Q&A その1
(;´Д`)<オリキャラ出したいんだけど……
(・∀・)<オリジナルキャラが原作キャラよりも目立つ物、また、同程度の立場である場合、受け入れられない
事の方が多いようです。そんな作品の場合は投稿所の方が無難ですが、最終的な判断は作者さんに
委ねられます。
もし、これは大丈夫だ、と思ってスレに投下して、投稿した作品にケチをつけられたとしても、
それはそれで一つの事実ですので素直に受け止めましょう。
次の投稿時にその経験を活かしてください。
(;´Д`)<そんな固い事言ってたらオリキャラ使えないじゃん
(・∀・)<そんなことはありません。原作に登場してはいないものの、その世界に間違いなく存在しているキャラ
(一般生徒・店員・通行人)等のいわゆるMobは、登場させても問題ありません。
但し、それでもし投稿した作品にケチをつけられてとしても、それはそれで一つの事実ですので素直に
受け止めましょう。次の投稿の時に(ry
(;´Д`)<原作キャラの性格を弄りたいんだけど、どの程度なら大丈夫なの?
(・∀・)<極端に変わっていなければ大丈夫です。が、だからといってスレに投稿してケチをつけられてとしても、
それはそれで(ry
例外的に、笑いを取りに行った場合には受け入れられる事もあるようです。
Q&A その2
(;´Д`)<瑞穂ちゃんがあまりにも可愛いので、おかま掘りたいんだけど……
(・∀・)<どうぞ掘ってください。但し、作品が出来上がったときはスレの方ではなく、投稿所へお願いします。
逆に瑞穂ちゃんが掘っちゃった場合も投稿所を利用してください。
(;´Д`)<マリみてとか、極上生徒会なんかとクロスオーバーさせたいんだけど……
(・∀・)<クロスオーバー物は、混合物の元ネタを知らない人もいますので、投稿所の方へお願いします。
(;´Д`)<瑞穂ちゃんを襲った○○が許せません! お仕置きしてもいいですか?
(・∀・)<構いませんが、必要以上の暴力・陵辱・強姦・輪姦・監禁・調教・SM・スカトロ・グロ・強制妊娠・
達磨プレイ・死姦・人体改造・触手・食人等、読み手を限定してしまうような表現がある場合は、
投稿所の方へお願いします。
また、直接的な表現が無くても鬱な展開になった時は受け入れられない場合もあります。
(;´Д`)<携帯だから投稿所使えないyo!使えるけど投稿所ヤダ!
(・∀・)<仕方ないので事前に1レス使って傾向報告、あぼーんできるようにコテ、ケチつけられても
文句言うのはやめましょう。でも可能な限り投稿所利用してください。
(・∀・)<おとぼくの雰囲気に合わないと思われる作品は投稿所へ、どうすればいいか分からないときは
皆に聞いてみて下さい。
>>1 乙なのですよ〜
_
〃⌒ヾ
/  ̄/ ̄ `ヽ
__ / ハ (( ノj ) い
〃 ヽ! ! . . レ !
{ ノ| !(こ)//// に). |
`ーヾn ', ハ ノ│ 浴衣のお話をお願いします… あん♪
/^ヽK、> __ < ノ
. /: : : Y´ヽ: :/ イ: :| !
ゝ: ___:ノ  ̄ ̄ ̄`!ヽヽ
ノi! ├───‐| ヽゝ○
リ |: : : : : : : : | ノう/
. ヽ|: : : : : : : : |ノル"
l_____ノ "
(_ノ (_ノ
東の扉です。
浴衣のお話ではないですが、受信した電波の作品化が完了しましたので、投下させていただきます。
よろしくお願いします。
〜お姉さまの交換日記〜
ある日の夜、まりやの部屋……。
「由佳里、最近元気ないでしょ? 何か悩みでもあるの?」
お茶を持ってきた由佳里に、まりやは悩み事について話を聞いていた。
「はい、最近陸上がなんか空しくて……そのせいで、最近なんとなく面白くなくて……」
「ふーん……ま、今んところ言えるのは、初心を思い出すことと、気分転換するのがいいってことね」
そのきっかけや理由など色々と聞いたまりやは、そう結論を出した。
「煮詰まった頭で考えるより、その方がよっぽど効果的だしね」
「なるほど……お姉さま、ありがとうございます。じゃあ、私はこれで……」
「待ちなよゆかりん」
「えっ……!?」
帰ろうとした由佳里が振り返ると、まりやがニヤニヤ気味の悪い笑みを浮かべている。
「な、なんですか……私、この後用事がありますので……」
口調と表情からまたろくでもないことを考えてると直感した由佳里は、逃げようとするが……。
「なんだねその態度は。人がせっかく気分転換してあげようというのに」
「結構です! その方法ぐらい、自分で選びま……ひゃああああっ!?」
「遠慮しなさんなって。ほらほらほら」
由佳里が言い終わる前に、まりやは由佳里を愛撫しにかかる。そして、由佳里はまりやの腕の中で何度も何度もイかされてしまった。
「う……うう……まりやお姉さま、ひどいです……」
終わった後で、由佳里は涙目でまりやを責める。
「でも、たまってたもの処理できて、スッキリしたでしょ?」
「まりやお姉さま、私をなんだと思ってるんですか!?」
「歩く性欲。服着た煩悩。万年発情期の淫乱クイーン」
由佳里の抗議に、まりやはこともなげに言った。すると……。
「まりやお姉さまみたいなデリカシーのかけらもない人に、私のことがわかってたまるもんですか……」
由佳里は元気なく、泣きべそをかきながら、とぼとぼと自分の部屋に帰っていった。
「あっちゃー……失敗しちゃったか……こりゃ相当の重症だわ……」
わざと由佳里を怒らせて、自分とケンカさせることで気を軽くしてあげようと思っていたまりやは、当てが外れたことに落胆した。
「おはようございます……って、えっ!?」
翌朝、由佳里が起きてくると、奏がまりやのお茶を入れていた。
「な、なんで奏ちゃんが、まりやお姉さまのお茶を入れてるの?」
キツネにつままれたような顔をする由佳里。
「ああ、今日から1週間、お世話係を交換することにしたから。今日からあんたのお姉さまは瑞穂ちゃんよ」
まりやがそう説明する。
「えっ!? えっ!?」
「そういうことなの。よろしくね」
瑞穂がそう微笑む。由佳里は、しばらく呆然としていたが、我に返ると、あわてて瑞穂にお茶を注いだ。
そして、夕食後……。
コンコン……。
「お姉さま、お茶をお持ちしました!」
「えっ……!?」
瑞穂は、声の主が由佳里であることに一瞬驚いたが、すぐに状況を理解した。
「あ、ええ。どうぞ入って」
「失礼します」
そう言って由佳里が入ってくる。
「お茶をお入れしますね」
由佳里はそう言って持ってきたティーカップにお茶を注ぐ。
「どうぞ」
「ありがとう」
瑞穂はそう言って口をつけるが、そこで思った。
(そっか、本来2人のティータイムじゃないんだ……)
最近は奏と一緒にお茶を飲むのが当たり前になっていた瑞穂は、改めてそのことに気づいた。
「由佳里ちゃん、これ」
瑞穂はそう言って自分の所有物であるマグカップを由佳里に渡す。
「どうしたんですか?」
「うん、由佳里ちゃんも一緒にどうかと思って」
「あ、ありがとうございます。でもこれ、お姉さまのですよね?」
「ええ。こっちはもう口をつけてしまったから」
瑞穂は申し訳なさそうに言う。
「お姉さまがお使いになっておられるもので、私が……」
由佳里はカップに口を近づけながら、頬を染めてつぶやく。
「ちゃんと洗ってあるから平気よ」
「そう……ですか……」
途端に元気がなくなった由佳里を、瑞穂は不思議そうに見た。
「じゃ、いただくわね、由佳里ちゃん」
「はい!」
そう言ってお茶を飲み干す瑞穂。それを由佳里は凝視している。
「………」
「どう……ですか?」
「うん……おいしいわ」
気まずそうに言う瑞穂。それを見て、由佳里は不安になった。
「もしかして、おいしくなかったんじゃ……」
「違うわ。いつも奏ちゃんのお茶を飲んでたから違和感がして。お茶入れは、奏ちゃんの方が上手みたいだから」
「……そうですよね」
「あ、勘違いしないで。あくまでも奏ちゃんとの比較だから。由佳里ちゃんのお茶も、十分おいしいわよ」
「あ、はい」
「でも、元に戻ったら、まりやから『まずーい!』って言われるのは、覚悟しておいた方がいいかも」
「あはは……はい」
おどけて言う瑞穂に、苦笑する由佳里であった。
「そういえば、お姉さま……」
「何? 由佳里ちゃん」
「私、何かまりやお姉さまを怒らせるようなこと、したでしょうか?」
由佳里は落ち込んだように表情を曇らせて、瑞穂に相談した。
「どうして?」
「だって、急にお世話係を変えるなんて……」
「違うわよ。まりやが由佳里ちゃんに、愛想を尽かすことなんてありえないわ。
少なくとも、由佳里ちゃんがそうなるように仕向けない限り、ね」
瑞穂は、優しい表情で由佳里に説明する。
「実はね、昨日まりやが……」
「ねえ、瑞穂ちゃん。奏ちゃんも」
「どうしたの、まりや?」
「まりやお姉さま、どうしましたのですか?」
僕と奏ちゃんがお茶を飲んでいるとき、まりやが覇気のない表情で僕の部屋に来た。
「うん、実はしばらくの間、お姉さまを交換してほしいんだけど」
「え? それって……」
「奏がまりやお姉さまのお世話をして、由佳里ちゃんがお姉さまのお世話をする、ということなのですか?」
「そう。急なお願いで悪いんだけど」
「何かあったの?」
「うん。なんか由佳里が落ち込んでるんだけど、あたしのやり方じゃ立ち直らせることができないみたい。
だから、瑞穂ちゃんと一緒にいれば、立ち直るんじゃないかって」
「まりや……」
実は、今までにもまりやのおいたが過ぎて由佳里を本気で怒らせたことや泣かせたことは何度もあった。
そんな時は、何かおいしいお菓子とかをあげたりして慰めていたが、
それでもダメな時は、瑞穂がよく優しくして(変な意味でなく)立ち直らせていた。
「不本意ではあるんだけどね。由佳里のこと第一に考えれば、それが一番じゃないかって。奏ちゃんには悪いけどさ」
まりやはそう言って照れ隠しに笑う。
「奏は大丈夫なのですよ。由佳里ちゃんに元気出してもらえるなら、少しぐらい平気なのですよ」
「私もいいわよ。由佳里ちゃんの力にならせてもらうわ」
「ありがと。じゃ、由佳里のことよろしく頼むわね」
「……というわけよ。まりやは、由佳里ちゃんのことちゃんと考えてるんだから」
「そうですか。まりやお姉さまが……じゃあお姉さま、改めてこれから1週間、よろしくお願いしますね!」
由佳里は、改めて笑顔で瑞穂に言う。
「こちらこそよろしくね、由佳里ちゃん」
一方、その頃……。
コンコン……。
「まりやお姉さま、お茶をお持ちいたしましたのですよ」
「え?」
「ですからまりやお姉さま、お茶をお持ちしたのですよ」
(あっそうか、今日から奏ちゃんが持ってくることになったんだっけ)
由佳里がお茶を持ってきてくれるのが当たり前になっていたまりやは、戸惑った後で気づく。
「いいわよ。入って」
ガチャッ
「失礼いたしますのですよ」
奏はそう言って、2人分のお茶を注ぐ。
「か、奏ちゃん、なんで2人分も淹れてんの?」
「えっ? あっ……」
まりやがびっくりして聞くと、奏は本来のことを思い出す。
「ま、まりやお姉さま、ごめんなさいなのですよ。奏、いつもお姉さまとご一緒にお茶を飲んでおりましたので、
いつの間にかそれが当たり前になっていましたのですよ」
「い、いや、別にいいけど……そっか、瑞穂ちゃん、奏ちゃんとそうしてたんだ……」
必死の気迫で謝る奏に、まりやは冷や汗交じりにそう答えてお茶を飲んだ。
「おいしーい! これホントにいつものお茶!?」
「は、はいなのですよ」
「そっか、瑞穂ちゃん、いつもこんなおいしいお茶飲んでたのか」
まりやはおいしいお茶を飲んで、急にお茶請けが欲しくなった。
「ねえ奏ちゃん、悪いけどあれ、取ってきてくれない?」
「あの、まりやお姉さま、あれってなんなのですか?」
「あ、ああ、そっか……食堂の棚の中にラブルージュのフィナンシェが入ってるからさ。紅茶と一緒に食べようと思って」
「わかりましたのです。奏、今すぐお持ちするのですよ!」
奏はそう言って部屋を出て行った。
「由佳里にはあれで通じたし……最近はあたしが言わなくても適当に持ってきてくれてたしな」
奏が部屋を出て行った後を見ながら、まりやは、由佳里との会話で当たり前だと思っていたことが、そうではなかったことに気づいた。
3日目の夜……。
「ねえ由佳里ちゃん、昨日は聞き忘れたけど、一体何を悩んでるの?」
今日もお茶を持ってきた由佳里に、瑞穂が優しい顔でたずねる。
「えっと……なんでしょうか? 陸上が面白くなかったんですけど、お姉さまを交換してから、なんか新鮮な気分になって、
いい気分転換になりましたから、スランプ脱出です!」
「……そう。もう解決したの。よかったわね」
「はい」
そんな簡単でいいのか? とも思いながら、瑞穂はホッとした。
「でも、今日は別の悩みが……」
「別の悩みって?」
「明日小テストがあるんですけど、この前の結果を考えたら、ちょっと……」
「ねえ、見せてくれる? この前のテスト」
ひきつった笑顔を浮かべる由佳里に、瑞穂は力になろうと思って言った。
「どうしても、ですか?」
「ええ、どうしてもよ」
「は、はい……わかりました」
由佳里は力なく部屋に戻ってこの前のテストを取ってくる。
「これはひどいわね……」
「ううう……」
がっくりとうなだれる由佳里。絶望的な目でテストを見る瑞穂。
「じゃあ、明日はこんなことにならないよう、しっかり勉強しなきゃね」
「いいですよ。どうせ今さらしてもしなくても同じですから……」
ふてくされて言う由佳里に、瑞穂は厳しい顔になる。
「由佳里ちゃん、なんでも最初からあきらめちゃダメ。1日やっただけでも、やらないのと全然違うわ」
「ち、違いませんよ! 私、頭悪いですから」
「そんなことはないと思うわ。その証拠に、由佳里ちゃん、お料理のことに関しては、知らないことなんてほとんどないでしょ?」
「え? ええ、まあ……」
由佳里が言うと、瑞穂は笑顔になる。
「それが、頭が悪くないことの証明よ。由佳里ちゃんは頭が悪いんじゃなくて、覚えようという気がないだけなのよ」
瑞穂は由佳里の勉強を見るため、さらに続ける。
「教科書とノート、持っていらっしゃい。私が教えてあげますから」
「わ、わかりましたあ……」
がっくりとうなだれながら教科書とノートを取りに戻る由佳里。
そして、2人の勉強会が始まった。
「漢字なんて、読めるように書ければいいんだから、書き順なんてどうだっていいじゃないですか……」
「はいはい、文句はいいから、次はあんなことにならないように、しっかりやりましょうね」
新しい課題を言われるたびにぶつぶつ文句を言う由佳里を瑞穂は軽くかわしていく。
「でもお姉さま、私はやる気がないっておっしゃいましたよね?
だったら、やる気を出させるのもお姉さまのお役目じゃないんですか?」
まりやに似て、へりくつ使った文句の多い娘だ……と瑞穂は思うが、それも一理あるかもと方法を考えてみる。
「しょうがない娘ね。じゃあ、次のテストで1教科5点以上。合計25点以上アップしたら、
私の大切なものを由佳里ちゃんにあげるわ」
「えっ!? ほ、本当ですか!?」
「ええ、本当よ」
「じゃ、じゃあ、お約束しましたからね!」
そう言うと、由佳里は今までの態度がウソのように机に向かう。その様子を、瑞穂は困ったように笑いながら見ていた。
そして、5日目の夜。
「お姉さま、やりました! 見てください!」
由佳里がティーセットを用意しながら、帰ってきたテスト用紙を瑞穂に見せる。
「すごいわね。全部でだいたい8点ぐらい……合計42点もアップしてるわ」
瑞穂が感心して言う。
「お、お姉さま、お約束の……」
由佳里は、頬を染めてもじもじしながら言う。
「ちょっと待って! 目をつぶってくれる?」
「は、はい……」
由佳里は右手を胸に当てて、必死で心臓の鼓動を抑えながら目を閉じる。
しばらくして、由佳里は瑞穂が掴んだ手の上に、何かが乗せられたのに気づいた。
「もういいわよ。目を開けても」
「は、はい?」
由佳里は釈然としないながらも目を開けると、手に乗っていたものは……。
「こ、これは……?」
手に乗っていたものは、小さな巾着袋だった。
「母さまが昔持っていた学力向上のお守り。私も試験の時、ずいぶんこれに助けてもらったわ。私の大切なものよ」
「あ、あはは……そ、そうですか……」
違うことを期待していた由佳里は、唖然としながらも、乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
「どうしたの? 当てが外れたみたいな顔してるけど、ご期待に添えなかったかしら? 一体何が欲しかったの?」
瑞穂は心配そうに聞いてくるが、由佳里は自分が期待していたことについて言えるはずもない。
「い、いえ……ご期待に添えました……ありがとうございました」
悪気がないだけに、ある意味まりやよりタチが悪い……由佳里はそう思いながら、がっくりと自分の部屋に帰っていった。
6日目の朝、食堂……。
「あっはっはっはっは、傑作ーっ!!」
瑞穂から昨日の話を聞いたまりやは大笑いしていた。
「ま、まりや、何がおかしいの?」
「だってさー、その時の由佳里の顔が目に浮かぶようで……なっはっはっは……」
引き気味な瑞穂の問いに、まりやは目に涙を浮かべたまま答える。
「うーっ……まりやお姉さま、笑いすぎですっ!!」
頬を膨らませて抗議する由佳里。
「残念だったわねゆかりん。ご期待どおりのものじゃなくて」
「ゆかりんじゃありません! 別に変なものも期待していません!」
「ふーん……変なものってどんなもののことかにゃー?」
まりやは意地悪モードにチェンジしてつっかかってくる。
「ど、どんなものって……そんなの……」
「そんなの?」
「もう! 知りません!」
由佳里はキレてしまった。
「でもさ、瑞穂ちゃんも人が悪いよねえ。肩すかし喰らわせてさ」
「え? 肩すかしって?」
「由佳里に瑞穂ちゃんの大切なものあげるなんてウソついてさ」
首をかしげる瑞穂に、半分意地悪モードのまま答えるまりや。
「ウソじゃないわよ。由佳里ちゃんにあげたのは、ホントに私にとっては大切なものなんだから」
「……恐ろしいわ。天然ってものすごく。そう思うでしょ、由佳里も?」
「あ……あはははは……」
真剣に言う瑞穂に、呆れる2人であった。
「お姉さま、お茶をお持ちしました」
今日も瑞穂にお茶を持ってくる由佳里。
「どうぞ。入って」
「失礼しまーす!」
部屋に入って、2人分のお茶を淹れる。
「お世話係を交代するのも、今日で最後ね」
お茶を飲みながら感慨深く言う瑞穂。
「そう……ですね」
「由佳里ちゃん、そろそろ元に戻りたいと思ってる頃じゃない?」
「うーん……戻りたいような戻りたくないような……複雑な気分です……」
由佳里は真剣に考えながら話す。
「私はそろそろ元に戻りたいかしら。奏ちゃんのおいしいお茶が恋しいからね」
瑞穂はいたずらっぽく言う。
「あーっ! お姉さま、ひどいです!」
「ごめんごめん。冗談よ」
瑞穂は優しい顔に戻って続ける。
「でも、由佳里ちゃんの気持ち、なんとなくわかるわ。由佳里ちゃんには、奏ちゃんにないいいところもいっぱいあるし、
その逆も言えるし、どっちの空気にも浸っていたい……そう思えるのよね」
「お姉さま……」
「さあ、お茶を飲んでしまいましょう? でないと、せっかくのお茶が冷めてしまうわ」
「はい!」
由佳里の手作りの茶菓子を食べながら紅茶を飲み、瑞穂と由佳里はお姉さま交代期間の最後のひと時を過ごした。
そのころ……。
「まりやお姉さま、お茶をお持ちいたしましたのですよ」
奏が、やはりまりやにお茶を持って来ていた。
「ああ奏ちゃん。入っていいわよ」
「失礼いたしますのですよ」
そう言って、奏はまりやのお茶を注ぐ。
「でも奏ちゃん、だいぶあたしの世話係にも慣れてきたわね」
「はややっ、由佳里ちゃんのようにはいかないようで、申し訳ないのですよ」
奏の淹れたお茶を飲みながらしみじみと言うまりやに、奏は手をバタバタさせて慌てて取り繕った。
「誰もそんなこと言ってないわよ。ま、確かに最初は由佳里の機嫌を直すためだったけど、実際やってみて、
あたしも色々勉強になったよ。奏ちゃんのことも、瑞穂ちゃんのことも、由佳里のこともね」
「奏もなのですよ! お姉さまのお世話で当たり前だと思っていたことが、そうでないことが改めて痛感いたしましたのですよ」
「そうだね。きっと瑞穂ちゃんたちも、そう思ってるわね」
「はいなのですよ!」
瑞穂の部屋を遠い目で見ながら言うまりやに、奏も元気よく返事をする。
こうしてまりやと奏も、お姉さま交代期間の最後のひと時を過ごした。
8日目、朝。
「今日から、また元通りね」
「そうだね。あー、なんか懐かしいわ」
お世話係の交代期間も終わり、今日からまたいつも通りの関係に戻る。
「ねえ、瑞穂ちゃんと由佳里はどうだった? お世話係を交代してみて」
まりやは、この1週間の感想を興味深そうに聞いた。
「はい! 色々新しい視点で見ることが出来て、本当によかったです!」
「そうね。私も今まで当たり前だと思っていたことを色々考える機会になったわ。
たまにはこうして交代してみるのも、悪くないかもね」
瑞穂がこの1週間を振り返りながら言う。
「そういうまりやと奏ちゃんはどうだった?」
「奏、まりやお姉さまのお世話をしてみて、改めてお世話することの難しさを思い知りましたのですよ」
「あたしも色々学ばせてもらったわ。瑞穂ちゃんのこと、奏ちゃんのこと、
そして由佳里のありがたみも、イヤって言うほど実感させられた」
「本当に大切なものは、失ってみて始めてその価値に気づくってこと?」
真剣な顔で言うまりやに、瑞穂がそう切り返す。
「まあそんなとこかな」
どうやらみんな、それぞれ得るものがかなりあったようだ。
ちなみにこのお姉さま一時交換制度は、薫子と初音、そしてその妹たちにも受け継がれていくのだが、それはまた別のお話。
「ところで瑞穂ちゃん、奏ちゃんが瑞穂ちゃんのことどう思ってるか知ってる?」
「どう思ってるの?」
不思議そうに聞く瑞穂に、まりやはそっと耳打ち。
「母性愛の塊、女の中の女、美しさと優しさを兼ね備えた女神様そのもの、だって」
「………!!」
それを聞いた瑞穂は、食堂の隅にうずくまってしまった。
「まりやお姉さま、奏のことなんとおっしゃったのですか?」
「どうってそのまんまだけど……まあ瑞穂ちゃんは気にしなくていいわよ。いつものことだから」
奏の質問に答えたまりやは、そのまま由佳里の方を向く。
「由佳里……どうだった? この1週間瑞穂ちゃんと過ごして。スランプは脱出できた?」
「はい! もう十分元気も出ました! ありがとうございました!」
心配そうに聞くまりやに、由佳里は満面の笑顔で元気いっぱいに答える。
「よかったわね。あたしも交代してみて、今まで当たり前だと思ってた色々なことが、
由佳里の気配りのうまさだったんだって気づいた……」
「そ、そんなこと……」
「身にしみて実感できたよ。由佳里のありがたみが、ね」
「お、お姉さま……」
いつになくまじめに感謝の気持ちを語るまりやに、由佳里は照れてしまった。
「……というわけで、久しぶりに2人の戯れのお時間といきますか!」
そこへ、不意打ちでまりやが意地悪モードにチェンジし、由佳里にいたずらを仕掛けにかかる。
「ひゃあああっ! ま、まりやお姉さま、それが人のありがたみがわかった後にやることですかあ!?」
「だから、由佳里をいじれるありがたみもよくわかったんだから、それをもう一度確認するためにも、おとなしくいじられなさい!」
「そ、そんなありがたみ、わからなくていいです! やめてくださ……わああああっ!!」
その後由佳里はまりやに、いつもの数倍もの時間をかけて、たっぷりとおもちゃにされ続けるのでありました。
Fin
以上です。
14話の最初が、私の作品ですみません。
暑い日々が続きますけど、皆さん、これからも頑張っていきましょう!
それでは、私はこれで。失礼いたします。
>>23 GJ!
世は夏休み、そろそろそういったお話も出てくるのと
wktkしながら見てます
25 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:13:12 ID:ILH16cAV0
バースデイ・カプリッツィオ、続きです。 どうぞ。
26 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:15:51 ID:ILH16cAV0
よく飽きないな…。
葉子は呆れとも感心ともつかない表情で鼻息を漏らした。
いつものことである。 特に心配などはしていなかった。
お姉さまが横にいらっしゃるから…というのもあるけど、
何より今の二人の言い争いには、昔のような刺々しさが感じられない。
まるで相手のことを分かり合いながらぶつかり合っているかのようで、危なげないのだ。
君枝さんはちょっとおろおろしているみたいだけど。
葉子がフォークに突き刺したちぎりレタスを青じそ風味のドレッシングに浸していると、
「あ、そうそう」とまりやお姉さまが突然何かを思い出したようにきびすを返した。
「あ…」
今まで言い争っていた相手にいきなり置いてけぼりにされ、呆気に取られる会長を尻目に、
まりやお姉さまは自分の席のところで腰を曲げると、何かを手に取った。
再び会長の前に戻ると、持っていたものを「はい」と無造作に会長へと突き出す。
「え…と…」
未だ呆気に取られたまま目をパチクリさせる会長だったが、何とか気を取り直すと、
目の前に突き出されている袋からゆっくりと目線を上げ、まりやお姉さまの顔を見つめながら尋ねた。
「もしかして……プレゼントですか…?」
「決まってるじゃない」
「そ、そうですか…」
27 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:17:51 ID:ILH16cAV0
まるで予想外の反撃に虚を突かれ、困惑した表情で手を伸ばしたものの、
プレゼントを受け取ると、ちらちらとまりやお姉さまの顔とプレゼントに視線を往復させた。
口元を歪ませて何とかポーカーフェイスを維持してはいるが、
じわじわと顔が赤らんでいくのを自覚したのか、受け取ったプレゼントで顔の下半分を隠してしまう。
とはいえ、いかな状況においても儀礼を重んじる会長である。
その仕種のまま、まりやお姉さまを少し俯きがちに見上げた会長は、
「あ…ありがとう…」
と素直に感謝の言葉を告げた。
どっか〜ん!
…比喩するなら、こんな感じだろうか?
皆言葉こそ漏れなかったが、それは言葉を発することすらできなかっただけに違いない。
今のしおらしい仕草と普段の凛々しい会長とのギャップは、葉子でさえ思わずはっと息を飲むほどに、
それこそ暴力的なまでに会長の可愛らしさを引き出していた。
数瞬遅れて周りからは息を飲む音が聞こえてきたり、
君枝さんの方を見てみれば、口をだらしなく開けながら会長に見蕩れている。
目の前で直撃を受けたまりやお姉さまはといえば、からかう余裕すら吹き飛ばされてしまったようで、
赤い顔で「どう…いたしまして」なんて、ひねりのない返事をしてしまっていた。
28 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:21:55 ID:ILH16cAV0
しかし会長が「中を見てもよろしいですか?」と楽しそうに問いかけると、少々顔色を変え、
「あ…あ〜、できれば家で見たほうがいいんじゃないかとあたしは思うな〜…」
と額に手を当てながら歯切れ悪く答えるまりやお姉さま。
「………」
しばし不思議そうにまりやお姉さまを見上げた会長だったが、不意に軽く眉をひそめると、
さっと袋の口を開けて中を覗き込んだ。
「あ」
中を数秒ほど見つめた会長は、すぐさま袋の中に手を突っ込み、中身を取り出す。
袋の中から出てきたそれは、紺色の布製の何か…あれは、水着?
…うん、水着だ。
しかし、「冬なのに水着?」といった疑問が頭に浮かぶことはなかった。
なぜなら。
「スクール…」
「…水着?」
誰かがぽつぽつと呟く。 そう、それは学校制式の、いわゆるスクール水着だったのだ。
「…こっ…これは……どういうことですか?」
目を閉じてしかめっ面になった会長が、眉間をピクピク震わせながら低い声で尋ねる。
対するまりやお姉さまは、涼しい表情で事もなげに答えた。
「どうって、あんたが喜ぶもん用意してあげたんじゃない」
「こんなもので私が喜ぶとでもお思いなのですかっ!」
「ま〜ま〜、それ、広げてみな」
29 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:30:55 ID:ILH16cAV0
「っ…、〜……」
まだまだ何か言いたげな会長だったが、表情から余裕の色の消えないまりやお姉さまを見て、
渋々そのスクール水着を左右の肩ヒモの部分を持って広げた。
次の瞬間、まりやお姉さまと会長を除いた面々の口から、
「あ」
という言葉が漏れる。
…なんともはや。 葉子は思わず吹き出しそうになるのを慌てて抑えた。
頼んだのはこちらではあるのだが、さすがはまりやお姉さま、
また一悶着ありそうなものを用意してきたものである。
「あ〜、ぎゃくぎゃく」
「逆?」
まりやお姉さまに手を回すようなジェスチャーで促され、水着をひっくり返す会長。
会長の視線がつー、と水着の上を滑り、ある一点で立ち止まった直後、その身体がぴくんっ、と小さく跳ねた。
「み…みやの…こう……」
声を震わせながら、手にした水着の胸元付近に書かれてある文字を呟いた会長は…、
その体勢のまま動かなくなった。
「ちょちょ、ちょっとまりや!」
すると今度は気を取り直したお姉さまが、腰を起こしながら荒げた声を上げる。
「何よ」
「どうして私の水着をまりやが持ってるのよ!」
当然の疑問だった。 だって、あれはお姉さまの水着だったのだから。
30 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:33:54 ID:ILH16cAV0
「どうしてって、ちょこっと拝借させてもらっただけよ」
「あのね…」
拝借と言っておきながら他の人にプレゼントするとはこれいかに。 戻ってこないじゃないか。
…まぁ、そういう問題じゃないけど。
炸裂する相変わらずのまりやお姉さま節に、沸き起こる感情を我慢するように目を閉じながら、
少し開けた唇をわなわなと震わせるお姉さま。
言いたいことがありすぎてまとまらないのだろう。 色々と心中察するに余りある。
「いいじゃん、もう着ないんだから」
「そういう問題じゃないでしょう…一体いつの間に…」
腰を下ろしながら、疲れた表情で大きく溜め息を吐くと、
ふと何かを思い出したようにまりやお姉さまを見上げた。
「もしかしてまりや、あの雨のあと」
「鋭いね瑞穂ちゃん」
雨のあと…?
この前まりやお姉さまにお願いをしに行って以降、雨が降ったのはまりやお姉さまに逢ったその日だけだ。
ということは、私と話した直後にその足でお姉さまの部屋に行ったのだろうか。
「…まぁ百歩譲って私の水着をプレゼントするのはいいとして…、
貴子さんがそんなものをプレゼントされて喜ぶわけないでしょう?」
「瑞穂ちゃん、本気で言ってる?」
一歩でも譲れるところが凄いな。 まりやお姉さまとの付き合いがいかなるものであるかが垣間見えるようだ。
しかしその切り返しは太刀筋を誤っている。
会長がお姉さまに好意を持っているのはすでに見え見えだし、
現に今、お姉さまの水着を手に固まっている会長がそのいい証明である。
31 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:36:25 ID:ILH16cAV0
相手の招いた追い風を背に、腕を組んだまりやお姉さまが反撃の狼煙を上げる。
「ま〜だ自分がどういう存在なのか分かってないね、瑞穂ちゃん。
この学校の大多数の生徒はお姉さまに関わるものなら何でも欲しい、そう思ってるの」
「そんなこと…」
「あるのよ。瑞穂ちゃんが件のハンカチ○子よろしく青いハンカチで顔の汗でも拭ったことが噂になろうものなら、
次の日からこれが学校制式とでも言わんばかりに全ての生徒のハンカチが青く染まるわ」
「もう、大げさよ」
「でも、もしお姉さまの持っていらっしゃるものと同じハンカチが売られていたら、
奏、買ってしまうかもしれないのですよ」
「私も…買っちゃうかも…」
申し訳なさそうにまりやお姉さまの意見を肯定する周防院さんに、上岡さんも同意する。
「ほら見なさい」
「そういう…ものなのかなぁ…」
思わぬ伏兵の出現に少し複雑な表情で唇を尖らせたお姉さまを、
そら見たことかといった顔で見下ろしながら、まりやお姉さまは身振り手振りを加えて更に畳み掛ける。
32 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:39:52 ID:ILH16cAV0
「そういうものなの。どんなに些細なアイテムでも、
それがお姉さまのものであればその価値はうなぎ上りなのよ。
それが瑞穂ちゃんの身の回りのものだったら価値はもっと上がるし、
制服とか体操服とか水着とか下着とかベッドとか枕とか、
瑞穂ちゃんのあれやこれやが染み付いたものとかになってくると、もう一財産ね。
学校内オークションでもやれば軽く家が建つわ」
「建つわけないでしょう…。あと、妙な表現はやめてほしいんだけれど」
いや、誇張とはいえ確かに石を投げれば熱狂的お姉さま信者に当たる聖應である。
聖應には政財界の令嬢も多く在籍しているわけで…、
あながちありえないとも言い切れないのが怖いところだ。
「日常暮らしていれば汗やら何やらあれこれ染み付くわよ」
「…でも、貴子さんが私の水着を欲しがるとは限らないでしょう?」
反撃の糸口を掴めず、会長に逃げ道を求めるお姉さま。
しかし残念ながら、恐らくその道は行き止まりだ。
「じゃあ、聞いてみれば?」
「え…う、うん…。貴子さん?……貴子さん?」
まりやお姉さまにそそのかされ、少し情けない表情のお姉さまが会長に話しかける。
一度目は話しかけられても無反応の会長だったが、お姉さまが肩に手を置いて小さく揺すると、
「…はっ、はい!?」
と声を裏返しながら、はっと意識を取り戻した。
33 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:43:39 ID:ILH16cAV0
「あの…貴子さん、その水着…欲しいですか?」
「え゙ぇっ!?そそ、その…」
自分の所持品である水着を指差し、困った表情で単刀直入に尋ねるお姉さまに、
そのお姉さまの水着を抱きしめながら、声を震わせて狼狽する会長。
言っちゃ悪いけど、非常に挙動不審である。
「私が着たものですし、他に使いようがないでしょう?」
「莫迦ね〜瑞穂ちゃん。中古だからこそ意味があるんじゃない」
答えに窮する会長の代わりに、まりやお姉さまが言い返す。
「…どういう意味?」
「にっぶいな〜。まぁ…マルバツマルバツとか〜サンカクシカクサンカクシカクとか〜、
使いようはいくらでもあるってことよ」
「何その伏字…」
にやにやと笑うまりやお姉さまに、お姉さまは怪訝そうに眉をひそめる。
言葉から推測するに、二文字の言葉を繰り返す四文字の言葉なんだろうけど…。
「ほぉら貴子、欲しいなら欲しいってちゃんと言わないと分かんないって」
「えぇっ……そ、その…記念として、い…頂けないでしょうか…」
まりやお姉さまに促され、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらも素直に願い出る会長。
「記念…ですか」
「えっええ、記念に…」
何の記念かは不明だが、何はともあれこれでチェックメイトだ。
そこまで言われてしまっては、お姉さまももう嫌だとは言えないだろう。
確かに実際問題、もう使わないものなんだし。
34 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:50:53 ID:ILH16cAV0
「…分かりました。え…っと、大事にしてください…っていうのは何だかおかしい気もしますね…」
ついに堕ちたお姉さまは、諦めた表情で溜め息を吐きながら苦笑した。
「そりゃあ大事にするわよ。ね〜え?大事にしないと長く使えないし〜」
「…使う使わないのくだりは意味が分かりませんけれど、大事にいたしますわ」
含みを持たせるようなまりやお姉さまの言葉に口答えしながらも、
感情を気取られないようにポーカーフェイスを気取る会長だったが、
かえってちょっと変な表情になってしまっている。
その表情からは嬉しさを何とか隠そうとしている様子が透けて見え、
それが何とも言えず面白…いや、微笑ましかった。
まりやお姉さまが自分の席に戻り、会長がお姉さまの水着を袋の中に戻しているのを確認する。
葉子は小声で君枝さんの名前を呼んで視線を合わせると、小さく頷いてみせる。
君枝さんはこちらに頷き返すと、膝の上に置いていた、小さな袋が上に乗った平べったい箱を手に取り、
プレゼントを椅子の横に置いて体勢を戻した会長へと差し出した。
「会長、これを」
呼びかけた君枝さんの方を見て一瞬嬉しそうにする会長だったが、すぐに不思議そうな表情へと変わる。
「あら、でもさっき可奈子さんが…」
「実はさっき可奈子が渡したプレゼントはニセモノなんです。
あれも会長へのプレゼントには間違いないんですが、私たちのプレゼントはそちらが本物です」
当然出ると思っていた疑問に葉子がプレゼントを手で指しながら答えると、会長はおかしそうに吹き出した。
「ふふっ、そうだったの」
「会長、おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「おめでとうございまぁ〜す」
35 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:54:16 ID:ILH16cAV0
「ありがとう…嬉しいわ。…早速だけれど、開けてもいいかしら」
君枝さんからプレゼントを受け取った会長は、膝の上に箱を乗せ、
上に乗っている小さな袋を摘まんで広げながら聞いた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
君枝さんの返事を受け、嬉しそうに袋の口を広げると、その中から二本一組、三束のリボンを取り出した。
白地に青い薔薇(っぽい花)がデザインされているリボンが君枝さんので、ピンクと白のタータン柄が可奈子、
ライトイエローの布地に赤い花とツルが延々とデザインされているリボンが、葉子の選んだものだ。
「これはリボンね。可愛らしいリボンたちだけれど、私に似合うかしら…」
会長が少し苦笑気味に漏らすと、君枝さんが慌ててそれを肯定する。
「かっ、会長なら、どんなものでもお似合いになると思いますっ!」
大声でそう断言され、一瞬目を丸くした会長だったが、すぐにおかしそうに頬をゆるませた。
「…ありがとう、君枝さん」
「あ…もっ、申し訳ありません…」
我に返った君枝さん。 顔を真っ赤にして恥ずかしそうにうつむいてしまった。
会長絡みになるとブレーキが利かなくなるのはいつものことだけど、
あとから振り返ってへこんだり落ち込んだりしないのだろうか。
…君枝さんの性格からして、してるのかもしれないな。
「ふふっ。まぁ、会長ならもっと可愛らしいリボンでもお似合いになると思いますよ」
会長は今、黒のシンプルなリボンで髪を結っている。
学校というものは勉学に勤しむ場所であり、身だしなみは質素に整え、
華美な装飾を控えるべきであるという姿勢を身を持って体現している会長は、
普段から暗色の飾り気のないリボンを身に着けていることが多かった。
「そうかしら…」
36 :
Qoo:2007/08/02(木) 02:57:32 ID:ILH16cAV0
「ああそうだ、君枝さん、結って差し上げたら?」
「わわっ、私がですかっ!?」
葉子のふと思いついて言った提案に、大げさにこちらを向きながら狼狽する君枝さん。
「そうですよ〜。せっかくのプレゼントなんですからぁ〜」
「…そんな、恐れ多いです…」
逡巡する君枝さんの視線が葉子、可奈子、会長へとちらちらと移っていく。
たかがリボンを着けて差し上げるだけだというのに、そこまで畏まらなくてもいいだろうに。
「会長も、いかがですか」
このままではラチが開かないので、会長の方から動かした方が良さそうだ。
「そうね…。せっかくだから、お願いしようかしら。君枝さんが選んでくれたのはどれ?」
「あのっ、えっと…その白い…」
困り顔の君枝さんが遠慮がちに自分の選んだリボンを指差すと、
会長は「これね」とその選んだリボンを摘まんで君枝さんに差し出した。
「お願いするわね」
「はっ、はい…では…」
背水まで追い込まれ、何とか覚悟を決めたらしい君枝さんが、緊張した面持ちで立ち上がる。
でもちょっと手が震えてるけど…大丈夫だろうか。
君枝さんが立ち上がったのに合わせて、会長は髪を結っていた黒のリボンを解くと、頭を軽く振った。
戒めから開放された豊かな栗色の髪が、柔らかそうにふわふわとゆれる。
そんな会長を見て、周防院さんがふと言った。
「会長さん、リボンをしていらっしゃらないお姿もまたお綺麗なのですよ〜」
その言葉を聞いて、他の皆もうんうんと頷く。
37 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:00:43 ID:ILH16cAV0
考えてみれば、会長がリボンを解いたところは一度も拝見したことがなかったけど、
元が良いのでこういった髪型もまた似合っていて美しい。
それに何というか、よりお嬢様然といった感じで新鮮だ。
「ありがとう奏さん。お世辞でも嬉しいわ」
恥ずかしそうに微笑しながら会長が言うと、周防院さんが慌てて目の前で両手を振って否定する。
「そんな、お世辞じゃないのですよ〜」
「ええ、私もとってもいいと思うわ。たまには学校でもその髪型になさればいいのに…」
「そうですよぉ、会長〜」
お姉さまと可奈子の言葉に(多分、主にお姉さまの言葉に)、会長の顔の赤みが増す。
「が、学校では髪は邪魔になりますから…」
そんな中、葉子の目の前に座っている上岡さんがぽつりと呟いた。
「いいなぁ…髪が長くて綺麗で…」
「いいじゃない。あんたは短いのが似合ってるんだし」
まりやお姉さまが頬杖をつきながら返答する。
「どうせ長い髪形は似合いませんけど…」
「よく分かってるじゃない」
「ちょっとはフォローしてくれたっていいじゃないですかぁ〜」
あっけらかんと言い放つまりやお姉さまを、下唇を噛みながら恨めしげに見上げる上岡さんだったが、
「あたしの妹なんだから、短くて丁度いいのよ」
軽く鼻で笑いつつぽんぽんと頭を撫でられ、存外に優しい口調でそう言われると、
照れたように頬を赤らめ、大人しくなった。
ちょっと唇を尖らせているが、満更でもなさそうな表情だ。
38 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:04:39 ID:ILH16cAV0
「会長、よろしいですか?」
会話が終わるまで律儀に待っていた君枝さんが、二人のやりとりに小さく笑っている会長に問いかけた。
同じように二人のやりとりでなごんだのか、君枝さんの緊張もどうにか和らいだようだ。
「ええ、いいわ。待たせてしまったわね」
「いえ。では失礼します」
君枝さんが髪に指をすき入れ始めると、会長は残りのリボンを袋の中に入れなおして机の上に置き、
膝の上に乗せてある平べったい箱に手をかけた。
「じゃあ、これも開けるわね」
「どうぞ〜」
可奈子が答えると、パカっと箱を開けてフタを椅子の横に立てかける。
「これは…服?」
箱の中から取り出して広げてみせたそれは、
中央のフリルが僅かに飾るのみのシンプルなライトグリーンのチュニック。
それと箱の中にはもう一つプレゼントが入っている。
「と、この黒いのは…ジーンズ…というのかしら」
服を膝の上に乗せ、代わりに今会長が引き上げたのが、ブーツカットのスリムなブラックジーンズだ。
最終的に葉子たちが選んだもう一つのプレゼントは、一度は否定したカジュアルな服という選択肢だった。
選択の理由は、うろうろと商店街をうろつき回りながらプレゼントを思案している最中、
可奈子が言ったあることがキッカケである。
「以前可奈子が私服のお姉さまをお見かけしたことがあるらしくて」
「…私を?」
「はぁい〜。そのときのお姉さまってば、男の人っぽい格好なのにすっごく女っぽくてぇ、素敵だったんですよ〜」
「そ、そうなの…ありがとう…」
「素朴なデザインの方が会長の美しさを引き立てるのではないかと思い、選んでみました」
ちなみに店で買ったときに入れられたのは普通のビニールの袋だったのだが、
何となくプレゼントにそぐわない気がして、家にあった無地の紙箱に中身を入れ替えていた。
39 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:06:57 ID:ILH16cAV0
「サイズの方はちゃあ〜んと調べましたからぁ、その辺りはご心配なく〜」
人に着るものをプレゼントする際、サイズというのはとても大きな問題なのだが、
それは先の学園祭のときに会長の衣装を作成した手芸部に連絡を取ることで、何とか解決した。
三人の中で手芸部の部員とは交流のある人は一人も居なかったので、
一度学校に戻ってから電話をする羽目になったけど。
それとジーンズの裾は、会長と身長が同じくらいの葉子に合わせて裾上げしてもらったので、
それほど誤差はないと思われる。
「そう…こういう服は着たことがないのだけれど…」
チュニックの襟を首元に当てながらこぼした言葉に、お姉さまが優しく微笑しながら答えた。
「とてもお似合いですよ」
「そっ、そうですかっ…?」
その反応に上擦った声を上げる会長。 …分かりやすい。
「でもそれ首元がちと薄いから、首元に何か着けるといいかもね」
まりやお姉さまがアドバイスを付け加える。
「何か…ですか?」
「ネックレスとかチョーカーとかね。あんた持って…ってやっぱいいや。
持ってそうだけど、あんたが持ってるの何かゴチャゴチャしてそうだし」
「ご、ゴチャゴチャってどういう…」
40 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:12:57 ID:ILH16cAV0
「貴子、明日あたしの部屋に寄りな。プレゼントしたげる」
むっと熱を上げる会長の言葉をさえぎり、予想外なことを口にするまりやお姉さま。
「…えっ?」
「ついでにそれに合う靴もね」
いたく気前のいいまりやお姉さまの申し出に、会長は目を丸くして少々困惑気味のご様子だ。
「…ま、まりや…さん?よろしいのですか…?」
「ま、さっき渡したプレゼントは元手ゼロだったしね。ネックレスのほうはあたしのお下がりでよければ」
「あ…ありがとうございます…」
お礼を言いながらも何だか少し戸惑っていた会長だったが、ふっと息を吐くと、すぐに楽しそうな笑みに変わった。
「…それでは遠慮なく、明日の放課後に伺わせていただきますわ」
「はいよ」
まりやお姉さまが蓮っ葉に返したところで、いつの間にか作業を追え、
またも後ろで律儀に待っていた君枝さんが、会長に「終わりました」と声をかけた。
「ありがとう君枝さん。どうかしら、似合う?」
会長は結われたリボンを軽く撫でると、君枝さんの方に向きなおりながら問いかける。
「は、はい…よくお似合いだと思います…」
「ふふっ…ありがとう」
赤くなりながら首肯する君枝さんに、嬉しそうに微笑した会長は、
服とジーンズを箱の中になおすと、「皆さん」と皆に呼びかけた。
41 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:26:21 ID:ILH16cAV0
君枝さんも自分の席に戻り、呼ばれた全員の目が会長へと集まる。
会長は前に向きなおって姿勢を正すと、一度全員の顔に視線を巡らせ、悠然と話し始めた。
「今日は私のためにこのようなパーティを開いていただいて、
あまつさえこんなにたくさんの素敵なプレゼントも頂きました」
言葉を止めると、膝元、椅子の横とプレゼントを見やり、そして少し切なそうな表情になる。
「実はパーティの途中、自分は皆さんにこのようなことをして頂けるような存在なのだろうか、
私はそれほど皆さんに何かをしてきただろうかって、そんな詮無いことを考えていたんです」
「そんなっ…か、会長は素晴らしい人で…それに、何かをしてもらったからとかそういうのではなくて、
ただ会長に喜んでもらいたいって、そう思ったのですわ!」
会長の告白に、ぼっと熱くなる君枝さん。
「考えていた」のだからまだ続きがありそうなのに、そう焦ってがっつかなくても…とは思ったが、
まぁ君枝さんの性格からすれば無理からぬことか。
「私も尊敬していますよ、会長」
君枝さんの言葉に乗っかり、葉子も合わせる。
言ったのはついでだけど、でもこの言葉に嘘はない。
「可奈子も〜、会長のことだぁ〜い好きですよ〜?」
可奈子も間延びした声で続けると、会長は小さく笑いながら頷いた。
42 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:33:48 ID:ILH16cAV0
「ええ。皆さんを見ていて、ただ心から私を祝福してくれていることが分かって。
それが少し驚きで、でも…言葉にならないくらい嬉しくて…」
見とれるほどに綺麗な笑顔を浮かべながら話す会長の目には、薄っすらと涙が浮かんでいて、
それがまばたきを合図に小さな雫となって頬を滑り落ちた。
心の温度が一気に膨れ上がり、こちらも思わず目頭が熱くなる。
「今日は最高のクリスマスです。皆さん、本当に…ありがとう…」
そう言って深く頭を下げる会長。
「会長…」
会長がそこまで喜んでくれたのなら、こちらとしても嬉しい。 大成功、万々歳だ。
「貴子さん。パーティはまだ終わりじゃありませんよ。
料理もケーキもまだまだ残っていますから…涙をお拭きになって」
お姉さまが会長の肩に手を乗せ、ハンカチを手渡しながら優しく声をかける。
「はい」
そうして目を擦りながら顔を上げた会長は、まるで幼く見えるほどに無邪気な笑顔を満面に浮かべていた。
心が温かくなるようなその笑顔は、今まで会長を見てきた中で一番可愛い表情だった。
43 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:39:16 ID:ILH16cAV0
お姉さまのハンカチで涙を拭きながら、ずっ、と小さく鼻をすすり上げた会長は、
膝の上に乗せていた紙箱を手に取ると、腰を曲げて椅子の横に立てかける。
体勢が元の位置に戻ると、その手には箱の変わりに小さな袋が握られていた。
葉子たちがプレゼントしたリボンの入った袋は、未だテーブルの上に置いたままだ。
どこかで見たことがあるような………ああそうだ、思い出した。
あれは会長をここに連れてくる作戦の実行中に、可奈子が渡したダミーのプレゼントじゃないか。
「そういえば…これは貴女方の用意したプレゼントではなかったのよね」
「えっ、ええ…」
「確かに私たちが用意したものではありませんが、会長の机の上に置かれていたらしいので、
恐らくは会長へのプレゼントであることは間違いないと思います」
「会長〜、何が入ってるんですか〜?」
確かに、中身は何なのか気になる。
可奈子が催促すると、会長は少し赤くなった目で笑いながら頷いた。
「そうね…開けてみるわね」
再度鼻をすすり上げ、目を拭った会長は、ハンカチをたたんで膝の上に置くと、
袋の口を開けて中を覗きこんだ。
「………」
無言のまま数秒ほど中を見つめ、なぜか少し首をかしげると、袋の中に手を差し入れた。
中からスルリと出てきたのは、白くて柔らかそうな布製の何か。
…それの正体が判明すると、食堂に非常に微妙な空気が流れた。
44 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:43:13 ID:ILH16cAV0
「…いわゆる…ショーツ、ってヤツ?」
「……ですね」
自問するように言ったまりやお姉さまの言葉に、葉子は何とか気を取り直して答える。
今会長が摘み上げ、目の前にぶら下げたそれは、女性用下着、パンツ、ショーツなど色々言い方はあるものの、
つまりはそういうものだった。
「……まぁ、下着のプレゼントっていうのもある意味粋じゃない?」
「…私は、見ず知らずの方からこのようなものを貰って喜ぶような性癖は持ち合わせておりません」
何とかフォローを試みるまりやお姉さまの言葉に、苦い表情で溜め息を吐く会長。
粋かどうかは置いておくとしても、せめてこのようなプレゼントは余程親しい人に贈るものじゃないだろうか。
あるいは、ジョークが通じるような相手かどうかが問題だ。
しかし、このプレゼントは生徒会室に置いてあったわけで、親しい人であれば普通手渡しするだろう。
そして見ての通り、会長は後者が当てはまる人物ではない。
…とか色々考えていたら。
「ちょっ、ちょっと待ってください貴子さん、そのまま」
なぜかちょっと焦っているような声で、手を下げかけた会長を制止するお姉さま。
「は、はい…」
お姉さまの様子に困惑する会長をよそに、会長が手に持った下着をじぃっと見つめると、
突然きびすを返し、不安げな表情でまりやお姉さまのところへ歩いていくお姉さま。
そして何かを耳打ちすると、まりやお姉さまは何やら驚いた様子で眉をひそめた。
45 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:46:33 ID:ILH16cAV0
「マジ?」
「うん…多分…」
お姉さまが頷くと、今度はまりやお姉さまが席を立ち、つかつかと会長に歩み寄っていく。
「ちょっとそれ見して」
「は、はい…どうぞ」
真剣な表情に少し気圧された会長が、伸ばされた手のひらの上に下着を乗せる。
するとまりやお姉さまは、その下着を何やら確認し始めた。
裏返して隅々まで委細を確かめながら、一人でうんうんと頷いている。
「…うん、確かに。間違いない」
不意に「はい」と下着を返され、怪訝にまりやお姉さまを見上げる会長。
「何が間違いないんですの?」
その問いにまりやお姉さまが事もなげに言った答えは、とんでもないものだった。
「それ、瑞穂ちゃんのパンツだよ」
「…………は……?」
口をぽかーんと開けながら固まる会長。
「 「 「 えぇ〜っ!!!!?? 」 」 」
突然降って沸いた霹靂に、皆が驚きの声を上げる。
「……え…っと、冗談…ですよね」
皆の声が一度引いたところに、上岡さんが信じられないといった表情の混じる半笑いで、まりやお姉さまに問いただした。
冷静に考えてみれば、確かにまりやお姉さま流のジョークだということも考えられる。
しかし、そこでまりやお姉さまの首が横に振られることはなかった。
「いや、マジで。瑞穂ちゃんの下着は全部あたしが一つずつデザインして作らせたフルオーダーメイドだから、
同じものは二つとないはずだし」
46 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:58:00 ID:ILH16cAV0
そう真剣な表情で通告すると、ごくり…と誰かが唾液を飲み込む音が辺りに響いた。
これにはさすがに葉子も他の人と同じく言葉を失った。
よりにもよって、どうしてお姉さまの下着があんなところから出てくるのだ。
「………とっ、ととっ…ということは、こっここ、これは、お姉…さまの…?」
しばしの猶予の後、ようやく事態を飲み込んだらしい会長は、どもりまくりながらも再度確認を試みる。
しかし、無情にもまりやお姉さまの答えが変わることはない。
「うん。デザインだけじゃなくて内部構造もカンペキだったから、間違いない。
それは正真正銘、瑞穂ちゃんのパンツだよ」
改めて回答したまりやお姉さまの顔を驚愕の表情で見つめた会長は、
更に手に持ったお姉さまの下着をじぃっと見つめ、そしてそれから数秒後。
「………ふはっ」
鼻血を盛大に吹き出しながら、椅子の背もたれにぐったり倒れこんだ。
「……かっ、会長おぉ〜〜〜〜!!」
君枝さんの大声が食堂に響き渡り、皆が慌ててわっと会長の下に群がる。
水着のときでもやばかったけど、パンツはさすがに耐え切れなかったか…っ。
背もたれの後ろに首をだらりと下げ、鼻血を垂らしながら目を回している会長を皆が気遣う、そんな中。
会長の顔を真上から見下ろしていたまりやお姉さまは、
「あ〜あ、さすがにこれは…死んだわね」
口元で僅かに笑みながら、そんな不謹慎なことを呟いていた。
そして雨に濡れた最後の歯車が、血に濡れて、ゆっくりと回り始める。
47 :
Qoo:2007/08/02(木) 03:58:44 ID:ILH16cAV0
不覚…。
冒頭に 「◆ 8回表・2/2 11月16日:放課後」 付け忘れました。(泣)
えっと、B・Cはもうちょっと続きます。
>>24 超季節外れでごめんね。 (汗)
たまにはさらっと読めるような夏の話でも書いてみようかな〜。
ちなみにリボンのプレゼントのくだり。
貴子さん、瑞穂ちゃんとのデート中は違うリボンしてたし、
実は結構色んなリボン持ってるんじゃね?
な〜んてプレイしながら書いてる最中に思ったりして。
お暇なら次も見てね。 Qooでした。 m(_ _)m
>>47 (o^-')bbGJです〜
>たまにはさらっと読めるような夏の話
期待してのんびり待ってます〜
貴子さんのどっか〜んのくだり、リアルに映像が浮かんで
萌え死にそうになりましたww
続きも楽しみにしてます
乙&GJでした!
>>47 乙彼です。
>不覚…。
>冒頭に 「◆ 8回表・2/2 11月16日:放課後」 付け忘れました。(泣)
私もよくあります。後で気づいたのですが、
>>19で「7日目の夜」が、
前スレ掲載「最高のプレゼント」の263番で、
それから、6月8日、アメリカの御門家別荘……。
「まりやさん、誕生日おめでとうございます」
「お姉さま、お誕生日、おめでとうございます!」
の部分が抜けていました(汗)
また受信した電波の作品化が完成したのですが、今度はもっと慎重にやらないと……。
それでは。バースデイ・カプリッツィオ、最後まで気長に楽しみに待っております。
ごきげんよう、こことは別の場所で修羅場っていたNの館です。
浴衣ネタは……その「別の場所」の方に出してしまっていたり。ごめんなさい。
◆東の扉さん、
とてもいい電波が受信できたようですね。
原作にこういうイベントがあっても良かったかも、と思えました。GJ!
◆Qooさん、
これでやっとあの冒頭の一節につながるわけですね。
いやあ、すごいです。さすがです。まりやと貴子がとてもいい感じです。
でもごめんなさい、一ヶ所だけ。
>>42 の貴子さんのセリフの内容に違和感を憶えたのは私だけ?
それでは、当分電波が来そうもない私はこれにて失敬。
東の扉です。
>>50で書いた作品の整理が終わりましたので、投下させていただきたいと思います。
内容は、主に由佳里ちゃんの昔の話です。
よろしくお願いします。
とある日曜日の夜、聖央女学院女子寮……。
「ふう……もうみんな部屋に戻ったみたい」
大人っぽい服装を身にまとい、大人っぽい化粧をし、サングラスをかけた小柄な女が、ビニール袋を手に持ち、
壁に背を預けてあたりの様子をキョロキョロ窺いながら、奥の部屋に向かっている。
と、食堂のところまで来たところで……。
「何やってんのよ、由佳里」
いきなり後ろから声をかけられた。
「ま、ままま、まりやお姉さま!」
とっさにビニール袋を後ろ手に隠し、後ろ向きに思いっきり後ずさる。
「夕食にも顔出さないで。っていうか、あんた、思いっきり挙動不審よ」
「な、ななな、なんのことですか?」
由佳里はしどろもどろ。
「大人っぽく見える化粧のやり方教えてくれって言ってきたすぐにそんな格好して。変装でもしてるつもり?」
まりやが質問するたびに、由佳里の顔が蒼ざめていく。
「こ、これはお料理の本ですよ! まりやお姉さまには関係ありません!」
「ふーん……誰もそんなこと聞いてないんだっけどー?」
ビニール袋に何かあると確信したまりやは、ニヤニヤしながらそれに手を伸ばす。
「な、何するんですか? 人のものあさるなんて、プライバシーの侵害ですっ!」
由佳里は必死に訴えるが、無論好奇心に駆られたまりやには何の効果もない。
「あたしとゆかりんの仲じゃない。それに、ホントにお料理の本なら、別に見られてもかまわないでしょ?」
「ダメーッ!!」
ビニール袋を奪ったまりやは、取り返そうとする由佳里の手を阻み、中身を見ると……。
〜Hメンタルプレリュード〜
「うーわっ。18禁のエロ写真集にエロ漫画。DVDにローションに大人のおもちゃもいっぱい……」
「あ……あああ……」
呆れるまりや。顔を耳まで真っ赤にして固まる由佳里。
「ふーん。お化粧は18歳以上に見せかけて、こういうもの買うためだったんだ?」
「あ……あ……あの……えっと……」
パニックになっている由佳里は、どう答えていいのかわからない。
「そういえば由佳里、最近瑞穂ちゃんの写真をやたら集めてたけど、ひょっとしてエロい写真に顔だけ貼りつけるつもり?」
「………!!」
由佳里の顔がさらに赤く、表情が蒼白になる。
「ふーん、図星か。あんたってほんっっとーにエロエロよねえ……」
「ううう……」
「まったく、今のうちからこんな色情狂で、将来どうなるのか、お姉さまが心配になっちゃうわよ」
「よ、余計なお世話です……!」
呆れたように言うまりやに、由佳里は真っ赤になりながらもかろうじてそう反論する。
「まあいいけど……でもさ、なんでそんなにエロくなっちゃったわけ? なにかきっかけでもあるの?」
「………」
由佳里は答えようとしない。
「由佳里のことだから、あたしとしては興味あるのよ。よかったら教えてくれない?」
「……イヤだと言ったら?」
「由佳里がエロ写真集に瑞穂ちゃんの顔写真を貼りつけておかずにしてるなんて知ったら、
瑞穂ちゃん、さぞかし面白い表情するだろうねえ……恥ずかしさのあまり、写真燃やしちゃうかも」
まりやは思いっきり意地悪な顔で言う。
「わかりましたあ……お教えしますう……」
絶望的な表情で、由佳里はしぶしぶ承知した。
あれは、私がまだ広島にいた頃のことです。
まだ小学6年生だった頃、おてんばな私は、性的なことはもちろん、恋愛ごとにも興味はなく、
女ながら男友達と一緒にバカやって楽しんでいました。
その日も、クラスのガキ大将たちと一緒にピンポンダッシュなんて子供じみたいたずらをしていて、
私が後ろを見ながら逃げようとしていると……。
ダンッ!
