◆◆ファンタジー世界の女兵士総合スレpart2◆◆
乙。
>>1 乙です。
このスレも沢山の良SSに恵まれますように。
とりあえず即死防止に小ネタ書いてみます…期待せず待っててください。
頑張れ。
期待せず期待しつつ待ってるよ。
禿しく期待
>>1乙。
俺も前スレに描いた続きを描きたい……。
ネタさえ浮かべばなあ
>>1乙!
職人のみなさん、気長に待ってますから良作ヨロシク!
11 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 07:00:49 ID:0+aVwyfl
保管庫あったら良いのに
・゜・(ノД`)ノシ☆(((´Д`)))
ヒドスw
16 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:48:23 ID:NYxpjJh+
小ネタ投下です。長め、かつエロ少な目ですけどご容赦。
*********
<ネミの森の妖精>
故郷の領主から濡れ衣を着せられ、お尋ねものとなった僕は、剣一本で生きてきた。
ある時は戦場で歩兵となり騎士たちの露払いを務めたし、ある時は怪物の跋扈する辺境の守備隊に加わった。
またある時は旅する貴族の護衛、またある時は商品を安全に目的地まで届ける仕事をしたこともある。
簡単に言えば、僕は傭兵だ。
故郷を出てほんの数年。でもその間に僕は何度も生死の狭間をかいくぐり、それなりに腕を上げてきた。
と言っても、やはり僕はまだたった十六歳の小僧に過ぎないんだけれども。
1.
その日、僕はいつもの通り、仕事を探して町から町へと旅している途中だった。
仕事はいつでもあるわけじゃないし、口を開けて待っていても飛び込んでは来ない。
最近は世間もおおむね平和になったのか、傭兵業も見つかりにくくなっていた。
「隣町なら、商人や貴族も多いし、最近景気もいいって言うし、仕事が見つかるんじゃないかねえ?」
田舎町の居酒屋で女将から言われたそんなアヤフヤな言葉を頼りに、僕は隣町を目指している。
途中大きな森を越えなければならなかったけれど、そんなのは慣れっこだった。
いやむしろ、人里離れた場所なら故郷からの追手がかかる心配もない。
だから僕は安心して森の獣道を歩いていた。
幸い天候も良いし、保存食はたっぷりあるし、皮袋には水もぶどう酒も詰まっている。
木々が吐き出す綿毛に覆われた種が、まるで雪のように舞う幻想的な森。
僕はちょっとした散策気分だった。
「おい、そこの」
だから突然人間の声が聞こえた時、僕は驚いた。
とっさに腰の剣に手をかけ、辺りを見渡す。
木の影から現れたのは、騎馬の男が三名、そして犬を連れ弓を背負った男が二名。
一瞬、罪人を追う国王直轄の巡察隊かと思ったが、それはすぐ杞憂だと分かった。
誰一人国王の紋をつけていないし、徒歩の男はどう見ても地元の猟師だった。
「――こんなところで一人歩きとは、珍しいな」
一行の頭らしき騎馬の男がそう言いながらフードを取った。
頭に降り積もっていた種子が、はらはらとこぼれ落ちる。
「何のようで、このネミの森に入った?」
「……あんたたちには関係ないだろう」
「何をっ」
もう一人の騎手が声を荒げるのを、頭らしき男が手で制する。
17 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:48:42 ID:NYxpjJh+
「傭兵か?」
「……今は失職中さ」
僕の返事に、頭はにやりと笑う。
「それは大変だな。ガンドルフォの町に行くのか?」
「……ああ、景気が良いと聞いてね」
「俺たちはそこから来たんだ」
頭はそう言いながら、子分たちを見渡す。
「それで? あんたたちは何のようで森に?」
「見て分かるだろう。狩りだよ」
僕は表向き納得したような顔で頷く。
ゆっくりと剣の柄から手を放し、跳ね上げたマントを羽織り直す。
確かに犬を連れているのは勢子だろうし、騎馬の男たちの持っている弓も投げ槍も狩り向きだ。
だが、僕は馬の鞍に縛り付けられた、鳥かごのような物が気になった。
「森を抜けるなら、あまり寄り道はしないことだ」
別の騎手が言った。
「この森には、魔法がかかっている」
「魔法?」
僕は聞き返す。なんであれ情報や噂話には耳を傾ける方がいい。
それが生き残る術であることを、これまでの経験から僕は身に染みて理解していた。
「そうだ。森の奥にうっかり足を踏み入れると、悪霊の魔法にかかって二度と出られなくなるという」
「……気をつけよう。忠告、感謝する」
僕は軽く頭を下げ、一団を押しのけるように歩き出した。
「――お前、名前は?」
頭が振り向きながら尋ねる。
「ジェイン。そっちは」「カシムだ。旅の幸運を祈る」
僕は小さく手を振って、先を急いだ。
やがて背後で馬のひずめの音が聞こえ、次第に遠ざかっていった。
18 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:49:08 ID:NYxpjJh+
2.
どれくらい経っただろう。
僕は汗をかきかき、森の中を歩いている。
森の木々が日差しを防いでくれるとはいえ、半日も休み無く歩いていればさすがに疲れる。
僕は休憩しようと、腰を下ろせそうな場所を探す。
その時、僕の耳に心地よい音が聞こえた。
それはかすかだが、旅人なら決して聞き間違えない音――川のせせらぎだ。
どうやら獣道を少し外れた所を流れているらしい。
どうせ休むなら水に浸した手拭いで体を綺麗にしたいし、水は節約するに越したことはない。
何より川岸というのは涼しく、心地よいものだ。
一瞬、さっきの男たちの言葉が頭をよぎったが、音からして川はさほど離れているとも思えなかった。
僕は一つ頷き、獣道を外れ水音のする方に足を向けた。
だが、それはすぐに間違いだと気づいた。
いや、最初はほんの数分歩けば川に出ると思われた。
だが、それはいつまで経っても姿を現さず、それどころかせせらぎの音は次第に遠くなるように思えた。
もう少し歩いたら、もう少し歩いて駄目なら引き返そう――
そう思っているうちに、僕は完全に森の奥に迷い込んでしまっていた。
振り返っても、一体獣道がどこだったか分からない。
ちょっとの寄り道、そう思ったのが失敗だった。
道しるべもつけず歩いてきたせいで、どちらへ戻ればいいのかすら分からない。
「まずいな」
そう言うと、僕は大木の麓に腰を下ろした。
こういうとき、とにかく焦ったら駄目だ。冷静になり、確実な方針を立て、実行する。
そうやって僕は生き延びてきたのだから。
腰を下ろし、皮袋から水を一口飲むと、少し気分が落ち着いた。
そうして、頭上を見上げる。
太陽は木々に隠されてはっきりと見えない。まるで空全体が輝いているようだ。
方向を定める助けにはならなかった。
自分の足跡を辿ろうかと思ったが、その痕跡はすでに無数の種に覆い隠されている。
小さくため息をつき、少し思案する。
悪霊に魔法をかけられたのならば、勘を頼りに歩くのは危険だ。
辺境にもそういった幽鬼がいて、時々旅人や行商人が行き倒れになる。
そんなときはそいつらの弱点を知っていれば助かることがある。
例えば、ある種の花の匂いが嫌いな幽鬼には、その花を摘んで持っていれば魔法はかけられない。
だが、この森の悪霊は何が弱点なのか、そもそも弱点があるのかすら分からない。
19 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:49:28 ID:NYxpjJh+
仕方なく僕は火を焚くことにした。
悪霊であれ怪物であれ野獣であれ、火を嫌うものは多い。
それに火と煙を見た誰かが助けてくれるかもしれないことを考え、僕は火口箱を取り出す。
それから松明を作るため、剣を抜いて木の枝を払おうとする。
その時、声がした。
『止めろ』
動きを止める。
『森を傷つければ、さらなる災いがお前を襲う』
男のような、野太い声が木霊した。どうやらこいつが森の悪霊らしい。
無視して剣を振り上げると、さらに大きな制止の声が飛んだ。
『止めろと言っている。お前をくびり殺すなど、私には簡単なの……だ』
悟られぬよう、僕はにやりと笑う。
そして、剣を構えたまま周囲を見渡す。
「お前がこの森の悪霊か?」
『そうだ』
すぐに答えがあった。会話が成立するというのはいい兆候だ。
「僕はただガンドルフォの町に行きたいだけだ。お前が惑わすから木を切らざるを得ない」
『何故木を切る』
「火をおこすためだ」
『火だと!』
悪霊の声に少しおびえたものがあることに、僕はすぐ気づいた。どうやら助かりそうだ。
「そうだ、このままではここで野宿することになるだろう。ならば火を焚くしかない。
それにどうせ死ぬなら、この森ごと燃やして焼け死んだ方がましだ」
『そんなことをすれば、お前はたちまち我が魔力で死ぬ』
「やってみればいい。お前の魔力とやらが見てみたいもんだ」
僕はそう言いながら、火口箱から火打ち石を取り出す。
脅しのためだ。
「さあ、火をつけるぞ! さっさと呪い殺せ!」
僕は叫びながら火打ち石を打ち合わせた。
カチーンと鋭い音がして、火花が飛び散る。とたんに慌てふためいた悪霊の声がした。
『止めろ! 本当に死ぬぞ!』
「いいとも! さあ殺せ!」
僕はそう言いながら、ゆっくり移動する。
もはや、悪霊の言っていることがはったりなのは明らかだった。
そして僕はうすうす、こいつの正体に気づいていた。
勘が正しければ……
もう一度火打ち石を打ち合わす。もちろん、移動し続けたままだ。
『止めないか! もう二度と警告しないぞ!』
「そうか! じゃあ今すぐ火をつけてやる!」
『止めろ! 止めてくれ!』
その叫びで僕は確信した。さっと駆け出し、目の前にある大きな木のうろに手を突っ込む。
「やってみろ、このいたずらもの!!」
手が何か柔らかな感触のものを掴んだのを確かめ、僕は思い切りそいつを引っ張り出した。
『きゃーっ!!』
20 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:49:45 ID:NYxpjJh+
3.
「放せー! 放せってばっ!」
「やっぱり妖精のしわざだったか」
僕の手の中で、小さな妖精が必死にもがいている。
妖精にも色々いるが、こいつはちょっと珍しい種類の妖精だった。
姿形は女性のようで、大きさは大き目のインコぐらいだろうか。
これは妖精族に共通の特徴といえた。
しかし、羽根が珍しい。
ほとんどの妖精は蜻蛉かトンボのような薄くて透明な羽を持っている。
だが、僕が捕まえたこいつは、まるで蝶のような羽だった。
青と紺色と紫が複雑な文様を描き、そこに金の絵の具を落としたような斑がある。
「へぇー」
初めて見る物珍しさと羽の美しさに、僕は思わずため息をついた。
「このっ、このっ、放せ!!」
妖精は必死に僕の指に噛み付き、引っかいているが、ほとんど痛みは感じない。
まあ、鳥に啄まれていると思えばいい。
「放してやってもいいが、約束しろ」
僕はことさら恐ろしげな声を出して、妖精に言った。
「や、約束って、何……?」
自分の何倍も大きな相手に言われたのが応えたのか、妖精は途端におとなしくなった。
「僕を無事、獣道まで戻せ。そしたら放してやる」
「――お前は、わたしたちを狩りに来たんじゃないの?」
「狩る? 妖精を?」
僕が思わず間の抜けた声で尋ねると、妖精はキッとこっちを睨んできた。
「とぼけたって無駄だ! 人間が考えてることは分かってる! 町で私たちを売り飛ばすんだろう!」
「違う。僕はただの旅人だ。隣町にさえ着ければ何でもいい」
脅迫しても無駄だと悟って、今度は一転して優しげな声で言う。
もちろん表情も柔らかく。
すると、妖精は疑わしげな、それでいておずおずとこちらを伺うような顔を見せた。
どうやら根は素直らしい。
「――ホント?」
「本当だ。大体妖精を売り飛ばすなんて話、聞いたこともない」
そう念を押すと、妖精は初めてほっとした顔を見せた。
「……話を聞かせてくれないか」
21 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:50:02 ID:NYxpjJh+
妖精はミーシャと名乗った。
この森に住む妖精族の一人だという。
ミーシャの話では、昔からこの森は悪霊がすむといわれ、近隣の人々は近づこうともしなかったらしい。
もちろん旅人の道を惑わすのは彼女たちの仕業だった。
だが、それは単なるいたずらで、すぐにちゃんとした道に戻してあげていた。
しかしここ最近、森に妖精を狩りに入る人間が急に増えたのだという。
どうやら、平和になり暇をもてあました貴族や金持ちが、愛玩動物として妖精を飼うようになったらしい。
とりわけこの森の妖精は、その羽の形の珍しさと美しさから、大変高値で取引されているようだ。
「それに、私たちの羽には魔力が備わっているの」
「そりゃ、当たり前だろ? 妖精が飛べるのは聖霊が妖精をお創りになったとき、羽に魔力をこめて……」
僕たちは話しながら歩いていた。
一応逃げられると困るので、ミーシャはまだ僕の手の中にいる。
だがさっきとは違って、彼女が苦しくないようにやんわりと握っている。
「ジェインは無知ね」
ミーシャは小さな手で口を押さえながら、鈴みたいな声で笑った。
こうしてみると、その仕草もあいまってミーシャはとても愛らしい。
金持ちが愛玩動物として彼女たちを欲する理由が分かるような気がした。
「私たちの羽は、どんな怪我や病気もたちまち治す特効薬になるのよ」
「へぇー」
再び感心した声を出すと、ミーシャは呆れたように僕を見上げた。
「そんなことも知らないで、よく旅をしてこれたわね」
「ずっと辺境や、戦場にいたからね。妖精を見るのだってミーシャが初めてだし」
そう言うと、ミーシャは意外といった顔で僕をまじまじと見つめた。
「ジェインは、兵隊だったの?」
「まあ、そうだね」
ミーシャは何か尋ねたそうだったが、僕は無視した。傭兵稼業は面白おかしい話じゃない。
「羽を、薬にするって、むしって粉にして飲んだりするのかい?」
「そうよ」
ミーシャは急に不愉快な顔を見せた。
「……だからね。人間たちは私たちを捕まえて、閉じ込めて――
そして、大きな病気や怪我をしたら、自分が捕まえた妖精の羽を……」
ミーシャは僕の手の中で体を振るわせた。
もちろん、そうなれば妖精は二度と飛べなくなるのだろう。
人間で言えば、両脚を叩き切られるようなものだ。
「ひどいな」
思わず呟いた言葉に、ミーシャは目を丸くする。
「――そう、思う?」
「ああ」
戦場では無数の死を見てきた。死ぬのはいつも僕たち雑兵で、貴族や将軍はめったに死なない。
そんな奴らがいま、金に飽かせて長生きするため妖精たちを狩り立てている。
「そんな権利は、誰にもない」
僕がそう言ったとき、目の前がさっと開けた。
さっきの獣道だった。
相変わらず、雪のような種子が降っているが、もう木々からは恐ろしさを感じない。
「ありがとう」
僕はミーシャを放すとちょっと笑った。途端に、ミーシャは顔を赤らめる。
「どうしたんだい」
「……」
ミーシャは黙っている。
僕がいぶかしげに顔を近づけると、ミーシャはつい、と手の届かない高さまで飛び上がった。
「……なんでもないわっ。じゃあねジェイン。これに懲りたら、二度と森の奥に気軽に足を踏み入れちゃ駄目よ!」
「ああ、分かった」
僕は小さく手を振る。
すると、ミーシャはぷいと顔を背け、森の奥へと飛び去っていってしまった。
しばらく彼女の飛び去ったほうを見ていた僕は、やがて再び町への道を歩き始めた。
22 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:50:21 ID:NYxpjJh+
4.
「キャーッ!!」
しばらく歩いたとき、背後から叫び声が聞こえた。
思わず立ち止まる。
耳を澄ます。だが、もう何も聞こえない。
しかし、それは間違いなくさっき別れたばかりのミーシャの声だった。
はっと、脳裏に閃くものがあった。
身を翻すと、来た道を駆け戻る。
すぐに先ほどミーシャと別れた場所に着いた。
低木の影からそっと様子を伺う。
そこには、予想したとおりの連中がいた。
カシムと、その手下たち。そして鳥かごに閉じ込められたミーシャ。
「ちぇっ、こいつ、えらく暴れやがって」
猟師の一人が、悪態をつきながら自分の手を見ている。
「そんな怪我ぐらいでぐちゃぐちゃ言うな。これで俺たちは大もうけなんだからな」
「ちっ、そんならお前が噛み付かれればよかったんだ」
そう言いながら、猟師はミーシャの入った鳥かごを荒々しく叩く。
「おい、傷つけるな。羽が駄目になったらおしまいだぞ」
馬上のカシムが鋭く静止する。
彼の鞍に結び付けられた鳥かごの中で、ミーシャはぐったりとうずくまっている。
どうやら薬か何かを使われたらしい。
「それにしても、さっきのガキのおかげで助かりましたね」
「ふむ。あいつも同業者かと思ったんだがな。まあ、尾けた価値はあった」
「それにしても、金千枚の価値はあるってのに、放してやるなんてあいつも馬鹿だな」
別の騎手が笑う。
それに同調するように、カシム以外の全員が大声でどっと笑った。
「……それぐらいでいいだろう。町へ戻るぞ」
「その前に、一休みしましょうや、カシムさん。半日飲まず食わずなんだ」
だがカシムは首を振った。
「駄目だ。俺たちが別の同業者に尾行されてる可能性もある。日があるうちに町に戻るんだ」
その命令に男たちは不満そうだったが、表立って反抗する者はいなかった。
「……じゃあ、せめて小便だけでもさせてください。もう漏れそうだ」
騎馬の男がそう言いながら馬から降りる。
カシムは仕方なさそうに「早く行って来い」と呟いた。
男が仲間たちから離れていくのを確かめ、僕は素早く動き出した。
23 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:50:45 ID:NYxpjJh+
「ひっ、ひぃぃぃぃ!」
森の奥から、突然叫び声が上がる。
「どうした、アジール!!」
残った四人は一斉に色めきだった。各自が得物を抜き、さっと周囲をうかがう。
次の瞬間、ものすごい断末魔の叫びが上がった。
「アジール!!」
しかし、返事はない。手下たちはカシムの顔を見る。
「トゥム、サンガリオン、俺と来い! ケフはここで妖精を見張っていろ!」
そう言うと、カシムは馬を残して走り出した。残り二人もすぐ後を追う。
残されたケフは、剣を片手に不安そうに周囲を見回している。
悪霊の正体を知っている彼らとて、やはり一人で残されれば不安にもなる。
ましてや仲間の一人が突然消息を絶ったとあっては……
「早く帰ってきてくれよォー」
ケフは心細そうな声をあげて、カシムたちが消えた方を見る。
その瞬間。
背後からの一撃を喰らって、ケフは絶命した。
もちろん、僕の剣が過たず彼の心の臓を貫いたのだ。
この予想外の奇襲を可能にしたのは、ミーシャの「悪霊」のトリックと同じものだ。
この辺りの木々は空洞が多く、音を予想外の方向に反射させる。
だから、僕がアジールを切り倒した声は、全く違う方角からカシムたちに響いて聞こえたのだ。
素早くカシムの馬に近づくと、鳥かごを覆っている布を取り払う。
「ミーシャ、助けに来た」
「……ん、ぁ……」
かごの中でぐったりしているミーシャに声をかけても、反応はない。
どうやらまだ薬が効いているらしい。
僕はそっと鳥かごの蓋を開けると、ミーシャを両手に乗せるようにして取り出す。
「ミーシャ、しっかりしろ」
「……え……じ、ジェ……イン……?」
「そうだ、僕だ。飛べる? もし飛べるなら……」
その時、鋭い叫びが聞こえた。
「しまった! さっきのガキだぞ! 戻れ!!」
カシムの声だ。
こうなっては仕方ない。僕は懐にそっとミーシャを入れると、一目散に逃げ出した。
24 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:51:02 ID:NYxpjJh+
三対一で戦って勝てると思うほど、僕は無謀じゃない。
ただひたすら走った。
心臓が破れるんじゃないかと思うぐらいの勢いで森を駆けぬける。
枝に顔や腕を傷つけられ、木の根に足を取られそうになりながら、それでも走る。
後ろからは馬のひずめの音と、カシムたちの声が聞こえる。
いまさら馬を奪っておけばよかったと思うがもう遅い。
とにかく彼らを撒くことを考えるしかない。
僕はがむしゃらに走った。胸の辺りにミーシャのほのかな体温を感じながら、ひたすら走った。
「あそこだ、トゥム!」
「おうっ!」
カシムの声が思いがけないほど近くで聞こえ、背筋に冷たいものが走る。
背後に彼らの冷たい刃が迫るのを感じながら、僕は走り続けた。
だが。
ビュン
風を切る鋭い音が響いて、僕は体を引き攣らせる。
背後から突き飛ばされるような衝撃に、思わず倒れこんだ。
それでもミーシャを潰してしまわないように、体を庇うことだけは出来た。
背中を手で探る。
矢が背骨のすぐ脇に突き立っていた。
痛みを堪えながら立ち上がる。
だが、足がもつれる。それでも力を振り絞って足を前に進める。
「ミーシャ……せめて、君だけでも……」
手を懐に入れ、ミーシャを取り出す。
だが、やはり彼女はぐったりと僕の手に身を預けたままだ。
段々目がかすんでくる。
せめてミーシャだけでも隠そうと、無我夢中で茂みをかき分ける。
背後に、馬のいななきが迫る。
少しでも遠ざかろうと、足を一歩踏み出した時――地面が消失した。
25 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:51:19 ID:NYxpjJh+
5.
「ジェイン、ジェイン」
僕の耳元で小さな声がする。
それはまるで――眠る僕を優しく起こしてくれる、母親のような声だった。
だが、目を開けようにも瞼が重い。
「ほら、しっかりしてよジェイン」
頬を何か冷たいものがぴたぴたと叩く。
とはいえそれは程よく心地いい強さで、思わず僕は笑ってしまいそうになる。
「んっ……んん……」
言うことを聞かない体に鞭打つようにして、僕はようやくうっすらと目を開けた。
視界はまだかすんでいるが、目の前に白く輝く姿があるのは分かる。
「ミーシャ……」
「そう、私よ。ジェイン、大丈夫? 私の言うこと聞こえる?」
「――うん、聞こえる、みたい……だ」
「もう、しっかりしてよジェイン」
泣きそうなミーシャの声に、僕は苦笑する。
とはいえ、それはどちらかと言えば苦痛に顔をゆがめたみたいに見えたと思う。
「はい、舌を出して」
舌? なぜ舌を? 僕の頭に疑問が浮かぶが、体は素直にミーシャの言葉に従った。
唇の間からそっと差し出す舌先に、何かが当たる。
やがてそこから、これまで味わったことのないような甘く、とろけるような味が広がっていった。
ごくり、とそれを唾と一緒に飲み込む。
すると、とたんに頭にのしかかっていた重みが霧のようにかき消えた。
瞼をはっきりと開け目の前のミーシャの姿を確かめる。
仰向けになった僕の胸の上に、ミーシャが立っていた。
「ミーシャ、君……」
「ああ、良かった……やっと元気になってきたのね」
そう言って笑うミーシャの目は、さっきまで泣いていたのがはっきりと分かるぐらい赤く脹れていた。
「僕は、どうなったんだ?」
「あそこから落ちたのよ」
ミーシャはそう言って振り返りながら頭上を指差す。
それに合せて視線を持ち上げる。まだ頭全体を動かすことは出来なかった。
ミーシャの指す先には、高い崖がそびえている。
崖の上には木々が作る屋根があるものの、僕の頭上は一面の星空だ。
今僕は、峡谷の間を流れる川の岸辺に身を横たえていた。
「ミーシャ、君は……」
無事か、そう聞こうとした僕は、ミーシャの姿を見て絶句した。
26 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:51:36 ID:NYxpjJh+
「ミーシャ、君……その、背中は一体……」
途切れ途切れに尋ねると、ミーシャは照れ隠しのようにはにかんで見せた。
彼女の背中にあったはずの羽がない。
白く輝く裸体を飾っていたはずのそれがあった場所には、二筋の赤い傷がついている。
「……まさか、ミーシャ」
ミーシャが小さく頷くのを見て、彼女がしてくれたことに気がつく。
彼女は、自ら背中の羽を引き裂いたのだ。
「へへへ、ほら」
照れ笑いを浮かべながら、ミーシャは自分の背丈と同じぐらい大きな羽の一枚を持ち上げた。
だが、それは既に輝きを失いつつあり、しかもまるで枯れ葉のようにぼろぼろだった。
「これ一枚を一気に飲み込めば、どんな傷だって一瞬で治っちゃうんだけど。
でも私の手も口も、ジェインには小さすぎて……」
「……なぜ」
僕の質問に、ミーシャは黙って首を振るだけだった。
そして、また自分の羽の一部をむしりとると、それを自分の口に含む。
しばらくそれを咀嚼すると、僕の口に顔を近づける。
「口を開けて」
素直にその言葉に従う。
ミーシャは僕の舌に口づけるようにして柔らかく噛み砕いた羽を口移しする。
「でも、良かった。こうやって少しずつでしか羽を飲ませてあげられないから」
僕に羽を含ませると、ミーシャはまた自分の羽を細かく千切り、口に入れる。
「……手遅れになっちゃうんじゃないかって、私……ジェインが……」
そう言うと、ミーシャは片手でぐいっと涙を拭った。
きっと、何度も何度も羽を千切っては口に運んでくれたのだろう。
そうでなければ、矢で射られた上、あんな高さから落ちて生きているはずがない。
「ミーシャ」
「私、ジェインが死んじゃったらどうしようって……だって……」
「ミーシャ……」
僕は鉛みたいな腕を持ち上げると、指先でそっとミーシャの頭を撫でる。
驚いたようにミーシャが顔を上げて、僕を見た。
「ありがとう、ミーシャ」
「……うん」
初めて、ミーシャはこれ以上ないくらい輝く笑顔を見せてくれた。
僕もつられて笑う。
笑顔のまま、ミーシャはまた顔を近づけてきた。
「ん……」
そうやって何度目かの薬を飲み込む。
もう体全体の痛みはほとんど無くなっていた。
「ジェイン……」
だが、薬の口移しが終わっても、ミーシャは僕の口元から離れようとしない。
それどころか、僕の唇に手を添えて、その小さな口でそっと僕の舌に触れている。
「ミーシャ、君……」
僕に言われて、ミーシャは初めて我に返ったように唇から顔を放した。
僕の見つめる前で、たちまちミーシャの顔は真っ赤になっていく。
27 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:51:59 ID:NYxpjJh+
「……ごめん。あのね、ジェインにね、お薬を上げてたら……段々変な気分になってきて……」
「へん、って……よ、妖精でもそんな気分になる……の?」
予想外のことに、思わず糞真面目に尋ねてしまう。
すると、ミーシャはこっくりと頷いた。
「妖精だって……女の子、なんだよ」
ミーシャはそう言うと、僕の唇にはっきりと自分のそれを押し付けてきた。
「ミーシャ……」
「ジェイン、へ、変なことお願いして、いい、か、な……?」
恥ずかしそうにうつむきながら、ミーシャはもじもじと言う。
「……私のこと、舌でぺろぺろ、して?」
「えっ……」
僕は絶句する。
妖精の営みがどんなものかは知らない。だが、少なくとも愛撫するという習慣はあるらしい。
ミーシャは、僕に体全体を舌で愛撫して欲しいと頼んでいるのだ。
「……い、嫌だよね? ご、ごめん、忘れて! 変なこと言ってゴメンね! あはは……」
照れ笑いを浮かべるミーシャに、僕はどう答えて良いのか分からない。
だが、その仕草に僕は何かいいようのない感情を抱いていた。
それが僕の劣情から発していることに気づくのに、それほど時間はかからなかった。
僕はミーシャをそっと手で掴むと、むりやり顔の近くに持っていく。
「あ……ジェイン……」
僕は無言のまま、舌を伸ばすとミーシャの体を舐めた。
もちろん、ぺろりと一舐めすれば、ミーシャの足先から顔まで濡らしてしまうことが出来る。
だが、僕はあえて舌先を使って、ミーシャの小さな胸のふくらみを舐めた。
「ん……ジェイン……っ」
小さな小さな胸の、さらにその先についた小さな桃色のつぼみを、何度も舌で擦り上げる。
「んっ、んぁ……ん、ふぁ……」
ミーシャは僕の愛撫に合わせるように、かわいい声で鳴いた。
輝く妖精の体が、まるで人間の少女みたいに薄桃色に染まっていくのを、僕はじっくりと観察できた。
やがて、僕は舌をミーシャの秘所の方へと這わせていく。
「ひぃ……ひぁぁぁっ……ジェイン……」
自分と同じくらい巨大な舌に愛撫されながら、ミーシャは僕の前で体をよじった。
いたずら心がわきあがり、僕は何度か舌を胸から秘所へ、また胸へと往復させる。
そのたびミーシャはすすり泣きのような声を上げた。
「い、意地悪……」
「だって、ミーシャが……かわいいから」
「も、もう、やだぁ……っ」
照れながらも、ミーシャは僕の手に体を委ね、愛撫に身を任せている。
まるで精密な人形のようなその体を、僕は夢中で舐めた。
28 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:52:36 ID:NYxpjJh+
「ジェイン、ジェイン……私……」
「もう、イキそう?」
僕の問いに、ミーシャはこくこくと何度も頷く。
それに応えるように僕はミーシャの秘部を集中的に舐めてあげた。
「んーっ……ジェインの舌、すごくざらざらしてるぅ……」
いつしか僕は、自分の唾液ではない、もっとねっとりしたものが舌先に絡むのに気づいた。
それが妖精の愛液だと気づいたときには、もうミーシャは絶頂に向かう寸前だった。
やがてミーシャの体がびくりと跳ね上がると、彼女はぐっと唇をかみながら何度も体を震わせ、崩れ落ちた。
「じぇいん……」
夢見心地な声を出しながら、ミーシャは僕を見つめている。
いつしか僕も興奮していた。
小さな女性を舌だけで絶頂に導く行為。ただひたすら奉仕することに、僕は言いようのない喜びを感じていたのだ。
僕の胸の上で息を整えていたミーシャは、やがてゆっくりと身を起こした。
「今度は、私の番ね……」
そう言うと、ミーシャは僕のズボンの前をゆっくりと開く。
手のひらと同じぐらいのボタンを外し、帳を開くように重なる布地をかき分けていく。
あえて、僕はミーシャのするがままにさせていた。
妖精の少女が自分の陰茎を求めてうごめくさまは、妖しくも官能的な光景だった。
ついに、僕の陰茎が露になった。
ミーシャにしてみれば、木のようにそびえ立つ僕の物を、彼女はうっとりと見ている。
「いっしょに、イこうね……」
そう呟くと、ミーシャは体全体を使って僕の陰茎をしごき始めた。
カチカチに張り詰めた幹に、ミーシャの柔らかな胸や陰部がこすり付けられる。
そして、ミーシャの舌が、僕のカリを激しく攻め立てた。
「……み、ミーシャ……」
今まで感じたことのない快感に、僕はうめく。
ミーシャも、自分の体くらい大きな逸物に、興奮しきっているように見えた。
「ミーシャ、もう、僕も……」
「うん、私も……イっちゃいそうだよぉ……」
何より、ミーシャの献身的な奉仕によって、僕自身をたちまち限界へと達しようとしていた。
ミーシャは中腰のまま、自分の胸と腹を使って僕をしごき上げていく。
「ミーシャ、ミーシャ……」「……ジェインっ! ジェイン……っ!」
僕は小さな彼女の名を何度も呼びながら、達した。
びくびくと体を震わせ、その精を思うさま吐き出す。
ミーシャも体中に白濁液を浴びながら、二度目の絶頂に達した。
29 :
このスレの1:2006/06/11(日) 15:52:55 ID:NYxpjJh+
エピローグ.
次の日、僕は目を覚ますと、川で顔を洗い軽く身支度を整えた。
それから、崖から落ちた拍子に散らばった背負い袋や身の回りの品を拾い集める。
幸い、商売道具の剣や食糧も含めて、ほとんどのものを失くさずに済んだ。
それから、ミーシャの所に戻る。
彼女はまだ僕の脱いだ上着の中で眠っていた。
火をおこし、干し肉をあぶっているうちに、ミーシャが起きてきた。
「お、おはよ、ジェイン」
「おはよう、ミーシャ」
昨日結ばれた(?)二人は、ぎこちなく挨拶を交わす。
もはや飛べなくなったミーシャは、まだ足で歩くということに慣れていない様子だった。
それでも僕のそばに小走りで近づくと、ぺたりと腰を下ろす。
しばらくの間、彼女は僕が朝食の準備をするのを眺めていた。
「ねえ、ジェイン」
「なに?」
干し肉をあぶりながら、僕は返事をする。
「これから、どこか行くあてはあるの?」
「……いや、特にないな」
雲のまにまに流れていく傭兵稼業、行き先など決まってはいない。
だが、それを聞いた途端ミーシャはぱっと顔を輝かせた。
「あのさジェイン。こんな伝説、知ってる?」
「どんな?」
十分柔らかくなった干し肉をパンに挟むと、僕はその端っこを千切ってミーシャに渡す。
そして、二人揃ってそれを食べ始めた。
「あのね、『万物創生の書』の伝説」
「もちろん、知ってるに決まってるだろ」
この世をお創りになった聖霊が、世界の創り方について書き残した書物だ。
伝説だという人もいるし、実在するという人もいる。
「ねえ、それを探す旅に出かけない?」
「……は?」
思わず食事の手を止め、僕はミーシャの方を振り向く。
「その書物を手に入れれば、どんな願いも叶うというでしょ? 何しろ世界の創り方が書いてあるんだから」
「ああ。そうか、そうすれば君の羽を蘇らせる方法も……」
そう言いかけたとき、僕はミーシャの小さな手でぺしりと叩かれた。
「違うわよ!」
「……違うの? 僕はてっきり……」
僕が首をかしげていると、ミーシャはなぜかうつむき加減で呟いた。
「……私は、妖精が人間になる方法を知りたいの。そしたら私ジェインの……」
その言葉に、僕は顔に血が上るのをはっきりと感じた。
驚いて見つめ返すと、ミーシャは昨夜見せてくれた、あの愛らしいはにかみを浮かべながら僕を見上げた。
「……駄目?」
やがて、僕はミーシャに負けないくらいの笑みで答える。
「一緒に行こう、ミーシャ」
「うんっ、ジェイン!」
**
こうして、羽を失った妖精の少女と、人間の傭兵は生涯をかけた探索の旅に出た。
彼らは果たして『万物創生の書』を手に入れることが出来たのか? ――それはまた別の物語である。
(終わり)
ミーシャ可愛いよミーシャ(*´Д`)GJGJGJ
そして乙!
素晴らしい、のひとことです。GJ!
互いのために身を投げ出す二人の姿が尊いというか美しいというか。
あと、舐められて感じるミーシャがエロかわいかった。
1さん、GJ!そして乙です。
読み応えあってよかったです。
ミーシャ可愛い……
1さんにゴールデンGJ賞を送りたい。
でも、無粋なこと言うけど、スレ違いじゃね?
いやいや、冒頭に
>タイトルに拘らず、女剣士・騎士、冒険者、お姫さま、
海賊、魔女、何でもあり
とあるからいいんでないかい?妖精でも。
しっかりしたファンタジーだし。
スレ立てたばっかりだし、スレが賑わうのが重要。
前スレもこのやりとりがあったから、スレタイ変えるもんだろうと思っていた。
盛り上がりも何も、投下する気の失せた人間が少なくとも一人。
まあがんがれ
二スレめか……
感慨深いものがあるなぁ……
今適当に書いてるのが完成したら後日投下しやすわ
>36
wktk
俺はこのスレタイが残ってくれてうれしかったよ。
ニッチなように見えて、案外需要のあるジャンルなのかな。
ずいぶんと前に書き始めたまま滞っていたのを起こしてみるので、しばし待たれよ
しばし待たせていただきます
ばしばし待ちます。
じゃあ俺も待機しよう
42 :
投下準備:2006/06/18(日) 17:48:33 ID:l+RA2/fn
スレタイが女兵士になってるので、テンプレに何でもOKとあっても
総合とは住み分けが必要かな、と思って総合用のssを作ろうとしたが、
女兵士スレの方に書き込むべきものが出来たので投下させていただく。
読む前に注意、
・はじめてエロssを書いたのであんまり上手く書けなかった。職人さんの手間と技量が実感できた。
・むしろはじめてssを書いたので(ry
・前半と一番最後はエロくない。
・ss作るのはAA作るのと同じくらい難しいことが分かった。
・続編の構想は完全に白紙。
というわけで投下「魔王とイリア」
43 :
魔王とイリア:2006/06/18(日) 17:49:12 ID:l+RA2/fn
太陽が傾きかける前に戦局は決した。
闇の軍勢を討伐するために終結した連合軍は、撤退のラッパが鳴らされる前に総崩れとなっていた。
戦いの前には太陽の光を浴びて白く輝きを放っていた光の軍旗は引き倒され、血と泥で見る影もなく汚されていた。
連合軍の兵士たちは自分の命だけは奪われぬように、物資も武器も名誉もまだ息のある同胞もすべて捨てて
全力で逃走する以外になかった。仮に少しでもそれらに未練を残そうとすれば、追撃をかける亜人の戦士たちの
餌食となっていたであろう。
戦場に響く逃げ遅れた将兵の嘆きの声は、敗残兵の決死の足音にかき消され、
ついには闇の軍勢の猛追撃に飲み込まれていった。
闇の軍勢の本陣に設けられた台座から、漆黒のローブに身を包んだ人物が立ち上がった。
周囲を取り囲む将兵、魔道士たちは一斉に姿勢を正し、台上の人物に注目した。
ローブの人物が指揮杖を高く掲げると、本陣に訪れた僅かな沈黙は
兵士たちの勝ち鬨によって破られた。そして本陣に響き渡った大音声を聞いた者たちも次々に呼応し、
全軍の戦士たちが戦場に響き渡らせた。
戦場には亜人や戦鬼たちが叫ぶ、咆哮にも似た勝利の凱歌が響き渡った。
闇の軍勢の侵攻を封じ込める事に失敗した光の勢力は、数世代にわたって維持してきた領域、
かって偉大な英雄たちが闇の勢力を駆逐して獲得した光の版図において、敵を迎え撃つこととなった。
44 :
魔王とイリア:2006/06/18(日) 17:50:32 ID:l+RA2/fn
太陽が沈み戦地を闇が覆い隠した頃、陣営の中心部に建てられた巨大な天幕に
数名の亜人戦士を引き連れ、黒いローブの人物がやって来た。
この巨大な天幕は、陣営のどの天幕と比較しても大きかった。他の天幕の数倍の高さと
その高さに比例した広さを持っていた。もしここに二十匹の戦鬼が中に入ったとしても
窮屈に感じることはないと思われるほどであった。
黒いローブの人物は、入り口の両脇を固める亜人の護衛兵が威儀を正し、礼を払うのも気に留めず
随行の戦士たちを残して一人天幕の中に入っていく。
天幕の内部は、梁から吊るされた布でさらに数室に区切られていた。外で聞こえた軍陣特有の喧騒も、
戦士や魔獣が放つ悪臭もここには無かった。ただ奇妙なことに明かりも無かった。闇に包まれた天幕の中を
漆黒のローブをまとった人物は奥に進もうとしたが、数歩歩いたところで足を止め、
右の仕切り布に向けて声をかけた。
「何用だ。イリア」
低く小さな声であったが、わずかに苛立ちが混じっていた。数秒後、仕切り布の向こう側から
うら若い女の声が返ってきた。
「夜の森を代表して此度の戦勝をお祝い申し上げるために参りましたわ。わが主君」
「それは先程そなたの叔父から受けた」
「わたくしも直接陛下に申し上げたかったのでございます」
その言葉に合わせてイリアは仕切り布をめくり、黒いローブの人物の前に歩み出た。
イリアの髪は暗い天幕のなかに溶け込む黒髪であり、その肌は褐色である。
日のある所であれば美しい光沢を放つであろう艶やかな黒髪から、
闇エルフ特有の長く尖った耳がつき出ていた。外見は細面の端整な顔立ちをした少女であるが
長寿を誇る妖精族として、一般の人間の天寿を超えた年月を生きてきたことは間違いない。
イリアは片膝を着いて頭を下げ、己の主への礼を表した。この漆黒のローブの人物こそ
闇の軍勢の領袖であり、光と闇、双方の勢力から魔王と呼ばれる存在である。
45 :
魔王とイリア:2006/06/18(日) 17:51:45 ID:l+RA2/fn
「真に見事な勝利でございました。わたくしも陛下の勝利を喜ばせて頂きます」
ひざまずくイリアの祝福を受けると、魔王は再び天幕の中枢部に向かって歩き始めた。
眼前にはさらに仕切り布が吊るされていたが、魔王が近づくと独りでに開き、
その主を迎え入れた。魔王は奥にある一室に入っていった。
部屋は天幕の中心部分にあり、魔王は部屋にある長椅子にローブに包まれたその身を横たえたが、
しばらくすると、入り口の方に顔を向けた。
「まだ用があるのか?」
その言葉に合わせて、仕切り布は開かれた。そこにはひざまづいたイリアの姿があった。
護衛兵も入れない天幕に潜り込んだ闇エルフの少女も、魔王の部屋に入るのには主の許しが必要だった。
魔王が横になったまま片手を軽く挙げると、部屋の脇に置かれた長持から敷物とクッションが飛び出し、
長椅子の前にイリアの席を作った。許されたイリアは静かに入室し、クッションに腰をかけた。
「・・・そなたの今日の働きは見事であった」
「お褒めに預かりこの上ない光栄でございます」
今回は魔王からイリアに労いの言葉をかけた。イリアは夜の森の闇エルフの族長の姪であり、
最前線で弓と短槍を武器に敵の将兵を幾人も討ち取った。
戦が終わってからどこかで身を清めてきたのか、浴びたはずの返り血も血臭もイリアの体にはなかった。
「して戦勝の祝いの他に用があるのか?」
「・・・此度の勝利を寿がせていただくことでございます」
「それはさっき聞き入れた」
「言葉にできるものだけでは、わたくしの想いの半分も伝えることは出来ませんわ」
そう言うとイリアは立ち上がり、自分の鎧下の帯を解き始めた。
魔王はイリアが入ってきた時から少しも動かなかったが、目の前で闇エルフの少女の褐色の裸を見ても
微動だにしなかった。やがてイリアは全ての衣類を脱ぎ、再び魔王に向かってひざまずいた。
「わが君、どうぞわたくしの祝福を受けて下さいませ」
少女の姿に似合わぬ、媚を含んだ妖艶な微笑を捧げられた魔王は、しばし言葉を発しなかった。
46 :
魔王とイリア:2006/06/18(日) 17:53:27 ID:l+RA2/fn
「・・・・・・・・・イリア」
「はい、わが君」
「・・・余は疲れておる」
その言葉を聴くと、イリアの微笑みは失望に変わった。戦闘中、闇の軍勢を率いる魔王は本陣の台座に趺坐し、
一歩も動くことはなかったが、その反面、闇の軍勢を勝利させるために莫大な魔力を使っているのである。
亜人、鬼族や魔獣たちの精神に干渉して死地に向かわせ、闇の魔道士が行う術に力を分かち与え、
敵の魔道士の術から軍勢を守り、時には直接敵陣に呪いをかける。
力のある魔王が誕生すれば、闇の勢力は団結して光の力を凌駕する。
数百年現れなかったと噂されるこの魔王の力をもってしても、今日の戦は容易なものではなかった。
魔王が再び片手を挙げたのを見て、イリアは退出するように背後の仕切り布が開かれるのだと思ったが、
動いたのは布ではなく、部屋の長持であった。
「故にいつもの様には付き合ってやれぬ。手短に済ませよ」
イリアの座の隣に飛び出してきた新しい敷物は、三四人で寝そべっても余裕があるほどのものであり、
それを同じく飛び出してきたクッションが埋め尽くした。
喜びを顕にするイリアを前に、長椅子から身を起こした魔王の体から
漆黒のローブが誰の手も借りずに脱げていった。
47 :
魔王とイリア:2006/06/18(日) 17:54:43 ID:l+RA2/fn
「陛下・・・」
山と詰まれたクッションに仰臥する魔王の体に、イリアは手と舌を這わせていた。
魔王の体は人と比べてやや大きめであるが、そこには余計な肉の一片もなかった。
そして体色は白い。普段ローブに身を包み肌を露出させていないことを含めてもなお白かった。
体毛はやや薄茶色であるが、この白い体を褐色の肌の少女が愛撫していく様は、誰かが見れば
好対照であると感じたであろう。ただしこの部屋には二人以外の誰も存在せず、明かりもない。
闇の中でイリアと魔王は交わっていた。
魔王の体を唇と舌で責めるイリアだったが、魔王は何の反応もないかのように横になっていた。
常ならば髪や頬を撫でたり、胸や秘所に手を伸ばしてくれるものだが、
今日はイリアだけが動き、魔王はイリアのするに任せていた。 イリアとしては、
むしろ愛する男に自分の体を蹂躙され、戦場で高ぶった心と体を癒してもらいたいほどなのだが、
相手も自分以上に消耗し、さらに「勝利の祝福を捧げる」という名目で許された以上、
主君にそれを要求することは出来なかった。
手と口の愛撫の間に、イリアは自分の秘所を魔王の男根に摩り合わせた。
少しでも相手に快楽を味わって欲しいと思っての行為であったが、そのうちに男根に擦られる自分の体が
更なる快感を求めてしまい、そのうちに手と口はおろそかになり始めた。
「イリア」
行為を始めてから魔王がイリアに話しかけるのははじめてであった。イリアは我に返り自分が
魔王への奉仕を忘れかけていた事に気付いた。
「良い」
羞恥で顔を赤くするイリアに、魔王は言葉を続けた。
閨房で魔王は饒舌ではないが、イリアには自分の高ぶりを感じ取った魔王が、好きなように動くように
促してくれたことが判った。
まるで発情期の雌剣歯猫のようにあさましい振る舞いを主君に見られ、
さらに顔を赤らめたイリアであったが許しを得た以上もはや我慢はできなかった。
魔王に覆いかぶさっていた自分の体を起こし、魔王の男根に手を添えて自分の秘所に導き、
そのまま腰を下ろした。
48 :
魔王とイリア:2006/06/18(日) 17:56:22 ID:l+RA2/fn
「あぁぁ」
魔王の男根はイリアの秘所からあふれた愛液で十分に濡れており、何の支障もなく貫いた。
いきなり最深部まで到達した感触を味わい、イリアは堪らずに声を上げた。
そして男根が抜けないように加減しながらも、自ら大きく腰を振り快感を貪りはじめた。
「陛下・・・へいかぁ」
答えは返ってこないことは知りながら、イリアは何度も愛する主君に呼びかけ、叫ぶ。
叫んでいないと快楽に飲み込まれて気を失いそうになるからである。
幾度となく男根に子宮を突かれるうちに、イリアは動かぬ主の左手を取って、自分の胸にかき抱いた。
妖精族に共通する華奢な体型は、人間族のに見られるような豊満な肉体の者は見られない。
イリアの褐色の胸もわずかな膨らみしかなかったが、その乳房の形が歪むほどに魔王の手を押し付け、
その指を乳首に押し当てた。
「ちゅぅ」
イリアは乳房に当てていた魔王の左手を持ち上げ、その指に口付けし、舐め上げた。
魔王は自分の手をイリアが使う事にも何も言わず、静かに闇エルフの少女の痴態を眺めていた。
そのうちイリアの喘ぎはさらに艶を帯びたものになり、腰の動きは速さを増していった。
「はぁ・・・んぁあ ・・・んぁぁあん」
いつしかイリアは主の左手を放し、腰の動きだけに集中した。魔王の胸に手をつき、
心のままに腰を落としていくと、不意に予想外に突き上げられた。
「ぁあッ 陛下・・・」
イリアはそれまでまるで動こうとしなかった魔王が、己の絶頂が近いことを察して突き上げてくれたことに
強い歓喜と快楽を覚え、急激に上り詰めていく。
「ぁっぁぁっ あっ んぁ んなぁあああーーーーー」
天幕の中に意味をなさない絶叫が轟き、イリアは気を失った。
49 :
魔王とイリア:2006/06/18(日) 17:56:57 ID:l+RA2/fn
それからしばらく経って、目覚めたイリアは自分が仰臥した魔王の胸に倒れこみ、
さらに秘所には男根が挿入されたままであることに気がついた。
「イリア・・・ そなたの祝賀、たしかに受け取った」
「ぁあ・・・・・・・・・」
主君に対して何と言うべきか判らずうろたえるイリアに、魔王から言葉をかけた。
救われた想いのイリアは潤んだ瞳で主君を見つめていたが、
魔王は突然胸にしなだれかかっていたイリアの肩に手を伸ばし、
体を入れ替えて逆に組み敷いた。
「陛下・・・?」
「イリア、先程のはそなたからの祝賀。これはそなたへの余からの褒美だ」
そう言うと魔王はイリアに口付けし、深く舌を差し込んだ。
50 :
魔王とイリア:2006/06/18(日) 18:01:05 ID:l+RA2/fn
魔王の天幕の一室で、再びイリアが目覚めた時には魔王の姿はなかった。
イリアは戦で昂った心身を望んだ以上に翻弄され、心地よい疲労とともに体の各所が痛んだ。
入り口の仕切り布が開いていることから、目覚め次第出て行くようにと魔王が望んでいることが判った。
欲を言えば、先のように目覚めるまでそばにいて欲しかったが、
闇の勢力の王にそこまで望むことは欲が深すぎると思った。
イリアが魔王に抱かれる様になって五年がたつ。闇の種族が多く暮らす大陸南東部に突如出現した彼は、
数年のうちに勢力を拡大し、ついに夜の森の闇エルフに臣従を要求した。
夜の森の闇エルフは、光のエルフから闇の勢力に堕した一般の闇エルフとは異なり、
ハイエルフが光明神の末裔であるのと同様に、暗黒神の系譜に連なる純粋な闇の種族である。
それゆえ特別に気位が高く、新参の魔王の要求を嘲笑した。魔王は直ちに夜の森に懲罰の軍を送り、
待ち構えていた闇エルフの軍団を粉砕し、降伏するか、夜の森と共に消滅するかの選択を迫った。
夜の森は降伏しを選び、慣例に従ってイリスは人身御供の一人として魔王の陣営に送られた。
そして魔王は族長の親族であるイリスをその褥に侍らせるようになった。
当初は純粋な闇エルフとして他種族に抱かれることに屈辱を覚えたものだったが、
そのうちに魔王の底知れぬ魔力に惹かれるようになった。
周辺の闇の勢力を糾合した魔王が、西方の光の勢力を攻撃するべく大号令を発したときは、
自ら従軍を志願した。西方攻略の暁には、夜の森の軍勢はかって光の勢力に追われた故地、
「古く深く森」を与えられることになっているが、イリアの目的はただ愛しい主のそばに侍り、
その寵を受けることだけである。
魔王の臭いの残る部屋を後にするのはいささか後ろ髪を引かれる想いであったが、
下着と鎧下を身に着けると、イリアは魔王の天幕を後にした。
(魔王とイリア 終わり )
51 :
投下完了:2006/06/18(日) 18:12:49 ID:l+RA2/fn
映像イメージとしては闇の勢力が勝つ指輪物語の映画版
ただし指輪のように魔王が非人間形じゃないし、サルマンのように爺でもない。
おまけに指輪ほど闇の勢力は光の勢力に対して圧倒的じゃない。あれでよく旅の仲間は勝てたもんだ。
エルフと恋に落ちる話はディードに限った話ではないのに、
ダークエルフの女戦士と恋人になる話は
どうしてもアシュラとピロテに似てきてしまうので難しい。
GJ!
出来れば続きを読みたい。魔王のねちっこい攻めを重点的に。
あと光の軍勢側の女騎士が魔王の捕らわれになって…という展開もキボン
イリアたんかわいいよ。
魔王も結構淡白な人だからあんまねちっこい攻めできるかなぁ。ご褒美以外はほとんど体を動かさなかったし。
おおGJ!!
リクエストにお答えするために女騎士編を構想していたが、
別のキャラを登場させる関係上、そっちの方の作成を優先することにしました。
そちらは半分ほど書いたので、近日中に完成予定
・・・だけど出てくるのは女兵士じゃないからファンタジー総合の方がしっくりくる気がするなあ。
どーしよう?
気にしないで投下キボン!
ミーシャたんも女兵士じゃなかったが、ファンタジーらしかった。
WKTKで待ってます!
58 :
投下準備:2006/06/21(水) 23:06:13 ID:1pfTeOjk
まあ初稿をこのスレに書き込んだし、
続けて投下させていただくか。
読む前に注意
(女兵士以外は嫌な方はスルーされよ)
59 :
魔王とフィリオ:2006/06/21(水) 23:12:24 ID:1pfTeOjk
大天幕に繋がった白い天幕からは、常に蒸気が漏れている。
この天幕に設けられた大釜には、魔王の浴槽のために使われる湯が一日中沸かされていた。
この部屋の中心に置かれた青銅製の湯船は、文字通り小さな船を象っている。
違うのは船は中に水が入らないようにするが、こちらは中の湯がこぼれない様にする物である。
移動中以外、つまり設営されている間はいつも誰か入浴係が配置されている。
そして魔王が入浴する際には、天幕の梁に吊るされた鈴が鳴らされる。
浴室を担当する端女にはどのような仕組みで鳴るのかは判らなかったが、
彼女達は行軍中でない限り、いつ何時でも入浴できるように準備するのが仕事である。
闇の軍勢が光の連合軍を破った日の夜は、フィリオが天幕内の腰掛に座って魔王が訪れるのを待っていた。
その日魔王は二度入浴していた。一度は戦の前、二度目は戦の後である。
その時にはまだ日が上っていたからフィリオの同輩が勤めを果たした。
本来なら日中は少しでも眠っておき、夜番に備えておくべきであったが
決戦の最中の張り詰めた雰囲気は全陣営に張り詰め、魔王の端女に過ぎぬフィリオすら一睡もできなかった。
ゆえに日が沈み己が浴室に侍する番が来ると、いかようにもしがたい眠気がフィリオに付きまとった。
60 :
魔王とフィリオ:2006/06/21(水) 23:16:04 ID:1pfTeOjk
『カランッ カランッ カランッ』
フィリオは鈴の音で目が覚めた。
そして自分が夜番を務めながら半ば居眠りをしてしまっていたことに気付き、愕然とした。
魔王が大天幕の自室からこの天幕に来るまで、どんなに遅くとも二分とかからない。
背筋を寒気が走り抜ける思いがフィリオから眠気を完全に追い払った。
気が付けば竈の薪は燃え尽きかけている。即座に竈にマキを足し
湯船の蓋を外して天幕の隅に片付けると、浴槽に入れる香料を用意した。
準備が整うまで魔王がやって来ないよう、フィリオはあらゆる神に祈ったが
その甲斐あって最後に手桶と海綿を準備し終わり、入室する直前には湯船の側にひざまずいて魔王を迎えることが出来た。
フィリオは人間族であるが、人間族の宮廷に仕えた経験はない。
しかし仕える対象としても魔王は全く異質であることは判る。
人に限らず王侯というものは豪奢に着飾る人種のはずだが、魔王はフードの付いた漆黒のローブしか身に付けないのだ。
それも貴人であれば自分の着替えさえ召使にやらせるものだが、ローブも着物も独りでに脱げる。
着る時も同じく誰が手伝わなくても魔王の体に纏われていく。
だから衣装係という役職は魔王に必要がない。
入り口の鈴と同じく、フィリオには理解できない理由があるのだろう。
魔王は、ひざまずいた端女に気を留めることなく自分一人で湯船に歩み寄り、そのまま身を浸した。
61 :
魔王とフィリオ:2006/06/21(水) 23:18:21 ID:1pfTeOjk
フィリオは密かに安堵のため息をついた。
後はいつも通りに湯船に香水を注ぎ、ころあいを見て魔王の体を薬液を滲みこませた海綿で洗えばよい。
そう思って手に持った水差しから、香水を湯船に注ごうとした。
するとフィリオの腕は魔王の右手に掴まれた。
突然の行動にどう反応すればよいのか分からず、身動きの取れなかったフィリオだが、
次の瞬間、魔王が自分の腕を湯の中に引き込むと、全て疑問は氷解した。
『・・・微温い!』
フィリオは居眠りを始める直前には、大釜の湯を浴槽に加えて適温にしておいた。
自分が思った以上に長い時間居眠りをしていたらしいことに気がつき、先程鈴が鳴ったとき以上に背筋が凍りついた。
「もっ・・・申し訳ございません! ただちに湯をお足し・・・」
一瞬でも早く湯船の温度を適温にしなければならない。そう思ったフィリオであったが、魔王はみなまで言わせなかった。
フィリオの左腕を湯の中に引き込んだのは右手であったが、フィリオが立ち上がろうとした瞬間に
魔王の左手はフィリオの細首を掴み、上半身ごと浴槽に引きずり込んだ。
「がぼぼがっ」
頭から水面に叩きつけられる格好になったフィリオは、大量の湯を飲み込んでしまった。
人の肺は気体を呼吸しなければならない様に出来ているが、湯船の中でそれを探すのは無理な話である。
湯を飲み込まないように必死に口を閉じたフィリオは、引きずり込まれたときにはまだ掴まれていた右腕が
いつの間にか開放されていることに気が付いたが、そのようなことはこの窮地を脱するために何の意味も持たなかった。
言葉さえ発することが可能ならば、魔王に命乞いをすることも出来るだろうが、口を開いても生まれるのは言葉ではなく
たんなる泡でしかないだろう。
フィリオは己の首を締め付ける魔王の手が信じられない程の力を秘めていることを知った。
昔ドワーフに腕を掴まれた事があったが、岩の様にしっかり握られたその手は
とうてい自分の力では振りほどくことが出来なかった。
フィリオはどうにかして浴槽から顔を出そうと懸命にもがいたが、
肉に食い込むほどに首を締め上げる五本の指は、決して外れなかった。
その魔王の左手にさらに力が込められ、喉を圧迫されたフィリオは必死に溜め込んでいた空気を吐き出さざるを得なかった。
『死ぬ・・・』
吐き出した空気の変わりに湯が口中に流れ込むと、フィリオは死を覚悟した。
62 :
魔王とフィリオ:2006/06/21(水) 23:19:59 ID:1pfTeOjk
しかし、そうはならなかった。
今までフィリオを水面下に引きずり込んでいた魔王の左腕が、今度はフィリオを浴槽の上に引き上げた。
息が苦しくなるほどに込められていた力も緩められ、十数秒ぶりに空気のある世界に帰ることが出来た。
『助かった・・・』
フィリオがそう考えるのも無理はなかった。先程まで呼吸をすることさえ困難な状態に追い込まれ、
もはやこのまま息絶えるものだと思っていたのだから。
咽返り、涙を流しながら、ただフィリオは思い切り呼吸を繰り返していたが、数十秒後には自分の予感が
甘すぎた事を実感することになった。
魔王の左手はフィリオの呼吸を乱さぬ程度に力を抜いてあったが、
相変わらず相手の細首を放してはいなかった。
フィリオの呼吸が整いだしたのを見ると、魔王は右手でフィリオの腰帯を掴み
今度はフィリオの全身を湯船の中に引きずり込んだ。
63 :
魔王とフィリオ:2006/06/21(水) 23:21:24 ID:1pfTeOjk
行軍中の持ち運びが苦にならないように、陣中に設けられる浴槽は
魔王宮にあるものとは比べ物にならないくらい小さい。
しかし魔王が足を伸ばしても十分な広さがあるし、首筋まで浸かれる深さもある。
ゆえに魔王よりも背の低いフィリオならば、何の問題もなく全身を湯の中に沈めることができた。
湯の中に引き込まれるのは二回目でもあり、フィリオはすぐに息を止めた。
前回と違うのは、先程首を締め上げられていないこと、その代わりに後頭部を掴まれて
湯船の底に押し付けられる形で沈められていることであった。
気をつけていれば鼻から水が入ることもなく、
少なくともフィリオにとって一度目よりは苦しくない体勢であった。
しかし、先程よりも楽に思えたのはわずかな時間であった。
後頭部を押さえつける力はそのままに、フィリオの左腿が魔王に抱きかかえられた。
体勢を変えられたのを感じた直後、何か硬いもののが尻の谷間に触れたと思うと、
己の後門を魔王の男根に穿たれた。
『ごばぼばばぁっ』
それまでなんとか吐き出すのを耐えていた息だったが、痺れるような異物感が脊柱を走り抜けると
まるで腹中にねじ込まれた分が押し出されるかの様にフィリオの口から大量にこぼれていった。
64 :
魔王とフィリオ:2006/06/21(水) 23:22:45 ID:1pfTeOjk
突き入れられた際にフィリオはかなりの量の息を吐き出してしまったが、
魔王の行為は一度で終わるものではなかった。
限界近くまで深く貫き終わると、はらわたを引き抜かれるかの様な感触とともに魔王の男根は引き戻された。
その時には吐き出した分湯を飲み込んでいた。
そして再び突き入れられると、堪え切れずに残り少ない肺の中の空気が押し出される。
フィリオの口から小さな泡すら出なくなり、手足がもがき暴れる力が無くなるまで、
魔王はフィリオの臀部に腰を打ちつけ続けた。
息も尽き果てたのを見計らって魔王は再びフィリオを引き上げ、後ろからフィリオの胴を締め上げると
胃と肺に流れ込んだ水分を吐き出させた。
・・・・・・
65 :
魔王とフィリオ:2006/06/21(水) 23:25:30 ID:1pfTeOjk
湯船の中で後ろから抱きかかえる形で、フィリオは力なく魔王に寄りかかっていた。
虱が発生する陣中では、奴僕の髪や体毛は短く刈り込んでおくのが慣例である。
身分の高い者達は虫除けの薬剤を使うが、そうでなければ痒みを耐えるか、毛髪を切るかである。
魔王付きとはいえ端女であるフィリオは、出征前は肩口まであった栗色の髪を切り、
現在はうなじが隠れる程度にまで短くしていた。
そののうなじに魔王が甘噛みを加えると、
朦朧とする意識の中で、フィリオは声にならない吐息をもらした。
すでに声を上げる力すらなかった。
気を失いかけたフィリオを蘇生させた魔王は、まだフィリオを開放する気はなかった。
ぐっしょりと濡れた衣服の隙間から手を潜り込ませ、先に凄まじい力を発揮した魔王の指が、
今度は繊細な力加減で肌を撫でまわすたびに、フィリオの性感を呼び覚まされていった。
すでに湯は微温さを通り越して冷たくなりかけていたが、休むまもなく責め立てられている
フィリオにはそれを感じる暇すら与えられなかった。
胸元から差し入れられた左手がやわやわと乳房を揉みしだき、
高腿を撫で上げていた魔王の右手が己の股間に到達すると、
フィリオはあまりの快楽に身じろぎせざるをえなかった。
まだ後門は魔王の男根で貫かれているのである。
魔王が腰を動かさなくても、自分が体を動かせば嫌でもその感触を味わうことになる。
指や唇で与えられる感覚に、尻に突き立てられた感触が重なり、
フィリオの体は蕩けそうになるほどに熱くなっていた。
66 :
魔王とフィリオ:2006/06/21(水) 23:26:57 ID:1pfTeOjk
「っはぁん」
指が女陰に挿入され膣内を掻きまわすと、フィリオの体が反り返った。
魔王はフィリオの反応を加減するかのように、一箇所をしつこく弄り回したりはしなかった。
フィリオの後門から抜けきらぬ程度に、フィリオが力尽きぬ程度に、ゆっくりと愛撫した。
白い天幕からは、フィリオの声にならない喘ぎと水音がいつ絶えるともなく聞こえていたが、
女陰と後門を同時に弄ばれ、フィリオは限界近くまで昂っていた。
その状態を感じ取った魔王は女陰を嬲っていた指を抜き、
フィリオに両手で湯船の縁を掴むように誘導すると、
再度後背位でフィリオを攻め立て始めた。
水音に魔王の腰がフィリオの尻を打つ音が加わり、
魔王はそれまでに倍する速さで腰を打ち付ける様になった。
急に勢いを増した魔王の動きに、フィリオは縁を掴む両手に力を込める。
唇から漏れ出す甘い喘ぎがしだいに乾き、かすれた声に変わり出した頃、
文字通り息も絶え絶えになっていたフィリオが絶頂を迎えた。
「っぁぁあああーーーー・・・・・・ っごごぁぁばぼぁぉぁぁぁあわわあーーーーーー・・・・・・」
今までに経験したこともない高みに押し上げられた末の、最後の絶叫であったが、
その瞬間魔王の手はフィリオの頭を掴み、三たびフィリオはぬるま湯の中に沈み込められた。
絶頂の叫びは途中で口中から吐き出される泡となった。
もはや口を閉じる力すら尽きたフィリオは、
薄れゆく意識の中で腔中に魔王の精液が放たれるのだけは感じ取れた。
67 :
魔王とフィリオ:2006/06/21(水) 23:29:15 ID:1pfTeOjk
・・・
気が付くと、フィリオは浴槽の外にうつぶせになっていた。
空ろな瞳で天幕の中を見渡しても、魔王の姿はない。
フィリオを責め終えると、あの独りでに纏えるローブを着て去っていったのであろう。
湯船に放置されなかったということは、どうやら魔王は溺死刑だけは赦したようだった。
命が残っている事に安心すると、フィリオは咳き込んだ。日に三度溺れかけた体は、真底疲れきっていた。
しかしフィリオはこのまま寝入る訳にはいかなかった。
浴槽の湯は魔王との行為によってあたりに撒き散らされ、敷物はぐっしょりと濡れている。
この状態を何とかしなければならなかった。
魔王は今日三度入浴した。おそらく四度目はないであろう。
しかし、もしも四度目の入浴があり、そこで不始末をしでかせば、
フィリオが四度目の水責めを受けることは明らかであった。
そしておそらく五度目はない。
フィリオは全身に残る倦怠感と戦いながら、大釜の湯を汲み出しして湯船に張るために、
ずぶ濡れの体を起き上がらせるのであった。
(魔王とフィリオ 終わり)
68 :
投下完了:2006/06/21(水) 23:36:03 ID:1pfTeOjk
というわけでフィリオ編です。
リクエストに答えて魔王様にねちっこく攻めて頂きました。(水責め)
エロを濃く書くのはホトホト疲れましたよ。その割りにファンタジー分が薄いし反省点が多すぎ。
続きを書くにしてもしばらく間をおくことにします。
週末ごとに少しずつ書くつもりなので、あとは職人先生たちにお任せしますわ。
GJ!
なんか魔王がかわいく見えてきた。
ファンタジー色は大丈夫だよ。
気にせずがんがん書いてください。
グジョーブ!!
