あー、
>>676は「アキバ」と読んじゃったから違和感があるんだな。
秋<aki>葉<ha>原<bara>だから、特におかしいことはない。
>>677のような意図は汲んでいると思われる。
そういえば、秋葉原はもともとアキバハラと読んでいたらしいな。
>>678 そういうことだったのか。ありがd
そして保管庫どこにあるのか教えて
保守
>>683 おk。いなべたかしごんりはみがにし
さて皆さん、私は今、この間投下した奴のボーイズサイドを書こうか、(時間軸的に)その前の奴を書こうか迷っております。
年末まで少し忙しく、どちらか片方しか書けそうにありません。当然両方書きたいのですが、容量の少ない我が頭脳では忘れそうです。
そこで質問なのですが、どちらを先に読みたいでしょうか?長いのを1つに絞る分、シリーズと関係のない短編を書こうかとも思っています。
図々しい質問かもしれませんが、教えていただければ幸いです。
先に書けたほうでいいよ
>>685 thx。ほんの数行だけですが書いていたほうがあったのでそれを仕上げたいと思います。
短編は……今までと違う感じの奴を出そうかと思ってるので「こんなの素直クールじゃない」と言われそうなものになりそうです。
hoshu
今日発売のチャンピオンに、「彼女の僕」って読み切り載ってるんだが
なんか素直クールっぽい
作中では不思議ちゃんって扱いになってるけど
話の展開がここに投下されてきた作品のに似てる気がする
作者はここの住人か?
689 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/30(木) 19:46:16 ID:elcOmmny
hosyu
691 :
野園:2006/12/06(水) 01:55:13 ID:5NX9Awjq
ベタな感じだと思いますが投下します
――――
彼女はクラスでも少し浮いた存在だ
成績優秀で運動神経抜群、容姿淡麗で肩まで掛る黒髪が綺麗で神秘的
難を言えばその何事にも動じない意思により放たれる言葉
彼女の言い方には悪く言えば棘がある、冷静沈着な物腰は
到底高校生には思えない
だからといってクラスの女子からはぶられることはない
友達、とまではいってないようだが絶妙な距離間を保っている
しかも男子にはファンが多いらしい、彼女は全く気にしてないみたいだけど
俺?
俺は昼寝が唯一の楽しみの平平凡凡な高校生さ
なんで彼女について詳しいかって?そりゃ彼女が俺の前の席だからさ
窓際一列目、そこが彼女の居場所、その後ろが俺の居場所、簡単な話だよ
692 :
野園:2006/12/06(水) 01:56:43 ID:5NX9Awjq
高校に入学して初めての冬
クラスも大分落ち着き、色々グループも出来た
クラス内ピラミッドも存在する、せいぜいいじめと判断されないことを祈る
俺に所属するグループはない、たまに話す人間が2、3人いる程度
だがピラミッドでいえば上層にいる、これには自信がある
要は普段の行いが大切なのさ
「おーい、野崎、トランプやらないか〜?」
「悪ぃ、パス、寝る」
「おー」
ほらな、クラスでも中心的なグループから誘われた
孤立と孤高は違うのさ、下らないと思うだろうが俺には大事なことだ
「やっぱり坂西君よね」
「え〜、神田君もなかなかイイよ」
「う〜ん、うちのクラスはなかなかレベル高いからね」
「でも馬鹿だけどね(笑)」
「そうそう、男子なんて下半身でモノ考えてるんだから!」
昼休み恒例の女子の井戸端会議、俺が近くなのに猥談を話すのが最近の悩みの種だ
今日の話題はクラスの男子でもし付き合うなら、だ
ちなみに俺の名前は挙がらない、影が薄いせいだと思いたい
693 :
野園:2006/12/06(水) 01:58:54 ID:5NX9Awjq
「園咲さんは?誰がタイプ」
「私?」
お、珍しく園咲さんに話が振られた
園咲さんとはさっき話した「彼女」のこと、本に栞を挟み井戸端会議に目を向ける
「園咲さんって結構モテるって聞くけど、彼氏いるの?」
「交際している人物はいない」
「でもでも、ファンクラブがあるって噂だよ〜?」
「それは・・・私が変だから、それが若い彼等には珍しく見えるだけだ」
「じゃあ!、好きな人とかいる?」
いつもの癖で寝た振りしながら聞耳立ててたらとんだ展開になった
俺には分かる、さっきの吉井の質問で教室に緊張という物質が撒かれ
談笑したりトランプしたり本読んだり勉強したりしてる奴らの
全神経が耳に集まっているのが分かる
「好きな・・・人?」
園咲さんは眼鏡の位置をゆっくりと直しながら、ゆっくりと口を開く
「私が好きなのは、野崎・・・野崎優士君だ」
え?
