うっせーバーカ
ご苦労様です
『やぁ、【>1】遅れてしまってすまない…せっかく君がココに誘ってくれたのにな。』
『改めて言わせてほしい、本当に有難う…凄くうれしかった』
『ふふふ…今日は君の為にこんなものを持ってきた、良ければ受け取って欲しい…』
つ【保守】
11 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 13:11:01 ID:0TZP/q70
>>1乙カレーだ。
即死回避ボーダーが何レスなのか未だにわからないんだ
15 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/14(木) 18:28:49 ID:gJ4zlvPb
んじゃ協力しときまひょか。一応age。
まだまだ?
手伝い
hoshuhoshu
ほしゅ
21 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/15(金) 16:27:30 ID:Hn1Rh4r7
>>1ごくろうだったな、疲れただろう?
どうした?面食らった顔をして。
なにか不思議なことでもあったのか?
ああ、私がこんなことを言うとは思っていなかったのか。
ふむ・・・
笑わないで聞いていてほしいのだが
確かに私はあまりこういったことには慣れていない。
しかし・・・ だ
そもそも人が頑張っている姿というものは心打たれるものであるし、
さらに・・・ だ
わたしだって女なのだ。
愛するひとが私のために頑張ってくれたのだぞ
このことを女として幸せに思わぬわけがないではないか。
ううむ・・・
確かにこう説明するのは私らしくないな。
そうだな・・・
確かに私は感情表現は得意なほうではない。
いや、むしろ苦手なほうだ。
誤解されることも多いし、私も慣れているつもりだった。
しかし・・・ だ
ほかの誰に誤解されても気にはしないのだが、
愛するひとにだけは誤解されたままではいたくないのだ。
そう・・・
やはりわたしも女だということだ。
それもキミを愛している・・・ 女だ。
どうした?
なぜ微笑んでいるのだ?
わたしは真面目に話しているつもりだったのだが?
ううむ・・・
しかし、キミの笑顔はやはりいいな。
怒る気もなくなってしまったよ。
保守しようとしたらついイキオイでやってしまった。
今は反省している。
それはそれとして
>>1乙です。
(´;∀:)イイオンナダナー
(゚∀゚ )乙
1乙
ほしゅ
保守
28 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 19:29:03 ID:wgqB5mmF
保守 ?
保守!
即死回避。
ま、今はネタはないが週末まで待て。
素直に待つ
保守
わたし待〜つ〜わ。週末まで待〜つ〜わ。
全裸で腹筋して待つ
前スレは無事に落ちたみたいだな
と言うわけで俺は全裸で正座して待つ
そんな格好じゃ風邪引くぞ、余り私を心配させるな。
そのとおり。
せめて靴下くらいは履け。
>>30を待っている皆さんごめんなさい、先に投稿させて頂きます。279です。
先に短いの書くつもりだったんですがねー、暇ってのはなかなか無いもんでねー(ry
ではどうぞ。
あれから幾度目かの後朝。乱れた衣服と整えている彼女が話し出した。
『浩輔。』
―何でしょう?
『1つお願いがある。』
―何か買って欲しいんだ、なんてのは勘弁してくださいよ。
『なに、君に金銭面での負担はかからない。むしろ1食分食費が浮くぞ。』
―なんですか?
背筋に走る悪寒を感じながら聞き返す。
『君を我が家の夕食に招待したい。父や母からの招待だ。』
―……それは蹴り飛ばして逃げるわけには?
『当然不可、だ。そんなことをしてみろ、君にとっても、私にとって悲しい結果になる。』
―……分かりました。で、どのような服装をして何時ごろいけばいいでしょうか?タキシード着て正装していきましょうか?
『我が家をなんだと思ってるんだ。極々普通の日本の家庭だぞ。』
―年収が多すぎて幾らか分からないような家庭は日本国内にそうそうありません。
彼女の家は日本有数の大金持ちらしい。なんでも本人曰く、『息をしているだけで生活に必要な金額は向こうから飛び込んでくる。』のだとか。
その上、某社の取締役としてあちこち飛び回っているというんだから……
バイト代が5万円に乗るや乗らずやで一喜一憂している、小市民街道まっしぐらな一学生にそもそもつりあう相手じゃない。
そこへきて向こうのテリトリーにご招待だ。緊張しないはずが無い。
『念のために言っておくが、娘さんを僕に下さい、みたいなことはする必要は無いからな。私としてはしてくれても全く構わないが……』
―構わないが……何ですか?
『父がな、少し子離れが出来ていない人なんだよ。』
……覚悟して行こう。
〜数時間後、彼女の家にて〜
「あら浩輔ちゃんいらっしゃい。小学生のとき以来かしら?」
―お邪魔します。そうですね、もう10年近く家の中にはお邪魔してませんね。
玄関で将来の義母に迎えられ居間へ通された。
彼女が自分の横に座るように目で合図してくる。
―これは何ですか?
座布団の上に座り込みながら小声で質問する。
『これは我が家の食卓だな。』
俺の目の前に広がるのは1人分のスペースが卓袱台くらいある、冗談のように大きな机だった。その上には所狭しと大皿に料理が並んでいる。
―ひい、ふう、みい……
『何をしているんだ?』
―いや、こんなに食卓におかずが並んでるのを初めて見たんで……
『品数だけで言えば、我が家ではこれが普通だぞ。内容は君が来ると聞いて少し気合を入れたんだがな。』
―これで<少し>ですか……
分厚いステーキや世界三大珍味が並んでるんじゃないか、なんて冗談で考えていたが、その予想が悉く当たっていた。
少しだけ気合を入れただけで世界三大珍味を網羅するなんてどんな家庭ですか。
彼女の親父さんがなかなか帰ってこない。大事な仕事があって帰れないかもしれない、と事前に伝えてあったらしいので連絡を取る。
まだ帰れないそうだ。先にいただくことにする。
『父がいなくてよかったな。』
―全くです。
「子供のころに遊びに来ていたときも、ウチのお父さん、苦手にしていたでしょう?」
―ああ、ばれてましたか。
『当然だ。父がいるときは君は遊びに来なかったし、もし遊んでいる最中に父が帰ってきたら、逃げるように帰ってしまっていたじゃないか。』
ムスッとしている人を俺はどうやら受け付けないらしい。それを気付かせてくれたのが彼女の親父さんだ。
幼稚園に通っていた頃からここには遊びに来ていたが、彼女の親父さんはいつも俺のことを渋い顔をして見ていた。うるさくて、うっとうしかったのだろう。
そんな空気を感じて俺は次第にこの家に寄り付かなくなっていった。そんなふうにして俺と彼女とは疎遠になっていったのだ。
食べ過ぎた。気持ち悪い。お喋りに花が咲いて満腹に気が付かなかった。
『そろそろ帰るかい?』
―でもおじさんに挨拶していかないと……
「いない人に気を遣う必要は無いわよ。」
『それに苦手なものに敢えて対峙する必要も無い。』
―……それじゃ、お言葉に甘えさせていただきます。
これでは敵前逃亡のようだが親切には甘えるべきだ。素直に、ごちそうさまでした、と挨拶しつつ玄関に向かう。
長い廊下の後ろからバタバタと足音が近づいて来たと思うと、背中に柔らかみを感じた。
『今日も君の家へ行くよ。』
―これからすぐにですか?
『いや、明日の朝食の材料を買わないと。ただ、スーパーの閉店時間まであまり間が無いから、すぐに出ないといけないな。』
―荷物持ち、しましょうか?
『お願いしようかな。この機会に少し重い物も買っておこう。お米に味噌、醤油……』
―くっ……じゃ、じゃあテクテク歩いて行きましょうか。
『ああ。』
玄関まで来て、さあ行こうという時に、彼女は財布を忘れたらしい。先に行っていてくれ、と一言置いて自室へ戻っていった。
外から玄関を見つめながら、白い息を吐きながら待つ。そして彼女の、将来の自分の父親に思いを馳せる。
いつかはきちんと向かい合わなくてはいけない。しかもその時は恐らく……
―娘さんを下さい、だよなあ。
「許さん。」
突然背後から声がした。
口から飛び出した心臓を体内に押し込んで、ゆっくり振り返る。
最も会いたくない人が、そこにいた。
『すまない、待たせた。行こうか。』
玄関の引き戸をガラリと開け、彼女が顔を出した。自分の部屋までの少しの距離を急いで駆けていったのか、僅かに息が弾んでいる。
自分の娘を見つけた父親は厳しい顔を崩し、まるで俺がその場に存在しないかのように振舞った。
「ただいま。」
『おかえりなさい。じゃあ行ってきます。』
「駄目だ。」
『何故ですか?』
「どうせこの男のところへ行こうというのだろう?」
ああよかった、とりあえず俺がこの場にいることは認められているようだ。
『何か問題がありますか?』
「お前は私の娘だ。娘を守るのが親の責務だ。馬の骨に嫁にやるわけにはいかん。」
うわあ、“馬の骨のような奴”じゃなくて“馬の骨”ですか。
『何故いきなり結婚の話になるのか分からないのですが。』
「この男は私に向かって<娘さんを下さい>とぬかしおったのだ。」
誰が向かって言ったよ。
『そんなことを言ったのか?』
彼女がこちらに向き直って、俺に質問をぶつけてきた。
……顔が熱い。
―……そんなこと言ってないです。
「私にははっきり聞こえたんだが?まさかそんな中途半端な気持ちで呟いた言葉なのか?」
顔が近いよお父さん。いや本当に近いから。
―いやあれはなんというか……予行演習というか……
小さな声で答える。前髪どうしが触れ合うほどの至近距離だから聞こえているはずだ。
「本人を目の前に予行演習か。自分の伴侶にしようという相手に敬語を使うような間柄でか?」
馬鹿にするような口調だが、地獄の底から響いてくるような低音で聞いてきた。
いやだからあんたがいること知らなかったんですって。
黙っていると、彼はやがて大きく息を吐き出した。
「いつかは来るとは思っていたが……」
いかつい表情を俺に向けながら言葉を続ける。
「大事な娘を手放さなくてはならないとはな。」
語尾が震えている。眉間によった皺が一度ほどけて、もう一度きつく結ばれる。先程とは眉の角度が違う。潤んだ瞳が一瞬見えたのは気のせいか。
俺に背を向けて娘の前に立ち、そうして恐らくは娘以外には見せたことの無いような顔をして、言った。
「儂、儂、お前を嫁にやりたくないよ〜!」
大声を上げて泣き出した。
……まあ、お茶目さん。
スーパーから帰る道の途中、話題は自然に彼女の父親の話になる。
『だから言ったじゃないか、子離れの出来ていない父親だと。』
―でもあれは誰だって驚くでしょう?
初老に手が届きそうなオジサンが膝から崩れ落ちるようにして号泣するシーンなんて、人生がいかに長くてもそうそう見られるシーンではない。
その後は、玄関前の騒ぎを聞きつけた彼女の母が自分の旦那をずるずる引きずって行った。まるで、またか、とでも言いたそうな顔をして。
『私のこととなるといつもこうなんだ。以前私が風邪を引いたときなんか、予定の大半を残して南米から飛んで帰った来た事があったんだぞ。』
―嘘ですよね?
『君に嘘をついたことは無いだろう?』
地球の裏側からの直行便は無い。一度アメリカでトランジットをする必要があるので、必然的に24時間近く移動にかかってしまう。
まさに親馬鹿としか言いようが無い。
5kgの米と1Lの醤油を持った左手がそろそろ疲れてきた。右手に持ち替えたいのだが……
―腕、離してもらえますか?荷物持ち替えたいのですが。
『嫌だ。』
さっきから右腕に絡みつくようにくっついている彼女が答える。
『暗い夜道だし、最近は痴漢も多いと聞く。一瞬でも君と離れるのは不安だ。』
―そんな大げさ過ぎますよ。
『……浩輔、君と私の仲だ。丁寧語や敬語は基本的に使わないでくれないか?』
―なんですか突然。
『私が不安なのはな、何も犯罪ばかりじゃない。君がいつか離れていくのではないかと不安で仕方が無い。』
―離れたくても離してくれないじゃないですか。
『茶化さないでくれ。……以前から考えていたのだが、君と私の間にはどこか壁があるようだった。だが、今日気が付いたんだ。』
―さっきの親父さんの言葉ですか。
『そうだ。私は君にまだ心を許されていないらしいと気付かされた。いくら体を重ねようが、まだ心は……』
俯いて表情は見えないし声のトーンも変わらないが、コートが強く握られる。
―そんなこと、無いですよ。
安心されるように、優しいトーンで話しかける。
―大体、心を開かないで体を重ねる事なんて僕には出来ません。そこまで器用じゃないの、知ってますよね?
『それは知ってる。知っているが……』
―じゃあいいじゃないですか。
『……だけど君は分かって無いな。』
我が家の前に着いて、腕を離れた彼女がこちらを向く。
『女という生き物は形式を大事にするものだぞ。……一応言っておくと、私も女だ。』
―分かったよ。……これでいいですか?
『まだ、分かっていないようだな……徐々に慣らしていけばいいか。』
鼻が触れ合うくらいに近づいて、甘い吐息を吐き出す。
『これから、ゆっくり、な。』
抗議の声をあげる暇もなく唇を塞がれた。口の中も犯される。
今日の夜は昨日より長くなりそうだ。そう思いながら僕は我が家へ入っていった。
ハイ、エロありません。ごめんなさい。
ハイ、オッサンが萌えキャラ化してます。ごめんなさい。
……………………
仕方無かったんや〜〜!エロなんて入れられんかったんや〜〜!堪忍や〜〜!(泣)
精進します……
お父さん萌えw
GJ!
隣近所の男の家に娘が堂々とお泊りってのは、お父さんさぞ辛かろうw
お父さんがツンデレというオチかと勝手に妄想したのはここだけの秘密だ。
〜海平と智子パート2〜
『久々の登場。いや〜元気だったかいスレの皆、明日の予定は決まったか?
私か? 私はモチのロン、愛する海平とドロd...(中略)クリスマスなんて糞喰らえだよな!!』
「なんで糞喰らえなのよ? いったいお前の脳内でなにがあった?」
『あぁ! 妄想すれば海平! ひどいぞっ、私を捨ててあんな雌豚とイブなんてぇ!』
「まてよ脳内。つーか智子さん俺に用があったんでしょ? だから屋上に呼んだんでしょ?」
『( ゚д゚)ハッ! そうだった!』
「辞書直しとけよ……いつか恥かくぞホント」
『海平くん海平くん、君は確かポール・スミスのジャケッツが欲しいと、アルバイトしていたなぁ』
「あ? あ、うん。でも何で知ってんの? (ストーキングか!?)」
『しかし結局バイト代もジャケッツの値段には届かないと』
「ん、やっぱね、高いからね。つーかジャケッ"ツ" って "ツ"」
『で、だ。海平くん、きぃみはぁ〜〜、明日暇かなぁ〜〜?』
「……ゴメンすごい急用があ
『ここに百万ある』
「 !? 」
『実を言うと我が家は、なんというのか、資産家でね。まぁ、それほど裕福とは言えないんだが、
まその〜〜、それなりにあの〜〜、まぁ、一生遊んで暮らせるほどにはぁ〜〜、まこの〜〜』
「田中角栄かお前は」
『まぁ、つまりだ。明日は街に出てショッピングを楽しもうかと思ったんだが、如何せんクリスマスイブだ。
使用人も休暇を取っており、荷物番がいない。人も多いから歩くのも一苦労だ。だもんで』
「俺の出番?」
『そう! なかなかりかいがはやい! わたしはあなたのようなヒーローをもとめていたのです!
どうかな、引き受けてくれないか? むろん無料とは言わない。
報酬は君の欲しがっていたジャケッツ(+私のは・じ・め・て♪)だ。いい話だろう?』
「……わかった。実を言うと俺ヒマでヒマでしょうがな...イヤイヤ!! 智子さんとデート出来るなんて
ホントに嬉しいやぁ!! つーか実は今日デートに誘おうと思ってたんだよマジ!!」
『ハハハこやつめ! 愛い奴愛い奴! (しかし、なぜかすごく寂しい気が……ま、いっか)』
「オッケ、じゃ明日迎えに行くから後で時間メールして」
『わかった。よろしく頼むよ海平 (ア〜〜ン海平様が堕ちたぁ〜〜う、う、嬉)』
――斯して決戦の火蓋は切って落とされた
海平と智子の愛憎劇は佳境へと進む
ああ、実に恐ろしきは金の力か
いざ、物語の運命やいかに!
以前言っていた短編仕上げました。
※※※正直言って素直クールの側には全く救いがありません。幸せな話の読みたい方はスルーしてください※※※
ではどうぞ。
どうしたんだ?何か言いたいことが?
君は私のことを邪険に扱いたいようだが、私の面倒を見るのは君の仕事だ。きちんとペイが欲しいのなら仕事はちゃんとすべきだな。
心配するな、払わないつもりなんて毛頭無い。
求婚する時でも君の仕事の邪魔にならない時間にしているじゃないか。どこが不満なんだ?
部屋の中で裸でいるのは見苦しいから止めてくれ?それが本題か。
そう言われてもご存知の通り私は生まれて以来、光というものを感じた事は無い。私の裸が醜いといわれても確認の仕様が無いな。
顔も見えないのに何故こんなにも執着するのかだって?
それは違うな。顔が見えないという“だけ”だ。君は誰かを好きになったとき顔だけで判断するのか?その人の声や、人柄や、いろいろなものに惚れるものだろう?
少なくとも私はそうだ。
どうした、話はそれだけか。それでは仕事に……終わったのか。ご苦労様。
それでは君に愛を囁く時間となったな。
なに?もう帰るのか。仕方ない。仕事が完全に終わってから君を拘束する権利は、私には無いからな。
次に来るのはいつだったかな。明後日か。君の仕事が長引かないようになるべくきれいに使わないとな。
時間いっぱい使っても、君に言いたい事をすべては語りきれない。時間は大切だ。
それでは、また明後日に。
〜〜〜〜〜〜〜〜
確かにお給金はいい。
いいんだけれど、あの性格は何とかならないものかしら。毎度毎度同じことをよくも飽きずに……
それだけ惚れられているということなんだろうけど、はっきり言って私の好みじゃないしねえ。
資産家の息子だし適当に騙くらかせばいい額は入ってくるだろうけど、そこまで悪い事できる人じゃないことは自分が一番よく知ってるしね。
このままの関係でもいいか。別に我慢できないようなセクハラを受けているわけでもないし。
ただ裸でいるのは勘弁して欲しい。初めて見たときは警察に通報しようかと思ってしまった。
時給がいいからこれからもこの仕事は続けるだろう。息子のために、そしてまだ見ぬ子供のためにも頑張ろう。
ふふふ、今日の旦那はどんなプレイをしてくれるのかしら。
見ての通り男の側が素直クールです。
設定は盲目の男(32)のところにハウスキーパーとして来ている子有りの人妻(28)。
人妻は旦那と3年目でラブラブ、2歳の息子の将来の学費のために3駅隣の資産家の家に、てな感じです。
なんだかスレの主旨とずれまくっている感じがするので、保管庫への掲載は管理人さんの判断に任せます。
>>48 お金の力で振り向かせようとするなんて、健気なのかアホの子なのか……w
GJです。
52 :
野園:2006/12/25(月) 03:10:47 ID:BoiXRNBH
「おはよう」
マフラーと手袋が登校の必須アイテムとなっている時期、
雪乃さんは必須アイテムを身に付け白い息を吐きながら俺に挨拶する
「あ・・・・おはようございます」
俺の驚いた顔を見て彼女は首を傾げた
「何かおかしいか?」
「いえ、ただ雪乃さんがいるとは思わなくて」
「恋人同士は一緒に登校するものだろう?」
「ええまぁ」
一緒に帰って雪乃さんが俺ん家を通る道のりなのは知っていた、
昨日も俺ん家に上がって親に挨拶をすると利かないのをなんとか説得したばかりだ
「何分ぐらい待ちました?」
「・・・君が気にすることではない」
「でも!」
なぜそんなことを聞くか、それは俺は学校に着くときには彼女はいつも席に着いているからだ
クラスのやつによれば一番最初に来ているらしい、
いつも遅刻ギリギリの俺とはかなりのタイムラグがある
「言ってください」
「そんなことより行こう、遅刻してしまう」
「雪乃さんっ!」
「・・・・45分くらい」
まさかとは思ったが、雪乃さんは昨日告白した相手を一時間近く
このクソ寒い中待っていたことになる
「なんでそこまで・・・」
「だって・・少しでも長く君といたいから・・・」
「!!?」
とりあえず抱き締めた
53 :
野園:2006/12/25(月) 03:12:07 ID:BoiXRNBH
続きは後で
では
ちょおおおw
そんなあなた、2週間も待ってたのにいいいいいw
いやGJなんだけどね…
よし、何とか今日中に完成した。
そんでわ、時事ネタいくよー。ド畜生。
「なぬ? 知らない?」
その日、壮馬が聞いた言葉は、まさしく耳を疑うものだった。
「知識としては持っている。ただ、実感が無い」
「ああ。そういや、こっちで過ごすの初めてだったか」
納得する。聖奈の経歴を考えれば、致し方ないことだ。
五年ぶりに再会して、初めての冬。折角だから、イベントは楽しんでもらうに限る。
改めてよくよく見れば、聖奈は美人だ。
均整の取れたスラッとした肢体。無駄な脂肪は無くスマートだが、女としての魅力はいささかも損なわれていない。
ショートカットとクールな瞳は……やや取っ付き難い印象はあるが、許容範囲だろう。
普段はスッピン。衣装も素っ気ないのが減点対象。このままでも充分美人なのだが、めかし込めばさらに化けるのは確実。
こんな機会を逃すのも何だ。
「ふむ――」
丁度予定も立ち消えた所だし。
「デートでもするか?」
「あ……ウン」
「ってわけでな、十字。どんなプレゼントやりゃいいと思うよ?」
「こンのクソ忙しい時期に、何を寝言ほざいてやがる。第一、テメェのが詳しいだろが」
壮馬は同僚に悪態を吐かれる。そんなにおかしなことを訊いただろうか。
「クリスマスプレゼントだぞ、クリスマスプレゼント。たくさん意見があったほうが、選択肢が増えていいだろが」
「そういうこと言ってんじゃねえよ! 時期を考えろ時期を!」
「いや。俺の仕事、時期は関係ねえし」
いざという時、すぐに動けるようにしておけば事は足りる。忙しい時はそれこそ寝る間もないが、そうでなければ仕事量に変わりは無い。
やるべき時、やるべき事は向こうから来てくれる。それまでは、準備万端で待っていればいい。
「ったく、これだから裏方は嫌なんだよ……」
「腐るなって。禿るぜ」
「そしたらテメェが原因だから、安心しやがれコンチクショウ」
「わははは。よっしゃ、責任もって増毛剤贈ってやるよ」
壮馬は豪快に笑う。
「要らねえから仕事手伝え」
「まままま。そんな、根詰めても能率上がらねえって。ちと茶にでも付き合えよ。飲み物くらいは奢るぜ」
「クソ、しょうがねえな」
壮馬と十字、大の男二人揃って食堂へ足を運ぶ。
二人とも、百八十超の筋肉質の大柄な男だ。真昼間から二人でというのは、何やら侘しいものがあるが、気にすることではない。
齢三十を過ぎて尚、若々しく精力溢るる壮馬。年相応の落ち着きと、二十歳と言っても通用しそうな荒さ、爽やかさが同居し、年齢不詳の感を出している。
白衣がトレードマークの十字。ギリギリ二十代。鋭い目元とクールな表情。黙っていれば落ち着いた頭脳派だが、外見に反する口の悪さと豊かな感情を隠そうともしない。
双方、それなり以上の男前とされるが、さして黄色い声援を向けられるようなタイプではない。親しみやすさがそうさせているのだろう。
極一部では、別の意味で黄色い声援を向けられているらしいが、その辺りは完全に理解不能だ。ちゃんと異性のお相手がいるのに……。
何時如何なる世も、女は真に不可思議な存在である。
「ブラック、と」
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な……」
早々に決まった壮馬に対し、券売機の前で何やら決めあぐねている十字。
「ええい、このスイッチだ!」
やたら気合を入れて購入する。寝不足が祟っているのかもしれない。
ブラックコーヒーと青汁を手に、だだっ広い食堂のど真ん中に陣取る。昼食時はかなり過ぎているので、人影はまばらだ。
「ぅぉおぉぉ……!」
「取り替えるか?」
「いらん! ……ふ、眠気が覚めて好都合さ。カフェインじゃ、こうはいかん」
そうは言っても、
「ぐぉ……ああ」
「一気飲みしたほうが楽だぞぉ」
「そ、それくらい知っている!」
とても大丈夫には見えない。何故なら、食堂名物の苦さ十倍青汁だからだ。主に注文されるのは、破目を外す時の罰ゲーム時の代物。でも健康には良かったりする。
たかが押し間違い如きで、よくまあ意地を張る。
「んぐ…………っぷはぁッ! さて、本題に入ろうか」
「おう」
「その前に、もう一杯」
「後でちゃんと寝ろよ、お前」
どうもイマイチ正気ではなさそうだ。面白いから放っておこう。
「んで? 聖奈のクリスマスプレゼントだったか?」
「ああ。どうにもピンと来なくてな」
「何でお前に解らんもんがオレに解るんだよ」
「だから参考までに聞きたいだけだって」
「つってもな……日用品とかでいいんじゃないか? 時計とか財布とか。服って手もあるけど、あの娘あんま洒落っ気無いしな」
「まー、そんなトコだよなあ」
ハズレが無い。故に定番という。面白味も無いが、悩むくらいなら定番をというのは一つの手だ。
だが、どうにもピンと来ない。
というより、下手すればナイフや銃火器等にうっとりするかもしれないくらい、普通とはかけ離れている。定番が通用するかどうか。
「出来りゃあ、ホント普通のモノで喜んでもらいたいんだが……」
「あれ? 二人ともどうしたんスか?」
腕組みしつつ悩んでいると、二人を見つけた後輩が、定食のトレイを引っ提げて話しかけてきた。
人懐っこい表情をした、二十歳過ぎの青年。名は龍也。顔もイケメンだ。
いかにも暇を持て余しているという感じでブラブラしている。実際には、他人に見せることなく、やるべきことはやっているのだが。
壮馬もろとも、怠け者扱いされることもしばしば。それでも評判が良いのは、人柄に拠るところが大きいだろう。
「いいねーいいねー。何処のお代官様だい? この時期、あっちもこっちも忙しないってのにさー」
「壮馬サン、調子どうですか?」
「おお。まーボチボチだな」
何故かストローで青汁を啜りつつ、変なテンションでいぢけている二十代終盤は、華麗にスルーしておく。
顎をテーブルに載せながらストローを咥えるのは、非常に行儀が悪い。
「折角だ。今、暇だろ? 話に付き合えよ」
「いいすよ」
其処座れと手前に促す。この瞬間、黙っていれば色男トライアングルが結成された。ワイルドな壮馬、クールな十字、正統派な龍也。様々なニーズにお応えします。
風の噂では、サイレンス・トライアングル・ファンクラブなるものもあるらしい。微妙に人権侵害してる気がする。
壮馬は、簡単に話を説明する。
聖奈のイベントへの認識。約束を取り付けた経緯。そして、プレゼント内容の吟味。
さして取り上げて語るようなことでもないが、状況を正確に理解してもらったほうが有り難い。もともと長話になる類でもないので、大した労力の差も無い。
だが結果は変わらないだろう。
「困るなあ。壮馬サンに解らないってのに、俺に解るわけないじゃないすか」
案の定、同じ答えを返された。
「でもプレゼントかぁ。俺も何かあげようかな。そんでもって、あわよくばアレコレと……」
「ははは。迂闊に手ぇ出したら、顔面砕けるぜ。アイツ容赦ねぇとこあるから」
にやける龍也に忠告する。
「そーいや壮馬よぉ。あの娘、最初はお前を殺しそうな勢いでつっかかって来たんだよな」
「原因は知ってんだろが、十字。誤解だよ誤解。……解けてからも、急所狙い日常茶飯事が暫く、ってのは勘弁してもらいたかったが」
全員に怖気が襲い、三人揃って股間を押さえる。
「怖っ……にしても、今じゃ聖奈ちゃん本当に懐いてますよね」
「時期移行型、もしくは元祖だな」
「何のこっちゃ。まあ、人徳だわな。重要なのは、過去ではなく現在。そして未来だと思うワケよ」
「そうそう、そーゆーモンすよね。昔なんかどーでもいーんですって。あーもう、俺もあんな娘に好かれてえ!」
「羨ましいだろう」
「そりゃもう! 換われるもんなら是非!」
拳を握り力説。目をキラキラ輝かせている馬鹿一人。
一通り話に花を咲かせた後、案を煮詰めていく。そして辿り着いた答えはというと。
「ぬ、ぬいぐるみ……とか?」
「いっそ花束とか」
「…………」
「…………」
「…………」
「三人寄らば……」
「文殊の知恵、とはいかないもんだな」
暖房の効いている食堂に、木枯しが吹く。
「何か適当に定番から見繕うわ」
「そーしとけ」
「やっぱハズレが無いってのは、デカイすよ」
敵は強大だ。大の男が雁首揃えて情けない。
壮馬は席を立ち、暫くしてからカップを二つ手にして戻ってきた。
「ほれ、礼だ」
「あ、すまねえっす」
「なあ……龍也が紅茶で、オレはまたも青汁って、イジメ? イジメだな? 疑う余地も無くイジメだね?」
「気にすンなって。ほれほれ、グッといけ。グッと」
「グッとね……――ッしゃ!」
十字は立ち上がると、腰に手を当て、天を仰ぐように一気に飲み干す。
その姿、風呂上りの如く。
「っかぁ〜〜……ぁ?」
糸の切れた操り人形のように、力が抜けて椅子に崩れ落ちる。
「うっわあ!? じ、十字サン!?」
「おー、こりゃまた見事に落ちたなあ」
「い、今、凄え音しましたよ? ゴンって、テーブル破壊する勢いで!」
「さっきから眠り薬仕込んでたんだが、漸くか。味を誤魔化す必要無いから楽だったぜ」
怖いことを言う人だ。
「どんくらい入れたんすか?」
「普通の十倍くらいかな」
「殺す気ですか!」
「何、馬鹿なことを。俺はこの程度じゃ死なんぞ?」
「アンタと一緒にせんでください!」
まあ実際、平気なのだが。
十字は十字で、壮馬ほどでなくとも常人離れしている。寝不足+十倍で漸くといったあたりからも、それは窺えるだろう。
壮馬も、そのあたりは計算ずくで行動している。おちゃらけていても、しっかり考えているタイプなのだ。
「ま、これで寝不足ともオサラバってワケでな」
根を詰めすぎるくらいなら、あえて眠ったほうが効率がいいものだ。
目覚めた後の彼は、時間が人を左右するのではなく、人が時間を左右するものだと、身を持って証明してくれるだろう。
「じゃなくて、良い子が真似したらどーするんすか」
「此処の何処に良い子が居るってんだ?」
そうだ。こういう人なんだ……。
「よっし、部屋に運ぶぞ」
「へーい」
手伝いながら、龍也は説得を諦める。どうせ十字の部下達にも、連絡済みに違いない。
良い意味でも悪い意味でも、余人の計り知れないところで物事を突き進む人。それでありながら、自分の言動がどのような影響を与えるか知っている人。
天然かつ狡猾。超人の領域に足を突っ込んだ、底の知れないマイペース。それがこの男。
「コイツの仕事も、ちっとばかし片付けといてやるか」
「そっすね」
ぐったりとしながら鼻提灯膨らます図体のでかい男を、野郎二人が引き摺っていった。
時期にあわせ、煌びやかに飾りつけされた洒落たレストランで、一組の男女が食事をしている。
「理由は話した通りだ。お前に助力を請いたい」
「阿呆」
言いのけられた。
「しかしな、沙夜。女の中じゃ、お前を一番信頼してるからなんだぞ」
「ありがとう。けど、食事に誘っておいて、他の女のこと頼むのって、デリカシーがどうとかの問題じゃないでしょ」
「埋め合わせは、ちゃんと考えてあるさ」
「はいはい。とびっきりのを待っててあげる。……ったく、期待して損した」
沙夜は、これみよがしに溜め息を吐く。
壮馬同様、当初の彼女の予定も立ち消えた。タイミングよくお誘いが来たのかと思えば、肩透かしもいいところだった。
長い髪を一つに纏め、きっちりとスーツを着込んだ知的な美女。壮馬よりかなり年下だが、余程大人の雰囲気を漂わせている。
そして壮馬が、そんな仮面など無視して、どんどん内面に踏み入ってくる。
解っている。この男は、自分が我が侭を受け入れることを知ってて頼み事をしている。悪意が無いのが性質が悪い。
「すまねえな。やっぱお前良い女だよ」
「何であんたみたいのと関係しちゃったかな……」
屈託の無い笑顔を正視できず、顔を背ける。
付き合い始めて五年。今では、あえて距離を置き、付かず離れず大人の関係。こんな厄介ごとを持ち込まれるのも、それに文句たれるのも毎度のことだ。
(気付いてるだろうなあ、コイツ)
他人をいぢめるのが、楽しくてしょうがないのだろう。
腹が立つのは、それを受け入れてしまう自分。
「何時までもガキなんだから」
「ん?」
「別に。いいよ、どうせ暇だったし」
「サンキュ」
そして何より腹が立つのは、ここでさらにお節介をしてしまう自分。
「それと、プレゼントだったらアクセサリーがいいと思う」
「へえ。何でだ?」
「あの娘も女だってコト。服装は実用重視だし、オシャレに興味は無いにしても、細かいところは無意識に気を使ってるの、この節穴共」
そういえば、シルバーのアクセなどは、よく身に付けているようだ。あまり目立たず、マッチしすぎているので、そちらに気が回らなかった。
だがこの様子では、そのアクセサリーすらも地味と言わざるを得ないだろう。あまり印象に残っていないのだから。
「成る程。知恵まで貸してくれるとは、サービス良いな」
「乗りかかった船だもの」
「そんじゃ、当日は頼むぜ」
「了解」
そして当日。聖奈の部屋に、沙夜が訪れていた。
約束まで、あと数時間。その準備のために、沙夜は駆り出されていた。
自前の服を次々取り出し、着せ替え人形のように一人だけのファッションショーをする。
「別に普段着で良いのに」
「駄ー目。折角のデートなんだから、おめかししないと。……と言っても、アイツは普段着だろうけど」
「ねえ。沙夜は、壮馬の恋人――」
「ってワケでもないけど、昔はね。パートナーというか、腐れ縁というか、ちょっと複雑かな」
しかし、好意を持っていることは間違いない。そして心理的には、最も近い位置にいる。なのに、嫌な顔もせずデートの準備を引き受けるのは何故だろうか。
「アイツのやる事為すこと、一々気にしてられないでしょ。それに女の子は、応援してあげないとね。……好きなんでしょ?」
「ん、まあ」
「もう仕方ないことだけど、よりによってあんなのにねえ……苦労するよ」
経験者は語る。
大事にしてくれるし、実は細かいところで色々気を使ってくれている。けれど、掴めない。飄々として、どうにも一方通行だ。加えて、結構女好きだし。本当の意味で浮気性というわけではないのが救いか。
哀しいが、生粋の自由人なのだ。
「はい、これで終わり。それじゃ、次はお化粧しようね」
「だから別に。服も替えたし、スッピンでも……」
「アイツ、軽い化粧の女の子が好きなんだけど」
「教えてください」
沙夜に玩具にされながら、最低限の嗜みを教え込まれる。
そして、運命の時は来る。
「はい、完成ー」
「ほっほーう。お見事、沙夜。化けるモンだなあ」
「見違えたか?」
「おおよ。上出来上出来」
聖奈の問いに、壮馬は笑って答える。心なしか、聖奈も頬を染める。
黒い薄手のセーターにミニスカート、白のロングコート。長いマフラー。シンプルかつ可愛く纏まっている。普段の洗いざらしとは大違いだ。
目付きの鋭い印象もメイクで緩和され、一見した取っ付き難さもなくなっている。薄く引いたルージュが、なかなか艶やかで色っぽい。
素材が良いため、最小の手入れと、最大のバランス感覚によって、絶妙の味に仕上がっている。
対して、沙夜の予想通り、普段着全開のデリカシー皆無な男。
「さ、聖奈ちゃん、行ってらっしゃい」
「いや、ちょっ」
沙夜に背中を押されるが、
「何言ってんだ。沙夜、お前も来いよ」
「壮馬……言ってなかったのか?」
「はぁ!?」
引っ張られて向かった先は……。
「――って、何でみんなで街に繰り出してんの!?」
「聖奈は、お祭り騒ぎなの初めてだろ? だから、予定の無い連中掻き集めた。んで、お前への埋め合わせもな」
「うわぁ……」
それはつまり、恋人いないのを公言してるに等しいわけで……。
何も気にしていない者、狩人の目の者、いっそ開き直っている者。男女混合十数人のメンバーが、それぞれの在り様で参加している。
「畜生、チクショウ、ちくしょう、ここまで来て! ここまで来て……っ!!」
「小人さんって、本当にいたんだな……」
つい昨日受けたショックを残し涙する龍也や、仕事に区切りが付き、目がうつろな十字まで混ざっていたりする。
イルミネーションされた街をゾロゾロと練り歩き、ショッピングをしたり、食事をしたり、ごく普通の遊びをして過ごす。
大騒ぎしての鬱憤晴らしは、街の雰囲気もあって盛り上がる。
たった数時間の、日常的な非日常。
夜も更けて、煌びやかな夜を眺めて歩く。
「どうだ聖奈、楽しんでるか?」
「ああ。おかげさまで」
「二人とも、どういうコトよ」
沙夜が不審な顔で語りかけてくる。
「いやな、さっき説明した通りなんだが。本人の希望でよ」
「二人きりっていうのも、少し捨て難かったケド」
「はっはっは、大人になったらな」
「一応、二十歳なんだが」
「まだまだ。それでも俺より一回りは年下なんだし、もちっと我慢しな。心身ともに大人になったら、ちゃんと相手してやるよ」
言葉通り、頭をぽんぽんと叩いて子供扱いする。
「むぅ……」
悔しいが、自覚しているだけに言い返せない。言ってる本人の中身は子供っぽいのに、妙な説得力がある。
今は、妹のようなポジションに甘んじるしかない。
「しかし逆に言えば――」
「いいぜ。早く大人になれば、明日にでも可愛がってやるさ。……おおい、そこの二人、何時までテンション下げてんだー?」
大声を上げて、十字と龍也へ駆け寄ってしまう。一番楽しんでいるのは、間違いなく彼だ。
そんな壮馬を眺めて、聖奈と沙夜は苦笑する。
「やれやれ」
「まったく……成る程、大変だ」
「いい? 適当なところで手綱を握る術を覚えないと、もっと大変になるからね」
「ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いします」
「女なんて……女なんて……」
「まぁま、新しい女見つけりゃいいじゃねえか。折角の日に、しょげてんじゃないよ」
「昔話ってのはさ、正直者のお爺さんには、必ず良いことが起こるもんなんだよな」
「お前は、いい加減目ェ覚ませ……っと、ほれほれ。絶妙のタイミングで、前方三十メートルに女子三人組発見!」
しかも上玉だ。
その瞬間、二人の瞳に光が戻る。
「中央、身長百六十三センチ。スリーサイズ、上から八五・六〇・八八!」
壮馬が、
「向かって右、身長百五十七センチ、七九・五五・七八!」
龍也が、
「左、百六十一、八三・五九・八五!」
十字が、
「よし! 二人とも、行くぞぉ!」
「おおッ!!」
「我らのトライアングルアタックを見せてやる!」
漢の誇りにかけて、一つの戦いに挑んだ。
「そこを行くお嬢さん方」
「俺たちと」
「めくるめく聖なる夜を過ごしませんか?」
正面、右向き、左向き。それぞれ得意な方向から、得意の決めポーズで、とびっきりの笑顔を見せる。白い歯を、輝かせることも忘れずに。
後光が差すほどの魅力に、三人の女性は、思わず見惚れ忘我する。あまりの威力に、女神様も吃驚だ。
たとえ神であろうとも、全ての女性を魅了する。これぞ必殺、トライ・アングル・アタック!
「はいはいはいはい。ブリザードを吹かすんじゃないの」
「私が認めただけあって、なかなか良い度胸をしているな」
「あででででで! 耳、耳を引っ張るな!」
連行される男を、五人は呆然と見送る。
「あ、あははは。数が減っちゃいましたね」
「それじゃ、失礼しまーす」
「お兄さんたち、黙っていればハンサムですよ」
十字と龍也は、手を振って見送る。
女の子たちが見えなくなったところで、拳を握り、決意を新たにする。
「夜は長い。まだこれからだ!」
「そうだとも。負けるな、龍也! オレたちの戦いは、まだ始まったばかりだ!」
諦めない勇気が、新たな彼女を手にすると信じて。
応援ありがとうございました。彼らの次の戦いにご期待下さい。
「解った、わぁかった、解ったから離せ、な!?」
「まったくもう」
「少しは反省しろ」
「ぁ痛って!」
乱暴に腕を振って――洗濯バサミが離れるように――耳が解放される。
「埋め合わせするなら、ちゃんと責任取る!」
「壮馬に放っておかれると、この日を楽しめなくなる」
「スマンスマン」
涙目になりながらも、それを楽しむように笑う。だから憎めない。
聖奈は左腕を、沙夜は右腕を取って、背の高い男をそれぞれ下から覗き込む。
「それじゃ、今夜はみんな解散してからも、朝まで付き合ってよ」
「何件ハシゴしようか?」
「お、いいねぇ。潰せるもんなら潰してみな」
二人を持ち運ぶように、振り回すように、壮馬が走る。両脇の二人は、はしゃいで足を浮かす。
そうして、再び皆と合流する。
楽しい夜は、まだまだ続く。
聖奈の胸元には、紅い宝石のペンダントが輝いていた。
さて、本当は昨日中に仕上げるはずだったのだが……。
予定外の仕事+体調不良のダブルパンチとは。
今日は休日だったからよかったけどさ。
はーい、心当たりのある皆さんご一緒に。
「嫉妬の心はッ!」
こんばんぐはああああああああ
なんだこのラッシュは
まとめてですまんがGJ!!!!!
◆uW6wAi1FeE氏
本文1スレ目の最後で引っかかり、2スレ目の頭で気が付いた。
テレビモニターブン殴ろうか?
とにもかくにもGJ!
67 :
野園:2006/12/26(火) 02:31:16 ID:kKu06Wps
番外編といいますか
話的にクリスマスが近かったのに実際にクリスマスになってしまったので
クリスマスネタだけ先に載せてしまおうという俺の勝手な都合です
「あの・・・」
この人はまたクラスの女子に何か吹き込まれたんだろうか
「おかしいか?男性はこうすると喜ぶと聞いたのだが」
「嬉しいですから早く服を着てください」
「むぅ、わかった、少し待っていてくれ」
まさかクリスマスに雪乃さんに呼ばれたかと思えば
バカデカイ箱にリボンで大切な所を隠しただけの雪乃さんが入ってるとは、
いや嬉しかったけど
「おまたせ」
「まったく、あんな格好なんかして、誰から聞いてぇえっ!?」
「む、またおかしかったか?」
「いえ、似合ってますよ、そのサンタ姿」
「そうか、それはよかった」
雪乃さんの家族はみんなクリスマスということで出掛けているらしく
広い園咲家には俺と雪乃さんだけだ
「紅葉も残りたがっていたんだが、みんなが気を効かせてくれてね」
「そうなんですか」
インテリアの暖炉に目を奪われながら、雪乃さんの言葉に耳を傾ける
「君はよかったのか?クリスマスに私といて」
「何言ってるんですか、クリスマスは恋人といるべきって言ったのは雪乃さんですよ?」
「それはそうだが・・・」
「それに両親はどうせ仕事だし、妹は家で友達とパーティだそうですから」
チキン、寿司、高級そうな料理、そして見たこともない立派なケーキ、これ二人分か?
「さぁ、遠慮せずに食べてくれ」
「はい」
やべぇ、うますぎる、どこのレストランだよ
「特にこのビーフシチュー最高ですよ」
「そうか、口に合って良かった、頑張った甲斐があったよ」
「へ?」
「君の好みがわからないから無難なものになってしまったと不安だったんだ」
「まさかこれ雪乃さんが作ったんですか?」
「他に誰がいるんだ?」
料理が得意とは言ってたけど、まさかこれほどとは・・・
またクラスのやつらにいびられるネタが増えたな
「だからあんなにお弁当がうまかったんですね」
「君の好みが分かればもっとおいしくできるぞ?」
「はい」
優しい音楽とローソクの火に照らされながら、滅多に見ることのない
雪乃さんの笑顔を独り占めしながら、夕食は過ぎていった。
「あの・・・コレは」
「クリスマスプレゼントだ」
夕食が終わり、案内された部屋はまさにサンタのプレゼント置き場だった
「確か君はテレビゲームが好きだったな」
PS3にwiiにXBOX360にDSにPSP!?
「それに最近ビデオデッキの調子が悪いとも」
最新型DVDデッキにプラズマテレビ!?
「それに欲しがってた服や靴に漫画やDVD、自転車もあるぞ」
フレンドパークのダーツ景品の視聴者用の【全部】より豪華だ
「クラスのみんなに聞いたんだが君のことをあまり知らなくてな
とりあえず喜んでくれそうなものを集めた」やばい、衣装も合い舞って雪乃さんが本当のサンタさんに見える
それに引き替え俺は・・・
「どうした?」
「いえ、雪乃さんはすごいなぁって」
「そんなことはないさ」
「え?」
「私は君の欲しがっている物ひとつ分からない駄目な彼女だ」
「雪乃さん・・・」
彼女の寂しそうな目を見つめながら、俺はポケットからある物を取り出す
「コレは・・」
「俺も、雪乃さんの欲しがってるものはわかりません、でも」
それは指輪、本物なんか買う余裕はないから偽物
「あなたが笑顔になるために努力は惜しまない」
この指輪に込めた想いは本物
「君は・・・」
嬉しそうに泣きそうな顔の雪乃さんを俺はそっと抱き寄せる
「これ以上君を好きになったら私は壊れてしまうよ」
静かな夜、俺と雪乃さんは最高のプレゼントを与え合った
「メリークリスマス」
71 :
野園:2006/12/26(火) 02:38:29 ID:kKu06Wps
まぁ本当のクリスマスも数時間前に終っているんですが(つ∀`)
ではまた
ベッタベタなプレゼント。いいっすねー俺こういうベタな展開大好きだ。
野園氏GJ!
七月の末だというのに、雨ばかりが続く。部屋の窓を開けていても涼やかな風が入ってくる
ことはなく、都会の、湿気を帯びた不快な空気が教室を満たしている。
そんな不快な空気の中、中島千鶴は黒板をつまらなそうに眺めていた。
教師が黒板をチョークで妙に強く打ち付けるガッガッという音と、雨が地面を打ち付ける音はなん
とも耳障りだ。
「……であるから、ここにxを代入して――」
雨足が少し早くなる。
窓の外に眼をやると、グラウンドが水浸しになっていた。ぽつんと一人佇むサッカーゴールが、ひど
く淋しく見える。
この小柄な数学の教師は嫌いではないが、千鶴は雨が嫌いだ。それに頭がぼんやりと痛む。
いつもは真面目である千鶴も今日は授業を受ける気にはならない。
ガタン、と椅子を鳴らして立ち上がった。
「先生」
保健室で一眠りしようと思い、言った。この時限の残りの時間――四十分も眠れば、この気
分も頭の痛みも晴れるのかもしれない。
黒板をチョークで叩く手を止め、教師がめんどくさそうにこちらを見た。
「調子が悪いんで、保健室に行かせてください」
周りが、多少ざわつくが気にもかけない。
いつも真面目な千鶴は、授業をサボるはずがない。多くの教師が思うようにこの教師も思っ
たようだった。
「ああ、中島か。いいぞ。お前もたまには休め」
そう言って教師は黒板に向き直り、左手をひらひらと振った。その手は千鶴とは別の、全く
違うほうへ向けてだが。
ふらりと教室を出て、保健室に向かう。
この学校は北館と南館に別れていて、北館には各クラスの教室がある。簡単に分けられてい
て一階には一年、二階が二年、三階が三年の教室がそれぞれ入る。
南館にはそれ以外、職員室や食堂、美術室、音楽室などがあり、目当ての保健室は南館だ。
北館と南館は東西の二本の廊下で繋がれており、その間は中庭となる。
上空からみると東西に長い『口』の形だ。
当然、保健室に行くために千鶴は二階の北館と南館を繋ぐ廊下を歩く。
歩きながら、何食わぬ顔で雨を落とす空をどんなに恨めしく睨みつけても、ちっぽけな一人の
思いが聞き入れられるわけがなく、雨が止む様子はまるでなかった。
保健室の戸を開けると、いるはずの養護教員の姿はなかった。だけれども冷房はしっかりと
きいていてひんやりとした空気が肌に心地良い。
ぼうっとしたまま中に入り、引き戸を閉める。途端に不快だった雨音は薄れ、代わりに静か
な冷房の音がよく聞こえてきた。
冷房が入っているということは誰かいるんだろうな。そう思い、カーテンで囲まれているベッド
に近寄る。
失礼かもしれないかと思ったが、好奇心に負けた。カーテンを少し開けて顔を覗かせる。果たし
てそこには、一人の女子生徒が眠っていた。
横を向いているので横顔しか見えないが、そうこいつは――蒼葉だ。
蒼葉水都。二年四組。千鶴の隣のクラスの生徒だ。
身長165センチぐらい。少し吊り上がった目と、整った顔立ち。腰のあたりまでのびた一つに
纏められた黒い髪が印象的だったが、今は寝ているためか解かれて散らばっている。千鶴には
それが酷く綺麗に思えた。
千鶴はしばらく眠っている彼女に見とれ、そしてはっと我に帰る。
――何してんだ、俺は。
目をつむり、深呼吸。軽く頭を振る。
――疲れてるんだ、さっさと眠ろう。
見とれるなんて、そうに決まっている。
無理矢理気持ちを押さえ付け、そして千鶴はゆっくりと薄緑色のカーテンを閉め、もう一つのベッ
ドに向かった。
そして千鶴はカーテンも閉めず柔らかなベッドに身を沈め、睡魔はすぐに訪れた。
なぜか一瞬、さっきの水都の姿がよぎったが、それと同時に千鶴の意識は闇に沈んでいった。
何か変な感じで意識が覚醒した。その変な感じ――視線を感じるのだ。じっくりと、だが優
しく体中を見られているような。
だから目は開けなかった。開けられなかった。
五分ばかりその状態が続いた。
その間も、千鶴は動けなかった。金縛りにのように意識だけがはっきりとし、体は全く動か
ない。
相手は何がしたいのだろうかとか、俺を見て何が面白いのかとか、そういうことばかりが
千鶴の頭を回っていく。
そこにいるはずの人物はずっと変わらず、ただじっと千鶴を見ていた。
千鶴にだって限界がある。それを越えた時にどうなるかはわからないが、千鶴の限界に近い
時だった。
ふと。温かい何かが頬に触れた。
それが千鶴の金縛りを解いた。目を開ける。今まで開かなかったのが不思議なくらい簡単に
目は開いた。目の前に白い腕があり、頬に触れていたのは指だったのかと納得する。
首を軽く横に向けると、そいつと眼が合った。
「おはよう」
そいつはにっこりと微笑んだ。
面白そうなんで続き期待
ただ
>>74の後半を読むまで、千鶴は女だと思ってた
「……何してんだ」
むっくりと上半身を起こす。
なぜか枕元に座っていたそいつ――水都はふふふと笑った。
「寝顔を見ていたのだよ」
「……」
「あんまり幸せそうだったので、な。頬っぺたも、つい触りたくなったんだ」
「……」
この娘は、ほとんど面識のなに異性を相手に、恥ずかしいことを、簡単に言う。自分の顔が
赤くなるのを感じた。
「それにキミだって、私のことを見ていただろう」
「なっ……」
その言葉と、いつの間にか鼻先が掠れ合うほどに近づいた彼女の整った顔に驚き、少し身を
退いた。
「おあいこ」
そう言ってにんまりと笑い、水都は顔を離し背を向けた。
長い髪はまだ纏められておらず、ベッドに不規則な模様を描いている。だけどこのほうがい
いと千鶴は思う。癖のない、濡れた様に光る水都の髪が布団に散らばる様は思わず息を呑むほ
ど綺麗だったからだ。
「……今」
「ん?」
「何時だ?」
ぐっ、と伸びをする。背骨がごきごきと音を立てた。
「午後一時、だな。補習はもう終わってしまっている。どうやら、ずいぶんと君の顔を見続け
ていたみたいだ」
腕時計を見て、くくくと笑いながら水都が言った。
「どれくらい、見てたんだ」
「さあな。まあざっと三十分くらいだ」
ぬけぬけと言う。心底楽しそうな顔だ。
――俺も彼女をもっと見ていたかった。
「……まあ、」
言って立ち上がる。そしてもう一度伸び。
「帰らないとな」
窓から外を見ると。雨はもう止んでいた。傘を忘れていたので、濡れて帰らずにすみそう
だ。
「今日はいい日だ」
シャツの襟を直していると、水都がいきなり呟いた。
「なんで」
千鶴にとって、湿った雨の日はみんないい日ではない。
「ふふふっ。愚問だ。これは恋する乙女にしかわからないよ」
わけのわからないことを言って水都は髪を纏める。その時に見えたうなじに思わずどきりと
する。一瞬、纏めたのもいいかもしれない、なんて思った。
「……じゃあな」
これ以上一緒にいると変な気が起きそうになるので、早々に帰ろうと千鶴は水都を残して
保健室を出た。
その日だった。
千鶴が水都に恋をしたのは――。
以上です。
初めて書くんで感想下さい。
もうちょっと続くと思います。
ごめん、リアルタイムで投下中だったんだな
邪魔してすまんかった
話は面白かった。千鶴も水都も魅力的なキャラだし、文章も読みやすい
続き期待してる
ただ数レスに渡るのなら、先にメモ帳か何かに書いておいて、
まとめて投下してくれると助かる
多分まとめて投下したんじゃないか?よっぽど筆が早くないとこの分量を15分やそこらで書くのは無理だぞ。
まあ何はともあれ冬にふさわしいしっとりした感じの話だったな。書き手さん続き期待してるよー!
81 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 00:57:52 ID:zvT0E6iC
人いねー
おるぞー。
さて、年の瀬だが、本日まで連日十時間以上こき使われた自分の人生に疑問を抱く今日この頃。
近況報告はどうでもいいが、忙しいと筆が速くなるのはどうしてだろう。
中途半端な忙しさだと、普通に遅くなるってのに。
それじゃ、今年最後のを投下します。
ある年の瀬、風物詩である炬燵にミカンを堪能していると、その人物は信じがたいことを口にした。
「何故、キミがここに居る?」
馬鹿げたことを、と返す。
何故と言われても、此処は自分の居場所である。異邦人を見るような目を向けられても、正直困ってしまう。
「キミは今、本来ならば此処に居るはずがない」
それは残念。目論見が外れたか。誰も居ないはずの部屋で、何をしたかったのか、何を考えていたのかは、この際問わないでおこう。
事情は変わるもの。それは子供にも理解出来る。納得出来るかは別にして。
目の前の真実は、疑いようが無い。状況把握も出来ないほど、耄碌しているわけでもあるまいに。
「ああ。充分に状況把握しているよ」
ならば、寒空の中悪いが、とっとと出ていって欲しい。こちらにも都合というものがあるのだ。
のんびりしているように見えても、ただ無為に過ごしているわけではないのだから。これは、貴重な時間なのである。
やっと大掃除も終え、紅白を観つつ、鍋に火をかけて蕎麦でも茹でようかと思っていた頃合だ。今邪魔をされると、予定が大幅に狂ってしまう。ここは、全てを忘れて去って欲しい。
「随分とまあ、無体な話だね」
此方の気も知らず、さっさと荷物を置いて、勝手に炬燵に入り込んでしまう。
まったく、人の話はちゃんと聞いてほしいものだ。
「充分に聞いた上での行動だから、安心して欲しいな」
ミカンにまで手を伸ばすとは。ちっとも聞いていないじゃないか。
「あのね。私は、自分のやりたいようにしているだけだ。キミにそれを咎められる権利は無い」
まったく。ああ言えばこう言う。暖簾に腕押しとは、まさにこのことか。
「というかね、そもそもの問題として――」
「ミサキよ。何で、キミは施錠されてた私の部屋に居るんだ。それもご丁寧に、勝手に年越しの準備までしてくれちゃって」
「うむ。それはだね、シン。たまたま予定が早く上がったものだから、驚かせようとしたんだ。そうしたら、キミも予想以上に早く帰って来るじゃないか」
腕を組み、一人頷くミサキ女史。
長い髪の美しい女性だが、障害物にぶち当たっても、破壊しながら直進するような性格に難あり。
きっとまた今日も、シンは迷惑を被るのだろう。
「クリスマス過ぎれば、暫しは結構楽になるものだ」
「そうか、迂闊だったな。それよりも、たまには、ちゃんと部屋の整理をしろ。一人では、なかなか重労働だったぞ」
「で、空き時間に身体を休めていた、というわけだね?」
「そうだ。準備万端にして帰りを迎えるはずだったので、途中経過を見られたくない乙女心を考慮してくれると嬉しい」
「ところで。いや、これが一番重要なんだが……」
「合鍵なら勝手に作った。頻繁に変えるものだから、こちらは色々大変なんだぞ」
「出てけ、犯罪者」
この国で、まさかこんな堂々とやられるとは思わなかった。
仕事柄、それなりに気を使っているというのにコイツは……。
暗黙の信頼より成り立っている、日本の風紀と治安はどうなった。
「まあ、嘘なのだが。管理人さんに事情を説明したら、あっさり入れてくれたよ」
「ちょっと殴ってくる」
「待て、暴力はいけない」
ゆらりと立ち上がるシンを、ミサキが諌めた。
シンは頭痛を覚える。
人の良識として制止しているのは解るのだが、ならばまず、自分が原因だということを自覚して欲しい。
とりあえず、もう少し本格的に防犯対策したほうが良いかもしれない。
「……まあいい。手間が省けたこと自体は、非常に感謝している」
「感謝されるほどでもない。ベッドの下や本棚の裏を漁っても何も出てこない掃除というのは、存外つまらないものだと学習できたからな」
「やっぱり出て行ってくれないか、キミ」
とは言うものの、どうせ出て行ってくれないので、今ではテレビ観ながら蕎麦食ってます。
「……毎年思うのだが、相変わらず、金掛かってる衣装だね。今までどれくらい使ったんだろ」
「今年のゲストは誰だろうか?」
愚にも付かないことを語りながら、また“今年”は過ぎてゆく。
「ところで、シン。簡単なお願いがあるのだが」
「何でしょうか、ミサキさん」
正直なところ、シンには大方の想像は付くのだが。
それなり以上の付き合いがあれば、いい加減、対応にも慣れようというものである。
「来年の十月十日に、二人の愛の結晶をプレゼントして欲しい」
そうか。二年越しときたか。
「つまるところ、死刑宣告と受け取っていいのかな?」
「住めば都と言うし、慣れれば墓場も悪くないと思うぞ」
「ほお」
「それに、そんな心配することもない。地獄の沙汰も金次第だ。キミならば、金策に困るようなことはないだろう?」
随分と人にばかり払わせる腹積もりである。
「いやいや。無論、私も何かの代償が無ければ不公平だろう。労働力の提供などどうだ? 主に、炊事洗濯掃除になると思うが」
「それ何て専業主婦かな?」
養わせる気、満々だ。ここまで開き直っていると、いっそ清々しい。きっと将来は大物になる。
「さて、もうすぐカウントダウンが始まる。そろそろ開始しないと、期日に間に合わなくなる」
「除夜の鐘って、何の為に鳴らすか知っているかい?」
「そんなの常識だろう。馬鹿にしているのか。ただ九七二個残るというだけだ」
「歳末大感謝セールとかで、八割……いや、せめて七割引してくれると助かるな、私は」
「それは駄目だ。採算取れなくなるのを我慢できるほど儲かってもいなければ、損して得を取る長期の見積もりが出来るほどの眼も持ち合わせていない。何より人間が出来ていない。五割が妥協のラインだ」
ウィットに富んだ会話で流すことも出来ない。何とも我が侭。何とも頑固。ちょっと始末に負えない。
「長く色々な女性と付き合ってきたが、キミのようなタイプは初めてだ」
「光栄な話だ。所謂、オンリーワンというヤツだな」
「忘れたくても、忘れられないっていうのは、間違いないと思うよ」
ミサキは、心外だというように目を丸くして、大袈裟なジェスチャー付きでフォローを入れる。
曰く。
「いや、待て待て。何も、キミを一生――永遠に縛りつけようなどと思ってはいないぞ。そこのところ勘違いしないように」
「珍しく殊勝な心掛けだね、うん」
「百年くらい、私が一番であれば、それでいいんだ」
割りとスケールが大きい。やはり恵まれたユーモアの持ち主のようだ。
「……ミサキ。キミは今、凄く残酷なことを口走ったの、理解してるかい?」
「少し慣れておけ。これくらいで凹んでいては、この先やっていけないぞ」
「やれやれ……」
シンは溜め息を吐く。
どうやら、これから一年も、散々なことになりそうだ。
と、その前に。
「さあ、シン。愛し合おう。そして役所が開いたら、一番に顔を出そう」
この目先の危機を、どう脱したものか。
はい。今回は時事ネタの短編&オーソドックスなもので攻めてみました。
それでは皆さん、良いお年を!
>>85 いたのかー
個人的にこういう軽快な会話大好きだよーぐっじょぶだよー
そして神職人さん良いお年を!
◆uW6wAi1FeE氏GJ!
あっさり風味の話っすねー。時事ネタで今年ももう終わりかー。
86に習って、職人の皆さん良いお年をー!
GJ&よいお年を
レスありがとうごさいます。そしてあけましておめでとうございます。
携帯なんでコピーするのに少し時間がかかってしまうのです。すみません。
という訳で、いきます。
からりと晴れた日だった。
冷房はかかっておらず、教室の窓という窓は全て開け放たれていて、天井に備え付けられた
二つの扇風機がせわしなく風を送る。だが暑い教室の空気を引っ掻き回すだけでこれぽっちも
涼しくならない。冷房をかければ変わるのだろうが、いかんせんこの数学教師は冷房が嫌いな
のだ。
窓の外のグランドに眼を向ければ、サッカーゴールが陽を目一杯浴びいて、どこか嬉しそう
だ。
その日は夏の前半の補習最終日だった。
最終日と言っても千鶴の通う高校は進学校であり、お盆を挟んだ一週間ほどしか休みはない。
休みが終わればすぐに後半の補習が始まる。
「……で、この式からxの範囲が――」
生徒の口から溢れる「あちぃ」や「冷房つけて」や「死んじまう」などの祈りや恨みなどに
似た言葉は、この数学教師の心には響かないらしい。
説明が一段落ついたところで数学教師は額に浮かぶ大粒の汗を袖で拭った。そして、
「小林ー、問い二十五、えー……荒城!起きろ!問い二十六!」
少しざわついた雰囲気の中、あの小柄な数学教師は生徒を次々とあてていく。あてられた生
徒は嫌な顔や不安げな顔、あるいは無表情で黒板に向かい、深緑に白い数式を書き連ねていく。
千鶴にとって、この数学の時間は全くの無意味だった。いましている範囲の予習は終えてい
て、把握している。
夏期休業の課題をしようかとも思ったが、すでに全て終えてしまっている。
つまりこの時限は何もすることがない。
始まってからわずか十四分。千鶴の授業に対する集中力は途切れてしまった。その代わりに
やってきたのは、眠気。昨日の徹夜が祟ったのだろう。
だがここで千鶴は机に突っ伏して寝息を立てるなどという行動は、しない。基本千鶴は真面
目すぎるほど真面目であるのだ。
「先生」
黒板に群がる生徒をしげしげと眺めている教師に声をかける。
調子が悪いんで保健室へ――。
千鶴のクラスは二年三組だ。北館の二階、やや東寄りに教室はある。それより東には一組と
二組、西には四組、五組と順番に続いていく。
保健室は南館の一階西側にあり、最短距離をとるならば必ず四組の前を通る。そしてその四
組には、水都がいる。今四組で授業をしている教師が、あの数学教師のように冷房嫌いで窓を
開けているなら、顔ぐらい見れるかもしれない。
そう思い、四組の教室の前を通り、閉められた擦り硝子に溜め息をこぼした。
どうやら冷房は四組の教室の冷房はきいていて、快適に授業をしてるようだ。そして自分は、
どうしようもないくらい水都に惚れてしまっているみたいだ。
がらり、と保健室の引き戸を開ける。開けた途端に体を撫でていく冷えた空気が心地よい。
中に入る。戸を後ろ手に閉める。
冷房がきいているということは誰かがいるのだろうが、以前と同じように養護教員の姿はな
い。千鶴が保健室に行った時、養護教員がいつもないのは千鶴と養護教員の相性が悪いせいな
のか。
もう一度周りを見渡してから誰もいないのを確認して、ベッドに向かう。今回はカーテンが
閉まってないので、だれもいないはず――そう思いさっきまでは死角だったベッドに近づいて
みると。
「――っ!」
心臓が飛び出るかと思った。
そこにはすやすやと寝息をたてる水都がいた。
右肩を下に横向きに眠っていて、ほどかれて散らばった長い艶やかな黒い髪は枕とシーツ、
それに水都自身の顔や制服から出た白い腕に不規則な模様を描いている。少し暑いのか、かかっ
ていたであろう青いタオルケットはくしゃくしゃになって腹に乗っかっている。
千鶴は、少しの間瞬きさえ忘れて水都に見入った。
心臓が、今までにないほど速く強く大きく、鼓動を刻んでいた。
気がついたら、水都の枕元に座っていた。そして水都の頭を撫でている自分がいた。一瞬前
の記憶がない。だけど、千鶴にそんなことは気にならなかった。右手に伝わる水都の髪の感触
が、心地よかった。
水都の頭を、ゆっくりと撫で続ける。ずっと、そうしていた。
「なあ」
三十分は撫で続けていただろうか。途中水都が目を覚ましたのはわかったが何も言わなかっ
たので、水都が喋るまで千鶴も何も言わなかった。
「――いつまでそうしているつもりなんだ?」
ぼんやりと水都の顔を見ると、ばっちりと眼が合った。
「んー。ずっと」
言って、軽く笑いかける。水都がこのことに対して怒らないということを、なぜか千鶴は確
信していた。
「そうか」
顔を赤くした水都は眼を逸らした。そしてごにょごにょと、
「私も、気持ちがいいから、もって続けて欲しい」
と言った。
「わかった」
千鶴は無言で頭を撫で続ける。
水都の髪はとても柔らかくてさらさらとしていて、シャンプーの匂いと水都自身の女の子の
匂いがした。
「なあ」
「ん?」
「嫌じゃないか? こんなあんまり話したこともないような男に頭撫でられて」
「好きな人に頭を撫でられて、嫌な人はいない。それより君はどうなんだ。私などの頭を撫で
て、楽しいか?」
「好きな人の頭を撫でるのが嫌な人なんていない」
「……そうか」
真っ赤になって、水都は顔を枕に押し付けた。
しばらく水都はそうしていて、急にこっちを見たかと思うと、むにゅりと千鶴の頬を引っ張っ
た。
「いひゃい」
「夢?」
「俺は現実だと思う」
「よかった」
水都はそう言って、熱っぽく息を吐いた。
「なあ、なあ。ちょっといいか。ひざ枕をしてくれ」
「ひざ枕?」
ずっと頭を撫で続けていると水都は急にそんなことを言った。
「お願いだ」
「……わかった」
水都に懇願されて、千鶴に断れるはずがない。
やった。そう水都は言って跳び起きた。
水都が千鶴に足をベッドに上げて座るよう言い、千鶴がそうする。そうそう、そんな感じだ。
そう言って水都は千鶴の太腿の上に頭を乗せた。
「……これでいいか?」
「うん。ばっちりだ」
少しの間水都はちょうどいい場所を探して頭をごそごそしていたが、簡単に見つけられたら
しくすぐに落ち着いた。
「ほら、ほら。早く頭を撫でてくれ」
「ん」
軽く返事をして、頭を撫でる。水都はさっきとは違い仰向けになっていて、千鶴の顔をじっ
と見つめてきた。
千鶴にはそれが何だか妙に恥ずかしく感じて、できるだけ水都のことを見ないよう顔を背け
た。
もちろん、頭を撫で続けまま。
静かだが温かい時間が流れ――。
「なあ」
それを破ったのは水都だった。
千鶴が顔を下に向けると真剣な顔の水都がいた。
「私は、君のことが好きだ」
同時に水都の手が伸びてきて、千鶴の顔を両脇から優しく包む。
一瞬、水都は暗い表情になり、視線を千鶴からずらした。
「君は、私のことが嫌いか?さっき君はあんなことを言ったが――」
千鶴に触れた水都の手は、小さく震えていた。
「水都」
びくりと体を震わして水都はこちらを向いた。
千鶴は恋人なんていたことがない。だから、こういう時に言うべき言葉がわからない。だから、行動で示した。
千鶴はそのままゆっくりと顔を水都に近づけていき、気付いた水都も顔を近づけ、お互いの
息が鼻を掠め、唇があと数センチのところで――。
がらり。
嫌な音が響いた。
だけど千鶴の眼の前には止める気なんてさらさらないだろう(結構大胆だな)目をつむった
水都がいて、さらに彼女の手はいつの間にか千鶴の頭をがっちりとホールドしていて――。
千鶴に、逃げれるはずがなかった。
夏期休業前半の補習は終わった。
中島千鶴と蒼葉水都が付き合い始めたという事実を残して――。
以上です。
感想、アドバイスなど下さったら嬉しいです。
誤字脱字はどうか脳内補完でお願いします(´・ω・`)
「誤字脱字は云々」という逃げを打つのは嫌いだがGJ!
