Q&A その1
(;´Д`)<オリキャラ出したいんだけど……
(・∀・)<オリジナルキャラが原作キャラよりも目立つ物、また、同程度の立場である場合、受け入れられない
事の方が多いようです。そんな作品の場合は投稿所の方が無難ですが、最終的な判断は作者さんに
委ねられます。
もし、これは大丈夫だ、と思ってスレに投下して、投稿した作品にケチをつけられたとしても、
それはそれで一つの事実ですので素直に受け止めましょう。
次の投稿時にその経験を活かしてください。
(;´Д`)<そんな固い事言ってたらオリキャラ使えないじゃん
(・∀・)<そんなことはありません。原作に登場してはいないものの、その世界に間違いなく存在しているキャラ
(一般生徒・店員・通行人)等のいわゆるMobは、登場させても問題ありません。
但し、それでもし投稿した作品にケチをつけられてとしても、それはそれで一つの事実ですので素直に
受け止めましょう。次の投稿の時に(ry
(;´Д`)<原作キャラの性格を弄りたいんだけど、どの程度なら大丈夫なの?
(・∀・)<極端に変わっていなければ大丈夫です。が、だからといってスレに投稿してケチをつけられてとしても、
それはそれで(ry
例外的に、笑いを取りに行った場合には受け入れられる事もあるようです。
Q&A その2
(;´Д`)<瑞穂ちゃんがあまりにも可愛いので、おかま掘りたいんだけど……
(・∀・)<どうぞ掘ってください。但し、作品が出来上がったときはスレの方ではなく、投稿所へお願いします。
逆に瑞穂ちゃんが掘っちゃった場合も投稿所を利用してください。
(;´Д`)<マリみてとか、極上生徒会なんかとクロスオーバーさせたいんだけど……
(・∀・)<クロスオーバー物は、混合物の元ネタを知らない人もいますので、投稿所の方へお願いします。
(;´Д`)<瑞穂ちゃんを襲った○○が許せません! お仕置きしてもいいですか?
(・∀・)<構いませんが、必要以上の暴力・陵辱・強姦・輪姦・監禁・調教・SM・スカトロ・グロ・強制妊娠・
達磨プレイ・死姦・人体改造・触手・食人等、読み手を限定してしまうような表現がある場合は、
投稿所の方へお願いします。
また、直接的な表現が無くても鬱な展開になった時は受け入れられない場合もあります。
(;´Д`)<携帯だから投稿所使えないyo!使えるけど投稿所ヤダ!
(・∀・)<仕方ないので事前に1レス使って傾向報告、あぼーんできるようにコテ、ケチつけられても
文句言うのはやめましょう。でも可能な限り投稿所利用してください。
(・∀・)<おとぼくの雰囲気に合わないと思われる作品は投稿所へ、どうすればいいか分からないときは
皆に聞いてみて下さい。
7 :
みどりん:2008/04/05(土) 22:11:56 ID:F2BBLeV/0
東の扉さん、ご苦労様でした。
早速、利用させていただきます。
8 :
みどりん:2008/04/05(土) 22:14:28 ID:F2BBLeV/0
声の力
(1) 古文の授業風景
「それでは、奏さん教科書の28ページから読んでください」
緋紗子先生が授業で奏を指名します。
「はい……」
奏はその場で立って教科書を読み始めます。
「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり」
源氏物語桐壺の冒頭の部分ですね。流れるような美しい朗読です。聞いていると心地よくなります。
「はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方がた、めざましきものにおとしめ嫉みたまふ。同じほど、それより下臈の更衣たちは、ましてやすからず。
朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積もりにやありけむ、いと篤しくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、いよいよあかずあはれなるものに思ほして、人のそしりをもえ憚らせたまはず……先生?」
zzzzzzzzzz
zzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz
全員就寝してしまいました。
(2) 体育の授業風景
今日の体育はバレーボールの試合です。奏がサーブを打ちます。体に比して大きいボールですので、力を込めないと球が飛びません。
「あっん」
なんというか……微妙な掛け声と共に奏は球を打ちます。ボールがふらふら〜〜と飛んでいき………ゆ〜〜っくりとネットを超えて………そのままストーンと床におっこってしまいました。サービスエースです!!
でも、どうしてこんなイージーボールを取れないのでしょうね?
「奏さんの掛け声を聞くと、どういうわけか体をうごかすのが億劫になってしまうんです」
9 :
みどりん:2008/04/05(土) 22:15:07 ID:F2BBLeV/0
(3) ハイキング
卒業生の瑞穂や貴子、紫苑を誘って奏、由佳里、薫子、初音はハイキングに来ています。
「たまには山歩きもいいですね」
瑞穂がいいます。新緑の季節、森の空気も爽やかです。
「本当ですわ。奏さん、お誘いいただきありがとうございます」
貴子も同意します。
「いえ、私たちこそお越しいただき感謝しています」
奏が4人を代表して挨拶します。
「紫苑さんや初音さんはこの程度の運動は大丈夫なんですか?」
瑞穂が体の弱い二人を気遣って問いかけます。
「ええ、このくらいの運動でしたら問題ありませんわ。森林浴は健康にもいいという話ですし」
「私も平気です」
二人は答えます。
「お姉さまぁ、私の体は心配してくださらないのですか?」
「そうです、瑞穂お姉さま。私たちも虚弱体質で………」
由佳里と薫子が少しすねていいます。
「はいはい、由佳里ちゃんも薫子ちゃんもハイキングをして平気なの?」
「あー!ひどいです、お姉さま。そんな投げやりな言い方をなさるなんて」
「本当です!!」
「だぁってぇー………」
「ウフフフ」
3人のやり取りを聞いていて貴子が笑い出しました。
「オホホホ」「アハハハ」
それをきっかけに、みんな笑い始めました。ほのぼのとしたいい雰囲気です。
さて、暫く順調に山歩きをしていたのですが、問題が起こりました。ハイキングコースの真ん中に岩がおっこちていて、道を塞いでいたのです。
「困ったわねぇ、これでは先にいけないわ」
瑞穂がいいます。
「別のコースはないのかしら?」
紫苑も心配そうに言います。すると、奏が発言します。
「大丈夫です、お姉さま、紫苑様。私に任せてください……皆さん、少し危険ですから下がっていてください」
東の扉さん、お疲れ様です
11 :
みどりん:2008/04/05(土) 22:19:33 ID:F2BBLeV/0
そう言って、一人岩の前に立つと、大きな声を出しました。
ワワワワワワワワ
ワ ワ
ワ ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワワ ツ
岩は粉々に粉砕され、弾き飛ばされてしまいました。
「さあ、皆さん、これで大丈夫です」
奏が皆に言います。全員顔が引きつっています。
「………か、奏ちゃん……すごいわね」
瑞穂がそれだけ発言するのがやっとでした。
それからもハイキングを続けましたが、何か雰囲気が変わってしまいました。
奏一人で、はしゃいでいました。
(大きなワがずれているかもしれません。ご容赦ください)
12 :
みどりん:2008/04/05(土) 22:20:19 ID:F2BBLeV/0
(4) 最凶の応援の2年後
今日は聖M学園とのバスケットの試合です。L鍋氏の発案で対外試合にはエルダーが応援にくることになっています。今年は奏が来ています。でも、瑞穂の時のように、皆がエルダーに見とれるということはないようです。大丈夫でしょうか?
「ピーー」
ホイッスルの合図で試合が始まります。
ボン、ボン、ボン
ボールは早速聖M学園の支配下になってしまいました。さすがに動きがいいです。
「みなさ〜ん、がんばってくださいね〜」
奏のよく通る声が体育館に響きわたります。と、急に聖M学園の選手の動きが悪くなりました。それをみた恵泉の選手はすばやくボールを取ると、すぐさま反撃しました。恵泉の選手は動きが著しく緩慢な聖M学園の選手の間を抜けていき、楽々とシュートしました。
「……ひぃ〜〜」
なんとも情けない音のホイッスルですが、まあゴールが認められました。それからも聖M学園の選手の動きが戻ることはなく、恵泉は空前の大差で勝ったのでした。
キャプテンにインタビューをしてみましょう。
「勝因はなんでしょうか?」
「お姉さまの声が聞こえないよう、強力な耳栓をしたことです」
おしまい
みどりんさんGJ&……ごめんなさいorz
14 :
L鍋:2008/04/06(日) 02:08:03 ID:yokitloOO
みどりんさん、GJでした!
東の扉さん、スレ立てお疲れさま!
私は、荒らしのアクセス規制に巻き込まれて、PCからの書き込みが出来ません TT
前スレの埋めはおろか、SS投下も出来ません…
規制解除まで多分、一ヶ月くらい…
>>14 ご愁傷様です。1ヶ月もL鍋さんの作品が見れないのは、私も他の閲覧者の方々も辛いと思います。
まあ、今は何作でも下書きしておいて、規制解除されたら一気に投下してくだされば、
その利子分だけお互い楽しみが増えるでしょう。
瑞穂くんの聖誕祭にはギリギリ間に合いそうですから、そちらもよろしくお願いしますね。
それでは、シンデレラへのステップ、投下させていただきます。
〜由佳里編APPENDIX U シンデレラへのステップ Part1〜
由佳里と奏ちゃんの卒業式を見に行った後、僕は2人を鏑木邸に案内した。
由佳里は僕の婚約者として、奏ちゃんは僕の新しい妹として、この家で一緒に暮らすために。
その次の日……。
「これを全部運べばいいんだね」
「はい、でも瑞穂さんに手伝ってもらわなくても……」
「お姉さまに申し訳ないです」
僕の家の前には、たくさんの荷物があった。今日から婚約者として僕の家で暮らすことになる由佳里と、
鏑木家の養女としてうちで暮らすことになる奏ちゃんの荷物だった。
「薫子ちゃんと初音ちゃんもありがとうね。せっかくの休日なのにわざわざ手伝いに来てくれて……」
「いいえ、瑞穂さん、気にしないでください。休日でも、たいしてやることありませんから」
「そうです。それにお姉さま方のお役に立たせていただけるのは、私たちも嬉しいですから」
このことを聞いた薫子ちゃんと初音ちゃんは、なんと休日を返上して奏ちゃんと由佳里の引越しの
手伝いに来てくれたのだった。
「そう。ありがとう。じゃあよろしくお願いするよ」
「薫子ちゃん、ありがとうございます」
「初音、ありがとうね」
こうして、由佳里と奏ちゃんの部屋の荷物運びは開始した。
「あらあら、瑞穂さまったら、こんな4人もの美女を手玉に取られるなんて、隅に置けませんわねえ」
「母さま、人聞きの悪いこと言わないでください……奏ちゃんは身寄りがないから家で引き取ることにしただけで、
薫子ちゃんと初音ちゃんは2人の引越しの手伝いをしに来てくれているだけですから」
父さまと結婚し新しく僕の母さまになった楓さんが、相も変わらず僕をからかってくる。
「はいはい。それにしても、これで奏さまは、晴れて私の娘になるわけですよね?
これからは紫苑さまのように、奏さまを思いっきりぎゅっとできるかと思うと、感無量です」
母さまは早くも妄想モードにトリップしてしまっている。奏ちゃんも少し困惑気味のようだ。
「はいはい母さま、妄想しなくても、あとで思う存分やればいいですから。
じゃあ、初音ちゃんは僕と一緒に由佳里の、薫子ちゃんと母さまは奏ちゃんの手伝いをお願いね」
「はい!」
「これはこちらでよろしいでしょうか?」
「うん。お願いね」
僕と初音ちゃんの手伝いもあって、由佳里の部屋の引越しは予想より短い時間で終わった。
「瑞穂さん、ありがとうございます!」
「別にいいよ。夫婦が助け合うのは当たり前でしょ?」
「ふ、夫婦って、そんな……」
それを聞いた由佳里の顔が真っ赤になった。
「由佳里お姉さま、お顔が真っ赤です……」
初音ちゃんはそう言うと僕に羨望のまなざしを向けてきた。
「はあ……瑞穂さまがうらやましいです……私も男の方に生まれてたらな……」
「あ、初音もありがとう。初音もここに遊びに来てもいいから」
「えっ!? よろしいんですか!?」
1オクターブ高い声で初音ちゃんは聞く。
「もちろんだよ。ねえ、瑞穂さん」
「うん。いつでも大歓迎だよ」
それを聞いた初音ちゃんは、すっかり舞い上がっていた。この光景、なんかどこかで……。
「初音には、私が一子さんから見たお義母さまに見えてるのかな?」
そっか。幸穂母さまに憧れていた一子ちゃんだ。
「そうだね」
大きな荷物の整理も終わり、薫子ちゃんと初音ちゃんも櫻館に帰って、部屋には僕と由佳里だけ。
あとは小さな荷物を運ぶだけだった。
「ふふふ……」
「どうしたんですか、瑞穂さん?」
「だって、なんか、これで正式に由佳里が僕のお嫁さんになってくれるんだって感じがしたら、すごく嬉しくって……」
「もう、瑞穂さんったら……そうなんですよね。私、瑞穂さんのお嫁さんに……なれるんですよね」
それを聞いた由佳里は、頬を染めながら、そう感慨にふけった。
「また奏ちゃんとも一緒に暮らすことができるしね」
「そうですね……って、あーっ!?」
「どうしたの?」
突然大きな叫び声をあげる由佳里。どうしたんだろう?
「瑞穂さん、浮気しちゃダメですからね!」
「ぶっ……!」
続けられた由佳里の言葉に、僕は思わず噴き出してしまった。
「な、なんでそこで笑うんですかあ!?」
「だ、だって、そのセリフ、もう何度も言ってるじゃない。相変わらず心配性なんだから、由佳里は」
そう言って由佳里の頭をなでなで。
「由佳里以外の女の子を恋愛の対象としては見てないって、何度も言ってるじゃない。僕って、そんなに信用ないんだ?」
「な、ないですよお……だって、1年近くも私のこと、ずーっと騙してたじゃないですか……」
「うっ……ご、ごめん……」
由佳里が困ったような顔をしながら言ってくる。耳がすごく痛い。
「もう、そんなに困った顔をしないでくださいよ。冗談です。今さらそんなこと気にしてませんから」
「ゆ、由佳里の意地悪……」
笑いをこらえるように言う由佳里に、僕はちょっとスネた態度を見せてみた。
「………!!」
と、由佳里の表情が固まった。
「ど、どうしたの?」
「い、今の瑞穂さん、すっごく可愛かったです。どの女の子よりも……」
ガーン!!
「ど、どの女の子よりも……可愛い……」
「あっ! 瑞穂さん、元気出してください! 今の、取り消しますからっ……!」
いや、今さら取り消すって言われても、ただの機嫌取りにしか聞こえないんだけど……。
「あ、瑞穂さん、小物の片付け、手伝ってもらえますか?」
「う……うん」
由佳里が気まずそうに言う。でも、その方が気がまぎれていいよね。
僕と由佳里は、ダンボールを見渡す。
「ねえ由佳里、僕が開けてもいいのとか、開けてはいけないのとかある?」
「そうですね……」
僕が念のため聞いてみると、由佳里は何を詰めたのか思い出しているようだった。
「じゃあ、これとこれは私がやりますから、瑞穂さんはそれ以外から適当にお願いします」
これとこれには何が入ってるんだろう? でも、由佳里も知られたくないだろうし、そっとしておいた方がいいよね。
「この本は、どこにしまえばいいの?」
「あ、それはそっちにお願いします」
「このビデオは?」
「それはこっちに……」
由佳里の指示で、僕は部屋の整理を手伝っていた。
こうして見ると、由佳里の趣味がわかって楽しい。
「ふふふっ……」
「どうしたんですか、瑞穂さん?」
「ううん、こうして手伝っていると、あらためて由佳里のことが色々わかるな、と思って」
「み、瑞穂さん、何見てるんですか!?」
僕が言うと、由佳里は頬を染めて抗議する。何か見られたくないものでもあるのかな?
「由佳里、何勘違いしてるか知らないけど、僕は褒めてるんだよ。すごく女の子らしいなって」
「そ、そうですか……ありがとうございます……でも、やっぱりちょっと恥ずかしいです」
「そうやって恥ずかしがるとこも女の子らしくて可愛いよ」
「も、もう、瑞穂さんったら」
由佳里はますます頬を染めてそっぽを向いた。
「じゃああとはダンボール1つだけだから、ついでにそれもやってしまおうか」
僕が言うと、由佳里は途端に顔を真っ赤にしてダンボールの前に立ちふさがる。
「みみみ、瑞穂さんはもういいですよ! こ、これは後で私がやっときますから!」
すごくわかりやすいな、この慌てっぷり、これじゃあまりやがいたずら心を出してしまうのも無理はないかな。
見ててすごく微笑ましいんだもん。
でも、ここまで隠したがってるんだから、暴くのはかわいそうだよね。
「ふうん……僕にも言えないものが入ってるんだ。じゃ、誰にも中身を教えるわけにはいかないよね」
「そ、そうです……」
「口はしっかり塞いでおかないと。こんなふうに」
チュッ。
「………!!」
僕がキスをすると、由佳里は耳まで真っ赤になって固まった。
「あ……あっ……」
「ふふっ、じゃ、おやすみ、由佳里」
僕はそう言って部屋に戻っていった。頬に両手を当ててボーッとしている
可愛い由佳里の顔を目にしっかりと刻み込みながら。
ちなみに、この後由佳里は、僕のキスでダンボールの片付けをすっかり忘れてしまい、翌日までそのまんまだったみたい。
4月、とうとう待ちに待った日が来た。僕は、今日から翔耀大学3年になる。
それと同時に、僕の最愛の人がここに入学して来るんだ。
僕は、そわそわしながら校門まで迎えに来た。
「瑞穂さーん!」
と、僕に気づいたのか、僕の最愛の人が校門のところで手を振っているのが見えた。
僕は心持ち足取りが速くなるのを感じながら、近くまで駆け寄った。
「入学おめでとう、由佳里」
僕はそう言って由佳里を抱きしめる。
「あは、瑞穂さん、恥ずかしいです」
「だったら突き放せばいいんじゃない?」
抱き返してきた由佳里に、ちょっと意地悪。
「もう、相変わらず意地悪なんだからあ……」
由佳里は頬を膨らませながらそう言う。だけどそれがものすごく可愛い。
いつも由佳里をからかって面白がっていたまりやの気持ちがちょっとわかる気がする。
「ごめんごめん。ところで、ちゃんと覚えてるよね?」
「ええ。もちろんです。卒業式の日はまりやお姉さまたちに邪魔されましたからね。今度こそ約束は果たすんですから!」
「「入学式の日は、2人で手をつないで登校する!」」
僕たちの声がハモる。そんな些細なことさえも、由佳里と結ばれていることの証明みたいで、すごく嬉しい。
「「あははは……」」
「じゃ、行こうか」
「はい!」
そう言うと、僕たちは手をつないで校舎の入り口に向かった。
「……みんな、僕たちに見とれてるみたいだね」
「ここでこれから瑞穂さんの恋人として、4年間過ごせると思うと、とてもいい気分です。えへへ♪」
「もう、由佳里ったら。僕に2年間留年させるつもり?」
「え? あ、あはは、違いますよ。今のはちょっとした失言です」
普段はしっかりしているのに、こういうところは抜けてるんだよね。
照れながらそう言う由佳里の顔が可愛くて、僕は少し見とれてしまう。
「ふふっ、わかってます」
「あ、瑞穂さん、今日は大丈夫でしょうね?」
「あ、うん。紫苑さんたちには頼んでおいたから」
所変わって、大学のとある部屋……。
「あらあら、瑞穂さんたち、すっかり注目の的ですわね」
紫苑や貴子たちが窓から手をつないで登校する瑞穂と由佳里を見ていた。
「なあ紫苑、邪魔せんでええん? 紫苑なら偶然装って邪魔しそうやけど」
「まあ、そうしたい気持ちもありますが、高校の卒業式でも邪魔されたそうですから……
そう何度も邪魔するのもかわいそうでしょう?」
「そうですわね。まりやさんの次に紫苑さんにまで邪魔されたら、瑞穂さんたちもさすがにご立腹なさるでしょうからね」
貴子も微笑みながら紫苑に同調した。
高校時代はやや気まずかった2人だけど、貴子が瑞穂と2人で紫苑の婚約を破棄してからは、すっかり打ち解けて
仲のいい大親友になっていた。
まあ、その辺の事情はやるきばこ2に描かれている内容とほぼ同じなので割愛するが。
「仲がよさそうで結構だな。俺たちもそうありたいものだな、桃子」
「ちょっと隼人、なんでうちにふるん!?」
「うふふふふ……」
「えへへ、やっぱり瑞穂さんを独占しているみたいで、とってもいい気分です」
「みたいじゃなくて、独占しているでしょう? しっかりとね」
……以前にも同じ会話をした事があったな。
「そうでした。今でも私、瑞穂さんの婚約者になれるんだって思ったら、夢を見ているみたいになるんですよ?
初めて会ったときから、住む世界が違う人、私では手の届かない人だって思ってましたから」
そういえば、由佳里はずっとお義姉さんと、彼女に似てるらしい僕にコンプレックスを抱いていたんだったっけ。
「でも、由佳里もこの2年間、勉強もダンスも礼儀作法も、頑張ったじゃない。もう僕のことはとっくに追い越してると思うよ?
僕の方こそ、由佳里が僕のところに嫁いできてくれるのが夢みたいだって思ってるんだから」
「もう、瑞穂さんったら……」
「あはは……僕たち、案外似た者同士なのかもね」
「でも、それはそれで嬉しいです。そういえば、ダンスのことでちょっと悩みがあるんですけど……」
「悩みが? まあそれは家に帰ってからゆっくり話し合おうよ」
「そうですね」
由佳里とそんな会話を交わしながら校門を目指して歩いていく。
道行く人は、僕たちを見ながら何か話している。何を話してるんだろう? そう思って耳を傾けてみると……。
「あれ、鏑木の恋人じゃないの?」
「ウソ。あれって女の子じゃない。女同士で恋人なんて……」
「それに、鏑木と手を組んでるのって、そりゃちょっとは可愛いけど、鏑木に比べるとたいしたことないじゃないか。
妹じゃないの?」
「ムッ……」
その言葉に、僕はカチンときた。
「み、瑞穂さん、抑えてください。みんな羨ましいんですよ」
由佳里が小声でささやいてきた。そうだね。このくらいで由佳里をいやな気持ちにさせることもないし、聞き流すことにしよう。
「案外、新入生の方が男だったりして」
「それなら、ちゃんと男女の恋人になるな」
「新入生のって、なんとなくえっちそうじゃん。自分のお姉さんに欲情して、手を出しちゃたんじゃないの?」
「弟を甘やかして身体を許すお姉さんか。そういうのもいいかもな」
ガーン! ガーン!! ガーン!!
「姉さん、僕、もう我慢できない!!」「もう、えっちなんだからあ♪ しょうがない弟くんね」
そんなセリフが、僕と由佳里の脳内に響く。
僕と由佳里は、その場に手をつないだまま落ち込んでしまった。
「あらあら、お2人そろって落ち込んでしまわれていますわね」
「いったい何言われたんやろ?」
「さあ……」
「また失敗なされたようですけど、これは私たちには責任はありませんわよね?」
紫苑たちは、窓から落ち込んだ瑞穂たちを見ながらのんきにそう話していた。
「随分派手に落ち込んでいられましたわね」
僕が校舎の中に入ってしばらくすると、紫苑さんたちが来た。
「貴子さん……」
「でも、これは私たちのせいではありませんからね」
紫苑さん……言われなくてもわかってますってば。
「由佳里ちゃん、入学おめでとうございます」
「入学おめでとうございます、由佳里さん」
「紫苑さま、会長さん、ありがとうございます!」
紫苑さんと貴子さんのお祝いの言葉に、由佳里は元気いっぱいに返した。
「あらあら、すっかり高校時代の役職があだ名として定着してしまったようですわね」
「由佳里ちゃん、ここでは様付けで呼ぶのはやめていただけませんか?」
以前と同じ呼び方に、紫苑さんと貴子さんは苦笑い。
「あっ、ご、ごめんなさい!」
「まあまあ……それで、この娘は僕の婚約者の上岡由佳里」
僕は、隼人先輩と桃子ちゃんに由佳里を紹介した。
「か、上岡由佳里です、よろしくお願いします!」
「もうすぐご結婚なさるのですから、鏑木由佳里とご紹介してもよろしいと思いますが……」
紫苑さんがそう茶々を入れてくる。僕と由佳里は、それを聞いて真っ赤っか。
「し、紫苑さん!」
「し、紫苑さま! そんな……」
「紫苑さん……途中で言わなくてもよろしいのではありませんか?」
「ふふふふ……そうですわね」
「……えっと、話が脱線したけど、由佳里、こっちが僕の先輩の黒澤隼人さんと恋人の松下桃子ちゃん」
「黒澤隼人です。よろしく」
「松下桃子や。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします」
「それにしても、いつも瑞穂っちから話を聞いて気になっとったけど、2人はどこで知りおうたん?」
「そ、それは……」
「え、えっと……」
桃子ちゃんの質問に、僕と由佳里は返答に困ってしまう。本当のことなんて、とても言えそうにない。
「実は、瑞穂さんの幼なじみの御門まりやさんという方が聖央出身で、由佳里ちゃんはまりやさんの寮と部活の後輩でしたから、
その方の紹介で知り合ったのですわ」
紫苑さん、ナイスフォロー! これならウソをついていることにはならないし、
僕が女装してそこに通っていたことも言わないですむ。
「なるほどな」
「でも瑞穂っちってそんな経緯で知りおうた人とつきあえるほど軽い女には見えへんけどな」
桃子ちゃん、だから僕は男だってば!
「まあ、人によって色々ありますから、そこはツッコまないでくれると嬉しいんだけど……」
僕は冷や汗混じりに答えた。
「ふうん……そう言われるとますます知りたくなってくるんやけどな」
「桃子!」
「はいはいわかりました。隼人がそう言うならこれ以上聞かんことにするわ」
隼人先輩、ありがとうございます。
「そういえば由佳里、ダンスのことで悩みって?」
スランプなのかな? 通っているダンス教室から、特にそんな情報は聞いてないけど……。
「ええ。ダンスの先生が、私の実力からいくと世界を狙えるから、是非大会に出てほしいって言われて……」
僕は驚いた。由佳里のダンスは今や僕から見てもすごく上手だとは思っていたけど、
まさか世界レベルにまで到達しようとしていたなんて……。
「あら、それは驚きましたわね。私もダンスは幼い頃より習っておりますが、
そのような域までは考えたこともなかったですのに……」
「紫苑さんもそう思われますか? 私もまさか習い始めて2、3年で世界レベルになれる方がいらっしゃるなんて、
とても信じられませんもの」
僕も信じられないよ。たった3年でそこまでのレベルになれることもだけど、そんな人が僕を選んでくれていることも。
「へえ、すごいじゃないか」
「そんな人と友達やなんて、うちも鼻が高いわ」
隼人先輩と桃子ちゃんも、そう由佳里を褒めてくれる。
「出ればいいよ、由佳里。由佳里なら、きっといい成績を残せるから」
「あの……ですから……」
「心配しなくてもいいって。僕たち、みんな由佳里を応援してるから」
この時、僕は自分のことのように浮かれていた。それが、波乱を呼ぶことになるとも知らずに……。
To be continued……
とりあえず、ここで一区切りです。が、なかなか思ったようにいかずに困っています。
次は、由佳里ENDで語られているダンスの大会出場問題について徐々に書いていこうと思っています。
もしかしたら、由佳里ちゃんのお兄さんも登場するかもしれません。
彼と義姉の名前も考えてありますが、もし公式設定で登場してもブーイングはご容赦ください。
それでは、これで失礼します。お目汚し失礼いたしました。
29 :
なー:2008/04/07(月) 21:16:43 ID:wIvYN/Sm0
東の扉 さんGJです
SSのネタ、微妙に設定が違うけど被ったOTL
※国語が赤点寸前だった人間の文章です。慈悲と寛容のry
大学に通い始めて3日経ち、ようやく学校内の施設の配置がつかめ始めた頃ことだった。
その日、僕は聖央の寮に来ていた。昼間の一件を由佳里ちゃんに話すためだ。
「じつは、私の正体が貴子さんにバレてしまいました。」
「そんな・・・。大丈夫なのですか。その、瑞穂さんの家とは・・・。」
「大丈夫だと思います。貴子さんは信頼できますから。それで、少しお願いされてしまいました。
由佳里にはきちんと話しておかないとね。」
昼の事だった。
教室まで移動していると、目の前には見覚えのある後姿があった。
まさか・・・、貴子さん?
直接確かめる訳にもいかず、少し離れたところから、後ろをついていった。
何となくストーカーの様であまりいい気がしないんだけど、そうも言っていられないからね。
しばらく付いていくと、貴子さんの目の前に、柄の悪そうな2人組が立ちふさがった。
怒号が聞こえる。
「お高くとまりやがって、何様のつもりか知らんが、せっかく親切にしてやろうってのに、
無視とはどーいうこった。えー?」
そう怒鳴りながら、貴子さんの腕をつかむ。
「!!・・・。」
あまりの事に声が出せない様で、そのまま建物の陰に引きずり込まれていく。僕は慌てて駆け出した。
僕の正体がどうこう言っている場合ではなかった。
30 :
なー:2008/04/07(月) 21:17:35 ID:wIvYN/Sm0
「貴子さんを離しなさい。」
「!?瑞穂さん。」
「なんだと、この尼!」
「ヒュー。これは丁度云い。両方頂いちまおうぜ。」
じょ、冗談じゃない。なんで女扱いされるんだ。それはともかく一人が、掴み掛かってくる。
その手をひねり上げる。
「って、何しやがる。」
「何をしているというのは、あなた方のほうです。」
もう一人が殴りかかってくる。つかんでいた相手を殴りかかってきた方へ突き飛ばした。
「瑞穂さん危ない!」
「てめえ、やりやがったな。」
「これで、正当防衛が成立しますね。」
「そこ!何をしてる。」
その声に2人は逃げ出した。警備員が駆け寄ってくる。恐らく誰かが通報したのだろう。
「あ。あの、有難うございます。瑞穂さん。」
そういって抱き付いてきた。
「えっ!・・・これは。」
当然あると思っていたはずのものが胸に無いのだから、驚くのも無理は無い。
「お、男の方になられたのですか・・・?」
「いいえ、違います貴子さん。僕はもともと男です。今まで騙していて本当にごめんなさい。
なんでもしますから。」
冷静に考えれば、卒業から僅か数週間で性転換手術を行って大立ち回りなど出来るわけが無いし、
嘘を言ったところで直ぐにバレてしまうだろうからね。暫く沈黙が続く。
「・・・。私、秘密にしますから。・・・その、瑞穂さんに助けられてもらって、嬉しかったのです。」
「有難うございます。僕の事は後ほど、お話しを聞いて頂けますか?」
「はい。」
31 :
なー:2008/04/07(月) 21:19:20 ID:wIvYN/Sm0
「まずは、この件の事を片付けないと。」
そう言って、上着を差し出した。正直、目の毒だ。思わず学園祭のハプニングを思い出してしまう。
「その、羽織ってください・・・。」
「えっ、あっ・・・・。きゅ〜。」
おそらく、貴子さんもその事を思い出してしまったのだろう、失神してしまった。
「わ、わ、貴子さん。」
その後、貴子さんの回復を待って警備員に事情を話すことになった。一応、学内のことなので、
どうやら、うやむやにされそうだが、噂話はすぐに広まるだろう。何といっても、鏑木と厳島の組み合わせだからね。
その後、貴子さんに、僕の事、つまり、聖央でのこれまでの経緯を話した。
事情聴取のときには、僕が鏑木ということを貴子さんに知られてしまったので、全て正直に話す事にした。
その後の会話で、貴子さんは、厳島の家を出て一人暮しをしているという事。
いくらか銀行の個人講座に貯金してあるというが、決して多くは無い金額で、かなり節約を迫られている様だった。
そう云う金銭的な理由で、生徒への融資や奨学制度の充実したここの大学にいる事は偶然ではなかった。
「瑞穂さんの行為を学院が容認されていた理由はよく判りました。この事を秘密に致しますわ。
私を貴方の商売敵の厳島と知った上で、何度も助けていただいたのです。
それなのに、恩をあだで返す事など出来るはずが無いではありませんか。」
「貴子さん・・・。親の仕事なんか関係ありませんから・・・。僕は、ただ貴子さんを大切な友人と思っていますから。
それに、僕の行為は謝って済むというものではありませんから。」
「そうですか・・・。それでは、一つお願いが・・・・。交換条件というわけではないのですが・・・、
その、暫く、ご一緒させて頂けませんか?」
「えっと、どういう事なのでしょう。」
32 :
なー:2008/04/07(月) 21:20:41 ID:wIvYN/Sm0
「実は、その・・・私、男の方が苦手なのです。・・・、今のところ大丈夫な男の方は瑞穂さんだけですから・・・。
何といったら良いのでしょうか、男の方に馴れる為の練習台になって頂けませんか?」
「その言い方だと誤解されてしまいますよ。お話しは判りました。あっ、それから、僕は約束してますから、その、
なんというか。」
「由佳里さんですか。」
「えっと。はい。」
「ふふふ、判りましたわ。由佳里さんから瑞穂さんを奪おうなんて思ってませんから。」
という、経緯を由佳里ちゃんに話した。
「普段、私といてほしいそうです。勿論、貴子さんは私と由佳里ちゃんの事を知った上でお願いしていますから。
その、貴子さんは男の方が苦手だからそうです。」
「えっと、その、どうして瑞穂さんが・・・。」
「あは、あはははぁ・・・はぁ〜。・・・私の容姿がね・・・。それで、馴れる為の練習台になってほしいのだそうです。」
「あっ、ごめんなさい。それから、貴子お姉さまの事わかりました。」
「ありがとう。由佳里ちゃん。絶対約束を破ったりはしませんから。」
「はい。私も、もう何があっても瑞穂さんを離しませんから。」
33 :
なー:2008/04/07(月) 21:22:57 ID:g2AwlDZ70
その後、何事も無く何日か過ぎた。皆に美少女組みなどと言われる以外はね。
「その、瑞穂さん。大学の方はいかがですか。」
「ええ、いろいろと楽しいですよ。まず学生の自治会というか、学際の実行委員になってしまいました。
無趣味ですから、やっていみたい事とかありませんでしたから、サークルに所属するつもりおありませんでしたし。」
「そうでしたか。・・・それで、その・・・貴子お姉様は・・・。」
「えっと、知り合いもいませんから、選択科目以外は一緒にいる事が多いですね。」
「うううう」と、小さくうなる由佳里。
「・・・。そうだよね。今まで由佳里ちゃんを騙していたわけだから、信用無いよね。ごめんなさい。」
「違うんです。その、瑞穂さんの事は信じています。こうして、お話しをして下さっているじゃありませんか。
・・・、その・・・私・・・。ヤキモチなんです。謝るのは私の方なんです。」
「ありがとう。」
「え?」
「やきもちを焼いてくれたっていう事は、私の事を好きでいてくれるからでしょう。」
僕は、由佳里を抱きしめた。
「瑞穂さん・・・」
「はい、ここまで、後は勉強が済んでからです。」
流石に、まだ外も明るい事だしね。
「瑞穂さん意地悪ですぅ〜。」
「すねない、すねない。」
34 :
なー:2008/04/07(月) 21:23:24 ID:g2AwlDZ70
コンコンというノックの音。
「はい、どうぞ。」
「奏なのですよ。お茶はいかがですか。」
「あっ、ずっる〜い。また奏ちゃんにお茶を淹れられちゃった。」
「すぐにお茶を淹れてさし上げない、由佳里ちゃんが悪いのですよ〜。では、お姉様ごゆっくりなのですよ〜。」
「もう、奏ちゃんったら。」
由佳里は拗ねてはいるが、奏がお茶を淹れる事を拒む事はしなかった。
奏の境遇を知っているからに他ならない。そんな奏からささやかな絆を断ち切ってしまうことなど出来る筈もなかった。
「私としては、奏ちゃんのお茶はおいしいですし、由佳里ちゃんとこうしてお話しが出来る時間が増えるわけだから、
良いかなと、思っているのですけど。」
「確かに、お茶を淹れたら奏ちゃんのほうが上手ですし、瑞穂さんの好みを良く知っていますからね。でも、やっぱり悔しいです。」
「そう言えば、由佳里の妹はどうしたの?」
本来なら、寮の仕来りで由佳里の妹がお茶お入れに来てくれるはずだけど。
「まだ、部活動を選ぶために仮入部していると思いますから、もう少し遅くなると思います。」
「じゃあ、なんで奏ちゃんが?」
「えっと、それは『お姉様』がお見えになれば、すぐに噂で広まりますから・・・。」
そうだった、この学院では噂話が広まるのが恐ろしく早いんだった。
「それですぐに駆け付けてきたんだ。・・・・そうなると、ここに来るのは夜遅くか、土日曜日だけの方がいいよね。」
「ちょっと残念だけど、しかたないかなぁって。」
「そう言えば、奏ちゃん強くなったね。真っ先に、新入生の娘に話したんだってね。」
「ええ。私も驚きました。って、なんで知ってるんですか?」
「一応、これでも奏ちゃんの『おねえさま』ですからね。妹の事は気になりますから。」
「なんか羨ましい・・・。」
「大切な妹だから、手出しできませんから・・・。」
「あっ。もう、瑞穂さんずるいです。」
35 :
なー:2008/04/07(月) 21:24:40 ID:g2AwlDZ70
更に数日して、由佳里ちゃんの態度がよそよそしかった。
原因は僕が貴子さんのと一緒にいる事だという事わかっているけど・・・。
大学を替える訳にも、貴子さんを邪険にする事も出きるはずも無かった。
「どうしたのですか、瑞穂さん。お顔の色が優れませんが・・・。悩み事ですか。」
「ええ、といっても、僕がどうこう出来る物ではないのですが。」
「由佳里さんですか?」
「えっ・・・はい。」
「うまく行っていないのですか?」
「・・・いえ。ただ、どう言って良いのでしょうか。また、あの娘を傷つけてしまわなければ良いのですが・・・。
大学での事を話すと不機嫌になってしまいし、かといって、約束ですから黙っている訳にも行きませんし。」
「私の事ですか・・・。」
「・・・。」
「瑞穂さんらしいですね。私の事など放って置いてくださればいいのですよ。」
「ですが、貴子さん・・・。」
「瑞穂さんは真正直過ぎます。そうですね。私に任せてくださいませんか。」
そういうと、悪戯っぽく笑った。
36 :
なー:2008/04/07(月) 21:26:57 ID:GeCRqKr00
貴子は聖央の寮に来ていた。
「上岡由佳里さんはいらしゃいますか?お話がしたいのですが。」
「はい。どうぞあがってください。」
由佳里の部屋に案内されると、奏が紅茶を運んできた。
「貴子お姉様どうぞなのですよ。では、失礼致しますのですよ。」
貴子は礼を言って紅茶を受け取った
「・・・由佳里さん。私はあなたに謝らなければなりませんね。瑞穂さんを取り上げる形になってしまって。」
「えっと、その・・・。」
「瑞穂さんは貴方との仲で悩んでいましたから。瑞穂さんは私の事など、ほおっておけば宜しかったのにね。」
「私、嫉妬していたんです。不安だったんです。頭では瑞穂さんは悪くないと判っているのに・・・。感情が押さえられなくて。」
「でしたら、ちゃんと謝らないといけませんわ。」
「はい・・・。」
「ところで、好きだった陸上部をお止めになったそうですね。その理由を伺っても宜しいでしょうか?」
「はい。えっと・・・その、瑞穂さんと同じ大学に入るためです。旦那様の話していることが理解できなければ、
相談にも乗って差し上げられませんし、支えにもなれませんから。ですから、同じ大学に入る為に勉強しないといけませんから。
私、お莫迦ですから。」
「そうですか・・・。それなら生徒会にお入りなさい。」
「えっ?どういうことですか、生徒会なんかに入ったら、勉強に追いつけなくなってしまいます。」
「そうね、確かに、勉強する時間は減ってしまいますわね。ですが、瑞穂さんは、いずれ組織の上に立たれる方です。
ですから、あなたが組織運営の事を知っていれば、瑞穂さんの役に立てるはずでは無いでしょうか。
それは、勉学と同じ位必要だと思いますが、違いますか・・・。」
「・・・。」
「それに、私も生徒会をこなした上で大学に入っているのですよ。お出来にならないとは言わせませんわ。
そうでなくては、私は認めませんからね。」
由佳里は少し考えて、きっと貴子を見つめ返した。
37 :
なー:2008/04/07(月) 21:27:40 ID:GeCRqKr00
「私、絶対みとめさせますから。」
「そう、その意気ですわ。お励みなさい由佳里さん。生徒会は辛いだけではありませんよ。がんばった分、
瑞穂さんに勉強をしっかりみてもらえますわ。その分一緒にいられる時間が長くなるはずですからね。」
「あ・・・その、えっと・・・。」
「そうそう、私も瑞穂さんの事が好きなのですよ。瑞穂さんには内緒ですよ。
ですが、私は知ってのとおりジュリエットですから・・・。貴女の事を応援しますわ。」
「貴子お姉様は、お優しいのですね。」
「そう感じられるのは、きっと瑞穂さんのおかげなのでしょうね。ふふふ、瑞穂さんは真正直過ぎますから、
私がそっとガードしておきます。ですから、必ず受かりなさい。」
「はい。絶対に入りますから。」
「それと、瑞穂さんは私と居た方が誘惑が少なくて済みますわ。」
「えっ?」
「考えて御覧なさい。瑞穂さんは皆にお優しいのですよ。ですから、皆さんが瑞穂さんをお好きになられるのは、
無理ないことなのですね。お付き合いをお願いされる事なんてしょっちゅうですわ。瑞穂さんが断るにも、
私がいれば相手が勝手に解釈して諦めますからね。それとも、私は瑞穂さんと一緒にない方が良いのでしょうか。」
貴子は、全てを話していない。『男性からのおつき合いのお願い』という事だ。
「そんな・・・。貴子お姉様。瑞穂さんの事お願いします。」
「では、がんばってね。ふふふ」その後、呟いた。
「わたくしも、ずいぶん姑息になったものです。ただ、瑞穂さんと一緒にいたいだけですもの。」
「貴子さんお見えになっていたのですか?」
「ええ。瑞穂さん、由佳里さんから、『許可』を頂きましたから、ふふふ。」
「申し訳ありません。わざわざ。」
「みずほさん。その、ごめ・・・。」
僕の口で、由佳里ちゃんの口をふさいだ。
38 :
なー:2008/04/07(月) 21:29:10 ID:GeCRqKr00
「えっ?」
「謝る必要はないわ。嫉妬するくらい私の事を好きでいてくれたのでしょ。」
「あらあら、毒気に当てないでくださいね。」
顔を真っ赤にする由佳里ちゃん。
「貴子さんには返って迷惑をおかけしました。申し訳ありません。」
「いいえ。そんな事はありませんわ。もともと無理なお願いをしたのは私の方ですから。」
「あの・・・、貴子お姉様は家を出られたそうですが、これからどうなさるつもりですか?」
「ふふふ、せっかくですから瑞穂さんの所へ就職できればと思っているのですが・・・。まあ貸しもあることですし。
それくらいの見返りがあっても罰はあたらないと思いますから。」
「敵いませんね、貴子さんには。私としても、優秀な方を探す手間を省けて助かりますから。」
「ええ!?それじゃあ、勉強の手を抜けないじゃないですかぁ。」
「あははは。まぁ、由佳里は由佳里なりに努力すれば良いのですからね。」
「そうね、手抜きして瑞穂さんに嫌われない様にね。瑞穂さんの事をお好きな方は何人も・・・。
そうなったら何方かが瑞穂さんを頂く事になりますから。ふふふ。」
「由佳里ちゃんの事を嫌いになんかなりませんから。」
「はいはい、ご馳走様・・・。お邪魔虫はこれで退散致しますわ。では、ごゆっくり。」
そう言って、貴子さんは帰っていった。
「瑞穂さん・・・。貴子お姉様って素敵ですね。」
「どうしたの?」
「なんだか、瑞穂さんの恋人としての自信なくしちゃうから・・・。何故、私を選んでくれたの?
貴子お姉様の事を理解なさっているじゃないですか。」
「さて、なぜでしょう?信じられないというなら・・・。」
「きゃっ。」
お姫様抱っこしてそのまま、ベットにむかった。
「瑞穂さん、はずかしいです・・・。」
「あっ、嫌だったの?」
「いえ・・・。・・・あの・・・可愛がってください。」
「ふふふ、わかりました、ゆかりん。」
39 :
なー:2008/04/07(月) 21:30:24 ID:GeCRqKr00
エピローグ
秋のゴールデンウイーク、丁度、僕が寮に遊びに来ていた時のことだった・・・。
携帯電話が鳴る。貴子さんからだ。
「瑞穂さん、紫苑様を助けてください。」
「え、どういう事ですか?」
あまりに唐突な内容なので、面食らってしまった。
「電話ではなんですから、お会いできませんか?」
「いま、寮にいますが。ここでは駄目ですか。」
「できれば・・・、勝手なお願いなのですけど、瑞穂さんのお父様にお会いしたいので。」
「判りました。駅の方で待ち合わせましょう。では、後程。」
「どうかしたのですか。」
「ええ、詳しい事は判りませんが、貴子さんから紫苑さんを助けてほしいと。それで、貴子さんに会いに。」
「わかりました。行って下さい。多分、私じゃあ、役に立てないと思いますから。」
「ごめんなさいね、由佳里ちゃん。」
「その代わり、紫苑様を助けてくださいね。」
「ええ、もちろんです。あっ、この事は奏ちゃんに内緒ですよ。きっと悲しみますから。」
「まったく、瑞穂さんは皆にも優しいんだから・・・。でも、そこが良いんだと思います。」
お目汚し失礼いたしました。
40 :
みどりん:2008/04/10(木) 22:01:47 ID:t8TGmk0s0
笠地蔵
あるところに瑞穂・貴子という夫婦がいました。二人は鏑木テキスタイルという洋品店を営んでいましたが、なかなか売れず、いつも貧しい生活でした。それでも二人の仲はとてもよいものでした。
明日はお正月です。お正月にはおいしいお料理を頂きたいですが、先立つものが無くそれは難しいことでした。そこで瑞穂は店にある洋服を街に売りに行くことにしました。
「それじゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃい。いっぱい売れるといいですわね」
瑞穂は歩いて街に向かいます。街に行く途中に聖マリア像が立っています。瑞穂はお参りをしていきます。
「幸せに暮らせますように………」
街について瑞穂は洋服を売りはじめます。
「洋服はいりませんか〜?洋服はいりませんか〜?」
でも、この年の瀬に洋服が必要な人はあまりいません。結局1枚も売れませんでした。
瑞穂はとぼとぼと家路につきます。と、雪が降ってきました。
「あ、雪だ。早く帰らないと………」
瑞穂が聖マリア像の前を通ると、像の上に雪が積もっていました。
「マリア様も寒いでしょう。これをどうぞ」
そういって、雪を払ってからフードのついた外套を像に着せてあげました。
家について、瑞穂は貴子に言います。
「ごめんね、貴子。1枚も売れなかった」
「仕方ないですわね。来年はきっといい年になりますわ」
「そうだね……そうそう、マリア様が寒そうだったんで、外套を着せてあげてきたよ」
「それはいいことをなさいましたね」
二人は恵泉女学院の出身ですから、マリア様を深く信仰しています。そして、ふたりは粗末な夕食を食べて、床につきました。
41 :
みどりん:2008/04/10(木) 22:02:23 ID:t8TGmk0s0
夜、二人が愛し合っていると、ずずっ………ずずっ………と変な音がします。
「何だろう?」
「怖いですわ……」
二人がしっかり抱き合ってぶるぶる震えていると、そのうち音が止まりました。そして、どさっと音がしました。それから、またずずっ………ずずっ………という音が次第に遠のいていきました。
瑞穂は起きて外を見てみます。すると、家の前に箱がおいてありました。そして、遠くにマリア像が歩いているのが見えます。マリア様が瑞穂たちに贈り物をしてくれたようです。
「貴子、来てごらん。マリア様が何かくれたみたいだよ」
「本当ですか?何が入っているのかしら?」
瑞穂は箱を家の中に入れ、ふたを開けてみました。すると…………中には瑞穂に着せるための女物の服が山のように入っていました。
「いらないよ、こんなもの!!まりや」
おしまい
42 :
みどりん:2008/04/10(木) 22:05:44 ID:t8TGmk0s0
出会い?
僕が貴子さんに出会って、数ヶ月。今では僕は毎日学校で貴子さんの肌の感触を楽しむ、そういう関係になっている。
貴子さんは最高だ。
マシュマロのように柔らかい肌が僕に吸い付くようだ。
特にお尻の感触がたまらない。
触るととろけるような柔らかさ、でも崩れることはなくて触っていてとてもいい感じだ。
貴子さんは安心して僕に体を任せている。
僕は貴子さんの体をしっかりと支える。
僕らの肌のふれあいは毎日のように繰り返されている。
僕らがこのような関係にあることを知る人はいないだろう。
そこまで僕は貴子さんに惚れ込んだ。
僕はこのまま貴子さん一筋に生きていく、そう思っていた。
でも、ある日その自信が少しぐらついた。
ひょんな出来事をきっかけに、まりやと肌を合わせることになってしまったのだ。
まりやは貴子さんとは別の素晴らしさがある。
運動で鍛えた張りのある肉体。
特に太ももの感触が素晴らしい。
貴子さんを越す感触はないと思っていたのに、これは新たな発見だ。
一瞬まりやに心を乱されたが、それでも、僕は意思をしっかり持って貴子さんに気持ちを戻した。
まりやには悪いけど、やっぱり僕が一番好きなのは貴子さんだ。
まりや、これからは自分の人生は自分で決めてもらいたい。
これは運命なんだ。
僕と貴子さんは結ばれるべくして出会ったのだ。
貴子さん、難しいことかもしれないけど、卒業後も僕を使ってください。
学校の貴子席の椅子の独り言でした。
おしまい
東の扉です。
新しいSSを思いつきましたので、投下させていただきます。
よろしくお願いします。
なお、この話も一応オリキャラが登場しますので、ご注意ください。
私のSSでは、他にもオリキャラが登場した話がいくつかありましたが、
いずれも実在の人物とは一切関係ありませんので。
それでは、次スレからスタートさせていただきます。
「お、お姉さま、助けてください!!」
ある日、由佳里の部屋に初音が泣きながら訪れた。
「初音、どうしたの?」
「そ、それが……」
そう言って、初音は自分の置かれている立場を話し始めた。
〜ゆかりんのお料理教室〜
「新入生お料理コンテストに、1−F代表で出ることになった!?」
「はい……決めるのが私が風邪で学院をお休みしてる日で……いつの間にか私が代表に決められてしまっていました……」
話を聞いた由佳里は、呆れるというか、驚くというか、そんな表情で口を大きく開けて言った。
新入生お料理コンテストとは、聖央内部で開かれるイベントで、聖央の1年生がクラスごとに代表を決め、
代表者1人が課題と自由、2つの料理を作り、優勝を決めるというものだった。そして優勝者とそのクラスには、
エルダーから賞状と賞品が手渡されることになっている。
「それで、初音にお料理の経験はあるの?」
「いえ……まったく……」
予想していたが、その通りの答えに、由佳里は大きくため息をついた。
「はあ……なんでよりによってそんな人を代表に選んだんだか……」
「それが、前年度の優勝者の妹だから、私に任せておけばなんとかなるだろうって……」
「そ、そんないい加減な……」
由佳里はもはや怒りを通り越して呆れてしまった。
「それで、初音は私にお料理を教えてもらいたいわけね」
「は、はい……」
「よし、妹のピンチに、このお姉さまが一肌脱ぐといたしますか!」
由佳里は、まりやのマネをして言うと、初音は嬉しそうに涙を流す。
「あ、ありがとうございます!」
「はあ……どうしてうまく切れないでしょう?」
早速料理を習うことになったん初音は、早くもスランプだった。
素材に包丁を入れても、どうしても切りたい場所と少しずれてしまう。
「正確に合わせてるはずなのに……」
「あ、初音、正確に合わせちゃダメだよ」
「え……?」
由佳里の言葉に、初音は疑問いっぱいの顔。
「包丁っていうのは、刃の先が端っこについているから、包丁の真ん中に合わせてたら、どうしてもずれてしまうの。
切りたい場所を、刃のついている方の端っこに合わせなければ……」
「あ……なるほど」
初音は得心がいったようだった。
「この場合、均等に切りたいのなら、真ん中の部分を包丁の端っこに合わせて……」
包丁を持つ初音の手に、由佳里がそっと手を重ねた。
由佳里の手のぬくもりが、初音にじかに伝わってくる……。
「そして、いっさいの迷いを捨てて、一気に切るの」
そう言って、由佳里は初音の手を持って一気に素材をスパッと切った。
「ホントです……すっごく上手に切れています……」
「ね? コツがわかれば、あとは練習すればうまくなるんだよ」
「そうですね。自分の手でできるようになりたいです」
「大丈夫だよ! 初音なら」
こうして初音は、夜遅くまで由佳里に料理を教わった。
「じゃあ、もう遅いから、ここまでにしておこっか?」
「そうですね。遅くまでありがとうございます。お姉さま」
「気にしないで。妹の悩みを解決するために、お姉さまがいるんだから」
「あ、ありがとうございます! それではお姉さま、おやすみなさい」
「おやすみ、初音。明日もびっちり鍛えてあげるからね」
初音はそれを聞いて、重ねられた由佳里の手のぬくもりを思い出し、頬を染めながら部屋に帰っていった。
そして、3日後……。
「基本的なことはかなり出来るようになってきたわね」
「あ、ありがとうございます……」
今日も初音は、放課後から由佳里に料理を教えてもらっていた。
「じゃあ、次の段階に入るわね。よりおいしい料理を作る方法だけど……」
それから由佳里は、初音に材料の選び方や保存の仕方、などなどを教えていく。
初音は、しっかりとメモにとって真剣に聞いていた。
夕食の時間……。
「主よ、今から我々がこの糧をいただくことに感謝させたまえ。アーメン」
「アーメン」
いつものように由佳里が音頭を取り、夕食の時間がスタートした。
「そういえば初音、毎日由佳里さんに料理を教わっているそうだけど、どう?」
「新入生お料理コンテストの代表に選ばれてしまったそうですけど、うまくいきそうですか?」
情報を入手した奏と薫子が、心配そうな顔で初音に聞いてきた。
「えっと……意外と出来そうな気もします……由佳里お姉さま、さすがに料理がお好きなだけあって、
教え方もすごくお上手なんですよ。今まで私が考えたこともなかったことまで、指摘していただいて……」
「もう。初音ったら。褒めてもなんにもでないわよ?」
「い、いえ、ハトとか花吹雪とかが出ても困るんですけど……」
由佳里がくすぐったそうに言うと、初音がそう返してきた。
「………」
「ぷっ……あははははは……」
一瞬の沈黙の後、初音以外のみんなが大笑い。
「えっ? えっ?」
「もう、初音、由佳里さんは手品師なわけ?」
「今、一瞬初音ちゃんが褒めて、由佳里ちゃんがハトとか花吹雪とかを出すところを想像してしまいました……」
「奏ちゃん、何想像してるのよ?」
由佳里が冷や汗混じりに苦笑。
「まあ、あたしらには何にも出来ないけどさ。精一杯がんばんなよ」
「初音ちゃん、頑張ってくださいね」
「奏お姉さま……薫子ちゃん……ありがとうございます……」
優勝は、まず間違いなく1−A代表の酒井日向子(さかい ひなこ)だろう。彼女は、高級レストランの跡継ぎ娘で、
昔から料理を習っており、またその家柄ゆえ、高級食材の確保も思いのままだから。
でも、勝てなくてもいい。由佳里お姉さまだけじゃない。応援してくれるみんなのためにも、頑張らなければ。
初音はそう思った。
そして、コンテストの前日……。
「これで、私が期間内で教えられることはすべて教えたわ。あとはあなた次第よ、初音」
「はい! お姉さま、ありがとうございました!」
「そうだ! もし優勝できたら、私からも君にご褒美をあげちゃおう!」
初音を励ますために、おどけてまりやのマネをする由佳里。
初音もまりやと対面したのはわずかな時間だったが、その空気はしっかりと読み取っていた。
「あはは……ありがとうございます。優勝は1−Aの酒井日向子さんで決まりでしょうけど」
「決まりってことはないと思うよ? 初音の料理の腕も、初心者とは思えないほどになってるし」
「でも、日向子さんは、それに加えて高級食材も手に入れてるんですよ? どう考えても、優勝はムリです……」
初音の弱音を聞き、由佳里は真剣な表情で語る。
「じゃあ聞くけど、初音、昨日私の作った味噌汁、どうだった?」
寮母さんが休みの日は、由佳里が料理を担当することになっている。
その日由佳里が作った味噌汁の味は、寮生全員を驚かせたものだった。
「すごくおいしかったです……とてもお味噌汁とは思えないくらい上品な味で……
何か特別なお味噌をお使いになられたのですか?」
「ううん、そこらで売ってる普通の味噌だよ? それにこしょうとみりんを加えただけ」
「そ、それだけで、あんな味に……わかりました。高級品を使うだけが全てではないのですね!?」
「そういうこと。あと、何よりも大切なのは、作る人の心よ」
「心……ですか?」
そうは言われても、昨日今日料理をかじったばかりの初音に、料理の心なんてわかるはずもない。
「まあ、そう言ってもわからないだろうから、私から最後のアドバイス。
初音が一番食べてほしい人に食べさせるつもりで作って?」
「食べていただきたい方に……ですか?」
「そう。ご両親でも、お友達でも誰でもいいから、一番食べてほしい人に、ね」
由佳里はそう言って、部屋に戻っていった。
「一番……食べていただきたい……方に……」
初音は、そっとそうつぶやいた。
そしてコンテスト当日、講堂で行われる新入生お料理コンテスト。
今までも順調に試食が進み、残るは1−Fのみとなった。
評価は、1−Aがダントツで上だった。壇上では、すでに酒井日向子が勝ち誇った顔をしている。
「それでは最後に、1−F代表、皆瀬初音さんのお料理を試食したいと思います」
そして、審査員の教師たちは、初音の作った課題料理のミネストローネと、自由料理のハンバーグを試食する。
「………!!」
試食した瞬間、教師たちの目の色が変わった。何も言わずに、箸を進めていく。
そして全ての料理の試食が終わった後で、審査会議の後、優勝者の発表に移った。
「それでは、今年度の新入生お料理コンテストの、優勝者を発表したいと思います」
初音は、不思議と落ち着いていた。
優勝できなくてもいい。自分にやれることはすべてやったんだから、どんな結果が出ようと悔いはない。
それが初音の想いだった。
「今年度の優勝者は……」
観客席では、奏、由佳里、薫子……そして初音の友人達が、不安そうに初音を見ていた。
クラスメイト達も、何も考えずに行った人選の行方を、固唾を呑んで見守っている。
「……1−F代表、皆瀬初音さんです!!」
(えっ……!?)
今、私の名前が呼ばれたような……初音が呆然としていると、1−Fから、寮生たちから、おびただしい歓声が聞こえた。
(私、本当に優勝したの? ウソみたい……)
「どうして!? どうして私の料理が、あんなまともに料理をしたこともないような方に!!」
初音が呆然としていると、自分の優勝を確信していた日向子が、審査員に食って掛かっている。
審査員の教師たちは、日向子の料理に心が伴っていなかったこと、
それが初音の料理には満ち溢れていたことを冷静に説明した。
がっくりとうなだれる日向子を尻目に、初音はクラスメイトや寮のみんなの下に向かった。
その夜……。
「それにしても、まさか本当に優勝してしまうとはね」
「私も、いまだに信じられません」
呆れたように言う由佳里に、初音は君枝から受け取った自分への賞品を見ながら同意。
「初音には、優勝したらご褒美をあげるって言ったわね」
「そういえば……それで、ご褒美とは?」
そう初音が聞くと……。
「ふむ、今日一日、学院内屈指の美少女由佳里様が、初音くんと一緒に寝て進ぜよう」
「えっ!? よろしいんですか!?」
意地悪を言ったつもりの由佳里に、初音は目を輝かせた。
(じょ、冗談なのに……それに、屈指の美少女に対してツッコミはなし?)
一方、由佳里は口を半開きにしたまま、冷や汗をかいた。
「う、うん、そんなんがご褒美でよければ……いいわよ」
「う、嬉しいです!! では、早速準備してきますね!!」
そう言って自分の部屋に戻る初音。それを見て由佳里は、素直に可愛いな、と思った。
「本当に正直、恥をかかせずに済ませてあげれればいいと思ってたけど、
まさか優勝候補の酒井さんに勝つとは思わなかったよ」
由佳里の部屋のベッドの上で、一緒に横になりながら、由佳里と初音は語り合っていた。
「でも、日向子さんもこれを機にお料理について見つめ直して、もっと腕を磨いていただきたいです」
「前にバカにされてたと思うけど……初音は優しいわね。そういえば、お料理からもそれが感じられたって、
審査員の先生方が言ってたけど……」
「由佳里お姉さまに食べてもらうんだって思ったら、今まで見えなかったことが、不思議なくらいに見えてきたんです……
どうすれば、よりおいしくいただいてもらえるかが……」
「………!!」
それを聞いた由佳里は赤い顔をしたが、その後、すごく愛しい目で初音を見る。
「ふうん……じゃあ、初音を優勝させたのは、私への愛情なわけだ」
「そ、そうです……」
「初音みたいな可愛い娘が、そこまで私のことを慕ってくれてるとはね。姉冥利に尽きるよ」
「そ、そんな……」
お互い赤い顔のまま、しばらく会話を交わしていたが、由佳里が、次に初音が静かに目を閉じた。
翌日の朝……。
「う……んっ……」
初音が目を覚ますと、横では由佳里がすでに目を覚ましていた。
「おはよう、初音」
由佳里が優しく挨拶をすると……。
「ゆ、由佳里お姉さま……きゃ……きゃあああああっ!!」
初音は顔を真っ赤にして、脱兎のごとく逃げ出した。
「ど、どうしたんだろ?」
由佳里は、呆然と見送るしかなかった。
お昼に、屋上に続く階段で……。
「ねえ、初音、今朝はいきなり逃げたけど、私、初音に何かしたの?」
今朝の事が気になった由佳里は、初音を呼び出して聞いてみた。
「い、いえ、違うんです……お姉さまの寝顔が間近にあったから……その……思わずキスしてしまって……」
それを聞いた由佳里は、ホッとすると同時に、自分も昔した事があったな、と思い返した。
「ふうん……そうなんだ……それってこんなふうに?」
チュッ。
由佳里はそう言って、初音の唇にキス。
「………!!」
初音は耳まで真っ赤になった。
「あら? 私も初音にキスしちゃったわね。じゃあ、これでおあいこね?」
「あああ……あの……」
「このことは、2人だけのひ・み・つ。いい?」
「あ、は、はい……」
「ふふっ、じゃあ、これで許してあ・げ・る」
「は、はい……ありがとうございます……」
初音はそう言うとふらふらと帰っていった。
(ふふふ、初音ったら……可愛いわね)
なんか、まるで瑞穂にラブラブしてたときの自分みたいだ。由佳里はそう思った。
(私、あの時の瑞穂お姉さまになれてるかな? なんて♪)
そう自己陶酔に浸ってみる。
でもね、残念だけどなれてませんよ、由佳里ちゃん。なりたいなら、そこで思いっきり落ち込まないと、ね。
Fin
以上です。
このSS、由佳里ちゃんがお料理を教えるシーンを書きたかったのですが、思ったほど書けなかったです……orz
相手は、瑞穂くんにして瑞穂くんとラブラブにするか、初音ちゃんにするか迷いましたが、こうなりました。
この選択は正解だったのかな……?
まあ、ともあれ、お目汚し失礼いたしました。
unnko
56 :
みどりん:2008/04/13(日) 20:50:35 ID:ErkiWUO20
勝負なさい!