「えー!、園咲さんの好きな人って野崎君なの!?」
「まぁ確かに顔は悪くないし、運動もソコソコ・・・でもいつも寝てるし」
「野崎君好きなんだ、いがーい」
「あぁ、彼になら私の全てを捧げてもいい」
ちょっとまて!なんて言った!?
俺?俺が好きだと言ったのか?
694 :
野園:2006/12/06(水) 02:00:25 ID:5NX9Awjq
今日はここまでです
では失礼します
……実にいい所で切れてしまった。これでは嫌でも続きを待たざるを得まい。
少し気になったのだが、地の文に句点は付けたほうがいいぞ。無いと文にぶっきらぼうな印象を与えてしまう。
ただ、敢えてそれを狙っていたと言うのなら……申し訳ないが読まなかったことにしてくれ。
ごめんなさいちょっとふざけてみただけです
696 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 06:29:48 ID:idBTzbjm
>695お前何がしたかったんだw
ともあれ
>>694GJ!
佳境で放置だけど元気に待つよ!
697 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 20:48:51 ID:97+o2+EQ
お、これは期待出来そう。
あーー!!続きが気になる!!
中わけでがんばってくれい
続きwktk
期待
続きをwktkしながら俺も投下。
新作いくよー。
幸せとは何であろうか。
富、名声、権力、経済力……。
そんな即物的な世知辛いものもあれば、オシャレや好奇心・探究心の充足など、ホビーによる満足感もある。
さらには異性との触れ合いなど、種の本能に忠実なものもあるだろう。
家族の笑顔なんていう、ささやかなものだって大切だと言う人は多いはずだ。
僕の場合は、平穏な生活だ。
まだ若いのに、ジジ臭いなどと言うなかれ。余裕があってこそ、気付けるものも多いのだから。
幸せは人それぞれ。それはいい。
だから、人様に迷惑かけないんなら、どんな幸せも肯定しよう。たとえ価値観に相違があったとしても。
「――と、いうわけで。貴方で遊びたいと思います」
頼むから、迷惑かけないで。お願い……いや、本当に。
「あー……取り敢えず、何がというわけなんでしょう?」
「だから。何となく昔のビデオ観てたら、とあるインスパイア受けたの。それで、実演してみようかな、と」
「ほお。休日に一大事だとイキナリ呼び出して、やるコトそれですか」
「天気が良かったからつい。思い立ったが吉日と。……なのに待ち惚けさせて、何様のつもりか?」
「うわ、僕が悪いんだ。キミ、何処のお姫様?」
折角走ってきたのに。
「話も纏まったところで、わたしの家に行こう」
聞いちゃいないし。というか、既に腕引っ張ってるし。いっそのコト、例の園児の真似でもしててくださいよ。
嗚呼、道行く人々は平和だなあ……。
とある冬の日。彼――吾妻勇喜は悩んでいた。傍から見れば羨ましいかぎりだが、本人はいたって真面目に悩んでいた。
何に。
それは愚問。いわずもがな、彼女のことである。
カナという名のこの女と出会って以降、波乱が日常となり、心休まる暇が無い。
いや、それだけならいい。多分。
好かれることに悪い気はしないが、もう少し自分へ向けて協調性というものを発揮して欲しい。
そう、自分に。
勇喜は悩む。何故、自分の言葉だけは届かないのか。というか、意図的に右から左へ抜けていくのか。
しかしとりあえずは……、
「どうした? 恥ずかしそうにして」
「いや……そりゃまあ……」
この状態を何とかしたい。
女に引き摺られる男というのは、お世辞にも格好いいとは言えない姿。好奇の視線に晒されるのもむべなるかな。
勇喜の抵抗も意に介さず、首根っこを捕まえてズルズルと運搬していく。