それはさて、千鶴が男であることを思い出すのに少し時間を取られるのが勿体無い気がした。
敢えて性別が判り難い名前を使うのであれば、毎回登場時にほんのちょっとでも性別を匂わせてはどうだろう。
どーしても某四姉妹が浮かぶのは俺が悪いとして、
確かに最初は百合と勘違いする人多いと思う(俺はそれはそれで好物だからいいけどなww)
まあ次回を気楽に待ってるよ。
えーっと、つまりこう言えばいいのかな?
「女みたいな名前なのに。なんだ男か」
今夜はお寿司と聞いて喜んだあと出てきたのがいなり寿司だった気分
面白かった。素直クール同士のカップルなのかな
なんて言うか、キャラも好きだけど文体が特に俺の好みだ
>>95 面白かった。GJ。
文体も簡潔で分かりやすいし、この後の作品にwktkwktk!
>>98 俺は某数字の五姉弟が思い浮かんだ。
もののけ姫のサンやエボシって素直クールかもよ
明けましておめでとうございます。保管庫の中の人です。
えーと、新年早々に恐縮なのですが、職人方にお願いしたいことがあります。
出来れば、投下される作品にタイトルを付けておいて下さい。
こっちの中の人は矢もかくやという速さの某スレの管理人氏のようなネーミングセンスを持ち合わせておりませんorz
それでは、素直クールの更なる飛躍を祈願して。
保管庫にある野園さんの話と千鶴と水都の話がおかしくなってない?
hosyu
補習
おはようございます279です。
続きです。でも、いつぞや言ったボーイズサイドではありません。エロ分頑張って増やしてみました。
ではどうぞ。
最近彼女の機嫌が悪い。
なんとなく予想は付いてはいるが、一応聞いてみる。
―最近機嫌が悪いみたいだね?
『そうなんだ。来るはずのプレゼントがいつまでも来ないんだよ。それで少しイライラしているんだ。』
―ちなみにどんなプレゼント?
『君との子供だ。』
―出来るはずないじゃないか。毎回避妊してるんだし。
『何週間か前、コトに及ぶときに私から渡したコンドームがあったろう?あれに少し細工をしたんだ。有り体に言ってしまえば穴を開け……』
―やっぱりそうか!
なんて事しやがる、この女怖えよ。
ソファの隣で大声を出した俺に顔をしかめて会話を続ける。
『急に大声を出すな。ビックリするじゃないか。……だからそろそろ生理が止まるはずなんだが、今月も来たんでな。』
―来るに決まってるだろうが。
『何故だ?細工は流々、仕上げをごろうじろ、だったのに。』
―いつも俺の用意してるブツをそっちが渡したんだ。何か引っかかった感じがしたから、すりかえておいたんだよ。
『何てことをするんだ。』
―そりゃこっちの台詞だ。大体約束はどうした、約束は。
『うん、そのことも気にはなったんだが、社会人として自立してから出産なら問題は無いだろう、と思ってな。』
―勝手に思うな!つーかせめて一言言ってくれよ……
勘が働いてよかった。もし何も知らずにいたら気絶していただろうな、間違いなく。
『で、何故そんなことをしたんだ?』
―何でってなあ……
『まだ自分に自信が無い?』
―……将来のことだしな。
今年の春には今までの生活を捨てて新しい生活に挑む。未知の世界への挑戦だ。その中で彼女(とその子供)を養っていけるのか。全く予想が付かない。
『自信が無いのか。……心配するな、私も無い。君と仲良くやっていけるか、全然ビジョンが浮かばないんだよ。』
驚いた。いつも自信満々に迫ってくる彼女がそんな不安を持っていたなんて、夢にも思わなかった。
でも……
―俺が裏切るとでも?
目を細め、口元にうっすらと笑みを浮かべながら少しだけ不快感を露わにする。
『あ、いや、そういう意味じゃ無いんだ。』
珍しく焦る彼女を見て、もう少し困らせてやろうと悪戯心が芽を出した。
―そういう意味じゃないって、じゃあどういう意味?
『う゛……えっと、その……どうだっていいじゃないかそんなことっ!』
―どうでもよくないな。俺の不安は知ってるのに、あんたの不安は、俺、知っちゃいけないのか?
『む゛ー……』
―いけないの?
脇腹を下からこすりあげながら耳元で囁く。どちらも弱いのは織り込み済みだ。悲鳴を上げて涙目で睨んでくる。
『もう!弱いの知ってるくせに。』
―で、どうなの?
『うん……君ほどいい男だと、あちこちから引く手あまたなんじゃないかと思って。』
―やっぱり俺のこと信じてないんじゃないか。
耳たぶを口に含んで口の中で転がす。背筋を突っ張らせ耐える彼女が可愛くて、先をうながしながら続ける。
『だか……ら、君が他の人に目うっ……つりしないか、はあっ、心配なんだよっ……』
―これだけどっぷりはまってるのに?
『熱し、やすく冷めやすいっ……なんて言葉もある、ふぅ……は、あぁ、じゃないか。』
耳たぶを攻めながらセーターの襟ぐりから中へ手を突っ込む。先端を撫でながら、もう一方の手は首筋に爪を滑らせる。
―自信が無いの?
『ああ、無いな。世の中に……は、30億の女性がいるんだ……ぞ。』
―心配しなくても大丈夫だよ。俺の中じゃランキングダントツの1位だから。
我ながら、なんてクサイ台詞だろうと思いながら首筋を舐め上げる。ひゃあ、と情けない叫び声をあげて体を縮こませる。
『……それじゃあ、後続に気をつけないと。』
視線を絡ませて唇を押し付ける。二人とも示し合わせたようにお互いの舌を舐め合い、そのままソファへ寝転ぶ。
唾液の糸を引きながら首から顎にかけて舐めあげて、そのまま鼻にも舌を走らせる。
襟ぐりから手を引き抜くと、今度は臍からブラジャーに手を伸ばしフロントホックのブラジャーを片手で外す。今まで何度も味わった柔らかさが弾けるのを感じた。
『上手くなったな。』
―俺もそう思う。
軽口を叩きながら、もう何度も攻めて覚えてしまったポイントを刺激していく。臍の周り、脇腹、膝丈のスカートの裾から内腿へ手を伸ばす。
しかしその先へは手を伸ばさない。
彼女は何とかして少しでも奥に手を触れさせようともぞもぞと腰をくねらせるが、それに気付かないふりをして何度も内腿を上下にさする。
『焦らさないで、触ってくれ。』
―どこを?
『どういう言い方がいい?』
そうでした、こういうこと言うのに恥じらいの無い人でした。私が悪うございました。
―……っとに色気の無い……
『何か言ったか?』
―いいえなんにも。
今度は焦らさずに素直にさすってやる。湿った薄布を通じて大きく膨らんだ肉芽と愛液でまみれた女性を感じる。
下着を脱がせようと手をかけると少し腰を浮かせて手伝ってくれた。
―うまくなったな。
『初めてのときからそうだったと思うがな。』
―……ゴメンね手先が不器用で。
『もう器用になってるじゃないか。手先なんて使えば使うほど器用になるものだろう。もう何度使っていると思ってるんだ?』
―……まさか数えてるんじゃないだろうな、<した>回数。
『当たり前じゃないか。今日のこれが……』
―気が滅入るから言わないでくれ。
『じゃあもうやめるか?』
―我慢できるの?
『出来ないが、君がそうしろと言うのなら。』
―……俺は手先が不器用だし、生き方も不器用なんだ。
『知ってるぅっ!』
少しずらして露になったそこにいきなり指を突っ込み、中で折り曲げる。彼女は入り口の裏側辺りが特別、お気に入りだ。
彼女は体を反らせ、大きく見開かれた目からは一筋、涙が流れ落ちた。
『何度も言った事だが、君は本当に……』
―酷い男だな?……悪い、なるべく考えないようにしてた事聞かれて、八つ当たりしちまった。
『気にするな。』
首筋を抱きしめられて、耳元で囁かれた。
『君に頼られるのなら、どんな形でも構わないさ。』
―俺が構うよ。好きな人に負担をかけることはしたくない。
『君が男だからか?』
―それもある。それに社会に出てからもいつまでも子供でいるわけにはいかないだろ。
『社会に出ている人全てが大人と思っているのか?私の父のような人もいるじゃないか。』
―……あれはちゃんとした大人なのか?
『あんなのでも会社社長が出来る世の中だ。もう少し、肩の力を抜け。君の負担は私も請け負う事が出来るんだぞ?』
―でも貴女の負担を俺は……
言いかけて、唇で唇を塞がれた。
『問題無い。君が愛してくれるだけで十分だ。』
―……変なテクニック覚えやがって。
『君がよくやる手法じゃないか。』
ムッとした。……やっぱり俺は芯からSなようだ。
無言でもう一度ソファに押し倒し、舌で彼女の秘所を弄る。
中途半端なところまでしか弄っていなかったが、そこは十分に濡れていた。彼は、だが染み出してくる愛液をすくい取り続けることを止めない。
『や、つあたりじゃあっ……ないか。』
―ゴメン。
言いながらそこに吸い付いて、中心から少し離れたところの突起を舌で転がす。
『っ!……言っていることとやっていることが違うっ!』
―ゴメン。でも止めるつもり、無いから。
『私も、やめてほしくうぅっ、は無いが……なら早く一つになりたいよ。』
―俺はもっと弄ってたい。
少し大きめの音を立ててエキスを啜りこむ。彼女の体がビクリと跳ねて、そのまま固まった。
荒れた呼吸を整えようと形の良いバストが上下しているが、浩輔はそれに気が付かないふりをして自身の欲望を満足させようと彼自身に準備を施す。
『ちょっと待った。イッたばかりなんだ、少し休ませて……』
―嫌だ。
入り口に自身をあてがうと一気に押し進めた。
挿れた瞬間、彼女の虚ろだった目が大きく見開かれもう一度身体が大きく跳ねた。
―挿れただけでイッたのか?
大きく何度も首肯いて、上半身にしがみついてきた。自然、口元に相手の右耳が来る。
―……子供のままじゃ、こんな風になるかもしれないんだぞ。
『確かに、毎日はキツいものがあるな。でも、私は君に貫かれる瞬間が一番幸せなんだ。だから……』
彼女は腕を緩めて、顔を向き合わせるように少し離れた。
『セックスレスにはならないでくれよ。』
―……しながら言う台詞じゃないだろ、それ。
思わず笑ってしまう。
やっぱりこの人を選んで正解だったな、と改めて思った瞬間だった。
〜〜コトが終わって〜〜
『ついに使ってくれたな。』
―何を?……ってうわああ!
『うるさいぞ。少し静かにしてくれ。この幸せを長く楽しみたいんだ。……3日前に生理が終わったばかりなのが悔やまれる。』
―マジで心臓止まるから止めてくれ。出来ないっていう保障が無いのが怖すぎるんだよ……。
……やっぱり失敗だっただろうか?コイツと一緒にいると長生き出来そうにない。
何でエロ書けないのにエロパロでSS書いてんだろorz
>保管庫の中の人
いつも更新乙です。
題名ですが、このシリーズは名無しのままでいけないでしょうか?
それがもしいけないのならまた考えます。
最後に一言だけ。
朝っぱらから何やってるんだ俺。
名無しを固定名詞化したら?
≪名無しのシリーズ≫とか
うまいこと鳥でてるだろうか?別ブラウザから書き込んでるもんで
名無しのシリーズにしてもいいとは思ったんだけど、名前をつけないほかの人もいるだろうし
まずいかなと思ったんで。
GJでした。
>>115 ―俺と彼女のシリーズ
とか
GJ。
ところで関係ないんだが、このスレで出る素直クールって口調がほぼ固定だよな。
雰囲気的に合ってるしお約束的なモンもあるんだろうが、丁寧語口調の素直クールとか
ちょっと見てみたい今日この頃だ。
>>117 保管庫にあると思うが、過去に数例丁寧語の作品があったはずだぜ。
兄妹とか
>>117 丁寧語以外にも過去に何人か違う口調使ってた職人さんいたね。
保管庫漁ってみた。
けっこうあったんだな。さんくー。
いきなりだけどアニメやゲームで素直クールなキャラて少ないよね
そりゃそうだ。
ツンデレに対抗して人工的に作られた属性なんだから。
なるほど……つまりアンドロイド系の話を私に再現して欲しいということだな。
承知した――――ッ!
カヒッカヒッw
ラブコメの醍醐味は誤解と妄想と片思いなのに、素直クールじゃそれが生じにくい。
だからじゃね?
ラブ米で素直クールやったら、アメリカかぶれの人権団体が文句言ってくるからじゃね?
>>123 そんな事はないだろう
自分の気持ちに素直で、かつ周囲の反応を意に介さない、
常に冷静なキャラというのは昔からいた
ただ昔はそういうキャラは、主人公の先輩とかの位置にいたので
ラブコメとして描かれる事が少なかっただけだ
わが道をいって自分の気持ちに素直(=告白も直球)だと
告白を受ける側が好意を持っちゃうと、くっついちゃうんだよ。
なんで、途中の紆余曲折がドラマとして描きにくいというのは
あると思う。
だがそれがいい。
だが、ちょっと待って欲しい。告白を受ける側も好意を持っていても、なおかつツンデレである可能性はないだろうか。
むしろそれがいい。
>>129 手近なものとしては、展開を悲恋にするという手が残されている。
「好きだ。付き合ってほしい」
「ふっ、ふざけんな。誰がお前なんかと!バ〜カ、弱虫、泣き虫…」
…思い出すたび、壁に頭をガンガンと打ち付けたくなる
十七年の生涯で一番の後悔の種だった
小学四年生の時、クラスメイトの子に突然告白された
全く免疫の無かった僕は、恥ずかしさの余り、むちゃくちゃに罵って逃げてしまった
翌日、その子が外国へ留学したと聞かされた
クラスの女の子達からは白い目で、男どもからはヤッカミの嵐、なにより自分が一番自分をゆるせず、虐めぬいた
当時、習っていた空手の稽古で…
目的はなんであれ、むちゃな稽古を重ねれば、壊れなければ強くなる
いつのまにか、全国で屈指の選手になってしまっていた
世界大会に出られるほどの…
開催国は、あの子の留学した国だった
僕はあの子に手紙を書いた
一週間かけて、便箋を十冊以上使い潰して、書けたのは
「来い」
の、一言だけだった
大会にあの子は来てくれた
やっと話が出来た
あの時は興奮して熱くなってしまったこと、皆の前で素直になれなかったこと、本当は…
「好きだ。付き合ってほしい」
今度はこちらから言えた
素直に、クールに…
彼は大きく頷いてくれた
僕は素直クールな女の子になれた幸せにひたった
終
僕っ子によるフェイントを書いてるうちに思い付き、試したくなってやった
今は後悔している
冒頭で「もしかしたらオンナノコ?」と思ったものの、「クラスの女の子たち云々」で
「やっぱり男の子か」と思い込んでしまった。
その下りは、「クラスのみんなからの白い目とやっかみの嵐」でよかったのではないだろうか。
とは言え、個人的には萌えた♪GJ!
>>138 オパーイボイーンだな
ってか恥ずかしがらずにこうゆうことを言ってのける素クールが怖い
>141
絵師はだれ?
自分で描いたんじゃないの? とにかくGJ! どんどん投下してくれ
>>104 亀だが
「矢もかくやという速さの某スレの管理人氏のようなネーミングセンス」の某スレについてkwsk
145 :
141:2007/01/17(水) 20:38:46 ID:pVGPebui
自作絵だろうけど、転載だよ。
角煮でかなり前にみたことがある。詳細不明だけど、わりと初期のものらしい。
>>144 管理人氏じゃないが、多分俺もそこの住人。
ぶっちゃけ「」内の情報ですぐ絞り込めるよ。エロパロ内でもっとも賑わっているスレのひとつだから。
ほんと傍から見ていてよく管理出来るな、ってぐらい。
最近伸びてるといえばハルヒスレ?
素直クールがパニックに陥ったらどうなるかという思いつきと
>>141の絵で触発されて筆を取ってみた。ちなみにエロ分はなし。
処女作だけど誤字脱字等々あればどんどんお願いします(`・ω・´)つ
「起立、礼。」
やっと今日最後の授業が終わった。
気だるげにため息を1つつき、柏木悠一郎は大きく伸びをした。
とにかく今日は散々な一日だった。
事の発端は昼休み。
「悠、少し時間をもらえないか?」
教室に入ってくるなり俺の机の前で俺の彼女――藤倉葉月はそう言った。
彼女といっても、葉月に告白されて俺がそれをOKしたのがまだほんの10日前のこと。
だから葉月のことは成績優秀、容姿端麗といったクラスの誰もが知っているようなことしか
俺はまだ知らないが、二週間という短い間でも1つだけ知ったことがある。
どうやら葉月の辞書はオブラートに包むという慣用句が欠落しているらしい。
その容姿のせいでただでさえクラスの注目を(主に男子どもから)集めるというのに
とんでもないことを時たま口走るものだから――。
付き合い始めたその日、『悠が私の求愛に答えてくれるとは、今日は私の人生最良の日だ。』と言われ
クラス中の男子どもからの殺意の視線で針の筵状態になったことが不意にフラッシュバックした。
もうあんな思いはゴメンだ。今後は気をつけねば…。
「悠、聞いているのか?」
どうやら考え事に気を取られて上の空になっていたらしい。
「ああ、聞いてるよ。」
「そうか?ならいいが…。」
葉月は俺の机の上に身を乗り出し、眼鏡越しに僕の顔を真剣な眼差しで見つめた。
「実は、悠に折り入って頼みがあるんだ。」
「な、なんでしょうか?」
葉月のプレッシャーに圧されて思わず敬語が出てしまった。まずい、嫌な予感がする。
「うむ、今日は君と付き合って丁度10日目の記念日だ。私はこの記念に君と子作りに励みたいと思っているのだが」
…嫌な予感が的中した。
「私は大抵のことは自分一人でできる自身があるが、子作りに関してはどうしても悠の協力が必要なんだ。」
クラスの時間が凍り付いている中、葉月の声だけが教室に響く。
その間俺の身体には殺意の視線がザクザクと突き刺さっている訳なのだが。
その後まだ早すぎるだろてかまずそういうことは人前で言わないで下さいお願いしますと
どうにか葉月の頼みを断ったのはいいが、その後女子からはからかわれ
男子どもからは「何ゆえオマエばかり」「死ねばいいのに」と怨みの篭った言葉を頂いて今に至る。
「…今後はより一層気をつけることにしよう。あんまり効果ないかもしれないけど。」
と俺は放課後の教室で頭を掻きながら微妙に硬くない決意をする。
俺は普段短めの髪を立てているのだが、ここで髪が結構伸びていることに気付いた。
そういえば最近髪切ってないな。ワックスとかつけても最近なかなか髪立たないし。
「よし、決意を固めた記念に断髪式ってことで帰りに床屋でも寄ってくか。最近なかなか立たないしな。」
「悠っ!!」
突然教室の扉が開けられ、葉月が物凄い勢いで詰め寄ってきた。
「今『さいきんなかなかたたない』と聞こえたがそれは本当か!?」
「へ?…ああ、まあ。」
「なるほど、だから昼休みにあんなことを言って断ったのか…。だがそれならそうと言ってくれれば」
葉月は顎にてを当てて何か小声でブツブツ言っている。
しかし何故髪が立たないことが昼休みの馬鹿騒ぎにつながるのだろうか。さっぱり理解できない。
「…ふむ、何か原因があるかもしれないな。心当たりはないのか?」
心当たりと言われても…。
「うーん、長くなったからだろうな。」
「な、長く?」
葉月が驚愕の表情で聞き返してきた。何だ?今俺はそんなに変なことを言ったのか?
「な、長さによって立ったり立たなくなったりするものなのか…?」
「そりゃそうでしょ。だから今から切りに行こうかと思ってるんだけど。」
「なっ!?きっききききき切る!?」
葉月が口をパクパクさせながら、まるで信じられないことを聞いたように驚いている。
また俺は変なことを言ってしまったのだろうか。それにしても普段殆ど無表情と言ってもいい葉月が
こんなに驚くなんて、葉月もこんな表情をすることあるんだな。
「まっ待て!早まるな!立たなくなったくらいで切るなんてそんなことしなくても!」
葉月が珍しく慌てている。本当に何かあったのだろうか?こんなに取り乱すなんて葉月らしくない。
「そんな大げさな…。どうせ切ってもまた生えてくるのに。」
「まっまたはえてくる!?」
そう言うと葉月の身体がぐらりと傾いた。
「うわっ!?ちょ、葉月、どうした!?」
思わず俺は倒れそうになった葉月を支えた。どうやら気を失ったらしい。
「……貧血?」
なるほど、今日の葉月が驚いたり慌てたりしていつもと違ってたのは体調が悪かったからか。
葉月を保健室に連れて行き、ベッドに寝かせた後ベッドの隣にあったパイプ椅子に腰を下ろした。
今日は体調悪いのに話し込んだりして葉月に悪いことしたかな…と暫く考えていると葉月が目を覚ました。
「う…ん。」
「お、目が覚めたか。悪いな、体調悪いのにはなs「悠!!お願いだから切るなんて言わないでくれ!!」
俺の顔を見るなり葉月はそう言った。しかし目が覚めてからの第一声がそれかよ。葉月は髪が長い男が好みなのだろうか。
いや別に『介抱してくれてありがとう』とかそんな気の利いた科白はまったく期待してなかったけど。
「いや、さっきも思ったけどさ、髪を切るくらいでそんな大げさな…。」
「……髪?」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして葉月が聞き返した。
やはり体調が悪いようだ。普段の葉月がこんな顔をするのを俺は見たことが無い。
「………フ、フフフ。そうか、髪か。なるほど、私の勘違いか。」
葉月が乾いた笑いを放っている。うん、こんな葉月も見たことが無い。
しかし何故だろう。さっきからとんでもなく嫌な予感がするのは。
よく分からないが本能が逃げたほうがいいと言っている。ここは退却した方がよさそうだ。
「な、何か元気そうだし俺今日は床屋寄ってこうと思ってたから先にk「却下だ。」
そう言って葉月に右手首を掴まれた。割と洒落にならない力で。
あれ?葉月ってこんなに握力強かったっけ?
「悪いが悠にはこれから私に付き合ってもらう。」
「つ、付き合うといいますと?」
「今回は私の勘違いだったが今後そうならないとも言い切れないし、何より私にこんな思いをさせた
埋め合わせはしてもらわないといけないからな。」
こんな思いとはいったいなんだろう。何か怒らせるようなことでも言ってしまったのだろうか。
「なるほど、本人の自覚はなしか。まあいい。これからホテルで罪状をじっくり聞かせてやる。」
どうやら顔に出てしまっていたらしい。だがそんなことより
「ほ、ホテル?何で?」
「決まっているだろう?埋め合わせとして子作りに協力してもらう。勿論、反論その他は一切認めない。」
そういって葉月は俺の右腕を掴んで歩き出した。何故そうなるのかさっぱり分からない。
俺が何かしたのだろうか?葉月にズルズルと引きずられながら俺は
あぁ、やっぱり気をつけても効果はなかったみたいだなと割とどうでもいいことを考えていた。
終
>>150-153 うほーーーー^^−−−い
スホーイ!
これはまた素晴らしい素直クールですね!!!!!!!!!
GJGJGJGJ!
リアルタイムGJ!素直だからこその勘違いワロタw
俺もPC規制解除されたら1本挙げますよってに……
一瞬、プロミネン庫のやつかと思ったが違うよな……。
約束どおり上げますよっと
年末に4日間規制されてまた3日間ですかorz
例によってエロなんてものありません
青く、吸い込まれそうな空を戴いたある日曜日。
『君の大学の卒業式はいつだったかな?』
―ん?3月の頭だったはずだけど。
『じゃあ3月の中旬に優先して予約を取ってもらおう。親のコネというものは有効活用しないと。』
―……何の話?
『やはり私も女性なのでな、純白のドレスを用意する必要が……』
―結婚式か?
『察しがいいな。』
―分からないほうがおかしいだろ。大体、俺まだそっちの親にちゃんと挨拶してないぞ。
『そこは大丈夫だ。以前君を招待したときな、親には結婚の挨拶ということで紹介してあるから問題は無い。』
―……つかちょっと待て、俺はそっちの親の招待と聞いたはずなんだが。
『そんな細かいことはどうでもいいじゃないか。……さて、式場の準備以外にもしなければならないことがある。』
―なんだよ?
『今度は私の番、ということだ。』
―もしかして今から行くのか?
『そうだ。行こう。』
そういうことになった。
あれよあれよという間に父と母の暮らす街へやってきた。小ぢんまりとして暮らしやすそうな街だ。
時折強く吹く風に身体を震わせながら、教えられた住所を目指す。
新幹線での移動中に携帯から電話すると、母さんは珍しく自分から連絡を取ってきた息子に面食らってはいたが、の住所を教えてくれた。
「ところで、何でいきなり来るなんてことになったの?」
―挨拶したいんだってよ、彼女が。
「あの子が……もしかして『息子さんをください』だったりして。」
―そのまさかなんだよ。
……そりゃ流石にうちの母親でも絶句するよな。
教えられたマンションの前に到着すると、繋いだ右手が少し強く握られる。
―緊張してる?
『少しだけ。』
―俺もだ。
『君でも緊張するのか?』
―うん、親父がな。4年近く顔合わせてないし。……どういう顔したらいいのか分からないんだ。
『笑えばいいと思う。』
―真面目な話ししないといけないのに、笑えるかよ。
玄関ロビーでオートロックのチャイムを鳴らす。回線がつながったと思ったら、会話も交わさずにすぐにロックが開かれる。
お前は下宿学生か。相手が誰かくらいは確認しろよ、無用心な。
「いらっしゃい。……浩輔、あんたは来なくてよかったのに。」
―何でだよ!
『お邪魔します、おば様。』
最愛の息子に何言ってやがる、この親は。
居間に案内される途中いくつかの部屋を覗いたが、二人暮らしには十分すぎる大きさのようだ。がらんどうの部屋がいくつか放置されている。
……もしかしたら俺と一緒に暮らすことも考えてたのかもしれないな。
居間のソファに座り、真面目な顔になって本題を切り出す……その前に。
―親父は?
「いいじゃない、いなくても。」
『そういう訳にはいきません。』
「いいのよ、あの人息子にぜーんぜん興味ないから。」
―知ってはいたけど改めて強調するなよ……で、どこにいるんだよ。
「出張中。」
―出張先から出張かよ!そもそも最初3年間の予定じゃなかったっけ……?
「明日には帰ってくるらしいから、泊まっていったら?私は眠りが深いし防音も完璧だから、夜中に<元気>にしても問題ないわよ。」
『そうですか。よかったな、今日も楽しめる。』
―お前らちょっと黙れ。
何が悲しくて母親の下ネタを聞かんといかんのだ。
「で、何か言うことがあるんじゃないの?」
『はい、息子さんを私に下さい。』
―なんか逆じゃない?
「いいわよ。」
『ありがとうございます。』
―返事早いな、おい。
「で、式はいつごろを予定しているの?」
『彼が卒業したらすぐにでも。』
「そう、それじゃあ3月までにそちらの親御さんに挨拶に行かないといけないわね。」
……なんだか俺が完全に置き去りにされている感が強い。一応当事者のはずなのに。
―母さん、トイレ借りていい?こっち寒くってさ。
なんだかその場にいづらくなって口を開いた。
「玄関に一番近いドア。」
―どーも。
俺はその場を離れた。
…………………………
「私達にとって、たった一人の息子なの。」
居間を出て行ったのを確認して真剣な口調で喋りだす。自分の半分も生きていない小娘に本音を言うなんて、考えたこともなかった。
「大事にして。」
それだけが望みだ。
旦那と結婚したのは20歳の時。幸せだった。でも子供には10年間恵まれなかった。
遅くに出来た子供は甘やかされてろくな子供に育たない、なんてことをお姑さんに言われたこともあって、人一倍躾には気をつけたつもりだ。
それでもあの子をちゃんと育てられたのか自信が無い。
その子が今、幸せを掴もうとしている。これほど嬉しいことがほかにあるだろうか。
『当たり前です。あれだけ私に愛情を注いでくれる彼を、蔑ろにすることは私には出来ません。』
「ありがとう。」
20年以上私に圧し掛かっていた重石が、ほんの少し、軽くなった。
…………………………
「遅かったわね、大き……」
―だから下ネタは止めろ。
ドスンとソファに腰を下ろし話の続きがあるのかと身構えていると、彼女が口を開いた。
『さて、用件は済んだ。私はそろそろお暇しよう。』
―お暇って……もう帰るのか?少しゆっくりしていってもいいじゃないか。
『いや、そもそも事前に訪問の約束を取り付けていたわけではないんだ。あまり長居しても失礼だろう。』
―だったらちゃんと約束取り付けてから来ような。……じゃあ帰りますか。
立ち上がりコートを手に取ろうとすると、彼女に押し止められた。
『帰るのは私だけだ。君は久しぶりのお母様だろう?甘えるなり、親孝行していくなりしていけ。』
久しぶりの家族団欒にケチがつかないように気を遣ってくれたようだが、彼女一人を帰すのも忍びない。
―別に……
「ならあなたも残ってもらわないと。」
突然、母が割り込んだ。
「あなたももう少しでうちの一員になるんだから。親孝行、していってもらいましょうか?」
いつものように微笑を浮かべ、有無を言わさぬ口調で彼女に迫る。顔には「結婚に反対する事もできるのよ」と書いてある。
……どう見ても脅しです、本当にありがとうございました。
『……分かりました。今日はこちらに泊めてもらいたいと思います。』
「いいでしょう。……さあ、今日の夕食はどんなものが出てくるのかしら?」
―買い物からして来いって?
「当たり前じゃない。調味料以外何にも無いわよ。」
―……っとによー……仕方ない、買い物に行きますか。
『ああ。』
確か駅からの道の途中にスーパーが1軒、建っていたはずだ。あの規模なら大抵のものは揃うだろう。
「いってらっしゃい。お肉関係がいいな。」
―いってきます。その年じゃ太るぞ。
「車に轢かれてしまえ。」
―実の息子に言う言葉じゃねえよ。
まなじりがつりあがったのを確認して、慌てて退散した。
…………………………
「ねえ。」
空っぽの部屋の中、その場にいない小娘に語りかける。
「私の息子、奪っていったのは大きなマイナスよ。まずは今日の料理でどれだけ挽回できるかしら。」
さあ、私とお嫁さんの戦いはこれからだ。
…………………………
急に鼻の奥がムズムズして大きなくしゃみをする。
―やっぱりこっちは寒いな。
『うん。人肌が恋しくなる。』
鼻をすすり上げながら右腕に抱きつく。
―ああこら、鼻水つけるなよ。
『大丈夫だ。……君のお母様はいい方だな。』
―そうか?わがままだし感情の起伏が激しいし、そんなにいい人とは思わないけどな。
『でもそういう悪口を赤の他人に言われたら腹が立つだろう?……やはりいい人だよ、あの人は。』
―上手くやっていけそうか?
『君が私を愛してくれる限り、何があったって平気さ。』
―そうだな。
いつもの事だな、と思っているのだろう、彼は適当に相槌を打っている。
抜き打ちで頬にキスをする。真っ赤になって慌てている彼の横顔を眺めながら呟く。
『早く君の子供が欲しい。』
―街中でそんなことを口走るな!
あんな素敵な母親に、私もなりたい。
言うまでもなくその日は楽しんだ。
と、以上です。
アハハ、エロ分なんて知りません。何ですかそれ?
浩輔の親父?彼は「ウチのカミサン」的な役回りでいいですよね?
いつか彼主演のドラマが一本作られて(以下黒歴史
あと、ところどころ何かのパロが入っていますが気にしないように。
二作品共、GJです!><
あちこちにある『素直クール』スレのなかでも、
ここが一番落ち着く。
つーか、素直クールスレと胸張って言えるのはここくらいしかないw
ここしか来ないんだが他はどんな感じなん?
>155
スホーイかよw
VIPの素直クールスレって無くなっちゃったのかね?
保守っておこう
保守
こんなところにあったのか・・・素直クール・・・
文章だけ見ればまんまだな
「…寒いな」
「…そうですか」
「冷たいな。愛しい恋人が寒さに震えてるというのに」
「なら、なぜに脱いでるんですかお前は」
「なぜに…って、寒いからさ」
「いやいやいや、当たり前のように言ってるけどそれは違う。逆だ
寒いなら着ろ。そしてこっちに来るな」
「ふふふ…、照れるところも(ry
「やっ、ちょっ、ゃ…、ぁん…っ
って、いや、まじか。おちつ────
(省略されました、続きを読むにはワッフルワッフル!!)
ワッホーワッホー!!
ヤックルヤックル!!
マッスルマッスル!!
シッコクシッコク!!
ヤック デ カルチャ!!
保守
183 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/01(木) 22:06:27 ID:uXKvj4yP
age
素直クールはもっと多くの人に愛されるべき
同意だが…ワンパターンになるんだよねぇ。
そこが難しい。
まとめサイトの長編はもう更新されないのかな・・・
明けましておめでとうございます。
もう節分だが、まあいいや。
ちまちま書いておりますが、なかなか落としどころが見つからず……。
いや、結末は決まっているけれども。
無闇に構想が広がったので、ある程度書きあがり次第投下する連載形式、
ついでにSFという世界観で良ければ、近々いけるかと。
いやまあ、ぶっちゃけ恋愛色が薄くなりそうな物語なのは、このスレの意義的に大問題な気がせんでもないのだが('A`)
もしくは、さらにちょっと時間を空ければ、今までのキャラを使った短編。
さて、ご注文はいかが致しましょう。ご要望承ります。
>>187 テラwktk
浩毅と珠樹の続きじゃなくても、いや続き書いてくれれば最高ですけど、とにかく
素直クール×ツンデレ(男)ものをお願いしたい
189 :
書く人:2007/02/03(土) 07:50:03 ID:mjyBTHzR
ジャーが白米を炊くまでの時間つぶしに短編を…
190 :
書く人:2007/02/03(土) 08:01:41 ID:mjyBTHzR
事件とは、本当に唐突に起こる。
俺こと解助が彼女である説子と、俺の親友のである素直と一緒に飯を食っていた時の事だ。
一人の女性とが俺達の前に立った。
ポニーテールに怜悧な容貌――隣のクラスの留学生・クール=ストレーナ
彼女は俺達、というか素直の前に立つと、何の気負いもなくこう言った。
「素直くん。唐突だが私はあなたが好きなの。付き合ってくれないかしら?」
「その前に質問がある、クール君。カメラと「どっきり」と表記されたプラカードを持っているスタッフはどこに隠れている?」
191 :
書く人:2007/02/03(土) 08:15:07 ID:mjyBTHzR
何が起こってるんだ?何が起こってるんだ?
俺こと解助は、説子が作ってくれた弁当のタコウィンナーを口からはみ出させたまま、目をぱちくりさせる。
目の前の男女は、似たもの同士だ。
冷静で理性的で殆ど常に無表情。だが自分の欲求に正直で、常識を平気で踏破する。
素直クール。一言で表現するならそんな感じだ。
そんな二人が、お互いを探るように互いを見つめあい、会話をしている。
その声の平坦さや、凍りついたような表情は、まるで早打ちに挑もうとしているガンマンのよう。
だが二人の間で飛び交うのは弾丸ではなく
「素直くんは、これが悪戯の一種と考えているのか?それならば誤解だ。
私の発現に虚偽はない。君に異性として好意を抱き、男女の交際を申し込んでいる」
「なるほど。確かに信用は置けるだろう。仮に冗談、悪戯の類であるとしてもここまで言い当てられた時点で種を明かすのが普通だ。
まして君の普段の行動様式からしてこのような悪戯を仕掛けるとは思えない。
だが普段の行動を判断基準にした場合、君が俺に好意を持っているという事実は極めて信じるのが難しい」
「それは当然だと言える。私が君への好意を表明したのは今しがたの発言が始めてであり、またそれが外部に発覚せぬよう可能な限りの注意を払ってきたのだから」
…えっと、つまりこいつらの言っている事を意訳すると
『ふ、ふざけてなんかないわよ!本気なんだから!』
『そう…なのか?確かに、お前はそんな奴じゃねぇけど…けど、そんなそぶり少しもなかったのに…』
『当たり前よ。今まで秘密だったし…ばれないように気をつけてたもん』
ってことか?
192 :
書く人:2007/02/03(土) 08:22:57 ID:mjyBTHzR
だが…内容と表情とかが全くあってないだろう?
戸惑う俺の耳元で、説子が囁いた。
(ねぇ、見てよ解助。素直くんもクールさんもすっごく照れてるよ)
「なんですと!?」
説子の言葉に俺は驚き声を上げてしまう。
あの二人が照れてる?
あの、新聞部でロボ疑惑すら取り上げられたことがあるあの二人が、照れる?
改めて二人を見てみるが、しかし俺には普段との違いが全く見られない。
―――いや、少しだけ、耳が赤いか?
気のせいかもしれない僅かな変化。
193 :
書く人:2007/02/03(土) 08:58:50 ID:mjyBTHzR
「大体、解らない。どうして君は俺に好意を抱く?」
「それは不明よ。だが、それは問題ではないと思うわ。
要は、素直くんが受け入れてくれるかどうかよ」
(うわぁっ…クールさん、開き直ってきたね。
素直くん、押されてるよ。ま、好きな人から告白されたら当然だよね)
(アイツ、クールさんのこと好きだったのか!?)
衝撃の新事実。足元が崩れるような感覚を受けつつ、俺は二人の攻防を見つめる。
「なるほど。確かにそれは道理だ。
男女交際は両者の同意確認以上の必要がない。だが…」
「なら回答して。もちろん、断ってもかまわないわ。
しかし振るならば教えて欲しいわ」
「いや、その必要はない。君との交際を了承する」
「嬉しいわ」
(うん!がんばった!よくがんばったわ、二人とも!)
(いや、そんなにがんばったのか?)
(がんばったわよ、二人とも、物凄く緊張しているじゃない!)
力説する説子。しかし俺には二人とも、普段通りにしか見えない。
「では、今日の放課後に一緒に帰るということで、いい?」
「解った。校門の前でだな」
俺と説子が言い合っているうちに、二人は早速、一緒に帰る予定を立てている。
その事務的な会話からは、やっぱり「ときめき」とかそういった要素が微塵も感じられない。
194 :
書く人:2007/02/03(土) 09:11:11 ID:mjyBTHzR
「では、私は移動教室なので失礼させてもらうわ」
「解った。放課後、校門で。予定に変更があった場合は携帯電話による連絡を入れる」
「ええ」
それだけ言って、クールさんは教室から出て行った。
「あ、私。心配だからクールさんの様子見てくるね。素直くんのことはヨロシク」
「心配?っておい!?」
俺の疑問に答えずに、説子はクールさんが出て行った扉から駆け出した。
(心配するような様子は見受けられんがなぁ)
俺は首をかしげながら、隣で告白を受ける前と全く変わらない様子の素直をからかう事にした。
「よう!良かったじゃないか!」
俺は彼女の肩を叩き―――そのままの体勢で、素直は椅子ごと横に倒れた。
「うおっ!?だ、大丈夫なのか!?」
「―――ああ、問題ない」
まるでゼンマイが切れた人形のように、ピクリともせずに言う素直。
ひょっとして…こいつ、めちゃくちゃ緊張していたのか?
どうしようかと途方にくれる俺の耳に、今度は廊下から悲鳴が聞こえた。
「うわっ!クールさんが倒れたぞ!」
「ゼンマイが切れたのか?」
「ほ、保健室保健室〜!」
…どうやら、説子の心配はこのことだったらしい。
(変な奴ら…)
ともあれ、コレがこの風変わりな―――素直クールカップルの馴れ初めだった。
195 :
書く人:2007/02/03(土) 09:15:07 ID:mjyBTHzR
エロなくてすまん。
まあ、何が言いたいかと言うと、チキンハートな素直クールってのもありじゃないか、ってことで。
これは新鮮
GJ!
ずいぶんと役割のはっきりしたお名前ですこと。
GJですな。
「解し(ほぐし)」と「説き(とき)」のペアと思ったら要は「解説」だったのか!
ほ
GJ
しかし見てる人こんなにいたのかwww
いやいやエロなくてもGJですよw
>>俺は彼女の肩を叩き―――そのままの体勢で、素直は椅子ごと横に倒れた。
ただここ気になったんだけど、素直て男だよね?
>>201 ま、説子がクール追っかけるシーンと絡んでのミステイクだろうから許してやれ
そして続ききぼーん
203 :
書く人:2007/02/04(日) 20:01:46 ID:TTkvE5vr
意外に好評らしいので、飯が炊けるまでの暇つぶしパート2、投下。
204 :
書く人:2007/02/04(日) 20:02:17 ID:TTkvE5vr
「解助。今日、下校に際して同行してくれないか?」
昼休みの終わり教室で、腐れ縁と親友の中間である知人、冷泉院(れいぜいいん)素直の奴が普段同様のシリアス顔で言ってきた。
俺こと上京(じょうきょう)解助は首をかしげる。
「今日って…お前、昼間にクールさんと一緒に帰るんじゃないのかよ?」
「ああ、そうだ。だからそれに同行してもらいたいと願い出ている」
ますます訳がわからない。
俺が疑問に思っているのを察してか、素直は付け加えた。
「俺は今まで異性と交際などしたことはない」
「あ、なるほどな」
俺は納得する。
コイツは家は金持ち、顔は良し、スポーツ万能、成績優秀とはっきり言ってモテまくり、当然告白も受けている。
だがそれらの告白を今まで全て断ってきた。
さっき、隣のクラスのクールさんに告白されるまでは。
「大丈夫だって、そんな心配しなくても」
「いや、慎重になるに越した事はない。
なんと言ってもこちらは恋愛経験未体験。それに対してクール君は見ての通りすばらしい女性だ。
おそらく経験など豊富と言うのも馬鹿らしい程だろう。
ゲームに例えるなら、俺はスライムと戦うのすら命がけの装備竹竿の遊び人レベル1。クール君はラスボス瞬殺の最高装備MAXレベル勇者だ」
「そこまでは…相手は同い年の女の子だぞ?そこまで戦力差はないだろ?」
コイツ、アホだなぁと思いながら、呆れ混じりに突っ込む俺。
205 :
書く人:2007/02/04(日) 20:02:47 ID:TTkvE5vr
「ま、何事も経験だしここは一発失敗覚悟で…」
「何を言ってる解助。失敗なんて出来るわけがないだろう!」
「うおっ!?」
珍しく、というかおそらく生まれて初めて聞いた素直の大声。
ビックリする俺の前で素直は語る。
「いいか?相手はあのクール君だ。
美しく、頭脳明晰で、運動も得意、慎ましやかなクール君だ。
アラブの石油王からミジンコのオスに至まで全ての雄性生物が彼女を狙っているはず。
そんな彼女が十人並みに過ぎない俺に声を声をかけるなど、奇跡を通り越して何かの間違いに過ぎない」
「…それで?」
恋は盲目と言うが、あまりに盲目過ぎる気がするんじゃなかと、半ば呆れる俺に素直は続ける。
「うん、それでだ。間違いとは言えチャンスはチャンス。
なんとしても物にしなくてはならない。
失敗は赦されないのだ。
だからこそ、親友である経験豊富な君に支援を頼みたい」
「親つーか、腐れ縁つーか…
それに経験豊富っていっても、今まで付き合ったのは説子も含めて4人…」
「頼む」
「けど…」
「頼む」
「……」
俺は黙って素直を見つめ返す。
その目はいつもと同じ感情の欠片も見えなくて…
…いや、違う。
いつもと少し違って、素直の目には不安の色がかすかに見えた。
ああ、そうか。コイツ、本気でクールさんに惚れてるんだな。
それで、不安で混乱して、どうしようもなくて…。
畜生、気持ち、理解で来ちまうじゃねぇか。
俺も説子と…運命の相手と思える女の子と付き合い始めた時はそんな感じだった。
そして、今でもそうだもんな。
しぶしぶと言った風に装いつつ俺は頷いた。
「解ったよ。けど、説子が良いって言ったらな」
「うん、助かる。この恩は消して忘れないだろう」
そう言って次の授業の準備を始める素直。
こいつ、つくづく変な奴だよなぁ…。
俺は苦笑交じりに、どこか嬉しそうな親友を眺めた。
206 :
書く人:2007/02/04(日) 20:03:19 ID:TTkvE5vr
「説子さん、今日、下校に際して同行してくれないかしら?」
昼休みの終わり保健室を出た廊下で、半年前に近所に越してきた隣のクラスの留学生、クール・ストレーナが普段同様の真面目な顔で言ったきた。
私こと十強(じっきょう)説子は首をかしげる。
「今日って…クールさん、素直くんと一緒に帰るんじゃないの?」
「ええ、そうよ。だからそれに同行してもらいたいと願い出ているの」
ますます訳がわからない。
私が疑問に思っているのを察たらしく、クールさんは付け加えた。
「私、今まで異性と交際などしたことはなくてね」
「あ、なるほどね」
私は納得する。
彼女は家はお金持ちで、顔は良くて、スポーツ万能で、成績優秀で、控えめに言ってもモテまくりで、告白もされている。
けど、それらの告白を今まで全て断ってきた。
さっき、うちのクラスの素直くんに告白するまでは。
「大丈夫だよ、そんな心配しなくても」
「いい、慎重になるに越した事はないわ。
なんと言ってもこちらは恋愛経験未体験。それに対して素直くんは見ての通りすばらしい男性よ。
おそらく経験など豊富と言うのも馬鹿らしい程に違いないわ。
ゲームに例えるなら、私はレベル1の勇者の餌食になるスライム。素直くんは裏技でも使わないと倒せないような隠しラスボスよ」
「そこまでは…相手は同い年の男の子だよ?そこまで戦力差よ」
この人、かわいいなぁと思いながら、苦笑交じりに突っ込む私。
207 :
書く人:2007/02/04(日) 20:05:43 ID:TTkvE5vr
「ま、何事も経験だしここは一発失敗覚悟で…」
「何を言ってるの説子さん。失敗なんて出来るわけがないでしょ!」
「ひゃっ!?」
珍しく、というかおそらく出会っていら初めて聞いたクールさんの大声。
ビックリする私の前でクールさんは語る。
「いい?相手はあの素直くんよ。
カッコよく、頭脳明晰で、運動も得意、紳士的な素直くんよ。
ハリウッドのトップも出るからミジンコのメスに至まで全ての雌性生物が彼を狙っているはず。
そんな彼が十人並みに過ぎない私に声を声をかけるなど、奇跡を通り越して何かの間違いに過ぎないわ」
「…それで?」
恋は盲目と言うが、あまりに盲目過ぎる気がするんじゃなかと、半ば感心する私にクールさんは続ける。
「うん、それでよ。間違いとは言えチャンスはチャンス。
なんとしても物にしなくてはならないわ。
失敗は赦されないの。
だからこそ、数少ない友達である経験豊富な君に支援を頼みたいの」
「えっ、ま、友達って言えば友達だけど…
けど、経験豊富っていっても、今まで付き合ったのは解助も含めて5人…」
「頼む」
「けど…」
「頼む」
「……」
私は黙って素直を見つめ返す。
その目は一見すればいつもの無表情なんだけど…
…けど、本当は全然違う。
いつもと違って、クールさんの目には不安の色が見えた。
ああ、そっか。この子、本気で素直くんに惚れてるんだぁ。
それで、不安で混乱して、どうしようもなくて…。
あ〜あ…。気持ち、理解できちゃうよ。
私も解助と…運命の相手と思える男の子と付き合い始めた時はそんな感じだった。
そして…今でもそうだもんね。
ついついこぼれてしまう笑顔で、私は頷く。
「解った。けど、解助が良いって言ったらね」
「うん、助かる。この恩は消して忘れないわ」
そう言って廊下を歩いてゆくクールさん。
この人、つくづくカワイイなぁ。
私は苦笑交じりに、どこか嬉しそうな隣人を眺めた。
208 :
書く人:2007/02/04(日) 20:07:21 ID:TTkvE5vr
ま、今日はこんなもんで。暇が出来たら不定期に書きます。
いつか、エロに到達できれば良いな、と思います。
209 :
書く人:2007/02/04(日) 20:19:19 ID:TTkvE5vr
うわっ、後半クールさんと素直を間違ってるところあるよ…。ゴメン、心意気で変換しておいて。
なぜあげる
お久しぶりです279です。
なんだか期末のこんな時期にこんなことしていていいのかわかりませんが、例のシリーズのとりあえず締めを書いてみました。
ではではどうぞ。
―つっ……かれたー!
嘘みたいに広いベッドに堅苦しい装いのまま突っ伏して喚く。
僅かに左側のマットレスがへこんだ。
『そうだな。』
彼女もそのまま寝転ぶ。豪奢なドレスのままだが気にしていない様子だ。
『だが、今日は人生最良の日だ。』
珍しく感情をあらわにした表情を浮かべる。満面の笑みだ。
今日は俺達の結婚式だった。
結婚をする、という報告を各所にするのは非常に……何というか……面倒だった。会う人会う人に好奇の視線を向けられるのだから。
流石に定年間近の大学のゼミの教授や、人生経験の豊富なバイト先の店長にはそんな反応はされなかったが、それはそれで面倒な反応だった。
「キミ、学生結婚の恐ろしさを知らないね?ボクの受け持ったゼミの生徒でも何人かいたんだけどね、殆どが別れたか、上手くいっていないよ。悪いこと言わないから(以下略)」
「あのときの女の子か?若いうちに無茶はするもんだぞ。上手くいかなくても、若ければ次があるしな。誰か紹介して欲しかったら(以下略)」
……何であんたらは別れる事前提で話を転がしてるんですか?少しは祝福してくれたっていいじゃないか。
『個性的な方々だな。』
この話をすると真顔でそう言われた。最初は表情から感情を読むことは出来なかったが、今は頬の微妙な突っ張り方や声のトーンからなんとなく読めるようになってきた。
考えたことをそのまま口にするタイプだからあまり必要なスキルではないのだが、それでも少しうれしい。
『式には呼ぶつもりか?』
―呼んでも構わないけど、何か問題があるのか?
『親族以外の人を呼ぶとなると、父の仕事の関係で関係各所から日本の重鎮がうんざりするほどいらっしゃる事になる。』
―下手すると披露宴でこっちの関係者が1テーブル、そっちの関係者が数十並ぶ可能性もあるのか。
『父の知り合いには既に政財界を引退されている方も多い。お年を召した方同士、久しぶりに親睦を深める場としては冠婚葬祭はもってこいの場だからな。』
―近所の葬式で親睦会開いてるご老人みたいなもんか。……いいんじゃないか?俺も友達くらいは呼びたいし。
……今思うと、こんなこと言うべきでは無かった。
会場には今年新卒採用された俺の友達と、彼らのトップに君臨している会長職が同じ会場で一組の男女を祝うという訳の分からないことになってしまった。
披露宴の最中、若者は萎縮して静かになり、老人は俺達を肴に騒ぎ立てている。なんだかあべこべだ。
『政財界の人たちは行動力に溢れる人が多いからな。』
進行に四苦八苦している司会者を見ながら、苦笑して彼女は言った。確かにそれくらいの元気が無いと世界に進出するような企業のトップには立てないだろう。
式次第も彼女の父親――もう俺にとってもお義父さんだけれども――が大泣きして、数人がかりで外に連行された以外は粛々と進行していった。
「いやだあああぁああぁぁあぁぁぁぁあぁ……ぁぁ……ぁ……」
一緒についていったお義母さんの手はきつく握り締められていた。きっときつい一撃が待っているのだろう。
後で聞いた話だが、お義母さんは空手師範の免状を持つ達人らしい。
……うん、不倫だけは絶対に出来ないな。するつもりも無いけれど。
披露宴を早々に切り上げ、俺の友達を中心とした若者達は二次会へ向かった。
お歴々の方々は式の行われた豪華なホテルに残り、お義父さんを慰める会に参加してくれたようだ。日本を背負って立ってきた方々に、心からゴメンナサイを申し上げる。
二次会会場に向かう前に、また一悶着があった。彼女が式に出た優雅な服装のまま、歩いて会場に向かう、と言い出したのだ。
当然俺は止めたのだけれども、披露宴で出た少量のアルコールで気が大きくなった悪友達が、そのまま行ってしまえ、と騒いだので、仕方ないがそのまま行く事にする。
居酒屋までの盛り場を10人以上の団体とコスプレした一組の男女が歩く姿は壮観だったに違いない。
居酒屋では殆ど衆目に晒す事の無かった彼女の姿に興奮した暴徒(と書いて俺のダチと読む)と、俺を酔いつぶれさせようとする酒乱(と書いて俺の(以下略))の2組に分かれた。
彼女の知り合いも何人かいたようだが、そんなコヒツジたちはオオカミ(と書いて(以下略))に口説かれていた。
……店が貸しきりで本当に、本当によかった。
宴もたけなわ、アルコールにやられて茫洋とした頭で彼女のほうを見ると……恐ろしい事態が起こっていた。
……彼女の周囲には見知った顔が死屍累々、積み重なっていた。全員目を回している。
う、目が合ってしまった。見た様子、泥酔してはいないようだ。足取りもしっかりして……こっちに向かってくる!
―アレ、どういうことだ?
『うん、君が周りの人たちと杯を交わしているのがとても楽しそうだったんでな、あれをやりたい、と言ったら周りの人が乗ってくれたのはいいんだが……』
―返杯やったのか!?全員と!?
『返杯というのか。それを続けていたら一人、また一人と眠ってしまってな。』
周りが潰れるほど返杯続けるなんてどれだけ飲んでるんだ。
見ると彼女のいたテーブルには日本酒のビンが十何本も並んでいた。こっちはビールでやってたのに、何考えてるんだ。
後で聞いた話だが、ビールより透明な酒がいいと言ったのは彼女だったらしい。流石にそこでウォッカ持ち出さなかった死体達(と(以下略))には感謝、感謝だ。
―どうした、顔が赤いぞ?風邪か?風邪なんだな?どれ、体温を測ってやろう。
自分の額と俺の額を辺りに音が響くほど勢いよくぶつけてくる。体温を測っているつもりなんだろうが、彼女も体温が上がっているので正確に測れるわけが無い。
頭がガンガンと響いているが、蕩けたような目でこちらを見ている彼女に思わずドキッとする。
吐き出す息が酒臭い。彼女にもあるはずの頭の痛みも感じないほど酔っているらしい。
『うーんおかしいな、熱があると思ったんだが。』
……この目つきには見覚えがある。<スイッチ>が入ってしまった目つきだ。早くホテルに戻らないとこの場で服を脱ぎだしかねない。
周囲に、コイツもう無理、と言って、席を立とうとしたが一瞬遅かった。
唇を塞がれ、唾液の交換を求めてくる。周囲は沸き立ち、彼女は続きをせがむがそんなことが出来るわけが無い。
一言幹事に途中退出を詫びて、2人でその場を飛び出した。
一番夜の街が華やかな時間帯、場違いな格好をした一組の男女が歩く。
彼女は完全に酔っ払っているようで、首が座っていなかった。タクシーを呼ぼうかとも思ったのだが、それは本人がきっぱりと拒否した。
タクシーに乗らないと本人が言っているし、気持ちが悪いわけではないようなので歩く事にする。夜風に当たって少しでも酔いが醒めてくれればいいのだが。
『ん、定位置。』
と言いながら右腕に捕まる彼女をなだめながら、俺はアルコール起因の頭痛と闘っていた。
それにしても彼女がこんなに酒乱だとは知らなかった。しかも一番性質の悪い酔い方をするなんて。
2人で飲んだ事は何度かあったが、少量飲んだ姿しか見たことがなかった。これからはなるべくお酒を勧めないようにしよう。
そう考えながら歩いていると、いつの間にかホテルの前に到着していた。いつの間にか着いているなんて、注意力が散漫になっている証拠だ。
足元にことさら注意しながら彼女が部屋の番号をフロントに告げる。俺が鍵を受け取ってエレベーターへと向かう。
4桁の数字の上2桁を参考にエレベーターのボタンを探すが、なかなか見つからない。
これも酔っていて頭が働いていないからだな、と苦笑して下から見上げていく。
するとスッと隣から白い手が伸びてかなり上のほうのボタンを押す。
『自分の泊まる部屋さえ分からないなんて相当酔っているな。』
お前だって酔っ払いだろ、と心の中で突っ込んで、向かう階を確認する。
……最上階だ。
ホテルの部屋の予約その他全てを彼女に任せていたので、どの部屋かまでは知らなかった。
『せっかくの結婚初夜だ。思い出に残る場所でしたいだろ?』
エレベーターの表示を見ながら、ゾクゾクするような流し目を送ってくる。
今まで彼女は全てにおいて完璧だと思っていたが、もしかしたら金銭感覚においては宵越しの銭を持たないタイプの浪費家なのかもしれない。
ここまで来ていまだに彼女の知らない部分があるなんて、自分が情けなさ過ぎる。
エレベーターを降りるとそこは部屋だった。1フロアがそのまま1部屋となっているスイートルームだ。
―スゲー……テレビでしか見たことねえよ……
部屋をよく観察する間も無く、袖を引かれてベッドのある空間に引っ張られていく。
大きなベッドに惹かれて二人で横になるが、スーツ姿のまま寝るわけにはいかないし、体も流したい。そのためには早くコイツを寝かしつけないと。
―俺は風呂入ってくるよ。
『どうして?このままで構わないのに。』
―酔っ払ったまましたいのか?
『君と子作りに励めるんなら問題無い。君と初めてしたときもそんなこと気にしなかっただろ?』
―特別な一夜だって言ったのは自分じゃないか。今度は酔いが醒めてからしよう。だから寝ておきな。
『うん、分かった。』
そう言って目を閉じてくれた。
……とりあえず大丈夫かな。
少しぬるめに設定した風呂に頭まで浸かる。いつもなら物足りない温度だが、肌にまとわりつくような温度もまた気持ちがいい。
輝く街を見下ろす、特大サイズの浴槽の端に頭を引っ掛けてうつらうつらしていると、浴室に彼女が入ってきた。体も流さずに俺に並んでその体を沈める。
―もう酒は抜けたのか?
『いや、まだだ。……でも私もお風呂に入りたいし、君が戻ってくるのを待ちきれなかったんだ。』
酒と眠気で活動を放棄しかけていた頭が一発で覚醒した。下半身が元気になってくる。
『いつもより熱いな。』
左手を添えて軽く握ってくる。俺の肩に左頬をこすりつけるように体をあわせてくる。
俺の方はというと、頭が目覚めても体がついてこない。唯一動きそうな右腕も、右側に座った彼女に動きを封じられてしまっている。
意識だけははっきりしたまま、彼女からの愛撫を受けるがままになっていた。
『今日は疲れただろ?私は少し休んだんだ。そのままでいいから今度は君が休んでくれ。』
ジンジンと痺れるような快感の中で、体は休息を求める。動かない体のまま呼吸だけが浅くなってくる。
『気持ち、いいのか?』
言いながら軽く口を吸われ、握力に強弱をつけて刺激を送ってくる。
どれくらいの時間続けられたのか、愛撫されるまま眠ってしまった。
目が覚めて、湯気でしっとりと濡れた前髪を掻きあげる。寝る直前まで、いや恐らく寝てからもしばらくは続けられていたであろう行為を思い出す。
横を見るとすぐ近くに彼女の頭があった。右肩に彼女が頭を乗せて眠っている。
回り込むように顔を覗き込んで寝顔を観察する。愛おしくてたまらない。間違いなく今、俺は世界で一番の幸福を享受している。
ボソリと一言呟くと、彼女が目を見開いた。唐突過ぎて心臓が縮み上がる。
『聞こえたぞ。』
鬼の首をとったような顔をして詰め寄る。
『もう一度ちゃんと言ってくれ。』
―……さあ、あがりますか。体冷えてきたしな。
『一言でいいんだ。恥ずかしがる必要ないだろう。』
―ちょっとやめろ脇腹はダメだって、アハ、アハハハハハ!
脇腹を引っかくようにくすぐられながらバスルームを出た。
備え付けのバスタオルを使って、そのまま閨へ向かう。抱き合ったまま2人でベッドへ飛び込む。
『なあ言ってくれよ。』
―嫌だ。
俺の熱を帯び始めた存在を向こうも感じとったのか、彼女は俺の手をとって自分の秘所を触れさせた。準備は十分だ。
だがそのまま突き進むのは少し色気が足りない。もう少しだけ言葉遊びを楽しもう。
『私はいつも君に言っているじゃないか。その分、返してほしいと思うのはおかしな事か?』
―おかしくはないけど、強要するもんじゃないだろ?
彼女自身に添えたままの指を動かし、爪で弾くように内壁を叩く。
『ッ……強要はしていない。お願いしてるだけだ。』
彼女は応えるように、鈴口に指先を引っ掛け全体を揺する。
―わッ……分かったよ。
耳元に唇を寄せ、先ほどの言葉を囁く。
『ありがとう。……しよう。』
俺はうなずいて、初めて裸のまま彼女の真ん中を貫いた。
彼女の中は熱く蕩けていて、優しかった。俺という異物を拒むことなく、むしろ歓迎しているかのようだ。
今までゴム越しにしか触れ合うことのなかった2人の肌が激しくこすれあう。
グチュッグチュッグチュッ……
水音を派手に立てながら視線を絡め、舌を絡める。胸を触ることをせずお互いに抱きしめあう。
一つになりたい。その気持ちだけでお互いを高めあう。
『うっ、くうぅぅっ!……いつもより、激しい。』
―いつも以上にいいからだよ。
『気が合うな。私もすごく気持ちがいい。』
言うと今度は彼女から腰を打ちつけはじめた。
なんて気持ちがいいんだろう。普段以上に蕩けて崩れ落ちそうな意識で必死に放出を我慢する。
『浩輔、私っ、ダメだ。もう……おかしくなりそうなんだっ。いつもより壊れるんだっ……イ、くうぅぅっ!』
膣が収縮したのを感じてからも何度かグラインドして……初めて彼女に注ぎ込んだ。
『初めてだな。ちゃんと最後まで性交をしたのは。』
―ちゃんとって……今までだって何度も……
『いいか、性交というのはお互い協力して子供を作る事だ。だから私は今日初めて君と契ったと言えるんだよ。』
相変わらず変な考え方の持ち主だ。
『よくもここまで待たせてくれたな。これからはたくさんしてもらうぞ。……まず、今からしようか。』
―もうダメ!俺は1日5試合以上こなせないんだって!