「私たちの代表と勝負なさい!」
屋上にやってきた奏を慕う生徒が、薫子に対し宣戦を布告します。それに対して………
(1) 裏切り
「皆さん、ありがとうございます。私のことを大事に考えてくださって。私も困っていたのです」
奏が皆に言う。
「か、奏おねえさま、ソレハヒドスギマス・・・」
薫子の涙が止まらない。
(2) 種目
「その勝負、受けてたつ」
売り言葉に買い言葉で喧嘩を買ってしまった薫子である。勝負の種目は翌日伝えられるとの事であった。
さて、翌日のこと、奏の部屋に薫子がやってきた。
「奏お姉さま」
「なんですか、薫子さん」
「負けました」
「え?今日は種目を聞くだけなのではないのですか?」
「ええ、そうなのですが、あれはどんなに努力しても勝ち目がありません」
「薫子さんがそんなに弱気になるなんて、珍しいですね。いいですわ、明日一緒に皆さんの誤解を解きに行きましょう」
「申し訳ありません。ご迷惑ばかりおかけして………」
「それで、薫子さんがあっさり負けを認めた種目とは何なんですか?」
「百人一首です」
「百人一首!!」
「ええ……」
57 :
みどりん:2008/04/13(日) 20:50:59 ID:ErkiWUO20
回想シーン-------------------------------------------------------
「今日は勝負の種目を伝えに参りました」
「何でも受けてたつ」
「いい心がけですわ」
「それで、勝負は何で……?」
「百人一首ですわ」
「百人一首?………あのカルタ取り?」
「まあ、そういえばそうですが、我が校から全日本のクイーンを狙っている人もおりますから、レベルはそれほど低くないですわ」
「ふーん」
薫子の関心はまだそれほど高くない。
「一度部活動を見てみてはいかがでしょうか?」
「そうさせてもらえると助かる」
そこで、全員で百人一首の部室に移動していった。
丁度試合をしているところである。
「あ、薫子さん、そこに立っていると危ないかもしれませんわ」
「危ない?」
「ええ……」
m(バーーーーーーーン!!)「ヒッ!」
むらさめの〜〜〜〜〜〜つゆもまだひぬ〜〜〜〜〜〜まきのはに〜〜〜〜〜〜
きりたちのぼる〜〜〜〜〜〜あきのゆふぐれ〜〜〜〜〜〜
きりたちのぼる〜〜〜〜〜〜あきのゆふぐれ〜〜〜〜〜〜
一文字目の子音が聞こえたか聞こえないかのうちに、札を取りに手が動き、バーンと音を立てて札が弾き飛ばされ、薫子のすぐそばを飛んでいった。薫子は余りの出来事に思わず声をあげてしまった。
「どうですか?薫子さん」
「す、すごい………です………ね」
やe(バーーーーーーーン!!)
へむぐら〜〜〜〜〜〜しげれるやどの〜〜〜〜〜〜さびしきに〜〜〜〜〜〜
ひとこそみえね〜〜〜〜〜〜あきはきにけり〜〜〜〜〜〜
「それでは勝負は一週間後ということで」
「え、ええ………」
------------------------------------------------------- 回想シーン終わり
58 :
みどりん:2008/04/13(日) 20:52:13 ID:ErkiWUO20
「あれは、勝てませんね」
「ですよねぇ」
(2-2) 種目2
「奏お姉さま、また負けました」
「今度は何の種目ですか?」
「囲碁です」
「あれも、勝てませんね」
「ですよねぇ」
(3) 剣道
「断る!」
薫子はきっぱりと拒絶する。
「………薫子さん、それはひどいのではないですか?」
屋上に押しかけた生徒たちは、一瞬の絶句の後、そう反論する。
「あなたたちの代表ということは私はその分野に素人だということだ。そんな不公平な試合は受け入れられない」
まあ、正論である。そこで、おしかけてきた生徒たちは議論を始める。
「それでは、薫子さんの得意な種目だったらよいのですね」
「ええ、剣道なら受けてたつ」
「ですが、それですと私たちが素人。ハンディを頂きたいですわ」
「何なりと」
薫子、大した自信である。
「それでは私たちは10人選手を用意いたします。一人でも有効をとったら私たちの勝ちということでどうでしょうか」
「いいでしょう」
そして試合当日
「「「「「「「「「「やーーーーーーー!!」」」」」」」」」」
「ちょ、ちょっと、同時に来るなんて!…うわーーー!!」
さすがに10人同時に相手にするのは難しかったようである。宮本武蔵への道は遠く、険しい。
薫子さん、散々ですが嫌いじゃないです。
小ネタグッジョブ!
こーゆーのも面白いですね
最近、呼び方が違うのが目立つ気がする。
とりあえず、奏は「薫子ちゃん」な。
内容が良くても、呼び方が違うと評価が下がるよ。
一部で良いから、原作をプレイし(読み)直して確認してからにして欲しい。
それが嫌なら、ここで聞きなよ。
>61でわ親切なあなた
皆さんのためにすべての呼称リストを作ってあげたらどうでしょう。
一々聞いてから書くのだと職人さんの時間をとらせてしまうので。
言い出した方からやっていただくべきだと思います。
と思ったら、
>>61は、自分が作るって宣言したのか。
>>61 >>60は適切な指摘をしただけなのに、
なぜ「じゃあお前がリスト全部作れ」になるのかが分からん。
言い出した方からやっていただくべき?
そういうお前がやれ。
65 :
名無しさん:2008/04/17(木) 17:29:52 ID:N0dDYNJM0
>>64 いや、
>>61は自分に作れと言っている。
つまり、自分が作ります、宣言。
66 :
名無しさん@初回限定:2008/04/17(木) 21:07:02 ID:zeP74TN+0
>>60は適切な指摘をしているが、表現がきつい。
とりあえず、「薫子ちゃん」な は 「薫子ちゃん」にしたほうがいいでしょう な。
内容が良くても、表現が悪いとカチンとくるよ。
少しでいいから礼節をもって書いて欲しい。
それができないならここに書くなよ。
>>66 おいおい、むしろ、あれでカチンとくるようなら、お前は、ここに来るなと言いたい。
初期〜10スレ目あたりまでは辛口のアドバイスは結構あった。
最近は馴れ合いっぽい雰囲気でスレが進行していたから、キツく見えるかもしれないが
今回の
>>60は雰囲気を悪くする物とは言えない。むしろ的確なアドバイスと言っても良い。
叩かれたと思って書くのを止めるか、助言されてより良い作品を書こうと思うかは書き手次第。
少しのことでヘタレるようならそこまでの人。
69 :
名無しさん:2008/04/17(木) 23:19:49 ID:1gwRcPZg0
まあまあ。最近は過疎ってることですし、すこし柔らかな口調でお話ししましょう。
お姉様の子羊たるもの、優雅に礼節を持って進行していきましょう。
う〜ん。ネタがないなぁ・・・
70 :
みどりん:2008/04/18(金) 00:23:47 ID:rAG3CB7L0
まあ、指摘があればどんどん言ってください。できるだけ直すようにしますから。
とはいうものの、所詮は素人なのであまり高望みはしないでくださいね。
鈍感カ?(どんかんか?)
鏑木テキスタイルでは3ヶ月に1回社内のファッションショーが催される。これは新人デザイナーの出来をまりやが確認するというもので、ショーというよりは教育や、商品の確認に近いかもしれない。ずいぶんと丁寧な会社である。
ちなみに、このショーに出せるだけでも有望であることの証明である。大多数の作品はデザイン画の時点でまりやに捨てられている。ドレスを作るのはそれなりに労力がかかるので、余程仕立てて大丈夫と思うものでなければドレスに仕立てられないのである。
だからショーといっても大体毎回2〜3作品あるかどうか、というものである。それをまりやを始め社員が確認するのだ。
まだオートクチュールに作品を出せるようなデザイナーは育っていないが、プレタポルテなら何とかなるようなレベルの者は出てきた。作品群を揃える実力はないので、ショーを開くにはまだ道のりが遠いが。
ショーに出せるような作品であれば、何とか商品化したいものであるので、一部修正して量産品として売るような道もある。いずれにせよ、このショーで評価されれば一応社内でデザイナーとしてみなされることになる。
モデルも社内から選ばれる。デザイナーはまりや以外であれば大体誰でも選ぶことが出来る。同じ人間を選んだ場合はデザイナーの卵通しのじゃんけんで決める。瑞穂は一番人気である。
出張でいないというような場合を除いて、ほぼ毎回モデルになっている。可愛そうに………。本人はもう女性モデルになることに達観している。あきらめている、とも言う。
一度、男性服を瑞穂にデザインした猛者がいたが、どういうわけか全く似合わずそれ以降は毎回女性モデルである。そのときは服自体はよかったのに一般受けしなかったのが残念である。
そのときの服は鏑木テキスタイルのメンズ部門で一番売れている量産品となっている。似合わなくてもまりやの服に対する評価はしっかりしている。
71 :
みどりん:2008/04/18(金) 00:25:53 ID:rAG3CB7L0
貴子はモデルの二番人気である。モデルとしては背が低いのが難点であるが、もともと美人なので何を着てもそれなりに似合う。服が引き立って見える。
まあ、先ほどの例もあるようにまりやは純粋に服だけをみるので、そのような姑息な手段は通用しないが。
女性用水着はさすがに瑞穂には着せられないので、貴子に多く着せられている。非常に嫌がっている。本当に嫌がっている。まあ、運命とあきらめるしかないかもしれない。
ちなみに、今回は貴子はモデル候補から外されている。まりやの作った作品を彼女に着せるためである。
さて、ショーの様子を見て見よう。
「そうね、なかなかよく仕上がったんじゃない?色遣いもう少し春らしく工夫して、あとドレープの形もすっきりしたほうがいいわね」
まりやの声が響く。
「シャツに使ったのは紬かしら?面白いわね。デニムほどカジュアルではないけど、フォーマルすぎない感じね」
「でも、紬は布自体が量産品に使うには高めだからどういうターゲットにどのくらい売るか練らないと」
服を着ている瑞穂の発言である。モデルはしていても社長としての見方を忘れていない。さすがは社長も出来るモデルだ。
「あと、素材や柄はどう?これは絹でシンプルな藍の縞模様だけど、これだったらプリントでも似たようなのが出来ちゃうじゃない。シンプルすぎるとデザインをアピールできないよ」
「そうね、シンプルなのもいいけど、色や柄はバリエーションを増やしてラインアップしたほうがいいわね。素材は……絹の光沢もいいけど、古くなったときの藍染の木綿も捨てがたいわ。
あとでこれを作ったデザイナーと相談するわ。美由紀さんでしたっけ?」
「はい、そうです」
デザイナーの卵の美由紀が答える。
「素材は一つに統一してね」
瑞穂は注文をつけるのを忘れない。
「うん……わかったわ。スカートは」………
それからも作品の評価を続けた。そして、2作品目の評価を終えて、瑞穂がみんなにアナウンスする。
「さて、皆さん、今日はもう一作品、というかまりやの作品を見てもらいたいと思います。貴子さ〜ん」
72 :
みどりん:2008/04/18(金) 00:26:22 ID:rAG3CB7L0
舞台奥から貴子がおずおずと歩いてくる。
「室長〜〜、お美しいです〜!」
観客から声が飛ぶ。
「どう?貴子。いい花嫁衣裳でしょ?」
まりやがにやにやしながら貴子に自分の服の自慢をする。
「どどどどうして、こんな服を着なくてはならないのですか?」
そう、貴子の着ていた服はウェディングドレス。そう、瑞穂が貴子に着せるためにまりやに発注したドレスだ。
「どうして……って、本番で着る衣装の仕上がりを見てみないと……」
瑞穂が言う。
「え?本番?」
貴子が不思議そうに聞き返す。
「そうです、僕と貴子さんの結婚式です。貴子さん、僕と結婚してください」
「瑞穂さん………そんな………」
貴子はそこまでいうと涙をぽろぽろと流し始めた。瑞穂はそんな貴子の左手を取って、持っていた指輪をはめる。それから貴子をしっかりと抱きしめてキスをする。
パチパチパチ……
「おめでとー」
「社長ー、室長ー、おめでとうございます」
従業員の間から、拍手と二人を祝福する声が聞こえてきた。
「貴子、瑞穂ちゃん……よかったわね。おめでとう」
まりやも二人を祝福する。
73 :
みどりん:2008/04/18(金) 00:27:42 ID:rAG3CB7L0
さて、その晩のこと………。まりやは会社を出てから、愛車を運転し、まっすぐ部屋に戻ってきた。鞄を机に放り出し、はぁ、とため息をついて、服を着たままベッドの上にどさっと横たわる。
そして、そのままじっとその体勢を維持している。と、そのうちにまりやの眼に涙が溢れてきた。
「………瑞穂ちゃん……残酷よ。……あたしだって、瑞穂ちゃんのことが好きだったのに。貴子より、ずっとずっと前から好きだったのに。どうして、貴子なの?どうして、あたしじゃないの?
どうして、瑞穂ちゃんをあきらめるための服をあたしがデザインしなくてはならないの?あの服は本当はあたしが着たいの………」
そう、貴子のためにデザインはしたが、それはもう瑞穂が手の届かないところに行ってしまうことを意味しているのだ。アメリカから帰って数ヶ月。
瑞穂の心が貴子に向いているのは分かっていたが、それでも何となく貴子と張り合いたくなっていたものだ。
それがとうとう貴子を選ぶというメッセージをあからさまに含んだ服のデザインで決着がつけられてしまった。瑞穂をあきらめるアイテムを自分で作らなくてはならない、まりやにとってこれほど残酷なことはないだろう。
それでもまりやはプロである。瑞穂からの依頼をきっちりとこなした。そして、服の完成と共に瑞穂をあきらめた……つもりだった。
でも、いざウェディングドレスを纏った貴子を見ると、やっぱり自分は瑞穂が好きだったんだと思い知らされてしまう。思いは涙を作る。時が瑞穂を忘れさせてくれるだろうか?
一方、鏑木家では………
「これでまりやが他の人を探してくれるようになればいいんだけど……」
鈍感な振りをしている瑞穂の独り言があった。
おしまい
新たにSSが完成しましたので、投下させていただきます。よろしくお願いします。
〜白鳥の湖 おとボク編〜
昔々、あるところに、セーオー王国という、豊かでもなければ貧しくもない、1つの王国がありました。
ある日、ミズホフリート王子は、退屈なパーティーから抜け出して、近くの森にある湖に来ていました。
「前に狩りの途中で偶然見つけたけど、やっぱりきれいだな……」
ミズホフリート王子は、それ以降ここがお気に入りの場所になっていました。
「あれ? あんなところに小屋なんてあったかな?」
王子は、ふと感じた違和感を確かめるため、小屋に近づくと、中から数人の男が出てきました。
「なんか貴族とその従者って感じだけど、別荘にしては小さすぎるし、どうしたんだろ?」
ミズホフリート王子がそう思っていると、なんと男たちが見る見るうちに女性の姿になっていきました。
「………!!」
驚く王子に向こうが気づくと、王子は冷静になってどういうことなのか尋ねてみました。
「私はイマツクシの領主の娘で。タカコットと申します。私たちは悪魔ロットマリヤの呪いで、
男性の姿に変えられてしまいましたの。こうして夜の間だけ、女性の姿に戻る事ができるのです」
「タカコット様は男嫌いですので、男性の姿に耐えられないので、こうして我々とともに身を隠すことにしたのです」
「呪いを解くには、18歳の誕生日までに、皆さんの前で、どなたかから永遠の愛を受けるしかないのです」
「明日が、タカコット様のお誕生日なのです。それを過ぎたら、タカコット様は永遠に男性の姿でいるしかありません。
たとえ愛と慈悲の女神シオーヌ様でも、呪いを解けなくなってしまうのです」
従者たちが、口々にそう説明します。そしてミズホフリート王子は、タカコット姫と話をすることにしました。
「心配いりませんよ、タカコット姫。僕が、悪魔の呪いを解いてさしあげますから」
「王子様……」
2人は話しているうち、いつしか両想いになっていました。そして、明日必ず呪いを解くと約束を交わしました。
そして、翌日の婚約者お披露目パーティーの席……。
ミズホフリート王子の側には、仕立屋により美しくメイクされたタカコット姫がいました。
「王子様、私の得意料理です。どうぞ召し上がってください」
タカコット姫は、そう言って王子にラーメンを差し出します。
「………!!」
ミズホフリート王子は、あまりのおいしさに腰を抜かしてしまいました。
(ハンバーグ味のラーメンなんて、ずいぶん斬新な発想だけど、さすが得意料理だけのことはあるよ)
「では言います。僕は、この姫に永遠の愛を誓います」
その誓いは、城のみんなに祝福されました。
「では、誓いのくちづけを……」
そうして、ミズホフリートが姫にキスをしようとした、まさにその時……。
「………!!」
玄関から、飛びこんできたのは、ボロボロの姿のタカコット姫でした。
「タ、タカコット姫! これはいったい……」
タカコット姫は、ロットマリヤの魔法に邪魔されて、ようやくここにたどり着いたのでした。
「私が本物のタカコット。そこにいるのは偽者です。悪魔ロットマリヤの妹、ユカリールですわ!」
「なんだって!?」
なんと、ミズホフリート王子は、タカコット姫に永遠の愛を誓ったつもりで、まったくの別人に誓ってしまっていたのです。
「もう私は2度と元の姿には戻れません。さよなら、王子様……」
傷心のタカコット姫は、そのまま逃げるように城から立ち去りました。
「タカコット姫!」
ミズホフリート王子は、慌ててタカコット姫の後を追います。
しかし、そこへ仕立屋に化けていたロットマリヤとユカリールが行く手を阻みます。
「ミズホフリートちゃん。あんたはユカリールに永遠の愛を誓ったのよ。それを忘れないでね」
「くっ……!」
「それにこのセーオー王国では同性愛は禁じてるんでしょ?」
「仕方ないな。ユカリールもタカコット姫に似てることだし……」
こうしてミズホフリート王子は、タカコットをあきらめ、ユカリールと結ばれたのでした。
なんてオチではありません。
「黙れ! よくも騙したな! そんな姑息な手で、僕たちの愛が壊れると思っていたら、大間違いだ!」
ミズホフリートは、ロットマリヤとユカリールを振り切って、タカコット姫の許に向かいます。
「愛と慈悲の女神シオーヌ様! あなたの大いなる力で、タカコット姫の呪いを解いてくださいませ!」
ミズホフリート王子は、そう必死に祈ります。タカコット姫のために。
「残念ですが、それはもう不可能です。悪魔の呪いは、私の力でも解けなくなってしまいました……」
女神シオーヌは、無念の気持ちを表情に出しながらそう答えました。
「それならば! 私の性別を入れ替えてくださいませ!」
「お、王子様!」
「なっ!」
その発言に、タカコット姫もロットマリヤもびっくりしました。
「それならば、ちゃんと男女のカップルになるはずです! お願いします!」
「ミズホフリート王子。あなたは本当にバカな人ですわね。そこまでタカコット姫だけを愛するなんて……」
それを聞いた女神シオーヌは涙を流しながらも、笑顔で言います。
「わかりましたわ。それならば可能です。ミズホフリート王子の性別よ、今ここに転換せよ!」
ミズホフリート王子は、女神シオーヌの放つ光に包まれました。そして光が収まると……。
「お、王子様……」
そこには、女神も恥じらう絶世の美女が、純白のドレスに身を包んでいました。
「さあ、タカコット姫……いえ、タカコット王子……でしょうか? これで、私たちは男女のカップルです」
「ミズホフリート王子様……い、いえ、ミズホ姫様……」
「タカコット王子、改めて誓います。私は生涯、永遠にあなただけを愛することを……」
「ミ、ミズホ姫……様……」
タカコット王子は、歓喜の涙を流しながら姫を抱きしめました。
それから王国はタカコット王子とミズホ姫との結婚が正式に行われました。
突如現れた絶世の美女の姫に、国をあげての祝辞が催されました。
それどころか、絶世の美女ミズホ姫の姿を一目見ようと、国内はもちろん、外国からも観光客が後を絶たず、
セーオー王国は、信じられないほどの繁栄をほしいままにしました。
最初は男性嫌いだったタカコット王子も、ミズホ姫の姿に心打たれ、いつしか男でいることに抵抗を感じなくなり、
幸せな人生を送りました。
ちなみに、悪魔ロットマリヤとユカリールはどうなったかというと……。
「ユカリール殿、本日は外国と同盟を結ぶ重要なパーティーですから、お料理はお任せしてもよろしいかな?
あなた抜きではどうにもならなくて」
「もっちろん! 私にどーんとお任せあれ! ですよ!」
ユカリールは、ミズホフリート王子に料理の腕を買われ、宮廷料理人としてスカウトされました。本人も、
「人を不幸にするより、お料理作ってる方が全然楽しいもん!」
というわけで、この国に災厄をもたらすことそっちのけで、宮廷料理人としておいしいお料理を作る傍ら、
日々おいしいハンバーグの研究に没頭しているようです。
ロットマリヤは、女性化したミズホフリート王子の衣装選びに夢中になり、それがミズホの災厄につながるので、
ミズホ姫の災厄=素敵な衣装を選び続けることに熱中するあまり、他に災厄をもたらすことについては、
完全に忘れてしまいました。今では、ミズホ姫専属の仕立屋兼メイク係として宮廷で働いています。
そして次々と新しい衣装を披露せざるを得なくなったミズホ姫の人気はうなぎのぼりになる一方で、
それがらみのお土産も売れに売れて、ミズホクッキーやミズホケーキ、果てはぬいぐるみや人形、
銅像まで立てられる始末です。
こうして、女神シオーヌと2人の悪魔のおかげで、この国は誰もが幸せいっぱいの日々を送ることになりましたとさ。
めでたしめでたし。
「僕は幸せじゃなーい! めでたくもなーい!」
Fin
以上です。
ニセの結末に、みどりんさんはじめ貴子さんファンの方は憤慨されたかな?
それとも、私の安い手品なんてもうお見通しかな? と考えています。
それにしても、私の中では由佳里ちゃんはヒロインNo.1ですし、
まりやのことも好きな方なのに(というか、嫌いなキャラはいない)、なぜこうなってしまうのか……。
まあ、2人とも最後は幸せだからいい……のか?
ともかく、お目汚し失礼いたしました。
83 :
みどりん:2008/04/24(木) 23:22:19 ID:TV/YUCX00
星の王女
「………なんだって」
「そうですの。ずいぶんふざけた女ですわね。自ら星の王女と名乗るとは」
今日、僕は奏ちゃんに偶然であって、そこで今の恵泉の話を色々聞いてきた。それを貴子に話していたところだ。で、冒頭の台詞はケイリ・グランセリウスという子の話をしたときの貴子の感想だ。
「まあ、夢があっていいんじゃないの?」
「高校生にもなって王女様とは、少しおかしいですわ」
「でも、外国人だそうだし……なんでも今まであまり集団活動になじみがないらしいから……」
「……どういう人間か調べてみましょう」
「いや、そこまでしなくても……」
「問題ありませんわ。今は何でもパソコンから調べられる時代ですから」
「そういう個人情報はどこにも載っていないと思うのだけど……」
「当たり前です。そういう普通のところでなくて、アメリカの諜報機関のデータベースを直接覗きに行くのですわ。今は世界中の個人の電話、メール、防犯カメラの映像、何でも収集され、解析されているのですわよ」
「そ、そうなの?」
「そうですわ。だから、その女の通話内容ですとか、そのほか発信した記録などは結構簡単に調べられるのですわよ。それを調べればどんな人間か、大体分かりますわ」
「……ちょっと、怖い時代なんだね。でも、そんなデータベースが普通に覗けると思わないのだけど」
「もちろんです。だから、色々テクニックを駆使しなくてはならないのです。こうやって……パスワードはこれで迂回して……次はこの辺でいいかしら?……」
「何やってるの?」
「データベースに入るルートを探しているのですわ」
「ど、どうして、そんなことを知ってるの?」
「べべべ別に、厳島グループはこうやって情報収集して企業を大きくしてきたわけではありませんわよ」
僕は、ああ、そう、と心の中で思った。貴子も、時々余計なことを答える癖は直っていないみたいね。
84 :
みどりん:2008/04/24(木) 23:26:27 ID:TV/YUCX00
「これで、繋がりましたわ」
「本当?」
「あとは、キーワードを入れて、情報を落として、目ぼしいデータを取ればお終いですわよ」
「ふーん」
「ケイリ・グランセリウス……ですか。女ですとKaley Glanzelius……こんな感じかしら……ほ〜ら、一杯出てきましたわ」
「………す……すごいね」
「同姓同名がいるかもしれませんが。それで、フィルターをかけて……あら?」
「どうしたの?」
「変ですわ……どうしてFIBやMI6に情報が多くあるのかしら。何か危ないことをしている人なのではないかしら?」
「み、見てみない?」
「そ、そう………ですわね……………………これ・は……」
「なになに?……え〜っと、セリウス星系を支配するグランセリウス家の第2皇女、地球に極秘に来訪中。現在日本在住………星の王女様だね」
「……ですわね」
おしまい
85 :
みどりん:2008/04/24(木) 23:35:06 ID:TV/YUCX00
東の扉さん
白鳥の湖面白かったです。単純明快で。貴子さんが男になってしまったと言うのは始めてみる気がしますね。
男だったと言うのはどこかにあった気もしましたが。
わたしも、また昔話を書こうと思います。
それでは
86 :
みどりん:2008/04/25(金) 22:49:38 ID:j9WaOAn40
一寸法師
あるところに瑞穂・紫苑という名前の夫婦がいました。二人には奏というこどもがいましたが、いつになっても背は低いままでした。
「まあ、元気だからいいんじゃない?」
瑞穂がいいます。
「そうですね。ムギュ〜としやすいですものね」
紫苑も同意します。
奏は高校に入る年になりました。背はやっぱり低いままです。最初は元気に通っていましたが、そのうち問題がおこりました。セイトカイ山に棲んでいる鬼貴子に目をつけられてしまったのです。
「そのリボンは大きすぎますわ。校則違反です。すぐに対処なさい!!」
少し、怖いですね。奏は困って瑞穂と紫苑に相談しました。二人は考えた末、一計を案じることにしました。瑞穂がリボンをつけてみることにしたのです。
「貴子さん、私のこの姿は校則違反でしょうか?」
鬼貴子はリボンをつけた瑞穂に見とれ、鼻血が出そうになりました。が、それを理性で押しとどめるとこういいました。
「いいえ、瑞穂さん。全然問題ありませんわ」
「では、同じリボンを奏ちゃんがつけたら校則違反というのは法の公平性に欠けるのではないでしょうか」
鬼貴子、言い返せません。議論に負けてしまいました。
「わかりましたわ。そのリボンは問題ないことにいたします」
そして、こう付け加えました。
「セイトカイ山に伝わるこの秘宝を貸して差し上げましょう。これは打ち出の小槌といって、おおきくな〜れと念じながら振ると大きくなるというものですわ」
貴子さん、結構優しいところがあります。これで奏の背が伸びれば何も問題なしですね。
87 :
みどりん:2008/04/25(金) 22:50:08 ID:j9WaOAn40
さて、その晩のこと………
紫苑は奏を前に立たせ、打ち出の小槌を振ります。瑞穂もその様子を見ています。
「おおきくな〜れ、おおきくな〜れ」
紫苑は念じながら打ち出の小槌を振ります。が、全く奏に変化がおこりません。
「おかしいですね。全然変わりませんわ。……おおきくな〜れ、おおきくな〜れ」
一生懸命小槌を振ります。と、そのうち瑞穂が騒ぎ始めました。
「イタッ!、イタタタタッ!!」
紫苑は何事かと思って瑞穂を見てみると、瑞穂の股間は大根のように大きくなっていました。足が三本生えているようです。どうも別のものが大きくなってしまったようですね。それを見た紫苑は………
「奏、もう寝なさい!」
「え〜、まだ早いのですよう」
「そんなことだから大きくなれないのです!」
と、妙な屁理屈を言って奏を部屋に押し込んでしまいました。それから瑞穂を寝室に連れて行き………
「瑞穂さん、私が小さくして差し上げますわ。早く来て!!」
もう、瑞穂は痛くて仕方ありません。すぐに入れることにしました。
「それじゃあ、紫苑さん、入れるね」
「ええ………………あぁ、おっきい!!おっきすぎる!!!ぁああああぁぁぁぁぁ………………!!」
大根のようなサイズのモノがグイグイ入ってきたので、紫苑はあっという間に絶頂を迎えてしまいました。大根サイズを全て銜えるとは大した器です。そして、大きくなったものをギューっと絞ったので、瑞穂も射精を迎えました。
「ゥアアアァァァ〜〜〜〜〜〜ッ………ハァ……ハァ………楽になった」
消防車のように勢いよく液体を放出して、瑞穂のモノはようやく元のサイズになっていきました。瑞穂はがっくりと紫苑の上に覆いかぶさりました。あれだけ多量の液体が体から出て行ったら疲れますよねぇ。
88 :
みどりん:2008/04/25(金) 22:50:47 ID:j9WaOAn40
その次の日のこと………瑞穂がセイトカイ山に来ました。
「貴子さん、この打ち出の小槌は返します」
「お役にたちましたか?」
貴子は聞きます。
「ひどい目にあいました」
瑞穂は独り言のように答えます。
「え?」
「いえ、何でもありません。余り効果ありませんでしたね」
「そうですか。お役に立てず申し訳ありませんでした。大きくなるはずだったのですが……」
「折角の貴子さんのご好意だったのに残念です」
「また、何かありましたら仰ってください」
貴子は謙虚に答えます。
瑞穂が去るのを確認して、別の者がセイトカイ山にやってきました。
「貴子さん、お願いがあるのですが……」
「何でしょうか、紫苑様」
「あの、打ち出の小槌をもう一度貸していただけますか?」
「ええ、構いませんわ。ですが、今度はただというわけには参りませんわ」
貴子はニヤッと嗤って答えます。紫苑は心配そうに聞きます。
「……おいくらなのでしょうか?」
「お金ではございません。私にも瑞穂さんを分けてくださいませんでしょうか?」
実は打ち出の小槌は何でも大きく出来るわけではなかったのです。特定のモノだけ、大きく出来る能力があったのです!!
「み、瑞穂さんを分けるとはどういうことですか?」
紫苑は慌てたように答えます。それに対して、貴子は冷静にこう答えます。
「紫苑様、昨晩はお一人で気持ちいい思いをしたのではありませんか?」
「な……何のことを仰っているのかわかりませんが」
「そうですか。それは残念ですわ。それではこの話はなかったということで……」
「ちょ、ちょっと待ってください、貴子さん……仕方ありませんわ。背に腹は代えられませんから」
「それはよかったです、紫苑様。それでは今晩」
「ええ、今晩」
「今晩は、私からでよろしいですね」
「ふっ、受け入れるしかありませんわね」
恵女……間違いました、悪女二人はにんまりと嗤いを交わしました。
89 :
みどりん:2008/04/25(金) 23:05:45 ID:j9WaOAn40
その晩からは瑞穂に対して打ち出の小槌が二回振られるようになったそうです。振り過ぎで破裂しなければよいのですが………
おしまい
来週の世界の昔話・日本の昔話は
ピノキオ
天狗のうちわ
の二本立てです。お楽しみに! (本当か?)
おまけ
何日か後のことです。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
「あぁ〜ぅ、あぁ〜ぅ、あぁ〜ぅ、あぁ〜ぅ」
瑞穂と貴子が交わっています。
「貴子さん、そろそろ替わってください」
紫苑が催促します。
「もう…ちょっと…もう…ちょっと……」
貴子が答えます。紫苑は少しむっとしました。
「そんなことを言っている二人はこうして差し上げますわ」
そういって、打ち出の小槌を取り上げると………
「おおきくな〜れ、おおきくな〜れ」
そう言って打ち出の小槌を振り始めました。
「あああーーー、紫苑さん、止めて!止めてぇーーー!!!」
「紫苑様、ごめんなさい、止めてください、止めてください!裂けるーーー!!」
瑞穂の体の一部が貴子の体の中でどんどん大きくなっていってしまいました。二人とも体が破壊されそうな感じになりました。二人とも涙を流しながら、大量の脂汗をかいています。そして………抜けなくなってしまいました。
「あら………これは困りましたわね」
紫苑は一人涼しい顔でそういうと、そのまま二人を放っておいて眠ってしまいました。瑞穂と貴子の運命や如何に?
90 :
みどりん:2008/04/25(金) 23:06:24 ID:j9WaOAn40
大変お見苦しい作品、失礼いたしました。
毎度のことではありますが。
それではまた。
>>85 遅くなりましたが、ありがとうございます。
後から気づいたのですが、誤解を生む書き方でしたね。
私は、「タカコットをあきらめ、ユカリールと結ばれたのでした」のところで、
「なに傷心の貴子さんをほっといとんじゃあ!!」と憤慨し、
「なんてオチではありません」で、「なあんだ」とホッとしたのかな、と思ったわけです。
ちなみに、ifの舞台裏です。
「シオーヌ様、王子様女性化計画、大成功ですね」
「ええ。ロットマリヤさん、ユカリールさん、ご協力ありがとうございました」
「いえ、気にしないでください」
「水の魔王ケーナッツオ様と、大魔王ミチコブリーナ様のご意向でもありますから」
「それにしても、王子様との会話の時のシオーヌ様の演技、素晴らしかったですね」
「お互い様でしょう。侍女のキミエーヌさんたちに『呪いが解けなくなる』とハッタリを言った時のあなたの気迫……」
「まあそれはそれとして、ミズホ姫のきれいな衣装、これからも次々とご披露いたしますから、楽しみにしててくださいね」
「ええ。期待いたしておりますわ、ロットマリヤさん」
1人の女神と2人の魔王に目をつけられたミズホ姫の受難は、生涯続きそうである。
読み返していて気づきましたが、L鍋さんがアクセス規制に巻き込まれて20日……
ということは、単純に考えてあと10日すれば久しぶりにL鍋さんの作品が楽しめるんですね……!
今から待ち遠しいです!
93 :
みどりん:2008/04/26(土) 23:33:54 ID:hsuMHqxY0
セイレーン
「今日は金曜日ですから、セイレーンの君がお昼の放送の当番ですわ」
「そうですわね。毎週楽しみですわ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ここは某警察署の警察署長室。
「お呼びでしょうか、署長」
交通課の課長が署長に呼ばれている。
「今年度に入ってから交通事故件数が急増している。理由は何だね。このまま放置しては問題だ」
「はっ、それは自分も疑問に思って調べたのでありますが、よく分からないのです。ただ、毎週金曜昼に恵泉女学院のそばで不思議と事故が多発しているのであります」
「うーん……何かあるな」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
セイレーン
ギリシア神話などに登場する西洋の伝説上の生物。海の航路上の岩礁にいて、美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難、難破させる。
おしまい
東の扉です。
今パソコンを修理中で聖誕祭記念SSを下書きできなくて困っています。
とりあえず、別のを借りて小ネタを投下させていただくことにしました。
よろしくお願いします。
ほしゅ
すみません。あれから今まで書き込めませんでした。
今度こそ投下させていただきます。
中国故事シリーズ 蛇足
昔々、中国のどこかに、領主の瑞穂と茉莉耶、紫苑、奏、由佳里、貴子、一子という
6人の側近が住んでいました。
ある日領主の瑞穂は側近たちをねぎらい、幻の鳥、烏骨鶏の卵で作ったカステラを6箱買って
分け与えました。
今と違って食材が安全だった頃の中国のこと、側近たちは非常に喜びました。
ところが、いざ1箱ずつ受け取る時になって、側近の1人、茉莉耶が言いました。
「ねえみんな、1箱ずつもらうのもいいけどさ、どうせならゲームをしない?」
「ゲーム、ですか?」
「そっ。みんなで瑞穂ちゃんの全身像を書いてさ、一番早く描けた人がみんなの絵と
カステラを6箱全部もらうの」
「なるほど、面白そうですわね」
「そういうのも楽しそうですね」
「賛成なのですよ!」
「お姉さまへの愛が試されてるわけですね! マリア様に誓って負けませんよ!」
「まあ、たまにはそういうのもよろしいですわね」
こうして、全員一致でゲームが始まりました。
「よーし! それじゃあ、はじめっ!」
合図とともに、瑞穂の全身像を描くのが開始された。みんな、必死の形相で全身像を描いていく。
そして、最初に描き終えたのは……。
「できましたあ!」
全てにおいて非凡な潜在能力を持つ由佳里であった。
由佳里は、満面の笑顔でカステラ6箱分自分のところに持ってきた。そして……。
「どうせなら、男性器も描いちゃえ!」
と、頬を染めて、興奮しながら描いたのであった。
そこへ、次に描き終えた茉莉耶が由佳里のカステラを奪い、
「瑞穂ちゃんに男性器なんてあるわけないんだから、描けるわけないわよ」
と、その場で1箱分食べて、残り5箱を持ち帰ってしまいました。
このことは、内容が内容なのと、瑞穂の男性器について賛否両論に別れそうなことから、
話を蛇の絵と足に変えられて「蛇足」の話として、後の世に語り継がれることになりました。
ちなみに、その日の夜、茉莉耶はこの時のセリフが原因で、殺し屋エルダー72世を名乗る者によって、
全治3ヶ月の重傷を負わされたそうです。
残り5箱の烏骨鶏のカステラはというと……。
「まあ、おいたわしや茉莉耶さん。でも、この状態ではカステラを食べられそうにありませんし、
治るのを待っていたら腐ってしまいますから、3着の私がありがたくいただいておきますわね。
ですから、安心してご療養くださいな」
と、3番目に全身像を描き上げた紫苑が、奏と一緒に全て食べてしまったそうな。
Fin
以上です。お目汚し失礼いたしました。
突如電波受信した中国の故事ネタですが、L鍋さん、みどりんさん、Kamakiriさん、
その他のSS作者のみなさんも、中国の故事を、おとボクで捏造してみてはいかがでしょうか?
お待ちしております。
ちなみに由佳里ちゃんはというと、紫苑さんと奏ちゃんがおいしそうにカステラを食べているのを見て、
「私が最初に描き終えたのにー」と泣いているのを見て不憫に思った妹の初音が、
姉のためにハンバーグまんを数個買ってきてくれたので、ほどなくして機嫌を直したそうです。
こんにちは。
ようやく規制が解除になりました。
でも、あまり書いていませんでしたので投下する分がありません。
みどりんさんが書いていたように、保守代わりに私も昔話でお茶を濁しておこうかと。
思いっきりバカ話です。しかも短いです。
放課後の教室に集まっている瑞穂、紫苑、まりや、由佳里、奏。
「昔話ねえ…」
まりやが首をかしげる。
「オーソドックスに桃太郎なんかどう?」
「いいですわね」
瑞穂の提案に紫苑が賛成する。
「じゃ、配役考えて見ましょうか」
桃太郎…瑞穂、 犬…奏、 猿…まりや、 雉…由佳里
鬼・・・紫苑
「ぶ、無難な所…かな…」
「ええ、良いと思いますわ」
微笑みながら頷く紫苑。
「…し、紫苑さんがそう云うなら…」
<物語スタート>
鬼が島に向かって桃太郎が歩いていると、奏イヌがやってきて声をかけました。
――エッ、いきなりそこからスタート?
――仕方ないでしょ。配役が足りないんだから。お爺さん、お婆さんは無しよ。
「桃太郎さん、御腰の袋から良い匂いがするのですよ〜」
「ああ、これはね。お昼ごはん用に畑から持ってきた甘王が入っているのよ」
「あ、甘王!奏も食べたいのですよ〜」
「ふふふ、良いわよ。ついていらっしゃい。一緒にお昼に頂きましょう」
「感激なのですよ〜」
こうして桃太郎はイヌを家来にしました。
――奏ちゃん。実際にこんなに簡単に知らない人について行っちゃダメよ。
――現実には甘王を腰の袋に入れて歩いている人はあまりいないので大丈夫なのですよ〜。
桃太郎とイヌが歩いていると、まりや猿が現れて云いました。
「は〜い、そこのカワイコちゃん。あたしとデートしない?」
「何…そのナンパ丸出し」
「あたしゃ、いいものいっぱい持ってるわよ〜」
「結構です。鬼が島に急いでますので失礼します」
「まあ、待ちなって」
猿は通り過ぎようとする桃太郎にタックルするとその場に押し倒しました。
「わっわっ!奏ちゃん、たすけて」
「ごご、御免なさいなのですよ。奏には何とも出来ないのですよ〜」
猿はこの里一帯の動物達の寮監、もといボスだったので手出しすることが出来ませんでした。
「止めて!止めて!や〜め〜て〜!!」
「ふふ、愛いやつ、愛いやつ」
まりや猿の手が瑞穂の体を弄ります。
「何でも云うこと聞くからやめてぇ!」
「……じゃあ、あたしも旅についていくから、旅の間、あたしが渡す衣装や鎧を着てちょうだい」
「わ、わかったわ。……とほほほ」
――なに、この展開。脅迫されてるの?
――ま、当然でしょ。力関係で行くとあたしの方が上だし。
――…本来は桃太郎の方が上なんだけど。
桃太郎とお供(?)二匹が歩いていると、由佳里雉が現れた。
由佳里雉が声をかけてくる前に、まりや猿が話しかけた。
「あら、由佳里。あたしたちこれから『びっくりドンキー』いくんだけど」
「あわわ、あたしも行きますっ!!」
雉が速攻で仲間になった。
――えーと、何て云ったらいいかわかんない…
――自然な展開でしょ
――あたしそこまで喰い意地張ってません!
さて、勇者パーティーが全員揃ってラストステージに向かいます。
ラスボスは強力な紫苑鬼です。
「任せなさい。桃太郎ちゃんがこの鎧着れば大丈夫」
猿がデザインした鎧は、RPGの主人公が着る様な胸と腰まわりのみ防御がついた露出度満点の鎧でした。
「この鎧って、防御力が弱くない?」
「いいのよ。それが紫苑さまには猛毒なのよ」
猿が興奮したように云います。
気がつくとイヌと雉も赤い顔しながらねっとりとした目で見ています。
「これなら鬼とも互角に戦えるでしょ」
「これ着て4人がかりでも互角なの!?どれだけ強力な鬼なの!!」
「ロングホーンという角を生やした鬼でね。超人強度1000万パワーで・・・」
やってきましたラストステージ、鬼が島。
「さあ、皆気合入れていくわよ。ヤアヤア桃太郎ここに見参!鬼よ、姿を現せ!」
4人は意気揚々と名乗りを上げます。
「うふふふ。待っていましたよ、桃太郎さん!」
城の中から3体の鬼が出てきました。
「・・・えっ!?3人?」
「私は海界の美智子です」
「私は冥界の圭」
「そして私は天界の紫苑ということだそうですよ」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
『桃太郎 残酷物語』 終了っっ!!!
瑞穂が真っ白になって机に突っ伏している。
まりやもヘロヘロの状態。
「ありゃあ、酷い目にあったわね。ラスボスが黄金聖闘士ひとりだと思ってたら、いつの間にか神3人になってたなんてね」
「無理なのですよ〜。勝てっこないのですよ〜」
「700人で立ち向かっても勝てません…」
ガクガクブルブル震えている奏と由佳里。
「なんで圭さんや美智子さんがいつの間にか入ってるんですかっ!」
「いや、帰る前に教室を覗いて見たら面白そうなことやってるから。私と美智子はお爺さん、お婆さんでも良かったんだけど
もうかなり話が進んでたから、あとは鬼くらいしか残ってなかったの」
「……物語を正しくするために配役を入れ替えてもう一度やりましょうか」
お爺さん…由佳里、 お婆さん…奏
桃太郎…紫苑、 獅子…圭、 鷹…美智子、 狒々…まりや
鬼…瑞穂
「・・・・・・・・・・・えっと・・・アナタたち、仲間いりますか?ひとりで充分じゃないかと思うんですが・・・」
「じゃ、そろそろ始めましょうか」
「ち、ちょっと待って!…え〜と、貴子さん呼んできてもいいですか?」
「いいけど。貴子が来たところで犠牲者がひとり増えるだけかと思うけどね」
鬼の手下…貴子
<物語スタート>
『鬼が島 残酷物語』 終了っっ!!!
お粗末さまでした。
お姉さま聖誕祭には投下したいと思いますが、まだ書いてる最中でして間に合うかどうか。
それでは。
109 :
みどりん:2008/05/08(木) 00:11:23 ID:3s6P/YW+0
風が吹けば
瑞穂はその日一日の活動を終え、入浴して寝ようと思っている。もう、夜も遅いからみんな入浴は済ませているだろうと考え、入寮してから数日間いつも遅めの風呂をとっている。
だから、今まで誰にも自分が男だとばれないで済んでいた。
その日も今まで同様遅めに風呂に行き、更衣室で服を脱ぎ、浴室に入る。ここまでは今までと同じ情景だ。だが、その日は浴室は空ではなかった。
「あ、みずほちゃん……」
「あ、ま、、、ま、まりや、ごめん、すぐ出るから……」
たまたま遅めに風呂に入っていたまりやが風呂からあがろうとした、丁度そのときに瑞穂が入ってきたので、裸の二人が鉢合わせになってしまったのだ。
瑞穂は慌てて外に出ようとしたのだが、あまりに慌てたので足を滑らせ、転んでまりやの足払いをするような格好になってしまった。
「きゃっ」
だから、まりやは瑞穂の上に倒れ、そのまま身を守るため反射的に瑞穂を抱きしめてしまった。瑞穂もまりやが怪我をしないように抱きとめて、そして……
「ご、ごめん、本当にごめん、まりや。今でるから……」
そう言って風呂から出ようとしたのだが………
「まって……瑞穂ちゃんが迷惑でないなら、いいわ」
まりやは瑞穂を軽く抱きしめる。
「まりや………」
次の日からは、瑞穂は遅くに入浴するときも、一応他の寮生に確認をとるようになった。
「由佳里ちゃん、もうお風呂は済ませたかしら?」
「は〜い、大丈夫です」
「奏ちゃんは、お風呂に入った?」
「ええ、もういただいたのですよう」
このように確認しておけば誤って風呂場で鉢合わせになることもないだろう。それから、まりやの部屋に行き……
「まりや、もう大丈夫だよ」
「それじゃ、はいろっか」
瑞穂とまりやはそれから長い夜を一緒に過ごすのである。
110 :
みどりん:2008/05/08(木) 00:12:21 ID:3s6P/YW+0
さて、今まで入浴の確認をしていなかったのに、急に確認を取るようになったら、何で?と思うのが普通だろう。由佳里は食事後の団欒時にそのことを瑞穂に聞いてみる。
「瑞穂お姉さまぁ」
「なあに、由佳里ちゃん」
「どうして、最近お風呂に入ったか聞くようになったのですか?」
「え?え?え?そ、それは……由佳里ちゃんや奏ちゃんが入っている時にわたしが入っていったら迷惑でしょ?」
「え?そんなことないのですよう。お姉さまが入ってこられたらお背中をお流ししてあげたいのですよう」
「ぁわぁわぁわ……そ、それにね、最後に誰にも邪魔されずにゆっくり入るのが好きなのよ。あは、あはは……」
瑞穂は両手を横に振って、強く否定する。だが、動いた手は2本でなく3本だった。食事が済むと、瑞穂とまりやは由佳里と奏に見られないテーブルの下で手をつなぐようになっていたのだ。そのまま手を上に上げたので、まりやの手も一緒に動いていたのだ。
「ちょ、ちょっと、瑞穂ちゃん、人の手を勝手に動かさないでよ」
まりやは慌てたように瑞穂を非難する。
「ご、ごめん、まりや。つい……」
由佳里の目がきらりと光る。
「『つい』……何なのですか?瑞穂お姉さま」
「え?その…驚いてそばにあるものをつかんじゃったのよ。アハハ」
「そ、そうなのよ。瑞穂ちゃんったら、昔から緊張するとそばにあるものを掴んじゃうのよ。ねー」
「そ、そうなのよ、由佳里ちゃん」
「ふーん……どうして緊張なさったのですか?」
「えっ!!!そ、それは…………ゆ、由佳里ちゃんがお風呂のことなんか話すから、つい緊張しちゃったのよ。今まで家でいつも一人で入っていたから、お風呂が共有なんて少し恥ずかしいの……」
「そう……ですか……」
「そ、そうよ。由佳里。瑞穂ちゃんのお家のお風呂は、それは立派なんだから」
まりやも加勢する。
111 :
みどりん:2008/05/08(木) 00:13:02 ID:3s6P/YW+0
部屋に戻ってから、由佳里は奏の部屋を訪れる。
「ねえ、奏ちゃん。瑞穂お姉さまとまりやお姉さまって、何か怪しくない?」
「怪しいって、何なのですか?」
「怪しいって、……怪しいっていうことよ」
「よく分からないのですよう」
「だって、お風呂のことを聞くと、お二人ともあんなに驚いていたし、それに手をつないでいらっしゃったのよ」
「えー?手は、緊張したので掴んだって仰っていたのですよう」
「そんなの嘘に決まっているじゃない。きっとずっと手をつないでいたのよ」
「そうなのですかぁ?」
「絶対そうよ……ねえ、今日、瑞穂お姉さまがお風呂に入るのを覗いてみない?」
「えーー?!きっと迷惑なのですよう」
「でも、お二人の秘密を調べたいと思わない?」
「それはそうですけどぉーー」
「それじゃあ、決まりね。瑞穂お姉さまがお風呂に入りそうになったら迎えに来るから」
「わかったのですよう……」
奏はしぶしぶ納得する。
112 :
みどりん:2008/05/08(木) 00:14:16 ID:3s6P/YW+0
そして、またいつものとおり瑞穂が入浴したか確認しに来た。きっとそろそろ入るのだろう、と由佳里は思ってドアを少し開けて隙間から廊下を見ている。と、瑞穂がまりやを伴って風呂に向かうようだ。
「え?……うそ?」
そして、二人がいなくなってから奏の部屋へと向かう。
「奏ちゃん、瑞穂お姉さまがお風呂に行ったわよ。私たちも行きましょう」
「う〜〜ん、……今日はもう寝るのですよう」
奏は本当に眠そうにそう答えて、そして本当に眠ってしまった。
「奏ちゃん……ったらぁ」
由佳里は何度か奏を起こす試みをしたが、だめだったので、一人で風呂に向かうことにした。音がしないように静かに扉を開け、そして中を覗いてみる。すると……磨りガラスの向こうに裸の人間が二人、抱き合っているのが見えた。しかも、声まで聞こえてくる。
「まりや……」
「瑞穂ちゃん……」
由佳里は、慌てて、しかし音がしないように慎重に部屋に戻っていった。
「み、瑞穂お姉さまとまりやお姉さまがあんなことをしていたなんて……」
それから、二人の痴態を想像しながら、生まれて初めてオナニーをした。
これが原因で、由佳里はエッチになっていき、そしてそれを餌にまりやに甚振られるようになってしまったのである。風が吹けば桶屋が儲かる……ではないが、瑞穂がひっくり返ると由佳里がエッチになる、ということがあったのでした。
113 :
みどりん:2008/05/08(木) 00:19:15 ID:3s6P/YW+0
以上です。お粗末でした。
ところで、中国の故事は面白いかもしれないですね。
では、またそのうちに……
東の扉です。
私のPCが返ってくるのは12日以降になるらしいので、聖誕祭に間に合わせることはできそうにないです……。
でも、シナリオは出来ているので、遅れてでも必ず投稿させていただこうと思っています。
新たに2つ電波を受信しましたので、まずは1つ目を書かせていただきます。
よろしくお願いします。
中国故事シリーズ 矛盾
昔、中国に、2人のエルダーの宣伝を行う茉莉耶という女がいました。
「みんな、71代エルダーの紫苑さまは、他のどんなエルダーも足下にも近寄らせないすごい人よ」
茉莉耶は、熱を入れて宣伝します。
「でもって、72代エルダーの瑞穂ちゃんは、他のどんなエルダーも遥かに超えるすごいエルダーよ」
そこへ、見物社の1人、貴子が口を挟みました。
「それでは、紫苑さまと瑞穂さんを比べるとどうなるのですか?」
「えっと……」
茉莉耶は困ってしまいます。それは考えたことがなかったのですから。
「確かめてくるから、答えは明日まで待って……」
茉莉耶は、そう言ってひとまず退散しました。
「そういうわけで、紫苑さま、瑞穂ちゃんと勝負してくれませんか?」
「わかったよ」
「わかりましたわ」
こうして、瑞穂と紫苑、どちらが強いか勝負することになりました。
「あっあっあっ、ああーん!!」
「し、紫苑さん、いい、とっても気持ちいいです……くううううっ!!」
「み、瑞穂さん、私も……ああああーっ!!」
2人の勝負は果てることなく続いていきます。
そして翌日……。
「はあ……はあ……はあ……」
「あ……はあ……あはあんっ……」
瑞穂と紫苑は、肌を重ね合って共にぐったりしていました。
「茉莉耶さん、結果はどうですの?」
「うん……引き分けみたい……」
貴子が答えを聞きにくると茉莉耶は決まり悪そうに答えました。
「そうですか……」
こうして、最強の盾を最強の矛で突いた結果は引き分け……という解釈が新たに誕生したのでした。
Fin
とりあえず、1つ目終了です。2つ目は、今執筆しています。
ご無沙汰しております。明日は時間が無さそうなので、少し早いですが、お姉さま聖誕祭記念をふたつ投下します。
と云っても、基本的には同じ話ですが……
『私のパンチを受けてみよ』
とある休日の事、瑞穂達は街に繰り出した。
一通りショッピングを(主にまりやが)楽しんだ後、「少し休憩しましょうか?」と云う話になったのだが……
「あの……瑞穂さん、アレは何でしょう?」
「アレは……」
貴子の視線の先に有ったのは、ゲームセンターの店先に置いてあるパンチングマシーンだった。
「うわっ!懐かしいわねコレ。瑞穂ちゃんこう云うの得意でしょ?」
「……人を馬鹿力みたいに云わないでよまりや」
「ね、みんなでコレやってみようよ。最下位が今日のお昼御飯を奢るって事で……」
「やるのは良いけど、奏ちゃんと紫苑さんは思いっきり不利だと思うよ」
「申し訳有りませんが、わたくしは身体が弱いので、遠慮させていただきますわ」
紫苑がわざとらしくよろめいて見せた。
「大丈夫です。奏が紫苑お姉さまの分までがんばるのですよー」
「まあ!ありがとう奏ちゃん」
「紫苑お姉……むぎゅっ」
奏ちゃんを抱きしめるパワーが有るなら……なんて事は、絶対に口にしてはいけない。
「それじゃ言い出しっぺのあたしからやるわ。瑞穂ちゃん、何かコツとか有る?」
「……そうね。自分が強く想っている事を拳に乗せてみる……って所かな?」
瑞穂のアドバイスに、場が沈黙した。
「あ、あれ?私変な事云ったかしら?」
「あ……いや、瑞穂ちゃんキザだな〜って思って」
「お姉さまはロマンチストなのですよー」
概ね好評だった様だ。
まりやは筐体にコインを1個入れ、マシンに向かって構えた。
「強い想いを拳に乗せる……ね。……貴子の陰険堅物女ーーーっ!」
バコーンッ!……ピピピピピピピピ……カチッ!
『ただいまの記録、111kg』
「……ふう、まあまあかな?」
「まあまあかな……じゃありません!何ですか今のは?!」
「何って、あたしの貴子に対する強〜い想いを拳に乗せたんだけど」
「……まあいいですわ。それでは次はわたくしが挑戦致します。とりあえず、まりやさんにだけは負けませんわ!」
このマシンは1コインで3回出来るので、コインの追加投入は必要無い。貴子は無言で構えを取った。
「……(聞き取れない小声)んっ!」
パンッ!……ピピピピピピピピ……カチッ!
『ただいまの記録、165kg』
「……ふう、まあまあですわね」
貴子はまりやに向かって微笑んだ。
「何よそれ?!何でそんなへなちょこパンチであんなスコアが出るのよ?!」
怒るまりやに対して、貴子はただ無言で微笑むだけだった。
「では、次は私が挑戦します!」
由佳里がマシンに向かって構えた。
「……って由佳里、あんた居たの?」
「……居ましたよ最初から。セリフがたまたま無かっただけです」
気を取り直して……
「……(聞き取れない小声)まっ!」
パシンッ!……ピピピピピピピピ……カチッ!
『ただいまの記録、162kg』
「……うん!まあまあです」
由佳里はまりやに向かって微笑んだ。
「何よそれ?!ゆかりんの癖にナマイキよ!」
「往生際が悪いですよ、まりやお姉さま」
怒るまりやに対して、由佳里もただ微笑むだけ……
「次は奏の番です!」
「奏ちゃん、店員さんに踏み台を借りてきたわ」
「お姉さま、ありがとうございますなのですよー」
瑞穂が改めてコインを投入し、奏は踏み台の上で構えた。
「……(聞き取れない小声)きなのですよー!」
パコッ!……ピピピピピピピピ……カチッ!
『ただいまの記録、162kg』
「由佳里ちゃんと同点なのですよー」
「……何よそれ、奏ちゃんまで」
怒る気力すら失ったまりやを尻目に、奏は満面の笑みを浮かべた。
「……はぁ、何でこんな結果になっちゃったのかなぁ……」
落ち込むまりやに対して、紫苑は必死で笑いを堪える様な表情を見せた。
「紫苑さま?」
「ふふふっ、『強く想っている事を拳に乗せてみる』……瑞穂さんのアドバイスが功を奏した結果ですわね」
「?」
「裏を返せば、素直になれなかったまりやさんの負け……と云う事ですわ」
どうやら紫苑は、貴子達が何を想っていたのかを把握しているらしい。
「……何だかよくわからないけど、宣言したからには仕方が無い。
今日はあたしが奢るから、お昼を食べに行きましょ!」
「ちょっと待ってよまりや。まだ私の番が残ってるわ」
「……瑞穂ちゃんがあたし達よりも低いスコアを出すなんて有り得ないし。
まあでも、瑞穂ちゃんのパンチは見てみたいかな」
「私も見たいです!」
「奏も見たいのですよー」
「あなた達、瑞穂さんにプレッシャーをかけてはダメですよ。さあ瑞穂さん、どうぞ!」
「何だか貴子さんに一番プレッシャーをかけられている気がするけれど……では行きます!」
それまでにこやかだった瑞穂の表情が一変した。
それと同時に、一瞬にして場の空気が張り詰めた物になった。
腰を軽く落とし、スタンスをやや広めに取ってから、静かに右拳を引いた。空手の構えだろうか?
「(声には出さない想い)……せいっ!」
ドゴーン!……ピピピピピピピピ……カチッ!
ものすごい轟音と共に、右ストレートがターゲットに突き刺さったのだが……
『ただいまの記録、Errkg』
場が静まり返った中、かろうじて由佳里が声を出した。
「……お姉さま、イーアールアールって何ですか?」
「これは……要するにエラー(Error)って事かしら?」
「……気合入れすぎよ瑞穂ちゃん。一体何を想ってぶん殴ったのかにゃー?」
「そ、それは秘密。えーっと、結局私が最下位ね」
「へ?最下位はあたしでしょ?」
「記録が出なかったのだから、私が最下位よまりや。それでは皆さん、お昼にしましょうか……」
(ふぅ……何とか誤魔化せたかな?)
瑞穂達は、レストラン街に向かって歩いて行った。
……果たして、瑞穂が拳に乗せた想いとは、一体何だったのでしょう?
『完』
皆さまごきげんよう、十条紫苑です。本日は瑞穂さん達とご一緒にショッピングです。
瑞穂さんが聖應にいらしてからと云うもの、わたくしにも素敵なお友達が沢山出来ました。
以前のよそよそしい雰囲気とは違い、今のわたくしは充実した学院生活を送れています。
瑞穂さんには、感謝してもしきれない気持ちで一杯です。
『比類なきハードパンチャーズ』
……あら?貴子さんが何かを見つけた様ですね。
「パンチングマシーン?どう云った物なのですか奏ちゃん?」
「あれはパンチ力を測る機械なのですよ、紫苑お姉さま」
どうやらまりやさんは乗り気みたいですね。でも……
「やるのは良いけど、奏ちゃんと紫苑さんは思いっきり不利だと思うよ」
やはり瑞穂さんはお優しいのですね。尤も身体が弱いと云っても、余程の無茶をしなければ問題無いのですが。
それでも瑞穂さんのお気遣いを無駄には出来ませんね……
「申し訳有りませんが、わたくしは身体が弱いので、遠慮させていただきますわ」
『わたくしは病弱です』と云うポーズを取ってみました。少々大袈裟だったでしょうか?
「それじゃ言い出しっぺのあたしからやるわ。瑞穂ちゃん、何かコツとか有る?」
「……そうね。自分が強く想っている事を拳に乗せてみる……って所かな?」
瑞穂さんのアドバイスで、場が静まり返ってしまいました。
「あ、あれ?私変な事云ったかしら?」
「あ……いや、瑞穂ちゃんキザだな〜って思って」
「お姉さまはロマンチストなのですよー」
そう云えば、男の方はロマンチストが多いと、美智子さんがおっしゃってましたね……
「強い想いを拳に乗せる……ね。……貴子の陰険堅物女ーーーっ!」
バコーンッ!……ピピピピピピピピ……カチッ!
『ただいまの記録、111kg』
「……ふう、まあまあかな?」
「まあまあかな……じゃありません!何ですか今のは?!」
「何って、あたしの貴子に対する強〜い想いを拳に乗せたんだけど」
「……まあいいですわ。それでは次はわたくしが挑戦致します。とりあえず、まりやさんにだけは負けませんわ!」
お二人は相変わらずですね。
でも『まりやさんが強く想っている事』は、わたくしにとって想定外の内容でした。てっきり……
「……(聞き取れない小声)んっ!」
貴子さんがパンチを出した時の叫び声を聞いて、わたくしの胸がチクリと痛みました。
心臓の発作などではありません。その様な肉体的な物とは全く違う何かがわたくしを蝕むのです。
どうやら他の皆さんには聞こえなかった様ですが、わたくしには全てが聞こえていました。
明確な音声では無く、貴子さんの強い想いが……
『ただいまの記録、165kg』
「……ふう、まあまあですわね」
ああやっぱり……
貴子さんが見せた笑顔は、わたくしの想像を確信に変えるのに十分過ぎる物でした。
「……(聞き取れない小声)まっ!」
パシンッ!……ピピピピピピピピ……カチッ!
『ただいまの記録、162kg』
「……うん!まあまあです」
「……(聞き取れない小声)きなのですよー!」
パコッ!……ピピピピピピピピ……カチッ!
『ただいまの記録、162kg』
「由佳里ちゃんと同点なのですよー」
由佳里ちゃんと奏ちゃんも高得点を出しました。
考えるまでもありません。妹二人の想いも、間違い無く貴子さんと同じ物です。表情を見れば一目瞭然です。
瑞穂さんは理解されていない様ですが……やはり瑞穂さんは鈍感ですね。
本来なら微笑ましい光景の筈なのに、何故わたくしの胸はこれ程までに痛むのでしょう?
今わたくしの中で、微笑ましい想いと例え様の無い痛みが渦を巻いています。
幸い表情に出たのは前者の方ですが……
「紫苑さま?」
「ふふふっ、『強く想っている事を拳に乗せてみる』……瑞穂さんのアドバイスが功を奏した結果ですわね」
「?」
「裏を返せば、素直になれなかったまりやさんの負け……と云う事ですわ」
違う。素直になれないのは、まりやさんでは無くわたくしの方……
「……何だかよくわからないけど、宣言したからには仕方が無い。
今日はあたしが奢るから、お昼を食べに行きましょ!」
「ちょっと待ってよまりや。まだ私の番が残ってるわ」
「……瑞穂ちゃんがあたし達よりも低いスコアを出すなんて有り得ないし。
まあでも、瑞穂ちゃんのパンチは見てみたいかな」
「私も見たいです!」
「奏も見たいのですよー」
「あなた達、瑞穂さんにプレッシャーをかけてはダメですよ。さあ瑞穂さん、どうぞ!」
まりやさん達が瑞穂さんを激励しますが、わたくしはただ一人、お声をかける事が出来ませんでした。
瑞穂さんが拳に乗せるであろう『強い想い』。知りたい……知りたくない……どちらなのでしょう?
「(声には出さない想い)……せいっ!」
ドゴーン!……ピピピピピピピピ……カチッ!
『ただいまの記録、Errkg』
「……お姉さま、イーアールアールって何ですか?」
「これは……要するにエラー(Error)って事かしら?」
「……気合入れすぎよ瑞穂ちゃん。一体何を想ってぶん殴ったのかにゃー?」
貴子さん達の想いは容易に読めましたが、瑞穂さんの想いは結局わかりませんでした。
ただ一つ確かなのは、瑞穂さんご自身の力だけではない大きな何かが拳に乗っていたと云う事だけ……
「そ、それは秘密。えーっと、結局私が最下位ね」
「へ?最下位はあたしでしょ?」
「記録が出なかったのだから、私が最下位よまりや。それでは皆さん、お昼にしましょうか……」
瑞穂さんがレストラン街に向かって歩き始めました。
納得出来ない表情のまりやさんと、逆に清々しい表情の貴子さん達が付いて行きます。
あら?皆さん、瑞穂さんのパンチの凄まじさで何かを忘れていませんか?
「瑞穂さん、わたくしそこのコンビニで買う物が有るので、先に行っていて下さいますか?」
「紫苑お姉さま、それでしたら奏がご一緒するのですよー」
「ふふっ、奏ちゃんが一緒だと、抱き締めてしまってその場から動けなくなってしまいますから。
ご好意だけ貰っておきますね。すぐに追いかけますから」
「……わかりました。何か有りましたら携帯にご連絡下さいね紫苑さん」
もしかしたら、瑞穂さんはお気付きになったのかもしれませんね。今わたくしが一人になりたいと云う事を……
肝心な所では鈍感なのに、妙な所で勘が鋭いのですね。
「ええ、心配なさらずに。すぐ済みますから」
宣言通りコンビニに向か……わずに、先程のパンチングマシーンの所に戻って来ました。
まりやさんがおっしゃってました。1コインで3回出来る……と。
確かにターゲットが上がっています。あと1回出来る様です。
渾身の力を込める訳には参りません。ただひたすら想いを込める事だけを考えます……
「(声には出せない想い)っ!」
ズンッ!……ピピピピピピピピ……カチッ!
『ただいまの記録、173kg』
予想外……いいえ、予想通りの結果でしょうか?