全て文字通り、である。
「ああ、買ったばかりの靴が……」
踵が物凄い勢いで削れていく。
この怪力女め。
カナ。本名不詳。年齢不詳。本人曰く、謎の美女。
日本以外の血が入っているらしく、若干色素の薄い肌と髪。レザーのジャケットとサングラス(度入り)がトレードマーク。
小柄ながら、その外見と姿勢の良さから格好良い女との印象がある。
事実、経歴不明の一点を除いては、多数の知り合いからもそう認識されている。警察にマークされてなければいいが。
「ふむ。貴方、何か惹かれるモノがありますね」
「…………は?」
この一言が、全ての始まりだった。
特に何か説明があったわけでもない。勝手に納得し、勝手に決定されただけの話だ。
その後の詳しい経緯を語る必要はないだろう。あれよあれよという間に、下僕だか玩具だか――勇喜はあまり認めたくないが――恋人だか、説明しにくい間柄になっていた。
贅沢は言わない。とりあえず、せめて本名くらいは教えて欲しい。
いくらなんでも、そのネーミングはあんまりだ。
何時までも引き摺られているわけにはいかない。
仕方ないので、若干の抵抗の意を込めて、乱暴にカナの手を跳ね除ける。次いで、横に立った。
この通りを目にするのは何度目だろう。何時しか見慣れた場所まで、既に連行されている。地の利はカナにあり。逃げても多分捕まるだろう。
「どうやら、観念したね」
「やっぱり解ってやってたんですか、アンタは」
嫌そうに顔を歪めてみせるが、童顔気味のためかイマイチ決まらない。
「ご褒美に、ジュースを奢ってあげましょう」
別に要らないとの言葉を聴く耳は持たない。
はい、とカナの両手で硬貨を握り締めさせられた。
掌には、冷たい金属の感触。開いてみれば……、
「……いや、いいケドさァ」
色違いの二枚。
当て付けに、複数の自販機巡りを敢行し、意地でも自腹を切らず一本GET。
微笑ましげに見守るお姉様。それに気付かぬ、鈍い少年。
一気に飲み干し、クズカゴへ。
軽く顔を叩いて気を引き締める。
「うし!」
「気合入ってるね。善哉善哉」
「というより、覚悟を決めたっていうか……。今更ジタバタしても、どーにもなりゃしませんしね」
鼻を鳴らし、むくれる勇喜。
どうせ流されやすい性分なのだ。ならば出たとこ勝負。成り行き任せでどうにでもなれ。
……と、毎回この調子で敗北記録を更新しているのだが、改善される様子は無い。
女は強い。一本芯が通っているのなら、男などより遥かに。少年は、それを本能的に理解させられている。している、のではなく。
なので、諦めは良い。絶対に譲れない一つさえ守れれば、後は野となれ山となれ、だ。
抜けるような秋晴れの空を見上げ、勇喜は呟く。
「あーあ。誰か理解者は居ないものかなぁ」
急に冷え込み出した秋の日。その苦悩の言葉は、虚しくも風に溶けて消えた。
「ぅえっくしっ! んあー……」
「…………?」
「鼻がムズムズしただけだよ。ンな目で見るな」
「…………」
「寄るな! 組み付くな! 密着するなッ!」
「暖めたげる」
「風邪じゃねえっつの!」
遠い空の下。田舎の村の少年が、友情を育めそうな誰かの気配を感じていた。
何処かで見知らぬ少年が、延々悪戦苦闘を繰り広げている頃、勇喜とカナは目的地に到着していた。
「相変わらず、でかい家……」
「簡単に相変わったら困るケド」
「いやいや、そうじゃなくてですね」
高い壁に、格子型の大きな門。広い庭を抜けて敷地の中心には、西洋風の館が、その存在感を示している。
何時も思うのだが、まだ若いのに、この日本でこの物件を、どうやって手に入れたのだろうか。
血縁関係からの相続……ではないのだろうな、この人のコトだから。
「今更だけど、カナさんって何歳?」
「まだ二十歳前」
「はた――」
「だったらイイね」
結局いくつさ!