今回も抜かせてもらった
ちょっと説明が多すぎるような木がするけど
面白い。続き楽しみにしてます。
72 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 18:34:27 ID:IhP8nnOI
ほしゅ
73 :
投下完了:2006/06/25(日) 01:16:55 ID:9SRjxi/R
敗戦から一夜明けて、アデラは檻車の中に囚われていた。彼女が所属する聖騎士団は壊滅していた。
敵戦列に総突撃を敢行した騎士団連合は結局魔王を討ち取ることができなかったのだ。
光の軍勢の最精鋭部隊として、昨日まで全軍の羨望を受けていた身が、
いまや駑馬の引く檻車の中で手足に枷を嵌められて輸送さえている。
罪人のように檻に入れられた上に、周囲の亜人や鬼族の兵士たちの嘲笑を受けるのは
聖騎士として耐え難い屈辱であった。
しかし、武器を奪われ四肢を拘束された身にできることは一切残されていなかった。
アデラは生まれて初めて自分の無力さに打ちひしがれる思いがした。
日が傾き、魔王軍が野営の準備に入ると、鞭を手にした戦鬼たちによって、アデラは檻車から降ろされた。
足枷は外された代わりに鉄の首輪を嵌められ、獣のように引き立てられて向かった先は、
野営地中心部に聳え立つ黒い天幕の脇にある、白い天幕だった。
光の種族で育てられた者は、幼い頃から闇の軍団の恐ろしさを教え込まれている。
天幕から昇る湯気を見た時、アデラは自分が亜人たちの餌にされるのだと思い込んだ。
しかし、天幕に放り込まれたアデラを待っていたのは、薄衣をきた人間の少女であった。
「お初にお目にかかります、騎士様」
天幕の中にいた栗色の短い髪をした少女は、可愛らしいしぐさで頭を下げた。
短髪にしている事から、身分の低い存在であることが分かった。
しかし、この天幕には厨房特有の血の臭いが無い。
少なくともここは自分を料理する為のものでないらしい。
てっきり調理台上で生きながら捌かれるものだと思っていたアデラだが、
目の前にある青銅の浴槽と、その脇に控える少女の姿には
自分の予想が全く外れていた事を認めるしかなかった。
「失礼いたします」
檻車に乗せられる前に、防具は臑当から小手に至るまで剥ぎ取られていたが、
栗色の髪の少女は、予想外の展開に戸惑うアデラの首輪を外した。
首筋が重荷から開放された喜びもつかのま、少女にさらに鎧下の帯も解いた。
「なっ何をする?」
「何って… お召し物を脱いで頂きませんと」
悪意の感じられない真摯な表情で答えられた。
「西方の方は服を着たまま湯に浸かるのですか?」
もちろん西方人も風呂に入るときは服を脱ぐが、アデラには捕虜である自分の境遇と
少女に入浴の世話をされるという状況が繋がってこなかった。
「私を風呂に入れる気か?」
「左様で御座います」
「何のために?」
「陛下の御下命ですから」
「魔王が!?」
「はい、騎士様は昨日の戦でたった一人陛下に槍をつけたお方、
湯を使って戦塵を落とすようにとの事で御座います」
魔王の名を聞くと、アデラは自分の血が熱く騒ぎ出すのを感じた。
先の戦で討ち取ることができなかった敵の指揮官であり、
光の勢力の種族がこぞってその命を狙う大敵、
そして今や戦場で斃れた同輩たちの仇でもある。
「ご入浴がお済みになったら、特に謁見を賜るとのお言葉です」
「!」
アデラにとって、檻車から降ろされてからの展開には予想を裏切られてばかりだったが、
さらに思いがけない方向に事態は進行しているようだった。
戦場では敵本陣に肉薄するために、多くの味方が命を落としたというのに、
今は向うから自分を招き寄せてくるとは!
『自分の手の届く距離まで魔王に接近する。
そのためには、余計な警戒を抱かせてはならない。
まず相手に従う振りをすることだ。
どんな犠牲払ってでもやり遂げてみせる!』
アデラは即座に自分の成すべき事を確信した。
「すまない、急に脱がされそうになったので驚いてしまっただけだ
続きを頼む」
「はい、かしこまりました」
にこりと微笑むと、栗色の髪の少女はアデラの衣服を脱がせていった。
確かに手枷を嵌められている身では、自分ひとりで脱ぐことはできなかった。
「…そういえばまだ君の名前を聞いていなかったな」
「フィリオとお呼び下さい、騎士様。
ああ、代わりのお召し物は用意して御座いますので」
そう言うと、フィリオは手枷が邪魔で脱ぐことができない所は、みな鋏で切り取ってしまった。
手枷以外を脱ぎ捨てたアデラの体は、戦士にふさわしい引き締まった体をしている。
鍛え抜かれた筋肉の上にうっすらと脂肪がついており、
特に乳房と臀部の膨らみは、アデラが女騎士であることの証であった。
フィリオの手を借りて青銅の湯船に浸かると、アデラは心地よい暖かさが全身に染み透る思いがした。
出陣してからはごくたまに水浴びする機会しかなく、実に久しぶりの入浴だった。
アデラは従軍の疲労が溜まりきった今、このまま眠りに落ちてしまいたいという誘惑に駆られた
もし魔王の名前を聞いていなければ、おそらくそうしていただろう。
浴槽に張られた湯はアデラの体から落ちた垢ですぐに白く濁ってしまい、
世話係のフィリオは何度も湯を汲み替えなければならなかった。
一頻り温まると、アデラは湯から上がり、フィリオに体を洗ってもらった。
数日振りに全身の汚れが落ち、新しい力が体の芯から沸き起こる。
『これなら・・・やれる』
再び自分の体が戦う力を取り戻したことで、アデラの顔には微笑が浮かんだ。
それを見たフィリオは、相手が気持ちよく入浴できたことを喜んでくれたのだと思った。
そしてにっこりとフィリオも微笑を浮かべた。
「騎士様、腕を上げて下さいませ」
「うん」
魔王に接近すると決意を固めてからは、アデラはフィリオの言葉に素直に従っていた。
ことさら反抗して余計な警戒感を抱かせないためだが、
これまで入浴時に世話を受けたなどという経験がないので、どうすればよいのか分からなかったのだ。
だからフィリオが自分の脇に泡立つ粘液を塗りつけたときも、
多少のこそばゆさは感じても、フィリオのするに任せた。
「じっとしていてくださいね?」
「わっ ちょっと待て!」
しかし、フィリオの手に剃刀が握られ、自分の右腋に当てられた時は
さすがに抗議の声を上げた。
「そこまではしなくていい!」
「でも、腋の毛はお剃りになりませんと」
しゃり、しゃり、しゃり、しゃり
粘液のおかげで腋の肌の上を滑らかに剃刀が滑り、アデラの腋毛は剃り落とされた。
他人に体毛を処理してもらうなどという風習が無かったため、
アデラはかなり気恥ずかしい思いをした。
しかし、魔王に接近するためには何でもすると先程決意したばかりである。
聖騎士としての信念が、今は耐えろと命じていた。
左腋も同様に剃り終わると、アデラは安堵のため息をもらした。
だが、アデラの信念が試されるのはここからだった。
腋毛を剃り終わったフィリオは、今度はアデラの正面にひざまずいた。
「では、足を開いてくださいませ」
「えっ?」
「下の毛もお剃りいたします」
アデラにとって信じられないような申し出だったが、
フィリオの声には相変わらず悪意の欠片も無い。
アデラは知らなかったが、闇の軍勢に所属する人間族、妖精族たちは、
頭部以外の体毛をそり落としている者が多くいた。
その理由は、ひとえに鬼族や亜人族の体にたかる蚤、虱の類が原因である。
そもそも鬼族や亜人族の生活には清潔という概念が存在しないのである。
さらに鬼族の体にたかる蚤、虱は、通常人間にたかる蟲よりも遥かに性質が悪いのだ。
よって彼らと行動を共にする者は、それなりの対処が必要になる。
フィリオたち端女が髪を短くしているのもその一つであり、むろん彼女も体毛を剃っている。
闇の軍に同行する商人に「一番売れる品物は何か」と尋ねたなら、
「質のよい虫除け薬だ」と答えが返ってくる程であった。
体毛を処理するための機会が与えられない虜囚たちの多くが、蟲に苦しめられている。
だからフィリオが体毛を剃ろうとしているのも、彼女の善意であった。
「いいっ そこは剃らなくていい!」
「でも、どうしてもこちらは剃っておくべきです。
今日は陛下のご下命で、ご入浴のお世話をさせていただけましたが、
次にこのような機会があるかどうか・・・」
アデラの拒絶に対して、フィリオも折れなかった。
アデラはよっぽど『自分はじきに蟲のことなぞ関係なくなるのだ』
とフィリオに言ってしまいたかったが、それは目的を達成するためにも、
絶対知られてはならない秘密である。
『あまり強く拒み続ければ、感づかれるかもしれない』
苦しみ抜いた上でアデラは「剃毛を受け入れる」という結論に至った。
そして、ためらいながらもフィリオの眼前で大きく脚を開いた。
ぬるぬる、ぬる。
フィリオは先程腋にも使った粘液を手の平で泡立て、秘所に塗りつけた。
アデラは生まれて初めて人に自分の秘所を触られた。
手馴れたフィリオの指は、アデラの陰毛に満遍なく塗り込んだが、塗られる側にとっては
そんな物を使わずに直に剃刀を当てて欲しかった。
しかし心優しいフィリオは、ゆっくり、しかも丁寧にアデラの秘所に指を這わせてくれた。
『あぁっ・・・ 魔王に近づくためとはいえ、こんな・・・』
聖騎士として入団して以来、アデラは騎士団の禁欲的な空気の中で暮らしてきた。
その自分が同性とはいえ人に陰部をさらし、さらに指で触られているとは。
「ではお剃りいたしますね」
「ぅ・・・うん、はやく済ませてくれ・・・」
しょり、 しょり、 しょり、
羞恥に顔を真っ赤にしたアデラにとっては、このような事態は一秒でも早く終わらせたかった。
そんな思いを裏切るように、あいかわらずフィリオの手は丁寧に剃刀を動かしている。
相手の大切な場所を扱うのだから、フィリオは間違いが無いように顔をアデラの股の間に入れて、
じっくりと、剃刀を当てる場所をよく見て作業をするのだった。
秘所を見られる羞恥と肌の上を剃刀が撫でる感触に、アデラは思わず身じろぎしてしまった。
動いた拍子に、剃刀を持つフィリオの指がアデラの陰核に当たってしまった。
「あぁん!」
「も、申し訳ございません! とんだ粗相をいたしました」
剃刀を止め詫びるフィリオに、アデラは平静をよそおって早く終わらせるように促したが、
心の中では他人に陰核を触れた事への驚きと羞恥で一杯であった。
しょり、しょり、しょり・・・
陰毛をすべて剃り落とすと、フィリオはぬるま湯で粘液を洗い落としてくれた。
洗い落としがないように、指で優しく撫でて洗ってくれた。
『終わった・・・』
時間にしてみれば数分間の行為であったが、アデラにとっては長い試練の時間であった。
桶を置いたフィリオを見て、アデラはようやく人心地がついた。
ほっとしているアデラに、フィリオは微笑みながら言った。
「わたくしめに背を向けて、床に手をついてください
お尻の毛もお剃りいたしますから・・・」
女聖騎士の試練の時間は、まだ終わっていなかった。
(アデラとフィリオ 終わり)
ちょwwwwwwwww
GJ!!
ファンタジーもので剃毛シーンが拝めるとは思ってなかった。
アデラ編は長くなりそうだったので、
前半のフィリオとの話を先に投下しました。
すいません、魔王が出てこないので本番シーン無しです。
言い訳
文に説明が多くなるのは筆癖なので…
おまけに設定厨、伏線厨の気があるからなおさら説明文が多い。
さらに、イリア、フィリオ編では会話が少ないので、状況描写に走ってしまった面がある。
これは、私の中で「貴人はあまり喋らない」という考えがあるから。
外交や謁見などの必要な場面では喋るだろうけど、
民主主義でない世界の最高権力者があんまり饒舌になる必要を感じない。
「綸言汗の如し」という言葉もあるように、魔王は軽々しく喋らないのです。
ロープレやアニメで敵の大将が主人公側と喋りあうのには違和感があります。
とくに自分の理想を語りだす奴。
またファンタジー分を出そうとして、説明が増えてしまう点もありますね。
今後注意してみます。
目的(話の展開)と手段(設定)のバランスが逆転しない限りは気にしなくていいと思う。
ファンタジーな話に各々独特な設定が出てくるのはある程度避けられないだろうし。
何が言いたいかといえばGJ
ファンタジー定番の闇側下等亜人は不潔だから蚤虱が多い。だから一部の知能が高くて綺麗な種族は体毛を剃って蟲害除けとすると
変なところで感心してしまったw
前スレで書いた女騎士アリューシアの話、投下します。
今回は続きではなく、前々作、前作より時間的に前の話になります。
本筋と関係ないので、こぼれ話、と言う感じで読んでいただければ…。
今回はエロ無しです。すみません。
いつも通りの調子なので苦手な方はなにとぞスルーで
お願いします。
それでは、「棘」です。
86 :
棘:2006/06/26(月) 13:27:25 ID:gyKiDD2z
これは彼女がまだ彼の胸の内の事など全く知らなかった頃の話───
「昼食をお持ちしました」
ノックの音と共にいつもの小姓の声を聞き、グルドフは作業小屋の扉を開けた。
「いつもすまないね」
「いいえ。僕、今日は昼から街に買物に行きますけど、何か入り用はありますか?」
まだ年端も行かない少年は、長身な彼を見るため首を思い切り逸らして見上げ、昼食の
入ったカゴを差し出した。
「いや、何もない」
グルドフが短くそう答えて荷物を受け取ると、人懐っこい笑みを浮かべた小姓は
「では、また来ます」とだけ言い、すぐに立ち去った。
素っ気無いほどあっさりとしたやり取りだが、長い付き合いで彼が無駄な世間話が
好きではないことを知っている小姓は、これか一番良い対応だという事を理解していた。
第一王子の館の外れに住み、普段は薬師として働いている魔法使いのグルドフは、
館から3度3度の食事を小姓に運んでもらっているのが常だった。
仕事も切りが付き作業台の上の一角を空け、さあ食事を、と薬師が遅めの昼食を取ろうと
椅子に腰掛けた所で、再びノックがあった。
「どうぞ」
彼の声が、先程より少しだけ不機嫌になっていることに気が付いた勘の良い小姓が
申し訳なさそうに扉から半分だけ顔を覗かせた。
「女性の方が訪ねてみえてますけど……お食事中だと知らせたほうがよいでしょうか?」
女性──グルドフは僅かに眉を寄せた。
「何でも、『棘』を取ってもらいたいとか」
顔色を窺うように、小さな声で小姓は付け足す。
だが、それを聞くと、グルドフの眉間にはっきりと皺が刻まれた。
(棘、か──)
そんな些細な用事でこの様な辺鄙な所までわざわざ来る女性客など、ろくな客ではない。
棘などその気になれば自分で針でも刺して、その場で抜いてしまえるものなのに。
くだらない理由を見つけては此処に来て、長いこと居座ろうとする下心を持った
女性がたまにいる。
グルドフはうんざりした。
そういった輩にせっかくの食事の時間を妨げられるのはたまらない。
だが同時に、ここに来る女性は大概が王子に縁のある人物だ。
王子に仕えている、という立場を取っている自分がその相手を無碍に断れば、
王子の顔に泥を塗ることになる。
彼は眉間に皺を寄せたまま、ため息を付いた。
嫌な仕事はさっさと片付けるに越したことは無い。
望み通り棘を抜いて満足させてやり、早々に客を帰してそれからゆっくり食事、と言う
図式を頭の中に思い浮かべる。
87 :
棘:2006/06/26(月) 13:30:08 ID:gyKiDD2z
「構わないよ。入れてくれ」
楽しみは後に取っておく。
そういう考えの持ち主である薬師は、昼食の入ったカゴを目の前に、指を組み合わせ
ながらいつも通りの冷静な色を瞳に浮かべ小姓に返事をした。
だが、程なくして入ってきたのは予想外の人物だった。
「なんだ」
抑揚の無い声で、薬師は入ってきた客を迎えた。
「誰かと思えば──あなたでしたか」
「私で悪かったな。グルドフ」
招かれざる客であると思ったのか、女騎士アリューシアは衛兵の制服の上着を片手に、
むすりとした顔で小屋の中に足を踏み入れた。
グルドフにとっては、まさに意外な客である。
この女騎士の性格なら、棘など人の手を借りずとも、針どころがナイフを使ってでも
自分でえぐり出して済ませてしまうだろう。
今日は彼女の主人である王子の妹が館に遊びに来ているのは知っていたが、
彼女は『本当に用事がある時』で無ければここには来ないなずだ。
これはただの棘ではないな、と思いながらグルドフは椅子を勧めた。
「それで、棘はどの指です」
「いや、指ではなく、此処なんだが……」
女騎士は薬師の前までつかつかと近づくと、亜麻色の長い髪を片手で無造作に束ねて
前に垂らし、くるりと背中を彼に見せた。
「棘──ですか」
それを見て一瞬硬直した後、グルドフは唸った。
「こういうのは、棘では無く『木片』と言うものです」
左の肩から背中にかけて、シャツがべっとりと血で赤く染まっていた。
いく筋もの線がシャツを切り裂き、体に傷を刻んでいる。血に濡れて分かりにくいが
裂けた木の繊維らしきものが何箇所も、その背中に刺さったままになっている。
こんな傷を負って、よく平然と振舞っていられるものだ。
相変わらずの気丈さにグルドフは内心感嘆しながら立ち上がり、長持の中を探った。
「服を脱いでおいてください。前は隠してもらって結構ですから」
大判のクロスをアリューシアに差し出し、昼食の入ったカゴを持ち上げる。
「その間、私は隣の部屋で食事を済ませますから、ごゆっくりどうぞ」
「怪我人を前にして、のん気に食事か?」
平然としているもののやはり傷の痛みに気が逆立っているのか、女騎士はその美しい顔に
あからさまな非難の色を浮かべた。
案の定、の反応である。
88 :
棘:2006/06/26(月) 13:31:55 ID:gyKiDD2z
「待っている間、暇ですからね」
無表情のまま、淡々とグルドフは答えた。
「その程度の怪我では、10分ぐらい治療を始めるのが遅くなっても死にませんよ。
それとも、裸にするのを手伝ったほうがいいですか?」
「───早く食べて来い」
不機嫌そうなその言葉を確認すると、グルドフは隣の部屋へと入っていった。
*
素早く食事を済ませた彼が部屋に戻ると、アリューシアは言われた通り、
シャツを脱ぎ前身だけをクロスで隠した姿で椅子に座り、彼を待っていた。
クロスを胸に押し付け、やや前屈みになり背中を晒す姿は、背筋を伸ばし凛然と
振舞う普段の女騎士とはかけ離れ、彼女に儚げな印象を与えていた。
「一体どうやってこんな傷を?」
グルドフはアリューシアの後ろに座ると、患部に水差しで水をかけ、血と汚れを
洗い流していった。
「藪の中にでも突っ込んだんですか」
「姫が2階から飛び降りたんだ」
姫──グルドフは、可憐な姿からは想像も出来ないトラブルメーカーである
マルゴット王女の姿を思い浮かべた。
「それで?」
「たまたま下を通りかかった私が抱き止めたのだが、受け止めきれずに姫を抱いたまま
後ろに倒れてしまった」
腰の上で汚れた水を受け止めた布切れは、すぐに赤黒く染まった。
そのたびに新しい布切れに替え、傷口の洗浄を続ける。
「倒れ込んだ所が植え込みを整理したという場所で、根元からばっさりと切った
潅木が残っていたんだ。それがちょうど、こう、地面から何本も槍が突き出たように
なっていて──」
「なるほど」
それで背中を突き刺したのか。
頭を打っていない事と骨折の可能性の無い事を確認すると、グルドフは背中の傷を
観察した。
後が残るのは確実だが、神経や骨を傷付ける程には深くは無い様で、突き刺したと
言うより、引き掻いたと言う表現が近い状態になっていたのが幸いだった。
枝が細かったこともあり、硬い目の詰まった布地で仕立てられた制服がある程度の
ショックを緩和し、文字通り串刺しになると言う惨事を防いだのだろう。
それにしても、なんという事を……。
89 :
棘:2006/06/26(月) 13:35:01 ID:gyKiDD2z
「あの姫が身投げをするようなお方とは思えませんが」
「ああ、そんな事ではないんだ。何でも、実験をしたかったそうだ」
「……………何のです」
多分聞いたら腹が立つ──精神衛生上あまり聞きたくは無かったが、話の流れで
彼は尋ねた。
「ある本を読んでいたら、塔の上から身を投げる姫の話があったらしい。
悪者に追い詰められて身を投げた高貴な姫を、颯爽と現れた騎士が危機一髪で
下で受け止めて救った、という内容なのだが──それが実際に可能な話なのか試して
みたくなったそうだ」
いかにもあの姫の考えそうな事だ、とグルドフは思わず大きく息を吐いた。
アリューシアは顔を後ろに向け、いつに無く盛大にため息を付いた薬師を睨んだ。
「そこまで呆れることは無いだろう」
「呆れますよ」
汚れを落した背中を擦らない様に細心の注意をはらい、布切れで柔らかく
押さえるように水気をふき取っていく。
「骨折もせずにこの程度の怪我で済んだからいいものを……」
「抱きとめた時に必死で踏んばったからな」
それを聞いたグルドフは眉をひそめた。
「貴方はあのマルゴットを──」
「姫を呼び捨てにするな」
「──マルゴット様を、諌める立場にあるのでしょう。それを、一緒になって
そんな愚かな事をするなど、どういうつもりです」
「仕方ないではないか。知らなかったのだ。下を歩いていて、呼ぶ声がしたから
上を見たら、姫が2階のバルコニーから降ってきたところだった。いたた……」
アリューシアは突然肩に走った激痛に身をすくめた。
「動かないでください。手許が狂う」
事務的な口調でそれだけ言うと、グルドフは治療を続けた。
刺抜きで、傷口に残っている大小の繊維片を一つずつ取り出していく。
あまりの痛みにアリューシアは拠り所を求めるように片手で作業台の縁を掴み、
自らの腕に額を押し付けた。
「いったぁ……いっ…………つぅ!……」
棘に触れるごとに身を強張らせ、それが抜けるごとに大きく息が吐かれる。
声を出さないように堪えてはいるようだが、それでも痛みが走る度に
その口からは悲痛な声が漏れた。
荒い息と共に肩は上下し、苦痛に耐える体は次第にうっすらと紅く染まった。
「う…ああっ!………はぁっ、はぁっ……」
「そんな情けない声を出すとは──騎士ともあろう方が」
「そんな事言ったって──うぅ…………痛み止めとかは無いのか」
アリューシアは額に汗を浮かべながら、痛みを逃すように繰り返し息を吐いた。
「貴方に渡す痛み止めなどありませんね」
グルドフは冷淡にそう答えた。
「痛みを忘れたら、どうせ貴方はまた傷が治らないうちから無茶をするのでしょう?
痛いのが嫌なら、少しは反省してこれからは自分の体の事も考えるんですね」
「酷いじゃないか」
アリューシアは振り向いて、険しい顔でグルドフを睨んだ。
90 :
棘:2006/06/26(月) 13:37:42 ID:gyKiDD2z
「何が酷いのです。酷いのは自分の体にそんな傷を負わせて平気な顔をしている
貴方自身ですよ」
「今回は不可抗力だ」
「私が言っているのは、今回に限っての事ではありません」
女騎士の鋭い目付きに怯む事も無く、彼は冷静に相手を見据えた。
「私の体なら傷ついても構わないんだ」
アリューシアは彼から目を逸らすと、反抗するかのようにポツリともらした。
「姫が無事なら、それでいい」
グルドフは一瞬手を止め、無言で彼女を見下ろした。
「──ですから、そんな考えはおやめなさい」
暫くの沈黙の後、グルドフは静かに口を開いた。
「いつか大怪我をして、姫を守れない体になりますよ。そうなってしまっては
本末転倒です」
静かな口調だったが、一切の反論を受け付けないような気迫があった。
彼の言葉に押されたようにアリューシアは黙り込み、再び気まずい沈黙が流れたあと、
「わかった……気をつける」とだけ返事をし、後は無言になった。
*
異物を全て取り去って、患部から流れた血を再び水で洗い流した。
滑らかな白い肌の上に、深紅の血を含んだ水が幾筋も流れ落ちていく。
その様に妖しい美しさを感じ、肌を伝う血を舌で舐め取りたい衝動にかられた
グルドフは気を逸らすようにかねてからの疑問を口にした。
「あの姫にそんなに尽くすだけの価値があると思って、あなたはそれをしているのですか」
「ああ、思っている」
いささかの躊躇いもなく、アリューシアは答えた。
「姫の良さは姫とじっくり向き合って初めて分かる類のものだ。人を見抜く目には
神がかり的なものがあるし、ああ見えて物事の本質を見据えることの出来る賢いお方だ。
奉仕するに十分値する方だと思うし、私でよければ、これからも尽くしていきたいと
思っている」
「成る程ね」
グルドフは木箱の中から小さいガラス瓶を取り出し、蓋をあけると粘性の低い
ゲル状の軟膏を指で掬った。少し染みますから、と断りを入れてから清潔にした傷口に
滑らすように薬を塗っていった。
91 :
棘:2006/06/26(月) 13:39:55 ID:gyKiDD2z
「ですがあの姫に仕える以上、貴方の体から生傷が絶える事は無いと思いますよ」
「そうだろうな。今までも怪我はしょっちゅうだったから、医者とももう顔なじみだ」
「でしょうね」
「いや、顔なじみどころか、体中を知られていると言った方がいいかな。
もう、体の隅々まで見せた仲だから」
あっけらかんと笑うアリューシアの言葉を聞いた途端、薬を塗っていたグルドフの手が
ぴたりと止まった。
「……あの若い軍医に?」
「へっ?」
突然語気が乱れたグルドフに驚いて、アリューシアはきょとんとして後ろを振り返った。
「いや、彼ではなく侍医の中に一人女医がいるので、いつもは彼女に診てもらって
いるのだが………………それがどうかしたのか?」
「いいえ。……別に」
相変わらず表情を出さない顔で、何事も無かったかのようにグルドフは手を動かし始めた。
その胸のうちで、彼女の相手が美丈夫と言った風情の青年軍医ではなく、
温和を絵に描いたような初老の女医である事に、彼が激しく安堵していたのを
アリューシアは知る由も無い。
*
今の彼の反応がどういう意味か分からず、アリューシアが釈然としない様子でいるなか、
扉をノックする音が部屋に響いた。
「グルドフ様、いらして?」
華やかな声と共に、豪華な刺繍の施されたドレスに身を包んだ美しい娘が作業小屋の中に
入ってきた。
「これは、ロアンヌ様。今日はどうなさいました」
「お花を摘んでいたら、棘が刺さっちゃって……見ていただけるかしら」
娘はアリューシアを無視するかのようにグルドフに歩み寄ると、甘えた声を出して
彼を見つめた。
「───どうぞ」
一拍の沈黙の後、グルドフは手に付いた薬を拭って立ち上がると、手を娘の前に
差し出した。
その上に、娘は優雅な動きで自らの白くて細い指を乗せた。
指に顔を近づけて目を眇めると、確かに、人差し指に小さな棘が刺さっているような、
刺さっていないような……。
「これですか……」
「もう、痛くて痛くてたまらないの」
大きな瞳を可憐に潤ませ、娘は苦痛に満ちた表情でグルドフに訴えた。
「お可哀想に。すぐに抜いて差し上げましょう」
グルドフは作業台の上の木箱から、小さな針を取り出した。
92 :
棘:2006/06/26(月) 13:43:11 ID:gyKiDD2z
「おい、グルドフ」
アリューシアが傷を晒したまま不満気に声をかけた。
「こっちはどうするんだ?」
「レディファーストですから」
娘に向き合ったまま振り返りもしないグルドフにあっさりとそう突き放され、
アリューシアは口を噤んだ。
「まあ……いいのかしら?」
娘は一瞬勝ち誇ったように浮かんだ笑みを慌てて押し隠し、うわべだけの気遣いを示す。
「別に構いません」
グルドフは指から目を逸らさずにそう言うと、娘の指に針を当てた。
「やぁん!いたぁい」
「大丈夫です。すぐに済みますから」
まだ刺してもいないのに痛いと声を上げる娘を、突き刺さるような女騎士の視線を
無視しながらグルドフは穏やかに宥めた。
「あんっ」
ちょい、と針先を動かしてその棘を取り除くと、娘は悩ましげな声を上げた。
終わりましたよ、と薬師に言われ、弱々しく棘の抜かれた指を胸に当てる。
「………まだじんじんするの」
「では痛み止めを出しておきましょう」
あっさりとそう言い、グルドフは戸棚から薬の包みを取り出した。
「痛みがある時に煎じて飲んでください。これでもう大丈夫ですよ」
薬を手渡し、水場で針を洗う彼に娘は語りかけた。
「グルドフ様、これからこの方の治療なの?」
「ええ、そうです」
「じゃあ、此処で終わるのを待っていようかしら」
娘は窺うように小首をかしげ、針を片付けるグルドフの顔を覗きこんだ。
「色々相談に乗ってもらいたい事もあるし……ね?いいでしょう?」
「─────今日は止めておいたほうがいい」
グルドフは感情の篭らない声でそう言うと、部屋の片隅の炉に歩み寄り
そこに傾けてあった焼き鏝を取り出した。
「今からこの者の傷口を焼こうと思っていたところですので」
炉の中で熱された焼き鏝は先端が煌々と赤く輝き、高熱が周りの空気を揺らめかせた。
「──狂ったように泣き叫ぶ患者を押さえつけて、皮膚が裂け、赤い肉の見えるえぐれた
傷口に焼き鏝を押し当てる様は女性の目には毒というか、あまりよろしくないかと……。
それに、繊細な方だとその時の匂いで、暫く肉料理が食べられなくなりますし」
焼き鏝を手にして淡々と話す真顔の薬師の言葉に、その場の二人の女性は息を呑んだ。
グルドフは冷暗なこげ茶色の瞳を娘に向けた。
「どうなさいますか?」
「あ──私」
蒼白な顔になった娘は何歩かあとずさった。今までその体の周囲に纏わらせていた
甘い雰囲気はとっくに掻き消えている。
「やっぱり………今日はもう帰ることにするわ」
「賢明な判断だと思います」
「ま……また来るわね」
娘はこわばった笑顔でグルドフを見た後、小走りで小屋を飛び出した。
気が動転していたのか、作業台の上の痛み止めの薬は放置されたままになっていた。
93 :
棘:2006/06/26(月) 13:44:59 ID:gyKiDD2z
立ち去る馬車の音を背に、焼き鏝を掲げたグルドフと視線が合ったアリューシアは
びくりと身を硬くした。
「や……焼くのか」
「───と、思ったのですがね」
冷暗な目付きのまま、薬師は不安げな表情を浮かべるアリューシアを見下ろした。
「どちらでもいいですよ。お望みなら、焼いて差し上げますが──」
「冗談ではない!必要が無いのなら、止めてくれ」
「………そうですか」
彼は焼き鏝を再び炉の中に放り込んだ。
「脅かすな」
アリューシアはほっとした表情を浮かべて、椅子に深く座りなおした。
「早く傷の手当てをしてくれ。いつまでこんな格好をさせておく気だ」
「ああ、そうですね」
グルドフは思い出したとでも言うかのようにのんびりと木箱から包帯を取り出し、
準備を始める。
「レディファーストか……」
アリューシアはその様子を見ながら、恨めしげに呟いた。
好きな事や楽しい事は一番最初、という考えのアリューシアは、自分が一番後回しに
された事がただただ不満であった。
「私だって女だ」
不服な顔で女騎士がそう言う。
「貴方を女扱いするなと言ったのは、貴方と貴方の主人ですよ」
澄ました顔で薬師はそう答える。
好きな事や楽しい事は一番最後、という考えのグルドフは、一番後回しにした対象に
やっとじっくり向き合える事に満足していた。
「では、再開しましょう」
グルドフはアリューシアの背後の椅子に陣取り、軟膏を塗ったガーゼと包帯を手にした。
──邪魔者もいないし──
「何か言ったか?」
アリューシアは納得のいかない表情のまま、後ろの薬師を顧みた。
「いいえ、何も」
彼は短く返事をすると、女騎士の細い肩に慈しむような手つきで真新しい包帯を
当てがっていった。
(棘 END)
94 :
棘:2006/06/26(月) 13:46:02 ID:gyKiDD2z
以上です。
いつも読んで下さり、本当にどうもありがとう。
りあるたいむGJ!
次回作も楽しみにしてるよ!
この上がりっぱなしの口角をどうしてくれる!!
半裸の描写も良かったけれど、
好きなものは最初と最後の対比がとても良かった。
続きをwktkで待ってます。
イイヨイイヨー
エロがなくたってイイヨイイヨー。
今回もGJだったぜ!
男のツンデレに萌えさせられるなんて……くやしいっ(ビクビクッ)
「……あの若い軍医に?」
グルドフ、可愛い。そして最後に、一番のご馳走を!
悪賢いようで純情な彼に萌。
次の展開を更に楽しみに待ちますwww
おっしゃぁぁぁGJ!!
次にも期待してるぜ!
痛みを訴える女騎士に欲望を抑えながら治療を続ける魔法使い…
ナント素敵なシチュエーションなんだーーー
この職人さんは文章の旨さもさることながら
萌える設定をつくり出すのが巧みなんだなぁ
この二人が好きだー大好きだぁぁぁ、
まだ×2続いて欲しいぜっ!
次は人目を忍んで逢引する二人を希望。
超GJ!ホント次が楽しみです!
どこぞの女の棘<<<食事<〜越えられない壁〜<アリューシア
の図式が良かった。
良作びっくりと同時に
このスレにこんなに観測人がいると知ってなおびっくり
>>103 このアリューシアの話みたいに良作で続きものがあると
楽しみで時々覗いてみてる人が結構いるのでは?
ちなみにお姫様でエロなスレにも続き物で
素晴らしいものが時々で投下されとるよ、オススメする。
お姫様スレも巡回ルートに入ってる。
このスレとは関連性が強いからね。いい作品が結構あるので楽しみにしてる。
ちなみに一番好きなのはローランの話かな。
一時世界設定だけ借りて二次創作を書こうかと思ったくらいだ。
>105
(・∀・)人(・∀・)ナカーマ
お姫様の過去スレに女騎士のお話があったね。
あれよかったなあ。続き書いてほしい。
そ、だね。
でも、お姫さまになる…ような話だったし、どちらのスレにするかは作家さんの思うがままに。
ぜひ書いてください。
そっとアズリンの続きも読みたい、と呟いてみる。
アズリンよかったね。
続きじゃなくてもいいから作者さんには何か書いてほしいな。
アデラたんがどうなるのか続きが気になる。
魔王とアデラ、書いてる途中です。
今日明日中に完成する予定。
しかし総合スレのさびれ具合は悲しいですね。
女兵士スレと姫様スレに人を取られてしまうと、ファンタジー分を出すのが難しいんでしょうか?
中世って文字に硬さを感じるのかも…。
でも、ageといてみた。
113 :
投下準備:2006/07/08(土) 22:24:40 ID:K3C01XXA
アデラ編の後半「魔王とアデラ」投下です。お待ちいただいた↑の方、遅くて申し訳ないです。
注意事項
前半は設定、解説、伏線、戦闘シーンばっかり。エロスレには本来いらない部分。
(女兵士なのに戦闘シーンの一つもないんじゃ、ただの設定か記号だろ、と思ったので)
後半から読んで頂いても全く問題はありません。
『我ながら・・・似合わない』
入浴前に着ていた衣服の代わりに、アデラには体に巻きつける形で着る東国風の衣装が用意された。
布地を長くつかったこの衣装では動きづらく、
出来ればいつも着ていたチェニックの様なものが望ましかったのだが、
手枷のせいで袖を通すことが出来ないため、このタイプの衣装にならざるを得なかった。
加えて問題なのは、聖騎士が普段下半身に着ている脚衣が用意されていなかったことだ。
新しい衣装を用意してくれたのは良いとしても、どうも着慣れない女物の装束に足元が涼しい。
さらに問題なのは、いまや股座も涼しくなってしまっている事だ。
天幕の内は隙間風が入り込んでくる余地はないのだが、歩くたびに感じる違和感はどうしようもない。
「こちらでございます」
暗い天幕の中に似つかわしくない位に、フィリオの声は明るい。
天幕内には明かりの用意が一切無いので、
硝子のランタンの中に入れられた、見たことも無い蟲たちの胴が放っている青白い光だけが唯一の光源である。
暗い天幕の中をフィリオに先導してもらったが、天幕は広さの割りにはあまりに人気がない。
そして魔王の私室も、闇のあらゆる種族に君臨する絶対権力者にしては何も無い部屋であった。
壁際に置かれた幾つかの長持、古風な長椅子、飾り気の無い敷物・・・
上座に置かれている黒檀の席がおそらく魔王のものなのだろう、
それだけは歴代の闇の王が座してきた風格を備えている。
アデラは玉座に正対する位置に座り、フィリオは壁際に控える形で魔王の出現を待った。
フィリオはこの部屋にアデラを連れて来るように命じられていたが、
いつ魔王が会いに来るかまでは知らなかった。
時間を潰す意味もあり、アデラはフィリオに様々な質問をした。
もともと話すことが好きな性質なのか、フィリオはアデラの問いになんでも答えてくれた。
アデラが知りたかったこと、それは魔王と謁見する時にどのような形式になるかということだ。
フィリオが言うには、ここは魔王個人の天幕であり、魔王に近侍する戦鬼護衛兵も入ってこない。
闇の勢力の首脳たちも居る灰色の天幕ならば護衛兵が内部まで警備しているが、
ここで会うということは、ごく私的な謁見という扱いになるだろうと云うことだった。
『これは・・・願ってもない・・・・・・・・・』
まさに望むところであった。魔王がなぜ自分に会おうとしているのかは知らないが、
一対一になれるという事が重要だった。
「・・・フィリオはよくこの中に入るのか?」
「いえ、わたくしもここまでは入ったことが無いのです」
「? ではどうやってこの部屋まで・・・」
天幕内は外の光を全く通さない、暗闇の空間であった。さらに梁から吊るされている布が壁の役割を果たし、
何度か曲がり道に入ったり、仕切り布をくぐったりしている。
アデラは修行時代に地下迷宮に潜った経験がある。そのときと同じ印象をこの天幕には感じるのだ。
「お気付きになられませんでしたか? 進んでいく間、曲がるべきところで布が揺れたり、
潜るべきところで触ってもいないのに幕が上がったりしてたんですよ?」
「なるほど・・・・・・・・・ たとえ間者が忍び込んでも魔王に近づくことは出来ないというわけだ」
「そういう事になりますね。どういう仕組みでそうなってるのかは分かりませんが」
「・・・・・・ですから、この天幕にはいろいろ噂があるんです。
月の無い夜に、黒い鎧を着込んだ戦士達がゾロゾロと出てきたとか・・・
天幕に火を放とうとした間者が倒れてきた柱の下敷きになったとか・・・
魔王の許しなく忍び込んだものは、天幕から出ることができなくなる、
『黒い天幕の囚われ人』になって一生出ることはかなわないとか・・・」
「ほう、恐ろしい話だな」
「ぅふふ、 他愛の無い噂話ですよ。
実際この天幕に忍び込んだ事のあるお方も知っておりますし、
夜明けとともに天幕も解体されて運ばれていくので・・・」
途中でフィリオの言葉は止まり、同時に深々と頭を下げて畏まった。
アデラもその理由がすぐに分かった。今まで聞こえていた蟲の羽ばたきとは異なる音。
近づいてくる衣擦れの音が聞こえてきたからだった。
振り向くと入り口から漆黒のローブを纏った男が入ってきた。
入浴が終わってから小半時過ぎ、魔王はついにアデラの前に姿を現した。
「聖騎士の娘よ。そちの戦場での勇戦、真に見事であった」
「・・・・・・・・・」
「光の軍の将兵七万のうちに、余に槍をつけることの出来る者が居たとはな・・・
神官団の魔法障壁さえ打ち抜きよったわ」
魔王の言葉に、アデラはあの戦場での昂奮を思い出さずにはいられなかった。
あの時聖騎士団は甚大な犠牲を払いながら敵の中陣を切り崩し、確かに魔王の本陣まで迫った。
そして敵の陣形のわずかな混乱をついて、アデラはただ一騎本陣目掛けて切り込んだのだ。
本陣台座を固める戦鬼護衛兵や闇神官団が身構える様さえ、はっきりと憶えている。
護衛兵たちが造る壁の隙間に黒衣の魔道士を捉えた瞬間、必殺の確信を込めて投擲槍を放ったのだ。
風の精霊の魔力を込めたあの投擲槍ならば、標的がたとえ板金鎧を着ていても射抜くはずだった。
しかし、その標的は今アデラの目の前で玉座に座っている。
「全軍に冠絶する勇敢さを惜しむゆえ、そちの命は取らぬ。
何ぞ望みあらば言ってみるがいい」
しばし逡巡した後、アデラは答えた。
「・・・・・・・・・ではこの手枷を外して頂けるか? コレのお陰で着替えも儘ならない状態なので」
「良かろう」
魔王が袖の中で指を鳴らしただけで留め金は外れ、手枷は二つに割れた。
即座にアデラも動いた。
今まで両手を封じていた手枷を掴み、一つを前方に座る魔王に向かって投げ放つ。
そして間髪いれずに玉座を目掛けて駆け出した。
「きやゃぁ!?」
突然の暴挙にフィリオが驚愕の声を上げるのも気に留めず、すでにアデラは魔王に飛び掛っている。
先程投げつけた手枷は魔王が袖を払うだけで弾き返されていた。
『殺る!』
手にした手枷の片割を振りかぶり、魔王に叩き付ける。
このタイミングならば、魔王が呪文を発動する暇を与えることはない。
しかし、敵の頭蓋を砕くはずの手枷は、その寸前で魔王の左手に止められていた。
「ッ!?」
「やはりそちは勇敢だな、余を恐れずに打ちかかるとは・・・ 」
魔王の言葉が終わるのを待たず、相手の顔面に左拳を突き入れようとした。
だが、拳は届かなかった。魔力の塊に鳩尾を貫かれる感触と共に、アデラは吹き飛ばされた。
あの戦場で投擲槍を放った瞬間にも、これと同じ衝撃を味わった。
馬上で姿勢を保てなくなったアデラは軍馬から振り落とされ、そのまま気を失ったのだ。
「・・・余との組み打ちを望むか?」
黒い玉座を降りて魔王は倒れたアデラの側に歩み寄ってきた。
腹部を魔力に打ち抜かれたアデラには立ち上がることすら苦痛であったが、
先程までどうやって近づくかに心を砕いた相手が向こうからやって来たというのに
何も出来ぬままではいられなかった。
四肢に残った力を振り絞り立ち上がると、聖騎士としての過酷な修練の成果がアデラに構えを取らせた。
「いざっ!」
気合と共に再びアデラは動いた。
聖騎士団に伝わる小具足打ちの技は、戦場を経験してきた先輩団員から直々に伝授されている。
体格の差を技術で補うべく磨き続けた体術は、男性騎士にも引けを取らない腕前だと自負していた。
しかし何度打ち込んでも魔王に致命傷を与えるどころか有効打すら決めることができなかった。
『くそっ!?』
魔王はまだ満足に反撃すらしてこない。
アデラは自分の狙いが甘すぎたことを知った。
強大な魔力を持っていたとしても所詮は魔道士、接近戦に持ち込めば勝機はあると思い込んでいたのだ。
だが、魔王が護衛も付けずに虜囚に引見し、さらにその拘束を解いたのも
自分ごときに倒される事は無いという確信があったからなのだ。
少なくとも剣さえあれば、ここまで翻弄されることはなかったかもしれない。
しかし、いまのアデラには自分の拳脚しか武器がなかった。
『魔王は私を侮っている。相手が攻撃してこないなら・・・』
アデラは貫手を打ち込む動作をフェイントにして、魔王の襟を掴んだ。
同時に左足で魔王の腹部に蹴りを入れる。
無論相手の腕で蹴りは防がれるだろうが、その瞬間自分の体重で敵の重心を崩して転がす。
密着状態での格闘戦になれば、相手を討ち取るチャンスが発生するはず・・・
しかし、アデラの望みどおりに事は運ばなかった。
アデラを襟にぶら下がらせていても、魔王は微動だにしなかったのだ。
『こんな馬鹿な・・・? まさか重量消去魔術!?』
アデラにとって信じられない事態であるが、ローブを掴んでいる腕にほとんど自分の体重による負荷を感じない。
動きを見切られて魔術を使われたことも驚きであったが、
高位の魔道士にしか扱えない術を無詠唱で発動させるとは、
過去の伝説上の大魔道士たちでさえ可能とは思えなかった。
「組み打ちなら余を討てると思うたか?今は軍勢を統御しておらぬ故、余も存分に戦えるのだぞ」
驚愕のあまり動きが止まったアデラを、魔王はまるで布切れのように放り上げた。
次の瞬間、アデラの体から失われていた『重さ』が戻ってきた。それも通常の数倍の重量になって。
「ぐぉ・・・」
数倍の自重で床に叩きつけられた衝撃で、アデラの戦闘力は失われた。
『ここまでか・・・』
聖騎士団として最後まで敵と戦うことは重大な義務であるが、全身に力の入らない今のアデラを殺すのは
部屋の片隅でうろたえているフィリオでさえ容易であろう。
それでもアデラに後悔は無かった。敵に従って命を永らえるよりも、戦って死ぬことこそ聖騎士の誉れだった。
「そちの勇敢さは誉むべきだが、身の程を弁えぬ振る舞いは咎が有るべきだな」
「・・・殺せ、覚悟は出来ている」
「・・・・・・・・・」
「聖騎士は死を恐れないぞ。・・・だが私が死んでもきっと誰かがお前を討ち滅ぼす!」
「・・・・・・なにか思い違いをしているようだな。聖騎士の娘よ? 余はそなたを殺す心算はないぞ」
「なに?」
「既にそなたの勇敢さを賞して命を取らぬと言った、ゆえに殺しはせぬ」
魔王は床の上に倒れ伏すアデラを見下ろしている。
「・・・」
「まして命を惜しまぬ者に死は罰にならぬ・・・ ならば命でなく別の物で償わせよう」
その言葉と同時に魔王の装束から一本の長い帯紐がほどけ落ちた。
すると帯紐はまるで蛇のようにアデラの体に絡みつき、拘束した。
「えっ・・・貴様! 何をする!? ばっ ばかな、止めろ!」
先程の衝撃による痛みも忘れ、身じろぎしようとしたアデラだが、魔王の帯紐は幾重にも上半身に巻きついている。
さらに両腕は後手に硬く縛り上げられ、天幕に入った時よりもその動きは制限されることになった。
魔王は身動きの取れないアデラの傍らに膝をつき、宣告した。
「死を恐れぬ娘よ・・・ 生命を奪う代わりに聖騎士の操を奪う事としようぞ」
魔王はアデラの顎を引き寄せ、強引に唇を合わせた。
幼い頃に聖騎士団に入ったアデラも、一応性的な知識は持っている。
しかし、それを実践したことは無かった。
団員の中には陰で異性同性と関係したり自慰行為を行う者も居たが、
アデラは自分にそれを許さないできた。
『はぁっ… こっこんな、 あぁ…』
乳房を弄られる感覚に、アデラは戸惑いを禁じえなかった。
清純と貞操は聖騎士としての義務だった。
その自分がいま敵に嬲られている。
魔王の手は決してアデラの体を力任せに扱う事はなかった。
むしろアデラの反応を計るかのように、引き裂かれた装束の隙間から強弱を混ぜてゆっくり動いてくる。
「ぁっ! やっやめないか!! この!!」
魔王の唇がアデラの耳朶を這い回るたびに、アデラは声を荒げて拒絶した。
なぜそこに触れられると嫌なのか自分でも判らないが、
指で弄ばれ、爪で掻かれるたびに震えるほど反応してしまうのだった。
魔王もそこだけを責め続けたりせず、また別の箇所へ移動する。
そして別の箇所に意識が向かった後に、再び責められるのだ。
湧き上がる衝動に存分に反応してれば、ある程度開放感を得ることができたであろう。
だが帯紐が食い込むほどに縛りあげられたアデラは、満足に身悶えすることもできない。
そのうち衣装の裾をたくし上げられ、魔王の手がアデラの股間に到達した。
「いやっぁ!? っそこには触るな! 卑怯者っ!! いやだっ… っつ、やめ… 」
入浴時に剃りあげられたばかりの秘所は、魔王の愛撫を妨げることもできない。
滑らかな秘所の肌の上を指で撫でまわされると、言いようの無い嫌悪感と甘い痺れが湧き上がってくる。
かろうじてアデラに出来た抵抗は、腿を硬く閉じて相手の行為をしづらくすることだけだったが、
魔王は無理やり足を開かせることはしなかった。
「うぅぅ…」
それよりも秘所に伸ばしていた手をアデラの腿に移し、その肉付きを確かめるかのように撫でさすっていった。
聖騎士として馬術で鍛えられえたアデラの下半身には、余計な肉は一切付いていない。
股を閉じるために力を込めた今は、触ると女らしい柔らかさよりも固く張り詰めた感触がしたであろうが、
魔王の指は固さを楽しむかのように肌の上を走り、アデラを戸惑わせた。
そしてアデラの意思など無視して撫で擦っていく手は、腿から臀部へと移っていく。
「っぁああ… 駄目だ! それはぁっ!!」
尻の割れ目に魔王の指がかかると、アデラは身をよじって懸命に逃げようとした。
そこに触れられると、どうしても剃毛されたときの羞恥を呼び起こされてしまう。
陰部の毛深い相手を気遣ったフィリオの配慮であったが、
いまとなってはアデラを苦しめる一因にしかなっていない。
「手を離せっ! …うっん」
非難の声を塞ぐように、再び魔王に唇を奪われる。
身動きさえ取れれば相手を突き倒していたであろうが、今は相手から逃れるすべもない。
『………今の私は…なんて無力な 』
日暮れまで檻車で運ばれていたとき以上の屈辱と無力感がアデラを苛んだ。
少なくともあの時は自分の意思に反して弄ばれるという事がどのようなものか、知らないままでいられたのだ。
「…フィリオ」
「はっ はいぃ!?」
自分はどうしたらいいのか分からず、部屋の隅に縮こまっていたフィリオは、
突然魔王に声をかけられて驚愕した。
「部屋が暗い… 余はともかくこやつには明かりが必要だ」
「たっただいま明るくいたしますっ」
フィリオは硝子のランタンを何度も叩き、蟲達が出す威嚇光を強くした。
魔王の呼びかけに驚いたのはアデラも同じだった。
いままでこの部屋に居るもう一人の存在を忘れていたが、
自分が陵辱されている現場をまさに見られているのだ、という認識をはっきり持たされた。
さらに明かりを強くするということは、自分とフィリオにその光景を見せ付けることではないか。
怒りと羞恥に突き動かされたアデラは、目の前にあった魔王の左手に噛み付いた。
「きゃぁっ!!」
フィリオの叫びは無理も無いことだった。フィリオにとって魔王の力は不可侵であった。
彼女は魔王に逆らえる者を今まで見たことはなかったのだ。
さらに驚いたことは、薄明かりに照らされた魔王の顔に笑みが浮かんでいるように見えたことだった。
「……勇者は愛でるべきかな。
魔道の極みに達してより、余に血を流させた者はほとんどおらぬのに…久方ぶりに傷をつけられたか」
「…」
「しかし、その癖の悪い口は何とかせんとな」
「あっ…」
そう言って魔王がアデラの首筋を撫でると、急にアデラの顎に込めた力が抜けた。
食い千切るつもりで噛み付いた魔王の手は、易々と引き抜かれた。その甲には血がにじみ、歯形がはっきり付いている。
その手でアデラの体を引き寄せると、魔王はその舌をアデラの口に差し入れた。
「??!」
アデラは自分の意思が顎に伝わらなくなったことに気付いた。
口中に侵入してきた舌を噛み千切ろうとしても、下顎が動かないのだ。
「ぅ…ぁ…」
存分に唇も歯茎も舐めまわされたが、抗議の声を上げることも、歯を噛み合わせて防ぐことも出来ない。
アデラに出来た事は、侵入者と触れ合わないように自分の舌を奥に引き込めることしかなかった。
「うぁ……… くはっぁはっぅはぁ」
魔王の舌から開放されると、アデラはむせ返った。
できるのならばすぐに口をすすぎ、魔王に嬲られた感触を洗い清めたかった。
しかし、相手はそれを許さなかった。
アデラの頭を掴むと、黒いローブの隙間からそそり立つ男根を口の中に捩じ込んだ。
『嫌ぁ!! 』
男根は舌に喉に擦り付けられ、アデラは性器を咥えさせられている事を思い知らされた。
舌を入れられ時以上に深く口中を蹂躙され、嫌悪感の余りアデラから涙が零れた。
『うぁ… うぅぉ… えぁ… うぉ… 』
喉を突かれると嘔吐しそうになり、そのたびにアデラはうめき声を出した。
魔王の手がアデラの頭を動かすことで、男根は口中のあらゆるところに打ち付けられる。
「おぅ……… ぷはぁっげほぅげほぉっ、はぁはぁ…」
幾度突き込まれたか分からないほど動かされた後、ようやく魔王はアデラの頭を離した。
同時に顎にかけられた麻痺術も解かれ、アデラは涙ながらに咳き込んだ。
しかし、待ち望んだ開放感を長く味わうことは出来なかった。
魔王の男根はアデラの唾液で十分に濡らされている。それは次の行為の準備ができたことを意味していた。
己の股の間に割って入られるたとき、アデラは魔王の意図に気がついた。
アデラは渾身の力で抗ったが、先ほどのように足を閉じようとしても魔王はそれを許さなかった。
「やっ!? 駄目っ、嫌だぁ!! 、やめてぇ! それは……ひあぁ!!!」
アデラの言葉に耳を貸すこともなく、魔王は無毛の秘所に存在する裂け目を指で開くと、
唾液で濡れた男根で貫いた。
「ぁああぁぁーーー!!」
身を裂かれるような激痛が股間を襲い、アデラは絶叫した。
この痛みが何を意味するのか知っていた。自分は聖騎士としての貞操を奪われたのだ。
それも宿敵たる魔王によって。
「いやぁ…やめてぇ、 いっ痛い… お願い…抜いて、抜いてぇ… こんなのぉ…」
これまで決して懇願などしなかったアデラが、魔王に対して哀訴していた。
己の身命を擲ってでも闇と戦う聖騎士として、あってはならない事だった。
このときアデラは聖騎士として二重に戒律を破った。
「うぁああぁ!! 」
男根は処女の証である抵抗を突き破り、最深部まで貫いた。
性的な経験を持たないアデラにとって、この行為は凄まじい痛みを感じるだけだった。
魔王はアデラの痛みに気を払わず、躊躇なく打ち貫き続けた。
「ぁっつ! ぁあっ! うぁっ! …」
いまだ帯紐はアデラの体を緊縛していたが、もはや意味を成さなかった。
アデラはすでに抵抗する気力を失っていた。
足を閉じようとする力も無く、ただ付き込まれるたびに呻き声を上げるだけだった。
どれほどの時間が経ったか、すでにアデラの涙も枯れ果てていた。
嗚咽の声も途切れがちになった頃、魔王はそれまで以上の力でアデラの中に打ち込み始めた。
「…きぁぅ ぁあ… はぁ はぁあっ! 」
それまどまでが甘かった訳ではないが、今度の打ち込みはさらに容赦がなかった。
内臓にまで響くような感覚を立て続けに加えられ、アデラの体力は限界に達していた。
「うっ…うああぁぁぁっーーー!!! ……… 」
最後の打ち付けとともに膣内に熱い迸りを感じた瞬間、アデラは意識を失った。
「…フィリオ」
「はいぃ!?」
射精を終えた魔王はアデラから男根を引き抜くと、この一部始終を見ていた端女を呼んだ。
「後始末を…」
「はっはいっ!」
フィリオは二人の傍に膝行し、破瓜の血と愛液に染まった魔王の男根を手巾で丁寧に拭い清めた。
「よい…下がれ」
「はい……あの、こちらの騎士様はいかが致しますか?」
「お前の気にすることではない… 下がれ」
魔王の言葉にフィリオが背くことは出来なかった。
二度も下がれと言われた以上、即座にこの場を去らねばならない。
この場に自分が世話をした女騎士を残していくのは気が引けるが、一介の端女である自分に出来ることはなかった。
「それでは…」
ランタンを手にとってこの部屋を去ると、魔王の居室は一切の光を遮断した空間となる。
魔王と失神している女騎士を暗闇の中に残してフィリオは去った。
………明朝、出立の時間が来ると、フィリオは天幕の入り口をを守護する護衛兵たちに女騎士の消息を聞いた。
しかし、だれも女騎士が出てくるのを見ていなかった。
そして天幕が片付けられて骨組みだけになっても、女騎士の姿はどこにも無かった。
ここに至って、フィリオは知った。
『噂は本当だったのだ。 あの騎士様は「黒い天幕の囚われ人」になったのだ…』
「黒い天幕の囚われ人」がどうなるのか、それはフィリオには判らないことだった。
(終わり)
というわけでアデラ編終了です。
リクエストに答えて書き始めた「魔王とアデラ」ですが、書きづらい事この上なかったです。
話も長いし、「アデラとフィリオ」の数倍時間がかかりました。魔王が喋るし。
前に投下した文の中で、魔王の衣装が勝手に脱げる描写がありましたが、
それは今回書いたように相手を自動緊縛できるマジックアイテムを出そうと思ってたからでした。
だって魔王が自分の手で縛るなんて格好悪いでしょ。
緊縛も実際は相手が協力してくれないと難しいらしいし。
GJ!!!
端女に見られたままというのがたまらん。前半も面白かった。
「黒い天幕の囚われ人」は魔王とエロエロな人生を送るんだろうなと勝手に想像しておこう。
おおぉ、GJ!
読み応えありました!
アデラたんはこれでおしまいなんですか?
ぜひ、また他の話も書いてください!
待ってます。
光側の女騎士をリクしたのは俺です!
本当に書いてくれてうれしい。GJです!
ふぅん、魔王は喋っちゃいけなかったの? アデル編、よかったよ。
フィリオは素直な可愛い子だね!
次編では、へっぽこさん(改名希望)の思うとおりの魔王像を見せて下さい!
眠たさのあまり、めちゃめちゃなレスをつけてしまった!
ゴ・メ・ン・ナ・サ・イ!
魔王は喋っちゃいけない訳ではありませんが、あまり喋ると闇に君臨する絶対者としての尊大さが薄れちゃうんですよね。
基本的に魔王の意思は闇の勢力において法律であり最高方針ですから、魔王が白いといえばダークエルフの肌も白いのです。
その分いい加減なことは言えない立場でもあります。
それでもイリア編やアデラ編では会話シーンもありますが、
フィリオ編で一切魔王の台詞が無いのは、端女如きが魔王と話をするなどという事はありえないからです。
身分の差が大きすぎて、とても話ができる関係ではありません。
身の回りの世話をするにしても、指示が無くてもミスなくやり終えて当然な世界です。
フィリオはお仕置きで済みましたが、下手すりゃ首が飛んでました。
実際古代中国では料理がよく煮てなかったという理由で料理人を処刑した王がいた位です。(後に暗殺された暴君ですが)
魔王は「やれ」「行け」「来い」等、命令すれば済み、
『逆らえる者など存在しない』(フィリオ談)ために会話する必要性は少ないのです。
また魔王本人が冗談とか言わないし、臣下とも馴れ合わない性格です。でも毎回女気絶させてるから次は何とかしたいな。
長くなりましたが、何が言いたいかというと私の書く魔王が↓のような会話をすることはないってことです。
イリ「陛下、大勝利おめでとうございます」
魔王「ありがとうイリア、でも皆が力を貸してくれたからの勝利さ!」
イリ「ご謙遜ですわ… 陛下無くして今日の勝利はござません」
魔王「そうかな、 あっ、イリアも頑張ってくれたよね。ありがとう…… ちゅっ」
イリ「きゃっ」
魔王「へへっ ご褒美だよ」
イリ「まあっ陛下ったら、……恩賞はこれで終わりですか?」
魔王「あわてないで、続きは後で余の部屋でゆっくりとね…」
フィ「お湯加減はいかがですか?」
魔王「………触ってみて」
フィ「えっ?…… 申し訳ありません、微温すぎました! すぐにお湯をお足しします」
魔王「いーや、許さん! お仕置きだ!!」
フィ「きゃん、陛下、お許しを〜!」
アデ「いたぃ… もう許して! 抜いてよぉ…」
魔王「ふふふっ 聖騎士の処女はきつ過ぎてチ○ポが食いちぎられそうだ」
アデ「あぁ…ヘンなこと言わないでよぅ…」
魔王「馬術で鍛えてるからか? 他の女どもとは比べ物にならない好い締りだぞ」
アデ「酷い… そんな…そんなつもりで鍛えてる訳じゃ無いのに…」
魔王「はははっ 恥ずかしがるな。これほどの名器、むしろ誇りに思っていいぞ!」
>>132 ごめ、あまりに違う魔王に噴いたwwww
何このエロゲ主人公みたいな魔王w
みなさん、阿呆を華麗にスルーしてくれてありがとうございます。
作者様、魔王の本領発揮の姿をどうぞ描いて下さい。
あり得ない(とおっしゃる)上記の魔王像も脳内に留まりそうですが、
あなたの魔王ワールドが楽しみです。
136 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 18:33:13 ID:npsZ6wgP
もりあがれ
昔のが出てきたので、投下しますね〜
陵辱ものですので、苦手な方はスルーでおねがいします。
この国は、北を山岳地帯、南は海に面しており西側の砂漠の国と東側の緑豊かな大国に接した小国である。
雑多な種が行きかい、商業の中継点として活況を呈してはいるものの、大国の狭間で揺れる国なのだ。
現在この国を治めるのはトトク・イエ。額に天眼をもつ魔法使いである。
アビゲイル・マナが17になった年、砂漠の国との戦で父が死んだ。
嫡子であるアビゲイルの弟はまだ成人の儀が行える14歳に4年満たず、マナ家の家督と騎士の身分を継ぐ資格がなかった。
因みに騎士の身分は支配階級の末端であり、家督を継ぐものがなければ容易く家門は潰えてしまう。
やむなくアビゲイルが家督を継ぎ、従軍することとなった。
むろん、いきなり新兵を戦場に出すことはなく、まず陸軍の訓練所に入ることになった。
首都の校外に設けられた陸軍の訓練所は、アビゲイルのような急造の新兵に戦闘をたたきこむ施設であると同時に、3年から5年を掛けて軍の中枢を担う人材を育成する施設でもあった。
ただし、この両者には身分と意識に明確に隔たりがあるので、そう接点があるわけではない。
アビゲイルたちは10人ばかりが一部屋で雑居自活し共同生活を営んでいるが、貴種の者達は豪奢な私室に使用人を使い、優雅に暮らしている。
女の軍人は数が少ない。アビゲイルのことはすぐに訓練所内に知れ渡った。
はじめの内はまわりの好奇の目や野卑な冗談、きわどい揶揄に面くらったが、そのうちに、慣れた。
性行為自体は既に経験していたし、彼女持ち前の物事に細かくこだわらないさっぱりとした性格で、同僚や同房の男達との雑駁な兵営生活になじんでいった。
また、厳しい訓練の中で身体能力の高さと、軍事的能力で頭角を現し、実際に行為に及ぶ命知らずはいなかった。
なによりもアビゲイルが驚いたのは女性が性的にオープンなことであった。
雑居している房にはほかに2人女性がいたが、彼女達は皆、複数の者と関係を持っており、そのことをあけすけに報告しあう。明け方まで房に戻らないこともしばしばである。
自分のベットで色事に及ぶこともある。さすがにこれには同房の男連中も辟易しており、相手の男を袋叩きにしたらしい。その後は雑居房で事に及んではいない。
彼女たち曰く愉しまなくてはやっていられない、とのことだが、アビゲイルには理解できないことであった。
さて、この日は騎馬の模擬戦が行われた。
アビゲイルの所属する隊の指揮を執ったのは、ガーナバル・ソバイ・イエ。
現王の妾腹の息子であると言う。なるほど、額のまんなかに王族のあかし、閉じた天眼が見える。
しかしこのガーナバル、神経質そうな線の細い男であり、高慢で用兵が雑と来た。
アビゲイルたちはこれ以上はないほど相手に引きずりまわされ、叩きのめされ、やる気を失い部下をなじるガーナバル王子を叱咤激励しあながら、時間切れ直前に相手方がワザと示した隙に便乗して、引き分けに持ち込んだ。
後の検討会の最中にガーナバルは責任を部下に転嫁し、抗議の声を上げたアビゲイルと同僚のタイロンをにらみにつけて、席をたった。
退室時に従僕に当り散らす金属質な高い声をききながら、アビゲイルはあの王子が嫌いだ、と思った。
「訓練しても、あんなのの下につかされたらやってらんないよ」溜め息とともに思ったことがそのまま口から出てしまった。
「おいおい、滅多なことを言うもんじゃないぜ。一応王族なんだしよ」
隣のタイロンが声をひそめて忠告をした。アビゲイルは肩をそびやかし、それきり沈黙した。
王子の退席により、検討会は座がしらけたようになり、議論も進まず解散となった。
予定時刻よりも半時ほど、夕食まで思わぬ時間があいた。
アビゲイルは皆と別れ、厩舎に向かう。本日使った馬の鞍に個人もちの皮手袋をひっかけたままにしていたのを思い出したのだ。
このとき皆と一緒に行動していれば。或いはアビゲイルの行く道は違ったものになっていたやもしれない。
ふ、と気が付くと漆黒の闇の中にいた。頭のなかに赤い霞がかかっていて、自分がどこにいて、何をしているのかわからない。身体を動かそうにも感覚が鈍く、どうにももどかしい。
感覚が徐々にもどってくると、罪人を縛る要領・・・身長ぐらいの槍の両端に両手を広げてくくりつけられ、大きなバンザイをしている格好で吊られていることがわかった。
足はギリギリ爪先が床に触れる程度である。
唐突に、全て思い出した。
厩舎からの帰りに回廊であのガーナバルと行き会ったのだ。アビゲイルは跪き、臣下の礼をとりながら王子の行き過ぎるのを待っていた。
王子は取りまき達に今日の模擬戦の様子を声高に語っていたのだが、その内容があまりに現実とかけ離れているのでアビゲイルはつい、下をむいたままとはいえ、鼻で笑ってしまった。
取り巻きの一人が聞きつけ、アビゲイルを取り囲んだ。「おまえは先程の女騎士ではないか。」
「生意気な」ガーナバルは本気で気分を害しているようであったが、他のものは面白がっているようである。
金属的なこの声は耳に痛いなどと暢気に構えていたが、細いあごをつままれ、上を向かされた瞬間見えたのは、赤い赤い、額に開いた目・・・
「お目覚めか?なまいきな女騎士どの」
耳障りな金属音。聴覚が一気に現実に舞い戻ってきた。
だだっ広い部屋だ。夜になったのか、天幕が引かれているのか、薄暗い。ただ、ガーナバルの天眼だけが赤く輝いている。
その天眼に照らされて、ガーナバルの取り巻きたちも浮かび上がっている。
「下級貴族の分際でこのガーナバルをバカにするとは不届きな。予が自ら仕置きをしてくれるわ」
ガーナバルが大仰にきらびやかな飾り刀を鞘ごと振り上げ、そのまま躊躇なくアビゲイルの腹に振り下ろした。
腹筋をしめて、衝撃をやりすごすが、第二波、第三波と飾り刀がおそう。急所もへったくれもない、闇雲に刀を振り回すだけだ。
たまりかねてうめき声を上げると、取り巻き立ちがはやし立てる。
やがて、飾り刀の装飾がアビゲイルの上着に引っかかり、胸元が派手に裂けた。振り下ろされる刀がとまる。
裂けた上着から見え隠れするアビゲイルの上半身を凝視するガーナバルをみて、アビゲイルは総毛だった。
あたらしいおもちゃを見つけた幼子のようだ。
頭の隅で警鐘がなる・・・この男はヤバイ。
「みなに犯される様を見物してやろうと思ったが・・・気が変わった。気が変わったぞ、女騎士どの。」
ガーナバルは飾り刀の鞘をとりはらい、切っ先をアビゲイルの上着に当てた。飾り刀とはいえ、刃物である。冷ややかな刃が衣をゆっくりと裂く。
巧みな刃の使い手とは言えず、ときに肌を傷つけながら、けっして豊かではないが形の整った乳房が。続いて引き締まった白い腹が、あらわになった。
下半身は無骨な軍人用のズボンに、膝までの乗馬用の軍靴のまま。上半身の白さがまし、なんともいえないアンバランスな美しさである。回りの男達が生唾を飲み込む。
「おまえたち」「は」「この者の靴を取り払うことを許す。」
大人しくされるがままになっていれば、王子の気が済めば開放されるかもしれない。・・・このまま無抵抗に陵辱されるのも癪にさわる。
アビゲイルは、だらしない笑い顔で近づく側近の一人を、思うように動かない足で蹴り上げてやった。また、のこりの取り巻きがナサケナイ、とはやし立てる。
「下賎の女は活きがのいいな。せいぜい愉しませてくれよ。」
何人かには蹴りや膝をおみまいしてやったが、所詮多勢無勢、軍靴もズボンも下着も剥ぎ取られてしまい、すっかり裸身をさらすこととなってしまった。
アビゲイルはかなり体力を消耗し、好きにしろ、という半ばあきらめの境地に至っていた。
「天眼で身体の自由を奪ってしまうとな、反応も鈍くなってしまうンだよ、女騎士どの。」不意に耳元でガーナバルのささやき声がした。
くすくすと笑っている「だから、天眼はもう使わない。苦しむ姿を見せてくれたまえ」
つるり、と腰にガーナバルの手がまわった。両手で骨盤を支えて腰を固定する。
キシリ、キシリとアビゲイルを吊り下げた手枷が軋んだ。
悪寒がする。まさか、まさか。
ガーナバルはおもむろにアビゲイルの腰を引き寄せる。尻に当たるのはガーナバルの衣服の感触ではなく・・・既に熱く屹立した彼自身であった。
犯されるのは覚悟がついた。自分の中に折り合いをつけた。
だがまだ、なにもしていないじゃないか!
