:21 ID:4DuDFcri
もうすっかり出来上がってる夕乃さんが
美味しく頂かれちゃうSSはまだですか?
503名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 15:29:39 ID:oWjXe7a2
実は切彦ちゃんは、ナイフ×自分で妄想する変態
504名無しさん@ピンキー:2010/03/27(土) 14:59:04 ID:ZZ4ZBiD4
でもバージン。
そうか切彦ちゃんは淫乱処女か。
505名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 06:47:34 ID:uYO46GRt
夕乃さんが淫乱なのは周知の事実だが、実は銀子も毎日真九郎でオナッてそうだ。
506名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 11:04:49 ID:OqGtuwok
煩悩退散!
507名無しさん@ピンキー:2010/04/02(金) 11:06:09 ID:cdKxsrFh
……やらしい
508名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 02:37:46 ID:UJhOJADp
にゃーにゃーにゃん?
ttp://viploader.net/pic/src/viploader1189200.jpg
509名無しさん@ピンキー:2010/04/05(月) 09:12:07 ID:9iPkBGCK
>>508
勃起した
510名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 02:08:21 ID:pTwDxYrB
>>508
「おい、銀子。今から僕が言う文章を復唱しろ。
 斜め77度の並びで泣く泣くいななくナナハン7台難なく並べて長眺め」
511名無しさん@ピンキー:2010/04/17(土) 05:45:22 ID:xVEE+BCL
ho
512名無しさん@ピンキー:2010/04/17(土) 19:41:04 ID:EZ+Ffst1
いやらしい
513名無しさん@ピンキー:2010/04/29(木) 01:35:13 ID:gJH+q6OE
銀子とにゃんこプレイ
514名無しさん@ピンキー:2010/04/29(木) 04:43:07 ID:k8i3B9QR
腕折れたりとかボロッボロになって死にかけて
意識不明の重体的なアレになった真九郎の病室にお見舞いに来た銀子ちゃん
夕乃さんとか紫に
「あなたたちと関わらなければこんなことにはならなかった」
的なことを言い捨てて病室から追い出して独りで傍に。
でも思い返してみたら自分もそんな変わらないっつーか無理やりにでも崩月から連れ出せばよかったとか
自責の念にかられてベッドの隣で嗚咽漏らして号泣する銀子ちゃん
515名無しさん@ピンキー:2010/04/29(木) 05:20:35 ID:xACm2i53
そういうのは銀子スレに書いてくれよ。勿体無い
516名無しさん@ピンキー:2010/04/29(木) 07:22:03 ID:gGfwGGRR
>>514
んな事言われたら、紫死んじまいそうだな。
517名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 06:47:32 ID:UN8cAJ31
真面目な話、紫をイかせるにはどうすれば良いか
518名無しさん@ピンキー:2010/05/07(金) 21:18:29 ID:tPTnMs5y
>>517
まじめな話なのか?
519名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 00:12:36 ID:wC03MLPu
>>517
真面目な話、空想のキャラをどうこうするのは無理
520名無しさん@ピンキー:2010/05/08(土) 07:13:46 ID:F3CdlbgI
真面目な話、ブサメンじゃ紫じゃなくても無理
521名無しさん@ピンキー:2010/05/11(火) 02:01:51 ID:ntGnwEwy
>>519
エロパロスレまで来てお前……
522名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 03:02:34 ID:pGizm74h
デレ銀子
523名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 18:21:30 ID:FyoHlale
ヤンデレが似合う銀子
524名無しさん@ピンキー:2010/05/18(火) 20:56:19 ID:8ZYoiSLV
なにこれ1年あいてる
525名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 03:41:31 ID:OgM+Lbru
紅で検索したら流れ流れてここに来たんだけど・・・
ここ何?
526名無しさん@ピンキー:2010/05/20(木) 04:27:59 ID:0COb+qeK
このスレのほとんどは

紫×心苦労
夕乃さん×心苦労
銀子×心苦労

で出来ています>>525
527名無しさん@ピンキー:2010/05/23(日) 23:36:29 ID:GZm6waRy
ho
528名無しさん@ピンキー:2010/05/27(木) 19:40:11 ID:p+xLuK+Z
>>527
にゃーにゃーにゃん?
銀子が可愛過ぎて困る
529名無しさん@ピンキー:2010/06/01(火) 21:34:12 ID:g8uBw3IE
まだ片山が続編を出すかもしれないという奇跡を信じているのは俺だけですか。。。

色々読んだけど、ラノベで一番面白かったのはやっぱ片山の作品だと思うなぁ

530名無しさん@ピンキー:2010/06/02(水) 00:33:45 ID:In+0WZp2
醜悪斉は編集部が一番醜悪でしたというオチ。
…順調に進んでいたらジュウと心苦労が出あうエピソードとかあったんだろうな。
531名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 02:51:25 ID:/OR3v8u9
片山先生……
女子高生になった紫が、見たいです……
532名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 04:30:39 ID:wTwg7EaO
でもそしたら夕乃さんは25歳
いよいよもってムチムチっぷりがマキシマム

銀子は24歳
ツンデレに磨きがかかったOLタイトスカートメガネ美女


そんなのと紫が張り合えるのかな?
533名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 04:40:36 ID:xRWKRbWu
元々精神年齢が高いからあまり変わらない気がする。
あ、千鶴は見てみたいな。
534名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 22:30:03 ID:unlBLTZq
千鶴は中学生か高校生?
「紫ちゃんはねー、」と言って紫のフォローに入るおっとり娘に
なっているに違いない。
535名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 22:32:27 ID:EnK1zlHy
その頃ならぼちぼちジュウ達も出演可能ですな。


あ、千鶴は永遠に幼女ですね。わかります。
536名無しさん@ピンキー:2010/06/03(木) 23:50:43 ID:yUeGlZKx
3レスにも渡ってキャラの名前を間違えたままとは……おまえらは愛が足りない!
537名無しさん@ピンキー:2010/06/04(金) 23:10:30 ID:ovK45B4q
きっと16歳の誕生日に、もう結婚できる、って逆レイプしちゃうんだろうな
538名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 04:47:15 ID:jmz3Xxq+
今回の銀子もよかった
539名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 21:43:15 ID:/liyZ+XU
原作だと銀子苦手だったけど、コミック版の紅読んでから銀子が大好きになった
540名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 13:48:41 ID:IcuC0uwY
散鶴は中学生になった頃、真九朗にツイスターゲームを教えていることだろう。
541名無しさん@ピンキー:2010/06/06(日) 21:38:22 ID:STdqZ15v
真九郎はDTBの黒みたいになってそう
542名無しさん@ピンキー:2010/06/07(月) 23:37:44 ID:pVpkv3Wn
うぅあー…つか、せめて電波の続編だしてくだしゃい…ガチで
543名無しさん@ピンキー:2010/06/12(土) 06:20:13 ID:ZNzAS5yh
ううむ、ガチで無理じゃね? 幸福ゲームが5年前だからなあ。
544名無しさん@ピンキー:2010/06/13(日) 11:30:56 ID:7pQEdj59
もうそんなに経ったのか・・・
てか客観的に見ればもう引退同然だよな片山
売上やメディアミックスで相当稼いだろうし、引き際だと思ったのかね。
今でも復帰は待ってますけどね。
545名無しさん@ピンキー:2010/06/14(月) 06:21:16 ID:8kuQ0lVn
作家業はメインにもサブにも出来る面があるからね。復帰もあるかも知れないよ。
本業持ちが手慰みに書いてる例も、少なからずある事だし。

ただ、電波が爺になっても書ける作品かどうかについては・・・ちと不安。
546名無しさん@ピンキー:2010/06/19(土) 13:39:47 ID:OLuIItVZ
復帰期待保守
547名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 01:53:56 ID:RpbCpS2J
もう真九郎は紫銀子夕乃切彦絶奈をまとめて6Pするしか無いな
548名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 02:46:15 ID:FmBGfSX1
P云々はさておき、真九朗の立場で、紫・銀子・夕乃の中から誰か選ぶってのは
相当キツい気がするな。

洩れなく浅からぬ事情付きの家柄が付いて来る上、各家とも世話になりまくり
な人々で形成されてる訳で。作者の意図としては紫一択方向に持っていきたい
っぽいけど、そう簡単な話ではなかろう。
549名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 04:27:41 ID:thovA1y6
「真九郎!ついに私を本妻にする気になったのだな。嬉しいぞ」
「もちろん私が第一夫人ですよね?真九郎さん♥」
「…私以外の女を妻にするつもりなんてないわよね?そもそも五歳のときに私にプロポーズしたのは誰だったかしら?」


こうですね
わかります
550名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 05:18:21 ID:FmBGfSX1
「崩月の子鬼めが。吠えた挙句に裏切り居ったわ」
「好きにしろとは言ったがな。俺の孫を袖にしていいとは言ってねえぞ、ええおい」
「俺ぁ長いこと殴りっこからは足を洗った積りだったんだがなぁ、真ちゃん。銀子が独りで泣いてたんだよ」

 誰を袖にしても、こういう方向といいますか。はい。
 特に九鳳院家と崩月家は、組織・家族を上げて大変な事になりそげ。
551名無しさん@ピンキー:2010/06/21(月) 20:53:19 ID:XoKF3CKl
あちらを勃てればこちらが勃たず。
真九郎死ぬしかないんじゃね。もしくは>>514
552名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 21:50:10 ID:0qDu8JZl

真九郎が紫を選んで、法泉が九鳳院に乗り込む(殴りこむ)なんて恐ろしい想像をしtおらワクワクがとまんねぇぞ
553名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 21:52:06 ID:0qDu8JZl
でも、ま。

個人的な願望とか希望とかで言ったらやっぱ紫と結ばれて欲しいなぁ…
554名無しさん@ピンキー:2010/06/22(火) 23:16:23 ID:AvPs9TUy
紫は真九郎が精神的な地盤になってるっぽいから、振られでもしようものなら相当な
ダメージだろうし、九鳳院の特殊性を思うと、その後の紫の生活が危機に晒されそう
なのを知った上で真九朗にそれができるとは思い難い。といって紫との結婚となると
九鳳院との内部抗争が生じる事請け合いな上、万一蓮丈が怒って敵対関係になどなろ
うものなら崩月家にまで類が及びかねない。

また崩月の場合、夕乃以下の面々は真九郎の取り込みに家系を賭けてるっぽい気配が
あり(史上100年間で三人しか採ってない内弟子)問題は夕乃との二者間で済ませられ
る範疇を超えている。それにちーちゃんや冥理、法泉が寄せる厚い期待を、彼らに支
えられて、ようやく生きて来られた真九朗が裏切れるかと言うと、やはり厳しかろう。

三家中で唯一、普通の失恋話に近い範囲で済みそうなのは村上家くらいなのだが(過去
に一度は崩月家に真九郎を取られるのを看過した訳だし)逆に真九朗が銀子一筋に走っ
た場合に、困難な事態に陥る可能性が否めない。というのも、九鳳院や崩月が相手では
安易な手出しは避けるであろう悪宇商会辺りが、この場合は動きを見せかねない。また
村上家は他二家に比べると、対抗力に難がある(気がする)。

てか、悪宇商会の立場で真九朗をどうにかしたければ三家中で最もガードの薄い、村上
家を相手取る方が遥かに容易な訳で、銀子とくっつく事には他の二家の場合とは異なる
困難を招く可能性がある。あれだけ悪宇商会に強い印象を与えてしまった真九朗が、そ
れをそう易々と拭えるとは思えないし。


てな事をつらつらと考えるに、ベストの答は紫と結婚して九鳳院家で上り詰める事の様
な気がしてきた。実現しないまでも重要な位置を占められれば、その間は悪宇商会の動
きを牽制できるかも知れない。うまくいけば紫を救った上で、九鳳院・崩月間の仲介を
果たせる上、村上家を陰に陽に庇護できるだけの力も得られるだろうから、大きな意味
では他二家を裏切る事にもならずに済むだろう。夕乃と銀子は失恋するが、裏切られる
訳ではない。

よし、これだ。リスク含みだが、何とか蓮丈と渡り合って逆玉を狙え真九朗。
555名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 04:10:10 ID:vMUOLLLW
本妻は紫

正妻は夕乃さん

奥さんは銀子


それでいいじゃない
556名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 21:00:56 ID:RacIn1tL
じゃあ切彦ちゃんは頂いていきますね^^
557名無しさん@ピンキー:2010/06/23(水) 21:03:12 ID:BwPk29pu
切彦ちゃんは岡田以蔵ポジションで。
558名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 19:11:32 ID:vUauVZwT
>>555
竜士が泣いてくやしがるなwww…問題はガキ作れるのかということだが
559名無しさん@ピンキー:2010/06/24(木) 23:01:51 ID:YsQRTUTS
おい、おまいら。

環ルートはどうした!環ルートは!!
560名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 00:13:59 ID:DKBX7UNC
そんなものはない
561名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 00:18:52 ID:mlzFNCHI
まぁ、嫌いじゃないよ
でも殴るのは簡便な!
562名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 02:25:31 ID:HkPagn4U
切彦ちゃんは四六時中一緒にいるボディーガード

環は紫と夕乃さんと銀子の産んだ真九郎の子供の乳母
563名無しさん@ピンキー:2010/06/25(金) 04:40:49 ID:XwARmxLu
「…いたんですか、環さん」
「ええ、ずっと」
564名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 03:41:30 ID:5opi3akQ
 ■ 環の告白 ■ お試し導入Ver


 12年後の、ある日。

 黒い車が古いアパートの前に停車し、後部座席から一人の青年が降り立った。青年が運転席の者に
何事か告げると、しばらくして黒い車は走り去って行く。

 「やれやれ」

 久し振りに帰国した真九朗は、ホッと溜息を漏らした。近頃の彼は多忙を極める毎日だ。殊に紫と
の結婚が決まって以降は九鳳院に連なる者として、年間の殆どを各国行脚に投じている。過去の自分
が、パスポートのスタンプ欄をメモ帳の様に消費する現在の自分を見たら、どう思うことだろう。

 ここは五月雨荘。ようやく我が家に帰ってきた真九朗は、目元に安堵の色を浮かべた。

 しかし、それも短い事になりそうだ。明後日には自室の荷物を纏めて、九鳳院の屋敷に移らなくて
はならない。

 真九朗は改めて五月雨荘を見つめる。本当は、このまま引越し後も部屋をとっておきたかった。実際、
不戦の約定が交された五月雨荘は、セーフハウスとして申し分ない物件でもある。

 だが部屋を確保し続ければ、次にこのアパートを必要としている、過去の自分の様な人間の生活空間
を奪う事にもなってしまうだろう。真九朗は、もうここを辞するべきだった。

 もしかすると自分が入居する以前にも、同じ様に出て行った人がいたのかも知れない――

 そんな事をぼんやり考えていた真九朗は、突然、背後から体当たりを食らって飛び上がった。

 結婚が決まって九鳳院に入る以前、真九朗は数々の修羅場を潜り抜けてきた、プロの中でも有数の揉
め事処理屋だった。現在も仕事のステージを移しただけで、職業人としての自覚や技能は捨てていない。
それに紫との婚約を契機に、崩月での稽古はより一層厳しいものになった。師範による闇討ちじみた路上
稽古も増え、今の真九朗は気を抜いている様でも、自分に近寄る気配はまず見逃さない。

 その警戒をすり抜けて後背を至近距離から襲える者など、そうは居ない筈だった。真九朗は直後に迫
る猛攻を想定して総毛だったが、昂ぶる事無く冷静に状況を把握し―――

 飛びついてきた相手が、環である事を突き止めたのだった。

 「・・・いたんですか、環さん」

 「ええ、ずっと」

 環はニコニコしている。真九朗はがっくりと空を仰ぎ、先程とは別種の溜息をついた。背後と頭上の
死角を突かれたまま、のほほんと構えていたとは、我ながらなんてザマだ。

 「今日は。闇絵さん」

 樹上から闇絵の声が降ってくる。

 「久し振りだな。少年」

 過去の自分が、未だに少年呼ばわりを免れない現在の自分を見たら、どう思うことだろう。
565名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 03:43:28 ID:5opi3akQ
環ルート考えてみたけど・・・えちぃとこ無いし、止めておいた方がよさそうなら
続きは控えるでごわす。
566名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 04:11:11 ID:pxq+n7yo
>>565
なんだよ
投下し始めたんだったら最後まで投下しやがれ
567名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 09:27:07 ID:jhC8Q9im
>>565
ぜひ読みたいので、続きを投下してくだちい
568565:2010/06/29(火) 00:41:50 ID:ewaTKKbZ
ども、であります。大丈夫そうなので、以下続きを。
569名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 00:43:42 ID:ewaTKKbZ
 ■ 環の告白 ■ No.2-1

 樹上からふわりと降り立った闇絵に、持っていた手土産を渡す。免税品店で大量に買い込んだ煙草
の袋だ。

 「ありがとう、少年。近頃では軒並み値上がりでね。困っていたのだよ」

 ちっとも困っていない体で、闇絵は言う。真九朗はついぞ、彼女が自分で煙草を買う場面を見たこと
がない。実際、自分で買うことはないのではないかと思う。

 環には大量のビーフジャーキーと焼酎。

 首にぶら下がった姿勢のまま、屈託無く土産を受け取った環は思い出したように言う。

 「聞いたよっ、真九朗くん!ついに紫ちゃんと結婚だってね。おめでとう!」

 満面の笑みを浮かる環。その笑顔は無邪気で魅力的なのだが――遺憾にも“これは今夜の御肴です”
という意味と同義。弄くり回すのに丁度いいネタを嗅ぎつけた時に見せる表情だという事を、真九朗は
長年の経験から悟っていた。心の中で溜息を漏らす。

 とはいえ実のところ、この結婚話をこんな風に祝ってくれたのは環が初めてだった。比較的近い祝辞
は「ふーん逆玉ね嬉しそうね良かったわねロリコン」。他には「私は今夢を見ているのです立派に成長
して逞しくなった真九朗さんが私を捨てて紫ちゃんと結婚するなんて酷い事を言いだす悪夢なんです
夢なんです」という一風変わった祝辞・・・もあった。

 額に嫌な汗を一筋たらしながらも、真九朗は礼を言う。

 「有難うございます、環さん」

 「やったじゃ〜ん?七難八苦を乗り越えて、ロリコンの夢をものにしたねっ!真九朗くん、勇者だよ
ペドの勇者っ!」

 「はあ、お陰様で・・・って、誰がペドですかっ!」

 ロリコンよりも酷かった。
570名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 00:44:16 ID:ewaTKKbZ
 ■ 環の告白 ■ No.2-2


 環はぶはあっと酒臭い息を吐き出した。どうも朝からご機嫌さんのようだ。

 しかし彼女が酒臭いのはいつもの通りだし、紫と出会ってからロリコン扱いされる事も珍しくはない。
まして実際に結婚する今となっては、もはや抗弁もならず、真九朗としては耐えるより他に術が無い。
まあ、流石にペドの勇者というのは新境地だったが。

 しかし、もう紫は19歳で真九朗は28歳だ。過去の経緯を知る環には何を言われても仕方がないも
のの、未だにロリコン呼ばわりはどうなのだろうと思わなくもない。まあ、その説を強く主張する者も
彼女の他に2名ほど居るのだが。

 ともあれ、引越しの日取りまで時間が無い。こうしてじゃれつかれる機会も、もうない事だろう。
一瞬そう思った真九朗は、つい何時もの自分役を演じてしまうのだった。

 一方環は、相変わらずのズボラな格好で、頭を掻いていたりなどする。未だ出会った頃の若々しさは
変わる事無く、その愛嬌ある美貌も僅かなりと損なわれていない。ただ外見に問題なしとはいえ、彼女
の実年齢は30過ぎの筈。いわゆるOLなどとは職種が違うにせよ、何日風呂に入っていないか分らない
様な風体はそろそろどうかと思うのだが。

 そう思いつつも、彼女の変化の無さに真九朗は微かな笑みを漏らす。前述の建前を棚上げすれば、
この風景は彼女以外には到底実現できない、一種の奇跡のようなものだった。


 当の環はしばらく目を擦っていたが、やがて欠伸をかみ殺しながら訊いてくる。

 「んで、新居はどうすんの? 五月雨荘は出ちゃうんだよね?」

 「ええ、九鳳院の空いた家に入る事になりまして。俺はあんまり荷物がありませんから、明後日には
  引越しになると思います」

 にへらっと笑う環。

 「えへへへ〜〜そりゃまた、急だねぇ」

 朗らかな魅力に富んだ笑顔。だが、その屈託のない笑みは――こう語っていた。


 これは今夜の御肴です。
571名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 14:42:15 ID:9YispHua
wktk
572名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 08:13:17 ID:xqG8PoWb
 ■ 環の告白 ■ No.3-1

 酷い宴会だった。あまりの騒ぎに、真九朗は鋼森の顔を10年振りに拝む事になった程だ。勿論、彼は
近所迷惑を訴えて怒鳴り込んできた訳だが。

 その後の狂宴は鋼森を巻き込んで続いた。当初抵抗を示して暴れた鋼森も、酔った環に締め上げられた
挙句に大量の酒を流し込まれ、闇絵にいたぶられ続ける内に据わった目で社会への不満を訴える様になる。
彼の愚痴を元にブツブツと始まった一連の説話は歴史を遡ってヘロドトスから地政学経由で地質学に至り、
鉱物とプレート理論の解説を経て工学へシフトした後、ベルヌーイの定理を詳述。気付いた頃には地球圏
を飛び出して太陽系規模に拡大し、オールトの雲に至った辺りで唐突に途絶えた。

 満足げな屍と化した鋼森の頬を、ダビデがひっぱたいて続きを要求していたが、他は鋼森が落ちた事に
すら気付いていない。

 やがて飲む物も食べる物も無くなり、声も枯れ果てる頃になってようやく騒ぎは終息する。真九朗も未
青年ではないから、環によってしこたま酒を飲まされて意識が朦朧としていた。そのせいだろうか、自室
に引き返す闇絵の後姿が、なんだかふらふらしていた様に見えたのは。

 環は床と一体になっていた。このまま放っておけば、何だか分らない芽でも生えてきそうなので、真九朗
は彼女を無理矢理起して水を飲ませる。

 「・・・しまった、芽が生えてくる」

 真九朗ははっきりしない頭を一振りして、自分も水を飲む。少し意識がはっきりした。コップ入りの水
の出所をちょっと考え、自分の影だと思い当たる。酔いは、もう醒めていた。


 座り込んだ後も、強風に煽られる竹の様にぐらんぐらんと頭を回している環。真九朗は彼女を背負い、
部屋まで運ぶ事にする。

 真九朗の意識は既に醒めきっていたが、如何せん足元が不確かな事はどうにもし難く、廊下の途中で古
新聞に躓いてしまった。環の頭がごちごちと壁に当る。

 「わーん、お母さんごめんなさい〜〜お供えのお萩食べたのあたしです〜〜でもカマドウマは嫌ぁ〜〜」

 何かトラウマがあるらしい。

573名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 08:13:54 ID:xqG8PoWb
 ■ 環の告白 ■ No.3-2

 しばらくかかって部屋に這い入った後も、環は酷く酔っているようだった。ふらふらと体を揺らしながら
布団を敷く真九朗を眺めている。その様子は傍目に『落ちる寸前』といった体。しかし、眠気に耐えるよう
に目を擦った環は、ふと真九朗に話しかける。

 「ねえねえねえ、真九朗くん真九朗くん」

 「はいはい。何ですか、環さん」

 多分「水ちょうだい、水」とでもくるのだろうと思いながら、真九朗は手を動かし続けていたが、実際に
かけられた言葉は予想とは違っていた。

 「真九朗くんが〜五月雨荘に来てから〜〜あたし何回、真九朗くんと結婚する〜って言ったっけ?」

 変な質問だったが、真九朗は手を止めずに応じる。

 「知りませんよ。環さんいつも酔っ払ってましたし、酔うとそんな事ばっかり」

 「238回だよ」

 停止する真九朗。その背中に、環はにへらっと笑いかける。

 「えへぇ」

 「真九朗くん、あたしは君に238回もラブラブラブコールしたのでしたぁ〜〜」

 環はふらふらしていた頭をカクッと伏せると、小さく付け足した。

 「全部振られたけど」


 言い知れぬ雰囲気に言葉を失い、真九朗は固まる。殆ど完全な不意打ちだった。

 普段なら冗談ばかりの環の事、ホラ話と受け流す場面だったが、今の言葉は気配が違う。真九朗はなぜか、
この数字が真実である事を殆ど確信していた。

 部屋に沈黙が降りた。 

 相変わらず散らかった環の部屋。真九朗がここに入って布団を敷く事は多分、もうない。


 突然、環が弾かれた様に顔を上げ、大声で喚いた。

 「も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!真九朗くん、なまいき過ぎっ!!なまいき過ぎっ!!年下のくせにぃっ!!!」

 強張る真九朗の背中に、小さな呟きが続く。

 「1回くらいっ・・・いいよってゆってくれたって、良かったじゃんか」


 声は部屋の空気に霧散し、後には言葉が残る。真九朗は、いつも能天気な環がこんな気配を纏う事が信じら
れず、引き攣ったように身動きが取れないでいた。

574名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 08:14:44 ID:xqG8PoWb
>>571
有難う。
575名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 22:18:30 ID:xqG8PoWb
 ■ 環の告白 ■ No.4-1


 それきり静まり返った室内で、目覚まし時計の秒針の音だけが響いていた。

 真九朗はふいに、その時計は数年前の環の誕生日に自分が贈ったものだと気付く。寝起きの悪い彼女が
壁に叩き付けても壊れないよう、ブリキで出来た頑丈な品を選んだのだ。大分痛んでいるが、まだ壊れて
はいない。

 よく見ると環の部屋には、そうした道具や調度類が幾つも置いてある。真九朗はこの十数年の間、自分
が如何に彼女の生活空間に浸透していたかを自覚した。いつの間にか、こんなに。


 幾許かの時が過ぎる。


 環に背を向けたまま、真九朗は布団を整える作業を再開した。

 布団の綿を均等に整え、新しいシーツに隙間無く挟む。枕の中のそば殻を均しながら、真九朗は環に語り
かけた。


 「・・・環さんは基本滅茶苦茶ですけど、俺は随分助けられました。覚えてます?」


 環は無言。だが真九朗は布団を引き延ばしながら、話し続ける。

 そう。五月雨荘に引っ越して来た日。崩月家から逃げ出すように一人暮らしを始めた日。真九朗に一番
最初に声をかけてくれたのは彼女だった。


 「いい匂いだね。今から晩御飯?」


 過去。幼かった真九朗は両親と姉を空港テロで亡くして以降、他人の庇護の下で暮らしてきた。幸運な
事に、周囲は優しい人ばかりだった。彼らはとても親身に接してくれ、愛してくれさえもした。だがそれ
でも家族と居場所を失い、周囲の人々の好意に甘えるばかりで何も出来ない自分を思う時、真九朗は彼等
から一歩引いた場所に身を置かざるを得なかった。ずっとそうでないと、いけない気がしていた。

 そんな真九朗にとって五月雨荘は、孤児になって以来、初めて得た自分の居場所。誰憚る事なく、自由に
過ごせる大切な居場所だった。時に、水しか口にできない日もあったけれど。


576名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 22:19:08 ID:xqG8PoWb
 ■ 環の告白 ■ No.4-2


 当初隣人との関係は、それまで暮らした崩月家とは違う、確固たる他人同士として始まった――筈だった
のだが、環の行動や生活様式ときたら滅茶苦茶で、到底見ているだけの立場に甘んじられる様なものでは
なかった。

 変化は直ちに現れる。ある日、仕事のプレッシャーとテスト勉強と異臭とハエとゴキブリに追い詰めら
れた真九朗が、箒と雑巾とバケツを装備して決起したのだ。

 そうして受ける被害を避ける内に、気付くと衣食住の世話の多くを自分がやるハメになっていた。


 「なぜだろう」と腕を組む日が無いではなかったが、しかし、その結果は意外な副産物をもたらした。
真九朗は他人の世話をする側になって初めて、周囲の人々が自分に寄せる好意や気持ちを、素直に受け入
れられるようになったのだ。

 あれ程始終、薄く厚く繭の様に自分に纏わり付いていた“報いられないはがゆさ”、“借り物の様に感じる
生活感”。それは、これほど単純な行為の副産物としても、受け手によっては生じ得る。自分が環や闇絵に
料理を振舞う時がそうである様に、厚意の相手は報いなど、それこそ毛程も考えていないかも知れないのに。

 勿論、これは受けた恩を軽視して良いという事ではない。だが、与えられる厚意を必要以上に意識して
しまう事は、相手の行いの意味や規模や内容を正しく理解できていない事に他ならない。遠慮や辞意も行
過ぎれば、互いの関係にとって良くないに違いないのだ。

 それに、いざという時に環が見せる自分への厚意。単なる隣人、利害のない他人。当初はそういう間柄で
始まろうと、人間はあれだけの関係を他者と結ぶ事が出来る―――真九朗の心の奥深くで形作られた、その
善性とも言うべき確信の基には間違いなく、環という女性が席を占めていた。


 少し照れたように微笑み、真九朗は話し続ける。

 「それに環さんは、なんだかんだ言ってスゴい人ですからね。傍に居られて有難かったし、嬉しかったんです」


577名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 22:19:49 ID:xqG8PoWb
 ■ 環の告白 ■ No.4-3


 真九朗は過ぎた時間を思う。12年の間に数多くの出会いと別れがあった。中には墓場に行っても忘れ
られない、忘れるべきでない別れもある。

 「いつか、犯人を見つけたら・・・ぶっ飛ばしてやってね、わたしの分も・・・」

 機械に繋がれ続けた生涯の最後に、彼女は言った。その事件で出会った黒リボンの刃使いは後年、窮地
に陥った真九朗のために孤人要塞に立ち向かい、最後まで紫達の身を案じた隻眼の近衛は手懸りと簡潔な
メッセージを残した。そして“あの事件”以後、行方を絶った世界最高の揉め事処理屋――――

 残された真九朗には、するべき事が山程あった。

 彼等との約束――自分の影に潜む忍の末裔が、無言の内にそれを思い起こさせる。もう真九朗の身は、
本当の意味で彼一人の物ではない。だが、そんな事情に環が巻き込まれる理由もないのだ。

 「でも、今の俺には負い切れるかどうかの預かりものが沢山あって。年下のくせに、ほんと生意気なん
  ですけど・・・」

 真九朗は告げた。分水嶺を過ぎて遠い、別たれた支流に語りかけるように。

 「だから、御免なさい。俺は――いいよ、とは言えない」

 黙って作業を続ける真九朗。背後の環は、何も言わなかった。

 ようやく寝具の準備を終え、それを確認した真九朗は後の懸念事項を告げる。

 「そうそう、俺が引っ越した後の話ですが。うるさく言う人間が居なくなるからって、お酒は飲み過ぎ
ないで下さい。アル中になったりしたら本当に一滴も飲めなくなるんだから」

 環の方に振り返りながら

 「程々にしておいた方が、結局は――――」


 とんっ


 しばらく逡巡し、改めて後ろを振り返る。真九朗の背に頭を預けた、どこか可愛い年上の女性。彼女の
あどけない口許からは、小さく寝息が漏れていた。

 一息ついた後、真九朗は環を起こさないよう体制を入れ替えて正面に向き直る。彼女の顎を前から肩に
乗せるようにして後頭部を押さえ、膝上に置いた両手がこぼれない様に気を配りながら、ゆっくりと布団
へと運んだ。

 枕に環の頭を乗せて、静かに身を起こす。改めて見つめる環の寝顔は睫毛が長くて顎の線が薄い、なか
なかの美人だ。しかし、無邪気であどけない雰囲気もある。ふっくらした頬と、への字に結んだ口許。

 足音を忍ばせて、戸口に向かう。


 「おやすみ、環さん。また明日」


578名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 22:20:41 ID:xqG8PoWb
 ■ 環の告白 ■ No.5-1


 翌日。環の部屋には朝から人の気配がなく、ノックしても応じる声はなかった。真九朗は自分の引越し
準備に忙しく、そのまま慌しい一日が過ぎて準備は滞りなく完了する。


 引越しの日の朝。


 環は顔を見せないままだ。流石に気になった真九朗は、見送りに現れた闇絵に尋ねてみた。


 「ああ、環か」

 紫煙をたなびかせ、闇絵はこともなげに語る。

 「どうやら身の振り方を決めたらしい。今は実家に戻っているそうだ」


 真九朗は時計を見る仕草で心情を隠す。お陰で少し面白げに細めた闇絵の視線には、気付けなかった。
足元で背中を擦っていたダビデがスッと闇絵の肩に乗る。

 「少年には、よろしく伝えるよう言われたよ」

 「・・・そうでしたか」

 真九朗は少し五月雨荘に視線を向けた後、再び闇絵に向き直った。静かに息を吸うと、思い切って尋
ねてみる。いつか聞きたいと思っていた『答え』。自分が五月雨荘を離れる事になり、環も身の振り方
を決めた今、真九朗はどうしても尋ねておきたかった。それを闇絵は見つけられたのだろうか。

 「闇絵さんは―――」

 「ああ、いつかの答えかね?」

 闇絵とダビデ。心を見透かす四の視線に見据えられる。いつも捉え所の無い闇絵だが、こんな視線を向
けられるのは初めてのことだった。半ば覚悟していた様に、真九朗はこの瞬間、自分とこれまでの12年
間が審判に晒されている事を知る。

 ふと笑みを漏らし、闇絵は告げた。

 「出て行くその日からここの暮らしに未練とは、いくらなんでも気が早過ぎやしないか?」

 黒い手袋に包まれた細い指にタバコを挟み、紫煙を吐き出す。こういう仕草がここまで絵になる人物を、
真九朗はもう一人知っていたが。

 「選んだ選択肢を正しいものにしていくのは、少年。君自身の仕事だよ。他人は手伝う以上の事は出来ない」


579名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 22:21:19 ID:xqG8PoWb
 ■ 環の告白 ■ No.5-2


 真九朗は息を呑む。これは何時か聞いた言葉の続きだった。紫と出会ったあの事件、ホテルに向かう車内。
ただ、それを告げた相手は―――

 改めて見遣る、闇絵の姿。それは初めて見た時と変わらない、朝日の下でも闇が凝固した様な美しい姿
だった。

 真九朗は既に成人して久しい。当然、周囲の人々にも同じように12年の歳月は降り積もっている。紫
はもう少しで成人を迎えるし、銀子は幾つもの会社を経営、夕乃も美しいながら最早高校生などではなく、
5歳だった散鶴は今や大学受験に励んでいる。雰囲気の変わらない環でさえも、容貌そのものは往時のまま
ではない。

 しかし、闇絵の姿は出会った時と全く変わらない。真九朗は一瞬、自分と闇絵が並び立っているこの様子
が第三者の目にどう映るかを思い、即座にその思考を断ち切った。馬鹿馬鹿しい。『下手をすると、自分の方
が年上に見えるのではないか』などと。

 一瞬、取り留めのない思考に囚われかけた真九朗に向かい、黒い魔女は静かに言う。

 「今の選択を大事になさい」


 真九朗はどこか優しい、その声に意識を戻された。辛くても飲まなくてはならない言葉の薬。そう、自分
はもう揺り篭願望など抱いて許される年齢でも、立場でもないのだ。一昨日、自分で環に語ったように。


 闇絵はついでの様に告げる。

 「私は――そうだね。もうしばらくは、ここに居るよ。先の事は分らないが」


 真九朗は黙って頭を下げた。何時も、こういう時は想いの割に何も出来ないものだと悟りながら。



580名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 22:22:04 ID:xqG8PoWb
 ■Epilogue


 ところで。正しく、先の事は分らない。この数日後、真九朗は意外なところで彼女等と再会する。

 それは九鳳院の新居での事。仕事先から戻った真九朗が荷を降ろす直前、ダイニングテーブルを料理
やジュースやビール缶で覆い尽くした連中が、一斉に挨拶をよこした。人数も相まって妙な迫力。

 「おお、戻ったか!おかえり真九朗、待ちかねたぞ!」
 「おかえりなさい、真九朗さん。お食事になさいます?それともお風呂・・・」
 「それはわたしのセリフだろう!」「料理もお風呂も、用意したのはわたしです!」
 「・・・いやらしい」
 「やあ、少年。しばらくだな」「ニャー」
 「やっほー。今日からお世話になるよー!」
 「おかえりなさいませ、お兄ちゃん」

 肩から滑り落ち、ガラガラと床に散らばる荷物。硬直する真九朗。

 「・・・えっ、あ・・・ただいま・・・?」


 真九朗の思考が四次元に飛び立っている間に『預かると言うなら全員住ませろ』という、物凄い要求を
呑まされるのはこの後の話。


 □ Fin.

