おんなのこでも感じるえっちな小説6

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  女の子でも感じるえっちな小説ってありますか?
  なんか「おま○こ!」とか直接ドーンと言ってるのも
  冷めるけど、「秘密の果実」とかとおまわしすぎるのも
  かなりわらっちゃう(笑)
  ネット上で読める小説ならなおよろしーですvv
  オトコノヒトにちょっとsっ気があると
  なお萌えvv(笑)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(スレ1より引用)

過去スレ 1 2 3 2.5 4 5
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1001766305/l50
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1014119568/l50
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1032311145/l50
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1031529909/l50
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1046837302/l50
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1061873340/l50

縮刷版
http://www2.gol.com/users/kyr01354/bbsstory/

はぁ…はぁ… また……ここから始まるのね……?
2名無しさん@ピンキー:04/06/19 20:21 ID:to9/q91z
 ,'⌒⌒ヽ
/ λ W λ i ヽ
く ゝ` ‐´ノ,,ゝ
( .)~==~)つ
レノ人__人!
  (/(/

御機嫌いかがですか?NOIRのChloeが>>2ゲットです・・・・・。

>1 スレを立てるのは私だったのに!私のはずだった!!
>3 スレはあなたを必要とはしていない。それだけ言えば充分でしょう。
>4 これがあなたのレスか。・・・・・なるほど、つまらん。
>5 すべては過去スレ過去ログに記されています。
>6 答えは・・・・・答えは自分で見つけるように。スレ住人はいつもそう言っています。
>7 私が全身義体化サイボーグとして復活し「魔法先生ネギま!」に登場しているのは秘密です。
>8 あなたは、コピペを、貼る。なんの躊躇いもなく、貼る。
>9 あなたはノワールのエロ画像を失ってしまった。だからそんな顔をするんですね・・・・・。
>10 どうして・・・・・・・・・・どうしてッ!?
>11 嘘つきぃッ!!
>12 ・・・・・・・・・・ノワール・・・・・。
>13-1000 私、>>2ゲットできて幸せです。
3377:04/06/19 20:29 ID:685b1zZd
前スレが一杯になってしまったので、勝手ながら新スレを
立ててしまいました。

途中だったので、また最初から投下します。
4一徳編:後 1/36 :04/06/19 20:31 ID:685b1zZd

 思えば、生まれた時から私の男運は悪かったんだろう。
 親父はアレだし、初恋もアレだし、今だって。
 くー、と水の如く酒を飲みながら、私は馬刺しを食べる。うん、美味しい。あ
あ美味い。太るな、これは太るな。そう思いながら、料理を追加する。いつもな
らそんな食えないけど、今なら食える。きっと食える。
「…うま」
 馬を食いながらうま、とはこれいかに。思い切り口の中に詰め込んだ食物を、
酒で流し込んだ。
 
 嫌な事があった。
 好きな男に浮気されて、年下の母親が出来て、素っ裸見た男と再会した。
 帰ろうかと思ったけど、ムシャクシャしたから、なんか食べようと思って居酒
屋に入った。でもって今に至る。
「お待たせしました、オムライスです」
 ことん、と美味しそうなオムライスが置かれる。問答無用でスプーンを取った。
 がつがつ食べていると、不意に大輔と付き合い始めた頃の事を思い出した。そ
ういえば、大輔ケチャップ嫌いだったな。
 チキンライスを凝視して、浮かぶのは大輔の事ばっか。
 …好きだよ。凄く好きだ。大輔の事、好きだ。だから、余計に腹が立って来る。
黙っときゃ良かったのに。私に殴られるって、罵倒されるってわかってた筈なの
に、馬鹿正直に言いやがって。それでその後どうなるかってのも、薄々どころか
厚々わかってたろうに。それで、実際そうなったのに。
 あぐ、とちょっと大きすぎるくらい取ったオムライスを無理に口に運ぶ。熱い
し、多いし、喉に詰まる。それをまた、酒で流し込んだ。

5一徳編:後 2/36 :04/06/19 20:31 ID:685b1zZd
「…あの、もしかして」
 不意に、声を掛けられる。振り向くと、男が1人。なんだ?相席か?でも席は
空いてるし、なんか、見た事あるような顔…して…
「―――っ」
 酔いが、一気に覚めた。
「覚えてる?忘れちゃった…かな?俺。由貴。染井由た…」
「失せろ!」
 私は思い切り睨んで、一言そう言った。そして、再びオムライスに向かう。
「…手厳しいね」
 人の話、聞いてないのだろうか。そいつは私の正面に座ると、なんか辛そうな
顔をして私を見た。
 …本当に、厄日だ。好きな男に浮気されて、年下の母親が出来て、素っ裸見た
男と再会して、初めて好きになって騙された男にも再会した。

 染井由貴。
 親戚で、桜花ちゃんを落とす為に私に近付いて来た奴。正直、気分悪いわ。
 初めて、自分よりも桜花ちゃんを選んでくれて、本気で好きになって、自業自
得だけど、自分の身体までやって。それなのに。
「手厳しくもなりますね。これ以上酷い扱い受けたくなかったらとっとと帰って
下さい。私、機嫌が凄く悪いんです」
「…わかってる。叔父さんの再婚でぐげっ!?」
 わかっているなら言うな。帰れつってんだから。思い切り弁慶を蹴ってやる。
本当は、こんなもんじゃ済まないんだけどね。
「いらっしゃいませ、ご注文は」
「あ、この人すぐ帰りますから」
「っ…なっ…生中と…枝豆…後、ほら、何頼んでもいいから…」
6一徳編:後 3/36 :04/06/19 20:32 ID:685b1zZd
「じゃあ、この店で値段が高いものベスト3を3品ずつ」
 言った瞬間、由貴の顔が引き攣る。店員は終始笑顔で。
「はい。それではアワビの酒蒸し、松坂牛の炭火焼、世界3大珍味+日本3大珍
味の素敵丼を3つずつと、生中、枝豆ですね」
 爽やか〜に言い放ってくれた。由貴は泣きそうだったが、異論は無さそうだっ
た。ちょっと、スッとした。

「おーいしーい!!」
「…うん、美味しいね」
 物凄くがっくり来ている由貴を無視して、私は料理を食べる。お酒もどんどん
進む。ごはん奢ってくれた礼として、空気としてここに存在しないという認識で
相席している。
「ねえ、さくらちゃん」
「うわー、ナニコレ、すっごい美味しい」
 素敵丼は、絶妙なまでの味のハーモニーだった。美味しい。美味しいにも程が
ある。自分家で作ろうと思っても食材に手が出ないから、正にここでしか味わえ
ない。
「…さくらちゃん」
「うめー!松坂牛、半端なくうめぇー!!底知れねぇー!!」
 由貴は、尚も私を呼ぶ。悪いけど、返事は絶対しない。絶対、呼び掛けには答
えない。絶対に。
「さくらちゃんってば…」
「あ、すいません。芋焼酎お願いします」
「かしこまりました」
 笑顔で対応してくれる店員。既に何杯目かわからない。
 それでも、由貴はしぶとく私を呼び続けていた。
7一徳編:後 4/36 :04/06/19 20:33 ID:685b1zZd


「おなか一杯…」
 はぁ、と頼んだ物を全部2皿と半分ずつくらい残して、私はカルピスサワーを
飲む。おなか、はちきれそうです。
「…そりゃそうだろうね」
「あー、死にそう」
 その残りを、死にそうな顔で食べている由貴。
「あれ?おかしいなぁ、誰もいないのに勝手にお皿の料理が減ってる」
「…勘弁してよ…ねぇ、話だけでも聞いてくれないかなぁ」
 由貴は、本気で頼み込んで来る。けど、私は絶対に視線を合わせない。陰険だ
って、酷い人間だって、そう思われても構わない。そうなった理由の何割かは、確実にこいつにあるから。

 観念したのか、由貴は溜息をついて、下を向いた。そして、聞いているかどう
かの確認もせずに、勝手に喋って来た。

「…あのさ、俺、振られたんだ」
 その声は、今にも泣きそうだった。ふーん、ともへぇー、とも言ってやらない。
その対応でももういいと判断したのか、由貴はそれでも喋る。
「俺、会社で好きな人がいたんだ。それで、付き合ってて、で、今日喧嘩して…
そしたら、本当は俺の事、好きじゃなかったんだって。友達がいて、そいつの事
が好きだったんだって。でも、友達は別に好きな人がいるから、仕方無いから俺
と付き合ってやってたって…」
 心の中で、へぇー、と思う。どこかで聞いたような話。どこかで見たような表
情。由貴は、明らかに傷付いていた。
8一徳編:後 5/36 :04/06/19 20:33 ID:685b1zZd

「…そう言われて、ああ、これは自業自得だって思った。俺はあいつを責める事
なんか出来ない。そんな資格は無いって思った。君にした事、殆どそのままの事
が、自分に跳ね返って来たからね」
 自然消滅ってか、無視し出して、そのまま終わったから、あっちにしたらばれ
たかー、ちっ、くらいにしか思ってないだろうなと思ってたけどな。
「それで、よく考えたら、君にろくにあやまりもしなかった事に気付いて、気が
付いたらさくらちゃんの家に行ってた。そしたら、いないんだもんなぁ…」
 苦笑いする。まぁ、実家は出てるけどね。その事…ついでに桜花ちゃんと同居
してる事も知らないか。どうでもいいけど。

「…本当に、ごめん。悪いって思ってる」
 私は、応えない。視線を合わせずに、ただ酒を飲む。
 謝ったからってどうなるってんだ。要は自分がスッキリしたいだけだろ?そう
やって謝って、こっちが同情してやりゃ、気分良くなって、それでもって明日か
らは私の事なんか忘れるんだ。
 …私は、7年経った今でも―――

「さく、え、え!?さくらちゃん!?」
 視界がぼやける。気持ち悪い。物凄く、眠い。
「ちょっ、え!?えええっ!?さくらちゃん、どんだけ飲んだの!?」
「えーと、お客様はカルアミルク2杯、カルピスサワー3杯、芋焼酎2杯、当店
特製マムシ酒1杯、シラネケン5杯です」
「飲み過ぎだ――――――!!」
 …絶叫する由貴とは対極に、終始笑顔の店員は、どこまでも爽やかなまでに冷
静だった。
9一徳編:後 6/36 :04/06/19 20:34 ID:685b1zZd

 その頃、俺はたった一人の人を守れるだけの力が、欲しかった。

「……」
「……」
「……」
 何も、言えなかった。
 転校してから暫く経ったけど、友達が出来ない。そりゃ当然だろう、全然喋ら
ないのだから。喋れない訳でもない。ただ、何故か言葉が出ないだけだ。楽しく
話そうという気が無いから、何を言ったらいいのやら。
 だから、こんな時もそうだった。
 何か言わないと、この人、確か…あの人の弟さんだった。えっと、えっと、名
前は…あれ、えっと、岸部さん家の次男だから…

「シローさん?」
「…お前、この状況で言いたい事はそれだけか?」

 3人くらいの…多分シローさんの同級生に囲まれて泥だらけになってるシロー
さんは、至って冷静に突っ込んでくれた。
「別に、それだけって訳でも無いですけど…えいっ」
「っわぁああっっ!?」
 俺は、掌大の石を思い切り、囲んでいる人に投げ付ける。すんでの所で、避け
た。俺は、もう少し大きめの…あ、いいいものあった。
「どわああああああああああああっっ!?」
「ちょっ…こいつヤバイぞ!?」
 すぐ側にあったものを手に取り、振り向いたら、囲んでいる人達は逃げていた。
10一徳編:後 7/36 :04/06/19 20:34 ID:685b1zZd
「…大丈夫ですか?」
「お前、本気でヤバイな」
 若干蒼褪めながら、シローさんは言った。
「とにかく、その物騒なもん…放せ」
 俺の持つ錆びた鉄パイプを凝視しながら、溜息をついた。

「…大丈夫ですか?」
 ごとん、と鉄パイプを放り捨てて、座り込んでいるシローさんに手を差し伸べ
る。が、ぺちん、と手で弾かれる。
「なんだよ、同情でもしてんのか?言っとくけどな、誰にも言うなよ。特に、家
の馬鹿には…っお!?」
 寸前で、掌で受け止められる。馬鹿、と言うのが誰を指しているのかすぐわか
ったから。
 …不愉快だった。初めて会った時から、自分の兄を見下しているこの人が。自
分だって弱いくせに、あんな必死な人を蔑むこの人に、正直腹が立った。
「なっ…なんだお前!?もしかしてただ暴れたいだけなのか!?」
「……」
 俺は、その人を放って帰る事にした。怪我をしていたみたいだけど、知らない。
こんな人、死ねばいいんだ。あいつみたいに。
「…言われなくても、誰にも言いません。話題に出したくもありません。そうで
すね、もし言ったら全財産あげるって約束してもいいですよ」
 腹立ちついでにちょっとしたイヤミを。まんまと乗ったのか、シローさんは。
「っんだと!?お前…いくらだよ全財産!!」
「600円です」
 ちょっとの、沈黙。ていうか、気になるのそっちなんだ。そして、絶叫。
「スケールのちっさい話だなぁああああぁあああああっっ!!」
11一徳編:後 8/36 :04/06/19 20:35 ID:685b1zZd

 守りたい人がいた。
 けれど、俺には力が無い。何も出来ない。ただ、守られるしかない。
 …そして、守りたい人を守ってくれる人間が、現れてしまった。その人は、大
人だった。俺よりも、守りたい人よりも大きくて、ちょっと…なんていうか、ア
レだけど、絶対に、大切にしてくれる人。
 劣等感に苛まれた。
 そりゃ、俺はまだ子供だから。歳だって、やっと二桁になった程度だから。
 けれど、俺は、俺があの人を―――お母さんを守りたかった。それなのに。
 その人は、俺の事も守ろうとしてくれてる。大切に、優しくしてくれる。俺は、
そんな人に対して、悔しくて、無視する事しか出来ない。自分が情けなくて、ち
っちゃくて、大嫌いだ。
 その人みたいになりたいのに。大切な人を守りたいのに。思う理想とは、どん
どん掛け離れて行くだけの自分が、そこにいた。


「…ねぇ、大ちゃん!」
「?」
 お母さんは、帰って来るなり血相を変えて俺の所に来た。
「ねぇ、今聞いたんだけど、彰ちゃんの弟の孝一くんがまだ帰って来てないんだ
って!大ちゃん知らない!?」
 …孝一?
 俺は考える。誰だろうか、孝一って。
 頭を捻る俺を見て、お母さんは苦笑する。
「そのレベルの認知度なのね…いいわ。お母さん、探すの手伝って来るから、お
留守番お願いね」
12一徳編:後 9/36 :04/06/19 20:35 ID:685b1zZd
 そう言って、お母さんは行ってしまった。
 俺は中断していたゲームを始める。ちら、と時計を見ると…7時近い。外も暗
い。近所の人が、行方不明なのか。そういえば、彰ちゃんって…
 俺は、なんか引っ掛かる。彰ちゃんって、言ってた。誰だっけ、彰ちゃん…彰
ちゃん…あ。

『始めまして、大輔くん。俺の名前は岸部彰一っていうんだ』

 でもって、その彰ちゃんの弟…シローさん。孝一っていうのか。で、まだ帰っ
て来ない。そういえば、さっき座ったままだった。
「…もしかして、立てなかった…?」
 俺は、慌ててセーブしてリセットボタンを押しながら電源を消す。そしてその
まま走った。



 いた。
 暗い中で、その人は…泣いてた。
 俺より年上の(と言ってもひとつだけど)6年生の男子が、暗い中で、さっき
と同じ格好で、ランドセルを抱き締めて、泣いていた。
「…みんな、探してましたよ」
「っのぇ!?」
 シローさんは、驚いてこっちを見る。
「いっ…言ったのか!?」
「いいえ、言っていません。ていうか、孝一君を探してるって言われて、後から
考えたら、ああ、孝一君ってシローさんかって思い出して、来ました」
13一徳編:後 10/36 :04/06/19 20:36 ID:685b1zZd
 …なんだろう、やっぱ悲しいのかな。それとも、俺が来た事への安堵感かな?
シローさんは物凄く顔が引き攣っていた。
「歩けないんですよね。おぶって行きますよ。あ、ランドセルは背負って下さい
ね」
 そう言うと、俺は背中を差し出す。が。
「どうしたんですか?この体勢意外と辛いんですよ」
「…お前、馬鹿にしてんのか」
「してませんよ、さ、早く」
 本当に馬鹿になんてしてないから、即答する。シローさんもこのままでいるの
は良くないと思ったのか、割合素直におんぶ状態になってくれる。
 俺は背の小さい方で、シローさんは大きい方+ランドセルだからちょっときつ
いけど…まぁ、頑張ろう。


「やっぱ、馬鹿にしてるだろ」
「…くどいですね。俺はしてないって言ってるじゃないですか」
「だって、俺、さっき…」
 ああ、泣いていた事だろうか。
「だって、酷い事されてたじゃないですか。動けなくなっていたじゃないですか。
シローさんスカした人ですから、クラスに友達も味方もいないの丸わかりですし。
そんな状況だったら誰だって泣きますよ」
「…うわぁああーん…」
 何故か、素直に泣いてくれた。
 でも、素直になる事っていい事だと思う。俺も、そうなりたい。あれだけスカ
していたのに、シローさんって凄いと思う。
 ―――決めた。
14一徳編:後 11/36 :04/06/19 20:37 ID:685b1zZd
「シローさん」
「っ…だ…だんだよ…」
 鼻声で、返事をする。
「俺、シローさんを守ったげます。俺はスカしたシローさんは死ね!って思いま
すけど、今のシローさんは好きですから」

 ―――誰でもいいから。

 自分より弱い人を、守って見せたかった。
 それは、一種の…ていうか、そのままか。単なる自己満足だった。
 守りたい。ヒーローになりたい。泣いている人を守ってあげたい。その為なら、
俺は―――



「…で、なんでこんな事をしたんだ」
「言えません」
 同じ遣り取りを、もう何度しただろう。
 夕日が差し込む職員室。呼び出されたのは、もう何時間も前。その間、何度同
じ事を言われ、言って来ただろうか。

 シローさんを守ると決めてから数日。一向に改善しない、クラスの人達のシロ
ーさんへの仕打ち。俺は、手始めにボスらしき人のランドセルに、紙袋を忍ばせ
た。ゴキブリで一杯の、紙袋を。
 当然、疑いはシローさんにかかってしまった。糾弾されるシローさん。俺は、
責任を取って、自分が犯人である事を告げた。
15一徳編:後 12/36 :04/06/19 20:37 ID:685b1zZd

 …でもって、これだ。
 ていうか、シローさんが虐められてて何もして来なかったのに、この先生はな
んで俺を責めるんだろう。なんで、一方的に俺だけが?とはいうものの、俺は何
故こんな事をしたか、の理由を言っていない。だって、シローさんとの約束だか
ら。

「なぁ、水沢。先生は怒っているんじゃないんだ。ただ、なんであんな事をした
のか言ってくれないと…」
「ですから、言えません」
 かち、と時計の長針が動く。5時になった。

「っ…すいません、あの、水っ沢大輔の、ほっごほ、保護者代理の者ですが」
「え?」
 思い切り咽ながら、何故か、あの人が入って来た。俺は予想外の人物の出現で
思考が一時停止した。ていうか、俺の保護者って事は…
「っ、アンタ、俺のお母さんと結婚したの!?」
「えっ…え、えええ!?いや、まだ、え!?ていうか嫌なの!?」
「ていうかお前、まだ諦めてなかったのか!?」
 三者三様の叫び。
「うっ…うるさいなぁ先輩!いいじゃん!!俺の将来の夢、意外と実現しそうで
しょ!?」
「将来の夢が『とも子さんの旦那になる』だったな!!好きなら名前を全て漢字
で書いてやれよ!!すげぇ婆さんのイメージになるぞ!!」
 …なんだろう、この戦い。俺はもんの凄―――くレベルの低い罵りあいを暫し
凝視していた。視線に気付いたのか、先生は気を取り直して咳をひとつ。
16一徳編:後 13/36 :04/06/19 20:38 ID:685b1zZd
「まぁ、実現するかしないかはともかく、お前…まぁ、捕まらなかったのか…忙
しいらしいからな。未来の父親って事で…まぁ、腕の見せ所だぞ」
「…先輩、わざと嫌な言い方してない?」
「うるせぇよ、こまっしゃくれたクソガキ共の相手に疲れたんだよ。言っとくけ
ど、俺は明後日からずっとやりたかった母方の実家の養豚業やるからな。知るか
知るか。教師なんかクソだクソ。豚に塗れる素晴らしい毎日に戻るんだ」
 言いながら、先生は机に突っ伏してしまった。
 …辛い事、一杯あったんだなぁ。

 俯いたままぶつぶつ愚痴ってる先生は置いといて、彰一さんは俺をじっとみつ
める。初めて会った時から変わらない、物凄く真剣な眼。大人の男の人の眼。
「…聞いたよ、大体の事は、孝一から」
 俺と目線を合わせて、そう言った。
「言ったんですか、シローさん」
「シ…あ、あー。シローさんね。じゃあ俺は一徳さんになるのかな?」
「そうですね。で、言っちゃったんですか」
 ギャグを思い切り流した事にちょっと不満だったのか、苦笑する一徳さん。が、
そこは大人の男の人。すぐに持ち直して立ち上がる。
「ここじゃなんだから、どっか行こうか。先輩、この子連れて帰りますよ」
「おー、帰れ帰れ。とっとと連れて帰れ」
 ぱたぱた手を振る先生。一徳さんは俺の手を引いて、職員室を出た。

「…気ぃ悪くしないでね。あの人も色々あるんだ」
「はい…人生って色々ありますよね」
 子供の癖に、つい知ったような事を言ってしまった俺に、一徳さんは笑ってく
れた。
17一徳編:後 14/36 :04/06/19 20:38 ID:685b1zZd
「大人っぽいね、大輔くんは。羨ましいよ」
 …それは、無理してるからそう見えるだけで、俺に取っては、一徳さんの方が
羨ましい。早く、大人になりたいのに。
 何も言えない。
 てういか、知ってるんだから、別にもういいと思うんだけど。俺は謝る気は一
切無い。自分のやった事は悪い事かもしれないけど、それでも。
「はい」
 近くのお店で、一徳さんはおしるこドリンクと粒入りコーンポタージュを買う。
そのチョイスになんだか泣きそうになりながら、俺はおしるこドリンクをいただ
いた。
 …甘い。頗る甘い。
 それを飲みながら、一徳さんはじーっと俺をみつめて来た。
 言われる。
 きっと、何か言われる。俺は、色々な事を覚悟しながら視線を返す。

「…どういう気持ちで、君はああいう事したの?」
 あれ?
 なんか、今までとは若干意味合いの違う質問が来る。似てるようで、なんか違
う。俺はなんだかしっくり来ない気持ちで一徳さんを見る。
「それって、どういう…」
 あくまで、普通に。一徳さんは、同じ大人に問うような表情で、言った。
「そのままだよ。君はそれをやった時、どういう気分だった?」
 怒ってる訳でも、悲しんでる訳でもない。本当に、質問していた。逆に、なん
かすっと答えられた。
「正直、気分が晴れました」
 それを聞いて、一徳さんは少し苦い表情になる。
18一徳編:後 15/36 :04/06/19 20:39 ID:685b1zZd
「じゃあ、君はそれを続ける気?」
「誰かが、シローさんを傷付ける限りは」
 守るって決めたから。
「…他に、解決方法は無いの?」
「だって、あの人達はシローさんに酷い事をするから」
 守りたい人が傷付けられたら、それはやっぱり。
 堂々と答える俺に、一徳さんは溜息をついた。
「それじゃあ、同道巡りになっちゃわない?」
「なりません」
 きっぱり言い切った。
 

 
 ―――その当時は、俺は自分が一番正しいと信じていたから。
 お母さんを、誰かを、誰でもいいから、誰かを守りたかったから。
 今は…今だってどうなんだろう。
 ただ、泣きそうだったから。絶叫してるのに、凄く悲しそうに見えて、ちっさ
い身体が、もっとちっさく見えて、だから、俺は…

「…ん」
「あ」
 ほわよん、と何か凄く柔らかくて軽くて大きいものが掛けられる。その比類な
き柔らかさを持った何かの感触がこれまたなんて言えばいいかわからなくて、起
きてしまった。
「…これ、何ですか」
「知らない」
19一徳編:後 16/36 :04/06/19 20:40 ID:685b1zZd
 苦笑いをして、その物体を俺から取る…
「…俺、貴方の事、どう呼べばいいんですか」
 その人は、もこもことその物体(正直、掛布なのか敷布なのかの判別も付かな
い)を畳みながら、俺を見る。
 何も喋らない。
 馬鹿みたいに、お互いをみつめ合う。その内、耐えれなくなったのか、その人
は眼を逸らし、唇を震わせて、明らかな挙動不審人物と化した。
 たっぷりと間を置いて、そして、物凄く小さな声で、その人は。

「…出来れば、お父さんって」
「お父さん」
「あ、嫌なら、パピィでもダディでも…」
「…お父さん」
「あの、あ、やっぱ、いつも通りで…」
 …テンパリ過ぎて、お父さんはどうやら俺の声が聞こえていないみたいだ。

「あの、だから、あの…」
「そういえば、二ノ宮先生って元気ですか?」
 不意に、夢に出てきた、顔を合わせた時間は少ないけどインパクトは最上級の
先生の事を思い出す。
「え?え、あ、あー…先輩なら、元気だよ。今は二ノ宮さんでなくて松浦さんだ
けど…毎日豚に塗れて…こないだ、豚肉お裾分け来たでしょ、アレ、先輩の…」
 どうでもいい事を聞きながら、夢の内容をどんどん思い出してしまう。もしか
して、この人…あ、そういえば訂正なんてしてなかった。
「…お父さん、もしかして、未だに俺がお母さんと結婚するの嫌がってると勘違
いしてるんですか?」
20一徳編:後 17/36 :04/06/19 20:41 ID:685b1zZd

 …その瞬間、お父さんの表情が変わる。
 この人、本当に馬鹿なんだなぁ、と何度も思った事を、また思う。

 あの日、俺の『お父さん』みたいな存在は、前のお父さんから、この人になっ
たのに。
 お父さんは、大切な事をわかりやすく教えてくれた。
 俺がした事が問題じゃあない事。それを平気で、出来るっていう考えの事。人
を敵か味方でしか判別出来ない事の怖さ。
 …俺が、お母さんやシローさんを大切に思うように、シローさんを苛めてた人
だって、他の誰かにしたら、俺にとってのお母さんと同じなんだって事。
 もし、お母さんが、俺がした事を他の誰かにされたら。
 想像しただけで、凄く嫌だ。物凄く、悲しい。
 俺がそう思う事を、俺自身がやらかしてしまった。そしてその事に気付かず、
またやらかそうとしていた。そんな俺を、軌道修正してくれた。
 嬉しかった。それなのに、俺はそれを何ひとつこの人に伝えていなかった。
 一番言わなきゃいけない事だったのに、何年も。ずっと、この人は、俺のたっ
た一度の『アンタ、俺のお母さんと結婚したの!?』って言葉に脅えてたのかと
思うと…
「あっ…あの、大輔…」
「なんですか、お父さん」
 さっきから、気付いているだろうか。そりゃ、気付いてるだろうけど。
 お父さんは、どうしたらいいかわからないといった顔のまま近付いてくる。俺
も、別段逃げようとは思わない。きっと、抱き締められるんだろう。そう思った
その瞬間。
 ―――とても陽気な着メロが、鳴り響いた。
21一徳編:後 18/36 :04/06/19 20:42 ID:685b1zZd

「出るの!?」
 どこかで聞いたようなツッコミ。まぁ、滅多に掛かって来ない人だし、今は味
方にしたい人だし。
 俺は、桜花さんからの電話に出ると、畏まって返事をした。

『こんばんは。突然のお電話、すいません』
「いえ、いいんです。て言いますか、桜花さんが俺に電話を掛けるって、さくら
さん関連以外無いでしょうし」
 …正直、俺と桜花さんの関係って物凄くドライだ。多分、お互いにちょっと嫉
妬心みたいなものがあるからだとは思うけど。まぁ、今はどうでもいい。
「どうしたんですか?何か…また、行方不明になったとか?」
 俺の言葉を聞いて、お父さんがあっ、という顔をする。え?何?なにか知って
るの?聞こうとしたけど、それより早く。
『いえ、もうすぐ家に帰って来ます』
 と、あっけない返事。一瞬何か大変な事が起こったかと思った。俺は溜息をつ
いて胸を撫で下ろす。が。
『私、今からちょっと出掛けるんです。それで、さくらちゃんなんですけれど』
「今から出掛けるって…」
 そんな、さくらさんじゃあるまいし桜花さんがこんな時間にって…て、まさか。
「ちょっと、桜花さんってばぁ、もう、やっだぁ」
 物凄い気の利かせように、俺は思わず笑みが零れる。が、気のせいだろうか、
桜花さんが…ここからでは表情のわからない桜花さんが、なんか、鼻で笑ったよ
うな気がした。

『男の人と、一緒に帰って来るんですよ』
22一徳編:後 19/36 :04/06/19 20:42 ID:685b1zZd
「はぁ!?」
「えええっっ!?」
 突然大声を出した俺に驚いて声を上げたお父さんを睨むと、すいません、と手
を合わせる。そのままそれは放って置いて、桜花さんを問い詰める。
「ちょっ、どっ、どういう、え!?」
『私達の親戚の方が、居酒屋で潰れてしまったさくらちゃんを発見して、お家ま
で送り届けてくれるそうです。最後に見たのは数年前でしたが、かっこいい方で
すよ』
 …桜花さんって、こういう人だっけ?
 俺はちょっと悪意を感じて、舌打ちする。
「それで、俺にどうしろと言うんですか」
『いいえ、ご自由にしてください。私は、明日まで近所の漫画喫茶にでもいます
から』
 なんだろうか。物凄く冷たい声。桜花さんは少し間を置いて。
『…私、自分がここまで嫌な人間だなんて知りませんでした』
 そう、吐き捨てるように呟いて、電話を切った。そして、俺も切り。
「あ、あの、大輔、俺…」
「すいません。話は後でお願いします。お父さん…えっと、あ、もういいや、い
いです。結婚でもなんでもOK牧場です。そんな事より俺、行かなきゃいけない
用があるので、行きます」
「そんな事って…え!?ちょっと、ちょっとぉおおお!!いいの!?」
 半分困惑、半分嬉しいといった顔。お母さんののんきな『行ってらっしゃい』
の声に送られ、俺は家を出る。
 …今日からは大手を振ってお母さんを守って下さい。俺は、俺の大切な人の所
に行って来ます。
 行った所で100%死ぬ訳ないのに、そんな事を思った。
23一徳編:後 20/36 :04/06/19 20:43 ID:685b1zZd


「う…」
 なんか、誰かにおんぶされてる。なんだろう、うう、気持ち悪い。飲み過ぎた
し食い過ぎた。
「気が付いた?」
 優しく、でもって呆れたように呟く誰か。
 誰だろ…大輔、かな。
「ぉう―――…」
「まだ寝てるみたいだね。いいよ、もうすぐ家だから」
 …そっか。あ、なるほど。来てくれたんか。あんなに会いたくないって言った
のに、あんなに罵倒したのに、あんなに攻撃したのに。

 大輔は、いつだって来るなって言うのに来る。
 ホントは、それが嬉しい。いや、人それぞれだろうけど、私は、嬉しい。うざ
ってぇって思うけど、でも、心のどっかで来て欲しいって思う時に限って…大輔
は。いつだって、大輔は…私の事。
 じわ、と涙が浮かんで来る。
 今日、誕生日だったのに。
 ケーキだって、料理だって、プレゼントだって用意してた。
 わざとじゃないって、事故みたいなもんだって、やっぱり心のどっかで理解し
てるのに、物凄くイライラして、それで。
 でも、それでも、大輔は…

「…ごめん…私、やっぱり、好きなの」
 酒が入ってなきゃ、こんな事、言わなかったと思う。
24一徳編:後 21/36 :04/06/19 20:43 ID:685b1zZd
 ぴた、と大輔は止まる。息を飲むような音。私は、続ける。お話させていただ
きます。
「誰が悪いかって言えば、そっちだと思う…けど、私だって、何にも話を聞かな
いで、ただそっちを責めてばっかで、でも、それでも…私は」
「…さくらちゃん」
 なんか、一瞬違和感を感じる。けど、いいや。どうとでも呼べ。私は大輔から
降りて、背中に抱き付く。なんでこいつスーツ着てるんだろうなんて、一瞬思っ
たけど…まぁいいや。
「好き」
 浮気したっていい。たまには羽目外すのもいい。ただ、やるな。合体はよせ。
私はそこまで心が広くないんだ。やったとしても、黙っとけ。私が、抑え切れな
くなるから。
 …きっと、大輔はもうそんな事しない。今回の事で一番傷付いているのは、多
分大輔だから。きっと、私よりも―――
「好きなの…今まで、ごめん。本当に」
 きゅ、と大輔の身体に回した手を、大輔は握ってくれる。
「…俺だって、本当はずっと後悔してた。いなくなってから君が一番大切だって
事に気付いた。けど、でも、ごめんっ、俺は、俺は…」
 ずき、と胸が痛んだ。
 ―――もう、駄目なの?
 そう思った正にその時だった。

「へ?」
「…え?」 
 ぎゅきぎぎぎぎぎぎぎぎょっ、というような音。でもって、どげん、という音。
私は大輔の背中に顔を埋めていたから、それが何かは、見えなかった。
25一徳編:後 22/36 :04/06/19 20:44 ID:685b1zZd
「ちょ、え!?だっ、大丈夫ですかぁっ!?」
 慌てて大輔は音がした方向に向かう。あー、なるほど、事故か。自転車でスピ
ード出し過ぎて、で、人がいて、慌ててブレーキ掛けて、避けて、衝突と。大輔
がよくやりそうな事故…
「…大輔?」
「さくらさん、おっはー…」
「…古い」
 あれ?
 私は頭が混乱する。あれ?今そこで事故っておっはーやってるのが大輔で、私
が今までこっぱずかしい事口走って抱き付いてたのは…
「さくらちゃん、あの、この人知り合…」
「ええええええええええええええええええええええ…」
 私は、絶望感丸出しの顔で言う。
 つまり、私は…酔っ払って由貴を大輔と間違えて恥ずかしい事ぶっぱなしてい
たのか…うわあああああああああああああああ。
 大輔は地べたにねっ転がった状態のまま大分冷静に。
「あ、俺は浮気して三行半突き付けられたけど未練たっぷりの元恋人です」
「…そ、そうですか」
 そう言いながら、由貴は真っ赤になって私と大輔を見る。あーあ、あーあ、誤
解してる。私はがしがし頭を掻く。ていうか、これって千載一遇のチャンスじゃ
ね?今なら、色んな事が一気に解決するような気がする。だから、言う事にする。
 私は大輔に近付くと、しゃがむ。苦笑いをしてみせると、大輔も笑う。
「久しぶりですね、さくらさん」
「…そうだね。もう半日も会ってなかったね…ってバカ」
 ノリツッコミ大成功。私は大輔の頭を撫でる。言葉は、慎重に選ぶ。吹っ飛ん
だ眼鏡を掛けてやると、大輔はちょっと困ったような顔になった。
26一徳編:後 23/36 :04/06/19 20:45 ID:685b1zZd
「あのさ、大輔」
「あの、さくらさん」
 同時に喋ってしまう。あまりにぴったりで、お互い吹き出してしまう。
「…大輔どうぞ」
「ありがとうございます。あの、さくらさん、俺はやっぱりまだ貴方が好きです。
なんでもするんで、俺の事見捨てないで下さいお願いします」
 …うわー。
 痛いわ、大輔さん、その愛は。でも、嬉しい。物凄く、なかんずく、あにはか
らんや嬉しい。私はにんまり顔になってしまう。
「その顔、気持ち悪いですよ、俺は好きですけど」
「人に天国と地獄一気に味わわせるの、やめて」
 ぺし、と大輔を叩いた。ほったらかしの由貴は、私らを見て、凄く困ってる。

 こいつの事嫌い。
 正直、どうしていいかわかんないくらい嫌い。だけど、いつまでも引き摺って
るのも…なぁ。大分金使わせたし、ヤな事あったみたいだし、ここで、すっぱり
切った方が…お互いいいのかな。
「…あの、由貴さん」
「なに」
 困ったような笑顔。
 あ、変わってない。私が好きって言う度にしてた顔。後戻り出来なくなって、
困って、流されるままになってた時の顔。
「さっき言った事、酔っ払ってコレに言ったもんだと思ってただけだから。私は、
アンタが大嫌いで、もう会いたくも無いから」
 わざと、すっげぇ嫌な感じで言う。
「…あ、そう…まぁ、そう、だよねぇ」
27一徳編:後 24/36 :04/06/19 20:45 ID:685b1zZd
 微妙だ。物凄く微妙だ。残念なのか喜んでるのか戸惑ってるのかパニくってる
のか、どうとでも言える顔。
 大輔は、何も言わない。立ち上がって服に付いた汚れを払う。自転車を起き上
がらせて、固定する。その間私と由貴は見合ったままだ。
「…でも、本当にごめん。俺がした事は消えないってわかってる。でも…」
「くどいよ…もういい。アンタも謝ってスッキリしたでしょ。それでいいじゃん」
「っ、よくなんか、ない…俺は」
 私は、後ずさる。これ以上、聞きたくない。
 それでいいんだと思う。多分、お互いこういう偶然の重なりでも無きゃ、普段
は思い出しもしない古傷なんだから。ただ、思い出したら胸が痛い程度の。
 だから、これでいいんだ。会った事で、お互い少し踏ん切りは付いた筈だ。こ
れ以上は、もう…嫌だ。
「…大輔、行こ」
 私は大輔の手を掴んで、歩こうとする。ちょい足取りふら付くけど、気にしな
い。大輔は私と由貴を見て、黙って付いて来た。由貴も、追っては来なかった。

 ―――さいなら。
 私は泣きそうになりながら、心の中で呟いた。振り返る事は、無かった。



 そのまま歩いて、家まで辿り着く。大輔は自転車を引っ張りながら、私の横を
歩く。そして今更。
「俺、いていいんですか?」
「黙れ」
 私は一刀両断した。大輔も、黙った。
28一徳編:後 25/36 :04/06/19 20:46 ID:685b1zZd

 大輔は、駐輪場に自転車を止める。そして、私の方に一直線に歩いて来る。ど
うするかは、なんとなくわかってた。で、やっぱり。
「……」
 すっげぇ力で抱き締められた。
 ていうか、馬鹿じゃねぇの、別れて半日くらいしか経ってないじゃんか。それ
なのに、なんでこんなんになるんだ、こいつは。こんな根性も性格も悪い女なん
かの為に。
「さくらさん」
 抱き締めたまま、呼ぶ。私も、背中に手を回す。これで、わかって貰えただろ
うか。よく考えなくても、大輔には何も言っていない。一回恥ずかしい事言っち
ゃったから、もう言いたくないんだけど…
「あの人、もしかして―――あ、あの、やっぱいいです」
 聞こうとして、すぐに首を横に振る。ああ、そういやこいつに話したっけな。
何気なく話したつもりが、最期には泣いてたな。あーみっともな。
「うん、そう。偶然会って、飲み過ぎて、ああなっちゃった。ていうか、なんで
大輔来たの?」
「あ、あー…あの、愛の力という訳じゃないんです。あの、桜花さんが教えてく
れたんです。あの人、多分桜花さんに家の場所を聞いたんだと思います」
 ちょっとしどろもどろになりながら説明してくれる。桜花ちゃんめ、やってく
れたな。今度すっげぇ半端ねぇチーズオムレツ作るから。
「あ、じゃあ、桜花ちゃん今、あの、家に…」
「…近所の漫喫に朝まで避難するそうです」
 にやー、とすげぇ笑みを浮かべて、大輔はいきなりキスして来た。
「あの、怒ってませんか?」
 別に、怒ってないけど…そう質問するくらいならすんなよ。
29一徳編:後 26/36 :04/06/19 20:46 ID:685b1zZd
「怒って、ない…あの、むしろお前が私に怒ってない?私、随分とえらい事した
気がするけど」
「いいんです。俺が悪かったんですから。それに、これから随分とエロイ事した
いと思ってますし」
 大分質の悪い冗談だ。けど、大輔はこうでないとなぁ。うん、好きだよ。すっ
げぇ好きなんだよ。だから、あんなに許せなかったんだよ。
「…しても、いいけど」
「マジっすか!?やったぁあ!!」
 いや、喜び過ぎ喜び過ぎ。私は夜という事もあって、大輔の口を押さえる。
「いいけど、あの、出来れば、私以外とはもう…しないで欲しい。あの、大輔の
事縛りたい訳じゃないの。あの、コンパ行っても、多少羽目外してもいいの。け
ど、私…うわ、痛いなぁ。あの、他の女と大輔がしてるなんて、考えたくもない」
 あの、って何回言えば気が済むんだ。うわああ、なんだよ、スゲェ独占欲丸出
しじゃねぇか。いった、いったいわぁ。って。
「っ…」
 ぶにょ、と頬を両手で掴むような感じにされる。眼を閉じちゃったけど、恐る
恐る開いてみると…大輔が、笑ってる。ぶっさいくだわぁ。
「俺は、もう絶対同じ過ちは犯しません。貴方を悲しませるような事はしたくな
いです。あと、俺は別の意味で貴方を縛ってみたいとは思いまごっ!?」
 瞬時に意味を解して、私は攻撃する。この野郎、いい事言いながら同時に落と
そうとするな。
「ばぁーか、いいよ。私に合わせるな。どうにもこうにも私の気持ちって重たい
みたいだし…ごめんね、私…」
「いいですよ、安心して下さい。俺だって昔彼女に『アンタの愛はイタイ』『お前
の気持ちは重すぎる』って言われましたから。重い同士でいいカップルですよ」
 …あれ?なんだろう、すっげぇ救われないし、嬉しくないし、しっくり来ない。
30一徳編:後 27/36 :04/06/19 20:47 ID:685b1zZd
 微妙な気分になって大輔を見る。なんだよ、真面目くさった顔してこっちを見
るなよ。そう思っても、じーっとこっちを見たままだ。私は、眼を閉じる。
 それを合図に、大輔はまたキスをした。ほんの短いちっすだった。
「行きましょうか」
「…うん」
 私は自然に顔が熱くなるのを感じながら、頷いた。


 ざー、と火照った身体を冷やすようにちょっと冷た目のシャワーを浴びる。が、
何故かどんどん熱くなるばかりだ。馬鹿じゃなかろか、初めてでもないし、第一
大輔となんて…ついこないだもしたばっかだ。
 それなのに、なんで、あの、こんな恥ずかしいんだろう。
 それを悟られたくなくて、油断したらすぐ一緒に風呂に入ろうとする大輔を先
に風呂に入れた。それで、今に至る。

 付き合ってから、結構…大輔とした。若いし基本的にエロいし、色んなことさ
れた。それこそさっき言った『縛りたい』とか、冗談に聞こえない。別に、いい
けどさ。痛いとかそういうのでなきゃ。大輔がしたいんなら。
 そう思ってたくらいなのに、なんでまた今、恥ずかしいんだろう。念入りに身
体洗って、髪も洗って、ついでに泡で髪の毛をスネオヘアーにしてみたり。
 …あんまり延ばすのもなぁ、と観念する。本当は髪の毛で遊んでて、ふと鏡を
見て我に帰っただけだけど。泡も恥も洗い流して、風呂から出る。意を決してタ
オル1枚で部屋に向かった。
「…大輔、ごめん遅くなっ…」
「だぁーれだぁあっ!!」
 物凄く楽しそうに、後ろから乳を両手で掴まれた。
31一徳編:後 28/36 :04/06/19 20:48 ID:685b1zZd

「…大輔、ごめんなさいは」
「ごめんなさい」
 顔におもいっきり手形付けて、大輔は土下座する。私は溜息をつくと、土下座
した大輔を放置してベッドに向かう。タオルを取ると、裸で布団に包まった。
 大輔は土下座状態から顔を上げる。私は視線でおいで、と呼び掛ける。大輔は
服を着たまま潜り込んで来る。なんだか、初めて大輔とした時の事を思い出して
しまう。

「なんだか、初めての時みたいですね」
 眼鏡を外しながら、大輔は言った。なんだ、お前も一緒か。笑ってしまう。
「うん。そうだねぇ」
「あ、そうだ。前は事後確認でしたよね」
 ぽむ、と手を叩いて、大輔は頷く。私は意味がわからない。大輔は改めて私を
睨む。まぁ、眼悪いし。
「さくらさん、好きです。俺の恋人になって下さい」
「え…」
 一瞬戸惑う。ああ、あー、そっか、別れたもんな、一回。で、前はやってから
言われたし、だから…
「…………うん、私で、いいなら」
「さくらさんがいいです」
 真っ赤になる私に、畳み掛けるように大輔は言う。私は自分の顔を隠すように
頷く。大輔がそんな私を抱き締めた。
「じゃあ、あの…」
 私は大輔の服のボタンを外そうとする。こういうのも初めてじゃないんだけど、
緊張する。
32一徳編:後 29/36 :04/06/19 20:49 ID:685b1zZd
「さくらさん、至れり尽せりですねー」
「…うるさ…ぉわっ!?」
 座って向かい合ってるような格好だったけど、これまたイヤーな顔した大輔に
急に押し倒される。上から遠慮無く自分の裸見られるのって、凄く恥ずかしい。
いつまで経っても慣れない。
「さくらさん綺麗です」
「どうも…」
 ストレートにそう言う大輔にも、慣れない。正直、する事そのものよりも恥ず
かしいかもしれない。
 顔が近付いて来たから、キスされるかと思ったら、唇を舐められる。その感触
に驚く隙も無く、今度は本当にキスされる。
「…甘いですね」
「ごめん、昔懐かしイチゴ味の歯磨き粉使ったからかな」
 誘惑に負けて、イチゴ、メロンと色々買ってしまった。ちょっと、失敗したと
思った。
「いいですよ、ホント面白いですよねぇ、さくらさんは」
 笑って、また。舌が入って来て、私の舌に絡んで来る。そうやっていて、前に
言われた事を思い出す。私って舌が短いらしい。普通だと思ってたんだけど大輔
とこうやってしてると、確かに大分短いような気も、する。
 正直、長い事してるとボーっとして来て、そんな事どうでも良くなるんだけど。
 キスしながら身体の色々な所を、大輔が触って来るから、余計に何も考えられ
なくなる。大輔の手が脇腹を撫でたり、太腿を擦ったりする。前はくすぐったい
なと思ってただけなんだけど…最近は、なんだか感じるようになった気がする。
「ぶふっ…」
 背中を撫でられて、ぞく、となった。変な声、出そうになったけど、キスして
る最中だったから、変な音が出た。
33一徳編:後 30/36 :04/06/19 20:50 ID:685b1zZd
「あ…」
 不意に唇が離れる。唾液の糸を拭って、大輔が今度は頬に口付けて来る。すぐ
に離れたけど、息が耳に掛かって鳥肌が立った。
 大輔は簡単に私を起き上がらせると、後ろから抱くように座る。そして本当に
後ろから抱き締めて来た。
「え、なに、大輔…?わっ」
 大輔が、後ろから耳を咥える。びっくりしてしまうが、そのまま大輔が舌を這
わせる。何事かと思って振り向くと、大輔はやっぱり笑っていた。私のおなかに
回している手が、両方胸に行くかと思いきや、苦しいくらいに私を抱き締めて来
た。
「や…ん、大輔…あっ」
 人差し指が口の中に入って来る。どうしていいかわからずに、私はそれを自慢
の短い舌で舐める。反対の腕で、大輔は閉じていた私の脚を拡げる。恥ずかしか
ったけど、許してくれなかった。
「っん…」
 口の中に入ってる指と同じように、大輔は私の中に指を入れて来る。知らない
内にヌルヌルになっていて、いとも簡単に大輔の指を受け入れてしまう。ちゅっ、
と音を立てながら、大輔の指は私の中を行き来する。
「やっ……ん、んっ…やだっ」
 私の唾液で濡れた指を抜く。その指で、強く胸を揉まれる。痛いくらいだった
けど、気持ち良かった。指と指の間で乳首を挟まれると、余計に声が出てしまう。

「―――なんだか」
 溜息をつくように、大輔は言う。ボーっ大輔のやる事に見を預けてしまってい
る私には、なんだか遠くから聞こえるような感じだった。
「さくらさんが1人エッチしてるみたいですね」
34一徳編:後 31/36 :04/06/19 20:51 ID:685b1zZd
 ―――え?
 一瞬わからなかった。けど、抗議しようと思ったら、私の中に入っていた指が
抜かれ、濡れた指が敏感な部分に触れる。
「やぁっ!」
 もう片方の腕も、下に伸びる。弄りながら、また中に指が入る。慌てて自分の
手で抑えようとしたけど、遅かった。
「あっ、あっ…ん、やだ…やっ、大輔…」 
 中をかき回され、その度いやらしい音がして、大輔の指も、私の指も濡れて行
く。恥ずかしくて、気持ち良くて、私は大輔の手をただ掴むだけで、されるがま
まになっていた。
「さくらさん、嫌じゃないんですか」
 …わかってて、そういう事言うか貴様は。私は思い切り大輔の手の甲をつねっ
た。意外に、すぐ離れた。
「え…」
 中途半端に火を点けられた状態で、大輔は止めてしまった。楽しそうに指を舐
める音がする。顔は見えないけど、なんかわかる。きっと、むかつく表情をして
いるんだろう。
「…んっ」
 さっきみたいに、両手で胸を掴まれる。胸フェチの本領発揮か、実に楽しそう
に触る。けど、こっちは…あの、足りない。あそこが、あの、物足りなくて、疼
いてしまう。
「…大輔…あの、あの…」
「なんですか?」
 っ…言えるか―――っ!!大輔をぶっ殺したい衝動に駆られながら、私は胸の
手を触る。
「どうしたんです?」
35一徳編:後 32/36 :04/06/19 20:52 ID:685b1zZd
 その、実に楽しそうな声!!私は泣きそうになりながら呟く。
「…あの、胸とかも、いいけど、私…」
「あ、俺さくらさんの1人エッチ見たいです」
 …この男、私が言い終わらない内に、とんでもない事を言い出した。
「えっ、えっ、えぇっ!?」
 あまりの予想外な自体に、私は声を上げる。けど、大輔は。
「ほらぁ、お願いしますぅ。ね?中途半端でしょ、さくらさんも」
 私の手を、下半身に持って行く。ちょうど指が、感じる所に触れる。
「っ…」
 両方の乳首を、指で摘まれる。同時にまたあそこが疼く。私は泣きそうに…ど
ころか、もう泣きながらそこに触れた。
「あっ…ん、んっ」
 そうすれば、気持ち良くなる事なんかわかってた。けど、そんなの人前でする
なんて普通出来ない。でも、熱い部分に一旦触れてしまったら、止まらなくなる。
「んっ、ん…あっ…あんっ」
 ホントに1人でする時みたいに、中に指を入れる。さっき大輔がしてたよりも
激しく、指を動かす。その間、執拗に大輔は胸を愛撫して、首筋を舐め回す。
 
 …これは、本当に1人自家発電行為なんだろうか。そう思いつつ、私は1人で
達してしまった。身体を仰け反らせ、大輔に寄り掛かる。シーツに染みを作って、
私はお尻が冷たくなるのを感じた。
「あぅ…」
 ひょーい、と大輔が寄り掛かる私から離れる。バランスを崩して、足を広げた
まま仰向けになってしまう。恥ずかしい、とは何故かその時は思わなかった。
 ―――その時までは。
「えっ!?」
36一徳編:後 33/36 :04/06/19 20:52 ID:685b1zZd
 汗ばんだ太腿を掴まれ、大輔は私の身体を2つにするみたいに足を上げる。胸
に膝が押し当てられるような、窮屈な格好。イッたばっかで、まだヒクヒクしな
がら濡れてる所が、丸見えになる。
「いっ…嫌ぁ…」
 大分弱気な声が出てしまう。そりゃそうだ、あんま、こういう明るい明かりの
下で見れるようなもんじゃないし…
「あ…っ、ぁ、ああああっ…」
 無言で、大輔は私の中に入って来る。指よりも何倍も太いものが、眼の前で、
ゆっくりと私に突き刺さって行く。
 易々と私の身体はそれを受け入れて、それが、またゆっくりと引き抜かれて行
く。丸見えの状態から、私は眼が離せなくなっていた。
「やだ…ん、あっ…ああっ…感じ…んっ…」 
 引き抜かれたものは、私自身のでヌルヌルになっている。それが灯りのせいで
濡れて光っている。これ以上無いくらいやらしい光景。眼を背けたいくらいなの
に、それ以上に私は興奮している。
 もっと、して欲しい。そんなゆっくりでなくて、もっと。
「ああっ…だい…す、け…あんっ…あっ…」
 びくびくと腰が震える。眼の前が、霞む。また軽くイってしまったようで、中
のものをきゅーっ、と締め付けてしまう。大輔は楽しそうに笑うと、少し体勢を
変え、私の身体が楽になるような、普通の、あの、世間一般の形になる。少し乾
いた唇を、大輔はまた舐める。
「大輔…」
 私は、やっと真正面から顔を見れて、馬鹿みたいに安心してしまった。首に腕
を絡めて、抱き寄せる。大輔も私を強く抱き締める。
 そして、ひとつの決意を胸に、口付けた。
 ―――大輔、終わったら後でぶん殴るから。
37一徳編:後 34/36 :04/06/19 20:53 ID:685b1zZd


「…で、どういう事」
 さっきの手形が消えかかっているけど、反対の頬に新たな手形が付いている。
2人で布団に包まって、私は呟いた。
「だから、羽目外していいって言ったから…」
 鼻を啜りながら、大輔は言う。
「は?」
「だって、さくらさん言ったじゃないですか。多少羽目外してもいいって。です
から…」
 あ、あー。
 言われて、思い出す。そして。
「アレがちょっとなのか―――!?」
「ちょっとですよ!!ていうか足りないくらいですよ!さくらさんだって口では
嫌がってたって、下の口は物凄く悦んで―――」
「お前、本気で死ね!!!」
 とんでもない事を口走ってくれる大輔。私はもう一度殴ってくれようかと起き
上がる。が、それより先に、大輔が私を抱き締める。
「…本当に嫌なら、もうしません」
 そう、口ぶりでは本当に反省しているような感じで言う。
 …けど、あの、その、ホントは私だって、あの、凄く気持ち良かったし、でも、
凄く恥ずかしくて、それで―――

「さくらさんが、本当に嫌がる事はしたくありません。俺は、貴方を―――」
「…お前、ちょっと黙って」
 私は、うるさい大輔の口を、自分の口で塞いだ。
38一徳編:後 35/36 :04/06/19 20:54 ID:685b1zZd
「…さくらさん?」
「うるさい。ホントにうるさい。五月の蝿って書いて五月蝿い」
「さくらさん」
 私は、大輔の胸に頭をくっつける。何も言わず、何も言えず。大輔は私の頭を
撫でて、私を抱き締めた。

「俺は、ずっとお母さんの事守りたかったんです」
 …?話が読めない。私は訝しげな顔になってしまう。だって、唐突だから。
「ていうか、誰かを守れるような強い大人に早くなりたかったんです。ぶっちゃ
け、自己顕示欲を満たしてくれる相手なら、誰でも良かったんです」
 なんでだろう。
 そう自嘲的に呟く大輔は、なんだか悲しそうだった。
「でも、現実は駄目でした。俺はいつだって相手を悲しませる事しか出来ません」
 溜息。私は、やっぱりどう言っていいのかわからない。何が言いたいのかも。
「でも、これだけはわかります。今は、誰でもいい訳じゃないです。貴方を守り
たいんです。さくらさんでなきゃ、俺は駄目なんです」
 ―――ああ、物凄く前フリの長い告白か。私はくすぐったくなりながらも、笑
を堪えていた。
「…お前、何が言いたいの?」
「全部要約すると、さくらさんを愛してますって事になりますが」
 さらりと言い放つ。うーん、悲しいくらいシンプル。
「じゃ、それでいいよ。私も同じだよ。それじゃ駄目?」
「…いえ、物凄く嬉しいですよ」
 一瞬、なんか驚いたような顔をして、それから大輔が、なんかいつもの胡散臭
い笑みじゃなくて、ホントに子供みたいな笑顔になる。
 ―――不覚にも、ときめいてしまった私は…うん、馬鹿だな。
39一徳編:後 36/36 :04/06/19 20:56 ID:685b1zZd

「それで、どういう事ですか」
 私は、将○の寿司を片手に、絶対に孝一さんを見ずに話をする。どうやら孝一
さんは土下座をしているみたいですけど、知りません。
「…ですから、もう2度とあんな事はしません…」
「当然ですっ」
 …私は、心が狭いです。凄く嫌な女です。おまけに、私の大切なさくらちゃん
をあんなに傷付けた要因を作ったこの人も、大輔さんも簡単には許したくありま
せん。まぁ、さくらちゃんの気持ちは知っていますし、孝一さんに私の居場所を
教えてしまったお茶目な部分で、譲歩はしましたけど。
「……」
 光だけで、メールが来た事を告げる。私は携帯電話を見ると、大輔さんからで
した。どうやら上手く行った模様です。私はおめでとうメールを返信しました。
 ぱちん、と携帯を閉じると、泣きそうな顔で孝一さんが私を見ています。でも、
知りません。
「今の、誰から?」
「他人の貴方には関係ありません」
 つーん、と私はそっぽを向きます。あ、孝一さんが泣きました。
 …でも、許してあげません。全巻読み終えるまでは、絶対。
 私は、嫉妬深いんです。今日、知った事ですけど。物凄く、性格が悪いです。
嫌な、女です。腸が煮えくり返っています。
 多分、それだけ私が孝一さんの事を愛してるからでしょうけど。
「桜花さんごめんなさいぃぃぃぃ…」
 私は孝一さんの声を無視して、○太の寿司の続きを読み始めました。
 …この分なら、朝までに全巻読めますね…





40377:04/06/19 21:02 ID:685b1zZd
はい、もう一徳編といいますかなんといいますか…
終わりました。
待って下さった方、本当にお待たせしました。

またこのスレに合う話を作れたら、投下したいと思います。
長々とすいませんでした。
41377:04/06/19 21:12 ID:685b1zZd
それから書き忘れてしまいましたが、前スレで限界に気付かずに投下して、
中途半端にスレを終わらせてしまった事をお詫びします。
もう少し周りに眼を向けるべきだったと反省しています。

42名無しさん@ピンキー:04/06/19 21:19 ID:FwwDVMNB
乙です!リアルタイム来ました〜。すごくよかったです。次も待ってますノシ
43名無しさん@ピンキー:04/06/20 19:13 ID:lJ+yUNeE
新スレ告知上げ
44名無しさん@ピンキー:04/06/20 22:41 ID:YbaG5hMr
377さんスレ立て&新作乙でしたー!
45名無しさん@ピンキー:04/06/21 01:32 ID:vdd28LSP
遅ればせながら乙でした。

大 輔 桜 禿 萌 ! ! (えろー!)
46名無しさん@ピンキー:04/06/21 01:32 ID:HCOtc3uJ
>>377さん、スレ立て&新作乙乙乙です!!
やっぱさくら&大輔は萌える(*´Д`*)ハァハァ
これで終わりかと思うと読むのがもったいなくてたまらんかったですよw
次の作品も期待してます!!
47名無しさん@ピンキー:04/06/21 09:35 ID:qtxviVsa
新スレ&続きキテター!

なかなか新スレに気づかず、エロなしで放置プレイ?
と涙目になっていました。
なんかもー、あっちこっちに萌えと笑いのツボがあって、エロくて、
とにかく堪能させていただきました。
新作もできましたら、よろしくですー。
48名無しさん@ピンキー:04/06/24 00:59 ID:kGu7SxhG
えーーーーーーーーーーっ
これでおわりなんですか?!(涙目)
いや、話的にはちゃんとひとつながりだし大輔の性格がどうしてこうなった
のかとか伏線がきっちり締めてあるしあのその。でもね。
さくら&大輔素敵すぎです!!!

ほんとーに終わっちゃうの?終わっちゃうの?・・・と
しょーもないことをつぶやきつつ、新作待ちます。<をい
49名無しさん@ピンキー:04/06/24 01:39 ID:lAwQE3VX
さくら&大輔続編を書いて欲しい…ここにも1人!
50名無しさん@ピンキー:04/06/24 23:53 ID:Bh7hYdr2
2人!
51名無しさん@ピンキー:04/06/24 23:56 ID:qbp8E++G
3人目がいる
52名無しさん@ピンキー:04/06/25 01:02 ID:YYAvGJtp
ノシ
4人目
53名無しさん@ピンキー:04/06/25 03:26 ID:w71aFkPj
このシリーズがが好きって意味で5人目。
だけど、綺麗に終わっているから、作者さんが
ネタが浮かんだらと言う感じで、待ってます。

年上の好きな人も大好きなので、こちらも待ってます。
54名無しさん@ピンキー:04/06/25 04:46 ID:rjjGnC9M
ノシ
6人目。
漏れも、綺麗に終わってるので無理に続けて欲しいとは言いません。
新作も楽しみだし。
・・・が、もし少しでもネタが浮かんだりした時には是非オナガイシマスw
55名無しさん@ピンキー:04/06/25 06:15 ID:LeN6DzRm
47さんと同じく新スレに今まで気付かず、一気に読ませていただきました。
お笑い好きなので、さくら達のセリフの端々に反応しつつw

またいつか377さんの作品が読めることを期待しております。
56名無しさん@ピンキー:04/06/27 17:09 ID:VMAZjwig
あ〜ビックリした! 前スレの一徳編が途中でブッちぎられてるしいつの間にか落ちてるし。
今やっと新スレに気付いたよ。とりあえず377さま、お疲れさまでした。
自作&気が向いたら番外編を期待してます。
57裏方:04/07/05 09:08 ID:n2iXd4cf
pie.bbspink サーバーで新スレ立ち上がってて、
なおかつ、この(エロパロ)板はブラウザから見られるんですね〜
めでたい。age ちゃえ
あと、377 さん、もつかれ〜
58名無しさん@ピンキー:04/07/05 09:34 ID:IEDinQH1
962 名前:風と木の名無しさん 投稿日:04/07/04 08:11 ID:XmSSU4X8
しかし現実問題としては、ノーマルな男性に801を広めるのは困難と言わざるを得ません。
やはり小中学生の頭の柔らかいうちに、801を受け入れられるように活動するのが効果的だと思います。
若ければ若いほどスポンジに水がしみこむように、先入観や色眼鏡なしで801を吸収させられる。
大人になってからじゃ手遅れなんですね。気恥ずかしさで素直に受け止められないケースが多い。
現在でも学校で広報活動してらっしゃる腐女子の皆さんも、自己満足で終わること無く
使命感を持って「普及」「教育」していってほしいものですね。
なるべく幼い男の子が狙いめですよ。習う前に慣れろとは良く言ったものです。
彼らの好むマンガ、アニメのなどの多少過激かなって思われるエロチックな同人などを目につかせるのが良いです。
性の目覚めが801であれば最高ですね。以後は自ら801を求めるようになっていくはずです。
多少下品な表現になりますが、男の子に801でオナニーさせる事から始めましょう。
そうすれば、そのうちリアルで好きな男の子が出来ちゃったりするかも?
自分だけのリアル萌えで2倍おいしいです。
59名無しさん@ピンキー:04/07/05 23:34 ID:UYyXna2h
私からも337さん、もつかれ〜♪

また気が向いたら、SS書いて下さいねっ!(o^ー´)b

ん・・・・もいっかい読みなおそっ☆彡
60名無しさん@ピンキー:04/07/06 01:37 ID:1XhhXiO7
>>59 ID:UYyXna2hは、
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1088778953/200- で
わざわざ顔文字のような荒れる元を投下して面白がり、
あまつさえ、常態に戻そうとする住人を全て荒らしと見なして
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1088778953/222 のような
勝手な自治レスを投下する人間です。

詳細状況は
ttp://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1088960431/47- を
参照してください。
61名無しさん@ピンキー:04/07/06 01:38 ID:i/4nOzPV
>>59
すみません、いくらなんでも (o^ー´)b の類はやめていただけませんか?
62名無しさん@ピンキー:04/07/06 04:25 ID:6p3643mi
>>59
雰囲気嫁。
ただでさえ、2ちゃん全体で腐女子・顔文字叩きが横行してるのに。
63名無しさん@ピンキー:04/07/06 09:11 ID:112gnD18
文字通り腐ってるね、59。
64名無しさん@ピンキー:04/07/06 20:06 ID:41qwd01u
337さんの作品、素晴らしすぎ。
保管庫に行って全部読ませて頂きました。
テンポ・構成・キャラクター、全て超ハイレベル。
自分も一駄文書きですが、格の違いを思い知りました。
……今後とも期待しつつ、己の腕を磨きたく存じます。
65名無しさん@ピンキー:04/07/06 23:39 ID:qTIUhjn1
今までこのスレで>>59のようなふざけた文面の感想書いた奴いたっけ?
どこかで見た「ハァ〜〜〜〜〜イ!ハジメマシテ〜〜〜〜〜〜ェ!!」みたいだ。

それはそうとして337さん乙ですー。
66名無しさん@ピンキー:04/07/07 03:58 ID:r8ym4afK
>59は巣に帰れ。
67名無しさん@ピンキー:04/07/07 05:27 ID:RSiRyQJ5
ho
68名無しさん@ピンキー:04/07/07 14:23 ID:HdXufIgi
もうほんとスルーでヨロ。
作家様方の降臨お待ちしてます。
69名無しさん@ピンキー:04/07/07 19:40 ID:pTYyIoLS
70名無しさん@ピンキー:04/07/08 00:14 ID:Evq3TCTI
もう>>59なんて死んだってどうだっていいから
職人さん戻ってきて!!
71名無しさん@ピンキー:04/07/08 03:24 ID:1d8Y741s
職人様待ちsage
72377:04/07/10 23:34 ID:0dfQOXxW
投下します。
ちょっといつもと違った感じかもしれません。

保険医×科学教師です。
73白衣×白衣 1/25 :04/07/10 23:35 ID:0dfQOXxW

「…悪いけど、アンタ好みじゃないんだわ。寧ろ嫌いなタイプ。だから駄目。付
き合えません」
 そう言って、私―――品川綾の想い人はこれ以上無いって位の冷たさで私を拒
絶しました。わかっていました。私、自分が駄目だっての、理解していました。

 身長、176cm…
 普通の女としては聊か高過ぎるこの身長。小さい頃からこれのせいで苛められ
て来ました。別に太ってはいませんが、物凄く運動オンチです。お陰で色々な部
活に勧誘はされたものの、すぐに物凄く失望され、そのせいで必要以上に暗い性
格になりました。今では、こんなんなのに科学教師やっています。
 そんな私が、人生何度目かの恋をしました。
 去年この高校(男子校)に赴任して来た、保険医の桜井先生。歳は26歳、身
長は…169cmとやや小柄だけど、綺麗な顔をしたクールな人です。
 ずっと見ているだけでしたが、先日一念発起して告白して、2秒で撃墜。いい
んだ、大抵こんなんだったから…だから、今回の恋も、暫くすれば忘れる事が出
来る。
 大丈夫。きっと、大丈夫。

 ―――そう、思っていたんだけどなぁ。


「…最悪」
 割と、ショックは大きかったみたいだ。もう2日くらいマトモに寝れていない。
放課後、準備室でうとうとしていたら、あっという間に6時半。
 家に帰るの遅くなるなぁ、と溜息を付きながら帰り支度をした。
74白衣×白衣 2/25 :04/07/10 23:36 ID:0dfQOXxW

 薄暗い校舎の中、私は歩く。
 …私の人生、これでいいのかな。友達も少ないし、これはといった特技も無い。
何か、刺激的な事でも起きないかな…
 少々イタイ事を考えながら、私は職員用玄関に向かう。途中に保健室があるか
ら、毎朝、毎夕と胸が痛くなるんだけど…

 …ん?
 保健室の前を通り過ぎようとした瞬間、中から苦しそうな声が聞こえて来た。
あれ?この学校の七不思議、保健室関連あったっけ?
 幾ら考えても…
 ・中庭の向江学園(この学校)創設者、向江徹の胸像が夜中緑色の涙を流す
 ・音楽室で西暦末尾が6の年の6月6日、一斉に吹奏楽器が3cm浮かぶ
 ・家庭科室に何故かある牛体模型は実は本物の骨
 ・3年3組の教室の右から12列目上から4列目のロッカーは銀で出来てる
 ・この学校には地下室があり壁に『さぷらいずどゆう』と書かれている
 ・職員用トイレで怪死した音楽教師の霊が夜中『十七歳の地図』を歌う
 ・視聴覚室のモニター側の壁で逆立ちすると、必ず右足薬指を骨折する
 うん、保健室関連は無い。
 私は大分怖がりながら、こっそり保健室の扉を開けようとする…って、開いて
る。そろそろと、中に入ると、はっきり声が聞こえた。

『…日比谷先生…っ、好き…好きなの…』
 奥の、ベッドがある方から、そんな声が聞こえている。
 日比谷先生って…あの、音楽の、おっとり目の、どちらかというと可愛い感じ
の…ネックは喜三郎って名前くらいの音楽教師…
75白衣×白衣 3/25 :04/07/10 23:37 ID:0dfQOXxW
 ああ、恋をしているんだな、と思った。けど、解せない部分がただひとつ。
 聞こえて来る声は…どうしても聞き間違いが出来ない、男の人の声。桜井先生
の…声…
 私は、その時意識を失っていたのかもしれない。なにをしているのか、半ばわ
かっていた筈なのに。私は無意識に部屋とベッドの仕切りをしているカーテンを
しゃっ、と開いた。
 その瞬間、空気が凍る。
 ―――案の定。

 ベッドの上で、物凄く色っぽい表情で、1人で、あの、自分の、こう、あれ、
ナニを握り締め…

「っ…き」
「ちょ、さっ、叫ぶんじゃないわよっっ!!」
 そう言って、絶叫しようとする私の口を塞ぐ、女言葉の桜井先生。ていうか、
その手、今の今までナニを握り締めていたんじゃ……!?
「っ!?」
 でっかい私を、いとも簡単にベッドの上に組み伏せる。ていうか、出てる、出
てます、あの、その、いきり立ったうまい棒が!!
「…見たわね」
 いや、見られて困る位なら、しまって下さい!しまって下さい!!しまって下
さいってば!!!
「っ…っ…」
 口を塞がれて、簡単に、腕一本で動けなくされて、私は恐怖で完全に泣いてい
た。ていうか『怖い』って感情で泣く日が、24歳になった今になって来ようと
は思ってもいなかった。
76白衣×白衣 4/25 :04/07/10 23:37 ID:0dfQOXxW

「っ…ぐっ…ふ、ぶっ…」
 喋ろうとするけど、出来ない。本気で私を憎んでいるような眼の桜井先生が怖
くて、涙が止まらない。
 …殺されちゃうのかな。そんな事を、思った。終わってしまう。全部、私の人
生が、全部終わっちゃう…

「…悪かったわね」
 そう、あっさり諦めた瞬間、それ以上にあっさりと、桜井先生は私を解放した。
そして、いつのまにか萎えてた例のブツをしまう。
 …ていうか、ここまでで、わかった事実。
 桜井先生は、ホモで、オカマで、大分短気。私は、溜息を付く。この人の事、
1年見続けて何もわかっていなかったんだ…
「いえ、いいんです」
 私は、微妙に眼を逸らしながら涙を拭う。じっ、と桜井先生を見ると、それで
も、理解してしまった。私、まだこの人が好きなんだって。
「いい訳無いでしょ、アンタ、アタシの事誰かに言うんでしょ?放課後の保健室
でオカマが同僚オカズにして一発ぶっこ抜いてたって」
 …オカマの割に、言葉が汚い。
「え、いっ、いえ、あの、そんな事―――」
 一瞬、物凄く嫌な予感した。逃げろ、逃げろ。そんな声が、頭の中でした。し
かし時既に遅し。桜井先生は転がったままの私に再び覆い被さって来る。そして、
え、嘘!?
「どっ、どこからそんなの―――」
 桜井先生は、いきなりガムテープを取り出し、恐るべき速さで私の両手首をぐ
るぐる巻きにしてしまう。そして、最期に私の口にべった、と貼る。すると。
77白衣×白衣 5/25 :04/07/10 23:38 ID:0dfQOXxW
「…アンタがアタシの秘密を知った以上、アタシだってアンタが何も言えなくな
る事をすれば、いいのよ」
 くすくす笑いながら、桜井先生は私に近付く。
「っ、っ…!!」
 シャツと、セーターを一気に捲り上げられる。脱がされるかと思ったけど、身
体に比例した邪魔な乳が出る格好で、止められた。それからスカートも、腰まで
捲り上げられる。
「ぶっ、ふぶっ、っ―――!!」
「うっさいわね、黙らないともっと脱がすわよ」
 そう言うと、馬乗りになったまま、携帯電話を取り出した。まっ…まさか!?
撮影ですか!?
 そんな事、させる訳には行かない。私はぐるぐる巻きにされてるけど、なんと
か動かす事の出来る腕を使って、携帯電話を叩き落す。力の限り、開いた状態の
を叩き落としたから、やった!真っ二つ!!慌てる桜井先生の隙を突いて、私は
両手に渾身の力を込めて、股間を握り潰す。
 …うまい棒の方じゃなくて、付属物の方を。