まだ身体は男を受け入れる準備ができていない。まだ・・・
残る力を振り絞って抵抗しようとするが、既に遅かった。
ガーナバルは彼女の入り口に後ろから照準をあわせ、なんの遠慮もなく腰をすすめ、強引に押し入ってきた。アビゲイルの口から声にならない悲鳴が漏れる。
「いいぞ、お前、素敵な声が出るじゃないか!」後ろから乳房に手を回し、無茶苦茶にこね回し、自分のほうにアビゲイルを引き寄せ、さらに進入する。
殆ど濡れていないその部分が、男をを飲み込める訳が無い。きつく締まるアビゲイルの内側が、無謀な男の侵入を拒み、固く入り口を閉ざそうとする。
先程アビゲイルの爪先を鼻先にくらった側近が、アビゲイルの鳩尾を殴りつけた。
「か・・・はっ」空気の塊が唇を震わす。ガーナバルはその隙をついて、更に腰を進めた。
アビゲイルの全身は冷や汗で濡れ、痛みのための生理的な涙が目に浮かぶ。
「…う…っ…ぅ…」
くくりつけられた手首の先はむなしく空を掻くばかり。「その苦痛に歪んだ顔がみたかったんだよ、騎士どの」
受ける苦痛が彼女の筋肉を硬直させ、ガーナバルは最期まで進入できない。
「きつい・・な。まるで生娘だ」
ガーナバルは舌打ちをし、取り巻きに椅子を持ってこさせた。取り巻きたちが天井から吊っていた手枷の支えを緩める。
上から吊られていたアビゲイルの体重は支えを失い、落下した。それにあわせて、ガーナバルは椅子に腰を下ろす。
「く…ぁっ…うう うぁあぁっ!!!」
アビゲイルの口から聞くに耐えない痛々しい絶叫がほとばしった。
彼女に自重でガーナバルの男根は根元まで挿入され、突き上げられている。
身体を内側かわ引き裂かれそうな激痛で、額には汗が玉になり、瞳を見開いて、アビゲイルは息もできなかった。
少しでも苦痛から逃れようと、自由の利かない身をよじる。
「これは・・・たまらんな」
椅子に腰掛けているので挿送はせず腰をグラインドさせる。
摩擦を残したままで体内をかき混ぜられる苦痛に、かすれた悲鳴があがった。
「もちあげろ」
取り巻きが2人がかりでアビゲイルの手枷を持ち上げアビゲイルをガーナバルの男根から引き離しにかかる。
アビゲイルは、開放されるのかと期待を持ってしまった。
次の瞬間、無常にもガーナバルが命ずる。「落せ」
すしん、と重い激痛が腹部を襲い、いっそのこと意識を手放してしまいたいのだか、すぐにまた、めりめりと男根が引き抜かれる痛みで覚醒する。
やがて、アビゲイルの言葉にならない悲鳴と苦悶の表情に興奮が抑えきれなくなったのか、ガーナバルがアビゲイルを床に組み敷き、覆いかぶさって腰を使い始めた。
激痛に押し出される悲鳴に声がかれ、笛のような音が室内にこだまする。涙と汗がが流れ落ち、床に敷かれた毛氈にしみをつくる。
ついに、アビゲイルの粘膜は擦り切れて鮮血が滲みはじめた。
潤滑を得て、ガーナバルの律動はスムーズになり、一気に頂点へ向けて動きを増した。
甲高い獣じみたうめき声を発して、ガーナバルが一人、高みへと登りつめた。
まず、アビゲイルの中に欲望を放ち、男根を抜き去ると残滓をその白い背中に撒いた。
「増長するからこんな事になるのだ、女騎士。」息が上がった状態でガーナバルがアビゲイルを嘲った。
アビゲイルの高く掲げられた尻から大腿にかけて白濁液と混じった鮮血がしたたり落ちていく。
その後のことは、よく覚えていない。
ガーナバルがアビゲイルから身を離すと、すぐに取り巻きの男が群がり、代わるがわる、全員に犯された。
散々嬲られ、弄ばれた後、アビゲイルは誰かのマントにくるまれて、雑居房の入り口に捨てられた。
次に意識が戻った時には自分の使っている雑居房の寝台の上だった。内腿を誰かが触っている。
悪夢がまだ続いている・・・
「ヒッ」あげかかった叫び声は、誰かの手に阻まれた。
「おちついて、アビゲイル」同室の女だった。「酷い目にあっちまったね」
内腿はもう一人の女が絞ったタオルで身体を拭いてくれているのだった。
涙がこみ上げてきた。
「多かれ少なかれ皆こんな目にあってンのさ」静かな口調だった。
「誰がやったかなんて聞いたってどうしようもないから聞かないよ。」
最初に声をかけてくれた女が手首の傷をアルコールでふいて、手際よく包帯を巻いていく。
「辛いことだけどね、あんたには付込まれる隙があったってことだよ、アビゲイル。」
たしかに。あいつらを甘く見ていた。
「いいかい、明日もきちっと訓練に出るんだ。決して休んじゃいけない」アビゲイルは殴られて晴れた目で、女を見上げた。
「男達を付け上がらせちゃいけない。他のやつらもすぐ、尻馬に乗る。」
・・・訓練所は基本的に男所帯だ。この雑居房もこの3人を除けばあとは皆男だ。
「油断してたら公衆便所にされっちまうってわけ。」
ガーナバルの高笑いがフラッシュバックして、アビゲイルは震えた。
「今は大丈夫。あたしが一緒にいてあげるから。」
傷の手当をしているほうが夜具の中に滑り込んできた。もう一人はアビゲイルが包まれていたマントや身体を拭いたタオルをもって、そっと天蓋幕から出て行った。
「・・・・すま ない」
「こういうときは、お互いさまなんだよ。さ、無理かも知れないけど目を閉じて眠るんだ」
言われるままに目を閉じる。
震えながらじっとしていると、ガーナバルから受けた辱めが浮かんでくる。
もう、2度とこんなことにならないために、私はどうすればいい?
隙を作らないようにするには?
付込まれないようにするには?
あの天眼に対抗できる策はあるのか?
人の悪意を見抜けるようにならなければ。
誰にも負けないよう武術の腕を磨かなければ。
理不尽な要求を論破できるだけの知識も身につけなければ。
やることはたくさんある。
やがて、泥のような眠りが訪れた。
150 :
おしまい:2006/07/12(水) 21:26:37 ID:fYF7vW4m
以上で終了です。
ファンタジー色が薄くて申し訳ないです・・・
個人的にはアビゲイルにも幸せな性体験をさせてあげたいな、などと思っているので、そのうちに、続きを書きます。
乙!GJっす!!
リアルタイム初めてだー。
今度は気持ちよくしてあげてください。
同じく!GJっす!!
凌辱がタイトルだけじゃなく中味もちゃんと凌辱で、甘さに流れず読み応えありました。
でも私も、幸せな性体験をさせてあげて、と願います。
GJ!
同室の姐さんたちがいい味出してるね。
釣り上げプレイも新鮮だった。
乙
しかしアビゲイルというと、どうしても闇の僧侶のあいつを思い浮かべてしまう
そういえば、久しぶりに本屋いったら
バスタードの最新刊売っててビビタ
156 :
投下準備:2006/07/16(日) 00:46:14 ID:3wIJ1vIS
毎回読んでくれる方、感想書いてくれる方感謝。
今回の話は魔王に敵対する側の人たちです。
闇の軍勢が送った使者は、首だけになって帰ってきた。
これの意味するところは明白である。
魔王軍本隊が包囲した城塞都市は、徹底抗戦する意思を表したということだ。
先日の戦に拠出した部隊は全滅したため、都市の戦闘員は半減しているはずである。
残っているのは警備兵しかおらず、いかに堅固な都市でも抵抗して長く持ちこたえることはできまい。
この状態で開戦することは自ら死を選んだに等しい。
「準備が整い次第、総攻撃を開始せよ」
「ははっ、……陛下、工兵に坑道を掘らせましょうや?」
「不要だ。そこまで時間はかけぬ。
アインファンド島の巨人兵も投入せよ。 月が変わる前に落とせ」
「おうっ! 奴らに望みどおり死を呉れてやれ!」
「ウゴーゥッ!!」
「コロセーッ!コロセーッ!」
「皆殺しだー!!」
半月以内に陥落させるという魔王の意思が示されたことで、将官達の声も熱気を帯びている。
明日から嵐のような戦が市壁を巡って繰り広げられるだろう。
そして一度防御壁が破られれば、今度は街中に地獄絵図が繰り広げられるに違いなかった。
・・・・・・・・・
都市中心部に建つ天守塔からは、日中街のあらゆる景色が見える。
さらに市壁の向こうに広がる平地と遠くに聳え立つ山脈もここで眺められた。
しかし今夜見えているのは、都市を完全に取り囲んだ魔王軍が灯す夥しい数の篝火である。
塔の最上階からそれを眺めるのは、軍服に身を包んだ一人の女性であった。
「こちらでしたか、奥方様」
戦装束の女性が振り向くと、そこに将軍の軍装を着た壮年の男が立っていた。
「ディオス…」
「こうして改めて見ると…凄まじい数ですな」
「………」
将軍服の男は都市防衛軍の司令官、ディオスであり、
彼が声をかけた軍服の女性はこの都市の太守の妻、エレクトラである。
ただし夫は先の戦いに従軍した際に討ち死にし、太守未亡人としてこの都市の最高指導者となっていた。
軍議を終えた後、エレクトラを尋ねたディオスは、彼女の夫が愛したこの塔に上ることになった。
「…わたくしの決断は正しかったのでしょうか?」
「奥方様…」
「魔王との妥協はできないにしても、交渉を続けることで少しでも時間を稼ぐとか、
情報収集を行う方が良かったのでは…… みなの目はそう言っていました」
「あれでよろしいのです。いたずらに時を稼いでも我々の結束が乱れるだけです。
降伏に傾いていた者もこれで覚悟を固めましょう」
降伏勧告の使者を引見したエレクトラは口上を聞き終えると、ディオスに使者を斬首するよう命じた。
そして城壁から首級を敵陣に投げ返させたのだ。
幕僚の誰にも諮ることなく決断したのは、ディオスの言うとおり余計な混乱を招きたくなかったからだ。
数こそ多くないが、街の有力者の中にも降伏を公言する者もいる。
そして降伏までは言い出さないにしても、
交渉で武装解除や城外退去に持ち込むべきだと思っている者が多いであろう。
しかし、エレクトラは即時抗戦を選んだ。
ここでこの都市を引き渡してしまえば、王国中枢部まで魔王軍を塞ぎ止めるものはない。
先の大敗で壊滅的損害を被った光の連合軍にはなすすべがあるまい。
ならば彼らが軍を再編する時間を稼ぐためにも、一日でも長く魔王軍を引き止めなければならなかった。
交渉の振りなどをしているうちに、降伏派と交戦派に城内が分裂しかねない、エレクトラはそれを恐れた。
『みなの意見を聞けば、かえって悪い流れが生じる時がある…』
これは彼女の夫が生前語った言葉であった。
その時には判らなかったが、ここに至って彼女もその意味が実感できた。
「太守が生きておられたとしても、奥方様と同じ決断を下されたでしょう。
お悩みになる必要はありません」
「ディオス…」
「はい」
「わたくしたちは、死ぬのでしょうね?」
「……はい、間違いないでしょう」
ディオスは気休めを言わなかった。二人が見つめる圧倒的な陣容の前にはどんな虚言も無意味だ。
そして軍使を斬るという事の意味を知らぬ二人ではない。
敵対関係にある国家、種族間でも使者として訪れた者は尊重される。
それを斬ったという事は、差し出された手を切り落としたに等しい。
まして魔王の怒りを買った者の末路は、遥か遠国にまで伝わっている。
ディオスはエレクトラが震えているのが判った。
「ディオス…… 一つお願いがあります」
「はい、何なりと…」
相手を見つめるエレクトラの瞳には、悲壮感と決意が浮かんでいた。
「闇の軍勢は遠からぬうちに城壁を越えて街を滅ぼすでしょう……
その日まで、どうか貴方にはわたくしの傍にいて欲しいのです」
「奥方様…」
「お願い、ディオス… 死ぬときには貴方と一緒に死にたいのです…」
エレクトラはディオスの胸にすがり付いた。
ディオスもそれを拒みはしなかった。
己の胸で震える女をディオスは優しく抱きしめた。
「奥方様…」
「…」
「約束しましょう。 私は死ぬまで貴女の傍を離れません」
いえ、もう離しません。どうか貴女も私の傍から離れないで下さい」
「…はい、これからはずっと一緒です」
お互いの気持ちは既に判っていた。
エレクトラがこの街の太守に輿入れした日、お披露目の宴が開かれた時に、
まだ若い将官であったディオスとエレクトラは一目で惹かれ合った。
夫である太守に不満があったわけではない。
正妻としてエレクトラを大切にし、変わらぬ愛を注いでくれた。
しかし夫を尊敬できても、愛してしまったのは夫の部下であるディオスだった。
ディオスにとっても太守は忠誠に値する主君であった。
その彼にとって、主の妻に懸想するという事は許されざる不忠であった。
ディオスはエレクトラを忘れるために、太守に薦められた縁談を進めたが、
妻との間に子を設けてもエレクトラを忘れることはできなかった。
皮肉にも、光の軍勢の大敗と太守の戦死、そして都市の包囲という事態になって、
ようやく二人は気持ちを言葉にすることが出来たのだ。
「…エレクトラ」
「ディオス…」
エレクトラは自分を主君の妻ではなく、名前で呼んでもらえた事が嬉しかった。
「んんっ… ちゅぅ…」
そして初めて抱きしめ合う二人はそのまま熱い口付けを交わした。
夫を失ったばかりだというのに、このような事をしていると皆に知られれば、
さぞかしふしだらな女だと噂が立つだろう。
しかし、死を覚悟した二人には他人の噂など意味を持たないことだ。
仮に誰かが塔を上ってきても二人を止める事は出来ないであろう。
ディオスはエレクトラの舌を吸いながら、彼女の軍装を解きにかかった。
「あっ……」
愛しい男に裸にされる羞恥に、エレクトラの顔が朱に染まる。
だがベルトを外され、サーコートを脱がされるのも拒まなかった。
「綺麗だ、とても」
「ディオス、貴方と結ばれる日が来るなんて…」
下着も解かれ、愛しい男の前にエレクトラは裸体をさらした。
十年近く心の奥底に封じ込めてきた想いが報われる日が来たのだ。
エレクトラの目には涙が浮かんだ。
「んっ…!」
ディオスの手が裸身に触れると、それだけで歓喜で声がこぼれる。
「うっぁあ…!」
長い間夢見ていた愛しい女に触れることができたディオスの手は、エレクトラの体を容赦なく揉みしだいた。
「ああっ… もっと、もっと強く触って!
貴方がわたくしを忘れないように。 ずっと憶えていられるように!」
「忘れたりするものか… 死ぬまで、いや!死んでも貴女を忘れたりはしない」
時に長い口付けを交わし、互いの体を弄り合う。
「ディオス、貴方も…」
エレクトラの手が、男の脚衣の隙間から硬く張り詰めた男根を引き出した。
「はうっ?」
「あっ…わたくし、何かしてしまいましたか?」
「いや…なんでもありませんよ……」
エレクトラには言わなかったが、指が先端に触れた瞬間、
ディオスも快感のあまり声を出してしまったのだ。
男の手は女の乳房や腰を、女の指は男根から袋を撫で回す。
ときに睦言を交わしながら、しばらく二人は愛撫を続けていた。
「あぁ…わたくし、もう…」
デイオスの指が股間をなぞると、熱く火照ったエレクトラの体は、十分準備が出来ていた。
「はい… では壁に手をついて」
「えっ?」
「床の上に寝ては硬いでしょう」
「あっ……でも…」
「?」
「壁に手をついてしまうと、貴方の顔が見えなくなってしまいます…」
「エレクトラ…」
「貴方に抱かれていることを感じていたいから… たとえ硬くても構いません」
「…では、私が下になりましょう。 こちらへ…」
エレクトラにとっては、自分の都合を相手に押し付けたようで気が引けたが、
ディオスはその場に腰を下ろし、ためらう女の手を取って誘導し自分の体に跨らせた。
仰臥した男の体にまたぎ、エレクトラはゆっくりと腰を下ろしていく。
「あぅ…っん」
硬く反り返った男根が、愛液に濡れるエレクトラの秘所に入っていった。
「わたくしたち… 一つになれたのですね…?」
「……ええ、もう誰も私達を引き裂ける者はいません」
深く腰を下ろしたせいで、最奥部まで挿入された男根は強く子宮を突き上げていたが、
今のエレクトラにはそれさえ快感だった。
「あぅっ!!」
ディオスが腰を突き動かすと、エレクトラはさらなる衝撃に悲鳴を上げた。
だが、男の動きは止むことなく、女の体を突き上げ続けた。
そのうちにエレクトラもどう動けばいいのか判ってくる。
「ぁん、 あぁぅっ、うぁ、あたくし…貴方と…こんな…ぁあん」
しだいに悲鳴は甘い喘ぎに変わって行く。
ディオスにも限界が近づいてきた。
突き上げるタイミングを調節し、二人の呼吸を合わせる。
「ディオス… ディオス…! 」
何度も愛しい男の名を叫びながら、エレクトラは高みに押し上げられていく。
最後の突き上げに合わせて、子宮にディオスの精液が注ぎ込まれた瞬間、
エレクトラも絶頂を迎えた。
「あっあああぁぁぁーーーーっ!!!」
叫び声とともに、脱力したエレクトラはディオスの胸に倒れこんだ。
「エレクトラ…」
「ディオス……わたくしは、もう思い残すことはありません。
こうして貴方と一つになれたのですから…」
長い間耐え忍んできた思いが成就したことを、抱きしめ合った二人は実感していた。
その時、塔外から凄まじい轟音が響いた。
「……始まりましたね」
「はい」
夜行性の亜人族戦士団を擁する魔王軍は、昼夜を分かたず攻め立てる心算らしい。
「…約束を忘れないで」
「貴方も…」
最後に二人は再び唇を重ね、防戦を指揮するために塔を下りた。
それからの二人は共に戦を指揮し、兵を激励した。
前線に立つ指揮官の姿に感激した兵士達は敢闘し、押し寄せる軍勢を二十日間に渡って跳ね返し続けた。
しかし、連日続けられる猛攻の前についに城壁の一端に敵兵が乗り込んだ。
そしてそれを押し戻す力はもう残っておらず、とうとう市壁は敵の手に落ちた。
鏖殺命令が出されている以上、市街に突入した亜人や戦鬼達は獣心のままに虐殺した。
愚かにも命乞いをする者もいたが、この場で殺されなかった者たちも貴賎を問わず、
生き延びたことを後悔するような拷問の末に全員惨殺されるのだ。
それが降伏を拒む者達への見せしめであった。
最後の生き残り達は城内に立て篭もったが、それも長くは持たなかった。
天守塔の扉が打ち破られる前に、二人は塔から身を投げた。
墜死した二人の亡骸は首を打たれ、陣営に並んで晒された。
共に死に、共に晒されることを二人が喜んだかどうかは判らない。
しかし、もう二人を引き離そうとする者は存在しないことだけは確かだった。
(終わり)
163 :
投下完了:2006/07/16(日) 00:54:25 ID:3wIJ1vIS
『戦と不倫は騎士道の華』ということで切ない二人を書いてみました。
いささか悲しい終わり方ですが…
グッゾブです。
悲しい終わりだけど、二人が引き離されずに終われたってのはよかったと思います。
しかし初耳だけど、不倫も騎士道の華だったんだw
騎士道は文学だ。文学は文化だ。文化は不倫だ!
さておき、GJでした。切ないのもいいね。
どんどん上手になってる感じだなあ。
次もまた楽しみにしてます。
体位をどうするか話す二人がエロくてイイネー
生意気言うようだが、俺もこの魔王シリーズを書かれている方は
回を追うごとに文章が良くなってきてる感じ。
今回は色んな描写がなかなかの優れものでした。
どうかここで書き続けて下さい!応援してるぜ!
アビゲイルのその後、書いちゃいました。
エロないです。おつまみにドゾー。
アビゲイルの訓練所での生活も半年がたった。
5月ほど前の悪夢のような出来事・・・アビゲイルに与えられた暴力と辱めは、人の口の端に乗ることもあったが、相手の身分と素行に問題がありすぎ、上層部からは完全に黙殺されている。
訓練兵の中には、アビゲイルを娼婦のように扱おうとする輩も出たが、強姦に及ぼうとした者がアビゲイルに完全に叩きのめされ、公衆の面前に引きずり出されたのを期に、沈静化した。
アビゲイル自身あの件の後、己を磨くことに熱心であり、精神的にも肉体的にも知的にも大きく成長しており、若手筆頭の実力者となっている。
ひととおりの理論講習と軍事訓練を終了し、いずれも優秀な成績で単位を修得しており、教官より上級幹部候補生として訓練期間の延長を勧められたが、弟が家督を継ぐまでの在軍であることを理由に丁重に断っている。
目下退所のための最期の試験を受けている最中であった。
「・・・はぁ」溜め息をつきながら、焚き火に枯枝を足す。パチ、と火がはぜた。揺らぐあかりに浮かぶ顔には憂いの表情が見える。
退所試験がはじまって今日で5日目だ。
訓練兵は一振りの刀と1日分の食糧を与えられて、一人ずつ馬車から試練の森に放り出された。
放逐時に、この森には結界が張られており与えられた10の課題を解決しなければ抜け出ることができないこと、訓練兵の行動は森の管理人によって監視されていることが告げられている。
が、それ以外のこと・・・たとえば森の地理や気候などの概要、それどころか課題の内容さえ、何一つ情報を与えられていない。
アビゲイルは闇雲に動き回り方角を失う危険を冒さず、まず放り出された地点を中心に方角を割り出し、円状に行動範囲をひろげ、沢をみつけて飲料水を確保した。
昼夜定点観測をして生態系の確認をする。さらに行動範囲を広げ大型の肉食動物の痕跡がないことを確認し、軍の暗号で安全である、という領域痕を刻む。
テリトリーが広くなっても他の訓練生が付けたと思われる領域痕を見つけることができないので、この森が広いのか、人と出会わないように術が施されているのか考え込んでいるとき、初めて
人に遭遇した。
それが3日目の昼のことだ。
アビゲイルの仕掛けた警戒線の木鈴を派手に鳴らしてテリトリーに進入してきた彼らは、同じ訓練兵と見受けられた。全部で5人。
アビゲイルは迷った。
素通りして出て行くようなら、それはそれでかまわない。しかし、既に水も食糧も大方消費し、消耗しているように見える。飢えと渇きで判断能力が落ちているのか、鳥の声に模した軍独特の
口笛にも反応を示さなかった。
・・・このまま放置してよいものか。
結局、彼らの前に姿を現し、誰何した。
彼らはアビゲイルより1日はやく森に放たれ、当てもなくさまよううちに合流し、なんとなく一緒に行動していた。
行きがかり上、水場に案内し、簡単な仕掛けで取った野兎を分けてやり、一夜野営を共にした。
彼らは遠慮なくアビゲイルを見張りにアビゲイルの熾した焚き火を囲んでぐっすりと眠りについた。
朝が来て、アビゲイルが野営地を痕跡を残さぬようにたたみ、行動範囲を広げるための活動を始めると、当然のように後を付いてくる。
その上 生命の危険が感じられなくなり、安心したのか・・・アビゲイルに女を感じているようだ。本人たちは上手く隠しているつもりでも、生理的な欲求の軋みは明らかだ。
たとえば執拗に首筋や二の腕に絡むその視線。必要以上に身体を近づけたり、触れたり。5人がお互いを牽制しあったり。
・・・まったく男というものは。
パチ、とまた火が爆ぜた。もうじき2回目の徹夜の夜が開ける。
「苦労しているな、アビゲイル」まったく人の気配を感じなかった。
「・・・誰」刀に手を伸ばしながら、焚火の向こうの闇を透かし見る。5人の男達は相変わらず寝息を立てている。
滲むように、人が現れた。
肩の力が抜ける。
「タイロン。人が悪いぞ」
現れたのは旧知の人物であった。同時期に訓練所にきた、同じ騎士階級の男だ。訓練はほとんど同じメニューであったし、気心が知れている。
やや細身だが、よく鍛えた均整のとれた丈夫である。
「領域痕をみてあんたじゃないかと思ったんだ。一昨日の晩から追っかけてたんだけど、こいつらが合流するまではまったくお手上げ」バンザイをしておどけて見せた。
思わず、アビゲイルも笑みをこぼす。「・・・で、何の用?」
「つめたいな〜せっかく助けてあげようと思ったのに。困ってんだろ。」
邪気のない顔でにっこりと笑う。不思議なことに、アビゲイルをふくめて誰もが、茶色の髪に珍しい金の目をもつこの男を憎めない。
「ところで火はどうやって手に入れた?俺にもわけてくれ」
アビゲイルも負けないくらい、邪気のない顔で笑っていった。「秘密」
タイロンは試練の森に解き放たれた後、とりあえずマッピングと情報収集からはじめた。すでに結界の外周を一周し、南北の横断も済んでいるようだ。
「やっぱりどうあっても、境界からは出れねぇよ。何かに覆われてるみたいになってんだ」
焚き火を継ぎながら、肩を並べて話し込む。
「で、東から西へ一直線に縦断中にあんたの領域痕をみつけたってわけ。刻まれてる情報量が半端じゃねえし、こりゃアビゲイルしかいねえなって」
アビゲイルはテリトリー内の情報をこと細やかに刻んでいる。自分のためでもあるが、友軍のために必要な知識でもある。
「あの5人は見つけることもできなかったみたいだけどね。因みに、アビゲイルのテリトリーは森の1/5を網羅してるぜ。あと四半日も歩けば西の結界の壁に突き当たる。ちなみに、テリト
リーの中に訓練兵はこいつらと俺とあんたのほかにはいない。最初はほかに5人いたけど、脱水症状やなんやかやで管理人に回収されちゃったよ」
アビゲイルは、タイロンの情報収集能力の高さに舌をまいた。
「で、やっとあんたを見つけてみたら、5人も無能者抱えて往生してるんだもんよ。しかも色気付いてやがる。」
ニヤリと笑って朝食代わりの干肉を炙って口に放り込むタイロンをアビゲイルはにらみつけた。
「おまえ、おもしろがってるだろう」夜明けの薄明かりの中、アビゲイルは溜息をついた。
肉の焼ける匂いにつられたのか、拾った訓練兵がひとり、2人と起き出して来た。
夜の間に合流したタイロンの存在に驚き、警戒する。
アビゲイルが、なにを今更と言う気分になるのはしょうがないことだ。
「こちらはタイロン・ツバイ。西の国境の町出身の騎士だ」簡単に紹介する。
タイロンは無造作にアビゲイルを抱き寄せて言った。「こいつに会いに来ただけさ。すぐ消える」
とっさに、アビゲイルはタイロンの頬を張った。それを上手くかわして、ひょい、とアビゲイルを肩に抱え上げる。
「なにすんだよ!おろせ!タイロン!」
顔を怒りで紅潮させ、ジタバタするアビゲイルをものともせず、邪気のない顔で5人にむけて片目をつぶった。
「しばらく借りていく。邪魔すんなよ」そのまま沢に向かって歩き出した。
5人はあっけにとられて、声も出ない。
「いいかげんにしろっ!タイロン!」
アビゲイルが耳元で騒ぐのも、手で髪をつかんだり、背中を叩いたりするのもお構いなしでタイロンはくつくつと笑っている。「あの5人の間抜け面、みたか?」
タイロンはアビゲイルを肩に抱え上げたまま、難なく沢をつたい上流へと遡る。
「あいつら、絶対誤解してるぞ」「だな」
「だいたい、お前と私は関係を持ったことはないだろ?」「そのとーり」
「後が面倒だろう!」「そーかなー」
アビゲイルの抗議は軽くいなされ、抵抗しているのがむなしくなった。
「・・・自分で歩くから下ろしてくれ。」「イヤだね」
唐突にアビゲイルは宙を舞った。「タイロン!?」身体は重力にまかせて落ちて行く。
冷たい淵に投げ込まれた、と理解できたのは完全に身体が沈み、青い水面に差し込む日の光を視界に留めてからだった。熱くなった頬が急激に冷やされて心地いい。
このまま沈んでしまってもいいな、と思っているうちに息が続かなくなって、水面に顔をだした。
淵の真上の大岩に、タイロンがたたずんで大声で笑っている。
「おーまーえ!」
「そのまま真っ裸になって、服洗濯しろ!」「はぁ?」
「おまえ、あいつらの手前、洗濯も水浴びもしてないだろ?」
・・・あの5人は用を足す時でさえ、後をつけて来ていた。
タイロンがぷぃっと横を向く。人が悪そうに見えて、この男は根が優しいのだ。
アビゲイルになんとなく笑いがこみ上げてきた。
大岩の真下で、素っ裸になり、服は揉み洗いした。固く絞って上に向かって投げる。
落ちてこないってことは、タイロンが受け取って干してくれているのだろう。下着まで人の手に委ねるのはどうかと思ったが、遠慮しないことにした。
この日差しだ、すぐ乾く。靴は少々時間がかかるかもしれない・・・
冷たい清流が肌に心地いい。試練の森で、いやそれ以前の訓練所でもこんな開放感を味わったことがあっただろうか?
ざぶん、と水音がした。
「あいつら、追いついてきたぜ」意外に近くでタイロンの声がしたので、自分の注意力のなさに唖然とする。
するするとタイロンの腕が伸びてきて、後ろから抱きとめられた。「安心しろ。何もしない。」
「こうしていれば睦みあっているようにみえるだろ?」体を入れ替えて、正面から顔を合わす。
下に透かし見えるタイロンの身体には快楽の兆しは微塵もみえない。
「・・・あんたの真意が分からない。」溜息をつく。これさえも、あの5人からは快楽の吐息に見えるのだろうか。
「何もしないんじゃない。できないんだ。俺には呪いがかかってる・・・」タイロンのつぶやきが耳に入り、顔を仰ぎ見るが、逆光で表情はみえない。
アビゲイルは漠然と、この男はとてつもない事情を背負っているのだろう、と思った。
「あいつらを追っ払うだけだ。」そのまま、タイロンの顔が降ってきて、口付けをかわした。
情欲のかけらもない、見せるためだけの醒めたキスだった。
追跡者の気配が消えた。
しばらく気配を窺っていたが、引き返してくる様子もない。
2人は沈黙のまま淵から上がり、身体を乾かし、服を身に着けた。
アビゲイルが耳飾に下げている火打石で乾いた苔に火をつける。「普段から身につけてんのか。用意周到」タイロンは本気で感心しているようだ。
勢いをました火を枯枝に移し、清流に冷えた身体を温める。
「おまえのその、呪いってのはなんだ?」干した野兎の肉をタイロンに手渡す。
「・・・成人の儀で、相手に呪をかけられた」火で炙った野兎の腿肉をタイロンは無造作にほおばった。
この国では成人の儀式は三日間の断食潔斎ではじまり、神と交わる神婚をもって幕を閉じる。
漆黒の中で儀式は執り行われるので、相手の素性などまるで判りはしないが、神として14歳の者と契るのは王族である。
しばしば女性は成人の儀で天眼をもつ子どもを授かり、王宮に仕えるものとなるのだが、これは余談である。
アビゲイルは丁寧に肉に火を通す。「相手は王族の姫君か。報われないな」
「調べてみたから今はどこの誰だか知ってる。」
王族のことを探るなど、犯罪行為だ。アビゲイルはまじまじとタイロンを見つめた。
「執着したもんだな」
「あのアマ、忘我の境地で俺を言霊で縛りやがった。あのあと他の女じゃ勃たねぇよ」
憮然としたタイロンと唖然としたアビゲイル。どちらともなく、溜息をついた。
「それは愛とか恋とか情とかの類じゃないか・・・ま、一種の呪いといえなくもないな」
少し気の毒になって、タイロンの膝をぽん、とたたいた。
「私は神婚の相手を覚えてもいない。朦朧としてたから。」そっけなく付け足す。
どこか痛いような、微妙な表情でまた一つ溜息をついて立ち上がり、飲み水を求めてタイロンは川岸へ下りていった。
身体があたたまり、食べ物も口にして、アビゲイルに強烈な眠気が襲ってきた。考えてみれば、この2日間まともな睡眠を取っていない。
ゆっくりとタイロンが淵の大岩に登ってくる気配がする。また逆光で表情は見えないが、雰囲気は穏やかだ。
シルエットの向こうからのぞく太陽の光が酷くまぶしくて、目を閉じた。
岩にもたれかかり、安心した様子で眠るアビゲイルを、タイロンはしばらく眺めていた。
かくり、と首が前に落ちたのを期に、手を添えて横にしてやった。自分の上着を敷物にしてやる。
火の始末をし、痕跡を消し、出立の準備を整えてから、アビゲイルのとなり腰を下ろす。
右手で、アビゲイルの顔に張り付いた明るい栗色の髪を払う。
「おまえだ、アビゲイル」
そのまま何度か髪を撫でた。その手を額にやり、くつくつと笑う。
「ソノマナコニノミワガミヲユルス」歌うように抑揚をつけて口にする。「・・・やっかいな呪を返しやがる」
苦笑いをして、天を仰ぐ。
上をむいた額には黄金の天眼が開いていた。
「おかげで天眼が明かないと欲情もしない」
全身に鳥肌が立つ。
「しかも相手はおまえ限り」
その股間は屹立し反り返っているのがズボンの上からでも判った。
「ま、いいけど」勢いをつけて立ち上がり、再度ズボンを脱ぎ捨て全裸になる。
「・・・よくないか」
服地がすれるだけで、すさまじい快楽が全身を駆け抜けた。
無防備に横たわるアビゲイルを見下ろす。
「時はまだ、だ。」
いまこの女を抱きたい。
「まだ早い。」
男根がぴくぴくと波打つ。
「いま正体がばれるのはまずい・・・」
自分に言い聞かせる。
未練がましくアビゲイルを見つめる天眼を無理矢理手で閉じ、一つ頭を振って、淵へと飛び込んだ。
アビゲイルが目覚めた時、タイロンはまだ淵の中にいた。岩場に内臓を取った魚が干してある。
起き出したアビゲイルの姿を認めて、岸に上がる。「大漁だろ?喰える種類ばっかりだ」
タイロンが身支度を整えている間にアビゲイルが収穫物を手早くまとめ、その地を後にした。
2人で野営地に立ち返ると、5人の姿がなかった。
姿だけでなく、アビゲイルの蓄えていた干し肉や果物類、小動物の毛皮なども持ち出したとみえ、きれいさっぱり消えている。
「いっそ気持ちがいいほど何もなくなっているな」2人ともに、肩をすくめた。
野営地の痕跡を残さぬように後始末をしながら、タイロンは問いかけた。「さて、この後はどうする?アビゲイル嬢」
「とりあえず、あんたの言う結界を見ておこうと思う。あんたは西へ縦断するんだろ?そこまでは付き合う。」一番大きな木の幹に領域痕を刻みながら、アビゲイルが応える。
タイロンの頬が一瞬緩んだことは、アビゲイルには判らない。
「まだ日は高い。日暮れまでには着くだろうな」早くも歩み始めるタイロンの背を、アビゲイルは追う。
幕切れはあっけなかった。
タイロンが確かに確認したはずの結界の壁は、どこにもなかった。境界線には一本の赤い線が引かれていただけであった。
腑に落ちない顔でその線を越えると、どこからともなくフードをかぶった御者があやつる馬車がやってきて、目の前に停まった。黙って乗るように促す。
馬車には、訓練所の教官が待ち構えていた。曰く、10の課題は次のとおり。
1 飲料水を確保すること
2 食料を確保すること
3 火を確保すること
4 自身の位置を把握すること
5 自身の痕跡を抹消すること
6 情報を収集すること
7 必要のない情報を捨てること
8 得た情報を友軍に伝えること
9 得た情報を敵軍に渡さないこと
9 友軍と合流すること
10 協力して事に当たること
兵士として、戦地で生き抜くための知恵であり、掟である。
全ての条件を満たすと、結界はただの線に戻る仕掛けであった。
タイロンが一人で行動している間は、結界は壁として立ちはだかり、アビゲイルという仲間を得てここに至ったので、ただの線に戻った、というわけだ。
「・・・なかなか粋なことを考えるもんだ」憮然としたタイロンをみて、アビゲイルは笑い転げた。
馬車は日が落ちる前に、砦に滑り込んだ。
砦の主は白銀の髪と、白銀の天眼をもつおだやかな老人だった。礼節をもって2人を迎える。
教官によると、この試練の森はこの老人一人の魔力で維持されており、その天眼で持って全てを見渡し、訓練生を見守っているのだそうだ。
老人を前に2人は跪き、祝福を受ける。
アビゲイルは敬意をはらい目線を下げていたので、老人がにやりと口の端を歪め、タイロンが首を竦めたことを知らない。
「優秀な2人に祝福を。」やさしい老人の声が響いた。
2人は退所試験の最短記録を半日塗り替えたらしい。
アビゲイルは「7 必要の無い情報を捨てること」の項目にマイナスの評価がついたものの、野戦向き即戦力として高い評価を受けた。
タイロンは特に情報収集能力に高い評価をうけ、おそらく斥候や情報収集に携わることになるだろう。
5日砦に滞在し、怪我人の搬送に便乗して訓練所に戻った。
更に5日の後、実戦配属の辞令を受け取るために王都に召還され、訓練所を後にした。
タイロンは監察局に、アビゲイルは北の山岳地帯にある国境警備隊にそれぞれ配属され、速やかに任地へ旅立った。
2人の次なる邂逅は、1年あまり後のことである。
その後のアビゲイル終了
エロ入れようかな、とも思ったんですが、オアズケのほうが、つぎ気持ちいいかな?とおもいまして。
遅ればせながら前回、感想下さった方々、ありがとうございました。
>>183 GJ!!
アビゲイルには幸せになってほしいものだ…
>>183 連カキすまんが、最後に出てきた老人には全て見られてたってことか!?
覗き見ktkr!
>>183 超GJ!!
試験内容とかがしっかり構成してあってすごく楽しめた!
特殊な設定なのにすっと入って行けるのは文章力があるからなんだろうな。
天眼の存在も気になるし、続きをwktkで待ってます。
あげ
188 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 10:41:37 ID:5YQxwflR
ほしゅあげ
アビゲイルまだー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
190 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 10:36:17 ID:UzcHo6i8
ほ----------しゅ-----------
191 :
魔王とネリィ:2006/07/29(土) 14:20:37 ID:zL6oUCOo
その晩イリアは不機嫌だった。
従兄弟達から『目隠し弓』に誘われても断ったし、魔獣が捕虜を食い殺すのを見物する気分でもなかった。
原因ははっきりしている。
今日本国からの後続部隊が合流し、黒い天幕の隣に朱色の天幕が建てられたからだ。
今頃彼女の主君は、朱の天幕の住人を訪れているのだろう。
それを思うとイリアはいたたまれない気持ちになるのだ。
(たかが定命者に、私は嫉妬などと…)
どんなに美しい花でも、いずれ枯れてしまうものだ。
現に初めて見かけた時に比べれば、あれは明らかに年を重ねている。
寿命を持たぬ闇エルフにとって、限られた時間しか生きられない人間達は侮蔑と哀れみの対象でしかない。
その人間を妬むなどという事は、イリアにとって認めがたい屈辱なのだ。
………
朱の天幕の中には、二人の人影があった。
一方は闇の軍勢の総帥たる魔王、もう一人はこの天幕の主である。
魔王はいつも通りの漆黒のローブを纏っているが、
朱天幕の主は艶のある亜麻色の髪を美しく結い上げ、紅色のドレスと黄金の装身具で身を飾っている。
この二人以外には誰も中にいない。
高貴な身なりをしているにもかかわらず、一人の侍女も付けていなかった。
魔王は床に敷かれた大剣牙虎の敷皮に座り、天幕の主に酌をさせている。
「…どうした? ネリィ」
朱天幕の主、ネリィが酒を注ぐ手を止めたのを見て、魔王は訊ねた。
「蚊が…入っておりますね。どこかに隙間が空いていたのでしょうか?
捕まえて外に出してやりませんと……」
「気にするな」
「でも…」
ネリィの言葉は、魔王が杯を差し出したことで遮られた。
暗がりに消えた先程の蚊が気になったが、主君の意向に背いてまで探すことはしなかった。
しかし再び魔王に酌をするも、ネリィはどこか心苦しげであった。
「気になるのなら雷で焼き払ってくれようか?」
「おっ おやめ下さい! それでは余りにも可哀想でございます」
「………蚊如きにそこまで気を使えるとは、お前らしいな」
「蚊も生きておりますもの、無駄に命を落とさせたくないのです………きゃっ」
うつむくネリィの腕を掴んで、魔王は相手を自分の胸元に引き寄せた。
「あっ……陛下?」
いぶかしげに主君の顔を窺うと、魔王はネリィの手首に巻かれた包帯を見つめている。
「あの、これは……」
「あまり深くは切るな、傷が醜く残る」
腕輪で包帯を隠していたつもりだったが、魔王の目をごまかすことは出来なかった。
「……はい」
うなずくネリィの頤をつまんで、魔王は唇を合わせた。
192 :
魔王とネリィ:2006/07/29(土) 14:21:42 ID:zL6oUCOo
「むゅぅ…… ちゅろ… ちゅる… ぢょる…… むぢゅる… 」
魔王の舌が口中に差し込まれてきたのに応じて、ネリィも舌を動かす。
舌と舌との交わりの間に、時折互いの口中に溜まった唾を啜り合った。
情事の呼吸は二人の間で自然に伝わりあっていた。
「………む、あっん」
服の上から乳房を掴まれて、ネリィは口を離した。
ここ数年魔王の愛撫を受けて大きくなった乳房だが、張りと弾力は少しも損なわれていない。
魔王の指は衣装の隙間から侵入し、直接胸を撫で回した。
「はぁっ……んぁ」
甘い喘ぎ声を漏らすネリィを敷皮の上に寝かせ、魔王は愛撫を続ける。
「んんっ… 」
唇と指で責める一方、魔王は相手の衣装を脱がせていった。
絹の布地と装身具を剥ぎ取られたネリィは、手首の包帯以外何も纏わぬ姿になる。
「陛下… 今度は私に…」
そう言ってネリィは体を入れ替え、それまで自分に覆いかぶさっていた魔王の胸に跨った。
「………ちゅっ」
漆黒のローブから男根を引き出すと、既に硬くなっていた男根に口付けをする。
そして手と舌で優しく撫で上げていった。
ネリィの愛撫を受ける魔王は、目の前にあるつややかな尻と太ももに指を這わせる。
時に戯れのように裂け目をなぞって行くと、ネリィから甘い吐息が洩れた。
「うぅん… じゅるぃ…… ぐじゅりぃ… 」
下半身への愛撫を受けながら、相手を飽きさせないように変化を加えながら深く喉まで咥え込む。
「じゅぅ… じゅりじゅるり、くぢゅるり、ちゅり………んんっ、じゅっ、じゅっ、じゅぅっ」
そのまま強弱をつけて男根をしごき上げる手管は、まだ分別のつかぬ幼子であった頃から教えられてきた事だ。
「んんっ、…んっ んっ・・・ぅんんんっ!!」
魔王の指が秘所へ侵入し、膣内をかき回すと、
ネリィも相手を絶頂に導くように速度を上げていく。
「んっ…ぐぅん…んくっ」
魔王の射精を喉の奥で受け止め一滴も溢さず口に収めると、
ネリィはそのまま男根に吸い付き、精を飲み干した。
「じゅ、じゅぅる……… ぷぅ」
男根に残った精液も残らず吸い尽くしてから、ようやく口を離した。
一度射精したにもかかわらず、男根は硬くそそり立っている。
身を起こした魔王は、息を整えるネリィを抱えて後ろから秘所に挿入した。
「っ…きゃぁん!」
指で十分に解されていた秘所は、すんなり相手を受け入れる。
一突きで最深部まで貫かれた快感に、ネリィは嬌声をあげた。
「…お前を抱くのも久しぶりゆえ、今宵は存分に味わってみようぞ」
「はい、…御意のままに」
ネリィはそう答えると、ゆっくりと腰を動かし始めた…
………………
193 :
魔王とネリィ:2006/07/29(土) 14:22:55 ID:zL6oUCOo
情事を終え、何度も魔王の精を胎内に受け止めたネリィは、恍惚の中に横たわっていた。
しかし、ふと気づくと床に蚊の亡骸が転がっているのが目に入った。
(…あっ)
この蚊が死んだのは、誰の所為でもない、自分の血を吸った為だ、
『先程目を離さなければ、この蚊も命を落とさずに済んだのでは』と思うと、
ネリィは自責の念に駆られてしまうのだった。
ネリィが産まれたのは、東方のある国の王宮である。
父母は王族であったらしいが、ネリィは両親の顔を覚えていない。
どんな罪を犯したのか、父親は生まれる前に刑死したらしい。
ただ、夫に連座して殺されるはずの母は、その時子を孕んでいた。
宮廷の長老たちは、女子が産まれれば両親に似てさぞ美しい子になるだろうと予測し、
母の死刑を取りやめた。
ただし、母体に与える食事には秘伝の毒を盛り続けた。
子が生まれながらに毒を体に染み込ませた「毒姫」となるように。
臨月を迎えたある日、致死量の毒を飲まされて死んだ母親の胞から、ネリィは取り出されたのだった。
生まれる前から密かに毒を与え続け、相手を確実に虜にするよう、幼い頃から男女の交わりを覚えさせる。
そして、美しく育ってのちに敵国の王に妻妾として献ずる。
美しさに惑わされて毒姫を抱けば、口付けにも、愛液にも、破瓜の血にすら染み込んだ毒が必ず王を殺す。
ネリィはそのためだけに生かされ、育てられてきた娘だった。
そして十数年が経ち、王宮の中で最も美しく、強い毒を持つに至ったネリィは、魔王の後宮に送り出された。
戦に負けても権謀で勝つ、それが古く暗い歴史の中で磨かれてきた宮廷の術策である。
しかし、彼らにとって誤算だったのは、ネリィを抱いても魔王は死ななかったことだ。
そして自分を殺すために遣ってきた女を、魔王は責めなかった。
194 :
魔王とネリィ:2006/07/29(土) 14:23:59 ID:zL6oUCOo
魔王宮に献ぜられて数年たつが、ネリィはいつも不思議に思う。
何故魔王は自分と交わっても死なないのか?と。
以前真剣に聞いてみたが、魔王は「古より、毒殺された魔王などおらぬ」としか言わない。
答えは未だ分からないが、とりあえず自分を抱いても死なない男がいるだけでいい、と思った。
「陛下、この度の遠征はあとどれ位かかるのでしょうか?」
「戦は相手次第だ。それは余にも分からぬ」
「また、多くの血が流れるのでしょうね……」
「………」
ネリィは『死』を嫌っていた。
自分の呪わしい身体ゆえに、一層生命を奪いたくないという気持ちを抱いていた。
そして戦争も政略も嫌いだった。
自分がこのような身体になったのは、そういった薄汚い宮廷内の都合のせいのなのだ。
しかし、魔王が行うことならば、ネリィにそれを止める気はない。
闇の軍勢の勝利のためにネリィが出来ることといえば、味方に自分の毒の血を使わせることだけだ。
身体に染込んだ毒を鏃に漬けておけば、かすり傷だけ敵は死ぬ。
魔王はネリィが自分の体に傷をつけることに良い顔はしなかったが、
もし求められたのならば、己を受け入れることのできる唯一の男に
最後の血の一滴まで捧げ尽くすつもりだ。
ただ、ネリィの手首から傷が消える日はまだ来そうに無かった。
(終わり)
195 :
投下完了:2006/07/29(土) 14:25:07 ID:zL6oUCOo
バジリスクで一躍メジャーになった観のある毒娘さんのお話です。
一応イリア編を書いてから構想してた話はこれで書き終えました。
アデラが黒い天幕の世界から帰還する設定とかも考えてあるのですが、若干エロに問題があるので…
読んでくれた方、感想くれた方多謝でした。
>>195 超GJ!
毒姫さんツボにはまったよ。すごく萌えた。
どの話も設定が凝っててとても面白かった。
アデラの話もなんかの形で投下してくれると嬉しいな。
もし毒を持った女子を魔王が抱いたらどうなるだろう?
死ぬ? いいや、撥ね返す!
かわいそうな毒娘一人救えずして何が闇の支配者ぞ!
>>197 「痛くないのォ!?」
「その痛みに反逆する!」
なんとなくこれ思い出した
200 :
はじめに:2006/07/31(月) 20:27:28 ID:nYxPae6C
昔々のある国で、王女様が悪いドラゴンに攫われました。
…珍しい話ではございません。
困った王様が『ドラゴンを征伐した者に王女を娶らせる』と触れを出しました。
……良く聞く話でございます。
そして勇者がドラゴンを倒し、囚われの姫君を救い出す。
………あまりに陳腐な展開です。
はてさて、そんな良くあるお話を、これからさせて頂きましょう。
見事竜を打ち倒したるは、勇者ヴァイオレット。
自慢の名馬に跨って、巣穴から救い出したローリア姫とともに、王都に帰還する最中でございます。
「あの、ヴァイオレット卿?」
「なんでしょうか?ローリア姫」
「その…そろそろ街が近づいてきますよね」
「はい、今日はあの街で宿を取りましょう。
これまで山道ばかりでしたら、どうかおくつろぎ下さい」
「いえ、…その、馬から下ろして頂けませんか?」
「とんでもない!姫様を歩かせるなんて」
ヴァイオレットはローリア姫を馬から下ろそうとは致しませんが、姫君が恥ずかしがるのも無理はありません。
なにせ姫は馬上でヴァイオレットに抱きかかえられているのですから。
「このオケアノス号はある精霊から送られた霊馬。二人で乗っても何の問題もありませんよ」
「いえ、そういうことではなく…」
片手で手綱を操りながら、ヴァイオレットはしっかりと姫を抱えて放しません。
ヒヒィーン
「おっと」
「きゃあっ」
突然馬がいなないて棹立ちになりますと、姫はたまらずヴァイオレットにしがみ付きます。
「はははっ、失礼しました。こいつは馬鎧を二重に着けて戦場を走り回ってもへばらない頑健な奴ですが、
ちょっと気性が荒いのが玉に瑕でして」
とぼけた顔をしてヴァイオレットは言いましたが、こっそり馬の尻に拍車を当てたことは黙っていました。
まったくオケアノス号は主の意を良く汲む名馬でございます。
「さあ、日も暮れてまいります。はやいところ街に入りましょう」
二人を乗せたオケアノス号は、歩みを速めて街道を進みます。
「あ、あの、ヴァイオレット卿。街に入ると… 人目がございますから」
「なにをおっしゃいますか。姫がご無事に帰還されたことを、民にも見せてやらねば」
「いえ、このようにヴァイオレット卿に、その、抱えて頂いているのを見られるのは…ちょっと」
「恥ずかしがることはありません。
古来より怪物を倒した騎士は、このように姫君を抱えて凱旋するものでしょう?」
まあ物語に描かれている英雄の絵姿は大抵そんな感じでございますが。
「でも……」
「それに姫と私、女二人で馬に乗っている姿を見られた所で、何の問題があるので?」
そう、ドラゴンが姫を攫うのも、王様が姫君を褒賞とするのも、勇者がドラゴンを倒すのも、
そこら中にある話でございます。
しかし、ドラゴンを倒して姫君を救い出したこの勇者、ヴァイオレットは女だったのでございます。
お話いたしますのは、人呼んで『スミレの騎士』
女勇者ヴァイオレットのお話でございます。
「親父、貴賓用の一番上等な部屋を『一つ』用意しろ」
「はい、かしこまりました」
突然やって来た女騎士と身分の高そうな姫君に、宿の主人もびっくりしましたが、
そこはそれ、あわてるそぶりを見せずに対応いたします。
「あの、ヴァイオレット卿?」
「なんでしょうか、姫」
「いえ、部屋が一つということは… 卿と私は同じ部屋で休むことになりますの?」
「はい、このような辺鄙な街の宿には姫にお泊り頂くような部屋は幾つもありませんからね。
ここが一番マシとはいえ、狭くて汚くて垢抜けない部屋でしょうが、どうか我慢して下さいませ」
「でも…」
ヴァイオレットの言葉にとまどうローリア姫ですが、それを聞いて宿の主人は内心面白くありません。
この街は都へ続く街道の要所、当然身分の高い客を迎えることもあります。
この宿を街で一番と見てもらった事はありがたくても、
『狭くて汚くて垢抜けない』と言われては黙っていられません。
「なにをおっしゃいますか。私めの宿には都の貴族の方たちもお泊り頂いておりますから、
貴賓用の部屋もいくつかございます」
「…なんだと?」
「まあ、泊まれる部屋がありますの?」
「はい、そちらさまはご身分のある方とお見受けいたしますが、
お二人に相応しい部屋を二つ用意することもできま………せん。
申し訳ありませんが、貴賓室は一部屋除いて全て改修中でございました」
さすがこの街一番の宿の主、ヴァイオレットが剣の柄に手をかけて睨みつけたのを見て、
どう言えばいいのか即座に理解しました。
もちろんローリア姫の目に入らないような位置での抜刀でございます。
「…ほう、残念だな。貴賓室は一つしかないのか?」
「はい、左様で」
「その部屋は姫と私に相応しい部屋なんだろうな?」
「幸いなことに一番上等な部屋が空いております」
「当然ベッドは一つしかないよな?」
「一つしかありませんが、大きなベッドですからお二人でも十分お休みいただけます」
そこまで聞いたところで、ようやくヴァイオレットは抜きかけた剣を収めます。
鍔鳴りの音も無い滑らかな挙措ですから、ローリア姫には全く事情が分かりません。
「ああ、本当に残念ですが、今夜はどうか私と相部屋でお休み下さい」
「ええ…仕方ありませんね」
少し世慣れた者でしたら、もう一人は別の宿に泊まってもらうとか提案するでしょうが、
世間知らずの姫君にはそういった知恵は浮かんできませんでした。
でもヴァイオレットにかかれば街の全ての宿を一部屋除いて休業中にすることも出来るでしょうから、
無駄な提案になったでしょうけれど。
「さあさあ、お疲れでしょう。今夜はゆっくり『休み』ましょう。
親父、部屋に案内しろ」
「はい、どうぞこちらへ………」
どんな『休み』方をする心算なのか、などとは主人も聞かず、そそくさと二人を案内いたしました。
「あと姫はお疲れゆえ、湯浴みの支度を頼む」
「はいはい、かしこまりました」
案内された先は王侯貴族の屋敷とまでは言えませんが、家具も内装もなかなかのもの、
まず王女に泊まって頂いても恥ずかしくない部屋でございます。
「ああ、竜の巣穴に囚われていた時は、もう二度と人の世界に降りる事はできないのかと思ってましたわ!」
久しぶりにまっとうな部屋で休めるとあって姫様はとってもお喜びのご様子。
「本当にありがとうございます、ヴァイオレット卿」
「いえ、姫君のために危険を冒すのは騎士の本分ですから」
素直に喜んでくれるローリア姫にヴァイオレットも微笑みます。
気位の高い御令嬢の中には、せっかく怪物から救い出しても、
『何処の馬の骨とも知れぬ輩と同室などできぬ、そなたは馬小屋にでも寝るがよい!』
などと言い出す方もおりましたので、ヴァイオレットとしてもローリア姫の純粋さは嬉しい事でございました。
…ちなみにその気位の高い御令嬢がその後どうなったのかは、ここでは語らずにおきましょう。
「お客様、湯浴みの用意が整いました」
「おう、待っていたぞ。 姫様、これまでは川や泉での水浴びばかりでご不便をおかけしました。
今宵はどうぞ湯を使って下さいませ…… 不肖、このヴァイオレットがお世話いたしますれば」
「は…はい、でも、その…騎士たる方に湯浴みの世話をして頂くなど…失礼になりませんか?」
「おお、勿体無いお言葉です。しかし姫の為なら火の中水の中、どんな事でも致します。
さあさ、どうぞこちらへ」
そう言って気後れする姫君を強引に引っ張っていく様子は、まるで都の遊び人が箱入り娘を騙す手管のよう。
姫君がうろたえるのも気にせずに、あっという間に衣服を剥いで、湯船につからせてしまいました。
「………(恥」
「姫様、お湯加減はどうですか?」
「…はい、大丈夫です」
「何でもお気になさらず仰って下さい……… じゅるり」
「ヴァイオレット卿? 今の音は何ですの?」
「はい、お姫様のお体をお流ししている中によだれ… いえ、お湯を溢してしまいました。
本当にローリア姫のお体は綺麗ですね。」
「まあ、そんな……… ヴァイオレット卿こそ、細身の身体ですのに、
たくましくもしなやかな体付きでいらっしゃいます」
「はははっ、私のこんな身体でも、姫のお褒めに預かるようなら捨てたものではありませんね」
「いえ、ヴァイオレット卿の身体はとても素敵ですわ。
それにお名前の通り、スミレの香水をお付けになっていらっしゃいますのね?」
「お気付きでしたか」
「はい、卿に抱きかかえて頂いたときに、とてもよい香りがしましたもの。
綺麗好きでいらっしゃいますのね?」
「ええ、綺麗な者は大好物です」
「私もこんなに隅から隅まで洗って頂いて… 申し訳ないですわ」
「いえいえ、私は綺麗好きですから。 食べる前にはよく洗っておく性分なのです」
「?」
「ああ、済みません。こっちの話でございます。 さあ、御髪も洗って差し上げましょう………」
侍女のように細かい所まで世話を焼いてくれるヴァイオレットに、姫もだんだん気を許してしまいました。
そして日が沈み、二人は寝床に入ります。
「では、おやすみなさい。ヴァイオレット卿」
「いえ、まだお休みになるには、まだ早うございます」
「???」
「夜は始まったばかりでございますよ。
姫は無理に力まずに… 万事私にお委ねいただきましょう」
「あっ…あの?」
「ローリア姫………」
………………………
夜が明けて、二人は部屋を後にします。
「姫、では出発しましょうか」
「はい、ヴィオラ様」
いつのまにかヴァイオレットの呼び方が変わった姫君ですが、
その姿はどこかお疲れの様子、とてもゆっくり休んだとは見えません。
反対にヴァイオレットはご満悦です。
そんなヴァイオレットに宿の主人が挨拶します。
「お早うございます。私どもの宿はご満足頂けましたか?」
「うん、実にいい部屋だったぞ。 ………ベッドも柔らかかったしな」
「はあ」
「あの部屋ならまたいつか使ってもいいな」
「有難うございます」
「分かってると思うが、私が誰か連れてきたときは…」
「他の部屋は改修中にいたします」
「それでいい、これは取っておけ」
そう言うとヴァイオレットは数枚の金貨を主の掌に押し込みます。
「はい、ぜひまたのご利用を。しかし、本当に……… 『昨日はおたのしみでしたね』 」
それからヴァイオレットとローリア姫は王都に凱旋いたしました。
しかし、竜を倒した英雄が女だったということに王様はビックリ。
いくらなんでも女に姫を娶らせることはできないと、ヴァイオレットに姫を与えません。
怒ったヴァイオレットは傭兵たちを集めて蜂起し、かってのドラゴンに劣らぬ大暴れと相成るのですが、
それはまた別のお話でございます。
(終わり)
GJ
ヴァイオレットの百合ハーレムを幻視したよ。
ツン奴隷、ウマになった麗しき精霊、美女傭兵団、等等ついでにドラゴン娘というハーレムを……
逝きすぎか?だがやってくれそうな素敵な騎士さまに敬礼して別の話を期待します。
GJ!
女騎士だー。
品があって何処となくコミカルな文体で、こういう感じ好きです。
超GJ!!面白かったよ。
ヴァイオレットもかっこいいし素直なお姫様も萌えた。
209 :
はじめに:2006/08/05(土) 00:27:30 ID:D1E8xp3n
昔々のある国で、皆を悩ませていた悪いドラゴンが退治された頃の話でございます。
この吉報にがっかりしたのは、竜退治で名を上げようと目論んでいた冒険者連中と、
隊商や町村を護衛するために雇われていた傭兵たち。
『これじゃあ飯の食い上げだ。この国にはそろそろ見切りをつけて、他所の国へと稼ぎにいくか』と、
口をつくのは景気の悪い話ばかり。
しかし、落胆したのは彼らだけ。
ほとんどの住人たちは、村人から貴族まで『ドラゴンの襲来を恐れずに済む』と大喜び。
これで平和が戻ってくる、そんな風に皆が思っていた頃の話でございます。
王国の北西にある辺境伯領に、美しい貴婦人がおられました。
先日この貴婦人は夫を病で亡くし、若くして寡婦となられました。
『城付き』『領地付き』の『麗しい未亡人』がいるとなれば、周りが放っておきません。
ご夫人と結婚できれば、爵位も財産も転がり込んでくるのですから、
顔や、家柄、腕っ節、自信がある者も無い者も、蟻の様に群がってまいります。
湖の岸部に聳え立つ石造りの城郭には、その日もたくさんの騎士や貴族が訪れておりました。
「モートラントのガイゼリックでございます。麗しきエルザ殿」
「お初にお目にかかります… ガイゼリック卿」
「このたびは御夫君を亡くされて、さぞやご心痛のこととお見受けします…
私はエルザ殿のお父上にあらせられる、先代の辺境伯にもご懇意にして頂き、
また、御夫君にもとても良くして頂きまして…」
「ガイゼリック卿、後が支えておりますので、そこらで切り上げて頂きましょう。
…次の方」
大広間に並ぶ求婚者の群れを捌くため、辺境伯未亡人であるエルザをはじめ、城中みんなが大忙し。
普段は丁寧に応対をする家宰さえも、長々と売り込み文句を聞かされては堪らんと、
客のしかめっ面も気にかけず、とっとと次に移らせます。
「此度の訃報には真に心が張り裂ける思い、エルザ殿のご心中お察し申し上げます。
女ひとり夫に先立たれてさぞ心細いことでございましょう?
いえ、私の母も早くに夫を亡くしておりますれば、よく分かります。
そんな時に我が母を慰めたのは、私の義父でありまして…」
「奥方様、ウルマートのフェルン公子でございました。
はい、次の方」
「モルノンのギョルムでございます。
ああ、エルザ様。貴女の悲しみにくれるお顔を見るに、私の胸は張り裂けそうになりまする!
かなうことなら私が貴女の悲しみを救って差し上げたい!
ああ、それにして憔悴した貴女のお姿もなんとお美しいことか、まるで…」
「はい次」
なにせ連日新しい求婚者が城を訪れるのですから、
彼らの供応をするのも一苦労、追い返すのは大苦労です。
直接来る連中だけでなく、エルザ宛に送られた、大量の求婚の手紙や使者。
自分の美点を持ち上げてライバルの欠点を注進させようと、侍女に金を掴ませようとする輩。
親切ぶって縁談を持ち込む裏で、こっそり自分も甘い汁を吸おうとする親類縁者まで、
まるで腐肉をあさるジャッカルたちです。
「はい次の方」
「ベルネのヒルデブラントでございます。奥方様には以後お見知りおきを」
やや高めながら良く通る声で名乗り出たのは、髭を生やした若い騎士。
他の求婚者のように長々と挨拶せず、言うだけ言ってエルザの前を辞します。
「ヒルデブラント卿、こちらこそよしなに…」
自分を売り込む卑しい輩よりも何と清々しい振る舞いと、エルザも感心しましたが、
その時、家宰が怒鳴りつけました。
「違う! ベルネのヒルデブラント殿ではない!!」
求婚者の列に戻ろうとするヒルデブラントを指差して、満座で偽者と糾弾します。
ベルネは王都の南東にあり、この城とは距離がありましたが、
家宰はヒルデブラントの一族と親交があり、顔を見知っていたのです。
「他人の名を語る不届き者め! 貴様はなにもの………うぐぉっ」
哀れ家宰はみなまで言うことが出来ませんでした。
銀光一閃、偽ヒルデブラントの放った短剣が喉を貫いて、彼の言葉を封じたのです。
「皆の者かかれ!」
「狼藉者!」
偽ヒルデブラントの号令と親衛兵長の叱咤はほぼ同時、
親衛兵たちは即座にエルザを取り囲み鎧の壁と化します。
「ロロ、グィルフィ、手向かう奴は斬れ!」
「おうっ!」
偽ヒルデブラントの声に応じて求婚者の列に潜んだ手の者が抜刀、守備兵に襲い掛かります。
「ガイゼリック、城に火を放て!
フェルンとギョルムは求婚者どもを捕らえろ!」
「ええっ!?」
「なんだと!?」
親衛兵たちを案山子の如く切り倒しつつ、偽ヒルデブラントがそう叫ぶと、彼らはそろって驚愕しました。
何せ彼らは本物、正真正銘の求婚者だったのですから。
「間者がまぎれているぞ?捕まえろ!」
「なっ何をするだ! 貴様らー!?」
「貴様が裏切り者か?」
「貴様こそ裏切り者だ!」
偽求婚者は求婚者に切りかかり、求婚者同士は猜疑心から斬り合って、
城中は大混乱に陥りました。
「みんな来てくれー! ジヨン卿がボルソン伯に殺されたぞっ、仇を取るんだ!」
「なにっ畜生、奴らの一味を生かしておくな!」
「ぶち殺せっ」
「皆落ち着け、俺はまだ生きてるぞ? 騙されるな!」
「嘘を吐け、あいつは偽者! 俺が本物だ!」
彼らの従士たちも参加すれば、互いに面識の薄い者同士、
おまけに同じ相手に求婚するライバルとあって、敵対心剥き出しの間でしたから、
どうにも収拾がつきません。
広間で大乱闘が繰り広げられる間も、偽ヒルデブラントはエルザに迫ります。
甲冑を着込んだ親衛兵が盾となって距離と時間を稼ぐ隙に、護衛に守られ広間を脱出しました。
もしも普通の相手が襲ってきたのだったら、そのままエルザは難を逃れることも出来たでしょう。
しかし偽ヒルデブラントは盾となった親衛兵を次々に片付けて、
エルザに追いすがったのでございます。
(ああっ、一体何が起ったというの?)
「奥方様、その部屋にお隠れに!
私が時を稼ぎます。城内にいる兵を集めれば、じきに狼藉者を取り押さえられますから!」
親衛兵長の言うとおり、エルザは侍女と共に城の一室に入ります。
そして入られぬように閂をかけた瞬間、
「ぎゃっ―――!!」
親衛兵長の絶叫が扉の外から響きました。
ドゥン!ドゥン! ドゥン!!