思わずツッコミを入れたくなるが、グッと堪える。こんなことをすれば、カナの思う壺だ。
実際に越えてるのか、越えてないのか。それも不明瞭。ハッキリしてるのは、二十歳前後の若い女性であるというコトのみ。それ以上は、確実にはぐらかされるだろう。
頭を振って、頭を冷やす。次の質問へ。
「……此処の権利関係って、どうなってるんです?」
「ある人から預かったんの。管理人ってコトで」
任せるほうも任せるほうなら、任されるほうも任されるほうだ。豪快な人達である。
維持費だけでも相当なモノになりそうだが、高校生が気にするコトじゃないと一蹴された。
それ以上は、いくら頼んでも教えてもらえなかった。色々と理由があるとのコトだが、はてさて……。
石畳の通路を伝い、二人は館へ。
重い扉を開けると、シンプルな造りのロビーになる。
「――――」
勇喜は息を呑む。何度訪れても、イマイチ慣れない。
特に豪奢な調度品は置かれてないし、煌びやかな装飾が施されているワケでもない。
それでも、どことなくこの館を包む空気が、少年を圧倒する。どうにも落ち着かない。
「さて――と」
今度は、息を吐く。
いざ、戦場へ。
「いらっしゃいませ、勇喜様」
「や、キリちゃん。お邪魔します」
ふと見やれば、
「お、こんにちは。お前もお出迎えしてくれたのか?」
恭しく頭を下げ、客を出迎えたのは一人の少女。そして、その足元には白い猫。
こんな屋敷に住んでいるが、ある意味場違いの素朴な服装。気付きにくいが、整った顔立ち。穏やかで、優しく暖かな笑顔は、日本的な雰囲気を漂わせる。
カナの妹、キリ。
当然のように、義理、ないしは自称である。何しろ、見た目からして、純血の日本人なのだ。
ちなみに、キリは愛称。勇喜も、こちらの本名は知らされている。ただし、姓は依然として教えられていないが。
本当にコイツらは何者なのか。
少年は、ヘンな世界に片足突っ込んだ自分も変人なのかと悩む次第である。本気で逃げ出そうという気が起こらないのも、さらなる不安を煽ってくれる。
足元にまとわり着く屋敷の小さな番人が、今のところは心の慰めだ。
通された客間には、お持て成しの用意が万全にされていた。
「今、お茶を淹れますね」
「どうぞお構いなく」
客用のソファに腰を下ろすと、カナはテーブルを挟み対面に座した。家の中でも、サングラスは滅多に外さないのが気になる。
膝の上には、白猫のアキ。待ち侘びたように飛び乗って、足場を確かめると、そのまま丸くなってしまった。
可愛いし暖かいのは良いのだが、足を動かせないのが辛い。まあいいか、可愛いし。
頭から首筋、そして咽喉を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めて、さらに丸くなる。うん、和む。
テーブルの上には、手作りの和菓子と、凝った茶器。急須から湯呑みに注がれた茶の香りが、鼻孔をくすぐる。
建物には不似合いに思えるが、これはこれで妙に馴染んでいる風景だ。どんな文化も取り入れてしまうのが、日本の良いところです。
何はともあれ、持て成されたのだ。素直に舌鼓を打とう。
お茶請けはドラ焼き。この前は、芋羊羹。その前はきんつば。玄人裸足も度が過ぎている気がするが、まあ美味ければ良し。
大きく齧り付き、数度咀嚼したところを、お茶で流し込む。強い甘みから、程好い甘み。お茶で爽やかな後味へ。
勇喜はこの食べ方を好み、キリはそれに適した甘味を用意する。特に口にしない、小さな心遣い。
「…………」
湯飲みに口を付けつつ、カナは二人の様子を窺う。
仲が良い。
満面の笑みを浮かべながら、味の感想を述べる勇喜。それを熱心に受け止めるキリ。
口元の餡子を指で拭う勇喜。絶妙のタイミングで手拭を渡すキリ。
膝には、鼻をひくひく鳴らすアキ。
「…………」
そして、それらを見ているだけのカナ。
自分には向けない笑顔。
どこか抜けた少年と、世話焼きでしっかりものの少女。
良い雰囲気だ。
見ているほうも、思わず微笑を浮かべてしまいそうな程の。
そして、思わず妬けてしまいそうな程の。
というより、既に熟年夫婦の貫禄を醸し出しつつあるのはいかがなものだろう。
思考を巡らせ、怪しげな笑みを浮かべる。
一時的とはいえ、今のカナは蚊帳の外。気取られる心配はない。
まあ、別の笑顔を向けてくれたりもするから、構わないと言えば構わないのだが。それはまた別の問題。
「さてさて――」
どうしてくれようか。
カナはサングラスの下を光らせた。
「ご馳走様!」
「お粗末様です」
最後に一杯の茶だけ残して、キリは卓上を片付けに入った。テキパキとした動作で、みるみるうちに、余分なものは消えていく。
全てを盆に乗せ、台所へ向かう。
扉が閉じられたところで、勇喜の表情が変わった。明らかに何かを待っている。
「…………」
「…………」
二秒、三秒。僅かな沈黙。冷や汗が浮かぶ。
「あの……」
「ん?」
カナは、わざとらしく小首を傾げる。
怖いなァ。絶対に何か企んでるよ。
無理でも何でも、全力で逃げておけば良かったと後悔する。