「はぁ…」
 口のガムテープを剥ぐと、歯で手首のテープの端を噛んで解く。桜井先生は、
まぁ、暫く大丈夫だろう。股間を抑えて、ベッドの上で泣き崩れている。
「…大丈夫ですか?」
「うぅぅううぅぅうっせぇ…」
 あ、余裕が無い。カマ語じゃない。
 本気で痛いんだろうなぁ…でも、私にはどうする事も出来ないし。でも。
「そんなに痛いですか?」
「…聞くか」
78白衣×白衣 6/25 :04/07/10 23:38 ID:0dfQOXxW
 私を、泣きながら睨む。確かに、こうなるとわかっていてしたから…まぁ。
「擦ってあげましょうか?」
「…なによ、アンタ同情してんの?」
「いえ別に。こっちが同情して欲しい位です。あ、謝って下さいよ、それよりも」
 そう言うと、私は立ち上がり、真っ二つの携帯電話を拾い上げる。が、桜井先
生…いや、こんな奴に先生、なんて付ける必要は無いだろう。桜井は、私を睨ん
で来るばかりだ。
「へーぇ、そういう事出来るんですか。いいんですよ、今すぐにでも私、日比谷
先生に電話して、桜井先生にレイプされ掛けたって泣き付いても」
 ―――その瞬間、桜井の表情が一気に蒼褪める。
 私は、こんなに性格が悪かったろうか。
 私は、こんなに酷い事が出来ただろうか。
 色々な疑問が頭に浮かんだけど、私は考えないようにした。今はただ、かつて
好きだった―――ううん、きっと、今でも好きなこの人を、どうしたらいいんだ
ろうと考えながら、泥沼に落ちようとしている。
「っ…すっ…すいません、でしたっ」
「宜しいです」
 そう言うと、私は電話を取り出す。そして。
「っ、ちょ、アンタ、何を―――」
 私は、ベッドから離れる。電話を掛ける。桜井は、動けない。

「あ、もしもし…私だけど…」
 ちろ、と桜井を見る。あ、這い蹲りながら少しずつ移動して来る。私は更に逃
げる。そして、人生初めてかもしれない、泣き真似をする。
「っ…あの、っ…あの、実は」
「―――っ!!」
79白衣×白衣 7/25 :04/07/10 23:39 ID:0dfQOXxW
 桜井は、何とか立ち上がろうとする。けど、ダメージはかなり深いみたい。私
はもう少し引っ張って、そして落とす。
「ちょっと、生徒が起こした事故で、今日遅くなるの…うん、あ、大丈夫。ごは
んは家で食べるよ。じゃね、お母さん」
 ぷち。
 そう言って、私は電話を切った。数メートル先には、脱力して倒れている桜井。
私はくすくす笑って、桜井を抱き上げようとした。が、振り払われる。
「っ…何よ!アンタすっごい性格悪いわね!!アタシが今、どんな気持ちで…」
 …アタシが今、どんな気持ちで?
 加害者の癖に、そんな言葉を使った桜井に、私は何故か、物凄く腹が立った。
そして、やっと理由がわかった。

「―――え?」
 そんな、間の抜けた声を出したのは、桜井先生の方だった。
 私はがっくりと膝を付いて、また泣き始めてしまったのだ。
「え?え?え、ちょっ、アンタ―――」
 急に、おろおろし始める。そりゃそうだろう、形勢逆転してたのに、いきなり
泣き出すんだから。でも、やっと私は理解したんだ。

 ―――押し倒されて、拘束された時、私は人生最大の恐怖を味わっていたんだ。
 最大、というか、感じる許容量を完全に越えてしまっていたから、頭の中のど
こかが焼き切れて、逆に冷静になった振りして、私はおかしくなっていたんだ。
だから、あんなに淡々とどえらい事が出来たんだ。
 そんな事に今更気付いて、私は本気で怖くて、さっきの桜井先生みたいに泣き
咽ぶ事しか出来なくて。 
 …桜井先生も、どう扱っていいかわからずに、股間を押さえるしかなかった。
80白衣×白衣 8/25 :04/07/10 23:40 ID:0dfQOXxW


「…ちょっ…ねぇ、アンタなんなの?なんで…」
 暫く経っても、まだ泣いている私に、やっと復活出来た桜井先生は近寄る。私
に、触ろうと―――
「嫌ぁっ!!」
 怖くて、その手を払い除ける。ちょうど、さっき私がされたみたいに。が、桜
井先生は私みたいにムッとはしなかった。それどころか、物凄く傷付いたような
顔になる。そして―――

「っ…ごめん」
 本当に、謝られた。今度こそ、本当に私に悪い、と言う気持ちで謝ってくれた。
私は涙、鼻水でぐっちゃぐちゃの顔を上げる。桜井先生は、見た事も無いような
切ない表情で、私を見ていた。が、耐え切れなくなったのか、ティッシュを取り
出す。反射的に眼を閉じると、桜井先生は顔を拭ってくれた。

「もう、アタシの事なんて軽蔑したでしょ」
「…はい」
 軽蔑、もそうだけど、それよりもどっちかというと恐怖対象になってしまった。
 桜井先生は溜息をつきながら、三角座りをする。
「…言って、いいわよ。どうあっても、アタシがした事は許される事じゃない」
 そんな事言うなら、しなきゃ良かったのに。そう思いつつも、いきなりしおら
しくなってしまったこの人が、ちょっと可愛くて。さっきのだって、襲おうとし
たんじゃなくて、誰にも―――日比谷先生に知られたくなくて、短絡的思考でや
ってしまったと考えると―――…いや、そこまで好意的にというのは無理だ。
 それより大泣きしてちょっとスッキリして、ある別の事が気になりだしていた。
81白衣×白衣 9/25 :04/07/10 23:40 ID:0dfQOXxW

「…桜井先生はなんでオカマになったんですか?あと、日比谷先生を抱きたいん
ですか?抱かれたいんですか?」
 ―――絶句する。が、桜井先生は頭をがしがし掻きながら、応えてくれた。
「…アタシが好きな女が、別の女が好きで、だったらその女よりイイ女になって
やろうと思ったからよ」
「で、玉砕して男に走ったんですね。じゃ、抱かれたいんですか?」
 私の言葉の端々がむかつくのか、ちっ、と舌打ちしながら溜息。
「逆よ。抱きたいわよ。メチャクチャにしてやりたいわよ」
 そう言った。
「へぇ〜」
「アンタ、アタシに悪意しか無いわね?」
 頭をぎりりり、と掴まれる。もう、怖くは無かった。思い出したくは無いけど、
この人が怖い、というのは無くなった。
 暫くお互いに笑っていたが、桜井先生は急にはぁ、と溜息をついた。
「…でも、駄目なのよね。結局アタシは後一歩で足が止まるのよ。本気でアイツ
が好きなら、乳付けたりち○こちょん切ったりすれば良かったのに、頭のどっか
ではアイツを男として抱きたいって思ってたし、今だって、拒絶されるのが怖く
てこうやって誰もいない保健室でオナニーに勤しむ事しか出来ない」
「家で出来ないんですか?」
「…学校の方が乗るのよ。アンタだって気持ちが乗るのは大切だと思うでしょ?
どうせアタシをオカズにやった事…おぶふっ!?」
 私は、真っ赤になって桜井先生の口を塞いだ。ていうか、こんな事したら、し
てるってバレバレだ。私は本当に、この人の何を見ていたのだろうか。クールな
人だと思ってたのに、蓋を開ければコレ。なんだかなぁ…って。
「え…」
82白衣×白衣 10/25 :04/07/10 23:41 ID:0dfQOXxW
 不意に、桜井先生が…あの、私の胸を触った。あまりの事に、私は反応が出来
ない。
「あっ、あの…」
「…いいわね、アンタは」
 そう言うと、桜井先生は私を見ながら、穏やかに笑う。意味が、わかりません。
「アンタはアタシが欲しかった物、一杯持ってるもの。高い身長も、おっきいオ
ッパイも、優しい所も」
 くっ、と胸を触る力が強くなる。私はどうしていいかわからずに、眉を下げる
事しか出来ない。明らかに痴漢行為なのに、何故か、傷付いてるみたいな桜井先
生が凄く気になって。

「…悪かったわね、こっ酷くフッちゃって」
「あ…」
 言われて、さっくり撃墜してくれた時を思い出す。
「嫌いなタイプっての、嘘よ。アンタが、アタシが男としても女としても欲しか
ったもの、みんな持ってたから、腹立ったのよ。だから―――」
 だん、と床を叩く。私は、こんな時なのに、こんな状況なのに、こんな顔をさ
せているのに、私は―――

「私も、貴方に憧れてたんですよ…?」
 この人を、好きになってた。
 好きな理由は、前までと180度違うけど、でも、確かに。
 …この人を、好きになってた。だから、慰めたかった。そんな悲しい顔、させ
たくなかった。
「っ…品川、先生?」
 私は、胸を触ってる桜井先生の手を、握った。そして、もう一度、告白した。
83白衣×白衣 11/25 :04/07/10 23:42 ID:0dfQOXxW
「…桜井先生、好きです。好きになった理由は変わってしまいましたけど、好き
です」
 瞬間、桜井先生の顔が、真っ赤になった。そして、私の手を振り払うと座った
まま後ずさった。桜井先生の反応も、180度違っていた。
「え、え!?ちょ、え、嘘、え!?アンタ、え!?」
「いいんです。伝えたかっただけです。結果は聞きませんよ、わかっていますし。
けど」
 どっこいしょ、と座ったままの桜井先生の手を取り、立ち上がらせる。
「好きになってしまいました。前よりも、本当の貴方を知って、ずっと好きにな
ってしまいました。一度、軽蔑しました。恐怖対象にもなりました。でも、好き
になってしまいました」
 好きになってしまいましたと3回言った。私はにこー、と笑う。
 好き。一種、清々しさを感じる位、好き。だから。
「ですから、協力します。日比谷先生もどっちかと言えばそっち系ですから、あ
る程度行ってしまえば、行けるんじゃないですか?」
 そう言うと、物凄く驚いた顔をして、桜井先生は私を見る。が、その表情がど
んどん険しくなって行く。そして。
「痛っ!」
 ぐ、と胸倉を掴まれる。え、なんで!?
「っ…なんでよっ、なんでアンタ、そんな事言えるの!?アタシが好きなんでし
ょ!?なのに、なんでアンタはそんな…アタシの茨道けもの道みたいな恋応援し
ようとすんのよ!よく考えなさいよ、パンピーホモにするより、男の機能付いて
るオカマ振り向かせる方が簡単でしょ!?」
 一息に、物凄くキレながら言う。けど…
「え、でも、桜井先生は日比谷先生が好きなんでしょう…?」
「アンタはアタシが好きなんでしょう!?」
84白衣×白衣 12/25 :04/07/10 23:43 ID:0dfQOXxW
 一喝される。私ははい、と答える。そりゃ、ちょっと辛い。けど、こんなに馬
鹿で一途なこの人見ると、応援してあげたくなる。それだけの話なんですけど。
「でも、桜井先生は…」
「なにこの無限ループ!!アタシじゃないのよ!アンタなの。アンタはアンタの
好きな人がいるんでしょ!?手に入れたくない訳!?」
 なんでだろう。なんでこの人、こんなに怒ってるんだろう。私は、本気で不思
議でならない。まぁ、言いたい事はなんとなくわかるけど…これは多分考え方の
違いだと思うけど…どっちがいいとかじゃなくて。
「落ち着いて下さいよ…要は私と桜井先生では基本方針が違うんです。多分、桜
井先生は好きな人に好きな人がいても、諦めなかった。私は好きな人が好きな人
と結ばれる応援をしたくなった。それだけです。貴方が幸せになって欲しいだけ
なんです」
 言って、合わせなかった視線を合わせる。釈然としない顔。せめて、身長が逆
なら。私だって、一度は好きになった人を見上げてみたい。けど、それは叶わな
い願い。この人が私の方を振り向いて欲しいというのも…叶わない願い。
 諦めてばかりなのも悪くない。それが良い方向に向かう事だってある。それに、
応援したいのも私の意思だ。けど、どうも納得してもらえないようだ。顔が怖い
し。
「…アンタ、ほんっとにむかつくわ」
「え?」
 そして、紡がれたのは予想外の言葉。桜井先生は、溜息をついて私の肩を叩く。
当然痛い。
「なんでなのよ…なんで、アンタはそうなのよ。なんで、アタシがそうしたい事
を普通にやってのけんのよ…なんで、アンタは全部持ってんのよ…」
 …困る。そういう言い方、凄く困る。だって、私だってそういう友達いるもん。
何でもはっきり言えて、背が小さくて、明るい友達。羨ましいって思う。
85白衣×白衣 13/25 :04/07/10 23:44 ID:0dfQOXxW
 全部、欲しいって思う。けど、土台無理な話。私は私でしか行動できないし、
この地味顔で生きて行くしかない。そういうとこ、わかって欲しい。
「っ…!」
 私は、ぎゅっと桜井先生を抱き締める。
 本当は、私がそうされたいんだけど…無理だし、そういう気持ちで抱いた訳じ
ゃ無い。不安定なんだ、今のこの人。だから、こうした。
 わかってくれたのか、桜井先生は素直に泣いてくれた。私の胸の中で、可愛く、
子供っぽく、わんわん泣いてくれた。私は頭とか背中とかを撫でてあげる。そう
すると、また桜井先生は泣いてしまった。
「……んっ」
 不意に、泣きながらキスされた。ちょっとしょっぱい。え、ていうか、キス…
「え」
 私は、状況が把握出来ずに何度も瞬きをしてしまう。すると、桜井先生は鼻水
を袖で拭ってからまた。びっくりし過ぎて、されるがままになっている。その内、
触れるだけだったキスが、舌まで入って来て…
「っ、ちょ、さく…」
「うっさいわね、アンタ、アタシが好きなんでしょ!?女はねぇ、一番好きな男
より、一番愛してくれる男といた方が幸せになるのよ!!」
 そう言われて、一瞬考える。
「…桜井先生、女で無くてオカマで、私は男で無くて女です」
 物凄く抗議したくなって、突っ込んだ。が。
「せめて、オカマでなくて男って言いなさいよ!踏ん付けてやるわよ!!」
 そう、怒られた。とっても理不尽。そして、桜井先生は強引に私を抱き寄せる。
さっきとは逆。私が、望んでいた―――
「あ…」
 自覚してしまうと、耳まで熱くなって来る。あまりの急展開に付いて行けない。
86白衣×白衣 14/25 :04/07/10 23:44 ID:0dfQOXxW

「え、えっ!?あの、桜井先生…」
 さっきと同じ体勢。けど、さっきとは全然違う優しさで、私はベッドに押し倒
される。で、またキス。そのままぎゅっとされる。
「怖い?さっきの、思い出す?」
 言われて、さっきの事を思い出す。怖い…かもしれないけど、それよりも。
「…ドキドキ…します」
 胸を押さえる。なんだろう、なんで、こういう事するんだろうか?
「怖い、けど、でも…私、好き、ですから…好きな男の人にこんな事されて、ど
うしていいか…」
 別に、初めてじゃない。けど、こういう状況下は初めてだから、戸惑っている
のだろう。とにかく、不快じゃない事は確かだった。
「なにするんですか…」
「なにって、ナニよ。言っとくけど、アタシまだスッキリしてないんだからね」
 にやー、と完全に男の人の顔になってそんな事を言い放つ。
「えっ…ちょ、やだっ、やです、私、いくら好きでもそういう公衆トイレみたい
なのは、凄く嫌です…」
 またキスしようとする桜井先生の顔を掴んで、私は起き上がろうとする。けど。
「ちょっ、アンタ何て事言うのよ。いつアタシがアンタを肉便器にするなんて言
ったのよ。あのねぇ、さっき言ったじゃない。アタシの本命、たった今からアン
タなのよ。だから、あの、優しくするから抱かせなさいよ」
 …肉便器って単語に聊か興味を引かれながら、私はじっと桜井先生を見る。今
言われた事、全然前の言葉から読み取れなかったけど、それって―――
「あの、その言葉を世間一般の表現で言っていただけませんか?」
 言われて、桜井先生は真っ赤になる。そして、けして目線を合わそうとせず。
「…アンタが好きよ。アタシのものになって」
87白衣×白衣 15/25 :04/07/10 23:45 ID:0dfQOXxW
「…はい、喜んで」
 神レベルの切り替えの早さに心から感謝しながら、私は桜井先生を抱き締めた。


「桜井先生…恥ずかしい」
 辺りはすっかり暗くなって、月明かりが差し込んでいる。そんな中、私は保健
室ベッドの上で全裸で正座してる。なんでこんな事になったかと言うと…なんで
だろう。
 桜井先生、実は女の子抱いた事そんなに無いみたいで、だから、じっくり私の
身体が見たい、なんて言ったけど…恥ずかしい。正直、大きい訳だし。
「いいわよ、アタシはアンタの身体羨ましいんだから」
 そう言いながら、桜井先生は立ったままじーっ、と私を無遠慮に見る。恥ずか
しくて、じわ、と涙が浮かんで来る。
「桜井先生…」
「うっさいわね…アンタそういう顔すんじゃないわよ」
 そんな事言われても…そんな風に見られたら、こんな顔になってしまう。
「乳のでかさの割に乳首小っさいわね」
「っ…!」
 いきなり、右の乳首を摘まれる。私は素直に反応してしまい、顔をもっと赤く
してしまう。桜井先生は笑いながら私の身体を強く抱き締める。
「やっぱ、女の子の身体ってのもいいわー。やらかいやらかい。アンタ、いい身
体してるじゃなーい」
 …桜井先生は服着たままだから、余計恥ずかしい。でも、服の感触が何とも言
えない。あったかい…裸だと肌寒いし…
「桜井せんせ…」
「操でいいわよ」
88白衣×白衣 16/25 :04/07/10 23:46 ID:0dfQOXxW
 さらっ、と言ってくれる。じゃあ、私も…
「…私の事も、綾って呼んで下さい…操先生」
「何かが根本的に違ってる事に、早々に気が付いて欲しいわぁ」
 溜息を付きながら、言った。意味はちょっとわからない。
「操先生、私、あの…」
 そんな事より、もっと気になる事が。
 実は、さっきからなんだけど、私を抱き締める操先生の、あの、下半身…なん
だけど…あの、こうぐりぐり押し付けて来る感じで…あの、凄く困るんですけど。
「っの、あの、あっ、あの」
 言うより先に、操先生は私の手を握って、自分のを触らせて来る。
「溜まりっぱなしなのよねぇ。アンタ、責任取ってよ。もう少しで出せたのに」
 ちー、とズボンのファスナーを下ろす。変質者みたいな顔をして、操先生はご
自慢の波動砲を出す。間近で見るの、私も初めてなんだけど…
「ねぇ、アンタ乳どんだけあるの?」
 不躾な質問。私はちょっと苦い顔をしながらEです、と答える。あれ?という
顔をする操先生。
「あー、なんだ、そうなの。アタシ、Gカップくらいあるかと思ってたのに…は
ー、でもEでそんだけあるんだぁ」
 べたべたべたべた触って来る。変な気分になってしまうんですけど、あの、操
先生…
「ねぇ、綾」
「あっ、あ、はい!?」
 唐突に呼ばれて、慌ててしまう。感じてるの、バレないといいんだけど…
「アンタ、今物凄いエロい顔してるわよ」
「うぐっ…」
 …思い切りバレてました。
89白衣×白衣 17/25 :04/07/10 23:46 ID:0dfQOXxW
「そりゃそうよね、そういう風に触ってるんだもの。胸でかいと感じにくいって
聞くけど、まぁ、普通よねぇ。こんな固くしちゃって」
「やぁっ…!」
 今度は、舌で突付かれる。びっくりして、倒れこんでしまう。私に覆い被さっ
て、操先生は尚も私の胸に口を付ける。あったかい口の中で嘗め回される感触が、
気持ちいいのか悪いのか…そう思いながらボーっと押し付けられるような感触を
享受していると、不意に―――
「あ…」
 操先生が体勢を変えて、またさっきみたいに馬乗りになる。すると、私の胸を
両方掴んで寄せると…ぅえええええっっ!?
「ちょっ…いやっ…やですっ、いやぁっ…」
 操先生の唾液でヌルヌルになった胸に、あの、挟んで…あの、先、顔に当たる
んですけど…あの、舐めろって事…ですか?
「…ホモなのに、なんでこんなプレイ考え付くんです?」
 一生懸命、ちろちろ舐めながら普通に疑問に思った事を言う。
「うっさいわね、ちゃんとこういうのはメニューにあんのよ」
「だから…」
「…アンタ、だまんなさいよ」
 両手でつかまれた胸を、痛いくらいに揉まれる。あの、そういう事されると、
声は余計に出てしまうんですけど…それに、私…こんな事した事無いから、先の
方を舐めるしか出来ない…
「んっ…にが」
「良薬」
「違います」
 寒い事を言う前に、制する。私はとにかくこの現状をどうにかしたくて、こう
なったら、と聞いてみる事にした。
90白衣×白衣 18/25 :04/07/10 23:47 ID:0dfQOXxW
「…操先生」
「なに」
 楽しそうなお顔。でも、正直私は…苦しい。
「どうすれば終わります?」
「…やなの?」
 首をかしげる操先生。喜んでする女の方、いるんでしょうか。
「だって、私やり方わかりませんし、このまま延々やり続けなきゃいけないんで
すか?」
「へー、なによ、やり方わからな…」
 意地悪な笑顔で、途中まで言う。そして、途端に顔が蒼褪める。そして、カタ
カタ震えながら挟んだうまい棒を抜く。あー、ぬらぬらしてる。
「…あの、処女?」
 その質問には、首を横に振る。あ、安堵の溜息。
「なんで、怒らなかったのよ」
「…あまりの事で思考停止してたんです。初めてですよ、あんなの舐めるの」
 あんなの、という言葉に一瞬カチン、と来たようだけど、それよりも罪悪感の
方が強かったのだろうか。
 ちゅー、と吸われるようなキスをされた。それでもって、私を優しく抱き締め
る。ごめんね、と一言。
「ちゃんと聞けば良かったわね。なんか、雰囲気でなんでもアリみたいに思って」
「…なんでもって、なんですか?」
 その言葉に今度は私がカチン、と来たけど、一応我慢した。操先生は笑って。
「え?縛るのとか、叩くのとか、色んな道具とか、アナ…」
 ぱちーん、と叩いた。
「ちょっ…なにすんのよ!言っとくけど、アレだって慣れれば気持ちいいんだか
らね!?第一男と男ってどこでセックスすると―――」
91白衣×白衣 19/25 :04/07/10 23:47 ID:0dfQOXxW
「…私は女です。で、操先生は男の人です」
 ちょっと冷たく突っ込む。うぬぬ、と歯軋りする。でも、私が睨むと溜息をつ
いた。また頭を掻くと、気を取り直したように笑う。
「まぁ、この件に関してはアタシが悪かったわよ。ちょっとルール違反だったわ。
でもね」
「ひゃっ!?」
 私の股座に手を突っ込んでくる。そんな事して、どうするのかというと―――

「アンタだって、濡れてんじゃない」
 くすくす笑って、指を舐めた。
「…サイテーです」
 私は、顔を隠して呟いた。
「なによう、拗ねないでって。今度はアタシがしてあげるから」
「………………はい」
 何度も、色々な所にキスされる。その度、笑ってる眼が、なんだか本当に私を
好きでいてくれるみたいで、それだけで、なんとなく…許してしまう。惚れた弱
みって、恐ろしい。
「しかし、アンタ無意味に柔らかいわね」
 つー、と意味無く手首に舌を這わせて来る。反論したかったけど、鳥肌が立っ
て言えなかった。
「ほら、も少し脚開きなさいよ」
 …全体的に、この人はデリカシーに欠けてる部分があると思う。まぁ、この辺
は仕方無いだろうけど…
「恥ずかしいで…ひょえええっっ!!」
 ムードもへったくれもなく、がっぱり脚を開かされる。確かに、こういう遣り
取りあったって、最終的にする事は変わらないだろうけど…
92白衣×白衣 20/25 :04/07/10 23:48 ID:0dfQOXxW
「ちょっ…え!?」
 なんか、下半身が明るい。というか、光ってる。よく見てみると、将棋の駒み
たいな物を持ってる。それが光ってて―――
「なっ…なにしてるんですか!なんですかそれ!!」
 流石に切れそうになる私に、操先生は。
「見たいのよ!自分に無いモン、見たいのよ!!ついでにこれは新しい将棋の駒
よ。試合中は関係無いんだけど、夜家帰って鍵開ける時にボタンを押せば光って
鍵穴がわかりやすくなる、キーホルダーとかにすると最適!!」
「それは単なるキーホルダーじゃないですか!!」
 そう言いながら、奪おうとする。が、出来ない。逆に、両手首を、両手で掴ま
れる。
「…だから、見たいのよ。自分に無い、綺麗な身体が。欲しくて、羨ましかった
けど、見れば見る程手に入らないってわかるのよ…だから、その分愛しく感じる
のよ…今は。不思議よね、さっきまで憎たらしかったのに」
 笑った操先生の笑顔は、なんだかとても…男の人みたいだった。でも。
「それは操さんの言い分であって、私が納得する要素が何ひとつ無いんですけど」
 …操さんの表情が、一気に変わった。

「もうっ、アンタ、ホント腹経つわねぇえええっっ!!」
「えっ…え、きゃああっっ!?」
 おもいっきり押し倒されて、そのまま、一気に…操さんが入って来た。びっく
りして、仰け反ってしまう。痛みは感じなかったけど、とにかくびっくりした。
「やっ…みっ、みさ…っさぁ…」
 私の腰を掴んで、私の中を抉るみたいに抜き差しして来る。今は、快感という
よりも―――なんだか、自分の中に、男の人が入ってるっていう事実の方が大き
くて…そうなった経緯を考えると、急に身体が反応してしまう。
93白衣×白衣 21/25 :04/07/10 23:49 ID:0dfQOXxW
「…っ、操、さん…」
 私は、何故か両手で自分の頭の横ら辺のシーツを握り締める。
「…アンタの中…気持ちいい、わよ…」
 酷く意地悪く、言ってくれる。でも、さっきもそうだったけど、そうやって意
地悪くされると…
「アンタ、可愛いわねぇ…んな言葉に一々反応して。キム○クと身長同じなんで
しょ?それがねぇ…」
 そういう事を言われる度に、私は、操さんのを、自分でも恥ずかしいくらいに
締め付けてしまう。してる本人がわかっているんだから、されてる方だって…現
に、言われてるし…
「あっ…ん…んっ」
 必死に声を出すまいと、私は唇を噛む。けれど、操さんはとてもおかしそうに
私を犯す。わざと卑猥な音がするように、ギリギリまで抜いて、深く突き入れる。
奥を突かれる度に、私の抑えも効かなくなる。
「イイでしょ?アンタやっぱこういうの好きでしょ。中、グショグショに濡れて」
「あっ…やぁあっ…!あっ!?」
 急に、身体を抱き起こされる。正面から抱き締められる。正直、これ、好きじ
ゃない。私の方が大きいって思い知らされるから。わかってくれたのか、今度は
操さんが寝転がる。眼で、私に『キスしなさいよ』と訴えている。なんでアイコ
ンタクトまでカマ語なのかは考えないようにして、望み通りにキスをする。と。
「ふっ…!?」
 密着した体勢で、腰を掴まれる。そのまま、腰を使って私を突き上げるように
激しく攻め立てる。歯がぶつかったけど、そんなの、気にしなかった。夢中で、
操さんの唇を求め、もっと快感を貪るように腰をくねらす。
 静かな保健室に、激しい息遣いと、ベッドが軋む音と、淫らな水音が響く。
「ん、いたっ…」
94白衣×白衣 22/25 :04/07/10 23:49 ID:0dfQOXxW
 操さんが、下から私の胸を思い切り鷲掴みにする。指の間で、堅く尖った乳首
を挟み、上下に揺らす。少し痛かったけど、それが、自分の中で快感に変わって
行く。もっと痛くしても、構わないのに。

「ふふっ…アンタ、今だらしない顔してるわよ…」
 カマ語なのに、汗が流れる顔は、綺麗なのに、今はもう完全に男の人の顔にな
ってる操先生が、また言葉で私を苛める。私は汗を舐めた。全てがいとおしくて、
もっと滅茶苦茶にして欲しくなる。
 だらしない顔、してるんだろうな。そう思ったと同時に、つーっ、と涎が流れ
た。操さんはそれを拭うと、ぎゅっと抱き締めて、キスしてくれた。
 ―――同時に。
「イッちゃいなさいよ」
「っひ―――あぁああっ!?」
 感じて、膨らんだ一番感じる場所を、指で強く摘まれる。私は、引き攣ったよ
うな声を上げながら、自分の中の操さん自身を、締め上げる。同時に、操さん自
身ももっと大きくなったような気がした。完全に快感に自我を奪われて、倒れ込
みそうになる私を、操さんは仰向けにさせる。
 途切れそうな意識を辛うじて押し留めたのは、身体に掛かる熱いものだった。


「……」
「……」
 お互い無言で、校舎を出る。既に真っ暗で、月がとても綺麗だった。
「―――すいません」
 何故か、私は謝ってしまった。当然操さんは訳がわからず、怪訝そうな顔をし
ている。が、すぐに気を取り直して。
95白衣×白衣 23/25 :04/07/10 23:50 ID:0dfQOXxW
「意味わかんないわよ。アンタ」
 何故かそっぽを向いて、舌打ちした。
「行くわよ」
「あっ…」
 操さんは、私の手首を掴むと、一直線に歩き出した。あまりに早くて、私は付
いて行くのに精一杯だ。そして、あっという間に私の家に付いてしまう。別に、
操さんが道順を知っていた訳でなくて私がナビった訳ですが。
「ありがとうございます…」
 あまりに短い道のりに、ちょっと不満はあったけど―――
「うっさいわね、男が自分の女を送り届けるのは常識でしょ」
 はん、と鼻で笑うと、ちょっと陶酔した操さんは私を見る。そして。

「……真っ赤になってんじゃないわよ!!」
 叩かれました。けど、キスしてもらいました。



「……遅いなぁ」
 次の日は休日だったので2人で遊ぶ約束をしました。ボーリングをしてからご
はんを食べて、ボーリングをした後スコアが72以下ならもう1ゲームだそうで
す。その後スコアが90以下なら、私はどうやら操さんの要求に何でも答えなけ
ればいけないそうです。
 因みに、私の最高スコアは27です。それが先生方の親睦会の時で、操さんに
見られています。今日、私は何をされるんでしょうか。

「あ、操さ…」
96白衣×白衣 24/25 :04/07/10 23:51 ID:0dfQOXxW
 1時間半遅れたにも拘らず、操さんは偉そうにずんずん大股で歩いて来ます。
ちょっと可愛い髪形に可愛い服装。私、ぶっちぎりで負けています。
「…悪かったわね、遅れて」
 今にも死にそうな形相で、搾り出すような低い声で言いました。そして、昨夜
みたいにがっし、と腕を掴まれます。
「行くわよ」
 そのまま、ボーリング場とは逆方向に連れて行かれます。
「あ、あの、どこへ行くんですか」
「も少し奥まった路地にあるアダルトショップ!!!」
 ―――え?
 私は一瞬思考停止した。そして、すぐに我に帰る。
「ちょっ…私、まだスコア90以下じゃ…」
「うっさい!!悪いけど、今日明日とアタシん家に監禁だからね!!」
 私をズルズル引っ張って、本当に奥まった路地に行く。いや、理由がわからな
い。肉欲はわかるけど、その今の経緯が…
「みっ…操さ…」
「…今日、告られたのよ」
 既に、鼻声だ。ていうか、え?誰にですかい?まさか―――

「…物凄く可愛いアタシ好みの格好した日比谷先生にさっき呼ばれて校舎裏で告
られたのよ!!」
 ―――蒼褪める。という事は。
「ちょっ…操さん、という事は…」
「うっさいわね!わかんでしょ!?」
「さっき、という事は起きたの一体何時なんですか!?」
「聞くとこ、どっか違わないかしらぁああああああああああっっ!?」
97白衣×白衣 25/25 :04/07/10 23:52 ID:0dfQOXxW
 ヤケクソ気味に絶叫する。あ、そっか。
「操さん好みの格好って、どんな…」
「違うわあああああああああああああああああああっっ!!」
「あ、私捨てられ…」
「うっさい!!アンタは捨てないわよ!!ノンケの振りして優しく振ってやった
わよ!!アンタのせいだからね、アンタさえいなきゃ、アタシ幸せになれたんだ
からね!!」
 ずるずるずるずる、引っ張られる。
「じゃあ、別れます?」
 本気で泣いているから、なんだか可哀相で。
「…うるさい、アンタ黙んなさいよ」
「だって、今なら間に合いますよ?放課後独り寂しく自家発電するくらい好きだ
ったじゃないですか。ダッシュで行けば…」
「うるさい。お前黙っとけ」
 物凄―――く低い声で、言われました。ので、素直に黙った。ていうか、無理
する必要は無いと思うのに。
「…俺が今一番調教したいの、お前だから」
 ぽそ、と呟かれた。
 そして、お互い無言で歩き出す。

 ―――その言葉の意味は凄く嬉しいけど。
「その言葉自体は、なんだかとても嬉しくないです…」
 私は今日明日何をされるのか不安になりながら操さんに付いて行ったのだった。


                                                  終
98377:04/07/10 23:55 ID:0dfQOXxW
はい、こんな感じです。
タイトルの割に、2人共話の中で白衣は着ておりません。

少しこのスレから逸れたかな?という感じの
話になってしまいましたので、お気に召さなかったら
すいません。
99名無しさん@ピンキー:04/07/11 00:14 ID:IsEv1Tw6
ぬう
毛色が変わってちょっといいかんじ
100名無しさん@ピンキー:04/07/11 00:53 ID:DcZ0lL3A
うわ…タイプが違うと377さんの上手さを改めて実感するなぁ
とても楽しませていただきました。
相変わらずキャラ立ちがいいですね。
101名無しさん@ピンキー:04/07/11 01:44 ID:lVXy1+Vw
377さん乙です!
個人的には全くオッケーでです。
導入部、という感じで今後の二人の関係が激しく気になります…
102名無しさん@ピンキー:04/07/11 02:49 ID:7dMa9vHX
GJ!
377さんの小説大好きです。

>「せめて、オカマでなくて男って言いなさいよ!踏ん付けてやるわよ!!」
踏ん付けてやる、でピー○を連想してしまった俺レって・・・_| ̄|○
103名無しさん@そうだ選挙に行こう:04/07/11 08:34 ID:wEMCTMxA
377さん、グッジョブ!
うまい棒わらかしていただきました。波動砲にもw
2人の将来が気になります。
なんとなく私好みの予感がする日比谷先生の行方も気になったり……
104名無しさん@そうだ選挙に行こう:04/07/11 16:58 ID:TI+HJ7I8
「女の子でも……」というより、「女の子しか感じない……」というスレだな。
105名無しさん@そうだ選挙に行こう:04/07/11 19:05 ID:2998mdE3
377さん乙です!!(*´∀`*)
しかも相変わらず笑えるw
漏れも二人の今後が禿しく気になるッス ノシ
106名無しさん@そうだ選挙に行こう:04/07/11 20:13 ID:jfecoOiE
377氏新作乙です。

個人的な感想を言わせて貰いますと、カマキャラのせいかどっちが話してるのか
分かりにくくて会話文が読みにくかったです。「先生」という単語が多く出てくるせい
かも知れませんが。(自分だけかな?)
でも新しい方向に挑戦する氏の姿勢は素晴らしいと思います。
次作も楽しみにしてます。
107名無しさん@ピンキー:04/07/12 02:51 ID:wPPJg7c5
選挙には行ったのか?
108名無しさん@ピンキー:04/07/12 23:37 ID:USNOl++3
うっほー!
377氏ありがとうございます!
この手のものは実はあまり好きではないのですが、
今回は楽しく読ませてもらいましたw

次回作も楽しみにしてます(*´∀`*)
109名無しさん@ピンキー:04/07/14 02:10 ID:HbIC1b1f
110108:04/07/14 22:38 ID:mkZRnZoR
>>109
…違w
111名無しさん@ピンキー:04/07/15 00:05 ID:eHmHATLX
増えてるってことか…。
112名無しさん@ピンキー:04/07/15 11:16 ID:j+w524Kn
(*´∀`*) に反応したのかな?
↑は2chでよく使われるタイプの顔文字だと思うが。

ていうか、個人的にはどんな顔文字だろうといちいち
突っかかる方がウザイ。
私も顔文字多用してる文章は嫌いだけど、使う人の
好きずきだろうから見ても黙ってるよ。
スルーできない奴の方が厨だと思う。
一応言っておくと私は105とも108とも別人だからね。
113名無しさん@ピンキー:04/07/15 19:41 ID:VQ/Klvlj
【板名*】エロパロ
【スレ名*】おんなのこでも感じるえっちな小説6
【スレのURL*】http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1087643952/
【名前欄】
【メール欄】sage
【本文*】↓
>>112
ああ悪かったよ、>>59
114名無しさん@ピンキー:04/07/15 20:35 ID:lWcZj1tM
代行スレに依頼してまで煽らないと気がすまないのか。
すげー粘着だな。
そんなだから、アク禁くらうんだよ。
115名無しさん@ピンキー:04/07/15 20:54 ID:j+w524Kn
や、むしろここは笑うトコかもしれぬ。
体をはった笑いをありがとう!
116名無しさん@ピンキー:04/07/16 03:01 ID:zSMVDy5t
>>115
実際受け狙いかも。
念のため代行スレ検索してみたけど、それらしい書き込みはなんもなかった。
117名無しさん@ピンキー:04/07/19 16:22 ID:79LSgzMR
マンセー意見が続いてる中恐縮ですが・・・
377氏の作品、いつも楽しんで読ませてもらってるけど、
感じない・・・というかえっちな小説ではないような希ガス。
話はすごい面白いんだけど、肝心のえっち描写がいまいちなんだよね。
118名無しさん@ピンキー:04/07/20 00:56 ID:w9hWGhPT
確かにあっさり風味ではあるかも知れないけど私は好みだ
自分、どうもS癖寄りみたいなんで
女の子がいつまでもネチネチと言葉攻めされてるのは萎えてしまう
あーはいはいもういいよしつけーな、入れたら早いからか?塚、遅漏か?
とか思ってしまうもんだから

そんな私は大輔&さくら禿萌えヽ(゚∀゚ )ノ
口は悪いし乱暴者だけど実はすごい女の子らしいさくらが可愛いですな
超マイペースな大輔もカコイイ・・・ピンポイントですた
2回目のえっちの時の『大丈夫です、死にません』は名言だと思う
大輔一人称から見たさくらが禿げしく可愛かったので
大輔視点のさくらとのえっちの話が凄く読みたいなぁ・・・
377さんまた話が浮かんだ時は是非(*・∀・)タノミマスー
119名無しさん@ピンキー:04/07/20 18:26 ID:UgQZ2Oml
確かにH描写はややさっぱり目だね。

大輔視点で、乱暴で激しいHきぼんw
120名無しさん@ピンキー:04/07/21 00:47 ID:GVJ549iC
あえぎ声があっさりなのは好みだったりします。
あっさりしてても要所要所が濃く感じるから
私はちょうどいいなぁ…個人的感想ですが。

大輔視点だとエロエロになりそうですね。
でも大輔だから胸近辺の描写が多くなりそうw
121名無しさん@ピンキー:04/07/21 22:57 ID:UHBzjSag
・・・あーおっぱい浮かんでる、ですなw
さくらの体形については巨乳という以外は特に出てなかったように思うけど
小食ということで細そうだよね。それでEだからやっぱでかいよな
IとかJとか人外の領域に行かれるよりそれくらいが(・∀・)イイ !

一徳編後半の大輔の回想からの独白読んだら
大輔が何故唐突にさくらを好きになっちゃったか理由がちゃんとあって
何か嬉しいなーと思いますた(私の解釈が間違ってなければだが)
やっぱ最強カプルだと思いますよ
122名無しさん@ピンキー:04/07/21 23:38 ID:gUbe9Az+
大輔に何気に主導権握られるさくらさん萌えw

そういうシチュいいなあ。
123名無しさん@ピンキー:04/08/02 05:03 ID:MI/e4wQ4
ほしゅ?
124名無しさん@ピンキー:04/08/03 00:24 ID:QTHFP7in
女性からしたらこういう話どうなの?
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1089199625/l50#tag865

逆パターンのがいいのか?!
125名無しさん@ピンキー:04/08/03 01:42 ID:AQTVC9Vh
>>124
宣伝萌え厨=>>59失せろ
126名無しさん@ピンキー:04/08/03 03:06 ID:tj6/V99S
また・・・?

もういいよ。性転換だか何だか知らないけど二度と来ないで!!
127名無しさん@ピンキー:04/08/04 11:36 ID:/HOKucfz
住人が女のスレってなんでこんなにDQNが多いの?排他的ってゆーか、、、
いちいち顔文字の一つでそんなに荒れなくってもいいじゃん。何がそんなに気に入らないの?

オレ?オレ男だよ。空気読めなくてごめんな、ハハハ。
128名無しさん@ピンキー:04/08/05 02:12 ID:2P/bi5hc
宣伝は取り敢えず厨行為。
更に、一度騒がれた経歴があるというのは
この手の掲示板ならどこであっても致命的。

age厨では無くとも初心者に近いヤシだというのは判る
129名無しさん@ピンキー:04/08/05 04:39 ID:p79A6oyd
はぁ。 だからいちいちそんな反応しなくっていいじゃん。
別に124も59も厨じゃないとは言ってない。
叩きすぎなんだよ。無視すりゃいーじゃん。解らないかなぁ?
130名無しさん@ピンキー:04/08/06 03:17 ID:He9kFFVC
TSの話題は荒れるからやめて欲しい。
131名無しさん@ピンキー:04/08/06 16:47 ID:hzMv9J9P
>>129
初心者以前にネットマナーというモンを知らなさそうだなコイツ
基本は「最大公約数の嫌がる事をしない」

ま、多数決は得てして不平等だがな。従え(w
132名無しさん@ピンキー:04/08/07 09:06 ID:dp28w8Eq
流れ読まずに顔文字を多用するようなガキが、なんで21禁板に来るのやら?
夏だから?
133名無しさん@ピンキー:04/08/07 12:21 ID:NPu0PbX8
>129
同意
この程度のことスルーしろや、アホらしい
134名無しさん@ピンキー:04/08/07 20:08 ID:1SindhNz
うん、怒ってるほうがどうかと思ったよ見てると…
135名無しさん@ピンキー:04/08/08 08:22 ID:DGBgHm8o
スルーしたいなら黙ってスルーしてればいいのに・・・何故反応するかね。
136名無しさん@ピンキー:04/08/08 09:02 ID:aawzQbbF
>>135
同意
スルーしろと訴えてる奴の方が必死に見えるな

案外みんな124だったりしてw
137名無しさん@ピンキー:04/08/08 10:49 ID:2eigibs6
どっちもどっち。
138名無しさん@ピンキー:04/08/15 05:29 ID:zqnlJpCG
ほしゅ
139名無しさん@ピンキー:04/08/16 11:51 ID:YhWPD8nZ
hxxp://f53.aaacafe.ne.jp/~noel/comike2004/index.html
(xx->tt)
ひまつぶしに裏方2度目のコミケ見学報告です。縮刷版からも行けます。
来年は貴女もいかがですか?
140名無しさん@ピンキー:04/08/17 11:50 ID:gM68nk+6
〜〜腐女子の特徴〜〜
・ 語尾に「でつ」「まつ」は必至。
・ 一人称に「漏れ」を使う。
・ 顔文字、半角仮名を多用。
  特に「。・゚・(ノД`)・゚・。 」などの泣きAA、
  「(´・ω・`)」「_| ̄|○」などの同情を誘うようなAAを好き好んで使う。
・ 「○○ドゾー(`・ω・´)つ旦」など差し入れAAを用いて馴れ合うのを好む。
・ 「○○なのは私(漏れ)だけ?」なんて感じの同意の求め方をする。
・ 「スマソ〜で逝ってくる」「LANケーブルで吊ってくる」などを良く使う。
  しかし「逝ってくる」と言いつつも、すぐに戻ってくる。
・ 「〜につきsage」などはsageればいいってもんではないことを理解できない。
・ 荒らしを無視できない。
  例)「あらあらまたですか。暇な人ですねえ。」
    「みんな、わかってると思うけど、>>○○はスルーですよ!(`・ω・´) 」
  構うから荒らされるんだぞと、10回注意しても直らない。
・ 「あっそ。ふ〜ん」などと余裕・無関心を装うが、内心イライラしてるのがまるわかり。
・ 好きなものは激しく庇い、嫌いなものはちょっとでも関係するものまで叩く。
  どちらも強く粘着する。
・ 語尾に「〜なんでしょ?」「〜ば?」などの威圧的な言葉を良く使う。
・ 「〜だが。」「〜知らんぞ」「〜じゃね?」と漫画のような男言葉(男キャラ言葉)を使う。
  でも内容は女くささでいっぱい。
・ もう廃れ気味の2ちゃん用語を嬉々として使う。
141名無しさん@ピンキー:04/08/17 11:52 ID:gM68nk+6
・ 叩きたいレス相手を「あなた」呼ばわりし、慇懃無礼でも気取る
・ レスアンカーに特徴がある。
   例)}}*、<<*
・ やたらスレの「空気」にこだわり、
  「あなた空気読めてませんよw」「空気嫁!」と他者を攻撃する。
  同時に、自分は空気が読めてる=自分はスレの主流であることを暗に主張する。
・ 「( ´∀`)σ)´Д`)」「(=゚ω゚)ノ」「(・∀・)人(・∀・)」などの馴れ合いに発展するAAが好き。
  それを何処でも構わず使い、うざがられるのが分からない。
・ 『ふじょし』を”腐”女子と書かず”婦”女子と書く
・ プライドの高さからか、自分達の間違いを認めれない。
・ 根拠もないのに、他スレ住人を荒らし扱い。
  自分達は正しい、間違いなんてないと思い込んでる。
・ 些細なことでも揚げ足をとる。優越感に浸るのが好き。
・ 持論に反論され、更に脊髄再反論を試みる時の第一声は 「モチツケ」
  自分達が一番落ち着いてない。
・ スレ違いを指摘されると、「じゃあ、あなたがネタを出したら?」
・ 自分に反論するものに名称を付けて、レッテルを貼りをし排除しようとする。
・ スレの趣旨から脱線しても全く気に止めない
・ 顔文字とひらがな炸裂、語尾が「〜ぎゃ」「〜きゃ」
・ 自分を棚にあげる。
・ 自演を決め付けるのも大好き。意見する相手はすべて自演扱いで必死 。
・ 煽りの時に、wを大量にいれるww
・ スレの決まりをものすごく大事にする。
・ レッテル貼りが十八番
  自分たちに気に入らない事を言うやつを排除しようと言う、排他的意識の表れ。
  最終的には、レッテル貼りから、ただの揚げ足取りになって相手を不快にさせる。
・ 何で文句を言われるのかの自覚がない。
142名無しさん@ピンキー:04/08/17 11:53 ID:gM68nk+6
 ・突然割って入ってきて意味もなく馴れ合いはじめる
 ・板違い、スレ違いな話で馴れ合う
 ・聞かれてもいないのに自分語りをし始める
 ・ことあるごとに必ず「マターリしようよ」的なことを連発する
 ・2ch語、AA多用の上、自分達の住んでいる板でしか通用しない用語を他板でもばらまく
 ・その板そのスレの空気に合わせようとせず、好みの流れでないと「殺伐としている」
  「荒れている」と文句を言う
 ・自作自演や自作自演決めつけをこよなく愛する
 ・スレの流れを心配した発言などに対し「なんか感じ悪い・・・」とレスをつける
  (男で「○○って感じ悪い・・・」なんて言う奴はいない)
 ・スレの意義より馴れ合いを優先する。文字通りスレを腐らせる
 ・すぐにヲチしたがる 
 ・コピペやURLは自分の意見を書き込まないで貼り付ける
 ・スレタイだけ読んで怒り、既にレスが500超えているのに唐突に>>1叩き
 ・たとえ正論であっても煽り口調で書かれていたら、煽り返さずにはいられない 
143名無しさん@ピンキー:04/08/17 11:54 ID:gM68nk+6
 ・「(ry」を多用
・すぐカップルというか、恋愛感情みたいなものに言及したがる(男女・ホモ共)
 ・ドラマや映画なら、すぐ俳優の話に移行する(そのときの呼び名は「中の人」)
 ・発言を煽られたり馬鹿にされたりすると言いたいことグチグチ言って捨て台詞に
 「もうこのスレにはこないので、私にレスしても無駄です」などと付け加える
 ・「男だって」「どうせキモオタが」と、何か一言言わないと気がすまない
 ・自分の事を批判されるとすぐに感情的になって根拠も無く批判返し
 「お前が厨だ」「あなたの方が何々だ」
 ・内容ではなく「〜なんだあー。へぇー」など言葉尻で嫌味っぽさを表す
 ・言葉遣いの間違いとか言葉尻をとらえて本題以外のことでしつこく相手を叩いたり煽ったりする
 ・すぐケンカ腰になるか、すぐスレタイと異なる馴れ合いを繰り広げる
 ・馴れ合いの巣窟と化して人が居なくなると、最近書き込み少ないなどとのたまう
 ・女が叩かれてるようなレスの直後に自分は男だということを強調
 ・スルーすると、「この話題してもOKなんだ」とか勘違いし出す
 ・絶対に負けを認めず、最後に自分が捨て台詞を吐いてから話を終わらせないと気が済まない
 ・その板によって違う雰囲気を鑑みず、オノレの常駐板の空気が絶対であるかのように 
  ずかずかと土足で踏み込みスレを腐らせる
 ・空気も過去ログも読まないでわめき散らす
 ・スレの題材をけなされたり、批判されたりすると煽りっぽいものにも黙っていられなかったり 
  結構まっとうなものでも「スルー汁」とまともに受けて立とうとしなかったり
  どっちにしろ半端に相手してしまう
 ・「おおむね同意」「禿げ上がるほど同意」
「>○○ あなたは私!?(*´∀`)人(´∀`*)ナカーマ!(以下延々と自分語り」
と人の意見にかぶさってくる
 ・でふ、まふ、しませう、〜だよママン、〜しる!、もにょるを使う
144名無しさん@ピンキー:04/08/18 00:54 ID:x2QvmWod
( ´,_ゝ`)プッ私怨でこんだけ貼れる執着振りはヲタ以外の何者でも無い
145名無しさん@ピンキー:04/08/18 20:31 ID:lMzsHM/S
同族嫌悪てやつでしょう
146名無しさん@ピンキー:04/08/24 01:48 ID:zZB7ZOwJ
あのー、職人さんじゃなくても書いてもいいんですかね?
女性向けってことはふまえて。
147名無しさん@ピンキー:04/08/24 09:32 ID:d/Y0rdAg
男と女は違う生き物なんだよ。
148名無しさん@ピンキー:04/08/24 23:46 ID:oX9QtBlE
何か読みたいシチュありませんか?
他スレに常駐してるけど、書いてみたくて…でもネタが…
もしかしたら他の職人さんも触発されて書かれるかもしれませんし。
149名無しさん@ピンキー:04/08/25 00:22 ID:hH/lerGI
>>148
>>146の人?
ネタくらい自分で考えたらいいんじゃ?
自分はこれを書きたいってものはないの?
自分が書きたい気持ちから出たものじゃないのに、無理に他人から
お題もらってまで書きたいっていうのがわかんないな。素直に疑問だ。


150名無しさん@ピンキー:04/08/25 01:04 ID:sVnEaCn2
>>146
ちょっとまった。
「女性向け」なのか?
おんなのこ「でも」感じる、じゃなかったのか?
151名無しさん@ピンキー:04/08/25 02:16 ID:KI3g8WDX
>>149
書きたいものが多すぎてっていうものが世の中にも存在しまして。
お題もらうと格段に書きやすくなるのも事実でして。
お題をもらってそれが凄く書きたくなるかもしれないこともあるわけでして。
お題をもらってまで書きたいのは、小説を書くのが好きだからでして。
お題に沿ったものを自己満全開で書き上げられた時はそれこそ恍惚でして。
疑問は解けましたかな?
152名無しさん@ピンキー:04/08/25 02:31 ID:TXCiIs+E
書きたいものと書きたいことの区別はつく?
つまり、書きたいことが自分で
見つけられていない状態なんでしょ。

それを疑問に思っているんだと思うよ。
153名無しさん@ピンキー:04/08/25 02:42 ID:KI3g8WDX
書きたいことが見つけられない。普通にある話だけど、それが疑問なのはちょっとした想像力の欠落
何かを書きたいけど、何を書いたらいいか分からない。新しいSS職人になりそうな人がいて、ネタを探してるなら、受け入れられないかもしれないけど提示してあげればいいのでは。
書きたいものと書きたいことは、一つの作品に凝縮される。書きたい物で、書きたい事をやる。
もう少しまったり気質で行ってもいいと思う。あくまで思うだけ。強制じゃないけど、ゆとりのあるスレには職人さんも来る。
こんなにトゲトゲした空気じゃ、誰も投下したくないよ。
なんて、俺が>>149にレスつけたのが始まりなんだけどね。
>148
自分、泣きたくなるほどの片思いに苦しんでる人を助けてあげる人の話が読みたいな
自分で書けって人が出てくるかもしれないけど、書くのと読むとでは、ちょっと違った楽しみがあったりする。
154名無しさん@ピンキー:04/08/25 03:06 ID:TXCiIs+E
書きたいことは、凄く書きたくなる衝動のこと。

それに書きたいものが多すぎて、困っているといっているみたいだけど。

だったら、まず自分でその題材から創作衝動を掻きたてられることを探し、
それを優先させたほうがよっぽどいいのではないのかな。
155名無しさん@ピンキー:04/08/25 03:16 ID:KI3g8WDX
無いかな、同時にいくつもインスピレーションがわいて、いくつものストーリーが頭の中で展開してくこと。
どれも書きたくて、どれも選べなくて、苦しむことってないかな
あるほうがおかしいなら、迷って決められないのがダメなことなら、さて、困ってしまうな
156名無しさん@ピンキー:04/08/25 03:34 ID:KE0kZUHW
だから同時進行で書けと。
忘れる前に形にしておくのが最優先だ。ワガママ言うなグルァ
157名無しさん@ピンキー:04/08/25 07:11 ID:KI3g8WDX
それは書きなれた人の話で、書きなれていない人に対して同時進行して書けは少し難しいと思う
まして、これから初めてSSを書くんだって人に、自分で考えろは冷たいと思う
もっともな意見はごもっとも。自分は、ただ>>149のいい様が少しきつ過ぎると思った。
まぁ、それに脊髄反射で返した自分のレスもトゲトゲしいとは思うのだけど
正当な意見ばかりが、人に優しいとは限らないと思う
158名無しさん@ピンキー:04/08/25 10:38 ID:ywoTgqi1
なんだこの流れ。
自分は146ですが、146以外書きこんでいません。
147見て、新規参入不可なのかと思ったので。

148さんとは違います。
159名無しさん@ピンキー:04/08/25 12:30 ID:EYBrXpVX
縮刷版(まとめページ)担当の裏方です。 >>1 参照
こちらの女性の方々にお仕えさせて頂いている身ではありますが、少し発言を。

>>146 様
誰でも最初は職人さんではありません
>>148 様
最近、ライトSM成分が不足気味です

お二人以外の方へ。
「おんなのこでも感じるえっちな小説」ならなんでもOKですので、お気軽にどうぞ。

160名無しさん@ピンキー:04/08/25 14:59 ID:jMNx5Pmu
このスレホントツマランなぁ。排他的杉
161名無しさん@ピンキー:04/08/25 15:30 ID:KE0kZUHW
>>157
萌えが昂じて書くようになった初心者同然の人間だが
ネタが複数ある場合は暫定的に思い出せるだけ全て思い出してメモってたぞ。
後で読むとその切れ切れ具合に鬱ったりもしたが、
全体的な雰囲気は変わらなかった。

つーか出力しないで脳の中だけでこねくり回すと
絶対話がおかしくなるしまとまらないから、そういう意味で書けと言った。

その場の勢いだけではまず書けない。ヘミングウェイは神だと思った
162名無しさん@ピンキー:04/08/26 04:02 ID:n5tiFtpw
書く上でのどうこうとかいう話はスレ違い。

書きたい人遠慮せずに投下ヨロ。
最近荒れるばっかりで作品こなくてつまんないよーT_T
昔はすげぇ良スレだったのに・・・
163名無しさん@ピンキー:04/08/27 14:56 ID:+e6IupYe
age
164名無しさん@ピンキー:04/09/02 14:45 ID:JNVuV3iy
久しぶりに来て見たら、
客が変わったのか?厳しい人が増えましたね・・・。
前はマターリしてたのに。
165名無しさん@ピンキー:04/09/02 23:27 ID:Gp/jJpPH
337氏カンバーック!

書き込みしづらい空気かとは思いますが
あなたのSSを心待ちにして毎日みてます。
166名無しさん@ピンキー:04/09/03 08:08 ID:pHikABdq
以前はいろんな作風の作家さんがいてバラエティに富んでいて面白かったのにな、このスレ。
作家さんの降臨お待ちしてます。
167名無しさん@ピンキー:04/09/03 13:49 ID:krn0qE8S
純愛SSにシフトして逝ったのかも
168目覚め(1/12):04/09/07 12:41 ID:ehwRwLZH

母が台所から振り返って私を見ていた。
「目が覚めた? もう大丈夫かな〜? どれどれ」
近寄ってきて、さりげなくおでことおでこをくっつける。
私はなぜかそんな母のしぐさに、子供心にどきどきしてしまう。
「熱、さがったね。もう心配ないかな。すぐにお粥が出来るから待ってて」
そう言うと、母はむこうを向いて、食事の支度を再開する。
トントントントン。眠気を誘うリズミカルな包丁の音が続く……

……私は少しの間まどろんでいたのだろうか。
包丁の音で目が覚めたとき、なんとなくそう思った。
でも、見上げた天井は、なぜかさっきまでと違って、目が痛くなるほど白い。

すぐに完全に覚醒した。そして私がもう6歳の子供ではなく、
19歳の女のはしくれであるという当然の事実を思い出す。
ついさっき見た気がした台所の母の姿は、遠い昔の記憶にすぎなくて…

トントントントン

…どうやら包丁の音だけは、記憶の再現ではなく実在のようだ。
周りを見まわす。大きなベッド。白いシーツ。見覚えの無い家具。
どこ? ここは? なんで私こんなとこにいるの!?

そんな私の動揺を無視するかのように、遠くから規則的な音は続いている。
上半身を起こす。私はブラとパンツだけしかつけていなかった。
しかし、何も異常はないようだ…… 別に、何も、たぶん……

そばのいすにあったバスローブをちょっと借りた。
ついでにふかふかのスリッパも。
ともかく音のするほう、出口と思われるドアを開ける。
169目覚め(2/12):04/09/07 12:42 ID:ehwRwLZH

広いダイニング。ローズウッドっぽい床。壁にかかる上品な絵。
恥ずかしげもなく部屋の一角を占める大きな液晶テレビ。
こんなリッチな部屋って、私は雑誌の中でしか見たことがない。

音を立てないようにしてドアを後ろ手に閉め、中まで進む。
右手に台所があって、そこに男の人が背中がを向けて立っていた。
かなり背が高い。包丁の音を立てている。
急にリズムが停止した。たぶん私の視線を感じたんだろう。男が振り向く。

「おはよう〜 もう大丈夫?」
私は息を飲む。硬直したまま身動きすら出来ない。
なんで?! なんで加賀見先輩がここにいるの?!

「どうしたの? なんかお化けでも見てるみたいだけど?」
笑顔が私に向けられている。
あぁ、やっぱり素敵。私はこの笑顔に出会うと、とろけてしまいそうになる。
高校のバトミントン部にいた時からいつだって…
いや、今はそんなこといってる場合じゃない!

「あ〜、やっぱりそうか」
「え?」
「じゃないかと思った」

そう言いながらこちらに向かって来た。わ、どうしよ。
私の腕をつかみ、ゆっくりとダイニングの椅子に腰掛けさせる。
目の前で私の目を見ながら話し始める先輩。
「でさ、ジュンちゃん、ゆうべの事な〜んにも覚えてないの?

………なんか私 ……やっちゃった?
170目覚め(3/12):04/09/07 12:42 ID:ehwRwLZH

えっと、

ゆうべは高校のバトミントン部の同窓会で、加賀見先輩もいて。
私、なんか結構うかれて飲んでて。お店を出たときには……

って、そこから先の記憶が、全然、なんにも、からっぽ。
お〜い!

「かなりオヤジ入ってるよな〜 飲んで記憶無くしちゃうなんて。まだ若いのに」
笑いをこらえながらの失礼な一言だけど、私、言い返すことができない。

「ここ、俺のアパート。終電もなくなったんで、とりあえずおまえを寝かせた。
 あと。一応言っておくけど。俺、襲ってはいないから。安心しろ」

「というより、酒くさくてやたら文句多くて、
 気付いたら、よだれ垂らしながら馬鹿でっかいイビキかいてててさ。
 そんなのを襲える奴が居たらお目にかかりたいぐらいだけどな」

恥ずかしさのあまり、顔から火がふきだしそうだった。

「そうだ。ゆうべジュンちゃんの家に電話だけは入れておいた。心配するといけないから」

そんな。それは絶対やばいって、ぜったい。

「電話してみます」
あわててテレビの近くのソファーに移動して、ケータイで自宅に電話を入れた。
呼び出し音がもどかしい。
171目覚め(4/12):04/09/07 12:43 ID:ehwRwLZH

「あ、あたし。母さんは?」
「え? おねぇちゃん? 母さんは出かけてるよ。
 えっと、まだ彼氏んとこにいるの?
 …もしかして、まだベッドの中だったり? ぬくぬくって二人で? フフッ」
「あんた! なんて事を言うの?! あたしは」
「い〜のい〜の、照れなくたって。おねぇちゃんの幸せ邪魔する気なんてないから。
 そうだ。母さん今朝、言ってたよ。
 優しそうな人だし、礼儀正しいし。こんど家に連れて来て、正式に紹介してほしい。って。
 あたしも見たいな〜 おねぇちゃんの彼氏」

とりあえず家族は心配してなかった。というより思いっきり誤解の嵐。
でも、その誤解を解く方法も見当たらなかったので、適当に話して電話を切った。
妹が何か言ってたけど無視。すべては帰ってからにしよう。

このあとのいろいろを考えて、私は足元を見ながら大きくため息をつく。
ふと視線を感じて顔をあげると、目の前に加賀見先輩の顔があった。

「どう? 家のほう、大丈夫だった?」
「…はい。心配はしてませんでした。ありがとうございました」
「よかったよかった。じゃ朝メシにしよう。こっちに来て」

すぐそこ、テーブルの上にはいつのまにか…
ウェッジウッドのティーカップが上品に並んでて、朝メシと表現してはいけない感じで。

でも、どうなの、この現実って?
こんな朝に、コンチネンタル・ブレックファストを前に差し向かいで座って、
憧れの加賀見先輩が私の分の紅茶を、今ポットから注いでいるんですよ?

私。涙、出そうだ。いや、もう出まくってる。バスローブの袖で目立たないように拭いた。
172目覚め(5/12):04/09/07 12:43 ID:ehwRwLZH

しかし、感動と食欲は全く別物らしい。悲しいくらい。

なんか一気に食べて満腹中枢が警告を出しまくる状態になったところで、目を上げると驚愕の顔がそこに。
もう私って最低。自己嫌悪が津波のように襲い掛かる。アホ! 馬鹿!
絶望の淵に沈む私の耳に、先輩の声が聞こえた。

「あのさ」
「は、はい」
私はここで今、「女失格!!!」と烙印を押されるのだろう。嘲笑われたとしても自業自得だ。

「あの… ひとつだけ教えて欲しいんだけど」
なんか違うみたい。でもなんだろう、やけにあらたまって。

「きのうさ」
やたら言いにくそうにしてる。
「ジュンちゃんさ」
わ・た・し・が? まだあるの?

「俺のこと… 好きだって、言ってたけど… あれ、本気?」

ノックアウト。そんなことまで言っちゃったんだゆうべ。
え〜い。もういい! 覚悟決めた。玉砕だぁ!

「それ、本気です。ずっと前から、先輩のこと、好きでした」
言っ… ちゃっ… たよ… おい…

「それって… おそいよ、ジュンちゃん!」
怒られてる、ような、
「え?」
173目覚め(6/12):04/09/07 12:44 ID:ehwRwLZH

椅子に座ったままの私を先輩が抱きしめた。そしてキスされた。
な、なに? この展開って

と思ったのはほんの一瞬。唇から伝わるあたたかさと、
包まれるように抱きしめられてる心地よさで、なんかとってもホワホワしちゃって。
そう… 幸せ… とっても幸せ。

キス自体、全然経験なかったりする私。だからこれが初。彼氏いない歴19年はダテじゃない。

でも、押し付けられた唇をいつのまにか逆に吸い返してる自分がいて、驚きまくり。
うぉ、私って実はエッチぃおんなだったんだ〜

唇が離れ、抱きしめられたまま、耳元で言われた。
「俺につきあってる人がいるって、そんな噂聞いたこと、ある?」
そういえば… 不思議にそんな話って聞いたことない。どう見てもいい男なんだけど。
アタックして振られた友達は結構いた。みんな断られてて。
「だろ?」

「昨日はさ、俺、ジュンを口説く気であそこにいったんだ」
当然そんなの初耳。いやそれより、今、呼び捨てされた!? ジュンって。
かなりの快感。うれしいよ〜

「部活の先輩が、受験前の後輩をかどわかすのもどうかと思って、
 卒業するまで待ってたんだよ。だからきのうやっとさ」

そんな先輩の気遣いを踏みにじるように泥酔した馬鹿女が約一名ここに。
でも、かまわないって。私でもいいんだって。うぉ、また涙が。
174目覚め(7/12):04/09/07 12:44 ID:ehwRwLZH

「了解?」
「RE:了解」
メールならこうなるところを、私と先輩は目でこんな会話した。
もう何年も恋人同志だったみたいに。

そして、椅子から立ち上がってちょっと背伸びして、もう一度熱いキスを交わす。

ここだ。私は肩に掛かるガウンを、自分から脱いで床に落とした。

何度も夢見てたこと。この人に抱かれること。
他の誰でもない、目の前の憧れの人と素敵な思い出を作ること。

「どうしたのいったい?」
あわててガウンを拾おうとする先輩。
恥ずかしくて言葉になんか出来っこない。そのまま下着だけの姿で抱きつく。
「おいおい」
その言葉も完全に無視。私は強く抱きつく。お願いだから気付いて!

少し、考慮時間。何秒か二人ともそのまま。不安。

私は急に抱き上げられた。横抱きに。

やった! それが正解です、先輩。合ってます。

先輩の足はさっきのベッドルームに向かっている。
175目覚め(8/12):04/09/07 12:45 ID:ehwRwLZH

ベッドに横たえられたとき、どういう風にすればいいのか見当もつかなかった。
処女の正しいベッド姿勢! なんてあるわけないだろうけど。
背中向けるのもいまいちだし。どうすりゃ、

ブラの上から胸をつかまれた。

「ウッ」
悩ましい声は他の誰でもなく私の声だった。

両方の胸。乳首のあたりを指でこねられて、おもわず両手で彼の手をつかんだ。
かまわず愛撫が続けられて。それからカップの上の端から指が侵入してきた。

そして直接つまんで。コネコネって。
すぐにブラはずされた。体傾けて外しやすくしてあげたけど。

胸のすそのほうキスされてる。
少しずつ移動しながら頂上に向かって動いて、最後に乳首にチュッってされた。
ビクンって体が動いてしまう。反対側も同じようにされてビクンって。
よくわからない感覚だけど、気持ちいい… みたい。

あれ、唇がおなかのほうに。
それは、勘弁して。滅茶苦茶くすぐったい。ほんとに。
死ぬほどくすぐったいの、そこは!

「だめ! やめて!」

その言葉が恥ずかしがってるせいだと思われたみたい。違うんですけど、全然。
制止する私の腕を両手でつかんで、大幅に勘違いの儀式が続く。
やめろ〜! いますぐ!
176目覚め(9/12):04/09/07 12:46 ID:ehwRwLZH

やっとおへその所を通過したのでひと安心。いや、待て。そのまま行くと。

「だめ! やめて!」

こんどは本当に恥ずかしくて声にした。でもやめる気配は全然ない。
なんとか体をねじって避けようとしても、足元の体重と腰を掴む手で全然効果がない。
努力の甲斐なくついにあそこに彼の顔が。

ゆっくりと、あそこの毛をおしわけるように彼の舌が入ってきた。
汚いってそこは。口とか舌でさわるのやめて!

「ああっ!!」
一番敏感な場所を舌で触れられたとき、私は思わず声を上げ体を硬直させた。
両ももが痛いくらいつっぱってた。彼の顔を押し上げるように腰が持ちあがる。

それからもずっとそこをゆっくり刺激されて、だんだん私の頭がモワーッとなってきた。
最初はあまりにも強烈な感覚に戸惑いを感じ、気持ちいのか痛いのか自分でもわかんなかった。
でも今は、正直気持ちいい。
ヌメヌメとあちこち動き回る舌が一番敏感なとこに触れる瞬間が、待ち遠しいぐらい。

「ヌチャ」みたいな音がさっきからしてる。濡れてる? 私が?
そういえば舌の感触が最初のときよりスムーズに感じられる。

両手で足を開かれ、大きく下から上に舐めあげられた。
だめだよ〜 そんなこと…… したら…… アン… そんな

急に、愛撫が止まる。薄目をあけて足元を見たら、彼が部屋の奥で引き出しあけてた。
手に持った小さい袋は多分コンドーム。先輩優しいな〜 うれしいよな〜
って。 これから、入れられちゃう… わけ? 私、ヤられるの?
177目覚め(10/12):04/09/07 12:47 ID:ehwRwLZH

すごく緊張した。わかってはいたことだけど。誘ったのはまぎれもなく私だけど。
さすがに初めてだし。かなり痛いって友達から聞いてるし。

そんな混乱状態の私の上に、先輩が覆い被さってきた。
「せ、せんぱい」
イヤということは決してないけど、やっぱり怖かった。

「その言い方、やめない?」
「え?」
「こんな状態で先輩もないだろう」
そう言いながら胸つかんで揉んでる。せんぱいが。
確かにこんな呼び方、この場面には似つかわしくない。

「えっと」
どう考えても名前は無理! そんなに一足飛びにはできっこない。
「加賀見さん」
これで精一杯。充分恥ずかしい。目あけてられない。

「じゃ。ジュン、そろそろ始めるよ」
えっ!

足、開かれた。彼の腰が割ってはいる。あそこに、なんか、あたってる。
ギュって圧力がかかってちょっと痛いと思ったら、ヌルンって下にはずれた。
もう一度。やっぱりヌルンって。私が濡れすぎてるのか、うまくいかない。

「むずかしいな、思ったより。ジュン、場所教えてくれないか?」
そ、そんなこと。なんで私の口から。無理。

というより、そのお言葉からすると、先輩も初めてだったり?
178目覚め(11/12):04/09/07 12:47 ID:ehwRwLZH

「そういうこと。お前のこと気にしてたらいつのまにか、ってわけだ」
私の疑問に気付いたようで、恥ずかしそうにそう言った。
んもう。こんなんあり? 私のために他の女は抱かなかったんですか? マジですか?
たまりません。うれしすぎます。

実を言うと、彼とのセックスを妄想してるとき、あそこに指入れたことがあるから、
だいたいの場所の見当はついてた。何度もやったし。
だから、自分の指でそこの上押さえて、「この下」って小さく耳元で言った。
彼は自分のソレを手でおさえながら、私の指をたよりに…

痛っ!!  や、やめよ!! やだ! やっぱりやだ!
胸を押したけどびくともしない。ずんずん入ってくる。

ほんの一瞬の後、彼のものが私の中にきっちり納まっていた。
ズキッ、ズキッ。鈍い痛みが続いている。彼が動き始めるとそれが更に痛くなった。

なんかうめき声を上げながら、彼は私のあそこに腰をくりかえし打ち付ける。
もう我慢できない、痛すぎる、やっぱやめてもらおうと思ったとき、彼の動きが止まった。
「ウッ!」
私の上で体が硬直してる。え? これって?