扉を強打する音が聞こえてきますが、太い閂のおかげで扉が開くことはありません。
敵が入ってこれないとエルザが安心した直後、扉の外から高く鋭い声が響きました。
アンロック
開 錠
呪文の言葉が轟いた刹那、扉を封じていた閂はへし折れて、
偽ヒルデブラントが押し入ってきました。
そして驚くエルザに冷たく宣告します。
「城主エルザ殿、貴女は私の虜になった。
これ以上の騒ぎを起こさないためにも、皆の前で降伏して頂きましょう」
エルザに剣先を突きつけるた偽ヒルデブラントですが、口周りに生えていた髭は取れかかり、
付け髭であったことが明白です。
「そなたは何者ですか?!」
「我が名はヴァイオレット……… 『竜殺しのヴィオラ』と聞けばお分かりか?」
そう、この偽ヒルデブラントこそ、王国を悩ますドラゴンを征伐した勇者、ヴァイオレットでございます。
ヴィオラは、竜を退治されて燻っていた冒険者と傭兵たちを糾合し、辺境伯領乗っ取りを企てたのでした。
竜の鱗さえ斬り裂く魔剣を奥方の喉に着き付けて、大広間にヴィオラが現れれば、
城兵も求婚者達も成すすべなく、大半が剣を下ろします。
それに乗じてヴィオラ方は皆の武装を取り上げ、さらに城外に伏せていた手勢を引き入れて、
小半時で城を制圧してしまったのです。
むざむざと姦計に嵌るのを潔しとしない、勇敢な輩もいましたが、
彼らは全員ヴィオラによって『永遠に』黙らされてしまいましたので、
万を超える敵兵の攻撃に耐え抜いたという堅城も、今やヴィオラの手の中です。
城門はスミレの軍旗が掲げられ、守備兵と求婚者の集団は檻の中。
でも幾ら大きな城であっても、こんなに多数の人質が入れる牢屋はありませんから、
身分の低めの囚人は、物置や酒倉にまとめて閉じ込められます。
「狭い」「臭い」と不平が出ても、捕虜の身ではどうしようもありません。
そもそも倉に入れて貰った者たちは、まだましな方。
下級兵士なぞは荒縄で数珠繋ぎにされ、城の外で夜風にさらされていたのですから。
そんな虜囚の待遇のなかで、元城主であった奥方は、天主の一角を占める塔に幽閉されておりました。
(ああ…これまで一族の敵を閉じ込めてきたこの塔に、私が入れられる日がこようとは!)
エルザの嘆きはもっともですが、元々好きで閉じ込められる者などめったにおりません。
「ご機嫌はいかがですか?エルザ殿」
「………」
「名を偽ったことはお詫びします。
でも堂々と名乗ってしまえば、私はともかく部下たちを広間に入れては頂けなかったでしょう?」
詐術を用いて城を奪い、『ご機嫌いかが』もありませんが、
とりあえずヴィオラはエルザと会見します。
「私は………」
「なんでしょうか?」
「私は、竜征伐を成し遂げた英雄殿は、もっと立派な御仁かと思っておりました」
「ご期待に沿えずに申し訳ありません。しかし、私にも事情があったもので…」
「事情? 何の事情ですか!
いきなり城に乗り込んで刃傷沙汰に及んだ挙句、私も家臣も投獄して…
恥を知るのならば即刻私たちを解放しなさい!」
激昂する奥方の心境も分からなくはありませんが、
そう云われて開放するくらいなら、最初から乗っ取りなんて仕掛けませんよね。
実際ヴィオラはエルザの面罵もどこ吹く風。
微塵もたじろぐ事はありません。
「ではお聞きしますが『約定を守らない国王を攻撃するために城と領地を貸してくれ』と、
正直に申し上げていたなら、ご協力頂けましたかね?」
「!?」
「詭計と言われるのも当然、非道と思われても無理はありませんが、
少なくとも私は一度公言した約束を翻すような『恥知らず』ではありませんよ」
「まっ……まさか王国に謀反を?」
「王国ではありません………神聖なる契約神の名において、二枚舌の王に懲罰を与えようというだけです。
あと、厳密に言えば私は王に臣従しているわけじゃありませんから、
謀反と呼ばれる筋合いはありませんよ?」
涼しい口調でヴィオラは言ってのけましたが、一国の王と対決しようという事に違いはございません。
「私は一度ヤると決めたら、必ずヤる女です。
相手がドラゴンだろうが国王だろうが、虚仮にされて黙ってはいられません」
エルザは信じられない物を見るような目でヴィオラを眺めましたが、
相手の瞳に秘められた強い意志に打たれ、自分の身体が震えだす始末でございました。
「ところでエルザ殿?」
「…」
「この城は私の手に落ちましたが、御領内にはまだ幾つかの城砦があります。
それらを一々落としていくのは難儀な上に、兵士領民の犠牲も増えましょう。
エルザ殿から私に帰順するようご説得頂けるなら、双方の幸いでありますが?」
「それは………できません。我が一族は父祖も夫も、王家に忠実に仕えてまいりました。
例えこの命奪われても、王の仇となることはできません」
さすがは辺境一の名家の当主、己の命も顧みずヴィオラの請求を撥ね付けました。
もちろんヴィオラとてこれ位は予想の範疇、
従わないからといって奥方をどうこうする心算は元から有りません。
「残念です」
「お役に立てずに申し訳ありませんね」
「いえ、自らの信念を貫かんとするお気持ちには敬意を評します。
いささか手間がかかるでしょうが、自分の力で平定しましょう」
「そうなすって下さいませ………あの、ヴァイオレット卿?」
自分の立場を守り通すことが出来て、ほっとした奥方でしたが、
話が済んだと思っても部屋を去らないヴィオラを見て怪訝な顔をいたします。
「あの、まだ何かお話が?」
「はい、話といっては何ですが… ぜひエルザ殿にご協力いただきたいことがありまして」
ヴィオラはゆっくりとエルザの傍に近寄ります。
「この城を手に入れるために、実は手勢と共にしばらく近くの山野に潜んでおりました」
「えっ…ええ、そうですの?」
「むさい野郎達と一緒に寝起きするだけで、私は自分が穢れる思いがするのですよ」
「そっ…それで」
「つきましては麗しき貴婦人に、私を清める手伝いをお願いしたいのです」
いまやヴィオラはエルザを壁に追い詰めて、優しく体を抱きしめます。
ようやくエルザは思い出しました。
この竜殺しの英雄が『女ながらに姫に求婚』し、王に拒否されたということに。
「それってつまり…」
「はい、エルザ殿。
私と寝ていただきましょう」
スミレの騎士としての名誉のために、あえて言わせて頂きますが、
なにもヴィオラは協力を拒否された事を怒って相手の肉体を要求するような、
下衆な輩ではありません。
これは最初の最初から、この辺境領に目をつけた時からの予定通りの行動なのですから、
お間違えの無いようにお願いします。
「きゃぁ!嫌っ やめて下さい、放してぇ」
エルザは渾身の力でもがきますが、何といっても相手は『竜殺し』。
女の非力でどうにかできるヴィオラではございません。
あっという間に寝台に押し倒され、身ぐるみ剥がれてしまいます。
「エルザ殿… とても綺麗な身体でいらっしゃますね」
「このっ外道! ならず者ぉ!」
「ならず者とは傷つきますね…
勝者が敗者の妻女を奪うのは古からの戦の習い、王家も貴女のご一族も似たようなものでしょう」
確かにヴィオラの言にも一理ありますが、でも女騎士が妻女を奪う例は…はて、あったでしょうか?
さてさて、それはさておいて、始めこそ奥方も『嫌よ嫌よ』と泣き叫んでおりました。
しかし、相手の抗議に耳を貸さず、ヴィオラの指と舌がエルザの身体を嬲っていきますと、
長い孤閨を託ってた未亡人の身体が疼きだし、ほぐれ蕩けていきました。
エルザとしては不本意なことでございましたが、ここは女の性と責めるよりも、
『淑女殺し』の隠し名を持つヴィオラの技量こそ原因でございましょう。
奥方は夜が更ける頃には、夫が床に伏してからご無沙汰でございました秘め事で、
精も魂も尽き果てるほど弄ばれて息絶え絶えになるほどに、
何度も絶頂に押しやられてしまいました。
こうして辺境伯夫人は、城も体もヴァイオレットに乗っ取られてしまったのでございます。
湖畔の城にたなびくスミレの軍旗は、王国を焼き尽くそうとする最初の火種となったのです。
色を好むのが英雄とすれば、ヴィオラの武勲譚はまだまだございますが、
それは、またの別の機会といたしましょう。
(終わり)
>>206 OK、
オケアノスは設定上雄だったり、ドラゴンはやっぱりドラゴンなので、
全部希望通りは無理だが、ツン奴隷ものは作るよ。
プロットは出来たので、次かその次位に書き上げる予定。
うはwwwwwヴィオラDQNだwwwwwでもおk。
とても楽しく読ませてもらってます。
ツン奴隷もwktkでお待ちしております。
おやおや、DQNといわれてしまうと、ヴィオラも不本意だと思います。
ちょっとプライドが高くて、計算高くて、狡猾で、辛辣かつ悪辣で、冷徹で、強引で、淫蕩で、情け容赦なくて、
目的のためには手段を選ばないマキャベリストで、ノン気でも遠慮なく食っちゃう女でございますが、
気前がいい所もあり、機転も利き、道理や礼儀も弁えており、手下を纏めるカリスマ性もあり、
どうやら魔道の心得もあるようなので、それなりの知恵と学識もあるはずで、
さらに(女をベッドに連れ込もうとする時以外は)相手の事情が汲み取れない人間でもなく、
自分の思惑通りにコトが進まなくっても、それに腹を立てるような馬鹿でも無い上に、
信念を貫こうとする敵に敬意を表せる度量もあって、
城乗っ取りの策略を企てる度胸も、頭も、腕っ節もありますから、
決してドキュンとは申せません。
それはこれからの話で明らかに…なるのでしょうかね?
確かにDQNとは言えんな・・・外道とか鬼畜とお呼びしようw
いくらなんでも失礼だぞ。
糞とか劣化ウランにしとけや。
ヴァイオレット来てたー。GJ!
飄々とした様子ながらいろんなことをしてしまう竜殺しの騎士に
今後も期待しています。
223 :
206:2006/08/08(火) 21:53:19 ID:PxcAGBLo
大変すばらしゅうございます。…GJ
お久しぶりでございます。
暑中見舞い?にアビゲイル書きました。
今回は特にファンタジー色が薄くて申し訳ありませんが、ご笑納くださいませ。
北の山脈と南の大海、西と東の大国により地理的にも情勢としても狭間の小国の、北に広がる山脈の岩
肌に、その城砦はあった。
北面警備隊の本部、北城から東へ2日、王都から北北東に位置する。
おもに山岳地帯から進入する大国の間諜や、略奪を目的とした山の民と呼ばれる山岳民族の侵入に備え
、一個中隊250人を持ってその警備に当てている。
現在首都から北北東に位置し高所でもあるこの辺りは、短い夏を謳歌した後の初秋を迎えており、眼下
には燃えるような紅葉の森が広がっている。
日没まであとわずかという時間帯、城壁に篝火を灯してまわる兵士の歩みが止まる。
沈む夕日と輝く尾根、眼下に広がる錦の樹海。刻一刻と変化する、美しい夕焼けに心を奪われているよ
うだ。
「マナ分隊長!」城壁内部への扉から声がかかった。「打合せがはじまります」
「今行く」応えたのはは辺境の地にめずらしい、女性の声だった。
アビゲイル・マナが北面国境警備隊に配属され、山の砦と呼ばれる城砦に配備されて3月。
雄大な景観を持つ任地を気に入っている。
ホールには既に小隊が整列しセルゲイダ・ロク小隊長が来るのを待っていた。
アビゲイルはロク小隊の半分をあずかる分隊長を拝命している。もう一人の分隊長、ハザウエイ・カイ
の横に並ぶ。
ハザウエイは20代前半の茶色の髪と目をもつ、威丈夫である。鞍上での槍の使い手で、部下の面倒見
もよく、他の隊からも一目置かれる存在である。アビゲイルも着任当時より何かと頼りにしていた。
まもまく小隊長が入室し、図面をもって行程の説明をはじめた。
ロク小隊50名は明日より5日間の予定で北面国境警備隊の本部がある城塞都市「北城」に物資補給を
兼ねた定期連絡の任務につく。
行きは街道をそれ国境界付近を巡視しつつ北城に赴き、冬に向けた物資を受け取り、帰りは最短経路を
とる。略奪者が行きかう晩秋から冬場に比べると、幾分気楽な行程である。
中日の一日は休暇が与えられる。北城は、軍事目的の城塞とはいえ民間人も多く居住し、北方では一番
にぎやかな都市である。
兵士にとっては実に3月ぶりの街での休暇であり、気もそぞろといったところで、小隊長の指示もあま
り頭に入ったように思えない状態であった。
アビゲイルとハザウエイは苦笑して肩を竦めた。
北城への往路は騎乗ということもあり、2日目の日の暮れる前に北城へ入城することができた。
ロク小隊長がハザウエイを伴い、城主に伺候する間にアビゲイルは小隊に割当てられた厩舎に馬を入れ
、手続きを済ませて宿舎へ入所した。
10人一部屋の雑居房に放り込まれている部下を集め、2夜の休暇の間の羽目をはずさないよう注意を
あたえ、解散させる。
部下達はアビゲイルを飲みに誘ったが、最期は色街に繰り出すことがわかっているのでやんわりと断り
、皆を送り出した。
一息ついて、自分に割当てられた部屋に・・・といっても、ロク小隊長の部屋の次の間に分隊長が控え
るだけなのだが・・・やっと落ち着いた時には、日が落ちていた。
ロク小隊長の荷物を部屋に運びこんだあと、次の間に2つある寝台のうち、窓のないほうを選んで私物
を放り込む。
2人が帰ってくる前にと急いで湯を使い、こざっぱりした私服に着替えた。私服、といっても支給品で
あるので、粗悪なチュニックとズボンである。
乗馬用の長軍靴を手入れしている時に、2人が城主のもとから帰ってきた。
「アビゲイル。申し訳ないが、なにかつまみになるようなものを見繕ってきてくれないか?」
ロク小隊長は満面の笑みで、下賜品の葡萄酒を両手にかかげた。後ろのハザウエイは心なしか上気した
興奮を抑えた顔をしている。
アビゲイルは怪訝な面持ちで、兵士用の食堂に向かう。
賄人に適当に見繕ってもらい、三人分の軽食と酒のつまみを準備し、葡萄酒を支給品の銅のコップで飲
むのも無粋かと思い、グラスを借りた。
部屋に帰ると、2人はそれぞれ葡萄酒の栓と格闘中だった。
葡萄酒は紅玉を溶かしたような赤い物と、琥珀色のものの2種類ある。
まず赤い葡萄酒をグラスに注ぎ、目の高さにかかげる。「カイ小隊長に!」その言葉にアビゲイルは驚
き、まじまじとハザウエイを見た。
「おどろいた。ご出世おめでとう!」改めて杯を重ね、言祝ぐ。
「西城管轄の、砂岩城へ転属になったんだ。」
王国の西方面はここ数年、砂漠の国との小競り合いが続いている。国内随一の精鋭が集められている方
面であり、中堅どころの兵士にとっては栄達の場である。
因みにアビゲイルの父も砂岩城、と呼ばれる城塞都市の所属で中隊長として250人を束ねる職にあっ
た。
さすがに下賜された葡萄酒は味も調っており、飲みやすい。杯はどんどん進み、赤い葡萄酒の瓶はあっ
という間に空になった。
アビゲイルは普段、アルコールをたしなまないが、このときばかりは、飲んだ。
転属の辞令がおりたとなれば、ハザウエイは山の砦に帰ることなくこのまま砂岩城へと出立することに
なる。3人で酒を飲むのはこれで最期となるだろう。
ロク小隊長は誇らしげに言う。「ハザウエイは俺の部下の中では一番頼りになるやつだ。手放すのは惜
しいが、どこへ出しても恥ずかしくない。」
大柄な威丈夫が、はにかんだ様な照れたような顔をする様子が微笑ましく、その姿をつまみに更に杯が
進む。
2本の葡萄酒はあっという間に空になり、アルコールに強くないロク小隊長が酔いつぶれてしまった。
品が良い物は市販の物よりずっとアルコール度数も高いようだ。
2人の分隊長は彼らの小隊長を寝台に抱え上げ、靴を脱がせ、夜具をかけて退室した。
ハザウエイは自分の寝台にひっくり返っている。無理もない、本日の主役はかるく葡萄酒1本を飲まさ
れたのだ。
「ハザウエイ、水は?」自分のコップに水を注ぎながら、声を殺して問いかけたが、反応がない。
「寝たのか・・・?」
酔いのせいなのか酷く暑く感じ、ハザウエイの身体の上から、小窓を開けた。頬をなぶる微風が心地よ
い。
不意にハザウエイの手が伸び、アビゲイルを抱き取った。アビゲイルは完全に虚を突かれて、足場がな
い。
アルコールのせいか体の反応も鈍く、抵抗するま間もなくハザウエイの大きな身体に抱きこまれてしま
った。
「アビゲイル」耳の後ろから思いいれたっぷりに名を呼ばれて、アビゲイルは戸惑う。
「一度でいいんだ。想いを遂げさせてくれ」しっかりと巻き締められて、苦しい。
両手がおずおずとアビゲイルの体のラインを探り始める。
「君がわるい」後ろから抱え込むように押さえつけ、ささやく。「男の寝台に上がりこんだりするから
」
言い訳を口にしながら、ハザウエイは段々と大胆に手を動かし、ついには素肌をまさぐりはじめた。
当のアビゲイルというと。
ひどく醒めた気分であった。精神的にも肉体的にも、何の興奮もない。
ハザウエイが「好きだった」だの「アビゲイルは柔らかい」だの「肌がきれいだ」だの、やくたいもないことを口走るごと、醒める。
抵抗するのも馬鹿らしくなって、脱力してハザウエイのなすがままチュニックを引き抜かれた。
うなじを行き交うハザウエイの唇や吐息も、乳房をまさぐる指も、何の感慨もわかない。
嫌悪感がないだけましか、と大きく溜息をついた。
ハザウエイはアビゲイルの溜息を快楽の兆しと受け取ったようだ。より大胆に、胸を揉みしだき、内腿に指を這わせる。
やがて、後ろからの体制に飽きたのか、軽々と体勢を入れ替えて組み敷き、正面からアビゲイルを見下ろした。
下着を取り去り、完全に素裸にされたアビゲイルを見て、感嘆の声を上げた。「・・・きれいだ」
実際に、薄明かりに浮かび上がるアビゲイルのしなやかな肢体は美しいものだった。
熱があるような潤んだ瞳と、荒い息のハザウエイは、これがお互い求め合った上での姿なら魅力的に見えるのだろうが、何の盛り上がりもないアビゲイルにとっては興ざめに感じられる。
醒めた顔を見られるのもイヤなので、顔をそむける。
「恥ずかしがらなくてもいいんだ。ほんとにキレイだ。」アビゲイルの細いあごを持ち上げ、接吻をする。
舌を入れ歯列を割り、咥内を蹂躙する。「夢みたいだ・・・アビゲイル」
アビゲイルはされるがままになっていたが、一人盛り上がるハザウエイが妙におかしくて、笑いがこみ上げてきた。
さすがにそんな顔をみせるのは失礼かと思い、ハザウエイの首に両手を巻きつけ、表情を隠す。
その行為にますますハザウエイが気をよくし、アビゲイルの両膝を割って、腰を中に入れた。
ハザウエイの両手と唇の興味は胸元に移った。決して大きくはないが、形のよいそれを、いい様もみしだかれ、頂を強く吸われる。
快楽は一向にわかないのだが、外部からの刺激に先端がしこる。「感じてくれているんだね。こんなに硬くして・・・」
まさか、アビゲイルがうっとりと乳首を舐めまわす自分を「この男はこんな顔をしていたっけ」などと思いながら見ているとは夢にも思うまい。
アビゲイルはひどく手持ち無沙汰に感じてハザウエイの茶色の髪に指を絡ませ、弄ぶ。
そういえば、タイロンも似たような癖のある茶髪だったな、などとぼんやり考えている。
いま、男は、アビゲイルの大腿を限界まで押し広げ抱え込み、亀裂に唇を当てている。
日に焼けていない内腿が白く浮かび上がり、その両足の間にある茶色の頭はせわしなく動き回っていた。
夢中でぴちゃり、ぴちゃりと水音をさせて性器を舐め上げているハザウエイを、アビゲイルは冷静に眺めていた。
歯が当たったり、強く吸い上げられすぎで痛みが走ったりすると身じろぎをして刺激から逃れようとするアビゲイルの反応を自分の都合のよいように解釈し、夢中でぴちゃり、ぴちゃりと水音をさせて性器を舐め上げている男を、アビゲイルは冷静に眺めていた。
なんで、こんなに無感動なのか自分が理解できない。なりゆきとはいえ強姦ではないのだから、もうちょっと快いものではないのか?
もともとハザウエイを信頼のおける同僚だと思って、男として見てなかったからか。暴行をうけてこの方、異性と交わる行為に興味がもてなくなったしまったのか。
アビゲイルは多くない性体験を思い返してみるが、情交に心地よさを感じたことがないように思えてきた。
神婚で処女をささげたときは確かに意識を手放すほどの快美を感じたというのに。
「・・・・・・ふ・・・ゥ」深い溜息をついて、天を仰いだ。
ハザウエイが両足のあいだに入り込んでにじりあがってきた。
「・・・イったの?」耳元に口を寄せてささやく。
アビゲイルはいまさら違うともいえず、片手でハザウエイの頭を引き寄せて、表情を隠す。あたかも満足したように。・・・欺瞞だ。
思わず吐いた溜息を、ハザウエイが快楽の余韻と受け取ってくれればいいのだが。こんな自分を抱くハザウエイを気の毒に感じた。
ハザウエイはアビゲイルの空いた片手をとり、自分の股間に誘導する。そこは既に熱く屹立しており、アビゲイルを待ち構えていた。「アビゲイルのせいでこんなになったんだ」
手のひらに先走りの露とピクリと脈打つ幹が感じられる。「・・・うぅっ」ハザウエイがアビゲイルの手ごと男根を包み込み扱き上げた。
その部分がよりいっそう硬度をまし、天を衝き、震えているのがアビゲイルにも見える。「あぁ・・・アビゲイル、とてもいい・・・」夢中でその部分を見つめるハザウエイの顔を直視しかねて、天を仰いだ。
ハザウエイのもう片方の手はアビゲイルの入口を探りあて、指を体内に押し込む。異物感にアビゲイルは身じろぎした。「気持ちいい?・・・感じるの?」
指を増やし、出し入れを繰り返してほぐしてゆく。
外部刺激により多少分泌液がにじみ出てくる様子に満足し、耳元で熱に浮かされたように「ひとつになりたい」と繰り返す。
やがて、アビゲイルの腰は持上げられ、ハザウエイの男根の先が入口にあてがわれた。焦らすように2度3度と秘唇を往復する。
「アビゲイル・・・いい?入るよ?」少し困ったような上目使いの微笑を向けられ、ハザウエイは多少残っていた理性がとんだ。一気に腰を進める。
この期に及んで、意志を確かめるハザウエイが滑稽だと笑いが込み上げていた、などとは口が裂けてもいえない。
ハザウエイが突き上げるように腰を使い、とうとう、男根を根元までアビゲイルの胎内に納めた。
アビゲイルの内奥は、異物を押し出そうとしてハザウエイをキチキチと締め上げていた。「う・・・きつ・・い。・・・大丈夫?アビゲイル」
乱れて頬にかかった髪を払って、接吻をしながら身体をより密着させる。アビゲイルの身体を強く抱きしめ接吻した。
「やっとひとつになれた・・・今だけは俺のものだ・・・あぁ俺のアビゲイル」歌うように、ささやきかける。
ゆっくりとハザウエイが腰を動かし始める。「きもちいい?」「感じる?」絶えず聞かれるのが疎ましく「ハザウエイは?」とささやき問い返してみた。
「すごく気持ちいい・・・すぐに果ててしまいそうだ」目を閉じ、うっとりとした顔でひたすらに腰を振るハザウエイをうらやましく思った。
ふ、と目を上げると先程押し上げた窓のガラスに自分達が映っていることに気が付いた。
相手の男の大きな身体の下に組み敷かれている自分が冷たく残酷な顔をしているような気がして、身震いする。映りこんでいる姿を見まいと頭を振った。
「イきそう?」また自分の都合のよいように解釈したのだろう。満足げなハザウエイがアビゲイルをのぞきこむ。
蕩けていない顔を隠すために、再度ハザウエイの頭を両手で引きよせた。この癖のある髪に指を絡めていれば、多少は気がまぎれるような気がした。
狭い寝台の上で絡まり動くので、夜具に大きくしわが寄る。
ちょうどアビゲイルの腰のした辺りに大きなしこりができ、なんとも居心地が悪い。ハザウエイに持上げられている右足をはずして腰にまわし、立てた左足を基点に皺を乗り越えようとした。
「ぅあう!」ハザウエイがうめく。アビゲイルの胎内が大きくねじれ、男根が絞られるような大きなうねりに飲み込まれたのだ。
「アァビゲイル・・・すごい・・」額には汗が珠になり、余裕がない様子が窺える。
「・・・はぁっあっぅ俺、もう持たない・・・アビゲイル一緒にイこう。・・・一緒に」普段の落ち着いた分隊長の姿など微塵もない。
ハザウエイの限界が早くおとずれるなら・・・アビゲイルは先程と同じ動作を繰り返した。
「っく・・・アビゲ・・イル」ハザウエイの限界は間近だ。律動は、早く、強くなっていく。
アビゲイルはハザウエイの頭を引きよせささやいた。「ハザウエイ・・・身籠るのはこまる・・・」
「ぁあっ!」名を呼ばれたその瞬間、ハザウエイに至福の時がおとずれた。アビゲイルのささやきの後半は耳に入ったかどうか。
アビゲイルをを強く抱きしめて、短く息を吐きながら強く腰を打ちつける。同時に男根は大きく脈打ち、アビゲイルの胎内で滾る熱がはじけた・・・
2度3度と大きく引いては深く突き、欲望を全て吐き出した。
男根をアビゲイルの胎内にのこしたまま、覆いかぶさって再度抱きしめた。耳元で、ささやく。「よかった?」
アビゲイルは全身がけだるくて、返事をするのも億劫となっていた。首に巻いたままの腕で、ハザウエイの髪を梳きながら、溜息をつく。
身体の上から退いてほしい・・・
「ごめんな、声を殺すの大変だっただろ?俺加減できなくて・・・」言いながら、男根を引き抜く。
そのまま、アビゲイルの横にごろんと横になり、肩を抱き寄せた。いとおしそうに頬をなで額に口付けた。
「小隊長を起こすのはまずいもんな・・・」
夜具の上掛けを手繰り寄せ、自分自身とアビゲイルの下半身を隠す。
アビゲイルは、窓に映る2人を、ひとごとの用にぼんやりと見つめていた。
アビゲイルはしばらくの間、となりですうすうと寝息を立てる男を眺めていた。
絡まっていた腕をそっと解いて寝台を後にする。2人で寝るには狭いじゃないか、と言い訳めいたこと
を口に乗せてみた。
投げ捨てられていた、自分の下着やチュニックを拾い上げ、部屋の反対にある自分の寝台へ引き上げる
。
2・3歩歩いたところで、胎内から妙に水っぽいハザウエイの残滓が零れ落ちた。
ゆっくりと伝い落ちる感覚に、背筋がぞくぞくとした。全ての行為が終わってしまってから、俗に言う
「感じる」状態があることに、混乱した。
慌ててつたい落ちたものを、下着であったもので拭いさる。手布を濡らして、全身を隈なく拭き清めた
。
ハザウエイは遠慮なく身体の彼方此方に吸痕をのこしたので、明日からしばらく着る物に気を配らなく
てはいけない。
明日、何事もなかったように振舞えるだろうか?
窓から入ってくる夜風は乾いていて、頬に心地いい。
男から受ける愛撫より風のほうがいいなんてふざけてる・・・なんだかむなしい。
とめどなく考えながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。
おしまい。
なんだか、たくさん書きたくなって、またまたアビゲイルはオアズケ状態になってしまいました。次こ
そは蕩けてもらいます!
しかし、独りよがりのハザウエイが不憫です。
誤字がけっこうあります。ごめんなさい。。。
あれ?改行もへん。次から気をつけます。
GJ!
醒めてるアビゲイルもイイ!
次回もwktk!
アビゲイルキテタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
相変わらずのクオリティにハァハァ。
次回も楽しみです。
>>237 GJ!このシリーズ好きだわ。
現在の醒めに未来のエロエロを期待させられる。
次回もwktkで待ってるのでよろしくお願いします。
湖畔に建つ石造りの城郭が、その主を変えてから二月ほどたった頃のこと。
周辺の辺境伯領をとりあえず平定したヴァイオレットは、根拠地にて今後の戦略を練っておりました。
かっては湖を訪れる鳥達にちなんで『鷺の城』ともいわれたこの城も、
誰が呼び始めたのか『菫の城』、『竜殺しの城』と呼ばれ始めています。
しかし、ヴィオラにとって城の呼び名などはどうでも良いこと。
それよりも近いうちに起るはずの討伐軍との戦の方が、遥かに重要でありました。
ヴィオラの手勢はもともと冒険者や傭兵だった者たちをかき集めた物。
彼らを訓練した上で、戦闘行動ができるまでに組織しなければならないのです。
辺境伯領平定のなかで、おぼろげながら軍の形を整えてきましたが、
本格的な会戦が出来る様にするためには、まだ十分とは言えない状態でした。
そのため、ヴィオラは日中の多くの時間を錬兵と新規募兵に充て、
残りを新領主としての裁判、交渉、謁見、儀礼に費やし、深夜まで政務を執っておりました。
「………?」
誰かに自分の行動を見られている気配を感じ取り、ヴィオラは文の途中で手を止めました。
「マーヤ、入って来い」
不思議なことに、呼びかけたのは廊下に続くドアに向かってではありません。
「どうした、入って来いと言ったんだぞ?」
ヴィオラはペンを置いてバルコニーに出ると、再び誰もいない暗闇に向かって話しかけます。
しかし、聞こえてくるのは森の梟の鳴き声ばかり、何の返事もありませんでした。
「はぁ…」
ため息を一つ吐くと、古代語のまじないを唱えます。
「パイアケス島の黄金よ、不届き者を懲らしめろ!」
その言葉を発した瞬間、城の壁に張り付いていた影が剥がれ落ちてきました。
ヴィオラはその影がバルコニーに落ちる寸前に、それを抱きとめます。
「素直に出てこないからだぞ、横着者」
「うぐぅぅぅ…」
呻き声を上げてヴィオラに抱えれられているのは、黒装束を着た少女でございました。
この少女は、月明かりがもたらす僅かな影にその身を潜めていたのです。
そう、これこそ森羅万象のあらゆる物に隠れ、諜報、破壊工作、暗殺等を為すという『シノビ』の技。
今宵はシノビの少女マーヤとヴィオラのお話をいたしましょう。
「黄金よ、仕置きはもう十分だ」
「ぐうぁ………はぁ、はぁ、はぁ」
少女を寝台に放り投げ、ヴィオラが古代語を唱えると、
苦痛にわなないていたマーヤはようやく息をつくことができました。
ヴィオラは相手の呼吸が整うのをみて問いかけます。
「報告を聞こうか?」
「な…南部諸侯で、王の招集に応じるものは少なく、
領袖格のホルヒート公とギラム辺境伯も、兵を出す動き無し…」
「確かか?」
「これは両名が王宮に送った使者が持参した、書状の写し」
マーヤが懐から取り出した紙片に書かれた内容を読むと、ヴィオラの頬に笑みが浮かびました。
「ほう、公爵の領地は蛮族に襲われ、ギラムは病気か。
………どうせ奴のことだ、金欠病か臆病だろう。それとも娼夫から病気でもうつされたか?」
「他の諸侯も同様……… 内大臣は『南部には疫病が流行っているのか!』と使者に怒鳴り散らす始末。
ただベルネとトランは派兵しており、近日中に王都に入る見通しでした」
「そこは仕方ないな。だが人質がいる限りベルネとは交渉の余地があるだろう。
………東部諸侯の様子は?」
「既に北部平原に集合するよう伝達されており、王宮では総勢二千名ほどの参加を見込んでいます」
「ふっ、王都からの討伐軍と合わせて両方向から攻撃する腹だな」
「………」
「他に変わったことは何かあったか?」
「………ひとつ」
「なんだ?」
「王宮と都では、今回の兵乱を鎮めるために、賊将ヴィオラを討ち取った『男』にローリア姫を娶らせる、
との勅が出されると噂が流れています」
「ぷっ、ぶははははははははっ!」
ヴィオラが笑うのも無理ありません。
竜から姫を救うのに姫を褒賞に出し、今度は竜殺しから姫を救うために姫を褒賞にするのですから。
まったく本末転倒も極まれり、でございます。
「ふふっ、よもやとは思うが、そんな勅が出たら身の程知らずどもが私に群がってくるだろうな?」
「『男』なら誰でもいいのでしたら、敵も味方も貴女の首を狙うでしょうよ。
………せいぜい戦場では背中にも注意することですね」
「ふっ、女達にもみくちゃにされるのは構わないが、相手が男じゃぞっとしない話だ」
よっぽど今の話が気に入ったのか、ヴィオラは寝台を叩いて笑い続けます。
「くははははっ、マーヤ、お前も男だったら良かったのにな? そしたらおまえも婿の資格があったぞ!」
「………この忌々しい呪いさえなければ、褒美など無くても殺しています」
ヴィオラの笑みとは対照的に、マーヤの声には憎悪と殺気に溢れていました。
「ふふ、二重の意味で無理だな。その呪いの解き方は私でも知らん。ましてお前の腕では私は倒せないよ」
「たとえ腕で及ばなくても、殺す方法は山ほどある………」
「ほう、罠でも仕掛けるか? 私の酒や食事に毒でも盛るか?」
マーヤの憎しみに満ちた言葉を聞くにつれ、ヴィオラはますます面白そうに笑います。
「それとも……あの時のように、寝込みでも襲うのか?」
「!!」
「はて、私が他の女を抱いている時を狙ってもいいかも知れないなぁ?………二人掛りでも私は構わないぞ」
「くっ…!」
屈辱にゆがむマーヤの顔には、例え敵わぬまでも打ちかかりたい、と書いてありましたが、
しかしそれは出来ません。
先程の言葉どおり、マーヤの身体にかけられた呪いが許さないのでございます。
「報告は終わりか?」
「はい………ぎゃぅ!」
「そうか、では残った問題はコレだけだな」
突然マーヤは脇腹を掴まれ、思わず悲鳴を上げました。
「私の目は節穴では無いぞ。この傷はいつ付けられたのだ!?」
「しっ、書記官長の部屋から、てっ手紙を盗み出すときに………」
「…まさか、尾けられはいないだろうな?」
「追手は、全て片付けて…ぁ、川に流し………
帰る道筋も、アーティスの街に向かう道を通って、そっそこから…森を抜けて北上したっ」
アーティスは王国最大の自治貿易都市、王都の情勢を探ろうと諜者が送られていても不自然ではありません。
「まあお前の腕だ。追けられていないというなら、問題なかろう」
そう言ってヴィオラは傷口を掴んだ手を放し、黒装束を脱がしにかかります。
「ちょっ…!?」
「動くな。傷を改めてやろう」
「いや、くそっ!止めっ………ぐぎゃああぁ!!」
ヴィオラの手を打ち払おうとした瞬間、マーヤの全身に激痛が走り、身体は寝台の上で反り返りました。
「があっ、はぁ…はっ…はっ…はっ………」
「こりない奴だな………、いい加減呪いの仕組みについて学習したらどうだ?」
ヴィオラはかまわず脱がし続けます。
抵抗があろうがなかろうが、女の服を剥ぎ取ることはヴィオラの得意技。
大陸屈指の技前でございますから、あっという間に上半身に纏っていた上着と帷子を脱がされてしまいます。
「うぅ…」
「傷は深くないな………膿んでいない所を見ると、毒も無さそうだが」
血に滲んだ包帯も外して確認すると、
ヴィオラは肌身離さず持っている、自慢の霊薬を傷口に塗りこみました。
「あんっ…」
「染みるだろうが我慢しろ。この軟膏を塗っておけば遅効性の毒があっても大丈夫だ」
「んっ…」
痛みの所為か、はたまた恥辱の為か、マーヤの瞳にはうっすらと涙が溜まります。
………ちゅうっ
ヴィオラは少女の顔に口を近づけ、その涙を唇で吸い取りました。
「っ!?」
「分かっているのか? お前は私の道具。お前の目は私の目、お前の耳は私の耳だ。
お前の身体は勝手に傷ついていいモノじゃないんだぞ?」
「だっ…だれが貴様のものになんかっ」
「マーヤ、お前の腹に『コレ』が付いている限り、強がっても無駄だ」
「くそぅっ!」
ヴィオラの指がマーヤの臍に付けられた金具に伸びると、少女は屈辱に喘ぎました。
この臍に穿たれた黄金のピアスこそ、ヴィオラがマーヤにかけた制約。
古代の魔道士が作り上げたという呪具、『パイアケス島の黄金』でございます。
はるかな昔、魔道が今日よりも栄えていた時代、
ある錬金術師が自分に反抗することのない忠実な僕を手に入れるべく、さまざまな方法を追求しておりました。
その研究の完成形の一つが、この黄金のピアスなのでございます。
効果のほどは先程ご覧の通り、呪文を唱えれば、術師の好きなだけ相手に苦痛を与えることができ、
また、ピアスを付けられた者が主を傷つけたり、不利益になるように謀ったりすると、
『シノビ』ですら耐えられない激痛が襲いかかるのです。
さらに恐ろしいことは、黄金のピアスが『呪いをかける魔道具』ではない、ということです。
この『パイアケス島の黄金』は、マーヤの身体の『呪縛を封じる魔道具』なのです。
術をかけられた者は、術師に定期的に呪縛を封じ直して貰わなければなりません。
もし無理やりに外したり、付けられた部分を身体ごと切り落としたり、
そして、術師に封じ直して貰えなかった場合は、
呪縛を抑えることが出来なくなり、死んでも呪いの苦痛から逃れる事ができなくなるのでございます。
かってヴィオラの命を奪うために遣わされたマーヤでしたが、
返り討ちにあった上に、従属の呪具を嵌められてしまったのでした。
「ふふふっ♪」
「ええっ、なっ何を!?」
「いや、お前は主に隠し事をする不届きなシノビだからな。 下の方にも傷を隠していないか調べてやろう」
「なっ、そっちには傷を受けてないからっ!」
そんな抗議の通じるヴィオラではありません。
帯紐を手際よく解くと、脚半と脚衣をスルスルと脱がして相手を全裸にしてしまいました。
「むふふっ、相変わらず肌理の細かい綺麗な肌だ…」
下穿きまで剥ぎ取って、ヴィオラはマーヤの足に頬擦りしました。
その顔で本当に楽しそうに、脛から太ももに至るまで存分にマーヤの肌を堪能いたします。
「ん? こんな所に裂け目があるなぁ」
「ひぁん!」
「それに少し湿っているぞ? …こんな傷を隠しておくとは、困った奴だ」
「このっ畜生! きっ貴様の股座にも、ぉ同じ傷がっ…付いてるんだろうが! ぅぎぃいっ!!」
相手の顔を蹴りにかかった脚も、呪いの痛みのあまり途中で力を失います。
「ほう? 私にも付いているなら、後で『誰か』に癒して貰わないとなあ。
指で薬を塗りつけてもらおうか? それとも舌で優しく舐めてもらおうかな?」
「この、変態………色狂い!」
「ふふ、私が色狂いだとすればお前は何だ? 呪いの痛みが襲い掛かると知った上で、なお抗うんだからな。
…………ひょっとしてお前は嬲られたり、いたぶられる事で悦ぶ癖があるのか?」
「うぁ…そんなことは、ぁああっ」
「そうならそう言ってくれてもいいぞ? 私もお前の扱い方を変えよう」
「ちがう、そんな女じゃ……あぁん」
「やっぱり優しくされる方が好いか?」
「……………」
「ふふ、黙っていては分からないぞ」
……… がり、
「ぃいやぁいいっ!!」
花芯に歯を立てられて、意味を成さない叫び声があがりました。
「んん〜♪ 嫌なのか良いのか、いまいち分からないなぁ?」
「い…いやぁ、齧られるのは嫌ぁ」
「うふふ、噛まれるのは嫌か………」
……… べろり、
「んぁん!」
「ふん、舐められるのはいいのかな?」
「ふぅあぁ………あああああっん」
ヴィオラの舌は、アーティスの妓女たちに『悪魔と取引をした舌』とまで呼ばれた大業物。
奥まで舐め抜かれると、シノビの少女ですら我を忘れるほどでございます。
相手を一度逝かせると、ヴィオラは自分も夜着を脱いでマーヤに囁きかけました。
「私だけ動くのも面白くないな。 マーヤ、お前もしてくれよ」
「はい………………………ちゅっ」
少女はこれ以上抗おうとせず、主に応じてそっと口付けを交わすのでした。
………………………
相手の寝息を確認して、マーヤはそっとその腕の中から抜けました。
「………」
「しばらくは隠密行の用はない。その傷が治るまで、オケアノスの世話でもしていろ」
「!?」
剥ぎ取られた装束を音を立てぬように着直しているとき、背後から声をかけられました。
気取られぬように動いたつもりでしょうが、寝所でヴィオラの耳目を誤魔化すことなどできません。
「しかし、お前は事が終わるとすぐに出て行ってしまうな…… 一緒に夜を明かす位はかまわないだろ?
あんなに情けを交わした仲なのに、余りにつれないぞ」
「………正直に言ってよろしいので?」
「うん、許す」
「じゃあお答えしますがね、我々シノビの者は身体に匂いが付いたら終わりなんです!
草叢に、人込みに、暗闇に紛れるときには、
その場の環境と同化して気取られなくするのがシノビの術なんです!」
ヴィオラの許しを得たのをいいことに、マーヤは思う存分ぶちまけます。
「だから貴女とずっと抱きしめられていて、貴女の身体から臭ってくる、
甘ったるくて、厭らしくて、猥褻なスミレの匂いが私の身体に染み付いてしまったら、
シノビの務めが果たせなくなるんですよっ!!」
「……なるほど、そうゆう訳があったのか」
そう、いくら芳しくても、匂いはシノビの大敵。
どんなに上手に隠れていても、匂いがあっては即座に存在がばれてしまいます。
無味無臭、空気のように注意を引かないモノと化す事こそ、シノビの本領なのです。
「ふふっ、ふはははははははっ」
「なにがそんなに可笑しいんですか?」
「いや、ずっと不思議だったんだが、ようやく理由が分かったよ。
お前のは『他の女より薄味だ』と思ってたが、それはシノビの心得だったんだな?」
「…!」
ヴィオラの言葉を聴いた瞬間、空気を裂く刃音とともに部屋の明かりが消え、
同時にマーヤの気配も消えました。
「あの程度で照れるとは、…未熟者め」
いつの間にやら窓が開けられており、夜風がヴィオラの体に当たります。
蝋燭の火はマーヤの放った苦無で消されてしまいましたが、点け直すのも億劫です。
しばらくは手元に置いておく心算なので、次はどんな風にからかってやるか考えると、
雑務の退屈さも少しは紛れようというものです。
「今日は少しやり過ぎたかな… 手負いの身なんだから、ふふ、次は労わってやるか」
ヴィオラはやりかけの執務は明日に回すこととし、そのまま寝ることにいたしました。
いかなる事態にも心動かされず、務めを果たすのがシノビの業。
そこから言えば、ヴィオラの言葉どおりマーヤは未熟となりましょうか。
しかし、喜怒哀楽を捨てて、空気や土塊の如く生きることに、何の喜びがございましょう?
戦うだけの人形で終わるより、激情と矛盾を抱いて生きる今の方がマーヤとしても幸せかもしれません。
(終わり)
ツン奴隷は、ツンデレと違って定義が確立している訳ではないので、
自分なりに解釈を加えて造ってみた。
でも当初ヴァイオレットはドラクエ1の勇者を女にしてみたら?
という設定だったんだけどなあ… いつの間にこんなキャラになったんだろ。
何か呼んでて違和感があるな・・・なんだろう
イマイチ萌えない
GJ 確かにツン奴隷だ、
だけれど奴隷っぽさが少量というかマーヤの心理描写がなく、隷属(今回はエロ)描写が少ないため『ツン奴隷』分が不足しているように思える。
『ツン』は有れども物足りない……
しかしヴィオラはイイ女だ
語り口調で心理描写は書きにくいよ
投下してもいいかな?
長いんだけど
おっけー、やって下さいな!
うららかな午後。
弱く涼しい風に撫でられて、ルーシーは髪を押さえた。
左手は剣を突きつけたままだ。
足蹴にしている男の、苦しげな呼吸にため息をつき、
心持ちあごを上げてたまま、見下ろすように眺めていた。
「言え。言えば離してやる」
鎖骨の間に尖った靴先をめり込ませて、彼女は言った。
足蹴にされた男は、狭くなる気道に顔を歪めたが、頑なに口を開こうとしない。
瀕死の状態ではあったが、彼の騎士としてのプライドはいまだ健在のようだ。
ルーシーは何度目かのため息をついた。
男は、「殺せ」と言う。
「なるべくなら無駄な殺生は避けたいのでね」
言って少し、力を緩めてやる。
男は途端に大きく息を吸った。
青ざめていた顔が少し、生気を取り戻したところで、
ルーシーは再び体重を乗せた。
「苦しいか?」
ぐうっとうめく声に、ルーシーの剣は彼の口先にあてられた。
「言ってしまえ、忠義を尽くしたところでこの辺境の地で、
誰も君を覚えてはいまい。
どっちにしろ、奴はこの手に落ちるんだ。
むしろそのための犠牲が少なくなる、君が話してくれればな」
柔らかく、同情するように彼女は説く。
彼女の声は時に悲しげに響き、聞くものの耳にこんこんと入り込む。
その効果は彼女自身がよく知っていた。
男の顔に哀願するような表情が浮かんだ。
「いいか?今、
君はこの先の陣営をくんだ仲間を、みすみす死に追いやろうとしているところだ。
君が話さないことで、確実に襲撃される、
君の死と引き換えになるのは、
役に立たない君のその自尊心だけだ」
言ってしまえ・・・・・ルーシーは踏みつけている右足に上半身を預け、
ますます苦しげに悶える男を覗き込む。
これ以上気道を押さえ込めば、確実に呼吸できなくなるそのぎりぎりの隙間で、
男は浅い呼吸を繰り返して、彼女の言葉にじっと耳を傾ける。
「・・・自尊心と、仲間の命、どっちが大切だ?
どっちがいま、正義と思う?
ここで忠義とやらを押し通したところで、国王は君と君の仲間に、何をしてくれるんだ?」
男の葛藤に、ルーシーは黙って待つ。
しばらくして、
男は、意思を持って彼女を見据えると、次に自分の首の上に視線を移動させ何かを訴えた。
「・・・・・」
脚をどかせ、と言うことらしい。
しゃべる気になったか
ルーシーは脚を緩める。
男は大きな呼吸をしようとしてむせ返り、顔を真っ赤にさせながらのたうった。
だから、早く話せばよかったのに。
ルーシーは、男を見て思う。
「あの、柵の、・・・・・」
男は、一言話し出そうとしてはむせこむ。
途切れ途切れの説明に呆れて、
「ゆっくりでいいぞ」
ルーシーは剣を突きつけたまま、言う。
上半身を起こし、男はその剣をちら、と見て怯えたような目をした。
そして遠慮がちに咳を繰り返してから、大きく深呼吸をして、話しはじめた。
「ご苦労様」
話し終えた男に、ルーシーが言うと、
「君のいう正義、目が覚めたようだ」
立てひざをついて、そこに手を置いて、男は言った。
生存を選んだ彼の目、ルーシーはおかしくなった。
なんだったんだ、さっきまでのかたくなさは。
話して荷を降ろしたような男は、自責に囚われてもいないようで、
すっかり諦念しきった顔をしていた。
自嘲するように、口元が笑っている。
あの国王なんかに仕えてるからよ、ルーシーは思い立ち上がった。
まあ、この先会うこともない男だ、生かそうが殺そうがたいした違いはない。
敵はこいつではない。
ルーシーは、「この道を戻ったところに泉がある」と指差し、
「そこで傷を癒すといい」
と言った。それからひゅうッと口笛をふくと、飼いならした黒鳥を呼び寄せる。
ごおお、と大きな風の音。
羽の巻き起こす旋風に男はよろけ、ルーシーは笑うと、
黒鳥の頭を、つま先を伸ばしてなでて「届けてやれ」と命令をした。
「皇女様」
侍女の声に、転寝をしていた彼女は、ゆっくりと身を起こした。
庭園に置かれた柔らかな寝椅子の上で、
「勅使が謁見を願っておりますが、いかがいたしましょう?」
ルーシーはぼんやりと寝ぼけた頭を振って、
「二時間後。できればもう少し引き伸ばしておいて」
と答える。いかがも何も、断ることは出来はしまい。
御意、と下がっていく侍女にルーシーはここが城内であることを思う。
あの男は、無事に逃れただろうか。
小鳥が鳴き、淡い緑と咲き誇る花に囲まれた庭園で、ルーシーは思い出す。
仰向けになり、空を眺めて新たな作戦を立てはじめた。
肩までの淡く青みかかった髪は緩やかな螺旋を描き、彼女の奔放な性格をよく
表しているようでもあり、その髪をねじるのが何かを考えるときの彼女のくせだった。
ねじった毛先を空にかざし、それの向きを変えたりして眺めているうちに、
彼女の顔は次第に険しくなっていく。
あの男に問い詰めた奴の居場所・・・・・それが確実とも限らない。
なぜ、辺境の地ばかりを狙う?
拠点である奴の城内に忍び込むのは危険すぎた。
外地であれば勝手もわからずその分隙が出来る。そこを狙うつもりだった。
次に奴が現われる陣営はどこだ?
辺境にいくつもいくつも組まれた奴の陣営。
もしかして、彼の指したそれはダミーであるのかもしれない。
無駄足になるかもしれない。
奴、とルーシーがさすのは、彼女の幼いとき、この城を陥落させた隣国の王である。
肥沃な領地、土地柄か穏やかな気性を持つこの国に襲撃は容赦なく行われ、
両親は名だけの平和条約を突きつけられた。
そして、契約を交わした直後、何者かによって毒殺される。
すると奴はもったいぶりながらもあえて自分が治めることはせず、まるで善人ぶって、幼い彼女を城主とし、
その摂政をつとめることで、実質上この国を配下に属させた。
もう十数年前の話になる。
いまだ後見の余地有、と彼女の実権は奪われたままだ。
ルーシーが奴らを恨んでも仕方ないことだ、しかし、
当然、衛兵を募ることも組織することも、奴に掌握される。
国を挙げて反乱を起こすのは不可能に近い。
ルーシーは、ごく側近の侍女のみを従え旗揚げ、復讐を誓った。
実権を取り戻すとまではいかないまでも、せめて。
何者かに、かの国の王が刺されればよいのだ。
自国民を守るためには、決して捕まるわけにも刺し違えるわけにも行かない。
反乱は隠密のうちに、すべてをまっとうしなくてはならない。
。
剣の使い方は、かの国の公用語であるトロイ語の勉強、と称し招きよせた。
古くからの騎士は文武両道を鍛え上げられており、
そして中にはこちらの意図に沿ったものが多数残っているようだ。
その中からも、より狡猾な者を選んで教えを乞うた。
彼は表向き第一線を辞した者として隠居を決め込んでいたが、
次第に皇女の計画を察すると、薄ら笑いを浮かべて恭しくつかえる旨を告げた。
習熟した老兵。キウイ、という。
なるほど、浅黒くくすんだ皮膚、薄く短い毛。ルーシーは思ったが、それは言わなかった。
歩き方こそよぼよぼと怪しく、当初彼女は疑いに疑い侍女のカミルにささやいた。
「大丈夫なの、あんな爺で」
カミルが答えようとしたその瞬間、老人の杖が飛んできた。
「油断禁物じゃな、何か羽虫が羽ばたいておる」
そう爺は笑った。ルーシーは驚きながらも息を潜め背後に回り、なにげなく爺に剣先を向けてみた。
途端爺のかかとが石を蹴り上げ飛ばし、その衝撃にはじかれ、剣を取り落とす。
ルーシーはさすがに慄然とした。
カミルはおずおずと話した。
「皇女様、あの見た目はじじいそのものでございますが・・・・
最後の最後にかの国の王子を盾に取り、あなた様を城主に、と折衝したのが、
このじじ・・・・いえ、彼でございます」
爺はくしゃりと微笑むと、ルーシーに剣を取るように促した。
「実に身の程をしらん皇女じゃな、いやそれこそ教え甲斐があると言うものか」
そういって精魂込めて彼女と侍女たちにすべてを注ぎ込んだ彼も、もう、いない。
ルーシーの支度がすんで、侍女は何か誓うように彼女と目を合わせる。
「わかってる」
彼女はにっこりと微笑む、まるで深窓の姫君のように。
世間知らずで、両親の死に何の疑問も抱かぬ、孤独で哀れな姫君。
大国に身を寄せるほかに出来ない、か弱き姫君。
ルーシーは、完全な演技のなかにはいりこんだ。
「ようこそおいでくださいました、長旅、お疲れのことと労いもうしあげます」
ルーシーは語尾を上げ、舌っ足らずな口調でそう述べた。
広間に、彼女の声が響く。
勅使は頭を下げたままだ、一瞬の間が開いた。
「は、ありがたきお言葉」
その間に、微妙な違和感を覚えながらも、ルーシーは
「お顔をあげてくださいな」
と微笑んだ。
彼はなかなか顔を上げようとしない。
「どうなさったの?あんまりお待たせしちゃったから、お首が固まってしまったのかしら・・・」
無邪気な姫の様子に、侍女や衛兵がくすくすと笑う。
「姫、失礼ですよ」
微笑みながら、老女がとがめる。
「あら、ゴメンナサイ・・・」
首をすくめる。笑いが小波のように広がる。
とっととあげないかしら、勅使にしてはなかなか鈍い奴。
ルーシーは昼寝を中断されたのもあり、少しイラついたのだが、
「恥かしがり屋さん、なのかしらね?」
いま彼女のやんちゃな髪はきれいに纏め上げられ、皇女としてふさわしく
豪奢なティアラが載せられていた。
ところどころに優雅におとされた後れ毛は、彼女を幼く無邪気にみせる。
「姫ったら・・・・」
老女の声と笑いさざめく衆に、やっと勅使は顔をあげ、そしてまっすぐにルーシーを見上げた。
その男に、見覚えがあった。
ルーシーの微笑んでいた目がすうっと強くなる。
逃げ延びたか。
「皇女ルイ・シェリル様」
男はここでいったん言葉をきった。
この男、気づいているな・・・・。
ルーシーは思い、男が狡猾にも敵軍に返り咲いたことに反吐が出る思いだった。
「ご機嫌麗しゅう、御国ますますのご繁栄こころよりお喜び申しあげます、皇女様におかれましては・・・」
いつ暴露にでるか分らない不安と動悸に、ルーシーは、
「長いご挨拶は、結構よ」
と甘ったれた声で、だがきっぱりと切り捨てた。
「では、久々の謁見賜り御礼だけ申し上げます」
男の目がルーシーを射るように見据えている。
久々、ときたか。
ここにいる侍従たちはすべて、老女ですら、ルーシーの計画を知らない。
ルーシーは意識して装って、老女らを頼るように見回し、
「覚えてないの、ごめんなさいね」
言って反応を男の見たが、それ以上に言及する気はないようだ。
老女はそっとルーシーを気遣い「使者も多く参りますものですから・・・」
男は「さようでございましょう」
こいつ、どう出る気かしら・・・この場で切りかかってくることはまずあるまいが、
近頃辺境で起きる不穏な動きについて、この皇女ルイ・シェリルの仕業と気づいただろう。
この情報の暴露、ましてや自国に持ち帰らせることはどうしても避けなくてはならない。
あのとき、止めを刺せばよかった。
が、今ここで後悔したところでどうにでもなるものでもない。
ルーシーは素早く頭を駆け巡らせる。
「ご用件をどうぞ?」
ルーシーはにっこりと微笑みかける。
お互いを探り合うような視線が絡み合う。
「では」と言って彼は背を伸ばした。
「近状についてお聞き及びのことと存じ上げます、
賊の出没、奇行について皇女様の御所見を賜り、
及び同盟国としてのご意向、助力のほど、お願いに参りました」
要するに征伐するから協力しろ、って命令か。
ルーシーはしばらく黙り、それからおもむろに、
「用向きはわかりました。
ですが、恥ずかしながら、貴国のご存知の通り、わが国の軍力というものは
ほとんどと言ってよいほど実戦経験の少ないものばかりですのよ」
あんたの国のせいで。
上目遣いに、彼をみやる。
彼の口端はゆがんだ。「おや?」
ルーシーはそっと息を呑んだ。
「噂ですが、大層優れた女騎士がいるとか・・・・」
「なんですって?」
ルーシーは立ち上がって彼の言葉を遮った。
するどく老女に向かって、
「そんな者がいるの?私は知らないわ、どういうこと?」
老女は突然の皇女の追及に戸惑い、慌てて「衛兵!」とよびつける。
近衛隊長が素早く膝をつき、皇女の前に礼を尽くした。
「恐れながら、申し上げます。
そのような者は、・・・誓って、おりませぬ。
・・・・・・勅使殿のお勘違いかと」
男の目的は、隊長を追い詰めることではない。
が、この場合、どちらに対しても敬意を払わなくてはならない隊長にとって、
内臓を吸い上げられるほどの苦役であったろう。
ルーシーは内心で彼に謝罪しながら、
「と、申しておりますけど・・・・」
とドレスをつまむ指も優雅に、玉座に座りなおしてにっこりとした。
「さようでございますか。いやこれはとんだ失礼を」
お許しください、男は不適に笑う。ルーシーは舌打ちをこらえた。
「噂にすぎないようですわね?」
「心よりお詫び申し上げます」
彼は素直に頭を下げた。
「時に、国王様はお変わりなく?」
ルーシーは、後れ毛をねじりながら聞いた。
「最近は乗馬に凝っておられるようでして、皇后様のご機嫌を損ねたばかりでございます」
屈託なく冗談を言う彼に、ルーシーは声を立てて笑い、
そこから、その場は歓談の場となった。
「もう、夜も遅うございますわ、使者殿にもてなしの用意を」
ルーシーは命じ、
「今宵は、どうぞ楽しんでらして」と微笑んだ。
男は、「は、有難き光栄」と答え、ルーシーから目を離さない。
勝負、か。
何事もないのに勅使を帰さなかったとあれば、反乱の火種と判断されることは明白。
かといって、もちろんこのまま帰すわけにも行かない。
暴露か?それは、彼の裏切り行為と、皇女の行為を天秤にかけるまでもない。
正当な方法では、八方塞がりだ。
ルーシーは意を決する。
事が露見した場合、私の国の民が犠牲になるのだ。
仕方ない。
彼はルーシーに、不埒にも身分を超え狼藉を働いたことにより、成敗される。
無理のある設定に皇女はうなだれた。
・・・・・・使うしか、ないか。
キウイが最後に残した秘薬。
それはいわゆる媚薬、というものでキウイは何度も念を押した。
「使い方は幾千通り。
が、くれぐれも、
恋とかの下賎な感情にお使いなさいますな」
過去の事例で言えば、当然にハニートラップがあり、他にも自白剤代わりに使う、
毒を仕込んだ女を忍び込ませて暗殺する場合に使う、脅迫に使う、
変わり処では、夢と思わせつつ徐々に、狂気に導くために使う、などがある。
ルーシーには、恋愛の経験などはない。
充分に美しい彼女ではあったが、それを利用する術を知らなかった。
果たして、いかに飲ませるべきか・・・
彼女はねじった髪を引っ張ってはほどき、何度かそれを繰り返した。
もてなしは十二分に盛況に終わり、それぞれが自室に引き上げる時間となった。
ルーシーはひらりとドレスをつまみ上げお辞儀をすると、
可愛らしく微笑んで、「使者殿、ごゆっくり」と首をかしげた。
「お言葉に甘えて」
男は頭を下げた。
ここでは飲ませられずに終わったが、それならそれで他の方法を取るだけだ。
ルーシーは言う。
「お休みあそばせ、ごゆっくり」
黙って眠る男ではないだろう。
ましてや、以前ルーシーに口を割られた屈辱もある。
男とルーシーの視線は絡み合う。
男は言った。
「また、明朝お会いいたしましょう」
月明かりの中、ルーシーはぱちりと目を開けた。
忠誠を誓った侍女がすぐそこに侍っている。
ルーシーが窓に目をやると、彼女は黙って頷き、それを音もなく開ける。
宴会のうちに油を差したと見え、それは静かに開かれた。
するりと天蓋の付いたベッドを抜け出ると、侍女はまた頷いて、
皇女の抜けた後に滑り込む。
ルーシーは頷き返し、窓の外に滑り降りた。
もう一度確認するようにベッドの中の侍女に微笑みかけると、外側から、その窓を閉める。
外の見回りに気づかれぬよう、彼女は声を殺して、
隣のバルコニーへと飛び移る。
裸足でひらりと宙に浮き、彼女は着地の衝撃をその足の裏に吸い込む。
そうしながら、徐々に階下へと降りていく。
最後に客間のある2階へと忍び降り、慎重にその部屋を覗き込んだ。
腰の短剣を手のひらで確認する。
それは今、自室で代わりを果たす彼女のものだった。
これで刺せば、そのイニシャルから割り出され、彼女は後に罪にとがめられるだろう。
わかっている。
ルーシーは、自分の責任の重さに深呼吸をした。
とにかく、彼を自室まで誘えばいい。
今はそれだけを考えよう。
胸元にひそめた媚薬。
一番に見えたものに欲望をもつ、という。
必ず、ルーシーでなければならなかった。
そして今頃、ルーシーの部屋を確認した老女が、
城内に配置された衛兵たちを、引き上げさせている。
「皇女と客人は無事、お休みになった。任務ご苦労である」
いかにものんびりとしたこの城には、反逆を訴え出る果敢な騎士もいない代わり、
騎士たちは大国に守られている安心感のなかで、仮眠を取る。
後は部屋の前の宿直に任せて。
老女は自分の就寝前に必ず宿直の侍女を集め点呼をとり、
注意事項を述べてまた配置に戻す。
軟弱な体勢。
狙うは、点呼している一瞬。その一瞬に彼が私の部屋へと忍び込めるよう。
ルーシーは時を狙いながら、老女を思い浮かべた。
老女はルーシーの育て親のようなものであり、彼女を守るためには身を挺するほどだった。
だからこそ、ルーシーは心配をかけたくなく、計画は話せない。
老女はきっと我慢を強いるだろう、だがそれは私のために。
その老女を騙すことに幾分気が引けたものの、計画が露呈されては元も子もない。
「ごめんね、ばあや」
ルーシーは無意識に呟く。
もちろん本日の彼の部屋の前の宿直は、ルーシーの息のかかった侍女だった。
点呼に行く前に、なんだかんだと上手く誘導してくれる手筈になっている。
窓から覗くと、客室に置かれたベッドはこんもりと盛り上がり、男は眠っているようだ。
ルーシーは侍女の仕組んだ鍵を針で解き開けた。
時間だ。
衛兵が見回りを終える頃だ。ここから、時間にして約20分。
老女が真剣な表情で点呼及び注意事項をおえるまで。
ルーシーは、ひらりと窓枠を乗り越えると、ベッドの脇に立った。
すやすやと眠る彼が見えた。
窓を閉め、サイドテーブルの水を横目で確認しつつ、眠る彼の横に腰掛、それに手を伸ばしつつ、
媚薬を口に含んだ。
すい、と水を口に足し、目を閉じ、そうであろうと言う箇所に優しく口付ける。
ルーシーは、そんな行為を受けたこともないが、これは侍女に教わった。
「優しく、ですよ。それからそっと舌でいじるんです」
口をあけるはずです。
なぜなら、女をあてがっておきましたから。
女を?ルーシーは目を見開いた。
「誰を?」
名をエルといった侍女は答えず、
彼はその余韻と誤解するはず、と言って笑った。
「ん・・・」と言って男はルーシーを抱き寄せる。
ルーシーはされるがままに目だけはきつく開けながら、
ぴったりと口を当て、含んだ液体を流し込もうと舌を動かした。
ところが、男は口を開けない。
合わさった唇のまま、ぐっと抱き寄せられたルーシーは液体をこぼさぬよう、
必死にそのまま唇を動かす。
そこへ、彼は突然素早く身を起こした。
そのまま仰向かされたルーシーは、逆流するその勢いに思わず、その液体を、
ごくん、と喉を鳴らして飲んでしまった。
「あ」
ルーシーはこの薬の効き目が確かなことを、誰よりもよく知っている。
心底から、寒気が襲った。
「来るとは思ってましたがね」
男は言い、「何を飲ませようとしてたんですか?まあ、あなたのその慌てぶりから言って、
よからぬものとは判断付きますが」
悠々と、水差しから注ぎ、口をゆすぐ。
「エルは」
裏切られた?
ルーシーは、焼け付くような喉の痛みに、そして内部の疼きに、堪えて聞いた。
「こちらにも薬学はありますよ」
「エルは?!」
自責の念に駆られたんですかねえ・・・男は言う。
「あなたが言った正義、だ」
だとすると、そのエルとやらに、あなたは何をしてあげたんですかねえ。
ルーシーはぐっと唇を噛んだ。
ただれるような痛みを、そこに感じていた。
触れて、なでて、どうか、触れて・・・・・・。
唇を噛みながら、今は亡きキウイに願う。
ちょっとは容赦しなさいよ・・・。
「正義なんて・・・・・」
ルーシーは、悩む。
理性と欲望がせめぎあう。
男は薄ら笑いを浮かべたまま、淡々と続けた。
「私も、調べたんですよ。
あの女騎士が誰なのかを。悔しくてね」
「・・・・・」
ルーシーは悶えそうな煽情に、黙る。
「毒殺」
男は、言った。
「その背景には、いろいろな政情や野心、そうですね、野心だ、
・・・・があった、でもそれはあなたにとっての正義ではない」
「そうよ」
ルーシーは、息を荒げつつ答えた。
「辺境に陣営を組み続けるのは何故」
冷静を保つために、呼吸を繰り返しルーシーは問うた。
「さあ?」
無関心な彼の様子に、ルーシーは起き上がり、怒鳴ろうとする。
「無責・・・・」
言い終わらないうちに唇を吸われた。思わず体の力を抜きその先に期待が及ぶ。
耐えられない、ルーシーは自分の期待を疎ましく思う。
「苦しいか」
苦しい、喉を押さえたとき、この男はこんな気持ちだった?
彼の指が、首筋を這う。
勅使、これは多分嘘だ。
ルーシーはぎゅっと眼を瞑り、ここで負けるわけに行かない、と思う。
「殺せ」
いっそのこと、殺せ。
後は侍女がうまくやってくれるだろう。
ルーシーは、もう一度、呟いた。
「殺せ」
男はあざ笑う。
「引き換えになるのは、あなたの自尊心。
みすみす国を反逆の罪に落すつもりですか」
「・・・好きにしろ」
もはや甘えきった姫を演じるつもりはない、ルーシーは言った。
「やってみろ。必ず、君を殺す」
超GJ!