前にいた人とぶつかりました。
「痛ったあ……」
「ごめん。大丈夫?」
私のほうからぶつかったにもかかわらず、相手の方から謝ってきました。
「………!!」
私がそっちを見ると、そこにいたのは、すっごくキレイな女の人でした。
長く伸ばした、柔らかそうな亜麻色の髪。優しさが滲み出てくるような、澄んだ瞳。優しそうな声。年は私より2、3歳上でしょうか。
私はしばらく、その人に見とれていました。
周りを見ると、その人が持っているかばんの中から、色々と落ちて散らかっています。
「大丈夫だった? 怪我しなかった?」
でも、その人は落ちているものには目もくれず、私のことだけを心配しています。
私からぶつかって、自分も痛いはずなのに……自分のものも落として、
車はほとんど来ない裏道だけど、危険な道路上に散らかってるのに……。
まるでメルヘンの世界から抜け出てきたような美貌の持ち主なのに、ずっと昔から近くにいたかのような感覚。
「あ、あの……だ、大丈夫……です……」
私はそう言うのがやっとでした。
「そう。よかった」
その人は、まぶしいくらいに無邪気な笑顔で、そう私に微笑みかけてきました。
私の胸は、いたずらしてスリルを味わう時なんかとは比べ物にならないくらいドキドキしていました。
「あ……あの……あなたのかばん……お、落し物……」
「ああ。散らかっちゃったね」
その人はそう言って、拾いにかかります。
「あの……私も手伝います!」
それを見た私は、自分でも落し物を拾って、その人に渡します。
「ありがとう。あなたのおかげで助かった。悪いけど急ぐから。じゃあね」
その女の人は、そう言って去って行きました。
「………」
私はまだドキドキしている心臓を胸に当て、ボーッとしながらその女の人が去っていった先を見ていました。
今思えば、あれが私の初恋だったのでしょう。
「ふーん……それと、由佳里がエロいのとどう関係があるの?」
「話は最後まで聞いてください!」
「あの……由佳里ちゃんにまりやお姉さま……どういたしましたのですか?」
そこへ私たちの話に割り込んできたのは……。
「奏ちゃん!」
「奏ちゃん、なんでここに……」
「まりやお姉さま、なぜと言われましても……奏は、お姉さまに淹れるお茶の用意をしに参りましたのですよ」
奏ちゃんは困ったように言います。
「そっか……」
「あの、由佳里ちゃんはまりやお姉さまと、なんの話をしてらっしゃったのですか?」
奏ちゃんはそう聞いてきます。でも、何の話かなんて言えないよ……。
「由佳里が広島にいた頃の、可愛い初恋の話よ」
すると、まりやお姉さまが、そう助け舟を出してくださいます。
「そうなのですか。由佳里ちゃん、今度奏にも聞かせてほしいのですよ」
「う、うん……そのうちね」
奏ちゃんには、エッチな部分を伏せて教えれば大丈夫でしょう。
「では、奏はこれで失礼いたしますのですよ」
お茶の用意をした奏ちゃんは、そう言って私たちにペコリと頭を下げ、お姉さまの部屋に行きました。
「それで、どうなったの?」
「はい、それで……」
「あ……これ……」
しばらくして我に返った私が見ると、その人が落としていった、漫画らしい本に気づきました。
「どうしよう……もうどこ行ったかわからないし……」
警察に届ければいいのでしょうが、この時の私はまだドキドキして興奮状態になっていたのと、また会いたいという気持ちから、
その考えは頭に浮かびませんでした。
「また明日、探しに来るかも……その時にでも渡せば……」
こうして、私はその本を預かることにしました。
「あの人、どんな漫画を読んでるんだろ……?」
もっとあの人のことを知りたい……そう思った私は、少し罪悪感を感じながらも、その漫画を見てみることにしました。
「ちょっと見るぐらい……いいよね。減るもんじゃないんだから……」
そう自分に言い訳して、中をめくってみました。すると、そこに出てきたのは……。
「な、何これ!? よくわからないけど、すごい……」
描かれていたのは、その時の私にはまったく未知の世界の過激な漫画でした。あれがレディースコミックというものなんでしょう。
それを見た私は、心臓バクバク。口からは荒い息を吐いていました。
あんなきれいな人が、こんなすごいエッチなものを読んで……読んで……もしかして、今の私と同じ気持ちに……。
そう思った途端、私の意識は途切れました。
それから意識を取り戻した私は、その時の感じを思い出しました。
普通ならそんなものを読んでたことにショックを受け、幻滅して人間不信になっちゃうところでしょうけど、
あの人は、そんなこと関係なく思えるほど魅力的でした。
ですから、あの人がそんなものを読みながら……と思うだけで、逆にすごく興奮してしまったんです。
興奮が収まらない私は、家でその本の一部をコピーして、大事にとっておきました。
翌日、私がその本を渡そうと昨日のところへ行くと……。
「えっ……!?」
昨日の人が本を探していたのですが、昨日の男性的な衣装とはうってかわって、すごく露出度の高いきわどい服装をしていました。
「どうしよう……あの本、見つからなかったら、どうなるかわからないよ……」
心底困った顔でそうつぶやきます。
こんな魅力いっぱいの人が……あんなエッチな服を着て……こんな本を見て……
そう思うと、私の心臓だけでなく、全身が熱くなって火照ってきました。
「あ、あの……お探し物はこれですか?」
私はドキドキを必死で押さえ、そう言って昨日見つけた本を渡します。するとその人は本をいろんな角度から見て……。
「ありがとう。これがなくなったら、どうしたらいいかわからなかった。本当にありがとう」
その人は、心底安心したように言いました。
「い……いえ……そんな……」
この人、こんな恥ずかしい本を、なくなったらどうしたらいいかわからないくらい、何度も見てるんだ……。
それからしばらく、私はドキドキが止まりませんでした。
そのドキドキを味わいたくて、その人のことを思い出しながら何度もレディースコミックのコピーを見て、
しかもその人が私にそういうことをしてくれるところまで想像していた私には、
それがドキドキ→気絶から劣情に変わるまで、そんなに時間はかかりませんでした。
「ふーん……なるほど、そんなことがねえ……じゃあ由佳里は、その初恋の人に運命を狂わされたわけだ」
「そんな……あの人の悪口を言わないでください! 私にとってあの人は、それでも素敵な人なんですから!」
まりやお姉さまの言うとおりなんでしょうが、私の初恋の人をけなされてるようで、カチンとしました。
「そうよねえ。由佳里には素敵すぎるエロエロな官能の世界を教えてくれたんだもんねえ」
「な、なんでそうなるんですか! 私があの人に魅かれたのは、そんなところじゃありません!」
その後しばらく、私はまりやお姉さまにからかわれ続けました。
一方、そのころ……。
「やっぱり奏ちゃんと一緒に飲むお茶はおいしいわ」
奏ちゃんが心をこめて淹れてくれたお茶を、僕は奏ちゃんと一緒に飲む。
「お姉さま……奏、照れますのですよ」
「あら、奏ちゃんは私の大事な妹ですから。姉妹で一緒に飲むお茶は、普通おいしいと思うでしょう?」
「姉妹……」
「どうしたの?」
何か考えこんでいた奏ちゃんに、僕は聞いてみる。
「そういえば、下で由佳里ちゃんがまりやお姉さまとお話をしてらっしゃったのですよ」
「ふーん……どんなお話かしらね」
「なんでも、由佳里ちゃんが広島にいた頃の、初恋のお話らしいのですよ」
「広島の話……まりやと……」
それで、僕の中に封印されていた、苦い想い出がよみがえった。
「お姉さま、どうしましたのですか?」
「ごめんなさい、“広島”と“まりや”というキーワードで、ちょっとイヤなことを思い出しちゃったから」
「イヤなこと……ですか?」
僕は、奏ちゃんに話を聞いてもらうことにした。
「ええ。私、中学2年の時、私の家とまりやの家で、広島に旅行に出かけたことがあるんだけど、
その時私はまりやの荷物持ちをさせられたの」
「それで……どうなったのですか?」
奏ちゃんは心配そうに聞いてくる。
「うん。まりやとはぐれて、まりやの泊まっている別荘に荷物を届けに行く途中で、
何かから逃げるように後ろを向いて走ってきた女の子とぶつかったの」
その時のことを思い出しながらだから、ちょっと話す速度が遅くなるかな。
「それで、その女の子も拾うの手伝ってくれたんだけど、まりやの本を1冊忘れてしまったみたいで、
まりやに大目玉を喰らってしまったのよ」
「お、お姉さま、だ、大丈夫だったのですか?」
奏ちゃんは半泣きになった。
「もう、大丈夫だって。それで、罰として次の日、恥ずかしい露出度の高い服に着替えさせられたの。
見つかるまで、旅行中はずっとそれで過ごせって。でも、まりやは何の本か教えてくれなかったのに……」
「はうう……お姉さま、かわいそうなのですよ」
まるで自分のことのように落ち込む奏ちゃん。それは嬉しく思うけど、元気になってもらわなくちゃね。
「でもね、昨日その女の子とぶつかったところを探してると、その女の子が拾ってくれてたみたいで、私に渡してくれたのよ」
今思えば、すごくいいタイミングだったな。
「まりやの名前を見つけたときは、本当に嬉しかったわ。見つからないまま恥ずかしい格好をさせられ続けたら、
どうしたらいいかわからなかったから」
「よかったのですよ」
「そうね。今となってはいい思い出なのかしらね。ふふふ……」
「あははは……」
僕たちは、お茶を飲みながらしばらく笑いあった。
それからしばらくして……。
「まりや……」
「あ、瑞穂ちゃん。どうしたの?」
僕が受験勉強の合間に、冷蔵庫のお茶を飲もうと下りてくると、まりやが先にお茶を飲んでいた。
「うん。気分転換にお茶を飲もうと思って」
「あたしの飲んだ後のでよければ、そこに沸いてるけど」
「じゃあ、ありがたくいただくね」
僕がそう言うと、まりやがお茶を淹れてくれる。
「ありがとう」
「いいって。瑞穂ちゃんも、あんまり無理しないようにね」
僕は、まりやの淹れてくれたお茶を飲みながら、さっきの話を思い出した。
「そういえば、奏ちゃんから聞いたんだけど、まりや、由佳里ちゃんの初恋の話を聞いてたんだって?」
「そうだよ。おかげで色々わかったよ。なんで由佳里があんなにエロいのかもね」
それを聞いて、僕は飲んでた紅茶が鼻に回りそうになった。
「ぶはっ! ま、まりや、由佳里ちゃんになんてこと聞いてるんだよ!」
「まあ、由佳里にも色々あったみたいね」
ふうん……ってことは、まりやも由佳里ちゃんのことが少しわかったってことか。
「じゃあ、そのことをネタに由佳里ちゃんをからかうのは、もうやめるんだよね?」
「まっさかあ。冗談! あたしの中でベスト5に入るほど面白いことを奪おうなんてひどいことを言うのか、瑞穂ちゃんは?」
あっけらかんとして、当然のように言うまりや。由佳里ちゃんもかわいそうに……。
「僕にはそんなことで由佳里ちゃんをからかう方がひどいように思うけど?」
「そりゃあさ、由佳里をエロエロにしたのがあたしだって言うなら、ひどいと思うよ。でも由佳里がそうなったのは
小学生のまだ広島にいた頃なんだから、どう考えても違うでしょ? だからいいの」
「ま、まあほどほどにしてあげてね?」
こんな姉を持つ由佳里ちゃんの明日はどっちなんだろう……けっこう心配。
「じゃあ、僕はこれで。おやすみ、まりや」
「お休み、瑞穂ちゃん」
そう言って、僕は部屋に戻る。
「さあて、由佳里のヤツ、今頃“買い物”で遊びまくってるわね。明日になったら、感想聞いてやるとするか」
その後まりやは、その時の由佳里の顔を想像しながら、こみあげてくる笑いを必死でこらえていた。
Fin
以上です。
今回は由佳里ちゃんがあそこまでえっちな理由をでっち上げてみました。
由佳里ちゃんの初恋の人のセリフの言い回しを選ぶのは、ホント悩みました。
大体こんな感じなのかどうかはわかりませんが、ただ1つはっきり言えるのは、
一番やばいのはこんなことばっかり考えてる私だということでしょうね……。
それでは、私は充電するために退散します。
お目汚し失礼いたしました。
前スレの
>>552、
>>554さん。
指摘ありがとうございました。
前スレの521です。
ちょっと書き込めないような状況だったので御礼が遅れました。
既に新しいネタは思いついたのですが、何分遅筆なもんで……
お二方の指摘を元に良い作品を作れるよう頑張ってみます。
>前スレの521さん
次の作品待ってます。
前スレ、生意気に指摘してごめんね。がんばって〜
僕はもうウツでダメです。俺の屍を越えてゆけ〜!(へろへろ)
67 :
みどりん:2007/08/05(日) 21:31:09 ID:F5yXloCS0
書き込みテスト。
東の扉さん、誤字すみません。直しておきました。
>>53-61の続きを思いつきましたので、投下させていただきます。
翌日の夜、まりやの部屋……。
「でもさあ、昨日はホント驚いたわ」
「ですから、その話はしないでください!」
お茶を持ってきた由佳里を、まりやは昨日のことをネタにからかいまくっていた。
「……でもさ、由佳里の初恋の人って、今頃どうしてるのかな?」
「……え? さあ」
まりやが話題を変えると、由佳里は呆然として考えてみる。
「ま、まあ、どこかの高校で学園のマドンナ……みたいになってると思います」
「そうよねえ。でもそんなエロい人なら、それこそ学園中を虜にして、虜になった女の子たちを食い物にしてるのかも……」
「だから、あの人の悪口を言わないでください!」
意地悪モードのまりやに、ムキになって反論する由佳里。
そのころ……。
「ふぇーっくしょん!!」
「はややっ、お姉さま、風邪なのですか?」
奏とのティータイムの最中にくしゃみをした瑞穂に、奏が驚き、心配そうに言う。
「心配してくれてありがとう。でも、そんな兆候はなかったけど……どうしたのかしらね」
「まりやお姉さま、今、くしゃみの音が聞こえませんでした?」
「あれ、瑞穂ちゃんじゃない? おかしいわね、バカは風邪引かないはずなのに……」
「まりやお姉さま、それはひどいですよ……でも、なんかタイミングよすぎませんか?」
のんきに言うまりやに、由佳里はちょっと困惑気味。
「考えすぎよ。だいたい広島にいた頃の由佳里と、東京に住んでる瑞穂ちゃんに、接点なんてあるわけないでしょ?」
「そう……ですよね」
それでもまだ半分納得してなさそうな由佳里。それを見たまりやは……。
「まさか……ね」
5歳の時からここに来るまで女装生活はしてなかったんだから、と思いながら、そうつぶやいた。
Fin
>>61 「そりゃあさ、由佳里をエロエロにしたのがあたしだって言うなら、ひどいと思うよ。
ひどいと思うw
>>68 「ふぇーっくしょん!!」
お姉さまが加藤茶くしゃみを!
>>68 gj
どんなに男らしい格好をしても他人には女にしか見えない
なぜなら瑞穂ちゃんはお姉さまだから
71 :
名無しさん@初回限定:2007/08/08(水) 22:45:03 ID:/eZZ8fwj0
>>68
ということは5歳まで女装させていたのか^^
>>71 確か5歳までは女として育てられていた、と記憶しています。
>>71 「もともと祖父の教育方針で僕が五歳まで女の子の恰好で育てられたせいもあるのだけれど、
小さい頃から一緒だったまりやはことある毎に僕に女装をさせたがる。」と原作にありますから。
短いバカ話を投下します。
※注意
バカ展開にキャラのイメージを損なう恐れあり。
シリアス派の方はご遠慮いただいたほうが賢明です。
『レンタルDVD』
ある日曜日。
一子の為にレンタルDVDショップにやってきた瑞穂と由佳里。
「どんなのを借りればいいのか分らないわ。由佳里ちゃんに任せて良い?」
「はい、任せてください。適当なのを見繕います」
「有難う。会計は私がまとめてするわね。あと、自分で見たいものも借りて行きましょ」
「はい、お姉さま」
それぞれ別れて適当なタイトルを物色しはじめる二人。
ホラーは嫌だと云ってたっけ。純愛モノかサスペンスか…
「ん、ふっふっふ〜由佳里〜」
いつ現れたのか、まりやが由佳里の目の前に立っていた。
「わわ、まりやお姉さま。確か今日は出かけてたはず。何故、ここに?」
「映画を借りにきたに決まってるでしょ。おかしい?」
「い、いいえ」
なんだかタイミングが良すぎるのでもしかして尾けてきたのかと疑う由佳里。
先ほど店内を見回したときにはまりやの姿は見えなかった筈。
「あたし、チャンスは逃さないの」
「何のですか?」
まりやは視線を上げると、店内の向こうのほうにいる瑞穂の姿をみてにやりと笑った。
その笑みを見て、由佳里の背筋に悪寒が走った。
「何本かまとめて借りるのよね」
こくり
頷く由佳里。
「会計は一緒にするのよね」
こくり
「瑞穂ちゃんと由佳里、どちらがレジに持っていくの?」
「お、お姉さまです…」
「……そう。うっふっふ〜」
まりやの笑みが大きくなる。
いけない!ダメだ!この人は悪人だ!お姉さまを狙っている…。
じりじりと由佳里が後ずさりする。この人から離れなければ!!
「由佳里、瑞穂ちゃんの『あんっ!』が聞きたくない?」
由佳里の足が止まる。
ダメだ!悪に巻き込まれてはダメだ!お姉さまはあたしが守る!
「瑞穂ちゃんが頬を染めて羞恥心に色っぽく身悶えする姿を見たくはない?」
「………話を聞きましょう」
簡単に心が挫けてしまう由佳里だった。
「ふっふっふ」
まりやがクイクイッと親指で自身の背後のコーナーを指差した。
別入り口が設けてあり、『18歳未満は入室禁止』とでっかく書かれている。
アダルトコーナーだった。
「普通のタイトルにアダルトを混ぜて瑞穂さんにレジに持っていかせるの」
由佳里がレジを見る。
女子高生らしいバイト店員がいた。
その時の瑞穂の反応を想像すると・・・
「見事です。まりやお姉さま!まさにプロの仕事です!」
「ふっふっふ。由佳里の携帯は動画、写真はちゃんと撮れる?画素数は最高に設定しときなさいよ」
「ああああっっ!!!ま、まりやお姉さま!貴女は神ですか?!もし違うなら神の称える仕事と云わざるを得ません!」
完全にまりやに同調する由佳里。
その頃、瑞穂は
「うぅ、寒い。この店、冷房効きすぎなのかな」
では早速!とばかりに、全く躊躇いも恥じらいも無くアダルトコーナーに入っていく汚れ姉妹二人。グレート!
このコーナーの中には、3人ほど男性客がいたが、まりやたちが入ってきたのをみてギョッとして慌てて出て行ってしまった。
コーナーに入ってすぐの棚にあるエロDVDのパッケージを取ろうとした由佳里の腕をまりやがむんずと掴んで止めた。
「待って、由佳里。それはダメ」
「えっ、どうしてですか?」
まりやは周りを注意深くぐるりと見回した。そしてコーナーの一番奥の棚に行くと、そこからひとつタイトルを選んで持ってきた。
「これにしましょ」
『***満開!**まくりの100連発!!24人の***』
どうやらタイトルも妥協しないようである。
「辱めるならトコトンよ」
「ま、まりやお姉さま…あなたという方は…妥協を許さぬ職人の鑑です!」
由佳里は、持ってるだけでリビドーが乾燥しそうなパッケージのエロDVDを平然と受け取ると、純愛物タイトル2本の間に
サンドして挟み込んだ。
そして、アダルトコーナーを出ると店の反対側のほうにいた瑞穂の元に向かった。
勿論、まりやも一緒である。
「あれ、まりや。今日は出かけてたんじゃないの?」
「うん。たまたま映画が見たくなってたまたまこちらの店に入ったら、たまたま瑞穂ちゃんたちに逢ったの」
「………そう」
「お姉さま。借りるもの決まりましたか?」
「ええ。このアクション物にするわね」
「では、これもまとめてお願いいたします」
そう云って由佳里は、リビドーサンドを瑞穂の手の上に乗せた。
何も知らない瑞穂は早速、それを持ってレジに向かう。
その後ろから、息を荒くしてついて行く汚れ姉妹二人。
カウンター近くまで来て瑞穂が急に足を止めた。
「ああっ!これは…」
タイトル確認をしてエロDVDに気がついた。
慌てて後ろを振り返る瑞穂。
「由佳里ちゃん!これって・・・・・・・・・なんで二人とも携帯を振りかざしてるの?」
「いや、その、電波の状態がちょっと。それよりどうしましたか?」
「その、これ、アダルトが一本はいってるわよ?まりやが入れたの?」
ありゃ、ばれちゃった…内心ガックリとする由佳里をまりやが軽く突付いた。
どうやら自分に任せろといっているようなので、ここは上官にお任せすることにする。
「あら、そんなものが混ざっていたの?きっと誰かが間違えて純愛物コーナーに重ねて置いていたのを一緒に持ってきてしまったのね」
「えええっ、純愛物と一緒に!?」
かなりうそ臭いことを云われて驚く瑞穂だが、そう云われて嘘でしょうとは云えない。
「…そうなの」
「瑞穂ちゃん、返さないといけないわね。そのDVD」
「えっ!?」
「間違えて持ってきてしまったものだけど、その辺に置いておく訳にもいかないし。返さないとね」
「か、返すってどこに…」
うろたえる瑞穂を優しい眼差しで見つめながら、まりやはカウンターを指差した。
可愛らしい女子高生バイト店員が立っている。
ピキッ・・・
瑞穂の表情が凍りついた。
「そ、それは、あの…その辺の棚に置いておくというのは…」
「当然、しちゃいけないわよね?瑞穂ちゃん」
結局、気付いても気付かなくてもレジに持っていかなくてはいけないよう仕向けるまりやの作戦。
頼もしげにまりやを見つめる由佳里。
「……そうだ!じゃあ、これを元の棚に返せば…」
「ええ、それならいいわね」
まりやは皮肉気に笑みを浮かべると、あごでアダルトコーナーを指し示した。
瑞穂はまりやの張った蜘蛛の巣に引っかかった蝶も同然だった。もがけばもがくほど泥沼にはまっていく。
瑞穂には、アダルトコーナーの入り口が奈落の底の入り口に見えた。
なんだか魔界からの瘴気が噴き出しているように見える…。
「・・・あ、うううっ・・・」
言葉に詰まる瑞穂。あの中に入らなくてはいけない…。
「あ、あの、まりや。お願いがあるんだけど…」
「まさか乙女のあたしや由佳里にあの中に返しにいってくれって云わないわよね」
「うううっ…」
女の姿をした自分が女子高生バイトにこの途轍もないアダルトのパッケージを差し出すのと、アダルトコーナーに
入っていくのとどちらが恥ずかしいだろうか……。
「なあに、ぱっと置いてぱっと出てきちゃえばいいのよ。カウンターで言い訳のように説明するより遥かに短くて済むわよ」
まりやが小声でぼそぼそと云うのに、そうだと大きく瑞穂が頷いた。
「そうね。さっと置いてきちゃいましょう」
意を決してアダルトコーナーに向かう瑞穂。その後ろから、にやにや笑いを浮かべながら、携帯を振りかざしてついて行く汚れ二人。
凄い美人を先頭に店内を進む乙女三人組に自然、客の注目が集まるが瑞穂は緊張で気付かないし、汚れたちは大事の前の小事と
ばかりに全く気にする風も無い。
そして、かなり躊躇いつつも意を決して瑞穂がアダルトコーナーの入り口をくぐる。
続いて汚れ姉妹二人も、全く、何の躊躇いも無く、ごく当たり前のように続いて入っていく。
中には4人ほどの男性客がいたが、乙女3人の突然の乱入に軽いパニック状態になりながらたちまち散らばっていく。
顔を真っ赤にした瑞穂は、急いでDVDのパッケージを近くの棚に置こうとしたが、その手をまりやが掴んで止めた。
「そこではないわね」
「わっ!まりや。中までついてきたの」
「ほら、ここはタイトルごとに分かれているのよ。そのタイトルはそこではないわ」
「え〜、でも…」
「ここまで来て、その辺の棚に突っ込むなんて中途半端な真似はまさかしないわよね」
「うううっ」
瑞穂は手に持っているパッケージを眺めた。
物凄いパッケージである。さぞや男の欲望が詰まっていることであろう。
たちまち顔を真っ赤にして目をそらせる瑞穂。だがここはアダルトコーナー。
目をそらした先にもAVパッケージがびっしりと並んでいる。
女の子の格好の自分が、何故こんなところにいるのか、しかも物凄いパッケージを持って…。
恥ずかしさで体が震える。羞恥心に体が身悶えする。パッケージを持つ手に力が入らない。
その鼻血が出そうな光景を見ながら、由佳里がまりやに感心したように云う。
「ようやくわかりました、少佐。コーナー奥からDVDを選んできた理由が。よしんばカウンターに持っていく前に気付かれたとしても、
簡単には元の棚がわからずに右往左往させるための二段構えの作戦ですね」
「戦いは非情さ。そのくらいのことは考えてある」
御門まりや…思考の速さは常人の3倍速と云われている。
(って、まりや達もここまでついてくるくらいなら、乙女がとか云わないで棚を探すのを手伝って欲しい)
そう思って瑞穂が振り向くと誰も居ない。このコーナーには瑞穂ひとり。
まりや達の姿を捜し求めると、入り口の外側から携帯を振りかざしながらいい、なんだかとてもいい笑顔でこちらを見ている。
(…由佳里ちゃんまで)
完全にまりやのコントロール下のようだ。とても応援は期待できそうに無い。
恥ずかしさを堪えて、棚を順番に見ていく。
早くコレを置いてここから出て行きたい。誰かに見られたらと思うと…。
そんな心配しなくてもアダルトコーナー入り口は、息の荒い姉妹が中を覗き込むようにして塞いでいるため、誰もそれを
押しのけて入ろうとはしなかった。
逆に、その不審な行動で店中から注目を集めていたが、姉妹は中に夢中で気付きもしないし気付いたところで
気にもしないかもしれない。
懸命に棚を探すがしかし、なかなか見つからない。
当然である。まりやがコーナーの奥の奥からしかもエロいパッケージをわざわざ引っ張り出してきたのだ。
コーナー最初から調べていけば、一番最後に見つかることだろう。
焦る。手伝ってもらいたい。しかしまりや達を見ると・・・イイ笑顔。
(ダメだ。この二人はダメだ)
もう、そこら辺にうっちゃっておきたい。でもまりやがそれを許さないだろう。
何故、こんなことになったのだろうと考えてみる。
(由佳里ちゃんと二人でやってきたら、まりやが現れて、アダルトDVDを渡されて、まりやに返して来いと云われて、
アダルトコーナーに来たら、棚がわからなくて、見つけるまでまりやが出してくれなくて、その様子をまりやたちが
いい笑顔で見ている)
・・・・・・結論、原因はまりや!
ようやくまりやに嵌められたことを悟ったが、既に身動き取れない状態。
本来、暴走したまりやを止めるのは瑞穂の役目だが、今回は嵌められているのが本人なのでそれは無理。
あと、まりやを止められるのは紫苑と貴子くらいだがここには居ない。
(そう云えば紫苑さんの家はこの近くだったような…。この近所を歩いていないかな…)
かなり薄い期待ではあるが、藁にもすがる思いの瑞穂は携帯を取り出して紫苑の短縮をプッシュする。
コーナーの外から予想通りの展開に満足度120%の笑顔で観察し続けるまりや達。
「でもまりやお姉さま。いつまで続けるんです?もうそろそろ」
「まだよ。あたしの欲望は底なしなのよ。もっともっと瑞穂ちゃんが困ってる顔や悩ましげな姿を見たいのよ!」
「・・・・・・ソウデスカ。お姉さま、御免なさい。あら、お姉さまが携帯を取り出しましたよ。どこにかけてるんでしょうか」
その時、中を覗き込んでいるまりや達のすぐ真後ろでアンパンマンの着メロがなった。
驚いて振り返ると、そこにはトレンチコートにソフトハットの不審人物がまりやたちと同じように携帯を振りかざして
中を覗き込んでいた。
「あらあら、ばれてしまいましたわ」
そう云いながら帽子とコートを脱ぐと、中身は紫苑だった。
「「し、紫苑さま」」
驚くまりやと由佳里。瑞穂も驚いている。
これまで全く気がつかなかった。こんな不審人物がいる気配すら感じなかった。
「瑞穂さんがこの場面で私に電話してくるなんて思いませんでした」
そう云いながら紫苑はアダルトコーナーに、全く、何の躊躇いも無く、ごく当たり前のように入っていく。
「ししし、紫苑さん。なんでここに?」
「今、瑞穂さんがお呼びになったからですわ」
「いえ、そうではなくてですね…」
「私、チャンスは逃しませんの」
「何のチャンスですか!?」
瑞穂の顔を見ながら紫苑がニッコリと微笑んだ。
「瑞穂さんが電話をした理由はわかっています。私、嬉しいんですの。この状況で私に頼ってくださったんですよね。
少なくともそれくらいには瑞穂さんにとって私は、意味があるってことですよね。ですから、私もまだ食べ足りない気が
しますが瑞穂さんをお助けしますわ」
「・・・食べ足りないってなんですか?」
紫苑は奥の棚を指差して、
「このDVDはあの棚の3段目です」
まりや達は驚いた。
やっぱり紫苑は、最初からまりやの近くで一部始終見ていたのだ。
「一体、何者?紫苑さま」
続いて、紫苑は入り口辺りで固まっているまりや達をみて、
「瑞穂さんのあられもない姿、まりやさん達が携帯で撮影していましたわ。うふふふ」
慌てて携帯を仕舞うまりや達に、怒りの形相の瑞穂が近づいていく。
「ま〜り〜や〜!!」
「いや、ちょっと、待って、瑞穂ちゃん」
まりやは宥めようとするが、いつにも増して悪質な悪戯に瑞穂の怒りは爆発寸前である。
じりじりと後ずさりするまりやの肩を、後ろから店員が叩いた。
「すいません、お客様。先ほどから何をなさっておられるんですか?」
能面のような店員の表情。
営業妨害同然の先ほどからの行動に、さすがの店員も切れかけているのだろう。
「いや、あ、あ、それは」
「まりや〜」
「お客様」
両方から挟まれて由佳里は涙目、まりやも身動き取れない。
ふと気付くと、その状態のまりや達を遠くから紫苑が携帯で撮影していた。
「!!!」
「それでは失礼します。皆様」
そう云うと紫苑はスタスタと店を出て行ってしまった。
まりやは、瑞穂に怒られ、店員に絞られ、レンタル料金を全て払わされた。
もちろん、まりやと由佳里の携帯の画像は全て消去。
自業自得。
由佳里はそれから暫くの間、激しく落ち込んでいた。
まりやは…
「まあ、瑞穂ちゃんの身悶えるあの姿を堪能できたのだから、コレくらいはよしとするか!」
ノーダメージのようである。
紫苑さま一人勝ち?
Fin
いつもと違う感じで書いてみました。
お粗末さまでした。
明日から仕事・・・短い休暇だった・・・
L鍋さん、お疲れ様です(笑)
レジの前で悩んでいるところに圭と美智子さんが現れて、あわててカゴを背中に隠す瑞穂ちゃんとか、
アダルトコーナーの入り口でニヤニヤしているまりあを見て中を覗いてみて
瑞穂ちゃんが困っている様子だったので、お手伝いしようとツカツカと入っていく貴子さんとか、
店員に怒られてアダルトコーナーから出てきたら緋沙子先生に見つかっておでこを突かれて赤くなる瑞穂ちゃんとか。
う〜ん、暑い夜は妄想も身体中から吹き出してくるなぁ(笑)
久しぶりのSSだーーーーーGJ!
>>87まりあゆーてるからアニメ板から来たの?
>>88 すみません。まりやですね(笑)
初めのSSはアニメ板で書いてました。
そのうち、エロはこっちでやれと誘導されてきました〜
GJ!
久しぶりにL鍋さんの作品が見れて嬉しかったです。
8月末にもう1作品、
これからも、お互い頑張っていきましょう!
>>75 (*^ー゚)b GJ!
>バカ展開にキャラのイメージを損なう恐れあり。
水泳授業欠席届けのときのまりやと紫苑さまを見るに、まったく自然なw展開です。
また、劇中発生しているはずの「一子ちゃんのためのDVDレンタル」というネタのチョイスもすばらしい!
GJ!
なんだか紫苑さまが圭さん化してますね。
だが、それが良い(笑)
次も黒い紫苑さま期待してます。
東の扉です。
突然ですが、また電波を受信しましたので、投下させていただきます。
今回は吸血鬼ものです。
おひまでしたら、どうか見てやってください。
書き忘れましたが、これはネタものですので、そのつもりでご覧ください。
今は古の時代、西洋に、とんでもない伝説を持つ吸血鬼がいた。
その吸血鬼に魅入られたものは、全てその牙にかかってしまっていた……。
中には、それを未然に防ごうと高名な聖職者や悪魔祓い師などを事前に呼んでいたものもいたが、結果は同じであった。
事が終わった後には、例外なくその聖職者たちの無惨な姿と、血を吸い取られた女性の姿があるのみだった。
その吸血鬼の棺が、どういうわけか、日本は東京の聖央女学院に存在していた。
そして、その吸血鬼が、数百年の時を経て、今、蘇ろうとしていた……。
〜蘇った伝説のカーミラ〜
「う……ん」
その吸血鬼が目を覚ますと、そこは女学院の講堂の中だった。
周りには数百人の女生徒。そして1人の悪魔祓いの神父が。
「ここ……は?」
きゃーっ!!
目を覚まして棺から出ると、突然女生徒達からの歓声が。
「なんて素敵な方……」
「吸血鬼らしからぬ、お優しそうな表情……」
「あんな吸血鬼にでしたら、私、血を吸われてもかまいませんわ……」
「あ、あの……ここは……?」
吸血鬼は、圧倒されながらも、なんとかそう質問。
「ちょっと、質問する前に、自分から名乗るのが流儀ってもんでしょ?」
吸血鬼の前に、お嬢さま高校にふさわしからぬ、強気で意地悪そうな女の子が出てきてそう言う。
「あ、そ、そうね。私は吸血鬼の……」
「名前は?」
「み、みずほりん……です……」
キャーッ!!
名前を聞いた女生徒たちから、再び歓声の嵐が……。
「なんてかわいらしいお名前なんでしょう……」
「それに、上品で控えめな感じもたまりませんわ」
「あ……あの……」
吸血鬼が目を覚ましたんだから、もっと緊張と警戒心を持つべきでしょ? とみずほりんは思う。
「カーッ! 現れたな悪しき吸血鬼め! この私が2度と蘇らぬよう灰のかたまりと化してくれる!」
神父らしい人がそう言う。どうやらまともな人もいるみたいだな……と思っていると……。
ゲシゲシゲシ!!
女生徒達がよってたかって神父を袋叩きにした。
「あんな素敵な方に何なさるんですか!」
「そうです! あなたごときがあの方を殺めようなどと……身の程を知りなさいっ!」
またか……みずほりんはそう思う。
実は、今まで呼ばれた悪魔祓い師たちも、例外なくみずほりんの虜になった女性たちにこのような目に遭わされ、
女性の方から私の血を吸ってくださいと願い出てくるのであった。
「みずほりんさま、どうか私の血をお吸いくださいませ!」
「いいえ、私の血を……!」
「いいえ、是非私の血を!」
以下略。みずほりんは呆れ気味。
「……えっと、みなさん、私のために血の提供を申し出てくれてありがとう。本当に嬉しいわ」
みずほりんは、なぜか黒いマントの中から駆血帯、止血用の脱脂綿、注射器と大量の注射針が出てくる。
「それじゃ、お言葉に甘えて、みなさんから少しずつ血をいただくわね」
「ちょっと、なんなのよ、それは!?」
先ほどの女生徒がケンカ口調で質問。
「何って、血を抜くための注射道具一式だけど……」
「そんなの見りゃわかるわよ! なんでそんなもんで血を採ろうとすんのかってことよ!
みんな直接あんたに血を吸われるのを待ち望んでいるのに!」
みずほりんのとぼけた返答。女生徒はますますいきりたった。
「直接って……それはまずいんじゃ」
「まずくないって。ほら、見なよ」
女生徒はみずほりんに生徒たちの様子を見せる。
「あなたのようなかわいい吸血鬼さんにでしたら、喜んで直接私の身体から血をさしあげますわ」
ロングの黒髪の生徒が、母性愛に満ちた目でみずほりんを見ている。
「それだけじゃないよ」
「こんなお優しそうな吸血鬼さんにでしたら、直接血をさしあげてもよろしいのですよ」
一瞬小学生が紛れ込んでる? と思うくらい小柄な少女が期待に満ちたまなざしをしていた。
「ほんでもって……」
次に指差したのは……。
「あ、あの、このような素敵なお方に血を吸っていただけるなんてまことにもって光栄至極、フ○ーザの戦闘力よりも高く
天に昇る勢いで私の精神も一気に太陽に向かって一直線、と申したいところではありますが、いかんせんこの状態では
それもかなわないかと思うと、タイタニック号もびっくりのごとく小笠原海溝より深く沈没してしまいそうで……」
ずっとネコのようなポーズをしながらそう話す女の子にみずほりん圧倒。ふらふらしてるのによく
そんなに早くしゃべるれな……と大いに感心。
「ほかにも、こんなのもいるよ?」
「あああ……あのような素敵なお方が私の血を……きゅうううう……」
ウェーブのかかった金髪の少女が鼻血を噴いて倒れている。
「ちょ……牙を突き立てる前に血を出してどうするの……救急車呼んだほうがいいんじゃ……」
「心配ないって。一過性のもんだから。もっとすごいのが……」
「やあっ……吸血鬼さん……そんなえっちなとこから血を吸っちゃ、やなのお……」
ヘアバンドをしたショートカットの女の子が喘ぎながら自分の胸と股間をまさぐっている。
「………」
もしもーし……まだ血を吸ってもいないんですけど……と心の中でツッコミを入れるみずほりんの身体から、滝のような汗が……。
「ねっ。こんなにもみんなみずほりんが自分の身体に牙突き立ててくれるの待ってるんだから、そうしたげなさいよ」
「で、でも、そうしたら、みんな吸血鬼化しちゃうじゃない。それはまずいんじゃ……」
最初は直接血を吸い取っていたみずほりんであったが、このことに気づいてからは道具を使って血を採ることにしていたのであった。
「そんなの、ぜーんぜん、まーったくノープロブレムよ。みんなあたしが吸血鬼化を阻止する効果のある化粧品を開発して、
全員それつけてるんだから」
「………」
みずほりんの顔におびえの色が見える。だって、餌食になるのは自分のような気がしてきたから。
今のみずほりんの心境。蛇ににらまれた蛙。ネズミに囲まれたド○えもん。勇者ににらまれたは○れメタル。
「じゃ、じゃあ……この指輪を受け取った人から……ね……」
みずほりんははめていた指輪を投げる。みんなが我こそはと指輪に群がる。そして受け取ったのは……。
「キャッチ」
寡黙そう……というかまるで幽霊みたいな少女だった。
「えっと、じゃあ、あなたからお願いするわね。失礼します」
みずほりんがそう言ってその少女に牙を突きたてようとすると、隣でニコニコ笑っていた少女が、突然腕を垂直に交差させた。
「………!!」
あれは、十字架……みずほりんは気づいた。
よかった……これで、この恐怖から解放される。みずほりんはそう思い、安らぎに満ちた笑顔を浮かべながら、灰と化していった。
なお、この時のみずほりんの安らぎに満ちた笑顔は、みんなの記憶に理想として焼きつき、美術部員が描いたそれは、
国際絵画コンクールでグランプリを受賞し、数億の値段がついたらしかった。
そして、新たな伝説が始まった……。
Fin
以上です。支離滅裂ですみません。
みずほりんが血を吸うシーンと、それに酔いしれる処女たちのシーンは、皆さんでご想像ください。
私も吸われてみたいな……。
あのポーズがネコのポーズに見えているのは、きっと私だけではないはず……ですよね?
後で気づいたのですが、「Hメンタルプレリュード」の設定だと、PS2版では、
まりやのおみやげで由佳里ちゃんの初恋の人が瑞穂くんだとバレちゃいますよね……(汗)
それでは、これで退散します。
美智子さんヒドスw
GJ!
なぜか八重歯がカワイイみずほりんの映像が浮かんできて悶絶してますw
それにしても本物がいるのに幽霊みたいって形容される圭さんって・・・
次も期待してます
お疲れ様でした!
>>97 >腕を垂直に交差させた
スペシウム光線・・・
またまた東の扉です。
仕事の予定変更のため1日遅れましたが、奏ちゃん聖誕祭記念のSSを投下させていただきます。
設定は奏エンド後、2年目の夏休みです。
それでは、よろしくお願いします。
「はあ……退屈なのですよ」
第74代エルダーシスターの周防院奏は、誰もいない寮で1人ため息をついていました。
「どうして奏のお誕生日は、夏休みにあるのでしょうか?」
普通なら、お休みの時にお誕生日があれば、ご家族やご友人たちと一緒に過ごせて嬉しいはずなのですけど、奏は……。
「由佳里ちゃんも初音ちゃんも実家に帰ってしまわれていますし、薫子ちゃんもお家の用事でここには
お顔を出せないようなのですよ……」
皆さん、さすがに奏のお誕生日のことは覚えてくださっていたようで、
プレゼントと「おめでとう」のお電話をいただきましたのですけど……。
「それでも、1人で過ごす誕生日は、やっぱり退屈なのですよ……」
奏は、孤児院を出てからは、自分が夏休みに生まれたことを、ずっと寂しく思っていましたのです。
もっと普通の日なら、寮の皆さんとご一緒に過ごせますのに……。
プルルルル……。
そこへ、お電話がかかってきましたのです。
〜永遠の二月革命〜
「はい! 聖央女学院女子寮です!」
よそ行きの口調に切り替えて、お電話をとりました。すると……。
「奏? 僕、瑞穂だけど……」
「瑞穂さまなのですか!?」
奏、それだけで舞い上がってしまいそうなのですよ。
「うん。今、寮には奏1人でしょ? せっかくの誕生日なのに退屈していると思って」
「そそそ、そんなことはないのですよ。さっきも、由佳里ちゃんや薫子ちゃん、初音ちゃんからお祝いのプレゼントと
お言葉をいただきましたのですよ」
奏は、とっさにごまかしてしまいます。
「ふふ、奏は強いね。でも、僕の前でぐらい、甘えてくれてもいいって言わなかった?」
そういえば、そんなことも聞いたような気がするのです。
「あの、それで瑞穂さま、どんなご用件なのですか?」
「えっと、僕は今沖縄にいるんだけど、奏を招待したくてね」
奏を日本の南端の沖縄に?
「どうかな? 僕の招待、受けてくれるかな?」
もちろん、お断りする理由などあるはずがないのですよ。
「もちろん、喜んでお受けいたしますのですよ!」
「じゃあ、もうちょっとしたら西岡さんが着く頃だから、今のうちに用意をしておいて」
「はうう、瑞穂さま、準備がよろしいのですよ」
「奏が断るなんて思ってないから」
やっぱり瑞穂さまはなんでもお見通しだと、感心してしまいますのです。
そして、その日の夕方、那覇空港なのですよ……。
「はうう……瑞穂さまはどこにいらっしゃるのでしょうか?」
奏は、全然知らない場所で、瑞穂さまのお姿を一生懸命探していましたのです。
「奏? こっちだよ」
すると、そう瑞穂さまのお声が。周りの人の声が、途端に聞こえなくなってしまったのですよ。
「瑞穂さま!」
声のした方を振り向くと、奏の大切な方のお姿が、はっきりと見えましたのですよ!
「奏ちゃん……お久しぶりね」
そして、奏を待っていたもうお1人のお声も……。
「し、紫苑お姉さま!」
奏が驚いていると、紫苑お姉さまは奏にふらふらと歩み寄り、ぎゅっと抱きしめてくださいましたのです。
「はややっ!」
奏もこれは最初は苦しかったのですが、慣れてしまった今では、とっても心地良く感じるのです。
「まあ、奏ちゃん、嬉しいこと思ってくださいますのね」
し、紫苑お姉さま! どうして奏の考えていることがわかりましたのですか!?
「あの……紫苑さん? なんだか妬けてきちゃうんですけど……」
そこへ瑞穂さまが紫苑お姉さまに冷や汗混じりにそうおっしゃいましたのです。
「まあ、これで終わりですの? 瑞穂さん、案外いけずさんですのね。私、すねましてよ?」
紫苑お姉さまが微笑みながらそう返しましたのです。
「明日は奏ちゃんと2人きりで過ごせるのですから、今日ぐらい奏ちゃんの可愛さに触れていても、罰は当たらないのではなくて?」
「ふう……わかりました。じゃあ、今日は許可します」
「では、瑞穂さんの許可もいただきましたことですし、改めて……」
紫苑お姉さまはそう言って再び愛情いっぱいに奏を抱きしめてくださいました。
「じゃあ、奏、改めて、お誕生日おめでとう!」
「おめでとう!」
「瑞穂さま……紫苑お姉さま……楓さん……ありがとうございますのですよ!」
いっぱいのごちそうに、いっぱいのプレゼントにイベント、そしていっぱいの笑顔……奏、こんな温かいお誕生日を
過ごす事ができたのは、本当に初めてなのですよ……。奏、嬉しくて嬉しくて、涙が出てきちゃうのですよ……。
「それにしても、奏ちゃんを見てると、身体が疼いてきますね……」
「ふふっ、楓さん、早くも禁断症状ですか?」
「はい、紫苑さんがうらやましいです」
パーティーが終わった後で、瑞穂さまと楓さんがそう話していました。
「あの……奏、楓さんにもギュってしてほしいのですよ」
思い切って奏はそう頼んでみましたのです。奏も楓さんにもされて見たいと思いましたのですから。
「あらあら、奏ったら。楓さん、じゃあ、せっかくですから、大事なお客様のお願いを聞いてあげてください」
「はい♪」
瑞穂さまがくすりと笑いながらおっしゃると、楓さんが満面の笑顔を浮かべて近づいてきます。
ムギュッ。
「はややっ!」
楓さんは十分以上奏を抱きしめてくださいましたのです。
「……楓さん、よっぽどたまってたんですね」
「楓さんだけずるいですわ。次は私が」
そう言って、次は紫苑お姉さまが抱きしめてくださいます。
「では、もう一度……」
「もう一度……」
………。
「きゅうううううう……」
こうしてお2人に抱きしめられ続けて、奏は、とうとう息苦しくて気を失ってしまいましたのです……。
そして、翌日なのですよ。
「むにゃ……ふぇ?」
「おはよう、奏」
「あ、瑞穂さま。おはようございますのですよ」
奏が寝ぼけ眼でいると、一緒のベッドで寝ていた瑞穂さまが起こしてくださいましたのです。
「今日は奏と2人でお出かけするからね2人で沖縄の空と海を楽しもう」
「はいなのですよ!」
今日は、瑞穂さまと2人っきりで……ドキドキするのですよ。
そして、奏と瑞穂さまは、首里城などの観光名所や、レジャー施設を訪れ、めいっぱい楽しい1日を過ごしましたのです。
もうすぐ夜になろうかと言う夕暮れ時、奏たちは海へと足を運びましたのです。
「瑞穂さま、今日は1日、とっても楽しかったのですよ。見たこともないところで、本の中でしか知らないものを見れて、
新鮮だったのですよ」
「そう。奏も夏休みに生まれて、よかったって思えるようになったみたいだね」
「はいなのです! 瑞穂さまにお祝いしていただけるなら、いつでもよろしいのですよ」
今までが寂しいお誕生日だっただけに、よりそう思えるのでしょうか?
「それにしても、きれいな海なのですよ」
「そうだね。奏、水族館に行った時言ってたよね。お魚さんの泳ぎがきれいだって」
「はいなのです。あんなにきれいに泳げるのが、すごいと思いましたのですよ」
図鑑では、止まっているものしかわからないのですから。
「あのきれいな魚たちも、この海のどこかに、確かにいるのよね」
……そうなのです。あのお魚さんたちは、水族館の中だけで生きているのではないのですよ。
「たとえ見えなくても、この海に、確かに……」
そう言って瑞穂さまは物思いにふけりました。奏は、その憂いを含むようなお顔に、ドキッとしましたのですよ。
「瑞穂さま?」
「聖央のみんなも、まりやも貴子さんも、由佳里ちゃんも、薫子ちゃんや初音ちゃん……姿は見えなくても、
この海の向こう側に、確かにいるんだよね」
……今までは考えたこともなかったのですけど、確かに瑞穂さまのおっしゃるとおりなのですよ。
「そして、一子ちゃんや院長先生、そして僕の母さまも、僕たちの心の中に、確かに存在するんだ。
今は遠く離れていても、どこかで必ずつながっているんだよね」
そう言って微笑む瑞穂さま。
「そうなのです……よね。たしかにつながっているのですよね」
「奏……」
「瑞穂さま……奏、2学期になっても、もっともっと頑張るのですよ。聖央の生徒だけでなく、もっとたくさんの方たちに
慕われるような人間になるのです。あの日誓った奏の二月革命は、まだ終わらないのですよ」
「ふふっ、その意気だよ、奏」
瑞穂さまも笑って応援してくださいました。
奏の永遠の二月革命、瑞穂さまのご期待以上にどんどん大きくしていこうと、改めて誓った誕生日だったのですよ。
Fin
以上です。
二月革命というのは、PS2版でバレンタインの時に言っていましたが、PC版では言ってなかったかな?
大急ぎで作ったので、内容については書ききれていない部分が多々あり、自分でも納得してはいません。
とはいえ、この作品で紫苑さん、まりや、貴子さん、奏ちゃん、由佳里ちゃん、全てのルートの作品が書けたわけですけど。
(出来はともかく)
それでは、とりあえずこれで。失礼いたしました。
GJ!
奏ちゃんの誕生日にwktkで待ってたのに投下が無くてガッカリ…
な感じだったんですが幸せそうな奏ちゃんが読めて良かったです。
お疲れ様でした。
GJ!
ほんわかしてよい感じでした。
来年の誕生日も、幸せに迎えられるといいですね。
>全てのルート
ひどいですひどいですひどいですぅ(ry
……突然妙な電波が……
那覇空港にて。
帰りの飛行機は4人とも一緒だ。
奏は瑞穂と紫苑の間の座席に座る。
「奏、ちょっぴり怖いのですよ……」
「僕がついているから大丈夫だよ、奏」
瑞穂はささやいて、おびえる奏の手をそっと握ろうとする。
だがその前に、奏の華奢な体は紫苑に抱き上げられていた。
「まぁまぁ、幽霊だって平気な奏ちゃんが、飛行機を怖がるなんて、なんて可愛らしいのかしら」
むぎゅー。
「あの、お客さま、まもなく離陸でございますので、
恐れ入りますがお子さまを一旦、お座席の方に座らせていただけますでしょうか……」
「怖いの怖いの、飛んでいけ〜」
「いや、ですから、飛んでいけないのですが……」
失礼しました〜那覇空港だったので、つい……
>>110 別に一子ちゃんを忘れているわけではないのですが、彼女のエンディングはノーマルエンドと解釈してますので。
機会があれば、彼女のルートも書いてみたいとは思います。
>>111 飛行機恐怖症は、由佳里ちゃんの方ではないかと……。
そういえば、そっちをネタにされることはあまりありませんね。
夏休みの旅行中に受信した電波の作品化が完成しましたので、そちらも投下させていただきます。
昔話の「人魚姫」が題材の小ネタです。
たびたびすみません。
〜人魚の願い〜
昔々、海の底のムー王国だかアトランティス王国だかもわからないところに、人魚の城がありました。
その城には、6人のお姫様が住んでいました。
人魚は、16歳の誕生日を迎えると海の上に出ることを許されます。
上からイチコ、カエデ、ヒサコ、ナオ、カナの5人は海の上を出ているが、もうすぐ16歳になる末娘のユカリだけは
まだ海上を見てはいません。そんなユカリは、上のお姉さまたちが話してくれる海の上の話に、とても憧れていました。
そして、ユカリの16歳の誕生日。ようやく海の上に出ることを許されたユカリ姫は、浮かれきっています。
「この上に、お姉さま方が何度も話してくださった、私の見ていない世界があるんだ……どんな世界なんだろ? 楽しみ」
そうしてユカリ姫が、海の上で見たものは……。
「………」
高貴な服を着た人間でした。年齢は自分より少し上……でしょうか?
栗色のサラサラの髪を腰あたりまで伸ばしていることと、その美しい顔立ちから女性かと思ったが、
着ている服は間違いなく男性のものでした。
その人間は、遭難して意識を失っているのか、眠ったように動きません。
「はあ……素敵……」
ユカリ姫は一瞬その美しさに見とれていましたが、すぐにその人間が危険な状態だと理解しました。
「息してない……心臓は動いてるみたいだけど……とりあえず、人工呼吸しなきゃ……」
そう言ってその人間の口に自分の口を合わせて呼吸を送ります。
「はあ……ふう……」
早く意識が戻りますように、と願いながら、ユカリ姫はこんなきれいな人と唇を合わせてるんだ……なんて
不謹慎なことを考えてしまいます。
(ダメ……私ったら……)
そうは思うものの、そう考えれば考えるほど意識してしまいます。
「んっ……んむっ……んふうんっ!」
ユカリ姫は、人工呼吸をしながらもいつの間にか自分の胸をもみしだいていました。
「う……ん……」
しばらくして、相手の人間が目を覚ましました。
ユカリ姫は、慌てて自分の体勢と貝のブラを元の位置に戻します。
「あ……あなたは……」
「目を覚まされたんですね……よかった」
心底嬉しそうにユカリ姫が言うと、相手は状況を理解したようです。
「あなたが助けてくださったんですね。ありがとうございます」
そう言って深々と礼をしました。
「いえ、そんな、お礼なんて……」
自分がしていたことを振り返って、いろんな理由で赤面しながら言います。
「あなたとは、またどこかで会えそうな気がします。その時には、是非僕と一緒に……」
相手の人間がそう言いかけた時……。
「ミズホ王子ー!」
「探しましたぞ!」
その人を探しに来たと思われる大量の船が、そう言いながらこちらに向かってきました。
「いけない、お迎えが来たようです。それでは、私はこれで」
ミズホ王子と呼ばれたその人は、ユカリ姫の頬にキスをして船に乗り込みました。
「ミズホ王子さま……」
ユカリ姫は、頬を手で押さえたまま、ずっと今の状況に酔いしれていました。
「ええーっ!? ユカリちゃん、そんなことがあったんですか? すごいですすごいです! これはまさに人魚の国と人間の国の
同盟ですよ! もう第三次世界大戦でもハルマゲドンでも持って来いの大事件ですよ!」
「まあ、ユカリさんも隅に置けませんわね」
「ユカリさんには幸運の女神様でもついてるのかしらね」
「うーん……案外そうかもしれないわね」
「カナ、うらやましいのですよ。ユカリちゃんの素敵な出会い、うまくいってほしいのですよ」
今日海の上で起きたことをユカリ姫から聞いた上の姉たちは、興味津々で話を聞きます。
「でも、相手の人は人間なんでしょう? 海の上で暮らす人間と海の中で暮らす人魚じゃ……」
「うーん……でも……」
ナオ姫がそう言うと、ユカリ姫は途端に表情を曇らせます。
「あっ……そういえば」
「どうしたの? カナ」
「海の中に、なんでも願いを叶えてくれるタカコという魔女の話を聞いた事があるのですよ! その方に頼めば、
もしかしたら人間にしてもらえるかもしれないのですよ!」
「ホントに? ありがとう、カナお姉さま!」
それを聞いて上機嫌なユカリ姫。早速海の魔女タカコのもとに向かいます。
「なるほど……愛した男と結ばれるために人間になりたいと……事情はわかりましたわ」
ユカリ姫からお願いを聞いた海の魔女タカコは、そう返事します。
「お願い……聞いてくださいますか?」
「わかりました」
「わあい!」
タカコの承知の返事に、ユカリ姫は大喜び。
「ただし……条件があります」
「条件?」
「ええ。その代償として、あなたの可愛い声をいただきますわ」
「声……ですか? それをいただくって……そうすると私はどうなるんですか? 変な声になっちゃうんですか?」
「いいえ。しゃべることができなくなってしまいます。会話をしたいなら、手話か、筆談か、読唇術が出来る方に
常にいてもらうしかないですわね」
ユカリ姫はそれを聞いてショックを隠しきれません。
「あ、あの……どうしても、ですか?」
「ええ。どうしても、ですわ」
タカコはそう冷静に言い返します。
「あ、あの……失礼ですが、どうしてそこまでして私の声が欲しいか教えていただけませんか……?」
ユカリ姫がそう質問すると、タカコの側に控えていた少女が怒り出しました。
「な……ななな、何をおっしゃるんですか! タカコ様を欲の亡者のように言う振る舞い、
このタカコ様の一番弟子のキミエがゆゆゆ、許しませーん!」
「キミエ、およしなさい。この方は私のことをよく知らずに来られたようですから」
「は、はい……」
タカコがそう制止させると、キミエと呼ばれた少女は口をつぐみました。
「私とて無償でお願いを叶えてさしあげたいのはやまやまですが、そのような大がかりなこと、
今の私の魔力では、何かと代償にして行うのが精一杯なのです」
「そう……だったんですか。すみません、失礼なこと言って……」
「よろしいですわよ。魔術のことを知らない方なら、そう誤解するのも無理のないことですから」
タカコの説明にユカリ姫が平謝りすると、タカコは笑って許してくれました。
「それと、期限は3日。もし3日以内にその人間の方と契りの証を交わせなければ、
あなたの身体は海の泡となって消滅してしまうでしょう。それでも、人間になりたいですか?」
それを聞いたユカリ姫は悩んでいましたが、しばらくすると決心に満ちた表情で言いました。
「はい、お願いします!」
「それでは、行いますわよ」
そう言ってタカコは目を閉じて儀式に入りました。
「コートクアーノクターラーサンミャク……」
「スーパーカリフラジリスティック……」
「シュビズビズババーシュビズビズババー……」
「海の神ポセイドンよ、大地の神玄武よ、天の神アラーよ、今ここにユカリの声を人間へと変える力へとしたまえ。アーメン」
「………」
宗教も登場作品もバラバラじゃないですか? ついでに作者の勝手に作ったメチャクチャな設定が混じってませんか?
とユカリ姫は思うものの、自分の頼みを聞いてもらっている手前、あえてツッコまずにおきました。
「さあ、終わりましたわ」
「終わったって、どこも変わってませんが……」
事実、呆然とするユカリ姫の足はいまだ魚のままです。
「ええ。ですが、地上に出たなら人間になっているはずです。人間になった途端しゃべれなくなりますので、お気をつけくださいね」
「はい! ありがとうございました!」
ユカリ姫はペコリと頭を下げてタカコの屋敷を後にし、地上へ向かいました。
パシャーッ!
ユカリ姫が海上に出ると、足が見る見るうちに人間の足になりました。
(す、すごい! 私、ホントに人間になったんだ!)
思わずそう叫んだものの、口がパクパク動くだけで、声になりません。
(あ、あれ? 私……どうして声に……あっ!!)
そこで、ユカリ姫はタカコの言葉を思い出しました。
(そっか、私、もうしゃべれないんだ……)
そう思いながらも、ミズホ王子を探すことにしました。
苦労の末、ユカリ姫がミズホ王子のいるギラブカ城に忍び込むと、ミズホ王子と側近たちの声が聞こえてきました。
「王子さま! いい加減に、お父上のギラブカ5世様の決められた許婚であるジョージュー王国のシオン姫様とご結婚なされませ!」
「イヤです! 私には心に決めた方がいるのです! あの日、溺れて死にかけた私を助けてくださった、命の恩人の美しい女性が……」
それを聞いて、ユカリ姫は感動。
(それって、私のこと? それじゃあ、ミズホ王子様も、ずっと私のことを思ってくださってたんだ……)
胸の中が熱い思いで満たされ、涙がこみ上げてきました。
(ミズホ王子様、あなたの探してる人は、私です!)
ユカリ姫は、そう心で訴えます。しかし、その前に高まりすぎたドキドキを鎮めるため、一目散にトイレに駆け込みました。
ところで、その会話を聞いていたのは、ユカリ姫だけではありませんでした。
「まあ、ミズホ王子にそのような方が……それで私と結婚しようとはなさらないのですね。そういうことでしたら……」
そこでシオン姫の髪が全身を包んだかと思うと、髪を解いたシオン姫は、魔女の姿になりました。
そう。ジョージュー王国は代々魔法使いの血統であり、その血を受け継ぐシオン姫も、海の魔女タカコ以上の魔力を持つ
魔法使いだったのです。
「サラダ油ペチカ油ビビディ・バビディ・ブウ……わが願いよ、ミズホ王子に届け! えいっ!」
シオン姫はそう言って杖から魔法をミズホ王子に向けて放ちます……しかし、何も起こらなかった。
「あらあら、間違えてしまったようですわね。では改めて……」
シオン姫は気を取り直して再び魔法の詠唱に入ります。
「マ○リク・マ○リタ・ヤン○ラヤンヤンヤン……わが願いよ、ミズホ王子に届け! えいっ!」
以下同文。しかし、何も起こらなかった。
「おかしいですわね……テク○ク○ヤコン・テク○ク○ヤコン……わが願いよ、ミズホ王子に届け! えいっ!」
しかし何も起こらなかった。
「これも間違いですか……では、アイ○ス・ルア○ス・パル○ミラ・レイ○ス・ラル○ス・パル○ラルー……
わが願いよ、ミズホ王子に届け! えいっ!」
しかし何も起こらなかった。
「困りましたわね……どれでしたでしょう……」
途方にくれるシオン姫。その時……。
ドンドンドンドン……。
「ジョージュー王国大臣様、お着ーきー!」
遠山の○さんのお白州のような太鼓とともにそう声が聞こえます。
「そうです! これですわ!」
シオン姫は魔法の詠唱を思い出しました。
ズントットット・ズントットット……。
シオン姫はそう回りながら踊りだします。そして……。
「今度こそ……わが願いよ、ミズホ王子に届け! えいっ!」
シオン姫の杖から、魔法がミズホ王子に向かって放たれました。
「うわっ!」
ミズホ王子は慌てますが、突然の事態に、どうすることもできません。やがて魔法の光が消えると……。
「お、王子さま、そのお姿は……?」
「えっ? わ、わあああっ!!」
呆然としながら言う家臣にミズホ王子が自分の姿を確認すると、プリンセスドレスを着ていました。
しかも、身体も女性化していました。
「こんな恥ずかしい格好……」
「いいえ、王子さま、とてもお似合いですぞ!」
「この方が違和感がまったくございませんな!」
「まことに! これこそ王子さまの真のお姿!」
ガーン!!
「ううう……僕って……僕って……」
ミズホ王子は激しく落ち込んでしまいました。
「あらあら、とても可愛らしいですわね……でも、真の目的を忘れてはいけませんわ。慌てすぎない、あせりすぎない、
そして見とれすぎない。何事も過ぎたるは及ばざるがごとしですものね」
ズントットット・ズントットット……。
シオン姫は、再び踊りながら魔法の詠唱に入ります。
「六度目の正直、わが願いよ、ミズホ王子に届け! えいっ!」
またもシオン姫の杖から、魔法がミズホ王子に降りかかります。
「うわっ!」
魔法が消えると、ミズホ王子は元の姿に。
「どうやら成功したようですわね。それでは、参りましょうか」
シオン姫は、ミズホ王子の前に出ました。
「はじめまして。私、ジョージュー王国の息女、シオンと申します」
一方ユカリ姫は、ようやく興奮を鎮める事ができ、トイレから出てきました。
(思ったより時間がかかっちゃったな。だって、ミズホ王子さまみたいな素敵な方と心がひとつになったんだもん。仕方ないよね)
そして、自分がミズホ王子の探している相手だと告げようと王の間に行くと……。
「あ、あなたは! まさしくあの時私をお助けくださった命の恩人!」
「ミズホ王子さま。私のプロポーズ、受けてくださいますか?」
「ええ、もちろんです!」
(そ、そんな……どうして!?)
そんな会話を聞いて、ユカリ姫は愕然としました。
シオン姫がミズホ王子にかけたのは、幻覚と魅惑と記憶のすり替えの魔法でした。
それにより、ミズホ王子は完全にその人がシオン姫だと思い込んでしまったのでした。
(………!!)
ユカリ姫は、その場にいる事が耐えられず、泣きながら海に逃げ帰りました。
(うっ、うう……)
一気に天国から地獄へと落とされたユカリ姫は、1人海岸で泣き崩れていました。
「ユカリちゃん、泣かないでくださいなのですよ」
(えっ!? カナお姉さま?)
夜まで泣いていたユカリ姫のところへ、カナ姫がやってきました。
「ユカリちゃん、これをお使いくださいなのですよ」
カナ姫はそう言って、ユカリ姫にひとふりの短刀を渡します。
「これは、魔術を切り裂く短刀なのですよ。これをミズホ王子さまに突き刺せば、王子さまにかけられた魔法が解けるはずなのです」
(でも、そんなことしたら、死んでしまうんじゃ……)
ユカリ姫はそう思うと、それを読み取ったカナ姫が言います。
「あ、大丈夫なのですよ。これは魔術だけを切り裂くものですから、相手が死ぬことはないのですよ」
カナ姫はそう言って短刀を自分の腕に振り下ろします。すると不思議なことに、短刀は腕をすり抜け、
カナ姫は傷ひとつ負ってはいません。
「魔女のタカコさまにお頼みして、リボンと引き換えにいただいたのです。恩人さんにいただいた大切なリボンですけど、
ユカリちゃんの命には代えられないのですよ」
(カナお姉さま、ありがとう)
ユカリ姫はそう思い、短刀を持ってミズホ王子の寝室を目指します。
(これを突き刺せば、魔法が解けて、ミズホ王子さまは、私のことを……)
そう思って、ミズホ王子の魔法を解こうとした時……。
「むにゃあ……シオン……」
ユカリ姫の心がずきんと痛みました。
「シオン……愛してるよ、シオン……」
心底幸せそうな寝顔でそうつぶやきます。
(ううっ……できないよ……大好きな人の幸せを奪うことなんて、できないよ……)
お人よしのユカリ姫は、結局短刀を使うことが出来ませんでした。
そして期限の時……。
(さよなら、私の恋……さよなら、私の命……さよなら、ミズホ王子さま……)
ユカリ姫は、海に飛び込みました。身体が、徐々に泡と化していきます……。
ちなみにカナ姫は、魔法の短刀をもとのリボンに戻してもらったらしいです。
それからだいぶたって……。
(あれ? 私、死んだんじゃ……)
ユカリ姫は、自分の意識があることに驚きました。
「あんたは、確かに死んでるわよ」
(えっ!?)
振り返ると、1人の天使の服装をした女がいました。
「今のあんたは、幽体ってわけ。ああ。あたしは神の使いの1人で、マリヤっていうの」
(神の使い?)
「清い心を持ちながらも、幸薄い一生を過ごした魂に、せめて永遠の安らぎの地へと誘うのが、あたしたちの役目。
あんたもそこに迎えられた1人よ」
(私も? この人に連れられて……)
ユカリ姫は安堵しました。もう辛い思いをせずにすむ……と。ところが……。
「ふふーん。と、い・う・わ・け・でえ。その前にあたしが、安らぎを教えてあげるわね」
マリヤは意地悪そうな顔で言います。ユカリ姫はいやな予感がしたものの、手遅れでした。
「ほらほらほら」
(ダメ……そんなにしちゃ……やめてーっ!!)
マリヤは、容赦なくユカリ姫に快楽を与え続けます。
「どうだった? あたしのテクは? うまいでしょ」
(もういい加減にやめてください!)
一段落してそう聞いてくるマリヤに、ユカリ姫は涙目でそう訴えますが……。
「そっか。泣くほど気持ちよかったのか。それじゃ、もっと愛してあげるわ」
マリヤは、いたずら好きな上に、なんでも自分に都合のいいように解釈してしまうという、困ったクセの持ち主でした。
ユカリ姫がしゃべれないので、マリヤは持ち前の本領をどんどん発揮していきます。
(やめ……ミズホ王子さま、助けてーっ!!)