『今日はまだ4回しかしてないだろう?限界を見てみようか。』
―「以上」の意味分かってるかお前!?ちょっと待てっ……
うっすらと明るくなってきた窓の外を見て、何時間励んだのだろうとぼんやり考え、やがて思考は欲望にさらわれた。
何ヶ月か後、彼女の妊娠が分かった。あの後しばらくただれた生活を送っていたのだから、当然といえば当然だ。
お義父さんの錯乱振りはひどかったが、周囲の人たちは祝福してくれた。
うちの母親に至ってはベビー用品を早くも送りつけてきた。
まだ半年以上早いだろう、と文句を言いながらお礼の意味も兼ねて連絡すると、送れと言ったのは我が父親らしい。
孫馬鹿の姿が目に浮かぶようだ。
これだけの人たちに祝福されていて、しかも隣に彼女がいるんだ。今なら恥ずかしがらずに言える。
俺は幸せ者だ。
だからなんで書けもしないエロをお前はお前は(ry
そして「十人以上」を「住人異常」と変換したPC、お前はお前は(ry
>>209 GJ!
ところどころ誤字脱字があるけれど、それを含めても名作ですよ。
正直自分のようにエロなんて微塵も書けないような奴がいるんだから、変に気張らずに続きを書いてください。
異常d……じゃなくて、以上でこのシリーズ一応終わりです。
なんだか他の話もチョビチョビ考えてはいるんですが、しばらくはリアルの生活的に書けない日々が続きそうです。
もっと精進して出直してまいりますので、そのときは生暖かい目で叩いてください。
駄文製作者、279でした。
うん、やっぱり次世代を担う素晴らしいジャンルだよ、素直クールは
>>218 GJ
まとまったらまた来て下さい。お待ちしてますよーノシ
何か短期間で完成。またこんな時間になったけどね!
それでは、新作出来ましたんで、投下します。
時は如月。身を切るような寒さが続く、一年で最も冷える時期。
浩毅と珠樹は、一年後に向けた教師達のお説教も、そろそろ耳にタコが出来始めた頃。
経験者は語ると言うが、事勉学に関して心に響く台詞を吐ける親や教師は少ない。
「きっと、少年の気持ちを忘れてしまうからだろうなぁ」
浩毅はぼやく。
この世で最も信用ならない言葉の一つは、親や教師――教育者の「気持ちは解る」だ。本当に解った上で言うのなら、それは自身の失敗をも認めるコトになる。
それでも半分は本人の責任だというコトも、何時の世の若者達はちゃんと知っているのだ。ただ迷ったり、恐怖したり、押し潰されそうになっているだけで。後に振り向けば、乗り越えるのは簡単なコトであるとも知らず。
その一歩が一番大変であり、恐れず踏み出せる方法を探すコトが出来れば、人類史上最大の発見になるかもしれない。
などと、小賢しいことを考えてみたりする。
「まあ、お前が産まれて一仕事終えた身としては、頷ける部分も多々あるが……今は無駄口叩かず働け」
「へーい」
ちょっとした現実逃避も、祖父に遮られる。
新年気分もすっかり抜けて、軽口叩いていられるのも、一先ずの終わりが見えてきてしまっていて、やや憂鬱。
馬鹿は馬鹿なのに、余裕綽々と地元の大学への進学を決定している。半年以上遊べると、嬉々として語っていた。
国公立も充分射程圏内でありながら、あえて選ばなかった理由は言わずもがな。
同級生からは憎らしげな目を向けられたりもしたが、完全に本人の実力なので文句も言えない。というより、相手が相手だけに、文字通り馬鹿らしくなる。
そんな一般高校生の苦悩はさておいて。
「鬼はー外ぉ!」
「福はぁ内ー」
「鬼はぁ外ー!」
「福はー内ぃ」
珠樹と好生と女子ABCD。一人以外はさておけないはずの面々が、仲良く豆撒きをしていた。
さておけない人達は、全てが朱色の袴。馬鹿は上下共に白。
地元の年男年女数名も交え、境内に集まった人たちに向けて、豆と景品の入った袋を投げていた。
こういった行事も、神社の大事な仕事なのである。祭りや年始だけではないのだ。もっとも、メインとなる催し以外の時期は、気楽なものではあるのだが。
特に大きなトラブルに見舞われることもなく、見た目華やかで、今年は大盛況に終わった。
「はいよ、お疲れさん」
皆で控え室で駄弁っていると、浩毅がお茶一式を持ってやってきた。
手にはポットと、お盆の上に乗った茶碗と茶請け。両手が塞がっているので、行儀悪く足で襖を開ける。
「浩毅、終わった?」
姿を見るなり、パタパタと駆け寄る珠樹。それをシッシと追い払う。
「あー、いいいい。寄るな、座ってろ」
「……むぅ」
「恨めしそうな目ぇ向けるなよ。今日最後の仕事なんだから」
「?」
カルテットのブーイングをスルーしつつ、全員の前に湯飲みとお茶請けを並べる。
「茶で客を持て成して、今日はお役御免だとさ」
つまり、適当に友達と遊んで来いというコトだ。母は母で、他に雑用してくれた人達を引き受けてくれている。
「あ、そうそう。コレ、バイト代な」
本日の給金が入った封筒を、懐から取り出し、それぞれに渡してゆく。
お茶と封筒が行き渡ったところで、素直な疑問が寄せられた。
「それにしても、夏も正月も手伝っといて何だが、バイト禁止なはずなんだよな。いや、卒業間近な俺はいいんだが」
「でも黙認してくれるのよね」「ま、たまにだし」「それに割りはいいし」「正直、ありがたいわ」
「あんま気にするなよ。形としては、家の手伝いしてくれた礼だから」
といっても、高校生には大した額だ。
本日のように数時間拘束する程度で、日給五千円。祭りや正月となれば、一万五千〜二万円となる。しかも食事やおやつ付きだ。
余談ではあるが、珠樹はさらに色が付いている。前日から泊り込み、正規スタッフである家族と一緒に前準備をしてるのだから当然だ。
双方の親の了解も取り付け、万事に置いて抜かりなし。
……着々と、瀬川珠樹化計画は進められている。
話は弾むが、お茶の減りが芳しくない。どうやら、お茶請けがお気に召さないようだ。
「煎り豆か、瀬川浩毅」
小さな枡を持ち上げ、好生はしげしげと眺める。
「節分だからな」
「瀬川君手抜きだ」「これじゃ誠意を感じられませんな」「ところで、どしたの珠樹?」「そわそわしてない?」
「手抜きじゃねえよ。お袋直伝の来客用だ」
「む……確かに、妙に美味いな」
馬鹿の一言をきっかけに、カルテットも手を伸ばす。
「あ、本当」「美味しい」「こんなに違うもんなんだ」「これ、瀬川君が?」
「いんや。そこでそわそわしてる奴」
「みんな! 歳の数だけ食ったら、残りは俺にくれッ!!」
テーブルに手をついて、必死の形相で叫ぶ。もう少し待てば、地に頭を擦り付けてもおかしくない雰囲気がある。
いい加減、みんな馬鹿の扱いにも慣れてきているのだが。
さすがにコレは言葉を失い、視線は一点に集中して、呆然と動向を見守るしかない。
ほら、頭の位置が下がってきた。ニュートンさんも真っ青だ。
「だ、駄目なのか……? ならば――!」
「おかわりいくらでもあるぞ」
ゴンッ、と。
絶妙のタイミングで制動は利かず。豪快な音を立て、額とテーブルが激突した。
「藤宮珠樹に治療してもらい、藤宮珠樹の作ったものを腹一杯食べる……。はあ……至福の一時」
山と詰まれた豆を前に、合川好生は、これまでにない恍惚の表情を浮かべる。まるで、ヤバいクスリでもキメてるようだ。
放置しておいても良かったのだが、流石にそれは憚られた。接待役である以上、当然のコトだ。放っておいたのが母にバレれば折檻されるし。
それでついでに、万が一の口止めも兼ねて、珠樹にシップを貼るのを頼んだというワケだ。
「だが、それにつけても――」
険しい目付きになって、馬鹿は向かいに指を突きつける。
「何で密着してるかなァ、キミ達は!」
「いやホント、何でだろうなァ。つか珠樹も珠樹だ。くっつくなって、何時も言ってんだろうが」
浩毅は何度も引き剥がそうと試みるが、ゴムのような伸縮性で瞬時に腕に絡み付いてくる。
人前では、極力接触は避けるように言い付けている。正確には、抱きついてきたりベタベタしたり、まさに『密着』をだ。接触を禁ずるのは、もう諦めた。
なのにこの場では通用しない。親しい間柄しかいないから、心置きなく言いつけを破っているのだろう。
嫌な予感はしたんだよなァ、と第六感を呪う。
珠樹は、ちょっと不満気のような楽しそうな顔で言う。
「ラブラブなのに」
「公にしてても、駄目なモンは駄目なの!」
去年の夏休み後に交際を発表してから、ますます珠樹のアプローチは激しくなった。
関係が進むコトで満たされ、ある程度は治まるかと思いきや、甘かったようだ。
珠樹曰く、むしろ飽和砂糖水より甘い生活を送りたいというから、浩毅は気が気ではない。
慣れは怖い。気付けば新婚さんと冷やかされてたりするなんて頻度も多くなってきたから、本当気が気ではない。
「みんなの前でも、もっとイチャイチャしたい」
「この空に太陽がある限り、たとえ神が許しても、この俺が許ざんっ!」
力の限り叫ぶ。ムキになって、ドスの利いた声でご先祖からの許可も反故にしてしまう。
観念すれば楽になるのだが、そうするコトを浩毅に望むのは酷だろう。
「ほほう、デレ方も洒落てきてますな」「命の限り、二人で一人と」「とっても愛してるワケね」「ほんとに何時までも愛してるワケだ」
「あーもう、お前ら金返せ☆」
青筋浮かべた爽やか極上スマイルで、カルテットを威圧する。
だがしかし、その程度で悪乗りを止めてくれるようなら、とっくの昔に止めてて苦労はあるまい。
そして、内心必死に否定しつつも、この空気が楽しくなりつつあるから、とにかく、何が何でも気が気ではないのだ。
「ていうか、何だ。二人きりだと、もっとイチャイチャしてるのか……いかんな。だが、負けんぞ、瀬川浩毅!」
そんな中でも馬鹿は空気を読まず。という空気も、既に日常と化しつつある。
何時もの如く浩毅を指差し、何時もの如く提案をする。
「よし、後で藤宮珠樹を賭けて勝負だ! 種目は豆撒き! 屋外なら掃除しなくていいし!」
「どーやって勝負つけんだよ?」
こうして、彼らの日常は平和に過ぎてゆく……。
だが、気をつけなければならない。
平和が壊れるのは、往々にして、満喫している最中――終わりの時を、微塵も疑わない瞬間である。
この先、恐ろしい出来事が待ち受けているコトを、まだ誰も知らなかった。
以上、前編終了。後編は近いうちに。
内容が節分なのは、書き始めた日だからってのと、神社の息子設定をちょっとでも生かしたかったから。
つーか、寝ろ、俺。
休みで良かったよ……。
ありがとう。そしておやすみなさい。
おおっ作品ラッシュ。
皆さん乙です。
おっと、忘れてた。
>>224 GJ!
こういうの大好き。後編楽しみにしてます。
>>225 やっぱり男側がツンデレは素直クールが活きるw
GJです
>>228 どうみても素直クールです。本当に(ry
231 :
野園:2007/02/07(水) 01:14:21 ID:6Tnz5Hj4
>>52の続き
3分ほど抱き締めていただろうか
「優士君、気持ちは涙が出るほど嬉しいけど、遅刻してしまう」
じゃあなんですぐ言わなかったのか、とは聞かなかった
雪乃さんのことだから正直に言ってこちらが恥ずかしい気持ちになってしまうだろうから
「あの、これは」
「手を繋ぐのは嫌だった?」
「そうじゃなくて、ほら」
そういって俺は左手の、雪乃さんは右手の手袋をはずす
「寒いぞ・・・・あっ」
そのまま手を繋いで俺の服のポケットに手を入れた
「この方が温かいですよ」
「今日の優士君は大胆だな」
雪乃さんはクスッと笑う
「いや、まぁ・・・その」
俺なんかのために寒い中待っててくれた雪乃さんが
愛しく感じたなんて口が裂けても言えない
「こ、校門までですよ」
「十分だよ」
少しだけ、ほんの少しだけ遅く歩いた
232 :
野園:2007/02/07(水) 01:15:07 ID:6Tnz5Hj4
学校での生活はいつも通りだった、多少周りの目が気になったけど・・・
しかし改めて思うが雪乃さんは無口だ、必要最低限なことしか話さない、
休み時間も本を読んでる、存在感があるのかないのかわからない人だ。
昨日一緒に帰った時に結構話しかけてきてくれたのがなんだか嬉しく感じた。
「優士君」
「はい?」
四時間目の英語の授業、なぜか知らないが自習になっていたのを寝惚け眼で確認しながら
返事をする、雪乃さんはこちらを向くなりじっと俺の顔を見る。
「君は確か昼食は学食のパンで済ませていたな」
「えっ、まあ」
「今日からその必要はないぞ」
「え?」
丁度その時授業の終了を告げるベルが鳴り、雪乃さんは鞄から小さな包みを取り出した。
「口に合うかわからないが・・」
「これって・・」
「お弁当だ、お茶もあるぞ」
まさか付き合ったばかりで弁当を作ってくるとはなんとも行動力のある人だろう
「どう?」
「めちゃくちゃうまいですよ」
料理をするイメージがなかったので、正直不安だったけど、
お世辞がいらないくらい雪乃さんの作る弁当はうまかった。
「それはよかった」
その日、周りの視線が一層厳しくなった気がした。
233 :
野園:2007/02/07(水) 01:16:09 ID:6Tnz5Hj4
―――
―
「あと一週間だな・・・」
「なにがですか?」
「冬休みだよ」
あぁ、と言葉を漏らすと雪乃さんはクスリと笑った
「君は長期休校を喜ぶタイプだと思っていたよ」
雪乃さんに告白されてからてんやわんやですっかり忘れていたとは言えない
「いや、俺だって楽しみですよ冬休み、むしろ雪乃さんこそそういうの
気にしない人だと思っていましたよ」
「何を言ってるんだ!?」
雪乃さんは心外だとでも言うような顔をする
「君がいるからに決まっているじゃないか」
そうだ・・・、こういう人だった
「それで、ものは相談なんだが・・・」
「なんですか?」
「今度、君のお宅にお邪魔したい」
「はい?」
はっきり言って話題変わりすぎじゃありますんか?
「いや、迷惑ならいいんだ!すまない・・・やはり駄目だったか・・ブツブツ」
そして突然慌て出す、普段のクールの欠片もない姿を見て笑みが溢れた
「迷惑なんかじゃないですよ」
「・・・・本当?」
「はい、なんなら今から来ます?」
「今日!?」
こんな慌てふためいた雪乃さんをクラスのやつが見たらどんなリアクションを取るだろうか
「本当に今日の君は大胆だな」
あなたに言われたくありません
234 :
野園:2007/02/07(水) 01:17:07 ID:6Tnz5Hj4
「こんなアタフタした雪乃さん見るの初めてですよ」
「わ、私だって人間だ、・・緊張したりするんだぞ」
「緊張?」
まさかこの人からこんな言葉を聞くことになるとは思わなかった
「付き合ったばかりで家に行きたがって嫌われないか不安で、でも君の家には行ってみたい、だから緊張」
積極的かと思ったら意外と心配性、新しい一面を発見
「そんなことで嫌ったりしませんよ」
「・・・本当?」
「本当」
「だけど昨日は駄目だって言ってたじゃないか」
あー・・・、そりゃあ突然だったし、雪乃さんの目がなんか怖かったし
「まぁ、昨日のことで一応部屋片付けたんで今日は平気です」
「そうか、私のために・・やはり君は最高だ」
あの・・・、腕組むのはいいですが胸が当たって・・・まぁいいか
「あんまあさらないで下さいよ?」
「・・・・・ああ!」
235 :
野園:2007/02/07(水) 01:18:51 ID:6Tnz5Hj4
投下がかなり遅くなってすいませんでした
これからもできるだけ早く仕上げる様努めます、ではまた
>>235 やっぱ素直クールはこうでなくちゃな
超GJ
GJだ
>>235はやれば出来る子だと思っていたよ
さあ、早く続きを書いてくれ
保管庫の『ひろたまの日々〜如月〜』の作者が間違っているような気がするのは気のせいか?気のせいならスマン
240 :
中の人:2007/02/09(金) 23:44:18 ID:nAJpHfcx
>>239 その通り、申し訳ない。修正しました。
5日は九州行きでちょっとバタバタしてたのでコピペミスしていたようです。
凄い遅レスですが
>>113◆6x17cueegc氏へ。
別に今の掲載のままで構わないのであれば、そのままでも。あくまでお願いですので。
私は今まで投げ込んだものにまともなタイトルなんかつけたことありませんしね……( ̄□ ̄ll)
管理人さんドンマイ。
応援してるぜ!
期待あげ
ageるとアゲんな、といわれるのか・・?
とっ、とにかく保守だ。
素直クールってもしかして女ムスカなんじゃね?
ムスカ?
素直でもなけりゃ、クールでもないように思うが
「あなたの阿呆面には心底辟易させられますわ」
「私を置いてどこへ行こうと言うのです?」
「目が・・・目がよく見えません・・・あなたに恋するようになってから」
「御覧なさいな、人が塵芥のようですよ」
言葉を慎みなさい! あなたは女王の前にいるのよ
単なるツンデレだったなw
ノリの良い、そんな貴方達が大好きだ。結婚してくれ。
……そうか、性急過ぎるか。
ではプレゼントを受け取って欲しい。
そういう日なのだろう? 遠慮することはない。
日本という国は、大なり小なりイベントが多い。
全国レベルのメジャーなモノから、地域密着型のマイナーなモノまで。
何でも簡単に取り入れ、独自に発展させるという気風があるからか。特に、近代以降はその傾向に拍車が掛かっている。
興味があるなら、少々散策してみればいい。平均すれば、ほぼ毎月のペースで何かやっている、なんて土地も少なくない。
そして、あれから十日。節分もそうだが、その次の全国的イベントが早くもやってきた。
天気も良い平日。雲ひとつ無い青空。空を見上げれば、それだけで気分も高揚するような、文句をつけようもない絶好の日和。
二月十四日。
天国と地獄を――勝ち負けを、否が応でも知らされる日。
聖・バレンタインデー。
毎朝の待ち合わせ場所に、良く知る姿を見つけ、浩毅は声をかけた。
「よお、珠樹」
「あ、浩毅」
子猫のような仕種で、珠樹が駆け寄ってくる。
見れば、此方を微笑ましそうに見ながら、軽く挨拶して消えていく女子四人。
「何か話してたのか? 急がなくてもいいんだぞ」
「いいの」
人目も気にせず、必殺ハグを見舞う珠樹。
生活指導の先生(三十三歳・独身)の目が痛い。普段なら気にしないでくれてるが、今日は流石に日が悪い。
「だーかーらー、引っ付くなっての!」
「……ゴメン……」
やや不服そうではあるが、素直に離れる。
いくら言っても、コレだけは改善されない。朝一のスキンシップは、珠樹にとって譲れない一線らしい。
「な、何だよ、妙にアッサリしてるな……わかった、いいよ。校舎まではな」
「うん」
またも素直に、だが嬉しそうに腕を組んでくる。
何ならもっと人気の少ない場所で待ち合わせてもいいのだが、田舎のため、今度は見晴らしが良すぎるのが難点となる。
仕方ないので、早めの登校で妥協したというワケだ。
恒例行事を済ませた浩毅と珠樹は、手を繋いで校舎へ歩いていった。
既に当たり前になって半年近く。この程度では、冷やかす面々も最早少ない。
時折、思い出したように言われるコトはあるものの、基本的には何時もの風景として処理される。
だが本日に限っては、そうもいかず。チラチラとわざとらしい視線を多く感じる。
不審な雰囲気は、当事者も例外ではない……はずなのだが。
「……何?」
「い、いや、別に」
「そ」
何度か視線を送っても、それだけで終わってしまう。
自分から切り出すのも情けない話なので、特に突っ込むコトもなくそのまま歩く。
仮にも恋人同士なのだ。さして急くコトもあるまい。
いくら普段素っ気なくとも、浩毅も男。気にならないはずがない。
しかし未だ浩毅は知らない。
この普段の光景も、彼の受難の始まりに過ぎなかったコトを。
人も疎らな教室に入るなり、珠樹が強張ったのが解る。
「どした?」
「あ……えと、その……」
珍しく、何かを言いよどむ珠樹。
何かあるのかと、浩毅は教室の中を見回してみるが、特におかしな点は無い。
当然のように先に到着していたカルテットも、こちらを見てニヤニヤしている。何時ものコトだ。
本当に不審な点は無い。
強いて言えば、既に数名の女子がチョコを渡すのに精を出してるコトだが、日を考えれば不思議ではない。
「?」
取り敢えず、自分の机に着く。
その横で珠樹は、浩毅くらいしか解らぬほど僅かに頬を赤らめ、無言で、立ったままモジモジしている。
これは……。
「ごめんなさい。忘れた!」
「………………は?」
浩毅は、思わず間抜けな声を上げる。
渡すタイミングを図ってたとかではなく、言葉そのままの意味だろうか?
「だから……わ、忘れちゃった」
「あー……そっか。うん」
「その――」
「あ、いや、いいさ。人間、誰しも忘れるコトくらいあるって。それにまあ、何も焦るこたねえし」
拍子抜けしたのは確かだし、少し面倒ではあるが、放課後に貰えるならそれでいい。
丁度良いコトに、今日は稽古の日じゃない。どうせ適当にブラついたりするくらいしか予定は無いのだ。何ならいっそ、珠樹の家にお邪魔してもいいだろう。
だが、続く珠樹の言葉は、さらに予想を上回るモノだった。
「――えっとね……用意、してないの」
「そ、それは……」
本気で忘却の彼方だったと言うのだろうか。
残念無念とはいかず、むしろ呆気に取られる。
この時期、忘れるほうが難しい。どれだけ情報から隔離されてればこうなるのか。現代日本人として、流石に如何なモノかと。
「日付……」
「明日か――――ッ」
浩毅はガックリ項垂れる。
合点はいったが、ウッカリしすぎだ。カレンダーは毎日確認しておきましょう、珠樹さん。
教室は、一気に暗い空気に包まれる。
何と言うか……居た堪れない。校内どころか、地域でも名物のバカップル。それが、よりにもよって、この日にこの有様である。
かける言葉も無い。
浮かれた雰囲気は消し飛び、否が応にも、同情の視線が瀬川浩毅に注がれる。
次々に登校してくるクラスメイトは、すぐさまこの異様な気配に呑まれ、事情を知る者から即時に経緯を伝達される。
時間を重ねる毎に、空気中の憐れみの濃度は増す。
今年は何個貰えるかなどと、小さな期待に胸躍らせていた男子も、貰うコトを既に諦めていた男子も、己の幸せを涙ながらに噛みしめる。
そして目蓋の裏に焼き付けるのだ。あまりに不憫、あまりに痛々しく、あまりに儚く散った男の哀愁溢るる背中を。
「みんな……頼むから、同情するような目で見ないでくれないか……」
そう言われても、無理と言うものだ。憐れむだけではない。他人の不幸は蜜の味という気持ちも、少なからず発生してしまうのだから。
それはそうと、チョコレート配布会は滞りなく行われる。本命だったり、義理だったり。それはそれ、これはこれだ。
浩毅の机の上に、順調に築かれてゆくチョコの山。それがまた、より一層悲しみを際立たせる。
「瀬川くん、ファイト!」
「強く生きてね、浩毅くん」
「負けちゃ駄目だよ! 生きていれば、必ず良いコトある!」
「お返しはいらないから。ね? ね?」
チョコと一緒にいただく有り難い慰めは、塩を擦り込まれるに等しい。
もう正直放っといてください。
意気消沈したところで、時間の流れは変わらない。着々と登校する生徒。着々と増えるチョコ。オロオロする珠樹。チョコもくれず、遠目で様子を窺うカルテット。
その勢いで、やがてホームルームの始まりを告げに、担任の英語教師がやってくる。
「さあ、今日も張り切っていくぞ。バレンタインだからって浮かれるなぁ」
「か、片岡先生! しーっ、しーっ!!」
「む?」
慌てて前列の生徒に口を塞がれるが、時既に遅し。一応説明を試みるも……、
「成る程……。ま、俺には関係ないからいいか」
あっさり流された。
「俺は本命に貰ったから、後はどうでもいいし」
「…………ッ!」
浩毅は、人知れず血涙を流す。
他人の惚気が、こんなに憎らしいと初めて知った。
片岡教諭が、男子憧れの美人教諭に熱を上げていたコトは周知の事実だ。そしてついに最近、見事勝ち星を挙げたコトも。
青春に年齢は関係ないのだと、しみじみ枯れてみたりもする。
「無駄話はここまで。さっさと始めるぞ」
悪夢の日は、こうして始まった。
休み時間のたびに、話を聞きつけた女生徒が、クラスの垣根を越えてもやってくる。ノリの良い校風である。
そしてそのたびに、自身の現状を嫌でも突き付けられる。
浩毅のフラストレーションは溜まっていく。
やがて限界は来た。
「どうせ俺は駄目な日本人さッ!!」
昼休み早々、学食でクダを巻く男が一人。
呷ったアイスティーのグラスを、テーブルに叩きつける。
「荒れてるなァ……」
「荒れてるねえ……」
スポーツマンの外山と、インテリの西脇。
友人二人も、処置なしと判断したのか、取り敢えず遠くから見守るスタンスに決定した。例の四人も、飽きずに観察を続けている。
珠樹すら、浩毅から離れてみんなと食事を摂っている。
「……しかし、どうも何かを忘れてるような……」
「うん。意外と状況はややこしくないね。完全に当人達の問題だし」
「……えっと……」
「気に病むなよ、藤宮。誰が悪いんでもない」
「ていうか、珍しく大人気ないよね、瀬川くん」
「何だかんだで、いっつも一歩退いてるとこあっからな」
心配ではあるが、たまにはこんなのも精神衛生には必要かもしれない。
だが本人には、気が気ではないワケで。
衆目に晒されながらも、気に留めるコトもなく、さらに荒れる浩毅。
こんな状態でも、つまみの甘味は増えていくのだから、もうイジメかなんかではなかろうかと思う。そろそろ三桁いきそうだし。
本当、ノリが良いのはここら一帯の気風であるらしい。
「畜生……恨むぜぇ、近代の平賀源内……!」
「荒れてるなァ……」
「荒れてるねえ……」
海が荒れるということは、嵐も近いというワケで。
「おお、こんなとこにいたか! やっと捕捉出来た!」
ご期待通りに、只今参上。
「あー……忘れてたのアレか」
「平和なワケだね」
「今日もまた勝負だ、瀬川浩……毅……?」
流石の馬鹿も、様子がおかしいコトに気がついた。
外山は、好生の肩に手を置き、静かに首を横に振る。
「そっとしといたれ」
「な、何がどーなってるんだ?」
「実はね――」
かくかくしかじか。
簡潔な説明を、西脇が請け負う。
説明を追うごとに、好生の顔色が変わってゆく。
「……それは酷いだろう。俺だったら立ち直れないぞ、藤宮珠樹……」
「…………」
「そ、そんな哀しそうな顔をするな。――よし! ここは俺が一肌脱ごう!」
腕まくりの仕種で意気込んで、馬鹿が行く。
相変わらずのポーズ。台詞と共に、人差し指を突きつける。
「瀬川浩毅、藤宮珠樹を賭けて勝負だ! さて、お題は貰ったチョコの数でいこうか。ちなみに俺は二十個ほどだが、お前は? うわ、凄い数だな。教室でも貰ったんだろ? こりゃ敵わん。はははははははは」
これでも好生は意外とモテる。同学年の休みが目立つ時期にこの戦果が、それを証明している。
考えてみれば、それも当然だ。馬鹿という一点を除けば、文武に優れ、ルックスも家柄も恵まれた上に性格もいい。
加えて、現在勝ち目が皆無の恋愛をしているのだから、誰に憚るコトなく、安心してアプローチも出来るというものだ。
だが本人は、自分がモテる理由を今一つ理解していない。
ついさっきも、持ち前の真面目さで、女生徒の告白を丁寧に断わってきたところだ。
そんな彼が、この日に則した勝負を挑み、負けを認めたのだが……。
「わはははは、はは……は……………………すまん」
認めたのだが、この展開ではやはり役に立ちはしなかった。
少しだけ好生に顔を向けて、浩毅が呟く。
「いや、いい。お前……いい奴だな」
「む。べ、別に瀬川浩毅の為じゃないからな。勘違いするな。藤宮珠樹の為だ」
「そっか」
それっきり、会話が途切れる。
まるで鉛のように空気が重く、息が詰まる。
そそくさと、それ以上何も言えずに、合川好生は帰ってきた。
「すまない、駄目だった」
「いや、よく頑張ったと思うよ」
「しっかし、本当どうするよ」
「まさかこれほどとは……」「流石に見てて可哀想ね」「ここは一つ」「珠樹の手作りチョコを用意するしかないか」
「そりゃそうだが、今すぐってワケには――」
その瞬間。
プチン、と。何かが切れる音がした気がする。
「俺の心はボロボロだぁっ! お前らに俺の何が解るんだよぉ!」
誰に言っているのか。
浩毅がテーブルに突っ伏し、腕に顔を埋めて咽び泣く。
「いかーん! 浩毅が壊れた!」
「購買! 今あるチョコを買い占めるんだ! あとラッピングできるモノ!」
「おばちゃん、厨房、厨房貸して! いやモズクはいいから」
「厨房はいい。家庭科室だ!」
「よし、鍵借りてくる!」
流石にこれは、外山、馬鹿、西脇までが面食らう。それぞれが自分に出来るコトをと行動するが、混乱していてスムーズにはいかない。ギャラリーはもう目を放せない。
食堂は、いよいよもって驚天動地の様相を呈す。
「こ、これは予想外に大変なコトに」「だから止めようって言ったのに」「今更言ってもしょうがないでしょ」「ごめん、もういいよ珠樹!」
「――うん」
許可を受け、我慢していた珠樹が動く。
昨日から用意していた包みを、やっと取り出すコトが出来た。
小さく拳を握り気合を入れて、浩毅に駆け寄る。
そして目の前に差し出した。
「浩毅、これ」
「――珠樹?」
「バレンタインチョコ。浩毅の為に作ったの」
「あ? ……え?」
言葉を理解出来ず、目を丸くする。
無いと言われていたのに、現物は此処に在る。つまり……どういうコトだろう。
フォローするように、珠樹の後ろにカルテットが現れた。
「ごめん、瀬川くん」「とある人からの悪知恵、私達が吹き込んだの」「どれくらい好きか図れるからって」「私達はいいけれど、珠樹だけは許してあげて!」
「な、なん……お前ら! ちょっ、そんな、俺が……ああもうッ!」
言葉が上手く出てこない。
要するに、騙された上に、これ以上ない醜態を晒してしまったという話だ。
情けなくて、別の涙が出てくる。
とにかく落ち着こうと、浩毅は大きく深呼吸をした。
「なるほど。やはりそういうコトか」
冷静さを取り戻し、引きつりながらもやせ我慢。
誤魔化せないコトなど、浩毅本人が一番解っている。だが、せめてやせ我慢でもしなければ、今度は羞恥で壊れてしまいそうなのも解っているのだ。
外山が呆れた溜め息を吐く。
「……人騒がせな」
「まあ、落ち着いたんなら、それでいいけど」
「だがなぁ……ふん! ふん! ふん! ふん!」
「わっ!?」「きゃっ!?」「痛っ!」「何すんのさ、合川好生!」
脳天に見舞われる鉄拳制裁。
好生は四人に睨まれるが、それを目で抑えつける。
「ったく。悪戯するなとは言わないが、種明かしは引っ張るな」
普段馬鹿と呼んでいる相手に説教され、しゅんとするカルテット。
彼女らも頭が悪いわけではない。言うコトは理解出来るし、省みるコトだって出来る。
何よりあの姿を見ては、首謀者として良心の呵責が無い人間も珍しいだろう。
事態の収拾を確信し、笑いながら、外山が浩毅に話しかけてきた。
「ま、コイツらはともかく、珠樹は許してやれ。な?」
浩毅を持ち出せば、あっさり計画に乗るのもどうかと思うが。良くも悪くも、純粋すぎる娘だ。
「そうそう。寛大にね。――あ、コレ借りるよ」
「ん? ああ」
好生が既に購入してしまっていた安物のリボンを、西脇が拝借する。
手近の“あるモノ”に、手際良くみるみるうちに装飾を施す。
「ホラ、オマケつけたから」
「え? え?」
リボンを巻かれ、ラッピングされた珠樹が目の前にいる。
贈り物として飾られた姿は、まるで細い羽衣を幾重にも身につけたようだ。
その姿で、再度本命チョコを浩毅に差し出す。
「手作りは浩毅だ――け?」
「く、お前も悪乗りしやがったクセに、感謝なんかしねえぞ」
「……〜〜ッ……」
言葉とは裏腹に、浩毅は思いっ切り珠樹を抱き締める。
突然、何時もと逆の立場になって、珍しく誰の目にも明らかなほど紅潮する珠樹。珍しいもの揃いな日だ。
「おーい、浩毅……本音と建前が逆んなってるぞ」
「……と言うべきかどうか。本当、珍しいね。公衆の面前で」
この場合、口では嫌がっていてもと、街娘を捕らえた悪代官風に表現するべきなのだろうか。
「ぐぁー! そこまでやるな、瀬川浩毅! くそ、辛いな!」
格好つけた手前、無理に引き剥がすワケにもいかないので、購買でついでに買ったハバネロスナックを自棄食いする馬鹿。
一頻り感触を堪能した後、我に返る。
「はッ!? し、しま……っ」
「浩毅、もっと」
「で、出来るかバカ!」
「あっ?」
浩毅は、顔を真っ赤にして飛び出していった。
今日はどうにも決まらない。
人生最大の厄日だと、自信を持って言える。それでもニヤけてしまうのを抑えられない自分は、意外と現金だったのだなと思ってしまう。
食堂を飛び出した浩毅は、一分後には人気の無い裏庭に来ていた。
「〜〜〜〜〜〜……ぃよしッ!」
周囲に誰の気配も無いのを確認し、溜めに溜め、安心して盛大なガッツポーズをとった。
そんな浩毅を、
「照れちゃって……可愛い」
と評する珠樹だった。
ところで、悪巧みを吹き込んだのは誰だろう。
放課後、何時もの喫茶店に珠樹と寄ったが、どうも優希さんではないらしい。
自分の知らない交友関係からも筋だろうかと納得したが、答えは意外な所で判明した。
「どうせ僕は駄目な日本人さッ!!」
「俺には、最早愛娘しかおらんというのに!」
帰宅すると、いい年こいた男二人がクダ巻いていた。
「お義父さん、今夜はウィスキーで乾杯しましょう!」
「おおとも、とことん付き合うぞ!」
台所では、夕食の用意をしてる真っ最中の母。
帰宅の気配を感じ、振り返った母と目が合った。
二人に見えないよう、悪戯っぽく舌を出す。似合うから困る三十代。
……黒幕はアンタか。
これで終わり。気に入ってくれたのなら幸いだ。
どうせ俺は駄目な日本人だよ、コンチクショー!
(・∀・)ニヤニヤ
GJ。笑わせてもらったw
馬鹿可愛いよ馬鹿
GJ!
登場するたびに馬鹿が真人間になっていくな。元から真人間ではあるはずなんだがw
どうせ俺も駄m(ry
ちょwwww馬鹿wwwww
超GJ!
馬鹿、いいやつだなあ
浩毅デレデレだなw
保守…ってか死守
馬鹿がいいねえ。
ひろたま二作目のオチをやっと理解した……。
>>257 >「む。べ、別に瀬川浩毅の為じゃないからな。勘違いするな。藤宮珠樹の為だ」
なにこのツンデレwwww
マブラヴの冥夜だっけか
あれって素直クール?やってないからわからん
いきなりベッドの中にいるんでしょ、たしか
>>269 すまないが、私もアージュは君望しかやったこと無いんだ。
さて、一本投げていくわ。ちょっと妄想歴史小説スレと迷ったけど。
とかく元ネタが志怪小説なので苦手な人はスルーよろしく。
専ブラ持っているならIDで弾いちゃってください。
誰も覚えちゃいないと思うけれど、前回と違ってエロも入れてますよ。
昔々、海の向こうの大陸の、更に南の方の港町に、とある男が住んでいました。
姓を謝、名を端。幼くして両親に先立たれましたが誰も親戚がおらず、隣人が彼を不憫に思い、自分の子のように育てていました。
やがて謝端は真面目で慎み深い、働き者の青年に育ちました。
彼は育ての親の家を出て一人立ちし、朝早くから夜遅くまで働いていました。
隣人はそんな彼のために嫁を探しましたが、両親のいない彼に娘をやろうという家は中々見つかりませんでした。
そんなあくる日のこと。
「お、兄ちゃん。今日も精が出るねえ」
「ええ、こんな世の中ですから。自分の食い扶持ぐらい自分で稼がないと、あっという間に飢え死にしてしまいます」
?江(みんこう)の支水のひとつ。
かつて中原と謳われた北の大河の黄色く濁った水とは違い、ここの川は一面が青でした。
空とも見紛うその青さの上を筏に乗り、竿を操って謝端は渡っていました。
その時代は時の宰相が幼い皇帝を位に就けると、それを傀儡として国務を壟断しておりました。
宰相は古今の例に漏れず、贅を尽くした宮殿を建てるなど国庫を傾け、民衆は圧制に喘いでいました。
無論謝端もその例外ではなく、農作業だけでは足りない収入を、時折の川漁で補っているのでした。
「安石様がご健在の頃は、こんな思いしなくても済んだんだがな、まったく……ところで」
一仕事終えたのか、河岸に筏をつけようとしている謝端に、男は不思議そうな声をかけました。
「ああ……気付きますよね、これ。よく分からないんですけどいきなりがんっ、ってぶつかって来まして。危うく獲物を逃がすところでした」
「何だろうなそれは……法螺貝か?」
男の言う通り、形を見ればそれは普通の法螺貝でした。
ただ謝端の筏をぐらつかせただけあって大きさが尋常ではなく、一番大きいところなどは謝端の両腕でやっと抱えられるほど。
謝端はそれを殻頂を上にして筏に括り付け、浮き袋のようにして運んでいました。
「何だか気になったもので、つい拾ってしまったんです」
「しっかし何に使うつもりだい、そんな形じゃ甕(かめ)代わりにもならんぞ」
「はは……そうですね」
この時はまだ謝端も、法螺貝にさほどの興味もありませんでした。
珍宝と呼ぶにはあまりに地味ですし、かといって中身は空っぽ。家には持ち帰ったものの、物置にしまったきり存在を忘れていました。
しかし半月程が経ち、彼の生活にはささやかな、けれど驚くべき変化が現れたのです。
「……またか……? 一体どうなってるんだ」
謝端は野良仕事から帰ると不思議そうな声をあげました。
自分以外は誰もいないはずの家には既に夕食の支度がされており、芳しい湯気が立っていたのでした。
今日に始まったことではありません。昨日も一昨日も、謝端が朝起きる前と夜帰ってくる前も同じでした。
隣人に聞いても知らないと言われ、挙句「お前はもう私に内緒で嫁を貰って、それが決まり悪いからこんなことを言うのだろう」と笑われる始末。
見るからに金目のものなど無さそうなちんまりとした謝端の家など、物乞いでも目に留めないでしょう。
かといって他に自分の家に無断で出入りする人に当てはありません。謝端は申し訳ないと思いつつも空腹の悲しさ、今夜も見知らぬ誰かの施しを食むのでした。
次の日も謝端はいつもと同じように目を覚まし、当然の如く用意されている食事を見て、ついに好奇心を抑え切れなくなりました。
貰うばかりでは気が済まないという彼の性分もあったことでしょう。彼はそのまま野良仕事に出かけましたがいつもより早めに仕事を切り上げ、
急いで家の近くまで帰ると、粗末な垣根の外から中の様子を窺います。
謝端も、内心ではどうせ隣人がやっていることだろうと思っていました。
それならそれで知らぬふりをするのが礼儀ですが、まさか……という思いを捨て切れず、じっと息を殺しているのでした。
そして日が中天を過ぎ、やがて西に傾きかけようとした頃、遂に彼は真相を目の当たりにするのです。
「むっ……ふ……ふんっ、うく……むぐぅ……っ!」
何やらくぐもった怪しい声が家の中から聞こえます。
すわこそ、じりじりと逸る心を鎮めつつ、謝端は自分の家へと足を踏み入れます。
「ぜぇ……ぜぇ……毎回の事ながら無理があるだろうか……けれどこれしきで音を上げるわけにはいかん」
戸の影に隠れて部屋の中をちらりと見た謝端は、仰天して腰を抜かしそうになりました。
火打石を手に謝端の家の台所を占拠しているのは、見たことも無い少女でした。
扇を広げたようにゆるるかな黒髪。肩や背の動きに合わせてふわふわとそよぐ様は、今にも甘い香りが漂ってきそうです。
頬は紅をさしたかのように鮮やかであり、古に聞く“花のかんばせ、玉の肌”がぴたりとはまる美しさでした。
あまりの衝撃に謝端が呆然としている間にも、ぱたぱたと少女は働き続けます。
目を奪われた――いやそれどころか、内心ではその姿をずっと見ていたいとさえ謝端は思っていました。
竈(かまど)の火を確かめるために腰を屈めると、ぴっちりした淡い水色の長袍が身体の曲線を際立たせているのがよく分かります。
足首までかかろうかという長い裾は腰上まで切れ込みが入り、上半身とは打って変わって白い直線的な?がせわしく動いています。
熱気に絡みつかれた肌はじっとりと汗を浮かべ、少女の神采に温みを添えています。
幻のような美貌と、どこにでも見られる――けれど家族のいない謝端には縁の薄い――日常的な眺めが入り混じって、触れれば壊れてしまう危うささえ感じさせます。
謝端がためらうのも無理はありません。
しかし彼女は見知らぬはずの謝端の家で食事の支度をしているのです。
そしていつも謝端が気が付いた頃には、その痕跡だけを残して雲か霞のように消えてしまっているのでした。
鼻をふわりと包み出したおいしそうな匂いにはっと我に返った謝端は、ついに意を決しました。
「あ、あの……あなた、どなたなんですか。どこから来たんですか?」
「えっ」
美しい中にも人間離れした、化かされたかと思ってしまいそうな妖しさが、気の抜けた声で一気に霧散しました。
俄然勢いづいた謝端は少女に迫ります。
「君はここに来たの、初めてじゃないよね」
「あ……う……」
少女は柳眉を歪ませ惶或していました。彼女が振り返った時に目が合ってしまい、思わず謝端は心臓を跳ねさせます。
そのまま永遠とも感じられる時間二人は見つめ合っていましたが……不意に少女の姿が消え、
「隙あり――!!」
「ぎゃうっ」
いきなり謝端の顎に腰の入った正拳突きが決まりました。目の前に星が飛び謝端はたまらず悶絶。
大の男をも突き倒す少女、あな恐ろしや。哀れ謝端は床に伏して、奇特な闖入者は今生の謎のまま――
「――……んんっ、んんぅーっ! ううっ……」
嗚呼、頭が痛い、ぐらぐらする。痛い、熱い、何なんだこれは。どうしてこんなになってるんだ。身体は。
「うぐ、ぐぅん……んんんんーっ!! ぐっ……」
じっとしていると痛みがだんだん引いていく。じぃんとした耳鳴りも治まったようだ。
どん、ばかん、ごん……うるさいな、何の音さ。ばきゃん――あ、何か割れたな。
この音は甕だな。音が高いから薄手の小さいやつだろう。まったく人の家で何をやっているんだ……
そう、そうだ。人の家だよ。というか私の家だ。
「うう……うむぅ……ふはぁ、はぁっ、は……」
おもむろに起き上がって周りを見回すと、見慣れたはずの部屋が荒らされていた。
誰がやった……って、一人しかいないか。今もまた何かぶっ壊したようだ。
「君は、何をやっているのかい」
「ふぐぅ! うぐ、うぐっ、わぅうっ!!」
「こ、こら、暴れるな!!」
がたんごとんばたんという騒音の主――多分人だと思いたい――は私の声を聞くと火がついたように暴れだした。
私にはとんと縁の無い上物らしい服もあちこち汚れてしまっている、ああ勿体無い……そんな場合ではないか。
「この、止まれ! ――うぁいだっ!!」
「ううっ、んんんーっ!! うぁうっ……ぐふぅ……」
そして無茶苦茶なことにその人影は、頭から肩のあたりまですっぽりと法螺貝を被っていた。
確かに私の拾ったのは有り得ない大きさの法螺貝だ、人の顔ぐらいは余裕で入るだろう。
だが法螺貝は殻頂に近づくにしたがって細くなっていく。どうやら途中でつっかえてしまったらしい。
そんなものが頭を覆っているせいで頭突きの威力も倍増だ。
「うぅっ! ふぅん、うぁっ……あうう」
「いい加減にしてくれよ……」
貝の中で意味不明な呻きを出しながらじたばたするのを押さえ付ける。これ以上我が家を貧相にされてはたまらない。
貝被りの方もぜぇぜぇと荒い息をつき、入りきらなかった髪の毛はばらばらに乱れ、とても人前には出せない有様になっていた。
「これはこれは、大変な粗相をしてしまったようだな。気の毒なことだ」
「いや君がやったんだろ」
夕暮れの陽光が窓――というより壁穴と化していたが――から差し込んでいる。
四半刻以上もの壮絶な格闘を経てどうにかこうにか法螺貝から顔を引き抜いてみれば、泣きそうになっていたあの少女の顔が現れた。
その後どうにかこうにか人が雨梅雨をしのげる環境を取り戻した部屋で、私達は机に向かって白湯をすすっていた。
仮にも来客に一献も出せないとは我ながら情けない……それはともかくとして、私は彼女に聞いてみた。
「で……君は誰なんだ。私に何か用か?」
「妾(わらわ)か? 妾は天漢の白水素女よ。肉親のひとりもおらず朝から晩まで働き詰めのそなたを天帝が憐れみ、
妾を遣わしたというわけだ……そなた、あの法螺貝を拾ったであろう?」
「あ、ああ。そうだ……」
「あれで妾はここまで下ってきたのだ。だのに……あれだけ窮屈だと苦労するぞ。
たださっきは取り乱してしまっていたが、いつもならもっと早く出入り出来るが」
からからと笑いながら、俄かには信じがたい話をどうということもない風に話す。
気を抜けば思わず見惚れてしまいそうな笑みだった。
「いつも……ということは、やはり君なのか。朝や夕方に食事を作っていたのは」
「他に誰か思い当たるか」
「…………」
「そうか」
ずずず、と無造作に白湯を飲む白水素女――確か女神とかいったか。
だが目の前の彼女は俗っぽ過ぎる。食事の支度ををしているときであればまだしも。
しかし、本当に綺麗だな……何故か少し納得いかないところがあるが。
涼やかな目元を筆頭に整った目鼻立ち。暴れていたときはぼろぼろだった髪の毛も艶やかな光を放つ濡れ色だ。
豆腐屋の西施や江南の二喬も裸足で逃げ出すだろう肌は勿論染みひとつ見当たらない。
詩文の中でしか見たことの無い深雪とはこのように輝くのだろうか。暖かい江南ではお目にかかれないだろうが。
「どうした、妾がどうかしたのか」
「うわぅっ」
無防備に視線を彷徨わせていたら、ばっちり目が合ってしまった。すると何を思ったのか彼女は頬を緩ませ、一足で傍まで寄ってくる。
「そう狼狽することはなかろう、これでもそなたの妻であったのだぞ……仮初のではあったが」
「つ……妻だとっ!?」
ま、まさかあの人の“知らぬ間に妻を〜”が本当だとは。いや私も知らないぞ。
「もっとも、仮初ゆえに姿を見られるわけにはいかなかったのだが。ところで」
「ぐあぁあぁっ」
腕を掴まれいきなり地面が引っくり返る――いや、見慣れた天井が見えるだけなのだが――私は腰掛けていた椅子から撞き倒された。
さらに彼女は私の上に馬乗りになる。
「さっきは、何故妾を見て呆けていたのだ?」
明り取りから入る夕日に照らされた姿は、まさしく天の使いだった。
橙色に染め上げられた肌、楽しくてたまらないと言わんばかりの唇、そして私の頸にかけられた両手。
動かない。動けない。そういえば彼女は私を一撃で昏倒させたのだったな。
「申せ。端よ、妾に申せよ」
「う……く……苦し……」
きっと彼女にとっては大した力ではないのだろう。空いた指で私の喉仏をさすったり、鎖骨を撫でたりしているのだから。
「……分からないのであれば教えてやろう。そなたは妾に目を奪われて、何も考えられなかったのであろう」
ふっ、と突然頸の締め付けが消える。あきれているらしい表情。それさえも綺麗で、目が行ってしまうことに腹立たしさが湧き上がってきた。
あまりに信じられない事ばかりが起き過ぎてやけになってしまっていたのだろうか。
「……何が悪い」
「端――?」
「自分の妻に見惚れて、何が悪い」
開き直って吐き出す私に、一瞬彼女は目を丸くし、そして息を呑んだ。
「そうか、そなたが……妾を妻と申すのだな」
「ああ、そうだ、その通りだ」
勢い込んだ私の言葉を反芻している……いつの間にか、彼女の顔に西日が妖しい陰を落としていた。
私の背中に戦慄めいた震えが走った。
「ならば、阻むものは無いな」
言葉を口の横に流して、彼女は私に唇を重ねてきた。
「む……ちゅ……く……ふぅん……」
舌が唇に割り込む。あまりのことに半分硬直してしまった私を、彼女は事も無げに弄ぶ。
歯列を、歯茎をなぞり、気付けば顎をこじ開けられ舌を吸われていた。目まぐるしい動きに圧倒される。
彼女が唇を離して顔を上げると、銀色の細い柱が立ち、すぐに崩れた。
「き、君は……」
「どうした、何か不都合があるか。夫と妻が契るのだ、邪魔は何もあるまい。それに」
彼女は私の肩に手を乗せると、腰をわずかに浮かして動いた。
「この姿勢だとそなたの沸き立つのがよく分かるぞ」
私の麻の下布を押し上げる肉茎を、彼女は自分の股に?越しに擦り付ける。水色の長袍の合間から見える白さが眩しい。
「だいたいそなたは、妾が貝殻を被っていたときからこうしてみたかったのではないのか」
「そっ、それは」
図星だった。今まで私は女の身体に殆ど触れたことが無かったのだ。もし彼女が大人しくしていたらきっと手が出なかっただろう。
姿を思い起こせば、同時に肌にもふっと沸き起こる、抑え付けていた時の、掌に、腹に、腰に感じられたえもいわれぬ快い柔らかさ。
私はその時まで女に溺れる、ということを半分迷信だと決めてかかっていた。だが、今まさに私がその淵に追い込まれているのだ。
「ほうら、さっきみたいに触れてみろ。遠慮はいらぬ」
布の上からでも分かる急峻な稜線。爪が、指の腹が、手の全てが吸い寄せられて私は彼女に触れた。
白い肌の熱さがすべすべした長袍の生地をすり抜けて陽炎のように立ち上っている。
私は夢中で双丘を捏ね回し、揉みしだいた。心の臓の打つ手応えさえ感じるようだ。
「ふっ、はあぅ……はは、分かるか端よ。妾も随分滾ってしまっているな……だが、悪くない」
荒くなってきた息遣い。紅に照らされた眩しさの中にも陶然とした表情が見える。
犯したい――この女を犯し、その肢体に己が存在を刻みたい、征服してしまいたい。
声が、匂いが、手触りが、目が……全てが私を誘っている。急かしている。抗う術は無い。
「は、んっ、ん……端、端?」
反動をつけて上体を起き上げ、馬乗りになっていた彼女を逆に莚(むしろ)の上に押し倒す。
豊満な胸を覆う上衣を一気に剥いだ。その眺めに、はしたなくも喉が鳴ってしまう。
月も光を消し花も恥らう、そんな陳腐な表現が消し飛ぶほど、彼女の乳房は私を蠱惑してくる。
じわりと伝わってくる甘さは素肌を晒してぐんと濃くなり、輝くばかりの白さが今はほんのりと紅潮していた。
服を通してでも感じられた量感は、仰向けになっているにも関わらずこちらに迫ってくるようだ。
石竹に似た淡い赤の頂は、蕾が時を得て咲き誇るように張り出している。
「ど、どうしたのだいきなり」
動きを止めてしまった私を不審に思ったのか、おずおずとした言葉が響く。
「良いだろう? 先刻とて散々眺め回した……それとも、裸を見られるのはやはり嫌なのか。
……そうだな、私も見ているだけでは嫌だ」
ぷつんと糸が切れて、私の腕は脱兎の勢いで二つのふくらみに伸びた。
「くぁ、っ……ふぁん……んっ……」
瑞々しい果実が形を変える。頂を指先で転がす。その度に奏でられる悩ましい囀(さえず)りが一層私を駆り立てる。
思い余って私は、彼女の乳房に口でむしゃぶりつき、舌で蕾を舐った。
「ああっ、んっ、はぁ……まるで、赤子のようだぞ……はんっ、あん……」
自分で口に出した言葉が可笑しかったのか、彼女は声を出して笑った。
けれど私はひたすら乳房を嘗め回し、弄繰り回す。ずっと触れているうちに無心になっていく気さえする。
いつの間にか彼女に頭を撫でられていた。優しい手つきだった。
「むう……これは中々男らしいではないか。そなた、初めてなのであろう?」
「う…………」
「なあに、妾はこれほどの宝貝が持て余されているのかと思ってな。それにしても……見ているだけで善がってしまいそうになる」
再び仰向けに寝かされている私の身体の中で、一物だけはすっかり立ち上がり、彼女にその姿を見せ付けていた。
しかし、こうもしげしげと瞳を凝らされていると流石に気恥ずかしいものがある。首を起こし彼女を見やると、白い?をするすると脱いでいた。
足首ほども脚を覆っていた長い上衣の――だが、彼女の纏うそれには腰上から切れ込みが入っている――間から垣間見えるは布の白さではなく、
清げなる金蓮咲くが如き下肢の蠢きである。彼女は静かに私をまたいだ。一物の先で熱を感じる。女の息衝きに触れる。
「端よ、我が良人……今こそ房中を為そうぞ」
私の胸板に手を突き、彼女はゆっくりと腰を沈める。私が飲み込まれて行く。
「うわぅあ……!」
一物から背筋へ、そして身体全てに広がっていく感覚。噛み殺そうとしても声が出てしまう。
彼女が絡みついてくる。腰が浮かぶ。もう抑え切れない。
「きゃんっ! ひゃあううっ、あ、ああっ、ああっ!!」
膣内を突き上げ、こそぐ。艶かしい肢体のうねり、挑発するように揺れる胸、耳を包む嬌声。
文字通り私は溺れて、藻掻きながら内奥を叩く。別の生き物のような律動に翻弄される。
「あ……あう……ぐ……も、もう無理だ、来る……来るぞ!!」
予感が伝播していき、腹の底ががくんと震え、私の一物は遂に弾けた。
続けざまに精が放たれ、まだ動きを止めない膣内に流し込まれる。もうひとつの口となって搾り取ってくる。
「う、ふふ……んぁっはは、ははぁっ……」
どこか狂人めいた破顔。なのに薄気味悪いどころかこちらまで狂わせるほど心を惹きつける。
「は、はぁああっ、あはぁ……その、分だと……すっかり羽化登仙の心地のようだな……」
危うい光を眼差しに宿しながら、真正面から視線で射抜かれて臓腑が飛び上がる。
眩暈が頭を過ぎる。全てが、見透かされているのか――?
「まだ男も持つであろう。そなたを……もっと妾に寄越せ」
ようやく彼女との交合が終わった時分にはすっかり陽も落ち、空は群青色になっていた。
私は彼女の肢体を清めるために井戸に水を汲みに行き、何気なく天を仰ぐ。もう星が出ていた。
「端、そこにいるのか」
不意に後ろから声を放られる。彼女の声――しかし、まぐわう前とは全く別人のような声だった。
海が、時化から凪へと変わったのかとも思えた。
「もうすぐ、星が出てくるな」
「そうだな。……まだ明るいうちからあんなことをしてしまっていたのか」
苦笑しようとした私を、静かな口調が遮る。
「いや、ああでなければならなかったのだ。天漢が出れば、妾は還らねばならぬ」
「……何を、言っているのだ」
きっちり揃えた鴉色の髪を流し、彼女は空を見上げている。ぽつり、ぽつりと唇が動く。
「妾は仮初ゆえに姿を見られるわけにはいかなかったのだ。人は、人と結ばれねばならぬ。
そなたが真の妻を娶った時まで、妾はここにいるはずだった。だがそれも叶わぬ……仮初が本分を侵すわけにはいくまい」
「何を言っている、私は言っただろう、君が……君が私の妻だと、言ったじゃないか!」
「ああ……嬉しかった。姿も見せられず、気付かれないよう遠目に見るだけで終わると思っていたからな。妾は幸せだ」
澄んでいた夜空に、ひとつ、またひとつと星が瞬き始める。光のかんばせから溢れる微笑が歪み、ぼやけ、滲み出す。
手を伸ばして引き止めたいのに、腕が寸分も動かせない。かろうじて感じられる彼女の吐息が、広がる。
「端よ、妾が去っても、どうか……幸せに――」
喉を引き裂かんとする謝端の叫びは、突如吹き付けた一陣の風に流され、その風は翕(きゅう)としていた白水素女をも、空へと運んでいきました。
彼は大いに嘆き悲しみましたが、家に残された法螺貝を神体として祭り、尚も勤勤として働き続けました。
そして後には官庁に仕え、妻を娶り、一族は富貴を極めたと伝えられています。人々はその話を知り、素女を崇めて祠を建立しました。
今もその地には、謝端の法螺貝が眠っているそうです。
どっとはらい。
281 :
海音 ◆Z9Z6Kjg2yY :2007/02/19(月) 03:32:33 ID:qvBiEDry
ちなみに元ネタは捜神後記の「白水素女」です。
最後の最後に上げちまったorz
ちょっと吊ってくる……
>>280 切ない・・・・・・
また端のところに法螺貝を戻してやるわけにはいかないのかい?
GJだぜ!
確かに俺も天女が戻ってくるバージョンを見てみたいな。
たとえ元ネタと違おうが、ここは天下のエロパロ板!
愛とエロさえあれば良いと思うんだぜ!
>>妻を娶り、一族は富貴を極めたと〜
この妻が実は天女だったとすればいいんでは。
いいもの読ませてもらいました。
GJではあるがラストはやっぱりハッピーエンドでひとつ…
或る日、昼休みの教室にて
――ザワザワ コレオイシーネー オーイガクショクイコウゼー ハラヘッター
『武君』
「ん? なにさ」
『私と付き合ってくれ』
――!!!! Ω ΩΩナ、ナンダッテー!
「なんだよ藪から棒に」
『イヤ、武君のことが好きなんだ。激LOVEなんだ。結婚を前提に付き合ってくれ』
――ウッソー! アノキヨコサンガー!? フダンハアンナニクールナノニ ツーカゲキラブッテwww
「ふーん」
――ェエェェエエ!? ハンノウウスッ!! ツーカコクンナヨww イミワカンネw
『ど、どうかな』
「あのさぁ、紀代子さんと付き合ってさぁ、俺にどんなメリットがあんの?」
――ェエェエエー!? カンジワルッ!! オンナノコガコクハクシテルノニ! ツーカココデヤンナッテww
『そりゃすごいさ! 三食昼寝は当たり前、この身体を自由にしていいし、
調教し放題だし、カード代わりにお金を引き出せるし、その他にもやりたい放題だよ!!』
――エエエッ!? ダメッショソレハ!! ササゲスギッショ!! ツーカチョウキョウッテww ドンダケダヨw
「ふーん、なるほどね。んじゃ付き合えば本当にやりたい放題なのね?」
『ああ、本当だよ(ニマァ』
――ドウスルンダロタケクン ヤッパツキアウノカナー ダカラサーココデヤンナヨww シカモヒルヤスミダシww
「だが断る」
『!!』
――!! ェェエエエェエエッ!! ヒッドーイ!! サイテーッ オンナノコガコクッタノニフルナンテ!! ウハッwwタケスゲェww
「この俺が最も好きな事のひとつは、周りを気にせず勇気を出して告ってきたクールビューティーに『 NO 』と断ってやる事だ!!」
――サイテー!! シネッ!! キヨコサンカワイソウッ!! チネッ!! ロハンガイルww ツッカ、タケオニスギw フツウニカワイソww
『……そうか、……ダメか』
――!? エッ? ソノ、テニモッテルノハ? ナ、ナンカ、ヤバゲナフインキ
『才覚の違い……ってやつかな』
瞬間、紀代子は持っていたコルクバットを高らかに持ち上げると武目掛けて一気に振り下ろした。
武はこれを霞でかわすと後ろに飛びのいて距離をとる。
椅子の爆ぜる音が教室に響き、破片があたりに散らばった。
――・・・・・・マ、マジデスカ・・・マジデスカァァァ!! ヤバイヨォオオ!! ナニコノヒトォォ!! ヤバイヨォォッ!!
「こ、こらこら〜〜いきなりそんなことしちゃだめだわよ」
『……言ってダメなら、身体で解ってもらうしかないからな。なぁに心配しなくていい、気絶させた後犯すだけだ。命まで獲りはしない』
――エエェェッ!! ナニイッテンノォ!? ヤバスギダキヨコサン!! オカシイッテ!! ツーカキョウシツダヨココ!! ワカッテンノカヨアノヒト!!
「おやめなさいよ紀代子ちゃん。俺は女を殴る趣味はねーの」
――ウッワ、カルイ!! ナンカヨユウダシ!! タケッ、ヤメトケッテ! ナンカコイツヤバイカラ! ニゲロッテ!
『すまない、今から耳は日曜日だ。何かあるならこのバットに聞いてみてくれ』
――コワッ!! ヤバイッショ!! ヤバイッショコレ、コワイッテ!! チョ、センセイヨバネ? マジヨンダホウガヨクネ?
「ったく、困ったちゃんだなぁ。そーいうのは……ダメよ!」
言い終えるがはやいか紀代子の懐へ飛び込み渾身の掌底を水月に叩き込む。
が、紀代子は海豚のように身を躍らせこれを避けながら反撃の一打を放つ。
間一髪、武は左肘でバットを受けると再度距離をとった。
『嘘つきだな君は。女を殴る趣味はないのだろう?』
「あらやだ。新たな趣味に目覚めちゃったの、か・も♪」
――ナンカコワッ!! イロンナイミデコワッ!! ナニヨコノホンコンエイガ ホンキデコワクネ? ツカヤバクネ!
『……(ニマァ』
「……行くぜ」
――!!
きーんこーんかーんこーん
「っと、昼休み終わったなぁ、んじゃまた今度ってことで」
『……そうだな、ここは一先ず勉学に勤しむとしよう』
――エエェェェッ!! オ、オワリィ〜!? ナンカ、ナンカナ〜 チョ、オワリカヨww ナニコレww
――ナンカコワカッタネェ キヨコサンテチョットクルッテルネ〜 タケクンチョットカッコイイ/// ナンダッタンダww ソウダイナコント乙ww
『だが、あきらめないぞ、絶対に、絶対に(ニマァ』
――・・・恐ッ!!
えっと……ところどころに修羅の門テイストがあるのは仕様ですか?w
GJです。
GJ
ギャラリーオモシロクネ?
どうも、279です。新しいものを書いてみました。
エロなんて書けないのになんでここで書いてるんだろうね……
肌の表面がビリビリと痺れるくらい寒い日の、楽しい楽しい昼休み時だった。
押し詰められて凍ったように固まった弁当飯によくしなるプラスチックの箸で挑んでいると、背後から肩を叩かれた。
クラスメイトの悪ふざけだと思い、箸を咥えたまま振り向くと、この学校で一番との噂に名高い安田翠が立っている。
この少女、1学年下ではあるが上の学年の俺でさえ噂を聞くような奴だ。
曰く成績は学年トップだとか、実家は金持ちだとか、たった1年で10以上の告白され、その全てを蹴ったとか色々な噂は聞いていた。
だからそんなはるか遠いところにいる人間が俺と係わり合いを持つ事になろうとは夢にも思っていなかった。
実に意外な人物が思わぬ行動をとったことで俺の脳は一瞬活動を放棄してしまう。
「先輩に聞きたいことがあるんですが。」
「……何?」
しまった、タイミングを逸した。話のペースを完全に持っていかれた。俺の短い人生経験上、こういう相手に話の主導権を握られると非常に面倒臭い。
「先輩には付き合っている人がいますか?」
「……いや、そんな大層なもんおらんけど。」
「それじゃあ、私と結婚を前提としたお付き合いをして下さい。」
決して大きな声ではないが、ざわついていた教室の中に響く凛とした声だった。
少しの間俺の脳(恐らく教室の中の全員の脳も)は活動を放棄してしまった。数瞬後、ようやく動き出した脳は1つの結論を導き出した。
『今の状況は自分の耳がどうかしてしまったのか、この子の頭がどうかしてるのかのどちらかに違いない。』
普段特別誰かと仲良くしているというわけじゃない、だからと言ってクラスの中でも浮いているわけでもない俺に学校のアイドルが話しかけるというだけで一大事だ。
ましてや……今のは告白か?