しばらくこないうちに職人さんがゐぱーい♪
どれもこれも楽しませていただきました。
「穏やかではないですねえ・・・・
しかも死んでしまったら、殺すも何もありませんよ」
彼は馬鹿にするように言った。
ルーシーは自分の口走ったことを反芻しながら、混乱してくる。
殺せって意味じゃなくて・・いや・・・
「ああ、違う意味の‘好きにしろ‘ですかね」
彼は言って、ルーシーの胸元を掴みその突起に触れると、
「こういう意味、ですか?」
「ぬかせ・・・」
ため息をつくように口だけで抵抗する。
残念ながら、体はしびれたような状態だった。
少しでも触れたら、もうそこから溶けてしまいそうだ。
「いい声ですねえ」
ルーシーの内部はまた動く。
話す彼の唇が、欲しくてたまらない。
触って、なでて、触って欲しい・・・。
そればかりを考えてしまうのに、彼女は首を振った。
男は構わず、話し続ける。
「あなたがそりゃあ鮮やかに言い放った」
彼の指はルーシーの肌にじかに触れ始める。
「こんな辺境の地で、誰が君を覚えている?・・・確かに正論だ」
彼は言って目を細めてから、彼女を見た。
「が、少なくとも、あなたは覚えていてくれましたね。
先ほどは鳥肌が立つ思いでしたよ、やっと見つけたってね」
「・・・勅使だと嘘を」
「あの後で、すごすご軍に戻れるわけはないでしょう、
私は、仲間と自分の命と引き換えにあなたに国を売った」
ですが、と続け、
「これで正解」
ルーシーは荒げた息のまま、問う。
「どういう、意味・・・・?」
今は秘密です、と彼はささやき、
ルーシーの柔らかな首筋に口付ける。
「うあっ・・・」
ただそれだけでルーシーの体は反応する。
その体を抑えるように圧し掛かり、男は言う。
感じる体温に、ルーシーは喘いでしまう。
何が済めば薬の効き目は終わるんだろう?
ルーシーは、触れる彼の指に意識を奪われる。
「ほれ込んだんですよ、あなたのその声に。
あなたの手段を選ばないその場の正義、というものにね。
きっと、裏切ったエルとやらをあなたは処罰しないでしょう」
「・・・・・・」
「2人で話す時間をくれ、と言ったんですよ。
でないと今すぐにここを発つ、と。皇女の背徳をすべて報告させていただく、とね。
彼女は、ならばこのままここで待っていろ、とだけ教えてくれました」
いいながら、彼はルーシーの胸をもみしだく。
片手で、彼女の腰を引き寄せて脚を開かせる。
「ん・・・・」
そういうこと・・・エルも苦渋の末・・・・
だが意識をエルのことに持っていこうとしてもままならない。
彼の指の行き場ばかりを思ってしまう。
触れて欲しいと思い、実際に触れられると、もっと、と願う。
ルーシーは自分に嫌気が差し、眉を寄せた。
「ご心配なく。彼女は無事ですよ、あなたが帰るまで部屋で待っているはずです」
彼はにこっと微笑みかけた。
その彼にルーシーは気を許してしまう、悪い人じゃないみたい・・・。
ためらったものの、
「私の体が・・・・その・・・・このままじゃ帰れないみたい」
ルーシーの状態に、話し続けていた男がやっと気づく。
「・・・ずいぶんとよく効く薬のようですね?」
驚いたように彼は言う。
「これじゃ、お辛いでしょうねえ・・・」心底同情したような声に、
ルーシーは恥かしさもあって目に涙を浮かべ、くすん、と洟を鳴らした。
指を止めないで欲しい・・・。
「あの、君・・・・」
「僕はスザクといいます」
「スザク・・・」
なんとかして、ルーシーはしくしく泣いた。
「触って欲しくてたまんないの、でもそれで治るのかもわかんないの」
スザクは慌て、「まさかとは思いますが・・・」
「あなたもしかして、こういった経験は・・・ない?」
「ない」
ルーシーはいう「あなた薬学くらいあるんでしょ?なんとかしてよ」
「なんとかって・・・・あのですね、こういった薬は」
また手を止めて話し始める彼に、
「説明は要らないの、早く治して」
「いや、要らないとかではなく、そして治すとかでもなく」
「手、止めないで」
ルーシーは彼の手を引き寄せる。
スザクは慌てて彼女の体を撫でる。
「僕は、あなたの情報を売る人間かもしれないんですよ?!」
「うん」
「しかも僕がじらす立場にあるってわかってます?」
「うん」
「この状態で、そう甘えてこられても、ですね」
「うん」
「あなた、聞いてました?私の話?」
「エルは無事なことと、私の声にほれこんだとこ、までは」
スザクは、ぐったりとなった。
「手、止めないでってば」
ルーシーはささやく。
「早く治して・・・・」
ああっとスザクは息を付くと諦めたように自分の服を脱ぎ捨て、
そのまま、ルーシーの服にも手を掛けて、一気に脱がす。
ルーシーをみると、彼女はにっこりと笑う。
「〜〜〜〜〜〜」
目を閉じるように言って彼はゆっくりと口付ける。
舌を何度か絡めると、ルーシーはすぐに真似をする。
まだ固さを残した乳房を吸うと、それは応えて柔らかくなっていく、
ルーシーは、小さく声を上げて、両足をきつく閉じようとする。
「あの、余計なことかもしれませんが・・・
濡れるのは、普通です。閉じても無駄ですよ」
ルーシーは、にっこりと力を抜く。
「そうか」
スザクはふと思い、そっとそこに指を差し入れた。
固い。
こりゃ時間がかかりそうだ・・・
彼の動きを一部始終みながら、
「そこ、はいるものなの?」
ルーシーは聞く
「いれると気持ちいいでしょ?」
彼はため息をつきながら答え、
せっかくの媚薬、この女を夢中にさせてみせる、とやけっぱちな気分にもなった。
「うん」
彼女は、笑う。
朝になり、謁見の広間にルーシーは静々と現れた。
「使者殿、よくお休みになれましたか?」
甘ったれた声。
「ええ・・・・・」
疲れきった彼の声に、くす、と彼女は笑う。
「ご要望の件、検討いたしました。申し上げますわ、
まず、軍の派遣についてはご要望にお答えできません。
ですが、使者殿のありがたきお申し出、
こころより感謝の上、お受けいたしたいと存じます」
なーにが、お申し出、だ。
彼は脅されたのである。
なに、真の勅使でない以上、煮ようが焼こうが彼女の一存なわけで、
「今ここで狼藉を働いた罪で、処刑されるのと、
私に協力するのと、どちらを選ぶ?」
スザクの気が付くと、侍女数人に囲まれ、ルーシーは短剣を構えている。
「協力するなら、それなりの待遇でお迎えしよう、
が、ここを逃亡しようものなら・・・・黒鳥は君を覚えているからな。あいつは肉も好きだ」
「は」
「では、お立ち上がりください。みなにご紹介いたします」
立ち上がろうとしてスザクは、力を入れた腰の痛みに呻いた。
「あら?腰が固まってしまったの?」
ルーシーが悪戯っぽく笑う。
ちくしょー・・・
飛んで火にいる夏の虫。
スザクは己の間抜けさに、舌を巻いた
おわり。
ながくてすまん
長いこと無いですよ!読み応えありました。
GJ!
ルーシーかっけえwww
GJ!
堪能いたしました!
274 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 00:38:59 ID:PwMicWsp
保守!
そろそろアリューシアが読みたいなあ。
激しく同意
アリューシアいいですねえ。
以前の作品、ぜひ見たいものです。。。
278 :
277:2006/08/19(土) 23:27:31 ID:ITi1XzLQ
連投になった。
前レス見た。
ユノ・ゼル泣いた。。。
文章がきれいなだけにしみた。
アリューシアには幸せになってもらいたい。
ただそう思った。
ユノ、ゼル・・・
よかったけどもすこし丁寧に書いてほしかった、
キレイなだけに堪能したかったよ
ユノ・ゼル、よかったね
作者さんはこんな心の行き違う、切ない恋を
経験したんだろうなあ、と思ったよ
女騎士アリューシアの話、投下します。
今回は前スレに投下した「最も多忙なる一日」の続きになります。
前スレの話を読んでいない方には話の飲み込めない部分があると思いますが
ご容赦下さい。
甘々なので苦手な方はなにとぞスルーでお願いします。
それでは、「拝借」です。
282 :
拝借:2006/08/20(日) 02:59:07 ID:D+agrJGY
(誰が口を利くものか──)
その日、マルゴット王女の護衛兵兼、お目付け役である女騎士アリューシアは目に見えて
不機嫌な様子であった。
いや、正確には離宮に住む第一王子の元へ遊びに来ているマルゴットが、兄を待つ間
彼に仕える魔法使いを部屋に呼ぼうと気まぐれに言い出したのを耳にした時からなので
あるが。
今日は姫は王子と遠乗りに行くために、此処を訪れていた。
それは前々から分かっていたからいいとして、あの普段は薬師として働く男に会うなどという
予定は聞いていなかった。
準備を待つ間姫が側近と笑談するなか、いつものように部屋の隅に控えるアリューシアは
先日会った薬師のことを考えていた。
卑劣な奴らから危ない所を助けてもらった事には感謝しているが、
その後散々からかわれる様な事をされた。
こちらが事情を知らないのをいい事に、内心ほくそ笑みながらあんな事をされたのかと
考えると、ようやく収まっていた怒りが改めて頭をもたげてくる。
あの後すぐさま会う機会があったのなら、横っ面の一つでも張り倒して気も済んだで
あろうが、そういった機会は無く、怒りは下火になったものの不完全燃焼のままで
ずるずる引きずる羽目になっていた。
普段は余所余所しい態度を取る男だ。
おそらくは部屋に入ってきても、こちらには目もくれないだろう。
それならば望むところだ。
こっちだってあの男なんて、今は顔さえ見たくも無い。
護衛としての役目を務め、細密な彫像のごとく直立不動の姿勢を保ちながら
アリューシアはつらつらとそう考えていた。
しばらくするとグルドフが落ち着き払った様子で部屋に入ってきた。
理知的な表情の薬師は、やはり壁際で控えているアリューシアには一瞥もくれることは
無く、マルゴットの前に進み出た。
「マルゴット様。ご機嫌麗しく、何よりでございます」
「堅苦しい挨拶なんていいのよ、グルドフ。こちらへ」
マルゴットは扇を振って彼を招くと、それを広げて口元を隠した。
秀麗な顔立ちの薬師が体の触れるほど側に寄ると、顎を上げた彼女は白くて細い首を
伸ばし、艶めかしい仕草で彼の耳元で何かを囁く。
「分かりました。御用意しておきましょう」
グルドフが静かに答えると、閉じた扇を指で弄びながら、マルゴットは優雅に満足げな
笑みを浮かべた。
「お前は本当に有能な薬師ね」
283 :
拝借:2006/08/20(日) 03:02:06 ID:D+agrJGY
姫がお気に入りの薬師を相手に会話を楽しんでいる間に、扉が開き、王子の侍従が
入ってきた。遠乗りの支度が出来たことが王女に告げられると、上機嫌な王女は
目の前の薬師に気安く声をかける。
「グルドフ、お前も付いてきたらどう?」
「有難うございます。ですが、私は今日中にやっておかなければならない仕事が
ありますので」
「あら、そうなの」
「それで一つお願いがあるのです。マルゴット様」
扇を緩やかにあおぐ姫を前に、薬師は恭しく続けた。
「実は、あちらの者を少しばかりお借りしたいのですが──」
グルドフがすっと上げたその指先は、真っ直ぐにアリューシアに向けられていた。
(ぇええっ?)
突然の指名。
部屋の中にいる者全てが一斉に注視するなか、思わず大きな声を上げそうになるのを
アリューシアは慌てて堪え、騎士の威厳を保った。
仕事中に堂々と連れ出そうとするとは、この男、正気か───
「まあ……何故、アリューシアを?」
勿論このような事は今までに前例が無い。
マルゴットは好奇心を露にした瞳で、探るようにグルドフを見つめた。
「どうして彼女が必要なのかしら?」
姫だけではなく、女官や侍女をはじめその場にいる全員がどういう事かと好奇の眼差しで
彼の意図と成り行きを見守る。
彼の答え次第では、噂好きな御婦人方を奮い立たせる格好の餌食だ。
だが、そんな事を物ともせずに、彼はいつもの淡々とした口調で理由を説明しはじめた。
「薬草園の手入れをしようと思っているのですが、2階の壁まで這い登った植物の
整理の為、梯子を使うような高い場所でも平気な身軽で度胸のある『山猿』のような者を
探していたのです。彼女はちょうどよさそうだ」
女官達の間からいくつもの小さな忍び笑いが漏れた。
「まあ」
いつもの事ながら、誰もが褒め称えるこの美貌の女騎士を全く女とみなしていない
薬師の言い草にマルゴットも面白そうに口元を緩ませた。
「ほほほ……確かに彼女は適任そうね。いいわ、護衛の者は他にもいるし。
──アリューシア」
「はい」
「お前、グルドフに付いていっておあげなさい」
「……………」
姫に口添えされたとあれば、拒否する権利は無いも同然であった。
それでも主である姫に対して露骨に渋い顔を向けた女騎士に、「お前ならきっと彼の役に
立つと思うわ」と言い、マルゴットは可笑しそうにころころと笑った。
284 :
拝借:2006/08/20(日) 03:04:30 ID:D+agrJGY
姫から退室の許しを得て、グルドフはアリューシアを促した。
「………誰が山猿だ」
歩きながらアリューシアは横目で薬師を睨みつけた。だが、彼は女騎士の視線に怯む事
無く、皆の見守る中涼しげな顔で扉を開ける。
「そういえば貴方は猿ではなく、気高き狼などと呼ばれていましたね。では、行きま
しょう」
二人が退室し扉が閉められたと同時に、クスクスと言う笑い声が扉の向こうからは
湧き上っていた。
*
館の外まで出ると、辺りに誰もいないことを確かめながらも、アリューシアは声を潜め
てグルドフに話しかけた。
「おい、困るではないか。こんな風におおっぴらに呼び出されては!」
「きちんと姫に許可を頂いているのです。何も問題は無いでしょう」
前を向いたまま歩きながらグルドフはさらりと答えた。
「そう言う話ではない。姫は人一倍勘が働く御方なんだぞ。感づかれたらどうする気だ」
「───何をです?」
「な、なにって…」
「先ほどお話しした通りの理由で貴方をお借りしただけなのですが」
「───」
表情も変えずにあっさりとそう言われてアリューシアは口を噤んだ。
それでもなお何か言いた気な女騎士の表情など意に介さず、グルドフは穏やかに言った。
「作業小屋まで行くので、貴方の馬も連れて来てください」
「今日は馬は無い」
「馬車に同乗してきたのですか?珍しいですね」
「……ああ。はじめは馬で来るつもりだったが、マルゴット様が自分の隣を空けたから
私も馬車に乗れと、強引に言い出したんだ」
ふてくされた顔でアリューシアは答えた。
二人きりになったと言うのに今まで通りの、彼のこの腹の読めない他人行儀っぷり。
それに加えて、口を利くまい、という頑なな誓いをいつの間にか自分から
破ってしまっている事に気付いて、女騎士の機嫌は今までよりも増してさらに
悪くなっていた。
同じ敷地内にあるとはいえ王子の館から薬師の作業小屋までは、歩くには少し時間が
かかる距離にあった。
小姓に用意させた馬に乗り二人で道のりを進むものの、ずっとアリューシアは沈黙を
守っていた。
グルドフはそんな彼女を気にするわけでもなく、何も言わずに馬に揺られている。
結局、作業小屋にたどり着くまでの道のりは、二人は微妙な距離を保ったまま、ずっと
無言であった。
285 :
拝借:2006/08/20(日) 03:06:49 ID:D+agrJGY
しかし──
作業小屋に近づくと、それまで不機嫌だったのを忘れたかのようにアリューシアは歓声を
上げていた。
薬草園の中にぽつんと建つ薬師の住処でもある小さな2階建てが、季節外れの雪でも
降ったかの様に真っ白いもので覆われている。
石造りの壁はいつもなら蔓植物が縦横無尽に伝って、まるで緑色のお化け屋敷の様で
あったが、今は一斉にその植物──原種の蔓薔薇の白い小さな花が綻んで、その様は
さながら暗い色調の石壁を流れる白い滝のようであった。
今までは建物に覆いかぶさるように植物が茂るのが不気味で、何故このように
しておくのかが不思議であったが、花の時期にはこうなるのか──。
「その薔薇の実は薬になるんです」
グルドフが長い梯子を運んできて、目の前の景色に見とれているアリューシアに背後から
声をかけた。
「どうも冬場に蔓枝を整理したのが不十分だったらしく、つぼみが膨らむごとに
枝が重みで垂れ下がってきてしまって。このままだと満開を迎える前に枝が折れて
しまいそうなので、それを直そうと思っているんです」
彼はハサミと麻紐、革の手袋をアリューシアに差し出した。
「やり方は先程説明した通りですので、よろしくお願いします」
「私がやるのか………」
「お願いします」
───こいつは本当に、手伝いをさせるため『だけ』に私をわざわざ連れ出したのか。
アリューシアは納得のいかない顔でグルドフを一瞥しながらも、梯子に脚をかけると
するすると上に登った。
きしきしと悲鳴を上げて撓る頼りない梯子に臆する事なく2階の屋根までたどり着き、
説明された通り、壁に縦横に張り巡らされている針金に棘に気をつけながら枝を
麻紐で次々くくりつけていく。
慣れない作業で思いのほか苦戦する。
暫くその作業に励んでいると、遠くからマルゴットの声が聞こえてきた。
「がんばっているわね」
梯子の上でバランスを取りながら振り向くと、兄と一緒に馬に乗った王女が、従者を従えて
森の方へと向かっているところだった。
「そうしていると、花の精みたいよ」
様子を見るために、遠乗りの途中にわざわざこちらに寄り道をしたらしい。
白い薔薇の洪水に飲み込まれている女騎士の姿を眺め、まるで他人事の王女とその一行は
楽しそうに笑いながら、そのまま去っていった。
286 :
拝借:2006/08/20(日) 03:08:29 ID:D+agrJGY
(なぜ私がこんな所まで来て、こんな庭師の真似事をしなければならないのだ)
無性に腹が立ってきて、暑さも手伝って苛だたしげにアリューシアは上着を脱いだ。
下を確認し、それを落とす。
上着が見事に頭に命中した薬師の、いたっ、と言う声が聞こえたが、それを無視して
女騎士は作業を続けた。
*
全ての手伝いが終わった頃には、もう昼をとうに過ぎた時刻になっていた。
「貴方が来てくれたお陰で助かりましたよ」
作業小屋の中で休んでいるとグルドフが銀のトレイを運んできた。
アリューシアの前を彼が横切り、空気の流れが彼女の頬を撫ぜる。
「ご苦労様でした。軽食なら用意できますから食べていきますか」
手際よくお茶の準備を進めていくグルドフの背中を眺めながら、アリューシアは
不機嫌そうに口を開いた。
「用はこれで終わりか」
「そうですよ」
「わかった。では姫の所に戻らせてもらう」
「帰るのですか?」
グルドフは顔を上げ、ゆっくりと彼女の方を向いた。
「帰る」
アリューシアは短くそう答えた後で、怒りを押し殺した様な声で付け足した。
「これ以上なにを考えているか分からぬお前に振り回されるのはかなわぬからな」
「………」
宥めたり、言い訳じみたことでも言って引き止めるのならまだましだ。
しかし、一瞬の間があいた後、アリューシアの期待にも似た予想を裏切り
グルドフは穏やかに言葉を返した。
「そうですか………分かりました。では、ご苦労様でした」
引き止めるそぶりなど微塵も見せない。
グルドフはそれだけ言うと、手許にあった一冊の本に目を落し、ぱらぱらとそれを
めくった。
(最低な男だ)
アリューシアは心の中でそう悪態を付くと、無言で扉に向かった。
扉の前に立ち、鉄の取っ手に手をかける。
「ああ、そうだ」
視線を本に落したまま、独り言を言うかのような口調でグルドフが言葉を発したのは
その時だった。
「この間のシャツはできたら早めに返して頂きたい。気に入っている物なので」
その言葉が、扉を開けようとしていたアリューシアの動きを止めた。
287 :
拝借:2006/08/20(日) 03:12:13 ID:D+agrJGY
次の瞬間、彼女は踵を返しつかつかとグルドフの側に歩み寄ると、だんっ、と荒々しく
作業台に両手を突いた。
「あの時は本っ当に世話になったな!」
顔を真っ赤にして、怒りに染まった目でグルドフを睨みつける。
「だが、あんなやり方は卑怯だ!」
「でも、『良かった』でしょう?」
「ばっ……何を言うかっ」
言葉に詰まったアリューシアの反応を楽しむかのようにグルドフは彼女の顔を
見下ろしている。
余裕の表情で平然と自分の顔を眺める薬師と、自分の動揺の差に益々苛立ち、頭に血が
上ったアリューシアは無意識に声を荒らげた。
「私はお前のそう言う所が気に入らんのだ、グルドフ! 」
険しい顔で相手の男を見据え、良く通る澄んだ声で言葉をぶつける。
「そうやって人をからかうのは止めろ! それが私に思いを寄せているなどと言う男の
態度か? 振り回されるこちらの身にもなってみろ」
今まで胸の中でわだかまっていたものを一気に吐き出すようにアリューシアは言い募った。
「お前の態度を見ていると、私の事を本気で好きなのか、そうでないのか良く分からぬ。
こんな中途半端な思いをさせられるのはもう御免だ! 一体お前はどういうつもりだ。
はっきりしてくれ!」
二人の間に沈黙が流れた。
静寂の中、窓から入り込んだ初夏の風が微かに花の香りをはらんで鼻先をかすめる。
暫く続いた駆け引きめいた見つめあいを遮り、グルドフが泰然とアリューシアに
聞き返した。
「では、貴方はどういうつもりなのです」
「── え?」
同じ質問を返され、アリューシアが訝しげな表情を浮かべた。
「そう言えば、私は貴方の気持ちを聞いたことが無い。貴方こそ私の事をどう思って
いるのです?」
それを聞くと、深い藍色の瞳で彼をきつく見据えたアリューシアは、
売り言葉に買い言葉の勢いで張りのある声を響かせた。
「今更お前の事など何とも思っていない、などと言うとでも思っているのか!」
真っ向から勝負を挑むように対峙し、醒めた色合いの目の男に指を差して言い放つ。
「こんな風になって、愛していないだと誰が言える! お前のその余所余所しい態度に
いちいち腹が立つのも私がお前の事を愛しているからだっ。ああ、そうだとも、
私はお前を愛している! もうお前無しの人生など考えられない位にな!」
「──────」
「さあ、どうだ! 文句があるなら言え!」
息巻くアリューシアを唖然と眺めて、薬師は硬直していた。
288 :
拝借:2006/08/20(日) 03:14:51 ID:D+agrJGY
魂が抜けたように暫くの間、瞬きもしない彼であったが、「くっ」と小さく呻くような声を
出すと、身を屈め、腹を抱えて苦しそうに肩を細かく揺らしだした。
「……おい?」
目の前の男が急に具合でも悪くなったのかと思ったアリューシアは、体を折り曲げて
彼の顔を覗き込んだ。
だが、こげ茶色の髪に隠れていたその表情を確認するとむすりとして呟いた。
「…………笑うな。真面目に言っているのに」
「ああ。悪い───」
息も絶え絶えといった様子で声も無く笑っていたグルドフは、掠れた声でなんとか
言葉を続けた。
「まさか、そんな事を貴方から言われるとは思っていなかったので………驚いた」
そう言いながら体を起すと、捕らえるようにきつくアリューシアを抱きしめた。
「驚いて……文句も何も──」
「グルドフ」
グルドフは自分の胸に彼女の頭を抱え込むように抱いて、煙るような色合いの亜麻色の
髪を撫で、何度も頭や額に口付けを施していった。
彼の力強い腕に絡め取られ、その胸に顔を埋め至福を味わいながらアリューシアは
小さな声で囁いた。
「………ベッドに行こう」
*
2階にある寝室の開け放たれた窓から、壁を伝う花の馥郁たる香りが風に乗り入ってくる。
飾り気の無い部屋の窓際にある簡素な寝台の上に二人は腰を降ろした。
「お前に手を出したのがばれたら、姫はお怒りになるだろうな」
「私が手を出された事になるんですか?」
「違うか?」
アリューシアは笑いながらグルドフの胸に手を置き、そのまま縺れる様に二人一緒に
ベッドの上に倒れ込んだ。
まるで世間話でもしているかのように口調は穏やかだったが、互いに剥ぎ取るように
服を脱ぎ捨て、裸になった体をせわしげに弄っていく。
時間が限られている、という事が念頭にあるのも事実だが、それよりも一刻も早く
相手と交わりたいという気持ちの高ぶりが二人を動かしていた。
何度も口付けを交わしていく。
唇を重ね、撫でるように舌を絡めあう。
グルドフが舌を退くと、それを追いかけるようにアリューシアは彼の口内にまで舌を
差し入れた。ゆっくりと味わうようにグルドフの口の中で舌が相手を探り、擦る。
「んっ──」
口付けを続けながら、グルドフはアリューシアの脚の間に体を割り入れた。
勃ちあがり、硬くなりつつある己の物でアリューシアの秘部を擦りつける。
289 :
拝借:2006/08/20(日) 03:17:49 ID:D+agrJGY
「グルドフ……」
首に腕を回し、彼の耳元でアリューシアは切なげに吐息を漏らした。
「……早く………もう」
グルドフはアリューシアの手首を掴んで、己の物に触れされた。
「欲しい?」
「うん……」
掴まれた手首を動かされ、どうしたらいいかを教えられたアリューシアは彼の物を
おずおずと手で扱き始めた。
彼女の手の中でそれはみるみる熱くなり、固く張りつめていく。
「………早く」
充分な愛撫など無くても、既に彼を求めている体を持て余す様にアリューシアは
もどかしげに繰り返した。
「じゃあ、おいで」
そう言われ戸惑うような表情を見せたアリューシアの手を引き、グルドフは彼女を
自分の上に跨らせた。ぎこちなく、上に乗るのは初めての様子ながら、
アリューシアは素直に彼に従う。
「腰を下ろしていって、……そう」
反り返るように立つ彼のものを入り口にあてがい、少しずつ腰を沈めていく。
太くて固い幹が狭い肉の壁を押し広げるようにして奥へと進んでいくのを感じ取り、
アリューシアは熱い息を吐いた。
「動けますか?」
「…………私が動くのか?」
根元まで受け入れ、気怠げに聞くアリューシアに「ええ」と答えてから、
グルドフは揶揄するように付け足した。
「乗馬は得意でしょう?」
何か言いたげにアリューシアがグルドフを睨んだその時、彼は下から一度だけ
激しく彼女を突き上げた。
「ぁあんっ!」
突然の下腹部の鈍い響きに、思わずアリューシアは仰け反り高い声を上げた。
その様を下から眺めながらグルドフは再び口を開いた。
「───動いて」
「……んっ……ぅうん…」
グルドフがアリューシアの腰を掴んで前後に動かし始めると、アリューシアもそれに
合わせるように腰を揺らした。動くたびに彼の熱く滾ったものが強引に奥まで入り込み、
同時に敏感な突起は擦られるように刺激され、アリューシアは快楽に震えた。
彼のものが埋め込まれた部分からは透明な液が徐々に溢れ、繰り返される動きを
より滑らかにしていく。
真珠色の肌はいつしか汗に濡れ、うっすらと紅く上気していた。
グルドフの腕につかまり、しなやかにアリューシアは腰を動かした。
290 :
拝借:2006/08/20(日) 03:20:39 ID:D+agrJGY
あまりの快楽に自我を奪われてしまいそうになる危うさを感じつつも、
もう止められなかった。
ぐちゅ、ぐちゅ、と湿った音を立てながら、自分の体内が乱暴にかき乱される。
絶え間なく襲う痺れるような快感に泣き出しそうになりながら、アリューシアは夢中で
体を動かし続けた。
「あ…あ…いや…ぁ……グルドフ………」
自分に快楽を刻み付ける男の視線を肌に感じる。
彼の名前をうわ言のように口にしながら、彼の腕に縋りつく手に力を込め、擦り付ける
様に腰を動かす。
体の中は火照ったように熱を帯び、男のものが往復する度に蕩けた場所から蜜が零れた。
さらに強い刺激を与えようとグルドフから何度も腰を突き上げられ、アリューシアは
甘い鳴き声を上げた。
「……あっ…ん……あぁん…あぁん…。あっ……ぁあああっ!……」
彼に体を揺さぶられたまま絶頂に押し遣られ、アリューシアは体を細かく震わせて
はあっ、はあっと荒く熱い息を吐いた。
「アリューシア?」
「……ん」
上体を前に倒して今にも崩れそうなアリューシアを支えようと、グルドフが後ろ手を
ついて自分の体を起こそうとした。
「いや………。離れないで」
体を動かそうとする彼を押しとどめ、繋がったままアリューシアは顔を上げ
切なげな表情を見せた。
「大丈夫だから」
宥める様にそう囁くとグルドフは体を起し、向き合って座り込んだ体勢で彼女の腰に
手を置いて、ぐい、と自分の方へと押し付けた。
「───あっ」
体を密着させられるのと同時に、また奥深くまで押し込まれて、アリューシアは小さい
悲鳴を上げた。
目の前が一瞬白く弾け、息が上がる。
堪らずアリューシアはグルドフの首に腕を巻き付けた。
一糸纏わぬ姿で交じり合い、しっとりと湿った肌を擦り合わせ、その心地良い感触に
酔いしれる。
素肌に互いの熱を感じながら、二人は何度も唇を重ねた。
何かに耐える様な震える息使いが彼の耳元に甘く掛かっていた。
アリューシアは腿で彼の脇腹を挟み込み、足で彼の腰に絡みついた。
グルドフは滑らかな首筋や胸元に吸い付き、歯を立てながら、達したばかりで敏感に
なっているアリューシアの体を下から揺さぶるようにゆっくりと突き上げていった。
「は…あ……ぁあ……、もう…だめ……あっん…ぁあんっ……」
彼の体に縋りつき、アリューシアは虚ろな表情で吐息を漏らした。
291 :
拝借:2006/08/20(日) 03:23:56 ID:D+agrJGY
いつしか彼女は与えられる快楽を受け入れるだけで精一杯になっていた。
それでも彼女の蕩けるような熱い肉の壁は、彼に絡みつき、脈打つように締め付けていく。
グルドフが低く呻き、アリューシアの体をベッドに強く押し倒した。
覆い被さるようにして彼女の体を押さえつけ、脚を押し広げ今までよりも一層強い力で
体を打ち付けた。
アリューシアの体がグルドフの動きに同調して揺らいだ。
柔らかで白い乳房は突き上げの度に弾むように揺れ、その頂の淡い色の突起が誘う様に
震えている。グルドフは身を屈め、それに吸い付いた。
「…ああっ!……」
体がびくん、と跳ね上がり、アリューシアの唇からは甘い声が零れた。
幾度と無く登り詰めた彼女の中をグルドフは容赦なく往復し、責め立てていく。
全てを奪い尽くそうと、淫らな音を立てながら引き抜いては押し込まれる荒々しい動きが
何度も繰り返される。
繋がった腰から細波の様に生まれる快感が背中を昇り、意識を陶酔の中に陥れていく。
底知れぬ快楽に悶えながら、受け入れたものからより深い快感を紡ぎだそうと彼女の中は
何度も収縮し、絡み、扱く様にリズムをつけて締め上げる。
込み上がる快楽の蠢きに徐々に堪えきれ無くなるのを感じた。
限界が近い。
抉る様に何度か突き上げた後で、グルドフは体を引き抜き、アリューシアの滑らかな腹の
上に勢い良く自分の精を解き放った。
それを終えると、アリューシアの顔を大きな掌で包み込み、荒い息のまま乱雑に彼女の
唇を塞いだ。
「これって……?」
アリューシアはぼんやりと自分の体の上に放たれた白濁した体液に指で触れた。
「確か今日は避けたほうが…………周期は以前聞いた時と変わっていないですよね」
肩で息をしながら、掠れた声でグルドフは苦しげに答えた。
「え?」
「以前女性には周期があるという事を姫に話した時に、貴方も一緒に聞いていたでしょう。
忘れましたか」
そう言えば、月のものの始まる日を憶えておくと、身篭りやすい時期と、そうでない時期を
知ることが出来る、と言う話を以前この薬師からされたことがあったような気もする。
しかし、その時には自分には当分必要のない知識だろうと思って気にも留めていなかったのを
アリューシアは思い出した。
「また詳しく話しますけど、今は……」
グルドフはシーツの端でアリューシアの腹の上を拭うと、大きく息を吐いて
その横にごろりと体を倒した。
292 :
拝借:2006/08/20(日) 03:24:57 ID:D+agrJGY
アリューシアがぐったりと横たわるグルドフの額に手を伸ばし、汗で張り付いた髪を
払いのけた。
「グルドフ……良かったか?」
「ええ。貴方は?」
「ああ、良かった」
アリューシアは彼の体に擦り寄り、胸に顔を乗せた。
「ずっとこうしていたい………」
「───今度の休みはいつです?」
互いの指と指を絡め、戯れるようにゆっくりと動かしながら会話が続く。
「5日後」
何か予定は?と聞かれアリューシアは首を横に振った。
「では、その時に来て下さい。できれば前の晩から」
息を整えつつ、まるで仕事の予定の話でもしているかのような事務的な口ぶりで
淡々と薬師は話した。
「…………」
「でないと、また仕事中に姫から貴方をお借りすることになる。今日の様に。
………そういうのは、嫌なのでしょう?」
───やっぱり今日の呼び出しは確信犯だったのか。
「………馬鹿者」
絡めた指を払って作った握りこぶしをゆるゆるとグルドフの頬に押し当てると、
彼は可笑しそうに目を細めた。
「そろそろ姫が遠乗りから帰ってくる頃だと思いますが」
「あっ………そうだ」
アリューシアは彼の言葉に反応してベッドから飛び起きると、急いで窓の外を見た。
丘の向こう、森から姫達の一行が館に向かっていくのが見えた。
「まずい。──姫に遅れないようにしないと。体を拭きたいんだが、水をくれるか」
「階段を下りた右の部屋の水場で体を流せるようになっているから、そこを使って
ください」
「ああ、悪いが使わせてもらうぞ」
甘い余韻を払拭し、きびきびとシーツを体に巻きつける。
すっかり騎士の顔に戻ったアリューシアは、僅かにふら付きの残る足取りながら
急いで水場へと駆け下りていった。
293 :
拝借:2006/08/20(日) 03:26:11 ID:D+agrJGY
体を清めた後、てきぱきと身支度を整えて外に出たアリューシアを、グルドフは薄手の
ガウンを羽織った姿でのんびりと見送りに出た。
「お前は気楽でいいな」
「宮仕えは大変ですね」
「お前だって宮仕えだろう。一応は」
アリューシアはそう言いながら、ぐるりと薬師の前でまわって見せた。
「何処もおかしい所は無いな?」
頷いたグルドフに、じゃあ、と言ってアリューシアは名残惜しそうに彼を見つめた。
「──行ってくる」
「行ってらっしゃい」
「うん……」
アリューシアが馬に乗ろうとすると、おもむろにグルドフが彼女を呼び止めた。
「待って」
そう言うと彼は窓枠に引っ掛けてあった鋏を持ち出してきた。
薬草の生い茂る畑から香料用の薔薇や薬草を物色して何本も切り取ると、手際良く
それらをまとめて見る見るうちに美しいブーケを作り上げた。
「これを持って行ってください」
「……私にか?」
アリューシアは嬉しそうに顔をほころばせた。だが、
「騎士のくせに男から花をもらって喜ぶなどとは酔狂ですね」
グルドフは口の端を吊り上げ、にやりと笑う。
「マルゴット様に差し上げていただきたい」
どこまでも可愛気のない薬師の手から、アリューシアは乱暴にブーケをひったくった。
*
遠乗りの疲れを癒し、マルゴットが帰り支度を済ませて馬車に戻ると、そこには既に
いつもの様に深緑の制服に身を包んだ女騎士が礼儀正しく待機していた。
王女が近づくと彼女は手にしていたブーケを差し出した。
「あの薬師からです」
その言葉はどこか刺々しかったものの、マルゴットはそれには気にも留めず、あら、と
嬉しそうに声を上げてブーケを受け取った。
摘み取ったばかりの大輪の薔薇と薬草で作られたブーケからは甘く清涼感のある香りが
立ち上り、マルゴットの嗅覚を捕らえ魅了した。
「いい匂いだわ。素敵ね」
王女は上機嫌でそれを顔に寄せ、幾度も匂いを楽しんだ。
294 :
拝借:2006/08/20(日) 03:27:30 ID:D+agrJGY
姫と女官の一人に続いてアリューシアも馬車に乗り込むと、マルゴットはブーケを
手にしたまま彼女に話しかけた。
「今日はご苦労だったわね。どうだった?しっかりグルドフの役に立ってきた?」
「………さあ。役に立ったかどうかはわかりませぬが、一応仕事は済ませてきました」
「そんな変な顔をしないで。アリューシアったら、どうせまた何か気に入らない事でも
言われてきたのね」
薬師のいつもの調子と、それに対する女騎士の態度をいつも目にしている姫は
面白そうに笑った。
姫と従者を乗せて、馬車はゆっくりと動き出した。
アリューシアは知らない事であったが、グルドフが作ったそのブーケは言わば
お守りの様な物であった。
その鮮やかな香りは人々を引きつけ、馬車の中の空間を一杯に満たしていた。
女ほど鋭い生き物は無い。
杞憂で終わればそれでよいが、体を拭いたとはいえ情事の後の火照った体から匂い立つ
僅かな残り香で、何かを感付かれる可能性が全く無いなどと誰が言えるだろう。
とりわけ男女の経験が豊富なマルゴット王女は、そういう事には人一倍勘が働く
女性だった。
馬車の中のような閉ざされた空間なら尚のこと──
新鮮で美しいブーケがよほど気に入ったのか、姫は城に着くまでずっとそれを
手にしていた。
その複雑で贅沢な香りは他のものをかき消すには十分に馬車の中にさわやかに広がり、
その視覚的な美しさは人の関心をそちらに向け、女騎士を不必要な詮索から遠ざけた。
用心深い薬師の思惑が功を奏したのか、姫をはじめとしてアリューシアの秘密に
気が付く者は誰一人としていなかった。
───さて、その後の話なのですが。
勘の鋭いマルゴット王女でさえ二人の関係に気が付いたのはだいぶ後になってからで、
その際には、独占欲の強い姫から二人はそろって祝福と共に、たっぷりとお叱りを
受けたという事です。
(拝借 END)
295 :
拝借:2006/08/20(日) 03:29:00 ID:D+agrJGY
以上です。
いつも読んでくれる方、感想くれる方、
励みになってます。
ありがとう。
起きててよかった!!ありがとうございます!
GJ!!
毎度毎度高いクオリティに脱帽です
アリューシアもツンデレ可愛いし、グルドフもいい味だしてます
297 :
277:2006/08/20(日) 11:01:11 ID:3FhJe4AQ
アリューシアが来てる!
もうメロメロ。
グルドフもですが作者さんの緻密な計算に脱帽です。
298 :
275:2006/08/20(日) 13:39:20 ID:hKJUpwf8
アリューシア来てくれたーー!!ホント嬉しいです。
アリューシアが素直ヒートでめちゃくちゃカッコイイ!!
グルドフの細かい配慮もドキドキする!
今回も堪能しました。本当にありがとう。
超GJ!
眼福でした〜
GJ!
アリューシアもだがグルドフもツンデレカワイイよ
GJでした。絶妙なバランスがいいっすな!
ところですみませんが『最も多忙なる一日』ってどこにあるか
教えてくれませんか
GJ!!!!!
よく気のつくグルドフ!
じゃあ5日後は…堂々と○マな訳ですね
その後のお話、とさりげなくエピローグ付きですが
まさか打ち切りじゃないよね?
とうとう、2人が晴れて両思いである事を確認したんですな!
アリューシアの話、今回も素晴らしくGJ!ですぜ〜
三行読んだ時点から萌えてドキドキしてしまうよぉぉぉ!
エロなくてもいける面白さ、美味さなのにエロも濃厚って…
い〜よ、イーヨ、いいねっ!作者殿に感謝いたすっ!
両思いになったのなら、グルドフに口とかで奉仕してあげるアリューシアをお願いしたいです、ハイ。
>>305 プレイ方法の要望まではどうかと。
職人さんの好きにしてあげれ。
何でもいいからこの職人さんが書き続けてくれる事を希望!
>>306 スマン。
今までグルドフ→アリューシアなんで、逆にアリューシア→グルドフって思っただけです。
職人さんの思うがままに書いてください。
前スレ中を丁寧に見ていたら
アズリン・エゼルも後日談が気になって来た。
こういう言い方はどちらにも失礼なのでしょうが
「天使が−」スレで気に入っているSSのノリに似ていて、とても好き。
ユノ、ゼルの幸せだった話も読みたいなあ
このスレ、読めば読むほどはまる。。。
アビゲイル・タイロンも気になる。
アリューシアは完結なのかな?
アズリン・エゼルも
と書き出してみて
女主人公「ア」から始まるのだけ読んでるのか?自分って気がした。
ユノ・ゼル急展開だったからびっくりしたけど。
甘々になると思ってたから。
模範騎士アリューシアと新人騎士アズリン
どっちも美味しい
俺はヴィオラも好きだったんだがなあ。
十数頭の軍馬が繋がれている厩舎の一角、風通しも日当たりも一番良い場所、
ここは菫の騎士の愛馬オケアノス号に割り当てられた場所でございます。
ある日、シノビの少女が世話するオケアノス号の元に、この霊馬の乗り手、ヴィオラがやってまいりました。
「マーヤ、遠乗りに行くぞ」
「………政務もう終わったのですか?」
「交渉は打ち切りだ。奴らとこれ以上話しても時間の無駄でしかない」
「では、すぐに用意いたします」
「ここしばらく乗ってやれなかったからな…… いい骨休めになっただろうが、動きは鈍くなってないか?
んん………そうか、『疑うなら乗ってみろ』と言うんだな。
これからはお前にも大いに働いてもらうぞ、覚悟しとけよ」
ひらりとオケアノス号に跨るヴァイオレットの姿は、まさに名馬と英雄の取り合わせでございます。
「湖の向こう側まで行く……… オケアノスに振り切られたら、いつものより酷い仕置きが待ってると思え!」
「!?」
「ハイャァー!」
ヴィオラが掛け声と共に鐙で腹を蹴ると、オケアノス号は即座に城門めがけて走り出します。
「くそっ!」
一呼吸遅れてマーヤも追走します。
シノビの足はそこらの凡馬を凌ぐ脚力を秘めていますが、
一日に千里を駆けるというオケアノス号に付いて行くのは至難の業。
この日城門を警備する兵は、疾風の如く城門を飛び出して行く大小二つの黒い影を目撃することになったのです。
・・・・・・・・・
「んー、オケアノス? こんな小娘一人引き離せなかったなんて、やっぱり動きが悪くないか?」
向こう岸に城を望む丘の上、馬体から流れ落ちる汗を拭きながら、ヴィオラは愛馬の首筋を撫でてやります。
ブブルルルルルルッ
「フフッ、それともコイツに情けをかけてやったのかい?
人参をたんまり食わされて、手懐けられてしまったかな。まったく甘い奴だ」
笑いながら愛馬を労わるヴィオラですが、彼女も鞭を使って無理に馬を急かそうとはしませんでした。
女に甘いとしたら、おそらく主に似たのでしょう。
「んんー、久しぶりの遠乗りは気持ちいいな。マーヤ、喉が渇いたよ。水をくれ」
「はい」
「待て、………ただ飲むだけでは面白くないだろ」
「?」
主の言葉に応じてマーヤは水筒を差し出しましたが、そのまま飲むようなヴィオラではありません。
「口移しで飲ませてくれ」
「はいっ?」
「お前の口を使って私に水を飲ませてくれ、と言ったんだよ」
「ええっ!?」
水を飲むのに面白くも何も無いものですが、そこがヴィオラの真骨頂。
『美少女の口付けで喉の渇きを癒す』、これこそ風流人の本領でございます。
「わっ、私はそんな事したことありませんよ!」
「何事にも初めてという時はあるものだ」
「でもでも、どうやったら良いのか分かりません!」
「アーティスの『サイレンの涙』で、妓女たちにやらせてたの見てただろ?
あれは酒だが、あれと同じ様にやれば良いのだよ」
「ぎ、妓女遊びとか、ひっ……人のその…濡れ場なんて、まじまじと見てる訳じゃありませんから」
「これからはよく見ておくことだ。後々の参考になる」
無体な要求をさらりと言ってのけると、相手の戸惑い気に留めず、ずずいとマーヤを追い詰めます。
「さあ、難しく考えるな。やってみろ」
「………もし断ったら、どうせ仕置きが待ってるんですよね?」
マーヤは水筒を手に、やけっぱち気味に吐き捨てます。
黄金のピアスの呪縛によって、彼女は主の意向に背けません。
「嫌なら無理にやらせたりしないよ」
「本当に?」
「ああ、ただその時は別の飲み方をするだけさ」
「別の飲み方?」
「お前の臍に注いだり、股座で飲んだり、背中の…」
「いえ、口でやります!」
ヴィオラの言葉を聴くとマーヤの顔は真っ赤になりました。
これらの飲み方は、アーティスの妓楼で実際に妓女とやる『遊び』でございます。
ただマーヤの幼い胸では、よく行われる『谷間に注ぐ』ことはできますまいが……
さて、話が逸れました。
前にヴィオラがこのような妓女遊びをしているのをマーヤも覗いていたことがありましたが、
純朴なマーヤには少々刺激が強かったようです。
アレを自分がやるのかと思い出しただけで、シノビにあるまじく慌てふためいてしまいました。
「さあっ、いきますよ」
ぶちゅぅっ
覚悟を決めたマーヤは頬が膨らむほど水を口中に含み、そのままヴィオラに口付けしますが…
「ちっ、…ぶはあぁっ、げほげほ、げほ、 ………この馬鹿! 私を窒息死させる気か!?
いきなり全部吹き込もうとする奴があるか!…紙風船を膨らますのとは違うんだぞ、ごほごほっ」
マーヤがあまりに勢いよく水を流し込んだものですから、ヴィオラも飲み込み切れずに吹き溢してしまいました。
「もっとこう、相手の呼吸に合わせてだな、いきなり注ぎ込むような事はしないで、
相手が飲み込む準備が出来ているかを唇で量って………」
「はあ」
「そして吹き矢を撃つんじゃないんだから、一遍に吹き込むような真似はするな。
まず舌を相手の口の中に挿れて、それから舌の上を通じて水を渡らせるような感じで少しずつ…
むしろ自分の口の中から相手側に移すという気持ちでだな……… ああっ もういい、よこせ!」
ヴィオラは説明を切り上げて、マーヤから水筒をひったくります。
まあ何の経験も無い少女に、いきなり口移しで水を飲ませる技を使えといってもやや無理があったのでしょう。
しかし、コレくらいで諦めるようであれば、ヴィオラはヴィオラではございません。
「私が手本をみせてやる!」
「えっ!?」
「ほれっ、動くなよ」
ちゅっ
水筒の水を呷ると、マーヤの柔らかい唇に己の唇を重ねます。
「んんん!」
普段のヴィオラなら、いきなりのキスに戸惑うマーヤに「慌てることはない」と声をかけるところでしょうが、
口中に水を蓄えていてはそれもままなりません。
代わりにその背に手を回し、優しく抱き締めることで相手に落ち着くように促します。
「……ん、」
相手の驚きがおさまったのを感じ取ると、互いの舌が絡み合うほど深くマーヤの口の中に差し入れて、
少しずつ水を渡らせていきました
「んんー」
マーヤは自分の口中に少しずつ水が貯まっていくため、こくりこくりと少しずつそれを飲み込んでいきます。
手馴れた遊び人には、相手の舌を啜ってごくごくと飲み干したり、
入ってきた舌を噛んでイジワルをする手合いも居るのでございますが、
なにせ飲ませるのも飲むのも初めての少女ですから、ただただヴィオラの舌捌きに身を任せておりました。
『自分で言うだけあって、この人は……巧い』
単に水を流し込もうとしただけの己に比べて、なんて上手にやるものかとマーヤは思いましたが、
それはヴィオラは百戦錬磨、女性関係の戦歴をマーヤとは比べ物にならないくらいこなしているからでございます。
しかし、このときばかりはマーヤは素直にヴィオラの技量に感心する他ありませんでした。
「ちゅうっ…ん、さて、判ったか?こういう風にやればいいんだぞ」
「はい、判りましたよ………… 嫌というほど」
「じゃあもう一度やってもらお……… あれ?」
手にした水筒を振ってみても、水音はほとんど聞こえません。
逆さにしても落ちてくるのは雫ばかり、これでは口移しできようもありませんでした。
「くそっ、空か…」
ヴィオラにとってはガッカリですが、マーヤはホッといたしました。
『この人がやってみせたように、自分もやらなければならないのか』と思うと、羞恥でまた顔が赤くなるほどです。
「ええい、興が削がれた。もう帰る!」
ヴィオラはそう言って水筒をマーヤ放り投げると、好きに遊ばせていたオケアノス号を呼び戻しました。
「そうだ、マーヤ。来たときと同じように賭けをしよう」
「賭け?」
「もしお前がオケアノスよりも早く城に戻れなかったら、今夜は一晩中口移しで酒を飲ませる特訓だ!」
「!」
それを聴いた瞬間に、すでにマーヤは動いておりました。
こういうことを言い出したヴィオラは、何を言おうとやってのけるのを知っているからです。
疾風のようにオケアノス号の脇を走りぬけ、マーヤは一目散に城を目指します。
「おお、早いなぁ。じゃあオケアノス、私たちも行くか…… うわっ!!」
何ということでしょうか、ヴィオラが愛馬の背に乗ろうと鐙に体重をかけた瞬間、
皮ひもが切れてヴィオラは危うく転げ落ちる所でございました。
「あいつめっ小癪な真似を!」
そう、マーヤが先程オケアノス号の脇を走り抜けた瞬間、ヴィオラの死角で鐙の皮ひもに切り付けていたのです。
主に害を為すつもりは無くとも、その馬具を傷つける行為は呪いが発動するかギリギリのところでありましたが、
まともに走っても負けは確実。ここは呪いが効かない方に賭けたマーヤの読みが勝った、ということでしょう。
しかし、黄金の呪いには勝ててもまだヴィオラに勝てたわけではありません。
ただちに切れた皮ひもを別の紐で代用し、再び愛馬に飛び乗ります。
「オケアノス、相手は本気だぞ。手加減は無用!」
来るときには使わなかった鞭をピシリと鋭く馬の尻に入れると、オケアノス号は稲妻のように駆け出しました。
追って追われては恋の道、
マーヤがヴィオラを出し抜けたのか、それともヴィオラがマーヤを捕まえることができたのか、
気になるお方もおりますでしょうが、このお話はここまでにさせて頂きとうございます。
(終わり)
先日のマーヤの話はあんまり評判良くなかったみたいなんで、
追加で書いてみた。
GJ!
どっちも楽しく読ませていただいてます。
今回は小ネタが豊富で面白かったです。
飲み込み切れずに水を吹き溢したヴィオラが
マーヤに怒りながらやり方を説明するシーンが良かった。
GJ!
322 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 13:31:28 ID:VitEiApS
よっしゃ!ほしゅ
wktk
保守させていただこう
325 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 16:49:33 ID:X+Lba89R
保守あげ
人がいないな、
誰かドワーフの山へ行って
職人達に作品を造ってもらってきてくれ。
女兵士は艱難辛苦の末、ついにドワーフの山へたどりついた。
ドワーフ「ふははは。作品が欲しければ、わしと戦え」
女兵士は首をかしげ、ドワーフをじっと見詰める。
それからおもむろに近づいて……、
ちゅっ
彼の頬にキスした。
それから、二人は手に手を取って洞窟に入り、幸せに暮らしましたとさ。
いい♪
光景が目に浮かぶ
保守代わりといってはなんだけどスレ住人に質問
ファンタジー系の創作における登場人物の名前なんだけど、
英語読み、仏語読み、独語読みといった感じに呼び方は統一されていないと違和感を感じるのかな。
たとえば「エアロン、ベルナール、チェーザレの三人兄弟は…」とか書いてあってもいいと思う?
また「キャサリンはカトリーヌに嫉妬した」とか、「アーサーとアルトゥルが話をしていた」とか
書いてあっても大丈夫だろうか?
呼び方まで注意して書くのは適当な名前が少なくて面倒なんだが、
いい加減に書いて読み手に違和感を与えてしまってるのではないか、と心配になるときがある。
ヘンリーとアンリとか、同じ単語の別言語読みは多少の違和感がある。
>>329 呼び方まで注意して書くのは適当な名前が少なくて面倒なんだが、
いい加減に書いて読み手に違和感を与えてしまってるのではないか、
と心配になるときがある。
此処の部分激しく同意。
でも、自分は名前決めるときに悶絶しながら捻り出すほど名付けが苦手なので
そこまで気が回ってないのが現実。
他の職人さんのSS読むときには、余り気にしないよ。
回答サンクス、やっぱ皆苦労してるのね。
現実とは違う世界のことだから、
我々の世界にはなかった文化の混雑があったとか考えればいいのかな。
違和感が出ない程度に名前付けてくか。
うーん、スレに一足早く秋風が吹いてるなあ。
以前の盛り上がりを復活させることを祈念して新作投下。
女騎士物です。
自分としてはオーソドックスな造りにしたつもりです。
離宮の地下牢獄で、バシレイオスとエレインは再会した。
かっては幼馴染として身分の隔てなく学びかつ遊んだ二人の間にも、今や勝者と捕虜という明らかな違いがあった。
「………三年ぶりの再会だな、エレイン」
「その通りですね、バシレイオス公子」
「昔のようにバジルと呼んでくれてもいいぞ?」
先王の孫であったバシレイオスは、神官長の娘である近衛騎士エレインと同年の生まれだった。
幼い頃から活発な子だったエレインは、公子であるバシレイオスと仲が良く、愛称で呼び合う仲であった。
しかし、鎖に繋ぐ側、繋がれる側に分かたれた今となっては、十数年来の友誼も空しいものである。
「あいにくですが…」
「謀反人の子を愛称で呼ぶわけにはいかないか?」
「はい、今の貴方は私と王国の敵、馴れ合う間柄ではないでしょう」
「ふっ、王国か? いまや我らこそ王国だよ」
「………」
「王は死に、王都は落ちた。廷臣の主だった者も捕らえた。一両日中にも父は戦勝を宣言することになるだろう……
二度目の謀反でようやく念願の王位に辿り着いたというわけだ」
バシレイオスの父は三年前にも反乱を起こしていた。
当時王位にあった自分の母親の死期が近いことを察したうえで、兄から次期王位を奪うために陰謀を巡らしたのだ。
しかし病を押して鎮圧に向かった女王の手であえなく失敗した。
せめてもの救いは、死を前にして実子を殺したくないという女王の意思により処刑を免れ、
辺境へ一家揃っての流刑ですんだことだった。
だが、この処遇がアヴァロン王国に災厄の芽を残すことになる。
女王の死と実兄の即位を知っても、権力への渇望は止むことがなかったのだ。
どのような手段を使ったのか、密かに夷狄と連絡をつけ、王宮の反体制派と語らって再挙した軍団は
討伐軍を撃破して王都に殺到し、宮城に立て篭もった王を討ち取ることに成功したのだ。
「そしてアヴァロン王の印章も叔父上の指から抜き取った。
後は従兄妹のセシリアを捕らえば、父よりも上位の継承者は存在しなくなる」
「………セシリア姫まで殺めるお積りですか」
「セシリアは我とお前にとっても妹同然、できれば命は助けてやりたいがな………
だが父や兄姉は生かしておくまい」
彼らが追放される前から、エレインは彼らを知っていた。
そして反乱勃発から今日まで聞こえてくるその所業は、追放前に輪をかけて非道なものになっているという。
王の一人娘であり、今では正統な王位継承者であるセシリア姫を彼らが放置するはずもなかった。
「ところでエレイン。我はそのような話をしに地下牢に来たわけではないぞ。
アヴァロン王の指輪はあった。宝冠や王錫もな……… しかし、開祖アルトリウスから伝わる霊剣が無い」
睨みつけるバシレイオスの眼光を、エレインはその頬に僅かながら冷笑さえ浮かべて受け止めた。
「敗戦を見越して誰かが隠したのだ。
あれはアヴァロン王の証たる神器、霊剣と印章の二つが揃わなければ正統な王とはいえぬ」
「王都より脱出したセシリア様がお持ちなのでは?」
「とぼけるな、霊剣は常に開祖の霊廟に安置されている。たとえ国王であっても動かすことは無いのだ」
「………」
「落城の混乱のなかで王廟を開くことなど不可能だ。
そして王が敗戦を予感していたというなら、娘に霊剣を与えて逃がすより前に自分も王都を脱出していただろうよ」
「だから霊剣を隠したのは王ではない。セシリアも持っていないはずだ」
「では誰がそのような事をしでかしたのでしょう?」
「それをお前に聞きたいのだよ……… 市壁が破られる前日にアルトリウス霊廟に入ったお前にな」
その言葉を聞き、エレインの笑みもさすがに凍りついた。
「霊廟と神殿に供奉する者達を残らず締め上げた結果だ。だれも霊剣のありかを知っているものはいなかった。
だが、落城の前にお前と神官長が話し込んでいるのを聞いていた者と、お前が霊廟に入ったのを見ていた者がいた」
「………」
「そいつらは既に始末したが、姉上の耳に入る前で幸運だったと思え。
もしお前を捕らえていたのが我でなかったら、このような優しい聞き方をしていないぞ?」
今度はバシレイオスが冷笑を浮かべる番だった。公女パトリキアの拷問から生きて逃れた者はいない。
彼女が考え出したという拷問術は王国中の臣民を震え上がらせていた。
中には彼女の牢に入れられると聞いただけで狂死する囚人がいるほどだ。
「エレイン、アルトリウスの霊剣は何処にある?」
「存じません。霊剣が何処にあるかは私のあずかり知らぬ所です」
「…」
「仮に知っていたとしても、貴方のお言葉どおり霊剣は正統なる王位の証。
それを継承するのは貴方の父上ではなく、セシリア様です。
どうして謀反人に霊剣のありかを教えることが出来ましょうや!」
「………本当に知らないのか?」
「はい、私が霊剣の行方を知っていると証言した輩は、拷問に耐えかねて虚言を吐いたのでしょう」
「ほう、そうかな? では、もう一つ疑問に思っていることがあるのだが………
近衛騎士団は全員王宮で玉砕したというのに、なぜお前は生き永らえているのか?」
「…」
「お前が城外で生け捕りにされたと聞いて耳を疑ったぞ。
我の知っているエレインは、命惜しさに戦場から逃げ出すような女ではない……
それこそよほどの理由が無い限りはな」
それまでバシレイオスの言葉を正面から受け止めていたエレインだったが、このとき初めて顔を逸らした。
エレインが捕らえられたとき、王や騎士団長からの命令書を所持していなかった。
王都の守備兵全員に死守命令が発せられていたというのに、近衛騎士が命令なく戦場を離れていたということは、
敵前逃亡罪に問われてしかるべき事態なのだ。
「………」
「答えれらぬか? 沈黙こそもっとも雄弁な答えとも言うがな」
「何とでも思ってください。たとえ口を裂かれても敵に情報を漏らしたりはしません」
「その言葉は我以外には使わぬほうがいいぞ、我が父や兄妹に言ったなら本当に裂かれかねん」
そう言うとバシレイオスは軽くため息をついた。自分の身内ながら彼らの度を超した残忍さには呆れるほどである。
「エレイン、これは幼馴染として聞いてくれ。
もしお前が霊剣のありかを教えてくれれば、お前の安全と身分は我が保障する」
「…」
「そしてセシリアの命も、我と神君アルトリウスの名誉にかけて守ろう。
父に助命するように働きかけるし、それが叶わなければ国外へ亡命できるよう手を尽くす。
どうしても我は霊剣を手に入れたい…… どうか昔の情誼を思い出し、我を信じてくれ」
「………」
バシレイオスの言葉には聞く者の心に響く真摯な情が溢れていた。
たとえ初めて会った者であったとしても、彼の誠意を感じ取ることが出来たに違いない。
ましてエレインは幼い頃からともに過ごしてきた間柄である。エレインにその気持ちが伝わらないはずがなかった。
「……………」
沈黙を続ける相手が答えてくれるのを、辛抱強くバシレイオスは待ち続けた。
「申し訳ありませんが、私の答えは先程と同じです………」
「…」
「貴方を信じないわけではありませんが、私は霊剣のありかを知りません。
近衛騎士たる者が、敵に有利になることを教えるのは軍規に背きます」
その回答を聞いたバシレイオスの顔は、ほんの僅かな時間であったが落胆に沈んだ。
しかし、次の瞬間にはその瞳に暗く、冷たい光が灯った。
「そうか………… ただエレイン、お前が霊剣を隠したのではというのも我の推論だ。確信は無い」
「…」
「だから本当はお前が戦を前に怖気づいたのかもしれないし、
霊剣とは別の重大な命令を受けて移動中だったのかもしれない。
………それもどうせ教えてはくれないのだろう」
「ご明察」
「ならば我は確かめねばならない」
バシレイオスはそっとエレインの顎を引き寄せた。
「なっ…… んんんっ!」
不意に唇を奪われ、エレインは驚愕したが、バシレイオスの手は彼女が逃れるのを許さなかった。
そればかりかもう一方の手はエレインの乳房をの服の上から揉みしだき始めた。
「……………ほう、やはり三年も経てば女は変わるものだ。随分この胸も膨らんだじゃないか」
ウールの鎧下の上からであったが、女体の柔らかな肉付きは感じ取れた。
突然の無礼な振る舞いも、両手を鎖で拘束されたエレインはそれを止める手立ては無い。
バシレイオスは女騎士の唇を心行くまで嬲りぬくと、
腰帯から短刀を取り出してエレインの衣類を切り裂き、その裸体を曝け出させた。
地下牢の松明の明かりに照らされた白い裸身を見て、バシレウスも感嘆の声を上げた。
「ふっ、あのお転婆エレインがこんな女らしい体になるとはな」
「いやっ、見るなっ」
エレインの拒絶も介さず、バシレイオスは指で確かめるように直にその肌を撫でていった。
「止めろっ、このような真似をすれば私が口を割るとでも思ってるのかっ!?」
「どうせ霊剣のありかも知らぬ、喋りもせぬと云うのなら、牢に入れておくだけ無意味だ。
ならばせめて慰み物にでもした方が、少しは役に立つというものだ」
「くそっ、やはり貴方もあのならず者どもの一味か! …きゃん」
「何とでも言うがいい…」
短刀が下帯をも切り裂くと、エレインの秘所がバシレイオスの前に晒される。
その股間の茂みをバシレイオスの指はまさぐっていく。
「嫌ぁ、止めないか! 卑怯者ッ…… あぁんっ! 指、入れないでっ」
「馬鹿、指で拡げておかなければ入らんだろうが」
「うあぅ………あっ、ああっ!」
エレインの体が戦慄き震えるたびに、彼女を縛り付ける鎖はジャラジャラと音を立てた。
しかし、バシレイオスはその音にも女騎士の抗議の声にも耳を貸さずに、執拗に女の体を弄んでいった
「大分馴れてきたようだな…… では指二本は入るかな?」
「くぅ…んんっ」
先の倍の容積の異物を受け入れたエレインの膣は、少しずつ潤みを帯び始めてきていた。
指先が膣壁を掻くたびに地下室に響き渡っていた声も、今は押し殺された甘い叫びと化していた。
「そろそろか……」
バシレイオスは脚衣から己の男根を取り出すと、暴れるエレインの股間にあてがい、一息に突き入れた。
「ひきゃぁああああああああんんんっ」
指とは比べ物にならない異物感が己の胎を貫き上げてきた感触に、エレインは絶叫した。
しかし、みちみちと突き進んでいく男根は、容赦なく彼女の処女の証を破り、その奥深くまで入っていった。
「ん、 …奥まで入ったようだな」
「ううっ、畜生っ!悪魔っ! お前ら外道どもの一家は揃って精霊に呪われるがいいっ」
「ふふん、お前は今その悪魔に犯されているということを忘れるなよ。
高潔なる騎士エレイン殿、気高く行い正しいお前がこのような目にあうのは、一体だれの呪いかな?」
「いっ、うっ動かないで………」
互いに蔑みの言葉を投げ合いつつも、犯す者と犯される者、両者の力関係は歴然である。
バシレイオスはエレインの罵りに答えつつも、腰を動かすことでたやすく相手の口を封じることができた。
「うぁ、ああっ、ああっ、ぅああっ」
「先程までの威勢はどうした?」
「あうぅ、だめっ、壊れる、ああうぅっん」
「お前は初めてだから分からんのだろうが、女の胎はこの程度で壊れるようなものではないぞ」
「いゃ、そんな、ああんっ、うそだ、っあああん」
「嘘ではない。壊れる程というのなら……… せめてこれ位は動かねばなあっ!」
「ぎぃっ、あいっ、あいぃ、いつぅ、ぐぅぃ、きつぃ、ああっ、」
エレインの腰に手をあてがって、それまで以上の力を込めてバシレイオスは男根を打ち付ける。
幾度なく子宮を押し上げられる衝撃と苦痛を味わうたびに、エレインは悲鳴を発した。
「ふうっ、我ももうじき出そうだな」
「うぁぅ…」
「お前の膣内に出してやる」
「やっ止め、そんな、こんな、ひどぃ、いやぁ、あうっ、ぅうっ、……いやぁあぁあああああっ!!」
エレインが己の腹中で熱い射精の迸りを感じた瞬間、地下牢内に悲嘆の叫びがこだました。
「ううっ…」
「………………………」
陵辱の時が終わり、力なくうなだれるエレインを、バシレイオスはしばらくの間、静かな瞳で見つめていた。
「………エレイン、幾つか確信したことがある」
「…」
「やはりお前は霊剣のありかを知っている」
「!?」
エレインは、陵辱によって処女を散らされるという思いがけない事態のために失念していたが、
この公子の目的は王家の神器の所在であろうという事を思い知らされた。
「お前たち近衛騎士は、あのように身体を汚されるくらいなら、むしろ舌を噛んで死を選ぶはずだ。
それが出来ず、戦場で死ぬことも出来なかった………
これはお前が王国の帰趨に関わる大事を背負っていないのならば説明がつかん」
「…」
「そして死ぬことが出来ないということは、今それを知っているのはお前一人だということだ。
宝物を隠すということは、何時か取り出すことを前提にしなければならない。
死んでしまえば、誰かに伝えることが出来ない………
正統な王位の証である霊剣は、セシリアも手に入れることが出来なくなるというわけかな」
エレインは自分に向けられる視線に耐え切れず、目を閉じざるをえなかった。
「………」
「先にも言ったが、沈黙こそ最も雄弁な答えだな。
だが、我も今すぐに霊剣のありかを聞き出そうとは思ないよ」
「?」
「父は一秒でも早く霊剣を手に入れて、正統な王位を宣言したいのだろうが、こちらにも色々都合があるからな」
それだけ言うと、バシレイオスはエレインに背を向けて、牢屋の外に向かって歩き出しかけた。
しかし、数歩歩いたところで再び振り返り、囚われの女騎士に言った。
「そうそう、エレイン。先程の我の推理だが、一つだけ穴がある」
振り返った顔にはこれまで見せなかった微笑が浮かんでいた。
「お前が重大な秘密を抱えていないのに、陵辱されて舌を噛まない別の可能性もある。
……………それは相手が我だから身体を許してくれたんだ、という場合さ」
にやりと笑ったその顔に、エレインは三年前に別れた幼馴染の姿を久しぶりに思い出した。
しかし、どんな宿命の悪戯か。
今の二人は二つの陣営に引き裂かれていたのである。
(終わり)
GJ。勝者と敗者の関係ってやっぱ萌えるなあ。
個人的な好みとしては、重厚な文体や台詞に合わせて喘ぎ声も格調高いと良かったんだけど。
続きがありそうなんで期待してます。
343 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/24(日) 10:07:53 ID:GhnP8KV2
喘ぎ描写にはいつも苦しんでるのです。
まったくご指摘の通りですが、残念なことに格調高い喘ぎ声を私は聞いたことがないので…
悩むよな、いやらしさも必要だしな。
喘ぎ声を入れないと雰囲気出ないのもあるからなあ
345 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/24(日) 20:34:08 ID:NCBwBppf
あの、
ユノゼルのハナシ、めちゃくちゃ短いんですけど
いいっすか書き込んで。
是非是非お願いします
マジで?!嬉しいよ!