これも何時ものコトだ。毎度毎度、似たような感覚を味わっているのに、ちっとも成長しない。学習能力の欠如か、それとも……。
「で、ビデオで思いついたコトって何ですか?」
「ああ、そんなコトもあったね」
言って、カナは優美な仕種で――何とも庶民的なデザインの湯呑みがミスマッチだが――茶を口に運ぶ。
やはり、単なる口実か。
要するに、揃って休日をまったり過ごしたかっただけなのだろう。
だが、この機を逃すワケには……。
「それじゃあ――」
「思い出したところで、当初の予定通り、実演しましょうか。勿論、協力してくれるね?」
「んが!?」
だが当然。この機を逃すワケもなく、カナが先手を打った。
さらに、折角貴方が思い出させてくれたのだし、と駄目押しされる。勇喜、見事に墓穴を掘る。
「そうだね。例えば、こんなのはどう?」
ピッと人差し指を立て、微笑むカナ。
その様子が可愛いのはいいのだが、例えばという部分が気になってしょうがない。
「ダーリンだ〜い好き」
しなを作り、声もキャラも作って勇喜の傍に寄る。
雷娘? ……ではないようだ。ならば一体、何であろうか。何処か覚えのあるフレーズではあるが。
薄れた記憶を探り、答えを出す前に、続きがきた。
「んふ。顔、真っ赤だぞ」
真っ赤じゃない。色っぽく鼻先を突付かれても、断じて真っ赤じゃない。
だがコレは、
「あれ?」
確か……。
「んん〜、ダーリンったらぁ。照れ屋さん」
「よりによってソレですかッ!」
「あはははは。怒った怒ったぁ」
正解とばかりに、抱きついてきた上に、頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でられる。
アキは、触らぬ神に祟り無しと、そそくさと寝床を移動。対面のソファで丸くなった。
まるで呆れてるように見えるのは、おそらく気のせいではないだろう。
この後、幾つかの身体を張ったネタに、勇喜は翻弄される。キャラクターの崩壊も何のそのだ。
もう好きにしてください。二面性三面性じゃ収まりませんよ、この人。
「ところで。これ、全部アドリブですよね?」
「当然です」
「…………そですか」
その時、アキの耳がピクンと動いた。
「お待たせしまし――あ」
キリが洗い物を終えて戻ってきた。
ドアを開けた瞬間、キリの目に飛び込んできたのは、
「あの……姉様、勇喜様……?」
紆余曲折の果てに、ソファに押し倒されてる(ように見える)カナの姿。
「え、えっと……コレは、その……ね?」
しどろもどろに弁解しようとするも、この状況はどうにもならないだろう。誤解を解くにも、どれだけのパワーが必要になるか。解けたところで、きっと悪印象は持たれたままだろう。
終わった……。
勇喜は心中で涙する。こういう時、男は悪者にならざるを得ない。
いや、一縷の望みに賭けて、玉砕覚悟の言い訳を続けてみるか。
縋るようにアキを見るが、そっぽを向かれた。尻尾でソファを叩いて、自分を巻き込むなとの意を示す。
足掻くか諦めるか。数秒にも満たない、刹那の逡巡をしていると、納得したようにキリが胸前で両手を打った。
「あ、なるほど。計画成功したんですね、姉様」
解決。
猫が退屈そうに欠伸をした。
つまり、
「もともと揃ってグルになって、僕を玩具にするつもりだったと?」
「もう少し引っ張っていぢめるつもりだったんだケドねえ……」
ちらり、と半目でキリを見る。
「すみません。ついウッカリ」
キリは苦笑で答える。
「でも、あまり長いこと蚊帳の外なのは、やはり良い気がしませんし。ですよね、姉様」
「ん。次はキリに譲る」
「おーい。目の前目の前」
怖いね、何とも。
「まあ、つまり、アタフタ慌てる姿が可愛いので、見てみたくなったというワケだね」
「可愛い……可愛いですかあ……」
「お気に入りの玩具って、何度遊んでも飽きないモノでしょ?」
「泣いていいですか?」
可愛い。
男として、ちょっとショックである。常々気にしているコトだ。贅肉も少なく、身体は筋張っている。四肢も随分伸びたものの、それでも顔付きは如何ともし難い。
引き締めていればそれなりなのだが、やや幼く、迫力が不足しているのは否めない。
もちろん、そこを突いて言っているわけではないのは解る。解るからこそ、一人で腐れるだけだ。
新しく淹れてもらった茶で、気を誤魔化す。
「でもでも、私も可愛いと思いますよ。そんな勇喜様が好きなのですし。悪いコトじゃないし、落ち込まないで下さいな」
「キリちゃんまで……」
とりあえず、コレで終わったと油断していた。
「さて、時に勇喜。貴方――」
「?」
閑話休題、とばかりにカナがトンでもないコトを口にした。
「――キリとシたね?」
「はははははははは。何のコトやら」
「手が凄く震えてますね。お茶、零れてますよ」
当事者なのに、冷静に状況説明をするキリさん。
神経が極太なのか、心臓に剛毛が生えているのか、はたまた天然なのか……。
というより、普通に考えるならば、やはり……。
「申し訳ありません」
目と目で通じ合い、ぺこりと頭を下げられた。
このウッカリもの……!