 (以降は「紫の結婚」にて?)
581名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 22:27:24 ID:xqG8PoWb
 以上、終わりです。

 長らくお付き合いを下さいまして、有難うございました。

 あと途中で気付いたけど、これ環ルートでもなんでもなく普通に紫ルートのサブメニューの様な。
・・・あの、何と言うか嘘言ってすみません。
582名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 05:24:33 ID:sP02E7oY
久々の投下、GJ。
続編?希望です。
583名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 09:17:28 ID:Dscu5a86
>>581
乙! 面白かった
環かわいいよ環
闇絵いい女だよ闇絵
584名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 22:43:20 ID:vu7ihq4U
>>582
>>583
妄想に付き合ってくれて、有難う。読み返すに、なんか迷走しているような。

日記以外の文章書くの初めてで、他の人のを見てちょっとやってみたけれど
思ったより難しくて、難儀しました。最初思いついたものとは随分形が変わ
ってしまった。
585名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 17:50:20 ID:9aCJ4Gmq
今回のSQで絶奈の株が鰻上りなんだがどうすればいい
586名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 18:22:48 ID:fNApr42V
押し倒される銀子がいい
587名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 20:06:31 ID:AEFtUA3C
今月、絶奈様が初めて可愛いと思った
ここの人たちはずいぶん前から絶奈様の魅力に気付いていたんだな。
588名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 01:33:52 ID:s2Q1ocf9
未だに、何故『醜悪祭』があんなことになったのか理解できん。
仮に原稿が上がりきっていなかったんだとしても、
片山氏の普段の遅筆ぶりを考えれば、
読者は結構納得しそうな気がするし。
もし、あれが噂通り編集部の強行だったなら、
奴らは地獄に堕ちるべき。
………すまない。アツくなりすぎたようだ。
「どうした、銀子。今日はやけに機嫌がいいな」
「別に普通よ、お父さん」
「あぁ、真ちゃんに何か言われたか?」
「……っ、何でもないって!もう仕事があるから、部屋に行くね」

「やれやれ、いい加減素直になりゃいいのに」

父と銀子とのやりとりがあり、
その後、銀子が布団に入ったあたりで真九郎の「愛してるよ」を思い出しニヤニヤする、と脳内補完してみる。
590名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 06:01:21 ID:7hqDZWRt
ナイフ切彦ちゃんを性奴隷にしたい
591名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 22:43:21 ID:gFpY7HyJ
切彦の評価は、原作版と漫画版で大分違うだろうな。
俺はどっちも苦手だが。
592名無しさん@ピンキー:2010/07/23(金) 23:13:13 ID:bt3+JrYx
かわいいは正義
593名無しさん@ピンキー:2010/07/28(水) 08:08:45 ID:ZsutsQvD
切彦ちゃんに挿入中にナイフを持たせたり置かせたりして楽しみたい
594名無しさん@ピンキー:2010/08/05(木) 05:27:29 ID:3M9gQzVL
デレデレ切彦ちゃん
595名無しさん@ピンキー:2010/08/15(日) 07:37:24 ID:b92GqqEM
保守
596名無しさん@ピンキー:2010/08/24(火) 01:25:23 ID:aLerBIBH
最近は書き込みがないなあ。
保守上げ
597名無しさん@ピンキー:2010/08/29(日) 06:50:03 ID:RlYRa5fP
絶奈のおっぱいってパイズリ中にナニを潰せそうだよな
598名無しさん@ピンキー:2010/09/02(木) 05:02:10 ID:8uqPYPrG
片山憲太郎作品に関連するスレは何故か下ネタの巣窟になりやすいな
続きが出ないもんだから話題のネタに詰まるのかも知れんが
599名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 20:05:42 ID:XOFJo1lR
漫画の方、生き延びてたと思ってたリンさんが危なくなってきた
600名無しさん@ピンキー:2010/09/06(月) 06:39:07 ID:l9Mj0ngJ
原作では紫と切彦の間に関係がないから良いけど、漫画版でリンを死なせるのはマズかろうね。

それに漫画の展開で関係を深めてきたリンが原作みたいに惨殺された後で、真九朗が「ありがとう切彦ちゃん」
などと言った日には違和感がハンパなくなるし。
601名無しさん@ピンキー:2010/09/08(水) 00:51:26 ID:G526A9kE
とうとう本スレおちてしまったか・・・。
またたつかな
602名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 16:59:47 ID:FVKEMAD+
鯖が飛んでラノベ板のスレ全部なくなったっぽいから、それで前スレが消えたんだと思う
探したらもう新スレ立ってたで
603名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 21:36:08 ID:ZoZVtNfR
あーそうだったんだ。>鯖が飛んでラノベ板のスレ全部なくなった
スレ落ち表示が出る前頃に、何かおかしな表示が出るなと思ってたんだよ。
604名無しさん@ピンキー:2010/09/10(金) 23:00:59 ID:VH50Bh+4
漫画版はホントなにしたいのかわからん
醜悪祭やるとしたらリンさんはホント邪魔にしかならない
いやリンさんが嫌いなわけじゃないんだけどさ
このままだと切彦も出張ってくるだろうし
原作の空気守るきないのか子安
605名無しさん@ピンキー:2010/09/11(土) 01:50:43 ID:ItHXMLZp
>原作の空気守る気
それは多分、無いだろう。あるなら前からそうしてる筈。
別に漫画版を悪く言う気はないけど、アニメにせよ漫画にせよ、原作への配慮を
これ程ないがしろにされる作家も珍しいね。ま、本人が何も言わないせいだけど。
606名無しさん@ピンキー:2010/09/12(日) 23:42:06 ID:R6ThtLsN
>>605

北斗の拳の外伝みたいな乗りで見ればいいんじゃないの>漫画版
あれはあれで好きだけど、リンや悪宇サイドどうなるのかが気がかりだ
そして何より片山先生の復帰が何時になるのか……
607名無しさん@ピンキー:2010/09/13(月) 01:44:18 ID:R+dlMPnm
>>606
>北斗の拳の外伝みたいな乗り
だね。読者としてはそういうスタンスが幸せだろうと思って、そうしてる。
どうしても合わないとなったら読まない自由もある訳だし、取敢えず漫画も
アニメも楽しんでるよ。

ただ子安氏の仕事に関しては「女性キャラは取敢えず脱がしとけ」みたいなとこ
が安易で嫌だな、とは思う。作家業の仕事内容としてね。
608名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 21:11:47 ID:eANx2VXt
>女キャラは脱がしとけ

闇絵「ほう、興味深いな」
609名無しさん@ピンキー:2010/09/15(水) 23:52:26 ID:IONFyWK5
闇絵もその内脱がされたりして
610名無しさん@ピンキー:2010/09/16(木) 15:09:10 ID:HtVEQ5as
あれ、このシリーズはとっくに漫画がメインでアニメはまだしもラノベは無かったことにされてるもんだと思ってた
だから原作と違う展開にしてんじゃないの?
611名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 06:37:44 ID:BvVr6oty
>>610

むしろ原作ファンからすればアニメが黒歴史
一応漫画はラノベ準拠……オリキャラ出たり時系列ずれたりしてるけど。
612名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 04:54:56 ID:pnk0hjOM
アニメがメインでマンガがオリジナル展開でラノベが黒歴史な俺は
異端すぎて誰とも話が合わないw
613名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 05:08:06 ID:L9FgMK23
んじゃ、ここには「ぼくちゃんアマノジャクなんだー」って言いに来てる訳かw
そりゃ大変。
614名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 12:14:54 ID:gFscfuui
ていうか
オリジナルの流れはゆっくりでちゃんとかいてるのに
原作の方の話になると展開が早すぎて
原作ファンをバカにしてんのかって感じ
俺が月刊誌読み慣れてないだけなのかな?
615名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 20:15:23 ID:xOttyRFY
向いてないと思うならさっさと読むのやめれば?
616名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 23:36:25 ID:IB2rTR+u
>614
だからつまりラノベは無かった事にしたいんでしょ。
あんな酷い売り方した後にまともな続刊出せんよ。
諦めて原作は漫画なんだって自分を騙しとけ。
617名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 05:14:32 ID:42aaY6eq
なんか適当な話でいきなり連載終わりそうだなあ
618名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 14:12:21 ID:PJyNRqE6
各ヒロイン
漫画版:切彦
小説:銀子
アニメ:紫

みたいに少しずれたifの世界だったらいいのに
619名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 16:34:14 ID:LRWjZvRq
崩月流次期後継者が笑顔で>618睨んでるぞ
620名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 21:47:18 ID:ZrhxNvFu
618の方、ちょっとそこにお座りなさい。

・・・正座!
621名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 00:51:18 ID:EAWPArAQ
電波の方も惜しい所で切れてるよな。次があれば円の話だとは思うんだが。
622名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 11:26:16 ID:p3vgZP94
電波読み終えた訳だが、続きはまだなんですか
623名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 23:14:38 ID:F3tzP3hd
お客さん、知らなかったんですかぃ? 電波の続きは違法化されたんスよ。
624名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 23:27:26 ID:wuGZUDjc
原作ファンって馬鹿なの多いなw原作の話だけが好きならおとなしく原作だけ読んでりゃいいのに
アニメも漫画も無理して見る様なもんじゃないだろ
625名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 02:57:36 ID:GWBGQar2
626名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 11:45:54 ID:46XKvkwa
保守
627名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 23:00:11 ID:tL7IvarC
>>623

どういうこと?
おれしらなかった。
kwsk教えていただけませんk?
628名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 03:50:53 ID:H58Al98R
ぜなのおっぱいもみもみ
629名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 17:24:19 ID:Pu+gR50P
ここしばらくの過疎っぷりは少し寂しいな。一時はSSの投稿がよくあったのに。
630名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 16:32:21 ID:n7Rt1gTU
素材がなあ……
631名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 23:13:06 ID:sU4flm3d
銀子SS書いてみたけど、読む人居るかな・・・?
632名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 23:19:08 ID:8qcl5ZJm
ここにいるぞぉ!
633名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 23:53:36 ID:sU4flm3d
了解!では、投下させて頂きます。
634名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 23:57:58 ID:sU4flm3d
 ■ 銀子パニッシャー ■ No.1-1


 カシャカシャカシャカシャ カチカチッ カシャカシャカシャカシャ・・・

 カタッ

 軽やかなキータッチの音が、少し強めに叩かれたキーの音を最後に途切れる。

 「ふう・・・」

 眼鏡を外し、パッドが当っていた鼻筋の部分を軽くマッサージ。多分、赤く型が付いてるだろ
うが、今日はもうあのバカや崩月先輩と顔を合わせる事はない。だから跡など気にする必要は
無いのだけれど。

 眼鏡は剥き身の瞳を隠せる様で何となく気に入っている道具の一つ。ただ、こういうところ
には不便さよりも原始的なものを感じる。可燃ガスの混合気を爆発させる毎に車軸を一回転さ
せる、考えてみると結構乱暴な駆動方式の内燃機関とも似た野蛮な感じ(この現代に、というあれ
だ)。とは言え自分の眼鏡はかなり手間暇をかけて選んだ軽量で品の良い、オーダーメイドの
逸品。その分、皮膚にかかる負担は少ない筈だった。

 「ま、傘と同じ様なもんか」

 誰に言うともなく、つぶやく。傘は6世紀に渡来して以降、短い変遷を経て和傘のスタイル
に落ち着いた。現在よく目にするのはいわゆる洋傘だが、基本的な構造は和傘とそう変わらない。
恐らく傘は、既に道具としての最適解に近いのだろう。だから雨に濡れない代わりに腕が疲れ
るのも、視力を補う代わりに鼻筋に赤い型が付くのも仕方がない訳だ。まあ傘の場合、ホネに
髪が引っかかるのは何とか出来そうなものだけれど。


 銀子は取り留めない思考を止め、コーヒーを淹れに階下の台所へ下りた。家族を起こさない様、
音に気を配りながら薬缶をコンロにかけ、冷凍庫から粉状のコーヒー豆を取り出す。計量匙で数杯
掬ってペーパーフィルタに入れ、熱湯を注ぐと、程なく濃い目のコーヒーが出来上がった。ミルクを
入れるかどうかで少し迷い、結局ブラックにする。

 部屋に戻ってベッドに腰かけ、カップに口を付けた。美味しい。深煎りが銀子の好みだった。

 そうして小さな幸福感を味わっていて―――唐突に今朝の電話を思い出す。やはり、自分は思った
以上に、あの会話を気にしていたらしい。
635名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 23:58:45 ID:sU4flm3d
 ■ 銀子パニッシャー ■ No.1-2


 「・・・銀子、あのさ」「愛してる」


 まったく溜息しか出ない。鼻から魂が抜けて出そうだ。何なのだ、あのバカは。似合いもしない
台詞を幼馴染に言いたくなる季節でもあるのか、最近とみにその手の言が増えている。地味な
ナリで色男気取りなど、失笑を飛び超えてハラワタも煮えくり返るというものだ。小生意気な・・・っ!

 どうせあのバカの事。相手が崩月先輩だったら同じ真似はとても出来やしないだろう。それに
先輩なら真九朗の言葉が冗談であろうが何であろうが、それを口実に本当に婚約まで押し切って
しまいかねない。そういう鬼気迫る何かを、あのバカもバカなりに薄ぼんやりと感じている節が
ある。もっともそれはデリカシーなどという上等な代物ではなく、アメーバの接近を察するミジ
ンコの本能の様なものなのだが。

 「でも私なら冗談で済むだろうと。つまり、そういうことね」

 まったく安心の上に胡坐をかいているという訳だ。バカのくせに。あの電話では適当に切り返し
はしたが、しかしそれでこちらの気が済んでいる訳ではない。それはもう、全くない。何度かあの
バカにも会話上のオチと物事の行方は別だと説明した筈だが、未だその辺りの機微が分らないと
見える。ここらで適切な教育指導を行っておくのも、あいつの為というものだろう。

 「うふふふふふふ・・・見てなさい、紅真九朗くん。愛で地ベタに這いつくばらせてあげるわ」

 何やら思いついたらしい銀子は当人的には酷薄を模した、しかし、そのぎこちなさが傍目に微笑
ましいという特殊な表情を浮かべた。この種の顔は彼女の父、銀正の大好物だ。
636名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 00:01:31 ID:sU4flm3d
 ■ 銀子パニッシャー ■ No.2-1


 それは唐突な、ある日の午後。

 「この間の告白について、真面目に考えてみたけど」

 「・・・え?」

 「私もあんたの事が好きよ。だから今週末、デートに行きましょう」

 ここは星領学園の体育館裏。向かい合う男女生徒一組と、それを見つめる・・・食い入る様に見つめ
る女性が二人。勿論、向かい合っているのは紅真九朗と村上銀子で、あんぐりと口を開け、半ば
放心しているのは九鳳院紫と崩月夕乃の二人だ。

 「あの時の言葉、本当はとても嬉しかった。だから―――」

 唐突に携帯が鳴る。調子外れなテンポにして、不穏なサウンド。


 『銀子あのさ、愛してる――キスしていいか?』『銀子あのさ、愛してる――キスしていいか?』


 この物騒な音を喚きたてる携帯は遺憾にも鞄の奥に入り込んでしまった様で、銀子は取り出しに
手こずっている。もたつく手付きで鞄の奥を探りながら「やだもう恥ずかしい」などと言う、その輝く
ような白々しさ。しかし、今やその棒読みさえもが奈落に向かって加速する真九朗への潤滑油だ。
勿論、絶妙な頃合に携帯が鳴る様、事前の仕込みがあった事は言うまでもない。

 小学校で先に授業が終わる紫が真九朗を迎えに来る曜日と時刻を、人を介してそれとなく夕乃に
リークし、誰にも疑問を抱かせる事なく、この場に集わせたのは情報屋・銀子の手腕。全員各々の意思
と理由で来ているにも関らず、正確な意味で目的を遂げているのは銀子一人だった。

 実のところこれは紫と夕乃、二つの強力なトラバサミを用いた真九朗を狩る罠だ。そして獲物は
実に呆気なく、かつ自然に狩り取られる。まるで罠以外に行き場が無かったかの様な有様だ。

 剣呑な沈黙の中、思う存分着信音を響かせた後で、ようやっと携帯に出た銀子は相手に軽い口調
で応じる。

 「ああ、母さん・・・ホウレンソウとハンペンね。分った。直ぐに買い物を済ませて帰るから。」

 ふと振り返ると、信号機の様に激しく色を変える紫と夕乃の顔。両者とも、今にも顎が地に落ち
そうだ。その影で真九朗は岩と化していたが、脳内では警報が激しく鳴り響いているのだろう。足
が微かに震えている。

 しかし銀子は、一切に気が付かない体。いつもの実直な口調で真九朗に告げる。

 「じゃ、週末」

 凍りつく三つの像にスっと片手を挙げる会釈を残し、銀子はその場を後にする。遠からず、あの
バカは二人への弁明と証言を求めて来るに違いない。
637名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 00:05:02 ID:tsz2HM5m
 ■ 銀子パニッシャー ■ No.2-2


 ただ、今回取り扱う情報は乙女の純情を多量に含んでいる。真九朗の払える対価が労働しかない
場合、その換算レートは控えめに言って酷く高いものにつくだろう。せいぜいお高く売りつけてや
る事にする。未払いの情報料も溜まっている事だし、その利子と今回の件を穏便に済ませるための
情報料、ついでに慰謝料を加えて、取敢えず今週末の48時間を自分への奉仕労働に費やさせるのは、
まあ適当な処置だ。勿論、楓味亭でコキ使うのは当然として。

 携帯の呼び出し音から例の音を外しながら、スーパーに向かって歩く。うっかり外し忘れて、父に
知られでもしたらコトだ。間違いなく半年以上はからかわれる。それにしても、あの時のあいつの情
けない顔ときたら。

 「何か楽しくなってくるわね」


 揉め事処理屋なんて馬鹿な真似を、よりにもよってあのお人好しが始めた時。大怪我したり命を
落としたりしない様、サポートするには自分は体力が無さ過ぎた。だから始めた情報屋稼業だったが
――当初は自分でも馬鹿な真似をしている、と思ったものだった。

 今も忘れられない、幼い頃に店に殴りこんで来たやくざ達の暴力。大切にしていた玩具や家具を
バットで壊された。日常の中の平和な時間と最悪な時間。その落差を交互に味わわせる為に、わざ
とランダムに、しかも執拗に脅しをかけてくる彼等の遣り口。

 そして真九朗が柔沢紅香に出会った、あの事件。自分もその日、その場に居た。誘拐組織の人間が
自分達に向ける厭らしい視線や、乱暴な手の感触は思い出すと悪寒がはしる。そして抵抗した自分を
指す、銃口。それは自分に向けられる前、泣き喚く男の子の頭を吹き飛ばしたものだった。

 なのに高校に入学するなり、あのバカは。真九朗は――そんな連中相手の仕事をすると言い出した
のだ。それを聞いた時の激しい眩暈と、吐き気を覚えるほどの怒り。今もそれは続いている。殊にあいつ
が大怪我を負った時など、空港テロの犯人も柔沢紅香も崩月家の人間達も、一切合財を全部まとめて
地獄に叩き込んでやりたくなる。

 明滅する古い記憶。崩月家に入ってからの真九朗は、学校を休みがちになった。心配して見舞いに行
っても、そういう時の崩月家の門は堅く閉ざされ、呼び鈴や電話の対応も曖昧。普段は大らかな崩月家
だけに、その雰囲気には隠し難い違和感があった。

 そして時に数ヶ月にも及ぶ休学。その末に登校した真九朗の体には、必ず酷い怪我の痕があった。包帯
だらけの真九朗の異様な姿は当初、クラスメート達のからかいの的になったが、それが益々酷く、長期に
及ぶに至って誰もその事に触れなくなった。当初はDVの可能性を疑い、訝しんでいた小学校や中学校の教師
達も、決まってある日を堺に沈黙。真九朗のそんな状態は、高校に入学するまで続いた。
638名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 00:15:04 ID:tsz2HM5m
 ■ 銀子パニッシャー ■ No.2-3


 だから柔沢紅香が自分にとっても命の恩人にあたり、崩月家が傷付いた真九朗の心の多くを癒し、鍛
え上げた事を理解していて尚、銀子はそうした感情の燻ぶりを完全には打ち消せないでいる。

 彼等個々人の人間性の問題ではない。しかし真九朗を危険な裏世界に留めているのは、彼等との繋がり
そのものに思えてならないのだ。真九朗は彼等との関わりを大事にするあまり、そこから抜け出せなくな
っているのではないだろうか。


 柔沢紅香は確かに凄腕の揉め事処理屋だ。知る限りに於いて、仕事選びの傾向も総じて悪くないと思
う。だが、その内容には人の死を窺わせる、血生臭い事件も数多く関係している。そして崩月家は、かつて
裏社会で猛威を振るった鬼の家系だ。先代当主の代から殺人稼業からは足を洗った様だが、自衛の為に
も未だ殺人の技は現役の域にある。言い換えれば状況次第で、何時元の姿になるかも分らないのだ。

 「絆(きずな)」という語には「ほだし」という別の読み方がある。これは家畜を繋ぎとめておく為の綱
の事。

 銀子は今の真九朗が小口径の拳銃弾くらいでは死なない事を知っているが、それでも時折正視し難い
大怪我を負う真九朗の姿を見ていると、堪らなくなる。柔沢紅香や崩月家は、本当に一個の少年として
の真九朗を認識しているのか。彼等には彼等の為に存在する真九朗しか、見えていないのではないのか?
真九朗が信じている彼等との絆には、本当に「ほだし」の側面はないのだろうか。

 この気持ちは、あいつがあの馬鹿げた稼業を諦めない限り、消えることはないのだろう。
639名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 00:15:54 ID:tsz2HM5m
 ■ 銀子パニッシャー ■ No.2-4

 だが一方で真九朗のフォローから始まった情報屋の仕事は、何時の間にかその域を超えて自分の
生活の一部になり、今やある種の自負すら感じる稼業の様な状態になっている。今日のこんな小さな
事でさえ、それと無縁ではないのだ。

 例えば、あいつも他の星領学園の学生達も詳しい事情を知らないが、自分が新聞部室を私物化して
いる件。これ一つ取っても、実は見掛け以上に大きな力学構造が背景にある。まあ、それを構成して
いる情報/要素の一つ一つはそれほど大仰なものではなく、バラけても居る為、強力な人為的操作でも
ない限りは大事には至らないだろうが―――それでも縦糸と横糸の手繰り方次第では星領学園はおろか、
県の教育委員会を丸ごと引っくり返す事も不可能ではない。現状がそうなっていないのは、単にそれ
を知る自分にその気がないからだ。

 状況に流されるのではなく、情報を先取して状況を作る側に立つ。始める以前は知らなかった、この
力の強さと有用性。そして付きまとう、その脆さと怖さ。強固な防御対策を講じてはいるが、自分の体
は只の女子学生に過ぎない。素人の男に殴られただけでも、軽くない怪我を負うことだろう。

 それに自分が情報収集の過程で冒している危険の規模は、実のところ、あの能天気のそれとはランクが
違う。詳細を知れば、間違いなく真九朗は己の事を棚上げにして自分を止めようとするだろう。

 でも揉め事処理屋があいつの仕事なら、情報屋はわたしの仕事。意見するなら先ず、こちらの条件を
飲んでもらわねばならない。幼い頃に交わした、小さな約束の履行。それが叶うまでは全てが“一先ず・
さておき”だ。

 それにしても―――

 「あまり考えた事無かったけど・・・わたし、こういうのも向いてたのか」

 この体を流れる血も情報基盤も、伝説の情報屋にして銀子の祖父・銀二から受継いだもの。ともあれ、
何とか今の位置に居られる事を感謝しなくてはなるまい。

 ありがとう、お祖父ちゃん。お陰で週末、あいつをコキ使えます。


 何か楽しみな事でもあるのか、軽く弾むような足取りで銀子は帰路に就いた。
640名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 00:18:50 ID:tsz2HM5m
 以上です。どもでした〜
641名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 00:24:52 ID:79Q/YzFm
乙〜
また頼むよ!
642名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 01:13:33 ID:llYUlwfV
おつおつ。
文章うまいね。

続きも期待してます〜
643名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 01:41:01 ID:tsz2HM5m
お付き合い下さって有難うございます。
宜しければ、また投下させて頂きますね。
644名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 11:18:15 ID:OV6gOIXI
新作SSキター(・∀・)!!!
乙でした
645643:2010/10/31(日) 05:19:05 ID:omFdbh/x
>>644
どもです〜(^^) またお付き合い下さい!
646名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 15:50:40 ID:WMgt8/VS
また静かになったな…
647名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 15:05:18 ID:K/Oe7Ly/
最近悠木をよく見るが、紫の演技から格段に上手くなってる。
648名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 09:48:18 ID:Efhj2+tq
紫の演技も子供らしくて良かったとよ。声優って凄いと思うわ。
649名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 09:59:19 ID:Efhj2+tq
あれ……?「とよ」じゃなく「と思うよ」とかいたつもりが
650名無しさん@ピンキー:2010/11/06(土) 12:39:41 ID:gAeIbYA/
福岡人乙
651名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 03:40:43 ID:UTB8NnS7
紫と散鶴と性教育
652名無しさん@ピンキー:2010/11/07(日) 08:24:57 ID:DlnrjKDX
夕乃さんの保健体育(実地講義)

まあ途中から銀子も乱入するわけだが
653名無しさん@ピンキー:2010/11/16(火) 09:15:39 ID:zRujipdJ
保守
654名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 10:11:09 ID:1oLiDJay
切彦ちゃんとか処女の癖に手馴れてそう
655名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 20:54:30 ID:FoiVttYn
blogとかでSS書いてる人いないの?
656名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 00:53:08 ID:cxbzkpfH
>blogとかでSS

見たことないなあ。探せばあるかもだけど。
657名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 01:46:16 ID:Iod6v+ho
新参だけど保管庫 2スレ20 の内容がなかったので追加しといた。
658名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 01:49:56 ID:cxbzkpfH
乙!
659名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 02:58:35 ID:Iod6v+ho
SS保管庫 2スレ目の一覧に 2スレ48 が無いから追加してみたらリンク先にすでにSS本体のページがある
wiki開設当初にページ作られてたみたいだけどリンクされてなかったということかな。
しかしカウンターtotal2388 yesterday1 となってる不思議

電波の長編が読みたい age
660名無しさん@ピンキー:2010/11/20(土) 21:36:59 ID:niuThq4g
ss乙!
絆にそんな意味があるとは知らなかった…
661リンさんって弄り甲斐がありそうだよね:2010/11/22(月) 19:21:13 ID:vh1w5czW
「む……こんな所で貴様に会うとはな。『斬島』切彦」
「どうも……えーと、おサムライさん」
「リン・チェンシンだ」
「すみません、今まで名乗ってもらっていませんでしたんで……」
「ふん、紫様の友人でなければ『剣士の敵』斬島の者など名乗るより先に斬り捨てて」
「ところで、あなたの護衛対象は?」
「ひ、人の話は最後まで……っくっ、ここの中だ」
「……ねこ、かふぇ?」
「御学友からお聞きになられたそうでな。一度行ってみたい、と」
「あなたは入らないんですか」
「……入ろうとはしたよ、護衛だからな」
「……?」
「……何故か私を見ると猫が一斉に怯えて逃げ出すんだ」
「……」
「紫様から「外で待ってろ」と言われて……」
「どんまい」
「お前の慰めなどいらん!くそう……」
「にゃー」
「あ、だびで」
「この猫は……確かあの黒ずくめ女の飼っていた」
「だびでです」
「私を見ても逃げ出さないな……」
「呼べば来るかもしれません」
「そ、そんな事……私は別に猫など」
「だびでで猫に馴れたら、他の猫にも怖がられなくなるかも」
「むっ……そ、そうか、なら、ちょっとだけ……護衛の為にだぞ」
「わかりました」
「コホン、えー、ほ、ほーら、おいでー」
「あ、来ました」
「うわっ、いきなり飛びついてくるな!おい、こ、これどうしたらいいんだ」
「抱いてあげたらいいと思います」
「抱くって、どうすれば……こ、こんな感じか?」
「ふにゃー」
「気持ち良さそうです」
「ふ、ふふん、どうだ。私が本気になれば、こんなものだ」
「良かったですね。じゃあ私は店の中ででお茶してきます」
「紫様に妙な真似はするなよ」
「にゃうー」
「ふふ、安心しきった顔をしおって、警戒心の薄い奴だ」
「にゃー」
「んー?どうした?何か言いたい事でもあるのか?」
「にゃーん」
「生憎と猫語はわからんのでにゃー。なんてな、ふふっ」
「あのー」
「にゃーん」
「んー?にゃにゃにゃん?」
「あのー」
「にゃーん」
「にゃにゃにゃーん?」
「あのー」
「なんだ貴様、五月蝿い……ぞ……」
「あ、どうも……えと、こんにちは、リンさん」
「く、紅……お前いつから……」
「え、と『猫語はわからんのでにゃー』の辺りから……」
「忘れろおおおおぉぉおお!!!」
「うわああ、リンさん落ち着いて、街中で刃物はまずいから!」
「切彦よ、外がなんだか騒がしいようだが……」
「しーいずぷりてぃー」

漫画5巻での銀子のシチュをリンさんでやってみただけ。
662名無しさん@ピンキー:2010/11/22(月) 21:29:41 ID:Mu8hWZou
>>661
リンさんぷりてぃー過ぎるGJ!
663■タイトル■かいたの:2010/11/23(火) 00:45:22 ID:UMUWw8Hm
>>660
どもです!今ちらちらとルーシーVSジュウ様ネタを書いてるのですが、UP出来まし
た際に宜しければ、またお付き合い下さいね。

>>661
おサムライさん乙!リンさん、かわええw
「」に誰某と振られてなくとも、全然普通に読めますね。
664名無しさん@ピンキー:2010/11/25(木) 00:55:17 ID:yKACDtjG
GJ!
665名無しさん@ピンキー:2010/11/30(火) 00:04:58 ID:32oXU71G
マンガの新刊表紙が出たね
666名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 21:28:29 ID:nPQ4rQIi
保守
667名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 09:56:20 ID:1FclJdaQ
>>665
ナイスなおっぱいだ。これから買いに行くぜ
668名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 22:04:43 ID:4MrS88z4
限定版と通常版で表紙絵が...
669名無しさん@ピンキー:2010/12/12(日) 11:33:55 ID:8W16hnBL
いまさらながら絶奈さまおっぱいやばすぎ。
こんなに揉みまくりたいおっぱい久しぶりに見た
670名無しさん@ピンキー:2010/12/13(月) 23:56:52 ID:4n/Ugp57
うまい具合にウケる絵が描ける人だね 嫌味がない
671名無しさん@ピンキー:2010/12/14(火) 03:09:45 ID:lG1XDLe+
絶奈は高校行ってんのかね
672名無しさん@ピンキー:2010/12/15(水) 03:33:52 ID:1H3fAeB6
実は生徒会長
673名無しさん@ピンキー:2010/12/27(月) 14:28:40 ID:K5gBQmNU
保守
67449:2011/01/02(日) 08:40:22 ID:sG6TFtxn
前に投下してから随分と立ちますが…
真九郎と絶奈の馬鹿話をひとつ
67549(1/3):2011/01/02(日) 08:43:16 ID:sG6TFtxn

「おっぱいが壊れたの」
「――――はァ?」
予期せぬ来訪者の予期せぬ台詞。
たっぷり十秒の間を空けて、紅真九郎はようやく声を上げた。
返事でも返答でも何でもない情けなくて間の抜けた声だったが。

十二月三十一日。大晦日のこの日、真九郎は五月雨荘の五号室で隙を持て余していた。
日頃、真九郎の周りを彩っている個性豊かな女性たちは、みんなそろって用事があるらしい。
九鳳院紫は某国貴族との晩餐会。崩月夕乃は巫女のアルバイト。村上銀子は家業の手伝い。
武藤環はスキー合宿。闇絵とその愛猫ダビデは鍋パーティーの翌日から姿を見ていない。
そういうわけで、真九郎はひとり。ひとりぼっち。
改めて、自分が天涯孤独な身の上なのだと思い知らされた気分だった。
気を紛らわせるためにテレビをつけたところへ、ドアを叩く音が。
おんぼろなドアに遠慮しない、いっそ壊れてしまえと言わんばかりの乱暴な打突音。
扉が壊されれば、寒風吹き込む部屋で冬を過ごさなければならない。それだけはごめんだった。
急いで開けたドアの向こうで、待ち構えていたのは赤毛の美少女。
「遅いわよ」と不機嫌な顔で言い放った彼女の名は、星噛絶奈。
瞬時に身構えた真九郎を押し留め、絶奈は冒頭の一言を発したのだった。

不倶戴天の敵を前にしながら、真九郎はあんぐりと口を開けたままだった。
今し方絶奈の口から出た言葉の意味が理解できない。
――――おっぱいが壊れた。
まるで意味がわからない。
ろくに返事もせず、構えも解こうとしない真九郎に焦れたのか、
「だーかーらー! 壊れたのよ、私のおっぱいが!」
先ほどより三割増の声量で、絶奈は同じ内容を繰り返した。
しかし、やはり真九郎には何が何だかわからない。いくら考えてもわからない。
むしろ、わかろうとする努力そのものが、無益なのではないかとさえ思えてくる。
これは自分の頭が悪いせいばかりではないはずだ。
67649(2/3):2011/01/02(日) 08:45:43 ID:sG6TFtxn
これは自分の頭が悪いせいばかりではないはずだ。
しばし思案して、
「壊れたのはアンタの頭のほうだよ、きっと」
疲れたようにそう言って、静かにドアを閉めようとした。
が、そうはさせまいと絶奈がドアの隙間から強引に脚をねじ込む。
「いきなり閉めるなんて酷いじゃない。話くらい聞いてくれたっていいでしょう」
「あとでいい病院探してやるから今日のところはとりあえず帰りやがってください」
「寝ぼけたコトほざいてないで、おとなしく話を聞きなさい!」
「聞いたら絶対面倒なことなるに決まってるだろうが!」
「自分から面倒に首突っ込んでヒトの楽しみを邪魔してくれた奴が何言ってんのよ」
錆が浮いたドアノブを掴んでの押し合い引き合いに、ぎしぎしと古いドアが抗議の悲鳴を上げる。
「くっ……! さっさと帰れ、アル中改造人間」
「この……! いいから開けなさい、ヘタレペドフィリア」
共に裏十三家の異能者で、常人離れした腕力を持つ紅真九郎と星噛絶奈。
そんな二人の攻防に、腐りかけて著しく耐久力が下がったドアが耐えられるはずもなく、
「「あ」」
理不尽に限界を迎えさせられて、ドアはぎぃぃぃっと恨めしげな音と共に廊下側へ倒れ込む。
おどけた動作でそれを避けると、絶奈はにんまりと勝ち誇った笑みを浮かべた。
「話、聞いてくれるわよね?」
「…………」
ああ、この世界はやっぱり悪のほうが強い。
残酷な真理をしみじみと噛み締めて、真九郎は怨敵を自室へ上げたのだった。

望まぬ客にも、茶と座布団をすすめるべきか。
真九郎は少し考えて、結局、薄い座布団だけを絶奈に差し出した。
彼女の真意は不明。五月雨荘には非戦の約定があるから、荒事にならないことだけが救いか。
「で? どういうことなんだよ。その……おっぱいが壊れたっていうのは」
乱暴な口調で真九郎は訊いた。つけっぱなしのテレビからは大晦日の国民的歌合戦が流れていた。
「ん……。口で説明するより、実際に見てもらったほうが早いと思うわ」
真九郎の対面に腰を下ろした絶奈は、言うなり自分の服に手をかけた。
ジャケットを放り捨て、ネクタイをほどき、シャツのボタンを上から順に手早く外す。
「ちょ、待て! なにいきなり脱いでんだよ」
突然のストリップショーに真九郎は一時強制停止。
我に返って制止した時にはすでに、絶奈は下着(黒ブラ)まで取り去ってしまっていた。
「どう? わかる?」
67749(3/3):2011/01/02(日) 08:50:42 ID:sG6TFtxn
絶奈は真九郎に向けて、ずいと剥き出しの乳房を突き出す。
異性の前だというのに、恥じらう素振りは微塵もない。
思わず顔を背けていた真九郎も、男の本能と好奇心には勝てず、つい視線を向けてしまう。
そして、釘付けになった。
そこにあるのは凄絶な美巨乳。
シミやホクロがひとつも見当たらない肌理の細かい白い肌。
はちきれんばかりに中からせり上がる壮大なボリューム。
ほんのり桜色をした小さめの先端からは、白濁した液でしっとりと濡れていて――――。
……白濁した、液?
「え? それって、まさか……」
真九郎の拙い生物学の知識では、女の乳首から出る液体はひとつだけ。
「そう、母乳よ。孕まされた覚えもないのに、妊婦顔負けのミルクタンクになっちゃったの」
「えっと、なにゆえに……?」
「原因はハッキリしているわ。この前の強奪戦よ」
強奪戦。紅真九郎と星噛絶奈が、互いの意地とプライドを賭けて繰り広げた聖夜の血闘。
形の上では真九郎が勝ちを収めたが、客観的には両者戦闘不能で引き分け。
「あちこち殴られまくったせいで、代謝機能に異常が出たみたいでさあ。
特に乳腺周りなんか完全にイかれちゃってこのザマよ」
「……おっぱいが壊れたっていうのはそういうことかよ」
流石の『孤人要塞』も、怒り猛った戦鬼の攻撃に無事ではいられなかったようだ。
「吸ってくれる赤ちゃんがいるわけじゃないから、おっぱいが張ってもう痛くって痛くって」
「それをオレにどうしろっていうんだよ……」
その台詞を聞くや、絶奈は待ってましたと淫らしい笑みを浮かべて、
「ねえ、紅くん。私のおっぱい、吸ってくんない?」
とんでもないことを言い出した。
「――崩月流甲一種」
「なに戦鬼化しようとしてんのよ。なによ、君のせいでこうなったんだから、
君が責任取るのがスジってもんでしょう」
「んなわけあるか! それを言うなら、オレだってアンタのせいであちこち痛いし、
右腕は痺れまくってんだぞ」
「ああ、それは大変。自分で自分を慰めることもできないわよね。私が手伝ってあげよっか」
「ぜひ頼む――って違う! とにかくオレはそんなことしない。わかったら帰れ」
「え〜? 紅くんが吸ってくれなかったら、どうすんのよこれ〜」
「知るか。搾乳機でもつければ」
「いやよ。あれって痛いばっかで全然気持ちよくないんだもん」
67849(last):2011/01/02(日) 08:55:34 ID:sG6TFtxn
試したのか! というツッコミをどうにか真九郎は飲み込んだ。
「それなら、こういうのはどうかしら?」真九郎がなびきそうにないのを見て取って、絶奈は取引を持ちかける。
「これは仕事の依頼ってことにしましょう、揉め事処理屋さん」
「なん、だと……?」
「星噛絶奈から紅真九郎への揉め事処理の依頼。
内容は私のこの母乳の処理、もちろんお口で吸ってね。期限は胸部装甲の修理が完了するまで。
拘束時間は一日二時間、時給は一万円、延長の場合は十分につき五千円、その他は適宜相談。
どうかしら?」
「いや、あの、どうと言われても……」
提示された破格過ぎる条件に真九郎は焦った。
強奪戦の負傷のせいで、この年末はバイトもできていない。餅もミカンも買えていない。
そこに降って湧いた美味しい仕事。これを逃す手はないだろう。
それ以前に紅真九郎も思春期男子。おっぱいに並々ならぬ興味があるお年頃。
先ほどから目にし続けている美巨乳に、徐々に理性の鎖が切れ始めていた。
たとえそれが人造物だろうと、たとえそれが人でなしの胸であろうと、おっぱいはおっぱい。
揉め事処理屋の意地も、牡の本能の前では蟷螂の斧ほども役に立たない。
「ねえ、これなら問題ないでしょう?」
早くOKって言いなさいと、絶奈は左右の乳房を持ち上げて見せる。見せつける。
「え、え〜と、いいのかなぁ……」
「いいのよ、ほら」
そう言って、絶奈はキュッと右の乳首を摘んだ。
そこから発射されたミルクは、緩い放物線を描いて真九郎の唇に付着。
口腔と鼻腔から甘ったるい臭いが侵入し、脳髄に至る。理性を溶かし、本能を呼び起こす淫魔の香り。
これが駄目押しになった。
真九郎はふらふら絶奈にもたれかかり、絶奈は優しく真九郎を抱きしめる。
「さあ、紅くん絶奈のおっぱいトラブルを処理してちょうだい」
「――――はい……」

十二月三十一日、午後十一時五十八分。
波乱に満ちた一年が終わる、少し前のことだった。
67949:2011/01/02(日) 08:57:48 ID:sG6TFtxn
以上です
文字数と行数の計算間違えました…
携帯からなんで見辛かったらすみません
今年こそ新刊でますうに
680名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 11:31:50 ID:zyeT31sU
タイムリーなネタGJ! 真九朗ヘタレ過ぎるw
681名無しさん@ピンキー:2011/01/02(日) 23:59:22 ID:NjIbQcgC
乙!
真九郎くん流され通しかよwww
682名無しさん@ピンキー:2011/01/04(火) 22:35:36 ID:5CLfun5K
SS乙〜!
683名無しさん@ピンキー:2011/01/04(火) 23:24:06 ID:zEmzeora
久々の投下じゃないか!
乙!
684名無しさん@ピンキー:2011/01/06(木) 12:11:53 ID:Z9y1r7eo
やっぱここって大分住人減ってるみたいだな
685名無しさん@ピンキー:2011/01/07(金) 19:57:16 ID:5nbUWmdg
ちょww
早くしてくれおmm
686名無しさん@ピンキー:2011/01/14(金) 14:11:46 ID:XbwoNCwj
また絶奈のえろ本というか紅の本出したいなぁ
とか思ってます。
687アキヅキ:2011/01/14(金) 14:12:26 ID:XbwoNCwj
名前間違った アキヅキです。じゃ。
688名無しさん@ピンキー:2011/01/14(金) 18:52:41 ID:oD5gphfZ
>>687
テキストベース?それとも漫画で?
689アキヅキ:2011/01/14(金) 19:03:19 ID:XbwoNCwj
>>688
漫画しか描けないから漫画
690アキヅキ:2011/01/14(金) 20:49:03 ID:XbwoNCwj
http://www.pic-loader.net/picfile/687166.jpg

久々に描いたけどこんなん。誰てめ絵だわ
691アキヅキ:2011/01/14(金) 20:49:31 ID:XbwoNCwj
アッー画像デカすぎたごめんなさい
692名無しさん@ピンキー:2011/01/14(金) 22:06:27 ID:oD5gphfZ
いや、大きい方が有難いので無問題。>画像
上手い!かわええし。同人出してくれたら普通に買うよ。
693名無しさん@ピンキー:2011/01/14(金) 22:34:08 ID:oD5gphfZ
>アキヅキさん
気になって探したらみっけました、画像を色々。
相当に本格的な方だったのデスね・・・
694アキヅキ:2011/01/14(金) 23:05:51 ID:XbwoNCwj
>>693
本格的ではないですがwちょこちょこ描いてました
695アキヅキ:2011/01/14(金) 23:06:35 ID:XbwoNCwj
エロパロだけど、絵って落としても良かったのかしら。
どっか違うスレのが良かったかすら
696名無しさん@ピンキー:2011/01/14(金) 23:28:18 ID:oD5gphfZ
>>694
前の本、絶版で残念しました。随分可愛い絶奈ですねw
画像投稿はアリではないかと思います。というのは、過去スレ保管庫にも画像
が上げられて居ますから。

http://www35.atwiki.jp/katayama/pages/82.html
697名無しさん@ピンキー:2011/01/22(土) 23:32:45 ID:MTUGFkKT
書きたいけど、いざ書こうと思ったら難しいよな
698名無しさん@ピンキー:2011/01/25(火) 23:52:53 ID:3GXX54MK
ss投稿したいが上手く創れない‥。
699名無しさん@ピンキー:2011/01/25(火) 23:59:46 ID:q1R2Azlp
わたしは「結果」だけを求めてはいない。
「結果」だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ………
近道をした時、真実を見失うかもしれない。
やる気もしだいに失せていく。

大切なのは、『真実に向かおうとする意志』だと思っている。
向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は製作が滞ったとしても、
いつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな。
…………違うかい?
700名無しさん@ピンキー:2011/01/26(水) 00:13:45 ID:MBk14sr/
>>699
羨ましいな。以前 オレは…ssを投稿したいと思っていた…
オタになった頃から…ずっと立派なss投稿者に…なりたかったんだ…
かつてあんたやこのスレのss投稿者ような“意志”を抱いていた事もあった…
でもだめにしちまった…オレって人間はな…くだらない男さ…
なんだって途中で終わっちまう…いつだって途中でだめになっちまう
701名無しさん@ピンキー:2011/01/31(月) 16:50:15 ID:1/mR7ASf
そんな事はないよ…>>700
お前は立派にやってるじゃあないか…“意志”は同じだ…
お前がオタになったばかりの時抱いていたその“意志”は…今…
お前のその心の中に再び戻っているのだよ…>>700
702名無しさん@ピンキー:2011/02/03(木) 21:35:15 ID:BwKjf4Sv
ちょこちょこ書いてたら、文章の容量が70Kを超えてたでござるの巻。
703名無しさん@ピンキー:2011/02/04(金) 00:59:53 ID:fRZRNmUs
Zipでうpれ
704名無しさん@ピンキー:2011/02/09(水) 17:34:53 ID:excsu6Sl
保守
705名無しさん@ピンキー:2011/02/09(水) 18:25:35 ID:WuRt3s83
てす
!ninja冒険の書(Lv=1,xxxP)
冒険の書(Lv=1,xxxP)
706既出かもしれんが:2011/02/10(木) 14:11:14 ID:67LZkaJa
「少年」