力尽きたみたいに、私の胸に彼の顔が乗っかってきた。多分、終わったんだ。
無性にうれしい。
入れられてからは快感なんて全然なくて、痛いだけだったけど。
これがいつか気持ちよくなるなんて、ほんとかな。そんな感じ。

私の横に位置をかえた彼が腕枕してくれた。もう片方の手で私の髪を撫でてる。
ここに来るまでの流れに様々な問題点はあったけど、
結果オーライでとっても満足。 最高。
179目覚め(12/12):04/09/07 12:49 ID:ehwRwLZH

彼が起き上がっておでこをくっつけてきた。目と目がほんの数センチの至近距離。

「ジュン。後悔してない?」
「全然!」
キッパリと言い切った。

怒っちゃうよ? そんなこと言うと。
なんて私の本心を言葉にするのはなんだったから、目でそれを訴えてみた。

返事はなくて、ただ力いっぱい抱きしめられた。うまく伝わったみたいだ。

その時、私はふと昔読んだ文章を思い出していた。
母親の腕に抱かれ、男の腕に抱かれ、神様の腕に抱かれる。
それぞれの場面で至福の時を過ごすことが出来るのが女。
そんな感じだったと思う。

今、私はまちがいなく2番目の時間にいる。
なんとかたどりつけた、この場所。この人の腕の中。

私は充分満たされてた。

…5分後に再び彼が私を襲ってくる瞬間までは。

[Fin]
180名無しさん@ピンキー:04/09/07 22:13 ID:jl0A0KXW
おんなのこ向け×
ガキ向け○
厨向け◎

コンチネンタルブレックファストってわざわざ書くかよ( ´,_ゝ`)プッ
しかもそこまで書いておいて食器がウエッジウッドw
181名無しさん@ピンキー:04/09/07 22:51 ID:Sw+PH0PX
>>180
俺にもわかるように説明キボンヌ
182名無しさん@ピンキー:04/09/07 22:54 ID:jxlowEWK
>>180
フィッシュアンドチップスの揚げ油を、
口に流し込んだる。
183名無しさん@ピンキー:04/09/07 23:15 ID:3dMyxJA5
>>182
程度の低いage荒らしはほっとけ。

184名無しさん@ピンキー:04/09/08 02:34 ID:caZBzSU3
>>168-179

ちょっと都合良く運び過ぎてる気がするけど
読後感は悪くない

185名無しさん@ピンキー:04/09/08 07:14 ID:nlQ8vK6K
いや、でもよ、 これ読んでも漢字ないだろ。180でも181でもないがオレにもコンチネンタルなんちゃらは意味が解らんし。
ついでに最期の「おかん→男→ネ申の腕」のフレーズは萎えた。げんなり。


なぁ、もしかして>1は女の子でも感じるって快感フレーズだとかそこら辺の展開のこと言ってるのか?
だとしたら(読んだことないが)オレの嗜好とはかけ離れてるので二度とこんな空気嫁てないレスはしません。
別に荒らしがしたいわけじゃないからそこだけ答えてくれ、>住人さん。


最期に、個人的にスレ内容にはそぐわないと感じましたが、>>168-179のSSはいい雰囲気だと感じました。抜けないしエロくないけどこーゆーハッピーエンドな話は好きです。
186名無しさん@ピンキー:04/09/08 07:27 ID:hIJIW2Zm
なんか、ものすごい幼稚な気はするな。
女の自分ツッコミ激しく萎え。エロスは全然感じない。
187名無しさん@ピンキー:04/09/08 07:41 ID:mHbTcyEE
実生活もきっと空気嫁ないんだろうな。
そしてそんな自分を正当化して今日も頑張ってそうだ>185
嗜好に合わなきゃスルーすりゃいいだけだろう。金払って読んでる訳じゃないんだから。
188名無しさん@ピンキー:04/09/08 15:29 ID:kHIKa2Cr
そうじゃないんじゃないか。
今のスレ入ってからもちらほら書かれているように、「おんなのこでも感じる」っていうスレタイがそもそも空気嫁てないでしょ。
はっきり言って「おんなのこ向けのえっちな小説」っていう名前でスレ建ててそっちでやったほうが盛り上がるんじゃないの? 荒れないでさ。

俺はここのスレタイ見て「男でも女でもいけるスゲーの目指してるんかな」と思って期待して覗いたよ。実際見てみればとてもそういうハイエンド志向のスレじゃなかった。
189名無しさん@ピンキー:04/09/08 21:02 ID:K4e298H1
>188
ハイエンド志向とやらの基準がよくわからないよ。
そんな大層なことを誰が決められるんだ?
読んで気に入らなかったらならスルーするかスレを閉じればいいだけで、
男女の差はないだろうに。

スレを一読すればどのようなものが好まれているかはわかるし、
スレの雰囲気もわかると思う。そんなのはどこのスレでも同じ。
ハイエンド志向とやらで作品を発表しても歓迎されるものは歓迎されるだろうし、
されないものはされないよ。何をこだわってるんだ?
190名無しさん@ピンキー:04/09/08 21:57 ID:mHbTcyEE

>そんな大層なことを誰が決められるんだ?
>何をこだわってるんだ?
禿々しくドウーイ。
191名無しさん@ピンキー:04/09/08 22:22 ID:qbVPlWK/
なんか雰囲気悪くなったなー…
もう夏は終わってるはずなのに。
192名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:15 ID:f8xXjPwA
あのー。。。
エロ投下してもよかですか?

お目汚しかもしれませんが…
193名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:36 ID:lfWrBWLC
>192
クレ!
荒れてる時はスレに沿った文(エロ小説)が一番。
…と勝手に思っています。
194名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:47 ID:f8xXjPwA
>>193
サンクスコ
つたない文章の上に短いですが…
195名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:50 ID:f8xXjPwA
シャワーを浴び、後はもう眠りにつくだけ…というときだった。
誰かがドアをノックする。

のぞき穴からドアの向こうを伺うと、知った顔の男が一人。
「LED…」
夜風に吹かれながら,ドアが開くのを待っていた。

「…いいか?」
この時間にたずねてくることは少なくない。
目的も、わかっていた。
「…いいわよ」
本当にシャワーを浴びた直後で、
ブロンドの長い髪も濡れ、体にはバスローブを巻いただけだった。
その姿をまじまじと見て、口元をニヤつかせる。
「そそるな…準備して待ってたのか?」
「そんなわけないでしょ。…なにしにきたのよ」
「わかってるくせに聞くのか?」
「…確認したっていいでしょ?」
すっと、LEDは腰に手を回し、引き寄せると目を見つめ、こう言った。
「抱かせてくれ。カーレ」
返事の前に、キスで唇をふさがれていた。
196名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:51 ID:f8xXjPwA
ベッドはすぐ奥の部屋にあるというのに、LEDはそのまま
体ごと壁に押し付け、濃厚に舌を絡ませてくる。
「ン…。ん。。。待って…」
バスローブの上から胸を揉みしだかれる。
「待てないな」
その言葉通り、バスローブの中に手をさし入れ、直接胸をつかんできた。
舌を吸い取られそうな激しいキス。
身動きもとれず,なすがままとなる。
「ベッド…あるでしょ…」
やっと、口は開放されたが、首筋に舌を這わせるLEDは答える気配がない。
バスローブははだけ,すでに胸は男の眼下にさらされている。
巧みに両胸をもまれ、首筋を舐め上げる舌使いに、次第に呼吸がみだれてくる。
「ん。。。ン…あ。。。」
ベルトをはずす音がかすかに聞こえた。
197名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:53 ID:f8xXjPwA
上半身はコートまで身にまとったままなのに,押し付けられた腰は生暖かい。
すると、口元を耳に寄せ、さらに体を押し付けながら、LEDがささやいた
「わるいな…ちょっと荒っぽいが」
「え?」
左ひざが押し上げられ、片足立ちにさせると、いきなり自分のモノを押し当ててきた。
「ち…ちょっ…あ…っ。。。ちょっとだめっ」
LEDのモノが硬くなっていたことは押し付けられた体でわかっていはいたのだが…
「いやっ…あっ。。。だめっ」
無理やり中に入ってくる。苦痛に顔をゆがめる。
「…これならどうだ?」
LEDは自身がもぐりこんだ部分の少し上…ふたりの体の狭い隙間に手を入れる。
その指は器用に私の突起を探り当てた。
「あっ…いや。。。」
再び口が塞がれ,意識が散漫にされる。
突起をまさぐる指に感覚が翻弄される。
キスの合い間に漏れる吐息がしめり、染み出す潤いにLEDの指使いがさらに激しくなる。
「あ。。。あぁ…ん。。。ン。。。」
自然と、手はLEDの背中に回り、押し上げられた足はその腰にからみついていた。
「いい女だ」
ゆっくりとLEDの腰が動き出す。
「あ…。んん。。。ンっ・・・」
深く進入したモノが,さらに奥を突き上げてくる。
知らない感触ではない。
この先の,快感も知っている。
それを…呼び込みたくなる。
198名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:54 ID:f8xXjPwA
キスをして欲しくて,薄く閉じていた目を開け,LEDを見つめる。
見透かしていたのだろうか。
少し笑うと,舌も深く絡めてきた。
そうしながら,男の両手は左右のお尻の肉をつかみ,より深く,より強く,突き上げてきた。
「…っ。…ん。。。。」
聞こえてくる濡れた音が,二人の間から聞こえてくる。
それが,快感を加速させる。
そして,欲望を増幅させていく…
そんな期待が膨らみかけたときだった。
「…すまんな。」
すこし,上ずった声が聞こえたかと思うと,一気に引き抜かれた。
中途半端な違和感を残されたまま,壁にもたれかかる。
LEDのほうは,床に置き去りにされたバスローブでなにやら始末をしている。
本当に我慢が効かなかったらしい。
すこし間抜けですらあるその光景を眺めながら,つぶやくともなしに言葉を投げる。
「…気に入ってるのよ。そのバスローブ」
「あぁ。おれもだ」
にやりと口の端で笑うと,すっ。と立ち上がり,再び唇を奪ってきた。
199名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:54 ID:f8xXjPwA
軽々と持ち上げられると,そのままベッドまで運ばれる。
投げ落とされるように寝かせられる。
LEDはやっと,身にまとうものを剥ぎ取った。
「きらいよ。早いの。…年には勝てないの?」
それでも,LEDがのしかかってくるのに抵抗するわけではない。
「30代前半を舐めると痛い目にあうぞ。お嬢さん」
いさめるように,キスを落とされる。
「あと10年もたてばお前も仲間入りだ」
「11年後よ」
「そいつは失礼した」
言葉とは裏腹に,次々と軽いキスを落としていく。
「それにな」
次第に濃密になっていく口付けに伴い,声が深く響いてくる。
「お前があんまりそそるからだ」
左の首筋に舌を這わす。そこから,耳元へ,絡みつくような舌使いがにじり寄ってくる。
震える体。
この男は,私の体を,よく知っている。
「今度は…楽しむさ」
鼓膜をくすぐる,低い声でささやかれると,湿った吐息が口から零れ落ちてしまった。
200名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:56 ID:f8xXjPwA
LEDの舌が,胸の突起を転がしていく。
尖らせた先端が,口に含んだ,硬く凝り固まったそれを弄ぶほどに,
呼吸が乱れ,LEDの頭に添えられた手が,何かを求めるように髪をもかき乱してしまう。

ちゅっ。・・・ちゅっ。・・・

わざと,音を立てて乳房に吸い付いてくる。
時折立てられる歯が,傷みの快感を教える。
そうして、じらすように左右の胸を交互にむさぼり,反対の手は常に,もう片方の胸を揉みしだいていく。
ふと。胸の谷間に舌を這わせ,つー。っと舐め上げる。

「…っあ」
その微妙な感触に,思わず声が漏れる。
「お前の胸がよくてな」
さほど大きくはない胸に顔をうずめ,頬を擦り付けてくる。
湿った息を吹きかけ,すこしざらついた頬で敏感になった肌を刺激する。
「おぼれそうだ」
両の胸を,その両手でやわらかくつかみ,ゆっくりと緩急をつけながら,揉まれていく。
激しくはない刺激だけに,脳の中心が,どこかへいってしまいそうになる。

それから。

LEDの片手が,そろそろと下に降りて行く。
なでるように柔らかな動きが,胸に与えられる感触にまぎれて,下半身へと進出していく。
するりと,茂みに入り込んだ手が,巧みに突起を探り当てた。
「やっぱり。…いい女だな」
そんな言葉とともに,潤いを指に絡ませながら,もう敏感になりすぎている突起をあざ笑うようにこすり上げる。
201名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:57 ID:f8xXjPwA
「ぁあっ。。。…ん。…あ…」
どんどん核心に迫る快感を押し付けられ,ぴチャぴチャと濡れた音を立てるそこから,さらにあふれる蜜を感じながら,
男の指先に翻弄されていく。
「舐めてやるか?…ちなみにオレのはフェラチオが必要ないぐらいになっちまっててね」
そんな提案とも,宣言とも取れない言葉に,答える余裕もなかった。
「あっ……ん。…っ。や。…あ…。あ」
零れ落ちていく声を止めることもできずにいると,LEDは指を奥に進ませ,舌先で肉芽を味わいだした。
たまらない刺激に,背がのけぞる。
「あぁ。…あん。…だめ。…ぃや、ん。…んあ。。」
弾みをつけたかのように,指は刺激を強め,確実に刺激を与える箇所を執拗に攻める。
卑猥に踊る舌先が神経を伝ってその奥をしびれさせ,さらに脳髄まで溶かそうとする。
「いや、いや、…はッ…あぁっ…」
迫りすぎる快感の波から逃れるように,首を振り,悶えてしまう。
それでも,まったく緩める気配がないのが,この男の性か…。
「たまらんな。…」
独り言のような言葉を残して,熱くなり過ぎた体が開放される。

が。

すぐに足をつかまれ,大きく左右に割りさかれる。
「今夜はやけにそそられる」
その言葉とともに,入り口を押し広げるようにして,巨大なものが進入してきた。
「…っ。…くぅっ」
先ほどとはすこし違うが,それでもやはり,痛みがはしる。
この男と交わるときは,いつも,この痛みがやってくる。
そして…そのあとに来るのだ。残酷なまでの,快楽。
202名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:58 ID:f8xXjPwA

「さっきは痛かったか?」
男の先端が,最奥の壁を擦り付けるかのように,ゆっくりと動く。
「悪かったな。…今日はちょっと,高ぶりすぎてるようだ」
腰を持つ手が,ぐいっと引き寄せられ,それとともに,ひどく感じる部分につきいれられる。
「あぁっ」
この男しか知らない場所。
この男でしか,与えてくれない快感。
意識に遠いところで,中に,力が入り,男を締め始めた。
それを合図に,男の動きが,次第に強く,大きくなる。

こうなってくると,後は官能に身を任せ,男のなすがままになってくる。
淫靡に響く自分の声と,卑猥な水音と,男の律動。
すべてが高まりの材料にしかならない。
突き上げられる衝動が重なるたびに,一つ一つ何かが崩れていく。
「んっんっあっ。。。。だめっ・・・ダメ…」
理性のかけらが,そんな言葉を吐き出させる。
それすら崩れ始める兆候。
そして動きの間隔が狭まり,より深く,激しい刺激が襲い掛かる。
「あぁっ…あっあっあっ。。。あぁっいっ…いやぁっ」
覆いかぶさる男の背に必死にしがみつき,高まる体の緊張を逃すまいとする。
暴れる剛直は許すということを知らないらしい。
さらに攻め立て,さらに追い込んでいく。
貫かれ,極限まで溜め込まれた快感が,光速で脳髄に到達した。
「いやああああっ!」
背をのけぞらせ,男の入り込んだ中を力の限り収縮させる。
硬く太いそれを押しつぶさんばかりに締め上げたのを感じた次の瞬間,全身から力が抜けた。
203名無しさん@ピンキー:04/09/08 23:59 ID:f8xXjPwA
タバコのにおいが鼻をくすぐった。
眠ってしまったつもりはなかったのだが,意識は途切れていたようだった。
うつぶせになった体がだるい。
「LED…」
自分が思うよりも数段小さな声しか出なかったのだが,当の本人にはちゃんと届いていたらしい。
すっていたタバコを灰皿に押しやると,そっと抱き寄せてきた。
男の胸に頬を寄せる。温かい胸板に包まれる。
「…ご感想は?」
「聞かないで」
くすくすと笑うと,胸板もおどる。
「…実はこっちはまだだったんだがな…まぁいい。お互い様だ」
「先にイったのはそっちよ」
「だからお互い様さ」
頭をなでる男の手がくすぐったい。
本当は,この瞬間がたまらなく好きだったりするのだが,本人には死んでも言うつもりがない。
「…仕事。終わったの?」
指先で,男の胸をなぞりながら問いかける。
「あぁ。…予定より早くカタがついてな」
だから…。
男の手に,顔を見上げさせられる。
「そのかわいい声を聞きにきた」
それが。
その最中に口から零れ落ちていったものをさしているのだと気がついてしまい,自分ではどうしようもなく顔が熱くなる。
「ばかっ」
「あぁ。オレはバカなんだ」
にやりと笑う男が,さらにののしろうとする口を塞いだ。

強く抱き寄せられる腕に誘われて,私の腕が,LEDの体に絡みついていった。



end
204名無しさん@ピンキー:04/09/09 00:03 ID:rKDobm1t
すみません。
申し訳ない。

エロがたりねぇです。。。   _| ̄|○

だって。こいつら私の頭の中じゃあ,すげぇエロエロなのに…

うおぉぉぉぉ。
ただの妄想野郎で終わりたくないんだぁッッッ!
205名無しさん@ピンキー:04/09/10 02:33 ID:HSeUGsGh
発光ダイオード?
206名無しさん@ピンキー:04/09/10 08:13 ID:1arOAlij
乙カレー
207名無しさん@ピンキー:04/09/10 22:47:09 ID:Ok9aNeDQ
>>205
だよな。
208名無しさん@ピンキー:04/09/10 22:47:43 ID:Ok9aNeDQ
ageちった。激しくスマソ。
209名無しさん@ピンキー:04/09/11 00:14:37 ID:iDftGbdR
>>205
あぁ。w。
ぜーんぜん考えてなかった。

自分でほかに書こうと思ってた
エロがメインじゃない(笑)話に出そうと思った二人だったんですが
「レッドミラージュってかっこいいよね」…ぐらいの感覚で名前付けてた。

そうか。…光るんだな。夜。
「あ…。あん。青いのぉっ。…みて。中で光ってるぅ」
   _| ̄|○アホか。
210名無しさん@ピンキー:04/09/11 04:15:41 ID:O6As9zO+
REDだったなら…
211発光ダイオードでまったりネタ:04/09/12 01:47:17 ID:kGvCRamb
「コレ。試してみないか?」
「バイブ?卑猥なもん出してんじゃないわよ」
「コイツよりもっと醜悪なもんと毎晩まじわってるだろうが」
「毎晩じゃないでしょぉっ!…っていうか。醜悪って自覚あるわけねっ!」
「ここが光るんだよ」
(スイッチを入れるとモーター音と共に異様な振動音を発しながら…先端が青く光る)
「な?」
「…だから何?」
「…おもしろいだろ?コイツは発光ダイオードといってなぁ…」
「光ってるからなんだっていうのよっ!」
「ほら。お前の腹の中からこの青い光がだなぁ…」
「見えるわけないでしょっ!」
「…そこを試してみないとわからないじゃないか」
「死ね」
「なにを言ってるんだ。発光ダイオードによる人体の治癒効果は医学的にちゃんと研究されている分野なんだぞ」
「だからそれがなんだっていうのよっ!」
「お前の処女膜の治療に…」
「何年前の話もちだしてんのよっ!」
ばこっ!
「わ。わかった…白状するから」
「…なにを」
「…こいつで悶えるお前が見たい」
「いや」
「わるくはないはずだぞ。これを作ったヤツはその筋では『匠』と呼ばれる人物で,そいつの玩具を使って失神した人間は数知れず…」
「あんたも作ったやつも最低」
「オレは最低かもしれないが,お前はいい女だ」
「そんなこといってもだめ…あ。いや。…ばか。勝手に…あ。。だ、…いやっ。ふ…あっ。あんっ。。。。」


…スレを盛り下げたお詫びにネタ提供です。。。すみませんでした。。。
212発光ダイオードでまったりネタ:04/09/12 01:49:16 ID:kGvCRamb
>>210
マンガのこと?表紙しか見たことないんだなぁ。。。ゴメン
213発光ダイオードでまったりネタ:04/09/12 01:58:21 ID:kGvCRamb
>>206 ありがとうございます。
214:04/09/14 01:58:02 ID:Nsf6LI5b
投下してみてもヨカですか?^^;;;
215名無しさん@ピンキー:04/09/14 02:13:01 ID:UQztRdmP
してして
216愛人 1/20:04/09/14 02:49:02 ID:Nsf6LI5b
「僕の愛人になりませんか?」
隣に座っていた男が私に声を掛けてきた。私は唖然としてその男を見つめていた。
一緒に飲んでいた女友達数人が、「何?この人」「ちょっと失礼ですよ、あなた」
とか言っている。そんな女友達の声などまるで気にしていないように、男は私の顔を
じっと見つめて笑顔を称えていた。少し白髪が交ざり始めた頭髪。年の頃は40前位かな。
男性の年齢はいまいち読めない。でも、間違いなく20代って事もなさそう。
30代後半?眼鏡を掛けた穏やかな顔はとてもその口から「愛人」なんて言葉が飛び出して
来そうにもない、分別をわきまえたいわゆる普通の人、って感じ。
「あの…?」
「これ、僕の名刺と携帯番号です。その気になったら連絡下さい」
男はそういうと、うっすら笑顔を浮かべたまま、席を立った。
「そんなの捨てちゃいなさいよ」
「うわ、度胸ある〜、会社に連絡してやろうか」
等と女友達は男を罵りながら名刺を交互に見て、やがて飽きた様に私の前に名刺を戻して
きた。友達の、男への評価は一様に飢えたオジサン、で、エロ爺いで、変態親父、だった。
「あんなのほっときなよ」
一人が私にそう念押しした。それを切っ掛けに、話は別の話題へと転がっていく
。私はその話題に乗り遅れない様に一緒になって笑いながらも、
何となくその名刺を鞄の中に放り込んでいた。
217愛人 2/20:04/09/14 02:49:33 ID:Nsf6LI5b
「それで、どうして僕に電話してきてくれたんです?」
受話器を通して響く男の声はあくまで穏やかで物腰が柔らかかった。
でも、その奥の感情が読みとれない。
電話に興奮した様子も、落としてやろうという様な脂ぎった様子も。
「僕の、愛人になるんですか?」
まるで商談をしているかの様に男はなめらかな口調で滞ることなくそう言った。
「あの……」
「はい?」
電話の向こうの声はあくまで優しい。
優しいけれど何を考えているか分からないからその優しげな声が何となく不気味でもある。
……なんで私、電話掛けているんだろう?
「何で、私だったんですか?」
私は意を決したように、それでも至極当然に、そんな質問を口に出していた。
218愛人 3/20:04/09/14 02:50:28 ID:Nsf6LI5b
最近は主婦と言ってもみんなお洒落だし、飲みに行っても遅く帰っても別段平気な人が多い。
私ももちろんその一人だし、そう言った友達と飲みに行くことは嫌いじゃない。
旦那への愚痴、義母への愚痴。子供が出来ない話、夜のオツトメの話。
少し赤裸々で共感を覚える話題は、TVのワイドショーよりも身近で興味深いと思う。
職場の誰々さんが浮気してるんだって。へぇ〜、あんなおばさんでも出来るんだね、
一生女なんだ、なんて事を言いながら無責任な会話を垂れ流す。
みんな、自分が噂の的になるのはイヤだった。
だからこそ、他人への噂は重要な共通の話題だった。
 そこへ、愛人になりませんか、なんて声を掛けられて。私は正直焦った。
変に尾ひれが付いて、格好の噂の種になってしまう事を恐れた。
ならば、その場で名刺を破り捨てればよかったのに、と後で何度と無く後悔したけれど
、無意識に鞄の中に入れた名刺は何故か捨てられず持っていた。

 斉藤正隆

会社名と共に、印字された名前はごくごく平凡で、何度聞いても数分後には忘れてしまい
そうなくらいありきたりだと思う。
顔だって、本当にごくごく平凡だった。
インパクトのある行動をした割に、今はまじまじ見ていたその面影さえ曖昧でよく思い出せない位に。
219愛人 4/20:04/09/14 02:51:02 ID:Nsf6LI5b
なのに、何でこんなに気になるんだろう。
私は名刺を貰ったあの日から毎日その名刺を見つめてはひっくり返し、電話番号を見つめては
名前を確認していた。……何で私はこの名刺を捨てないんだろう?
 その理由の一つは何となく判っている様な気がした。
……要は、単純に嬉しかったからだ。
あの面子の中で。他にも可愛い顔立ちの友達はいた。スタイルのいい友達もいた。
男の気を引くとしたらそう言う人たちの筈で、「ほっときなよ」って言うのはいつも
私の役目だったから。
「私ね、今日声掛けられちゃった」
飲み会から帰ってそう旦那に言ってみた。
それでも興味なさそうに「あ、そう」と言うだけの旦那。
少しは妬いてくれるかと思ったのにそれすら無い。
私たちはもう随分と夜のオツトメ自体していない。
私はまだ女でいたいのに。時々、旦那に対してそう思う。
もう、女として魅力無いのかな。
飲みに行くと声を掛けられ、楽しそうに男性と会話を交わす友達。
彼女たちはまだまだ男から女として見られている。でも私は?
旦那からも他の男からも女として見られず、このままオバサン化していくの?
それはとても寂しくて切ない感情を沸き起こす。そして焦燥感を連れてくる。
友達の夜のオツトメの話を聞く度に、セックスレスの自分たちと比較して嫌になる。
浮気をしているらしい人の噂を聞く度に、なら、私も浮気すれば相手は私を女として
扱ってくれるだろうかと思う。そして、自己嫌悪に陥って、女である自分を否定したくなる。
せめて子供でもいたら自分の中で言い訳だって立つだろうに。
子供が出来ないままセックスレスになってしまい、そのまま3年が過ぎた。
恋人の様でいいじゃない、と言われる度に、恋人にすらなれていない関係を嘆いた。
私にだって性欲もあるのに。ただ抱きしめて欲しい夜だってあるのに。
そんな甘い関係すら望めないまま一緒に暮らしている男は、いったい私の何なんだろう?
 男から名刺を貰ったのは、ちょうどそんな時だった。
220愛人 5/20:04/09/14 02:51:35 ID:Nsf6LI5b
「他にも……私の隣にいた人とか、もっと男性から見ていいと思う人はいたでしょう?
なのにどうして私だったんですか?」
「あなたが一番、面白そうだと思ったからです」
電話の向こうで男の穏やかな声がする。
「面白そうって……」
「確かにあなたの隣に座っていた方は可愛い顔されてましたね。その向こうはスタイルが良かった。
……でも僕はあなたが一番面白そうだと思った。だから声を掛けたんです」
「……よくそうやって声掛けてるんですか?」
「まさか、初めてですよ。僕だって驚いてます」
男の穏やかな声が少し笑う。急に親近感の沸く声になるな、と思う。
「面白いって、誉められてる様な気はしないんですけど」
「そうですか?うーん、困ったな。誉めてますよ、勿論」
「そう?馬鹿にされてる気がします。私、そんなに男にモテなさそうに見えました?
欲求不満そうで、声掛けたら誰にでも着いていっちゃう様に見えました?」
「あれ?もしかして怒ってます?……いや、違うな。怒ってたら一週間も経ってから
電話してきたりしませんよね。その前に僕の名刺破ったり捨てたりする筈ですしね」
穏やかな声のまま、男が言う。
「あなたがモテない様に見えるとか、声掛けたら必ずヤれそうとか思った訳じゃないですよ。
端的に言うと、あなたに対して僕が女を感じたからです。
もっと下世話に言うと、あなたを抱いてる僕、ってのが浮かんだから声を掛けたんです」
「はぁ?」
私は思わず素っ頓狂な声を上げた。何?この人。やっぱり電話なんかするんじゃなかった。
そんな想像されてたなんて。
「あなた、飲んでる最中もつまんなさそうな顔してたでしょ。一緒にいた人たちと話して
笑ってたけど、決して楽しそうじゃなかった。
笑顔だったけど、どこか抑えてる感じがしたんですよ。
で、時折本音の様な表情と、上辺の表情が交錯する感じがね、面白いなぁと思ったんです」
「はぁ……」
221愛人 6/20:04/09/14 02:52:15 ID:Nsf6LI5b
「そう言う女性がね、どういう風に感じてどういう風に装うのか、ふいに想像してみたく
なったんですよ。想像してみたらね、本当に見てみたくなった」
「あの……でも私、結婚してますから」
「ああ、そんなことは構いません。僕も結婚しています」
男は躊躇無くそう言う。……あんたが良くても私が困るのよ。
「それに、私お受けするつもりで電話した訳じゃ……」
「じゃあ、どういうつもりだったんです?ずっと僕の名刺持って?
一週間も後にお断りの電話ですか?非通知にせず、番号を晒してまで?」
男は更に穏やかな中にも感情を含ませない冷静な声で理屈だけを述べていく。
「気になったんでしょう?だから電話してきたんでしょう?なら、それでいいじゃないですか」
「でも……」
私の声は男の平静な声に反して徐々に戸惑いを隠せなくなって来ていた。
「明日お逢いしましょう。この間の居酒屋でお待ちしてますよ。来なかったら諦めます。
別に無理強いしたい訳じゃない。話はその時で。……すいません、時間が無いのでこの辺で」
男は一方的にそう言うと電話を切った。私はツーツーツーという切れた電話の音を聞きながら、
その一方的な話の展開に戸惑っていた。行かないわ。行くもんですか。馬鹿にしてる。
面白いだなんて。
 それでも、男が私を女として見ていたらしい、という事は、私にとって耐え難い誘惑の
様な気がした。もう思い出せもしない男の顔をぼんやりと思い浮かべる。
あの男が、私の服を剥ぎ、組み伏せる。
……まるで全く想像出来ない事の様にも思える。それでもその下で甘えるように啜り泣く
自分がふっと浮かび上がっては消えていく。
私は慌てて頭を降ってそれを否定した。
……そんなこと、出来やしないわ。 私には旦那がいるんだし、それって不倫じゃないの。
 けれど、男の穏やかな、ありきたりな声が耳から離れなかった。
−あなたを抱いている僕ってのが浮かんだから−
私は、あの男の頭の中で、どんな風に抱かれていたんだろう?
222愛人 7/20:04/09/14 02:52:49 ID:Nsf6LI5b
「来ましたね」
男が……斉藤正隆、が、カウンターに座って私を見ていた。にこにこと微笑んでいる。
私は少し仏頂面のまま、その隣に黙って腰を降ろす。
どうして私は今ここに腰掛けているんだろう。
「すっぽかされるかな、と不安だったんです」
斉藤は、まるでそんなこと微塵も思っていないような口調でそう言った。
「一方的に電話を切ったじゃないですか……断ろうにも断れなかったから……」
私は呟くように言い訳めいた事を言う。
「ああ、そうでしたね。すいません。よく来てくれました。
……で、わざわざ断りに来たんですか?」
「……そうです」
そう答える私を、意外でも何でもない様な表情で見つめて、斉藤が「ふぅん」と言う。
そして、じっと私を値踏みする様に頭の先から足の爪先まで無遠慮に見ている。
私はじっと身動き一つ取れずに、カウンターの木目だけを見つめていた。
お気に入りのモスグリーンのツーピース。化粧も念入り。
靴も鞄も、一分の隙も無いくらいに考えて悩んで、まるでデートの前の様に胸をドキドキ
させながら来た自分を否定したくてたまらない。
化粧が濃かったかしら?髪型は変じゃ無いかしら。
そんなことを思いそうになる自分を打ち消すように、そんなことどうだっていいじゃない、
とわざと心の中でそう思う。
 暫くして、斉藤が喉の奥からくっくっく、と笑い出した。
私は思わず怪訝な顔をして隣の男を見る。じっと私を見つめていた斉藤の目と私の目がぶつかった。
「あ、いえ、失礼。……えーっと、名前伺っていいですか?」
……まだ笑ってる。嫌な男。
「田辺です。田辺由美」
「ありがとう……由美さん、こう呼んでいいかな?……可愛い人ですね」
斉藤はまだくっくっく、と笑っている。私は思いっきり不機嫌な顔になってしまう。
223愛人 8/20:04/09/14 02:53:23 ID:Nsf6LI5b
「ああ、ごめんなさい。決して馬鹿にした訳じゃないですよ。馬鹿にするどころか、
本当に可愛い人だなぁと思ったので。……やっぱりあなた、面白いですよ」
急に笑ったり、人のこと面白いって言ったり、かと思えば可愛い人……って、
そんな言葉いきなり言われたって、鵜呑みに出来る訳無いじゃない。
私は更に不機嫌になってしまいそうになりながら、唇をきゅっと噛みしめた。
「面白い……って、色んな意味あるでしょ?僕が言ってるのは興味深いって意味ですよ。
可笑しいって意味じゃ無いです。それを先に言えば良かったですね」
「興味深いって言われても……それでも、いい気分はしませんよ。
何だか私がモルモットか何かで、実験して、その結果が興味深いとか言われてる様な感じしますし」
私は不機嫌なまま下から睨み付けるように斉藤の顔をじっと見た。
斉藤は漸く喉の奥から笑みを漏らすのを止めて、少し驚いた様な表情をしている。
「ん〜そうか。別に僕はあなたを試した訳でもないし、モルモットだと思った訳でもないんですけどね。
……まぁ、取り敢えず乾杯しませんか?」
店の人間に生ビールを注文しながら、斉藤が私に甲斐甲斐しくお箸やら取り皿を並べてくれている。
……まぁ、ね。悪い人ではなさそうなのよね。
「じゃ、改めて。えーっと。再会出来たことに、乾杯」
ビールが来ると、斉藤はそんな事を言ってジョッキを心持ち上に上げ、私のジョッキを軽く叩いた。
コン、と言う音がジョッキ同士で響く。
美味しそうに喉を鳴らしながら半分くらいまで一気に飲んでしまう隣の斉藤を見ながら、
私もビールに口を付けた。
「あ〜、うまい。……実は僕、喉カラカラだったんですよ」
また、ホントか嘘か判らない様な口調で斉藤が言う。
鬢の辺りの生え際が少し白くなっていて、笑うとホント、くしゃっと顔中にしわが寄る。
人当たりの良さそうな、人の良さそうな笑顔。
「何でそんなに喉乾いてらしたんですか?」
斉藤が言った言葉の意味が半分ほど読めていながら、私は敢えてそう尋ねる。
「そりゃぁ、由美さんが来てくれるか不安だったし、今も緊張してますからね」
お決まりの言葉を、私の目を見て微笑みながら斉藤が言う。
……やっぱり読めないわ。本心なんだろうか?それとも、上辺だけの言葉なんだろうか?
224愛人 9/20:04/09/14 02:53:55 ID:Nsf6LI5b
「……嘘ばっかり」
私は取り敢えずそう言ってみた。
斉藤は少し目を丸くして、それから少しわざとらしく顔をしかめた。
「ああ……僕、顔の表情読めないでしょ。
本気で言っててもどこかふざけてる様に見えるらしいんですよね」
わざとらしくしかめた表情はやがてすぐにまた以前の笑顔に戻る。
「でも、由美さんから電話が来るまでの一週間、僕はすごく不安だったし後悔もしたし、
自分がしたことにも驚いてたんですよ。知らない携帯ナンバーから電話が来る度に、
あなたかもしれないと思って、胸を弾ませて、違うと思ったら落ち込んで
……本当に、待ってたんですよ」
斉藤は笑顔を浮かべたまま、瞳と口調だけは真面目にそう言った。
「でも、そんな風に聞こえませんでした」
私はビールジョッキの水滴を指先で拭いながら、前を見つめてそう言う。
「心臓はバクバクだったんですよ。由美さんから電話貰った時は。
すぐ判りました。あなただって」
……私が顔すら朧気で思い出せていなかった間、この男は私を想っていたと言う。
それが例え口だけだったとしても、その言葉は何て甘いんだろう。
「正直僕はあなたを抱きたいと思ってます。でも、そう急ぐ歳でもない。
無理強いはしませんよ。ただ、こうやってあなたと一緒に飲んだり喋ったり出来るだけでも構わないんです」
斉藤は穏やかにそう言った。その言葉には、口調には、優しさが込められているような気がした。
「……ええ、それだけなら……」
私は安堵しながらそう答えつつも、どこかで残念に思っている自分に気が付いた。
嘘。私、抱かれたかったの?
斉藤は私の顔を食い入るようにじっと見つめながら、やがて、また喉の奥でくっくっくと笑い始めた。
「……なんですか?」
「いえ、由美さん、やっぱり可愛い人だと思いますよ。
瞳がね、くるくる動いて口より素直なんですね。……可愛いなぁ。
やっぱり、その素直な瞳がどんな風に潤むのか見てみたい気がしますね」
225愛人 10/20:04/09/14 02:54:23 ID:Nsf6LI5b
ドキン、と胸が跳ねた様な気がした。何だか見透かされている気がする。
一緒に飲むだけでいいと言われた時に安堵しつつも残念だって思いが沸いた事とか、
昨夜。胸をときめかせて思わず一人で体を火照らせ果てた事とか。
「本当にあなた、断りに来たんですね?」
私はその問いかけに頷く事が出来なかった。
体が硬直したように動かなくて、私は一体、断りたいのかそれとも抱かれたいのか、徐々に
判らなくなっていた。
……この人怖いわ。私を追いつめる……
どう返事すればいいのか判らず、無言のまま体を強ばらせていると、斉藤がそっと私の肩に手を置いた。
「……出ましょう」
その手は大きくて暖かい、と思った。
226愛人 11/20:04/09/14 02:55:03 ID:Nsf6LI5b

 それはとても自然な流れの様でいて、夢の中の様な情景だった。
部屋の真ん中に据えられたベッド。薄暗い照明。私どうしてこんな所にいるんだろう?
斉藤は慣れた様子でベッドの脇にあるカウチにスーツの上着を脱いで置く。
私は部屋の入り口でその様子を眺めていた。
「何か飲みますか?コーヒーくらいはあるでしょうしね。アルコールの方が良かったですか?」
斉藤はそう言いながらカップが揃えてあるキャビネットの方へ向かう。
「あ、いえ……結構です」
掠れた様な声でそう返事をして、私は俯いた。
「じゃあ、座りませんか?」
斉藤が呼びかけることにすら返事が出来ない。
硬直した体はそこに根を下ろしたかの様に、微動だに出来なかった。
斉藤の視線が体を刺している気がする。痛いような心地よい様な視線。
見ている。彼は私を見ている。
こんなに緊張したのは一体どれくらいぶりだろう?
私はどう答えていいやら判らず、視線を上げてちらりと斉藤を見た。
 斉藤は穏やかな表情を崩していない。
そのまま、私を眺めるように見ている。
その瞳は先ほどの、まだ余裕を残している様なものとは違っていた。
あれは……間違いなく男の目だ。
こんな所まで来てしまっておいて今更だけど、少しでも動いたらもう
取り返しの付かない事が起こりそうで怖かった。
 やがて、無言の時が過ぎ、斉藤がゆっくりカウチから立ち上がって私に近づいて来た。
肩に手を置こうと手を伸ばしたのが気配で分かる。
……置かれたらもう終わりだ。もう取り返しが付かない。
私はパニックになりながら一歩後ずさり、かなり自分でもビックリするくらい大きな声で
「あのっ」と叫んでいた。
「はい?」
「あの……これって浮気ですよね?不倫ですよね?私、主人います。だからダメ。ダメなの」
「ふぅん……」
斉藤は少し考えた様に私を見つめていた。
227愛人 12/20:04/09/14 02:55:28 ID:Nsf6LI5b
私はダメって言いながらすでにそう言ったことを悔いていた。
この、甘くて力の抜けそうな雰囲気。
緊張と恥ずかしさとこれからの期待感が交錯する思いをすべて打ち消してしまうセリフに、
自分でも思わずショックを受けるくらい、後悔が襲ってくる。
「由美さん、じゃあどうしてここまで着いて来たんです?」
斉藤の穏やかな声は、怒りを含んでいる様にも寂しさを含んでいる様にも聞こえない。
先ほどと全く変わらない単調なまでに穏やかな声質。
「僕は構いませんよ。別にここでお茶を飲んでゆっくり話してもいい。……どうしますか?」
その言葉に私は思わず顔を上げた。斉藤の視線とぶつかる。
思わぬ至近距離にある斉藤の瞳に少し驚きながら、それでも瞳を離せなかった。
「あ……の……」
動かした唇からは掠れた吐息の様な音しか漏れ出さなかった。
斉藤の瞳に吸い込まれそうだった。
 斉藤の手が、大きな温かい手が私の肩を優しく掴む。
引き寄せられ、そして斉藤の顔が近づいて来る。私はゆっくり瞳を閉じてしまう。
重なってくる斉藤の唇は何だか柔らかく、しっとりと私の唇に吸い付いてきた。
軽くついばまれ、乾いていた私の唇が徐々に濡れ始める。
旦那のものとは違う初めてのその感触は最初違和感を伴っていたけれど、徐々に一体感を帯びてくる。
私の唾液が斉藤の唇を濡らす。斉藤の唾液が私の唇を濡らす。
柔らかい唇が離れてはすぐに互いの唇を求め、また重なる。
ちゅ、ちゅ、という音がついばむ度に唇から漏れ、甘くゾクゾクとした陶酔感が私を襲う。
肩に手を置いていた斉藤はいつの間にか私を抱きしめていた。
私は斉藤の腰の辺りの服をぎゅっと握りしめていた。
力が抜けそうだった。こんなキスは知らない。ただ、唇を重ねるだけのキスしか知らない。
いつまでも重なってこない舌先が欲しくなった。
しっとりと濡れた唇の隙間から自分の荒い息が漏れだしているのが判る。
閉じた目の裏側、その暗闇はねっとりと湿度を帯びて私を包み込む。
上唇を、斉藤の唇が挟み込む。ちゅ、と吸い込む。私は思わず舌先を差し出し、斉藤の下唇をなぞる。
228愛人 13/20:04/09/14 02:56:01 ID:Nsf6LI5b
それを合図にしたように、斉藤の舌がゆっくりと私の口を犯し始めた。
歯の隙間から入ってきたねっとり濡れた舌が私の舌と重なる。
ぬるぬるとお互いを弾き合った舌は、やがて求めるように絡まる。
斉藤の唾液の味が私の口に流れ込み、私の味と攪拌されて新しい味になる。
知らない味。新しい味。それがこんなにも甘く心地よいものだなんて、私は知らなかった。
「んっ……ふぅ……んんっ」
私はいつの間にか鼻から抜けるような甘えた声を唇の隙間から漏らしていた。
膝の裏がカクカクして力が入らない。そんな私を支えるように、斉藤は私の腰を抱いていた。
私も、斉藤の服にしがみついていた。
 ゆっくりと舌が私の歯茎を、歯の裏を、あごの裏を、舌をなぞって離れていく。
私はそれがあまりに惜しくて舌を思いっきり延ばし、最後まで堪能する。
ゆっくりと瞳を開くと、斉藤の少し紅潮した顔が間近にあった。
「もう、何を言っても遠慮しませんからね?」
斉藤がゆっくりと微笑んだ。穏やかな声がどこか艶めいて感じる。
私は返事をしたのかしなかったのかさえよく分からなかった。
斉藤の指先がゆっくりと首筋を這い上がり、耳の裏を通って髪の毛を逆撫でる。
指の腹でくすぐるように這った指の跡に余韻を感じながら、触られた所から私の産毛が逆立っていく。
指の間で髪の毛を梳き、頭を優しく撫でながら再び重なっていく唇は既に、私にしっとりと馴染んでいた。
貪るように、すがりつく様に斉藤の唇に吸い付き、斉藤の指先に翻弄される。
頬を伝い、鼻筋を撫で、額をくすぐる指先。
顔中を愛撫されるのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
 ゆっくりと斉藤の指が再び首筋を伝い、降りていく。
襟を通り、服の上から指先だけで乳房の膨らみを確認する様になぞっていく。
私はぴくっと体を動かし、重なった唇の隙間から何度も何度も吐息を漏らす。
やがて斉藤の指が胸の膨らみの間にするすると滑り来て、ジャケットを脱がしに掛かる。
その動きに呼応するかのように、私は体を捻り、ジャケットを脱がせて貰う。
そしてまた指先はブラウスの上から私の膨らみを確認するようになぞっていく。
その焦れったいほどの動作は、私の頭の奥を麻痺させていく様だと思う。
229愛人 14/20:04/09/14 02:56:35 ID:Nsf6LI5b
斉藤の指先が漸くブラウスのボタンに掛かった時。
私は体を見られる恥ずかしさよりも、その後の期待の方が大きく膨らんでいた。
一つ、二つとボタンが外れる度に、空気に触れていく肌が心地よかった。
 斉藤の唇が私の唇から外れ、耳元を通り、首筋へ降りていく。
鎖骨をなぞり、胸の谷間に顔を埋めながら全てのボタンを外していく。
「由美さん、綺麗な肌、してますね」
胸の谷間から、穏やかな斉藤の声が響く。
その声は胸元から這い上がって耳へ届くかの様に、甘く疼いて聞こえる。
 ……ああ、見られている。見られて触れられている……
それがこんなに気持ちいいものだと言うことを、私は随分長い間忘れていた様な気がした。
直接肌に触れた他人の肌が、唇が、こんなに気持ちよくて興奮を呼び起こすものだと言うことを
忘れていた様な気がした。
やがて、ブラのホックを外され、スカートを降ろされ、私はベッドへゆっくりと押し倒された。
「由美さん、一つ約束してください」
斉藤が私の上に覆い被さり、頬を撫でながら言った。
「……なるべく目を開けていて欲しいんです。瞑らないで、その目を僕に見せて」
私は少し戸惑いを覚えた。こういう時って私、目を開けていられるだろうか?
「なるべくでいいんですよ……。僕は由美さんの目に惹かれたから」
その言葉を聞いて私は小さく頷いた。
230愛人 15/20:04/09/14 02:57:14 ID:Nsf6LI5b

「由美さん、目を開けて……僕を見て」
じゅぶじゅぶと指が私の膣壁をこすり上げる度に私は悲鳴を上げて、目を瞑る。
その度に斉藤は私に目を開けろと強要する。無理よ……そんなの絶対無理。
熱く痛いほど気持ちいい指の動きに翻弄されながら、私は腰を捻り、その快感から逃げようと藻掻く。
その腰をしっかり押さえ、私に覆い被さったまま、斉藤は私の中を指先で擦り上げる。
「ああああっ、ああああああっっ」
感じた事も無いほどの強い衝撃。感じたことも無い程の強い快感。
そこを見つけられたのは初めてで、私はコントロールの効かない自分の体を持て余す。
中が焼けただれる様な感覚に、私はただただ、悲鳴を上げ続けるだけ。
「ダメだよ、由美さん。ほら、目を開けなきゃ……止めちゃうよ」
止めて欲しい。止めて欲しくない。その相反する気持ちをどう言えばいいのか。
私は精一杯瞳を開けようとしてまた強烈な快感に顔を歪ませる。

 斉藤の愛撫は執拗だった。キスだけで恐らく悠に30分は費やしていたと思う。
時計を見ていた訳じゃないから詳しくは判らないけれど、とても長いような、でも短いような、
そんな感じがした。全身をくすぐるように愛撫するのでキスと同じくらいの時間を費やした様に思う。
焦れったい位のその指の動きはやがて私の体をトロトロに溶かし、
早く肝心な場所へと触れて欲しいと思う位だった。
漸く斉藤が私の股間へ手を伸ばしてきたとき。多分彼も驚いていたと思う。
……私だってビックリした。下着の上から、染み出してきた愛液が糸を引く、だなんて。
そこまで濡れたのなんか初めてだったから。
231愛人 16/20:04/09/14 02:57:51 ID:Nsf6LI5b

「ああああ、いや、いやぁ、熱い……っ あああああっ……」
喉の奥から振り絞るように私は声を出す。
けれどその悲鳴は既に掠れて、ひしゃげた音となって意味をなさないままに紡ぎ出されていく。
斉藤の指先は、最初はゆっくり私の中をまさぐっていた。
その頃はまだ私も余裕で瞳を開けていることが出来た。
ところが、感じる度に、目を瞑る回数が増え、その度に斉藤はそこを指の腹で押し上げ、
擦り、掻き回した。
じゅぷじゅぷと言う音が私の下半身から響いてくる。嘘でしょ……こんなに濡れるなんて。
私は瞑った目の奥のねっとりとした闇にそのまま抱かれたい、と思った。
けれど、斉藤はそれを許さない。
「由美さん、僕を見るんだ。今由美さんを感じさせているのが誰か、よく見て」
愛液を掻き出しながら、斉藤が指をぐりん、と回す。
その度に焼けるような快感が膣内から脳みそへ直結するように響いていく。
私は汗なのか涙なのか、それとも斉藤の唾液なのか判らないもので顔をぐしゃぐしゃにしていた。
首を大きくのけぞらせ、腰が勝手に浮くのに任せた。
斉藤の指先がぎゅっと私の一番熱い部分を押し上げた。
「…………っっ!!!」
その刹那、大きな波がそこから広がり、全身に波紋を描くように広がって、私は果てた。
232愛人 16/20:04/09/14 02:58:17 ID:Nsf6LI5b

 ゆっくりと斉藤が私の中を掻き分ける。その張りは私の膣を押し上げ、痛いくらいだと思う。
おなかがいっぱいになる感覚。久々の感覚。
「んっ……あぁ……」
私は喉を反らし、その圧迫感を堪能する。
「由美さんの中……溶けそうな位熱いですよ」
斉藤は騎乗位にさせて下から私を見つめていた。
私は見られるのが恥ずかしくて、俯いたまま目を閉じる。
「ほら……また目を閉じる……ダメですよ。僕を見て……」
斉藤は、ずっと私を見ていた。愛撫した時も。挿入した後も。
騎乗位なんて、腰の動かし方が判らないと言うと、斉藤は感じるままに好きな様に動けばいい、
と言った。私は先刻の、あの熱くただれた場所を探して、腰を左右に振ってみたり腰を反らしたりする。
その度に下から斉藤が突き上げて、私はまた悲鳴を上げる。
こんなセックスは初めてだった。いつもは旦那が私を組み伏せ、腰を動かし、そして果てる。
キスも愛撫も、ここまで執拗で濃厚なのは初めてだった。
 私は腰を動かしながら斉藤を上から見つめる。斉藤も私を見つめている。
時折快楽に彼の表情が歪む度、それでも瞳を閉じず私を見つめ続けている度に、
今こうしてこの人の上で自分が腰を振っているのが当然の様な気がして、それがまた不思議でもあった。
ついこの間まで全く知らない人だったのに。さっきまで顔すら朧気だった人なのに。
 私はゆっくりと斉藤の上で体を反らした。当たる……クリトリスの裏側。
さっき熱く焼けた場所。そこに斉藤自身が、当たる。
快楽に表情を歪めている自分が判った。
薄目を開けて斉藤を見つめ続けると、斉藤は私の瞳を見つめたまま、腰を突き上げる。
「ぁぁぁぅ…ぁっ…」
突き上げられて更に仰け反りながら、私は腰を小さく前後に振る。
膣がきゅっと締まって、斉藤自身を中から感じる。その形も、その熱さも。
 それは何という充足感だろう。
私は段々我を忘れて腰を振り始めた。
233愛人 18/20:04/09/14 02:58:54 ID:Nsf6LI5b
感じる所に当たる様に、貪るように、その快楽を逃すまいと必死だった。
「由美さん……ぁぁ……いいですよ、もっと動いて……」
斉藤が私を下から突き上げながら、腰を持ち、私を誘導する。
私は彼の手に自分を委ねる様にして、腰をぐりぐりと前後に動かす。
時折仰け反り、そしてまた慌てて斉藤の瞳を見つめ、また目を閉じ、そして慌てて斉藤の瞳を見つめ。
……そうしていると徐々に、私はこの人に惹かれているんじゃないか、と言う気がしてくるから不思議だった。
「斉藤……さんっ……ああ、ダメ……もう……」
腰をさすりながら支える斉藤の手のひらが熱かった。
中から突き上げる斉藤自身が愛おしかった。
快楽を貪りながら、心地よさに身をよじる自分自身が、愛おしくてたまらなかった。
「イク……イッていい?ああああ…………イク……」
234愛人 19/20:04/09/14 02:59:39 ID:Nsf6LI5b

「最後、目を閉じましたね?」
ハァハァと荒い息をしながら体中を優しく拭って貰い、恥ずかしくて慌てて布団に潜り込んだ後、
斉藤は悪戯っぽく私の頬を撫でながらそう言った。
「だって……無理です。開けてられないし。……それに、何でそんなにこだわるんです?」
私は斉藤の顔を下からのぞき込む様にして尋ねた。
「ん〜……僕、由美さんの目が多分好きなんですよ。色んな感情を映し出す目が」
「それだけ?」
「分かりません。でも、感じている時の由美さんの目は、思った以上に色っぽくて潤んで、
とても良かったですよ」
穏やかに、けれどどこか照れたように言う斉藤に、私は何だかこういうのも悪くないかな、と思った。
「……で、愛人のお話なんですけど」
「ああ、はい」
「今時、愛人なんて言いませんよね?……どうして愛人なんですか?」
「あ〜。いや、何となくです。最近って何て言うんですか?こういうの」
「何て言うんだろう……せ、セックスフレンド?」
言ってから、私は思わず狼狽えた。
こういう関係って、そうよ、セックスフレンドになるんじゃない。体だけの割り切った関係。
快楽だけを貪り合う関係。……それって、凄く本能的で厭らしい気がした。
「セックスフレンドですか……う〜ん、情緒が無い様な気がしませんか?
もっとしっとりとした関係を由美さんと築きたかったんですよ、僕。
最初にも言いませんでした?お話するだけでもいいって」
斉藤の指先が、布団に隠れた私の頬を撫でる。
「……そんなに、気に入って貰っているとは思ってませんでした……」
「そりゃぁまぁ、初めて浮気したいと思った位ですからね。余程の事が無いと、そう言う気にはならないですよ」
「え!!」
私は驚いた。愛人って言うのは初めてだったとしても、結構女性の扱いに長けている気がしていたから。
「え、って……由美さん酷いなぁ。僕を何だと思ってたんですか?」
苦笑しながら斉藤が私の髪を少し荒々しく、それでも優しくくしゃっと撫でた。
235愛人 20/20:04/09/14 03:00:05 ID:Nsf6LI5b
「飲み屋で隣に座ってたあなたの、話し声、話し方。友達と笑いながらくるくる動く瞳、
時折つまらなさそうに曇ったりしているのに、表情だけ笑ってたり。かと思えば満足そうに
瞳を輝かせてたり。……あなたのね、表情と瞳が一致するトコが見たかったんです」
少し照れた様に言う斉藤が、何だか可愛らしいと思った。変ね。こんなに年上の人なのに。
そんな風に私を見ていた人がいる、というのがこれ程嬉しくて心を暖かくする物だとは思わなかった。
「……斉藤さん。愛人のお話なんですけど」
「ええ」
「改めて、お断りします」
私がそう言うと、斉藤の目は一瞬宙を彷徨った。
ああ……確かに、瞳って物を言うよりも反応が素直だわ。
私は斉藤の瞳の揺れを見ながら、くすくすくすっと笑ってしまった。
怪訝そうな顔で斉藤が私を見つめる。
「……愛人より、恋人がいいかな?」
布団を引っ張り上げ、瞳だけ見せてそう言うと、斉藤の顔がくしゃっと崩れた。
236:04/09/14 03:01:50 ID:Nsf6LI5b
>>232のタイトル横の数字間違えました。
17/20です。失礼しました。

お目汚しだったらすいません
237名無しさん@ピンキー:04/09/14 23:12:26 ID:fORPzSiX
GJですv
238名無しさん@ピンキー:04/09/15 00:20:39 ID:JWKAEeix
>>236
男(斉藤)の行動や台詞はちょっと…って感はあるけど
話の展開自体はスムーズですし、丁寧かつ読みやすい文章で
楽しませていただきました。

お目汚しなんてとんでもない。GJでした。
また新作が出来たら是非、お越し下さい。
239名無しさん@ピンキー:04/09/15 15:35:37 ID:V6CQ5yBm
GJ!!読みやすくてとても良かったです。
自分も新作ができたら是非読んでみたいです。
240:04/09/15 19:37:19 ID:9X98l97j
ありがとうございます。ホッ

「初めての不倫」物なので、どこまで読んで下さる方が
違和感を感じずに読み進められるかに試行錯誤しました。
良かったです。

>>238さん
斉藤の行動や台詞、こういう男はあんまし好きじゃない
って意味でしょうか?それとも、こんな事言われても
普通女はなびかないと思うわ、って事でしょうか?

…自分の好きなタイプの男を書いたらこうなっちゃいました(笑)

>>239さん
新作、頑張って書いてまた投下させて頂きます。
全く別パターンの物がいいか、それともこちらの続編が
いいか迷ってますが、宜しければまた感想をお聞かせ
下さい^^
241名無しさん@ピンキー:04/09/15 23:21:51 ID:JWKAEeix
>>240
言葉が足らなくてスマソ。
こんな行動や台詞を言うような男はいないって意味です。
そういった部分で少々リアリティに欠けるのが残念な部分だと感じました。

ですが、話自体は面白かったですよ。またお目にかかれる事を期待してます。
242名無しさん@ピンキー:04/09/16 19:38:03 ID:q6zGqKe5
>>240
読後感が良かったので、続きも悪くないと思いますよ。
でも、他にどういう作品を書かれるかというのも興味があったり。
243:04/09/16 22:49:13 ID:LfeWND3I
>>241さん
確かにちとリアリティに欠ける男性像かも知れません。
結構年上の方ってあんまりお付き合いする機会も無いので
どんなもんかな〜と。
これくらい落ち着いておいて欲しいという理想と、話の都合上
こう言ってくれた方がスムーズに進んでくれるという私の
身勝手から産まれたものでして…
もう少し身近な男性をモデルにした方が良かったかも知れない
ですね^^;

ありがとうございました。

>>242さん
既存作品で宜しければ多少手直しの上投下出来ますが…
でも、ここに投稿するぞ〜って言うのもモチベーションに
なったりして^^
他の方の投下が無く、既存作でも良いと言って頂けるなら
新作の合間に投下させて頂きます。

スレルールって特にありませんでしたよね…?
244名無しさん@ピンキー:04/09/17 10:58:24 ID:k1fZRO2n
>>243

 >>238 また新作が出来たら是非、お越し下さい。
 >>239 自分も新作ができたら是非読んでみたいです。
 >>241 またお目にかかれる事を期待してます。
245:04/09/19 00:30:53 ID:2yuqHe7S
新作書けました。

投下します〜。

前回の続編ではありません
246楽しいオフ会(1/18):04/09/19 00:32:35 ID:2yuqHe7S
 どうしてこんな事になっているんだろう?と私は股間を開いたままぼんやり思う。中心
はとろとろに蜜が溢れ出し、ぱっくり開いてヒクヒクと呼吸しているのが分かる。恥ずか
しい。これ以上無い位恥ずかしい。けれど、その恥ずかしさが、蜜をとろとろに溢れ出さ
せているって言うことくらい、十分分かっている。

 こんな事になるなんて。

私は今のこの状態にハッキリ興奮していた。恥ずかしさと興奮が入り交じった甘い陶酔感
が私を襲う。そしてまた、私の芯から蜜がトロリと溢れ出す。ひくん、と蠢く入り口が空
気に晒されて少しひんやりする。きっと、中が熱すぎて、そこから溢れ出した蜜が入り口
を濡らす度に、空気に触れて温度が下がるからなんだわ、と頭の片隅でちらりと思う。け
れどそれはほんの一瞬の事で、私の腰が勝手に上がり、くねっている事に私は驚きと戸惑
いと恥じらいを感じて、またあの甘い陶酔感に酔いしれる。

 嘘でしょ、私、そんな性癖だったの?

そう思いながらも麻薬のようなこの痺れた甘い感覚には抗えなかった。その場の空気がそ
うさせていたのかも知れない。こんなの異様よ。変よ。そう思えば思うほど、私の体はま
すます反応する。目はいつの間にかとろんと半開きになり、唇からは荒い吐息のようなた
め息が何度も漏れる。

ああ……そうよ、もっと見て。もっと私を見て……

 私は股間を突き出すように、腰を軽くくい、と上げた。
247楽しいオフ会(2/18):04/09/19 00:33:19 ID:2yuqHe7S

--オフ会しませんか?--
と言われたのはほんの一週間くらい前だったと思う。私が開いているサイトの掲示板に、
いつも書き込みをしてくれている常連さんの一人、マコトさんが私にそうメールをして来
てくれたのが始まりだった。
--今度の土日、用事でそちらに行くので、良ければその近辺の方にも声掛けてオフ会しま
せんか?是非、生まにちゃんに逢ってみたいです--
私はそのメールにOKを出し、マコトさんが掲示板にオフ会の告知をしてくれた。遠くに住
んでいる人は無理だったけれど、近郊に住んでいる常連さんの殆どが、オフ会出席の意向
を示してくれた。
--あ〜、憧れていたまにちゃんに逢えるんだ、嬉しいな--
--凄く楽しみです。まにちゃん、この間撮ってた服で来て欲しいな--
掲示板には私に逢える喜びに満ちた男性からの書き込みが多くて、私はまるで自分がアイ
ドルになった様な気分に浸ったものだった。
--まに、みんなにいっぱいサービスするね(^_-)-☆--
そんな書き込みまでしちゃったと思う。けど、まさかこんな事になるなんて、私は思って
もみなかった。
248楽しいオフ会(3/18):04/09/19 00:33:51 ID:2yuqHe7S

 男たちの視線が食い入るように私の体中を舐め回す。少し濡れた唇を、ほんのりと上気
した頬を、露わになった胸元を、つんと勃った乳首を、そして溢れててらてらに光った股
間を。彼らは目で私の体の隅々を犯している。
 ハァハァと荒い息づかいだけが部屋に響いている。それ以外は誰も無口で、時折ごくん、
と微かに飲み込む喉の音だけが聞こえる様な気がする。
 そう、みんなそんな目でまにを見るんだ。いいよ……もっと見て。ほら、まにの全部を
見て……
 私は少し仰け反りながら腰を上げた。長い髪が背中に軽く当たり、はらりと揺れた。


249楽しいオフ会(4/18):04/09/19 00:34:22 ID:2yuqHe7S

「まにちゃんに出会えた事に、かんぱーい」
オフ会は居酒屋の座敷を借り切って始まった。総勢で12名。個人のサイトにしては十分人
が集まったと思う。
「かんぱーい」
私は無邪気にそれだけの人たちが集まってくれたことを喜んだ。
「嬉しいなぁ。生まにちゃんだ。やっぱり可愛いね。想像していた通り」
「やだぁ。何だか顔見られるの恥ずかしいな」
私はちょっと俯きながらみんなの方を上目遣いで見回す。
「どうして?もったいない。顔も出しちゃいなよ」
「うん、あの大胆なポーズをこんな可愛い子がやってるって思うだけで、絶対見に来る人
増えるよ」
「えぇ……そうかな?」
私は少し照れたように頬を手のひらで押さえた。

 私が持っているホームページは、今までの話からも分かるように、少しエッチなヤツだ。
セルフポートレートとでも言うのかな。色んなコスプレっぽい服や下着姿で自分の写真を
撮って載せている。四つんばいになってお尻の方から撮ってる写真や、裸にエプロンとか
乱れた浴衣姿とか。
 ギリギリの所までは見せてるけど、それ以上は見せない。一応自分なりの線引きがあっ
て、どんなにリクエストされても裸は見せないようにしていたの。
 別に体に自信がなかった訳じゃない。
単に、そうしちゃったら下品なエッチサイトと同じになっちゃうから。
そうじゃないの。まにのサイトは、綺麗なエロスを追求してるの。まに自身の体で。

 オフ会はとても盛り上がった。みんな私に優しかったし必死にアピールしてくれる。サ
イトに関係ないところで普通にコンパしても、こんなにモテた事なんて無かったのに、今
は全員が私を気遣い、私を持ち上げ、私に気に入られようとしている。
 私はもう有頂天だった。こんなに気分がいい飲み会は始めてだったから。
250楽しいオフ会(5/18):04/09/19 00:34:53 ID:2yuqHe7S

「まにちゃん、あの写真はセルフポートレートって書いてあるけど、ホントにまにちゃん
が一人で撮ってるの?」
誰が言い出したのかよく覚えてないけれど、そう尋ねられた様な気がする。
「うん、そうなの。だから時々、思ったように撮れないんだけど。変な写真時々あるでし
ょ?ごめんね?」
「ううん、凄いよ。いいアングルで撮れてるのとか多いからさ。誰かに撮って貰ってんの
かな、誰だ、そんな羨ましいヤツは、ちくしょう〜とか思ってた訳」
「あはは、違うよ〜。撮ってくれる人なんていません」
この頃には私ももうすっかりいい気分で半分酔っていたと思う。何を聞かれてもすらすら
と答えてたから。
「え〜、まにちゃん、彼氏はいないの?」
「うん、別れちゃってね、その後にサイト開いたんだぁ。だからね、誰にも撮って貰った
事ないよ〜」
「そうかぁ。僕が撮ってあげたいなぁ……色んなまにちゃんのしどけない姿」
「あ、ちょっと"なんじゃ"さん、抜け駆けはなしですよ」
「うんうん、まにちゃんを撮ってあげたいな〜って思ってるのはみんな同じなんだから」
「僕だったら……まにちゃんの真っ白な下着姿を撮ってあげたいな。それがちょっとずつ
乱れて行くトコなんか綺麗だと思う」
「ええ〜?みんな、色んなアイディアあるんだね〜。凄いな〜、まに、撮って欲しいかも」
私は笑いながら冗談半分でそう答えた。そうか、みんなからアイディア貰って、それ活か
して写真撮ればいいかな?なんて思いながら。
「あ、僕デジカメ持ってきてるよ」
「あ、俺も」
オフ会に来ていた殆どの人たちがデジカメ持参だった。小さくて軽い物から、一眼レフの
ものから、機種は様々だったけれど。
「後でまにちゃん、撮ろうよ」
みんながにこにこそう言ったので、私はそれに応えるようににこっと笑って頷いた。まる
でアイドルの撮影会みたいで気分いいなぁ、なんて思いながら。
251楽しいオフ会(6/18):04/09/19 00:35:31 ID:2yuqHe7S

「俺、もう我慢出来ない」
誰かがそう言ったのが合図だった。私をじっと見ていた男たちが、一斉に、最初はおずお
ずと、やがて貪り付く様に手を伸ばしてくる。頬を撫でる手。唇の輪郭をなぞる指先。鎖
骨から首筋を愛撫するように撫でる手のひら。乳房を持ち上げ、鷲掴みにし、腰を撫で、
太股を触って、ヘアを愛撫する指先。
「あ、ちょっと」
私は慌てた。一気に群がる男たちに一瞬恐怖を感じて体が強ばる。このままだと私、輪姦
(まわ)されちゃう?……そう思った。
「いやっ、いやぁ」
慌ててそう叫ぶけれど、誰も私の言う事を聞いてくれない。暴れる手首を押さえ、足首を
持ち上げ、唇を唇で封じられる。
「むっ……ふぅっ……ふぅんっ」
鼻から抜けるように声が漏れる。さわさわと触っていた無数の手が、執拗な位に愛撫を繰
り返す。
「ぁっ……イヤ……っ……んっ、ふぅぅん」
首筋に舌を這わせる人。足の指の間を丹念に舐め始める人。乳房をゆっくり愛撫して乳首
を舌先で転がす人。腰の辺りを何度も何度も唾液の筋を作っていく人。キスされている人
の肩越しにうっすら目を開けると、荒々しくも真剣な表情をした男たちの顔が、私を食い
入るように覗き込んでいる。
「おい、俺もまにちゃんとキスしたい」
塞がっていた唇がまた違う唇へと交代する。今度は厚くぽってりした柔らかい唇の男性が
私の唇を覆う。……あ、ぁん、この人キス上手……一瞬私はそう思った。途端に、溢れて
きていた蜜が奥から更にトロリと押し出されるのを感じる。
「ああ、凄いよ、まにちゃんの肌吸い付くようだ」
「プロフにまにちゃん、乳首を摘まれると気持ちいいって書いてたけど、ホント?」
男たちが口々に勝手なことを言いながら私の体を好きなように弄り回す。やがて、ヘアを
弄んでいた指先が、茂みを掻き分けて軽く私の敏感な蕾に触れた。

252楽しいオフ会(6/18):04/09/19 00:36:01 ID:2yuqHe7S
「ふぅっっ……ぅぅぅぅんっ」
塞がれた唇の隙間から吐息が漏れる。体が敏感に反応して、背中から腰に掛けて、びくん、
と跳ね上がる。
その間にも乳首を摘まれ、唾液でいっぱい濡らした舌が乳房を覆い、乳首の先端を転がし、
太股の間をぬめぬめと這い回る。
「あっ、あぁんっ、あぁぁぁ……」
何だかおかしくなってきそうだった。ぬるぬるした舌が体中をくすぐって、クリトリスに
触れた指先が徐々に力を加えていく。塞がれた唇は何度もついばんで私の唇を濡らし続け、
無数の手のひらに撫で回された体が、段々ほぐれて行くのを感じていた。
「まにちゃん、クリが敏感ってホントだね」
クリトリスに触れた男がそこを執拗に弄ぶ。指に力を加え、小刻みな振動を与えてくる。
「愛液味わっていい?」
太股を執拗に舐めていた男が、私の脚の間に滑り込み、じっと蜜の溢れ出るそこを見つめ
ていた。クリトリスを弾かれ、ひくんひくんと揺れる腰、ぱくぱくと呼吸する蜜の出口。
「ふむっ……んむぅぅ……んんんっ」
唇を塞がれ、ぬめぬめとした舌先が私の歯を押し分けて入ってくる。必死に抗う様に小さ
く首を左右に振るけれど、全身の力はもうすっかり抜けきっていた。
ちゅぷ……という音と共に、男が愛液を舌先ですくうように舐め上げる。クリトリスを弄
んでいた男が同時に、二本の指で挟み込む。
「んむぅぁぁぁ……っっ、んぁっ、んんんんん〜〜〜〜〜〜っっっ」
激しい位の衝撃に、私の腰はかくん、と跳ねてその腰を複数の手が支える。首と脚の爪先
だけがベッドに付いてる状態で、後は背中から腰まで持ち上げられる不自然な体制。
「まにちゃんの愛液うまい?」
誰かがそう聞いている。汗ばんだ熱い手が、私の手のひらに誰のものだか分からない、熱
い滾りを握らせる。
もう、何が何だか分からなかった。訳が分からない位に気持ちよかった。
クリトリスを弄っていた手が、ゆっくり膣へ滑り込む。愛液をすくうように舐めていた舌
先が、クリトリスを弾き出す。私は両手に違う太さ、大きさの棒を握らされ、唇を塞がれ、
腰を持ち上げられて乳房を揉みしだかれている。
253楽しいオフ会(8/18):04/09/19 00:36:31 ID:2yuqHe7S
「んんんむっ、んむぅぅ〜〜〜、んぁぅぁっっ」
じゅぶじゅぶと言う湿り気を帯びた音が私の下半身から響き渡る。ちゅ、と首筋にキスを
する人、顔中に舌を這わせる人、乳首を舌先で弾く人。入れ替わり立ち替わり、舌は交代
して私の全身を這い回る。
「Gスポットってどの辺?」
慣れない人がいるのか、私の股間を覗き込むようにして、両方の陰唇を摘んで広げる。
「この辺。結構浅いよ」
指を入れていた男が奥から膣の入り口の方へ指を移動させて、くい、と指先を押し上げる。
「ぁふっ……ぅぅん」
「じゃ、ボルチオってどこ?」
「ボルチオ性感帯?」
「そそ、それそれ」
「それは、もっと奥の方。指をこれくらい入れて、曲げた上の方かな」
指がぐい、と奥に入ってきた。それだけでキツイ位なのに、その指がくい、と曲がる。
「あぁぁぁぁぁっ……んぁっ、あああああっっっ」
悲鳴のような声が漏れる。くい、と曲がった指は私の体のスイッチを入れた様な感じだっ
た。一瞬にして体の奥が熱く灼けただれるような感覚に襲われる。
「わ〜、凄い反応」
感心した様に言う男の声が聞こえる。
「入れてみ?この辺だから」
一本だけ入っていた指に被さる様に、その下から違う指がぬるりと入ってくる。……え、
嘘でしょ。明らかに最初の指とは違う人間の指の感覚。二人掛かりで私の中をまさぐって。
「んぁぁぁぁぁ、ダメ、そんな……あああああっ」
膣内で不規則に動く二本の指が、膣壁の上を、下を擦り上げる。
「ひゃぁぁぁぁ……っっっ……ダメっ、ダメぇぇぇぇ」
その間にもクリトリスを執拗に舐めている男。乳首に吸い付いて離れない男。手のひらに
握りしめた二本の滾りはどくんどくん脈打って私の頭上にある。
「お、すげ、中がぎゅ〜って締め付けてくる」
「これはイク前兆かな?」
254楽しいオフ会(9/18):04/09/19 00:37:11 ID:2yuqHe7S
男たちの声が徐々に朦朧として聞こえなくなってきた。私はただただ、目の前にある唇に
必死に吸い付き、ぎゅっと目を瞑ったその奥の快感を貪った。
「じゃあ、こっちも愛撫しちゃおっか」
ずっとお尻を撫でていた手のひらが、するりとその谷へ降りてきた。ぱっくり割れた隙間
を指でつつつ、となぞって誰もまだ触っていなかった穴へと到達する。
「ひぁぁんっ……あああああああああっっ」
ゆっくりと筋を延ばすように、皺の合間を指でなぞるように動く指先。入り口付近をやわ
やわと撫で上げては、時折皺をきゅっと伸ばす。
全身から、色んな快感の情報を与えられて、私の脳味噌はパニックになりかけていた。
「あっ、潮噴いた」
「お〜〜〜スゲ、俺こんなの生で見たの初めて」
ジャパッという何かが噴きだした音と共に、体が大きくうねった。
「もっかいやってよ」
ゾクゾクする感覚が断続的に襲ってくる。体の芯が熱くて熱くて、気が狂いそうだった。
バシャッ……バシャッ……
徐々に自分の体の奥から、何かが噴きだして行く感じを掴める様になる。
これが潮噴いてるってことなの?
朧気な状態で、私はハァハァと荒い息を吐き出しながら思う。
「どこ?俺潮って噴かせた事無いんだ、どの辺?」
代わる代わる、男たちが私の中へ指を差し込んではその場所を擦り上げる。その度に体の
奥から、ドクン、という音が聞こえそうな気がする。そして、そのドクン、という感覚と
共に、バシャァッと潮が噴き出す。
「も……やめ……て……ぁぅぅぅぅっ……ぁぁぁぁっ……んひぁぁんっ」
私は息も絶え絶えに懇願し始めていた。