「心配しなくても、あんたは幽体なんだから、誰にも見えないのよ。邪魔は入らないんだから、遠慮しなさんなって」
(ひーん!! ミズホ王子さまーっ!!)
マリヤから与えられる快楽の大波は、ユカリ姫の意識も、記憶も、心も飲み込んでいきます。
そしてユカリ姫は、文字通り、全てを忘れてしまいました。
そして……。
「うーん……」
「あなた、どうしましたの?」
「何か大事なことを見落としてるというか、勘違いしているような気がするんだけど、それがなんだかわからないんだ」
「考えてもわからないことを、考え続けるのは不毛ですわ。あなたも私も、こんなに幸せに満たされてる。
それでよろしいではありませんか。違いまして?」
「シオン……そうだね。僕も変に考えないで、この幸せを噛みしめることにするよ」
ユカリ姫の行く末など知るよしもないミズホ王子は、お妃のシオンとともに、末永く幸せに暮らしましたとさ。
Happy end
「どこがですかあ!! うわーん!! グレてやるーっ!!」
……以上です。
瑞穂くんは、魔術にかかっていますので、そういうことと思ってください。
紫苑さんの相手側についている奏ちゃんも……とは思います。
……それにしても、由佳里ちゃんのファンで、彼女を不幸にする話に憤りを感じていた私が、
どうして、いつの間に由佳里ちゃんをいじめる側に回ってしまったのか……。
「どれだけの人に喜んでいただけるか?」以前に、「これでよかったのか?」と思ってしまいます。はあ……。
圭さん「感染者1名・・・」
美智子さん「では、病院へ。 お疲れ様でした、東の扉さん」ぺこり。
東の扉先生の次回作に期待だ!
128 :
名無しさん@初回限定:2007/08/28(火) 19:52:30 ID:mSs7vg/w0
>>126 ( ゜д゜)ポカーン
「ゆ・・ゆかりん・・・」
これしかコメントできません。本当に(ry
奏ちゃんは普通に幸せそうな話なのに由佳里ちゃんは何故w
一子ちゃんの話も楽しみにしてます。
乙でした!
130 :
名無しさん@初回限定:2007/08/28(火) 23:49:51 ID:HeHvbpfPO
今回ばかりは魔法なんて姑息な手を使った紫苑様に殺意を覚えますた。
131 :
名無しさん@初回限定:2007/08/29(水) 12:40:47 ID:wPI2yZX40
こ…これは俺でも引くわ
ゆかりん不憫すぎる…(´;ω;`)俺様が仇討つから安らかに眠ってくれw
┃ ;┃
┃ ;┃ 神 エ
┃ .┃
┃: : ;┃ の ル
┃ \ ; i ; ..┃; ・
┃ i / i i. .┃ 裁. ト
┃ 丶 / i. i .┃.; l
┃ Y 丶 .i .┃; き. ル
┃ i / ヽ. ┃.; !!!
┃ .i . /. ┃
┃ i 丶. ┃
┃ / .i. ┃
┃ ヽ i. ┃
ヾ .i┃ ./ゝ .i .. ┃
. i┃ i i .i. ┃ / /
\ ヾ ┃ : ┃. / . /
\ヾ┃ .┃/ /
紫苑>>_| ̄|○ ○| ̄|_
>>126
132 :
名無しさん@初回限定:2007/08/30(木) 00:09:56 ID:d6Xns2Z00
∩___∩
| ノ ヽ おらおら紫苑!あんま調子こいてっと厳島の兄貴を呼ぶクマ!!
/ ● ● |
| ( _●_) ミ
彡、 |∪| 、`\
/ __ ヽノ /´> )
(___) / (_/
| /
| /\ \
| / ) )
∪ ( \
\_)
……今にして思えば、あの時はストレスがたまり過ぎていたのか、ドーパミンが出過ぎていたのか……。
今回は反省もこめて、埋め合わせのSSを書いてみました。
設定は由佳里エンドの2年後で、時季の指定はありません、
卒業してから約2年。僕は今日も、聖央女学院の女子寮に来ていた。もちろん女装して、だけど。
女装はイヤだけど、それであの娘に会えるんだと思うと、ほとんどなんでもない。
「こんばんは」
「はい……あっ、瑞穂さま!」
初音ちゃんが迎えに来てくれる。僕の顔を見ただけで、目的をわかってくれたようだ。
「由佳里お姉さま! 瑞穂さまがいらっしゃいました!」
〜すでに日常になっていること〜
「お姉さま、こんばんはなのですよ」
「奏ちゃん、こんばんは」
「瑞穂さま、また来てくれたんだね」
「薫子ちゃん、今日は予定が開いてたからね」
寮のメンバーと交わす挨拶。僕は予定のある日を除いて、毎日と言ってもいいくらい由佳里に愛に、じゃなくて
会いに来ている。勉強を教えに行くって約束したからね。
「お姉さま、相変わらずなのですよ。由佳里ちゃんはもうお姉さまにお勉強を教わる必要はないと思うのですよ」
「まあ……ね」
実は僕が教えに行くようになってから、由佳里の成績は冗談のように伸びていた。
そして今や、学年でトップクラスの実力の持ち主だ。
「奏お姉さま、瑞穂さまは由佳里お姉さまに会いたいだけだと思うよ」
「薫子ちゃん……私はそんなこと……」
当たってるだけに、そういわれると返答に困ってしまうな。
「そんなこと?」
「あ、あるけど……」
「あはは……では、そろそろ由佳里ちゃんに会いに行ってあげてくださいなのですよ。
きっと、首を長くして待っていると思うのです」
「奏ちゃん……じゃあね」
そう言って、僕は食堂を後にした。
コンコン……。
「はい」
由佳里の部屋をノックすると、向こうからそう声が。
「僕だけど」
もう薫子ちゃんも初音ちゃんも僕の正体は知っているから、遠慮せずにそう言う。
「その声は瑞穂さん!」
いきなり声の調子が上がり、勢いよくドアが開かれる。
「いらっしゃい、瑞穂さん!」
そう言っていきなり抱きついてくる。
「もう、由佳里ったら」
それを苦笑いで返す。これは人目のことを何度注意しても直らないみたいだから、あえて放っておくことにした。
まあ、僕も抱きつかれて嬉しいんだけどね。
「“一応”お勉強を教えに来てるんだからね」
「はあい」
由佳里はそう不服そうに僕から離れる。僕もちょっと名残惜しいかな? ずっとこのままでいたいからね。
「それで、お勉強でわからないとことか、ある?」
一応聞いてみる。
「うーん……そうですねえ……今日のところはありません」
この会話も同じ。まあ、たまにわからないっていう時もあるんだけどね。
「そう。それじゃあ、他に何でもいいから、相談したいことは?」
そう言って僕たちは日常の会話に入る。僕の大学生活とか、家庭のこととか。
由佳里の方は、学校や寮でのこと、それから好きな芸能人とか、食べ物とか、番組とかの話。
あと、奏ちゃん、薫子ちゃん、初音ちゃん、そして由佳里自身の悩みを相談したりもしてくる。
それに対しては、僕も真剣に考えていくつか解決へと導いていた。
「そういえば、今日久しぶりに景子ちゃんと競争しましたよ」
「景子ちゃんって?」
「今の陸上部部長の京極景子(きょうごく けいこ)ちゃんですよ!」
「ああ、由佳里といいライバルだった……それでどうだったの?」
僕はまりやからの情報や由佳里の話で思い出して聞いてみた。
「……やっぱり、完全に差をつけられちゃいました。でも、走っている時はやっぱり気持ちよくて、それを景子ちゃんに言ったら、
『久しぶりに楽しそうに走る由佳里ちゃんを見れてよかった。また時々でいいから、私と一緒に走りましょう』って」
そう話す由佳里は、本当に嬉しそうだ。
「そう。よかったね。いい友達を持って」
「はい! 瑞穂さんのほうはどうですか?」。
「えっと、今日、すごい美人の女の子が転校してきたんだ。それでみんな、すぐにその娘に近づこうと必死だったよ」
僕が今日あった出来事を苦笑いしながら話す。
「瑞穂さん、楽しそうですね」
と、途端に頬を膨らませる由佳里。
「そんなことないって」
「知りません!」
完全にすねてしまった。まあ、こういうところも可愛いんだけど。
「心配しなくても、今の僕は由佳里以外の女の子には興味ないって。証明してあげよっか」
そう言って由佳里の唇にキス。
「んっ……」
しばらくの間お互いの唾液を交換して、唇を離す。
「どう? 機嫌は直った?」
「な、なんですかそれは……私はまだ怒ってるんですからね!」
そうは言うものの、頬は染まってるし、口調も怒ってるというより、完全に甘えている感じだ。可愛いとしか思えない。
「じゃあ、その毒気を取り除いてあげるよ。へそ曲がりさん♪」
僕はそう言って、由佳里の下着の中に手を伸ばす。
「瑞穂さん……あっ」
そしてそのまま優しくもみしだくと、すぐに由佳里からあえぎ声が漏れてきた。
「はあ……はあ……」
「どう? これで機嫌直してくれる?」
「あーん……もっとお……」
と、由佳里は荒い息を吐きながら、さらなる愛撫を求めてきた。
「もう、しょうがない娘だね」
そんなところをたまらなく愛しいと思いながら、僕は由佳里の欲求に応えてあげる。
「そういえば瑞穂さん、この前のテストの結果です」
「もう奏ちゃんと互角ね。僕がいた頃の成績がウソみたいだ」
あの時は由佳里ちゃんの成績、後ろから数えた方が断然早かったからね。今思い返すと懐かしいな……。
「だって、成績が下がっちゃうと、瑞穂さんとデートもえっちも出来ないんだもん!」
「……理由はそれ? というか、由佳里が決めたんでしょ、そのペナルティは」
苦笑いしながら言う。
最初の頃、由佳里が自分の成績を伸ばすために、ペナルティとして成績が下がった時は僕との時間は家庭教師専門で、
デートもえっちも次のテストまで無しということにしよう、と提案してきたんだ。
僕も由佳里のためにもその方がいいかな、と思ったからその提案を受け入れたんだけどね。
「でも、1回だけ成績下がった事があったっけ」
「あの時は友達とか妹たちの悩み事とかで頭がいっぱいでしたから……」
他人の悩み事でそんなになってしまうというのも、由佳里らしいんだけどね。
「あの時は、ホント辛かったな……次のテストでは、絶対いい成績とってやるって思いましたから。
そうしないと、ノイローゼになっちゃいそうで……」
「僕も辛かったよ」
由佳里は懐かしそうに言う。僕も今となってはいい思い出だけど。
「でも、欲求不満が重なってた分、次のテストの後は瑞穂さんと一緒にすごく燃えましたよね」
「……お互い、相当我慢してたからね。反動出ちゃったんだね」
「あれはあれですごくよかったな。たまには成績下げてみるのもいいかな、なんて思ったりして……」
由佳里はいたずらっぽく言う。言いたいことはわかるけど、そう言われると、教えに来ている立場としてはさすがに……。
「あっ! そういうこと言うんだ! そんな人には、もう教えてあげない!」
でも、そう言いながらも、口調が怒ってないのが自分でもわかる。
「あーん! 瑞穂さん、怒らないでくださいよ! 冗談に決まってるじゃないですか!」
「くすっ……わかってます」
「あの、瑞穂さん……そろそろ一緒に」
「うん。寝よっか」
由佳里に勉強を教えにきたときに、由佳里の部屋に泊まるのも、もう当たり前になっている。
もちろん、その時に肌を重ねるのも。
そして翌日……。
「う……うん」
僕が由佳里の可愛い寝顔を見てると、由佳里も目を覚ました。
「あ、瑞穂さん……」
由佳里はまだ寝ぼけ眼だ。
「おはよう、由佳里」
「おはようございます、瑞穂さん……って、また私の寝顔を見てらしたんですか?」
「うん。だって、すごくかわいいんだもん」
「もう……」
僕が微笑んで言うと、由佳里は頬を染めてそっぽを向く。これもいつものこと。
「ふふっ……でも瑞穂さん、昨日もすごくよかったです……」
「そう。よかった。でもこんなことまりやに知られたら、一生ネタにされるだろうね」
「あはは……そうですね。でもまりやお姉さまは今アメリカですから、絶対に知られるわけないですけどね」
「うん。そうだね」
苦笑いで言う由佳里。まあ、由佳里の言うとおりなんだから、安心なんだけどね。
一方その頃……。
「今日の手紙はこれだけか……皆瀬初音? 誰だろ? イタズラかな?」
まりやはアメリカで、自分宛の郵便物を開いていた。
「でも住所が聖央の寮だし……一応見てみるか。どれどれ?」
まりやはその手紙を開いて、中身を見た。
はじめまして。今は遠いアメリカにいるお姉さまへ、お手紙をお出しすることにいたしました。
私は、お姉さまがご卒業された後、新しく入った寮生の1人で、皆瀬初音と申します。
その私がなぜこの手紙をいまだお会いしたことのないあなたに出すのかというと、感謝の気持ちを伝えたいからです。
週末をはじめ、余裕ができたときはいつも恋人である由佳里お姉さまに会いに来られる瑞穂お姉さま。
あの方は、由佳里お姉さまにお勉強を教えに来ていらっしゃるのですが、
奏お姉さまや私たち新しい寮生にも優しくしてくださって、時には私たちの悩みを親身になってお聞きくださり、
お姉さま方と一緒に解決してくださったことも何度かあります。
まあ、由佳里お姉さまに会いに来られるたびに私たち寮のみんなが全員気づいていることも知らずに、
『夜のお勉強』にまで頑張っておられるのには、少々困ってしまいますが、それを差し引いても、
瑞穂お姉さまに救われたいくつものことを思えば、いくら感謝してもしたりません。
彼女をこの聖央女学院に入れてくださったあなたにも、心から感謝しています。
初めてお会いしてから2年近くになる今でも、瑞穂お姉さまが男の方だというのは、いまだに信じられませんが……
というか、すでに瑞穂お姉さまのこと、『彼女』と書いてしまっていましたね。
いつかお姉さまがアメリカからご帰国なされたら、お会いして改めて感謝の気持ちを口にしたいと思います。
それでは、デザイナーの修行、頑張ってください。いつかお会いできる日を夢見ています。
まりやお姉さまへ あなたの妹の妹より
「へえ、初音ちゃんか……いい娘そうだね。私もいつか会いたいな」
まりやはそう言って、まだ見ていない自分の“妹”に思いをはせる。
「にしても、妹たちのいるそばで淫行にふけるエロボケカップルか……にっしっし、こりゃあ一生ネタに使えるわね。
ホント瑞穂ちゃんも由佳里も、港町のすし屋と一緒で、一生ネタには困らないわ」
そしてまりやはその後、2人に電話をかけた時の反応を想像して、必死に笑いをこらえていた。
Fin
これで終わりです。
このSSで由佳里ちゃんも機嫌を直して、泣きやんでくれるといいな……。
なお、手紙については、第10話の431を流用しました。(私の書いたものです)
ちなみに、一子ルートのお話も、構想は出来上がりました。
あとはワードに書いてそれを分割しておいて投下するだけ……。
……にしても、最近書いてあるのは、ほとんど私ですね……(涙)
他の方のSSも、もっと見たいです。どなたかお願いします。
では、これで。お目汚し失礼しました。
初めてSSに挑戦してみたけど、
無駄に長い・おとボクの世界観から逸脱している・パクリ・自分が読んでもつまらないで
とても他人に見せられるものではありませんでした
修行して出直してきます
>>143 ゆかりん、良かったねゆかりん
一子ちゃんのもwktkで待ってますよ
>>144 ガンガレ!
>>144 すぐ上にそれ以下でも得意そうに晒してるのがいるから大丈夫だよ
147 :
名無しさん@初回限定:2007/09/02(日) 23:52:10 ID:cUv8i7wG0
そうそう、書いてみて、投稿して、読んでもらって、笑われて落ち込んで
また斯いて、その繰り返しでうまくなってゆくんだ、がんばれ
>>146 きっつい言い方しちゃダメだよ。オブラードにくるんであげなきゃ
物書きは書いて批判されるのが修行。
批判が嫌になったら投稿所へ行くと良い。
・・・このスレもじきに腐海に沈む・・・
>>149 元々投稿所が推奨されるような内容の物をここで公開したら批判されるのは当然だろ?
>>144 どんな内容なのかは存じませんが、とりあえず投稿してみてはいかがでしょうか?
自分で思っているよりずっといい評価が出る、という可能性もありますし。
以前も書きましたが、私の作品ばかりでは、閲覧者の皆さんもつまらないでしょうし。
……というか、そう思っている人がほとんどのようですから(涙)
投稿所が推奨されるような内容なら、そっちで書いて欲しいのは確かだけど、
批評家気取りで、展開がどうだ文法が云々って奴も正直うざいな。
面白いのが正義でいいじゃん。面白くなければ、スルーすればいいじゃん。
>>152 評論家気取りの奴を、お前がスルーすればOK
とりあえず、L鍋さんは俺の嫁ということでいいか?
素晴らしい突拍子の無さにワロタww
三日ぶりにこのスレを覗いたら、嫌な展開で流れが止まってて、
鼻から牛乳が噴き出してしまいました。
>>154 全力で辞退いたします。勘弁してください。
157 :
144:2007/09/04(火) 23:34:45 ID:EIZ+DSqL0
>>151 もう少し推敲してから考えてみます
それから東の扉さんの作品いつも楽しく読ませていただいてます
次も楽しみにしています
じゃあL鍋さんは俺の義妹ということでOK?
>>156 ………(苦笑)
気分は男に迫られた瑞穂くんでしょうか?
>>158見てまた咳き込んだりしなければいいですけど……(汗)
奏ちゃんの誕生日にはL鍋さんの作品が拝めるかと期待していましたので、少し残念でした。
次回作も期待して待っています。とりあえず……
瑞穂くんのベッドの隣をかけていつものメンバーで行われる、回答状況によってはボーナスで得点が何倍に増えるクイズ大会。
2人がダントツでほぼ互角の高得点のまま迎えた最終問題。
誰が答える? そして勝負の行方は?
優勝者は、瑞穂の隣で“静かに”寝る事ができるのか?
……というお題を考えてみましたが。使う使わないは、お任せします。
>>157 応援ありがとうございます。励みになりました。
>>159 東の扉さん、御題提示どうもです。
私はどうも、御題を決められるとかけない人間のようです。
仕事で溜まったストレスをテキストに叩きつけるというのが
私の書き方のようで・・・。
以前、提示してもらったのも試してみたのですが途中で全く書けなくなっちゃいまして。
現在、新しいのを書いてる最中です。
毎日書いてます。
一日1KBくらい。
亀のように鈍いです。
最近、仕事で体力を使い果たして帰宅して直ぐに寝てしまうもので。
だもんで、8月中には無理でした。
でも先月の初めから書いているので、結構溜まってきました。
上手くいけば来週にも出来上がるかも知れません。
あんまり量が多いと、分割して投下するか、投稿所のほうに落とすかも知れません。
161 :
名無しさん@初回限定:2007/09/09(日) 13:43:10 ID:9KcaVw210
「Helpless ゆかりん」
ゆかりんはあせっていました。なぜなら提出しなければいけないレポートが山のように
たまっていたからです。
レポートを片付けながらゆかりんは助けてくれそうな人たちの顔を思い浮かべてました。
「奏ちゃんは演劇部で忙しいし、瑞穂お姉さまも大学受験だから迷惑かけたくない、まり
やお姉さまは素直に教えくれないだろうし、そもそもここぞとばかり苛めてきそうだし・
・・・・」
それでも刻一刻と時間は過ぎてレポートははかどりません。
そのときゆかりんの脳裏に天啓が降りてきました。
「そういえば昔、大学のレポートに『我が家のカレーライス』のレシピを書いて出したって話が
あったっけ・・・・」
そしてやおら机に向かいなおすとレポート用紙に猛然と鉛筆を動かし始めました。
そして次の日、床りんは意気揚々とレポートを出しました、ゆかりん特性のハンバーグ料理の
レシピが書かれたレポート用紙を・・・・・・
それを見た先生は・・・・・
「アラビンドビンハゲチャビーン」
と合格の印を捺しました、などということはなく再提出をゆかりんに命じ、泣く泣くゆかりんは
再び机に向かうのでした、どっとはらい
一子ルートのSSが完成しました。
設定は一子エンド後すぐの話です。
それでは、お暇な方はどうか見てやってください。
「ふう……今日の講義……ちょっと難しかったかな」
大学も終わり、僕は鏑木邸の自分の部屋に帰ってきた。
「お姉さま、お帰りなさいませ!」
と、部屋に入るなり声が。
「わあっ! 一子ちゃん、少しは手加減して……」
僕と一緒に聖央を出た一子ちゃんが抱きついてくる。
〜G(ゴースト)がG(ゴッド)へと変わる時〜
僕は、聖央女学院をエルダーとして卒業し、大学に入学してからも、アルバイトをしながら、
今までと何も変わらない大学生活を送っている。
僕の家には、時々アメリカに留学中のまりやから電話がかかってきたり、
紫苑さんや貴子さん、奏ちゃんや由佳里ちゃんが遊びに来てくれたりするんだけどね。
「そういえばお姉さま、それどころじゃないんです! 大変です大変です大変です大変なんです!!」
と、一子ちゃんが目に涙を浮かべながら慌てて僕にそう言ってくる。
まあ、一子ちゃんは大げさだから、言うほど大変じゃない事がほとんどなんだけど。
「もう、どうしたの、一子ちゃん?」
まあ、とはいえ、苦笑いを浮かべながらも僕は聞いてみることにする。
「どこかのお金持ちの方が、悪霊を使って世界を破滅させようとしているんです!」
「はあ? どこからそんな荒唐無稽な話が……」
僕は一瞬唖然としてしまった。
「お姉さま、そこの雑誌をご覧になってください! 楓さんに手伝ってもらったんですけど、そこにその話が……」
「どれどれ?」
僕はその雑誌「週刊モーゲン」をめくってみた。
「……なになに? 『昔愛する人を待ち続けていたが、会えずに死んでしまった少女が、この世の生者を呪う悪霊となった。
とある大財閥の御曹司が、この悪霊を目覚めさせ、その怨念を利用して、この世界の全てを支配すべく動き出した模様。
詳細については、わかり次第順次詳しく説明していきたいと思う』……なんかどこかの漫画かゲームのストーリーみたいだね」
僕は苦笑してしまった。
「お姉さま、信じておられないんですか?」
一子ちゃんは、きょとんとして聞き返す。
「信じるも何も、現実性があまりないじゃない。ああ、でもこの悪霊って、愛する人を待ち続けて会えずに
死んでしまったってとこと、大財閥の御曹司が目覚めさせたってとこだけは、一子ちゃんと同じだね」
「そういえば……でもお姉さま、私は別に生きてる方々を呪ったりなんてしませんよ!」
ムキになる一子ちゃん。
「誰もそんなこと言ってないじゃ……あ、電話だ! ちょっと待って」
僕は一子ちゃんに断って電話を取った。
「はい、鏑木です」
「瑞穂ちゃん! ヤッホー! 元気してる?」
電話の向こうからまりやのハイテンションな声が聞こえてくる。
「まりや……僕は元気だって。今も一子ちゃんと雑誌について話してたとこ」
「雑誌? 何読んでたの?」
僕はまりやに読んでいた雑誌の内容を話した。
「ねえ……思うんだけど、その悪霊って、一子ちゃんのことじゃないの?」
「えっ!?」
「そんなーっ!! まりやさんひどいですよ! 私は今生きてる人を呪ったりなんてしてません!」
僕が戸惑っていると、電話を聞いていた一子ちゃんが割り込んでくる。
「一子ちゃん、落ち着きなって。あたしはもちろんそんなこと思ってないけどさ、でも瑞穂ちゃんの言うとおり、
一子ちゃんと状況が同じなとこがいくつもあるんでしょ?」
「あ、はい……」
「それに、その週刊モーゲンの出版社の芽良蓼(めらたで)株式会社って、厳島の系列じゃない。
鏑木と犬猿の仲の厳島が鏑木に悪印象を植え付けて潰そうとしてもおかしくはないし、
一子ちゃんのことだって、貴子はその存在も出てきた経緯も知ってるんだから」
確かにそうだけど、でもまりや……。
「まりやさん、いくら貴子さんと仲が悪いからって、偏見しすぎです! 確かに旅館で最初に貴子さんとお会いしたときは
私のこと怖がってましたけど、すぐに誤解が解けて仲良くなりましたし……」
「そうだよ。それに貴子さんが僕を陥れようとするわけないじゃないか! しかもこんな卑劣な手で!」
「貴子はね。でもさ、貴子が家で一子ちゃんのことで独り言を言ってて、それをあいつの親父や兄貴が盗み聞きしてて、
わざとそう貶めるように解釈することならどう?」
僕と一子ちゃんの憤慨に、まりやはそう冷静に説いた。
確かに、その可能性なら十分にありえる……。
「ま、そういうわけだから、瑞穂ちゃんも一子ちゃんも、気をつけたほうがいいよ?」
「うん。そうだね。警告ありがとう」
そして数週間後、事態はまりやの言ったとおりになった。
僕の住む鏑木邸は、毎日毎日悪霊を追い払えだのテロ行為を中止しろだの、例のデマ記事に踊らされた人たちによる
抗議の人だかりでいっぱいだ。
紫苑さんや貴子さんをはじめとする聖央卒業旅行のみんなが一子ちゃんの弁護をしてくれてはいるんだけど、
大人数相手では焼け石に水、紫苑さんや貴子さんの威厳も、デマ記事に煽動されて熱くなった人たちの前では治外法権だった。
「はあ……疲れるな」
「お姉さま、ごめんなさい……私のせいでこんな……」
一子ちゃんも完全に落ち込んでしまって、目にうっすらと涙を浮かべながら僕に謝っている。
「一子ちゃんは何も悪くないよ。悪いのはデマ記事を書いた人たちと、ろくに考えもせずに記事を鵜呑みにして
一子ちゃんを悪霊と決めつけている人たちだよ」
「お姉さま……でも、一子はべつにかまいませんが、お姉さまにまでご迷惑がかかるのは、我慢なりません!」
「……心配しなくても、みんないつかわかってくれるよ」
その“いつか”がいつになるのかは見当もつかないけどね。
そして夏休み。
結局誤解が解けないまま、僕は一子ちゃんと一緒に軽井沢に旅行に出かけていた。
それなりに楽しんで、帰る途中……。
「あいかわらずすごい渋滞だな……帰れるのはいつになるんだろ?」
「いつになるんでしょうね……」
帰省ラッシュや旅行関係の渋滞に巻き込まれ、僕と一子ちゃんはため息をついて車の外を眺めていた。
「でもお姉さま、そんなこと考えてると余計憂鬱になっちゃいますよ? こういう時は外の景色を眺めましょう!
その方がずっと楽しいですし、いい想い出になりますよ?」
「ふふっ、そうだね」
こういう時は一子ちゃんの前向きさ、というかお気楽さに救われるな。
そう思いながら外を眺めていると……。
「あれ? どうしたんだろ?」
右後ろの車の人が、困った顔をしながら何かをしている。
「すみません、何かあったんですか?」
車を降りて聞いてみると、多分親子だろう、男女2人がぐったりしている子供を休めている。
「あ、ああ、この子が急に元気がなくなって倒れたんだよ」
「それで、救急車が来るまで、なんとか少しでも休ませてあげようとしてるのよ」
「大変ですね……それで、救急車は?」
「もう少しで来るはずですけど……」
そう言っていると、僕たちが向かっている先のほうから、サイレンの音が聞こえてきた。
「あ、あれ!」
間もなく救急車が来て、僕たちは安堵した。しかし……。
「病院まで1時間かかる!?」
救急車が来たのはいいけど、渋滞のために病院までそれだけかかるらしかった。
渋滞の具合がひどくて、救急車に道を作ることも出来なさそうだし……。
「そんな……どうすれば」
いつの間にか一子ちゃんも車から降りてきている。もう普通の人間のフリをするのは慣れているので、
全員違和感を感じていないようだ。もっとも、そんなことにまで気が回らないだけかもしれないけど……。
「こんな小さな子が……まだありあまる未来があるはずなのに……」
こればっかりはどうしようもない……そう思っていると……。
「そうだ! お姉さま、私が空から運んでいけば!」
一子ちゃんがそう言う。でも空から運ぶって……。
「一子ちゃん、物はつかめないんじゃなかったっけ?」
「はい! でも、生き物でしたら大丈夫です! 私が救急車に乗っておられる方をつかめば、必然的に救急車も持ち上がります!」
なるほど、その手があったか!
「いい考えね。でも、そちらの方にどうするか聞いてみないと」
子供の両親に聞いてみた。
「どうしますか?」
「お願いします! 少しでも可能性があるなら……」
「そうね。少しでもこの子が助かる方に賭けましょう!」
「はい! この高島一子、幽霊の誇りにかけて、見事この子を病院まで搬送させていただきます!」
一子ちゃんはそう言うや、救急隊員の手を通じて救急車を持ち上げる。
「一子ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です! この子は、私よりずっと長い人生があるんです! なのに、こんなところで死んではいけないんです!」
一子ちゃんは必死の形相で、あっという間に救急車を運んでいった。
「みんな……どうか無事でいて……」
僕はその間、みんなの無事をただひたすら祈っていた。
「あの、ここからどこの病院に運べばよろしいでしょうか?」
「ああ、佐堀(さぼり)総合病院にお願いするよ」
「……どこですか、そこ?」
救急隊員の答えに、一子は呆然として返す。それはそうだろう。一子はここの地理については何も知らないのだから。
「ああ、そこを右に曲がって少し行くと……」
「あ、看板が見えました! あれですね!」
一子が右手を見ると、大きく「佐堀総合病院」の看板が。急いでそこに救急車を下ろした。のだが……。
「そ、そんな……」
その病院は、受付を終えて閉まりかけていた。中から病院の医者らしい人が出て来る。
「あの、すみません! この子を見てください!」
両親がその先生にお願いする。
「悪いけどもう診察時間は終わったんだ。明日にしてくれないか?」
ところが、その医者はうんざりした顔で冷淡にそう返した。
「この子が大変なんです!」
「大変大変ってみんな言うけど、そういう場合の8割は明日でもいいんだよ」
「そんなこと言わずにお願いします!」
両親はとうとう涙を流した。
「こっちはこれから会食に出かける予定があるんだ。さ、わかったら帰った帰った」
だが、医者はにべもなくそう突き放す。と、そこへ……。
パン!
一子の手が、その医者の頬をたたいた。
「な、何をする!」
「あなたはそれでもお医者さんですか!? 会食とこの子の命と、どっちが大切なんですか!」
一子は本気で怒った顔でその医者を非難する。
「8割は明日でもいい? じゃあ、この子が明日ではダメな2割の患者だったらどうするんですか!」
「………」
医者もそう言われてはすぐには言葉を返せない。
「私は幽霊になってから、死んだらできなくなることを、色々思い知らされました! この子には、私よりもありあまる
未来があるんです。それを守ろうと私は幽霊の特性を生かして、必死でこの子をここまで運んできたんです!」
一子はなおも続ける。
「あなたはそれを踏みにじろうというんですか!? あんまりふざけたこと言ってると、呪っちゃいますよ!」
「この子の言うとおりですよ。会食は次の機会がありますけど、この子の命は、次の機会はないかもしれないんですから」
一子と救急隊員の説得に、医者は慌てて診察に入った。
「ありがとうございます!」
病院に入っていく子供についていく前に、両親は感激の表情で一子に礼を言った。
「いえいえ、お気になさらずに。こちらこそ、お役に立てて嬉しいです」
後には、救急車と幽霊だけが残された。
「もう、あの子は大丈夫ですよね」
「ああ。あとは医者に任せるだけだ」
胸をなでおろす一子と救急隊員と、そこへ……。
ピーッ!
「……の交差点で玉突き事故が発生!」
無線でそう連絡が聞こえた。
「この近くだ。けど、この渋滞では……」
救急隊員は一子を見る。
「でも、無関係の彼女のこれ以上迷惑は……」
「いいえ、大丈夫です! ことは一刻を争うんでしょう? この高島一子、最後までお手伝いさせていただきます!」
一子は元気いっぱいにそう返した。
「はあ……はあ……はあ……」
その後何回か救急車で急患を運び、一子はぐったりとしながら浮いていた。
「これで終わりですね」
「ああ。おかげで大助かりだよ! ありがとう、高島さん」
と、そこへ……。
パシャパシャパシャ!!
無数のカメラのシャッターを切る音が聞こえた。
「あ、あの……えっと……」
「ふうん……そんなことが……一子ちゃん、お疲れ様」
マスコミの取材をしどろもどろになりながら終えたらしい一子ちゃんは、僕のところに帰って来るなりそのことを話す。。
「でもお姉さま、今日も帰ることは出来ませんでしたね」
「まあ、予想はしてたけどね……」
結局、僕たちは東京に帰ることは出来ず、長野県の県境辺りにあるホテルに泊まっている。
「そうだ! 渋滞の合間を縫って、お店で一子ちゃんの好きな食べ物をいろいろ買ってきてあげたから、
後で僕に取り憑いて食べればいいよ。いちご大福もちゃんとあるから」
「お姉さま、よろしいんですか?」
途端に一子ちゃんは元気になって答える。現金だな……。
「うん。頑張って大勢の人を助けてくれたごほうび」
「あ、ありがとうございます! この高島一子、それだけで生き返る想いです!」
……いや、生き返ることはないと思うけどね。
そして、翌日……。
「一子ちゃん、起きて!」
「うにー……」
僕の隣で寝ていた一子ちゃんを、起こした。どうしても伝えたいことがあったから。
「一子ちゃん、一子ちゃんったら!」
「ふみゅ? あ、お姉さま、おはようございます……」
「おはよう、一子ちゃん、見て、この新聞」
僕は興奮しながら新聞の見せたいところを一子ちゃんの前に見せる。
「えっと……『県内で玉突き事故。奇跡の死者ゼロ』よかった。みんな助かったんですね」
一子ちゃんは心底嬉しそうに安堵の笑顔を見せる。でも、僕が見せたいのは……。
「一子ちゃん、その下」
「え? 『おてがら幽霊、高島一子さん』……もう、お姉さま、照れちゃいますよ」
その後、一子ちゃんはしばらくくすぐったそうに身悶えしていた。
そして東京に帰ると、事態は一変していた。
一子ちゃんが大勢の人を助けた事が話題になり、週刊モーゲンの記事がデタラメだとわかってくれたみたいで、
僕の家には、謝罪の手紙がいっぱい来ていた。
「お姉さま、誤解が解けてよかったですね」
「そうだね。一子ちゃんのおかげだよ。あの時、一子ちゃんは悪霊から救いの神に、ゴーストからゴッドになったんだよ」
ちなみに芽良蓼出版はまだ誤りを認めようとはせず、今度は僕が聖央に女装して潜入し、
大勢の女の子をレイプしようとしていたという記事を載せたが、それでますます信用をなくして、
その出版社の本はまったく売れなくなり、ほどなくして倒産した。
余談だけど、その波紋は厳島にまで広がり、僕と貴子さんはその期に乗じて
紫苑さんと貴子さんのお兄さんの婚約を破談に追い込むことに成功した。
それから数ヵ月後……。
「お姉さま、ついに成仏する方法がわかりました!」
「ホントに?」
一子ちゃんが朗報を僕に教えてくる。
「ええ。未来が欲しいって、そう思えばよかったんです」
そっか。一子ちゃんは成仏しちゃうのか。これから寂しくなるな。
「あ、でもでも、その前に、ひとつだけこの世に未練が……」
「なに?」
僕は聞いてみる。一子ちゃんの未練ってなんだろ? 僕に解決できることなら、力になってあげたいし……。
「お姉さまのお嫁さんですよ!」
「えっ!?」
そのお願いなら、一子ちゃんが出てきた日に叶えたと思うけど……。
「一子は幽霊ですから、本当のお嫁さんになることは出来ません……ですから、お姉さまと生涯をともにしてくださる方が
見つからないと、安心して成仏できないんですよ! 聖央にも、お姉さまを愛していらっしゃる方は何人もいらっしゃいますし……」
「そっか……」
僕たち、もしかしたら生まれてくるタイミングを間違えたのかもね。
「大丈夫だよ、一子ちゃん。必ず見つけるから」
一子ちゃんのためにも、必ずその人を選ぼう……僕は、改めてそう強く決意したのだった。
Fin
以上で終わりです。
ふう……これで、本当に一子ちゃんを含めて、全てのルートの作品が……。
出来はともかく、一応書くことができました。
L鍋さんの作品も今週中、あるいは来週中にも拝読できそうですし、本当に楽しみです。
>>160 >8月中には無理でした。
新しい作品が奏ちゃんのなのかどうなのかは存じませんが、聖誕祭記念SSを書く時は、
完成までの時間を逆算して書き始めるといいと思いますよ。
それでは、これで失礼します。
オチが面白かった
おつかれさまでした<(_ _)>
179 :
名無しさん@初回限定:2007/09/12(水) 21:30:37 ID:MYyiGHEO0
タイトル見たら恐竜漫画かいてる人が昔他社で書いていた作品思い出した、ただそれだけ
まだ全部書きあがっていないのですが、50KB超えました。
ですので、話を分割して書き直しすることにしました。
とりあえず、投下できるものから。
ご注意
かなりバカ話です。
キャライメージを損なう可能性がありますので、
シリアス派の方はご遠慮いただいたほうが賢明かも。
『心象風景』
〜私の家のルールでは役満ですわ編〜
***********************
恵泉火力大全@
ツンデレ級戦車 タカコ
主砲 会長キャノン
副砲 豆鉄砲
その他 君枝型索敵レーダー装備
学院内の治安維持のために巡回する装甲車両
対地戦闘に於いて戦闘力抜群
天敵は飛行兵器
会長キャノンは水平方向に於いて威力を発揮
高角度に向けると威力が半減する
対空兵器との併用が望ましい
************************
設定は貴子ルート・貴子視点
2月のある日、生徒会室にて貴子はいつもの生徒会3人組と雑談していた。
以前の貴子は、生徒会室ではいつもピリピリしていて、雑談など考えられなかったが、
最近の貴子はとても柔らかで時折、冗談も云ったりもする。
生徒会のメンバーたちはその変化を好ましいものだと歓迎していた。
駅前にある喫茶店[プラチナ]
その店のメニュー、[レジェンド・ツリー・パフェ]を店内の一番奥の席で食べさせ合いをしたカップルは、
末永く深い愛で結ばれるという…
雑談時、可奈子が現在、学院内で流行っているそんな恋愛の噂話を披露した。
「その話は私も聞いたことがあります」
君枝もその話を知っていた。
「い〜なぁ〜。伝説素敵〜。私もパフェ食べた〜い。ね〜葉子さ〜ん」
可奈子が羨ましそうに云うのに対し、葉子が
「可奈子には相手がいないわね。だから無理」
と、いつものようにクールに返している。
「会長〜、ご存知でしたか〜この話〜」
可奈子が貴子に尋ねる。
「勿論です」
(勿論、知りませんでしたわ)
「さすがは会長。なんでもご存知です」
君枝が褒めそやす。貴子のことなら何でも褒めるのだ。
(そんなジンクスが流行ってるんですか…)
貴子の脳裏に瑞穂と一緒にパフェを食べる自分の姿が思い浮かぶ。
「どうですか〜会長〜?」
「何がですか」
「行ってみたら如何ですかぁ〜お姉さまと〜」
「……!!」
一瞬にしてかあっと貴子の頬が赤くなる。
「ななな、何を…」
「それは良いですね。会長とお姉さまでしたら凄く絵になりますし」
「君枝さん、何を云ってるんですか。私とお姉さまはそんな間柄ではありません」
心にも無い事を真っ赤な顔で云う貴子を、可奈子たち3人が笑いながら見つめている。
「ノンノン、会長〜。今更そんなこと云っても〜。デートは楽しかったですか〜」
「デ、デートだなんてそんなこと…。ただ、お姉さまとふたりで出かけて、食事しただけです」
あの日、ラーメンを食べた後、瑞穂の部屋に行った。
「それを〜世間では〜デートと云うのですよ〜」
可奈子が楽しそうに云うのを、葉子が窘める。
「こら可奈子。そんなことを云っては会長を追い詰めてしまうでしょ」
窘めてはいなかった。
「会長。私も可奈子の云うように、お姉さまをお誘いして行かれれば良いと思うのですが」
「葉子さんまで…。私はそのようなジンクスなど信じませんし、信用しておりません」
「ですが、ジンクスと云うものは心の持ちようであって、願い事が叶うというものではないと思うのです。
その事をすることによって、無意識にでも願い事を成就させようと云う気持ちが働く、結果として希望通りのことになる…
そう云うものではないでしょうか。ですから神頼みのように考えずに、お姉さまといらっしゃれば良いと思いますが」
(確かにその通りですわね)
葉子の意見に深く感心する貴子だが、性格ゆえかつい正反対のことを云ってしまう。
「…ですが下校中に寄り道して喫茶店に入るのは、風紀上好ましくありませんわね」
(すぐに瑞穂さんを誘ってみましょう)
心の中で思っているのとは反対に、かたい言葉で否定してみる。
「それは…まあ…」
貴子にこういう風に、四角張ったことを云われれば、葉子たちも鼻白んで返す言葉も無くなってしまう。
「では、今日は私はこれで失礼させていただきます。用事がありますので」
(ふふふ♪瑞穂さ〜ん)
どうやら現在の貴子は、性格が柔らかくなったどころかゆるゆるのようである。
残念な様子の3人に言葉をかけて貴子は席を立った。
「「「お疲れ様でした」」」
生徒会室を出ると、そのまま3-Aの教室に向かう。
(瑞穂さん、まだいらっしゃるでしょうか)
もし既に下校しているようなら、寮に立ち寄ってみるつもりの貴子。
教室の前でまりやと鉢合わせする。
「あら、貴子。何の用かしら」
(なんでこの人は、いつも肝心なときに私の前に現れるのでしょうか。どこかで見張ってるのでしょうか)
「まりやさんに用などありませんわ。お姉さまに会いにきたのです」
「わざわざ他所のクラスにまで押しかけてくるとは…。会長を引退して暇なのね〜」
「貴女も他所のクラスでしょう」
「ええ。あたしも暇だから」
(相変わらず考えなしにしゃべる人ですわね)
構わず教室に入ろうとすると、
「瑞穂ちゃんは帰ったわよ」
「えっ、本当ですか」
「なんか用事があるとか云って今日は、実家のほうに戻って行ったわよ」
ガックリうなだれる貴子。
そのまま、回れ右をしようとした時、教室のドアが開いて中から瑞穂が現れた。
「あ、貴子さん。今、生徒会室へ行こうと思ってたんです」
ギロリと貴子はまりやを睨みつける。
「には〜☆惜しい」
全く悪びれた様子も無い笑顔のまりや。
「一体どういうつもりですの?」
(私が瑞穂さんとお付き合いをすることは、まりやさんも了承済みだったはず。嫌がらせをするなんて今になってやっぱりダメ…とか)
まりやはポリポリ頭をかきながら、
「いやあ〜退屈だったから、つい」
「何ですか、それ!?」
まりやの理由にもなっていない返事に、つい大声を出してしまう。
「ん?まりやが何かしたの?」
瑞穂がきょとんとした顔で尋ねる。
「…いえ、なんでもありません。ただ、まりやさんの行動を真面目に考えるとこちらの精神が磨り減るということを
改めて認識しただけですわ。ところで瑞穂さん。生徒会室へ何の御用でしたか?」
「貴子さんを迎えにいこうと思いまして」
貴子にニッコリと微笑みかける瑞穂。
「もし生徒会の仕事がもう無いのでしたら、一緒に帰りませんか?」
たちまち、貴子の鼻の奥が熱くなってくる。
(わんだほ〜!びゅーてぃほ〜!みずほさ〜ん!!)
もう貴子の脳裏では脳内物質鼓笛隊が大合唱を始めている。
瑞穂の端正な笑顔を見るだけで、一日の疲れがリセットされる。
さらに自分に対して優しい言葉をかけてもらって、つい数秒前の不愉快な出来事も一瞬で吹き飛んでしまっている。
「そ、そうですわね。まだ仕事はあるんですが、せっかくのお誘いですし本日はこれで下校することに致しましょうか」
横でニヤニヤ笑いで見つめているまりやの視線を感じながら、そう返事を返す。
「それでは行きましょうか」
瑞穂と貴子が並んで歩き出す。
その後ろから、まりやもついて来た。
貴子は後ろを振り返り、まりやを見て云う。
「まりやさん、ついてくる気ですの?」
「あたしも帰るトコなのよ」
「そうですか。ではお先にどうぞ」
「え〜、あたしも一緒じゃダメなの?それとも、二人っきりになりたいのかな〜」
不満顔のまりやがからかうような口調で云った。
(どうして、この人はいつもいつもこうなんでしょうか。悪気がないのか、それともあるのか…)
勝手にどうぞ、と貴子が云いかけたとき、瑞穂がニッコリ笑って云った。
「ええ、そうなの。私は貴子さんと二人っきりで帰りたいの。ごめんなさいね、まりやさん」
そこは校舎玄関前。辺りには数人の生徒たちがいる。
皆、瑞穂の言葉にシーンとなった。まりやも息を呑んでいる。
(瑞穂さんがこんなにキッパリと云うなんて…)
まりやは直ぐに、仕方ないなあという風に苦笑いして、
「参ったわね。判ったわ、先に帰ってるわね」
そう云うと一足先に、校舎を出て行ってしまった。
「さあ、私たちも行きましょう」
瑞穂の言葉に、貴子が慌ててウンウンと頷いた。
下校すると云っても、瑞穂は学院敷地内の寮に住んでいる。
貴子と一緒に下校するときには、駅まで送ってくれるがそれでも、たいした距離ではない。
「さ、先ほどは驚きましたわ。瑞穂さんが他の人がいらっしゃる場所であんなことをおっしゃるなんて」
「ふふ。そうですね。失敗だったかも。まりやが何か貴子さんに悪戯したようだったのでちょっと、強めに云ってしまいました。
明日、もしかしたら噂になっているかもしれません。貴子さんにも迷惑をかけてしまいますね」
迷惑だなんてとんでもない。寧ろ逆。貴子の心は嬉しさで満ち満ちている。
幸せのラッパが吹き荒れている。
「いえ、瑞穂さんが悪いのではありません。気にしないでください」
冷静さを装って、さも大したことが無いような口調で返事をするが、本当はそれどころではなく、そこら辺を転げまわって、
嬉しさを表現したい、瑞穂がまりやに対して自分を大切にしているような言葉を口にしてくれたことに喜びを表したいと
思っている。
しかし、気恥ずかしさとプライドが邪魔をする。
例え、瑞穂と二人きりになったとしてもくだけた口調で話をすることが出来ない。
(私は瑞穂さんの彼女なのに)
学院内では瑞穂のことを『お姉さま』と呼んでいる。
幼い頃からの性分で貴子は人の視線を意識してしまう。
大分柔らかな物腰になったと云われてはいるが学院内では、瑞穂にベタベタと狎れた態度を見せることは決してない。
「ん?貴子さん、どうかしましたか」
貴子の微妙に落ち込んだ表情を見て、瑞穂が尋ねた。
(瑞穂さんは鈍感かと思いきや時々、妙に鋭くなりますわね)
「何でもありませんわ」
云おうとして云い出せない話題がある。
貴子の性格では相当に難しい。会話も途切れがちで、必死に頭を捻って考え込んでいる貴子を見て、瑞穂が声をかけた。
「貴子さん。手を握って良いですか?」
「は?」
一瞬、ぽかんとする貴子。
「貴子さんと手を繋ぎたいんです。ダメでしょうか?」
「い、い、いいえ。ダメなんて、そんな」
「それじゃ」
瑞穂は貴子の右手を取って、ぎゅっと握り締めた。
ボッと顔が赤くなる貴子。瑞穂と一緒にいると、年がら年中血が上っているようだ。
(このまま行くと早晩、死んでしまいますわね)
失神しなくなっただけまだ、マシである。
「貴子さん、何か話したいことがあるんじゃないんですか?」
手を繋いで歩きながら、再び瑞穂が尋ねてきた。
繋いだ手から勇気が湧いてくる気がする。
「大した事ではないのですけれど…こんな噂話を聞きまして…」
そう前置きをして、先ほど可奈子から聞いた話をする。
……かくかくしかじか……
「…という事なんですのよ」
……チラ
瑞穂の顔を横目で観察する。
特に何の変化もない。
「そんなこと、あるわけ無いですわ!馬鹿馬鹿しい」
……チラ
反応なし。
「下校途中で寄り道なんて風潮は歓迎できませんしね!!」
……チラ
反応なし。
(くうぅぅ、瑞穂さんったら!さっきまでとはうって変わっていきなり鈍感モードですわね)
「貴子さんは信じていないのですね」
(瑞穂さんと一緒にそのパフェ、50杯くらい食べたいですわ!)
「ええ。私、そういった類はあまり信じていませんの」
「……そうですか」
(馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿…私の馬鹿!瑞穂さんが白けてしまっているじゃありませんか!信じていないですって!?
なら何で、こんな話をしたんですか!本当に私は大馬鹿ですわ!瑞穂さんもそこで終わりはないでしょう!
もう一押し何かあっても良いんじゃありませんの!)
貴子がぶつぶつと自分を呪っている間に、寮の近くまで歩いてきていた。
「貴子さん、ちょっと寮によって行きませんか?」
「はあ、良いですが…」
寮に入ると、リビングで先に帰っていたまりやが、奏と由佳里を相手にお茶を飲んでいた。
「お帰り、瑞穂ちゃん。あら、貴子もいるの?」
「こんにちはなのです。会長さん」
「お邪魔します。奏さん、上岡さん」
「おや、あたしには挨拶がないの?」
「貴女とはさっき会ったばかりではありませんか」
「そうだったっけ」
云い合いをしている二人を置いて、瑞穂は着替えて来ると云って部屋に戻っていった。
「生徒会長が寄り道なんてしていて良いのかにゃ〜」
「残念ながら先日、会長職は引退しましたの。それにここは学院の敷地内で寄り道とは云えません」
「むむ、屁理屈が達者だねえ〜」
「屁理屈ではありません」
「お茶をどうぞなのです」
「まあ有難うございます、奏さん。……美味しい!」
「照れるのですよ〜」
そんなことをしている内に着替え終わった瑞穂が2階から降りてきた。
セーターにジーンズ。手には濃い色のコートを持っている。
「お待たせしました。では、行きましょう、貴子さん」
「えっ?」
瑞穂が寄っていけと云うから、貴子は寮で一時間くらい談笑してゆっくりして行くつもりだった。
「行くって…」
「駅までお送りしますよ」
どうやら直ぐに帰れと云われている様である。
(瑞穂さんってば…送ってくださるのは嬉しいですが、何もこんな追い立てるようにしなくても)
顔には出さないが、内心、かなりがっかりする貴子。
「それじゃあ、まりや。貴子さんを駅まで送ってくるね」
「あいよ。いってらっしゃい」
ふたり肩を並べて、駅の近くまでやって来た。
たわいの無い話をして、瑞穂の様子に特に変わった様子は無い。
(瑞穂さんはどうしたのでしょうか?)
駅まで送ってくれるのは、いつもと同じ。
寮に寄って着替えてくる必要など無かったのではないか?
「瑞穂さん、この後、どちらかにお出かけなのですか?」
「…そうですね。これから行くつもりです」
「???」
駅前のローターリーをいつもとは反対方向に回っていく。
「あの、瑞穂さん?駅とは反対方向ですわ」
「いいえ、これで良いんですよ。ほら」
そう云って、瑞穂が前方のお店を指差した。
喫茶店[プラチナ]
「さっきの話で、是非、噂の[レジェンド・ツリー・パフェ]を食べてみたくなりました。貴子さんと一緒に」
「・・・・・・・・・」
「学校帰りの寄り道は良くないですから、ほら、服は着替えてきましたよ。貴子さんは申し訳ありませんが、私のこのコートを
着てください」
そう云って手に持っていた長めのコートを貴子に羽織らせた。
「これで制服はほとんど隠れました。これで大目に見てくださいね、生徒会長さん?」
ニッコリ笑う瑞穂の顔にしばし見とれる貴子。
「・・・・・・・・・」
「あの、貴子さん?」
「・・・・・・・・・」
呆けている貴子の顔の前で手をヒラヒラさせてみる。
反応なし。
「もしも〜し!貴子さ〜ん!」
その頃、貴子の心の中では……大騒ぎになっていた。
例えて云えば、阿波踊りと牛追い祭りが一緒になったような・・・。
ダメだと思っていた喫茶店が瑞穂から誘ってもらえたのは麻雀で云えば、
(ロンですわ。瑞穂さん、役満『加賀百万石』です!)
(た、貴子さん。『加賀百万石』は役満ではありませんよ。ただのチンイツです)
(ええっ!そんな…私の家では…今までずっと…)
(…良いですよ、貴子さん。役満にしましょう。今日から私の家でも『加賀百万石』と『大車輪』は役満にします)
(瑞穂さん!!)
こんな感じだった。
「貴子さ〜ん」
瑞穂からの呼びかけに、ハッと我に返る貴子。
「…あ、そ、そうですか。仕方ありません。瑞穂さんが食べたいとおっしゃるのでしたらお付き合いさせていただきますわ」
そんなツンデレくさい言葉で返してしまうが、脳みそは阿波踊りの音楽にあわせて牛を追いまくっている。
「ええ。有難う、貴子さん」
ニコニコと笑いながら礼を云う、心の広い瑞穂。
早速、二人連れ立って喫茶店の前まで足を運ぶ。
と、入り口前で3人連れとばったり出くわす。
「あら、あんた達、帰らずに寄り道してるの?」
それは、奏、由佳里を引き連れたまりやだった。
(まりやさん!!)
「な、何故ここに!?」
「いや〜、この店のパフェがいま噂じゃない。ちょっと食べてみようと思ってね」
「でも先ほど寮で別れたときには何も…。それに貴女、私たちより後に出たはずなのにどうして先にここに着いているんですか!?」
「なにケンカ腰に云ってるのよ。偶然でしょ、ぐ・う・ぜ・ん!あんたたちの歩きが遅いから追い越したんでしょ」
まりやはそう云いながら、目ににや〜とした笑いを浮かべた。
その目を見た瞬間、
・・・・・・ウウゥゥゥーーーーー
貴子の脳裏で、空襲警報のサイレンが鳴り響く。
伊達にまりやと長年、ケンカしてきているわけじゃない。
もとより、まりやの言葉を信じていない。
(この…、私と瑞穂さんのデートを邪魔するつもりですのね)
「貴子ぉ、あんた、寄り道なんてしていいのぉ」
まりやの姿が、平和な街に突如飛来した不吉な重爆撃機のように感じられる。
(どうしてここに立ち寄ることを知ったのでしょう?私も先ほど瑞穂さんに云われるまで知らなかったのに)
「瑞穂さんがどうしてもと云われるから…良いのです!」
「ほほう、自分の意思ではないと?」
「……ええ」
いやらしいまりやの突っ込みに歯軋りして答える貴子。
(私ってば、私てっば…申し訳ありません、瑞穂さん…)
瑞穂は貴子をかばう様に、援護射撃。
「そうよ、まりや。私が貴子さんを誘ったの」
高射砲『みずほ』威嚇射撃!
「ふ〜ん」
効果あり!まりや方向修正!
「まあいいわ。さっさと入りましょ」
みんなしてゾロゾロと店内に入っていく。
「何名さまですか?」
ウェイトレスが人数を尋ねた。
「5人です」
まりやが当たり前のように答える。
(私たちと一緒のテーブルに座る気ですか!?)
ジンクスでは店の奥のテーブルで、二人でイチャイチャしながらパフェを食べることになっている。
はっきり云って、まりやたちは邪魔だ。
「ちょっと、まりやさん!何で一緒のテーブルなんですか?」
「あら良いじゃない。みんなで食べたほうが楽しいし。それとも、別の目的があって、あたしたちが邪魔だとでも?」
(くぅ〜間違いありませんわ。まりやさん、わかっててやってらっしゃいますわね。私のせっかくの役満をチンイツ扱いにしようと
してますわね)
「何もみんな一緒のテーブルでなくても宜しいんじゃなくて?まりやさんも最初は、3人で食べるつもりでいらしたんでしょ?」
それを聞いて、まりやの横にいた由佳里が
「あ、あたしは…みんなで一緒にたべたいな…と…思うのですけど…」
続いて奏も、
「お姉さまや会長さんと一緒に食べるときっと美味しく感じるのですよ〜」
ふたりともやや気まずそうに云う。
その二人の真ん中で勝ち誇ったような表情のまりや。
「………」
貴子の対空砲、届かず!
「じゃ、そういうことで。瑞穂ちゃ〜ん、パフェ食べさせあいっこしようね〜」
チンイツどころかチョンボにされてしまったようだ。
(罰符ね、貴子)
そんなまりやの声を聞いたような気がした。
敵爆撃機、本土上空に侵入。
「ダメよ、まりや」
高射砲『みずほ』が火を噴いた。
「今日は私が強引に貴子さんを誘ったの。二人でデートしたくてね。だから今日はダメ」
「………」
命中!
「奏ちゃん、由佳里ちゃん、御免ね。今日だけはわがままを許してちょうだい?」
「…え、いいえ、いいのですよ〜。奏はいつもお姉さまと一緒ですし〜。今日は会長さんと一緒にいてあげて下さいなのです」
「そ、そうです。あたしも奏ちゃんもまた今度でいいです」
瑞穂の言葉に二つの小型爆弾も慌てて沈静化した。
(ナイス!わんだほ〜!瑞穂さん!)
全く本日の瑞穂は頼りになる。まりやの爆撃をことごとく退けてくれる。
まりやは悔しそうな表情を隠そうともせず、貴子を睨みつけている。
貴子はそんなまりやに対して、鼻高々な晴れやかな表情を見せつけた。
(ふふん。先ほどから喫茶店に先回りしたり寮の妹さんたちを使ったり、姑息な手を使ってますが無駄ですわよ。
やっぱり役満判定は覆りませんわ)
そんな貴子の表情を読み取ったのか、まりやは今にも暴発して暴れだしそうである。
しかし、深呼吸してかろうじて気を静めたのか、引きつったような笑みを浮かべて何とか収まった。
「そうね。瑞穂ちゃんがそう云うなら今日は別々にしときましょうか」
ギリギリと音がする。
どうやらまりやが歯を食いしばっているらしい。
貴子のこめかみに、一筋の汗が滴り落ちる。
脳裏の空襲警報はまだ鳴り止んでいない。
長年の付き合いで熟知しているまりやの性格。
この程度で引き下がるわけが無く、逆に闘争心を燃え上がらせているはず。
(まだ油断できませんわね。この人、まだまだヤル気ですわ)
まりやたちは入り口近くのテーブルに座り、瑞穂たちは店内一番奥のテーブルに向かい合わせで座った。
瑞穂が奥のテーブルをリクエストしたとき、ウェイトレスは瑞穂と貴子を見比べて一瞬、まあ!という風に大きく目を見開いたが、
直ぐにニッコリ微笑むとテーブルに案内した。
「ご注文は?」
「レジェンド・ツリー・パフェをひとつ。…で良いですよね、貴子さん」
顔を真っ赤にしてコックリ頷く貴子。
この期に及んで余計なことを云う必要は全く無い。ただ感動で打ち震えているのみだ。
(思えば苦難の道のりだった…)
余韻に浸りながら、店内を見渡す貴子。
障害の原因であるまりやは、遠く入り口近くのテーブルにいる。
そのまりやの手持ち武器ともいえる妹二人は、先ほど瑞穂に釘を差されている。
油断は出来ないが、危機は去ったのではないか、もうちょっかいは出してこないのでは…と思える。
(ふう〜、やれやれですわ)
コップの水を飲みかける貴子の目に信じられないものが映った!
・・・喫茶店のドアの外に紫苑がいた。
ゴクゴクゴクゴクゴクッッ!!!
驚きで全開してしまった食道にストレートにコップの水が流れ込んだ。
「ち、ちょっと!貴子さん!どうしたんですか!1秒で飲み干しましたよ!大丈夫ですか!」
「ゴホッ!ゴホッゴホッ!」
(だだ…大丈夫なわけありません)
むせてのた打ち回る貴子。
瑞穂が慌てて背中をさする。
鼻から水が出てきた。
(し、死ぬかと思いましたわ)
ウェイトレスがとんできて、むせて涙目になった貴子にナプキンを差し出した。
そして、テーブルを拭いてグラスに水を注いで去っていく。
その間、貴子は瑞穂の問いかけにも答える暇も無く涙目でドアの外を凝視していた。
(紫苑さまはまりやさんの爆撃とは比べ物になりません!空の要塞ギガントですわ!)
紫苑はなにやら、ドアの外でキョロキョロと辺りを見回していた。
どうも、この喫茶店に来たようでは無さそうだった。
そして、そのまま喫茶店の前から立ち去っていった。
ホッと息をつく貴子。
しかし、3秒後、またしても店の前に姿を現した紫苑。
立ち去ったのではなかったようだ。
紫苑が店のドアをじっと見つめた。
ドアのガラスは薄いスモーク色がかけられていて、店内から外は良く見えるが、外から中は見えないようになっていた。
それでも、ドアを凝視していた貴子は、紫苑と目が合ったような気がして咄嗟に目をそらした。
(落ち着いて!……大丈夫、大丈夫。見えている訳じゃないんですから)
右手を自分の胸にあて、呼吸を整える。
(この店に来ると決まったわけではありませんわ…)
・・・そんな貴子の様子を瑞穂が不安そうに見ていた・・・
「貴子さん、大丈夫ですか?」
貴子にはそんな瑞穂の声も聞こえていない。
恐る恐るドアの方に目を向ける貴子。
・・・紫苑がドアの外から中を凝視していた。
「ヒッ・・・イィィィ・・・」
思わず仰け反る貴子。
「あの…もしもし?…貴子さん?…」
外からは見えていないのは判っている。
だが、目が合ったような錯覚に思わず声を出してしまった。
(ななな何をしていらっしゃるのでしょうか、紫苑さま…。まさか…入ってこようとしているのでは…)
・・・じっとドアを紫苑が見つめている。
(寄り道はダメ!寄り道はダメ!寄り道はダメ!寄り道はダメ!寄り道はダメ!寄り道はダメ!……)
手を組み紫苑に念力を送る貴子。
・・・紫苑は店の看板を眺めて、首をかしげて考え込んでいる。
(寄り道はダメ!寄り道はダメ!寄り道はダメ!寄り道はダメ!ダメったらダメダメダメ!・・・・・・)
貴子の額からは汗が噴き出し、目を血走らせ唇が細かに震えて微かに声が漏れ出している。
精神的に色んなものを燃焼させさらに念力を高める。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・貴子さん・・・・・・」
一心不乱に祈り続ける貴子。
やがて紫苑は、くるりときびすを返すとそのまま駅のほうに立ち去ってしまった。
(……か、勝ちました。わ、私の祈りが勝ちましたわ!)
やりましたわ、瑞穂さんとばかりに顔を向けると、青い顔でドン引きした眼差しで見つめる瑞穂の顔がそこに在った。
「………」
「………」
お互い無言。
かなり気まずい雰囲気。
コホンと軽く咳払いをすると、貴子は顔の前で手を組み合わせ目を瞑った。
「・・・・・と云うことを感謝させたまえ、アーメン」
「なんですか、それ!?なんのお祈りですか!?と云うか明らかに後付けですよね、それ!?」
答えようも無いので、瑞穂の突っ込みは華麗にスルーすることにする貴子。
ともあれ、ギガントの脅威は去った。
落ち着いて水を飲もうと、貴子はコップを持ち上げた。
「パフェはまだ来ないのでしょうか?」
そんなことを云いながらコップに口をつける。
入り口近くに座っていたまりやが立ち上がり、ドアから外に出て行った。
そして大声で叫んでいるのが聞こえた。
「紫苑さまー!こっちこっち!!」
ブウゥゥゥゥゥゥーーーッ!!!!
おもいっきり水を噴き出す貴子。
「ゴホッ!ゴホッゴホッ!」
(ああああの…あのひとはぁぁぁ!!!!)
むせて涙目になる貴子。
鼻から水が出てきた。
ウェイトレスがとんできて、貴子にナプキンを渡す。
(あの人、よりによって紫苑さまを…禁断の力に手を出すとは本当になりふり構わず邪魔するつもりですわね…)
瑞穂は紫苑に対しても、上手く迎撃が出来るのか?と貴子は瑞穂の顔を見る。
なぜか瑞穂がずぶ濡れになっていた。
「・・・・・・どうして水をかぶっているんです、瑞穂さん?」
「・・・・・・いや、もう、どうでもいいです・・・・・・」
ウェイトレスが瑞穂とテーブルを拭いて、コップに水を注いで去っていく。
「瑞穂さん、お願いいたしますね」
「何がですか?」
もちろん高射砲のことである。
まりやがホクホク顔で店に帰ってきた。
・・・紫苑襲来。
瑞穂が座ってる席は、入り口に背を向けている為、今、誰が入店してきたのか判っていない。
まりやが貴子たちのテーブルを指差しながら、何か紫苑に話している。
奏や由佳里たちは何だか複雑な表情。
紫苑が来たことの喜びと瑞穂と貴子への同情が半分ずつといったところだろうか。
貴子はもう既に半分以上諦めている。
(紫苑さまがいらっしゃれば、瑞穂さんでもどうしようも無いでしょうね。実際のところ・・・)
紫苑のパワーは、役満だチョンボだというレベルでなく卓ごとひっくり返してしまう。
それだけにわざわざ、紫苑を店に引っ張り込んだまりやに途轍もなく腹が立ってくる。
(どうしてそこまで邪魔したがるのでしょうか…)
まりやが何か云うのに対して、紫苑が首を振っている。
(あら、何か揉めているようですわ)
紫苑がまりやと由佳里たちに、二言、三言、何かを云うとまりやがなんだか慌て始めている。
やがて、その場にガックリとまりやは膝をついた。
何が起こっているのか…
(…ど、どうしたんでしょうか)
何が起こっているのか気になってしょうがない。
どうやら自爆したようであるが・・・
やがて、紫苑は貴子のほうを向いてニッコリと微笑んだ。
(!!!)