……この想いだけは、誰にも知られてはならない。
わたくしは決意を新たにすると、本心を奥底に封印して、表情を作り直し、瑞穂さん達の後を追いかけました。
『完』
本日の比類なきハードパンチャーズ
1.十条紫苑 173kg
2.厳島貴子 165kg
3.上岡由佳里 162kg
3.周防院奏 162kg
5.御門まりや 111kg
・
・
・
ランク外.宮小路瑞穂 記録なし
以上です。紫苑編はかなりの難産でした。(文章の大半はコピペの癖に……)
某ゲーム(またか)のネタをパ……アレンジしました。原型はほとんど留めてません。
貴子達の想いは、バレバレだと思うのであえて書きませんでした。
お姉さまの想いに関しては、読み手の皆さんのご都(ピー)合主義にお任せします。
書きたい話はいくつも有るのですが、ネタは有っても文章が浮かばない……という状況です。
薫子ルートとか1回書いてみたいんですが……
少し早いですが、お姉さま誕生日おめでとうございます!
……正直ゲーセンのパンチングマシーンでは、正確なパンチ力は測れないんですよね。
いかに体重を乗せるかがポイントです。だから奏ちゃんは不利だし紫……
ピンポーン!
あれ?こんな雨の日に来客かな?
130 :
みどりん:2008/05/12(月) 23:10:29 ID:+HmqOZAo0
舌きり雀
恵泉女学院の桜寮は、瑞穂・まりやの夫婦が管理人をしていました。瑞穂はとても優しい男でしたが、まりやはなかなかに意地悪な女でした。どうして、こんな二人が結ばれることになったのでしょうか?まあ、世の中色々分からないことがあるものです。
さて、今年も新入生が入ってきました。由佳里という女の子です。
「こんにちわー、よろしくお願いしまーす」
なかなか元気のいい女の子ですね。
「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」
瑞穂は優しく答えます。
「迷惑かけるんじゃないわよ」
それに対し、まりやの答えは取り付く島もないという感じの答えです。
それでも、まあ普通に生活を送っていました。瑞穂はいつも由佳里に食事を提供します。瑞穂は寮をいつも清潔に保ちます。瑞穂は洗濯をしています。瑞穂はよく買い物に出かけます。瑞穂はいつも由佳里に優しく接します。え?まりや……ですか。さあ?
131 :
みどりん:2008/05/12(月) 23:11:17 ID:+HmqOZAo0
ある日のことです。瑞穂は買い物に行っています。その間、まりやが珍しく料理をしています。何を作るのか、山芋をすっています。そして、途中で何か用事があったのでしょう、どこか別の場所に行ってしまいました。丁度そこに由佳里が通りかかりました。
「これは……山芋だわ。昔の女の人って、これで気持ちよくなっていたっていう話を聞いたことがあるけど………」
どこで仕入れたのか、つまらない知識を知っているものです。そして、ショーツをおろし、山芋を手にとって自分の大切なところにつけてみました。
「あーー……っぁああーーー……気持ちいい……気持ちいい……」
痒みと快感が一緒に来たような感触がとても心地よく、由佳里は思わず激しい自慰行為に耽ってしまいました。だから、まりやが戻ってきたのも全く気付きませんでした。
「由佳里、何やってるのよ!」
「あ、まりやお姉さま……」
「そんなにエッチなことが好きなんだったら、あたしが気持ちよくしてあげるわ」
まりやはそう言って、由佳里の服を脱がすと、残っていた山芋で由佳里の貞操を奪おうとしました。山芋が由佳里の股間に割って入っていきます。由佳里は必死にまりやから逃れようとします。
あまりに激しく暴れたので、まりやの手から山芋が滑り落ちてしまいました。そして、その隙に由佳里は寮から逃げていってしまいました。
「ちっ、しくったか……」
とても元華族の家系の娘とは思えない発言です。
132 :
みどりん:2008/05/12(月) 23:12:25 ID:+HmqOZAo0
暫くして、瑞穂が帰ってきました。
「あれ?由佳里ちゃんは?」
由佳里がいないのに気付いた瑞穂はまりやに聞きます。
「由佳里なら寮からでてったわよ」
そして今日あった出来事を言って聞かせました。
「なんてかわいそうなことをしたの!謝ってこなくては………」
瑞穂はそう言って由佳里に謝罪に出かけました。
瑞穂が暫く歩いていくと、馬洗い貴子様がいました。
「貴子さん、由佳里ちゃんの家を知りませんか?」
「私を気持ちよくして下さったら、教えて差し上げますわ」
瑞穂は言われたとおり、貴子を気持ちよくしてあげました。
「向こうに行くと牛洗い紫苑様がいらっしゃいます。紫苑様に聞くとよろしいですわ」
貴子はうっとりとした表情で瑞穂に教えます。
瑞穂が言われたとおりの方向に歩いていくと、確かに牛洗い紫苑様がいました。
「紫苑さん、由佳里ちゃんの家を知りませんか?」
「私を気持ちよくして下さったら、教えますわ」
瑞穂は言われたとおり、紫苑を気持ちよくしてあげました。
「向こうにハンバーグ屋があります。そこが由佳里ちゃんの家ですわ」
紫苑はうっとりとした表情で瑞穂に教えます。
瑞穂が言われたところにいくと、確かにハンバーグ屋がありました。瑞穂はそこに入っていきます。
「由佳里ちゃ〜ん、由佳里ちゃ〜ん?」
呼んでみますが、返事がありません。瑞穂はよーく耳を澄ませてみました。すると、奥からしくしくと泣き声が聞こえてきます。きっと、由佳里はそこにいるのだろう、と思った瑞穂はお店の奥に行ってみました。
すると、はたして由佳里ちゃんがそこで泣いていました。貞操は守りましたが、あんな酷いことをされたら、それは心が傷つきます。
「由佳里ちゃん……」
「あ、お姉さま………」
「ごめんね、まりやがあんな酷いことをして……」
由佳里は、わぁっと泣いて瑞穂の胸に飛び込みます。瑞穂はそんな由佳里をしっかりと抱きしめます。
133 :
みどりん:2008/05/12(月) 23:16:09 ID:+HmqOZAo0
暫く泣いて、少し気が晴れたのでしょうか、目にはまだ涙がありますが、泣き声は収まってきました。そして、由佳里は瑞穂にこう言います。
「お姉さま……私を慰めてください」
元はといえば、まりやの悪戯が原因です。瑞穂はもちろんそれに答えます。
「いいよ、由佳里ちゃん。由佳里ちゃんの気が済むまで慰めてあげるから………」
それから由佳里は瑞穂に心行くまで慰めてもらうことが出来ました。
「お姉さま、どうもありがとうございました。おかげですっきりしました」
「ごめんね、由佳里ちゃん。もうまりやがこんなことをしないようにきつく言っておくから」
「いいんです。お姉さまがいらっしゃったら、もう何があっても大丈夫です。今日は折角お越しいただいたので、私の作った料理を食べていってもらえませんか?」
「そんな……謝りに来ただけなのに……」
「いえ、お姉さまがいらっしゃらなかったら、いつまでも心が暗くなっていたと思います。だから、そのお礼です」
「そう、それじゃあ頂こうかな?」
「はい!」
由佳里はそれから喜んで瑞穂のためにハンバーグフルコースを作りました。
「あーー、おいしかった。もう、食べられないや。それじゃあ由佳里ちゃん、今日は帰るね」
「お姉さま、折角なので、プレゼントも持っていってください。ここに大きい葛篭と小さい葛篭がありますが、どっちの葛篭がいいでしょうか?」
「そんな、プレゼントまでもらえるなんて……申し訳ないから、小さいほうをください」
「はい、それではお姉さま、また機会があったらお会いしましょう」
そして瑞穂は家に帰っていきました。
家についてから瑞穂は箱を開けてみます。するとなかから………
「奏なのですよー」
小さい奏が出てきました。
「え?奏ちゃん?」
「そうなのですよう。私はこれからお姉さまのお世話をするのですよう」
それから奏は甲斐甲斐しく瑞穂の世話をするのでした。
134 :
みどりん:2008/05/12(月) 23:16:42 ID:+HmqOZAo0
さて、面白くないのはまりやです。
「瑞穂ちゃんがあんないいお世話係をもらったんだったら、あたしも欲しいわ」
そこで、由佳里のところに謝り(恐喝?)に行くことにしました。
暫く歩いていると馬洗い貴子様がいました。
「貴子、由佳里の家を教えなさいよ」
「断りますわ」
即答です。でも、まりやは全く動じません。
「そう。この写真でどうかしら?」
まりやはにやっと嗤って写真を渡します。瑞穂の入浴シーンや寝顔、着替えの写真です。
「ここここれは………仕方ありませんわね」
貴子は写真を受け取って、まりやに由佳里の家への行き方を教えました。
暫く歩くと、今度は牛洗い紫苑様がいました。
「紫苑様、由佳里の家を教えてくださいますか?」
「お断りです」
これも即答です。でも、やっぱりまりやは動じません。
「紫苑様、この服でいかがでしょうか?」
まりやは紫苑に何やら布地を渡します。紫苑がそれを開いてみると……スクール水着に瑞穂という名前が縫い付けてあります。
「これは………仕方ありませんね」
紫苑は瑞穂の水着を受け取って、まりやに由佳里の家への行き方を教えました。
「由佳里〜〜、来てやったわよ!」
まりやがハンバーグ屋につくと、由佳里がにこにこと働いていました。が、まりやの顔を見るなり、恐怖の表情に変わってしまいました。
「あ、ままりやお姉さま………」
「由佳里、折角謝りに来てやったんだから、もてなしとプレゼントをよこしなさい」
「は、はい……」
由佳里は怖くて断れません。言われるままにハンバーグフルコースを出し、最後にプレゼントを渡します。
「まりやお姉さま、ここに大きい葛篭と小さい葛篭がありますが、どっちの葛篭がいいでしょうか?」
「おっきいほうに決まってるでしょ?さっさとよこしなさい!」
「はい……あの、ふたは家に着くまで開けないでくださいね」
「何でよ?」
「そういう仕組みの葛篭なんです」
「あ、そう。まあ、分かったわ。由佳里もそろそろ寮に戻ってきなさい。また、可愛がってあげるから………」
この言葉を聞いたからには絶対に戻らないことでしょう。
135 :
みどりん:2008/05/12(月) 23:19:12 ID:+HmqOZAo0
まりやは重い葛篭を一生懸命運んでいます。が、重くて仕方ありません。
「何が入っているかみてみよう」
まりやはそう言ってふたを開けてみました。すると、なかから瑞穂が出てきました。
「やあ、まりや……」
瑞穂はにこっと笑って箱からでてきました。
「何で瑞穂ちゃんがこんなところにいるのよ?さっさと寮に戻って仕事しなさいよ」
まりやは怒ったようにいいました。
「うん。でもね、そういうわけにはいかないんだ。今ダークバージョンになっているから」
「え?」
それを聞いたまりやは血の気が失せました。ダークバージョンの瑞穂はダークまりやと罠・エンディング2の続き(未公開……非公開?)で経験していましたが、何れもまりやは瑞穂に地獄絵図を体験させられていたからです。
「い、いや……いやーーーーーっ!!」
それからまりやは陸上部で鍛えた足を生かして、泣き叫びながら死に物狂いで寮に戻っていきました。幸い途中で瑞穂に捕まることはありませんでした。
寮に飛び込んだまりやの前に、瑞穂が立っていました。
「あ、お帰りまりや。由佳里ちゃんに会えた?」
帰ってきたまりやに瑞穂は声をかけます。まりやは瑞穂と距離をとって話しかけます。
「………ねえ、瑞穂ちゃん……瑞穂ちゃんは普通の瑞穂ちゃん?」
「……何を言っているか分からないけど、今までどおりの僕だよ」
それを聞いたまりやはわぁっと泣きながら瑞穂の許にかけより、その胸の中でわんわんと泣くのでした。
「怖かったの………とっても怖かったの………」
「どうしたの?まりやらしくないじゃない。何があったか知らないけど、もう大丈夫だよ……」
瑞穂はまりやを優しく抱きしめながら、まりやを癒すのでした。その口許に冷たい微笑が含まれているのは、まりやは知る由もありませんでした。
この事件がきっかけで、まりやの意地悪な性格は改善されました。由佳里も瑞穂の説得により、寮に戻ってきました。そして、奏も含めた4人で楽しく寮の生活を楽しんだということです。
おしまい
少しまりやをひどく書きすぎた気もしますが、まあ大丈夫でしょう。
それでは
137 :
みどりん:2008/05/14(水) 22:40:03 ID:hwibQQw50
舌きり雀・大
(前略・舌きり雀を参照ください)
「お姉さま、折角なので、プレゼントも持っていってください。ここに大きい葛篭と小さい葛篭がありますが、どっちの葛篭がいいでしょうか?」
「そんな、プレゼントまでもらえるなんて……折角の由佳里ちゃんの好意だから、大きいほうをください」
「はい、それではお姉さま、また機会があったらお会いしましょう」
そして瑞穂は家に帰っていきました。
家についてから瑞穂は箱を開けてみます。するとなかから………
「奏なのですよー」
大きい奏が出てきました。
「え?奏ちゃん?」
「そうなのですよう。私はこれからお姉さまのお世話をするのですよう」
「本当に奏ちゃんなの?」
「もちろんなのですよう。おねえさま、奏を忘れてしまわれたのですか?」
「そうではないのだけど………」
138 :
みどりん:2008/05/14(水) 22:40:38 ID:hwibQQw50
見た目は奏そのものなのですが、身長192cm、体の比率は小さい奏そのままなので、なんというか巨大です。それから奏は甲斐甲斐しく瑞穂の世話をするのですが………
ドス・ドス・ドス・ドス………
奏の足音が寮に響き渡ります。
ドカッ……(イタッ)
奏が顔を鴨居(ドアの上)にぶつける音がします。
「お姉さま、お紅茶が入ったのですよう」
「ありがとう……奏…さん」
これだけ大きいと奏ちゃんという雰囲気ではありません。
「お姉さま、『奏さん』なんて恥ずかしいのですよう」
奏は軽く瑞穂の肩を叩きます。すると、瑞穂は部屋の端まで吹っ飛んでいってしまいました。
「いたたたた………」
「ごめんなさいなのですよう……大丈夫なのですか?」
奏は恐縮して謝ります。
「え……ええ、大丈夫よ」
本当でしょうか?壁が凹んでいるのですが……。とにかく、瑞穂は気を取り直して紅茶を飲みます。
「あら?」
「どうなされたのですか?お姉さま」
「いえ、ちょっと紅茶が大味な感じがしたのだけど………」
「ごめんなさいなのですよう……入れなおすのですよう」
「いえ、そこまでしなくてもいいわ」
体が巨大なのに、行動は小さいときのままなので、なにか、こう……その……違和感というか恐ろしさというか、そんなものを感じます。
139 :
みどりん:2008/05/14(水) 22:42:00 ID:hwibQQw50
「紫苑さん……」
「どうなされたのですか?瑞穂さん」
瑞穂が疲れた表情で紫苑に話しかけます。
「奏ちゃんが、何というか怖いんです」
「………何か恐ろしい信仰にはまってしまったとかそういうことでしょうか?」
紫苑は心配そうに聞きます。
「いえ、そういうことではなく、単純に姿が怖いんです」
「何を寝ぼけたことを仰っているのですか。あんなに可愛らしい奏ちゃんが怖いなんていうことあるわけ………………」
「紫苑様ぁーーー」
ドスドスドスドス
奏が走ってきます。
「ゑ゛ッ?!」
紫苑は思わず悲鳴を上げます。
「お久しぶりなのですよう」
そして、奏は紫苑をムギュ〜〜っと抱きしめます。
「グヴォッ……」
紫苑は潰されてしまいました。
「わぁ〜〜〜、紫苑さ〜ん!!」
今後の巨大奏の活躍が楽しみです。
おしまい
お粗末でした。おそらく世界初の巨大奏だと思います。
>>137-139 思わず笑ってしまいました。GJです!
PCを修理に出していて3日遅くなりましたが、私も瑞穂くん聖誕祭記念SSを投下させていただきます。
よろしくお願いします。
〜由佳里編APPENDIXU シンデレラへのステップ 番外編〜
今日、5月12日は、僕の誕生日。だけど、正式な誕生パーティーは明日開催される。
これは、別に僕がみんなの都合を押しつけられたんじゃない。逆に僕がみんなに無理を言ってそうしてもらったんだ。
それと、もう1つのお願いも。
今日は、みんなが僕の願いを叶えてくれる。その日が来たと思うと、自然に心地良い感じに浸ってしまう。
「うーん……」
僕はベッドから起き上がり、みんなが用意してくれた僕の誕生日プレゼントの中で1日を過ごすために、
昨日留学から帰ってきたまりやの見立ててくれた服に着替え、部屋を出た。
「あっ、瑞穂さん、おはようございま……」
と、そこへ、同じくまりやの見立ててくれた服を着た由佳里が部屋から出てくる。
僕たちは別々に服を見立ててもらったので、その服を着た由佳里を見るのは、これが初めてになる。
由佳里は、僕を見て挨拶の途中で固まっている。そういう僕も、由佳里を見て固まってしまっているんだけど……。
「あ、おはよう、由佳里……どうしたの? 挨拶の途中で固まって」
「えっと……瑞穂さんに見とれちゃいました……」
「僕に?」
「はい……今日の瑞穂さん、いつもよりずっと素敵で……なんていうか、いつもの瑞穂さんらしさも確かにあるのに、
別人のようにきれいな感じもして……だから……」
由佳里は恥ずかしそうに頬を染めてそう言う。それは、今の僕の気持ちを的確に表していた。
今日の由佳里も別人のようにきれいなのに、中身はいつもの由佳里だから、そのギャップがたまらなく愛しく思えてくる。
「そういう瑞穂さんは?」
「うん……僕も、由佳里とおんなじこと考えてた……」
「あーっ! 瑞穂さんずるいです! ちゃんと言ってください!」
「わかったよ。今日の由佳里は、いつもらしい魅力と別人のような魅力が同居していて、とっても素敵だよ」
「瑞穂さん……嬉しいです……」
由佳里は、頬を染めて僕に抱きついた。
そして、朝食の席……。
「瑞穂さん、おはようございます」
「おはよう、瑞穂」
すでにテーブルに座っている父さまと母さまが挨拶してくる。
「おはようございます。父さま、母さま」
「おはようございます。お、お義父さま、お義母さま……」
僕の挨拶に続き、由佳里がまだギクシャクした感じで挨拶をした。
「ははは、由佳里ちゃん、もういい加減慣れてもいいと思うけどな」
「そんなこと言われても……大好きな人のご両親なのに……」
由佳里は、言われてもの後は消え入りそうな声で話す。
「おはようございます、お姉さま、由佳里ちゃん」
そこへ空気を察したのか、奏ちゃんが挨拶をしてきた。
「おはよう奏ちゃん」
「おはよう……ねえ、ところで奏ちゃん、いい加減にその“お姉さま”っていうの、やめてくれない?」
「ふぇ? 私は正式にここの家の養女になったのですから、もう正式な私の“お姉さま”ですよ?」
奏ちゃんは否定されたこと自体が不思議だというように返してくる。奏ちゃん、そのセリフに疑問は感じないの?
「奏ちゃん……僕は男なんだけど? それに、もうすぐ由佳里も奏ちゃんの“お義姉さま”になるのに、
どう区別つけるつもり?」
「うーん……由佳里ちゃんは由佳里ちゃんですし……由佳里ちゃんのことはお兄さまと呼べとおっしゃるのですか?」
「「なんでそうなるんだよ!」」
僕と由佳里の声がハモる。奏ちゃん、気づいてないと思うけど、それ、両方にけんかを売る発言だよ……。
「まあまあ、奏も悪気はないんだし、おまえのお願いを聞いてくれるんだから、目くじら立てなくてもいいじゃないか」
父さまがそうなだめてきた。まあ、確かにそれはありがたいし、今日ぐらいはいいかな……。
「瑞穂さん、お願いって?」
「ああ、今日はみんなにちょっとあるお願いをしたんだよ。僕の誕生祝いとして」
「誕生祝い……ですか?」
まあ、今日は晴れているから、僕の望みどおりのデートが出来るし、そのコースではみんなも
苦労しなくてよかったんだけどね。
「じゃあ、まりやに頼んでおいた、晴れの日の服に着替えて、出かけましょうか」
「はい!」
こうして、僕たちは誕生日のデートをすることになった。
「お姉さま、今日は何をするんですか?」
由佳里が聞いてくる。まあ、内容は秘密にしておいたから当然だけど。
「わかばみ」
「わかばみ?」
キョトンとする由佳里。そうだろう。そんな言葉は聞いたことないから。
「春にするのがお花見。秋にするのが落ち葉見。そして今の時期なら若葉見」
「……つまり、自然のデートコースですか?」
「そういうこと。じゃあ、もう準備できてるし、2人でゆっくり自然に浸ろう」
僕は、そう言って由佳里と一緒に僕の家が所有する山を登っていった。
「わあ……きれい……」
僕が森の中の適当なところを見つけてシーツを敷くと、由佳里はまわりの景色に見とれていた。
「そうだね」
確かに若葉萌える森をこんなに間近で見るのは初めてだし、空気も清々しくて心地いい。
だけど、そこに黄緑色のブラウスに、茶色のミニスカートを着ている由佳里は、もっと絵になると思う。
「まるで妖精みたいだね。由佳里は」
紫苑さんを“静”の妖精にたとえるなら、由佳里は“動”の妖精といったところか。
「も、もう、瑞穂さん、からかわないでください……」
由佳里は頬を染めて恥じらいの表情を見せる。すごく可愛い。
「からかってなんかないです」
「もう……」
「ところで、2人でちょっとこの辺を散策してみない?」
僕はそう提案すると、由佳里は少し不安そうになった。
「あの……迷子になったり……しないですよね?」
「大丈夫だよ。ここには何度か来たことがあるし、散策しても迷わないから」
僕たちは、森の中を歩き回り、川に足を浸したり、小高いところから街を眺めたりと、2人きりの時間を存分に楽しんだ。
そして昼ごろ。シーツの敷いてあるところに戻ってきた僕たちは、由佳里の作ってきた料理の入った重箱を開け、
昼食をとりながら話していた。
「うん。やっぱりすごくおいしい」
「ありがとうございます!」
「由佳里はどう? こういうのは」
「はい……街へ遊びに行くのもいいですけど、こういうのもなんか幻想的でいいですよね」
由佳里も気に入ってくれたようだ。僕の誕生日だから主役は僕なんだけど、
由佳里が笑顔でいてくれるのが、僕にとって一番の幸せだ、と思う。
「幻想的か……」
「はい、なんか……すごく新鮮でした」
「じゃあ、近くにロッジもあるし、今日はそこに泊まろうか」
僕がそう言うと、由佳里がなぜか戸惑った顔をした。
「で、でも、私、夕方ぐらいに帰ると思っていたから、パーティーの準備とか、何もしてませんよ?」
パーティーか……それもそうだけど。
「いいよ。どっちにしろパーティーは明日みんなで開いてくれるから。
それより、今日は由佳里と2人っきりの時間を過ごしたいな」
「わかりました。瑞穂さんがそうおっしゃるなら……」
由佳里は頬を染め、消え入りそうな声でそう言ってくれた。
4時ごろまで僕たちは若葉見を楽しみ、それから約30分歩き、僕たちは木造のロッジにたどり着いた。
僕は、中を案内して回る。
「瑞穂さん、ちょっと待っていてくださいね」
僕が一通り案内すると、由佳里はそう言って、リュックを持って外に飛び出していった。どうしたんだろう?
見ると、リュックの中身が全て出されているみたいだけど……。
そう思いながら、僕は外で森の光景をボーッと見ながら由佳里の帰りを待っていた。そして……。
「ただいま帰りました!」
あれから1時間ほどして、由佳里は帰ってきた。ところどころが土で汚れてる姿で……。
「どうしたの? そんな泥だらけになって?」
「すぐにわかりますよ」
由佳里はそう言ってキッチンに向かう。
「こ、これ、由佳里が今採ってきたものなの?」
「はい!」
僕は驚いた。由佳里は、夕食の材料を全て山で採ってきたんだ。
テーブルに並んだのは、ご○○主義によりロッジに残っていた米で炊いたご飯と、川魚の塩焼き、
野草のお味噌汁や炒め物などだった。
「でも、食べられるものと食べられないもの、どうやって見分けるの?」
「私、子供の頃から時々山で遊んでいましたから、野性の勘というか、そういうにおいがわかるんです」
由佳里ってすごいな……料理の腕だけじゃなくて、食材を見分けることもできるなんて……。
僕たちは、野性の旨味があふれる夕食をとてもおいしくいただいた。
「ふう……今日は楽しかったな」
「私もです」
僕と由佳里は、寝室でイスに座って、今日のことを話していた。
「それにしても、夕食で、また由佳里の新しいすごいところを見つけられるとはね……ますます虜になっちゃったよ」
「もう……瑞穂さんったら、お口がうまいんですから……社交辞令のときもあるんですか?」
僕が褒めると、由佳里は恥ずかしそうにごまかしてきた。由佳里って、自分を過小評価してるんじゃないかな。
まあ、僕が恋人の欲目で過大評価している部分もあるんだろうけど。
「ううん。由佳里に言うことは、全部本心です」
いつしか僕たちはベッドの中で、下着姿で話していた。
「そうだね。だから僕もみんなにお願いしたんだから」
「え……?」
「そっか。言ってなかったっけ。僕がみんなに、誕生日は由佳里と2人っきりで過ごさせて欲しいってお願いしたの」
「み、瑞穂さん……」
それを聞いた由佳里の顔が赤らみ、表情からは嬉しさが滲み出ている。
「由佳里……」
僕は、由佳里の後ろから手を回す。
「でも、瑞穂さんがくれた夢も、夜が明けると醒めちゃうんですね……」
ふと、由佳里が不安そうに言う。でも、残念ながら、それは防げないんだよね。
「そうだね。だから、せめてこれが夢じゃないってこと、しっかり心に刻みつけよう。
最後に忘れられない想い出を作って、ね」
僕はそう言って、由佳里の下着の上から、胸とあそこを優しく触る。
「んっ……」
「2人っきりでいられるうちに、由佳里とこうなっておきたいからね」
「私も、ずっと瑞穂さんに触ってて欲しい……です……はあっ……」
「触ってるだけでいいの?」
「あ……そんなのやです……んっ……」
僕が意地悪く聞くと、予想通りの答えが返ってきた。
「ふふっ、それじゃあ……」
次は由佳里の唇にキスをし、それから由佳里の全身に舌を這わせていった。
「ふぁああ……瑞穂さん……ダメ……優しすぎて、感じすぎちゃいます……」
「あれ? 優しくされるのが、由佳里の好みじゃなかった?」
「そ、そうですけど、瑞穂さんの優しさはもともと限度を超えすぎてるんです……」
「そうかな? 僕は普通にやってるつもりだけど」
僕も由佳里も、お互いの愛をめいっぱい受け止めたいっていうのもあるんだろうな。
「み、瑞穂さんの普通は、私にとってはすご過ぎるんです……ぷふぁあああっ……!」
「嫌い?」
「ぜ、全然、嫌いじゃないです……」
「じゃあ、もっと優しくしてあげるね」
僕はそう言って、もう1度由佳里の唇にキス。そして、下着の中を弄り回しながら、顔の至るところにキス。
「み、瑞穂さん……私、もう……もう……んふあああっ……!!」
由佳里も、そろそろ限界みたい。見ると、胸もあそこも満タンだ。
「じゃあ、挿れるね」
「は、はい……ふぁあああうっ!」
そして僕は、由佳里を抱きしめながら、由佳里の中をかき回した。
「ゆ、由佳里……僕、もう……」
「瑞穂さん……私も……」
お互いに確認すると、一緒に達するように心の準備をする。
「あああああああっ……!!」
「ぷふぁあああああうっ……!!」
「どうかな? これで、忘れられない想い出になったかな?」
「はい……なりました」
同時にイってしばらく休み、起き上がると、僕は2人っきりの世界の締めくくりに、感想を求めた。
「そう。よかった。僕も忘れないよ、今日のこと」
「じゃあ……」
由佳里はそう言うと、僕のものを愛しそうに手でしごき、自分の中にあてがう。
「もう、由佳里ったら……」
僕は苦笑した。あれだけやって、まだ欲しいなんて。でも、そんな由佳里を、とても愛しく思う。
「瑞穂さんとなら、24時間いつでも、何回でもいいですから」
そう言って、由佳里は僕の手を掴み、自分の胸をさわらせてくる。それから、僕たちは朝までお互いを求め続けた。
おまけ
「瑞穂ちゃん、誕生日おめでとう!」
「おめでとうございます!」
次の日、1日遅れで僕の誕生パーティーが開かれた。みんな、僕の誕生日を祝ってくれるのは、とても嬉しく感じる。
昨日も、素晴らしいものをもらったし。
「じゃあ次は、みんなに見せたいものがあります」
パーティーは次々と進み、終盤あたりでまりやがそう言ってビデオをつける。
「………!!」
その内容を見て、僕と由佳里は愕然とした。
「み、瑞穂さん、もっと、もっとおお!!」
「ゆ、由佳里、僕も、気持ちいい……」
そこには、昨日の僕たちの様子が映し出されていた。無論、お互いの行為の最中も。いつの間にこんなもの!
「ちょ、まりや、止めてよ!」
僕はリモコンでビデオを止めようと必死でまりやを追いかけた。
「瑞穂ちゃんのお願いは、誕生日に由佳里と2人っきりで過ごさせてあげることだけでしょ?
誕生日に邪魔はしてないんだからいいじゃない」
「そうですわ。みなさん昨日は我慢してらっしゃったんですから、これぐらいの報酬はいただいてしかるべきではなくて?」
紫苑さんもまりやの弁護にまわる。
「知ってたが、止めるのもつまらないだろ?」
「こちらの方が面白いですから」
父さまと母さまもグルなんですか!?
「今回ばかりはまりやさんのお気持ちがわかりますわ」
た、貴子さんまで……。
「まあなんだ、これで瑞穂ちゃんと由佳里も、一生忘れられない想い出になったでしょ?」
まりやが勝ち誇ってそう言ってきた。
「ううう……恥ずかしすぎです……」
「これからは、もっとよく考えてお願いをつけたそう……」
こうして、僕たちは1つ大人になったのだった。
Fin
以上です。お目汚し失礼いたしました。
まあ偏愛というか、思いっきり由佳里ちゃんびいきな聖誕祭SSですが、
昨年は(貴婦人への架け橋 バースデー編&デート編)由佳里ちゃんをオチに使ってますので、
あるいは、由佳里ちゃんは普段冷遇されがちですのでこれで釣り合いが取れる、というのは、
やはり私の身勝手な解釈……なのでしょうね。
まあ、おそらく現在L鍋さんが大急ぎで聖誕祭SSを執筆中だと思いますので、
お口直しにそちらをお読みください。
それでは、私はこれで失礼します。
母さま?楓のこと?
それとも仮想設定ですか?
>>154 楓さんのことです。
この時、慶行さんはすでに楓さんと再婚している設定ですので。
しまった……後でよく見てみたら、抜けている部分がありました。
>>147より
僕が褒めると、由佳里は恥ずかしそうにごまかしてきた。由佳里って、自分を過小評価してるんじゃないかな。
まあ、僕が恋人の欲目で過大評価している部分もあるんだろうけど。
「ううん。由佳里に言うことは、全部本心です」
「世界は日々変わっていくけど、こういうことをしてると、永遠に時間が止まっているみたいだね」
「そうですね……私、できるならこのまま、時間が止まったような場所で、ずっと瑞穂さんと2人っきりで過ごしたいです」
いつしか僕たちはベッドの中で、下着姿で話していた。
「そうだね。だから僕もみんなにお願いしたんだから」
>>148へ
以上です。失礼いたしました。
一週間遅れ…orz
東の扉さんに尻を叩かれて何とか書き終わりました。
バカ話です。どうしようもないくらい。
ご注意
L鍋の各SSは、一応、それぞれがパラレルワールドとなっております。
どっかで見たな〜と思われる設定も、繋がっておりませんので気のせいということでお願いします。
『鬼ですよ、このボードゲーム』
設定はノーマルエンド(一子エンド)
卒業から一年後の瑞穂の誕生日パーティー。
いつものメンバーが、鏑木邸の瑞穂の部屋に集まってお祝いしている。
ちなみにいつものメンバーとは、瑞穂本人、誕生日に合わせて帰国してきたまりや、恵泉女子大の紫苑、
瑞穂と同じ大学の貴子、そして恵泉女学院の寮から憑いてきた人外の女の子、一子。
一子のことは紫苑も貴子も、卒業旅行の時以来、顔見知りである。
「凄い凄い、お姉さま、凄いです!皆さん物凄い勢いでビールを飲んでます!もうギュンギュンですっ!」
一子は未だに、瑞穂のことを『お姉さま』と呼ぶ。
最初は注意していた瑞穂も、だんだんともうどっちでも良いかと思うようになり、何も云わなくなった。
「まりやが大量に持ち込んだ酒類が、まだまだあるね…」
「あったり前でしょ。パーティー=酒盛り!常識ってもんよ」
部屋に漂う物凄いお酒の匂い。
もう全員が相当な量を飲んでいる。
床に転がる大量の缶ビールの空き缶。そして部屋の隅には、缶ビールの入った大箱がまだ、2箱積まれている。
紫苑の運転する車でまりやがここにやって来る前に、酒屋で仕入れてきたものだった。
まりやが開いてくれた瑞穂の誕生パーティーのハズなのだが……
「僕の誕生パーティーだってこと、忘れてるよね」
「嫌ですわ、瑞穂さん。覚えているに決まってるじゃありませんか」
「そうそう」
「今日は瑞穂さんの誕生パーティにきたんですよ」
そう云われて瑞穂は部屋をぐるりと見回す。
しかし、部屋にあるのは出前の寿司と空になった一升瓶、あと、酒のつまみに買ってきた『珍味蛸べえ』と
『いか太郎くん』が入ったでっかいプラスチック容器である。
「……違う。絶対に違う。こんなの誕生パーティーじゃない…」
「なにウジウジ云ってんのよ。こんなキレイどころが集まってんだから、もっとハイテンションになりなさいよ」
酒臭い息を撒き散らしながら、まりやが瑞穂に抱きつく。
「ああっ、まりやさん!瑞穂さんから離れなさいっ!」
貴子が喚く。
「では、私も。うふふふ」
紫苑が抱きつく。
「…ううっ、なに、このサバト」
「お姉さま、へっぽこ幽霊三等兵なんのお役にも立てず申し訳ありません」
「大体、まりやさん。貴女は今日、何の誕生日プレゼントも用意してきていないではありませんか!」
「ん?プレゼント?あるわよ〜。つーことで瑞穂ちゃん。明日はあたしとデートだあ」
「「「「えっ?」」」」
まりや以外全員つっこむ。
「ちょっと、まりや。プレゼントをねだるつもりはないけど、一体それのドコがプレゼントなの?」
「うひひひ、勿論ただのデートじゃないわよ。濃厚なデートよ。濃厚!夜のデートも含めてね!」
そう云われて顔を赤くする瑞穂。
「まりやさん。そういうデートでしたら瑞穂さんへのプレゼントではなく、瑞穂さんからのプレゼントなのでは?」
「いいえ、紫苑さま。瑞穂ちゃんはこう見えても男なんですから。こういうのはやっぱり嬉しいんですよ。ね〜瑞穂ちゃん」
「いや、僕は別に…」
「なあに!聞こえないわよっ!」
まりやが酒臭い息を吐きながら般若のような目つきで睨む。
「ひっ。何でもないです」
「でしたら私もそのプレゼントにすることにします」
紫苑が云いだすと、貴子も続いて云う。
「わ、わ、私もですわ。の、濃厚デート。それにまりやさんがデートのお相手ではプレゼントではなく罰ゲームですわ」
「何が罰ゲームですって!ともかく、このプレゼントデートはあたしの発案なんだからあたしのモノ!」
ビール片手にわいわいと云い合いが始まる。
それを横目に、はあ〜っとため息をつく瑞穂。
「お姉さま。お疲れですか?」
「ん、大丈夫。一子ちゃん。皆、祝ってくれてるんだから文句いうつもりはないんだけどね」
「それにしても皆さん、パワフルですねぇ。まりやさんは先ほどから缶ビール500ml缶を一息で飲み干してますし、
紫苑さんは珍味の容器を小脇にずっと抱え込んでますし、貴子さんは洋酒のビンをさっきから離しませんし」
「あのお酒、父さまの戸棚からまりやが勝手に持ってきちゃったやつだよね」
そうこうしている内に話がついたのか、まりやがカバンをごそごそといじったかと思うと、大きな箱をでんと取り出した。
「じゃあ、これで勝負をつけましょ」
「なに、コレ?」
「ゲームよ。ボードゲーム。こんなことになるかもと思って持ってきてたの」
「こんなことに…って予想してたの?」
「当然でしょ。瑞穂ちゃんの誕生日→集まるメンツ→酒盛り→ゲーム対決、ほら決まってるじゃない」
「決まってないでしょ!」
「ということでゲームの勝者は瑞穂ちゃんと濃厚なデートをする権利を得ます!」
パチパチと沸き起こる三人の拍手。ちなみに瑞穂と一子は拍手していない。
「多数決で決定ね」
「決まっちゃいましたね、お姉さま」
「…ううっ、僕が勝ったらどうなるの?」
「この三人の内、サイコロ振って決めた相手と濃厚デートってどう?」
「それって何も変わらないじゃない」
「つべこべ云わない。じゃ、どうするかは勝った時に決めたらいいじゃない。まあ、勝ったらの話だけど」
「…それで、このゲームは?」
「ボーゲーマニアのあたしが選び抜いた一品よ」
タイトルを読む瑞穂。
「えっと、『入生ゲーム・鬼』・・・なんてコメントしたら良いのか分からないけど、とりあえず云うね。
名前、丸パクは拙くない?」
「なに云ってんの。パクってないわよ。あっちは『人』、こっちは『入』、別モノでしょ。読み方はニュウセイゲームよ」
「・・・うん、判った。もうそれで良いよ。鬼ってなに?とも聞かないよ」
「それにしても、まりやさん。この展開は何だか覚えがあるような…デジャヴ?」
※重ねて云いますが、以前書いた話と設定は繋がっておりません。
「気のせいでしょ。じゃ、始めるわよ」
「あのう、まりやさん」
一子が手を上げる。
「なあに?一子ちゃん」
「私も参加したいなあ…なんて思ったりして」
「う〜ん、そうね。じゃ、一子ちゃんも参加ってことで」
「うわあ、有難うございますぅ」
「僕が一子ちゃんのルーレットを廻すね」
早速、まりやがゲーム盤を広げて準備をする。
大きなゲーム盤にループ状にマス目が描かれていて、そして盤の真ん中には白・グレー・黒のカードの山が置かれている。
「それじゃ、ルール説明するわよ。この入生ゲーム・鬼はゴールのマスは無し。ループ型の盤上で互いの所持金を奪い合うゲームよ。
各プレイヤーが持ち金100万ペリカでスタートして、持ち金が0になったら脱落。最後の一人になった人が勝者。OK?」
瑞穂が手を上げる。
「はい、まりや」
「なあに?瑞穂ちゃん」
「突っ込まないって決めたけど、云わずにはいられないから云うね。ペリカってナニ?」
「お金の単位よ」
「・・・なんだか分からないけど、とても不吉な感じがするからドルにして。お願い」
「いちいち五月蠅いわね。いいわよ。ドルにしてあげる。じゃ、順番決めるわよ」
5人それぞれダイスを振って順番を決める。
瑞穂、一子、貴子、まりや、紫苑の順番に決定。
「では僕から」
瑞穂が軽くルーレットを回す。
――カラララッ…3
【ラッキー!白のカードを引け】
「これだね」
真ん中のシマに置かれている白のカードの山から、一枚カードを引く。
《新興宗教を始める。全員からお布施10万ドル貰う》
「ふふふ、凄い数の信者が集まりそうですね」
「その時にはあたしがマネージメントしてあげるわ」
「…絶対にありえないから、そんなこと」
次は一子の番。瑞穂が変わりにルーレットを回す。
「勢い良くまわしちゃってください」
――カラララララララッッ………8
「うわあ、初っ端からおっきな数字が出ましたね〜。幸先が良さそうですよ、コレは」
【アンラッキー!!黒カードを引け!】
「黒…こっちだね」
黒カードの山から一枚カードを引く。
《バナナの皮で滑って転ぶ。持ち金1万ドルを残して全て落とす。落としたお金は次の順番のプレーヤーのモノになる》
「ひええええっっっ!!!!」
絶叫する一子。
「う、うわぁ…これは…初っ端から…」
「ふっふっふ。このゲームを甘く見てもらっちゃ困るわね。伊達に鬼の名をつけている訳じゃないの。一撃必殺があるんだから」
「ボードゲームで一撃必殺って…」
一子のお金を貰って、ニコニコ顔の貴子。
ルーレットをまだ一回も回さないうちに、既にダントツのトップ。
「まあまあ、所詮はゲームなんですから。一子さんも気になさらないで」
余裕めいたことを口にしているが、心の中では瑞穂との濃厚デートをゲットした確信からガッツポーズをしている。
「お遊びですよ。お遊び」
ブランデーを片手に、貴子が軽くルーレットを回す。
――カラララッ……8
【アンラッキー!!黒カードを引け!】
「・・・えっ!?」
《バナナの皮で滑って転ぶ。持ち金1万ドルを残して全て落とす。落としたお金は次の順番のプレーヤーのモノになる》
「ひいいいいいぃぃぃぃ!!!!」
絶叫する貴子。
「はいはい、ご苦労さん。これであんた達のお金はあたしのモノっと」
お金はまりやのところに流れ込んだ。
「こ、これは、サギですわ。ズルですわ、まりやさんの陰謀ですわ!」
喚く貴子。
「貴子あんた、数秒前までの余裕が一気に吹き飛んで本性剥き出しになってるわよ」
まりやが缶ビール片手にルーレットを軽く回す。
――カラララッ……4
【ぱるぷんて。グレーのカードを引け】
「グレー?」
「グレーカードはラッキーとアンラッキーが50%ずつ入ってるの」
瑞穂にまりやが説明する。
【組長暗殺失敗。スクワット10回】
「あらあ、スクワットかあ」
「組長暗殺…一体ナニをやったの?」
「まりやさんの持ってきたゲームだけあって全く変なゲームですこと」
まりやがスクワットを10回する。
「では次は私ですね」
いか太郎くんを片手に紫苑がルーレットを回す。
「し、紫苑さん?あまりお行儀が良くないですよ?」
――カラララッ……5
【ハンドル操作失敗!黒カードを一枚引け!】
「黒カード……コレですわね」
ゲーム盤中央に山積みされている黒いカードの束から、紫苑が一枚とる。
《強制奉仕活動!今からゲーム終了まで誰かに膝枕をしてあげること》
「あら、これはどういう事しょう?」
「つまり紫苑さまは誰かに膝枕をして差し上げないといけないということですね」
まりやが解説する。
「それは私が誰にするか決めていいのですか?」
「ええ」
紫苑はクルリと瑞穂の方を向くとニッコリと微笑んだ。
「では、瑞穂さん。どうぞいらしてください」
「えっ!?いや、その、紫苑さん…」
「どうぞ」
「そ、その、罰ゲームなんですからそんな嬉しげに…。何でしたら無理にしなくても良いんじゃないかと…」
紫苑はポンポンと自分の腿を叩いた。
「瑞穂さん、カモン」
「・・・・・・」
「いいなあ」
嬉しそうに瑞穂を膝枕している紫苑を、羨ましそうに見ているまりやと貴子。
瑞穂は顔を真っ赤にして、出来るだけ膝のほうに頭をちょこんと乗せようとしているが、紫苑が強引に頭を引っ張って、
自分の太腿の上に押さえつけている。
「あれでは罰ではなく御褒美ですわね」
「流石は紫苑さま。強運ね」
ニコニコ顔の紫苑。
「このままじゃ、まともにゲームできないよ…」
瑞穂の番。起き上がろうとしても、紫苑が瑞穂の頭を押さえつけているため寝転んだままでルーレットを回す。
――カララララッ……7
【ドリフト成功!豆腐屋に勝利!ラッキーカード白を一枚引け!】
「豆腐屋?何のことだろう…ラッキーカードってこれだよね」
瑞穂はゲーム盤中央に山積みされている白いカードの束から一枚引いた。
《現在の束縛状態から免れる。若しくは任意の人から10万ドル貰う》
「助かったぁ」
ほっとした表情で膝枕から起き上がる瑞穂。
「瑞穂ちゃんも運が強いわね」
「んんっ、残念ですわ」
残念そうな紫苑。
「別に10万ドルでも良かったですのに」
「いえ、遠慮しときます」
「次は私の番ですよ。今度こそ〜」
一子の変わりに瑞穂が回す。
「今度は軽くお願いします」
――カララッ……8
「おや?また気前の良い数字が出ましたね〜」
【とことんツイてないアナタ!黒カードですよ!】
「・・・えっ!?」
《小石に躓いてお金を投げ出す!10ドル残して持ち金を前の順番のプレイヤーに渡す》
「どっひええぇっっ!!!」
絶叫する一子。
「うわっ、また…。ゴメン、一子ちゃん」
謝る瑞穂。
「あう…私って一体…。幽霊でありながら滑ったり躓いたり…」
一子のお金9990ドルが瑞穂のモノになった。残金10ドル。
「では回します。…8は出ないで」
貴子の番。
――カララララッ……7
【運が向いてきたアナタ!白カードですね】
「ふう、危なかったですわ」
「…ちっ!」
舌打ちするまりや。
《ひったくり成功!前の順番のプレイヤーから1万ドル奪う!》
「あらあ、貴子。引ったくりなんかして…。人間堕ちたくはないものね〜」
「わ、私が引ったくりなんかする訳ないでしょう!例え貧していても犯罪なんかいたしません!」
「まあまあ、ゲームの中の話ですから」
瑞穂が宥める。
「えっと、一子さんから1万ドル貰えるんでしたわね。私も所持金が少ないですから助かりますわ……」
「・・・・・・」
一子は10ドルしか持っていなかった。
一子、ゲームオーバー!
「あああっ!!!終わりですか!?私、終わりですか!?もう私要らない子ですか!?まるでスチールセイント・・・」
「ストップ!一子ちゃん!」
がっくりうな垂れる一子。
貴子もがっくりしている。
「じ、10ドルだけ…」
「にはは〜。貴子潰すチャンスね」
喜んでいるまりや。
「あの…御免なさい、貴子さん。10ドルしか持っていませんで…うううっ」
「いいのですよ、一子さん。所詮はゲームなんですから。ほほほ」
貴子が引きつった笑いで答える。
「ああ〜。用無しのポンコツ三等兵は後ろで黙って見物しています」
一子は貴子の後ろに行くと黙ってゲームを眺める。
じぃぃぃ〜〜
「・・・・・・・・・」
じぃぃぃ〜〜
「…あの、一子さん?」
貴子が後ろを振り返ると、そこには恨みがましい目をした一子の顔が!
「ヒッ、ひえぇぇー!!!」
絶叫しながら凄い勢いで貴子が後ずさりする。
「どうかぁしましたかあぁ〜」
ゆらゆらと近寄ってくる一子に貴子が腰を抜かす。
「ヒエッ!ヒエェー!!お、おば、おば・・・」
そんな様子をまりやは缶ビール飲みながらケラケラ笑っている。
「今更なに云ってんだか。一子ちゃんは元からお化けでしょ」
「違うでしょ。お化けじゃなくて幽霊」
瑞穂が慌ててフォローする。
「うううっ、私ってやっぱりお化けで化け物でモンスターなんですね。ずびばぜ〜ん!うええん」
「一子ちゃん、泣かないで。貴子さんも酒に酔ってたから…」
「そ、そうです!私が怖がりなだけです。一子さんは悪くありませんよ」
我に返った貴子も慌ててフォローする。
紫苑が優しく微笑みながら慰める。
「一子さん、良いのですよ。幽霊は驚かすのがお仕事ですものね」
「「「「・・・えっ!?」」」」
貴子とまりやは目を丸くして呆気に取られている。
ヒソヒソと会話する一子と瑞穂。
「…また、云ってますが…紫苑さん。やっぱり本当にそう思ってらっしゃるようですね…」
「良いんですよ。そこが紫苑さんの良いところなんですから」
「…?」
皆の反応に首をかしげている紫苑。
「ま、一子ちゃんはビビリの貴子じゃなくてあたしの後ろで応援してくれれば良いわよ」
「うっ、返す言葉がありませんわね…」
「あう…有難うございます。お言葉に甘えまして」
一子がまりやの後ろに移動する。
「それでは応援させていただきます。まりやさん、ガンバレ!それ行け!突っ込め!」
「…声出さなくて良いから」
「…ハイ」
「さあ、一子ちゃん!アナタを追放した鬼畜貴子を葬るわよ!一子ちゃんのパワーをあたしに預けなさいっ!」
「人聞きの悪いことを云わないでくださいなっ!」
「こういうタイミングでのあたしの強運は凄いわよ〜」
勢い良くまりやがルーレットを回す!
――カラララララッ……4
【あんっラッキィ〜!黒カードを引きなさい】
「まさか…」
《バナナの皮で滑って転ぶ。持ち金1万ドルを残して全て落とす。落としたお金は次の順番のプレーヤーのモノになる》
「・・・っ!!なにっ!?」
「お〜っほほほっ!なるほど強運ですわねえ、まりやさん。自慢するだけのことはありますわ」
「くっ!」
まりやが悔しそうに唇を噛む。
「おかしいわね。いつものあたしならこういう場面、いい奴が一発出るんだけど…」
色々考えて、チラリと一子の方を見るまりや。
「あぁ、私の応援がお役に立てず申し訳ありません」
「……いいのよ」
(もしかすると、一子ちゃんに応援されるとアンラッキーになるのかしら…)
「皆、何故か黒カードが多いね」
「あらあら、いつの間にか私がトップですか?」
紫苑のところに現在、一子、貴子、まりやの3人分のお金が集まっている。
「一子ちゃん、一子ちゃん。今度は紫苑さまを応援してあげて」
「はい?」
「…いや、その…だって、あたしばかり応援してもらっちゃ悪いしね。ここは平等に…」
「そうですか。では」
一子が紫苑の背後に移動して、応援を始める。
「紫苑さん、がんばれー」
「うふふ。ありがとう。一子さん」
紫苑がルーレットを回す。
――カラララッ……6
【大失敗!!プリンに醤油!たまご豆腐と間違える。黒カードを引け!】
「あら…」
「やっぱりっ!」
密かにガッツポーズをするまりや。
《全員に慰謝料50万ドルずつ渡す…》
「150万ドル吐き出すことになるわね」
「あれ?まだ続きがあるみたいだよ」
《…追徴金10万ドルずつ上乗せすれば白、グレー、黒いずれかのカードをもう一枚引いても良い》
「では、お一人60万ずつお渡しすればいいのですね」
「即決!?カードを引くんですか?」
「だってこのままでは面白くありませんでしょう?」
紫苑はそう云って全員に60万ずつ渡した。
「それでは黒カードを引きますわね」
「「「「・・・何故、黒!?」」」」
全員の声がハモる中、黒カードを一枚引く。
…ピラッ!
《強制奉仕活動!今からゲーム終了まで誰かに膝枕をしてあげること》
「「「「またっ!?」」」」
ニコニコ笑いながら紫苑は瑞穂の方を向く。
「さっ、どうぞ」
「いや、あのね、紫苑さん…」
「どうぞ」
「その…」
自分の腿をポンポンと叩きながら、にこやかな顔ではっきりと云う紫苑。
「 カ ・ モ ・ ン ! !」
「・・・・・・・・・」
嬉しそうに瑞穂を膝枕している紫苑を、羨ましそうに見ているまりやと貴子。
まりやがギリッと爪を噛む。
「ふむ…どうやら一子ちゃんの不運では紫苑さまのパワーを抑えきれないか…」
瑞穂は真っ赤になりながら出来るだけ浅く、紫苑の膝に頭を乗せようとしているが、紫苑が力ずくで
自分の太ももに押さえつけている。
「うらやましい…」
ポツリと漏らす貴子。
とっても嬉しそうな紫苑の顔。
「ハイ、瑞穂さん。ア〜ン…」
そう云って、瑞穂の口元に『いか太郎くん』を持ってくる。
「い、いりません…」
「あら、『珍味蛸べえ』のほうが?」
「い、いや、お腹いっぱいですから…」
「んん、残念ですわ」
膝枕状態の瑞穂にどうしても食べさせたいらしい。
瑞穂の番。
「な、なんとかまた、この状態から脱出しないと…」
寝転んだままで瑞穂がルーレットを回す。
「お姉さまっ!頑張ってください!」
一子が応援する。
「あっ、駄目!一子ちゃん!」
「へっ?」
――カラララッ……4
【青い空、白い雲。白カードです】
「「「「「………」」」」」
全員が固唾を呑んでカードを見守る。
ピラッ
《消える飛行機雲、追いかけて旅に出る。全員から旅費10万ドルずつもらう》
「ふむ。瑞穂ちゃんには効かないのか」
「まあ、瑞穂さん。ロマンチックですのね。はい、10万」
「ああっ、お金よりもこの状態を何とかしたかったよ」
「…ある意味、不運とも云えるかも…」
「ちょっと、まりやさん。さっきから何やら挙動不審ですわね」
貴子がまりやの行動に不審を感じる。
「ん?何のことかしら。それより次は貴子の番よ」
「分かってます!」
貴子は手に持ったブランデーのグラスを一気にグビッと飲み干す。
「紫苑さまから瑞穂さんを奪いますわよ」
「その意気その意気。さ、一子ちゃん、私たちも貴子を応援しましょ」
まりやがにやっと笑う。
「ストップ!ビィクワイエットっ!!まりやさん、シャラップ!」
声援をかけようとした二人を貴子は手を上げて制止した。
「まりやさん、どうも貴女の先ほどからの行動が変です。何だかとても怪しいので応援は遠慮しますわ」
「あらあら、人の好意を足蹴にするなんて心の荒んだ人ね。じゃ、一子ちゃんだけでも」
「黙って!動かないで!ドンウォーリー。応援は一切いらないと云いましたわよ」
貴子が気迫で、まりやと一子の口を閉じさせる。
流石は貴子。まりやの悪戯に対する嗅覚の鋭さは一級品である。
「た、貴子さん…。何だか怖いです」
「私は自らの力で運を掴んで見せますわ。この黄金の指でっ!」
自称、貴子のゴールドフィンガーがルーレットのツマミをつまんだ。
「運なんて無い女が何偉そうに云ってんだか…。じゃ、応援がいらないなら呪いをかけてあげましょ。
ムニャムニャ・・・くたばれ・・・倒れろ・・・堕ちろぉー!!タカコォー!!」
「何云ってるんですかっ!まりやさん!貴女というひとはっ!」
――カラララッ……5
【澱んだ空、生ぬるい風。黒カードです】
流石は貴子。まりやからの攻撃に対する運の無さも一級品である。
「あらぁ、残念ね〜。貴子」
「………」
ピラッ
《消える飛行機雲、追いかけてはねられる。お金をぶちまけてしまった!全員に10万ドルずつ渡す》
「ヒヒ、道を歩くときはしっかり前を見て歩きなさいよ。ふひひ」
「・・・・・・・・・」
無言でわなわなと拳を振るわせる貴子。
「ね、まりや」
「なあに?瑞穂ちゃん」
「さっきから思ってたんだけど、このゲームの雰囲気というか感性というか、とってもまりやチックだよね…」
「へへ。実はコレ、あたしがおじ様にお願いして作ってもらったりして」
「…やっぱり」
「ああああなたっ!貴女が作ったんですの!?このスットコなゲームを!?」
「スットコってなによ。自分が負けてるからって」
「スットコじゃなければヘッポコですわ。センスの悪い駄作!大体、作った本人の貴女も負けているじゃありませんか!」
「センス悪いですってー」
しかし一子は素直に感嘆している。
「は〜、まりやさんって多才なんですね〜」
「その通りよ、一子ちゃん。一子ちゃんはあたしのことがよく分かってるわね」
次はまりやの番。
「今度は私が貴女を呪って差し上げますわ。しくじれ〜しくじりなさい〜」
「ふっふ〜ん、無駄無駄。貴子ごときの呪いじゃ屁でもないわ」
ビール飲みながら全く余裕の表情のまりや。
「まあまあお二人とも喧嘩はやめて、せっかくのお姉さまのお誕生日なのですから」
一子が仲裁する。
「さあ、ゲームを続けましょう。不肖ヘッポコ幽霊も応援させていただきます。それ、ガンバレ、まりやさ〜ん」
「!!あっ、バカ!一子ちゃん!ダメ!」
「さっきから何を云っているのですか、貴女は」
慌てて制止するまりやを貴子が見咎める。
「何やら、一子さんの応援が関係するようですが、何かあるのですか?」
「………」
「一子さんに応援されるとツキが落ちるとか?」
「・・・・・・・・・チッ、カンノイイヤツ」
「えええっ!私が応援するとツキが落ちちゃうんですかあー!?」
驚いて涙目になる一子。
「それで貴女、先ほどから!まりやさんっ!アナタって人はっ!」
ぎゃぎゃあと両側から喚きたてる二人を、まりやが手を振って黙らせる。
「シャラップ!一子ちゃん、ツキが落ちるって云ってもちょっとだけよ。ほら、瑞穂ちゃんは大丈夫だったでしょ」
「瑞穂さんは元から強運の方ですし」
「うっさい!少々のアンラッキーで負けるようならそれが実力なのよ!」
「ほ〜、なら一子さんがまりやさんを応援しても問題ありませんわね」
「…くっ」
「では一子さん、まりやさんの応援を派手にしましょう」
「で、でも…」
躊躇う一子に貴子は力強く力説する。
「大丈夫です。まりやさんもその程度、恐れるヘタレではない。どんとこい!カムヒア!とおっしゃってますし」
「わかりました!一生懸命応援しますね」
「ついでに私も応援しますわね、まりやさん。……しくじれ〜しくじりなさい〜堕ちなさい〜」
一子ちゃんと貴子の大合唱の中、ルーレットを回すまりや。
「このぉ、貴子のくせにぃ。……負けるかあぁ!」
――カラララッ……3
【せっかくだから赤の扉を選ぶぜ。グレーのカードを引け】
「来いっ!」
ピラッ
《めがんて!誰かひとりに所持金の半分を与えなければいけない…》
「あらあら、ご愁傷様ですわね、まりやさん」
愉快そうな貴子に軽く笑いながら返すまりや。
「ふん。甘いわね、貴子。続きがあるのよ」
《…その代わり油性マジックでその人の顔面に落書きしてよい》
「…えっと、何ですか、コレ」
「はい、貴子。お金」
まりやは貴子に所持金半分を押し付けると、腕を掴んでグイッと引き寄せた。
「なな、何をするんです」
「ええい、じたばたするなぁ」
そして油性マジックの蓋をキュポンとはずした。
「さっき、あんた、あたしのセンスが悪いと云ったわよねぇ。ほんとにそうか試してあげるわ!」
「いやっ!やめてぇ!」
キュッキュッキュッ
貴子の額に書かれる漢字一文字 『 肉 』
「・・・・・・・・・」
「あたしのセンスはどうかね?気に入ってもらえたかね、肉?」
「・・・・・・・・・」
「返事が無い。ただの屍のようね」
「気に入る訳ないでしょう!」
貴子とまりやが不毛な争いを続けている間、部屋の一方ではもう一つの争いが繰り広げられていた。
「はい、瑞穂さん。ア〜ン…」
「む、無理です。食べられません」
「そんなこと云わずに。さあ」
紫苑が口に咥えた珍味を膝に押さえつけた瑞穂に食べさせようとしていた。
「「紫苑さま!!」」
貴子とまりやが同時に突っ込む。
「あら、もう終わりましたか?」
「紫苑さま!こっちに汚れを押し付けて自分だけラブコメしないでください!」
「あまりに手持ち無沙汰だったもので、つい」
「こっちは終わりましたから紫苑さま、次にいってください」
「そうですか。あとちょっとでしたのに。残念ですわ」
ルーレットに手を伸ばす紫苑。
こそこそ話をはじめる貴子、まりや、一子。
「今の流れは紫苑さまのペース。肉、分かってるわね?」
「誰が肉ですか!勿論わかってますとも。一子さんも存分に紫苑さまを応援してくださいな」
「えっ、で、でも」
「紫苑さまの超強運を打ち破るのは一子ちゃんだけじゃ不足。これは実証済みなのよ。ここは3人が力を合わせないと
紫苑さまのワンサイドゲームになっちゃうでしょ」
「さあ!3人力を合わせますわよ!」
一子の応援、貴子とまりやの呪い念力の大合唱の中、紫苑がルーレットを回す。
「あらあら、賑やかですこと。皆さん楽しそうですわね」
――カララララララッッ…………8
【あすとろん。グレーカードを引け】
「グレーか」
「流石に手強いですわね」
皆の注目の中、グレーカードを一枚めくる。
ピラッ
《まほかんた。全員から10万ドルずつ貰う。さらに追加ダメージとして全員の顔面に油性マジックで落書きできる》
「「………強い」」
「これ、どう云うことでしょうか…あら、貴子さんの額…なるほど、マジックで何かを書くんですね、皆さんの額に…」
紫苑はマジックの蓋をキュポンと外すと、全員の額に文字を書く。
キュッキュッキュッ
全員の額に書かれた漢字一文字 『 丼 』
「何だか少しお腹が空いてきましたので」
貴子の文字は『 肉 丼 』になった。
「・・・・・・・・・」
手鏡を持ってブルブル震えている貴子。
「紫苑さまのセンス、ばっちりね。そう思わない?肉丼」
「・・・・・・・・」
「返事が無い。ただの屍のようね」
「キ〜〜〜ッ!」
その後、いろいろあって1時間後ゲームは終了。
優勝は瑞穂になった。
何だか顔中にキスマークと食べ物のカスがいっぱいこびりついている。
「結局、瑞穂さんが勝ちましたのね」
「ま、そうなるような気がしてたけど。それじゃ、3人の内の誰と濃厚デートするか決めましょうか」
「うふふ、楽しみですわね」
「紫苑さまはもういいでしょ」
「いえ、まだ満腹していませんので。甘いものは別腹ですし」
「どうしてもやんなきゃ駄目かな」
瑞穂がうんざりしたように訊く。
「「「ダメです」」」
「…んじゃ、一子ちゃんは?」
「「「えっ?」」」
「一子ちゃんも参加したんだから、当然、デート候補にも入るよね」
全員が空中に浮かんですやすや寝ている一子を見る。
「ん〜、でも、幽霊だし」
「一子さんはいつも瑞穂さんと一緒にいらっしゃるんですから却下でしょう」
「あら、それとこれとは違いますわよ」
「まあ、ゲームキャラでいうと空気とメインヒロインくらい違うわね」
喧々諤々と酒を片手に議論を始める3人。
瑞穂は寝ている一子の手を引っ張り、そっと寝室に向かう。
「もう勝手にやってて。僕は寝させてもらうよ、お休み。それからありがと、誕生パーティー」
3人の議論は、飲み比べで貴子とまりやが轟沈するまで続いた。
Fin
お粗末さまでした。
今回もちょっと長すぎたかな?
L鍋さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
と思ったのに一子ちゃんとのデート前で終わりとか生殺しですか
お疲れ様でした。GJ!
L鍋さんの作品では、一子ちゃん初登場&初の紫苑さんと貴子さん以外のルートですね。
そのうち、まりやルート、奏ルート、由佳里ルートの作品も出来上がるのでしょうか?
ところで、一子ちゃんのルーレットですが、一子ちゃんが瑞穂くんの手をとって、
一子ちゃんの力で回すようにするのはどうかな、と思いました。
「あーあ。今年の誕生日は散々だったな……」
「そうでしょう? 誕生日にまりやお姉さまがお酒を持ち込むと、ろくなことにならないんです」
落ち込む瑞穂に、由佳里が声をかけてきた。
「由佳里ちゃんもそうなの?」
「……詳しくは『最終兵器 瑞穂』をお読みください」
瑞穂は一通り読み終えて……。
「そっか……私、由佳里ちゃんの誕生日、祝ってあげられなかったんだ。ごめんね」
「いいですよ。来年は今年の分も祝ってくだされば、許しちゃいます」
「もちろんよ。来年こそは盛大にお祝いさせてもらうわ」
「今度からまりやお姉さまがお酒を持ち込もうとしたら、全力で叩き潰すことにしましたから」
「そうね。私もそうするわ」
そして2人の言葉は、現実になった。
まりやはこの後、2度とこの2人の誕生日にお酒を持ち込ませてはもらえなかったのである。
L鍋さんのお話で誕生日にお酒が絡むと、本人にはろくなことないな、とふと思って思いついたネタです。
ちなみに、ここでは勝手に続編はなかったものと思ってください。
それでは、失礼しました。
こんばんは。中国故事シリーズ第3弾が完成しましたので、投下させていただきます。
よろしくお願いします。
〜中国故事シリーズ 守株〜
昔々、中国では、鏑国と妹国が戦争をしていました。
しかし、鏑国は次第に妹国に押されて、敗北寸前まで追い込まれてしまいました。
その2つの国の国境付近に、そんなことまるで関係ない、茉莉耶という農婦が暮らしていました。
「会ーえーるだけで輝くー今日のわーたーしー♪」
茉莉耶は今日も、歌を歌いながら野良仕事に精を出しています。と、そこへ……。
「大丈夫……だよね……誰もいないよね?」
1人の身分の高そうな女性が、キョロキョロ辺りを見回しながら近づいてきました。
「あれは、妹国の第1皇女……由佳里姫?」
茉莉耶は、身を隠して様子をうかがっていました。由佳里姫は、周りに誰もいないことを確認すると、
近くにあった切り株に目をつけました。
「何するんだろ? 腰掛けて休むのかな?」
茉莉耶がそう思っていると、由佳里姫は、なんとローブをまくって、秘所を切り株の角にこすりつけ、
同時に胸もはだけさせてもみ始めたのです。
「くうんっ……あっ……いい……いいよお……」
(す、すごい……こんなスクープ、見逃す手はないわ……!!)