「どうかしましたか?」
軽く襲ってきた眩暈に目頭を押さえながら、素早く辺りの状況を確認する。
昼休みなので学食に行ったり、空調の効いた図書館に篭もったりしている連中が半分。あとの残った半分は俺の一挙手一投足に注目している。
俺は刺さるような視線の中で落ち着いて会話が組み立てられるほど大人じゃない。
「とりあえず、出よか。」
「はい。ついていきます。」
教室を出ると同時に静まり返った教室から会話が爆発した。
さて、どこに行こうか。
「どこに行くんですか?」
「人気の無いところ。できれば暖かいところがええなあ。」
「暖かなところがいいのなら、さっきの教室でもいいじゃないですか。」
「……君はさっきの教室の雰囲気についてどう思う?」
「静かで話しやすい環境だと思います。」
こいつのもう一つの噂を思い出した。『宇宙人』だ。噂によれば辺りの状況を考えない突飛な行動をとる、という。
「俺は学校内で目立つような事はしたくないんだ。けど君が話しかけてくることによって否が応でも目立つんだよね。」
「私と会話する事はそんなに目立つ事ですか?」
「うん。君、可愛いから衆目を集めるし、それにあんまり本人に聞かせるべきじゃない類の噂も流れてる程度には有名人だね。」
「じゃあ先輩は私といるのは迷惑なんですか?」
「なかなか賢明で助かるわ。」
「……これ、読んでください。それに私の言いたいことが全て書いてあります。」
そう言って彼女は俺に分厚い封筒を手渡すと、自分の教室のほうへ戻っていった。
……言いたいことも何も、付き合ってほしいとさっき言っただろうに。可哀相に、ドッキリか罰ゲームか、そのどちらかで言わされているとしか思えない。
仕方が無い、可愛い後輩の嘘に乗っておいてやるか。たまに道化を演じるのも悪くない。
残りの休み時間は教師が10分ほど遅れてくるまで、女子に囲まれて過ごした。
まさか自分が人の輪の中心に来る事は無いと思っていたので少々面食らったが、特別変な質問をしてくるものもおらず、普通に応対できていたと思う。
午後の授業中は、教師と教室全員の目を気にしながら封筒の中身を読んでいた。幸いな事に一番後列の座席だったので教師にはバレずに済んだ。
女の子らしいほっそりとした字体で、流れるようにペンで書き込まれている。封筒の分厚さに比例してかなりの長文だ。
そして文体がおかしい。『先輩が好きな理由』を箇条書きで書いてある。
……どこの研究機関のレポートだ。幼稚園児でさえもう少し色っぽい中身を考えられるだろう。
それにしても罰ゲームにしては少し手が込みすぎている。きつめの灸を据えてやらないといけないかな、と考える。
最後まで読み進めると、今日の放課後部室に来ると書いてある。
……今日はサボるか。コンクール前で出来るだけ作業を進めたい時期だったが仕方が無い。
美術部なんて規模の小さな部にアイドルが舞い降りるだけで大事件だ。教室が嵐の真ん中な分、余計な波風は立てたくない。
顧問の岸本先生に休みますと連絡を入れるため美術室へ向かう。
「しつれーしまーす。先生、今日は……」
「ああ、飯嶋君。お客さんだよ。」
「先輩、昼休みの答えを聞きに来ました。」
何故お前がここにいるんだ。教室は俺のほうが近いはずなのに。
「……今日は、厄日なようなので帰ります。」
途切れた言葉を継ぎ足して、回れ右をして下足ホールへ向かう。
早足で歩いたが、後ろから追いかけてくる安田から逃げることは出来なかった。
「待って下さい。」
「なんで?」
「まだ答えを聞いていません。」
「付き合ってくれって奴か?人を困らせるような嘘はついたらアカンで。」
立ち止まって彼女に向き直り、目を見て少しきつめの口調で叱責する。
「嘘じゃありません。先輩の事が好きです、付き合って下さい。」
無表情だが真っ直ぐな瞳に見返されて、思わず目を逸らす。
「……どこまで付き合えばええんや?都心の賑やかな所まで?」
「先輩こそ真剣な告白に冗談で答えるのはやめてください。」
もし本当に俺のことが好きだとすると彼女の言う通りだし、とても失礼な振る舞いなのだが、いまいち信じられない。
「悪い。……とりあえず詳しい話聞きたいから駅前の……どこか店にでも入れへんか?」
「先輩が行きたいところならどこへでもお供します。」
こいつの相手してると、なんか調子狂うな……
駅前から少し外れた商店街の端に、そのハンバーガーショップはあった。学校とは駅を挟んで反対側にあるのでウチの生徒とかち合うことは無いだろう。
よく来ている店なんだ、と一言置いてからドアを開ける。
「よお、久しぶりだな。」
「昨日も来てたやないですか。」
「そうだったか?……注文は?」
「とりあえずAセット2つ。」
「大喰らいだな。」
「後ろ、見えませんか?」
「それお前の連れだったのか。もったいない。」
「俺もそう思います。」
「そうか。……席に座って待ってろ。お客も少ない時間帯だし、持って行ってやるよ。」
「お願いします。」
勘定を支払い、窓際の4人用の席を確保する。
合成皮革のソファに鞄を放り投げて、俺はその隣に陣取る。安田は向かいの椅子にちょこんと座って、手荷物をもう1つの椅子に置いた。
「で、何から話しましょうか。」
「とりあえず君が正気かどうかを確認しておきたいな。ついでにドッキリの可能性についても。」
「結論から言うと私は正気ですし、ドッキリということもありません。先輩が好きなんです。」
「ありがとう。君のように可愛い子に告白されるなんて嬉しいで。」
嘘ではない。小柄でかわいらしくて、はっきり言ってストライクゾーンド真ん中。ホームランコースだ。
「でも俺は君と付き合う気は無いよ。」
「私と一緒にいると目立つからですね?」
「ご明察や。君はホンマに聡い子やね。……俺はな、学校生活で目立っていいことなんて1つも無いと考えてるんや。」
「私は目立とうとしているわけではないのですが。そうですね、先輩が嫌なら……1つ方法があります。」
……悪い予感がする。一瞬言葉に詰まった彼女の表情は目が据わっていた。
「ねえ、安田さん?何か馬鹿な事考えてへんか?」
「たいしたことではありません。学校で目立たなくなるためには学校に行かなければいいんです。明日にでも退学届けを用意してきます。」
「……君にはどういう風に伝えればいいのか分かれへんわ。」
「日本語で伝えていただければ一番分かりやすいと思います。」
こういうところが『宇宙人』と呼ばれる所以なのだろう。
彼女の考え方に絶句して、数秒経過。
「はいAセットお待ち。」
「どうも。」
「どうぞごゆっくり。」
助かった。ちょうどいいタイミングで入ってくれた。
ホットコーヒーを一啜りして彼女を見ると、トレイの上のポテトをつまみあげて首を傾げている。
「別に変なものは入ってへんで?」
「すみません。ファストフードを初めて食べるので。」
「え?」
彼女は意を決したように、ひとかけらを口の中へ放り込む。十分すぎるほど噛み砕いて飲み込んだ。
ファストフードを食べた事が無いという未知の人種をまじまじと観察していると、
「そんなに見つめないで下さい。照れます。」
と注意された。
表情を崩さず、頬も染めず、どこが照れているのかと聞きたかったが、見つめてしまっていた事は事実なのだから素直に謝る。
「構いません。……私のことを見てくれるなんて、これほど嬉しい事はありません。」
「ああそうかいな。」
しかし表情に乏しいな。
目がおかしくなったのか、安田の体が傾いで見えた。そのまま椅子ごと倒れる。受身くらい取れよ。
……いやいやいやそうじゃなくて。
「大丈夫か!?」
「はい。少し緊張しすぎただけです。まさか先輩とこうして食事を楽しむ日が来るなんてと思うと……」
起き上がりながら返事をする。頭をぶつけたりはしていないようだ。
「楽しんでたのか、今の食事。」
「はい。先輩が向かいにいるだけで幸せです。」
「……そういう寝言を言うときは、せめてそれらしい顔作ってから言おうな。」
いくら可愛くても鉄面皮にそんな事言われては喜びなんて感じない。
トレイの上をあらかた片付け、一息ついてから話を切り出した。
「で、だ。色々聞きたいことがあるんやけど。……何で俺やねんな?」
「理由が必要ですか?」
「今日の昼に渡された手紙から判断するに、君が理屈っぽい事は分かんねん。だから俺を好きになる理由もあると考えたわけや。」
俺はどう間違ってもイケメンと呼ばれる部類の人間ではないし、惚れられる理由が分からなかった。
「一番大きいものは一目惚れ……直感です。他にも理由は手紙に書いてあったと思いますが。」
「何事も筋道立てて考えるらしい君の思考回路からすると、かなりイレギュラーやね。だから嘘や、と疑ってかかってるんやけど?」
少しかわいそうだとは思ったが、バッサリと切り捨てた。が、彼女はあの文面だけで自分という人間を分かってもらえて嬉しい、と述べ、更にこう言った。
「私もイレギュラーだと思います。何しろ私にとって初恋ですので、最初はこの感情が何なのかという所からスタートしたくらいです。」
今日2度目の激しい眩暈だ。眉根に皺を寄せ、睨むように彼女を見る。
「初恋、と言う事はこれまで誰かを好きになった事が無いということか?人間である以上、そんなことはありえないと思うけどな。」
「感情の起伏は少ないですが、私にだって家族愛や友愛はあります。でも愛欲を孕んだ愛情を抱いたのは先輩が初めてなんです。」
……ちょっと待て、今なんて言った?『愛欲』だとか物騒な単語が聞こえたような気がするんだが。
「どうかしましたか?」
固まっている俺を見ても自分が問題発言をしたとは感じていないようだ。
「気のせいやと思うが、い……ま、その……あ、愛、欲とか言うたか?」
「はい。愛欲というのは性交渉をしたいという欲求の事ですね。」
ご丁寧に単語の意味まで解説してくれた。頭を抱えて会話を繋ぐ。
「……性交渉の意味、分かって言ってるんか?」
「当然です。実際に経験したことはまだ無いですが、先輩と出来るんなら今すぐにでもしたいです。」
……こっちが恥ずかしい。
ふと視線を上げると、遠くで店長がニヤニヤと笑みを浮かべている。……あのオヤジ、後でブッ飛ばす。
「もう一度お聞きします。先輩、私と結婚を前提としたお付き合いをして下さい。」
「……普通にお友達、じゃあアカンか?それなら強く断る理由も無いんやけど。」
「構いません、階段は一歩ずつ昇るものですから。嬉しいです。」
声のトーンがほんの少し上がったように感じられた。が、本当に嬉しいのかはよく分からない。
「それでは早速行きましょう。」
「どこに?」
「ホテルでもモーテルでも私の家でも構いませんが。」
「!……ちょっと待て、ちょっと落ち着こうかちょっとでええから!」
落ち着けといっている俺が一番落ち着いてないのは傍目には明らかだったと思う。
「いいからウチに帰りなさい。」
「嫌です。せっかく先輩とセックスフレンドになったんですか……」
「誰と誰が、いつそうなったんや!?」
店から学校への道の間、ずっとこんな口論を続けている。
まだお互い子供なんだからと言う俺と、仮に今妊娠しても出産の頃にはお互い結婚できる年齢になっていると言う安田。お互いの主張は平行線を描いていた。
というか俺との交際は本気で結婚前提なのか、彼女にとって。
ちなみに何故学校へ戻っているのかというと、
「駅まで送っていこうか?」
「いえ、電車通学ではないんです。いつも学校の近くまで車で送り迎えをしてもらっているので。」
「ほんなら車の待ってるところまでは送っていくわ。」
となったからだ。
……思えばこんな提案するべきでは無かった。
学校は駅を挟んだ反対側にある。つまり学校に向かって歩くと言う事は駅へ向かって帰ろうとする生徒とかち合うこととなる。
道中何人か見知った顔とすれ違ったし、これで明日は教室の中だけじゃない、学校中の視線が全て俺のものだ。こん畜生。
みるみる雲行きの怪しくなる俺の心象風景を察したのか、彼女は自分から話題の転換をした。
「ところで先輩。」
「なんや後輩。」
「嫌な言い方ですね。……今美術部では何を描いてるんですか?」
「君に合わせて呼んだだけや。……コンクールが近いから最後の作品作りに励んでるな。」
「最後、ですか?」
最後の作品というのはあながち嘘ではない。来年の5月には引退が待っているし、根気よく仕上げられるものは最後になるだろう。
そして受験はせずに家業を継ぐつもりだから、大学で続けるという選択肢も無い。
「で、何を描いているか聞いたんですが。」
「……ごまかせんかったか。」
「どんなの描いてるんですか?」
「答えにくいことを聞いてくるなあ。」
ここ最近頭を悩ませているのがそれだ。何を書こうか全然イメージが湧かないのだ。これまではそんなことは1度だって無かったのに。
最後にいい作品を仕上げたいと言う気持ちもあり、コンクールの締め切りもある。焦っているのだ。
「どうでもええやないか。第一、どうしても見たければ出来てから見ればええ。」
「それなら、仕上がった作品を一番に私に見せてくれませんか?」
「そりゃ無理ってもんやな。部員は俺1人とちゃうし、先生もちょくちょく覗きに来るし。」
「じゃあ描いてるところ、見に行きます。」
「勝手にどうぞ。……ところで、もう学校に着くけどお迎えはどこに?」
辺りを見回しても車の陰一つ見えない。
「100mほど手前にいましたよ。」
「早よ言え!」
「少しでも彼氏と一緒にいたいと思うのはおかしな事ですか?」
「……誰が彼氏やねん。人を待たせてるのにその前を通り過ぎるなんて鬼畜やね。」
「鬼畜プレイはお好きですか?」
聞こえなかったふりをして回れ右をする。
待っていたのは黒服のお兄さんでもなく、豪華なリムジンでもなかった。彼女が示したのは真っ赤な軽自動車。運転席には少し年上らしい男性が乗っていた。
「あ、どうもはじめまして。田辺と言います。」
屈託の無い笑顔で挨拶をされて、こちらもつられて笑顔を作って挨拶する。
「はじめまして、飯嶋です。……田辺、さんですか。」
「ええ。近所に大学があるでしょ?実家が遠いんで親戚のこの子の家に間借りしてるんですよ。」
俺の怪訝な顔を見て簡潔な説明をしてくれた。会う人会う人に聞かれるらしく、スラスラと言葉が出てくる。
この辺りはちょっとした学園都市になっていて、我が高校の最寄り駅を、同じく最寄りとする大学とその付属高校、中学、違う系列の私立中学がある。
おかげで朝の電車内、駅前、コンビニは戦争だ。子供の安全を考え、家庭によっては学校までの送迎をすることろもある。
俺が彼女の送迎について大きく驚かなかったのもそれが原因だ。
「いやー、翠ちゃんに色々噂は聞いてるよ。なんでももう付き合い始めて結構経つとか。」
迷わず安田の耳を掴み駐車場の隅へ引っ張っていく。
「やめて下さい、鼓膜が破れます。」
「そういうリアルな嫌がり方は止めぇ。ところで、いつ君と俺は付き合いだしたのか教えてくれるか?」
「忘れるなんて酷いです。」
「嘘をつくな泣き真似をするな。」
「将来的にそうなるんですから、なんら問題は無いですよね。」
「せめて最後に『?』マーク入れるくらいは謙遜してもバチは当たらへんと思うで。」
彼女はちゃんと送り届けたし、もう帰ろうと背を向けた。
「んじゃ、さようなら。」
「先輩。」
「なんや後輩。」
呼び止められて振り向き返事をする。
「私はどれだけ嫌われても構いませんから、これからずっと、先輩の事を好きでいさせてください。……それでは、また明日。」
それだけ言うと車に乗り込み、窓越しに会釈をしながら走り去っていった。俺は車が駐車場を走り去っていってからもしばらく立ち尽くす。
可愛い女の子だ、破壊力は抜群だった。何の破壊力かって……
『これからずっと』
……これからずっと、ストーカーされるに3000点。
付けるの忘れてましたが、題名↑つけてみました。
面倒でしょうが管理人さん、対応お願いいたします。
今回、男が関西弁です。
これはただ、私自身が関西の人間で、脳内での関西弁→標準語の変換が面倒なのでそのまま出してみましたよというだけのキャラ設定です。
……何ですか、関西弁の人出しちゃだめですか、関西の人全否定で(ry
嫌という方がいたら、次は標準語にしますのでじゃんじゃん言ってください。
どうも私は「黒い女」を書きたい人のようです。
「誰を殺せば世界が平和になるんでしょうか」とか
「仕方が無い、塀の上でも歩くか(違法行為でもするか)。ま、落ちない自信はありますが」とか
「待て、なんだその身に覚えの無い婚姻届は!マジで訴えるぞ!」「勝てる?」とか。
ちなみに全部同じ漫画のセリフだったりします(一部改変あり)。
最後に。
業者死ね。氏ねじゃなくて死ね。
なんかスレタイと微妙にジャンルが違うような…
まあ今後の展開に期待でいいのかな
で、エロは無いの?
>296
ナイス素直
ナイスクール
エロにも期待しちゃうぜ
別にエロがあろうが無かろうがかまわんが、
男のしゃべり方は標準語の方が分かりやすいと思う。
とりあえずGJなんで続きに期待w
GJ!
ただ実際に関西圏に住んでる身としてはこんな言い方するか?と思うのが多々あった
一人称の文で地の文が標準語なら会話も標準語にするべきだと思うな
やっぱり不評ですか……方言は難しいですね。
それでは次に出すときは標準語に口調変えます。
>>300 関西圏といっても極端な話、京都の北と和歌山の南では全然違いますもんね。
素直クールなキャラってひょっとするとアスペルガー症候群なんじゃないかと思ってみる
よくわかんないけど女のコが関西弁のほうが好き
男が関西弁はなんか嫌
個人的な意見
俺は逆に男だけ関西弁ってのが新しいと思ったが
しかもテンション低めの関西弁だし
おもしろいんじゃね?
素直クールにテンション低く突っ込むも
ツッコミ自体がさえないのであっさり流される関西弁
関西弁ならたいがいの人が言ってる意味は理解できるし
キャラの特徴づけとしては悪くないんじゃないかと
まぁつまりはアレだ。
職人さんGJ! そして頑張れ! ってことだな。
GJ!
ただ、周りが標準語なのにどうして男だけが関西弁使うのか説明がされてなかったから男の最初のセリフで「何で関西弁?」と思った。
あと、文章にしたら純粋な関西弁よりは少しデフォルメしたほうが万人受けしやすいと思う
好きな文体だから次回作にも期待してる。ガンガレ
一人称で台詞が関西弁だから関西弁に親しみない身としては読み辛かったかな
でもさ、保管庫に保管されたときとか考えてみようよ。
いきなり主人公の口調が変わったらおかしくと思わない?
一度関西弁で書いたなら、作品の終わりまで統一すべき。
関西弁はかまわんが途中から理由なく変わるのは簡便な。
しかし内容はGJだぜ!
関西弁をやめなければならないような状況を話の中で作れば無問題
具体的には……やめておこう、これは俺の作品じゃないから
ともあれGJだ!
でも目立つのが嫌だと言っておきながら、学校で一人だけ
関西弁喋ってるのっておかしくない?
何で急に批評厨共がのさばりやがっておられますか?
スレが素直クールなら、住人も素直クールでいってもいいと思うんだ。
どっちでもいいから来るんだ、残らず頂くぞ(*´ρ`*)
GJ!!
イイヨイイヨー
しかし関西弁のせいで男が亀田みたいな奴しか想像できないんだ
GJ
関西弁のイメージがあまり……
いいやつもいるんだけど、ちょっと
おーい。
ここはお前らの関西弁に対する思いを表明するスレじゃないぞー。
感想くらい好きに言わせてくれてもいいじゃない。
>>315 君の考えには目から鱗が落ちる思いだ、流石だな。
あんまりお久しぶりでもないですが、「これからずっと」の人です。こんにちはこんばんはおはようございます。
注意書きが少し長いですがご一読下さい。
あれからいろいろと考えましたが、結局方言のまま行こうと思います。
一度は標準語にしようかと思ったんですが、「一度関西弁でいったんだから最後までやれよ」というご意見もありましたし、
口調を変えることに私自身、かなり抵抗がありましたので。
関西在住の方には「こんな言い方しねーよ」と突っ込みを頂くかもしれませんが、私の言い方はこうなので、生温い目でスルーしてください。
このあとの作中、とあるチーズの名前が出てきますが、あえてどのようなものかは説明していません。
詳しく知りたい人はググって下さい。私は止めません。全ては自己責任です。
それではどうぞ。例のごとくエロ分はありません。
※作中、とあるチーズの名前が出てきますが、詳しく知りたい人はググって下さい。全ては自己責任です。※
安田に告白された翌日から、彼女は休み時間ごとに俺の教室に来るようになった。
教室まで来て何をするかというと、隣に来て俺の顔をずっと眺めているのだ。チャイムが鳴る寸前に「失礼します」と一礼して帰っていく。
何をしてるんだ、という問いに彼女は「先輩の横顔に見とれているんです」とのたまう。しかし至近距離から観察している限り、呆けているようには見えない。
周りの男友達は最初のうちこそ外野から囃し立てていたが、彼女は自分が冷やかされているわけではないから、と全く反応しなかった。
そんな風に安田が照れるそぶりも見せず毎時間毎時間俺の顔を眺めに来るのに飽きてしまったのか、彼女を気にかけるものはいなくなってしまった。
彼女がいてもいなくても(いないことはほとんど無いのだが)、平気でエロ話をしてくる剛の者さえいる。
……お前らにとってこの子はオブジェですか?
逆に段々俺との距離を狭めてきたのは女子だ。
安田は同性にとっても「神聖ニシテ侵スヘカラス」だったらしく、学年が違うということもあり会話をしたことのある人はいなかったようだ。
他のクラスからも見物人が現れては「はじめまして」で会話をスタートさせていく。
一応話しかけられればちゃんと返事はするので、愛玩動物のようにクラスの女子に可愛がられている。
中には彼女と特別に仲良くなりたいと俺に相談してくる女子までいたが、彼氏でもなんでもない俺には分からない、と丁寧に説明した。
明らかに「嘘ついてるんじゃねえよボケ」という目で見られたが知ったこっちゃない。本当のことを言って、なんでそんな目で見られなきゃならないんだ。
今年は暖冬だというが、それでも寒いもんは寒い。身震いして席を立つ。後ろをトコトコと安田がついてきた。
「ついてこんとってくれる?」
「そんなひどいです、私を捨てるんですね。あんなに激しい時間を一緒に過ごしたのに……」
「だから嘘をつくな泣き真似をするなと言うてるやろ?トイレに行くだけやって、もう……」
廊下で事実無根のノロケを垂れ流すな。大体、何故トイレに行くだけでなんでカルガモの親子を演じないといけないのか。
「恋人なら当然じゃないですか。」
「人のモノローグを読みな。それと真顔で嘘をつく癖、何とかしたほうがええで?」
「嘘ではないですよ。脳内妄想を展開してるだけです。」
「……妄想っちゅう自覚があるんやったら、現実世界に展開するのはやめとこな。」
用を足していると隣のクラスで中学3年からの友達、泉田が並んで話しかけてきた。
「うっす。……最近どう?」
「最近面倒臭いのにまとわりつかれてるわ。知っとるやろ?」
「参ってるねえ、相当。」
「少なくとも校内に俺の安息の地は無いなぁ、ここ以外は。」
どこにでも付いてくる彼女だが、流石に男子トイレまでには付いてきたことは無い。
「入ってきたらどうする?」
「……首くくって死んだら、俺の秘蔵本は全部お前にやるわ。」
「マジで!?よーし、じゃあ呼ぶかな。」
「止め。ホンマに入って来かねへん。」
「まさか。」
「付き合うてみたら分かるで。……揚げ足は取らんとってや?」
「チッ、恋人宣言いただいたと思ったのに。」
ファスナーをあげて手洗い場へ向かっても会話は続く。トイレの中は声が響きやすいから少し声を張るだけで十分だ。
「にしてもお前、女嫌いじゃなかったか?中学のときから必要以上の会話、女子としてなかったもんな。」
「外から眺めてるのが一番やとは思うな。変に近寄って肘鉄喰らうよりええやろ?」
「それでも擦り寄っていくのが漢ってもんだろ。」
「自分は少し、懲りたほうがええで。この2年で……5人に玉砕仕掛けたんやったっけ?」
「玉砕って死ぬの前提かよ!それに俺が告白したのは7人だ!」
「響くんやから怒鳴りな。いつの間に数、増やしたんや?」
「やっぱりバレンタインには本命チョコ欲しいから……」
動機が不純すぎる。目的のために手段くらいは選べ。
「そんなんやから彼女出来へんねん。黙っとおったら二枚目やのに、もったいない。」
「男に褒められても嬉しくもなんとも無えよ!」
「はいはい。ほな。」
「おう、お疲れ〜。」
案の定、トイレの戸を引き開けると目の前に安田が立っていた。泉田の後からトイレに入ってくる生徒がいなかったのもこいつのせいだろう。
「揚げ足とっていいですか?」
……トイレの前で聞き耳を立てていた事を怒るべきか、許可を求めるようになっただけ成長したとみるべきか。
「安田さん、毎日毎日放課後遅くまで残って親御さん心配しないの?」
と聞くのはウチの岸本先生。
「大丈夫です。両親にはちゃんと言ってますし、迎えも来てますから。」
と答えるのは部員ではない安田。
「早よ帰れ。」
と言うのは当然俺だ。
休み時間ごとに俺の教室に来るのと同じように、彼女は毎日美術室に通うようになった。
休み時間ならまだ問題無いは無いのだが、絵を集中して仕上げたいときに隣でじぃっと見つめられるのはどうにも具合が悪い。
ただでさえテーマが決まらないから集中できないのに……
「もう完全下校の時間にです。帰り道にはくれぐれも注意するんだよ、特に女の子ね。……男の子はどうでもいいから。」
「センセ、男の部員って俺だけやないですか。」
「うん、君のことを信頼しているから心配していないんだよ。」
「……もう1回、今度は目ぇ合わして言ってもらえます?」
俺とそんな漫才をしながら、先生は戸締まりがあるからと教室内の生徒を追い出した。当たり前のように安田もいる。何故帰らないんだお前は。
他の部員はどこに寄り道していこうか、なんて話をしているが俺には関係無い。
「んじゃ、行こか。」
「はい。どちらまで?」
「迎えの車までに決まっとるやろ、毎度毎度アホ言いな。ホンマにもう……」
「仲がいいね、お二人さん。」
「仲がええように見えるんやったら眼鏡買うたほうがええよ、広江さん。」
ニヤニヤと笑いを浮かべながら我らが部長がやってきた。
「この間コンタクト買ったばっかりだから大丈夫。……ところでどこか寄って行かない?」
「?」
「いつも同じメンバーだと話題がループするのよね。たまにはゲストが必要なのよ。……そんなに睨まないでよ、あなたも来る?」
彼女は後ろのほうを覗いてニッコリする。安田は俺の後ろに立っているので見えないが、あの無表情で睨みつけていたらしい。
「先輩が行くなら。」
「だって。愛されてるね〜。」
「茶化しな。別に行ってもええけど……」
「じゃあ決まりね。おーい、イイジマ参加するって!」
広江は廊下を大分進んでいた他の部員へ走っていく。
「人の話は最後まで聞けよ……俺は行ってもええけど、安田さん、お迎えは?」
「もう今日は電車で帰ると連絡しました。部活中、彼女達のお喋りが聞こえてきていたので。」
「全然、気ぃつけへんかったわ。」
なるほど、部活中に俺を誘うか相談していたのか。部活中に彼女らがうるさいのはいつものことなので聞き流していたようだ。
ただいつも騒がしいとはいっても作品の締め切り前には<近づくな>オーラを出すのは流石だと言えるだろう。
「先輩。」
「なんや後輩。」
「今日は家まで送ってくださいね。私の部屋ならかなりうるさくしても音は漏れませんから、もし<あの>ときの声が大きくても大丈夫ですよ?」
「……グーで殴るよ。」
「SMまで開発……」
全部言い切らせないように、彼女の頭のてっぺんをゴツン(決してコツンでは無い)とやって下足へと歩いていく。
声も無くうずくまっている、珍しいものを見ることが出来た。
「どこに行こうか?」
「せっかくゲストが来てるんだし、ちょっと違うところに行きたいよね。」
「いつものお店じゃ味気ないし……」
「どこか知らない?」
華麗なる4連携で俺に意見を求めてきた。俺の中では完全に彼女達についていく気だったので、裏切られた格好だ。
「自分らのいつも行っとる所で問題無いやろ。」
「いつも通ってるところは、ここ5日、連続で通ってるんだよね。」
「と言われても、俺、普段は牛丼屋だのラーメン屋だのしか使こてへんからなあ。」
考えていると学ランの裾を引っ張られた。いちいち振り向いて確認しなくても安田しかいない。
「最初に連れて行ってもらったあの店はどうでしょうか。」
「でもあそこはな……」
「この時間帯ならこの人数で入っても席はあるでしょう。」
「何〜?二人の世界に入っちゃて、熱いね〜!」
周りが囃したて、部長が割って入る。お前らいい加減にしろ。
「で、そのお店はどんな店なの?」
「駅の反対側でここから遠いんや。」
「私達全然気にしないよ?」
「そうそう、新たなお店を開拓できるし問題無し。」
まだ渋ってる理由が分からないみたいだな。
「……『早い安いうまい』っちゅう標語がある。」
「……それだけ言ってもらえれば、大体どんな店か分かった。」
「味はええんやけどな。」
「分かったんちゃうんかい。」
駅の反対側に向かって女5、男1の集団が移動する。
「分かったけど行かないとは言ってないじゃない。」
「それに私達の中では、もしお金が足りないならその店を紹介した人が不足分を出す、という暗黙のルールが……」
「聞いてへんぞ、そんなこと。」
「大丈夫です。そうなったら私が出します。」
珍しく安田が会話に参加する。だが……
「お前に貸しを作るのは嫌やからええ。それに後輩にメシ代出させるわけにはいかんやろ。」
「!」
「じゃあ奢ってくれるんですか?セ・ン・パ・イ。」
今いる美術部のメンバー4人のうち半分は1年だ。語尾にハートマークを大量にくっつけて媚を売ってくる。
「じゃあ私の分もお願い。実は私財布忘れちゃって……」
「私、家が貧乏でお小遣いもらってないの……」
「お前電車通学やし今日学食で食ってたやろが。そっち、小遣いもらってない奴が6日連続で外食できるかい。」
「「チッ。」」
「舌打ちでユニゾンすな。」
「私には出してくれますよね、彼女なんですから。」
「事実を歪曲するような奴にはビタ一文出す気は無いで。」
どいつもこいつも、俺を怒らせて楽しいか?
翌日が休日ということもあって、店はそこそこ混んでいた。
「いらっしゃいませ。Aセットだな?」
「注文くらいさせてくださいよ。まあその通りですけど。」
「そうか。ところで、いつの間に女囲えるほど金持ちになったんだ?」
「誰が囲って……」
「そうなんです。実は私達、悪い人買いに騙されて……」
「こんな人をご主人様と呼ばないといけないことに……」
「誰がこんな人や。大体、どんな設定やねん。……後ろが詰まってるんやから早よ注文せえよ。」
「じゃ、飯嶋君のツケでぇ〜……」
「自分ら帰れ。」
それだけ言うとメンバーと店長に背を向けた。大所帯だから空いている席を探しに行かないと。
混雑した店内、周囲の白い目に耐え3つのテーブルを繋げて席を確保する。最初に、部長がこっちへやってきた。
トレイの上には一人分のメニューが並んでいる。結構食うんだな、と思っているとニヤリとされた。
「一応言っておくと、君の分は自分で取りに行ってね。」
「何でぇな!?」
「さも私達が取ってくるのが当然のように言わないでくれる?」
「しゃあないな……」
次々と他のメンバーがやってくるが、誰もが自分の分しか持っていない。結局、俺のメニューを持った奴はいなかった。
レジに並んでいたのは安田だけだった。何か面倒臭いメニューでも頼んでいるのか。
「イーイジーマ君。」
「何ですか店長さん、そんな気色悪い声色使こて。」
「気色悪いとは失礼な。ところで、君は料金払わずに飯食う気か?」
忘れてた、道理で誰も俺のトレイを持っていないはずだ。改めて注文し直す。
「承りました。オーダー入りまーす!」
少し待たないといけないな、と考えていると、安田が擦り寄ってきた。
「先輩、私も注文をしたいのですが。」
「まだしてへんかったんかい。」
「私はファストフードは2回目です。注文の仕方がよく分かりません。」
「何事も挑戦やと思うんやけどなあ……まあええわ、俺と同じのんでええか?」
「はい。先輩が好きなものは私も好きですから。」
「ふーん、俺が好きなもんは、ねえ……」
さっきからイジられ続けて少しイライラしていた。Aセットが来るまで少し意地悪をしてやろう。
「俺な、ロックフォールが好きやねん。」
詳しい人じゃないとこんな名前は分からないだろう、と思って種類を挙げてみた。
ちなみにロックフォールというのはブルーチーズの一種で、ゴルゴンゾーラチーズの仲間といえばどんなものか分かるだろう。
念のため言っておくと、ブルーチーズを含めチーズ類が好きなのは本当だ。
「そうなんですか。私も好きですよ。」
全く変わらない顔色に、本当は分かっているんじゃないかと錯覚してしまうが、こいつは元来こういう奴だ。更に探りを入れる。
「あの香りがええよなぁ。癖になる人も多いとかいうし。」
「そうですね。」
当たり障りの無い受け答え。まだ正直に「知りません」と言わないか。それなら……
「安田さんは他にはどんなのが好きなん?」
「……あの、その……」
よし勝った、と勝利を確信したその時、彼女の口から信じられない単語が出てきた。
「カス・マルズが好きなんです。」
唖然としたのはこっちのほうだった。
「以前家族でイタリア巡りの旅行をしたときに食べて。日本のチーズは淡白過ぎます。」
口に出すのもおぞましいアレが好きというのか。
……完敗だ。
オーダーのタイミングが同時なら、トレイを持って席へ戻るのも2人同時になる。
カシャピコーン♪
何か絶望的な電子音が流れたほうへ向き直ると、かしまし娘’sが全員ケイタイを構えてこっちを向いていた。
「うん、激写激写。」
「いい画が撮れたね。」
「いやあ誘った甲斐があった。」
「お二人さん、もう1枚。……いちたすいちは?」
「はいどうぞ。……にー。」
「君ら、その辺にしときや?……自分も『にー』やない!」
「その辺にするのは飯嶋君、君のほうだよ?何しろこっちは現場を押さえた!それに人質もいるのだよ!」
「広江、俺の鞄に何をする気や。中は開けるな、止め、おい!」
悪い笑みを浮かべ、鞄のファスナーに手をかけて脅してくる。敵の思う壺だと分かっていながら逆らえない。
……こうなったら腹をくくるしかないか。
ガンガンと鳴り止まない脳内を治めようと、指で眉間を締め付ける。
「……何が聞きたいんや?」
「ふっふっふ。物分かりが良くて助かるよ。」
どこの悪の組織だ、お前らは。
げっそりとして店を出たのは2時間も後のことだった。何故恋愛の話になると女性というものはこんなに粘着するのか、出来るのか。
「安田さん、何でそんなに元気なんかなぁ?」
2時間も質問攻めにされていながら、疲れた様子もなく足取りはしっかりしている。
「嬉しいからですよ。これでまた一つ外堀が埋まりました。こうした地道な活動がいつか本丸を落とすのです。」
「本丸の目の前でそういうこと言うて、落としにくくなるとは思えへんのかな、君は。」
「思いません。外堀の埋まった本丸がどれだけ抵抗できるとお思いですか?兵糧攻め、力押し、何でもござれ、です。」
「怖いわ、君。」
「ちなみに先輩の側が折れるという『和平』というカードもありますが。」
「それは俺側の手札にないから安心しとき。」
「はい、安心しました。これで心置きなく次のステップへ進めます。」
『次のステップ』の内容が気になったが、聞こえないふりをして駅へ歩いていく。
不意に無機質な電子音が流れた。安田が自分のポケットを探り、携帯電話を取り出した。
「……はい、はい……今学校の近くです。……わかりました、それでは。……先輩、行き先変更です。」
「親御さん、車で迎えに来はるって?」
「はい。残念ながら先輩の役目はそこの駅までになりました。父が会社帰りに寄り道をしてくれるそうです。」
……何が残念なのかは聞かないほうが良さそうだな。斜め上の答えが返ってくるとしか思えない。
「それではここで。」
駅前のロータリーで別れの挨拶をされた。ここで別れていいのか、と聞いたが、すぐに来るから帰っても構わない、と言われた。
しかしここまで来て、この場で置いておくわけにもいかないだろう。
「俺も君のお父さんが来るまで待つわ。自分一人で置いとくわけにいかんやろ。」
「それなら、こうしていていいですか?」
そう言って一歩距離を詰めて俺の手指を握った。拒否する間もなく捕らわれ、逃げられない。
見た目の通り細くしなやかで、柔らかい指だ。だが、血が通っていないかのように白い指は見た目とは違って熱い。
彼女は俺の肩くらいまでしかないほどの小柄だ。覗き込まないと表情は見えない。
覗き込もうと少し腰を屈めると、指を痛いくらいに握り締められた。
「見ないで下さい。……にやけて、変な顔になってますから。」
顔を見られまいと俯き、恥らう。その仕草にクるものもあったが、
「鉄面皮が笑うところなんて是非見てみたいもんやな。」
痛みに顔をしかめながら笑う。
俺の貧困な想像力では彼女の笑顔は想像がつかないが、嫌がるものを無理に、というのはあまり見目麗しいものではない。
顔を覗き込まない代わりに、俺の手を握るままにさせてはやるが、それ以上何かすることも、何かさせてやることも許さない。
絶対に許さない。
「ウチの娘と仲良くやってくれよ。それじゃ。」
意外にも安田父はまともな人だった。いや、娘をこんな性格に育てたのだから本当はまともではないのかもしれないが。
「先輩。」
安田娘が開いた後部座席の窓から呼びかける。
「なんや後輩。」
「また、楽しいことしましょうね。」
「なんでそういう誤解を招く発言をすんねん。……おじさん、何ですかその分かってるよって顔は。ちょっと……」
逃げられた。絶対誤解されてるよな、あの様子だと。こういう部分があの親にしてこの子あり、なのかも知れない。
帰ろう。今日はいろいろありすぎたし、思い出したくないことも思い出してしまった。
……カス・マルズは勘弁してください。
とまあこんなもんです。
>>313 一応主人公が標準語圏で関西弁を使う理由は考えてるんで、あんまり突っ込まないで下さい。
……そこ、後付とか言わない。
あと関西弁(特に大阪弁)が暴力的というイメージを持っている方が多いようですが、個人的には広しm(以下荒れる原因なので削除)
以上です。
GOooooD! Job!
いつくっつきますか?
最近、定期で投下があるから
すごく嬉しい
読むことの出来る幸せ
GJ!!!!
まるで楽毅か陳慶之の如き鮮やかな城攻め、この娘っこ侮れん!
……いや、なんでもない、ぐっじょぶ(*´ρ`*)
方言なんて、神奈川県民の俺には手の出ない要素だなぁ……
GJ!!
もしかして安田家は一家そろって素直クール?
お母さんは確実に素直クールだろうな。
で、親父は主人公を昔の自分と重ね合わせて「そういや昔は俺もこんな風にツンツンしてたな」なんて思ってるかもな。
むしろ娘は父親似で、若作りなお母さんはツンツンデレデレしてたりすると萌える
これからずっとの中の人です。こんにちはこんばんはおはようございます。
続きです。
投稿のテンポが速い?聞こえません。ただ長期の休みがとれてるだけです。……ホントですってば。
いつものことながらエロを期待した人は馬鹿を見ます。
遠くのほうで聞いた事のある声が聞こえる。ああ何か叫んでいるな、と思いながら寝返りを打ち、伸びをして……
「オラ、起きんかい!」
ガラの悪い罵声とともに強烈なレバーブロー一撃。瞬時に肺が圧搾され、呼吸が止まる。
「まだ起きへんのか!早よ起きへんねやったらもう一発行くで!?」
「い……息、出来……っ……!」
鯉のように口を開き、瞼はギュッと締め付けられ、目尻からは涙が一筋流れ落ちる。そんな俺を見て追撃は不要と考えたようだ。ベッドの縁に腰掛ける。
俺のほうはようやく回復した心肺機能をフルに使い抗議の声を上げる。
「無防備な人間に何すんねん、コラ……!」
「ウチのジャンプの着地予定地に『たまたま』アンタがおって、『たまたま』膝で着地しただけやろ。」
それが破壊力抜群のフィニッシュブローの正体か。
寝てたのがベッドじゃなくてコンクリートだったら、今頃間違いなく血反吐を吐いてのた打ち回っていただろう。
「重いんじゃこのボケ!」
「かわいい妹捕まえて重いとはどういうことや!それに、休みやけど部活があるから起こしてくれ、言うたんは自分やろ?文句言いな。」
俺の妹君は朝から本当にテンションが高い。俺にとっては今のところ、デメリットしか無いのだが。
「なんでそんなに人体破壊に精通してるんや、お前は……」
「そりゃ、お前に襲われたときに反撃できるように、に決まってるやんか。『いやーん、お兄ちゃん、ケ・ダ・モ・ノ』。」
無言で頭の上に拳骨を降らせる。さっきまでの元気が一気に削がれた馬鹿を横目に起き上がる。
さあ、静かなうちに着替えて朝飯だ。
表面が黒くなりかけたトーストをかじりながら牛乳を飲む。朝、一番落ち着く瞬間だ。
ピン、ポン♪
不意にチャイムが鳴らされた。もう食べ終えて出るだけだったので、食卓の下に放り込んだ鞄を掴むとドアへ向かう。
朝早くからいったい何なのか。ご苦労なことだ。
「ハイハイ、今出ますよ〜っと。」
念のためにチェーンをかけてから鍵を開け、外を窺うと……
「おはようございます。父に車を回してもらっていますので、早く行きましょう。」
安田がいた。
「早よ行きましょうやない。何で自分、おんねや……」
「父に車を回してもらっていると言いましたが。」
「そういうことやないやろ。……何で俺が学校に行く予定まで知ってるんや?てか何で俺ん家知っとんねん。それにオートロックは……」
「愛の力です。」
頭にきた。
バタン!ガチャリ、ギィ……チェーンを外して外に出る。
「いってきます。」
中に声をかけてドアを閉め、外から鍵をかける。まるでそこに安田がいないように振る舞い、マンションのエレベーターへ向かう。
後ろから話しかけてくるが、徹底的に無視。流石に家にまでやってくる奴にまで相手をしていられない。
エレベーターに同乗したまま1階に下りると、そのままロビーを出て駅へ向かう。駐車場とは反対側に出て行く俺に、慌てて前に回りこむ安田。
「どうしたんですか?」
前に回りこまれては流石に足を止めるしかない。
「何で怒ってるんか分かれへんのか?」
「何が癪に障るのか分かりません。」
「それは人生やり直したほうがええな。」
冷たく突っぱねて横を回りこんで行こうとしたが、サイドステップでまた阻まれる。
「確かにお宅の場所を勝手に調べたのは悪い部分があるかも……」
「『あるかも』やない。……それが理由や。」
数瞬睨み合った末、不意に均衡が破れた。
「いや〜待ってたよ。さ、こっちこっち。」
安田父だ。
後部座席に安田娘と並んで座る。あそこで捕まって乗車拒否をするほど俺は神経が図太くはない。
車内は咳払い一つさえ許されないような静寂に包まれていた。安田娘はいつものように俺の顔を眺めることはせず、俯いている。
いつかの夜、手を繋いだ距離は、今、人1人分離れていた。
学校の前に着き、安田父にお礼を述べてから降車。安田娘も同じように降りる。
安田父が娘に「何時頃迎えに来ようか」と聞いている間に下足へ向かう。なるべく早足で、逃げるように歩いていく。
どうせ行き先は美術室なんだからそんなことをしても無意味なのは分かっているが、今は少しでも彼女から遠ざかりたかった。
彼女には下足で追いつかれた。小さな体を大きく上下させて荒い呼吸を繰り返している。
「はぁ、はぁ、はぁ……歩くの、速いですね……っく、はぁ……」
気が付いたら俺の姿が無いので慌てて走ってきたようだ。
「自分が遅いだけやろ?」
もう上履きに履き替え終えていた俺は素っ気無く応対して美術室に向かう。当然彼女は今下足に付いたばかり、まだ履き替えていない。
俺は自分の下足ロッカーに向かう彼女を尻目に大股で歩いていった。
渡り廊下の途中でまた捕まる。
「さっきからどうして怒っているんですか、教えてください。」
「『教えてくれ』言うたら、何でもかんでも教えてもらえると思たら大間違いやぞ。」
「それでも、教えてください。」
「……気が向いたらな。」
「今、教えてください。」
会話を打ち切ろうとしたが、安田は先へ進もうとする俺の裾を捉えて離さない。
「話したくない、言うたら?」
「それでも話してもらいます。教えていただけなくても調べる方法はいくらでもありますし。」
「そういう手を使うんが逆鱗に触れとると分かれへんかな、自分。」
裾を握ったままの彼女の手を振り払い美術室に向かおうとするが、さらに追いすがって手を握ろうとしてくる。
触れた瞬間、何かのスイッチが入った。思いっきり振り払う。
そろそろ物事には加減というものがあるということを教えてやらないといけない。
「人が嫌や言うてるのんを、何で聞き出そうとすんねん。その辺にしとかな、ホンマに怒るで。」
静かに、一言一言区切って怒りを露にする。
「もう怒っているじゃないですか。」
「怒らしてるんは誰やと思ってんねや!」
思わず声を荒げてしまい、静かな廊下に声が響く。しかし彼女も動じている様子はない。流石は『宇宙人』といったところか。
「教えてください。……お願いします。」
視線を外そうともせず、真っ直ぐに見上げてくる。……これじゃあまるで、俺のほうが子供じゃないか。
「……絶対誰にも言わへんか?」
「約束します。」
「部活が終わったら教えたる。……どうせ今日も俺が帰るまでおるんやろ?」
「はい。」
部活中、安田はいつも通り横顔を眺め続けているし、ほほえましい光景だと眺めている顧問も、ニヤニヤ笑いを浮かべている他の部員もいつもどおりだ。
しかし俺の心象風景は荒れていた。見つめられている上に、この後話すことが頭の上に重くもたげていては集中できるはずもない。
集中できていないことに加えて寝起きが最悪だったことも手伝って、さっきから欠伸が止まらない。何度伸びをしても眠気が取れず、筆も動かない。
そんな俺を見かねてとうとう岸本先生から、
「そんなに眠いんなら休んできなさい」
と『追放命令』を受けた。確かにこのままではほかの部員に迷惑をかけるだけだろう。
「中庭で寝てきます。」
言われたとおりなので大人しく従った。
雲一つ無い、風の弱い日だ。まだ3月の頭だがベンチで居眠りできるほどには暖かい。中庭に設置されたそれに横になる。
瞼越しに感じる陽光がわずらわしくって、そして心地よい。まどろんで意識を失う寸前、揺り起こされた。
「約束です。前倒しですが、教えてください。」
安田か。空気読んでくれ、と思わないでもないが、文句を言わずに起き上がる。
「やっぱり寝かしてくれへんか。……分かりやすう言うとな、マスコミ対策や。むかーしむかしにパパラッチされたことがあってん。」
「どうしてマスコミに?」
聞きにくいことをズバズバ聞いてくる。普通こんな話されたら動揺するだろうに、そんな様子は微塵も感じられない。
逆に俺のほうが面食らって、言葉に詰まってしまう。
「……ちょっと事件起こした親戚がおってな。それで中3のとき、こっちに引っ越してきたんや。」
小学生だった妹や中学生だった俺にも容赦なくカメラやマイクを向けることで商売が成り立つ連中が連日我が家に押しかける。
そんな胡散臭い連中が俺の家の周りにたむろしていれば、周囲との温度差が大きくなるのは当然だ。
「つまり、近所の『暖かい』目に耐え切れんと逃げ出してきたんやな。」
そこまで一息に喋ってもう一度横になろうとする。安田は何も言わずに突っ立っている。
用事は済んだだろ、と俺は手をひらひらさせて彼女を追い払おうとした。すると図々しくもベンチに腰掛けて、自分の膝をバシバシ叩いている。
「何のつもりや?」
「膝枕を知らないんですか?」
「それぐらい知っとるわ。何でそういう流れになるのかが不思議や、ちゅうことやねんけど。」
「枕があったほうが眠りやすいでしょう?」
「合えへん枕やったら無いほうがマシやな。大体何でそうベタベタしたがるんや分からん。うっとうしいねん。」
「好きな人と一緒にいたい、一つになりたいと思うのは不自然ですか?」
「……いや、自然やとは思うけど。でも、片思いのときは控えたほうがええと思うで。」
こう言って膝枕を辞退して横になる。
安田がいるので少し窮屈だが、ベンチで横になれる幅は確保した。自分の腕を頭の下に回し、目を瞑る。再び太陽とそよ風を感じるようにして落ちていく。
目を覚ますと、真ん中よりやや西側に偏った太陽が目に入った。ボーっとした頭でその意味を考える。
マズイ、もう正午を回ったのか。
カチコチに固まった体をほぐそうと、体勢を変えずに背筋だけを突っ張らせる。自然と頭のほうに座っている彼女と目を合わせることになった。
「よく眠れましたか?」
「まだ少し肌寒いし、合えへん枕のお陰で寝覚めは最悪やな。」
いつの間にか俺は膝枕のお世話になっていた。……俺を目覚めさせないように、どうやって頭を持ち上げたんだ?
足で反動をつけて上半身を起こし、俺の頭の下に据えられていた彼女の膝から離れる。勢い良く首をグリグリやると、バキボキと嫌な音がした。
この飄々とした様子では、いくら文句を言っても効果は悲しくなるくらい薄いだろう。
腕時計を見ると1時少し前だ。2時間以上寝ていた計算になる。頭もすっきりしたことだし、続きをやるか。
……こういうエキセントリックな言動に慣れてきた自分が嫌になる。
美術室に戻ると部員の視線が痛い。なんとなく予想は付いていたが一応聞いてみる。
「あんなにお熱いところ見せ付けられちゃ、ねえ?」
広江が周囲に同意を求めると、首を縦に振りだすかしまし娘’s。
「自分らなぁ……」
周囲をねめつけるていると……岸本先生まで頷いていた。先生にまで見られてたのか。
せっかく休日に学校に出てきたのに、今日も工程は進みそうに無い。
「先輩。」
「なんや後輩。」
夕日が窓越しに自己主張を始めた頃、後片付けがあらかた終わった俺に安田が話しかけてきた。
「帰りも一緒ですよね?」
「何でそういう誤解を招く言い方をするんや。……まあ、送ってもらえるんやったらありがたく乗っけてもらうけど。」
「分かりました、連絡しておきます。」
そう言ってケイタイを取り出した。
今考えれば、途中で寄り道してもらうように頼んでいるのだろう、と納得した俺が馬鹿だった。
迎えの車が来てから一言「飯島先輩の家に寄ってくれ」と言えばいいだけの話なのに、わざわざウチに連絡する必要などあるわけも無い。
俺を乗せた車が着いたところは何故か我が家のマンションではなかった。
そして何故か門扉には『安田』と表札が掲げられていた。
言いたいことはただ一つ。次回を待て。たぶん休みの間には次のあげられますから。
エロいのもほんのちょっとだけ期待してくださいな。
請う、ご期待!
GJです!
し、しかしまさか……いきなり彼女の家で色々しちゃうのか? 色々?
素晴らしいですな!!
344 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/03(土) 04:08:33 ID:8ZBLLUJF
GJGJGJ!!!
/おおいに期待(^▽^)
忘れとったY(>_<、)Y
>>344 一応言っとくがここは18歳未満立ち入り禁止だぞ?
>>342 GJ。
素クールって行き過ぎるとただの精神障害者になりかねないな、と思えてしまう。
一回ガツンと言わせた方が今後の為になると思うどうしようもない野暮天の俺がいる。
GJ
男のデレはまだか・・・!
このままでは素直クールがヤンデレになってしまう。いや、素直に待ちますけど。
>>353 今の時期に学生で休みがあるとすると大学生じゃないか?
少なくとも俺の高校時代では期末試験前でひぃひぃ言ってたはずなんだが。
つれない先輩が餌食になる日が待ち遠しい(*´ρ`*)って、それは別スレか。
どこのスレの誤爆ですか?先生怒らないから言ってみなさい。
素直クールというと男口調ばっかで食傷してた。
>>342におおいに期待して待ってる。全裸で。
食傷とか言うなよ(´・ω・`)
男口調も否定はせんが
個人的には現実的に有り得なすぎて萎えなのも確か
というわけでフツーに女口調の素直クールきぼんぬ
なんか今書いてるやつ、素直クールとツンデレの中間みたいな…。
こちらに投下してもいいですか?
どんどんおいで。
355 :
カズ:2007/03/06(火) 23:44:52 ID:88agTtE2
ありがとうございます。
明日、上の名前で投下しようと思います。
>>350 >>342じゃないけどこんな感じ?
《まひろん》
「勇一」
朝の通学中。
坂道の途中で突然、誰かが僕を呼んだ。
女子の良く通る声。
僕を名前で呼ぶようなクラスの女子はいないはずだけど……そう思いながら振り返った。
声と同じ美しい女の子が、いきなり僕の胸に飛び込んできた。
朝に似合う爽やかな香りの髪。長さは肩くらいだ。
僕は焦って真っ赤になってしまう。
周りにいた他の生徒たちが、じろじろと僕たちを見ながら通り過ぎる。恥ずかしい。
一体何が起きてるんだ。
「忘れたの? 酷いよ」
彼女は顔を上げた。
すごく整った顔立ち。大きなアーモンド型の目。鼻筋が通っていて唇の形も良い。
だが、まるで人形のようにその表情は乏しかった。
「真尋よ。上条 真尋(かみじょう まひろ)」
その瞳の光はわずかに僕を責めているように感じた。
真尋……まひろ……?
「あ! おまえ、あのマヒロンか?!」
「その呼び方はやめてよ」
急に声が低くなる。表情の変化がほとんどないだけに、よけい怖い。
「でも、思い出してくれたから良しとするか」
彼女の声の高さが元に戻った。
僕はとりあえず、彼女から離れて歩き出した。
すると、ふいに彼女は僕の腕を取って組んだ。なんて密着。ドキドキする。
「今日から一緒に登校しようよ」
彼女はそう言うとさらに僕の腕をぎゅっと掴む。
「えええ?! それってどどどういう……」
彼女の発言にも慌てたがそれよりも!
こ、このひじに当たる……ほんわほわした感触はッ?!
これがあの伝説に聞く“女子の胸”というものかッ?! そうなのかッ?!
むう、これはけっこう……。
健康な男子にはヤバイですよ? 特に下半身方面で。
僕は腰が引けて、動きがぎくしゃくとなってしまう。
僕は気を紛らわすため話を振った。
「マヒロン……いや真尋、いつ日本に帰って来たんだ」
「ちょっと前よ。わざわざ勇一の学校探したんだから」
え、それって……。
ふいに彼女が僕から離れて目の前に出る。
くるりと振り返ると、わずかに表情が軟らかくなった。
「勇一、昔から大好き。付き合って」
時が止まる。
有名なマンガでそんな力を持った悪役がいたな。
その間に攻撃されるんだ。
やがて時は動き出す。
「ぐはぅ!」
案の定、物凄い量のヒットポイントを奪われた。
周りの生徒達は一気にヒートアップしている。
僕たちをはやし立てたり、呪いの言葉を吐いたり。
ああ、顔が熱い。息が切れる。鼓動が激しい。世界がぐるぐる回る。
「勇一。これ、使って」
真尋がふいにハンカチを差し出した。
「え……」
僕は顔に手をやると、指が真っ赤に染まった。
「な、なんじゃこりゃぁぁ?!」
鼻血だった。
――
以上ー。
素直クールじゃない方が萌えそうな感じだな
男口調なんて、現実的にはボクっ娘よりもツンデレよりも生存率高いと思うがなあ。
バリエーション増えるのはいいけど、否定しないでくれるとありがたい。
素直クールの、クールという面を出すのに、男口調はちょうどいいんだ
素っ気ない感じがするから
女の子口調でやりすぎると、ただべたべた甘える女の子になってしまう
野郎口調(語尾に〜じゃねえか、〜だろ等)の女なら割といる。
僕っ子は著名人(作家の篠原一とか)やらゴスロリ女やらに時々いる。
が、丁寧な青年口調とでもいうべきあの特有のしゃべりを実際に使う女を俺は知らん。
前スレかどっかで女性自衛官がそんな口調だとは聞いたが。
女性自衛官なんてゴスロリ女より棲息率低いだろ。
360はもっと周りにいる現実の女の実態に目を向けたほうがいいよ。
夢を見続けたいなら止めないけどね。
>>362 いわゆる女言葉の素直クールはただの甘えに堕すってのには同感。
>>356くらいならほどほどに抑制されてていいと思う。
365 :
カズ:2007/03/08(木) 23:14:43 ID:0WaR3PE5
タイムリー(?)に、女言葉の素直クールいきます。正直、ツンデレとも取れそうな…。
―――――――――
外はもう薄暗い。
それなのに、パソコンのキーボードを打つ音は一向にやみそうにない。
「坂田君。手、止まってるわよ」
「…はい」
俺、せっかくの休日使って何やってんだ…?
向かいに座る生徒会長は、至って普段通りのクールな面持ち。『お姉さま』だの『学園のマドンナ』だの呼ばれる時の顔だ。
緊急招集、とメールで学校に呼び出されて、早半日。何事かと飛んでくれば、月曜日までに提出の書類の整理、手伝って…。
「会長ー」
「んー?」
一旦作業を止め、窓の外をぼんやり見ながら言った。休みの日まで汗水垂らす運動部の連中の姿も、もうまばらだ。
「なんで、俺しか呼び出さなかったんですか。…矢野とか西川とか、会長が言えば尻尾振って来ますよ」
俺がつるんでる奴らで、会長のことを崇拝してる。
多分、今日のこと(二人きりで仕事)がバレたらリンチ決定だろうな。
すると、キーボードの音が止んだ。
じっと、ノーメイクとな思えない端整な顔で見つめてくる会長。…しかも無表情で。
別にからかうつもりなんか無かったのに。
「いや、そのつまり…こんなに仕事が溜ってるのにですね」
「それは」
言い訳が遮られた。
「坂田君のことが、好きだから」
………………はぁ!!?
ガタン!!
366 :
カズ:2007/03/08(木) 23:38:16 ID:0WaR3PE5
椅子から情けなくころげ落ちてしまった。だが、尚も会長の言葉はつづく。
「好きなひとと、二人きりでいたいっていうのは…当然でしょ?」 その唇から発せられた告白に、頬が熱っていくのを感じる。口をただパクパクさせる事しかできない。
な、なんでいきなりこんな展開に…!?
すると。
「…くっ、…」
く?
「…あはははははっ」
今度は突然、腹を抱えて笑いだした。めまぐるしい状況の変化についていけていない俺は、ただ会長に振り回されていた。
「かっわいー。顔、真っ赤だ」
「…」
別人のような、いじめっこじみた表情。
………この人はっ!!
「はははっ。…あのね、この間坂田君、定例会議忘れてて遅刻したでしょ?あの罰ゲームのつもりで一人にしたの」
目尻の涙を拭いながら言う会長に、頭の血がのぼるのを覚えた。
そりゃ悪かったけどさ。あれは生徒会室の掃除でカタが付いたんじゃないのか!「〜〜〜〜〜っ!職員室行ってきます!」
「え?なにしに?」
芸人でも今時しないようなさっきの自分のリアクションを思い出すと恥ずかしすぎて、ここにはいられなかった。
「書類、届けにっ」
「あ、そう?じゃあこれもお願いね」
「…」
無言で差し出された書類の束を会長の手からひったくる。
そして、逃げるように廊下に飛び出した。
…だから、俺は知らなかったんだ。 その後、会長が一人で深い溜め息をついたことも。
…その手に、緊張の汗をかいていたことも。
終われ。
…以上、スレ汚しすみませんでした。
…ていうかこれ、ツンデレだ…orz
乙
クールっぽいが素直じゃない。
正直スレ違い
スレ違いかもしれんが内容はGJ!
>>364 素直クール特有の口調を否定はせんが、
よく考えたら現実に有り得ない女すぎて萎えたって話。
(そう考えるとなんかツンデレも萎えてきた気がしないでもない)
あと単純に飽きてきたってのもある。
ところで小説や漫画の女口調も実際は有り得ないよねアレ。
語尾に「〜よ」とか「〜だわ」とか付ける女を未だかつて見たことがない。
でもお姉様(お嬢様)口調だけは萎えない!
ああいう口調の女は実在するんだぜ消防ん時見たもん俺。
というわけで365は次こそ素直クールなお姉様を!君はやればできる子だよ!
皆さんこんにちはこんばんはおはようございます。これからずっとの人でございます。
続きです。先に言っておきます。
前回、エロに期待しやがれコノヤローなんて言ってごめんなさい。
※あと、ちょっと暴力表現的なものが入っておりまして、名前欄に「これからずっと(要注意)」と入れますので嫌いな人は弾いて下さい。
※一応つながるように調整しておりますので。
それではどうぞ。
「いらっしゃい、ようこそ我が家へ。」
「さあ、入ってください。」
「……お邪魔します。」
言葉だけでなく、体中から棘を発散しながら玄関口に上がる。しかし安田父とその娘にはまったく効果を示していないようだ。
学校から家まで送ってくれると思っていた俺が着いた場所は安田一家のお宅だった。
見たことの無い地名が目の前を通過していくことに気が付いたときには、既に全ては遅かったのだ。
ここまで連れてこられて、反抗する気になれる人間がいるだろうか?いやいない(反語)。
「いらっしゃい、お待ちしてましたよ。」
安田母が挨拶しにやってきた。娘に似て小柄で、若い頃はさぞやもてたに違いないという顔つきをしている。
居間に一歩入ると香ばしい香りが漂ってきた。
「急にウチに来ると聞いたときは僕、驚いちゃってねえ。」
安田父はそう言って笑いながら、自分の前に据えられたグラスにウイスキーでオン・ザ・ロックを作り、一気にあおった。
和をメインにした夕食をいただき、今は食後に1杯引っ掛けているという状況だ。ちなみに俺は、未成年だから、とアルコールは固辞している。
「……イ、…と…目。」
横で安田娘が何か呟いたがよく聞こえなかった。聞こえないほうが良かったのかもしれない、と聞き流してしまう。
つまみに饗されたチーズを勧められたのでひとかけら頂く。発酵が進んでいてアンモニアも強いが、旨味も強い。相当高いものだろう。
「この子から、色々うわさは聞いてるよ……」
恐らく初日に大学生の田辺さんに展開された話題と同じことが繰り返されるだろうから、適当に聞き流すことにする。
改めて居間の中を見回す。特別飾っている部屋というわけではないが、大型の液晶テレビが据えられている。
シンプルな調度品もきっと値の張るものばかりだろう、普段見慣れている材質のものは見当たらない。
『俺と安田のエピソード』をあらかた語り終えた安田父は、酒飲みにありがちな質問大会を始めた。
家に拉致……じゃなくて招待してもらって、餌付け……夕食までご馳走になった手前「ええ加減にしとけよお前」とキレることも出来ない。
しかし確実に限界は近づいていた。
「そんなに苛めたらかわいそうでしょう。」
追加のつまみとグラスを1つ載せたトレイを持って安田母が現れた。そのまま場に加わる。
体が小さいと回りが早くて、と言いながらビンから注いだ酒をストレートで飲み干す。
……あんた、弱いんじゃないの?
「照れるさまが出会った頃の君のようでかわいかったからね、ついついおもちゃにしてしまったんだ。」
「私、そんなに照れていたかしら。」
「君に告白したとき、僕はアッパーカットを食らったな。」
思わず目を剥く。どんな状況だ。
「確かにしたけど、あんな大勢の前で告白されたら誰だって怒るじゃない。」
……安田母に同情した。恐らく俺と同じような状況になったのだろう。どうやら安田娘の性格は父親譲りらしい。
「ハイ、……たり……。リー……」
また安田娘がノイズを発したが、恐ろしくて聞き返すことができない。
「ただいまです〜。」
田辺さんが帰ってきた。居間に入ってきた彼はソファに座る俺を見て驚いたようだったが、軽く会釈してきた。俺も会釈を返す。
「食事は済ませてきたのかい?」
「ええ、友達と軽く。」
「じゃあ飲もうか。」
安田母はグラスを、安田父は新たなボトルを取りに台所へ向かい、田辺さんは間借りしている部屋へ荷物を置きに行った。
自然、居間には俺と安田娘が残される。
1人分の隙間を詰め寄ってきて、指と指を絡めてくる。親の手前我慢していた、と言いたげにベタベタと張り付いてくる。
吐息からかすかにアルコールを感知した。そういえば絡められた指が熱い。
「飲んどるな、自分。」
「酒宴で飲まないほうが空気が読めない人ですよ?」
小首をかしげてそう言い放つ。潤んだ瞳に見上げられてやられそうになるが、グッと踏ん張って話題を変えた。
……いつもどおりの鉄面皮じゃなかったら負けてたかもな、俺。
「……ところでさっきから何を呟いてるんや?ほら、『ハイ、なんちゃら〜』ってやつ。」
「すぐに分かりますよ。もうリーチかかってますから。」
俺は今、間違いなく地雷を踏んでいるようだ。足を離した瞬間、ドカンといきそうな匂いがプンプンする。
田辺さんも戻ってきて酒宴は再開された。安田夫妻と違い田辺さんはあまり強くないらしく、グラスに注がれたカラメル色の液体をチビチビやっている。
「ハイ、ビンゴ〜。」
……ノイズが聞こえたが聞こえない。聞こえないったら聞こえない!