前スレ読んでない方すみません。
お好きでない方もすみません。
スルーしてください。
では、以下から。
「ユノ」
彼が呼ぶ声はいつもどことなく優しくて、私は困惑する。
微笑んで振り向いてしまいたくなる。
口角を引き締めて
「御用は?」
と聞くと、彼はいつもの通り困ったように笑う。
そして差し出す右手にはいつも何かしら握っていて、
ポトリ、とばかり私の手のひらに落とす。
こないだは水晶のかたまりだった。
その前は氷の枝、その前の前は紅花・・・・そしてその前は・・・
身を飾るようなものばかりだった。
だが、彼の私に与えた役割は諸刃の右腕。
矛盾に、余計困惑する。
彼の握って差し出されている手に、
「そんな、余裕ないわ」
冷たく言ったはずなのに、彼は笑顔で、その手をさらに突き出す。
「・・・・・・」
私は仕方なく手を出した。そこにふわり、と落ちたもの。
花びら、だった。花だったんだけどな、
「帰る途中で握ってたみたいだ」
くしゃり、と笑うと
「だから、それだけだ」
「・・・・・・」
気に入らなかったら、捨てるがいい。
言い残して、彼は私に背を向けた。
私が一度もそれらを身に付けたことがないことを、彼は気づいているのだろう。
幾重にも包んで、胸の奥にだけしまう感触、
侍従が片付ける箱の中に、それらは音を立ててしまいこまれた。
覚えているだけで、いい。
最初のプレゼントは、邪悪な指輪だった。
いつでも嵌めているように、と言い残したから、私はそれだけを身に付けている。
それ以後のものは必ず「捨てるがいい」と言う。
だから、私はそうする。命令は、命令。
後に残るものなんて、できるだけ持ちたくない、
持てば持つほど、思い出に枝葉が付くように重くなってしまう。
二番目のプレゼントは夕焼けの残滓。
綺麗で、私は間違えてしまいそうになる。
優しくしないで。
お願いだから、その手を私に向けたりしないで。
きな手が、私の頬に触れた。
「お前ほど感情のない女を、俺は知らない」
「こんなに従順なのに」
「言うことを聞くから、素直なわけじゃない」
ゼルは少し酔っているようだった。
動作がゆっくりで、濡れた目で私を見る。
ゼルの唇が私のそれを覆う。
「んッ・・・・・・」
その感触だけで、体は柔らかくなる。
いつもとほんの少し違う気がした。
暖かくて、優しくて、でも憎くて
泣きたくなってしまう。
抱きついて、彼の首筋にかじりつきたくなる。
「ユノ・・・」
その声が甘くて、すべて許されているようで、
同時にその余裕はたまらなく憎たらしくなる、
どうして、怒らないの、
どうして、いつも余裕なの、
あなたをいつか倒そうとしている私を。
相手にしていないから。
いつでも息の根を止められる、虫けらのような存在。
分ってる、でも確かめたい。もしそうとはっきり述べてくれれば、
堂々と、私は彼を憎んでいられる。
なのに、確かめたくない、どこかでそう思っている。
そんな私こそ息の根を止めてしまいたい存在だった。
彼の指は私の肌をさまよいながら、探り当てる。
暗闇の中で、彼の指は描くように私の体を意識させる。
「ん・・・・・ふ・・」
漏れる声をゼルは掬い取って口付け、それから私の唇をひねるようにつまんだ。
不意の行動に我に帰ったとき、重たい口調でゼルは囁いた。
「俺から離れたいか」
突然の言葉に、私は戸惑い彼を見る。
「ゼル?」
私は彼の顔を両手で挟んだ。
「離れたい、と言え」
ゼルは冷たいけれど濡れた目で私を見ていった。
濡れた目が、言ってしまえと促すように見えた。
突き放す言い方にそれでも、
「飽きたの?」
私はゼルを笑いながら睨んだ、睨みながら、憎しみが増していく。
そうであって欲しい、と思った。迷わなくてすむ、
やっぱり、おもちゃだった・・・・・・
憎んでいられる、間違えなくてすむ。
「・・・・・・」
「答えて」
自虐的な思いに、笑うしかなかった。
「・・・・命令する気か」
ガラスの器を落とすように、もし割れなかったら本物だと確かめるような気分だった。
これを、万に一つの可能性、と言う。
もしかして
いやちがう彼が飽きたと言ったら、
いや望むところだ、
ここにいる理由はなくなる、
いや望むところじゃないか?
また改めて彼に臨めばいい。
臨む?
それは
何のために?
「答えて」
飽きたなら、飽きた、と。
そうしたら、あなたを憎んでいられる。
何のためらいもなくあなたの首に剣を突きたてられる。
やっぱり、憎んでいて、愛さなくて、
良かった
ゼルは何か苦いものでも飲み込むような顔をして、
「もう、いい」
と言った。ため息をつき、乾いた笑いで、
「俺がバカみたいだ」
私はその瞬間、なぜだか漠然と後悔をした。
何かを逃してしまった気がする。
でもそれがなんなのかはわからない。
「バカだったら、その隙にとっくのとうに殺してるわ」
つなぐように私はいい、
「離れたいわ」
と思い切って後悔のまま目を閉じて言った。
彼は一瞬黙り、
「離れたい、と言ったところで離すと思うか?」
鼻で笑う。
それは今の私にとって、言って欲しい言葉、だった。
泣きそうになって彼の首に腕を絡めた。
私がここにいられる理由。
「言うだけ無駄じゃない・・・・・」伏せて肩に額を押し付けた。
そうだ、と彼は言った。
閉じた目に、彼の悲しそうな顔を思い浮かべた。
両手を掴まれた。
そのまま離さないで、そう私は思いすぐ否定する。
「無駄だよな、ユノ」
ゼルはいい、私の中に埋め込めようとする。
「んあっ・・」
私の髪をゼルは撫でて、弱く、たぶんこう言ったのだと思う。
「聞くだけ無駄か・・・・」
もし、その意味を知っていたら。
後の祭り、とはよく言ったものだ。
そのときゼルはあきらめたように私を犯し始め、私はあきらめたように彼の唇を吸った。
終わり。
なんとなく、一瞬は思いがかすったような二人を書きたかった。
GJ!
やっぱりセツナス!
超GJ!やっぱ神だ。
胸を締め付けられる感じ。
書いてくれて嬉しいよ。
ユノゼルだー!GJ!!
相変わらず綺麗だなあ。内容も。雰囲気も。
これからも書いてください。ずっと待ってますよ〜。
ユノゼルありがとうございます。
何でこんなに切なく書けるのでしょうか。
またしばらくとらわれるんだろうなあ。
次作(ユノゼルにしても、他の題材にしても)お待ちしております。
ユノゼル超GJです。
あまりの切なさに胸が締め付けらたよ。
私はファンタジースレではユノゼルが一番か二番目くらいに好き。
何て言うか、心理描写の多いこの書き方が凄く好きなんで。
また何かあれば是非投下してください。
お待ちしています。
GJ!
もしかしたらスレチぎりぎりだったかもしれないが、
自分はゼルの独白口調のが一番好きなんだ
切なくて。でもあれ読むと
感情入りすぎてちょっとユノ憎たらしくなっちゃうんだよな
あ、ちょっとだけ!ほんのちょっぴりな!
362 :
361:2006/09/28(木) 07:49:44 ID:b9bPbrpQ
うそですホントは大好きです。
俺も好きだ
「このまま壊してやろうか」のくだりが今でもぞっとする。
せつないよな
ここの保管庫ってないの?
無いと思う。
過去スレは読めるよ。
おながいします
366さんの保管庫いつも利用させてもらっていますよ。
ありがとうございます。
保管庫、ぜひお願いします。
369 :
366:2006/10/05(木) 00:46:11 ID:IUIdnniR
ありがとう。
こっちも素敵なSS群を保管できるので嬉しいです。
保管スピードが遅いのでご迷惑をおかけするかもしれませんが頑張ります。
すみません、ルーシーはのっけないでください・・・・
ありがとう、ほんとにすまん
保管作業がんがってください。
アホみたいに長いの書いて申し訳ないです。
でもまたアホみたいに長いの書くと思いまふ。
そろそろアリューシアとアビゲイルの続きが気になるなあ
禿同
いつも思うんだけど、
皆さん、騎士の階級や職階、呼び名(?)などは
どうやって調べているのでしょうか?
例えば宰相と将軍、どっちが偉いんだろう・・・
>>例えば宰相と将軍、どっちが偉いんだろう・・・
それはケースバイケースです。
舞台設定や時代設定によって変わってくる部分です。
よって一概にどっちが偉いとはいえません。
最終的には作者さんが決めることですね。
たとえば大統領という職種について、
現在のアメリカではあの通り大活躍ですが、ドイツではそれほどでもなく、
首相の方が権限があります。
フランスには大統領と首相が両方居ますが、
やはりこの体制も米、独とはやや異なっています。
現実世界でも結局はお国柄や歴史背景によって決まってきます。
あと私の場合、位階や職掌については、世界史の本などを資料にしてます。
ファンタジーとはいえ人間のやることは現実世界と変わらないはずですから。
また、中国史の位階表も武官、文官の呼称には参考になります。
騎士団の組織内の階級については、
食い詰めた下級貴族が戦場稼ぎをするために集まった傭兵騎士団、
宗教的な繋がりで集まった騎士団、
王侯や領主にお手盛りの団員資格を与える、名誉職としての騎士団、etc
等々の騎士団としての性格を決めるときに団内の組織構造も設定します。
呼び名等はやはり西洋史や軍事関係の本とかで調べます。
そこまでの設定を細かく描写すると、
ただでさえくどい文体が一層ひどくなるので書きませんが。
よくは分かりませんが、
宰相といったら政治的な役職では?
将軍となると明らかに軍部の称号ですよね。
組織が違うので、比べられない気もしますが???
>>378 ありがとうございます!もったいないくらいお答え頂き、感謝いたします。
勉強不足でこれ以上の言葉が見つからず、申し訳ありません。
ひとえに御礼申し上げるばかりです。
本当に詳しくお調べになっているんですね、どうりでこのスレ、
レベルが高いわけです・・・。
今子のスレにデビューすべく、構想を練っていたのですが、
正直、それは遠くなりました(笑)
>>378 ありがとうございました。
いくつか調べた結果ですと、
国王→宰相→大臣→軍→兵または国王→大臣→軍(の中に参謀として宰相がいる)
となっていたので、混乱していました。
組織が違うんですね・・・・
ということは、同じ宰相でも二つ役割があると言うことですかね?
378です。
調べた訳ではないので申し訳ない事でした。
ふと思い出したのは「三銃士」のリシュリウ卿です。
翻訳しか読んでいませんが「宰相」と表記されていたと記憶しています。
宗教的な権威も振りかざしていたから、本当の立場については何とも言えません。
簡単な和英辞書では
「宰相」=a prime minister
「将軍」=a general
と出ていました。‘minister’には「牧師」の意味もあるようです。
軍の中にも「宰相」があるのですね。
よく知りもしないでコメントしてしまいました。
細かい事を気にせず、創作に没頭して下さると嬉しいです。
379です。
>>380さん、
こちらこそ甘えてしまってすみませんでした。
ご丁寧にありがとうございました、ますます興味がわいてきました!
皆様に読んでいただけるものが書けるように、頑張ります!
あと、最初に二度もアンカーつけてしまってました・・
>>377さん
>>378さんお2人に失礼してしまって、ごめんなさい。
中世ヨーロッパの世界観については
自治体の図書館に行けば分かりやすいまとめ本を借りれるし、
2chには世界史板なんでものもあるから(初心者用の質問スレもある)
そのへんを参考にすればいいよ。
ただ、設定はしっかりしておくにこしたことはないけど
メインテーマは女兵士やエロのはずだから、
実際に解説するのは主人公とその周辺にとどめといたほうがいいと思う。
ところで前スレのアズリンの話って40kbもあったのね。
良SSは長く感じないってことの好例だなあ。
>>380 リシュリューは宰相だったけど枢機卿でもあったから、
世俗的な政治権力と宗教的権威の両方を持ってた。
彼に限らず、中世や近世の官僚は聖職者がなることが結構あった。
スレ違いレススマソ
女兵士にエロいことができるなら
宰相でも将軍でもいいじゃない
みつを
380です。383さん、
リシュリウが枢機卿でもあった。うっすらとそんな気もします。
司祭みたいな服装でしたね。
384さん
女兵士にエロい事が出来るなら、
宰相でも将軍でも枢機卿でもなくても… いいですよねww
気遣って頂いたのかな?
優しい人ですね。
>>382さん、ありがとうございましたw
381です、2chでも調べられるのですね、ぜひ参考にさせていただきます!
みなさま、ありがとうございました。
このスレ、本当に勉強になります。
オフ会とかしたら、貴重な談義が聞けそうですね。
ではまたロムに戻ります、
皆様の作品、心よりお待ちしております。
ありがとうございました。
>>384 「武官風情が調子に乗りおって!」
と権力をかさにネチネチと女兵士を責める宰相と
力づくでエロに持ち込む将軍とでは大きな違いがあるぞ。
もちろんどっちも読みたい。
女兵士と悪宰相の場合
女兵士「お前のような男に抱かれるくらいなら、死んだほうがましだ!」
宰相「フフフ、お前はまだ自分の立場を分かっていないようだな。
お前がわしの言う事を素直に聞けば、前国王や姫の命を助けるように
新しい王にとりなしてやってもいいのだぞ」
女兵士「卑劣な奴めっ。貴様が裏切りさえしなければ、姫様達は──!」
宰相「何とでも言うが良い。さあ、姫達の命が助かるかどうかは、お前次第だ。
姫を救いたければ今ここで裸になり、わしの前に跪き、慈悲を請うのだ」
女兵士「…………(私が我慢さえすればっ)」
女兵士と悪将軍の場合
女兵士「今更生き恥など晒したくは無い!さっさと殺せ!」
将軍「いつまでも威勢のいいことだ。だが、所詮は女、こうされては成す術も無いか」
女兵士「その手を離せ!ケダモノめ!」
将軍「離して欲しければ、払いのければいいだろう。──出来るのならな」
女兵士「止めろっ!離せっ。…いや…だ、………触るな……」
こうですか?先生。わかりません!
たいへん良くできました。
GJ。そしてできることならばその続きを…
ついでに聞いてみる。
テレビのCMだけど、ギョーザ食べてるドラフトワン公国のアベール王子
というのはどうなの?公国に王子がいるのはアリなの?
あと、新聞でよく見る表記なんだけど、海外の王国の次代君主の事を皇太子
というのはどうなの?王太子じゃないの?
かつて日本政府が皇帝と王の区別なく表記したのを、今もって日本マスコミが
踏襲している為に広まっている誤り、という話を見た事があるんだが。
ロードス島伝説で、モスを構成する一小国でまで皇太子とか皇太孫と
使っていた時は、さすがに違和感ありまくりだった
ビールを飲みながらのギョーザは最高ですね。
という事で、やふーじしょで簡単に調べてみた。
公国とは:
ヨーロッパで公の称号を持つ君主が統治する小国。
モナコやルクセンブルクなど。
君主とは:
世襲により国家を治める最高位の人。天子。王。皇帝。帝王。
君主が、「王」と呼ばれる人物なら、その子供は「王子」と
いうことになるんじゃないかな。
CM作った人が、そこら辺どのくらい理解していて
作ったのかも謎だけど。
あ、でもついでにモナコ公国のこと調べてたら
『アンドレア王子はモナコ公国の王子様です』
という一文が出てきたので、アリなのかも。
よくわからない。詳しい人、お願いします。
>「〜太子」の言葉自体がいずれその地位を継ぐことを意味するため、
>君主の地位が王である場合には王太子(女)、王太孫、王太弟などの
>名称を用いるのが正確であるが、現在の日本の公的文書やマスコミによる報道では、
>対象が次期国王であっても「王太子」の語は用いられず、「皇太子」を用いる。
>ただし歴史上の人物については、慣例に従って「王太子」の語も用いられる。
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%87%E5%A4%AA%E5%AD%90 つーことではじまりはよくわからんけど
マスコミの間では皇太子を用いるのが慣例。
公子が「王子」になっちゃうのも多分似たようなもんだろう。
その慣例のせいで一般人は「王太子」や「公子」といった言葉になじみがないから
CMやラノベの一種ではなじみのある「皇太子」「王子」が使われてんじゃないかな。
このスレは慣例よりも正確な使用法にこだわる人が多そうだから
称号は厳密に使用したほうが受け入れられやすいんじゃないかと思う。
声に出しちゃうと「公太子」と「皇太子」の区別つかんしな
Princeの訳語が一律「王子」となることが多いのも影響してるかも
かなり納得した。ありがとう
ヴァルキリープロファイルも、公国の王女になってるな。
あれじゃないか?
日本語には漢字があるから面倒くさいのであって、
皆結局、お世継ぎ(候補)なのじゃないか?
どっちでもかまわんと言うことじゃないか?
だめかい?
どっちでもいいと思うけどSSとして投下するんなら
活字で違和感なく読んでもらえるほうがいいんでないかな。
もしくは萌えると思われるほう。
自分だったら大公の娘なら「公国の姫」にする。
>もしくは萌えると思われるほう。
そんなあなたがすき
私は王の子=王子、王女。 第一王位継承者=王太子(または王太孫、王太弟など)
王の弟=大公、王の甥姪=公子、公女だな。
小公女セーラ、小公子は?
話ぶったぎってごめんなさい。
陵辱ものを投下します。10レスです。
苦手な方はあぼんして下さい。
403 :
シーア:2006/10/12(木) 01:01:52 ID:ydlGNfsc
シーアは部屋に入って、そっと安堵の息をついた。
布張りのソファ、簡素なベッド、テーブルにはお茶を楽しむためのティーセットまで
乗っている。壁に埋め込まれた鎖付きの手枷がなければ、彼女の控え室である
王の近衛の部屋と、さほど変わらない。
ここは、アリスン監獄の貴賓牢――ちょっと度が過ぎた醜聞沙汰や喧嘩騒ぎを
起こした貴族を入れるための場所だ。
彼女の父親の護国将軍や、先日亡くなった王弟殿下も入ったことがあるし、
同僚の中には、入った回数を自慢する不届き者さえいた。
「騎士様、どうぞこちらへ」
「それは飾りと聞きましたが?」
シーアは刑吏が手枷の下で待っている風なのを一瞥した。彼女が連行されるのを、
げらげら笑って見ていた同僚が、からかいまじりにそう教えてくれたのだ。
「尋問の方がいらっしゃいますので。形だけでございます」
「……わかりました」
逆らっても益がない。彼女は両手を上げて大人しく手枷に繋がれた。
――これなら夕方には出られるはず。
昨夜の酒場での、宰相の親衛隊員と起こした決闘騒ぎの件で、と刑吏が言っていた。
決闘はこちらの圧勝で、相手にあまり酷い怪我はさせなかっはずだが、恐らく、宰相が
国王陛下に泣きついたのだろう。
後悔はしてなかった。親衛隊員は、剣を振り回すしか能のない馬鹿と、王太子殿下を
侮辱したのだ。
近衛長官を兼任する王太子殿下は、近衛全員の誇りだから、あんなことを言われて
黙って過ごすわけにいかない。
ましてや、自分は自他ともに認める"王太子のお気に入り"だ。
牢から出たら、殿下からお褒めの言葉をいただけるだろう。
シーアは壁によりかかり、楽な姿勢で尋問係を待った。
いくらもしないうちに、足音がして扉が開く。入ってきた人物を確認して、シーアは困惑した。
「ルーゼン殿下?」
武芸に秀でた王太子とは正反対の弟王子――第二王子ルーゼン。
彼は小さな頃から体が弱かったせいか室内で過ごし、今も武芸全般に興味を示さず、
兄殿下とも、しばらく前に些細なことで仲違いしたとのことで、彼女とはあまり接点がない。
淡い金髪を長く伸ばし、後ろで編み込んだ姿は、まさに貴公子といった風情で、
さすがに文物に優れた智の王子と人から称されることはあると、シーアは目した。
404 :
シーア:2006/10/12(木) 01:02:49 ID:ydlGNfsc
「このような格好で申し訳ありません、殿下」
彼女は腰をできるだけかがめ、騎士の礼をとった。
――"王太子のお気に入り"と第二王子の会見か。いい方向のものだったら良いけど。
内心の不安を隠し、姿勢を正す。
――兄弟の和解の仲立ちを頼まれるとか。
弟王子はうなずいて礼を返した。
「兄のために酒場で喧嘩したそうだな。王の近衛があきれたものだ」
「恐れながら、わたくしは国王陛下と王太子殿下に忠誠を誓っておりますので、
殿下への侮辱は許しておけません」
「陛下と殿下に忠誠を誓っている、か。王家全体に誓っているわけではないのだな」
ルーゼンの含むところがあるような言い方に、シーアは心中で眉をひそめた。
*
ルーゼンは壁に繋がれた女をじっくりと観察した。
やわらかくカールした黒髪は、耳の下で切りそろえられ、体質なのか、一日中武術や
馬術の鍛錬をしているのに、肌が抜けるように白い。
その手足はすんなりと長く、肢体はよく発達し、草色の近衛の制服を一分の隙もなく
着こなしている。
「何かご用でしょうか?」
黙り込んだルーゼンを、父親譲りの緑色の目が真っ直ぐに見詰めた。
「ああ、……実は、不思議な話を聞いてな。街中に懇意にしている薬屋がいるのだが、
彼から聞いた話だ。」
父親譲りなのは目だけではないな。さすがにあのしたたかな将軍の娘だけある。
観察を続けながら、ルーゼンは言葉を継いだ。
「先日、顔をベールで隠した貴族の婦人が来たそうだ。その婦人は名乗らず、こう言った。
飼っている馬が足を悪くしてもう長く生きられない。苦しませずに死なせてやりたいので
眠るように死ねる薬をくれ、と」
「……さして不思議な話とも思えませんが」
405 :
シーア:2006/10/12(木) 01:03:58 ID:ydlGNfsc
彼女の声に動揺の色はない。
――たいした度胸だ。
ルーゼンは正面に立って彼女の顎をつかんだ。
「ああ、不思議なのはこれからだ。薬屋が言うには、彼女の手には貴族の婦人に
あるまじき剣だこがあったそうだ」
「……」
シーアの眼が微妙に揺れる。
「それで思い出したのだが、王弟である叔父上が眠るように亡くなった晩、
夕食を共にしたのは、護国将軍――お前の父君ではなかったか、と」
「殿下……」
もの問いたげなシーアに構わず、ルーゼンは続ける。
「剣を扱う女が買った毒薬、騎士を娘に持つ将軍との食事、そして急死。
何かの符牒が合うと思わないか?」
「何をおっしゃりたいのか、わたくしには理解しかねますね」
予想に反して、シーアは素知らぬ顔でしれっと答えた。
――分からないはずがない。
ルーゼンはかっとなって、彼女の耳の後ろの側壁を叩いて威嚇した。
「お前と護国将軍が、叔父上を毒殺した、と言っている」
「……本気でおっしゃっているのですか?」
片眉を上げて、わざとらしく驚愕の表情を作るシーアに、ルーゼンは、ますます
苛立ちを深めた。
「ああ、疑っている」
「父もわたくしも、国王陛下に忠誠を誓っております」
「だから?」
「そのようなこと、ありえません」
「どうかな」
シーアは呆れたように横を向いた。
「馬鹿らしい」
406 :
シーア:2006/10/12(木) 01:04:49 ID:ydlGNfsc
「薬屋がお前を指差しても、そう言っていられるかな。
或いは、拷問吏が熱い焼きごてを持って近づいてきても」
ルーゼンは彼女に顔を寄せてすごんだ。
「王族殺しは大罪だ。告発されれば、お前たちは隅から隅まで調査されるだろう。
その日、お前がどこにいたか、護国将軍がどこにいたか。
そうそう、用意周到なお前たちのことだ。実際に犬か猫で薬が効くか試したかもしれないな。
死体は庭にでも埋めたか? それとも川に投げ捨てたか」
「それだけでは、証明できますまい」
シーアは頑として態度を変えず、それは倣岸にも見えるほどだった。
「全ての証拠を隠滅した自信があるようだがな。薬屋は俺の保護下にあるのだぞ。
俺が疑惑を告発し、それが明らかになれば、お前の一族は護国将軍を手始めに、
使い走りの小者に至るまで……」
彼は手刀をつくり、首を刎ねる仕草を見せて、冷笑した。
「万が一、証明されずとも、護国将軍の失態をてぐすね引いて待っている貴族は数多い。
お前の家を没落させる材料に、王弟毒殺の疑いだけでも十分だと思わないか?」
シーアは、まぶたを伏せて沈黙し、やがて決意を秘めたような目を上げて、
ルーゼンを見据えると、静かに答えを返した。
「それで……、宮廷や法廷ではなく、ここで、それを、おっしゃる理由は?」
――取り引きだ。
ルーゼンは湧き上がる勝利感に、思わず笑みをこぼした。
「俺は常々思っていた」
手を伸ばして、彼女のやわらかい髪をもてあそぶ。
「先に生まれたというだけで、俺の欲する何もかもを独り占めにする兄の……」
彼女の額に触れ、頬に触れる。
「……兄の"お気に入り"を、どこかに閉じ込めて好きなようにしたら、
どれだけ溜飲が下がるだろうと」
「なんですって!?」
今度の驚愕は、本物だった。
407 :
シーア:2006/10/12(木) 01:05:53 ID:ydlGNfsc
呆然となった彼女の唇を唇で覆った。黒髪に両手を差し入れて頭を傾けさせ、
さらに舌を割り込ませる。
――ああ、これが欲しかったんだ。
片手でうなじをさすり、腕を撫で上げ、指に絡ませる。
もう一方の手で彼女の体を引き寄せようと背中に回し……、
「いたっ」
ルーゼンは、すねを硬いブーツで蹴られて体を曲げた。
「つまり、兄殿下を逆恨みした挙句、鎖に繋がれた女を脅して、力づくでものになさりたい、
というわけですか」
見下ろす表情は、あまりにも冷ややかすぎた。
「脅されていることが分かっているなら、抵抗はしないことだ。断頭台が待っているのだぞ」
シーアの白いのどをくすぐり、近衛の制服のボタンに手をかける。
「兄殿下なら、このようなことはなさらないでしょうに」
壁に背を密着させて精一杯言い放つシーアの言葉は、彼の劣等感をことさら刺激した。
「では、お前が兄と口づけを交わしていたのは、俺の見間違いか?」
ルーゼンは嘲笑った。
「軽々しく配下の者に手を出す男が、そんな立派な人格者と思えないがな」
前をはだけ、胸に巻いた布を引き下ろして、あらわになった乳房の突端をはじく。
「……っ」
何か言いかけた彼女への、罰するような荒々しいキス。
何度も噛み、吸い、腫れ上がった唇を舌でなぞる。
どんなに彼女を汚しても、汚しきれない記憶がある。
半年前のあの日、見られていると知らず、厩舎の片隅で兄がシーアについばむような
キスをした。うなじまで真っ赤になった彼女に、兄が何かをささやいた。
彼女は、にっこり笑ってささやき返し、手を伸ばしてせつなそうに目を閉じる。
――俺にはあんな顔見せない。
彼女の首筋に顔を埋め、粟立った肌に熱い息を吐きかける。
「……兄を、愛しているのか?」
――答えはわかっているのに。
「忠誠を、誓って……いっ、おります」
ルーゼンは愛撫する手を止め、脇腹を強くつねった。彼女の喉元から低い悲鳴が漏れる。
「お前は、嘘つきだ」
叔父上を殺したから憎んでいるわけではない。むしろ、そのほうがよかった。
408 :
シーア:2006/10/12(木) 01:06:59 ID:ydlGNfsc
顔を下ろして、彼女の丸いふくらみに口づける。
この手の中の乳房も、なめらかな細い腰も、兄が先に触れていたかと思うと、
くらくらするほど腹が立つ。
帯をほどき、剣を投げ捨てる。シーアの目線がそれを追いすがった。
「…剣を、返して……」
抗議の声が弱々しいつぶやきとなって消え、ルーゼンは彼女の抵抗が崩れかけて
いるのを知った。
平らな腹部を撫でさすり、腰骨をつかんで支えのないズボンに手を添える。
「こんな、こと……」
かすれ声の後、彼女は体を固くして顔をそむけた。
腰のなだらかな線に沿ってズボンと下穿きを下ろし、黒い茂みをさらす。
陰毛を割って腿の間に手を入れると、そこは汗ばんではいるが、それだけだった。
ルーゼンは手のひらを上に向け、彼女の割れ目をそっと撫でた。
「兄はどんな風に触れた? 優しかったか?」
シーアは答えない。
ただ羞恥に耐える暗い目のみが、彼女の不服従を物語っていた。
「……シーア」
ルーゼンは片膝をつき、シーアの両足を抱きかかえた。
首を伸ばし、目の前のやわらかい襞と隠された核に顔を近づける。
彼の行為を察したシーアは、狼狽して身をよじらせた。
「殿下っ!」
鎖が鳴った。
罪人を縛するための手枷が、今は彼女の動きを制していた。
腰を曲げて拒否する彼女を引っ張り、下肢を広げる。
不安定な体勢に、たたらを踏む彼女の両膝をしっかりとつかんで固定し、
自分の肩をその間に入れると、最初の目的地はすぐそこだった。
409 :
シーア:2006/10/12(木) 01:07:51 ID:ydlGNfsc
「だっ……め、……です」
襞の中心に鼻をこすりつけ、舌でひねって舐めて濡らした。
赤く色づき始めたものに息を吹きかけて、また舐める。
「やめ……、くだ、さ…」
彼女の芽に絡ませた彼の唾液が、もっと下の敏感なところへ、伝わって落ちた。
シーアが、はっと息を呑んだ。
彼女の顔の筋肉がゆるみ、刹那、震える顎を引き結ぶ。
ぎゅっとしかめた表情は、自らの快感に怯えているようにも見えた。
「…………い、…ゃ」
濃い匂いが、ルーゼンの鼻腔をくすぐった。
粘性をともなったそれは、彼女自身の奥からにじみ出ていた。
「兄はさぞ、お前を楽しんだだろうな」
ルーゼンは顔を近づけて憎悪の気持ちを吐いた。
かすな息遣いを受けて、またそれは量を増していく。
彼女の両足から力が抜け、体がゆるゆるとずり落ちる。
ルーゼンは太腿を抱え込んで、彼女を支えた。
「淫らな女だ」
言葉と同時に彼女を責める。
唇でそっと触れるのも、舌で周辺をなぞるのも、全て彼を感じて欲しいがため。
――兄ではなく、俺を。
「……いっ、ゃぁ…、あ……」
そして、彼女の甘美な反応が、彼への褒美だった。
足のつま先が力なく空をかき、浮き上がった下半身がときおりピクンと跳ね上がる。
「ん、……く」
食いしばった歯の間から、喘ぎ声が漏れた。
充血した裂け目は、すでに深奥からあふれるものでぬらついている。
「ぅ…、んぁ……」
――……近い。
舌先を尖らせて、中に侵入し、さらにうごめかす。
「……ぁぁ、」
彼女の全身が一瞬震え、弛緩した。
410 :
シーア:2006/10/12(木) 01:08:55 ID:ydlGNfsc
「……シーア」
ルーゼンは自らが猛り狂っているのを痛烈に意識した。
シーアの下半身にまとう全てを脱がせて体を起こす。
それから、自分のズボンを下げて、ものを出し、彼女の膝の裏に手を入れて
腰の高さまで両足を持ち上げた。
「シーア、…………頼む」
引き寄せて、こめかみに口づけ、ひくついた入り口にあてがう。
ぐちゃりと音がして、彼の先端がめり込んだ。
ルーゼンは、ぎょっとしてうろたえた。
――狭すぎる。
抵抗はたやすく苦痛の声に変わり、ルーゼンは、今まで誰も入ったことのない場所に、
自分がいることを悟った。
二度、鎖が鳴った。それから、もう一度鳴り、途絶えた。
「シーア……、…………すまない」
彼は少しづつ腕の力を抜き、彼女の体の重みで我が身を挿入する。
シーアの体は、がちがちに強張り、押し分けて入れるたび、額に脂汗がにじむ。
「…が、……止められない」
ルーゼンは痛いくらい締め付けるそこへ、ゆっくりと全部を収めた。
彼の肩に顔を伏せ、悲鳴を噛み殺す彼女の背中を撫でる。
「息を……」
出来ないとでも言うように、彼女の首が小さく動いた。
「力を……抜け」
右手で彼女の臀部を支え、反対の手で握り締められた拳を無理やり開かせる。
シーアが詰めていた息を吐き、呼気が彼の耳朶をなぶった。
快楽どころではなかった。
彼女の肺が空気を求めて大きく上下するに合わせ、彼を包んでいる壁が蠢動し、
絞るようにまた締まる。
ルーゼンは気が遠くなりそうな錯覚を覚えた。
411 :
シーア:2006/10/12(木) 01:09:49 ID:ydlGNfsc
「ひどい、かた」
彼女は泣いているようだった。
「……ああ」
ぐったりとした彼女を壁にもたせかけて、自分の体とはさみ、片手で彼女の顔を
支えて正面に向けた。
閉じたまぶたからあふれる涙が、紅潮した頬を転がり落ちる。
ルーゼンが少しでも動くたびに、いつもは強い意志を感じさせる濃い眉が苦痛に歪み、
鮮やかな血色の唇の隙間から浅い息が漏れる。
彼女の痛々しい姿に、ルーゼンは、なるべく動かないようにして涙を拭う。
「すまない……」
二人を繋ぐ場所から、うっすらと血の匂いが立ち昇った。
ルーゼンは彼女を抱き締めた。
「お前が、初めてだと知っていたなら……」
知っていたらどうだというのだろう。ルーゼンは自問した。
彼女を手に入れたかった。どんな手段を使っても。兄の恋人であっても。
――でも、何も無かった。初めてだった。
その事実に酔いしれて、彼は最後の抑制を手放した。
「………やっ……あ…ぃゃ、…ぁ」
己の獣性のままに、何度も何度も突き上げる。
「くっ……、ん……いっ…、っ…」
彼の激しい動きに、彼女は痛みを逃そうと、体を仰け反らせる。
――もう、限界だから。
快感が差し迫り、ルーゼンは一層激しく揺すり上げる。
もはや、疑惑や憎悪は何の意味もなかった。
腕の中にいる彼女だけが世界だった。
「……くっ」
ルーゼンは、呻き声とともに自分の全てを放出し、彼女の中を満たした。
*
412 :
シーア:2006/10/12(木) 01:10:51 ID:ydlGNfsc
手枷を外されたシーアは、その場に力無くへたり込んだ。
壁も床もひんやりとしていて、ともすれば沈みそうになる意識を引き戻してくれる。
――牢……、死…、知っている……から、脅迫…、……?
確かめなければならないことがあるのに、体中が痛くて言葉がまとまらない。
一緒に座り込んだルーゼンが、息を整えて体の上から退いても、まだ彼女は動けなかった。
「すまない。お前を傷つけてしまって」
ルーゼンが自分の手を取って、手枷に擦れてにじんだ血に口づけるのを、ただ傍観する。
「シーア?」
薄青い瞳が、心配げに覗き込む。
「……毒薬」
シーアは、ばらばらに壊れた思考をかき集めるように、額に右手を当てた。
「王弟殿下の……後を、追って…」
股の間から、どろりとした何かに混ざって、心身の生気がこぼれ落ちる。
「俺を、叔父上のように殺すつもりか?」
答えがのどに引っかかった。
「それもいいかもしれんな」
ルーゼンが自嘲的に笑った。
「宮廷内の勢力争いで、叔父上が邪魔だったのだろう?俺もいずれそうなる。
だから、今のうちに芽を摘んでおいた方がいい」
――弟殿下……。多分……、殿下は…、欲する…の…は。
「それとも、俺を王として擁立するか? 俺は良い傀儡になるぞ」
「王位?」
シーアは我に返った。彼につかまれていた方の手を引っ込めて、握り拳を作る。
「王位が、欲しいのですか? 血の、繋がった…陛下と王太子殿下を……弑して?」
ルーゼンの顔に憎悪が浮かび、シーアは、兄殿下のことに触れるのは失敗だったと知った。
「王位など、犬にでもくれてやればいい。…俺は、……」
ルーゼンは顔をしかめて、立ち上がった。
「こんな時でも父上と兄が第一とは、見上げた忠誠心だ」
憎々しげに吐き捨てて、扉に向かう。
「俺を殺すなら、お前がその手で殺してくれ。お前が、一生、覚えておけるようにな」
彼の遠ざかる足音を聞きながら、シーアはその台詞の意味を考え続けた。
以上です。
アヴァロンの方とシチュが似ていて申し訳ないです。
おお、深夜に偶然!
よい物に巡り会いました。
凌辱というには哀しみに溢れ、情緒もたっぷり。
上の宰相以下の話もしっかり生かされ、GJです!
親衛隊、近衛隊の描き分けも香り高くいいですね!
ギャワーっ!
似てるどころか次に投下しようとして構想してた続編とのあまりの類似+そちらのレベルの高さに
思わず書きかけの原稿を消去した私がいた。
ことここに至ればそちらに任せた。私は別の原稿を書く。
416 :
投下準備:2006/10/14(土) 20:14:23 ID:fRoWoI3E
久しぶりに魔王物の続きを投下します。ただ主役は魔王じゃないです。
自分で書いててアレですが、萌え要素は殆どありません。
かなり属性を選ぶSSになってしまいました。
※注意※
男女じゃないと嫌な方、
本番がないと嫌な方、
魔獣物が嫌いな方、
伝奇趣味のクドイ文章が駄目な方はスルーして下さい。
一応先に投下した話と繋がりがあるので投下しますが、
本来なら別ジャンルになるべき物かもです。
一条の光さえ差し込まない暗黒の中に、アデラは一人佇んでいた。
彼女が気がついたときには既にこの闇の中に居た。
気がついたときに感じたのは、天幕の布地のざらざらとした感触だ。
魔王に挑み、敗れ、そして犯された事まではおぼろげながら覚えている。
しかしそれら全てが現実か否かは、今のアデラにも定かではない。
この暗闇の中においては、それらを確かめる術が一切ないのだ。
ただ記憶に刻み込まれた屈辱と恐怖、そして秘所に感じる疼痛だけがそれが事実だったことを告げていた。
あれはいつ起きたことだったのか。
それは数刻前のようにも感じるが、それ以上に時間が経っているようにも思える。
『私はこのまま… どうなるのだ………』
応えのない疑問だけがアデラの心中を巡っていく。
目覚めてから、手探りに布地に沿って歩いてみたが出口はない。
歩幅から考えて天幕の広さ超える距離を歩いているはずなのに。
ためしに布をめくって進んでみたが、似たような空間があるだけで一向に外界へは出られない。
そもそもどちらが外なのかさえ定かではなかった。
始めのうちは、それでも無聊に耐え切れず闇の中を探り歩いたが、最早その気力さえ尽きた。
いまや膝を抱えて孤独と絶望感に苛まれながら、時間だけが過ぎていった。
かって修行を重ねていた頃、訓練の一環として地下迷宮の探索に参加したことがある。
その時はいくら闇の中とはいえ松明の灯りがあった。道も出口もあった。そしてなにより仲間が居た。
ここにはそれらが一切無い。
『ここには誰も居ないのか…?』
語り合う者もなく、ただ一人だけで存在することの辛さをアデラは知った。
ここでは時間の感覚が一切ない。空腹も生理現象も覚えない。
ただ闇だけがアデラと共にあった。
『誰でもいい。敵でも味方でも、私の前に現れてくれ…』
アデラは心の中で呟いた。
この暗黒の世界には自分が存在するための目的が見当たらない。
味方ならば語り合える。敵ならば憎める。挑める。
たとえ己を陵辱した魔王が現れるとしても、今の彼女は避けはしなかっただろう。
「・・・・・・・・・るぞ」
どれほどの時間が経過したか、ふと己の呟き以外の音が彼女の耳に聞こえてきた。
それが幻聴ではないと確信したとき、アデラは喜びに打ち震えた。
「おーいっ、誰か居るんだな!?私はここだ!!」
誰の声が聞こえてくるのか分からなかったが、とりあえず全力で叫んだ。
『ここに居るのは私一人ではない。他にも人が居たのだ。
もしかしたら私と同じように魔王に閉じ込められたのかもしれない。
ならば力を合わせて脱出するための方法を相談できるだろうか?』
「ぐ・・・る、・・・・が・・・・・するぞ」
声のする方角に歩み続けているうちに、奇妙なことに気がついた。
聞こえてくる声は何か意味のある言葉を紡いでいる様だが、しわがれた老女のような声だ。
さらに時折妙な響きを伴って聞こえる。
漠然とした不安を感じながらも何とか近づこうとしていたが、ついにその違和感の正体に気がついた。
「ぐぁるるるる」
『!?』
間違いなく、声は獣の咆哮だった。
それを感じたときに、アデラの足は止まった。
一瞬引き返すべきか逡巡したが、迷う時間は与えられなかった。
「ぐ ぁ る る る る 、 女 の 臭 い が す る ぞ !」
その言葉がアデラに聞こえた瞬間、相手は己の目前に在った。
『それ』が現れた時、同時に闇の世界に光が生じた。
幾つもの青白く燃える炎が、漆黒の天幕の世界を薄明るく照らし出した。
だが決して歓迎できる光ではなかった。
この明かりは白魔術師が使役する光精の力ではない。
死人の魂魄を燃やして輝く鬼火の光だ。
「っ!?」
「久方ぶりの獲物に巡り合えたか。妾の星巡りもそう悪くはないようじゃ」
『それ』は鬼火の光に照らされて輝く、黄金の瞳を持つ雌剣牙虎だった。
顎からは長く鋭い牙が覗き、その舌は獣のものでありながら器用に人語を操っていた。
ぎ ろ り
剣牙虎の禍々しい黄金の眼光で睨みつけられた瞬間、アデラは腰が砕けた。
『馬鹿な?この私がすくみ上がっているっ!?』
魔王に相対したときですら怯えなかった自分が地に尻をつき、
臆病な町娘のように震え上がっていることが信じられなかった。
「おお、若くて活きの良さそうな女子じゃ。前にかような獲物を食らったのは何時の事じゃったか」
舌なめずりして剣牙虎がのしのしと歩み寄ってきても、アデラは何も出来なかった。
蛇に睨まれた蛙という言葉があるとおり、彼女は剣牙虎の瞳に込められた「凝視の術」に縛られたのだ。
べ ろ り
剣牙虎の舌がアデラの頬を舐めた。
「ひぃっ!?」
「ほほほ、張りのあるいい肌じゃ。さぞかし身も締まって歯ごたえがあろうて・・・」
『このままでは、喰われる!?』
自分を食べてやろうと魔獣が言い放っても、むせ返るような獣臭が鼻をついても、
金縛りにあったアデラの身体は動かない。
死を目前にしながらも何も出来ない恐怖に、彼女の身体は瘧のように震えた。
「めったにない上玉よ。よく味わって喰らわねば」
「いやっ」
剣牙虎はアデラを地面に押し倒すと、その爪で衣類を剥ぎ取った。
すでに魔王に引き裂かれていた物を、要所は隠せるように巻き直していたのだが、
それさえ奪われたアデラの身体は青白い鬼火の光の下にその全てを曝すことになった。
べ ろ り、 べ ろ り、
ざらざらとした舌は頬から首筋をつたって身体を舐め回したが、
舌でなぞられる度に、アデラの身体に恐れからではない震えが走った。
「あんっ!」
「おうおう、初心ななりをして随分はしたない声を上げるではないか。
・・・・・・ではここはどうじゃな?」
魔獣の舌はアデラの乳房を、頂点にある乳首まで舐め上げた。
「いああぁん!?」
「ほほほ、好い声で啼くわ。どれ反対側の乳も舐めてやろう」
人語を話す獣の舌は、性的経験の浅い女騎士の身体を巧みに嬲っていっく。
剣牙虎がそこに飽きる頃には、アデラの両乳房は獣の唾液でぐっしょりと濡れていた。
「ううぅっ………」
「ぐるるるる。好いぞ、好い身体じゃ。
妾が外界におった時さえ、かような上玉が口に入るのは稀じゃった・・・」
臍から下腹へ舌を進めながらも、魔獣の老いた声は続けられた。
「ほう?」
鼻をヒクつかせながら、魔獣はアデラの下腹部を嗅いだ。
「ふふふ、どこぞから血の臭いがすると思うたら、ここであったか。
・・・お前、ここに放り込まれる直前に処女を失ったな?」
「!」
それはアデラのもっとも忌まわしい屈辱の記憶だ。
聖騎士であった身が魔王に貞操を汚され、今魔獣にそれを指摘されて辱められている。
喰われることへの恐怖など吹き飛んだ。
金縛りさえ解ければ、命をかけてでもこの剣牙虎に挑みかかっただろう。
だが、いくら全身に力を込めても四肢は動かない。
怒りと羞恥からくる震えだけが、彼女の反応だった。
その様子を楽しむかのように剣牙虎の舌はアデラを弄んだ。
「うむ、血と精の味がするわ」
「ああんっ」
「女の身でここに来るとはのう・・・ 閨で彼奴に粗相でもしよったか?」
舌はアデラの秘裂を舐め渡り、さらに深く舌を入れた。
「どうじゃ? 彼奴めもこのようにお前を舐めたか?
彼奴めのモノは妾の牙よりも太かったか?」
秘所に牙を当てられ、アデラはその硬さに魔王の男根を連想せざるをえなかった。
切っ先を押し当てられてはいないので、血が流れることはなかったが、
魔獣の牙は巧みに陰核を擦ってアデラを悶えさせる。
「ひぁああんっ」
「ぐるるるる、彼奴のモノもここまで硬くはなかったろうが。
・・・そうじゃ、一番牙はここに入れてやろう。 彼奴が味わった秘所を妾が喰らうのじゃ」
そう言うと剣牙虎は牙を離し、再びアデラの上半身に興味を向けた。
「どれ、彼奴はお前の口にも精を放ったかのう? ・・・確かめてやろうぞ」
「やめっ… むぅんんんんんっ」
獣の舌がアデラの唇を割って口中に侵入してきた。
アデラが他者に唇を許すのはこれで二度目だ。
しかし、そのどちらも彼女の望んだことではない。
今回も剣牙虎はアデラの意を介さずに口を押し付け、長く大きい舌を挿し込んできたのだ。
その舌はアデラの舌を、歯を舐め回した。
さらに耐え難いことは、顔を押し付けられることによって雌虎の放つ獣臭を否応なしに嗅がざるを得ないことだ。
だが、アデラの口を賞味する舌は突如として止まった。
「ぬっ!? これは!!?」
口を離した剣牙虎の黄金の瞳に、驚愕が浮かんでいた。
「ぐるるるるっ! これは、この味はお前の血ではない!
言えっ、言わねば噛み殺す! これは彼奴の血か?
お前、あやつの血を舐めたのか!?」
その禍々しい瞳に憎悪を込めて、剣牙虎はアデラを凝視する。
先程からの物言いから、この魔獣が言う『彼奴』とは魔王の事に他なるまい。
気の弱い者であれば睨みだけで心臓が停止する程の異形の瞳に見据えられ、アデラはただ頷いた。
「ぐおるるるるっ! 何という僥倖ぞ。あやつの血の味を残した娘にめぐり会えたとは」
歓喜の雄叫びを吼え上げると、再び剣牙虎はアデラの口にその舌を入れた。
先程よりも深く、容赦なく魔獣の舌は蠢いた。
『嫌っ、やめて! そんなに舐め回さないでぇ!』
獣に唇を奪われるのは、アデラにとって魔王にされた以上に嫌悪感を伴った。
剣牙虎の口からは涎が滴り落ち、彼女の顔を汚した。
無論アデラの口の中も、獣の舌を伝った唾液で満たされ、
窒息を免れるためにはそれを飲み込まざるを得ないのだ。
そんな獲物の心中を雌虎は微塵も気にかけず、ただ己の欲するものを知るために舐め続けた。
そしてアデラの口の中を舐め尽すと、剣牙虎はアデラから顔を離し高々と雄叫びを上げた。
ぐ ぁ る る る る る る る る る る る る !!!
「うおおおお、分かる。分かるぞ。 あやつの味が! あ や つ の 臭 い が !! 」
すでに剣牙虎の眼中にアデラはなかった。
そしてその金色の瞳で内幕の一枚の布地を睨みつけた。
『 そ こ か !』
鋭い爪で黒い布地を切り裂くと、暗い天幕の迷宮と異なった空間がそこには在った。
アデラはその部屋を知っていた。そこはここに封じられる直前に居た場所、魔王の私室だ。
そこに据えられた玉座には魔王が坐っていた。
剣牙虎は布地の裂け目からゆっくりと魔王に向かって歩を進め、魔王に相対した。
「玉座から降りよ!
そこは妾の父上の物じゃ」
「………愚かな、魔王の座は無明の時代より最も強きものが手に入れるのが定め。
貴様の父親は余に敗れた。そうしてこの玉座は余の物となったのだ」
「ぐぁるるるるる、僭称者めが!
魔王の座は父上の物じゃっ、そして妾の物じゃ!」
聖騎士すらすくみ上がらせる金色の凶眼も、魔王には通じなかった。
魔王は気だるそうな風にさえみせながら玉座から立ち上がり、己に挑む魔獣に錫杖を突きつけた。
「畜生めが……… 大人しく闇の中に封じられておればよいものを。
父親同様に生皮剥いでやろうぞ」
「やってみよっ!」
ぐ ぁ ぉ お お お お お お お お お お お お お お !!!
アデラが最後に聞いたのは、雌剣牙虎が上げた魔力の咆哮であった。
既に消耗しきっていたアデラは、耐え切れずに気を失った。
彼女が最後に聞いたもの、それは魔王とその座に挑戦しようとする者の戦いの合図であった。
・・・・・・・・・
黒い天幕の横には、いつも白い天幕がある。
そこでいつ何時魔王が入浴を望んでもいいように準備しておくのが、フィリオたち端女の役目だった。
いつもの様に鈴が鳴り、フィリオは普段通り魔王を迎えた。
しかし、今日は彼女の主の方が普段の通りではなかった
「きゃああ!?」
本来主の前でこのような叫び声を上げる事は許されないことだが、今回ばかりは仕方あるまい。
なにしろ魔王の黒い装束は血まみれであったからだ。
「………」
己の様子をみて目を丸くしている端女を無視して、魔王は両手に抱えていた物をどさりと放り投げた。
「………洗っておけ」
それだけ言って魔王は白い天幕を後にした。
どうやら風呂に入るためにここに来たのではないらしい。
取り残されたフィリオは恐る恐る魔王が投げ出したものを見た。
「えっ!?」
そのうち一人は見覚えがある、二ヶ月ほど前に彼女が世話をした女騎士。
もう一方は見たことのない、燃えるような金髪の少女だった。
それだけならフィリオも驚くまい。彼女が驚いたのは二人とも一糸纏わぬ裸であり、
さらに金髪の少女は頭髪からつま先まで、全身血だらけだったのだ。
『ええっ? 一体どんな真似をすればこんなに血だらけに?』
フィリオはこの少女の様子を見て、生まれた直後の赤子を連想した。
それほどまでに、金髪の少女の身体には血に塗れていない箇所が無かったのだ。
だが、この少女は自分より幼いとはいえ、母親の胎の中にいるような歳ではない。
とりあえずこの天幕には常に湯が沸いている。
魔王が命じた以上、二人とも洗っておかなければならない。
しかしどちらを先に洗ったものだろうか?
もう一方の女騎士は血を浴びている様子は無いが、なにやら得体の知れない臭いがする液で濡れている。
顔見知りのこともあり、彼女を助けたい気もするが、やはり血まみれの少女も放っておけない。
『………』
しばし逡巡した後、結局二人にお湯をかけて、
それで目を覚まさなかったらとりあえず二人一緒に湯船に入れることに決めた。
後はどちらか先に気がついた方から事情を聞こう、
そう決めたフィリオはぬるま湯をくみ出すために桶を抱え、釜に蓄えられたぬるま湯を汲みだし始めたのだった。
(終わり)
424 :
投下完了:2006/10/14(土) 20:27:00 ID:fRoWoI3E
レズ魔獣姦というシチュのため、触手・怪物スレに該当するのかもしれませんが
続き物のため書かせて頂きました。
副題は「アデラと雌剣牙虎」です。
読んで気に入らなかった方には申し訳ないです。
>>380 遅レスながら一つ。
もともと宰という漢字には料理人という意味があり、古代中国では
主君の内向きの用事を取り仕切る人という意味がありました。
これが転じて秦漢における丞相の別称、さらに後の時代では文官の最高位(明の内閣大学士など)を
指す通称として用いられるようになったものです。つまり宰相とは厳密な官職名ではなく
「政治家・官僚でいちばん偉いひと」といった程度の理解で良いのではないでしょうか。
ふと思った、
オ フ 会 し ま せ ん か
>>424 今回も素晴らしい!
特にラストに金髪少女が出てきたのが色鮮やかでよかった。
少女は生皮剥がれた魔獣の本体でOK?
428 :
投下後校正:2006/10/15(日) 06:44:59 ID:T+Gqqe2q
>>423 最後の一文。
そう決めたフィリオはぬるま湯をくみ出すために桶を抱え、釜に蓄えられたぬるま湯を汲みだし始めたのだった。
↓
そう決めたフィリオは桶を抱え、釜に蓄えられたぬるま湯を汲みだし始めたのだった。
すいません。
最後の文章は推敲中だったものをそのまま送信してしまいました。
ぬるま湯くみ出しが二回も文中にあって変になってますよね。
>>427 気に入って頂けた様で幸いです。
金髪娘については機会があったら続き書きます。
>>425 380です。
なんと丁寧なリサーチ!ありがとうございます。
宰相が役職名とは言えないですね。
文字の解説からして頂けるとは思いも寄りませんでした。
勉強になりました。感謝です。
この上は、この話を受け売りするチャンスを狙うばかりですね!
また、うかうかとよく知らない事を口走るものではないと、反省もしきりです。
本当です!
430 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/16(月) 22:05:31 ID:aDIeaJ25
ツルペタの金髪をwktkして待ってます
女騎士アリューシアの話、投下します。
前作
>>282からの話の続きです。
甘々なので苦手な方はなにとぞスルーでお願いします。
それでは、「行楽日和」です。
432 :
行楽日和:2006/10/18(水) 15:36:29 ID:oG3vjt5q
「明日の予定はどうする?」
アリューシアはボードゲームの駒を進めつつ、目の前のグルドフに語りかけた。
「明日……ですか?」
駒の進みを目で追いながら、薬師はあまり気の無い返事を返す。
「せっかくの休日なんだ。なにも考え無しで無駄に過ごしてしまってはもったいない
だろう。今日のうちに予定を決めておいて、明日は有益に過ごさないとな」
そう言いながら、彼女は窓の外を眺めた。
乾いているが、どこか柔らかい草の匂いを含んだ漆黒の夜の世界。
半円の月は煌々と輝き、時折、月光に照らされた白い雲が細く煙のように流れていく。
「明日もいい天気になるぞ。きっと行楽日和だ」
あの日から五日後の約束の日。
その前日の夜に仕事を終えたアリューシアは、慌しく食事を済ませた後、一緒に食堂に
いて雑談を始めた同僚の衛兵達に別れを告げて、早々と彼の所にやって来ていた。
「そうですね…………」
と言ったきり、いくら待ってもその後には何も続く様子はなかった。
それぞれ十六の駒を使って互いの王を取り合うゲームの中盤戦。
やや劣勢の彼は戦術を考えるためか、ボードの上の配列に視線を置いたまま、
微動だにしない。
痺れを切らしたアリューシアは口を開いた。
「特に決めてないなら、バンセス湖まで遠乗りに行かないか?」
そこでようやく薬師が顔を上げた。
「少し遠いけど、朝早めに出れば向こうで充分遊ぶ時間はあるだろう。
魚釣りも楽しめる所らしいから、それを昼食にすればいいし。二人ならきっと楽しいと思う。
ずっと前から行きたいと思っていたが、なかなか行く機会が無くてな。どうだ?」
いつもは凛々しさを湛えた深い藍色の瞳を、休日前の子供がそうであるようにキラキラと
輝かせて、アリューシアは期待に満ち溢れた表情を浮かべた。
二人で過ごす、初めての休日。
(有意義に過ごして、素敵な思い出を作りたい)
口にこそ出さないが、アリューシアはかなり気合が入っていた。
過去に多々、彼女に憧れる男性からの誘いがあったにもかかわらず、当の本人は全く
それと気が付かなかった、仕事熱心でそういう類に疎いこの女騎士。
彼女は休日も姫の付き添いや、剣の稽古、衛兵仲間との付き合いを優先していて、
今までデートらしいデートというものをほとんど経験したことが無かったのである。
約束を交わした時には、一緒に居られるだけで嬉しい、と思っていたが、
その日が来るのを待つうちに欲が出た。
二人であれもしたい、これもしたい、と期待と妄想はどんどん広がり、
今では彼女の頭の中では、既に休日の綿密な計画が練り上げられていた。
433 :
行楽日和:2006/10/18(水) 15:37:24 ID:oG3vjt5q
「…………」
肘を付き、顎を乗せたグルドフは相変わらずの感情を表さない顔を向けていた。
その濃いこげ茶色の目でアリューシアを暫く見た後、彼は再び無言で
視線をボードに落とした。
無愛想はいつものこと。
一旦口を開けば減らず口なのに、それ以外は口数も少ない。
何も言わないのは、すなわち賛同だとアリューシアは自信を持って解釈した。
「よし、では決まりだな」
満足げにそう言った後気が付くと、グルドフが既に駒を動かし、自分の番となっていた。
配列をみて、息を呑む。
優勢だったと思っていたが、このままだとどうやら雲行きが怪しい。
とっておきの葡萄酒を開け、それを楽しむついでに始めたようなゲームであったが、
負けが続くと元々の負けず嫌いの性分がもたげ出て、いつの間にか
熱中してしまっていた。
本来の目的であった葡萄酒は既に飲み干してしまい、数本の空のボトルだけが
テーブル脇に残って、蝋燭の光を鈍く反射させている。
夜はとっぷりと更け、家族は安らかな夢を見て、恋人達は互いに愛を囁きあう頃に
なっていた。
だが、アリューシアはそんな事にはお構いなしに、なんとかこの男から
勝利を勝ち取ろうと、目の前にあるゲームに意識を集中させていた。
しかし、翌日の計画を楽しみにしているのなら、彼女はもう少しそこで
注意を払うべきであったのである。
NOと言わない代わりに、YESとも答えなかった薬師の態度の意味を。
*
「こんなものか……」
庭先で全ての洗濯物を干し終えると、グルドフはそれらを眺めて一人呟いた。
「昼食をお持ちしました」
なじみの声を聞き彼が振り向くと、いつもの小姓がいつもよりも一回り大きいカゴを
提げて歩いてくるところだった。
「いつもすまないね」
「いいえ。今日は二人分でしたね」
小姓は内容の確認を取りながら、人懐っこい笑みを浮かべた。
薬師の彼の元には、客人はもちろんのこと、病人やけが人などが患者として
滞在することがある。
そういった人たちの食事を用意するのも慣れた仕事だ。
434 :
行楽日和:2006/10/18(水) 15:38:49 ID:oG3vjt5q
「食べ物の硬さは普通でよろしかったですよね」
「ああ」
「患者さんの食事、裏ごしとか必要でしたら教えてくださいね」
そう言いながら小姓は薬師の背後の洗濯物に気が付いた。
「洗濯物でしたら、いつもみたいに僕に渡してくれればよかったのに」
「……まあ、急ぎだったからね。構わないよ」
「そうですか。又いつでも遠慮なく申し付けてくださいね。すぐに来ますから」
「ありがとう」
「でも、グルドフさん……」
小姓は視線をそれに向けたまま、心配そうに尋ねた。
「あの洗濯物、もう少し絞ったほうが良いと思いますけど……」
ロープにつり下げられているそれらは、すすぎが終わったものをそのまま絞らずに
広げたかのような濡れ方で、ぽたぽたと雫さえこぼしていた。
おまけに、干してある場所もどうみても昼からは日陰になりそうな場所だ。
「あれじゃ、いくら今日みたいに天気がいい日でも、乾くのが夕方になりますよ。
……僕、今からもう一度絞りましょうか」
「いや、いいんだ」
「でも……」
「夕方乾くくらいでちょうどいい」
「はあ……。??」
余りにもきっぱりとした返答に、小姓もそれ以上は何も言わなかった。
「……じゃあ、これ、小屋の中に置いておきますね」
ぺこん、と頭を下げ、訝しげな表情を浮かべながらも、無駄な詮索などはしない優秀な
少年はそのまま小屋の入り口へと向かっていった。
洗濯道具を片付けた後、小屋の中に置かれた昼食のカゴを手にし、グルドフは小屋に
繋がる建物の二階へと上った。
向かう先は彼の寝室である。
寝室の扉を開けると、窓の無い廊下にも増して一層中は薄暗い。
カゴを脇の棚に置き、すたすたと部屋を横切ると、彼はベッドを回り込み
勢い良くカーテンを開けた。
東向きの窓から、一気に明るい光が差し込んだ。部屋の中が光で照らし出される。
「……うう…ん…」
くぐもった声がして、寝台の上でふくらむ上掛けの中身が、もぞり、と動いた。
「まぶしい…」
不機嫌な声と共に、剣だこのある手が上掛けをさぐり、自らの頭にすっぽりと覆い被せる。
435 :
行楽日和:2006/10/18(水) 15:39:44 ID:oG3vjt5q
「そろそろ起きたらどうです」
「もう朝?」
「………昼です」
「……………」
ぎし、と寝台を軋ませ、グルドフは寝ているアリューシアの横に腰を下ろした。
「いつまで惰眠を貪る気ですか。規律を重んじることで名高い王女の騎士が
こんなに自堕落だとは、呆れましたね」
「明け方まで私を眠らせなかったのは、何処の誰だ……」
「貴方があんなに遅くまでゲームを引き伸ばしたりするからですよ」
「…………」
アリューシアは未だ完全ではない頭の中で、のろのろと昨日の夜のことを思い返した。
あのゲームは衛兵仲間の内では一、二を争うほど自信があったのに、
昨晩はなかなか勝てなかった。
つい意地になり、夜遅くまでもう一回、もう一回、と勝負を挑んでいたら、
呆れ顔になった彼に無言で押し倒されて、
はぎ取る様に服を脱がされて、
その後は…………。
一度肌を重ねてしまうと、あとはもうなし崩しだった。
蕩け合い、貫かれ、何度も達し、放たれた精を体の奥に受け止めた。
身も心もより深く繋がりたいという欲求には終点が無かった。
思えば、柔らかなベッドの中で二人で過ごす夜というのはこれが初めてで、
嬉しさと恥ずかしさの入り混じる気持ちの中でそれは始まり、我を忘れて夢中になった。
最後のほうの記憶はおぼろげだ。
ただ、組み敷かれて朦朧とした意識の中、早起きの小鳥の囀りが耳に届き、
もうそんな時間なのかと思った事は憶えている。
「休みの日にしっかり睡眠だけはとっておかないと、次の日からの仕事がきついんだ。
もう少し寝かせてくれ……」
「マルゴット様に貴方の自堕落ぶりを報告しますよ」
「勝手にしろ……そんな事をしたら、お前だって困るくせに」
最大の効果をもたらすと思われた彼女の主人の名を持ち出しても動かない女騎士に
グルドフはため息を付いた。
「……今日は遠乗りに行くとか言ってたけれど──あれはもう中止ですか?」
「…………あ」
そうだ。遠乗り。
提案したのは自分のほうであったのを思い出す。
さすがに提案しておいてこれでは、相手に申し訳が無い。
436 :
行楽日和:2006/10/18(水) 15:40:47 ID:oG3vjt5q
ようやく起き上がる気になったアリューシアはのろのろと上半身を起し、顔に掛かる
長い髪を後ろに払った。
「……支度をしなくてはな」
「まだ本気で行くつもりですか」
「当然だ。せっかくの休日なんだから……」
昨日は抱き合ったまま眠ってしまったので、アリューシアは裸のままである。
体を上掛けで隠しながら、枕元においてあった新しい着替えに手を伸ばす……が、無い。
「あれ?」
眠たい目を擦ってから、上掛けをめくり、床を眺め、はては寝台の下まで覗き込む。
彼女の着替えは何処にも無かった。
それどころか、昨日グルドフに剥ぎ取られて、床に放り出されていたはずの服さえも
見当たらない。
首を捻りながら服を探すその様子を先程から黙って見ているグルドフに
アリューシアは向き直った。
「……………」
「何です」
「服、知らないか?」
「何の服です」
「決まっているだろう。私の服だ。昨日脱いだ服も、今日の着替えも見当たらない」
「ああ、服ね」
本調子に戻ったらしい女騎士を見て、グルドフは表情も変えずに、さらりと答えた。
「洗濯して、干してありますよ」
「─────なっ!!」
「他に洗う物があったので、ついでに」
「何故、今日の着替えの分まで洗濯するんだ!」
一瞬の絶句の後、アリューシアは寝台の上で立ち上がらんばかりの勢いで声を張りあげた。
「私は何を着ていればいいと言うんだ!何を!」
この家に彼女の服の替えなど、もちろん無い。
グルドフの服を借りるにしても、シャツは袖を捲くればなんとかなるが、
ズボンはサイズが違いすぎる。
とてもではないが、そんな不自然な格好で外を出歩くことなど出来はしない。
つまり、服が乾くまではこの家に軟禁状態である。
「貴様っ。どういうつもりだっ!!」
完全に眠気を吹き飛ばしたアリューシアの剣幕に動じることも無く、薬師は確認を
取るような口調で飄々と言葉を発した。
「今日の遠乗りは無理みたいですね」
「────!」
437 :
行楽日和:2006/10/18(水) 15:41:59 ID:oG3vjt5q
彼の顔に、一瞬だけ、してやったりという表情が浮かんだと思ったのは、
気のせいではないはずだ。
アリューシアは唸った。
「……………遠乗りが嫌だったら、素直にそう言えばいいのに」
「別に嫌だとは言いませんが」
「じゃあ何でこんなたちの悪いことをする!」
「どうせ貴方の事だ。気が進まないとこちらが言ったって、結局は自分の意見を押し通す
つもりだったでしょう?強引だから」
「ぐっ……」
図星であった。
「あのですね。確かにバンセス湖は風光明媚な所ですが──」
言いながらグルドフは身を乗り出して、アリューシアの体を寝台に押し倒した。
「──いい年した男女が二人で過ごそうってのに、何故山を一つ越え、道無き道を進み、
幾つもの沢を渡って行かなければ辿り着けないような難所に、日帰りで行かなくては
ならないのです。なんの軍事訓練ですか?それは」
「だ、だってだな…美しい景色を二人で……」
二の腕を強く押さえつけたまま、醒めた目でじっと見下ろしてくる彼に対して、
女騎士は必死に抗弁を試みる。
「景色を楽しむ前に、二人して疲れきっていたら話になりませんよ」
「楽しい魚釣り……」
「もっと近場があります」
「道程に苦労を重ねるほど、目的地についた時の喜びは大きいじゃないか!」
「気合を入れて挑んでいただくのは結構だが、もう少し情緒と言う物を
考えて欲しいものだ」
「うう………」
反論の余地無し。
「まあ、貴方らしい考えと言えばそうかもしれませんけど」
と、すっかり黙り込んでしまった彼女に対して前置きし、
「今更、どうやって二人で過ごすかなんて事をあれこれ考える必要など、
何処にも無いと思いますが」
グルドフは上掛けを払いのけると、アリューシアの一糸纏わぬ姿を露にさせた。
その体に覆い被さり、体重を掛けて動きを封じると、
体の曲線をするすると撫で回し始めた。
「わっ……馬鹿。何をするっ、こんな朝っぱらから! 節操の無いっ」
「もう昼です」
焦る彼女の耳元に顔を寄せ、ふうーっ、と息を吹きかける。
「同じだ! …ふぁ……あん───じゃない! 離せ! 馬鹿者っ」
「──このような格好で目の前に居られたら、こうするしかないでしょう?」
「誰のせいだ、誰の」
「付け入る隙を与える貴方に落ち度があるのですよ」
438 :
行楽日和:2006/10/18(水) 15:42:58 ID:oG3vjt5q
亜麻色の髪を指で掬い、耳から首筋へと繰り返し唇を這わせていると、
あっけないほどに早く抵抗は止んだ。
しばらく戯れのように体中を愛撫した後、彼女の体から頑なさが消える頃を見計らい
グルドフは顔を上げて囁いた。
「脱がせて」
アリューシアは顔を赤らめ、恨みがましい目付きで薬師を一度睨みつける。
それから、そろそろと彼のシャツのボタンに手を伸ばした。
服が脱がされるとグルドフは彼女を抱きしめ、鎖骨の周りに柔らかく歯をたてた。
弾力のある豊かな胸のふくらみを掌におさめ、感触を楽しむかのように揉みしだく。
「グルドフ……」
「何です?」
「お、お前は意地悪だ」
「………」
それには彼はもう何も答えなかった。
そう言いながらも髪を撫でてくるアリューシアの指の動きに、グルドフは可笑しさに
口元をほころばせ、その胸に顔を埋めた。
「せっかくの休日なのに……」
微かに息を乱しながら、アリューシアは小声で呟いた。
「休みの日だからといって、どこかに出かけなければ気が済まないなんて、
子供の考えですよ」
唇が上下に揺れ動くたわわな乳房の先端に触れ、ぱくりと喰らい付く。
「あっ……ぅう…ん…」
舌を絡め、柔らかく乳首を吸われる。
お前のした事だって、充分大人げ無いじゃないか。──という言葉が心の中に浮かんだが、
アリューシアは最早それを口には出さず、心に留めておくだけにした。
蕩けるような感覚に、昨夜のように体が熱を帯びていくのを感じながら、
彼女はただ、甘い声を上げた。
青葉に薫る風がそよそよと入り込み、カーテンを揺らした。
澄み渡る空を讃えるように高らかに歌う鳥達の声がする。
寝台の上には、いつまでも重なり合う二人の姿。
開け放たれた窓からはさんさんと陽光が降り注ぎ、今日が実に素晴らしい
行楽日和であることを示していた。
(行楽日和 END)
439 :
行楽日和:2006/10/18(水) 15:44:06 ID:oG3vjt5q
以上です。
読んでくれた方、いつも感想くれる方、どうもありがとう。
お待ちしてました!