貴子と目が合ったが、紫苑は近寄ってこず、ニコニコ笑いながらただ口の動きだけで、
『ごゆっくり』
そう云った。
そして、奏の手を引いて店を出て行く。
由佳里も後に続いて出て行こうとしたが、まりやに襟首を掴まれて引き止められていた。
(……紫苑さま)
「貴子さ〜ん。帰ってきてくださ〜い」
先ほどからまりやたちの方へ意識を集中させていた貴子に、瑞穂がまた必死に呼びかけていた。
「…はっ!ご御免なさい、瑞穂さん」
「やっと帰ってきてくれました。一体さっきからどうしたんですか」
「その…」
瑞穂が後ろを振り向いた。
勿論、紫苑はもういない。
入り口近くのテーブルにはまりやと由佳里がうつろな目をして座っている。
「あら、奏ちゃんはどうしたのかな?」
「お待たせいたしました」
レジェンド・ツリー・パフェが到着した。
デカい!
二人前以上ありそうである。
スプーンが二つ。
(なるほど、カップル仕様ですのね)
まりやたちのテーブルにも注文品が届いていた。
レジェンド・ツリー・パフェが二つ、ジュースが三つ…
まりやと由佳里が青い顔して、呆然とパフェを見つめている。
「確か食べさせあいをするんだったっけ」
瑞穂が嬉しそうにクリームをスプーンで掬って、貴子の口元に差し出した。
「はい、貴子さん。あ〜ん」
(み瑞穂さん!そんな…いきなり…うれしい!)
貴子の顔が真っ赤になる。
頭に凄まじい勢いで血が上る。
鼻の奥が熱くなり、気が遠くなりそうになるがそれを必死に堪える。
(ダメです、耐えるのです。私はもう失神したりしませんわ。これを食べずして今日、何のための苦労ですかっ!)
あ〜ん、パクッ!
瑞穂のスプーンにパクついた貴子。
そしてその表情に恐らく心からの笑顔が、生まれてきてから最高とも思える至高の表情が自然と浮かび上がった。
次の瞬間…
・・・・・・ブゥゥゥゥーーーーーーーーー!!!!
鼻から夥しい真っ赤な液体が噴出!
テーブルが一瞬で血の池地獄と化した。
その光景に凍りつく瑞穂と周りの客。
貴子は…失神していなかった。
見上げた根性である。
しかし、パフェは血まみれ…。
(こ、こんなことで…。諦めませんわ!)
ジンクスでは食べさせ合いをしたカップルとなっている。
食べさせ合い…
鼻血を滴らせた笑顔のまま、貴子はスプーンで血まみれのパフェを掬った。
そして瑞穂の口元へ運んでいった。
「・・・はい、瑞穂さん、あ〜ん」
「・・・・・・無理です。許してください」
………ジンクス失敗
やがてウェイトレスがやって来て、黙々とテーブルを拭き始めた。
そのころ、入り口近くのテーブルでは…
泣きながらパフェを食べる由佳里、
「まりやお姉さま、無理です、無理!もう入りません」
そして、鬼の形相でもうひとつのパフェを食べるまりや。
「・・・・・・うるさい。黙って喰いなさい!」
「うっ、うぅっ…なんであたしの姉はこんな人なんでしょう…」
「・・・・・・・・・」
〜えぴろーぐ〜
次の日、学院にて
「お姉さま、有難うございました」
休み時間に葉子が瑞穂の所へやって来て礼を云った。
「良いのよ。私も貴子さんと一緒に出かけて楽しかったし」
「ですが、昨日は大変だったと聞きました。私の頼んだことでご迷惑をおかけしました」
昨日の昼休み、葉子が瑞穂の所へやって来て貴子とデートしてくれるように頼んだのだった。
今、噂になっているデートコースを会長に話をするから、と…。
会長にはお姉さまを誘うようにと話をもっていくので是非、と…。
このデートのセッティングは、お世話になった会長への生徒会メンバーからのプレゼントだった。
「全然。楽しかったわ。ある意味、一生記憶に残るくらいのデートだったわよ」
「そう云って頂けると、幾分でも救われた気になります。落ち着かれたらまた是非出かけて、今度はジンクスを
達成させてください。会長のために」
「う〜ん。そうしたいのはやまやまなんだけど、あの店、出入り禁止になっちゃって」
当然のことである。
「ですから今度はまた違うセッティングをお願いしますね。貴子さんが喜ぶようなコースで」
微笑みながらそう云う瑞穂に、感謝の言葉とともに深くお辞儀をする葉子だった。
Fin
お粗末さまでした。
ちょっと長かったかも。
今回のまりやの行動とかは、次の『チンイツ編』で書いています。
ほとんど書きあがっているので、近日中に投下できると思います。
GJ!
喫茶店で読んでいて、水吹きそうになったwww
>一生記憶に残るくらいのデートだったわよ
瑞穂ちゃんヒドスwww
紫苑さまとまりやのやり取りにも期待しています。
207 :
名無しさん@初回限定:2007/09/15(土) 15:37:52 ID:pWzQvwvh0
会長不憫
がんばれ貴子。
瑞穂気合で食ってやれよ
GJ!!
さすがL鍋さんですね
嫁取り合戦に巻き込まれるだけのことはありますww
L鍋さんの紫苑さまにしては珍しく常識人でしたが…w
次の『チンイツ編』への伏線?
今からwktkで待ってます、乙でした!
>>205 >「・・・・・・無理です。許してください」
瑞穂ちゃんでも血塗れのパフェは無理だった、いやまあ当然だけど、やっぱり吹いた。
というか、食べさせる前に鼻血を吹け貴子さん。
>>209 >食べさせる前に鼻血を吹け
……拭け、だよね?
浦島の瑞穂 〜厳○神社縁起〜
今は昔、ある海辺の村に瑞穂という若者がいました。
父と母はとうの昔になくなっていましたが、心優しい立派な若者でした。
ある日、瑞穂が海辺を歩いていると子供たちが騒いでいました。
近寄ってみると子供たちが大きなウミガメをいじめているではありませんか。
「やめなさい。ウミガメがかわいそうじゃないか」
瑞穂がさとすと子供たちはしゅんとして、ウミガメに謝りました。
「ご、ごめんなさい・・・」
瑞穂は素直な子供たちに釣ったばかりの魚をあげて、他の遊びをするように言いました。
声を上げて駆けていく子供たちを見送って、瑞穂はウミガメを波打ち際に運びました。
「元気でね!」
ウミガメは何度も瑞穂の方を振り返り、波の間に消えていきました。
次の日、瑞穂が砂浜を歩いているとだれか呼ぶ声がします。
「瑞穂さん、瑞穂さん。こちらです」
辺りを見回してみても誰もいません。
「瑞穂さん、こちらです。海を見てください」
言われて海の方を見てみると大きなウミガメがいます。
「昨日は助けていただきありがとうございました。お礼に竜宮へお連れします」
「そんなたいしたことじゃないよ」
「いえいえ。どうぞどうぞ。お姫様がたも会いたがっておられます」
ウミガメが砂浜へ上がってきました。
大きな前びれで背中をしきりに指さします。
「瑞穂さん、わたしの背中へ乗ってください。水の中でも息ができますからご心配なく」
「じゃ、じゃあ遠慮なく・・・」
ウミガメは波に乗って沖へ出ました。
「ではもぐりますが、息はできますからあわてないでくださいね」
「うん。ちょっと怖いけどね・・・」
ウミガメはざんぶと波の合間に飛び込んで、海の底までもぐっていきました。
「うわぁ・・・きれいだ」
ウミガメの言ったとおり、ふしぎと海の中でも息ができました。
あたりには赤い大きな珊瑚の林が立ちならび、そのあいだを色とりどりの魚が泳いでいました。
ときおり魚たちがはきだした泡がゆらゆらと七色に光りながら上っていきます。
「瑞穂さん、ほら、あれをご覧なさい」
前を見ると大きくてきれいな宮殿が海の中にたっています。
「あれが竜宮城ですよ」
ウミガメは門番の車海老に挨拶をして中に入っていきました。
竜宮城の中の広場にはトビウオの兵隊が並んでいました。
「お待ちしておりました瑞穂さま」
ウミガメの背中から降りた瑞穂はあまりのもてなしにびっくりしてしまいました。
「え、えと・・・たいしたことをしたわけでもないのに、このようなお招きをいただき・・・」
「いえ。あのウミガメは我が竜宮城の長老。助けていただきありがとうございました」
トビウオの兵隊が両側に分かれると、そのあいだをきれいな着物をきた人間のお姫様が現れました。
「私はこの城の姫で紫苑と申します。よろしくお願いいたしますわ。瑞穂殿」
「わ、私は貴子と申します。こちらは妹のまりや。由佳里、奏です」
「ちぇっ。自分で言いたかったのに〜」
「こ、こんにちはっ。じゃなくて、はじめましてっ!」
「よろしくお願いしますのですよ〜」
「みなさん、はじめまして。よろしくお願いします」
美しいお姫様たちにどきどきしつつ、瑞穂は挨拶しました。
「ふふっ。では瑞穂殿、どうぞ中へ」
紫苑姫に導かれて瑞穂はお城の中へ入っていきました。
瑞穂が大広間の座敷に上がると宴が始まり、山海の珍味が運ばれてきました。
「瑞穂さま、お酒はいかがですか」
「まもなく女官が舞を始めますわ。ごらんになって」
いままで見たことも味わったこともない料理や、見事な舞でもてなされて
瑞穂は夢見心地で数日間を楽しく過ごしました。
ある日、瑞穂は砂浜で遊んでいた子供たちが気になって、村へ帰りたくなりました。
「え〜?もう帰っちゃうの? もっと遊んでいきなよ!」
「奏、瑞穂さまがお帰りになると寂しいのですよ〜」
瑞穂が帰りたいというとお姫様たちはひきとめましたが、そろそろお暇しようかとも思っていたので
瑞穂はどうしても帰りたいと言いました。
「では瑞穂さま、こちらの玉手箱をお持ちください。ですが、くれぐれもふたを開けたりしないように」
貴子姫が一つの木箱を手渡しました。
そっと涙を流すお姫様たちにこころ魅かれましたが、長くお邪魔しても悪いと思いふたたびウミガメの背にまたがりました。
来たときのように珊瑚の林を通って海の上に出て波に乗って波打ち際にたどり着きました。
「では私はこれで帰りますが、絶対に箱を開けてはなりませぬぞ」
ウミガメはそういって波に消えていきました。
瑞穂は周りを見渡しましたが、ここがどこか分かりませんでした。
ウミガメは違う村に瑞穂を送り届けたのでしょうか?
瑞穂は近くを歩いていた老人に聞いてみることにしました。
「おじいさん、ここはいったいどこでしょうか」
「ここは名前もない小さな村じゃ。ところであなた・・・どこかで」
「名は瑞穂と申しますが」
「おお、やはり。瑞穂さまでしたか。私が小さいときに遊んでいただいたものですが、これはいったい」
「小さいとき?」
瑞穂にはなんのことやらさっぱり分かりません。
「童のころ、亀をいじめていたときにお会いしたではありませんか。その翌日から姿が見えずどうしたのかと思っておりましたが。
あのころの姿そのままとはこれはいかに」
「亀を助けたのはついこの間です」
「いえいえ。あれからもう五十年は過ぎております。瑞穂さまを知るものはもう私しかおりますまい」
なんと、瑞穂が竜宮城で過ごしていた間に村では何十年も経っていたのです。
うちひしがれる瑞穂に挨拶をして老人は立ち去っていきました。
入り江や岬の様子もすっかり変わってしまい、瑞穂はすっかり寂しくなってしまいました。
「そういえば・・・この箱はいったい何なんだろう」
気になり始めると気になってしょうがありません。
あれほど開けるなと言われていたのに、ついに瑞穂は玉手箱のひもをといて開けてしまいました。
中から煙が立ちこめて瑞穂の身体をおおいました。
煙が消えたとき、海の方から声が聞こえました。
「やっぱり開けちゃったわねぇ。ふしし」
「きれいです。瑞穂さま」
たくさんの女官に囲まれて、竜宮のお姫様たちが波間に立っていました。
言われて我が身を見れば、なんと胸がふくらんでいます。
「やっぱり瑞穂殿は女性の方が魅力的ですわ」
なんということでしょう。瑞穂はきれいな女性になっていました。
「み、瑞穂さん。本当は玉手箱を開けると二度と竜宮城には戻れないしきたりですが、
今回だけは見のがして差し上げますわ」
「ていうか、これだけの美人を見逃す手はないわね」
「・・・な、なんてことだ・・・」
絶望にへたり込む瑞穂をウミガメの背に乗せて紫苑姫が号令しました。
「さあ、みなさん。瑞穂姫を竜宮城に連れ帰りますわよ」
「「「お姉さま〜っ!」」」
何百人もの女官たちが瑞穂ちゃんを取り囲んで騒ぎました。
こうしていまでも瑞穂ちゃんは竜宮城に軟禁・・・幸せに暮らしているそうです。
申し昔けっちりこ
オチだけ思いついて、勢いで書いてしまいました。
ちょっとウツで電波が舞い降りてこないのですが、また今度天女の羽衣の話で書きたいと思います。
それにしても今日は暑いですね。
ビールでも飲んで涼んでから寝るとしますか。
おやすみなさい。
217 :
名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 03:27:23 ID:dtHzyNVd0
オチに思わず吹いちまったぜw
老化ではなく女体化ですか。瑞穂ちゃんらしいなwgj
>>216 その状況下で良くぞ書いてくれたgj
誰か赤頭巾ちゃんという電波を受け取り始めてss書こうとするものの
色んなパターンを思いついて書こうにも書けれない状況に陥っている俺に救いの手を
投下します。
内容は前回の話にそっていますので、先に前作を読んでいただくと
判りやすいかと思います。
ご注意
相変わらず、かなりバカ話です。
むしろバカ度がアップしてます。
シリアス派のかたはご遠慮いただいたほうが賢明かと…。
『心象風景2』
〜役満?それはタダのチンイツよ編〜
***********************
恵泉火力大全A
多目的爆撃機 マリヤ
主武器 小型爆弾、焼夷弾多数(バーグ級、リボン型など)
その他 多目的攻撃用毒舌機関砲、口先バルカン砲
対地、対空共に強力な攻撃が可能
特に対地に於いて絶大な威力
爆弾の載せ換え可能
誹謗中傷ミサイル搭載可能であるが南極条約により禁止
***********************
設定は貴子ルート・まりや視点
昼休みのことだった。
まりやは階段の踊り場で、瑞穂と葉子がコソコソと話をしているのを発見した。
(怪しいわね。何やってるのかしら)
二人に見つからないよう、こっそりと近づくと壁に張り付いて聞き耳を立てた。
葉「…という風に会長にお話しますのでよろしくお願いいたします」
瑞「わかりました。勿論、OKですよ。それにしても、皆さん、貴子さんのことが好きなんですね」
葉「いえ…これまでお世話になったご恩返しをと思いまして。会長はああいう性格ですし。ご自分からはなかなか云い出せないだろうと」
瑞「ふふふ。そうですね。そこが可愛いのですが。貴子さんとデートするのは私も楽しみです」
葉「…さすがお姉さま。余裕ですね」
(なるほど。生徒会の後輩が貴子のためにデートのセッティングに来てたのか)
こっそりとその場を離れて、まりやは教室に戻った。
(後輩が先輩のデートの心配をするなんて。まったく、貴子らしいか。ふふ。まあ、それだけ慕われてることでもあるんだし、
貴子も幸せよね。……最高の彼氏をゲットしたし。来たらちょっとからかってやるか)
その日の放課後、A組に向かうまりやは前方から貴子がやってくるのをみつけた。
貴子は何だか上の空で、ブツブツと独り言を云いながら歩いてくる。
(ははあ、コレね)
教室の前で待ち構えて声をかける。
「おや、貴子。どうしたの」
「あら、まりやさん。どうもいたしませんわ。お姉さまに会いに来たのです。そこをどいてくださいな」
「あちゃ〜残念。瑞穂ちゃんは下校したわ」
「えっ!」
「なんだか実家に用があるとか云って」
見る見る内にしな垂れていく貴子。
「そう…ですか」
(そんなにショックだったのかしら。デートに誘えないくらいで。いまや貴子は瑞穂ちゃんにくびったけって感じね)
貴子の激しい変化は見ていて楽しいくらいだが、そろそろ勘弁してやろうと思っていたら教室の中から瑞穂が出てきた。
「…まりやさん!」
凄まじい目つきで貴子がまりやを睨む。
(まるで肉食獣ね)
「あら、勘違いだったみたい。にゃはは」
「どうしたの?」
二人の様子を見て瑞穂が声をかける。
「何でもありませんわ。まりやさんと話をして疲れただけです」
「あら〜ひどい云い草ですこと」
「……もういいです」
疲れたように肩を落とした貴子が瑞穂と並んで歩き出した。
下校するのだろう。
瑞穂は最近、貴子を駅まで見送っている。
「じゃ、あたしも帰るか」
二人の後ろからまりやも歩いてついて行く。
(貴子がなんて云って瑞穂ちゃんをデートに誘うのか気になるしね)
校舎玄関まで来たとき、貴子が振り向いてまりやを見た。
「まりやさん、ついてくる気ですの?」
「あたしも帰るトコなのよ」
「そうですか。ではお先にどうぞ」
道を譲って、まりやに先に帰るように促す貴子。
(さては、これから云いだすつもりね)
となれば見逃すわけにはいかない。
「いいじゃん。一緒に帰れば。それとも一緒だとなんだかまずいのかな〜」
そう云ってまりやが貴子の口を封じると、今度は瑞穂が口を開いた。
「まりや、悪いけど先に帰っててくれる?」
「えっ!?」
「私は今日は貴子さんと二人っきりで帰りたいから」
周りには少なからず生徒たちがいる。
その生徒たちが皆、聞き耳を立てていた。
一瞬、シンと辺りが静まった後、キャーという歓声が起こった。
お姉さまと会長が…
素敵…
そんな声が聞こえてくる。
まりやは少なからずショックだった。
(瑞穂ちゃんが人前でこんなことを云うなんて)
確かに貴子と瑞穂が付き合うことを認めてはいるけど、まりやは自分が貴子より下に扱われることなんて考えてもいなかった。
誰と付き合おうと、恋愛感情が無かろうとも、常に最優先なのは自分であると思っていた。
(瑞穂ちゃんがこんなことを云うのは…色ボケにしたのは貴子か!)
ジロリと貴子をみると、貴子も驚いたのかボーッとした顔をしている。
(おうおう!幸せそうな表情しちゃって)
ちょっと、胸の奥がちくりとした。
「にゃはは、瑞穂ちゃんにそう云われたら仕方ないわね。じゃ、あたしは先に帰ってるわ」
そう云ってまりやは、何気ない風を装いながら寮に向かって歩き出した。
寮の玄関のドアを手荒く開けて中に入ると、ズンズンと足音荒くリビングに入った。
テーブルでは奏と由佳里がお茶を飲んでいた。
「お、お帰りなさいなのですよ〜」
「ま、まりやお姉さま。なんだか荒れてますね」
まりやはソファーにカバンを投げ出すとその横にドサッと腰を下ろした。
「お、お茶を入れてくるのですよ〜」
そそくさと奏が席を立つ。
「許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん・・・」
ブツブツと唸っているまりやを恐ろしそうに見る由佳里。
「こんな時は近寄らないのが一番」
今までの経験からそう判断する由佳里。
しかし、残念ながらこれまでの経験全てにおいていかに用心しようとも関係なく妹は姉の厄介に巻き込まれてしまっていた。
しばらくまりやの方を見ないようにして、唸り声が聞こえなくなったので、チラリと、ほんのちょっとだけチラリとまりやに目を向ける。
・・・まりやが、じっと由佳里の顔を見ていた。無表情に。
「ひっ!」
「なあにびびってんのぉ〜、由佳里ぃ〜」
「イイエ、ナンニモ…」
まりやはユラリと立ち上がると、ゆっくり由佳里に近づいてきて、隣の椅子に腰を下ろした。
奏がお茶を持ってきた。
そのお茶をゆっくりと飲みながら、まりやは右手を隣で固まっている由佳里の首へ回した。
「ねえ、由佳里。あたし最近思うのよ。しつけは大事だって…」
「………」
「愛玩犬は飼い主と犬仲間とどちらに尻尾を振るべきだと思う?」
由佳里には、まりやが何を云っているのかさっぱり判らない。
「さ、さあ?か、飼い主でしょうか?」
「そう!そうよね!だから・・・シメようと思うの、瑞穂ちゃんを」
ブウウゥッー!!!!!
「何が大切かわかっていない発情した愛玩犬にはしつけが必要よね。いや、それを云うなら貴子にも必要か。
あたしが交際を許可したと思って図にのってるわね。先に貴子を…いや、どちらもまとめてシメることにしましょ」
由佳里は大きく目を見開き、ギギギッとゆっくり顔をまりやに向けた。
「アンタ、正気ですか?」
由佳里の頭がまりやの両拳で締め付けられる。
「イタイッイタタタ」
「お前も…お前もかぁ!由佳里ィィ」
「イタッ!ゆ、許してください!申し訳ありません!まりやお姉さま!」
鬼の形相のまりやに涙声で許しを請う由佳里。
奏は青い顔でガタガタと震えている。
「ただいま〜」
玄関で瑞穂の声がした。
途端に由佳里の頭の締め付けが消えた。
瑞穂がリビングに入ってきた。
「お帰りなさい、瑞穂ちゃん。貴子をもう送ってきたの?えらく早かったわね」
澄んだ笑顔でまりやが迎えた。
一瞬前までの鬼の形相は跡形も無く消えている。
「ん?どうかしたの?」
瑞穂が奏と由佳里を見て声をかける。
二人はまりやと違って、瞬時に表情を切り替えることなど出来ない。
先ほどの恐怖をまだ引きずっていて、それを瑞穂が変に感じたようだった。
「な、なんでもありません。ね、奏ちゃん」
「そ、そ、そうなのですよ〜」
引きつった笑みを浮かべる二人。
「おじゃましますわ」
続いて貴子が現れた。
一瞬、まりやの表情が歪んだが瞬時ににこやかな笑みに戻ったのを由佳里は見逃さなかった。
「あら、どうりで早いと思ったわ。道草なんてしてていいのかしら」
「寄り道ではありませんわよ。ここは学院の敷地内です」
「ふ〜ん。ま、そういうことにしてあげるわ」
平静な顔つきでまりやは普通に会話している。
平静なその表情の下には、ドロドロとした感情が渦巻いているのを由佳里は知っている。
「…目的遂行のためなら汚れた水も平気で飲む…か」
由佳里がボソッとつぶやいた。
途端に、テーブルの下で由佳里の太ももがつねり上げられた。
「!!!イタッ!イタタ!」
「ど、どうしたの?由佳里ちゃん」
「なな、なんでもないです!」
瑞穂は着替えてくるといって二階に登っていった。
まりやは瑞穂が何故、貴子を寮に連れてきたのか考えてみる。
(お茶を飲むだけ?いや、だったら着替えてくる必要が無いわね。これからどこかに行くのか?デート?それにしては貴子が
普通の顔をしてるし。ん〜〜)
テーブルの下でまりやは、由佳里の太ももをツンツンとつついた。
EYEコンタクトで由佳里と会話する。
ま(貴子にここまで来る途中、瑞穂ちゃんとどんな会話をしたのか訊きなさい)
由(嫌ですよ。まりやお姉さま、自分で訊いて下さい)
ま(あたしだと貴子が警戒するでしょ。さりげなく聞き出したいのよ!)
由(ふ〜ん。自分のことよくお分かりじゃないですか)
またしても、太ももをつねり上げられる由佳里。
「イタッ!イタイイタイ!」
この姉妹、仲が良い悪いはともかく、ツーカーである。
由佳里がさりげなく話題を振ると、貴子は駅前の喫茶店[プラチナ]の[レジェンド・ツリー・パフェ]を
店内の一番奥の席で食べさせ合いをしたカップルは、末永く深い愛で結ばれるというジンクスの話をした。
「その話、あたしも知っています!」
「奏も聞いたことがあるのですよ〜」
女子高生は恋愛噂話に敏感である。
例え男子がいない女子校であっても、この手の話は絶えることが無い。
その喫茶店に食べにいくだけ行ってみようという者や、女生徒同士でパフェを食べに行こうという者もいる。
「私は信じていないのですが」
貴子が真っ赤な顔でそう云った。
(それだ!謎は解けたわ!)
まりやは今の話で、瑞穂がその喫茶店に行こうとしているのだと看破した。
そして、信じていない、興味が無いと赤い顔で由佳里たちに云い訳する貴子を冷めた目で見る。
(結局、噂話をするだけでデートに誘えなかったのね。このヘタレ)
しかし瑞穂は昼間に、葉子からデートのお願いをされている。
いくら鈍感な瑞穂でも、これが話をされたデートの誘いだと気付いただろう。
そして貴子が云いだすのが恥ずかしいなら、瑞穂が誘った形でデートに連れ出そうと考えたに違いない。
「お待たせ、貴子さん」
瑞穂が着替えて降りてきた。
セーターにジーンズ。手には濃い色のコートを持っている。
「さあ、帰りましょう。送っていきます」
「えっ?」
まだいるつもりだった貴子が驚いたような顔をする。
(この期に及んでまだ気がついてないのね。このボンクラ)
「それじゃ、まりや。行って来るね」
貴子を促して瑞穂はリビングを出て行く。
「いってらっしゃ〜い」
にこやかな顔で見送るまりや。
バタンという玄関のドアの音がすると、途端に表情が一変した。
「うわわわっ!また鬼の表情に!」
「くっくっく、さあ、あたしたちも出かけるわよ」
「えっ?どこへ?」
「あの二人、これからあのジンクスの喫茶店にパフェ食べに行くのよ」
「えっ、そうなんですか!いいな〜」
「奏もパフェたべたいのですよ〜」
「というわけで、あのバカップルを粉砕しに行くわよ」
「奏、これから宿題が…」
「あたしもこれからランニングに出かける時間ですから」
席を立ってそそくさと出て行こうとする二人の襟首をまりやががしっと掴んだ。
「あたしたちもこれから…い・く・の・よ!」
「「はいっ!」」
寮を飛び出した3人は小走りで裏道を走る。
「ほら、もっと急いで!奏ちゃん」
「も、もう、限界なのですよ〜」
「ああっ。先回りして駅に着かないといけないのに!由佳里!奏ちゃんの左腕持って!」
「はいっ!」
体力姉妹は奏の左右の腕を持つと、凄まじい速さで走り出した。
「そりゃあ!ニトロ注入!ブースター点火!安全弁解除!」
「速度上昇第4段階!20秒後にMAXです!」
異様なスピードで裏道を走りぬける体力姉妹。
二人の間で腕を掴まれている奏は、まるで風にたなびく旗のようにパタパタと宙に浮いていた。
「……な、何だか光が線になって流れているのですよ〜。き、きれい…なの…ですよ〜」
「着いたわね」
瑞穂たちに先駆けて、喫茶店[プラチナ]の前に到着したまりやたち。
奏は青い顔でフラフラしている。
「な、何だか気分が悪いのですよ〜」
「ああ、亜光速酔いね」
「あ、亜光速!!」
そんなことを云ってる内に、瑞穂たちの姿が見えた。
「来たわよ。皆、隠れて!」
「なんで隠れるんですか?一緒に入れば良いじゃないですか」
「このお馬鹿!あたしたちはお邪魔虫なのよ。正面きって行けばかわされちゃうでしょ。効果的にダメージを与えるためには
奇襲攻撃が効果的なのよ!」
「…自分のことをお邪魔虫って…よくお分かりじゃないですか…」
全力を込めて両拳で由佳里の頭を締め上げるまりや。
「イタッ!イタイ!イタイタイイタイ!!!!」
そのままズルズルと物陰に引きずり込んで、瑞穂たちの様子を探る。
瑞穂が喫茶店を指差して、何か云っている。
貴子もそれに対して、何か答えているようだ。
「遠すぎてよく判らないのですよ〜」
「何を話してるんでしょうね」
奏と由佳里が横のまりやを見ると、まりやはなにやらこめかみを指で押して、目を血走らせて瑞穂たちを眺めていた。
「「・・・・・・・・・」」
解説しよう。
まりやはこめかみのツボを押すことで聴力を普段の3倍にすることができ、また集中力を高めて凝視することで、30M先の人物の
唇の動きを見ることができるのだ。
「・・・・・・まりやお姉さま。人間じゃないですね・・・・・・」
(…是非貴子さんとパフェを食べたい…何キザな云い方してんの、瑞穂ちゃんの女ったらし!…貴子、ボーとしちゃって、
うん?何か云ってるわね…私、ジンクスなど信じておりません…
瑞穂さんが食べたいとおっしゃるのでしたらお付き合いさせていただきますわ)
それを聞いて、まりやは集中を解き、瞼の上から指で目を揉みほぐした。
「くっくっくっく…」
まりやの口からは気味の悪い薄笑いが漏れている。
「ま、まりやお姉さま?」
由佳里も奏も薄気味悪そうにまりやを見ている。
(貴子…ボンクラの分際で今、とんでもないことを云ったわね。…瑞穂ちゃんに対してツンデレを仕掛けるとは…
極刑に値する。・・・・・・死ね!!!)
まりやがカッと目を開いた。
不可視の邪念のオーラが噴き出した。
奏と由佳里が驚いてしりもちをつく。
「あああ・・・ひぃぃぃ・・・・」
(嫉妬神ジェラシスも照覧あれ!必ずやあのバカップルに手ひどい目をみさせてやります!恋のジンクスなどいう暴挙、
天が許さない!世界が許さない!あたしが許さない!木っ端微塵に粉砕してみせる!どうか大神のご加護があらんことを…)
「アーメン」
「へっ?」
由佳里たちが目を丸くする。
この状況とお祈りと接点がない。
「まりやお姉さま、何を主にお祈りなさったんですか?」
・・・・・・祈ったのは、妄想の嫉妬神である。
説明できるわけが無いので、由佳里のそんな質問はスルーする。
「さあ、行くわよ」
まりやは物陰から出て、瑞穂達のほうへ行こうとする。
「えっ、物陰から隠れて、薄汚く、ねちっこく、チクチクと嫌らしく邪魔するんじゃないんですか?」
まりやは全身の力を両拳に集中させて、由佳里の頭を締め上げる。
「イイイイイタァァァ、イタイイタイ!割れる、割れます!許してくださああい!」
「作戦は変更よ。正面から行って、力ずくで粉砕することにするわ」
「あ、あの、奏、もう帰って良いですか〜」
半泣きの奏に、まりやは冷徹に首を振る。
「だめ。奏ちゃんも由佳里もあたしの大事な手ごまなんだから。首までもうどっぷり浸かっちゃってるんだから
今更足抜けは無理よ」
「か、奏、浸かっちゃてるんですか〜」
「あれあれえ、瑞穂ちゃん、貴子。こんな所で会うなんて奇遇ねぇ」
「まりや!?」
「ま、まりやさん!」
瑞穂も貴子も凄く驚いている。
(視界良好、進路クリア、攻撃ランプオールグリーン!くっくっく、攻撃開始!)
「それはあたしの台詞ね〜。貴子が寄り道するなんて!云〜ってやろ、云ってやろ、せ〜んせいに云ってやろ!」
「子供ですか!」
「寄り道して、あまつさえ喫茶店に入ろうとするなんてねぇ〜。よ・り・み・ち…していいと思ってんのぉ〜」
「さすがはまりやお姉さま。ねちっこく嫌らしい見事な攻撃です」
まりやは殺意のこもった目で睨んで由佳里を黙らせる。
「まりやさんたちは何故ここに?」
「ふふん。今、噂になっているパフェを食べにね。こう見えてもあたしも乙女だし。には」
「で、でも、私たちより寮を出るのは遅かったはずなのに。何故、先に?」
「さあね〜。あんたたち、歩くのが遅いんじゃないの?」
…正解は、体力姉妹、裏道、亜光速移動
「ん〜、もしかして、貴子たちも噂のパフェを食べに来たのかな〜?寄り道して」
「え、いや、その…」
「永遠の愛を、とか聞いてわざわざ瑞穂ちゃんを引っ張ってきたのかな〜?寄り道して」
「………」
「寄り道して」
赤い顔して黙りこむ貴子。
誰も勝てない。口先でこの女に勝てない。そんな雰囲気が漂い始めたとき、瑞穂が口を開いた。
「まりや。私が貴子さんを強引に誘ったの。どうしても貴子さんとパフェが食べたくて」
豪快な援護射撃。
ちっ!とまりやが舌打ちする。
逆に貴子は、一気に明るい表情。
「そ、そうです。瑞穂さんがどうしてもとおっしゃったので」
(貴様…まだ云うか…)
嬉しそうな貴子の表情。してやったり!という笑顔。
さしずめ麻雀で大物手を上がったような笑顔。
(役満をロンしたような顔をして!そうはさせないわよ。どうせ貴子のことだからズレたアガリに決まってる。
チンイツあがって『加賀百万石』とか。そんなもん、通らせるわけないでしょ!チョンボにしてやる!)
「そうなんだ…貴子の意思じゃないんだ?」
「…ええ」
「じゃ、今日は寄り道せずに帰ってもいいわよね。無理に校則違反することないわよね〜」
「……!!」
まりやは瑞穂のほうを向いて、
「瑞穂ちゃんも無理に貴子を校則違反させることはないわよね。どうしてもパフェが食べたいなら、アタシが付き合うから」
二カッと笑うまりや。
「アタシは寮に帰ってから来てるから寄り道じゃないし」
「・・・・・・・・・」
歯噛みする貴子。何も云うことができない。
恵泉の生徒で寄り道して喫茶店に入る生徒は大勢いる。というか、ほとんど全員がそんなこと気にしていない。
校則では確かに寄り道は禁止になっているが、それで罰を受けた生徒はこれまで存在しない。
辺りがシーンとなる。
やはりまりやは強い。さながらまりやの機銃掃射で辺りが一掃された感じである。
「まりやお姉さま流石です。屁理屈云わせたら天・・・ヘグッ」
由佳里がまりやのマッハパンチで沈黙した。
「ダメよ、まりや」
瑞穂が口を開いた。
「私は貴子さんと食べたいの。たとえ貴子さんに校則違反をしてもらっても!二人でパフェを食べたいのよ」
強力な瑞穂の砲撃。
まりやもここまで瑞穂が強行に反抗してこようとは予想していなかった。
「・・・・・・!」
咄嗟に言葉を詰まらせる。
貴子は感激で目を潤ませている。
瑞穂がここまで云ってくれるとは考えてもいなかったのだろう。
(くっ…手強いわね。瑞穂ちゃん。でもまだまだ)
「そう。瑞穂ちゃんがそこまで云うなら良いってことにするか」
まりやがそう云うと、辺りがホッとした空気が流れた。
「んじゃ、せっかくだから皆で中に入りましょ」
喫茶店のドアを開いて、中に入る一同。
ウェイトレスがやってきて人数を確認する。
「5人よ」
まりやが当然のように云う。
「ちょ、ちょっとまってください。まりやさん、一緒のテーブルなのですか!?」
「そうよ。皆で食べたほうが楽しいじゃない」
そう云いながら、まりやは肘で由佳里のわき腹を突付いた。
(行け!バーグ級爆弾)
仕方なしに由佳里が口を開く。
「あ、あたしは…みんなで一緒にたべたいな…と…思うのですけど…」
(根性なし!しけた云い方して!ほんと度胸無いんだから。じゃ、続いて小型焼夷弾リボン1号行きなさい!)
まりやに背中を突付かれ、奏も仕方なしに口を開く。
「お姉さまや会長さんと一緒に食べるときっと美味しく感じるのですよ〜」
とりあえずこれで良し!と満足げな表情のまりや。
これで瑞穂も貴子も何も云えなくなる…ハズ。
(二人でパフェをつつきあうなんて暴挙、アタシの目の黒いうちは許さないわよ)
「御免なさい。由佳里ちゃん、奏ちゃん」
瑞穂が再び口を開いた。
「私は貴子さんとデートしたいの。奏ちゃん、由佳里ちゃん、御免ね。今日だけはわがままを許してちょうだい?」
(!!!)
「…え、いいえ、いいのですよ〜。奏はいつもお姉さまと一緒ですし〜。今日は会長さんと一緒にいてあげて下さいなのです」
「そ、そうです。あたしも奏ちゃんもまた今度でいいです」
瑞穂の言葉に二つの小型爆弾も慌てて沈静化した。
結局、テーブルは二つにわかれた。
まりやたちは入り口近くのテーブル、瑞穂と貴子は店内奥のテーブルに座った。
「アンタたちの弱腰にはがっかりよ。何故、あそこで暴れるくらいの根性を見せないのよ」
まりやが由佳里たちに向かってブツブツ文句を云っている。
「あ、暴れるって…そんなの無理…」
「お姉さまにああ云われたら、とてもそれ以上のことは云えないのですよ〜」
誰だって瑞穂に嫌われたくは無い。
「……まあいいわ。瑞穂ちゃんがあんなに粘るなんて予想外だったしね」
まりやの攻撃は全て、瑞穂によって撃退された。
奥のテーブルに目をやるまりや。
後ろ向きの瑞穂の表情は良く見えないが、こちら向きの貴子の表情は幸せそうだ。
まりやの心の奥がちょっと…切ないような…羨ましいような…
「・・・・・・ゆるさん!」
ウェイトレスが注文を聞きにやってきた。
各自、思い思いの飲み物を注文する。
「奥の二人は何頼んだの?」
まりやがウェイトレスに尋ねた。
「レジェンド・ツリー・パフェです」
予想通り!と目を怒らせるまりや。
由佳里と奏は羨ましそうな表情をしている。
「いいなあ。あたしも食べたいなあ」
「奏も食べたいのですよ〜。でもとっても大きくて食べきれないのですよ〜」
「じゃ、奏ちゃん。二人で半分ずつ食べようか?女の子同士で気兼ねなしに」
「はいなのですよ〜」
由佳里と奏は二人でひとつ、レジェンド・ツリー・パフェを注文した。
(大きくて食べきれない…か。よし!)
「さらにもう一個、レジェンド・ツリー・パフェ追加ね」
まりやがさらに注文した。
「ま、まりやお姉さま!ひとりで食べるつもりですか?」
驚く由佳里と奏。
ウェイトレスも目をまん丸にして、間違いないかと念を押す。
普段では、一日に数えるほどしか出ないこのパフェが、この5人で3杯も注文するのだから無理も無い。
(パフェが来たら、食べきれないって云ってあっちのテーブルに持って行ってやる。そして、ドサクサに紛れて、あたしが
瑞穂ちゃんに食べさせる…と。くくく、貴子のヘボ役満、何としてもチョンボにしてやる)
それにしても打つ手が単発で威力に欠ける。手駒は2つとも役立たず。どうしたものか…とまりやが考えていると、
貴子が不審な表情をしているのが目に付いた。
(貴子のやつ。何やってるのかしら)
何やら白目をむいて、口から泡を吹いている。
「あっ…」
奏が小さく声をあげた。
「どうしたの、奏ちゃん?」
「い、いえ。何でもないのですよ〜」
慌てて、返事をするが何となくおかしい。
(なんかドアを見てたわね)
まりやは振り返って、喫茶店のドアを見た。
・・・・・・・・・居た!!!
(重爆弾『黒髪10号』!!)
恵泉最強の破壊兵器、十条紫苑。その人であった。
姿を見せただけで、貴子が泡を吹くほどの破壊力。
(まさにジェラシス様からの贈り物!しかし…あたしに扱えるのか!?この最終兵器が…)
下手をすれば自爆する諸刃の剣。
ウンウンと考え込んでいる間にも、紫苑は喫茶店の前から歩き去ろうとしている。
(ええい、どうとでもなれ!)
慌てて店の外に飛び出して紫苑を追いかける。
「紫苑さま〜!こっちこっち!」
紫苑が振り返った。
「あら、まりやさん。ここで何を?」
「この店でパフェを食べていたんです。瑞穂ちゃんや奏ちゃんもいますよ」
「まあ。皆さんおそろいですのね」
「紫苑さまもどうですか?寄って行きませんか?」
「私は別のところに用があるのですが…。だけどちょっと覗いて見ましょうか。ひとりで行くのもなんですし」
「?」
まりやが紫苑を連れて店に戻ってくる。
店の奥では、貴子が盛大に水を噴き出していた。
(くっくっく。これまでよね、貴子)
「紫苑さま、ごきげんよう」
「紫苑お姉さま、ごきげんようなのですよ〜」
奏たちが嬉しそうに挨拶する。
「由佳里さん、奏ちゃん、ごきげんよう。瑞穂さんと貴子さんは別のテーブルなんですね」
「そうなんですよ。見てください。貴子がムカつ…嬉しそうな役満笑顔してますでしょ」
「役満?何ですか、それ」
「えっと、麻雀の上がり手です。ご存じないですか」
「麻雀…というとあの、家族でジャラジャラするやつですか?」
「何だか微妙な例えですが、多分それです」
「そうですか。私、麻雀というのは知らなくて。ドンジャラなら知ってるのですが。アンパンマンの」
何だか変な方向に話がずれてしまった。
「ところで紫苑さまはパフェは好きですか?」
「ええ。甘いものは大好きですわ」
「ちょうど良かった。いま、巨大パフェを頼んだところでしたの。とても食べきれないくらいでしたから一緒に食べませんか?
瑞穂ちゃんのところのテーブルで」
まりやの台詞を聞いて、奏と由佳里が、やっぱりという顔をした。
(ふふふ。いくら瑞穂ちゃんでも紫苑さま相手にはどうにも出来ないでしょ。貴子は論外ね。卓ごとひっくり返してあげるわ。
ふたりとも…パフェではなく紫苑さまの威力を存分に味わいなさい!)
まりやの話を聞いて、紫苑は少し首を捻った。
紫苑の口調が少し変わった。
「まりやさん。そのパフェというのは噂になっている例のパフェではないですか?」
ギクッ!
(紫苑さまがそんな噂を知っているなんて)
「え、ええ。そうです。良くご存知ですね」
「そして、今、瑞穂さんたちが座っているテーブルが噂の奥のテーブルではありませんか?」
「……ええ。そうです」
紫苑は微笑みながら、意味深な目でまりやを見た。
まりやは紫苑が砲塔を自分にに向けるのを感じた。
「まりやさん。お気持ちは判りますがダメです」
言葉は穏やかだが、反論できない何かがこもっている。
「・・・・・・・・・」
「いいですね。絶対にダメですよ。瑞穂さんたちの為にも。そしてまりやさん自身の為にも…」
「そ、そんな…」
一撃だった。
紫苑の言葉一撃で、機体は貫通し、煙を上げて墜落していく。
失敗!
紫苑から直接、ダメだしをされてしまった。
これ以上続けると、瑞穂、貴子、紫苑の3人を敵に回してしまう。
そこまでは、まりやと云えども踏み込むには相当の覚悟がいる。
(そんな…そんなあ…ジェラシス様あああ)
ジンクス達成を妨害するという人生の目標が絶たれてしまった。
賭けに負けたのだ。紫苑を見誤ったのだ
猫の子と虎の子を、爆弾とギガントを見誤ったのだ。
人類に扱える兵器ではなかった。
ガックリと膝を突くまりや。
「紫苑お姉さまも一緒にパフェを食べましょうなのですよ〜」
奏が嬉しそうに云う。
「奏ちゃん。駅前デパートで今、パティシエコンテストが開催されてるのを知ってる?」
「はい!国内の有名パティシエが7人集まって、腕前を競ってるそうなのですよ〜。テレビでも云っていたのですよ〜」
「そこの招待券があるのよ」
そう云って、紫苑はチケットをピラッと取り出した。
これがあれば、会場で好きなだけスイーツが試食できる。
「「わあ〜〜」」
声を上げる奏と由佳里。
「今日が最終日で、このチケットで4名様までご招待なんだけど、奏ちゃん来る?ここのパフェはいつでも食べられるけど、
コンクールのスイーツは今日だけですから」
「ハイなのですよ〜」
即、返事をしてから気がついたように由佳里とうな垂れているまりやを見る奏。
「由佳里さん、まりやさんはいかがですか?」
「是非、あたしも…」
由佳里がそう云いかけた時、
「お待たせしました」
パフェとジュースが届いた。
「あら、パフェが来ちゃいましたね。では、私と奏ちゃんは先に行っておりますので、もし良かったら後からでもコンクール会場に
来てくださいね」
そう云って紫苑は奏の腕を引っ張って、店の外に出て行く。
「ま、まりやお姉さま、由佳里ちゃん。御免なさいなのですよ〜」
引きずられながら、奏の姿がドアの外に消えていく。
「あ…あたしも!」
慌てて後を追おうとする由佳里の後頭部を、まりやが右手のワンハンドだけでミシッと掴んだ。
「どこに行くの?由佳里」
「えっ?」
「えっ?じゃないでしょおがぁぁ!!」
鬼の形相で右手の力を込める。
ミシミシミシッッ!!!
「イタイイタイッ!ゆ、許して!許してください!まりやお姉さま!」
「アンタはここで死ぬまで喰えっ!」
巨大パフェを鬼の形相でつつくまりやと、泣きながら食べる由佳里。
奥のテーブルでは、鼻血で血まみれになったパフェを震える手で掬う貴子と青い顔で首を振る瑞穂。
異様な雰囲気に他の客たちが次々と店を出て行く。
この四人が、この後、この店の出入り禁止になったのは当然のことであった。
〜えぴろーぐ〜
その晩、寮にて。
まりやが独りでリビングでお茶を飲んでいると、
「ただいま」
「ただいまなのですよ〜」
瑞穂が帰ってきた。奏も一緒である。
「遅かったわね。もう7時よ」
「うん。いろいろとあってね」
「奏、ちょっと部屋に戻っていますのですよ〜」
そう云ってヨロヨロと部屋に戻っていった。疲れているようである。
「まったく、まりやの所為で酷い目にあったよ」
「あら、全てがあたしの所為みたいに云うけど、要は自爆でしょ」
結局、貴子の鼻血でデートが失敗するなら、無理にまりやが邪魔しに行かなくても良かった。
「由佳里ちゃんは?」
「寝てるわよ。うなされてるわ」
「なんで?」
「さあねえ」
死ぬほどパフェを食べさせられた由佳里は寮に帰ってくるや否や、直ぐにベッドに沈没してしまった。
「……うーん、許してください!割れる、割れます!」
喫茶店を瑞穂たちとまりやたちは別々に出た。
瑞穂たちが出るときには、まだまりやたちはパフェを食べていたので、あの後、瑞穂たちがどこへ行ったのか知らない。
「まりやは元気だよね。まりやも結構大変な目にあったと思うんだけど」
「あたしはこの程度で寝込むほどやわに出来ていないわよ」
「…とても良家のお嬢様の台詞とは思えないよね、それ」
「にはは。なんだか気分的にすっきりしちゃった。これからもストレスが溜まったときは瑞穂ちゃんたちのデートに
くっついていくことにするわ」
「御免。ほんとに勘弁して!」
そう云う瑞穂を、ただニヤニヤと笑って見つめるまりやだった。
Fin
244 :
名無しさん@初回限定:2007/09/17(月) 12:44:54 ID:R0MMhCIG0
お粗末さまでした。
これで終わらせるつもりだったのですが、あの人の行動が書ききれませんでした。
ですからあともう一話、『ドンジャラ編』書きます。
まだ書き始めですから、ちょっと時間かかるかも。
気長にユルユル書いていきます。
sageわすれスマソ。
GJ!
あれっ?紫苑さま普通じゃん?って思ったら続きがあるんですねw
楽しみに待ってますよ!
やらかしまくってるな。
ほんとに申し訳ない。
L鍋さん、まったり、ゆっくりでOK。
気長にいきましょう。
>>245 いつも思いますが、毎度毎度、よくこんなあほばっかり考えつきますね(もちろん褒め言葉ですよ)
そういう私も、その後を考えてみましたが。
それから数日後の日曜日、寮のみんなで遊びに出ていた帰り……。
「あー、今日はよく遊んだね」
「そうね」
「楽しかったのですよ」
「また行きたいな」
そう会話しながら4人が歩いていると、目の前に喫茶店が……。
「ねえ、ちょっと寄っていかない?」
「そうだね。ちょうど小腹もすいてきたし……」
「決まりね。じゃあちょっと行って来る」
瑞穂はそう言って喫茶店に……。
「どうだった?」
「うん。今空いてるのは2人の席だけだって」
「そうなのですか……」
「どうする?」
「寄っていきましょう」
瑞穂たちは喫茶店に入ることにした。
「じゃあ、奏ちゃんは私と、由佳里ちゃんはまりやと一緒の席でいい?」
「あたしはいいよ」
「奏もそれでよろしいのですよ」
「由佳里ちゃんはどう? ってあれ、由佳里ちゃん?」
瑞穂が見ると、由佳里は視界にやっと見えるくらいのところまで走っていた。
「由佳里ちゃん、どうしたのかしら?」
「さあ……でも、なんか感じ悪いわね」
まりやがふくれながら言った。
そして夕食の時……。
「由佳里ちゃん、今日いきなりいなくなったけど、どうしたの?」
「そうよ。あたしと相席って言った途端に逃げて! そんなにあたしと同席がイヤだって言うのかー!?」
言うなりまりやは由佳里の頭を両手のげんこつでぐりぐり。
「あだだだだだ!!」
「まりや、そうケンカごしにならないで……由佳里ちゃん、どうしてまりやと一緒の席になりたくなかったの?」
「いたた……そんなの当たり前じゃないですか! これ以上まりやお姉さまの身勝手な行動の尻ぬぐいをさせられるなんて、
まっぴらごめんです!! 私は力士でも大食いチャンピオンでもありません!!」
由佳里は怒って部屋に帰ってしまった。
「……いったいどういう意味なのかしら? まりや、何か心当たりある?」
「さあ……あの娘、何わけのわかんないこと言ってんだろ?」
あれ以来、すっかりトラウマになって根に持ち続けてる由佳里と、
そんなことはとっくの昔にけろっと忘れているまりやであった。
以上です。次のドンジャラ編も気長に楽しみに待っていますよ。
あと、たまには由佳里ちゃんにも花を持たせてあげてくださいね(って依頼すると書けなくなっちゃいますか)
まあ、単なる私の希望ですので、思うままにどうぞ。
由佳里ちゃんに花というか、由佳里ちゃんを悪く書かずにしっかりかける人って結構すごいと思うな。
誰だって使いやすいキャラに逃げるもんだ。
>251
一つを持ち上げるために他を貶める必要はないだろ、褒めたきゃ「良い」と言えばいい
よけいな言葉をつけるのはどうかと思うぜ。
あた て のひ もあはち
東の扉です。
今新たにSSを書いているのですが、なかなか思うように進まないので、気分転換に小ネタを書いてみました。
時期は、聖央卒業後、瑞穂くんたちが社会人になってからのことです。
よろしければご覧ください。
〜真実は大きなミステイク〜
某クイズ番組、それに瑞穂をはじめ、聖央のみんなも出演している。現在、勝ち残っているのはおよそ100名。
「それでは次の問題です。鏑木グループの社長、鏑木瑞穂は、実は男性である」
「……って、僕のことじゃ……」
瑞穂は驚いた。
「さあ、○か×か?」
みんな大きく○と×の書かれた大きな看板の元へ向かう。
「……って、なんでみんな×の方にいるの?」
○の方にいるのは瑞穂1人だけ。あとはみんな×のほうに集中していた。
「ちょっと、貴子さん、僕の胸パッドが落ちたとこ見たでしょ!?」
「でも、あれを見ても信じがたいというか……」
「奏ちゃんに由佳里ちゃん、僕が男だって教えたでしょ?」
「そんなこと言われても……」
「どうしてもそちらの方がウソだと思えるのですよ」
「まりやに紫苑さんまで……」
「いやあ……最近はあたしもどっちかわかんなくなってきちゃってね」
「ええ。容姿といい、仕種といい、立ち居振る舞いといい、どこから見ても100%完璧な女性ですわ」
「ううう……みんなひどいよ……」
瑞穂は落ち込んでしまった。
「それでは正解です!」
でも、正解を聞けばみんなわかってくれるはず……。
「正解は……×だーっ!!」
わーっ!!
たちまちわきあがる歓声とどよめき。一方……。
くらっ……ぶくぶくぶく……。
瑞穂は泡を吹いて倒れてしまった。
「あれ? ○の方に1人いる」
「こんな簡単な問題もわかんないなんてね」
「いや、簡単に思えるからって、深読みしすぎたんじゃない?」
その後、瑞穂はショックのあまり昏睡状態が続き、目覚めてからもリハビリに数ヶ月かかったそうな。合掌。
以上です。
あ、しまった……セリフ以外の部分、1文字空けるの忘れてた。
短いので、ワードから直接コピーしてしまったからな……。
それはそうと、いくつかの途中で立ち消えになっている作品の続きとかも、続きを書いてほしいな、と近頃思います。
Kamakiriさん、いつかボクネスクの第2弾を書きたいとか聞いた気がしますが、
時代劇にも挑戦してみてはいかがかな? とふと思いました。
天女の羽衣の話も期待しています。
それでは、お目汚し失礼しました。
>>257 瑞穂ちゃんは、いじられてナンボですなあ。
なにはとまあれ、GJ!!ですよ。
こんにちは〜東の扉さん。
なんか秋の喘息期が来て、へろへろです(笑)
時代劇(江戸時代)は女性の髪を結い上げてるのが嫌で・・・
やっぱり、一夫多妻おkな平安時代に限ります。
ボクネスク続編はいろいろ構想があるのですが、逆にまとまらなくて〜
ほかに「まりみて」で寝苦しい夜に怪談パーティーをするというネタもあるのですが
いつのまにか旬が過ぎてしまいましたね。
天女の羽衣はSFちっくな感じでせめていきたいのですが、
もうすこし話に合理性を持たせたいので、原案を練っています。
話の根本から作り直しになる予感です。
>>259 『まりみて』の旬が過ぎた? いやいや、私めはずっとお待ちしておりましたぞ。
ささっ、早く投下を…じゅるり
>>260 ごめんなさい。まだネタの段階なのです。構想も練ってません。
出すとしても非エロ・・・
>>261 まだネタの段階でしたか。
非エロでも大歓迎ですから、できましたらどうか投下して下さいませ。
お待ちしておりますぞ。
>>259 >時代劇(江戸時代)は女性の髪を結い上げてるのが嫌で…
そうでしたか。では、それは私のほうで考えてみることにします。
>「まりみて」
私も楽しみにしてます。あとはまりやと由佳里ちゃんだけですけど、
次に抱くのはどちらなのかな? と思っています。
以前に書いたSSの前編が完成しましたので、投下させていただきます。
なお、冒頭の部分だけですが、オリキャラがいますので、ご注意ください。
少しでも入っているのが気に食わない方は、パスするのが賢明です。
それでは、どうぞ見てやってください。
今日は日曜日。僕は久しぶりに、女装せずに街をぶらぶらしていた。
聖央からは遠いから、まあばれる心配はないだろう。
「うーん……開放感。やっぱり男のままっていいな」
思いっきり背伸びをして女装なしでいられることの喜びを味わっていると……。
「あれ? 鏑木じゃないか?」
後ろから声をかけられた。
「えっ?」
驚いて振り向くと……。
「あっ、桐生仁(きりゅう じん)くん!」
そこにいたのは、僕の開正学園での友人だった。
〜嵐を呼ぶ代理さん 前編〜
「……で、おまえ、今どこ通ってんだ?」
「えっと……それは訳あって言えないけど、充実した日々を送ってるよ」
僕たちは、喫茶店に入り、お互いの近況について話し合っていた。
「そういえば鏑木、頼みがあるんだけど、いいかな?」
ふと、桐生くんが僕にそう言ってきた。
「頼みって?」
「俺、アルバイトしてるんだけどさ、家庭の事情でしばらく出れないんだ。
だからその間、おまえに出てもらえれば助かるんだけど……」
そうは言われても……。
「僕に出来るようなことなの?」
「出来る! というか、俺の知る限り、おまえにしか出来ん!」
真剣に話す。じゃあ、簡単に断るわけにもいかないか……。
「……とりあえず、場所と曜日と時間を教えてくれる?」
僕はそう言って内容を聞いてみることにした。場所は聖央の近くのスナックで、土日の夜7時から10時まで。
聞く限り、できないことはないだろう。
「わかったよ。任せて」
「サンキュー。恩に着るよ。じゃ、向こうには連絡つけとくから」
……こうして、僕の臨時の仕事は始まった。
僕は翌日、そこに面接に来ていた。
「うわっ、こんなところで働くのか……」
高校生がバイトしているスナックというから、軽食堂、ようするに喫茶店をイメージしてたんだけど、
そこは「デメーテル」というスナックバーだった。
「すみません。鏑木瑞穂ですけど……」
僕は開店直前の店に入った。連絡はしてあるから、すぐに終わると思うけど……。
「ああ、桐生くんから聞いてるわよ。臨時の彼の代理なんだってね」
出てきた店主らしい女性がそう言う。話がわかっているみたいだな。
「それで、どうでしょうか?」
不安になりながらも聞いてみる。
「いいわね。彼から聞いていた以上の逸材だわ。採用よ」
……僕もびっくり。ろくに話も聞かずに採用って……いいの?
「いいんですか? そんな簡単に決めて?」
「いいのよ。うちで一番大切なのは容姿とスタイル。あとは仕込めばいいわけだし、桐生くんの紹介なら信用できるしね」
「……はあ」
そういえば桐生くんって、開正でも先生とか友達とかによく信頼されてたよな。
それは納得いくけど、このオーナーらしい人、声をよく聞いてると男性の裏声みたいな感じに聞こえなくもない。
なんとなくイヤな予感がするのは気のせい?
そして土曜日、デメーテル。
「ちょっと! こんな話聞いてないよ!」
“バイト姿”に着替えさせられた僕は、猛然と抗議する。
「だって、桐生くんから聞いてるんでしょ? こういう仕事だって」
「………」
だから仕事の内容についてはぼやかしてたのか……こういう内容なら、僕じゃなくてもひいてしまうしね。
「今さらイヤだなんて言わないでよ? こっちはもうそのつもりで予定組んでしまってるんだし……」
「ううう……」
そう言われては僕には選択の余地は残っていない。僕は仕方なく、仕事に向かうことにした。
「おっ、新しく入った子、ずいぶん色っぽいね」
「ホント、誰よりも輝いて見えるよ」
「あんな子がいるんなら、俺、毎日でも通わせてもらうよ」
「ううう……」
僕に周りのお客さんたちから、そう視線と“褒め言葉”という名の心無い言葉の嵐が浴びせられる。
接客の仕事というのがバーのホステスだなんて知ってたら、最初から受けたりしなかったのに……。
バストに詰め物をして着ている色っぽい衣装が、すごく恨めしい……。
「フレアちゃーん! つぎはこれをお願いね」
「はあい♪」
源氏名で呼ばれた僕は、ムリに色香を作って返事する。
「あれ?」
仕事を始めてしばらくしてから、また入客があったので、そちらを見てみると……。
「………!!」
緋紗子先生! それに紫苑さんにまりやたちまで!!
いったい、みんなどうしてこんなところに……!
「あ……あの? ここは18歳未満立ち入り禁止じゃ……」
僕はまりやたちを指差して、近くのホステスに聞いてみる。
「ああ。子供たちだけではね。大人の方が一緒ならOKよ」
「そ、そうですか……」
僕はがっくりとしながら承諾した。と……。
「………」
一瞬紫苑さんと視線が合ってしまった。まずい!
プイッ。
僕は慌てて視線をそらす。危ない危ない……。
聖央のみんなのことは、終わるまで無視していよう。余計なことには関わらないのが大切だ。特に紫苑さんとまりやの2人に、
僕がここで働いてることは絶対にバレてはいけない。そうなったら、どうなるかは目に見えているから。
「フレアちゃーん。次は8番テーブルお願いね」
「はあい♪」
僕はオーダーを受け取って、8番テーブルに持っていった。
「………!!」
僕は、8番テーブルを見て凍りついた。そこは、緋紗子先生たちの座っているテーブルだったから。
「わあっ! こんな素敵なホステスさんがいるなんて感激なのですよ! 周防院奏と申しますのです!
よろしくお願いいたしますのですよ!」
「本当、すごく色っぽいです!」
「あ、ありがと……」
奏ちゃんに由佳里ちゃん、恥ずかしいし不安だから、そんなに近づかないで……。
「私、上岡由佳里です! あなたは?」
「フ、フレアですう……はじめましてえ……」
冷や汗を流しながら、僕は何とかそう返した。
「へえ、フレアちゃんっていうのか。真っ赤になっちゃって、かわいいねえ」
「ええ、本当に。衣装の雰囲気に似合わず、まるで純真無垢なお嬢さまのようですわ」
まりやに紫苑さん、そんなに僕の顔を見ないでよ……いつバレるかと思うと、生きた心地がしないよ……。
「きょ、今日が初めてですから」
「まあ、そうですの? こんなホステスさんがいらっしゃるなら、毎日でも通いたいですわ」
にっこりと満面の笑顔で言う紫苑さん。勘弁してください……。
「だ、代理として臨時に入っただけですから……」
「そう? あんたさ、あたしのよく知ってる人に似てるのよねえ」
「そ、そう……ですか?」
ま、まりや、それ以上はつっこまないで……。
「うん。あたしの幼なじみなんだけどさ、女の子の衣装が信じられないくらい似合うし、
女性としてこれ以上ないってくらい魅力的なのよ」
ま、まりや、それ以上言わないでよ。人がいないと思って……。
「実際そこの貴子なんか、全然しゃべらないで見とれてるし……」
僕が見ると、貴子さんはうつろな目で頬を染めながらボーッとこちらを見ている。なんというか、すごい可愛らしい。
「オーラというか、気配まで似てますわね。実は本人ではなくて?」
ひーっ!! 血の気が引くーっ!! 背筋が凍るーっ!!
「ななな、何をおっしゃってるんですか!! そ、そんなわけわけ……」
僕が必死で弁解すると……。
「そうですわね。聖央の生徒が、このようなところで働くはずありませんものね」
「そうよね。しかもあの子、そういう服装するのすごい嫌がってたからね。他人の空似ね」
まりやと紫苑さんは意外にもあっさりと納得してくれた。よかった……。
「あっ、飲み物を持って参りますね」
とりあえず落ち着こう。そう思って紫苑さん達を見ながら後ずさりしてると……。
「瑞穂さん、危ない! 後ろ!」
「えっ……?」
紫苑さんの叫びに、僕はあわてて後ろを見る。しかし、何も変わった様子はなかった。
「紫苑さん! 何もないじゃない……で……」
僕がそう言って抗議しようとすると、紫苑さんとまりやがものすごい悪人顔で笑っていた。
「やっぱり、瑞穂さんでしたのね」
「ええ。紫苑さまの作戦、大当たりでしたね」
はめられたーっ!!
まずいまずいまずい……。
「しかも、私のことを『紫苑さん』と呼びましたわよね? 名乗ってもないのに……」
ううう……終わった、僕の人生……。
「えっ!? お姉さま?」
「お姉さまなのですか?」
奏ちゃんと由佳里ちゃんもそう言ってくる。しかたない、こうなったら観念しよう。
「え……ええ……そうよ」
「お姉さま……そういう衣装も、とても素敵なのですよ」
「あ、ありがとう、奏ちゃん」
うるうるした目で言われては、そう返すしかない。
「本当に……スタイルの良さを引き立てる妖艶な衣装、そしてそれに似合わぬ恥辱に頬を染める表情が、
かわいらしさを倍増させていますわ」
「ええ。この店のどのホステスよりも、女性の魅力ダントツですわね」
ガーン!!
「じょ、女性の魅力が……ダントツ……」
紫苑さんとまりやの言葉が、僕の心に痛恨のダメージを与えた。
「ほらほら瑞穂ちゃん、そこで落ち込まないの」
「そうです。私たちは褒めているのであって、イヤミを言っているのではないのですから」
いや、まりやに紫苑さん、イヤミで言ってくれた方がよっぽどダメージ少ないんだけど……。
「それにしてもお姉さまが、こんなエッチな衣装を着けてるなんて……」
由佳里ちゃんがそう言って近づいてくる。だからまじまじと見ないで……。
「ゆ、由佳里ちゃん……そんなに見ないで……恥ずかしいわ」
「ほ、ほんと紫苑さまのおっしゃる通り、すごく色っぽい……」
「だから言わないで……」
僕が反論するたび、由佳里ちゃんの顔がますます赤く染まっていく。
「あ、あの、私、ちょっとトイレに行ってきます!」
由佳里ちゃんはそう言うと、一目散にトイレに駆け込んだ。
「……由佳里ちゃん、ずっと我慢してたのかしら? そんなふうには見えなかったけど」
「そりゃそうよ。瑞穂ちゃん見て我慢できなくなったんだから」
……まりや、僕をなんだと思ってるの?