「はい、なんでしょう?」

「最近、少年は私に随分と冷たくなったのではないか?」

「なんのことですか・・・」

「まあ、幼女愛好家の少年としては、例の少女にうつつをぬかして、私や環に構う暇がなくなってしまうのも頷けるというものだが」

「だからなんなんですか・・・俺これから仕事のことで銀子の所に行かなきゃなんないんですけど・・・」

「・・・ならば単刀直入に言おう」

「はい」

「・・・最近、なんでタバコを買ってきてくれないんだ」

「・・・は?」

「だって以前は学校の帰りなどに頻繁に買ってきてくれたではないか」

「あの・・・」

「それが最近はなんだか環どころか私のことも無視しがちだし・・・環など、この前は少年の枕で自慰を」

「わー!わー!なんですかそれ!?初耳ですよ!」

「それは少年が私達と話をしないからだよ」

「う・・・でもそれはここのところ忙しかったからで・・・」

「それはともかく、今日こそはタバコを買ってきてくれたまえ、少年。ついでに環に酒でも買ってきてやるといい」

「いえ俺未成年ですし・・・」

「百歩譲って酒は無理でもタバコは買えるだろう?さ、早く行きたまえよ」

「いや、あの・・・闇絵さん」

「なんだ、まだ文句があるのか。少年」

「タスポって、知らないんですか・・・?」

「・・・・・・なんだそれは」



闇絵さんって世間のこと知らなそうだよね
707これも既出かもしれんが:2011/02/10(木) 15:17:30 ID:67LZkaJa
五月雨荘の5号室で怪しく動く二つの影。
「いい?真九郎くんが帰ってきたら、さっき教えた通りにするのよ?」
「わ、わかった・・・しかし、真九郎は本当にこんなことで喜ぶのか?」
「へへへー。まあ見てなって」

〜〜真九郎帰宅〜〜

「はー、つかれたー」
今日は学校でテストがあり、グッタリとした様子の真九郎。
ドアノブに手をかけ、鍵を開けようとすると。
「あれ、あいてる・・・?」
不戦の約定があるこの土地で泥棒ということはないだろうが、朝でかける時にはしっかりと鍵をかけた記憶があるし、誰かが中にいることは明白だ。
考えつくのは二人ぐらいしかいないが・・・。その二人の名前を呼びながら、ドアを開ける。
「紫?環さん?勝手に入るなっていつも」


「おっ、おかえりなさいませ、ご主人様っ!」


顔を真っ赤に染めた九鳳院紫に、メイド服姿で出迎えられた。
「・・・・・・」
真九郎はそっとドアを閉じた。
と同時にドアが勢い良く開かれる。
「待て!真九郎、なぜドアを閉める!?」
「うるさい!お前こそなにやってんだ、紫!」
「こっ、これは環が『これ着たら真九郎くんなんて一発で落とせちゃうよーん』というからだな・・・」
真九郎は紫の小さな肩をしっかりと掴み、真剣な顔で言葉を放つ。
「紫、もう金輪際あの人と話をしちゃダメだ」
「えー!真九郎くんひどーい!」
今度は環が飛びたしてくる。


巫女服で。


「・・・・・・。紫、目も合わせちゃダメだぞ」
「わ、わかった」
「ひっ、ひどいっ!?紫ちゃんもわかっちゃダメー!」
「うるせえ!いつも余計なことばかりしやがって!」
「なによー!良かれと思ってやったのにー!」

708これも既出かもしれんが:2011/02/10(木) 15:23:31 ID:67LZkaJa
ギャアギャアと騒ぐ環を尻目に、真九郎は
紫に顔を向ける。
「ほら紫。俺は外に出てるから、もうそんなもん脱いじゃえ」
「そ、外で脱げだなんて・・・イヤん真九郎くんダイタン!」
「ぁ、その、真九郎・・・」
「どうした紫?大丈夫、害虫は駆除しておくから」
「害虫!?」
「えっと、その・・・」
よく見ると、俯き気味な紫は、微かに頬を染めている。
「なんだ?お前らしくもないな。変なもん食べさせられたか?」
「そんなことしないよ!」
「うん・・・えっと、これ・・・」
紫はメイド服のスカートの両端をつまんで少しだけ持ち上げると、上目遣いでこちらを見上げた。


「これ・・・かわいい?」


「ぅぉっ・・・・・・」
もともとが異常なまでに整った顔立ちの紫のそれは、少女趣味など無いと言い張る真九郎をぐらつかせるには、十分な破壊力を秘めていた。
「か、かわいぃん、じゃ、ないか?」
「そ、そうか!へへ・・・」
思わず声が裏返る真九郎。
嬉しそうにはにかむ紫。
「ねえ、ねえねえ真九郎くん!私もかわいい?かわいい?」
なんだか知らないが変なポーズをとっている環。
それに対し真九郎は率直な感想を述べる。
「正直微妙です」
「うわーん!真九郎くんがいじめるー!助けて銀子ちゃーん!」
そんなことを叫ん傍らに佇んでいる銀子に抱きつく環。
「・・・・・・え?銀子?」
恐る恐るそちらを見遣ると、出会ってから今までで一番冷徹で恐ろしい表情をした村上銀子がいた。
ここの所何かと忙しくろくに勉強もしていなかった真九郎は、今日のテストで赤点必至のため、銀子に勉強を教えてもらおうと思い、五月雨荘に招待したのだった。
帰って早々のアクシデントのせいで、すっかり忘れていたのだ。
「・・・・・・銀子」
「・・・・・・」
「い、今までの流れ見てたよな?」
「ええ、しかとこの目で」
「じゃ、じゃあ、違うってわかるよな?」
「わからないわ。あ、じゃあ私この辺で。さよなら、変態ロリコンコスプレ野郎」
「ぎ、銀子ぉーーーー!」


オチ弱くてごめん
キャラの口調とかも違うかも
709これも既出かもしれんが:2011/02/10(木) 15:27:02 ID:67LZkaJa
おまけ

「銀子ー?」

「なに?お父さん」

「さっきお前に届いてだ荷物なんだがな」

「!?」

「真ちゃんって・・・コスプレフェチなの?」

「かっ、勝手にヒトの荷物見るなぁ!」

「いててっ!ちゃ、チャイナ服はお前には早いと思うぞー!あっはっは!」

「くっ・・・明日からもうお店に顔出せない・・・」
710これも既出かもしれんが:2011/02/10(木) 15:29:25 ID:67LZkaJa
おわり
規制うざいね
711名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 16:51:55 ID:7gPUiKrk
乙〜 タスポw
確かに闇絵さんは、そういうの知らないっぽい
712名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 18:37:27 ID:k3A8IzKT
乙!
713名無しさん@ピンキー:2011/02/10(木) 19:22:13 ID:67LZkaJa
最近漫画の方読んでると
このまま『数年後』とか言って
電波に入っていってくれるような気がしてならない
てか入ってくれないかなーという願望
714名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 00:12:08 ID:I+L+CcsJ
〜光雲高校食堂にて〜

「円堂さんを信用してないわけじゃないけどさ……」

「その『円堂さん』ていうの、やめてくれる?媚びてるみたいで気持ち悪いから」

「……じゃあ『円堂』―」

「気安いわね。友人と言うほどの間柄ではないでしょう?」

「えっ、じゃあ……なんて呼べばいいんだ?」

「……『円』……」

「え?わるい、よく聞こえなかった。もう一度言ってもらえるか?」

「……『円』でいいわよ。」

続く
715名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 03:03:14 ID:LUIiqwGa
円たんデレキタ
716名無しさん@ピンキー:2011/02/11(金) 03:54:40 ID:a2pGdKFV
久し振りに紫分を補給できたぜ・・・
717紅真九郎:2011/02/15(火) 00:42:24 ID:N3nU3msd
「真九郎!チョコだ!ありがたく受け取れ!」

「真九郎さん、はい。今年も愛情たっぷり込めて作りましたからね?」

「・・・はい。あんたが物欲しそうな目してるから、あげるだけよ」

「少年。海外では、男女問わず親しい相手、行為を持った相手に対してチョコを贈るそうだ。つまり、わかるね?」

「真九郎くーん!はい!ポッキーあげる!ホワイトデーは期待してるからね!」

「おにいちゃん・・・ちづる、作ったから・・・食べて」

「ぷれぜんとふぉーゆー・・・チョコです」
718柔沢ジュウ:2011/02/15(火) 00:49:58 ID:N3nU3msd
「ジュウ様。現世にはこの日にチョコレートを贈る習慣があるそうです。光ちゃんに手伝ってもらって作ってきたので、お一つどうぞ」

「べっ、べつにあたしはあんたに作りたかったわけじゃないけど、お姉ちゃんが手伝ってって言うからしかたなく・・・」

「ジュウくん!あたしも作ってきたよー!切って形整えただけだから、ちょっと歪だけど、気にしないで!」

「はい。雪姫も雨もあげるのに私だけあげないのもアレだし」

「ハッピーバレンタイン、ダメ息子」
719名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 00:51:13 ID:N3nU3msd
1日遅れたが気にしないっす
その他のキャラは脳内補完ってことで
720名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 00:53:27 ID:N3nU3msd
やべミスった

闇絵さんのとこ
「行為を持った」
じゃなくて
「好意を持った」
に訂正よろしく
721名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 01:52:59 ID:c7Tjdyxt
>>718
“ジュウくん”は美夜の呼び方 雪姫の場合は“柔沢くん”だったと思う
722名無しさん@ピンキー:2011/02/15(火) 16:58:48 ID:Q2xQSg5Y
mjdk
ごめんねテヘペロ
723名無しさん@ピンキー:2011/02/16(水) 11:04:36 ID:9KgEraVG
mjdd
気にするなヨ ウヒペロ
724名無しさん@ピンキー:2011/02/17(木) 20:19:32 ID:yroOCSYX
>>720
わざとじゃなかったのか
そういうネタなのかとばかり
725名無しさん@ピンキー:2011/02/20(日) 11:20:59.30 ID:qV8pp8zn
初投稿です

光「ちょっと!こっちジロジロ見ないでよこの変態!」

ジュウ「・・・・・」

光「なによ今日はバレンタインだからあんたみたいなのでも一つくらいは欲しいでしょう?
  ひとつあげたくらいで何期待してんのよスケベ!」
ジュウ「・・・・・」

光「あと、仕事のほうは大丈夫なの!?最近忙しいらしいじゃないの!?ご飯もちゃんと食べてるの!?
  明日お弁当作ってあげようか!?どうする!?」
ジュウ「・・・・・なあ光」

光「なによ!!」
ジュウ「おれは大丈夫だから、頼むからもう少し落ち着いてくれ
    もうお前ひとりの体じゃないんだから」
光「――――――うん/////」

うん、初投稿にしてもひどい文章というのは自分でもわかってるんだ
ただ光ちゃんが好きなんだ。それだけなんだ。

なんだかんだジュウとは光ちゃんが一番合いそうな気がする。
726名無しさん@ピンキー:2011/02/20(日) 22:20:03.55 ID:/UtIg7sQ
うむ、愛は伝わった 乙
727725:2011/02/21(月) 00:52:15.16 ID:FnBLfFUD
>>726
ありがとう
電波の新刊なかなか出ないから
自分の妄想を我慢できなくなったんだ

ここで投稿してるみんなに比べて、
遙かに低レベルな文章で申し訳ないが
また何か思いついたら投稿します。
728725:2011/02/22(火) 11:46:01.92 ID:D83FJAcJ
昨日、夢の中で電波の夢を初めて見た

雪姫や円がまたアキバかどっかで
アニメ関係のイベントに行って
ジュウも連れて行かれるんだけど
雪姫たちのムチャ振りで歌を歌わされる
そこでジュウがしぶしぶアコギ持って
急遽開いたプチライブに俺が客としていた。

ここまでコアな夢見るとはマジで末期だな俺。
ちなみにジュウが歌ってたのは
TRIPLANEの「君ドロップス」だったよ。

だれかこれをssとして書いてほしい・・。
729名無しさん@ピンキー:2011/02/22(火) 20:23:21.45 ID:mLu1lOBx
そこは場の空気を読まずにジョン・リー・フッカー行ってみたり
(選曲は、幼少時に聞き覚えた紅香の趣味)

で、ぶっつけ本番なのに、何故か雨がブルースハープ激ウマ
730725:2011/02/22(火) 20:49:24.35 ID:D83FJAcJ
>>729
ジョン・リー・フッカーww
youtubeで調べてみたら古いし渋すぎるww
でも幼少期に覚えた紅香の趣味って設定はいいな

確かに寡黙なジュウには合わなくはないが
あえてTRIPLANの「君ドロップス」みたいな女の子とかが良いなぁって
思える曲を歌いこなすっていうギャップがいいと思うんだよ俺は。

そういった意味ではキュアラビッシュの「Thank you」とかもいいなと思う。
731名無しさん@ピンキー:2011/02/25(金) 16:53:53 ID:9AUwOWab
なんか急に思いついた妄想
若干のキャラ崩壊かもなので注意



ある日、家で料理をしているジュウ。
しかし、包丁握ったまま足元がふらつき転倒。包丁が腹にズブリ
偶然、そこに押し掛けてきた雪姫があわてて救急車呼ぶ

救急車の中でうなされるジュウ。その時、雪姫を見て
無意識に呼んだ名前が
「・・うぁ・・・美夜」

幸い命に全く別状はなく傷もたいしたことない
だが、なぜか雪姫は心中穏やかじゃなかった
聞いたことのない女の名前がジュウの口から出た事

雨が何か知っているんじゃないか?と思い、聞くと
「彼女は・・紗月美也は・・おそらくジュウ様の初恋の人です・・」
「・・・え?」

なぜ、その今その名前が出てきたのだろう?
「雪姫たちと知り合う前にジュウ様は
彼女に刺され瀕死の重症になりました。・・私をかばって。
その時のことが重なったのかと思います・・。」

じゃあなぜ私を見てその名前が出たの?
「・・雪姫は少し・・・彼女に似ていますからね」
「――――!!」

初めてだった。
気が気じゃない。心の波が消えない。どうしていいか分からない
なんといえばいいかわからないが決して良い気分じゃない。
雪姫を見て、雪姫じゃない女の子の名前が出た事が
暗い濁りを雪姫の心に残す。

気がつくと雪姫は雨から聞いた、とある少年院の前にいた
なにをすればいいのか,なにをしてるのか自分でもよくわからない。

でも、来てしまった・・。
彼女がいる、この場所に


うん、相変わらずひどい文章だ。ここまでは妄想したんだが
雪姫は美夜の事をもう雨から聞いてるんじゃないかと思った。
そして雪姫はここまでうろたえる性格でもないな・・。


続きは皆さんの脳内で展開するか
ssを書いて投下していただければと
732名無しさん@ピンキー:2011/02/28(月) 07:16:10.02 ID:k9qqf880
どうぞそのまま続けて下さい。
733名無しさん@ピンキー:2011/02/28(月) 11:36:36.07 ID:n7UyKDMi
>>732
続けたいんだが、ここから先が
どうにも思いつんのですよ

まあ、思いついたら上みたいに
箇条書きになるけど投下します。

光ちゃんもいいけど雪姫も良いんだよなぁ
734名無しさん@ピンキー:2011/02/28(月) 23:44:35.29 ID:n7UyKDMi
↑どうにも思いつかんのですよ

だったね。誤字スンマセン。
735名無しさん@ピンキー:2011/03/03(木) 23:58:53.82 ID:1cu5sZSZ
誰も見てないだろうけど
>>731の続き、

少年院の前に着いてからは、簡単だった
受付に向かい、「円堂円」の名前を出した。
あたしとその「紗月美夜」は全くの無関係にもかかわらず
円の名前を聞いただけで職員の一人が拘置所まで案内してくれた。

「こちらです。面会時間は10分間ですのでご了承ください。」
「・・ありがとうございます。」

この扉の向こうに「紗月美夜」がいる
彼女になにを聞きたいのか、何を言いたいのか、
そもそもあたしは何をしにここまで来たのか
そんなのわからない

わからなかったが、
目の前の扉を開けることに躊躇いはなかった。

――――――ガチャ・・・

扉をあけるとそこに彼女はいた。
ガラス越しにいる彼女を見て少し驚いた。
少し顔色が悪いとは言え、顔立ちの整った可愛らしい少女だった
こんな子が人殺しを、柔沢くんをカッターナイフで刺したのか?
内心、戸惑う雪姫を前に美夜が口を開く

「・・・あなたは?私の知り合いですか?」
「・・・いいえ」
美夜の問いに答える。

「あたしとあなたは間違いなく初対面ですよ。」
「・・?どういう事?」

「あたしの名前は斬島雪姫、堕花雨と柔沢ジュウくんの友達だよ」
「―――――!!」

私は一体何をしたいのだろう
彼女と何を話したいんだろう
まだ分からない

でも、きっと私は彼女になにかを伝えたいのだ
それがなにかはまだわからないけど



とりあえず、ここまで
いつまで続くのか、
っていうか完結するのかも分からんです。

この次も思いついたら投稿します。
っていうか主人公、雪姫じゃなく
光ちゃんにしたかったんだ実は。
736名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 10:55:14.61 ID:RyRdG9av
続きを思いついたので投下です。

「ジュウくんの?・・」
「うん、友達だよ。雨ともね」

それから雨やジュウとの関係を話し
ジュウが救急車に運ばれたことを話すと
「ジュウくんが!?大丈夫なの!?」
「!!う、うん!命に別状はないハズだからすぐに退院できると思うよ!」
「そっか・・よかったぁ」

急に取り乱した美夜に少しあわてる雪姫
「・・って、私がこんな事言う資格も無いんだよね・・」
「・・・・」

急に暗い陰を見せる美夜
「私さ・・、もう堕花さんから聞いたかもしれないけど人を殺したんだよ。それもたくさん」
「・・・うん」

「お兄さんに襲われてから、なにもかもおかしくなっちゃって・・」
「・・・・」
美夜が泣きそうな顔で笑う

「挙句の果てに、ジュウくんまで・・ジュウくんまで殺しかけて―――!!」
「・・・・・」
ついに抑えられない感情が美夜の目から溢れてきた

「ジュウくんを殺しかけたとき、ジュウくんはなんていったと思う?
 『なんで助けを求めなかった?』『お前は一人じゃないんだ』なんて言ってた
 これから自分を殺そうとしてる相手にだよ?――。
・・バカだよ―――!」
「・・・・・」

「ジュウくんを刺しちゃった時、ジュウくんは何したと思う?
 わたしを抱きしめて笑ったんだよ?優しい顔で・・。
 ・・ホントにバカだよ――!・・・バカすぎなんだよ!ジュウくんは――!!」
「・・・・・」

「なんで・・こうなっちゃったんだろうね・・・」

そして、美夜は言った
「ホントはジュウくんのこと、大好きだったのに―――!!」
「―――――!!」

「う・・うああぁあぁぁ・・・」
美夜の涙はもう止まらなかった、
そしてその顔は救急車でうなされながら
美夜の名前を呼ぶジュウと同じだった。

この二人は互いに苦しんでるのかもしれない
737名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 10:57:10.27 ID:RyRdG9av
「・・ねえ美夜ちゃん」
「・・・え?」
はじめて名前を呼ぶ。
だが、昔からの友達のような気持ちに不思議となれた。

「雨が言ってたんだ。柔沢くんが美夜ちゃんの事
思い出して今でも暗くなることがあるって・・」
「・・そうだよね。ジュウくんを散々騙して、
 挙句に殺しかけたんだもん。私が言えたことじゃないけど
 ジュウくんには早く私の事を忘れて、普通に生きてほしいよ・・。」

「違うよ美夜ちゃん」

雪姫は美夜を見据える
「これも雨から聞いんだけど、柔沢くん言ってたらしいんだ。」

『俺は美夜の事、救えなかった』
『美夜と毎日一緒にいたのに、美夜が苦しんでるのに気付けなかった』
『もしこの先、美夜と逢う事があったら伝えたいんだ。お前の苦しみに気付けなくてすまないって』



『今更、手遅れかもしれないけど美夜、おまえはひとりじゃないんだ。そう伝えたい』


738名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 10:59:16.89 ID:RyRdG9av

「・・なんで?どうして?・・なんでよぉ!!・・」
美夜は泣きながら困惑する。
雪姫自身もそう思った。自分を殺しかけた人間に贈る言葉じゃない

「ねえ?もしいつかここを出たら・・ジュウくんにもう一度会って欲しいんだ」
「――!何言ってんの!?私はジュウくんを殺しかけたんだよ!!
会えるわけないじゃん!!私が会ってもジュウくんを苦しめるだけだよ!!」
「柔沢くんも美夜ちゃんの事大好きだったんだよ!!」
「―――!!」

雪姫は美夜を見据える。
「だからこそ、柔沢くんは苦しんでる。
なぜなら美夜ちゃんが苦しんでるから」
「・・・そんな・・事」

「あたしも柔沢くんが大好き。
 はっきり言って恋人になりたいくらいね」
「だったら・・、あなたがジュウくんの
傍にいればいいじゃない!私にはもう―――!!」

「でも、美夜ちゃんとは友達になりたいんだ」
「・・・はぁ?」
美夜はもうわけが分からない

「美夜ちゃんの事で柔沢くんは苦しんでる。
あたしは大好きな人のそんな顔見たくないんだよ。
 美夜ちゃんは柔沢くんの事で罪悪感を感じている。
 柔沢くんも美夜ちゃんを救いたいって言ってる。
 だったら、もう一度やり直そうよ。」

「でも、私は・・もう・・ジュウくんには・・」
「美夜ちゃんがいつまでもそうやってるから
 柔沢くんが苦しんでるんだよ?
 君が柔沢くんにしてあげられる一番の事は
 早くここから出て、私たちと・・柔沢くんと一緒に笑い合う事だよ!」
「――――!!」

ああ、ようやく分かった
あたしはこの事を彼女に言いたかったんだ。
大好きな柔沢くんが苦しんでいる。それは彼女のせいだと思っていた。

でも違った。柔沢くんが苦しんでるように、彼女も苦しんでる。
だったら、あたしがそれを変えればいい。
あたしが柔沢くんと彼女をつなぐ橋になれば、
大好きな柔沢くんの笑顔が見れる。
あたしはそれを見たかったんだ。

それに、なぜか彼女とは初対面とは思えなかった。
きっと私たちはきっと良い友達になれる。
そんな気がしてならなかった。


739名無しさん@ピンキー:2011/03/04(金) 11:01:28.08 ID:RyRdG9av

「・・もう時間だね。」
「え?あ・・そうだね」
二人とも残念そうに言う。

「なんだか私たち、似てるかもね
 とても、今日初対面とは思えないんだもん。」
「あはは、雨にも言われたよそれ」

雪姫はドアノブに手を懸け、言う

「じゃあね、また来るよ美夜ちゃん」
「うん、今日はありがとうね、雪姫ちゃん」
はじめてお互いの名前を呼び合い、別れた。


帰り道、雪姫は思う。
なにも、考えずこんな大胆な行動をしたのは初めてだ。
だけど、

「いい子だったな。美夜ちゃん。」
素直にそう思えた。

なぜ、私はここまでしてしまったのだろう?
なぜ、初対面の子にあそこまで自分の気持ちをさらけ出したのだろう?
答えは簡単だった。

「あー、やっぱり、あたし柔沢くんの事大好きなんだなー。」
素直にそう思えた。恥ずかしながらベタ惚れみたいだ。
私だけじゃない、あの子もそうだ。
だから、友達になろう、なんて言ってしまったんだろう。

「さてと、明日にでも柔沢くんの見舞いに行こうかな!」

ジュウや雨には美夜の名前はまだ出せないが、いつか言いたい

――――――あたし、友達が一人増えたよって



とりあえず完結。
反省点だらけ、何を言いたいのか分からない、
展開早すぎ、ちょっとキャラ崩壊、
っていうか見てる人いないと思うが

なんていうか、美夜と雪姫が似てるって
ジュウが原作で言っていたので思いついた
そして、藤嶋と光ちゃんも似てる気がする。

俺の妄想もここまで来るとすげえな。
740名無しさん@ピンキー:2011/03/05(土) 03:05:27.28 ID:ziyen/Mn
GJ

次は光ちゃんでヨロシク!
741名無しさん@ピンキー:2011/03/13(日) 00:05:37.68 ID:I4HPmO90
美夜が更生して退院して勇気を振り絞ってジュウに会いにいくけど雨となんかめっちゃ仲良くなってて
ジュウが自分に最後に見せた優しい微笑みを雨に向けてるのを見てああやっぱりもう遅かったんだと思って帰ろうとするんだけど
ジュウに見つかってなんか雪姫と光もバッタリあって大変な修羅場になるとかそういう展開はないんですか?

742名無しさん@ピンキー:2011/03/15(火) 18:14:50.68 ID:aAscaUQ9
>>741
それいいな。ネタありがとう。
つづきはその路線で書きます。

ただ、俺がいるとこ東北で、
しかも、沿岸地域だから
今、地震で結構バタバタしてる・・。
騒ぎが落ち着いたらssの続きを書きます・・
743名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 05:35:50.62 ID:yBz6Bbde
>>717
一番最後、切彦ちゃんだよな


最初読んだとき、鉄腕!? と思ったのは内緒・・・
 
744名無しさん@ピンキー:2011/03/16(水) 17:54:47.82 ID:wylpPWbq
SS乙!

旧サーバーの方をブックマークしてたせいで、気付くのが遅れたw
745BOLT:2011/03/16(水) 20:02:18.56 ID:2fm5//Kg
ついこの前、紗月美夜と雪姫のssを書いた者です。
他にも>>725>>728も書いた者なんだが、
俺の名前を「BOLT」にします。

実は、最近2chの書き込みを始めたばかりなんで
こういう掲示板とかって書き込むときに
名前とか決めたほうがいいのかなあと思って・・。
いらないのかな?・・

たまにまた妄想ss書くかもしれないんで
そん時はよろしくお願いします。
746名無しさん@ピンキー:2011/03/17(木) 05:02:39.01 ID:EWKUnXrq
よろ〜
747:2011/03/17(木) 07:20:38.00 ID:/eM7+ZjB
前々から書いてた奴をアップしてみようと思います。

ちょっと長くなってしまったので、取敢えずは一部を。残りは反応を見て、続けて良い様なら
このまま。問題がある様なら、無料ブログにアップ等の対応で行くつもり。
748:2011/03/17(木) 07:24:57.87 ID:/eM7+ZjB

 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.5-2


 「悪宇商会のルーシー・メイでございます。柔沢さんをお連れに参りました。」


 繁華街に向かう途中、突然呼び止められたジュウが振り返ると、奇妙な集団が立っていた。

 ジュウは、その連中に全く心当りが無い。だが彼らの物騒な雰囲気からすると、どうも人
ごみを避けて裏通りを選んだ事が裏目に出たらしい。

 ジュウを連れに来たと言ったのは、手前の地味なコートを着込んだ眼鏡の女性だろう。その
後ろには10人以上の男達が控えるように立っている。彼等はいずれも上背があり、引き締ま
った無駄のない体つきをしているが、目つきの方は鋭さよりもむしろどろっとした虚無的な気配
を感じさせる。荒事慣れしている事は間違いない。それにジュウの都合などお構いなく、力ずく
で連れ去る意図を隠す積りもないらしい。

 「生憎と予定があるんでね。出直してくれ。」

 事情は分らないがジュウは危険な気配を察して、取敢えず時間稼ぎの言葉を並べた。

 男達の周囲に漂う剣呑さ。この連中はまともじゃない。もしかすると無駄な抵抗になるかも知
れないが―――しかし、今日は雨との約束がある。今朝は、その事で光に電話で叩き起こされたのだ。

 「お姉ちゃん、物凄く楽しみにしてんだからねっ!あんた、絶対すっぽかすんじゃないわよ!!」

 元々すっぽかす積りなどなかったが、その上光にああまで言われている以上、こんな連中に邪魔
される訳にはいかない。しかし案の定、眼鏡の女はジュウの反応を意に介する風もなく返事をよこす。

 「済みませんが、その予定はナシで。どうしても今、柔沢さんに来て頂かないと困ってしまうんですよ」
749:2011/03/17(木) 07:25:28.55 ID:/eM7+ZjB
 暴力を背景にして、明るく笑う女。ジュウは相手から隠れる様、服のポケットの中で腕時計の留め
金を外した。後は右手に持ち替えるだけだ。

 「あんたらの都合なんて知らないね」

 女は苦笑して一歩下がる。入れ替わりに、それまで黙って並んでいた男達が前に出た。

 「こういうの、悪役みたいで嫌なんですが」

 ジュウは覚悟を決めて左ポケットから手を出し、素早く腕時計を右拳に巻いた。そこで怪訝な表情
になる。相手の女が、急に含み笑いを漏らしたのだ。

 「何がおかしい」

 「いえ、懐かしいと思いましてね。その時計を見て確信しました。やはり、あなたは柔沢紅香の息子です」

 ジュウは驚く。何故こんな連中の口から、紅香の名前を聞くことになっているのか。だが、ジュウ
の受ける動揺など相手はどうでもいいらしく、にやついた表情も変わらない。

 「・・・何でババアの名が出てくるんだ?」

 「お知りになりたいのなら、我々と一緒に来られては?」

 「お断りだと言っただろう」

 ジュウは内心の動揺を押さえ込み、戦闘態勢に入った。今はとにかく、この連中の包囲を突破しな
くてはならない。色々考えるのはその後だ。身構えるジュウと、男達の間で高まる緊張。その糸が切
れそうになった刹那―――


 「柔沢」


 振り向くと何時から居たのか見覚えのある男子学生が一人、怪訝な表情を浮かべて立っていた。これ
から部活に行く為かボストンバッグを肩にかけ、光雲高校の制服を着ている。

 「トラブルか?」

750:2011/03/17(木) 07:29:33.16 ID:/eM7+ZjB
■ルーシー・ヴァイパー■ No.1-2


 「ぃ・・・」

 伊吹、と言いかけてジュウは押し黙る。今ジュウと向かい合っている人間達は、間違いなく裏社会
に巣食う手合いだ。そんな連中に自分との関わりを知られ、学校の制服を見られただけでも既に問題
―――まして伊吹は昨年の全国空手選手権大会で優勝を収め、今年も各メディアから取材を受ける程
の有名人だ。ここで名を呼ぶのは、無駄に彼の危険を増すばかりだった。ジュウは取敢えず状況を流
す事を選択する。

 「この人達が俺に用があるらしくてな。まあ、お前には関係ない話だ」

 当の相手は――さっさと去れば良いものを――周囲に軽く目を走らせた後、呆れた様に言う。

 「とてもじゃないが、話し合う空気じゃないな」

 肩のバッグを下ろして手に提げ、伊吹は改めて剣呑な連中に向き直った。特に力の入らない、自然な、
しかし毅然とした態度で言い放つ。

 「俺は幸雲高校、空手部の伊吹秀平だ。この金髪に先約がある。悪いがこちらを優先させてもらいたい」


 ジュウは呆気に取られた。こちらの気遣いが無駄になったばかりか、伊吹は訊かれもしないのに、わざ
わざ言う必要のない事まで明かしてしまったのだ。こいつは真性の馬鹿だろうか。

 伊吹はそんなジュウの気持ちを読んだか、不服そうな目を向け

 「・・・そんな馬鹿を見る様な目は止めろ。こういう状況じゃ、俺はお前に加担しない訳にいかないんだからな」

 視線を戻すついでに覚悟も口にする。

 「そうなればこの格好だ。素性を隠したって同じだろ」


 危険な状況下で荒事が避けられないなら、ジュウが拒もうと加担する。だから無難に避ける為の気遣い
も拒絶する。伊吹にとって先の名乗りは、そういう意思表示を含んでいたらしい。何たる四角四面。いっそ
馬鹿だと思いたくなる程に、彼は真面目な男なのだった。

751:2011/03/17(木) 07:30:19.28 ID:/eM7+ZjB


 ただジュウには何故、伊吹がここまで頑なな立場を取るのかが分らない。勿論、彼の厚意が嬉しくない
訳ではないが、それも状況によりけりだ。大体、本物の危険に伊吹を巻き込んでしまっては光に合わせる
顔がない。ジュウはあの明るい顔が曇る様はもう見たくなかった。まして、再び自分がその原因になるなど
真っ平御免だ。

 そういう意味でも今回の相手は最悪。事を構えれば確実に後の災厄に発展する―――そんな類の人種だ。
下手をすれば、いや下手を打たなくとも、学校や伊吹の家庭にまで類が及びかねない。こんな連中を相手
にしてまで、彼が自分を庇う理由などありはしないのだ。

 「大きなお世話だ。変に首を突っ込んで来るな」

 「そうはいくか。こっちにはこっちの都合がある」


 二人が言い合う間にも男達は動きだしていた。彼らは無言で二人の逃走を塞ぐ形に展開。今更、どちら
も逃がす積もりはないらしい。ジュウと伊吹は自然と互いを背にする形になる。

 こうなると、もう仕方がない。ジュウは軽く溜息をついて覚悟を決め、伊吹に囁きかけた。

 「互いにフォロー抜き。逃げられればいいが、多分出たとこ勝負だ。後は個々の展開次第ってことでいく」

 伊吹が参入した時点でジュウの負担は大幅に減っているから、それ以上の手助けは不要。そもそも余裕の
ある状態ではないし、状況がどう転ぶかも予想が付かない以上、展開は流れに拠るしかない。両方、或いは
どちらかが逃げられれば良しとする。

 語彙の足りないジュウの説明だが、しかし意図は伝わったらしい。伊吹が短く応じる。

 「元々その積りだ」

752:2011/03/17(木) 07:33:38.61 ID:/eM7+ZjB
■ルーシー・ヴァイパー■ No.1-3


 ジュウは何時も以上の集中力で破壊衝動の構築に臨む。筋肉が熱を帯び、急激に視界が狭まる様な感覚。
皮膚がざわめき頭髪の先端まで意識が染み渡り、精神の内側を不可思議な静寂が満たす状態を錬り上げて
いく。今回は、殺意に迫る域まで意識を持っていく必要があるのだ。

 ジュウは苦心して“上手くやる”思考を捨て去った。今日、もしかしたら自分は人を殺してしまうかも
知れない―――そういう想いが一瞬脳裏を掠めたが、敢えて無視する。

 恐らく自分一人なら、ここまでの踏ん切りはつかなかっただろう。だが背後には、こういう事に巻き込
まれるべきでない人間が居る。自分のような何処にでも居るガキに出来る事などたかが知れているが、それ
で責任を放棄して良い筈もない。

 それに先程「フォロー抜き」と言いはしたが、本来は無関係である筈の伊吹を置き去りに、ジュウ一人が
逃げ出す展開などありえない。だが、その逆なら話は別だ。伊吹の参入からジュウの置かれた状況は充分
マシになっている。あとは隙が生じさえすれば伊吹は逃げていい。否、逃がさなければならない。ジュウ
の言葉は暫定的な相方の行動に、枷を嵌めない為のものだった。

 勿論、伊吹の武道家としての腕前は尋常なレベルではない。或いはこの種の配慮は余計な事かも知れな
いが・・・ただ彼の気質のクリーンさが気にかかる。それだけにジュウ自身は、どうあっても踏ん張らな
ければならなかった。その為なら目潰し、噛み付き、武器使用ほか何だってアリとするしかない。


 慎重にリミッターを解く。後はもう、始まるだけだ。

753:2011/03/17(木) 07:34:25.92 ID:/eM7+ZjB


 一方、当の伊吹は背後に立つジュウの変容を正しく感じ取っていた。

 まるで体温を帯びた厚い壁を背にしている様な感覚。伊吹は大柄な米兵を相手取った過去の経験を思い
出す。あの時は相手が酔っていたこともあり、何とか事なきを得たが、人体の壊し方を体得した人間は極
めて危険な大型獣に他ならない。頑丈でウェイトに勝る、殺気立った米兵を捌くのは、著しく勝った技量
を以て尚至難の業だった。

 そして、この柔沢は180センチを超える並外れた肉体と鋭い感性の持ち主だ。かつて道場で向かい合った
時には分らなかったが、伊吹はこの状況に立って初めて、他校の道場というロケーションがジュウに大き
なハンデを強いていた事を理解した。大体、あの時とは背後の気配が違い過ぎる。

 今、自分が背を預けているのは無様に酔ってなどいない―――大柄な獣。


 「あの」

 男達の向こうから顔が覗く様、背伸びしながら眼鏡の女が声を発した。面倒事でも押し付けられた様な
表情。

 「私達は荒事が仕事ですんで、普通に武器とか薬品とか使いますし・・・目を潰したり、骨を砕く程度の事
には抵抗感ゼロですよ? え〜っと、そのぉ」

 気遣わしげな態度はあからさまな演技、ばかりでもあるまい。男共のやり過ぎを懸念しているのだ。手向
かわず、大人しく従ってくれればお互い楽なのに。そう言わんばかりの態度で女は続けた。

 「大丈夫です?」

 その刹那。伊吹の前に立っていた男が隠し持っていた拳銃型の催涙スプレーを取り出し、トリガーを引
き絞った。

 このタイミング!女の言葉を聞く隙を突いての攻撃だ。どうやら、あの台詞は一種の囮だったらしい。
何が「大丈夫です?」だ!