茉莉耶は、ビデオでその自慰の光景を隠し撮りしました。
「ああんっ! 瑞穂さまあっ、もっと、もっと優しくうん……!!」
しかも、由佳里姫は敵国である鏑国の第1皇子、瑞穂のことを想いながらしているようです。
(声も録音できるビデオ持っててよかった)
茉莉耶は、凝視しながら、その光景を撮り続けます。
「んっ……」
やがて、行為を終えた由佳里姫が目を覚ましました。
「おはようございます、由佳里姫様」
茉莉耶は、思いっきり意地の悪い笑みを浮かべながら挨拶します。
「あなたは……?」
まだボーッとしながら聞く由佳里姫。茉莉耶はそれに答えず言いました。
「欲求不満は晴れましたか?」
「………!!」
それを聞いた由佳里姫は、ようやく状況を把握し、顔を真っ赤にしました。
「あ……わあああっ!!」
茉莉耶はビデオを再生します。
「妹国の第1皇女ともあろうお方が、こんなところで1人遊び、しかも敵国の皇子をおかずに……
こんなことが世間に知れたら、面白いことになりそうですね」
「お、お願いします……何も見なかったことにしてください……これをお渡ししますから……」
由佳里姫は、目と同じ幅の涙を流しながら、小切手に相当の金額を書き込んで、茉莉耶に渡しました。
「うむ。あたしも鬼じゃないんだし、これで手を打って差し上げましょう」
茉莉耶は、ビデオを渡し、誰にも言わないことを約束しました。
それからしばらくして、茉莉耶のところに、今度は鏑国の第1皇子、瑞穂がやってきました。
「もうダメだ……このままじゃ追っ手に捕まる……なんとか変装しないと……」
瑞穂は、妹国の追っ手を振りきろうと、必死に逃げてきたのでした。
「もし、そこの農婦さん」
そこで茉莉耶に気づき、声をかけました。
「よろしければ、追っ手をまくために、変装のお手伝いをしてくれませんか? お礼はします!」
「わかりました! あたしが見事に変装させてみせます!」
それは茉莉耶の得意分野だったので、喜んで承知しました。
「……ってこれ、女装じゃないの!」
やはり、というか、茉莉耶が瑞穂に課した変装は、女装でした。
「性別が変わると、案外気づかれにくい物ですよ。その証拠に、ご覧ください」
茉莉耶はそう言って、瑞穂を撮った写真を見せます。
「なるほど……確かにこれならわからないかも……」
「でしょう?」
「うん……ありがとう」
瑞穂はそう言って小切手に相当の金額を書き込んで、茉莉耶に渡しました。
「どういたしまして。じゃあご無事をお祈りしていますわ。皇子さま」
茉莉耶はさりげなくその写真を棚にしまいながら、瑞穂に言いました。
瑞穂は、何度も礼を言って去っていきました。
「やったあ! この切り株は幸運の切り株ね。ここを見張ってれば由佳里姫がオナニーしに来るし、
瑞穂皇子は女装させてくれるし、もう働かなくてもOKね」
それから、このことに味をしめた茉莉耶は、野良仕事を辞めて、毎日切り株の近くで由佳里と瑞穂を待ち続けました。
「まだ来ないかなあ? 由佳里姫と瑞穂皇子」
そう。何日も何日も待ち続けました。畑はすっかり荒れてしまい、2人からもらったお金が半分くらいなくなっても。
「もう、何してんのよ! こんなに待ってるのに、いつになったら来るのよ!」
由佳里は他人に見つかった場所でもう1度するはずもないし、瑞穂も逃げたのですから戻ってくるはずもありません。
それでも、茉莉耶は待ち続けました。お金が底をつき、餓死寸前になっても。
「もう、いい加減に来てよお……あたし、飢え死にしちゃうじゃないの……」
そこへ、姉国の第2皇女、貴子が通りかかりました。
「どうしましたの? こんなところで」
貴子が聞くと、茉莉耶は今までのことを話しました。
「……そういうわけで、いくら待っても来ないんですよお……由佳里姫も、瑞穂皇子も……」
「来るわけないでしょうに……ふふふふ……あははは……あーっはっはっは……!!」
茉莉耶は、貴子姫に大笑いされてしまいました。
それから……。
「ちょっと貴子姫さま、あたしのセンスに文句あるんですか? だいたい姫さまが見初めたのは……」
「誰もそんなことは申しておりませんわ。愛し合っている最中に覗くのと口を出すのは無粋だと言っているだけです」
「まあまあ、茉莉耶さんに言っても、やめてくださるとは思えませんから、仕立て料代わりだと思って……」
瑞穂皇子は、姉国に亡命し、女装姿に一目惚れした貴子姫と結ばれたのでした。
そして、第1皇女の紫苑と、3人で愛し合ったりデートしたりと、楽しい毎日を過ごしているようです。
茉莉耶は、貴子姫に連れられて姉国に来て、瑞穂の衣装係として働くいっぽう、
楽しいことを覗いてからかっているようです。
一方、妹国はというと……。
「手配書はどこに貼ればよろしいでしょうか?」
妹国では、逃げた瑞穂皇子の手配書があちこちに貼られていました。
「そうね。まずは宮殿の皇族用女子トイレに。それから、私がお忍びでよく行く場所の女子トイレに。
そこだけは絶対に貼ること。あとはお任せするわ」
「由佳里お姉さま、どうして女子トイレなのですか? 別にトイレじゃなくてもいいと思うのですよ」
「どうしてもなの!」
第2皇女の奏の疑問に、第1皇女の由佳里は真っ赤になりながらも頭ごなしに断言しました。
由佳里姫が女子トイレにこだわる理由は、言うまでもないので省略します。
そしてある日……。
「あーん!! もう早くしてよお! もれちゃうよお!!」
妹国皇族4姉妹がお忍びでとある喫茶店に来ていた際、由佳里姫はそうはしたない叫び声をあげました。
「由佳里お姉さま、おトイレは他はいくつも空いているのですよ」
「ダメえっ! あそこのトイレじゃなきゃダメなのっ!!」
奏姫は冷や汗混じりにそう言いましたが、由佳里姫は涙を流しながらそう叫びます。
「由佳里姉さん、トイレぐらいに何もそこまでこだわらなくても……」
「由佳里お姉さま、なぜこだわるのかは知りませんが、お泣きになるぐらいなら、
他の個室に入ったほうがよろしいと思いますが……」
「ヤダヤダヤダー!! あそこがいいのお!! 私はあそこでするのお!!」
第3皇女の薫子と第4皇女の初音もそう言いますが、由佳里は結局お目当ての個室……
瑞穂の人相書きが貼られている個室が空くのを最後まで待っていました。
宮殿の皇族の女子トイレにはすべて瑞穂の人相書きが貼られているので、用を足すのもそこでするしかないのですが、
由佳里姫はそのうち瑞穂に見られながら用を足す高揚感に目覚めてしまい、瑞穂の手配書無しでは
用を足せなくなってしまったのでした。
ちなみに、由佳里姫はそれ以来、どこでも用を足せるよう、瑞穂の手配書を持ち歩くようになりましたとさ。
Fin
以上です。お目汚し失礼いたしました。
この話は「待ちぼうけ」の方が有名でしょうか?
「うさぎぶつ、枯れ木の根っこ〜♪」
無理してない?
199 :
みどりん:2008/05/24(土) 22:30:39 ID:XWI8+8Yp0
もてなし
恵泉桜寮に新入生が入ってきました。最近は寮に入る人間は少ないのですが、それでも今年は2名の新入生を迎えることが出来ました。
七々原薫子と皆瀬初音です。二人とも親元を離れての生活は初めてなので緊張気味ですが、もちろん在寮生は新入生を心から喜んで受け入れ、そしてリラックスできるように上級生としての務めを果たします。
入寮式も無事終わりました。最後に新寮長の由佳里が皆に伝言します。
「これで解散だけど、今晩は歓迎パーティーをするからまた食堂に集まってきてね」
「はい、わかりました!」「はい」
夜になって、歓迎パーディーが始まりました。料理は由佳里が全部作ったということです。
「さあ、皆さん、どうぞ」
「えーー?!これ全部由佳里お姉さまが作られたのですか?」
薫子が驚いて聞きます。テーブルには所狭しと料理が並べられています。ただ、よく見ればどれもハンバーグをベースにした料理のようですが………
「そうよ。ハンバーグは少し自身があるので、それをベースに色々作ってみたの」
「本当にすごいです」
初音も感動します。
「さ、びっくりするだけではおなかは膨れないから、みんなで食べましょう」
「はい」「頂きます」
そして、4人席について奏が食事前の祈りを奉げます。
「ここはキリスト教系の学校だから、食事の前に祈りを奉げるの。だから、二人とも手を合わせて、私の祈りを聞いてくださいね。そして、最後にアーメンと言ってくださいね」
「はい」「わかりました」
4人は手を合わせ、目を閉じます。奏の祈りが始まります。
「天にまします我らの父よ
願わくは
み名をあがめさせたまえ
み国を来たらせたまえ
み心の天に成る如く地にもなさせたまえ
我らの日用の糧を今日も与えたまえ
我らに罪を犯す者を我らが赦す如く我らの罪をも赦したまえ
我らを試みに遭わせず悪より救い出したまえ
国と力と栄えとは限りなく汝のものなればなり
そして今日新しい隣人を迎えられたことを感謝いたします
アーメン」
「「「アーメン」」」
奏の祈りが食堂に響きました。それだけで、何か厳かな雰囲気になりました。
200 :
みどりん:2008/05/24(土) 22:31:20 ID:XWI8+8Yp0
「さあ、頂きましょうか?」
奏の声で薫子と初音は現実に戻ってきた気がしました。
「あ、はい」「はい、頂きます」
でもまだ、なにかボーっとしている気がします。奏の作る厳かな雰囲気にあてられてしまったのでしょう。が、一口食べたとたん………
「あっ!これ、すごくおいしいです、由佳里お姉さま」
薫子が昂奮したように叫びます。
「本当です。こんなおいしいハンバーグ、今まで食べたことがありません!!」
初音も驚いて叫びます。そして二人とも貪るように料理を食べ始めました。
「本当?喜んでもらえて嬉しいわ」
由佳里が本当に嬉しそうに答えます。
少したって、薫子が奏に聞きます。
「あれ?奏お姉さまはハンバーグは頂かないのですか?こんなにおいしいのに」
「ええ、ちょっと今日はおなかの調子が悪いので、サラダだけにします」
「こんなおいしいものを食べられなくて残念ですね」
「でも、去年1年間食べたから………」
奏は遠いものでも見るような表情で答えます。
「あ、それもそうですね」
薫子は楽しそうに笑います。
「でも、こんなおいしいものだったら毎日でも食べたいくらいです」
初音が言います。
「本当?だったら毎日作ってあげるわよ」
由佳里が嬉しそうに答えます。
「本当ですか?とても楽しみです」
こうして、新入生歓迎パーティは終わったのです。
それから毎晩………
「由佳里お姉さまのハンバーグは本当においしいですね……」
「本当です。こんなにおいしいものを作れる由佳里お姉さまは天才です」
「そんなに喜んでくれるなんて!もっと頑張らなくては……」
という風景が見られるようになったのです。
201 :
みどりん:2008/05/24(土) 22:31:51 ID:XWI8+8Yp0
が、それから10日も経つと………
「由佳里お姉さま、そろそろ別のお料理もたべたいなぁー、とか思うんですけど」
「そうですね。ハンバーグもおいしいのですが、色々なものも食べてみたい気がします」
という薫子と初音が言い出しました。そんな二人に由佳里はこう答えます。
「何を言っているの?二人とも。ハンバーグはね―――――――――」
それから延々とハンバーグの講釈が続いたのでした。二人とも由佳里を説得するのは無理だということを知ったのです。
食後になって、新入生二人は相談します。
「初音、どうしよう?」
どうしようって、もちろんハンバーグ以外のものを食べるにはどうしたらいいだろうということです。もう二人の頭の中はそれだけです。
「そうですね……奏お姉さまにお願いするというのはどうでしょう?」
「あ、それいい考え」
そして、二人揃って奏の部屋に向かいます。
「奏お姉さま〜」
「いらっしゃいますか〜?」
「あ。。。」
「「……あーーー!!」」
薫子と初音の目には、昼の間に寮母さんに作ってもらっていたお弁当を一人で部屋で食べている奏の姿が飛び込んできました。
「どうして、お一人だけお弁当なんですか?」
「ハンバーグに飽きたのでしょ。酷いです」
二人は文句をいいます。が、そんな二人に奏は涙ながらにこう答えるのです。
「私も1年間耐えてきたの。1年間よ。毎晩毎晩ハンバーグを食べてきたの。お願い、もう、解放して。これからは二人で努力して……」
そう言われると返す言葉がありません。それを聞いて薫子は初音の方を向いてこういいます。
「初音、あなた由佳里お姉さまのお世話係よね。毎日でも食べたい位って言っていたわよね」
薫子、ハンバーグから逃げるつもりです。結構ひどい人です。
「薫子さ〜ん………苦しみを共にしましょうよう」
初音は目をうるうるさせて薫子を見つめますが、だめでした。もう何も言い返せません。ハンバーグ係は初音に決まってしまいました。可愛そうに………。
それからは毎晩由佳里と初音がハンバーグを食べることになったのです。
202 :
みどりん:2008/05/24(土) 22:34:10 ID:XWI8+8Yp0
さて、数日後、夕食で奏が他の3人に声をかけます。
「今日はデザートを作ってみたの。是非食べてみて」
それを聞いた由佳里は
「あ、悪いけど宿題があるから………」
といって部屋に戻っていってしまいました。薫子と初音はいや〜な予感を受けましたが、そもそも拒否できませんし、それにハンバーグと違って毎晩というわけではないようなので、たまにはデザートを食べてもいいか、と思いました。
「喜んで頂きます」
「どんなデザートですか?」
とはいうものの、そういう二人の表情は少し引きつって見えます。そんな二人に奏はババロアのようなお菓子を運んできました。
「これです」
上にクリームとフルーツが可愛らしく載っていて、見た目はとてもおいしそうです。薫子も女の子です、やっぱり甘いものが好きです。薫子は少し安心して一口口にしてみました。が……
(う………甘すぎ。これはちょっと……)
初音はどうだろう?と思って初音の様子を見てみます。と、初音は勝ち誇ったような表情で薫子を見ています。薫子はしまったー、と思いましたが、もうあとの祭りです。これからおこる事態を謹んで受け入れることにしました。
「奏お姉さま、申し訳ないのですが私甘いものが余り得意でないので、甘いものが好きな薫子ちゃんにこのデザートを差し上げます」
初音はそう言って、一口だけ少なくなったお菓子の残りを薫子に渡してしまいました。
「ありがとう、初音。とっても嬉しい」
薫子は涙ながらに答えます。
「あら、薫子ちゃん、そんなに甘いものが好きだったの。それなら毎日作ってあげないとね」
「そんな、奏お姉さま、ご迷惑でしょうから……」
「いえ、実は私もデザートつくりが好きなのよ………」
「………それでは………ありがたく………頂きます………」
薫子、苦渋の答えです。
「………薫子ちゃん、どうして泣いているの?」
「それはもう、泣くほど嬉しくて、嬉しくて………」
「それでは腕によりをかけて作らないとね」
奏はにっこりと微笑みかけます。
「ありがとうございます。本当に嬉しいです」
薫子はデザートを食べている間も、それから暫くの間も涙が止まらないのでした。
おしまい
203 :
みどりん:2008/05/24(土) 22:40:53 ID:XWI8+8Yp0
:201 s/薫子さ〜ん/薫子ちゃ〜ん/
(多分)
お粗末でした。こんなひどい先輩はいないと思いますが。
204 :
みどりん:2008/05/24(土) 22:44:42 ID:XWI8+8Yp0
:201 s/という薫子と初音が言い出しました。/と薫子と初音が言い出しました。/
推敲が足らないですね。
面白かったです。
ただ、確か薫子ちゃんは由佳里ちゃんのことは「由佳里お姉さま」ではなく「由佳里さん」と言ってたと思います。
少なくとも、最初の頃は。
みどりんさんGJ!
奏ちゃんを傷付けまいとする薫子が健気…w
207 :
みどりん:2008/05/25(日) 16:39:18 ID:zUhqHovv0
>>205 東の扉さん
ご指摘ありがとうございます。
確かにそんな気がします。
次(があれば)は気をつけます。
GJ!
209 :
みどりん:2008/05/28(水) 21:58:52 ID:k4lTbP/K0
真夏の夜の夢
作:シェ・クスピア
訳:みどりん
恵泉の森には、その森を守っている王様の瑞穂と、その妻、女王のまりやが住んでいました。
が、この瑞穂王、なかなかに浮気性で、街に行っては可愛い女の子を探し出し、そのまま桜宮殿に連れ込んでいるという困った王様でした。
今日もセイトカイ村の貴子という女の子を桜宮殿に連れ込む算段を整えたのですが、この貴子という女子、まりや女王とは犬猿の仲で、どうにかまりやと貴子が遭わないようにする必要がありました。
そこで、瑞穂は家来で妖精の奏に命じました。
「奏ちゃん、今日は貴子さんが僕に会いにくるんだ。夕方宮殿の入り口に通じる道で待ち合わせることになっている。けど、まりやと貴子さんは仲が悪いから遭わないようにしてもらいたいんだ。
ここにほれ薬があるから、これをうまく使ってまりやが邪魔をしないようにしてくれる?」
そう言って液体の入った水鉄砲を奏に渡します。
「わかったのですよう。これはどう使えばいいのですかぁ?」
「それは、かけられた人が最初に見た人を好きになるほれ薬なんだ。まりやが変なものを見ているときにそれをかけるといいと思うよ。強力だから気をつけて使ってね」
「わかりましたぁ」
奏はそう言って了解はしたのですが………
「あ〜あ……奏も瑞穂様が好きなのですよう。本当は奏も瑞穂様に愛してもらいたいのですが………」
そういいながらほれ薬の入った水鉄砲を眺めています。
「いいことを考えたのですよう!!」
そして奏はまりやの許へと向かっていったのです。
「まりや様ぁ」
「なぁに?奏ちゃん」
まりやはファッション誌を見ながらのんびりと答えます。
「大事なお話があるのですよう」
210 :
みどりん:2008/05/28(水) 21:59:51 ID:k4lTbP/K0
「何なの?」
「今晩、瑞穂様は貴子様を桜宮殿に連れ込むらしいのですよう」
「本当?」
まりやは急に表情を険しくして、奏に向き直ります。
「本当なのですよう。夕方、瑞穂様と貴子様は宮殿に通じる道の入り口で待ち合わせをして、それから宮殿に来るそうなのですよう。でも、まりや様が邪魔なので邪魔されないように命令されたのですよう」
「………瑞穂ちゃんに言われて、何かあたしをはめようっていうんじゃないんでしょうね?」
まりやは疑いの眼で奏を見ます。
「そんなことないのですよう。瑞穂様にはまりやさまが邪魔しないようにするように言われたのですよう。でも奏は瑞穂様にあまり浮気してもらいたくないのでご報告に来たのですよう」
「そう、分かったわ。ありがとうね、奏ちゃん。恩に着るわ」
まりやは何事か決意したような表情になりました。
(うふふ、うまくいったのですよう………)
そして夕方………貴子が一人道端に佇んでいます。と、そこに誰か来る気配がします。貴子は瑞穂が来たと思い、気配のした方向を見ますが、残念ながらそこにいたのはまりやでした。
「あ……」
「あら、貴子じゃないの。こんなところで何をしているのかしら?」
「あ、あなたに言う必要はございませんわ」
「ふ〜ん……もしかして瑞穂ちゃんと待ち合わせをしているとか……」
「そそそそんなことありませんわ」
(ピシュ)
「でもね、悪いけどあなたを瑞穂ちゃんに合わせるわけにはいかないの」
「余計なお世話ですわ」
「だって、あなたを愛しているのは瑞穂ちゃんだけじゃないんだもの……」
「え?」
「あたしも、昔から貴子のことを愛していたのよ」
「なななななにを仰るのですか?」
「昔からあなたに冷たく接していたのは、愛を認めたくなかったからなの。あなたを愛する心を隠しておきたかったの」
「ふふふふざけないでください」
「でも、もうだめ。あなたへの愛は、抑えきれないの。貴子、お願い、あたしの愛を受け入れて……」
そういいながら、まりやは貴子のほうへ一歩、また一歩と近づいていきます。
「いや……いやーー」
貴子は走って逃げていきます。
「まって〜〜たかこ〜〜にげないでよぉ〜〜」
まりやも貴子の後を追っていきます。そして、桜宮殿につながる道には誰もいなくなってしまいました。
211 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:00:42 ID:k4lTbP/K0
そこに、隠れていた奏が顔を出します。
「うまくいったのですよう。これで、瑞穂様にほれ薬をかけて、奏を好きになってもらったらバッチグーなのですよう」
と、道端で瑞穂が来るのを待っています。程なく瑞穂がやってきました。
「あれ?奏ちゃん?貴子さん知らない?」
「し、知らないのですよう」
「おかしいなぁ」
瑞穂はあたりをきょろきょろ探します。
(今なのですよう)
奏は持っていたほれ薬を瑞穂にかけます。
(ピシュ)
「奏、いいところにいたわ。演劇部の連絡を忘れていたわ」
丁度そこに圭が通りかかりました。
「あ、部長……」
「奏、明日の部活のことなんだけど………???」
奏に話しかける圭の手を、瑞穂はしっかりと掴みます。
「黒く澄んだ瞳、艶やかな黒い髪、透き通るような白い肌、そして人形のような整った顔立ち……」
「何いってるの、瑞穂さん」
「こんな美人に気付かなかったなんて、なんて僕は愚かだったんだろう」
瑞穂はそう言って圭を抱きしめます。
「ふざけないでよ」
圭は瑞穂を突き放します。
「ふざけてなんかいません。圭さん、一緒に桜宮殿に行きましょう」
そういって、再度圭を抱きしめようとします。
「いや、止めて!!」
圭は走って逃げ出します。
「圭さ〜ん、待ってくださいよう〜〜」
「いやーー、助けてーー!!」
瑞穂と圭はどこかへ走っていってしまいました。またも、奏は一人取り残されてしまいました。
「あややーー、失敗してしまったのですよう。でもこのほれ薬は面白いのですよう。折角だから、もう少し遊んでみるのですよう」
奏はほれ薬を持って、恵泉の森を飛び回ります。
212 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:01:14 ID:k4lTbP/K0
少し飛び回っていると、さっき別れたばかりの瑞穂と圭が走っているのが見えました。
「圭さ〜ん、待ってくださいよう〜〜」
「いやだってば……」
相変わらず楽しく(?)追いかけっこをしています。
「あ!美智子、助けて!瑞穂さんがおかしいの……」
丁度そこに圭の恋人の美智子が通りかかりました。
「え?瑞穂さんが?」
(ピシュ)
美智子は圭を助けようと瑞穂にタックルして瑞穂を止めました。
「ありがとう、美智子」
「何をするんですか!美智子さん」
瑞穂は美智子にタックルされ、そのまま抱きつかれているので、動くのもままなりません。
「瑞穂さん、圭さんでなく私を愛してください。こんなにも瑞穂さんを愛しているのですから」
「え?美智子までどうしてしまったの?」
圭が驚いたように美智子に尋ねます。
「美智子さん、お気持ちは嬉しいのですが、僕の圭さんを愛する心は変わりません。だから、申し訳ないのですが、僕のことは忘れてください」
「そんな………瑞穂さんにお会いしたときから心ときめかせていましたのに………」
そういって美智子は瑞穂をしっかりと抱きしめます。
「ごめんなさいね、美智子さん。さあ、圭さん、僕たちも愛を育みましょう」
瑞穂は瑞穂で圭を捕まえようとします。でも、美智子がくっついたままなので、美智子を引きずりながらの追撃です。
「いやっ、いやーーー」
「ちょっと、美智子さん、いい加減離れてくださいよ!」
「いやです!!」
そして3人(1+2人)の追いかけっこが始まりました。
「あはははは!とーっても面白いのですよう。もっと遊んでみるのですよう」
と、別なところに飛んで行きました。
213 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:06:15 ID:k4lTbP/K0
「たかこ〜〜、まってってば〜〜」
「まりやさん、しつこいです」
貴子とまりやも相変わらず追いかけっこを続けています。が、どう考えてもまりやの足の方が速く、そのうえ持久力もあります。だから、とうとう貴子はまりやに捕まってしまいました。
「うふふ、た〜か〜こ〜ちゃん、つ〜かま〜えたっ!」
「ま、まりやさん、助けてください、許してください!私が悪かったです。本当に悪かったです。ですから、許してください。放してください!!」
貴子は悲壮な面持ちでまりやに訴えかけます。
「そんなぁ、二人で愛し合うだけじゃないの……」
まりやの唇が貴子の唇に近づいていきます。
「ヒーー!!」
貴子は悲鳴をあげます。と、丁度そこに学校帰りの紫苑が通りかかりました。
「あなた方、何をなさっているのですか?」
(ピシュ)
「あ!紫苑様、助けてください。まりやさんに襲われているのです、ム〜〜!!」
とうとう、ファーストキスをまりやに奪われてしまいました。
「それは貴子さんを助けなくてはなりませんわ」
そういって持ち前の怪力でまりやを貴子から引き離してしまいました。
「ありがとうございます、紫苑様」
助けられた貴子は紫苑に礼を述べます。そして、紫苑の陰に隠れます。これ以上まりやと一緒にいたら何をされるか分かりません。
「紫苑様、何をなさるんですか?これからっていう時に。あたしと貴子の愛を引き裂くなんて、いくら紫苑様といえども許せませんわ」
まりやが憤慨して言います。
「まりやさん、お言葉ですが貴子さんは私のものです。私のものに手出しをするとはまりやさんこそひどいのではないですか?」
「ゑ?」
それを聞いた貴子は安心していた気持ちが一気に吹き飛んでしまいました。そして、紫苑とまりやがいがみ合っている隙にまた走って逃げていきました。
「あ、貴子さん、折角助けてあげましたのに……」
「たかこ〜〜、まってよ〜〜」
「いやーーー、いやーーーー!!」
「あはははは!面白い、面白〜い!!。もっと遊ぶのですよう」
214 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:07:16 ID:k4lTbP/K0
奏が飛んでいくと、今度は由佳里が歩いているのに出会いました。
「由佳里さんにも悪戯してみよーっと」
(ピシュ)
奏は由佳里にほれ薬をつけて、そっと後ろからついていきました。
「あれ?まりやお姉さまに貴子様に紫苑様。何をしているのかしら?」
追いかけっこをしている3人を見かけました。由佳里は3人を追いかけていきました。
「まりやお姉さま、何をなさっているのですか?」
3人は由佳里の声に足を止めます。さすがに少し疲れたのでしょう。
「あ、由佳里。今あたしは新しい愛に目覚めたの。こんなにも貴子のことが好きだったのに今まで気付かなかったなんて、今まで時間を無駄に過ごしてきた気がするの。だから、今あたしたちは二人で愛を確かめ合おうとしているの」
「そんな勝手なこといわないでください!!」
貴子の憤慨した声が聞こえてきます。
「そうですわ。貴子さんは私のものですのに」
紫苑の声も聞こえてきます。
「違います!!」
またまた貴子の怒った声が聞こえてきます。
「たかこ〜、キスをした仲じゃない?」
まりやの声が聞こえてきます。貴子は怒りと恥ずかしさで真っ赤になります。
「でも、まりやお姉さま。それは酷すぎます」
由佳里が涙ぐんでまりやに訴えかけます。
「何でよ?」
まりやは怪訝そうに聞き返します。
「だって、まりやお姉さま、私をあんなにも愛してくださっていたのに、私を捨ててしまわれるのですか?」
「え?何のこと?」
215 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:07:49 ID:k4lTbP/K0
「昨日の夜も、私をベッドに押し倒して愛してくださったではないですか?」
「あれは、由佳里、あんたを少しからかっただけで………」
「違います!あれはまりやお姉さまの深い愛の為せる技です。ですから、まりやお姉さま、私だけを見てください」
そういいながらまりやに近づいていきます。
「そうですわ。貴子さんは私に任せて、まりやさんは由佳里さんと仲良くなさい」
紫苑も賛同します。
「いや、そうじゃなくて……いやーー」
まりやは由佳里から逃げていきます。
「さあ、貴子さん、私たちも……」
「え?いや、いやーーー」
「あ〜ん、たかこ〜、まってよ〜〜」
由佳里から逃げるまりやもまた貴子を追いかけます。4人の追いかけっこがはじまりました。
「あはははは!面白い、面白〜い!!。本当に面白いのですよう」
奏は腹を抱えて笑っています。
「そうだ!」
(ピシュ)
そして、そのまま4人のあとをつけていきました。
貴子を先頭にした4人の追いかけっこはまだまだつづきます。と、今日の仕事を終えたのでしょうか、緋紗子が歩いているところに出会いました。
「あ、緋紗子先生!!」
貴子が叫びます。
「あら、皆さん、お揃いで……」
緋紗子が答えます。
「緋紗子先生、愛しています!!」
貴子は緋紗子の胸に飛び込み、そのままキスをしました。
「ななななにをするのですか!貴子さん」
緋紗子は驚いて叫びます。
「緋紗子先生、本当に愛しています!!」
貴子は緋紗子に抱きついたまま愛を告白します。
216 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:19:28 ID:k4lTbP/K0
(ピシュ)
「緋紗子先生、貴子さんを返していただけないでしょうか?貴子さんは私のものなのですから」
追いついた紫苑がいいます。
「そうですわ、緋紗子先生。貴子はあたしと愛を育むのですから」
まりやもいいます。
「ちがいますぅ。まりやお姉さまは私と愛し合うんですぅ」
由佳里が怒ったようにいいます。
「貴子さん、気持ちは嬉しいのですけど、やはりあなたはまりやさんと愛し合うべきです」
緋紗子が諭すようにいいます。
「そうですよねぇ、緋紗子先生」
まりやが嬉しそうに言います。
「だって、私はこれから紫苑さんと愛し合わなくてはならないのですから……」
「何を仰っているのですか、緋紗子先生」
紫苑が少し驚いたようにいいます。
「何って、私たちは愛し合う運命なのよ、紫苑さん」
緋紗子がいいます。
「違います、私は貴子さんと愛し合うのです」
紫苑が言い返します。
「いいから、早く貴子を返して下さい」
まりやが怒ったようにいいます。
「違いますぅ、まりやお姉さまは私と愛し合うんです!」
由佳里がいいます。
217 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:24:53 ID:k4lTbP/K0
と、運悪くそこに瑞穂一同もやってきました。
「あ、瑞穂様たちなのですよう」
(ピシュ)
「いやーー、助けてーー」
「圭さん、まって〜〜」
「瑞穂さん、早く愛し合いましょうよう」
先頭を走っていた圭はまりやたちの集団を確認して、走りよってきます。
「紫苑様、助けてください。瑞穂さんがあたしたちの愛を引き裂こうとするのです」
圭は紫苑に抱きつき、紫苑に窮状を訴えます。
「何をいっているのですか?圭さん。私たちの間には愛はありませんわ。あるのは私と貴子さんの間ですわよ」
「何をいっているの、紫苑さん。あなたは私と結ばれる運命なのよ」
緋紗子が言います。
「緋紗子先生、いくら先生といえども紫苑様との愛を引き裂くことはできません」
圭が緋紗子に文句を言います。
「圭さん、紫苑さんは放っておいて、二人で愛し合いましょう」
「瑞穂様、愛し合うのは私たちですわ」
「緋紗子先生、早く私を愛してください」
「貴子ぉ、愛し合うのはあたしたちでしょ?」
「まりやお姉さま、昨日の続きをやりましょうよう」
その様子を遠くから見ている奏は一人大笑いをしています。
「あはははは!!面白い!!面白すぎるのですよう!!……そうだ、もっと面白くするのですよう」
そう言ってセイトカイ村に飛んで行きました。
218 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:25:21 ID:k4lTbP/K0
セイトカイ村には君枝、葉子、可奈子が残っていました。その3人に奏が声をかけます。
「大変なのですよう。会長が大変なことになっているのですよう。助けにきてくださいなのですよう」
「え?会長が?!」
「それは大変ですわ」
「すぐに行きましょぉ」
3人が現場に到着します。
「あ!あれは……」
3人の目に、確かにある意味大変な状況が飛び込んできます。修羅場といえばいえなくもない状況です。
(ピシュ)
(ピシュ)
(ピシュ)
・・・
・・
・
・
「あー、面白かったのですよう。今日はもう遅いから寝るのですよう」
奏はそう言って桜宮殿に戻って眠ってしまいました。
219 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:26:49 ID:k4lTbP/K0
翌朝………
「奏ちゃん、奏ちゃん……」
瑞穂の声がします。
「うーーーん、よく寝たの………あれ?皆さんお揃いでどうなさったのですか?」
奏のベッドの周りを、瑞穂、まりや、貴子、紫苑、由佳里、緋紗子、圭、美智子、君枝、葉子、可奈子が取り囲んでいます。そして、奏を睨んでいます。
「奏ちゃん、昨日の晩はちょっと悪戯が過ぎたんじゃないの?」
瑞穂が怒っていいます。夜が明けたので、ほれ薬の効力が切れてしまったのです。そして、みんな瑞穂に奏がいたずらをしたと聞いて、怒って制裁を加えに来たのです。
「そうよ、あれから一晩中大変だったんだから!」
まりやも怒りをあらわにします。ほれ薬が切れても記憶が残っているのが困ったところです。貴子にキスしたなんて、いくら怒っても足りないことでしょう。
「そうですわ。一晩中逃げていたので、もう足も動きませんわ」
貴子も怒っています。まりやに迫られたことを思い出し、顔が真っ赤です。おまけにファーストキスはまりやに奪われてしまいましたし、緋紗子にもキスしてしまいました。
「これはしごきが必要ね」
圭も怒っています。これは、少し嬉しそうです。
「えーー?それは嫌なのですよう」
「でも、自分のした罪の償いはしなくては、ね」
緋紗子も言います。なんとも微妙な表情をしています。
「元はといえば、お姉さまが貴子様とお会いするのを邪魔されないように、奏にほれ薬を使って工作するお願いなされたのが発端なのですよう。だから、お姉さまが一番悪いと思うのですよう」
「えっ!!」
瑞穂が驚いたように叫びます。
「「「「「「「「「「……えーーーーーーっっ?!!!」」」」」」」」」」
残りの全員の視線は瑞穂に集中します。
「本当なの、瑞穂ちゃん」
「瑞穂さん、どうなのかしら」
まりやや紫苑が尋ねます。
「いやーーー、あのーーーー………」
瑞穂はしどろもどろです。
「そう……みずほっちが……ねぇ……」
圭の目がきらりと不気味に光ります。
「お姉さまにはお仕置きが必要ですわね」
美智子の目も冷たく光ります。
220 :
みどりん:2008/05/28(水) 22:33:31 ID:k4lTbP/K0
「そうですわね、今日一日恥ずかしい格好をするというのはどうかしら」
貴子も嬉しそうにいいます。
「それは賛成です」
由佳里も賛成します。
「女装はどうでしょうか?」
君枝がおそるおそる言ってみますが……
「君枝さん、それでは普通の服ですわ」
と、葉子の突込みがおこります。
「これがいいわ」
圭がどこからともなく現れる。どこで見つけたのか、手に持っているのはナース服だ。しかも超ミニでサテン地の、ある種特殊目的用(主に夜、寝室で使用する)。
(どこかでみたようなフレーズですが)
「圭さん、それは駄目ね。一応制服があるのですから」
緋紗子にたしなめられてしまいます。
「残念………本当に残念」
「制服で〜恥ずかしいかっこうっていうと〜」
可奈子がのんびりといいます。
「ブルマ!」
由佳里の嬉しそうな声。
「もっと〜、露出が多い制服は〜〜」
またも可奈子がいいます。
「「「スクール水着!!」」」
紫苑、貴子、美智子の三重唱が聞こえてきました。可奈子は案外策士ですね。
「というわけだから、今日はこれね!」
まりやはいったいいつ取ってきたのかというほどの準備のよさで、もう手許に水着を用意しています。
「そんなぁーー」
瑞穂は一応クレームを付けるのですが………
「それなら問題ないでしょう」
緋紗子のお墨付きまでついてしまいました。
そしてそれから数日間、瑞穂は水着で過ごすことになったのです。当然奏は瑞穂が糾弾されている隙にどこかに消えてしまっています。なかなか賢い子です。
で、その後瑞穂の浮気の癖が直ったかというと……まあ、数日はもったようですが、瑞穂の水着姿に心を奪われた生徒たちをまた毒牙にかけようと牙を研ぎ始めたようです。困ったものです。
おしまい
221 :
みどりん:2008/05/28(水) 23:00:51 ID:k4lTbP/K0
お粗末でした。
イギリスのお菓子屋さんシェ・クスピアの翻訳ものです。
ベニスの商人、ロミオとジュリエットも翻訳中です。
ではまた。
こういう悪い奏ちゃんは珍しいですね。また面白かったです。
ところで、私もネタを1つ思いついたので投下させていただきます。
設定は由佳里ルート以外での5月頃、陸上部事変の時です。
〜5つの反論〜
「千佳部長、昨日のことですが……」
由佳里は陸上部部長の千佳から初音の世話ばかりしすぎではないかと言われ、まりやに相談して返事をしに来ていた。
「確かに私は初音にばかり気にかけすぎてたかもしれませんが、私も初音がちゃんと走れるようになるまで教えるって約束したんです」
「あなたはまりやお姉さまにそっくりね。そんなふうに、なんでも自分の思い通りになると思っているところも……」
1.聞かざるコース
それに対して、由佳里はすごい気迫で反論する。
「どこがですか!? 私は茶髪でまりやお姉さまは紫ですし、背もまりやお姉さまの方がずっと高いし、スタイルもいいし、それに私は、まりやお姉さまみたいなお料理なんだか炭なんだか判別つかない料理なんか間違っても作りません!」
「……あなた、人の話最後まで聞いてた?」
2.理屈屋コース
それに対して、由佳里はすごい気迫で反論する。
「なんでそうなるんですか!? 私は私の事情も聞いてもらおうと思って言っただけです!
自分の事情を言うことが、自分の思い通りにしようとするってことになったら、誰も自分を完全に殺さなきゃいけないじゃないですか!
今の部長の発言は、完全に的外れです!」
「……言われてみればそうだけど……あ、理屈のこね方もそっくりなの追加するわ」
3.助け舟コース
「そんなことありません! 由佳里お姉さまは「姉」を決める時でも私の意見をちゃんと聞いてくださいましたし、
私が陸上部に入った時とか、寮の中でも、人の意見をしっかり取り入れてくださいます!」
「皆瀬さんに言ってないから……というか、いつからそこに?」
4.追憶コース
それに対して、由佳里はすごい気迫で反論する。
「そんなことないです! まりやお姉さまは私が転校してきた時、ご自分のやりたいことを潰して町を案内してくださいましたし、
その時外食する時も、自分の行きたいレストランじゃなくて、私の好きなハンバーグのおいしいレストランにしてくださいましたし……」
それから、由佳里の昔話は1時間近く続いた。
「……どうでもいいけど、あなた記憶力いいわね」
5.愚痴コース
それに対して、由佳里は……。
「うっうっ……去年1年間、私は瑞穂お姉さまには相手にされないし、紫苑さまや貴子さまは奏ちゃんばかりで私はいつも蚊帳の外だったし、
まりやお姉さまにはいじめられ続けて、挙句操までメチャクチャにされて……そんな状況1年も耐えていたっていうのに、
そんなこと思えるわけないじゃないですかあ……」
涙をドバドバ流しながら語る。
「……っていうか、やっと屈辱の1年から解放されたっていうのに、部長にまで縛り付けられなければいけないんですか!
うわああああああん!!」
泣き出してしまった由佳里に、千佳は頭をなでなでしながら言う。
「……上岡さん、私が悪かったわ。あなたも大変だったのね。ある程度気が晴れるまでは、好きなようにさせてあげるから」
「あーん、千佳お姉さまあ!!」
「よしよし、いい娘いい娘」
(私が由佳里お姉さまを幸せにしてあげなければ! 由佳里お姉さまにここに来てよかったって思っていただかなければ!!)
一方、それを聞いていた初音はそう誓うのであった。
Fin
以上です。お目汚し失礼いたしました。
あと、投下している途中に「真夏の世の夢」のアフターが頭に入り込んできました。
あれから半年後……。
「ここに戻ってくるのも久しぶりなのですよ」
妖精の奏が恵泉の森に戻ってきました。と、瑞穂が森を歩いています。
「あ、瑞穂さまなのですよ」
奏は瑞穂の前に出てきました。いじめやいたずらでは、やった方はすぐに忘れてしまうものです。
「瑞穂さま、お久しぶりなのですよ。お会いできて奏は嬉しいのですよ」
「奏ちゃん……」
「瑞穂さま……?」
ところが、瑞穂は急に険しい顔になりました。裏切られた上に、あれだけのいたずらの責任まで
全部押し付けられたのですから、当然でしょう。やられた方はいつまでも覚えてて、根に持っているものです。
「半年前はよくもやってくれたね。僕は奏ちゃんなんか……」
瑞穂はここぞとばかりに積年の恨みをぶつけます。が、あまりにもむごい罵声のため、省略させていただきます。
「……以下だよ。僕は奏ちゃんなんか世界一、太陽系一、銀河一、宇宙一大っ嫌いだよ!!」
「ガーン!!」
愛する人にそこまでくそみそに罵倒されてしまっては、誰でも痛恨の一撃になってしまいます。
奏もショックのあまり、立ち直れなくなりました。そして、そのまま石と化してしまいました。
「瑞穂ちゃんに蛇蝎のごとく嫌われたみたいね。考えてみりゃ当然だけど」
「放っておきましょう。こんな方のことなんか」
「やっぱり悪いことはできませんね」
そして、自分たちをひどい目にあわせた奏を立ち直らせようとするものは、当然のごとく誰一人としていないのでした。
因果応報、身から出たさび、自業自得。
Fin
もう1つ思いついたので追加します。たびたびすみません。
そして、その1ヵ月後……。
「さて、そろそろいいかな」
怒りもだいぶ薄れてきた瑞穂が、石化している奏に純金の針をぷすっと刺します。
「あれ? 瑞穂さま? 奏は何をしていたのですか?」
どうやら奏は瑞穂に浴びせられた罵声の嵐をすっかり記憶から消し去っているようです。
「奏ちゃん、僕に愛してほしい?」
瑞穂はそれに答えずに言います。
「もちろんなのですよ。奏は瑞穂さまに愛してほしいのですよ」
「じゃあ、2度と悪さをしないって誓える?」
「誓うのですよお」
瑞穂の問いに、奏はそう答えます。
(またいたずらしたくなったら、とぼければいいのですよお)
奏はまだ懲りずにそんなことを考えているようです。
「そう。じゃ、愛してあげる。今晩に、僕のベッドの上でね」
「ありがとうございますのですよ」
そうして瑞穂のベッドの上で、一晩身体を重ねあいました。
翌日……。
「んっふっふっ……奏ちゃーん♪」
願いがかなって夢見心地の奏を、まりやが思いっきり意地悪そうな目で見ています。瑞穂も同じ目です。
「な……なんなのですか?」
奏はいやな予感がします。
「昨日は楽しかった?」
「ふぇ……?」
それから、あの時のメンバーが集合して、全員、奏を同じ目で見ています。
「このことよ」
「………!!」
まりやの合図で、魔法の鏡から昨日の光景が映し出されました。奏の顔だけわかるような構造です。
奏の言った恥ずかしいセリフもちゃんと再現されています。
「もしまた悪さをしたら、これを世界中にばらまくからね」
あまりのことに、さすがの奏も身体中から汗が出ました。
(まだ道はあるのですよ。この場で割ってしまえばいいのですよ)
しかし、いくらか冷静になりそう考えました。
「ああ、これを割ればいいと思ってるなら甘いわよ。まだ予備があるから」
「予備……どこにあるのですか?」
「みんなで合計3桁同じの持ってて、妖精にわからないように
バリアを張って、あらゆる場所に隠してあるから回収は不可能よ」
奏は、顔色をいっそう青くしながら聞きます。
「3桁って、正確にはどれくらいあるのですか?」
「そんなこと教えると思う?」
考えが甘かったようです。7ヶ月前の事件で、瑞穂をはじめみんなの奏に対する信用は地に落ちていたのでした。
(ふええ……これじゃあおとなしくしているしかないのですよお……)
奏は半泣きになってとぼとぼと退散したのでした。
233 :
みどりん:2008/05/29(木) 22:35:01 ID:S11WQvrk0
真夏の夜の夢 〜後日談〜
「貴子……」
「な、なんですか?まりやさん」
「あ、あんたにキスしたからって、あんたのこと好きになったわけではないんだからね」
「そそそそのくらい存じておりますわ」
「ほ、本当だからね」
「わ、私もまりやさんのことは大っ嫌いですから……」
「今日、帰り寮に寄っていきなさいよ。言っておきたいことが山のようにあるのだから」
「ええ、是非そうさせていただきますわ。私もあなたに言っておきたいことが山のようにあるのですから……」
そして‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……こんなひどいことをするまりやさんは大嫌いですわ……」
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……あたしも、こんなに何回もあたしをいかせる貴子は大嫌いだわ……」
「まりや…………さん……」
「貴子………」
「本当に、あなたのことは大嫌いなんですから……」
「あたしも、貴子のことなんか大嫌いよ………」
それから、相手を黙らせるため、自分の唇で相手の口を塞ぐ二人なのでした。
おしまい
234 :
みどりん:2008/05/29(木) 22:42:03 ID:S11WQvrk0
東の扉さん
アフター投稿ありがとうございました。
ただ、奏ちゃんはそんなに悪ではないつもりだったのですが………
>>234 >奏ちゃんはそんなに悪ではないつもりだった
私にとっては悪に見えちゃいました。
まあSSというのは、いろんな人によっていろんな見方をするからこれは仕方ないと思います。
それがSSのいいところであり、悪いところでもあるのですが……。
それはそうと、また新しいSSが完成しましたので、投下させていただきます。
内容は、L鍋さんの心象風景の後日談です。
以前L鍋さんにご覧いただいたものに、多少の推敲をしたものです。
〜心象風景 勝手に続編〜
レジェンドツリーパフェ事件の翌日……。
「ねえ瑞穂ちゃん、昨日はあの後どこ行ってたの?」
朝食の時に、まりやが聞いてくる。
「あの後って?」
「瑞穂ちゃんだけ喫茶店からいなくなったでしょ? あの後よ」
「ああ、紫苑さんや奏ちゃんとパティシエコンクールに行ってたわよ。紫苑さんへのお礼もかねて」
「なにーっ!? ずるいよ、瑞穂ちゃんだけ!」
瑞穂の返事に、まりやが怒声を上げる。
「でしたら、まりやお姉さまと由佳里ちゃんも来ればよかったのですよ」
「私も行きたかったけど、まりやお姉さまにぼうが……あぐっ!!」
困ったような顔で言う奏に、由佳里が返事しようとすると、苦痛に顔をゆがめた。
向こう側では、まりやが思いっきり由佳里を睨んでいる。まりやが膝を思いっきり蹴飛ばしたのだ。
「………?」
「どうしたの、由佳里ちゃん?」
「い、いえ、何でもないです……」
首をかしげる瑞穂と奏に、由佳里は脅えながらそう答えるしかなかった。
「あーあ……私もパティシエコンクール、行きたかったなあ……」
瑞穂は生徒会の用事で、奏は演劇部の朝練ですでに出かけ、2人のところに、
由佳里がそうまりやに非難がましい目を向けながら愚痴をもらした。
「めちゃくちゃ、すっごく、本っ当ーに行きたかったなあ……」
まりやにしても行きたかったのは同じだったので、頭に来たまりやは、由佳里の頭を両の拳でぐりぐり回しにかかった。
「あだだだだ!!」
「過ぎたことをいつまでもうじうじ言ってんじゃないの!」
「やめ、やめてください! あいたたたたたた……!!」
その後、まりやは遅刻ギリギリまで由佳里の頭をぐりぐり痛めつけた。
その翌日。
「由佳里ー。今日はあんたが作る日でしょ? 早く朝食作ってよ」
今日は寮母さんが休みなので、由佳里が代わりに料理を担当する日だった。いつまでも降りてこない由佳里の部屋を、
おなかをすかせたまりや、瑞穂、奏の3人がノックする。
だが、何度ノックしても返事は返ってこなかった。
「由佳里、聞いてんの!? いつまで寝てんのよ!?」
「……起きてますよ」
まりやがドアをガンガン叩きながら呼びかけると、中からいつもより1オクターブ低い由佳里の声が返ってきた。
「だったら返事ぐらいしなさいよ! とにかく、あたしたちはおなかペコペコなんだから、早く起きて作んなさいよ」
「……おなかが破裂しそうにパンパンで、とても作る気になれません! おとつい、まりやお姉さまに
パフェを無理やり死ぬほど食べさせられたせいで!」
明らかに怒気を含んだ声だ。
「そんなに食べたいなら、コンビニで買ってくるか、喫茶店にでも行ったらどうですか!?」
みんなが幸せいっぱいの中、自分だけ自分の責任以外の理由でひどい目に遭わされ、追い討ちをかけて
まりやのサンドバックにされた由佳里がへそを曲げるのは、無理もないことだった。
「………」
「仕方ないわ、今はあきらめましょう」
この調子では、どう説得しても朝食を作ってくれそうにない。瑞穂たちは、そのまますごすご退散した。
「ああー! もうよそ行ってる時間ない!」
「早くしないと、間に合わないのですよ」
結局まりやたちは、朝食を食べずに学院に行くしかなかった。
「……というわけで、朝は何も食べられなかったのですよ」
「まあ、それはかわいそうに……」
昼食前の休み時間、そう泣きついてきた奏を、紫苑はギュッと抱きしめる。
「紫苑お姉さま、もうおなかペコペコなのですよ……お昼に食べておかないと、
由佳里ちゃんは、きっとお夕飯も作ってはくださらないのですよ……」
紫苑は奏の話を聞きながら、一昨日のことを考えていた。
あの時、結果的に由佳里を見捨てて貧乏くじを押し付けることになってしまったけど、
それがこんな形で返ってくるとは……。
「なんとかしなければ……いけませんわね」
由佳里を説教することもできるけど、原因の一端が自分にもあるだけに、それはかわいそうだ。
それに下手にそんなことをすれば、まりやだけでなく、自分や奏、果ては瑞穂まで悪者にされてしまいかねない。
最悪、怒りに任せて極端にうがった形で言いふらされてしまうこともありうる。
(自業自得とはいえ、みんなが不幸になる結末はいただけませんわね……)
「奏ちゃん、まりやさんと相談して対策を立てますから、これで失礼しますね」
「あ、紫苑お姉さま、よろしくお願いいたしますのですよ」
紫苑は、奏の頭をなでると、まりやの許へ向かった。
「まりやさん。奏ちゃんから聞きましたわよ。朝食、食べられなかったそうですわね」
まりやを見つけた紫苑は、人気のないところに移動して話し始めた。
「そうなんですよ。おかげであたしはおなかの虫が鳴り響いて……」
「まりやさんが後先考えずに由佳里さんをいじめるからこんなことになるんですわよ?」
「それ……瑞穂ちゃんにも言われましたよ……」
紫苑に言われ、まりやは力なく答えた。
「うーっ……由佳里のヤツう……」
朝食を食べる時間がなくなってしまったまりやは、歯ぎしりをした。
「もう、もとはといえば、まりやが由佳里ちゃんをひどい目に遭わせるからじゃない」
「でもさ、おなかが破裂しそうって、昨日はちゃんと食事食べてたじゃない。何で今日になって……」
「あのね……そのまんま解釈してどうするのよ。みんなが幸せなのに、自分だけひどいことされて、
ほっとかれたのが面白くない、ってことでしょ?」
当然のように言うまりやに、瑞穂はため息をついた。
「まりやは由佳里ちゃんのお姉さまなんだから、まりやがもうちょっと大人にならないと」
「うっ……」
「由佳里ちゃんをおもちゃにしたりいじめてばかりいないで、たまには女王様気分のひとつも味わわせてあげれば?」
「ぐうう……」
瑞穂の正論に、まりやは反論できなかった。
「……というわけ。でも女王様気分を味わわせるって、あたしのガラじゃないんですよ」
紫苑は考えていた。たしかに女王様気分を味わわせるのは、まりやでは無理があるだろう。
(ここは、由佳里さんにもパティシエコンクールの代わりになるものをさしあげて、
機嫌を直していただくのが得策ですわね)
「由佳里さん」
「なんですか、紫苑さま?」
まりやと協力してお目当てのものを見つけた紫苑は、ほどなくして不機嫌オーラ全開の由佳里を見つけた。
「奏ちゃんから聞いたのですが、あの後由佳里さんはひどい目に遭われたそうで……本当にごめんなさいね」
「紫苑さまのせいじゃないですよ。悪いのはまりやお姉さまです!」
予想通り、今はまだ怒りの矛先はまりやにしか向いていないようだった。これなら大丈夫だろう。
「そこで、お詫びといってはなんですが、まりやさんと2人でいいものを見つけましたの。
由佳里さんにそれをさしあげようと思いまして」
「……いいものって?」
由佳里が首をかしげながら聞くと、紫苑は説明を始める。
「大手中華レストランチェーンの新しいスイーツの発表会の参加チケットですわ。この前のパティシエコンクールほどでは
ないにせよ、それなりに楽しめるでしょう。明日にはチケットが届くと思いますから、どなたか誘って行っていらっしゃい」
その高級レストランチェーンでは、スイーツの新メニューを社員やバイトの中から募集し、
上層部や外部の一般者の審査で、そこで上位5つのものを採用するというものだった。
「紫苑さま……ありがとうございます!」
「いいえ、どういたしまして」
由佳里は紫苑に礼を言うと、上機嫌で立ち去っていった。
その夜、瑞穂は上機嫌の由佳里を見て、ホッと胸をなでおろした。
(由佳里ちゃん、元気になってよかった。きっとまりやが機嫌を直してくれたんだな)
そして翌日……。
「どうしたの、由佳里ちゃん?」
「あ、あの……お姉さま、これ……」
紫苑から2枚のチケットをもらった由佳里は、瑞穂を誘うべく屋上に続く階段のところでチケットを差し出した。
瑞穂は由佳里の言葉を待っている。
「あっ! 私が手に入れたかった……!」
そこへ、瑞穂に会いに来た貴子が、由佳里のチケットを見て驚いた。
「どうしたんですか? 貴子さん」
「そのチケット、瑞穂さんと行きたくて探したんですけど、結局手に入れられなかったんです」
貴子は、由佳里のチケットを指差しながら答える。
「あの……お姉さま、これですけど、よろしければ、ご一緒に……」
由佳里が行ってくれないかと言おうとすると、
「そう。じゃあ、ありがたくいただいておくわね」
瑞穂は、チケットを2枚とも掴んで貴子に歩み寄る。
「貴子さん、これで、日曜は一緒に行けますよ。めいっぱい楽しみましょう」
「まあ! 感激ですわ、瑞穂さん」
瑞穂と貴子は嬉しそうに階段から去っていった。
「………」
後には、呆然と立ち尽くす由佳里だけが残された。
そして、日曜日の夜……。
「今日は楽しかったですね、貴子さん」
「ええ。本当にありがとうございました、瑞穂さん」
「後で由佳里ちゃんにもお礼を言わないとね」
「そうですわね。まりやさんの妹にしてはよくできた方のようですから」
(貴子にとっては)刺激的なシチュエーションが無かったこともあって、瑞穂と貴子は、中華スイーツの試食会を
存分に楽しむ事ができた。
そして、櫻館の門限も過ぎてしまっているので、2人でどこかに泊まることになった。
一方、櫻館では……。
「ちょっと由佳里、なんでこんなところにいるのよ! 瑞穂ちゃんと試食会に行ったんじゃなかったの!?」
由佳里が部屋にいることに驚いたまりやは、そう聞いてみた。
「……盗られちゃいました」
「え……?」
「中華スイーツ試食会のチケット、会長さんに盗られちゃいました!」
「何ーっ!?」
(人がせっかく機嫌直そうと苦労してお膳立てしてやったのに、貴子のヤツー!!)
まりやは唖然とした後、その怒りを再び貴子に向けるのだった。
翌日の月曜日……。
「お姉さま、今日の放課後、何か予定は入ってますか?」
「予定? 特に入ってないけど」
朝食後、由佳里に呼びとめられた瑞穂は、今日のスケジュールを見つめなおして答えた。
「じゃあ、放課後一緒に映画を見に行きませんか?」
由佳里は以前に偶然手に入れていた映画のチケットを瑞穂と観ることで、今度こそ自分も幸せを掴もうと思った。
「え、ええ、いいわよ。大事な予定が入らなければね」
瑞穂は、断る理由もないので、とりあえずそう約束した。
そして昼休み、食堂で……。
「お姉さま、今日のことですけど、どうしましょうか?」
「そうね……とりあえず、一旦寮に帰って、着替えてから行くということで……」
由佳里が瑞穂と映画を観に行く段取りについて話し合っているところへ……。
「あ、あの、瑞穂さん……今日、これを観に行きませんか?」
貴子が由佳里のとは違うチケットを持って瑞穂のところへやって来た。
「で、でも……」
瑞穂は、言われて由佳里をチラッと見る。貴子は、瑞穂は由佳里と何か約束をしているようだと気づいた。
「由佳里さん……申し訳ないですが、今回は譲っていただけませんか? この映画、今日が上映最終日ですので」
それを聞いた由佳里は、当然嫌そうな顔をする。
「どうしたのよ、なんかあったの?」
そこへまりやがやって来た。
「あっ、まりやお姉さま!」
由佳里は、まりやに状況を説明した。
「ちょっと貴子、あんた前に人のもの奪っといて、また奪おうなんて、どういう神経してんのよ!」
試食会のチケットを奪われたとだけ聞いたまりやは、貴子にそう喰ってかかる。
が、それを由佳里が譲ってくれたと思い込んでいる貴子には、さっぱり意味がわからない。
「何をワケのわからないことを! 私から瑞穂さんを奪おうとしたのはまりやさん、あなたの方でしょう!」
「だからって、由佳里にたかることはないでしょうが!」
「変な因縁をつけるのもいい加減になさい! 瑞穂さんと付き合っているのは私です!」
そして、状況はまりやと貴子のかみ合わない言い争いへと発展していく。
「こんなことはどうかと思いますが、これ以上悪さをするようでしたら、生徒会長として、臨時総会にかけますわよ!」
「何が生徒会長ですか! 人のものを無理やりとりあげた泥棒のクセに!」
そこへ、その発言にキレた由佳里が場に入ってくる。
「あなたまでまりやさんに加担する気ですか! まりやさんの妹にしてはよくできた方だと思っていましたのに……」
そして、場はますます混沌と化していった。
「……まあまあ、2人とも落ち着いて」
言い争いを見かねた瑞穂が入ってくる。
「とにかく、瑞穂ちゃんがはっきりすればいいのよ! どっちを選ぶのよ!? もちろん由佳里よね?
先約なんだから、筋通しなさいよ、筋を!」
「あなたに筋がどうとか言われたくありませんわ! 瑞穂さん、こんな方の言うことなど聞く必要ありませんわ!