255楽しいオフ会(10/18):04/09/19 00:38:07 ID:2yuqHe7S
「二次会は、まにちゃん撮影会だ〜〜〜〜」
何故か流れがこうなっていた。みんなでスナップ写真を撮ったり、記念撮影したりする程
度かと思っていた私は少し驚いたけれど、私がポーズをとってみんながカメラ小僧みたい
に私を撮って行くのも何だか気分良さそうだと思った私は、凄く単純にOKを出してしまっ
ていた。お酒で少し酔っていたせいもあったかも知れない。
 大勢で入っても追加料金だけでOKのパーティルームを借りて、その中へぞろぞろと団体
が入っていくのも、端から見たら変だったと思う。だって、女の子は私一人だけだし、パ
ーティルームって言っても、要はそこはラブホテルだったんだから。

256楽しいオフ会(11/18):04/09/19 00:38:29 ID:2yuqHe7S
「まにちゃん、ポーズとって。ちょっとお尻突き出して。パンツ見えそうな位ギリギリ…
…あ、いいそれ。可愛い」
「こっち向いて〜まにちゃん、唇ちょっとすぼめて、胸の谷間強調して。あ、いいなぁ」
フラッシュがパシャパシャ焚かれて、何台ものカメラが私を捉えるのって、ホント気持ち
いい。アイドル志願の女の子の気持ちとか分かる気がするなぁ。こうやってちやほやされ
たら、私って何だか凄く可愛い女の子の様な気がしてくるんだもの。
 有頂天になっていた私は、みんなから上手く乗せられたせいもあったんだろうけど、一
枚、また一枚と服を脱いで行く。徐々に、みんなから要求されるポーズもきわどいものに
なってきていた。それでも、リクエストに応えたポーズを取ったり、一枚ずつ服を脱いで
行く度に、男たちの視線が私に釘付けになり、ギラギラとした視線になって行くたびに、
私は自分がただ可愛いだけじゃなく、どんな男でも惑わせる極上の女になった様な気がし
てきていた。
「まにちゃん、ブラも取っちゃおうよ……その綺麗なおっぱい、見せないのはもったいな
いよ」
そう言われて、私はちょっと妖艶な笑顔を浮かべてブラをゆっくり外した。腕で隠しなが
ら、下着一枚だけの姿にハッキリと興奮を感じていた。
「どうせなら産まれたままの姿も……それでまにちゃんの写真集作っちゃおう」
最後の一枚を脱ぐ時には、確かこんな感じで言われたんだと思う。
私はかなり夢見心地状態だった。ヘアヌード写真集を出してる女優たちも、きっとこんな
感覚になるのね、なんて思っていた。
脳裏には、綺麗な裸を晒して、挑発的に男を誘う瞳の自分が表紙になっている本を思い浮
かべていた。それくらい、私はみんなに綺麗に撮られている、と思っていた。
257楽しいオフ会(12/19):04/09/19 00:39:16 ID:2yuqHe7S

「じゃあ、最初はオフ会発起人のマコトさんからどうぞ〜」
「遠いところ、ようこそ〜」
「え〜?そんな。悪いなぁ。じゃあ、遠慮無く……頂きます」
既に潮を噴きまくり、湿ったシーツの上にぐったり横たわっていた私の脚を割って、マコ
トさんが私の中を貫いた。
「ぁぅぅぅぅっっ…………」
喘ぎまくって掠れた声しか出ない喉から、ひしゃげた様な声しかもう漏れて来ない。
それでも、一回、二回、と擦り上げられると、体の奥はまた燃え上がり、芯が灼けるよう
に熱くなってくる。
「うあ……まにちゃんの中、とろけそう。どろどろなのにやわやわ」
マコトさんがそう実況中継する度に、男たちは繋がった私の股間を食い入るように見つめ
ている。
「まにちゃんのお口、開いてるから、幹事のシゲルさんどうです?」
突き上げられて、あんあんと喘ぎながらも遠くの方でそんな声が聞こえてくる。やがて視
界に大きく勃起したおちんちんが見えたので、私は何も考えられずに条件反射の様に、そ
れを口に含む。
「あぁっ……まにちゃんの可愛い口が僕のを……っぅぅっ」
そんな風に言われちゃったら、もっともっと頑張ろうって思うから不思議。私は舌をちろ
ちろ動かして竿とカリの間を何度も何度も跳ね上げる。
「んっ……ふぅんっ……ぁうぅんっ……」
マコトさんがガンガン私を突き上げて、どろどろに溶けていたそこが収縮を始める。中で
マコトさんの形が分かるみたい。膣壁に引っ掻かせるようにして腰を動かすから、その度
に私の背中は仰け反ってしまう。
「ああ……俺、もうダメ。出ちゃう」
ぴゅっ、と生暖かい物が頭上から降ってきた。それは頬を伝い首筋へとどろり、落ちてい
く。見ていた誰かがどうやら私の顔に射精したらしいって一瞬後に理解する。

258楽しいオフ会(13/19):04/09/19 00:39:53 ID:2yuqHe7S
「んっ……んむぅっ……んんんっ」
息も絶え絶えに喘いでいると、放たれた精子を誰かが私の胸元へ広げていく。ぬるり、と
した生暖かい感触と、独特の匂いが鼻につく。
「あ、まにちゃん、俺もう出るっ……」
マコトさんが腰の速度を速めた。私は口にシゲルさんのを頬張ったまま、マコトさんに揺
らされ続ける。
「あぁぁっ……」
どくん、と生暖かいものが体の中に放出されたのが分かって、私の体はぴくんぴくん、と
跳ねる。
ハァハァと荒い息づかいで私の体をぎゅっと抱きしめたマコトさんは、どろどろになった
股間から自分の物を引き抜くと
「お次の方どうぞ」
と言ってるのが聞こえた。
私の腰は、中に何もない状態を寂しがっている。腰をくねくねと動かし、持ち上げ、次の
挿入を待ちわびていた。
「まにちゃん、やらしいな〜。全員の相手出来るかなぁ?」
そんな私の腰の動きを見ながら、シゲルさんが頭上で言う。
……いいよ、もっとまにをめちゃくちゃにしてっ……
私はそれしか考えられず、シゲルさんに呼応する様に、自分の物をしごいている人のをき
ゅっと握りしめる。
「お〜、まにちゃん、やる気満々」
嬉しそうに誰かが私の両足を持ち上げて、その間に割って入ってくる。
ぬるぬるとした入り口にそれが当たった瞬間、私は腰をくいくい動かして、早く入れてと
催促する。
 ぐい、と二本目のそれに貫かれ、私の頭の中は甘く痺れていく。柔らかい感触が胸元に
感じられて、誰かがおちんちんを擦りつけていることが分かった。真似する様に、太股や
腰におちんちんを擦りつけている人たちもいる。
259楽しいオフ会(14/19):04/09/19 00:40:20 ID:2yuqHe7S
「ああ、まにちゃん、ちょっとごめんね」
シゲルさんが私の両頬をがしっと掴んだかと思うと、その腰をくいくい、と動かし始めた。
「んんん〜〜〜〜〜〜っっ、んむぅっ……んぐむぅっ」
強引に抜き差しされるそれに吐き出しそうになりながら、必死に口をすぼめ、舌先を動か
す。
「ぁ、ぁぁ、まにちゃんイクよ……出すから飲んでっっ」
シゲルさんのおちんちんが、一番深くまで挿入された。喉の奥の壁を突き破りそうな位深
くて、私は一瞬息が詰まりそうになる。そこへどくどくっと生暖かくどろりとした液体が
喉の奥を凄い勢いで押して、流れ込んでいく。私は噎せながら、それを一生懸命飲み込ん
だ。
「えほっ……えほっ、げほっ……んぐっ……ハァハァ」
その合間にも、私の体を突き上げ、乳房におちんちんを擦りつけ続けている人達がいる。
「まにちゃ〜ん、お口でお願いね〜」
そして、次のおちんちんが私の目の前ににゅっと突き出される。
「あむっ……んんんっ……んむぅ」
「へ〜、あんな顔になるんだなぁ、まにちゃん」
取り敢えず出し終えて一息付いているマコトさんとシゲルさんが、ソファに座って話して
いるのが何となく見えた気がした。

パシャッ

一瞬後、フラッシュが焚かれたのが見えた。
「むぅんんんっっっ……んむぅぅぅっっっ」
フラッシュの閃光と同時に、私の中がバシャっと灼ける様な気がした。
「おおっ……まにちゃん、そんなに締め付けたら……」
私に挿れてる人が呻く声が聞こえる。
だって……何これ? 体の芯が焼け焦げてどっか行っちゃいそうな感じだった。
何?これ。
「まにちゃん、撮られるの好きなんだね」
260楽しいオフ会(15/19):04/09/19 00:40:43 ID:2yuqHe7S
マコトさんの声が聞こえた。
パシャッ、パシャッ、パシャ……

シゲルさんと二人掛かりで絶え間なくフラッシュを焚かれ、撮られ続けながら、私は意識
が朦朧とし出すのを感じていた。
……ああ、もっと、もっと見て、もっと撮って……
「んむむぅぅぅ〜〜〜〜〜っ、いぐっ、いっぢゃうっ」
私は口に含んで誰かのを握りしめたまま、果てた。
261楽しいオフ会(17/19):04/09/19 00:41:22 ID:2yuqHe7S


 裸になって最初は大事な部分を隠しながら、毛布にくるまったり、後ろ姿を撮って貰っ
ていたりした。ちょっとした悪戯心が芽生えたのは、もうすっかり裸の状態にも慣れた頃
だったと思う。少し動く度に、太股と太股の間で擦れ合ったそこが、にちゃ、という微か
な音を立て始めていたからかも知れない。
 私は、ポーズを取りながら、ちょっと乳首を見えるようにしてみた。
男達の視線が、面白いくらいにそこへ集中していくのが分かる。
はだけた毛布の隙間から、脚を組み替えてみる。勿論見えるように。
にちゅ……と鈍い湿った音がして、更に私の奥から溢れて来だしているのを感じる。男達
の喉がごくん、と動くのも見逃さなかった。
 ……それは、今までに無いくらい刺激的な挑発行為だった。
私の一挙手一投足全てに神経を集中し、見逃すまいとしている痛いくらいの視線が気持ち
よかった。
 そして、ゆっくりと私は脚を広げたのだ。
……溢れたそこを見せつける様に。


262楽しいオフ会(17/19):04/09/19 00:41:56 ID:2yuqHe7S
「まーにちゃ〜ん、漸く僕の番だよ〜」
そう言いながら入って来たのは何人目だっただろう?もう何度も私は果てていた。大きな
波、小さな波が断続的に私を襲っている。もう、挿れられただけで体は反応して、小さく
痙攣してしまう程に。
体中どろどろだった。汗と涎と精液でぬるぬるになっている。放出された精液をぬりたく
られ、乾いたところが無いくらい。
「ぁぁぁんっっ……」
朦朧とした意識の中でも、挿入されて私は反応する。膣内がもうずっと痙攣し続けている。
「僕、アナル好きなんだ……いいかな?まにちゃん」
私の体を背中の方からぐい、と持ち上げた男がいる。
「え、同時にですか?やっと僕の番なのに」
「まぁまぁ、そう言わないで。二本差しも結構いいらしいよ」
そう言うと背後から私を支えていた男が、愛液をアナルにまぶしつけ、指をゆっくり挿し
てきた。
「んぐっ……んぁぁぁぁぁ……」
鈍い痛みのような感覚と共に、不思議な感じがお尻を襲う。
指を抜かれる度に、そこから何かが出て来るような感じがして、私はお尻をもぞもぞ動か
しながら
「やめて……いやっ……」
と声にならない声で抗う。
「ほら、な?おまえのをこっちからこう、触ってるの分かるだろ?」
「うほぉ……すげっ、そんなんされたら僕すぐ出ちゃいますって」
「はぅぁんっ……んぁんっ…だめぇ」
否定の言葉は誰も聞いていなかった。その口にまた新しいおちんちんが差し込まれる。
「んぐっ……んむぅ……」
「じゃ、まにちゃん行きますよ〜。力抜いてね〜」
263楽しいオフ会(18/19):04/09/19 00:42:25 ID:2yuqHe7S
力なんてもうとっくに入って無かった。揺らされるままに揺らされ、与えられる終わりの
無い快感に支配されきっていた。
「うぎ〜〜〜〜っ、んぐぅぅぅ……っっっ」
めりめりって感じで入ってきたそれに、私は思わず悲鳴を上げる。
お腹が裂けそうだった。股間を割られておちんちんに串刺しされてるような感覚に襲われ
てしまう。ダメ、死んじゃう。
「うわ……急に狭くなった。すげ、薄い壁みたいなのの向こうに、タクさんのがめちゃく
ちゃよく分かりますよ」
「そうだろ?俺のとおまえのも擦れて、結構気持ちいいだろ?」
「気持ちいいどころか……っ……僕、もうイキそうです」
男達が勝手にそんなことを言っている。
ああ、もうやめて。膣壁と腸壁の境目が、壊れていきそうな感じになる。
けれど、それは痛みよりも張り裂けそうな位お腹いっぱいって感じで。その二本が勝手に
適当にリズムもバラバラで動く度に狭い私の中が押されて熱い場所に当たる。
「変になる……っ、変になっちゃうよぉ……んぐっ……んぢゅぅぅぅ」
差し込まれた口の隙間から、私は喘ぐようにそう訴えた。
「いいよ、まにちゃん、変になりなよ。気持ちいいよ。変になっちゃえ」
口々に囁く声に、私は我を忘れて腰を振り続けた。


264楽しいオフ会(19/19):04/09/19 00:42:54 ID:2yuqHe7S
--まにちゃんファンクラブへようこそ--

 私は毎晩、そのサイトを眺める。会員制で、あの日オフ会に参加した人たちだけが見る
ことの出来るサイト。私のサイトからはリンクも何も貼っていないけれど、オフ会に来れ
なかった人の何人かは誰かに聞いたのか覗いているって噂。
 そこには、最初服を着た普通のまにから始まって、ちょっと酔い始めてほんのりと頬を
染めているまに、徐々に服を脱いで行くまに、そして全裸でちょっと挑発的にポーズを取
っているまに、挿入されて悶えているまに、等の写真が順序よく並んでいた。
 それを見る度に、私は思わず自分の体をまさぐってしまう。
あんな経験始めてだった。強烈でもう二度と普通のセックスじゃ満足出来ないんじゃない
かとさえ思えてしまう。今夜もまた、私の股間は写真を見て、思い出したのかじっとり濡
れて早く触ってとおねだりしているかの様。
 ……まって。まだ途中なんだから……
私は欲しくて堪らない体に言い聞かせるかの様に、ゆっくりページをクリックしていく。
 射精されてどろどろになったまに。二本差しされて気を失いそうになっているまに。ぐ
ったりと濡れそぼったシーツに横たわっているまに。
 こんな経験、きっと普通じゃ出来ないわ。
私はそう思いながら、あの日の事を何度も何度も思い返す。何回果てただろう?結局、一
晩中誰かの物を中に挿れていた気がする。
 最後の写真を見ながら、私はまたオフ会しようよってお誘いが来ないかといつもの様に
思ってしまう。お風呂の中で大勢で撮った写真。まにが中心にいて、泡泡の体をみんなに
優しく洗って貰った。お姫様の様に大事に大事に洗って貰ったんだよね。
 ゆっくりと自分でクリトリスを弄ぶ。指先に敏感に反応したクリトリスは、つんと勃ち
上がり、嬉しそうに膣の入り口がきゅっきゅっと収縮する。
 今度オフがあったら。きっと人がもっと増えるわ。この間来られなかった人もきっと来
る。もしかしたら常連さんじゃない人だって来るかも知れない。
 ぐちゅっにちゅ、という音がするクリトリスを指で摘み、擦りながら私は、早く誰かオ
フ会しようよって言ってくれないかな、と思い続けていた。

265A:04/09/19 00:48:10 ID:2yuqHe7S
途中で総数が18から19へ変わりました。
大変失礼いたしました。

>>252のタイトル、(6/18)となってますが正しくは
(7/19)
>>261のタイトル、(17/19)となってますが正しくは
(16/19)です。

タイトル間違い、申し訳ありません。

今回のはかなり嗜好が出てしまいました。
お好みに合う方がいらっしゃれば幸いです。
266名無しさん@ピンキー:04/09/19 00:54:05 ID:ohn6S1eB
リアル遭遇してしまいました。
スレの嗜好と合ってるのかどうかはチト判断つきかねますが、
私はすきですよ。
時間軸がたまにわかりづらくなるのでそこをクリアにしてくれると
もっと読みやすかったかな。
ゴチでした、おいしゅうございましたm(_ _)m
267A:04/09/19 01:06:36 ID:2yuqHe7S
早速の感想ありがとうございました。

時間軸、こういう投稿形式だと難しいですね^^;
区切りがハッキリしなくて、どう区切ろうか悩みました。
判りづらかったのなら、本当にすいません。
エディターではきっちり区切ってたんですが^^;;;
その辺もう少し勉強します。

スレの嗜好……うううん、合ってなかったら大弱りですね^^;
もしそうだったらホントにお目汚し、失礼しました。
268名無しさん@ピンキー:04/09/19 08:33:39 ID:LmjP7Rmx
これまでに読んだことのないシチュだったので、純粋におもしろかったです。
時間軸が入り組んでいるところは混乱はしなかったんですけど、
別に普通の時間軸でもいいんじゃないかな?と思いました。
269名無しさん@ピンキー:04/09/19 12:39:53 ID:GP5BNJV8
確かに混乱するほどではないですが時間軸が分かりにくいかも。
でも、内容は面白かったですよ。GJ!!
270名無しさん@ピンキー:04/09/19 23:58:06 ID:Q0ectIt2
ありがとう
271名無しさん@ピンキー:04/09/20 00:02:28 ID:+mIzvxjN
しまった途中で送信しちゃった。
>A様
ツボでした! ごちそうさま!
272A:04/09/21 12:40:50 ID:Q54Aagyp
皆様感想をありがとうございました。嬉しいです。

>>268
 普通の時間軸だと話がだらだらしてまとまりにくいかな、と思ったんです。
 ちょっと裏目に出てしまったみたいです^^;
 でも、純粋に面白いと言って頂けて嬉しかったです^^ありがとうございました。

>>269
 うう、上の様な理由で時間軸行ったり来たりさせたら、読みにくくなって
 しまった様ですね^^; 大変失礼しました。
 内容はとにかく単純にエロを、と思ったので書いてる最中は幸せでした(笑)

>>271
 いえいえ!ツボと言うことは私と同じ嗜好ですね?
 良かったです。感想ありがとうございました^^
273名無しさん@ピンキー:04/09/22 00:07:43 ID:yuvCER0z
私は今回みたいなのの方が好きですね〜。

主人公の記憶がフラッシュバックしている様子が、まるで主人公が
「何でこんな事になっちゃったんだっけ・・・」なんて考えているようで。

その行為に没頭しつつも片隅で冷静な部分を残している感じが”女性”
らしくて凄くリアリティーを感じましたよ?

とてつもなくゴチでした。
いや〜、暫くおかずにさせていただきますw
274名無しさん@ピンキー:04/10/02 00:53:11 ID:JYgU49nL
定期あげ
275一歩手前みたいなw(1):04/10/03 12:36:43 ID:o7YMVBEE
現在の時刻は午後一時。家には夜まで誰も帰ってこない。沙織は睡眠薬入りの茶を飲んだために
ぐっすり眠っている。量も多くしたので夕方までは目が覚めないだろう。
自分の手にはポラロイドカメラが握られている。
ということで条件はすべて整った。沙織には悪いが、体を少し見せてもらうではないか…

自分はこれから行う行為に興奮してすでにあそこをパンパンにしていた。
もちろん沙織に処女をいただこうというのではない。そこまでしたら証拠は残るはなんやらで自分が
危険になってしまうからだ。
さあ、それでは始めましょうw
沙織は学校帰りで直でここまで来たのでもちろん姿は制服。季節は夏とあってブラウスからは中の
白い下着がうっすらと見えている。沙織はテニスをしていたせいか脚力はあるようで足は見事なまでに
ムチムチであった。これからそれらを自由にできると考えると自分のものもまた元気になったような
気がした。
276一歩手前みたいなw(2):04/10/03 12:37:17 ID:o7YMVBEE
まずは壁に寄りかかっている沙織を仰向けにして真上からポラロイドで一枚とった。
これは普通の姿をとっておく以外に衣服を元の状態に戻すための見本として残しておいた。
こんな興奮状態でそんな冷静なことが良く考えられたものだと今も改めて思っている。
ここで自分には3つの選択肢が用意された。顔か胸か下半身の3つである。
自分は順番に顔からやることにした。
手にしたポラロイドカメラを静かに置き、自らの顔を沙織の前に持っていく。
スースーと寝息を立てている沙織の鼻に頬を持っていく。頬に鼻息が触れるたびに自分の興奮度も
高まっていった。
そして沙織の唇に狙いを定めた。見るからにやわらかそうな沙織の唇はまるでゼリーのような艶やか
さを持っているようであった。
そして恐る恐る、自分の唇を沙織のものに重ねた。そしてそのまま沙織の薄い唇を自分の舌で開き中
に侵入していった。寝ているのもあって沙織の口内は歯でふさがれていたが自分は沙織に
ディープキスできただけでこの上ない満足感に浸ることができた。
そのまま10分ぐらい激しくディープキスをし、やっと自分は沙織から唇を離した。小説で読んだのと
同じように自分と沙織の唇は一本の唾液の糸ができて、そして切れた。
自分にとっても沙織にとってもこれは初キスだっただろう。沙織も満足してくれたことだろう。
続いて自分は胸に向かった。
277一歩手前みたいなw(3):04/10/03 12:37:43 ID:o7YMVBEE
沙織の胸は発育途中であったためにそんなに大きくなかったが、そんなこと自分には関係なかった。
自分は唾をひとつゴクっと飲み込んでブラウスのボタンに手をかけた。
プッシュ式のボタンだったためにボタンをはずすのは容易かった。
そして自分の目の前には白いブラを小さな胸に纏った沙織の姿があった。
自分は夢中になってポラロイドのシャッターを切った。
そしてゆっくりとブラの上から小さな丘を触ってみた。小さいながらも弾力があり、自分の男根を
そそった。ブラの上からその丘の突起を何回もつまんだり転がしたりした。
沙織も感じたのか時折甘い声を上げるようになった。
そして自分はブラをたくし上げて丘を露出させた。何回も転がしたせいもあってか、突起は大きく
なっていた。ここでポラロイドをとり3枚ほどとった。
そのまま胸をしゃぶりたかったが、あまりにも沙織が反応するので下手をしたら起きてしまうのでは
と思ってしまい、自分はそのままブラを元に戻してブラウスを着せてやった。
さあ、残すは下半身のみとなった。ここが自分の一番楽しみにしていたところである。
自分は沙織の両足を少し開き、その間に正座した。そしてゆっくりとスカートの裾を捲り上げた。
その中にはやはり純白のパンツをはいた沙織の股があった。
夢中でポラロイドを切った。といっても7まいぐらいである。
その後、一番やりたかったことを実行することにした。そう、股に顔を埋めるのである。
沙織の両足をもう少し広く開脚させ、自分の鼻をパンツの股へと押し当てた。
今までかいだことのない、温かくやさしい匂いが鼻を駆け抜けていった。
自分は顔を埋めたまま上からたくし上げたスカートを頭にかけてうつ伏せになって寝転んだ。
沙織の股はとてもいい香りがして、その上肉が柔らかく、このままずっとこの体勢でいたいと思う
ほど気持ちのよいものだった。
278一歩手前みたいなw(4):04/10/03 12:38:24 ID:o7YMVBEE
気が付くと30分くらい寝てしまっていた。時刻は午後五時。そろそろ沙織も帰らねばならない時間で
あった。自分は沙織の衣服の乱れが無いかどうか入念に写真とにらめっこしながら確認し、
確認し終わると、取った写真、そしてそれに用いた機器などをすべて片付け、沙織を起こした。
まだ薬が効いているのかやや眠たげであったが、帰りが遅くなると駄目なので何とか起こしてやった。
「ほら、早くしないと帰るの遅れるよ。」
「ごめんね。なぜかすごく眠たかったのよ。宿題もできずに終わっちゃった。」
「まあ仕方ないよ。ぼくのノート貸すから家で勉強しな。ノートは明日返してくれたらいいし。」
「ありがとう。本当にやさしいな。」
「いやぁ〜(赤面)」
そして沙織は身支度をして帰ることになった。玄関で
「そうそう、さっき変な夢みてたのよ」
「ん、どんな夢?」
「言ってほしい?」
「是非是非」
沙織は少々顔を赤らめて言った。
279一歩手前みたいなw(5):04/10/03 12:38:48 ID:o7YMVBEE
沙織は少々顔を赤らめて言った。
「私達結婚しててね、それで二人でいろいろしてた夢よ」
「・・・・・・・・・・・・・・」←唖然
「いろいろって言うのは考えてくれればわかると思うよ。」
「・・・もしかして?」
「んもう、わからないの?言うの恥ずかしいじゃない・・・まあつまりこういうことよ。」
そういうと沙織は自分の首に手を回し口付けをした。さっき自分がやったものとは比べ物にならない
くらい濃厚なディープキス。舌と舌が溶け合い、激しい息遣いが玄関を包み込んだ。
しばらくして沙織は口を離した。お互いの口と口に唾液のアーチを作りながら…
「わかってくれた?」
「は…はい。」
そういうと沙織は軽く自分に口付けて帰っていった。
自分は沙織の大胆さにその後5分程度その場に呆然と立ち尽くしていた。
その後自分は沙織の写真でさっきからずっと元気だったものを静め、床に付いた。
「…沙織を大事にしよう。うん。」
自分は心からそう思った。
280ぺぺぺまん:04/10/03 12:43:26 ID:o7YMVBEE
上の小説書きました…ほんまスンマソン…逝って来ます

;y=-(゜Д゜)・∵.ターン
281名無しさん@ピンキー:04/10/03 20:14:14 ID:HCHfgkTm
心情を→で示すとか()とかwで済ますってのはどうか。
エロも薄いと思う。男から見たにしてはずいぶん男の性的感情が
あっさりしすぎでは。
もっと濃厚に描いた方が面白いと思う。
282名無しさん@ピンキー:04/10/07 17:04:51 ID:fooNQ4rF
文才ないよ
283名無しさん@ピンキー:04/10/11 11:59:06 ID:4silvZVt
女の子しか感じない小説じゃなくて、
「俺が考える『女の子が感じる小説』」スレだろ
書き手が男ばっかり


284名無しさん@ピンキー:04/10/13 00:40:48 ID:NjNx9v08
書き手が男ばっかりなのは別にいいのさ。
285名無しさん@ピンキー:04/10/14 15:49:15 ID:kmXEh7eC
保守ついでに、コソーリ耳年増な童貞×処女とか激しくキボン。
愛が無くても仲良いのが見えれば萌え
286名無しさん@ピンキー:04/10/18 17:32:33 ID:MZaqY/fc
じゃあ、自分が書いてみたら?>283

287名無しさん@ピンキー:04/10/20 23:10:47 ID:2rQsnC3N
書き手さんの性別はどうでもいい。
でも、男性の書く物だと男がブサキモだったりオヤジだったり、
どー考えてもソレは痛いだろっ気持ちよくはないだろってのの
割合が多いのが困る。

AVみてても思うけど、痛くて声上げてるのをよがってると勘違いしてるんかなぁ。
288名無しさん@ピンキー:04/10/21 04:28:55 ID:bGtcv8gt
オヤジが相手は嫌とおっしゃいますが。青すぎます。
私的におじさまとの絡みは萌えシチュエーションです。


どー考えてもソレは痛いだろっ気持ちよくはないだろっての
>
うーん、このスレ普通に見てて、そう思った表現はなかったんだけどな。
前儀に力いれてるし、みんな。

AVとか、例に出してるけど私は逆に
美形でパーフェクトでテクニシャンで絶倫
男が出てくると、ありえなさすぎーとか思って萎えちゃうんだけどな。

でも、ハーレクィーン的展開が好きな人はそれがいいのかもね。
だから否定はしない。個人的に趣味じゃないだけだから。


289名無しさん@ピンキー:04/10/22 02:22:45 ID:yTOf0Rg7
>>287>>288
どっちも互いの感性押し付けてるだけやん。頭冷やせ頭。

ブサキモどころか間違いなく臭いそうなヲタに
汚されてみたいとかいうカキコならどっかで複数見た。
(自演という訳でも無かろう)
が、実際声は痛くて出る方が多い事も知ってる。
(気持ちいとウハウハ唸ってるだけという場合だって勿論ある)

ただハーレクイン的なモンだったら美しく激しく萌えさせて欲しいし
有り得ない位ぶっ飛んだ話だったら納得いくまでねっちり濃ゆく書いて欲しい
くっらい陵辱話なら…あんま女体を痛がらせたり醜くしたりしないでくらさい。

求めてるモンはそんなモンで無いか?
290名無しさん@ピンキー:04/10/22 13:28:20 ID:WT2ergFx
じゃあ、自分が書いてみたら
291名無しさん@ピンキー:04/10/23 04:27:05 ID:NsAfJMuF
否定はしないって言ってるじゃん。趣味は人それぞれだから
>298

後は同意できる。

292名無しさん@ピンキー:04/10/23 07:50:40 ID:tt9aKQlS
298は291の同意できるような事を書くように。
293291=288:04/10/23 17:17:56 ID:NsAfJMuF
うおっ突っ込まれてはじめて気がついた。289あてですた・・・・・


鬼畜陵辱もハーレクィーンも
ありえなさ度では一緒だなと思う。

おんなのこの感じるえっちな小説も
女の数だけ、色んな趣向のものがあるわけで
294名無しさん@ピンキー:04/10/24 21:11:23 ID:DGwN1ta8
そうだね。
世の中「犯されたい」願望ある人だって
SとかMの性癖持ってる人だっているんだから、
「おんなのこ」の感じる、の一言で纏めることはできない。
ただ、傾向として、>>1にあるようなことが言えるってだけ。
295名無しさん@ピンキー:04/10/26 12:51:15 ID:xmiatnD1
自分も>288にほぼ胴衣
296名無しさん@ピンキー:04/10/30 01:57:09 ID:p0SQa3sP
>>294
コレは同意だな。見落としてたよ
…ただ、お下品系はとことんまでギャグに走ってくれたら
個人的には許せる、場合がある
伏字では無くて超うさん臭い当て字とか
そういう小ネタで笑いつつ萌えてみたい
297 ◆M/CJRioWes :04/11/05 15:34:53 ID:zEkqCKEp
記念マキコ♪
298名無しさん@ピンキー:04/11/05 23:21:59 ID:YEAJLV9f
皆さんは一人称と三人称、どちらの小説(エロ部分だけでも可)が好きですか?
299名無しさん@ピンキー:04/11/05 23:42:59 ID:s5K5TSOD
人の好みより、自分の書きたいことに合った人称を選んだら?

300 :04/11/08 20:06:36 ID:KcQICBfk
301名無しさん@ピンキー:04/11/16 23:38:04 ID:kbar6L62
>>73-97
女ですが、377さんの「白衣×白衣」凄く面白くて、何度も読み返してる。
続きを切実に希望。
302名無しさん@ピンキー:04/11/17 22:50:08 ID:4T1kzkih
漏れはさくらと大輔を切実にキボンヌ。めちゃくちゃ好きですよ
303名無しさん@ピンキー:04/11/17 23:02:56 ID:drJdVBAN
毎回じゃあじぶんで書いたらってコメント入れてるのって、同一人物・・・?
304名無しさん@ピンキー:04/11/18 14:42:11 ID:5kseShTF
漏れもさくら大輔キボンヌ
377さんは個人HPないのでしょうか
ないなら作ったりはしないのでしょうか
作ってほしいなと言ってみる・・個人的なことでスマソ
305377:04/11/19 14:49:11 ID:4243qfke
お久しぶりです。投下します。
今回もなんか、変な話です。
306シンデレラ(に近い話) 1/29 :04/11/19 14:51:13 ID:4243qfke

「ちょっと!アンタ私のドレスどこにやったのよ!!」
 どすどすと、これからドレスを着ようという割には少々お下品な足音を立て、
少女が怒鳴り込んできた。
 怒鳴られたのは、粗末な服を着て床を磨いていた少女だった。その少女は、ち
らりと見上げると、舌打ちをして。
「うるっせぇなあ…お前、自分の服くらい自分で管理しろよ。だいたい、準備は
前日までにしとくもんだろ?そんなだから食ってる飯も落とすんだよ、この縦ロ
ール」
「うっ…うるさいわね!それとこれとは関係無いでしょ!手首釣りやすいんだか
ら、御飯茶碗落としちゃうのよ!!あと縦ロールも!!」
 ぎゃんぎゃん喚く少女に溜息をつくと、立ち上がり手をエプロンで拭く。そし
てすぐ側の部屋に入ると、すぐに着られるようにしてあるドレスを手に戻って来
た。
「ほれ」
 差し出したドレスをひったくると、少女は顔を真っ赤にして、後ずさる。そし
て、小さな声で『ありがとう』と言って、行ってしまった。
 そんな少女を見て、つい口の端が上がる。
 ワガママで意地っ張りで、ちょっとお馬鹿な義姉を、少女は嫌いではなかった。


「…あらあら、ごめんなさいね、素香ちゃん。いつも淡路ちゃんが心配掛けて」
 そう言いながら、すんげー綺麗な女性が、綺麗なドレスや装飾品を見に纏い、
がっちり化粧も決めて、階段を下りて来た。
「…そういう義母さんこそ、用意早過ぎちゃいますか?舞踏会夕方っすよ?」
 ぺん、と義母に突っ込む。ルーズな娘に用意周到にも程がある母親。
307シンデレラ(に近い話) 2/29 :04/11/19 14:51:53 ID:4243qfke
「うふふ、私だいぶうっかりさんだから、早めに用意しちゃったの」
 少女―――素香は時計を見る。1時半。ちょっと、溜息をつく。
「でも、本当にいいの?素香ちゃん」
「ああ、いいんですよ。私人込み苦手ですし、あんな所でキッツイドレス着てう
まいもんちょっとしか食えないより、家で丼飯食ってた方がいいですから」
 からから笑うと、義母もそうねぇ、と笑う。
「まぁ、お出掛けするのも確か4時半くらいからでしょう?それまでドレス汚れ
ないようにじっとしてて下さい。ほら、バケツもそこにありますから…」
 そう言って、可愛い義母を押し遣る。微笑を残して、義母も行ってしまった(て
か、行かせた)。
 ちなみに、この天然ボケにも程がある義母も、嫌いではなかった。


 あの2人と、素香に血の繋がりは無い。父親の再婚相手である。
 綺麗な服を着る2人に対して、服装が粗末なのは家事を一手に引き受けている
から。そもそも少々完璧主義な所のある素香は、常々このでかい家に何人もいる
割には色々な所で緩い使用人の皆さんに不満を抱いていた。
 こんなんに金払うくらいなら、全部自分でやったらぁ!と判断して今の状態で
ある。お金も浮くし、給料として貰ってる大分大目のお小遣いだって全使用人の
給料と比べると微々たるものだ。
 そんなこんなで、素香はそれなりに幸せな生活を送っていた。

「じゃあ、行って来ますよー」
 掃除を終えて、買い物に行く。流石に外に出る時はそれなりの格好をして行く。
必要なもの買って、ちょっとお菓子とか余計なもの買って、でもって、最後に知
り合いの店に寄る。いつものパターンだ。
308シンデレラ(に近い話) 3/29 :04/11/19 14:52:30 ID:4243qfke
「オッス。繁盛してるか水野?」
「当たり前だ、俺様の店だぞ」
 そう言うと、ガラスのケースはもう空になっている。昼のピークも過ぎていた
し、この遣り取りもいつもの事だ。
「で、一番最初に無くなったのは?」
「今日は卵だった。焼きソバだと思ったのにな…ほれ」
 そう言うと、袋に入ったアゲアンパンを投げ渡される。備え付けの小さいテー
ブルに、苺牛乳を置くとキャップを開けた。
 毎日、一番最初に売り切れるものが何かを対象に賭けをしている。買った方が
アゲアン・苺牛乳を独り占め出来る。因みに今現在の勝敗は216勝222敗6
09引き分けで素香が負けている。お互いギャンブル運は無いと思われる。

「おいしい」
「だろうな、俺様のパンに篠子おばちゃんの苺牛乳だぞ、マズイ訳が無い」
 そう断言する。その自信もどっから来るのだろうか。
「今日は、もう閉店だな…今日は舞踏会だからな」
 そう言うと、鍵を閉める。売る品物も無いし、店主だからそこら辺の匙加減は
自由だ。
「お前どうすんの?」
「行かねー。めんどくせー。そんな事より行った義母さんが見初められないか心
配だわ。家での最萌王は間違い無くあの人だぞ」
 と、ちょっと本気で言った。水野も、その考えには同意する。暫く笑った後、
ふとちょっと思い付いた、下らない考えをそのまま口に出した。
「でも、お前だって玉の輿に乗れるかもよ?今夜の舞踏会、もう漏れてるけど王
子の嫁探しなんだろ?お前割と可愛いし、なんかマニア受けしそうだから、確率
1/65536くらいで見初められるんじゃね?」
309シンデレラ(に近い話) 4/29 :04/11/19 14:53:01 ID:4243qfke
「どっから出てきた、その数字」
 そう言いながら、少し拗ねる。
「お、拗ねよったか?」
 ショーケースからテーブル側に回って、素香の顔を覗き込む。その顔が、余計
に腹立たしい。
「拗ねるか、貴様なんぞに」
 身体ごとそっぽを向く。うぢゅー、と頬にキスをされると、ちょっと鳥肌が立
つ。手が、胸に伸びて来たから、おもっくそつねってやった。
「っだぁあああっ!?」
「何だお前!?お前はどうしたいんだ!?」
 立ち上がり、蹴りを入れる。水野は割と簡単に転がった。立ち上がり、鍵を外
して店を出る。勿論荷物は持って。
「ちょっ…素香!?」
 呼び止める声を完全に無視して、走った。


 …ふざけんなふざけんなふざけんな…!!
 どすどすと、さっき義姉がしていたような歩き方をしながら、必要以上に心の
中で呪詛を唱えていた。別に、100%冗談だってわかってる。だけど、そんな
事言いながら真っ昼間から変な事しようとしたのが、ちょっと許せなかった。少
し、セックス自体に恐怖感があるのもあったが。

 一応、素香と水野は恋人関係にある。小さい頃からの知り合いで、1年程前、
即ち素香の実母が急な病で死んでしまったのがきっかけで、なるようになった。
 今までに3回、抱かれた。でもって3回、失敗した。失敗というよりも、素香
が快感を得られなかったという話だが。
310シンデレラ(に近い話) 5/29 :04/11/19 14:53:54 ID:4243qfke
 …もしかして、捨てられるかもしれない。大分本気で考えていた。少々ズレる
が、離婚の理由の上位に性の不一致が多いとよく聞く。

 …好きなのに。水野の事、お父さんとかお母さんと同じくらい好きなのに、な
んで私の身体は水野を受け入れてくれないんだろう。
 自分が情けなくて、恥ずかしくて、涙が出て来る。
 水野は、そういった事で素香を責めた事は1度も無い。が、自分も責めない。
仕方ない、次はきっと上手く行く、と励ましてはくれるが。
 視界が霞んで、つまづきそうになりながら、家路を急いだ。こんな顔、誰にも
見られたくなかった。

 家に帰った時、淡路に見られて、何か言っていたような気がしたが、それも聞
かなかった。部屋に閉じ篭って、布団の中に入った。
 数時間後、義母が様子を見に来たが、大丈夫という事を伝え、舞踏会に行かせ
た。食欲も無かったので、そのまま寝る事にした。


 ―――コツ、コツ。
 微かな音で、素香は眼が醒めた。時計を見ると、もう6時を過ぎていた。季節
柄夜になるのが早いので、もう真っ暗だった。明かりは、空に浮かんだ満月のみ。
 その光が差し込む窓の外に、フード付きのマントを被った人間が、いた。
 別に、驚きはしなかった。むしろ、うんざりした。でも、ちょっと嬉しかった。
 窓を開けて、一言。
「…お前、誰だ」
「……魔法使いです」
 暫く黙った後、マント男は言った。
311シンデレラ(に近い話) 6/29 :04/11/19 14:54:28 ID:4243qfke
「用は無い、帰れ」
 窓を閉めようとすると、慌ててマント男改め魔法使いは止めた。
「まっ…待てよ!俺だよ!!な、悪かった!悪かったから…許してくれよ」
 あっさり正体を表す水野。元からわかっていたので、すぐ部屋に入れた。
「てか、ここ何階だと思ってやがる」
「3階だろ?」
 平然と言い放つ魔法使い改めパン屋。普通に訪ねてくればいいのにと苦笑する。

「…怒って、ないか?」
「いや、それ俺のセリフ」
 手を振って、真面目な顔をする。
「だって、理不尽だろ、私の態度」
「いや、でもお前があんなに感情出すっての珍しいし。俺の言葉自体に腹が立っ
たとも思うし、違う事情で不安定になってたら、心配だし」
 …とまぁ、恥ずかしい事をさらりと言ってくれる。素香は、勝手にベッドに座
った水野の隣に座ると、ぴと、とくっついた。
「…ごめん、ガキで」
「いいって。俺様お前より4つも年上のお兄様なんだからよ。ほれ、呼んでもい
いぞ、お兄ちゃんって。兄ぃでも兄くんでも兄貴でもいいけど」
 肩を抱き寄せて、水野は調子に乗った。勿論素香は呼んでやらなかった。が、
代わりに。

「……して」
 そう、呟いた。そのまま恥ずかしくて水野の胸に顔を埋める。
「痛いって言わないし、我慢するし、泣かないから…」
 素香は顔を胸に押し付けながら服のボタンを外すという器用な事をする。
312シンデレラ(に近い話) 7/29 :04/11/19 14:54:58 ID:4243qfke
「…お前、どうした?熱でもあるのか?」
 流石に不審に思ったのか、ボタンを外す手を止めて、額に手を当てる。
「素香、お前なんでするかな、そういう事」
 呆れて、水野は素香を抱き締める。抱き締める力が強すぎて、逆に痛い。

「本気でなんかあったのか?そんで俺に縋ろうとしてる訳?は?何が我慢するっ
て?俺は、自分の女ひとり満足させられないってお前もじっとり認めてるな」
 半分キレた口調で、マシンガンの如く喋る。
「…お前さ、言ったろ?俺はお前の味方だって。なのになんで俺の事まで怖がる
んだよ。そういうのされると、マジへこむわ。いや、マジで」
 ばっしばっし背中を叩く。地味に痛い。水野が優しくしてくれた事もあって、
簡単に涙が流れてしまった。


「…って、いつまでも、初めての時みたいな反応しか出来なくて」
 しばらくお互いそのままでいた。沈黙に耐え切れず、素香はぽつぽつと喋り出
した。
「いつもいつも、水野に気使わせて、怖くて、痛くて、いくら水野が好きでいて
くれたって、このままじゃ、駄目になっちゃう気がして…」
 鼻を啜りながら、言った。言いながら、自分が情けなくて、泣けて来た。水野
は素香の顔を上げさせると、とりあえず鼻を拭いた。まずそれからだ。そして、
少し荒れた口唇を舐めて、口付けた。
「好きだ」
 頬を擦り合わせて、頬にも口付ける。
「…俺が、下手なんだよ。俺だって、ガキの頃からお前が好きだったから、お前
が初めてだったし、ホントは、どうしていいかよくわからなくて、だからだ」
313シンデレラ(に近い話) 8/29 :04/11/19 14:55:30 ID:4243qfke
 いつもは強気なのに、情け無い表情をして、溜息をつく。けして言いたくなか
ったであろう言葉を言ったのは、他でも無い、誰よりも大切な素香をこれ以上泣
かせたくない一心である。
「だから、とりあえず能力値上げる為にちょっと街角で立ってる綺麗な姉ちゃん
の所にお金持って行って来る」
「はぁ!?」
 …これまた、素香には本気か冗談か見抜きにくい冗談をかます。が、怒れるく
らいにまでなったのだからいいか、と弁明せずに素香を押し倒す。ボタンを外し
た服から、チラチラと乳とかがさっきから見えていたのだ。ここまで来て、何も
しないで帰るというのも、哀しい。素香もそれがわかったのか、元から抱いて貰
うつもりだったので、抵抗はしない。
「…して?」
 今度は、少々控えめに、誘う。
「させて下さい」
 ちょっと違う返事をした。
 それを合図に、素香はさっさと服を脱いでしまった。ちょっとだけ、素香はこ
ういうムード作りが足りないと水野は思う。が、全裸で自分を見上げる自分の彼
女がいて欲情しない男はきっといない。ここのポイントは『自分の』という所だ。
「脱げ」
 さらりと漢らしく、言って来た。更に、脱がせようとする。あ、と思い水野は
自分のマントをすっぽしと素香に着せた。裸マントだ。
「え、なに?なんだこれ」
 首を傾げる素香。ただ単に萌えたくてしただけの事だ。そして、それを見てひ
とつの決断を下す。後で洗濯すればいいか。
「あのさ、素香、このままするぞ。寒いから風邪引くと悪いし(←建前・本音:
なんか萌えるから)」
314シンデレラ(に近い話) 9/29 :04/11/19 14:56:01 ID:4243qfke
「…あ、ああ、わかった」
 妙に眼に力を感じて、それ以上は触れなかった。

「水野は、寒くないのか?」
 服を脱いで、自分に覆い被さって来る水野に、素朴な疑問をぶつける。寒くな
い、と囁いて、そっと胸を触った。
 胸は、ちょっと薄い。まだ大きくなるだろうと思いながら、両手で寄せて上げ
てみる。くすぐったいのか、眉を顰める。
「…お前さ、俺にどうされると気持ちいい?」
 普通に進めたら、今までの二の舞になる気がして、とりあえず聞いてみた。
「え、え―――と、なんだろな。っと、キス…は好きだし、あの、中、入るまで
なら…水野のしてくれる事、大抵気持ちいい…と、思う気がする」
 哀しいような、嬉しいような事を言う。大分貧弱な腰周りを撫でると、くすぐ
ったそうに笑った。そもそも、素香を抱いたのは少し早過ぎたかもしれない。そ
んな事すら、思ってしまう。
「んっ…くすぐったい」
 そう言いつつも、少し頬を紅潮させて呟く。細い身体をくねらせて、顔を背け
る。外気に晒されて固くなった乳首を、ちいさな乳房ごと口に含む。少し、冷た
かった。
「っう…」
 暖かな口の中で、冷たくなった胸が溶かされるような感覚。もう片方は冷たい
まま指で摘まれ、少し痛みを感じてしまう。
「水…野…」
 呼吸を荒くしながら、水野の頭を抱こうとする。いつもより怖くないのは、水
野の匂いのするマントを羽織っているせいだろうか。
 ふと、水野が顔を上げる。眼が合った。なんだか、気恥ずかしかった。
315シンデレラ(に近い話) 10/29 :04/11/19 14:56:39 ID:4243qfke
「なんか、今日は怖くない」 
 手を伸ばすと、両方握ってくれた。嬉しくなった。
「そりゃ良かった」
 ある意味、心からそう思う。無性にキスしたくなって、しながら抱き締めると、
素香も応えてくれた。前は縋るようにしがみつくみたいだったのだが、今日は何
かが違う。
 …正直、水野も不安だった。愛しい素香に、苦痛しか与えられない事。怖がら
せている事。年上なのに、守りたいと思うのに、結局は自分だけが(身体の上で
は)満足している事が、悔しくて、哀しかった。
 今日は、素香に救われてる気がした。こう考えている事を全て素香に話したら、
確実に鼻で笑われると思うが、少しでも気持ちを伝えたくて声に出そうとした。
「素香、愛しちぇる」

 …………
 暫くの、沈黙。大事な所で、水野は噛んだ。本気で、泣きたくなって来た。あ
ーあ、あーあ。笑われる。素香はお構い無しに笑う。完全にへコんだ。
「うい。私も愛しちょる」
 …いらん気を利かせてくれた。
 とりあえず、無かった事にした。

「…明日は、どっち?」
 愛撫、というよりもお互いじゃれあっていると言った方が正しいだろうか。楽
しい雰囲気の中、ふと素香は呟いた。
「んー…街のみんなは今日うまいもん食ってるだろうから、高級嗜好になってる
と予想して…一番高いチーズハンバーグか?」
「そ?私は逆に質素に行こうと思ってショボさNO1のハムカツかな」
316シンデレラ(に近い話) 11/29 :04/11/19 14:57:51 ID:4243qfke
 月明かりに照らされて、いたずらっぽく笑う素香は、やっぱりマニア受けの可
愛さかもしれないと思う。この顔が苦痛に歪むのがたまんない人間もいるだろう。
が、水野は普通に感じさせて、善がる顔が見たい。ただ、こうやって裸で抱き合
っているだけでも…正直、まあいいかと思ってしまう部分もある。いや、やりた
いのはやりたいんだけども。
「ん…ちょっとごめん」
 不意に、素香は水野から離れてベッドを降りる。向かった先は部屋の隅。ちー
ん、と鼻をかむ音が聞こえた。

 …っとに、こいつは…
 はぁ、と溜息。普通に戻って来る素香に若干むかつきを覚えてしまう。
「…お前よぉ」
 後ろから抱き付き、梅干を喰らわす。いだだだだっだだ、とこの場にそぐわぬ
声を上げる。
「いってぇ…なんだよ、なんでこげん事すっとばい!!」
「自分で考えろよ!!」
 髪の毛をぐしゃぐしゃにして、また溜息。いい加減自分も本当に寒くなって来
たので、子供体温+マント付きの人間暖房器具を抱き締めた。
「素香、お前あったかいなぁ」
「どこ触ってものを言ってんだ、お前」
 両手で乳房を掴み、揉む。もうじゃれるのはお終いだ。気が変わった。耳朶を
後ろから口に含むと、ぶわっと鳥肌が立った。声も出ないくらいに。
「やっ…くすぐ…ってか、なんか変だ…」
 ぷるぷる震えながら、抗議の声を上げる。どちらかと言うと嫌悪感が強そうだ。
 それを無視して、舌を耳朶から、首筋まで這わせる。素香は恐怖からか胸を揉
んでいる腕を力無く握る。その手を逆に水野は掴み、下腹部へと滑らせる。
317シンデレラ(に近い話) 12/29 :04/11/19 14:58:23 ID:4243qfke
「自分で触った事、あるか?」
 耳に息を吹き掛けるように囁く。力無く首を横に振った。
「わっ」
 足の付け根にまで手を置かせる。自分は、躊躇せずにそこに触れた。ぬるつい
た感触。今までで身体もあったまっていたのか、僅かだが濡れていた。
「脚、開け」
 言うが早いか、素香は素直に開いた。
「どうすれば気持ちいいかは、わかるよな」
「…触ればいいんだよな?」
 …半分正解、半分間違いな気がしないでもない。素香にこういう場面で質問す
る方が間違いだと判断して、そっと手を伸ばした。
「あ」
「あ」
 ぺと、とお互いの手が触れ合った。本とかお菓子を取る時ならともかく、こう
いった時にこうなるのは…珍しい気がする。
「…水野触るの?自分でやれって事かと思った」
「いや、あの、俺だってそこまで鬼畜じゃ…」
 考えてもいなかった大胆発言で、正直頭の中が大パニックになる。余裕が無い
のは、お互い様だ。とりあえず素香をえいやっ、と寝転がせると、がばっ、と抱
き締めた。もう、どうしていいか水野本人もわからなかった。
 おろおろしながら素香を見る。がっつり眼が合った。きっと、今の自分は超絶
カッコ悪いんだろうな、と思った。

「…続き、しないのか?」
 とまったままの水野に、素香は尋ねる。その表情は、不安そうだった。
「…っ…すっ、するよ。そら、するわ」
318シンデレラ(に近い話) 13/29 :04/11/19 14:59:02 ID:4243qfke
 不安にさせたくない。そう思うのに、自分自身が一番不安になっている。こん
な奴が、安心させられる訳が無い。本気で泣きそうになった。
「っ…泣くなよ、お前が悪いんじゃないだろ?悪いのは―――」
「おっ…お前じゃねぇよ!」
 つい、語気を荒げてしまう。びっくりして、素香は萎縮してしまう。余計に、
水野も焦ってしまう。違う、こんなんじゃない、こんな顔させたい訳じゃ無いの
に―――思いばかりが募って、余計にこんがらがってしまう。
 自分の頭をがっしゃがしゃにして、どうにか落ち着かせようとする。中々上手
く行かない。早く、早くしろと自分で自分を蹴り倒したい衝動に駆られる。が、
次の瞬間、思考が停止した。

「あ!そうだ!!」
 と、素香がいきなり叫んだからだ。
「いい事思い出した。ちょっと待ってて」
 呆気に取られている水野を残して、素香は裸マントのまま部屋を出て行く。ぱ
たぱたとスリッパを履いた足音が遠ざかって行き、暫くしてまたぱたぱたという
音が大きくなって来た。そして、ばん、とドアを開ける。
「こういうのがあるんだけど」
 そう言うと、何かの液体が入った瓶を水野に手渡した。水か何かと思ったが、
瓶を振っても中の液体はあまり動かなかった。
「なんだこれ?」
「わかんない。けど、お父さんが義母さんの身体とかあそことかに塗ってからや
ってた。なんだか凄く気持ち良さそうだったの思い出したから持って来た」
 ほー、と水野も納得する。中に入っていたのは、ローションだった。ナルホド、
これを使えば濡れにくい素香でも大丈夫だろう。痛みも大分和らぐ。
「よっしゃ、いい子だ。よく思い出し…」
319シンデレラ(に近い話) 14/29 :04/11/19 14:59:33 ID:4243qfke
 そこまで言って、水野は顔を引き攣らせる。ひとつ、とても大事な事を今、聞
き流した事に気が付いた。
「…お前、覗いたのか?…親の性生活…」
「うん。参考になると思って。お父さん帰って来たら必ず毎日最低2回は連続で
やってるから」
 事も無げに言い放つ。思い切り脱力しながらも、ローション持って来た事に親
指は立てる。早速蓋を外し、手に取って見る。どろどろ具合を見て、ささっとマ
ントを外す素香。
「どうした?」
「いや、洗うの大変だよ、つくと」
 うんうん、と頷きながら水野の手を凝視する。寝なさい、と何故か妙に恥ずか
しくなってそう言ってしまった。
 素香は素香でどこをどうされるかわからないから、ある意味ドッキドキである。
 ただ、さっきの水野の慌てっぷりが、あまりにも可愛くて。あんなになるくら
い、自分を好きでいてくれるんだと実感出来たから、水野より不安は無い。だか
ら、余裕が出来てローションの事を思い出したのだ。 

「つめたい…」
 いきなりもう股座に手を突っ込まれた。本人にしてみれば、変としか言いよう
の無い感触で、撫で回される。
「いっ…っ!?」
 びっくりする。冷たい、と思っていた筈なのになんだか、熱くなったような気
がする。いや、気のせいかもしれないけど。
「ちょっ…まっ…まてまてまてっ…!!」
 素香の膣中に、指が驚く程するりと入る。本気でびっくりして声を上げるが、
これ以上待てるかとばかりに無視した。
320シンデレラ(に近い話) 15/29 :04/11/19 15:00:05 ID:4243qfke
「…すげー」
 ぽそ、と感心して呟く。滑りで簡単に指が入って、面白いくらいに指を行き来
させる事が出来る。そうすると、奥の方から溢れて来て、余計濡れて行く。
「すげ…じゃ、ねぇよっ!やめ…待って…」
 熱くて、堪らない。水野の指が動く度に溢れて、お尻が塗れる。指が増やされ
ると、初めは痛みを覚えたものの、すぐに受け入れた。頭がボーっとなって、真
っ白になるような感覚なのに、ぐちゅ、ぐちゅ、という卑猥な音だけははっきり
聞こえる。
「っ…あ…っ…か、馬鹿っ…やっ、ああっ!」
 喘ぎ半分、悪態半分といった所か。こんな反応は―――というか、こんな時に
元気な素香は初めてで、妙に興奮する。指の動きに合わせて、少しずつ腰を動か
す様は、全然知らない女を見ているようだった。
 もっと、苛めてやりたくなる。大事にしたいと思う気持ちとは別に、そんな気
持ちが生まれる。
 ―――粘膜で平気なら、口に入っても害は無いよな?
 一瞬考えて、すぐ実行に移す。ローションに塗れて、充血して膨らんだクリト
リスを舌先で突付く。
「やぁあっ!?」
 びく、と素香の身体が仰け反る。ぎゅっ、と指が締め付けられる。その反応を
見て、我慢が出来なくなる。既に、自分自身も勃起して、痛いくらいだ。
「素香っ」
 羞恥か、快感か、どちらで泣いているのかはわからないが、今は構っていられ
なかった。蕩け切った膣口に己のものをあてがうと、素香が何か言ったような気
がしたが、聞こえない振りをした。
「嫌―――っ…!」
 素香の事を何も考えず、挿入する。瞬間、引き攣った声がした。
321シンデレラ(に近い話) 16/29 :04/11/19 15:00:34 ID:4243qfke

「―――あ」
 それで、我に返った。自分の下で、素香が顔を真っ赤にして、歯を食い縛って
いる。何度も、見た顔。異物感に慣れる事も出来ず、ただ小さい身体に突き刺さ
っているとしか認識できない、一番大切な女の子。

『痛いって言わないし、我慢するし、泣かないから…』 

 ―――そう言った素香に、自分はどう答えた?
 

「っ…もう、やだ…最悪だ…」
 ただ耐えてるだけの素香の上で、自己嫌悪に陥って、呟く。
 なんでだろうか。なんで、あれだけ失敗して来たにも関わらず、また同じ事を
繰り返すのだろうか。
「ごめんな、俺、またお前にばっか辛い思いさせて…」
 面白いくらいに涙が零れた。馬鹿だ、馬鹿過ぎる。
「今、抜くから」
「…動くな、痛い」
 動こうとした水野に、素香は舌打ちして、だるそうに言った。
「しばらく、このままでいろ」
 ぎゅっ、と水野を抱き締めて、頭を撫でた。慰めてくれているのが丸わかりで、
水野はうん、と頷いて、素香を抱き締めた。

「ごめん」
 何度目かの『ごめん』を、水野は言った。
322シンデレラ(に近い話) 17/29 :04/11/19 15:01:09 ID:4243qfke
「いいよ、あのさ、本当はそんなに痛くなかった。少なくとも前よりは」
 ただ、びっくりしたのがでかかったくらいで、痛いのは前回の6割程度だ、と。
「6割なら充分じゃねぇかよ…」
 フォローされればされる程に情けなくなって来る。がっくりし続ける水野に対
し、素香は妙にスッキリしている。

「なぁ、水野は私としてて気持ちいい訳?」
 とりあえず、一番気になっていた事を聞いてみた。水野の様子を見て、ある程
度はわかっているのだが、一応。
「へ?あ、あー…ああ。そりゃな。気持ちいいけど…ごめんな、俺ばっか」
 今現在だって、それ相応に。結局素香には中途半端にしか出来なかったから、
余計情け無い。
「じゃあいいや」
「は?」
 なにがだ?俺との付き合いか!?
 冷や汗を垂らしながら、素香を凝視する。
「いや、好きでいてくれるのはわかったけど、私とするの、全然気持ち良くも楽
しくもないんじゃないかって思ってて…でも、取り越し苦労か」
 自分でこれだけ痛いんだから、突っ込む方だって痛いんじゃないかなー、と。
ちょっとだけ心配だった。
「それにさ、私お前より下じゃんか。しかも4つも。けどさ、コレに関しては同
じだなって思うと、嬉しい」
 にへー、と笑う。その笑顔は、物凄く可愛かった。険が全く無い。
「俺は、ちょっと複雑」
 苦い表情で、額に口付けた。

323シンデレラ(に近い話) 18/29 :04/11/19 15:01:41 ID:4243qfke

「…もう、いいよ、動いても」
 大分、異物感にも慣れた。今なら、ゆっくりだったら痛くないと判断した。
「いいのか?別に無理しなくても」
「いいよ、動け」
 …命令されてしまったので、そうする事にした。ゆっくり、ゆっくりと動くと、
やっぱり少しだけ眉を顰める。我慢出来ない程ではないけど、ちょっと引き攣れ
るような、そんな感じの、少しだけの痛み。それも、少しずつ消えて行く。

「っ…」
 不意に、ぞく、と鳥肌が立った。この感覚は、知っていた。ついさっき、指で
されてた時みたいな。
 ―――もっと、して欲しい。
「みず…」
「素香っ!」
 その事を伝えようとした瞬間、先に水野が素香の名を呼んだ。そして次の瞬間。
「…あ」
 自分の身体に、熱い感触。
 …終わっちゃったんだ。ほんの少し、がっかりする。

 最後に少しだけ感じる事が出来ただけでまぁ…良しとするか。そう、自分を納
得させた。



「帰るの?」
324シンデレラ(に近い話) 19/29 :04/11/19 15:05:09 ID:4243qfke
 身支度をして、堂々と玄関から帰ろうとする。
「まぁな。明日も仕事だし、お前一応お嬢様だから」
 そう言いながら、キスをする。
「…明日も来いよ、待っててやるから」
「ほざけ」
 蹴り真似をして、笑った。
 今も昔も、変わらない。けど、今は恋人同士だ。
「好きだよ、素香」
 いきなり、水野が真面目な顔になる。
「え、あ…あー、私も」
 好き、と言おうとしたその時だった。
「あれ?アレって淡路じゃね?」
 言われて、振り向く。確かに、門から玄関に向かって走って来るドレスを着た
縦ロール。見間違う筈も無い。義姉の淡路だ。よく見ると、淡路は―――

「どうした?」
 淡路は顔を真っ赤にして、泣きそうだった。しかも、よく見ると靴を片方しか
履いていない。どういう事だ?
「なぁ、何かあったのか?義母さんは―――」
「うるさいわねっ!アンタに関係無いわよっ!!」
 ―――うわ。
 昼間の再現かと思った。となると、これ以上は何を言っても無駄かと思われる。
実際、さっきの自分がそうだったから。
「…まぁ、いいか。マジでなんかあったら義母さんが…あ、義母さんだ」
 淡路を追っ掛けるように、義母が走って来た。フォームめっちゃ綺麗なのが逆
に怖かった。
325シンデレラ(に近い話) 20/29 :04/11/19 15:05:53 ID:4243qfke



 結局、一晩経っても淡路は部屋から出て来なかった。ので、ほっておく事にし
て素香は買い物に出掛けた。いつものように買い物をして、最後に水野の店『小
林パン』に向かう。そのつもりだった。が、その足取りが止まった。
 …前方から、なんかおかしい奴が来る。おかしいってか、もう既にヤバい。服
装は普通なのに、変な仮面付けてる。仮面舞踏会とか…そう、昨日やってた舞踏
会でなら、まだなんとかなったと思うけど、街中ってのは、異常だ。ていうか、
もうマジで怖い。だって、隣に立ったら確実に仮面当たるでかさだし。周りの人
も完全に避けている。あの、海がなんかゴバーと割れるアレみたいだ。絶対、係
わり合いになりたくない。
 それなのに素香は避けれなかった。何故かと言えば、奴が手にしているものに
ものっそい見覚えがあったからだ。

 …なんで、アレをあの不審者が持ってんだ?
 頼む、見間違いであってくれ。マジで。神よ、ゴッドよ、現れたまえゴーレム
よ。あれが、私のアレじゃない事を、心から祈る。

 ―――お母さんの形見の、なんか珍しい宝石の付いてる、靴…!!
 嫌だけど、もし自分のだったら取り返しがつかない。ていうか、あんな奇妙な
デザインの女物の靴で26cmサイズなんて、悪いけど世界にひとつしか無いと
思う。意を決して、不審者が路地裏に入った所で、声を掛けた。

「―――ちょっと、イイデスカ?」
 とりあえずおっかないので、下手に出た。
326シンデレラ(に近い話) 21/29 :04/11/19 15:07:19 ID:4243qfke

「なんだ?お前」
 …態度は悪い。年は…物凄くわかりにくいけど水野と同じか、少し下程度か。
「あ、あの、その手に持ってる靴…」
 つ、とまで言った瞬間、不審人物は思い切り仮面を取った。思い切り良すぎて、
羽とか当たった。痛い。
「…わ」
 ほーほーほー、これまた上玉だこと。顔は合格。ただ、持ち点100点で、顔
で+100点。しかしこの仮面を選ぶセンスと着けて街中歩けるキ○ガイっぷり
で軽く−1120点取れる。素香は一瞬で合計−920点を弾き出した。
「もしかして、これはお前のか?」
 ずずい、と靴を私に突き付ける。珍しい宝石の付いた、26cmの、私にぴっ
たしな靴。中敷を捲ると…見慣れた自分の字で『村越素香』と書いてある。
「…私のだ。ちょっと、なんでコレをお前が持ってんだ?コレは私の部…」
「Hey!見つけたぜ野郎共!!連れて帰れ今すぐ挙式だ!!」
 そう、理解不能な言葉を言った後、どこにいたのか十数人の男が素香を取り囲
む。なんか、変な箱に詰められて、運ばれる事になった。

 …もしかしなくても、これって…拉致…だよな?