 しかし、その液状スプレーは二人の動きに何ら影響を与えることはなかった。伸びたガスの軌道は空振り。
霧状に残留した液体が占める空間を縫う様に伊吹の長身がしなったと思うと、何時の間にか解き放たれていた
拳が蛇の様に伸び上がり、撃った男の鼻骨を砕く。拳が最適な打撃位置に伸びきる瞬間に生じる、最大の運動
エネルギーを用いた突きだ。

 公式ルールの枷が無ければ、伊吹はダメージコントロールなど自由自在。若くして十二分に怪物の器と称さ
れる、超高校級の空手家だった。

754:2011/03/17(木) 07:37:31.12 ID:/eM7+ZjB
■ルーシー・ヴァイパー■ No.1-4


 乱闘の開始を告げる、明確な合図はなかった。

 伊吹は最初の一人を突きで仕留め、その相手が地面に崩れる頃には二人目に弾丸の様な下段回し蹴りを放っ
ていた。膝関節を横薙ぎに打ち抜かれた男は苦悶の表情で倒れ込みながらも、腰から電極を飛ばす型のスタン
ガンを引き抜き、伊吹に狙いを付ける。三人目を射程範囲に捉えながら瞬時に状況を読んだ伊吹は、難なくそ
れを避けようとして―――最初の男に捕まった。

 彼らの目的が掴みにある事くらい、争う前から想定していた筈だった。多勢で動きを封じられては膂力も技術
もない。蟻の群れに襲われた昆虫の様に分解されるのを待つだけだ。それを避けるための運足と体捌きだった
が・・・相手にしている人間達のポテンシャルを見誤った。自分も柔沢も危険な動物には違いないが、この男
達もそうなのだ。

 無限に引き延ばされる一瞬、放たれた電極針―――伊吹は、後の状況を想定して強張りかける。

 しかし結局、高電圧が彼の肉体を貫く事はなかった。

 いましも伊吹に突き刺さろうとしていた電極針を防いだのは、突然に現れたスナックの看板。背後から側を
掠めて飛来したそれは、スタンガン本体と電極針を繋ぐ電線を巻き込みつつ、二人目の男の顔を直撃した。金属
製のシャッターをハンマーで殴った様な、ガンッ!という物凄い音を立てて、男は沈黙する。

 振り返った伊吹の目線の先では、男が二人ほど“飛び散っていた”。中央には、一匹の鬼。


 盛り上がる角ばった筋肉。限界まで吊り上った太い眉の下、狂気じみた殺気を放つ双眸。剥き出しの犬歯は
比喩ではなく、血にまみれた牙そのものだ。足元では男が一人、食いちぎられた鼻を押えて転げまわっている。

 「な―――」

 先の動揺を上回る戦慄が伊吹の背骨を駆け上がり、半ば本能的に危機回避の攻撃を発しかけて―――危うく
思いとどまる。


 これは、柔沢だ。

755:2011/03/17(木) 07:38:12.69 ID:/eM7+ZjB


 自ら助太刀を申し出た筈の相手を呆けた様に見つめ、動揺のままに言葉を漏らしてしまう。その瞬間、雷鳴
の様な咆哮が背筋を貫いた。

 「ボサッとしてんじゃねえぞ伊吹ッ!!」

 殴られた様な衝撃を受け、伊吹は極短い空白から意識を引き戻された。だが強烈なイメージとは裏腹に、放
たれた言葉は充分に理性的なもの。柔沢は必死に流れを引き寄せようとしているのだ―――自分達二人の流れを。

 直後に死角から迫った鋭い蹴りを何とか流し、一連の動作でカウンター気味の抜き手を返す。相手は仰け反
りながら吹っ飛び、地面を転げまわった。背に走る冷気にも似た感覚はそのままに、伊吹は再び目前の闘争に
集中する。冴え冴えとした視線で周囲を見渡す姿には、既に強固な安定感が戻っていた。軽い動作で最初の男
に止めを刺す。

 実は見た目が細身の伊吹には、意外にも思える身体特徴があった。それは太く変形した指。それがどんな理由
で生じた特徴かは―――抜き手を食らった男の胸と、そこから流れる血の量を見れば一目瞭然。鍛え抜かれた
伊吹の両手は、殆ど二本の槍なのだ。

 破壊と怒号と血肉が飛び交う裏通りは、今や鉄火場の様相を呈していた。しかも闘争は未だ序盤。

756:2011/03/17(木) 07:38:59.43 ID:/eM7+ZjB


 後方で状況を眺める悪宇商会の女は、僅かに目を剥いた。熱気をはらんで荒れ狂うジュウの暴力と、切れ味
鋭い伊吹の技。用いる力の在り様が異なる両者だが、それが合わさった破壊力たるや凄まじく、かなり有利な
状態から事態に臨んだ筈の男達が、逆に勢いに押されている有様だ。しかも相手は、未だ大人と言うより子供
に近い未成年者二人。

 ルーシーは軽く溜息をつく。計画内容から考えて必要あるまいと、今回動員した人員を良質な者だけで構成
しなかったのは確かだが―――裏十三家縁の者ならともかく、まさか一般の高校生如きにここまでの手向かいを
受けようとは思わなかった。それに、後から現れた学生が想定外に良過ぎる。いわば彼女は「ジュウ一人なら」
と初手から網で捕獲を図った積りが、想定以上の反撃を受けて、その一部を破かれた様な形だった。

 尤も最初に足止めに掛ったのは中でも下の役割を押し付けられる程度の連中であり、それ以外の部下の力量
からすれば、以降の展開がこれまでの様に推移しない事も分っている。

 ただ、今回の仕事には時間的な制約があった。各街路の入り口に人員を配して辺りを封鎖してはいるものの、
警察にまでは手を回していないのだ。おまけにその封鎖もどう掻い潜られたものか、相手の助っ人が混ざり
込んでくる始末。

 この騒ぎは確実に人を引き付ける。事態の綻ぶ速さが気懸りだった。

 不本意だが、既にこれだけの損害を出してしまった以上、当初予定の低コストで素早くコトを済ませるプラン
は破綻したと見るべきだろう。

 「あ〜〜最初から大袋被せて車内に放り込んで搬送、ってルーティンでいくんだった・・・」

 この状況の責任は自分にある。正直に言えば、外注仕事で偶然突き当たった“あの”柔沢紅香の息子に興味
を持ってしまったのだ。眠らせて本部に持ち帰るやり方だと、後は納品が待つばかりで観察する余地などない。
だが、そこで余計な色気を出した挙句がこの様だ。


 それにしても、なんとまあ―――流石は柔沢紅香の直系、収まりの悪い事この上ない。不本意だが、これは
ハンマーで叩いて角を取り、大人しくさせてから網に入れ直すしかあるまい。そう判断した彼女は、傍らの巨漢
に声をかける。

 「ダニエル」

 呼ばれた男が、サングラスの下で片眉を上げた。もたれていた壁から身を起こす。

 黒地に極細縞のダブル。その服装は黒髪のドレッドヘアや濃褐色の肌とも相まって、色彩的にはまとまって
いた。しかし、盛り上がる筋肉のせいでスーツ本来のドレープの方は台無し。何よりも服自体が安物なのだろう。
生地が部分的に引っ張られたり、弛んだりしている。

 これまでのところ、この男は乱闘に加わるでもなく「我関せず」とばかりにガムを噛んでいたのだが。

 「的を押さえなさい。殺さない様に気をつけて。後から来た方は潰しちゃっていいです。」

 巨漢はチョイと肩をすくませてから、ゆっくりした足取りで闘争の場に向かって行った。

757:2011/03/17(木) 07:41:34.13 ID:/eM7+ZjB
取敢えず、今回はここまで。
あと、>>748はナンバリング誤りで、本当は ■ルーシー・ヴァイパー■ No.1-1 です。
758名無しさん@ピンキー:2011/03/18(金) 00:59:11.95 ID:iAwIQ1UT
>>757
ヤベえ何か凄い大作の予感……!
GJでした。なんて気になることろで終わるのwww
759:2011/03/18(金) 02:50:38.35 ID:yyITC1Ug
>>758
どもです(^^)。

このお話は殆ど書いてあるのですが、実はこれまでの部分で全体の1/6程(--;)。
流石にどうかと思ったのですが、zipでのアップは何か味気ない気がして・・・正直、
反応を頂けるのは嬉しいですし。

ただサイズによってはブログなど、個人スペースでやる方が良いのかなあと思いつつ
これまでは、ここでばかり書き込んで居ましたから悩んでいます。
760BOLT:2011/03/18(金) 11:34:44.25 ID:n8Zd041u
>>759
続きを楽しみにしてます。
ようやく、このスレもまたssが増えてきたな。

俺も続き考えよう。
761:2011/03/19(土) 04:00:24.70 ID:dVO2aHsK
>>760
妄想にお付き合い、どもです^^。


特に問題等の指摘もない様なので、続きを投下してみます。
762:2011/03/19(土) 04:06:44.24 ID:dVO2aHsK
 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.2-1


 状況がやや膠着状態に陥っている事は、自覚していた。それも当初と変わらず、自分達が不利な態勢のままでだ。

 ジュウは、自分の足元で鼻を押えて呻く男の顔面を蹴り抜いて沈黙させると、状況を測るべく周囲を見渡した。
倒れた相手に酷な様だが、後難の要因は努めて排除せねばならない。何せ状況は最悪。頭数だけとっても、どう
しようもない程の開きがある。それに相手が自分達を子供と侮って僅かに残していたであろう油断に付け入る、
猫騙しの一撃はもはや通用しない。ここからはよほど上手く立ち回らないと―――或いは上手く立ち回っても
―――泥沼の様な消耗戦になってしまうだろう。無論向こうが沼、こちらが獲物だ。

 それに今対峙している男達は最初の連中のお陰で無傷な上、あまり考えたくない事に、先の相手よりずっと
上手の実力者揃いの様だ。どうやらジュウが淡く期待していた、最初の一撃で相手に生じた隙を突いて逃走する
プランは暗礁に乗り上げてしまったらしい。


 さて、どうするか―――


 ふと側頭部に近付く気配を感じて首を伏せたのは、今日何度目かの奇跡だった。

 髪を掠めた黒い塊が、傍の壁をぶち抜く。とてつもなく大きな運動エネルギーが生み出す破壊音。その震動が
ジュウの下腹に響くのと、ほぼ同時に下方から太い足が迫る。咄嗟にガードした両腕に鋭い痺れが走ったかと
思うと、ジュウの体は斜め後ろに弾き飛ばされていた。その隙に背後から組み付こうとした相手を後頭の頭突き
で振り払うと、ジュウは改めて目を前に向けた。

 視界を圧して迫る、黒く大きな影。継いで凄まじいラッシュがジュウを襲った。轟音に振り向いた伊吹が叫ぶ。

 「無事か柔沢!!」

 「ッ余所見すんじゃねえ!!」

 マズい。事前に確認したにも関らず、伊吹は単独で脱出する気が全くない―――

 選択肢が手元から滑り落ちていく。元々手に余る連中を相手にしていたジュウ達だったが、この素早く動く
黒人の巨漢は最悪な状況の上に、更なる悪化を齎した。事態が定まる流れは殆ど秒で決するところに達して
いるのに、打開の手段がまるで見出せない。

763:2011/03/19(土) 04:09:50.66 ID:dVO2aHsK


 しかし、ジュウはしぶとく抗った。必ず、何とかする。強い高揚がジュウの感性を状況分析から、目前の
闘争への集中に切り換えさせていた。

 巨漢の激しいラッシュと、時折不意打ちの様に混ぜられる掴み。それらをギリギリの危うさで避け続ける
ジュウ。周囲の男達はジュウ達の退路を断ちつつ、隙を突いて攻撃を仕掛けてくる。それを防ごうと奮闘する伊吹。

 この極短い瞬間の中に凝縮された様々な出来事。それは誘拐や殺人といった醜悪極まる物事の中で、奇妙な
輝きを放っていたかもしれない。合理的で破壊的で根源的な闘争。充満する、相手を叩き崩そうとする意思。
少なくともそこにだけは嘘がない。

 雨と出会う以前のジュウは常にそういう空気の中に独り、身を委ねていた。だが今回は少し事情が違う。
背後に味方がいるのだ。それで自分の能力がどう変わるという訳でもないのだが―――ただジュウは過去の争いで、
ここまで敵に容赦のない己を自覚した事はなかった。言い換えれば“必死さ”だろうか。かつて賀来羅清に対した時
より、鋭敏な自分を感じる。

 その勘が、ジュウに微かな違和感を告げた。自分がこの巨漢の攻撃に対し、回避に重点を置いてガードを避け
続けた理由。それが何時まで続けられるかは、ともかくとして―――この相手の動きはどこか不自然だ。

 洗練されてはいるが、素手にも関らず全身が何か重い物の慣性に引っ張られている様な挙動。逆に言えばその
違和感の原因さえなければ、ジュウはとうに叩き伏せられて居たかも知れない。その不自然な気配、巨漢の拳が
空を切る音と量感が、相手の攻撃をまともに受けては危険だと教えてくれる。

 次の瞬間、ジュウが抱いた疑念への答が視界の隅に映った。

 それは、先程打ち砕かれたブロック塀。派手に崩れ落ち、無残な様相を呈する残骸群は、およそ人間の齎した
破壊の結果とは思えない。まるで建築破壊用の鉄球でも、ぶつけたかの様な有様だ。

 やはり、こいつの腕には何かある。分ったところで対処に困る事実ではあったが、しかし―――


 「ちょっと、ダニエル!商品を潰す気ですかっ!?」


 背後で上がった女の声で、黒人の巨漢が動きを止めた。分厚い唇の端が持ち上がり、何とも嫌な笑みを形作る。
伊吹の方に目線を振ると、軽くおどけたような口振りで呟いた。

 「Oops. 潰していいのは、あっちのガキだっけか」


 ダメだ!伊吹にこいつの相手をさせる訳には―――


764:2011/03/19(土) 04:10:56.27 ID:dVO2aHsK


 矛先を変えた黒人に対し、一瞬集中力を欠いたジュウは無防備な一歩を踏み込み―――気付くと、斜め下から
飛んできたバックハンドを浴びてしまっていた。

 辛うじて両腕でガード。バックステップで威力を軽減させはしたが、まるで中身の詰まった鋼材で殴られた
様な一撃だ。肉が潰れる嫌な感触がし、骨にも鈍い衝撃が伝わる。

 「柔沢っ!!」

 動揺する伊吹の隙を突く様に、黒い巨漢は返す上体で再びバックハンド。破壊されたブロック塀を見ていた
筈の伊吹は、しかし焦りで判断を誤ったか、肘周りを使ってのガードを図り―――鋼鉄の洗礼をモロに受けて
しまった。

 「がっ・・・」

 猛烈な痛みから生まれた隙が、状況を決した。巨漢は前傾した伊吹の腹に雑な蹴りを叩き込んで上体を浮かせ、
ハエでも叩く様な仕草で握り拳を打ち下ろす。アスファルトに人体が叩きつけられる、嫌な音が響いた。

 場に静けさが降りた。

765:2011/03/19(土) 04:16:30.59 ID:dVO2aHsK
 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.2-2


 状況は決した。この状態を見ればジュウが伊吹を担いで逃げ出す事など不可能だし、これまで伊吹に割かれて
いた人員は全て残った一人に集中出来る。取り押さえたその後は、生意気なガキに2・3発くれて大人しくさせ、
袋に詰め込んでしまえば、それで終わりだった。

 ダニエルは一応、更に状況を安定させる為、作業的に倒れ付した伊吹を踏みつけようとして―――

 左頬骨上部に電撃的な一撃を喰らった。サングラスが砕けて弾け飛び、眼球の隅に鋭く細かな砂利が入り込んだ
感触。

 振り向いた先には、視界一杯の文字盤。時計を巻いた右ストレートが“鉄腕”ダニエル・ブランチャードの左目
を打ち抜いた。緩みかけた男達が一瞬にして緊迫し、目を剥いたルーシーの視線の先には蒼白な顔を怒りに歪める
“商品”。


 他の多くの事柄と同様に、暴力沙汰にも技量がある。激した勢いを相手にぶつけ、勝つ事だけを追求する一方で
冷静な対処も怠らない。そうした心身の特殊な状態を利用しつつ、全体の流れを制御下に置いて展開される争いは、
単に正気を失って暴れる事とは似て非なるものだ。無作為に頭を真白にして良い事など無い。しかし――――――


 それを知悉して尚、今のジュウには状況などどうでもよかった。結果がどうなるかも知らない。だが、こいつは
―――このクソ野郎だけは!!


 ジュウの視界が真っ赤に染まる。右手には鋼鉄の腕時計。左手には拳大のコンクリートの破片。直後、鋼鉄と
コンクリートが乱れ飛ぶ暴風の様な攻撃が始まった。

 ふいを突かれて左目を損傷した“鉄腕”の頭部に、雨あられと叩き込まれる鉱物の拳。闇い怒りに我を忘れ、暴れ
狂うジュウの動きは、その滅茶苦茶さとは裏腹に軽快とさえ言えるものだった。

 一瞬で、デカブツの額に鋼板が埋め込まれている事が分った。鼻と唇の間、鼻の横、頬骨と耳の間への打撃が有効
な事は確かめた。顎の先端は太い首の筋力に支えられて今ひとつ。眼球には、やはり痛みとダメージが及ぶらしい。

 繰り出す一撃一撃が、巨漢の仕様を暴いていく。

 左手のコンクリートブロックが、繰り返される打撃で角砂糖の様に削れだし、ジュウの掌の皮膚が破れて血が迸る。
だがその動きに勢いを削がれる気配はなく、ジュウはヤスリで削り取る様な攻撃で更に“鉄腕”を攻め立てた。堪り
かね、頭部を鋼の両腕でガードする巨漢。だが、これはジュウの直感を実証する為の罠だ。
766:2011/03/19(土) 04:17:36.34 ID:dVO2aHsK


 上体程には洗練されていない下肢の動き。その関節は恐らく生身。遠慮の無い振る舞いからすると、要所毎にプロ
テクタを付けているかも知れないが、膝関節の斜め横を上から踏みつける様に蹴れば―――

 膝関節に可動範囲とは異なる角度から強烈な踵蹴りを叩き付けられ、思わず“鉄腕”は片膝を落としかける。その
頭頂目掛けて振り下ろされる、ハンマーの様なコンクリートの拳。激しい震動が直接脳を襲った。

 傲慢なまでに暴れまわるジュウを掴もうと試みた、幾度目かの失敗で“鉄腕”は右目にもコンクリートの一撃を
浴びる。堪らず背けた頭部、その急所に強烈な4発。継いで反り返った顔、その鼻を下から削り取る鋼鉄のアッパー。


 「・・・・・・ッ!!」


 よろめき、数歩下がる“鉄腕”。これだけのダメージを受けて尚、苦痛の声を上げない辺りは流石に暴力世界の
本職だが、同時にそれは信じ難い光景を呈してもいた。何しろ幾多の荒事を請け負い、数多の命を蹂躙・殺害して
きたプロの戦闘屋が、一介の高校生に“殴り殺されそうになっている”のだ。こうする間にも、情け容赦の無い
攻撃が“鉄腕”をメッタ打ちにしている。

767:2011/03/19(土) 04:19:47.60 ID:dVO2aHsK


 最早ダメージが隠せなくなった“鉄腕”に、ジュウは更なる追撃を繰り出そうとし――――――女の金切り声で
僅かに我に返った。


 「抵抗をやめなさいッ!!さもないと彼を殺します!!」

 振り返った視線の先では下唇を噛み締めた悪宇商会の女が、青褪めた顔でジュウを睨みつけていた。傍らには男達
に羽交い絞めにされた伊吹。気を失っているのか、膝を突いた姿勢で俯いている―――が、息はある様だ。

 女は怒りに震える声で、搾り出す様に言う。

 「・・・よくもまあ、好き放題に暴れてくれたものですね。正直言って驚きましたよ。」

 ジュウは虚ろに濁った怒りの視線を女に向けた。見ず知らず―――という訳でもないらしいが、他人に大勢のゴロ
ツキをけしかける様な奴は男だろうが、女だろうが碌な人間ではあるまい。しかも、こいつは最初から安全圏で高み
の見物と来ている。気に食わない―――ジュウは酸欠気味のコンディションを悟られない様、荒い息を押えながら
言い放った。


 「他人事じゃねえぞ、眼鏡」

 一瞬鼻白んだルーシーは、しかし、ニタっと笑うと毒の様な言葉を吐き出した。

 「言っておきますが、こちらも脅しではありませんよ?」

 男の一人に髪を掴まれ、強引に顔を引き上げられる伊吹。その喉元にナイフが突きつけられる。

 「本当に殺します。彼も、彼の家族もね」

 じりじりとジュウを取り囲む男達の包囲が狭まり始める。先のジュウの反撃を警戒してか、極めてゆっくりとした
動きではあったが。

 「でも、そちらが大人しく従うなら考えないでもありません。最初から目的はあなたの身柄ですし」

 勿論、これは嘘だ。だが彼女にとって、嘘は単なる交渉技術の一部。それ自体は呼吸と同じく、日常的な行為に
過ぎない。重要なのは相手に齎す効果の程度だ。その意味で「直ぐバレて状況を悪化させる様な安い嘘」は悪に違
いない。しかし口先一つで場の優位を得られる状況にあって、それができないのは善良な指向などではなく、単なる
低能の醜い限界だ。流動的な状況下にあって、事実と虚構は含有量と編集と効能で考えられるべきテーマであり、
それが調理出来ない馬鹿は正直者にでもなるしかない。

 ルーシーはジュウを拘束した後、伊吹の処置は部下に任せる積りだった。自分はともかく、ガキにやられ通しと
あっては連中の気が収まるまい。腹いせに嬲り殺すなり、内臓を売って小遣いの足しにするなり、好きにすればいい。


 対するジュウは、傍目にも危険な状況に置かれていた。判断を先送りにする漫然とした時間は、より不利な方向に
事態を傾けるだけ。しかも、その猶予期間は秒単位で大きく損なわれていく。直ちに最適な解を見出し、対応しなく
てはならないが―――肝心の選択肢は、まだあると言えるのか。

768:2011/03/19(土) 04:28:49.89 ID:dVO2aHsK

 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.2-3


 非常に困難な思考と選択を迫られる、険と困惑の渦中。突然、ジュウの気配から凶暴な鋭気が消えた。未だ、警戒
の姿勢は解かれないままだったが・・・それでも先程まで湛えられていた殺気からすれば、それこそ嘘の様な気配の
変化。唐突で奇妙な成り行きに、間を外したような静寂が生じる。

 しかも、よく見るとジュウは実に複雑な表情を浮かべているのだ。何かに戸惑う様な、困った様な―――あまりに
状況にそぐわない標的の態度に、ルーシーが気を取られた一瞬後。彼は軽い溜息と共に告げた。


 「そいつはどうだろうな」

 ジュウの言葉が終わるや否や、伊吹が取り押さえられている方向から悲鳴が上がった。

 ルーシーが振り返ると、先程まで人質を羽交い絞めにしていた数名の男達全員の両手首から血が噴出している。
悲鳴は腱を切られた彼らの叫びだ。継いで、すらりとした長い足が稲妻の様に瞬き、居並ぶ男達を次々と昏倒させた。

 咄嗟の出来事に飛び退いたルーシーの眼前を高速で擦り抜けた物体が、はぜる様な音をたてて地面に突き刺さる。
それは直径1センチ弱の鉛玉。


 「他人のものにちょっかい出すのは、止めてもらいたいな」

 倒れた男を跨ぎ、ふらりと立つ少女が言う。年の頃は16、7歳だろうか。どこかで見た様なあどけない顔とは
裏腹に、鋭く光る剣呑な瞳。醒めた様なニヒルな笑み。結い上げた長髪に白いリボンをあしらい、小さめのTシャツ
の上から丈の短いボアジャケットを羽織っている。大胆なカットジーンズと膝丈のソックス。被った濃紺のキャップ帽
には、銀糸で「Born to Kill」の文字。右手に握られた小さなナイフが、目を引いた。

 この奇妙な気配の少女は、遊びを邪魔された苛立ちを苦笑に置き換えた様な声で続けた。

 「今日はこの脚線美で迫る予定だったのに、邪魔が入って台無しだ」


 崩れかける伊吹を支えたもう一人も、やはり同年代の少女だった。さっぱりとした短髪、感情の窺えない怜悧な顔。
グレーのスキニーパンツを穿き、黒いシルクのシャツにタイトなマルーンカラーのメンズジャケット。右肩には装い
にそぐわない、大きなスポーツバッグを背負っている。

 彼女は冷えた瞳で観察する様に周囲を検めた後、チラリとジュウに視線を遣り、溜息混じりに呟いた。

 「・・・よくもまあ、こう次から次へとトラブルに巻き込まれるわね。呆れたものだわ」

769:2011/03/19(土) 04:29:41.40 ID:dVO2aHsK


 ルーシーは続け様に生じた想定外の出来事に焦り、苛立ちもしたが―――何より困惑していた。この地区は悪宇
商会の配下が封鎖している筈の場所。そこに現れている以上、彼女等は“既に”商会に所属する手練の包囲を掻い
潜った事になる。だがコンビニでもあるまいに、何故こうもイレギュラーな連中がぽんぽんと入って来られるのか。

 この状況を額面通り受け入れるなら、外の連中に相応の問題が生じている事を想定する他ない。しかし、それなら
それで、既に何らかの情報なり連絡なりがあって然るべきだった。いくら何でも、ここまでの不意打ちを許すとは―――

 訝しさを覚えつつも、詳細を見極めるべく目を凝らしたルーシーの足元に再び鉛球がはぜた。飛び退く彼女を追い
立てる様に3発、4発、5発。見上げた弾道の先は、4階建てマンションの外付け階段。その中央から澄んだ声が響く。


 「警告はここまで。次は額に当てます」


 その声は何の衒いもなく、迷いもなく、ただ一つの明確な事実を告げていた。即ち、

 柔沢ジュウの敵は排除する。


 手すりに身を乗り出した、小柄な人影。風になびく黒髪が陽光に照らされ、青く輝いている。その手にあるものが、
鉛玉の装填を済ませたスリングショットなどでなければ・・・その光景は一服の絵と言えたかも知れない。

 しかし彼女にとって、そんな事はどうでもいい事だった。ましてや、柔沢ジュウが危険に晒されている場面に於い
ては尚更に。

 少女の顔の上半分は長い前髪に隠され、表情を窺うことはできないが―――周囲に漂う冷たい殺気は紛れもない
本物。その鋭さは、かつてジュウの母・紅香すらも鼻白ませたお墨付きだ。眼下の様子を静かに見つめる瞳は、周囲
を警戒すると同時にルーシー・メイの首元を確実に照準している。この射で相手の動きを封じ、次弾で額を打ち抜く。
高速で放たれる重く柔らかい鉛球は、軽くて硬い鋼球に比べ、跳ね返されて損なわれる運動エネルギーのロスが少
ない。標的に接した玉自体が僅かに変形する事で、より強い衝撃を対象に齎すのだ。彼女はそこまで冷静に、確実な
結果を想定していた。手中の獲物は、その意思を完遂すべく用意された、照準器付きの“実用性”に富む代物。

 スタンガン、ピッキングツール、ロープ、ライター、ビニールテープほか各種工具。この少女は状況に応じて様々な
道具を駆使し、驚くべき能力を発揮する。そして、それら全ては只ひたすらに主を守り、その意思に副う為のもの
なのだ。

 堕花雨。そんな事ができてしまう彼女は――――――自らを柔沢ジュウの“従者”と呼ぶ。

770:2011/03/19(土) 04:39:54.18 ID:dVO2aHsK
 では、今回はこの辺りで。
771名無しさん@ピンキー:2011/03/19(土) 11:26:37.56 ID:VawY3RtS
一瞬、ここがエロパロスレだと忘れちまったよw
どいつもこいつも格好良く登場しやがって、次回が楽しみで仕方がないぞ。
772:2011/03/19(土) 18:56:10.67 ID:dVO2aHsK
>>771
ども!励みになります^^

しかし、そう・・・ここって基本、エロパロスレだったw
えちいのは、どういう訳か全く思いつかないんだよなあ。

あと次回の投下は明日か、遅ければ明後日くらいになると思います。まだまだ
後半に続きますので、何卒宜しくお付き合い下さい。
773BOLT:2011/03/19(土) 22:16:58.04 ID:4o4y6MN4
一通り読んでわかった。
これは久々の大作だわ。

こんな面白い作品の後に
おれ続きかけねえよww
どうしてくれんだww
774:2011/03/20(日) 05:37:12.22 ID:1KQTbhfT
>>773
おお、嬉しい。頑張ります!
一緒にスレをSSで埋め尽くしてやりましょう。
775:2011/03/20(日) 16:40:05.32 ID:1KQTbhfT
本当は一番最初に述べておくべきところを失念していましたが、このSSは設定ほか
全ての事柄を、小説版の片山作品に準拠して書かれています。ご承知おきください。

では、続きを投下。
776:2011/03/20(日) 16:41:39.27 ID:1KQTbhfT

 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.3-1


 ジュウは雨の姿を認めると、溜息をついた。今すぐ雪姫や円堂、そしてこの雨に対しても「逃げろ」と言い「関って
来るな」と怒鳴るべきだった。事実、つい先程自分に加担した伊吹は大怪我を負ってしまったのだ。そんな事が
もし彼女等の身に起こりでもしたら自分は一生、己自身を許せなくなってしまうだろう。

 だが実際に口を突いて出た言葉は、そういう類のものとは違っていた。声の調子も、半ば呆れた様なもの。

 「お前、よく俺の居場所が分ったな」

 この何とも言い難い心地のせいだろうか、つい訊いてしまう。同時に、答は殆ど分り切っていると思った―――
こいつは自分を驚かせた後、決まってこう言うのだから。

 「前世の絆です」


 そうかよ。我知らず、ジュウは小さな苦笑を漏らす。そんじゃまあ、取敢えず伊吹は雪姫と円堂に任せて、もう
ひと暴れいってみようか。

 ―――と、その前に。

 「おい」

 「はい。ジュウ様」

 「もっと体を隠せ。こいつらに飛び道具があったらどうすんだよ」

 「しかし、ジュウ様。それでは射角範囲が・・・」


 「命令だ」


 関るなら、この条件は絶対―――その強い意思を感じたのか、雨はジュウの言葉に大人しく従い、可能な範囲一杯
まで体を隠した。勿論、ルーシーへの照準は外さないままだったが。
777:2011/03/20(日) 16:42:43.87 ID:1KQTbhfT

 ジュウはホッと息をつく。自分の言葉の一体何が、彼の護衛に関して頑なな雨に通じたのか分らないが・・・取敢えず
安堵。この場に光が居れば確実に「鈍感野郎!」とでも罵られていただろう場面、周囲を警戒するジュウの思考が、
ふと変な方を向く。

 それにしても、こう幾度もいいタイミングで「前世の絆」を云々され続けていると―――何時か自分も乗せられて
しまうんじゃないか?

 緊迫した状況にも関らずジュウは一瞬そんな想像に捕らわれ、慌ててかぶりを振った。いやいやいや。あいつの言う
前世とやらは紀元前にあったとかいう、剣と“魔法”の世界だぞ? 剣はともかく魔法はない。いや、だからって剣なら
アリと言う訳じゃないが・・・


 突然、重い衝撃音が響いた。その鋭い轟きが、妙な感じになりかかったジュウの精神を争いの場に引き戻す。


 眇められたジュウの視線の先では、黒人の巨漢が膝を立てた姿勢で地面に拳を突き立てていた。狂的な怒りと、
受けたダメージによって酷く歪んだ顔。幾分当りが浅かったのか僅かに開いた右目で周囲を睨め付け、ギリギリと
歯を軋ませる様子は、感情のブレーキが壊れた人間の憎悪そのもの。正視し難い醜悪さだ。

 やがて憎悪の塊はジュウの姿を捉えると声にならない雄叫びを上げて立ち上がり、猛突進を開始した。瞬時に
危険を察した雨のスリングが高い精度で“鉄腕”の額を捉えたが、鉛玉は埋め込まれた鋼板に弾かれ、突進を止める
事ができない。


 雨がスリングに次弾をつがえ 残る悪宇の男達が動き 雪姫が走り ジュウが身構えた


 その刹那―――様々な想定外の出来事が、同時に発生する。


 突如、ジュウの脇を後方から擦過した影が怪物の突進と激突。次いで悪宇の男達に銃弾と“苦内”の雨が降り注ぐ。
銃撃は主に制止に主眼を置いた威嚇射撃だったが、伊吹と円に近い位置まで達した一部の男達は、苦内にその四肢
を貫かれ、苦悶の叫びをあげた。
778:2011/03/20(日) 16:43:48.53 ID:1KQTbhfT


 一斉に舞い上がる砂埃。各人各様に生じる騒乱。その諸々が幾分薄まった頃、事態の中央に静止する小山の様な
巨漢の影が浮かび上がった。

 否、正確にはもう一人。

 “鉄腕”を受け止めた影の正体は、驚いた事にジュウより背の低い青年。彼はそのまま力勝負に持ち込む様に、
ガッシリと巨漢と両手を組み合っている。

 それは実に奇妙な光景だった。

 勢いに乗った2メートル超の熊の様な巨漢と、中背でどちらかと言えば細身の青年がぶつかったのだ。普通に考え
れば、体重にアドバンテージがある方が有利に決まっている。その両者の重量差は、傍目にも明らかに倍以上。

 それに相当な衝撃が生じたのだろう。衝突の瞬間に生じた音は―――人体同士がぶつかった音としては―――耳
を覆いたくなる様な物凄い音だった。しかも“鉄腕”はその名が示す通り、両腕を金属製の特殊な義手で武装した、一種
の戦闘サイボーグ。これに生身の人体がぶつかるという事は、先のジュウや伊吹が受けた打撃と同じく、ムクの鋼材
に体当たりする様なものだ。到底、ただで済む筈がなかった。

 だが現実には巨漢が動きを止められ、両者は今も組み合ったまま静止している。それも、ただの静止ではない。
背景にある凄まじい力の鬩ぎ合いを示す様に、細かく震えて軋む、二人の肉体の上に成り立つ静止状態だ。
779:2011/03/20(日) 16:44:35.93 ID:1KQTbhfT


 そのまま、緩慢な数秒間が過ぎる。岩の様な筋肉を強張らせ、驚愕に目を剥く“鉄腕”が苦しげな呻き声を漏らした。

 「・・・貴、様・・・崩月の・・・ッ」

 青年の声が、軽い感じで応じる。緊迫した状況にそぐわない、涼やかな声。

 「へえ、アロハは止めたんだ」

 “鉄腕”は動揺の為か、早くも額に脂汗を浮かべていた。その顔を軽く見上げ、真九朗は続けた。

 「でも今着てるのも、あんまり高い服じゃなさそうだな。薄給で肉体労働ってのもキツいよね“鉄腕”?」

 この相手を見て正気に戻ったらしい“鉄腕”は、苦しげな息の下で切れ切れに言葉を返す。

 「・・・戦闘屋が・・・ッ、仕事中にブランド物なんて着れるか!」

 「成程」

 納得したのか、頷く真九朗。そして益々酷くなる震えと軋み。その最中で“鉄腕”は全身にびっしりと粘る汗を
浮かべ、歯を食いしばって耐えている。一方の真九朗は、この状態をさして苦にしていない様子。

 「ところで、悪いんだけど今日は旧交を温めてる暇がなくてさ」

 「・・・ッ?!」

 「そんな訳だから、名乗りも省略って事で勘弁な!」

 真九朗は両手を組んだまま羽のように宙に浮かび上がり、“鉄腕”の顎を目掛けて、全身を引き伸ばす強烈な蹴り
を放った。細身の体から発したものとは思えない、凄まじい剛力―――だが崩月流を戦鬼の技たらしめる角は、未だ
出現していない。

 それでも余程の衝撃だったのだろう。壁の様な“鉄腕”の巨体が激しく仰け反った。衝撃をまともに喰らった顎は
口内を圧迫し、鮮血と共に数本の歯が飛び散る。真九朗は戦闘屋の手から離れて地面に降り立つと、瞬間移動を思わ
せる急加速で再度肉薄。巨漢の胸部と頭部周辺で、乾いた音が響き渡った。

 全ては一瞬の出来事。悪宇商会所属の戦闘屋“鉄腕”ダニエル・ブランチャードは、立ったまま白目を剥くと、吊糸
が切れた人形の様に崩折れた。

780:2011/03/20(日) 16:45:55.55 ID:1KQTbhfT

 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.3-2


 そこからの展開は急速だった。真九朗が懐から取り出した小型通信機に小声で何事か告げると、救急隊員が大挙
して押し寄せ、ルーシーの手下達との静かな乱闘を開始する。各街路に配置されていた十数名の悪宇の人員も、押
しやられる形で集まってきていたが、とても抗し切れない。数で圧倒された悪宇商会側は、暴力や薬物で昏倒させ
られた者から順に次々とストレッチャーに拘束され、隊員達に運び去られていった。


 今や無事な者はルーシー周辺の5名のみ。他は散発的に続く周囲の争いで手一杯の状態だ。それも長くは持ちそう
にない。真九朗はルーシーの方に歩み寄り、飛び掛ってきた一名を蹴りの一閃で黙らせる。その傍らには何時の間
にか、一人の女性が立っていた。

 後頭で束ねた髪に細い目。服装は霞がかかった様なダークグレーで整えられている。この女性は全体に渡って印象
が希薄だった。仮に街中で見かけても次の瞬間には忘れている様な、淡い佇まい。だが、そんな彼女の両手には使い
込まれた苦内が握られている。

 犬塚弥生―――柔沢紅香を主に戴く、彼女の腹心にして現代の忍だった。


 真九朗が残る内の二名を、後の二名を弥生が黙らせる。何れも瞬時に片がついた。抵抗を諦めたか、憮然と押し
黙るルーシーの傍らに立った真九朗は、未だ周辺で乱闘をやめようとしない悪宇商会の残党に穏やかな声で呼びかけた。


 「あー動かないで。そのまま、そのまま。あなた方の見張りはご覧の通りで、現在、周囲はこちらの人間が張ってる。
そこの彼女達は柔沢君の友人だって言うから、特別にお通ししたけどね。」

 傍らで黙っていた弥生が、真九朗にだけ聞こえる声で呟いた。

 「まだ高校生の『円堂』に見返りを要求していた様ですが」

 真九朗は聞こえない振り。

 「警察には“事前の”撮影許可を取ってある。だから、ここでは何があっても問題ないんだ。例えば」

 一呼吸置いて続けた。

 「あなた方が“物凄く酷い目に遭う様なシーン”でもね」

781:2011/03/20(日) 16:47:04.63 ID:1KQTbhfT


 どうにも・・・この警告は迫力を欠いたか、今一つ聞いてもらえなかった様で、乱闘が止まない。やっぱり総倒し
にするしかないらしい。ああ、頼むよ本当にもう。誰も死ななきゃいいのだが。

 大体、こんな風に力を背景に無理矢理押し切るなんて、まるで悪役になった気分だ。交渉もへったくれもあった
もんじゃない。弥生さんはフォローしてくれないし。

 深く被った狡猾面の仮面の下で、真九朗は誰にともなくボヤいた。まあ、どう考えても今回の悪役はジュウの誘拐
を目論んだ悪宇商会なのだし、弥生が一切口を出さない事も、状況全体を自分が担っている為と言えなくもないのだが。

 やっぱり紅香と自分では根元から違う気がする。どういう訳だか同じ様な場面でも、あの女帝がやるとスカッと
決まってしまうのだから―――全く世の中は不公平だ。自分には到底、あの真似はできない。

 真九朗は心中で溜息をついた。

 まあ、とはいえ・・・始めた案件は、きっちり背負って最後までやり通さねば。圧倒的優位からでも、圧倒的不利
からでもだ。最も根本的な、この原則だけは揉め事処理屋を営む者の矜持。それを思えば多少嫌な奴っぽい振る舞い
も、この際仕方あるまい。大体、他にやり様もないのだし。

 真九朗は瞬時に気を取り直すと、まだしも話が通じそうな顔見知りに声をかけた。


 「どうも。お久し振りです、ルーシーさん」

782:2011/03/20(日) 16:49:28.12 ID:1KQTbhfT

 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.4-1


 「伊吹ッ!!」


 ジュウは円に体を預ける伊吹の傍に駆け寄った。膝をついて苦しい息を抑えつけ、必死に呼びかける。勢い込む
ジュウを見、朦朧としている伊吹の代わりに円が応えた。

 「落ち着きなさい、柔沢君。あなたが焦ったところで仕方がないわ」

 「そうか・・・いや、だが、そう、いや救急車を・・・ッ」

 慌てて尻ポケットの携帯に手をやったが強張った指は殆ど動かず、中々取り出す事が出来ない。挙句、散々四苦
八苦して取り出したそれは―――先の乱闘で男達が放った鉄棒の一撃からジュウの身を守った代償に―――破壊され
ていた。傍らの雪姫が視線の先で何か見出し、宥める様にジュウの肩に手を置く。

 「その必要は無いみたいだぞ」

 彼女が顎で示す先にジュウが視線を向けると、救急救命士と思しき男達が器具を抱えて、こちらに向かって来る
ところだった。

 安堵しかけて、瞬時に思い直す。つい先程まで周囲では同じ格好をした人間達が乱闘を繰り広げ、あの誘拐犯ども
を叩きのめしていたのだ。危急の状況下では味方にも見えたが、後者も怪しげな連中である事に違いはない。再び
警戒を強めたジュウは彼等を睨みつけると立ち上がった。その様子は、まるきり手負いの獣の様。その腕を円が掴
んで止める。

 「大丈夫よ。彼等に任せた方が、救急車を呼ぶより何倍も良い待遇が受けられるわ」

 「・・・周りの様を見て、何でそんな事が言えるんだ?」

 ジュウは救命士姿の男達に視線を向けたまま、警戒を解かない声で訊き返した。彼等はジュウの剣呑な視線を受け、
戸惑ったように立ち止まる。円は溜息を付くと一転、厳しい声を発した。

 「伊吹を巻き込んだ事に責任を感じるなら!邪魔をしないで彼等に仕事をさせなさい、柔沢君!!」

 痛いところを容赦なく抉られ、思わず強張るジュウ。彼女の声を聞き取った救命士達は、ジュウに警戒の視線を
向けつつ伊吹に駆け寄った。次いで、てきぱきと作業を始める様子を見守りながら、円堂円は説明を再開する。

 「さっき、あなたを助けた人ね。ちょっとした有名人なのよ」

 「九鳳院で―――と言ってもあなたは知らないわね。とにかく、伊吹は国内最高の治療を受けられる。そういう
手筈になってるの」

 押し黙るジュウを見て、雪姫がフォローを入れた。

 「伊吹はウチの高校の空手部員だぞ、柔沢。円がおかしな連中に任せる訳がない」

 説得力のある説明だった。確かに、円の様子からは落ち着いた気配しか感じない。
783:2011/03/20(日) 16:50:22.84 ID:1KQTbhfT

 ここで、やっとジュウは警戒を解いた―――解く事が、できた。緊張が解かれた肉体から、急速に力が抜けていく。

 一度緩んでしまうと後はもうガタガタだった。足が崩れ、がっくりと肩が下がる。とても立っては居られず、膝を
ついて倒れかけるジュウを雪姫が慌てて支えた。ジュウの意識とは別に強張った肺は焼け付く様な荒い息を吐き出し、
全身の筋肉は痺れて震え、噴き出す汗が滝の様に流れ落ちる。

 実際、ジュウの体の状態は酷いものだった。至る所に打撲傷や裂傷、擦過傷。また、夢中で争う最中で気付かな
かったが、肋骨の一部も骨折していた。中でも特にダメージが目立つのは両手で、強張ったまま開かない拳から血
が溢れ出している。内部でかなり深い傷を負っているのは明らかだった。

 その様を見て雪姫が黙り込み、円が顔をしかめる。それまでのジュウがあまりに平然と動いていた為、彼の怪我
の程度を見誤っていたのだ。

 「あなたこそ・・・ズダボロじゃない」

 円は伊吹の処置をしている救命士に向かって、何事か訊ねた。ジュウの手当ての段取りをつける積りらしい。

 無言でジュウの手を取る雪姫。握った右手の肉には時計の鎖がめり込み、左の掌には無数の尖ったコンクリート
片が埋もれていた。雪姫は黙ったまま、一本づつ指を解いていく。壊れ物に触るように慎重で、優しい手つき。
その暖かい手触りにジュウは安堵した。周囲に居るのは皆味方で、もう襲われる事もなければ襲う必要もないのだ。

 ただ当の雪姫は手つきに反して、不自然なまでの無表情。その顔には抑え難い怒りの色が浮かんでいた。これは
ナイフを手にする彼女には、とても珍しい事だ。何時もと異なる雪姫の反応に気付き、ジュウは落ち着かなくなった。
どこか宥める様な声で言う。

 「こんな怪我なんざ大した事ねえよ―――それより、済まねえ。またお前等を巻き込んじまって」

 巻き込んだという事実関係は本当で、深い感謝と謝罪の気持ちに偽りはないが、この時のジュウの言葉は空回りした
様だった。押し黙ったまま作業を続ける雪姫。手配を終えた円も、今はじっと様子を見守るだけで一言も発さない。

 何時果てるともつかない沈黙に耐えかね、再び何事か話そうとしたジュウの耳に微かな声が届いたのは、そんな
時だった。

 「・・・何か、言ったか?」

 よく聞き取れず、ジュウは訊き返したが、応じる声はない。その言葉は円の方には届いたものの、意味までは
伝わらなかった。ふと手を止めた雪姫が、小さく漏らした呟き。


 「―――痛い」


 ジュウの方にも救命士が到着し、応急処置を始めるまで雪姫はジュウの手を離そうとしなかった。

784:2011/03/20(日) 16:51:33.27 ID:1KQTbhfT

 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.4-2


 周囲の状況は、かなり落ち着きを取り戻していた。事後処理の緊張下で怒鳴りあう声や、慌しく作業に従事する
人々の騒音は其処此処で起こっているが、害意の篭った騒乱とは異なる気配。一定の深刻さが感じられる非常時な
がら、危機下とは異なる空気だった。

 伊吹が慎重にストレッチャーに乗せられる様子を見、ジュウは付き添いに行こうと雪姫の肩を借りて立ち上がる。

 つい先程まで、彼自身もストレッチャーで搬送されるべきだと雪姫と円が主張していたのだが、現場入りした
救急車のサイズから自分が乗せられてしまっては伊吹と同乗できなくなる為、ジュウはこれを拒否。仕方なく雪姫が
肩を貸したものの、円は「好きにしなさい」と言ったきり、伊吹の方に行ってしまった。どうやら即座に彼を運び去り、
ジュウを置いて行く事で安静に搬送させようという事らしい。緩慢に、だが可能な限り急いで歩み始めるジュウ。