さあ、一緒に行きましょう!」
決定権は瑞穂に託された。でも、そうなると、誰でも好きな人と一緒にいたいと思うものである。
(まりやはああ言ってるけど、貴子さんは今日じゃなければいけないし……そもそも由佳里ちゃんには
予定が入らなければって条件をつけてあることだし……)
瑞穂はそう自分に結論を出すと、申し訳なさそうにチケットを由佳里に返した。
「由佳里ちゃん、悪いけど、他の人と行ってくれないかしら?」
「ううう……うわああああああん!!」
チケットを返された由佳里は、泣きながらダッシュでその場を去る。
「あっ、由佳里!」
まりやは2人を睨みつけると、慌てて由佳里の後を追った。
「どうしたのかしら? 泣くほどのことでもないでしょうに……」
「さあ? 奏ちゃんとかまりやとかと一緒に行けばいいだけの話だと思うけど……」
瑞穂と貴子は、呆然と2人の去った先を見ていた。
「ふええ……お姉さま……」
「どうしたの、奏ちゃん?」
翌日、奏が瑞穂に泣きついてきた。
「由佳里ちゃんが、一言も口を聞いてくれないのですよ……」
「そう。どうしたのかしらね?」
瑞穂は、まさか映画の誘いを断ったぐらいでそうなるとは思わないので、そう切り返した。
「由佳里ちゃんにも、虫の居所が悪い時もあるでしょ? とりあえず夕食の時にでも聞いてみるから」
夕食の時も、由佳里は怒りのオーラを出しまくりながら黙々と食べ続けるだけだった。
しかも、食べ終わると誰とも口を利かずに部屋に戻っていった。
「本当に思ってたより機嫌悪そうね。何があったのかしら?」
「何がって、自分の胸に聞いてみなさいよ! 全部瑞穂ちゃんが悪いんじゃないの!」
瑞穂がそうこぼすと、まりやも怒ってそう言い捨てて自分の部屋に帰っていった。
「映画のこと……かな? あの映画そんなに見たかったのなら、代わりにまりやが一緒に行ってあげればよかったじゃない」
「……というわけなんですよ」
翌日、瑞穂は生徒会室で紫苑と貴子に相談した。紫苑は何か考えていたが、ふと思いついたように瑞穂に言う。
「そういえば瑞穂さん、前の日曜、中華スイーツの試食会に行かれたそうですわね」
「ええ。今度は貴子さんと楽しめました。出入り禁止になった喫茶店でのデートの分まで」
瑞穂は嬉しそうに言うと、紫苑は笑顔で切り返してくる。
「そういえば、私、あの時結果的に由佳里さんを泣かせてしまったお詫びにと、由佳里さんに誰かと一緒に行っては
どうかと、同じチケットを渡しましたが、ということは、由佳里さん、瑞穂さんをお誘いにはならなかったのですわね」
紫苑はまりやから聞いていたのだが、誤解とすれ違いの生んだものだと感じ取り、
あえて何も知らないフリをして遠まわしに言った。
「え……?」
それを聞いた瑞穂と貴子の顔色が変わった。
「由佳里さんも他の方と楽しめたでしょうから、そのことを話題に出してから
不機嫌の理由を聞いてみてはよろしいのではなくて?」
紫苑はそう言うと、これで気づくだろうと安心して教室に戻った。
「……じゃあ、あの時由佳里ちゃんがチケットを差し出したのは、もしかして……!」
「映画の時、私のことを泥棒と言ったのは……」
瑞穂と貴子は顔を見合わせる。そして、同じ結論にたどり着いたようだ。
「大変! 由佳里ちゃんに謝らないと!」
瑞穂と貴子は、大急ぎで由佳里を探しに行った。
「本当にごめんなさい、由佳里ちゃん」
「申し訳ありませんでしたわ……」
瑞穂と貴子は、部屋で由佳里に謝っていた。由佳里は、不機嫌オーラ全開のまま、視線を2人に向けずに座っている。
「私だけ不幸のどん底にいるのに、なんで他の人を幸せにしなきゃいけないんですか……」
「まりやに説得した後由佳里ちゃん上機嫌だったから、まりやが解決してくれたんだろうって、私の中では終わってたのよ。
だから、貴子さんが手に入れられなかったと言った時に由佳里ちゃんがチケットを持ってきたから、
私たちに譲ってくれてるんだと早合点しちゃって……」
「私はそんなこと存じませんでしたし、瑞穂さんの言うことなら間違いないと思っていましたから……」
「映画の時もまさか傷をずるずる引きずってるとは思わなかったから……」
「弁解なんて聞きたくないです!」
瑞穂の話は、ゆかりに一蹴されてしまった。
「と、とにかく、そういうことなら、次は一緒に映画、見に行ってあげるから……」
「……破いちゃいました」
「え……?」
「また会長さんにとられるに決まってると思って、チケット、破いちゃいました!」
「………」
状況は、ますます気まずくなっていく。
「ま、まあ、次こそは、絶対に由佳里ちゃんのお願いを最優先するから……」
「わ、私も、次は由佳里さんに譲ってさしあげますから……」
「もういいです! 心の傷なら、夢の中のお姉さまに癒してもらいますから!」
瑞穂と貴子は食い下がるが、そんな2人に由佳里はキレてそう叫んだ。
「夢の中の私……?」
「夢の中のお姉さまは、いつも私のことを気にかけてくれて、私のことをわかってくれて、
私だけに優しくしてくださるんです! これからは誰ともかかわらずに、夢の中のお姉さまと
2人っきりで過ごしていくんです! 邪魔しないでください!」
由佳里はそう言うと、2人を部屋から追い出し、ドアに鍵をかけてしまった。
「……まさか、現実逃避に走るなんて」
「悪意はなかったのですから許していただけると思っていたのですが、甘かったようですわね」
「ええ。私たち、思っていたよりずっと、由佳里ちゃんのことを傷つけてしまっていたんですね……」
「どうしたらいいと思う?」
瑞穂と貴子は食堂に降りてきて、今あったことを寮のメンバーと紫苑に話した。
「……もうほっとくしかないんじゃないの?」
「まりやお姉さま、それはひどすぎるのですよ!」
「そう言われてもね……瑞穂ちゃんの言うことさえ聞かないんじゃ、腹の虫がおさまるまで
そっとしておくのが一番じゃない? 下手に首つっこむと、余計機嫌が悪くなりそうだし……」
「そうですわね。由佳里さんが幸せなら、それがよろしいのかもしれませんわね……」
「お2人とも、甘いですわよ」
まりやと貴子の消極的な意見に、紫苑が異議を挟む。
「機嫌が直って現実に戻ってくるなら構いませんが、妄想に浸りきっているうちに、それを真実だと思い込むようになると、
それが原因で知らないうちに引き裂かれてしまうこともありますわよ?」
「うっ……」
「それに、それだけ辛い目に遭うと、優しくしてもらいたさに自傷行為に走る心の病にかかってしまうかもしれません。
それが思い込みで体調を崩すまでになってしまったら、瑞穂さん、もう貴子さんと
付き合うどころではなくなってしまいますわよ?」
病院で過ごした経験の長い紫苑の意見に、瑞穂と貴子ははっとする。
確かに、命の危険にかかわるようになったら、由佳里を見殺しにしてまで貴子と付き合うわけにもいかないだろう。
「では、どうすれば……」
「瑞穂さんも貴子さんも、結果的に由佳里さんの幸せを奪ってしまったわけですから、
代わりになるものはあなたがたで用意すべきではなくて?」
そして、たまたまその日に来た、2ヶ月に一回通販で貴子に来ている1個5,000円前後のケーキ10個を
由佳里にあげることになった。
「由佳里ちゃん、これで機嫌を直してくれるかしら?」
「即席の間に合わせにしちゃ上出来よ!」
「ねえ、私と2人のティータイムってことにしようと思うんだけど……由佳里ちゃん、
私に機嫌を直してもらいたかったみたいだし」
最初のパティシエコンクールに比べるとかなりグレードダウンしているとはいえ、
それでも一般ピープルの由佳里にとっては、めったに口にできない代物には違いないだろう。
とはいえ、ここまで低くなると、せめてもう少しなんとかしたいと瑞穂は言った。
「でも……」
それを聞いて、貴子はためらう。瑞穂が自分から言い出したので、嫉妬心が芽生えたのだろう。
ケーキをあげるだけで十分じゃないか、とも思えてくる。
「貴子さん、お気持ちはわかりますが、あなたたちの付き合い自体がどうなるかの瀬戸際でもあること、お忘れなく」
「わ、わかりました……瑞穂さん、由佳里さんのこと、よろしくお願いしますね」
紫苑の言葉に貴子は折れた。確かに自分達の恋愛関係が破局になる危険性を考えれば、長くて1〜2時間
瑞穂を貸してあげるくらい、なんでもない。それに瑞穂の行動は、浮気心ではなく責任感から出たもののはずだ。
そして、高級ケーキでの瑞穂と2人っきりのティータイムでいくらか気分を良くした由佳里は、
やっとみんなと仲直りしてくれたのだった。
エピローグ
「由佳里ちゃん、夕食の時間よ」
それから数日後、まりやが遅れるので、瑞穂が由佳里を部屋に呼びに行った。
「………!!」
ところが、呼びに行ってドアを開けた瑞穂は固まった。由佳里は、瑞穂の幼い頃からの女装のポートレートを見ながら
1人いけない遊びをしていたのだ。
見られた由佳里は、真っ赤になって部屋の壁にもたれかかっている。
「ね、ねえ由佳里ちゃん、いい娘だから、それ渡してくれない?」
正気に戻った瑞穂は、弱々しく由佳里にお願いした。由佳里は、いやいやしながらアルバムを後ろ手に隠す。
「どうしたのよ、いったい?」
そこへまりやが帰ってきた。
「あ、まりや、まりやからも由佳里ちゃんにお願いしてよ」
瑞穂は事をまりやに話した。
「ダメね。だってそれ、喫茶店のことのお詫びにあたしが渡したんだもん」
「まりやが!?」
「そっ。中華スイーツ試食ですめばよかったけど、誰かさんが私利私欲のために由佳里から強奪したもんだからさ」
「ちょ……人聞きの悪いこと言わないでよ。あれは由佳里ちゃんが譲ってくれたと勘違いして……」
「貴子といちゃつくことで頭いっぱいで、由佳里のことなんてこれっぽっちも考えてなかったんでしょ?
本質的には大して変わんないじゃない」
「うっ……」
まりやに核心をつかれ、瑞穂は言葉に詰まる。
「恥ずかしい思いするのは、ある意味自業自得よ」
「それは……でも……」
「貴子にばっかかまってないで、たまには由佳里にも女王様気分の1つも味わわせてあげたらどうですか? お姉さま」
「ぐっ……」
かつて自分が言ったセリフを言われては、瑞穂も反論できない。
「そうです。私は会長さんにとられるのを2回も泣いて我慢してたんですから、今度はお姉さまが我慢する番です!」
まりやの援護を得て、由佳里も満面の笑顔で瑞穂に言う。
「ううう……」
瑞穂は、すごすごと退散するしかなかった。
「ううう……みんなの視線が痛いよ」
それから、瑞穂のアルバムの話題はあっという間に広がり、瑞穂の女装アルバムも多くの人が手に入れた。
無論奏も、貴子も、紫苑も。
さらに、まりやの「瑞穂をおかずにしているのは由佳里だけじゃない。少なくとも2桁はいる」発言が、
瑞穂をトラウマに追い詰めた。
「怖いよ……みんなの僕を見る目が怖いよ……」
こうしてレジェンドツリーパフェ事件に端を発した今回の騒ぎは、瑞穂以外のほとんどの生徒に幸せをもたらして
幕を閉じたのであった。
Fin
以上です。お目汚し失礼いたしました。
前回では幸せをつかめなかった2人……。
貴子さんは中華スイーツの試食会を瑞穂くんと2人で楽しめてご機嫌でしょう。
由佳里ちゃんは今回もけっこうひどい目にあってますが、最後には幸せを味わえたのですから、
それで勘弁してくれたらいいな……と思います。
にしても、連投規制つらかった……一体どういう基準で出てくるのか……。
同じ時間で投下してもかかったりかからなかったりだし……。
……
257 :
名無しさん@初回限定:2008/06/01(日) 16:56:06 ID:L39riN9/O
こ・・・これって幸せな結末なのか…?
俺には不幸が誤魔化されたようにしか見えんのだが・・・
紫苑も原因作って置きながら立場忘れて高みの見物同然になっているのも・・・
ゆかりん・・・(´・Å・`)
>>257 全員を幸せにするなんて傲慢な事できるわけないじゃん
10幸せにするのに2・3生贄にするのは仕方ないかと。
ここのとこずっとの流れはそうだしね
259 :
名無しさん@初回限定:2008/06/02(月) 08:28:55 ID:0YDnbag0O
全ての幸せを望む事は傲慢な事なのか?
10の幸せに2の生贄だなんて
まるで理想と現実の差に絶望した某正義の味方志望だな。
理想を抱えて溺死しろ。
とでも言いたげだな。
>>258 おとボクの原作世界は「悪者はいない・誰も不幸にならない」
その意味で
>>259の意見もわからなくはない
この作者の作品は原作観を外し気味なので、気になる方はスルー推奨
つかこの話、最初の段階で変。
そもそも瑞穂には、由佳里に対して優しくしてあげる義務なんてない。
(この辺は、ゲーム本編の由佳里ルートやエトワールで奏ちゃんが語ってる)
由佳里がまりやに文句を言うのは当然だが、瑞穂に対して「私を構って下さい」なんて言うのは筋違い。
この話(に限らないんだが)の由佳里は、駄々をこねてるだけの痛い子にしか見えません。(泣く子は多く飴をもらえるって奴)
ついでにまりやは、自分の事を棚に上げて瑞穂を一方的に悪者にしているひどい奴。
紫苑さまは、中途半端なフォローの後投げっぱなしにした挙句、
>>257氏曰く高みの見物をしてる悪女って所だろうか?
瑞穂&貴子は、強いて言えば空気が読めないバカップルだろうか?しかし瑞穂に非は無いはずだ。
結局この話って、何も悪くないはずの(無理矢理悪者に仕立て上げられた)瑞穂(&貴子)が一方的に不幸になるだけなんだよね。
更に女装アルバムをばら撒くって……どんな仕打ちだ!と……
以上長文失礼。理想を抱えて溺死してくる。
263 :
みどりん:2008/06/03(火) 23:30:18 ID:OsRngapu0
ベニスの商人
作:シェ・クスピア
訳:みどりん
十条紫苑と鏑木瑞穂は仲のよい友人です。旧華族のつながりで、家族の付き合いがあり、それで昔から旧知の関係だったのです。学年こそ紫苑のほうが一つ上ではありますが、誕生日はほとんど同じで、何れは結婚をしようという間柄でした。まあ、許婚といっていいでしょう。
ちなみに、紫苑は女子高、瑞穂は共学校におりましたから、学校で顔を合わせることはありませんでした。
さて、瑞穂は事業家の息子ですから、結婚資金は自分で作ろうと考えました。まだ高校生なのに見上げた心がけです。
「紫苑さん、なかなか有望な先物取引があるので、これを使って僕らの結婚資金を作ろうと思います」
と、自身満々に言う瑞穂に対し……
「瑞穂さん、先物取引なんて危ないのではないですか?それに元手がないのではないでしょうか?」
「かなり確実な情報だから大丈夫でしょう。元手はまりや商会から借りようと思います」
「え?!あの、悪徳商会として名高いまりや商会ですか?」
「ええ。確かに悪徳ではありますが、お金に関してはしっかりしていますから問題ないと思いますよ」
「本当でしょうか……」
「まあ、紫苑さん、そんなに心配しないで気楽に待っていて下さい」
264 :
みどりん:2008/06/03(火) 23:30:43 ID:OsRngapu0
そして、瑞穂はまりや商会に出向きました。
「まりや、お金を貸して欲しいんだけど……」
「いいわよ、瑞穂ちゃん。希望するだけ貸してあげるわ」
悪徳まりや商会はあっさり貸付に同意します。
「利子はどの位?」
あんまりあっさり認可されたので、少し不安になった瑞穂はまりやに聞きます。
「利子なんて取らないわ」
「本当?」
「ええ。その代わりこれにサインして……」
まりやはなにやら紙を手渡します。
「え〜と、何々?
鏑木瑞穂、以下甲は御門まりや、以下乙に対し借金をするものとする。貸付額は_____円、返済日は_年_月_日とする。乙は甲に対し利子の請求をしないものとする。甲は返済日までに一部でも返済できない場合は来年3月末日まで女装を続けるものとする。
変な契約書だね。要は返済日までに返せばいいわけでしょ?」
「まあ、そういうことね」
「わかった。それじゃあ、額と日付を記載して、署名すれば……これでいい?」
「いいわよ。毎度あり〜〜」
瑞穂は所定の金額を持って、家に帰っていきました。
事務所に残ったまりやの前に、影に隠れていた人間が一人現れました。そして、謎の人間とまりやは顔を見合わせてにっこりと微笑むのでした。
瑞穂は喜び勇んで取引を開始します。最初のうちは利益を出していましたが、次第に相場が予想と逆の方向にずれていってしまいました。
「う、これはまずい………」
「どうなさったのですか?瑞穂さん」
紫苑が心配そうに聞きます。
「いや……大丈夫ですよ。安心して待っていてください。アハハ」
瑞穂はそう答えますが、どうも元気がありません。紫苑は心配で仕方ありません。
「何か私に出来ることはないかしら?」
265 :
みどりん:2008/06/03(火) 23:31:33 ID:OsRngapu0
そして返済日がやってきました。瑞穂は足らなくなった金額をどうにか工面しようとしましたが、親にも断られ、他の貸金業者からも断られ、万策尽きてしまいました。そこで裁判所に調停を申し込むことにしました。
裁判所には瑞穂・まりやが呼ばれています。
「裁判長様。この契約書の通り、瑞穂ちゃんを女装させることを許可願いたく、審理お願いします」
まりやが裁判長に訴えます。それに対し、瑞穂は……
「このような基本的人格権を無視したような契約はそもそも無効です。契約の撤回をお願いします」
と反論します。
裁判長は瑞穂に問いかけます。
「瑞穂さん、あなたは返せない時は女装することを確認して署名したのですか?」
「え?ええ、まあ………そうです……」
「そうですか………それでは仕方ありませんね。裁判所はまりやさんの訴えを全面的に認め、瑞穂さんを女装させることを許可します」
瑞穂はがっくりします。
「さあ、瑞穂ちゃん、女装タイムよ〜」
まりやは嬉しそうに瑞穂の服を取り替えようとします。ところが、そのとき裁判長がまりやにいいました。
「まりやさん、お待ちなさい!」
シェークスピアのベニスの商人では、ここでポーシャが『血を取ってはいけない』といってアントーニオを救ってくれるらしいのですが………。
「この契約ではまりやさんが、来年3月までいつ何時も瑞穂さんが女装していることを確認する術がありません。従って、当法廷は、瑞穂さんを恵泉女学院に編入させ、まりやさんと同じ桜寮に入寮させることを命じます」
「えーーー!!そんなぁ」
瑞穂は大声で反論します。何といっても踏んだり蹴ったりの判決ですから。
「瑞穂さん、法廷を侮辱することは許しません。判決に素直に従ってください。まりやさん、これでよろしいですね?」
「はい、ありがとうございました、裁判長様。これで間違いなく女装していることを確認できます」
まりやはニコニコしています。瑞穂はがっくりうなだれます。まさにorzといった雰囲気です。こうして、瑞穂は女子高に通うことになってしまいました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
266 :
みどりん:2008/06/03(火) 23:35:41 ID:OsRngapu0
瑞穂は恵泉女学院に編入しました。まりやが丁寧に化粧も女装もしてくれました。そして、その初日のこと………
「瑞穂さん、これで同じ高校に通えるようになりましたわね」
「え?え?え?紫苑さん、どうしてここにいるんですか?一つ上でもう卒業しているはずでしょ?」
「あら、言っていませんでしたかしら。私、去年病気で出席日数が足らなくなってしまって、留年してしまいましたの」
「そ、そうだったんですか?」
「それで、まりやさんと相談して瑞穂さんをここに入れる方法を考えましたの」
「えっっっ?!」
そう、瑞穂が借金に行ったとき、まりやの部屋で悪巧み……いえ、相談をしていたのは他ならぬ紫苑だったのです。そして、紫苑は瑞穂編入作戦の首尾を確認していたのでした。
「裁判長は私が化けていましたのよ。なかなか似合っていたでしょ?」
「あ……」
「先物取引の偽情報も私がお義父様にお願いして流したのですよ。うまく乗ってくれるかどうか少し心配だったのですが、大丈夫でしたわね」
「……………」
「そうそう、まりやさんには正しい情報を流しておきましたから、ちゃんと元は取っているようですわ。ですから、借金のことは心配しなくても大丈夫ですわよ。それから情報料も頂いておきましたから、結婚資金も大丈夫ですわ」
「…………………」
「あと、誰もお金を貸してくださらなかったのは、私が少し皆様にお願いしたからだと思いますわ」
「……………………………」
「今年一年一緒に楽しい学院生活をすごしましょうね」
紫苑はそう言って瑞穂の腕に嬉しそうに抱きつくのです。完全に紫苑に手玉に取られたと知って、開いた口が塞がらない瑞穂でした。こうして紫苑の活躍で、瑞穂は尻にしかれた[BS]x6幸せな生活を送ることが出来るようになったのでした。
めでたしめでたし。
おしまい
「ちが〜う!!断じてめでたくな〜い。僕は幸せじゃな〜い!!!」
「え?私と一緒にいることがそんなに不幸なのですか?」
「いえ……そうではないのだけど………」
「よかった。やっぱり幸せなのですね」
「………………」
267 :
みどりん:2008/06/03(火) 23:39:15 ID:OsRngapu0
お粗末でした。
少し休憩。
>262
君らはこのスレが2次創作だということをしっとるかのぉ?
世界観は2次創作作者のみがきめることではないだろうか
>>268 全く持ってその通り
他人の感性と自分の感性が完全に一致するなんてありえないし
もし一致するなら気持ち悪い
自分の感性に一致するものが欲しければ自分で書くしかない
他人に求めるな。重すぎる
270 :
呼称表1/2:2008/06/06(金) 09:38:16 ID:if2gtfBS0
|瑞穂 |紫苑 |まりや |奏 |由佳里 |貴子
瑞穂 |僕/わたし |紫苑さん |まりや |奏ちゃん |由佳里ちゃん|貴子さん
| |紫苑 |まりやさん |奏 |由佳里 |会長
紫苑 |瑞穂さん/あなた |私 |まりやさん |奏ちゃん |由佳里ちゃん|貴子さん
まりや |瑞穂ちゃん/お姉さま. |紫苑さま |あたし |奏ちゃん |由佳里 |貴子
|瑞穂さん/瑞穂 |. |. | |ゆかりん
奏 |お姉さま/瑞穂お姉さま |紫苑お姉さま. |まりやお姉さま.|奏 |由佳里ちゃん|会長さん
|瑞穂さま
由佳里 |お姉さま/瑞穂お姉さま |紫苑さま |まりやお姉さま.|奏ちゃん |わたし |会長さん
|瑞穂さま/瑞穂さん. |. |. | |私
貴子 |お姉さま/瑞穂さん. |紫苑さま |まりやさん |周防院さん| |私
| |. |. |奏さん
一子 |お姉さま/瑞穂お姉さま |紫苑さん |まりやさん |奏ちゃん |由佳里ちゃん|会長さん
緋紗子 |瑞穂くん/ 瑞穂さん |紫苑さん |御門さん |奏さん |由佳里さん |厳島さん
|宮小路さん. |十条さん |まりやさん | |由佳里ちゃん|貴子さん
圭 |瑞穂さん. |紫苑さま |まりやさん |奏 | |会長
美智子 |瑞穂さん. |紫苑さま |まりやさん |奏ちゃん |由佳里ちゃん|会長/貴子さん
君枝 |お姉さま |紫苑さま |御門先輩 | | |会長
271 :
呼称表2/2:2008/06/06(金) 09:40:23 ID:if2gtfBS0
|一子 |緋紗子 |圭 |美智子 |君枝
───―───────────────────────────―
瑞穂 |一子ちゃん|緋紗子先生|圭さん |美智子さん |君枝さん
紫苑 |一子さん |緋紗子先生|圭さん |美智子さん |君枝さん
まりや |一子ちゃん|緋紗子先生|圭 |美智子さん |
奏 |一子さん |緋紗子先生|部長さん|美智子お姉さま. |君枝お姉さま
| |先生 | |. |
由佳里 |一子さん |緋紗子先生| |. |
| |先生 | |. |
貴子 |一子さん | | |. |君枝さん
一子 |わたし | | |. |
|私 | | |. |
緋紗子 | |わたし | |. |
圭 |一子 | |わたし |美智子さん |
| | | |美智子 |
美智子 | |緋紗子先生|圭さん |私 |
君枝 | | |私 |. |
とりあえず作った
修正あったらよろしく
なおやるきばこ2の内容は含んでない
エトワール由佳里の一人称は「あたし」
由佳里→まりやは、基本的には「お姉さま」だと思う。瑞穂が居る場所では、区別するために「まりやお姉さま」になる。
由佳里→一子は「一子ちゃん」だと思ったけど。
まりやの一人称に「私」を追加すべきかな?公の場では「私」のはず。
>>272 エトワール及びやるきばこ2を入れるとややこしいので別に作ろうかと思っている
由佳里→まりやの「お姉さま」は使用例が少ないから省いたけどやはりあった方がいいかな?
由佳里→一子は「一子さん」なはず
アニメでは「一子ちゃん」だけど
まりやの一人称は見落としてた、すまん
みどりんさんへ
ふとネタを思いついたので書いておきます。
よろしければこのスレでなくてもいいのでお使いください。
・もし瑞穂くんがストーカーで、ヒロイン達をストーキングしていたら?
そして、それを知ったヒロイン達の反応は?
場所と書き方によってはOKかな? とも思います。
それでは、失礼しました。
『○○記念』
20XX年6月8日。瑞穂と由佳里が結婚して最初の、まりやの誕生日……
「さあみんな、今日はあたしに付き合って貰うわよ!」
やけにハイテンションなまりやが一同を引っ張っていった。
「どこへ行くのまりや?」
「それは着いてからのお楽しみ!」
電車を乗り継ぎ数十分。御門まりや一行は府中本町(ふちゅうほんまち)駅に到着した。
「まさかまりや……」
「瑞穂さん、どちらに行くのかご存知なんですか?」
「うん、恐らく……」
「おおっとストップ瑞穂ちゃん!いいから黙って付いてきなさいゆかりん」
専用通路を通り約5分……
「やっぱり……」
『東京競馬場西門』
「ま、ま、まりやさん?!ギャンブルなんて良くないですわ!」
「ったく……相変わらずカタいわねぇ貴子は。競馬=ギャンブルってのは偏見よ。
『サラブレッドの躍動感溢れる走りを観賞しに来た』って云って頂戴!」
チケット(200円)を購入し入場しようとした所、係員が奏に話しかけてきた。
「お嬢さん、15歳未満は入場無料ですよ」
「ふぇ?奏はもうハタチを過ぎてます。勝馬投票券も買えるのですよー」
「ええっ?!そ、それは失礼しました」
頭を下げながら係員が去って行った。
「……奏、やっぱり子供っぽいですか?」
「いきなり『勝馬投票券』なんて云える子供はいませんよ。それに、奏ちゃんは今のままで良いのです」
「紫苑お……むぎゅっ……」
場内は人・人・人で溢れかえっていた。
「ものすごい人ですわね」
「そりゃそうよ。今日は国際GT『安田記念』があるの。香港からも応援の人が沢山来てるからねぇ……」
ttp://keiba.yahoo.co.jp/scores/2008/05/03/06/11/denma.html 「ふうん…………!」
瑞穂が何かを閃いた様だ。
「それじゃせっかくだから、みんなで安田記念の馬券を買って、まりやにプレゼントしようよ」
「へ?瑞穂ちゃん、それって外れたらゼロって事じゃない?」
「この人数でそれぞれ別の馬を買えばどれか当たるでしょ……多分。
この中で一番幸運な人の運を貰えるって思えば良いんじゃないかな」
「それは良いアイディアですわ瑞穂さん。わたくしがまりやさんに当たり馬券をプレゼントして差し上げます」
「……貴子、あんたわざと外す気でしょ……」
「それでは第1回、『まりやにオールオアナッシングプレゼント』を開催致します」
ワーッ!
「ルールは簡単、それぞれが『これだ!』と思った馬の単勝馬券を購入して、まりやにプレゼントします」
ワーッ!
「当たれば天国外せば地獄。まりやに幸運をプレゼント出来るのは果たして誰か?」
ワーッ!
「ニューヨークに行きたいかーーーッ!!」
シーン……
「……え、ええっと、マークカードを持って来るね」
思いっきり顔を真っ赤にした瑞穂が、マークカードを取りに行った。
「……今のは兎も角、瑞穂ちゃん明るくなったわねぇ」
「そうですわね。聖應にいらした頃よりも元気一杯、と云った感じがします」
「ご結婚がきっかけではないでしょうか?ね、由佳里さん」
「え、私ですか?……でも、本当にそうなら嬉しいです」
「逆に由佳里ちゃんは、少し大人しくなった感じがするのですよー」
「そうよね。瑞穂ちゃんと結婚してからのゆかりんは、反応鈍いから弄りがいが無くてつまんないわ」
「勝者の余裕……ですわね。まりやさん、あなた妬んでいるだけでしょう全く……」
そこに、マークカードの束を持った瑞穂が戻ってきた。
「みんな楽しそうだね。何の話をしてたの?」
「瑞穂さんと由佳里ちゃんがラブラブで羨ましい、と云う話ですわ」
「し、紫苑さん?!」
元に戻ったはずの顔が、再び真っ赤に染まった。
「うーん……まりやお姉さま、私競馬って買った事無いんですが、どの馬を買えばいいんでしょうか?」
「瑞穂ちゃんが云ったでしょ。あんたが『これだ!』って思ったのを買えばいいのよ。
好きな名前とか、好きな番号とかでいいんじゃない?」
「あの、お姉さま方は、いくら位お買いになるのですか?」
「好きなだけでいいよ奏ちゃん。お金をプレゼントするんじゃなくて、まりやに運をプレゼントするんだから」
「おやおや〜、なんで『お姉さま方』って呼び方なのに、瑞穂ちゃんが返事するのかな〜?」
「……はっ!つい癖で……orz」
「ふぇ?お姉さまは由佳里ちゃんとご結婚されても『お姉さま』なのですよ」
「流石は伝説のお姉さまですわね、み・ず・ほ・お・ね・え・さ・ま!」
(もうやめて……orz)
それぞれが馬券を買ってきた後、瑞穂はふと疑問に思った事を口にしてみた。
「ねえまりや、何で今日はここに来ようと思ったの?」
「うーん……家に篭ってパーティーってガラじゃないでしょあたしは。それに家に居るとあの両親がね……」
まりやの両親が必要以上に過保護なのは既に周知なので、皆思わず頷いてしまった。
「んで、どっか行こうってネットで調べてたら、安田記念が有るって見つけたから」
15時40分レース発走。
欅(けやき)の向こう側を通り過ぎ、4コーナーを回って直線の叩き合い。
「うらー、行けーっ!」
「まりやさん、はしたないですわよ」
「ぃよっし!そのまま、そのままーーーっ!」
5番『ウオッカ』号が、他馬を引き離して圧勝した。
ttp://keiba.yahoo.co.jp/scores/2008/05/03/06/11/result.html 「よっしゃー!ウオッカの単ゲット!」
他の面々は、大喜びのまりやをただ黙って眺めていた。
「……あれ?もしかして当たったのあたしだけ?」
「……そうみたいだね。おめでとうまりや、ってこれじゃプレゼントにならないなぁ……」
「そうですわね。残念ですわ、まりやさんに当たり馬券をプレゼントして差し上げたかったのに」
「白々しいわよ貴子。ま、でも、みんなの気持ちは貰ったから。ありがとう!」
「それでは、皆さんの勝馬投票券を発表しましょうか」
「そうですね紫苑さん」
「それじゃ僕から。僕が買ったのは4番『ニシノマナムスメ』。
まりやのご両親の事を考えて決めました。まりや、これからもご両親を大切にね」
「ん……ありがと瑞穂ちゃん。ハズレだけど大事に取っとくわ」
「それでは次は私が。私が買ったのは……」
「「「「ジョリーダンス!」」」」
由佳里が答えるよりも早く、まりや・紫苑・貴子・奏の4人が見事にハモった。
「ええっ?!何でわかるんですか?」
「いや……最初からバレバレでしょ、でもありがとね由佳里。
瑞穂ちゃんにダンスを教えたのはあたしなんだから、感謝しなさいよ!」
瑞穂は黙って首を横に振った。
「奏は18番の『ドリームジャーニー』を買いました。
夢を求めてアメリカに留学したまりやお姉さまにピッタリだと思ったのですよー」
「あたしが行ったのは旅行じゃないんだけどね……ありがと奏ちゃん。じゃ、次は貴子かな?」
「え、あ、あの、わたくしは……」
貴子は馬券を差し出すのをためらっている様だ。
「いいから出しなさいほら!」
まりやが無理矢理馬券を奪い取った。
「ええっとなになに……単勝2番『キストゥヘヴン』」
「「「「「……」」」」」
「ま、ま、ま、まりやさん、勘違いなさらないで下さい。これは、その……」
「……あのねー、あたしが妬んでるとか云っときながら、あんた未練たらたらじゃない。良く良く考えたら、
事故とはいえあんたが瑞穂ちゃんのファーストキスを奪っちゃったんだから、由佳里がかわいそうよね」
「う……ゆ、由佳里さん、本当に申し訳ないですわ」
「え?瑞穂さんのファーストキスの相手は私ですよ」
「「「「え?」」」」
「ゆ、由佳里?!その話は……」
「ほほう……どう云う事かな瑞穂ちゃん?貴子より前って事は、学院祭よりも前、
つまりあんた達が結ばれる前の話よね。ご説明願いましょうか?」
この後散々絞られた……由佳里が。
「それじゃ、最後は紫苑さまですね」
「はい。わたくしが買ったのは……『ウオッカ』です」
「……はい?」
「って紫苑さん、当たってるじゃないですか?!」
「紫苑お姉さま、1万円も買ってるのですよー」
「ウオッカの単勝は410円。つまり1万円が4万1千円って事ですか?!」
「ふふっ、少々意地悪だったでしょうか?まりやさん、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます紫苑さま」
「そう云えば、まりやはいくら買ってたの?」
「あたし?10万」
「ええっ?!買い過ぎだよまりや。当たったからいいけど、もうムチャな買い方はしちゃダメだよ」
「ふっふっふっ、瑞穂ちゃんが云った通り、あたしの勝負は『オールオアナッシング』よ!」
(……ダメだこりゃ)
「まりやは何で『ウオッカ』を買おうと思ったの?」
「そりゃあモチロン酒……じゃなくて、
さっき瑞穂ちゃんが『せっかくだから』なんて云うもんだから、あたしは赤い帽子を選んだのよ!」
「……紫苑さんは?」
「それはモチロン……ではなくて、名前が一番短い馬を選んだのですわ」
「?4文字なら他にも『アルマダ』が居ますけど?」
「え?この馬は『そとあるまだ』と読むのではないのですか?」
「いや、『外』って云うのは外国の馬って意味で、馬の名前の一部ではないです……」
「あらそうなのですか……それは気が付きませんでした」
(多分紫苑さん(さま)も、お酒だから買ったに違いない)
瑞穂達はそう思ったが、紫苑に面と向かって云える勇者はここには居なかった。
「じゃ、馬券を払い戻して帰ろっか」
「当たり馬券のお金でウオッカを買って、祝杯を挙げましょう」
「いいですね紫苑さま。あたしの家……はアレだから、瑞穂ちゃんのおうちでパーっとやりましょう!」
「「断る!」」
身の危険を感じた瑞穂と由佳里が綺麗にハモった。
『完』
(おまけ1)
「瑞穂ちゃんは『ニシノマナムスメ』を買ったんだねぇ。
どちらかと云えば、瑞穂ちゃんには『スーパーホーネット』の方がお似合いだと思うけど……」
「?」
「スズメバチの如く由佳里を突き刺す!ってな感じで」
「な、何をおっしゃるんですかまりやお姉さま?!瑞穂さんは針みたいに細くないです!」
「ゆ、由佳里?!」
「あ、そうだったわね。瑞穂ちゃんのはもっと太くて……」
まりやは両手で何かの形を表現している様だ。
「……何でまりやお姉さまがそこまでご存知なんですか?」
この後修羅場になったとかならなかったとか……
(おまけ2)
「貴子、まだ瑞穂ちゃんの事引きずってんのね。って云うか、男嫌いが治る気配はないかな?」
「余計なお世話です!男なんて……男なんてっ!」
(あのー、僕一応男なんですが……)
「『キストゥヘヴン』の母の名前が『ロングバージン』、貴子の現在過去未来そのままよね」
「くっ……では、まりやさんはいかがなのですか?」
「……言い返せないのが悔しいわ。それもこれも瑞穂ちゃんが悪いのよね」
「ええ、全くですわ!」
「ええっ?!何で僕?!」
(おまけ3)
誰も見ていない隙に、紫苑はゴミ箱に17枚の馬券を捨てた。
(うふふっ、誰かが当てないと場が白けてしまいますからね……)
そう、実は紫苑は、出走馬18頭全ての単勝馬券を購入していたのだ。
尤も、『ウオッカ』の単勝は1万円買っていたが、他の17頭の単勝は千円しか買っていなかったのだから、
瑞穂達の想像は、あながち間違えてはいなかったのである。
以上です。競馬知らない人は完全に置き去りです。ラストは東の扉さん(
>>188)を参考にしました。
『みずほはへんたいさん』と世界観が繋がっています。話自体は繋がってないのでどうでもいいですが……
元々書く気は無かったんですが、テレビで競馬中継を見ている時に、
おとぼくのキャラだったら何を買うんだろう?→まりやならウオッカだな→
それじゃもしウオッカが勝ったら何か書くか→ウオッカ大楽勝→馬券買っとけば良かったorz
こんな感じです。
奏ちゃんが子供を産んだらその子はジョッキーになれるかな?
なんて考えてしまいました。私はどうやら疲れているようです。
それでは、まりあさん誕生日おめでとう!
「あたしはまり(以下略
>>282 競馬知らないけど、面白かったです。
まりや聖誕祭記念作品が合計2個しかなかったそうだからどうしよう……と思っていましたので、
ちゃんとそのSSが読めてよかったです。
私の書いたのを参考にしてくださるのは、少し恥ずかしいけど嬉しいです。ありがとうございました。
残念ながら私は今年は何も思いつきませんでしたが、とりあえず誕生日おめでとうございます!
シンデレラへのステップの続きを投下させていただきます。
〜由佳里編APPENDIXU シンデレラへのステップ Part2〜
入学式の日、いつもの鏑木家の夕食の時間……。
「瑞穂、ずいぶん嬉しそうだな」
「そうですねえ。何かいいことでもおありになったのですか?」
父さまと義母さまが僕を見てそう聞いてくる。やっぱり僕って、表情に出やすいんだろうか?
「ええ。実は由佳里が、ダンス教室の先生から世界を狙えるから、是非大会に出て欲しいと言われてるらしくて……」
「本当か、それは!?」
「由佳里ちゃん、すごいです」
父さまと義母さまに続き、奏ちゃんも驚きの声を上げた。
「ええ。本当ですよ。ダンス教室にも確認しましたから」
「それはすごい! 大会に出るなら、是非私がスポンサーにならせてもらうよ」
父さまは興奮気味だ。
「あの、お義父さま……私は……」
「由佳里ちゃん、何も迷うことはないです。由佳里ちゃんなら、きっといい記録を残せますよ」
「奏ちゃん……だから私は」
「由佳里、別に記録を残せなくてもいいから、やるだけやってみようよ。僕も応援するから」
まだ消極的な由佳里だけど、僕をはじめみんなの応援もあるんだし、きっと決心してくれるだろう。
それからしばらくして、夜遅く、僕は由佳里の部屋を訪ねた。
「由佳里、ちょっといい?」
そう言ってノックして扉を開けたけど、中に由佳里はいなかった。まあ、行くことはあらかじめ言ってあったから
入ってもいいだろう。
「あれ? どうしたんだろ?」
僕が部屋を見回してみると、引越しの時には見られなかった、1つのぬいぐるみが机の上にあるのを発見した。
「可愛い女の子だな。誰なんだろ?」
その可愛い女の子のぬいぐるみからは、ほのかに石鹸のいい香りが漂ってきた。
「瑞穂さん……あっ!」
そこへ由佳里が帰ってきた。由佳里は僕が見ていたものに気づくと、途端に顔を赤くした。
「お邪魔してるよ。これ、由佳里のぬいぐるみ? 石鹸のいい匂いがするね」
「そ、そう……ですか……」
「なんてキャラなの? 一体どこで売ってるの、これ?」
僕が聞くと、由佳里はますます頬を染めた。いったいどうしたんだろ?
「あ、あの……それ、どこにも売ってません……」
「え?」
「私が作った、瑞穂さんのぬいぐるみですから……」
「えっ……?」
これ、僕なの? それに由佳里が作ったって……僕が由佳里を見ると、由佳里は赤い顔のまま言い始めた。
「私、瑞穂さんが聖央に転校してきた時、瑞穂さんのぬいぐるみを作ったんです。そして、いつも部屋に飾ってました。
朝起きたときと、おやすみの前には……」
「おはようのキスと、おやすみのキス?」
僕が言うと、由佳里は恥ずかしそうに頬を染めて身を縮こまらせた。いろんな意味ですごくかわいい。
「それから、嫌なこととか、辛いことがあったときにはぎゅっと抱きしめて、元気をもらっていました……」
「そうなんだ。僕って、そんな形で、いつも由佳里の元気の糧になってたんだね」
僕はそう言うと由佳里を抱きしめて、唇にキス。
「瑞穂さん……んっ……」
「あ、そうそう、今日は由佳里に相談しに来たんだった」
キスしてからしばらく見つめあった後、僕は本題を思い出して雰囲気を戻す。
「明日のこと、ですか?」
「そう。やっぱり初めてだから、僕としてはどうしようか色々考えちゃって……」
明日は、広島にいる由佳里の家族に挨拶に行くことになっているんだ。正式に由佳里と結婚するつもりだから、
やっぱり早い方がいいしね。
「大丈夫ですよ。私の家族はそんなにお堅い人たちじゃないですから。それに瑞穂さんのことは何度か話してありますから、
よっぽどの事がない限り、失敗はありませんって」
由佳里はそう僕を励ましてくれる。
「そうだね。やってもいないことを心配しても仕方ないからね。由佳里を信じるよ」
「ふふっ、それでこそ瑞穂さんです。やっぱり瑞穂さんに弱気は似合いませんから」
それから、僕たちは明日の予定について話し合った。
「由佳里のおかげですっかり元気出ちゃったな。あれだけ不安に思ってたのがウソみたいだ」
自分の部屋に戻ってきた僕は、もう一片の迷いもなく明日の準備の最終チェックをしていた。
「ふふっ、それにしても、由佳里が毎日僕のぬいぐるみにキスしてくれてたなんて……」
僕はそのときの由佳里を想像しながら、そんな由佳里をすごく愛しく思えた。
「僕のこと、あんなに可愛く作ってもらって……って、ちょっと待って!!」
ガーン!!
そういえば、僕は、あのぬいぐるみを可愛い女の子と認知したんだった。自分で自分のぬいぐるみを女だと思ってしまう
僕って一体……。
「ううう……」
翌日、僕たちは広島の由佳里の実家に来ていた。由佳里は飛行機が苦手だから、電車を使って来た分、
かなり遅くなったけど。
「ふう……やっと着いたか。ここが由佳里の家?」
「はい、そうです……普通の家……というか、普通の家より悪く見えるかもしれないですけど……」
由佳里はそう決まり悪そうに言う。だけど、僕は世間一般で言ういわゆる上流階級の家しか行ったことがないから、
普通の家の基準がわからないんだけどね。
「心配しなくていいよ。僕が由佳里の家を悪く見たりはしないから」
ピンポーン!
僕はそう言うと、家のインターホンを鳴らした。
「はい、どなたですか……って、由佳里!」
中から20代前半らしい男性が出てきた。ひょっとしてこの人が、由佳里のお兄さんなのかな?
「ただいま帰参いたしましたわ。お久しゅうございます、お兄さま」
「ゆ、由佳里……!?」
由佳里がそう淑女モード全開の言葉遣いと仕草で挨拶すると、由佳里のお兄さんらしい人は
ハトが豆鉄砲を食らったような顔で戸惑っている。由佳里がメモ○れの花○果凛のように普段の顔と淑女の顔を
うまく使い分けてることを知っている僕には、それがおかしくてたまらない。
「なーんて。ただいま帰りました! それでお兄さん、こちらが以前話した……」
由佳里がそう言って僕を指す。
「はじめまして、鏑木瑞穂です」
「そうか。君が鏑木瑞穂くんか。なるほど、確かに美祈(みき)にそっくりだ」
美祈って、ひょっとして、ずっと由佳里から聞いてた、お義姉さんの名前かな?
「はじめまして。私は由佳里の兄で、上岡秀一(しゅういち)といいます」
「秀一さん、ですか。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
それから、僕は由佳里の家族みんなに紹介され、夕食も一緒にとることになった。みんな僕を温かく迎えてくれて、
「由佳里をよろしくお願いします」と言ってくれた。
「どうでしたか、瑞穂さん」
そして夜、僕たちは由佳里の部屋だったところで、一緒に寝ている。
「うん。みんなすごくいい人たちだね。美祈さんが帰ってきたみたいって言われちゃった」
僕が由佳里の義姉さんに似てるっていうのは本当みたいだな。ほかにもそう感じる人がいるんだから。
「もう、みんなったら……」
「ふふっ、でも、これでお互いの家族公認の仲だね、僕たち」
「瑞穂さん……そ、そうですね」
僕が言うと、怒っていた由佳里も、途端に頬を染めて恥ずかしそうに僕を見る。
「まあ、でもいくら公認の仲になったからって、娘をほかの男と一緒の部屋に寝かせるのはどうかと思うけど」
「瑞穂さんは、私と一緒に寝るのはいやですか?」
僕が冗談っぽく言うと、由佳里がすねてしまった。
「もう、何を今さら……そんなわけないでしょ?」
僕はそんな由佳里の肩を抱いて、自分の方に引き寄せる。
「そうだ……せっかくだから、このまま愛し合おうか?」
「あはは……そうですね。そうしたい気持ちもありますけど、今日は遠慮しておきます……」
「あれ? 由佳里は僕なら24時間いつでもOKだって言ってなかった?」
僕はわざと意地悪く声を作って揚げ足を取ってみた。
「た、確かにそうですけど……家族に聞かれたら恥ずかしいですから……」
まあ確かにね。由佳里は比較的えっちな方なのに恥ずかしがり屋さんだからな。
そのギャップがすごく愛しく思えてくるんだけど。
「わかりました。じゃあ、今日はこのまま寝ようか」
「ありがとうございます……」
由佳里のお礼に僕は思わず笑ってしまった。べつにお礼言われることじゃないと思うけど。
「でも、このまま由佳里を抱きしめながら寝たいな。それぐらいならいいよね」
「瑞穂さん……はい……」
由佳里は頬を染めながら僕の腕の中に入ってきた。そして、僕たちはそのまま眠りについた。
「ここです、瑞穂さん」
「ふうん……ここにいるんだね」
翌日、僕と由佳里は由佳里のお義姉さんである美祈さんの墓参りに来ていた。
美祈さんの写真を見せてもらった時、外見そのものはそんなに似ているとは思わなかったけど、
みんなに言わせると、雰囲気というか、空気が似ているんだそうだ。
「そういえば、由佳里が聖央に来たのって、美祈さんに憧れてだったよね」
「そうです……」
そして、美祈さんの勧めと彼女の家族のサポートもあって、聖央に来ることになったんだ。
形は約束とはだいぶ違うものになってしまっていたけど、由佳里は美祈さんの望みどおり、聖央で幸せを掴む事ができた。
僕と一緒に……。
「美祈さん……はじめまして。鏑木瑞穂です」
僕は美祈さんのお墓に供え物をして手を合わせてお祈りをし、そう話しかけた。
「僕はこのたび、由佳里さんと婚約することになりました。家族のみなさんにも、認めていただきました」
「お義姉さん、ごめんなさい。私、お義姉さんとの約束、破っちゃいました……」
由佳里がそう申し訳なさそうな顔でお墓に顔を合わせる。
そうか。そういえば由佳里は聖央に入って、美祈さんのいた陸上部に入部することを約束してたんだっけ。
でも、由佳里は自分の目標のために、陸上やめちゃったからな。
「すみません。でも由佳里さんを責めないであげてください。由佳里さんが陸上をやめたのは、
僕に釣り合う女の子になるよう努力するためなんですから」
「み、瑞穂さん……」
由佳里が驚いた顔で僕を見る。僕は続けた。
「でも、美祈さん、これは僕の勝手な思い込みかもしれませんが、あなたのお願いは、由佳里さんが幸せな高校生活、
ひいては幸せな一生を送ること……だったはずですよね? そういう意味では、由佳里さんはあなたとの約束は、
きちんと守っていると思うんです」
「………」
それを聞いた由佳里は複雑そうな表情で僕とお墓とを見比べていた。
「僕は由佳里さんを必ず幸せにする……とは確約できません。これからケンカをすることもあれば、
辛い思いをさせてしまうこともきっとあるでしょう」
僕は自分自身に言い聞かせるように話していく。そう。どんな形であれ、長い人生の中、それを共にするのであれば、
避けられないことだろう。
「でも、それでも、少なくとも由佳里さんのことは愛していますし、幸せにしたいとも思っています。
そんな僕でよければ、どうか由佳里さんとのこと、天国で見守っていてください」
「お義姉さん……どうかお願いします」
僕と由佳里は、美祈さんのお墓に向かって、深々と頭を下げた。
ふわあっ……。
ふと、そこへ一陣の風が吹いた気がした。
(瑞穂さん、由佳里のこと、よろしくお願いします。由佳里、瑞穂さんとお幸せにね)
そして、そんな声が聞こえた気がした。
「美祈……さん?」
「お義姉さん……」
僕と由佳里は、色々な思いを胸に、しばらく空を見つめていた。
「瑞穂さん……」
「由佳里、行こうか」
「はい!」
僕と由佳里は、もう1度お墓に参って墓地を後にした。見ると、由佳里の顔は
何かふっきれたような清々しさに満ちていた。
「そうか、それでは由佳里ちゃんのご家族にも認めてもらえたのか」
「ええ。みんないい人たちばかりで、僕を見て由佳里のお義姉さんの美祈さんが帰ってきたみたいだって
言われちゃいました」
僕たちは鏑木邸に帰ってきて、みんなに由佳里の家族とのことを話して聞かせた。
「へえ、これがその美祈さんの写真ですか。あまり瑞穂さんとは似ていませんねえ」
美祈さんの写真を見た義母さまがそうつっこんでくる。
「ええ。でも雰囲気とか気配とかがそっくりなんだそうです」
「でも、ご家族の方にも認めていただけてよかったですね、お姉さまも由佳里ちゃんも」
「ありがとう、奏ちゃん」
奏ちゃん、相変わらず僕をお姉さまと呼ぶのは変わらないようなので、僕はもうあきらめている。
「ありがとう、それで、これ、おみやげだよ」
そう言って由佳里は帰郷のお土産のもみじ饅頭をはじめ色々なお菓子をテーブルに並べた。
「それでは、今日はみんなでおみやげでティータイムといこうか」
「はい!」
「すごくおいしいです! 由佳里ちゃん、こんなおいしいお土産を売っているところ、良くご存知でしたね」
義母さまがお土産を食べながら感嘆のため息を漏らす。
「本当です! 以前食べたのよりずっとおいしいです!」
「本当、奏ちゃん? よかった……あ、その生クリームと苺クリームをミックスしてあるの、全部奏ちゃんのだから」
「僕のは……うん。甘さ控えめですごくおいしい」
「瑞穂さんのは、和風のとビターチョコ味のですね」
「でも由佳里ちゃん、よくここまで見事にみんなの好みに合ったのを見つけられたな」
父さまがそう言う。そういえば、あまりにもできすぎてるような……。
それに、お土産が紙の箱じゃなくて、プラスチックの箱に入っているのも変だし……。
「ねえ奏ちゃん、奏ちゃんのもみじ饅頭、1つもらっていいかな?」
「いいですよ。はい」
奏ちゃんはそう言って僕にもみじ饅頭を渡してくれた。僕は試しにと一口食べてみる。
「△§*↑@◆♯〆☆‡!!」
口に入れたときの僕の叫びは、声にならなかった。とてつもなく甘い。甘すぎる。
「あっ! ダメだよ瑞穂さん。それは奏ちゃん用なんだから」
由佳里がそう言ってきた。もうここまで来ると偶然じゃない。
「そういえば由佳里、帰りにお土産コーナーを物色するようなこと、まったくしてなかったと思うけど……」
「え……?」
それを聞いたみんなの動きが止まった。
「お姉さま、それ、どういうことですか?」
「由佳里、ひょっとしてこのお土産、店で買ったんじゃなくて、全部由佳里が作ったんじゃ……」
「ええーっ!?」
「あ、あはは……バレちゃいました?」
それを聞いた由佳里は決まり悪そうに笑っていた。
「へえ、すごいな。これだけのお菓子が作れるなんて」
「本当。これならどこに行っても」
「あはは、まあ私の趣味ですから……」
みんなから褒め言葉の嵐を受け取って、由佳里はしどろもどろだ。
そして、その夜は遅くまでその時の話や、僕と由佳里の結婚の話で盛り上がった。
そして翌日、翔耀大学では……。
「まあ、これ全部、由佳里さんの手作りですの?」
「は、はい……」
「しかし、瑞穂っちや聖央組はともかく、うちらの好みなんてよお知っとったな」
「そ、それは、瑞穂さんから聞いていましたから……」
学食でみんなで由佳里お手製のお土産を食べながら、帰郷の話で盛り上がっていた。
「しかし、由佳里ちゃんが瑞穂さんのぬいぐるみを作って、それで遊んでいらっしゃったなんて……」
「し、紫苑さま、変な言い方しないでください!」
「………?」
由佳里が真っ赤になってそう反論すると、みんなは意味がわからずきょとんとしている。
由佳里って、よっぽどまりやにいじられてた時のことがトラウマになってるんだな……。
「由佳里、紫苑さんはそんな意味で言ったんじゃないと思うよ」
僕はそっと小声で由佳里に耳打ちした。
「あ、な、なんでもないです……こっちの話ですから……」
「そうですか、それはともかく、私も瑞穂さんと奏ちゃんのぬいぐるみを作っていただこうかしら?」
紫苑さんはあっさりと聞き流してくれたようだ。
「紫苑さんが作っていただくのなら、私も同じのをお願いいたしますわ」
「わ、わかりました。ちょっと恥ずかしいですけど、頑張ってみます……」
それを聞いた紫苑さんと貴子さんは嬉しそうだ。
そういえばダンスのことはまだ未解決だけど、由佳里もそのうち自信も出てくるだろうし、もう少し気長に待ってみよう。
仲間たちの楽しそうな笑顔に囲まれながら、僕はそう思った。
To be continued……
とりあえずここで一区切りです。今回は由佳里ちゃんの家族に挨拶に行かせてみました。
由佳里ちゃんのお兄さんとお義姉さんの名前の由来、わかる人にはわかると思います。
このシリーズ、内容をやるきばこ2のAPPENDIXに合わせているので、えっちシーンは
最初と最後に、ということにしたいので、今回はパスしました。
オフィシャルではこれ以上おとボクのAPPENDIXが発表されることはなさそうですし、
このシリーズだけはぜひとも完成させたいと思っています。
まあ、正直待ってくださっている人がいるかどうかも怪しいですが(汗)
では、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。
捕手
発作的に思いついた一発ネタです。
「狼少女」
昔あるところに、瑞穂という羊飼いの女の子がいました。
瑞穂はいつも自分のことを男だと言い張っていますが、だれも信じません。
それどころが皆、瑞穂のことをほら吹き呼ばわりします。
「そんな……僕男なのに……」
今日も膝をついて落ち込んでいます。
ある日、瑞穂が飼っている羊を襲いに狼がやってきました。
瑞穂は村人たちに助けを求めましたが、普段うそばかりついているためだれも本気にしてくれません。
「本当です! 本当に狼が来たんです! ついでに僕は男です!」
どんなに必死で頼んでも、だれ一人助けにきてくれず、
とうとう羊はみんな食べられてしまいました。
「うう……僕嘘なんかついてないのに……」
普段嘘ばかりついていると、肝心なときに信じてもらえないものですね。
おしまい
299 :
名無しさん@初回限定:2008/06/17(火) 04:46:45 ID:STGLbmbC0
「時には流れに身をまかすのも必要だ」
と言う尊い教えですね
>>298 アイデアは面白かったのに最後のせいでボロボロ。
あなた、元の作品知ってますか?
『普段嘘ばかりついてると』とありますが、特に説明がないので瑞穂は男ではないのですか?
普通に考えると嘘など一言も言ってないと思うのですが。
もう少し考えて納得できるオチを書いた方がいいですよ。
>>300 最初に書いたように突発的に思いついたネタですのであまりつっこまでください……
元作品はもちろん知っています
まあ、確かに最後の一文は少しおかしかったかもしれません
嘘の後に?でも入れたらいいですか
普段嘘?ばかりついていると、肝心なときに信じてもらえないものですね。
私の場合、落ちをまとめきれず、お蔵入りにすることが多いので
思いついてすぐ勢いで投稿したまでですよ
お目汚し失礼しました
302 :
300:2008/06/18(水) 13:28:53 ID:hsXoVnLY0
『元作品はもちろん知ってます』と言うのに『女の子がいました』と書いてます。
ネタフリの為に書く必要がある時等もありますが、どう読んでも理解できません。
なのにそれ以降は男である前提で書かれています。
綺麗な男の子、女の子にしか見えない男の子、などではなく『女の子』と書いた理由は何ですか?
上記のような事を思ったので『元の作品知ってますか?』と書いたので念のため。
文章だけでは本当に女の子なのに男と嘘をついているという可能性も考えてましたが301でそれは違うようです。
オチもどうして『嘘』という言葉にこだわるのでしょうか?
瑞穂自身は真実しか言ってないのに『嘘』という言葉を使う理由が全く説明不足です。
むしろ、298や301より299のオチの方が100倍面白いです。
∩___∩ |
| ノ\ ヽ |
/ ●゛ ● | |
| ∪ ( _●_) ミ j
彡、 |∪| | J
/ ∩ノ ⊃ ヽ
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
>>302 せっかく落としてくれたSSに、どうしてそんなに噛み付くんだ?
このスレのモットーは優雅と礼節だろう。
理解できないならスルー汁。
そうすれば皆幸せになれる。
指導やアドバイスであれば何も言わんが、君の言動は叩きにしか見えん。
君の言葉を借りれば、君のレスより298のほうが100倍マシだ。
なんか変な奴がいるが、一発ネタとして普通に読める出来だから
気にせず今後も書いとくれ
>>300にはユーモアを理解するセンスが全くない事だけは分かったw
307 :
みどりん:2008/06/18(水) 22:32:55 ID:qsskOm4p0
マクベス
作:シェ・クスピア
訳:みどりん
これは、まだ瑞穂が開成にいる頃の話です。
瑞穂が夜遅く家に帰ろうとすると、前方に3名の女性が立っていました。女性と言っても年は瑞穂と同じくらいでしょうか?どこかの高校の制服らしいものを着ています。
三つ子なのか全員同じ顔をしています。髪は黒く、まっすぐで長いです。顔もなかなか美人ですが、それ以上に彼女らには得体の知れない怪しい雰囲気が漂っています。あまりお近づきになりたくない感じの人種です。
瑞穂も怪しい雰囲気を感じ取り、彼女らの前を足早に通り過ぎようとしました。すると、中の一人が声をかけます。
「お待ちなさい、瑞穂さん」
「え?!」
いきなり自分の名前を呼ばれたので驚いて、その場で立ち止まりました。
「あなたに予言を授けましょう」
「いえ、結構です……」
極めて全うな答えです。そして、そこから去っていこうとするのですが、別の二人が瑞穂の前方を塞ぎ、そして一人がこういいます。
「まあ、お待ちなさい。すぐ終わるから……」
姿かたちが一緒なら、声も一緒です。
「………少しだけですよ、もう夜も遅いのだから」
お人よしの瑞穂は、不満をいいつつも少し彼女らに付き合うことにしました。そんな瑞穂に一人目が言います。
「瑞穂さん、あなたは女子高に入ることになるでしょう」
二人目も続けていいます。
「瑞穂さん、あなたは最高の女性になるでしょう」
そして、三人目も続けていいます。
type S
「瑞穂さん、あなたは入院中の将来の伴侶を病院で犯すことでしょう」
type T
「瑞穂さん、あなたは将来の伴侶と共に警察に呼ばれることでしょう」
そして、3人揃ってこういいます。
「「「では、ごきげんよう、瑞穂さん。お待ちしておりますわ」」」
それから、3人揃ってにこやかに去っていきました。
308 :
みどりん:2008/06/18(水) 22:33:58 ID:qsskOm4p0
残されたのは呆然、というより憮然とした瑞穂です。
「………何あれ?新たな嫌がらせ?いくら僕が女っぽいからって、女子高に入るわけないじゃない!!」
瑞穂は怒りながら帰っていきました。
家についた瑞穂を楓が出迎えます。
「ただいま、楓さん」
「お帰りなさいませ、瑞穂様。あの、弁護士の久石様が明日お会いしたいとの事です」
「ふ〜ん、久石さんが?何だろう………」
瑞穂が最初の予言が的中することを知るのはそれからほんの少し後のことでした。そして、怪しい女性が小鳥遊圭という生徒に酷似していると知るのは、更に少し後のことでした。
おしまい
マクベス おまけT
「あの、圭さん」
「何かしら?瑞穂さん」
「ぼ……わたしが恵泉に来る前に話をしたことがあったと思うのですけど?」
「あら、それは古典的なナンパかしら?」
「ち、違います!!」
うまく圭にはぐらかされて、真相を聞くことが出来ませんでした。
マクベス おまけU
「美智子さん……」
「はい、何でしょうか?瑞穂さん」
「あの、圭さんって三つ子ですか?」
「……さあ………そういう話は聞いたことがありませんが。どうしてそのような質問を……?」
「いえ、転校前に圭さんに似た、というより圭さんそのものの姿をした3人組を見かけたもので……」
「圭さんったら、分身の術は駄目といっておいたのに…………」
「え?何か仰いました?」
「いえ、何でもありませんわ。きっと、よく似た3人がたまたまいただけではないでしょうか?」
「そうですか……どうもお手数おかけしました」
それにしても似ていたなあ、『お待ちしておりますわ』って言ってたけど恵泉の生徒かなぁ、絶対圭さんだよね、と思う瑞穂でありました。
おしまい
309 :
みどりん:2008/06/18(水) 22:45:28 ID:qsskOm4p0
ちなみに、typeM、typeK、typeY、typeIの場合はどう予言しますか?
おひさしぶりです。
いま、大正時代について考えているところです。
話が作りにくいです・・・orz
typeM(まりや)、妄想ですが・・・
魔女「あなたは将来の伴侶とともにファッション界に躍り出るでしょう」
瑞穂「嫌な予感しかしないのですが・・・」
typeK(奏)は
魔女「早くさがしだして結婚しないと児童ポルノ禁止法案が・・・急いで!」
瑞穂「せ、せめてヒントを!」
typeYだと
「あなたは将来の伴侶とともに、社交ダンス界にその名を轟かせ……ないでしょう」
「?」
こんな感じでしょうか?
MとKを美智子&圭さんだと思った私はもう終わってるかもしれません
>>311-312 解答ありがとうございます。
typeKはエイプリルフールネタでしょうか?
ちなみに、シンデレラへのステップ、次は社交ダンスの問題を書く予定です。
ただいま誘拐事件ものを執筆中の東の扉でした。
314 :
みどりん:2008/06/21(土) 15:45:42 ID:QUHJMTeK0
え〜っと、既にいくつか餡[BS]案でているようですが、とりあえずみどりん案も載せておきます
当初いろいろ考えたのですが、いいのが思いつかなかったのでSTだけ経緯がありますので、出来は悪いですが……
type I
「瑞穂さん、あなたは将来の伴侶に取り憑かれることでしょう」
type K
「瑞穂さん、あなたは将来の伴侶に砂糖漬けにされることでしょう」
type M
「瑞穂さん、将来の伴侶に6年間会えなくなることでしょう」
type Y
「瑞穂さん、あなたは将来の伴侶を世界に羽ばたかせてあげることでしょう」
typeMの出来が特に気に入らないのですが、いいのが思いつかなかったので、各自いろいろ作ってみてください。
掲示板にL鍋さんの作品キテター( ゚∀゚)o彡°続編予告もキテター( ゚∀゚)o彡°
瑞穂ちゃんモテ話クル━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
やっぱ、L鍋さんのバカ話はおもろいわ。
>>316 続編キター!!!
今日は良い夢見れそうだ。
東の扉です。
>>298を見て、私も同じネタを考えてみました。
よろしければお読みください。
〜狼少女 東の扉版〜
昔あるところに、瑞穂という誰が見ても女性にしか見えない羊飼いの男の子がいました。
彼は奏、由佳里、貴子という3人の羊と、一子という1人の霊羊とともに幸せに暮らしていました。
ところで、瑞穂はいつも自分のことを男だと言い張っていますが、誰も信じません。
それどころが皆、瑞穂のことをほら吹き呼ばわりします。
「そんな……僕は本当に男なのに……」
今日も膝をついて落ち込んでいます。
ある日、瑞穂が飼っている羊のところへまりや狼と紫苑狼がやってきました。
瑞穂は村人たちに助けを求めましたが、普段うそばかりついているため誰も本気にしてくれません。
「本当です! 本当に狼が来たんです! ついでに僕は男です!」
どんなに必死で頼んでも、誰一人助けに来てくれません。その間に狼たちは……。
「奏ちゃん、貴子さん、もっと瑞穂さんに愛していただきたくないですか?」
「か、奏、もっとお姉さまに愛していただきたいのですよ!」
「おおお、お姉さまに今まで以上に……も、もちろんですわ!」
「ねえ由佳里、瑞穂ちゃんとえっちしたくない?」
「そ、それは……」
「由佳里、ためらうフリしてるけどエロい眼でよだれ流してるじゃない。決定ね」
「あうう……」
「一子ちゃんは?」
「もちろん、お姉さまのお嫁さんになりたいと思っていましたから、結ばれるなら結ばれたいです!」
こうして2人の狼たちは、瑞穂の羊たちを狼に変えてしまいました。
さて、誰にも信じてもらえなかった瑞穂が、自分1人だけでも羊たちを守ろうと大急ぎで帰ってみると……。
「よかった、無事だ……」
そう思って安心した瑞穂でしたが、羊たちの様子が変です。
「お姉さま、私はずっとお姉さまにえっちしてほしくてたまりませんでした……今日こそ思いっきり私とえっちしてもらいますから!」
「ゆ、由佳里ちゃん……?」
「お姉さま、一子をお姉さまのお嫁さんにしてください! それがダメなら、せめてお姉さまと結ばれさせてください!」
「一子ちゃん……!」
「か、奏、もっとお姉さまに愛されたいのですよ」
「わ、私も、お姉さまに愛の証をいただきたいです!」
「奏ちゃんと貴子さんまで……」
「やっほー瑞穂ちゃん。その娘たちの相手した後は、あたしたちもお願いね」
「私も、瑞穂さんに精一杯愛していただきますから、覚悟しておいてくださいね」
「わーっ!!」
こうして瑞穂は、自分の飼っていた狼と化した羊たちと、本物の狼たちに食べられて、骨の髄までしゃぶりつくされてしまいましたとさ。
Fin
以上です。お目汚し失礼しました。
管理人さんへ
シンデレラのステップは、プロローグ→Part1→Part2と続きます。
番外編はプロローグから最後までのどこか、ということですので。
このシリーズは「〜からの続編」表示がされていなかったので、書かせていただきました。
あと、第15話のリンクが全てトップに飛んでしまうようですので、
お手数ですが、次回修正をお願いします。
1年以上前に書いて未完でほおっておいたものですが、書き足して投下します。
前作を読んでもらってからのほうが分かり易い内容です。
なんじゃこりゃ、と云う内容で恥ずかしいのですが。
『家庭科ハーレム2』
家庭科の洋裁の時間。
被服室に移動して、各自ミシンと裁縫道具を使い、数回の授業時間内に上着を一着仕立てる。
僕はジャケットを作ることにした。
僕の机の近くにいるのは、紫苑さん、圭さん、美智子さんのいつものメンバー。
紫苑さんたちはコートを作るらしい。
僕が裁縫が苦手なのを知っている紫苑さんたちは難しいところになると手伝ってくれる。
「瑞穂さんは並縫いとミシンがけをしてください。すそ止めのまつり縫いは私がしますから」
紫苑さん達が手伝ってくれるので僕の出番があんまりない。
圭さんも演劇部の衣装縫いなどで慣れているのか、てきぱきと作業を進めている。
いいのかな、僕の作品なのに。
ちなみに先生は隣の教員室で、テストの採点をしているので用があるときは呼びに来るように云っている。
ビクッ!