酒宴は荒れることもなくお開きになった。田辺さんが自室へ引き返し、次に安田夫妻が互いの体を気遣いながら寝室へ戻っていく。
さて俺もそろそろお暇しようか、と思ったが、1つの事実に気が付いた。気が付くのが遅すぎたくらい重要な案件だ。
俺が事実に気が付き硬直したのと同時に、背後に妖しい気配を感じる。気配を発している<それ>は耳元でもう一度呟いた。
「ビンゴ、です。私、一人っ子ですから。」
この家にいる運転免許持ち(であろう人物も)は全員酩酊している。つまり『運転に著しく支障をきたす』状態だ。
ついでに言うと、俺はここの住所が分からない上に安田は教えてくれないだろうから、親に救助を求めることは出来ない。
出来ることは「今夜は友達の家に泊まる」と家族に伝えることだけだ。
完全に嵌められた。安田夫妻や田辺さんまでも巻き込んだ壮大な罠だ。
居間に俺たち2人だけになると、安田は普段のきびきびとした挙動からは考えられない緩慢な動作で俺にしなだれかかってくる。
猫のようにしなやかに、妖艶に擦り寄って頬ずりをしてくる。体を密着させて体の柔らかさを強調してくる。
俺も男だ。ここまでされて興奮していないと言えば嘘になる。しかしこちらにも譲れない一線というものがあるのだ。
彼女の侵攻を拒否しようと強張った体が2人分の体重を支えきれずに、俺がソファに押し倒される格好になる。
「先輩。」
「な、何や、後輩……」
「このまま襲いたいのはヤマヤマなんですが……」
酒臭い息を吐き出し、至近距離で「襲う」なんてとんでもない単語を吐いてくれる。
「すみません、酔っ払って全身に力が入りません。部屋まで運んでくれませんか?」
……助かった。
彼女を背負って2階の彼女の部屋に上がっていく。彼女は意外と軽かったが、それでも文化系部活所属の俺には重労働だ。
彼女の部屋の前に到着してドアを開ける。女性の部屋に入った経験なんてそんなに無いが、目の前に広がる光景は異質と呼べるものだった。
彼女の性格から女の子らしい装飾は皆無だろうと思っていたが、そんな予想の斜め上を行く部屋だった。
パステルカラーを基調とした調度品の数々、フリフリのレースで飾られたカーテン、数える機がうせるほどのぬいぐるみが並んでいる。
一瞬別世界に迷い込んだ錯覚を覚え、部屋に入る一歩が暫く踏み出せなかった。背中の酔っ払いがずり落ちそうになって、慌てて前へ踏み出す。
「驚いたでしょう?母がカワイイもの好きで、生まれたときから囲まれていたんです。私も今ではこうでないと落ち着かなくって。」
毛足の長いパステルピンクの絨毯(……)を踏みしめて、純白のシーツの張られたベッドに背中のブツを下ろした。
「ありがとうございます。……手を、握っていてもらえますか?」
「寝るまでやったらな。」
苦しそうに口を開けて呼吸が浅くなっている姿に同情して右手を差し出すと、そのままベッドに引き込まれた。
意外なタイミングで、意外に強い力で引き込まれたので抵抗する暇もなく倒れこんだ。咄嗟に腕を突き立てる暇も無く、彼女を押しつぶしてしまう。
そのまま腰に手を回され、逃げられない。このまま彼女の上に乗っかっているのは苦しいだろうから、と横へ体を避けた。
セミダブルサイズのベッドに2人が向き合って寝転がる。
「……自分、酔ったふりしとったんか。」
「外堀は埋まりました。後は……力押しです。」
彼女の顔を至近距離で眺めたことは何度かあったが、表情が変わらないくせに今までで一番性を感じる。思わず唾を飲み込み、喉がごくりと音を立てた。
「私も初めてですが……そんなに緊張しなくていいと思います。こういうことは、為せば成るものだと思いますから。」
そう言って俺のブレザーのボタンに手を掛け、一つ一つ外していく。その緩慢な動作を振り払うことも出来ず、目が離せない。
俺の上着を脱がし終え、今度は自分のブレザーを脱ぎだす。恥じる様子も無いまま……あっという間に下着姿になってしまった。
声1つ出せないくらい固まっているくせに、小柄な体に見合った凹凸具合だな、と冷静に分析してしまう。
「ここからは……」
安田は俺の手をとって、自分の背中へ誘導してくる。ホックを外してくれ、と言いたいのだろう。
ここでようやく、あまりの興奮と緊張感に固まっていた体が動き出した。起き上がり、体を離す。ベッドの縁に座って背を向けた。
「どうして……?」
どうしてもくそも無い。
「出来るか、アホ。」
安田とはまだお付き合いしているわけでさえないのだ。第一、出来てしまったら洒落にならないということを理解しているのか。
「ここまで来て……しないでいられますか?」
衣擦れの音がして、それから抱きつかれた。Yシャツ1枚を挟んで肌と肌とが触れ合い、乳首の大きさまではっきりと感じられるほど押し付けてくる。
「しましょう。私はもう我慢できません。……ほら、こんなに。」
俺の腕を取って、自分の下へ手を持っていく安田。そこは下着の上からでも分かるほど潤っている。
意を決して、俺は捕まっている腕を引き抜いて180度向き直った。
「自分な、子供が出来るって意味分かってるんか?」
「2人の愛の結晶が出来る、という意味です。」
「分かってないな。子供は産むだけやない、独り立ちするまで育てないかんのやぞ。」
「構いません。」
「『構わない』程度の覚悟で子育てできると思っとるわけか。ハッ、そんな奴と、尚更ヤれへんわ。」
思わず嘲笑。後先をまったく考えていないのが丸分かりだ。
「それに子供を育てるには相応の銭が必要なことも分かってるんか?今、俺らが通ってる学校かてタダとちゃうんやぞ。」
「……」
「自分が食う分も稼げんようなお子ちゃまが子育てするんか。……どうやねん。」
「……それでも、先輩との子供が欲しいです。」
「そうか。ほんなら……我慢せえよ。」
突き飛ばすようにして押し倒す。乱暴に身体をぶつけた。
「ゴメンな……こうせな気分が出えへんねん。」
両方の手首を左手でがっちりホールドし、噛み付くように乳房をまさぐり、握りつぶす。
安田は少し眉根に皺が寄せるがまだ何も言わない。
下着の上からクリトリスに指を1本あてがい、力加減もせずにグリグリと押しつぶし捏ねる。
多少濡れているとはいえかなり痛いらしく、大きく息を吸い込み声を上げようとする。だがその瞬間、腕の戒めを解いた左手で口を塞いで叫ばせない。
「まだ続けるんか?」
声を出せないので、頷く安田。
「そんなに震えとるのに?」
先程まで頭の上で縛られていた両腕は小刻みに震えている。普段変わらない表情も引きつっているくらいだ、相当の恐怖を感じているのだろう。
ここまで脅せば十分か。
「嫌なんやろ。嫌なら……態度で示さんと分かれへんで。」
ようやく動いた彼女がとった行動は、俺の排除だった。
拒否された。反対に下から突き飛ばされて、俺のほうが安堵した。
レイプまがいの行為さえ受け入れられたらどうしようかと思っていたが、流石に自分の身体を大事にしたか。
安田の顔は一瞬泣きそうな表情を浮かべたが、すぐに無表情に戻った。しかし無意識に震える身体を御しきれてはいない。
「無理してもええことなんか無いって分かったやろ。……ゴメンな。下のソファ、借りてるで。」
俺は上着を持って立ち上がり、部屋を出た。
閉じたドアの向こうからすすり泣く声が聞こえてきたのは、きっと気のせいじゃない。そう信じたい。
適度に柔らかなソファのおかげで、家のベッドより心地よい寝覚めを迎えた。学生服のまま寝たので多少の肩こりは残ってはいるが。
まだ真っ暗な窓を見るに、この家で一番早く起きたのは俺のようだ。大きく伸びをして立ち上がる。昨日の酒宴の後片付けでもするか。
家の人々を起こさないようなるべく音を立てずに掃除を行い、テーブルの上がすっかりきれいになった頃、居間の入り口に誰かが立った。
「おはようご……」
安田夫妻のどちらかと思い振り向くと、安田娘が立っていた。
ソファにどっかと座り会話をどう切り出そうかと考えていると、安田が横に座った。
「昨日はゴメン。」
彼女は何も言わない。さらに言葉を継ぐ。
「怖い思いさせて悪かった。明らかにやりすぎやった。」
弁解できるなんてこれっぽっちも無かったから、どうなじられても文句は言えないと考えていた。
それだけのことを俺はしてしまったのだ。
「どう言われてもしゃあない、よな。」
先程から一言も喋らない彼女の顔を窺うように覗き込む。
「ごめんなさい、は、私のほうが言わないといけないです。」
唐突に話し始めた。
「何で?俺のほうが……」
「好きだから!一つになれればそれでいいと考えていました。……浅はかでした。」
「そういうことは1回失敗せえへんと分かれへんもんやろ。……偉そうに言うた俺も親父の受け売りやし。」
浅はかなのは俺も同じだ。昨日の行為は絶対にしてはいけないことだった。しかし斜め上の発言が俺の思考を叩いて砕く。
「だから昨日一晩考えて、でもやっぱり先輩と子作りをしたいです。」
「今、自分で『浅はか』言うたやないか!」
「駄目ですか?」
「アカンに決まっとるやろ。理解してへんで、自分。」
普段のやり取りになりつつある漫才をしながら、内心俺の所業に怒っている様子が無いことに安堵していた。
別に付き合っているわけではないが、嫌われるより好かれたほうが気分がいいに決まっている。
「ごめんね、昨日はすぐ寝ちゃって。送っていかなきゃ行かなかったのに。」
と安田父。この人が全ての元凶だが、笑顔で応対する。
「いえいえ、別に気にしてないですから。ただ連絡したとはいえ親にめちゃくちゃ怒られる、思いますけど。」
「親御さんに謝らないといけないわね。私もお宅に伺うわ。」
と安田母。しかしこの時間ではもう両親は仕事に出ているだろう。
「親に僕はあんまり大事にされてないですから。」
「僕が送っていけばよかったのにね。」
と田辺氏。しかし巻き込まれた(らしい)人まで責めることはしない。
「田辺さんは知らへんかったですから、しゃあないですよ。……知らんかったんですよね?」
俺の言葉に固まった田辺氏を見て確信した。やっぱり家族ぐるみの罠だったな。何てことするんだ、この家族。
「先輩。」
言うまでもなく安田娘だ。罠に確信を持った今、ジト目にならざるを得ない。
「……何や後輩。」
「そんな昨日みたいな怖い顔しないでください。……どうかしましたか?」
「ちょっと眩暈がな……」
弱みを与えてしまった。やりすぎだったと改めて反省した。
とまあ以上です。
本番まであと……3回で行けばいいほうかな?
>>367 逆に考えるんだ
「これから素直になっていく」と考えるんだ
……やっぱりツンデレだな
>>366 今度は素直クールで頼む。期待期待。
>>376 感動した!!!
いやいや、ていうかむしろ男のほうがツンデレだなおい
本番までワクテカしながら待ってますよ!
読みたいものがあるなら
「こういうものが読みたい」ってそれだけ書けば十分でしょうに。
「これは読みたくない」って書いても他に読みたい人が
いるかもしれないし。
好みに合わなければスルーすればいいだけだし、
否定的なことをわざわざ書いても
お互いにいいことないと思うんだけど。
禿同
素直クールはフィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません
381 :
カズ:2007/03/09(金) 12:56:35 ID:FA55taIY
確にスレ違いだったかもしれませんね。
次、会長を素直クールにしたやつを投下したいと思います。
>>381 スレ違いでも面白かったですよ。みんな言ってるけど次作に期待。
萎えるとか飽きたとかは禁句中の禁句。これから投下する人を萎縮させてどうするのか。
>>376 GJ
でも、主人公怖いよ
ハッピーエンドになることを期待していいですか?
>>383 同意。
萎えるとか飽きたとかは個人的な問題で、本人以外に関係ないんだから
書き込まなきゃいいのに。
>>369 てか、こういうやつてわざわざこのスレになにしにきてるんだ?
飽きたならこなきゃいいだけだろ?
萌えを探しに来てるんだよ
萌えを探しに来た人が
他の人の萌えを否定しちゃいけないよ
389 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 16:28:23 ID:B7W2hSEy
期待age
>>296 GJ
こんなところで王様の仕立て屋ネタをみるとはw
「…………」
「…………浩毅」
「北国か高山にでも行け」
「旅行? 泊りがけ?」
「平日だし、俺は学校。お前だけご招待だ。交通費は自前な」
「近場でいいから、浩毅がいないとヤダ」
「そか。光栄だ」
「こんな日だし、浩毅が欲しいな」
「オヤジ的下ネタは、お兄さん嫌いです」
「…………」
「今、舌打ちしたな? 聞こえないように、小さくしたね?」
「ウウン。ゼンゼン」
「ハハハハ。フダンムクチデモ、チャントヨクヨウツケテルクセニ」
「じゃあウェディングドレス」
「じゃあって、おい。うち、神社だぞ」
「やっぱり白無垢?」
「だからさ……第一、法律上、まだ無理だろ」
「…………」
「…………」
「浩毅?」
「みなまで言うな。いやもう、ホント勘弁してくれ」
「――で?」
「先月も赤っ恥かかされたし、無しってことでチャラに出来ないかな?」
「駄目」
「ぶっちゃけると、思いっ切り忘れちまってたんだが」
「ふぅん」
「わかった、わかったよ。放課後デートすりゃいいんだろ」
「へぇ」
「今日はサービス。お代は全部こっち持ち!」
「それで?」
「……その後、我が家にお招きさせていただきます」
「うん!」
イベントスルーしかけたので即興さ。
すまんね、
>>390。エレガンテにはいかなかったぜ。
GJw
問答の最初は白にかけて「雪が見たい」とでも言われたのかね?
394 :
名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 23:32:59 ID:lfSyiCXt
期待age
保守
オリのつもりで書いていたら版権っぽくなってしまったので、開き直ってオリキャラ×版権で投下しようと思うのだがかまわないだろうか?
ヤッチマイナー
保守
>>396 全裸に五本指ソックスでwktkしながらまってるぜ!!
正直五本指ソックスは、親父が常用してるもんだから、
俺自身が履き始めるまでオッサン専用だと思ってた。
しかし、いざ履いてみると夏場足のムレムレが見事に解消。
今では手放せない。
よしワクテカ
保守
保守
そういえば今日はエイプリルフールだったのね。
保守
綾波レイのような包帯にまみれたキャラが見たい
漫画版の流竜馬とかか
やつは熱血過ぎるだろうwww
OK、流れを理解した。
四月中に何とかしてみようじゃないか。
虚無らないことだけ祈っててくれ。
>OK、流れを理解した。
……え?
最後は、宇宙の果てでドグラとかと戦う素直クールっ娘なんだよ、きっと。
最大のピンチ時に時間が物語の最初に戻って、
それまでの冒険のことはすべて「なかったこと」になるという
あのパターンかもしれない
視界のすべて、いや、宇宙すべてを覆いつくさんとする敵・ドグラ。
宇宙船の甲板に出て、その絶望的な光景を眺める俺、それに、彼女。
これからの最終決戦を前に、俺の身体を震えが包む。カッコ悪いけど、正直ビビってる。
「なぁ、大切な話があるのだが」
戦乙姫の装束をまとった彼女が、俺のわずか半歩前、俺に背を向けて立っている。
その彼女が、俺の方を振り向くことなく、そういってきた。
「・・・なんだ? もしかして、怖いのか?」
後ろを振り返ることの許されない戦いの中、ただがむしゃらに突っ走って、ここまで来た俺達。
確かに、いまここに来て何か特別に思うことがあってもおかしくない。
「いや、そういう話ではない」
そして彼女、俺の方を振り返って。
「君が好きだ。愛している」
そんなことを。
「・・・・・・あのなぁ、そんなことを」
俺が少し呆れた溜め息と共に返す。
そんなこと、いつもいつも言ってるじゃないか。
俺が照れくさくて、その言葉に答えないまま、それでも毎日毎日、何度も何度も。
なんでこの期に及んで。
そんなに俺の答えが聞きたいのか。
わかったよ、これが最後になるかもしれないんだ、言ってやるよ、俺もお前のことが・・・
「いや、言わないでいい」
と、俺が口を開くのを彼女は言葉でとどめた。
「これを言うのが私の日課だからな。毎日朝昼晩と、君にこれを言わなければ、私の気が済まないのだ」
そういって彼女、また視線を宇宙の果てに向ける。そして背中越しに言葉を続けてくる。
「だから君は、いつも通り、私の言葉に答えてくれなくても、いい」
「それが私たちの、日常なのだから」
・・・確かにそうだな。
へへっ、俺ってヤツは、ビビってナーバスになっちまってるらしい。
わざわざこんなことで、死亡フラグ立ててる場合じゃねーぜ。
いっちょ、気合いを入れて戦ってやるか!
コイツの、この言葉を明日も、これからもずっと聞いていたいからな。
>>411 とまぁ、そんな夢を毎日毎日、何度も何度も見てる俺。
ちょっとは精神病のたぐいを疑った方がいいのかもしれない。
夢で早起きばっかりしてる俺は、ここのところ毎日健全な登校を続けている。
そしていつも、夢のことを思い返す。
宇宙を無に帰そうとする存在と、命がけで戦うスペースオペラの主人公が俺。
そして俺の傍らにいて、毎日毎日愛を囁き続けてくる、無愛想だが美しい姫。
漫然と学校に通ってるだけの退屈な学生やってる俺からすりゃ、まさに夢物語。
はー、と大きな溜め息を吐いて、俺はとぼとぼと学校へと足を向ける。
「やっと、見つけたぞ」
そんな声。
俺の背後からのその声に、俺は振り向いた。
するとそこには、見慣れぬ学生服の、きれいな女の子。
きれいだけどどことなく無愛想で、なんて言うかクールビューティー。
・・・あれ? なんか、この子、どこかで見覚えが・・・
俺がそんな既視感のようなものにとらわれていると、彼女は再び口を開いた。
「君が好きだ。愛している」
石川先生の「魔界転生」が俺のバイブルです。
萌えた
と同時に、
石川漫画とダイナミック漫画を読みふけったあの頃を思い出した
このスレにこんなに石川賢読者がいたことが驚きだw
石川クールと言うべきかダイナミッククールと言うべきか……
とにかくグッジョブ。個人的にはやはりゲッターが一番好き
OVA真ゲのゴウは素直クールに分類されるのではないか
419 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 22:28:38 ID:n+4iudnq
そんな流れになるから、うっかり「隼人の校しゃ」のパロを書いてしまったじゃないか。
コンセプトは隼人がもしも女で、それも竜馬へ素直クールだったら?
改変ネタと原作のグロ描写が苦手な人は避けるべし。
規則的に住宅が立ち並ぶ街に、ざんざんと雨が降り盛る。それは天からの恵みの雨というよりも、これから起こる不吉な事を予告するかのようなものだった。
その不気味な雨音は、時を刻むごとに激しくなってい街の騒音すらもかき消していく。その雨音に導かれるかのようにして街をゆけばたどり着いた、とある学園。
そこには半壊して撤去すらされずに放置された、旧校舎があった。不穏な空気が流れてくる……。
中に入り廊下を進めば、まるで怪談にでも出てきそうなほどに、おどろおどろしく朽ちた空間が広がっていた。
まるで生気を感じさせない旧校舎の中、ぼんやりと明かりの灯る、がれきまみれの教室がひとつ。そこからは人の気配がしていた、話声が聞こえる。
「いいか、これが大臣の乗っている車だ。研究所の手前には小さな橋がある」
すると、朽ちた教室の中に異様な雰囲気をもった学生たちが、模型の車を中心になにか秘密めいた話題に興じていた。
誰もが学生とは思えぬ様な殺気を漂わせており、それは彼らがまともな人間では無い事を物語る。その一人がつづけた。
「あらかじめ、橋を車二台分の重みには耐えられない様にしてある。次に大臣の車が……」
といって、模型の車を橋に見立てた木のトレイに走らせると、空いたでその支えをポキリと折る。
「まず護衛の車が来る。次に大臣の車が……橋は支えきれずに落ちる。そうしたら、まずこちら側から大臣の車を襲う」
「そうしたら?」
「大臣は車から出るだろう、そうしたら後はこちらの丘から撃つ」
そういって、襲撃の様子をシミュレートしていく学生たち。彼らはいわゆる学生闘争に明け暮れる、過激な思想的暴力集団だった。
詳細については後述するが、ともかく彼らの行おうとしている事は、青少年期特有の自己顕示欲の延長線上にある、ファッションとしての学生闘争などではない。
テロリストそのものと言っていいレベルの闘争を繰り広げる、若い思想犯たちだった。
それでも政府要人の殺害を企てたのは初めてであったようで、模型を中心に集う彼らのあいだにしばし沈黙がおとずれる……。
そして、やがてそれに耐え切れなくなった一人が「本当に大臣を殺るつもりなのか」と、口を割ると、
それをきっかけに、誰しもが己が犯そうとしている罪から目をそむけるかのように口々に思いのたけを吐き出していく。
「ああ……俺達が計画してやらなかったことは、ひとつもない」
「全ては隼奈(はやな)の計画通り……ぬかりはないはずだ」
「しかし。やるにしても、こりゃまわりくどいぜ、橋に爆弾をしかけりゃ良いじゃないか」
「われわれの名を売るためだ」
「少し、手の込んだ殺り方の方がマスコミが記事にする時にいい……そのほうが、われわれの名が広まるのだ」
それぞれが勝手に囃し立てていく。彼らがいくら過激といっても、かつての忍びのものや軍隊の特殊部隊に所属する様な、特別な人間ではないのだ。
ゆえに感じる恐怖を、あえて物騒な言葉を並べ立てる事で押し隠そうとする。
だが、その中にたった一人、真に恐怖などひとかけらも感じていなさそうに黙っていた女学生が、ふっと顔をあげる。
その背は他の男学生たちよりも頭ひとつ分高く、すらりとしたプロボーションに横一列にそろえた前髪が特徴のロングヘアを下げた頭には、切れ長の眼が美しく映える。
紺と白を基調としたセーラー服に、足首近くまで伸びた同じく紺のロングスカートを少しの乱れもなく着用した彼女は、胸の下で腕を組みながら一人を睨み、
「西田。大臣が早乙女研究所に来るというのは、本当だろうな?」
と、聞くだけで氷の刃を首に押し付けられた様な感覚を覚える声で、西田と呼ばれた学生に問う。どうやら、この女学生がこの集団の頭であるようだった。
突然話をふられた西田は、幾分か緊張した様子で答える。
「その事は秘密だが本当ですよ、県会議員の親父が言ってましたから……偉い人が、毎晩集まって相談してます」
その発言に隼奈は答えず、しかし口元をわずかに吊り上げると「良し」の意を西田に伝える。その様子に他の学生達も安心したのか、いよいよ殺気だって俺がやる、俺がやると武器を手に取ろうとしていく。
そんな中だった。それまで影で小さくなっていた、二人の年少の学生が血気にはやって興奮する連中を尻目に、そろり、そろりと朽ちた教室を抜け出そうとし始める。明らかに怯えている。
大臣を殺害するという一大作戦に、誰もがそんな脱出者の事に気を留められなかったが、しかし隼奈だけがぴっと感づくと、彼らの行く手を遮るかのようにして回り込む。まるでヒョウの様な速さだ。
そして、二人の首根っこを捕まえると、その片方に向かって鼻がぶつかりそうなほどに顔を接近させると、不敵に笑って「どこへいく?}と甘い息を吐きかける。
そして仏像の様な微笑を浮かべる隼奈に、しかしその表情の真の意味を悟っている学生は、がたがたと震えながら捕まれた首から必死に許しを乞う言葉を吐く。
「ゆるして下さい、神さん。大臣暗殺なんて……僕たちはまだ高校生です」
すると、その言葉を聞くやいなや、隼奈は一瞬、首から手を離したと思うと鋭利な刃物のごとく伸びた両手にして十対の爪を、二人の学生の顔面に素早く打ち込む。
めり、と嫌な音がして、捕食される動物の様な悲鳴が漏れる。
その仕打ちに配下の学生の一人が「彼らはまだ新入生です、我々について知識がなかった」と助けの船を出そうとしたが、隼奈はちらりと目をくれるだけで、相手にしない。
そして、やはり仏像の様な微笑を浮かべたままの隼奈は独り言を喋るかのように語り始めた……。
「遊びで私達のグループに参加したのか……革命を、ゲームだと思っていたか?」
この時はじめて、隼奈の口から「ククッ」と含んだ笑いが漏れる。その禍々しい雰囲気に、本能的な危機を感じた二人がなりふり構わず叫び出す。
「わあっ! 許してくださいっ、僕たちは革命という言葉のかっこよさだけでついてきたんです」
「お願いです……ああ、許してください」
必死の命乞いをする二人。それもそうであろう、次には大臣を殺すと企てている連中が、秘密を知って逃げ出そうとする子供を見逃すはずがない。
隼奈はその通りに、最初は微笑が冷徹な笑みに、そしてだんだんとそれが般若の様な恐ろしい形相に変わりながら語気を荒げていく。
「ふん、許せだと? 私達の掟を破り……あまつさえその秘密を知って……許せると思うかぁ!! やあッ!!」
掛け声一閃、隼奈は右手で突き刺していた顔面をそのままズバッと力任せに引きずりおろす。
一瞬にして顔の皮を剥がされた学生がひときわ大きな悲鳴をあげて崩れると、その反動で左手の学生が抜け落ちる。
錯乱した彼は、その隙に角材を拾って隼奈に襲い掛かろうとするがムダな事だった。なんと片手で振るわれる角材を受け止めた隼奈は、そのままへし折ってしまう。
そして、あまりの光景に動けなくなる彼に、隼奈の無慈悲な止めがさされる。
「目だ!!」
刃物のような爪が両目を潰し、
「耳だ!!」
耳を削ぎ落とし、
「鼻だ!!」
鼻を引き千切る……その全ての行為に、鮮血がほとばしる。
読んで字のごとく「処刑」された彼は、この世のものとは思えぬような絶叫を上げて転げまわり続ける。
それにツバを吐きかける隼奈は爪に塗れた血液をぺろりと舐め取ると、にやぁっと笑うのだった……。
「続けろ。この隼奈の校しゃを汚す者など、一人とて許すわけにはいかない。私達の、掟の厳しさを見せるんだ。ふふふ……」
ざんざんと降り続く雨の中に、人間の悲鳴がまざり聞こえていた……。
・
・
・
おかしな形の傘を手に、ぼろぼろの学生服をまとって路地を行く少年がひとり。彼は、とぼとぼと歩きながら、物思いにふけっていた。
(隼奈の校舎――聞いた事があるか? 各地で学生運動がさかんだが……たいていは学園側に押さえられるものだ。しかし、この学園だけは違う。
この神隼奈という女が率いるグループは、強い団結力と素早い行動力で学園側をきりきりまいさせている)
(神隼奈……噂に聞いた事はあるな)
(そうだ。小学校ではIQ三〇〇の天才と騒がれ、中学では体操で鍛えスーパーレディと言われた女だ)
(へぇ)
(多くの犠牲のもと、この女は校舎ひとつを奪い取るまで至った……どうじゃ竜馬。ゲッターを動かすに相応しい人間だと思わんか!? ふふふ……お前にこいつが連れてこられるかな)
(上等じゃねえか……ふふ、わかった)
回想を終えた男、すなわち流竜馬は隼奈の巣食う魔の学園へとたどり着く。
幼少よりひたすらに強い相手を倒すために空手を鍛えてきた竜馬は、ゲッターロボのパイロットとなった後でも、その闘志が収まることはなかった。
途中、殺気だって襲い掛かる野犬の首を手刀で跳ねてぶち殺すなど、だから、今回のゲッターパイロットのスカウト(連行といえる)に、相当なまでの期待を胸にやってきていた。
ゆえに思わず、独り言がでる。
「これが隼奈のいる学園か。さてと、どこが隼奈の校舎だ?」
学園に踏み入ってそうつぶやく竜馬の目に、雨の中傘もささずに蠢く集団が映される。見れば、頭から血を流している男二人を、数人がかついでどこかへ持って行こうとしている最中だった。
(察するに、ここが隼奈の校舎だな)
そう感づいた竜馬は、わざとその言葉を口にだして連中に聞こえるかのように大声にする。すると、やはり予感は的中したようで、竜馬に気づいた集団の一人がつかつかと歩み寄って因縁をつける。
「誰だ」
「おめえに用はねえ、おれが会いたいのは隼奈だ。すげえ美人だっていうから、さらいに来たのさ」
「なんだと、きさまぁ!」
「どけってんだッ!!」
挑発にのった男がぐわっと襲い掛かってくるが、それを竜馬は傘の柄で殴りつける。男はまるで爆発に巻き込まれたかのように吹っ飛ばされると、ぐったりと倒れて動かなくなる。
その様子に一瞬にして他の男たちが竜馬を取り囲んでいくが、彼はその一人一人をものの数秒で片付けていく。
(こうして暴れりゃ隼奈も出てくるだろ。予定通りだ)
竜馬が乱暴な呼び出し方を企んだ。すると、その思惑は当たったようで丁度取り囲んだ連中が全滅する頃に、ゆらりと校舎の影から女が現れる。隼奈だ。
「ふふふ……」
彼女は顔に不敵な笑みを貼り付けたまま、雨が降り、累々と倒れて散らばる学生達という異様な風景を背に竜馬と対峙する。
(ひゅう、こりゃ本当に美人だ。早乙女のじじいめ、よもや顔だけで選んじゃいねえだろうな)
その姿を見やる竜馬は、隼奈の噂通りの美貌に感嘆しつつも油断ならない相手である事を察知して心で構える。戦闘体勢は、まだだ。
「あんたが隼奈かい。美人だって噂聞いてさらいにきたんだ、大人しくついてきてもらおうか」
「……誰に頼まれたか知らないが、ずいぶん暴れてくれたな」
「隼奈……あんなガキ共といつまでも革命ごっこでもねえだろ。おめえにはもっと似合いの戦場があるぜ! 騙されたと思って、こい」
「私の校舎を騒がしたら……ただでは済まさないぞ」
「やるか? 口べたの俺が口説こうなんざ初めから思っちゃいねえよ!」
そうして、隼奈がすぅっと動く。いよいよかと竜馬は身構えると戦闘の姿勢をとって隼奈を迎えようとするが、しかしその動きに殺気をまったく感じられず、わずかに戸惑う。
その隙をついて隼奈が肉迫する、しかし竜馬は飛びのこうともしなかった。
空手を極めた竜馬は相手が己に向ける気を自在に掴む事ができる。それなのに、隼奈からは一番最初に発せられた殺気が霧散して消えている事に気づいたからだった。
竜馬は拳を降ろすと、エサをおあずけされた犬のごとく不機嫌そうに隼奈を睨んで言う。
「なんのつもりだ、てめえ」
だが、隼奈は一向に介さず、さらに竜馬に近づいて、さきほど処刑した学生にやった様に顔を鼻の先ぎりぎりまで近づける。
しかしながら、その表情が違った……なにか新発見でもしたかのような驚きと、喜びの混ざった顔になった隼奈が言う。
「お前の様な男は初めて見たぞ。気に入った」
予想だにしなかった台詞に呆気にとられる竜馬。それはそうだ、どこの世に自分のテリトリーを襲撃されて喜ぶ人間などいるだろうか。
しかし、目の前の女は事実それを意味する言葉を吐いて竜馬を見入っている。
「えぇっ……な、なんだよ、つまんねえ……まあいいや。ならとっとと付いてきてもらおうか、あんたを必要としている男がいるんでね」
「ついていってやってもいいが、その前に……」
ついに直接の果し合いはなしに目的が達成されそうな事に、竜馬はがっかりしながらも任務は果たそうとした。しかし、隼奈からは取引が持ちかけられるのだった……。
・
・
・
あの後、竜馬は隼奈に連れられて「隼奈の校舎」へと踏み入れていた。彼女は、上に行くと部下たちがいるから、地下について来いと竜馬を誘ったのだ。
罠かもしれないが、何をされようとも負けるつもりなど少しも無い竜馬は、もしおかしな真似をしたらぶっ飛ばすとだけ言って、とりあえず彼女の言い分を聞いた。
そして案内された部屋はぼろぼろに朽ち果てた上の階層と異なり、暗いながらも、そこそこに手入れが行き届いた場所だった。
それを辺りを見渡して不審な気配がしないか確かめながら、竜馬が言う。
「で……何のようだ」
すると、それを受けて隼奈は怪しく笑ってまた、竜馬を見つめた。
「ふふふ。ただでは済まさないと言っただろう?」
あからさまに敵意を含んでいるように聞こえる言葉に、竜馬は「結局それかよ」と再び構えるが、隼奈はそれを無視して、セーラー服のネクタイに手を掛けるとしゅるりと脱ぎ捨てる。
それを皮切りとして、次々に衣服を脱いで、その抜群のプロポーションに飾られた裸身を露わにしていくと、
目の前で何が起こっているのかしばらく理解できず、竜馬はぽかんと口を開けてそれを見つめていたが、やがて正気に戻ると少し顔を赤らめて騒ぎはじめる。
「な、何してやがんだ隼奈! 俺はこんなことしにてめえを尋ねてきたんじゃねえぞっ……!?」
そこまで言いかけたが、全裸になった隼奈に抱きすくめられて唇を塞がれる事で次の言葉を封じられてしまう。
そんな隼奈のキスは強引だった。竜馬は吸盤に吸い付かれる様にあちこちをキスマークだらけにされて、ようやく開放される。
それを見て、嬉しそうな隼奈が竜馬の耳元で囁いた。
「気に入った男とこんなことをするのが私の趣味だ……ついて来て欲しいんだろう? 言う通りにしろ。なに、悪い思いはさせないよ」
(えいくそ。じじいめ、なんて女を選びやがった。やっぱりやましい目的があったんだな、あとで見てろよ)
竜馬はそう心の中で毒づくが、しかし据え膳を前にして大人しく振舞うほどストイックな人間であるつもりは毛頭ない。例え相手に企みがあっても、襲い掛かってきた時点で返り討ちにすれば済む話だ。
そう決めると、隼奈の大振りな乳房に手を延ばすとわしづかみにして言う。
「じゃあ、せっかくだから良い思いをさせてもらおうじゃねえか」
「やっとその気になったか。そうだ、それでいい……さあ、たっぷり楽しもうか」
「ふふふ」
「さあて……じゃあ、早速お前のモノを見せてもらおう。爪が怖ければ隠してやるぞ?」
「好きにしな。爪なんかにビビってられるかい」
それだけいうと、ズボンのジッパーを下ろして自らの剛直を取り出す竜馬。痛々しいほどに天を突くそれは、目の前の美女をはやく食わせろといわんばかりにぴくぴくと蠢いていた。
それを見て含み笑いを漏らす隼奈は、抱擁を解いてするすると竜馬の下半身に滑り落ちて剛直に向かう。鼻先をつんと、その先端につけると、すんすんと臭いを嗅いで恍惚とした表情になる。
「ひっ……これだ、この臭い……。ふふ、洗ってないな? ふ、ふふ……綺麗にしてやらないとなぁ」
隼奈はべろりと赤い舌を出すと、亀頭を数回嘗め回して濡れた唇を被せていく。そして亀頭だけ口に含んで、唇と舌を連動させた吸引運動をしかける。暗い室内にちゅぷちゅぷと淫靡な効果音だけが広がった。
その間、竜馬はされるがままにして隼奈の口技を楽しむ。時に甘噛みされたり、舌で鈴口を愛撫されたりすると呻きが漏れるが、それすらも隼奈の糧となってフェラチオが繰り返される……。
そして、しばらく変化に富んだ口技を味わった頃だろうか。竜馬の剛直は先にも増して脈動が大きくなり、同時に熱を持ちはじめる。それに反応して、少しずつせり上がっていく玉袋を隼奈はくっと握ると妖しく微笑んで言った。
「出そうか? もう出そうなのか? いいぞ、ふふふ。熱ぅいのをいっぱい、浴びさせてくれ……」
竿をゆっくりとしごきながら、竜馬の射精を促す。すでに暴発寸前なのだろう、はちきれんばかりに竿が膨れ上がっているのを、隼奈は手の平に感じ取る。とどめとばかりに指先で先端を弾いてやると、ついに竜馬が降参する。
「そんじゃ遠慮なく……うッ」
膨れ上がった剛直が、精巣から溜まりきった子種を次々と吸い出しながら放出していく。粘ついた白濁液が、隼奈の美しい顔や頭髪にべとべとと降りかかる。
それを舌を出したまま妖しく微笑みつづける隼奈が受け止めると、そのまま口内へ導いて味わうと飲み込んでいく。こぼした分は手ですくいとると、自分の肉体になすりつけて。
その色気に、さしもの竜馬もくらくらとしためまいの様なものを覚えるが、しかし隼奈の求めはこの程度で終わるものではなかった。
「ごちそうさま。さあ、次はお前の番だ。好きな所から私を犯してくれ……アソコがいいか、胸がいいか、尻がいいか、それとも鼻や目か……?」
「なんなら全部犯してやってもいいんだぜ」
「それは楽しみだ……さあ早く、ふふ、滅茶苦茶にしてくれ。でないと、頼みは聞いてやれないな」
「おめえがゲッターに乗った時の反応が楽しみだぜ。おらっ」
とことん隼奈に挑発された竜馬は、彼女を床の上に押し倒す。そして組み敷くと、獣が獲物を貪るようにして隼奈の肉体に沈んでいくのだった……。
おわり
この後、襲来してきた恐竜帝国に原作通り校舎をぶち壊された隼奈は、色々と出すもの出してハ虫類をブチ殺したのち、竜馬におぶられて逃げるハメになるのだった。全裸で。
そしてジャガー号に乗せられてゲロゲロしたりするのは、言うまでも無い。
皆さんお久しぶりです。これからずっとの人です。
私の頭は一年中暁を覚えないようで……ああ眠い。
エロ描写を期待している人は次回のエロのための充電回だと思って読み流してください。
ではどうぞ。
昼休み頃、泉田がやってきた。
「おっす。」
「おっす。」
始業式を迎えて暫く経ったこの時期ではあるが、授業は半ドンで終わる。家路を急ぐものが半分、部活のため昼食を摂るものが半分だ。
俺は後者、部活があるので教室で自分の弁当を広げていた。隣にはお重を口に放り込んでいる安田が、当たり前のように存在している。
……お前、部活してないのになんでいるの?
「いつも仲良いな、お2人さん。」
泉田は俺たちを見てあきれたようにつぶやいている。
「ただ纏わり付かれとるだけや。」
「ふーん……」
視線が明らかに胡散臭いと言っている。しかし付き合っているわけではないし、何も無いのだからこう表現するしかない。
「ねえ、安田さん。こんな朴念仁に執着するより、俺と付き合わない?」
「遠慮しておきます。私が好きなのは飯嶋先輩だけですから。」
「よかったな、これで8人目やったっけ。」
「10人目だ!」
「ペースが上がっとるな。」
「今付き合い始めれば卒業までちょうど1年だろ?」
「ええ加減、目的のために手段を選ぼうか。」
どう見ても二枚目なのにどうして三枚目に振舞うのか。もったいない。
「ところでさ、お前らって……本当に何にも無いの?」
「しつこいなあ、自分は。付き合うても無いのに何でそういうこと聞くんや?何にも無いに決まってるやん。ええ加減に……」
「そうやって言葉数が多い時って嘘ついてるときが多いんだよな、人間って。」
「……何にもありません、ホンマです。」
気が付くと同じように昼飯を食べていた周囲の注目が集まっていた。こいつ、狙ってやったな。
「本当か?……ねえ安田さん、本当にコイツとは何も無いの?」
「いいえ、この間ありました。」
気管に白米が侵入してきた。むせ返って声を出せない。その間に会話は進む。
「なっ……あったのか!?」
「はい。ついこの間。」
「ど、どういうことを!?」
「昔の言い方をするならBまで……」
周囲が色めきたった。と、同時に俺に鋭い視線が向けられる。殺気と羨望と祝福の入り混じった視線だ。
涙目になりながらようやく呼吸を回復した俺に当然のように話が振られる。
「お前……見損なったよ。」
「何がや。」
「ナニをだ。」
誰がうまいこと言えと言った。
「どうして付き合ってない女とそういうこと出来るのかな?」
「……こいつの言うたことなんて嘘に決まっとるやろ!」
震える語尾をごまかすように大声を張り上げる。が。
「……この間の土曜日。私の部屋のベッドで。」
「「「「!?」」」」
クラス中の目と耳が彼女に集中した。そして俺は動きが止まった。
もうこの場で死にたい。
いつの間に広まったのか、昼に俺の教室で行われた暴露大会を部員連中は全員知っていた。針の筵、とはああいう状況を言うんだろう。
「ところでさ、あんたたち付き合ってるんでしょ?」
ようやく作品の方針が固まりあとは絵筆を走らせるだけだったが、横槍が入ってきた。広江部長、自分の作品進めてください。
「いや、全然。」
「まだお友達です。」
俺たちが同時に返事をする。聞き取りにくかったのか顔をしかめてはいるが、2人が言っていることは聞き取れたようだ。
「それでやることやってるんだ。ふ〜ん……」
そんな目で俺を見るな。いや「事実かそうでないか」と訊かれたら事実ではあるのだが、意味合いは恋人同士のそれとは全く違う。
「でも付き合ってないんですよね?」
「男としてそれはどうなの?」
「てゆーか人として。」
「先輩、見損ないました。」
かしまし娘sが一斉に……て最後のは安田じゃないか。
「むしろ見損なってくれたほうが好都合や。」
安田にだけ返事をして目の前の描きかけの絵に向かう。全員を相手にするなんてやってられない。
だが絵を遮るように広江が顔を突っ込む。
「ええ加減にせえ。邪魔や。」
「この際付き合っちゃえば?別に好きな人がいるわけじゃないんでしょ?」
「邪魔、言うてるんが分からへんのか?……それに、好きな人やったらおるわ。」
キャンバスの前からどかない広江に折れて、つい口走ってしまう。途端に教室内に歓声が上がった。
「詳しく。」
「聞かせて。」
「もらおうか。」
「飯島君?」
何故こいつらは神がかった連携を見せるのか。
「何が悲しくてお前らを喜ばせんといかんねん。自分も黙っときや?」
モノ言いたげな安田を見て早めに釘を刺す。これ以上集中できない状態が続くなら帰ろうかと本気で考えたが、流石に顧問が止めに入った。
……センセ、本当は聞き入ってたでしょ。
部活を終え、逃げるように学校を出る。その足で夕食を摂りに駅前へ向かう。
「先輩。」
「何や後輩。」
「歩くの速くないですか?」
「気のせいやろ。」
全く振り向かずに応対する。慌てたように歩幅を大きくしたのが足音から分かった。
なるべく気にしないようにしているが、安田の家に上がったとき以来どうも彼女の顔を直視できない。理由はアレに決まっているのだが。
駅を飾り立てるイルミネーションを眺めながらどの店に入ろうか決めあぐねていたとき、後ろから上着の裾を引っ張られた。
「生地伸びるから引っ張んの止めへんか?」
「私、あのお店に行きたいです。」
「またあそこかい。……毎度毎度飽きへんか?」
「どのメニューもおいしいですよ。」
ラーメン屋や牛丼屋にも平気な顔をしてついてくる彼女だが、それらの店よりバーガーショップのほうが気に入っているようだった。
おそらく理由は……
「それに先輩と並んで座るのもいいですが、やっぱり向かい合って顔を見ながら食べたほうがいいですから。」
ほら、やっぱり。ラーメン屋や牛丼屋など、カウンター席しかない店が嫌いな理由がこれなのだろう。
「飯食うときくらい顔眺めるん止めへんか。あんまり気分のええもんやないんやけど。」
大口を開けて、もしゃもしゃハンバーガーを食べる顔を見つめられているのは少々辛いものがある。
ましてやこの間のことがあってからは尚更だ。目を見ることも出来ない。だから出来ればあそこは勘弁してほしかった。
しかし裾をグイグイと引っ張られて仕方なく、無理矢理に連れて行かれた。
いつものように1つのトレイとテーブルを2人で囲み、
「「いただきます。」」
意外にも俺と同じくらいの食料を身体の中に放り込むチビッ子は、見ている限り太っている様子は無い。
そういえば昼にも弁当箱がお重じゃなかったか。基礎代謝量が俺とは段違いに高いのだろうか。
気になって訊いてみる。
「やはり先輩の妻として身体は絞っておかないといけませんから。」
「いつ誰が旦那になったかは知らんが、努力しとるんやな、やっぱり。」
「努力というほどのことはしていません。なるべく歩くようにすることと、食事に気をつけるくらいです。」
そういえばお重の中身は野菜がメインだったような気がする。
「そうなんか……ってあれ?」
納得して頷きかけて1つ引っかかった。食事に気を遣うような奴がほぼ毎食俺の外食にくっついてきてるのは、ちと不味くはないだろうか。
「先輩が行くと仰るのでしたら、黙ってついていくのが私です。」
そういうのを世の中ではストーカーと言わないだろうか。まあ、どうせ言っても無駄だから口には出さないが。
「先輩。」
「何ひゃこふはひ。」
自分の注文分を早くも食べ終えた安田が、まだハンバーガーにかぶりついている俺に話しかけてきた。
「質問したいことがあります。……先輩の思い人というのはどんな人ですか?」
レタスが喉に張り付いたようだ。グフグフと咳き込み涙目になる。
「その人の年齢は?身長は?特技は?」
「ゴホゴホッ……1つだけやったら質問に答えたる。それ以上訊こうとするんやったら何も喋らへんで。」
「私からの質問に答えるなんて珍しいですね。」
「答えへんかったらしつこいやろ、自分。……俺も多少は学習してるんやで。」
1つしか質問ができないといったことで、安田はじっと考え始めた。
残りのメニューを片付けて一息ついていると、ようやく答えが出たようで、真っ直ぐにこちらを見据えてきた。
「決まったか?」
「はい。……『先輩にとってその思い人はどういう人ですか?』」
「また……抽象的な質問やな。正直、どうとでも答えられるからな。」
「それが狙いですから。」
今度は俺が考え込む番だ。
最適な言葉を頭の中から引きずり出してくるのには時間がかかった。しかしようやく見つけだしたその言葉は、ぴったりの言葉だった。
「答えは……『俺の存在価値の全部を占めていた人』やな。我ながらクサい台詞やと思うけど。」
照れ隠しに頭を掻きながら、視線を外して言う。
やっぱり恥ずかしい。あの人が好きだった頃は本人を前にしても言えたのに。
「そうですか……」
心なしか気落ちした声で言葉を返してきた。彼女が少しかわいそうになって、ほんの少しの救いを与える。
「でも、自分は気にせんでええ話や。過去形やろ?呼び方が。……フラれたんや、俺があの人怒らせて。」
そう、『占めている人』ではない。だからあの人のことはもう引きずってはいない。あの人のこと自体は。
「私は何をされても先輩のことを袖にはしませんよ?だから……」
「付き合いません。それとこれとは話が別や。」
「むうぅぅぅ〜〜……」
安田は頭を抱え込んだ。
いつも通り車の待機場所まで送っていく道すがら、携帯電話に着信があるのに気が付いた。
見ると母親の名前が着信履歴欄を埋め尽くしており、留守番電話が何件も入っていた。聞いてみる。
「もしもし、仕事が早よ終わったからご飯食べへん?」
「もしもーし、もう駅まで来たで〜。」
「駅前のあの店に入ってるからな、連絡よろしく。」
…………。
履歴に表示された時間を見るともう2時間も前だ。背筋に氷が流れ込んだ思いがした。思わず周囲を確認する。
安田は誰かいるわけも無いのに急に振り返った俺を怪訝に見上げ、後ろを振り返った。
「どうかしましたか?」
俺はその問いに応えず、彼女の腕を引っ掴むと車の場所へ急いだ。もしこの状況を親が見たら何と言うか。考えただけで面倒くさい。
「お母様ですか?そうなら私も生涯の伴侶として挨拶……」
「逢わせたくない。」
「えっと……」
状況がよく飲み込めていないのか、瞳を『?』に変えて引きずられるようについてくる。
「分かりやすう言うたる。ウチの親は俺が女子と一緒におると、めっちゃメンドいんや。」
「どういうことですか?」
「……人間知らんでもええこともあるし、言いたくないこともあるねん。」
「『知りたいと言ったら何でも教えてもらえると思ったら大間違い』ですか?」
「そうや。自分で考えなさい。」
早足で、でも彼女がギリギリ付いて来れるだろう速さで引っ張っていく。
この努力も結局は徒労に終わった。それも最悪の結果だった。件の駐車場の手前、背後に気配を感じる。
「おい。」
聞きなれた声に振り返ると母が立っていた。
「何しとる?」
「……知り合いの子を送りに。」
「仲良ぅ手ぇ繋いでか?」
慌てて腕を掴んでいた左手を離す。当然のことながら時既に遅くはあるのだが、この後の拷問を少しでもましにしないといけない。
「これは……」
「こんばんは。」
我が愛しの母君は俺を無視して安田に話しかける。
「このアホとはどういうご関係?」
「ただの先輩・後輩ってだけや。」
「アンタには訊いてない。」
ピシャリとやられて口をつぐむ。あとは安田が空気を読んで発言してくれることを祈るしかない。
だがその可能性は……
「飯嶋先輩とは仲良くさせていただいてます、『とっても』。」
……スッポンが月に勝つ可能性くらい低い。
途端に渋面が晴れた。
「いつの間に彼女作ったん?」
ニヤニヤ笑いがうっとうしい。
「違うって言うてるやろ。ただの後輩や。」
「仲良ぅ手ぇ繋いどったやん。母はうれしいよ。」
「俺はうれしないわ。……俺が誰も好きになれへんの知っとるやろ?」
「私がいい加減忘れなさい、といつも言うてるのも知らんか?」
「忘れられるわけがない、ってことが分からんか?」
「あの……」
安田は話の流れが見えずに困惑していたようだが、親子の間の空気が険悪になったのを見て口を挟んだ。
「ん?事情知らんのか。……この子、大阪で彼女がおったんよ。」
「それは聞きました。」
「そんでな……」
危ない言葉を発しそうになる母親の首を絞めて黙らせようとするが、思わぬ反抗にあい、うまくいかない。
「なんやねん、邪魔しな。ほんなら自分で言うか?」
「言うわけないやろ!」
頭に血が昇り、声を大きくする。そんなこと自分の口から言えるわけないじゃないか。
「私は聞きたいです。先程も訊いたんですが、どうやらまだ隠していることがあるようですから。」
「ふうん……じゃあアンタにコレ貸すから自分で訊き出して?」
俺の耳を引っ張り吊り上げて安田のほうへ追いやると、俺たちに背を向け、肩越しにヒラヒラと手を振って駅のほうへ去っていく。
「家にはチェーン掛けとくからな〜。暖かい所で寝たいんやったらその子のところに泊まり。」
「待てコラ!俺に決定権は無いんか!」
「……あんたも、いい加減吹っ切らんと辛いやろ。その子には酷かも知らんことやけど。」
「酷やと思うんやったら……!」
「私は大丈夫です。何があっても。」
安田が俺の腕に取り付き、母を見据えて言った。
うっとうしくて振り払おうとしたが叶わなかった。力一杯抱きついている。
「やって。じゃあ、さようなら〜♪」
本当に帰りやがった。
「いつまでくっついてるつもりや?」
「私が満足するまでです。」
「ちなみにいつ頃満足しそうや?」
「そうですね、50年ほど時間を頂ければ。」
「……離してくれへんか。」
「分かりました。」
予想通りすんなりと解放してくれた。滅多に抱きつけないからと『抱きつき溜め』でもしたつもりなのだろうか。
……で。
「泊まるところか……」
この時期なら野外で寝ても凍死することはあるまい。この辺りに屋根の下にベンチがある公園なんてあっただろうか
考えを巡らせていると、もう一度腕が締め付けられた。離してくれるんじゃないのか。
「駄目です。」
「何が?」
「私の家に泊まってください。ベンチで横になるより、ベッドで眠ったほうがいいでしょう?」
「俺はお前の期待に添えるようなことはせえへんで。してほしいから呼ぶんやったら諦めて1人で帰り。」
腕の締め付けが強くなった。絶対に離さないという意思のあらわれだろう。表情や言葉では感情をなかなか表現しないので、非常に珍しいことだった。
「離しては……くれへんか。……しゃあないな、行くわ。行ったらええんやろ!」
半ば投げ遣りに言い放つと、腕を引き抜き車へ向かう。
さあ、2度目の伏魔殿だ。
俺は、最後までしらばっくれることが出来るか……?
いよいよ次回行為を書こうかと。前回のような生殺しは……しないと思います。たぶん、きっと、おそらく……?
>>390 ……まさかこんなところじゃバレないと思ってたのに。恐るべし、仕立て屋スレ住人。
実はあっちでもこの鳥使ってバカやってたりするんですがね。
>>423 こ、これが漫画版ゲッターか……
私には神谷のイメージしかない(しかもスパロボ経由)ので「目だ耳だ鼻だ」を見れたのはちょっとうれしかったり。
1つの話をずっとやってるとなぜか違う話が浮かんできてしまう私は異常でしょうか?
ああ早く次のシリーズ書きたい!な精神状態なので、これの続きは遅くなるかもしれません。
>>419-423 すげえ。最初から最後まで原作絵で想像できた。
隼奈だけはなんとなくマリア・フリードの絵で想像してしまったけど。
隼奈が迫力ありすぎて俺のチンコは縮み上がってしまったけど、このSSは癖になりそうだ。
>430
来い来いカモン!
全裸で待ってるぜ!
>>430 もう正直、行為があるかどうかは二の次で、続きが読みたい。
たのもう
人いない…………
>>419 今更ながらに読んでみた。
ダメだ、脳内で石川絵(無印ゲッターの頃)で再生されてしまう。
だがそれが良い
俺も
>>419好きだ
こんなバイオレンスなエロパロ見たことない
流れ仏契り。
18kbほど、投下いたします。
いろいろと試験的な、自己修行のSSですので、お暇な方はおつきあいを。
エロはありません。
長めの上にエロなしなんで、スルーされる方はタイトル『素直クールの星の下(もと)に』でNG登録を推奨。
前島先生は、良い先生です。
なにしろ、俺にラーメンをおごってくれた。
「まぁ、喰え。ほれ、これも」
俺の担任である前島先生(48才、オトコ)は、隣に座る俺、飯田橋 王者(いいだばし おうじゃ)に、そういって
餃子も勧めてくれた。
その日は、朝から学校でトラブルがあり、当事者達は生徒指導室に呼ばれ、前島先生と面談となっていた。
実は俺もその当事者の一人であり、不本意ながら中心人物でもある。
故に、前島先生は俺の順番を最後にして、じっくり話を聞くつもりだったのだろう。
俺は放課後の教室で暇をつぶしていたのだが、予定の時間になっても一向にお呼びがかからない。
ようやく放送で呼び出されたのが、下校時間予鈴の鳴った直後。俺が指導室に行くと、前島先生は帰る用意を
しろ、と俺に言い、こうしてラーメン屋に連れてきてくれた。
待たせて悪かったな、そういって先生は俺を促し、ラーメンを注文させた。俺が少し遠慮して、一番安いラーメン
を頼むと、遠慮するな、といってチャーシューメンに切り替えさせた。
「悪いな、約束の時間を遅らせちまって」
先生は、俺と並んでカウンター席に腰掛け、吸うぞ? と断って煙草に火をつけた。ふうー、と先生の吐き出した
紫煙は、無遠慮にもカウンター越しの厨房にまで届き、大型の換気扇に勢いよく吸い込まれていった。よほど疲
れたのだろうか、がっくりと肩を落とし、視線を虚ろに固定したまま動かすことがない。時折ゆっくりと瞬きして、そ
してまた虚ろに視線を戻す。
「で、先生、俺の面談はやらなくても良いんですか?」
俺は、さすがにここに付き合わされた理由を察していない訳ではない。下校時間となり校内に残ることを許されな
いわけで、場所をここに移したのだろう。俺も、面倒な束縛を後日に持ち越すことがいやなので、有り難い話だ。
ラーメンも奢ってもらえるし。
「そうだな、始めるか」
冴えない風貌ながらも、生徒に理解のある、良い先生だ。俺も好感を持っている。ラーメンも奢ってくれたし。
俺は、先生の質問につらつらと答える。俺自身、やましいところはそれほどない、と思っているのだが、状況はそ
うやって逃げることを許してはくれない。
出来事の顛末を報告して、反省、謝罪する必要があるのだろう。
そして、先生は俺に、『本日の重要参考人2名』のことを話し出した。
「で、飯田橋、お前はあの二人のこと、どう思ってるんだ?」
ずいぶんとストレートな御質問。投手が直球で放ったボールには、フルスィングでお返しするのが礼儀だろう。
「大事な友人です」
嘘偽りのない、俺の心境。
この、先生が言った『本日の重要参考人2名』。
そのうち一人は、俺の先輩である3年生、一ツ橋 日曜(ひとつばし ひよ)。
この学園に多大な援助を行っているスポンサー、『一ツ橋財団』の娘。
俺の所属する剣道部、その男女混合の部において、男性部員を差し置いて主将を務める女性。校内でも一,二
を争う大所帯となった剣道部、それを統率する部長なのだ、かなりの腕前である。
彼女の古風な物言いは、おおむね彼女の思考形態に沿った順当な特徴でもある。
その視線は鋭く、端正に整った面差しと相まって、鋭利に切れる日本刀を思わせる美しさ。
腰ほど届こうかという艶やかな黒髪は、飾り気の少ない質素なリボンで先端を一房に束ねられている。長身で
姿勢も良く、胸こそ少し控えめではあるものの、十分に大人びた女性だ。
校則違反にならないのかといつも心配しているのだが、制服のスカートにはベルトが掛けられ、そこには大小
の木刀が刺さっている。
俺はその彼女を、部の先輩として大変尊敬している。
もう一人は、俺の同級生である2年生、音羽 弾倉(おとわ たくら)。
俺達の学園を経済的に援助するもう一つのスポンサー、『音羽財団』の娘。
わざわざ校内に射撃場まで作らせて、彼女はそこのボス、つまり『銃道部』の部長に就任した。『柔道部』じゃな
くて『銃道部』な。さすがに実弾を使うわけにはいかないので自ずとモデルガンになるのだが。サバゲー同好会っ
てのもあったんだが、彼女が彼らを襲撃し、全滅させ、吸収してしまった。今ではどんどんと私兵(部員)を増やし、
巨大な部へと成長した。
弾倉本人はというと、クールな傭兵を思わせる雰囲気で、口数も少ない。長い髪を束ねることもせず、自然な
ウェーブで背中を覆っている。長身でスタイルも良く、胸も大きい。校則違反にならないのかといつも心配している
のだが、常に腰からはホルスターに納められたモデルガン2丁がぶら下がっている。
俺はその彼女を、ユニークなクラスメイトとして大変楽しく観察している。
そんな二人に、先日告白された。
昼休み、教室で。
「飯田橋、私はお前のことが好きだ」
放課後、部活の最中に。
「飯田橋、拙者はお主が好きじゃ」
場所、時間は違えども、その告白は同じ日に行われた。
俺はそんな告白に、それぞれ同じような文言で答えた。
「ごめん、まだ俺、そういう気持ちになれない」
俺は少し前に、失恋をした。
中学の頃からつきあっていた女が居るのだが、高校になって別の学校に進み、疎遠になってすれ違い、彼女が
他の男を作った。振られた俺はしばらく未練たらたらだったんだが、ここ最近になってようやくその女への執着が
薄れてきた。だがしかし、新しい恋を始めるにはまだまだ気持ちの切り替えが出来ていない。
二人が俺に告白してきたのは、俺が振られたことを友人にカミングアウトした翌日だった。
おそらくそれがいかなる経路か二人の耳に入り、告白という行動をとらせたのだろう。
俺に告白してきた一ツ橋先輩も音羽も、決して嫌いではないのだが、告白されてハイそうですか、といってそれ
に応えるというのも、失恋直後にやってしまってはいかにも不誠実な感じだったし、言葉通り俺は傷心も癒えて
いない状態で、そんな気分になれなかった。
正直心苦しくもあったが、二人は大事な友人と先輩だ。いい加減な気持ちや、前彼女の変わりにするつもりで
付き合うなんてことは出来ない。
だから俺は正直に答えたんだが。
俺のその答えに、二人はというと。
「そうか。拙者としたことが、気がせいていたようじゃ」
「そうだな。私としたことが、焦っていたようだ」
そんな風に答えた後。
「だが、私は諦めたわけではない」
「じゃが、拙者は諦めたわけではないからの」
二人は、同じような言葉で締めくくった。君らは双子か、と思うほどのシンクロニティであった。
そして1週間ほど経ったある日、つまり今日、事件が起こった。
俺はその場に居合わせなかったのだが、一ツ橋先輩と音羽が、衝突した。
諍いの原因は、お察しの通り、俺、らしい。
「まぁ、2名はそれぞれ、今まであまり周りのことは気にしない質だったのだろうが、お前さんのこととなると事情
は変わるらしい。
いわば『恋のライバル』とも言うべきお互いの存在は、ちゃんと調べてあったようだ」
ずぞぞ、とラーメンをすする傍ら、先生は俺に言った。
俺も、チャーシューを一切れ、口の中に放り込み、聞く。
口の中でほろほろとほどけていく軟らかい肉、絶品だ。
・・・っといかん、チャーシューの美味さに逃避してる場合じゃない。
そうなんだ、今朝の出来事だって、俺に責任がある、とも言えるわけだし。
ここから先は人伝からの想像になるんだが。
今朝、俺のクラスの前の廊下。
登校し、自分のクラスに到着したあと、席を立つ音羽弾倉。
部活の朝練を終え、俺のクラスまで顔を出した一ツ橋日曜先輩。
そして、教室の入り口、その廊下でばったり出会った二人。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
最初は、二人ともしばし無言。
そして。
「一ツ橋日曜だな?」
「これでも拙者、お主の先輩じゃ。それなりの礼は尽くせ、音羽のじゃじゃ馬よ」
そんな第一声、お互いを視界に捕らえたときから、敵意むき出しだったらしい。
二人とも普段から無駄口を叩かないクールフェイス、それが口にした言葉が、シンプルに相手に突き刺さる。
そして無言。お互い目を逸らさず、険悪な空気が二人を取り巻く。やがて力のあるオーラがその空間を満たし、
空気が揺れ、帯電し、ゴゴゴと唸り響く。
その光景を見ていたクラスメイト須藤君やら鈴木さんの頬に、かまいたちの傷が出来るぐらい。
そして、5Gくらいはあろうかという重力場の中、つい、と彼女たちは半歩、足を進めた。
「おぬしなどに構っておる暇はない。飯田橋に取り次いで貰おうか」
そういって、一ツ橋日曜先輩は、なぜか腰の木刀に手を按ずる。
「飯田橋はいない。とっとと引き返せ」
そういって、音羽弾倉は、なぜか腰のホルスターに手を伸ばす。
そしてその化け物二人が乱闘を開始した。
友人達の証言によると、そこから先の動きは確認できなかったそうだ。
ただでさえそれぞれが達人級の使い手である上に、それが二人ともなるととても目で追いきれないらしい。俺は、
一ツ橋先輩が凄い腕前であることは知っていたし、まぁ音羽だってそれなりに凄いヤツなんじゃないかとは思っ
ていたので、その二人の対決が凄い戦いになることくらいは想像できる。だけど俺がそれを友人に言うと、甘い、
と言われた。どうやら俺が思っている以上に化け物じみた実力者同士らしい。『凄い』ではなく、『凄まじい』のだ
そうだ。
さらに状況をややこしくしたのは、この二人に傅く僕(しもべ)とも言うべき人間達の存在。彼らによってこの乱闘
の規模がでかくなってしまったことだ。
「一ツ橋、音羽にはそれぞれ部活の同好の中に、近衛兵とも言うべきシンパが居る。・・・剣道部のことはお前も
知っているよな?」
先生はレンゲでずずずとスープをすすり、言った。
確かに、俺が所属し一ツ橋先輩が治める剣道部には、部長に忠誠を誓う四天王と、それを補佐する十二神将が
居る。部長は俺に、入部早々四天王のポジションを勧めてきたことがあったが、丁寧にお断りした。部長ほどでは
ないにしろ、かなりの実力者達で構成されるメンツの中に、俺のような素人がいきなり収まって良いはずはない。
「それと同じような奴らが音羽にも居るんだよ」
四柱神と十二の魔人、元サバゲ部の精鋭達が音羽に傅き、忠誠を誓っているらしい。
一ツ橋先輩と音羽、二人の諍いを聞きつけた両陣営が、学校中に展開して全面抗争となった。
もとより、学園での立場を競い合っていた二つの巨大財団、その尖兵とも言える部活同士は仲が悪かった。
そしてその、学校全体を戦場にした二大勢力の戦いは、正午まで続いた、らしい。
ちなみに俺はどうしていたのかというと、学校をサボっていた。
たまたま道に落ちていたポルノ映画館のチケットが今日期限のものだったため、通学路を右折して映画館に直
行した。朝からぶっ続けで、『痴漢花電車』『セクシーテレフォン0721』『人妻看護婦・快感診察』『セーラー服の
青い果実』『ああ妹よ』『女教師28才・夜の個人授業』を鑑賞していたわけだ。
そんなわけで、朝練に顔を出さない俺の様子を見に来たらしい一ツ橋先輩と、いつもの時間に教室にいない俺
を探しに行こうとしていたらしい音羽が、そこで出会ったというわけだから、やはり今日の事件、原因は俺か。
昼過ぎに映画館を出て、鑑賞中電源OFFにしていた携帯を開くと、クラスメイトや先生達からのメールがびっし
り届いていた。良く状況を掴めないまま急かされて学校に向かうと、そこは『戦場』だった。テンプレな表現だが、
それ以外に適当な言葉が見つからない。まぁ、死者が出てたら、『地獄』と言っても良いんだろうけど、さすがに
そこまでは。
で、おっかなびっくり学園の門をくぐると、二人の女性が出迎えた。そう、一ツ橋先輩と音羽だ。
二人は俺を待っていたようで、こちらに近寄ろうとしていた。
だが、俺が二人と話をする前に、集まった警備員達に二人は拘束されてしまった。学園にとって腫れ物に近い
デリケートさを要する二人の立場であったが、さすがに今日はやり過ぎたらしく、教師も二人を拘束する許可を
得たそうな。
「そして俺が、お前と、あの二人から事情を聞いて、教育的指導ってのをする事になった」
とんだ貧乏クジだぜ、と前島先生は溜め息を吐いた。
ご愁傷様です、と俺は言った。
前島先生はそれでも、俺を責めることはせず、それどころか、自分のラーメンと一緒に、俺のラーメンに替え玉
を頼んでくれた。
校内全体を巻き込んだ乱闘騒ぎだったが、それはもちろん対外的な、所謂K察がらみの事件とはならなかった。
ご想像の通り、学園内は2大財団の共同経営する場所、治外法権みたいなもんだ。マジで人死に,重傷者でも
出ない限り、あの二人の手が後ろに回ることはないだろ。
そして放課後・・・っつっても、授業なんか出来るはずもなく、とりあえず時間の割り振りという意味合いだけの
放課後、俺を含む当事者3名の指導となったわけだ。
「んで、まぁ最初は音羽だったんだがな・・・」
先生は、新たに投入された替え玉を箸でぐーるぐーると攪拌してスープに絡めながら、話し始めた。他の生徒の
指導状況を俺に話すのはおかしいんじゃないか? とも思うし、そう訊ねたんだが、先生は穏やかに、こう言った。
まぁ、話には順序がある、と。
「前島先生、事情聴取には喜んで協力いたしますが、一つだけ約束願いたい」
音羽弾倉は、先生の対面に姿勢正しく腰掛けた後、そう言ったらしい。先生が、何を? と聞き返すと、これまた
はっきりとした声。
「本日の騒動、飯田橋には何ら責任はありません。彼を責めるのはやめていただきたい」
まっすぐ、少しも逸れることのない強い視線で双訴えられて、先生は了承した。まだ話も何も聞いていないうち
からそんな安請け合いしても良いのかとも思うのだが、その辺りは俺を信じてくれているのだろう、と夢見がちな
観点から信じてみる。
「私の思うに、本日の責任は私が3割、一ツ橋が7割といったところだと思いますので」
そう、強く断言する音羽。先生曰く、この後に行われた一ツ橋先輩の方からも、同じ要求と分析があったそうな。
もちろん先輩も、自分3割相手7割と、強気な責任分割だ。
二人とも、俺をかばってくれるのは嬉しくもあるんだけど、二人が「自分は3割しか悪くない」とかいいだしたら、か
ばわれてる俺が残り4割の責任を被ることになるんだろうねぇ。
先生は、その辺りの約束をした後、事情を聞き出していく。ことの顛末を聞いていくうち、訊かれもしないところで
彼女はわざわざ宣言したそうだ。
「私は飯田橋のことが好きです」
赤面するでもなく、言い淀むでもなく、きっぱり宣言、ずばっと断言。
「友人としての好き、所謂『LIKE』ではなく、『LOVE』です。日本語に訳すと、私は飯田橋を愛している、となります」
あいつ、良くもまぁそんなこっぱずかしいことを。聞いてる先生が逆に恥ずかしくなる、と。
俺が、別に俺が悪いわけでもないけれどとりあえず謝っておくと、先生が、別に先生が悪いわけでもないだろうに、謝ってきた。
「前島先生。そこで先生にお願いしたいことがあります」
そういって真剣に音羽は。
「私が飯田橋と結ばれるよう、取りはからって欲しいのです」
そんなことを言いだしたらしい。
それに対して先生は。
「・・・・・・いいだろう」
と、応じたそうだ。
「・・・・・・って、先生、なんてことを・・・」
俺が、一度は手繰りかけた麺をもう一度スープに漬け直し、溜め息を吐く。
俺は先生に説明した。俺がどうして彼女らの求愛に答えなかったのかを。先生はそれを聞いて、あー、すまん、
とばつが悪そうに謝った後、まぁ、喰え、と鳥の唐揚げが盛られた皿を差し出してきた。俺がその唐揚げを一つ
箸で取ると、先生は、全部喰っても良いぞ、という。俺はなにやら胸騒ぎをして先生に聞いてみた。
「まさか、その後の一ツ橋先輩からも同じことを要求されたんじゃないですか?」
「・・・・・・すまん」
図星か・・・。
先生としては、音羽の要求に対して、彼女の真剣さをむげに出来なかったんだと。同じように真剣に言ってきた
一ツ橋先輩の頼みも同様だ。それが矛盾する行為だとはわかっていても、頷くしかできなかった。これを、「気迫
に押された」と、先生は表現した。
「つまり、先生は俺に、上手に二股をかけろ、とおっしゃるわけだ・・・・・・ハハハ」
半ば自棄になった俺は、大きめの唐揚げを丸ごと口の中に補織り込む。衣を噛み締めると熱々の脂がジュー
シーに零れ、舌を火傷させた。熱さを我慢しつつ何度か唐揚げをかみ締め、ごくりと喉を通す。あー、胃が焼ける。
「いや、二股というかだな・・・」
まだ先生は、もごもごと何か含んだ曖昧な合いの手。
「しかしておっくうなのは、あのじゃじゃ馬のあしらいじゃな」
前島先生を目の前にして、ごく自然に落ち着き払った姿勢で座った一ツ橋日曜先輩。
「ふむ、いっそのことここは本腰を入れて、潰しておくべきかのう」
怖いことをさらりと、なんでもないように言う先輩に対して、先生は、これ以上揉め事を起さないように必死に説得
した。今日の騒ぎでもかなりややこしい話になっているというのに、これで『本腰』入れて抗争を勃発させられては、
今度こそ大惨事だ。悠然と構えたその生徒に対して、先生は、先ほど同じようなことを言った音羽を説得した手段
に頼らざるを得なかった。
「いや、これ以上騒ぎを起すのは、飯田橋が悲しむから、やめなさい・・・」
「・・・先生、俺の名前、好き放題に使ってくれますね」
まぁ実際、俺に迷惑がかかるというのは正しいのだが。
結果的に、これ以上問題が起きないように収まってくれるならば、少々妙な使われ方をしても綻びることはない
だろう、俺のチンケな名前でも。
そして先生は、ややこしいことになって悪い、と謝ってきた。
・・・・・・まだ、何かあるんじゃないでしょうね、先生。
俺がそんな疑いの三白眼を向けると、居たたまれないように視線を逸らして、
「店長、コイツのラーメンに、煮込み卵を追加してやってくれ」
そう新たなオーダーを追加した。
「なるほど。飯田橋本人に、拙者とじゃじゃ馬、公平に選ばせよと申すのじゃな、先生は」
一ツ橋先輩は、先生の提案に、深く納得したとばかりに唸り出す。
「して、具体的に何を選ばせればよい? 形(なり)か? 家事の手際か?」
「そ、そうだな、だいたいそんなものだろう」
先生は、会話の主導権をすっかり彼女に奪われ、曖昧に応じるしかできないようだった。その辺りを俺は責め
ない。まぁ、仕方ないよなぁ、とか同情もしながら、店長が投下してくれた煮込み卵を箸でつまんだ。
「ならばいっそ、夜伽の具合も比べさせるべきか」
つるり、と箸から滑った卵が、どんぶりの縁にあたって、ぼとり、とテーブルの上に落ちた。
「いずれはこの身を任せるのじゃ、ならば早いうちに、じゃじゃ馬の肉にも見切りをつけて貰わねばならぬからの」
俺は、先生から伝で聞いた彼女の言葉に、落とした食べ物を拾う『3秒ルール』も忘れ、愕然とした。
「すまん、音羽も一ツ橋も、お互いライバル心剥き出しで、すべての面において相手をうち負かすことを是とする
性格みたいでなぁ、おのずとそうなったんだ」
先生は、申し訳なさそうに言う。
しかもさりげなく、同じ流れが二人同様に起こったことをカミングアウト。
落としてから10秒経ったが、せっかく生んでくれた鶏さんに悪いから、俺は卵を拾い、食べた。
しばらく無言で、残った麺を手繰り、スープをすすり、腹に収める。
正直、脱力してしまった。
一ツ橋先輩も、音羽も、二人とも極上の女だ。間違いなく二人が校内ナンバー1,2を争っている。俺はそんな
女たちに好かれて、あえて下品な言葉で言うならばヤリ比べが出来るのだから、ずいぶんと贅沢なのだろう。
だが、比べる、ということは、片方を選んで残る一方を落とすと言うことだ。
そんなこと出来るわけがない。
先生も、ずいぶんとやっかいな宿題を用意してくれたものだ。
道理で、気前よくラーメン奢ってくれたわけだ。しかもチャーシュー麺+替え玉、餃子唐揚げ煮込み卵付き。
「・・・・・・先生、じゃあ、これで俺の指導は、終わりなんですね?」
俺は、念を押すように、そういった。
正直、一人を選びもう一人を振る、という気分の重い問題を抱えて、うんざりしていたのだ。
しかし先生は、首を横に振った。
「いや、お前に対する『指導』は、これからなんだよ」
は? と間抜けに顎を下げる俺に、先生は『指導』の言葉を。
店長おあいそ、と財布を取りだし支払いを済ませながら、先生は言った。
「飯田橋、お前は、二人とも自分のモノにしろ」
まいどあり、と店長の見送りをうけて、俺と先生はラーメン屋を出た。
すっかり辺りは暗くなり、珍しく夜空には星が瞬く。
「もしもお前が、一人を選んでもう一人を捨てたりしたら、学園に対する援助がどう傾くかわからんのだ」
正直、知ったことではない。しかし、それよりも、どちらか一方を振った後の反応を想像すると、ただでは済ま
ないことが容易に想像できる。いや、間違いなく、素直に諦めてくれない、ような気がする。どこかでだれかが、
血を流す、ことになるだろう。
怖い。
いやマジで。
ここは、腹をくくるしか、無いのか。
俺は、夜空にぽつぽつと光る、星を見た。
しかし、なんでまた、二人揃って俺、なのかね?