 背中に耳慣れた声がかけられたのは、その直後だった。

 「ジュウ様!」

 ジュウと雪姫が振り返る。先を行く円は少し離れた場所から、駆け寄ってくる雨とジュウ達を見遣った。

 「申し訳ありません。辺りを封鎖している者達が聞き分けてくれず、遅くなってしまいました」

 雪姫や円と違い、一人狙撃位置に居た雨は現場入りが難しかったらしい。よく見ると髪や服装が幾分乱れ、息が
弾んでいる。唇を噛締める様子から雨が相当に怒り、また落ち込んで居る事が見て取れた。これはこれで、とても
珍しい佇まいだ。登場した時は冷静な様に見えた彼女だが、内心は気が気でなかったに違いない。

 ジュウはろくに動かない手を持ち上げ、その甲を雨の頭にぽんと乗せた。血の付いていない箇所で、優しく触れる。

 「さっきは本当に助かった。有難うな」

 雨は一瞬頬を染めて俯いたが、再び目を上げると怪我だらけのジュウを気遣わしげに見つめた。徐々に顔から血の
気が引いてゆく。どうやら見かけより酷い怪我が、早々にバレてしまったらしい。ジュウは頭を掻く事も出来ず、
立っているのがやっとの状態だった。

 雨は急場の止血が施されたジュウの手をそっと取ると、それを俯く額に当てた。震えだす肩。前髪に隠れた瞳は
窺えないが、ジュウは彼女の呟きから激しい感情の揺れを感じた。

 「ジュウ様・・・」

 またやってしまった。今回は自分で招いた事ではないとはいえ、それで雨にかける心配が軽減される訳でもない。
くそっ、ババアめ・・・ここ暫く音信不通になったと思ったら次はこれか?今度絶対、事情を吐かせてやる。

 その傍らに立つ雪姫が、二人の様子を複雑な表情で見つめている事に、この時のジュウは気付けなかった。

785:2011/03/20(日) 16:52:27.15 ID:1KQTbhfT


 円は伊吹に付き添って先行している為、立ち止まってしまったジュウ達との間には距離が開きつつある。彼女は
歩きながら、ストレッチャーに臥せた功労者に向って呟いた。

 「伊吹。礼を言わせてもうらうわ―――ありがとう」


 もしジュウが連れ去られたり、殺されでもしていたら、あの友人達はどうなっていただろう。二人との付き合い
が長い円だが、それだけに彼女等のポテンシャルが最大限に発揮された場合の状況は、あまり考えたくないもの
だった。間違いなく彼女等には地獄が、そして相手組織にも相応の被害が生じていたに違いない。

 今回それが紙一重で防がれたのは、間違いなく伊吹のお陰だった。担架に臥して細い息を吐く、この優男は傷
つき、気を失っていたが・・・外傷自体は時間をかければ回復できそうだ。悪宇商会の戦闘屋とやりあった結果
としては、まだしも軽い方なのかも知れない。

 ただ、この様子では今年の公式戦は断念せざるを得まい。空手に打ち込むこの生真面目な男に、それは相当厳
しい事実の筈だ。否、それどころか今回の傷害事件が歪な形で公になれば、伊吹の選手人生に今以上の深刻な影
を落とす可能性もあった。だが恐らく、彼はそれを知りつつも助力せずには居られなかったのだろう。

 それにしても、あの男――――――

 「全く、ろくでもない」

 目に険を寄せ、尖った声で呟く。言わぬ事ではない。以前、光雲高校の食堂で突きつけた警告が現実のものに
なりかけたのだ。円は多大な迷惑をかけるなら雨達の前から消える様、ジュウに言い渡した際、彼が寄こした返事
を思い出す。

 『そんな事になる前に、あいつらは俺に飽きる』

 あの男は特異な内面故か、無責任に他人の好意を引き寄せる割に、その重さには殆ど頓着しない。自分など何時
でも捨ててくれ―――本心からそういう態度なのだ。

 では、周囲の人間達がそうできなければ「それは他人の勝手だから、どれほど苦しもうと気にならない」とでも
言う積りか!・・・そう言って通じる相手なら、どれ程楽な事だろう。

 まあ、どうやら今回の騒動は、災難の方から降りかかってきたものらしい。だが怪我は怪我、死は死、失踪は
失踪。周囲の者にとって、原因は起こった現象を構成する二次的要素であって、現象が齎す欠損とは関係ない。
これは無自覚が免罪符になる問題ではないのだ。大体、何だってあの男の周囲ではこうトラブルばかり起こるのか。

 これまでのところ、自分はあの男については静観を決め込む積りでいた。しかし、結局は何時も巻き込まれて
しまうのだ。まあ、あの奇妙に善良で時折魅せる人間性は、それなりに評価できるものではあるが・・・自分との
接点については未だによく分らない。彼との出会いの意味は、一体どの辺りにあるのか―――そこでふと、円は
ブロッコリー並に嫌悪する男の事で、頭を悩ませる己に気付く。

 やっぱり、ろくでもない。

786:2011/03/20(日) 16:53:13.78 ID:1KQTbhfT


 一方、ジュウはようやっと歩きだしはしたものの、依然震えたままの雨をどうやって鎮めたものか、未だに悩
んでいた。如何に平気を装うとも、彼女の目はジュウの怪我の度合いを正確に見抜いてしまっている。強がって
見せる事は、彼女の安心には繋がらないだろう。

 ジュウはどこか言い訳めいた自分の挙動を自覚しながら、軽めに切り出した。ぐらぐらと体を揺らしながらな
ので、どうにも不恰好だったが。

 「これから、凄い治療施設に行くらしい」

 「・・・九鳳院、でしょうか?」

 「よく知らんが、円堂が言うにはそうらしいな」

 ジュウは一呼吸置く。こう続ける事には、何故か度胸が必要だった。


 「お前も、ついて来てくれるか?」


 勿論、彼女の返事は言うまでもないが・・・それに留まらず、何故か雨はぴたりと固まり―――耳まで真赤に
なった。頭から湯気でも出そうな雰囲気。


 ナイフを仕舞った雪姫が、膨れっ面で口を挟んだ。

 「柔沢くんさあ。あたしにも何か言うコト、忘れてない?」

787:2011/03/20(日) 16:54:01.41 ID:1KQTbhfT
それでは、今回はこの辺りで。
788:2011/03/20(日) 18:20:40.76 ID:1KQTbhfT
先の書き込みで「設定ほか全ての事柄を、小説版の片山作品に準拠」と書きましたが、
このお話は以前投稿した「■環の告白■」の続編でもある為、一部原作にない設定が
含まれていました(--;)。ご容赦上、ご承知おき頂けると幸いです。

細々と補足して申し訳ないです。
789名無しさん@ピンキー:2011/03/20(日) 23:16:56.28 ID:7pVP89OP
ちょ、久し振りに覗きに来たら何この大作…!!
GJ&続きwktk過ぎて何言って良いか解らーん!!www
790BOLT:2011/03/21(月) 00:58:26.16 ID:HN6ksYwO
この人文書くのうまいなあ・・
おれのと違ってw

俺もこのまえの美夜のss続き書いてんだが
おれが書くと幼稚極まりない文章になっちまうww

>>788さんの名前がわからないから
あなたのこと■さんって呼びますw
続き楽しみにしてるよ!■さん!

791:2011/03/21(月) 05:25:25.90 ID:bP/+fZHv
>>789
楽しんで頂けたなら幸いです^^。
続きは、あと2回程の投下予定です。宜しくお付き合い下さい。

>>BOLTさん
>美夜SS
楽しみにしてます。このスレも、一頃みたいに沢山ssが投稿される様になったらいいですね。
>■
なんかヤバイ伏字みたいですけどw、それでお願いしますね。
792:2011/03/21(月) 15:10:18.93 ID:bP/+fZHv
 長々と続いて居りました、このお話の投下も今回を入れて残すところ、あと2回となりました。
何卒、最後まで宜しくお付き合いください。

 では、投下開始。
793:2011/03/21(月) 15:11:45.43 ID:bP/+fZHv

 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.5



 「一人で戻ったりしたら、わたしは社長に殺されちゃいますよ!!」


 大声で怒鳴るルーシーを見やり、真九朗は困ったように応えた。

 「でも、それは石を蹴飛ばしたら足を怪我したって話でしょう?そんな事言われても困ります」

 まあ、あの柔沢家の直系を石に譬えるなんてとんでもない話ですけど、と笑いを含んだ声で続ける。

 「それにもうすぐ、紅香さんの部下が沢山やって来ます。ここに残ってるのはマズいでしょう?」

 意に沿わぬ展開に、傍らに立つ弥生が口を開いた。

 「紅さん、勝手に紅香様の敵を逃がす様な真似は―――」

 真九朗は弥生の苦情に柔らかく、しかし筋の通る声で応じた。

 「僕はまだ、この件で誰かに雇われた訳じゃありませんからね」

 この状況に於いて、真九朗と弥生は僅かに立ち位置が異なる。現場を制しているのは紅香の部下ではないのだ。

 「それに、ルーシーさんにはちょっとした借りがあって・・・弥生さんもご存知ですよね?ホテル跡地の、例の
一件です」

 弥生は少し考える様に間を置いた後、微かに呆れた声で言った。

 「・・・随分、昔の話を持ち出したものですね。」

 真九朗は視線で、離れた場所に立つジュウの方を示し

 「時計の縁でもあります。今回だけっ!お願いしますよ」

 「・・・・・・」

 拝む様に両手を合わせる真九朗を軽く睨みつけ、弥生は沈黙した。
794:2011/03/21(月) 15:12:28.26 ID:bP/+fZHv

 一先ず黙って成り行きを見守っていたルーシーが、真九朗に向き直り

 「紅さん―――」

 「言っておきますが、これ以上の交渉は無理ですよルーシーさん」

 打って変わった鋭い声と目線でルーシーを押さえ付け、言い放つ真九朗。

 「俺の手札はこれ一枚きりで、他に弥生さんを説得できるネタはありません。弥生さんも、あの時の助力を
酌んで見逃してくれるだけです。今回に限り、貴方だけは五体満足で帰れる。柔沢君への狼藉を思えば破格の
お話でしょう?」

 一拍置いて、ストレッチャーに拘束されて運ばれる連中を親指で指し示し

 「勿論、彼等には色々と訊くことになりますが・・・まあ、死んだりはしないでしょう。多分ね」

 考える様に沈黙する、ルーシー。真九朗は目を眇めて救急車に搬送される伊吹とジュウ達の様子を確認し、彼女
にちらりと視線を向ける。

 「それから柔沢君と、助っ人に入った学生達の件ですが―――彼等の事は俺が預かります。今後彼等の周囲で
何か問題が起こった場合、それがどんなに些細な事だろうと貴方の仕業と判断して、然るべき対処を行います
から。くれぐれも宜しく」

 「・・・あの空手学生の両親には、怪我の原因をどう説明されるお積りですか」

 「主犯が“鉄腕”の集団傷害事件に巻き込まれたことにします。傷痕も一致しますし、問題ないでしょう・・・
おっと、彼の事は諦めてくださいね。この件の辻褄合わせが必要ですし、それに」

 “鉄腕”は実行犯としてやり過ぎた。真九朗としては庇いようが無いし、また庇う理由も無い。

 実際のところ、今回真九朗がルーシーを見逃すのは、単に過去の借りに免じての事ではなかった。むしろ裏稼業
最大手の人材派遣会社・悪宇商会内部とのコネクションを維持する事の方が理由に近い。

 しかし、それは場の優位を掌握しているとはいえ真九朗個人の都合でしかない以上、提示条件には限度がある。
本来ならルーシーは悪宇内部の情報を洗いざらい吐かされた後で、内密に処理されても文句が言える立場ではない
のだ。実際、後続する紅香の配下に捕まれば、真九朗としては庇う訳にもいかない。現時点で弥生の干渉を退けて、
ようやく定まりかけた彼女の安全はなくなるだろう。

 また、弥生が真九朗のやりようを見過ごす事にも理由があった。実は今回の件を企て、それを悪宇商会に持ち
込んだ依頼者は既に真九朗の情報網から割れていたのだ。彼等がルーシー達の実行を食い止めるのに幾分遅れた
のは、紅香が息子に施した情報面での防御・隠蔽が強固であったが為だった。
795:2011/03/21(月) 15:13:17.84 ID:bP/+fZHv


 問題の依頼者の名は、草加聖司。かつて「えぐり魔事件」の主犯だったこの男も、今は全盲となり、独力では話す
事すら出来なくなっていた。しかし、彼はジュウ達に募らせた狂的で一方的な恨みを晴らすべく、高価なハイテク
身障者器具を購入。これを駆使して何とか悪宇商会とコンタクトを取ると、多額の金を積んで柔沢ジュウの誘拐を
依頼した。

 実際、ジュウの身柄に狙いを定めた事は、彼自身や雨を破滅させるのに最適なスイートポイントではあったが・・・
全てが明らかとなった今は、逆に草加の破滅を意味していた。警察病院から逃げ出す事など今の草加には不可能だし、
海外に隠した彼の資産も既に押収済み。悪宇商会に支払われる筈だった後金も、現在は空手形だ。最早草加の今後は
自分で閉じるか、他人に閉じられるかの二通りしかない。

 それに弥生を含めた紅香の麾下組織は現在、悪宇商会と敵対状態にあり、互いに警戒し合う関係上、接触が薄い
事も今回の判断に有利に働いていた。現状では商会内部に複数のコネを持つ第三者―――真九朗に、ある程度の裁量
を認めざるを得ないのだ。

 彼が言外に滲ませた意味を吟味しながら、ルーシー・メイは冷めた視線を向けていたが―――やがて目線を外すと
投やりな調子で言い放つ。

 「あーあーはいはい!分りましたよ、紅さん」

 不機嫌な声。かつては軽く陥れられたであろう人間に、今は自分の選択肢を握られて居るのだ。面白かろう筈もない。

 「全く・・・つい何年か前までヘタれた青瓢箪だったのが、随分とまあ出世したものですね!いいですよ、仰る通り
の条件で降ります!」

 真九朗は不貞腐れるルーシーに苦笑を返しつつ、やや大げさに肩をすくめた。

 「いやぁ、ホっとしました」

 フンっと鼻を鳴らし、憤懣を隠そうともしないまま悪宇商会の女は言う。

 「交渉成立ついでに、もう一つ!お耳に入れときたいんですけどっ!」

 仰向けた人差し指をシャクトリムシの様に曲げ伸ばしし、真九朗を招く。状況的に見る限り、この女幹部に妙な
真似をする意味も余地もない。だが―――

 不審顔をする真九朗に、今度はルーシーが苦笑を返した。

 「別に変な事じゃありません。ただ―――」ちらりと弥生を見て続ける。

 「プライベートなお話ですので」

 「プライベートな話?」

 「そう、プライベートなお話」
796:2011/03/21(月) 15:14:11.64 ID:bP/+fZHv

 真九朗は配下に撤収準備を指示。周囲に視線を走らせた後、ルーシーの方に歩み寄った。

 「何なんです?」

 「ちょっとお耳を拝借」

 真九朗が顔を寄せると、背伸びをしたルーシーが耳元に唇を寄せた。囁く様に告げる。

 「・・・ご婚約おめでとうございます」

 言うが早いか耳たぶに噛みつき、ついで舌先でチロっと舐め上げて―――

 「うわぁっ!?」

 あわてて身を離す真九朗に、毒蛇は悪意にまみれた微笑を寄こす。唇と耳の間に一瞬、細い銀線が光って消えた。

 「今回の手打ちは、まあご祝儀です。分が悪いのも確かですし」

 唖然とする真九朗に背を向け、手を挙げる。

 「ただ、部下の生命は保証してもらいますよ。洗い終わったら返して下さい」


 言い捨てて地味なコートをなびかせると、そのまま振り返る事なく不吉な女―――ルーシー・メイは去って行った。
後には香水の香りだけが漂う。


 「紅さん」

 いやに冷たい声を背後からかけられて、真九朗は固まった。

 「その女癖の悪さはどうにかしないと、その内災厄を起します。いい加減になさいます様」

 振り返ると蔑むような目線とぶち当たる。弥生だった。

 「い、今のは俺のせいなんですか・・・?」

 言いながら真九朗はハンカチで耳を拭く。噛み痕に傷はなく、状況的にも何らかの仕込みである可能性は低い筈
だが、何しろ相手は悪宇商会のルーシー・メイ。悪意ある仕掛けを施している可能性も、否定はできない。九鳳院
に向かう途中で山浦医院に立ち寄って、成分分析を依頼することにする。


 真九朗は空を仰ぎ、瞼を指でマッサージした。ここ数日、徹夜仕事が続いている。それに今夜からアルゼンチン
行きで、帰国までは暫くかかってしまうだろう。温められる旧交は、温めておくにしくはなかった。
797:2011/03/21(月) 15:14:58.89 ID:bP/+fZHv

 撤収作業は着々と進行している。真九朗はそれを確認すると、弥生に告げた。

 「さてと。少し寄るところがあるんで、後は近衛に任せて引き揚げます」

 「紅香様のご子息とは、お会いにならないのですか?」

 「ええ。何となく時期じゃないと思うし―――それに、まだ紅香さんの事が途中ですからね」

 「・・・・・・」

 そこで真九朗は弥生の気持ちに気付き、付け加えた。

 「大丈夫ですよ。情報汚染と誘導は進めてますし、きっと上手くいきます。それまでは我々で、ね」

 「はい」

 二人は暫く、ジュウ達を収容した救急車両を見遣った。やがて真九朗は踵を返すと、弥生に告げる。

 「弥生さんは九鳳院まで彼と同行して下さい。俺は大丈夫ですから」

 「いえ、そういう訳には参りません」

 弥生は言下に真九朗の気遣いを却下すると、その背を追いつつ呟いた。

 「それに、私も時期ではないと思いますので」

 真九朗は苦笑。

 「真面目ですよね、弥生さんは。適当に息抜きしないと持ちませんよ?」

 「あなたに言われたくありません」


 現場から二つの影が掻き消えた。


798:2011/03/21(月) 15:17:18.08 ID:bP/+fZHv
 では、今回はここまで。
799BOLT:2011/03/21(月) 16:41:01.27 ID:HN6ksYwO
相変わらず文章のクオリティすげえw
真九朗も昔に比べて仕事ぶりが
プロフェッショナルになったな。

■さんのオリジナル小説とかがあったら
読んでみたいわ
800:2011/03/21(月) 21:31:55.98 ID:bP/+fZHv
どもです^^。

>オリジナル小説
小説っぽいもの(と言ってもSS、かつ二次ものですが)は、先の「■環の告白■」が初めてでした。
SS保管庫の光さんシリーズを読んで、ちょっと挑戦してみようと思って。

ところで、今のお話も大分長くなってしまって居るのですが・・・まだ読んでもらえているのか、ちょっと
心配だったり(^^;)。次回分は途中でうまく切る箇所が無かった為、ちょっと長いです。泣いても笑っても
今話最後の投下という事で、御寛恕頂ければ幸いです。
801:2011/03/22(火) 04:15:50.73 ID:EqVHk3DL
それでは、投下開始。
802:2011/03/22(火) 04:16:37.15 ID:EqVHk3DL

 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.6-1



 一週間後―――

 伊吹は個室の窓際で、外の景色を眺めていた。

 ここは彼の自宅から車で40分程度の距離にある、総合病院だ。


 九鳳院の救急医療施設から転院後の数日間は、慌しかった。

 どうやら競技空手の有望選手である伊吹入院の報が、学校側から洩れてしまったらしく、連日マスコミが押し
かけては病院関係者や家族、空手部の後輩達が追い帰すという状態が繰り返された。報道関係者をシャットアウト
した後も、過去のコネに縋ってネチネチと話を聞きだそうとする者や、病院関係者を装った服装で隠し持った機材
を持ち込む人間すら出る始末。

 ただこうした状況は、両親がガードマンを雇い入れる事を真剣に検討しはじめた辺りで、ピタリと止んだ。

 病院関係者は胸を撫で下ろし、両親は訝しんでいたが、伊吹自身はその不自然な成り行きを黙って受け入れた。
十中八九、自分達を助けた勢力が手を回した結果に違いない。

 そして恐らく、これは自分に事件前の日常に戻ることを促している、という事でもあるのだろう。取敢えず周囲
が静かになったのは良いが、やはり何とも言えない心地は拭えなかった。

 それにしても。今回の事件に、ここまでの力が振るわれる背景があるのなら・・・柔沢の置かれた立場は、思った以上
に厄介なものなのかも知れない。伊吹とジュウの間には考えて何かを察せられる程の付き合いはないが、しかし、
一旦この違和感に触れてしまうと何も考えない訳にもいかなかった。

 柔沢ジュウ―――あいつは一体、どういう人間なのだろう。


 伊吹は思考の狭間でふと芳香に引かれ、傍らに置かれた林檎に視線を移す。それは自分のよく知る女生徒が差し
入れてくれた、見舞いの品だった。
803:2011/03/22(火) 04:18:01.98 ID:EqVHk3DL

 今日も、慌しく駆け込んできた彼女の瞳。それは最後に見た時の悲しみと理解の淡い光ではなく、真夏の太陽の
様な輝きを放っていた。真直ぐで力強い、自分がよく知る堕花光の本来の色彩。

 もっとも光の方は一週間前に伊吹が大怪我を負ったと聞いて、それどころではなかった。他人を巻き込み、自分
もまた大怪我を負ったジュウをありとあらゆる手段で攻め立てながら、伊吹の面会謝絶が解かれる日を待った彼女
は、その報を受けるや、取るも取敢えず九鳳院の病室に乗り込んだのだった。

 その日以来、光は転院後も足繁く見舞いに来る。そして伊吹の回復の様子を見るついでに、何くれとなく身の回り
の世話をしてくれるのだ。伊吹が謝辞しても、にっこりと微笑むだけ。その様子は、まるで伊吹の負傷に責任を感じ
ているかの様でもあった。

 しかし、ややもすると陰気になりがちな、消毒薬や患者達の体臭が漂う病院内。彼女が居ると、ただそれだけで
部屋の空気が明るく感じられた。不思議な子だ、と思う。


 暖かさと明朗さと情熱に満ちた光の視線。それは伊吹の目に眩く映る。かつては、その大きな瞳を通して集光
され、自分に注がれてきた・・・そして他ならぬ自分自身が、粗略に扱ってしまった輝き。

 今なら分る。あの時の自分はどうしようもなく―――未熟だった。

 正しく見詰めて居れば、見抜けた筈だったのだ。彼女が“顔見知りに過ぎない他人でも、災いの渦中にある者を
捨て身で助けようとできる人間だ”という事を。そして本当の穢れとも言うべき思惑が、自分達の身内に巣食って
いた事を。

 空手部で起こった一連の事件が終わった後。その後の調べで事態の元凶が鏑木だったことが判明した。その事実
が明るみに出た後でも、鏑木は光に罵声を浴びせた部員達の中で只一人、関係者への謝罪を拒絶。責任の履行を
条件に行った、伊吹との組手で叩きのめされた彼は、それでも尚謝罪する事を拒否し続けた。

 部から飛び出す形で去る際、事の理由を問われたかつての主将は、腫上った顔に醜悪なせせら笑いを浮かべて、
こう吐き出した。

 「お前はうぜえんだよ、伊吹。そのバカ面が間抜けなザマァ晒しゃ、面白ぇと思ってよ」

 あの写真は、鏑木が付き合っている広瀬という女子から仕入れた物だった。また、手紙の件が鏑木の仕込みだった
事を、数人の部員が知っていた事も分った。事が明るみに出たのは、その内一人の告白があったからでもある。
彼等にすれば勉強も出来て家柄も良く、空手の実力にも秀でた伊吹の存在は、酷く目障りに映ったらしい。そんな
連中にとって自分の晒した醜態は、ある意味で胸がすくような光景だったそうだ。

 それだけなら、いい。良しとできる。実際のところ、伊吹が多方面に才能を発揮しだした頃から、その類の話は
珍しくもなかった。光の姉、堕花雨といったか、彼女の説明にあった「幸せ潰し」の件を聞いた時、普通なら
突拍子もない話を割にあっさりと納得できたのは、他ならぬ伊吹自身にも心当りがあったからだ。
804:2011/03/22(火) 04:18:49.30 ID:EqVHk3DL

 だが、それらの一切に光は関係ない。勿論、柔沢も。そんな彼等に、自分は何をした。何をしてしまったのか。

 出自の怪しい話を頭から信じ込み、光から事情を聞こうともせず、件の写真も捨てたきりに放置して部員に
晒されるのを止めなかった。

 道場に現れ、事情を話そうとする柔沢に殴りかかった鏑木を本気で止める事もしなかった。今にして思えば、
あの時の鏑木は柔沢の説明を邪魔していたのだ。

 光がどんな目に遭わされたかを聞いて激怒した柔沢を叩き、部員達の殴るに任せた。そして奴の話を聞くことも、
関わる事も拒絶しながら「話の証明をしてみせろ」と一方的な条件を突き付け、それに失敗した柔沢が仕掛けた
タイマン勝負では抵抗しない人間を殴り、蹴った。


 その後で事情を理解した時の感覚は、床が抜けた様な墜落感。

 光の姉に頼んで彼女を呼び出してもらい、取るも取敢えず謝罪したが―――話の途中で向かった柔沢のもとから
戻るなり、光は開口一番

 「事情はどうあれ、無抵抗の素人をあんなになるまで殴るなんて・・・伊吹先輩、一体どういう積りですかっ!!」

 これで全国空手道大会の優勝者!聞いて呆れる、チンピラ以下の無様さだ。怒る彼女の正論はどこまでも正しく、
伊吹は語る言葉を持てなかった。そんな自分に対しても光は撥ね付ける事はせず、辛抱強く最後まで話を続けてくれた。

 またその際、彼女自身に降り懸かった事実上のリンチについては、触れられる事すら無かった。結局、伊吹の方
から強引に話を持ち出し、部内で話し合って適切に始末を付ける旨を伝えたが「誤解が解けたなら、それはもういいです」
と言われる始末。

 彼女も、そして柔沢も彼等自身の事では怒らなかった。怒るのは、他人の身に起きた理不尽に対してだけ。その
潔さに比べて、彼等を汚れた連中の様に扱った自分は―――この俺は、どうだったというのか。

 取り返しのつかない失態をしでかした己自身を嫌悪し、砂を食む様な苦悶の日々を過ごしたが・・・起こった事実を
無かった事には出来ない。当然だ。

 そして今だからこそ分る。自分との間にそんな事があっても、光は伊吹が理不尽な災いに見舞われていたなら、
やはり何とかして助けようとしてくれるのだろう。場合によっては、それこそ捨て身ででも。

 だが、その優しさは今や博愛に類するもの。とても暖かいけれど、かつて寄せられた熱い想いとは異なる。そして
彼女自身は気付いていないが、その気持ちは恐らく別の男に対して開きつつあるのだ。
805:2011/03/22(火) 04:19:40.44 ID:EqVHk3DL


 淡く、苦笑を漏らす。

 今になって自覚する、自分にも芽吹きかけていた燠火の様な想い。それは対象を失ってから、小さな炎になった。
ちりちりと心臓を焼く、慙愧の炎。未練や恋心などではない。既に、そういうものではないのだ。

 今回の件で自分がジュウに加担したのは、言ってしまえば、その痛みに耐えかねての事だった。

 『こっちにはこっちの都合がある』

 あれは嘘偽りの無い、己の本心。光の優しさや、柔沢の奇妙な心意気とは違う。結局、自分は―――


 「失礼します」


 かけられた声で、伊吹は沈んだ思考から我に返った。振り向くと、何時の間にか開かれていた個室の入り口に、
小柄な人影が佇んでいる。

 顔の上半分を覆う長い前髪に、学校指定のセーラー服。この独特のスタイルは、見間違え様もない。光の姉
―――堕花雨だ。

 彼女は伊吹の驚いた様子に気付くと、頭を下げた。

 「申し訳ありません。ノックはしたのですが」

 伊吹は気にしていない、という意思表示に軽く手を振ると、さりげなく雨の背後を見遣った。奴の、柔沢の影は
ない様だ。実は伊吹は前にジュウが現れた時、もう見舞いには来ない様に告げていた。


 『俺が勝手にやった事だ』

 『それに、むさ苦しい面を見せられていたら怪我の治りが悪くなる。容態を気遣うなら、もう来るな』


 自身の怪我を押して見舞いに訪れた人間に対し、何とも悪し様に言い放ったものだが、今回のこの件では、奴に
妙な気遣いをされたくなかった。きちんとした形で出会い直す、その日まで。自分と柔沢は今まで通り、無縁の
人間であるべきなのだ。我ながら持て余す性分ではあるが、仕切り直すなら、きちんと仕切り直したい。


 「光ちゃんなら、1時間ほど前に帰りましたよ。それとも」

 苦笑と溜息を交えて、言う。

 「・・・柔沢に言われて、来てくれたのかな?」

 雨は小さく首をかしげると、伊吹の疑念にはっきりと応じた。

 「いえ。ジュウ様は近日中に、また自らお運びになられます。先日、こちらを辞した折に『勝手ばかり言うな
 こっちにはこっちの都合がある』と仰せでした」


 伊吹は思わず噴き出してしまった。痛い、痛い! あいつは、全く―――俺の怪我を酷くする積りか!

 ちょっと笑い過ぎてむせる見舞いの相手を、雨は静かに眺めていた。
806:2011/03/22(火) 04:20:20.07 ID:EqVHk3DL


 伊吹が落ち着くのを見計らって、彼女は手土産を差し出した。それは大量の漫画本。今や古典とも言える、世紀末
武闘アクションの名作。

 「入院中は退屈かと思い、一応、全巻持参しました。個人的には第一部、長兄編の完結までがお勧めです」

 受け取った本の表紙では、独特の色使いで描かれた主人公が炎の様なオーラを身に纏い、冷たい視線をこちらに
向けている。このお洒落さとは方向性が異なる、黒々とした表紙の本を平然と差し出してくる光の姉は―――やはり
変わった娘の様だ。

 実のところ、真面目な伊吹は学校や予備校の授業に出来る限り遅れない様、毎日無理が祟らない辺りまで勉強
している為、それほど暇という訳ではない。ただ漫画の類は彼の家では強固に規制されている対象物で、普段は
興味があっても手が出せない品だった。伊吹はずっと以前、家庭内のそんな事情を光に漏らした事がある。

 雨は恐らく、それを妹から聞いて気を回してくれたのだろう。確かに入院中の息子に贈られた見舞いの品なら、
あの厳格な両親と言えども無下にはできまい。それに、どうせ部活に費やす分の時間が浮いているのだ。伊吹は
苦笑を噛み殺すと、雨に礼を言った。

 「有難う。実はこれ、前から読みたかったんだよ」


 見舞いの挨拶の後で、雨は伊吹の容態を確認する質問を幾つか投げかけ、伊吹が正確な答を返すと納得した様
に頷いた。まるで大病院に患者を取られた、かかりつけの医者の様な態度だ。伊吹はまた少し、脇腹が痛くなった。
ジュウと雨の奇妙な関係を初めて目の当たりにした時は流石に戸惑ったが・・・成程、こうしてみると似合いの者
同士にも思える。


 一通りの会話を終えると、雨は姿勢を改めた。伊吹も笑みを消して、彼女の言葉を待つ。どうやらここから、
本題に入るらしい。

 「実は今日、こちらに一人でお邪魔させて頂いたのは、改めて個人的にお礼を申し上げる為と―――」

 「以前のお見舞いでは、訊けなかったお話があるからなのです」

807:2011/03/22(火) 04:21:53.11 ID:EqVHk3DL

 ■ルーシー・ヴァイパー■ No.6-2


 雨から強く請われ、伊吹は自分の知る事件の状況を語った。興味本位の連中やマスコミなどには到底話せないが、
雨の場合は事情が違う。それくらいの事は、彼にも分っていた。

 「―――柔沢は頼もしかったが・・・正直、危険だとも思った」

 「あの時のあいつは、学校の道場の時とはまるで違っていたよ。倒れた男の頭を蹴り上げていたが、あの様子
では相手が死んでも不思議じゃなかった」

 伊吹は起こった事柄を正確に伝える様努めると同時に、その時自分が感じた事も包み隠さず話した。雨が知り
たい事は、恐らく自分の知る全て。忌憚無く話す方が、彼女の望みに適うと思ったのだ。

 20分程も話したろうか。あまり饒舌でない自分が、ここまでスムーズに一つの事柄について話した事を自覚し、
伊吹は不思議に思った。どうやら聞き手としての堕花雨は、非常に優秀な人材の様だ。知る限りの事を粗方伝え
終えた伊吹は、話を締めくくる。

 「俺が知ってるのはそのくらいまでだね。黒人にやられた後の事は、分らない」

 話が一段落し、沈黙が降りた。


 遠くで、風が樹々を撫でる音がする。それに混じって時折聞こえる、鳥の声。特徴的なこの鳴き声は、シジュウカラ
だろうか。肉体に直接刻み込まれた陰惨な事件とは対照的な音と風景が、窓外に広がっている。


 ふと、雨が言葉を漏らした。

 「ジュウ様は―――ご自分の為だけなら、その様な振る舞いはなさいません」

 言い置いて立ち上がると、彼女は持参した花を生ける作業を始めた。室内の洗面所で花瓶に水を汲み、束ねられた
花の包みを剥がす。伊吹は、やや躊躇いを覚えながらも、その背中に問いかけた。

 「それは、どういう意味?」

 「貴方の介入がなければ、ジュウ様はかなりの確率で誘拐されていただろう、という意味です」

 そう聞いても、ジュウとさして親しくない伊吹には分らない。振り返り、その様子を見て取った雨は、作業を続け
ながら静かに自論を開帳した。

 「ジュウ様は本当に危険な敵対者が相手でも、その影響がご自身で収まる範囲である限り、とことんまで冷酷には
 なられません。勿論、上手く立ち回って何とかしようとはなさいますが、究極的には“本気で戦って相手を死なせる
 事に比べれば、自分が誘拐された方がマシ”―――思考というより心で、そういう結果を受け入れてしまいかねない
 部分をお持ちなのです」

 「・・・・・・」
808:2011/03/22(火) 04:22:40.11 ID:EqVHk3DL

 パチンッ。病室に、紐を切る音が響いた。雨は更に一本一本の茎の長さを整え、束ね直した花束を花瓶に挿す。
沈黙の間が生じたが、伊吹には口を挟むことが憚られた。やがて花を整える音に紛らわす様に、雨は呟いた。

 「私は、それが怖い」

 手が止まる。

 「・・・とても怖いのです」


 作業を終えた雨は、花瓶を窓際に置いた。患者から遠過ぎず、近過ぎない絶妙の位置。彼女は会話の相手に向き直る。

 その顔に、伊吹は「いや、まさか」とは言えなかった。むしろ、あの時のジュウの行動に合点がいった気がしたのだ。
自分が柔沢の足手纏いになったとまでは思わないが、しかし奴があの日、あそこまで非情になり切ろうとしたのは
―――俺の為か。

 「・・・敵わないな」

 感心より、むしろ呆れた様な心地で呟く。雨の話が本当なら、そんな優しさ(それを優しさと言うなら、だが)を
負いながら危険に関ろうとするなど、殆ど自滅行為だ。よくも今まで―――


 「勿論、何人もジュウ様には敵いません」

 何を今更、という語調で雨が首肯する。伊吹は少し驚いた。彼女の口調に、常ならぬ冷淡さを感じたのだ。

 「あの懐の広さは、ジュウ様の御心とお力の上にしか成立しません。しかし、あの方も不死身ではない」

 雨の言葉は何時しか、伊吹には理解し難い熱を帯び始めていた。前髪の向こうの瞳から、自分に強い視線が注がれ
ているのが分る。彼女は一体、何を言おうとしているのだろう。

 「私は貴方にとても感謝しています。貴方の助力がなければ、恐らくジュウ様は誘拐され、取り返しの付かない
 事態に陥っていた事でしょう。それは、私にとって地獄を越える地獄。ですが・・・」

 室内の空気が鋭気を帯びたまま停止した。伊吹は続く言葉を待ったが、彼女は口を閉ざしたまま。その姿は鉱物
の様に不動に見える一方で、何かを躊躇している様にも見えた。

 沈黙の数十秒が過ぎた頃。気詰まりする空気に耐えかねた伊吹が口を開きかけた矢先、雨は核心に触れる言葉を
放った。

 「ですが、同時に私は妬ましい―――本来ならジュウ様が危急にある時、傍に控えているのは貴方ではなく、私で
 なければならなかった」
809:2011/03/22(火) 04:34:41.78 ID:EqVHk3DL

 伊吹は黙って雨を見つめた。平たい常識に照らして見れば、彼女の言い分は矛盾している。少なくともジュウを
救って深手を負い、今尚入院中の患者に言うべき言葉ではない。

 だが、彼女は全て分っているのだ。何もかもを分っていて尚、どうしようもなく悔やんでいる。その気持ちが、
今の伊吹にはよく分った。

 かつての自分が光の危機に際し、柔沢が居た位置に居れたなら。過ぎた出来事に“もし”は有得ないと重々承知
していながら“もし、立場が違っていたなら”。そう考えてしまう自分は、確かに居る。


 全てを承知している筈の、堕花雨。彼女が敢えて、こうした醜態を晒して見せるのは―――恐らく、自分に代わって
大事な人を守った人間への、彼女なりの誠意なのだろう。


 「大事なのは、今後じゃないかな」

 自然に言葉がこぼれた。自力で幾度も繰り返し辿りついていながら、独りではどこか上滑りしていた答。それが
人に語る段になって、初めて実感を伴って腑に落ちる。

 そう、大事な事はこの先にある。自分も堕花雨も、この先幾度も試される筈だ。振り返った後になって、運命
だの人生だのと呼ばれるものに。

 「俺があの場に居たのは、ただの偶然だ。力になれたなら、良かったとは思うけどね」

 そう言って複雑な笑みを浮かべる伊吹の顔を、光の姉はじっと見つめていた。

 やがて、小さく頭を下げる。

 「益体もない事を言ってしまいました。申し訳ありません」

 そして。再び顔を上げた彼女の顔には、初めて見る表情が浮かんでいた。小さな、微笑み。

 「ままならないものですね」

 伊吹も軽く頷くと、苦笑を交えて応じた。

 「全くだよ」
810:2011/03/22(火) 04:36:44.05 ID:EqVHk3DL


 そうして少し雑談した後、堕花雨は帰っていった。

 何となく、この後の彼女が柔沢の元に直行している様な気がしたが、それはまあ只の想像に過ぎない。いずれに
せよ、自分は当面入院だ。


 伊吹は、幾分すっきりした頭で考える。つい先程まで落ち込んで居たのに、不思議なものだ。


 潔癖症は、ある種の病。過剰に白く染められた心は脆く、容易に特定の色に染まってしまう。己の価値観―――
尊敬する両親から受けた薫陶も相応な理由あってのものに違いないが、それだけで全てを測るには、この世は複雑だ。

 自分はもっと自身の在り様を考えて行かねばならないらしい。あれだけの事があって、その程度の教訓を学べ
ないなら、それこそ本当の大馬鹿だ。かつては見向きもしなかった対象の中にも、綺麗なものが混じっている場合
がある事を、今の自分は知っているのだから。

 それに冷静になって思い返してみれば、あの鏑木をおかしな行動に駆り立てた原因の一端は、自分にもあったの
かも知れない。現在の空手部は実質的には伊吹が中心になって居て、粗野な鏑木は一定の実力を認められつつも、
部員の大半にあまり尊重されていなかったのだ。殆ど敬遠されていた、と言っていい。

 対して伊吹は道場通いに予備校等、部に出る日が限られる身でありながら部員と顧問の信頼が厚い。彼個人は
そうした出席体制故に副将という位置に留まったのだが、それが他の部員や鏑木にどう受け取られているかに
ついては、ついぞ考えた事がなかった。

 ただ改めて思うに、鏑木が主将の座を占めるに至った経緯は、或いは彼の自尊心をいたく傷付けたのかも知れ
なかった。実際、鏑木の乱暴な言動や問題傾向は、彼が主将に就いた昨年辺りから加速度的に酷くなった様に思う。
殊更の示威的な態度は元々の性格もさる事ながら、焦りや苛立ちの反映だった可能性も否めないのだ。

 これまでの自分は部員個々人の事情として、その種の問題からは一定の距離を置き、敢えて触れない方針を
とって来たが・・・それも事と次第による、という事なのかも知れない。


 退院したらもう一度、鏑木とも話し合ってみよう。無駄に終わるかもしれないが、彼とて長らく一緒に練習に
取り組み、合宿では同じ釜の飯を食い、共に笑いあった事もある人間だ。また問題行動こそ多かったものの、過去
2年余りを空手部に注ぎ込み、主将にまでなった部員でもある。その全てが嘘だったと切り捨ててしまうのは、
早過ぎるかも知れない。

 それに今年の大会に、自分は出られない。後輩を指導できる人間が必要なのだ。相手あっての事だけに、結果
がどう転ぶかは分らないが―――試せる余地がある限りは試してみなければ。


 「でもまあ、今できるのは本を読むくらいか」


 伊吹は、光の姉が差し入れてくれた漫画本を手に取った。表紙では相変わらず、主人公が冷たい視線をこちら
に向けている。この差し入れについては厳格な両親も目こぼしをくれる可能性は充分あったが、一応、彼等の目
の届く前に読んでおく事にする。