「もう、まりやって失礼ね。私は下剤?」
「……瑞穂ちゃん、そのリアクションまったくの見当外れよ」
どこがどう見当外れだっていうの?
「ねえ、まりや……」
「ああ、言っとくけど、小さい方でもないからね」
……じゃあなんだって言うの? 1人でトイレに行く理由なんて、その2つしかないじゃない。
「まあ、それはそれとして、瑞穂さんがもてなしてくれることになったみたいだから、決めちゃいましょう」
緋紗子先生が僕の疑問をよそに、話題を変えてきた。
「緋紗子先生、決めるって何を?」
「もちろん、瑞穂さんにお酌をしてもらう順番よ」
その瞬間、紫苑さんたちから拍手が上がる。
「満席の時に名前を書く紙がここにあるから、これにお酌をしてもらう順番を書き込んでいってね」
緋紗子先生がそう言うや、みんな我先にとその紙をとろうとしている。
「あ、みんな機会は均等になるように、平等に書くこと。いいわね?」
みんな一瞬うなずき、すぐに紙に名前を書く。
「……一気に15番まで埋まるなんて」
信じられない。なんでたかが僕にお酌してもらうくらいで、こんな夢中に……。
「では、まずは私からですわね」
「ええ。よろしくお願いします、貴子さん」
僕がそう言うと、貴子さんは真っ赤になる。
「え、ええ、こここ、こちらこそ……」
貴子さんは震える手で、グラスを持っている。
「じゃあ、失礼して……」
僕は瓶に入っているジュースを貴子さんのコップに注いだ。ホステスを意識しているので、
その時に手は貴子さんの肩を抱いている形になる。
「さあ、貴子さん、どうぞ」
僕がそう言うと、貴子さんはふらふらしながら……。
「わわわ、私が……おおお、お姉さまのお酌で……」
そうどもっている。鼻からはぽたぽたと赤い液体が……。
「貴子さん!」
僕はハンカチで貴子さんの鼻のあたりを優しく拭いてあげた。
「瑞穂ちゃん、ダメ!」
「ダメって、まりや、どうして?」
そう言いながらも、僕は貴子さんの鼻を拭く。と……。
「きゅうううう……」
貴子さんは顔を真っ赤にしながら気絶してしまった。グラスからは僕の注いだジュースが流れてしまっている。
「あーあ……だから言ったのに」
まりやが呆れ顔で言う。って、早く貴子さんを介抱しないと!
「貴子さんの介抱でしたら、私がいたしますわ」
「紫苑さん……」
「私の順番はまだ先ですから、ここは私に任せて、瑞穂さんは次の方のお酌をしてあげてください」
紫苑さんが笑顔で言ってくれる。ありがとう、紫苑さん。
「じゃあ、次はあたしの番ね」
「まりや……」
「いやあ……こんなエロい格好の瑞穂ちゃんにお酌をしてもらえるなんて、夢にも思わなかったよ。
やっぱ緋紗子先生についてここに来て大正解だったわ」
まりや、照れ半分に言うけど、僕から見れば不正解だよ……。
「ほらほら瑞穂ちゃん、あたしはお客さんなんだから、ブーたれた顔してないで、さっさとお酌しなさい!」
……お客だからって、そんなにえらそうに……。
「瑞穂くん、いくら幼なじみでも、ここでは従業員と客なんだから、丁寧にもてなしてあげてね」
緋紗子先生がそう耳打ちしてきた。正論なんだけど、すごく悔しく感じるのは気のせい?
「いやあ、瑞穂ちゃんのお酌で飲むと、いつもよりおいしく思えてくるわ」
「それはどうも……」
でもまりや、ビール飲む時みたいにプハーッて息吐くのやめてくれない? オヤジじゃないんだから……。
「瑞穂ちゃん、もう一杯」
「はい、どうぞ」
僕はまりやの肩を抱きながらグラスにジュースを注ぐ。
「んじゃ、お言葉に甘えて」
まりやがそう言ってジュースを飲もうとしている。そうだ! どうせサービスなら……。
「ねえまりや、私が飲ませてあげよっか」
まりやを見ながら微笑んで言う。
「うわ、瑞穂ちゃん、キザ……」
まりやはと単に顔を赤くして言った。いつもがあれだから、別人みたいに可愛い。
ていうか、いつもこうなら困ることはないんだけど……。
「じゃ、せっかくだからお願いするわ」
僕はまりやからグラスを受け取り、それをまりやの唇に当てた。
「あっ……」
そのまま、まりやの口の中にジュースを流し込む。これは初めてだから、慣れるまで手がかかるな……。
「ふう……まりや、どうだった?」
「………」
まりやは赤くなったままぼーっとしている。まりやにもこういう一面もあるんだな……ちょっと意外……。
「じゃあ、次は私の番ね」
「って、緋紗子先生まで……」
「教え子にお酌をしてもらえるなんて、教師冥利に尽きるわね」
「わかりましたよ。じゃあ、緋紗子先生、失礼しますね」
そして……。
「はあ……やっと落ち着いた……これでお姉さまと一緒に……」
「ああ、由佳里、やっと処理終わった? お疲れ」
「変な言い方しないでください! って、お姉さまと緋紗子先生、何やってるんですか?」
今までトイレにいた由佳里が帰ってくると、瑞穂が緋紗子先生にジュースを飲ませてもらっているのが見える。
「見りゃわかるでしょ? 瑞穂ちゃんにお酌してもらってんのよ」
「お酌って……」
「そこの紙に書いてある順番どおりにね」
由佳里はまりやが指差した紙を見ると……。
「あーっ!! もうこんなに書きこまれてる!! 私のいない間に、ひどい!」
由佳里は慌てて紙にいくつも自分の名前を書き込んでいく。
「……続けて書きすぎじゃない?」
「みんなして私のいない間にお姉さまを独占してるんだから、これぐらいいいじゃないですか!」
「次は奏の番なのですよ」
「じゃあ奏ちゃん、私の隣に座って」
「は、はいなのですよ……」
奏ちゃんは顔を赤くして、緊張しながら隣に来る。
「ふふっ、奏ちゃん、硬くならなくてもいいじゃない。毎日、私にしてくれてるんだから」
「あ、はいなのでずよ……」
そう言うと奏ちゃんは僕の隣に座った。顔は赤いままなんだけど……。
「じゃあ、まずは普通にお酌してあげるわね」
僕は奏ちゃんのグラスにいちごジュースを注ぎ、それを奏ちゃんは一気に飲み干す。
「お姉さまにお酌をしていただけるなんて、奏は世界一の幸せものなのですよ……」
僕がお酌したのは奏ちゃんだけじゃないんだから……嬉しいと同時に、思わず苦笑。
「もう、奏ちゃん、おおげさよ」
そして次は、奏ちゃんのグラスを持って、優しく口の中に注いでいく。
「ふにゃああああ……」
「ああっ、奏ちゃん!」
ジュースを流し込み終わると、幸せそうな表情をしたまま、奏ちゃんは気絶してしまった。
「貴子に続いて、被害者第2号ね」
「もう貴子さんの介抱も終わりましたし、次は私ですわね」
次は紫苑さんの番か。
「じゃあ紫苑さん、私の隣へ」
「はい♪」
僕は紫苑さんの持っているグラスにジュースを注ぐ。
「ふふっ、それにしても」
「それにしても?」
「瑞穂さんにお酌をしていただけるなんて、長生きはするものですわね」
満面の笑顔で言う紫苑さん。でも、そのセリフ言うには若すぎると思いますけど……。
「では、次は瑞穂さんの手で……」
「はい、かしこまりました、お客さま」
僕は紫苑さんのグラスを持って直接ジュースを口に流し込む。
「まりやさんのおっしゃるとおり、こうして飲ませていただくと、いつもよりおいしく感じますわね。
私、瑞穂さんのいらっしゃる日は、毎日ここに通うことにいたしますわ」
うっとりとした表情で言う……だから紫苑さん、勘弁してくださいってば。
「貴子さんも、だいぶ慣れてきたようですね」
「は、はい、お姉さま……」
20回目ぐらいになろうという頃、貴子さんも、やっと僕のお酌に耐えられる? ようになってきたようだ。
でも、相変わらず顔を真っ赤にしているし、鼻血も多少出るみたいだけど……。
「じゃあ、次は私が飲ませますね」
僕は貴子さんのグラスを持って流し込もうとする。今までは鼻血を噴いて気絶してしまってたけど、今度は大丈夫かな?
「んっ……んっ……」
貴子さんは耳まで真っ赤になりながら、まりやと紫苑さんが支えているおかげで、
なんとか僕の腕の中で全部飲む事が出来たみたいだ。
「はあ……はあ……やっぱり、刺激が強すぎて、心臓に悪……」
と思ったら、また幸せそうな顔でばったりと倒れてしまった。
「きゅうううう……」
これじゃ、免疫がつくのはいつになりますことやら……。
「じゃあ、次は私の番ですね」
次は由佳里ちゃんか……。
「『まだ店内にいらっしゃるお客様方、当店はただいまを持ちまして閉店させていただきます。
またのご来店、お待ちいたしております』」
と、そこへ、閉店を告げる店内放送が流れた。
「そ、そんな……」
「はい。もうおしまい。帰るわよ」
まりやがひょいと由佳里ちゃんを掴んで言う。
「ま、まりやお姉さま、1回ぐらい」
「おとなしくあきらめなさい。見苦しいわよ」
まりやは、そのまま駄々をこねる由佳里ちゃんをずるずると引きずっていった。僕もようやく肩の荷が下りて、ほっとため息。
そして帰り道、僕はみんなと一緒に帰路に着いた。
「それにしても、今日はみんな瑞穂さんにお酌してもらえて、本当によかったわね」
「ええ。思わぬ収穫でしたわ」
「緋紗子先生のおかげですね」
「今日のこと、一生忘れられませんわ」
……みんなそう幸せそうに話す。僕はくたくたに疲れたけど、みんな幸せそうな表情をしてるのを見ると、
よかったって思えるな。
エルダーの性格がしみついてるのを実感しながら、僕はそう思った。
To be continued……
「ちょっと待ってください! みんなって、私のこと忘れてませんかあ!?」
とりあえず、ここで一区切りです。
瑞穂くんのホステスの仕事がこれからどうなるのか、今回お酌をしてもらえなかった由佳里ちゃんが、瑞穂くんにしてもらえるのか?
それは、次回のお楽しみということで。
それから、オリキャラの名前の由来がわかる方、いてくださると嬉しいです。
……ところで、もうそろそろ、L鍋さんの紫苑さん視点のが書き終える頃でしょうか?
そちらも楽しみにしています。
それでは、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。
乙です。
またゆかりんはオチ担当ですか(笑)
ゆかりんにはしあわせになって欲しいけど、文章が浮かばない・・・
オ○マバー?
>>279 GJです。
近くにこんな店がなくてよかった……貢がされるだけ貢いでしまいそう。
>>281 男を演じている女を演じている男……どっちが本職かわかんなくなってきた。
>>282 >男を演じている女を演じている男……
昔読んだ少女マンガ思い出した。タイトルも作者も忘れたけど。
主人公は男で本業は学生。でも裏稼業で産業スパイをしてる。
で、裏の仕事をする時は、女装した上で「男装の麗人」を演じてた。
理由は本名などを知られない為。
彼の裏稼業を偶然知ったクラスメイトの女子があきれて曰く
「男装の麗人の正体が男だなんて、確かに誰も想像しないわよ・・・」
284 :
名無しさん@初回限定:2007/10/07(日) 19:13:04 ID:tOizYBAT0
男でありながら女を演じ、さらに女装した男を演じる。かってこれほどばかばかしい立場になった
人間はそうはいないだろう
という文がよぎった。昔読んだ本のもじりだが
>>279 乙です。
ちょうど書きあがったのを見計らったかのようなベストタイミングでした。
『心象風景』完結のドンジャラ編が書きあがったので投下します。
主人公は紫苑さまです。
前回、体力姉妹が活躍しましたので今回は出番少な目です。
ご注意
バカ話です。
この話に出てくる紫苑さまは《超人》です。
シリアス派の方、《超人》嫌いな方はご遠慮いただいたほうが賢明かと。
『心象風景3』
〜最強 ドンジャラの女編〜
***********************
恵泉火力大全B
浮遊要塞 シオン
主砲 旧エルダー砲
副砲 最年長レールガン
その他 4次元レーダー装備
老舗兵器メーカー十条の全技術力の結晶
恵泉最強の兵器でありながら、確たる任務を持たない浮遊要塞
主砲・副砲共に対地、対空どちらに於いても強力な破壊力を誇る。
狙われた相手は、逃亡か諦めるしか選択肢はない。
4次元レーダーにより色々なチャンスを逃さない。
***********************
恵泉火力大全C
自走砲 ミズホ
主砲 新エルダー砲
副砲 無し
その他 無し
見た目、主砲のみの華奢な戦闘車両。しかし、主砲は最強。
鏑木社が闇ブローカー御門と老舗メーカー十条の全面支援を受けて完成した
新エルダー砲は対地、対空どちらに於いても最強の破壊力を誇る。
あらゆる装甲、外壁を貫通する新エルダー砲は常に周りの関心を集め、
一部の人たちの間で、紛争の種ともなっている。
***********************
設定は貴子ルート・紫苑視点
放課後、華道部の部室から退出しようとした紫苑は香原茅乃に話しかけられた。
「紫苑さまは甘いものはお好きでしょうか?」
「はい。お菓子類は好きですわ」
「良かった。ではこれをどうぞ」
そう云って渡されたのは、駅前デパートで今、開催しているパティシエコンクールの招待券だった。
チケットが2枚。
駅前デパート催事場で国内の有名なパティシエが数人集まって、自慢の腕を振るったスイーツの試食会を行なっている。
「これは…」
「親戚が駅前でパートの役員をしておりまして頂きました。試食会が本日、最終日なのですが私は
ちょっと用事がありまして行けそうにありません。もし宜しかったらどうか紫苑さまが行って頂けませんでしょうか」
チケットには、4名様まで御招待と書いてある。
「御家族か他の親しい方にお譲りになられたら如何ですか?」
「ふふふ。家族は全員、それぞれチケットを持っているんです。そして友人というのでしたら、そう云わせていただくのも
もったいないのですが紫苑さまに差し上げたいのです」
「…そうですか。有難うございます。喜んでいただきますわ」
これまで親しく接している友人が少なかった紫苑は、このように面と向かって友人であると云われると
感激で胸がいっぱいになってしまった。
(本当にありがとう。茅乃さん)
紫苑は2枚あるチケットの内1枚を茅乃に返した。
「1枚お返しいたしますわ。これで4人誘えますので、これは他の方にお渡しください」
「わかりました」
(さて誰を誘いましょうか)
ウキウキとした気分で教室に戻る紫苑。
昨年と違い、今年は瑞穂のお陰で親しい友人が何人もできた。
その内の誰を誘おうか、そう考えると楽しい気分になってくる。
教室に戻ってみると人がまばらだった。
(確か瑞穂さんは…)
昼に瑞穂が話していたことを思い出す。
(多分、貴子さんと出かけることになるだろうとおっしゃってました。おそらくデートでしょうか)
教室のクラスメートを誘おうかと考えたが、それを諦める。
昨年までと比べて確かに今年は皆と親しくしてもらっているが、それでも『クラスメート』の域であって『親しい友』ではない。
紫苑から誘われても、戸惑う人が多いだろう。
(まりやさんや奏ちゃんはどうしてるかしら)
早速、まりやの3−Bの教室に行ってみる。
まりやは既に下校していた。
続いて奏の1-Eの教室に行ってみるとやはりいない。
クラスの子に聞くと、本日は演劇部がお休みなので下校したという。
(では、寮に行ってみましょうか)
せっかくのチケットを無駄にするつもりは毛頭ない。
友人と思って渡されたものであるなら尚更のこと。
しかし、こうやって誘う相手を探しているのは勿体無いからという考えからではない。
このようなイベントに一人で出かける、その事に寂しさを強く感じてしまうからだった。
(私という人間にはつくづく友人が少ないのが思い知らされます)
軽い自己嫌悪に陥ってしまう紫苑。
寮の前までやって来た紫苑は、玄関の中から何やら叫び声が聞こえてくるのに気がついた。
「ほらー、早く靴履いて!駅前に先回りするのよ!最初の一呼吸で300メートル行くよ!ヘモグロビンを総動員させな!」
紫苑の目の前で、バン!と勢い良く玄関ドアが開かれると、そこから黒い一塊が凄い勢いで飛び出していった。
何やら旗のように引っ張られてヒラヒラしていたのは奏だったようだが…。
「……あ」
紫苑が声をかける頃には、その姿は小さな点になっていた。
「………」
念のため、寮の中を覗いてみたがやはり誰も居ないようである。
「仕方ありません。駅に向かったようですし、私も行って見ましょう」
(寮の皆さんはいつも楽しそうですわね。そう云えば…)
瑞穂が云っていたことを思い出す。
(瑞穂さんも駅前の喫茶店と云っていた様な…)
他に当てもなし、とりあえずまりやたちの後を追いかけることにする。
テクテク歩いていると、はるか向こう約50メートル先の校門のところに、圭と美智子が並んで歩いている姿が見えた。
豆粒のように小さく見えるその姿は、普通の人には判別不可能だろう。
しかし、紫苑にはわかる。
紫苑はその人が発するオーラを感じることが出来るのだ。
度重なる入院生活で身に着けた特殊能力だった。
どうやら、二人揃って下校するようだ。
(演劇部は今日はお休みと云ってましたっけ。あのお二人をお誘いしようかしら)
そう思った瞬間だった。
美智子が後ろを振り向いて、紫苑を見る。
これほどの距離が開いているにも関わらず、その視線に紫苑は威圧感を感じた。
(今は二人っきりの時間なんですよ。し・お・ん・さ・ま!)
了解して、紫苑は歩くペースを少し緩め、二人との距離をもう少し開けるようにした。
何故だか判らないが、美智子も紫苑と同じくオーラを感じることが出来るらしい。
ただ、美智子の場合はもっと攻撃的で『氣』と呼んでいるらしいが。
(不思議な人です。美智子さんは…)
自分のことは棚に上げて、そう考える紫苑。
今のような超長距離アイコンタクトを行なえる人物は、学院内で紫苑と美智子の二人だけである。
人間以外でなら、狼、鷹などが可能であると思われる…。
仕方ないので、先ほどのまりやたちのものと思われる残留思念を追いかけて行くことにする。
通常の人間には不可能。
だが紫苑にとってはごく普通のことである。
(まりやさん、なんだか興奮なさってたようですね。思念が攻撃的ですわ)
微かに残っている思念の後を追って、裏道をテクテクと歩いていく紫苑。
こうした思念を感知することは人間は紫苑などの例外を除いてほとんどの人が無理だが、
例えば野良犬や野良猫などの気配に敏感な動物にも探知できるらしい。
今も、裏道の塀の上でまりやの攻撃的な残留思念に感化されたのだろう。
野良猫が2匹、毛を逆立てて唸りあっている。
下手に手を出すと思い切り引っかかれそうだ。
「猫さん」
恐れる風も無く、紫苑が2匹の猫に近づく。
猫たちは動きをピタッと止めて、紫苑を見る。
「ケンカは止めてくださいね。残留思念をかき回されると、後を追えなくなってしまいますから」
優しく微笑みながら猫に話しかける紫苑。
傍目には猫に話しかける少女という微笑ましい風景である。
しかし…
話しかけられた猫は、
「フギャ!」
とひと声鳴いて塀の向こうへ転げ落ちた。
もう一匹の猫も体を硬直させて身動きひとつしない。
上空をカラスが飛んでいる。
紫苑が歩き去ってから、2匹の猫たちは大慌てで逃げ出した。
駅前までやってくると、人通りが激しくて残留思念は途切れてしまっていた。
(どうしましょうか…)
人通りが多い駅の近くの小さな公園。
公園内で紐をつけずに犬を放し飼いにしている人がいた。
雑種であろうその犬は、結構体も大きく、時々、激しく吠えては近くの人を驚かせていた。
飼い主らしき男性は、近くのベンチに座ってマンガを読んでいる。犬が吠えようとお構いなし。
手にビニール袋を持っていないことから、糞の後始末などもサラサラする気もないのだろう。
もし犬が通行人に噛み付くようなことがあったらどうするのか。
紫苑が歩いて来た。
犬が吠えかかろうとして、紫苑と目が合った。
「何か御用でしょうか?」
ビクッ!
硬直する犬。
上空でカラスが鳴いている。
犬がゴロンと腹ばいに寝転がってお腹を見せる。
飼い主の男は知らん顔でマンガを読み続けている。
寝転がった犬の横を、紫苑はそのまま何事もなく通り過ぎていく。
公園の前の道路はバスの停留所があった。
停留所に人が並んで順番待ちをしており、その列には恵泉の生徒も数人いた。
そこへチンピラがひとりやって来て、強引に先頭に割り込んだ。
恵泉の女子生徒が無謀にもそれを注意し逆切れしたチンピラに凄まれている。
紫苑が歩いてきた。
「そのような行為はお止めになったら如何でしょうか」
「紫苑お姉さま」
「なんじゃ、お前!」
「人として恥ずかしくない行動をなさったほうが宜しいでしょう。私たちの行動は常に天に見られていますよ」
「ああん、何云ってやがる」
チンピラが紫苑のほうへ近寄ってくる。
美貌の紫苑に興味を引かれたようだ。
「人の行動を散々、貶してくれてるがこの落とし前はつけてくれるんだろうな」
「落とし前と云われましても…。ただそういう事をしていては、いつか天譴が下ってしまいますよと忠告して差し上げただけです」
さっきまで絡まれていた女子生徒は心配そうに紫苑を見つめている。
その生徒に紫苑は心配ないという風に微笑んでみせる。
「バチが当たるって?そりゃ面白いな。じゃ早速当てて見せてくれ、そのバチを。ただし、なんも無かったらちょっと付き合ってもらうぜ」
下種なニヤ笑いを浮かべるチンピラ。
「私は一介の学生ですのでそう云われても困りますが…」
ちっとも困ったような様子でなくそう云う紫苑。
カアーッカアーッ。カラスが鳴いている。
「例えば…あの犬が…」
公園の中、かなり離れたところに居る先ほどの犬を指差す。
犬がビクッとこちらに顔を向けた。
「貴方のところにやって来て…」
トテテテッ
犬が走ってくる。
「脛を噛むとか…」
ガブッ!
「痛ッてエェー!」
脛を押さえて飛び上がるチンピラ。
「アラ…」
「ッテテ…なんだこりゃ!テメ、何しやがった」
「何をしたと云われても…。たまたま犬が噛み付いたのでしょう。早速バチがあたりましたわね」
「ふ、ふざけやがって」
顔を赤くしてチンピラが怒り出す。
そして紫苑を掴もうと手を伸ばした。
「・・・そんなことをなさってるとまたバチがあたりますよ」
ガブッ!
「イッテー!」
さっきと全く同じところを噛まれて、飛び上がるチンピラ。
「ほら、またバチがあたりました」
「・・・・・・・・・」
脛を押さえて蹲るチンピラ。
「ちなみに犬の飼い主はあの方です」
公園のベンチでマンガを夢中になって読んでいる男性を指差した。
「く、くそっ」
紫苑を相手にしていて、なんだか嫌な予感がしたのだろう。
チンピラはもう、紫苑に構おうとせず、足を痛そうにしながら飼い主のほうへ歩いていった。
飼い主は、先ほどからのことに全く気付かずマンガを読んで笑っている。
そこへチンピラが近づいていく。
チンピラが去って、
「紫苑さま。有難うございました」
列に並んでいた数人の恵泉生徒たちが、紫苑を囲んで礼を云った。
他のサラリーマン風の人や一般の人たちが目を丸くしてこの様子を見ていた。
しかし恵泉ではごく当たり前の風景だった。
「さすがは紫苑さまです。感激いたしました」
「いいえ。これも主のご加護でしょう」
カアーッカアーッ!
「皆さん。貴女方のなさったことは正しいことかも知れませんが、無謀なことはお止しになることです。
今後は考えて行動なさってくださいね」
「はい。申し訳ありません」
窘める紫苑の言葉に素直に頷く女生徒たち。
「ところで、私、3-Bのまりやさんを探しているのですが、ご存じないでしょうか?」
「えっと、陸上部部長の御門まりやさまですか。見ませんでしたが」
「そうですか」
「ただ、お姉さまと厳島会長でしたらこの先の喫茶店の近くでお見かけしました」
やがてバスがやって来て、女生徒たちは全員乗り込んで帰っていった。
紫苑もそれを見送ってから、その喫茶店に向かってみることにした。
(瑞穂さんと貴子さんがお二人ということはデートなさっているのでしょうか。もしそうなら、声をかけないでおきましょう)
公園の中を覗いてみると、飼い主がチンピラに胸倉を掴みあげられていた。
喫茶店[プラチナ]の前までやって来た。
おそらく、中に居るのだろうと思われるが、扉のガラス戸は濃いスモーク色で中が良く見えなくなっている。
(とりあえず確認してみましょう)
ドアの外から店内のオーラを探ってみる。
ドアを凝視する紫苑。
サーモグラフィのように店内の人間のオーラが見えてくる。
人間離れした能力。
紫苑にとってはごく普通のことである。
いくつものオーラがうっすらと浮かび上がってくる中、ひときわ目立った光が見える。
(強い金色のオーラ、瑞穂さんですわね。その近くの青い色は貴子さん。やはりデートのようですわ。
野暮は止めておきましょう)
瑞穂たちに声をかけるのは止めにする紫苑。
紫苑自身、瑞穂個人に対しては色々と複雑な感情を持っている。
しかし、それと同じくらい周りに居る友人たちに対しても大切にしたいという思いも持っている。
瑞穂と貴子が幸せであるなら、紫苑にとって何も異存はない。
店内に赤いオーラが見える。
(あら?これはまりやさんですね。何を怒っているのでしょう?)
興奮しているらしく、刺々しい雰囲気を感じる。
その横に小さなオーラが二つ。奏と由佳里である。
(やっぱり。寮の皆さん一緒に食べに来ていらしたのですね)
さて…と紫苑は考え込んだ。
紫苑はパティシエコンクールに行く為に、誰か一緒に誘う相手を探してここまできた。
もし皆が団欒を楽しんでいるなら、無理に誘ってそれを壊すようなことはしたくない。
紫苑がその団欒に混じりたければ、そのまま喫茶店に入って行けば良い。
だけど、茅乃に貰ったチケットを無駄にするつもりは紫苑にはない。
(どうしましょうか)
ドアをじっと見つめたまま考え込む。
(仕方ありません。一人で参りましょう)
少し寂しいが、それも仕方ない。
きびすを返して、駅前に歩き始めた紫苑。
その時、喫茶店の中からまりやが飛び出してきた。
「紫苑さまー!こっちこっち!」
振り返るとドアの前でまりやが手を振っていた。
まりやに呼び止められるとは予想外だった。
「あら、まりやさん」
「紫苑さま、お帰りの途中ですか?」
「いいえ、駅前デパートに行こうとしてたところです」
「そうですか。ちょっと寄っていきませんか?皆揃ってますよ」
「…どうしましょうか」
そう云いながら紫苑はまりやの顔を見た。
目が輝いている。期待に頬が緩んでいる。
これはまりやが何かを企んでいる時によく見る表情である。
(まりやさん、何かを企んで私を呼び止めましたね)
「では、ちょっとだけ寄っていきましょうか」
「やったあ!」
まりやの目が益々、輝く。
(やっぱり!)
この瞬間、紫苑はまりやが何か悪巧みを企んでいたら即座につぶして、誰か一人を貰っていこうと決めた。
(出来れば瑞穂さんか奏ちゃんが良いのですが)
店内に入ると、奏と由佳里がニコニコ顔で挨拶してくる。
まりやたち3人は入り口近くのテーブル、瑞穂と貴子が一番奥のテーブルに座っていた。
貴子は何故か盛大に口から水を噴き出している。瑞穂はこちらに背を向けて座っていて、
貴子の噴き出した水を顔面で受けていた。
「瑞穂さんたちは別のテーブルなのですね」
「ええ。あの二人は本日はデートだそうです。あたしたちは邪魔者なんですって」
まりやが棘のある云い方をする。
「そうですか」
(皆で団欒していたわけではないのですね)
紫苑にとっては好都合である。悪巧みがあった場合、心置きなく叩き潰せる。
「見てください。貴子の憎たらしい役満笑顔」
見ると貴子は真っ青な顔でガタガタ震えている。
とても笑顔には見えない。
(???)
当の原因である紫苑には、貴子が震えている理由が分からない。
「役満笑顔…ですか。役満というのは何でしょう?」
「知りませんか?麻雀の上がり手です」
「麻雀?…ああ、家族でするゲームですね。私、知らなくて。アンパンマンのドンジャラなら前にしたことがあります」
「そうですか。では今度、寮で瑞穂ちゃんも交えて麻雀を一緒にしましょう。ドンジャラも麻雀も基本は同じですから」
「でも私、麻雀の役とか知りませんし」
「お教えします。紫苑さまなら直ぐに覚えられますよ。普通はお金を…いや、ゴホン、色々と賭けてするんです。
白熱しますわよ〜。お小遣いを賭けてしましょうか?紫苑さまからかっぱぐのも刺激的で良いですわね〜。
そうだ、勝った人は皆に何か命令できるというのはどうでしょうか!」
よほど自信があるのか、紫苑相手にかっぱぐつもりで話をしているまりや。
「それは楽しみです。是非、お願いしますね。ふふふ、以前、家でドンジャラをした時は私、一人勝ちでしたのよ」
「紫苑さま、強そうですものね。でもあたしも強いですよ〜。友人からはダブリーのまりやと云われてますから!
覚悟してくださいよ、紫苑さま!」
※解説
ダブリー……ダブルリーチの略。第一自模の時点で聴牌(あと一枚でアガリの状態)していた時に立直するとつく役。
ダブルリーチの確率は約1200分の1と云われている。狙ってつく役ではなく出来るかどうかは運次第。
「何のことか判りませんがさすがはまりやさん。怖そうですね。ふふ、私の場合、何故だか知りませんが、
欲しいと思った絵柄が必ず入ってきますの。それはもう絶対に!」
「そ、そうですか」
「3回に1回くらいは初めから綺麗に絵柄が揃っていますしね」
「・・・・・・・・・」
※解説
初めから絵柄が揃っている……天和(テンホー)という役満。天和ができる確立は約30万分の1と云われている。
出来るかどうかは運次第で云うまでもなくイカサマ以外に狙って作れる役ではない。
「楽しみですね」
「・・・・・・ソウデスネ」
まりやの口数が急に少なくなってしまった。
「まりやお姉さま、顔色が悪いですがどうしました?」
由佳里が話しかけた。
「…うるさい!」
「まりやお姉さま。皆揃っての麻雀大会はいつにしましょうか。楽しみですね」
「…黙れ!」
「え〜、まりやお姉さまってば〜。いつにしま・・・・・・ぐえっ!?」
まりやが由佳里をプロレス技のネックハンギングツリー(別名、人間絞首刑台)で高々と締め上げた。
「ま、麻雀の話はまた今度。紫苑さま、パフェ食べませんか」
ぐったりした由佳里を横に放り出して、まりやがかなり強引に話題を変更させる。
「巨大パフェを注文したところなんです。紫苑さまも食べていってください」
奏も是非と勧める。
「そう云われましても…」
これからスイーツの試食会に行くつもりである。
「巨大パフェを二つ注文したんですよ。あ、このテーブルだと手狭かもしれませんから、紫苑さまは瑞穂ちゃんたちの
テーブルでも良いですよ。瑞穂ちゃんたちも喜びますわ、きっと」
そう云って怪しい笑いを浮かべるまりや。
(なるほど。まりやさんは貴子さんに嫉妬してらっしゃるのですね)
まりやの心中を見抜いて、心の中でニヤリと笑う紫苑。
(私を使って、瑞穂さんたちのデートを邪魔しようとしてらっしゃるのですね。ふふふ、確かにそれも面白そうではありますが)
でも…と紫苑は考える。
紫苑にはまりやの気持ちがわかる。
紫苑も学院で瑞穂と貴子が仲良く話をしているのを見ていると、時々、心中波立つのを感じるときがある。
幼い頃から瑞穂を独占して来たまりやなら、なおさらそんな気分になることも多いだろう。
でも、仕方が無いのである。
瑞穂は貴子を選んだのだから。
なにも考えずに、瑞穂に悪戯をすると云うのならば、気付かないフリをしてまりやの誘いに乗っても良い。
でも、嫉妬に駆られて瑞穂と貴子のデートの邪魔をすると云うのは、
(何の益にもなりませんわ。何より、まりやさんがあのお二人に疎まれる元になりかねません)
もとより、まりやの企みを潰すつもりの紫苑である。
まりやが紫苑に瑞穂のテーブルに行くように勧めるのを聞いて、顔色を曇らせた奏と由佳里に気付いた。
(二人とも、まりやさんに力ずくで連れてこられた感じですわね。では全員まとめて私のほうにお付き合いしてもらうことにしましょう)
「いけませんね、まりやさん」
「えっ!?」
「まりやさん。ここはもしかして最近、学院で噂になっている喫茶店ではないですか?」
まりやの顔色が変わる。
「は、はい。そうですが…」
「では瑞穂さんたちが座ってらっしゃる席があの噂のジンクスの席ですね。瑞穂さんたちはジンクスにあやかりに来たのでは
ないのでしょうか」
「………」
「まりやさん。お気持ちは判りますが、お二人の邪魔をするのはよくありませんわね。まりやさんにとっても」
紫苑にダメだしされるとは想定外だったのかもしれない。
赤い顔をしてまりやは黙り込んでしまった。
ガックリと膝をついてわなわな震えている。
(ふふふ、ちょっと可哀相な気もしますが…。さて、と)
紫苑は懐からチケットを取り出して、奏と由佳里に見せた。
「今、駅前デパートでパティシエコンクールが開催されているのを知っていますか?
この招待券で好きなだけスイーツの試食が出来るんですよ」
「「わあ〜」」
奏と由佳里が声を上げた。
「チケット1枚で4名までご招待なんですが、もし宜しければ皆さんご一緒に参りませんか?」
この喫茶店のパフェはいつでも食べられるが、有名パティシエの自慢のスイーツが食べられるのは、今日だけである。
「まりやさん、憂さ晴らしに極上スイーツのやけ食いというのも宜しいんじゃないですか?」
この紫苑の言葉に、まりやが顔を上げた。
まりや自身も、恐らく、紫苑に止められてデートの邪魔をすることの不毛さに気がついたのだろう。
「…そうですね」
ここは腹いっぱい、スイーツを食い倒すかと思ったとき、
「レジェンド・ツリー・パフェお待たせしました」
巨大なパフェが2つやって来た。
デカい!
器がドンブリ鉢のようである。
到底、ひとりで食べきれるような量ではない。
さすがの紫苑もこの量を見て目を丸くする。
(これはいけませんね。ぐずぐずしていると私もこのパフェを片付けるのを手伝わされそうです)
すぐさま作戦変更して、奏だけを攫っていくことにする。
紫苑は急いで奏を小脇に抱えると無情にも、
「それでは、私と奏ちゃんは先に駅前デパートに行っておりますので、もし宜しければあとからでもいらっしゃってくださいね」
そう云って、慌てて紫苑を引きとめようとするまりやと由佳里を置いて喫茶店から外に出た。
「ま、まりやお姉さま〜、由佳里ちゃ〜ん。御免なさいなのですよ〜」
「し、紫苑お姉さま。苦しいのですよ〜」
暫く歩いていると、小脇に抱えた奏が訴えた。
「あら、御免なさい。奏ちゃん。うっかりしてましたわ」
奏を地面に下ろす。
「奏ちゃんはちっちゃくて軽いから、意識せずに持ち運んでしまうわね」
「奏はカバンではないのですよ〜」
カア〜ッカア〜ッ!
先ほどの公園にやって来た。
ベンチで男がひとり、真っ白に燃え尽きて座り込んでいた。
先ほどの飼い主のようである。
紫苑と奏が公園の中を横切っていると、男の足元に居た犬が駆け寄ってきて、紫苑の足元で
ゴロンと横になってお腹を見せて寝転んだ。
「紫苑お姉さま。犬が服従のポーズを取っているのですよ」
「きっと、弱虫の犬なんでしょうね」
「ベンチの人、真っ白に燃え尽きているのですよ」
「きっと、怖い目に遭ったのでしょうね」
「カラスがたくさん飛んでいるのですよ」
「きっと、餌を探しているのでしょうね」
紫苑と奏の後を数羽のカラスがついて来る。
奏が時々、怖そうに上空のカラスを振り返っていたが駅前デパートの前まで来たときに、カラスたちがギャーギャー
と鳴きながら、一斉に四方に散って行ってしまった。
「……何故ここに?」
首をかしげてデパートを見上げる紫苑。
「紫苑お姉さま。カラスたちが急に逃げて行ってしまったのですよ〜。如何したのでしょう?」
「きっとこの近くに鷹がいるのでしょうね」
「た、鷹がいるのですか!?怖いのですよ〜」
「大丈夫。うふふ。きっと奏ちゃんには優しい鷹ですよ」
デパートの中に入り、エレベーターでコンテスト試食会が行われている最上階の催事場へ向かう。
入り口でチケットを見せて、会場の中に入ると広い会場の割には少なめの客数だった。
恐らく中に入れるのは、プレス関係者とデパート関係者、招待客だけなのだろう。
「混んでいないから落ち着いてまわる事ができますね」
あちこちのコーナーに置かれたテーブルの上には各種様々なスイーツがバイキング形式で並べられている。
入場者はそれぞれを好きなように味見してまわり、気に入ったスイーツがあればそのコーナーのテーブルにある
投票用紙に一票投じて行くようになっている。
「紫苑お姉さま、あのザッハトルテを食べたいのですよ〜。あっちのタルトも美味しそうなのですよ〜」
「ふふふ、奏ちゃん。慌てなくてもお菓子は逃げないわよ。ゆっくりと好きなだけ回りましょう」
はしゃぐ奏を嬉しそうに見つめる紫苑。
「由佳里ちゃんやまりやお姉さまも一緒だったら良かったのです」
「そうね。最初から誘えていれば良かったのですけど」
後から来るようには云ったが、あの巨大パフェを食べた後ではとても来る気にはならないだろう。
(まりやさんの自業自得とは云え少し可哀想だったでしょうか)
二人であちらこちらのテーブルを楽しく回っていると、
「奏、楽しそうね」
声をかけて来る人物がいた。
見るとそこにいたのは圭だった。
「ぶ、部長さん!何故ここにいるのですか〜!?」
「招待券があるからに決まっておろう。失敬な奴め」
そう云って懐から取り出したチケットをピラピラと振って見せる。
「いえ、そうじゃないのです。あ、先ほど紫苑お姉さまが云ってらっしゃった鷹というのは部長さんの事だったのですか?」
「ふふ違うわよ。奏ちゃん。圭さんはタカ無しよ。鷹は別の人」
だがその圭も到底、小鳥ではありえない。
鷹は圭の隣にいた。
高根美智子…猛禽類である。
「圭さんが華道部の部長さんにチケットを頂いたんですよ」
美智子の言葉に圭が頷いた。
「今日までだからもったいないって」
紫苑には圭と茅乃の組み合わせは、ちょっと意外な気がしたので尋ねてみる。
「圭さんは茅乃さんとお付き合いがあったのですか?」
「勿論です、紫苑さま。同じ文科系クラブの部長同士ですから」
(そう云われればその通りですわね)
「良いゆ・う・じ・ん付き合いをして頂いてるんですよね、圭さん」
ニコニコ顔で美智子が云う。
「…まあね」
嫉妬深い美智子は、自分以外親友と呼べるほどの付き合いを圭に許さないだろう。
「チケットを頂いたときに、茅乃さんから聞いてましたから紫苑さまがここに来られる事は知ってました」
「そうだったのですか。何故かデパートに入るときに美智子さんがいらっしゃるような気がしたんです」
(気がしたのではなく確信だったのですけどね)
「奏ちゃんが嬉しそうに食べる姿は、とても可愛らしいですね。見ていてこっちが楽しくなるくらい」
「そうでしょう。でも奏ちゃんは私のものですからお取りにならないでくださいね」
そう云って紫苑はぎゅっと奏を抱きしめる。
「奏。可愛らしいだけでは動作は演劇部員として不足よ」
「えっ!?」
圭のダメ出しに戸惑う奏。
「ナチュラルに喜ぶだけじゃなくて演技を入れなさい」
「演技なのですか?」
「例えばこういう風に…」
圭は奏を連れて人気のない和菓子のコーナーに行くとそこにあったどら焼きをひとつ口にした。
そして実際に演技をしてみせる。
「!!!こ、これはあぁっ!甘すぎず、しかも程よい酸味!な、中に使っているのは一体…!クリーム!!
そうか!生クリームを使っているのか。上質の小倉あんと極上生クリームのベストマッチ!両者が口の中で
渾然一体となって奏でるベストハーモニー!……はっ!これは宇宙!ひとつの小宇宙かっ!いいや、違う!
和菓子のビッグバンだああっ!」
大げさな身振り手振りで、お菓子の感想を云う圭。
目を丸くしている奏。
周りの客たちも、なんだなんだという風に圭を見始めている。
「ま、こんな感じね」
「なんだか、どっかで見たような台詞なのですよ〜」
「いいのよ、細かいことは気にしない。さ、奏もやってみなさい。今日は特別にここで演技指導をつけてあげよう」
そう云われて困った表情の奏だが、どら焼きの横に置いてあるこれもまた、人気のなさそうな団子をひとつ取ると
パクリと口に入れた。
「!!!」
そして満面の笑み。
「お、美味しいのです。香りがとても良いのですよ〜」
そんな奏の表情に、二人を見ていた周りの客たちの顔も自然と笑顔になる。
なんだか和菓子コーナーの周りに客が集まってきた。
「うん。悪くはないわ。でもインパクトが足りない。もっと強烈にアピールしなさい。例えば…」
そう云って、圭も団子をひとつ取ると再び口に入れた。
「・・・・・・!!」
そして体が小さく、ブルブルと震え始めた。
一体何事かと、固唾を呑んで見守る奏と観客たち。
「…な、なんちゅう…なんちゅうもんを食わせてくれたんや。なんちゅうもんを・・・こんなうまいもんは食べたことはない。
口に広がるこの香り、よもぎ…よもぎやな。長いこと忘れ取ったわ。この味わい。日本人なら誰もが懐かしく感じる
この感触。しかもこの味は砂糖を使ってないな。果糖か?なんか力が沸いてくる気がするわ」
目を瞑りながらムシャムシャと味を吟味する圭。
なんだか今にも涙を流しそうな演技である。
「…何故、関西弁?これもまたどっかで見たような台詞なのですよ〜」
目を丸くする奏。
周りの客たちは、次々と団子を手に取っている。
和菓子のコーナーに人がどんどん寄って来て、人だかりが出来始めていた。
そんな二人の様子を、離れたところから楽しそうに眺めている紫苑と美智子。
「紫苑さま。瑞穂さんはどうしたんですか?お誘いしなかったのですか?」
「ええ。瑞穂さんは本日、貴子さんとデートですの。お二人のお邪魔になるようなことはしたくありません」
「そうでしたか。でも、紫苑さまがお誘いになったら、お二人もきっと喜んだと思うのですが。
瑞穂さんもこの場にいたら、きっともっと楽しいと思いません?」
「そうですね。きっと楽しいと思います。とても残念です」
その時、紫苑の携帯の着メロが鳴った。
ピッ!
「はい、もしもし…。まあ!そうですか。わかりました」
携帯で話す紫苑の表情がたちまち明るくなった。
電話は瑞穂からだった。
喫茶店を出るときに、半死半生の由佳里から紫苑と奏がデパートにいることを聞いてやって来たのだ。
会場に入る為にはチケットがいる。
「私、入り口まで瑞穂さんたちを迎えに行ってきますね」
嬉しそうな表情の紫苑。
十条紫苑、欲しいと思った絵柄の牌は必ず手に入れる最強のドンジャラ雀士である。
〜えぴろーぐ〜
教室にて昼休み、
「あっ、紫苑さまだ。じゃ、あたし自分の教室に帰るから!」
瑞穂とおしゃべりをしていたまりやは、紫苑がこちらに近づいてくるのをみると慌てて帰っていった。
「まりや!?…行っちゃった」
「あら、またまりやさん行っちゃいましたか」
「ええ。どうしたんでしょう?」
ここ数日、まりやは紫苑の顔を見ると慌てて逃げ出していた。
「さあ?私もよく分からないのです。私、まりやさんに嫌われてしまったのでしょうか?」
「まさか。まりやは紫苑さんを嫌ったりしませんよ」
「前に皆で麻雀大会をしましょうと話したことがあって、いつしましょうかと先日云ったら…」
首をかしげる紫苑。
「そうだ。今日の放課後、一緒に寮に来ませんか?まりやを捕まえて、麻雀でもしながらおしゃべりしましょう」
「それは良いですね。瑞穂さん、私、麻雀を良く知りませんので教えてくださいね」
「簡単ですから紫苑さんなら直ぐに覚えられますよ。慣れたら何か罰ゲームでも賭けてやりましょうか」
Fin
お粗末さまでした。
途中、この板がサーバーダウン(?)したときにはちょっと焦りました。
これでとりあえず、完結です。
いままで私の話に出てきた紫苑さまの無敵ぶりの理由は実は超人だからという…。
理由になっていませんか…。
何だか力関係を示した話になってしまいましたが。
貴子<まりや<<(超えられない壁)<<紫苑
私の中ではこんな感じでしょうか。
あくまで「私の中」での事ですのでお怒りにならずにお許しを。
凄すぎるぜ、紫苑さま!
サーバーも治してしまうとは!
なんという無敵超人!!
GJ!
紫苑さま良い超人っぷりですねw
今度は紫苑さまと美智子さんとの頂上決戦も見てみたいですw
乙でした!
GJ!
「圭さんはタカ無し」で不覚にも吹いたw
紫苑さま……超人というよりもはや単に人外だt(ry
妖怪・髪長姫
GJ!
ひとりだけ強さのパラメターが飛びぬけてるww
超人 超人 ぼくらの 紫苑さ〜ん♪
(歌:水木一郎)
>>280 >>282 ありがとうございます。
>>281 説明できませんでしたが、「デメーテル」はそれとキャバクラの中間です。
ちゃんとモノホンの女性ホステスもいますよ。(女性は全員バニー姿です)
>>307 またしてもGJです!
そんな思惑があったんですね(笑)
でも、由佳里ちゃんだけは……。
以前にも書きましたが、次回作では、由佳里ちゃんにも幸せを……。
別に由佳里ルートの由佳里ちゃんメインで、瑞穂くんとラブラブのSSを書けとは言いませんが、
少しぐらいはいい思いをさせて終わらせてあげてもいいんじゃないかな……と思いました。
生意気に何度も口出ししてすみません。
それでは、次回作も期待しています。
怖っ!
嵐を呼ぶ代理さんの後編、書きあがりましたので、投下させていただきます。
「瑞穂さん、昨日はいい体験をさせていただきました。おかげで、心身ともにかなりのリフレッシュができましたわ」
「紫苑さん……その話はしないでください」
あれから次の日の昼休み、僕と紫苑さんは昨日の接客の話をしながら昼食を食べていた。そこへ……。
「あの、お姉さま……」
「どうしたの?」
見知らぬ女生徒がジュースと紙コップを持って僕に話しかけてきた。
「私にお酌をしてください!」
「へっ……!?」
〜嵐を呼ぶ代理さん 後編〜
「お酌って……どうして?」
「父から聞いたんです! お姉さまらしい人が、近くのパブでアルバイトをしていたって!
私にもしてほしいですけど、そこは18歳未満立入禁止らしいですから……」
昨日のこと、もう話題になってるのか……早過ぎない?
「なるほど。瑞穂さんのお酌は絶品ですものね」
「し、紫苑さん!?」
その娘と紫苑さんの話を聞いて、食堂にいた大勢の生徒が反応する。
「それ本当なんですか!?」
「紫苑さま、本当にお姉さまにお酌を?」
「私もぜひお姉さまに……」
口々にそういったかと思うと、みんないっせいに紙コップを買って行列を作った。
「じゃ、じゃあ、順番にね。まずはあなたから……」
昨日みたいにしていては、この人数相手に昼休みだけでは間に合わないので、単純に1人1回だけお酌をしてあげるだけにする。
「はい、どうぞ」
女生徒の肩を抱き、ジュースを紙コップに注いで、手を添えて一緒に口まで運んであげる。
「んっ……」
その女生徒はおいしそうにジュースを飲んだ。そして……。
「ああ……お姉さまのお酌で飲ませていただけるなんて……」
そのまま、恍惚の表情で気絶した。そしてその次は……。
「ああ……お姉さまあ……」
「ちょっと、何これ!」
そして、数人のお酌をした後、まりやが奏ちゃんと由佳里ちゃんを連れて食堂まで来た。
「ああ、まりやさん、みなさん瑞穂さんにお酌をしていただいて、それでこうなりましたの」
紫苑さんは、僕がお酌をした後で気絶した女生徒たちを指差す。
「大変じゃない! 早く保健室に運ばないと! 由佳里、奏ちゃん、手伝って!」
まりやが2人に声をかける。
「かしこまりましたのですよ!」
「お姉さまにお酌……いいなあ」
奏ちゃんはすぐに反応して手伝いにかかるけど、由佳里ちゃんはうらやましそうにしてるだけだった。
「由佳里! 何やってんのよ! 早く運ぶわよ!」
「で、でも、その前に私もお酌……」
言おうとするや、まりやは由佳里ちゃんの頭をこづく。
「あたしたちは昨日デメーテルで瑞穂ちゃんにたっぷりしてもらったでしょうが!!」
「あたた……まりやお姉さま……私は1回もしてもらって……」
「ほらほら、口を動かす暇があったら手を動かす! ボーッとしてたら仕事はたまる一方なんだから!」
「はあい……」
由佳里ちゃんは渋々ながらも気絶したみんなを運ぶのを手伝いにかかる。
よかった。倒れたみんなは、これでなんとかなりそうだ……。
「うええええ……」
女性と女装した男性のホステスが接客するパブ、デメーテルに代理で入ってから2週間、僕は、心身ともに疲れ果てていた。
「瑞穂ちゃん、今日もゾンビみたいね」
「……当たり前だよ。バイトは結局ああなってしまったし、受験勉強は空いてる時間を見つけて全部回してるし、
昼休みはあんな状態だから、満足にお昼ご飯も食べられないし……」
聖央の近くのパブでは平均的な実力しか持っていなかったデメーテルだが、僕が入った2日間を境に、
その人気は付近でダントツのNo.1になっていた。しかも、過半数がフレア=僕目当てで来るお客さんらしい。
そんな状態だから、当然ながら当初の予定だった土曜と日曜の7時から10時までというわけにはいかず、
定休日である水曜と木曜以外は全て開店から閉店までの時間帯まで仕事を入れられていた。
しかも、昼休みには、相変わらずお酌ねだりの生徒たちが行列を作っているし……。
「あはは……いったいいつになったら、もとの生活に戻れるんだろ?」
「さあ……」
「瑞穂ちゃん、あれから相変わらず夕食多く食べるわね」
「まりやお姉さまみたいですね」
「……ちょっと由佳里、聞き捨てならないわね、今のセリフは」
「あはは……」
寮での夕食、みんな飢えた獣のように夕食の残りをもりもり食べる僕を心配してくれている。
「まあ、昼はあまり食べられないものだから……」
「あれではしかたないのですけど……お姉さま、かわいそうなのですよ」
僕は昼もよく食べたいんだけど、お酌を頼む妹たちが後を絶たないものだから、
出来るだけ多くの妹のお願いを叶えてあげられるよう、いつもすぐに食べられるメニューを選んでいる。
「……じゃあお姉さま、しばらく和食も食べてないんじゃないですか?」
「そうなのよね……ああ、和食が恋しいよ……」
聖央に入ってから和食を食べる機会は、お昼休みの食堂でしかなかったからね。
最近のお昼は、ミックスサンドセットとかの軽食系ですまさざるをえなくなってしまってるから。
「あの、お姉さま」
「なあに、由佳里ちゃん?」
「よろしければ、お姉さまの晩ご飯は、私が作ってさしあげましょうか?」
「えっ……!?」
僕は由佳里ちゃんの意見に、ちょっと戸惑った。
「お姉さまが帰ってくる時には、寮母さんの作った夕食はとっくに冷めてしまってますし、
だったら、私がお姉さまの分は別に作ってさしあげたほうがいいんじゃないかと思いまして……
よっぽど難しいお料理じゃなければ作れますから、そうすれば、お姉さまの好きな和食も食べられますし……」
なるほど。それはいいアイデアだな。
「ありがとう。じゃあ由佳里ちゃん、お願いするわね」
「はい! お任せください!」
元気よく返事する由佳里ちゃん。ああ。これで、やっと和食が口にできる……!
そして夕食後、僕の部屋……。
バタン!
そうドアを開ける音がしたかと思うと……。
「へーい瑞穂ちゃん、入るよ」
そう言っていきなりまりやが入ってきた。
「入ってきてから言わないでよ……」
「まあまあ、気心の知れた幼なじみなんだから、細かいことはいいじゃない」
僕の呆れたツッコミも、まりやは意に介さずだった。
「親しき仲にも礼儀ありって言葉知らないの?」
「学校じゃあるまいし、今さら礼儀で固めた会話しても白々しいだけじゃないの」
……何を言ってもムダみたいだから、さっさと本題に移ろう。
「もう……それで、何の用なの?」
「瑞穂ちゃんさあ、昼疲れてると思ってさ、いいアイデアを思いついたんだ」
「いいアイデア?」
「そう。これ」
まりやはそう言ってスカートのポケットから紙を取り出した。
「……何これ?」
「ズバリ、エルダーのお酌チケットよ。瑞穂ちゃんのお酌サービスは、これと引き換えってことにするの。
そうすればお酌する人数も限定されるし、瑞穂ちゃんの負担も軽くなるでしょ?」
なるほど……それはいいかもしれないな。後の人のを断る理由にもなるわけだし。
「でも、本当はこれでまりやがお金儲けしたいだけじゃないの?」
「ま、それもあるけどね。瑞穂ちゃんにもメリットあるんだし、別にいいじゃない。利害の一致よ」
……ま、いいかな。論理でまりやを打ち負かせた試しはないわけだし。
「じゃあ、お願いするわね」
「OK! 任しときなって。じゃあ」
そう言ってまりやは帰っていった。
翌日の昼休み、食堂。周りにはチケットを持った女生徒たち。そして、紫苑さんやまりやをはじめとするスタッフ一同。
「お姉さま、お酌をしてください!」
「はい、じゃあ、チケットを見せてくれる?」
その女生徒がチケットを僕に渡すと、僕はお酌にかかる。でもまりや、この枚数じゃ以前と五十歩百歩じゃない?
「はい、じゃあ、こっちに来て」
そしてお酌がすむと……。
「ああ……お姉さまあ……」
いつものように、恍惚の表情を浮かべてバッタリ。それをすかさず紫苑さんや友人たち、
まりやや由佳里ちゃんをはじめとする後輩たちが運んでいく。
そして……。
「はあああああ……やっと終わったあ……」
僕はそう言って、テーブルに顔を埋める。
結局、僕が予想したとおり、昼休み最後の一分を休みとして得ただけに過ぎなかった。
「まりや、あんなにいっぱい作ったんじゃ、以前と変わらないじゃない」
「でも、瑞穂ちゃんだって少しだけど休むことができたじゃない。あたしのおかげね」
……僕が何言ってもまりやの頭の中では対策ができてるんだろうな。僕はあきらめてだまされることにせざるをえなかった。
そして、次の日も……。
「お姉さま、お酌をしてください!」
「はい、じゃあ、チケットを見せてくれる?」
その女生徒がチケットを僕に渡すと、僕はお酌にかかる。
「はい、じゃあ、こっちに来て」
そしてお酌がすむと……。
「ああ……お姉さまあ……」
いつものように、恍惚の表情を浮かべてバッタリ。それをすかさずいつものメンバーが運んでいく。
「じゃあお姉さま、次は私に……」
……って、由佳里ちゃん?
「こらー!!」
ゴンッ!
「ぶっ!」
そこへ由佳里ちゃんをまりやからのげんこつが襲う。
「管理スタッフのあんたがそっち行ってどうすんの! あたしたちはギリギリのメンバーでお酌相手の管轄をしてるんだから……」
「1回ぐらいいいじゃないですか! それに、お姉さまがちょっとずつ元気になってきてるのだって、
私が疲労回復に効くよう考えたお夕飯を作ってるからで、ちょっとぐらいお返ししてくれたって……」
「はいはい、そりゃお疲れ様。でもね、それはそれ、これはこれよ。
だいたいあたしたちが作ったチケットをこっそり確保してんじゃないわよ。初日にいっぱいサービスしてもらってんのに!」
「お姉さま、だから私は……」
「とにかく、この時間はあんたはこっち。スタッフの仕事はきっちりしなさい!」
「うわーん!」
泣きわめく由佳里ちゃんをまりやはずるずるとスタッフの持ち場に引きずっていく。
でも、僕は由佳里ちゃんにもお酌をしてあげたとは思うけど……由佳里ちゃんは何を言いたかったんだろう?
何か、ひっかかるような違和感が……。
「お姉さま、お酌をお願いします!」
「はい。じゃあチケットを……」
それを考える間もなく、お酌タイムが再開され、僕はそのことを忘れてお酌を勤めることになった。
「はああ……でも、いったいどうしたらいいんだろう?」
僕は連日のバーと昼休みの仕事に疲れきっていた。まりやのチケットや由佳里ちゃんのお料理で少しは良くなって来てるけど、
まだ根本的な問題は解決してないし……。
深夜遅くに寮に帰ってきた僕は、由佳里ちゃんの作った薬膳系、要するに栄養たっぷりで身体に優しい夕食
(時間的には夜食かな?)を食べ終えると、何の気なしにテレビをつけた。
「時代劇?」
そこに映し出されたのは、時代劇の再放送と思われるシーンだった。
「『私は両替商の越後屋さんにだまされて、借金のかたにここに連れてこられたんです。
お代官様のなぐさみものにされるために……』」
遊郭らしい場所で、遊女が主人公らしい若侍にそう話していた。
「『それは気の毒に。ここの代官の悪行には目に余るものがある。よし、身請けの金子は私が用立てよう。
だからあなたは愛するものの所に帰りなさい』」
「『お侍様、ありがとうございます!』」
そうして時代劇のシナリオは進んでいった。
「身請け……か……」
それはいい手かもしれない。でも、誰にしてもらおうか……そして、そのお金は……。
そして、翌日の月曜日、屋上……。
「瑞穂さん、私に話というのは?」
僕は紫苑さんを呼び出していた。僕のお願いを聞いてもらうために。
「ええ。紫苑さん。僕を身請けしてくれませんか?」
「え? あの、瑞穂さん。おっしゃることがよく……」
紫苑さんは戸惑っていた。そりゃそうだろうな……。
「僕は連日のお昼と仕事のお酌で疲れ果てているんです。そろそろ受験勉強にも身を入れなければいけませんし。
それで、僕をデメーテルから買い取ってほしいんです」
「なるほど……お話はわかりました。私にとっても願ってもない機会ですが、あいにく私の家は……」
紫苑さんならいざって時には頼りになるし、貴子さんと違って、家のことも考えなくていいからね。僕は説明を続ける。
「ええ。ですから紫苑さんには、僕から男であることを黙っていてもらう口止め料を渡します。紫苑さんは、そのお金で
僕の身請け、よろしくお願いします。お金は、父とデメーテルで話し合って決めますから」
僕がそう説明すると、紫苑さんは喜びの表情になった。
「わかりました。瑞穂さん、そのお願い、しかと聞き届けましたわ」
「ありがとうございます、紫苑さん」
「いいえ、私のほうこそ、瑞穂さんにお礼を言いたいくらいですわ」
とりあえずこれで一安心。心おきなく今までの遅れを取り戻せる。
「では、さっそく皆さんにお願いすることにしましょう」
「お願いします」
紫苑さんはそう言うと、屋上を後にした。
そして、昼休みが終わると……。
ピンポンパンポーン
「『ええ……聖央女学院の皆様にお知らせいたします。宮小路瑞穂さんは、私こと十条紫苑が身請けをすることになりました。
したがって、明日以降の学院内での瑞穂さんへのお酌はご遠慮くださいますよう、お願いいたします。
繰り返します、宮小路瑞穂さんは……』」
たちまちのうちに学院内に広がる波紋。僕はたちまち質問攻めに……。
紫苑さん、僕のお願いを聞いてくれるのはありがたいですけど、タイミングといい、手段といい、お見事……としか……。
そして、火曜日の夜。
「あーあ。瑞穂ちゃんのお酌サービスも終わりか。いい金づるだったのにな」
残念そうに言うまりや。って、やっぱりそっちが目的じゃないか。
「うっ……うっ……」
一方、由佳里ちゃんはすすり泣いていた。どうしたんだろう?
「どうしたの、由佳里ちゃん?」
「とうとう私だけ、1回もお姉さまにお酌をしてもらえずに終わっちゃったよ……」
由佳里ちゃんだけ?
「何言ってんだか。最初の日に緋紗子先生とデメーテルに行った日に何回もしてもらったじゃない」
「してもらってません!」
そう言い張る由佳里ちゃん。でも、確かに最初の日に何回もして……って、あれ?
「してもらったじゃないの! 忘れたの?」
「だから、私だけはしてもらってないんです!」
「まりや、由佳里ちゃんの言ってることは本当だよ! 確か順番を書いてたとき、由佳里ちゃんはトイレに行ってて、
やっと順番が回ってきたら、閉店になって……」
状況を思い出した僕がそう説明する。
「あっ……」
まりやも、ようやくあの時の状況を思い出したようだ。
「『あっ』じゃないです!」
「ごめんごめん、思い違いしてた。でもさ、それを今まで言わなかった由佳里も悪いんだよ?」
まりやがそう諭すように言ったが、それを聞いた由佳里ちゃんは……。
「何度も言おうとしました! でも、まりやお姉さまは、聞こうともしてくれなかったじゃないですか! うわあああん!!」
そう言って泣き崩れてしまった。どうしよう……このままじゃ由佳里ちゃんが……。
翌日、水曜日の昼休み。僕は、紫苑さんと奏ちゃんと一緒に昼食を食べていた。
「……というわけで、由佳里ちゃん、落ち込んでいるのですよ。紫苑お姉さま、由佳里ちゃんだけ
特例でお酌を認めてあげてほしいのですよ」
「まあ、本当にお友達想いなのね。奏ちゃん、可愛いわ」
むぎゅっ。
「はややっ!」
紫苑さんは奏ちゃんを抱きしめる。しばらくして、奏ちゃんは脱出した。
「紫苑さん、私からもお願いします! 私の周りで、由佳里ちゃんだけしてもらってないんですから……」
僕も紫苑さんに説得する。けど……。
「ダメですわ」
「そんな……」
「お2人のお気持ちはわかります。しかし、それを認めれば、他のみなさんが、
『それなら私も』と口々に言ってくるでしょう。それでは、身請けした意味がないのではありませんか?」
「そ、それはそうですけど……」
納得いかないながらも、僕たちはその話はそれっきり口にしなかった。
そして、その日の夕方……。
「由佳里ちゃん、ごめんなさいなのですよ……紫苑お姉さまにお願いしてみましたけど、ダメだったのですよ……」
「ううう……」
奏ちゃんの報告を聞いて、由佳里ちゃん、ますます落ち込んじゃったみたい……。
「全部まりやお姉さまのせいです! まりやお姉さまが何度も邪魔するから、
結局私は1回もお姉さまにお酌してもらえなかったじゃないですか!」
あ、やり場のない怒りをまりやに向けたみたい。
「それは、あの時は由佳里もしてもらってたと思いこんでたんだって!」
「だったらなんなんですか……ちょっとは私のことも考えてくださいよ……うえーん……」
あ、今度は泣き出しちゃった。
「だから、悪かったと思ったから、チケットの売り上げの分け前、他の人よりだいぶ多くしてあげたじゃないの!」
「なんですかそれは……私とお姉さまのお酌の時間を奪われた悲しみは、
お金なんかじゃいやされませんよ……うっ……ひっく……えぐ……」
由佳里ちゃんは泣きやまない。
「由佳里ちゃん、泣きやんでくださいなのですよ……冬の次には、必ず春が来るのですよ」
「奏ちゃんはいいよね。お姉さまに何度もお酌してもらって幸せいっぱいだから、そんなふうに言えて……」
奏ちゃんの励ましも、由佳里ちゃんには届かないみたい。
「ああもううるさい! そんなにサービスしてほしけりゃ、あたしがたっぷりサービスしたるわ!」
まりやがキレちゃった。でも、なんで関西弁?