いつもながら、GJでございます!!
おおお…萌え死にそうだ(*´Д`)ハァハァ
GJ!! 相変わらず絶品でしたわい
少年騎士と少年騎士よりも4〜5歳年上の姫とかいいよね。
「昔みたいにお姉ちゃんって呼んで!」という台詞が合いそうなんだ。
相変わらずの超GJで嬉しいです。
二人の会話と心情描写にいつも萌えます。
またの投稿を心よりお待ちしています。
良かった、続きあるんだ! 両思いになってお終いかと思ってがっかりしてました。
この二人、丁丁発止で且つ又ラブラブと言う絶妙な距離感が大好き。
またのご登場を心からお待ちしております。
>>442 悪くないシチュだけど、
お姫様は独立したスレがあるからなあ。
姫将軍ならこのスレでなんとかなるかもしれないんだが、
騎士に叙勲された少年に「お姉ちゃん」とは呼ばせないだろう。
お姫様スレで要望することを推奨する。
『行楽日和』とはこれまた季節柄にあったお話で!
陽光の中でいたす二人で終ってまことに爽やかエロでしたね。
このカップルは可愛いねぇ、たまらんですよ!
いつも短くまとまっていながらヒネリが効いて面白い話になってますがな。
感服です。まだ続くようで期待してます。
447 :
投下準備:2006/10/20(金) 19:00:53 ID:VOXbBb/w
魔王の話の続編です。
一時期流行った人外ロリなるものを書いてみようと思い作ってみました。
ティラナの本性についての詳細は『黒い天幕の囚われ人たち』を読んで下さい。
前回は魔獣モノでしたが、今回は人型でのお話です。
魔王の前に立つ少女は、いささかも怯えたそぶりを見せず、逆に相手を睨み据えた。
歳はようやく月の障りを迎えた年頃であろうか。
少女の金色の髪は磨きぬかれた黄金細工のように輝き、同じ色の瞳は燭台の炎を映してぎらぎらと光っていた。
なによりも、少女はその白磁のような肌の上に何も着ていない。
ただ首には猛獣を繋ぎ止める為の鉄環が嵌められ、そこから伸びた鎖が時折鈍い金属音を立てた。
「ぐるるるるる、」
繰り返すが、少女は一糸纏わぬ姿である。
にもかかわらず、その顔にも振る舞いにも一欠けらの恥じらいも見せていない。
それどころか、魔王に対し喉を鳴らして威嚇する始末だ。
闇の勢力の総帥である魔王にここまで倣岸な態度を取れるのは、よほど肝の据わった者か、
あるいは身の程を知らぬ愚か者だ。
長椅子に腰掛ける魔王は、少女の眼光になんの反応も見せなかった。
漆黒のケープの奥に覗くその瞳には、いつもと代わらぬ冷厳なる光が宿っている。
その態度が少女をますます苛立たせた。
「………妾の毛皮を返しや!」
甲高い声で、金髪の少女は魔王に怒鳴りつけた。
獣たちの諍いにおいても、先に咆えるのは格下の個体だ。
それゆえ自分からは言葉をかけたくなかったのだが、
魔王が余りに泰然と構えているのを見て我慢が出来なくなってしまった。
いくら虚勢を張っても、主導権を握るのは常に強者なのだ。
「………」
「なんとか申したらどうじゃ!貴様が剥ぎ取った妾の毛皮を返しや!!」
魔王は目の前で喚き散らす少女の様子をしばし眺めていた。
そして少女が喚き疲れた頃にようやく口を開いた。
「それはならぬ」
「なぜじゃ!?」
「己の所業を省みるがいい。そなたが暴れ狂った所為で、余は一合戦分の力を使ったのだ。
そこまで仕出かした輩に、何ゆえ力の源を返さねばならぬ?
本来なら逆剥ぎにした上で縊り殺すところぞ」
「ぐっ、」
そう、この金色の髪と瞳をした少女こそは、先日まで黒い天幕の中に封じ込められていた剣牙虎。
かって魔王が屠り、その地位を奪った先代の魔王の娘であった。
「では、何ゆえ妾を殺さぬ?」
「………」
無言のまま魔王が手を振ると、見えない力が少女の細首から下がる鉄鎖を引き寄せた。
非難の声を上げる間もなく魔王の側に引き据えられると、少女はそのまま頤を摘まれ、唇を重ねられてしまった。
「ぺっ、………なにをしやるっ!」
「余はまだ獣精の類と交わったことがない」
「妾を犯す気か!? むっ…むむぅ?」
魔王は言葉を返さず、口付けで相手の舌を封じた。
先程の触れ合うだけの行為ではなく、深く舌を挿し入れて相手の口中を探るように舐めていく。
抱きすくめられて唇を奪われたことに対し、少女は手足を暴れさせることで抵抗したが、
人型となっては魔王の身体を押しのけるほどの力は無い。
いまの少女には、外見同様人間の娘程度の腕力しかないのだ。
けなげにも非力な腕で相手の身体を殴り続けていたが、魔王は構わず少女の唇を貪る。
噛み付こうとしてくる牙を巧みにかわしつつ、その唇から歯茎に至るまで十分に味わった後、
ようやく魔王は唇を離した。
「ぷ、ぷはぁっ!」
「歯並びもヒトと変わらんな。犬歯がやや長いくらいか」
「くそっ、奪うのには慣れているが、唇を奪われるのは初めてじゃ…」
非難がましい目を向ける少女を己の膝の上に乗せると、魔王の手は相手の身体を弄っていった。
逃れようにも、少女の手首は魔王に掴まれている。
空いている手で魔王を引っ掻こうとした瞬間、手首がきしむほど握りしめられた。
世辞にも体格雄偉とはいえぬ魔王の身体であったが、
少女にはその腕が外見以上に凄まじい力を秘めていることが分かった。
魔王のもう一方の手は、少女の金色の頭髪を梳くように指を絡ませ、
骨格を確かめるかの様に首筋へから背骨、わき腹、腰骨に至るまでその指先で触れてゆく。
「うう……」
「どうした?」
「こそばゆいのじゃっ!」
「堪えよ」
そう言い捨てると、魔王の指は相手の肉付きの薄い胸地をなぞった。
少女は僅かに顔をしかめただけであまり反応は無い。
揉むのにも苦労しそうな平らな乳房をしばらく撫でた後、指はそのまま臍を経て少女の足の間へ下りる。
少女の股間にはまだ毛が生えていない。
そのぴたりと閉じられた裂け目を、魔王は容赦なく割った。
「や、やはり其処も触るのか………」
「………」
「ん、んんっ」
初めて異物を迎え入れる未成熟な秘所は、撫でられたくらいでいきなり快楽を感じるはずもない。
異物感に耐える少女の困惑を無視して蠢く魔王の指であったが、秘奥の入り口を撫でている途中で突如止まった。
「?、どうしたのじ…ゃわあ!」
手首を握り締めていた魔王の掌は急に離され、今度は足首を握られて高々と掲げられる。
自然、少女の脚は大きく開かれて相手にその秘所を晒す格好となってしまう。
魔王がその付け根に存在する裂け目を指で押し開くと、鮮やかな朱色の秘部の様子が全て見えた。
「ひゃ………、ぐるるるるる、何の真似ぞっ?」
「生娘の膜は人間と妖精の一部しか持たぬ聞いていたが、そなた達獣精の類にもあるのだな」
「知るかっ、生やしたくて生えている訳ではないわっ!」
物珍しそうに秘所のとば口を撫で回す魔王に、少女は怒鳴りかけた。
確かに処女しか持たぬ純潔の証は人間と妖精族にしかない。
ヒト型を持つ存在であっても半獣人族や鬼族にはそれの特徴を持たないものが多いのだから、
魔王が少女のそれに興味を抱いたのも無理は無い。
「いつまで其処を撫で回しておるかっ、生娘など貴様には珍しくもなかろうが!」
「………」
だが、執拗にその箇所を嬲られるというのは少女にとって恥辱の極みであった。
その言葉に従うように、魔王の指は秘所から離れた。
ただし少女が息をつけたのもつかの間、指よりも太く長いモノが少女の秘所に押し当てられた。
「ひっ、ひぎぎいぃ! ぐっ、止め… さっ、裂ける!」
少女の身体を側臥の形で開かせ、魔王の男根はまだ誰も受け入れたことの無い関門を破り、その奥へと侵入していった。
秘所を愛撫していた魔王の指は、先程の少女の言葉で止められてる。
そのために秘所も十分な潤いを得るに至っていない。ましてそこは初めて異物を迎え入れたのである。
狭隘な秘道は男根の侵入によって引き裂かれるような激痛を伴いつつ、無理やりに拡張されていった。
「ぅうあああああっん! うっ、うっううっ………………」
あらん限りの力で絶叫を放つ少女の股間を、破瓜の出血によってぬめりを得た魔王は躊躇なく穿ち抜いた。
女として育ちきらぬ身体は、魔王の男根を半分しか飲み込むことができなかった。
それでも魔王の先端は子宮に届き、胎の底を押し上げるかのような感触を与えている。
『うぐぅ、生皮を剥がれるよりも痛いかもしれん… 』
少女の想いを他所に、魔王は彼女の片足を抱えて犯し続けた。
身を突き進める度に少女の口から洩れる叫び声と、
首輪に繋がれた鉄鎖が揺れるじゃらじゃらとした音だけが部屋の中に木霊する。
幾たび進退を繰り返したか、悲痛な呻き声も枯れはてた頃、魔王は最後の打ち込みと共にその精を子宮めがけて放った。
「初めて雄と交合ったが、思っていたものと大分違うわ」
「………」
「何より痛い、世の女どもは皆このような苦痛を耐えておるのか?」
「………」
「これで妾は用済みか?
これからどうするつもりじゃ。また天幕の闇の中に封じ込める気か?」
少女は赤く染まった股を閉じ、その黄金の眼光は依然魔王を真っ向から見据えている。
だが僅かに声が震えていたのは、先程の情事において叫びすぎた為だけであろうか?
魔王は眼前にいる少女の扱いを思案しているのか、しばし何も言わなかった。
そして数分後、ようやく心を決めたのか、魔王は少女の首に手を伸ばした。
「何をするか!」
「静かにしておれ」
後ろ首をつかまれてもがくのも構わず、軽々と少女を持ち上げた魔王はそのまま天幕を後にした。
・・・・・・・・・
朱色の天幕の横に建てられた仮湯屋で、ネリィは一人湯船に浸かっていた。
ネリィが湯を使うとき、誰もそれを世話するものはいない。
東方の貴人であれば一人で入浴するのは珍しい。
なかには介添えなしで風呂に入る方法を知らぬまま死んでゆく貴族もいるほどだ。
その絶大な地位に比べ実に簡素な生活をしている魔王すら、湯に入るときは端女を侍らせる。
だがネリィが湯に浸かるとき、彼女の身体から染み出した毒素は蒸気を嗅ぐだけで人を昏倒させる。
それゆえ、いかなる者もネリィの仮湯屋へ近づこうとしない。
風呂係の端女たちが恐る恐る近づくのは、湯が冷めて湯屋の蒸気が完全に収まってからだ。
だからネリィには仮湯屋に近づいてくる足音を聞いた時、それが誰であるかすぐに分かった。
「陛下?」
ネリィの予想通り、仮湯屋へ入ってきたのは自分の主人であった。
ごくまれにだが、魔王はネリィの湯屋を訪れ、浴槽で戯れる事があった。
しかし今回入ってきたのは魔王一人ではなかった。
魔王はもう一人、後ろ首を掴まれて持ち上げられた金髪の少女を伴ってきたのだった。
「ええいっ、離しや!」
「あっ!? へっ、陛下!? 何をなさいます!」
魔王はネリィの狼狽など気に入らぬかのように、掴み上げた少女を頭からその湯船に放り込んだ。
それを見たネリィの目には、かすかに非難の色が浮かんだ。
闇の王として、諸々の成敗は不可欠なものであろう。
命が失われる事を嫌う彼女も、それくらいは承知している。
だがわざわざ私の毒を使っていたいけな娘子を処刑しなくてもよいではないか…
「………ぶはぁっ、何をしよる!湯を飲んでしまったではないかっ?」
「えっ?」
ネリィには、目の前に居る金髪の少女が無事だということが信じられなかった。
嗅いだだけで命が危ない毒の湯を飲んでいるというのに、相手には死の徴候の片鱗すら見られない。
「案ずるなネリィ。そやつは中々に死なぬ」
「くんくん……この匂い、この娘毒姫か? ふん! 妾を甘く見るでないぞ。
皮を剥がれたとはいえ、この程度の毒でどうにかなるような妾ではないわっ」
「あっ、あの…陛下、この子は」
バ シャ ンッ !
「きゃあっ」
思い切り湯船の水を引っかけられて、ネリィの言葉は妨げられた。
「妾を子ども扱いするか!?妾はお前の父が生まれるよりも遥かに昔から生きておるのじゃぞっ」
「そなたに与えた大剣牙虎の毛皮があったろう。その皮の持主の娘だ」
「ぐっ?、がるるるるるるっ。 貴様っ、妾の父上の毛皮を寵姫に呉れよったと申すか!」
「………ネリィ、手を出せ」
「はい」
差し出されたネリィの手に、魔王は自分の指から抜き取った鉄の指輪を握らせた。
「そなたに預ける。徒然の慰みにでもするがいい」
それだけ言うと、魔王は仮湯屋を出て行った。
ネリィにはまだ闖入者二人の話した事柄の半分も理解できていなかった。
預けるとはこの指輪のことだろうか?それともこのあどけない姿の金髪の少女のことだろうか?
「あ……、あの」
「何じゃ」
「貴女の名前は?」
「名前、名前じゃと? ふん、おかしな事を聞く。お前は自分の主人の名を知っておるか?」
「………」
少女の指摘にネリィは答えられなかった。
ネリィは魔王の名を知らない。皆が魔王とだけ呼ぶように、自分もそう呼んでいた。
その後宮に納められた後、声をかける時は『陛下』『我が君』と呼んでいる。
「それと同じ、魔王はただ魔王と呼ばれる存在。そう呼べば皆が誰のことか分かる。
だから特に名前など不要なのじゃ。
妾のことも魔王の娘と名乗れば誰にも通じた。ゆえに妾にも名前は無い!
もっとも名乗りを上げた後に食い殺してしまうことも多かったが………」
「………ふふふ、可愛い顔をして暴れ者なのね。
そう、ティランノス…じゃあ男の子みたいだから、貴女のことはティラナと呼ぶことにするわ」
「だれが暴れ者じゃ!?」
「きゃっ、やめてティラナ」
ティランノとは、古語で暴君という意味である。
再び湯しぶきを浴びせられながらも、ネリィは嬉しかった。
いままで誰がこのように湯屋で遊んでくれただろうか?
物心ついてから、自分は常に一人きりだった。
心を許せる人間は誰もいなかった。
それを魔王が現れて救ってくれた。
交わる相手を殺してしまうという宿命から、魔王は自分を救ってくれた。
そして自分の毒で死なぬこの少女を与えてくれたのも、魔王の単なる気まぐれかもしれない。
それでも生まれて初めて同性の相手と湯船で戯れる喜びに、ネリィは唯ひたるのだった。
(終わり)
リアルタイムGJ!
どんどん世界が拡大してくなあ。
456 :
投下完了:2006/10/20(金) 19:09:51 ID:VOXbBb/w
「魔王とティラナ」でした。
本来ティラナはアデラが黒い天幕の世界を脱出するためだけのチョイ役だったのですが、
人外ものも書いてみようかなという気持ちがふと沸き起こってきて新しく設定を加えてみました。
いつも感想をくれる方、楽しみにしてくださる方ありがとうです。
次はおそらく第一話ぶりにイリアが話しに絡んできます。
>>455 今同じこと書こうとしててびっくりしたw!
いい意味で力が抜けてきた感じだね、悔しいけどどんどん上手くなってる!!
GJ!!
今回もGJ!
金髪美少女の高飛車口調に萌え萌えでした。
>403の「シーア」の続きを投下します。14レスです。
460 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:02:22 ID:1p30/hQl
ルーゼンは栗毛の馬に乗って手綱を取り、溜め息をついた。
辺りはもう真っ暗で、屈強な護衛が松明を灯して彼を先導する。
がっしりとした馬の背に揺られ、まだざわめきの残る王宮を離れると、街中の遠い
明かりが目に付いた。
――やっと邸に帰れる。
国王の第二王子以下の男子は、成人を機に王宮暮らしから出るのが慣例で、
彼も、ほど遠からぬ場所に自邸を構えて、起居していた。
叔父から紹介された建築家が建てた邸は、少し小さめだが優美で繊細、
何よりも、あれこれと人の出入りが激しい王宮より静かなのが、気に入っていた。
今日は大変な一日だった。
ルーゼンは思い返してうんざりした。
彼が父王から任じられた内治部には、首都のありとあらゆる問題が舞い込んでくる。
毎日の細かな仕事に加えて、幾つかの揉め事を仲裁し、突然の訴えを辛抱強く聞き、
新しい商取引のための膨大な資料を、短時間で読まねばならなかった。
おまけに、今まで後援していた音楽家の自信作とやらを、気分転換に聴いたら、
とんでもなく調子外れで、余計に疲れを溜めることになったのだった。
政務についてまだ日も浅いのに、叔父が亡くなった後、彼の仕事の一部を受け継ぐ
ことになったのも、疲労の原因の一つだった。
――でも、最大の原因は……、
知らず知らずのうちに、また溜め息をつく。
――今日もシーアの姿を見なかった。
アリスン監獄での出来事から十日。
いつもなら、父王の護衛についている時か、兄のそばに控えている時に行き会う
ことが出来るし、そうでなければ、馬場や訓練所、武器庫まで、散歩と称して足を
伸ばせば、大抵、笑顔の彼女と擦れ違うことが出来る。
だが、王宮には彼女の影も形もない。
シーアは、ずっと出仕していないのだった。
461 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:03:39 ID:1p30/hQl
噂好きの貴婦人からそれとなく聞き出したところ、監獄の冷たい風に当たって
熱を出したとのことで、誰も不審に思っていないようだった。
貴婦人は、あの騾馬より丈夫な女騎士が病気になるなんて、とくすくす笑ったが、
ルーゼンは笑うどころではなかった。
護国将軍も、常と変わらないように見える。
もっとも、護国将軍は世界が終わっても動じない人と言われているくらいだから、
それで彼女の病状を量ることは出来ない。
たとえ、シーアが死の床にあっても、将軍は平然とした態度を貫くだろう。
――よほど病気が重いのだろうか。
ルーゼンの苛立ちが伝染したのか、馬がいなないて前脚を蹴り上げた。
それをなだめながら、また彼女の安否に心をさまよわせる。
ルーゼンをさいなんでいるのは、彼女は本当に風邪なのかという疑問だった。
彼とのことで、人前に出られないほどショックを受けて泣き暮らしていたり、
果ては思い詰めて、取り返しがつかないことになっているかもしれない。
ルーゼンの頭の中を、悪い想像ばかりがよぎる。
――シーアに会いたい。
会って様子を確かめたい。
ルーゼンは手綱を固く握って、護国将軍の邸宅へ馬首を向けたい衝動をこらえる。
――けれど、会いに行くことは出来ない。
ルーゼンの胸が、きりきりと痛んだ。
自分にその権利がないことは分かっている。
あんなことがあった後に、どんな顔をして会えるだろう。
自分がどれだけ彼女を傷つけてしまったか、シーアと兄の仲を疑って煩悶していた方が
どれほどましだったか、思い知るには遅すぎた。
吐き気のような罪悪感が、頭の中でぐるぐる回って彼を押し潰す。
内治部の書類で彼女の入牢を知り、考えなしに行動したが、今となっては自己嫌悪と
後悔しか残っていなかった。
そもそも、アリスン監獄のことがなくても、ふだん接触のない第二王子が、王の近衛の
女騎士を見舞うのは、あまりに不自然で、礼式に反していた。
462 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:04:33 ID:1p30/hQl
こずえを揺らす風に混ざって、ひづめの音が暗がりに消えていく夜。
こんな気が滅入る夜は、昔の絶望を否応なく思い出してしまう。
ルーゼンは、今日で何度目かの溜め息をつき、枕元の花かごを脳裏に描いた。
それは彼の大事な思い出であり、またお守りでもあった。
その昔、年若くて王宮に住んでいた時分、彼は頻繁に熱を出して臥せっていた。
カーテンを閉めた病室は昼間でも薄暗く、部屋中につんとした薬の余臭が漂う。
側仕えたちが、成人まで生きられるだろうか、とひそひそ言い、
野心を持つ者は、彼に見切りをつけて職を辞し、そばを去っていった。
病床のルーゼンは、生きる気力を無くし、いつも絶望のことを考えていた。
そんな世界から忘れ去られたような静寂のある日、扉を叩く音がして、兄が顔を出した。
「熱か下がったと聞いたから、見舞いに来た」
この頃はまだ、この幾つか年上の兄が好きだった。その風貌から、仔獅子に例えられて
いた兄は、勇猛果敢でしかも優しく、将来の帝王として皆に嘱望されていた。
起き上がって出迎えるルーゼンに、兄は良さそうだなと笑った。
「見舞いの品に、花を持って来たんだ」
兄の合図で、大きな花かごに埋もれているような少女が、くせのある黒髪を
撥ね上げながら現れた。
彼女が暖かな笑みを浮かべると、陰鬱な病室がぱっと明るくなった気がした。
ルーゼンは絶望を忘れて、彼女に見入った。
それが、シーアとの出会いだった。
「彼女は護国将軍の末娘で、十二歳になったから、新しく俺の近習についた」
「初めてお目にかかります。シーアと申します」
シーアが優雅に礼をすると、さわやかな芳香が彼に届いた。
彼女は兄と顔を見合わせて微笑み、抱えた花かごを枕元に据える。
萌黄色の近衛近習の制服は、黒いまつげに縁取られた大きな緑の目によく似合う、
とルーゼンは思った。草色の近衛の制服なら、もっと似合うだろう。
463 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:05:21 ID:1p30/hQl
彼女はルーゼンと変わらない年齢であるのに、病気がちの彼より遙かに健康的で、
小鹿のように活発で、体中から晴れ晴れとした生気を発散させていた。
ルーゼンは、己の病苦に打ち勝つ決心をし、彼女が枕元の花かごのように、ずっと
そばにいてくれることを願った。
シーアが兄とそうしているように、隣で馬を駆り、剣を構える。
そんな、今考えれば赤面するような子供っぽい願いを。
あれから幾つもの歳月が過ぎ、シーアの制服は萌黄色から草色になった。
ルーゼンも、その願いのために、馬術と剣術を少しづつ始めた。ただし、それらは
全くものにならず、人に知られることはなかったが、甲斐あってか、人並みに
丈夫になって寝込まなくなり、ルーゼンは内政の一端を担うまでになった。
それでも、二人がどれだけ変わろうとも、彼女がルーゼンの救いであることは
変わらなかった。
口さがない連中が、腹黒い護国将軍は末娘を王太子妃にしようと画策している、
計算高い娘もそのつもりだと、まことしやかに噂した。
ルーゼンは信じなかった。
護国将軍が、かつて父王の近習を務め、その後二人が背中を合わせて戦う戦友に
なったことは有名で、自分の子たちを同じようにしたいと思っていても不思議ではない。
それに、彼女の兄弟や従兄弟で近衛に入っている者が何人もいる。
兄だって、自身が国のために結婚しなければならない立場なのは、分かっていると
思っていた。
シーアと兄がキスしていた、あの日までは。
邸に着き、馬から下りて手綱を馬丁に渡す間も、ルーゼンはうわのそらのままだった。
会えなくとも、せめて無事でいることだけでも確認できたら。
癇癪を起こして貴賓牢に置き去りにするべきではなかった。
彼女が自分の身より兄と父王を気にかけたとしても、それは騎士の本分なのだから。
でも、兄や父王に捧げる忠誠心、或いは笑顔の、ほんの一部でも、自分に向けて
くれていたら、あんなにシーアを憎まなかったかもしれない。
――それは勝手すぎる考え方だな。
ルーゼンは苦々しく思った。
464 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:06:25 ID:1p30/hQl
出迎えた執事の日常の報告を聞きながら、広間の大階段を上がって、寝室で
部屋着に着替え、書斎へ向かう。寝る時間までに、もう一仕事できるだろう。
「……今日の報告は以上です。他に何かありますか?」
「花かごを……」
「は?」
「……いや」
花かごを用意しても、会いに行くことはできない。ただ渡すことさえできない。
鬱屈した感情が心の奥底でよどみ、彼の心臓を締め付ける。
彼女が自分に会いたいわけがない。会うことは出来ない。
落ち窪んだ眼窩の憔悴しきった男が、廊下の壁に掛けられた大鏡に映った。
ただでさえ細面であるのに、頬が削げて憂苦に満ちた顔は、まるで幽鬼のように見えた。
思わず立ち止まり、その暗い影を覗き込む。
――方法はある。叔父上の死を盾にすればいい。
影の中の浅ましい男がささやいた。
――会わなければ、告発すると。彼女は否と言うまい。
その黒くどろどろした誘惑を振り払うように、鏡の前から足早に去り、書斎の扉を開ける。
――そう。否と言うまい、が……。
ルーゼンは立ちすくんだ。
彼女が、そこに居た。
*
銀の燭台に立てられた蝋燭に、部屋の隅々まで行き渡る光量はない。
照らされて、闇の中に浮かび上がるのは、琥珀色の光沢を放つマホガニー製の
書き物机に、大きな肘掛け椅子、その後ろの本棚のみ。
本棚の前に立つシーアが、優美な曲線を描く背中を反らせて、革装の本を取り出した。
それから、ゆっくりとルーゼンの方に体を向ける。
彼女の瞳が蝋燭の明かりを受けて、挑むように光っていた。
465 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:07:30 ID:1p30/hQl
「あ…ああ…! シー…………」
とっさに言葉が出ない。
「侵入者? ルーゼンさま。警護の者を呼んで……」
執事の慌てふためいた声に、ルーゼンは、はっとして振り返った。
「い……いや、俺の客だ。……もう、下がっていい」
落ち着きなく手を振り、口外しないよう付け加えて退出をうながす。
扉を後ろ手に閉め、執事の足音が完全に消えてもなお、ルーゼンは混乱から
覚めなかった。何か言おうと開けた口をどうすることも出来ずに、そのまま閉じる。
シーアが手にした本をパラパラめくり、本棚に戻して別の本を手に取った。
何の気もなさそうにページをくる彼女の様子は、まるでつまらないお茶会にでも
参加しているように淡々としていた。
「ど、どこから入ってきた」
やっと出た言葉は、本当に聞きたいことではなく、彼はますます狼狽した。
「そちらから、鍵を壊して」
シーアは顔を向けて、厚いカーテンの掛かった大窓を指し示した。大窓の外は
バルコニーと外階段に続いているから、侵入は容易だったろう。
「ここの警備は脆弱です」
なぜか少し憤慨した様子で言うと、シーアは本をパタンと閉じ、うつむいて紋章の
ついた革表紙に目を遣った。
「何をしに来た」
気を取り直し、声が震えないよう、下顎に力を入れて抑揚を抑える。
「……本当に、何をしに来たのかしら」
シーアが指先で本をそっと撫でながら、人を食ったような答えを返す。
「俺を、殺しに来たのか?」
「殺しに?」
彼女はどことなく苦笑すると、顔を上げて、ル―ゼンを探るように眺めた。
「いいえ、……とりあえず、今はまだ」
それから、また本に視線を落とし、人差し指を浮かせて幾度かトントンと叩く。
その音はひどく彼の神経に障った。
466 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:08:26 ID:1p30/hQl
ルーゼンはシーアをにらみ付けた。意図がまるで分からない。なぜここに居るのか、
なぜ会いに来たのか。
いや、うすうすは察している。でも、はっきりと聞きたくはない。
彼女に会うといつも、浮き立つ心の裏で腹立たしく思う。それは彼女の視線の先に
自分がいないのを、いやというほど分かっているから。
彼女がここにいる理由も、たぶんそう。
彼のためでなく、他の誰かのため。
「シーア、こっちを向け」
我慢できずに、ルーゼンはつかつかと彼女に迫り、本をひったくって机の上に置く。
「これは、叔父上から譲り受けた本だ。叔父上だ。お前が殺した男だ」
あらん限りの軽蔑を込めて言ったのに、シーアは肩をすくめただけだった。
「殿下は気が短すぎるようですね」
「否定しないな。叔父上を殺したこと、認めるのだな」
「いいえ、認めません」
シーアはやんわりとした口調で否定し、それから声を落として続ける。
「でも……、それを表沙汰にされるのは、困りますから……」
彼女が一歩踏み出して近づく。彼の肩に置かれた彼女の両手が首筋を滑る。
「……それで」
「それで?」
彼女の腕が首の後ろに回され、二人の距離を縮める。
「殿下の口を塞ぐ方法を考えていて……」
乾いた瞳が彼をうかがい、接近し、あでやかな唇が彼の唇にそっと触れた。
彼女のキスは甘くて苦い。ルーゼンは渋面を作った。
「口止めか? 護国将軍が愛娘に娼婦の真似ごとをしろと言ったのか?」
「父は関係ありません。わたくしには、わたくしなりの責任がありますし……、殿下」
なまめかしい表情に誘われて、また彼は唇を重ねた。
暖かい吐息とやわらかな感触が、彼の正気を失わせていく。
467 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:09:22 ID:1p30/hQl
「やめろ」
やっとの思いで、彼女の腕をつかんで体から離す。彼女と距離を取って、怒りを
つのらせなければ、こんなにもたやすく自分を忘れてしまう。
――脅しているのは俺だ。強い立場なのも俺……。
「何をたくらんでいる」
「たくらんで欲しいのですか? これが殿下の望まれたことでしょう?」
少し困ったような眼がルーゼンを見詰めた。
緑の瞳は魔性の眼。溺れてしまうから、見詰め返してはいけない。
「殿下はただ、欲したものをほしいままに受け取れば良いのです。
それとも、ここに来たのは、わたくしのうぬぼれでしたか?」
「…………脱げよ…」
彼女を傷つけて、屈服させた姿を見たかった。でも、あの快活な少女であった女騎士が
こんな風に彼の言いなりになる姿も見たくなかった。彼に抵抗して欲しかった。
計算された行動ではなく、シーアの真意を受け止めたかった。
「俺を誘惑しに来たんだろう。だったら、さっさと脱げ」
シーアは戸惑い、しばらく上着のボタンをもてあそんでいたが、
やがて勝利を確信したように口の端を上げ、上から順に外し始めた。
「何故殺した? 叔父上がそんなに邪魔だったか?」
自分の呼吸がやけに大きく響く。
「殺してなど……。けれども、そうですね。邪魔なのは邪魔でしたよ」
上着が落ちて、よく発達した肩と、しっかりとした二の腕、その腕の白く光る一条の
傷痕がむき出しになる。
「王弟殿下は王家以外の貴族の台頭をうとましがり、父の力を削ごうとなさっていました。
国王陛下が王弟殿下より父を重用なさるのも、お気に召さなかったようですし」
細長い指が、肌着のひもをつ……と引っ張る。手首を回転させて、それを指先に
からめ、素肌を露出させていく。その肌着よりも白い素肌が、どんなになめらかで
あったか思い出して、ルーゼンは固くなった。
「でも、王家あっての貴族、貴族あっての王家です。どちらか一方ということはありません。
……ルーゼン殿下も、それを忘れないでいただきたい」
468 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:10:29 ID:1p30/hQl
それが警告であることに、シーアと視線を交わして、彼は気づいた。
護国将軍には逆らうな。さもないと叔父と同じ道をたどることになる。
「……ああ、分かった」
与えられるのはシーア。代価は沈黙、そして従属。
――それは俺が最初に望んだ取り引き。シーアの望む取り引き。でも、……。
肌着と胸に当てた布が、腕にまとわりながら落ちる。その間からは、つんと上を向いた
乳首が覗き、ズボンからは、締まった腹筋と扇情的な腰骨の上半分が垣間見えている。
「ルーゼン殿下は、王弟殿下と親しかったのですね」
シーアが、ぽつんと言った。
「俺も殺したいか? 叔父上のように」
シーアの表情が少しだけ曇った。
「……必要が、あれば」
剣を机に立てかけ、帯をほどく。ブーツを片方づつ脱ぎ、ついでにズボンを落として
素足をさらした。一糸まとわぬ姿になると、さすがに彼女は恥じらって、腕を回して
裸体を隠した。
「ふん、誘惑するには、色気が足りないな」
「経験がないのですもの。仕方がありません」
シーアは少し赤くなって横を向いた。
「殿下は経験豊富な方がお好みですか?」
「ああ、そうだな」
彼女を困らせようとした言葉に、シーアは、ふっと笑った。
「では、殿下がそうお望みなら、出直して、誰か他の男性に教えてもらって……」
ルーゼンは思わず彼女の肩をつかんだ。
「駄目だ」
彼女を引き寄せて、息が詰まるほど強く抱き締める。
「誓ってくれとは言わない。他の男と寝ないと約束してくれ。…………頼む」
ルーゼンはささやいた。
もうあんな思いはしたくない。彼女が誰かの――兄の腕の中にいて、愛の言葉を
ささやいて、笑いながら抱かれている。そんな光景を想像して苦しむ夜はたくさんだ。
彼女は含み笑いのまま、約束しますとだけつぶやき、彼はその言葉にすがりついて、
キスをする。
469 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:11:28 ID:1p30/hQl
シーアとのキスは、今まで抱いた他の誰とするよりも、気持ちがいい。
恋人のように舌を入れて、奥を探る。引き離されたものが、再び一つに合わさるように深く。
彼女への思い以外は何もかも諦めて、彼女の体温を感じ、彼女の匂いを嗅ぎ、
彼女が自分のそばにいるのを実感する。
――ただの取り引きでもいい。俺に何の感情も持っていなくても。
それでも、そばにいてくれるなら。
部屋着の隙間から彼女の手が潜り込む。剣だこのある手のひらは、皮膚に
引っかかってこすれ、不思議な快感を呼び起こす。
そのぎこちない手の動きに、思わず顔がやわらいだ。
「本当に経験がないんだな。シーア」
「殿下のお気に召すよう、努力いたします」
シーアが生真面目な顔できゅっと唇を結んだので、ルーゼンは小さく吹き出す。
「ああ、期待している。ほら、俺のも脱がせろ」
彼女の手を誘導し、留め金とゆるく巻いた帯を解かせる。胸を両手でさすらせながら、
体をひねって部屋着を落とし、しっとりとした肌を密着させる。双丘のやわらかさを
楽しみ、半勃ちのもので彼女の腰をつつく。
彼女の全身がピクリと反応し、体が逃げて、小刻みに震え始めた。
「シーア。……どうした? やめたいのか?」
彼の腰に回されていた腕が、ぎゅっと緊張した。
「いえ、すみません。覚悟は出来てます、けど、その……」
張り付いたような笑みが壊れ、今にも泣き出しそうな顔がうつむいた。
「い……、痛かったんです。アリスン監獄で……」
――怖がっている?
昔の快活な少女の片鱗を見た気がして、ルーゼンは優しい気持ちを彼女に抱いた。
「ああ、あの時は、すまなかった。今度は優しくする」
シーアは、ほっとしたように目をつむって力を抜き、彼の愛撫に身をゆだねた。
ルーゼンは、顔や首筋に口づけながら、ゆっくりと肩から腕、背中まで撫でて、
彼女の筋肉をほぐした。
470 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:12:25 ID:1p30/hQl
「ほら、来い」
床に座り、震えが収まったシーアに両手を差し出す。
「いえ、あ、や……」
その途方にくれた様子が可愛くて、つい手荒く引き寄せる。
膝の上にまたがらせて、乳房を揉み、まろやかさを堪能する。
親指で乳首を刺激し、さらに唇で挟んで両方ともふくらませ、珊瑚色に染め上げる。
彼の唇の下で、彼女の心臓の音がだんだん強くなるのを感じ取る。
手を下ろし、親指の爪で前の敏感な場所をひっかき、人差し指の腹を割れ目に当てて
うるおいを引き出す。
彼女が感じやすいのは分かっている。
人差し指と薬指で裂け目を割り、中指をそっと差し入れる。中から染み出たものが
彼の指にまとわりついた。
「ん……」
シーアが背中を反らせてあえいだ。両手でルーゼンの肩をつかんで体を支える。
関節を曲げて入り口付近を刺激すると、腰をすくめて反応した。
「……あ、………ん」
彼女は恥ずかしがって、顔を隠すように彼の肩にかじりついてくる。
ルーゼンは真っ赤になったうなじに目を遣り、空いている方の手で背骨に沿って
くすぐった。彼女の熱くてじんわり湿ったふくらみが、彼の胸に当たって滑る。
「は、……あ」
手首を回し、もう一本指を入れて、中を慣らす。
二本の指をそれぞれに動かすと、ぬらぬらしたものが指を伝わってしたたり落ちた。
「んん、あぁ」
彼女の上体が跳ね上がり、感極まったような声とともに軽く達した。
腰のくぼみから臀部の淫靡な曲線に浮かび上がる汗が、蝋燭の明かりに照らされて
こがね色に光った。
ルーゼンは、弛緩したシーアの体を自分にもたせかけて、股の間の大きくなったものを
彼女の溝にくっつけた。
そうして彼女自身の重みと、そこから垂れる愛液の感触を飽くことなく満喫する。
471 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:13:38 ID:1p30/hQl
「お前が泣き暮らしているのではないかと心配していたんだ」
シーアが体を起こすのを待って、ルーゼンは話しかけた。
彼女があまりに素直に感じるので、ひねくれた気分になっていたかもしれない。
「だけど、あの計算高いと評判の女騎士が、そんな愁傷なわけがなかったのだな」
彼女の頬にまつげの影が落ちた。弁解しようとする彼を静止して、彼女は首を振る。
彼のものが少しめり込み、シーアは、しばし身悶えた。
「あ、……いいえ、……。そのように言われるのは仕方がありません。
でも、失ったものをいつまでも嘆いているわけにいきませんから」
彼女は口中に溜まった唾を飲み込み、一息ついて続ける。
「その……やるべきことをやるだけです」
「やるべきこと……俺と寝ることか?」
ルーゼンは下から揺すり、入り口をこすり合わせて、彼女を絶句させる。
半開きの口から、こもった息が漏れた。
「え、あ、……はい…」
そのまま床に押し倒して、もうすっかり準備の出来ている彼女の中に先端を入れる。
様子を見ながら、まだ慣れていない隘路をじりじりと押し進めて広げる。
「痛いか?」
「だい、じょ……ん、です」
しっとりとした息を吐き出して、彼女が答える。
眉根は寄せられているけれども、彼にしがみついて精一杯感じようとしている。
淫らな水音とともに、奥まで呑み込ませ、覆い被さり耳打ちする。
「シーア、俺の名前を呼んでくれ」
「……ルーゼン殿下」
「敬称は入らない。ただのルーゼンで」
「主君筋の方を呼び捨てになど……」
「出来ない? 殺すことは出来ても、名前を呼ぶことは出来ないと?」
脈打つ肉の手が、包み込んだものを強くつかんで締め付けた。
472 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:14:25 ID:1p30/hQl
「殿下。……こ、これ以上、…」
シーアが息も絶え絶えにささやく。
「これ以上、何だ?」
ルーゼンは腹に力を入れて衝動をこらえ、腰をゆっくり回した。
「王弟殿下のっつ……死に、言及なさ…、なら……」
見開いた彼女の目が二つの相反したものを訴える。
「わたくし、……んく、かえ、かえり……ま、」
「帰るのか?」
「で、殿下!……ああ」
いったん引き抜いたものを、一気に差し入れて、嬌声を上げさせる。
「ああ、俺は叔父上のことを忘れる。だから、お前も……」
――兄のことを忘れろ。
自分の束髪が背中を叩き、汗が飛び散る。
「…ん……ああ、……ぅく、……」
シーアが焦点の合わない目で恍惚にひたり、彼を求める。
ルーゼンは無我夢中になって、シーアと繋がった。
「う……あん……あぁ、あ、ぁ」
手のひらで押さえ込んで、浅いところを往復し、また奥までえぐって快感を引き出させる。
幾年も焦がれ望んだ女が、体の下にいて、動きの一つ一つに喘ぎ声を上げる悦楽。
毎日の鍛錬で荒れている手は、兄を守るための手。
腕に浮かび上がる傷跡は、戦場で兄と背中合わせに戦って得た兄との絆。
――でも、シーア、今は、俺のものだ。
全てが一点に集まって、根元からせりあがる。
求めて動きを速め、昇り詰めて、深く突き立てる。
絶頂の果てに、シーアは応えて痙攣し、ルーゼンは真っ白になって果てた。
「……シーア」
ルーゼンは体を横倒しにし、荒い息をついた。
呼吸が静まった後、じっとりとした絨毯に気持ち悪さを感じつつも、シーアを引き寄せて、
仰向けに寝転ぶ。二の腕の彼女の重さが心地よい。
「ん、……殿下…?」
「ああ……」
低くうなって、彼女の眠たげに落ちたまぶたに口づける。
やがて、シーアの寝息を聞きながら、どっしりとした疲労に包まれて、ルーゼンの五感も
やわらかい暗闇に引きずり込まれていった。
473 :
ルーゼン:2006/10/26(木) 01:15:24 ID:1p30/hQl
*
さわやかな朝の気配が、ルーゼンの意識を揺り動かした。
大窓から差し込む朝日が、まぶたを透かして彼の眼球をちくちく刺す。
ベッドが固くて、背中が痛い。ルーゼンは上掛けをつかんで上半身に巻き付けた。
――いや、ベッドではなく、書斎の……。
「シーア……」
半覚醒のまま、呼びかけて手を伸ばす。
だが、それはむなしく空をかき、固い床を叩いた。
もう一度、彼女を捜して手探りするも、あえなく本棚にぶつかる。
「……シーア?」
ルーゼンは体を浮かせて辺りを見渡した。
――いない。帰った、のか。
彼女がいないことに、自分でも不思議なほどに失望した。
たぶん、目覚めるまで一緒にいてくれると、何の根拠もなく期待していたのか。
起き上がって座り込み、頭を振る。
ルーゼンの肩から、上掛けではなく、大窓に掛かっているはずのカーテンが落ちた。
――カーテン? シーアが掛けてくれた?
扉を叩く音がして、執事がおずおずと顔を見せた。
「あの、お客様はお帰りになりましたね」
執事は部屋に入り、ルーゼンがカーテンを毛布代わりにしているのを見て、眉を吊り上げ、
それから大窓に近づき、壊れてぶら下がる鍵を調べて口をへの字に曲げた。
(また、参ります。このことは、くれぐれもご他言なきよう……)
彼女の静かな声を覚えている。
――あの女は、叔父上を殺した女、兄を愛している女。
冷徹な言葉も、狡知にたけた笑顔も。
――必要なら俺を殺すと言い、好きでもない男と寝る女。
ルーゼンは、つらつらと思い返す。
紅潮する肌、しがみつく手。彼を呼び、快楽にあえぐシーア。
彼はすっかり冷たくなったカーテンを引き寄せ、両腕に抱きかかえた。
――そして、少しだけ優しい。
「その鍵は、直さなくてよい」
ルーゼンは苦虫を噛み潰したような顔の執事に告げた。
以上です。
読んでくださった方、感想くださった方、ありがとうございます。
前作よりも互いの色々な思いが複雑に交差しているようで
思わず読み入ってしまいました。
次も期待しています。
GJ!
うわぁ、うわぁ、うわぁ、
朝起きたら素晴らしいものが!
ルーゼン切なくて胸きゅんだw
自分もシーアの本当の気持ちが知りたいよー。
次も楽しみにお待ちしてます。
GJでした!
女兵士側の心情がまだ謎っていいよね。おぼこい所も可愛いなあ。
ルーゼンに感情移入できるのも作者殿の描き方が丹念だからか。
とにかく読み応えありますね!
これからどうなるのか楽しみです。
478 :
投下準備:2006/10/29(日) 00:55:41 ID:SU2H8rut
魔王の話の続き、予告通りイリアが久しぶりに登場です。
合戦シーンいらないだろ、と思われるかも知れませんが、
こういうのを考えるのが好きなので…、
いつもより長いですが、よろしければ
やきもち闇エルフ娘vsツンデレ人外ロリの恋の鞘当てをお楽しみ下さい。
『イリアとティラナ』です。
「ぐるるるる、あの程度の小城に幾日かけるつもりじゃ?」
本陣台座の階に腰掛け、ティラナは魔王に言った。
魔王の軍勢が侯爵の居城を囲んで半月以上経つ。
この侯爵領は光の王国の中心である王都、そしてエルフ族の住む「古く深い森」、さらにドワーフ族の山岳要塞へと街道が繋がっている。
冬の訪れの前にここを落とそうと、闇の軍勢の主力は大攻勢をかけていた。
「………攻撃は何も滞っておらぬ。あと四五日のうちに城は落ちよう」
「妾が征けば今日中に落ちるわっ!」
歴代の領主がその財力を投じ、防備を固めてきた城郭はなかなかに守りが堅いが、魔王軍はじわりじわりと敵に出血を強いている。
城壁の周りに寄せ手の屍が山を築いたとしても、小鬼や亜人の損失など幾らでも補充が利く。
その程度の損失は闇の軍勢のほんの一部でしかない。
「のう、毛皮を返してくれるなら、夕刻前に城を落としてやるぞ?」
「……」
「光の軍勢は焦土戦に出ておる。
ここの間抜け領主は命令に背いて自領にしがみ付きおったが、奴らにそれを許せば今後の進軍に支障をきたすぞ?」
「………」
「やはり一日でも早くここを落として、駒を次に進めるべきよな。
つまらぬ意地を張らずに妾の力を借りるのが得策じゃ」
闇の軍勢の糧秣は、基本的に略奪によって賄われる。
野戦でかってない大敗北を喫した王国軍は、全土に疎開・焦土命令を発した。
無論ここの侯爵のように命令に従わない者も居るが、このまま冬を迎えれば魔王軍の破竹の進撃は止まる。
その隙に兵力を再編、あわよくば西方からの支援を仰いで反攻に転じようというのが光の軍勢の目論見であろう。
敵の焦土作戦を妨害するためには、相手を上回る速さで進軍すればよい。
ゆえにティラナの言葉にも一理はある。
魔王はしばらくの間ティラナに喋らせていたが、ようやく口を開いた。
「………そなたの助力など要らぬ」
「むぅ、何故じゃ?」
「今更四五日進軍を早めても無駄だ。王国元帥の名で
『敵に奪われる恐れがあるならば、収穫物であれ人畜であれ全てその場で全て焼け』との教書が出されたそうだ
…そしてこの程度の城、そなたの毛皮と引き換えはならん。」
「ぐるるる、」
「去ね、ネリィの所にでも行っておれ」
「………」
魔王の視線は城砦へと戻された。
高く堅牢な城壁を巡って相変わらず死闘は続いている。
人間、妖精、小鬼、亜人、戦鬼、さまざまな戦士達がそれぞれの言葉で鬨の声をあげ、断末魔の悲鳴を放つ。
魔王はそれをただ静かに眺める。
「………まだ何か言いたいことがあるのか?」
台座の側で物言いたげに佇む少女に、ようやく魔王は声を掛けた。
「毛皮、返してもらえんかの…… 妾も戦に加わりたい」
「………」
「ええい! 返せとは言わぬ。しばし妾の手に毛皮を戻してくりゃれ。
これほどの血と鉄の臭いを嗅がされて、何も出来ずにいるのは拷問じゃっ!」
この少女にしては珍しくしおらしい態度に感心したか、それともこれ以上騒がれるのを嫌ったのか、
魔王は台座に敷かれていた剣牙虎の毛皮を少女に投げて寄越した。
「おおっ!」
歓喜の声をあげてそれを被ると、少女の身体はまたたくまに毛皮と一体になった。
眼窩には黄金の瞳が輝き、顎には舌が、その毛皮の下にはしなやかな筋肉が生じ、
忽ち少女は一匹の大剣牙虎と化した。
「 ぐ ぉ る る る る る る る る る る る っ !!! 」
陣営中に響き渡る咆哮と同時に、剣牙虎は戦場に向かって疾風のように走り出した…
・・・・・・
ティラナがまず目をつけたのは戦鬼用の鉄梯子だった。
今の剣牙虎の身体では、小鬼用の木梯子が重さに耐えられない。
城壁の上から雨の様に石や矢が降ってくるが、己の速さに狙いをつけられる巧者はいないらしい。
一跳びで堀を飛び越え、城壁に立てかけられた鉄梯子に飛び付いた。
梯子を立てかけていた戦鬼たちは、丁度いい踏み台になってくれた。
味方を二三匹蹴り落としつつ、城壁の上で槍を繰り出そうと待ち構えていた敵兵に躍り掛かる。
突然出現した魔獣の攻撃に、不幸な槍兵は碌な抵抗も出来ぬまま喉笛を食い千切られた。
脇から斧を振りかぶった歩兵が斬りかかるのを、槍兵の亡骸を叩きつけて退けると、
ティラナはその黄金の瞳であたりを睥睨した。
「あ、あああぁ…」
「ひっ…ひいぃっ!」
金色に輝く瞳を見た敵兵たちは、それだけで凍り付いた。
皆全身が鎧をガチガチと鳴らすほど震え上がり、中には武器を取り落とすものも居た。
彼らにとっても昨日今日始まった戦ではない。
それでもこの魔獣の眼に見られただけで、腹の底にある何かが叫ぶのだ。
『この相手には敵わない』と。
だが次の瞬間、己の眼力に竦み上がった兵士達を前にティラナは瞼を閉じた。
「…かっ、かかれぇっ!!」
眼光から開放された隊長の掛け声を合図に、我に返った兵士達は再び眼前の敵に挑みかかる。
『久方ぶりの狩りじゃ、少しは足掻いてくれねば歯応えがないわっ!』
己の爪牙に血を吸わせるのも随分久しぶりだ。
鎧ごと噛み砕かれる者、城壁の下に叩き落とされる者、爪で内臓まで引き裂かれる者…
目を細めて戦いの喜びに浸るティラナの周りで、彼女に屠られた戦士たちが次々に死骸に変わる。
その体躯を鮮血に染め、黄金の剣牙虎は殺戮に酔いしれた。
だが彼女が敵兵達を蹂躙し続けるうちに、味方の亜人兵達も続々と乗り込んで来た。
「ガァーゥ! ツヅケー!」
「ブゴォーッ!!」
「グォー、カカレー!!」
「えっ、援軍、援軍を呼べっ!」
いまやティラナが切り裂いた防御陣の一角を、亜人兵部隊がさらに拡げようとする。
それを敵方は押し戻そうと決死に戦う。
敵味方入り乱れての激戦が城壁の上で繰り広げられるが、それを見るティラナの目は冷めていた。
彼女にとって後からやって来た輩など自分の狩場を荒らす邪魔者でしかない。
『やれやれ、騒がしくなってしもうたわ………、どれ河岸を変えるとするかの』
幸い城壁の上は敵兵で埋まっている。
ティラナはその中でも一番守りの堅そうな場所を探した。
『おお、あれが良い』
彼女が選んだのはこの城の正門であった。幾条もの軍旗を掲げた堅牢な城門の上には、多数の騎士達が陣取っている。
あそこなら自分が狩りを行っても易々と邪魔は入りそうに無い。
なにより一番の精鋭が集まっているのが良い。
そうと決まれば迷うことはない。
戦場に漂う血と汗と鉄と内臓の臭いが、ティラナの本性を突き動かす。
「 が ぁ る る る る る る る ぅ っ ! 」
敵味方の区別なく、目の前に居た者たちをその爪で切り裂きながら、
ティラナは新たなる狩場へと向かうのだった…
・・・・・・・・・
が ぉ お お る る る る !
城壁の上から響き渡る魔獣の咆哮は闇の軍勢の本陣まで聞こえていた。
本陣から突如現れた剣牙虎によって、戦の流れは急激に変わろうとしている。
だが、それをイリアは忌々しげに聞いた。
聴力に優れた闇エルフである彼女には、ティラナが剣牙虎と化す前に交わした魔王とのやり取りも聞こえていた。
一月ほど前から姿を見せるようになったあの小娘は、魔王に対して余りに馴れ馴れしい。遠慮が無い。無礼ですらある。
魔王はこれまで誰にもあんな態度を許した事がなかったではないか。
「なかなか良い働きをする………」
「くっ…!」
貴重な戦力である闇エルフ部隊は、消耗が激しい攻城戦には投入されない。
イリアも当然陣営で待機していたが、主君があの得体の知れない小娘を賞賛するのを耳にして、じっとしてはいられなかった。
「…叔父上、私も行きます!」
族長である叔父が止めようとするのを振り切って、イリアは軍馬に飛び乗った。
「ハイィヤー!」
短槍を小脇に抱えたイリアが本陣を飛び出すのを、魔王は相変わらず静かに見ていた。
だが全軍を指揮するその手はゆっくりと掲げられ、そして無言のまま振り下ろされた。
「 !、進軍ラッパーっ、鳴らせー!! 全軍、総攻撃ぃー!!!」
「総攻撃!」
「総攻撃!!」
「オオーーーッ!」
総帥の指令を受けて、将校たちの号令が攻囲軍に走る。
まるでイリアの後に続くかのように、城門を目指して行進が始まった。
侯爵の城郭は、ティラナの宣言どおり日が沈む前に落ちた。
・・・・・・
守備軍の残党は掃討され、王都の命令に逆らった侯爵は愚かさの代償を命で支払った。
日が暮れた今でも、兵士達によって略奪が城内のあちこちで行われている。
これで魔王軍の将兵達もしばらくの間は屋根の下で眠れるのだろう。
もっとも亜人や戦鬼などは屋根があろうがなかろうが平気で寝起きするのだが、
イリアたち妖精族や人間族の戦士にとっては、あまり長い間野営生活は体に堪える。
遠征中は黒い大天幕で過ごす魔王も、今日は侯爵の私室に入っている。
そして、まだ城内に戦勝の興奮が満ちている中、イリアは魔王に呼び出された。
魔王の声がかかることを期待していなかったと言えば嘘になる。
かっての領主の部屋で、彼女は一番会いたかった人物に会うことが出来た。
だが、その代わりに一番会いたく無い者も居た。
『何でこいつがここに?』
「がるるる?、」
イリアは眉を顰めつつそう思ったが、どうやら向こうも似たような感想を抱いたらしい。
彼女は嫌悪感に曇った顔を主に見られまいと、すぐに面を伏せて魔王に礼を払った。
「お召しにより参上いたしました。我が主君」
「……イリア、近う」
主に招かれて彼女が魔王の側近くまで進んでいくと、金色の瞳をした少女と目が合った。
あの戦場で見せた獰猛な戦いぶりからは、とても信じられないほどの綺麗な顔立ちをしている。
それにしても、相変わらずこの小娘は魔王に近づきすぎる。
椅子に座った魔王の足元に胡坐をかいて、瞳と同じ色の髪を手で掻き毟る様子は、
イリアにとって子供だからということで我慢できるものでは無かった。
『魔王とは闇の全てを統べる者、誰にも冒すべからざる者であるのに………』
この娘が現れてから、魔王に不遜な態度を取るたびに、魔王に絡むのを見るたびに、いつも不満に思っていた。
自分ではあくまでも小娘の態度が気に入らないのだ、と自分に言い聞かせているが、
小娘の振る舞いを許す主君への不満も、気付かぬうちに混じっていたかもしれない。
イリアは小娘にあてつけるかの様に、主君の手が届くほど近くまで進み、膝を付いて畏まった。
相手は鼻を鳴らして露骨に嫌がったが、自分は魔王に召されて来ているのだ。
小娘の不平なぞに憚るつもりはなかった。
「ふんっ」
嫌な相手が自分の場所に近づいた為であろう。少女は立ち上がって二人の側から離れていった。
イリアの心に一種の優越感が沸き起こった。
彼女にとって魔王の側は、魔王に招かれた者だけが居てよいのだ。
もし主君の目の前でなかったら、手を叩いて喜びたいほどであった。
「イリア…… 面を上げよ」
「はい、陛下」
「今日は何ゆえ命令を待たず動いた?」
「えっ…」
「夜の森の軍団には陣営での待機を命じてあった筈。そなたは余の采配を軽んずるか」
「………」
思いがけない主君の言葉に、イリアは言葉が無かった。
彼女としては、今日の戦功を賞されるものだと思い込んでいた。
戦鬼兵が破城鎚で城門を打ち開いたのに乗じ、いち早く城内に攻め入った。
そして城の食料庫を誰よりも早く押さえ、敗北を悟った敵に糧秣が焼かれるのを妨げた。
篭城のために蓄えられていた備蓄は、冬を前にした軍団にとって貴重な物資である。
イリアも命令違反が重罪であることは承知してるが、自分の働きはそれを補えるものだと考えていた。
「答えぬか、イリア」
「…」
繰り返し問う魔王の言葉に、しばしの間をおいた後イリアは搾り出すように言った。
「………からでございます」
「何?」
「陛下に、私の働きを………お見せしたかったからでございます」
その言葉に嘘はないが、まさか『金髪の小娘を褒めるのが気に入らなかった』と正直には言えない。
「そなたの忠勤は余も承知しておる」
「でも、此度の城攻めではお見せする機会がございませんでした」
「それで…… 余の号令を待たずに戦に加わったか」
「………」
魔王の手がイリアの頬を撫でる。
いつもならば愛しい主君に触れられる悦びが心に沸き起こるはずだが、今はそれどころではなかった。
「イリア、夜の森の軍団に待機を命じたは余が軍略ぞ。
堅城を力攻めするような局面に闇エルフは向かぬ。山林原野での遊撃戦にこそそなた達の本領があろう」
「………はい」
魔王は叱責の言葉にうなだれるイリアの顎を捕らえると、その視線を己に向けさせた。
「二度とは言わぬぞ、余の命令に背いての勝手な戦は控えよ」
「はっ…、申し訳ございません」
「判れば良い… 城攻めなどに加わってもしその身体に手傷でも負えば、それこそ余への不忠と思うがいい」
「陛下……… あっ?」
魔王は椅子から立ち上がると、イリアの身体を抱きかかえた。
「そなたの戦働き、余は確かに見届けた」
「………命に従わなかった事、お許し頂けるのでございますか?」
「命令を越えて勲功を立てるのも将兵の才覚。それほどの怒りは覚えぬ」
イリアを抱えたまま寝所へ入ると、魔王は彼女をベッドの上に横たえた。
主に呼び出される前に、戦で浴びた返り血と汗は洗い落とし髪は結い直していた。
戦塵にまみれた軍装も着替えた。
魔王は己の為に整えられた装束をゆっくりと脱がしていく。
「我が君……」
イリアの求めに応じて魔王は唇を重ね、その褐色の身体を抱き締めた。
愛しき主君が自分を認めてくれた悦びが彼女を滾らせる。
戦の疲れも構わず、いつもより激しくイリアは愛撫を求めた…
・・・・・・・・・
いつの間にかイリアは主の隣で寝息を立てていた。
魔王はその身にシーツを掛けてやると、ベッドの脇に潜むものに視線を向けた。
「………」
「人に城を落とさせて自分は女子とお戯れとは、良いご身分じゃな」
「…まだ居たのか」
「ふん、妾は好きな時に好きな所へ居り、そして去るのじゃ。誰の指図も受けぬわっ」
「働きある将兵を愛でるのも王の務めであろう」
寝台の脇にはティラナが座っていた。
あいかわらず上半身は裸だが、なにも魔王がそうさせている訳では無い。
この少女は自分の毛皮以外を着る事を極端に嫌うのだ。
最近はようやく短い獣皮の腰巻を着けるようになったが、
ネリィがうるさく口を出さなければ、未だに全裸で歩き回っていたことだろう。
「言っておくがな、あの城壁に一番乗りを果たし、敵の主将を討ち取ったのは誰じゃ?」
「そなただな」
「妾がおらねば今宵のうちに城を落とせていたか?」
「いや、まだ落ちておらぬだろうな」
「では何ゆえその黒兎が先に愛でられて、妾は後回しにされねばならぬ」
怒りながらも可愛らしいこの顔だけからは、少女が恐ろしい剣牙虎であったなどとは信じられまい。
金の瞳で相手を睨む姿も何も知らぬ者が見れば、気性の強い少女が大人を難詰するようであったろう。
戦場では歴戦の戦士すら怯ませる目を見つめながら、魔王は逆に問うた。
「ティラナ、そなたが戦に加わったは余の為にか?」
「ぬ?……そんな気は毛頭無かったわ」
「であろうな」
魔王はイリアを起こさぬように身を動かし、寝台の縁に腰掛けた。
そして床に胡坐をかく金髪の少女に話しかける。
「そなたの働きは余の為ではなく、そなた自身が楽しむためであろう」
「………」
「そちらは戦場で存分に血と命を狩り、余はそれで何も失わなかった。それで良かろう…
それとも何やら褒美が欲しくて戦ったのか?」
「ぐっ、ほっ褒美など、己より上の筋から賜るものじゃっ! わっ妾は貴様からそんな物受けぬわ!」
ティラナは顔を背けて怒鳴った。
だが、言葉を続けようとするその頬は朱に染まっていた。
「しかし、貴様には妾に対して責任があろう」
「何の責だ」
「わっ妾を…、おっ女にした責じゃっ!」
「…」
「こんな気持ちになるのは初めてぞ……… 戦が終わってから何やら妾はおかしい。
身体が滾る、心が騒ぐ。一族の者たちは戦の後には情を交わしたくなると言っておったが………」
「それは獣精の類に限らぬ。戦を生き延びた者たちは大抵そうらしい」
「これまではこんな事は無かったのじゃ! どんな種族の者と戦っても、その……」
「男が欲しくなる事は無かったか?」
「あっ有体に言えばそうじゃ!」
ティラナは相手を横目で見ていたが、それに対する魔王の反応は冷ややかであった。
「余の軍勢には三十万近い雄が居る。適当に見繕うが良い……」
「なっ!?」
「虜囚となった者で気に入った者がおれば、男女問わず呉れてやろう。
それとも元の姿で交わりたいというのなら毛皮を返すぞ。元々今日一日はそなたに返す約定だ」
「ぐぉるるるるるっ!」
ティラナの顔は今や屈辱と怒りでさらに紅潮していた。
歯を剥いて喉を鳴らし、敷物に爪を立てて憤りを露にする。
だが、どんな威嚇も通じる相手ではない。
天幕を脱出してからの短い間であるが、それは十分に思い知らされていた。
「ぐぅ……」
「…」
しばらくしてティラナは静かになった。
うなだれて何かを考えているその姿を、魔王はじっと見ていた。
「ほっ…ほれ、こっこれでどうじゃ?」
突然ティラナは自ら床に転がった。
特に何をすると言う訳ではないが、仰向けに寝そべった。
「わっ…妾がこうして他人に腹を晒すなど、お主がは、はっ初めてなのじゃぞ!」
ティラナは魔王の目を見ることが出来なかった。
それどころか腕で顔を覆い、相手の視線から隠れようとした。
衣類という代物を軽蔑しきった少女なので、大抵の場合誰でもその腹部を見ることは出来るのだが、
今見せているこのしぐさは、彼女なりに立って腹を見せるのとはまた別の意味があるらしい。
「妾も闇に生まれし者。強き者が王となる、暗黒の掟は受け入れざるを得ぬわ」
「…」
「そして、いっ忌々しいことじゃが、己を負かすほど強き雄に魅かれる性には逆らえぬ。
妾が抱かれたいのはお主だけじゃ………」
ティラナが見せたのは、降伏の意思表示であった。
自分の致命的な弱点を晒すことで、相手に生死を預ける所作だ。
さらに加えるのなら、これには彼女なりの求愛のつもりでもあったろう。
魔王は寝台から立ち上がると、目の前に寝転がる少女の足元に屈みこみ、手を伸ばした。
「ひやぁ!」
「………」
「あんっ、そんなに腹を擦るでない!」
自分から見せた腹とは言え、そこを撫でられるのは身をよじって逃れたい程の羞恥を伴った。
だが魔王の手のひらの温もりを腹で感じるのには、むず痒い悦びと幸福感が沸き起こる。
その様子を楽しむかのように、魔王はティラナの身体を撫で回していた。
「ううっ、他の事もしてくりゃれ」
「撫でられるのは嫌か?」
「いっ、嫌ではない。嫌ではないが、妾はもう我慢が出来ぬ…… ああんっ」
皮の腰巻の奥は、既に濡れていた。
魔王はそこに手を差し入れると同時に、ティラナの唇に己の口を重ねた…
・・・・・・・・・
「ああああぁぅっ!!」
膣の奥に放出され、言葉にならない絶叫と共に果てると、ティラナはぐったりと床に転がった。
よほど疲れたのか、ささやかな膨らみしか持たぬ胸は、荒げた息に合わせて大きく上下している。
この少女の恥じらいの意識は世の常とは違う。
快楽を感じるときに呻きや喘ぎを押さえる事をしない。
他人が聞けばはしたないと思うだろう事も平気でする。
だから自分が交合った相手以外に、もう一人居るという事も気にせず大いに叫んでいた。
「………そう恨めしげに見るな、イリア」
「そ、そんな…恨めしげになどは」
背後で己を見つめる視線に、魔王は言葉をかけた。
イリアとしては、主の見えない所で目と耳を澄ましていたつもりなのだが、魔王は欺けない。
しかしいくら深く眠っていたとしても、これほど大声で喘がれてはどんな者も目を覚ますだろう。
自分を先程まで抱いていた魔王が、気が付いたら別の女を抱いていた。
彼女にとっては悔しくて当然である。
知らず知らずのうちに、恨む気持ちが篭ってしまったかもしれない…
そう思うと、イリアは魔王にその気持ちを悟られたことがひどく恥ずかしかった。
「……申し訳ございません」
「謝る必要は無い。だが余を恨むのは他所でやるがいい」
寝台に戻った魔王はいつもと変わらぬ冷厳な瞳でイリアを見た。
あらゆる闇を見通し、そして従えるこの瞳に囚われてから、イリア魔王から離れられなくなっていた。
「今宵は、どうかもうしばらくお側に居させて下さいませ」
「……構わぬ」
イリアは起き上がると、そっと主の背に寄りかかる。
そして魔王もそれを咎めなかった。
愛しい主君の背の温もりを感じ、このまま夜が明けなければ良いものを、そう考えるイリアであった。
(終わり)
491 :
投下完了:2006/10/29(日) 01:06:20 ID:SU2H8rut
『イリアとティラナ』です。
イリアとティラナはキャラが被ってる所があるので、
きっと二人は仲が悪いだろうな、と思ったら話が出来てしまいました。
『黒い天幕の囚われ人』の後に書き始めたネタが今回で終わりなのですが、
なにかリクエスト有りますか?