「そ、その……コレはつまり……」
今度はこちらに言い訳をする番になるのかと思いきや、あっさりとお許しの言葉が出た。
「大丈夫、責めてるワケじゃないよ。ただ――」
少しだけ、カナは頬を染めた。
「わたしの純潔を奪って間もないのに……っていうのは、どうかと思って」
「百戦錬磨なんて言うから……百戦錬磨なんて言うから……」
痛い。言葉が胸に刺さる。
嘘は言っていなかった。ただし、ナンパを追い払うコトに関してだが。
頭を抱え、勇喜は涙する。
純潔を奪われたという点では、勇喜も同じコトである。しかし、そこで感じる責任は、男女では天地の開きがある。
軽く見るつもりはないが、百戦錬磨という響きに安心感があったのも事実だった。
そんな自己嫌悪の渦の中、心を優しく包み込んでくれるキリにコロッとイッてしまったワケで……。
いくら茶を流し込んでも、潤う気がしない。
「それに、あの後来てないから、ちょっと心配だったりするケド」
「いやまあ、流石にそう連続では引っかかりませんよ?」
「でも湯呑みは落とすのですよね」
キリ、ナイスキャッチ。
「嗚呼――僕はどうして、何時頃大人になってしまったんだ……」
「二ヶ月くらい前、雰囲気に流されたからじゃないかな」
「二ヶ月前の秋の夜、貴女は僕に何をした!?」
「ナニ」
「うわ、直球!」
流されやすい自分が憎い。こんなに不誠実な男だったのだろうか。
色々あって、精神的に不安定な時期だったとはいえ、あまりにも迂闊だった。
後悔先に立たずという言葉の意味を、身に染み入るように理解する。先人は、往々にして後の世のための教訓を遺してくれるものなのだ。
「僕ってヤツは……僕ってヤツは……」
何と罪深い。ご先祖様の尊い犠牲を無駄にしてしまった。願わくば、自分の失敗も教訓の礎にならんことを……。
「ま、とにかく。手を出すのが、わたしとキリ限定ならとやかくは言わないよ。キリは?」
「私もそれで問題ありません」
「あ、そう……なの?」
「そりゃ、多少は気になるケド……あれだけ強引に攻めていれば、何処かへ逃げてしまうのも仕方ないかと思う部分もあるよ」
自覚はしていたワケだ。
だからこそ、見ず知らずの相手ではなく、仲良しの姉妹ならば、妥協もできるという理屈だろうか。
取り合えず、改善しようという選択肢は存在しなかろう。
「両手に花なんだから、貴方も不満は無いでしょ?」
「…………」
しかし、こうも簡単に割り切りがいくものなのか。
勇喜は思う。
元々、身内には大らかな人達だ。他の誰でもない、姉妹だからこそ、というのは間違ってはいないだろうが……。
「ん?」
だからこそ。
だからこそ……?