『助けてーーーーーーー!!ギィャーーーーー!!殺されるーーーーーー!!』
「ちょっと、この子すげぇ人聞き悪いぞ!!」
「もー!早く連れてけよ!てか気付けよ、靴の持ち主ならそこのアンポンタンと
昨日踊った筈だろ!?」
 …は?
327シンデレラ(に近い話) 22/29 :04/11/19 15:07:53 ID:4243qfke
 昨日、といえば…朝起きて、掃除して、買い物して、水野に会って、拗ねて寝
て、水野と…まぁ、あの、ナンダカンダやって。
『踊ってねぇよ!下ろせよ!帰せーーーー!!』
「あーもううるせぇよこの子!!中に薬撒け!撒け!!」
『はぁあああああああああああああああ!?』
 なんか不吉な言葉がした。同時になんかホントに薬が入って来たけど、即、外
に出した。
「うわっ!?なんか強いぞこいつ!!」
『強いもクソもあるかああああああああああっっ!!』


 どさっっ。
「いってぇえええっっ!!」
 箱から、無造作に落とされる。周りを見ると、やはりさっきの野郎共+ヤバい
人が。ていうか、死ぬのか?死ぬんだな?
「くっ…来るな!来るんじゃねぇ!!殺すぞ!!もしくは自殺するぞ!!」
 気が動転して、どちらにしろ死ぬ選択肢を出してしまう。
「お前、活きがいいなぁー」
 半分呆れ、半分興味津々、といった表情で、じりじりと近付いて来る。野郎共
のひとりが後ろに回って来て、がちゃ、と手錠を掛ける。その拍子に、持ってい
た靴を没収される。
「ちょっ…返せこのハゲ!!」
「誰がハゲじゃこの水虫!!」
「はぁ!?水虫の訳ねぇだろこのインポ!!」
「なっ…なんだとこのホモ!!」
「私ゃ女だ!このぽっちゃり体型!!」
328シンデレラ(に近い話) 23/29 :04/11/19 15:09:26 ID:4243qfke
 因みに開いては身の丈5尺3寸程のアフロのムキムキマッチョメンである。
「度胸もあるなー、余計気に入ったわ」
 靴を渡されて、近付いて来る。
「っ…寄るな触るな近付くな!!お前、いいか、これ以上近付いたらなんかする
ぞ!!」
「なんかってなんだよ…」
 ぽそ、とマッチョメンが呟く。ええい、こいつなんか腹立つ。全然、私なんか
怖がってねぇよ。こっちは…完全に極限状態だってのに。
「なんかはなんかだ!」
「まぁ、怖がるな。お前みたいなちっこいのに虚勢張られてもこっちは怖くない
んだし、そもそも危害は加えねーよ。ただ確かめるだけだから」
 …読まれていた。まぁ、確かにここにいるのがそこのマッチョメンだとしても、
逃げれる確率はゼロに等しい。人が多過ぎる。
「っ…嫌」
 靴を脱がすと、持っていた靴を履かせた。身長の割に、素香は足がでかい。2
6cmの靴はぴったり収まった。うれしくも、なんとも無い話だ。おおー、と多
分外見の割の足のサイズに関しての驚きの声が上がる。そして、何がなんだかわ
からないまま、いきなり抱き締められた。
「―――会いたかった」
「…っ…」
 気持ち悪い。嫌だ。そんな感情が渦巻く。
 …怖い。このまま、何をされるんだろうか。嫌な想像ばかりがぐるぐる回る。
 一生、もう会えなくなるのだろうか。お父さんにも、義母さんにも、淡路にも。
 もう、水野のパンも篠子さんの苺牛乳も。
 ―――水野。
 読まれていた通り、張ってた虚勢のツケがここになって返って来た。
329シンデレラ(に近い話) 24/29 :04/11/19 15:09:58 ID:4243qfke
「お前が好きだ。そりゃ、会ってた時間は短かったけど、俺は初めて誰かを好き
になったんだ。大切にする。だから―――」
「嫌だ…帰る。帰りたい…っ…」
 もう駄目だ。一旦泣いてしまったら、止まらなくなる。流石に周りの人々も暴
言をどれだけ吐こうとも嫌がってるちんまい女の子を泣かせたらあまりいい気分
はしない。

「あの、嫌がってますよ」
 マッチョメンが声を掛ける。
「でっ、でも、昨日はそんな嫌がってなかったと思うし、第一、俺の嫁探しって
知ってて来たんだろ?なんでそこまで嫌がるんだよ」
 素香は首を横に振って嫌がる。
「っ…行ってない…私、昨日はずっと家にいた…」
「はぁ!?じゃ、じゃあ、お前その靴はなんなんだよ!お前のなんだろ!?」
 …もう、帰りたい。質問には答えず、既にそれだけを思っていた。大体、ここ
はどこなんだ。国内なのか国外なのか。目的は一体なんなんだ。
 てか、ふと、頭の中が冷静になる。さっき、よく考えれば受け答えしてた。嫁
探しって、確か、昨日は―――まさか。

「…お前、もしかして王子なのか?」
 聞いてみる。ぱぁっ、と王子(らしき人物)の表情が明るくなる。
「思い出したか!?ほら、お前髪を縦ロールにして、ピンクのドレス着て、俺と
踊ったろ?」
「踊ってねぇよ!人違―――」
 ―――縦ロール?
 その単語に、嫌な予感を覚える。そして沸々と怒りが。
330シンデレラ(に近い話) 25/29 :04/11/19 15:10:32 ID:4243qfke
「…お前、眼が完全に見えないのか、脳髄が腐ってるのかどっちだ?」
 急に、眼の前の男に殺意が沸いて来る。
「…前者が近いですが後者も否めません」
 マッチョメンが言うと、馬鹿王子に大分分厚い眼鏡を渡す。素直にそれを掛け
る。うっわ、ダッサ!!
 じーーーーーーーーーーー、と素香の顔を見ると、王子は一言。

「―――お前、誰だ?」
 言った瞬間、かちゃん、と手錠が外される。この部屋にいる全ての人間が、G
Oサインを出していた。

 ―――素香が王子に殴り掛かったのは、その数秒後だった。


 マッチョメンに訳を話して、真犯人である淡路を呼んで来て貰い、一喝した。
今回ばかりは、素直に謝った。ていうか、靴のサイズは5cmも違うのに、よく
履く気になったものだ。まぁ、だから階段駆け下りる途中ですっぽ抜けたのだが。

 恋に恋焦がれる年頃である淡路は、王子同様、一目惚れをしていた。全てが初
めてな彼女は、どうする事も出来ず、逃げて来た。こっそり借りた、綺麗な靴も
片方無くし、途方に暮れていた。
 それでもって、この事態だった。

「…とにかく、お前は視力も脳も悪いって事だな」
「…はい、反省しています」
 正座して、きちんと謝罪するボコられた王子。横には淡路も正座していた。
331シンデレラ(に近い話) 26/29 :04/11/19 15:11:09 ID:4243qfke

「本当にすいませんでした、家のアンポンタンが」
「…別にいいです。苦労してるんでしょう、貴方も」
 心底同情しながら言った。マッチョメン…もとい本名木村琵琶湖さんは物凄く
遠い眼をしてしまった。
「もしかしたら、こっちの馬鹿娘も将来世話になるかもしれませんが、その時は
本当、お願いします」
 そう言って、頭を下げた。
「…ご迷惑を、お掛けしました」
 何度も何度もお互い謝って、城を後にした。


 家までの道のりを、素香は歩く。その3歩後ろを、淡路は付いて行く。お互い
一言も喋らない。そのまま暫く歩いていると、意を決して淡路は話し掛けた。

「…怒ってる?」
「別に」
 普段通り、ちょっと冷たく返す。本当は、ちょっと怒ってる。1日が無駄に終
わったし、大事に大事にしている靴を無断で借りられたし、すっげぇ泣いた。
 でも、言わない。言ってやらない。それ以上は、何も言わずにまた歩き出した。
 …が。まずい。非常にまずい。一歩踏み出したと同時に、すすり泣く音が聞こ
えて来た。
 舌打ちして、振り返る。案の定、淡路が泣いていた。あーあ、あーあ、皆注目
してやがる。これじゃ完全に素香が悪者である。
「っ…たく…ほれ、怒ってねぇよ。だから泣くな。許してやるから」
 これでは、どちらが年上かわからない。
332シンデレラ(に近い話) 27/29 :04/11/19 15:11:47 ID:4243qfke

「…ごめんなさい」
 片手を繋いで、片手で涙を拭って、歩きながら淡路は言った。
「謝るくらいならするな」
「私、いつだってアンタに…素香に迷惑しか掛けられない」
 あ、わかってたんだ。
 …とは、言わない。また泣くし、面倒臭い。甘えたさんで、すぐ泣いて、わが
ままで、意地っ張りで、その癖すぐに自己嫌悪に陥る。

 …嫌いじゃあ、ないんだよ。そういうの、お父さんにも義母さんにも出さない
で、結局は私に甘えてるだけなのも、現状打破しようとしてるのも、わかってる。
 嫌いじゃないから、家族だから、仕方ないけど、受け止めてやる。
 でも、別の誰かを見つけたんだから、これからはこうは行かない。わかってい
る筈だ。

「昨日だって、素香が泣いてるのに、私は何も出来なくて…」
 言われて、思い出す。ちょっと恥ずかしい。
「いいんだよ。お前にそういうの、望んでない」
「……そう」
 歩いていると、パン屋が見えて来る。無性に、水野に会いたくなった。
「私、用があるから。ひとりで帰れるよな、おねーーーーーさま」
 わざと、憎らしく言う。一瞬ムッとしたけど、何も言わずに帰って行った。素
香は反対方向のパン屋に向かった。



333シンデレラ(に近い話) 28/29 :04/11/19 15:12:17 ID:4243qfke
「―――素香!!」
 どうやら街中で起こった事だから、事情は知っていたようだ。死にそうな顔で
駆け寄り、素香を抱き締めた。
 うん、やっぱり、抱き締められるのはこいつがいい。そう思った。

「無事だったか?なんかされなかったか?」
「されたけどボコったから別にいい」
 さらっと流したつもりだったが、息を飲んでこっちを凝視するもんだから、ど
うやら流せていなかったようだ。

「大丈夫。昨日の舞踏会で見初められた淡路と勘違いされて連れていかれただけ」
 大分省いて説明する。あー、驚いてる。でも、昨日の事思い出して、ああ、と
納得したようだ。
「王子の顔、初めて見た。ツラはまぁまぁだけど、脳味噌のネジが軽く4、50
0本は抜け落ちてやがる」
 からから笑う。が、水野は笑っていなかった。じっと素香を見て、そしてやっ
ぱりぎゅっと、さっきよりは優しく抱き締めた。
 ―――安心する。やっぱり、恐怖や寂しさはあった。
 でも、それでも全部払拭してくれる。側を、離れたくなくなる。水野に応える
ように、背中に腕を回した。

「…今日、泊まる。ずっと水野といたい」
 そう、ねだってみる。今日ばかりはずっと離れたくない。そう思った。
「あー…いや、マズイだろ、それ流石に」
 色々考えて、そう言う。水野だって、泊まらせたくない訳ではない。寧ろ万々
歳だ。一晩中寝かせないくらいの勢いである。
334シンデレラ(に近い話) 29/29 :04/11/19 15:17:43 ID:4243qfke
「でもな、お前の年で男の家に外泊は、許可出ねぇだろ」
「別に、お前とはずっと知り合いだし、いいだろ。今から電話入れる。電話借り
るぞー」
 そう言って、勝手にずかずか入ろうとする。
 …別に、まぁ、願ったり叶ったりではあるのだが。きっと、素香の父親に叱ら
れるのだろう。それはもうこってりたっぷりと。
 
 初めて会った時に大決闘してお互い大怪我した時も。
 夜遅くまで(素香に引っ張られて)遊んで門限越えた時も。
 2人で高いツボでキャッチボールして見事割った時も。

 2人でこれをしたら悪いと思った事柄で、それでも実行した時は、必ず怒られ
た。多分、確実に、今回も。
 そうやって素香とずっと一緒にいるんだろう、と思った。ずっと、変わらずに。

 電話を終えた素香が、ひょい、と店先に顔を出す。
「そういえば、今日はどうだった?」
「…予想を大幅に裏切ってソーセージだった」
 

 ―――きっと、この賭けもずっと続くんだろう。
 苦笑して、水野は素香のいる居住スペースに向かったのだった。



                                   終
335377:04/11/19 15:26:55 ID:4243qfke
はい、こんな感じです。
趣向を変えて前フリ→エロでなく前フリ→エロ→もう1本話でした。

個人的には、スレタイに合った話というのはエロに行くまでのやりとりが
大事かな、と思ってやってます。

またこのスレに合う話が出来たら投下したいと思います。
336名無しさん@ピンキー:04/11/19 20:58:44 ID:+XgH0xY1
ま‥‥待ってた甲斐があったよ377さん。
相変わらず話の流れが良くて、一気に引き込まれてしまいました。
そして濃過ぎず薄過ぎないエッチシーンもとてもいいですし、おまけに今回は
やたらとギャグ入りまくりが楽しい!
こういった話にギャグ入れるのって書き手のセンスが問われるけど、さらりとこなしてるし。

また新しい話ができたら、お願いします。
337名無しさん@ピンキー:04/11/20 03:02:02 ID:jOUUHefT
やっとお目にかかれました!
う、うれしい・・・・。
338名無しさん@ピンキー:04/11/21 01:23:47 ID:fobGBhdY
377さんの作品はいい。ほんといいよ。ぜひ個人HP作るべきだ。
339名無しさん@ピンキー:04/11/21 14:52:49 ID:XIlXFoyy
話自体は面白かったけど、スレタイに合った=感じる話かというと微妙。
まあ、個人の感じ方ですが。
340名無しさん@ピンキー:04/11/22 04:40:35 ID:S21/M0Db
世界観がはっきりしないな…
舞踏会じゃなくて何か他に設定を

いや、萌えたけど
341名無しさん@ピンキー:04/11/23 01:04:34 ID:obTmyOdV
377さんは是非HP作るべきだに一票。
スレタイ関係なしの作品も読みたいと思う
342名無しさん@ピンキー:04/11/23 04:35:52 ID:WR1nDtKD
乙でした。

3人称なのに1人称っぽく主語の抜けた表現が多くて分かりづらいかなぁ。
あと、馬鹿でごめん、主人公の名前、読めない…。

377さんならもっと書けるはず!とか思うので、すこし残念かも。
343名無しさん@ピンキー:04/11/24 05:05:41 ID:LpjxdYPB
乙です。
342さん同様、ちょっと分かりづらい部分があると思いましたが
内容は相変わらず面白かったです。次回作も期待してます!
344301:04/12/05 01:12:31 ID:ti7F0NMj
377さん乙です。
会話の応酬、相変わらず面白かったです。
・・・けど、設定に無理があるようで、そこが残念な気がしました。
キャラは立ってて、義理の妹とか、すっごく好きです。
あと、アゲアンパンと苺牛乳、飲みたくなりました。
けど、かなり甘そうなので、別々に希望です。(笑)

・・・苺牛乳自分で作るかな、甘み少なめで。

345名無しさん@ピンキー:04/12/05 11:06:28 ID:sumlvql4
何というか、大事なところを早口になってしまった芸人さん、
みたいな流れになってるかなーと感じることは時々あるかもしれないです。
ただ私は377さんのぶっ飛んだ(いい意味で)、独創的でパワーのある作風が好きなので
設定や世界観等にあまりこだわらない方がいいような気がします。
次回作も楽しみにしてます。
346名無しさん@ピンキー:04/12/11 14:56:22 ID:IBCKu3sz
保守
347名無しさん@ピンキー:04/12/18 02:43:54 ID:opeeRtWR
「シンデレラ(に近い話)」を読んで
川○泉っぽいなぁなんて
思ってしまったのは
私だけだろうか。
348名無しさん@ピンキー:04/12/19 23:21:52 ID:Jz3ThQ9N
設定おかしいって話もあるけど、下町風なパン屋さんで
王子とか舞踏会ってのが逆に私は面白く読めましたよん。
>>347
キスシーンのない漫画かくあの人か。
なんか主人公の雰囲気が似てますね。知的で、ユーモアがあって、
情に厚くて、性的なものに距離を置いた少年のような。
349名無しさん@ピンキー:05/01/01 02:10:59 ID:pISLdx70
350名無しさん@ピンキー:05/01/04 17:04:40 ID:SPPCiV7j
期待のスレ上げ
351名無しさん@ピンキー:05/01/05 19:07:35 ID:HKQLW6Na
初投下します。
エロまで少し長めです
352なきうさぎ 1:05/01/05 19:08:49 ID:HKQLW6Na
 あたしの恋愛は長続きしない。
 あたし自身は彼氏に恋をしているけど、彼氏の方はそうではないらしく、いつも彼氏から別れを告げられる。
 彼氏があたしに言う別れの言葉は、付き合ってきた彼氏の数だけある。

「君は鬱陶しい」
「他に好きな人が出来た」
「恋愛より仕事を優先したい」 ――などなど。

 彼氏達は皆、別れの言葉を残してあたしの元から去る。
 別れたくないと言って引き止めても。
 あたしの制止を振り切って彼氏が去った後、あたしは必ず泣く。部屋の隅で一人っきり。

 別れがツラくて泣くんじゃない。
 一人っきりが寂しくてツラいから泣く。

 まぶたの裏と頭の奥が痛くなるまで泣いた後、あたしは旅立つ。
 寂しさを紛らわす為の恋人を求めて。
353なきうさぎ 2:05/01/05 19:10:14 ID:HKQLW6Na
 前の彼氏と別れてから一ヶ月もたたない内に、新しい彼氏ができた。
 今の彼は、大企業に勤めている三上さんという人。
 付き合い始めてから六ヶ月。あたしにしては長く付き合っている方だ。
 彼の身長は170cmで普通。体型も中肉中背で普通。顔も普通。
 ちょっといい大学を出て、大企業で働いている事だけが取り柄かな。

 今日はそんな彼とのデートの日。
 派遣で細々と事務をしているあたしと違い、彼は忙しい人なのでデートは週末だけ。
 その週末だけのデートも、最近は彼の仕事の都合で潰れる事が多かった。
 先週も先々週も彼の仕事でデートはおじゃん。
 会えない事をメールで愚痴ったら、『寂しい時は電話で話そう』と言ってくれた。
 あたしは彼の言葉に甘え、頻繁に電話したから寂しくはならなかった。
 けど、最近は会いたい時に会えないなんて、恋人でも何でもないと思うようになってきて……
 これが、愛情が薄れるという感覚なのかもしれない。
 こんな感情を抱くのは初めてだ。いつも、愛情がある内に別れていたから。
354なきうさぎ 3:05/01/05 19:11:41 ID:HKQLW6Na
 愛って何だろうとか考えながら、あたしはデートの待ち合わせ場所にやってきた。
 CMなどで名前をよく耳にする会社のビルが立ち並ぶ駅前。
 駅前は週末という事もあって、人が多く通り過ぎていく。
 帰路を急ぐサラリーマン風の男。
 学校帰りらしい女子高生の集団。
 観光地ではないのに、旅行ガイドブックを片手に立ち往生している旅行者。
 この人込みの中から彼を見つけるのは一苦労だなぁと思った時、彼があたしを見つけて話しかけてきた。

「やぁ、久しぶり」

 本当に、久しぶりの再開だった。
 三週間、彼の仕事のせいで会えなかった。
 それなのに彼からはお詫びの言葉は一切無く、普通に接してきた。
 電話でいつも話してはいたけど、ちょっと酷くない?
355なきうさぎ 3:05/01/05 19:12:26 ID:HKQLW6Na
「何よ、軽々しく久しぶりって……
 あたしが三上さんに会えなくて、どんなに寂しい思いをしたかわかってるの?」

 彼の飄々とした態度にちょっとムッとしたから、言葉を荒げてしまう。

「ははは……電話とメールだけじゃ物足りなかった?」
「物足りないに決まってるじゃない!」

 確かに電話やメールをしていると寂しさは紛れる。
 けど、それだけじゃ物足りない。
 会って会話しないと完全に寂しさは消えない。

「じゃあ、今夜は舞さんが満足するまで話しようか」
「当たり前でしょ。今まで満足させて貰えなかったんだから」

 彼は自分の腕をあたしに差し出した。
 多分、腕に抱きついてもいいというサイン。
 あたしを怒らせた詫びのつもりなのか。
 まぁ、怒ったままデートに突入は気まずいから、仲直りの意を込めて彼の腕に抱きついた。
 そして、彼の足が赴く所についていく。
356なきうさぎ 5:05/01/05 19:13:32 ID:HKQLW6Na
 彼に連れられてやってきたのは、いわゆるジャズバーと呼ばれる所だった。
 少し暗めのオレンジの光に照らされている店内。
 店の中央にはグランドピアノが置いてあって、ライブが行われている。
 ピアノの伴奏に合わせ異国の歌を歌う女性。
 店内にいる数人の客達は、ピアノと歌に聞き入っていた。

 あたしと彼は店内の一番奥の席に座る。
 オレンジの光があまり届かない薄暗い場所。
 あたしはアルコール度が低いカクテルを頼み、彼はウィスキーを頼む。
 お酒はすぐに届けられた。
 再開を記念して軽く乾杯をして、あたしはカクテルに口付ける。

 あたしはお酒が弱い。
 お酒が弱い人ランキングがあったら一位を取れるくらいに。
 ちょっとカクテルを飲んだだけで、もう酔ってきた。

「三上さんはあたしと会えない間、何やってたのぉ?」
「何って、仕事だよ」
「ほんとぉ〜に?」
「本当さ。
 僕の一日は仕事して、舞さんと電話して、寝る。なんだから」
「ちゃんと食事もした方がいいよぉ」

 ダメだ。完全に酔ってるよ、あたし。
 舌が回らなくなってる。
 せっかく会えたのに、酔って終わりというデートにはしたくない。
357なきうさぎ 6:05/01/05 19:14:32 ID:HKQLW6Na
「仕事に余裕ができたら自炊でもしてみるよ」
「いつから余裕できそう?」
「さぁ……」

 さぁ……って、分かっても無いのに期待させるような事言わないでよ。

「三上さんってぇ、仕事仕事ばっかりで全然あたしと会ってくれないよねぇ。
 あたしと仕事、どっちが大切なのぉ?」
「舞さん、男が女に言われて嫌だと思う言葉を教えてあげる」
「嫌だと思う言葉?」
「あたしと仕事どっちが大切?」

 あの質問は、働く男にとっての禁句。
 そりゃそうだ。男は女よりも仕事を大切にしないといけない。
 将来できるであろう家庭を守るために。
 こんな事も気づかないなんて……かなり酔ってるな、あたし。

「ごめんねぇ、無神経な質問してぇ。
 今の事は忘れて、別の話しようよぉ。
 あっ、そうだ。
 今日ねぇ、あたしの仕事場で営業の人が上司に叱られててさぁ、ちょっと気になったから盗み聞きしてたのよぉ。
 何で叱られてたかは分からなかったんだけどぉ、上司が『今を大切にしないと、明るい未来は無い』とか言っててさぁ、なんて陳腐な言葉だろうって……」
「全然陳腐じゃない。僕達も今を大切にしないと」

 彼はあたしの言葉を遮り、氷と水だけになっているウィスキーのグラスを手にする。
 ウィスキーを追加するのかと思ったら、グラスに入っている水を飲んだだけだった。
 明日は休みなんだから、もっと飲めばいいのに。


「舞さん、僕は今を大切にしたい。
 だから別れて欲しい」
358なきうさぎ 7:05/01/05 19:16:44 ID:HKQLW6Na
 ……今、何て言った?
 今を大切にしたいから別れたいってどうゆう事?

「どっ、どうして!?」

 酔いが一気に醒めた。

「君とこうして話している時間を、もっと別の事に使いたい」
「それって、あたしと話している時間は大切じゃないって事?」
「そう。毎日していた電話の時間を、別の事に使いたいと思っていた」

 ショックだ。
 あたしの唯一の楽しみであると言って過言ではない彼との会話が、
彼にとって大切じゃないという事実が。

「いつからあたしとの会話を鬱陶しく思い始めたの?
 最初から鬱陶しいと思っていたら、六ヶ月も付き合う訳ないよね?」
「僕の仕事のせいでデートができなくて、
舞さんが毎日電話してくるようになった頃から」

 つまり、三週間前だ。
 寂しい時は電話してと言われたから、
その言葉に甘えて毎日電話していたあの頃。
359なきうさぎ 8:05/01/05 19:18:40 ID:HKQLW6Na
「電話が嫌なら、電話していいって言わないでよ」
「別に電話が嫌じゃない。
 ただ、舞さんの場合、度が過ぎているというか……」

 何かの雑誌で読んだ事がある。
 男は女より恋愛に興味が無いという記事を。

 あたしは彼と毎日会って、毎日話したいと思っている。
 寂しさを紛らわせたくて。
 その思いから、彼に毎日電話をしていた。
 けど、彼にとってあたしの思いは重荷だったんだ。

 衝撃を紛らわす為カクテルを飲もうとしたら、
長く話していたせいでカクテルの氷は溶けていた。
 水によって薄まったカクテル。
 三上さんのあたしに対する愛情も、このカクテルみたいに薄まったのかな。

「三上さん、恋愛と仕事どっちが大切だと思ってる?」
「……」

 彼は質問に答えてくれない。
 その代わり、嫌な事を聞く女だなといいたげな表情をしてくれた。
 さっき教えてもらった、男が女に言われて嫌な質問の類似質問だからか。
360なきうさぎ 9:05/01/05 19:20:04 ID:HKQLW6Na
「あたしは恋愛が大切だと思ってる。
 彼氏と毎日デートしたり、話したりしたいと思ってる。
 それが恋愛であり、付き合うって事だと思うから。
 あたしは、毎日傍にいてくれる人と付き合いたい」

 そう、恋人とは毎日一緒にいたい。
 現実的に毎日一緒にいるのは無理だと思うけど、
それでも出来る限り一緒にいたい。
 一緒にいれば寂しさが無くなるから。

「じゃあ、僕と付き合うのは無理だ。
 僕は忙しいから、舞さんの要望に応えられない」
「うん、実はあたしももう別れたいと思ってた。
 三上さん、全然会ってくれないし……
 今日だって待ち合わせ場所に来る間、
会いたい時に会えないなんて恋人じゃない。とか考えてた」

 とうとう言ってしまった。自分から別れの言葉を。
 いつも言われてきた言葉を、初めて相手にぶつけた。
 一方的に別れを告げられる時とは違って、悲しみは湧いてこなかった。
 涙も出なかった。
 寂しさに対する恐怖も無かった。
 ただ、早くこの人と別れて、新しい恋人を見つけたいと思った。
 いつも一緒にいてくれる恋人を。

 きっと、今まで付き合ってきた彼氏達もみんな、
何らかの不満をあたしにに持ち始めたから別れを告げたんだろうな。
 自分が別れを告げる立場になって、
ようやく彼らの気持ちが分かったような気がする。
361なきうさぎ 10:05/01/05 19:21:22 ID:HKQLW6Na
 彼が無言で立ち上がる。
 テーブルの上に置いてあった伝票を手にして、レジへ向かった。
 そのまま彼は戻ってこなかった。
 無言の別れ。
 きっと、もう彼と会う事は無い。

 彼と別れた後、電車を乗り継いで自宅に戻ってきた。
 いつもの別れと違って、部屋の片隅で泣く事はしなかった。
 だって、涙が出てこないから。
 これから新しい恋人を見つけるまで一人っきりなのに、寂しいとも思わなかった。
 何でだろう。
 あんなに一人っきりは嫌、寂しいのは嫌だって思ってたのに。
362351:05/01/05 19:24:56 ID:HKQLW6Na
続きます。

「なきうさぎ3」が二つありますが、二つ目は4です。
間違えました。スミマセン。
363名無しさん@ピンキー:05/01/05 23:13:58 ID:BePZ1gZg
おりょ?なんかおもしろそうなのが来てる。

期待大だな。
364名無しさん@ピンキー:05/01/06 01:34:55 ID:RZK2KrhX
続き、楽しみやね。
365なきうさぎ 11:05/01/06 19:28:40 ID:DXyd7OHU
 あれから一週間が過ぎた。
 仕事をして、食事をして、睡眠をとるだけの一週間。
 彼との電話が無い一週間。
 一人っきりの一週間。
 なんて味気ない日々。

 夕食を食べながらテレビを見る。
 テレビは丁度ニュースをやっていて、今日起きた事故を伝えていた。
 高速道路での追突事故。
 かなり大規模な事故だったらしく、事故に遭った車は炎上している。
 ブラウン管に映し出される赤。
 それは、あたしの家族を包み込んだ炎と同じ色だった。

 五年前、あたしはお父さんとお母さん、そして妹を事故で失った。
 その事故は高速道路で起きた。
 三人を乗せた車が高速道路を走っている時、突然車が炎上。
 後ろから揮発油を大量に乗せた車が追突したせいで。


 だから……だから、一人っきりは嫌。
 家族の事を思い出して、寂しさが募るから。


 涙が溢れてきた。
 家族を失って悲しくて、一人っきりで暮らすのが寂しくて。
 事故から五年経ったのに、未だに家族の事を忘れられない。
 一人っきりでいる事に慣れない。
 寂しさの余り死んでしまいそうだ。
 仲のいい相手が死んでしまうと衰弱してしまうウサギのように。
366なきうさぎ 12:05/01/06 19:29:36 ID:DXyd7OHU
 あたしは携帯電話を手にした。
 リダイヤル画面を開き、通話ボタンを押そうとして止める。
 寂しい時は電話していいって言ってくれた人とは、もう別れた事を思い出したから。
 前まではちょっと寂しいと思えばすぐに電話してた。
 今になって思う。
 今日みたいな涙が出るほど悲しい時だけ電話すればよかったと。
 そうしておけば、別れなくて済んだのに。
 今日だって電話できたのに。

 馬鹿だなぁ、あたし。
 彼に別れを告げられた時、自分からも別れるって言ったくせに。
 毎日傍にいてくれる人と付き合いたいという理由も付けて。
 それなのに、あたしは彼を求めている。
 別れた時はもう自分にも愛情は無いって思ってた。
 けど、今になって彼を恋しく思う。
 忙しいのに三週間、あたしの電話に付き合ってくれた彼を。


 彼に会いたい……三上さんに会いたい。


 厚顔無恥だと思うけど、それでも会いたかった。
 会って話をしたかった。
 付き合っていた頃のように寂しさを紛らわせたい。
 我侭だっていうのは分かってる。
 でも、今日だけでいいから一緒にいて欲しい。

 一度涌き出た欲望は止らない。
 夕食をそのままにして、あたしは家から出た。
367なきうさぎ 13:05/01/06 19:31:01 ID:DXyd7OHU
 閉店時間を迎え、シャッターを下ろしている人通りの少ない商店街を駆け抜ける。
 道に出ると、三階建ての小奇麗なアパートが見えた。
 このアパートの二階に彼は住んでいる。
 あたしはアパートの二階へ続く階段を上り、彼の部屋の前に行く。
 そして、ドアホンを鳴らす。
 ためらいは無かった。一刻も早く彼と会いたかったから。

 しばらくしてドアが開いた。チェーンの長さ分だけ。
 あたしを家の中に入れる気は無いといいたげな隙間。
 その隙間から彼の姿が見える。
 一週間ぶりに見る彼は、何一つ変わってなかった。

「三上さん、あのっ……」
「先週、君に言うのを忘れていた事があった。
 もう会わないようにしようって」

 冷たくあしらわれた。
 当然だ。あたしとはもう別れたんだから。

「待って。
 あたし、三上さんに話したい事があるの」
「話す事なんて無い」
「ただ、あたしの話を聞いてくれるだけでいいから」

 あたしはドアの隙間に手を入れてドアをつかみ、彼がドアを閉じられないようにした。
 彼が勢いよくドアを閉めれば、あたしの指の骨は折れてしまうかもしれないけど、話を聞いてもらう為なら骨折ぐらいしてもいい。
 あたしがドアを掴んだ意図を察した彼はため息をつく。
368なきうさぎ 14:05/01/06 19:32:47 ID:DXyd7OHU
「いいよ、話して」

 了承を得た。

「先週、あたしからも別れるって言ったけど、あれは撤回。
 あたしは三上さんの事を愛してる。
 別れたくないと思ってる」
「今更そんな事言われても……」
「分かってる。
 今更愛してると言っても、三上さんがあたしと寄りを戻す気にならない事は。
 ただ、今日だけはどうしても一緒にいて欲しいの」

 あたしの悲しみと寂しさを消し去って欲しいから。

「先週、言ってたじゃないか。
 毎日一緒にいてくれる人と付き合いたいって。
 僕じゃなくて、その人の所に行けば?」
「そんな人、今のあたしにはいない。
 新しい彼を探す前に、泣いてしまうほど寂しくなったのよ。
 一度別れた人の所に来てしまうぐらいに」

 今のあたしには、寂しさを紛らわす方法がこれしか思いつかなかった。
 別れた男の元にのこのこと現れて、寂しいと語る事しか。
 彼は多分呆れているだろうな。
 同意を得て別れたはずの女が現れて、我侭を言ってるから。
 忙しいから帰ってくれないか。って言ってもいいよ。
 いつもの失恋みたいに泣いて泣いて寂しさを涙で流すから。

「一晩、僕の好きなようにさせてくれるなら、一緒にいてもいい」
369なきうさぎ 15:05/01/06 19:34:00 ID:DXyd7OHU

 耳を疑った。
 そんな、あたしに都合のいい答えを聞けると思ってなかったから。

「本当に?
 本当に、一緒にいてくれるの?」
「ああ、一緒にいてあげる。
 君が僕の言う事を何でも聞いてくれるなら」

 一緒にいてくれるなら、何をされてもいい。
 寂しさを紛らわせてくれるなら、どんな命令にだって従う。
 まだ愛している人の言う事なら、何だって聞く。

「何でも命令して。
 三上さんがあたしの我侭に付き合ってくれたように、
あたしも三上さんの命令に従うから」

 ドアのチェーンが外され、彼はあたしを部屋の中に入れてくれた。
 何度か来た事のある彼の部屋。
 フローリングが剥き出しの床の上に、ベッドやテレビが置いてある。
 男の人の部屋の割には綺麗に片付いているかな。
 テレビの電源が消えていた事にあたしはほっとする。
 ここでまた、あのニュースを見てしまったら、泣かずにいられる自信が無い。
370なきうさぎ 16:05/01/06 19:35:21 ID:DXyd7OHU
 部屋の中心で、彼に後ろから抱きしめられた。
 優しく、あたしを包み込むように。
 背中から彼の体温が伝わってくる。心地よい熱。
 こうして触れ合うのは四週間ぶりだった。
 先週は話をして終わりだったから。

 しばらくして彼は、あたしが着ているブラウスのボタンを外して脱す。
 あたしの上半身はブラだけになる。
 色気など欠片もない、モカのハーフカップブラ。
 彼に会いたいという思いで急いで家を飛び出したから、
下着にまで気が回らなかった。
 そういえば、洋服だって白のブラウスと黒のスカートという地味さ。
 メイクだってほとんどしてない。
 これで彼に会うのは多分最後になるのだから、
もっとオシャレしてくればよかった……

 あたしが落ちこんでいると、ブラの左カップの中に手を入れられた。
 左胸が彼の手に包まれ、優しく撫でられる。
 沈んでいるあたしを慰めるかのように。
 何度か撫でた後、彼の指があたしの乳首に触れる。
 撫でられていたせいで、既に固くなっている胸の先。
 あたしは感じていた。彼の優しい手に包まれて。
 乳首が摘まれる。
 固くなった事によって生まれた弾力を楽しむかのような動き。

「んっ……」

 漏れてしまった。感じている事を示す甘い声が。
 そういえば、彼は『言う事を何でも聞いてくれるなら』って言ってたけど、
何も言ってこない。
 でも、彼があたしとセックスを望んでいるのは明らかだった。
 無言の命令。
371名無しさん@ピンキー:05/01/06 19:35:57 ID:D9KPhHAo
ここ意外とエッチです
http://f12.aaa.livedoor.jp/~sakusha/
372なきうさぎ 17:05/01/06 19:36:25 ID:DXyd7OHU
「……痛っ」

 今まで優しく摘まれていた乳首が、強く摘まれた。
 潰すかのように強く。
 痛い。この痛さは彼が与える罰なのだろうか。
 我侭なあたしに与える裁き。

「自分で脱いで」

 乳首を捻る残酷な指とは裏腹の、優しい声で言う。
 正反対の指と声、どっちが彼の本心なのだろうか。
 あたしは衣服を脱ぐ。
 ブラウスは既に脱がされていたから、スカートのジッパーを下げて脱ぐ。
 下着姿になって、下着を脱ぐ事をためらっていると、
彼が荒荒しく下着をもぎ取った。
 彼は全裸になったあたしから離れ、ベットに腰掛ける。

「僕の前に跪いて」

 一瞬、どうして?と聞きそうになった。
 今までの彼とのセックスで、そんな要求をされた事が無かったから。
 けど、どんなに疑問を抱いても、今日は彼の命令に従わなければいけない。
 それが、あたしと一緒にいてくれる交換条件だから。 

 言われた通り彼に近寄って、床に跪く。
 彼は足の間にあたしを迎え入れた。
 そして、ズボンのジッパーを下げ、自分のモノを取り出す。
 何度も見て、触れて、自分の中に入れられた事がある彼のモノ。
 よく見ると、既に先走りが出ていた。
 彼も久しぶりのセックスで興奮しているのかな。
 既に新しい彼女がいて、ヤっているかもしれないけど。
373なきうさぎ 18:05/01/06 19:38:14 ID:DXyd7OHU
「何をすればいいか、言わなくても分かるね?」

 ここまでくれば、彼が何を求めているか分かる。
 あたしは跪いたまま、彼のモノに指を近づけた。
 先走りを指で掬って、亀頭を指でこね回す。
 こね回すといっても強くはしない。優しく、ゆっくりと。
 亀頭を指で責めながら、サオを舌で舐め上げる。
 時々、舐めるのを止めて陰嚢に口付ける。
 彼があたしの頭を抑えつけた。
 多分、全てを口に含めという意。
 先端から指を外し、代わりに口で銜えた。
 彼が最も感じるくびれの部分を集中的に責める。
 既に大きくなっていた彼のモノが更に大きく、そして固くなった。
 あたしは口の奥まで彼のモノを含む。
 全てを含む事はできなかったけど、歯を立てぬように舌と口腔を使い愛撫する。
 唇をすぼめて、頭を上下左右に動かして。
 突然、おとなしくしていた彼のモノが動き、あたしの喉をついた。
 奇襲にむせかえる。
 苦しさの余り、目に涙が浮かぶ。

「ほら、ちゃんとやって」

 言葉は優しい。けど、行動は残酷だ。
 彼は何度もあたしの喉を突く。
 苦しくて舌を動かす事ができない。
 彼もあたしの愛撫を期待していないようで、
ただひたすらあたしの喉の奥に入り込もうとする。
374なきうさぎ 19:05/01/06 19:39:36 ID:DXyd7OHU
「ぐっ……う……っ」

 彼の動きが速くなる。
 喉を突かれていて苦しいけど、あたしは彼のモノを舌でしゃぶった。
 手は陰嚢と裏筋の繋ぎ目を刺激し、彼の最後を促す。

「くっ……」

 彼が呻いた瞬間、精液があたしの口の中に迸った。
 勢いよく飛び出た精液が喉仏にあたり、むせる。
 精液を飲もうと頑張ったけど、咳が止らなくて無理だった。
 飲み込む事ができなかった精液が口の端に滴る。

「漏らさないで、全部飲んで」

 彼は口の中の精液を喉に押し込むように動く。
 あまりにも苦しくて逃げようとしたけど、
全部嚥下するまで彼は許してくれなかった。
 ようやく咳が止り、精液を飲む事ができた。
 一回では飲み干せなくて、何度にも分けて。

 精液を全て飲んだ事を確認した彼は、あたしをベットに寝かせた。
 仰向けで寝かされたから、蛍光灯の光が視界に入る。
 こんな明るい場所で裸や、フェラチオを見られていたかと思うと、
恥ずかしくて居た堪れない。
 電気を消して欲しいと思った途端、光が遮られた。
 あたしの上に彼が覆い被さったから。
375なきうさぎ 20:05/01/06 19:41:13 ID:DXyd7OHU
「あうっ……」

 首筋を舐められた。
 あたしが苦手とする部分。
 快感よりも嫌悪感が優先する場所。

「嫌っ……やめてっ!」
「君が僕と一緒にいたくないなら、別に止めてもいいけど」

 そうだった。彼の好きなようにさせるのが今晩の契約。
 これ以上嫌がったら、あたしはこの部屋から追い出される。
 寂しさと、快楽を抱えた体が癒えない状態で。

 あたしは我慢した。全身を襲う嫌悪感を。
 我慢すれば、彼は一緒にいてくれるから。

「ひっ……嫌ぁ……」

 止めてとは決して言わないけど、嫌という言葉を抑える事ができない。
 彼は舌で首を責めながら、手であたしの体のラインをなぞる。
 胸、わき腹を通り、手は太腿の内側へ移動した。
 彼はあたしの足を開かせる。
 既に濡れているかもしれない、いやらしい場所が剥き出しに……

「凄い……
 嫌と言っておきながら、本当は首で感じてる?」

 違う、首では感じてない。
 あたしのそこが濡れているのは、最初に胸を弄られたせい。
376なきうさぎ 21:05/01/06 19:42:20 ID:DXyd7OHU
 彼の指が秘裂に触れた。
 秘裂に沿って指を動かす。
 指がクリトリスに触れると思った時、彼は触るのを止めて秘裂を開いた。
 さらに露になるあたしの秘所。
 きっと、彼を求めてヒクついている。
 寂しさより、性欲を満たしたくて彼を求めているそこ。
 早く中を掻き回して欲しいと思うのに、
彼は秘所の入り口を触るだけで中には入ってこない。

「お願い、指入れて……」
「今日は僕の命令を聞く約束だったはずなんだけど。
 まぁ、一回だけなら君の言う事も聞いてあげる」

 思わず口走ってしまった欲求を彼は受け入れてくれた。
 あたしの望み通り指が入ってくる。
 指を奥まで入れて、
あたしの中で一番敏感な所に指が当たるように出し入れをする。
 あたしはもっと指を感じられるように腰を動かした。
 秘所の入り口の近くにある感じる部分。
 ここに刺激が与えられると、全身にむず痒いような快感が走る。
 感じるけど、イクことはできないじれったい快感。

「ねぇ、クリトリスも触って」

 あたしは快感の塊であるクリトリスを触ってもらえないとイケない。
 沸き起こる熱を解放する事が出来る唯一の手段を彼に求める。

「言う事を聞くのは一回だけってさっき言ったばかりじゃないか。
 だから、却下」
377なきうさぎ 22:05/01/06 19:44:48 ID:DXyd7OHU
 彼は余っているもう片方の手をあたしの首に持っていった。
 そして、首をくすぐるように指で触れる。
 人の話を聞いていなかったお仕置きだと言わないばかりに。
 上半身は不快感に、下半身は快感に支配される。
 この感覚は彼の指が離れない限り止む事が無い。

「おっ、お願い、もう……」

 自分でも何をお願いしているのかは分からない。
 首を触るのを止めて欲しいのか、秘口の指を抜いて欲しいのか、
クリトリスを触って欲しいのか。
 彼はあたしの願いを聞く気は無いらしくて、中を弄り続けた。
 最初はゆっくりと出し入れしていただけの指は、今では中で折り曲げたり、
内壁を押さえつけたりしてGスポットを刺激する。
 指が動く度にいやらしい音が響く。あたしが流した液体によって。

「もう……」

 嫌と言おうとした時、首と中を甚振っていた指が離れた。
 許してくれた?と思ったけど、彼はあたしの言う事を聞いてくれた訳じゃない。
 その証拠に彼はあたしの腰をつかんで、自分のモノをあたしの入り口に押し当てた。
 そして、ゆっくりと中に入ってくる。
378なきうさぎ 23:05/01/06 19:45:49 ID:DXyd7OHU
「あっ……ああっ……」

 久しぶりに受け入れる彼のモノ。
 長い間してなかったせいか、
狭い所に無理矢理入れられたような感じがして苦しかった。
 大きく息を吸って、受け入れようと努力する。
 彼はあたしの感触を味わっているようで、動こうとしない。
 そのおかげですぐ馴染む事ができた。
 あたしの中が彼のモノを締め付けるかのように蠢き始める。
 その変化に気づいたのか、彼は動き出す。
 浅く抜き差しをして、入り口の敏感なGスポットを突く。

「はぁ……っ」

 彼はあたしが中だけでイケない事を知っていて、わざとそこを狙う。
 いつもなら空いている手でクリトリスを触ってくれるけど、
今日の彼の手はあたしの腰を押さえつけているだけ。
 感じるけど、イケない状態。
 拷問だった。延々と快楽を与えつづける拷問。

「ううっ……」

 入り口周辺だけでは飽きたのか、彼のモノが深く入ってきた。
 それでもGスポットを刺激するのは忘れない。
 むず痒い刺激から逃げたかったけど、腰を押さえられていて無理だった。
379なきうさぎ 24:05/01/06 19:46:49 ID:DXyd7OHU
「もう……嫌。も……動かないで……ひっ!」

 押さえつけられていた腰が前後に揺すられる。
 嫌でもGスポットを刺激される。
 イケない辛さに耐えられなくなったあたしは、自分の指を秘所に持って行った。
 自分でクリトリスを触る為に。
 しかし、そこに触れてイク事はできなかった。
 あたしの動きを察知した彼が、あたしの手を掴み妨害したから。
 自慰に浸ろうとしていた手は頭上で一括りされた。

「嫌ぁ……手、離して……」
「はしたない人だ。自分で慰めようなんて」
「誰のせいで……こんなっ」
「君自身のせいだろう?」

 彼と一緒にいる事を望んだのはあたしだ。
 けど、こんな風に焦らされるセックスをしたい訳じゃない。
 ただ、寂しさを紛らわせたいだけだったのに。
 今では寂しさの他に性欲も抱えてしまってる。
 両方共自分の中から消し去りたいと思うのは我侭なのだろうか。

 ごめん、三上さん。
 今日は貴方の言う事を聞くって約束だったけど、その約束は守れそうじゃない。
 あたしは自分の欲望を満たす事だけを考えて行動し始めてる。
380なきうさぎ 25:05/01/06 19:48:16 ID:DXyd7OHU
「お願い、触ってぇ……」

 はしたない、恥知らずと言われてもいいから、
身体中に広がっていく熱を早く解放したかった。

「これだけじゃイケない……」

 しかし、あたしがどんなに懇願しても彼はあたしに触れてくれない。
 彼は自分の快感だけを追い求めているかのように、激しく腰を動かす。
 激しく動けば動くほど、Gスポットに当る刺激が強くなる。

「女の子だろ。膣だけでイキなよ」
「そんなの、無理っ……ああっ」

 一際強く突かれたかと思ったら、彼の動きが止った。
 どうして?もしかして、イカせてくれるの?
 あたしは彼を見上げる。
 彼は辛そうな顔をしていた。
 何で……辛いのはあたしの方なのに。

「舞さん……ゴメン……」

 彼が呟くと同時に、あたしの中に精液が注がれた。
 何度も彼のモノが震えて、生暖かい液体を浴びせられる。

「嘘っ……嫌ぁぁぁぁ!」

 永遠に続くかと思うほど長い彼の放出。
 打ち付けられる液体の刺激で、あたしは始めて膣だけでイッた。
381なきうさぎ 26:05/01/06 19:49:41 ID:DXyd7OHU
 生まれて初めて味わった快感の余韻に浸る事はできなかった。
 快感よりも、中出しされて妊娠するのではないかという恐怖が襲ったから。
 あたしはベッドから飛び降りて、自分のカバンの中を漁る。
 カバンのポケットの中からモーニングアフターピルを取り出し、その場で飲む。
 もしもの時の為に処方してもらった薬。
 まさか、別れた男のせいで使う事になろうとは。

「ゴメン……」

 彼が謝りながら、コップに入れた水を差し出してくれた。
 あたしは遠慮なく受け取り、水を飲む。
 セックス中に叫んでいたせいで乾いていた喉が潤う。

「本当にゴメン。中に出す気は無かったけど、我慢できなくて……」

 普段のあたしなら、完全にキレていた。
 けど、今日の事はあたし自ら招いた災難。
 あたしが三上さんの命令に従うからと言ったから。
382なきうさぎ 27:05/01/06 19:51:20 ID:DXyd7OHU
「こっちこそ、ゴメン。
 どんな命令にも従うって言ったのに、我侭ばかり言って」
「そんな事、どうでもいい!
 もし、妊娠していたら……
 さっきの薬を飲んだだけで避妊できるのか?」

 彼に肩を掴まれてゆすられる。
 あたしの事を心配してくれているのか。
それとも、別れた女に自分の子供が出来る事を恐れているのか。
 こんなに焦っている彼を見るのは初めてだった。

「大丈夫。七十二時間以内に飲めばいいから。
 じゃあ、あたし帰るね。
 今日は一緒にいてくれて嬉しかった」

 立ち上がろうとしたけど、彼が手を離してくれず立ち上がれなかった。

「一晩、僕の言う事を聞く約束だっただろ。
 まだ、一晩経って無い」
383なきうさぎ 28:05/01/06 19:52:33 ID:DXyd7OHU
 あたしは彼に命じられるままにシャワーを浴び、ベッドに横たわった。
 布団に包まれたせいで眠気が襲ってきたけど、
彼は眠る事を許してくれずあたしに色々質問してきた。
 色々といっても、あたしの寂しさについての質問ばかりだったけど。

「どうして今日、泣くほど寂しくなった?」
「ニュースを見て、家族の事を思い出したから」

「家族の事?」
「昔、事故で家族を失ったのよ」

「いつも寂しいと言っているけど、寂しい理由はそれ?」
「そう。家族がいなくて寂しい」

 実は、彼に寂しい理由を話すのは今日が初めてだった。
 家族を失った事を話して、余計な心配をさせたくないから。
 あたしの気持ちを察したらしい彼は、家族について深く聞いてこなかった。
384なきうさぎ 29:05/01/06 19:53:59 ID:DXyd7OHU
「今まで舞さんは猫だと思っていたけど、実はうさぎだったんだ」
「どうゆう意味よ?」
「寂しいを理由に我侭を言う人だと思ってたら、
実は本当の寂しがりやだったという事」

 やっぱり、我侭だと思われてたんだ。
 一応自覚はしてたけど、面と向かって言われるとショックだった。

「ねぇ、舞さん」
「何?」
「寂しい理由話してくれてありがとう。
 いつも電話していた時、ずっと疑問に思ってたから」
「そう……」

 これ以上、彼は話しかけてこなかった。
 静まる部屋。
 しばらくして、彼の寝息が聞こえてきた。
 その寝息に誘われるように、あたしも眠りにつく。
 朝になって目を開いた時が一晩の契約の終わり。
385なきうさぎ 30:05/01/06 19:55:08 ID:DXyd7OHU
 翌朝、あたしと彼は寄りを戻す事無く別れた。
 僕は君の寂しさを紛らわす事はできないと言われて。

 彼の部屋で別れを告げられた時、あたしは泣いた。
 いつもは自分の部屋に戻るまで泣くのを我慢するけど、今回は彼の目の前で。
 ここから離れた途端、一人っきりになるのが寂しくて。
 彼は泣くあたしの頭を撫でながら言った。 
「きっと、君の寂しさを無くしてくれる人が見つかる」と。

 彼と別れて数ヶ月。
 その間何人かの男と付き合ったけど、
あたしの寂しさを無くしてくれる人とは出会って無い。
 皆、何かと理由をつけてあたしと別れる。
 今付き合っている男との別れも近かった。
 最近、話をする度に鬱陶しいと言われるようになってきたから。
 今日にでも別れを告げられる予感がする。
 皮肉にも今日のデートの待ち合わせ場所は数ヶ月前、
彼と待ち合わせをした場所だ。
 あの時と同じように、駅前にはサラリーマンがいて、学生がいて、観光客がいる。
 この人ごみの中から付き合っている男を捜すのは一苦労だと思った時、
あたしは見つけてしまった。
 付き合っていた頃は何の特徴もないと思っていた彼を。
 
 あたしは彼に駆け寄った。
 ニュースを見て寂しくなって家を飛び出した時のように。

 終
386名無しさん@ピンキー:05/01/07 02:10:53 ID:DRKlCuAn
エロ描写はそこそこだけど、最後の一レス状況がよくわからん。
駆け寄った「彼」って振られた彼のことか?
だったら駆け寄っても意味ないやん。
387名無しさん@ピンキー:05/01/07 10:35:20 ID:yalIBKzh
自律しない言い分けがましい女の生臭さが強すぎて、「おんなのこ[でも]感じるえっち小説」としてつらい。
388名無しさん@ピンキー:05/01/07 23:31:41 ID:CvUpQO5i
「今まで舞さんは猫だと思っていたけど、実はうさぎだったんだ」

この台詞は好きだな。
GJ。
389名無しさん@ピンキー:05/01/08 10:36:52 ID:/yWrS2ry
女の子の性格に対する好き嫌いはあるだろうケド
SSとしては、心理描写もエロ描写も上手いなぁと思いました。
また書いてくださいね。

実はつきあってる男がこの女の子みたいな状況で、むむむ…って感じだったw
390名無しさん@ピンキー:05/01/09 14:25:03 ID:q88lidK2
>なきうさぎ

 じんわり良かったです。
 また機会がありましたら、お願いします〜。
391名無しさん@ピンキー:05/01/15 21:56:54 ID:msZmd+RU
ホントに意外に内容に賛否両論があるね。
タイトルと内容がしっかりかみ合ってて話の展開は面白いと思ったし、
個人的にはすんなり読めて良かったと思うな。

392名無しさん@ピンキー:05/01/23 15:39:53 ID:Lu/rPS/k
最後の2行以外はよかったよ。
良い話的にまとめたかったんだろうが
その彼的にはカンペキ終わったはずなのに
何ヶ月かたって、いきなり駆け寄られても思いっきり引くだけじゃん。
結局他人の話を聞かない、寂しいを理由に自分を押し付ける女になってるし。
今までのこと全部ひっくり返し。
でもそこ以外は良かったよ。面白かった。
393名無しさん@ピンキー:05/02/02 22:16:23 ID:MqgrjXsv
今さらなんだけど
なきうさぎの三上さんは最後のエッチ、
何が目的だったんだ?
どうせ別れる女だから、自分の嗜好のままにやっちまえ!
ってこと?
394名無しさん@ピンキー:05/02/02 22:20:49 ID:AUCqap8r
 
395名無しさん@ピンキー:05/02/03 00:19:41 ID:PPXApnsB
この話、どうも作者の実体験のような気がしてならないんだけど…。
396名無しさん@ピンキー:05/02/03 03:30:20 ID:OAfrweg1
まあ作家というものは少なからず自分吐きしてるものかと
397名無しさん@ピンキー:05/02/04 00:49:14 ID:Z4J9bjcE
俺が三上の立場だと仮定して考えると、三上は「非道い男」として別れたかったことになる。その方が「優しい男」として別れるより後腐れないからな。
398名無しさん@ピンキー:05/02/04 02:09:43 ID:puJLvRCz
でも未練たらたらな女が追いかけてきておしまい、か。
399名無しさん@ピンキー:05/02/04 08:00:09 ID:8o8W3uVU
なにこの臭いスレ
400名無しさん@ピンキー:05/02/04 08:11:55 ID:Y7pSBXHe
谷山浩子の「うさぎ」がモチーフなのかなーと思ってた。
違ったらごめ。
401名無しさん@ピンキー:05/02/08 11:06:12 ID:GoXPjPCu
あんまりH重視じゃないけど、ちょっと新鮮な感じだったので。
http://anoji.muvc.net/sadaco001.html
穏やかぎらいの人はまたいでってね。
402名無しさん@ピンキー:05/02/08 21:35:18 ID:zLPg8yrq
さくら大輔シリーズ希望あげ。
403名無しさん@ピンキー:05/02/09 01:58:08 ID:uO4Xskts
保守
404名無しさん@ピンキー:05/02/09 05:44:41 ID:1jRf6Y5A
>402
あんまり希望しすぎるのも考え物かと…
自分の中で完結した作品を再び書き出すって結構労力いるだろうし、
他の書き手さんも投下しづらいだろうし。
405名無しさん@ピンキー:05/02/17 21:14:40 ID:ASJXuUb+
HOSHU

406377:05/02/27 18:56:12 ID:QkSV13Az
えーと、久々に投下します。
今回はこんな感じのゲームあったらいいのになぁ、と思い2分くらいで
作った設定の元で話作りました。
407館もん。 1/30 :05/02/27 18:57:35 ID:QkSV13Az

 もごふ、もごふ、と眼の前のご馳走を、貰った割り箸で食べ続ける。
 うまい。ていうか、うますぎる。なんか金持ち特有の長くてでっかい、白いテ
ーブルクロスのアレな机の、多分一番イイ席で、出された料理を下品にがっつい
ている。気分は某映画の豚になった父親&母親。もしくはカ○オス○ロのル○ン。
 近くに座ってる叔父さんとか、その血の繋がってない息子とか、物凄い唖然と
した顔で見てる。あ、叔父さんは微笑ましい表情だ。まぁどうでもいいけど。

 前菜はとりあえず誰よりも早く食い終わった。
 スープはスプーン使わずにラーメンの汁・漢飲みで飲み干した。
 で、今はメインの肉を箸を使って喰い千切ってる。
 …いや、いつもこんな食べ方してる訳じゃないんですよ?両親にはちゃんと躾
けて貰ったし、レストランとか行ったらちゃんとスプーンもナイフもフォークも
使う。今こうしてる目的はただひとつ。全員に呆れられる事だった。

 …話をかいつまんで説明すると、私はこの藤乃原コンツェルンだかグループだ
かの日本有数の金持ちでなんかえらい家柄の、使用人と駆け落ちした長女・理佐
子の娘らしい。
 ずっとほっとかれたんだけど、先日お亡くなりになった当主(私のじーさんに
当たる)の遺言書に全部の実権やら財産やら私のお母さんに譲る事になってたそ
うで。万が一の事態になってたら、それはお母さんの娘である私―――千佐子に、
という事らしい。でもって、万が一の事態になってた。お母さんはもう死んでた。
 早々に私はお父さんの元から連れ去られ、今この藤乃原の家で暮らしている訳
だ。だが、継ぐ気は無い。
 こうなったらもう資格無し、と判断されて追い出されようと思ってるんですが。

408館もん。 2/30 :05/02/27 18:58:52 ID:QkSV13Az
「いい食いっぷりだねぇ」
 さっきからずーっとにこにこしたままの叔父さんが、不意に言った。
「なんか、孫○空見てるみたいだった。あ、ドラゴ○ボールのね」
「…ド○ゴン&ボール○ワー?」
『違う!!』
 …ちょっとした小ボケだったのに、叔父さんの息子ども…たしか短気バカの長
男浩司とスカした嫌味の次男誠司がユニゾンで突っ込んで来た。嫌いな人間のボ
ケなのに突っ込んで来るのは、多分根がいい人なんだろう。
「浩司も誠司も、おすましで食べるからねー。うん、気に入ったよ」
 …おかしいといえば、この叔父さんもどこかおかしい。私の事、何が何でも全
肯定。何をしても私を褒める。それこそ、浩司や誠司を引き合いに出してでも。
 遺言さえ無ければ、叔父さんが全部引き継げたのに。本来なら…それこそどっ
かの推理小説とかの世界なら、私は殺されても文句無いのに。
 今まで、私は無理矢理連れて来られてまず一番側にいた浩司をぶん殴って、宛
がわれてたらしい婚約者(名前は…佐原かなんかか?忘れた)を全力で追い返し
て、脱出を16回試みて全部失敗して…なんか、それでも叔父さんは私を慰めた
り仲良くなろうとしたりしてる。おかしい。
 浩司みたいに私をずっと恨んでいたり、誠司みたいにスカした態度でずっと無
視してる方が余程自然だ。
 …とりあえずこれ以上気に入られるのがイヤなので、普通に食べ始めた。
「普通に食べられるんじゃないですか」
 冷静な誠司のツッコミが、妙に癇に障った。




409館もん。 3/30 :05/02/27 18:59:34 ID:QkSV13Az
「あー、おなかいっぱい。げっつり。もう食えない」
「素敵な食べっぷりでした」
 用意された部屋のベッドで寝転がる。すぐ側で、私のお世話専門らしいメイド
さん―――名前に反してつるぺた体型の不二子ちゃんが言った。
「嫌味?」
「いえ、私もそういう食べ方したいんですよ。ほら、ラ○ュタとかでロブスター
1本手で千切って食べるとか、がっつり食べたりするの憧れなんですけど…」
 聞けば、1度やろうとして喉に詰まって死に掛けたらしい。その可愛いお顔で、
やる事はなかなか漢だ。
「お腹が苦しいのでしたら、細田胃散とか持って来ますか?ああ、鈴原先生に頼
みましょうか?」
「…ヤダ」
 鈴原先生は、どうも病弱な浩司の主治医。態度悪いわ俺様だわセクハラ野郎だ
わで、正直嫌い。まぁ、不二子ちゃんに並々ならぬ好意を寄せているみたいだか
ら、なんか無碍には出来ないんだけども。
 私の表情を見てわかったのか、不二子ちゃんは笑う。
「安心して下さい。私も鈴原先生苦手です」
 …よっっしゃあああああああああああああああああああああ。
 何故か、そう思う。ザマミロ鈴原、お前の恋路は絶対上手く行かねぇぞ。
「そっか、私も苦手」
「と言いますか、嫌いです」
「うん、私も嫌い」
「たまーに、死ねって思います」
「私は常に。よし、歌おう。死ーね、死―ね、死―――ねっっ!!」
「イエ―――――――――っっ!!です!!」
「人を勝手に殺すんじゃねぇえええええええええっっ!!」
410館もん。 4/30 :05/02/27 19:00:17 ID:QkSV13Az
「キャーーーっっ!?」
「ぎぃやああああああああああああああっっ!?」
 2人で盛り上がっていると、突如眼の前が真っ暗になり重みが掛かる。なんだ
なんだと思ったら、渦中の存在、鈴原が勝手に人の部屋に入って、不二子ちゃん
を巻き込んでベッドに倒れ込んで来たのだ。
「あははははは!両手に花じゃー!!」
 右手に不二子ちゃん、左手に私を抱いてご満悦だ。
「やっ、ちょっ、鈴原先生っ」
「おまっ、おまっ…」
「…お前、放送禁止用語言うつもり?」
「言うかっ!!」
 必死で鈴原から離れると、私の方はどうでも良かったのか不二子ちゃんを本格
的に抱き締める。
「っ…千佐子様、助けて下さい!!」
 不二子ちゃん、本気で助け求めてる。じゃあ、という事で私は後ろから鈴原の
首を思い切り締めた。当然、鈴原は止めた。私の胸に飛び込んでくる不二子ちゃ
ん。おお、可愛い。
「うわーい、メイドと女主人の抱擁萌えー!!」
「何を言うかお前は…」
 バカ丸出しの医者に溜息をついて、私は小柄でちっちゃい、震えている不二子
ちゃんの背中を叩いてやった。鈴原は…なんだ、急に真面目腐った顔しやがって。
「…さて、俺は遊んでる余裕なんか無いんだ。仕事なんだからな」
 そう、言い腐った。殺してやろうかこいつ、そう思ったその時だった。
「そうですね、仕事なんですからとっとと来て下さいね」
 ―――そう、冷気漂う声が響いた。
「っ…あ、せっ…誠司坊ちゃん」
411館もん。 5/30 :05/02/27 19:01:00 ID:QkSV13Az
 うっわ怖。私も思ったよ。不二子ちゃんも固まってるよ。
「早く兄さんの所に行って下さい。また少し熱が出た模様ですから」
 冷静に、あくまで冷たい表情を崩さずに言った。鈴原はへこへこしながら部屋
を出て行こうとした。
「全く、女性に目が無いのもいい加減にして下さい」
「そんな、いいっすよ、女は」
「はよ行かんかいっ!!」
 …すぐさま、冷静な仮面は崩れた。溜息をつくと、じろ、と私の方に視線を寄
越した。うわー、感じ悪い。
「なっ…なんだよ」
「いえ、貴方は男性より女性の方が好きそうですねと思っただけです」
 言われて、ずっと不二子ちゃんを抱き締めたままな事に気付いた。てか、不二
子ちゃんや、なんで赤くなってんの。
「…まぁ、ここでロクデナシの男ばっか見てると、女に走っちゃうかもねー。特
に、眼の前の無理して大人ぶってる女顔のオカマさんとかねー」
 お、怒ってる怒ってる。こんなやっすい挑発に乗るってのもまだまだ若い証拠
だ。
「ちっ…千佐子様…」
 不二子ちゃんが脅えてる。が、私は構わずにあっかんべー、と更に挑発してや
った。が。
「…あ、鈴原馬鹿だ」
 不意に、興味が移る。なんと鈴原、ドア横に鞄を忘れている。不二子ちゃんを
放して、それを取りに走る。
「なにをするつもりですか」
 少し心配そうに眉を顰める。
「は?忘れ物だから届ける。後、死にかけ浩司の見物」
412館もん。 6/30 :05/02/27 19:01:42 ID:QkSV13Az
 そう言った瞬間、なんとなく誠司がキレたのがわかった。ので、ダッシュで浩
司の部屋に向かった。



『馬鹿かお前は!!』
『なんだよー、うる星やつだなー。今取りに行くから待ってろ』
 浩司の部屋の中で、そんな声が聞こえた。まぁ、鞄の事だろ。苦笑しながらノ
ックする。返事がしたから、中に入った。
「鈴原先生、忘れ物」
 そう言って鞄を差し出すと、鈴原も、ベッドの中の浩司もイヤ―――な顔に。
なんだ?どういう事だ?
「…不二子ちゃんじゃないんだ」
「…不二子じゃねーのかよ」
 同時に、言いよった。私は窓際まで大股で歩き、ベッド脇にあった浩司のもの
らしき、ホ○ミスライムのストラップの付いた携帯電話と鞄を持ってぱかん、と
窓を開ける。そのまま手を外に突き出し。
「2人共、言う事は?」
 ちなみにここは5階。
『すいませんでした』
 と、深々と頭を下げた。単純馬鹿は見てて気持ちがいい。よろしい、とばかり
に2人にそれぞれ返してやった。
「てか、お前も不二子ちゃん好きなの?」
 言われて、浩司の顔が今よりも真っ赤になる。ああ、単純馬鹿万歳。ふい、と
私から眼を逸らした。可愛いな、マジで。
「ま、不二子ちゃん好きな人いるっぽいけどね。勿論お前ら以外で」
413館もん。 7/30 :05/02/27 19:02:25 ID:QkSV13Az
 さらっと言うと、2人は揃って『?マジっすか!』と声を揃える。仲いいな。
「マジっすよ。だって本人から聞いたもん。恋する乙女の顔だったよー」
 そう言いながら、その顔を思い出す。誰だろう、浩司でも誠司でも鈴原でもな
い好きな人って…って、あ、浩司が倒れた。
「じゃ、お大事に」
「……ぁぃ」
 今にも死にそうな声を出して、鈴原は手を振った。


 …さて、鈴原に鞄を届けたのは、単に親切心だけじゃない。17回目の脱走の
為だ。言っておくが、私は未だ逃げる気満々なのだ。周りを見て、階段を下りる。
向かうは、3階のトイレ。窓があった筈だ。
 から、と窓を開ける。よーしよし、落ちても死なない程度だ。狭い窓から出る
と、ちょっとした足場がある。そこへジャンプして、結構なジャングル状態と化
している生い茂った木の枝を取る。が。

「―――何をしているんですか」
「げ」
 速攻、見付かった。トイレの窓から顔を出しているのは。
「…見逃せよ誠司、お前だって私が当主になるの、嫌だろ?」
 そう言うと、誠司はまた眉を顰めた。どうにもこうにも、こいつはストレート
に嫌な顔をしない。する時はするけど、なんか、表情が微妙だ。
「そりゃ、嫌ですよ。貴方みたいなやる気のない人がなるのは」
「言い方、まどろっこしい」
 妙に引っ掛かる言い方しやがって。

414館もん。 8/30 :05/02/27 19:03:08 ID:QkSV13Az
「…この家は、貴方に取って苦痛でしかないですか」
 急に、誠司が弱気な口調になる。は?どういうこった。決まってんだろうが、
苦痛に決まってる。
「苦痛だよ。苦痛でしかない。家に帰せよ、今すぐ。私は―――」
 その続きは、言えなかった。なんでかって言うと、足を滑らせて…

 …ばさばさばさ、と身体中に枝が引っ掛かるような、そんな音が聞こえた。




「さん……子さんっ!千佐子さんっ!」
 気が付いたら、頭の上から私を呼ぶ声がした。なんだろ、身体中が痛い。どう
した事か、眼の前もよく見えない。身体も動かない。
「…あー…」
 なんとか動く口から、とりあえずなんかを喋って見た。同時に、呼び続けてい
た声が止んだ。段々と視界が開ける。眼の前には―――
「千佐子…さん…」
「…せぇ…じ…?」
 泣きそうな顔の、嫌味な坊ちゃんの筈の―――誠司だった。まぁ、よく考えれ
ば普通の人間ならそうだわな。逆だとしても、私もこうなるわ。
「…いた…い」
 身体中、本気で痛い。折れてたらやだなぁ。あ、折れてたら入院か?そりゃ好
都合かもしれない。ともかく、この家に住まなくて住むなら―――
「っ…安心して下さい、今すぐ鈴原先生を呼びます。家には色々な設備もありま
すし、ですから、千佐子さん…!」
415館もん。 9/30 :05/02/27 19:03:51 ID:QkSV13Az

 ―――冗談じゃねぇっ!!
「わぁあっ!?」
 がばっ、と起き上がる。人間、割と丈夫に出来てる。手も動く足も動く、ただ
痛いだけだ。びっくりしてる誠司を尻目に、私はダッシュで逃げようとした。
「くっ…そぉおっ…」
 痛いのに無茶しようとするから、本気で身体中がびっしびしだ。何語だこれ。
しかも、早々に誠司に捕まってる。
「あっ…貴方、本気で馬鹿なんじゃないですか!?なんて事を…!」
「うっ、うるさいっ!放せ!帰るんだって!こんな所、一秒だっていたく―――」

 ばし、と思い切り平手で叩かれた。そして同時に、思いっきり舌噛んだ。午後
は○○くらい、おもいっきり。それはもう、口の中にものっ凄い血の味が広がる
くらいに。

「―――あ……」
 誠司の顔が、まずい、というような顔になる。そりゃそうだろう、こっちは泣
いてるんだからな。しかし、舌と頬の痛さの割合は8:2くらいだ。結局どっち
みち悪いのは叩いた誠司なんだけど、完璧に誠司は叩いた事で泣いてると思って
いる。
「…千佐子、さん…」
 しかしまぁ、痛いわ。満身創痍ってこの事言うんだろうなぁ。泣けるわ、本当
に。身体も身体の中も痛い。
「……」
 ていうか、喋れない。口の中、意外に血だらけだ。いや、多分殆ど唾か。
「千佐子さん、あの、大丈夫ですか?」
416館もん。 10/30 :05/02/27 19:04:33 ID:QkSV13Az
 非常に低姿勢に聞いて来る。私は涙を拭いながら、首を横に振った。無理が祟
ったのか、身体中が本気で痛くなって来た。ごきゅ、と、とりあえず唾を飲み込
んだ。うう、まっず。苦しい。
「…失礼します」
「っ!?」
 ボヤボヤしている間に、誠司が私の事を抱き上げよった。俗に言う、お姫様抱
っこだ。いや、アンタそんな…
 顔が、痛みとかそういうの以外の要素で真っ赤になって、熱くなる。恥ずかし
い。これは恥ずかしい。客観的に見れば、私は脱走しようとして失敗して勝手に
大怪我して叱られて泣いてこうなったのだ。恥ずかしい。恥ずかし過ぎる。
「っ…っ…」
 いやだ、と誠司に下ろすよう要求する。けど、誠司は無視した。うわあああ、
自業自得だけど、これで連れてかれて、鈴原に治療受けて馬鹿にされて、浩司と
か叔父さんとかにも事情全部話されて…うわああ、馬鹿にされる。嫌だ。嫌過ぎ
る。でもって、きっと二度と逃げられないようにされるんだ。だって前脱走して
捕まった時にこいつに、『次やったら、承知しません。地下牢にでも放り込みます』
とか言われたもん。
「っ…」
 いてぇ、舌いてぇ、喋れやしねぇ。抗議も出来ねぇ。誠司の野郎、完全に無視
して…ん?
「…黙っていて下さいよ」
 小声で、そう言った。まぁ、喋れない訳なんですけど。


「……?」
 人に見付からないようにこそこそ移動して、誠司の部屋の前まで来てしまった。
417館もん。 11/30 :05/02/27 19:05:54 ID:QkSV13Az
 慎重派なのか、鍵を掛けているらしい。私を抱いたまま鍵を出そうとしていたが、
無理なので一旦『すいません』と私を床に座らせて、戸を開けた。もっかい私を
抱いて、やはり周囲を確認して、部屋に入った。

「……」
 さっきもそうだったけど、誠司は私をちょっと高めのお皿みたいな扱いをして
くれる。まぁ、怪我してるからだろうけど…浩司とは違って和風で広い部屋にマ
ッチした古い茶箪笥から箱を出して持って来る。
「…拗ねててもいいですから、服を脱いで下さい」
「―――?」
 は?意味がわからずに眼を丸くしていると、外見に似合わない舌打ちをする。
「困るのは、貴方なんですよ」
 そう言うと、かぱ、と箱を開けた。救急箱か。私は全部をやっとこさ理解した。
あー、鈴原に治療されるのとこいつじゃどっこいだけど、報告が叔父さんや浩司
に行かないだけましだ。

「……」
「素直なんだか、拗ねているんだか…」
 正直嫌なんだけど、全身痣や打ち身、結構切れてる所もあったから、下着姿で
素直に治療を受けてる。大した事の無い身体だから私はどうでもいいんだけど、
誠司がものっ凄く照れてる。
「……」
 言った方が…てか、伝えた方がいいんだろうか、喋れないっての。なんか勘違
いしてるみたいだし。一応、誠司には感謝しているんだし。そう思って、どこか
に紙と書くもんは無いかと視線を巡らせる。

418館もん。 12/30 :05/02/27 19:06:37 ID:QkSV13Az
「…僕は、味方ですよ」
 不意に、誠司が呟いた。ちょうど消毒も終わった。もしかして、じろじろ部屋
を見てたの、また脱走するのかと勘違いされたのかな。ぎゅっ、と手を握って来
た。
「兄さんはああいう身体ですし、僕だって人の上に立つ器じゃない。だからと言
って貴方が相応しいかと言うと甚だ疑問ですが」
 まぁ、その意見は賛同する。ていうか、浩司以上に向いてない。
「遺言通りにしようという動きがありますけど、別に無理矢理にでもしなきゃい
けないという訳では無いです」
 …拉致監禁したくせに?
 言おうと思ったけど、言えなかった。途中でまずい、という顔をしたから、わ
かってるんだろうけど。
「貴方を疎ましく思っている人もいます。でも、僕や兄さんはけしてそうじゃな
いですから。ですから…」
 なんか、必死だ。ていうか、その口ぶりからすると叔父さんは信用出来ないっ
て事と受け取っていいんか?とりあえず、これでいいやと思って誠司の手を取っ
て、手の平を上に向けさせた。

『さっき叩かれた時に舌噛んで喋れない』

 さささ、と手に書く。頭のいい誠司はすぐに理解する。そして、あっちゃぁ、
という顔をして謝った。別に、怒ってない。誠司の見方も今は変わってるし。だ
から、色々込めて『ありがと』って書いた。
 誠司が、それでもちょっと困った顔だったけど、笑ってくれた。とりあえず味
方だっていうのは…信じてもいいんだろう。こいつ、単純だし。
「あーあ、派手に噛みましたね」
419館もん。 13/30 :05/02/27 19:07:20 ID:QkSV13Az
 べー、と出した舌を見て、溜息をつく。とりあえずという事で、部屋の冷凍庫
から氷を出して口の中に入れてくれた。染みるけど、気持ちいい。それから、遠
慮せずにてきぱきと治療してくれた。手際がいいな。
「…兄さんも大分馬鹿な人ですから、一々人を呼ぶよりも僕がした方が早いと思
いましてね」
 怪訝な視線に気付いて、苦笑した。浩司はやっぱり馬鹿なのか。

「はい、終わりましたよ」
 包帯を巻き終えて、言った。『ありがとうございます』とお辞儀をする。この短
い間で距離も縮まったもんだ。急に、こいつの前で半裸になってるのが恥ずかし
くなって来た。それがわかったのか、誠司も照れてしまう。さっさと服を着てし
まおう、そう思ったその時だった。

「誠司、お前確か、女教師が教壇の上で生徒17人にレイプされるDVDのヤツ
持ってなかった?」
 がちゃ、と遠慮無しにそんな事を言いながら、まだまだ具合の悪そうな浩司が
入って来た。鍵、閉め忘れたんか。しかし、どうしたもんかねこの状況。私は下
着姿でベッドの上に座ってるし、誠司はそんな私を見下ろす格好で立っている。
服は落下した時に気に引っ掛かって意外とズタボロだ。三者三様に固まって、そ
して一番最初に動いたのは…浩司だった。

「っ…お前、次期当主ってか、女に何て事してやがんだぁああああああっっ!!」
「ええええええええええええええええっっ!?」
 完全に勘違いした浩司が、誠司に殴り掛かった。やっぱり、馬鹿だ。けど、い
い人なんだろう。後、具合悪いのにオナニーはよした方がいいと思うよ。

420館もん。 14/30 :05/02/27 19:08:02 ID:QkSV13Az
「…という訳なんだけど」
「すいません…」
「……」
 舌も痛みが引いて、状況説明して。今度は誠司が拗ねていた。事もあろうに私
に乱暴した、というレッテルを貼られたのが一番の不機嫌の理由と思われる。デ
コのチョップ痕が痛々しい。弟よりも背が低いからこんな攻撃になったんだろか。
「ごめんな、誠司。あとDV…」
 ぎろ、と浩司を睨む。別に気にしないよ、年頃の男がどんな趣味のAV持って
たって。とは言うものの、やっぱり恥ずかしいのだろうか。顎で兄に『出てけ』
と促すと、浩司はすごすごと出て行った。
 ―――そして。

「とにかく、僕だけは信用していいですから」
 あ、浩司除去された。私はつい吹き出してしまう。誠司も、誤魔化し切れるも
のでもないと思ったのか、顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「…まぁ、二人共信用は…するよ。別に、元から悪い奴だって思ってた訳じゃな
いし、普通に健康的な男子だという事もわかったし」
 あ、誠司がすっごい落ち込んでる。ていうか、そこまでになるなら、そんなD
VD持ってなきゃいいのに。もしくは誰にも言わなきゃいいのに。
「落ち込むなよ、別に思ってないけど例え私に変に思われても気にしないだろ?」
 がっくりしている頭をなでなでしてやると、あーあ、耳まで真っ赤になったよ。
気にするんだ。まぁ、今までの態度とかそういうの見せておいてAVの趣味がそ
れっていうのは、バレたくなかったんだろう。
「…軽蔑しません?」
「別に、お前に彼女が出来て実際に同じプレイを強要してたとしても、それは人
の性癖なんだから、気にしないわ」
421館もん。 15/30 :05/02/27 19:08:45 ID:QkSV13Az
 まぁ、有り得ないから言ったんだけどね。実際やられてたら、正直心の中では
引くけど。
「…寛容なんですね」
 ちょっと呆れたような顔をしつつ、ちょっとは立ち直ってくれたようだ。
「そうか?」
 お互い、ちょっと気まずい。そろそろ帰るか。軽い捻挫もした、という事で借
りた杖(年代物)を支えにして立ち上がる。
「大丈夫ですか?」
「ああ、これで暫く脱走も出来ないだろうしね」
 地下牢放り込む、ってのはフカシだったようだ。誠司はちょっとむっ、とした
顔になる。
「そんなに帰りたいんですか?」
「…まぁ。だって、買い物帰りに拉致されて、お父さんにも会えてないし。とに
かく連絡取りたいんだよ。どうせ当主になる気無いんだし、一緒に普通に暮らし
て行きたいんだって…なんでそんなんもわかってくれないんだよ」

 今の事件で、ちょっとは誠司の事も浩司の事も理解出来た。けど、基本じゃね
ぇか。なんで普通に暮らしていた家族を引き離して、普通にしてろって言えるん
だ。
「せっかく誠司や浩司の事わかったのに、それが普通だって言うなら、私は絶対
に好きになんかなれない。味方だなんて言われたって、信用なんか出来ない」
 ガタガタ震えるのは、全身痛くて、杖があっても立ってるのが割と辛いから。
こっちを見てる誠司は、何故か悲痛な表情で、こっちが加害者みたいだ。悪いの
は、そっちの癖に。
 …誠司は何も言わない。何も。ただ、私を―――何故か、哀れむような表情で
見ている。そんな顔、するな。するくらいなら、今すぐ開放してくれ。
422館もん。 16/30 :05/02/27 19:09:27 ID:QkSV13Az
「なんだよ、言えよ。言いたい事あるなら、言えよ」
「…言わなければいけないとは、思っていました」
 意を決したように、誠司は私の肩を掴む。いや、痛い。痛いって。じろ、と誠
司を睨む。けど、全然怯まない。

「きっと、貴方は信じないと思います。だから、僕の話を聞いた後、自分で確か
めてください」
 そう言って、誠司は私の手に携帯電話を握らせる。この機種、この白猫と兎と
犬と蛙とロボットと黒猫のストラップ…私のだ。ていうか、あの時充電しなきゃ
いけない状態だったのに、電池満タンだ。充電してくれたんだ。
「…単刀直入に言います。貴方は、あの日いきなり連れて来られたんじゃないん
です。貴方の父親とちゃんと話をして、売っていただいたんです」

 …………は?
 …あまりといえばあまりのお言葉に、完全に私の頭は真っ白になってしまう。
「…え、い、いくらで?」
「そこですか?」
 うわー、というような顔をして、誠司はこめかみを押さえる。
「そういうの、聞かない方がいいですよ。高いと言えば高いですし、安いといえ
ば安いんですから…」
 倒れそうになる私を抱き抱えて慰めにならないような事を言う。
「高いか安いか区別つかない?なに?6千円?」
「確かに微妙ですけど!!」
 …嘘だ。いや、絶対嘘だ。ていうか嘘だ。私は慌てて携帯に電話を掛ける。パ
ニックになり過ぎて、登録してあるのにイチから…東京03から掛けてしまう。
お父さん、嘘だ、そんなん嘘だ。絶対に。
423館もん。 17/30 :05/02/27 19:10:10 ID:QkSV13Az
 3回程でお父さんが出た。私は大声で。
「おっ…おっ、おと、お父さん、助けて…お願い、私、帰りたい!!」
 必死になって助けを求める。けど、お父さんは何も言ってくれない。
「お父さん、お父さん…助けて…」
 それでも、何も言ってくれない。誠司は、もうこっちを見ていない。顔を伏せ
て、身体を震わせている。
『―――すまない』
 やっと、お父さんはそれだけ言ってくれた。てか、すまないって―――
「…おとぉ…さ…ん?」
『すまない。父さん、どうしても金が必要だったんだ。きっと、お前は父さんと
いるよりもそっちにいた方が幸せになれるんだ。だから―――』
 お父さんの声が、泣きそうだった。
「おっ…お父さん!?嘘でしょ!?私、私、そんな事無いよ。お父さんといた方
が絶対幸せだもん!!だから、私、すぐ帰るから、だから―――」
 必死になって、私は訴える。嘘だ。こんなの嘘だ。あ、そうか、脅されてるん
だ。お父さん、電話口で銃口突き付けられてたりするんだよね!?
「おとう…おと…っおっ…」
 勝手に、涙が出て来る。なんで?なんでこんな事になったの?なんで、ただ、
普通に暮らしてただけだったのに。なんで、なんで?
『…千佐子、落ち着いて聞いてくれ。覚えているか?荻窪の叔父さん』
 悲痛な声で、お父さんは言う。うん、わかる。あのいかにも幸薄そうな―――
って、まさか。
『父さんな、その人の保証人になってな、それで、叔父さん、夜逃げして―――』
 …まさか、って思った事が、どんどん実現して行く。眼の前が、真っ暗になる。
でも、それだって、まさか、娘を売ってまで、する事なのか?お父さんは、それ
でいいって、そう思ったのか?
424館もん。 18/30 :05/02/27 19:10:53 ID:QkSV13Az
「いくら!?いくらなの!?それって、お金どんくらい必要だったの!?お父さ
ん、私の事いらなくなったの!?ねぇ、お父さん―――」

『―――いらないんだ、正直言えば』

 …は?私の顔が、引き攣る。え?ていうかえ?
『父さんな、恋人がいるんだ。でも、その人と結婚するにはお前がちょっと邪魔
で、それで借金出来たのを藤乃原の方が嗅ぎ付けて、それで―――』
 は?え?ていうかちょっと急展開ちゃう?あまりのお言葉に、完全に私はどっ
か切れたような気がした。
「え…だっ、誰!?ていうか、本当にいくらだったの!?もしかして、口実!?
借金って、えええええええっっ!?」
『借金は、600万ちょいで、相手は―――ほら、近くのフィリッピンパブのマ
マで―――』
 …それを聞いた瞬間、完全に私は切れた。
「金額も理由も相手も全てにおいて中途半端だなぁあああああああああ!!!」

 がしゃ、と私は4年愛用した電話を床に叩き付けた。見事に全部で4つに別れ
た。メモリーかなんかの四角いやつとフタと画面部分とボタン部分。肩で息をし
て、ぺたし、と座り込んでしまった。
 誠司はおろおろしながら携帯電話と私を交互に見た。
「―――知ってたんだ」
 声を出さずに、頷いた。
「浩司も、叔父さんも、鈴原も、伊藤も、不二子ちゃんもか」
 一瞬送れて、それでもやっぱり頷いた。だからか。だから、絶対に電話をさせ
なかったのか。思えばさっき浩司の携帯取った時に使えば良かったな。私の馬鹿。
425館もん。 19/30 :05/02/27 19:11:35 ID:QkSV13Az

 ―――本当に、馬鹿だ。
 面白いくらいに涙が出た。自分の馬鹿さ加減とか、本当は影で笑われてたんだ
って事が情けなくて情けなくて。
「…私、捨てられてたんだ。借金が無くたって、疎まれてたんだ」
 自分で、わざわざ口に出して言う。言って、自分で更に傷付いてる。馬鹿みた
い。本当に、私だけがわかってなくて、馬鹿だったんだ。

「千佐子さん…」
「……」
 私は、杖を使って立ち上がる。
「どこへ行くんですか」
「…どこでもいいよ…どうせ帰る所なんか…無いんだから」
 ―――そう。もう、私に行く所なんか無い。与えられたあの部屋しか、私には
無い。
「千佐…」
「触るな」
 私の身体を気遣ってくれたのか、誠司が私を支えてくれようとしたけど、今は
それすら鬱陶しかった。
 全てが嫌で、全てが憎くて、堪らなかった。
 逃げたかった。せめて、布団の中で、全部を遮断して眠りたかった。察してく
れたのか、誠司はそれ以上は何もして来なかった。

 重い足取りで、なんとか自分の部屋に辿り着く、心配してくれた不二子ちゃん
をも追っ払って、私は部屋に閉じ篭った。自分の希望通り、布団の中に潜り込ん
で、思う存分泣いた。
426館もん。 20/30 :05/02/27 19:12:28 ID:QkSV13Az
 多分、誠司が伝えてくれたんだろう。誰も、それこそ何時になっても誰も声も
掛けに来なかった。正直、ありがたかった。
 泣いて、寝て、起きて、ウトウトして、思い出したように泣いて、また寝る。
 …そんな事を、何度繰り返しただろうか。気付けば、もう真っ暗だった。身体
は痛いし、顔も痛い。鼻も痛い。眼も痛い。全部痛い。
 水でも飲もうかな、とそう思った矢先だった。
「―――え」
 かちゃ、と鍵が開いた。鍵、掛けてたのに。なんとも嫌な予感がしつつ、身構
える。怒った誠司だろうか?そう思いながら、眼を凝らす。月明かりに照らされ
てそこに立っていたのは―――

「叔父さん…」
「来ちゃった」
 瓶と、なんかグラスを2つ持って、叔父さんが部屋に入って来た。かち、と後
ろ手でまた鍵を掛けると、電気を付けた。うん、やっぱり叔父さんだ。ラフな格
好がまた似合ってる。ゆっくり私の方に近付くと、ベッドの脇にある机にグラス
と瓶を置いて…ってこれ、もしかして酒か?正気か?私まだ未成年だぞ?
 ジト眼で叔父さんを見ると、にひょ、となんとも子供っぽく笑って。
「若い内の飲酒ってのは若い内にしか出来ないでしょ。叔父さんもね、千佐子ち
ゃんくらいの時、嫌な事があってね。勢いで飲んだ事あったんだ」
 きゅぽ、と栓を抜くと、とっぽとぽ注ぎやがった。
 …まぁ、興味無い訳じゃないけどさ。確かに今、ヤケ酒かっくらいたい気分で
はあるけど。
「…叔父さんも、知ってたんでしょう?私の事」
 勧められるがままに、私はちび、とお酒を飲む。おいしいとかおいしくないと
か以前に、なんか熱くなった。かーっとなる。これが大人味か。
427館もん。 21/30 :05/02/27 19:13:27 ID:QkSV13Az
 叔父さんは、自分のグラスには注がず、瓶を持ったままこっちをじっと見てる。
「すまなかったね。言っても、信じて貰えないと思っていたし…諦めてくれれば、
必要以上に傷付ける事が無いと思って―――」

「……っ…」
 叔父さんは、私の事をぎゅっと抱き締めた。ホントは、言ってる事に同意は出
来なかったけど、でも、今の私には、お父さんとそう歳の変わらない人が、ただ
こうして抱き締めてくれただけで、何故か、安心してしまった。
「これからは、ずっと守ってあげるから…側に、いてあげるから」
 自然に、涙が零れてしまった。恥ずかしい。この人に、別に心を許した訳じゃ
ないのに。お酒のせいか、どんどん身体が熱くなって来る。
 不意に、叔父さんが身体を放した。向き合う形になって、微笑まれる。私は、
妙に恥ずかしくなってしまった。さっきは、お父さんとそう歳が変わらないって
勝手に思ってたけど、叔父さんは、よく見たらもっと若かった。そう言えば、浩
司とも誠司とも血が繋がっていなかったよな。後妻ならぬ……後夫?入り婿だよ
な?なんだろう、胸がドキドキして来る。なんとなく、お酒のせいだけじゃない
気がする。

「…こうして見ると、君は理佐子に瓜二つだ」
 優しく微笑んで、そんな事を言い放った。
「お母さんの事…知ってるんですか?」
 なんか、今まで話をしてても殆ど聞き流していたから…そうか、この人お母さ
んの事、知ってたんだ…聞きたいな…お父さんには裏切られたけど、お母さんは
死んじゃったから、裏切る事は無いし…
 くー、と私はグラスの中のお酒を飲み干した。また叔父さんは注いでくれた。
わんこ酒か?これ。
428館もん。 22/30 :05/02/27 19:14:10 ID:QkSV13Az
「…知っているよ。私と彼女は幼馴染だったんだ」
 お酒って、こういう飲み方って普通…しないよな?グラスギリッギリまでお酒
が入ってる光景、ビール以外で見た事無いや…
「幼馴染…ですか」
「ああ、ずっと好きだった」

 ―――え?
 