「わあっ! ま、まりやお姉さま、何するんですか! やめてください!」
やれやれ、もう、何が何やら……。
修羅場と化した様子を見て、バイトの代理を始めてから今までの疲れがドッと襲ってきた。
「奏ちゃん、悪いけど疲れたから休むわね。後はよろしく」
「あ、はい、お任せくださいなのですよ! お姉さま、おやすみなさいなのですよ」
「おやすみ、奏ちゃん」
その日、僕は今までの積もりに積もった疲れの分だけ、朝までぐっすりと眠っていた。
To be continued……
また続いてしまった……。
これで終わりにしようと思ってたんですけど、長くなったので、2つに分けることにしました。
ラストはいったいどうなるのか? 瑞穂くんは、紫苑さんは、そして由佳里ちゃんは?
嵐を呼ぶ代理さん エピローグ、乞わないご期待!(笑)
まあ、とりあえず、これにて一旦休ませていただきます。お目汚し失礼しました。
ふーん。長いだけで展開はないな。もっと短く出来ないの?
あぁ、お姉さまを身請けしたい…
334 :
名無しさん@初回限定:2007/10/14(日) 02:22:37 ID:+w+t2sjs0
相変わらずゆかりんの扱い酷いな。
このスレの住人はゆかりんに何か恨みでもあるのだろうか?
とさえ思ってしまうというオチ役ゆかりんの徹底振り…
女子寮で深夜不審な物音がする→食べ盛りのゆかりんが特製バーグを焼いていた
とか、笑ってしまうオチを作りやすい、愛すべき人格者なのですよ。
336 :
名無しさん@初回限定:2007/10/14(日) 03:38:30 ID:+w+t2sjs0
>>335 そういうのを都合の良い存在(人権無視)と言う。
オチ役がこうも徹底されると流石に笑えなくなってくるよ。
そんな考えも起こせないとはお前等いじめっ子経験有か?最低の発想だな。
所 詮 ク ズ の 下 等 生 物 共
無 様 な も の だ な
まあ、仕事も出来ない人は、他人の行為を馬鹿にして溜飲を下げるのでしょう。
暇つぶしにモテ話をひとつ
『新通貨!?』
昼休みも半ばを過ぎた時間、、食堂に瑞穂とまりやがいた。
瑞穂はランチパックのバスケットのフライドポテトを食べていて、まりやは一足先に食事が済んだのか
手持ち無沙汰な感じでテーブルに頬杖を突いて外の景色を眺めている。
「あ〜、何だかバニラプリンが食べたくなってきたわ」
まりやはそう云って、売り場の方を眺めた。
今まさに二人組みの女生徒がバニラプリンを買っているところだった。
「よし、買ってこよう」
まりやがイスから立ち上がったとき、バニラプリンのコーナーに売り切れの札が貼られた。
「………」
憤然としてイスに座るまりや。
「一足遅かったみたいね」
ポテトをモグモグ食べながら云う瑞穂をまりやがキッと睨みつけた。
「そんな顔で睨み付けないで。私のせいじゃないんだから」
「ああん、食べたかったわ。買い逃したら益々食べたくなってきちゃったわ」
「そんな事云っても無理よ。もう売り切れちゃったんだから。ほら、ポテトあげるから、機嫌直して」
瑞穂はそう云って、まだフライドポテトの入ったバスケットをまりやに差し出した。
「……ありがと」
バスケットを受け取ったまりやは、ポテトに手をつけるでもなく、しばらく考え込んでいた。
「……そうだ!」
何やら思いついたようにそう云うと、ポテトのバスケットを手にもって立ち上がった。
それを不審気な表情でみる瑞穂。
まりやはそのまま、先ほどの最後のバニラプリンを買っていた女生徒のテーブルに行くと、何やら瑞穂の方を
指差して話し始めた。
そしてしばらくして、バニラプリンを持ってテーブルに帰ってきた。
「・・・・・・交換してきたの?まりや」
「ええ」
満面の笑顔のまりや。
「…よく躊躇いもなく人から貰ったポテトを交換しようと思えるね?しかも食べかけの物を…」
非難気味に云う瑞穂の言葉も、まりやは全く気にかける様子もない。
「そう?喜んで交換してくれたわよ。寧ろお願いしたいくらいだって」
まりやはウキウキと嬉しそうに、カパッとプリンの蓋を開けた。
そこへ紫苑がやって来た。
「美味しそうですね」
「おや紫苑さま。如何しましたか?」
「私もバニラプリンを買いに来たのですが売り切れていましたの」
「これは学食で一番人気ですからね」
「残念ですわ」
そう云ってまりやのプリンを羨ましそうにみる紫苑。
紫苑にそんな目で見られると、さすがのまりやも食べづらい。
「……仕方ないわね」
そう云うとまりやはプリンにスプーンを突き刺して瑞穂に差し出した。
「瑞穂ちゃん。プリン食べて」
「えっ?いいわよ。私、別に食べたくないから。まりや、要らないなら紫苑さんに譲ってあげたら…」
「良いから!とにかく食べて!」
「う、うん」
…ぱくっ
一口プリンを食べる瑞穂。
「はい、返して」
支援
パッと瑞穂の手からプリンとスプーンを取り上げると、まりやは紫苑に向かって、
「紫苑さま、ちょっと待っててくださいね。バニラプリン買ってきますから」
そう云って向こうの方へ行ってしまった。
「はい、お待ちしてますわね」
にこやかに微笑みながら見送る紫苑。
まりやが何をするつもりか判っているようだ。
「…えっ?えっ?」
ただひとり、瑞穂は訳がわからず呆然と見ている。
食堂の向こうで、まりやが瑞穂のほうを指差し何やら喚いている。
人がどんどん集まっていく。
やがて激しい動きが……。
ドタンっ!
バタンっ!
テーブルが倒れ、イスがひっくり返る。
皆が何かを奪い合っているようである。
「なに!?なに!?」
オロオロと慌てる瑞穂。
楽しそうに見ている紫苑。
暫くしてヨロヨロとまりやがプリンを抱えて瑞穂たちのテーブルに帰ってきた。
…ドサドサドサッ
抱えていたプリンをテーブルに置く。
まだ未開封のプリンが5つ。
「ええっ、まりや…コレ…」
「やっぱり、皆さん持ってましたわね」
紫苑の言葉に、
「ええ。売り切れる前に先に買ってる人が結構いました」
澄ました顔でまりやが答えた。
「まさか…まさか、食べかけのプリンを…」
あきれ果てたように云う瑞穂を横目に全く気にした風もなく、さあ食べましょと嬉しそうにプリンの蓋を開けるまりやと紫苑。
「えっと、バニラプリンが一個150円だから、
…1エルダーポテトは150円、1エルダープリンは750円という事になるわね」
「・・・・・・ナニ?その通貨・・・」
翌日、昼休みの学食では大勢の生徒が未開封のバニラプリンを手に瑞穂とまりやを待ち受けていた…。
〜 お ま け 〜
翌日の午前中、生徒会室にて
「君江さん」
「はい、何でしょうか?会長」
貴子が真っ赤な顔で、
「…お昼休みに、バ、バニラプリンを5個ほど買っておいて頂けますか」
「・・・・・・えっ?」
Fin
お粗末さまでした
亀ですが、少し前に円天が崩壊したな
エルダープリンは絶対崩壊しそうにないw
今史上最高値をつけている金相場よりも
一部の金持ちの間では注目されているとの噂も・・・w
GJ!&お疲れさまでした
貴子さん独占するおつもりですか?(笑)
エルダーあ〜ん♪プリンのレートは如何ほどですか?
どんどん円安になっていくような気が……。
嵐を呼ぶ代理さん、いよいよラストです。
〜嵐を呼ぶ代理さん エピローグ〜
そして、翌日、木曜日の朝……。
「あれ? 由佳里ちゃんは?」
僕が朝食を食べに降りてくると、由佳里ちゃんだけまだ降りてきていなかった。
「さあ? 寝坊してんじゃないの?」
「珍しいわね。早起きの由佳里ちゃんには」
「あ、あの、奏、由佳里ちゃんを起こしに行ってくるのですよ」
奏ちゃんが気を利かせてそう言ってくれた。
「待って、私も行くわ!」
「あたしも!」
僕とまりやも、由佳里ちゃんの部屋に向かった。
「由佳里ちゃん、起きてくださいなのですよ。もう朝ごはんのお時間なのですよ」
奏ちゃんがドアをノックしながら言う。しかし……。
「ううう……お姉さまとの……お酌……私だけ……してもらえ……うえーん……なんで私だけ……
なんにも悪いことしてない……のに……しかもまりやお姉さまに……ひどいこと……され……うわはあああん!!」
聞こえてきたのは、由佳里ちゃんの嗚咽交じりの泣き言。なんにも聞こえてないみたい。
「もう、まりやがキレて由佳里ちゃんに当たるから……」
由佳里ちゃんの部屋から少しはなれたところで、僕はまりやに抗議した。
「でも瑞穂ちゃんだって、あたしがいつまでもうじうじしてんの大嫌いなの知ってるでしょ!?」
「それは知ってるけど……だからって、余計落ち込ませてどうするのよ!?」
由佳里ちゃんもかわいそうに……でも、この調子だと、朝食に呼ぶのはあきらめたほうがよさそうだな……。
昼休み、食堂。僕と奏ちゃんは、紫苑さんともう1度話してみる。
「……というわけで、由佳里ちゃん、今日は学院にも来なかったのですよ……今頃、部屋でお1人で泣いているのですよ……」
「紫苑さん、なんとかなりませんか? このままでは、由佳里ちゃんがかわいそうです」
僕たちが説得すると、紫苑さんはため息をついた。
「ふう……由佳里さんもあなた方も、早合点が過ぎますわね」
「え……?」
僕たちはきょとんとする。早合点って?
「私は学院内で瑞穂さんにお酌するのはダメとは申しましたが、由佳里さんに瑞穂さんのお酌の機会を与えないとは
申しておりませんわよ?」
紫苑さん、それって……。
「どういう……?」
「瑞穂さん、奏ちゃん、私の言うことを聞いていただけますか?」
そして放課後、寮……。
「由佳里ちゃん、起きているのですか?」
奏は、由佳里の部屋をノックした。
「何?」
「由佳里ちゃん、今日7時に、デメーテルに来てほしいそうなのですよ。お車は、お姉さまがご用意してくださったのですよ」
「でも確か、今日って定休日じゃ……」
「じゃあ、お伝えしましたのですよ」
奏はそう言って自分の部屋に戻っていった。
そして、夜7時ごろ、スナックバー、デメーテル前。
「いったいなんだろ? 閉まってるのに……」
結局、瑞穂の家の車に乗ってきた由佳里が、「CLOSED」と書かれた札のついた扉を開けると……。
「あれ? 開く?」
由佳里は、開いた扉を進んでいく。その先に見たのは……。
「お、お姉さま? 紫苑さま?」
客席にいたのは、紫苑と、バイト姿に着替えた瑞穂だった。
「こ、これはいったい……」
「私も由佳里さんのこと、さすがに気の毒だと思っていましたのよ? ですから、今日お店のオーナーにお願いして、
今日1時間だけ、このお店を貸し切りにしていただいたのです」
「それって、もしかして……」
「そうよ。今日の私は、由佳里ちゃんだけのホステスってわけ」
瑞穂がそう答えた。
「そんな……いいんですか?」
「もちろんです。このまま瑞穂さんの周りで、由佳里さんだけしないまま終わってしまうのでは、あまりに残酷ですから」
紫苑が続けて答えた。
「ただし、今日、1時間だけですわよ? 明日には正式に瑞穂さんは私のものになるわけですから。ご不満かしら?」
「とんでもない! あきらめてましたから、今日1時間だけで十分です! ありがとうございます!!」
由佳里は途端に元気になって答えた。
「それでは、私はこれで。ごゆっくり」
紫苑さんはそう言ってここを後にする。
「じゃ、じゃあお姉さま、よろしくお願いしますね」
由佳里ちゃんは、顔を赤くしながら、そう僕に寄り添ってきた。
「ええ。じゃあ、グラスを出して」
由佳里ちゃんの肩を抱きながら、由佳里ちゃんが出してきたグラスに、ジュースを注ぐ。
「んっ……んくっ……」
由佳里ちゃんはそれをおいしそうに飲み干した。
「まさか、本当にお姉さまがお酌してくださるなんて、夢みたいです」
今まで溜まってた分、嬉しさも倍増してるみたいだな。本当によかった。
「どう? おいしい?」
「はい! それはもう、最高です!」
「じゃあ次は、私が……」
そう言って、僕はジュースを注いだグラスを、由佳里ちゃんの手の上に重ねた。
「あっ……」
由佳里ちゃんは身体をぴくん、と震えさせると、そうため息を漏らした。そんなに緊張しなくても……。
「じゃあ、失礼するわね」
僕はそう言って由佳里ちゃんの口にジュースを注ぐ。
「んっ……」
由佳里ちゃんの口に、ジュースが入っていく。
「ぷはあ……」
ジュースを飲み終えたけど、あんまり続けて飲むのもよくないよね。
「由佳里ちゃん、ちょっと休憩しましょうか? 気分転換する?」
「ううん……もうちょっと、浸っていたいです……はあ……」
僕が聞くと、由佳里ちゃんは顔を赤く染め、とろんとした目で答えた。
なんか酔っ払ってるみたいだ。って、これジュースだよね? 果実酒じゃないよね?
瓶のラベルを見ても、確かにジュースなんだけど……。
「じゃあ、サービス、再開するわね」
「はい……」
由佳里ちゃんは染まったままの顔でそう返事をすると、僕の腕の中にもたれる。
「ふふっ、まだ赤くなってるわね。酔っちゃってるのかしら? なーんて」
「そうです……お姉さまに、酔っちゃってるんです……」
「そう。それじゃ、もっと酔わせちゃおうかしら?」
僕はそれを見て芽生えたイタズラ心のままにくすりと微笑むと、自分でジュースを口の中に入れる。
「………?」
そして、呆然とする由佳里ちゃんの口を開き、ジュースを流し込んでいく。
「………!!」
僕がジュースを注ぎ終えると、由佳里ちゃんの顔が耳まで真っ赤に染まっていた。
「ふふっ、今まで待たせてしまったお詫び。由佳里ちゃんにだけ特別サービスよ」
僕がそう言うと、由佳里ちゃんの身体から力が抜けた。
「はあ……はあ……はあ……」
ぐったりしたまま荒い息を吐いている。ちょっと刺激が強すぎたかな?
そう思っていると、妙な匂いがしてきた。って、この匂いは……。
「も、もしかして……」
教会で一子ちゃんとした時にも感じた。僕は慌てて由佳里ちゃんのスカートをまくって中を確かめる。
「やっぱり……」
由佳里ちゃんのショーツの中心は、ぐっしょり濡れていた。
「これ、どうしよう……?」
このままにしておくのもかわいそうだし……申し訳ないけど、脱がせて……。
「落ち着け瑞穂……僕は女の子女の子、女の子なんだから……」
そう自分に言い聞かせながら、テーブルの上のペーパーナプキンで由佳里ちゃんのあそこを丁寧に拭いていく。
「んっ……くっ……は……ふぁあ……」
落ち着け! 耐えろ耐えろ、耐えるんだ鏑木瑞穂!
由佳里ちゃんの悩ましい声に精神力で耐えながらもなんとか拭き終えると、
トイレでナプキンをゴミ箱に捨て、洗面所で由佳里ちゃんのショーツを洗う。
「よく乾かして……まだちょっと湿ってるけど、しょうがないよね」
そして戻って由佳里ちゃんにそっとはかせる。
「う……ん……」
あ、由佳里ちゃんが目を覚ました。
「由佳里ちゃん、おはよう」
「お姉さま……私は……」
まだ寝ぼけてるような感じで聞いてくる。
「私にお酌してもらって、酔っちゃったみたいね」
「えっと……あ……」
そう言って考えていたようだけど、思い出してくれたみたいだ。
「どうだった? 私のお酌は」
「あ、はい……とってもよかったです」
「そう。じゃ、機嫌直してくれるわね?」
「もちろんですよ!」
「そう。じゃあもう1時間になるし、そろそろ帰りましょ。下に車を待たせてあるから」
「はい」
僕たちは、片付けは帰ってきたオーナーに任せて、下に降りていく。
「あ……お姉さま」
ふと、階段を降りているとき、由佳里ちゃんが声をかけてきた。
「どうしたの、由佳里ちゃん?」
「あの……なんだか、スカートの中が、ちょっと湿っぽい気がします……」
……それはそうだろう。その……洗いたてなんだから。
「お水でもかかったのかしら? 気持ち悪いかもしれないけど、寮に着くまで我慢してね」
「いえ……その、なんとなく……冷たくて、お姉さまの匂いがして、少し……気持ちいいです……」
ギクッ……まさか気づいてるんじゃ。由佳里ちゃん、それ以上つっこまないで……。
「そう。ならいいんだけど……」
僕たちは、そのまま寮に帰った。
「へえ、紫苑さま公認でねえ……よかったじゃない、由佳里」
「はい! おかげで元気になりました!」
寮に帰ってきた僕たちは、まりやと奏ちゃんに、早速今日のことを話した。
「由佳里ちゃん、よかったのですよ」
「奏ちゃんにも迷惑かけたね。もう大丈夫だから」
まりやも奏ちゃんも、由佳里ちゃんの幸せを、安堵の笑顔で喜んでくれている。
「でもさ、由佳里、これで一生おかずには困らないんじゃない?」
「ま、まりやお姉さま、変なこと言わないでください!」
いきなり意地悪そうに話すまりやに、引き気味の由佳里ちゃん。
「そうよ! 今さらそんな当然のこと言わなくてもいいじゃない!」
「うーわっ! 瑞穂ちゃんらしくないセリフね。キャラ間違えてない?」
僕がそう言うと、今度はまりやが引き気味に。
「どうしてよ? 由佳里ちゃんはお料理上手なんだから、そっちの方面では就職には困らないでしょうし、
自分で作れるなら、食費も安上がりで済むから、おかずに困るわけないじゃない」
「あ、あはは……」
僕がそう反論すると、まりやが今度は呆れたように笑った。
「前言撤回。めっちゃ瑞穂ちゃんらしいわ」
「………???」
どういう意味なんだろ、いったい?
そして翌日、屋上で……。
「そうですか。由佳里さんも元気になりましたか。よかったですわね」
「ええ。これで一安心です」
僕は昨日のことを紫苑さんに報告していた。
「それはそうと、今この付近の街の中では、ミズコンの女性が急増しているのをご存知ですか?」
ミズコン? 聞いたこともないけど……。
「なんですかミズコンって?」
「瑞穂コンプレックス。女性のような男性しか愛せない方のことですわ」
ガクッ……。
「紫苑さーん……勝手に人の名前で変な言葉作らないでください」
「いいではありませんか。こういう形で、後世まで名を残せるんですから」
……紫苑さん、そんな形で名を残すなんて末代までの大恥としか思えないんですけど。
「ところで瑞穂さん?」
「はい、今度はなんですか?」
僕が再び見ると、紫苑さんは満面の笑顔を浮かべている。
「瑞穂さんは私が身請けしたのですから、これからも私に、たっぷりとお酌をしてくださいね?」
「し、紫苑さん?」
ちょっと……なんか胸騒ぎがするんですけど……。
「もちろん、先日由佳里さんにしてあげた口移しも、お願いいたしますわよ」
「……なんでそれを!」
「さあ、どうしてでしょうか?」
ホステスは終わったけど、もう一生紫苑さんのおもちゃにされ続けるかもしれない……僕はそんな予感がしてならなかった。
Fin
以上で本当に完結です。
今回の紫苑さんは、由佳里ちゃんにも優しくしてみました。
由佳里ちゃんは最初からこうするのは決まっていましたので、私の中では納得していましたが……。
今まで待たせてしまってごめんね。
それにしても、ミズコンって言葉、本当に誰か使ってくれるといいな……。
って、すみません。作者の勝手な願望です。
では、これにて失礼いたします。お目汚し失礼いたしました。
なんか由佳里ちゃんに関してはとってつけたような感を覚えずには居られないです。
ごめんなさい。
無理しない方が良いと思います。
※荒らしの戯れ言とでも思って聞き流してください。
361 :
名無しさん@初回限定:2007/10/16(火) 23:11:00 ID:tsNl79DU0
由佳里ちゃんを苛めるなよ可哀想じゃないか!
って、いじめっ子に苛めを止めろと言うのは
麻薬をやめろと言うのと同じだったか。
ここまでくると立派な依存症だ病院逝け。
>>360 提案ですが、そこまで思い入れがあるならご自分で書いてみたらどうですか?
他人に自分の思い入れを押しつけてはいけませんよ。
>>362 書きたいとも思いませんよ。
実力がないのは解ってますから。
解ってても書ける人が羨ましいとは思いますがね。
一応言っておきますが、これ以上構うといらん方向に荒れますよ?
放置放置
作者を罵倒することで書き込みを止めさせて悦に入る愛知県刈谷市のソネット住民(鉄オタ)は、
オーガスト関連スレで数週間前まで粘着していた奴です。
366 :
名無しさん@初回限定:2007/10/18(木) 01:52:20 ID:gdxDTUYv0
>>362 ゆかりんがここまでオチ役で笑いキャラ扱いが徹底されていたから我慢ならなかったんだろ。
俺もその1人だし、傍から見りゃいじめで見苦しかったからな。
そんなに固定キャラをいじめて楽しもうにも批判浴びるのが嫌なら専用スレに逝けってこった。
エロパロ板辺りにスレありそうだが、まあ探してみれ。
>>366 今回は、単なる粘着の題材として使われた可能性が大。
なぜならゆかりんを擁護せず、相手を叩いて嘲笑して喜んでいたから。
つまりゆかりんはSSに出すな、という事を云いたいんだな。
ゆかりんに関してのあからさまに取ってつけたような感じのする話はやめろって言いたいんじゃね?
此処の住人はゆかりんをいじり過ぎたんだよ。
自分勝手グダグダ書くな。感想ならまだしも押し付けだろ!
こんなのばっかだと前みたいに職人が一斉にいなくなるだろが!
ただでさえ少ねーんだ。ちっとは学習しろ!
>>371が良いコト言った。
職人さん方、これに気を悪くせず頑張って下さいね。
楽しみに待ってますよ!
>>371 それでいなくなるならそれで良い。
それだけの存在だったってこった。
>>371 更にもう一言、
そんな事を言うお前も職人減少に貢献している事にいい加減気づけよバーカ
マンセーは感想
批判は押し付け
…か?
ゆかりんの扱いに関する文句も立派な感想だろうに。
落ちに使われるだけでも優遇されてるってなもんですよ。
空気以前に出番ないのだって居るというのに。
こんな不遇な扱いよりもいっそ出番無い方やマシだっぺ
そう思わせる程に弄り過ぎなんだよ。
そんな事もわからんとは…
いじめっ子がいじめられっ子の心情を到底理解できないのと一緒の理屈だな。
被害者に仕立てたい人間には全て東北系の語尾を、
加害者に仕立てたい人間には全て関西系の語尾を当てはめるところを見ると、
いつもの名古屋人(会津中毒患者)と思う。
……なんか私のせいでスレが荒れているようで……すみません。
私としては、由佳里ちゃんには最後の最後で他のヒロイン以上の幸せを与えてあげてるつもりだったんですけど、
誰にも伝わらなかったのですね(涙)。
どうしてだろう……はあ……。
今、由佳里ちゃんを優遇するSSを書いているんですけど、そちらがうまくいくよう努力することにしましょう……。
>>379 がんばれ!職人さん。
期待してるぞ!!
>>379 つ 冒頭に注意書き
1つ教訓ができて良かったじゃない。このお約束を守れば大人は何も言わないものだ。
書き手の書きたいものを書いた方が、話も面白い事が多いので、あまり気にしすぎるな。
>>379 あなたの所為では絶対にないので気にしない方が良いですよ。
ただの荒らしですし。
>>382 一読者としての意見を荒らし扱いされるのは侵害だな。
それを荒らしとして片っ端から排除すると、このスレが廃れますよ。
384 :
名無しさん@初回限定:2007/10/21(日) 00:26:11 ID:y5z43fuC0
385 :
名無しさん@初回限定:2007/10/21(日) 00:27:46 ID:y5z43fuC0
批判意見は意見としていいと思います。
が、問題は表現方法でしょう。
相手の意見を愚弄するような書き方、命令口調、自分の意見のみが正しいという姿勢、
それらは内容以前に荒らしとみなされてしまうと思うのですがどうでしょうか?
360の表現は普通だと私は思うのですが。
>>379 >他のヒロイン以上の幸せを与えてあげてるつもり
思ってても作品として伝えられなければ意味がない…というか、ネタいじりを幸せと思っているのなら、
由佳里ちゃんファンと相容れることは恐らくないでしょうね。
読んだとき素直に感じたことを書かせてもらうと、「これは過去の経緯でキレて、ワザと喧嘩ふってるな」と
思ったくらいですから。
悪意しか表現してない人間が一読者としての意見だなんておこがましいね。
由佳里がないがしろにされているとあなたが感じてる様に、
あなたの意見とやらは荒らしとしか受け入れられないという事です。
あなたは自分が文句をつけている行為と同じ事をしてるんですが、自分の行動を客観的には見れませんか?
22歳以上を自称するなら、その程度の事はするべきですよ。
>>387 >>あなたは自分が文句をつけている行為と同じ事をしてるんですが、自分の行動を客観的には見れませんか?
>>22歳以上を自称するなら、その程度の事はするべきですよ。
その言葉、そっくりそのままお返ししましょう。
批判的な意見を悪意と取るのは人それぞれであり、どんな意見であっても作品を読んだ瞬間から読者です。
それを批判的・悪意しかないからと言って荒らしだと決め付けて、一方的に排除するのはあまりに横暴だと思いませんか?
俺はそんな行為は幼稚な餓鬼だと思いますがね。もう少し世の中に目を向けましょうや。
批判的な意見であっても感想である以上、それは受け止めるべきだと思いますがね。
それが出来ないのならスルー或いは作品を投下しなければ良いってこと。
それで職人達が来なくなってスレが寂れるのなら、それだけの価値しかなかったという事ですよ。
お姉さま方。
恵泉および聖應の生徒らしく慈悲と寛容の精神を忘れずに、なんです!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| おまえらも |
∩_∩ | .|
(´ー`) < 暇な奴ら .|
( ) | .|
| | | | だなぁ |
(___)__) \_____/
だから、誹謗中傷しかしない名古屋の会津ファン(鉄オタ)なんでしょ
392 :
名無しさん@初回限定:2007/10/21(日) 21:28:25 ID:U+FLIYs7O
俺東京都在住
会津ファン?何それ食いモン?
馬鹿じゃねwwwwww
>>388 他人に寛容さを求めて、自分はただ甘えてるだけだから荒らし呼ばわりされるんですよ。
それこそ、荒らし呼ばわりをスルーすれば良いんじゃないですか?
│
│ ≡ ('('('('A`)
│≡ 〜( ( ( (〜)
↓ ≡ ノ ノ ノ ノ ノ サッ
ここで俺が華麗にスルー!
天女の羽衣 〜厳○神社縁起〜
昔、この地にある泉のほとりに四人の天女が五色の雲にのって降り立ったそうじゃ。
「きれいな泉ね〜 紫苑隊長、ここで汗を流していきましょうか」
「まりやさん、また貴女は! 調査が完了したのですからすぐに帰投すべきですわ」
とたん、まりやと呼ばれた天女は、たちどころに隣にいたふわふわ髪の天女に怒られたのじゃ。
「そ、そうです! は、肌をさらすなんて!」
「み〜ずほちゃん、あいかわらず恥ずかしがり屋さんね〜
もうあのこともカミングアウトしたらどう?」
「ま、ま、ま、まりや〜っ!」
そのやりとりを見ていた一番姉の黒髪の天女は、羽衣を脱ぎだしたそうじゃ。
「スーツ・オフ。・・・まあ、いいでしょう。1時間だけ休憩を許可します」
それを見て、他の天女も羽衣を脱いだのじゃな。
「いや〜 はるばるオリオン腕まで来てみるもんね。こんな星があるなんて」
「そうですわね。これなら十分に移住可能ですわ。ただし先住民族がいるようですが・・・」
「そんなの蹴散らして、奴隷にすればいいのよ」
「奴隷制度は7000年も前に禁止されていますのよ。すこしは宇宙史を勉強なさい」
「冗談だって・・・」
それを見ていたのが、森の中にひとりで暮らしていた娘、ゆかりじゃ。
ゆかりは天女が空から下りてくるのを見て、こっそり木の陰から覗いておったのじゃ。
「ボク・・・いえ、私は向こうの泉へ行ってきます!」
瑞穂と呼ばれた天女はひとり、少し離れた泉に向かったそうじゃ。
天女は周りを見渡して誰もいないと確かめてから、羽衣を脱いで松の枝に掛けたそうじゃ。
「・・・だと言うことは隠さなくちゃ」
後ろから覗いておったゆかりはたちまち天女に一目惚れしてしまったのじゃ。
ゆかりは羽衣を隠せば天女が空に帰れなくなると思い、そっと羽衣を隠したのじゃ。
さて時も過ぎ、天女たちが空へ返るころになってあわてたのは瑞穂天女じゃ。
「な、ないっ! 僕の機動スーツが・・・」
騒ぎを聞きつけて他の天女たちもやって来たのじゃ。
「どうしたの〜? 瑞穂ちゃ〜ん。そろそろ帰るよ?」
「まりや・・・私のスーツが・・・無いの」
瑞穂天女は恥ずかしそうに首まで泉に浸かって答えたのじゃ。
「なんですって! お姉さま。どこに置いてられましたの?」
「そこの松の枝に掛けてたんですけど・・・」
「あちゃ〜 『クマー』にでも持って行かれたかね?」
クマーとは、天の世界でイタズラ好きの獣じゃ。
その性、損するを楽しむと聞く。
さて、考えあぐねた姉の紫苑天女は、瑞穂を置いていくことに決めたのじゃ。
「明日、強襲揚陸艇で迎えに来ます。それまで・・・がんばってくださいね。瑞穂さん」
「ええっ! ふ、服も無いのにっ!」
「それではごきげんよう・・・総員帰投!」
天女たちは惜しみつつも瑞穂ひとりを残して天に帰っていったのじゃ。
「ど、どうしよう・・・」
日も傾いてきて、誰そ彼時になったころ、ゆかりが天女に声を掛けたのじゃ。
『そこのお姉様、どうされたのですか?』
自分で羽衣を隠しておいて、どうしたもないものじゃが。
「えっ! 先住民族!? ぶ、武器・・・ああ、スーツがないんだったー」
あわてふためく天女。
『あの・・・お姉さま?』
「や、やめてー! 僕はおいしくないですっ!」
天女が落ち着くまで四半刻もかかったそうじゃ。
瑞穂はゆかりから木綿の衣を差し出されてようやく安堵したのじゃ。
「君は近くに住んでいるんだね・・・それにしても君の言葉は先史文明のタミアラ語みたいだ。
明日、紫苑さんに報告しないと」
「よかったらうちに来てください。粗末なものしかないですけど・・・」
「え? 家に招待してくれるの? よかった・・・クマーにあったらどうしようかと」
こうして天女はゆかりの家についていくことになったのじゃ。
「ご飯の前にお風呂はいかがですか?体が冷えたでしょう」
じつは前もって風呂を焚いておったのじゃ。用意周到じゃのう。
「あ、ありがとう。ところであなたのご両親は?」
「幼いときに亡くなりました」
「ご、ごめん・・・」
「いえ、どうぞごゆっくり」
しゅるっ・・・瑞穂が衣を脱ぐ衣擦れの音がする。
ちゃぽん・・・瑞穂が湯に入る音がする。
「お姉さま・・・もう待てません!」
言うなり、ゆかりは瑞穂に迫ったのじゃ。
ところが、扉を開けて仰天。
瑞穂に胸はなく、かわりに股の間に松が生えておったのじゃ。
あまりのことに凍り付いておったゆかりじゃが、やがて歓喜の声を上げたのじゃ。
「すっ、すっ、すごいです! お姉さまはお姉さまでありながら男の方なのですね! 驚きです。驚天動地です。
私の知らない天の世界では世の中がここまで進歩しているとは!
ということはお姉さまはお姉さまでありながらお嫁さんを娶ることができるのですね!!お姉さまー!!!」
「ちょ、ちょっとゆかりちゃん、落ち着き・・・」
「お姉さまーッ!」
そうしてゆかりは天女と夫婦の契りを交わしたそうじゃ。
次の日。
空から五色の雲を従えて、天の岩舟が下りてきたのじゃ。
すかさず、走り寄る瑞穂天女。
「元気だった〜?」
「いや、それが・・・」
瑞穂の後ろから顔を出すゆかりじゃ。
『お姉さまの妻になりました、ゆかりです』
「な、な、なんっ・・・!」
「おっ、おちっ、おちちっ、た、貴子っ」
二人の天女は驚きのあまり声が出んかったのじゃ。
「とりあえず、その女性も母船へ連れて帰りましょう。瑞穂さん、覚悟してくださいね」
一番上の天女は瑞穂を叱るとゆかりと皆を天の岩舟に乗せて飛び立ったのじゃ。
「お姉さま方、お帰りなさいなのですよ〜」
天の世界に帰ると、末の天女、奏姫が出迎えたのじゃが、
貴子とまりやは放心状態、瑞穂は苦笑いのうえ見知らぬ娘と腕を組んでいて、
「ただいま、奏さん」
奏を抱きしめてくれたのは姉の紫苑姫だけだったのじゃ。
奏姫が紅い茶を用意したのじゃが、すぐにゆかりと瑞穂の縁談をどうするかで揉めたのじゃ。
「納得できませんわ!
瑞穂お姉さまは我々、『聖應による人類帝国』辺境星系第1調査隊の大事な一員です。
それをこんな領民政府もない地上世界の、どこの骨とも分からぬこんな小娘に!」
「貴子〜 そうは言っても一夜の契りを交わしちゃったみたいだし・・・」
まりや姫が手をぱたぱたさせて言った一言で、貴子姫は怒り心頭に発したのじゃ。
「わたくしは許せません。不測の恋愛に落ちたわけでもなく、ただの肉体関け・・・」
「貴子、ティッシュティッシュ。」
貴子姫はのぼせながらも異を唱えたのじゃ。
「地上人といえど、我々と同じく恋愛する権利はあります。
こうしましょう。貴子さん、ゆかりさんが我々に同行するにふさわしいかテストしてみてください」
紫苑姫がにっこりと微笑って提案したのは、ゆかりに無理難題を押しつける格好の口実じゃった。
「・・・貴方もばれてしまうと、陛下に叱られてしまうでしょう?」
紫苑姫がこっそり耳打ちしたのは瑞穂姫じゃった。
「う、うう・・・」
「まず。 星の眷属の一員となるには華麗でなくてはいけません。さあどうぞ見せてご覧なさい!」
貴子が居丈高に命じたのは、森の中で生きてきたゆかりには難しい問題じゃった・・・
しかし、ゆかりも肝が据わったもの。
瑞穂の首に腕を絡ませると、そのまま二本の竹がさざめくように踊り出したのじゃ。
風が吹けば寄り合い、寄りつ離れつ見事に舞を披露したのじゃな。
「ゆかりさん、上手ですー」
奏姫が拍手する中、悔しがるは貴子姫。
「あの・・・お気に召しませんでしたか?」
「べ、べつにあれくらいわたくしにも出来ますわ!」
「てーことは、ゆかりんは貴子と同じくらい華麗だったって認めるわけね?」
「くっ!」
まりやのにやにや笑いをじろりと睨んだところで、貴子姫の負けは明白じゃった。
「じゃあ、今度は私のテストね。
ゆかりん。星の眷属たるもの、料理が出来なくてはダメよ。おいしい料理を作ってみなさい」
まりや姫の考えは不明じゃ。天女の考えることはわからんて。
奏姫に連れられてゆかりは料理の材料を見たのじゃが、やはり天の世界の食材、
さっぱりわからんかったのじゃ。
しかしじゃ。
もとより森の中、手探りで毒か食べられるかを見極めてきたゆかりじゃ。
一口噛んでは味を覚えて、食材を確かめていったのじゃ。
そうして一通り探り終えたところで料理を作り始めたのじゃ。
昨日、瑞穂に出した料理で天女の好みを知ったゆかりは自信満面じゃった。
「灰汁はこれを使って吸い取ると良いのですよ〜」
料理が好きな奏姫は、ゆかりを応援してかまどの使い方からなにかと教えたのじゃった。
「お待たせいたしました!
天女風挽肉鍋です。どうぞっ!」
「あ、肉、肉!」
「まりや、野菜も食べないと・・・」
「そうですわ。それまだ煮えてませんわよ?」
「ポン酢はどこですの?」
「はい、ただいま〜♪」
天女たちはゆかりの料理に舌鼓を打ったそうじゃ。
「う〜ん。ごちそうさまでしたっと」
まりや姫をはじめ、天女たちはたいへん満足したのじゃ。
「こうも見事にこなされると・・・認めざるを得ませんわね」
紫苑姫が妹たちを見渡して仰ったのじゃ。
「以後、ゆかりさんの扱いについては瑞穂さんに一任致します。
問題なきよう、監督責任を果たしてください」
奏姫は新しい友人に、まりや姫は新しい料理番におおいに喜んだのじゃよ。
その晩は、あらためてゆかりを歓迎して宴を開いて夜通し騒いだそうじゃ。
皆が寝静まったころ、紫苑姫は天津神たちと鏡をはさんで申し上げたそうじゃ。
「この惑星探査の期間延長を申請します」
「理由は?」
「臨床による先住民との遺伝子交合・・・もとい交配実験を提案します」
紫苑姫は、それはそれは可憐に微笑まれたそうじゃ。
掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に
禊ぎ祓へ給ひし時に 生り坐せる祓戸の大神等
諸々の禍事・罪・穢 有らむをば 祓へ給ひ清め給へと 白すことを聞こし召せと 恐み恐みも白す
実際に文章を打ったのは今日の昼からだからあまりひねってません。
ちょっと展開に強引なところもありますが、ご了承ください。
天女の羽衣の伝説は異伝がいろいろあって、どれにしようか迷ったあげく、オリジナルになりました。
近いのは織り姫・彦星伝説なのですが。
書いてるうちにじょじょに変な方向に傾きましたが、なんとか書き終えましたかな。
じじぃ伝聞系の語尾はしつこいですね。今度からは考えましょう。
それでは、また雑談でお会いしましょう〜♪
なんだか一子ちゃんチックなゆかりんでしたねw
けどこうしてあらためて由佳里ちゃんを見ると結構スペック高いですね
GJ&お疲れさまでした!
一子ちゃんが私に似ていると言ったゆかりんだしね。
楽しく読めたです。
管理人さんへ
L鍋さんの「新通貨!?」の作品登録をお忘れになっていらっしゃるのではないかと思うのですが……。
>>405 某サイトでのSS収集は2chの外のことだ。
そっちでやってくれ。
別にこのスレに全く関係ないわけでもなし
わざわざまとめてくれてるんだから
そんなに目くじら立てなくても良いのでは・・・?
>>405 東の扉さん
ご指摘ありがとうございました。
次の更新(2-3日以内を予定)にて訂正させていただきます。
>>405 どうも有難うございます。私も気づいてなかったです。
以前書いた作品は行きづまってしまいましたが、別の作品が完成しましたので、投下させていただきます。
よろしくお願いします。
「ねえねえ瑞穂ちゃん、次の日曜日、あたしたちと一緒に出かけない?」
僕が教室で休んでいると、突然まりやをはじめみんなが僕のところにやって来た、
「まりや……みんなも出かけるってどこに?」
「有名モデルのファッションショーよ。コネでチケットいただいてきたから、みんなで一緒に見に行こう、と思って」
次の日曜か……別に予定もないし、気分転換するのもいいかもね。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
僕はまりやからチケットを受け取った。
〜Yの悲劇〜
「じゃあ、みんなにもチケットを渡すわね」
まりやは紫苑さん、貴子さん、奏ちゃん、由佳里ちゃんへとチケットを渡そうとする。けど……。
「あれ? 1枚足りない……」
チケットが1枚足りないみたい……?
「かばんの中とかは?」
「えっと……ないみたい」
それからいろんなところを探したけど、見つからなかった。
「どっかで落としたのかな? これプレミアものでもう入手不可能だし、やばいわね……」
じゃあ、いったいどうすれば……。
「仕方ない、誰かに抜けてもらうしかないわね」
「じゃあ私が……」
僕が名乗り出ようとすると、とたんにまりやが頭を小突いてくる。
「瑞穂ちゃんが抜けてどうするのよ!」
まりや、なんで僕が抜けちゃダメなの?
「別に誰が抜けても……」
「瑞穂ちゃんはダメなの!」
まりやの必死の気迫。なんかイヤな予感が……。
「まりや、私に変なことさせるつもりじゃないわよね?」
「安心しなって。変なことは絶対させないから」
まりやはそう言うけど、ホントに大丈夫かな?
「まりやさん、あなたの不注意でこうなったのですから、あなたが抜けるべきではありませんか?」
「何よ貴子! これはあたしが手に入れてきたのよ! そのあたしにそんなことを言うあんたこそ抜けなさいよ!」
まりやと貴子さんが言い争いをはじめた。どうしよう、こうなるともう収集が……。
「あの……私抜けます」
「えっ!?」
「由佳里ちゃん!?」
全員由佳里ちゃんを見た。まりやと貴子さんも、言い争いをやめて見ている。
「私、この日友達と買い物に行く約束してましたから……」
「じゃあ決まりね。由佳里にはちゃんとお土産持って帰ってあげるから、気を落としなさんな」
「あ、はい」
この日は、このことに関してはこれで終わった。
そして、次の日曜日、ファッションショーの会場……。
「うわあ、すごいわね」
「なんか、私たちだけ場違いな気が……」
「奏、周りのお客様だけで、圧倒されますのですよー」
さすがにチケットにプレミアのつくファッションショーの会場だけあって、来客もみんな豪華な衣装に身を包んだ上流階級の人ばかり。
「始まるわね」
そうこうしているうちに、ファッションショーは始まった。僕たちは初めて見る本格ファッションショーに見入っていた。
そして休憩時間……。
「ゲストの飛び入り参加の時間?」
ふと目にした、そんな文字。これの意味するもの。それを理解した僕は、体から冷や汗が……。
「そうよ。これに瑞穂ちゃんも参加するんだから。しっかりやんなよ」
あああ、やっぱり……でも。
「私は参加したくなんかないわよ」
「瑞穂ちゃんの意思は関係ない! 参加するのは決定なんだから。みんなも瑞穂ちゃんの本格ファッションショー、見たいでしょ?」
まりやが他のみんなの方を見て言う。って、みんないつの間に!?
「もちろん瑞穂さんがきらびやかな衣装を身にまとうお姿、ぜひ拝見したいですわ」
「おおおお姉さま、どうかご出場ください!」
「か、奏もお姉さまのモデル、見せていただきたいのですよ……」
みんな口々に僕をそう説得する。ううう……。
「ほら、多数決で決まりね。さ、わかったら着替えてきて」
そう言ってまりやは僕を更衣室に押していく。
「まりや、僕に変なことさせないって言ってたじゃないか!」
まりやにだけ聞こえるように小声で抗議した。
「変なことじゃないよ。当たり前のことじゃない」
ガーン!!
「あ、当たり前のこと……ううう……」
瑞穂が更衣室で着替えてるころ……。
「くっくっく……」
「まりやさん、最初からあれが目的でしたのね」
まりやと紫苑が、とある小部屋で話していた。
「紫苑さま……ええ、もちろんですわ。ゲスト参加の時間があると聞きましたので」
「瑞穂さんのモデル、今から楽しみですわね」
「ええ。紫苑さま、瑞穂ちゃんにはこういうものも着せる予定ですのよ」
まりやはそう言って、かばんの中から色々な水着や下着を出してくる。
「まあ、これは……大事な部分ギリギリしか隠れていませんわね。世の中にこんなきわどすぎる水着や下着が存在するなんて……」
「これは“殿方を誘う用”ですから」
「ですが、瑞穂さんに着られますの?」
「ご心配なく。その点はぬかりありませんわ」
まりやは、再びかばんの中から肌色のスーツを出してきた。
「このワンピースは、肌にぴったりくっつきますし、パッドも内蔵されて、大事な部分も忠実に描かれていますから。
この上から着れば、ノープロブレムですわ」
「まりやさん……」
紫苑の表情が少し硬直した。
「いかがなされました、紫苑さま? やめさせますか?」
「まさか。こんな楽しそうなこと、滅多にありませんからね」
紫苑の顔に、再び笑みが溢れかえった。
「そうですよね」
「呉服問屋まり屋。そちも悪よのお」
「いえいえ、紫苑お代官様こそ」
その部屋には、しばらく笑いがこだましていた。
それから……。
「さあ、もうすぐ瑞穂ちゃんの出番ですから、迎えに行ってくるわね」
ゲスト飛び入り参加の時間、もうすぐ瑞穂の出番というところまでやってきた。
「まりやさん、お願いいたしますわね」
「奏、今からドキドキしますのですよ」
「………」
貴子は、必死に鼻血を抑えていた。
しばらくして、まりやだけが、必死の気迫でダッシュで帰ってきた。
「みんな! 大変!」
「まりやお姉さま、いかがいたしましたのですか?」
「み、瑞穂ちゃんが……」
まりやは、事情を話した。
「逃げた?」
「そうなのよ! 更衣室をいくらノックしても返事がないから開けたらすでにもぬけの殻で、
会場をいくら探しても見つからなくて……」
「そんな……」
「がっかりなのですよ……」
それを聞いた貴子と奏は落胆した。
「今からでも遅くはありませんわ。瑞穂さんを探しましょう!」
紫苑がそう提案する。
「そうですわね。でも、逃げたのでしたら、もうこの会場からどれだけ離れてるか……」
「甘いわね貴子。瑞穂ちゃんは、間違いなくこの会場のどこかに隠れてるわ」
まりやがそう断言する。
「まりやお姉さま、なぜそう言い切れるのですか?」
「逃げたと見せかけて近くに隠れてやりすごすのは、瑞穂ちゃんの常套手段よ! それであたしは子供のころから、
かくれんぼでも逃げた時でも、100%瑞穂ちゃんを見つけてきたんだから!」
「なるほど、幼なじみだからこそわかることですわね」
「さあ、そうと決まったら、会場内を徹底捜索よ! 女神シーオンの名において、脱走の大罪人、
宮小路瑞穂を捕らえることを命ずる! 行け、暗黒生徒会長、厳島貴子! ならびにピンクリボン軍総帥、周防院奏よ!」
「イエッサー!」
こうして、会場内の捜索は始まった。
「まりやさん、こちらにもいませんわ」
「奏もダメでしたのですよ」
「こちらにも、瑞穂さんは見つかりませんでした。瑞穂さんらしいオーラの方も、いらっしゃいませんでしたわ」
約1時間後。4手に別れて、隠れられそうな場所は探しつくしたものの、結局瑞穂は見つからなかった。
「……なんで見つからないのよ」
ふと、まりやが小声でつぶやいた。
「なんで、すぐ見つかるところに隠れんのじゃあ! むっきー!!」
途端に、まりやが暴れだした。周りのものを、手当り次第に投げていく。
「まりやさん、落ち着きなさい!」
「暴れないでくださいなのですよ!」
周りのみんなは、まりやから避難しながら呼びかけるだけで精一杯だった。
「はあ……今日は散々でしたわね」
「お姉さまは見つからないわ、まりやさんの尻拭いをさせられるわ」
「奏、とても怖かったのですよ」
あの後、まりやが暴れたせいで、会場はメチャクチャ。4人は、関係者たちに大目玉を喰らってしまった。
その後、みんなで後始末をさせられ、壊れたものは弁償させられた。
そして、当然のことながら、みんなこの会場には出入り禁止にされてしまった。
(くーっ……それもこれも、みんな瑞穂ちゃんのせいだ! 帰ったら、絶対タダじゃおかないから!)
せっかく苦労して瑞穂ちゃんの魅力を引き出すお膳立てをしてあげたのに、きわどい水着や下着を見ても、
瑞穂ちゃんが逃げられない準備も完璧にできてたのに……。
(そうよ! 瑞穂ちゃんのものはあたしのもの。あたしのものはあたしのもの。
幼等部のときに、あたしが決めたルールだったじゃない!
それなのに、高校生にもなってそれを破って逃げ出すなんて、万死に値する重罪よ!)
帰ったら、たっぷりお仕置きした後で、1ヶ月間ファッションショー地獄の刑に処してやる! まりやはそう決意していた。
「はあ……疲れましたわ」
結局寮にも瑞穂は不在で、4人はインターバルのために聖央の食堂に来ていた。
「瑞穂さん、どこにいらっしゃるのかしら?」
「もう、探すのはあきらめて、お姉さまが寮にお帰りになるのを待った方がよろしいのでは?」
「奏もそう思いますのですよ」
「ううう……瑞穂ちゃん、帰ったら覚えてなさいよ!」
まりやは悔しさ全開の顔で、しぶしぶ承知した。
「そうですわ。せっかくですから、風に当たりにいきましょう」
紫苑は、気分転換のため、屋上に向かった。
「あら?」
紫苑が屋上を訪れると、なんとそこには先客がいた。
「……それでね、その時……」
「もう、お姉さまったら……」
瑞穂が由佳里の肩を抱く形で、寝そべりながら2人で話し込んでいた。
「瑞穂さん!? 由佳里さんも……」
「あっ、紫苑さん!」
「紫苑さま!」
2人は驚いて紫苑のいる方を見た。
「瑞穂ちゃんがいたって!?」
「お姉さま、見つかりましたのですか!?」
一方、それを聞いてまりやたちも屋上に駆けつけてきた。
「な、なんで由佳里と瑞穂ちゃんが一緒にいるのよ!」
「お、お姉さま、これはいったいどういう……」
「由佳里ちゃん、お友達とお出かけしていたのではなかったのですか!?」
みんな口々に疑問を投げつける。
「お姉さま、説明した方がよろしいのでは?」
「ええ、そうね」
由佳里にうながされて、瑞穂は説明を始めた。
「ふーっ……スッキリした」
着替えの合間、僕は用を足していた。すると……。
「くっくっく……」
「まりやさん、最初からあれが目的でしたのね」
この声はまりやと紫苑さん?
「紫苑さま……ええ、もちろんですわ。ゲスト参加の時間があると聞きましたので」
「瑞穂さんのモデル、今から楽しみですわね」
「ええ。紫苑さま、瑞穂ちゃんにはこういうものも着せる予定ですのよ」
な、何? こういうものって……いったい何を着せる気なの?
「まあ、これは……大事な部分ギリギリしか隠れていませんわね。世の中にこんなきわどすぎる水着や下着が存在するなんて……」
「これは“殿方を誘う用”ですから」
「ですが、瑞穂さんに着られますの?」
「ご心配なく。その点はぬかりありませんわ。このワンピースは、肌にぴったりくっつきますし、パッドも内蔵されて、
大事な部分も忠実に描かれていますから。この上から着れば、ノープロブレムですわ」
「まりやさん……」
「いかがなされました、紫苑さま? やめさせますか?」
「まさか。こんな楽しそうなこと、滅多にありませんからね」
「そうですよね」
「呉服問屋まり屋。そちも悪よのお」
「いえいえ、紫苑お代官様こそ」
………!!
僕は絶句した。
そんなとんでもないものを着ろって? 冗談じゃないよ!
そして僕は逃げた。ひたすら走った。この会場から少しでも遠くに。
だって、とにかくこの会場そのものが怖かったから。
「はあ……はあ……はあ……はあ……」
そして気がつくと、僕は寮に帰ってきていた。そして、落ち着こうと食堂に飲み物を飲みに行くと……。
「由佳里ちゃん!?」
「あ、お姉さま」
そこでは、友達と出かけているはずの由佳里ちゃんが1人お茶を飲んでいた。
「由佳里ちゃん、お友達とお買い物に行ってるんじゃ……」
「ああ……あれ、ウソなんです」
「え?」
「このままじゃ決まりそうにないと思ったので……」
「そうだったの、ごめんね。気づいてあげられなくて」
「いいですよ。貧乏くじを押しつけられるのには、慣れてますから」
「由佳里ちゃん……」
僕はそう言って笑う由佳里ちゃんが、とても悲しく見えた。
そのセリフは、裏を返せば、慣れてしまうくらい何度も貧乏くじを押しつけられている、ということになるから。
「ねえ、由佳里ちゃん、よかったら、これから私と2人でどこかにお出かけしない?」
「え? よろしいんですか?」
「もちろんよ。私は由佳里ちゃんとお出かけしたいんだから」
「喜んで!」
そして僕たちは、一緒にお買い物したり、お食事したり、映画を見たりして、楽しく1日を過ごした。
「ふう……帰ってきたわね」
「そうですね。お姉さま、ありがとうございます! お姉さまのおかげで今日はとっても楽しかったです!」
よかった。由佳里ちゃんの喜ぶ顔が見れて、僕も嬉しい。
「そうだ! 由佳里ちゃん、今から学院に行ってみない? 誰もいない学院を見て回るのも、いつもと違っていいかも」
「そうですね。それじゃあ……」
学院を一通り見て回った後、僕たちは屋上に着いた。
「楽しいですね。普段と違う学院を歩くのも……」
「そうね」
「そういえば、お姉さま、聞き忘れてましたけど、ファッションショーの方はよろしいんですか?」
「ああ……逃げてきちゃった」
僕はそう言ってペロッと舌を出す。
「逃げたって……お姉さま、よろしいんですか?」
「ちょっと心は痛むけど……でもいいの。向こうもやり過ぎなんだから」
そう言って、僕は由佳里ちゃんに、まりやたちがとんでもないものを着せようとしていたことを説明する。
「……あはは、確かにそれは調子にのり過ぎというか」
「私が逃げ出したくなる気持ち、わかってくれた?」
「まあ……少しはわかります。私はお姉さまと一緒にいられれば、それだけで満足ですけど」
地獄を見そうになった後だけに、由佳里ちゃんの言葉がとても温かかった。
「ありがとう」
チュッ。
僕は由佳里ちゃんのほっぺにキス。
「……!! お、お姉さま!」
由佳里ちゃんは、とたんに頬を真っ赤にして僕がキスした部分を手で覆った。
「あらごめんなさい。急に由佳里ちゃんにキスしたくなっちゃったから。迷惑だった?」
「と、とんでもないです! 私も嬉しかったです」
「ふふっ、喜んでもらえて、私も嬉しいわ」
そう言って、僕は由佳里ちゃんの肩を抱いた。
「今日は、もっと由佳里ちゃんを感じたいな」
「私も……お姉さまを感じていたい……です……」
赤くなりながら言う由佳里ちゃん。
そして僕たちは、屋上に寝そべりながらくだらない雑談をしていた。
「……というわけ」
「あらあら、聞かれてしまっていたなんて……油断していましたわ」
「すでに遠くに逃げていたなんて……まりやさんの経験も、当てになりませんわね」
「うるさい! ふーん……それでのんきにしてたってわけ……こっちがどんな思いをしたかも知らないで!」
まりやはいきりたった。そして自分たちのことを聞かせる。
「……それは、なんというか」
「ご愁傷様です。でもまりやお姉さま、それはある意味自業自得ですよ?」
由佳里がおかしそうに言った。
「なんだと由佳里ー!」
「ま、今回ばかりは由佳里さんの言う通りかもしれませんわね」
「貴子まで……」
「か、奏もそう思うのですよ」
「まりやお姉さま、以前ご両親が自分のことを着せ替え人形だと思ってるっておっしゃってましたけど、
まりやお姉さまこそ、瑞穂お姉さまのこと、着せ替え人形だと勘違いしてらっしゃるんじゃありませんか?」
「うぐっ……」
由佳里の指摘に、まりやは一言も返せない。
瑞穂への欲望を際限なくエスカレートさせた、“欲張りの悲劇”。
結局この日は、由佳里1人だけがいい思いをして、幕を閉じたのであった。
おまけ
それから約1ヵ月後……。
「ちょっと由佳里! 休日いっつも瑞穂ちゃんとばっかベタベタして! たまにはあたしたちにも回しなさいよ!」
まりやは、由佳里に文句を言う。
「あらまりや、由佳里ちゃんが私を1人占めしてるんじゃないわよ? 私が休日は由佳里ちゃんと一緒に過ごしたいだけ」
「瑞穂ちゃん! たまにはあたしたちにも……」
「だって、まりやたちにつきあったら、いつまたあんな恥ずかしい格好させられるかわからないし、
その点由佳里ちゃんなら私の気持ちをわかってくれてるし」
「くううううう……」
あの後、まりやの愚痴を聞いた一般生徒たちから、ファッションショーを見たいという声がどんどん上がっていった。
そしてまりやはこれ幸いと、学院でファッションショーを開き、例のきわどすぎる水着や下着も着させられたのだった。
ファッションショーの開催の投票で反対票は瑞穂と、愚痴を聞いていた由佳里だけで、
そのことが瑞穂の心をますます由佳里に傾けていった。
「そういうわけで、由佳里ちゃん、明日の休日も、一緒にデートしましょうね」
「えへへ、わあい!」
そして今では、瑞穂は由佳里ルートから、核爆弾が降ろうがブラックホールが降ろうが動かない状態にまで
なってしまっていたのであります。
Fin
えっと……以上です。
今回のタイトルの意味、“由佳里の悲劇”だと思いました?
まあ、そう見せかけたかったんですが。
これは、由佳里ちゃんをいじめていることにはならない……と思いますが、
そう思っているのは私だけだったりして……(汗)
それでは、今回はこれにて。お目汚し失礼しました。
東の扉さん、乙で〜す。
もっと由佳里ちゃんとラブラブなお姉さまが見たいです。
デートの内容をもっとkwsk〜
やるきばこ2が出たせいか、SS書きさんたちがお休みしてる中、ありがとうございました。
これから慶行のおじさまや貴子さん兄のSSがたくさんでてくるといいなぁ〜
>>424 もう由佳里に関して書かない方が良いんじゃない?
内容もアレなら、言い訳も見苦しいし。
>>424 今回の冒頭を読んでまたか…と思った瞬間、
こんなどんでん返しが待っていようとは…予想外でした。
ゆかりんが漁夫の利を得る話って珍しいと思うのは気の所為か?
その分読み応えがありました。gj!
それにしても、ここ最近のまりやは暴走し過ぎてるな…
すっかり悪役が馴染んだというか、その点では紫苑も同類ですね。
この2人にはきついお仕置きが必要かもしれませんね。
例えば、まりやと紫苑2人揃って瑞穂の奴隷にするとか…でもどうすれば実現するのやら?
1つのネタとしてここから先は職人さん達にお任せしますわ。
まりやは悪そうに見えて意外と純情だからなぁ・・・
紫苑さまも悪戯っぽいところはあるけど優しいのが真の姿だと思うんだが・・・
とりあえず、短いネタでも良いから書いてみようよ。
>>427
>>427 東の扉氏のキャラはいじりすぎてて根本から崩れてるところが多いので、それを楽しまないと駄目かな。
黒いまりやや紫苑は彼の特異性と思って気にしないが吉よ。
原作のキャラ性を活かしてないと嫌な人はNG NAMEにした方が無難な書き手さん。
430 :
まりやが怖い:2007/11/01(木) 23:08:51 ID:owKi0KJp0
怖い怖い、まりやが怖い
いつも勝手に僕の部屋に入って来ては
僕に女物のコスプレさせたり
僕をいきなり押し倒して僕の大事なところを手で扱いてくる
どうしてくれよう?どうしてしまおう?
よし、食べてしまえ!
「ちょ、ちょっと瑞穂ちゃんいきなり押し倒さないでって…なんであたしの服脱がしてるのよ!」
「よいではないかよいではないか、いつもは僕が押し倒されてひん剥かれているからイイじゃない。
それにアソコも濡れてるし、ひょっとして僕に襲われて感じちゃってるのかな?このままいいよね?」
「いいわけないでしょ!まだ心の準備ができてないしこんな…きゃっやめ、やめてええええ!」
「あん♪」
ああおいし…じゃなくって怖かった♪
まりやったら最初はあんなにも嫌がってたのに
すぐにおねだりしてきちゃうんだもんビックリしちゃった
朝、ふらふらした足取りで学園に向かっていったけど
まりやの事だから大丈夫だよね
「瑞穂さん!」
「きゃあ、紫苑さん!いきなり胸もまないで下さいよう」
「瑞穂さんが無防備なのがいけませんわ」
「だからってこんな…あっ、ちょっと!」
…うん、今度は紫苑さんが怖い
431 :
430:2007/11/01(木) 23:12:44 ID:owKi0KJp0
以上です
初めてSSに挑戦してみました
お粗末さまでした
まんじゅうこわいのパロディですかw
いいですね。いいですねっ!
紫苑さま編もお願いしますm(_ _)m
433 :
名無しさん@初回限定:2007/11/02(金) 01:48:43 ID:hp33DT4L0
おおっ?まりやお仕置きのネタが!?
>>430 GOOD JOB!!! そしてワロスwww
ティスプレイに吹いちまったジャマイカwww俺のコーラを返してくれwww
その調子で紫苑編もよろしく頼むwww
434 :
名無しさん@初回限定:2007/11/05(月) 15:21:33 ID:194mqOsF0
今人生初SS書いてるんだが…
えっち有りでしかもお姉さまが緋紗子先生に犯されるんだが
ここに投下してもよいものだろうか…。
鬼畜、陵辱系でなければOKだったと思う。
作品の雰囲気を壊してしまうようなのは
以前、スレがひどく荒れる原因になったので
おとボクSS投稿掲示板が、あるのでそこへ。
>>435 サンクス。
雰囲気を壊したつもりは無いんだが
チキンなので投稿掲示板にうpしてくるよ!
気が向いたら見てやってください。
>>438 私の記憶が正しいなら、それはたしかブラクラのはず
440 :
名無しさん@初回限定:2007/11/10(土) 23:31:18 ID:4S5ScO3d0
ただひたすら電話をかけつづけ卒業式を待つ
瑞穂ちゃんと紫苑さまの結婚後のある日のこと
唐突にまりやが瑞穂ちゃんに尋ねた
「紫苑さまには許婚がいたわけでしょ。瑞穂ちゃんにはいなかったの?」
「は?」
素っ頓狂な声を出してしまった瑞穂ちゃん
「いやほら、財閥の常としてお金持ちな許婚はいなかったのかな〜、と思って」
それに答えたのは瑞穂ちゃんではなく、父慶行
「うむ、瑞穂にはちゃ〜んと許婚がおったよ」
「あ…やっぱりいたんだ」
「写真もとってある。まりやちゃん見るかね?」
「もちろん」
即答するまりやと速攻で写真を取りに行く慶行
「ほら、この人がそうだよ」
「あらまあ、なかなかの二枚目ですわね」
どこからか現れた紫苑さまが慶行の持ってきた写真を覗き込む
「確かこの写真を撮ったのは16,7才の頃と聞いておるが…」
441 :
名無しさん@初回限定:2007/11/10(土) 23:31:54 ID:4S5ScO3d0
写真に写っていたのは腰ほどまである豊かな金髪を束ねた美しい少年の姿
「あの、でも父様?この写真の方はどう見ても男性なのですけど…」
瑞穂ちゃんが当たり前ながらいぶかしんで父に尋ねる
「こちらは伊集院財閥の跡取りで…」
まりやが慶行の言葉をさえぎる
「でも、日本の法律じゃ男同士は結婚できないわよねー」
紫苑さまが何か思い当たったらしく顎に人差し指を当てて言葉を紡ぐ
「お義父さま伊集院家といいましたが確か…
伊集院家にはレイ様とメイ様のご姉妹でけで殿方はおられないはず…」
「そうなのだよ!だからこの写真の人物はれっきとした女性なのだよ!」
まりやが苦笑いをする
紫苑さまも困ったような顔で困った発言をする
「男装美少年と女装美少女ですか…意外とお似合いのカップルになったかもしれませんね」
それを聞いて瑞穂ちゃんが凹む
「かんべんしてください…」
>>440 元ねたが分かる人にとっては面白いな。GJ
>>男装美少年と女装美少女ですか
男装美少女と女装美少年じゃね?w
ときメモネタですか〜
伊集院レイが出てきた時は思わず吹いちまったぞコノヤローwww
確かに女装美少年と男装美少女はお似合いだわなwww
いつもと変わらない朝の登校風景
「おはよー貴子ー」
ぽん、と貴子の背中をまりやが叩いていく
「はしたないですわよ、まりやさん!」
貴子の声に軽く手を振りまりやが校舎に入っていく
それが嚆矢だった
「おはようございますなのですよ〜会長さん〜」
「おはようございます」
あいかわらずの間延びした声の奏とまだ眠そうな由佳里が貴子の背中を軽く叩いていく
その行為を不思議に思いながらもあまり悪い気のしない貴子が笑顔で挨拶を返す
「おはようございます、周防院さん、上岡さん」
二人は軽く会釈をして自分たちの掌を見て教室へと移動する
「「おはようございます」」
声を重ねながら圭と美智子が貴子の肩に左右から手を置く
そしてやはり自分たちの掌を見て足早に消えていく
「おはようございます、貴子さん」
再び肩に手を置かれる
「あ、おはようございます紫苑さま」
振り向いて紫苑に挨拶を返す
「そんなわけありませんわよね…」
残念そうな顔をした紫苑が2,3度掌を握り歩き去っていく
「おはようございます貴子さん」
瑞穂までが貴子の肩に手をかけてあいさつ…そして紫苑と同じせりふを口にした
「そんなわけないわよね…」
「あの…先程から皆さん私の背中や肩を叩いてご挨拶なさるのですが…」
「いえ…貴子さんの背中に張り紙がしてありまして…」
ぺりっ、と瑞穂が貴子の背中から一枚の紙を剥がした
その紙には
『ペンキ塗りたて』
の文字が
「またまりやさんですわねっ!」
貴子の予想どうりそれはまりやのしわざだった
貴子の背中に張り紙を貼り付けた当のまりやは
「ありゃ、もうばれたか」
と言っただけだった
貴子は、誰もが予想しなかったことだが、何も言わずあっさりと引き下がった
その日の夕方
寮を訪れた貴子は、
瑞穂たち三人が食堂の隅で抱き合って小動物のように震えるほどの喧嘩をまりやと演じた
>>445 ないす! GJ!