ネリィがティラナの面倒を見てる話とか、魔王が古く深い森に侵攻する話とか考えてあるけど
エロが無いんですよね。
登場人物が増えてきたので簡単に↓に人物関係をまとめてみました。参考までに、
よく働く風呂係 雌虎め
フィリオ ――――― イリア ―――――――― ティラナ
ときどき話す 黒兎が
剃|剃 \ 好|側 \ 世|面
|ら 仕\使 き |女 \嫉 話|倒
|れ え\役 | \妬 なに|み
る|る る\ \ る |る
挑む 盲愛
アデラ ―――――― 魔王 ―――――――― ネリィ
犯す 寵姫
ティラナが魔王をどう思ってるかは、今回のを読んでください。
ネリィはイリアを特に意識してません。イリアとアデラは面識がありません。
『イリアとティラナ』面白かったよ。GJです。
本当に、面白かった。楽しみました。
「剃る 剃られる」ワロス。
今回もとても面白かったよ。
ツンデレ美少女がたまらない。
心からGJ。
494 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/29(日) 03:26:59 ID:UsjQlUq4
GJ!
個人的にはアデラのその後が気になる。
495 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/31(火) 22:15:03 ID:MXbK8QOX
ageる!
がるる
ヴィオラの話の番外編です。
※注意※
ホントに番外編です。
本編とは関係ありません。
番外編なのでファンタジーじゃありません。
こういうのが嫌いな方はぜひスルーをお願いします。
まとめサイトへは載せないで下さい。
ヴィオ「ヴィオラと」
マーヤ「……マーヤの」
ヴィオ+マーヤ「おまけコーナーぁ」
どんどんぱふぱふ
ヴィオ「さあっ、今日はいつも応援してくれている良い子の皆に素敵な番外編のプレゼントだ」
マーヤ「……良い子は21歳以上限定の板なんか見ないのでは」
ヴィオ「気にするなっ たとえ肉体は三十路でも、魂はいつも十八歳!
どーみても○学生でも、登場人物はすべて十八歳以上と書いとけば万事オッケー」
マーヤ「なんの話です?」
ヴィオ「いや、この板を見てる大抵の人たちには分かる話だ…
番外編というわけでいつもの物語形式じゃないぞ。あれはあれで書き辛いんだ。
登場人物のキャラや設定が若干本編と違ってもご容赦願おうかな。
さあっ、今回のおまけはっ!」
マーヤ「おまけは?」
ヴィオ「大公開っ、『ヴァイオレット卿の素敵な妓女遊び』だっ!」
マーヤ「はぁ?」
ヴィオ「いや、前回の話で口移し以外でも客に酒を飲ます遊びがあるって言っただろ」
マーヤ「……言ってましたね」
ヴィオ「でも実際にどういう風に飲ませるのか分かりにくいと思ってな」
マーヤ「まあ…そうでしょうね。私もよく分かりませんから」
ヴィオ「だから先の話でちらっと出てきた『谷間で』『臍で』『股座で』『背中で』といったやり方を
大サービスで公開してしまおうという企画だ」
マーヤ(またしょうもない事を…)
ヴィオ「ふふふっ、では今回協力して頂くゲストの方を紹介しよう。さあっエルザ殿どうぞ〜」
エルザ「えっ?わたくしが!?」
ヴィオ「そうですよ」
エルザ「そっ、そういうのはマーヤさんの仕事じゃ…」
ヴィオ「マーヤは前回使ったので読者の皆さんも飽きてるかもしれませんからね。
それにこいつの体では色々出来ないことがありますから」
エルザ「なっ、ナニをなさるお積りなの!?」
ヴィオ「だーいじょうぶっ、百戦錬磨の私が全てリードして差し上げますから」
マーヤ(哀れな…)
ヴィオ「さあっ、脱ぎ脱ぎしましょうか」
エルザ「あーれー」
エルザ、ヴィオラに上半身を剥かれる
ヴィオ「さて、こうしてエルザ殿に胸をはだけてもらった訳ですが」
マーヤ「無理やり剥いたとも言いますが」
ヴィオ「……貴様、エルザ殿の代わりにゲストを務めたいのか? それならこっちにも考えがあるぞ」
マーヤ(黙)
エルザ「ううっ、助けて…マーヤさん」
マーヤ「心の上に刃を置くと書いて忍です。ここは心を鬼にして見捨てさせて頂きます」
エルザ「ああっ、こんな姿、亡き夫に申し開きができませんわっ」
ヴィオ「羞恥に身悶えする麗しき未亡人か…… じゅるり」
マーヤ「あの、今回のテーマを忘れないで下さい」
ヴィオ「分かってるさ。さあ、エルザ殿、胸を隠している手をどけて下さい」
エルザ「ええっ?」
ヴィオ「そして貴女の豊かに膨らんだ胸を寄せて上げて…そう、こんな感じに」
エルザ「嫌ぁん」
ヴィオ「こうして二つの膨らみの間に出来た谷間に…マーヤ、酒を注いでくれ」
マーヤ「はい…」
エルザ「ああっ、つっ冷たいです!」
ヴィオ「こうして豊満な体付きの女性の胸の谷間を使って飲むのだ…… じゅるるるるぅ」
マーヤ「………確かに私の体では出来ませんね」
ヴィオ「うむ、でも私が心を込めて揉んでやってるからな、そのうちお前のも大きくなるんじゃないか?」
マーヤ「結構です。シノビの胸は大きくない方がいいんです。
小さい分にはさらしを巻けば男にも化けられますし、女に化けるときは詰め物をすればいいんですから」
ヴィオ「んー、でも詰め物じゃ揉み心地がなぁ……… じゅるじゅるるるるる」
エルザ「ひぃん、そんな音を出して啜らないでっ」
ヴィオ「いやいや、こういうのは音を出して啜り上げるのが作法なんですよ?」
エルザ「そんなぁ…」
ヴィオ「じゅるじゅるじゅる……ずずずずっ ぷはぁっ、いい酒だった」
エルザ「………ううっ、これで終わりですね?」
マーヤ「エルザ様、お疲れ様でした」
ヴィオ「では次」
エルザ「えっ? まだ続けるんですか!?」
ヴィオ「当たり前じゃないですか。こっからが本番ですよ」
マーヤ「順番から言って次は臍ですか」
ヴィオ「Exactly」
マーヤ「これは私にも想像がつきますね… 臍のへこみに注ぐのでしょう?」
ヴィオ「その通り… ではエルザ殿、お召し物をもっと下ろして頂けますか」
エルザ「ううっ…(泣」
ヴィオ「美女の泣き顔も好物ですが、泣いてばかりいても物事は進みません。さっさと脱ぎましょうね」
エルザ「いやー」
ヴィオ「さーて、こうしてエルザ殿に半裸で仰向けになってもらった所で…マーヤ、酒を」
マーヤ「はい」
エルザ「ひぃん」
ヴィオ「こうして臍のくぼみに注いで飲むのだ。出ベソの女では出来ない遊びだな」
マーヤ「冷酒でやると、おなかが冷えそうですね」
ヴィオ「うむ、コレをやるときは冷酒ではなく燗をつけた酒を使うのが常道だぞ」
エルザ「うう、早く呑み終わって下さい…」
ヴィオ「おお、これは失礼しました、では… ちゅ、ちゅ、ちゅっ」
エルザ「あんっ、」
ヴィオ「暴れるとお酒がこぼれますよ」
マーヤ「…貴女がお臍に吸い付くからでしょう」
ヴィオ「これが楽しいんじゃないか!(力説 」
もみもみ
エルザ「ああんっ」
マーヤ「どさくさ紛れに何で胸を揉んでるんです?」
ヴィオ「だって手持ち無沙汰だろう。 こうしてお腹の窪みを愛でながら、
胸の膨らみも楽しめるのがこの飲み方の好いトコだ… ちゅ、ちゅ、ちゅうぅっ」
ヴィオラ、飲み終わる。
マーヤ「お疲れ様でした」
エルザ「うう、夫が生きていれば…」
ヴィオ「御夫君とこういう遊びをなさる機会がなかったのは残念でしたね」
マーヤ(そういう問題か?)
ヴィオ「さてエルザ殿、お召し物を直していただいて結構ですよ」
マーヤ「よいのですか?」
ヴィオ「うん」
エルザ(はあ、やっと終わ…)
ヴィオ「着終わったら、今度は膝をそろえて床に座って下さい。
あと下穿きを脱いで、スカートの端を咥えて頂きましょう」
マーヤ「はあ?」
エルザ「えっ?」
ヴィオ「まさかこれで終わりだなんて思っておられたのですか?胸、臍と来たのですから、次は股座です」
しぶるエルザを、ヴィオラが無理やり脱がせて咥えさせる
エルザ「うぐぐ、」
ヴィオ「口を開いちゃ駄目ですよ。お召し物が酒で濡れますからね」
マーヤ「………いっその事全部脱いで頂いた方がよかったのでは?」
ヴィオ「馬鹿者、こうしてたくし上げてもらうのが通なのだ。
アーティスで『全裸でしてくれ』なんて言ったら、田舎者だと思われるぞ」
マーヤ「私はそんな所行かないでしょうから平気です」
ヴィオ「ではマーヤ、膝をそろえて座ってもらっているので、
エルザ殿の肉付きの良い太ももがぴったりくっついているな」
マーヤ「はい、ただ下穿きを脱いでいるので、その…」
ヴィオ「そう、茂みが丸見えだ」
エルザ「むぐぐ、(恥」
ヴィオ「そしてここに酒を注ぐのだ」
マーヤ「はいはい(諦め」
ヴィオ「太ももを合わせているため、こうして酒を注いでもちゃんと溜まる」
エルザ「ふぐぐぅ」
ヴィオ「こうして相手の一番恥ずかしい所に蓄えられた酒を…」
ず び ず び
エルザ「むむむぅ」
ヴィオ「こうやって顔を突っ込んで啜るのだ」
マーヤ「相手はかなり恥ずかしいですね」
ヴィオ「まあな、私も愛人から『やって下さい』と頼まれても二の足を踏むだろうね」
マーヤ「でも他人にはやらせるんですか」
ヴィオ「当然… ずびずび」
マーヤ(この人………本当に騎士か?)
ヴィオ「ずびずび、 このやり方をするにあたり、一つ言っておくべき事がある」
マーヤ「なんですか?」
ヴィオ「これはアーティスの通人たちの間でも激しい議論があるのだが、
この飲み方をするにあたり、麦酒は使うべきか否かという問題がある」
マーヤ「…」
ヴィオ「こうして股座から飲むのだから、黄金色の麦酒を使えば当然アレを想像するよな」
マーヤ「はあ…」
ヴィオ「ある者は『むしろそれがいい』と言うが、一方では『無作法だ』という声がある。
また妓女側もそういう遊び方をする者を敬遠する者がいたりする。
時代によって大流行する事があるらしいが、全く廃れる時代もある。
今のアーティスでは、また麦酒容認派が勢力を盛り返しつつあるな」
マーヤ「いっそ街ごと滅んだ方がいいと思いますよ」
ヴィオ「おいおい、妓女遊びこそ文化の真髄だぞ。客たちも妓女たちも見栄と意地と才覚のぶつけ合いだ。
金と色が縺れ合い、人死にが出ることも珍しくないのだ」
マーヤ「はいはい、さっさと飲み終わって下さい。エルザ様もいつまでもこんな格好はつらいでしょうから」
エルザ「むむむぅ」
ヴィオ「おお、これは失礼…… ずびずびずびずびずずびびびびっ」
ヴィオラ、飲み終わる
エルザ「うう、恥ずかしくて死にそうです…」
ヴィオ「いや、ご協力ありがとうございます。次で最後ですから」
マーヤ「最後に残ったのは『背中』ですね。私はこれが一番分かりにくいのですが?」
ヴィオ「そうだろうな、コレは通の中の通が好むやり方だ」
マーヤ「はあ…」
エルザ「わっ、わたくしな、何をさせられるんですか…」
ヴィオ「そう怯えないで下さい。別にとって喰う訳じゃないんですから」
マーヤ「ある意味もう喰ってますけどね」
ヴィオ「ではエルザ殿、今のお召し物を脱いで、こちらの衣装に着替えていただきましょうか」
マーヤ「これは…首の後ろで結んだ肩紐で吊るす袖なしドレス?
おまけに背中の部分は布地なし?
何というか………エプロンとスカートが一体化してるというか…
かなり露出度が高いですよ」
ヴィオ「アーティスじゃコレくらいの露出度は当然だぞ」
マーヤ「これ着たら背中が腰の辺りまで丸出しですよ」
エルザ「あの、これを… 着るのですか?」
ヴィオ「はい、当然肌着は脱いで下さいね」
エルザ、諦めて着替える
ヴィオ「よろしいですよ、じゅるり」
マーヤ「涎、拭いてくださいね」
エルザ「うう、背中がスースーします」
ヴィオ「では続いてそこに四つん這いになって下さい」
エルザ「こ、こうですか?」
ヴィオ「はい、背中を丸めないで… 出来るだけ反らし気味に」
マーヤ「これでどうやって飲むんです?」
ヴィオ「うん、こうすると反らした背骨のへこみと広背筋の膨らみが分かるよな」
マーヤ「…」
ヴィオ「このわずかな窪みに酒を注ぐのだ」
マーヤ「はい」
エルザ「ひぃやゃん」
ヴィオ「ふふふ、エルザ殿は背中が弱いから…」
マーヤ「では勘弁して差し上げたらいかがです?」
ヴィオ「冗談言うな、エルザ殿が動いてこぼれた分をさっさと注ぎなおせ」
マーヤ「はいはい、分かりましたよ」
エルザ「ひやぁん」
ヴィオ「頂きまーす、ちゅっちゅっ」
マーヤ「少ししか溜まらないので、傍から見ると背中にキスしてるだけのようですね」
ヴィオ「うむ、どんどん注いでくれ」
マーヤ「はいはい」
ヴィオ「うーん、それにしてもエルザ殿は背中もお綺麗だ」
エルザ「あうぅ…」
ヴィオ「この遊び方は、背中の肌艶が命だ。染みや傷がある女でやると、はっきり言って萎える。
たとえ金が貰えるとしても、背中の汚い女では飲みたくないな」
マーヤ「そうですか」
ヴィオ「あとこの衣装の良い点は、この格好をさせると隙間から乳がゆらゆら揺れるのが見えるのだ」
マーヤ「はあ… 私の場合は無理でしょうけどね」
エルザ「嫌ぁん」
ヴィオ「ああ、暴れると酒がこぼれますってば」
エルザ「もう、許してください………」
ヴィオ「はいはい、もう少しですよ。
ではこの飲み方について若干薀蓄を語らせてもらい、終わりにしよう。
これは普段あまり性愛の対象とはならない背中に着目し、古の粋人たちが考えた遊びだ。
さっきも言ったが肝になるのは背中の麗しさ。だから背中への執着に囚われた者達はこれを大層好む。
ある時代では女の背中に刺青を彫り、それを鑑賞しながら飲むのが最上の通とされた事もあるそうだ」
マーヤ「へー」
ヴィオ「また、アーティスでは下種のやる事とされているが、こうして…」
さ わ さ わ
エルザ「きゃん、お尻撫でないで下さい!」
ヴィオ「この姿勢では、女の尻や胸を堪能するのも容易い。
酷い奴は、わざと女の背中に高価な酒を注いだ上で身体を弄り回し、
女が耐えられずに溢すと『弁償しろ』と迫る奴もいたりする」
マーヤ「それは酷い」
ヴィオ「まあ以前私がその場に出くわした時は、その助平親父をぶん殴って顎を砕いてやったがね…」
マーヤ「そうですか、てっきり貴女は弄り回す下種の酷い奴の方かと思ってましたが」
ヴィオ「貴様…」
エルザ「うう、まだですか?」
ヴィオ「この飲み方の欠点は、疲れやすいので姿勢を保ってもらうのが大変なことだな。
あんまり長時間楽しむことは出来ない。 ちゅっちゅっ、べろべろべろ」
エルザ「いやぁあん、そんなぁ」
マーヤ「そうやって飲み終わった後に嘗め回すのも作法ですか?」
ヴィオ「その通り… はい、終わりましたよ」
エルザ「ぐすん、はっ恥ずかしかったです(泣 」
マーヤ「どうも身体を張ったご協力ありがとうございました」
ヴィオ「いやいやエルザ殿、本当にすばらしいご協力でした。
そしてここまでお付き合いして下さった読者の方々もありがとうございます」
マーヤ「感想を下さる方、いつもありがとうございます」
エルザ「ありがとうございます」
ヴィオ「では、次回番外編『驚愕!アーティスの妓楼で見つけたビックリ体位』でまたお会いしましょう」
マーヤ「かってに番外編の連載を始めないで下さい!番外編はこれっきりです!!」
エルザ「ううっ、どうか次はわたくし抜きでやって下さいね…」
(終わり)
GJ!ヴィオラ様待ってました!
キャラの軽妙なかけあいがとても楽しいです。
まとめサイト非掲載とはもったいない。
ヴィオラ様ワロス…………というか、ウラヤマシスw
>460の「ルーゼン」の続きを投下します。8レスです。
508 :
チアニ:2006/11/09(木) 01:01:14 ID:omwaBryR
ルーゼンは、チアニがいさめるような咳をするのを聞き、微苦笑を噛み殺した。
この主人思いの執事は、まだ若いくせに古風なので、ルーゼンの愛人が邸に
出入りするのを、嘆かわしく思っているのだ。
まして、愛人がまともな入り口を使わず、しかも約束も招待もなく来邸することに、
迎える側の執事として、誇りが傷つけられているらしい。
そのうえ、今も彼女は裸のまま、ルーゼンのベッドで、ルーゼンの隣にいるのだから、
大事な主人を堕落させる悪の権化とでも見なしているかもしれない。
「何だ?」
体を起こして、頼んだ書類を受け取り、非難の意見は聞かなかったことにした。
「いえ、何でもありません。何か他にありますか?」
「ないので、今日は下がってもいい」
「そちらのご婦人も、ご用はありませんか?」
チアニが言い、ルーゼンも思わず愛人――つまり、シーアの方へ振り返った。
「いいえ、ありません。でも、ありがとう」
ヘッドボードに立てかけた枕に寄りかかり、上掛けで覆って胸まで隠したシーアが、
チアニに感じのいい笑顔を見せた。
「人の噂になるから、顔も隠した方がいいのではないのか」
チアニが部屋を出た後、ルーゼンはシーアを咎めた。
本当は、シーアがチアニにさえ笑顔を見せるのが嫌なのだと、自分の我がままを
後ろめたく思う。
「ここの使用人たちの口が堅いのは知っていますから」
シーアは笑顔をそのままに、ルーゼンの方へ体を向けた。
「でも、殿下が軽率なので、報われないですね。……ふふ、殿下の新しい愛人の
瞳の色について、宮廷で賭けになっていますよ」
「瞳の色?」
二人の不名誉で世間をはばかる関係が、早くも暇をもてあます宮廷人たちの
賭けの対象になっていることに、ルーゼンは憮然とした。
「もちろん、ルーゼン殿下が求められた、高価な女物のエメラルドの首飾り……」
ルーゼンは枕の下に忍ばせた彼女への贈り物のことを考えて、どきりとした。
「……それが噂の的だからです。愛人の瞳に映える色だからか、それとも別の――
例えば、愛人の誕生石のような理由からか、愛人が殿下にねだったからか。
わたくし、緑に一口賭けようかと思っております」
509 :
チアニ:2006/11/09(木) 01:02:14 ID:omwaBryR
ルーゼンの愛人は、いたずらっぽく緑の目を光らせ、同時に、それとなく警告するような
口調に変えて続けた。
「掛けの決着が付くには、殿下の愛人が公の場でそれをつける必要がありますけれど」
「……そうだな。俺が何を贈っても、人に知られてしまうな」
彼女の物言いに、ルーゼンは溜め息をついた。
――俺が浮かれすぎているとでも言いたいのか。
シーアは、彼女の言う「都合のある日」と「危ない日」を避けて、ニ、三日に一度、
大抵は彼より早く、ルーゼン邸に通って来るようになっていた。
王宮で過ごす日中の関係は以前と変わらない。
だが、自邸の書斎で本を読んだり、居間で絵画を見ながら、彼を待っている彼女を
思うと、どんなに困難な仕事でも、疲れを覚えない気がした。
シーアは情熱的な恋人を演じてくれていた。
二人で戯れて、肌を合わせ、夜を過ごす。
彼女にいろいろ教え込むのは楽しくて、彼女も応えてくれている。
それだけでなく、楽器を爪弾いたり、お気に入りの画家の作品を語ったり、仕事の
ことで彼女の意見を聞くのは、とても満ち足りた時間だった。
今夜のように、シーアと一緒なら、ベッドの中であれこれと、厄介な問題についての
書類とにらめっこするのも悪くない。
そんな毎日が、幸せだと思う。
けれど、シーアの何気ない手の動き、ふっとそらす視線に、その幸せが独りよがりで
あることを認識し、忘れないよう意識させられる。
「免税の嘆願書? これは内治部の管轄ではないでしょう?」
シーアが彼の後ろから抱きつき、肋骨をふわふわと撫でながら、チアニの持ってきた
書類を覗き込んだ。背中に当たる乳房が、やわらかくてあたたかい。
「あ……、ああ。内宰府の……叔父上から受け継いだ仕事だ。
その、たぶん俺は、叔父上の後を継ぐかたちになるのだと思う」
叔父上のことを俎上に載せると、いつも気まずい沈黙が落ちる。
「え、あ、……そうですね。ええと、メッシエ・スールエ鉄山、採掘量の減少により免税」
首をかしげて頬を寄せた彼女の声が、彼の皮膚に伝わって響く。
510 :
チアニ:2006/11/09(木) 01:03:14 ID:omwaBryR
「書類はこれだけですか? 一ヶ月前にメッシエ・スールエを通りかかった時は、
別にさびれた感じではなかったのですが。
あの地方は昔から鉱脈筋が多くて、……ああ、そう言えば、鉱山師らしき男が、
遠いだの新しいだの喋っているのを耳にしました」
「従来の鉄山は掘りつくしても、どこか別の場所で掘っている可能性があるのか」
「ええ、ありますね。あそこの領主は小利口だとの評判ですし」
「では、調査の者を派遣して、新しく調べてみよう。
ないとは思うが、一ヶ月前と状況が変わっているかもしれな……一ヶ月前?」
一ヶ月前と言えば、アリスン監獄の後、シーアが熱を出して、十日間休んでいた頃だ。
そして、メッシエ・スールエは王国の東の端。首都からどんなに急いでも三日はかかる。
「……あら?」
口を滑らせたのに気づいたらしい。
誤魔化そうとしたのか、彼女はルーゼンの右肩に顎を乗せ、首の辺りに軽く口づけをする。
「で? メッシエ・スールエへ何をしに行ったんだ?」
振り向いて押し倒し、体の下に組み敷く。シーアは悪びれもせずに、彼を仰ぎ見た。
「メッシエ・スールエではなく、国境を越えて、その先の国の女王陛下と内密の要件で
お目にかかるため行ったのです」
「女王?」
「と、今年十六歳になる王女殿下の顔を確かめに。王太子殿下のお相手として」
「兄の相手? 結婚相手か!?」
「はい、女は女同士と言うこともありますので、国王陛下と王太子殿下のご依頼で」
ルーゼンは肩を落として、枕に顔を埋め、うなり声を上げた。
「それで、お前は……」
――お前の、"大事な王太子殿下"の婚約をととのえたのか?
言いかけて、飲み込む。
――自分の好きな男の。
そっと彼女の顔をうかがうが、伏せたまつげの下の表情は読めなかった。
511 :
チアニ:2006/11/09(木) 01:04:19 ID:omwaBryR
「北方の国境がまたきな臭くなっていますから、東を安定させたいとの陛下のご意向です」
やはり、兄は政略結婚をするのだ、と半ば納得しながらも、しかし、理不尽とも思う。
「東を安定させるといっても、あちらは小国で、俺の家と比べ、格が低い。
第一、兄と十六歳の姫では年の差がありすぎるのではないのか?」
「そうですね。年齢や国力から見れば、第二王子殿下が娶られる方が、釣り合いの
取れる組み合わせかもしれません。……ルーゼン殿下、そうされますか?」
彼女は、まるで馬や犬の繁殖話でもしているように提案する。
「お前は……」
――俺の気持ちを知っていて……。
「残酷な女だ」
シーアは、かすかに笑って、乳房の上で両手を合わせるように指を組み、その爪先に
目をやった。
「……あちらの王女殿下は、わたくしと違って、なかなか可愛らしい方でしたよ。
でも、あの傑物の女王陛下の血を受け継いでいらっしゃるなら、立派な妃殿下に
なられるでしょう」
彼女が可愛らしいと言った時、声に嫉妬が混ざっていたのを、彼は聞き逃さなかった。
「うらやましいのか?」
――兄と婚約する姫が。
「ええ、まあ」
シーアは、ルーゼンの怒気を含んだ目色を見て、少し困ったような顔をした。
「……今の自分を後悔しているわけではないのですが、時々、あんな風に育つことも
出来たのかと思うことはあります。花や刺繍や女らしいことで、頭をいっぱいにして……」
シーアは手のひらを掲げて、蝋燭の明かりにさらした。皮膚が変色するほど固くなり、
所々ひび割れている。刺繍などしたら糸が引っかかってもつれてしまうだろう。
「閨閥のために父の薦める貴族の男性と見合いをして、……顔も知らずにすませる
場合もありますが」
話をそらされたのに気づいたが、ルーゼンは、"貴族の男性と見合い"の部分にむっとした。
「それで、顔も知らない男と結婚して、好きでもないのに寝るのか?」
「そういう風に育ちましたので」
彼女は皮肉げにくすりと笑い、彼は何を皮肉られているのか悟って、唇を噛んだ。
512 :
チアニ:2006/11/09(木) 01:05:13 ID:omwaBryR
「申し訳ありません、殿下。そんなつもりでは……」
シーアは取り繕った笑顔を作り、唇に人差し指を当てた。
「あの、王太子殿下の婚約は、来週正式な使者が立って、水面下で話が進んで
いるとの噂が出回る手はずになっていますから、それまで内緒にして下さい」
「ああ、教えてくれてありがとう。もし、噂好きの連中から最初に聞かされたら、
もっとショックだったかもしれないな」
――父上は俺に話して下さるつもりがなかったんだろうか。
父王は特に、兄に目を掛けて可愛がっていた。
その一方でルーゼンのことは、幼い頃の病弱ゆえに見放していた気がしていた。
――それが、こんな形で証明されるとは。
ルーゼンの心臓は、ちくりと痛んだ。
「それを今、俺に喋って良かったのか? 父上は内密にしろと仰せられただろうに」
シーアは自分の唇に当てていた指を、今度はルーゼンの口元に持っていった。
「ルーゼン殿下が心無い方法で聞いてしまうのは不憫だ、と陛下がおっしゃいましたので。
ですので、もし近いうちに、実は……、と誰かが持ちかけたら、驚いた顔をして下さい」
「ん、分かった」
――では、父上は俺を忘れてないのだな。
ルーゼンは舌をちろりと出して、彼女の指を舐めた。彼女の瞳孔が開いた。
引っ込めようとするのをつかみ、ざらざらとした手のひらをむさぼる。
指を一本づつ口に含み、粘液で湿らせた皮膚の感触が、彼女の隅々に行き届くまで、
しゃぶりついて味わう。
「近衛がそんな仕事もするとは知らなかった。国王の護衛に、毎日の訓練、密使。
再来月に武芸大会もあるから、また忙しくなるな」
五年に一度開かれる武芸大会は、五日間にわたって首都で開かれる一大イベントで、
軍を統括する護国府や近衛、それに内治部も駆り出される今一番の大仕事だ。
「……あ、はい」
シーアは返事の代わりに、欲望の混ざった溜め息を返す。
「ああ、武芸大会の弓術部門の控え室の件な、やはり、前回の場所は破損が酷くて
使えないから、北の離宮を開けさせようと思う」
513 :
チアニ:2006/11/09(木) 01:06:14 ID:omwaBryR
北の離宮を使うと決めたのは、そういう要望があるとシーアに教えてもらったからだ。
「良い判断をなされましたね。北の離宮は会場に近いので、皆が喜びます」
シーアが、濡れてやわらかくなった指先を彼の胸に這わせ、口元に会心の笑みを
浮かべた。
それにつられて、ルーゼンも顔をほころばす。
「詳細を詰めたいのだが、誰に聞けば詳しいかな」
シーアは護国府の古参兵士の名前を二、三挙げた。
「前回の現場で仕切っていた責任者です。明後日なら空いているはずです」
「では、彼らを呼んで、検討しよう」
近衛は本来、国王を補佐する王統府の直轄で、護国府とは別組織だ。
しかし、その構成の過半数が、護国府からの選抜で占められ、交流も多いので、
近衛と護国府とは、一部と言っていいくらい密接に繋がっている。
それに、彼女の父親が護国府の長官である護国将軍だからというのもあってか、
武芸大会の情報を手に入れやすく、おかげで、準備段階の調整が予想以上に楽だった。
――考えてみれば、シーアは第二王子たる自分よりも国王に近いのだ。
ルーゼンが王宮の暗い寝室で病魔に苦しんでいた頃、シーアは父王や兄のそばにいて、
父王の言葉を聞き、行動をともにしていた。
そして生粋の近衛は、時には執務中の国王から意見を聞かれたり、国王の目や耳と
なって随所を回ることもあるがゆえに、内外の国事に精通する者も少なくない。
「シーアに教えてもらっているから、支障なく仕事が運ぶ」
武芸大会だけじゃない。シーアは他の仕事も良く知っていて、折に触れて父王の考えを
話してくれるから、王統府や内宰府から駄目出しされる案件が減ってきている。
「感謝している」
彼女の体に腕を回し、ふざけてわざと音を立てるように口づける。
「……ええ、……」
シーアが、すっと目をそむけた。
なごやかさが瞬時に消え、二人の間に冷たい空気が流れる。
「……内治部に直接話せる人物がいるのは、こちらとしても助かりますから」
その低い声は、幾分か曖昧な色を帯びていた。
514 :
チアニ:2006/11/09(木) 01:07:14 ID:omwaBryR
――それが第二王子なら……、
シーアを愛撫する手が止まった。
――護国将軍にとって、娘を差し出してでも得たいほどの価値がある。
――そうだ、第二王子だ。
父王は護国将軍の戦友で、護国将軍を頼りに思っている。
叔父上は自分と同じく、近衛にも護国府にも関係なく育ち、護国将軍の政敵となった。
その叔父上を始末すれば、残る王家の主な男子は、国王の三人の息子だけ。
王太子は近衛だ。近衛であれば、護国将軍と護国府の支持を受けていると言っていい。
兄の婚約の密使にシーアが出たくらいだから、これも護国将軍の後押しがあるのだろう。
十一歳の末王子も近衛志望で、来年から近衛近習になることが決まっている。
病弱だった第二王子は、成人まで持たないと言われ、後見人がいない。
だから、健康になった今、それを押さえれば、王家は、ほとんど護国将軍の手の内では
ないか。
――最初にきっかけを作ったのは俺だ。
「お前や護国将軍が腹黒いと言われる理由が、分かったような気がする」
シーアは、はっきりと苦笑し、自分の手を彼女の太腿に乗せた彼の手に重ねた。
「腹黒いのは、お嫌いですか?」
「少なくとも、好きではない」
――でも、後悔はしてない。
「"智の王子"の名が泣きますよ」
「俺は画家や音楽家の後援をしているから、"智の王子"と呼ばれるのであって、
お前たちのように陰謀を振り回したことはないんだ」
彼女は体を寄せて、あでやかに誘った。
「それは残念ですね。腹黒いのは、時々、役に立ちますのに」
太腿を割り、足を絡ませて、彼の欲情を煽る。
「時々、なのか?」
シーアに撫でられる皮膚がピリピリと熱い。
甘い餌をちらつかせ、唇を濡らすシーア、それに抵抗できない自分が恨めしい。
515 :
チアニ:2006/11/09(木) 01:08:20 ID:omwaBryR
「ええ、人の心は複雑で、よく分からないことも多いので、上手くいくことは少な……ん」
「俺のように、か?」
ルーゼンはシーアの首筋に吸いつき、彼の印を焼き付ける。
彼女は手を滑らせ、彼の背中をさすり、流れる極細の金髪をすいて、もてあそぶ。
こんな風に利用されるのは愚かなのだろうと思う。
しかし同時に、自分に利用価値があるのなら、それを使いつくしても構わないと
思うほど、ルーゼンは愚かで、幸せだった。
「俺の心は簡単だ。お前を手放すつもりはない。それだけだ」
彼女はその淫らな場所に、彼を優しく受け入れる。
こんな風に彼女の心に入り込めたら、と彼は思う。
「シーア……、お前は……」
ルーゼンは、それを聞かない。
聞けば、彼女は臆面もなく嘘をつく。
その嘘には耐えられない。
シーアが両足を巻きつけて、彼に合わせて腰を揺らす。
唇の間から舌を入れ、口中をまさぐり、唾液を流し込む。
彼女の息が乱れる場所を慎重に刺激し、真珠色の肌を輝かせる。
瞳をうるませ、せがむように高く悲鳴を上げるまで、念入りに責めたてる。
どこまで快楽を教え込んだら、自分から離れられなくなるのか。
どれだけ快楽を覚えさせたら、そばに引き止めておけるのか。
くちゅくちゅと淫靡な音を立てる水路がうねった。
さざなみが背中をつたって昇り、脳髄を極彩色に染めて、彼を狂わせる。
ルーゼンは、彼を魅了する彼女の全てに陶酔し、そして願う。
*
けれども、シーアはいつも、朝が来るのを待たず、振り返りもせずに帰っていく。
以上です。
エロ分少なくてすみません。
GJとだけ言わせて欲しい
GJ×3はあげたい。
シーアたんが読めない〜!!!
ルーゼンかわいいよルーゼン。
シーア応えてやってくれ……
GJ!こういう女騎士に翻弄されたい。
おおお素晴らしい!
522 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 23:27:00 ID:GHlK/Uuk
ほしゅ
そろそろ保守
こっそり、肉奴隷なアデラたんか幸せなアデラたんきぼん
『黄金か、白銀かと思わんばかりにその頭髪は輝き、
すらりとした細身の身体は糸杉の如し。
秀麗なる美貌は人の子の羨望を集め、
肌の白く滑らかなこと白磁の様………』
「いやぁん、お止め下さい!」
「ふふふ、いいじゃないか。初めてでもあるまいし?」
「は、初めてじゃなくっても嫌です… こんな所でなんて……… 大体もうすぐ戦が始まるんですよ?」
「戦が始まるからこそじゃないか。 私もひょっとしたらこの合戦で命を落とすかもしれない。
だからこの世に思い残しの無いようにしなくては…」
さて、昔々のある国で、よくある事なのですが合戦が始まろうとしてます。
でもそんな中、陣形を整えつつある敵味方をよそに、木立の影で不埒な真似をしようとする輩が約一名。
べ ろ り
「ああっん、舌入れないで下さい」
「ふっふっふ、シルフィはここが弱いな… 敵にココを攻められたら危ないんじゃないか?」
「ううっ、そんなトコ攻撃する敵はめったにいませんよぉ」
「んー、舌を入れるのは駄目か? …じゃあコレはどうかな、がり(齧 」
「あうぅ…、噛むのはもっと駄目ですっ」
「我儘だなあ、じゃあ私はナニをすれば良いって言うのだ」
「何もしないで下さいよぉ… ホントになんで私の『耳』ばっかりお弄りになるんですか?」
「そこに耳があるからさっ」
「答えになってませ…… ああん、息吹きかけるのも駄目ぇ〜」
「うふふ、エルフの耳は幾ら苛めてもホントに飽きないなあ」
皆様にも冒頭において語りました詩が何者を詠っていたか、すでにお分かりでしょう。
そう、不埒者にまさに手篭めにされんとしているのは、その知恵と長命と美しさで知られたエルフ族の娘。
彼女はこの合戦に援軍として派遣されたエルフ長弓兵の一員です。
エルフといえば華奢な身体で知られておりますが、その実彼らは立派な戦士でもあります。
特にその弓の技はつとに有名で、邪悪な勢力との古き戦においてもその腕を存分に発揮したとの事でございます。
さてさて、そんな怒らせると怖い妖精族の娘に平気で手を出そうとする輩といえば…
「嫌ぁん!ヴァイオレット様ぁ、止めてくださいよぉ。ゆっ、指でぐにぐにするのも駄目駄目〜」
「いやよ嫌よも好きのうち、やめてやめては止めないで だぞ」
そうです。我らがスミレの騎士、竜殺しの女英雄ヴァイオレットで御座います。
もうすぐ戦が始まるというのに、その前に木陰でエルフ娘と一合戦交えようというのですから、
なんともまあ好色…いえ豪胆無比と申せましょう。
まあエルフが腕が立つといえども所詮は妖精、人間の力には及びません。
まして相手は竜殺し。
『見目麗しければ、たとえ女巨人でも押し倒すだろう』と云うヴィオラが相手でございます。
背後から抱きすくめられて逃れる術も無く、弱点の耳をいたぶられるがままでありました。
「ヴァイオレット様ぁ…」
「他人行儀だな。知らない仲じゃないんだから、ヴィオラでいいんだぞ?」
「うう、いつの間に私なんかが、そんなに親しくして頂く関係になったんです」
「半月前、お互いの体を知り合い、肉体関係を結んだとき」
「あっ…あれはヴァイオレット様が無理やり……」
「ヴィオラと呼べ、これは命令だ」
「ヴ、ヴィオラさまが、無理やり私を……」
「無理やりであっても事実は事実、既成事実だ。もうシルフィと私は他人じゃないんだ」
「うぅ〜、ヴィオラさまは強引です」
「ふふ、恋も戦もときに強引さが求められる時がある」
「ヴィオラさまはいつもじゃないですかぁ!」
先月エルフ族からの援軍が参着した時から、ヴィオラは彼女に目を付けていたのであります。
そして他のエルフの目を盗んで言葉巧みに招きよせ、あれよあれよという間に手も付けてしまったのです。
顔をしかめて抗議するエルフ娘でありすが、美少女のふくれっ面もヴィオラは嫌いではありません。
「でも最後は気持ちいいって言ってたのは誰だ?」
「それは・・・ヴィオラさまがその………上手過ぎるんです」
老成して超俗したエルフのご婦人と懇意になるのも良いものですが、
若く稚気の抜けぬ妖精の少女をからかうのもヴィオラの大好物。
戦の邪魔にならぬよう結い上げたシルフィの髪を解き、その絹糸のような手触りを楽しみながら、
腕の中に捉えたシルフィに語りかけます。
「もっとロマンチックに口説いた方が良かったかもしれないけどね、
我々人間はエルフのように気が長くないんだよ」
「ぶう〜、もっと別のやり方をして下さい……あぁんっ」
「別のやり方って…こんな事かな」
「ちっ違います、全然違います〜」
「ほう、じゃあここかな?」
「あぅ〜んっ」
シルフィの着込んだ皮鎧で彼女の体はがっちりと堅められておりますが、
そんな事でめげるスミレの騎士ではありません。
狙いを耳から他所へ移し、皮鎧の隙間から忍び込みあるいはむき出しの肌を攻め、
ヴィオラは執拗に嬲り回します。
「んん〜、やっぱりこの体をもう一度味わうことなく戦死したら、死んでも死に切れん。
不死者になってシルフィを探して彷徨うかもしれんぞ」
「おっ、思い残しの無いようになんて…ヴィオラ様を討ち取れる者なんて、この世にはいませんよぉ」
「まあ…そうなんだがな」
「納得してくださったなら、お戯れはお止め下さい」
「やなこった……… そりゃそりゃぁー」
「はわぁーー」
言葉にならない喘ぎ声を上げる少女は、既に耳の先まで真っ赤です。
その精妙なる指先で官能を掘り起こされた上、戦場を前にした昂りと、
合戦を前にこのような不謹慎な真似をしているというスリルが、シルフィをさらに興奮させているのでした。
「あぁんっ、……ヴィオラさまぁ」
「うふふ、良くなってきたかな?」
鎧の隙間からだけ責められる分、一息に登りつめることはできないません。
もう一思いに逝かせて欲しいシルフィにはもどかしい限りです。
「もう、許してくださぃ〜」
「ほほう、もう降参かな?」
「降参ですぅ、もっもう駄目です〜」
「じゃあココを触られたら…」
「ああん、そこはぁっ」
下穿きの中にヴィオラの指がもぐりこみ、少女に一音高い喘ぎ声を上げさせます。
「はわわぅっ、そんなにされたらぁ」
「我慢しなくてもいいんだぞ…… ぱくっ」
「ひゃわわぅ、みみっ耳ぃ食べちゃらめえぇ……… ああうぅぅーっ!」
再び耳に奇襲を受け、同時にヴィオラの指が下半身の急所を捻り上げられ、
シルフィは大きく体を仰け反らせ、体をぴくぴく小刻みに震わせ絶頂を迎えました。
・・・・・・・・・
「おい、いつまで覗いてる気だ?」
絶頂に達してグッタリしているシルフィを抱き締めながら、ヴィオラは背後の草叢に声を掛けます。
「…覗いてなんていませんよ」
「じゃあさっきからそこでナニをしてたんだ」
「戦が始まろうって時に大将がいないんですから、探しに来るのは当たり前でしょう…」
何の物音も感じさせなかった茂みから現れたのは黒装束の少女。
ヴィオラの従者、マーヤでございます。
「きゃぅ、マっマーヤちゃん! いつからそこに?」
「『ヴィオラさまは強引です』って所からです」
「やぁん」
「おいおいマーヤ、私はともかくシルフィには覗かれ趣味は無いんだぞ。
もっとデリカシーのある物言いをしろよ」
「ふん、お戯れもいい加減にして下さい。敵はもうすぐ動き出しますよ」
「待たせとけよ。戦と女とどっちが大事だと思ってる」
この言い草にはさすがのマーヤも呆れます。
(ふう…、この色欲魔人っ、ちょっと可愛い娘を見るとすぐ手を出してっ、それでも騎士の端くれか?
自分で大勢の兵士たちを集めたくせにっ、命を賭けた戦場を何だと思ってるのだ!)
「………おい、今お仕置き級の事を心の中で呟かなかったか?」
「いえ、そんな事微塵も思ってませんよ」
疑わしそうに黒装束の少女を見つめる女騎士の視線を、マーヤは涼しい顔をして受け流します。
「ヴィ、ヴィオラさま。やっぱり戦の方が大切ですよぉ」
「むー、シルフィまでそんな事を言うのか?」
ヒヒヒィーン
「ほら、オケアノスも早く戦に行こうって言ってますよ」
「くっ、みんなして私を戦いに駆り立てようってんだから…
分かったよ、続きは後でにすればいいんだろ? ったく、敵方も気が利かないぜ。
『人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死ね』って奴だ」
「あうぅ、後では良いけど…続きは誰にも覗かれない所でがいいです………」
「ふふふ、楽しみにしてな」
「はいはい、二人ともそこまでにして下さい。早いところ甲冑を着て陣頭に立って下さい。
味方も開戦を前にして緊張してるんです。総大将が不在じゃ士気に関わりますよ」
「もちろんマーヤも後で可愛がってやるよ」
「………私は一番後回しでいいです」
「いやいや、今回はシルフィの次に体を開けといてやるぞ」
ヴィオラは苦笑しながら甲冑を着込みます。
彼女は脱ぐのも素早いのですが、それに劣らず着るのも素早いのです。
(もっとも一番早いのは脱がせるときですが…)
マーヤに鎧の締め緒を結ばせ、手早く装備を整えます。
「? どうしたんだ、シルフィ?」
「あううー」
ヴィオラが着替え終わろうとしているのに、このエルフ娘はまだ立ち上がろうとしません。
「いっ、言いにくいんですけど… さっきので腰が抜けちゃって立てないんです……」
「はぁ?」
「ふはははは」
「笑い事じゃないですよぉ」
「ふふふ、ごめんごめん。シルフィは感じやすいんだな。よし、私が手伝ってやろう」
そう言うとヴィオラはマーヤを抱きかかえて肩に乗せます。
そしてそのまま愛馬オケアノス号の鐙に足をのせ、ひらりと鞍に跨ります。
「わあぉっ」
シルフィはいきなり高所に持ち上げられた驚きで思わず声を上げました。
しかしもっと驚くべきは、細身のエルフとはいえ、
甲冑を着込んだ体で娘を肩に乗せて馬に飛び乗れるヴィオラの身体能力でございます。
でもまあこれ位常人離れした力が無ければドラゴンを単身で倒すなんて真似は出来ないのです。
「あの、ヴィオラさま、降ろしてください」
「いいじゃないか、このまま陣営まで乗せてってやるよ……
味方の兵士も『俺達の大将は余裕だぜ、戦の前に女を抱いてきたんだ』って思えば緊張も解れるだろ」
「うわわわわっ、だめぇーそんなこと思われたら私お嫁にいけないですー」
「安心しろ、そのときは私が貰ってやる」
「とにかく駄目ー!降ろしてくださいー!」
もがくシルフィを肩に乗せ、スミレの騎士は颯爽と自陣へ駆け出します。
・・・・・・
国王軍とヴィオラ軍の雌雄を決する大戦、
数こそ国王軍が勝っても、ヴィオラ軍は質で勝ります。
ラッパの合図と共に両軍前進し、まずは矢戦が行われましたが、
ここでエルフ長弓兵が威力を発揮、射程と精度で勝るヴィオラ軍は敵の弓兵を打ち散らします。
続いて前進してきた歩兵隊に当たるのは、ヴィオラ軍に参加した傭兵隊の百戦錬磨の猛者たち。
戦慣れした彼らの活躍で、数の差をものともせずに互角以上の戦いを繰り広げます。
形勢不利と焦った国王軍は、切り札の騎士団に出撃させますが、それこそヴィオラの思う壺。
待ってましたとばかりにオケアノス号に拍車を当て、配下の騎兵を率いて突撃すれば、
敵は次々とヴィオラに斬り倒されて、剃刀で羊皮紙を裂くが如く、騎士団は陣形を切り裂かれます。
持ち駒は使い果たした上に相手は自陣に突入しているのですから、もはや国王軍に打つ手なし。
おまけに自ら敵本陣に切り込んだヴィオラが敵大将を討ち取れば、スミレの軍の陣営に凱歌が響き渡ります。
横に後ろに回りこまれた国王軍は、部隊揃って逃げるか投降。
天下分け目の大決戦は、ヴィオラの勝ちと相成りましてございます。
さてさて、今宵もお付き合い頂きありがとうございました。
おお、最後に一つだけ語り忘れた事がありました。
討ち取られた敵大将でございますが、戦の後に亡骸を改めてみると、
オケアノス号に蹴られた傷が致命傷になっていたとかいないとか…
全くスミレの騎士の恋路だけは邪魔するものではありませぬ。
ではまたいずれ、スミレの騎士のお話をさせて頂くことといたしましょう……
ヴィオラ様今回も素敵でした。
多くの職人さんたちの活躍で盛り上がったpart2スレも
475KBを越えてきました。
そろそろ次スレのことを考える時期だと思うけど、
前スレで話のあった総合スレへの転身の件はどうしましょ?
類似したスレの●中世ファンタジー世界総合エロパロスレ●は
ここより早く立ったけどまだ160KB位なんだよね。
いまいち投下が少ない感じ。
@このまま女兵士スレで進む。
A中世ファンタジー世界総合と合流する。
Bスレタイに女兵士以外もOKと書き加えて、間口を広げる。
どれを選んだら良いと思う?
現時点で快調なんだから普通に現状維持でいいと思うが
現状維持に大賛成
このままpart3へ突入でいいと思う
自己レス
******勝負に負けて犯される********はレスが950越えててもう終わりそうだね
自分も現状維持希望。
このスレが好きなんだ。
ずっとこのままでいて欲しい。
538 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 02:05:42 ID:mPUZ0bo7
ねえねえ?
480KB、
これはもう一杯なの?
どれくらいいったら、限界なの?
500Kb。
短編1編投下してちょっと余る程度。
テンプレに非戦闘員も一応OKと書いてもらえると個人的に嬉しい。
せんせい、冒険者は兵士に含まれますか?
ボウケンピンクとボウケンイエローは戦うね
非戦闘員ならファンタジー総合スレのほうがいいんじゃないだろうか。
いえ、女兵士もので書き始めても、
話を進めるうちにいろんなキャラを出したくなってしまう性質なもので…
それなら初めから総合スレに投下しろと言われるかも知れませんが。
新作を現在書いてますが、残りの容量収まりきらないかもしれないので、
新スレが立ったら投下しますね。
>>544 漏れもそんなかんじ
前に書いたのと同じ舞台での話だけど冒険者x触手SSなので触手スレに投下するべきか
しかし冒険者が兵士に含まれるなら問題は全て解決
546 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 01:00:30 ID:mjH687d3
じゃあさ、
ファンタジー世界で頑張る女、にしちゃえばよくない?
別に上官がいてもいなくても可、
で き れ ば
女兵士推奨ってのは?
「ファンタジー世界で頑張る女」にしてしまうと
ファンタジー世界で占いをがんばる女占い師のSSなんかも可になってしまう。
そういうのはできれば別のスレでお目にかかりたい。
スレタイを変更しちゃうとどんどん女兵士から離れていくから
現状維持してほしいなあ。
シリーズものの書き始めの女戦闘員SSがウケれば
注意書きつきで別キャラのSSを投下しても受け入れられると思う。
粘着されたくないなら別スレやテキスト形式でうpしてリンクを貼って
保管庫で一緒にしてもらうって手もあるし。
ファンタジー世界で闘う女たち に?
547に全文同意。
「ファンタジー世界の女兵士総合スレ」でいいじゃないか。
あえて変える必要ないよ。
おけー
『女兵士』を『女戦士』にしたら
冒険者もいけるんじゃないかな。
>>535 勝負に負けて犯されると妄想時代小説は
外していいと思う。
>>1 に冒険者もOKとあるので、現状でも大丈夫なはず。
女戦士だと、語感からジョブが限定されてしまうかも。
メインは女兵士なのでスレタイは変えずに、
・タイトルに拘らず、女剣士・騎士、冒険者、お姫さま、山賊・海賊、魔女、女神官、何でもあり。
・非戦闘員も女の子が戦争・冒険に係わっていく話なら許容範囲。(ただし投下前の注意書きを推奨します)
とするのはどうでしょうか?
でもさ、やっぱ『女兵士』だけだとスレタイだけ見たとき間口狭いスレに思われる気が。
一度スレに来てざっと投下作品読んでみれば兵士に限らず受け入れる
良作神作揃いのスレだってわかるんだけど。
だからなんかもったいない気がするなー。
なのでこんなの考えてみた↓
【ファンタジー世界総合エロパロ・女兵士スレPart3】
スレタイだけを判断してスルーする人は、そこまでの人
中味をじっくり読んで、参加したい人だけすればいいんでない?
つーことで、次スレは今まで通り
◆◆ファンタジー世界の女兵士総合スレpart3◆◆ がいいと思う
前スレでも決着がつかなかった話題なので、あと20KB弱で意見がまとまることは無いでしょう。
結局は立てる人の感覚次第になるでしょうね。
巧いことバランスをとって、女兵士スレが繁栄するようなスレタイ、テンプレになってくれると良いな。
どんなスレタイ、テンプレになっても作品投下しますよ。
スレタイの文字数って今のでぎりぎり?
上の二つも前後の◆入らないか
◆ファンタジー世界の女兵士・その他総合スレpart3◆
◆ファンタジー世界の女兵士・戦う女総合スレpart3◆
ファンタジー世界の女兵士・その他戦う女総合スレ3
自分も考えてみたけど、なんか微妙
まー今までもそんなに問題なかったし現状でも良いんじゃない?
間口が狭いのも事実だけどさ、この手のスレ探すときのキーワードは「ファンタジー」じゃまいか?
むしろ「ファンタジー」で検索しない香具師はここに来るべきじゃないとさえ思うしな。
どちらにせよ問題ない希ガス
じゃ、現状維持ってことで次スレ立てちゃうよー
何か加えたかったら、またその都度話し合いってことでヨロ
こんな板だし、賑わっている限りは間口狭くても何の問題もないと思う
板見回してもマニアックな間口の狭いスレで溢れているじゃないかw
「ファンタジー萌え」でも「女戦士萌え」でもなく「女兵士萌え」つー嗜好があるということを理解して欲しい
梅ついでに相談なんだが。
さるマニアックなファンタジーRPGやってるんだがキャラゲーじゃない(むしろ顔とかは自分で気合入れて作る)ので
萌えって感じでもなく当然エロスレも立ってないと言うか、そもそもエロ需要が無い。
でも漏れは自分で魂込めて作った女キャラが牢獄にぶち込まれたり、むさい山賊に囲まれてボコられたりすると
色々と妄想力が働いてSSエンジン全開になるんだが、そーゆーの投下しちゃっていい?
もちろん元ネタ知らなくても大丈夫なように書く決定的な固有名詞は避けたり配慮する
つもりではあるけど、多少は説明的な文章が多くなるかも?
>>561 >>1に「オリジナル・版権も問いません」ってあるから大丈夫だと思う
陵辱物が苦手な人もいるので、注意書きして投下すればOKじゃないかなー
つうかテンプレに書いてあったな。
>・オリジナル・版権も問いません。
以上、一人相撲をお送りしました。
梅ついでに小話をば。
昔、「T&Tカザンの戦士たち」って言うPCゲーやってた時、メンバーに自分設定満載なキャラの名前を付けていたんだけどさ。
そのゲームはMSXとかPC88とか言ってた時代のしかも洋ゲーなだけあってさ、キャラは殆ど○とか□とかで表現されてて
キャラ萌えとかとは無縁、まさに想像力で楽しむゲームだったんだよな。(当時はこれが普通だった)
で、イベントでパーティがオークに捕らえられて、鉱山で強制労働させられる展開になったのよ。
鉱山で働きつつ脱出の機会を伺うわけだが、その途中にランダムイベントがポロポロ発生するのよ。落盤でダメ受けたりとか。
折りしもパーティには紅一点、華奢でロリな魔法使いの女キャラがいてさ、俺の脳内では「こんな時でも他のメンバーは
この女魔法使いを庇っているんだろうな。そーゆー性格設定だしな。」とか妄想しつつ楽しんでいたんだ。
それが、ある日の突発イベントで「***(女キャラ)はオーク達の怒りを買ってしまった!」とか言われてHPがガッ!ガッ!と減ったのよ。
その時の衝撃と言うか、俺のカタルシスの凄さと言ったら無かったな。大切に守っていたものを汚されたと言うか。
○とか□で表現された世界を超えて、その場面が頭の中にありありと見えたよ。
メンバーが必死に守ろうとするも、オーク達の中に引き立てられてHPが減りまくるほどに攻められる女キャラの姿が…。
それだけでしばらくは猿のように抜いてた。
俺のNTR属性や異種姦属性はその頃からだったかなあ…
自分が最近ファンタジー精神を掻き立てられたのは
ウォーハンマーの公式HPだな。
綺麗に塗り分けられたフィギュアが戦列を組んでるのを見ると
脳漿があふれ出す。
設定資料も無料ダウンロードできるので、読み応えがある。
ああ、グリーンスキンを1000体くらい綺麗に塗って揃えて飾って眺める程
技量と時間と金と場所があればなぁ。
またスレタイ現状維持か……
なんだかなあ
あと11kbあるけど、埋めたほうがいいのかな。
570 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 01:32:10 ID:1H8LmmU5
私見だが、スレタイ変更派は女兵士に限定するより、
もっと間口を広げて住人、職人が増加することを望んでる。
反面現状維持派は変に住人が増えても、
女兵士スレの特色が失われてしまうことを恐れてる。
まあ総合スレよりここやお姫様スレの方がよりファンタジーらしさが出てる気がするしな。
総合はスレが沈みかけていないと職人の投下が無いと主張する人も居るし。
>>571 >間口を広げる
職人が増えた方が嬉しいし、住人が増えれば感想も聞けて職人も嬉しいだろうし・・・
どこに投下するか悩む職人さんにはうってつけだわな。
だがそうすると何でもありになってしまうし、
このスレである必要はなくなるわけだよな、他でも良いんじゃないっていう。
ファンタジーで、各個人の解釈で女兵士だったらいいと自分は認識しているが。
ただ、そう考えて投下したら
「スレ違い」と言われるのは、怖いなあ。
このスレも職人さんも住人も、好きだしできたらここの皆さんに読んで貰いたい、
と思う人は他にもいるんじゃないだろうか・・・。
人によって違うよな…
先ほど総合スレを初めてみてきた。
見ると娼婦だが剣を扱う女性、メイドだが殺し屋(ということだろうか?)っぽい女性が出てる
そうなると、彼女らのようなキャラがいるだけでこちらのスレに作品を投下することもできちゃうと思うんだ
このスレでは、メインが女兵士・冒険者などでエロやればOK
色々でちゃって、色んなエロをしたいなら総合スレ
お姫様に色々なら姫スレ
ってことだと俺は結論づけた
悪い本当うまくかけない。どのスレも好きなんだよな俺は。俺はどのスレも読んでいるからこんな破天荒なこと書いてるんだろうな…
ざっと見渡して現状維持の極端な意見としては例えば、
>>559 >「ファンタジー萌え」でも「女戦士萌え」でもなく
>「女兵士萌え」つー嗜好があるということを理解して欲しい
だろうけど。や、嗜好は理解するよ。
けど、これがまかり通るぐらいだったら「女兵士」限定スレにすべきだろうな。
例えば、下のようなテンプレにする。
◆剣と魔法のファンタジー世界もの限定で、更に女兵士が関わるもの限定のSSスレです。
◆ファンタジー総合スレではありません。例えば宮廷ロマンスものは姫スレに、
亜人獣人ものは亜人獣人スレに投下するのが適切です。
◆エロは軽いものから陵辱系のものまで何でもあり。ですが、人によって嫌悪感を
招くようなシチュ(特に猟奇グロ、汚物、NTRなど)の場合は、最初に注意書きを
つけることを推奨します。
◆オリジナルか版権ものかも問いません。
現状維持派はこれでもいいだろうし、スレタイ変更派は諦めて見切りをつけるべき。
変更派に対して突き放した言い方っぽいけど、ちなみに自分は変更派。
実質的に、過疎化上等の先鋭嗜好のくせに、「タイトルに拘らず、女剣士・騎士、
冒険者、お姫さま、海賊、魔女、何でもあり」みたいな、「総合スレでもあるんですよ、
とりあえず投下してみれ」的な顔をしたテンプレ張るのがすごいイヤラシイと思ってる。
現状だと投下しづらさがあるんだと、理解してほしい。
他にそういうニュアンスの事を言っている書き手もいるみたいだし。
読み専か、女兵士以外はどうでもいい人しか、
>>559みたいな意見は言えないと思うんだ。
ともあれ、意見の折り合いが現状のスレタイとテンプレなんだろうけど、
折り合いの付け方としては、こういうのが一番よくない。
う〜ん、難しいね。
女兵士、っていうとかなり限られたものになってしまうよな。
けど、今までの投下作品に「スレ違い」とあからさまに指摘はなかったし、
この程度はオッケーと言う解釈なのかな。
ほんと、人によるよな。
まぁでも現状賑わってるからいんでないか?
スレタイに惹かれた読み手・書き手もいるだろうし
下手に変えて過疎ってもなぁ…
むしろ過疎っているファンタジー総合スレの方がなんらかの変更をすべきじゃないのかなとか
変更ってタイトルだよな
総合スレと女兵士スレって連動してんのか?
総合スレでそのテの話をみたことがない
埋めてみる
あなたは「愛してる」と言って私にあなたを埋めた。
だから、私も「愛してる」と言ってあなたに私を埋める。
私、あなたに話したわよね。
生まれ育った村が兵士崩れの一団に襲われたこと。
私はベッドの下で父や母や小さい弟が殺されるのを見てた。
彼らに見つからないよう声を殺して見てた。
血まみれの手が私の人形を拾った。
顔はつるつるした陶器で目はきらきらしたガラス。
髪はふさふさのブロンドで手足はふわふわのフェルト。
おままごとでは私の妹だったの。
私、妹を取り返すために旅に出たのよ。
剣の腕を鍛えて傭兵団に入ったのもそのためよ。
私はあなたを埋める。
あなたの荷物から見つけた私の妹を一緒に埋めるわね。
でも、私の心は埋めない。
さようなら。
私、故郷に帰るの。
こんなの書いといてなんですが
主従でエロスレの705みたいなうめネタきぼん
↓
漏れは「女兵士=戦う女」と解釈してたので辞書通りに「女兵士=上官の指揮下で戦闘する女」と限定されると厳しい。
恐らく最初にスレ立てた人も「女兵士=戦う女」程度の意識で立てたんじゃないの?本人じゃないので何とも言えんが。
どちらにせよ、
・このスレを(辞書通りの)兵士限定にしてそれ以外のは別でやれ
・何でも(村娘とかパン屋の娘とかも)ありにしろ
とか言う極端な意見はどちらも賛同しかねるな。
漏れはハッキリ言ってスレの内容的には現状で何の不満もないんだよね。
スレタイが微妙なのは否めないけど。
変えるなら中間を取って(と言うか丸きり漏れの解釈だが)、◆◆ファンタジー世界で戦う女の子◆◆で良いんじゃね?
敢えてスレタイに「総合スレ」は付けないでおけば、現在の総合スレとも差別化できて良い希ガス。
>>576,577
恐らくお二人ともこのスレの古株とお見受けする。
向こうの「総合スレ」も当初は「女兵士スレで良いじゃねえか」「空気嫁」「勝手に総合とか名乗るなyo」ってな
雰囲気で、それでも削除されずに残った結果、今のような現状になったと言う経緯があるんだよな。
だから、こっちに前からいる人には「総合スレ」に良いイメージ持ってない人も多いのではないかと。
かと言って今更騒ぐのもアレだし、もしも向こうの住人が納得してくれるのであれば、
こっち:◆◆ファンタジー世界で戦う女の子スレ◆◆
向こう:◆◆ファンタジー世界で戦わない女の子スレ◆◆
とか変えることが出来たら超華麗に住み分けが出来るんじゃまいか?
どう?漏れ良いこと言ってる?
戦う意思を持った女、って解釈にしてくれると嬉しいんだけどなあ。
気づいたことが一つ。
スレタイ一つで議論できちゃうくらい、みんなこのスレが好きなんだね。
自分は、ユノを投下したものだけど、
正直、スレチガイかなあ、とすごく心配してた。
最初こそ女戦士だったけど、あとは戦う女だと自分でも思ったし。
上のほうで、スレチぎりぎり、と言われたときには本当に、ドキッ、とした。
スレタイは、続きを書くのにすごく意識する。
もっさりしたスレタイは好かない。
スレタイは「女兵士」、テンプレは戦闘員の女ならOK、の現状維持でいいじゃない。
(個人的には「女騎士」のほうがより萌えるけど)
スレタイど真ん中でなくっても、良SSなら自然に受け入れられるので
職人さんには自信もって投下して頂きたいです。
ユノの話も、読めて本当に良かった。
ざっとこのスレを見渡してみて、今スレは28作の投下があった。
その中で女兵士が主役として登場しないのは、1の妖精話や魔王モノの一部。意外と少ない。
魔王モノ(8作)のような女兵士に限定しない物は、総合スレに移った方が良いのだろうか?
(つーか魔王話だけで三割近いのだが)
テンプレ通りで良いと思う。
もしも何か変えるのであればスレタイを語弊が無い程度にちょこっと弄るだけでいいじゃん。
スレの趣旨や内容を変えたり、SS師に移住を迫るような変更は本末転倒だと思うわさ。
あ、もしも
>>584氏が
>>580を見てそう思ったのだとしたら補足。
もしも向こう(総合)を「戦わない女の子スレ」として扱うのであれば、先に了承を取るのが筋だと思ったのだわさ。
もちろん、向こうがその旨を了承するのであれば華麗に移住して両方とも盛り上げるのが良いかと。
現状で賑わってるから、今はこのままがいい
次スレ以降で過疎るようなら、その時はテンプレ変更もいいかもなー
男主人・女従者のスレが間口広そうなんでそっちにお願いしたら?
現状維持を基本として、何らかの微調整を。という意見には頷けるんだが、
現状で賑わってるから今はこのままがいい、みたいな意見はすごく邪魔くさいなあ。
昔、「タイトルが駄目だ、ここは総合にしよう」みたいな意見に集約した事さえ
あるのにな、総合スレが立てられる前は。
スレタイ変わってないのは、現状維持派の強行採決っぽいし、いくら問題ないと
言い張っても遺恨は続くだろう。
現状は異なってきているが、別に総合スレがある事から、今度はこっちのテンプレの
何でもあり的な事項を修正する必要がある。
もちろん、女兵士以外だめってんじゃなくて、方向性の明確化の意味で。
いずれにせよ、今まで何度も何度も不備が指摘されているんだから、変更の方向でいい。
ただし、その方向をどうするか。程度をどうするかだよ。
何が何でも変更は駄目、みたいなミズポがいるなら、
見切りをつけてしばらく投下を止めるのも手だと思う。
んじゃあテンプレを
「・タイトルに拘らず、女剣士・騎士、冒険者、お姫さま、海賊、魔女、何でもあり。」
↓
「・「女兵士」に拘らず、女剣士・騎士、冒険者、将軍、海賊、魔女、
戦闘員の女性が出てくるなら幅広くOK」
って感じに変更すればいいんでない。
>次スレ以降で過疎るようなら、その時はテンプレ変更もいいかもなー
絶対ダメってことじゃないと思われるがな
またスレ立てる時に考えればいいんじゃね?
今回は時間が無くて現状維持で次スレが立っちゃったけど、
スレタイに不満のある人は次回頑張ってくれよ
作品を投下する人が困らないような、良い案が出るのを期待してるからさ
>現状は異なってきているが、別に総合スレがある事から、今度はこっちのテンプレの
何でもあり的な事項を修正する必要がある。
それは貴方の考えでしょ?サイレント魔女☆リティとか言うのは勘弁ねw
自分と異なる意見は「邪魔臭い」「強行採決」だの言うのはおかしいんじゃない?
漏れの意見は何度も言うように「現状でとりあえず満足、スレタイは多少弄ってもいいんでない?」
今回は「ありゃ、スレタイは同じかよ。まいいか。」程度に考えてる。
スレ立てる人次第で変わるときゃ変わるし、それが気に入らないスレだったら放置するだけ。
無理やり変えてSS師に移住を迫ったりするような流れになるのはマジ勘弁。
そもそも「変更派」だの「現状維持派」だの、他人を巻き込んで派閥vs派閥みたいに言うのは
辞めてくれまいか?