 今、なんか、物凄い発言を聞いてしまった気がする。けど、聞き返す事は出来
なかった。口、塞がれたから。
「…んっ…ふ…っ」
 ぬる、とした感触が口の中で這い回る。なんだろうこれ…あ、そうか、舌、だ
よな?なんで、こんな頭働かないんだ?これ、叔父さんの―――

「っ…やぁ…や、ん…」
 あまり力の入らない手で、なんとか叔父さんの顔を押し退けようとする。けど、
力が入らないから、やっぱりそれは出来なくて。
「…千佐子ちゃん、ほら…いい子だから、力を抜きなさい」
 叔父さんの冷たい手が、服の中に入って来て、熱くなった肌を撫で回して来た。
くすぐったい…かと思ったんだけど…なんだろう、気持ち…悪い…鳥肌が立って
しまう。
「やだ…何、すんですか」
 ひとつずつ、ゆっくりボタンが外される。布団の中に包まっていたから、シャ
ツとスカートだけの姿で、全部のボタン外されると、私は下着も着けていない身
体を晒す事になってしま…あ、包帯とかキズバンとかもあるか。でも、結局肝心
な所を隠していないから…同じか。
429館もん。 23/30 :05/02/27 19:14:52 ID:QkSV13Az
「せっかく綺麗なのに、こんなに傷を付けて…」
 ぺり、とキズバンを剥がす。傷よりも、勢い良く剥がされた皮膚の方が痛い。
「嫌…」
 叔父さんが、傷口を舐める。くすぐったいのと、痛いのと、後、怖くて、震え
てしまう。
「やだ…や、嘘吐き…さっき、守ってくれるって…」
 信じた訳じゃ無いけど、でも、言った側からというのは…
「言ったよ」
 さらりと言い放つと、またキスして来た。こんな事するの、初めてなのに。ど
うして、自分の叔父に自分の唇が奪われてるんだろうか。舌先に、また柔らかい
感触。吸い付くようにして、舐め回す。嫌なのに、鳥肌が立つのに、身体は、熱
くなって来る。
 冷たい指が、熱い身体を這う。抵抗が、全く出来ない。嫌なのに。こんな事、
この人としたくないのに、抵抗出来ない。それなのに、私は熱くなって…頭の中
が滅茶苦茶だ。
 こんな事考えてる間にも、ぴちゃぴちゃ、と音を立てて口の中を舐め回される。
嫌なのに、され続けると、嫌でも慣れて来る。身体を押さえ付けられて、唾液が
交じり合って、溢れて―――

「ふは…」
 不意に、唇が離れた。けど、唾液の糸は繋がって、叔父さんはそれを舌で舐め
取った。私は動けないまま、そんな叔父さんを見上げるしか出来なかった。
「―――千佐子ちゃん」
 叔父さんが、また顔を近付ける。けど、今度はキスはしなかった。一度だけ舌
を出して、また引っ込める。
「舐めなさい」
430館もん。 24/30 :05/02/27 19:15:45 ID:QkSV13Az
 そう言うと、また舌を出して、そのまま半開きだった私の口の中にまた入って
来た。どうしてだろう?従ってしまった。ヌルヌルしてた自分の舌で、叔父さん
のを舐めた。そうすると、叔父さんは頭を撫でてくれた。
 そんな事が凄く嬉しくて、私はさっきしてくれてたみたいに、叔父さんの舌を
吸った。叔父さんはぎゅっと身体を押し付けて来て、胸が服に擦れてちょっと痛
かったけど、もっとくっついて欲しくて、私はもっともっと舌を動かした。
 キスしながら、叔父さんは私の身体を起こした。私はそれでも叔父さんの唇を
求めた。けど、離れてしまった。今度は、私が糸を切って、口の中の唾液を飲み
込んだ。叔父さんは『いい子だ』と言ってくれた。
「…叔父さぁん」
 こんな甘ったるい声、出せたんだ。言いながら、思った。叔父さんは苦笑して、
私のスカートを脱がせた。ついでに、下着も。
「千佐子ちゃん、名前で呼びなさい」
「あ…ん、はい」 
 叔父さんの―――えと、確か、えーと、えーと、えーーーーーーと。
「……んっ」
 叔父さんの指が、太腿を撫でる。くすぐったくて、変な声が出てしまう。思い
出せない。自分の甘ったるい声で、思考が中断されてしまう。
「叔父さん…んっ…」
 また、布団の上に寝かされる。肌は汗ばんで行って、冷えるかと思ってたけど、
どんどん熱くなるばかりだった。
「千佐子」 
「…っ…えー…」
「…寛治」
 ぽそ、と耳打ちしてくれた。読まれてた…怒られるかな。
「悪い子だ」
431館もん。 25/30 :05/02/27 19:16:44 ID:QkSV13Az
 やっぱり。叔父…寛治さんも服を脱いで、私に覆い被さる。そういえば私、裸
だ。ていうか、裸包帯か…恥ずかしいのに、なんだか恥ずかしくない。
「寛治さん…」
 今度は、裸同士で抱き合う。私も熱かったけど、寛治さんの身体も、熱かった。
頭の中はそれ以上に熱くて、もう、なにがなんだかわからなかった。ただ、こう
して寛治さんがしてくれる事の全てが心地良くて、全てを任せたくなっていた。
「っ…」
 寛治さんの手が、太腿の内側をなぞる。下着を着けてないから、変な所に少し
触れてしまう。どうしたいんだろう、というのと少しくすぐったいので身体を捩
ってしまう。だからかどうか知らないけど、堂々とそこに手を突っ込んで来た。
「千佐子、君はまだ…」
 まだ、ってなんだ…あ、そういう事か。そうです。した事無いです。キスだっ
て、眼の前の寛治さんが初めてです。少々控えめに頷いた。
「そうか。いい子だね」
 わしゃわしゃ、と頭を撫でられる。嬉しい。
「や…んっ」
 頭を撫でながら、別の所を撫でる。指が、なんだか必要以上に熱くなったあそ
こを突付く。指の腹で擦るようにされると、変に声が出てしまう。自分でするよ
りも、ずっと気持ちがいい。
「寛治さん…気持ちいいよ…」 
 ぎゅっ、としがみ付く。そうすると、指が中に入って来た。入れた事無いから、
少し痛いかと思ったけど、簡単に入った。
 指が私の中で少しずつ動く。その度に、水っぽい音がして、静かな部屋に響く。
ちゅっ、ちゅっ、と少しずつ行き来する早さが増して、お漏らししたみたいに濡
れて、シーツに染みを作る。
 寛治さんが与えてくれる快感に溺れそうになる。けど、それでいいと思った。
432館もん。 26/30 :05/02/27 19:17:33 ID:QkSV13Az
 このまま、わからないまま、もっと自分を滅茶苦茶にして欲しいと思った。ど
うせ、もう自分は―――

「―――あ…」
 
 不意に、眼が醒めたような気がした。さっきまで頭の中が、霧が掛かっていた
ようだったのに、今はそれが晴れたかのような、そんな気がした。

「嫌…」
 今まで何してて、今更こんな言葉を吐くんだろう。でも、さっきまで、私は確
かにこの人を―――叔父さんを何の疑いも無く受け入れていた。その事自体が、
信じられない。何もかも、嫌だった筈なのに、もう誰も信じられないと思ったの
に、簡単に―――
「…嫌って、何が嫌なんだい?」
 叔父さんは、さっきと変わらず―――普段とは、大違いの落ち着き払った、別
の人間みたいな―――態度で、にや、と嫌な笑いを浮かべる。怖い。怖くて、眼
を逸らしてしまう。
「千佐子ちゃんのここは、嫌がってはいないようだけど」
 そっと、また私の中に入れようとする。簡単に、2本も。親指が感じる場所を
擦ると、恐怖と綯い交ぜになった、引き攣ったような声が自分から漏れた。
 …意識は、はっきりして来た。けど、それなのに、身体が上手く動かない。叔
父さんはそれがわかっているのか、私から離れた。そして。
「っ…!」
 半開きのままの口の中に、グラスを傾けた。お酒が流し込まれる。鼻を押さえ
られ、飲み込むしか無くなる。半分残っていたグラスの中身は全部、また私が飲
み干す羽目になった。これ、やっぱり…
433館もん。 27/30 :05/02/27 19:18:17 ID:QkSV13Az

「…すけ…て…」
 大きく足を広げられ、少しずつ、少しずつ叔父さんが中に入って来る。私は涙
を流しながら、それを受け入れる事しか出来ない。叔父さんのは大きくて、ヌル
ヌルしている私の中を引き攣るような痛みが襲う。
 好きじゃないのに。この人は叔父さんなのに、私、こんな事望んでないのに。
「いや…やめて、叔父さ…いっああっ…!?」
 嫌なのに、ぎゅっと、痛いくらいに乳首を摘まれると、感じてしまう。その度、
私の中のものを締め付けてしまう。
「…ああ、いいねぇ、その締め付け。もう少し、奥の方でして欲しいな」
 完全に、人事だ。痛いのに。私の事なんかどうでもいいみたいに、また身体を
密着させる。引き攣れの痛みが増す。ぐっ、と叔父さんが腰を押し進めて―――

「いた…い…痛い…よぉ、いや…ぁっ」
 みっともないくらいに流れる私の涙を、叔父さんの舌が舐め取る。そして、キ
ス。短いキスをちゅっ、ちゅっ、となんども、貪るようにする。
 嫌なのに、縋れるものが叔父さんの身体しか無くて、私は夢中でしがみ付き、
背中を引っ掻く。
「奥まで、届いたよ。これで君は女になったんだよ―――俺の手で」
 わかり切っている事を、嫌味な程はっきり言う。ズキズキと痛む中に、熱いも
のが突き刺さって、それが、本当に死ぬ、っていうような痛みじゃないから、余
計嫌だった。
 叔父さんの舌が、また口の中に入って来る。
 今は、はっきりと嫌悪感が勝っている。こうされていると、上と下から、身体
の中を叔父さんに汚されているような、叔父さんに侵食されるような感覚を覚え
る。飲み込むしかない唾液を飲み込む度、代わりみたいに涙が流れる。
434館もん。 28/30 :05/02/27 19:19:17 ID:QkSV13Az

 ―――助けて。誰か、助けて。
 言葉さえ満足に言えなくて、心の中で助けを求める。でも、誰が助けてくれる?
この状況で、誰が―――?
「そろそろ、いいね」
 白濁しそうになる意識の中で、くっくっ、と笑うように、言った。一瞬何の事
かわからなかった。けど、すぐに思い知らされる。
「ひゃ…あっ…あ…!?」
 埋まっていたものが、押し出すような感覚で抜かれて行く。今まで中に入って
た叔父さんのが、濡れている。私から出た液体に塗れて、そしてまた、今度は乱
暴に入って来る。腰を掴んで、さっきとは全然違う速さで、私の中を行き来する。
その度に濡れた音がして、痛いのに、別の感覚が襲って来て、どうしようも無く
なる。怖くて、恥ずかしくて、消えて無くなりたくなる。
「ぅあああっ…!あっ…ひぁ、い、やぁっ…嫌ぁあっ!」
 声が、出てしまう。こんなの、違う。それなのに、私、初めてなのに、どうし
て、こんなに、求めてしまうんだろう。あそこがどろどろに溶けてしまったみた
いに叔父さんのを受け入れて、放したくないみたいに締め付けてしまう。根元ま
で埋まる度に腰を動かして、快感を搾り取ろうとする。
「…ははっ、どうしたんだ、千佐子ちゃん…こんなに淫乱な娘だったんだね」
 気を良くしたように、笑う。両足を肩に乗せられ、より深く繋がるようにされ
ると、私はまた声を上げてしまう。
 嫌なのに、こんな、馬鹿みたいな声上げたくないのに。
「い…あっ…あう…うううっ!」
 嫌で嫌で、唇を噛む。けど、そんな事してたら、我慢してるのがバレバレだ。
そんなささやかな抵抗だって、すぐに火照った身体を撫で回されると崩されてし
まう。既に、私の身体はどうされたって感じるようになっていた。
435館もん。 29/30 :05/02/27 19:20:06 ID:QkSV13Az
 つーっ、と声を上げてる最中に、涎が流れて来た。汗も、涙も流れて、顔は今
更ってくらいぐちゃぐちゃだ。ああ、だらしない子だなぁ、と苦笑して叔父さん
は言った。そうしたのは、叔父さんなのに。
「…いきそう?千佐子、もう限界か?」
 そう言いながら、叔父さんの息も荒くなっている。私は霞む眼で、頷く。今ま
で一番強い力で、抱き締められる。もう、駄目だ、そう思った瞬間、眼の前が弾
けたような気がした。すると、あそこがびくびく痙攣して、きゅっ、と叔父さん
のを締め付けた。気持ち良さが爆発したみたいに、締め付け続けた。
「…ふぁ…」
 少ししてから、身体の奥に熱いものを浴びせられた。それから、叔父さんのが
引き抜かれる。中で出されたんだ、と本当に人事みたいに思った。

 ―――それが、最後の記憶だった。






「…マジでいいんですか?こんな量、ブッ壊れますよ?」
 聞き覚えのある声がした。なんだろう、声が出ない。身体も、動かない。ひと
つわかったのは、とりあえずまだ裸だという事だけ。寒い。
「いいんだ。鈴原くん、君は言われた通りにしてくれれば…それでいいんだ」
 …これも、聞き覚えのある声。私は今、何をしているんだろう。どういう状況
下に置かれているんだろうか。
「…怒るんじゃないですか?浩司坊ちゃんも誠司坊ちゃんも…」
436館もん。 30/30 :05/02/27 19:21:04 ID:QkSV13Az
 浩司…?誠司…?なんだろう、聞いた事、あるような…無いような…
「2人には、ちゃんと話しておく。元々この子は家を出たがっていたから…誠司
は怪しむかもしれないがね」
 はぁ、と溜息。そして、こっちに近付いて来る。
「なんだ、お前起きてたんだ。わかる?わからねぇか。あの瓶の中身全部飲まさ
れたみたいだからな」
 白い服を着た、男の人、その後ろにも、男の人。誰だろう。男の人は手を取っ
て、何かを巻く。ごしごし腕を拭いて、何か変な形の尖ったものを取り出す。
「…痛いのは、最初だけだ。少ししたら、もう何も感じなくなるからな」
 そう言うと、男の人はそれを私の腕に突き刺した。確かに、ちくっとした。尖
ったものの中身は、少しずつ…私の身体の中に入って行く。

 ―――男の人の言った通り、本当に、何も感じなくなって行く。それが、なん
だか心地良かった。ふと、後ろの男の人と眼が合った。その人はにこ、と笑って
くれた。なんだか、凄く安心した。

「やっと手に入れた。今度は、俺が君を守るから。ずっと、側にいるから」
 そう、言ってくれた。喋ってるのはわかったけど、言葉の意味はわからなかっ
たけど、なんだか嬉しかった。刺さってる方の反対側の手を握って、また何か言
ってくれた。やっぱり、何か凄く嬉しかった。



「―――愛してるよ、理佐子」



                                                終
437377:05/02/27 19:23:34 ID:QkSV13Az
はい、こんな感じです。
この手のゲームは一週目はいいとこ突いていても必ずバッドエンドになる、という
イメージがあるのでこんな感じになりました。

…まぁ、一週目も何も、この話はこれで終わりですが。
またスレに合った話が出来たら、投下させていただきます。
438名無しさん@ピンキー:05/02/27 21:14:26 ID:x6CGfa4k
暗いな。
今までみたいな明るい方がいい。
439名無しさん@ピンキー:05/02/27 21:48:34 ID:caxahyQV
GJ!だが俺、本名カンジ・・痛いよぉ
440名無しさん@ピンキー:05/02/27 22:01:44 ID:j5CJUWX3
今回のは他のスレに落とした方が良かったかも。
ここにはあまり合ってないような希ガス。
441名無しさん@ピンキー:05/02/27 23:46:47 ID:O8p8ZKdZ
あーここの読者は辛いね
主人公がイキイキしててよかた
個人的には次男坊とのカラミ希望
乙です!
またしかに気の強い女の子が…スレでも喜ばれそうだーね
442名無しさん@ピンキー:05/02/28 01:28:37 ID:bRWlxlsa
2周目が無いというのをハッキリ突きつけられて、
プライド傷付きながらもハァハァしてるオナゴが多そうな希ガス。
…個人的には…この手の話も嫌いでは無いせいか
遊びとしてはアリだと思いますた。まる
けどどうせならラストは
もっと白飛びしてるような感覚が欲しかったとオモタ。

エロは今までで一番えがった。
確認する馬鹿男は年齢・性格問わず、イイ。
443377:05/02/28 17:41:22 ID:AWOiJZRL
すいません、自分で2週目無いと書いておきながらなんですが、
やっちゃってもいいでしょうか。次のはちゃんとこのスレに合った方向だと
思うので…
444名無しさん@ピンキー:05/02/28 17:48:14 ID:fL9KLMv+
ストーリー的には悪くないと思うけど、ああいったエンディングは
ここじゃ好まれないのかもね。

文章や話の運びはうまいと思うんで、次作を投下してくれるなら
歓迎です。っていうかさっさと投下しる!(w
445名無しさん@ピンキー:05/02/28 20:22:30 ID:ndoasz6y
ラスト、結構意外性があっておもしろかったけどね。
展開が早いから、ちょっと唐突に感じるのかも〜。
バッドのルートに入ってしまってからの展開がもうちょっとほしいな。

そういう細かいところは気になったりもするけど、やっぱり大好きだわ。
377さんの。毎回同じ性格してるような気がする主人公も好き。
446名無しさん@ピンキー:05/02/28 21:15:35 ID:3LxuFMjS
つまんねー。前半の流れが面白かっただけに、後半からの流れがオモイッキリだれてんじゃん。
447名無しさん@ピンキー:05/03/01 02:14:16 ID:fW+HTpvr
>>446
他人のレスからパクっただけの中傷しか出来ん腐女子はすっこんでろ
448名無しさん@ピンキー:05/03/01 03:46:33 ID:eH43xh6o
>>443
却下
「思う」ならグロスレやレイプスレに投下してくれ。
449名無しさん@ピンキー:05/03/01 04:52:59 ID:fW+HTpvr
以前からダーク系の話なら幾らでも投下されている。
倉庫を見れば確認出来る筈だが、イタい系の話もそう少なくはない。
つまり、今になってここまでしつこい苦情が出てるのは……

物凄く嫌な悪寒がするんだけどママン
450名無しさん@ピンキー:05/03/01 10:27:07 ID:LV3KsTfM
お、おまいらちょっと厳しすぎるぞ。もうちょっと生暖かい目で見守ろうぜ。
せっかくハッピーエンドバージョンが投下されるかもしれんというのに。
451名無しさん@ピンキー:05/03/01 10:53:58 ID:ZKE4OK2+
そうだよ、最近このスレ雰囲気変わりすぎ…
萌えた・萌えなかったというのは前からそうだったけど、
文章批評なんてしてたか?それこそスレ違いだよ
ただでさえ投下しづらい状態になってるのに。
452名無しさん@ピンキー:05/03/01 11:29:06 ID:9gNFxMYf
上の方に同意です。
スレのギスギスした空気が作家さんを遠ざけてしまってますよね。
以前はいろんな作家さんの作品が読めるスレだったのに…。
453名無しさん@ピンキー:05/03/01 11:37:31 ID:wTKUjJ5l
確かに住民の質は変わったような希ガス。
長く続くとどこもこうなるのかね
454名無しさん@ピンキー:05/03/01 11:42:34 ID:8ffqF3SQ
とりあえず、がんばれ377!
応援してます。
というか、待ってます。
455名無しさん@ピンキー:05/03/01 22:23:33 ID:tYBLvsnn
377次作期待中
次男!次男!
456名無しさん@ピンキー:05/03/03 04:50:01 ID:/2qb2qae
次男!次男!でハッピーエンド!
457377:05/03/03 17:36:32 ID:p16mlBhb
投下します。
今回は、ハッピーエンドです。
ただ、お相手は一週目で二文字しか出てません。

後、ちょっと長くなってしまいました。
458館もん。2 1/55 :05/03/03 17:37:54 ID:p16mlBhb

 …こんにちは。私、鳥居千佐子と申します。目下、拉致監禁中の藤乃原家の次
期当主です。説明臭いとはお思いでしょうが、大目に見て下さい。今、ちょっと
大変なんです。
 只今、記念すべき17回目の脱走を試みているんです。 
 今まで16回、失敗してて、まだ懲りないかと思われているだろうけど、とこ
ろがどっこい、私のしぶとさはそれこそゴキブリ並なのだ。絶対、家に帰るんだ
から。お父さんの待ってる、家に。

 …うまく騙して、1人になれたはいいけど…さて、どこから逃げよう。3階の
トイレは…うーん、なんか、落ちたら怪我しそうだし、思い切って正面玄関から
…というのももうやったし、ここはいっちょ、男用トイレから…
 うーん、うーん、と考えに考える。
 だだっ広い屋敷の癖に、使用人の数はそんなに多くない。だから、逃げようと
思えば逃げれる筈なのに、いつも誰かに見付かってしまう。こうなったら、いっ
その事―――

「…あれ、千佐子様、また悪巧みですか?」
 後ろから、穏やかに穏やかでない事を言う声が掛かった。ちょっと、それ酷く
ないか?私は抗議しようと思って、振り向いた。
「…伊藤」
 のっけから酷い事を言う割には、善人みたいな印象。背が高くて、穏やかに微
笑む、鈴原と同い年くらいの、この家のお抱え料理人。
「光栄ですね、覚えていてくれたんですか」
 まぁ、確かに一度挨拶されたくらいだったからな。でも、お前もその割には暴
言を吐くよな。
459館もん。2 2/55 :05/03/03 17:38:54 ID:p16mlBhb
 …正直、伊藤の事はあんまり忘れられないと思う。一応毎日こいつの作った料
理を食ってる訳だし、貧乏舌の私が言っても説得力は無いんだけど―――伊藤の
作るごはんは、すっげぇ美味しいから。あんまり娯楽が無いから、ごはんの時間
はちょっとした楽しみになってる。だから、伊藤の事、覚えてた。
「…まぁ、いいや。別に悪巧みなんかしてないよ。それじゃ」
 せっかくのチャンスなのに、潰されて堪るか。私は早々に伊藤の元から立ち去
ろうとする。が、待ったを掛けられる。
「どこへ行くんですか?」
「どこでもいいだろ、お前に関係無い」 
 …なんだろか、ヤバイ。なんかヤバイ。逃げろ、この笑顔の前から逃げろ、と
頭の中でサイレンが鳴ってる。そんな事を思っている内に『失礼します』と伊藤
が腕を握る。まさか、まさか、まさか。

「千佐子様、捕獲しました」
 やっぱり―――!!私は慌てて逃げようとするも、伊藤の力は案外強くて、私
は庭に繋がれているのに逃げ出そうとする犬(雑種)の如くになってしまう。
「残念でした。この屋敷の使用人は全員誠司様の命によって、1人でいて怪しい
素振りをしている千佐子様を発見したらすぐ捕獲し、部屋に戻し、報告するよう
になっているんですよ」
 げっっ!?誠司の野郎、なんつー事をしやがんだ。
「くっ…くそ!おま、お前、離せ!」
「はい、なんでしょう、何をお話しましょう」
「そういう意味じゃない!てか、お前わかって言って―――?」
 ずるずると私を引っ張る。が、向かう先は私の部屋じゃない。階段を下りて、
1階まで来る。伊藤は食堂近くの、使用人の方々の休憩所みたいな所まで私を連
れて来て、座らせる。
460館もん。2 3/55 :05/03/03 17:39:44 ID:p16mlBhb
「???」
 伊藤はテーブルを挟んで向かい合う位置の椅子に座り、備え付けのポットから
お茶を淹れて、私の前に置いた。ついでに、自分の分も。
「あ、ありがと…」
 とりあえず、お茶のお礼。机の上には袋に入ったクッキーとかも置いてあった
ので、軽いティータイムみたいな形になっている。まだ、お腹は膨れてるけど。
 にこにこ笑ったまま私を見ている伊藤。なんだ?どういう事だ?
「…あの、どうして?」
「どうしてと言われましても、困ります」 
 しれっと言い放つこの男。侮れない。ちっ、と舌打ちして、私は睨む。
「だから、お前は私を捕獲したら、部屋に戻して誠司に報告しなきゃいけないん
だろ?どうしてこんな所に連れて来てお茶を飲まなきゃいけないんだ」
「別に無理矢理飲めとは言っていません。飲みたくないなら飲まなくて結構です
よ。でもこの玄米茶、美味しいですよ」
 っ……こいつ、殺してぇ。人の言葉尻ばかり取ってはぐらかしやがって。
 がた、と私は立ち上がる。私、完全に馬鹿にされてる。そりゃ、私は利巧かア
ホかの二択なら完全に後者だ。けど、よく知りもしないこいつに馬鹿にされる言
われは無い。
「千佐子様?」
 愛想がいい分、誠司より質が悪い。ただでさえこの家では神経尖ってるんだか
ら、こんな奴の相手はしていられない。無視して、立ち去ろうとする。が。
「―――すいません」
 いきなり、謝られた。振り向くと、伊藤は立って、こっちを向いていた。が、
笑顔なのがちょっと気に食わない。でも、謝られるとこっちも無碍には出来ない。
溜息を付いて、また座った。
「失礼しました。貴方に興味があったんですよ」
461館もん。2 4/55 :05/03/03 17:40:27 ID:p16mlBhb
 …それと、その言動には関係があるのか。
「…興味って」
 ず、と玄米茶を啜る。あ、ホントに美味い。
「興味は興味ですよ。ほら、今時遺言がどうの血筋がどうのって、珍しいじゃな
いですか。そんなの、一昔前の小説とか映画とかの世界だと思ってましたから」
 …その点には、同意する。同じ事、私も思ったから。
「伊藤も読むの?そういうの」
「いいえ、一切。イメージだけで喋っています」
 …こいつはよ。はぁ、と呆れて溜息をついてしまう。もしかして、単に誠司の
命令で逃げないように繋ぎ止めてるだけなんじゃないか?会話が投げ遣りにも程
がある。忙しいのにご苦労なこったな。
「…なぁ、伊藤、お前ホントは興味無いんだろ?無理して喋らなくても逃げない
から、せめて黙っててくれないか?」
 溜息をついて、伊藤から視線を外した。でもって、頭の中から完全に伊藤を排
除する。眼の前にいられる以上、完全には無理だけど、飽きてどっかに行くまで
はやり過ごせるだろう。
 …さて、こいついなくなったらどこから逃げよう。そんな事を考えながら、玄
米茶に手を伸ばす。ちびちび飲みながら、色々策を練る。
 暫くすると、伊藤は立ち上がった。そろそろ行くか。早かったな、意外と。そ
う思ったら。
「!?」
 伊藤は私の隣に座って来た。驚いて伊藤を見ると、やっぱり笑っていた。
「あ、やっとこっち向いてくれましたね」
 そう、のたまいやがった。てか、近い、近いから!
 座っている位置が位置なので、逃げる事が出来ない。とりあえず壁に寄って、
出来るだけ伊藤から遠のいた。伊藤は苦笑して頭を掻いた。
462館もん。2 5/55 :05/03/03 17:41:08 ID:p16mlBhb
「…手厳しいですね。でも、興味があるというのは嘘じゃないんですよ。本当に、
貴方とちゃんと話がしたかったんです。初めてだったんですよ、私の作った料理、
あんな山賊の頭みたいな食べ方する人」

 …そんな理由かい。まぁ、アレは仕方なかったんだけど。
「…悪かったよ、折角綺麗に盛り付けてたのに、あんな食べ方して」
「いえ、いいんです。あれはちょっと一度見てみたかった食べ方でしたし」
 いいもん見たなー、と言うような顔をする。こっちは複雑だよ。
「それに、滅茶苦茶でも普通でも、美味しくいただけてるというのがわかります
からね。気付いてます?普段より食べてる時の方が、千佐子様可愛いんですよ」
 ―――へ?
「え?え?どういう事?」
 ごめん、言ってる言葉の意味が全然わからん。
「ですから、簡単に言うと普段は不機嫌なのに、食事時になると機嫌が良くなる
って事です。初めて顔を会わせた時も、そうだったじゃないですか」
 …それを思い出すと、真っ赤になってしまう。そうだ、確かに初めて伊藤の料
理を食べた時、あまりの美味しさに、それまで人を殺しそうな勢いだったのにも
関わらず『おいしー!』って言っちゃったし。そんで、叔父さんが喜んでシェフ
を―――伊藤を呼んでしまったんだ。

「…嬉しかったんです。私の料理で、貴方を笑顔に出来る事が」
 しっかりと、私の顔を見て、そしてやっぱり笑顔で、伊藤は言った。
 …うわ。やだ、なんだこれ。私はそんな歯の浮くセリフをさらっと吐いた眼の
前の男に対して、何も言えなくなっていた。どうしよう、どうしよう、そんな事
急に言われたって、私、何も言えない。馬鹿だ、どうしようもない馬鹿だこいつ。
いや、私もか。
463館もん。2 6/55 :05/03/03 17:41:51 ID:p16mlBhb
「…そんな事、言われて、どうしろっていうんだよ…」
 たっぷり間を取って、結局言えたのは、そんな事だった。顔が熱い。馬鹿、私
の馬鹿。こいつの今までの言動見て来て、なんでこんな言葉で動揺してるんだ。
「どうしろと言われましても、困ります。私は思った事を言っただけですから」
 相変わらずの、余裕の笑顔。どうしよう、こいつ殴りたい。はぁ、と溜息。
「千佐子様、好きな食べ物ってあります?死ぬ前にこれが食べたい、という物」
 …割と唐突に縁起でもない事を言うな。
 うーん、うーん、と唸る。ホントは、言われた瞬間にぽーん、と浮かんだんだ
けどね。後は、確認と言うか、他に浮かべて、やっぱりこれだと駄目押しをする
作業みたいな感じ。

「ハンバーグ。付け合せはニンジンとブロッコリーで、上に目玉焼き乗ってるの」
 貧乏舌の上に子供舌。次点でエビグラタン、次がラーメン(塩)だ。
 その件に関しては何もツッコミを入れず、わかりました、と頷いた。なんだ?
誕生日にでも作ってくれるのか?まぁ、誕生日までここにいないけど。
「さて…と」
 そろそろお時間です、みたいに立ち上がる。気が付けば、結構な時間が経って
いた。
「私はそろそろ戻りますけど…どうします?」
 自分のカップを持ち、やはり空になった私のカップを見る。お願いします、と
渡した。伊藤は、じっと私を見る。
「…楽しかったです。暇な時は大抵ここにいますから、千佐子様も気が向いたら
いらっしゃって下さい。たまにケーキとかありますよ」
「ホント!?」
 ケーキ、という3文字に食いつく食いつく。伊藤はそれ見た事かと笑って、去
って行った。ちょっと、恥ずかしくなった。
464館もん。2 7/55 :05/03/03 17:42:33 ID:p16mlBhb

 変な奴に絡まれたなぁ、と思い、椅子にもたれかかる。

『…嬉しかったんです。私の料理で、貴方を笑顔に出来る事が』

 なんか、背中が痒くなる。馬鹿みたい、なんでそんな事さらっと言えるんだか。
いや、確かに、ホントに美味しいんだけどさ。
 ぶんぶん頭を振って、伊藤の事を忘れようとする。馬鹿馬鹿、あんなんに構っ
てる余裕なんか、無いんだ。でも…

「…夕飯くらいは、食べるか…」
 本日何度目になるかわからない溜息をついて、部屋に戻ろうとした。



 ら。
「あだぁあっ!?」
 階段を上がってさぁもうすぐ部屋だ、という所で、いきなりチョップを喰らっ
た。相手はなんと…浩司!?
「お前、あ、えーと…ちょっとこっち来い!」
「え!?え!?」
 今度はお前か!?私はまた引っ張られるがままに連れられて行く。行った先は
…浩司の、部屋。ていうか、浩司の手、熱い。こいつ、さっきまで寝込んでたく
せに、なにうろうろしてやがんだ?
「ちょっ…浩司…」
 強引に私を部屋に入れて、戸を閉めて、鍵を掛ける。
465館もん。2 8/55 :05/03/03 17:43:14 ID:p16mlBhb
 浩司は私を睨み付けて、びしぃっ!と指を指した。
「お前、また脱走しようとしたろ」
 わーお、バレバーレ。ていうか、チクったか、早速。まぁ、誠司じゃないだけ
マシだけど。
「…うるせー、タコ。お前に関係ないじゃん」
 ぷい、とそっぽを向く。が、2度目のチョップが来る。痛い。
「馬鹿、お前もう忘れたのか?誠司の奴、次やったら地下牢放り込むって言った
じゃんか。あそこ、暗いし狭いし怖いし寒いんだぞ?風邪引くぞ?」
 …チョップをキックで返しつつ、ふと、その言い方は心配してくれているのか
と感じてしまう。が、それよりも。
「お前、入れられた事、あんの?」
 だろうな、だろうなと思いつつ、聞いてみる。浩司はふんぞり返って。
「お前、俺を誰だと思ってやがる」
「どうしたって誠司の兄には見えない馬鹿」
 …顔も性格も子供っぽいし、身長も誠司より低いし。が、すぱっと言ってやっ
たらがくーん、と崩れ落ちた。まぁ、わかってるんだろうけど。
「…ほれ浩司、悪かったよ、心配もしてくれたんだろ?だから…」
 言葉が、止まってしまう。浩司に触ったら、さっきより熱かった。息も荒い。
 …この、馬鹿…
「熱あるくせに、歩き回るなよ…」
 よっこいしょぉお!!と倒れた浩司を担ぎ上げ、必死になってベッドに寝かせ
る。そこらに置いてあった熱を冷ます効果のあるシートをぺったし貼り付けて、
一息つく。ああああ、重かった。
 ふかふかした絨毯の上で座り込む。ふと、近くになんか…DVDが落ちていた。
拾ってみると、それは―――
「……」
466館もん。2 9/55 :05/03/03 17:44:13 ID:p16mlBhb
『美人教師・由愛子の淫乱性教育―戦慄の生徒17人レイプ・レイプ・レイプ―』
 …やたら長いタイトルを見て、死に掛けの浩司を見て、とりあえず見なかった
事にしておいてやる。机の上にそれを置いて、ぐったり浩司を見る。
「鈴原、呼ぶ?」
 声を掛けると、首を横に振った。まぁ、一応報告はしておくか。
「なんか、いる?」
 首を、横に振る。こちらに視線を向けると、口の端だけで笑った。

 浩司は、本当に身体が弱いみたいだ。それは、正直同情する。けど、私が浩司
にしてやれる事なんか、なんも無い。あったとしても、わざわざしてやる義務も
無い。
「…私、行くよ」
 とりあえず、寝てるのが一番かと思って、早々に退散する事に。浩司のちっち
ゃい『もう脱走するなよ』は、聞こえないフリをした。




 夕ごはんには、浩司来れないだろうなぁ、と思っていた。が、なんと今日は全
員いなかった。びっくりした。
 今までも、色々な理由があって誰かが欠けてた事ってあったけど…全員っての
は初めてだ。しかし、1人で食べるビーフシチューも美味い。寧ろうざったい人
間がいないから美味しさもひとしおだ。早々に食べ終わって食堂を出ると―――

「…ナンデスカ」
「どうしたんですか?」
467館もん。2 10/55 :05/03/03 17:45:02 ID:p16mlBhb
 普段、付いて来るんだったら不二子ちゃんなんだけど、なんでか、今日に限っ
ては…
「お前、仕事はどうした」
「いえ、浩司様の立ってのお願いで。今日は手薄になるから、見張っておけと」
 …あんのクソ野郎…変な所だけ頭回りやがって…
「逃げないから安心して」
「あ、私は千佐子様を信用してませんから」
 やっぱりさらりと言ってくれる。あああ、こいつ踏ん付けたい。
「…あのさ、じゃあせめて不二子ちゃんにしてくれ」
「駄目です。浩司様の命令ですし、峰さんじゃあ千佐子様を止めようとしても殴
る蹴るの暴行を受けて意識不明の重体なんて事になりかねませんし」
「なるか!!」
 こうなったら無視し続けてやる。のしのし歩き、部屋に向かう。その途中であ
くびをしながら歩く鈴原と遭遇した。
「よぉ、これから2人仲良くちょめちょめタイムか?」
「お前、相変わらず前立腺だけで物事考えるな」
 つーん、と無視してやると、今度は伊藤に絡み始めた。
「いとっち、俺も混ぜて、俺入れるんならどっちでもいいよぉ」
「鈴原先生、私はしてる最中に他の男がいると萎えるタイプなんでちょっと…」
 おーい伊藤、お前もそっち側の人間かーい。
「…頭痛い」
 こいつら単品でも疲れるのに、一緒にいられると倍率ドンだ。一刻も早く離れ
ようとする。が、不意にある事に気付く。
 べたべた触ってる鈴原。それでもにこにこ笑ってる伊藤。なんか、変な違和感
を感じる。なんだろ?何が不思議なんだろ?
 じーっと2人を見る私を不審に思ったのか、伊藤が、ん?という顔をする。
468館もん。2 11/55 :05/03/03 17:46:08 ID:p16mlBhb
「…どうかなさいました?千佐子様」
「なに、昨今の婦女子は男同士の絡みが好きって聞くけど、お前も?」
「違うわ…あー、もういい。お前ら好きなだけべたべたしてろ。私、部屋に戻る」
 もう、付きあってられるか。馬鹿の事はほっといて、立ち去る。が。

「だから、お前付いて来るなって…」
「…仕方ないでしょう、命令です。今は千佐子様のプライベート<脱走させない
事なんですから」
 私の3歩後ろを付いて来る、料理人の筈の男。医者は、振り向くと地面にオネ
エ座りをしてハンケチで涙を拭っている(フリをしている)。見るかどうかもわか
らないのに、ボケるな。大方伊藤が突き飛ばしたのだろう。後。

 …振り向かないと思ったのだろう。すぐに笑顔になったけど、伊藤は無表情、
どころかえらく不機嫌な表情をしていた。もしかして、鈴原の事…?



 嫌だって言ったのに、伊藤は部屋の中にまで入って来た。一回締め出したのに、
合鍵まで使って。なんで持ってるのかと聞いたら、浩司がもしもの時の為に叔父
さんから預かって、それを渡されたそうで。
 私がふてくされてベッドに転がると、そこらにあった椅子に座った。
「…いつ、出てくの」
「とりあえず、千佐子様が眠るまでですね。私もあまり暇でないもので」
 しかし、一々腹の立つ男だ。

「…じゃあ、早く寝るから話してよ」
469館もん。2 12/55 :05/03/03 17:46:51 ID:p16mlBhb
 壁の方を向いて、呟く。
「お話、ですか?余計眠れなくなりませんか?」
「つまんない話聞いてると眠くなるから」
 …あ、なんか空気がむっとした。ちょっと腹立ったな?くくく、と笑みが零れ
てしまう。

「じゃあ、つまんない話でよければしますよ」
 声の調子で行くと、なんとか自分の中で持ち直したみたいだ。
「…私、ついこの間までここを辞めようと思っていたんです」
「―――え」
 予想外の言葉に、私はつい伊藤を見てしまった。伊藤の表情は―――やっぱり、
にこやかなものだった。
「実は私は、初めて出来た彼女がカナダの人でして、名前はトレアという人でし
た」
 ほほう、と完全に私は食い付いた。
「ちょうど―――そうですね、3、4年前ですか。ほら、あの両親が豚になる映
画が流行っていた頃ですね。出会いまして…実は私、名前を千尋といいまして。
彼女は私を『セン』と呼んでいました」
 あーそれは安直なあだ名だな。私も一時期苗字のせいで黄薔薇さまと呼ばれた
事があった。どうでもいいけど。

「…彼女は、パティシエの修行の為、外国に行ってしまいました。本来なら、も
う修行が終わってこの家で働かせてもらう筈だったんです」
 そう言う伊藤千尋の顔が、少し悲しそうな笑顔になる。この屋敷に、そんな人、
いない。
「彼女は、修行中に他の男性と結婚してしまったんです」
470館もん。2 13/55 :05/03/03 17:47:33 ID:p16mlBhb
 ―――っ。
 一瞬、息が詰まった。何も、言えなかった。
「私は、今は彼女が幸せならそれでいいと思っています。でも、最後に貰った葉
書には『さようなら、ごめんなさい。セン』と書かれていました」
 足を組み替えて、笑う。
「私が後悔しているのは、彼女に罪悪感を感じさせたまま別れてしまった事なん
です。実は、その事で大分彼女を―――トレアを責めてしまったんです。結局分
かり合えないまま、別れて、その手紙を最後に、もう連絡は取っていません」

 …なんで、伊藤はそんな話を私にするんだろう。恋をした事の無い私だって、
信じていた恋人にそんな事をされたら、きっと同じ行動を取るかもしれないって
気持ちはわかる。それに、伊藤は、今も、もしかして。

「先日、どこかの県が新しく合併しようとした市の名前を『南セントレア市』に
しようとしてたじゃないですか。私、彼女にした事を忘れない為にも、そこに永
住しようかと思っていたんですよ」
 …が。
「…やめて、良かったよ」
 まぁ、白紙になりそうだし、馬鹿馬鹿しいし、第一精神衛生上良くないと思う。
 何故か、顔が見れなかった。私には、全然関係の無い事なのに。でも、伊藤は、
確実に今でも傷付いているんだ。なんで私に話したかはわからないけど、でも、
吐き出したかったんだ。自分独りじゃ、抱え切れなくなったから―――
「そう、ですよね。引越し、しないで…良かったんですよね」
「うん、そうだよ。私、行って欲しくない。ここにいろよ、お前の事、絶対に皆
必要な筈だって。きっと、行こうとしても行くなって、皆言うよ」
「まぁ、この話、嘘なんですけどね」
471館もん。2 14/55 :05/03/03 17:48:15 ID:p16mlBhb
 さらっと言う。なんだか、笑顔が晴れやかになったような気がした。
「ホント、お前の料理、今まで食べた中で一番美味しかった。それに、お前ハン
バーグ作ってくれるんだろ?」
 私は座ってる伊藤の側まで行って、肩を叩く。やっべ、泣きそうだ。馬鹿、伊
藤に気を使わせるな。
「…あれ、千佐子様、泣いてるんですか?」
 速攻バレた。が、誤魔化す。力技は得意分野だ。
「泣いて、ない。馬鹿、なんでそんな―――わっ!?」
 …ぎゅー、と抱き締められた。思いの外、強い力で。伊藤はぽんぽん、と私の
背中を叩く。なんで、私の方が慰められてるんだ?
「優しいんですね、千佐子様は。でも、落ち着いて聞いて下さいよ。さっき一回
言いましたよ?この話、嘘ですよって」
 途中まで普通だったけど、もう後半は笑いを押さえ切れない、といった感じで、
身体を震わせた。

 …えーと。
 えーと、えーと、え―――と。

「う…そ?」
 引き攣った声で、呟く。
「はい。真っ赤な嘘です。なんで愛知県に永住しなきゃいけないんですか」
 抱き締めるのを止めて、指で私の涙を拭う。そして。

「すいません!すいません!!本気ですいません!!!」
「うるせー!!お前、ホント、マジでぶっ殺す!!」
 いち早く察して、私の両腕を掴む。私は構わずに攻撃しようとする。
472館もん。2 15/55 :05/03/03 17:48:57 ID:p16mlBhb
「っ…あ、あの、話、話をしましょう、ね、ね、千佐子様、俺も悪気は…ちょっ
とだけあったけど、でも、そんな怒らんでも…」
 余裕が無いせいか、言葉使いが悪く…ていうか、普通になってる。と、別の事
に気を取られたせいで、バランスを崩してしまう。伊藤も思いっきり抵抗してい
たので、その反動で―――

「あだぁああっっ!?」
「うわああっ!?」
 椅子ごと横倒しになって、倒れてしまう。ううう、背中も痛いし、前面も痛い。
なんで、私が身体のでかい伊藤の下敷きにならなあかんのか。
「だっ…大丈夫ですか!?」
「…痛いよぉ」
 珍しく笑顔が消えて、今度こそ本当に心配そうな顔になる。潰されたようなも
んだからなぁ。腰を擦りながら、起き上がる。
「すいません」
「うるさい」
 痛みと、さっきの話のせいで完全に不機嫌になってしまう。気を使ってか、背
中とか擦ってくれるけど、気持ちいいけど、まだ腹は立っている。
「…もういい。お前帰れ」
 立ち上がって、もう1回ベッドに向かう。お風呂は、ちょっとふて寝してから
入ろう。
 そう思ってベッドに向かったが、それを止められる。なんだよ、と思って振り
向くと、全く読めない表情の伊藤がそこにいた。

「―――お詫び、という訳では無いのですが」
 …なんだ?なんかしてくれんのか?
473館もん。2 16/55 :05/03/03 17:49:39 ID:p16mlBhb
 ハンバーグ作ってくれるのかな、という馬鹿な期待をする。が、全く違う物だ
った。伊藤は私に近寄り、そっと耳元で囁く。

「お父様に、会わせてあげましょうか?」

 それを聞いた瞬間、耳を疑った。
「―――え?えっ…」
 びっくりし過ぎて、左右確認をしてしまう。ていうか、え、本気?
「うっ…嘘、じゃ、ないよね?」
 じわ、とまた涙が浮かんで来る。伊藤はぶっ倒れそうになる私を押さえて、ま
た私を抱き締める。どうしよう、ここでまた『嘘です』と言われたら、刺してし
まうかもしれない。が。
「明日の午後から私、ちょっといきなり私用で出掛けますから。ついでに千佐子
様も一緒に行きましょう」
 …本当だった。でも。
「っ…でっ、でも、そんな事したら、あの、バレ、たら…」
 何を言ってるんだろう。せっかくのチャンスなのに、なんで?それに、それに、
なんで、急にそんな事言い出すんだ?
「私は、千佐子様の味方ですよ」
 そう言うと、もっと強く抱き締められた。
「え?で、でも、なんで?私、伊藤には、ずっと、やな態度しか…」
「貴方は、私の料理で笑ってくれましたし、嘘の話で泣いてくれました」
 私の髪を梳いて、やっぱりさらりと嘘臭い事を言い放った。正直、納得出来な
い。ていうか、唐突だ。展開、早いって。
「えっ…で、でも、だからって…」
 いつまでもうじょうじょしてる私にむっとしたのか、伊藤は私から離れる。
474館もん。2 17/55 :05/03/03 17:50:25 ID:p16mlBhb
 とはいうものの、両肩に手を置いた状態で、もしかしたら叩かれるのかと思っ
た。が、違った。伊藤はむっとした表情のまま、顔を近づけて―――

「……」
「…こういう事です」
 頬に、キスして来た。びっくりした、口にされるかと思った。
 抵抗しないのいい事に、伊藤はまた私を抱き締める。最初の時もそうだったけ
ど、なんでか、そう…そんなに、嫌、じゃない。やだ、なんでだ、なんで?
 そりゃ、生まれて十数年彼氏の1人もおらんかった娘っ子が、性格はともかく
そうそう悪くない、しかも大分年上の物件に告られたみたいな事になったら、ま
ぁ、確かに…
「あ、あの、いっ、いと…」
「なんですか?」
 こ奴は、既に普段通りになっている。こっちの心中も知らんと、にこにこ笑い
おって。
「協力したいんですよ。千佐子様が悲しむ顔を見たくないですから」
 そう言うと、今度こそ私から離れ、部屋を出ようとする。

「…明日の午後1時半、一階の休憩所まで来て下さいね」
 そう言い残して、出て行った。

 後に残された私は、どうする事も出来なくて…さっきキスされた頬を撫でた。
 びっくり…した。いきなり、告られるなんて、思わなかった。まぁ、私自身、
あいつを好きかどうかの区別も付いてないんだけど…
 うわぁ、嫌だなぁ…こういうの…
 
475館もん。2 18/55 :05/03/03 17:51:07 ID:p16mlBhb




 ―――翌日。
 もしかしたら、狙っていたのだろうか。今日は朝から叔父さんは当然として、
誠司もいない。浩司はまだ臥せってる。鈴原も私用でいない。昨日の信用があっ
たからか、伊藤はきつーく誠司に私を逃がさないよう頼まれてた。私も釘を刺さ
れた。
 …騙されてるとも、知らないで。
 順調に逃げ出して、私は今、伊藤の運転する車の助手席に乗ってる。
 …まぁ、ちょっと前まで、トランクに入ってたんだけどさ。

「…いつまで持つかな…あんな嘘」
「意外と大丈夫じゃないんですか?夕方に電話を入れて、夕食の時間まで騙して
おいて欲しいと言って置けば…まぁ、最悪7時まで大丈夫ですよ。うっかり鍵も
持って来てしまいましたしね」
 涼しい顔で腹黒い事をのたまう。ていうか、使用人も浩司も、信じるんだろう
なぁ…今日1日部屋で大人しくしてればハンバーグ作ってくれるって条件を飲む、
というのは…あの食いっぷりから、私かなり意地汚い人間だと思われてるだろう
し。

「…ありがとね、本当に感謝してる」
 信号が赤になって、車が止まる。ものっ凄い後ろ見て尾行車とかいないか見て
たから首が痛い。
「いいえ。あの、ところでひとつ質問いいですか?」
476館もん。2 19/55 :05/03/03 17:51:49 ID:p16mlBhb
「ん?なに?」
「千佐子様の家、どこですか?」

 ―――既に、走り始めて20分は経っていた。



「…あっうううううあうううううううううううううううううううううっっ」
 すいません。今、泣いてます。いや、もう1週間振りの我が家(木造アパート)
っすから。買い物帰りに拉致されてから一週間ですから。
「千佐子様、キモいです」
「えうううああああああああああああああああいああああああ」
 今は、そんな伊藤の嫌味も気にならない。もうただただ感謝しか無い。けど。
「よく考えたら、平日の昼下がりにいる筈無いんだよな…」
 溜息をついて、とりあえず家に入ろうとする。鍵は、郵便受けの中に…
「無いな…という事は、お父さんいるのかな?」
 私はやったぁ!!と思いながら階段を上がる。ついでだから、車で待ってると
いう伊藤を引っ張ってやって来た。とりあえずお茶の一杯も出さねば。
「ただいま!お父さーん!!」
 がちゃ、と戸を開ける。と。

「ハイ、ドナタデスカー?」
 と、アジア系の女の人が出て来た。格好は、完全に…部屋着。一瞬部屋を間違
ったのかと思ったけど、表札はちゃんと『鳥居』だ。
「…アノ、何カ?」
「あ、あの、何かって、私は、あの、この家の人間ですけど…」
477館もん。2 20/55 :05/03/03 17:52:33 ID:p16mlBhb
 硬直してしまう。え?なに?どういう事?お互い何も言えずに相対していると、
後ろから子供が4人ほど出て来た。やっぱり、アジア系。ていうか、女の子1人
いて、その服には見覚えがあった。大事に取っておいた、お母さんが作った、も
う着古した、ちっさいきったねぇワンピース。

「っ…なんでお前がこれを着てんだよ!!」
 我ながら、大人気無いと思った。見た所、小学校にも上がってないくらいの子
供。けど、それは私の大切な物なんだ。ちゃんと頼めば着せる許可は出してもい
い。やらんけど。でも、勝手に人の部屋にしまっておいた―――

 そこで、気が付く。こんな安い汚い狭いと三拍子揃ったアパートに、お父さん
を抜かしたって、私の部屋があるのに5人も住める筈無い。
「ちょっ…どけ!!」
 女の子を突き飛ばし、食って掛かる男の子もどけて、部屋に走る。予想通りの
状態になってない事を祈り、そしてそんな訳ないだろと頭の中でツッコミつつ、
襖を開ける。

 ―――私は、久々に自宅の襖を指で開ける行為をした。
「チョット、ドウシタンデ…!?」
「…呼べ」
 私は、女の襟首掴んで、睨んだ。
「なんだよー!かーちゃんいじめるなよー!」
「だれだよおまえー!」
 …1人、玄関先で伊藤だけがすっごいモノを見る眼でこっちを見ていた。百年
の恋も冷める勢いのツラ、してるんだろうなぁ。私はまとわりつくガキどもをつ
まみ、放って、今にも暴れ出したいのを制御して、呟いた。
478館もん。2 21/55 :05/03/03 17:54:07 ID:p16mlBhb
「…お前でもガキでも伊藤でもいいから、とりあえず親父を連れて来いっ…!」

 ―――私の部屋なんて、無かった。子供4人分の荷物や布団があって、私の思
い出の物は全然無くて、あっても壊れたり汚れたりしていた。

 大急ぎで女がお父さんを会社から呼び出した。待ってる間女の子から服を引っ
ぺがして、部屋の中の私の私物を回収した。なんかすっげぇ泣いてたけど、知ら
ん。悪いけど、今の自分に触る奴は、誰であろうと本気で殴る気だった。ので、
小学生くらいの男の子が服返せとか攻撃してきたんで、鼻の穴に指突っ込んで思
い切り指を上に上げたらすげぇ泣かれた。正当防衛だ。
 諌めながらもけっして私に近付かない伊藤を睨んでると、親父が帰って来た。


 …ぶっちゃけると、私、売られたみたいだった。
 借金があって、それを藤乃原が嗅ぎ付けて、取引を持ち掛けた。それから、お
父さんは私を疎ましく思っていたらしい。
 お母さん子だった私は、口には出さないものの、暗にお父さんの再婚を認めな
い素振りをしていた。人見知りをするし、第一お父さんの財力じゃ女1人と子供
4人と私でもう少し広い所に引っ越すのもちょっと無理があったみたいだし。

 …私、働いたよ?お父さんが言えば、どんなバイトだってするし、朝昼夜問わ
ずに働けるよ。家にお金も入れる。
 …ただ、私は別の所に暮らしたけど。
 お父さんに取っては、その人は愛しい人で、子供も愛しいんだろう。けど、私
に取っては単なる他人で、私の生活に介入してくる厄介なだけの存在なんだ。
 ま、こんなんだから、売られるんだろうけどさ。
479館もん。2 22/55 :05/03/03 17:54:50 ID:p16mlBhb


 私はお父さんを7、8発殴る蹴るして、家を出た。今度はちゃんと、別れを告
げて。ひとつスッとしたのは、女の人が事情を全く知らず、今回の事を知って親
父を泣きながら引っ叩いた事だ。えっらい軽蔑してたな。ざまぁ見ろ。
 お母さんの作ってくれたワンピースと、誕生日に買ってくれたのに、クソガキ
のせいで綿が出ちゃった変な顔の人形を抱き締めて、私はボーっとしながら歩い
て、近所の公園まで来た。

 信じてたモノが、全部壊れちゃった。帰る場所も、心の拠り所も、皆全部無く
なって、残ったのは、何も出来ない、馬鹿な自分だけ。3歩後ろには、伊藤が付
いて来てる。正直、うぜぇ。
「…千佐子様、帰りましょう」
 声を掛けて来る。私は無視して歩き続ける。公園の中に入って、物凄く中途半
端な位置に来て、立ち止まる。別に意味なんか無い。歩く気が、無くなっただけ
だ。
「千佐子様、今からこっそり戻れば、なんとか…」
「帰らない」
 はっきり言った。
 確かに、もう脱走する理由は無くなった。けど、このまま藤乃原に戻るのも、
嫌だった。正直、もう本当に何もかも嫌になってた。

「千佐子様?」
「…お前、耳聞こえないの?帰らない。もう、戻りたくない」
 そう言うと、なんか半球型のドームに穴がいっぱい開いてる、とりあえず雨露
だけは凌げるんじゃないか的建造物に入る。
480館もん。2 23/55 :05/03/03 17:55:32 ID:p16mlBhb
 …このまま、この中で消えて無くなりたいな。ワンピースと人形を抱き締めて、
縮こまる。このままぎゅーっとぎゅーっと身体を丸めて、どんどんちっちゃくな
って、私なんかこの世から消えちまえ。
 呆れたのかどうかわからないけど、伊藤が中に入って来る。そして隣に座る。

「お前、気ぃ利かないな。どっか行けよ。ていうか、帰れよ」
「嫌ですよ。どうして貴方を置いていかなければならないんですか」
 ぐ、と肩を抱いて引き寄せる。伊藤の割に乱暴だ。
「触んないで、やだ。今、私なにするかわかんない。さっき、近付かなかったじ
ゃんか、なんで今そんな事すんの」 
 …喋る度に、言葉が震える。さっき、クソ親父やあの女やガキ共の前では死ん
でも泣くもんか、と我慢して来たから、そろっとツケが回って来てる。でも、今、
ここでも伊藤には絶対見られたくない。
「もう、関わるな。今帰れば、お前完全に怪しまれないで済むだろ、私はハンバ
ーグ捨てて脱走して自爆して行方不明になるんだよ。だから、離せよ!」
 伊藤の手を振り解いて、顔を覆う。もう駄目だ、来てもうた。だから、せめて
顔は見られないようにして、泣いた。でも出来るだけ声は出さずに。出来るだけ
伊藤から離れて。

 …悲しい。悔しい。苦しい。色んな負の感情が頭の中でぐるぐる回って、どん
どん嫌な気持ちが増殖して行ってる。頼りになるのはワンピースと人形だけ。
 ごめんね、汚くしちゃって。壊しちゃって。
 全部を拒絶して泣いていると、伊藤が立ち上がる音がした。やっと諦めて帰っ
てくれるのかと思ったら…

「…嫌」
481館もん。2 24/55 :05/03/03 17:56:15 ID:p16mlBhb
 性懲りも無く、伊藤は私を抱き締めて、無理矢理顔を上げさせた。いや、もう
ぐっちゃぐちゃだから見ないで欲しいんだけど。
「…千佐子様」
 また、昨日みたいに私の涙を拭う。伊藤の顔は真剣そのもので、私を見ていた。
「俺は、味方だから。絶対に、何があったって」
「……」
 ずる、と鼻を啜る。伊藤はそれ以上は何も言わず、顔を近づける。私、まだ、
わかんない。けど、でも、今は―――

 そっと、眼を閉じる。こんなの、良くない、駄目だってわかってる。けど、そ
んな事されたら。キスされて、抱き締められたら、縋ってしまう。
「泣いてもいいから」
 ぎゅっと、手に力を込める。私は、つい伊藤の背中に手を回してしまう。眼を
閉じたまま上を見ると、二度目のキスをくれた。
「泣け」
 ご主人様(仮)がコックに命令されたよ。ていうか、もう、駄目だった。キス
してもらったら、もう伊藤の腕の中で泣くしか、無かった。




「ただいま」
「お邪魔します」
 …因みに、最初の言葉は伊藤で、次が私だ。
 どうしても今日だけは帰りたくないとごねた私は、元・私の家のアパートから
40分くらい車を走らせた所にある、伊藤の実家に来ていた。
482館もん。2 25/55 :05/03/03 17:56:57 ID:p16mlBhb
 伊藤の家は両親共に料理人で、やっぱりどこかの家に仕えてるらしい。家は、
とりあえずたまに帰る時の為だけにあるそうだ。贅沢な。
 手にはスーパーの袋を持って、伊藤はさっさと家に上がる。
「千佐子様、茶の間で待っていて下さい。私は屋敷に連絡してから、夕ごはんを
作ります」
 …時刻は、もう夕方。今日一日で一杯ショックを受けて、伊藤の厚意ならぬ好
意に甘えて、こんな所まで来てしまった。罪悪感で一杯になって、呆然と立って
いたら、伊藤に押されて茶の間まで追い遣られてしまった。

 伊藤が2階に行ってしまって、ぽつん、と1人になってしまった。眼が痛い。
泣きすぎて、腫れてしまった。お行儀が悪いけど、座布団を繋げて、寝転がった。
 もしかしたら、疲れてしまってたのだろうか。1人になれて気が抜けたのか。
私は、あっという間に眠ってしまった。


 …夢を、見てた気がする。どんなのかは忘れちゃったけど、とりあえず楽しく
はなかった。悲しくて、苦しくて、どうして現実が辛いのに、夢でも辛いんだっ
て、一応夢だと自覚していたのはわかった。
 だから、伊藤が揺り起こしてくれた時は、心底助かった。結構汗をかいて、お
まけに泣いていたから。
「…いと、う…」
 カラカラになった唇で、名前を呟く。心配そうにこっちを見ている伊藤の顔を
見たら安心した。
「千佐子様、お風呂にでも入って来て下さい。沸かしてあります。上がる頃には、
ごはん、出来てますから」
 そう言うと、私の頭を撫でた。言う通りに、風呂場に案内して貰った。
483館もん。2 26/55 :05/03/03 17:57:39 ID:p16mlBhb

 ―――正直、食欲全く無いんだけどな…
 夢見もあるが、あの時から、ずっと気分が悪い。頭も痛いし、ふらふらする。
 でも、伊藤が一生懸命私の為にしてくれてるし…

『着替え、ここに置いておきます。母の物ですが、新品ですから』
「…ありがと」
 湯船に浸かりながら、礼を言った。正直、億劫だ。返事をするのも。ホントは、
1人になりたいんだけど…それは、ワガママも度が過ぎる。
「ねぇ、伊藤…」
『はい、なんでしょう』
 優しい声。穏やかな声。伊藤に寄り掛かって、いつまでもそれでいいんだろう
か?私はただ、伊藤を利用してるだけなんじゃないか?『次期当主』でも『藤乃
原の血筋の人間』でもない、『私』を必要としてくれる人間の好意に甘えて、好き
と明確にわからずに、恋人同士がするような事を受け入れたり、ねだったりする
のって…
「私、で、いいの?」
 一瞬、間が空く。そんな事を思いながら、試してしまう。
『…千佐子様が、いいんです』
 ごめんね…
 伊藤の言葉には応えず、湯船の中で身体を縮めた。伊藤は暫くしてから、また
出て行った。


「…うわぁ」
 ちょっとサイズの大きいパジャマを着て茶の間に行くと、用意が出来ていた。
484館もん。2 27/55 :05/03/03 17:58:29 ID:p16mlBhb
「一杯食べて下さいねー」
 にこにこしてる伊藤。ちゃぶ台の上には、ハンバーグでっかいのに目玉焼きが
乗っていて、にんじんとブロッコリーが添えてある。あと、ご飯と味噌汁とお漬
物。
「デザートもありますよ。チョコムースです」
「本当?」
 …マジっすか…
 普段なら、大喜びする所だ。けど、今は…正直、ご飯と味噌汁だけでも辛い。
けど、駄目だ。ここはおおはしゃぎでがっつかねば。せっかく、伊藤が作ってく
れたのに。
「いっただっきま―――す!」
「はい、召し上がれ」
 伊藤も気を使って、ご飯、大盛りに盛りやがって。まずはハンバーグをひと口。
でっかく。

 …あれ?
 非常に、ヤバイ事態となる。どうしよう、砂食ってるみたいな感覚。味が、し
ない。胸につっかえて、中々飲み込めない。
「どうしたんですか?」
「……」
 何度も何度も噛んで、やっと飲み込む。飲んだ感触も、なんか、無機物を流し
込んだような、そんな、苦しい感じ。駄目だ、心配させるな、これ以上、迷惑掛
けるな…!
「っ…ごめん、あまりの美味さに、気を失いそうになった」
 こういう時、普段が意地汚くて良かったと思う。伊藤が呆れて笑う。こうなっ
たら、もう意地でも食うしか無い。気合を入れて、箸を伸ばした。
485館もん。2 28/55 :05/03/03 17:59:16 ID:p16mlBhb


 ―――その結果。
「うげ…っげっ…げぼ…」
 ゲレゲレゲレと、吐き続ける。見たくないけど、見た感じ、これで全部か。胃
は痛いし、気持ち悪いし、鼻で逆流したし。
 飛び散らないように吐いたし、そこらにあったトイレ掃除用の薬品使って床も
拭いたし、あとは顔洗って、うがいをすればOKだ。よく食べましたねー、と笑
っていた伊藤に罪悪感を覚えつつ、トイレを出た。が、その瞬間、凍り付く。