笑わせていただきました。
447 :
コマイ:2007/11/13(火) 19:04:18 ID:HbE5FLr90
『誕生日のプレゼント』
「そういえば、もうすぐ貴子さんの誕生日ですね。」
瑞穂ちゃんが陽気に貴子さんに話しかけた。
「ええ、11月の16日ですわ。」
いつもと大して変わらない下校の風景。
「それならみんなでパーティーするのですよ〜」
「私、腕によりをかけてハンバーグ作っちゃいます」
奏ちゃんとゆかりんがはしゃぎだし、そんな二人をにこやかに見守る紫苑さま
「ハンバーグはおいといて…せっかくだから寮の食堂でパーティーしよう!」
まりやの提案に否やはない全員だったが、
「ボジョレーヌーボーの解禁日だしね…」
ぼそりとつぶやいたまりやの一言を聞きとがめたものはいなかった。
448 :
コマイ:2007/11/13(火) 19:09:13 ID:HbE5FLr90
ふと思い出したようにまりやが話し出す。
「そういえばさー、中学校のときだっけ」
「なにがです?」
貴子さんが聞き返す。
「あのときはあんたのお兄さんが、どっかの高級レストランでお誕生日のパーティーしようっていいだして」
「う、その話は思い出したくありませんわ…」
厳しい顔になる貴子さん、興味をそそられた紫苑さまがまりやに話をすすめるように促した。
「それがなー紫苑さま、貴子ってばみょーに庶民の暮らしにあこがれたりするもんだから…」
貴子さんが赤面しながらまりやの話の後を継ぐ
「パーティーをするなら、という意味でファミリーレストランでいい、と言ったのです」
さらにまりやが
「そしたらねー誕生日になってお兄さんが貴子に綺麗にラッピングされた何かを渡したのよ」
「私開けてびっくりしましたわ。『権利書』とか書いてあるんですもの。」
その場にいる全員、まりやと貴子さん以外が「?」の表情になった。
「そしたらさーお兄さんが言うのよね、「そこの国道沿いのファミレスがお前のだから」って」
「あのお馬鹿兄は私の言葉の意味を取り違えたのです!」
顔を真っ赤にして貴子さんが怒鳴るように声を絞り出した。
「あははは!ファミレスでいいの意味を「欲しい」と勘違いしたわけよ!」
瑞穂ちゃんたちは茫然自失。
奏ちゃんがようやく言葉を口にできた
「さすがに…お金持ちは桁がちがうのですよ〜」
瑞穂ちゃん&ゆかりん←まりや視点
貴子さん←瑞穂or紫苑視点
奏ちゃん←貴子以外の視点
紫苑さま←瑞穂以外の視点
まりや←瑞穂視点
……これは誰視点の文章なんだ?
>>449 わかった! この視点で見ている人物が犯人だ!
>>447-448 そういえばもうすぐ貴子さんの誕生日ですね。
昨年は書けなかったので、私もそろそろ本腰を入れますか。
それはそれとして、別に電波を受信しましたので、投下させていただきます。
設定は由佳里ルートの1月です。
1月のある日、聖央の女子寮で……。
「ねえ奏ちゃん、由佳里どこにいるか知らない?」
「由佳里ちゃんでしたら、お姉さまにお勉強を教わってらっしゃるのですよ」
由佳里を探していたまりやが、奏に聞くと、そう返事が返ってきた。
「え? テストなんてなかったと思うけど……」
以前瑞穂に教えてもらった時、点数と順位が飛躍的に伸びて以来、由佳里にとって、勉強もそこそこ面白く感じるようになっていた。
「ふーん。由佳里が自分から勉強を教わりに行くとはねえ……下半身使った勉強もしてるんじゃないの?」
「まりやお姉さま……確かにお2人はそちらもしているのですよ」
「ふうん……」
それを聞いたまりやの目が、邪悪な輝きを放った。
〜気持ちよくなる勉強会〜
今日も由佳里は瑞穂に勉強を教えてもらっているはず。さっそくまりやは瑞穂の部屋に向かうことにした。
「さあて、どうやってからかってやろうかな」
最近はよく由佳里を瑞穂ちゃんにとられてるんだし、それぐらいは当然の権利よね、とまりやは思う。
「じゃあ、今日の勉強はこれで終わりね。わかったかしら?」
「はい! よくわかりました!」
「でも、これだけ頑張れるようになったのなら、もう私はいらないと思うんだけど……」
「お姉さまに教えていただけるから頑張れるんです!」
結局由佳里も、勉強自体を好きになったわけじゃないようである。
「それで、お姉さま、もう1つの方のお勉強は……」
(おっ、いよいよエロシーンか? まずはたっぷり拝見させてもらうとしますか)
まりやの顔が興奮していく。
「ああ。でも、今日はもう遅いから。それとも、あの気持ち良さが忘れられないのかしら?」
「あの、今度やる時は優しくしてくださいね。この前は、私、もうクタクタでしたから……」
(クタクタって……そんなになるまでやってたんだ……くっ……
このまりや様ともあろうお方が、そんな重要な場面を見逃してたなんて……)
瑞穂と由佳里の激しいエッチシーンが見れなかったことに憤慨するまりや。
「あら? 気持ち良くなかったの?」
「それは……気持ち良かったですよ……でも、お姉さまってテクニシャンですね」
恥ずかしそうに、とぎれとぎれに話す由佳里。
「人に教える事ができるくらいですから。由佳里ちゃんは、私のテク見てどう思った?」
「お姉さまに教えていただいて、もっと気持ちよくなれるのかと思ったら、ぞくぞくしちゃいました……」
(ほほう……エロ娘の本領発揮ねえ)
あたしが見てたことを知った時の2人の反応が楽しみだわ。まりやはますます興味津々に聴く。
「じゃあ、明日の朝5時、校門前の並木道に集合ね。前よりももっと気持ちいい思いをさせてあげるわ」
「朝5時……ですか?」
「そうよ。じゃあ、おやすみ、由佳里ちゃん」
「おやすみなさい」
そう言うと由佳里は瑞穂の部屋から出て行く。まりやはとっさに身を隠した。
「朝5時に校門前の並木道か……こりゃあ見逃す手はないわね。にしても、屋外プレーとはね……
由佳里も瑞穂ちゃんも、いつの間にそんなにマニアックになったのやら……」
まりやは早朝から繰り広げられるエロシーンを想像し、部屋で邪悪な笑みを浮かべていた。
そして、翌日の朝5時……。
「はあはあ……お姉さま、お待たせしてしまいましたか?」
まだ薄暗い校門の並木道に、体操服の由佳里が大急ぎで走ってきた。同じく体操服姿の瑞穂が答える。
「ううん、私も今来たところよ。由佳里ちゃん、今回は演出もしてあるから、以前よりさらに快感を味わえると思うわよ」
「お姉さま……そんな……」
由佳里は恥ずかしそうに頬を染める。
「お姉さまも、気持ちよくなるんじゃないんですか?」
「ええ。由佳里ちゃんと一緒にね。でも私はわかってるから。今度は一緒にあの快感を味わいましょうね」
「は……はい」
「それじゃあ、始めましょうか?」
「はい……」
由佳里は顔を真っ赤に染める。
「もっと、姿勢を正して……」
瑞穂は直接由佳里の身体に触れ、姿勢を整えていく。
「お、お姉さま、恥ずかしいです……」
「あらどうして? ちゃんとした姿勢でした方が、もっと気持ちよくなれるわよ?」
「そ、それは……そう……ですけど……」
由佳里は相変わらず真っ赤になりながら、弱々しく返す。
「じゃあ、心の準備はいい?」
「ちょっと、待ってください……ドキドキがおさまらなくて……」
「落ち着いて。今日は優しくしてあげるし、怖いことなんか何もないんだから」
「はい……もう大丈夫、です……」
何回か深呼吸した後、由佳里は瑞穂にOKのサインを出した。
「じゃあ……はい!」
瑞穂の合図と同時に、2人で一緒にジョギングコースを走っていく。そして何周か走った後……。
「今日はこれで終わりね。もうそろそろだと思うから……」
「そろそろ……って……あっ!」
そう言った時、東の空から太陽が昇ってきた。
「どう? 走り終えた後に日の出を見た感想は?」
「すごいです……なんか、感動しちゃいました……普通に走るのも走り終えた後が気持ちいいですけど、
こんな光景を見ると、心まで洗われるように気持ちいいです……」
由佳里はボーッと朝日を眺めながら言った。
「でしょ? この瞬間は、私も清々しくて、すごく気持ちいいわ」
「でもお姉さまって、ほんとテクニシャンですね。私なんか、ちょっと油断すると、いつものクセが出てきちゃいますから」
「まあそれは慣れよ。由佳里ちゃんも続けていれば、私みたいになれるわ」
「ちょっとなんなのよそれは! そんで終わり? 冗談じゃないわよ!」
「まりや……いたの?」
「まりやお姉さま……いらっしゃったのでしたら、ご一緒すればよろしかったのに……」
まりやが憤慨しながら出てくると、瑞穂は少し驚きながら、そして由佳里はそれから少し残念そうに言う。
「あんたら、エロいことするんじゃないの!?」
「な、なんのこと?」
「奏ちゃんが言ってたわよ! 瑞穂ちゃんと由佳里が下半身使った勉強してるって!」
「奏ちゃんがそんなことを!? 奏ちゃん、なんでそんなウソを……」
由佳里が驚愕すると、瑞穂が気づいたように由佳里に言う。
「ちょっと待って、由佳里ちゃん、別にウソじゃないでしょ?」
「えっ……?」
その言葉に反応する2人。
「だって、足は下半身の一部なんだし、陸上の走り方の勉強なんだから、足は当然使うわけだし……」
「あ、なるほど……」
「………」
感心する由佳里とは逆に、まりやは呆然としながら、昨日の2人の会話を振り返ってみる。
「むっきーっ!! 純真無垢な乙女心を踏みにじりやがってーっ!!」
肩すかしを喰らわされたまりやは、2人に殴りかからんばかりの勢いで迫ってきた。
「ちょっとまりや、どこが純真無垢な乙女心なの!」
「お、お姉さまが勝手に勘違いしてただけじゃないですか!」
「うっるさーい! 紛らわしいにも限度があるんじゃーっ!!」
理不尽に追いかけられる2人の説得も聞かず、まりやは限度を知らないくらい追いかけ回すのだった。
Fin
以上です。お目汚し失礼しました。
……にしても、なんか連続投稿規制がすごく厳しくなっていたような……どうしてかな?
それはそうと、あさってには、L鍋さんの作品や、バースデーカプリッツィオの続きも見られるのでしょうか?
今から楽しみです。
ところで、今瑞穂くんと由佳里ちゃんのラブラブなSSが無性に見たい今日この頃です。
どなたか、紹介していただけませんか?
>>458 朝からご苦労様ですw 確かに連投規制厳しそうですねw
なんとなく体育会系のオチとは思いましたが、奏ちゃん発言がどう化けるかちょい期待しましたw
(マッサージ系を想像した私)
460 :
コマイ:2007/11/14(水) 21:20:41 ID:5427tWXm0
『OVER』
「いやー今日もゆかりんの作るご飯はおいしいわねー」
結構な勢いで真っ白なご飯をかっこむまりや。
「あ…ありがとうございます…まりやお姉さま…」
「食欲の秋とはいうけど…よく食べるわね…まりや」
「すごい量をお食べなのですよー」
学院の寮の何気ない夕食の風景
でもまりやの食欲に他のメンバーはあきれ気味
「ごちそうさまでしたっ!」
ぱん、と拍手を打つまりや
「お…おそまつさまでした…こんなに食べるなんて…明日の朝の分まで…」
「奏の…一日分ぐらいは食べてましたのですよ〜」
「さて、風呂にでも入りますか!ゆかりん!久しぶりに一緒にはいろ!」
まりやがゆかりんの首根っこをひッ捕まえて浴室に連行しようとする
「あ、でもお片付けが…」
「私がやっておくわ、まりやといっしょにはいってらっしゃい」
瑞穂ちゃんがお茶碗やお皿を片付けていく
「お姉さまだけにさせられませんのですよ〜奏も手伝うのですよ〜」
こうしてまりやとゆかりんは仲良くお風呂にはいりましたとさ
461 :
コマイ:2007/11/14(水) 21:21:49 ID:5427tWXm0
瑞穂ちゃんと奏ちゃんがのんびりお茶を飲んでいると
「むっきぃぃいいぃい!!!」
まりやの叫び声とともに浴室から破壊音が聞こえてきました
壮大な足音とともにまりやが食堂に戻ってきます
「な…なにがあったの?」
おびえながら瑞穂ちゃんが聞きただしました
「ふ…ちょっと…3キロほど体重が増えていたのよ…」
奏ちゃんはがたがた震えています
瑞穂ちゃんはもうひとつ気になったことを聞きました
「じゃ、あのすごい音は…」
その質問には目に涙をためたゆかりんが答えました
「まりやお姉さまが…お姉さまが…体重計を踏みつけて壊してしまったんです…」
462 :
コマイ:2007/11/14(水) 21:23:00 ID:5427tWXm0
翌日
「というわけで大変だったのですよ〜会長さん〜」
瑞穂ちゃん一行は登校途中で会った貴子さんに昨夜の顛末を話す
「まあ、相変わらず粗暴ですわね、まりやさん」
「いや、つっこみどころはそこじゃないと思いますよ」
瑞穂ちゃんがボソリとつぶやく
「でも、まりやお姉さまは「粗中に細あり」なんですよ」
「「粗にして野だが卑にあらず」ともいうのですよ〜」
「ふたりともうれしいけど、あんま女の子むけの褒め言葉じゃないわよ」
ゆかりんと奏ちゃんの言葉に苦笑いのまりや
「とりあえず今日は授業が終わったら新しい体重計を買いに行きましょうね」
瑞穂ちゃんの建設的?な提案だった
463 :
コマイ:2007/11/14(水) 21:28:39 ID:5427tWXm0
その日の夜
お風呂からあがってきたまりやはにこやかな表情だった
「あれ?機嫌よさそうだけどどうしたの?」
「ん?昨日の体重計は壊れてたみたい、今量ったらごく普通の体重だったわ」
まりやはご機嫌で自室に戻っていく
すぐあとにゆかりんがやってきて瑞穂ちゃんに耳打ち
「まりやお姉さまは怖いので体重計の目盛りに細工して軽くでるようにしておいたんです」
翌夜、浴場の前を通りかかった瑞穂ちゃんが耳にしたまりやの言葉
「あちゃー1キロ太っちゃったけど…ま、いいか」
「「まりや…それ合計4キロ太ってるよ…」」
口が裂けても言えない瑞穂ちゃんでした
464 :
名無しさん@初回限定:2007/11/14(水) 23:22:21 ID:37TBzDQx0
問題は4キロ太っても瑞穂ちゃんとの差が広がることだな
?
>>464 まりやの体重>瑞穂ちゃんの体重、ということだね?
高等数学を駆使して解いてみたよ。
でもそれは周知の事実〜w
467 :
コマイ:2007/11/15(木) 16:57:22 ID:Bn6IgfO50
『続 OVER』
「そんなわけで、太ってなかったと思ったら実は太ってて、さらに太っちゃって…」
下校途中にまりやが紫苑さまに愚痴をこぼす
「大変でしたわね」
「まあ、由佳里にはきっちりおしおきしましたけど」
「おしおき?」
紫苑さまが瑞穂ちゃんの方を見る、何か知っているのかと思って
「由佳里ちゃん…禁ハンバーグ一ヶ月の刑を喰らったんです…」
なんともいえない微妙な表情で瑞穂ちゃんが答える
「それは…まあ…なんと言ってよいやら…」
そんなことを言いながら歩いていると
紫苑さまの目が何かを捕らえ、紫苑さまは通学路を外れて歩き出す
「まあ、まあ、ネコさんですわ♪ 丸々と太って可愛らしい」
「太って」、その単語に反応しびくりとするまりや
一方ネコは紫苑さまが近づいても逃げる素振りすら見せない
それどころかあっさり捕まってしまう
468 :
コマイ:2007/11/15(木) 16:58:58 ID:Bn6IgfO50
「まあまあまあモフモフして気持ちのいい」
紫苑さまがネコの顎の下を弄繰り回す
ネコは目を細めて紫苑さまにされるがままに任せている
瑞穂ちゃんも紫苑さまと一緒になってネコを撫で回し始めた
「うわーフカフカですねー肉付きがよくってやわらかい」
美人二人に体中撫で回されて幸せそうなおデブネコ
それを羨ましそうに見るまりや
「あたしもネコに生まれてきたかったなー、おデブでも可愛いままだもん」
「ネコとかは、ほら毛むくじゃらだから可愛いんだよ」
ネコを撫でながら答える瑞穂ちゃん
「まりやさんも体中の毛を伸ばしてしまえばよいのではありませんか?」
幸せそうな顔をした紫苑さまの発言に
「それだ!」
大真面目にまりやが答えた
「まりやにお馬鹿なこと吹き込まないで下さい!紫苑さん!」
支援
紫苑
仕官
資金
えっと、コマイさん、これで終わりでしょうか? 途中ならすみません。
貴子さん聖誕祭記念のSS、落とさせていただきます。
〜翔耀と聖央に囲まれて〜
11月16日、鏑木邸……。
この日は、僕の家では、貴子さんの誕生パーティーが開かれている。
「貴子さん、誕生日おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます……」
僕が言うと、貴子さんは真っ赤になりながらもそう言う。
「貴子さん、誕生日おめでとう」
「貴ちゃん、誕生日おめでとうな」
隼人先輩と桃子さんも祝ってくれる。
「会長さん、おめでとうございます(のですよ)!」
奏ちゃんと由佳里ちゃんもそう言う。
「ありがとうございます、みなさん」
「えっと、今日は隼人の誕生日ちゃうで? っていうか、誰なん、この2人?」
その桃子さんの言葉に僕たちは吹き出してしまった。そっか。
「……この2人は……えっと、紫苑さんと貴子さんの高校時代の後輩で周防院奏ちゃんと上岡由佳里ちゃん」
さすがに僕にとっても後輩だとは言えないよね。
「奏ちゃん、由佳里ちゃん、こちらは僕の大学の友人で黒澤隼人先輩と松下桃子さん」
4人はお互いに自己紹介していた。
「ふーん。そういえば貴ちゃん高校では生徒会長やった言うてたな。かなぴょんにゆかりんか。よろしゅうな」
「よろしくお願いいたしますのですよ」
「よろしくお願いします……でも桃子さんまで……その呼び方やめてください!」
桃子さんが言うと、2人はそう返す。
「どしたん、ゆかりんは」
「あ、桃子さん、由佳里ちゃんはゆかりんって呼ばれるの嫌がってるから」
「ふーん……けど、そない嫌がることないんとちゃう?」
「そういえばおね……瑞穂さんもお久しぶりです。お元気でしたか?」
「瑞穂さま……お会いできてうれしいのですよ」
「うん。楽しい大学生活を送らせてもらってるよ。気が向いたら、みんなで高校にも遊びに行きますから」
そう言うと、2人は感激の表情を浮かべる。相変わらず可愛いな、この2人も。
「なあ、さっきゆかりんが言おうとした『おね』ってなんや? やっぱり瑞穂っちのこと、お姉さまに見えてるってこと?」
僕の体から滝のような汗が流れる。まずいまずいまずい!!
「桃子さん、瑞穂さんもこのお2人とは、合コンでお会いした事があると聞いております。
ですから、久しぶりに会って何か“お願い”したかったのではありませんか?」
紫苑さんがそうフォローしてくれる。助かった……。
「ああ、なるほどな。うちはてっきり瑞穂っちもまんま聖央に通とったんかと思うたわ」
……桃子さん、それ全然シャレになってないんですけど。
「それはそれとして、桃子さん、ゆかりんって言うのやめてくださいって言ってるじゃないですか!」
「なんでな? うちはええと思うけど」
桃子さんには、何度言ってもムダだってわかってるからね。そういう意味ではまりやみたいだ。
「まあ、僕も桃子さんにはからかわれてばっかりでよくわかるから、あきらめた方がいいよ、ゆかりん」
僕がおどけて言うと……。
「きゅうううう……」
由佳里ちゃんが顔を真っ赤にしたかと思うと、その場に倒れてしまった。
「僕にも言われて、そんなにショックだったのかな?」
「瑞穂、おまえも罪な男だな」
隼人先輩、そんなに責めないでください。
「瑞穂さん、黒澤先輩は責めているのではないと思いますわよ?」
紫苑さん、じゃあどういう意味?
それから僕たちは、パーティーを開いて、貴子さんの誕生日を精一杯祝ってあげた。
「貴子さん、どうでしたか?」
「感激いたしましたわ。この厳島貴子の誕生をパーティーを開いて祝っていただけたのは、初めてですから」
……えっ?
「初めてって、家では開いてくれなかったんですか?」
「あれは、厳島グループの令嬢の誕生パーティーなのであって、私の誕生パーティーではありませんわ」
……そっか。家があんな状態だから、貴子さんの誕生パーティーも、厳島グループとつながりを持とうとする
企業や政治家のもたれあいとか癒着の場として利用されていただけなんだろうな。
「……とにかく、そんなに感激してくれると、僕も嬉しいですよ」
「瑞穂さん……」
貴子さんは僕にぴっとりと寄り添ってくる。嬉しいな、こういうの。
「………!?」
その時、僕は何かの気配を感じた。
「瑞穂さん?」
「貴子さん、しばらく待っていてください。すぐ戻ってきますから」
僕は気配のした方に走っていった。
「順崇さん……」
「気づかれてたのか……」
そこにいたのは、貴子さんのお兄さんだった。
「どうして参加しなかったんですか? あなたにも招待状は送ったのに……」
「俺は貴子のこと今まで放っておいた上に、その親友を無理やりモノにしようとしたヒールなんだぜ?
今さらこんなとこに顔出せるかよ」
順崇さんは、そうぶっきらぼうに言ってくる。
「でも、それは、あなたにとっても望まない婚約だったんじゃ……」
「んなこと関係ねえよ。しかも紫苑もいる場だってのに、俺が来たらどうなるか考えてみろ」
「あっ……」
確かに、思いっきり盛り下がるだろうな。
「まあ、貴子も幸せそうでよかったよ。『おめでとう』とだけ伝えといてくれや。じゃあな」
「じゃあ……」
そう言うと、順崇さんは肩で風を切るように去っていった。
貴子さんも、みんなに愛されてるんだな。まりやも貴子さんの誕生日は覚えてくれてたみたいで、
プレゼントとおめでとうの言葉を電話で聞いたらしいし。
初めて会ったときは、そんな風には見えなかったけど、今でははっきりとそう実感できることが、
僕にはたまらなく嬉しかった。
Fin
以上です。このスレでは、やるきばこ2のキャラ初登場となったわけですが、
みなさん、初仕事がこんな作品ですみません。
というか、貴子さん聖誕祭記念なのに、貴子さんメインじゃなくなってますし……。
他の皆さんの記念作品、期待しております。それでは。お目汚し失礼いたしました。
『楊泰隆』
「お誕生日おめでとう貴子」
妹を祝う兄順崇
「そんなわけでプレゼントだ」
ありがとうございますといいながらラッピングを開けていく貴子
「って!札束をラッピングしただけではありませんか!」
「金銭というものは軽蔑すべきものじゃないぞ貴子
政治家などと一緒で暴走しないようにコントロールしてやればいいんだ」
「お兄様は暴走させっぱなしではありませんか」
「まあ、金銭と美術品に興味を持つことだ。
金銭は懐を、美術品は心をそれぞれ暖かくしてくれる」
「買い集めた美術品は全部贋作だったではないですか」
効果的な反論を見つけ出せない兄でしたとさ
どっとはらい
ヤン=タイロン乙
貴子「誕生日だというのにたいしたSS投下されませんわね」
紫苑「まあ、ゲームが出て随分と時が経っていますし」
瑞穂「しょうがないですね」
まりや「それはそれとして…
あたしのフィギュアはいつになったらできるんじゃーー!!!」
スイマセン。ちょっと寂しい様子でしたので仕事から帰ってきてから急いで
貴子さんネタを書きました。
>>477 笑いました。ネタがあまりにもピンポイント過ぎですww
『レストラン街の女王さま』
11月のある日、大学からの帰り道。
瑞穂と貴子が地元の商店街の近くを歩いていた。
「学生会の仕事ですっかり遅くなりましたね。今日は父さまも楓さんも帰りが遅くなると云ってましたから
どこかで食べて帰りましょうか?」
「そうですわね。どこか近くの店に入りましょうか」
大学に入り、鏑木家で生活し始めた貴子は様々な経験や大学の先輩の松下桃子に引っ張りまわされたお陰で
生活感覚もすっかり馴染み、いわゆる高級レストランではない町の定食屋のような店にも気兼ねなく入るようになっていた。
「じゃあ、レストラン街に行きましょうか」
ここの商店街には食堂や飲食店が軒を並べる路地があり、通称『レストラン街』と呼ばれていた。
ただし、並んでいるのは小さな定食屋や喫茶店、中華料理屋、蕎麦屋、焼肉屋などでしゃれたレストランなどはない。
「レ、レストラン街ですか」
「えっ、何か?嫌でしたら他に行きましょうか」
「いえ、構いませんわ。最近、行っていなかったので」
「?…貴子さん、前にお一人で行ったことがあるんですか?」
「ええ。あそこには3軒ほどラーメン屋さんがありまして、何回か行って顔なじみになったところもあるんです」
貴子が恥ずかしそうに顔を赤らめて云う。
「そうなんですか。では、今日はラーメン屋さんに行って見ましょうか。貴子さん、おいしいお店を紹介してくださいね」
「そ、そうですか。わかりました。では馴染みのラーメン屋さんに行きましょう」
そう云って、貴子の案内でレストラン街に向かうことにする二人。
「そう云えば屋敷の西岡さんも云ってましたが、最近、レストラン街が活気付いてきたそうですね」
「そうなんですか?」
「前は平日にシャッターが下りている店が結構あったそうなんですが、今ではどの店も活気に満ちて営業しているそうです」
「まあ!それは良かったですわね」
貴子のその台詞に瑞穂は、ん?という風に顔を見た。
「貴子さんも良かったと思うのですか?僕たちに直接関係のないお店なのに」
「勿論です。瑞穂さん。確かに鏑木とは関係のない商店街ではありますが、地域に住んでいる住人としては地元の商店街が
活気付くことは喜ばしいことではありませんか」
「もし今後、商店街の近くにウチの系列のレストランが出店することになるとしても?」
「…そうですわね。商店街の活性化は地域経済の活性化にもつながります。どんな大規模店が登場したところで、
その一店舗で地域経済を担えるはずがありません。やはり、地域に昔から根ざしている商店街が活気付くことが
必要でしょうし、後進の店舗が地域住民から支持を受けるためには共存していくことが必要でしょう。商店街の人々も
また地域の住人なのですから」
瑞穂は貴子のその言葉を聞いて深く感心した。
お嬢様育ちである貴子がここまで考えるとは、この半年間の所謂『世間勉強』は貴子自身を大きく成長させているようである。
瑞穂の父、慶行が貴子に経営の才を見出しているようであるが確かにそれはあるかもしれない。
「で、瑞穂さん。レストランはいつ頃出来ますの?」
「え、ああ、たとえ話ですよ。そんな予定はありません。でも、もし本当に出店したとしたら貴子さんが責任者に
なってくれれば良いと思います」
「まあ、何故ですの?」
「貴子さんならきっと、地元の人たちと仲良くして皆に愛される店作りをしてくれそうですから」
「私のような一介の学生がそんな上手いこと出来るわけがありません」
二人はそんなことを云い合いながら、商店街の中のレストラン街に入っていった。
夜、夕食時のこの時間、この路地に多くの人たちが歩いている。
どの店にも、それなりに客が入っているらしく忙しそうに店員が動き回っているのが外から見える。
とても少し前まで寂れてシャッターを下ろしている店が多くあった場所には見えない。
「たくさんの人がいますね。一体どうやって盛りかえしたんでしょうか?」
瑞穂が不思議そうに頭をかしげた。
路地に入って直ぐ、近くの定食屋から出てきた店主らしい親父が、貴子の顔を見て大声をあげた。
「おや!貴子ちゃんじゃないか!久しぶり!」
それに対して貴子が大きな会釈で頭を下げた。
その声を聞いたのか向かいの赤提灯からおばさんが出てきて貴子に声をかける。
「貴ちゃん、いらっしゃい!ちょっと寄っていきなさいな。ご馳走するから!」
「有難うございます。今日は『富士』に行きますから。また今度寄らせて頂きます」
貴子が笑顔で挨拶を返す。
そう云うやり取りをしている内にも、あちらこちらの店から続々と店主らが出てきて貴子に声をかける。
「貴子ちゃん、久しぶり!」
「ちょっと寄っていきな!」
「お嬢ちゃん、元気だった?」
それらの挨拶全てに笑顔で手を振って返す貴子。
「・・・・・・」
それを呆然と見ている瑞穂。
「…た、貴子さん」
「はい?」
「し、知り合いが大勢いるんですね」
知り合いというレベルではない様な感じである。
「ええ。前に数回来た時に知り合いになりましたの」
「す、数回って…」
路地をあげてのこの歓待ぶりは、どんな魔法を使えば数回でこうなるのか。
「ここですわ、瑞穂さん」
路地奥のラーメン屋の前で貴子が立ち止まった。
看板に『富士』と店名が書いてある。
よく街中で見かける規模のこじんまりしたお店である。
「このお店が結構、美味しいんですよ」
「…へ、へえ〜」
貴子がガラガラと引き戸を開けて店内に入る。
店の中は結構混んでいて、席は満杯だった。
「いらっしゃいま…貴子ちゃんじゃないの」
カウンターの中にいた中年の店主が嬉しそうに声をあげた。
「今晩は、ご主人。美味しいラーメンをいただきに来ました」
「久しぶりだね〜。毎日来てくれてもいいのに」
そう云いながら、テーブルに座っていた別の客に、カウンターに移ってくれと云って席を開けさせた後、
「さあ、ここに座って」とおしぼりと水を置いた。
他の客たちは何事かと貴子と瑞穂に視線を向ける。
些か居心地の悪い気がするがそのまま席に着く二人。
「今日は美人さんのお友達も一緒かい。美女二人で華やかだねえ」
「うふふ。ご主人、こちらの瑞穂さんは男性ですのよ」
えええっ!!
店主だけでなく、店中の客からどよめきの声が上がった。
「いや、まさか…こんな美人さんが…」
「よく間違われるんです。もう慣れてますが」
瑞穂自身がそう云うと、主人もやっと納得したようだった。
「そうかい。ま、これ程の美人の彼氏さんなんて、流石は貴子ちゃんだねえ」
何が流石なのか分からない。
「ご主人、醤油ラーメンを二つくださいな」
貴子が注文する。
「はいよ。腕によりをかけて作ってやるよ」
その時、別のカウンターにいた客が
「親父、こっちのラーメンまだ来てないぞ」
「うるせい、あんたは後だ。黙って待ってろ」
その様子を冷や汗を垂らしながら見ている瑞穂。
「い、良いのかな、アレ」
「ふふふ。相変わらずですわね。ご主人」
「えっ!いつもアレなの!?」
見ると云われた方の客も、ブツブツ云いながら帰る気配はない。どうやら云われたとおり待つようだ。
「貴ちゃんが来てるんだって!?」
ガラッと勢い良く戸を開けて、中年の親父が飛び込んできた。
「おう、そこにいるよ」
「あら、豚々亭の御主人」
貴子が声をかけると嬉しそうに近寄ってきた。
「ひどいじゃねえか。来てるならこんな店じゃなくて俺のとこへ来てくれれば良かったのに」
「こんな店で悪かったな」
カウンターで店主が不機嫌そうに返す。
この路地でお店を出している中華料理『豚々亭』の店主ですと、貴子が瑞穂に紹介した。
「早速だけど、貴ちゃんに食べてもらいたいチャーハンがあるんだ」
そう云って、豚々亭店主が持ってきたチャーハンを貴子と瑞穂の前に置いた。
「食べてみてくれ」
何のことだか分からず、瑞穂が躊躇っていると貴子は迷う素振りもなく「では…」と云ってレンゲでチャーハンを食べ始めた。
「美味しい。瑞穂さんも食べてみてください」
貴子にそう勧められてやっと食べ始める瑞穂。
豚々亭店主はそんな二人の様子を真剣に見ている。
「うん。美味しい!」
ご飯がパラッと炒められていて、一粒一粒に味がしっかりとついている。
一緒に炒められている具材もシャッキリしていて歯ざわりも良い。
「ど、どうだい?」
豚々亭店主が感想を聞く。
「美味しいですよ。こんなチャーハンは食べたことありません」
瑞穂が褒め上げると、店主は「そうかいそうかい」と嬉しそうな顔をした。
周りで見ている客も何だか羨ましそうな視線を注いでいる。
「貴ちゃんはどうだい?」
「ええ。私も素晴らしいチャーハンだと思いますわ。私には到底、作れませんわ」
「有難う。だけど何か決め手に欠ける気がするんだ。貴ちゃん、何か改良の余地はないかな?」
貴子がうーんと首をかしげる。
「そうですわね。豚々亭さんは確か豚骨ダシでしたわね。このチャーハンは醤油ベースみたいですが」
「そ、そうだよ」
「チャーハンにも豚骨ダシを使用しては如何でしょうか。ラーメンと一緒に食べたときに味がなじむと思うのですが」
「それだ!」
躍り上がって喜ぶ豚々亭店主。
早速試してみると店を出て行こうとした。
「あ、このチャーハンのお勘定は?」
慌てて瑞穂が声をかける。
「ああ、いらないよ。試食してもらった礼だよ。後でギョーザも持ってくるから食べてくれ」
それを聞いた別の客からも声が上がる。
「おう、俺たちも試食してやるから持ってきてくれ」
「てめえらに試食させるのは残飯くらいしかねえよ」
そう云って戸を閉める。
「ま、また…」
「いつものことですわ」
「これもいつもなの!?」
なぜこんな店主ばっかりのお店が並ぶ路地がこんなに繁盛してるんだろう?と瑞穂は本気で首をひねる。
「へい、おまたせっ」
大盛りのラーメンが二つ、テーブルに置かれた。乗っているチャーシューもてんこ盛りである。カニやでっかいエビも乗っている。
いろんな具材が山盛りである。
「特製ラーメンだ。腹いっぱい食ってくれ」
特製ラーメンなんて店内のメニューのどこにも書いていない。
それを見ていた別の客がまたも声をかける。
「俺もそれ喰いたくなってきた。特製ラーメンいくらだい?」
「5000円だ」
ブッ!!
店にいた客たちが一斉に吹き出す。
瑞穂も目を丸くする。
「あっ、貴子ちゃんとそちらの彼氏はタダでいいから。お代わりもしていいよ」
「なんだ、そりゃ。親父!差別じゃねえか!えこひいきすんなよ!」
「うるさい!嫌ならでていけ!」
何だか無茶苦茶である。
瑞穂がラーメンを前に冷や汗をだらだらと流していると、貴子が澄ました顔で、
「いつもすいません。御主人」
「・・・コレもいつもなのっ!?」
店の戸が再びガラリと開いて、今度は最初の赤提灯のおばさんが入ってきた。
「貴ちゃん、これ良かったら食べて頂戴」
そう云って、焼き鳥をテーブルに置く。
他にも次々と、他のお店の店主たちが来て貴子たちのテーブルに料理を置いていく。
しかも全部タダ。
呆然と見ている瑞穂と他の客たち。
「な、なんで貴子さんはこんなにして貰えるんですか?」
それを聞いて貴子の代わりに赤提灯のおばさんが答えた。
「貴ちゃんはこの路地の恩人だからだよ。最初はラーメン屋の味のアドバイスだけだった。そして、店をたたみかけた
中華料理屋の経営のアドバイスをするようになって、最終的にはこの路地に客を呼び寄せるための方策を真剣に考えてくれた。
レストラン街共通のポイントカードやお好みの味付けシステムの登録なんかは全部、貴ちゃんが考えてくれたことだよ。
お陰で今ではこの状態。レストラン街の皆が貴ちゃんに感謝しているよ」
驚いて目を丸くする瑞穂。
「いつの間に…貴子さん」
「み、瑞穂さん。恥ずかしいですわ。そんな目で見ないでください」
「いいえ、驚いているんです。貴子さんにそれほどの才能があったなんて」
貴子は照れて、真っ赤な顔でモジモジしている。
出されたラーメンは素晴らしく美味しかった。
店主曰く、貴子の好みの味付けにしたらこの味になったそうである。
ドタバタと賑やかな夕飯を済ませた後、店の外に出ると大勢の人たちがいた。
いろんな店の店主や従業員たちである。
「お嬢ちゃん、また来てくれよ」
「今度はうちにおいで」
次々にかけられる声に笑顔で答える貴子。まるで民衆の声援に応える女王様。
貴子がふと横を見ると、ちょっと引いたような目で辺りを見ている瑞穂の姿。
「瑞穂さん、どうしました」
「なんというか、熱狂しているというか…。凄い人気ですね」
貴子が厳島で経営のトップに立ったらどんなことになっていたか。
鏑木の時期トップである瑞穂は胸を撫で下ろす思いだった。
そのうち、周りの人たちから「貴子ちゃん万歳」のコールが聞こえてきた。
そのコールを聞きながら、恥ずかしさで足早に路地の出口に向かうふたり。
「ふふふ。ココだけの話、地域の皆さんに鏑木万歳と云って貰えるように頑張りますわ」
「貴子さん、それって何処の君主ですか」
もし貴子がこの地域に店を出したなら、共存どころではなく、熱狂的な支持を受けて全てを傘下にしてしまいそうである。
貴子のただ事ではない才能を見て、絶対に地元商店への出資を父さまに勧めようと誓う瑞穂だった。
Fin
お粗末さまでした。
超GJ
GJGJ!!
貴子さんバンザイw
492 :
doku:2007/11/18(日) 17:47:47 ID:ISxKKRFl0
『スプレー』
聖應女学院生徒会長厳島貴子はその日すべての授業を終え生徒会室に向かおうとしていた。
その前に用を足しておこうとトイレに入っていく。
音姫ボタンを押して流水音を発生させ用を足す。
水を流してハーブの香りとプリントされた消臭スプレーを吹きかけ個室から出る。
洗面台で手を洗い
「ふう」
一息ついたところで貴子は自分の声が異常なことに気付いた。
あわてて先程用を足した個室に戻り消臭スプレーを手に取る。
今になって気付く、そのスプレーはおかしかった。
もう一度吹きかけてみる、ハーブの香りなどしない、ラベルも何かおかしい。
乱暴にラベルを剥がす。
もう一枚のラベルが姿を現した
『ヘリウム』
「「こんないたずらをするのはあの人しかいませんわっ!」」
甲高くなった声でたかこが叫ぶ。
スプレー缶を床に叩きつけ個室から飛び出し、トイレの扉を開ける。
扉を開けるとそこには紫苑の姿があった。
493 :
doku:2007/11/18(日) 17:48:41 ID:ISxKKRFl0
いきなり扉が開いて吃驚している紫苑に貴子は怒鳴るように問いかけた。
自分の声が変質しているのを忘れて。
「「紫苑さまっ!まりやさんが何処にいるかご存知ですかっ!?」」
その瞬間、紫苑の顔が今までに見たことのないものに変化した。
そして貴子は今現在自分の声がどうなっているかを思い出した。
口とお腹を押さえて扉にしがみつき震える紫苑。
顔どころか耳まで真っ赤にして走り去る貴子。
「「あなたの仕業でしょうまりやさん!!」」
「ぷっ、何その声っ!」
「「あなたが消臭スプレーとヘリウムガスを入れ替えたのでしょう!?」」
「あたしゃそんなことしてないよ!大体なんであたしって決め付けるのさ!」
「「普段の行いが悪いからですわ!」」
「それにしても、今のあんたのその声じゃ怒られてる気がしないわねー。でもホントあたしじゃないわよ。」
「「まりやさんでなければいったい誰が…」」
「いたずら好きはあたしだけじゃないってことね」
そのころ紫苑は屋上へ移動し思う存分笑っていた
「ふふふっ、まさか貴子さんがひっかかるなんて…」
翌日の紫苑さまは腹筋が筋肉痛になっていましたとさ。
ある夜の寮の食堂
奏が一生懸命ダンボールの箱を持ち上げようとしていた
その箱の中身はとても重いものなのか
それとも奏が非力なのか、なかなか持ち上がらない
そこに瑞穂が通りかかり
「あら、奏ちゃん、重そうね私が持ってあげるわ」
「あっ!だめなのですよ〜お姉さま〜」
「ふふふ、大丈夫よ、私結構力あるから」
瑞穂がダンボールに手をかけ持ち上げようと力を込める
すてん
瑞穂は勢いよく転んでしまった
「かっ!軽いっ!」
「その箱には何も入っていないのですよ〜」
奏は泣きそうになっている
「じゃ、さっき持ち上げようとしていたのは…?」
「今度のお芝居でパントマイムをするのですよ〜その練習なのですよ〜」
瑞穂ちゃんはお尻をさすりながら奏ちゃんの練習に付き合ったそうです
特にオチなし
497 :
名無しさん@初回限定:2007/11/19(月) 23:07:36 ID:XTlL0RW50
>>496 短いけれど、なんかありそうですね。
日常のちょっとした事とかショートショートを読めると楽しいですね。
498 :
doku:2007/11/20(火) 20:46:54 ID:bqjuPlH10
『スプレー2』
その日の体育の授業はグラウンドでのマラソンだった。
空は青く晴れ、気温も高い。生徒の大半は半袖になっていた。
授業終了のチャイムが鳴り、半袖ブルマ姿のまりやが瑞穂のところに来る。
「いやー汗かいたー、瑞穂ちゃん、制汗スプレー貸して」
「うん、いいよ」
瑞穂がスプレー缶をまりやに手渡す。
まりやは受け取ったスプレー缶をカラカラと振り攪拌する。
とびっきりの笑顔で腕を空につき伸ばし脇にスプレーを吹きかける
ぶしゅーーもりもりもり
ノズルから出てきたのは泡だった。
「なんじゃこりゃあぁぁあ〜〜〜!!?」
まりやの絶叫が青空に木霊する。
499 :
doku:2007/11/20(火) 20:47:36 ID:bqjuPlH10
それを見ていた紫苑が
「ふっ…くっ…」
そう噴出しかけ慌てて口を押さえ校舎に入っていった。
他の生徒もくすくす笑い紫苑に続き校舎に戻っていく。
「あのまりや…」
瑞穂が話しかけると
めきゃっ!
まりやはスプレー缶を握りつぶしてしまった。
瑞穂はラベルが二重になっていることに気付く。
「まりやっ!これラベルが…」
まりやが握り締め泡が漏れ出している缶のラベルを剥がすと
『ヘアムース』
下から新たなラベルが現れた。
「ふっ…」
そう言ってまりやは校舎に駆け込んでいった。
500 :
doku:2007/11/20(火) 20:50:53 ID:bqjuPlH10
「貴子ーーーっ!あんたでしょ制汗スプレーをヘアムースとすり替えたのはっ!」
「な…いったい何のことですか!?」
「ええいっ!整えなきゃならんほどお手入れ怠ってないっつーの!」
握りつぶされたヘアムースの缶を貴子に突きつけるまりや。
「私なら正々堂々と正面からあなたの脇に吹きかけてさしあげます!」
「あ…よくよく考えたらこれ瑞穂ちゃんから借りたんだ…」
その頃の屋上
「ふふふふふ…瑞穂さんにいたずらして、まりやさんがひっかかるなんて…」
good Job!!!
この調子で今度は悪戯がバレて詰め寄られる紫苑様をキボン
秋の味覚
ある秋夜の食堂
まりや「ねえみんな、実家からキノコ送ってきたけど、どんな食べ方すきー?」
瑞穂「私、バター炒めがいいな」
由佳里「はい!キノコのバター炒めっておいしいですよね」
まりや「作るのも簡単だしね。じゃ、ちょっと待ってて」
瑞穂「ふふ、今日の夕食はまりやの手料理ね」
奏「楽しみなのですよー」
まりや「できたよー」
一同「「「「いただきまーす」」」」
由佳里「美味しいですねー」
まりや「酒があれば言うことナシなんだけどなー」
瑞穂「私たち未成年でしょ!」
奏「白いご飯でがまんなのですよ〜まりやお姉さま〜」
一同「「「「ごちそうさまでしたーー」」」」
奏「美味しかったのですよ〜」
由佳里「私、はじめて食べる食感でした」
瑞穂「そういえばなんてキノコだxっつあの?」
まりや「ああ、マツタケ」
まりや以外「「「は?」」」
まりや「だから松茸」
瑞穂「まりや…まさか松茸をバター炒めにしちゃったの?」
由佳里「お姉さまのばかーー!なんてもったいないことしてるんですかーー!!」
まりや「みんながバター炒めがいいっていったからじゃないの!」
その夜、みんなから非難轟々なまりやでした
そこら辺でつんできたというオチだと思ったら
何ともったいない事を…
きのこのバター炒め舐めんな!!!
これに醤油さっとかけるとマジ最高
その後で瑞穂ちゃんの特大松茸を堪能するまりやの話マダー?
>>504 瑞穂ちゃんの松茸にもバターを塗るのねw
着回し
由佳里「それにしても、まりやお姉さまいっぱい服買いましたねー」
まりや「ほとんど瑞穂ちゃんのだけどね」
瑞穂「まりやってばデザイン優先で着まわしのきかないのばっかり買うのよ」
まりや「いいじゃん、あんたお金持ちなんだから」
瑞穂「でも…」
そんなことを言いながら歩いていると一軒のお店が
看板は『武器・防具』
まりや「瑞穂ちゃんだって着まわしのきかない鎧とか買ってるじゃん!」
瑞穂「だって!だって!
エクスカリバーとイージスの盾と
源氏の兜と源氏の鎧とエルメスのくつだよ!漢なら買っちゃうでしょ!」
まりや「ちがーう!瑞穂ちゃんにはこっちの
アイアンバニーとハイレグ・アーマーとダンシングヒール
あとサソリ鞭が似合ってるのー!」
瑞穂「それ女の子の装備じゃないの!」
結局両方買ったという
店主「お支払いはギルで?それともマッカでですか?」
507 :
502:2007/11/24(土) 14:14:44 ID:TZzZLimn0
『味覚』
夜の食堂
瑞穂ちゃんがやってきて
「お腹すいたな…」
がちゃりと冷蔵庫を開けるとそこにはヨーグルトが
瑞穂ちゃんは一人分を器により分けてテーブルに移動する
そこにまりやもやってきて
「あ、これまりやの?一人分もらったよ」
「瑞穂ちゃんも食べるの?」
まりやも器にヨーグルトを入れてテーブルにつく
瑞穂ちゃんはスプーンですくってぱくり、口の中にいれようとした瞬間
まりやが一言
「おいしーよねー練乳の一気喰い♪」
ぱくり、瑞穂ちゃんは口に入れてしまった
そしてエチケットタイムに直行でした
今回は一子ちゃんの記念SSは思い浮かびませんでしたが、受信した電波の作品化が完了しましたので投下させていただきます。
設定は由佳里ルート、最終話と卒業式の間です。
よろしくお願いします。
「ふう……」
僕はベッドの上で、ため息をついていた。
今日は僕の最愛の人である由佳里とデートを予定していた。
そして、2人でデートに出かけた……出かけたん……だけど……。
コンコン……。
「はい、どうぞ」
ドアをノックする音がしたので、僕はそう返事する。
「瑞穂さん……」
入ってきたのは、ネグリジェを着た由佳里だった。疲れた表情をし、悲しそうな声で僕の名前を呼ぶ。
由佳里の気持ちは良くわかる。なぜなら、それは僕の気持ちそのものだから。
「あの……一緒にお休みしてもらえませんか?」
「うん。僕のほうからお願いしたいぐらいだよ」
そして僕と由佳里はベッドに入った。そして、お互いにギュッと抱きしめあう。
「デート……ちゃんとやりたかったよね……」
「私も……今日こそは瑞穂さんと2人っきりでいたかったです……」
そして、傷をなめあうように、ベッドの中で慰めるために抱きしめあった。
〜2人っきりになれなくて〜
今日もデートをしようと、お出かけ用の私服に着替えて、校門前で待ち合わせしていた。
「由佳里、待った?」
「ううん。私も今来たところですから。
それに、瑞穂さんとどんなデートするのかって考えてたら、待ってる間も苦になりませんでしたから」
「由佳里ったら。じゃ、出かけようか」
「はい!」
そうして2人で街へ出たのだが、最初の目的地で……。
「……まりや! 奏ちゃん!」
「ま、まりやお姉さま! 奏ちゃんも!」
「あら奇遇ね、瑞穂ちゃん」
まりやはニヤニヤしながら言ってくる。
「……奇遇って、何回奇遇が続けば気がすむんだよ」
「さあ? そんなことあたしに言われても困りますわ。それは神のみぞ知るわけでございますから」
……思いっきり怪しいじゃないか。
「せっかくですからみんなで回りましょうなのですよ。みなさんでいた方が、きっと楽しいのですよ」
「……奏ちゃん、そのセリフ、もう何度も聞いてるんだけど」
そう。僕たちのデートにまりやたちが付いて来たのはこれが初めてじゃない。というより、最初にした時から全部、である。
「奏ちゃん、私、今日こそは瑞穂さんと2人っきりになりたいんだけど……」
「別にいいじゃないの。由佳里はこれからずーっと瑞穂ちゃんと一緒にいられるんだから。
むしろ問題なのはあたしたちよ。瑞穂ちゃんとは卒業までなんだから」
……確かにまりやは卒業後アメリカ留学が決まってるけど、これで終わりってことはないと思うんだけど。
「そうなのですよ。由佳里ちゃんは新年度になってからお姉さまとの想い出を作れば、問題ナッシングなのですよ」
奏ちゃんもまりや同様、勝ち誇ったように言う。
そんなわけで、また僕たち2人っきりのデートはお預けになってしまったのだった。
「瑞穂さん……私、辛いです……すごく辛いです……」
「僕も辛いよ……由佳里とデートできないのも、そんな由佳里を見るのも……」
向こうも軽い気持ちなんだろうし、たまにならまあしょうがないかな、とも思えるけど、
さすがにこう毎回だと、いたずらではすまされなくなってしまう。
このままじゃダメだ……そう思った僕は、話せる人に相談してみることにした。
「貴子さん、ちょっと相談したいんですけど、いいですか?」
「お姉さま……ええ。私で相談に乗れることでしたら……」
僕は貴子さんに相談するため、生徒会室を訪れていた。
「実は……」
そう言って、僕は貴子さんに今までのデートのことを話した。
「……そう、ですか」
貴子さんにしてみれば予想外の相談だったんだろう。呆然としていた。
「確かにまりやさんでしたらやりかねないですが、1回だけならともかく、毎回となるとさすがにシャレではすみませんわね」
「ええ。それで、私も由佳里ちゃんも困っているんです」
「では、奏ちゃんは私が担当いたしますわ」
ふと、ドアの外からそう声が聞こえてきた。僕は驚いてドアを開けた。
「紫苑さま!」
「紫苑さん! 聞いてらっしゃったんですか!?」
僕たちが驚きの声を上げると、紫苑さんは笑みを崩すことなく答える。
「申し訳ありません。用事があって近くまで来たのですが、聞こえてしまいましたので」
「いえ、あとで紫苑さんにも聞いてもらおうと思っていたところですから」
「手間が省けて助かったわけらしいですわよ、紫苑さま」
「あら、それではこれで晴れて無罪放免、ですわね」
僕と貴子さんがフォローすると、紫苑さんのお嬢さまスマイルを浮かべながらの天然発言。
無罪も何も、誰も罪に問うたりはしてませんって……。
「じゃあ、奏ちゃんのことはお願いしますね」
「まりやさんは、私が説得いたしますわ」
貴子さんと紫苑さんは、僕に協力してくれることになった。やっぱり持つべきものは友、だよな。
その日の夜、奏ちゃんが僕たちに謝りに来た。きっと紫苑さんは奏ちゃんの説得に成功したのだろう。
まあ、素直だし、どう考えても主犯じゃないだろうし、説得はやりやすかっただろうな。
でも、まりやからは謝罪はない。ということは、貴子さんはまだ説得してないか、失敗したかのどちらかだな。
そして次の日曜日……。
「あれえ、瑞穂ちゃん。奇遇ねえ」
……やっぱりまりやが現れた。貴子さんのことだから言ってないとは考えにくい。多分失敗したんだろうな。
「ちょっとまりやお姉さま、いい加減にしてください!」
「だから、由佳里と瑞穂ちゃんは、卒業式終わってからいちゃつけばいいじゃないの」
「……あのね、もしまりやが同じことやられたら、って考えてみてよ?」
「あたしが? あたしは別にかまわないけど?」
……即答ですか。
「あらお姉さま、こちらにいらっしゃったんですか」
「瑞穂さん、ごきげんよう」
……紫苑さんと貴子さんまで!
「さ、瑞穂さん、みんなで遊びに行きましょ?」
「たまにはこういうのもよろしいですわね」
「さすが、貴子も紫苑さまも話がわかるわね」
……ええ、ええ。もうどうにでもしてください。
「……えっと、それじゃあ、まずはどこに行きますか?」
「……どこにでも」
由佳里がそう聞いてくるけど、僕にとってはもうどうでもよかった。
「では、そこの民族衣装店はいかがでしょうか?」
「……ええ、いいですよ」
と、みんなで民族衣装店に入っていった。
「うわあ、こうして見るとさすがに新鮮だな」
店に入ると、チャイナ、アジア、オーストラリアをはじめ、ロシア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカなどの
各国の民族衣装がちりばめられていた。
「ぬっふっふっふ」
ふと、まりやが気味の悪い笑みを浮かべる。すごくイヤな予感が……。
「みーずーほーちゃーん♪ わかってるわよねえ?」
「はい。承知しておりますわ」
まりやがそう言うなり、貴子さんが僕を掴む。そしてまりやとともに僕を無理やり着替えさせにかかった。
「わーっ!!」
そして、僕は1時間近くかけて、民族衣装のファッションショー(無論オール女性服)をする羽目になってしまった。
「ううう……いったい何の因果でこんなことに……」
「ほら瑞穂ちゃん、いつまで落ち込んでるのよ」
いつまでって、せっかくのデートをまた台無しにされた上に恥ずかしい格好を見せ物にされて、写真まで撮られて、
落ち込まずにはいられないよ……。
「まあまあまりやさん、落ち込んでいる方は放っておいて、思わぬ収穫を祝いに行きましょうか」
紫苑さんがまりやにそう声をかける……紫苑さん、そんな冷たい……。
「そうですわ。まずは近くのレストランで乾杯しましょう。私のおごりで」
「あら、貴子にしちゃ気が利くじゃない。じゃあ行きましょ。あたしはね……」
そういってまりやは紫苑さんと貴子さんに連れられて衣装店を後にした。
ふと、紫苑さんと貴子さんが振り返って僕たちにウインクしてくる。
そうか! 2人はそのつもりで……ありがとう、紫苑さん、貴子さん……。
衣装店には、僕と由佳里の2人だけが残された。僕たちは手を取り合って店を出る。
そして、近くの公園で一休み。
「やっと……2人っきりになれたね」
ベンチに隣同士で座って、由佳里の肩を抱いて言う。
「はい……すごく待ち遠しかったです」
由佳里は頬を染めて目を閉じて答える。僕たちは、しばらくそうしていた。
「じゃあ、出かけましょうか?」
「どこへ?」
「そうだね。とりあえず、デパートにお買い物に出かけようか?」
「はい!」
そう言うと、由佳里は僕の腕に自分の腕をからめてきた。
「わっ! 由佳里、ちょっと」
「だって、恋人同士なんですし、やっと初めての2人っきりのデートなんですから、これぐらいしたくなりますよ!」
そう強く主張する由佳里に僕は苦笑い。
「それとも、瑞穂さんは私の腕を組むの、イヤなんですか?」
「もう、そんなわけないでしょ? 突然でびっくりしただけ。僕も組んでくれた方が嬉しいよ」
「えへへ。わあい! それじゃあ行きましょう」
満面の笑顔でそう言って由佳里は僕を引っ張っていく。
「ねえ、そんなに急がなくても、デパートは逃げたりしないって」
由佳里に引っ張られながら僕はそう返す。
「だって、早く瑞穂さんと一緒に買い物したいですから」
「それもそうだけど、まず、由佳里と一緒に腕を組んで歩いてることの喜びを味わわせてよ」
「はあい♪」
僕がそう言うと、由佳里は頬をピンク色にしてネコのようにゴロゴロと自分の顔を僕の腕に頬ずりする。
なんだか、見ててすごく可愛い。
「もう、由佳里ったら」
そのまましばらく歩き、ふと僕が見ると、道を歩いている人たちが、そろって僕たちを見ている。
「瑞穂さん、どうしたんですか?」
「うん。なんかみんな僕たちの方を見てるな、と思って」
僕がそう言ってから、自分の状態に気づいた。
「……そっか! こんな格好してるから」
「じゃあ、みんな私たちのラブラブぶりに見とれてらっしゃるんですね。えへへ。すごく気分いいです」
と言いながら、なおも僕にベタベタしてくる由佳里。まあいいか。僕も心地良いし。
「お買い物って、ここですか?」
「そうだよ。何か不満?」
僕たちが来たのは、小物類のお店。だけど、由佳里は呆然としてた。
「い、いえ、その逆です。宝石店とか連れてこられたら、どうしようかと思ってましたから……ホッとしました」
その由佳里の答えに、僕は思わず吹き出してしまった。
「あっ! 瑞穂さん今笑いました! ひどいですよお……」
「ごめんごめん。そういえば由佳里は僕が鏑木グループの嫡子だってこと気にしてたっけ。
でも、僕のお小遣いも普通の人と変わらないから」
「そうですか……」
「それに、普通の女の子って、そういう高価なものを欲しがるのかと思ってたから……」
「私は、瑞穂さんにもらえるだけで嬉しいですから……それに私って、結構小心者なんですよ……」
そう言ってるわりには、腕を組んできたりとか、恋愛面に関しては大胆だけどね。そのギャップがまた魅力的。
そして僕は、由佳里が気に入ったものを色々と2つずつ買った。1つは由佳里ので1つが僕の。
「あ……」
ふと、おもちゃ売り場で僕は1つのぬいぐるみが目にとまった。
「どうしたんですか、瑞穂さん?」
「うん。あれ、なんか変わってて、なんか妙に可愛いと思って」
僕が指差したのは、蛇のぬいぐるみ。と言っても、漫画みたいに可愛いデザインだけど。
それが、はむはむという擬音が聞こえてきそうにハンバーグを口にくわえて食べている。
「あ、確かに変わってますね。蛇とは思えないくらい愛嬌ありますし」
結局、僕はそのぬいぐるみも買ってあげた。
「次はどこにしますか?」
由佳里の言葉を聞いて、僕が時計を見ると……。
「そろそろお昼だね。じゃあ、食事にしましょうか?」
「はい!」
そして、僕たちはデパート内のレストランで食事をすることにした。
「えっと……ハンバーグ定食でいい?」
「はい!」
いつものように由佳里はためらうことなく即答。
「すいません! ハンバーグ定食2つお願いします!」
「はい!」
ウェイトレスさんが注文を伝えに行く。そして注文が来るまでの間……。
「えへへ」
「どうしたの、由佳里?」
注文してからずっと嬉しそうな由佳里の顔を見て、僕は聞いてみた。
「だって、瑞穂さんも同じのを注文してくれた事が、嬉しくって……」
まあ、予想通りの答え。でも、それが聞きたくて聞いてみたくなる。
「さっきのお買い物でも、瑞穂さんとおそろいなんだって思ったら、それだけでドキドキしてきちゃって……」
「ふふっ、それは光栄だね。僕も由佳里とおそろいのが欲しくて買ったんだから」
それを聞いた由佳里は幸せいっぱいそうな表情をする。
「そういえばさ、ハンバーグってどこから出てきたんだろうね?」
僕がさりげなく疑問を口にすると、由佳里の顔色が変わった。
「瑞穂さん、そもそもハンバーグの名前の由来はドイツのハンブルグで……」
それから、由佳里のハンバーグに対する講釈が延々と続いていく。
「あ……」
思い出した。以前まりやが由佳里にハンバーグのことだけは聞いちゃいけないって、
今にも倒れそうに衰弱しきった表情で言ってたっけ。
そして、料理が来てからでもハンバーグの講釈は続く。
「それで、ムグムグ……ハンバーグにおける理想的な肉の割合は……モグモグ……」
食べながらも必死で講釈する由佳里に苦笑。
「由佳里、食べるかしゃべるかどっちかにしなさい。お行儀悪いよ」
「じゃあ、食べます! モグモグ……」
そして、2人とも全部食べ終わった。
「んーっ♪ 食べた食べた」
「……もう、そんなに食べるのに夢中になっちゃって……」
「だって、すごくおいしいんですもん……あ! そうだ! さっきの話の続きですけど……」
そう言うと、再び講釈に戻る由佳里。
それから延々1時間。まだ由佳里の講釈は続いている……なるほど。まりやの言ったことがよくわかった。
でも、普通ならうんざりするところだろうけど、由佳里の真剣に楽しそうに語る表情を見てると、
こういう時間も悪くないと思えてくるから不思議だ。話している内容は1割も頭には入っていないけど。
「……というわけです。瑞穂さん、わかりましたか?」
「う、うん……」
まあ、ほとんどチンプンカンプンだったけど。
「じゃあ、ハンバーグの理想的な牛肉と豚肉の割合、覚えてますか?」
やばい。それは忘れてしまった。
「えっと……牛肉が75%で、豚肉が25%だったかしら?」
「牛肉が70%で、豚肉が30%ですよ! もう、ホントにお聞きになっていたんですか!?」
間違えたらしく、由佳里が口をとがらせて言ってきた。
「ごめんね。真剣に話す由佳里の表情に見とれちゃって、あまり話は頭に入ってこなかったの」
「………!! なんですかそれは……ご機嫌とってもダメです……」
僕が謝ると、由佳里は顔を真っ赤にして、弱々しく甘えるように抗議した。
「ごめんね」
チュッ。
謝りながら、由佳里のほっぺにキス。
「今日はこれで許してくれる?」
「許しちゃい……ます……」
頬を染めたまま由佳里はそう言ってくれた。
「ありがと。じゃあ、次はどうする?」
「そうですね……映画でも見に行きましょうか?」
そして僕たちは、映画館の中にいた。
「今上映されている映画は5本か……」
ちなみに、今の映画は『プラトニックミラージュ』『ちぎれたフィルム』『夢暦北町奉行』
『邪霊城の叫び』『ファイナルクエスト』の5本。
「由佳里はどれがいい?」
「瑞穂さんが見たいのでいいですよ」
由佳里はそう言ってくれる。けど……。
「じゃあ、『邪霊城の叫び』……」
それを聞いた由佳里の表情が凍りついた。途端に真っ青になる。
「……はタイトルからしてホラーっぽいからパスだね」
僕が言い終わると、由佳里はハッと我に返る。
「もう! 瑞穂さん、脅かさないでくださいよ!」
脅かしたつもりはないんだけどね。思ってたより怖いものは苦手なんだ。
「ごめんごめん。どれがいいか考えがまとまらなくて……」
聞いた話だと、『プラトニックミラージュ』は少女趣味な恋愛映画、『ちぎれたフィルム』はサスペンス、
『夢暦北町奉行』は勧善懲悪の時代劇、『ファイナルクエスト』はアクション映画だったっけ。
「それじゃあ、『プラトニックミラージュ』にしましょうか」
結局、由佳里が一番好きそうな映画にすることにした。
「はい!」
元気そうに答える由佳里。どうやら由佳里もそれを見たかったらしい。
そして映画が始まると、少女マンガに出て来そうなストーリーが進行していく。
そして、主人公の女子高生が相手役に告白の末キスする場面。
始まってから僕の頭は、由佳里もこんな風だったのかな? 僕と由佳里もこうなりたいな……なんてことばかり考えていた。
「………」
ふと由佳里を見ると、ボーッと頬を染めて映画を見ていた。
そしていつの間にか由佳里の右手が自分のスカートの中に、左手が僕の股間の上に伸びていた。
どおりでなんか気持ちいいと思ったら……きっと由佳里は気づいてないんだろうな……。
映画が終わって、映画館から出てすぐ……。
「由佳里、どうだった? 映画は……」
僕が聞くと、由佳里は気まずそうに答える。
「あ……あはは……正直、よく覚えてないんです。見てる間、ずっと瑞穂さんのことばかり考えていましたから……」
そっか。由佳里も僕とおんなじ気持ちだったんだ。
「瑞穂さんはどうでしたか?」
「僕も一緒。上映中ずっと由佳里のことばかり考えてた」
由佳里の答えを聞いて優しい気持ちになった僕は、微笑んでそう答えた。
「私たちって、意外と似たもの同士なのかもしれませんね……」
「そうかもしれないね……」
そして、日が沈む頃になって……。
「瑞穂さん、今日はありがとうございました! 本当に楽しかったです!」
満面の笑顔で言う由佳里。その笑顔を見てるだけで、僕もすごく嬉しくなってくる。
「どういたしまして。僕もだよ」
「それじゃあ、そろそろ帰りましょうか」
由佳里はそう言ってくる。でも、帰ってもまりやに色々冷やかされるかも……。
「そうだ! 今日はどこかに泊まらない?」
「えっ……?」
「どうせなら、このまま朝まで2人っきりで……」
「………」
それを聞いた由佳里は、手で胸を押さえながら、真っ赤な顔でこくんとうなずいた。
「ただいまー!」
そして朝早く、僕たちは寮に帰ってきた。
「やあ、お帰り、2人とも」
「お帰りなさいなのですよ」
そこへまりやと奏ちゃんが出迎えてくれる。
「ねえ、2人とも」
まりやが奏ちゃんを残して、僕たちを2階まで連れてくる。
「どうしたの、まりや?」
「しっかし2人ともすっかりエロボケよねえ。朝帰りなんてさ」
まりやがニヤニヤしながら言ってくる。
「な、何言ってんだよまりや! 朝帰りしたぐらいで決めつけないでよね!」
「そうですよお姉さま! そんなわけないじゃないですか!」
僕たちはそれに必死で反論。しかし……。
「ふうん……じゃあ、昨日の夜はあーんなに激しく愛し合ってたのに? 2人ともこっちが赤面しちゃうほど乱れてたクセに……」
「………!!」
それを聞いて、僕たち2人は固まってしまった。まさか、見られてたなんて……。
「ほーら、やっぱり2人ともエロボケ全開じゃないの」
「ううう……」
僕たちは、真っ赤になって返す言葉も見つからない。というか、金縛りにかかったように動くことすらできない。
「ま、ラブラブなのは結構だけどね。2人ともまだ高校生で、しかも瑞穂ちゃんはエルダーなんだから、程々にしときなよ?」
まりやはそう言って下の食堂に下りていった。
「ま、まさか、まりやお姉さまに見られてたなんて……」
「つけてくる気配はなかったのに……どうして……」
それからしばらくして、呪縛から解放された僕たちはそう会話をする。
「それで、これからどうしますか? 私、もう恥ずかしくて学校行けませんよ……」
「まりやにもばれちゃったみたいだし、ついでにもう1回する? 3年は自由登校だし、由佳里はまともに学校行けそうにないし……」
「もう……瑞穂さんったら♪」
由佳里は頬を染めて、嬉々として一緒に僕の部屋に入る。
そして、瑞穂と由佳里が寮で再び愛し合ってる頃……。
「にひひ……瑞穂ちゃんも由佳里もホント単純よねえ。あんな簡単に引っかかるんだから」
まりやは、だいたいどんな状態でも当てはまることを適当に言っただけなのに、と思いながら学院までの道を歩く。
「ん? なんだろ?」
学院の手前の掲示板に、人が溢れていた。
「何があったんですか?」
「あ、まりやお姉さま!」
「さすがまりやお姉さまですわ。あんなおきれいなファッションも着こなしているのですから……」
何のことかと思ったまりやが、掲示板を見てみると……。
「ななな……なんじゃこりゃーっ!?」
まりやが絶叫した。そこに貼り出されていたのは、昨日瑞穂に着せた民族衣装をまりやが着ている写真だった。
しかも、表情もわざわざ恥じらいのになっている。
「あら、まりやさん、大反響ですわね」
「さすが、聖央一のおしゃれの達人を自称するだけのことはありますわ」
そこへ、紫苑と貴子が極上のお嬢さまスマイルを浮かべて出現した。
「ま、まさかあんたら……」
昨日の瑞穂ちゃんの写真と合成したんじゃ……と聞こうとすると……。
「ええ。まりやさんが瑞穂さんたちのデートに毎回お邪魔してらっしゃることへの、意趣返しをさせていただきました」
「まりやさんには、口で言ってもムダなようですから」
2人は笑顔を崩さぬまま答える。
「もしも今度瑞穂さんたちのデートに割り込んだら……わかってらっしゃいますわね?」
「くううううう……わ、わたしが悪うございましたあ……」
一番嫌いな可愛い系の服の合成写真を紫苑と貴子の2人に貼り出されては、さすがのまりやも計画を断念せざるを得なかった。
おまけ1
「紫苑さん、貴子さん、ご協力ありがとうございました! おかげでやっと2人っきりで楽しめました!」
「どういたしまして」
「よかったですわね、お姉さま」
僕が2人にお礼を言いに行った。お礼は何がいいかな?