なんか嫌な予感がして体が震えた。
「どうしたんですか?瑞穂さん」
紫苑さんが不思議そうに訊いてくる。
「いや、この前の調理実習を思い出して…」
前回の家庭科は大変な騒ぎになってしまい、とても授業どころじゃなかった。
「またあの時みたいな事…ありっこないですよね。あは、はは」
「そうですわね。裁縫に味見なんてありませんし。うふふふ」
紫苑さんはにこやかに笑いながら、僕の作品を手にとってチクチクと針を動かし続けている。
「すいません、紫苑さん、美智子さん、圭さん。僕の作品なのに」
僕だけ何もしていない手持ち無沙汰の状態。
「良いんですよ。私たちはどちらかと云うと苦手ではありませんから。それより瑞穂さんの作品はきっと
皆さんの注目を浴びるでしょうから、最低限のモノを仕上げませんと」
「お姉さま至上主義の子たちの夢が破れるところも、それはそれで面白そうだけど」
美智子さんと圭さんが面白そうに話す。僕も引きつった笑顔を返した。
「あら、瑞穂さん。手持ち無沙汰ですか?」
紫苑さんが尋ねてきた。
「はい。僕の作品なんで手伝うって云うとおかしいですけど何か出来ることはありませんか」
「そうですか。ではこちらの部分の止め縫いをお願いします」
そう云って背中の縫い合わせに当たる部分を指差した。
後でミシンをかける部分の仮縫いだ。
それでは…と。
裁縫が苦手な僕でも、コレくらいならできるよ。
木綿針と糸を用意して、針に糸を通す。
あれっ、なかなか通らないな。糸が太いのかな。
糸を細いのに替えようとしたら、紫苑さんが笑いながら云う。
「瑞穂さん。糸はそれで良いですよ。糸の先を湿らせてから針に通せば良いんです」
「あっ、そうでしたか」
そう云えば、そんなシーンをどっかで見たことがあるような気がする。
糸の先を口に咥えて軽く湿らせて針穴に通す……あれ?通らない。
糸の先が針に当たってグニャリと広がってしまう。
「何でも出来る瑞穂さんも針仕事は全くなんですね。ちょっと貸してください」
見かねたのか、笑いながら紫苑さんが僕の針と糸を手に取った。
「こうやって…」
糸の先を軽く咥えて湿らしてから、指で一回、軽く糸の先を扱いて尖らせた。
そして針穴に糸の先を当てると、簡単に糸が通った。
「ほら、簡単…あら、どうしたんですか?」
「えっ、なんでもありません」
間接キスに照れちゃったなんて、恥ずかしくていえない。
ちょっと顔が赤らんじゃったかな。
照れ隠しにちょっと、顔をそむけて周りに目をやってみた。
あれ、みんな手を止めてこっちをみてるよ。どうしたんだろ?
「お姉さま」
「わわっ!」
急に後から声をかけられて驚いた。
「何でしょうか?」
振り向くと後ろの机の娘が針と糸を持って立っていた。
「あ、あの…針に糸を通していただきたいのですが…」
「えっ?でも…」
「私、不器用なものでなかなか通すことが出来ないんです。お姉さまなら何でもお出来になりますから」
そう云いながら潤んだ瞳で針と糸を差し出してくる。
僕も糸を通すのが下手なのは今、実証されたばかりなんだけど…。でも、そんな瞳でお願いされちゃ断れないよね。
「判ったわ。それじゃあ、ちょっと貸して頂戴」
「はい。有難うございます」
凄く嬉しそうな顔で、僕に針と糸を渡した。
糸の先を濡らしてから、ちょっと扱いて尖らせるんだったっけ…。
糸を口に咥えて、尖らせてから針穴に糸先を持っていく。
…スルッ
簡単に糸が通った。
「なるほど。コツが判ってきた。ハイ、どうぞ」
「有難うございました。お姉さま」
針と糸を受け取ると直ぐに、恥ずかしそうにその娘は自分の机に帰っていった。
そして、その糸の先を持って……。
「お姉さま!!」
「は、はいっ!」
またもいきなり声をかけられ、慌てて振り返ると、今度は横の机の娘が針と糸を持って立っていた。
「針に糸を通していただきたいのですが」
「えっ、また!?針に糸を通すだけですか?」
「はい」
娘はそうですと云わんばかりに強く頷くと瑞穂の顔をじっと見つめた。
あれっ?この女の子、前の時も…。そう云えばこのシチュエーションって…。
ふと先ほどの娘の方を見てみると、なにやら揉めている様子。
先ほどの糸を振りかざして、近くの机の女の子たちと奪い合ってるようだ。
何やってるんだろう?
「……わかりました。それを貸してください」
手渡された針を見る。
……細い…。針の穴と糸の太さがほぼ同じくらいだ。
「あ、あの…この糸にこの針は細すぎないかしら。これ絹針でしょ、木綿針はないのかしら」
「ありますが」
「では、木綿針にしましょう。これは針が細いですから厚手の生地には不向きではないでしょうか」
「判りました」
…良かった。いくら何でも糸と同じ太さじゃ通らないよ。それ位、僕にもわかる。
「ではコレを…」
絹針の替わりに太めの木綿針を手渡される。
どれどれ…うっ。・・・・・・針穴が物凄く小さいよ!?…木綿針なのにさっきの絹針と同じくらいの大きさしかないよ!?
「なな、何かしら?この針穴…」
「申し訳ありません、お姉さま。先ほど木綿針をうっかり踏んづけてしまいまして穴が狭まってしまったみたいなのです」
踏んづけて?針穴が狭まる?そんな事ありえるの?
よく見ると確かに針穴の部分が不自然に変形している。
だけど針を変形させるほど強く踏みつけるって、一体どうやれば…。
なんとなく半目になりながら針を見つめていると、
「さっ、お姉さま」
早くとばかりに急かしてくる。
「他の針はないのかしら?」
「残念ですが本日は、その針以外全て紛失してしまいました」
針を全て紛失って…危ないこと云ってるなあ…
「…仕方ありませんね。それじゃあ」
糸先を口に咥えて湿らせて針穴に当てる。
・・・ぷに
やっぱり糸先が広がって穴を通らない。
ならば・・・
糸先を鋏で斜めに切ってから口で湿らせる。さらに手で扱いて尖らせる。
これなら・・・
糸先が何とか針穴のふちに引っかかりそうだ。
「よっ…とっ…んっと…」
必死になって針穴と格闘していて、ふと気がつくと目の前で僕の手元を凝視している娘がひとり。
そして周りを見回すと教室の全員が、いや圭さん以外の人全員が固唾を呑んで僕を見ていた。
唯一、圭さんだけが鼻歌交じりにミシンをかけている。
紫苑さんと美智子さんはちょっと離れたところから、不思議な笑みを浮かべてこちらを見ている。
「お姉さま」
「は、ハイッ!」
「針穴のほうも湿らすと滑りが良くなるそうですよ」
「えっ、本当?」
・・・そんなの聞いたことない。でも僕が知らないだけなのかも。
「じゃ、こっちも湿らすのね」
試してみることにする。
針を反対に持って針穴のほうを軽く口に咥えてみる。
なんか一気に教室の温度が上がったような気がする。
ガガガガガッッ
いつの間にか皆の話し声も聞こえず、只、圭さんがミシンをかける音と僕がチュパチュパと針を湿らす音だけが
教室に響いている。
な、なんだろう?鳥肌がたってるよ。急に口の中が乾いてきたような…。
「湿らせましたね」
「えっ!?、ええ」
「では、その針をお貸しください」
女の子は針と糸を受け取ると、何処から出したのか、お守り袋を取り出すと大切そうに針と糸をその中にしまいこんだ。
「あれ?お守り袋に入れるのですか?」
「ええ。私の宝物ですから」
女の子はニッコリ会釈すると、そのまま自分の机に戻っていった。
ア、アレ?僕、糸を針に通してたんだよね?まだ、糸が通ってなかったんだけど…。
ガンガンッ!
ドスッドスッ!!
急に周りが騒がしくなり始めた。
なんだかみんな、針を手にとって何処から持ってきたのか金槌で叩いたり、足で踏んづけたりしている。
「あ、あれ、これ前も見たような…。何してるのかな?みんな」
「家庭科ですわね」
「ええ、またもや家庭科ですわ」
紫苑さんと美智子さんが生暖かい目で僕をみつめていた。
ううっ…ナニ?また?なんでいつもこうなるの?
ガックリと膝をつく。
「う…うっ……」
「あらあら、瑞穂さん。落ち込んでしまいましたわ」
その時、僕の肩にポンと優しく手が置かれた。
振り返ると、圭さんが穏やかな顔で僕を見ていた。
「……け、圭さん」
「瑞穂さん、アナタも懲りない人ね。何度同じことを繰り返せば気が済むのかしら」
「・・・うわあぁぁん!」
「圭さん、全くその通りですがそんなにストレートに云ってはダメですよ」
美智子さん、それフォローになってません。
「またもや神聖な授業が一転して嫉妬と欲望の坩堝。これだけモテれば本望でしょ、魔王・瑞穂っち」
「本望なはずありませんでしょう!」
「ふふん。興奮しない、興奮しない。モテモテ瑞穂さん」
「ホントにモテモテですわね」
「ううぅ…」
「全く、お嬢様学校とは思えないわね」
見渡すと針と糸をもって僕をじぃぃぃっとみつめている女の子たち。
ううっ、怖いよぅ。
「圭さん…」
僕は圭さんを見る。
「何かしら、その期待するような眼差しは」
「その…何とかならないでしょうか?この状況」
「あたしとしては結構面白いんだけど、この状況。でも先生も、もうすぐ帰ってくるし何とかしましょうか」
圭さんは僕をミシンの前に連れてきた。
「じゃ、前と同じ方法にしましょうか。ちょっと不衛生だけど我慢しなさい」
そう云ってボビンケースを開ける。
「ほら、コレを咥えて」
糸のついた新品のボビンを取り出した。
「えっ、また?」
「文句云わない。想像ついてると思うけど皆が期待してるのはコレだから。咥えたわね。じゃ、返して」
ポロッ
圭さんの手に返す。
横をみると、紫苑さんと美智子さんが興味深げに事の成り行きを見守っている。
いや、ふたりだけじゃなく教室のみんなが見守っている。
「ついでにもういっちょ。瑞穂っち、舌だして」
んべっと僕が舌を出すと、圭さんがそこにミシン針の針穴を当てた。
そしてそのミシン針とボビンをミシンに組み込む。
「エルダーミシン一号機の完成ね」
「・・・エルダーミシン?」
ヽ
, ´/ `´ ヽ
l !ノノリ))ソ
|!(l|TヮTノl| 「一号機ってナンデスカ」
ノ, /i _i ノ_i リ
( とんU )U ノ
早速、ミシン使用希望者が殺到する。
「一台じゃ足りないから、三号機まで作ってもらうわよ、瑞穂っち」
「なるほど」
紫苑さんが感心したように頷く。
「さすが圭さんですね」
しばらく経ってから先生が教員室から帰ってきて、3台のミシンに群がっている生徒たちを見て驚いた。
「高根さん、コレはどうしたんですか?」
「皆さん、エルダーミシンを使いたいんだそうです」
「エルダーミシン?そんなメーカーあったかしら…」
クラスメート全員の作品が仕上がるまで、エルダーミシンはフル稼働を続け、ボビンの糸が無くなるたびに半泣きの瑞穂の口から
ボビンが吐き出され続けた。
「それもこれも鈍感な瑞穂っちの自業自得ってことね」
「訳わかんない…、何でこんなことになっちゃうのか」
さて、肝心の僕の作品はというと…、
紫苑さんたちに手伝ってもらったお陰で、なんとか見れる形のジャケットが仕上がった。
だけど、このジャケット、先生に提出して採点後返却されたその日のうちに誰かに持っていかれてしまった。
「大人気ですわね。うふふ」
紫苑さんが面白そうに云う。
「あんなぶきっちょなジャケットでも欲しがる人がいてくれるんなら、私は逆に恐縮するくらいなんですが」
「………」
「何ですか?紫苑さん。その何か云いたげな目は」
「瑞穂さん、何度も云いますが鈍感すぎるのもどうかと。また、同じことをしそうですわね」
「・・・・・・・・・」
Fin
お粗末さまでした。
うお!L鍋さん来てター!
最近は掲示板の方にも投下してくれてたし良いペースですね
また鈍感な瑞穂ちゃんがやらかすのを期待してます
GJでした!!
うおおおおおおおおL鍋さん来てた━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
またテキストファイルに移してW-ZERO3に入れて青空子猫で通勤途中のお供にするんだぜー
糸通し使えよ!というツッコミを誰からも入れてもらえない瑞穂ちゃんなむ。
授業中にお姉さまが「僕」とか言っちゃいかんだろ……というツッコミは入れておく
>>338のW-ZERO3に何が入ってるのか見てみたい
再びL鍋さんの話の後日談を作ってみました。2つ目のIfですが……。
前のと比べて反応はどうかとかいろいろ不安ですが、投下させていただきます。
2月19日。この日由佳里は、激しく落ち込んでいた。
当然だろう。昨日の誕生日は、紫苑を始め、周りの生徒たちに幸せを根こそぎ持っていかれ、
自分は誕生日を肝心の瑞穂に祝ってもらえず、最終的に残ったプレゼントがまりやのセクハラだけだったんだから。
〜最終兵器瑞穂 勝手に続編2〜
そして、夕食の時間。
「ねえ瑞穂ちゃん、ひな祭りのパーティーなんだけど……」
「ああごめん、その日は、紫苑さんと一緒に過ごすことになってるから……」
「紫苑さまと?」
「うん。昨日は、紫苑さんにずいぶん迷惑かけたからね。お詫びも含めて」
「奏も一緒に行きたいのですよ。お姉さまと一緒にパーティーしたいのですよ」
「いいんじゃないかしら? 奏ちゃんなら、紫苑さんも大歓迎のはずよ?」
そんな会話が流れていた。それを聞いていた由佳里の体が震えている。
「まあいいか。あたしも乱入すればいいわけだし」
「もう、まりや、あんまり迷惑かけるようなことはしないでよ。じゃあ、私は勉強があるから、これで失礼するわね」
食事を終えた後団らんをしていた瑞穂は、そう言って席を立った。
「……なんですかみんなして」
夕食の間、ずっと黙っていた由佳里が口を開いた。
「紫苑さまに迷惑をかけた? 私のほうがずっと迷惑してるんですけど?」
由佳里の声から、次第に怒りがにじみ出てきた。
「由佳里ちゃん……?」
「奏ちゃんもまりやお姉さまもひどいですよ! 私の誕生日メチャクチャにしといて!」
「はややっ、奏、そんなつもりじゃなかったのですよ!」
「そうよ。あれは不幸な偶然が重なって起きた事故なんだから、しょうがないでしょ?」
まりやと奏はそう言って由佳里をたしなめようとする。
「瑞穂ちゃんは間違ってお酒飲んじゃっただけだし、奏ちゃんはお茶だと思って持ってっただけだし、
あたしはそんなことになるなんて夢にも思わなかったし、誰も悪くないの。わかった?」
「ええ、よーっくわかりましたよ」
由佳里は、さらに低い声で言うと、部屋に帰っていった。
翌日の朝食の時間、由佳里は口も聞かずに、1人黙々と朝食を食べていた。
「ねえ由佳里、そこのピクルス取ってくれる?」
まりやが言う。しかし由佳里は、返事を返さず食べ続ける。
「由佳里、そこのピクルス取ってって言ってんの!」
さっきより大きな声で言うまりやに、由佳里はまだ無反応。
ガシッ!
「由佳里、さっきからピクルス取ってって言ってんのに、聞こえないの!? 返事ぐらいしなさいよ!!」
まりやは由佳里のひざを蹴飛ばして言う。
「………」
由佳里がゆらーっと立ち上がったかと思うと、奏をつきとばしてまりやの耳を両手で掴み、そこに顔を近づけると、
「よーっく聞こえてますよ!!」
と大声で言った。
「………!!」
まりやは耳元で大声で叫ばれたせいで、金縛りにあって動けなかった。耳では由佳里の声がキンキン響いている。
「いたたたた、由佳里ちゃんひどいのですよ……」
一方、つきとばされた奏は涙目で由佳里を見ている。しかし、由佳里はそんな奏を無視して自分の席に座った。
「ちょっと由佳里ちゃん、まりやに何を怒ってるのか知らないけど、奏ちゃんには関係ないでしょ!?
ちゃんと奏ちゃんに謝りなさい!」
それを見た瑞穂は、むっとして由佳里にそう抗議する。
「……なんで謝ることもしないような人に、私だけ謝らなければいけないんですか?」
「えっ……!?」
「……ていうか、お姉さまこそ、ご自分のことを棚にあげて私のこと責めるなんて盗っ人猛々しいです!」
由佳里の予想外の反撃に、瑞穂は固まった。どうやら由佳里はまりやだけでなく、寮生全員に怒っているらしい。
「……ねえ、私、由佳里ちゃんに何かしたの?」
「それはご自分の胸に聞いてみるんですね!」
そう言われて瑞穂は考えたものの、さっぱり心当たりはない。
それはそうだろう。由佳里はまりやが瑞穂にお酒で酔っ払ったことを話しているのを見たとき、
当然自分の誕生日のことも言っていると思っていたから。
しかし瑞穂は、「奏ちゃんがあたしのお酒をお茶と間違えて持っていって、それを瑞穂ちゃんが飲んでしまったのよ」
としか聞いていなかった。だから、そのことは由佳里とは無関係だと思い込んでいるのだ。
そして、夕食が終わった後……。
「ねえ由佳里ちゃん、今日一日考えてみたけど、全然わからないの。
お願いだから由佳里ちゃんがなんで怒っているのか教えてくれない?」
瑞穂は由佳里の部屋に行き、ドアをノックしてそう聞いてみた。
「まりやお姉さまから聞いてるはずです!」
「……それらしいことは何も聞いてないけど?」
由佳里がドア越しに言うと、瑞穂はしばらく考えてから言った。
「人の誕生日、祝ってもくれなかったくせに、まだとぼける気ですか!」
由佳里は爆発したのか、声を大きくして怒鳴った。
「ちょ、ちょっと待って! 由佳里ちゃんの誕生日って、いったいいつのこと?」
「お姉さまがお酒飲んでぐーすか寝てた日です!」
由佳里に言われて瑞穂ははっとなった。ここ最近でお酒を飲んで寝てた日、と言ったら、
紫苑に事態収拾を手伝ってもらった日以外に考えられない。
それから、由佳里は誕生日に受けた理不尽な仕打ちを、全て瑞穂に話した。それに対して瑞穂は、かける言葉もない。
(誕生日に幸せを周りの人に根こそぎ奪われて、僕も誰からも誕生日をまともに祝ってももらえず、
残されたものがまりやのセクハラだけ。しかも誰からも一言の謝罪もなし……か。そりゃ誰だって怒るよね)
それに、紫苑に迷惑をかけたお詫びにひな祭りは紫苑と過ごす、と由佳里の前で言ってしまった。
由佳里にとっては、それはふざけたあてつけにしか聞こえなかっただろう。
「本当にごめんね、由佳里ちゃん……お詫びにしばらく、由佳里ちゃんの言うことなんでも聞いてあげるから、
機嫌直して。お願い」
瑞穂は心底申し訳なさそうに言った。
「……本当に何も知らなかったみたいですね」
由佳里が鍵を開けて部屋から出てきた。
「わかりました。じゃあ誕生日プレゼントの代わりに、しばらくお姉さまにわがまま言ってもいいですか?」
「もちろんよ、由佳里ちゃん」
瑞穂は色々な想いを込め、由佳里を抱きしめながら言う。
「何がほしいの? 指輪でもネックレスでも、なんでも買ってあげるわ」
「いえ、そうじゃないです……誕生日から3日間、ずっとイヤな想いをしてきましたから、
その3日分、ずっと一緒にいてほしいんです……」
「そんなことでいいの?」
「はい……その間、ずっと私だけのお姉さまでいてくだされば……
それが私にとって、何よりの誕生プレゼントになりますから……」
「わかったわ。じゃあ、可能な限り、由佳里ちゃんと一緒にいてあげる」
「えへへ……わあい!」
由佳里は、ようやく笑顔になって、瑞穂の腕に抱きついた。
「もう、ほんと甘えん坊さんなんだから、由佳里ちゃんは」
瑞穂は、そんな由佳里を微笑ましそうに見ていた。
その後瑞穂は、由佳里と一緒に寝て、由佳里と一緒に昼食を食べ、放課後は由佳里と一緒に街に出かけ、楽しく過ごした。
2日目の昼……。
「ごちそうさまでした!」
「じゃあ由佳里ちゃん、ちょっと用を足してくるから」
「あ……はい」
由佳里と一緒に昼食をとっていた瑞穂が席を立ったのを見計らって……。
「ちょっと、顔貸してくれる?」
数人の女生徒が由佳里を取り囲んだ……。
「由佳里ちゃん、お待たせ……ってあれ? 由佳里ちゃんは?」
瑞穂が帰ってくると、由佳里の姿はなかった。
「あ、瑞穂さん、由佳里ちゃんでしたら、たった今何人かの生徒に連れられて行きましたわ」
そして、たまたまその場を見ていて、後を追おうとしていた紫苑が瑞穂に言う。
「わかりました。ありがとうございます、紫苑さん」
瑞穂はそう言って、後を追った。紫苑もついてくる。
「あなた最近、ちょっと浮かれすぎなんじゃない?」
「そうよ、恋人でもないのに、お姉さまを1人占めして!」
「ちょっとは見せ付けられる方の身にもなってみなさいよ!」
瑞穂が行くと、由佳里は女生徒たちにそう言われていた。
「何をしているの!?」
そこへ、瑞穂が割って入る。
「お、お姉さま!」
「何があったか知らないけど、由佳里ちゃんを大勢でよってたかっていじめるのは……」
「ご、誤解です! 私たちは、ただこの娘がお姉さまを独占しすぎじゃないかと思って、普通に話し合おうとしてただけで……」
「本当?」
瑞穂が由佳里に聞くと、由佳里は素直にうなずいた。
「本当ですわよ。私は最初から聞いていましたから」
紫苑が言う。そこにいる全員、耳がいいな、と感心してしまった。
「でも瑞穂さん、その娘たちの言うことにも一理あるのではなくて? 由佳里ちゃんの面倒を見るのも程々にして、
もっと周りにも気を配った方がいいと思いますわよ?」
「そうはいきませんよ。これは約束、というかお詫びの印なんですから」
「お詫び……?」
瑞穂はそう言って、紫苑に説明する。
紫苑が事態収拾したあの日が由佳里の誕生日だったこと。そして幸せを周りに根こそぎ奪われたうえに、
誰にもまともに誕生日を祝ってもらえなかったことで由佳里が落ち込んでいたことなどを。
「そ、そういうことでしたら……」
「さっきの言葉は取り消しますわ。それでは……」
「わかりましたわ。由佳里ちゃん、瑞穂さんに十分に癒してもらいなさい」
それを聞いて女生徒たちに続き、紫苑もそう言って去っていった。
それはそうだろう。女生徒たちは全員その日に瑞穂のキスを受け取っていたし、紫苑もそれを誰より堪能したのだから。
知らなかったとはいえ由佳里の誕生日に幸せを奪っておいて、今慰めてもらっているのまで妨害すれば、
自分たちは完全に悪者だ。由佳里に恨まれても文句は言えないだろう。
「わかってもらえたみたいだし、よかったわね、由佳里ちゃん」
「はい……」
2人はそう言って一緒に手をつないで食堂まで戻った。
そしてその日の夕食後……。
「由佳里ちゃん、お願いだからそれだけは……」
「えーっ!? いいじゃないですか、一緒にお風呂に入るぐらい」
由佳里に一緒にお風呂に入ってほしいと言われ、ごめんなさいした瑞穂に由佳里はそう抗議する。
「女同士なんですから、一緒にお風呂に入っても問題ないじゃないですか!」
女同士じゃないから問題あるんだよ、とは言えない瑞穂。
「お姉さま、できる限り私と一緒にいるってお約束だったじゃないですか!」
「そ、それはそうだけど……」
「どうしたのよ、いったい?」
そこへまりやが来た。
「あ、まりや……由佳里ちゃんが一緒にお風呂に入ってほしいっていうんだけど……」
「由佳里、今まで言わなかったけど、瑞穂ちゃんの身体にはほくろやらあざやらが変わった形で並んでてね。
小学生の時、それを散々バカにされたことでトラウマになってるの。だから誰とも一緒に入れないのよ」
「そんな、私はそんなことでお姉さまをバカにしたりなんかしません!」
「由佳里がバカにするしないの問題じゃないの。瑞穂ちゃんにはそれで考えるより先に身体が拒絶反応を示しちゃうのよ」
「わ、わかりました……」
由佳里は、そう言ってしぶしぶ1人でお風呂に入った。
「危ないとこだったわね、瑞穂ちゃん」
「ありがとう」
「でも由佳里も、瑞穂ちゃんは最後に入るって教えといたのに、一緒に入れなんて……」
「それはまりやが由佳里ちゃんをほったらかしにするからでしょ!?」
まりやが不服そうに言うと、瑞穂がそう抗議してきた。
「ていうか、どうして由佳里ちゃんの誕生日のこと教えてくれなかったの!?
最初に教えてくれれば、私がもっと早くになんとかしたのに……」
「だってさ、それ教えたら瑞穂ちゃん余計怒るじゃない。わざとじゃないのにそんなにこっぴどく怒られるのごめんだもん」
まりやは気まずそうに言う。
「何それ!? 由佳里ちゃんのこと全然考えてないじゃない!」
「あ、あの、お姉さま、まりやお姉さまは、由佳里ちゃんは2、3日たてば機嫌が直ると思っていたのですよ」
瑞穂が言うと、後ろから奏がそう言ってきた。
「奏ちゃんも知っていたの!?」
「は、はいなのです……でも苺と生クリームのたっぷり入った高級ケーキをくださいましたし、
由佳里ちゃんはすぐ機嫌直るだろうし、誰も悪くないのに、今さらむし返して怒られることもないとおっしゃられて、
その通りだと思ったのですよ……」
どうやら奏は、完全にケーキに目がくらんで、まりやに洗脳されているようだ。
「……呆れた。今大事なのは誰が悪い悪くないじゃなくて、傷ついてる由佳里ちゃんをどうやって立ち直らせるかでしょ?
それでも由佳里ちゃんの姉? それでも由佳里ちゃんの親友?」
「まあまあ、由佳里も瑞穂ちゃんのおかげで立ち直ってるみたいだから、固いこと言いっこなし。結果オーライじゃない」
「………」
瑞穂はそれ以上何も言わずに部屋に帰っていった。
そして3日目の夕方、瑞穂たちはハンバーグ専門の高級レストランに来ていた。
「……どうでもいいけど、なんでハンバーグ専門のとこ来るの? 他のメニューがあるところでも」
「由佳里ちゃんのために決まってるでしょ?」
まりやの不平に、瑞穂は当然のように言う。
「由佳里ちゃん、どれに決めた?」
「うーん……まだ迷っています。正直、どれも食べたいんですよね……」
「わかったわ。すみませーん」
瑞穂がウェイトレスさんを呼ぶ。
「この1番から40番まで、全部お願いします」
「お、お姉さま!?」
その言葉に、全員ビックリ。
「お姉さま、いくらなんでもそんなに食べられませんよ!」
「大丈夫よ、由佳里ちゃん。少しずつ、食べられるだけ食べれば」
「で、でも、すごい残るじゃない。さすがにそれは悪いと思うけど……」
「あら大丈夫よ。由佳里ちゃんが食べられなかった分は、全部まりやが食べればいいんだから」
まりやの引き気味な疑問に、瑞穂は眉の吊りあがった笑顔で答える。
「なっ……ちょっと」
「お、お姉さま……!」
その言葉に、まりやたちはビックリ。
「あ、もちろんここはまりやのおごりね」
「み、瑞穂ちゃん! なんであたしが……」
「まりや、わざとじゃないとはいえ由佳里ちゃんの誕生日を台無しにして、しかも謝るどころか
運のせいにしてひた隠しにして握りつぶそうとしたんだから、自業自得でしょ?」
愕然として抗議するまりやに、瑞穂は当然のように言った。
「じゃあ、奏ちゃんだけ無罪放免なのはなんでなのよ!?」
「奏ちゃんはあの後すぐに由佳里ちゃんにごめんなさいできたもの。まりやはしなかったでしょ?」
「そ、そんなあ……」
「お、お姉さま、よろしいんですか?」
「いいのよ。これぐらいしなきゃわからないみたいだから」
その後、由佳里は少しずつ全てのハンバーグを食べて、幸せいっぱいの顔で店を出た。
「お姉さま、ありがとうございました!」
「どういたしまして。じゃ、まりや、後よろしくね」
「まりやお姉さま、がんばってくださいなのですよ」
「ううう……奏ちゃんの裏切り者お……」
愕然としてごはんとハンバーグ料理の山を見るまりやを尻目に、瑞穂は由佳里と手をつないで、
奏も2人にくっついて帰っていった。
1時間後……。
「もうおなかいっぱい……どんだけ食べればいいのよ……」
まりやは、まだレストランの中で、泣きながらハンバーグ料理を口に入れていた。
「あーん! こんなことなら、もっとまじめに由佳里の誕生日祝ったげるんだったあ……」
その後まりやは1時間かけて、トイレと席を往復し、なんとか食べ終えたのだった。
「由佳里ちゃん、どう? これで機嫌を直してくれるかしら?」
「もちろんですよ! この3日間で、補って余りあるぐらいいっぱいいっぱいの幸せをいただきましたから」
「そう。よかった」
「でも、まりやお姉さまも、ちょっとかわいそうな気もしますね」
「まあね……でも、あそこまでやれば、さすがのまりやも少しは懲りるでしょ?」
「あはは……そうですね」
「じゃあ、お休みなさい、由佳里ちゃん」
「お休みなさい、お姉さま」
由佳里は瑞穂の腕の中で、幸せそうに眠りについた。
それからしばらくして、学食で……。
「由佳里ちゃんの機嫌が直ったことだし、久しぶりに4人で一緒に食べない?」
「そうね。そうしましょ」
「久しぶりに4人仲良くお食事なのですよ」
瑞穂の提案に、まりやも奏も賛成した。
「奏はミックスサンドセットなのですよー」
「私は和食のAランチにするわ」
「じゃあ私は……」
「ハンバーグランチでしょ?」
「ハンバーグランチなのですよ」
瑞穂の奏の声がハモった。まりやがピクッとなる。
「………?」
変だと思いながらも、みんな料理を持って集まる。と、由佳里の料理を見ていたまりやが……。
「うぎゃあああああ!! ハンバーグ怖いーっ!! 死ぬーっ!! 殺されるーっ!! 助けてーっ!!」
そう叫んで泣きながら逃げていった。
「……なんなのかしら、あれは?」
「わからないのですよ……」
「ハンバーグが怖いなんて、まりやお姉さまも失礼ですよね」
あれ以来、すっかりハンバーグ恐怖症になってしまったまりやであった。合掌。
Fin
以上です。
以前に比べ、よくなった、というかマシになった、というならいいですが、
悪くなった、と見られていたらどうしよう、と投稿を終えた今でも思っています。
ま、何はともあれ、お目汚し失礼いたしました。
前も今のもバーグが調子に乗りすぎているようにしか思えないのですよ…
大正浪漫のSSが練れてないのでバーグっぽい話でも考えてみる。
でも、いまひとつ、バーグの口調って特徴を捉えにくいんだよね・・・
亀レス失礼
>>314 type M
「瑞穂さん、あなたは将来の伴侶と、掘った掘られたの関係になることでしょう」
>>356 前回よりはそう見られるのは抑えたつもりですけど、まだまだ甘かったですか……というか、
普通に誕生日を祝ってもらいたい、迷惑をかけたことを謝ってほしいと思うのは
そんなに悪いことなのかな? と思うのですが……
>>357 楽しみにしていますね。ところで、私は「まりみて」の続きも(完結編まで)読みたいです。
瑞穂くん、まりやと由佳里ちゃんも愛してあげてくださいね。
悪くは無いだろうけど、逆ギレ的に怒り出しちゃったのがイマイチだったんじゃないかな
拗ねて落ち込むくらいに抑えて、瑞穂たちから気づいてアフターフォローする流れの方が自然だった気がする
貴方の作品は、一人の人物が騒いで周りが振り回されるだけで終わる、って印象受けるのです。
単発のネタなら良いんですが、ある程度読ませる物の時は
一人の人物主体に物語進めるより、物語主体に人物絡めて行くほうが
おとぼくの雰囲気に合うんじゃないかなぁと思ったりします。
今書いている話が完全に行き詰ってしまったので、なんとなく(電波が)降りてきた話を投下します。
『カ』
夏休みを間近に控えたある日の朝……
「おはようございます……」
明らかにテンションの低い由佳里が食堂に現れた。
「どうしたのよ由佳里?」
「……コレ見て下さい」
そう云って袖をまくった由佳里の腕は、何ヶ所も蚊に刺された跡でボコボコになっていた。
「うわ、凄いわね由佳里ちゃん」
「腕が真っ赤なのですよー」
「こっちもです。見て下さい!」
由佳里はスカートをめくって、太ももが赤くなっているのを見せ付けた。
「?!(由佳里ちゃんのパンツが……)」
瑞穂はさりげなく視線をそらした。
「そ、そう云えば、蚊に刺されるのって痒いの?」
「え?ものすごい痒いですよ……って、お姉さま蚊に喰われた事無いんですか!?」
「ええ。ぼ……」
「ぼ?」
「ぼ、ボウフラは蚊の幼虫よね……そうじゃなくて、私は何故か蚊に刺されないの。嫌われているのかな?」
(苦しい、苦しいよ瑞穂ちゃん)
「云われてみれば、瑞穂ちゃんが蚊に刺されたのって見た事ないわね。
子供の頃一緒に遊んだ後とか、あたし一人が刺されまくって、瑞穂ちゃんは平然としてたもんね」
「奏ちゃんは蚊に刺されたりしてない?」
「実は奏も蚊に刺された事が無いのですよー」
「莫迦ねー瑞穂ちゃん。奏ちゃんは平気に決まってるじゃない」
「「「?」」」
「奏ちゃんはちっちゃいから、蚊は奏ちゃんの存在を認識できないのよ!」
「いや、まりや、そのネタはもういいから」
「うーん、結局蚊に喰われたのって私だけなんですね。そう云えば、一子さんは生前どうだったんですか?」
「私ですか?多分人並みだったと思いますけど……私病弱でしたから、私の血は美味しくなかったと思いますよ」
「それ!それよ由佳里!」
「まりやお姉さま?」
「陸上部で徹底的に汗を流して、朝昼晩と肉の塊を貪る様に食べてるんだから、
由佳里に蚊が寄ってくるのは当然じゃない?」
「とりあえず、まりやお姉さまがひどい事をおっしゃっている……って云うのはわかります」
「何云ってんの、褒めてるんじゃない。要するに由佳里の血は美味しいって事」
「まりやの云い方には棘があるけれど……蚊は新陳代謝が活発な人の所へ行くらしいから。
蚊が沢山寄ってくるのは、由佳里ちゃんが健康で育ち盛りだからだと思うわ」
「ありがとうございますお姉さま。喜んで良いのか悪いのか……はぁ……」
「まりやは大丈夫なの?」
「あたしもどちらかと云えば刺される方だから、この時期になったら完全武装よ。
虫除けスプレー、かゆみ止め、部屋には虫除け器。これで蚊は完全にシャットアウト!」
「何かのCMみたいなのですよー」
「ま、とにかく……由佳里、あたしの装備を分けてあげるから、少しは蚊に刺されない様に努力しなさい!」
「……何だかんだ云っても、やっぱりまりやは由佳里ちゃんのお姉さまよね」
「はいなのですよー」
その日の夜。4人プラス一子が寝静まった後、寮の一角で人ならざる者達の会議が開かれていた。
蚊A「私昨日、少し日焼けしてる子の血を吸っちゃいました。すっごい美味しかったです!」
蚊B「えーっ、うらやましいな。あの子エネルギッシュで美味しそうだもんねー」
蚊C「私さっきその子の部屋に行ってみたんだけど、何だか嫌な空気が漂ってたよ」
蚊A「そうなの?あのバッテン女が余計な知恵を付けちゃったのかな?」
蚊B「バッテン女の血って1回吸ってみたいけど、あの子ガード堅すぎよね」
蚊C「大きなリボンを付けた子はどう?」
蚊A&B「……」
蚊C「あれ?私変な事言った?」
蚊A「彼女はやめときなさい。何て言うのかな……あの子からは成長エナジーを全く感じられないのよね」
蚊B「成長エナジーが乏しい血って味気無いし、卵の成長にも良くないからね」
蚊C「ふーん。それじゃピンクの部屋に居る綺麗な人はどうかな?」
蚊A「……実はさ。この前あの人の部屋に行ったんだよね」
蚊C「それで!どうしたの?」
蚊A「側まで近づいたんだけど、あの人って本当に綺麗なの。頭のてっぺんから爪先まで。
しばらく見てたら、『私ごときがこの人間を傷付けちゃいけない!』って気持ちになっちゃって」
蚊B「何もせずに引き返しちゃったんだ」
蚊A「……うん」
蚊B「実はあたしもなんだよね」
蚊A「そうなの?」
蚊B「あたし蚊だけど、それでもわかるんだ。あの人は最高に美しいってね。だからあんたの気持ちもわかるわ」
蚊D「……」
蚊C「そう言えば、Dちゃんさっきから何で黙ってるの?」
蚊D「……私、これからあの人の血を吸いに行こうと思うんです」
蚊A&B「えーっ?!」
蚊D「AさんとBさんの気持ちはわかります。でも、蚊に生まれたからには、最上級の血を吸ってみたいんです」
蚊B「……あんたの言う事は理解できるけど、多分ムリだと思うよ」
蚊A「うんうん。あなたも私達と同様、寸前で引き返すと思う……」
蚊C「AちゃんもBちゃんも、水を差すなんて無粋だよー。Dちゃんが吸いに行くって言うんだから応援しようよ」
蚊A「……そうね。頑張って来なさい」
蚊B「……あんたが成功出来るかどうか、あたし達が見届けてあげるわ」
蚊D「ありがとうございます。私、あの人の血を吸って、最高の卵を産みます!」
深夜、瑞穂の部屋。
蚊D「こちらD、ピンクの部屋に潜入した。指示をくれ」
蚊A&B&C「……」
蚊D「ごめんなさい。真面目にやります」
Dは慎重に慎重を重ね、羽音を極力させない様にして瑞穂に近づいた。
しかしその行為は結果として失敗に終わった。
瑞穂の隣で寝ていた一子が目を覚ましてしまったのである。
「……ん……うるさいですね……?!」
蚊の存在に気付いた一子が身構えた。
「ふっふっふっ、残念でした。お姉さまの血を吸おうなんて22年早いです。
この高島一子があなたを追い払ってあげますから覚悟して下さい。やーーーっ!」
一子は蚊に跳びかかった……のだが……
スカッ!スカッ!
「……あれ?蚊にさわれません」
スカッ!スカッ!
「なんでですかーーーっ?!私はお姉さまをお守りしなければならないのにーーーっ!」
蚊D(?……変な気配がするけど……気のせいかしら)
どうやら蚊は一子の存在を認識出来ない様だ。一子の奮闘も空しく、Dは瑞穂を射程圏内に捕らえた。
蚊D(!なんて美しい人なの?!)
遠くで見ているだけでは気付かなかった瑞穂の美しさが、Dの心を魅了した。
蚊D(……はっ!いけないいけない。私もAさん達みたいになる所でした)
気を取り直すと、Dは瑞穂の首筋にロックオンした。肌が直接出ている部分のなかで一番柔らかそうだったから。
蚊D(座標良し、距離良し、風向き良し……行きます!)
Dが猛スピードで瑞穂に襲い掛かった。
ピンッ!
Dが首筋に触れる直前、心地よい乾いた音が響き渡った。
蚊C「……Dちゃん?」
ABCが遠くから(一応瑞穂の部屋の中)心配そうに見守っていたが、結果Dは失敗した。
熟睡しているはずの瑞穂の右手が、蚊の反応速度を超えたスピードでDを弾き飛ばしたのである。
蚊B「……今まで数々の人間の攻撃から生き延びたあたしが……全く見えなかった……」
蚊A「私もです。どうやら私達は命拾いをした様ですね。Dさん……大丈夫ですか?」
蚊D「……な、何とか死なずに済んだ様です。Aさん達の忠告を聞いておけば良かったです」
4匹はあまりの恐ろしさに、猛スピードで瑞穂の部屋から……そして学生寮櫻館から逃げ出した。
その後4匹から噂が広まり、櫻館に近づく蚊は1匹もいなくなったそうだ。
瑞穂が蚊に刺されない理由
1.ほとんどの蚊は瑞穂の美しさに魅了され、傷付ける事を嫌い諦める。
2.それでも突撃した蚊は、瑞穂の本能と尋常ならざる反射神経で撃墜される。
この事を知る『人間』は一人も存在しない。
「凄いです凄いです凄いですお姉さまーーーっ!」
『宮小路瑞穂 護身完了』
以上です。初のオリキャラ?物です。モデルは特にいません。史上最短タイトルです(ぉぃ)。
私は人並み以上に蚊に喰われるらしく、右人差し指第一関節、左乳首の下など、良くわからない所を喰われて凹んでます。
由佳里だけ「喰われる」にしてみましたなんとなく。(私は喰われる派です)
Dちゃんを殺すか否か悩みましたが、お姉さまのキャラを考えて殺すのをやめました。
それに伴い、番外編(紫苑編)はボツになりました。
止まってしまった話はいつ書き上がるのやら……
どうやら私の真面目モードは2分しか持たない様です。私にはシリアスな話は書けそうに有りません。
それでは駄文失礼致しました。
GJ
>>368 ばんくーばーさん、私もそうです。
そういえば、O型の人は蚊にさされやすいと聞いたことがあります。
確かまりやと奏ちゃんがO型で、瑞穂くんと由佳里ちゃんがA型でしたよね。
>>370 東の扉さん
O型の人は蚊にさされやすいって言うのは、ただ単にO型の人の絶対数が多いだけって気がしますが。
……ちなみに私はO型です。
紫苑「AB型は蚊に刺されにくいみたいですね」
蚊に刺されないのは血液型が理由だと語る紫苑。果たして真相は?
『自己検閲により削除』
蚊
このスレにしては珍しくおもしろかった
GJ
>>371 日本人の場合の4つの血液型の割合は
A型→39%、
O型→29%、
B型→22%、
AB型→10%
だそうで、ほぼ4:3:2:1です。
「日本人」は確かにそうだ。
どちらにしても、血液型で刺されやすさが決まるって話は信憑性に欠けるらしいね
なんか、おとボクSS投稿掲示板に、不愉快極まりない異物が混入してますね。
管理人さん、早く削除してくれないかな?
それはさておき、受信した電波を投下させていただきます。昔話シリーズです。
よろしければご覧ください。
〜さるかに合戦〜
昔々、浜辺で由佳里蟹が海の水で口をゆすいでいました。
「うう……気持ち悪いよお……」
そこへ、散歩していたまりや猿が通りかかりました。
「何やってんの、由佳里?」
「あ、まりや猿さん……ちょっとお友達の奏亀ちゃんとデザートを食べてたんですけど、
奏亀ちゃんの作るデザートが甘すぎて……」
そう言って由佳里蟹はそのデザートの残りを差し出しました。
「どれ……うわ、こりゃ甘すぎ……」
まりや猿は吐きそうになるのをこらえて言いました。
「でしょう? これ10個も食べる羽目になって……」
「で、口ゆすいでた……と」
「はい……ああ、なんか辛い物食べたいなあ……」
「辛いもんねえ……柿の種ぐらいなら今持ってるけど、よかったら食べる?」
まりや猿はそう言って珍味の柿の種を1袋由佳里蟹に渡しました。
チョコがけとかはされてない、普通の柿の種です。
「いいんですか? ありがとうございます!」
由佳里蟹はそう言ってあっという間に柿の種をたいらげてしまいます。
「ああ、スッキリした……よかったら、お礼に受け取ってください」
由佳里蟹はそう言ってまりや猿にお手製のおにぎりを数個差し出しました。
まりや猿はちょうどおなかがすいてたので、食べることにしました。
「おいしーい! こんだけのおにぎりが作れるなんて、あんた料理の才能あるわよ」
「ありがとうございます! 褒めていただけて嬉しいです!」
由佳里蟹は大喜びです。
「んじゃ、あたしはこれで。ごちそうさま!」
「私もごちそうさまでした!」
これ以降、まりや猿と由佳里蟹はとても仲良くなりました。
由佳里蟹はまりや猿を「お姉さま」と呼んで慕うようになっていきます。
まあ、まりや猿はしょっちゅう由佳里蟹をおもちゃにして楽しんでいて、
由佳里蟹はそれに反発していますが、基本的には仲の良い2匹です。
そして、ある日のこと……。
「んっ……あっ……くうっ……ふうんっ……」
由佳里蟹が家で1人で欲求不満を晴らしていると……。
「由佳里、遊びに来てやったわよ」
まりや猿がいきなり家のドアを開けて入ってきます。
「わあっ! まりやお姉さま! いきなり入ってこないでください!」
「ふうん……由佳里もやっぱり毎日そういうことするんだ?」
まりや猿は意地の悪い笑みを浮かべて言います。
「ま、毎日もやっていません……」
由佳里蟹は真っ赤になりながらも、なんとかそれだけ言い返します。
そんな由佳里蟹を無視して、まりや猿は家をあら探しします。
「こんなにもエロい物いっぱいためこんどいて、説得力ないわよ」
「それは捨てるの忘れてただけで……っていうか、勝手に人の家あら探ししないでください!」
由佳里蟹はなおも真っ赤になりながら言い返します。
「いいじゃないの。あたしとゆかりんの仲なんだし」
「どんな仲ですか!? それにゆかりんじゃありません!」
「そんなに欲求不満で苦しんでるなら、ここはあたしが手伝って進ぜよう」
「苦しんでません! 手伝ってもいりません!」
「まあまあ、そう遠慮しないの。こう見えても結構上手なんだから」
まりや猿は由佳里蟹の言い分をまったく聞かずに手を出していきます。
「ちょ、ちょっと、やめてくだ……ひゃあああっ!!」
「もっと素直になりなさいな。ほれほれほれ」
「素直になってます……ふふぁあああっ!!」
こうしてまりや猿は、手を休めることなく由佳里蟹を愛撫していきます。
「ゆかりん声おっきいわねえ。それだけ気持ち良くなってるってことか。結構結構」
「き、気持ちよくなんか……ふぁああああああん!!」
由佳里蟹が気絶したのを見て、まりや猿はやっと愛撫をやめました。
「ああ面白かった。しばらくはこのネタでいじっちゃおうっと」
まりや猿は満足して由佳里蟹の家を後にしました。
「ううう……今まで誰にも知られなかったのに……もうお嫁にいけないよ……」
一方、しばらくして起きあがった由佳里蟹は、家でそう落ち込んでいました。
「こうなったら、まりやお姉さまに責任とってもらわないと……」
由佳里蟹は、えっちな割には操に対して意外と古風な考え方の持ち主だったので、そう決意しました。
それから数日後、由佳里蟹が浜辺に来ると、近くの森でまりや猿が友達の猿と話していました。
「まりやお姉さま?」
まりや猿は由佳里蟹に気づいていません。
「まりや、最近由佳里蟹と仲良いみたいだけど、つきあうわけ?」
「まさか。一緒にいて退屈しないけど、あたしと釣り合うにはまだまだね。
まあ、由佳里も欲求たまりやすいみたいだし、あたしもいいおもちゃがわりになって面白いから、
これからもえっちを手伝ってはあげるけど、ね」
まりや猿にしてみれば悪気はないのでしょうが、由佳里蟹は自分の恥ずかしい秘密を暴露された上に、
操を奪ったことに対しても無責任にされてる、と受け取ってしまいました。
まりや猿たちが立ち去った後でも、由佳里蟹はそこに立ちつくしていました。
「う……う……うわあああああん!!」
由佳里蟹は、泣きながら海に帰っていきました。
「由佳里蟹ちゃん、どうしたのですか?」
落ち込んで泣いている由佳里蟹に、奏亀が声をかけました。
「奏亀ちゃん……うわああああん!!」
由佳里蟹は、奏亀の胸の中で泣きながらまりや猿とのことを話しました。
「由佳里蟹ちゃんを泣かせるなんて、まりや猿さん……ひどすぎるのですよ! 許せないのですよ!」
由佳里蟹をなだめて家に送った後で、奏亀はそう怒りをあらわにしました。
翌日、奏亀は竜宮城に登城しました。
「一子さん、若君のご病気はいかがですか?」
寝室では、病気のため布団に寝ている若君の瑞穂を、御典医の幽霊船長の一子が診ています。
そばには、筆頭家老の紫苑鯛、次席家老の貴子くらげがついています。
「あまりよくありませんねえ。このままでは、若様はどんどん影が薄くなって、
誰にも気づかれなくなってしまいます……」
紫苑鯛の問いに、一子は暗い表情でそう答えます。
「どうすればよくなるのでしょうか?」
この時はまだ体内に骨を持っている貴子くらげが聞きます。
「そうですねえ……お猿さんの生き肝を食べれば、あるいは良くなるかもしれません……」
それを聞いた瑞穂お付きの側用人の奏亀は思います。
(そうなのです! まりや猿の生き肝を若様に食べさせればいいのですよ!
若様の病気が良くなる上に由佳里蟹ちゃんの復讐も出来て、一石二鳥なのですよ!)
奏亀はさっそく由佳里蟹の友人だと言い、瑞穂が会いたがっていると、まりや猿を竜宮城につれてきました。
「ふうん……この人が瑞穂ちゃんか……」
まりや猿は、瑞穂を一目見て気に入ってしまいました。そして、この人を是非とも女装させてみたい、と思いました。
「奏亀さん、このお猿さん、やけに性格悪そうですわよ。こんなのの生き肝を食べても若様は食中毒を起こすだけではありませんの?」
一方、まりや猿を見た貴子くらげは不愉快そうに言います。
「貴子くらげさん!」
「あっ!」
紫苑鯛にたしなめられて貴子くらげは口をふさぎますが、もう手遅れです。
「ふうん……なんか妙だとは思ってたけど、そういう魂胆だったんだ」
まりや猿は怒りの表情でそう言って瑞穂に近づきます。
「瑞穂ちゃん、我が身かわいさにあたしを犠牲にしようなんて、いい根性してるわねえ」
「ま、まりや、ちょっと待って!」
「ま、まりや猿さん、若様も由佳里蟹ちゃんも何も知らないのですよ! すべては奏の独断なのですよ!」
奏亀は瑞穂と由佳里蟹に非がないことを言いますが、まりや猿にしてみればどうでもいいことでした。
瑞穂に女装させるという願望を正当化する理由をゲットできたのです。
「そんなの関係ない! 部下の不始末は上司の責任! そんなの常識よ。タッタタラリラ……」
「ピーヒャラピーヒャラ……じゃなくって、僕だって知ってれば……」
「瑞穂ちゃん、この罪、ただではすまさないわよ」
まりや猿は瑞穂の言い分をまったく無視して、何時間も瑞穂を着せ替え人形にします。
「まあ、若君、女性物の衣装の方が数倍栄えますわねえ……」
紫苑鯛は見とれてそう言いました。奏亀も瑞穂の女装に見とれています。
「わわわ、若様……おきれいすぎます……ふにゃあああああ……」
貴子くらげは、瑞穂の女装に、すっかり骨抜きにされてしまいました。
それ以降、貴子くらげの身体からは骨がなくなってしまったのです。
瑞穂はというと、女装によって存在感が数倍に増したことで、影の薄くなる病気はすっかり治っていました。
「ま、まりや……わかったからもうやめてよ……」
「ダーメ♪ 未遂とはいえ殺人の罪は一生かかって償うものなの」
つまり、まりや猿はこれからもずっと瑞穂に女装させ続ける気なのです。
「そうですわね。若様には、一生かかって償っていただかないといけませんわね」
紫苑鯛もうれしそうにそう言います。
「し、紫苑さんまで……ううう……」
瑞穂は派手に落ち込んでそう言います。
それから、絶望に打ちひしがれた瑞穂は、お忍びで海中を散歩中、偶然落ち込んでいる由佳里蟹を発見しました。
「ねえ、蟹さん、どうしてそんなに落ち込んでいるの?」
「それが、わたし、まりやお姉さまに操をめちゃくちゃにされて……お嫁にいけない身体になっちゃって……ううう……」
(僕がこの娘を助けてあげたい)
由佳里蟹から事情を聞いた瑞穂は思いました。まりや猿が限度を知らないのをよく知っている瑞穂には、
由佳里蟹がどれだけ傷ついているのかもよくわかったのです。
「だったら僕がめとってあげるよ、由佳里ちゃん」
「瑞穂さま……私でいいんですか?」
「由佳里ちゃんは僕じゃ不満?」
「そ、そんなとんでもないです! 夢みたいです!」
こうして瑞穂と由佳里は交際するようになり、やがて結婚しました。
「そんなあ……あたしも瑞穂ちゃんのこと狙ってたのに……」
それを聞いたまりや猿は、やっぱり猿は蟹には勝てないのかと、すごすごと山へ帰っていきました。
Fin
以上です。
最初さるかに合戦のつもりで考えていたら、奏ちゃんをマリ○ブラ×ーズつながりで亀にしよう、
と考えていったら、いつの間にかくらげの骨なしまで書いてました……。
なぜ一子ちゃんが医者なのかは……やるきばこ2をプレーした方ならわかっていただけるかと思います。
それでは、お目汚し失礼いたしました。
なかなか良いものを見させてもらいました
387 :
ヴァー ◇AcMVuqiyH4qQ6:2008/07/20(日) 20:55:29 ID:n8wo90nO0
ここでははじめまして。
>>東の扉氏
はじめまして。
いつも楽しく作品拝見させていただいてます。
ところで
>>不愉快極まりない異物
これ、私のことでしょうか・・・・・?
もしそうだったら、誠に申し訳ないです・・・・・・
以後、書き込み自粛いたしますので・・・・
>>
酉すらつけられないとか…
390 :
L鍋:2008/07/20(日) 21:30:14 ID:mHm3u1oeO
>>387 初めまして
貴方のことではないと思いますよ
これからも、ドンドン書いてください。
楽しみにしてますね。
>>387 ヴァーさん、はじめまして。私の作品、楽しくごらんいただいているそうで、とても嬉しいです。
無論、あなたのことではありません。
>>389さんのおっしゃるとおり、そちらの掲示板です。
明らかにおとボクとはまったく関係ない書き込みがありますので、それのことです。
>>390 規制解除まで、あと約2ヶ月半ぐらいでしょうか?
復帰できる日を楽しみにお待ちしています。
392 :
ヴァー ◆JLv7p18K9I :2008/07/21(月) 20:17:14 ID:5syp2Ufo0
>>東の扉氏
どうもです。
私ではなかったのですか・・・・・よかった。
これからもどうぞ宜しく。
>>L鍋氏
はじめまして。
まさか貴方からもレスもらえるとは・・・・恐縮です。
これからも宜しくお願いします。
>>389氏
情報提供どうもです。
こいつのせいで余計な心配しちまったよ・・・・・
さて、安心したところで夏野菜カレー作ってきます。
ついでにネタも考えつつ・・・・・
393 :
名無しさん@初回限定:2008/07/21(月) 20:32:56 ID:hfq9Drbl0
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>>367 蚊を睡眠中に撃退するなんて、虎殺しの武神みたいだ。
お姉さまなら江田島塾長にも勝てるのでは…
396 :
名無しさん@初回限定:2008/07/22(火) 18:46:58 ID:23DIUoJv0
>>395 少なくとも江戸川や森田大器よりは強そうw
飛燕とどっこいぐらいだと思う。
切っちゃっても三週後くらいにはしれっと生えてるんですね
こんばんは。
アクセス規制中なので、友人の留守宅から勝手に接続して投下します。
『最凶の支援』
ある日、寮で4人そろって夕食を食べている時。
「ねえ、瑞穂ちゃん。今週の土曜日、空いてる?」
まりやが瑞穂に尋ねる。
「ん?」
「お願いがあるの。今週の土曜日にソフトボール部の練習試合があるから、応援に来て欲しいんだけど」
「ソフトボール部の試合?何処で?」
「ウチのグラウンド」
恵泉女学院には、大学と共同で使っているグラウンドがある。
「そういえば、そうでしたね」
由佳里が云う。
「へえ。ソフトボール部なんてあったの」
「あったわよ。弱小だけど」
「奏も初めて聞いたのですよ〜」
「まあ、仕方ないわね。弱い上に部員も3年生が抜けて8人になってしまったし」
「8人?それじゃ、試合が出来ないじゃないの」
「うん。だから今度の練習試合にはあたしが、臨時の助っ人として入ることにしたの」
「へ〜。まりやがソフトボールが好きだなんて知らなかったわ」
「そうじゃないのよ。ソフト部のキャプテンがあたしがかわいがっている後輩でね、泣きつかれたの。
このままだと来年度に廃部になるって」
「なんか前もそんなことを云ってたわね」
「まりやお姉さまは体育会系の部のボスですから」
「その云い方はなんか気に入らないわね、由佳里」
「っと、御免なさい。体育会系の頼れる姉ですから」
「…ま、いいでしょ。生徒会に確認したら確かに実績なしの人員割れの部だから来年度の廃部予定になっちゃってた訳。
そんな部に次年度予算は割けないって」
「それで?」
「あたしが掛け合ってなんとか存続の機会を出してもらったの。部員を10名以上にすること。
来期の好実績が期待できるような実力を示すこと。この二つをクリアすることってね」
「それと練習試合の助っ人と何の関係があるの?」
「鈍いわね〜瑞穂ちゃん。練習試合で強いトコを見せる。イコール強い実力を示すってことじゃない」
「ああ。たしか練習試合の相手は国慈館高校でしたっけ」
由佳里が思い出したように云う。
「国慈館!」
瑞穂も知っている。国慈館高校(以下、K学)は勉強、スポーツ両方に優れた私立の有名共学校である。
硬式野球部は何度も全国大会に出場している。
「そう。県下強豪の部活がウジャウジャ。女子ソフトボールでも去年の県大会準優勝校。
ここに勝てば強い証明ってもんでしょ」
「だけど、弱小で8人しかいないんでしょ」
「だからあたしが助っ人で入るんじゃない。それ以外にも何人か運動部から助っ人をいれるし」
「それにしたって…。そう云えばよくそんな強豪校が試合OKしてくれたわね。しかもわざわざやって来て」
瑞穂がそう云うとまりやがにやりとした。
「いやあ、苦労したわよ。向うの部長にはなんとかツテがあったから申し込んでみたけど、
けんもほろろに断られちゃって」
「当たり前でしょ」
「だから次は賞品つきで試合を申し込んでみたの」
「ち、ちょっと!」
「もしウチに試合で勝ったら、1点差ならバット10本、2点差なら部員全員のグローブを、3点差以上なら
部員全員のユニフォームを進呈するって云ったらOKしてくれたわ。しかもウチにわざわざやって来てくれるって」
「…それはちょっと酷いんじゃ…」
「強豪だ、名門だと云ったところで女子ソフト部。男子硬式野球部と違って内情は火の車なのよね」
流石に瑞穂も呆れ顔、由佳里たちも目を丸くしている。
「ま、まりやお姉さま。本当にその賞品をお出しになるのですか〜」
「負けたらね。ま、勝ちゃ良いのよ。勝ちゃね」
「そ、それにしたって…」
「あたしは目的遂行の為には手段を選ばない女なの」
「さすがまりやお姉さま」
「こ、怖いのですよ〜」
「まあ、そう云う訳で苦労してここまで試合のお膳立てしたからには負ける気は毛頭ないけど、
より勝利を確実なモノとするためここは、我らがエルダーの力が必要なのだよ」
「前のバスケ部の練習試合、お姉さまの応援のお陰で勝ったと大評判でしたね」
「そう云うこと!次の土曜日、是非応援に来て頂戴。瑞穂ちゃん」
まりやがビシッと指を突きつける。
「なるほど。よく分かったわ。でも無理」
ガクッとなるまりや。
「な、なんでよー」
「応援に行ってあげたいのはやまやまだけど、今度の土曜日、私のクラスは体育倉庫の掃除当番なの」
それを聞いてまりやが眉をひそめる。
「うっ…体育倉庫…」
恵泉女学院では普段の清掃は、生徒たちによって行われている。
その中でも、講堂、体育館、体育倉庫、運動場の草むしり、特殊教室などの多人数の力が必要な場所は、クラスごとに
当番が割り振られ、清掃は一ヶ月に一度当番のクラス総出で行われる。
ちなみにクラスの割り振りは学院全クラスがローテーションによって巡ってくるので、ひとつのクラスに一年間のうち、
2度くらいしか回って来ない。
「割り当てクラス当番か…うーん」
まりやが腕を組んでうんうん唸っている。
「体育倉庫は時間かかるわねー。瑞穂ちゃんだけ用事があるとか云ってこっちに来るとか…」
「駄目よ、そんなのは」
瑞穂が応援に来られないというのは、まりやの思惑にあってはならないことのようである。
「ううっ。仕方ない。じゃあ、掃除が終わり次第応援に来て頂戴。こちらの試合は出来るだけ、引き伸ばすから」
「……何故、引き伸ばす必要があるのかしら?」
さっきまで、勝って見せると豪語していたのはどういうことかと首をかしげる瑞穂。
「掃除が終わり次第、絶対に来て頂戴よ。相手は強豪なんだから!紫苑さまにも話をつけておくから!」
なんだかよく分からないが、とりあえず了承する瑞穂だった。
次の土曜日。
午前中から3-Aは全員で体育倉庫の清掃を行っていた。
中にある体育用具を全て運び出し、倉庫内の掃き掃除、拭き掃除を行い、また用具を運び込む。
これらの大仕事にみんなジャージに着替えて埃まみれになって働いていた。
正午を回り、やっと清掃完了。
皆、制服に着替えて、ある者は下校、ある者は食堂、ある者は部活へと向かう。
もっとも三年生なので部活に向かうものはほとんどいないが。
「瑞穂さん、それでは参りましょうか」
紫苑が着替えるために更衣室に向かおうとしていた瑞穂に呼びかける。
「え?何処へでしょうか?」
「瑞穂さん、お忘れですか?まりやさんに頼まれていらっしゃるのを」
「ああ、ソフトボール部の応援のことですね。勿論、覚えていますよ。着替えてからすぐに行くつもりです」
「着替えている暇はありませんよ。試合はもう、後半戦に入っています。着替えていては間に合いませんから」
そう云って紫苑は、瑞穂の手を取ると引っ張ってグラウンドの方に向かいだした。
「えっ!このままの格好で行くんですか。って云うか紫苑さんも行くんですか?」
「当然です。このような楽しい…いえ、他校との練習試合で我が校を応援するのは義務ですわ」
「はあ、そうですか」
大学と共同で使用しているグラウンドは一度、学院から出て、道路を渡ったところにある。
歩いて5分くらいの場所。
普段は練習などでグラウンドを使用している人以外は、ほとんどいない閑散としている場所なのだが、
本日は練習試合の選手たちとそれを見学に来ている生徒たちで、かなりの人数が集まっていた。
「結構人数がいますね」
瑞穂は辺りを見渡す。
ざっと見て40人ほどの見学の生徒がいるようだ。もちろん、ほとんどが恵泉の生徒たちだが、少数ながら他校の
生徒らしき姿もチラホラ見受けられる。
「まりやさんが、運動部の人気生徒を何人か連れてきていましたから、2、3日前から結構、噂になってましたよ」
「そう云えばそんなことを云っていたような…」
瑞穂は恵泉のベンチ横に、10人ほどの女生徒の集団がいるのに気がついた。
「あれは何でしょうか?」
恵泉の選手を声を揃えて応援している。
「あれはきっと即席の応援団ですわ。まりやさんがそんなことを云ってました。ウチにはチア部がないからって」
「……そりゃ、チア部なんてありませんよ。当然」
瑞穂たちがベンチに近づいていくと、その姿に気がついた生徒たちから歓声があがった。
――きゃあ〜、お姉さまがいらしゃったわ〜――
――お姉さまー!紫苑さまー!――
きゃあきゃあと騒ぐ生徒たちに会釈をしながらベンチ横に行くと、ネクストバッターズサークルにいたまりやが
やってきた。
「よしよし。間に合ったわね、瑞穂ちゃん」
スコアボードを見ると、現在は7回裏、2対0で恵泉は負けている。ワンアウト、ランナー無し。
「何回までするの?」
「7回裏で終了。この回に追いつかなければ負けね」
しかし、考えてみれば県大会準優勝のチームに負けているとはいえ、たった2点差というのは凄いことである。
「まあ、この3日間、運動部の優秀な連中を特訓して助っ人にしているのと、あとはこの応援…」
キャーキャーと大声で叫び続けている急造のまりや応援団。
「ホームの利を活かして声援で相手にプレッシャーをかけ続けてなんとか凌いできたけど、ここまでが限界ね」
それにしても運動部におけるまりやは相当な力をもっているようだ。
カツンッ!
鈍い音がして今打席に入っていたバッターが一塁に走る。
セーフ!
「よし!キャプテンが内野ゴロで出塁ね。じゃ、チャンスを広げてくるか!」
まりやがバットを肩に担いで軽い足取りでバッターボックスに向かう。
「大丈夫かしら、まりや」
「まりやお姉さまなら大丈夫ですよ」
いつの間にか、瑞穂の横に由佳里と奏が立っていた。
「あら、由佳里ちゃん達も来ていたの?」
「はい。奏たちも応援団に入っていたのですよ〜」
「この試合、まりやお姉さまは全打席出塁していますよ」
「ええ!?そんなに打ってるの?」
「いえ、打っている訳ではないんですけど」
ズバーーン!!