「―――なに、してるんですか千佐子様」
「っ…え、なん、な、なんだよ、食い過ぎたから出たんだよ!食・即・出だよ」
 慌てて、誤魔化す。が、怒ってる。完全に怒ってる。
「…響くんだよ、吐いてる音っていうのは」
 私を睨み、頭を叩く。
「無理して、食べたのか?」
 尋問するかのような、おっかない視線。私はこれ以上はもう駄目だ、と思って、
頷いてしまう。馬鹿、と呟いて、がっくり頭を下げてしまった。
「ごめん、もったいない事して…せっかく作ってくれたのに」
「…あのな、そういう事じゃないだろ…」
 もう寝た方がいい、と私を引っ張る伊藤を止めて、とりあえず洗顔、うがいだ
けはさせて貰う。それをしたら、また強く引っ張られて2階の寝室まで連れて行
かれた。
「……」
 客間とかなのだろうか?あまり物が無い部屋に、布団が一組敷いてあった。
「ほら、入って下さい。それでは、お休みなさい」
486館もん。2 29/55 :05/03/03 17:59:59 ID:p16mlBhb
 …割と乱暴に、部屋の中に入れられる。が、襖を閉めようとする伊藤の手に触
れると、動きが止まって、こっちを見た。
「なんですか」
「あの、怒ってる?よね?」
「怒ってますよ」
 うっっ…すっぱり言い切りおった。本当に、ごめんなさい。悪い事しました。
しゅーん、となって、無言で頭を下げる。
「…ごめんなさい」
「なんで貴方が謝るんですか」
 え?意味がわからず、顔を上げる。やっぱり、怖い顔。
「どういう…事?」
 説明を求めると、伊藤は襖を開けて、部屋に入り、襖を後ろ手で閉じる。
「とにかく、横になって下さい」
 ほれほれ、と私を布団に寝かせる。おお、元・私の家のボロ布団とは違う、い
いお布団だ。ベッドよりお布団派だ。そんな私を見下ろし、伊藤は正座する。そ
して。
「え、ちょ、どっ、どど、どした!?」
「すいませんでした」 
 何故か、伊藤が私に謝った。すいません、意味がわかりません。呆気に取られ
ていると、10秒くらい経ってから伊藤が顔を上げた。
「ですから、気を使わせて吐くまで食べさせてしまった件です」
「あ、あーそれ?いや、だって、あの…伊藤が、私の為にしてくれた事だし…」
「…ですから、それです。優し過ぎるんですよ、千佐子様は」
 ぶんぶん振ってしまった手を握られる。けど。
「優し過ぎる人間は、親父に暴行加えたり、後妻の襟首掴まないし、その子供の
服ひっぺがしたり鼻フックはしないと思うよ…」
487館もん。2 30/55 :05/03/03 18:00:42 ID:p16mlBhb
 その件に関しては、伊藤は聞かないフリをした。なんだか、気まずい空気にな
ってしまった。

「…ねぇ、伊藤」
「なんでしょうか」
 やっぱり、良くないよな、こんなん。一緒にいればいる程、伊藤の良さはわか
る。今日は全然、からかいもおちょくりもしないし。だから、騙すのって、良く
ない…よなぁ。

「ごめんね」
「…もう、いいですよ」
「違う、その事じゃない。あの、本当に、黙ってれば黙ってるだけ、辛い事にな
るから」
 …うわー、いてぇ。マジ胃がいてぇ。でも、言わなきゃ。こんなん、間違って
るから。こんな酷い事って、無いから。

「…どうしたんですか?」
「ごめん、伊藤、私、伊藤の事好きじゃない」
 ―――あれ?いや、その通りなんだけど。でも、なんか言葉、間違えた?あー、
固まってる。笑ったまま、固まってる。
「あっ、あの、違う、あの、好き。好きだけど、あの、恋愛対象には…あの、な
れないじゃなくて、わからなくて、あの…まず、ちゃんと話すようになって、2
日だし…」
 なんか、言えば言う程ドツボにはまって行く。あああああ、伊藤の眼が泳ぎだ
した。どうすりゃいいんだ?これ…
「あ、あの、ホント、ごめん、伊藤…」
488館もん。2 31/55 :05/03/03 18:02:00 ID:p16mlBhb
「…抱き締めても嫌がらなかったじゃないですか…」
「いや、あの、唐突過ぎて…」
「自分でキスしてって…」
「言葉には出してない…」
「私でいいのって…」
「…その件に関しては、本当に反省してます…」

 …私、よく考えなくても、人を傷付けてばっかりのような気がする…でも、今
言わなきゃ、余計傷付けるだけだし…ていうか、よく考えたら、付き合ったまま
だとしても、私婚約者いたよなぁ…名前も忘れたけど。
 しかし、私、ここでぶっちゃけちゃったけど…流石に、このまま一晩泊まるの
…迷惑だよな。歩くか。休み休み歩いて帰れば、明日の朝には着くかな?ホント
にごめん。あーあ、最低だ、私。
 むく、と起き上がって、畳んであったのをこっちに持って来てくれてあった自
分の服を持つ。パジャマは…寒いし、下に着て、洗濯して返すか。
「ごめんね、さよなら」
 未だがっくりしてる伊藤に声を掛け、襖に手を掛ける。その時。

「どこ、行くんだよ」
 あああ、やっぱ動揺してる。ていうか、普段、どんだけ我慢して敬語使ってる
んだよ…無理は良くないぞ。
「え、いや、帰るよ。休み休み歩いて帰る」
「…それで?疲れて帰って来たお前見られたら、連絡して保護した筈の俺の立場
どうなる訳?ただでさえもう誠司の奴には俺が連れ出したのバレてんだ。余計睨
まれるだろ」
 無理、良くないとは思うけど…あの、変わり過ぎじゃ。
489館もん。2 32/55 :05/03/03 18:03:26 ID:p16mlBhb
「…あの、あの、どうしたの?キャラ、変わり過ぎだよ?
「ああ、そうだろうな、ドン引きだろうよ、どっかの推理ゲームの2の犯人くら
いの変わりっぷりだろ」
 なっ…投げやりだぁあああ…嘘、もしかして、そんなにショックだったの!?
 ちっ、と舌打ちをして、私を見上げる。こういう体勢は珍しいな。

「…別に、いいんだけどさ。俺だって千佐子様じゃなきゃ死ぬって訳でもないし」
 まぁ、人間関係って大抵そうだけどさ。そっか、そんな切れる程酷い事しちゃ
ったんだよな…
「別に、親に裏切られてるんだったら、千佐子様でなくても良かったんだよ」
 ―――?なんとなく、その言葉の意味がわからず、でも、何か引っ掛かってし
まう。ていうか、今後も顔合わせるのに、そんな暴言吐いていいのか?
「伊藤、それって―――」
 その時の私の顔、どんな顔してたんだろ。伊藤は私を冷ややかに見据えて、鼻
で笑った。
「…は?わかんない?俺は別にお前が欲しかったんじゃなくて、お前みたいな境
遇の奴が欲しかったんだよ。それでズタボロに傷付いて、俺に縋って、俺しか見
えなくしてやりたかったのに、あーあ、優しくしてすっげぇ損した!!」
 …なんだろうか。これは、本当に恐ろしいくらいの変わりっぷりだ。普段の伊
藤の姿は微塵も無くて、どっちかと言うと、キャラ的に鈴原に近い。ていうか、
そんな事より伊藤の言い分だと、もしかして。

「あのさ、知ってたの?私が売られたの」
 もしかして、今日の脱走の手伝いも、ていうか、私に近付いたのも、全部、全
部可哀相な私を手に入れたくて、仕組んでた事なのか?
「知ってるよ。ていうか、屋敷の人間、全員知ってるぞ」
490館もん。2 33/55 :05/03/03 18:04:47 ID:p16mlBhb
 …ナルホド、知らなかったの、私だけか。あー、だからか。もしかして、私の
精神衛生上、諦めるのを待っていたって事だったのか?だろうな、そうだろうな。
基本、いい奴ばっかだもんな。
「……」
 私は、襖を開ける。
「は?行くの?お前、人の話聞いてなかった?そんなんだから捨てられるんじゃ
ねぇの?」
 わかってる。それは、自分でもわかってた事だ。性格、すげぇ悪いもん。なん
も知らんかった女とガキに暴力振るえるもん。でも、惜しかったな。

「そっか。そうだったんだ。ごめんな。私、言わなきゃ良かったな。だって、そ
うなる所だったから」
「…?」
「伊藤が、どんな事考えて、どういう思いでそういう人求めたかは知らないけど
さ、伊藤がそうしたがった事、私は伊藤にだけ重荷を掛けると思って。好きかど
うかもわからなかったけど、でも、例え好きだったとしても、そんな関係は駄目
だって思ったから、言ったんだ」
 だから。
 きっと、あのまま伊藤に寄り掛かり続けていて、伊藤が自分からそれを望んだ
と言われても、耐えられなかったと思う。いずれ、駄目になっていたと思う。

 ―――今、はっきりわかった。私、きっと伊藤の事、好きになってたんだ。勘
違いかもしれないけど、こういう気持ちって見えなくて、確証持てないもんだか
ら、そう思っちゃったからそうなんだろう。
 伊藤の考えがどうであれ、抱き締めて欲しい、キスして欲しいって思ったのは
事実なんだし、伊藤があの場にいてくれて救われたから。
491館もん。2 34/55 :05/03/03 18:05:40 ID:p16mlBhb
 でも、それでも。私だって結局あの場にいて、慰めてくれたなら、隣にいたの
が浩司だろうが誠司だろうが、もしかして名前も思い出せない婚約者だとしても、
縋っていたのかもしれないし。でも、実際そこにいたのは、連れ出してくれたの
は、話をしてて楽しいと思ったのは…伊藤だったから。
 人の事言えないけど、伊藤の場合は『私』じゃなくて…

「ごめんな、そこまで言われたらお前の屋敷内立場なんてどーでもいいよ。歩い
て帰る。じゃな」
 パジャマの上から服を着る。大分おかしい格好だけど、あったかいし、夜だか
ら誰も見ない。
 …伊藤は、声も出さない。私を見ない。

「でも、助かった。あの時、伊藤がいてくれたからなんとかなった。それは本当
に感謝してるよ。ありがと」
 それだけ言って部屋を出て、ぱとん、と襖を閉めた。

 伊藤も、『私』じゃなくて、『次期当主』や『藤乃原の血筋』みたいに『親に捨
てられて傷付いた、可哀相な子』を求めてたんだな、と思うと、無性に悲しくな
った。私の事、見て欲しかったんだけどな。見てくれてたと思ったんだけどな。
きっと、好きだから、悲しいんだろうな。良かったよ、涙が出るの、部屋出てか
らで。



 真っ暗な道を、とぼとぼ歩く。道、よくわかんないけど…まぁ、交番見付けた
ら道を聞くとするか。
492館もん。2 35/55 :05/03/03 18:06:22 ID:p16mlBhb
 …なんか、後ろから誰か来るな…まぁ、時刻は…夜8時半くらい。こんくらい
なら、人通りもあるだろう。うわー、この格好やっぱ後悔した。そう思った瞬間。
「いっ…いたぁっ!!」
「!?」
 いきなりダッシュで近寄って来て、人の腕を掴む。まぁ、そんなん伊藤しかい
ないんだけどさ。っていうか、顔!泣きっぱなしじゃん私!!
「なっ…なに…」
「…お前、あんだけ大騒ぎしてた癖に忘れんなよ、人形とワンピース…」
 顔、真っ赤にして、呟く。
「あ、ごめん…忘れてた」
 と言うものの、伊藤だって何も持ってない。それを指摘すると。
「うっ…うるさい!お前、自分の物くらい自分で取りに来いよ!!」
「…ごめん、めんどいから明日、お前持って来て」
 あんだけ大事にしといて、えらい発言だ。が、本気でそう思ってしまった。
「っ…却下!!」
 それだけ言うと、私の腕を握ったまま、もと来た道を戻る。
「あの、あんま残りHP無いから体力使いたく無いんだけど」
 伊藤の家からここまで、2キロくらいある。来る時通った道を使ったとはいえ、
よく見付かったものだ。伊藤は完全に私を無視してのしのし歩く。そして、やは
りこっちを見ないまま。

「…悪かったな」
 と、呟いた。
「そう思うなら言わなきゃいいのに」
 と、返してしまった。そこで伊藤がぴた、と止まる。が、またすぐ歩き出す。
 どうしたんだ?実は躁鬱の気でもあるのか?
493館もん。2 36/55 :05/03/03 18:07:04 ID:p16mlBhb
「…わかってる。俺は、考え無しで物を言う馬鹿だから。どんなにお前の事傷付
けるか、どっかでわかってたのに言って、お前が家出て、凄く後悔した」
 まぁ、概ね同意する。でも。
「私も、傷付けたからさ。お前の事利用してた訳だし」
「でも、それだって俺の目論見だったんだし、そうなるようにしてたから」
 …うーん、平行線。暫く無言で歩き続けて、伊藤の家に辿り着く。体力、かな
り削られた。伊藤は私を家に入れると、そのまま玄関閉めて、鍵を掛けた。
「え…?」
「よく考えなくても、お前、なんも食ってないような状態だろ。今日は、もう寝
ろ。嫌だろうけど…な。頼む」
 そう言うと、また手を引いて、元の部屋に戻る。伊藤の手は、震えていた。
 …必死に走って、私の事、迎えに来てくれたんだ。まぁ、自分の立場がどうこ
うとかも言ってたけど…でも、ちょっと嬉しかった。好きだってわかった訳なん
だし。
「えっと…あの…」
 伊藤は、視線を泳がせる。そして、あーあー、と発声。ちょっと咳をして、呼
吸を整える。

「…今回の件は、本当に悪い事をしたと思っています」
「あ、戻った」
 どうしてだろうか、伊藤は未だ緊張してビクビクしているというのに、私はも
う、完全に落ち着いていた。きっと、今なら牛丼特盛りつゆだく卵付きも余裕で
食えるだろう。
「そう。でも、別にもう気にしてないよ。私も罪悪感消えたよ。ひふちーひふち
ーって奴?でも、ひとつ聞いていい?」
 伊藤が首を傾げる。ちょっとしてから『どうぞ』と呟いた。
494館もん。2 37/55 :05/03/03 18:07:47 ID:p16mlBhb
「あのさ、私に自分の計画の事話した時、全然伊藤らしくなかった。考えなしっ
て言ったけど、普段の伊藤見てると、やっぱりあの時だけどっかおかしいよ。だ
から、まだ悪いって思ってるなら、それだけ聞かせて。それでお終いにしよう」
 まぁ、普段つっても、そんなに一緒にいないけどさ。でも、屋敷でだってあの
キャラでいたんだろうし。だから、余計に。
「…ん?」
 あらら?伊藤の顔が、どんどん赤くなって行く。眼を背け、挙動不審になる。
なんだ?この怪しさは。
「伊藤、おーい、伊藤さん?」
 近付いて顔を覗き込む。すっげぇちっちゃい声で『言えねぇ、言えねぇよ!!』
と呟いていた。うわぁ、可愛い。てか、近付いたのに気付いてない。
「伊藤、じゃあ命令。言いなさい」
 むによーー、と伊藤の頬を引っ張る。やっと気付いて、変なリアクション取っ
て私から離れる。
 …待つ事、15分。伊藤の奴は、やっと口を割った。

「真っ白になったんです」
 はい、のっけからわかりません。でも、突っ込まず次を待つ。
「…俺、千佐子様を守りたいと思ったのに、気付けなくて、無理させて、凄く情
けなかった矢先に、ホントは、必要じゃないって、好きじゃないって言われて、
俺、悲しかったんです」
 あら、あらあら。でもそれはやっぱり…どうなんだろう。
「悔しくて、辛くて、別に、千佐子様自身なんて、どうでも良かった筈なのに、
千佐子様の言葉で、おかしくなって、それで…それで、気が付いたら、凄く酷い
言葉、吐いて…ホントに、傷付けたくなかったのに、それなのに…」
 …普段は、もちっと理路整然とした喋り方の筈なのに、このパニックっぷり。
495館もん。2 38/55 :05/03/03 18:08:33 ID:p16mlBhb
 こんなに困って、傷付いてるのに、私、嬉しかった。伊藤の事、なんだか愛し
いなって、思った。だから、私は伊藤の事、抱き締めた。さっきとは、逆に。私
が、伊藤を慰めたくて。
「っ…?」
 こいつも、きっと、そうしたかったんだろうな。やっぱ同類ってのはわかるも
のなのかな?私は、さっきの伊藤と同じように、言ってやった。

「泣いてもいいよ」
 きゅっ、と、も少し力を込める。正座してる伊藤と、立ち膝の私。ちょうど、
胸に顔を埋められるようになってる。伊藤が、震える。胸に、熱い息が掛かる。
「泣け」
 …その言葉で、スイッチ入ったみたいに、伊藤が私を強く抱き締めた。そんで。




「…俺、本当はこの家の子供じゃないんです。本当の母親と、顔も知らない父親
の間に生まれたんです」
 布団の中で、さっきまで泣いてた伊藤が、ぽつりぽつりと話し出した。
「母親は…不倫、というか妾、といいますか…父親の性欲を処理する程度の存在
だったみたいです。でも、ある日突然捨てられてしまったんです」
 母親と一緒に、伊藤自身も。私は、伊藤の髪を梳いて、話の続きを待つ。
「俺が出来て、同時に、本妻にも子供が出来て…面白い話ですよ、俺とその子供、
同じ日に生まれたそうなんです。同じ父親から生まれたのに、俺は、認知もされ
ないで、母親と一緒に、ゴミみたいに捨てられたんです」
 さっきと違って、淡々と、あまり感情を込めないで物を言う。もうどうでもい
い過去なのか、それとも、考えすぎるのが辛いのか。
496館もん。2 39/55 :05/03/03 18:09:25 ID:p16mlBhb
「おまけに俺は親父と同じ名前だそうですよ。なんのこっちゃです」
 はぁ、とついた溜息。だからか。だから、その呪縛から逃れられないのか。結
局母親も小学生の時に蒸発して、親戚の今の家の夫婦に引き取られたそうだ。一
杯愛情は貰ってこんな立派に(笑わせるつもりなのか?)育ったそうだが、どこ
か欠けてしまったものは戻らず―――

「…同じ誰かを見付けて、空けられた穴を埋めてやって、それで自分の欠けた所
を補いたかったんでしょうね」
 それで話は終わった。私は何も言わず、伊藤も何も言わず、沈黙だけが流れた。
 寂しかったんだな、伊藤は。ぎゅう、抱き締めてやる。本当に、騙されてやれ
ば、騙していれば良かったのかもしれない。穴は、多分埋まっただろうから。

「…こんな事、誰にも言いたくなかったのに。ずっと、黙ってるつもりだったの
に、なんで言っちゃったんですかね」
 本当に不思議だと言いた気に、伊藤はぼやく。本当にわからないんかな?
「そりゃ、伊藤が救って欲しかったんでしょ。誰かに」
「…千佐子様に?まぁ、そうでしょうね。好きじゃなかったら、あんな醜態、晒
さなかったでしょうしね」
 力無く、笑う。あ、そうか。知らないんだ、伊藤は、私が伊藤を好きな事って。
 私は伊藤から一旦離れると、もそもそと伊藤と顔を合わせるように移動する。
すぐにでもキス出来るような、そんな位置。電気は付いたままだったから、顔が
よく見える。

「千佐子様?」
「…好きだよ、伊藤の事」
 そう言うと、初めて、自分からキスをした。
497館もん。2 40/55 :05/03/03 18:10:09 ID:p16mlBhb

「…嘘。どっ、同情、とかでなくて?」
 がば、と起き上がる。視線は、じゃあさっきはなんだったんだと、言いた気だ。
私は寝転がったまま。
「わからない、って言ったじゃん。それで、考えて、結局、好きだったんだって、
わかった」
 抱き締めたい。キスしたい。今は、ちゃんと自分から思える。こうやって、伊
藤が私自身を必要としてくれるってのもわかって、尚嬉しい。
 起き上がったままの伊藤は、なんだか泣きそうだ。私は手を広げて『来て』と
言った。少しだけ迷って、伊藤は来てくれた。
 暫く、布団の中でキスしたり、じゃれ合ったりしていた。幸せで、楽しくて、
ずっとこうしてたいって思った。けど。

「…わ」
 私が上になって首を締めてた時、不意に伊藤は真面目な顔になって、その癖、
私の胸を鷲掴みにして来た。
「や…なに、どうしたの?」
「どうした…って、千佐子様、嫌なんですか?」
 ストレートに、意地悪く聞いて来る。顔、真っ赤になるのがわかった。少し、
覚悟はしてたけどさ。でも、でも、やっぱり、ちょっとな。
「…嫌、じゃ、ないけど…んっ」
 嫌じゃないとわかった瞬間、キスして来る。さっきまでキスしてても、ただく
すぐったくて、好きだって思うだけだったのに、今は、なんだか…ドキドキして
来る。胸を掴まれてるってだけじゃなくて、なんだろう…期待してるの…かな?
「や…」
 パジャマは大きかったから、ボタンを外さず上着の如く脱がされた。
498館もん。2 41/55 :05/03/03 18:11:39 ID:p16mlBhb
 色気も無しに、そのまま下着ごとズボンも脱がされる。布団の中で、裸にされ
てしまった。なんだか悔しくて、反撃とばかりに私も伊藤の服を脱がせる。ええ
い、でかいからやりにくいわ!!
「お前、自分で脱げ!!」
「…千佐子様、漢らしー…」
 ちょっとした剣幕に、半分呆れながらぼやいた。後、ちょっと不満がひとつ。

「様は、嫌…」
 様付けで呼ばれるの、嫌だ。せっかく、恋人になったのに。じとー、とした視
線を向けると、伊藤は笑って。
「サマワ、嫌ですか。俺もちょっと住みたくはないですね」
 …と、はぐらかす。私はすっげぇむかついて、今度は本気で首を締める。あっ
さりギブをした伊藤は、何度か咳き込んで、私を抱き締めた。
「…冗談ですって…千佐子。でも、俺だっていつまでも伊藤は嫌です」
 背中をさわっ、と、なんだかいやらしい手付きで撫でる。ちゃんと呼ばれた事
と共にゾクゾクしながら、私は千尋にキスをする。
「うん、わかった。大好き、千尋」
 嬉しくて、どうしようもなくて、千尋にしがみついた。が、しかし。

「あの、普通、下って私じゃないのかな?」
 知識は漫画とか雑誌とかその辺しか無い私でも、この体勢は違和感を覚える。が、構わず千尋は笑う。
「いいんじゃないですか?こういうの、やり方のマニュアルなんて本来無い筈な
んですから。千佐子様攻めでお願いしますよ」
 相変わらずとんでもない事を事も無げに言ってくれる。
「ちょ…待って、待ってよ、私、初めてなんだよ!?わかんないよ…」
499館もん。2 42/55 :05/03/03 18:12:27 ID:p16mlBhb
 本気で困る。どうしていいか、よくわからないってのに。
「あ、じゃあ俺も童貞です。ですからやり方変でも笑いませんよ」
 にこー、と笑う。こいつ、もしかして一度フッたの、根に持ってるんじゃ…
 そう思いつつも、少しドキドキして、やってみたい気持ちも無い、訳じゃない。
こいつが本当に童貞だとしたら、私の好みに調教してやるんだから…!
「じゃ、千佐子行きまーす!」
「…似てますね」
 首を傾げながら、呟いた。

「…基本的に、舌を使うと気持ちいいもんですよ」
 のっけからアドバイスをくれるな。舌打ちしながら、とりあえず電気を消して
真っ暗にする。
「うわー…」
 思い切り落胆した声。うるさい、恥ずかしいんだ。手探りで顔を探し当てて、
とりあえず、キスをする。舌…か。ディープなキスとか…か?少し開いた唇の中
に舌を差し込む。舌先で、舌を突付いてみる。ざらざらしてる。手が開いている
ので、さっきのお礼とばかりに胸を触る。揉み甲斐の無い胸だこと。
 …反応があんまり無いから、胸はやめた方がいいと判断して、キスに集中する
事にした。さっきもそうだったけど、キスだけで、結構興奮するものだ。
 口の中の色々な所を舐めると、たまにぴく、と反応がある。それが、なんだか
楽しくもあり、そうなる度に自分がいやらしく思えてしまう。身体を密着させる
と、千尋の胸板に胸を押し付ける格好となる。その状態で身体を揺すると、乳首
が擦れて、気持ち良かった。
 口の中だけじゃ物足りなくなって来ると、一旦唇を離し、耳朶を舐める。それ
だけじゃどうもならなかったけど、耳の中を舐めて見ると、少しぞわっ、と鳥肌
が立った。面白い。
500館もん。2 43/55 :05/03/03 18:13:10 ID:p16mlBhb
「千尋…気持ちいい?」
 耳元で、囁く。ふっ、と息を拭き掛けてみると、余計鳥肌が。可愛いな。
「はい、いいです」
 髪を梳いて、今度は千尋からキスをして来た。しがみ付いて、離れたくないと
何故か思った。
「あっ…!」
 不意に、千尋が乳首に触れた。擦れて、膨らんだ乳首がまた硬くなる。指で円
を書くように擦られると、声が漏れてしまう。きっと、真っ暗な中で私が出した
声を聞いて、淫らに歪んでいるだろう顔を想像して、笑っているんだろう。
「千佐子の声、もっと聞きたいんですけど」
 私の身体を倒して、抱き締める。心なしか楽しそうなその声は、何故かもっと、
いやらしい事をしたい、という欲を駆り立てる。でも、本当にどうすればいいん
だろう。はぁ、はぁ、とお互いの息遣いだけが響く。
 ふと、自分が一体何をしているのかに気付く。そうだ、する時って、何を使う
かを忘れてた。私は身体を起こし、乗っかったまま、後ろ手で…大きくなってた
千尋のを触る。あまりに唐突だった為か、千尋はびっくりして声を上げた。
「…こんなになるんだ…これって…」
 興味を大幅に惹かれて、身体の位置を変えて、これを触りやすい方にまた乗っ
かる。つまりは、千尋に背を向けるように座った。
「あ、重くない?」
「大丈夫ですけど」
 暗闇の中で、千尋のをべたべた触る。それは熱くて、おっきくて、正直…あの。
「こんなん、入るの…?」
 声が、弱々しくなる。が、千尋はやっぱり事も無げに。
「入りますよ。子供が出て来るんですし、今までも大丈夫でしたから」
「やっぱ、千尋童貞じゃないんじゃんか…」
501館もん。2 44/55 :05/03/03 18:13:53 ID:p16mlBhb
 私の言葉に、1本取られました、みたいに『あ』と言った。まぁ…いいんだけ
どさ…じゃあ、仕方ない…行くか…
 はぁ、と溜息をついて、腰を上げる。入れようとするけど、上手く入らなくて、
滑ってしまう。
「や…んっ?」
 あそこに擦れて、感じてしまう。思わず、鼻に掛かった声が出た。
「…ちょっ…と千佐子、もう入れる気だったんですか?」
 うわぁ、馬鹿にされてもうた。でも、でもさ。
「だって、よくわかんないよ…なんか、もっとする事あるの?」
「ありますよ…」
 呆れてしまった。あるんだ…じゃあ、他にする事といえば…そういえば、まだ
濡れてないよな。でなきゃ痛いんだろうし。そういや、自分でするんだったら、
もう少し、こう…いや、でも2人でするんだから…
「千佐子、俺ちょっと調子に…」
「あ、ごめん、もう少し寝てて」
 千尋がなんか言ったような気がしたけど、聞こえなかった。どうせ見えないん
だから、と足を広げて、千尋のにくっつけるように跨る。今までので、ちょっと
は濡れてるし、自分からこういう事をする、という事で大分興奮してる。
「…ち、千佐子?」
「なに?」 
「いや、別に…続けて下さい、後、電気点けていいですか」 
「却下」
 物凄い名案みたいに言いやがって…恥ずかしいんだぞ、客観的に考えると…
「ん…」
 千尋のに擦り付けるみたいに、腰を動かす。まぁ、指でする時の要領で。熱く
て、ドキドキして、あそこが疼く。気持ちいい。
502館もん。2 45/55 :05/03/03 18:14:36 ID:p16mlBhb
「千尋…ぁっ…ん…」
 身体の奥から、蕩けるような感覚。私の中から溢れて来て、千尋のに塗り付け
るみたいにまた刺激する。指で触れてみると、千尋のは、私のせいで随分濡れて
いた。1人でするよりも気持ち良くて、もっといやらしい気分になって、もっと
激しく続けてしまう。
「千尋っ、いいよう…んっ、もっと…あっ…」
 次第に、私の喘ぎ声と、擦れる時の水音しか耳に入らなくなる。気持ち良くて、
自分の胸を自分で触る。さっき千尋にされたのを想像して、千尋にされてる気分
で、乳首を摘む。本当に、1人でするよりも、ずっといい。けど。

「…あの、すいません、千佐子様…」
 不意に、声を掛けられてしまう。
「ん…なぁに…?」
 声も、いつもよりもなんか、けだるい。
「あの、気持ち良くなってる所すいません、あの、俺もいいんですけど、これは
あの、セックスでなくて、千佐子様の俺を使ったオナニーじゃないかと」
「…ん、そう、なの?…あ、いやぁ…」
 千尋の家の電気は、紐が長いから寝ていても手を伸ばせば電気が付く。ぱっ、
と部屋が明るくなると、途端に恥ずかしくなって来る。
「や、いや…電気、消して…」
「千佐子、そんな顔してたんですか…やっぱり点けて置けばよかった」
 そうこぼすと、こっちを向かせる。相変わらず跨って見つめ合う状態。恥ずか
しい。でも、さっきの顔や格好、見られないで良かった。
「…あーあ、ここ、こんなにトロトロにして」
「ふぁ…あっ」
 千尋が、指であそこに触る。簡単に指を受け入れてしまう。
503館もん。2 46/55 :05/03/03 18:15:18 ID:p16mlBhb
「あっ…ん、いい…の…」
 指が、気持ちいい。擦り付けてるだけでも良かったけど、でも、やっぱり千尋
にされると、もっといい。
「思ったよりもエッチですねぇ」
「別に…違うもん」
 あそこから手を離して、腕を広げる千尋。抱っこして欲しくて、すぐに抱き付
く。千尋の、身体に当たってる。
「千尋だって、やらしいじゃんか。ここ、こんなになってる」
「そうですよ、千佐子の中に入りたいの待ってるんですから」
 相変わらずの物言い。でも、ああ、そういう事かと気付いてしまう。
「…ごめん、あの、私ばっか良くなって」
 さっきの、オナニーだって言われたけど、確かにそうだ。千尋を使って、勝手
な事しちゃって…
「いえ、ですから俺も良かったんですけどね。ホントに」
 …ホントかな?まぁ、でも、いいや。すぐ千尋も気持ち良くしたい。私は千尋
にキスすると、腰を上げて、またさっきみたいに狙いを定める。
「入れる、よ…千尋」
「いいんですか?」
 うん、と頷く。今度は、一杯濡れてるから、入りやすい筈だ。初めては痛いっ
ていうけど…
「っ…」
 割と、心配していたよりはスムーズに、ぬるりと入って行った。けど、やっぱ
りある程度まで埋まると、次第に。
「っう…っ…いっ…ち…ひろ…」
 これ以上、奥に入らないようにして、千尋にしがみ付く。痛いものは、痛かっ
た。千尋はぎゅっ、と抱き締めてくれた。
504館もん。2 47/55 :05/03/03 18:16:28 ID:p16mlBhb
「だから、いいですかって聞いたのに…」
「…え?」
 どうも、行き違いがあったらしい。私は入れていいかと思ったんだけど、千尋
はこの体勢でいいか、と聞いたみたいだった。正直、言葉が足りないと思う。千
尋はそっと、なるべく動かないように、私を抱き締めてくれた。
「…寝転がります?」
「つっ…ん、いや、動かない…で…」
 …なんとなく、そっちよりは、こっちの方が甘えられるような気がした。しか
し、痛い。ちくわにキュウリを入れるくらいの感じかと思ってたけど、実際はか
まぼこに切れ目を入れて、無理矢理キュウリ突っ込むようなもんだった。
 知らず知らずの内に涙が流れて、千尋にしがみ付いていた。
「千佐子」
 名前を呼ばれ、上を向く。初めてキスされた時みたいに、頬に軽くされる。
「…千尋、大好き」
「俺もです」
 明るい部屋の中、抱き合う。千尋の事、大好き。他の事、全部忘れるくらい。
今日の日の事、多分一生忘れない…色んな事、込みだけど。あーあ、忘れるとか
いって、思い出しちゃったよ。
 暫くじっとしてると、なんとか痛みも引いて来た。少しくらいなら、動いても
…大丈夫かな?
「…千尋、動いていい?」
「動くんですか?」
「動くんです」
 さっき、気持ち良かった。だから、今度は千尋の事、気持ち良くする。ゆっく
り、少しずつ、動く。
 少しだけ、ヒリヒリするけど、死ぬ程じゃあない。
505館もん。2 48/55 :05/03/03 18:17:46 ID:p16mlBhb
「ん…千尋、気持ちいい?」
 正直、私に快感はあんまり…無い。さっきの方が気持ち良かった。けど、明る
い中で、顔を紅潮させて、じっと私を見る千尋がいると、自然と気分も昂ぶって
来る。私の中で千尋が出たり入ったりして、いやらしい音を立てて、千尋がこん
な表情をしていて、そんな事実が、余計に。
「千尋…んっ、千尋っ好き…」
 何度もキスをして、言葉で、確かめ合う。いつの間にか、私も気持ち良くなっ
て、さっきよりも良くなって、頭の中が千尋だけで一杯になりそうだった。けど。
「…千佐子、ごめん、俺―――」
 不意に、布団に寝かせられる。ずるっ、ていう感じで、千尋のが抜かれる。あ
あ、そっか。千尋、もう…そう思ったら、私のお腹や胸に、千尋の…精液が降り
掛かった。
「っておい!?」
 ノリツッコミみたいなツッコミが入る。興味本位で、手で掬って、舐めてみた。
苦くて、変な味だった。美味しいとは思ってなかったけど。
「にがい…」
「…そりゃ、甘かったりしたら問題ですよ」
 そう言って、隅に置いてあった新品のティッシュの封を切って、身体を拭く。
「ここも、綺麗に…って、千佐子、まだ満足してないですよね?」
 …まぁ、そう言われると…うん。心情的には、満足してるけど。でも。
「でも…もう、今日は…あそこ、ジンジンするの…」
 ちょっと無理したってのもあるけど…だから、また入れられても、ちょっと困
る。今みたいに気持ち良くなるのに時間掛かっちゃうだろうし。
「そうですか、じゃあ、こうしましょう」
 そう言って、千尋は私の足を自分で広げると、顔を股間に埋めて―――
「ちょっ…えええっ!?」
506館もん。2 49/55 :05/03/03 18:18:31 ID:p16mlBhb
 舌で、私の…あそこ、舐めた。そりゃ、基本的に舌を使うと気持ちいいって、
言ってたけど…あったかい舌が、感じる部分を突付く。
「やっ…やだぁ…ん、千尋、やだ、そんな所…」
 わざと啜るような音を立てて、舐める。恥ずかしくて、そんな所、じろじろ見
られてると思うと、死にたくなる。
「やですか?じゃあ、こっちにしますか」
 つぷ、と、舌が中に入って来る。
「ひっ、ああああっ!?ちょっ…おっ、同じ、同じだからぁっ…!」
 中を、口の中みたいに舐められる。さっきの私みたいに、執拗に。唾液と同じ
で、舐めても舐めても、溢れて来る。
「いやぁあっ、駄目、だ、め…しちゃ、やぁ…っ」
 出来るだけ私の足を広げようとしてる。それも恥ずかしくて、私の下半身にむ
しゃぶりつくような格好の千尋の頭を追い遣ろうとするけど、力が入らない。次
第に、やめてとも言えずに、喘ぎ声しか出なくなって、されるがままとなった。
 …千尋の舌、気持ちいい。さっき、自分でしてたよりも、ずっと、ずっと。
「っうっ…ああっ…あ、う、あああっ!?ち…ひ…っ」
 びく、と、自分の中で、何かがこみ上げる。身体中がびくびくして、声もまと
もに出なくなる。
「あ…あ…ああっ!?」
 正直、心臓ヤバくなると思った。身体中が震えて、気持ち良くて、でも、それ
が終わった後、ちょっと心臓がどくんどくん高鳴って、びっくりした。あそこも
まだヒクヒクしてて、動けなくなってしまった。
 千尋は、そんな私を見て、満足そうな顔しやがって。私の横に寝転がって、一
緒に布団に包まる形となった。


507名無しさん@ピンキー:05/03/03 18:24:30 ID:ubct0tFZ
支援
508館もん。2 50/55 :05/03/03 18:26:32 ID:rj4lGq1a
「眠れませんか?」
 ドキドキしてたのが治まった頃、千尋は声を掛けて来た。
「…あんまり。やっぱり、こういう時って…ね」
 ひょ、っと簡単に復讐方法も思い付いたので、その事には触れず話す。
 千尋は微笑んで、ちゅ、とおでこにキスしてくれた。
「…お話、しましょうか」
 腕枕をしてくれて、ちょっと幸せ気分になってから、ふとそんな事を言った。
「うん、お話、して」
 少し、表情が寂し気だった。

「俺、幸せな家庭に引き取られた癖に、一時期グレていたんです」
 あー、そうなんだ…
 こうやって、黙ってた事、少しずつ吐き出して、私でガス抜きをしてくれると、
凄く嬉しい。
「何かが虚しくて、でも、どうする事も出来なくて、俺は家にも帰らず、ケンカ
と、バイトと、ボランティア活動に明け暮れていました」
 …えーと。
 最初はともかく、真ん中微妙で、最後は、完全にいい子じゃねぇか。
「でも、けして両親は俺を見捨てませんでした。そして、両親の説得もあって、
17の夏、俺はケンカもバイトもボランティア活動もやめました」
 いや、真ん中と最後はやめんでも…
「今、俺がこうしていられるのも、両親のおかげなんです。そして」
「……?」
 ちゅ、と私にキスをした。
「俺、もっと幸せになりたいです。もう、傷付くのを慰めるとか、そういうので
なくて。純粋に、貴方といたいです。そしたら、俺はそうなれます」
509館もん。2 51/55 :05/03/03 18:27:25 ID:rj4lGq1a
 笑顔で、のたまいやがった。うわ…どうしよう、また、心臓ドキドキして来た。
 千尋はわたわたしている私をじっと見て。
「…まぁ、これも嘘なんですけどね」
 と、これまた爽やかに言い放ちやがった。
「どこから!?」
 私は突っ込むが、千尋は何も言わなかった。まぁ、こいつって、そういえば最
初からそういう奴だったし…重い溜息をついて、眠る事にした。が。
「もうひとつ、嘘の話してもいいですか?」
「今度は最初から…?」
 なんか疲れたけど、やっぱり眠れそうも無いので、聞かされる羽目になった。
千尋は笑うと、また、話し出した。

「…俺、本当は鈴原先生とキャラ丸被りな性格なんですよ」
 あー…今度も、なんか納得する。ていうか、嘘か。
「それで?」
「それもその筈なんですよね。俺と鈴原先生は同じ日に、同じ父親で生まれた異
母兄弟なんですから」

 ―――え?
 質問するより早く、もう片方の手で千尋を私を抱き寄せる。
「おかしいんですよね。正直、藤乃原の家で出会うまで顔も知らなかったのに、
俺はそれまであの父親も、その息子も殺したい程、憎んでいたんです。関係無い
のに。きっとあの人は、同い年の腹違いの兄弟がいるなんて事も知らない筈なの
に、それすら腹立たしくて、憎くて憎くて、本当は、顔を合わせれば首を締めて
しまいそうで…だから、だから俺、自分を隠す為に、無理して誰にでも敬語使っ
て、本当の自分を隠して、自分を抑えてました」
510館もん。2 52/55 :05/03/03 18:28:09 ID:rj4lGq1a
 …千尋の胸の中で、今度こそ私は何も言えなかった。きっと、何を言っても正
解でもなく、望まれても無い言葉だと思ったから。
 代わりに、抱き締めた。強く強く、全てのものから守るみたいに。千尋も、私
を抱き締めた。

「―――でも、それももう終わりにします。俺には貴方がいますから」

 …嬉しかった。その言葉が。嘘の話で、つまらない話で、二度と思い出さない
でいいような話だったけど。
 私も、千尋がいるから。だから、強くなれる。きっと、幸せになれるから。

「あ、そうだ」
 急に、千尋が言う。話を逸らす為か、本当に思い出したかはわからないけど。
「今度から、イク時はちゃんとイクって言って下さいね」

 とりあえず、思い切り背中をつねってやった。物凄い勢いで謝られた。




 次の日、朝はおかゆを作って貰って、早い内に藤乃原の屋敷に―――今日から
の私の家に帰った。
 車をガレージに止めて、正面玄関から帰る。時間は指定していたから、なんと
玄関先に叔父さんも、浩司も誠司もいた。

「…ただいま」
511館もん。2 53/55 :05/03/03 18:29:29 ID:rj4lGq1a
「千佐子ちゃん…あの」
 叔父さんが、申し訳なさそうに私に近寄る。浩司も、誠司も、表情は暗い。
「いいんです。全部カタは付きました。これからは、脱走もしませんし、言われ
た通りにします」
 そう言ったのに、叔父さんの表情は暗い。
「…それは、自棄になっての言葉じゃないんだね?」
「はい。ならないでいいならなりませんけど」
 その言葉に、叔父さんは吹き出してしまう。まぁ、本気で言いましたが。
「すいません、勝手な真似をしました」
 私の後ろで、千尋が頭を下げる。安心してね。次期当主権限でクビにはしない
からねー。
「…そうだな、だが、千佐子を思っての事だったんだろう?」
 おお、寛大だ。やっぱアンタ当主になれよ。あ、そうだ、言わなきゃいけない
事、あったんだ。
「ねぇ、叔父さん。ひとつだけ、私が言う事聞く条件出してもいいですか?」
「なんだい?叔父さんと3泊4日でデ○ズニー○ーに行きたいのかい?」
「あ、それは半永久的にいいです。あの、婚約者いましたよね?私、あいつ嫌で
す。あいつと結婚しないでいいなら、という話です」
 その言葉(どっちかは知らないけど)で、う、と苦い顔をする叔父さん。でも、
悪い条件じゃあないしな。
「…まぁ、いいんじゃないですか?父さん…ここでごねて気が変わられてもアレ
ですし」
 ナイスアシスト誠司。お前、絶対私が当主になる事で将来苦労するの丸わかりなのに、いい子だ。
 はぁ、と溜息をついて、とりあえずはOKサインを出してくれた。
「しかし、悪知恵が付いたなぁ、お前」
512館もん。2 54/55 :05/03/03 18:30:23 ID:rj4lGq1a
 お、来たな浩司。その言葉を待っていた。私はなるべく天然を装って。
「まぁ、昨日布団の中で千尋が色々教えてくれたから」

 …その言葉で、確かにその場、周りにいた4人が凍り付くのを、私は見た。そ
して視線は一斉に千尋の元へ。私、千尋の前にいるから知らないけど、どんな顔
してるのかは想像付く。既成事実、先に言った方の勝ちだ。後から別の婚約者連
れて来られても困るから。

「ちっ…ちちちちちちち千佐子ちゃん、あの、あ、ふ、布団って、あの、え?ど
んな事を教えて…」
「えっとー、基本的には舌を使うと気持ちがいいとか、イク時はちゃんとイクっ
て言った方がいいとか…他にもいっぱい」
 あ、叔父さん死にそうな顔してる。浩司と誠司も、青い顔をしてこっちに向か
って…てか、千尋の方に向かって行った。

「…千尋ちゃんよ、その話、よぉぉぉぉおく、聞かせてくれね?」
「すいませんが、千佐子さん、伊藤をお借りしますね」
 両脇を2人に固められて、千尋は蒼褪めて声も出ない状態だ。そのまま連行さ
れる。頑張って言い訳してね、私達2人の幸せの為に。
 ばいばーい、と手を振っていると、叔父さんがやっと復活して、私の方を見て
いた。

「…どうしてそんな事に…」
「あ、いいんですいいんです。最近は女子高生でもばかすかやってる時代なんで
すし、合意の上です。まさか、当主になるのに、好きな人も選ばせてもらえない
っていうんですかぁ?」
513館もん。2 55/55 :05/03/03 18:32:25 ID:rj4lGq1a
 暗に、いざとなったらまたお母さんみたいに駆け落ちするぞ、という態度をす
る。まぁ、しないし、するつもりが無いから、先手取った訳だけどさ。あ、そう
だ。私はごそごそ紙袋の中から、人形を取り出し、叔父さんにわたす。
「…これは?」
「お母さんの形見です。先代の仏壇にでも供えて下さい」
 叔父さんは、暫く人形を見つめたまま、無言だった。一言『ありがとう』と言
って、内ポケットにしまう。いや、叔父さんにあげた訳じゃ無いんだけど。
 …しかし、大分意気消沈してるな。私は叔父さんの手を引っ張って、休憩所に
連れて行く。お茶を注いで、叔父さんに出した。大きな溜息。

「千佐子ちゃん、結婚前に叔父さんと軽井沢にでも旅行に行かない?叔父さん、
娘も欲しかったんだけどなー、もう誰かのものになっちゃうなんて…」
「いやー、相変わらずここの玄米茶は美味しいですねぇ」
 叔父さんの提案を無視して、クッキーの包みを破る。なんかまだ叔父さんぐち
ぐち言ってるけど、無視した。

 …さて、これからやらなきゃいけない事、がっつりあるだろう。まぁ、なんと
かなるな。皆がいてくれるんだし、何より千尋がいてくれる。それだけで、不安
は無くなる。アホみたいだけど、そういうもんだ。
 とりあえず、まずは…
「叔父さん、私、千尋の様子見てきますね」
 従兄弟達に、どんな折檻受けてるのかを考えると、えっらいワクワクして来た。
力の無いおじさんの『いってらっしゃい』を聞いて、私は歩き出した。
 
 …まぁ、これからおっかない舅が2人付くのは気が重いだろうけど、頑張れ千
尋。私のせいだけどね、まぁ、とにかく頑張ろうな。あと、ホントごめんな。


                                               終


514377:05/03/03 18:34:33 ID:rj4lGq1a
はい、こんな感じです。
次男コール完全無視ですいません。
あとやっぱり長過ぎでした。

またスレに合った話が出来たら、投下させて
いただきます。
515名無しさん@ピンキー:05/03/03 18:35:35 ID:uGgkeQ+4
リアル投下にお目にかかったのは初めてだ。
あとでゆっくり読ませてもらいます
516名無しさん@ピンキー:05/03/03 20:30:50 ID:gzGRq9SO
すごくよかったです。私的に鈴原と不二子の短編が読んでみたいな
517名無しさん@ピンキー:05/03/03 20:41:17 ID:cvBlqcmX
乙ですー。
ハッピーエンドもいいね。相手は意外だったけど。
伊藤は萌えキャラだなぁ。段々必死になっていくところとか。

鈴原は知ってるのかどうかとか次男の気持ちはどうなるんだとか
寛治は形見の品を受け取れて正気に戻ったのかどうかとか、
気になるところがいっぱい残った。そういうの別ルートでまた読みたいな。
518名無しさん@ピンキー:05/03/04 17:22:16 ID:YCHaevOc
次男コールした人間でしたけど好きですこれー
あんま長すぎって感じはしなかったですよ。
逆によく内面も描けてて楽しめました。
「かまぼこに切れ目を入れて、無理矢理キュウリ」
には激しく共感しました。
519名無しさん@ピンキー:05/03/05 02:01:02 ID:dlLT3GCn
たーのしかったですよ。
次男でも次作でも、お待ちしてます。
520名無しさん@ピンキー:05/03/10 16:19:41 ID:50RCrM5T
面白かったです!
途中ドキドキしましたが、ちゃんとハッピーエンドでよかった。
伊藤のキャラ好きだ・・・!!
521名無しさん@ピンキー:05/03/12 00:24:11 ID:vFgi0SC5
一周目みたいな結末にならんでよかったW
寛治と普通に幸せにはなれないのかな?

次も期待。後他の書き手さんも待ってます。
522名無しさん@ピンキー:05/03/12 00:31:29 ID:SPpaU0Tu
寛治と幸せになっちゃまずいでしょ。血は繋がってないけど。

377さんの作品はおもしろくてもうほぼファンなんだけど、
主人公があまり変わらないのだけが気になる。
基本的にさくらさんとあんまり変わらないよね。いや、それで十分面白いんだけど。
教師編みたいな、ちょっと変わった作風のも読みたいな。
523名無しさん@ピンキー:05/03/17 21:00:41 ID:eqp6wmdT
おもしろいなー。
色んなエンドが読んでみたい。
職人様、お時間あるときにお願いします
524名無しさん@ピンキー:05/03/18 14:35:28 ID:6OOQ67l+
自分新参者なんだが、前のほうのスレにでてきた火曜日の恋人に禿げ萌えした(?・∀?・)
同人誌買いたい!
525名無しさん@ピンキー:2005/03/21(月) 20:09:14 ID:RL7pU42c
age
526377:2005/03/23(水) 15:25:48 ID:qki6P1qa
次、投下します。
また長いですが、よろしくお願いします。
527377:2005/03/23(水) 15:26:39 ID:qki6P1qa
すいません、途中で送信しました。
3週目、1周目の19からの分岐です。
528館もん。3 1/60 :2005/03/23(水) 15:31:57 ID:qki6P1qa

 私、今までお父さんと一緒に生きてて幸せだった。
 だから、一刻も早く帰ろうとした。だって私の大好きなお父さんが、私が突然
いなくなって、悲しんでいない筈が無いって。
 けど、それは単なる私の願望だった。はっきりと、お父さんはいらないって言
った。私より、どっかの女を選んだ。
 私の事なんか、いらなかった。私、何の為に頑張ってたんだろう。こんな事な
ら、3階から落ちなきゃ良かった。知らないまま、諦めてれば良かったのに…



「千佐子さん…」
「……」
 私は、杖を使って立ち上がる。
「どこへ行くんですか」
「…どこでも、いい…帰る所なんか無いけど、でも、ここも嫌だ…」
 私の家は、無くなってしまった。あの家には、もう帰れなくなってしまった。
馬鹿みたいにまた涙が流れる。誠司を睨み付ける。きっと、今の私はとんでもな
くひっどい顔をしてるんだろうな。
「ちょっ…馬鹿ですか貴方、第一、そんな身体で…」
「そりゃ馬鹿だよ、今までずっと騙されてたんだからな。お前だって、ホントは
裏で笑ってたんだろ、自分を売ったクソ親父をまだ信じてやがんのって…」
 誠司が、あからさまに傷付いた顔をする。そうだろう、だってこいつホントは
いい奴だもん。わかってて、私は傷付けてる。自分を含めて、周りを全部滅茶苦
茶にしたくなってる。

529館もん。3 2/60 :2005/03/23(水) 15:32:39 ID:qki6P1qa
 たかだか600万?フィリッピンパブ?邪魔?ふざけんな。
「放せ…放せよ!お前なんか大嫌いだ!!うぜぇ!!どっかいけよ!!」
 暴れる私の腕を掴んで、誠司はなんとか抑えようとする。けど、本気出してキ
○ガイみたいに暴れる私に難儀している。
「っ…嫌いで、結構です!」
 ぎりり、と歯を食い縛って私をなんとか無傷で押さえようとする。さっき勢い
で舌噛ませた事気にしてんのかいな。
「っ―――!!」
 不意に、足を引っ掛けられる。バランス崩して、床に背中をしこたま打ってし
まった。痛い。その私の上に誠司が乗っかる。
「重いわ!どけよ!大体、そんなクソみたいな遺言なんぞに今時従うなよ!!」
「っ、僕だって、そんなものに従うのなんか、嫌に決まってます!!」
 ほらな、こいつだって、本心じゃ私の事邪魔だと思ってたんだ。いや、最初か
らわかってたけど。

 きっと、叔父さんだって、浩司だって、眼の前のこいつだって、本当は、私な
んかいらなくて、でも、従わなくちゃいけないから仕方なくやってるだけなんだ。
「…どけよ」
 力が、入らない。元々怪我してるのに、無茶ばっかしてたから、そのツケが回
って来た。身体中が痛くて、全てのやる気が削がれて行くようだ。誠司はおっか
ない顔のまま私を見下ろしている。
 …怖い。それでなくたって、そんなに男の人に免疫ある訳じゃないのに。痛い
のと、悲しいのと、怖いのと、全部ぐちゃぐちゃになって、また涙が出て来る。
「貴方が逃げないと―――無茶をせず、安静にしてくれると約束するなら」
 怖い顔のまま、声だけ優しくなった。優しいってより、押し殺してるようにも
聞こえるけど。きっと後者だろう。
530館もん。3 3/60 :2005/03/23(水) 15:33:22 ID:qki6P1qa
「…やだ。もうここにはいたくない。お前だって、さっき嫌だって、遺言に従う
のなんか嫌だって言っただろ。望み通りにしてやるから、放せよ」
 馬鹿みたい。声、震えて、泣いて。情けなくなって来る。自分がこれ以上傷付
くのが嫌で、怖くて、誠司の事、傷付けて。
「…別に、貴方に出て行って欲しいなんて、一言も言っていないでしょう」
 呆れたように、呟く。私の涙を指で拭うと、抱き起こして、じっと私を見て、
言った。
「貴方は、言葉をそのまま受け取るようですから、言わせて貰います」
 私が逃げないように、肩を掴んで、真剣この上ない表情で、誠司は。

「僕は、貴方がこの家で暮らす事を、望んでいます。そして、貴方の助けになり
たいんです」
「嘘だぁ!!」
 …つい、物凄い反射速度で返してしまった。けど、本当だった。よくよく考え
て、こいつが優しいのはわかってるけど、でも、それは、嘘だと思う。だって、
そんな筈無いから。遺言に従うの嫌で、なのに、助けになりたいって、意味わか
んない。
「嘘では、ないですよ。どうして貴方はそんなに疑い深いんですか。昔からそう
でしたっけ?」
 こめかみを押さえつつ、溜息をつく。そんな事は…無かった気がする。第一、
私、こんなに怒りっぽかったか?
「…そんなん、お前に関係無いだろ!いいから、もうどっか行きたいんだよ、1
人にさせてくれよ!!」
「……」
 本当に平行線だよ…わかってる。本当にこいつは心配してるってのはわかる。
けど、心配してる奴等全員、原因じゃねぇかよ。
531館もん。3 4/60 :2005/03/23(水) 15:34:04 ID:qki6P1qa
 誠司は、うつむいたまま溜息をつく。そして、何かを決心したかのように顔を
上げる。
「…どこかへ、行きたいんですね?」
 その表情は、どこか悲しそうで。私は突然の物言いに驚いて、頷いてしまった。
「1人になりたいんですね?」
 また、頷く。誠司は、何を考えているんだろう?意図がわからずに、ただ私は
頷いている。
「…僕の顔なんか、見たくないと…そういう事なんですね?」
「―――え」 
 最後の質問は、どうしてだろう、誠司が泣きそうに見えた。まぁ、それは一瞬
の事だったから見間違いかもしれないけど。ていうかそうだろうなぁ。
「ん…今は、ちょっと、見たくは…うん、ない」
 聞いてるんだから、こちらも正直に言わせて貰う。誠司は、茶箪笥の方へ向か
うと、小さい箱から何かを取り出し、ポケットに突っ込む。そして。
「行きましょうか」
 そう言うと、私の手を引く。杖を使ってよちよち歩こうとすると、誠司が。
「…遅」
 と、嫌味ったらしく呟く。へーへー、自業自得ですよ。ていうか痛いよ。
 はっきり言ってしまったのが悪かったのか、誠司は足早にドアまで向かって私
を待つ。ていうか。
「どこへ行くんだよ…」
「貴方の望み通りの所ですよ。そんなに1人でどこかへ行きたいなら行けばいい
じゃないですか」
 そう言うと、ドアを開ける。私も続く。出ると、誠司は鍵を掛けた。几帳面や
なぁ。

532館もん。3 5/60 :2005/03/23(水) 15:34:48 ID:qki6P1qa
「…ていうか、いいのか?」
 休み休み、歩きながらふと疑問に思った事を告げる。
「いいんですよ」
 冷たくつーんと、素っ気無く誠司は答える。あーあ、初めて会った時くらいに
戻ったな。一階の人通りの無い、客間も何も無い、ただの行き止まりに到着する
と、誠司は辺りを見回して、大分低い位置の壁を押す。壁がへこんで、なんかス
イッチみたいの出て来た。
「…うわ」
「黙ってて下さい」
 不機嫌そうに呟く。パスワードかなんかを打ち込むと、壁が開いた。誠司は私
を押し込むと、自分もすぐに入って、壁を閉めた。真っ暗。
「パスワード何?8823?スハダクラブ?」
 私の言葉は完全に無視して、いつの間に持参していたのか、懐中電灯を点ける。
狭い壁の中は階段で、そこを下りて行くと…


「ここから、外に出れます。それから先はお好きなように」
 襖四枚くらいの板があって、一番右端に鍵付きのちっちゃい扉がある。それを
開くと、また鉄格子があって、入る所の鍵を開け、手招きした。
「…ほら、早くしないとバレる可能性がありますから」
 些か乱暴に私の手を引くと、どん、と私を突き飛ばした。そして。
「―――え!?」
 誠司はがしゃん、と乱暴に鉄格子を閉める。そして扉も。懐中電灯の光も無く
なって、真っ暗になる。そして、私はやっと気付く。ここは―――

「せっ…誠司っっ!!」
533館もん。3 6/60 :2005/03/23(水) 15:35:31 ID:qki6P1qa
「はい、なんですか」
 木の扉はフェイクだったのか、本当に襖みたいに横開きに開いた。どうやら、
板の後ろは全て鉄格子だったみたいだ。そうだ、ここ、多分そうだ。
「お前、外だって言って…ここのどこが外だ!!地下牢だろ、ここ!!」
 動く筈の無い鉄格子を握り締め、動かそうとする。誠司は涼しい顔で私に懐中
電灯の光を照らす。
「…そんな事より、暗いですよね。千佐子さんの近くにスイッチありますから、
電気点けて貰えます?」
 涼しげな声が本気でむかつく。だまされた。だまされてしまった。でも、確か
に暗いのでとりあえず電気は点ける。ぱっ、と明るくなり、地下牢の全貌が明ら
かになる。しかしまぁ。
「ていうか、これ、本当に牢屋か…?」
 鉄格子の中は8畳の畳張りで、私が元住んでたアパートの部屋よりも上等だ。
布団も置いてあって、奥には…おい、テレビあるじゃねぇかよ。あーあー、水道
もある。
「トイレ、奥の扉がそうですから」
 そう言いながら、誠司はまた扉を閉めようとする。密室の上にまた密室にする
気かよ。
「ちょっ…まっ、待て、お前…」
 あの、悪いけどここ、怖い。すっげぇ怖い。
「…まぁ、外だと嘘をついたのは謝りますけど、でも貴方の願いは8割方叶って
いるんじゃないですか?1人になりたい、どこかに行きたい、僕の顔を見ないで
済む」
 ふふん、と意地悪く微笑む。こいつ、本気で根性悪だよ!!いや、そうでもな
いと思うけど、そうだよ!!ああああああ、本気でむかつくけどでも怖い!!
「それでは、良いお年を」
534館もん。3 7/60 :2005/03/23(水) 15:36:13 ID:qki6P1qa
 おと…
「っ、今、何月だと思ってやがる!!」
「さぁ」
 そう言うと、ぴしゃ、と閉めてしまった。そして外からがちゃこがちゃこと音
がする。鉄格子の中から開けさせないつもりか。

『それでは、安静にしていて下さいね』
 そう言うと、誠司は言ってしまった。地下室だからか、誠司が歩いて行く音が
響く。そして―――


 本当に、ひとりぼっちにされてしまった。
 しーんとした牢屋と言う名の大分上等なお部屋の中で、私はとりあえず出口な
んかあったりしないかなー、と思いながら辺りを見回す。いや、100%無いの
わかってるんだけどね。一応ね、一応。
「…てか」
 とさ、と私は畳の上に崩れ落ちる。もう、実は限界だった。身体中が痛いし、
それとは別に、なんだか心臓が痛かった。きっと、まだショックから立ち直れて
いないんだろう。誠司とのいざこざでワンクッション置けたけど、意外に傷は深
いみたいだ。
 季節柄、ストーブが欲しい所だけど牢屋だけにそんなもんは無い。布団にテレ
ビにトイレに水道にあるだけ贅沢な方だ。むしろ、住みたい。今の心境に、この
部屋はぴったりかもしれない。薄暗くて、広いのに息が詰まりそうな感じ。

「……」
 畳に、涙が落ちた。
535館もん。3 8/60 :2005/03/23(水) 15:36:55 ID:qki6P1qa
 もう、帰る場所が無いんだな、と思うと、改めて悲しくなって来た。
 仕方が無く、という事で手放したならまだわかる。けど、いらないって。私は、
邪魔な存在なんだって、そう思い知らされると、辛い。
 ぎゅう、と自分の身体を自分で抱き締める。誰かに守って欲しい訳でも無いけ
どさ、自分しかいないってのも…寂しい。畳に涙が染みて行く。心に何か真っ黒
いものが染みてくみたいに。

 …寂しい。哀しい。後…怖い。
 寒いけど、布団を敷く体力も気力も無い。落ちて破れたままの服だから、寒さ
もひとしお。でも、このまま凍死したら楽になれるかな、と思った。
 死んだら、お母さんに会えるかな。天国と地獄だったら、私どっちかな。8割
方地獄かな。性格悪いし、親不孝だったんだし。そういえば、親より先に死ぬと
賽の河原で石積みしなきゃいけないんだっけ?あれ?年齢制限あるかな?

 ―――おかしいの。
 こんなに泣いてるのに、頭の中では馬鹿な事を考えている。それが現実逃避だ
と気付いた瞬間、なんとなく哀しみが2割増しになったような気がした。
 まぁ、確かに逃げたいよ。ここからも、現実からも。私の居場所なんてどこに
も無いんだから。
「…さみしい」
 わざわざ、わかりきっている事を呟いた。言っただけ、余計寂しくなるのに。
涙は、まだ流れたまま。
 お母さん…お父さん。会いたい。会って、抱き締めて、慰めて欲しい。ずっと
一緒にいたい。叶う筈の無い夢を、見てしまう。実現する事は絶対に無いという
のに。
 そんなの、夢でしかないのに―――
536館もん。3 9/60 :2005/03/23(水) 15:37:46 ID:qki6P1qa

 …夢?
「夢…か…」
 夢は、どんなに願ったって夢でしかない。でも、見る事は出来る。眠ってしま
えば。ずっとずっと眠ってれば、夢を見続ける事は、出来る。
「…見たいな、夢…」
 呟く。これは、実現可能な事かもしれない。何も出来ない私の、唯一出来る事。
 会いたい。私の事、ずっと愛していて欲しい。そう願って、私は眼を閉じた。
元々色んな物が限界だったから、眼さえ閉じてしまえばすぐに眠る事は出来た。

 ―――おやすみ。お母さん、お父さん。




『許さない』
 ―――は?
 突然そんな事を言われて、私は正にそう呟くしか無かった。ここはどこだろう
か。見覚えはあるけど、全然思い出せない。眼の前の人にも、見覚えはあるよう
な気もするけど…でも、やっぱり思い出せない。
『―――私の一番大切なあの子に―――慎吾に手を出させたら、許さない』
 やっぱり、意味はわからない。誰だ?誰の事だ?少し虚ろな瞳で、私を見下ろ
す。大きな、大人の男の人。けど、ちょっと大き過ぎる。
 …ああ、そうか。男の人が大き過ぎるんでなくて、私が小さいのか。
『葵には気を付けなさい』
 だから、誰よ葵って―――あれ?これも、どこかで聞いたような。
537館もん。3 10/60 :2005/03/23(水) 15:38:28 ID:qki6P1qa

 違う。
 私が望んだのはこんな夢じゃない。イイ年した大人に脅されるなんて、嫌だ。
 どうして、夢の中でくらい幸せにしてくれないんだ。会いたいのに。お父さん
とお母さんに会いたいのに。お父さん。お母さん…



「っ…」
 目覚めると、なんか違った。さっきと違う。あったかい。あ、そっか布団で寝
てるんだ。なんでだろう、やっぱり夢の続きなんだろうか?
「…お父さん?」
 今までの事、実は全部夢だったのかな。実はお母さんが死んだのも夢だったり
して。それにしちゃあ長いような気もするけど、でも昔中学高校合わせて26巻
くらい続いたのに最終話で夢オチだったみたいな漫画あったなー…最近また中学
から始まって…
「お父さん…」
 ぼやけた頭と、霞む視界。自分の部屋よりも若干広いような気がするけど、気
のせいかな。お父さんは振り向く。どこかへ行くのかな。仕事かな…
「…行かないで」
 手を伸ばす。今行かれたら、何故かもう、永遠に会えなくなるような気がした。
そんなの嫌で、哀しくて、起き上がろうと思ったのに起きれなくて、だから、必
死に手を伸ばした。

「行かないで…1人にしないで」
 声は、震えていた。性懲りも無く、涙が流れた。
538館もん。3 11/60 :2005/03/23(水) 15:40:03 ID:qki6P1qa
「…お父さん」
 きゅっ、と私の手を握ってくれた。安心して、また泣いてしまった。もう片方
の手で、お父さんは私の頭を撫でてくれた。
「おと…さん」
 少し、不思議。略してSF。なんか、すっと心が軽くなったような気がした。
「まだ夜中ですから、寝ていて下さい」
「…うん」
 そっと、お父さんが頬を撫でた。その手に触れる。もう片方の手も頬を撫でて、
どっちかというと顔を優しく掴むような形になる。

「―――おやすみなさい、千佐子さん」
 そう言うと、唇に何か、触れた。あったかくて、柔らかい…あ、そっか。キス
されてるのか…お父さんの挨拶はいつからアメリカ式になったんだろう?
 少々の疑問も抱きつつ、安心しながらまた寝てしまった。
 わかってるんだ、本当は。

 ―――これは、幸せな夢って事くらい。




「おはようございます」
「…痛い」
 誠司に叩き起こされる。いい夢見てたのに…てか、布団で寝てる。という事は、
昨日、誠司がわざわざ来てくれたって事だろうか…だとしたら、なんか、その事
について大変な事があったような気がするけど…なんだっけ。
539館もん。3 12/60 :2005/03/23(水) 15:41:00 ID:qki6P1qa
「ほら、救急箱持って来てあげましたから…後、はい。早く用意して下さい」
 誠司は不機嫌なまま、私にヤカンとタオルの入った洗面器と…うわ、なんかこ
いつ持って来たと考えるとやだなぁ…今日も寝てろって意味か?パジャマと新し
い下着を渡された。
 …ちょっと嬉しいな。お風呂入りたいけどまだちょっと痛いし…
「悪いね。じゃ、ちゃっちゃと済ませるから」
 そう言うと、誠司は牢屋を出て行った。お湯を洗面器に入れて、水道水でぬる
くして…
『まだですか?』
「早いわ!!」
 あまりに急かす誠司に舌打ちしながら、身体を拭く。着てた服とスカートの間
に下着類を挟んでパジャマに着替える。
「終わったぞー!」
「…そんな大きい声出されても困ります」
 と、嫌味混じりに入って来た。そして。
「じゃ、僕も暇じゃないですからちゃっちゃと済ませます」
 そう言うと、救急箱を開いて、せっかく着たパジャマのボタンを―――
「……」
「……」
 誠司がぴた、と止まってしまった。ついでに、私も。昨日半裸見られてるのも
あって、後、起き抜けってのもあって、まぁ、つまりなんのこっちゃというと。
「―――っ!!」
 慌てて誠司から身体ごと顔を背ける。
 そうです。ブラするの、完全に忘れていました。持って来て無かったってのも
あるんですが。

540館もん。3 13/60 :2005/03/23(水) 15:41:42 ID:qki6P1qa
 とりあえず、昨日の着けてたブラを付けてから、治療再開。
『……………………』
 お互い無言で、湿布張り替えて貰ったり包帯巻いてもらったりしていた。
 恥ずかしい。恥ずかしい恥ずかしい。私の馬鹿。視界が霞んで来る。あああ、
泣きそうだ。
「…終わりました」
 その言葉を聞いて、私は会釈だけして後ろを向いてしまう。それからやっと。
「ご、ご苦労様です」
 と、少し見当違いな事を言ってしまう。誠司は救急箱の蓋をぱとす、と下ろし
て立ち上がる。
「すいません」
 と、何故か誠司が謝る。いやいやいや、これは悪いの、私だろ?
「い、いや、あの、あ、こっちこそ、ごめん、変なもん見せて」
 乳、人に晒すの初めてだ。自分の身体に自信ある訳じゃないし、胸、不二子ち
ゃんより大きいのは確定事項だけど日本人で言うと標準?くらいだ。女の身体は
25歳くらいまで成長するって聞いた事あるけど、お母さんのおっぱい思い出し
て、それは諦めた。
「…別に、変なものでもないでしょう」
 半分呆れ気味に言う。後ろ向いてるから表情はわからないけど、予想はなんと
なく出来る。
「そう…?ほら、あの、大してでかくもないし…」
 …なにを言ってるんだ私も。あああああ、もうやだ。ここから別の意味で逃げ
出したい。ゆっさゆっさ頭を振ると、誠司がぽむす、と肩を叩いた。思わず振り
向いてしまう。
「あ、あのー、その、えと、あ、僕は小さいほうが個人的には…」
 フォローなんだかどうだかわからない発言を。しかし誠司相手だとレアだ。
541館もん。3 14/60 :2005/03/23(水) 15:42:24 ID:qki6P1qa
「…なんだよ、誠司、ロリコン?」
「違います!」
 それは、一応即答するんだな…
「ロリコンじゃあ、ないです。僕はどちらかというと年上の方が…」
 聞いてもないのに、誠司はべらべら喋る。大分どうでもいい話だ。
「そっか、下は39から上は98までか」
「なんでそうなるんですか!ていうか、そこまで行ったら100までにして下さ
いよなんだかモヤモヤします!!」
 なんでそんな怒るかね…こいつ、店先で掛かってる額縁、ちょっとズレてたら
直すタイプだな。
「なんだよ、そんな怒るなよ…」
「別に、怒っていません。ただ、僕はそんなに守備範囲広くありませんから」
 ぷーい、と今度は誠司がそっぽを向いてしまう。愛い奴だな。
「ふーん、じゃあどんくらい?絶対ひとつ上じゃなきゃ嫌だとか?」
 わかってて、からかう。守備範囲厳し過ぎだっつに。誠司が怒るのを待ってい
ると…ん?いつまでも、怒らない。流石に完全に呆れられたか?でも、誠司って
そこまで冷静じゃない気がするんだけど…
「怒った?」
 あっち向いたままの誠司の顔を覗き込む。が、また逸らされる。
「…誠司、ごめん、ごめんってばぁーあー」
 ちくしょう、まだ身体痛いのに動かさせるな。
「ですから、別に怒っていませんっ」
 ヤカンに洗面器に着替えに一気に持って、牢屋を出ようとする。
『…朝食、机の上に置きましたから』
 出て、鍵を掛けてから、誠司が言った。なるほど、確かに。
『それでは』
542館もん。3 15/60 :2005/03/23(水) 15:43:10 ID:qki6P1qa
 冷たい声で言うと、誠司は行ってしまった。
 昨日から何も食べていないから、すぐさま机に向かう。むほほー、むほほー、
もひとつおまけにむほほー。ミルクのリゾットだ。うまそー。
「いっただっきまーす」
 早速、ひと口。うめぇー。超うめぇ。伊藤バンザーイ。
 ほくほく顔で朝食を楽しんでいると…誰かが、またやって来た。誰だろう?
「…食欲旺盛ですね」
 嫌味を言いながらやって来たのは、またもや誠司。しかも、なんかカバン持っ
て来てる。どういう事だ。
「まぁ、食べていて下さい」
 そう言うと、私の布団の近くに座って、カバンから文庫本を何冊か取り出した。
「…なに?暇つぶし?」
「ええ、そうですよ、僕の」
 そう言うと、私なんかそこにいないみたいな感じで本を読み出した。は?
「ちょ…なんで?なんでお前いようとしてるの?」
「いて悪いですか」
「いや、だって昨日8割方理想通りとか…」
 どっか行く、1人になる、誠司の顔を見ない…自分で言っておいてよお。

「…貴方を1人にしたくないんです」
「なんでよ、どういう意味」
 もぐもぐ、とそれでもリゾットを食べ続ける。
「別に、他意はありません」
 本から視線を外さずに冷たく言い放つ。別に、いらんけどなぁ。
「…そ。私、食べたらすぐ寝るけど」
「寝てもいいですよ。今日は僕も暇ですからずっとここにいます」
543館もん。3 16/60 :2005/03/23(水) 15:43:52 ID:qki6P1qa
 ふーん、ご苦労なこって…って。
「はぁ!?」
「…大きな声を出さないで下さい」
「だっ…な、なんで!?悪いけど、お前それは一日完全に無駄にするって事だ
ぞ!?」
 自分で言って悲しいけど、本当なんだから仕方が無い。こいつだってそう暇じ
ゃない筈だ。それなのに、なんで?
「別に、無駄じゃありませんよ。僕がそうしたいから、いいんです」
「い、いやいやいや、余計わかんないって、なんで?誠司、なんで…」
「ですから、貴方を1人にしたくないんですよっ」
 ふん、とまたそっぽ向く。
 …昨日今日で、とりあえず、納得はしてないけど心の整理は出来た。でもって、
こいつは一応味方で、いい奴なんだ。きっとこの先お飾りだろうが当主になれば
世話になるんだろうし。

 …ぶっちゃけ、すっげぇ気ぃ使われてるんだなー…
 泣いちゃったし、おもいっきり親に捨てられた訳だし、怪我もしたし。私は誠
司に背を向けてしまう。

「別に私、子供じゃないからいいよ、そんなん」
「…昔よりも子供っぽくなりましたけどね」
 ぺら、とページを捲りつつ呟く。なんだと、この野郎。
「お前、なんだよその言いぐ…」
 …今、なんか聞き逃せない事を聞いてしまったような気がする。振り向くと、
いつの間にか誠司はこっちをじっと見ていた。
「…昔…?」
544館もん。3 17/60 :2005/03/23(水) 15:44:36 ID:qki6P1qa
 どういう事?私は完全に誠司を不審者を見るような眼で見てしまった。
「はい、昔よりもです」

「嘘、まさか、お前らそんな昔から…!?」
「なんでそういう見方をするんですか…違います。あのですね、僕と母は、一度
だけですが、とある人にこっそり貴方の家に連れて行って貰った事があるんです」
 は!?嘘、覚え無いぞ!?…ああ、会ってないのか?
 いきなりのカミングアウトでびっくりしながら、誠司を凝視する。が、誠司は
自嘲的に笑って。

「僕、貴方と会ってるんですよ。母さん達が話をしている間、相手してくれて」
 はぁあ、とこめかみを押さえてぼやく。すいません、完全に覚えていません。
どんなに考えても、私の記憶の中に誠司の存在はありません。ていうか。
「浩司はその時何してたの?もう身体弱かったの?」
 ちょっと、気になったので質問。が、誠司は『うわぁ』って顔をした。そして
がっくり肩を落とす。
「…兄さんは、当時は身体は丈夫だったんですよ。でも、ちょうどその前日に3
階のトイレの窓から落ちて、無傷でしたが大事を取って寝ていて貰ったんです」
 どこかで聞いたような、そしてさらりと凄い事を聞いた。
「そう、そうなんだ…へぇ〜」
 とりあえず、そうとしか言えないよ。だって、誠司の事、本当に覚えてないか
ら。あー、あーあ、誠司、なんか落ち込んじゃった。
「…そ、その時、あー、どんな事したの?」
「アパートの近くの公園で、遊んでもらいました」
 完全に投げ遣り調で話す。あーあ、あーあ、今度こそ私、悪い事してもうた。
で、でも、なんで誠司が落ち込む必要あるんだ?
545館もん。3 18/60 :2005/03/23(水) 15:45:19 ID:qki6P1qa
「僕は5歳で貴方は6歳で、貴方は歳の割に大人びていて、僕の面倒を見てくれ
て、あの、僕、貴方にもう一度会えるって、楽しみにしていたんですよ」
 うわぁー…がっかりしただろうねぇ、覚えていないってのはまぁ、ちっさかっ
たからともかく…あーあ、憧れのお姉さんと十数年ぶりの対面が、実の兄を殴り
倒した瞬間だからなぁ。夢、壊してもうたな。

「がっっっっっっかりしたろ」
「…ええ」
 憧れのお姉さんは、泣く、叫ぶ、暴れる、拗ねる、暴食、落ちるとやりたい放
題。ドリームってもんは、見た時間が長いだけ現実見るとキツイからな。
「でもですね…」
「ん?」
 誠司は、笑う。少し、どきっとするような、笑顔。
「今は今で、貴方が好きですよ」
「嘘だぁ!!」
 …またもや、即答。いや、だって、こればっかりはちょっと…あの、人を地下
牢ブチ込んでおいてアンタ、ちょっと…あ、でも誠司が落ち込んでる。

「…やっぱり、言わなきゃ良かった…」
 はぁ、とふっかい溜息。あーあ、そりゃそうだろうな。悪いけど、誠司の事い
い奴だとは思うけど、一度も恋愛対象として見た事は無いからさ。
「ていうか、なんでよ。お前、どこ見て好きと言えるんだ?ただ単に昔の私を美
化し過ぎて、ギャップあり過ぎておかしくなったんじゃないの?」

「…そりゃ、貴方と再会して、失望する事だらけでしたよ。こんな酷い女性、見
た事ありませんからね」
546館もん。3 19/60 :2005/03/23(水) 15:46:01 ID:qki6P1qa
 おうおうおう、好きだと言った割にひっでぇなぁ。やっぱ気の迷いじゃねぇか。
「…でも」
 でも?なんだ?これ以上何を言いたいんだ?