そんなに彼女らに好かれるようなタイプなのか?
この星空の、どれか一つが俺の星で、それが強く、彼女たちを引き寄せているのかもしれないなぁ、などと。
先生に声をかけられるまで、ずいぶんとロマンチックなことを考えていた俺だったが。
「おい、お迎えが来たぞ」
その声で、視線を宇宙(そら)から地上に向けた。
「飯田橋、ずいぶんと待ったぞ」
すらりと背を伸ばす、姿勢正しい音羽弾倉(たくら)と。
「はよう、我らの愛の巣へ戻ろうではないか」
悠然としたたたずまい、威厳すら感じる一ツ橋日曜(ひよ)先輩。
その、二人の美しい女性が、俺を手招きする。
「じゃあ、がんばれよ」
そういって、俺の背中を押す教師。まるで虜囚の引き渡しだ。
そうして訪れる、俺と、二人の女の、初めての夜。
聞きたいか?
だったら、俺が無事に朝を迎えることが出来るよう、祈っておいてくれ。
END OF TEXT
名前がおかしいのは、申し訳ない。変な名前付けるの好きなんでス。
本編、極力主人公とヒロインを接触させないで書いてみました。
おつきあいいただいた方、ありがとうございます。
おや、コメディとして楽しく読めました。続きを期待。
先生苦労人www
おもしろかったです
エロとか萌えどうこうより、とにかく語り口が面白いね。
楽しかった。
続き、新作、どちらでもいいからとにかく期待。
跳躍さんはいつ出ますか?
455 :
450:2007/04/17(火) 09:02:56 ID:MzRO4bkL
日曜の姉、一ツ橋跳躍(はねる)の出番はありません。
(実力は日曜を上回るのだが、妾腹のためグループ傍流)
そのかわり、主人公の妹、飯田橋ひとみは出ます。
(黒幕系素直クール)
読んでくれた人、ありがとうございます。
次回、『素直クールの星輝くとき』はエロがメインですが、萌え表現の修業を頑張りたいです。
…書き手さん、いいセンスだ。
続きを楽しみにさせてもらうよ。
しかし……。担任氏、WW1か2辺りのイギリスもかくやの二枚舌外交だな。
ラーメン一杯では確実にアシが出るぞ、主人公!
GJ!
しかし、素直クールの星輝くときか。
つまりは攫われた主人公を助けるべく弾倉と日曜が協力して素直クールの星作戦を展開するわけだな。
「飯田橋を救うには素直クールの星作戦しかない。貴様の力など死んでも借りたくはないが、そうも言ってられん。
協力してくれるか。」
「それはこちらも同じ事。お主の力を借りるなど末代までの恥だが、飯田橋のためなら敢えてその汚名を被ろうではないか。
……作るぞ、素直クールの星を!!」
ってな感じか。
すらすら読めた。ぐっじょ。エロに期待。
キャラの名前、なんかモトネタあるの?
>>454-455のやりとりみても意味不明なんだけど。
>>455 漫画雑誌じゃね
サンデーとかチャンピオンとか
なるほどな
つーかランス(ry
なるほど
だから弾倉(Magazine)なわけか……
そういや音羽も一ツ橋も飯田橋も所在地だったなw
VIPの保管庫どうしたよ
もう少ししたらSS投下予定です。
「日阪君っ…!」
忘れ物を取りに戻った放課後の教室。
その入り口の戸を開けようとしたところで、日阪明俊(ひさか あきとし)はおよそ信じられないものを目にし、
固まっていた。
下校時間はとうに過ぎ、誰も残っていないはずの教室で、それは行われていた。
「はあっ…! 日阪くんんぅ」
鼻に掛かったような切なげな声を上げ、明俊の名を口にしながら、抱えた体操服に顔を埋めている女子生徒は、
彼の記憶が正しければクラスメイトの雪雨瑞希(ゆきさめ みずき)だ。
入り口の戸に嵌まっているガラス越しに見えるのは、彼女の後ろ姿のみだが、凛とした声と背中の中程まである
綺麗な黒髪、女子高生の平均身長を大きく下回る小柄な体躯が、明俊にその女生徒が瑞希であることを伝えていた。
雪雨瑞希は才色兼備のクールビューティ(友人の吉木に言わせれば、その容姿からクールプリティと呼ぶのが
相応しいらしい)として学校内で有名で、常に無表情で、思った事をはっきり言う性格だが、言葉にトゲや嫌味は
なく、その裏表のない人柄で男子からも女子からも好かれている女の子だ。
当然、男は瑞希を放っておかないが、彼女は次々と申し込まれる交際を全て断っているとの噂だ。
明俊も、告白するなんておこがましいことは出来ないが、彼女は外見も内面もすごく魅力的だと感じていた。
2年になって同じクラスになれた時は、友人とともに喜んだものだ。
別に特別仲良くなれるとも思っていないが、自分好みの可愛い子が同じクラスにいるのはそれだけで嬉しい。
まるで人形のように華奢な身体。白磁器のように滑らかで白い肌。艶やかな黒髪。キリっとした少し太めの眉。
そして整った顔立ち。
どんな相手に対しても常に敬語を使う変わった女の子だが、それは丁寧さというよりも穏やかさが強調され、
彼女の魅力の1つとなっている。と、明俊は評価している。
表情だって、一見無表情だけど、変化に乏しいだけでまったく無感動なわけではないのだ。
彼女の表情からその心情を完全に理解することは出来ないけど、「楽しそうだ」とか「悲しそうだ」ぐらいは
読み取れているような気がする。
さすがに本人に「今楽しいって思ってる?」とか変な確認をしたわけではないが、たぶん合ってるだろうと明俊
は考えている。
その彼女が何故、明俊のものと思われる体操服に顔を埋め、あまつさえ下腹部を机の角(この机も明俊の席だ)
に押し付けているのか、明俊にはさっぱり分からなかった。というよりも、頭がまったく回っていなかった。
目の前で起きているこの状況は、明俊の頭が処理出来るキャパシティを軽くオーバーしている。
とりあえず、教室を間違えた可能性を考慮して視線を上に移すが、そこには2-Cと書かれたプレートが納まって
いた。間違い無く自分の教室だ。
となると、彼女が今、硬く抱き締めている体操服はやはり明俊のもので、自分はそれを取りに戻って来たのだ
けれど「雪雨さん、盛り上がってるところ悪いけど、その体操服を持って帰りたいんだ。返してもらえるかな?」
とか言えるわけなく。
ああ、混乱してるな僕は、と思わず明俊は頭を抱える。
「あぁ…。日阪君気持ちいい…。気持ちいいです」
教室の中では彼女の行為がますます過激になり、普段の彼女からは到底想像出来ないような痴態が繰り広げ
られていた。
彼女は今や、体操服を下敷きに明俊の机に覆いかぶさり、一心不乱に下腹部を机の角に押し付けている。
その激しさに机がガタガタと揺れる。思わず明俊は机の中に入れっぱなしの教科書類が飛び出してしまうんじゃ
無いかと場違いな心配をしてしまう。
「日阪君のが…。ぁはあ! 日阪君の気持ちいっ!」
どちらかと言うと、綺麗よりも可愛いと称される顔を淫らに蕩けさせ、瑞希は自慰に没頭している。
机の角には明俊の体操服が巻き付けられ、瑞希は己の制服のプリーツスカートをめくり、下着越しに擦りつけ
ている。スカートに包まれた小さなお尻が小刻みに上下する。
「んっ、あっ、いい…。いいです…。あぁっ…」
彼女ははぁはぁと息を荒げながら机にしがみつく。お尻の動きが激しさを増し、円を描くような動きに変化
する。
……と、とりあえずこの場から立ち去ろう。
色んな意味でショッキングな光景の前で、いくらか働き始めてた頭が、まともだが無難な対応策をようやく
弾き出す。明俊がそっと引き戸から離れかけた時、感極まったような嬌声が発せられた。
「好き! 好きです日阪君っ!」
明俊は予想だにしなかった言葉にギクリと固まる。次の瞬間、不意に廊下に響いた音で、自分が鞄を取り落と
した事に気付いた。しまった! と思ったのと同時に教室内から聞こえていた彼女の声も机の音もピタリと止む。
水を打ったような静寂に、教室内にいる彼女の緊張が廊下の明俊にも伝わった。
明俊は慌てて鞄を拾い、散らばった中身を素早く掻き集める。拾った中身を満足に鞄に入れる間も惜しんで廊下
を駆け出していた。
* * * * *
慌てて身なりを整えた瑞希が恐る恐る引き戸を開けると、そこにはすでに人の姿は無く、廊下は放課後の
静寂を取り戻していた。
おそらく、誰かに見られてしまったのだろう。自分が自慰に耽る姿を。
はた目には完璧なポーカーフェイスを保っているように見える瑞希だが、内心は後悔と動揺と羞恥心が激し
く渦巻いていた。このまま消えてしまいたい気分とは、まさにこのことだと思った。
図書委員会の仕事で遅くなり、教室に置きっぱなしだった荷物を取りに戻った時、彼の体操服が無造作に机に
置かれているのを見つけた。
想いを寄せる彼の体操服を目にした時、気が付けばそれに吸い寄せられるかのように手に取り、顔を埋めていた。
彼の匂いを胸一杯に吸った後は、もうこの場が教室であることが綺麗に頭から消えていた。
だからって、いくらなんでも教室でシテしまうなんて。瑞希はため息をついた。
思わずその場に座り込んで泣きたい衝動に駆られる。もう、どうしていいか分からず、視線を落としたとき、
それを見つけた。
震える手でそれを拾い、最後のページを確認する。
それ──生徒手帳には日阪明俊の名前が記されていた。
* * * * *
「よう、遅かったな。明俊」
「…やあ、おはよう。吉木」
翌日、いつもより遅い時間に登校してきた明俊は、前の席に座る吉木元春(よしき もとはる)にだるそうに片手を
上げて挨拶を返す。
体が重く、席に着く時に思わず年寄りのようなため息を吐いてしまう。
「なんだ。随分とお疲れだな」
「うん、ちょっとね…」
「先週の中間試験の疲れがまだ取れないのか?」
「そういうんじゃないよ。ちょっと寝不足なだけ」
あくびを噛み殺しつつ、明俊は答える。
昨日、あの後、気がついたら家の前にいた。どんな経路で帰宅したのか全然憶えていなかったが、早鐘のように
鳴る心臓と滝のように流れる汗で、おそらく家までノンストップで走ってきたのだと推測される。手には鞄の中
身を抱えたままだった。
おかげで玄関に入ったとたんに倒れこんで、しばらく起き上がれなかったが、雪雨さんに自分の存在が知られる
前に立ち去る事が出来たに違いない。
あの状況だ。彼女は誰かが自分の痴態を見ていたことには気付いてしまっただろうが、その誰かが僕だとは気付
かれていないだろう。
あの時、雪雨さんは僕のことを好きだと言っていた……ような気がする。気が動転していたので聞き間違いだっ
たのかもしれないが。それよりも彼女のあの痴態が頭から離れない。
毎日学校で会うクラスメイトの、非日常的な行動。
感情の変化や起伏に乏しくて、決して取り乱すなんてことがなさそうな雪雨さんが、まるで発情した動物のよう
に腰を振っていた。
しかも僕の名前を口にしながら、僕の体操服を、僕の机の角に巻き付けて。
あの時はあまりに唐突で、あまりに理解の範疇を超えた光景だったために気が付かなかったが、精巧な人形の
ように可憐な彼女が淫らに乱れる姿は、計り知れないほど催淫的だ。
思い出す度に、下半身に血液が集中しそうになる。
僕だって健康な男子高校生だ。女の子にだって興味あるし、出来ればエッチなことだってしてみたい。
でもさすがに彼女の痴態を思い描いて処理する気にはなれなかった。クラスメイトを想像して、なんて、生々し
すぎるというか、事が終わった後、首を括りたくなるほどの罪悪感が生まれるのは容易に想像が出来た。
一時の自己満足のためにそれはできない。
それにしても、ホントにあの雪雨さんが僕のことを?
僕は、運動神経は人並み、成績も、生物は得意だけど、総合的に中の中といったところ。
まさに平凡を絵に描いたような人間だ。
雪雨さんに好意を持たれる理由はとんと思い当たらないが、ホントにそうだとしたら、もちろん嬉しい。
雪雨さんはちっちゃくて可愛くて、そのくせしっかり者で。クールだけどおしとやかで。
だがあまりに非現実的な昨日の情景に、あの放課後の出来事は夢だったのではないかとすら思ってしまう。
よく考えれば自分と雪雨さんはクラスメイトだと言っても、せいぜい挨拶を交わすぐらいの関係だ。
お互いをよく知らないし、好きとか嫌いとか以前の問題なのではないか。
やはりあれは夢か何かで、百歩譲って夢じゃないにしても、たぶん聞き間違いとか見間違いだったんだろう。
いや、でもでも。
雪雨さんの切なそうな声が耳の奥に、普段のクールさとは打って変わった扇情的な痴態が網膜に、圧倒的な
存在感を持って今なお張り付いて剥がれない。
だとすると、昨日のことはやはり実際に起きたことで。ということは雪雨さんは僕のことを?
と、昨日から延々と繰り返される自問自答に、明俊の思考がループする。
明俊は軽く頭を振って、メビウスの輪のようにループしつつ知恵の輪のようにこんがらがった思考を切り上げる。
この繰り返しで明け方まで眠れなかったんじゃないか…。
それに、いったいどんな顔して彼女と接すればいいのだ。
彼女に僕が覗いていた(恣意的に覗いていたわけでは決してなく、あくまで事故だ)ことがバレなかったの
だから、ごく普通に対応すればいいんだけど、不自然な態度になってしまいそうで怖い。
とにかく、なるべく雪雨さんと接触しないほうが良さそうだなぁと、とりあえず今日の方針を決定する。
明俊は本日何度目かのため息を吐き、何気なく机の端を一瞥する。
そこは昨日、瑞希が下腹部を押し付けていた角だ。明俊の体操服を巻き付けて。下着越しに。一心不乱に。
「──っ!」
顔がカっと赤くなるのを感じる。
今、ごく普通に過ごそうと決めたばかりなのに、何を想像しているんだ僕は。
明俊は眼をきつく瞑り、両方の眉毛を人差し指と親指ではさむように揉んで雑念を振り払う。
「…何をさっきから百面相してるんだ?」
眼を開けて正面を見ると、吉木が呆れたような顔をしていた。
「悩み事なら相談に乗るぞ。女と金以外だけどな」
まさにその女が悩みのタネなんだが、気を使ってくれている友人の言葉に自然と笑みが漏れる。
気を取り戻した明俊は、
「ありがとう。何でもないよ。大丈…」
夫。と言いかけ、二の句を失う。
吉木の脇にいつの間にか雪雨瑞希が佇んでいた。
「おはようございます。日阪君、ちょっといいですか?」
「お、おはよう。雪雨さん。な、なにかな」
普段通りに接しようとしていたのに、急な瑞希の来訪に明俊は気が動転して挙動不振になってしまう。
いつものように穏やかな口調で挨拶をする彼女を見て明俊は、ああ、やっぱり雪雨さん、今日来てたのか。と
今更のように確認する。先ほど教室に入ったときには、彼女の姿を確認するのが怖くて、一目散に自分の席に
着き、周りも極力見ないようにしていたのだ。
「日阪君、体調が悪いんですか?」
そんな明俊の様子を知ってか知らずか、凛としながらもやさしい響きを含んだ瑞希の声が届く。
「あ、いや、たいしたことないよ」
駄目だ、まともに彼女の顔を見ていられない。顔を背けて答える明俊の視界に、ふっと何かがよぎる。
「ちょっと失礼しますね」
ひやりとした感覚が額に生じる。
瑞希が右手を明俊の額に、左手を自分の額に当て、ん〜、と可愛らしく小首をかしげている。
明俊は驚いて声が出ない。
「ん〜…。手じゃ良く分かりませんね。じゃあ、」
さも当然のように行われたそれに、一瞬何が起きたのか分からなかった。
気がついたら目の前に彼女の顔があった。
軽く目を瞑り、お互いの息が掛かる距離。額に感じる体温。
気がつけば、おでことおでこがくっつけられていた。
そう理解した瞬間、明俊は全身の血液がどっと音を立てて顔に集中するのを感じた。
「…あら? 急に熱が…」
「ぉわぁ! だっ、大丈夫大丈夫! なんでもないなんでもない!」
慌てて離れた拍子に、椅子から転げ落ちそうになる。
なんなんだ。なんで今日に限ってこんなに雪雨さんが僕に絡んでくるんだ?
僕と雪雨さんはいつも挨拶を交わすぐらいがせいぜいの、普通のクラスメイトだったはずじゃないか。
普段通りに振る舞おうとしても、こんなことされてはとても平静でいられない。
周りのクラスメイトも何事かと明俊たちの方を伺っている。「瑞希ってば、いつの間に日阪君とあんな仲に
なったの?」とか、女子の声が聞こえる。
明俊は助けを求めるように、前の席の友人に視線を走らせる。おそらく自分の顔は真っ赤になってるだろうが、
そんなことは構っていられなかった。
「あー、平気平気。こいつ、ちょっと寝不足なんだってさ」
明俊の視線を受けて、吉木が助け舟を出す。
持つべきものは友達だ。明俊は思わず感動するが、
「まあ、どうせエロDVDでも徹夜で観てたんだろがなッ!」
「な! ちょっ、おま」
根も葉もないデマを口走る友人に慌てる明俊。ちらりとこちらを見た吉木の目が「なにお前、雪雨さんにこん
な羨ましい事されちゃってるワケ?」と語っていた。この野郎。さっきの優しさは偽りか。
というかエロはまずい。このタイミングでエロネタは、とてつもなくまずい気がする。
「冗談! 冗談だから!」
慌てて取り繕うとする明俊に、さらに追い討ちをかける悪友。
「なんだよ明俊。この前すごくいい女家庭教師モノが見つかったって喜んでたじゃないか」
「なあ!? なんだそれ!」
「とぼけるなよ〜。きれいなおねえさんは好きですかって書いてあるパッケージ向かって、好きですっ!って
宣言してたじゃないか」
「そんなことするか!」
ひそひそと囁きあう声が教室中から聞こえる。女子たちは、日阪君ってそんな人だったの? と眉をしかめ、
男連中は、みんなのアイドル・雪雨さんにあんな羨ましい事してもらったんだから、当然の報いだ、と心の中で
吉木にGJサインを送る。
そんな中、一人だけ冷静に見える瑞希が、明俊の顔をじっと見つめ、
「日阪君は、年上の女性が好みなのですか?」
と訊いてきた。しかも、
「もし良ければ、研究のためにそのDVDを貸して頂きたいのですが」
などとのたまう。
「け、研究!? いやあの、吉木の言うことは冗談だからっ!」
「冗談とは、好みの女性についてですか? それともDVDについてですか?」
「両方っ!」
瑞希の余りにピントがずれた発言に、今まで散々煽っていた吉木も、ざわついていた周りのクラスメイトたちも
言葉を失ってぽかんとしている。
「では、別に年上じゃなきゃ駄目ってわけではないんですね?」
心なしか、問いつめるような表情で聞かれ、明俊は口籠る。
「まあ、その……。はい…」
「それを聞いて安心しました」
何がどう安心したのか分からないが、明俊は、どことなく必死な感じだった瑞希の表情が和らいだように感じた。
「あ、そうでした。肝心な用件を忘れてました」
瑞希は胸の前でパムっと手を合わせると、制服のポケットから黒い手帳を取り出し、明俊に差し出す。
「生徒手帳?」
「ええ、日阪君のですよ。拾ったんです」
「あぁ、ありがとう。いつ落としたんだろ。気付かなかった」
生徒手帳は常に携帯する事を義務付けられているが、所持をチェックする先生も居なかったし、そもそも使用
するタイミングなんてほとんどなかった。
電車通学などで学割の定期券を購入する場合は、駅員に見せる必要があるらしいが、家が徒歩圏内にある明俊
には関係なかった。そもそも、どこにしまっておいたかも忘れていたぐらいだ。
おぼろげに、鞄に入れておいたような気がする、とその程度の存在だった。
そんな様子で生徒手帳を受け取る明俊を見て、瑞希は微かに口元を綻ばせる。
「拾ったのは、昨日ですよ?」
「え?」
「昨日、この教室の前で拾ったんです。放課後に」
「──!」
瑞希が言わんとしている事を理解し、明俊は思わず固まった。瑞希は相変わらず無表情だが、楽しそうに
微笑んでいるようにも見える。
あの時か。明俊は愕然となる。廊下に鞄の中身をまき散らした時、拾い損ねたんだろう。
ということは彼女は──
「それと、これもお返ししますね」
固まった明俊をそのままに、瑞希は紙袋から綺麗に折り畳まれたブルーのジャージを取り出す。学校指定の
体操服で、「2-C 日阪明俊」と書かれた名札が縫い付けられていた。
それを確認し、明俊はさらに固まる。昨日の情景が脳内にフラッシュバックする。
「あ、安心して下さい。ちゃんと洗いましたから。それとも…」
明俊は呆然と瑞希を見上げる。瑞希は淡い微笑みを浮かべながら真直ぐ明俊を見つめている。
「…洗わずに、そのままの方が…、私の染みが、付いたままの方が良かったですか?」
「んなっ!?」
明俊だけに聞こえるように囁かれた言葉に耳を疑った。
いったい何を、いったい何を言っているんだ雪雨さんは。明俊の脳みそは昨日の放課後以上に混乱していた。
口をぱくぱくさせて言葉を失う。
知ってるんだ。彼女は、昨日目撃したのが僕だって知ってるんだ。でもだからって、なんでこんな挑発する
ような事を。
訳が分からず汗だくになっている明俊に、瑞希はさらに囁く。
「とっても、気持ち良かったです。ごちそうさまでした」
「なっ ご、ごちっ!?」
ごちそうさまって…、ごちそうさまって! 明俊は瑞希に自分が見ていたことを知られた事に驚いたが、それ
以上に現在の状況に驚いていた。
だって、なんでこんな。自分が密かにオナニーに使ってたものを、その持ち主にバレてるのを分かった上で、
しししし染みが付いたままの方がだの、気持ちよかっただの、ごちそうさまだの言いながら返しに来れるの
か、この娘は。
しかも皆がいる教室だぞここは。小さな声とはいえ、周りに聞こえたらどうするのか。
自分が思った事を素直に言うとかチャチなもんじゃ断じて無く、もっと恐ろしいものの片鱗を味わった気分で
明俊は瑞希を見つめる。瑞希は相変わらず平然としているが、心なしか、頬にうっすらと赤みがさし、瞳もうる
んでいるように見えた。
バクンと明俊の心臓が大きく波打つ。
そんな顔は反則だ。
そんな顔して自分の痴態を報告してくるなんて、いったい雪雨さんは僕をどうするつもりなのか。
混乱に混乱を重ね、明俊の脳みそのブレーカーは落ちる寸前だ。
その時、教室の戸が勢いよく開いた音で、明俊はぎりぎりで我に帰った。
「ホームルーム始めるぞー。席着けー」
担任が来たことで皆ばたばたと何事も無かったかのように席に戻りはじめる。
「…お話したいことがあります。放課後、図書室でお待ちしています」
瑞希は先ほどと同じように、明俊だけ聞こえるように囁くと、ついっと振り返り自分の席へ戻って行った。
* * * * *
この後は、それはもう散々だった。
瑞希さんが囁いた内容は、幸いにも皆に聞こえてなかったらしく、そこは突っ込まれなかったが、おでこで
熱を測られる等の過剰なスキンシップをネタに、クラスの男からは総スカン喰らうし、女子はなんか面白がって
根掘り葉掘り訊いてくるし、それによってさらに男連中にハブにされるし。
瑞希さんはあれからはいつも通りに戻った。女子に囲まれてなにやら質問攻めにされていたが、のらりくらり
とかわしていたようだった。こちらにちょっかいをかけてくることも無くなったのは、不幸中の幸いだ。逆に、
嵐の前の静けさみたいな感じでそれはそれで不安だったけど、これ以上問題が大きくならなくなったのは助かる。
そんなこんなで放課後。丸一日イジられまくって体力も精神力も尽きる直前の明俊は、重い身体を引きずる
ようにして、朝、瑞希に言われた図書室の前にたどり着く。
体が重い理由は、クラスの皆にイジられたからだけではない。これからいよいよ瑞希と顔を合わせるのだ。
しかも恐らく図書室では二人っきりになってしまうに違いない。中間試験が終わったばかりの今、わざわざ
放課後に図書室を利用する生徒なんて居ないだろう。必然的に明俊と瑞希は二人っきりとなる。
瑞希の、意図が掴みかねる挑発の数々も、明俊の心を乱す。
いったい彼女は何を考えているのか。
…ええい、ここで思い悩んでいても仕方ない。
明俊は意を決して図書室のドアを開けた。
* * * * *
中に入ると、図書室独特の、埃とインクが混じったような匂いが鼻につく。
そういえば図書室に入ったのはいつ以来だろう。少なくとも積極的に利用した記憶は無い。
意外に広い図書館を、明俊が物珍しそうに辺りを見渡しながら奥に進んで行くと、
「良かった。来てくれたんですね」
と、後ろから瑞希に声を掛けられた。
振り向くと、瑞希が部屋の入り口の方から小走りに寄ってくる所だった。
僅かに口元が笑みが浮かんでいる。穏やかな笑顔に明俊の心臓が小さく跳ねる。
…やっぱり可愛い。これで困った行動を取らなければ最高なのに。
「えっと、話って何かな?」
心臓の鼓動を誤魔化すように、努めて平静を保って切り出すが、その直後に自分の質問の馬鹿さ加減に気付く。
何の話って、そんなの決まっている。昨日のことで、今朝の続きだろう。
「日阪君。貴方が好きです。付き合ってもらえませんか?」
瑞希は平然と答える。言い淀む気配は微塵も無い。
明俊はこの展開を予想していたが、緊張で早くも平常心を保つ自信がなくなってきた。
そんな明俊の様子を見て、瑞希は微かにばつが悪そうに微笑む。
「って、昨日聞かれちゃいましたよね?」
「まあ、その……ごめん。盗み聞きするつもりはなかったんだけど…」
明俊は照れくさくなり、思わず顔を背けて頭の後ろを掻く。
「そんな謝らないで下さい。あれは私が悪かったんですから」
瑞希はついっと歩み寄り、明俊を見上げる。
「あんな形で告白しておいてなんですが…。お返事、聞かせて貰えますか?」
明俊は自分の胸くらいに位置している瑞希の顔を見下ろす。
告白をされたのなら、返事をしなければならない。
明俊はその覚悟もしていたが、いざそのターンになると、とても冷静ではいられなかった。
いっぱいいっぱいの明俊は、自分を見つめる瑞希の瞳が不安げに揺れていることに気付かない。
とりあえず明俊は、昨日からの疑問をぶつけてみた。
「…あのさ、なんで僕なの?」
そうだ、これを聞かないと始まらない。
生まれてこの方、女の子から告白なんてされたことが無い。自分の一体どこに彼女は惹かれたのか?
自虐的なセリフになるだろうし、言ってて自分が情けなくなりそうだが、口にしなければならないと思った。
「あの、客観的に見てさ、僕って全然魅力ないような気がするんだ。特別勉強出来るわけでもないし、スポーツも
人並みだし。だから、純粋になんで僕なんかにって思って…」
「そんなことありません。日阪君はとても素敵です。勉強だって、生物の成績は学年トップじゃないですか」
「よ、よく知ってるね。まあ生物だけは得意なんだけど…。というか、雪雨さんみたいな可愛い女の子にそんな事
言われると、無茶苦茶嬉しいんだけどさ、だからこそ、余計になんで? って思っちゃって」
段々自分が何を言ってるのか分からなくなって来た。明俊は顔が熱くなっていくのを感じながらも続ける。
「だから、何が言いたいのかって言うと、凄い失礼なことを承知で言うけど、ホントかなって思っちゃうんだ」
「私の告白が信じられないってことですね?」
「えっと、信じられないと言うか、理由が分からないというか」
「理由は簡単です。日阪君はとっても素敵で優しいからです」
面と向かって言われると照れるが、自分のどの辺が素敵で優しいのか分からない。
「あー、えーと…。ありがとう。嬉しいけど、僕って雪雨さんと余り話とかしたこと無いような気がするんだ。
だから、その…」
瑞希は明俊の方をじっと見つめ、語り出す。
「先週の、生物のテストの時間を憶えてますか?」
「え? 生物の?」
おそらく先週行われた中間試験の事だろう。生物のテストは中間試験の最終日、一時限目に行われた。
「あの時、日阪君は私の体調が悪いみたいだって先生に言ってくれましたよね?」
「あー…」
思わず遠い目をする。確かに言った。
あの日は朝から雪雨さんの体調が悪そうだった。始めは気のせいかな? と思ったけど、表情がいつもより
硬かい気がしたし、顔色もなんだか悪いように見えた。
どうしたんだろう、声かけた方がいいかな? でも勘違いかも知れないしなあ…。そう思った明俊は、彼女と
仲が良い女子が瑞希の異変に気付くのを期待したが、試験直前のこの時間は、みんな教科書や参考書を広げて
最後の詰め込みに忙しそうで、とても気付く気配は無かった。
そうこうしているうちに試験が始まってしまった。明俊は裏返しに配られた問題用紙をめくりながら、瑞希の
様子を盗み見た。瑞希は微かに眉をしかめ、目を辛そうに伏せ、いつもは瑞々しい桃色の唇も、紙のように白く
なっているように見えた。これは本当に体調が悪そうだ。そう思った瞬間に明俊は手を挙げ、先生を呼んでいた。
「憶えててくれました?」
「うん、憶えてる。…でも、それが理由?」
確かに結果的に瑞希は体調が悪いままテストを受ける事態を回避したが、明俊がやった事は瑞希の様子を先生
に伝えただけだ。別に体調を回復させたわけじゃないし、人を好きになる理由としては弱いような気がした。
「でも、私にとっては充分な理由なんです」
瑞希はちょっと自嘲気味に微笑む。
「私って、すごい無表情なんですよね? 自分では普通に表情を変化させてるつもりなんですが、誰もその変化
に気付いてくれないみたいです。でも、貴方は誰も気付かなかった私の体調を見抜いてくれた」
「あの時は、皆周りを見る余裕が無かったから、気付かなかったんじゃないかな? 僕は生物は得意だから少し
余裕あったし。だから瑞希さんの様子に気付いたのかも」
「その気付いてくれたところが嬉しかったんです。たぶん、余裕があっても他の人は気付かなかったと思います。
私の表情を見て、体調とか気分を当てられるの、両親ぐらいなんですよ?」
「そ、そうなんだ」
確かに一見無表情だし、良く見ないと微妙な変化は見逃してしまうだろう。
「僕は雪雨さんのこといつも見てたから、気付いたのかも…」
何げなく言ってから気付いた。何言っちゃってるんだ僕は! 自分の言ったことに気付いて顔がカっとなる。
「そうなんですか? 嬉しいです」
あわあわと慌てる僕をそのままに、瑞希は心底嬉しそうに微笑む。目を微かに細め、口を僅かに綻ばせている
だけだが、明俊には瑞希が心から喜んでいるのが分かった。それが分かって余計に顔に熱がこもる。
「あの時、日阪君が私の事を心配して先生を呼んでくれた時、思ったんです。この人なら、私のこと分かって
もらえるって。本当に理解してもらえるって。それが、貴方を好きになった理由です」
自分で理由を聞いておいて何だが、こうはっきり言われると非常に照れる。明俊の顔はもはや耳まで真っ赤だ。
「なんていうか、その、ありがとう。そんなに好きでいてくれたなんて、思わなかった」
「もう。日阪君って、敏感なのか鈍感なのかどっちなんですか?」
瑞希がちょっと拗ねたように眉根をひそめる。
「昨日、私がしてたことを思い出してもらっても、私がどれだけ貴方のことが好きか、分かってもらえませんか?」
彼女にしては珍しく、恥ずかしそうに目を反らし、最後のほうは小声になりながらも続ける。
「私、日阪君のことを想って、日阪君の体操服を抱き締めながら、日阪君の机で、その…お、オナニーしてたん
ですよ?」
そうだった。いや、忘れた訳ではないが、余りに非日常な光景だったので、それはそれ、これはこれ、みたいな
感じになってしまっていた。
下品な言い方になってしまうが、こうはっきりと「オカズにしてました」と言われると照れるというかなんと言うか。
言った本人も、さすがに恥ずかしいのか「もう。女の子にこんなこと言わせないでください」と冗談めかして責める。
「そ、そんな事言ったって。雪雨さんだって朝、染みだのごちそうさまだの散々僕を挑発してたくせに…」
「だって、日阪君見てたらちょっと困らせたくなったんです」
「な、なんで?」
「だってそうじゃないですか。私の、お、オナニー、見てたのに、知らないふりするんですから。それに、疲れた
ような、困ったような顔で登校してきましたし。私の気持ち知ったはずなのに、そんな態度取られたら不安にな
るじゃないですか」
…ああ、そうか。なんとなく、彼女の気持ちが分かった。
まあ、だからってあんな挑発してこなくてもと思うが、その理由が分かったら、急に彼女が愛おしく見えてきた。
今すぐにでも抱き締めたい衝動に駆られる。
「見ましたよね? 私が日阪君の机にしがみつきながらシテるところ…」
いつの間にか、身体が密着しそうなくらいの至近距離から見上げられていた。
彼女の顔が赤いのは、窓から差し込む夕日の所為だけじゃないような気がする。表情は相変らず変化に乏しいけど
瞳がうるんでいるのがはっきり分かる。今朝のあの顔だ。明俊は熱にうかされたように答える。
「うん、見た。…それで僕のこと好きだって言ってて、びっくりして鞄落としたんだ」
「私も驚きました。つい夢中になっちゃって、教室だっていう事すっかり頭から抜けてて。あの時、すごい後悔した
んですよ? なんでこんなことしたんだろうって」
「雪雨さんも後悔することなんてあるんだ?」
「ありますよ。日阪君、私をなんだと思ってるんですか?」
「ご、ごめん! 雪雨さんて、いつも落ち着いてるから、そういう失敗とかしないって思ってた」
「落ち着いてなんかいませんよ。今だって、すごくドキドキしてます。心臓が破裂しちゃいそう。ほら」
そういって、瑞希は明俊の右手をとって、胸に押し付ける。
「わ! ゆ、雪雨さん!?」
明俊は熱湯に触ってしまったかのような反応で手を引こうとしたが、瑞希は想像以上に強く握っていてそれを阻まれてしまう。
ブレザー越しに胸の感触が明俊に伝わる。華奢で、起伏に乏しいように見えるのに、びっくりするほど柔らくて
右手が硬直したように固まる。
瑞希は明俊の右手を半ば抱き締めながら、さらに身体を寄せる。
「教室でシテるのを誰かに見られたんだってわかった時、ホントに泣きそうになりました。
でも、廊下に日阪君の生徒手帳が落ちてるのを見つけて、凄く、ほっとしたんです。
見られたのが日阪君で良かったって思ったんです。ちょっと変なタイミングですけど、
私の気持ちも伝えられましたし」
瑞希は意を決したかのような顔つきで明俊を見上げ、これ以上ないくらい、はっきりと宣言する。
「日阪君、貴方が好きです。
やさしく笑ってる貴方が好き。
苦手な数学の授業中、ノートに何回も数式を書き直してる貴方が好き。
得意な生物の授業中、真剣な顔で先生の話を聞いている貴方が好き。
今、こうして私の話を聞いてくれている貴方が好き。
貴方を独り占めしたい。もう、どうしようもなく、好きなんです」
明俊は、頭に麻酔が掛かったかのようになっていた。思考がまとまらない。僕はこの娘のどこまでも真直ぐな
告白に、どう答えるべきなんだろうか?
「えっと、」
明俊はカラカラになった喉を無理矢理うるおすように唾を飲み込みむ。
「と、とりあえず、手、放してくれるかな? 落ち着かなくて…」
「答えを聞かせてくれたら、放します」
あっさり却下された。
仕方なく、右手をなるべく意識しないようにしながら、頭を総動員する。
「さっきも言ったけど、すごく嬉しい。こんな僕をそこまで好いてくれてるなんて」
「…私、口下手ですから上手に言えませんけど、本当はもっともっと好きって言いたいんです。
これでも言い足りないくらいなんです」
これ以上言われたら、恥ずかしくてそれこそ何も言えなくなってしまう。
ふと、雪雨さんに抱き締められた右手に何にか違和感を感じた。…震えてる?
よく見ると、彼女の細い肩が微かに震えていた。
雪雨さんも緊張しているんだ。
明俊は一度息を吸い、心を落ち着けると、出来るだけ真剣な表情で瑞希を見つめる。
「あの、雪雨さん、僕は、」
「駄目」
「──え?」
気が付いたら、彼女に首を抱きつかれ、唇を奪われていた。
しっかりと首を固定され、がむしゃらに唇を押し付けられる。
「んっ…はぁ」
脳が溶けそうなくらい情熱的に、唇を重ねられる。
息をつく暇も無い。お互いの口から熱い吐息が漏れ、密着した身体から湯気が登りそうなくらい体温が上昇する。
「ちょっ、雪雨さ、んぅっ」
やっとショックから抜け出した明俊の口は、また問答無用で塞がれる。
無茶苦茶に唇を重ね、吸い、舌を入れ、また重ねる。
息を吸うのも忘れ、酸欠寸前まで唇をむさぼり、やっと離れたときはお互いの顔がべとべとで、明俊は机に
押し倒される形になっていた。
「…私、ずるいですね」
興奮してるのか、酸素が足りないのか、その両方か、瑞希は肩で息をついている。長い黒髪がカーテンのように
垂れ下がり、彼女の顔を隠す。
「雪雨さん…」
同じように息をつきながら、明俊は彼女を呆然と見上げる。お互いの吐息が熱い。
「日阪君に、答えを迫っておきながら、その実、怖くて、その答えを聞きたく無いんです。貴方に拒絶されたら、
私、きっと生きて行けません」
「雪雨さん、僕は、」
「駄目ですっ! 言わないでっ!」
悲鳴じみた声を上げ、瑞希が明俊にしがみつく。瑞希の髪の毛がふわりと明俊の顔をくすぐる。
「こんなこと言われても、迷惑なだけだって分かってます。でも、駄目。貴方の答えが、例え私を受け入れてくれる
ものだとしても、今は怖くて聞けません」
耳もとで聞こえる声が震えている。明俊をきつく抱き締めている細い腕もはっきりと分かるくらい震えている。
まるで羽のように軽い彼女。苦しいくらいきつく抱き締められているのに、酷く頼りない。
どうしようもなく愛おしくて、僕は彼女の背中に手を回していた。
抱き返す瞬間、彼女の肩が息を飲むように震えた。
「日阪君日阪君っ…」
彼女は明俊の肩に顔を埋め、泣いているような声をだす。もしかしたら本当に泣いているのかもしれない。
声を掛けたい衝動を必死に押さえる。今は言葉では無く、態度で示す時だと思った。
出来るだけ優しく、でも自分の気持ちが伝わるように強く、彼女を抱き締める。片手で彼女の髪を撫でる。
* * * * *
どれくらいそうしていただろうか。
すごく長い時間だったような気もするし、ほんの1、2分ぐらいしか経っていないような気もする。
彼女の震えはもう無くなっていた。抱き締めたままだから彼女の表情は分からないけど、落ち着いたように
感じる。
「……大丈夫?」
「はい」
そっと声をかけると、瑞希ははっきりとした声で答える。
明俊は抱き締めていた手を緩め、彼女の肩に手を掛けそっと押し戻そうとする。
「もうちょっと、このままで居させて下さい」
「え? でも」
「駄目ですか? 日阪君の腕の中がとても心地よくて」
瑞希はくりくりと額を明俊の肩口に押し付ける。
明俊とて、このままずっと抱き締めていたかったが、そうも言っていられない。ここは学校の図書室なのだ。
生徒は来ないだろうが、いつ先生が来るか分からない。それに──
「ほら、先生とか来るかも知れないし。ね?」
口では優しく言って聞かせるような調子だが、内心はかなり焦っていた。
昨日の痴態、今朝の挑発、そしてさっきのキス攻勢から現在の密着状態。
女の子との触れあいなんて皆無に近い明俊は、正直、もうどうにかなってしまいそうだった。
肩なんて信じられないくらい薄くて、首筋も腰回りも怖いくらい細いのに、どこまでも柔らかくて。
ふわりと香る髪の毛とか、密着している部分の熱さとか、もう、なんなんだこれは、と。
正直な下半身はすっかり目覚めてしまっている。瑞希は明俊のやや右側から抱きついているため、ズボンの
中で堅くなったそれに気付いていないようだが、ちょっと身体をずらすと接触事故が起きてしまいそうだった。
しかし瑞希はそんな切羽詰まった状態の明俊をさらに追い込む。
「それなら平気です。私は図書委員ですから、先生に今日は図書室の整頓をするって伝えてあります」
「そ、それならなおさら先生が様子見に来るんじゃないの?」
「いえ、鍵は私が預かってますし、図書委員の先生はもう帰られました」
「ええ!?」
そんな無責任な。いいのかそれで?
「よくある事なんですよ。私は1年の時も図書委員でしたから、信頼されてるみたいです」
続けて、彼女はとんでないことを言い出す。
「それに、すでに鍵を掛けてありますし。だから、誰にも邪魔はされません」
「ちょ、いつの間に…」
「日阪君が図書室に入った後、鍵を掛けてから声を掛けたんです」
なんてこった。あの時、入り口のほうから彼女が来たのはそういう訳だったのか。
「誰も、邪魔しに来ませんよ? 日阪君…」
うっとりとした口調で囁きながら、するすると彼女の手が下に降りる。
やばっ、と思った瞬間には彼女の小さな手が僕のに触れていた。
「あら、こんなに…」
キャーーー!と思わず叫びそうになる。僕は彼女を引き剥がし、背を向ける。
「ご、ごめん!」
「どうして謝るんですか?」
「いや、だって」
「私で興奮してくれたんですよね? 嬉しいです」
ぴたりと彼女が僕の背中に抱きつく。手を前にのばし、僕の胸とお腹を抱える。背筋がぞくりと震えた。
「よろしければ、私を使って鎮めて下さい」
「いやその大丈夫! 少し落ち着けばおさまるからっ」
やばいやばい。深呼吸をして落ち着かせようとするが、彼女の手がまた下へ。危なく彼女の手を捕まえて
阻止する。
完全に彼女に腰を後ろから抱えられている状態。思わず引いた腰の後ろ、僕の尻に彼女が下腹部を押し
付けるのを感じた。
雪雨さん、ちょ、駄目だって! もはや声にならない。
「…もう、私が我慢出来そうに無いです。日阪君ので私を鎮めて下さい」
そう言って僕の手を取り、後ろへ引く。ぐちゃりと、お湯を浸したスポンジのような感触が指先に。
同時に「はぁっ…!」と背中にくっついている彼女がぶるぶると震える。そのまま僕の手をぐりぐりと押し
付ける。
ぐちぐちと淫らが水音が図書室に響く。指先に感じるマシュマロのような感触と、つぎつぎと溢れ出す
生暖かい液体が、僕の理性を粉々に砕いた。
「っあ!」
振り返り、彼女の肩を掴んで机に押し倒す。神経が焼き切れそうなくらい頭に血が登っている。
「…雪雨さん、ごめん。もう、止まりそうに無い」
彼女も顔を真っ赤にし、半開きの唇から荒い息が漏れている。目が完全に情欲に染まっていた。
「はい…。
私の初めてをもらって下さい。
私の中に貴方のを下さい。
私の心も身体も貴方のものにして下さい」
……なんて殺し文句。
それに対し、僕は口付けで答えた。
「んっ、ふぁ、ちゅ、んふぅ」
瑞希に覆いかぶさり口を蹂躙する。彼女も明俊の口にむしゃぶりつき、舌で口内をなめ回す。
お互いに舌を絡めあい、涎を啜りあう。悦ばせるためのテクニックなど一切なく、本能的に行動していた。
「は、んぅ、口、日阪君のお口おいしいですっ」
無茶苦茶に唇を吸いたてる。そんなにおいしいなら、と明俊は舌を瑞希の口中にねじ込ませ、だ液を流し
込む。
ズズッ…ジュル…ジュルル……。
瑞希は明俊の頭を抱え、一心不乱に舌を吸う。コクコクと喉を鳴らす度に、頭がとろけそうになる。
「んはぁっ…もう、もう駄目ですっ…!」
組み敷かれた瑞希は、下から腰を浮かせて明俊に押し付ける。腰の奥が疼いて仕方ない。
埋めて欲しい。埋めて欲しい。埋めて欲しい。
腰の奥が空っぽになったかのように寂しく、切なく疼く。
彼のでっばりで、空っぽの部分を埋めて欲しい。
明俊も腰を押し付けている。痛いほどいきり立ったそれは、ズボンを押し上げ、瑞希の下腹部に突き刺さら
んばかりにぐりぐりと押し付ける。
「ひ、日阪君、下さいっ! 私っ、もうっ」
瞳をうるませ、切なそうに眉を寄せて懇願する瑞希を見て、よりいっそう下半身に血液が集中する。
明俊は無遠慮に瑞希のスカートに手を突っ込み、下着に乱暴にずり下げる。
もはや下着として機能しない程にびしょびしょに濡れたショーツが、くるくると丸まる。
明俊は震える手でベルトを外し、ズボンと一緒に下着も降ろす。弾かれたようにガチガチに堅くなった
陰茎が飛び出した。
これが日阪君の…。ボーとした頭で瑞希は見つめる。
びくびくと痙攣し、雄々しくそそり立つそれが、これから自分の中に入ってくると思うと、腰の奥が
ぞくぞくする。お腹の中から温かいものがトロトロと流れてくるのを感じ、自然に息が荒くなる。
明俊も息を荒くし、瑞希の足を広げさせ、腰を掴む。…いいよね? 入れるよ雪雨さん。
明俊は確認を取るように瑞希を見つめる。瑞希は壊れたようにガクガクとうなずく。はしたなく浮かせた
腰から、とめどなく愛液が滴る。
それっ! 日阪君のそれ下さい! もう私もう! 極度の興奮で声が出ない。犬のようにはっはっと
荒い息をあげる事しか出来ない。
くちっ…と、ドロドロにぬかるんだ割れ目に自分のものをあてがい、明俊はゆっくりと腰を進ませる。
トロトロに溶けた熱い肉壷に自分のが入って行く。ぎゅうぎゅうに締め付けながらも柔らかく収縮する
感触に腰がぞくぞくっと震える。女の子の中がこんなに熱いとは思わなかった。
「うくっ…! 雪雨さんすごい…」
明俊は未知の快感に思わず声を出す。
「日阪君のすごいですっ! 広げてっ! 熱くてっ!」
瑞希の方も未体験の快感に身悶える。信じられないほど硬化した肉棒が自分の中に侵入してくる。
狭いところを無理矢理広げ、その度に内面の襞が擦られる感触で腰がびくびくと跳ねる。
バツンッと何かが弾けた。
「ああああああああああ!!!」
破瓜の痛みに絶叫し、瑞希が仰け反る。ぎゅうっと物凄い締め付けが明俊を襲う。
「雪雨さん、入ったよ…全部」
「は…はい…」
身を引き裂かれるような痛みが走るが、それ以上に喜びの方が大きかった。
日阪君のが、自分のナカに入ってる。その事実が瑞希をさらなる興奮へ導く。
空っぽの部分がぴったりと満たされる。
まるで元から1つであったかのような充実感。
入ってる。彼のが。私の一番深いところに。
すごい、腰、あ、え、中、熱、浮くッ! 浮いちゃうッ! なにこれッ! なにこれぇ!
「あ!?、ああ、あああああああーーーーー! あーーーーーーー!!」
腰の中心から発生した凄まじい浮遊感が、熱いドロドロの津波となって尾てい骨を突き抜け、脊髄を走り
四肢の末端まで疾走する。
瑞希は一気に絶頂に登りつめた。手足をぴんと伸ばし、背骨が折れそうなくらい仰け反る。
バイバイさるさんになりました…。
残りはまた後程アップします。
素直クールは難しいな。
ちょwwここでかよww
個人的には、のけぞりそうな位のインハイって感じだな。
これは彼女の素質が覗かれたことで開花したと思っていい?
まだ途中だがGJ!
なめらかで読みやすい文だった。
雪雨さんかわいいし(染みとかごちそうさまあたりのセリフがエロかわいくて最高)、
それにも増して主人公のうぶな男子高校生っぷりがすごくうまく書かれてると感じた。
素直クールというにはクール分が足りない気もするけど。
続き待ってます。
さるさん規制っていつのまにか20レスになってたんだな……
「雪雨さん!? うわわっ」
瑞希の尋常では無い反応に、一瞬焦るが、次は自分が慌てる番だった。
己の棒にみっちりと絡み付いた襞が、突如として不規則に収縮する。
さらにまるで蠕動運動のように、陰茎の根元から先端に向けてぎゅうぎゅうと引き込まれる。
骨盤が引き抜かれそうな感覚に襲われ、陰嚢の裏がきゅっと引きつる。
「っううう!!!」
凄まじい快感にたまらず爆発する。
熱い塊が精道を削りながら弾丸のように飛び出る。
尾てい骨を直接いじられているような感覚が全身に走り、足の筋肉が吊りそうなほど硬直する。
「うッ! ぐッ!」
2度、3度と大きな波が腰を中心に広がり、その度に精道を削って熱いものが排出される。
ばしゃばしゃと音がしそうなほどの勢いで、精液が瑞希の子宮を叩く。
「あーッ! あーッ! あーッ! あーッ!」
瑞希はビクンビクンと引き付けを起こしたかのように震えながら絶叫する。
絶頂を向かえ、敏感になったところへ熱い塊が容赦なく叩きつけられた事で、また弾ける。
止めどなく送り込まれる快感の電気信号に、頭がどうにかなりそうだった。
「くッはあっ…!」
目の奥がちかちかするほどの射精感が過ぎ去り、明俊は力一杯食いしばっていた歯を解放する。
ただ一度の射精なのに、精嚢が空っぽになった気がした。
「…雪雨さん、大丈夫?」
「はっ…はい…。だいじょ……ぶ、です…」
瑞希は時折ぴくぴくと痙攣しながらも健気にもうなずく。
長い黒髪が机に乱れて広がり、涎と涙でべとべとの顔にも幾筋か張り付いている。
首筋まで真っ赤に染まり、荒い呼吸に胸が上下する。
「あたまが…どうにかなっちゃうかと思いました…」
「うん…。僕も…」
未だ繋がったまま、明俊は身体を倒して瑞希と唇を合わせる。
ついばむようなキス。瑞希は明俊の首に手を回し、もっともっととキスをせがむ。
「んっ、ちゅ、んぅ…」
ぴちゃぴちゃとお互いの唇をついばみ、吸い付く。
「日阪君…」
「なに?」
鼻と鼻の頭がつっくきそうなくらいの至近距離で見つめあう。
「まだ、大きいままですね」
「あー……うん」
あれだけの精を吐き出してなお、明俊のペニスは堅さを失っていなかった。
瑞希がくすくすといたずらっぽく笑う。
「私のナカ、こんなにたぷたぷにしておいて、まだ出し足りないんですか?」
明俊の顔がかぁっと赤くなる。
思わず視線を反らせた明俊に、瑞希は囁きかける。
「いいですよ。私ももっと欲しいですから…」
ぞくり、と明俊の背筋を何かが走り抜ける。
「あッ、ナカで大きく!?」
「行くよ、雪雨さんッ! 動かすからね!」
「はいっ! たくさん動いて、たくさん出して下さいっ…!」
じゅぶじゅぶと音を立て、熱くたぎった肉棒が初々しい花びらを掻き混ぜる。
激しい腰の動きに、精液と愛液と少し血の混じった液体が、結合部から飛び散る。
「うあ、すご…!」
ギチギチに締め付けながらも熱くとろける膣内が、明俊のものにグネグネと絡み付く。
押し込む度にぷりぷりした襞が敏感な先端を包み込みながら擦れ、引き抜く度に腰ごと持っていかれ
そうな吸引が発生する。
「あぁぁッ、あぁ、すごいっです! ナカ、擦れて! はぁッ!」
腰を打ち付けられる度に子宮を突き上げられ、ズルッと引き出される度にカリ首で肉襞をこそぎ取ら
れる。瑞希は初体験とは思えないほどの快楽によがり狂った。
「そこっ、そこイイ! 気持ちいい! あーッ! あーッ!」
瑞希はガクガクと身体を痙攣させ、不馴れな快感に耐える。
小さな身体を目一杯仰け反らせて乱れる彼女を見て、明俊がさらに強く深く腰を打ち付ける。
「あッ! あーーッ! そんな、駄目ッ! ゃあッ!」
全身を襲う快感に、瑞希が助けを求めるように明俊を見る。その顔は快楽に蕩けきっている。
明俊はたまらなくなり、瑞希を抱き締め、唇を吸う。
「んッ! はッ! んぅんッ」
華奢な身体をきつく抱き締め、無茶苦茶に唇を嬲る。
身体を起こして対面座位の形となり、明俊は瑞希を上下に揺さぶる。
「か、はッ! う、ふぅう!」
瑞希は容赦なく子宮口を突き立てられ、喉の奥まで衝撃が伝わり、苦しそうに息を吐く。
子宮口を突かれる苦しさは、程なく快感へと変わり、愉悦の声を上げ始める。
「あッ、ひぁあッ! 気持ちいいッ! 気持ちいいッ! 奥、来て! すごいよぅ!」
小さな身体をくねらせ、瑞希は自ら腰を振っていた。
「日阪君ッ! 日阪君ッ! 日阪君ッ!」
桃色の唇から涎を垂らしながら、自分が感じるポイントに明俊のペニスが当たるように腰をくねらせる。
がくがくがくがくと無茶苦茶に腰を動かし、整った顔が淫らに歪む。
ちっちゃくて、華奢で、人形みたいに可憐な瑞希が、快楽を貪るべく貪欲に腰を振る姿に、明俊は
頭のどこかで何かが切れる音が聞こえた。
「んあッ は、あ! イッ、イキそ、です! 私、もおッ!」
「僕も、あと少しでッ…!」
瑞希の声が1オクターブ上がり、悲鳴のような嬌声を上げる。
「お願い、一緒にッ! 一緒にぃッ! ひあ! あッ!」
「雪雨さんッ! 雪雨さんッ!」
ぐちゃぐちゃと結合部が泡立ち、溢れる愛液がボタボタと床や机に落ちる。
「あッ、あッ! もッ、もう駄目来ちゃうお願い一緒に」
切羽詰まった声を上げ、頭を振り乱して快楽に耐える。
「イクよッ! イクよッ!」
「好きッ! 日阪君大好きッ! あぁイクッ!」
「僕も好きだ! うっ! ぐ…!!」
「あッ! あッー! イクッ、イキますッ! あ! あーッ! ああああーーーーー!!!」
ビューッ! ビューッ! と堰を切って精液がほとばしる。
明俊は瑞希をきつく抱き締め、下半身ごとめり込ませるように腰を押し付ける。
「あっ♪ はあ♪ ナカ、出て。気持ち良いです…」
瑞希は白い喉をさらして、かたかたと震える。
愛しい人に注がれる幸せを感じて、瑞希は目を閉じる。
口を半開きにし、伏せた睫を震わせている雪雨さんの顔を見ると、劣情が再沸騰する。
僕のはまだ萎えていない。もっと擦り付けたい。もっとめり込ませたい。
彼女の細い腰を支え、上下に揺さぶる。
「ぇ!? やッ! 日阪君駄目ッ!」
水音を立てピストン運動をすると同時に、どぼどぼと接合部から精液が溢れる。
二人の間に精臭が立ち上り、頭の芯が痺れたような感覚を覚える。
「駄目ですッ! や、やあ! ひあッ! あーーーーッ! もおらめぇ!」
* * * * *
「…えーと、大丈夫? 雪雨さん」
その後、さらにもう1戦交えた僕達は、文字通り精魂使い果たした。
あちこちに体液が飛び散り、あたり一面に精臭が漂っている。
これからの後始末を考えると、気が滅入る光景だ。
「腰が抜けて、立てそうにないです」
彼女はぺたんと床に座り込んだまま立ち上がれないでいる。
「鎮めて欲しいと言ったのは私ですが、足腰立たなくなるまでされるとは思いませんでした」
「ご、ごめん。その、なんか止まらなくて…」
差し出した手に掴まって、瑞希さんがよろよろと立ち上がる。
「日阪君は、ケダモノですね」
「うう…」
反論出来ない…。
雪雨さんは僕に寄り掛かると、下から顔を覗き込むように見上げる。
「でも、とても素敵な体験でした。またして下さいね」
彼女の見とれてしまうほど可愛い笑顔を見て、ケダモノでもいいや、と僕は思った。
終わり
途中切れてしまって失礼しました。
以上でございます。
読んで頂いた方、ありがとうございます。
>>487 ヒロインは始めから純粋な素直クールのつもりだったんですが、
なるべく早くエロに持って行きたかったのと、
私の好みで、エロい言葉攻めをして欲しかったのとで、
肝心なクールさが薄れてしまいました。
私情に走り過ぎましたw
>>488 ありがとうございます。
御指摘の通り、クール分が足りません…。
もうちょっと良いバランスを模索してみます(`・ω・´)
>>493 私は君が大好きだ
英語に書き換えるとI love you.なのだよ!!