「――――ッ!?」
しまった、これは罠だ。
その瞬間、
「ゲェ――――ッ!?」
ようやく気付いたかといった具合に、二人の目がキラリと光る。うっすらと浮かぶは、悪魔の笑み。
見える。二人の後ろに、三国時代の宰相の姿が見える。
前門の虎、後門の狼とはよく言ったモノ。完全に八方塞である。
「あはははっ気付いたか。それじゃ、これからも貴方で遊ばせてもらうね」
「末永く、お世話させていただきますね」
「は、はははははは……」
ニュートンさんが、何かを発見しそうな具合に頭を落とす。
ウッカリ暴露したのではなかったのか。まさか自分自身を罠の一部とするとは……。
すみませんご先祖様。人は、何時までも過ちを繰り返すモノのようです。
だからこそ、カナとキリ、どちらかが確実に手中に収めた瞬間、片割れにも益が発生する。
手を伸ばせば、何時でも手に届く位置に置かれることになる。というより、所有権の共有が近いか。
無関係の者が介在すれば隙も出来ようが、当事者同士が結託してるとなればその限りではない。狩猟者は、確実に獲物を仕留めるだろう。絆が深ければ尚更だ。
――最初から揃ってグルになって、勇喜をモノにする計画だった、と。
「本当は、気付いた時にはもう遅いところまで追い詰めようと思ったんだけど」
「くそ、まだまだ……」
「そうだね。まだ少しは逃げる気起こるでしょう? ……逃げても捕獲するケド」
「むしろ狩るつもりなので、お覚悟を」
「お覚悟をって――」
言われても。
とっくの昔に覚悟は出来ている。
状況を理解し、受け止めるコトに関してだけは、優れているという自負がある。
「逃げ切ってやる」
そして、いつか立派になって、立場を変えてやる。追い立てられるのではなく、追いかけさせる立場に。
そのためには、一旦逃げ切って、呪縛から解放されることが不可欠なのだ。
「本当に逃げ切れますかね?」
アキを胸に抱きながら、キリが言う。アキはお気に召さないのか、抜け出そうともがいている。
「逃げ切るさ」
「えい☆」
決意を打ち砕くように、キリにより、勇喜の膝上に落とされる白猫。
迷惑そうに睨みつけるものの、すぐさま寝心地を確かめ始めた。欠伸をした後に伸びをして、数十秒で、丸くなり寝転がる。
「寝心地の良いベッドは、逃がさないって」
「ブルータス、お前もか……」
頭から首筋を撫でてやると、アキは気持ち良さそうに目を細める。
それはそうと、
「ところで、晩御飯食べていくでしょ?」
「是非そうして下さい。ちょっと作りすぎちゃいましたから。いつもの倍くらい」
「――その据え膳、食わせていただきます」
ガッチリ射程圏内に捉えられている以上、逃げ出すだけでも多大な労力を必要としよう。
成否は別として、結果が出るにはまだまだ時間が掛かりそうだ。
情けない話だが、今夜は眠れそうにない。迸る若さも大きな障害となっている。
「あーあ、お前だけは味方だと思ってたのにな」
咽喉を撫でていると、指先をアキに噛み付かれた。腕を抱え込まれ、爪を立ててキックされた。
ひょっとして、妬いているのはこいつだけなのかもしれない。
「――ぃっきし!」
「ドリフ?」
「じゃねえって」
「……やっぱり風邪?」
「あー……かもしんね。って、だからくっつくな!」
遠い空の下。田舎の村の少年が、とある一面で自分に匹敵しそうな誰かの気配を感じていた。
以上っす。いや、予想以上に時間が掛かった。
……師走なんか嫌いだ。
先月中に仕上げとくべきだったなあ。
712 :
野園:2006/12/09(土) 05:24:46 ID:h/Wx8v+a
>>692-693の続き
空気が重い、男子達の視線が痛い、頭に乗せられた園咲さんの手が暖かい
そりゃあ、園咲さんは可愛いし何でもこなす完璧人間だ
好かれて悪い気はしない、だけど好かれるほど面識がない
あぁ、園咲さん俺の頭をそんなに優しく撫でないでくれ
しかし、どうしたものだろう
周りの女子達は園咲さんのカミングアウトに盛り上がりまくっている
仕方ない、起きよう
「・・・ん、・・あんまり騒ぐなら向こうでやってくれよ」
よし、動揺は顔に出てないはずだ
「な・・・なんだ?」
これはさすがに驚いた、教室いる生徒がみんな俺を見ている
そして、女子達と一部の男子はニヤニヤと残りの男子達は複雑そうな目を俺に向ける
俺も軽いパニックだったんだろう、あろうことか園咲さんに聞いてしまった
「・・・なにかあった?」
「いや、よくある昼休みの談笑だよ」
「あ、そう」
その会話がまずかった、みんな堰を切ったように笑いだす
しかも、園咲さんは何事もなかったかのように読書を再開した
が、すぐに何かを思い出したように読書の手を止め俺の方を向く
「あ、そうそう」
「はい?」
「野崎優士君」
「はい」