 「どれ・・・痛てて」



 その後、空手部員達が見舞いに訪れるまでの数時間、個室は涼やかな香りとページを繰る音で占められた。

811:2011/03/22(火) 04:37:43.51 ID:EqVHk3DL
 ■ルーシー・ヴァイパー■ Ep



 時は遡って――――――事件後、真九朗が立ち寄った山浦医院での一幕。



 「ただの唾液だ」


 山浦医師は呆れた様に首を横に振ると、真九朗に分析結果を告げた。

 「しかし女に耳を舐めさせといて、それを分析してくれってのはなあ・・・お前それでも男か?」

 山浦の傍らで、かつての東西南―――現・山浦南は深い溜息を盛大に吐き出し、軽蔑する様に言い放つ。

 「はあ〜ぁ。真九朗くんてば、だっさっ!しょっぼっ!」

 それまで真九朗の足に抱きついて遊んでいた、現在5歳になる山浦家の長女・真南が、下から母親と彼を交互
に見比べて尋ねてきた。

 「しんくろ、しょぼいの?」

 この幼女はどういう訳だか真九朗が大のお気に入りらしく、彼が医院に来るのを楽しみにしている。外科病院
に来る患者の体には、つまり何らかの問題が生じている訳だが―――その辺はあまり気にならない様で、真九朗
はかつてカルテの電話番号に連絡してきた真南から「けが、まだ?」と訊かれた事があった。その上、彼女の強い
執着は彼の芳しくない方面の評判に信憑性を与えてもいたのだが・・・それはともかく。

 南は、愛情の滲む微笑を浮かべて娘の前にしゃがみ込むと、母が人生の秘訣を伝授する口調で応じた。

 「ん〜ん、ださしょぼいの。しんくろはださしょぼいのよ」


 乗せられてはいけない。ださくても、しょぼくても、しょうもなくても、三流の小心者であっても自分は死ぬ訳
にはいかないのだ。沢山の重い約束があるのだ。そのための警戒なんだから、他人にどう言われようと何でもない。
ああ、何でもないとも。影から弥生にジト目で睨まれてようが、だーれも分ってくれなかろうが自分には理解者
が3人も居る。紫や夕乃や銀子が居るのだ。

812:2011/03/22(火) 04:38:43.96 ID:EqVHk3DL


 ところで、やはりルーシー・メイは毒を仕込んでいた。勿論、仕込まない訳がなかった。


 毒は遅効性ながら確実に役割を果たし、真九朗は訳の分らないまま彼女の悪意を全身で浴びるハメになる。

 それは経過確認と引継ぎの為に、九鳳院に赴いた時。

 どういう訳だか許婚に散々に叱られ、ヘコみながらも崩月に事の顛末を報告に上がった時。

 静かに微笑む師範から強制された稽古でズダボロになった後、出国前の僅かな癒しを求めて風味亭に寄った時、
の三度に渡って彼を叩きのめした。


 実際、その被害たるや惨々たるもの。心身共にボロ雑巾の様に成り果てた真九朗は、ここに来てようやっと
ルーシーの悪意に思い至った。

 「あっ、あんの蛇女ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 その真九朗の雄叫びに応じる声は、あくまでも冷ややかで容赦がない。

 「・・・いやらしいわね、女のせいにする積り? これ以上穢れを店に持ち込まれても迷惑だから、さっさと
 行きなさいよロリコン。臭くてたまらないわ」


 毒の正体は化粧品。真九朗の耳を咥えて注意を逸らし、その隙にさりげなく胸元深くに吹き付けられた―――
地味な香りのパフュームだった。



 □Fin.
813:2011/03/22(火) 04:41:19.49 ID:EqVHk3DL
 以上、終わりです。長らくお付き合い頂き、有難うございました。
814BOLT:2011/03/22(火) 20:02:46.83 ID:1IKX18Ps
おもろかったよ
ちゃんと原作のキャラに沿って
面白く仕上げられているな。

おれもss書いているけど
原作からはキャラや設定がかけ離れてるもん
815名無しさん@ピンキー:2011/03/22(火) 22:18:44.18 ID:4/aCxj+t
>>813
超乙です。面白かったです。

未完のSS完結させたいけど、アイディアが全然出ないんすよねぇ…
せめて美夜を幸せにしてあげたい…
816:2011/03/22(火) 22:22:10.63 ID:EqVHk3DL
ども、お付き合い有難う^^。楽しんでもらえたなら、嬉しいです。

>原作のキャラに沿う
本当は片山氏がやってくれると良いのだけどもw 今回のSSは原作の未回収材料を拾い集めて
構成した感じですね。原作を読み込んでいる人に楽しんでもらえると成功なのですが・・・
伊吹については、こういう人物だったら好きになれるかな、と思ったものを書いてみました。

>キャラや設定がかけ離れてる
本来のパロディの楽しみは、むしろそういう作りの様な気がします。原作では取れない立場
にキャラを置いてみる、という遊びができる訳ですから。こちらでも、ちょびっとオリキャラ
混ぜたりしてますし。

ただ、やっぱ今回は長かったかな〜〜〜という反省もあり、今後はこのURLの方にアップする
場合があるかも知れません。ttp://blog.livedoor.jp/sledgehog/
ずっと、このスレに投稿してたので、今後も基本的にはそういうスタンスでいく積りでは居る
のですが。
817:2011/03/22(火) 22:26:23.62 ID:EqVHk3DL
あっと、>>816>>814へのレスです。

>>815
どもです^^。最後までお付き合い下さいまして、有難うございました。
僕のやつも半分放置しながら、チマチマ書いてたものです。弄っているうちに
色々出てくると思いますから、頑張ってください。

スレが盛り上がると良いなあ。
818名無しさん@ピンキー:2011/03/22(火) 22:31:04.94 ID:5apNyx5v
何という正統派SS。オチの上手さに脱帽。
819:2011/03/22(火) 22:37:58.02 ID:EqVHk3DL
>>818
お褒めに預かり痛み入ります。楽しんで頂けたなら、嬉しいです^^。
820名無しさん@ピンキー:2011/03/23(水) 22:07:57.92 ID:biAMrODW
SSは凄い面白いんだが、そういう心躍るSSの書き手に限って全レスとかしちゃって痛いんだよな……
作品は良いのにホント残念
821BOLT:2011/03/24(木) 00:13:47.58 ID:ZRFymhOZ
やべえ、こないだのssの続きが思い浮かばん。
せっかく、>>741さんがネタ提供してくれたのに
どうすりゃいいんだ。

>>820
まあまあ、ssがおもしろいんだから良いじゃないか。
残念がることはないじゃん。きっと律儀な人なのさ。

面白いssの書き手が久しぶりに現われてくれたんだ
仲良く行こうぜ。
822:2011/03/24(木) 06:58:56.51 ID:jVjAIXqn
個人的な話、好意的なレスをシカトするってムズい性分でさ。
全レスが傍目にどう見えるかを、分ってない訳じゃないんだけど。

しかし、いきなり痛いとか言われると結構堪えるな・・・根拠が分るだけに。
823名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 11:13:39.34 ID:omMRME79
次の作品を投下する際に、まとめてお礼するとか疑問点に答えるとかで良いんじゃないだろうか

光たんに萌えたいのに自分よりも背が高いせいで萌えられん……
824名無しさん@ピンキー:2011/03/24(木) 11:18:11.37 ID:RtSPc40i
おおー、これはお見事。
ひたすらGJ。

>>822
好意的な感想はそりゃ嬉しいもん、答えたくなる気持ちは解らんでもないよ。
でも全レスがウザがられるのは、ここは基本的にそういうところだから仕方ない。
そこはすぱっと割り切って適当に切り上げるほうがいいよ。
あなた個人の印象が悪くなったら勿体ないしさ。
また書いて欲しいな。
825:2011/03/24(木) 15:38:28.19 ID:jVjAIXqn
嬉しいのは勿論だけど、どちらかというとスルーは失礼に該る気がして。
でも、以後は気を付ける事にします。もうその必要はないかもだけど。

ただ、こちらに問題があったとはいえ820のコメは失礼だし、ただの中傷だと思う。
苦言なら他に言いようがある筈だから。少なくとも、仲良くするのは無理だね。
826名無しさん@ピンキー:2011/03/25(金) 16:18:18.02 ID:9kmHZ1oy
乙〜短気は損だよ
827名無しさん@ピンキー:2011/03/28(月) 15:36:22.07 ID:4qIByxDz
面白かった。
電波の続きがでないからちょっとストレスだったが少しは解消された気分だよ。
ジュウの活躍が見れて満足です。
まぁ、こんな場所だし適当に流すのが吉ですよ。
828BOLT:2011/04/05(火) 16:21:12.54 ID:PXgJ2o6I
>>741さんのネタをうまく使おうと思ってたのに
どうにもうまく盛り込めなかった。
なので自分路線で美夜ssの続き書きます。
ごめんね741さん

っていうか美夜ss続き書くつもりじゃなかったんだが
どうしても妄想が抑えきれないんだ・・。

というわけで相変わらずのおれの超駄文を投下します。
829BOLT:2011/04/05(火) 16:26:32.72 ID:PXgJ2o6I


今日、私は会いに行く・・
彼に・・ジュウ君に・・・
迷惑なのは分かってる。
たとえ会って拒絶されても言わなければ・・・
謝らなければいけない・・


私があの事件を起こしてから8年・・
私はとある場所で事務員として働いていた。

私は逮捕後、5年後に出所することができた
その間、たまにだが、雪姫ちゃんは来てくれた。
ジュウくんに会う事も出来なくはなかっただろう
雪姫ちゃんも「会ってみてもいいんじゃない?」みたいに言われた。

でも、私はそれを断った。
今はまだ、自分を見せたくない。
ここを出て、ほんの少しでも立派になってから会いたい
そのあとでジュウ君に謝りたいんだ。
また仲良くしてほしいなんては言わない。ただ謝りたい。

雪姫ちゃんは、堕花さんやジュウくんの事、詳しい事は言わなかったが
どうやらジュウ君は元気にやっているようで本当に良かった。


出所後、まともな商売に付けなかったであろう私は
もう、水商売とかしかないんじゃないか?なんて考えていた。

だが、私の事情を知ってる刑事さんの支援があったからだろうか
私は近くの工場で働くことができた。
830BOLT:2011/04/05(火) 16:34:41.11 ID:PXgJ2o6I


その工場はそこそこ大きい中小企業の下請けの工場らしく
最初は作業服を着て流れ作業みたいなことばかりやっていた。

しかし、院内で得た事務関連の資格が活きたのか、
少しずつ仕事を覚え、事務関連の仕事もしたとき、
上司から「君はデスクワークの方がいいんじゃない?」みたいなことを言われ
わりと本格的に事務の仕事を任されるようになった。

それを2年ほど続け、今度はその工場の上の中小企業の方に引っ張られた。
こんな前科持ちを何で引っ張るのだろう?なんて考えたが
どうやら、企業の職員と少年院時代の刑事さんが知り合いらしく
そこでも色々と支援してくれたらしい。本当にありがたいことだ。

それが、1年前の話。
現在はようやく仕事にも慣れてきた所である。
そこで、久々に雪姫ちゃんに連絡を取ってみた。
出所前、最後の雪姫との面会で教えてもらった連絡先
それを美夜は忘れていなかった。

「はい?もしもし、誰ですか?」
「えと・・ひさしぶり雪姫ちゃん・・」
「――――! 美夜・・ちゃん・・?」

最期に会ったのが出所1ヶ月前だったから
かなり久しぶりに聞く雪姫ちゃんの声
わたしの友人の声だ
わたしはこの2年間のいきさつを話した。

「そっか・・この2年で頑張ってたんだね・・美夜ちゃん」
「私は、まあ運が良かったからね・・。」

「そういえば、最近会えなかったけど、なにかあった?雪姫ちゃん」
「あ・・、この2年、色々あってさ・・会えなくてゴメンね?・・。」
「いやそういう意味で言ったわけじゃないよ!
っていうかどうしたの?なんかちょっと暗いよ?」
少ない機会とはいえ、美夜が見てきた彼女と今日の彼女の様子は
 明らかに何か違う。

「・・実はね、ホントはもっと前に言うべきだったのかもしれないけど・・」
「・・・?うん」

「柔沢くんね・・2年くらい前に結婚したんだ・・」

「・・・え?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

うん、なんていうか文章も世界観も相変わらずメチャクチャだな。
普通、前科持ちがここまですんなり職にありつけないものね・・。
■さんみたいな高クオリティSSのあとに
俺の書いたものは投下しちゃいけなかったわ
なんていうかスマンかった。

でも、俺の妄想が続く限りまた投下すると思うので、
限りなく長い目でよろしくお願いします

831名無しさん@ピンキー:2011/04/05(火) 16:52:48.06 ID:otoyylgg
おつー待っとるでー
832:2011/04/05(火) 23:37:52.24 ID:T4qoHrDe
いきなり結婚している?!w

GJ、続き待ってます。
833名無しさん@ピンキー:2011/04/05(火) 23:39:00.11 ID:YcG0OQKV
>>BOLT氏
美夜SS、待ってました。
続きも期待してます。


>>■氏
しばらくチェックを怠っていたので、今日ようやく読ませていただきました。
遅レスもいいとこですが、一言だけ言わせてください。

「片山先生に代わって、続編を書いてくれないか! 」(マジ)


なお、職人さんからのレスは不要なので悪しからず。
もし読み手に謝意を示したいと思ってくれるなら、また新作を投下してくれると嬉しいですね。


長文スマン
834BOLT:2011/04/08(金) 18:46:04.97 ID:JbZeXuIq
なんとか、美夜ss続きを執筆中
だいぶ良いとこまでかけたので
もう少ししたら投下します。

ただ、これ投下したらまたしばらく投下できないかも。
6〜7割くらいは完成したからあとはラストスパートだな。
835BOLT:2011/04/08(金) 19:32:51.19 ID:JbZeXuIq


昨日の話を思い出す
「ジュウくんが・・結婚した・・?」
「うん・・私の知り合いとね」

美夜の視界が揺れる
そうして胸の奥から何かが押し迫ってきた
そんな感覚がした。
なにかが溢れ出そうになって・・



「―――そっか・・。そうなんだね」
それを押し込んだ。

「うん、よかった。ジュウくん、幸せになったんだね」
「――――美夜ちゃん・・?」
「今日は急に電話してごめんね?雪姫ちゃん!
久々に声聞けて良かったよ!今度、一緒にご飯でも食べようね!じゃあまたね!」
「え!?あ、ちょっと美―――――――」
そこで電話を切った。



翌日、今日は休日である。
自宅で朝食を作りながら、美夜は思う。

「祝ってあげたいけど、私がジュウ君に会いに行ってもね・・。
やっぱ・・迷惑だよね。うん!まだ会わない方がいいよね!」

美夜はひとり呟いた。

「だいたい、せっかく結婚までしたのに
自分を刺した女に会うのなんて悪夢もいいとこだよね!」

美夜はひとり笑った。

「そうだよね!・・そうだよ・・ねぇっ――――!!」


美夜はひとり


泣いた


「ジュウくん――――
私、ジュウくんに謝ることも出来ないの?
もう2度と―――――
会わない方がいいの?――――」

美夜は泣いた
涙の理由なんてわからない
どうでもいい、
ただ泣いた


836BOLT:2011/04/08(金) 19:33:47.07 ID:JbZeXuIq



「ふう・・」

仕事が終わり家に帰ってきた柔沢ジュウはネクタイを緩める。
スーツにネクタイ。黒髪短髪。学生服を着た頃の自分が今の自分を見たら、なんて言うだろう。
まさか、それなりに規模のある企業のリーマンになってるとは思わないだろう。

――――――いや、それ以上に・・

「ちょっと!! 脱いだ服はちゃんと畳んで―――――
・・るわね。アンタなんでそんなチンピラ顔なのに几帳面なのよ!おかえり!」
  「・・・とりあえず最後の言葉はまず最初に言うべきだと思うぞ
   ――――――――ただいま、光。」

 まさか、こんな意味不明なキレ方をする口やかましい女と結婚までしてるとは思わないだろう。

837BOLT:2011/04/08(金) 19:36:53.46 ID:JbZeXuIq

―――――― 「あ・・・あああんた!か、かか彼女とかいるの!!」


高校を卒業して、短大に入学して間もないころだったなアレは・・

「別にそんなのいねえよ。っていうか前にも喋ったと思うんだけど?」
「いや、でも!今はいなくてもすぐにまた女の子に声かけてまたイチャいちゃしてるんでしょ!?分かってんのよあたしは!!」
「いや、またって何だよオイ。俺は今まで一度も彼女なんてできたことないぞ。」
「あんたこの年になって一人も彼女いないの!?なに恥ずかしいこと自分からカミングアウトしてんのよ!!変態!!」
「もうやだ、こいつとの会話・・」

聞かれたことに素直に答えて変態呼ばわりされるのは、ある意味貴重な経験かもな。

「・・あのな、言っとくけど俺にだって好きなやつの一人くらいはいるぞ?だから―――」
「それって・・・。紗月美夜さんって子の事?」
「――――――!!なんでお前があいつを知ってるんだ!?お前誰から!?」
「あ!いや!!お姉ちゃんから前に聞いたんだよ!!どうしたの急に!?」
光が目を見開いて声を荒げる

「!!――――あ・・いや、悪い・・。ごめんな、いきなり大声出して・・。
 あんまり懐かしい名前が出てくるもんだからな・・」
「いや・・いいけど・・。その人と何かあったの?」
「まあ、な・・・。話すと長くなるから、俺の家に来てくれないか?」
「!!あ、あんたの家!?でも、まだ私、色々と準備が・・」
「・・?」



とりあえず顔が赤くなりながら意味不明なことを呟く光を家に招待し、そこで紗月美夜の事を、あの事件の事をすべて話した。美夜に殺されかけた事、そして事件を通して自分は何も出来なかった事。
光は俺を見据えながらそれを聞いていた。
838BOLT:2011/04/08(金) 19:41:19.49 ID:JbZeXuIq


「―――・・・まあ、これでその美夜の事は全部だ。面白い話でもなければ良い話でもない。ただ俺は何もできなかった。ましてやお前の姉ちゃんに命を助けてもらった。まあ要するに俺が情けないって言うだけの話だよ」
「・・・」
「暗い話して悪かったな。この話は終わりにしよう。どうだ?せっかくだから飯でも作るよ。食っていくか?」

「あんたは・・ジュウはさ・・」
光が珍しく名前で呼ぶ。
「その人の事で・・・なにか後悔してるの?」
「光・・・」

後悔してるのか?分からない。そんな事考えている余裕なんてなかった。
ただ感じたこと。それは自分は無力だった。

「後悔してるといえば多分そうかもな・・。何も出来なかった事、お前の姉ちゃんに迷惑かけちまったこと。
 美夜の事だけじゃない。いつだって俺はそうだったよ。えぐり魔事件の事、お前の・・伊吹との事も。結局は雨やお前に助けられて、
 挙句の果てにはお前と伊吹の事で揉め事になっちまって・・」
「いや!だってあれは・・」
「いつだってお前らは俺のために助けてくれたのに、懲りずにまた迷惑かけてしまう・・。
 なんていうか・・雨にも雪姫にも、そしてお前にも報いることが出来ない。何なんだろうな俺は・・。」
「・・ジュウ」
「・・・話が逸れたな。飯作るよ。」

「じゃあもう一つ聞かせて、昼間の質問の続き。」
「・・・なんだっけ?」

光がどこか不安げな表情で言う
「ジュウの好きな人って・・その人なの?」
「・・・なんでそんなこと――――」
「答えて」

分からない。
光の質問の意図が。
だから、出来る限り素直に答えた。


「美夜は昔好きだった奴だ。だからって今は嫌いってなわけじゃない。」
それに今、好きな奴ってのは別にいるしな。

「でも昼間言ったよね?好きなやつの一人くらいはいるって・・。あれって・・」
「あー・・・」
なんでこういう事は忘れないんだよ・・。

「あれって今好きな人がいるってこと?」
「あー・・まあ、そういう事になります。」
アレ?言葉遣いわかんなくなってきた。

「それってやっぱりお姉ちゃん?それとも雪姫先輩?」
「いやお前なんだけど光」
あ、やば

「―――へ?」
思ったこと口に出しちまったああああああぁぁぁぁぁぁ

「あっいやそのなんだっ、ええと―――」
「は?え?いや?えええ?」
やばい会話できなくなってきた。

839BOLT:2011/04/08(金) 19:42:46.15 ID:JbZeXuIq


それから20分ほどかけてお互い気持ちを落ち着かせて
「・・・ねえ、あんた」
「・・・はい、なんでしょう?」
すっかり低姿勢になった俺に光が問う

「さっき言った事ってホント?それともなにかの言い間違い?」
・・もうここまで来たら、全部吐いちまった方がいいよな。

「言い間違いでも何でもねえよ。俺はお前が好きだ。結構前からな。」
あー・・恥ずかしさが極まると人間冷静になれるもんだな。
腹が据わるというか。もはや、何も怖くねえわ。

「なんで、・・お姉ちゃんや雪姫先輩じゃなくてあたし?」
「雨や雪姫も確かにすげえ魅力的な奴だって俺も思うよ。正直、俺自身もあいつらに対してドキッとしたこともあるしな。でもな・・」

「―――俺はお前が好きなんだ光。」
もう人生で二度と言う事はないだろうな。
こんな悶死しそうなセリフを吐くのは。
無論、死にそうなのは俺だが。

「・・・あんた、さっき結構前からっていったわよね?」
「え?ああ・・」
「なんで、今まで言ってくんなかったの?」
つーか聞く所そこ?

「なんでってそりゃあ・・」
言えるわけがないだろう。なぜなら


「だって、おまえ伊吹と付き合って―――」
「ないわよぉ!!バカアアアァァァァァァァ!!!」

その瞬間、鳩尾に拳をくらって意識を失うあたりまでは記憶があった。

後日、幸せ潰し以来、光は伊吹と付き合ってるもんだと思ってた俺の数年は盛大な勘違いだという事に気付き、光と正式に付き合う事になった。



そして現在俺と光は一緒になり、俺はリーマン、光は保育士となった。
共働きで忙しい毎日。二人で過ごす時間も少ない。
だからこそ、こうして二人でいる時間が好きだ
こんな気持ちを持てたのもコイツが傍にいてくれたから

――――なんてことは恥ずかしすぎるので絶対に言わないがな。


840BOLT:2011/04/08(金) 19:46:51.13 ID:JbZeXuIq

よし、今日はここまでにしとこうと思います。
ほんとはもうちょっと先まで書いてるんですがね。

若干のキャラ崩壊、世界観崩壊、ところどころアバウトな所
なにより文章力の無さ。

良いところのない相変わらずの俺の駄文ですが。
なんとしても、何を言われても。
どんなに時間がかかっても、完結まで続けようと思います。
841BOLT:2011/04/11(月) 01:01:15.81 ID:rdxhlDMJ
今日、ハードディスク交換したら
この美夜ssを書いてるwordが
開けるんだけど書いたり消したり出来なくなり
続きかけなくなっちまった。なんでだ?

そういうことでしばらく投下できないと思います・・。
チクショー
842名無しさん@ピンキー:2011/04/11(月) 07:31:51.68 ID:Hc+mqzT0
ジュウは多分美夜のことは誰にも話さないんじゃないかなぁとか思った

でも乙
843BOLT:2011/04/11(月) 12:44:18.55 ID:rdxhlDMJ
あ〜いわれてみれば確かにそうかもな・・

なんていうか、そういう自分のデリケートな部分を
光だけに自分から打ち明けるっていうところに
ジュウの光に対する心の開き方みたいなのを書きたかったのよ
なによりそのほうが俺自身萌えるからww
844BOLT:2011/04/11(月) 21:26:26.85 ID:rdxhlDMJ
だれか〜ss投下してくれ〜

俺はssの続き投稿するのもう少し先になりそうだから
その間、ほかの人のssが読みたいよ〜
845しがない物書き:2011/04/16(土) 19:32:43.69 ID:rrCldC6b
その日は、オレにとって、少しだけ特別な日だった。
オレは目の前の高層ビルを見上げ、そこが今日の自分の目的地であることを確認。
ポケットから携帯を取り出し、届いていたメールを見て最終チェック。
----------------------------
件名:情報
配達先 九鳳院 蓮丈
現在地 ホテル オベロン ヘリポート または 同ホテル 35階
期限 20090317 23:30
報酬 1,200,000
注意 最優先配達物 ワレモノ
〈業務〉終了後は、速やかにこのメールを削除すること。
----------------------------
ふと、12時間ほど前の会話を思い出す。
「…って訳だから。これ、頼むよ」
目の前に座る相棒の顔を、オレは呆れ顔で見つめる。
「…期限今日じゃねえか。もっと早く言ってくれよ」
「僕だってついさっき連絡されたんだよ。で、どうするの?」
「≪九鳳院≫のボスへのブツにしてはずいぶん報酬安いな。もうちょっと取れなかったのか?」
そう言うと、今度は相棒に呆れ顔で見られた。
「交渉するのは僕の仕事じゃないし、大体君今そんなこと言える立場か?ここ1か月、まともに仕事してないだろ?」
「仕方ねえだろ、いろいろ忙しかったんだから。」
「…で、どうすんだよ?報酬7ケタはひさしぶりだろ?このへんで君の銀行口座のお金、増やしといてもいいんじゃない?」
「…わかった。引き受ける。妨害が入ったら…」
相棒は、にこやかに言った。
「『いつも通り』で」
「りょ〜かい、っと」
相棒に話を振られた時から、なんとなく嫌な予感はしていたんだが。
「…やばくね?」
つい先ほど、今まさに向かおうとしていた最上階近辺で、結構な規模の爆発を確認。
なんか人みたいなのが吹っ飛んでいくのが見えた気がする。
急いだほうがよさそうだな。万が一死なれたら、せっかくの割のいい仕事が台無しだ。
オレは、オベロンの内部へと足を踏み入れた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
無論、彼は同じころ、九鳳院の令嬢が実の兄にレイプされかけていたことなど知らなかったし、
一人の揉め事処理屋がその娘を救おうとオベロンに乗り込んでいたことも知らなかった。
846しがない物書き:2011/04/16(土) 21:44:00.33 ID:rrCldC6b
予告なしで投下したのだが…
大丈夫なのだろうか?
847名無しさん@ピンキー:2011/04/16(土) 21:55:02.25 ID:jKuEyMd5
だいじょぶだいじょぶ
848名無しさん@ピンキー:2011/04/17(日) 00:51:11.32 ID:DiEEWIiw
>>846
予告なんて無くても構わない

まあ、するに越したことはないし、内容的にアレならば注意喚起の意味で必要かもしれないけどね

それよりも、続きマダー
(AA省略)
849しがない物書き:2011/04/17(日) 13:01:19.70 ID:43G8A5DI
今日中には第2話を投下できると思いますが、その前に。
―警告―
・この小説は、エロパロではありません。
・この小説に出てくる人物の性格などは、漫画版の紅をベースとします。
・この小説には、オリジナルキャラが出演します。
・オリジナルキャラたちが干渉したことにより、本来の紅とは違った展開を見せることもあります。
・人物の性格などは物書きの主観で決定します。読む人によっては、
 「こんなの真九郎じゃねえ」と思われるかもしれません。
・続きを投下できるのは、ほぼ休日に限られます。
上の警告を読んだうえで、「それでも良い」という方のみ、この小説をご覧ください。
850しがない物書き:2011/04/17(日) 14:03:46.96 ID:43G8A5DI
豪華な、しかし破壊された部屋に、男の声が響く。
そして。
「紫!」
男――九鳳院蓮丈は。
「おまえを、奥の院から出す。以上だ」
自分の娘に、自由を与えた。
――――――――――――――――――――――――
上昇するエレベーターの中で、考える。
――娘を救うためとはいえ、自分は≪九鳳院≫のルールを破った。
何の不安も、危険もなく生き、死ねるはずだった自分の娘を、魑魅魍魎が渦巻く外界へ放り出した。
 自分は、正しかったのだろうか?
そこまで考えて、蓮丈は、自分の愚かさに気付いた。
――そうだ。外の世界に出たことが正しかったのか間違っていたのかを決めるのは、あの子自身。
自分は、遠くから見守ってやるしかないのだ。紫が、歩んでいく姿を。
そう考えることで自分の迷いに決着をつけた蓮丈は、これからのことを考える。
――馬鹿をやったあのバカ息子は、5〜6年海外に飛ばし、頭を冷やさせよう。それから…
さらに重ねようとしていた蓮丈の思考は、しかし、中断された。
851しがない物書き:2011/04/17(日) 14:15:49.36 ID:43G8A5DI
きっかけは、屋上に着き、エレベーターの扉が開いたこと。
そこでは、近衛隊の者たちが、自分を待っているはずだった。
しかし。
彼が見たものは、コンクリートに横たわり、うめき声をあげる近衛隊の者たち。
そして、その中で1人だけで立ち、蓮丈を見据える(おそらく)男だった。
青…いや、『蒼』と表現すべきだろう。遠くから見たら黒と間違えてしまいそうな、深すぎる蒼い服。
肩からは大きめの鞄のようなものを下げている。どう見ても、近衛隊の者ではない。
そして、何より目を引くのは。

顔に着けた、まるでピエロの笑顔を写し取ったかのような、仮面。

1分…いや、1秒だったか。
沈黙を破ったのは、男。
「九鳳院蓮丈様デイラッシャイマスネ」
機械変換された無機質な声で、一方的に告げる。
「私ハ業務代行機関『ソレイユ』総務部配達課所属、S-4級エージェントノ」
一瞬言葉を切り、息継ぎ。
「【イーグル】トモウシマス」
852しがない物書き:2011/04/17(日) 16:19:09.47 ID:43G8A5DI
とりあえず、今日はこの辺で。
感想・改善すべき点など書き込んでいただけると幸いです。
853名無しさん@ピンキー:2011/04/18(月) 02:22:43.89 ID:TwJcVn7x
続きに期待!
854名無しさん@ピンキー:2011/04/20(水) 14:12:39.07 ID:0atRXCXc
大作の予感
855しがない物書き:2011/04/20(水) 21:17:31.16 ID:kJYHxnwq
少し時間が取れたので
ちょっっとだけ投下します。
856しがない物書き:2011/04/20(水) 21:57:47.09 ID:kJYHxnwq
業務代行機関『ソレイユ』。
蓮丈は、その名を少しだけ耳にしたことがあった。最近かなりの勢いで成長してきた、、裏社会の組織だ。
組織のシステム自体は、悪宇商会と同じ人材派遣会社。
しかし、明らかに異なる点があった。
一つは、少数精鋭主義なのか、人員があまり多くないこと。
もう一つ。請け負う仕事の幅が、圧倒的に悪宇商会より広いこと。それこそ
令嬢の誕生パーティのセッティングから誘拐計画の立案、果ては要人の暗殺まで『何でも』金さえ出せば
請け負うらしい。
最後は、あまりにも高すぎる任務成功率。そのためだろう。ほかの組織と比べれば高額な依頼料を請求するにもかかわらず、依頼人の姿が絶えることはないという。
噂では、悪宇商会に「今年最も目障りだった非合法組織」なるものに認定されたらしい。
…もっとも、これらの情報は表御三家である≪九鳳院≫の情報網をフル活用してやっと得られた数少ない情報である。
その情報隠蔽能力の高さも、『ソレイユ』の名を高める一因となっていた。
857しがない物書き:2011/04/20(水) 21:59:24.21 ID:kJYHxnwq
今日はここまでということで。
…やっぱりまとめて投下したほうがよかったかなぁ…?
858BOLT:2011/04/22(金) 11:16:53.41 ID:JOhIZUyw
新しいssだ!

まとめて投下できるならそのほうがいいかな
もっと読んでみたいので・・
859しがない物書き:2011/04/22(金) 21:24:03.26 ID:s9imvZuo
もちろん、実際に『ソレイユ』の人間と会うのは、蓮丈も初めてである。
彼は、屋上に配置した大勢の近衛隊を立った一人で叩き潰されたことに対する動揺を押し殺しつつ、
静かに、しかし威厳をもって問う。
「…その『ソレイユ』とやらの回し者が、わたしに何の用だ?」
その厳しい声に対して、イーグルは一切動じることなく淡々と答える。
「ハイ。本日ハ―――」
そういって、イーグルは無造作に鞄を手に突っ込む。
すると、
「動くな!!」
と、蓮丈と共にエレベーターに乗っていた近衛隊に銃を突き付けられた。
まあ、当然だろう。
近衛隊から見れば、イーグルは突如現れて屋上に配置されていた近衛隊を全員ねじ伏せた挙句に、
蓮丈に接触を図ろうとしている「超」危険人物。
そんな男が突然鞄に手を突っ込めば、「武器を出すのかも」と疑われて当然である。
しかし、イーグルは自分に向けられた警告をあっさり無視。
手をカバンから引き抜き、蓮丈に突き出し、一言。
「――オ届ケ物ガアリマス」
そこに掴まれていたのは、どこにでもありそうなA4サイズの茶封筒。
そして、白い小さな紙とペン。
「受領印トシテ、印鑑カサインヲオ願イシマス」
860しがない物書き:2011/04/22(金) 21:46:39.58 ID:s9imvZuo
突然現れて好き勝手に振る舞った挙句、印鑑かサインをよこせとまで言う。
一応敬語を使ってはいるが、それは目上の人間に対するものではなく、取引相手に対するものであった。
――この男は、わたしを、対等な人間としてみている。
もともと、九鳳院蓮丈のプライドは高い。目の前の男の無礼さに対する怒りは、頂点に達しようとしていた。
その心を察したのだろう。
「下郎!!無礼だぞ!御前の前で…!!!」
と言うや否や、女剣士――リン・チェンシンが、イーグルに刀を突き付けた。
しかし、イーグルは姿勢を崩さない。それどころか、首を少し回して、刀を突き付けているリンをまっすぐと見つめた。
5秒後。
「一度目メノ警告。九鳳院家近衛隊所属、リン・チェンシン。業務代行妨害。」
機械変換された声で、彼はリンに告げた。
リンの頭に浮かんだのは、なぜこいつは自分の名を知っていたのか、という疑問。
そして、どうやらこいつは話を聞く気はないらしい、という確信。
そうとわかれば話は早い。
「…御前。この無礼者を切り捨てます」
そういった瞬間、リンのよく力の入った、しかし力みすぎてはいない鋭い刃が、、イーグルの首めがけて一閃した。
861しがない物書き:2011/04/22(金) 22:07:18.96 ID:s9imvZuo
まず彼女が感じたのは、手にズンと響く確かな手ごたえ。
次に彼女が感じたのは、違和感。
――もし自分の一撃がイーグルをとらえ、その首を飛ばしたのなら、刀は『首のあった場所を超えて進み続ける』はずだが。
手には確かに手ごたえがあった。しかし、振り切った感じはしなかった。どういうことだ。
その違和感は彼女を覆い、生み出された戸惑いが一瞬動きを止めさせる。
その一瞬に、彼女は。
手首に、まるで下から銃で撃ち抜かれたかのような衝撃を感じた。
次に、宙を舞う自分の刀を見た。
そして、撃ち抜いたのはいつの間にか体を思い切り沈めていた、下段からのイーグルの蹴りだと知った。
次の瞬間。
彼女は、その場で足を蹴り下ろした反動を生かして跳躍し、自分のこめかみに向けて勢いよく蹴りを入れるイーグルの足が視界に入った気がした。
そこで、意識が途絶えた。
862しがない物書き:2011/04/22(金) 22:10:56.03 ID:s9imvZuo
今日はここまでで。
感想・改善すべき点・疑問点など書き込んでいただければ幸いです。
863しがない物書き:2011/04/23(土) 10:40:59.48 ID:8ii3ebwQ
うわ、誤字発見。
859の「立った」→「たった」
864しがない物書き:2011/04/23(土) 16:14:47.24 ID:8ii3ebwQ
第4話 20090317 23:19
ホテルオベロン ヘリポート
865しがない物書き:2011/04/23(土) 16:49:58.33 ID:8ii3ebwQ
蓮丈は、今しがた目の前で起こったことが信じられなかった。
文句無く、今ここにいる近衛隊の中でナンバーワンの実力を持っていたリン・チェンシンが、戦闘開始から10秒と持たずに倒されたのだ。
リンの体の陰になっていたせいで詳しく戦闘の様子を見ることはできなかったが、おそらく一方的なものだったのだろう。
イーグルの脚がリンのこめかみを上から蹴り下ろした瞬間、リンは顔からコンクリートの地面にたたきつけられた。
そして、その場で大きくバウンド。もがく様子はなかった。おそらく、その時点で、意識はすでに無かったのだろう。
しかし―――
イーグルは、攻撃の手を緩めなかった。バウンドしたリンの背中の横に回り、強烈な手刀を打ち込む。もう一度叩きつけられたリンの脇腹に、
標準を合わせ、思い切り蹴った。
何の工夫もないキックであったにもかかわらず、リンの長身の体はやすやすと吹っ飛び、ほとんど勢いを落とすことなく、派手な音をたてて屋上にあったエアコンの室外機に叩きつけられた。
大きくへこむ、室外機の側面。おそらく壊れただろう。
叩きつけられたリンは、ピクリとも動かない。
蓮丈は、初めて暴力に対する恐怖を感じた。
866しがない物書き:2011/04/23(土) 17:14:27.58 ID:8ii3ebwQ
そんな蓮丈に対し、まるで何事もなかったかのように、イーグルは再度要求。
「印鑑カサインヲオ願イシマス」
その言葉使いには息の乱れなど全く感じられず、つい先ほどと同じように淡々としたものだった。
蓮丈はさりげなく時計を見て、リンが刀を抜いてからまだ一分ほどしか経っていないことを知る。
一分。
その間に、立場は完全に逆転してしまっていた。
リンを倒されたことで、近衛隊は完全に戦意喪失。もはや銃も、「ただ持っているだけ」に近い状態だった。
蓮丈は、自分の取りうる決断が二通りしかないことを悟った。
『九鳳院蓮丈』としての感情を優先させ、目の前の男と一戦交えるか。
『九鳳院家当主』としての賢明さを優先させ、素直にサインするか。
さあ、どうする。一瞬の決断。
3秒後。
蓮丈は尋ねた。
「…ペンを持っているか?」
と。
867しがない物書き:2011/04/23(土) 17:46:29.68 ID:8ii3ebwQ
下降するエレベーターの中で、オレは上機嫌だった。
ちゃんと期限を守り、配達完了。『本部』への連絡は済ませたので、あとは相棒にサイン入りの[配達証明書]を渡してしまえば
完全に〈業務〉終了だ。
これで120万円。当分生活には困らないだろう。
さて、と。
オレは、最後の作業を始めた。手始めにケータイを開き、もらったメールを全消去。
そこで、オレは妙に頭が暑苦しいことに気付いた。
…あ、フードかぶりっぱなしだったか。
オレはかぶっていたフードを脱ぎ、あるところにメールを打つ。
-------------------------
宛先:ソレイユ 技術部
件名:第16号特殊戦闘服試験運用結果報告
本日実施した試験運用では、特殊服の防刃テストを行った。
使用した刃物は、日本刀『備前長船』。
刀を使用したのは、九鳳院家近衛隊のリン・チェンシン。
首に放たれた全力の斬撃を受けても、服にはほとんど損傷が確認できなかった。
以前に実施したテストの結果と今回の結果とを総合的に判断すると、この特殊服は職員の生命保護に極めて有効であると推測される。
-------------------------
よし。書けた。
オレは、送信ボタンを押した。
868しがない物書き:2011/04/23(土) 18:18:27.46 ID:8ii3ebwQ
一階についたところで、携帯に着信。
相手は…お、相棒だ。
オレは仮面の陰に隠してあった変声器を切り、電話に出る。
「…もしもし?」
『やあ、僕だ。〈業務〉は終わったか?』
「一悶着あったが、無事終わったよ」
『ふーん…〈殲滅〉したのか?』
「いや。警告は一回しか受けてなかった。無力化しただけだ」
『君はやり方が激しいからな…殺してないだろうな?』
「すぐ病院行けば、後遺症も残らないだろう」
『…ボコボコにはしたのか。ま、いいけど』
「…で、本題は?」
『ああ、そうそう。今からそっち行く』
「…は?」
『君、どうせ夕ご飯まだなんだろ?いい店を知ってるんだ。一緒に食べに行こう』
「お前なあ、今何時だか解ってて言ってんのか!?」
『23時47分』
「…わかった。ロビーで待ってる」
『20分で行くよ。またな』
そう言って、電話は切られた。
…あの非常識のKY野郎め。
まあ、腹はペッコペコだし、向こうのおごりなら悪くない。
男二人でディナーってのは不満だがな。
さて、あいつが来るまで暇だ。
オレは近くにあったソファに腰を下ろし、たまたま持っていた東野圭吾の「秘密」を読み始めた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
しかし、彼は勘違いしていた。
彼の相棒は「飯を一緒に食おう」と言っただけで、「おごってやる」とは一言も言っていなかったのである。
869しがない物書き:2011/04/23(土) 18:23:18.27 ID:8ii3ebwQ
プロローグ 完 です。
面白そうだなと思ってくださった方がもしいらっしゃいましたら、
感想などいただければ幸いです。
つまらなそうだなと思ったら、スルーしちゃってください。
一応この後もまだまだ続ける予定ですが…
実は、この先のことまだ考えてません。
ですから、どうか長い目で見てやってください。
長文失礼しました。
870しがない物書き:2011/04/24(日) 16:36:29.67 ID:kH3JsXl5
第5話 20090911 17:34
五月雨荘 2階 3号室前 
871しがない物書き:2011/04/24(日) 17:02:25.33 ID:kH3JsXl5
しまった!
全然違うの投下しちまった!
すいません、こっちが本物です!上のはスルーしてください!!
872しがない物書き:2011/04/24(日) 17:04:26.17 ID:kH3JsXl5
第5話 20090911 15:57
CLUB SEGA 店内
873しがない物書き:2011/04/24(日) 17:27:45.76 ID:kH3JsXl5
「…え?」
真九郎は、思わず声を漏らした。
―――――――――――――――――――――――
その日も、真九郎にとっては、いつも通りの一日となるはずだった。
いつものように学校へ行き、授業を受け、放課後に新聞部に立ち寄って幼馴染の情報屋に滞納していた情報料を支払う。
そのまま下校し、紫のもとへ。道中、最近知り合った切彦という女の子と出会う。
せっかくなので一緒に行き、紫と合流。そのままゲーセンに直行し、紫がクレーンゲームをやる姿を見る。
500円消費してとれたのは、犬のぬいぐるみ。とった本人は「見ろ、真九郎!とれたぞ!」と大はしゃぎ。
その後は切彦がやる格闘ゲームを観戦し、ゲーセンを後にする―――はずだったのだが。
異変は、切彦が49人目のプロレスラーらしきものの首を斬りおとし、50人目のものと闘い始めた時に起こった。
その時の相手のキャラは、おそらく柔道家。いかにも筋骨隆々そうな、ゴツイ体だ。
たぶん、速攻で斬り捨てられて終わりなんだろうなと思っていたのだが…
始まった瞬間から、このゲームをやったことがない真九郎にも、今までの相手とは違うと分かった。
あの切彦が、明らかに押されているのだ。切彦は、凄まじい速さで指をめぐらせ、相手を刺し、切り裂こうとするのだが、
相手のキャラ7は、その巨体に似合わぬ軽やかさで、ひらりひらりと紙一重でかわし続ける。
そして、一撃、また一撃と、確実に剣士にその拳を当てていく。
負けじと切彦も応戦したのだが…
画面の中のナイフ使いは、相手の上段回し蹴りをもろに受け、倒れた。
874しがない物書き:2011/04/24(日) 18:05:32.89 ID:kH3JsXl5
「…え?」
真九郎は、思わず声を漏らした。
どよめくギャラリー。
何人も、向こうへ様子を見に行ったのが見えた。
切彦も、かなり驚いた表情で画面を見つめる。おそらく、今まで負け無しだったに違いない。
紫が、心配そうな声でに切彦に声をかけた。
「だ、大丈夫か、切彦!?どこか、具合でも悪いのか!?」
それに対して、切彦は、弱弱しい笑みを浮かべ、言った。
「…大丈夫です、けど…」
真九郎も、何か言おうと思ったのだが、それよりも先に、
「お兄さん」
と、声をかけられた。
「な、何?切彦ちゃん」
「…もう一回」
「え?」
「もう一回、やらせてください」
普段の彼女が見せているものとは違う、真剣な目。
それからは、強い意志が感じられた。
「…いいよ。がんばって。切彦ちゃん」
切彦は、一瞬微笑むと、目の前の画面に没頭し始めた。
……しかし。
気迫のみで何とかできるほど、敵は甘くなかった。
数分後。
切彦は、何とか一矢報いようとしていたが、ナイフはもう、かすりもしない。
相手の男に一本背負いされ、切彦は、7回目となる敗北を味わった。
ギャラリーは、すでにほとんど全員向こう側に行っていた。
真九郎の好奇心は、あっちに行って対戦相手を見ろと言っていた。二人は一緒に画面に熱中しているので、いなくなることもないだろう。
真九郎は、本能に従った。
真九郎のイメージ的には、メガネをかけた小太りの男が熱心に指を動かしているような気がしていたのだが。
実際は、大きく違っていた。
875しがない物書き:2011/04/24(日) 18:33:46.50 ID:kH3JsXl5
まず目に入ったのは、大勢のギャラリー。
それをさりげなくすりぬけて、真九郎はプレーヤーを見る。
割と痩せた男。それも、真九郎と同年代。
少し野性的な顔立ちをしているが、それはゴリラのように不細工だという隠喩ではない。
では何と表現すべきか。真九郎は、言葉を探した。
だが、見つからなかった。
とにかく。
真九郎は思った。とにかく、文句なしで『美形』に分類される顔だろう、と。
しかし…
真九郎は、なんとも不思議な男だ、とも思った。
理由は一つ。
この男は、野性的な顔立ちでありながら、どことなく王族のような雰囲気をもまとっていたのだ。
だからだろう。
ギャラリーには女も大勢いて、彼を携帯で撮ったりもしている。だが、彼に声をかける者は一人もいなかった。
この男は、美形である魅力より、まるで王のように近寄りがたい雰囲気のほうが強い。
野性的に整った顔。
王のような雰囲気。
そして、アーケードゲーム機。
まるでアンバランスな取り合わせだが、この場においては、なぜかきれいに調和していた。
その指は、切彦を超えるほどのスピードで踊る。
数秒後、再び切彦を沈黙させた。
そして、彼は自分で《ゲーム終了》のボタンを押し、一言も発せず席を立った。
そこで、真九郎は初めて気づいた。
その男が、星領学園高校の制服を着ていたことに。
876しがない物書き:2011/04/24(日) 18:35:15.93 ID:kH3JsXl5
今回はここまで。
日曜だというのに人がいないなぁ…
寂しいなぁ…
877しがない物書き:2011/04/26(火) 23:09:34.01 ID:YqzHe2hU
えっと…
読んでくださってる方がいらっしゃるのかわかりませんが、ご報告。
今週末はひょっとしたら投下できないかもしれません。
理由は、この先どうするかまだ決めかねているからです。
一応いくつかアイデアはあるのですが、その中のどれにするのがいいか
まだ検討中なのです。連休に間に合うかどうか分かりません。
申し訳ありません。
BOLTさん戻ってきてくれないかなぁ……
878BOLT:2011/04/27(水) 11:07:25.50 ID:tnmcA+/v
どうも、僕も書いてるんですが。
なかなか続き思いつかないもので・・