確かに若干ではあるがクールが足りなかったがこれはこれで
アリだから色んな素直クールを書き続けて頂きたい…少なくとも腱鞘(ry
だからここに敬意を評してこの言葉を言おうGJだ!!
エロイ上に憎いほどに素直クール!
やっていきなり終わっちゃうのがちょっと寂しいくらいGJ
後日談というかエピローグが読みたい希ガス
気が向いたらヨロ
GJです!
付き合った後の二人も読んでみたいです!
GJ以外に言葉が見つからない自分が憎い…!!
「・・・ふむ、なるほどな」
彼女は、ちり、ちりとマウスのホイールを下げ、モニタに新しい行が現れるたびに感嘆しつつその文字を読みふけった。
「自慰を見せつけ、相手の興味を一気に跳ね上げる方法か」
やがて訪れた投稿の果て、結ばれた二人の結末に満足しつつ、彼女は席を立つ。
「なかなかいい。GJだ。その手口、いただくぞ?」
そして彼女は、さてどんなシチュエーションで見せつけてやろうか、などとその光景を夢想しつつ、タンスの中からお気に入りのショーツを選び出したのだった。
つうわけで、GJですた!
>>498 ノーパンでPCしている光景を想像して抜いた
>>493 ありとあらゆる意味をこめて送ろう
GJ!!
良い作品をありがとう
乙!!
450です。
参考までにおたずねしたいのですが、前に投下した『素直クールの星の下に』って、長かったですか?
次の分、結構長くなりそうなので、貯めて一気に投下するか、前後編くらいに分割して投下した方がいいか迷ってるんですが。
たぶん、全部で30kbを軽く越えそうなので。
保守
>>501 俺はあの長さでも問題ないけど…
続きが気になるw
読む人はちゃんと読む。読まない人は読まない。
YOU投下しちゃいなYo
>>501 かなり長くても問題ないくらい、文章に引っ張る力があるように感じた。
少なくとも自分はどれだけ長くても読むよ。
>>501 書いてると聞いたら少しでもいいから読みたいと思うのが住人のSAGA
450です。
きりの良いところまでまとまったら投下しますです。
まとめサイトのリンクがおかしいような…
ああ、下の三つね。悪い悪い。
思いつくまま書き進めると冗長になってしまうのは、今後の改善点。
修行なので、いろいろと試行しながら書いてます。
とりあえず3分割して、本日は前編を投下します。
エロは中編、後編に。こちらはGW投下。
お暇な方はおつきあいを。
父よ、母よ、妹よ。
気持ちは分かるが、まぁそんなに緊張するな。
なに、取って喰われたりはしない。
むしろ、喰われるのは俺だからな。
豪勢な高級住宅街に、しょんぼりと建つ一戸建て、それが我が家。
その我が家の応接間兼居間におかれた大きな卓袱台。その側に2枚の座布団が敷かれた。
そこに、俺の父と母が座る。
上座だ。
仮にもホストのくせに。
俺の父。しがないサラリーマン。
俺の母。しがないサラリーマンの妻。
その、俺の両親がもてなそうとするのを押し切って、逆に上座へ座らせたのは、客である二人の女の子。
「義父様(おとうさま)、義母様(おかあさま)、このような時間にお邪魔して、申し訳ない」
「義父上(ちちうえ)、義母上(ははうえ)、そのように固くならず、楽になさってくだされ」
たとえば漫画の吹き出しを見るような。俺には、そんな風にセリフの漢字を読みとる能力はない。
だが、分かるぞ。
君ら、『義』をつけたな、『義理』の『義』を!
しかもわずかに、目尻を下げ、口元を綻ばせて。
そんなに嬉しいのか、ヒトの両親に『義』を付けて呼ぶのが!?
彼女らのそんな『語気』を、緊張のために全く気付かないで居た俺の両親は、ある意味幸せだ。
彼女らの言葉など、深く噛み締めるまもなく右から左に通り過ぎていくだろうからな。
俺? 俺か、俺は、どうなんだろうなぁ。
なまじ冷静でいられる分、いろいろと損をしているような気がする。
卓袱台を挟んだ下座側、右側に音羽弾倉(おとわ たくら)が座る。
まるで、『リターンマン(帰還者)』とかの二つ名を持っていそうな、歴戦の傭兵ライクな彼女。ソファーに座る姿も
また、背筋を伸し、姿勢がよい。『一本、芯の通った』とは、彼女のための言葉か? 背中にまっすぐな梁が埋め
込まれてそうだもんな。
制服のブレザーの袂を窮屈そうに押し上げる胸、細くくびれた腰、柔らかそうに丸みを帯びた尻、と、高校生なが
らすでに『おんな』の身体を持つ。やはり金持ちは、毎日フォアグラとかキャビアとか喰ってるからこんな凄い身体
をゲットできるのか?
そして左側に、一ツ橋日曜(ひとつばし ひよ)が座る。
現代風な制服のブレザーを着てはいるのだが、中身はまごうことなき『サムライ』だ。
肩の力を抜き、物腰も柔らかな自然体の彼女、しかしそれでも見る人を威圧してしまう。それは、『おんな』という
鞘の内に納められた日本刀の真剣を、弱者の本能が感じ取ってしまうからなのかもしれない。なんてな。
胸の大きさこそ音羽に引けを取るものの、それで女性としての魅力が削がれた、なんてことはない。むしろ、その
繊細なバランスは、女性らしい儚さで見るものを惹き付ける。俺も常々興味を持って観察しているくらいだ。
その細い四肢のどこに、あれほどの剣技を振るう膂力があるのか。まぁ、知ったら知ったで、知らなければ良かっ
たと後悔しそうな気もするが。
そしてその真ん中、極上の女に挟まれて、俺が座る。
・・・どうしてだろうな?
最初に俺は、君らが上座だ、と座布団を促したのだが、二人はきっぱりそれを断った。一ツ橋先輩も音羽も、目上
の者を下座に座らせるわけにはいかない、と断固として譲らない。恐縮が緊張して畏まってしまった俺の両親は、
促されるままその場所に座ってしまった。俺の父は万年課長職で、彼女たちの背後に控える2大財団のプレッシャー
に、完全に呑まれていたのだ。まぁ、しかたないだろう。親父の小物っぷりは、自他共に認めるところだからなぁ。
そして問題の二人は、下座に腰を落ち着けたものの、それでも仲良く、とはいかなかった。表立った諍いこそする
様子もないが、お互いを認めない、というオーラが漂う、一触即発的な雰囲気。少しの間隔をあけて座る彼女たち。
俺は、先の読めない不安を心の棚の奥に仕舞い込む。
先ほどラーメン屋で行われた担任教師との面談において、いろいろと頭の痛い事実と、胃痛を伴う『宿題』を、
『教育的指導』された。
一ツ橋先輩と音羽、この二人が俺のことを好きだ、という宣言を行ったのは、もちろん告白された本人だから
知っている。そのときは、俺が失恋の直後であったため、丁重にお断りした。
そして今日、俺がいないところで学校を巻き込んでの大喧嘩をした二人は、教師との面談に置いてそれぞれ
が同じような結論に辿り着いたらしい。
先輩と音羽、二人がそれぞれ俺とセックスをして、そのパートナーとしての優劣を俺に選ばせよう、と。
非常に傍迷惑だ。
いや、正直に言ってしまえば、男として彼女たちのような極上の女を抱けるのは、嬉しいことだ。だが、ここで
彼女たちを抱いたとして、その後に彼女たちから二者択一を迫られることになる。
一ツ橋先輩と音羽、どっちがいいのか?
まだ二人と身体を重ねてもいない俺だって、その問いがどういう質のものであるかくらいは想像できる。
どっちと答えても、決して丸く収まらない。
先生が言ったような、学園の経営だとか援助金がどうだとか、そんなことはどうでも良い。
単純に、俺が片方を選んだとき、選ばれなかったもう片方がどんな行動をとるのか?
今日発生した乱闘騒ぎを引き合いに出すまでもなく、恐ろしいことが起こるんじゃないかと言うことは容易に
想像できる。主に俺を中心にして。
極端な話、選ばれなかった方が選ばれた方の命を奪うようなことが起こるかもしれない。
・・・我ながら、「極端な話」がそうあり得ない話に思えない辺りが空恐ろしいのだが。
で、俺がやらなきゃいけないこと。
担任の新島先生からも言われたし、俺ももうこれしかない、思い浮かばない。
二人を、仲良く同時に俺の女にする。
・・・・・・言った後でナンなんだけど、これほど前途多難荒唐無稽な話はない。
そんな、ちょっとした過去のおさらいと方針の明確化を頭の中で行った後、俺も卓袱台の脇に座る。ちょうど
俺の両親と先輩、音羽達の間、両者を取り持つような位置なのだが、座ったとたん睨まれた。
「「飯田橋」」
二人同時に声が出た。
先輩と音羽は、そのあとは視線の力だけで俺の腰を浮かせ、俺を二人の間に招いく。有無を言わせぬその
瞳の力に、俺は渋々その場所・・・間をあけて座る二人の間に、座を移すことにした。
ぎゅ、と。
俺が座ると同時に、二人が、左右からそれぞれ俺の手を握ってきた。なんだかんだで緊張しているのか? とも
思ったが、二人とも、そんなタマではあるまい。ただ単に、俺を挟んだ隣のライバルに対する牽制なのだろう。
一つの卓袱台に、5人の人間。
えらく微妙な雰囲気。
そしてここに+1。
「兄様、お茶が入りましたわ」
ことり、と最初に、俺の前に置かれる湯飲み。いや普通、客から最初に置くものだろう、妹さん。
一応紹介しとく。
これが、俺の妹、飯田橋ひとみ。
俺の通う学校の一年生。背も低く、まだまだ子供体型なのだが、これでも一応高校生だ。電車に乗るのも大人
料金がいる。ちなみに、胸は無い。小さい、というより、無い。女性としての胸ではなく、少年の胸だ。おまけに
ショートカットなものだから、少年と間違われてもしかたがない。それがいやなのか、スカートなどの少女らしい
衣服でフォロー。おかげで、どう見ても女装少年だった。
「で、こちらのお客様は、いつお帰りですか?」
じろり、と俺の隣の二名を睨む我が妹。
ひとみは昔から俺に良く懐いている、いわゆる『お兄ちゃんっ娘』というヤツだ。
言葉を喋るようになって初めて呼んだ人の名前は、パパでもママでもなく「にーちゃ(兄ちゃん)」だったし、
幼稚園児とは思えない画力で写実的に描かれた「家族の絵」のモデルは俺だった。
小学校で始めた書道では、「兄様」の二文字で県のコンクールに表彰され、6年生の時に製作したブロンズの
「兄様像」は、多くの大人を押しのけて有名な賞を受賞したこともある。
と、ここまではごく普通の、仲の良い兄妹といったところなんだが、中学生にあがった辺りからひとみは俺に、
『女』としてのアプローチをし始めた。
ある日いきなり「兄様、お慕いしております」と宣言したかと思えば、素っ裸で俺の布団の中に潜り込んできたり、
全裸で俺の背中を流しに風呂場に乱入してきたり(それまではスク水着用だった)、いつの間にか俺のお気に
入りのビニ本(古い言い方で失礼)をお手製のランジェリー写真集(自分がモデルをしてがんばった)にすり替え
たりと、困った行動が目立つようになった。
それをなんとか宥めながら上手く兄妹を続けてきたわけだ。
そして今のひとみは、俺が女の客を連れてきたもんでご機嫌が斜めになってるようだ。
「我が家はこれから夕食なので、早々にお引き取り願いたいのですが」
すまんひとみよ、俺はたった今、担任教師にラーメン奢って貰った。俺がそういうと、兄様は黙っててください、と
冷めた瞳で一括された。
そんな兄と妹のやりとりの後、俺の左側に座る一ツ橋日曜先輩が口を開いた。
「飯田橋ひとみ・・・いや、十二神将の一、毘羯羅大将(びからたいしょう)よ、なぜ貴様がここにおるのじゃ?」
「特別夜間修練ですか。そんなものを真に受けて、私がノコノコ兄様から離れるとでも? 見くびらないでくださいな」
俺とは別世界の会話なので、詳細は割愛するが、剣道部においてひとみは俺よりも強いので、下級生ながら
十二神将とやらに抜擢された。兄として、妹よりも弱いのはいささか癪なのだが、まぁこの辺りは実力の世界、
仕方がない。ひとみ曰く、兄様をお守りするために兄様より強くなるのは当然のこと、なのだそうで。やれやれ、
逆だろ、普通。
「己の都合のために部を動かすとは、意外と姑息なことをなさるのですね、主将」
「使えるときに使わずして、なんのための権力じゃ。不服なればとっとと部を抜けるがよい」
「私が部を辞めれば、それこそ兄様をお守りすることが叶わなくなります。鬼の前に贄(にえ)を置き去りにする
ことなど、出来るわけありませんから」
「・・・なれば、なんとする?」
「実力行使で」
「よかろ」
ちょ、ちょいまておまえら!
俺は、何となく静観していた二人のやりとりを、あわてて制止した。
どういう経緯か、部のややこしい力関係の理解を放棄した俺には分からなかったのだが、ひとみが部活の仕事
をさぼってここにいることを先輩が咎めて、辞める辞めないの喧嘩になっているらしい。たぶん。
「案ずるでない、拙者とて義妹(いもうと)殿に手をあげるような真似はせぬ」
先輩は俺にそう断ってから、席を立ちひとみと居間を出ていった。またなんか『義』が付いてたような気がするが、
そんなことよりひとみが心配だ。俺の手を離して出ていった先輩を追いかけようと席を立ちかけたが、俺の右隣に
座る音羽が握る手の力を強めて引き留める。
「飯田橋、お前は行かなくてもいい」
音羽は、俺を見ないままそういうと、懐からなにやら封筒を取り出した。そしてそれを卓袱台の上に置き、
そのままつい、と上座の両親に差し出した。
「義父様、義母様には尽きぬ感謝の気持ちがございますが、ひとまずはこれをお納め下さい」
ガチガチに固まったロボットのような挙動で親父が封筒を取る。中の紙きれを取り出すと、そこには温泉旅館
御招待券の文字が。
「本当のプレゼントは、十月十日後にお見せできるかとは思いますが」
おいおい。
「たまにはご夫婦水入らずで、温泉などはいかがでしょうか? 幸いにも、今日は金曜日。明日、明後日と、
ごゆっくり疲れお落としてください。家の外に車を待たせてありますので、すぐにでも出発できます」
音羽がそういうのを両親は、顔を見合わせ思案していたようだが、彼女に、ぜひ、と強く勧められ、反射するように頷いた。
それから後は、何とも手際良く、追い立てられるように親父達は家を出て温泉に出発。
ちょうどそれと入れ替わるように、先輩が帰ってきた。
「あやつには、良く言い聞かせて承伏させた故、邪魔することもあるまい」
もちろん一人だった。俺がひとみはどうしたのかを聞くと、先輩はふいと目を逸らし、部活に向かったと答える。
いまいち納得できずに、少し問いつめたところ、一ツ橋先輩はやや面倒臭さそうに応じた。
「『氣』を当てて眠って貰った。なに、大事にはならん」
なにその超・武術用語!!
あまり俺の理解できない世界の理論で話を解決しないで欲しいのだが。
まぁ、本気で妹をどうこうするような人ではないと信じよう。
そしてようやく、この居間には俺と、一ツ橋先輩と、音羽だけの3人きりになった。
俺は意を決して彼女たち二人に、部屋に行こうか、と声をかけた。
しかし、一ツ橋先輩と音羽は動こうとしない。
なんで?
俺は、差し障りのない言葉を選んで、二人に尋ねた。
あー、もしかして、ここでするの? と。
「飯田橋、おぬしが望むなら、それでも良いがの」
「それよりもまず、2つほど提案があるのだ」
そして二人は、俺に言った。
「まず、飯田橋、お前のことを名前で呼んでも良いか?」
へ? ・・・ああ、そんなこと?
べつにいいよ、と俺は普通に答えた。部活なんかでも、先輩は妹のことを『ひとみ』と呼んで区別するくせに、
俺のことを下の名前で呼んだことはないし。
俺のその答えを聞き、二人は心なしか嬉しそうだった。
さらに続いての提案。
「拙者のことは、日曜(ひよ)と呼べ。いつまでも堅苦しい呼ばれ方をするのは好かんからの」
「私のことは、弾倉(たくら)で良い。学校にも、他に音羽を名乗るものも数名いるからな、紛らわしくないように
しておきたい」
弾倉はともかく部活の先輩、主将に呼び捨てはまずいだろ、先輩は付けるぞ? 俺はそう返したのだが、先輩は
断固として譲らなかった。
「部活では、今まで通りでもかまわん。じゃが、それ以外では許さんからな」
仕方がない、相手がそういうならば従おうか。変にこだわる所じゃないからな。
俺が了承すると、二人は、なにやら俺のことをきつく睨み付けた。
ええ!? 俺、素直に了承したのに!
俺のそんな動揺を後目に、二人は表情も険しく、俺を睨みながら話し出した。
「では、呼ぶぞ・・・・・・お、王者くん」
「拙者もだ・・・・・・お、おう、王者どの」
俺の名前、飯田橋王者(いいだばし おうじゃ)は、変な名前だ。さぞ呼びにくかろう。二人がどもっているのも
そのためか。まぁそのうち慣れてくれるさ。慣れれば、『おーじゃ』とか気軽に呼んでくれるだろう。
さて、俺も呼び返すか。
たくら、ひよ、・・・・・・これで良いか?
俺が気軽にそういうと、二人はものすごい呆然とした表情。
言い方、ヘンだった?
俺がそういって、じゃあどう言い直そうかと思案していると、二人にものすごい勢いで手を掴まれた。
「い、いや、それでいい」
「ああ、ほれ、もっと呼んでみい」
なんなんだ、いったい。
俺は二人に請われるまま、たくら、ひよ、たくら、ひよ、と名前を呼んだ。
「やはり良いな、お互い名前を呼び合う仲というのは」
「そうじゃの、これぞ恋仲、といったところじゃ」
むふー、と鼻息も荒く満足した二人。
そ、そういうことか。
危うく俺、朴念仁になるところだったな、気を付けよう。
俺の家族に『義』を付けたりするような厚かましさはわかりやすいんだけどな。俺もまだまだだぜ。
・・・にしてもあれだな、こうしていると、けっこう仲良いよな、二人。
さて、提案とやらも無事円満に解決したことだし、早く部屋に行こう。俺はまだ、学校の制服姿で、鞄すら部屋に
持ち帰ってはいない。ラーメン屋からの帰途、二人に連行されたまま居間に直行したからだ。
ひよ、たくら、そろそろ俺の部屋に行こうか?
厚かましいのか気安いのか、おそらくそのどちらもの性分を併せ持つ俺だから、もう二人を名前で呼ぶことに
抵抗はない。ごく自然にそう呼び、二人を誘う。
そんな俺の言葉に二人、
「・・・・・・ああっ、いく、いくぞ、いかいでか!!」
「・・・・・・そ、そうじゃ、ぐずぐずしておれん、いくぞ!」
一瞬の放心の後、慌てて首を縦に振った。なんか、呆気にとられたような顔をしてたのは、俺の順応性に呆れ
たからか?
そして彼女たちは急いで、俺の手を引き、部屋に向かって歩き出した。
つか、俺の部屋、なんで知ってるんだ?
俺は、自分の部屋に入った。
違和感。
具体的に言うと、なんか部屋が、綺麗になっている。
そこいらに放り出して置いた漫画雑誌や、ベッドに脱ぎ捨てた俺の服などが見あたらず、きちんと手入れされている。
あれ!? なんか、壁紙も綺麗に、新しくなってるぞ!?
違和感から、嫌な確信へ。
俺は二人に、俺の部屋に入ったのか? と聞いてみる。
すると彼女ら、同時にこくりと頷いた。
何をした?!
俺が、けっこう真剣にそう問いつめると、二人はややばつが悪そうに、スマン、スマヌと謝った後、
「こいつが、素直に私の銃弾を受けていれば良かったのだ」
弾倉が日曜を横目で睨み、そういった。
「たわけめ。このような狭い部屋で飛び道具を持ち出す方が愚かなのじゃ」
日曜が横目でそれに応じ、言葉を返した。
「お前こそ。そのなまくらで弾丸をはじいたせいで、部屋の壁に跳弾したんだ。おかげで王者君の大事な『はだか
おんな』のポスターに穴があいた。ちゃんと彼に謝れ」
「おぬしこそ。こちらは手加減をして、その手入れの杜撰な髪の一房で堪忍してやろうというのに、見苦しく逃げ回
るもんじゃから、王者殿が夜ごと愛でておった『はだかおなご』の掛け軸を切り裂いてしもうた。王者殿にわびよ」
ばっ! ばっ! と、機敏な動作で部屋の壁を確認。
縦A1サイズの安藤美佳がいない。横A1サイズの佐々木あずみもいない。
部屋に入った人間の目に入りにくいように、入り口側の壁に貼られていたお気に入りの女優さんポスターが、無い。
そのかわりといってはナンだが。
四つん這いになって女豹のポーズをする裸のあずみちゃんのかわりに、同じポーズをした下着姿の弾倉のポスターが。
はだけたブラを両手で押し隠して、恥ずかしげな視線を向ける美佳ちゃんのかわりに、同じポーズではだけた
サラシを押し隠す日曜が。
物損のポスターを補充する替わりに自分がモデルになったポスターをわざわざ製作して貼り直す、というのは、
律儀を通り越して、暇人といわざるを得ない。しかもこの短時間に。どんだけ迅速な作業工程だよ。
そもそも、君らはなんで俺の部屋に入ったんだ?
俺は、部屋からいなくなったあずみちゃんと美佳ちゃんに黙祷をして別れを告げた後、二人に本題を。俺の、
そんな寂寥感を含んだ問いかけに、二人は今も続いていた口論を中断し、俺に向き直って答えた。
「王者君の性癖を調査するためだ」
「王者殿の伴侶となるに、知っておかねばならぬことなのじゃ」
さぁっ、と血の気の引く音が、毛細血管を伝って鼓膜に響いたような。
俺は慌てて、棚に置いてある本を確認。自慢のコレクションであるマドンナメイト文庫、フランス書院文庫などの
ポルノ小説が一掃され、かわりに鬼平犯科帳やら剣客商売やらの時代小説がずらりとならぶ。
引き出しの中にしまってあった往年の日活ロマンポルノDVDコレクションが綺麗に消え去り、その空間を埋める
ようにOK牧場の決斗、荒野の用心棒などといったウェスタン映画のDVDが。
「あまり奇抜な性的嗜好がないようなので安心した」
「念のため衆道の可能性も考慮しておったのじゃが、そのけは無いようじゃな」
がっくりとうなだれる俺。
普通さ、女の子にこうまであけすけにエロ嗜好の解析をされたら、へこむよ。
そんな俺に、二人は慰めるように声をかけてきた。
「王者君、そんなに落ち込むな。お前の性衝動は私が引き受けるから」
「幸い、拙者でも応じてやれそうな嗜好も多いからの、安心せい」
かえせー、俺のコレクションーーーっ・・・。
「もちろんじゃ、中身を吟味しおえれば、ちゃんと返すに決まっておろ」
「それまでの間、間を持たせるために私のお薦めを貸しておくだけだ」
・・・・・・本当だな?
俺はその言葉を、か細い希望の糸に見立ててなんとか立ち直ることが出来た。
どうやら彼女たちは、学校での面談の後、俺の家にやってきてエロ関係の持ち物を総チェックしたみたいだ。
その作業中の軽い諍いで発砲、抜刀に至り、家捜しの修繕ついでに壁紙を張り替えたと言ったところか。
かなりぐったりして、それでも俺は二人に向き直る。
いかん、こんなところでへこたれていては・・・。
とりあえず。
さりげない告白の中にさらりと織り込まれた、真剣、実弾のたぐいは問題だ。
二人揃って銃刀法違反じゃねーか。
禁止な、禁止。
抜刀も発砲も、無し、ダメ、アウト!!
少なくとも、俺の前では絶対禁止!!
そんな言葉を俺は、肺から吐き出す大量の息に乗せて、二人に告げる。
まるで、子供に道理を説き聞かせるようだ。
そして二人に、俺は両手の小指を差し出した。
はい、約束。指切りげんまん。
俺がそういう言葉に、またしても二人は固まった。
指、出す!
強く急かすと、二人はびくりと正気に返り、恐る恐る小指を差しだしてくる。
所在なげな二人の小指をかっさらうように、俺が両手の指をそれぞれの指に絡める。
ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーら、はーりせーんぼーんのーます!
と、本当に子供相手のお約束をしてしまったのは、なんだか妹のひとみを叱ってるような気分になったからだ。
そして俺は、ゆーびきった! と締めくくった。
・・・・・・のだが、二人は俺の小指を放そうとしない。
「ゆびきりげんまん・・・・・・これはいいものだ・・・」
「同感じゃ・・・この至福、とても言葉では語り尽くせぬ・・・」
二人は、俺の『ゆびきり』を幸せそうに堪能していた。
ええと、ちゃんと約束してくれよな? 頼むぜホント。
ふぅ、と思わず溜め息を吐く。
こんなんでいいのか?
ホントにエロいこと出来るのか、これから?
そして、『二人とも俺の女』計画が成功するのか?
だけど。
そんなことよりなによりも。
俺の中に、何かが欠けているような気がする。
そのことがなによりも不安で、怖い。
続く。
以上、前編です。
弾倉は、とあるスレの雑談から。
それ以外は、世にあまたあるネタを借用。
ツッコミをする主人公を、さらに読んでる人がツッコミできれば、おおむね進行として間違ってはいないかと。
なんか、SSを書かないといけないような気になってくるIDだ・・・。
なんだ、誰もGJしてないのか、仕方ない……私がしておこうか
GJ!!続き期待してるぜ!!
何?性格が違う?気にするな
GJ!
銃刀法違反女子2人が可愛くて仕方ない
GJ!楽しく読ませていただきました。
お兄ちゃん鈍感だよお兄ちゃん、妹かわいそうだよ妹w
スク水で突入のほうが個人的にはこn(ry
>>521 うまあい、ナイスラブコメ。練られた一人称が銃刀法犯罪者二人の可愛さを
一層際だたせているな、クールな中にも初々しい照れがあるのが嬉しいぜ!
妹、生きろ。
GJ
妹人気すぎわろた
だが、俺も好きだ
GJ!そうか!!読めたぞ!
妹を入れて4ぴry
流石にこうまでくると主人公に同情するなw
最初はやけに素直クールにこなれた対応をしていると思ったら、妹で慣れていたわけか。
いいかんじにテンパってるな、主人公。
しかし、このまま消えてしまうキャラとは思えないな、妹。
黒幕系素直クール……。
おはようございますこんにちはこんばんは。これからずっとの人です。お久しぶりです。
エロを入れると言ってしまったが為にキリのいいところで切れなくなってしまいましたが、エロシーンは半分以上あります。
頑張りました。うん、俺頑張った!
なんとかご期待に添える内容だとといいんですが……
それではどうぞ。
ほんの1週間ほど前にも訪れた門扉の前に立ち、一息おいて一歩踏み出し、扉を押し開ける。
今回は事前の連絡も無くお邪魔することになったので、向こうの親御さんはたいそう驚いていた。だが挨拶もそこそこに、彼女に2階の部屋へ連行された。
パステルカラーに彩られた部屋に俺と安田は2人きりになった。
「ええんか?ちゃんと挨拶せんで。」
まだどう言おうか考えていなかった俺は、少し時間をとろうと話を逸らす。が、それは見透かされているようだ。
「そんな隙を与えるつもりはありません。話をしていただけるまで帰しませんよ?」
怖いくらいに目がマジだ。
彼女は普段から真面目な顔はしているが、そのときの感情によって目元に生まれる微妙な変化から読み取るように出来ているらしい。
……そんな些細なことに気が付くほど纏わり付かれている俺って、何なんだろう。
「大阪におった頃に彼女がおった、ただそれだけやろ?」
「でも何かあったんでしょう?……恐らく、それが先輩たちが別れた原因になった。」
図星だが、それを顔に出さないようにしないといけない。
「知らんな。俺があの人怒らしたんは確かやけど、何で怒ったかまで分かるかいな。」
「どうして理由が無いのに怒ったんですか?先輩は『自分の全てを占めていた人』の気まぐれですぐに諦めて、別れてしまうような人なんですか?」
目尻に力を込め追求してくる。彼女らしい理路整然とした語り口だ。法律関係の職業に向いているのではないか、とふと思ったり……
「どうなんですか?」
……する暇も与えてはくれない。
暫くだんまりを決め込んでいると、敵はまず外堀を埋めに来たようだ。話題を変える。
「それなら言える範囲で先輩の好きだった人のことを教えていただけますか?」
「……分かった。」
ここ何日か、ある理由から何度も巻き戻していた当時の記憶を太陽の下へ晒す。
…………………………
向こう三軒両隣、お互いの顔が分からないという地域も増えてきたとマスコミは言っているが、少なくとも俺の住んでいた地域では嘘っぱちだった。
町内のご近所同士は仲が良かったし、学校からの下校途中、隣のおばちゃんに『おかえり』と言われることも多々あった。
そんな町内に仲良くしていた幼馴染の女の子がいた。幼稚園、小学校、中学校と毎日のように一緒にいた。
愛し合っていた、というのとはちょっと違うと思う。
うまく言葉で言い表せないが、お互いがお互いを必要としていて、お互いがお互いの全て『だった』。
…………………………
「先輩はSEX、好きですか?」
思い出話に一区切りをつけ大きく伸びをすると、唐突に質問された。女の子が口にする言葉ではないだろうと思ったがいつものことだ。スルー推奨。
「俺も一応男の子やからな、興味が無いって言うたら嘘になる。」
「それならその人とも、したんですね。」
確信を持って質問してくる。気が付いていないか、と彼女の話は続く。
「今、先輩の顔すごく優しくなっていますよ。まるで自分の半身をいたわるような、そんな顔をしています。」
彼女は、本当に一つにならないとそんな顔は出来ないだろう、とも付け加えた。
女の勘、女の洞察力は恐ろしい。そう思ったのは何度目だろうか。数える気も失せるほど何度と無く経験している。
だが、初めて強く意識したのはあの時だ。それだけは忘れようが無い。
…………………………
自分のことを深く知りたいと思うのは当然のことだった。身体の傷、皺、くぼみやへこみ、お互いがお互いの身体を知り尽くしていた。
初めて愛し合ったのは中1の冬だった。あの人の部屋にあがったとき、なんとなくそうなった。どっちもよく分からなくて、何度もチャレンジした。
何度も色々な場所で身体を重ねて、2人は1つになれたと感じ始めた頃、俺の家に来たあの人を見た母親が、真面目な顔でポツリと言葉を吐いた。
「アンタ等2人は、どこまで……してるんや?」
俺はその言葉に心臓が凍りついた思いがした。表情にも出ていたと思う。だけど俺はしらばっくれた。
母親も一言、そうか、と言うとそれ以上の追求はしなかった。俺はバレなかったと無邪気に喜んでいたが、今思えばそこが最後の岐路だった。
茨を突き抜けなければならない戻る道と、一見楽に進めるが道幅が細っていく道との分岐だ。
俺は目の前に見える茨を避けた。
…………………………
「その先を聞かせてください。」
安田はお気に入りらしいぬいぐるみを胸に抱きかかえ、動揺している様子も無く続きをうながす。
「もう言いたないんや、これ以上は。今でも十分サービスしとるくらいやで?」
「それでも聞かせて下さい。先輩の全てを知りたいんです、お願いします。」
それまでは床にぺたりと座っていたが、急に姿勢を正して正座をし、両手をついて額を絨毯に押し付けた。
俺は彼女を慌てて抱き起こし怒鳴りつける。
「んなことされたって、言いたないもんは言いたない!……それに結末は想像できるやろ、こんな昼メロに毛の生えたような話。」
「先輩言いましたよね、好きな人のことを全部知りたかったって。私の好きな人は先輩なんです。だから憶測では済ませたくないんです。」
「……何で俺が教えなたらなアカンねん。」
「先輩本人から聞くから意味があるんです。先輩は私のこと、嫌いですか?」
顔は好みのタイプだし、『宇宙人』と呼ばれる奇行にも慣れた。何より腕の中に納まっている彼女は母性本能をくすぐるように小さく震えている。
これで墜ちない男がいるのなら、そいつとはお友達になれそうにない。だが嘘を吐く。
「嫌いや……ない。やけど、好きでもない。」
「じゃあこれから好きになっていただければ結構です。……今は、身体の震えが止まるまでこうしていてください。」
背中に手を回されぎゅうと抱きつかれた。安田は顔を俺の胸に押し付けて震えている。
俺は自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、されるがままになってしまった。
そのままでたっぷり10分の間、2人とも一言も発しなかった。顔を上げた安田の身体はもう震えてはいなかった。
ほっとした俺は、静かだった間に思いついた質問を安田にぶつけてみる。訊きたくないが、訊かなければならない質問だった。
「身体震えてたんってさ……俺のせいやんな?」
恐る恐る切り出す。最近、安田が自分から触れにくることが減ってきて気にかかっていた。
カウンター席で並んで座るのを良しとしなくなってきたのもあの日からだし、今日だって、俺の母親の前で腕を抱きしめてきたくらいしか近付いてはこなかった。
彼女は一瞬ハッとこちらを見上げ、それから顔を伏せて口を開く。
「いいえ、私のせいです。調子に乗って自分が痛い目を見ただけなんですから。……自業自得です。」
嫌な予想が当たった。心がズシンと沈み込んで、目の前がチカチカしてくる。
「自分のせいや無い、俺がやったんや。」
「違います!」
珍しく声を荒げ、背中に回されたままの腕が強張る。
「大丈夫ですから。……怖くないですから、気にしないでください。」
再び始まった震えを押さえ込むように、腕が俺の胴体を締め付ける。
「ゴメン。」
俺にはそれしか言えなかった。
…………………………
愛し合えば、どれだけ気を付けていたとしても来るものは来る。いや、来なくなる、の方が正しいか。
高校にあがる前の少女なのだから生理は元々不安定だったが、流石に3ヶ月も来なければ病院の世話になるのが普通だろう。そうして、妊娠していることが分かった。
あの人の親からはなじられ、蔑まれ、無視された。俺は怒られることに苦痛は感じなかったが、あの人が自身の親から責められていると考えるのは胸が張り裂けそうだった。
結局、子供を育てることも出来ない俺達が唯一出来たことは、堕胎だった。
…………………………
ぼうっと昔の事を考えていると、腕の中の姫君が伸び上がり心配そうに顔を寄せた。
「……辛いことなら、どうしても話したくないことなら話さなくてもいいですよ?」
その代わりに楽しかった思い出を聞かせてほしい、と言う。彼女に気を遣わせてしまったが、その言葉に鬱々とした気分になりかけた心が一転、開けた。
それなら一晩あったって語りつくせない。だが、話し始めるその前にやることがある。
「よいしょっ。」
「え?」
臍下丹田に力を込めるように踏ん張って彼女を持ち上げた。俗に言う『お姫様抱っこ』と言うやつでベッドに向かう。
「あの……」
「ここからはただのノロケ話やからな。気ぃ楽にして、寝っ転がって聞いといたらええ。眠かったら寝てまえ。」
静かに腕の中の彼女をベッドに降ろすと、俺自身はその縁に腰掛けた。
何から話そうかと考える暇も無く、口から思い出が溢れてくる。
初めて遊んだこと。幼稚園に一緒に通ったこと。遠足で2人だけ迷子になって先生に怒られたこと。友達にからかわれて暫くそっけない態度をとったこと。
お互いがお互いを異性として意識しだしたこと。勇気を出して告白したこと。今更告白するなんてと笑われながら付き合い始めたこと。
初めて彼氏彼女として手を繋いだこと。深夜に家を抜け出して公園で語り合ったこと。唇に触れ合ったこと。
そして、身体を重ねたこと。
…………………………
その日は朝から天気が思わしくなかったと記憶している。黒雲が重く空を支配していたが、天気予報では夜半過ぎまで雨は降らないと言っていた。
放課後特に用事の無かった俺は彼女の部活動が終わるのを待って、2人で手を繋いで帰っていた。そうしているうち雨が降り出し、学校に近かった彼女の家に避難した。
濡れネズミになって渡されたバスタオルで身体を拭いていると紅茶をどうぞと誘われた。
冷えた身体に暖かい飲み物はありがたかったから、ずぶ濡れの靴下を脱いであがらせてもらい、彼女の部屋へ入った。
濡れたYシャツと冬の寒さに奥歯を打ち合わせながら砂糖のたっぷり入った紅茶を啜っていると、なんとなくあの人と目が合った。
寒いのなら脱げばいい、とあの人は立ち上がると大股で歩み寄り俺のYシャツのボタンに手を掛けて1つずつ外していった。
寒さで頭がどうにかなっていた俺は、俺のシャツのボタンを外していくあの人を濡れた身体のまま抱きしめてしまった。
少しして俺は体を離し彼女の顔を覗き込んだ。冷えた身体に不快感を示して頬を膨らませていた。が、やがて彼女は腕を背中に回して1つ頷いた。
いつも彼女の側にいた俺だから何を指しているのか理解できたし、身体を許しあえた。
…………………………
行為の話に入る前に彼女は疲れて眠ってしまったらしい。すやすやと寝息を立てている。
こんな話を微に入り細に入り話すわけにもいかないから内心ではほっとしているのだが、それでも不完全燃焼な気分は拭えない。
こんな話を後輩の女の子にしたいなんてと苦笑して、ベッドの縁から尻を持ち上げ背筋を反らせる。
そのままドアを開け外に出ようかという時に、ベッドの上から声が上がった。どうやら立ち上がったときのマットレスの揺れで目が覚めてしまったらしい。
「悪い、起こしてもうたか。」
「いえ。すみません、お話を聞いている途中で眠ってしまって。」
右手でグジグジと目をこすりながら上体を起こす。
「構わん、ノロケ話なんてあんまりかっこいいことでもないしな。」
少し楽になった心は笑顔を見せたがるものらしい。少し笑って部屋を出ようとする。
「どちらへ?」
「眠いんやろ?うるさくするのもあれやし。前みたいに下のソファ、借りてるで。」
「ダメです。」
安田はベッドから降りると、まだ寝ぼけた足取りで俺に抱きついた。
「ダメです。ここでお話してください。」
「俺は熟睡しとる奴に延々思いで話をしてやる趣味は持ってないで?」
「じゃあ少し待っていてください。顔を洗ってきます。お化粧も落とさないと。」
見ると先程こすっていた左目の周りが黒く滲んでいる。手にも付いているんだろう。思わず上着の触られたところを確認する。
安田はそんな俺を押しのけるようにして、足元がおぼつかないままドアを出て行った。後ろから見ても頭がぐらぐら揺れている。
……大丈夫か?
…………………………
一度、両方の家族が顔を合わせた折に結婚したいと言ったことがある。
その時まで俺とあの人は共に軟禁状態で会うことはできなかったが、2人の意見は一致していたらしく俺が言ったことにあの人は微笑みで同意してくれた。
それだけで俺には十分だった。
当然、そんなわがままは通ることは無かったのだが。
その時以来、あの人とは会っていない。
…………………………
安田は戻ってくると、今度はベッドの縁に腰掛けた。俺はそれを見てパステルピンクの絨毯に胡坐をかく。そうして自分の膝に肘を据え、真っ直ぐに向けられている視線に応える。
「先輩。」
「……何や後輩。」
「そんなに見つめないでください。」
「ん?ああ。普段見つめられてるお返しに、な。」
口の端を持ち上げ、芽生えた童心のままに言葉を発する。こんな大人げの無いことをするのは思い出話をしたせいだろうか?
しかし化粧を落とすと言っていたが、本当にそんなことしていたのだろうか。目の前にいる少女は部屋を出る前と変化があるようには思えない。
あえて相違点を挙げるなら、恥じらいからなのか頬を僅かに染めているくらいではないだろうか。
「化粧、しとったんやな。気ぃ付けへんかったわ。」
「マスカラと薄くファンデーションを引いているだけですし、気が付かないのも当然ですよ。」
それもあるだろうが、これだけいつも一緒にいて化粧をしているときが付かなかったのは、彼女の『興味が無い』と言わんばかりの性格にも一因があるだろう。
その上、スッピンのままでも肌はきれいだし睫毛だって人並み以上に長いから、男の俺に気が付けるはずもない。
「先輩が一応男の子のように、私だって一応女の子なんですよ。……実を言うと、先輩に会うまでそんなことに興味は無かったんですけど。」
何でも、化粧の仕方が分からないのでクラスメイトや母親に教えを請うたんだとか。かわいらしいところもあるんだなあ、と少しだけ見直した。
「どこまで覚えとる?」
途中で寝てしまった彼女に訊く。
「何やったら最初っからすんで?」
「勘弁してください。好きな人がするノロケ話は辛いものですから。」
「それもそうやな。」
軽く同意して、それなら何を話そうかと頭を巡らせる。
「じゃあ今度は私がお話しします。」
そうですね、と前置きしてから話し始めた。
彼女の小さいころには妹がいたらしい。とても仲が良く、どこに行くにしても一緒だったと言う。まるで先輩と先輩の好きな人のようですね、とは彼女の弁だ。
彼女が小学校に上がるころ、近所で2人は交通事故にあった。車で撥ねた側、撥ねられた側、どちらの責任とも言えない不運な事故だったという。
「私は半年ほど入院する怪我でした。でもあの子は……」
「言わんでええ。……辛いことやろうしな。」
今、彼女は一人っ子なのだ。間違いなく、亡くなったのだろう。
「そうですか。……私はともかく、親にとっては辛かったでしょうね。1人は死んでしまって、1人は半年以上病院に釘付けにされてしまっては。」
怪我のリハビリまでを含めれば1年近く病院とお友達だった、と言う。
「大変やったんな。」
「でも、もう治りましたから。」
なんとなく気まずくなって、そのまま2人とも口を噤んでしまう。
「先輩。」
「何や後輩。」
「すみません、変な話して。ノロケ話に少しイラついてしまったので、つい作り話を……」
「オイ!何だ、報復行為か?俺のしんみりした気分を返せ。」
腹が立ったが強い眠気がテンションを下げさせる。もう朝刊が配達され始めている時間帯だ。
そろそろ本当に寝ようか、と大あくびをしながら立ち上がりドアへ向かう。が、今度も行く手を阻まれた。
「一緒に寝ましょう。」
「そんなことせえへん、って言わへんかったか?」
ここに来る車に乗り込む直前、確かに言ったはずだ。しらばっくれることを失敗した今、貞操くらいは守りたい。
「本当に寝るだけですよ。何か期待してるんですか?」
「まさか。」
「じゃあ今夜一晩、あのぬいぐるみの代わりになってください。」
さっき抱いていた大きなぬいぐるみを指して袖を引っ張る。
「あれの代わりは出来へん。手ぇくらいやったら握っといたるけど。」
これ以上ブレザーの袖が伸びるのも嫌だったし、仕方なく譲歩した。
すとんとブレザーとスカートが落ちる。
「何しとんねん。」
「着替えるんです。制服のまま寝るわけにいかないでしょう?」
クローゼットを開けてハンガーを取り出しながらYシャツ1枚の彼女が言う。
「人前で服を脱ぐな言うてるんや。」
俺が彼女の奔放さを非難しているのもお構いなしだ。膝をほとんど伸ばしたままお辞儀をするように服を拾っていく。
そうして制服をハンガーにかけると、今度はパジャマらしい服を取り出す。着ているYシャツは洗濯に出すためか脱ぎ捨ててしまった。
上下の下着だけの姿になってこちらを振り返る。
「気にしなくていいですよ。私も気にしていません。」
「着替え、終わったら教えてくれ。」
もう一度ドアノブに手をやり、今度は部屋の外に1歩踏み出してから声をかける。今すぐに退却しないと我慢がきかなくなりそうだ。
「我慢しなくていいですよ?」
……女の勘は怖い。
内側から声がかかり中に入ると、彼女は既にベッドにいた。掛け布団をかぶって背を向けており、腕だけを突き出して『おいでおいで』をしている。
その腕を捕まえて約束通りに手を握る。赤ん坊のしなやかさと大人のつやの同居した、触り心地のいい肌だ。撫でたり、擦ったりしてしまう。
「先輩。」
「何や後輩。」
「気持ちいいですね。」
「何が?」
「先輩の手が。」
「俺の?」
自分の手の平を改めて観察してみる。特別、肌に張り、つやがあるわけでもない。むしろ指先はあかぎれがひどくひび割れ、ざらざらとして痛そうだ。
部活をしていると絵の具や水が付きっぱなしになって荒れてしまうのが嫌になる。
「あたたかくて、大きくて……」
「そうか。一応、ぬいぐるみの代わりにはなったみたいやな。」
「抱きしめて寝たいんですが。」
「調子に乗るんとちゃう。」
「嫌です。」
言うが早いかベッドに引きずり込まれた。……2度目なんだから警戒しておけよ、俺。
お互い顎を少し動かすだけで唇の触れ合うくらいに接近している。
「先輩。」
「何や後輩。」
「私のこと好きですか?」
「それはさっきも訊いたやろ。」
「さっきは『嫌いですか』と訊いたんです。」
屁理屈を言う。そんなことを言い出したら『制服で寝るわけにいかない』と言ったのは誰だったか問い詰めたい。
「私は先輩が好きです。先輩は私のこと、好きですか?」
「……嫌いやない。答えは一緒や。」
視線を外して言う。だが至近距離ではあまり効果は無い。
「じゃあ、試してみましょう?好きかどうか。」
安田は少し挑戦的な口調になり、唇を押し付けてきた。
ガツンという衝撃に2人の顔が跳ね上がる。
「「〜〜〜〜〜ッ……」」
前歯が欠けるのではないかという衝撃に両者呻き声を上げる。
「……すみません、やりなれていないもので。」
安田が口元を覆って言う。何か大人の真似をして膝をすりむいた幼児を見ているようで思わず笑みが漏れる。堰を切ったように声を上げて笑ってしまう。
「……どうして笑ってるんですか。」
「いや何でも……っ」
息をするのも苦しいほど笑っている俺を見て、彼女からムッとした声が漏れる。表情はほとんど変わらないからとても怖い。
「まだお答えを聞かせてもらっていません。」
「……好き、かな。今みたいなマスコット的間抜けっぷりが。」
呼吸を回復して、でも顔には笑顔を浮かべたまま答える。途端に彼女の目が険悪になっていくが、こっちだって決して馬鹿にしているわけではない。
段々彼女が恋愛対象になってきているのも事実だが、それ以上の感情は無い。その旨をきちんと伝える。
真面目に訊かれているのだから、真面目に答えたのだ。今現在はそれ以上の感情もそれ以下の感情も持ち合わせていない。
安田はそれを聞くと、さらに身体を寄せてパジャマの一番上のボタンを外す。肩が丸々露になる。
「これだけしても?」
膨らみを精一杯強調するように身体をすり寄せる。息遣いが振動として伝わってくる。
「ブレザーの上から押しつけても効果は薄いで。」
「じゃあ、肌を触れさせればいいんですね。」
彼女は体勢を変えて仰向けになった俺の上に跨ると、もう一度、俺の視界を支配した。
2度目はおっかなびっくり近寄ってきて、そしてゆっくり押しつけられた。
舌を入れるわけでも何でもない、ただ触れるだけのキスだったが、彼女は勇気を振り絞るように目を閉じて震えている。俺は身動き1つとらずに安田を観察していた。
上半身はパジャマの下には何も着けておらず、下半身は……下着一枚だ。白を基調にした布地と、蛍光灯の光を弾いている肌が眩しい。
やがて満足したのか異変を感じたのかどちらかは分からないが、唇を離し目を見開いた。
「気ぃ、済んだか?」
無言。
「頑張ったな、お疲れさん。」
残酷な言葉だと分かってはいたが、言わずにはいられなかった。
……女の涙ってのは見たくないのにな。
落ち着くまでとずっと頭を撫でていたが、もう必要ないようだ。
「先輩。」
「何や後輩。」
「何度も言うようですが、付き合ってください。今ならもれなく私の処女が付いてきます。」
「そういうこと言うとるから相手にされてへんっちゅうことを学習しような。」
全く、こいつの不屈の精神には恐れ入る。そして、それにグラグラきている自分がいるのも事実だ。
少しは見習わないといけないのかもしれない。目を閉じ、1つ息を吐く。何を言われても仕方が無い、と1つ覚悟を決めて、
「別に付き合うてもええで。」
目と鼻の先にいる彼女にもギリギリ聞こえるかという声量で呟く。
「別に……何です?」
危険を察知した草食動物の動きで身を翻すと、信じられない言葉を聞いたかのように聞き返す。
「俺もええ加減、昔のことを吹っ切らないかんかもしれん、て、前向きすぎる後輩に付きまとわれるようになって考えるようになったんや。」
それまではそんなこと考えたことも無かったと告白しながら、手は頭から耳、頬を撫で顎を伝い唇へ到達し、少し太めの下唇を中指と人差し指でならしながら話を続ける。
十年以上昔の思い出話をすらすら喋れたのも、この間安田を泣かせてしまった日から毎日のように昔を振り返っていたからだ。
「やからってまだ吹っ切れたわけやないし、アンタの期待に添える答えが出るか分からん。」
正直に白状する。俺は卑怯だ。
「そんな理由からでもええんやったら、付き合うてもええよ。……こんな卑怯なことされて、まだ愛想尽かしてへんねやったら、やけど。」
誰かを忘れるために違う誰かと付き合うなんて褒められた行為では無い。大体、振って泣かせた後に付き合ってもいいよ、なんて虫が良すぎる。
「これだけ何度も告白しているのに、断る理由がありません。」
うれしいのか頬をほんのり染めている。彼女の優しさと自己嫌悪に眩暈がした。
「俺、最低やね。ゴメン。」
「これからは私が先輩の一番になるんです。過去は関係無いですよ。」
俺の背中に手を回すと、俺の薄い胸板に頬ずるしながら安心したように目を瞑った。
そろそろ太陽が自己主張を始める時間だ。
眠たそうにしている安田の頭を撫でながら、そろそろ重くなってきたなあと思っていると、安田は俺の胸に頭を押し当てて目を瞑ったまま、質問していいですかと言う。
「どうぞ。」
「本音を言えばHしたかったんですよね?当たってます。」
「……本能は抑えようが無いんです、ゴメンナサイ。」
だって柔らかくて気持ちがいいんだもの。両腕を彼女のパジャマの背中に突っ込んで、ゆったりと抱きしめる。
「かゆ……くすぐったいです。」
安田は快とも不快とも取れないような声音で言葉を漏らす。
背筋のくぼみや脇腹のつややかさをもっと感じたくて、自然と手が伸びて体のあちこちを撫で回していたようだ。
ボロボロに角質化して皮膚がめくれかけた指が全身を這い回れば、少なくとも滑らかには感じないだろう。
「止めよか?」
俺もまだ我慢の出来るレベルだから引き返せるし、不快に感じているものを無理に進める必要も無い。
「いえ、続けて大丈夫です。なんだか、上手く言えない感じが広がっているんです。」
では遠慮なく、と先程よりも少し乱暴に指を行き来させる。俺の背中に回された腕に少し力が入り、眉間に皺が寄る。
俺はそれを見て右腕を裾から引き抜くと、風邪の子の熱を測るときのように手の平をおでこにあてがい、鼻の頭にキスをする。
「嫌やったら止めるって言うてるやろ?」
「続けてほしいと言ったのは私ですよ。……もっと、してください。」
うなじの辺りに電気が流れる感覚がした。ゾクゾクとする自分の背筋を御しようと、左手に力を入れて強く抱きしめる。圧迫されて苦しいのか彼女が目で訴えてくる。
安田には申し訳ないがスイッチが入ってしまった。こうなってしまったらなかなか留め置けるものではない。
本能という名の奔流が、理性という名の堤防を楽々乗り越えていく。
…………………………
彼女の全てを知りたい。
そう思ったのはいつのことだったか。はっきりと自覚したのは3度目、深夜の逢瀬のときだった。そのときに初めて唇を重ねた。
いつも一緒にいたからそんなことを考える必要も無かったが、彼氏彼女の関係となってからは考える頻度が増えていった。そして爆発したのがあの雨の日だった。
それは多分、あの人も同じだったんじゃないだろうか。
そんな2人は欲望を満たそうと何度も何度も身体をぶつけ合った。
…………………………
別の考え事をしながら安田の体を愛撫したせいか、安田も限界を超えてしまったようだ。突然ガバッと起き上がると、肩で息をしている。
「や、やりすぎ……です……」
「え?」
「私も本能を抑えられなくなっちゃいます。」
表情はそのままで、目の色だけを怪しく光らせる。その目の色に釣られるように俺も上体を起こして、向かい合って座る形になる。
「満足するまで付き合うで。別に本番をせんでも満足する方法はあるしな。」
「それなら本番までして下さい。」
「無茶言いな。ゴムも無いのに出来るかい。」
首の後ろに手を回し引き寄せてキスをする。舌を散らすように彼女の口の中を舐め回して、歯と歯茎と舌を順番に蹂躙していく。
唇を離して一息つきながら顔を覗き込むと、彼女の双眸は潤んでいた。それが気になり声をかけるが、本人は平気だと言い張る。
数瞬睨み合い、そして先に動いたのは彼女だった。押し倒されて唇を奪われる。さっきの震えながらのキスではない。余裕たっぷりに舌を絡ませる。
たった一度(だろうと思われる)の経験で、今度は自分からしてみようという神経に驚かされた。きっと半分は意地なのだろう。
俺の顎に両手をあてがっている彼女と違い俺の両手は何もしていない。空いた両腕を、今度は背中と尻に配置する。
尻に手を置いた途端にぴくりと身体が跳ねる。また震えが来たら今度こそ止めにしようと考えていたが、一瞬動きが止まったくらいでまた動き出す。
ならいいか、と産毛も生えていないような柔らかい肌を指に沁み込ませる。
背中の左手はパジャマの中、肩甲骨から脇腹にかけて指を滑らせる。背骨で凹み、肉感に溢れた腹部で膨れ上がる。
尻の右手は下着の上から指でつまんだり爪で擦ったり、時折中に手を入れて蒸れた様になっている尻たぶの間を伝う。
彼女は脇腹に触れるたびにくすぐったがり、尻の谷間に手を差し込むたびに身をくねらせた。
あまりに反応するので絡ませた舌を噛まれないかと心配になって手の動きを抑えると、安田はもっとしてほしいと言わんばかりに口の中をせわしく出入りする。
それに応えようと俺も段々際どい場所まで手を伸ばしていく。
息が続かなくなって名残惜しそうに絡んだ舌がほどける。酸欠と官能でクラクラする頭にゴツンと衝撃が走っておでことおでこがぶつかる。
「いて。」
「すみません。力が、入らなくって。」
ふうふう、ふいごの様に肩を上下させて腕を突っ張っている。
これ以上は体力的に無理か。そう判断して体を入れ替え、俺が上になる。
出来ればこの体勢にはなりたくなかった。この間、この場所この体勢で彼女を泣かせたからだ。
また身体が震えたりだとかの異変は無いか、とじろじろ見ていると、彼女の全身に力が入る。心がずくりと痛む。
「先輩。」
「何や後輩。」
「早く、満足するまで、お願いします。」
熱くて甘い吐息を鼻先に受けて、俺は唾を飲み込む。
俺の不安を押し隠すように朝日が昇り、夜はもう完全に終わっている。
安田の顔の横に左肘を置き、膝を立てて体を支える。そうして空いた右手と舌で胸を愛撫する。
パジャマのボタンを全てはだけさせる。下着はつけていない。そのまま控えめな頂に口を寄せ、指はもう片方を摘み上げる。
刺激を与えるたび、子供が脇腹をつつかれたように全身が固まり反り返る。
亀の歩みのようにゆっくりと、胸をいじっていた手を臍へ滑らせる。爪を押し付けるようにして少し強めの刺激を与えつつ、口は相変わらず胸を愛撫している。
臍を2度3度さすった後、その下へ手を遣るのを躊躇した。理由は言うまでもない。
その時、彼女に両手で右腕を掴まれてギュッと握られる。
「してほしいと言ったのは私です。」
「あの時もそうやった。」
口を離して見上げて言う。先程は潤う程度の涙の量だったが、今は目尻を転げ落ちている。
「そうですよ。だから、してください。」
声ははっきりと通っている。鼻づまりをしていないところから考えると、ただ性感の高まりから自然とこぼれた涙のようだ。胸を撫で下ろす。
腕を掴まれたまま、下着を下ろさせよういうのか手を下方へ導かれた。親指がパンティにかかる。
「今度は、してくれますよね?」
この間はブラジャーのホックに手を触れさせられたが、俺はそれには応えなかった。今回は応えてやる。
少し引きおろそうとして引っかかった。尻に体重がかかっているからおろせないのだ。それ以上おろすことは諦め、指を1本だけ立てて陰唇へ触れる。
一層強く彼女のまぶたが結ばれた。それを見た俺は彼女の上体を抱き起こすと頬を撫でる。不安なのだろう。見つめられて腕が頭に回される。
「少し、入れるで。」
中指の第一関節までうずめて反応を見る。嫌がっている様子は無い。もう少し無理をしても大丈夫だろうか。
今度は第2関節まで一気に進める。安田の表情からは何も読み取れはしない。心なしか腕に力が入ったくらいか。
こうして比べるのもなんだが、あの人よりも締まりがキツイ。小柄なのが作用しているのだろうか。
「動かしてええか?」
今迄だって嫌がることを散々しているくせに、まだ了解を得ようとする自分がひどく惨めに思える。
「何度言わせるつもりですか?」
潤んだ瞳と詰まった鼻腔の持ち主が少しイラついたような声で先をせがむ。自分から腰を振って、秘所からはくちゅりと音を立った。
「そうやったな、ゴメン。……痛かったり気持ち悪ぅなったら言うんやで。」
まず第2関節から動かし、そして段々と指の根元からと少しずつ指を大きく動かしていく。
指が自由に動くほど濡れてくると、クリトリスに親指を当てて圧力をかけながら中指は中を抉る。同時に肩に回した左手は耳たぶをいじり、唇は双丘を滑る。
「うっ……ふう……はぁ、はあっ!」
最初は苦しそうに呼吸をしていたが、俺が彼女の肢体をなぞる度に吐息に艶が混じってくる。
突然頭に回された腕の輪が縮められた。胸部に顔面が押し付けられる。
「す……すみません、私、何だかおかしくなりそうで変なんです。」
「止めるか?」
「意地悪、やめてください。」
それじゃあ、と言われた通りとことんまで弄りたおす。
秘所を弄る指を3本に増やす。割れ目に沿わせて人差し指も差し入れたが、流石にきつくて動かすことが出来ない。右手を動かすことは諦めて他の部分に力を注ぐ。
今まで吸い付いたり唇で摘み上げていた乳首には、少し噛み付いたり、摘んで捻ったりしてみる。快感で少し開いた唇に指をねじ込んでみたりする。
彼女の瞳はうっとりとして何も映していないように見えるが、意識ははっきりとしているようだ。もっとしてほしいと全身で表現している。
息遣い荒く腰を振り、瞳は何も受信しない代わりに静かな言語を操る。彼女の瞳は雄弁だ。
そうしているうちに努力が実ったのか手指がぬめってきて、くちゃくちゃと音を立てながら段々動かせるようになった。
無理をさせないだろう範囲で2本の指を動かす。深くしたりバラバラに動かしたり色々試そうとしたが、そんな暇もなく彼女の身体がガクリと震えた。
「ふ、うぅ、ああぁあっ……!」
中空を、色を失った彼女の視線が舐める。頭に回されたままだった腕に強く引き寄せられる。指が強く締め付けられて奥からドロドロした液体が溢れてくる。
今度こそは何も訊かないで弄るのをやめた。これ以上は――もう十分に、かもしれないが――身体に毒だ。
息が浅く弾んでいる。彼女ではない。俺がだ。気をやってぐったりとしている安田を見下ろすようにしてベッドの上に膝立ちになり、天井を仰いで息を吐く。
気が付くとシャツの下が汗まみれになっていた。気持ちが悪い。ブレザーを脱ぎ捨てシャツのボタンを1つ開ける。
こっちに越してきてからは枯れたようになっていた。身近な女性に興味が全然持てなかったのだ。
あの人のことが理由ではない。胎児の命を奪った自分を嫌悪していたし自分の性欲を憎悪していた。その感情自体は今も続いている。
だが秘密を家族以外の人間に話せたことで多少マシになったのか、それとも溜め込んでいた分が爆発したのか、今の『元気さ』は半端じゃない。
どうやって鎮めようか頭を捻っていると、意識を取り戻した安田が俺のズボンのジッパーに手を伸ばす。
「私もしたいです。」
「せんでええ!」
何を言っているのかを察し慌てて拒否するが、安田はお構い無しに下を脱がせていく。その表情は好奇心に満ち溢れた無邪気な子供のようだ。
ベルトを外されボタンを外され、下着ごとスラックスを下ろされるまで時間は掛からなかった。今にも暴発しそうな自身が跳ね上がる。
「これが……私のここに入るんですね。」
上体を起こしまじまじと見つめる。恥ずかしい。
「私がしてもらった分、お返ししたいです。」
そりゃ本音を言えばこっちだってされたいし、このまま押し倒さない理由は無い。だが避妊具も無いのに軽々しくそういうことが出来るほど、もう子供じゃない。
「自分で何とかするから、大丈夫や。」
「自慰するんなら、私に見せてください。今後の参考に……」
「なるかボケェ!……それにこの前も言うたやろ、出来たらどう責任とるんや。それにお前の期待に沿えることはせえへんって言うた筈や。」
股間を押さえるようにしてしゃがみこんで、高さが同じになった顔を覗き込んで言った。早々に割ってしまった口と違って、体は簡単に開けない。
「これは使いたくなかったんですが……」
枕元の引き出しをごそごそやって真四角に近い形の銀紙を出してくる。中身も入ったコンドームの包み紙だ。
「どこでそんなもん買うて来たんや。」
「父も母もまだ若いですから。」
どうやらご両親の寝所から失敬してきたらしい。これなら文句は無いだろうと胸を張る安田。
……元気なのは結構だと思うが、娘に避妊具の在り処がばれてるのはどうかと思うぞ、安田夫妻。
それでもまだどうしようか迷っている俺に向かって、安田は最後の一刺しを打ち込んだ。
「ここまでしておいて、まだ期待に沿っていないと思っているんですか?」
前戯と呼ばれる行為は一通り終え、彼女も絶頂を迎えて彼女の下半身と俺の右手はもうドロドロだ。
この瞬間だけを切り取るならば、どうみても行為後です、本当にありがとうございました。
「……ええんやな?」
最後の一線を踏み越えるため、最終確認を取る。
「あんまりしつこい人は嫌われますよ。……先輩、私の処女をもらってください。」
黙って頷く。
安田の手に持ったコンドームをひったくろうとしたが、その動きはかわされた。
「その前に、もっとよく見せてほしいんです。だから……少し待ってください。」
そう言いながら、コンドームを奪おうと前のめりになった俺の体の下に潜り込んで大きくなったそれを握る。
四つんばいになった安田に覆いかぶさって俺が圧し掛かっているようになっているから、振り払おうとどちらかの腕を離すと押しつぶしてしまいそうになる。反抗できない。
無遠慮に握り締めるようなことはせず指を置く程度にしか握っていないが、かえってそれが俺を追い詰めてきて声が漏れる。
「感じているんですか?もし痛かったり気分が悪くなったら言ってくださいね。」
皮肉なのか、さっき俺が言った言葉を使ってから手を動かし始めた。最初はゆっくりしたペースだったが、段々とギアが上がっていく。
やや皮を余して指の間に挟むようにゆるく握られたまま動かされて、目の奥が締め付けられるように感じられ、視界が真っ白になる。
「くっ……もうアカン、やめてくれ!」
それまでスラックスに押し込められていて我慢してきた上にこの仕打ち。半分悲鳴のような情けない声を上げ腰を引いたが、それがまずかった。
俺に急に大きな声を上げられ、腕の動きはそのままに安田の握力が増したのと、俺の腰が引いたのが同時だった。それがとどめになり、勢いよく精を放ってしまう。
音の無くなった室内で俺は、顔を真っ青にするべきか真っ赤にするべきか、複雑な心境を抱えて動きを止めてしまった。
「これが……せ、いえき?」
俺の下でまだもぞもぞやりながら呟くが、俺には答えられない。『軽く扱かれただけで達しました』なんて言えない。
俺だって一応オトコノコなんだから、そんな情けないことは言えない!