「愛している、付き合ってくれ」
「はい・・・・・・・え?」
713 :
野園:2006/12/09(土) 05:25:59 ID:h/Wx8v+a
シーン、と聞こえてきそうなほどの静寂、そりゃ声もでないって
しかも「好き」ならまだしも「愛してる」なんて数ランク上の愛情表現ですよ
そういやさっき勢いに乗って園咲さんからの告白に即答してしまった気が
「そうか!よかった、相思相愛だったんだな」
「え!?あの、えーっと・・いや、だからその、それはですね・・っつか、うーん」
ヤバイ、頭が回らない
「私が嫌いか?」
そんな悲しそうな顔をされて頭を縦に振れません
「じゃあ好きなんだな!」
なんかもう考えるのメンドクセ
「うおーっ!園咲が野崎に告白したぞ!!」
「しかもOK!?きゃーっ!」
「園咲さん大胆ー!」
「まさか園咲さんに先越されるなんて、良いなぁ彼氏」
「野崎よ、お前ってすげぇよ・・・」
「そんな、有り得ない・・・理論的に僕の理解を越えている」
「野崎君、親友になろう!」
外野がウルセー!、騒ぐな!園咲さんはそんな天使みたいな笑みを向けないで・・・
もう寝よう、起きたら考えよう
「寝るのか?」
どうにでもなれ、だ
「おやすみ、優士君」
714 :
野園:2006/12/09(土) 05:27:12 ID:h/Wx8v+a
きっと夢さ、だってあの園咲さんだぞ?そうさ、起きたらいつも通りなんだ
「優士君、起きるんだ」
「・・・ん・・ふぁあ・・・あ〜?」
ヤベ、寝すぎた、もうHR終ってるぞ、つーか5・6時間目の担任はなにやって・・・
そうか、今日の午後LHRだったっけ
あれ?
俺誰に起こされたんだ?
「フフ・・・よく寝てたな」
夢オチ失敗
「じゃあ、帰ろう」
「え?」
「どうした?恋人同士が一緒に下校するのは普通だろう?」
「そ〜・・・ですね」
これは素直に喜ぶべきだろうか、別に他に好きな人がいるわけじゃないし
向こうから好きだと言ってくれてるんだ、何も問題はない・・・・よな
「うん帰ろう、園咲さん」
「・・・」
「ん、どうしたの?」
「その・・・名前で呼んでくれないか?、雪乃って」
「・・・・・・・・うん、帰ろう雪乃」
「ああ!」
そうさ、これから好きになっていけばいい
俺の考えが甘かったと感じるのは暫く経ってからだった
715 :
野園:2006/12/09(土) 05:30:18 ID:h/Wx8v+a
今日はここまでです
>>711 GJ!
エロまでもう少し掛ると思いますが、出来るだけ急いでみます
では失礼します
二人揃ってひっそりと投下しやがって
GJだぞ
お二方共にGJ!
振り回す彼女も大層魅力的なんだが、振り回される男も微笑ましいw
二人ともGJ
ところで現在485KB
そろそろ次スレ?
二人ともグッジョブ!
>◆uW6wAi1FeE氏
>「ゲェ――――ッ!?」
ジャーンジャーンw
>野園さん
最後の「ああ!」が素クールの喜びが表れているようでいいね。
次スレだけど、テンプレは今の奴からVIPの奴抜いて、保管庫のURL追加くらいのいじり方でいいよな?
/ ̄ ̄ ̄フ\ _ ノ^)
// ̄フ / \ .//\ ./ /
// ∠/ ___\___ __// \ / (___
// ̄ ̄ ̄フ /_ .//_ //_ / \./ (_(__)
// ̄フ / ̄//////////// | (_(__)
/∠_/./ ./∠///∠///∠// ∧ ∧ /) (_(__)
∠___,,,__/ .∠__/∠__/∠__/ (´ー` ( ( (_(___)
\ \ \/ ̄ ̄ ̄フ\ \ \_ \ _ /⌒ `´ 人___ソ
\ \ \フ / ̄\ \ .//\ //\ / 人 l 彡ノ \
\ _ \//___\/∠_ // < Y ヽ ヽ (. \
//\///_ //_ /// 入├'" ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
// //.////////∠/ ヽ-i ヽ__ ヽ
/∠_//./∠///∠// .\\ `リノ ヽ |\ ヽ
∠____/.∠__/∠__/∠フ\.\\ c;_,;....ノ ヾノヽ__ノ
さあこっから埋め〜〜〜。
13キロか……えっと6500文字だっけ?埋めるの結構キツイな。
というわけで埋め
724 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 03:30:17 ID:WGjDUM9Z
次スレの即死回避にはどれぐらい必要なんでしょうか?
30じゃなかったっけ?
しかしこの板だとそう簡単に即死することはないと思うが
スレ数見ろ、もうすぐ圧縮だ。