「貴方がそういう行動を取る原因は、僕達にあったんですよね」
 まぁ、確かにそうだけど…しかし、思えば色々やったなぁ…ちょっと遠い眼に
なっちゃうよ。
「…まぁ、でも…なんかもうどーでも良くなって来たわ。もう当主でもなんでも
なったらぁ。あー、婚約者もいたな。明日にでも入籍するか」
 もう、投げ遣りだ。もう私に残された道なんぞ、それしかないんだ。いーよい
ーよ、栄華の限りを尽くしてやる。が。
「…貴方、本当にそれでいいんですか」
 誠司も、なんか私と同様疲れ切ったような顔をして言った。お前ももうどぉで
も良さそうだよな。
「いいよ、もうどうでも」
「…本当ですか?言っておきますけど、その婚約者の方と入籍するという事は、
子作りにも励むんですよ。貴方、好きでも無い人と出来るんですか?」
 っうっっっわ。
 そ、そうだ。確かにそうだ。誠司にしては下世話な話だけど、うわあああああ
ああああああああああ、嫌だ。顔も名前も覚えてないけど、嫌だ。
「それは…あの、凄く嫌だ…」
 正直に、前言撤回させていただきます。切り替えの早さに誠司に笑われた。で
もって。
「でも、回避する方法があるんですよ」
 ―――なんだろう。今の、全然覚えてない人間と云々よりも、物凄い笑顔にな
った誠司の方が4倍くらいおっかなかった。
547館もん。3 20/60 :2005/03/23(水) 15:46:45 ID:qki6P1qa



「―――という訳で、千佐子さんは僕と結婚します」
 開いた口が塞がらないって、こういう事を言うんだなー、と思った。実際口ぱ
っかー、開いたまんまだし。

「…は!?」
 大分遅れて、一先ず浩司がそう言った。だろうな、だろうな。私と誠司が結婚
するって、例えるならば…うーん、思い付かない。けど、とりあえずありえない
事だからなぁ。
 誠司は私を抱き寄せると、浩司はともかく叔父さんに向かって、聞く。
「…異論は、ありませんよね。知らない人と結婚させるより、僕と一緒になった
方が幸せになれますから」
 しかし、血が繋がっていないとはいえ、なんか誠司と叔父さんの間には何かが
あるような無いような…壁みたいなものがあるような気がするんだよなぁ。
「あ…ああ…うん、そ、そう…だよね」
 うっわ、叔父さんガタガタだ。ちら、と誠司を見ると…顔が怖い。もしかして、
嫌いなのかね、叔父さんの事。
 浩司も、叔父さんの方も気にしつつ、こっちを凝視してる。
「……」
 少し苦い顔をして、顎で部屋から出ろ、的仕草をする。誠司は素直に従って、
私を伴って浩司の部屋まで行く。戸を閉めて、浩司にしては珍しく鍵も掛けて、
そして、言った。

「…誠司、それは同情じゃないんだよな?」
548館もん。3 21/60 :2005/03/23(水) 15:47:43 ID:qki6P1qa
 普段の浩司からは、想像出来ないような―――今だったら、ちゃんと誠司の兄
に見えるような顔で、声で、そう言った。

「…はい。同情ではないです」
 誠司も、真剣そのものだった。次に浩司は私の方を向き。
「お前は、結婚したくないからって、誠司を利用してる訳じゃないんだよな?」
「いいえ、仰る通りです」
 あんまりにも真剣に言うもんだから、正直にぶっちゃけた。そして同時にこの
兄弟は崩れ落ちる。

「…ちょ、千佐子さん、それは言わないって…」
 完全に脱力し切って、誠司はぼやく。浩司は顔面からすっこけている。
「おっ…お前はああああああああああああああああああああああああっっ…」
 あーあ、そんな興奮しなさんなって。でも、仕方ないじゃん。
「だって、知らない奴と入籍するなんて死んでも嫌だもん。でも、誠司の事だっ
て好きな訳じゃないし…第一、持ち掛けたのは誠司なんだから…とりあえず」
 なんとなく。なんとなくだけど、嘘付いたらバレるような気がした。それでな
くても、私は嘘がすぐバレるタイプだ。だから、浩司も巻き込む形で、イチかバ
チかで言ってみた。

「…あのさ、お前こんなんに本気なのか…?」
 へなへなしながら、誠司に尋ねる。まぁ、そりゃそうだろうな。私だってまだ
疑ってるもん。
「ええ、こんなんがいいんです」
 うわぁ、誠司もこんなん扱いだ。私は苦笑しながら全然似てない兄弟を見た。
 ていうか、本当に誠司、こんなんでいいのか?
549館もん。3 22/60 :2005/03/23(水) 15:48:26 ID:qki6P1qa

「…別に、今は千佐子さんの望まない婚約を破棄出来れば良かったんですよ」
 じーーーーっと誠司をみつめる浩司に、言った。
「まぁ、こんな人を好きになってしまったのは、本当にもう仕方が無いんですけ
どね」
 行きましょうか、と誠司は私を手招きする。

「…がんばれよー」
 完全にやる気無さそーな声で、応援してくれた。誠司もやる気の無さそーなガ
ッツポーズで応えた。
 浩司の部屋を出ると、誠司は少し足早に自分の部屋らしき所へ向かう。が、私
はまだ杖つきだ。頑張って歩いていると、厄介な奴がやって来た。

「お、千佐子様。脱走失敗して誠司坊ちゃんにブチ込まれちゃったんだって?痛
くなかったですかい?」
「だから、お前はどうしてそんなに―――」

 ―――あ。
 ここで、私は何かが引っ掛かった。でも、何が引っ掛かったのか、わからない。

「?どうした?お前、そういえば杖も使ってるし…」
「…千佐子さん?」
 誠司も、近寄って来る。なんだっけ、えっと、なんか、鈴原が、どうしたんだ?
鈴原…
「……悪い、お前、えと、下の名前、どっち?」
 なんだか、支離滅裂な質問をしてしまう。
550館もん。3 23/60 :2005/03/23(水) 15:49:17 ID:qki6P1qa
「は?どっちって…まず何と何で?とりあえず、俺の名前は葵ちゃんだけど」
 
 ―――葵?
 そうだ。それだ。けど、なんで葵で引っ掛かったんだ?私は首を傾げる。
 眼の前には、心配そうな表情の誠司と、鈴原。
「大丈夫ですか?やっぱり、無理をさせてしまいましたか?」
 そう言うと、誠司は倒れそうな私を支えてくれる。
「なんだよ、お前具合悪いなら俺様に言っとけよ。ったく、信用ねぇなぁ」
 鈴原も、今ばかりは冗談も言わずに怒ってくれる。大丈夫だよ。鈴原に気を付
ける事なんか、何も無い。
 一瞬そう思って、またなんでそう思ってしまったのかわからず、またくらくら
して来る。あ、そうだ、どっちかって…
「2人共、『シンゴ』って名前に覚え、無い?」
 唐突にそんな事を聞いて、2人共訝しげな顔をする。
「…SM○P?」
「…警察無線?」
 完全に覚えは無いみたいだ。ていうか、その名前もどこから出て来たんだか。
頭がなんだかすっきりしない。
「まぁ、後で頭痛薬でももって来るわ。じゃ、俺は浩司坊ちゃんの所に行くから、
なんかあったら呼べよ」
 そう言って、鈴原は行ってしまった。誠司は私の肩を抱いて。
「話があったんですけど…戻りますか?部屋に」
 心配そうな顔をして、優しく言ってくれる。話?なんだろうか。私は首を横に
振って、誠司の部屋に付いて行った。


551館もん。3 24/60 :2005/03/23(水) 15:50:34 ID:qki6P1qa
「…さっき、どうしたんですか?」
 お茶を淹れながら、誠司は聞いて来た。
「わかんない…なんか、急に…なんでかな」
 理由が、本当にわからないだけあって…ちょっとおっかなくなって来た。私、
電波系だったんだろうか。やっぱり、まだ現実逃避なんだろうか。
「…やだな、なんか怖いわ。」
 昨日1人になった時みたいに、自分で自分の身体を抱き締める。寒気がする。
怖くて、俯いてしまう。馬鹿みたいに怖がってると、誠司が横に…それも、ほと
んどくっついてるくらいの位置に座って来た。
びっくりしたけど、それだけで、何かをして来るって訳じゃないんだけど…で
も、やっぱり隣に誰かいるっていうのは…ちょっと心強い。

「貴方は、1人じゃないんです。安心して下さい」
 …私の頭の中、見透かしたみたいに言う。それが少し嬉しくて、ちょっと…ど
ころか大分恥ずかしくて、少しだけ離れてしまう。
「…意識してくれるという事は少しは進歩したという事ですかね」
 誠司が、苦笑して言った。ぺち、と叩いてやった。あ、そうだそうだ。
「あのさ、話って、何」
 照れ隠しと、本当に疑問だったので聞いてみる。誠司もちょっと忘れていたみ
たいであ、という顔をする。そして、小さな声で、言った。

「…こういう事、言いたくないんですけどね」
 はあ、と溜息。どういう事?
「俄かには信じ難い話だと思います。出来れば、僕だって嘘だと笑い飛ばしたい
です。でも…笑わないと約束して下さい」
 ま、回りくどい…私はこの時点でうんざりしながら、約束はした。
552館もん。3 25/60 :2005/03/23(水) 15:51:18 ID:qki6P1qa
「…父さんは、貴方を姪ではなく女性として見ていると思います」
 ―――え?
 え?え?父さんって事は…あの、叔父さん…だよね?え?あの人?あの人が、
私を…ですか?
「まぁ、信じ難いでしょうね。こういう事は」
 うん、非常に信じ難いっす。馬鹿馬鹿しい話だ。けど、当の本人は大真面目。
なんだか否定するのがはばかられた。
「…気を悪くしないで下さいね。しかも、父さんは…貴方の母親を貴方に重ねて
見ているようなんです」
 誠司は、心底同情するような表情になり、そして、頭を抱える。こんな誠司を
見てしまうとその考えを笑い飛ばす事が出来なくなってしまう。
「知っての通り、あの人は僕たちの本当の父親ではありません。でも、母さんや
貴方の―――理佐子叔母さんとは旧知の仲で、父さんはずっと、理佐子叔母さん
を好きだったらしいと、聞いた事があるんです」
 …誰に?と聞こうとして、止めた。誠司の顔を見て、それは多分、誠司のお母
さんからだったんじゃないか、と思ったから。即ち、叔母さんも、お母さんを重
ねて見られていたんじゃないか、って。
 俄かには、信じ難い。だって、あの叔父さんが。あの、一見脳天気でずっと笑
っている、あの人が。

「あの人は、僕や兄さんを本当の子供のように可愛がってくれましたし、尊敬出
来る人だと、理屈ではわかっています。けれど、あの人は、母さんを悲しませて
いた。そう思うと…」
 はぁ、と深い溜息。
 基本、こいつって頭がいい。結構気の付くタイプだと思う。だから、余計な事
も色々考えてしまうと思う。
553館もん。3 26/60 :2005/03/23(水) 15:52:02 ID:qki6P1qa
 でも、子供って案外親の事わかるらしいからな。私はわかんなかったけどさ。
見てしまったんじゃないかなー、と。もしかして、叔母さんが泣いてるのとか。
早い話が、夫婦仲良くなかった、みたいな。再婚の割に。
「もしかして、父さんは貴方に手を出すかもしれない。そう思っているんです。
まぁ、とりあえず牽制球は投げましたけど」
 牽制…ああ、結婚云々か。
「手荒な真似はしないと思いますが、父さんには気を付けて欲しいんです。勿論、
僕が貴方を守ります。だから―――」
「うわっ…!?」
 凄く、必死だった。ううん、必死っていうより、あの、恐がって…?いるのか
な。私を抱き締めるってより、縋り付く、みたいな。
 
 …なんとなく、思い過ごしみたいなもんだと思うんだけどなぁ…だって、いく
らなんでも歳も大分違うし、誠司もちょっと過敏過ぎだと思う。けど。
「…千佐子…さん?」
 誠司の事、抱き締め返す。まぁ、勘違いするなよ?これはどっちかというと…
家族としての気持ちの方が強いからな。
「ほれ、お姉ちゃんが付いてるから、大丈夫だよ」
 誠司も、寂しいっていうか…1人が恐かった…ていうか、どう言えばいいんだ
ろう。寄り掛かれるものが、無かったんじゃないかな。
 父親も母親も亡くして、継父と上手く行かないで、たった一人の兄は病弱で逆
に自分が守ろうとでも思っているんだろう。その上また私って荷物まで守ろうと
しやがって。私より、年下のくせに。
「…千佐子さん…」
「お姉ちゃんとお呼び」
「あ、それは断ります。ていうか、さらっと恋愛対象から外させないで下さい」
554館もん。3 27/60 :2005/03/23(水) 15:52:52 ID:qki6P1qa
 割と、ちゃっかりしてやがる。こちらとしては出来の悪い姉のつもりだけど。
「わかったよ、叔父さんには気を付けるから。だから安心しろ」
 ぽふぽふと頭を撫で叩く。少し、不満そうな感じで頭を上げる。
「…ですから、弟扱いは困るんです」
 むっ、と割と歳相応の表情をする。あ、可愛い。いいなぁ、年下。誠司から離
れると、置いてあったお茶(玄米)を取って、誠司に渡す。私も、一服。んまい。

「…好きです」
 少し溜めて、誠司は言った。
「そ?なんか、改めて言われると照れるわ。私、そんな事言われるの、誠司が初
めてだから」
「もてそうにありませんしね」
 …その通りなんだけど、すっげぇむかつく。この野郎、仮にも婚約者になんて
事言いやがる。
「そぉですよぉおおおだ。誠司さんはさぞかしおモテになったんでしょうね」
「ええ、モテますよ。この顔と外面の良さですからね」
 い、言い切りやがった。うわああああああああああああ。私が口をぱくぱくさ
せながら誠司を見ると。
「ヤキモチですか?」
「ごめん、お前一回死んで?」
 イイ性格してやがる。まぁ、でも、元気になったんなら…いいか。


「…しかし、この部屋落ち着くなぁ」
 この館は洋風なのに、誠司の部屋は結構な和風テイストだ。惜しむらくは寝具
ベッドな所か。
555館もん。3 28/60 :2005/03/23(水) 15:53:35 ID:qki6P1qa
「いたいなら、いつでも…いつまでもいていいんですよ」
「あらら、それはどうも」
 こたつの上に突っ伏して軽く流す。
 なんだか、うやむやの内に和んでしまっている自分がいる。
「少しでも、落ち着ける場所が増えて行くといいですね」
「…まぁね。家、ここだもんね」
 色々、受け入れちゃったけどまぁ、3年もいりゃ住み慣れた我が家になるだろ。
「そうですね」
 みかんの薄皮をきっちり剥く誠司。私はそのまま食べる。
「父さんも兄さんも、意外にここに来る事多いんですよ。日本人だからですかね」
「…来るんだ」
 うわー、叔父さん浩司誠司の3人で団欒かいな。
「来ますよ。まぁ、楽しいといえば楽しいんですけど…2人共勝手に棚を開けた
り僕がいない間に入ってずっと寝てたり、日記とか見たりするのが…」
 …あ、だから戸締り万全なんだ。ちょっとおかしいや。
「本当の家族になれますよ、その内」
 誠司は笑って、そう言ってくれる。確かに、楽しいかもしれない。親1人子3
人。こたつを囲んで紅白とか…お母さんが死んじゃってから、あんまりそういう
事、してなかったからなぁ。
 …誠司の話が全部本当なら、ちょっとイヤな関係の家族だけど。
 いいのかもしれない。
「幸せに…なれるかな」
「なれますよ」
 あったかい部屋。みかん一杯食べて、お腹もいい感じ。なんだか眠くなって来
た。
「…誠司、私、ちょっと眠たい」
556館もん。3 29/60 :2005/03/23(水) 15:54:24 ID:qki6P1qa
 こたつを布団代わりに、寝転がる。
「…そうですね、僕も、少し」
 誠司も、同じように寝転がる。見えなくなった。けど、足が当たった。面白半
分に蹴ってやる。誠司が、やり返して来る。
「ふへっ」
 つい、笑ってしまう。本当の姉弟みたいな遣り取りをして、寝ちゃおうか、と
いう事になった時、邪魔が入った。ノックをする音。誠司が返事をして、鍵を開
ける。訪問者は…鈴原だった。

「よう、持って来たぞ頭痛薬。後、朗報だ」
「…朗報?」
 ずかずかやって来て、靴脱いで、堂々とこたつの中に入る。
「…おい」
「まぁ、聞いて下さいよ。俺なりに頑張ったんですから」 
 にこーーーー、と子供のような笑顔。みかんの皮を剥いて、3等分してから口
に放り込む。こいつも大雑把だな。
「なんですか?」
「ん?ああ、さっきのシンゴの件。なんとなく気になったから屋敷中の人間に聞
いてみたけど…一位がSMA○、二位が山城、三位が無線で次点で風見、実の祖
父。まぁ、普通に考えて俺等と同じ反応だわな。祖父って言ったのは最近就職し
たばっかの、酒屋の兄ちゃんだから一応除外な。でもって、その名前で過剰反応
したのが、2人いた」
 なんか、色んな意味でありがとう。私はその2人が気になって、身を乗り出す。
鈴原は真剣な眼差しで。
「1人は、いとっち…あ、コックの伊藤千尋。もう1人は不二子ちゃんだ」
 あらら、共通点無いなぁ。
557館もん。3 30/60 :2005/03/23(水) 15:55:07 ID:qki6P1qa
 が。
「2人共、聞いた途端に皿落として割ったり、いきなり殴ったりした」
「な―――!?」
 誠司が、驚く。聞けば、2人共穏やかで、割合冷静な人間だそうで。確かに、
聞いただけでそうなるとは…怪しい。
「な?おかしいだろ、2人共聞くと同時に後ろから抱き付いてほっぺにちゅーし
たくらいで…」
『それだーーーーーーーーーーーーーー!!!』
 真面目にアホな事を言い放つ鈴原に向かって、私も誠司も全力でみかんを投げ
る。ひとつは顔面クリティカルで眼鏡が吹っ飛んだ。
 因みにそれをやったのはその2人だけで、反省して後全部は普通に聞いたそう
だ。最初からそうしたれや。気の毒な2人だ。

 早々に鈴原を追い出し、なんだか体力を根こそぎ奪われたような気分になった。
 間も無くしてごはんの時間になって、食堂へ行くと、今日は浩司しかいなかっ
た。子供3人の食卓だ。今日のメインはロールキャベツだ。しかし、ロールキャ
ベツをナイフとフォークで食うってのは、なんか微妙だ。私が作る時はかんぴょ
う巻いてたけど、伊藤のはベーコンで巻いてある。
 …この家に住んでる限り、料理作る事ってもう無くなるのかな。


 考えながらも完食し、おなか一杯になって部屋に―――自分の部屋に戻る。
 途中、なんか憔悴しちゃった感じの叔父さんとすれ違った。気の無い挨拶され
ちゃって、なんだか、本当に…そうなんだろうかと思ってしまう。
 部屋に入ると、なんとなく鍵を掛けてベッドに寝転がった。

558館もん。3 31/60 :2005/03/23(水) 15:56:18 ID:qki6P1qa
「…うううう」
 不意に、誠司の事が頭に浮かんだ。
 …なんだかなぁ。よく考えれば、結構イケてる、外面のいい金持ちの次男坊に
告白されたんだよなぁ。
 これがもし、全然私が普通の家の子だったら…駄目だ、想像もできん。
 しかし、これって…酷い話なんだよな。誠司の方からとはいえ、利用してる事
に変わりはないんだし。
 誠司を好きになれれば、万事解決なのに、どうして誠司を好きになれないんだ
ろうか?まぁ、日が浅いってのがあるだろうし。
 一度会っただけの元婚約者と、紆余曲折あったものの現在は好きだと言ってく
れる従兄弟。頭で考えれば、絶対に好きになるのは誠司だと思う。けど、私自身、
子供作成に励む云々よりもキスどころか男の人と―――

「…あれは、違うよな…」
 誠司と―――男の人と、抱き合った。後、お姫様抱っこされた。乳も見られた。
相手は全部…誠司。あ、鈴原に押し倒された事もあったっけ?まぁ、除外除外。

 意識は、してる。そりゃするさ。でも、わからない。きっと、近い将来、好き
になると思う。誠司の事。きっと、私の事、大切にしてくれる。私も、大切にし
たい。
 誠司は、背負い込むタイプだから。それで、さっきだって結構、怖がって、私
なんかに縋って来たし、私でいいなら、って思うし。
 けど、今一生懸命探した『好き』の理由は、わざわざ恋人にならんでもいいん
じゃないかって事だ。それは恋人でなくたって、家族でも友達でもいい訳だ。

 …私、どうしたいんだ?
559館もん。3 32/60 :2005/03/23(水) 15:57:14 ID:qki6P1qa

 起き上がり、とりあえず誠司の事だけを考える。
 好き、だけど、好きじゃない。けど、多分近い将来好きになると思う。だって、
誠司と結婚する事になったんだから。だったら。
 ベッドから下りて、杖をつく。ゆっくり歩いて、鍵を外して、戸を開く。
 …最終的に、結婚するなら…じゃあ、もう少し恋人らしくすれば、少しはわか
るんじゃないだろうか。
 なんとなく、そうすれば万事解決するような気がして、私は誠司の部屋へ向か
った。




「いらっしゃいませ」
 いつでも来ていいみたいな事言ってたから、本当に来た。誠司はちょっと驚い
たような感じだったけど、嬉しそうにもしてたから、本当に好かれてるんだなー、
と思った。
「いらっしゃいました」
 誠司は何か本を読んでいたみたいで、さっきのこたつの上にお茶と何冊かが置
いてあった。どうぞ、と誠司はさっき私が座った場所に座るよう言ったが、私は
入らなかった。誠司は気付かずに自分の場所に入り、すかさず私も誠司の横に座
ろうとした。

「…狭いですよ?」
「うるさいな」
 戸惑いを隠し切れない顔と、声。
560館もん。3 33/60 :2005/03/23(水) 15:57:57 ID:qki6P1qa
「この場所が良かったんですか?」
「誠司の側が良かったの」
 自分でも、思わずぞっとするような事を言ってしまう。誠司も、相手が相手だ
けにすっげぇ不審人物見る眼になってるよ。
「熱…は無いですよね」
「お前動揺してる?」
 額でなくて頭のてっぺんに手を当てて熱をはかる。
「…千佐子さん、どうしたんですか?さっきから、少しおかしいですよ。」
 首を傾げる。さっきから…ってのは、シンゴ云々か。確かに、これは私もおか
しいとおもう。けど、本当にわかんないんだから仕方が無いんだよな。
「…そりゃおかしくもなる状況だとは思うけどな…まぁ、それはいいんだよ。そ
れより、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
 やっぱり狭いし、近すぎるけど…まぁ、まぁまぁ。好きにならなきゃいけない
んだから、まずは理解だよなぁ。

「あのさ、お前が私を好きな理由が知りたいんだけど」
 じっ、と誠司を見る。誠司はキョトン、とした顔になるけど、次第に赤くなっ
て来て、眼が泳ぎ始めた。
「…好き、だけじゃ駄目ですか…?」
 誠司、頑張って視線は逸らさずに言う。すげぇ恥ずかしがってる。でも、疑問
なんだよ。誠司が私みたいなもんを好きだって言ってくれるの、どうも信用出来
ない。いや、信用出来ないってより…信じられない。真珠られない。
「駄目…だよ。だって、わからないから。私だよ?浩司だって、さっき…」
「兄さんの意見は、別にいいじゃないですか」
「浩司に言われたからじゃなくて、だから、ただ、私があの…私なんか」
 結論を言えば、それなんだけどさ。
561館もん。3 34/60 :2005/03/23(水) 15:58:40 ID:qki6P1qa

「…可愛いからですよ」
「うもごっ!?」
 嘘だぁ、と言う前に口を塞がれる。今度こそ、嘘だ。あまりにも嘘臭い。
「いいですから、黙って大人しく聞いていて下さい」
 せっかく説明してくれるんだから、と大人しくする。誠司は咳払いをして、真
面目な顔になる。

「最初は、失望…というより、何がこの人をここまで変えたのかって考えるばか
りでした」
「お前等だよ」
 普通に言って頭をぐぐぐ、と下げられる。すげぇ重力in頭だけ。
「…悪い事をした、という自覚はありました。けれど、交渉した―――まぁ、父
さんから聞いた話だと、家で…その、あー、あまり、幸せではないと、思って…」
 んー、まぁ、そういう心配はありがと。おっきなお世話だけど。まぁ、いくら
貧乏でも最近ちょっとすれ違いばっかでも、それでも、いてくれるだけで、私は
幸せだったんだけどさ。あっちからは疎まれてたんだし。まぁ、これは環境と考
えの違いだ。
「本当は、上手く説明出来れば良かったんですが、結局ああいう形にしかなれな
くて…本当に…すいませんとしか…」
 まぁ、さらった後に事情言われても絶対信じなかっただろうし…まぁ、これも
すれ違っちゃったけど、私の為を思ってくれてたんだろうしなぁ。

 私は、出来るだけ好意的に受け取ってる自分自身に少し驚いてしまう。ま、そ
れだけ自分を守りたいんだろうな、というのもわかるんだけど。

562館もん。3 35/60 :2005/03/23(水) 15:59:23 ID:qki6P1qa
「いいよ、過ぎた事は。それより、脱線してない?」
 そう指摘したけど、誠司は首を横に振る。
「昨日も言い掛けましたけど、やはり貴方が落ちた時ですかね。頭が真っ白にな
ってしまいましたよ。まあ、これは理由とは少し違うと思いますが」
 まぁ…ね。アレは、正直見てた方も辛いだろうし。

「その後、貴方は身体にも心にも傷を負って、今まで溜めていたものが全て流出
してしまったような…言ってしまえば、凄く弱そうに見えてしまったんです。今
までは素手で熊でも倒せそうな勢いだっただけに」
 言いたい事言ってくれるじゃねぇか。ちょっと不満そうな顔をしてやるが、動
じない。
「…でも、熊が倒せそうな時の方が、嘘だったんですよね?」


 ―――う。
 ずびし、とストレートに指摘される。別に、故意にそう見せてた訳じゃないん
だけど。やっぱり、泣き過ぎたのが悪かったんだろうか。
「どちらかと言うと、貴方結構な寂しがりですよね」
 …それは、どうなんだろう。自分の事、自分が全部わかっている訳じゃないか
ら。それに、どうして誠司はそんな事思うんだろう。外れてる訳じゃないけど。

「僕は、貴方が悲しそうにしているのを見たくないですし、出来る限り幸せにな
って貰いたいんです。そして、出来れば貴方を守り、幸せにするのが僕でありた
いんです。これが全てという訳ではないですが、大まかな『理由』です」
 そう、誠司は言った。少し前までの、丁寧な割に気のちょっと短い坊ちゃん、
という印象は無くて、寧ろ、凄くかっこいい…
563館もん。3 36/60 :2005/03/23(水) 16:00:06 ID:qki6P1qa

「―――可愛いですねぇ、千佐子さん」
 ボーっとして、なんだか身体中が熱くなってる私を見て、笑う。いつまでも呆
けていたのが悪かったのか、誠司は眼を閉じて、ちゅ、と軽いキスをして来た。

「…馬鹿」
 予想外過ぎて、そんな私が馬鹿みたいな言葉しか出ない。
 どうしよう、嬉しい。誠司にかっちり口説かれて、嬉しがってる自分がいる。
やだな、簡単だ。私、すっげぇ騙されやすいタイプかもな。誠司が結婚詐欺だっ
たら、暫く立ち直れそうもない。
「馬鹿…誠司の馬鹿」
 さっきから、発した言葉の6割くらい、馬鹿だ。馬鹿は私だよ。
「馬鹿にもなりますよ」
 ぽそ、と何故か寂しそうに呟く誠司。なんだか不安そう。考えてみればそうか、
私は未だ何も返事してないし、ときめいてる訳だけど、まだわかんないから。生
殺しなんだよな…
 はぁ、とお互い溜息をつく。
「ごめんね、もう少し、待ってくれる?でも、私、多分―――」
「嬉しい結果を待っていますよ」
 もう一度、言葉を唇で遮られて、そう言われた。さっきので攻撃しなかったの
いい事に、ちょっと調子乗りやがったな。

「…テレビでも、見るか」
 恥ずかしくて、ドキドキして、こたつの上にあったリモコンを取る。チャンネ
ルを変えるけど、見たいような番組は無い。
「なんか、面白いビデオとか、無い?」
564館もん。3 37/60 :2005/03/23(水) 16:00:53 ID:qki6P1qa
「…そうですね、僕、金田一○介しかありませんけど」
「あ、見たい。誠司が見たいのでいいよ」
 そう言うと、誠司はこたつから出て行く。ふと、リモコンがもうひとつあって、
それがDVDのものだと気付く。
「…へぇ」
 貧乏だから、DVDなんてシロモノ、初めてだ。ちょっと適当にリモコンをい
じると…およ、なんか入りっぱなしだな。なんだろか?

「千佐子さん、珍しい方にします?月曜日の―――」
「……」
 誠司も私も、固まった。
 入れっぱなしのDVDの中身は『美人教師・由愛子の淫乱性教育―戦慄の生徒
17人レイプ・レイプ・レイプ―』だった。タイトル通り、これが浩司の言って
いた『女教師が教壇の上で生徒17人にレイプされるDVDのヤツ』か。
「ちょ、な、何を…」
「何って、あの、えと、え…」
 固まっている間に、始まってしまった。私は妙にムチムチした綺麗な女の人(多
分これが由愛子だろう)が気になる。ううう、胸、でけぇ。
「ち、千佐子さん、あの、止めましょう」
「あ、あの、み、見ようか?」
「はぁ!?」
 おいでおいで、とリモコン2つをこたつの中に隠し、誠司を座らせる。
 エロビデオ、見た事無いし、誠司がどんな趣味かもわかるかもしれない。まぁ、
 興味本位だ。誠司はしどろもどろしながらも、今度は私と違う場所に入る。
 …唐突に、婚約者とのエロビデ鑑賞会が始まった。

565館もん。3 38/60 :2005/03/23(水) 16:01:36 ID:qki6P1qa

『あ、あああ、イクぅ、イクのぉおっ!!』
「う、うわああ、あの、誠司、あの、入るの!?あの、お尻って、入れられるも
んなの!?」
「…僕に聞かないで下さい」
 眼を逸らしながら、誠司はぼやく。
 いやはや、すっげぇな、これ。本当に教壇上で生徒(って割には老けてる)に
レイプされてるよ。ていうか、これ既にレイプじゃない気もするけど。
 口から手からもう全部使って一度に5、6人は相手してる。周り囲んでるのが、
なんかアホみたいに見える。
「…うわあああ」
 開始、まだ15分。後何分あるんだろ…誠司は黙ったままだし、私もほとんど
うわああしか言っていない気がする。

 結局、そのまま全部見てしまった。しかし、凄かった。最後には由愛子は身体
中白くなってた。しかし、おっぱいでかかったな。
「…誠司、こういうの好き、なの?」
 私の問いに、やっぱり、誠司は答えない。私も、どうしていいかわからない。
どうしよう、どうすればいいんだ?迂闊に動けもしない。
「あの、あ、私、あの、帰る…った方が、いいよ、ね?」
 私自身、後悔していた。こういうの、一緒に見るものじゃないって。後、私も
同じだ、許可無しに日記見るのと、一緒だ。馬鹿、本当に馬鹿だ。
「……」
 無言で、誠司が私の腕を掴む。けど、私はおっかなくて、誠司の手を振り払っ
てしまった。誠司は、こたつから出ず、そのまま俯いてしまう。
 どうしようもなくなって、私は逃げ出してしまった。
566館もん。3 39/60 :2005/03/23(水) 16:02:19 ID:qki6P1qa


 うわあああああああああああああああああああああああああ。
 久々のお風呂の中で、私はそう言い続けていた。いや、心の中でなんだけどね。
ぬるめだから、傷にはあんまり染みない。が、今は胃とかの方がきりきり言って
いた。
 なんで、こんな事になったんだろう。興味本位でなんかすると痛い目にあうっ
ていうのはよくある事なのに。
 きっと、誠司怒ったな。寧ろ、また失望されたかもしれない。せっかく、好き
になってくれたのに。まぁ、こんなアホな女だってのに早めに気付いたのはいい
事かもしれないけど。

 …しかし、金っていうのはある所にはあるもんだと、痛感した。
 この風呂、私専用なんだもんな…結構広いし…自分の部屋に風呂とトイレがあ
るって、ここは旅館か、と最初は思った。風呂も、バスタブでなくてどう言えば
いいものか…床がへこんで、風呂があるっていう、本当に旅館みたいな風呂。
 最初か…逃げ出すって息巻いて、誠司も浩司も嫌いで、ホントは、不安で怖く
て仕方が無かったけど…

 こつこつ、とノックをされる。びっくりして『おゎいっ!?』と、返事なんだ
か叫びなんだかわからない声を上げる。
「え、な、だ、ふ、不二子ちゃん!?」
『僕です』
「僕さん!?」
 いや、声でわかるけどさ。誠司だ。私は何故か手近にあったタオル(でかい)
を身体に巻いてから、改めて返事をする。
567館もん。3 40/60 :2005/03/23(水) 16:03:02 ID:qki6P1qa
「…さっきは、すいません」
 とりあえず、謝った。誠司はこの場にはいないけど、コメツキバッタのように
謝った。
『別に、貴方が謝る事じゃないでしょう』
 緊張したような、声。どうしたんだろう。
「あ、謝る事、だよ。ごめん。ああいうの、反則だよ。ごめん。あの、あの…嫌
いに、なった?」
 怖くて、聞いてしまった。
 なんか、すげぇ間。うわあああ、怖い。怖すぎる。絶対、あの番組の解答者、
こんな気持ちだよ。

『…貴方こそ、僕の事、あの、軽蔑とか、してません?』
 震えた声。なんと、質問を質問で返す司会者(?)。
「や、やだな、あの、誠司、聞いたの私だって。私、誠司を軽蔑なんてしない」
 びしょっ、と真上に向けて水鉄砲を放つ。当然ながら、水は自分に降り掛かる。
やだな、いつの間に誠司に嫌われるのがこんなに怖くなってんだ?
 まぁ、捨てられるって事の怖さは身に染みてるけどさ。
『そうですか。すいません、勝手にこんな所まで来て』
「え、ううん、いいよ、いいよ。よかったぁ」
 うん、よかった、とりあえず最悪の事態じゃないみたいだ。誠司も、自分の方
が罪悪感、感じてたみたいだし、嫌われた訳じゃ、ないんだ。

「……」
『……』
 会話が、途切れてしまった。よく考えれば、こんな所で長話もするようなもん
じゃないし、けど、でも、このまま別れるのも…うーん、どうしよう。
568館もん。3 41/60 :2005/03/23(水) 16:04:03 ID:qki6P1qa
 誠司も、もしかしてなにかあるのだろうか?

 ―――ふと、さっきまでの自分の事を思い出した。婚約者になったからって、
利用したからって、無理に誠司の事、好きになろうとしてた。けど、今はどうだ
ろう?いつの間にか、嫌われるのが怖くなってる。そういえば、さっきは何しに
誠司の所へ行ったんだっけ―――?―――あ。
 お互い理解する、という事にうってつけの言葉があるじゃねぇか。どうせ乳も
半裸も見られた仲だ。日本語って最高だな。誰が考えたんだ『裸の付き合い』。

「…誠司」
『なんですか?』
 誠司もどうすればいいのか迷っていたのか、先に声を掛けた私に嬉しそうに返
事をした。
「あのさ、一緒にお風呂、入らない?」
 こんなん言ったら、怒られるだろうなぁと思いつつ、それで怒ってくれて出て
行けるならいいなぁ、という事も思ってしまう。来てくれるなら、それはそれで
誠司がそんなに私が好きか、と、嬉しくなってしまう。が。

 がらり。
「…早っ」
「詐欺…」
 誠司が予想よりも早く服脱いで、腰にタオル巻いて入って着た事に対しての私
の言葉と、多分、誠司のは…私が身体にタオル巻いていた事に対してだろうか。
「詐欺ってお前、ていうか、早いな、お前も」
「早いでしょう、普通そんなお誘いを受けたら」
 完全に開き直っているのか、誠司は普通に桶でお湯を掬った。
569館もん。3 42/60 :2005/03/23(水) 16:04:46 ID:qki6P1qa
「お湯、ぬるくないですか?江戸っ子でしたらもっと熱く…」
「お前、どこのじいさんだ。いいの、傷に染みるんだって」
 精神的にはともかく肉体的にはゆったりしていたので、身体は結構良くなって
いた。誠司がちゃんと治療してくれたのもあるけど。
「そうですか…そうですよね、すいません」
 シャンプーとリンスを一緒に手にとって、がしゃがしゃ頭を洗い、ヘチマにボ
ディーソープをぶっ掛ける。誠司は、意外とガサツな面もあると思う。
「別にどうでもいいんだけど…シャンプーとリンス一緒にするとあんまり意味が
無いって、聞いた事あるよ」
 なんだかこういう所を見ると、誠司も可愛く思える。
「そうなんですか」
 全然、気にしてなさそうだ。こいつそのくせ髪の毛お綺麗だったような気がす
る。ムキ―。私は風呂から出て、身体を洗っている誠司からヘチマを奪い取る。
「背中、流してあげる」
「…あ、ありがとうございまいたったたたたたた!?」
 がっしゃがっしゃ、と、少々力を込めてやる。あ、赤くなった。シャワーのコ
ックを捻って、大分冷たいお水をぶっ掛ける。
「つっ…ぬああああああ」
 泡が、一気に落ちる。頭から背中から、泡が落ちて行く。鏡にも掛けたから、
ぐぬあああああああああ、と悶えている誠司の顔が見える。可愛い。
「…こっ…殺す、気、ですか…」
 恨み節の入った誠司を無視して、私はまた湯船に逃げる。はぁ、と誠司は溜息
をついて残りの泡をお湯で流した。そんでもって。
「失礼します」
 静かに、誠司が湯船に入って来た。
 …なんだか、凄く変な感じだった。
570館もん。3 43/60 :2005/03/23(水) 16:05:30 ID:qki6P1qa

「…話、する?」
 急に会話が途切れて、どうしようかと思って、そう言った。
「別に、無理してする必要はありませんし」
 そう言うと、誠司は眼を閉じた。まぁ、そうなんだけどね。この、何も話さな
い状況が…全然重苦しくない。寧ろ幸せ。ずっとこうしてたいと…思ってしまう。
「…うん」
 私も、沈んじゃいそうなくらいに身体を伸ばす。おっきいお風呂って、本当に
気持ちいいな。
「色々落ち着いたら、どこかへ行きません?」
 おい、さっきの言葉はどこへ行った。苦笑しながら、いいね、と返す。旅行な
んて、全然行った覚え無いからな。誠司とだったら、どこでも楽しいかも。
「…千佐子さん」
「ん?」
 誠司が、笑う。けど、今までと少し違う。どっちかって言うと、悪戯っぽい…
 く、と身体が引っ張られる感覚。それもそうだろう、誠司はいきなり私のタオ
ルを―――
「ひゃ…!?」
 慌ててタオルを取り返そうとするけど、そんなの、裸で誠司に突っ込むのに変
わりないじゃないか。気付いた時には、誠司に抱き締められていた。

「ちょ、あの、せ、誠司、いや…」
「…嫌も何も、わかってましたけど、普通入浴に誘うって、無いですよ?」
 きゅうう、とまるで私の身体を自分に押し付けるみたいに抱きすくめられる。
いや、あの、確かによく考えればそうだけど…でも…
「嫌なら、すぐ止めますけど。その代わり僕、三日は泣き暮らしますからね」
571館もん。3 44/60 :2005/03/23(水) 16:06:13 ID:qki6P1qa
 そ、それは、あのもう既に脅迫じゃ…でも、正直断っても私に被害は来ない脅
迫だ。
「…第一、なんで自分の中のレギュラー物を好きな人の隣で見て、その後一緒に
風呂に入らなきゃいけないんですか…」
 誠司が抱き締める力をどんどん強くして来る。ああ、ナルホド。

「誠司、あの、発情しちゃったの?」
 …言い方、ものっ凄く悪かったかもしれない。誠司はぺし、と私の頭を叩いた。
「しましたよ、ええ、大いにしましたよ」
 さっきから、あの、当たってる。誠司の…うわああ。
「…由愛子?それとも…私?」
 ちょっとテンパりながら、どえらい事を口にしてしまう。誠司は脱力して、私
の肩に顎をのっける。
「あんまり、由愛子由愛子と連呼しないでいただけますか…そっちは、もう出し
てきましたから…」
「え?…う…ん…?」
 言葉の意味を考える間も無く、キスされる。誠司の手が私の胸を包むみたいに
触ると、なんだか鳥肌が立った。嫌なのか、そうでないのか、判断もつかない。
「やぁ…誠司…」
 誠司が、私の胸を触っている。こんな事になるなんて、思ってなかった。誠司
が、こんな事、私にするって…どこかで、ぶっちゃけありえないと思ってたし…
「っ…や、やだ、誠司、誠司ってば」
 もう片方の胸…てか、乳首を、口に含んだ。変な感触。唇だけで挟むようにさ
れると、本格的にぞわっ、としてしまう。
「千佐子さん、痛いです」
 いつの間にか、誠司の髪の毛を掴んでいたらしく、抗議の声が上がった。
572館もん。3 45/60 :2005/03/23(水) 16:06:56 ID:qki6P1qa
「だ…っ、だって、こんな、の…」
 おっかない。誠司と、いやらしい事のイメージが、理屈でわかっていても、ど
こか繋がらなくて、なんだか凄く悪い事をしている気分になる。
「こんなの?」
 誠司が、少しからかうような声で、聞いて来る。その間にも、私の身体を逃が
さないように押さえ、胸を揉み続けている。
「…嫌ですか?」
 身体の奥が、熱くなって来る。誠司の手が身体を這い回る度に、怖いのと、少
し物足りない、という気持ちが強くなって来る。
「千佐子さん、今なら土佐犬にも負けそうですね」
 比べるモノが、違う気がする。意地悪だ、こいつは。元々だって、熊なんか倒
せる筈が無いのに。それだって、嘘だって知ってる筈なのに。
「食べる量の割には、あまり出てる訳でもないですし」
「あっ…」
 お腹を撫でて、耳元で『胸もですけど』と嫌味を言う。誠司の、ダイレクトな
セクハラは、リアクションに困る。けど、とりあえず胸については由愛子を標準
にされちゃたまんねぇ。
「…小さい方が好きだって、言ったくせに」
 回らない頭では、この程度の返ししか出来ない。馬鹿丸出しじゃん、私。
「好きですよ」
 笑いを堪えながら、言う。馬鹿にされてるよ、やっぱり。腹立たしい。誠司は
私をお風呂の縁に座らせると、下から私の身体を舐めるみたいに見た。
「ただ、小さいからでなくて、貴方ですから、貴方の小さい胸が好きなんで」
 かこーーーーーーーーん、と手近にあった桶で誠司の頭を思い切り殴った。お
前、それは言い過ぎだろうよ。
 頭を擦りながら、誠司は涙眼でこっちを見る。
573館もん。3 46/60 :2005/03/23(水) 16:07:41 ID:qki6P1qa
「…容赦無いですよね、千佐子さん…」
「おうよ」
 ふん、と誠司を蹴ってやる。
「今のは、僕が悪かったです」
 すいません、と謝ってくれるのはいいけど…
「誠司…」
 太腿を撫でながら、首筋を舐められる。ぞくぞくして、押し退けようとするけ
ど、その前に唇は少し下に移動する。くっ、と胸を掬い上げると、赤ちゃんの如
く吸って来た。
「あっ…待って、や、そこ、や…」
 太腿を擦っていた手が、内腿に移動する。誠司の指が、触れる。
「やっ…あ!?」
 逃げようとしたけど、下半身押さえ付けられてたから、そのまま寝そべってし
まう形になる。当然、誠司に見せ付けるような格好になってしまう。
「やだ、や、誠司…!見ないで…」
「…嫌です」
 即却下。誠司は脚を閉じないように手で押さえ付ける。明るい中で、私は全部、
誠司に曝け出す格好となってしまう。
「やだぁ…っ…」
 恥ずかしくて、怖くて、涙が出て来る。誠司の顔が、見れない。そんな所、自
分だってじっくり見た事なんか無いのに。
「っ…!」
 つ、と、誠司の指が触れる。お湯かどうかはわからないけど、そこは濡れてい
て、簡単に誠司の指を受け入れてしまう。
「誠司、やめてぇ…こんなの、や…あっ…ああ」
 指が、もう少し奥まで入って来る。
574館もん。3 47/60 :2005/03/23(水) 16:10:14 ID:qki6P1qa
 そう思ったら、指が、抜かれる。が、また。音を立てて、誠司の指が私の中を
行き来する。
「あっ…あああっ!?」
 不意に、誠司が口を付けて来る。自分でも、触った事あるけど、一番感じる場
所。強く吸われると、誠司の指を締め付けてしまう。それがまた良くて、もっと
刺激を求めてしまう。
「ふぁ…あっ…誠、司…い」
 眼の前がぼやけて、明かりだけをみつめてしまう。自分の中から、お尻に伝う
くらい濡れて、それが舐め取られ、また溢れ出す。
「いやぁ…」
 快感に負けたくなるのと、恥ずかしいのとがぐちゃぐちゃになって、逃げ出し
たくなる。頑張れば、すぐ逃げれるようなもんだけど、力が抜けてしまって、ど
うしようも無い。
 …嫌、じゃないんだけど、でも、やっぱり慣れてない?ようなもんなんだろう
か。不意に、視界が暗くなる。誠司が、私を見下ろしてる。今、私はどんな顔を
してるんだろう。
「千佐子さん…」
 ぎゅう、と抱き締められる。どうして?なんで、こんな怖いの?
「―――貴方を、誰にも渡さない」
 そう、抑揚の無い声で呟く。声だけなのに、それだけで、抱き締める腕も、体
温も、全てが怖くなった。
「や…あっ、放して、誠司、なんか、怖い…」
 誠司が、どっかおかしい。それなのに、誠司自体が何かを怖がってるみたいで、
どうすればいいんだ。このまま、誠司の好きなようにさせれば、収まるのか?て
いうか…
「渡さないって…誰に…」
575館もん。3 48/60 :2005/03/23(水) 16:10:58 ID:qki6P1qa
 誰にって…こんな私なんぞ欲しがる奴がいるのか?そういえば…誠司が言って
いたような気が…―――あ。

「…叔父さん?」
 もしかして、本当に、そうなのか?てか、誠司、心配性過ぎないか?
「誠司、そうなの?そんな、叔父さんの事―――」
 抱き締める力が、緩む。慌てて誠司の顔を覗き見ると、茫然とした顔で、私を
見てた。でもって、その呆然とした顔が、次第に悲しそうな顔になる。もしかし
て、本当に、確証があって…言ってたのかな。誠司がこんなんになるって、相当
だと思うし。
「誠司、もしかして、何かあったの?」
 泣く寸前くらいにまでなった誠司を、私は抱き締める。暫く震えていたけど、
観念したように、ぽつぽつと喋り出した。

「―――貴方を地下牢に入れた後、父さんに、経緯を話しました」
 うわ。忘れてたけど、私自爆したんだよな。道理で杖ついてたのに、叔父さん
と浩司からツッコミ無かった訳だ。
「先に、貴方の怪我の事を伝えて、それから、説明しようとしたんです」
 言いにくそうに、言葉を一生懸命選んで、誠司は言う。
「…その時、父さんは、確かに言ったんです」
 誠司の表情が、曇る。じわ、と涙が浮かんだ。誠司が、泣いてる。それだけで
も凄くびっくりしたんだけど、誠司が言った言葉に、もっと驚かされた。
「…理佐子に、何をしたって…」
 誠司は、震えた声でそう言った。
 叔父さんの様子は、尋常じゃ無かったそうだ。誠司の胸倉を掴んで、本当に、
おかしくなったんじゃないか、と思うくらいの剣幕で。すぐ、戻ったそうだけど。
576館もん。3 49/60 :2005/03/23(水) 16:11:42 ID:qki6P1qa
「僕は、ずっと父さんが何を考えているか、わからなかったんです。父は、ずっ
とお祖母さんに逆らっていたのに、お祖母さんがおかしい事くらい、子供だった
僕にもわかっていたのに、でも、父さんはずっとお祖母さんの側に立って…」
 誠司は、私にしがみ付いて、急に話が飛んでしまった。けど、誠司は大分興奮
してしまっている。私は誠司を抱き締めて、とりあえず、全部吐き出させる事に
した。

 ―――どうやら、誠司も、浩司も、ずっと、それこそ、このくそ厄介な遺言を
残した前当主―――私のお母さんと、誠司達のお母さんのお母さん、即ち私達の
ばぁちゃんに虐げられていたみたいだった。
 駆け落ちしたお母さんを、ばぁちゃんはずっと探していた。
 その間、お母さんの妹の子供で、身体の弱い浩司と誠司は、ばぁちゃんに、絶
対に当主にさせないと、必要の無い人間だと、言い聞かされていた。
 ばぁちゃん―――てか、ババァに謂れの無い貶めを受ける度、具合が悪くなっ
て行った浩司を、いつまでもババァに苦しめられる元の父親、母親を、誠司は小
さい頃から守ろうとしていた。
 けど、ある日を境に、父親も身体を壊し、亡くなった。
 それから数年経って、今の父親―――叔父さんが入り婿としてやって来た。表
向きは母親を守っていたそうだけど、逆らい続けていた元の父親とは反対に、言
いなりとまでは行かないけど、意に添っていた。
 それが、逆に自分達を守る為のものだと思っていたけど、今回の事ではっきり
わかった。叔父さんは、お母さんを―――理佐子を自分の手中に納めたかっただ
けだと。そしてお母さんが死んだ今、私を身代わりにしようとしていると。
 だから、そうなるより先に、誠司は私を手に入れようとした。好きだって気持
ちはあるけど―――焦って、関係を持ってしまえば、既成事実さえ作ってしまえ
ば、絶対に手が出せなくなると思って。
577館もん。3 50/60 :2005/03/23(水) 16:12:24 ID:qki6P1qa
「…すいません。でも、これじゃ僕、あの人と何も変わらないですよね」
 しゅん、となってしまった。本当は、叔父さんの事に気付きさえしなかったら、
お風呂の誘いだって受けなかったそうだ。もう少し、こういうのに疎そうな私が、
ちゃんと心の準備が出来て受け入れてくれるまで、待つつもりだったそうだ。

 …つまり、誠司も、やっぱり浩司の弟で、私の従兄弟。ちょっと考え無しな馬
鹿なんだ。まぁ、私なんかよりは、ずっと優しくて、同じくらい不器用な。
 わかってた筈なのに。大切な人を大切にし過ぎて、自分だけが背負い込んでし
まうって、わかってたのに。

 ―――誠司がこういう奴だから、私も、守りたいって、吐き出して、泣いて欲
しいって思う。ここに来て、やっと、はっきりわかった。私、誠司の事が好きな
んだ。必死になって家族を守りたいと思ってるこいつの事…好きになってたんだ。
「…?」
 静かに、泣いている誠司を、私は抱き締めた。誠司は、そんな私に戸惑ってい
るのか、わたわたして手や首を動かしている。
「…好きだよ、誠司。ああいう事しなくたって、私はもう、誠司のものだから」
 そう、正直に自分の気持ちを伝える。ぴた、と無駄な動きが止まった。そして、
暫くそのままでいて、それからまた暫くして―――誠司も、抱き締めてくれた。
 あー、すっげぇ幸せ。半端なく癒される。が、ひとつだけ、心残りが。

「…あのさ、しよっか?」
 ぶっ、と誠司が吹き出した。まぁ、唐突っちゃぁ唐突なんだけど…あの、悪い
けど、私だって、中途半端なままだし…せっかく、素っ裸同士なんだし…何より、
私も出来れば…誠司とのこう、確証が欲しいっつーか。ああいう事言った手前、
なんだけども。
578館もん。3 51/60 :2005/03/23(水) 16:14:02 ID:qki6P1qa
 下を見れば、誠司のだって…あの、まだまだ元気だし。青少年の性欲をなめる
なっつー話だ。ていうか、男の人のって、はぁー、こうなってるんだ。うわああ。
「っ…!?」
 恐る恐る、触れてみる。熱い、大きい。こんなん…入る、んだよな。モザイク
掛かってたけど、入ってたし。好奇心もあって、由愛子みたいに口を開けて…は
ちょっと怖いから、舌で突付いてみる事にする。
「っちょ…千佐子さん!?」
 慌てて、私の頭をがっしと掴む誠司。手はいいのに口は駄目なんだろうか。
「せぇ…じ?嫌?」
 なんか、物凄く焦った表情で、本当に舐めさせまい、としてるみたい。
「あ、あの、嫌、な訳は100ありませんけど、でも、千佐子さん無理をしてい
ないですか?貴方、変な所で気を使いますし…」
 …うわああああああ。誠司に言われちまったぁ。なんか、情けなくなって来る。
が、同時に大分嬉しい。大事にされてるなぁ、と実感してしまう。が、しかし。
「別に、無理してないよ。さっき、誠司同じ事してたじゃん。だから、私も」
 がっしり掴む誠司の手をどけて、再度トライする。見るの自体初めてだけど、
これ自身が誠司だから、不思議とそんな怖くはない。かと言って日常的に出来る
かと言われても困るけど。今は、大分やらしい気分にもなってるからかな。
 ちろ、と舐めてみる。しょっぱい…んだかなんだかわからないけど、味云々よ
りも…凄く『自分の意思でで男の人のを舐めてる』って事実が、どうしようもな
くいやらしくて、恥ずかしい。舐めてるだけで、由愛子みたいに口いっぱいまで
入れてる訳じゃないんだけどさ…
 それでも、ずっと舐っていると、誠司のが私の唾液と、途中で誠司から出て来
た(とりあえず精液じゃないそうだ)ので、ヌルヌルになって来た。
 私も舐めてる事で興奮してきたのか、そっと触ったら、同じくらい濡れていた。

579館もん。3 52/60 :2005/03/23(水) 16:14:45 ID:qki6P1qa

「…千佐子さん」
 誠司が、思い詰めたような顔で、キスして来た。こう言うのなんだけど、お前
私の数十倍は色っぽいな。ちょっとした嫉妬心を抱きながらも、誠司にしがみ付
こうとする。けど。
「誠司?」
 誠司は私の身体をひっくり返して、四つん這いにさせる。
「誠司、こっちがいいの?」
 やっぱ、由愛子がちょっと頭にあるのかなぁ。まぁ、由愛子は最初こそこんな
んだったけど、終いにゃもう様々な格好でブチ込まれてたけどな。しみじみ思う。
 気配り上手の誠司は下にタオルを敷いてくれている。でも、そうするって事は、
やっぱり、後ろからするんだろうな…
「…痛かったら、言って下さいね」
 ぐっ、と腰を掴んで、そう言ってくれる。でも、多分歯医者と一緒で途中で止
める事は無いんだろうなぁ。

「―――っ…」
 ゆっくりと、時間を掛けて、誠司のが私の中に入って来る。
 …誠司の事、好き。だけど、そういうのとは別物で、なんだか怖い。自分の身
体の中に、誰かを受け入れるってのは…
「っつ…」
 眉を、顰めてしまう。ゆっくりだけど、やっぱり、痛いものは痛い。やっぱり、
後ろからよりは…真正面の方が良かったかもしれない。まぁ、後の祭だ。
「誠司…誠司…っ…」
 名前を呼ぶしか出来なくて、でも、どこかで受け入れる事に慣れて来て、ひと
つになれて嬉しいとも、思う。痛みの分だけ、なんとはなしに。
580館もん。3 53/60 :2005/03/23(水) 16:15:29 ID:qki6P1qa

「あっ…うぁ…あ」
 奥まで、行き届く。痛いのは痛かったけど、まぁ、余裕が全て無くなる程じゃ
あ、なかった。
「んっ…」
 誠司が、両手で胸を掴んで来た。両方の乳首を、同じような間隔で摘まれると、
誠司のを締め付けてしまう。少し痛い。もう少しだけ、待って欲しい。
 声の調子でわかってくれたのか、誠司はそれから動かずに、じっとしていてく
れた。時折頭を撫でてくれたり、背中にキスしてくれたりした。
 次第に、ズキズキしてた入口とかが、痺れるような感覚に変わって行く。はぁ、
と溜息をつくと、誠司がまたさっきみたいに胸を掴んだ。今度は―――
「あ…あぁっ…」
 また、締め付ける。けど、今度は痛みは少なく、蕩けるような感覚がした。声
も、甘ったるいものになる。誠司が少しだけ動いて、中を行き来すると、水音と
共に、声も洩れる。少しだけ引き攣るような感覚も、快感の方が勝って、気にな
らなくなっていた。
「いっ…誠司、いいっ…あ…ああっ…ぅ…」
 どうしよう、気持ちいい。誠司がする事、全部気持ちいい。ゆっくり、私の事
気遣って、傷付けないように動いてくれる。嬉しくて、気持ち良くて、あられも
ない声を、上げてしまう。それが続くと、腕が身体を押さえきれなくなって、床
に付いてしまう。思い切りお尻を突き上げるような形になってしまう。
「―――て、いい、ですか?」
 途切れ途切れに、誠司の声が聞こえて来る。私は頷きながら、また声を上げる。
いやらしい子だと、誠司は思っているだろうか。そんな事を思った瞬間、違和感
を感じる。誠司の指が、お尻の―――
「え…やっ…やだ…あっ、そんな…」
581館もん。3 54/60 :2005/03/23(水) 16:16:12 ID:qki6P1qa
 お尻まで一杯濡れてたから、誠司の指も、割合簡単に受け入れてしまう。そん
な所に入れた事が無いから、奇妙な感覚が襲い掛かる。また、きゅっ、て誠司の
を締め付けてしまう。
「やだ…変、変なの…いやぁ…抜いて…」
 じたばたするけど、誠司は一向に止めてくれない。
「いいでしょう、許可はいただいたんですし、僕の一杯締め付けてくれてるんで
すから…それに、入るのかと聞いてきたじゃ、ないですか」
 くっ、と指を動かし、その度に私は締め付け、腰を動かしてしまう。いや、確
かに聞いたけど、まさか、誠司―――
「今は無理ですけど…その内、試してみます?」
「ひぁ…あああっ!?」
 もう片方の指が、感じる所を、痛いくらいに強く擦る。びっくりするくらい敏
感になっている。お尻も一緒に弄られる度に、もっと快感を求めて、声を上げ、
腰を振ってしまう。頭の中が真っ白になって、ただ、快感だけを求めてしまう。

 ―――最後は。
 自分自身の大きい声と、自分の中で何かが弾けるような感覚。
 身体中の力が抜けて、同時に物凄い眠気が襲って来た。ここがお風呂だって事
も忘れて、私はそのまま意識を手放した。





『…お姉ちゃん、これ、あげます』
 そう言って、誠司くんは私に摘んだお花をくれた。
582館もん。3 55/60 :2005/03/23(水) 16:16:56 ID:qki6P1qa
『ありがとう』
 お礼を言うと、誠司くんは真っ赤になって、とても嬉しそうに笑った。
『…誠司様、千佐子様…そろそろお時間です』
 後ろから、声がする。誠司くんのお母さんと、一緒に来た人。
『鈴原先生、もうなの?』
 がっかりしたような声で、誠司くんは言う。先生という事は、お父さんじゃあ
ないんだろう。
『はい。そうです。ですが…私は千佐子様とお話があります。それまで、そこに
いていただけますか』
『…うん、わかりました』
 不服そうな顔。私は、その鈴原先生って人に、茂みの方まで連れて行かれる。
そして。

『いずれ、君は連れ戻されるだろう』
 ―――え?
 意味が、全くわからない。言葉の意味が、理解出来ない。でも、鈴原先生は構
わず、喋り続ける。
『そんな事はどうでもいいんだ。とにかく、葵には気を付けなさい』
 ―――は?
 いきなりそんな事を言われても、凄く困る。誰、アオイって。
『葵は、私と違って賢い。だから、早い内に気付き、眼が醒めるだろう』
 意味が、全くわからない。なにが言いたいんだろう。なにをしたいんだろう。
『そして葵は藤乃原の人間を、当主を―――君を憎み、そして、私を憎むだろう』
 頭が、おかしいんだろうか。この人は。
『―――私の一番大切なあの子に―――慎吾に手を出させたら、許さない』
 え?え?はい?誰?どなたですか?そのシンゴって。
583館もん。3 56/60 :2005/03/23(水) 16:17:43 ID:qki6P1qa
『あの子は、私の掛け替えの無い存在だ。だからこそ、狙われる。だから、身代
わりを用意した。だから、使うなら、その子を使いなさい』
 その子?名前がその子?そうなの?
『いいか、その子は道具だ。その子は慎吾の事も、葵の事も全て知っている。君
の味方であり、切り札だ。もしもの時は、その子を差し出せ』
 肩を、掴まれる。怖い。この人、怖い。怖すぎて、私は声さえ出ない。
『―――その子の名前は―――』
 最後に、それだけ言って、その人―――鈴原先生は笑った。この上ない、怖い
笑顔で。怖くて、怖くて―――それから、記憶が無い。気付いた時には―――



「―――っ!!」
 がば、と起き上がる。ここはどこだろう。ベッドの上で、私は寝ていた。
「っ…あ…」
 ぼろぼろと、涙が溢れ、流れた。
 怖い。凄く、怖い。
「っ…や…」
 どうして怖いのか、まるでわからない。それなのに、恐怖で、震えていた。

「…どうしたんですか?」
 不意に、横から声が掛かる。心配そうに、私の手を握る人。
「っ誠司くん!!」
 ぎゅう、と私は、何故か誠司をそう呼んで、抱き付いた。そして、安心感から
か、思う存分、誠司の胸の中で泣いてしまう。
「…千佐子、さん?」
584館もん。3 57/60 :2005/03/23(水) 16:18:30 ID:qki6P1qa
 戸惑いながらも、私を抱き締めてくれる。背中を叩いて、安心させてくれる。
 …馬鹿みたい。自分より年下の奴に縋って、泣き喚いている。どうして怖いか
もわからないのに。けど、これだけはわかる。
 今、ここで、誠司が側にいてくれて、本当に良かったって。
 
「…懐かしい呼び方をしてくれたものですね」
 泣き止んで、それでもまだ誠司にしがみ付いていると、不意に誠司が言った。
「え…っわた…し、変な呼び方…した?」
 鼻を啜って、誠司の顔を見る。苦笑して、頷いた。そして、腫れた瞼と、唇に
キスをしてくれた。
「なんでもないです。もう、これだから貴方を1人にはしたくないんですよ」
 頭を撫でて、またぎゅっとしてくれる。心が、楽になる。けど、これだからっ
て…どういう事だ。
「…まぁ、もうこうなった以上は言ってしまいますけど…昨日の夜、貴方が心配
で見に行ったら、畳の上で寝ていたじゃないですか」
 ―――う。そういえば、そうだ。でもって、誠司が布団に寝かせてくれたんだ
よな…あああ、情け無い。
「それで、出て行こうとしたら、貴方泣いてしまうんですからね。言ってしまえ
ば、僕の好きな理由はアレかもしれませんね、1人にしておけないって」
 からかうように、笑いながら言う。うわああ…ん?という事は…

「誠司、もしかして、その時―――」
 …キス、したのって、もしかしなくても…
「そうですよ。いいじゃないですか、バイト代ですよ」
 そのバイト代という言葉に若干の不満はあるものの…そっか、あの時、私の事
安心させてくれたの…誠司だったんか。
585館もん。3 58/60 :2005/03/23(水) 16:19:14 ID:qki6P1qa

「……」
 いいんだろうか、こうやって、誠司に甘えてばかりで。ていうか。
 …自分、確か、風呂場で寝た筈じゃ…慌てて自分の身体を確認。あ、バスロー
ブ着てるや。誠司、ナイス。
 少し吹き出してしまいそうになりながら、またしがみつく。
「昨日、誠司のおかげで、安心出来た…本当に、ありがと」
 その時に、わかられたのかな…寂しかった事…まだ、お父さんに縋ってた事。
誠司は私を抱き締めて、子供をあやすみたいにしてくれる。そして。
「寂しいの、嫌ですか」
 そう、聞いて来る。私は、頷く。
「1人は、嫌ですか」
 …基本的には同じ事だけど、まぁ、違う事でもあるから、頷く。
「…僕で、いいですか」
「誠司じゃなきゃ、嫌」
 頷かず、そう、真正面から、言った。
「―――ありがとうございます」
 それは違うんじゃないかなぁと思いつつ誠司は私を抱き締めながら横になった。


「…しっ…かし、これから、結構大変ですよ」
 不意に、誠司は呟く。
「そうだろうな…」
 ちょっぴしうんざりしながら、私も呟く。
「覚えなければいけない事、しなければいけない事、山程あります」
「苦労するだろうけど、教えてね」
586館もん。3 59/60 :2005/03/23(水) 16:19:59 ID:qki6P1qa
 …暫く間を置いて、はい…と死にそうな声で呻きやがった。まぁ、ちょっと考
えれば誠司の気持ちも痛い程わかるけど。
「後、くれぐれも父さんには気を付けて下さい」
「…うん」
 今度は、私が死にそうな声。嫌だなぁ、嫌だなぁ…この親子関係。
「あと…」
 後はなんだ…これ以上がっかりさせないでくれよ…
「愛してます、千佐子さん」
 そう言うと、キスしてくれた。
 …こんちくしょう、嬉しい不意打ちじゃねぇか。
「うん、私も…私も、誠司の事…うん、まぁ、そうだよ」
「ありがとうございます」
 変な空気が漂う。
「…ふへっ…」
「…あはは…」
 つい、笑ってしまう。幸せで、嬉しくて、恥ずかしくて。

 いつの間にか、怖いという感情は、無くなっていた。誠司がいてくれるから。
 なんだかどえらい事を忘れているような気もするけど…気を付けるべき『葵』
ちゃんとやらが奴である限り…まぁ、大丈夫か。それよりも、気を付けるべきは
…叔父さん。


「…誠司」
「なんですか?」
「私と誠司で駆け落ちしたら、もう誰も追って来ないような気がしない?」
587館もん。3 60/60 :2005/03/23(水) 16:20:57 ID:qki6P1qa
 …なんとなく。
 なーんとなく、言ってみた。
「…あまり、実の無い話はやめません?」
「そりゃそうだ」
 はぁ、とお互い溜息。まぁ、いいや。誠司がいてくれるなら、どこでもいい。
1人にしないでくれるし、寂しくもさせないでくれる。ましてや、それが誠司様
とあれば、怖いもんなんか何も無い。とにかく、これから大変なんだ。たっぷり
睡眠とって、起きたら…

 ―――明日のごはん、なんだろう?
 当座の悩みは、とりあえずそんなもんだった。





                                             終

588377:2005/03/23(水) 16:24:08 ID:qki6P1qa
はい、こんな感じです。
また、新しい話もしくは4周目が出来たら
投下したいと思います。

589名無しさん@ピンキー:2005/03/24(木) 01:25:00 ID:0GfmpBiG
ウホッ次男坊キター
やはりこの組み合わせは好きです大好きです。

なんか今回の主人公が一番可愛く感じた。
破天荒な部分だけじゃなくて弱い部分も丁寧に
書いてあるからかなぁ…
恋愛の一番幸せな部分が描かれてるようで楽しかったです。
つか普通にストーリーが気になる…!
590名無しさん@ピンキー:2005/03/24(木) 07:18:56 ID:ydVerYeU
長編乙!
次男坊の性格が複雑で、まだまだ全部だしてないぞ
みたいな感じが魅力的でした。
エロもGJですた。
続きが読みたいです。
591名無しさん@ピンキー:2005/03/24(木) 16:40:04 ID:SddxoOqU
377さんお疲れ様です!
今回の次男編も、楽しく読ませていただきました。
このシリーズ大好きです!
伏線がとても気になりますね。
新作も続編ものんびりお待ちしています。頑張ってください。
592名無しさん@ピンキー:2005/03/24(木) 23:22:42 ID:ndT4hviD
たのしかった!
乙!!
593名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 07:06:17 ID:rxuQO6cq
このスレ最近見つけたのですが、クオリティ高くて素晴らしいですね。
まとめサイトで楽しませてもらってます。
377氏の館もんは凄いの一言。面白い!

ところでこのスレ的には、他のスレでうpした物の再うpは有りですか
感想、意見聞きたいのがあるのですが、どうでしょう
594名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 08:10:47 ID:rxuQO6cq
593ですが
よく考えると、感想くれくれ君みたいだ。
ごめんなさい。スルーしてください。
595名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 15:16:56 ID:8utu7+sj
元スレの名前ださなきゃアリだしょ

SSカモン
596名無しさん@ピンキー
>>593
どこかに置いて、ここからリンクするのがよさげ。
そちらに感想掲示板とか捨てメアドとか置いて。
胸がえぐれるような感想が来る可能性もありますが。