続きは少し書いてあるので近いうちに投下したいと思います。
僕はあなたのSS楽しみにしています。
続きは気長に待ちますよ^^

879しがない物書き:2011/04/27(水) 22:40:03.66 ID:UcmGCiPv
ありがとうございます!
これからもがんばりますのでよろしくお願いします!!
880しがない物書き:2011/04/29(金) 16:08:18.92 ID:Q11pD8SM
第6話 20090911 18:59
五月雨荘 5号室

「真九郎く〜ん!ごはん、できた?」
五月雨荘に響く、若い女の声。
「…環さん、たまにでいいですから、食事くらい自分で作ってくださいよ」
真九郎は、声の主である空手家―――武藤 環を呆れたような目で見て言った。
「え〜、だって真九郎君の作るご飯のほうがわたしのよりおいしいんだも〜ん!」
「だったらせめて食費くらいは自分で払っ「ひど〜い!真九郎くんったら、女の子にたかる気なの!?」…『たかる』っていう言葉の意味、知ってます?」
文句を言いつつも、真九郎の手は止まらない。
あっという間に、今日の夕飯であるチャーハンが完成。
環の分を盛り付け、手渡す。
「…はい、できましたよ」
「わーい、ありがと!」
環は、そのまま持参したスプーンとともに居間にあがり込み、だらしなく座る。
「俺の部屋で食べるんですか?」
「うんっ、みんなで食べたほうがおいしいじゃない?」
ニコニコと、無邪気に笑う環。その笑顔を見ると、真九郎は何も言えなくなってしまう。
それに―――
一緒に食べてくれる誰かがいることは、真九郎にとっても、うれしいことだった。
「…まぁ、いいですけど」
自分の分もできたので、真九郎は手際よく皿に盛り、環のもとへ。
着席し、
「いただきます」
と声をそろえた。
何気なく、テレビをつける。
2秒後、ものすごく後悔した。
今は7時。
NHKでは、ニュースをやっている時間だった。
881しがない物書き:2011/04/29(金) 16:43:35.28 ID:Q11pD8SM
「4986名もの犠牲者を出した、アメリカの国際空港爆破テロ事件から今日で8年。爆破されたサンフランシスコ国際空港の慰霊碑前では…」
一日中、注意深く避けていたものを見てしまった。
あの日、真九郎の人生を変えてしまった事件。
どこぞのテロリストによって仕組まれた、無差別テロ。
真九郎が、(戸籍上は)天涯孤独の身となってしまった原因。
全ての元凶。
真九郎は、それが今日だと知っていた。自分の家族全員の命日を、忘れるはずがない。
だからこそ、彼は避け続けていた。
せっかく時が徐々に癒してきていた心の傷が、また開いてしまいそうで。
せっかく心の奥底に封印していた、家族の死にざまや、家族との思い出が、また蘇ってきてしまいそうで。
しかし―――
それを見てしまったにもかかわらず、彼は普通に夕飯をおいしいと感じることができ、「環さん、水要ります?」と隣人をいたわることもできていた。
おもわぬ自分の冷酷さに一瞬驚く。しかし、思い直す。
(まあ、こんなものなのだろう)
家族を失った悲しみは、今でも深く、辛い。だが、それでも平静さを失わない程度には、その悲しみを『忘れる』ことができていたのだろう。
それはそうだ。人間は、悲しかったこと、辛かったことを『忘れられる』ようにできている。
だからこそ、過去にとらわれすぎずに生きていける。
家族を失って、8年。さすがにいつまでも頭からその事が離れない、ということはなくなっていた。
だから、
「そういえば、五月雨荘にね、新しく引っ越してきた人がいるみたいだよ」
と環から聞いた時、真九郎は普通に驚いた。
「え!?いや、だって、ここはいつも満室じゃないですか!?なのに…!」
「なんかねー、3号室みたいだよ。いっぱい段ボールおいてあったし」
「どんな人ですか、その人?」
「それがさ、いまだに姿見せてないんだよ。一応転居祝いに余ってたエロビデオまとめて置いといたんだけどさ。さっき見たらそのまんまだったし」
またやったのか。
呆れ顔で見る真九郎。
環は、しばらく考えた後、目を輝かせ、
「そうだ!」
と叫び、真九郎を指さす。
「真九郎君!!チャーハンもって、偵察してらっしゃい!!」
882しがない物書き:2011/04/29(金) 17:32:40.03 ID:Q11pD8SM
「…は!?」
「チャーハン、余ってるでしょ?それ『転居祝い』ってことで持ってくの!」
「ダ…ダメですよ、そんなの!だいたい、あれは闇絵さんの」
「今日はどっか行っちゃってるよ、闇絵さん。男がギャーギャー言わないの!ほれ、しゅっぱ〜つ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…で、なんで環さんまで?」
「だって真九郎君ばっかりずるいでしょ?こんな面白いこと」
「別に面白くなんか…」
「でも面白そうだから乗ったんでしょ?」
ぐうの音もでない。
それにしても、昼間の一件といい、自分はこんなに好奇心が強かっただろうか?
そんなことを思いつつ、真九郎は3号室前へ。

「やっぱビデオはそのまんまか」
それは、環のセリフ。
「気配、探ってみなかったんですか?」
「軽く探ってたんだけど、途中で寝ちゃったんだよね」
それにしても。
環はだらしない女だが、戦闘面では超一流。
その彼女が、軽くとはいえ気配を探ったのなら、おそらく気づけたのではあるまいか。
とすれば――――――
新参者は、環に気付かれないほど気配を殺したまま、引っ越してきたのだろうか。
そんなことをする必要性は?
(ひょっとして、ここに引っ越してきた奴は、普通の奴じゃないのか…!?)
真九郎の胸に湧き上がる、わずかな危機感。
だが。
そんなものでは抑えきれぬほど、真九郎の好奇心は沸き立っていた。
意を決し、扉を軽くノック。
「ごめんください。隣のものですが!」
 少し大きめの声と、軽く添えたウソ。
 返答なし。
もう一回。
「ごめんください!隣のものですが!」
 やはり返答なし。
留守にしているのだろうか…?
真九郎の胸に広がる、かすかな失望感。
「…ねえ、ちょっとこれ見てよ、真九郎君」
環の声。
それは、深刻そうにも聞こえたし、また、必死で笑いをかみ殺しているようにも聞こえた。
何事かと思い、環のほうを見る。
環が指差しているのは、ドアの下におかれた大き目の紙袋。
環の転居祝いがどうしたのだろうと思い覗いてみると。

 まず目に入ったのは、一枚の短冊のような紙。
 そこには、太いマジックペンで「ありがとうございました」と殴り書き。
 汚い、しかし読みやすく、どこか品のようなものさえさえ感じられる、奇妙な字。
 次に目に入ったのは、大量のAV。
 しかし、それは明らかに環のものではない。
 環のものは、すべて古いビデオだが、そこにあったのはすべて真新しいDVDだった。
 当然、真九郎のものではない。となると、必然的に持ち主は一人しかいなくなる。
 よく見ると、DVDのケースには『輸入品』『規制対象』の文字があるものまで。
 その字は、手紙と全く同じ印象。

「…結構面白そうな男の子みたいだね」
ここには、まともな人はこないのか。
真九郎は、心底そう思った。
883しがない物書き:2011/04/29(金) 17:35:42.54 ID:Q11pD8SM
今日はここまでで。
なんかあっさり書けちゃいました。
感想・疑問点などなど、書き込んでいただければ幸いです。
884しがない物書き:2011/04/30(土) 18:08:36.06 ID:ZlwwkdID
第7話 20090912 07:43
星領学園高校 1年1組

昨日の「謎の隣人事件」から一夜。
真九郎は、念のため朝に一回3号室をチェックしてみたが、変化なし。
やはり、隣人は現れなかった。
(どこかに、出かけてるのかな)
そういえば、闇絵も昨日から姿を見せていない。
(なんか、気になるなあ)
まあ、人間なら当然だろう。
突然やってきた、予期せぬ新しい住人。
そのうえ、あの環の新居祝い攻撃(?)に対する切り返し方。
まともな奴ではない、と思う。
でも、面白そうな奴だ、とも思う。
「――あ」
そういえば。真九郎は思った。
なぜ、新参者は、環への届け物を自分の部屋のドアの所に置いといたんだろう。

そんなことを考えているうちに、学校へ到着。
通りなれた道を行き、自分の教室へ。
いつものように、『彼女』はそこにいた。
「おはよう」
『彼女』―――村上銀子は、当然のごとく無視した。
真九郎は、いつものように銀子に近寄り、菓子パンを渡す。
銀子は、一切画面から目を離さずに受け取った。指の動きからして、おそらく今が山場なのだろう。
真九郎は少しだけ銀子の様子を見つめた後、自分の机に戻ろうとした。

 そこで、初めて気づいた。

いつもは常に空席となっているはずの、真九郎の右隣の机。
そこに、一人の青年が座っていたことに。
その青年は、興味深いものを見るかのような目で、真九郎と銀子を見ている。
野性的に整った顔。
王のような雰囲気。
そして、昨日は気づかなかったもの。
深い瞳に宿した、理知的な光。
「―――あ」
真九郎は、思わず声を上げる。
その青年は、昨日切彦を完膚なきまでに叩き伏せたゲーマーだった。
銀子は、振り向きもしない。気づいていないのかもしれないが。
場に流れる、沈黙。
それを破ったのは、青年。
「お前等ってさ、恋人なのか?」
885しがない物書き:2011/04/30(土) 19:24:00.85 ID:ZlwwkdID
一拍。真九郎と銀子の脳が、その意味を理解するのに要した時間。
さらにもう一拍。銀子と真九郎の顔が、真っ赤になるのに要した時間。
そして。
動揺した真九郎は、反射的に言った。
「な…何言ってんだよ!いきなり!」
いくら鈍感な真九郎でも、そこまでストレートに言われれば気づかないわけがない。
低い、銀子の声。
「…あなた、バカなの?」
いつの間にか銀子も振り向き、怒りに満ちた目を向ける。
しかし、青年は。
「…ほほーう」
愉快そうな顔を崩さず、視線を銀子に向け、じっと見つめる。
5秒後。
「『怒り』…いや、『羞恥』のほうが強いな。『思ってもみないこと』ではなく、『隠していること』を暴かれた時の表情…
で、そこに『羞恥』が加わるってことは…」
何やらぶつぶつとつぶやいた後、一言。
「…お前、いわゆる『ツンデレ』ってやつ?」
真九郎には、聞き覚えのない単語を銀子に放る。
その直後に銀子が浮かべた表情を、真九郎はしっかり読み取った。
怒り。
凄まじい、怒り。
その感情を声に乗せ、銀子は目の前の青年に火を噴く。
「あなたって人間のクズなのかしら?いや違うわね。人間のクズに失礼よね、そんなこと言ったら。ええと…」
久々に、感情を露わにした銀子を見た。
いままでに真九郎が聞いたことも口にしたこともない恐ろしい声と文言。
背筋が凍るとはまさにこの事か。銀子は静かだが、確実にキレている。
ある意味、鉄腕より恐ろしい。心なしか、足も震えだした様な気がする。
しかしその激流を、目の前の青年は。
「…あんまり言うと、そこの奴に悟られるぞ。今は気づいてないみたいだから、安心しろ。」
一言で、あっさりと沈めて見せた。
こいつは、ただ者ではない。
真九郎の本能は、そう告げた。
―――だが。
不思議なことに、本当に不思議なことに、真九郎はなぜか、目の前の青年に人間として魅力を感じた。
「…フッ」
青年は、ちろりと笑う。
「お前ら、面白い奴らだな。お名前は?」
「…他人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るものでしょ?」
銀子は、一度静まりはしたが、それでもかなり怒っているようだ。
「おっと、すまん。君の言うとおりだ」
そういうと彼は席を立ち、黒板へ。
チョークを持つと、黒板に勢いよく字を書き始める。
「オレの名は『一成』」
汚いが、品のある字。
チョークを置くと、彼は二人が字を見やすいように場所を移動する。
そして、皮肉めいた笑みを浮かべ、言った。
「『歪空 一成』と申します。今後ともどうかよろしく」
真九郎は思った。
―――こいつ、変わってるな。
銀子は思った。
―――この男、まさか。
886しがない物書き:2011/04/30(土) 19:27:37.32 ID:ZlwwkdID
今日はここまでで。
感想・疑問点などなど、書き込んでいただけると幸いです。
…ここ、BOLTさん以外の人来てないんでしょうか……
887名無しさん@ピンキー:2011/04/30(土) 20:48:31.06 ID:8iPqAq1u
書いてて楽しいんですか?
888しがない物書き:2011/04/30(土) 21:06:39.92 ID:ZlwwkdID
小説を書くのは滅茶苦茶楽しいですよ!もちろん!
よかったらあなたもどうですか?
889名無しさん@ピンキー:2011/04/30(土) 21:54:37.30 ID:+jrVRRIt
いるけど警告見てスルーしてる
890しがない物書き:2011/04/30(土) 22:31:23.61 ID:ZlwwkdID
僕のせいでしたか…
ごめんなさい、今度からは迂闊な発言は控えるようにします。
891名無しさん@ピンキー:2011/04/30(土) 23:15:34.97 ID:+jrVRRIt
発言が気に食わなかったとかではなくて、自分の趣向に合わなそうだと判断しただけなので気にせず続けでください
892BOLT:2011/04/30(土) 23:50:15.11 ID:oO6Yc08O
いいねえ、物書きさん
俺は好きだよこういうの。
新しい強いキャラっていうのが

この新キャラと悪宇商会との
対決とかも見てみたいです。

さあ、俺もいま書いてる分の続き投下したいんだけど
美夜ss書いてるwordファイルがどっかいったww

もう少し待ってください。
893黒髑髏:2011/05/01(日) 03:10:19.31 ID:4axvMss6
GJ!!原作のキャラとこういう新しいキャラの絡みは大好きです♪ところでさ、原作のキャラでNLモノは無いのカネ?  
894しがない物書き:2011/05/01(日) 08:06:31.11 ID:Zp0I8wPE
第8話 20090912 06:21
星領学園高校 新聞部

結局、『歪空 一成』と名乗った男は、あれから真九郎たちに接触してくることはなかった。
見たところ、彼はほかの誰にも接触を図ってはいないらしい。
朝のホームルームで転校生として紹介された時も、彼は「…歪空一成です。よろしく」と簡潔にしか話さなかった。
今日一日。彼は一度も自発的に他のものとかかわりを持とうとすることなく、真九郎の隣で―――
寝ていた。ぐっすりと。
眠っていてもなお、王族のような雰囲気はいささかも衰えることなく彼を覆っていた。そのせいだろう。彼は今日一日、他人からも接触を受けることがほとんどなかった。
今日、彼をなんとなく観察していてわかったこと。それは彼の賢さ。
数学の時間、割と厳しいことで有名である教師が、一成に「歪空!この問題を解け!」と怒りに満ちた声で指示。
その問題は、単元の中で最高難度を誇る問題。銀子さえも一苦労していたようだ。
おそらく、見せしめにするつもりだったのだろうが、一成は。
それまで閉じていた教科書を開き、あっという間にその問題の場所を探り当てると、一瞬だけ目を細めた。
そして、
「…X=4.72,Y=2,43,Z=6」
指示されてから、わずか10秒。
こともなげに、即答して見せた。
一瞬、クラスにどよめきが走る。教師は、一瞬唖然とした顔をしたが、すぐに怒り出す。
「ゆ、歪空!お前、カンニングしただろう!」
一成は、その様を眺める。まるで、汚いものでも見るような目で。
そして。
「…これだからアホは嫌いなんだよ」
隣の真九郎にだけ聞こえる声でぼそりと言うと、真九郎のほうを向き、一瞬笑う。
「これから面白いもの見せてやるよ」と言う、ガキ大将のように。
そして。
「…半径10メートル以内にいる人間の中で、一番頭いいのはオレだ。オレより優秀な人間がいないのに、なんでカンニングできるんだよ」
簡潔にして最もわかりやすい論理を言葉に乗せ、一成は教師に傲然と言い放つ。
一瞬、相手は茹で上げたカニのように真っ赤になって反論しようとしたが、なぜか何も言えない。
おそらく、彼も気づいたのだろう。
彼の全身が全身にまとう、圧倒的な自信に。
「…座れ」
かろうじで、そう絞り出すのが精一杯だった。
一成は玉座につく王のように、ゆったりと座った。
そして、彼は。
クラスメートから、畏怖と敬遠を得た。
2人の人間を除いて。
895しがない物書き:2011/05/01(日) 08:31:38.98 ID:Zp0I8wPE
そして、昼休み。
真九郎は、銀子に腕を掴まれた。
「今日、新聞部に来て。何があっても、必ず来て」
そう告げる銀子の顔は、これまで見てきた彼女の表情の中でもかなり険しいもの。
「…何かあったのか?」
「いいから」
詳しくは新聞部で、ということなのだろう。
「…わかった」
こうして、午後の授業にろくに集中できないまま、真九郎は放課後を迎えたのである。

「…どうしたんだ?」
それは、7分間の沈黙に耐えかね、真九郎が発した言葉。
その声は、おそらく届いているだろうが、銀子は無視。
カタカタと、キーボードをたたき続ける。
「…あんた、気づいてないの?」
30秒後、銀子は問う。
「…何に?」
何のことだかわからない真九郎としては、ただ困惑するしかない。
銀子は椅子を回転させ、真九郎を冷たい目で見る。
―――そういえば、こいつは鈍かった。
ますます困惑する真九郎に、銀子は仕方無く答えを教える。
「…あいつよ。歪空 一成」
…え?
それは、真九郎にとって、全く予想外の言葉。
「銀子、あいつのこと気にしてたのか!?」
「…あたりまえじゃない」
嘘だ。ていうか、これは。
あの銀子が。
一日しか会っていない男を、その、気にしてたってことは。
「…好きなのか?」
その時、銀子が浮かべた表情。
朝のあれと全く同じ。
真っ赤になり、叫んだ。
「そ……そんなわけないでしょ!!!バカ!!」
久しぶりに、銀子の大きい声を聞いた。
「じゃあなんなんだよ」
ここは、さすが銀子。
真っ赤になったまま、しかし、声は幾分落ち着け、彼女は言う。
「歪空 一成」
「いや、だから何?」
「《歪空》」
銀子がアクセントを置いてくれたおかげで、初めて気づいた。
「《歪空》一成でしょ?あいつ」
やはり、自分は鈍い。
 《歪空》。
それは、彼にもなじみ深い《崩月》と同じ裏十三家の一つだった。
896しがない物書き:2011/05/01(日) 08:32:42.41 ID:Zp0I8wPE
今回はここまでで。
感想・疑問点などなど、書き込んでいただければ幸いです。
897しがない物書き:2011/05/01(日) 11:37:11.51 ID:Zp0I8wPE
またやっちまった!
804 06:21→16:21
898名無しさん@ピンキー:2011/05/01(日) 12:22:01.68 ID:jmWr8hH8
>>896
単なるキャラ潰しにしかなってないと感じる
片山キャラが出てきちゃ、貴方のオリキャラのかませ犬として潰されるだけなんで正直不快
このSSには片山作品を扱う必然性あんのかと思う
899名無しさん@ピンキー:2011/05/01(日) 13:32:18.85 ID:SnjsP43A
気に食わなきゃスルーでおk
わざわざ書き手を減らすようなこと言わんでくれ
最初にもオリキャラ出るって注意書きしてあるしな
できれば投下ごとにいってもらいたいが
900しがない物書き:2011/05/01(日) 15:17:17.96 ID:Zp0I8wPE
ご意見、ありがとうございます。
898さん、おっしゃる通りだと思います。
しかし、僕のssは「片山さん方が作られた漫画紅の世界に、物書きが作った異なる主人公が介入したらどうなるか?」
というストーリーにしていこうと考えています。
僕のssには、紅真九郎と歪空一成という2人の主人公がいます。
この先、一成を通して、さらに何人かのオリキャラも出す予定です。
ですから、最初の警告に「オリキャラ出るよ」「本来の展開とは変わるよ(IFストーリーになるよ)」
と明記しました。
読んでくださる方は、もちろん多ければ多いほどうれしいです。ですが、そういうssが好みでないのであれば、899さんの言われる通りスルーされたほうがいいと思います。
長文失礼しました。これからもよろしくお願いします。
901名無しさん@ピンキー:2011/05/01(日) 15:53:04.67 ID:jmWr8hH8
最初に断っておけばいいってもんでもないと思うがね
899の言い分も分るから以降はスルーでいくわ
902黒髑髏:2011/05/02(月) 00:10:20.32 ID:lphkt0wr
オリキャラも悪くないと思うヨ。続きに期待してマス!
903しがない物書き:2011/05/03(火) 10:58:16.75 ID:93bIwrzm
今から続きを投下しようと思いますが、その前に。
これからは899さんのアドバイス通り、投下ごとに警告文を乗っけようと思います。
―警告―
このssは、漫画版紅をベースとする非エロ小説です。
また、オリキャラが登場します。
オリキャラの干渉により、紅の本来の展開とはいろいろと変化が生じます。
このssは、オリキャラが「もう一人の主人公」的な立場で描かれますので、真九郎が登場しないことがしばしばあります。
なお、物書きの文章力は「皆無」です。
上記の警告を読んだうえで、「それでも良い」と思われる方のみ、このssを読んでください。

今回はイーグルの視点で進行します。
では。
904しがない物書き:2011/05/03(火) 11:46:19.37 ID:93bIwrzm
第9話 20090912 17:35
バー「ツァラストラ」

高校からの帰り道、バスに乗り込もうとしたオレは、携帯の着信音に気付いた。
メールならシカトしても良かったのだが、それは電話だった。
相手の表示は、『アルタイル』。
オレはため息をついてバスの列から外れ、電話に出た。
「…何だ?」
『やあ、僕だ。どうだい?新しい高校は?』
「特に変わりはない。要件がそれだけなら切るぞ」
『待ってくれ。話したいことがあるんだ。いつもの所で会おう』
「今話せよ」
『〈業務〉にかかわることなんだよ。30分で来てくれ。じゃあな』
オレの返事を待つことなく、奴は切りやがった。相変わらずマイペースな野郎だ。
本当なら行きたくないが、すっぽかそうもんなら奴は家まで飛んでくる。
それは避けたかったので、オレは奴のもとへ向かうことにした。

新宿。
黒く塗りつぶされていく空と反比例するように、町は活気づいてきていた。
煌びやかなネオンや、人の笑い声というものは、闇の中でこそ花開くものだと思う。
一瞬新作のゲームのことを思い出し、ゲームショップへ行きたくなった。
が、オレはプロだ。
お楽しみは、仕事が終わってからにしよう。
オレは、どんどん繁華街から離れ、裏路地へと入っていく。
すぐに人気はなくなり、あたりには腐敗した生ごみのにおいと酔っぱらいのゲロの香りが匂う空間と化してきた。
このあたりの交番には、警官はいない。パトロールという名目で、常にどこかへ行っている。
まあ、職質しただけで撃たれたり、目を合わせただけで青龍刀で切り付けられるような場所に行きたい奴は、だれもいないに違いないが。
そんなことを考えているうちに、オレは目的地に着いた。
バー「ツァラストラ」。
ビルの地下4階に位置する、薄汚い店だ。
立地条件の悪さと、店内の雰囲気とで、客はめったに来ない。
それだけに、オレたちのような『こっち』の人間が大きな声では言えないことを話すときには、使い勝手の良い店だった。
オレは、階段を降り、分厚い木製の扉を開けた。
905しがない物書き:2011/05/03(火) 12:20:14.19 ID:93bIwrzm
いつもの、薄汚い店内。
その一番奥、最もトイレに近いところに相棒はいた。
オレはそこが嫌いなのだが、相棒は大好きらしい。
オレは、そこに歩み寄る。
相棒は、一人チェスをしていた。
「〈業務〉の話って?」
オレはそう声をかけ、白いポーンを動かす。
「『ソレイユ』に入ったんだ。割といい仕事がね」
そういって、相棒は黒いナイトを動かした。
しばらくは、駒の音だけが響く。
しばらくして、相棒は言った。
「赤馬 隻という男を知ってる?」
「いや」
「≪レッドキャップ≫とも呼ばれてる」
オレは、しばらく記憶を探る。
脳裏に浮かぶ、白い髪。
「…ああ。『ソレイユ』の資料でチラッと見たな」
そういって、オレはビショップをずらす。
完全に予想外だったらしく、相棒は目を見開いた。
「そいつに、何か届けるものが?」
「殺してくれ」
沈黙。
奴にとっては、たぶん目の前の局面をどうしのぐかで頭がいっぱいなんだろう。
一方、オレは。
「…How much?(いくらで?)」
報酬のほうが気になっていた。
「42」
相棒は、うわの空で答えた。
「え?ホントに割が良いな。42万なんて」
「奇跡的に『第五種危険任務手当』がついたんだよ。で、どうする?」
「ああ、もち…」
ろん、という言葉がなぜか言えなかった。
レッドキャップは、確かにそれなりに名は通っているが、オレでさえ思い出すのに時間がかかったほどの小物だ。
なのに、『第五種』。
何か、裏があるのか。
人の死には興味ないし、殺人にも抵抗はないが、『裏』は気になる。
「言っとくけど、何も言えない。僕も知らないからね」
そういって、相棒はビショップを動かし、防衛。
「ただ、噂によると、そいつは近々大仕事をするらしい。裏社会のパワーバランスを崩しかねないほどの。
それを嫌がる人たちが、依頼してきた―――そんなとこだろう。おまけにそいつ、悪宇商会所属なんだ」
なるほど。
要は「悪宇商会から応援来るかもしれないから」ということだろう。
1対大勢になる危険アリ。
だからこその『第5種』。
しかし、オレには関係ない。
最近、何かと物入りで、そろそろ収入がほしかったところ。
「…決行は?」
「1か月後。時期が近付いたら連絡する」
「わかった。あと…」
オレはクイーンをずらし、「チェックメイト」と宣告。
血の気の引いた相棒に、
「お前が見つけた五月雨荘とかいうところ、なかなか面白そうだ。あそこに引っ越したのは正解だった。ありがとよ」
と、告げた。
906しがない物書き:2011/05/03(火) 12:22:00.76 ID:93bIwrzm
今日はここまでということで。
感想・疑問点などなど、書き込んでいただければ幸いです。
907しがない物書き:2011/05/04(水) 15:37:03.37 ID:HDeFwroV
おのれ、GWにかこつけて課題ドサッと出しやがって…

はい、どうも。しがない物書きです。
続きを考えましたので、投下開始します。
―警告―
このssは、真九郎と物書きが作り出したオリキャラにより展開される漫画版紅をベースとしたssです。
オリキャラの介入により、本来の紅とはストーリーが変わります。
文章力・構成力も皆無です。
「オリキャラ・ifストーリーOK」と思われる方のみ、時間つぶしのつもりでお読みください。

今回は真九郎視点で進みます。
いよいよ3号室の新参者の正体が…!(バレバレでしょうけど)
では。
908しがない物書き:2011/05/04(水) 16:11:11.83 ID:HDeFwroV
第10話 20090912 16:43
星領学園高校 新聞部

「…何か分かった?」 
「だめね。どこにも《歪空》の動向についての情報はない」
ほとんどの生徒が下校した後の閑散とした校舎に響くのは、キーボードを叩く音。
真九郎は、今日転校してきた一人の生徒―――歪空一成についての情報を銀子に集めてもらおうとしていた。
自分にもなじみ深い《裏十三家》。
その関係者―――おそらくは血族がこの高校にやってきたことを、銀子はどうしても「偶然」と割り切ることができなかったのだろう。
真九郎も少しはそういう気持ちがあったので、銀子の提案を受け入れたのだ。
しかし、それは徒労に終わった。
おそらく国内でも指折りの情報屋である銀子の情報網をもってしても、《歪空》の情報はほとんど得られなかった。
それは銀子の腕が未熟であるというよりは、裏に流れている情報量そのものが少なすぎるということなのだろう。
わかったことはごくわずか。
まず、《歪空》は《円堂》程ではないにしろ、衰退することは防げている家であること。
そして、『歪空一成』は、本家の直系の人間である(らしい)こと。
あとはすべて闇の中。
今も裏稼業を続けているのか。どのような特徴を持った家なのか。
まったくわからない。
「…あんた、本当に心当たりはないの?何か恨みを買うことしたとか」
「ないと思う。ここしばらくは、ろくに仕事してないし」
「でも、おかしいでしょ。崩月先輩もいるこの高校に、さらにもう一人。絶対に偶然じゃないと思うんだけど…」
確かに、おかしいとは思う。
だが、少なくとも、自分や銀子の命を狙っているわけではないだろう、とも思う。
絶対的な証拠はないが、そんな気がする。
理由は、朝のこと。
あの時、自分は完全にあいつの存在に気付いていなかった。
銀子がどうだったかはわからないが、おそらく同じだろう。
あそこなら、彼にはいくらでもチャンスがあった。さっさと殺して、その場から立ち去ればよかったのだ。
けれど、一成はただ静かに見ていた。興味深いものを見るような目で。
だから、あいつは少なくとも刺客ではない。
そう言うと、
「バカ」
一言のもとに斬り捨てられた。
「今日は様子見で、明日実行ということも十分ありうるわ。どこまでお人よしなのよ、あんた」
909しがない物書き:2011/05/04(水) 16:40:22.22 ID:HDeFwroV
確かに、銀子の言う事のほうが理にかなっているのだろう。普通に考えれば。
そして、自分の直感を貫き通せるほどの強い根拠を、真九郎は持っていなかった。
だから真九郎は、銀子に真面目な顔で
「とにかく、気をつけなさい。あいつ、信じちゃだめよ。今のところは」
と言われた時、とりあえず
「ああ。お前もな」
と言ってしまったのだろう。

通いなれた道を通り、真九郎は五月雨荘へ。
最後の角を曲がって五月雨荘の正面に出た時、真九郎は自分の部屋の明かりがついていることに気付いた。
(ヤバ、消し忘れたかな。それとも環さんかな)
とりあえず真相を確かめるため、真九郎は小走りで自分の部屋へ。
部屋の前まで来て、あとは扉を開けるだけとなった時、しかし真九郎は足を止める。
何故か。
「…え?」
真九郎の部屋の流しは廊下と接しており、その窓は磨りガラスとなっている。
だから、向こうがぼやけて見えるのだ。
おまけに、ここの壁は薄い。
そして、わずかに窓はあいていた。
向こうに見えたもの。それは人影。
向こうから聞こえたもの。それは何かを炒める音。
向こうから匂ってきた香り。それはおそらく焼きそばの香り。
真九郎は、考える。
料理人は誰だ。闇絵は絶対にありえない。あの人がそんなことするのは地球最後の日ぐらいだろう。
となると―――
まさか、あの人が。
日ごろから飲んだくれてて、下ネタ好きのダメ大学生が。
ついに。
ついに。
真九郎は、胸から湧き出すものを抑えられなかった。
扉を勢いよく開け、声をかける。
「環さ」
「おかえりー!」
「お帰り。少年」
「よう。遅かったな」
フリーズ。
おかえりとは、ちゃぶ台の前でだらしなく座る環の声。
お帰りとは、その隣で上品に茶をすする、いつの間にか帰っていた闇絵の声。
では、もう一人のは?
その声は、まだ少ししか聞いていなかったのにもかかわらず。
真九郎の脳に、しっかり焼き付いていた。
台所に立って、フライパンをふるっていたのは――――
Yシャツを着た、歪空一成だった。
彼は真九郎の目を見ると、陽気な声で言った。
「今度、ここの3号室に引っ越してきたんだ。よろしくな」
その時、真九郎が思ったこと。
―――やっぱり、こいつ変わってるな。
910しがない物書き:2011/05/04(水) 16:43:45.99 ID:HDeFwroV
今日はここまでということで。
感想・「ここ日本語としておかしいよ!」などなど、書き込んでいただければ幸いです。
5月だというのに、北海道は寒いです!
911しがない物書き:2011/05/05(木) 18:59:22.15 ID:iZyLlYno
連休も今日で終わりか…

どうも。しがない物書きです。
今日も続きを投下しようと思いますが、その前に。
―警告―
このssは、オリキャラ&ifストーリー&文章力ゼロの三文ssです。
そういうのが嫌な方はスルーしてください。

五月雨荘に引っ越してきた一成に、真九郎は…!?
では。
912しがない物書き:2011/05/05(木) 19:54:16.67 ID:iZyLlYno
第11話 20090912 18:35
五月雨荘 5号室

なぜしっかり鍵をかけておいたはずの俺の部屋に、勝手に侵入してやがるのかとか。
なぜその状況を環や闇絵は見過ごし、あまつさえ夕飯を作ってもらってるのかとか。
そもそもお前が上機嫌で作ってやがる焼きそばは、俺の部屋の冷蔵庫から盗った食材を使ってるんじゃないのかとか。
色々と言いたいことや問い質したいことはあったのだが、聞く前に一成と環と闇絵が答えてくれた。
「お前の部屋、ずいぶん簡単なカギだな。針金突っ込んだら普通に開いたぞ?」
「…いや、あのs」
「食材代と不法侵入の慰謝料なら冷蔵庫に貼っといた」
見ると、磁石でくっつけられたしわひとつ無い二千円札。
「真九郎くん、この子凄いんだよー!AVとか裏ビデオとか、めっちゃ詳しいの!わたしもびっくり!」
「そりゃすごいですね…」
「なかなかに興味深い青年だよ、少年。どこで知り合ったんだ?君の友人だと言っていたが」
「一成君のことは『青年』って呼ぶんですか…って、え?」
なぜか、友人ということにされているようだ。
「まあいいからとりあえず座れ、真九郎。もうできるぞ」
「…あ、ああ」
「ああ」と言ってしまった以上、真九郎は座るという行動をとるしかなくなった。
とりあえず、右隣の環に小声で聞く。
「環さん、あいつどんな感じでしたか?」
環は、不思議そうな顔をして真九郎を見る。
「なんで?あの子、真九郎くんのお友達でしょ?」
「違いますよ、今日俺のクラスに急に転校してきたんです」
「あ、そうなの。ふーん…悪い子じゃないと思うんだけどな。なんで嘘ついたんだろ」
環は、少し考え込む。
「…それより、あいつの名字に気づきました?」
「うん。自己紹介してもらったもん。歪空君っていうんでしょ?」
どうやら、気づいていないらしい。
「あの、《歪空》っていうのは」
「裏十三家だろう?」
突然、左から声がかかった。
「…闇絵さん」
「それも、おそらく直系だ」
「え?」
「雰囲気でわかるさ。相変わらず鈍いな、少年」
そんな事、と言いかけた時に、環がぼそりと呟いた。
「…ああ、だからか。妙に隙がなかったんだよね。普通の高校生じゃないとは思ったけど」
真九郎はまだ、ひょっとしたら同じ名字なだけで本家とは縁もゆかりもない人間なのではないかと少し期待していたのだが。
やはり、それは無かった。
913しがない物書き:2011/05/05(木) 20:24:19.65 ID:iZyLlYno
歪空一成は、間違いなく裏十三家の一人。
さて、どうしたものかと考える真九郎に、声をかけたのは闇絵。
それは、闇絵からすれば当然な、しかし真九郎から見れば思ってもみない一言。
「で、だからなんだというのだ?」
「…え?」
思わず闇絵の顔を見る真九郎。
美しい顔は、無表情だった。
「彼はおそらく《歪空》の人間だろう。それで?」
「いや、だって」
「人間は家柄では絶対に量れない。それを一番よく知っているのは君ではないのかね?」
あ。
真九郎は、一成を『裏十三家』として評価しようとし、しかもそれの愚かさに今の今まで気付かなかった自分に愕然とした。
家柄からでは人の本当の姿は見えないと、今までの経験から心底わかっていたはずなのに。
「…そうですね」
つくづく自分は馬鹿だと思った。今までの経験を、何一つ活かせていない。
うつむく真九郎に、闇絵は少し微笑んで言う。
「君は大丈夫だよ、少年。少なくとも、君は自分が愚か者だと知っている。真の愚者は、自分が愚かだということにすら気づかないものだからね」
それは闇絵なりの、励ましだったのかもしれない。
顔をあげ、闇絵の顔を見る真九郎。
「闇絵さん…」
真九郎の胸に広がる、心地よい気持ち。
それは、一撃で吹っ飛ばされた。
ちゃぶ台に何かが叩きつけられる音とともに。
びっくりした真九郎は、音の正体を見る。
ホカホカと湯気を上げる大量の焼きそばを乗せた、1枚の大きな白い皿。
それを作った主は、真九郎の前に腰を下ろすと、言った。
「さ、食おうか。腹ペコだ」
文字通り、山のようにそびえたつそれを呆然と見る真九郎。
環と闇絵は、すでに箸を持ち、今にも食べ始めようとしている。
確かに腹ペコだ。が、この量は…
まあ、言ってもしょうがないか。
真九郎も、箸をとった。
914しがない物書き:2011/05/05(木) 21:15:24.58 ID:iZyLlYno
今日はここまでということで。
感想・「ここ日本語としておかしいぞ」などなど、書き込んでいただけると幸いです。
やはりオリキャラ・ifストーリーともなると、需要は多くないみたいですなぁ…
915しがない物書き:2011/05/07(土) 17:09:10.99 ID:5fGurnfy
SQ19発売まであと12日か…
でも北海道は2〜3日遅れるかな…