「何だか、変な、うん。」
体の下で何か舌に絡んでいるのかクチャクチャというノイズ交じりに何か言っている。何を口にしているか気が付いたのは数秒後だった。飛び起きて突き放す。
「何を……」
予想通りのことをしていて絶句し、天を仰いだ。布団や彼女の体に飛び散り付着したザーメンを口に運んでいる。
「どうかしましたか?」
平然として指ですくった粘液を口に運ぶ。赤いシャツを着た黄色い熊が蜂蜜を舐めているようなその光景に性的興奮を覚える前に嘆息してしまう。
「口に入れて危険なものではないのですから心配する必要は無いと思うのですが。」
「いやまあそうやけど。」
あっけにとられている俺の表情に疑問を投げかけてくる。
艶かしい表情をしていればまだしも、いつもどおりの無表情でペロペロやられたんじゃねえ。
「おいしくは無いですね。」
「……それやったら舐めるの今すぐ止めなさい。」
こんな漫才をしている間にも、一度放って少し収まっていた分身がまた鎌首をもたげてきた。そこを凝視されて赤面する俺。
「……しょうか、本番。」
視線を反らせるためにはその話題しかなかった。
「はい。」
安田は一歩擦り寄って、先程の包みを差し出した。
女の側を仰向けにして、準備を施したモノを入り口に当てる。先程弄ったのでもう十分に濡れている。後はほんの少し腰を押し進めるだけだ。
俺は両手を彼女の腰に回し、彼女の手は背中に回される。
「いくで……」
一声かけてゆっくり押し進める。カリまでは入ったが、入り口からきつく締め付けてゆっくりでもなかなか前へ進めない。
「キツイ、ですか?」
「うん。痛くないか?」
「はい。」
「多分このへんから痛くなるで。」
会話をしている限り苦しそうな様子も無いので、もうちょっと無理が出来るだろうか。押し込む行為を続ける。
もう処女膜の直前まで進んでいたようで、突いたと同時に外と中を隔てていた薄い膜が破られた。
「んんっ!」
破瓜の瞬間呻き声を出したが、最奥まで突き入れても静かなものであっさりと貫通の儀式は終了した。
あの人と初めてしたときは痛がってどうしようかとオロオロしたはず……なんだけど、下に寝そべっている彼女は痛がっている様子は無い。
「痛くないか?」
「痛いですよ。でも快感が勝っていて、そんなに苦痛は感じません。」
口から発する言語はこう言っているが、その自己主張の強い瞳は早く早くと急かしている。その目に惹かれるようしてに俺は何も言わずに腰をグラインドし始めた。
「あっあっああっ、急に動……てすご……も……」
体の中心を大きく揺すられて口が半開きになっている。無性にキスがしたくなって開いた口を口で閉じる。
「う、むっむっむっんん!」
お互いの舌を絡め合い、下半身はお構い無しに突きまくる。合わさった口の端から唾液が垂れて、安田の耳の縁をなぞっていく。
息が苦しくなって唇を離し、2人同時に大きく息を吸う。
「先輩。」
「何や後輩。」
「もう、ダメです。さっき以上に頭の中がふわふわしておかしいんです。」
「最後まで付き合うたるから、心配せんでええ。俺も限界近いし、思う存分イったらええよ。」
事実彼女の中はきつく、奥まで入れた時点で出そうになった。それを誤魔化す為に一息ついたくらいだ。
お互い最後まで行き着くにはそんなに時間は掛からないだろう。
ぐぷっぐぷっぐぷっぐぷっ。血が混じった愛液が卑猥な音を立てている。
何度も突き上られて切ない顔を見せる安田の顔が俺の興奮を増幅させる。きっと俺の顔も情けない顔をしているのだろう。だが引き締めることも出来ず、快感に身をゆだねる。
そこから間もなく俺も限界が見えてきた頃、彼女の体が不自然に震えだした。
「やっ……あああぁ!イ、きますっ、イくぅっ!」
叫ぶと同時に膣が収縮して彼女の背中がエビ反りになる。俺も限界だった。今まで以上に締め付けられている中に数度出し入れして俺も果てた。
「先輩。」
「何や後輩。」
「いつ私の子宮に精子を注いでくれますか?」
「……寝ろ。」
「眠れません。」
「ええから寝ろ。」
「でも。」
「早よ寝ぇ。」
もう起きないといけない時間だが、今日も平日なのだから少しは寝ておかないと体に悪いだろう。
「体が火照って眠れません。」
「……このまま添い寝しといたるから寝てくれ。」
「はい。」
結局ぬいぐるみの代わりをすることになったなあ、と考えながらうつらうつらした頭で考えた。
と、以上です。
男の行動が支離滅裂だとかも言わないで!ああ俺構成力ダメダメだなあorz
まだまだ昔の女出したり妹に男くっつけたり色々やりたいことがありますが、なんか変な電波受信したので次は他のシリーズを書いてみたいと思います。
容量的にこのスレ中に投稿できるかなあ?
>>521 GJです。改行が多くて見やすいし、話は明るいし面白かったです。エロシーンも期待!
妹の逆襲にも期待!
ああ何で俺、こういう風に書けないのかなあ。才能がうらやましい。
>妹に男をくっつける
妹に彼氏を作ってやりたいという意味ですので近親相姦は出さないつもりです。念のため。
これからずっと氏GJ!
そうか、そんな過去があったんだ・・・
とりあえず俺は二人が真の意味で愛し合うのを待ち続ける。
なんという投稿ラッシュ。世間はまさにGW。
お二方ともGJです!
>>467の同級生型敬語系素直クールを書いた者です。
沢山のGJを頂き、ありがとうございました。
調子に乗って続編的なものを書いてみました。
推敲して、夜にでもアップする予定です。
悲しい話だ、と彼女は呟いた。
暗い部屋、煌々と灯るモニタの明かり。そこに映る文字の端々から二人の、過去に対する想いを感じ取っていく。
「だが安田よ、そういう過去を背負った男を包んでやれてこそ、女なのだ」
彼女はそう呟くと共に、自分もそうありたい、と強く思う。
それはそうとして、やはり下着を脱いだままの閲覧で正解だった、と彼女は、濡れた秘部をまさぐり始めたのだった。
つうわけで、GJですた!
549 :
名無しさん@ピンキー:2007/04/28(土) 13:54:11 ID:QHbjN07L
あと少ししたらSS投下します。前作の続きとなります。
長くなってしまったので、さるさん防止として、
2回に分けて若干間をおいて投下いたします。
-同級生型敬語系素直クール その2-
「ただいま帰りました」
「あら、おかえりなさい。瑞希」
図書室での情事後、その後始末が終わり、夕方遅くなってから自宅に帰った雪雨瑞希(ゆきさめ みずき)を、
ややのんびりとした声が迎える。
奥からパタパタとスリッパをならして、瑞希よりも頭2つ分近く背の高い女性があらわれる。だいたい、20代前
半から後半ぐらいだろうか。
まずその胸に目が行く。エプロンをこれでもかと押し上げている豊かな膨らみは、弾丸ライナーのように平坦
な瑞希のそれとは対照的だ。いや、対照的なのはそこだけではない。
女性にしては長身の体躯、豊かな胸にくびれたウエスト、そこから滑らかに裾野を広げ、ハートを逆さにした
ような見事なヒップ、むっちりしとつつもスラリとした脚。
普段着+エプロンという所帯じみた格好なのに、彼女が歩く玄関までの廊下が、まるでファッションショーの
舞台になったかのような錯覚を覚える。
「今日は遅かったのね。…あら? そちらの男の子は?」
にこやかな表情を絶やさずこちらを見る女性に、瑞希がいつもように平坦な口調で答える。
「彼は私の恋人で、遅くなった私を家まで送ってくれたんです」
その声で、明俊ははっと我に返った。そうだ、ここはパリやミラノのショー会場ではなく、雪雨さんの家だった。
「は、はじめましてっ。日阪明俊(ひさか あきとし)と申しますっ!」
びしっと気を付けの姿勢から、ずばっと最敬礼を繰り出す。明俊は緊張の余り、動きが堅くなる。
こ、恋人として紹介されてしまった…。いやまあ雪雨さんとは確かにそういう関係なんだけど、付き合い始め
たその日の内にこんな状況になるとは思わなかった。この女の人は、雪雨さんのお姉さんだろうか。
学校を出る時、家まで送って行くと言ったのは明俊だが、家の前で「それじゃ、また明日」と帰ろうとしたら
「そんな急がなくてもいいじゃないですか」と瑞希に手を取られ、半ば強制的に玄関に上がる羽目になってし
まった。カッコつけて「送って行く」なんて言わなきゃ良かったと一瞬後悔したが、でも僕の、か、彼女…なん
だし、自分も送って行きたかったし、でも、こんな状況はまだ心の準備が出来ていないと言うか、と、揺れ動く
思春期の男心。
そんな明俊に、長身の女性がのんびりと答える。
「あらまあ。瑞希が恋人を連れてくるなんて思わなかったわ。
はじめまして。瑞希の母です。わざわざ娘を送ってくれてありがとう」
穏やかな微笑みに、明俊の緊張が幾分おさまるが、彼女の言葉の意味に気付いて、後から驚きが来た。
……え? 母?
「え? お母さんですか? てっきりお姉さんかと…」
だって、女子大生かOLくらいの年齢に見える。高校生の娘を持つ母親とは思えない。
「あらあら嬉しいわ。お世辞が上手なのね」
単なる勘違いなのだが、彼女は頬に手をあて、相変わらずにこにことしている。
この人が雪雨さんのお母さんかあ。想像と違ったなあ…。明俊は思った。
いつもにこにこしてそうだし、体型だけじゃなくて表情も対照的だなあ。
と、観察してる明俊の左腕が、不意に左へ引かれる。
「わ、雪雨さん!?」
瑞希がまるで自分のものだと主張するかのように明俊の腕を抱き締める。お、お母さんの前でこんなっ! と
明俊は泡を食う。振りほどく訳にもいかず、わたわたと慌てることしか出来ない。瑞希の無表情に見える顔の奥
に、憮然とした感情が浮かんでいるように見える。
「そんな顔しなくても、取らないわよ。瑞希」
娘の突飛な行動に全く驚きを見せずに、母親は微笑ましそうにくすくすと笑う。
「ほらほら、放してあげなさいな。彼、困ってるわよ?」
ぴたりと寄り添っている娘とあわあわとしている彼を見て、まるで学生時代の自分と夫のようだと彼女は思う。
自分達も外から見たらこんな感じに見えたのだろうか? 彼女はくすぐったそうに微笑む。
「日阪君は私のです。手を出したら母さんでも許しませんよ?」
「そんなことしないから、安心なさい」
母親の言葉の真偽を見定めるかのように、瑞希が敵意むき出しでじっと見つめている。
なんでこんな状況になってるの!? と明俊は一人慌てる。
「お母さんが愛する男の人は、お父さんだけよ? 他の人なんて目に入らないわ。
今までも、これからもずっとそうよ」
にこにこしたまま答える彼女をみて、明俊は納得した。あー…、なるほど。雪雨さんの母親だ。
「…そうですね。確かに父さんと母さんを見てると納得出来ます」
瑞希はそう言って、きつく抱き締めている腕を緩める。明俊は、瑞希が発していた敵意が波が引くかのように
すうっと穏やかになったように感じた。
…これは、浮気なんかしたら殺されそうだ。明俊は思わず気を引き締める。実の母にも対してもこんな調子
じゃ、浮気なんてしたらどうなるか分からない。当然、浮気などする気はさらさら無いし、むしろ、自分が先に
愛想つかされてしまいそうだが、彼女の敵意が自分に向けられた時の事を想像して、明俊は背筋が冷たくなる。
でも、なんていうか。こんな些細な事で嫉妬する彼女がとても可愛いというか。好かれてるってことがはっき
り分かって、なんだかとてもくすぐったい気持ちになる。
「じゃあ、僕はこの辺で…」
未だ腕を抱いている瑞希から、さり気なくするりと腕を抜き、頭を下げ、明俊はそそくさと玄関のノブを掴む。
「あら、もう帰るの? 上がって行ってくださいな」
「日阪君、上がっていってください」
ステレオで言う母娘に、明俊は慌てて断る。
「いえいえ! もう遅いですし、お邪魔する訳には」
挨拶だけでいっぱいいっぱいなのに、家に上がるなんで無理だ。
「遠慮しないで。そうだ、晩ご飯食べて行きなさいな」
「そうですね。折角ですから、晩ご飯“も”食べて行ってください」
「いえそんな! お気持ちだけ頂いておきます!」
なぜか強調するかのように“も”を付ける瑞希をとりあえずスルーして、明俊は頭をさげて辞退する。
「あら、もうすぐ用意出来るのよ?」
「私はさっきのでお腹がいっぱいですが、日阪君は逆にお腹空いたんじゃないですか?」
「ちょっ!」
何言っちゃってんのーッ! 思わず叫びそうになる。
「あら? 瑞希、何か食べて来たの?」
「いえ、特に何も」
頭に?マークを出してる母親をよそに、瑞希は明俊を真っ直ぐ見上げ、
「晩ご飯“も”美味しいですよ? ですから、晩ご飯“も”食べて行ってください」
と、いたずらっぽく微笑む。
言外に、「さっき食べた私は美味しかったですよね?」と言ってるのが分かった。
な、な、な…! 明俊は驚きの余り、口をぱくぱくとさせる。
なんなのこの娘!? ここに不純な生徒がいるよ! PTAは何してるの!?
「瑞希もそう言ってるし、せめてお茶だけでもどう?」
そんな二人の様子に気が付いていない調子で言う母親の言葉で、明俊ははっと閃く。
びしっと姿勢を正し、
「お言葉に甘えさせて頂きたいところですが、こんな時間ですし、今日は雪雨さんを送りにきただけなので、
これで失礼させて頂きます。一度、キチンと御挨拶に伺いたいと思っておりますので、その時に改めて
お邪魔させて頂きます」
と、スラスラと自動書記のように言葉を発し、ペコリと丁寧に頭を下げる。
「あらそう? じゃあ今度いらしてね。楽しみにしてるわ」
「そうですね。そんな気を使ってくれなくてもいいんですが、そうことなら、また今度招待しますね」
一部譲歩することでこちらの目的を通す、そういった交渉術があったことを明俊は思い出していた。とっさ
に言った割には上手くいったようだ。
少し残念そうに眉を下げながらも、感心したように微笑む瑞希ママと、無表情の瑞希。だが、瑞希の瞳の奥
が微かに燃えているように見えるのは、明俊の気のせいだろうか。彼女が言う招待に、明俊は何か薄ら寒いも
のを感じるが、今日の所はこの状態から抜け出すのが先決だ。
「それじゃあ、お邪魔しました」
「あ、日阪君。ちょっと待っててください」
玄関を出ようとする明俊に瑞希はそう言うと、家に上がってパタパタと走り去る。やや間を置いて、紙袋を
持って戻ってきた。
「お土産です。温かい内にどうぞ」
「あら瑞希、気が利くわね」
どうやら何か料理を詰めて持って来てくれたようだ。明俊は晩ご飯を断ったことに罪悪感を覚えながら、紙
袋を受け取る。
「お口に合えばいいんだけど…」
「食が進むと嬉しいです」
と言う二人に明俊は、いえそんな、と手を振る。
「有り難く頂きます。こちらこそ、せっかくのお誘いをすみません」
「感想聞かせてね?」
「そうですね、私も是非感想が聞きたいです」
「はい。必ず。──それじゃ、お邪魔しました」
本日2度目の挨拶をして、明俊は玄関を出た。
* * * * *
外はすでに黄昏れ時を過ぎ、藍色の空が明俊を出迎える。
夜になり、冷えてきた空気を胸一杯に吸い込み、大きく吐き出す。
あー…、緊張したなあ…。明俊はこりをほぐすように首を回す。
まさか雪雨さんのお母さんに紹介されるとは思わなかった。まあでもそんなに悪い印象を与えなかったと
思う。雪雨さんのお母さんが優しそうな人で良かった。
今日は色んな事があったな。というかありすぎた。雪雨さんと付き合う事になったばかりか、学校でセッ…
エッチ、しちゃうし、そのまま、玄関だけとは言え、家にお邪魔しちゃうし。
雪雨さんの大胆な言動にはこれからも振り回されそうだけど、でもそれは、それだけ彼女が僕のことを好き
だってことで、そう考えると胸が熱くなって、なんだか落ち着かなくて、頬もなんだかゆるんじゃって。
ああもうっ! 家に向かって歩く足が止まる。今すぐ彼女の家に戻って彼女を抱きしめたい。頭ではそんな
事出来ないと分かっているけど、自分の腕の中にすっぽりと収まって幸せそうに肩口に額を押し付ける彼女を
思い出すと、もう、腕と胸が何かしびれたようにぞくぞくする。
あー。ハマるってこういうことなのかなあ…。
明俊はもう、引き返せないくらい瑞希が好きになっている自分を自覚した。
* * * * *
そんな事を考えながら、幸せな気分で自宅に着いた明俊だが、お土産として渡された紙袋の中身を見て、
瑞希の斜め上っぷりを再確認する。
「お土産って、これ…パンツじゃないか……」
今日一日、様々な予想外の展開を乗り越えた明俊だったが、今度こそ膝から力が抜けて崩れ落ち、がっくり
と床に手を付く。
料理もちゃんと入っていたが、紙袋の一番下に見覚えのあるショーツがビニール袋にくるまって入っていた。
確か、これは今日雪雨さんが穿いてたパンツだ。行為の時にびしょびしょになってしまったが、さすがにノー
パンで帰る訳にも行かず、家が近いですから平気です、と彼女は穿いて帰った。
まさにorz状態のまま明俊は、お土産を渡す時の彼女の言葉を思い出した。
「温かい内にどうぞ」って、脱ぎたてって事!? それにどうぞって!
「食が進むと嬉しいです」って、お、オカズにしろと!?
「是非感想が聞きたいです」って、それ聞いてどうするの!?
明俊はしくしくと女の子のように泣きたい気分になった……そう、なった、はずなのに。
え、ちょっと待って。なんで、こんな…。
意に反して、ぞくぞくと背筋が震えるのを感じて愕然となる。股間がむくむくとズボンを押し上げる。
思わずビニール袋に入った瑞希のショーツに目が行く。柔らかそうな素材で出来ており、小さく丸まったそ
れは、見た目にもふかふかとした印象を与える。白を基調とした布地で、小さな薄ピンク色の花柄が散らばっ
ていた。クロッチの部分を中心に彼女の染みが広がり、卑猥に濡れそぼっている。
明俊は喉の奥がかぁっと熱くなり、息が自然と荒くなる。
これは、雪雨さんがさっきまで穿いてたもので、この染みは、彼女が興奮して出来たもので、彼女が興奮し
たのは、ぼ、く、な訳で、僕に対して、こんな、絞れるくらい、壊れた蛇口のように雪雨さんは、濡らして。
明俊の頭に、図書室での情景が浮かび上がる。小さな彼女が、僕にまたがって、頬を染め、髪を振り乱して
涎を垂らしながら、腰を振っていた。
明俊は喉の奥が、まるで胸焼けしたかのようにジンジンと熱くなるのを感じた。ズボンの中のものは呆れる
ぐらい硬くなっている。熱にうかされたかのようにビニール袋に手を入れて、震える指がそれを掴んだ瞬間、
ビクリと固まる。……温かい。
濡れて、冷たくなっているはずなのに、まるでたった今この状態になったかのような温かさを放つショーツ
に、明俊は理性を失った。
単純に考えて、作り立ての料理と一緒に入っていたのだから、その熱に温められただけなのだが、程よく、
人肌に温められ、さらにほわほわと柔らかな感触を持ちつつも、さらさらとしたショーツの肌触りを手のひら
に感じた瞬間、もうそれに自分のものを擦り付けることしか考えられなかった。
* * * * *
……。
………。
………や…。
…やって、しまった…。
ああっ…。明俊は今度こそ、本当に、しくしくと女の子のように泣きたい気分になった。
遠い空にいる父さん、母さん。お元気ですか? あなた達の息子は、女の子に下着を渡されて興奮する変態
になってしまいました…。
* * * * *
どんなに落ち込んでいても、朝はちゃんと来るわけで。
明けない夜はない、という希望的な意味合いの言葉よりも、否が応にも朝が来る、と言った歓迎したく無い
方の心情で、明俊は通学路を歩く。
未だに夕べの自己嫌悪を引きずっていた。自慰の後は、大抵自己嫌悪に陥るものだが、あの時のそれは別格
だった。なまじ、物凄く気持ちよかっただけに罪悪感もひとしおだ。
そう、気持ちよかったのだ。物凄く。
女の子の下着でしちゃうなんて、どれだけ変態なんだ僕は。と明俊はがっくりとうなだれる。
どんな顔して雪雨さんと接すればいいんだ…。と、昨日とまるで変わらぬ状態のまま、とぼとぼと歩く。
そんな彼に、凛とした声が掛けられる。
「日阪君、おはようございます」
まさに、ちょこん、という擬音がぴったり当てはまるような感じで、瑞希が正面に立っていた。
朝日を背面から浴び、輪郭にキラキラと輝く光の粒を纏いながら歩み寄る瑞希が、それはそれは清らかで、
穢れ無いものに見えた。すっきりとした夏服も、彼女の清純さを引き立てているように見える。
長袖のブラウスに透ける細い腕も、プリーツスカートから覗く丸いひざ小僧も、紺のハイソックスに包まれ
た細いふくらはぎも、下手に触れたら壊れてしまいそうな危うさを感じさせる。
「お、おはよう。雪雨さん」
愛くるしい彼女の挨拶は、本来なら歓迎すべきものだが、今の明俊には眩しすぎて直視出来ず、後ろめたさ
に思わず視線を反らして挨拶を返してしまう。
不意に、ぐいっと顔を正面に向けられる。瑞希が正面から明俊の頬を両手で挟んでいた。
そのままついっと背伸びをし、唇に柔らかな感触が生まれる。
目の前に軽く瞑った目蓋が見える。長い睫が微かに震え、白磁器のような肌に、うっすらと青い血管が透き
通っているのを確認出来るくらい、至近距離。ふっと、なごり惜しむかのように唇が離れ、すとんと瑞希が踵
を着く。彼女は両手で明俊の頬を挟んだまま、僅かに微笑む。
「おはようのキスです。目、覚めました?」
遅れて、やっとキスされた事に気付いた明俊は顔に血が集中する。挟まれた頬が熱い。
「あ、え、う…」
しどろもどろになって言葉が出ない明俊に、瑞希は、
「まだ覚めませんか? じゃあもう一回」
と、背伸び。
「さ、覚めた! 覚めたよ!」
我に返った明俊は、慌てて仰け反りキスをかわそうとするが、頬を挟んでいた両手がするりと首に巻き付き
引き寄せられる。爪先立ちし、顔を目一杯上に向け、首にぶら下がるような形でキス。
「んー! んー!」
細い腕の、どこにそんな力があるのか。がっちりと首を抱えられ、逃れられない。
「んんっ! っぷあ!」
仕方なく、彼女を抱きかかえるようにして持ち上げ、顔を離すことに成功する。キス中の呼吸が未だに上手く
出来ない明俊は、肩で息を付く。恥ずかしいやら苦しいやらで、顔が真っ赤に染まる。
「日阪君の方から抱き締めてくれるなんて嬉しいです」
「雪雨さんが放してくれないからじゃないか…」
首に腕を絡め、抱きかかえられた格好のまま、嬉しそうに微笑む瑞希に、明俊はため息を付くことしか出来
ない。
「私としては、このまま教室まで運んで欲しいところですが、どうでしょう?」
「……却下します」
朝からどっと疲れた気分で、明俊は瑞希を地面へ降ろす。羽のように軽くて、人形みたいに細いのに、とても
柔らかくて温かい彼女をこれ以上抱き上げていると、ヘンな気分になってしまいそうだった。
そもそもここは通学路だ。幸い、周りに人はいなかったから良かったものの、こんな光景をクラスメイトに見
られたらと思うと気が気ではない。
「じゃあ日阪君の左腕で我慢します」
言うが早いか、瑞希は猫のようにするりと明俊の左側に回り込み、腕にしがみつく。
「…えっと、学校が近くなったら離れようね?」
「却下します」
左腕に感じる温かな感覚にどぎまぎしつつ、諭すように言う明俊に対し、瑞希は即答して腕に顔を擦り付ける。
「教室まで、いえ、授業が始まるまで放したくありません」
「いや、いやいやいや!」
彼女ならホントにやりかねない。そりゃ、しがみつかれて嫌な気はしないけど、時と場所というものがあっ
て、学校と言う集団社会で生活している以上、時には自分の主張よりも周りに合わせる事を優先することも大
事だと思うんだ。と、彼女を必死に説得する。
「私の目的は、日阪君と私の関係を学校中の生徒に知ってもらうことですから、注目されるのはむしろ好都合
です」
「な、なんで知ってもらいたいの!?」
「日阪君に悪い虫が寄らないようにするためです」
「心配しなくてもそんなの寄って来ないからっ!」
残念ながらというか幸いにもというか、約17年間生きてきて、そんな経験は一切ない。明俊は思わず頭を抱え
そうになる。
「あ、あのね? 生徒はともかく、先生に注意されると思うんだ」
そうだ。自分達が通う高校は、特別、風紀に厳しい訳では無いが、学校内をこんな状態で過ごしている生徒
を生活指導の先生が放っておくわけがない。
「生徒同士で腕を組んではいけないという校則はないと思います」
「な、無いかもしれないけどさ、その、心情的に反感買いそうでしょ?」
「先生にどう思われようと、私は気にしません」
僕は気にするのーッと叫びそうになるのを押さえ、明俊は瑞希の顔を覗き込むようにして、あえて、責める
ような口調で言う。
「雪雨さんはさ、来年も僕と同じクラスになりたくないの?」
「なりたいに決まってるじゃないですか」
なんでそんな当たり前のことを聞くのか分からない、といった風に瑞希が答える。
「じゃあ、少しは自重しないと」
「…どうしてですか?」
我が意を得たりといった調子で言う明俊を、瑞希は不思議そうに見上げる。
「ほら、クラス編成って、先生が決めるでしょ」
「そうですね。どういう基準か分かりませんが、結構ルーズに決めていると聞いた事があります」
「うん、だからさ、“学校内でイチャついているけしからん生徒がいる”って先生に思われたら、確実にその
生徒は別々のクラスにされるよね?」
「…………」
明俊の言わんとしていることを理解して、瑞希は不機嫌そうに目を反らす。
こんな言い方は卑怯だな、と思いつつも、明俊は心を鬼にして口にする。
「僕は、来年も雪雨さんと同じクラスになりたいなあ。高校生活最後の1年だし」
ごめんね雪雨さん。僕だって雪雨さんとイチャイチャするのは嫌いじゃないし、むしろ好きなんだけど。急が
ば回れというか、その方が結果的に僕達にとって良いと思うんだ。
「……でも、それでも私は、日阪君とこうしていたいんです…」
瑞希は駄々をこねる子供みたいなことを言って、うつむく。明俊の腕がぎゅっと抱き締められる。
そんな調子で言われたら…雪雨さん卑怯だ…。明俊は胸が痛くなった。耐え難い痛みを覚え、とてもたまら
ない気分になる。
僕の腕を抱き締める彼女の姿が、まるで、お気に入りのおもちゃを大人の勝手な都合で取り上げられそうに
なっている子供みたいに見えた。腕をしっかと抱き締め、悲しげにうつむく彼女は、とても健気で頼り無く、
僕はたまらなく胸が苦しくなる。
「…あー、」
明俊の声に、彼女は微かにビクリと震える。拒絶されると思っているのかもしれない。明俊は気付かない振り
で、素早く言葉を続ける。
「あのさ、僕、環境美化委員でね? 週に3日、30分ぐらい早く学校に行って、花壇とか植え込みに水をやった
りしないといけないんだ」
「…?」
頭の後ろを掻きながら、恥ずかしげに視線を反らし、早口で言う明俊を、瑞希が見上げる。
「だからね? その、週に3日だけだけど、その時なら、先生も他の生徒もいないし、もし雪雨さんが良ければ、
30分早起きしてもらわないといけないけど、こうやって腕を組んで学校に行ったり、キ、キスしたりしても
平気だと思うんだ。……それじゃ、駄目かな?」
途切れ途切れ言う明俊のセリフに、瑞希の顔が笑顔に変わる。
「…やっぱり、日阪君はとっても優しいですね。素敵です。惚れ直しました。大好きです」
初めて見る、彼女の満面の笑顔に、明俊は思わず見とれてしまう。瑞希は心の底から嬉しそうに明俊にしが
みつく。
「週に3日以外でも、学校の近くまでなら腕組んでもいいんですよね?」
「あー、うん」
「良かった。──行きましょう、日阪君」
満面の笑顔のまま、腕をぐいぐい引っ張って歩く瑞希に、明俊は困ったような、嬉しいような、なんとも言え
ない笑顔でついていく。
「日阪君。私まだ、学校でイチャつくのを諦めてませんよ?」
「え!?」
驚く明俊に、瑞希はこちらを真直ぐ見上げる。
「今年一年は我慢します。でも、来年は最後ですから、先生を気にする必要はありません」
いつものいたずらっぽい笑顔で、瑞希は続ける。
「一年間おあずけされる分、来年はすごいことしちゃいますよ? 覚悟しててくださいね?」
そう、楽しそうに宣言する瑞希に明俊は、
「お、お手柔らかにお願いします…」
と、力無く頭を垂れるのが精一杯だった。
* * * * *
ぽいっと、折り畳まれたノートの切れ端が、明俊の机に飛び込んで来た。
今は授業中、教師が黒板に向かっている隙に、明俊の隣の席に座っている生徒が放り投げたようだ。
今日はこれが最後の授業。試験も終わったばかりだということもあって、ほとんどの生徒が授業を聞いている
ようで聞いていないような雰囲気だった。
明俊の机に放り込まれた切れ端には「日阪君へ」と書いてある。いったい誰が?と教室を見渡すと、3列程
席が離れた先にいる瑞希が、明俊に視線を送っている。僅かに微笑んで、白い指がちょいちょいと明俊が
持っている紙片を指す。
なんだろう? 明俊は教科書を立てて壁にし、幾重にも折り畳まれた紙を開いた。
“私のびしょびしょに濡れたパンツは気持ちよかったですか?”
「ッーーーーーーーーーーーーーー!!」
声にならない悲鳴を上げ、ばしっと手を叩くような勢いで紙を閉じる。危なく大きな音が出そうになって、
背中にどっと冷や汗をかく。
か、完全に不意を突かれた…! 心臓が大型の単気筒エンジンのようにドカドカ鳴る。
今朝はこのことで頭がいっぱいだったのに、雪雨さんに会ってから、キスだのなんだので、すっかり頭から
消えていた。
板書している先生も周りの皆も特に気付いていないようだ。皆が真面目に授業を受けている時期じゃなくて
ホントに良かった。シーンした授業風景だったら、確実に気付かれていただろう。こんなメモを見られたら、
もう生きて行けない。
明俊は真っ赤な顔で瑞希の方を呆然と見る。瑞希は僅かに頬を染め、いたずら顔で微笑んでいた。
* * * * *
これは、いくらなんでも一言文句を言ってやらないと気が済まない。
正直、アレは無い。周りに気付かれなかったから良かったものの、皆や先生にあのメモを見られたらと思う
とぞっとする。第一、メモが僕の所に来る前に、誰かが見てしまう危険性だってあったんだ。
そう思い、授業が終わり、放課後になった瞬間に瑞希の席へ行こうと立ち上がりかけたとき、瑞希がこちら
に向かってくるのが見えた。視線が真っ向からぶつかり、明俊は思わず顔を背けてしまう。
椅子から浮かせた腰を下ろし、顔を伏せる。
「日阪君」
クラスメイトが思い思いに帰り始めた教室で、上から彼女の声がした。明俊は椅子に座り、顔は背けたまま
なので、彼女の表情は確認出来ないが、少なくとも声はいつも通り平坦だ。
彼女に対して答える声が、自然と憮然とした口調になる。
「…なに?」
「そんな、怒らないでください」
「だって!」
明俊は思わず声を上げ、瑞希を見上げる。そして驚いた。瑞希は少し困ったような顔をしていた。てっきり、
例のいたずら顔をしてると思ったのに。
「あんなに驚くとは思いませんでした」
「……驚くに決まってるでしょ…」
明俊は少し毒気を抜かれて顔を伏せ、力無く答える。
「でも、嬉しかったです」
「…僕が驚くのがそんなに嬉しいの?」
脱力して机に突っ伏しそうになる明俊に、瑞希はふっと顔を近付け囁きかける。
「あんなに驚いたという事は、私のパンツが凄く気持ちよかったんですね?」
どかんっと顔が沸騰した。
「自分で渡しておいてなんですが、まさか、日阪君が本当に使ってくれているとは思いませんでした。これは
嬉しい誤算です」
本当に嬉しそうに囁く瑞希に、明俊は真っ赤になった顔を隠すように背け、
「別に、つ、使ったなんて、言って無いよ」
と、精一杯、平静な声で言う。こんな分かりやすい反応をしておいて、説得力の欠片もないが、言わずには
いられなかった。
「隠さなくてもいいじゃないですか。私は使ってもらって嬉しかったんですから」
あっさり看破され、言葉を失う。否定も肯定も出来ずに、明俊は話題を反らした。
「な…なんで、パ、…あれを入れたの?」
「私は日阪君の体操服を借りたので、そのお返しにと思いまして」
どこの世界にそんなお返しをする女子高生がいるの……。明俊はもう呆れて声が出ない。
勝手に人の体操服をオカズにしたばかりか、自分の下着を相手にオカズにして貰うために渡すなんて。
「感想、必ず聞かせてくれるって言いましたよね? 使い心地はどうでした? どれくらい興奮しました?」
つ、使い心地って!? 明俊は夕べの自慰を思い出し、頭から湯気が出そうになる。思わず見上げた瑞希の
顔が、いつものいたずら顔になっていた。しかし、僅かに頬を染め、目も微かにうるんでいる。その顔をまと
もに見てしまい、明俊の心臓が大きく跳ねる。瑞希は明俊の答えを待たずに、さらに囁く。
「日阪君が私のパンツでしてるかもと思うと、凄く興奮して、昨日あれだけ注がれたのに、我慢出来なくて、
2回も一人でしちゃったんですよ?」
な、なんで、なんで雪雨さんは毎日オナニーの報告をしてくるんだ…。そんなに僕を挑発してどうするんだ。
いつの間にか二人っきりになっていた教室で、明俊は、ただただ呆然と瑞希を見つめる事しか出来ない。
瑞希はくすくすと楽しそうに微笑み、
「私たち二人とも、お互いを想ってオナニーしてたんですね。日阪君はどれくらい気持ちよかったですか?
私は凄く気持ちよかったですよ?」
腰を屈め、明俊の顔を覗き込むように顔を近づける。明俊は思わずのけぞって椅子から落ちそうになり、
机を掴んでこらえる。
明俊は何か言おうとしたが、上手く言葉が出てこない。何を言えばいいのかも分からない。
その間にも瑞希はさらにじわじわと近付く。お互いの息が掛かりそうな距離まで来た所で、瑞希はとんでも
ない事を口にする。
「今日も、図書室でしませんか?」
なッ!
「……に言ってるの? 駄目だよ」
かろうじて、かすれた声を出した明俊に、瑞希は、んー、と可愛らしく小首を傾げ、
「じゃあ、どこでしましょうか? 視聴覚室とか防音で良さそうですよ?」
と、まるでデートの場所を選んでいるかのように、楽しげで気楽な様子で言う。
「ちょっ、するのは確定なの!? というか、今年一年は学校内ではイチャイチャしないって…」
「イチャイチャではありません。これは愛の営みです」
「どっちも学校ですることじゃないよっ!」
思わず絶叫した。もう訳が分からない。女の子って皆こうなんだろうか?
「そうですか。わかりました」
「え?」
瑞希の予想外の聞き分けの良さに、明俊は思わず声が出る。
「学校じゃ無ければいいんですね?」
「いや、あの」
何か嫌な予感がして言い淀んでいると、不意に、まるで言葉を遮るように頭を抱きかかえられる。
「うぁ…!」
ベージュ色のベストが目の前に飛び込んできた。ニットの感触が頬をくすぐり、エンジ色のリボンタイが
視界の端で揺れる。
「今日、私の両親、帰りが遅くなるんです」
頭をぎゅっと胸に抱きかかえられ、囁かれたセリフに、明俊は思わず背筋がぞくりと震える。
ちょっと待って、こういうセリフって……。現実に、こんなセリフを自分が言われる時が来るとは思いも
しなかった。
「昨日、今度招待するって言いましたよね? 早速ですが今日招待します」
「ぁ、ぅ…」
華奢で、平らに見えるのに、柔らかく温かい胸に顔を押し付けられ、頭が熱を帯びる。思考がまとまらない。
「私の部屋で、いっぱいしましょう?」
いつも通り平坦な彼女の声が、どこか遠くから聞こえるように耳に届いた。
一先ずここまで。
少し時間を置いて、残りをアップします。
まさしくこれはGJ!!
お土産の中身が予想できた自分は駄目人間かもしれん
キターーーーーーー!!
続きを投下します。
* * * * *
その後、どういう風に雪雨さんの家まで移動したのか、よく憶えていない。
とにかく、僕は、半ばぼーっとした頭で、雪雨さんに手を引かれるがままに歩いた。
僕の手を引く雪雨さんは、まるで、今にも走り出したい衝動を押さえるかのように、早足で歩いていた。
その間、雪雨さんも僕も、全く会話をしなかったと思う。少なくとも言葉を交わした記憶は無い。
「どうぞ。上がってください」
僕を引く手が止まり、発せられたその声で、僕は雪雨さんの家に着いたと言う事にやっと気付いた。
ここにきて、やっと僕の意識が正常な働きを取り戻した。敷き居を跨ぎ、昨日もお邪魔した玄関に足を踏み
入れる。
「お邪魔します」
同時に、急激な緊張に襲われた。これから僕は、彼女の部屋で……。そう思うと、意識がはっきり覚醒した
分、より鮮明な緊張が身体を走る。明俊は心臓が早鐘のように鳴り、目眩を覚えた。
明俊の背後で、バタンと玄関が閉まり、ガチャと鍵が掛かる音がやけに大きく聞こえた。すぐ後ろに瑞希
の息遣いを感じる。
「日阪君」
いつも通りの瑞希の平坦な声が聞こえた。「なに?」と明俊が振り返った瞬間、ぶつかるような勢いで瑞希
が飛び込んできた。
明俊の首に腕を回し、頭を抱えるようにして瑞希が唇を押し付ける。瑞希の勢いに明俊は尻餅を付きそうに
なり、すんでのところで踏み止まる。
「んっ…ふぅ、んぅ…」
瑞希は目一杯背伸びし、明俊の首からぶら下がるような格好で情熱的に唇を重ねる。明俊の唇をむしゃぶり、
舌を入れて口内をなめ回す。ふぅふぅと荒い鼻息が明俊の顔をくすぐる。明俊も瑞希の背中に手を回し、上か
ら応戦する。
「んぅ…ちゅ、はぁ…、んんむ…」
お互い、首をぐるぐる振って唇をむさぼる。熱い吐息と涎が隙間から漏れ、熱で頭がぼーっとなる。
やっと離れたお互いの口から、だ液が糸を引く。
「……雪雨さんの部屋で、するんじゃなかったの?」
「そのつもりだったんですが、どうにも我慢出来なくて」
荒い息をつきながら問う明俊に、瑞希がいたずらっぽい微笑みで答える。お互いの顔が赤く染まり、熱い息
が掛かる。気が付けば、瑞希の足は地面から浮いており、明俊の腕の中にすっぽりと収まっていた。
ふぅふぅと荒い息をつきながら、しばし見つめあう。
「…部屋に、案内しますね」
まるで、長い葛藤の末に決断した答えのように、瑞希が言った。明俊は唾を飲み込むようにして頷いた。
* * * * *
初めて入る女の子の部屋で、明俊はとても落ち着いていられず、そわそわと身体を揺する。
瑞希は2階にある自室に明俊を案内すると、「お茶を入れてきますから、どうぞくつろいでいて下さい」と
言って、階段を降りた。
瑞希は明俊と同じく一人っ子らしい。八帖ほどのその部屋は、洋室で、全体的に白かベージュの落ち着いた
色合いでまとめられており、絵に描いたような女の子の部屋という感じではなかった。壁にクローゼットと本
棚が埋め込まれているため、八帖よりもゆったりとした印象を受ける。
明俊は部屋の中央にある小さなテーブルの前で、思わず正座をしていた。「くつろいでいて下さい」と言わ
れても、とてもそんな気分にはなれない。
女の子の部屋をあまりじろじろと眺めるのは失礼な気がして、首を固定して視線を動かさないようにする。
特に、壁際に設置されたベッドには極力視線が行かないようにした。
明俊は、童貞を捨てた男は全てに対して自信に満ちあふれ、緊張などしないものだと漫然と思い込んでいた
が、それが間違いであったことを身を持って知ることになった。こういう事は、たぶん童貞とかそんなの関係
ないのだろう。自分は脱童貞したはずなのに、ちっとも女の子に対して慣れるようになる気がしない。
口の中がカラカラになり、手が異様に冷たく冷えてきたのに、手のひらは汗でびっしょり濡れていた。
「お待たせしました」
瑞希の声で、明俊は面白いくらいびっくりする。
「コーヒーで良かったですか?」
「あぁ、うん。ありがとう」
コーヒーカップが二つ並んだお盆を、瑞希がテーブルに置く。香ばしいコーヒーの香りで、明俊は幾分緊張
が和らいだような気がした。
「どうぞ」
「ありがとう。頂きます」
明俊の前にカップを置き、瑞希は隣に腰を下ろす。
喉を潤すのと、緊張している頭を冴えさせるため、明俊はブラックのままカップに口を付ける。そんな様子
をどこか楽しそうに瑞希が見つめ、ふわりと軽く寄り掛かる。不意に瑞希の感触を感じて、明俊は危なくコー
ヒーを取りこぼしそうになった。
「あの、あんまり寄り掛かられると、コーヒー飲みにくいんだけど…」
寄り掛かられ、身体が逃げるように傾く明俊に、瑞希がいたずらっぽい微笑みを向ける。
「日阪君は、私の部屋にコーヒーを飲みに来たんですか?」
「ちょっ、雪雨さんが出したんじゃないか…」
「あ、そう言えばそうでした。でも…」
本当に忘れていたように苦笑し、自然な動きで明俊の手からカップを奪い取りテーブルに置くと、そのまま
のしかかって来る。
「私、もう我慢できないみたいです」
そう言って、身体を密着させてくる。
「ゆ、雪雨さん、ちょっ、待って」
「気持ちいい事、しましょう?」
ぴったりと身体を密着させ、鼻と鼻がくっつきそうな距離で囁くと、明俊に唇を重ねる。
「ふぅ…、んっちゅ、はぁ、んっ…」
明俊に覆いかぶさり、胸に手をついた体勢で、瑞希がキスの雨を降らせる。ちゅっちゅと唇をついばみ、
舌でちろちろと口の周りや唇の裏側をなめ回す。
「んぅ…。日阪君のお口、コーヒーの味がしますよ?」
「今、飲んでたから…」
瑞希の情熱的な口づけに、明俊は熱にうかされたように答える。
目の前の瑞希はすっかり発情した様子で微笑んでいる。長い黒髪がフローリングに垂れ下がり、明俊の頬を
優しくくすぐる。
「日阪君の、大きくなってますね」
瑞希の柔らかい太ももの下で、明俊の下半身はズボンを窮屈そうに押し上げていた。明俊は思わず視線を
そらし、
「雪雨さんがエッチ過ぎるからだよ…」
と言い訳するように呟く。
「私がエッチなんじゃなくて、日阪君が私をエッチにさせるんです」
「僕のせいなの…?」
「そうですよ? 私、日阪君を好きになるまでこんな気分になった事ありません。オナニーだって、日阪君を
好きになったら、自然と身体が求めたんです」
かぁっと明俊の顔が火照る。瑞希の告白に、文字通り顔から火が出そうになる。
「最初は、日阪君に対する自分の気持ちがよく分かりませんでした。でもすぐに、ああ、これが恋なんだって
気付きました」
思わず両手で顔を押さえたくなり、視線をそらす明俊をそのままに、瑞希の告白は続く。
「日阪君を想うと、苦しくて、切なくて、でも心が溶けそうに甘くて。布団の中で、一晩中自分を慰めて悶え
てた事もあるんですよ?」
もう明俊は恥ずかしくてどうにかなりそうだった。雪雨さんは、なんでこんなに真直ぐ告白出来るのだろう
か? ちらりと瑞希の顔を見た瞬間、明俊の心臓がバクンと跳ねる。
瑞希は明俊に負けないくらい、顔が真っ赤に染まっていた。瞳をうるませ、半開きの口から熱い息が漏れて
いる。
「日阪君と恋人になったら、この症状が収まると思ったんです。でも、逆でした。一人で想ってた時の何倍も
日阪君が恋しくて、もう、駄目なんです。この気持ち、分かってくれますか?」
「うん、分かる…」
明俊は忘我状態でうなずく。目の前の瑞希から目を放せない。
「昨日、雪雨さんの家から帰る途中、急に雪雨さん抱き締めたくなって、思わず戻りたくなったんだ…」
「…そうなんですか? とても嬉しいです」
明俊のセリフに、瑞希は一瞬驚いたように目を開く。すぐに微笑みに戻ると、
「…今なら、私を抱きしめられますよ?」
顔を近づけ、頬と頬を擦り付けようにして耳元で囁く。その声で、明俊は弾かれたように瑞希を抱き締めた。
「雪雨さんっ! 好きだっ!」
「あ、あああッ! 日阪君ッ!」
明俊が口走った言葉に、瑞希が震える。顔をお互いの首筋に埋めるようにして、力一杯抱き締めあう。
「日阪君ッ! 私も好きですッ!」
抱き締めあう二人は、お互いの熱い体温でまるで茹だるように頭が朦朧とし、息が荒くなる。熱い吐息が
お互いの首筋に掛かり、さらに体温を上げて行く。二人はまるでお互いの身体が溶け合うような錯覚を覚えた。
何かが足りない。熱にうかされた頭で、瑞希はそう考えていた。もっともっと溶けて混ざりたいのに、何か
が自分と彼を遮断している。
その邪魔者の正体に気付き、瑞希はがばっと身体を起こす。真っ白な顔がまるで内側から火を灯したように
紅く上気し、黒髪はもつれて乱れ、桃色の唇を半開きにして荒く息をつく。
「服、邪魔ですね」
瑞希は瞳をうるませ、まるで独り言のように呟く。
そうだ。服だ。これが溶け合う私達の邪魔をしてるんだ。服を脱いで、お互い生まれたままの姿で抱き合え
ば、きっともっと溶け合える。瑞希にはそれがとてつもなく素敵な事に思えた。想像しただけで腰が震える。
明俊に馬乗りになったまま、ニットのベストに手を掛け、乱暴に脱ぎ捨てる。続けて、興奮のあまり震える
手で、リボンタイを外し、ブラウスのボタンを外し掛けたところで手が止まった。
真っ赤な顔のまま、すっくと立ち上がり、窓際まで歩く。シャッと小気味良い音とともに、淡いベージュ色
のカーテンが引かれ、部屋が薄暗くなる。
まだ明るい外の光が透け、薄暗い部屋に浮かび上がる瑞希のシルエットを、明俊は沸騰寸前の頭で眺める。
明俊の目の前で、瑞希がブラウスのボタンを外して行く。薄暗い部屋に、瑞希の透けるような白い胸元が
徐々にあらわになって行き、明俊の目を釘付けにする。
薄暗い部屋の方が、明るい部屋よりも何倍もいやらしかった。特に、カーテンに太陽の光が透けている状態
が、明るいうちからカーテンを閉めて、自分が今、人に見せられないような事をしているんだと自覚させられ、
背徳感を大いに刺激する。明俊は荒い息で喉がカラカラになり、股間のものが、ズボンの中でチャックをはち
切らんばかりにいきり立っていた。
瑞希はブラウスのボタンを全て外し、するりと肩から滑り落とす。ほっそりとした首筋。白い胸元から艶か
しく浮き出ている鎖骨。小さな胸を、白を基調とし、控えめにレースの飾りが付いたシンプルなブラジャーが
覆う。細いのに、あばらがあまり目立たないすべすべとした胴回り。
目の前で裸になって行く瑞希に、明俊の興奮が高まる。
すっかりブラウスを脱いだ瑞希は、スカートに手を掛け、ファスナーを下ろす。スカートがフローリングに
落ちて広がる。瑞希はとうとう下着姿となって、明俊の目の前にその姿を晒す。
ブラジャーとお揃いのショーツは、同じく純白で、控えめなレースの飾りが付いていた。クロッチの部分が
見た目にも分かるほど濡れており、白い布地に恥部が透けて見える。その光景は、目眩がするほどの卑猥で、
明俊は居ても立ってもいられなくなり、腰を上げる。
「私だけ裸なんてずるいです。日阪君も、脱いで下さい」
平坦に聞こえる口調だが、目はうるみ、顔も真っ赤に染まっている。むしろ、弾けそうな興奮を、無理矢理
押さえ込んだような平坦さに感じられる。
「ぅ、うん」
明俊は喉がひり付き、かすれた声しか出ない。ワイシャツのボタンを震える手で外し、下に着ていたTシャツ
を脱ぐ。ズボンも下ろしてトランクス姿となった。いきり立ったペニスが、トランクスを呆れるくらい盛り上
げている。
お互い、はぁはぁと息を荒げ、歩み寄る。徐々に歩み寄るスピードが上がり、終いには、半ば走り出しそう
な勢いで抱きつく。そのまま激しくキス。
首に手を回して唇を押し付ける瑞希を、明俊は抱きかかえるように持ち上げる。脇の下から手を差し入れ、
背中と頭を支えてきつく抱き締める。瑞希も明俊の頭を抱えるようにしがみつき、唇をねぶる。
お互いの熱い吐息と、直接触れあう体温で、瑞希は頭が痺れ、腰の奥からトロトロと温かいものが溢れてく
るのを感じた。明俊も、瑞希の柔肌を直接身体で感じて、興奮で脳みそが沸騰する。抱きかかえた瑞希の、
すべすべとした下腹部に、張り詰めた熱い肉棒をぐりぐりと押し付ける。
「日阪君、ベッドに…。このまま、ベッドに運んで下さい」
うるんだ目で訴えかける瑞希を、明俊はベッドに運び、押し倒す。ベッドが二人分の体重で沈み込み、軋む。
明俊はそのまま唇を重ね、右手を瑞希の胸に当てる。
「!」
ビクッと瑞希が震える。至近距離で見つめあう目が、僅かに困惑の色を浮かべるが、明俊は止まらなかった。
「んぅ、ゃッ…日阪く、ぅん…」
明俊は瑞希の唇をついばみながら、右手を動かす。揉むと言うよりも撫でるような感じで、ブラジャー越し
に胸の感触を味わう。ごわごわしたブラジャーの下で、うっすらと微妙に膨らんでいる胸がふにふにと揺れる
のが分かった。
明俊がブラジャーに手をかけ、引き上げようとした時、瑞希がその手を掴んだ。
「日阪君、あのっ、胸は…」
珍しく慌てた様子で、瑞希が明俊の手をブラジャーから引き剥がす。
「駄目?」
明俊の問いかけに、瑞希は恥ずかしそうに顔を反らしモゴモゴと口籠る。
「私、む、胸にはちょっと自信が無くて、ですから、その、」
「……駄目。見せて」
「ぇ? ぁッ!」
瑞希のいじらしい様子にたまらなくなった明俊は、強引にブラジャーを引き上げ、胸を露出させる。真っ白
い、なだらかな曲線が、外気に触れてふるふると震える。
「ゃあッ!」
恥ずかしさに顔を真っ赤に染め、瑞希が身体をひねって胸を隠そうとする。明俊は瑞希の手首をベッドに押
さえつけ、それを阻止する。
「雪雨さん、可愛い。凄く可愛い」
羞恥に取り乱す瑞希が酷く新鮮で、明俊は情欲を肥大させる。我を失ったかのように胸にしゃぶりつく。
「んんッ!」
すでに硬くしこっている桜色の突起を吸われ、瑞希が仰け反る。胸の先端から電気が走ったように鋭い刺激
が全身を駆け巡る。
「ぁッ! やあッ! ふあッ!」
舌で乳首を転がされる度に、瑞希の身体がガクガクと痙攣し、薄い胸がふるふると震える。
全身を襲う鋭い快感に、すでに腕の力が抜け、抵抗出来ない瑞希を明俊はさらに責める。逆の先端に吸い付
き、だ液でぬるぬるになった方を指でいじる。
「やッ、やあッ! ひさかく、それ、駄目ぇ!」
両方の乳首を容赦なくいじられ、瑞希は髪を振り乱して悶える。両手で明俊の頭を抱きかかえ、波のように
断続的に押し寄せる快感に耐える。
「ひぅッ…」
唐突に止んだ愛撫に、瑞希は空気が抜けたような声を出してしまう。
長い黒髪が乱れてベッドの上に散乱し、耳まで真っ赤に染まっている。荒い呼吸に胸が上下し、ぬるぬるに
されて、きゅっと硬くなった先端がふるふると震える。
「雪雨さん可愛すぎるよ…」
明俊はうわ言のように呟き、乳首をいじっていた右手を下へ移動させる。すべすべしたお腹を堪能するよう
にすべらせ、ショーツの中に侵入する。
「ああ…!」
瑞希は待ちかねたかのように腰を浮かし、明俊の指に自ら股間を押し付ける。
ぐちゅぐちゅと淫らな水音が響き、明俊の指に熱い粘液が絡み付く。
「ああ、んっ、指、日阪君の、指」
ショーツの中で明俊の指が秘裂を擦る。そこはすでにとろとろに溶けて、明俊の指がにゅるにゅると花び
らをかき分ける。
「気持ちいい、気持ちいいです…。ぅうんっ」
瑞希はくねくねと腰を動かし、もっともっととねだる。眉根を寄せ、腰を振って喘ぐ瑞希に、明俊は激し
く劣情をそそられる。雪雨さんが乱れる姿がもっと見たい。明俊は痛そうなくらい硬くしこった乳首に吸い
ついた。
「ゃッ! 胸、駄目、あッ!」
左手と唇で乳首を責め、右手で秘所を責め立てる。複数の箇所から同時に迫る快感に、瑞希が悶える。
「ああ、駄目、きもちぃッ! 両方、すごいッ あ、あ、あ、あ」
秘所をいじる右手はすでに手首まで濡れ、中指を挿入し肉壷をかき回す。
「ゆび、なか、だめ、ひさかく、だめ、むね、なか、あ、らめ、らめ」
長い黒髪を振り乱し、慣れない快楽に、瑞希は途切れ途切れ喘ぐ。呂律が回らなくなり、半開きの唇から涎
が垂れる。
明俊が膣に入れた中指を折り曲げ、指の腹で天井を擦ると、瑞希がビクビクと反応する。
「あッ! やッ!? なに? あッ、だめッ! 擦るの駄目ですッ! それッ、あーッ!」
小さな身体を跳ね回らせ、強烈な快感に耐えるが、もう腰の奥が切なくて切なくて我慢の限界に到達する。
「ひ、ひさかくんだめわたしもう、おねがいいれていれてひさかくんのおねがいもうわたし」
情欲に染まった瞳で瑞希は哀願する。淫靡に乱れまくる瑞希が見たくて、拙い性知識を総動員して責めてい
た明俊だったが自分ももう限界だった。
明俊は瑞希のショーツを脱がし、自分のトランクスも下ろす。鉄棒のようにギンギンに硬直したペニスが飛
び出す。興奮のあまり、先端がすでにカウパー腺液で濡れてテラテラと赤黒く光っている。
ガチガチにいきり立ったそれを、瑞希がうるんだ瞳で見つめる。ふぅふぅと熱い吐息が唇から漏れ、腰の奥
がじんわりと熱くなる。すでに太ももの内側まで濡らしている愛液が、さらに秘所から溢れる。
明俊は熱くぬかるんだ蕾に自分のものをあてがい、ゆっくりと挿入する。
「あぁ、入ってきます…。日阪君のが、ふぁあ…」
さんざんいじられた肉壷は、驚くほど熱く、侵入する度にじゅぶじゅぶと結合部から愛液が滴る。
「はぁっ…。日阪君の入って、気持ちいい…」
切なく疼く膣内に恋人の熱を感じ、瑞希は震える。ぽっかりと空いた場所が埋まっていく。瑞希は身も心も
溶けそうになり、恍惚とした表情で声を上げる。
「あぁ…日阪君の素敵です……。私のナカ、嬉しくて溶けそうです」
「僕も気持ちいい、雪雨さんのすごい…」
ぎゅうぎゅうに締め付けながらもトロトロに柔らかい肉壁が明俊のものに絡み付く。明俊はたまらずに腰を
振り出す。
「んあッ! は、あぁッ! ゃッ! あぅんッ!」
抽送に合わせて瑞希が可愛く喘ぐ。
「ああ素敵気持ちいいッ! あン! ああッ! はあ」
小さな身体を淫らにくねらせ、悦びに悶える。
「あッ、やッ、きもちいいきもちいいきもちいい」
可憐な顔を蕩けさせ、瑞希は狂ったように喘ぐ。小さな胸がふるふる震える。
「ひさかくんのすごい、きもちい、あッ! あーッ! きもちいッ ふああッ!」
瑞希が声を上げる度に、膣がきゅうきゅうとうねる。入り口はきつく締め付けて肉棒の幹を扱き、内部は不
規則に蠢いて敏感な先端に吸い付くような刺激を与える。まだ一度も精を放っていない明俊は、迫りくる射精
感に奥歯を噛み締めて耐える。
「あーッ! あーッ! いきそ、いきそ! わたし、もうッ」
瑞希もまた、さんざん愛撫された末の挿入に、早くも絶頂を迎えそうになる。
「雪雨さんッ、僕も…ッ」
「あーッ! あーッ! あーッ! イク! イッちゃいます! だめ、もうッ!」
細い身体をビクンビクンと痙攣させ、瑞希が悶える。顔が情欲に歪み、黒髪が乱れてベッドに広がる。
「うッ…ぐッ!」
「だめイクッ! あッ! あーッ! ああーーーーーーーッ!!」
耐え抜いた末の射精は、凄まじい勢いで精液を噴射し、瑞希の胎内にぶちまける。
「あああああーーーッ! あああああーーーッ!」
熱い塊を子宮口に浴び、瑞希が絶叫する。膣が精液を搾り取るかのように収縮し、痙攣する。
びゅー、びゅーっと溜め込んだ精液が断続的に発射される。明俊は瑞希の腰を掴み、貫かんばかりに腰を押
し付ける。骨盤が引き抜かれそうな射精感に噛み締めた奥歯がぎりっと軋む。
「あ、あ、ナカ、熱い…。あああっ…」
膣内に感じる子種の熱に、瑞希がかたかたと震える。足を突っ張り、シーツを握りしめて絶頂の余韻に身体
を委ねる。
「くはぁっ…」
ようやく射精が収まり、明俊はぐったりと瑞希に覆いかぶさる。小さな瑞希に体重を掛け過ぎないようにし
たいのに、身体が言う事をきかない。
「ああ、日阪君…」
恋人の重さを感じ、瑞希は幸せそうに呟く。明俊の背中に手を回し、汗で濡れた身体を密着させる。お互い
の身体が溶け合うような感覚を覚え、瑞希はうっとりと目を瞑った。
* * * * *
「あッ…、あッ…、あッ…」
日がほとんど地平線に沈み、藍色が空を埋め尽くそうとしている時間。
カーテンを閉めた瑞希の部屋は、すでに真っ暗に近く、身体の輪郭をかろうじて確認出来るくらいの明るさ
しかない。
「うン、気持ちいい、奥、いいです…。素敵…、ああっ」
明俊と瑞希は対面座位の形で抱き合っていた。お互い、何度達した覚えていないが、この体勢に落ち着いて
から、すでに2回は出している気がする。
下手をしたら中学生よりも身長が低い瑞希は、この体勢でも明俊よりも頭半分低い。だが、より身体を密着
でき、したいときにキスも出来るし胸もいじってもらえるこの体位を、瑞希は気に入っていた。
「はっ、あン、あッ、んぅ、ちゅ、ふぅ…」
腰を振って快楽を貪る瑞希に、明俊は口づけをする。
「ちゅ、はあ、んぅ、ちゅぱ、ふ、んぅ…」
お互いに舌を絡めあい、ついばむように唇を吸う。瑞希の腰を支えていた明俊の手が、すべるように胸に移
動する。
「はあっ、日阪君、あッ! むね、いいッ! は、んぅ」
明俊は両手で胸を撫でるように揉む。ぷっくりと盛り上がった小さな突起に、触れるか触れないかぐらいの
微妙な刺激を与え、瑞希を焦らす。
「ゃ、いやッ、ああ、お願い、いじって、乳首…もっと…はぁッ!」
瑞希は我慢出来ずに明俊の手に自分の手を重ね、ぐりぐりと乳首をいじる。鋭い刺激に仰け反り、白い喉を
晒す。甘い痺れが脊髄を通る度に、膣内がきゅうきゅうと締まり明俊を刺激する。
「雪雨さん、乳首よわいんだね。凄い締まるよ…」
「きもちいいんです…。すごく、ああッ」
小さい胸ほど感度がいいってやつなのかな、と思いつつ口には出さず、明俊は瑞希の望みを叶えるべく、指
で桜色の突起を摘む。瑞希の身体をやや後ろに倒させ、唇でも乳首をねぶる。
「あッ! それいいッ! いいですすごいッ! きもちぃッ!」
瑞希は明俊の頭を抱え、もっと吸ってとねだるように胸に押し付ける。その間にも腰の動きは止めておらず、
くいくいと淫らにくねらせて膣内を肉棒に擦り付ける。
「はぁッ! はぁッ! ぁッ! んあッ! ああ…ッ!」
瑞希は切なげに眉根を寄せ、桃色の唇から熱い吐息を漏らす。胸の刺激と膣内の刺激が混じりあって、腰が
きゅんきゅん疼く。明俊は空いている左手を瑞希の腰に回し、後ろからぐいぐい引き寄せる。
「んぁッ! ああッ! あッ、あッ、はッ、奥ッ、来て、きもちいいッ!」
容赦なくぐいぐい腰を引き寄せられ、子宮口に熱い肉棒が突きささる。瑞希は明俊の肩を掴んで、より一層
激しく腰を振る。もっと、もっと奥を突いて欲しい。壊れるくらい、突いて欲しい。
「ああッ! ああッ! ああッ! ああッ!」
人形のように小さく可憐な瑞希が、より強い快楽を求めて腰をくねらせる。ガクガクガクガクと無茶苦茶に
振り、その度に唇の端から涎が落ちる。明俊は両手を瑞希の背中に回し、腰と肩をそれぞれ支え、瑞希の腰の
動きに合わせて、強く引き寄せる。
「あああッ! はあッ! あッ! あーッ!」
節くれだった熱い肉棒に、子宮を揺さぶられ、襞を擦られ、瑞希は急速に登りつめる。
「ああッ! あーーッ! あーーッ! こし、とけちゃうッ! おくが、ああーーッ!」
瑞希の頭はもはや快楽一色となり、口走る言葉も文脈が不明になる。腰が溶けそうに心地よく、身体の中心
から激しい浮遊感が生じる。
「とんじゃうッ! わたし、もう、おく、あーッ! いきそ、ですッ! もう、あーッ!」
「僕も…ッ! 出すよ!」
お互い腰をくねらせながら、絶頂に向かって高めあう。明俊は肉棒に精液が大挙して押し寄せる感覚を覚え、
さらに激しく腰を突き上げる。
「日阪君ッ! 私ッ! イクッ! イクッ! ああッ!」
「うくッ! 出る…ッ」
射精感がマックスに到達し、明俊は力一杯瑞希の細い腰を引き寄せ、突き立てる。
びゅるるるッ! と熱い塊がほとばしる。
「あああああああああああーーーーーッ!!!」
目一杯突き立てられ、絶頂に達したのと同時、精液が熱い波となって子宮に押し寄せる。
「あーッ!! あーッ!! ああああーッ!!」
瑞希は小さな身体をがくがくと痙攣させ、身体がバラバラになりそうな凄まじい絶頂感に意識が飛びそうに
なる。意識を手放さないよう、力一杯明俊を抱き締る。この快感を出来るだけ長く味わっていたかった。
「ぁ、はあっ…。ひさかくん…」
恍惚とした様子で呟く瑞希に、明俊は優しい口づけで答えた。
* * * * *
「ん〜〜っ…。気持ちよかったですね?」
「う、うん…」
大きく伸びをしながら言った瑞希のセリフに、明俊は赤面する。
二人はベッドの上でシーツにくるまりながら寄り添っていた。シーツの下は裸のままだ。
「大満足です。こんな幸せな気分はありません」
「そ、そう。良かったね…」
心底嬉しそうに目を瞑り、瑞希は明俊に寄り掛かる。明俊は思わず視線をそらす。何故か猛烈に恥ずかしい。
「もう、日阪君無しでは生きて行きません」
「あはは…」
うっとりとした声で言う瑞希に、明俊は乾いた笑いを浮かべることしか出来ない。行為の最中は極度の興奮
で頭がイッてたせいか、そうと感じなかったが、終わった後に猛烈な恥ずかしさが込み上げてきて、瑞希を直
視出来ない。