相手の投手が1球目を投げたところだった。
内角高めのストライク。
「速いわね」
予想外の速球に瑞穂は驚く。
「下手投げだからもっと山なりのボールかと思ってたわ」
「ふふ。それは認識不足ですわ、瑞穂さん」
紫苑が瑞穂に説明する。
「高校レベルの女子ソフトボールの球速は95キロはザラですわ。それに投手板から本塁までの距離が野球より、
5メートルも短いですから、バッターボックスでの体感速度は120キロ以上になるといいますよ」
「へぇ〜」
「それにほら、ピッチャーマウンドがないでしょう。バッターと同じ平地から下手投げで来る速球は、
浮き上がって来て打ちにくいそうです。ライズボールという球種は野球には無い変化球ですわね」
瑞穂も由佳里も奏も、目を丸くして紫苑の説明を聞いている。
ズバーーン!!
ピッチャーの内角が決まってカウントは2−1。
「あんな球をまりやは打ってるの?」
瑞穂は由佳里に訊くと、由佳里は首を来る。
「粘っているんです」
「?」
カツンッ!
まりやがストライクボールをカットした。
ファースト方向に転がりファウル。
「なに今の。中途半端なスイングね」
次の球もまりやはカットしてファール。
その次はきわどいコースでボール。
「ねっ!」
由佳里がにこやかな笑みをして瑞穂に顔を向ける。
「え、ええっ!もしかしてワザと?」
「はい!まりやお姉さまは全打席、四球と俊足を活かしてのバントで出塁されてます」
ツーストライクまで待って、球数を稼ぎ、後はストライクくさい球を全てカットしてボール球を待つ。
「ド素人なのに毎回追い込まれてからよく球の見極めをやれるわね…鉄の心臓ね」
「本当に、まりやお姉さまって心臓に毛が生えてますよねー」
「他の人は?」
「他の人は誰も塁に出ていません。さっきのキャプテンの内野ゴロが初めてです」
相手ピッチャーの球速を見れば仕方ないかと思う。
最終回だというのにこの速さ。まりやでもカットするのがやっとなのかも知れない。
だからこそ四球作戦なのだろう。
もっとも、それもまりやのクソ度胸があってのことであるが。
「相手校のピッチャー、県準優勝校だけあって流石に早いですわね」
「し、紫苑さん、何でそんなに知っているんですか?」
「うふふ。当然、勉強したんですよ。瑞穂さんにアドバイスしてあげる為に」
「えっ!?」
「瑞穂さんなら打てますか?あの球を」
「さ、さあ。ソフトボールはやったことがありませんし、自信ありませんね」
その時、ワーッという歓声が上がった。
まりやが四球で出塁したのだ。これでランナーが1塁2塁。
「そんな弱気では困りますわ。きっと瑞穂さんなら打てますわよ」
そう云いながら、紫苑が瑞穂の背中に回って何やらゴソゴソとしている。
「紫苑さん、何をしているんですか?」
「瑞穂さんの背中に背番号をつけているんですわ」
そう云いながら安全ピンで瑞穂のジャージの背中に背番号を貼り付ける紫苑。
「ええっ!?なんで…」
その時、一塁にいたまりやがタイムをかけて、代打を告げる。
「六番代打、宮小路瑞穂!」
きゃあぁぁぁ〜!!!
観戦の生徒たちから大歓声が上がる。いつの間にか応援の生徒たちが先ほどの倍くらいに増えている。
「ちょ、ちょっと待って!私は応援にきたのよ」
「ええ。支援戦力として来てくれたんでしょ」
そう云いながら近寄ってきたまりやが瑞穂にバットを渡す。
「なにそれ!そんな話聞いてない」
「あら?紫苑さまには云ってたんだけど。ね?紫苑さま」
「はい。私は聞いておりましたわ」
「だから私はきいてませんって!」
「ここまで来てグダグダ云わない!はいバット。なんだかんだ云って背番号までつけてやる気十分じゃないの」
「これは紫苑さんがつけて…って紫苑さん。わざと黙ってたんじゃ…」
「さあ?うふふ。楽しければ良いじゃありませんか」
紫苑の本音が出た。
「うわっ、紫苑さん…。それにいくら練習試合といってもこんな飛び入り参加、相手チームも納得しませんよ」
「大丈夫。最初から登録済みだから」
へ?と驚いている瑞穂にこの試合のメンバー表を差し出すまりや。
見ると確かに登録選手の中に瑞穂の名前が!
「な、なんで!?」
「あら?前に云ってなかったっけ。女子ソフト部は部員を10人以上にしないといけないって。
だからあたしと瑞穂ちゃんが卒業まで仮部員ってことで」
「まりや!なに勝手なことをしてるの!」
もう、まりやと紫苑に振り回されっぱなし。
結局、この二人に云い合いで勝てるはずもなく、瑞穂は観戦の生徒たちからの大歓声を受けてバッターボックスに
立つことになった。
「もう知らないわよ。どうなっても。私はソフトボールの経験がないんだから」
「野球は上手だったじゃない。そのつもりでやって頂戴。瑞穂ちゃんに打てないんなら、ウチのチーム誰も打てないから」
しぶしぶバットを受けとる瑞穂。
「あれ、なんだか軽い」
「瑞穂さん、ソフトボールのバットは野球のバットよりも細いんです」
「そうなんですか」
「と、この本に書いてあります」
そういう紫苑の手にある本。タイトルは『簡単!よくわかるソフトボール』とある。
「野球用より細いバットで野球用より大きい球を打つ球技なんです……と書いてあります」
「……へ…へぇー…」
自分が試合に出るわけでもないのに、ソフトボールの勉強をする紫苑。
「・・・・・・」
なんとなく半目で、本を読んでいる紫苑を見つめる瑞穂。
楽しみのための下準備には、骨身を惜しまない紫苑はまりやと同じタイプなのだろう。
「そもそもはボクシングのグローブを箒で打って遊んでいたんだそうですよ。うふふ」
どうでも良い豆知識まで披露。
ほんとに楽しそうだ。
もう何も云う気力もなく、瑞穂は素振りを始めた。
ピッチャーズサークルでは、相手チームK学のバッテリーがヒソヒソ話をしている。
細身の体のピッチャーと肉付きの良いがっしりとした体格のキャッチャー。
このキャッチャーがK学の女子ソフト部のキャプテンである。
ちなみにキャプテンの苗字が矢間田、あだ名が『ドカ○ン』だったりする。どうでも良い事だが…。
(キャプテン、一二塁で代打です。どうしましょ)
(どうって?まさか打たれると思ってるんじゃないでしょうね?)
(いえ、その、代打ですし一応用心したほうが)
(毎回一回戦負けのこの学校にどんな用心がいるの?代打といってもユニフォームじゃなくジャージで出てくる
ような代打よ。遊び半分なのよ。まあ、私たちも遊び半分でやってるけどね。万が一にでも打たれたら恥よ。
シャキッとしなさい)
ちょっと弱気なピッチャーにキャプテンが喝をいれる。
(それにグローブを取って帰ってこいって部長も笑いながら云ってたでしょ)
(はい。そうですね)
そう云ってバッテリー、ニッコリ笑いあう。
ブオォォッ!!
ブオォォッ!!
音がした。
振り返るK学バッテリー。
次のバッターが素振りをしていた。
その音は恵泉の代打の素振りの音だった。
ブオォォッ!!
大気を引きちぎるような音をさせている。
(・・・・・・)
(・・・・・・)
優美なフォームである。
だけど何故かその音は凶悪だった。
ブオォォッ!!
(…キャプテン…あの音…)
(…ええ。なんだかよく分からないけど力はありそうね)
(なんだか嫌な予感がしますが…)
(また弱気なことを。ほら、見なさいよ、あんな力んだスイング。当たりはしないわよ)
「瑞穂さ〜ん。スイングは力を込めずに腕とバットをしならせるように…とこの本に書いてありますわ」
「そ、そうですか。便利な本ですね。その本」
バットを振るのは久しぶりだから、力んじゃったかなと思い、今度は腕の力を抜き、
スイングスピードを意識してバットを振る。
ヒュゥゥゥン!!
ヒュゥゥゥン!!
今度は大気を切り裂くような音がする。
明らかにスイングのスピードが上がっていた。
その様子を無言で見ているバッテリー。
(…キャ…キャプテン…)
(…大丈夫だと思うけど、インコースで様子を見ましょうか…)
キャッチャーがホームベースに帰ってきて、まりやが一塁に戻りプレイ再開。
瑞穂が「お願いします」と云って、バッターボックスに入る。
見物人からは派手な声援。お姉さまコール。
(インコース中段。ここなら万が一打たれてもファールになる)
キャッチャーからのサインにピッチャーが頷く。
ピッチャー、ぐるんと腕を回して第1球を投げる。
ズバァーーン!
瑞穂、見送り。
サイン通りの位置に自慢のシュートが入った。
ストライク!
瑞穂が小声で「は、速いわね」と独り言を呟く。
キャッチャーそれを聞いて、イケると確信。
(さあ、もう1球同じところへ)
サインにピッチャーが頷き、続いて第2球を投げる。
先ほどと同じコースへ鋭く切れ込んでくるシュート。
……しかし!
瑞穂のバットが唸りをあげる。
グァッゴォォォン!!!
とてもソフトボールとは思えない打撃音!
次の瞬間、レーザー光線のような弾丸ライナーが三塁線上を飛んでいた!
・・・左に切れてファウル!
その間、三塁手、一歩も動けず。
三塁手の目に打球が全く見えなかった。
切れた打球はそのまま一直線に飛んで行き、遥かかなたに消えていってしまった。
シーンと静まり返っているグラウンド。
誰一人喋り声を発するものがいない。
プレイヤー、応援団、観戦者、全員が呆然としている。
一拍の後…
――きゃぁぁ〜!!――
――流石はお姉さま!!――
湧き上がる声援!
ルールを良く知らない女生徒たちも、今の瑞穂の打球が尋常でないことは分かった。
やっぱりお姉さまは凄いのだと興奮して大歓声を上げている。
…一方、K学ナインは全員、未だ衝撃から立ち直っていない。
キャッチャーであるキャプテンも、「嘘!?」と打球が消えた方角をまだ、見つめ続けている。
とてもソフトボールの打球ではない。
ふと、ピッチャーをみると蒼い顔で呆然と突っ立っている。
キャッチャー、タイムをとるとピッチャーに歩み寄る。
(……キャプテン…今の打球…)
(……ええ。私もはじめて見たわ。あんなの…)
(キャプテン。敬遠しましょうか…)
(!!何て云ったの!?敬遠?…ウチは女子ソフトボール県大会準優勝校なのよ!恵泉相手に敬遠ですって!?駄目!
例え練習試合でも駄目。あなた誇りがキズつかないの?それで先輩たちにあわせる顔があるの?)
(で、でもキャプテン…)
ピッチャー殆ど涙目になっている。
(あの人…あのパワー、女子とは思えないんですけど…)
ファウル一本ですっかり弱気になってしまったピッチャーをキャプテンが叱咤する。
(何云ってるの!どっからみても女性でしょ!)
そう云って瑞穂を指差す。
(幾らパワーがあった所であのタイミングでは全部ファウルになるわよ。その内、空振りして終わり。
自信持ちなさい!アナタのシュートはそう簡単に打てるシロモノじゃないんだから!)
「瑞穂さん。インコース打ちは溜めてから…と書いてありますよ」
「本当に何でも書いてあるんですね、その本。なんだか興味が出てきましたよ。
…それにしても、溜めたつもりだったけど甘かったみたいね。次はもっと溜めて…。
あと腕もコンパクトにたたんで振らないと…」
色々と自己調整しながら、素振りを始める瑞穂。
ヒュゥゥゥン!
「もっと…こんな感じで…」
ヒュィィィン!
「それで…こう…」
フュィィィン!!
「うん。こんな感じね」
フュィィィン!!
見る見る瑞穂のスイング音が鋭くなっていく。
なんというか、もはや、バットではなく鋭利な日本刀を振っているような音がしている。
フュィィィン!!
あんぐりと口をあけてその様子をみているK学バッテリー。
(・・・・・・・・・・・・)
(・・・・・・・・・化け物・・・)
(ね?ね?キャプテン!敬遠しましょう!あの人、きっとサイボーグですよ!)
(だ、駄目よ!ツーストライクじゃない!あとひとつ。何とか…)
(無理、無理です!あの人、絶対空振りしませんよ!)
(敬遠…敬遠かぁ…駄目、やっぱり。ね、結果的に四球になっていいから、敬遠だけは止めましょう)
(………)
(丁寧にコースをついていけば大丈夫よ。それで四球になってもいいから)
(…はい。わかりました)
プレイ再開。
再びバッターボックスに瑞穂が入る。
キャッチャー、先ほどの瑞穂の素振りを見ていて、インコースは危険と判断。
アウトコースの超低目のサインをする。
バッターが見送ればボールの位置。
(ここなら打たれても上には上がらないから。ほら!自信を持って!)
キャッチャーからの強い指示にピッチャーが頷く。
K学女子ソフトボール部のエース格。
昨年度の県大会準優勝時のエースは三年なので引退してしまっている。
今、投げているのは次期エース。
本当なら、恵泉との練習試合なんかで出てくる投手ではない。
だけど、まりやからグローブとユニフォームを取って来いと先輩たちに背中を叩かれてやってきた。
負けられない。
だからといって、なりふりかまわず見苦しく勝つこともダメ。
カウント2−0、ピッチャー大きく腕を回し、第3球目を渾身の力を込めて投げる。
スピードがのった速球。
しかし、怯えがあった為か、制球がやや甘かった。
アウトコースに向かった速球は、低めではなく高めに浮き上がってしまった。
(……ッ!?)
瑞穂、フルスイング!
パッキイィィィンン!!
次の瞬間、打球はセンターはるか上空で小さな点になっていた。
全員が、唖然と高く高く上がったボールを見つめている中、まりやがカカカッと笑いながらゆっくりと塁を回りだす。
「よっしゃ!逆転サヨナラスリーラン!上等上等!」
塁を1周して帰ってきた瑞穂を大歓声が迎える。
黄色い声援を送る女生徒たち。
真っ赤な顔で興奮して叫んでいる応援団の女の子たち。
嬉しさで泣いているソフトボール部の部員もいる。
そしてグラウンドには蒼い顔して立っているK学ナインの姿があった。
〜えぴろーぐ〜
練習試合の翌週、恵泉ソフトボール部には、瑞穂の姿に憧れた者、ソフトボールに興味を持った者など、
5名ほどの新たな入部があった。
部員も増え、瑞穂とまりやの仮入部はめでたく(?)取り消しになった。
生徒会も「ドーピングですね」と云いながらも努力は認めてくれて、来年度も部の存続を認めてくれた。
「全て予定通りね」
4人そろっての寮での夕食時。
まりやが満足そうに云う。
結局、全てはまりやの計画通りに終了した。
「まりやお姉さまは凄いのですよ〜」
「絶対に勝つって思ってたの?」
「本当はね、瑞穂ちゃんに初回から試合に参加してもらうつもりだったの。掃除当番は焦ったけど、
まあ、代打で起用すれば必ずホームラン級のヒットをかっとばしてくれると思ってたし」
「流石はまりやお姉さまです。でもK学の人たちにはちょっと気の毒でしたね」
「あたしは目的遂行の為には手段を選ばない女だから仕方ないわ」
「仕方ないで済むの?」
瑞穂がジト目でまりやを見る。
試合後、まりやはバット10本をK学女子ソフト部に贈った。
「多少、悪いなとは思ったわよ。あたしも鬼じゃないんだから」
「あのピッチャー、自信を失くしてないでしょうか?」
由佳里が云う。
「大丈夫でしょ。瑞穂ちゃんみたいな女子バッターは多分、オリンピック選手でもない限りいないと思うしね」
ちなみにK学のピッチャーはこの後、恵泉に強烈な苦手意識を持つようになり、他所の学校相手には完封するのに、
恵泉相手の試合ではヘナチョコ球しか投げられなくなる。
「本当にまりやには振り回されたわ」
「ところで瑞穂ちゃん。他の部からも出動依頼が来ているんだけど」
紫苑はそれを聞いてノリノリだそうである。
「 絶 対 に イ ヤ ! 」
Fin
お粗末さまでした。
さて、PC使った痕跡を消して終了っと。
乙でした
さすがお姉さまのエルダースティックですね
L鍋さん面白かったです
422 :
名無しさん@初回限定:2008/07/24(木) 23:36:47 ID:R21Fw4FC0
ピッチャーは「里那架」でしょうかw
423 :
名無しさん@初回限定:2008/07/25(金) 12:16:48 ID:DMIkpJeo0
誘拐犯A「おい、厳島の娘をさらってくる計画じゃなかったのか」
誘拐犯B「す、すみませんアニキ、コイツが邪魔に入ったもんで──」
誘拐犯C「その隙に目的の娘には、逃げられまして…」
瑞穂ちゃん「ぼ…僕をつかまえていても無駄だ。早く開放するんだ」
A「それで、代わりにコイツをさらってきたと。まったく女のガキ一人相手に…」
B「でもアニキ、こいつ、女子高生とは思えないほど、かなりの上玉ですぜ」
瑞「ひぃ」
C「どうせ俺たちはおしめえだ。捕まる前に楽しんじまいましょうよ」
A「そうだな。おい、誘拐犯C、この女の服をぬがせな」
瑞「い…いやだぁー…」
C「ふへへ。お嬢ちゃん、抵抗してもムダ…だ……?」
C「なッ! こ、こいつ、男ですぜ」
A&B「なんだってー」
瑞「ざ、残念だったな」
C「……」
B「…」
A「…………」
C「お、男でもいいっ!」(田中ロミオ風に)
A&B「うぉぉおお!! むしろ萌えるずぇええ!」
瑞「そ、そんな! いやぁ、けだもの〜 あぁーーっ」
ていうSS・CG・同人ない?
____ お、お前好みのかわいい子じゃねえか…
/ \ 男? 細かい事気にしねえで、ムリヤリやっちまおうぜ…w
|\/ ノ' ヾ \/|
|/ ≪@> <@≫ \| ⊂ニニ⊃
| (__人__) | ____ノ L
\、 ` ^^^^ ´ ,/ /\ / ⌒ そんなのダメだお!!!!!!!!
. / ヾ `ー‐" " ⌒ヽ /(○) (○) \
/ ヾ ," \ / (__人__) \ ちゃんと和姦に
| r r\,"⌒ヽ | |::::::| | もっていくべきだお!!!!!!!
:::::: ::;;:: ,,, ;;::: ,,:: ;;;;::::'' \ l;;;;;;l /l!| !
::::;; ::::::: ;; :::: ::::::::;;;:: ::::::;; γ⌒⌒/ `ー' \⌒⌒ヽ
::::::::;;::::::;; :::::::;;;::::: (_ノノ/ ヽ !l ヽしし_)
:::::::::::;;:: :::::::: ( 丶- 、 しE |
::::::;;;::::::::;;;; `ー、_ノ 煤@l、E ノ ( ドンッ!!
:::::: ::::::: ::::::;; ::::::: ::::: :::::;; ⌒
::::::::: :::::;;; ::::::::::::::: :::;
::;;::./ ̄ ̄ ̄\:::;;;;::::::::;;;;;;;:::''
/ ─ ─ \ ハァハァ…
/ <○> <○> \
| (__人__) |
\ `⌒J´ /
日本だと完全に二次元世界、ギャグネタだが、タイとか東南アジアだとマジでニューハーフが襲われたりしてるから困る
突如受信した電波の一発ネタです。
〜寝ゴースト〜
「ふみゅう……」
瑞穂のベッドで、一子が気持ちよさそうに寝ている。
「……そういえば一子ちゃんって、たとえばお寿司なら、何が好きだったのかな?」
「うにー……」
「………!」
瑞穂は、目を丸くして一子を見る。やはり寝ている。
「……一子ちゃん、手紙の昔の呼び方は?」
「ふみー……」
「………」
やはり一子は眠っている。
「……一子ちゃん、生き物はどこから生まれたか知ってる?」
「うみー……」
「………」
その後瑞穂は何度も同じようなことを試してみたが、一子は睡眠中の声で的確に答えてくれた。
そして朝……。
「お姉さま、おはようございます……」
「おはよう一子ちゃん。寝てる時でもしっかり答えてくれるのね」
「……はい?」
一子は全然覚えていなかった。
その後一子は、睡眠時には知らない間に寮生全員のおもちゃにされるのでした。
Fin
以上です。お目汚し失礼いたしました。
うーん・・・
投下させていただきます。よろしくお願いします。
〜乙女の祈り〜
「ごちそうさまでした!」
夏休みの櫻館、僕たちは朝食が終え、1日どうするか話し合おうとしたその時……。
「もうそろそろだね……」
ふと、由佳里ちゃんがつぶやいた。
「何がなのですか?」
奏ちゃんが聞こうとすると、由佳里ちゃんは目を閉じて頭を少し下げ、手を合わせた。
「………」
僕はどうしたのか聞こうとしたけど、なぜか聞けない。なんとなく声をかけづらかった。
「………」
それから1分ほどして、由佳里ちゃんは目を開けた。
「ね、ねえ由佳里ちゃん、何をお祈りしていたの?」
「どんなお願いなのですか?」
僕たちはもういいだろうと、由佳里ちゃんに聞いてみた。
「ひょっとして『お姉さまにえっちなことをしてもらえますように』かにゃあ?」
まりやが意地悪そうに聞く。
「お願いしてたんじゃないですよ」
珍しい、というからしくないな。いつもなら由佳里ちゃんは真っ赤になって必死に否定するのに、こんなリアクションは……。
「由佳里……?」
「じゃあ、何をしていたのですか?」
「黙とうしてたんです」
「黙とう?」
黙とうって、誰に?
「ええ。被爆して死んだすべての方に……」
「あっ!」
僕たちは息を飲んだ。そういえば、今日は8月6日だったっけ……。被爆地出身の由佳里ちゃんには、より非核の気持ちが強いだろう。
「……ごめん」
まりやが神妙な顔で謝った。こんなこと言われては自分の軽はずみな発言を後悔したんだろう。
「……みなさんも、ご一緒にしませんか?」
「そうね」
僕たちは、そろって1分間の黙とうをささげる。
「それにしても、私たちは体験してないけど、あんなおぞましい兵器が平気で使われるほど、戦争って恐ろしいものなのね」
「瑞穂ちゃん、それギャグ?」
まりやが呆れたような顔で聞いてくる。ギャグって?
「どうしたの? 私、何かおかしなこと言った?」
「あ、いや、なんでもない……」
まりやはそう言って引いた。どうしたんだろう?
「お姉さま、話を戻しましょうなのですよ」
「そうね」
「それなのに、今でも世界のどこかで、戦争が行われているわ」
………。
それぞれがみんな、戦争について考えているようだった。
「なんでみんな戦争なんかしたがるんだろ? 悲劇しか生まないっていうのに……」
「したいわね。戦争のない世の中に」
「……そうね」
「そのためにできることを、今から精一杯考えましょうなのですよ」
「うん!!」
戦争のない世界……それを実現するために、それに一歩でも近づけるために、できることを最大限やっていこう……一生をかけて……。
そう決意した朝の出来事だった。
Fin
以上です。架空設定ですが、実はこれ、8月6日に投下したかったのですが、
間に合わなくて、同じ記念日である今日投下しました。
……にしても、そろそろ他の方の作品も読みたいな……と思います。
なんか文科省あたりがおとぼく使って話つくるとこんな感じになりそうだな
私の場合はネタはあるが、それを文章にする力が足りないのですよね。
>>436 まずは書いてみるんだ。
自分の妄想を外に公表する快感にふるえたら、あとはもう猫まっしぐら。
438 :
みどりん:2008/08/15(金) 21:54:16 ID:tV3vvx/d0
フェンシング
「日本人がオリンピックのフェンシングでメダルをとったんですね」
「そうですね。史上初めてだとか………」
奏と薫子がオリンピックの話をしています。
「私にはよくわからないのですが、きっとすごいのでしょうね」
「本当ですね」
奏は急に嬉しそうな表情に変わります。
「……ねえ、薫子ちゃん。今から特訓すればロンドンには間に合うのではないかしら?」
「え?!無理に決まっています、そんなこと」
「でも、この間の試合では勝ったではないですか」
「あんなのビギナーズラックでたまたま勝っただけです。それに、学内でたまたま勝ったのと、日本や世界で戦うのとは訳が違います。剣道だって、同世代の人には勝てることが多いですが、日本一を狙うとなるとまだまだです」
「そう………残念ね」
「いえ、そんなことはないですよ」
といいながら、何事か考える薫子でした。
その翌日………
「瑞穂お姉さま」
「あら、薫子ちゃん、珍しいわね。今日はどうしたの?」
薫子は瑞穂の家に押しかけていきました。
「瑞穂お姉さま、是非オリンピックに出てください。お姉さまならきっと女子フェンシングの日本代表になれると思います!!」
薫子は熱く瑞穂に訴えます。
「ええっ?!それは……何かと無理だと思うのだけど……」
瑞穂はずっこけそうになるのをこらえながら、何とか話を続けます。根本的にセックスチェックで駄目ですものね。
「大丈夫です。お姉さまのようにお強い女性を見たことがありません。ロンドンまであと4年もあります。今から努力すれば、金も夢ではありません!!」
「ええっとね、薫子ちゃん………」
困っている瑞穂の隣で貴子がくすくすと笑っているのでした。
おしまい
太田選手、おめでとうございます。
>>434東の扉さん&
>>437かまきりさん
ここ最近ものすごい熱いです(誤字じゃないです)。SSを書く気力が……
私の部屋にはクーラーなんて無いですし。
>>438みどりんさん
そう言えば、もうオリンピックが始まってるんですね。
全然見る気になれない私は多分ダメ人間なのでしょう。
という訳で、つい先程書き終えた話を投下します。(ぇ?)
『禁断の実』
夏休み初日の学生寮櫻館。
「今日は私が夕食を作ります!」
数日前とは打って変わって妙に上機嫌な由佳里が、キッチンから大声を張り上げた。
「?何か有ったのかな由佳里……」
「そう云えば昼間、由佳里ちゃん宛てに荷物が届いたみたいだけれど……」
「由佳里ちゃんのお料理楽しみなのですよー」
そして夕食の時間……
「お待たせしました!」
食卓の上に料理が所狭しと並べられた。
「全部和食なのね、美味しそう!」
「はい!お姉さまは和食がお好きだと云う事なので、今日は張り切ってみました」
「ちょっと由佳里!何で瑞穂ちゃんにばっかり媚を売るのよ?!」
「……えっと、お姉さま方、奏ちゃんも、冷めないうちに召し上がって下さい」
由佳里はさりげなく、まりやの文句をスルーした。
「「「「(前略中略)アーメン」」」」
「それじゃあ……どれから食べようかしら?沢山有って目移りするわね」
そう云って食卓を見渡した瑞穂だったが、中央にある小鉢を見て動きが止まってしまった。
「どうしたの瑞穂ちゃん?」「「お姉さま?」」
「う……梅干?!」
「はい!今日実家で漬けてる梅干を両親が送ってくれたんです。上岡家自慢の逸品です!」
「ああなるほど、だから和食なのね。でも由佳里なら梅干もハンバーグに入れちゃいそうだけどね」
「まりやお姉さま、いくらなんでもそんな事はしません。梅肉ベースの和風ソースを作る位です」
(((やっぱりハンバーグにも使うんだ……)))
「お姉さま、お顔が真っ青ですけど……大丈夫ですか?」
「……ごめんなさい由佳里ちゃん。私、梅干だけはダメなの」
「あれ?瑞穂ちゃんに好き嫌いなんて有ったっけ?
子供の頃一緒に食事した時、瑞穂ちゃん梅干をバクバク食べてた記憶が有るんだけど……」
「ええ、梅干自体は大好きなのだけれど、ちょっとした理由で私は梅干を食べられなくなってしまったの」
「「?」」「どう云う事瑞穂ちゃん?」
「このままだと由佳里ちゃんと御両親に失礼だから、話をしましょうか……」
「「「ごちそうさまでした!」」」
「おそまつさまでした」
由佳里の料理を一通り平らげ(梅干以外)、奏が食後のお茶を持ってきた所で、瑞穂はおもむろに口を開いた。
「あれは私がまだ中学生だった時の事……
私が通ってた中学は給食が無くて、お昼は購買かお弁当だったのだけれど、
私の場合は楓さんが毎日お弁当を作ってくれて、それを食べていたの。
今日みたいな暑い日は、ご飯の中央に大きな梅干が入っていたから、喜んで食べていたのだけれど……
ある日私は教室の中の違和感に気付いたの。
私が梅干を食べた後、教室のみんなが私の方を向いて不思議な表情をするの。
笑うでも無く、嫌がるのでも無く、例え様の無い表情で私の事を見つめるの。
周りに問いただしてみても、みんな言葉を濁すばかりで答えてくれないし……
そんな事が何回か有って、それがトラウマになってしまったみたいで……
楓さんに梅干を入れない様にお願いして、それ以来私は梅干を食べてないの」
らしからぬ長ゼリフを喋った後、瑞穂は奏が淹れたアイスティーを飲んで一息ついた。
「多分食べている時の私の顔が変とか、そう云う理由だと思うけれど……」
「ふーん。だったら梅干を食べてる時に鏡を見るってのはどうよ?」
「私、すっぱい物を食べると目を瞑ってしまうの。だから見られません」
「カメラで撮るって云うのはどうですかお姉さま?」
「うーん、原因を知るのにそこまでするのは……」
「お姉さま!それでしたら今、奏の目の前で梅干を食べて下さいなのですよー」
「奏ちゃん?」
「奏はお姉さまがどの様な事をされても笑ったりしませんし、嫌がったりもしません!
奏は……奏はお姉さまの力になりたいのですよー」
「良く云った奏ちゃん!その通りよ!あたし瑞穂ちゃんにそんな悩みが有るなんてちっとも知らなかったわ。
あたし達が瑞穂ちゃんの食べっぷりを見届けて、言葉を濁したりせずに瑞穂ちゃんに指摘してあげましょう!
由佳里も賛成よね?」
「は、はいモチロンです。お姉さまには是非食べていただきたいですし……」
「あ、ありがとうみんな。私、梅干に挑戦してみるわ!」
「……と云う訳で、ここからは宮小路瑞穂ウォッチャーの高島一子ちゃんにも加わっていただきます!」
ワーッ!ドンドンパフパフー!
「よろしくお願いします!お姉さまを一挙手一投足まで見逃さずにチェックしたいと思います!」
瑞穂の前に置かれた小鉢には、上岡家特製の梅干が並べられていて、
瑞穂に食べられるのをまだかまだかと待ち侘びている。
他の4人は瑞穂の事を真剣な眼差しで見つめていた。
「あのー、そこまで真剣に見つめられると恥ずかしいのですが……」
「何云ってんの。今一子ちゃんが云ったでしょ、一挙手一投足まで見逃さないって。
あたし達が完璧にチェックしなきゃ意味無いでしょ!」
妹3人が無言のまま首を縦に振った。
「う……わかったわよ。それでは……いただきます」
4人が見つめる中、瑞穂は梅干を(種を取り除いた後)1個丸ごと口の中に放り込んだ。意外と大胆である。
パクッ!
(もにゅもにゅ……うーっ、すっぱ〜い!!)
この時点で既に瑞穂の目は閉じられている。
(もぐもぐ……あ、でも、これ凄い美味しい!ボリュームが有って強烈な酸味で……本物の梅干って感じ)
目を瞑ったまま咀嚼を続ける。
(うん、由佳里ちゃんが自慢するだけの事は有るね。あー美味しかった)
口の中の酸味がある程度治まった所で、瑞穂はようやく目を開く事ができた。
「美味しかったわよ由佳里ちゃん……って、うわーっ?!」
目を開けた瑞穂は思わずのけぞってしまった。
瑞穂の顔から10センチもしない所に、4人の顔が横一列に並んでいたからである。
しかも4人共様子がおかしい。
笑うでも無く、嫌がるのでも無く、例え様の無い表情で瑞穂の事を見つめている。
「どうしたのよみんな?まさかまりや達まで中学のクラスメイトと同じ反応なの?」
「……あ゛ー……瑞穂ちゃん。わかったわ理由」
「え?本当に?教えてまりや。言葉を濁しちゃだめよ」
「んー……そうね。言葉で語るより実際に見せた方が早いわね。今から梅干を食べた瑞穂ちゃんのモノマネをやるわね」
そう宣言すると、まりやは口の中に梅干を放り込んだ。
「ちょ、ちょっとまりや?!」
瑞穂が慌てたのは当然だ。いきなりまりやが瑞穂に向かってキスをせがむ様な仕草を見せたのだから……
「まりや!いきなり何するのよ?!」
キスの構えを解いて、まりやは目を開いた。
「何って……梅干を食べた瑞穂ちゃんのモノマネだって云ったじゃない。
目を閉じて、顔を少し赤らめて、唇を前に突き出して……
どう見たって、瑞穂ちゃんが『Please kiss me!』ってやってる様にしか見えなかったもん」
妹3人が無言のまま首を縦に振った。
「で、そんな瑞穂ちゃんの顔を見てたら何だかムラムラ来ちゃって……
瑞穂ちゃんの顔目掛けて突撃したんだけど、その手前で4人の顔がバッティングしちゃったの。
みんな考える事は一緒よねぇ……」
「そうなのです。奏もお姉さまの引力に引きずられてしまったのですよー」
「……私も以下同文です」
「先程のお姉さまの表情は、モデルさんが数十人束になってもかなわない美しさでした。
あ、モチロン普段のお姉さまもお美しいですよ!
ああ神様、お姉さまの美しさは一子だけのモノにしたいのに……」
「……要するに、梅干を食べると私は変な顔になってしまうって事ね。見苦しい物を見せて御免なさいね」
そんな瑞穂に対して、4人は『空気読め』と云う表情を見せた。
「あのねー、瑞穂ちゃんまだ自分の魅力をわかってないの?
あたしが『Please kiss me!』ってやったって何とも無いけど、史上最強エルダー、
ウルトラスーパービックマキシムグレートストロング瑞穂ちゃんがやると、それだけで破壊力は無限大!
中学の時のクラスメイトが不思議な表情をしてたって云うのは、
多分みんな、瑞穂ちゃんに襲い掛かりたくなる衝動を必死に押さえ込んでたって事よ」
妹3人が以下略。
「今ここに4人居たから何とか止まったけど、瑞穂ちゃんと2人っきりだったら間違いなく押し倒してるわ」
「そんな大袈裟な……」
「ま、兎に角、原因は究明してあげたから、あたし達瑞穂ちゃんからご褒美が欲しいな♪」
「え……えーと、私に出来る事なら」
「多分あたし達が望んでるのは同じ事だと思うから、みんなで一斉に宣言しましょ。せーの!」
「「「「お姉さま、キスして下さい!」」」」
4人が瑞穂の『モノマネ』をした。
「……」
ちゅっ!ちゅっ!ちゅっ!ちゅっ!
4人の唇はあえて見ない事にして、瑞穂は4人のおでこに手早くキスをした。
「な〜んだ、あたしは唇でも良かったのに……」
「奏はおでこでも嬉しいのですよ〜」
「やっぱりお姉さまのキスは最高です。お姉さまお姉さまお姉さまお姉さま〜っ!」
「……」
由佳里は何も云えずにただ惚けている。
「それじゃ結論!瑞穂ちゃんは今後梅干禁止!」
「賛成なのですよー」
「そうですね。お姉さまがキスをしていいのは私だけですから」
「一子さん、どさくさに紛れて理不尽な事を云わないで下さい!」
「……私は梅干を食べない方が良いって事ね、わかったわ」
「あれ?そう云えば瑞穂ちゃん。学食で梅干が出た場合はどうしてたっけ?
エルダーが食べ物を残すってのは、他の生徒にしめしが付かないし、
噂を聞きつけて某生徒会長さんがギャアギャア騒ぎそうだけど……」
「……いや、貴子さんはそんな事しないでしょ。
学食に関しては、あらかじめおばさんにお願いしてあるの。私に梅干は出さないで下さいって……」
「いきなり『貴子さん』とか云っちゃったよこの人……
ま、それなら大丈夫か。学食で梅干を食べたら間違いなく大騒動になるもんね。
いざと云う時は、あたし達がフォローしてあげましょ!」
「?……まりやお姉さまなら、お姉さまにムリヤリ梅干を食べさせてニヤニヤしそうなのに……」
まりやは由佳里が抱いた失礼な疑問に対して怒りもせず、小声でこう云い放った。
「……瑞穂ちゃんが不特定多数の人間からキスを迫られる所なんて見たくもないわ」
((((……え?))))
瑞穂が梅干を再び封印した数日後……
紫苑の「一緒に夏休みの宿題をしませんか?」と云う誘いを受け、紫苑を学生寮に招待する事になった。
「ごきげんよう瑞穂さん」
「ごきげんよう紫苑さん」
「あら?瑞穂さん、他の方々は?」
「ええっと、今日はみんな部活に出ています。私だけ帰宅部ですので……」
一子が瑞穂の部屋のクローゼットに隠れているのだが、無論それは口には出さない。
「それでは宿題を始めましょうか」
「ふふっ、瑞穂さんはせっかちですね。その前にお昼にしませんか?
今日はわたくしが瑞穂さんの為にお弁当を作って来ましたの」
「本当ですか?!ありがとうございます。紫苑さんは料理がお上手なので楽しみです!」
「あらあら、お上手なのは瑞穂さんの方ですわ」
紫苑が食卓の上に重箱を並べ、蓋を開いた。
「全部和食なんですね、美味しそう!」
「はい。瑞穂さんは和食がお好きだと云う事なので、今日は張り切ってみました」
(あれ?この展開は……)
「それではいただきます。沢山有って迷いますね……」
そう云って食卓を見渡した瑞穂だったが、ご飯の中央にある物体を見て動きが止まってしまった。
「どうしました瑞穂さん?」
「う……梅干?!」
「はい。今日は我が家で漬けている梅干を入れてみました。十条家自慢の逸品です」
(やっぱり……)
(瑞穂ちゃんと2人っきりだったら間違いなく押し倒してるわ)
まりやのセリフが瑞穂の頭の中で再生された。服の下は冷や汗でびっしょりになっている。
「あら、どうされました瑞穂さん?
……ああ!わたくしに食べさせて欲しいのですね。ふふふっ、瑞穂さんは甘えん坊さんですね」
(違います違います違います〜っ!)
「では瑞穂さん、あーん!」
紫苑が梅干をつまんだ箸を差し出した。どうする瑞穂?!どうなる瑞穂?!
『完』
GJ
是非お姉さまが梅干しを食べるシーンを見てみたいですね
以上です。
作中では大幅に端折ってますが、この話のお姉さまは由佳里ちゃんとは一緒に寝てません。
『カ』の数日後の話ですが、関連性は全くありません。
実は私、梅干が嫌いです。なので梅干の描写はかなりいい加減です。
とにかくアツい!奏ちゃん聖誕祭向けの話が書けないでいます。
それでは駄文失礼しました。
GJ
いいものを見させてもらいました
>>449 GJ!
不特定多数の前でお姉さまが梅干しを食べたときの反応も見てみたいです
>>449 >「……瑞穂ちゃんが不特定多数の人間からキスを迫られる所なんて見たくもないわ」
思わず嫉妬するまりやに萌えました
まりやでなくても見たくはないでしょう
454 :
みどりん:2008/08/20(水) 22:46:31 ID:K8v+UMLl0
100万本のバラ
食堂に瑞穂とまりあが並んで座っています。なんとなくラジオがなっています。100万本のバラの曲がかかっています。それを聴いてまりやが瑞穂に聞きます。
「ねえ、この曲100万本のバラっていうんだけど知ってた?」
「うん、何となく知っている気がする」
「本当に100万本のバラを贈った人がモデルになったっていうのも知ってる?」
「え?100万本のバラを贈った人が本当にいたの?」
「そうよ、グルジア人の画家でニコ・ピロスマニって人が歌のモデルになったそうよ。全財産でバラを買ったらしいわよ」
まりあがそれに答えます。
「素敵だね」
「ほんとね。そんな熱烈なプロポーズ、私も受けてみたいわ」
「あはは……そ、そうだね………」
「なによう、瑞穂ちゃん、その言い方。何かやなかんじ」
「い、いや、きっと素敵だよね。うん」
「瑞穂ちゃんも誰かに贈ってみたら?きっと喜ばれるわよ」
「そうか………そうだね!」
瑞穂は何事か思いついたようです。
「8月はあんまり市場に出回っていないんだね。集めるのが大変」
瑞穂があちらこちらの市場に連絡して、何かを買い集めているようです。バラでしょうか?
「輸入もしないとだめかなぁ……」
瑞穂は精力的に働いています。
「誕生日までは冷蔵庫にしまってもらって、当日冷蔵車で運んでもらおう。並べる場所は………」
プレゼントを贈る計画をたてているようです。
455 :
みどりん:2008/08/20(水) 22:47:16 ID:K8v+UMLl0
そして、8月26日の朝………
「うわーーー、いちごだらけなのですよう……」
奏の部屋から歓喜の声が聞こえてきました。
「奏ちゃん、誕生日おめでとう。僕からのプレゼント。100万個のいちごだよ」
「ありがとうなのですよう。奏、感激なのですよう」
奏の部屋の床は、歩く場所を除いていちごだらけ、寮の中も軒並みいちごだらけです。瑞穂が買い集めていたのはいちごだったのです。8月は流通が極めて少なく、集めるのが大変だったようです。
そして、誕生日まで冷蔵庫で保存しておいて、奏が寝てからいちごを運び込み、一生懸命並べたようです。これは、すごいプレゼントです。
「うっわーーー、これはすごいわね」
まりやも部屋から出てきて、驚きます。
「うん、100万本のバラの話を聞いて思いついたんだ」
「でも、本当にやるとは。……瑞穂ちゃんやるわね」
「可愛い妹のためだからね」
「……と、ほめたいところではあるんだけど、このいちごどうするの?食べ終わる前に腐っちゃうんじゃない?」
「あ………」
「それに、バラを贈った画家は振られちゃったのよ」
「え?そうなの?」
「うん、言わなかったっけ?瑞穂ちゃんも振られちゃうんじゃない?」
「う…………ま、まあ、奏ちゃんが喜んでいるからいいんじゃない?」
「そうね。それはいいんだけど、いちごの処理が問題よね。学校にいる人をいっぱい連れてこないといけないかしら?」
「うん……………………」
そう言っていちごと奏を眺めています。奏は嬉しそうに一人でいちごをぱくぱくと食べています。もう、いちごの世界に浸りきっています。
「あの、まりや。それは大丈夫みたいだけど」
「あ、あたしも今そう思ったところ」
二人の見ている前で、いちごはすさまじい勢いでなくなっていきました。あれから10分も経っていないと思いますが、既に奏の部屋の中のいちごはほとんどありません。
そして、2時間後………
「ああーーー、おいしかったのですよう。お姉さま、ありがとうなのですよう」
100万個のいちごを食べ終えた奏が本当に嬉しそうに瑞穂に礼を言いました。体形は全く変わっていません。一体どこにいちごは消えてしまったのでしょうか?
「え、ええ。喜んでもらえてよかったわ」
そう答える瑞穂は、少し引き気味なのでした。
おしまい
456 :
みどりん:2008/08/20(水) 22:47:53 ID:K8v+UMLl0
100万個÷2時間=秒食140個!!
15cc×100万個=15m3!!
甘いものは別腹なのですよ
そういう問題ではないでしょう・・・・
みどりんさん
少し早い奏ちゃん聖誕祭記念SSですね。
奏ちゃんの胃の中はブラックホールですか?(苦笑)
ばんくーばーさん
禁断の実、面白かったです。
>奏ちゃん聖誕祭向けの話が書けないでいます。
そういう時は気分転換でもした方がいいと思いますよ。煮詰まった頭で考えても泥沼ですから。
まあ、そういう私もいい話が書けないでいますが。
ところで今日の朝から
おとボクSS投稿掲示板には入れないんだが。
自宅PCと携帯両方試したがダメだった。
何が起こっているんだ?わかる奴いる?
461 :
sage:2008/08/23(土) 22:14:43 ID:rTjeAmLs0
おとボクSS投稿掲示板は8月20日に管理人の都合により閉鎖されました。
あそこの管理人さんの自腹でやってたHPだから仕方ないけどね。
でもあそこにしかないSSも多数あったから全部消えたのは痛いね。
>>462 Diffbrowserのログ漁ったらこんなこと書いてあったぜ
======== Anime/Game/Novel/おとボクSS投稿掲示板 ======== (2008/08/19 23:25:10) ▽
■閉鎖のお知らせ■
唐突ですが明日の20日を持ちまして閉鎖します。理由は有料サーバーの料金の支払いが困難になってしまった、です。
元々、とらハSS投稿掲示板のついででやっていたので。
過去ログに関しては管理人のホームページTOP(とらハSS掲示板のリンク参照)にでも置いておきます。
2年間(くらい?)の愛顧、ありがとうございました。
その
とらハSS掲示板にすら入れなくなってるぞ。
これまでの優良SSの数々が…orz
>>464 リンク参照って言うから、誰かリンク先思い出せば何とかならあな。
私も奏ちゃん聖誕祭記念SSを投下させていただきます。
ルート指定はなし、奏ちゃんたちが2年生の時の話です。よろしくお願いします。
〜だから私がいる〜
8月24日、櫻館……。
「ただいま帰りましたー!」
「お久しぶりです、奏お姉さま」
帰郷していた由佳里ちゃんと、ご両親に会いに行かれていた初音ちゃんが帰ってきました。
「お帰りなさい、由佳里ちゃん、初音ちゃん」
でも、どうしたのでしょうか? 夏休みの終わりにはまだ早いですけど……もしかして……!
「でも2人とも、夏休みの終わりにはまだ早いですよ? どうしたのですか?」
私、周防院奏は期待に胸を高鳴らせて聞いてみます。
「うん、実はね……」
実は……?
「明日近くでハンバーグコンクールがあるんだ! だから是非見に行きたくて!」
「私は、由佳里お姉さまに是非と誘われましたから……」
ガクッ……なんだ、私のお誕生日のことではないのですね……。
「みんな! ただいまー!」
そこへ、実家に帰っていた薫子ちゃんが帰ってきました。
「薫子ちゃんまで早くに帰ってくるなんて、どうしたのですか?」
「いやあ、由佳里さんに一緒にハンバーグコンクールに行かないかって誘われたもんですから……」
……ささやかな期待を抱いたりしなければよかったです。
翌日、由佳里ちゃんたちはハンバーグコンクールに出かけて行ったようで、私は櫻館で1人お留守番です。
「はあ……」
みんな私の誕生日のことを忘れているんでしょうか……? というか、去年祝ってくださったのは
お姉さまとまりやお姉さまと一子ちゃんの3人でしたし、私の誕生日のことは知らないのかも……。
「今日は最高の1日だったね」
「由佳里お姉さま、ハンバーグのことになると途端に生き生きしてらっしゃいましたね」
「由佳里さん、あれはさすがに限度がありますよ……」
夕食後、みなさんは今日の話題で盛り上がっています。結局、この日は私の誕生日のことは
まったく話題にあがりませんでした。
自分から誕生日だから祝ってなんて言うのも押しつけているようでイヤですし、
さりげなくみんなに気づかせてみることにしましょう。
そして8月26日、朝……。
「あ、今日は私にとって……」
朝食も終わり、私にとってとても楽しみな日、と言おうとした、その時……。
「奏ちゃん!」
由佳里ちゃんが大声で私に話しかけてきました。
「由佳里ちゃん……ど、どうしたのですか?」
私は腰を抜かしそうになるのを必死でこらえて聞き返します。
「ごめん! 今日取りに行かなければならないものがあったんだけど、すっかり忘れちゃってて、
悪いけど代わりに取りに行ってくれない?」
「ど、どうして私が……」
「ホントは私が行きたいんだけどさ、夏休みの宿題まだ全然終わってないし、
他にもやらなきゃいけないことがいっぱいあって……だからさ」
「別に今日じゃなくても……」
それに、それなら初音ちゃんに頼めばいいと思いますが……。
「それが、どうしても今日取りに行く必要があるのよ! また埋め合わせはするからさ、お願い、このとおり!」
由佳里ちゃんは手を合わせてお願いしてきます。埋め合わせって、できれば今日してほしいのですが……。
「……わかりました。私が取りに行ってきます」
ここまで言われたら断れません。私はため息をついて由佳里ちゃんの荷物を取りに行きました。
そしてお昼ごろ。ようやく由佳里ちゃんの荷物を取りに行って、櫻館まで帰ってきました。
「由佳里ちゃん、頼まれていたものです」
「ありがと奏ちゃん。もう昼食始まるわよ」
そして由佳里ちゃんの音頭で昼食が始まりました。
言いそびれましたけど、今度こそは……今からでは、大したものは用意できないかもしれませんけど……。
「実は今日は……」
「あ、奏お姉さま!」
今度は薫子ちゃんが声をかけてきました。
「どうしたのですか、薫子ちゃん」
なんかイヤな予感がします。
「ここに帰ってくる時の荷物、あたし間違えて宅配センター止めにしちゃったんですよ。
それで、申し訳ないですけど、奏お姉さまにも手伝って欲しいと思いまして……」
薫子ちゃんはばつが悪そうにお願いしてきます。
「……わかりました。どこの宅配ですか?」
断るのもかわいそうなので、仕方なく手伝ってあげることにします。
「いやあ、ありがとうございます、奏お姉さま」
「気にしないでください。全部運び終えてよかったですね」
「奏お姉さまが手伝ってくださったおかげですよ」
運び終えた時には、もう夕方に入る頃になっていました。私は満面の笑顔を浮かべる薫子ちゃんとは対照的に、
憂鬱な気分でいっぱいでした。
仕方ありません。今からでは去年みたいな盛大なお祝いはあきらめましょう。
「もうこの調子じゃ、去年と同じなのは……」
「奏お姉さま!」
今度は初音ちゃんが声をかけてきます。
「初音ちゃん、どうかしましたか?」
心の中では泣きそうになりながらも、努めて笑顔で対応します。
「実は陸上のスニーカーがボロボロになってしまいまして……明日いるんですけど、忘れてまして……
それで、奏お姉さまに見立てていただこうと……」
なんで今日に限って、こんなにみんなに用を言われなければいけないのでしょうか?
「それは、由佳里ちゃんではダメなの?」
「まだ夏休みの宿題が終わってなくて必死の由佳里お姉さまには頼めませんから……」
「でも自分に合ったのなら、陸上部の初音ちゃんのほうがわかってるんじゃないですか?」
「それはわかってますけど、デザインの見立ては奏お姉さまのほうが確かですから……
薫子ちゃんに似合う衣服も見立てられたって聞きましたし……」
「……もう時間がありませんから1軒だけにしますけど、よろしいですか?」
「はい! ありがとうございます!」
「奏お姉さま、今日はありがとうございました!」
「いえ……初音ちゃんのお役に立てて嬉しいですよ……」
無事初音ちゃんに似合うデザインのスニーカーを見立ててあげましたけど、私はもう時間がないことにガックリしました。
「では、私はこの後用事がありますので、これで……」
そう言って初音ちゃんは元気いっぱいに走っていきます。
「はあ……」
ここまで遅くなってしまっては、もうまともなパーティーを開いてもらうのもムリでしょう……
私は、落胆しながらトボトボと帰路に着きました。
そして、櫻館の食堂に着いたとき……。
「奏(ちゃん)(さん)(お姉さま)、お誕生日おめでとう(ございます)!!」
派手に数本のクラッカーが鳴ったかと思うと、皆さんの祝福の言葉が聞こえてきました。
食堂には由佳里ちゃん、薫子ちゃん、初音ちゃんのほかに、瑞穂お姉さま、紫苑お姉さま、
貴子お姉さまもいらっしゃいます。
「………!?」
あまりのことに、私は口が開けませんでした。
「あはははは、今の奏ちゃんの顔」
由佳里ちゃんが笑い転げます。
「もう、由佳里ちゃん、意地悪が過ぎるわよ」
「本当にまりやさんの妹ですわね」
お姉さま方が呆れ顔で由佳里ちゃんに言います。
「ごめんなさい奏お姉さま、由佳里さんに口止めされてましたので」
「奏お姉さま、すみませんでした」
薫子ちゃんと初音ちゃんが謝ってきます。これは……もしかして……。
「由佳里ちゃん、最初から……」
「そうだよ。初音と薫子には十分口止めしといて、いままで気づかれないように誕生パーティーの準備をしてたの」
「じゃあ、みんなで私に用事を言ってきたのは……」
「そっ。奏ちゃんを寮から追い出すのが目的。その間に私たちはお姉さま方を呼んで、
パーティーの準備に取りかかってたってわけ」
「由佳里ちゃん、ひどいですよ! みんなでグルになって、今まで黙って……」
「まあ今まで落ち込んでた分、楽しめるってことで勘弁してくれない?
っていうか、物語の展開読むのは得意なのに、リアルの話はからきしね」
「ど、どういう意味ですか?」
「いいかね周防院くん。考えてみたまえ。私はともかく初音や薫子まで帰る時期を早めてまで私の趣味に付き合うと思うかね?」
「あ……」
まりやお姉さまのマネをして解説する由佳里ちゃんに、ハッとしました。
「それに、君が誕生日の話題を出すたびにそれを遮ったり、今日に限ってみんなで用を言ったり、
私が初音がいるのに奏ちゃんに雑用を言ったりするのはおかしいと思わなかったのかね?」
「………」
言われてみればその通りです。どうしてそのことに気づかなかったのでしょうか?
「ま、それはともかく、落ち込ませた分だけ祝ってあげるから、ほら、早く席について」
その後、皆さんに盛大に祝ってもらい、私はすごく幸せな気分になりました。
「初音の買い物が終わって、奏ちゃん、どう思ったか当ててあげましょうか?」
「由佳里ちゃん、どう思ったというのですか?」
「『奏、とってもブルーなのですよ』。でしょ? 違う?」
由佳里ちゃんは、昔の私のマネをして言ってきます。
「わ、私はもう“なのですよ”なんて言いません!」
「言ってるじゃない」
「だから、“なのですよ”なんて言ってません!」
「あは、また言った」
私の反論に、由佳里ちゃんはこともなげに返してきます。
「……奏ちゃん、由佳里ちゃんは反論する時のなのですよのことを言ってるんだと思うよ?」
瑞穂お姉さまにそう指摘されて、やっと気づきました。
「由佳里ちゃん!」
「ごめんごめん。まあ、ちゃんと祝ってあげてるんだから、細かいことは気にしないで、パーッと楽しみましょ?」
まったく悪びれずにそう返す由佳里ちゃん。お姉さま方のおっしゃるとおり、本当にまりやお姉さまの妹です。
「ねえ瑞穂さん、『なのですよ』って何?」
「奏ちゃんの昔の口癖よ。昔は自分のことを『奏』って言って、その口癖を使ってたの」
「お、お姉さま……」
「昔の奏ちゃんもとても可愛かったですけど、今の奏ちゃんも素敵ですわ」
紫苑お姉さまはそう言って、私を抱きしめてきました。
その後、皆さんに精一杯の祝福を受けて、大変満足なパーティーになりました。
おまけ
「奏お姉さま、今度のあたしの誕生日ですけど……」
「どうしたのですか?」
「あたし、奏お姉さまに欲しいプレゼントを指定していいですか?」
「いいですけど、薫子ちゃん、私に何が欲しいのですか?」
「その日1日、昔の『奏は』『なのですよ』を使う奏お姉さまを見せてほしいんです」
「え……?」
私はそれを聞いて、恥ずかしさでいっぱいになりました。
Fin
以上です。ありふれたネタですみません。
お目汚し失礼いたしましたのですよ。
GJ 面白かったです
みどりんさん、東の扉さん、GJなのですよー
私も投下したいと思います。
故あって本文は説明不足なので設定を……
一子エンドの1年後、奏ちゃんがエルダーになった後の話です。
奏&由佳里ちゃんはお姉さまの正体を知ってます。薫子&初音ちゃんは知りません。
『十十(ダブルクロス)』
8月初め。とある場所に呼び出された薫子は、意外な光景に立ちすくむ事になる。
「……瑞穂さん、本当にコレをやるんですか?」
「ええ。お金をかけただけのプレゼントよりも、この方が奏ちゃんは喜ぶかな……と」
「それはそうだと思いますが、コレってかなり面倒臭いんじゃないですか?」
「でも、だからこそやる価値が有る……と私は思ってます。
出来れば薫子ちゃんにも一緒にやって貰えると嬉しいのだけれど」
「……そうですね。あたしの頭じゃ他に良いアイディアは思いつきませんし、
瑞穂さんに付き合いますよ。お姉さまの為ならエンヤコラです!」
「ふふっ、ありがとう薫子ちゃん」
そして8月26日。学生寮櫻館で周防院奏誕生パーティーが内輪の面々だけで行われた。
(2学期初めに、生徒達による盛大なパーティーが改めて開かれるらしい)
奏・由佳里・薫子・初音・瑞穂・貴子・紫苑、計7名の参加である。
「アメリカに留学しているまりやから、誕生日カードが届いてます!」
瑞穂がポケットからカードを取り出した。
「瑞穂さん、そんな物わざわざ読み上げる必要は無いですわ」
「貴子さん?」
「まりやさんの事ですから、
『奏ちゃん誕生日おめでとう!当日までに間に合うかわかりませんが、奏ちゃんに似合いそうな服を送ります』
なんて書いてあって、大きなダンボールで大量の服を送って来る……と云うオチですわどうせ」
「……ええと、それでは読みます。
『奏ちゃん誕生日おめでとう!当日までに間に合うかわかりませんが、奏ちゃんに似合いそうな服を送ります』」
「「「「「「「……」」」」」」」
ピンポーン!
絶妙なタイミングで寮の呼び鈴が鳴った。
「はーい、今出まーす」
初音が来客に応対した。
「あの、まりやお姉さまから荷物が届いているのですが……」
「大きなダンボールで?」
「はい」
「「「「「「「……」」」」」」」
貴子のエスパーっぷりに固まってしまった一同だが、何とか立て直し、誕生パーティーは極々平和に進行した。
プレゼントの受け渡しもほぼ終了し、残るは瑞穂と薫子だけである。
「薫子ちゃん、準備はいい?」
「は、はい瑞穂さん!」
瑞穂と薫子が、それぞれ小さな箱を奏に差し出した。
「誕生日おめでとう奏ちゃん!」「お姉さま、誕生日おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「「もちろん!」」
2人から同時に渡された為、面食ら……もとい戸惑ってしまった奏だったが、気を取り直し、2つの箱を開けた。
「これは、十字架……ですか?」
薫子の箱に入っていたのは、剣をモチーフにした十字架だった。
瑞穂の箱に入っていたのは、盾をモチーフにした十字架だった。
8月上旬、某工房にて……
「複雑なデザインにするのはやめましょうね瑞穂さん」
「そうね。大事なのは見た目よりも奏ちゃんに対する想いですものね。でも手抜きはダメよ」
「うぐっ……も、モチロンです」
銀をベースにした合金(純銀では軟らかすぎる為)を切り出し、それを少しずつ削って加工していく。
チュイーン!ガリガリガリ!
「あ、でも、結構楽しいですねコレ」
大雑把な形の合金が、少しずつそれらしい形へと変化する。
「あ゛ーっ?!」
手が滑り、せっかくの作品が台無しになる。そうなったら1からやり直し。
「前言撤回!あームカツク!」
「……ぷっ」
薫子の百面相に、瑞穂は思わず吹き出してしまった。
そんな事を何度も繰り返し、ようやく薫子の剣が完成した。
キュッキュッキュッ……キラーン!
「どーですか瑞穂さん、この神々しい輝き!この銀の剣なら吸血鬼だって一撃ですよ!」
「ふふっ、そうね。それでは私はその剣では貫けない盾を作りましょう」
「あ、それ知ってますよ。『矛盾』って奴でしょ……ってアレ?」
瑞穂が作っている盾は、一応それらしい形にはなっているが、
模様などが全く無く、現状ではただの金属板でしかない。
「私の盾は、薫子ちゃんの剣が出来てからが本番だから」
「どう云う事ですか瑞穂さん?」
・
・
・
「……とまあ、こう云う経緯で完成したのが、この剣と盾です」
「奏ちゃん、受け取って貰えるかしら?」
「はい!ありがとうございます、お姉さま、薫子ちゃん!」
「それじゃ薫子ちゃん。奏ちゃんに着けてあげて」
「ラジャー!」
薫子は奏に渡した剣と盾を受け取り、盾に刻まれている十字型の窪みに剣を嵌め込んだ。
「「「「「……ッ!」」」」」
今回瑞穂が一番苦心した場所がここだった。
2つの十字架を一緒に身に着けて貰う為、合体ロボ方式を採用したのである。
まりやがこの場に居たら、「瑞穂ちゃんのこう云う所って男の子よねぇ」などど云っただろう(云えないけれど)。
薫子の剣の形に合わせて、盾を中央部から少しずつ削っていく。
ある程度削ったら剣を合わせ、微調整を繰り返す。
そうして出来上がったのが、中央に十字型の窪みがある盾型十字架だった。
瑞穂がバッグから何かを取り出した。
「剣と盾を貰ってくれた方には、もれなくこの『ペンダント用シルバーチェーン』をセットでプレゼント!」
「しかも金利手数料は瑞穂さんとあたしが負担!」
「「「「「……」」」」」
「ありゃ?……(小声)瑞穂さん、みんな引いちゃってますよ」
「……(小声)とりあえず無かった事にして続けましょう」
剣と盾両方にチェーンを通し、完成したペンダントを奏の首に掛けた。
「似合いますか?」
ワーッ!パチパチパチパチ!
ペンダントを着けた奏に、場が盛り上がった……のだが……
「奏ちゃん!」「お姉さま!」
「は、はい!」
瑞穂と薫子が突然真剣な表情になった為、それにつられて奏も表情を引き締めた。
「私は奏ちゃんを守る盾になります」
「あたしはお姉さまを護る剣になります!」
「……え?」
「私達の決意が、奏ちゃんへの本当のプレゼントです」
「受け取って貰えますか、お姉さま?」
「……」
奏は何も云えないまま固まってしまった。
「(小声)瑞穂さん、もしかしてあたし達思いっきり外しちゃったんじゃ……」
「(小声)そ、そんな事は無いと思うけれど……」
奏の反応にどう対応すべきかわからず困り果てた2人だったが、更に追い討ちが掛かった。
奏の両目から、大量の涙が溢れ出てしまったのだ。
「奏ちゃん?!」「お姉さま?!」
ひたすら涙を流す奏に対して、2人は何も出来ずにただオロオロするばかり。でもそれは杞憂だった。
「えぐっ……私は……こんなに幸せで、良いのでしょうか?
お姉さま、薫子ちゃん、ありがとうございます……グスッ」
奏は何とかお礼の言葉を云い終えると、再び泣き出してしまった。
「なーんか、瑞穂お姉さまと薫子に全部持って行かれちゃったって感じよね初音?」
「そうですね。でも、私も何だか嬉しくなって来てしまいました」
「……奏さんは良い姉と妹に恵まれて幸せですわね」
「あれだけの事をして奏ちゃんが悲しむ筈無いのに……薫子ちゃんは瑞穂さん並の鈍感ですね」
4人は奏達の事を暖かい目で見守っていたが、突如由佳里がわざとらしい大声をあげた。
「あーあ!瑞穂お姉さまと薫子にパーティーを台無しにされちゃった。片付けるわよ初音!」
そう云いながら、由佳里の表情は底抜けに明るい。
「はい、由佳里お姉さま!」
初音は奏達に微笑みかけると、テーブルの後片付けを始めた。
「それではわたくしも手伝いましょう。
瑞穂さん、そこに立っていると邪魔ですから、後は3人でごゆっくりどうぞ!」
そう云うと、貴子は奏達3人を強引に食堂から追い出してしまった。どうやらこれが貴子流の『片付け』らしい。
「残念ですわ。『わたくしは奏ちゃんを守る鎧になります』なんて云いながら、
奏ちゃんを抱き締めようと思ってましたのに……」
「紫苑さま、それはア……」
「……あ?」
「ア……後にして下さい。今は3人だけにして差し上げましょう」
(云えません。『アイアンメイデン』なんて、絶対に云えませんわ!)
貴子達に追い出された3人は奏の部屋へ……
今の3人に言葉は要らない。瑞穂と薫子に挟まれる形でベッドに腰掛けた奏は、2人に甘える様に抱きついた。
どれ位時が経ったのだろう?ふと気が付くと、奏は瑞穂と薫子の手を握り締めたまま眠りに落ちていた。
「……あ、そうだ。薫子ちゃんにコレを渡すのを忘れてた」
瑞穂は薫子に小さな箱を手渡した。
「何ですかコレ?……って、ええっ?!」
箱を開けた薫子は少し驚いた。中に入っていたのが、薫子が奏にあげた剣型十字架と同じ物だったから。
「コレは薫子ちゃんの剣から型を取って作ったレプリカよ。私もほら……」
瑞穂は薫子に盾型十字架のレプリカを見せた。
「薫子ちゃんも奏ちゃんとお揃いで持ちたいかな?って思ったから」
「あ、ありがとうございます瑞穂さん」
「私も出来るだけの事はするけれど、この学院内で奏ちゃんを守るのは、主に薫子ちゃんの役目だから……ね」
「はい!七々原薫子、全身全霊を持ってお姉さまをお守り致します!」
「ふふっ、これからもよろしくお願いしますね、薫子ちゃん」
「こちらこそ、瑞穂さん!」
瑞穂と薫子の間で、奏が幸せそうな寝息をたてている。
(実は起きているのですけれどね……お姉さま、薫子ちゃん、これからもよろしくお願い致します)
薫子の剣と瑞穂の盾は、奏の胸でひとつになった。
薫子の剣のレプリカと瑞穂の盾のレプリカが、ひとつになる日は来るのだろうか?