どうも、しがない物書きです。
続きを考えたので投下します。
―警告―
このssは、オリキャラ&ifストーリー&文章力ゼロの三文ssです。
そういうのが嫌な方はスルーしてください。
916しがない物書き:2011/05/07(土) 17:10:52.91 ID:5fGurnfy
結論から言うと、それは美味だった。
真九郎は、満たされた腹を抑えつつ、目の前の空になった皿を見る。
「ふは〜っ、ごちそう様!一成くん、料理も上手なんだね!」
「ふむ、なかなか個性的な味だな。美味だったぞ、青年」
「おいしかったよ。ありがとう」
それが、三人の感想。
「まあ、普通に作っただけだったんですがね。喜んでもらえたのならよかった」
それが、一成のコメント。
そうなのだ。
一成の作った大量の焼きそばは、どこにでもある普通の焼きそばだったはずなのだが。
何故かそれは、真九郎の胃袋にするすると入っていった。なんというか、飽きが来ないのだ。
何か隠し味でもあるのかと気になった。なので、本当に口に出した。
返答は。
「バラしちゃったら隠し味になんねえだろ」
ますます気になったが、たぶん言わないだろうと思ったので黙っていた。
かわりに、いくつか質問をしてみることにした。
それは、揉め事処理屋としての情報収集ではなかった。
目の前の一成という男に、人間として純粋に興味がわいた。
真九郎は、ちゃぶ台を挟んだ向こう側で眠そうな顔をしている一成に向き直り、話しかける。
「なあ、一成君…」
「呼び捨てろ。同い年だろ?」
いきなり出鼻をくじかれた。
しかし、ここでは引き下がらなかった。
「じゃあ、一成」
「何だ?」
「好きな食べ物って何?」
「ピーマン」
「好きな食べ物は?」と聞かれたときに、ピーマンと即答する人間は、これまで真九郎の周囲にはいなかった。
やはり、変わっている。
少し驚く真九郎を、一成は楽しそうに見る。そして、言った。
「初対面の人間へのアプローチとしては、まあ妥当かな。転校生の自己紹介コーナーって訳だ」
そして、部屋を見渡す。
917しがない物書き:2011/05/07(土) 17:12:22.66 ID:5fGurnfy
闇絵はすでに帰った後だが、環は隅っこで漫画を読みながら寝っころがっている。
「…まあ、あの人なら大丈夫か」
つぶやき、真九郎に向き直る。
「で?」
「え?」
「好きな食べ物だけ聞いて終わりか?」
あ。
「じゃあ…」
その先に発しようとした言葉を一成はさえぎり、言う。
「嫌いな食べ物は酢、好きなことはゲーム、AV観賞、睡眠、読書。
嫌いなことは退屈なこと。得意なことはボードゲーム、物を記憶すること、パルクール、読心術。
あと、なんかある?」
一本調子に続けた一成を、真九郎はまじまじと見つめる。
「お前…」
「ん?」
「やっぱり変わってるな」
恥ずかしげもなく真顔でAV観賞と言ってしまえるあたり、やはり普通の高校生とは違う。
もっとも、特に驚きはしない。普通じゃないものへの耐性は、その辺の高校生よりは断然上だろうと思っている。
それは過去の経験から得たものであり、仕事から得たものだった。
「パルクール」というのが何か、少し気になる。
真九郎は、ふと思った。
この男なら、普通なら答えにくいような質問にも、今のように平気で答えてしまうのではないか、と。
だから。
真九郎は、珍しく直球で訊いてみた。
「…お前は《歪空》の直系なのか?」
「ああ」
こともなげに、あっさり即答。
一成は続けて何か言うことはせず、愉快そうに微笑みながら見つめてくる。
そして。
一成の表情がすとんと消えた。真っ直ぐ真九郎の目を見てくる。その目から、一成の感情をうかがい知る事は真九郎にはできなかった。
―――あれ?
一成の顔を見ているうちに、真九郎は不思議な既視感を覚えた。一成と会ったのは、これが初めてのはず。なのに、同じような眼差しを、どこかで見た気がする。
誰かに似ている。誰だったか。
しかし一成は、真九郎のことなどおかまいなしに尋ねてくる。
「…オレの苗字が何を意味するか知ってるってことは、お前も『こっち』の人間なのか?」
『こっち』とは何か。
真九郎は、正確に理解していた。ゆえに、正直に言った。
「ああ」
と。
一成の様子につられて思わず平然と答えてしまったが、内心ではかなり緊張していた。
目の前の男は、自分で裏社会の人間だと明かした。後ろ暗さなど全く感じさせぬ、堂々とした声で。
そいつに対して、自分は「自分もだ」といってしまった。もしこの場に銀子がいたら、「不注意だ」と怒られるだろう。とはいえ、そんなことを今更気にするわけにもいかない。真九郎は、一成の次の言葉を待つ。
「そうか、なにしてるんだ?」
一成は、真九郎の予想に反し、気軽に訊いてきた。
「…揉め事処理屋」
答えると、そこで初めて一成が驚いたような顔をした。
「ほお、おまえがか!」
そして、一成は薄く笑って言った。
「オレは運び屋だ」
918しがない物書き:2011/05/07(土) 17:16:25.16 ID:5fGurnfy
あれ?妙に横に長いなぁ…
はじめて「word」なるものを使ってみたのですが、やはりまだうまくいきませんね…
まぁいいか。
今日はここまでということで。
感想・「ここ日本語としておかしいよ!」・疑問点などなど、書き込んでいたたければ幸いです。
919しがない物書き:2011/05/07(土) 18:50:38.45 ID:5fGurnfy
あ、忘れてた。
今回の話は…
第11話:後編
20090912 19:07
五月雨荘 5号室
です。
920しがない物書き:2011/05/07(土) 23:15:07.43 ID:5fGurnfy
ふと思ったんですけど、オリキャラNGの人とOKの人って、どっちが多いんでしょうかね?
個人的にはNGの人のほうが多いような気がしますが。(「だったらお前は何で書いてんだ」というつっこみは無しでお願いします)
921BOLT:2011/05/08(日) 01:29:48.53 ID:G7x33KxA
俺は全然OKなんですが・・
意外とこのスレはオリキャラNGな人多いんだね
922名無しさん@ピンキー:2011/05/08(日) 07:59:25.75 ID:gepa1ahe
オリキャラが原作キャラを上から目線で詰ったり、諭したり無双するのがパターンだからね。
嫌われないわけがない
923名無しさん@ピンキー:2011/05/08(日) 12:12:11.44 ID:DwiONyxu
メインはちゃんと原作キャラで、オリキャラは完全な脇役やその他大勢としてしか出さないとか、
世界観だけ借りて、キャラも徹底してオリキャラしか出さない、とかいうならまだしも、
>>922も書いてるような、オリキャラを原作キャラ差し置いてメインていうか主役に据えて
大活躍(笑)させて原作キャラにオリキャラマンセーさせたりするパターンが正直大嫌いだ。
原作の世界を、ただ自分のキャラを活躍(笑)させる為の都合の良い場にしてる、と言えば良いか。
二次創作ってそういうものだろ、って向きもあるのかも知れないけど、自分はどうも受け付けない。

そういうキャラを二次のアンソロ同人誌でほぼ主役として登場させて、誰も尋いてないのに
プロフ添えて自信たっぷりに“うちの子”とか呼んじゃうような痛い奴を見た時に
ひたすら気持ち悪かった経験が実際にあるから余計印象悪いんだな多分。

なので、上の人のも、今回オリキャラについての質問?があったからこの機会に書いてみてるけど、
SSは申し訳ないけど警告の時点で自分には合わなそう(下手したら地雷)だと思って読んでない。
とはいえ内容貶したりはしてないしする気も無いよ(つーかそもそも読んでないわけだが)。
ちゃんと完全スルーを守ってます。
924名無しさん@ピンキー:2011/05/08(日) 15:10:04.62 ID:GFaNMl+L
ここだけの慣習かもしれんが何故投下してないときも常時コテなんだ
925名無しさん@ピンキー:2011/05/08(日) 18:41:48.76 ID:mN3LWhY0
反応が薄いのはオリキャラ云々とは関係ないと思う 原作世界より自分の話の方
が面白い事を他人に納得させられる事を証明すればそれですべて問題は解決っしょ
もっともカタヤマンの本は8冊もあって全部それなりの文章量と面白さがあるわけ
だけど勝算はあるのか疑問というか何というか だから今までのとこはスルーして
るわけだが
926しがない物書き:2011/05/08(日) 19:11:11.08 ID:t7G3NY8+
成程。
僕のキャラを片山さんキャラにマンセーさせるつもりは全くないですが、いつの間にかそんな感じになってしまう可能性は大いにありますね。
気をつけなければ。
僕の駄ssが片山さんの名作に勝てるとはかけらも思ってはいませんが(戦車と三輪車を一騎打ちさせるようなものです)
僕の力を可能な限り振り絞り、『片山さんの小説とは比べ物にならないが、読む時間が無駄にはならないもの』
と呼べるようなものを作っていこうと思います。
時間はかかってしまうと思いますが、どうかよろしくお願いします。
927名無しさん@ピンキー:2011/05/08(日) 22:49:55.07 ID:jSNkre46
そうなんだよね。オリキャラだから駄目ってわけじゃなくて、
典型的なオリキャラ話だからスルーされてるだけというオチ
928名無しさん@ピンキー:2011/05/08(日) 23:16:57.31 ID:0dyl34QE
>僕のキャラを片山さんキャラにマンセーさせるつもりは全くない
マンセーっていうのは言葉の通りの動作って事ではないからねえ
たとえば戦う前から敗北してブルった蓮杖は完璧にマンセーしたといえる
そういう意味ではもうやっちゃったことになるな
929BOLT:2011/05/09(月) 00:06:33.54 ID:G7x33KxA
まあ、自分が好きに書いたssを投下して
それがこのスレのみんなに合わなくて
多少あれこれ言われるのは仕方ないものなんだね。
こういう掲示板っていうのは。
っていうか、しがない物書きさんのssがダメで
なんで俺の超駄文ssが叩かれてないのか超不思議ww
俺はこの人のss嫌いじゃないんだが・・

しかし、ここの人たち意外と厳しいなあ・・
まぁ、それだけみんな片山先生のキャラが好きで
片山先生の作品を大事に考えてるんだよね。

俺は今のところオリキャラ出す予定はないが
ちょっとss書くの怖くなってきたw
930名無しさん@ピンキー:2011/05/09(月) 00:22:43.82 ID:WWfrDwyw
いや、むしろこのスレの民度高すぎてびびったくらい。スルー出来てるんだもの。
普通はこの内容なら叩かれまくると思う。優しいよまじで。

自分から反応ないけど人いない?オリキャラ嫌いなのかな
とか話振れば、そりゃ反応される。スルーしてたんだよ、言わせんなよと。
931BOLT:2011/05/09(月) 01:02:22.05 ID:YiKGFB5B
そうなんだな・・
マジで無知だったわ俺
今度ss書く時は気をつけるよ
932名無しさん@ピンキー:2011/05/09(月) 04:01:01.71 ID:rNMQx8Be
個人的な意見だけどあなたのSSは細かいところで好みの違いを感じるだけで反感を
感じたりはしない 多分あなたなりの原作キャラへの愛着を感じるからだと思うけど
しがないさんのは踏み台にしてる風に見えちゃうんだよな そうするなら話の内容にも
それだけの価値とか理由とかをだせなきゃだめだからまあ難しいと思うわ

あと930の意見は自分も同意 基本的には穏やかなスレでしょ
933名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 00:06:30.74 ID:rNMQx8Be
934名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 02:32:26.15 ID:cTJBmvs5
オリキャラを出すに当たって、その強さをわかりやすく表現するために原作キャラと対峙させる
のはよいとしても、もう少しやり方を考えて欲しかったね。

例えば、「第4話 ヘリポート」だったら

リンと一触即発のところで蓮杖が「…ペンは有るかね」と譲歩を示す

「蓮杖さま!?」と、思わず不満げな声をあげるリン

「リンの実力を疑うわけではないが、この者の腕前もなかなか侮れぬものと見た。
もし万が一にも“相討ち”などということになっては、私が困るのだよ。
お前ほどの実力と忠義心を兼ね備えた者など、九宝院の力を以ってしても探し出すのは容易ではないからな」と蓮杖

「なんと勿体なきお言葉……」と、引き下がるリン

という展開にすれば、蓮杖という人物(器)の大きさも、リンの強さも損なうこと無く、
得体の知れないオリキャラの実力も感じさせることができたと思うのたが、どうかな?
935名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 02:51:01.34 ID:cTJBmvs5
まあ、レスが欲しかったみたいだから、気になるところを述べさせてもらったけど、
しがない物書き氏の文章は上手いし、読みやすいと思うよ。

ただ、やはり二次創作の場合には、原作キャラの扱いについて配慮する必要があるだろうね。

936名無しさん@ピンキー:2011/05/10(火) 18:25:38.36 ID:Wy0NMexq
「オリキャラは添えるだけ」だよ
937しがない物書き:2011/05/10(火) 22:40:50.84 ID:pupSxfEg
たくさんのご意見、ありがとうございます。
>>928さん
少しやりすぎてしまったかなと思います。
>>930さん
自分で「スルーせよ」と言っておきながら、KYでした。以後気を付けます。
>>934さん
…タイムマシンがないのが悔やまれます。できれば一か月前に戻りたい…

同じ趣味を持つ友人に相談してみたところ、「読者の人は真九郎の活躍が見たいのであって、一成を見たいわけじゃない。オリキャラは超重要人物にはなれるが、主人公は無理だ」
と言われました。全くその通りだと思います。
そこで、考えてみました。
真九郎と一成の立ち位置を、デスノートでいう「夜神月とL」にしてみてはどうかと。(物書きは月が主人公だと思ってます)
先日書きこんだ「真九郎・一成ダブル主人公体制」は撤回させていただきます。
ですが、それでも一成は重要人物としてこれからも登場します。
また、登場人物の性格は、物書きの主観で決定します。人によっては、「こんなの真九郎じゃねえ」「誰だこの紫」という感情を抱かれてしまうかもしれません。
しかし、それでもできる限り多くの方が楽しめるようなssを作れるよう全力を尽くしていきますので、よろしくお願いします。
938BOLT:2011/05/12(木) 00:51:26.65 ID:fBUfAl4K
そんじゃあ続きを書いたファイルが見つかったので
俺も久しぶりに投稿します。

これ以降続きは書いてないので
またしばらく投稿できないけど・・

相変わらずのキャラ崩壊・駄文は、皆様の広い心で見逃してw
この前の続きです。
939BOLT:2011/05/12(木) 00:52:19.23 ID:fBUfAl4K


「ふぅ・・・」
雪姫の電話から2日後、今日は休日。美夜は自宅アパート近くの人気のない喫茶店にいた。
逮捕直後はまさか自分がこんな風にして社会に出て、人並みの人生を満喫できるとは思えなかった。本当に贅沢なことだ。

しかし、今はその贅沢を満喫している余裕がなかった。これも贅沢な事だろうか。

理由は2つ、1つは昨日、電話した内容、柔沢ジュウが結婚していたこと。
美夜自身これは自分の事のように嬉しいのは確かだが、なにか胸に複雑なものがうずくのはなぜだろうか?

そしてもう1つは―――――――
「久しぶりだね。元気だった?美夜ちゃん」
「・・・うん、久しぶり雪姫ちゃん」

――――久しぶりに友人に会える喜びからである。

940BOLT:2011/05/12(木) 00:54:27.67 ID:fBUfAl4K


「そっか、雪姫ちゃんはOLさんかあ」
「エヘヘ、まあね」
雪姫は現在、大手の音楽関係の企業の会社員として働いているらしい。
その会社は結構有名なので驚きである。
音楽といってもTVでみるような歌手アーティストとかそういうのではなく、
音響機器関連のデザイン関連の事務員として働いているらしい。
そういうのは、電化製品の会社がするものだと思ってたが、
雪姫は音楽会社の名義でそういった仕事をやっているらしい。

「まあ、ややこしくてあたし自身も良く分からない場所にいるんだよねー。
 まあそれでもきちんと働けて、きちんと生活できてるから不満も文句もないよ。」
「うん、雪姫ちゃんも元気そうで良かった」
話しているうちに注文したハンバーグが雪姫の席にきた。

「不満も文句もないんだけど・・・。」
雪姫がハンバーグとともに置いてあったナイフを持つ

「不安があるとすれば美夜、友人である君がそんな暗い顔をしている事かもな」
「え?」
雪姫が先ほどとは違う眼差しで美夜を見据える。
941BOLT:2011/05/12(木) 00:58:36.96 ID:fBUfAl4K


「先程言った通り、あたし自身今いる場所がよく分からない。というよりは想像できなかったんだ。今この場所にいる自分が。」
「雪姫ちゃん?」
「君もそれは同じことだろう?あたしも君もお互い友人としてこうして喫茶店でダベるなんて、数年前からは想像付いたか?」
「・・・・」
すこし冷たい雰囲気、だが、とても暖かい笑みを私に向けながら続ける

「そういうものだ人生は。何も考えず衝動だけで少年院に、君に会いに行ったことを思い出す。
 あんな風に何も考えない、あたしらしくもないあの行動が、今こうして君といる時間につながった。
 君を心から友人と呼べる絆にまでつながった。だから――――」

雪姫が優しく笑う
「美夜、君も君自身の思うままに動いてみろ。
 柔沢に謝りたいんだろ?言いたいことがあるんだろ?」
「雪姫ちゃん・・・」

「あたしも女だ、君の感じることは大体分かる。たしかに柔沢は結婚して幸せになった。
 だが、自分が会いにいって柔沢の幸せな気持ちを壊してしまうんじゃないか?なんて考えている。違うか?」
 雪姫ちゃんは心が読めるのだろうか?どこまでも私の心を読み当てる

「その疑問にあたしが答えてやる。そんなわけがないだろう?
 あたしの友人があたしの好きな男の幸せを壊すはずがない。
 あたしの友人を邪険にする男をあたしが好きなはずがない。
 なにを馬鹿なことでウジウジしてるんだ美夜。」
「――――っ」
「君が会えば柔沢も喜ぶと思うぞ。今も心のどこかで柔沢は君の事が引っ掛かっていたみたいだったしな。
 それと―――――――」
雪姫が言葉を紡ぐ

「また何か悩んでるんだったら、遠慮せずにあたしに言え。
 何度も言うが君は私の友人だ。


 ―――――もう君はひとりじゃないんだからな」




なんていうか

とりあえず人がほとんど居ない喫茶店を選んで本当に良かった。




だって、こんなこと言われて涙を我慢するのなんて無理だもん。

942BOLT:2011/05/12(木) 01:08:25.16 ID:fBUfAl4K

日も暮れてきて喫茶店を出て、美夜は雪姫に聞く

「ねえ、雪姫ちゃんってさ・・ひょっとしてジュウ君の事まだ好き?」
「・・・実を言うとハイ、そうです。」
雪姫がはずかしそうに呟く。

「まあ、でもまだ諦めてないしね〜」
「・・・んん?」
美夜は一瞬思考停止した。

「ちょっと待って?」
「ん?どうしたの美夜ちゃん?」
「まだジュウ君を諦めてない?」
「うん」
「ええと・・ジュウ君は結婚してるよね?」
「うん。そうだね。」
「つまりジュウ君は愛する奥さんが居ます。ここまでは大丈夫だよね?理解してるよね?」
「うん、そりゃ結婚したら奥さんは出来るよね。当たり前じゃん?何言ってんの?美夜ちゃん」
「それじゃあもうジュウ君とは恋人とか結婚とかは無理でしょ?」
「何言ってんの?まだ愛人枠が残ってるじゃん?
 それに柔沢くんは今のところ愛人は一人もいないわけだし?」
「―――――ハァ?」

「いやーでも今日の美夜ちゃんの相談であたしも心のわだかまりが吹っ切れたよ!」
「え?なに、どういう事?」

「まさか、美夜ちゃんも柔沢くんの愛人枠を狙っていたなんて!」

「・・・・・・・・」


アレ?思考が追い付かないんだけど。
943BOLT:2011/05/12(木) 01:09:33.89 ID:fBUfAl4K


「・・ねえ雪姫ちゃん?私何の事で悩んでたか、ちゃんと分かってるよネ・・?」

「もちろんだよ?要するに柔沢くんが結婚したのを知って、柔沢くんに昔の事を謝って、なんとか愛人になりたいけど
 新婚ホヤホヤの柔沢くんの幸せムードをぶち壊しにしちゃうんじゃないかなって悩んでるんでしょ?
 でも大丈夫!美夜ちゃん可愛いし、なんたって柔沢くんの初恋の子なんだし!あたしも結構スタイル自信あるんだよ?
 2人で攻めれば柔沢くんもコロッと落ちるって!」

「・・・・・・・」



尋常じゃない頭痛に襲われる中、美夜は今日の雪姫の言葉を思い返す。


―――――――美夜、君も君自身の思うままに動いてみろ

―――――――あたしも女だ、君の感じることは大体分かる。

―――――――自分が会いにいって柔沢の幸せな気持ちを壊してしまうんじゃないか?なんて考えている。違うか?

―――――――君が会えば柔沢も喜ぶと思うぞ。今も心のどこかで柔沢は君の事が引っ掛かっていたみたいだったしな。


まさか、この子、私の悩みをそんな風に受け取っていたのか?
だとしたら私のあの涙は一体・・・


「ねえ!美夜ちゃん!」

「・・・・なにかなぁ?雪姫ちゃん?・・」

まっすぐな目で雪姫は言う

「いっしょに仲良く柔沢くんの愛人になろうね!
 なんたって美夜ちゃんはあたしの友達なんだから!」

「・・・・・は・・あははは・・・・・」




なんていうか




数分前の私の涙、一滴残らず返せ。


944名無しさん@ピンキー:2011/05/12(木) 01:09:49.64 ID:xy+Nxl0E
支援
945BOLT:2011/05/12(木) 01:15:58.45 ID:fBUfAl4K

うん、笑える話を書くのは俺には無理だw
なんていうか、似てるといわれた雪姫と美夜の
決定的な違いを書きたかったんだ。

とりあえずまたしばらく投稿はできないけど
気長に続きを書きます。



それと、万が一にも俺のss読んでる人がいれば
読んでくれてありがとうございます。
946名無しさん@ピンキー:2011/05/12(木) 01:37:55.02 ID:xy+Nxl0E
>>BOLT氏
美夜SSの投下、乙でした

こちらも気長に待たせていただきますので、また続きを書いてください
947名無しさん@ピンキー:2011/05/12(木) 01:42:04.84 ID:iCQqHL97
万が一とか自虐はいらねーんだよ
948しがない物書き:2011/05/15(日) 12:56:14.61 ID:hOIHaRdk
BOLTさん、gjです!
とても面白かったです。次回の投下楽しみにさせていただきます!

ここで御報告。
定期考査が迫ってきておりますので、3週間ほど続きを投下できません。
私事で申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いします。
949名無しさん@ピンキー:2011/05/15(日) 19:05:08.87 ID:626Gh2rI
ここ暫くキツい書き込み多いからどうしようかと思ったけど
>ここで御報告。
>定期考査が迫ってきておりますので、3週間ほど続きを投下できません。
>私事で申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いします。
いい加減こういうのやめたほうがいいと思う ブログじゃないんだから
950名無しさん@ピンキー:2011/05/15(日) 20:33:28.71 ID:hOIHaRdk
>>948
発言する前に言っていい亊かどうか考えたほうが良いぞ。
迂闊な発言が多い気がする。他の作者の人の事見習ってくれ。
せっかくssが面白くても、マナー違反じゃ意味無いだろ?
951名無しさん@ピンキー:2011/05/16(月) 13:58:38.19 ID:93/o5wfz
>948 名前:しがない物書き メール: 投稿日:2011/05/15(日) 12:56:14.61 ID:hOIHaRdk  New!

>950 名前:名無しさん@ピンキー メール: 投稿日:2011/05/15(日) 20:33:28.71 ID:hOIHaRdk  New!
>>>948
>発言する前に言っていい亊かどうか考えたほうが良いぞ。
>迂闊な発言が多い気がする。他の作者の人の事見習ってくれ。
>せっかくssが面白くても、マナー違反じゃ意味無いだろ?


???
952名無しさん@ピンキー:2011/05/18(水) 13:16:30.48 ID:hV275r03
もうNGにぶちこんどきゃいいだろ
いちいち構うな
953しがない物書き:2011/05/18(水) 22:46:28.47 ID:TlZyRAPf
どうも、しがない物書きです。
今から続きを投下しますが、その前に。
―警告―
このssは、オリキャラ登場&ifストーリー&文章力ゼロの三文ssです。
そういうのが苦手な方はスルーしてください。

なお、948&952は、僕の書き込みではありません。
おそらくは、僕の名前を勝手に借りた通り魔的なイタズラでしょう。(なぜ僕かは謎ですが)
これに気づいたときは、大きなショックを受けました。
抗議文を掲載することも考えましたが、やるだけ時間の無駄かと思いますし、読み手の皆さんもそんなものは読みたくないことでしょう。
なので、僕個人としては、完全スルーという対応を取らせていただきます。
結構怒っていますので、少し乱文になってしまいました。お許しください。

あれから一夜、一成は…
では。
954しがない物書き:2011/05/18(水) 22:47:44.72 ID:TlZyRAPf
八年間受けた苛烈な修行の賜物か、真九郎の体内時計は一般的な高校生のそれに比べてかなり正確だ。
今朝も真九郎はいつも通りの時間に(時計が合っていれば、だが)起床し、いつも通りに三人分の朝食を用意し、制服に着替えた。
自分の分は先に手早く食べてしまい、残り二人の分はいつも通りにラップをかけておく。
あとは、各々好きにするだろう。
そう考えて、真九郎は部屋から出て階段を下りる。
そして、靴を片方だけ履いた時、初めて昨日ここに来たクラスメイトのことを思い出したのである。
(そういえば、あいつはどうするのだろう)
昨日の料理の腕を見る限り、おそらく自分の朝食を作るのには不自由しないだろうが。
念のため、三人分作っておくべきだっただろうか。
(戻って、もう一人分作っとこうかな)
一瞬だけ迷う。
結論は。
(まあ、今さら言っても仕方ないか)
昨日来たばかりの得体のしれない新参者のために、遅刻する気にはさすがになれない。
真九郎は一瞬部屋に戻ろうとした足を返し、そのまま玄関へと向かった。
955しがない物書き:2011/05/18(水) 22:49:09.94 ID:TlZyRAPf
第12話 『サボり男と眠り姫』
20090913 07:49
星領学園高校 一年一組

がらりと、通いなれた教室の扉を開ける。
いつも通りの、日常の光景。

静かな教室には、カタカタというテンポの良い軽い音が響き続けている。
無愛想な幼馴染の背中に向かって、真九郎は声をかけた。
「…きのう、一成が五月雨荘に引っ越してきた」
昨日の会話の重要な部分も一緒に伝える。
といっても、二つだけ。
一成が《歪空》の直系だと認めたこと。
どうやら、運び屋をやっているらしいこと。
「!…そう」
それが、教室で朝一番に交わされた言葉だった。
意外と薄い幼馴染の反応に、一瞬拍子抜けする真九郎。
しかし、自分が声をかけた瞬間から、あきらかにキーボードを叩くスピードは上がっていた。
訊くまでもない。彼女は、一成に関する情報を集めているのだ。
「そんなに疑うことないじゃないか」
そう言いかけて、やめた。
裏社会の事情を知らない者には、おそらく銀子の対応は過敏すぎるように見えていることだろう。
しかし、そんなことは全くない。というか、おそらく真九郎のほうがおかしいのだろう。
≪裏十三家≫とは、呪われた血。
夜の闇に暗躍し、数多くの命を奪ってきた家。
今ではその半数近くが断絶、あるいは廃業しているとはいえ、長年培われてきた様々な技術は、今もなお次代へと伝えられ続けていることだろう。
八年間も自分を優しく厳しく育ててくれた、《崩月》のように。
その上、半数は廃業しているということは、半数は存続しているということ。
その半数に《歪空》が入っていないという保証はどこにもないのだ。
しかも情報が全く入ってこないとなれば、厳重に警戒されるのは至極当然である。
だが、真九郎は一成のことを≪裏十三家≫であるという理由で警戒することがどうしてもできなかった。
「人や書物から得た知識だけでは、真実はわからぬものだ」
自分が守ると心に誓った少女の言葉が、そうさせているのかも知れない。
そんなことを考えているうちに、どうやら銀子は情報の海を一通りさらい終えたらしい。
結果は、不機嫌そうな顔を見れば、一目瞭然である。

とまあ、こんな具合に、世間一般の常識からは少し外れているとしても、真九郎の日常は今日も以前と変わらず続けられた。
以前とは、すなわち三日前から。
昨日は一成がいた、隣の席。
そこは、結局放課後を迎えるまで、誰も座ることがなかった。
早い話が、一成は学校に来なかったのである。

終業のベルが鳴り、真九郎は急いで玄関へと向かった。
今日は新聞部には寄らない。銀子には、もう伝えた。
特に表情を変えることもなく、銀子は「そう」とだけ言った。
こんなにも家路を急ぐ理由は一つ。
きょうは、紫が五月雨荘に遊びに来ることになっているのである。彼女を待たせたくはない。
なにより、彼女の声を聴くことを、真九郎は内心楽しみにしているのだ。
一緒にいて楽しい相手という条件には、年齢はほとんど関係ないと思う。
そんな思いを天が助けたか、真九郎は実にスムーズに公共交通機関に乗り、五月雨荘に着く事ができたのである。
いよいよ五月雨荘が見えてきて、真九郎は少し小走りになる。
そして、門に入ったところで。
真九郎は、目を丸くした。
まず見えたのは、大量のトランプで作られたピラミッド。
それと、その傍らで膝立ちになり、一心不乱にカードを積み上げていく、なぜか制服姿の一成。
そして、一成の背中にもたれかかるようにして、天使のような顔で眠る九鳳院紫だった。
―――とりあえず、話を聞くか。
真九郎は、トランプを積み上げている一成に歩み寄った。
956しがない物書き:2011/05/18(水) 22:50:17.81 ID:TlZyRAPf
今日はここまでということで。
感想・疑問点などなど、書き込んでいただければ幸いです。
957麗しの変態王子:2011/05/20(金) 02:56:34.66 ID:qMYNjt7G
GJ!オリジナルなストーリーも悪くないね。俺から見れば面白いからいいけど、あまり長く続けると飽きられちゃうヨ。時に、原作のキャラだけでエロパロ小説は無いのかィ?
958名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 02:24:52.16 ID:K7sb0x1t
「よお」

「やあ、柔沢」

「久し振りだな、伊吹」

「ここのところ、大会とか、練習試合が立て込んでてね……あ、アイスティーを一つ」

「主将も大変だな。俺はコーヒーで」

「いや、そうでもないよ。皆、優秀だし、
俺のことをしっかりサポートしてくれている」

「そうか……ところで最近、光とはどうなんだ?」

「どうもこうも、前から言っているが、俺と光さんは、なんでもないよ。まあ、以前のように仲良くはしているけどね」

「本当かよ? あんなにベタ惚れだったのに、全然信じらんねーよ」

「一度突き放したのは俺のほうだし、愛想をつかされちゃったんじゃないかな」

「ふーん……うまくいくと思うけどな、お前らなら」

「そうかな」

「そうだろ」

「……まあ、君はアレな感じだし、しょうがないのかな」

「? なんだ?」

「いや、光さんも、苦労するなと思って」

「はあ?」

「こっちの話だ……と、噂をすれば」

「ん?」
959名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 02:25:09.86 ID:K7sb0x1t

「柔沢ー!! なに伊吹さんに絡んでんのよーっ!」

「うぐぉっ!? ひ、光!?」

「あんた! いくら伊吹さんが良い人だからってたかってんじゃないわよ! あんたの血は何色!?」

「現在進行形で赤い血が流れてんだろうが! てか、いきなりなにすんだ!」

「善良な一般市民を、野獣の手から救いにきたのよ!」

「誰が野獣だ!」

「やあ、光さん。久し振りだね」

「あ、伊吹さん。大丈夫でしたか? こんな不良に絡まれて、可哀想に」

「はは、本当にね」

「てめ、伊吹!」

「ほら柔沢! あんたはこっち来なさい!」

「ああ!? どこ連れてく気だよ!?」

「あんた、この前あたしの傘壊したお詫びに、荷物持ちするって言ったでしょ」

「はあ!? 今からかよ!」

「当然! でなけりゃ、なんであたしがあんたを引きずって歩かなきゃならないのよ!」

「知るか!」

「いいから、ほらいくわよ」

「わかったから放せよ! 自分で歩ける」

「そんなこと言って、逃げる気でしょ! 騙されないわよ!」

「なんでだよ!」

ギャーギャーワーワー!!

「まったく……罪作りな男だよね、君は……」

「はあ……本当に、羨ましいよ、柔沢」
960名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 02:25:39.43 ID:K7sb0x1t
『………………わかりました』

『いえ、今、言わせてください』

『今、はっきりと返事をさせてください』

『………………』

『あなたのことは好きでしたけど』

『これから好きになる人に失礼だから』

『私は、もう二度と、あなたを好きになることは無いと思います』

『これからは以前みたいに』

『先輩と後輩として、仲良くしてください』



『私に恋を教えてくれて』


『ありがとうございました!』



961名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 02:28:43.74 ID:K7sb0x1t
おわり

半分他人のせいと言うことは、残り半分は自分のせいと言うこと
もしも伊吹が想いを伝えたとして、それが叶うことはきっとないんだろうなって
そんな妄想
962名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 02:30:25.25 ID:K7sb0x1t
あと、一人称、他人称が違うとこは指摘してください
原作が手元にないんで確認できなかったんです
すんません
963名無しさん@ピンキー:2011/05/24(火) 02:47:22.34 ID:ELErqVIz
光ちゃんかわいい
964名無しさん@ピンキー:2011/05/25(水) 05:08:15.93 ID:97WUkqiM
>>962
乙〜
>一人称、他人称が違うとこは指摘してください
光は初登場で一度フルネームで呼びかけて以降は一部例外を除いて苗字も名前も呼ばずに
あんた・あいつ・こいつで通してるね 呼び捨ては今のところ藤嶋香奈子とナイフ雪姫かな
あと空手部の主将は鏑木で伊吹は副将
965名無しさん@ピンキー:2011/05/25(水) 06:34:46.97 ID:Uk5Qz44f
>>964
あ、鏑木って伊吹より一つ学年が上だとおもったので、
鏑木が卒業して伊吹が主将になった感じの設定で書いてました
もし違ってたら……一連の問題(光のこととか)が発覚して鏑木が退部させられたとか
966しがない物書き:2011/05/27(金) 21:04:47.77 ID:XNG2OAO0
前回は書き込めませんでしたが
BOLTさん、乙でした!
とても面白い話でした。続きを楽しみにさせていただきます!
958-960さん、前半の明るさと後半の切なさのバランスが素晴らしかったです!

>>957さん
お褒めの言葉、ありがとうございます。
自分もダラダラ続くことは避けたいのですが、漫画紅の全エピソード+オリジナルストーリー1個
という進め方をするつもりですので、どうしても長くなってしまう予定です。
やはりどこかカットするべきなのでしょうか…
967BOLT:2011/05/27(金) 21:59:02.99 ID:saXG3DrN
>>966
しがないさん、さすがに全エピソードは長すぎるんじゃないかなww
見せ場だけを凝縮して、最低限の長さにしたほうが
読んでるほうは絶対面白いと思うよ。
あくまで俺が読むとしたらだけど

あんまりssが長いと、書き手側は苦労して書いたのに
読み手側は長すぎて読む気がしなくなっちゃったりする事が多いんで・・
968しがない物書き:2011/05/27(金) 22:24:00.95 ID:XNG2OAO0
そうですね…
長く続けすぎれば飽きられてしまって当然ですよね
注意するようにします。
969名無しさん@ピンキー:2011/05/28(土) 01:51:40.06 ID:wpLlzm+p
>全エピソード+オリジナルストーリー1個
それはブログや個人サイトでやる事
さすがにおかしいとおもうわ
970名無しさん@ピンキー:2011/05/28(土) 13:56:54.88 ID:DQGU0bgs
放置しろよ。日本語通じないし、マジキチだぞ
971名無しさん@ピンキー:2011/05/30(月) 08:45:55.12 ID:aQEQd4wu
ここエロパロだよね
エロどこ?
972名無しさん@ピンキー:2011/05/31(火) 09:46:12.11 ID:JhZ6MWHP
上の方にあるよ
973名無しさん@ピンキー:2011/06/01(水) 22:56:21.32 ID:92XxmERB
あった
974名無しさん@ピンキー:2011/06/02(木) 02:13:04.75 ID:axGLVBvc
素直w
975名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/10(金) 12:27:55.53 ID:cuM5MOWn
久しぶりに来たら結構SSがあったのでwiki更新しておきました。


私は絶奈のおっぱいの話しかまだちゃんと読んでいないので
作者様方、
直したいところがあったら訂正よろ。

あと人を呼ぶために意図的にageるのでなければ
E-mail (省略可)に『sage』と書いてから
書き込んでくださいな〜
976名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/10(金) 20:01:11.92 ID:0eswGOX+
977名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/17(金) 13:24:42.46 ID:wUajP/7e
「雨か」

「はい」

「お前じゃない、天気のコトだ」

「はい、そのつもりでお答えしました」

「そうか」

「はい、今日は午後の降水確率は70%で、この後から更に雨脚が強くなる予報でしたので」

「そうだったか。チェックしてなかったな」

「そんなコトもあろうかと……どうぞ」

「流石、準備がいいな」

「光栄です」
978名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/17(金) 13:36:33.57 ID:wUajP/7e
「んじゃ、帰るか」

「はい」

「ん、あれ? お前の傘、穴空いてんじゃん」

「は? あ、その様ですね……ですが大丈夫です。本当に小さな穴ですし、この程度の雨なら」

「いや、この後から雨が強くなる予報だったんだろ? ならこっち使えよ」

「いえ、それではジュウ様が」

「俺は男だし、ちょっとやそっとの雨じゃどうにもなんねーよ。ほら、そっち寄越せ」

「いえ、ジュウ様の性別は関係ありません。従者が王を雨に濡らすなどもっての他です」

「雨から従者も守れない王なんてなんの価値がある?」

「そのお言葉だけで十分です。さ、行きましょうか」
979名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/17(金) 13:37:45.31 ID:wUajP/7e
「お前がこっちの傘を使わないと、俺は傘をささずに帰るぞ」

「お戯れを。そんなコトはなんの意味もありません」

「お前が濡れずに帰れる」

「…………」

「…………」

「……わかりました。ではこうしましょう」

「ん?」

「…………あ、相合傘で、帰りましょう」

「……は? い、いやいや……それこそ意味ないだろ。お前がいくら小柄でも、俺と一緒じゃ二人ともはみ出しちまうぞ」
980名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/17(金) 13:38:53.56 ID:wUajP/7e
「大丈夫です。私は濡れても、ジュウ様が濡れなければ」

「だからお前が濡れるなら、俺はこの傘は使わずに」

「いえ、先ほどジュウ様は、この傘を私が使わなければ、と仰いました。ですから、私が濡れるかどうかは関係ありません」

「じゃああれだ、そこらへんの置き傘を借りて」

「王であれ、下々の者の所有物を無許可に拝借するのは宜しくありません」

「…………」

「……では、行きましょうか」

「……おう」

「はい」
981名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/17(金) 13:40:18.74 ID:wUajP/7e
なんかこんな感じの登下校だろうなぁと思って書いた
電波安定しねえ
982名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/17(金) 14:06:31.51 ID:frc2FikB
おお…原作に沿った感じで、しかも雨可愛い
乙!
983名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/17(金) 14:17:38.19 ID:nprHAmWx
GJ!原作に沿った感じでイイ!
「紅」のも書いて下さらないかしら
984名無しさん@自治スレで設定変更議論中
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1308289584/