『―― to be continued?』
以上です。薫子と瑞穂が壊れ気味なのは仕様です。
真面目な話を書くつもりだったんですが何故こんな事に……
実はこれ、長編?『薫子ルート(仮名)』シリーズの2話目だったりします。1話は半分くらい書いた所で止まってます。
もう少し正確にいうと、大雑把な話の流れと各話のタイトルまで考えたんですが、
冷静に振り返り「これは自分には無理だ」と判断。2話(この話)までで投げる気マンマンです。
それでは
奏ちゃん、誕生日おめでとうございます!
『薫子ルート(仮名)』シリーズ第1話『背中』。coming…………soonではないです多分orz
GJ、なかなかです
490 :
なー:2008/08/27(水) 12:20:17 ID:HVmHWMiF0
gj です。
奏ちゃんルート以外のssを用意していたのですが、
アク禁の巻き添えで投稿できないのですよ~。
orz...
チナミニ コレハ Ds ノ AP カラ カキコ。
491 :
みどりん:2008/08/27(水) 22:08:59 ID:lTUEKZ470
夢
――――これは、瑞穂がいちごを並べている夜の話です。
瑞穂は昼間のうちに夜間トラックと数名の人間が校内に入る申請を済ませていた。そして夜、予定通りいちごを大量に積んだトラックが寮にやってくる。楓とその機動隊は瑞穂の指示で大急ぎで予めトレイに並べられたいちごを寮内へと運び入れる。
日頃楓の厳しい訓練で鍛えられている機動隊はきびきびと、だがしかし静粛に働き、いちごをみるみる寮内へと運び込んでいった。
トラック内部はひんやりとしており、いちごは低温に保たれていたが、それを外に運び出すといちごの温度があがり、いちごから甘い香りが立ち上る。
奏の部屋に並べられたいちごからもいちごの香りが漂ってくる。そして、奏の部屋はいちごの香りで充満してしまった。
そんな雰囲気の中で寝ている奏は夢を見ている。
492 :
みどりん:2008/08/27(水) 22:09:50 ID:lTUEKZ470
夏はいちごのかき氷がおいしいのですよう。
ほんもののいちごは夏はないから、かき氷で我慢するのですよう。
冷たくておいしいから、それでもいいのですよう。
でも、そろそろほんもののいちごも食べたいのですよう。
あ〜あ、この寮がいちごでできていたら、幸せなのに……
そうしたら、いっぱいいっぱいいちごを食べられるのに……
目を瞑っていちごのお部屋を考えてみるのですよう。
お部屋の中はいちごだらけ。
ベッドもいちご、壁もいちご、床もいちご、
ぜ〜んぶぜんぶいちごでできているのですよう。
………あ、何かいちごの匂いがしてきたみたいなのですよう。
でも、これは奏の夢の話だから、目を開けたらいちごは消えてしまうのですよう。
………
でも、だんだんいちごの匂いが強くなってきたみたいなのですよう。
……少し………ほんの少しなら見ても消えないですよね。
すこ〜し……すこ〜し………
あ!………本当にお部屋がいちごに変わっているのですよう。
わ〜い!わ〜い!!うふふ……うふふ……
ベッドもいちごなのですよう。ふわふわ!
うふふ……うふふ……いちごのベッドは気持ちいいのですよう。
少しかじってみるのですよう
………おいしい!!奏、幸せなのですよう!!
ほっぺたをいちごにくっつけるのですよう
すりすり……すりすり……うふふふ……しあわせ……
いっぱい、いっぱいいちごをたべるのですよう
うふふ………うふふ……おいしい……おいしい……
たべてもたべてもなくならないのですよう……
おいしい……かべも食べるのですよう
床も食べるのですよう。
わ〜い!わ〜い!!
まだまだ、いちごがいっぱいなのですよう。
いちごのお部屋は幸せ一杯なのですよう
493 :
みどりん:2008/08/27(水) 22:10:53 ID:lTUEKZ470
奏はベッドででれ〜っとした表情によだれをたらしながら、ニコニコ笑って眠っている。
そして、朝。奏はいつものようにパッと目を覚ます。
「……あ、夢だったのですよう。でも、素敵な夢だったのですよう。本当にいちごが一杯食べられて幸せだったのですよう。それに、まだ何かいちごの匂いがする感じがするのですよう。
………あれ?本当にいちごの匂いなのですよう。夢ではないようなのですよう!!」
奏はがばっと起き上がり、そして辺りを見てみる。奏の目には山のようないちごが飛び込んできた。
「うわーーー、いちごだらけなのですよう……」
おしまい
GJです
495 :
みどりん:2008/08/28(木) 23:43:21 ID:ImKTzymM0
現実
「あ〜、もうすぐ新学期。奏さんや初音ちゃん、薫子ちゃんに会えるわ。みんな元気にしているかなぁ」
家で由佳里がうきうきしている。そんな由佳里に母親が声をかける。
「由佳里、あんた学校に行くのはいいんだけど、ちゃんと勉強しているんでしょうね。宿題もやったの?」
「うっ………………」
「由佳里……どうしたの?由佳里っ、由佳里ったら!!」
由佳里は母親の一撃必殺の攻撃で、生命力が0になり、固まってしまった。
「はあ、死ぬかと思ったわ。恐るべし、母親。少しはわたしも防御力をつけないと……。少しは宿題しておけば反論できるものね。宿題は……あはは、何か夏休みで初めて鞄を開ける気がするわ。何があるのかしら?」
由佳里は鞄を開けて、どのような宿題があるか調べ始めたのだが………
「うっ………………」
由佳里は学校の仕掛けたトラップに捕まり、生命力が0になり、また固まってしまった。
「お、恐るべし、宿題……。何でこんなにたくさんあるの?こういうときは、奏さんに見せてもらう………のは無理ね。奏さんまじめだから。はぁ………地道にひとつづつ片付けるしかないのかなぁ」
由佳里は健気にも宿題を順番にやっていこうと決心した。そして、最初の問題集を開く。
「え〜っと、何々?………うっ………………」
由佳里は問題集の毒にあたり、生命力が0になり、またまた固まってしまった。
「え〜ん、あのまま寝ちゃったよう。全然進んでない。仕方が無い。見せてもらうのは無理でも、教えてはくれるわよね。奏さん、親切だから」
翌朝、由佳里は学校に出かけて、寮で宿題をすることにした。
「母さん、学校に行ってきます」
「どうしたの、由佳里?まだ夏休みだっていうのに……」
「寮で宿題をしてくるの」
「えっ!宿題をする?!………」
由佳里の母親は思いもしない由佳里の行動に驚き、固まってしまった。
………よく固まる親子だ。
496 :
みどりん:2008/08/28(木) 23:44:02 ID:ImKTzymM0
「奏さん、ごきげんよう」
「あら、由佳里さん、ごきげんよう。どうしたのですか?夏休み中なのに……」
数時間後、由佳里は寮に到着していた。
「お願い!宿題を教えて!見せてとは言わないから……」
「ああ、そういうことですか。いいですよ、一緒に勉強しましょう」
「ありがとう!奏さん」
「それで、どの宿題をやればいいのですか?」
「え〜っとね、昨日初めて宿題を開いたから、これから全部やらないといけないの……」
「えっ!!」
あまりにショックな答えに、奏は固まってしまった。
「奏さん、大丈夫?体、動く?」
奏をようやく解凍して動くようにした由佳里が、奏に声をかける。
「え、ええ。少しショックで驚いたのですが、もう大丈夫です」
「それでは、私の部屋で……」
「ええ、始めましょう」
ようやく宿題が開始された。奏の指導の下、何とか宿題を始めた由佳里である。30分もすると、由佳里の宿題も軌道に乗ってきて、快調に進み始めた。
更に数時間が経ち、あたりは暗くなってきた。
「由佳里さん、そろそろ、私、……眠たく……なってきてしまって………」
奏が本当に眠そうに由佳里に訴える。
「あ゛ーー、奏さん、まだ8時よ?寝る時間じゃないわ!まだ、宿題だってこんなにあるのに!!」
由佳里は必死に奏を起こそうとしたのだが、全く駄目であった。奏は由佳里のベッドに倒れこみ、グーグーと眠ってしまった。
「え〜〜ん、一人でやるしかないよう……」
由佳里は夜遅くまで宿題をやり続け、翌日も、その翌日も終日宿題をして、なんとか提出に間に合ったのであった。
宿題は計画的にね♪
ご利用も計画的にね……?
おしまい
GJです、最後がちょっとあれかな
何だか眠れないので、唐突に思いついた
>>447の別ヴァージョンを……
『禁断の実 周防院奏誕生日Ver.』
瑞穂が梅干を再び封印した約ひと月後。
8月26日の夜、奏の誕生パーティーが終わった後の瑞穂の部屋……
就寝前のティータイム。奏の誕生日でもそれは変わらない。
「お姉さま、奏……お姉さまに差し上げたいモノが有るのですよー」
「ええっ?!今日は奏ちゃんの誕生日なのに……」
奏が差し出したのは、小さな皿に載った丸い物体……
「う……梅干?!」
「はいなのですよー!」
奏は、これ以上は無いと云わんばかりの笑顔を見せた。
「ええと、要するに……『コレを食べろ』と云う事かしら?」
「いいえ、コレはお姉さまに差し上げるだけなのです。どうされるかは、お姉さまの自由なのですよー」
「……ええっと、一子ちゃんは何処へ行ったのかしら?」
「一子さんは由佳里ちゃんの所なのですよー」
「……」
(これを食べたらシャレにならない事に、かと云って捨てる訳には……どうする瑞穂…………そうだ!)
「それじゃ、奏ちゃん……あーん!」
瑞穂は梅干を指でつまみ、奏に差し出した。
「はやや?お姉さま?!」
「奏ちゃんが食べている所を見てみたいわ。はい、あーん!」
「あ、あーん……はむっ!」
(!すっぱいのですよー)
あまりのすっぱさに、奏の目が閉じられた。
……ちゅっ!
(?!)
目を瞑った奏の額に何やら幸せな感触が……
「お、お姉さま?!」
奏は慌てて梅干を飲み込み、目を開けた。
「ふふっ、奏ちゃんの顔……可愛かったわよ」
奏の顔が見る見るうちに真っ赤に染まって行く。
「オネエサマ……アリラトウゴライマフナノレフヨー…………きゅぅ!」
真っ赤になったまま奏は気絶してしまった。
「わあっ?!奏ちゃん、奏ちゃーーーんっ!」
『続かない』
以上です。即興で20分で書いてみました。駄文失礼致しました。
結構面白いです
1年ぶりにきてみたら、まだこのスレ続いてたんだw
しかもpart16まで。
みんなすげえなぁ…
503 :
みどりん:2008/09/05(金) 23:27:10 ID:u4WLB0nC0
紫苑と二人きり……
その日も瑞穂と貴子は仲良く大学に向かっていました。
「そういえば、今日紫苑さんが一緒に買い物に行こうって誘ってくれているんだけど、貴子も行かない?」
大学で瑞穂が思い出したように貴子に声をかけます。
「あ、残念ですわ。今日は私は大学で用事がありますから、行けませんわ」
貴子が本当に残念そうに答えます。
「そう……それじゃあ、仕方ないね。僕だけ行ってくるから」
「分かりましたわ。紫苑様によろしくお伝え下さいね」
「うん、分かった」
と、瑞穂と別れた貴子でしたが……
「紫苑様はただのお友達。紫苑様はただのお友達。何も心配する必要はありませんわ……」
やはり、紫苑と瑞穂を二人きりにさせるのは、どうも気になるようです。
「紫苑様はただのお友達……紫苑様はただのお友達……」
「貴子さん……貴子さんってば」
大学で他の人に声をかけられても、すぐには反応できない位、瑞穂と紫苑のことが心配なようです。
「紫苑様はただのお友達……紫苑様はただのお友達…………え?何か仰いましたか?」
「もう、貴子さんったら、心ここにあらずって感じなんだから。何か心配事でもあるの?」
「え?なな何もございませんわ」
「………分かった、旦那さんのことでしょう?」
「だだだ旦那さんなんて、まだ結婚したわけではありませんから………」
貴子は顔を真っ赤にしながら答えます。
「それで、旦那さんがどうしたの?」
「べべべ別に、瑞穂が他の女と二人っきりになっているのが気になっているわけではございませんわ」
貴子さん、相変わらずです。もう、他の学友も貴子の扱いには慣れ始めています。にっこり笑ってこう答えます。
504 :
みどりん:2008/09/05(金) 23:27:57 ID:u4WLB0nC0
「そう、旦那さんが心配なわけではないのね」
「そそそそうですわ」
「ところで、旦那さんと一緒にいる女性って綺麗なの?」
「え?!紫苑様は……お美しいですわ」
「瑞穂さんとその綺麗な女性が二人で何か危ない関係になる、何てことは考えられないですよね」
「ええ、も、もちろんですわ」
「そう……それじゃあ、心配事も特にないみたいだから仕事に戻りましょうか?」
「ええ、そうですわね」
貴子の心配事は全てばればれです。
大学での用事も済んで、貴子は一人家に戻ります。家といっても、瑞穂の家ですが。
「紫苑様はただのお友達……紫苑様はただのお友達……」
まだ、心配なようです。帰る道中、ずっと独り言を言っています。
家に着くと早速瑞穂の部屋……いえ、瑞穂と貴子の部屋に向かいます。そして、すぐに中に入ろうとするのですが、少し躊躇しました。
「瑞穂さんのって、大きくて立派で逞しいですわ」
「紫苑さんも白い肌が滑らかで、腰のくびれなんかほれぼれする美しさですよ」
中から紫苑と瑞穂の会話が聞こえてきましたから。
「え?お二人で何をなさっているの?」
貴子は会話を聞き続けます。
505 :
みどりん:2008/09/05(金) 23:28:40 ID:u4WLB0nC0
「触るともっとごつごつした感じなのかと思ったのですが、結構滑らかなのですね」
「見た目どおり吸い付くような肌触りですね。それに、この口。ひだが何か入れてと誘っているようですよ」
「そんな、瑞穂さん。入れるものではありませんわ。見て楽しむものですわ」
「見るだけなんてもったいないです。僕が入れてあげましょう。もっと美しくなりますよ」
「いけませんわ……」
貴子はとうとう我慢できなくなってしまい、部屋に突入しました。
「あなた!何をなさっているのですか!!」
「あ、貴子、お帰り……」
「あら、貴子さん、お邪魔しておりますわ」
瑞穂と紫苑の前には、大きくて立派で逞しい形をした壷と、白くて滑らかでくびれていて口にひだがある壷が並んで置いてありました。
「新鋭の陶芸家の作品展があるっていうんで、紫苑さんと見てきたんだ。これを買ったんだけどどう思う?」
「瑞穂さん、酷いのですよ。この壷に何か活けたいと仰るのですよ。やはり壷だけで鑑賞すべきと思いませんか?」
瑞穂と紫苑はそれぞれ貴子に感想を求めます。
「壷………」
貴子は、フハハと笑いながら、その場にへたへたと座り込んでしまったのでした。
おしまい
GJ、面白かったです
507 :
名無しさん@初回限定:2008/09/08(月) 20:06:02 ID:/hcmEUWb0
瑞穂ちゃん・・・・彼女以外の女性、うかつに部屋に入れちゃだめじゃんw
508 :
みどりん:2008/09/08(月) 22:41:27 ID:HV/zDHqA0
中国故事シリーズ 北叟(北奏?)
周防院奏は恵泉高校に通う女子高生です。寮に住んでいるのですが、お世話をする上級生がおらず、いつもさびしい思いをしていました。
そんな時、転校生の宮小路瑞穂がやってきて、奏の姉となりました。
「奏ちゃん、よかったわね」
「本当に素敵なお姉さまが来てよかったですね」
今まで奏が悲しんでいるのを知っているまりやと由佳里は奏に声をかけます。が……
「いえいえ、それほど喜ばしいことでもないのですよう」
……そうですか。
しばらくして、奏が瑞穂にいつもちやほやされていることを快く思わない生徒から、奏はいじめを受けるようになりました。
「大丈夫?奏ちゃん?」
何人かの生徒に心配されています。
「いえいえ、それほど悲しむことでもないのですよう」
……そうですか。
奏へのいじめは、瑞穂が撃退してくれました。その上瑞穂は奏のリボンを輝くように美しく洗ってくれました。まるで瑞穂の監視が常にあると主張しているようです。
「よかったわね、奏ちゃん。いじめもなくなったし、リボンも綺麗になって」
まりやが奏に声をかけます。
「いえいえ、それほど喜ばしいことでもないのですよう」
……そうですか。
509 :
みどりん:2008/09/08(月) 22:42:05 ID:HV/zDHqA0
ところが、リボンがあまりに目立ったので、貴子に目をつけられてしまいました。
「そのリボンは校則違反です。即、対処なさい!」
改善義務命令を受けてしまいました。
「困ったわね……」
瑞穂が悩んでいます。
「いえいえ、それほど悲しむことでもないのですよう」
……そうですか。
瑞穂やまりやの尽力で、リボンをつけていても良いことになりました。
「これで安心ね、奏ちゃん」
と声をかける瑞穂なのですが……
「いえいえ、それほど喜ばしいことでもないのですよう」
……ああ、そうですか。
やはり、もう少し喜怒哀楽を露にしたほうがよいのではないかと思うのですが………
おしまい
510 :
みどりん:2008/09/08(月) 22:42:42 ID:HV/zDHqA0
東の扉さんのアイデアで思いつきました。
こうしてみると、塞翁が馬のモデルのお爺さんは、相当つきあいづらい人だったようですね。
以前から気になっていたのだけれど
みどりんさんの奏ちゃんの語尾の「よう」ってオリジナル?
ゲームの奏ちゃんの語尾は、たしか「よ〜」だったのですよ〜
>>510 ありがとうございます。
私もしばらくしたら故事シリーズ、また書いてみようと思います。
本日は、新たにSS電波を受信しましたので、投下させていただきます。
設定は最も由佳里寄りで真夏の肝試し、緋紗子先生に黙っていた状態です。
「一体どうすればここから出られるのよお……」
「もしかしたら、どこかから何か見つかるかもしれないのですよ」
「そうです! あきらめたらそこで終わりなんですから、最後まで頑張りましょう!」
9月、瑞穂たちは第2音楽室の幽霊? に会うため、夜の校舎に忍び込んだ。まりやたちは気絶した由佳里を瑞穂に任せ、
先へ行ったのだが、4階建ての校舎の“5階”に閉じ込められてしまったのだった。
〜しおりんディメンション〜
「で、どうすればいいと思う?」
「あの……まりやお姉さま……今までは西階段を使っていましたが、東階段を使ってみてはいかがかと思うのですよ」
「奏ちゃん……確かに試してみる価値はあるわね。じゃあ……」
まりやたちは東階段まで移動すると、そこから下に降りてみた。しかし……。
「同じですねえ……」
「同じなのですよ……」
「結局どっちの階段使っても同じか……」
1度試した手がムダだったとわかり、まりやたちは途方に暮れていた。
「こうなったら神頼みです!」
「……一子さん?」
一子の決意に満ちた表情に、まりやたちは呆然……。
「今こそクリスチャンの本領発揮です!」
そして、一子は大声で叫ぶ。
「偉大なる聖母マリア様! その慈愛の力で持って、私たちをこの空間よりお解き放ちくださーい!!」
「い、一子ちゃん、大声で言えばいいってもんじゃないでしょ?」
「び、びっくりしましたのですよお……」
あまりの大声に、まりやと奏は耳を塞いでいた。
「……何も起こりませんね」
「……起こったらスクープものだって。はあ……」
その場で座りこむ3人。
「あ、あの……まりやお姉さま」
「奏ちゃん?」
「今思いついたのですが、奏たちがここに閉じ込められたのには、閉じ込められる理由があると思うのですよ……」
「理由って?」
まりやが聞くと、奏は自分の意見を話し始めた。
「たとえばホラー映画とかですと、閉じ込めて皆殺しにするためという理由が一般的ですけど……」
「ひいいいいい!! 殺されちゃうんですか!? 私たち、殺されちゃうんですかあ!?」
それを聞いて取り乱す一子。
「い、一子さん、落ち着いてくださいなのですよお……」
「おまえはすでに死んでいる」
「ひえええええ!!」
まりやのセリフに、さらなるパニックに陥る一子。自分が幽霊であることを完全に忘れている。
「あ、あのね一子ちゃん……あんた22年前に死んでるのは事実でしょ?」
「あ……そうでした……私、幽霊になっちゃってたんでした……あはははは……」
一子はそう言うと、決まり悪そうに笑った。
「まりやお姉さま、一子さん、話を戻しましょうなのですよ……」
「そうね。それで?」
「……ホラー映画ではそうですけど、この聖央に、そんな方がいるとは思えないのですよ」
「確かにそうですね……」
「ということは、幽霊さんはこの階にある何かを見つけて欲しいのだと思うのですよ」
「何かってなんですか?」
「それはわからないのですよ」
「そんなの、1つ1つ部屋をしらみつぶしに当たれば見当はつくんじゃない?
そうと決まれば、早速1部屋ずつ当たってみるわよ!」
まりやたちは近くにある部屋から捜し始めた。
「一体何を捜せばいいのでしょうか?」
「さあ……」
一番近くにあった教室から入って探索に入るものの、目当てのものが何かわからないことに気づいた。
「このぞうきんまで怪しい気がするのですよ」
「……待て待て待て。その幽霊は音楽特待生だったって話よね。
だったらそれに関係するものに的を絞って捜せばいいんじゃない?」
まりやたちは部屋の中をしらみつぶしに捜すものの、それらしきものは見つからなかった。
「あとはこの部屋だけですね」
「そうですねえ」
「じゃあ一縷の望みをかけて、早速探索に入るわ……!?」
まりやが何かに感づいたように立ち止まった。
「……まりやさん?」
「……まりやお姉さま?」
「こっちよ……あたしの直感が、見えない道を導き出したのよ!」
まりやはそう言って窓を指差す。
「窓……ですか?」
「開けてみるのですよ」
奏は開けようとするが、開かなかった。
「奏ちゃん、一子ちゃん、下がってて!」
まりやは近くの教室からイスを持ち出してきた。
「まりやお姉さま……」
「それはちょっとまずいのでは」
「こんなの緊急避難よ! それに異世界で壊したところで、何の問題もないでしょ!?」
ガシャーン!!
まりやはそう言って窓ガラスを叩き割った。
「さ、行くわよ」
呆然としている2人に、まりやは言う。
「まさか、ここから飛び降りるのですか?」
「大丈夫よ。一子ちゃんは空を飛べるし、いざとなったら支えてくれるわ」
「あ、あの……私は生前2人もの人を持ち上げたことなかったですから、自信ないんですけど」
「火事場のバカ力でなんとかなるでしょ?」
まりやはそう言うと、奏と一子の手を握り、“5階”の窓から身を乗り出した。
「うわああああああ!!」
「助けてくださいなのですよー!!」
まりやは悲鳴をあげて泣き叫ぶ奏と一子を尻目に、下の階へと飛び降りた。
「きゅうううう……」
「ふにゃああああ……」
「確かこっちよ! こっちに行かなければいけないところがあるのよ!」
気絶している奏と一子を引きずって、まりやはトイレの窓からそっと中に忍び込む。
「んっ……くっ……ふぁっ……」
(この声……確か瑞穂ちゃんに女子トイレの使い方教えた時にも聞こえた……しかもまったく同じ声……てことは……)
まりやは、本来の目的も忘れてほくそ笑んだ。
「やあ……お姉さま……そんな……えっち過ぎるよお……あっ……あっ……はああああああんっ!!」
(終わったみたいね……)
「はあ……はあ……はあ……」
まりやは、向こうから出てくるのを個室の前で待ち構えた。
ガチャッ……。
しばらくして、鍵の開く音とともに、個室の扉が開いた。
「ま、まりやお姉さま!!」
出てきた由佳里は、まりやの姿に驚いた。
「ど、どうしてここに? 今までどこ行ってたんですか?」
まりやはその問いには答えずに、思いっきり意地悪な笑みを浮かべて言う。
「瑞穂ちゃんのことを思いながらして、少しは欲求不満とストレスを解消できた? ゆかりん」
「えっ……えっ……? ………!! わ、わあああああっ!!」
戸惑いの表情を浮かべていた由佳里は、顔を真っ赤にして思いっきり後ずさり、便器に足をぶつけて、上に座り込んだ。
「さっきまで思いっきり怖がってたクセに、もう1人でする余裕があるんだ?」
「そ、それは色々あって……」
「何があったの?」
「べ、別になんでもいいじゃないですか!」
「お姉さまに隠し事はよくないわよ、ゆかりん」
「ゆかりんじゃありません! それに無理やり聞き出すなんて越権行為です!」
「ほお? 言わなかったらみんなにバラすわよ、由佳里のあのことを」
「な、なんですかあのことって?」
「教えなーい」
今まで強気だった由佳里が引き気味になったのを見て、まりやはそう言う。
実際にはただのハッタリなのだろうが、色々と人に知られたくない部分がある由佳里は、渋々話し始めた。
「ふうん……雷に驚いておもらししちゃったんだ」
「し、仕方ないじゃないですか! 怖くて怖くてどうしようもなかったんですから……」
「それで?」
「それで、お姉さまがその周りを拭いてくださったんですけど、その時のお姉さまの目が、恥ずかしそうに正視するのを
避けられてて、でも見たいと思ってくださってるような熱っぽさがこもっているような気がして……」
まりやは瑞穂ちゃんもそういうとこ、やっぱ男の子ね、と思いながら聞いていた。
「それで、瑞穂ちゃんが自分にそのままえっちなことしてくるのを想像したら、我慢できなくなった、と」
「………」
沈黙が、肯定の返事だった。
「ううん……まりやさん、ここは天国ですか?」
「まりやお姉さま……いったいどうなったかわからないのですよ……」
そこへ、気絶していた一子と奏が目を覚ました。
「一子ちゃん、奏ちゃん、やったわ! 帰ってこれたのよ!」
そしてみんなでトイレを出た。
「由佳里ちゃん、もういいの……ってみんな! どうしてここにいるの? どこ行ってたの?」
由佳里がトイレを終えるのを待っていた瑞穂は、まりやたちがいるのに驚く。
「いやあ、ちょっと異世界に閉じ込められちゃってねえ、でも由佳里のおかげで戻ってこれたのよ」
「由佳里ちゃんのおかげ?」
「そっ。あたし、由佳里がネタに出来ることしてたら、直感でわかっちゃうみたい」
「直感でわからないでください!」
からかわれるネタを直感で全て見つけられてしまうなんて、由佳里ちゃんもかわいそうに……
まりやの言葉で、瑞穂はそう思った。
「ま、その話は後でゆっくりしましょ」
「疲れたのですよお……」
「そうね。それじゃあ寮に戻りましょうか」
瑞穂たちは、足をそろえて寮に帰った。
翌日、瑞穂と由佳里は緋紗子先生に呼び出され、1週間のトイレ掃除を命じられた。
そして放課後……。
「あらあら、また驚かれてしまいましたねえ」
「紫苑さん、掃除しているんですから、清掃中の看板を張っておいたほうがいいんじゃないですか?」
「確かに最初はうっかり忘れていましたけど、この方が楽しいではありませんか」
「紫苑さん……勘弁してほしいです……」
瑞穂は、紫苑と2人で楽しくトイレ掃除を楽しんでいた。
一方由佳里は……。
「あーあ。1週間トイレ掃除なんて、ついてないなあ……」
表に「清掃中」の看板を貼って、瑞穂たちとは別のトイレで疲れた顔をしていた。
「でも、お姉さま、優しかったなあ……」
緋紗子先生に呼び出された際、瑞穂は「ごめんね。私のせいで由佳里ちゃんにまで迷惑かけちゃって」と謝っていた。
無論由佳里は、お姉さまのせいじゃないと否定したが。
「お姉さま、か。そういえば昨日、おもらししちゃって、お姉さまが私のあそこを拭いてくださったんだよね……」
場所が同じトイレだったので、由佳里はその時の様子を鮮明に思い浮かべた。多少妄想部分も混じっているが……。
「やだ、そんなこと考えてたら、また疼いてきちゃった……でも昨日みたいにまりやお姉さまとか、他の人に聞かれたら……」
由佳里はそこまで言って、ハッと気づく。
「……そっか。今清掃中だから、誰にも聞かれないんだ……じゃあ、ちょっとだけ……」
そして由佳里は、ドキドキしながら個室にこもった。
「んっ……あっ……やあっ……お姉さまのえっちい……恥ずかしいよお……ふぁあっ……」
由佳里は、1人でトイレ掃除? を楽しんでいた。
それからしばらくして……。
「由佳里ちゃん、最近よくトイレの掃除当番を買って出てるそうね」
「あ、はい、まあ……」
夕食後、寮でみんなと会話している時、瑞穂がふと思い出したように言った。
「偉いじゃない。人の嫌がることを進んでやる。聖央の生徒の鑑ね」
「い、いえ、そんな……」
瑞穂に褒められ、由佳里は真っ赤になった。
「ていうか、由佳里はトイレ掃除のうま味を覚えちゃっただけじゃないの?」
「なっ……!?」
まりやにからかわれ、由佳里はさらに真っ赤になった。
「うま味って、内申書? 聖央ではあまり関係ないと思うけど?」
「違うわよ、もっとリアルなこと」
「………?」
政治家やら、時代劇の家老や代官でもあるまいし、トイレ掃除の当番ぐらいで職権濫用や賄賂の受け渡しなんて
できそうにないのに……瑞穂と奏は、意地悪なまりやと真っ赤な由佳里をよそに、いつまでも首をかしげていたのであった。
Fin
以上です。
ありえない脱出法ですが、実際は最後の部屋で詩織さんの緋紗子先生への気持ちを記した何かを渡すことを約束して
脱出したのでしょう。多分。
それでは、お目汚し失礼いたしました。
GJです
526 :
L鍋:2008/09/09(火) 21:06:55 ID:WM05aeIoO
みどりんさん
グッジョブでした。
私的にはみどりんさんの文章が好きで、みどりんさんの書き初めの時から違和感無く読んでました。
「…よう」はみどりんさんの独創性という感じで私も真似て書こうと思ったくらい大好きです。
東の扉さん
グッジョブでした
タイトルはジェミニネタですか^^
527 :
みどりん:2008/09/09(火) 23:03:11 ID:vrbAQFtK0
>>511 ご指摘ありがとうございます。
音で記憶して、それを文にしているので時々(よく?)誤字がありますが、ご容赦ください。
次からなおそうか、と思います。
L鍋さんのコメントもあったので、直すのを止めるかもしれませんが。
>>526 感想ありがとうございました。
>>526 お久しぶりです。規制解除まであと約1ヶ月ですか。
タイトルは意識してませんでした。佐賀のはあれ自体「異次元」という意味ですから。
また新たな作品、楽しみにしていますね。
>>527 私もみどりんさんの「なのですよう」はすごく気に入っているので、できれば続けてほしいです。
529 :
511:2008/09/10(水) 17:43:15 ID:R9YucRzTO
>>527 いえ、誤字の指摘ではなく単なる質問のつもりでした。
私も「ですよう」の方が語感が良くて、上品な感じがするので
他の方が仰るよう是非続けていただきたいです
530 :
みどりん:2008/09/10(水) 22:49:24 ID:Omu8R36x0
中国故事シリーズ 臥薪嘗胆
瑞穂が水泳の授業を休んだときのことです。瑞穂は貴子にそのことを指摘され、今後水泳をするよう言われました。本人はさほど気にしていなかったのですが、貴子と犬猿の仲のまりやはそのことをひどく気にしています。
「くっそー、貴子のやつ!!言いたい放題言ってくれるんだから!」
「でも、まりや、休んだのは本当のことだし……」
「瑞穂ちゃんは悔しくないの?貴子にあんなこといわれて」
「いや、そんなに……」
「少しは悔しがりなさい!」
「は、はぁ……」
「だから、そこに寝て!」
「え?どうして?」
「いいから、言うとおりなさい!」
「う、うん。こう?」
瑞穂はまりやの剣幕に、言われるままベッドに横になります。
「そう、それでいいわ。しばらくそのままにしているのよ!」
まりやはそう言って瑞穂の下半身をあらわにし始めました。
「ちょ、ちょっと、まりや、何しているの!?」
「何って、この悔しさを忘れないように瑞穂ちゃんの薪で悔しさを体に覚え込ませているのよ!」
まりやは瑞穂の薪を体内に納め、激しく体を動かし始めました。
「あっ、あっ……ま、まりや…あん…ふふぁあん……」
もう、瑞穂は息絶え絶えです。そして、二人揃って……
「まりや、もう、いっちゃう……」
「あ、あたしもよ……」
「ああ、あっ…あっ……」
「うぅっ……くっ………」
「「あああぁぁぁぁぁ…………っっっ!!」」
そしてそのまままりやは瑞穂の上に横たわっていきました。瑞穂の薪の上に臥せって喜びを感じて……違いました、苦痛を感じながら悔しさを思い出しています。
それから、連日まりやは悔しさを忘れないように瑞穂の薪を味わっていたのです。
531 :
みどりん:2008/09/10(水) 22:50:20 ID:Omu8R36x0
数日後、瑞穂はまりやの努力により、何とか水着を着ることができ、そして水泳の授業にも出ることができました。
「ふっふ〜〜ん、どう?貴子。何か文句ある?」
まりやが挑発的に貴子に結果の報告にいきます。
「な、何もございませんわ」
貴子はくやしさ一杯の表情で答えます。
「大体、貴子、あんたはねぇ――――」
それから、ねちねちとまりやが貴子を非難します。ですが、今回は貴子に非がありますので、言い返すこともできません。もう最後のほうは貴子の眼は悔しさでうっすら涙が滲んでいます。そして、その場は休み時間の終了と共に解散になりました。
学校が終わってからのことです。瑞穂が寮にいると、扉を叩くものがいます。
「はい、どうぞ」
「あの、お姉さま、少しよろしいでしょうか?」
扉を叩いたのは貴子でした。
「ええ、かまいませんよ。珍しいですね、寮に来るなんて。どうしたのですか?」
「あの、お詫びをしたいと思いまして」
「何のですか?」
「この間は、お姉さまが水泳の授業をサボっていると申し、まことに申し訳ありませんでした」
「ああ、そんなことですか。全然気にしていませんから」
「ですが………ですが、そのあとまりやさんに糾弾されたことが悔しくて悔しくて………」
「はあ……」
「ですから、お姉さま、少しそこに横になってくださいませんか?」
どこかできいたような台詞です。
532 :
みどりん:2008/09/10(水) 22:51:01 ID:Omu8R36x0
「え?これでよろしいですか?」
瑞穂は貴子に言われるままベッドに横になります。
「ええ、それでよろしいですわ。しばらくそのままにしていてくださいね」
貴子はそう言って瑞穂の下半身をあらわにし始めました。
「ちょ、ちょっと、貴子さん、何をしているのですか!?」
「何って、この悔しさを忘れないようにお姉さまの胆を嘗めているのですわ」
貴子はそういいながら、瑞穂の袋や筋をぺろぺろと丁寧に嘗め始めました。
「うっ……あん……貴子さん……」
貴子の絶妙な刺激で、瑞穂はあっという間に絶頂を極めてしまいました。
「ぁぁ……ぁ・あああぁぁぁぁーーーーーっっ!!」
貴子は瑞穂から放出された苦い白い液を全て飲み干しました。
「悔しさを忘れないように、毎日瑞穂さんの胆を嘗めに参りますわね」
貴子はそう言って帰っていきました。本当に胆なのでしょうか?
533 :
みどりん:2008/09/10(水) 22:58:06 ID:Omu8R36x0
そして、本当に毎日毎日貴子は、瑞穂を快楽へと導いて………いえ、胆を嘗めては悔しさを思い出していました。ところが、そのうちにそのことがまりやにばれてしまいました。
「貴子!何をやっているのよ?!」
そして、まりやは貴子が奉仕をしている………違いました、悔しさを思い出しているところに乱入していきました。
「悔しさを忘れないようにしているだけですわ」
貴子は平然と答えます。このころには当然のように貴子と瑞穂の関係は男女の仲に進んでいました。貴子は胆だけでなく、薪も堪能して………その両方の苦痛を体に受け止め、悔しさを忘れないようにしていました。もはや二人は当然のように何も身に着けていません。
「あ、あたしだって、まだまだ悔しさがなくなったわけじゃないんだから」
まりやは少し恥ずかしそうにクレームをつけます。貴子はそんなまりやにこう答えるのです。
「それでは、一緒に瑞穂さんに悔しさをぶつけませんか?」
「えっ?!……ええ、それはいい考えね」
まりやは少し驚きましたが、すぐににっこり笑って服を脱ぎながら二人の許に向かいました。
「ちょ、ちょっと、まりや、貴子さん!」
そう瑞穂はクレームを付けるのですが、全く意味の無いことでした。
「あん、やめて…むん…っっ……」
すぐにまりやに口をふさがれてしまいました。
それからは、毎日毎日貴子とまりやが瑞穂相手に悔しさを忘れないようにする行事が行われることになったのです。美女二人と極楽を味わえて、瑞穂も幸せなのではないでしょうか?
このとき以来、悔しさを忘れないように薪の上に臥せってそれを体に受け止め、胆を嘗めて出てきた苦い液を飲み干すことを臥薪嘗胆というようになった、ということです。
出典:眠明書房
おしまい
534 :
みどりん:2008/09/10(水) 23:17:21 ID:Omu8R36x0
お見苦しい作品もうしわけありません。
何卒ご容赦ください。
それでは。
楽しませてもらいました
536 :
みどりん:2008/09/11(木) 22:40:30 ID:8c2Y8EiR0
ロミオとジュリエット
〜薫子編〜
作:シェ・クスピア
訳:みどりん
学院祭のシーズンになりました。1、2年の各クラスはそれぞれのクラスの出し物を協議して決めていきます。
ですが、安易な出し物や、どのクラスでもやりそうなことでは客に喜ばれないし、かといって難しい出し物に挑戦すると自分たちの負担が大きくなるという問題があります。
学院祭には卒業生たちも多数見に来ますので、伝統を汚すような出し物は出来ず、少しプレッシャーのある行事です。まあ、多少はプレッシャーがないと、いつも安穏としている学院生活だけではだらけてしまうので、丁度よいかもしれませんが。
「今日のホームルームで、学院祭の出し物を決めたいのですが、何か意見はありますか?」
クラス委員をしている大谷京花が議事進行を務めています。
「喫茶店なんかどうかしら?自分たちでお菓子を焼いて、おもてなしするのです」
「え〜?それは安易ではありませんか?どこのクラスでも考えそうですわ」
「それでもおいしいお菓子が出来ればいいと思うのですが」
「そうは仰っても、素人が作るお菓子でしたら、やはりそれほど変わらないと思うのですが」
「装飾品を作って販売するのはどうでしょうか?自分たちで考えたデザインの装飾品を作るのです」
「何かアイデアはあるのですか?」
「去年のロザリオは素敵だったと思います。あんな感じにしたらどうかと思うのですが」
「ああ、あれはよかったですわね。私たちでもできるかしら?」
「練習すれば出来るかもしれませんわね」
「でも、それって二番煎じではないかしら?」
何でも否定的な人はいるものです。
「何をやっても二番煎じのようなものですから、それはあまり気にしなくてもいいのではないかしら?」
クラスメートが喧々諤々と議論しています。が、なかなか意見が収束しなさそうです。
537 :
みどりん:2008/09/11(木) 22:41:42 ID:8c2Y8EiR0
一通り意見が出たところで、京花が自分の意見を言います。
「劇はどうでしょう?」
「え?劇……ですか?」
劇は大体大変なので、嫌そうな表情をする人が多数います。
「ええ。去年の瑞穂お姉さまと貴子お姉さまが競演されたロミオとジュリエットを私達で再現するのです」
「ああ………」
クラスメートの脳裏に去年の素晴らしい劇の様子が浮かんできました。薫子以外全員高等部の学院祭を見に来ていますから、ほぼ全員が去年の劇を見ています。
「あれは素晴らしかったですわ」
「ええ、思い出すだけでもうっとりします」
「でも、あれが素晴らしかったのは瑞穂お姉さまと貴子お姉さまの為せる技ではないかしら?私たちであれを同じように素晴らしく演じることは難しいと思うのですが……」
うんうんと何人もそれに同意しています。その疑問に京花が答えます。
「丁度うちのクラスには騎士の君もいらっしゃることですし、紫苑様のマキューシオ役には茉清様が適任だと思うのですが」
「あああぁ………」
先ほどより大きめなどよめきと共に、クラスメート全員の視線が七々原薫子に集中します。薫子は発言も一切せず、大きい体を小さくして、目立たないように目立たないようにしていたのに全く無意味なことでした。一気に会議の中心人物になってしまいました。
「え?……わたし?……無理無理無理無理。劇なんかやったことないし、主役なんて問題外。きっと皆様にご迷惑かけるだけです。だから、他の事にしましょう。ね、ね。
そうそう、喫茶店がいいですよ、喫茶店。うん、きっと素敵な喫茶店ができますよ、みんなで協力すれば。わたしもウェートレスでも調理でも何でも頑張りますから。そうしましょう、喫茶店にしましょう………」
薫子は必死に劇を避けようとします。薫子でも今の流れから自分がロミオにされそうになっているということは分かりますし、ロミオとジュリエットでロミオといえば主役だということくらいは知っていますから。
が、それを聞いているのかいないのか、京花は全員に意見を求めます。
「何か意見のある方はいらっしゃいますか?」
「私たちでロミオとジュリエット。素敵ですわ」
「本当ですわね。騎士の君と茉清様がいらっしゃったら出来そうな気が致しますわ」
かわいそうに、薫子のクレームは完全にスルーです。
538 :
みどりん:2008/09/11(木) 22:42:36 ID:8c2Y8EiR0
「ですが、衣装とか準備が大変なのではないかしら?」
「演劇部の方に確認したら、去年使った道具一式全部揃っていて、今年も特に使う予定はないので、貸してくださるとの事でした」
下準備の良い京花が答えます。
「それでは、京花様というとおり劇にしませんか?ロミオとジュリエットが自分たちで出来るなんて素敵です」
「賛成」
「賛成ですわ」
京花はにっこり笑って宣言します。
「それでは、全員一致でクラスの出し物はロミオとジュリエットに決まりました」
わーー
クラス全員、いえ一人を除いて全員が拍手をします。薫子一人、がっくりとしています。そんな薫子に真行寺茉清が優しく声をかけます。
「人間諦めが肝心だよ」
‥‥‥茉清さん、フォローになっていませんから。
それから、役を決めてホームルームが解散になりました。ジュリエットは京花が行うことになりました。
「奏お姉さま、聞いてください」
「何ですか、薫子ちゃん」
寮で薫子が奏に文句を言っています。
「酷いのです。みんなで勝手にわたしを劇の主役にしたのですよ」
「劇の主役?」
「そうです。劇なんかやったことがないのに、それなのにいきなり主役なんてひどいと思いませんか?」
「うふふ。そうですね。でも、全員が賛成したということは薫子ちゃんなら出来ると思ったのではないですか?」
「わたしが騎士の君だというだけでそうなってしまったのですよ」
「そう……ですか。………役は何なのですか?」
奏は不思議そうに尋ねます。騎士と劇との関係が結びつかなかったので、怪訝に思ったのです。
「ロミオとジュリエットのロミオ役です」
「ああ………」
奏もまたそれを聞いて去年の劇と瑞穂を思い出しました。瑞穂お姉さまは素敵だったと改めて思い出されます。
539 :
みどりん:2008/09/11(木) 22:46:45 ID:8c2Y8EiR0
「それなら、私も賛成ですわ」
「ええーーっ?奏お姉さままで?」
「ええ。薫子ちゃんならきっと素敵なロミオができると思いますわ。雰囲気も瑞穂お姉さまに似たところがありますし」
「そ、そうですか?」
「ええ。少し私も薫子ちゃんの練習のお手伝いをしてあげましょう」
「あ、ありがとうございます……」
何か、自分の考えていたシナリオと違うような気がすると思った薫子です。こうして皆にロミオ役を薦められることになってしまいました。
「ジュリエットは誰が為さるのですか?」
「大谷京花さんです」
「大谷京花さん?」
「ええ、ほら覚えていらっしゃいますか?街で絡まれているのをわたしが助けてあげた、あの生徒です」
「ああ………何となくわかりました」
ジュリエットも貴子会長そっくりの雰囲気ですね、と心の中で思う奏でした。
「きっと、お二人で素敵なロミオとジュリエットにすることができると思いますわ」
「本当でしょうか?」
「ええ、きっと……」
奏はにっこり微笑みながら答えるのです。
「それで、これが今日配られた台本なんですが………」
台本は即日配られています。去年の資産がありますから、不足分を刷るだけです。道具が全部揃っているので、役者以外は案外楽にできそうです。逆に、去年の劇と比べられるので、役者には重圧がかかることでしょう。
「……結構長いんですね」
薫子が奏に感想を述べます。
「そうですね。去年の瑞穂お姉さまも苦労していらっしゃいましたよ。瑞穂お姉さまも劇は初めてだったんですって」
「そうなのですか?」
薫子は驚いたように聞き返します。
「ええ。ですから、何回も何回も読んでいらっしゃいましたわ」
「それでは、わたしは何十回も何百回も読まないと覚えられませんね」
薫子はがっくり力を落として溜息混じりに話します。
「大丈夫ですよ。役にはまれば自然に言葉が口に出てきますよ」
「本当ですか?」
「ええ。その代わり、しっかりジュリエットを護ってあげるのですよ」
「はあ………」
540 :
みどりん:2008/09/11(木) 22:47:21 ID:8c2Y8EiR0
それから、薫子の劇の練習が始まりました。毎日毎日練習しています。
「ぼ、ボクニ、タイマツヲヨコセ!ぼぼボクハトテモウイタキモチニハナレン」
「ウフフ……」
「あ、奏お姉さま、一生懸命やっているのに笑うなんて酷いです!」
「ご、ごめんなさいね。あんまり熱心なものだったから」
「だから、劇は苦手だって言ったのに………」
「もっとリラックスして言えばいいのですよ。ここは、マキューシオにいう台詞なのですから、マキューシオを思い描きながら話せばよいのです」
「はあ……」
説は尤もですが、それができれば苦労しないでしょう。
「マキューシオはどなたがなさるのですか?」
「茉清さん、真行寺茉清さんという方です」
「そうですか……ほら、丁度名前もマキューシオに似てるでしょ?」
「マキューシオ……茉清……確かにいわれて見ればそんな気もします」
だから、ほら、その茉清さんと漫才でもしているつもりで、台詞を読んでみてください」
「はい……『僕に炬火をよこせ。僕はとても浮いた気持ちにはなれん。なにしろ心が暗いんだから、せめて明りでも持つとしよう』」
「ほら、とても自然になったでしょ?」
「あ、ほんとだ」
「だから、劇をやっているのでなくて、相手の方とわかりにくい台詞を読みあって遊んでいるとでも思えば、きっとうまくいきますよ」
「はい!」
「それでは、続きを読みますね。『駄目、駄目、ロミオ、君にこそぜひ踊ってもらいたいのだ』」
かくして、薫子と奏の練習はうまくいっているように見えたのです。台詞も相当覚えているようです。これなら本当に薫子の主演もうまくいきそうです。
そして、読み合わせ初日の夜。
「はあ………」
「どうなさったのですか?薫子さん」
意に反して薫子は落胆した様子で帰ってきました。
「奏お姉さまとの練習ではうまくいった気になっていたのですが、今日実際に皆さんと読みあわせをしてみたら、やはり緊張してうまくできませんでした」
「まあ、最初はそんなものですよ。そのうちなれていきますから」
「そうでしょうか?」
「ええ、間違いありませんわ」
と、奏に太鼓判を押されたのですが、それから数日間、毎夜毎夜薫子の溜め息が聞かれたのでした。
541 :
みどりん:2008/09/11(木) 22:49:32 ID:8c2Y8EiR0
ところが、練習も本格化し、動きを交えるようになると、少し薫子の様子が変わってきました。台詞は随分と滑らかになってきました。本当にその相手に話しているように聞こえます。今までのぎくしゃくした様子がなくなってきました。
しかし、その反面練習をしていないときは、いつも何かを考えているようにぼんやりしています。
「薫子ちゃん………薫子ちゃん」
薫子は奏の入れてくれた紅茶を手に持って、じっと紅茶の方を見ています。
「………………薫子ちゃんったら」
「え?あ、奏お姉さま。本当にお姉さまの入れてくださる紅茶はおいしいですね」
「………薫子ちゃん、何か心配事でもあるの?」
「いえ、ありません。わたしはいつでも元気ですよ。どうしてそんなことをお聞きするのですか?」
「何かそんな気がしたから。困ったことがあったら、いつでも相談してくださいね」
「はい、ありがとうございます」
こういうことが何日も続きました。
そんなある日のことです。薫子は意を決したように奏に質問をしました。
「奏お姉さま、お聞きしたいことがあるのですが」
「なんでしょう」
「瑞穂お姉さまと貴子お姉さまが去年のロミオとジュリエットだったのですよね」
「ええ、そうですよ」
「あの………お二人の親しさが劇の前と後で変わったとかいうことはありませんでしたか」
奏はこの質問で、最近の薫子の悩みがなんだか分かってしまいました。
「そうですね、元々貴子お姉さまは冷徹な印象を持たれた方だったのですが……」
「そうなのですか?」
薫子は驚いて目を瞠ります。
「ええ、今では想像もつかないかもしれませんが、そうだったのです。目つきも鋭く、笑顔もほとんど見たことがありませんでしたね………」
それから、奏は去年の貴子の様子をなかなか丁寧に説明しました。
「へぇ〜〜。本当に想像がつかないですね」
「それが、劇の練習が進むにつれ、次第に瑞穂お姉さまと親密になっていって………その後も色々ありましたけど、今ではいつも一緒のご関係になってしまいましたね」
「そう………ですか」
「薫子ちゃんも、京花さんを護ってあげたいと思うようになったのですね」
「え?!あ……その……え〜っと」
薫子は顔を少し赤らめてもじもじしています。
542 :
みどりん:2008/09/11(木) 22:52:22 ID:8c2Y8EiR0
「隠さなくてもいいのですよ。どんなかんじだったのですか、京花さんは?」
「ええ、劇の練習の最初のうちは手を握るとか、軽くだきしめるとかそんな感じだったのですが………」
「ええ……」
「京花さんは華奢な体つきで、柔らかくて、彼女にふれているだけでこわれてしまいそうで………」
薫子は話を続けます。
「この間、キスシーンがあったんです。最初は劇なので仕方なしに唇をくっつけたのですが……」
薫子の顔は真っ赤になってきました。
「京花さんの唇は本当に柔らかで、それで……それで……急に心のそこから彼女を護ってあげたいと思うようになったんです。ずっと抱きしめていたい、ずっとキスしていたい、そんな気持ちになってしまったんです。変でしょうか?」
「そう……人を大切に思うのは大事なことよ。全然変じゃないわ。それで最近何か思いつめたような顔をしていたのね」
「ええ。でもわたしには奏お姉さまがいらっしゃいますし………」
「何言っているの?あなたは私のお世話係なのであって、好き嫌いとか護るとかは関係ないですよ。だから、あなたが本当に護ってあげたいと思う人を護ってあげなさい」
「え?いいのですか?」
薫子の表情から、急に曇りが取れました。
「ええ。もちろんです。かわいい妹に好きな人ができて、姉も幸せですよ」
「あ、ありがとうございます」
薫子は深々と礼をします。
「その代わり、これからはもっとしっかり私のお世話をしてくださいね。ぼんやりしていたら駄目よ」
奏はそう言ってウィンクをします。
「はい!もちろんです!!」
薫子は嬉しそうに答えるのでした。
543 :
みどりん:2008/09/11(木) 22:54:05 ID:8c2Y8EiR0
そして、次の土曜日………
「奏お姉さま、行ってきます」
「はい、気をつけてね」
薫子は大き目のバッグを抱えて、嬉しそうに寮を出て行きました。何でも京花に呼ばれて、彼女の家に泊まることになったらしいです。荷物は泊まるための着替えなどでしょう。特殊警棒が入っているところが、彼女らしいですが。
嬉しそうに歩いていく薫子の後姿をいつまでも奏は眺めています。そんな奏に声をかけるものがいます。
「いいの?奏さん」
声をかけたのは同僚の由佳里です。
「何がですか?」
「妹を取られちゃったじゃない」
「いえ、彼女に好きな人ができてよかったのではないですか?それに私には瑞穂お姉さまがいらっしゃいますから……」
「でも、瑞穂お姉さまは今は貴子お姉さまと一緒でしょ?」
「それでもいいんです」
「損な性格ね」
「うふふ………本当ですね」
「ま、そのうちにまた新しい出会いがあるわよ」
「そうですね」
奏と由佳里は、それから黙って薫子の去った先を見ているのでした。
「………私分かったことがありますわ」
沈黙を破ったのは奏でした。
「何が?」
「娘を嫁にやる父親の気持ち」
「ぷっ……可笑しい。それにおじさんくさ〜い」
「うふふふ………」
「あははは………」
まだまだ暑い秋の空に、二人の笑い声が響きわたりました。
薫子・京花のロミオとジュリエットは、去年の上演とはまた違った趣の、なかなか素晴らしい劇となりました。これも二人の絆の賜物でしょう。
その後の学院祭では、どこかのクラスでロミオとジュリエットを演じることが流行となりました。そして、毎年一組、親密なカップルが誕生するのです。恵泉の伝統はこうやって引き継がれていくのです。
おしまい
結構、面白かったです
みどりんさん、楽しませてもらいました。なるほど、そう来ましたか。
ところで、このスレも残り20KB足らず、そろそろ17話を用意しなければ、ですね。
546 :
みどりん:2008/09/13(土) 11:41:44 ID:Jj/srFPH0
中国故事シリーズ 杞憂
貴子が何やら悩んでいます。
どうしましょう。
瑞穂さんと一緒になれるのは嬉しいのですが……
大丈夫かしら?
その、今までも瑞穂さんと一緒にいるとよく気を失っていましたから。
瑞穂さんと手を繋いだり、瑞穂さんのお姿を拝見しているだけで、何か心が昂揚してきて気を失ってしまいましたもの。
しかも、鼻血まで出して………
は、恥ずかしいですわ。
結婚したら、やはり夫婦生活を営むのでしょうね。
いつも気を失ってばかり、ということはないかしら?
夫婦生活といったら、夜、ベッドで、瑞穂さんと……は……は……
貴子の顔は真っ赤になってきました。
裸……
そして、その言葉を口にしたとたん、きゅううと言って気を失ってしまいました。当然のようにたら〜っと鼻血も出ています。貴子さん、相変わらずです。
確かに、瑞穂のことを考えるだけで気を失うようでは、夫婦生活が無事行われるかどうか疑問ですね。
でも、それはいらぬ心配でした。貴子は瑞穂と結婚してから(する前から)毎晩のように活発な夫婦生活を営んでいますが、気を失うようなことは全くありませ……
いえ、時々気を失っていましたが、気を失うのは激しい絶頂を迎えた時だけで、夫婦生活には何ら支障ありませんでした。
それ以来、いらぬ心配をすることを「きゅうう」と言うようになりました。後世、これに「杞憂」という漢字があてられ、現在に伝わっているのです。
出典:眠明書房
おしまい
おいおい・・・
>>546 GJ
何が笑ったって
>出典:眠明書房
ここに一番笑ってしまった。
549 :
みどりん:2008/09/15(月) 12:37:07 ID:hvwsrQCp0
中国故事シリーズ 推敲
「むふ……むふふ………」
瑞穂がにやつきながら校内を歩いています。
「まりやはあんなにきれいに成長していたんだ。本当に昨日は気持ちよかった………」
………どうやら、昨晩まりやと初夜を迎えたようです。それを思い出してにやついていたのですね。困った生徒です。
「今日もやろうっと。そうだね、今日は太さと長さを生かしてグィーーグィーーっと推しこむようにしようかな。グィーーグィーーっと……むふふ………きっと、まりや、喜ぶよ」
一体、何を考えているのでしょう?本当に困った生徒です。
「まてよ………」
瑞穂はほかの方法を思いついたようです。
「それとも、もっと激しくパンパンパンと敲くようにしたほうがいいかな?……それも喜びそうだなぁ………」
今日どのようにまりやとやろうか、そればかり考えています。
「グィーー、グィーーかなぁ………パンパンパンかなぁ………」
瑞穂は腰を動かしながら歩いています。もう、呆れてものも言えません。
ドンッ
「きゃっ……」
夢中で考えていた瑞穂は前に立っていた緋紗子に気がつかず、ぶつかってしまいました。
「あ、ごめんなさい、緋紗子先生。大丈夫ですか?」
瑞穂は慌てて謝ります。歩いてぶつかったので、緋紗子は別に転ぶこともなく、少し驚いた程度でしたが。
「気をつけてね、瑞穂君。どうしたの?考え事でもしていたの?」
「ええ、実は………」
瑞穂は今まであったことを緋紗子に話しました。そんなこと話さなくていいですから!!
それを聞いた緋紗子は少し考えてから答えます。
「もう、瑞穂君、エッチなんだから。でも、そうねぇ………敲くほうがいいわ」
まじめに答えるほうも答えるほうです。
「わかりました。パンパンパンですね。どうもありがとうございました、緋紗子先生」
はいはい、勝手にしてください。
それ以来、よく考えることを推敲するというようになったということです。
出典:眠明書房
おしまい
550 :
みどりん:2008/09/15(月) 12:39:27 ID:hvwsrQCp0
杞憂のほうが気に入っています。
上品で‥‥‥(?)。
眠明書房、うけてよかったです。
それでは、また。
あと14KBか……。
本当にそろそろ17話スレを立てたいけど、恥ずかしながら仕事の都合で立てる時間がない……。
とほほ……。
過去スレ一覧が行数制限に引っかかってしまいました。
レス番を修正するなりして下さい。
ムネン アトヲ タノム orz
残り10Kbyteです
埋めです
埋めネタで埋めてしまいます。
深く考えて書いてませんのでご容赦ください。
『さあゲームを始めるわよ』
放課後の3-Aの教室に、瑞穂、まりや、由佳里、奏が集まっている。
ま「さあ、テーブルトークRPGを始めるわよ」
瑞「そうは云っても設定が白紙なんだけど」
ま「設定決めから始めるのよ。先ず舞台はファンタジーね」
由「お姫様とかでるやつですか?」
ま「そうよ。ま、人数が少ないから限度があるけど。お城で勇者を待っているお姫様っていうのはナシね」
奏「残念なのですよ〜」
ま「ゲームの進行はD&D型。主人公、敵に分かれるわよ」
瑞「えっ?みんなで冒険じゃないの?」
ま「敵も人間がやったほうが面白いのよ。次にキャラクター設定ね。主人公は私、あんたたちは全員モンスターということで」
瑞由奏「「「え〜〜っ」」」
ま「あたしのキャラ設定はコレね」
○ミネルヴァまりや
城を抜け出して冒険するお姫様
LV.60 HP600 MP10 AP300 攻撃力500 魔法威力10
必殺技 ちゃぶ台乱舞(打撃系・全体攻撃・使用AP100)
備考 正義のお姫様
瑞「ちょっとまりや。私たちがモンスターなんて酷いじゃない」
由「そうです!横暴です!いつもいつも!」
奏「お姫さまなのに打撃系なのですよ〜」
ま「あーっもう、うっさいわね〜。じゃ由佳里はこっち側でいいわよ」
由「わーい、やったあ」
奏「由佳里ちゃん、羨ましいのですよ〜」
○サンチョ由佳里
城の料理番。姫の料理係としてお供をする
LV.30 HP500 MP5 AP200 攻撃力200 魔法威力5
必殺技 ミートステップ(打撃系・単体攻撃・使用AP50 斬牛刀装備必要 牛系モンスターにクリティカル)
ポークダンス (打撃系・単体攻撃・使用AP50 豚殺鎚装備必要 豚系モンスターにクリティカル)
備考 スタミナがある
由「えええええええぇぇぇ!!!!サンチョオオオオオ!!!サンチョサンチョサンチョォォォ!!」
ま「じゃ次は奏ちゃんね」
奏「か奏はモンスターでも良いので普通の名前が良いのですよ〜」
由「………サンチョ…サンチョ…」
奏「ゆ、由佳里ちゃん、ショックで壊れちゃってるのですよ〜」
●ネピュラ奏
ウサギ型モンスター。ボスキャラ
LV.35 HP400 MP200 AP200 攻撃力100 魔法威力200
必殺技 スウィートストリーム(魔法系・単体攻撃・使用AP100)
奏時空(魔法系・単体攻撃・使用AP200 敵を吸込み3ターン行動不可にする。当たり判定が大きい)
備考 本人も強力だが戦闘不能になると更に強力な姉が現れる、対戦相手にとって最悪の敵
奏「奏、最悪なのですか〜」
瑞「まりやが勝手に作っているだけなんだから気にしないで」
由「……ブツブツ…サンチョ…サンチョ…」
●ロックブーケ瑞穂
ヒューマノイドタイプ。大ボスキャラ
LV.80 HP980 MP500 AP700 攻撃力500 魔法威力500
必殺技 ファイナルテンプテーション(魔法系・全体攻撃・使用AP100 敵全体を82%の確率でチャーム状態にする))
恥を知りなさい(特殊・単体攻撃・使用HP10 相手を立ち竦ませ1ターン行動不能)
備考 通常攻撃も強力な上、ステータス異常の攻撃を得意とする嫌な敵。FTTは超強力
瑞「………」
ま「さっ、始めましょうか」
由「なんでなんでなんでっサンチョって何ですか!嫌です!」
ま「しつこいわね」
由「あたしはもっとこう…魔法少女的な…癒し系な可愛いのが良いんです。なんで豚殺鎚振り回す肉体系なんですか!」
奏「由佳里ちゃんの云うとおりなのですよ〜。パーティーのバランスがおかしいと奏も思います」
ま「しょうがないわねー。ま、確かに回復系がいないのはつらいわね。よし由佳里、お望みは癒し系魔法少女ね」
由「やったあ〜」
○サンチョ由佳里
追加事項
必殺技 チキンソング(回復魔法・味方全部・使用AP50 鶏絞縄装備必要 可愛く歌って味方のHP回復)
由「・・・・・・」
ま「ほらこれで文句無いわね。これ以上、変更は認めないわよ。じゃ、始めるわよ」
瑞「…ちょっと待って、まりや」
ま「なによ」
瑞「忘れ物を思い出したから。すぐ戻ってくるからちょっと待ってて」
ま「は?忘れ物ってなによ。あ、ちょっと!どこいくのよ!…行っちゃった。忘れ物ってここ教室じゃない。何処に忘れ物したっていうのよ」
――3分後
瑞「お待たせ」
ま「一体どこ行ってたのよ。って紫苑さま?!」
紫「皆さんでゲームをなさると聞いたもので」
ま「瑞穂ちゃん、あんた」
瑞「人数が多いほど面白いかと思って」
紫「私も混ぜていただけますか」
ま「もも勿論ですわ」
瑞「……まりやの我が儘を押さえつけるためにはコレしかないから」
ま「紫苑さまは主人公側とモンスター側どちらが良いですか?」
紫「どちらでも良いですが、そうですね。その中間というのはどうでしょうか?」
ま「中間?」
紫「ええ。人数的に私が加わるとどちらかに傾いてしまいますから」
ま「そうですか。では中立キャラということで。ゲームの進行具合でどちらに味方するか決めてください」
紫「ええと、私のキャラクター設定は…」
◎ドラゴン紫苑
竜戦士。本人は気付いていないが伝説のエルダードラゴン ブラック・ヘアの転生した姿。13歳の少年
LV.98 HP998 MP998 AP10000 攻撃力900+α 魔法威力900+α
必殺技 ライジングドラゴンナックル(打撃系・単体攻撃・使用AP1)
スーパーハグ(特殊・単体攻撃・使用AP0 敵を抱きしめ窒息させて1ターン行動不能にする)
ドラゴンスピーチ(特殊・グループ攻撃・使用AP1 敵1グループを75%の確率でチャーム状態にする)
備考 まだ成長過程だが身体の内に秘めた潜在能力は未知数
ま瑞由奏「「「「・・・・・・」」」」
紫「あら、これからレベルアップしていくのですね」
ま「…そんなことしなくても充分のようですけど。って、LV.98ですよ」
紫「なるほど。これからレベルアップしてLV.100を目指すのですね」
ま「…それに行動ポイント1万に対して使用ポイントが1って…」
とりあえずFIN?
また埋めネタが必要なときにでも続きをするかも
うおっ!?
僅かに500KBに足りなかったか…
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