「それで、お礼をしたいんですけど、何がいいですか?」
「ああ、どうかお気になさらずに」
「私たち、お礼でしたらすでに十分いただきましたから」
「そ、そうですか……」
お礼って何かあげたかな? そう思いながら、僕は2人と別れた。
おまけ2
「由佳里、どうしたの、その写真?」
僕が由佳里の部屋に行くと、由佳里が僕の民族衣装の写真を眺めていた。
「紫苑さまと会長さんにもらったんです……あ、瑞穂さん、こういう写真はお嫌いでしたっけ?」
確かにそういうのを着るのも、それを撮られるのもイヤだけど……。
「いいよ、ほしいなら持ってても。相手が由佳里なら許せるし、由佳里だけが持っててくれるというのも嬉しいから」
「えへへ。わあい!」
由佳里はそう言って頬を染め、僕に抱きついてキスしてくる。
「もう、由佳里はホント可愛いんだから」
………。
「すでにお礼はもらった」「紫苑と貴子にもらった」……この2つの意味するものに、いまだ気づいていない瑞穂であった。
Fin
以上です。
私としては瑞穂くんと由佳里ちゃんのラブラブデートが書けてスッキリした……というところでしょうか?
まあ、私の作品でご不満でしょうが。
それでは、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。
まりや「あ、これなんか瑞穂ちゃんに似合いそうね」
貴子「あら、まりやさん、そのように地味なものは瑞穂さんには似合いませんわ」
まりや「そっか、じゃあもう少し派手なのを…」
貴子「まりやさん、こちらも中々派手ですわよ」
まりや「ぬう、わたしが選んだほうが派手だと思うけど!?」
瑞穂「ああ…二人ともなんか変な方向にヒートアップしてるよ…」
紫苑「お二人とも負けず嫌いでいらっしゃいますから」
−数十分後−
まりや「もうね、瑞穂ちゃんの可愛さを生かすにはこのひこにゃんの着ぐるみしかないと思うわ」
紫苑「まあまあ、瑞穂さんよくお似合いですわ♪」
貴子「もう何がなんだか分かりませんわね…」
特にオチなし
527 :
コマイ:2007/11/26(月) 22:28:03 ID:JZPos9Rf0
『ボタン』
「きゃ」
「瑞穂さんたら、可愛らしい声を上げてどうしたんですか?」
瑞穂の嬌声?を紫苑が反応する。
「あ。袖を机に引っ掛けてしまって…」
瑞穂が苦笑して袖を紫苑の目の前に持っていく
「まあ、ブラウスのボタンが取れかかっていますわ」
「おまかせあれ」
突如出現した圭。
その手にはソーイングセットがある。
瑞穂の腕を取るとほつれた糸を切る。
圭と一緒に現れた美智子が瑞穂に話しかける。
「圭さんは演劇部部長ですから。」
「それとソーイングセットとどう関係があるんですか?」
「よく衣装の手直しなんかをしてるんです。」
「はい、できたわよ。」
ボタンの付け直しはほんの数十秒のことだった。
528 :
コマイ:2007/11/26(月) 22:29:26 ID:JZPos9Rf0
「あの、圭さん?これはなんですか?」
問いかける瑞穂は困惑していた。
問われたほうは平然として
「『任務了解』とか言って押しちゃだめよ、瑞穂っち」
瑞穂のブラウスの袖に取り付けられた物体は立方体だった。
頂点に丸いモノが付いていた
それには黒いどくろマークが描かれている。
「なんで『任務了解』だけ声が緑川光みたいになってるんですか?」
瑞穂の顔から冷や汗と脂汗の混じったものが滴り落ちる。
「大丈夫ですわ、瑞穂さんなら『死ぬほど痛いぞ』ですみますわ」
「ちょっと、紫苑さん?なに言ってるんですか?なんでそんなに目を輝かせてるんですか!」
紫苑はそっと瑞穂の手をとり
かち
袖に取り付けられたボタンを押した。
その瞬間の瑞穂の顔を紫苑は一生忘れられない素敵なものだった、と後に語った。
「圭さんがやると冗談ごとに思えないんです。」
最近コミックから入ってようやくやるきばこまで終わった新参だけど
L鍋さんの瑞穂ちゃんモテ話が好きすぎてたまらんわ
エルダーデート三回も読んでしまった
>>530 俺も。
ここのじゃなくて、投稿掲示板のやつが好き。
有難うございます。
過分なお言葉に本人は転げまわって喜んでおります。
また以前受信した電波の作品化が完了しました。
由佳里ルートの「ばれちゃった」の場面のもう1つの可能性について考えたものです。
よろしくお願いします。
「な……なんですか……これ……これって……」
「あ……あああ……」
1月末、ちょっと早いバレンタインにと由佳里ちゃんは僕にチョコレートケーキを持ってきてくれた。
そして告白された……んだけど……。
「こ、これ……これ、なんですか……これ……どういうことですか?」
そこで由佳里ちゃんにキスされた拍子に、僕は倒れた。そして、由佳里ちゃんの手は、偶然僕の股間の上に触れてしまっていた。
「どういうことなんですかあっ!?」
〜惑いの森、夜明けの光 if〜
愕然とする由佳里ちゃんに、僕はかけるべき言葉もない。
「今、由佳里ちゃんが感じたとおりです……」
「そ、そんな……じゃあ、お姉さまは……」
「……私に、お姉さまと呼ばれる資格は……ないんです」
「そんな……そんなことって……」
由佳里ちゃんはふらふらしながら部屋を出て行った。
「由佳里ちゃん……」
僕はしばらくそこから動くことができなかった。
「お姉さま! まりやお姉さま!」
由佳里はそのまま、まりやお姉さまの部屋のドアを激しく叩いた。
「……由佳里? どうしたの? 一体……」
すぐにまりやが不思議そうな顔をしながら出てくる。
「お姉さまは……お姉さまはご存知だったのですか!? 瑞穂お姉さまが……瑞穂お姉さまが……!」
そのころ……。
「ふう……」
僕は、1人部屋で落ち込んでいた。
「由佳里ちゃん……どうなるのかな?」
きっと由佳里ちゃんは、裏切られた思いでいっぱいのはず……
素直で一途な娘だけに、その反動で道を踏み外したりしなければいいけど……。
「どうしよう……」
僕のことはいい……でも由佳里ちゃんだけは、なんとかしないと……。
僕は1晩中、由佳里ちゃんのこれからについて心配していた。
翌日の朝……。
「お姉さま! お姉さま! 起きてらっしゃいますか?」
僕の部屋のドアをノックする声が聞こえてきた。僕はドアを開ける。
「……由佳里ちゃん!?」
その先にいたのは、意外な人物だった。
「ごめんね……」
僕は、とりあえずそれしかかける言葉が見つからない。が……。
「そんな……謝らないでください! 悪いのは私のほうなんですから!」
「えっ……!?」
どうして? どうして由佳里ちゃんのほうが悪いことになるの?
「あの時はびっくりしてしまいましたけど、もう大丈夫ですから! 昔、まりやお姉さまにどんなひどいこと言われたのかは
知りませんけど、それでもお姉さまは私の大切なお姉さまなんですから!」
話が見えてこない。なんでまりやが出て来るの?
「ねえ、由佳里ちゃん……」
「ですから、あんなことくらいで、ご自分をお責めにならないでください!
私はそんなこと、これっぽっちも気にしませんから!」
「………?」
いったいどういうことなんだろう? 由佳里ちゃん、怒ってるんじゃないの?
「瑞穂ちゃん」
しばらくして、まりやがやって来た。
「まりや……」
「由佳里ちゃん、まりやに相談しに来たの?」
「……来たよ」
まりやはそう気まずそうに言う。
「ねえまりや、僕にはいまいちわからないんだけど、まりやが僕にひどいこと言ったって……」
「ああ、瑞穂ちゃん、自分にお姉さまと呼ばれる資格はないって言ったそうじゃない。それで由佳里、
昔あたしが男性器がついてることをさんざんからかって、それで瑞穂ちゃんがトラウマになったって思ったみたい」
確かに、女との身体の違いについて、まりやにからかわれたことはあるけど……。
「でも、由佳里ちゃん、僕が男だって知って怒ってるかと思ったのに……」
「ああ、瑞穂ちゃん、そのことなんだけど……」
まりやはいっそう気まずそうになる。
「何?」
「由佳里さあ、瑞穂ちゃんのこと、男だって気づいてないのよね」
「へっ!?」
気づいてないって……でも、あの時確かに由佳里ちゃんの手は僕の股間の感触に触れて……。
「ふたなりの女だと思ってるみたい」
ガーン!!
「ふ……ふたなりの女……」
ここまで決定的証拠を掴ませても男だと思われない僕って一体……。
「ううう……」
もう男としてのプライドずたずた……木っ端微塵だよ……。
それから、僕は立ち直るのに10日前後かかったのだった。
Fin
以上で終わりです。
>>530-531 確かに、修正版の方が味がより増していていいですよね。私も何度か読んでいます。
>>532 これからも期待しています。次はクリスマスあたりでしょうか?
ただ、1つ不満を言えば、しつこいですが、
これからの作品を修正する時はできればもっと由佳里ちゃんにもいい目を……と思います。
ご存知かもしれませんが、投稿掲示板の作品は、思いついたらいつでも修正できますので、
過去の作品も、もし書いた後でこちらの方がいいとひらめいたら、修正してもいいと思いますよ。
由佳里ちゃんばかりに目がいくと、他のオニャノコから涙目で訴えられるぞw
ワタシ一子、、、
たまにはワタシのことも思い出してください。
たしかに誕生日ですらスルーされてたもんな、一子ちゃん…
けどアニメのキャラスレだと最初から生き残ってるのって
一子ちゃんスレだけなんだよね…
人気があるのかないのか分からん娘だなw
一子ちゃんはエロとか抜きで好きなんだ。
由佳里厨ウザイ
そう言えば、冬コミの目玉商品は両面紫苑さま抱き枕カバーらしい。1万円。
奏ちゃんのミニ抱き枕が欲しいぜ。
『プライスレス』
「いやー、たまには貴子と二人でラーメンってのもいいわねー」
ずぞぞぞぞ
思いっきり音を立ててまりやがラーメンを食べる
「ものすごく幸せそうな笑顔で食べてますわね、まりやさん」
そういいながらも自身も幸せそうな笑顔でラーメンを吸い込む
ずぞぞぞぞ
やはり音を立てながら
ずぞっ、ふたりが同時にラーメンを飲み込んだ瞬間
「食い逃げだー!」
店主の叫びが店内にこだまする
「なにぃぃいっ!」
まりやがあふれ出す正義感のままに行動を起こした
放り投げて割れたどんぶり:800円
思い切り叩きつけて割った扉のガラス:35000円
走って逃げる犯人に投げつけた看板:25000円
巻き添えを食らって壊れた出前用カブ:100000円
まりやの活躍:プライスレス
「買える物は黙って持ってきた瑞穂ちゃんのカードで…」
>>544 なんて豪快な対処方法でしょうか。
色々な意味で(笑)
頭からラーメンのスープをかぶった貴子さんへの慰謝料: プライスレス
GJ!!
おもしれー。
もっと書いて。
>544GJ
だが、美味い穴場の店ほど、クレジットカードが使えない。
使えるようになると、大概、味が堕ちる。不思議だ
また受信した電波が作品化しましたので、投稿させていただきます。
内容は「いなばの白うさぎ」のパロディです。
〜聖央の白うさぎ〜
昔々、あるところに、瑞穂うさぎという白いきれいなうさぎがいました。
ある日、瑞穂うさぎは、用事があって海の向こう側の大地に行かなければならなくなりました。
でも、そこには橋も船もなかったのです。
そこで瑞穂うさぎは、海にいる鮫たちに頼むことにしました。
「ねえ、鮫さん」
「なんだ?」
「僕は海の向こう側に渡りたいんだけど、力を貸してくれませんか?」
「ああ、いいぜ。その代わり、あんたも渡り終えたら俺たちの頼みを聞いてくれよな」
鮫たちは、条件つきで引き受けました。もちろん、瑞穂うさぎは断る理由はありません。
「ええ。もちろんです」
こうして瑞穂うさぎは、鮫たちを橋代わりにして、海の向こうに渡りました。
「鮫さんたち、ありがとうございました!」
「じゃあ、次は俺たちの頼みを聞いてもらうぜ」
「ええ、それで?」
「実は俺たちの探しているお宝の封印を解いてほしいんだよ。その封印は女の哺乳類しか解けないらしいからな」
どうやら、鮫たちは瑞穂うさぎを女だと勘違いしたようです。
「あ、あの……僕は男なんですけど……」
「なんだとー! だましやがったな! 皮をはいでしまえ!」
瑞穂が気まずそうに告白すると、怒った鮫は瑞穂うさぎの毛を根こそぎひんむいてしまいました。
「ううう……女だなんて一言も言っていないじゃないか……」
身体中の毛を根こそぎひんむかれた瑞穂うさぎは、泣きながらそうこぼしました。
それからしばらくして、まりやが瑞穂うさぎのところにやってきました。
「どうしたの、瑞穂ちゃん?」
「まりや……鮫たちに身ぐるみはがされちゃって……」
瑞穂うさぎは、まりやに全てを話しました。
「ふうん……でもそれは、最初に男だと言わなかった瑞穂ちゃんも悪いわよ。
瑞穂ちゃんは女と間違われることを前提にして行動を起こさないとね」
「ううう……それで、全身がヒリヒリするんだけど、どうしたら……」
落ち込みながらも、瑞穂うさぎはまりやにそう聞きます。
「とりあえず、真水で身体を洗いなさい。でもって、寒いだろうからこれを着るといいわ」
まりやは、そう言って瑞穂うさぎにバニースーツを渡しました。
「こ、これを着ろって?」
「そ、瑞穂ちゃんには一番似合うわよ」
「とほほ……」
瑞穂うさぎは体を洗ったあと、仕方なくバニースーツを着ました。
「み、みんないい加減にしてほしいよ……」
瑞穂うさぎがバニースーツで歩いていると、通りすがりの人たちから次々と声をかけられます。
目的はサインをねだられたり、ナンパだったりするのはまだマシな方で、中にはAV撮影の勧誘だったりすることもあります。
まあ、瑞穂うさぎほどの器量でバニースーツを着ていれば必然でしょう。
「おなかも減ってきたし……どうしよう?」
そこへ、由佳里が通りかかりました。
「………!! うわあ! すごい美人で色っぽいうさぎさん……」
「ね、ねえ由佳里ちゃん、おなかがすいてきたんだけど、何か食べるものないかな?」
瑞穂うさぎは、由佳里に聞きます。
「それでしたら、私が腕によりをかけてごちそうしちゃいます!」
由佳里の料理の腕は天下一品だという風聞を聞いていた瑞穂うさぎは、嬉しくなりました。
「ホントにいいの?」
「ええ。私も瑞穂うさぎさんに会えて、たまっていたフラストを一気に晴らせそうですから、
お礼もかねて、一番おいしい料理を作ってあげますよ!」
「ありがとう」
こうして瑞穂うさぎは、由佳里にごちそうになることにしました。
だが……。
「さあ、瑞穂うさぎさん、召し上がれ!」
由佳里は満面の笑顔で言います。
テーブルには、ハンバーグそぼろごはん、ハンバーグシチュー、ハンバーグの三段重ねステーキ、
ハンバーグジュースにハンバーグパイ……。
「は、ハンバーグ尽くし……」
「はい! 私の一番の得意料理です! 私もこれを食べてる時が、一番幸せになれるんです!」
悪気のまったくない、極悪なまでに無邪気な笑顔で由佳里は言います。
(気持ちはすごく嬉しいけど、うさぎの僕は草食なんだよ……)
瑞穂うさぎは、口に出さずにそう思いながら、泣く泣くハンバーグ尽くしのご飯を口に入れていきました。
「わあ! 泣くほど喜んでもらえるなんて、作った甲斐がありました!」
一方、由佳里はそう勘違いして喜びました。
そして翌日……。
「う……ん」
「あ、瑞穂うさぎさん、おはようございます!」
瑞穂うさぎが由佳里の家で目を覚ますと、由佳里はすでに朝食の準備に入っていた。
「今から朝食の準備をしますから、ちょっと待っててくださいね」
瑞穂うさぎが見ると、由佳里の手の上にはひき肉がたっぷり……。
「い、いいよ。そう何から何まで由佳里ちゃんのお世話になるのも悪いから……!」
瑞穂うさぎは、慌てて逃げ出しました。
「……遠慮しなくってもいいのに」
「ううう……ひどい目にあった」
逃げ出してしばらくしてから、瑞穂うさぎは胃のむかつきをこらえるため、胃腸薬を飲んでいました。
「うえええええ……」
「あら? 瑞穂うさぎさま、どうかいたしましたのですか?」
そこへ、奏が通りかかりました。
「あ、奏ちゃん……僕は草食なのに、ちょっと、大量の肉を食べるはめになって……」
「はうう……瑞穂うさぎさま、おかわいそうなのですよ」
奏は、涙を流して瑞穂うさぎに同情します。
「それでしたら、朝ごはんは奏の家で召し上がってくださいなのですよ。奏のお料理はお肉は使わないのですよ」
「ありがとう、奏ちゃん……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」
……というわけで、朝食は奏の家で食べることになりました。
「さあ、どうぞなのですよ」
「おじゃまします……」
瑞穂うさぎが奏の家に入ると、掌に乗るサイズの、白いきれいな宝石のようなものが見えました。
「ねえ奏ちゃん、あの宝石は?」
「あれは“風の石”と言われる宝石なのですよ。3日前に、奏が手に入れてきたのですよ」
「風の石?」
「瑞穂うさぎさま、もう少しで出来上がりますのですよ。しばらく待っていてくださいなのですよ」
そう言って、奏が朝食を出してきます。
しかし……。
「こ……これが朝ごはん?」
「はいなのです。瑞穂うさぎさま、どうぞお召し上がりくださいなのですよ」
テーブルに並べられたのは、苺ミルクパフェ、苺パイ、苺シュー、苺のショートケーキ、苺ジュース、苺のクレープなどなど……。
「で、デザートじゃなくて?」
「奏は、毎日こういうものをお食事にしているのですよ」
奏は極悪に無邪気な笑顔で言います。
(気持ちはうれしいけど、僕は甘いものが嫌いなんだよ……)
そう思いながらも、瑞穂うさぎは仕方なく朝食を食べていきます。
(ううう……これじゃあ市販のデザートの方がずっとましだよ)
瑞穂うさぎが食べると、市販のものとは比べ物にならないくらいの甘さでした。
「ううう……またひどい目にあった……」
瑞穂うさぎは、胸やけをこらえるため、ブラックコーヒーを148杯飲んでいました。
そして、ようやく口の中から甘さが消えたようです。
「瑞穂うさぎさん、どうしましたのですか?」
そこへ、貴子が通りかかりました。
「貴子さん……」
瑞穂が振り向くと……。
「そそそ、その格好は……」
バニーガール姿に刺激された貴子は、鼻血を噴いて倒れてしまいました。
「ああっ、貴子さん!」
瑞穂うさぎは貴子を膝枕で解放したあと、貴子の家に行くことになりました。
「……なるほど、そういうことですか」
瑞穂うさぎから事のいきさつを聞いた貴子は、そう言いました。
「しかし、その格好は格別の目の保養……いえ、目の毒ですわ! これにお着替えくださいませ!」
貴子はそう言って、普通の男ものの服を出してきました。
「貴子さん、これは……」
「私は実家を出たばかりで、着るものも洗濯中で、間違えて持ってきた兄の衣服ですが……」
瑞穂うさぎは、ようやく一安心。
「ありがとうございます、貴子さん」
「それでは、昼食は私がご用意いたしますわ」
貴子はそう言って、キッチンで昼食を作っている間、瑞穂うさぎは客室に置かれた青い石を見ていました。
「さあ、昼食ですわ」
「これは……!!」
貴子が作ったのは、本格的なラーメンでした。
「瑞穂うさぎさんは草食らしいので、野菜ラーメンにいたしました」
「貴子さん、何から何まで、ありがとうございます!」
瑞穂うさぎは、あっという間に野菜ラーメンをたいらげてしまいました。
貴子と別れた後、瑞穂うさぎは、目的地である神殿にやってきました。
「瑞穂うさぎさん、お待ちしていましたわ」
そこには、神殿の巫女である紫苑がいました。
「紫苑さん」
「これで、ようやくいにしえの邪神にかけられたあなたの呪いも解けます」
紫苑がそう言うと、祭壇の前に瑞穂うさぎを案内しました。
「……み、みんな!」
そこには、なんと途中で出会った4人がいました。
紫苑は、祭壇から奏や貴子の家で見たのと同じサイズの、黄色の宝石を出してきました。
「まりやさんの『火の石』、由佳里さんの『土の石』、奏ちゃんの『風の石』、貴子さんの『水の石』、
そして、この『光の石』の5つが集まるとき、邪神の呪いは解けるでしょう」
そう言って、紫苑は祭壇に祈りをささげました。すると……。
「わあっ……!!」
「まぶし……っ!!」
瑞穂うさぎはまばゆいばかりの光に包まれ、そこにいたのは1人の女性……いや、ほとんど女性のような姿の男性……でした。
「紫苑さま、こ、この人は……」
まりやたちが紫苑に聞きます。
「この方こそ、この日出ずる国の神、カブラギノミコトですわ。邪神の呪いで、うさぎの姿に変えられておりましたの」
紫苑は、カブラギノミコトに向き直ります。
「さあ、カブラギノミコトさま、あなたはあの4人の中から、ご自分の花嫁を選ばねばなりません。
その時こそ、あなた様は本来の力を取り戻し、神として君臨する事ができましょう」
カブラギノミコトは4人を見渡しました。自分の花嫁……。
4人は、期待に満ちたまなざしで彼を見ています。
「では貴子さん、私の妻になってくれませんか?」
彼は考えるまでもなくそう言います。
「はい、喜んで」
貴子は、涙を流してそう返事しました。
こうしてカブラギノミコトは、妻の貴子とともに、末永く幸せに暮らしましたとさ。
Fin
……なんか後で見返してみると、「いなばの白うさぎ」のパロディのはずが、
完全に別物になっているような気も……。
まあ、とりあえずこれで終わりです。お目汚し失礼しました。
そういや、貴子さんの誕生日過ぎたんだよな・・・
SS書きたかったが、忘れてたorz
『天使の歌声』
瑞穂ちゃんがエルダーになってからしばらくしたある日
「そういえばこの学院って美術、書道、音楽から一つ選択なんですね」
次の授業を受けるために教室を移動しながら瑞穂ちゃんが紫苑さまに話しかける
「ええ、瑞穂さんは美術を選択したんですね」
「はい、書道を選択しておけば紫苑さまとご一緒できたんですけど…」
そんな話をしながら廊下の角で二人は分かれた
昼食中もその話になり
「あー、そういえば昔から瑞穂ちゃんは歌が苦手なんだっけ」
まりやがそう言い出した
「へ〜お姉さまも苦手なものがあるんですか」
ゆかりんは興味津々
「お姉さまはお綺麗な声なのに不思議なのですよ〜」
奏ちゃんも吃驚して聞き返す
「まー論より証拠ね、ちょっと歌ったげなさいよ、瑞穂ちゃん」
「ええ〜〜〜」
とは言ったものの奏ちゃんとゆかりんの期待に満ちた目に抗えず歌いだす
瑞穂ちゃんの歌声が食堂に響き渡り生徒たちが聞き惚れる
ところがヴィブラートをかけて歌うようになると
ふいに、瑞穂ちゃんの歌声が途切れた
「あれ?どうしたんですか?お姉さま」
ゆかりんの問いかけに瑞穂ちゃんは苦笑いで答えた
「あはははは…失敗しちゃった」
「さて、それではお立会い!」
まりやが何処かから誰かを引っ張ってきた
「ちょっと?ここ何処?俺なんでこんなところにいるの?」
まりやが連れてきた少年は
単眼式ヘッドマウントディスプレイを頭に、ウェアラブルコンピュータを左腕に装着していた
さらに青い毛並みのシベリアンハスキーを連れていた
「じゃ、さっきんとこもう一度歌って」
瑞穂ちゃんがまりやに促されもう一度歌いだす
そしてやはり声が途切れる
ところが
「うわん、わんわんわんわんわんわんわん」
「どうしたパスカル!」
突然青いシベリアンハスキーが吠え出したことに少年は驚く
犬が鳴いているのを見てまりやが面白そうに笑い出した
「あはははははは、瑞穂ちゃんの歌の音階の高さは犬笛なみなのよ!」
「で、まりやはどうやって男をお嬢様学校に連れ込めたのよ」
「犬もですよ、まりやお姉さま」
答えに窮するまりやでしたとさ
563 :
名無しさん@初回限定:2007/12/06(木) 20:30:22 ID:W36iBMXL0
564 :
名無しさん@初回限定:2007/12/07(金) 12:13:20 ID:0Fmm55JG0
>>561-562 なにかと思ったらメガテンか
まりや「金剛神界ってとこで知り合ったのよ」
ヒーロー「最初は魔人かと思ったよ」
瑞穂「いいから、元いた場所に帰してらっしゃい!」
紫苑「危うくICBMが投下されてしまうところでしたわ」
また新しい電波を受信しましたので、よろしくお願いします。
設定は紫苑ルートか貴子ルートのどちらか、どちらにでもありえる話だと思ってください。
「今日も一日、とっても充実して楽しかったな」
その日、宮小路瑞穂は、心底嬉しそうに背伸びをしながら言った。
愛しい人と両思いになれて、いつも愛しい人のそばにいられて、彼の心は光に満たされていた。
しかし、彼はまだ気づいていなかった。自分の知らないところで、恐ろしい爆弾が動いていることを……。
〜この世に光がある限り〜
「お姉さま!」
ある日、1人の女生徒が瑞穂に声をかけてきた。
「あら、どうしたの?」
「お姉さま、私を愛してください!」
その女生徒は、真っ赤になりながら思い切った表情でそう言う。
「……えっと、私は聖央のみんなのことは、ちゃんと愛してるわよ?」
瑞穂はしばらく呆然としていたが、やがて意識を取り戻して、何とかそう返す。
「違います! そうではなくて、私を抱いてほしいんです!」
薄々感づいてはいたものの、そうはっきり返されて、引いてしまう瑞穂。
「……ごめんなさい、私、今好きな人がいるから」
「そんな! お姉さま、他の方も抱いてくださっていらっしゃるじゃないですか!」
「えっ……!?」
そう言えばあきらめてくれると思っていた瑞穂は、あまりの予想外の反撃に、固まらざるを得なかった。
「私、そんなことしてないわよ?」
実際そうである。最近学院内では、瑞穂はもっぱら紫苑や貴子とばかり一緒にいるのだから。
「いいえ、私、ちゃんと聞きましたわよ! お姉さまに優しく愛していただいてるって! 紫苑さまや会長以外の方から!」
「えっ……!?」
瑞穂は困惑。どういうことか見当もつかない。
「えっ? それは本当なのですか?」
「それでしたら、私にもチャンスが……」
一方、それに対して周りの女生徒が敏感に反応する。
「お姉さまーっ! 私のことも優しく抱いてください!」
反応が反応を呼び、他の生徒たちも一気に瑞穂のもとに詰め寄ってきた。
「わーっ!!」
囲まれた瑞穂は、逃げ出す事ができない。
「え、えっと……ほら、ここは学院だし……」
「では、どこか他の場所で……!」
「そうですわ! 学院以外の場所でしたら、お姉さまと……」
瑞穂は恐怖する。もう話してわかる感じではなかった。かといって、紫苑や貴子という大切な人を裏切るわけにはいかない。
「私、本当に知らないのよ。でも、それじゃあ皆さんも納得できないでしょうし、“抱きしめる”だけで許してくださらない?」
それが、瑞穂の精一杯の譲歩であった。
「わかりましたわ」
「お姉さまがそうおっしゃられるのでしたら……」
そして、1人ずつ30秒間だけ、瑞穂に抱きしめられることになった。
それから数分後……。
「お、お姉さま……なんなのですか? これは?」
奏が食堂に来ると、そこは生徒たちの死屍累々の後だった。
「ああーん……お姉さまあ……」
みんながみんな恍惚の表情を浮かべて、うわごとのようにそうつぶやいて倒れている。
「うーんと……まあ色々あって。奏ちゃん、保健室に運ぶの手伝ってくれる?」
「は、はいなのですよ!」
こうして2人は、友人たちと協力して、生徒たちを保健室に運んだ。
その翌日……。
「瑞穂ちゃん! どういうことよ? 紫苑さまや貴子を裏切るなんて!」
瑞穂は、まりやに呼び出されていた。
「な、何がだよ?」
「瑞穂さん、他の女と抱き合ってらっしゃるそうじゃないの!」
「僕はそんなことしてないよ!」
「でも、貴子も聞いてるらしいわよ? 瑞穂ちゃんが他の人を抱いたという話を直接……」
「えっ!?」
瑞穂は硬直した。
「デマだよ! 本当に僕は何も知らない!」
「じゃあ、貴子が聞いたって話は……」
「それは、こっちが聞きたいぐらいだよ!」
それを聞いて、まりやは考えこむ。
「うーん……どうやら瑞穂ちゃんは本当に心当たりないみたいね。どういうことか、あたしも調べてみるか」
「お願いね。原因がわかれば、僕も対処しようがあるから」
瑞穂は協力者を得て、真相究明の第一歩を踏み出した。
翌日、生徒会室……。
「貴子さん、僕が他の人を抱いたって話を直接聞いたそうだけど……」
「ええ……」
真相を突き止めるため、瑞穂は貴子に話すと、貴子は衰弱しながらも答えた。
「相手が誰と誰だかわかりますか?」
「いえ……でも、独り言でした」
「独り言?」
ますますわからない。誰かと話してたなら、意図的にデマを流してる可能性もありえるだろうけど……。
「その人の特徴、わかりますか?」
瑞穂が聞くと、貴子は首を横に振る。
「いいえ、トイレの個室の中から聞こえてきましたので……」
「そうですか……」
貴子も誰なのかは、特徴もわからないのか……瑞穂は捜査がふりだしに戻ったことにがっくりした。
「瑞穂さん」
「紫苑さん……」
ちょうど生徒会室に、紫苑が入ってきた。
「貴子さんの話を聞いて、まさかとは思いましたが、瑞穂さん、私たちを裏切っては……」
「もちろんいませんよ。これから、真相を突き止めて、みんなの誤解を解こうと思っていたところですから」
「わかりましたわ。でも瑞穂さん、昨日、数十人の生徒を抱きしめていたそうですわね」
紫苑が厳しい口調で問いつめると、瑞穂は顔を蒼白にさせた。
「あ、あれは……お2人には悪いと思いましたが、話してわかる感じじゃなかったですし、仕方なくギリギリの譲歩をするしか……」
「わかっていますわ」
一転して笑顔で言う紫苑。
「ただ、ちょっと意地悪をしてみたかっただけです」
「紫苑さーん……勘弁してくださいよお……」
「ふふふ、ごめんなさい。瑞穂さん、私たちも協力しますから、真相、早く突き止めましょうね」
「はい! もちろんです!」
瑞穂は、そう言うと生徒会室を後にした。
「ふう……」
そして放課後、生徒会でエルダーとしての予定を聞いた瑞穂は、帰る前に用を足しにトイレに入った。
「だいぶ慣れたとはいえ、やっぱり疲れるな……」
トイレが終えた瑞穂は、しばらくそこで噂について考えていた。と……。
「あ……んっ……」
隣の個室から、何やら奇妙な声が聞こえてくる。
「ふぁあ……んくっ……あはあ……」
瑞穂の身体から冷や汗が出る。この声の意味に察しがついてしまったから。
「ああ……お姉さま……そう……もっと、もっと優しくう……」
「………!!」
こ、この声は……!!
「あああんっ……もっと私を愛してえ……!!」
聞き覚えのある声が悩ましげに隣の個室から聞こえてくる。
「あああ……お姉さま……好き、好き……大好き……はあはあ……」
ま、まさか……瑞穂の脳裏に、1つの仮説ができた。
「ふぁあああああんっ……!!」
そうこうしているうちに、向こうは絶頂に達してしまったようだ。
「お姉さま……ありがとうございます……いつも私を優しく愛してくれて……」
瑞穂は、一子を除けば、今の恋人以外とえっちしたことはない。ということは……。
(妄想?)
「寮のみんなの中で、私だけ活躍してないから、お友達も少ないし、奏ちゃんも最近私のことはほったらかしだし、
まりやお姉さまからはおもちゃにされたり、パシリにされたり、尻拭いとかさせられてばっかりだし……」
瑞穂は聞いてるうち、自分の思っていたより、根はもっと深いところにあったことを思い知らされた。
「でも、私にはお姉さまがいるから、いつもお姉さまが優しく愛してくださるから、こんな不幸な私でも、
なんとかやっていけそうです……」
それからしばらくして、隣のドアを開ける音と足音がし、瑞穂だけが残された。
「由佳里ちゃん……」
真相はわかった。でも、解決にはまだまだ課題が残されている。
そして、夕食後……。
「由佳里ちゃんは?」
「部屋で寝てるわ。なんか疲れたからって」
由佳里の心情を察しながら、瑞穂は話を切り出すことにした。
「そう。それじゃ、ちょっと話したいことがあるんだけど……」
瑞穂は、由佳里の今置かれている状況について話した。
「そっか、由佳里、そこまで追いつめられていたんだ……ちょっと意外……」
「うん。表面上はうまくいってるように見えても、中身までそうとは限らないからね。私も思い知らされたわ」
「由佳里ちゃん、ごめんなさいなのですよ……奏、紫苑お姉さまや会長さんといるのが心地良くて、
由佳里ちゃんのことは、知らないうちにおざなりになっていたのですよ」
真相がわかっても、誰一人由佳里を責めるものはいない。
実際、図らずも理不尽にみんなから孤立されて、まりやからおもちゃにされたりツケを押し付けられたりした由佳里は、
妄想の殻にでも閉じこもらなければ、やってられなかったのだろう。
光あるところ、必ず影ができる。それを思い知らされた瞬間だった。
そして、夜もさらに深まった頃……。
コンコン……。
「由佳里、起きてる?」
「まりやお姉さま?」
まりやが由佳里の部屋をノックすると、返事が返ってきた。
「話があるのよ。部屋に入れてくれない?」
「でも……」
「まじめな話なのよ。いたずらしたり、部屋荒らしたりはしないからさ」
「わかりました」
渋々といった感じではあるが、由佳里はまりやを部屋に招き入れた。
「それで、話っていうのは?」
「由佳里さあ、今日学校のトイレで瑞穂ちゃんのこと妄想しながらやってたんだってね」
「………!!」
それを聞いた由佳里の表情は凍りつき、顔は真っ赤になった。
「あ……あ……あの……なななな……」
必死で反論しようとするが、動揺のあまり何も言えない。
「落ち着きなって。まじめな話だって言ったでしょ? いじろうってんじゃないんだから」
まりやは珍しくその反応には関心を示さずに由佳里を諭す。
「あ……は……はい……」
まりやは由佳里が落ち着くまで待ってから話を続ける。
「ごめんね。由佳里も今まで普段どおりに見えたから、まさか由佳里が妄想の中に閉じこもるほど
思いつめてたなんて思わなかったの……」
「まりやお姉さま……」
「由佳里、言いたい事があるならはっきり言いなよ。今日は反論も反撃も無しで聞いたげるからさ」
しばらく間をおいて、由佳里は堰を切ったように言う。
「お姉さま方も奏ちゃんも有名になって、私だけ蚊帳の外ですし、瑞穂お姉さまも奏ちゃんも、最近は私のこと
相手にしてくれないし、私だってもっと普通に愛されたいですよ!」
まりやはあたしが愛してあげてるじゃない、と言おうとしたが、それを言ったら泥沼だと思ったので、
まじめな方向にもって行くことにした。
「あたしも瑞穂ちゃんや紫苑さまが奏ちゃんにするみたいに、もっと普通に由佳里を可愛がってあげたいとは思うんだけどね、
どうしてもああなっちゃうのよ」
「どうしてなんですか?」
由佳里は納得していないようだった。
「前にも言ったと思うけどね、あたしは両親にうっとうしいぐらい甘やかされて育ったからね。
それで普通に愛してうっとうしがられたらって、考えるより先に身体が拒絶しちゃうのよ」
「………」
「瑞穂ちゃんも奏ちゃんも、紫苑さまや貴子に夢中になるあまり由佳里のことおざなりにしすぎたこと、反省してるって言ってた」
「そう……ですか……」
紫苑も貴子も由佳里にはあまり関心がないし、瑞穂も奏も、それでますます由佳里と接する時間が少なくなっていた。
無論、由佳里から話しかけられれば応じるが、基本的には瑞穂や奏から積極的に由佳里に話しかけることはしていなかった。
「まあ、あたしももうちょっと気をつけることにするけど、この性格は今さら直しようもないし、
瑞穂ちゃんや奏ちゃんも紫苑さまや貴子の事があるから、結局ちょっとマシになる程度しか変わらないかもしれない」
「だから私に泣き寝入りしろっておっしゃるんですか!?」
由佳里は再び激情をあらわにした。
「まあ、それじゃ由佳里も納得できないだろうからさ、そこで提案なんだけど……」
「提案……ですか?」
「瑞穂ちゃんや奏ちゃんは賛成してくれたわ。後は由佳里次第なんだけど」
まりやはそう言って、由佳里に妥協案を話し始めた。
そして、数日後、みんなの誤解を解き、学院の波もようやく収まってきた頃……。
「お姉さま! 今日は放課後、一緒に来てほしいところがあるんですけど……」
由佳里が瑞穂に話しかけてくる。
「ごめんなさい、今日はちょっと……」
愛する人と約束をしていたから、と言おうとすると……。
「瑞穂ちゃん、今日は何日だか忘れたの?」
まりやが厳しい口調で言ってくる。
「あっ、28日だった……」
瑞穂はそう言うと……。
「わかったわ。なんとか他の日に回してもらうように頼んでみるから」
「やったあ!」
まりやの提案。それは、毎月8日、18日、28日の1の位に8がつく日は、“由佳里の日”にすることだった。
(ただし、6月8日はまりやの誕生日なので、翌日の9日)
この日は、由佳里の気持ちをすべてにおいて優先させること。由佳里をおもちゃにするのも、ツケを押しつけるのも禁止。
夕食はハンバーグ。そしてこの日、瑞穂は必ず由佳里を3分以上抱擁すること。
つまり、月3回、由佳里にいい思いをさせることで、殻に閉じこもるのを防ごうという作戦である。
紫苑と貴子にも話したが、これ以上放置すると由佳里が何をするかわからないというまりやの警告に、あっさり納得してくれた。
まあ、瑞穂が2人に相談した日から、瑞穂たちも由佳里のことを以前よりは気にかけているようで、
そのおかげで由佳里も少しずつ元気になってきてはいるのだが。
そして、その日、食堂で……。
「な、何これ!? 赤じそのごはんに赤じそハンバーグ、赤じそドレッシングのサラダに赤じそジュース……
なんでこんな赤じそばっかり」
「今日は“由佳里の日”らしいからね。ご飯もゆかりづくしにしてみたのよ」
「こんなオチでいいの……?」
瑞穂が呆れたようにつぶやいた。
Fin
以上です。ホントにこんな話でいいのか、と自分でも思いますが……。
こんな話でも、楽しんでくださる方が1人でもいるといいな……。
それはそうと、残り20KBですか……。
そろそろ15話を立ち上げ時かな。
ともかく、お目汚し失礼しました。最近疲れ果てているので、私はこれで休みます。
お疲れ様です(笑)
疲れたときは
つ おふろでゆっくり
為替取引で700万近く損失を出したよw
僕もゆっくりお風呂で・・・・ぶくぶく・・・
こんにちは。
いつの間にか埋めネタ担当になっている私が参りました。
それでは埋めてしまいましょ。
『パンチラとサンタと奇跡の一枚』
強い北風が吹く12月のある日の朝。
瑞穂たち寮生4人は、いつものように仲良く登校していた。
「ううっ、寒いわね」
「そうね。風も強いし」
周りを歩いているほかの生徒たちも言葉少なめに心もち早歩きで校舎に向かっている。
正面玄関前の道で、後ろからやってきた紫苑が挨拶して来た。
「皆さん、お早うございます」
瑞穂たちも紫苑に挨拶を返す。
「お早うございます、紫苑さん。今朝も風が強いですね」
「ええ」
瑞穂を先頭に玄関に向かう一行。
その時、背後から一陣の突風が吹いた。
ヒュウウゥゥゥ!!!
フワッと浮き上がるスカートの裾。
「きゃ…」
瑞穂は慌てて、スカートの前を両手で押さえつける。
・・・・・・ピラッ!!
スカートの後ろが捲くれあがってしまった。
(あ、見えちゃったかな)
瑞穂が恐る恐る後ろを振り向くと、・・・・・・
登校中の大勢の生徒たちが立ち止まって、瑞穂を凝視していた。
奏と由佳里は、両手で自分のスカートを押さえながら真っ赤な顔で瑞穂を凝視していた。
紫苑は片手でスカートを抑えつつ、もう片方の手で携帯を振りかざして瑞穂の姿を撮影していた。
まりやは自分のミニスカートが捲れるのを一向に気にせず、両手で携帯を構えて瑞穂の姿を激写していた。
全員硬直して、まるで時が止まったかのよう。
次の瞬間…
キャアァァァ!!!
あちこちで歓声があがった。
バタバタと倒れる生徒多数。
真っ赤な顔で神に感謝の祈りを捧げる者も多数。
「主よ、素晴らしい恵みに感謝します。アーメン」
「あああ、感激です。一生忘れませんわ!」
「私は日記に書きとめておきます」
「今日という日を忘れぬために我が校の記念日にすべきでは?」
「・・・・・・」
「よっしゃあぁぁ、パンチラげっとおぉ!!」
ガッツポーズのまりや。
「・・・・・・あのね、まりや」
「まりやさん、私もホラ」
紫苑がまりやに携帯をみせる。
「あらあ、紫苑さまもゲットですか〜。この見えそうで見えていない所がそそりますね。あたしのもホラ!」
「まあ!まりやさん、これは決定的瞬間ではありませんか。流石です。素晴らしいアングル!良い仕事ですわ!」
二人で携帯の画像を見せ合っている。
「・・・・・・あの、あのね、二人とも」
「ああ〜、まりやお姉さま。あたしにも頂けませんか」
「か、奏も欲しいのですよ〜」
真っ赤な顔して由佳里と奏も近寄って行く。
「由佳里ちゃんたちまで…」
「OKOK!いいわよ。但し、これは貸しだからね。いつかこのお代は何らかの形で払ってもらうわよ」
このまりやの言葉に即、了承の返事をする由佳里と奏。
「まりやさん、私の写真とお互い交換しませんか?」
「良いですわ。紫苑さまとは等価交換ということで」
これを聞きつけた周りの生徒たちが忽ち、まりやの周囲に群がってきた。
倒れていた生徒たちまでゾンビのように立ち上がってまりやの元へ寄っていく。
「御門さん、私にも一枚頂けませんでしょうか?」
「私も欲しいです」
「私も!」
凄い人だかりになった。
「・・・・・・あなたたち」
「さ〜いらはい、いらはい!お代は等価交換だよ!これと同じ価値のものしかダメだからね」
まりやの独壇場だった。
「え〜そんな価値のあるものなんて…」
「お金ではダメですの?」
残念そうな声が上がる中、少数ながらも取引成立している生徒もいる。
「ロミオ姿のお姉さまの写真が数カットあるのですが」
「OK!交換しましょう」
「水泳授業のときのお姉さまの幻の一枚が…」
「ん〜、こりゃアイコラでしょ。ま、出来がいいからOKにしましょ」
まさに門前市を成すありさま。
人だかりは膨らむ一方。
かける言葉もなく、呆然と見ている瑞穂。
風紀活動の服装チェックの為、正面玄関横にいる貴子もまた、声もなくまりやの繁盛振りを見つめていた。
「くっ…」
悔しそうに下唇をかんでいる。
先ほどの突風が吹いたとき、慌てて自分のスカートを抑えて瑞穂のほうを見ていなかった。
一生に一度のチャンスを逃してしまったかのような深い後悔。
瑞穂のパンチラ、『せくし〜ぽーず』を想像してみる。
・・・タラリ
鼻血が垂れてきた。
「か、会長!鼻血が…」
後ろにいた君枝が慌ててティッシュを差し出す。
「あ、有難う。君枝さん」
ティッシュを丸めて鼻に詰め込む貴子。
「君枝さん」
「ハイッ」
「まりやさんのあの写真、手に入れられないでしょうか」
「えっ!?」
「あ…いえ、没収すべきかしら。校内であのような行為は…」
「お言葉ですが会長。特に校則違反している訳ではありませんし、没収するのは無理かと。
せいぜいが風紀上の注意対応くらいだと思います」
「……そうですか」
ちらりと貴子の顔を見る君枝。
鼻にティッシュを詰め込んで羨ましげな貴子の表情。
それを見て(会長もあの写真を見てみたいと思ってらっしゃるのでは)と考える君枝。
ある理由で先ほどの突風時に君枝も咄嗟に写真を取っていた。それには偶然、瑞穂のパンチラが写っている。
何故会長が見たいと思っているのか判らないが、会長命の君枝としてはその写真を貴子に渡したい。
だけどそれは出来ない。なぜならその写真は…。
「あらあ、貴子さん。アナタも写真が欲しいのかしら?」
遠くで物欲しげに立っている貴子をまりやが目敏く見つけ声をかけた。
「えっ、いえ、そんなもの」
「ほっほう。そんなモノ呼ばわりですか。余裕ですなあ」
「あっ、いや…。ままま、まりやさん!貴女は何をなさっているんですか!?」
「見て分からない?北風という名のサンタさんからの贈り物を皆とわかち合っているの」
「洒落た云い方してもダメです。サンタクロースなんていません」
「アンタそれ問題発言よ。まあ貴子には世話になってるし、どうしてもって云うんならあげてもいいと思ったんだけど」
ニヤ〜と嫌らしい笑いを浮かべて誘惑するまりや。
貴子ものど元まで「ください」と声が出掛かった。
「やめてちょうだい。まりや、いい加減にして」
瑞穂の声に貴子はハッとわれに返る。
瑞穂は自分のそんな写真をばら撒かれることを嫌がっている。当然である。
まりやの強引な行動とあまりの展開に途方にくれたような表情の瑞穂。
その表情に母性本能が刺激され、貴子の心に俄然、正義心が湧き上がる。
「まりやさん。校内の風紀を乱すような行動は見過ごすことは出来ません。その画像は消去させていただきます」
鼻のティッシュを吹き飛ばして、声高にまりやに詰め寄った。
「え〜、いいじゃん。皆喜んでるし」
「じゃん、じゃありません!被害者であるお姉さまが嫌がっています!」
「瑞穂ちゃん、嫌なの?」
「うん」
「当たり前でしょう。さっ、その携帯を渡しなさい」
「でもさ、もう何人もの人に画像渡しちゃったわよ。その人たちのも消すの?紫苑さまのも?」
「うっ…」
言葉につまる。
校内100人の携帯をチェックするより、紫苑ひとりの携帯をチェックするほうが遥かに困難である。
「まりやっ!」
瑞穂が切れた。
「わかった、わかったわよ。もう止める。だから怒んないで。ね、瑞穂ちゃん」
まりやが終了宣言をすると、集まっていた生徒たちはブ〜ブ〜云いながら散開して行った。
「有難うございます。貴子さん」
「い、いいえ。これも役目ですから」
瑞穂の礼に気を落ち着かせて、澄ました顔つきで答える貴子。
礼を云うと瑞穂たちも疲れた様子で校舎に入っていく。
「………」
その後姿を貴子は黙って見つめている。そしてその表情を君枝が見つめている。
「瑞穂さん、素敵なお歳暮有難うございます」
「ほんと、勘弁してください。紫苑さん。画像、消して貰えませんか」
「ダメです。これ程のアートは生涯の家宝といたします」
「…紫苑さ〜ん」
紫苑と瑞穂のそんな会話が聞こえてきた。
「………」
「……会長?」
「…サンタですか」
小さくそう呟くと、ふうとため息をついて貴子も校舎に向かって歩き出した。
慌てて、後を追う君枝。
・
・
・
その日の昼休み。
君枝はまりやの元にやってきた。
「え〜と、アナタは確か、腰ぎんちゃ…じゃなくて、デコメガ…じゃなくて…」
「菅原君枝です」
「そうそう君枝さん。何の御用かしら?」
「じ、実は、その、今朝の写真なんですが…」
「今朝の写真?ああ、瑞穂さんの写真ね」
「はい。あの写真を頂きたいのですが」
「う〜ん。でも、瑞穂さんとアナタの上役の貴子さんに止められているし」
「もちろんタダとはいいません。この写真と交換で」
君枝はそう云うと、携帯を取り出して画像を見せた。
「ん〜、どれどれ。うおっ!」
画像を見て目を剥くまりや。そして周りをキョロキョロと見回した。
「ちょっと屋上にいきましょ」
まりやは君枝を連れて人気のない屋上へやってくると、改めて携帯の画像を眺めた。
その画像は今朝の突風のとき貴子のスカートが捲れた瞬間、
つまり貴子のパンチラを君枝が咄嗟に撮影してしまった画像だった。
画像手前に貴子の後姿でスカートが捲れている。
画像奥に瑞穂が捲れ上がるスカートを抑えている姿が横から映っている。
そして、その瑞穂の背後で紫苑がスカートを片手で押さえて、もう片手で携帯を持っている姿が。
こんな写真だから、君枝は貴子に画像を渡せなかったのである。
「恵泉三大美女のパンチラが写った画像ね」
でかい。この奇跡の一枚の価値は途轍もなくデカイ!
「君枝さん。アナタ、とんだワルね」
「はい?」
「この画像であたしからどれだけ毟り取ろうとしてるのかしら!」
「えええっ!?」
「良いわっ!分かってる!この画像がどれだけ凄いものかを!ここで値切るような御門まりやさまじゃないわよ!
いいでしょう、あたしの持っている画像コレクションありったけ放出しましょう!それで良いわねっ!!!」
胸倉を掴まれて血走った眼で迫られた君枝は、ただコクコクと頷くのみだった。
「毎度あり〜」
君枝の携帯に大量の画像が送られてきた。
まりやのコレクション画像は流石に素晴らしく、君枝は我を忘れて見入ってしまう。
…お姉さまの寝顔、寝姿
…お姉さまの私服姿
…お姉さまの着替え姿(後姿だけ)
…その着替えている最中に紫苑に襲われて胸を揉まれているシーン
「・・・・・・・・・」
夢中になって見ている君枝。
「だけど君枝さんが瑞穂ちゃんの写真を欲しがるなんて思わなかったわ〜」
「…はっ!あああの、その」
「てっきり貴子一筋だと思ってたから」
「も、勿論です!で、ですが恵泉の生徒でお姉さまを憧憬していない生徒は一人もおりません!」
「ふ〜ん。でも瑞穂ちゃんに執着してる貴子のほうが写真を欲しがりそうだけど。もしかして貴子に頼まれて
君枝さんが写真を集めてたりして」
「そそそっそんな訳ないじゃないですかっ」
「それもそうね。もしそうなら、こんな貴子のパンチラ写真なんて持ってくる訳ないもんね」
「そそそうですとも」
慌てて否定する君枝の姿をじーっと見てまりやは軽く微笑んだ。
「でも貴子にその写真を渡すときなんて云って渡したら良いか理由を考えるのが大変ね」
「ええ、そうなんです」
・・・・・・し〜〜〜ん
「あああああっっ」
自爆に君枝が顔を真っ赤にして絶句する。
「にゃはは〜。あたしと勝負するにはまだちょっと早かったわね〜」
「………」
「ま、そう落ち込みなさんな。誰にも云ったりしないから。そっか〜、貴子の為にね〜」
「あ、あの」
「意地っ張りでツンツンな上役の為にそこまで尽くすなんて、君枝さん、アナタ偉いわ」
「…会長はお綺麗で素敵な方です!」
「うんうん。君枝さんのような人がいてくれて貴子も幸せよね」
まりやにそう云われて、顔を赤らめてモジモジする君枝。
「で、貴子はそんなに写真を欲しがってるの?」
「い、いえ。私がなんとなくそう思うだけで。会長は口に出しておっしゃってません」
「そりゃ貴子は死んでも云わないでしょうね。でも傍にいる人がそう感じるってことはよっぽど欲しいんでしょうよ。
瑞穂ちゃん好きの貴子としては」
「え?会長、お姉さまのことが?」
「ありゃ、判らなかった?貴子、いつも瑞穂ちゃんのこと気にしてるでしょ」
「確かに云われてみれば…」
君枝の脳裏に思い当たる節が多々浮かんでくる。
貴子と瑞穂ならお似合いだし、素敵なカップルになると思う。
そう思いながらも、何故かガッカリと落ち込んでしまいそうな気分も沸いてくる。悲喜入り混じった複雑な気持ち。
何やらブツブツと云いながら考え込んでいる君枝を見てまりやが云う。
「君枝さん、貴子に渡す写真、あたしが渡しといてあげるわ」
「え?」
「変に渡してこの写真はどうした?と貴子に突っ込まれたら大変でしょ。この凄い一枚に対しての
サービスってことであたしが何枚か見繕って渡しといてあげるわ」
「で、でも…」
「まあまあ。サンタなんていないって云い切ってる貴子だからね。夢も希望ももってない娘への君枝サンタからの
プレゼントってことでいいじゃない。勿論、君枝さんのことは判らないようにするから安心して」
「そ、そうですか。ではお任せします」
そう云って、君枝はぺこりと頭を下げた。
・
・
・
そして12月24日、終業式の朝。
登校してきた貴子は、自分の下駄箱に紙封筒が突っ込まれているのを見つけた。
「何でしょうか、コレ」
封筒の上に手紙が載っている。
広げて内容を確認する。
『・・・・・・(中略)・・・・・・上記のような理由で保管できなくなりました。お姉さまのお写真なので
捨てたり燃やしたり出来ず途方に暮れております。最早、会長におすがりするしかなく、同封の写真は
お任せいたしますので如何様にも処分していただいて結構ですので・・・・・・(以下略)』
「お姉さまの写真?」
紙封筒を覗いてみると10枚以上の写真が入っている。
封筒から取り出してみた。
出てきたのは、あのまりやのコレクション写真。
貴子は貪るように写真を見るのに熱中した。
登校してきた瑞穂は下駄箱のところで何かに熱中している貴子を見つけた。
「貴子さん」
「………」
「貴子さん?」
「………」
「お早うございます、貴子さん!」
「ひっ、ひゃい」
大きな声で呼びかけると、貴子が文字通り飛び上がって驚いた。
「貴子さん、一体何をそんなに・・・わっ!?」
振り向いた貴子は鼻血をポタポタ…ではなくドクドクと流していた。
「わわわっ!た、貴子さん!鼻血!鼻血!」
慌ててティッシュを使って、なんとか鼻血を抑える。
「貴子さん、一体何をしていたんですか?」
瑞穂が貴子の手にある写真らしきものに目をやると、貴子は慌ててそれを隠すようにカバンの中に突っ込んでしまった。
「ナ、ナンデモアリマセン」
「・・・・・・」
「お、お姉さま!ついに私にも…」
「えっ?」
「お、お歳暮…サンタから…います!…サンタ!」
「はい?」
Fin
お粗末さまでした。
それではおやすみなさ〜い。
592 :
名無しさん@初回限定:2007/12/13(木) 22:26:35 ID:9CQSuWkv0
GJ!楽しませてもらいました。
君枝さんの活躍が光ってますねw
いつもお疲れさまです。楽しく読ませてもらいました。
思えば、お嬢さま高校にとってはお歳暮でさえ
「躊躇なく瑞穂へ贈り物を贈って良いイベント」に様変わりする訳だな…
お姉さまがいつものようにラブレターをもらった。
ウツになりながらも、封を開ける。
中から出てきたのは爪と髪・・・
『もうすぐお歳暮の季節ですね。期待していてください』
お姉さまは這いずりながら圭さんの元へ除霊してもらいに行ったという。
>>591 GJです!
L鍋さんの作品では、久しぶりに幸せな由佳里ちゃんが読めて嬉しかったです。
ご希望に応えてくださり、本当にありがとうございました!
こんばんは。
次スレ立ててきます。
スレ立て乙なのですよ〜
うめ〜
───アタシの名前はシオン。不治の病を負った女子学生。良家の子女で威厳全開のエルダーガール♪
アタシがつるんでる友達は演劇部部長をやってるケイ、学校にナイショで
街に繰り出して化粧品とか買いあさってるマリヤ。訳あって男なのにこの女学校に通ってるミズホ。
友達がいるとやっぱり学校はタノシイ。今日もマリヤとちょっとしたことで話が盛り上がった。
女のコ同士だとこんなこともあるからストレス解消できるよね☆そんな時アタシはミズホとふたりで夜通し語らいたいと思う。
がんばった自分へのご褒美ってやつ?将来からの逃避とも言うかな!
「あーカワイイ」・・。そんなことをつぶやきながらしつこい後輩たちを軽くあしらう。
「お姉様がた、あ、あの、あの・・・す、すみませんでした!」どいつもこいつも同じようなセリフしか言わない。
後輩の子たちはカワイイけどなんか薄っぺらくてキライだ。もっと等身大のアタシを見て欲しい。
「シオンさん・・・」・・・またか、とセレブなアタシは思った。シカトするつもりだったけど、
チラっと言葉を言ったミズホさんを見た。
「・・!!」
・・・チガウ・・・今までのミズホさんとはなにかが決定的に違う。スピリチュアルな感覚がアタシのカラダを
駆け巡った・・。「・・(カッコイイ・・!!・・これって運命・・?)」
症状はめまいだった。連れていかれてベッドに寝かされた。「ミズホさん、最後に・・・!」覚悟をきめた。
「ゴホッ!ガハッ!」アタシは死んだ。スイーツ(笑)
私、宮小路瑞穂は貞操を狙われています。
なぜ、誰に、命を狙われているのかはわかりません。
ただひとつ判る事は、第七十二代のエルダー選出と関係があると言う事です。
まりやと紫苑は犯人の一味。
他にもクラスメイトが4〜5人以上。
白い聖應女学園制服を所有。
どうしてこんなことになったのか、私にはわかりません。
これをあなたが読んだなら、その時私は犯され尽くしているでしょう。
・・・将来があるか、ないかの違いはあるでしょうが。
これを読んだあなた。真相を暴いてください。
それだけが 私の望みです。
宮小路瑞穂
, ' ´ ⌒V/'' 一_-、
/ / `ヽ,` 、
/ / / / i ヽヽ ヽ. \
/ i i ./ / .ハ i i i .i ヽ`、 ゙ 、
. l / i iイハi i i i iリi i i i ヽヽ i
l/ i i斗ェ士Iト;/ //__iリ i i ハ ',
l バ| 〈.{゚:::::i}゙ レノ/,ィメミト i i i.l.l i
l i ハ i.辷ソ " .{:::ソ〉i / .レ .| i
l i ハ ヽ::::: _ ' :::゙"/ / レノノi.l
l i i ト ヽ \ _ , イ イ ハノノ 埋めますよ
. l i i i 「`゙''ー゙r"T// i/ i i
l__i_, 斗‐へ ___ ィL/`ー- i_i iヽ
/ } } <´ ∧+.ト、`ヽ } } ヽi ヽ
/ } } _〉 :: :∧゙ヽ 〈 } i ヽ ヽ
/ V´ | , イ ハヽ、 ハ`' く '、ヽ
. / / ノイ/ .H ヽ ヽ,〉 ヽ ヽ \
〈 i ムr-i^'|ウレ イへi i .〉 \
. \ ト、:::::::::::::::::::i「o]i|::::::::::::::...ノ .人 ヽ
/ に_ >'i. `' -----┴┴-----イ < イ ヽ \
/< ̄7" i ハ |ハ こ イ i\\ \
. / V i iハ ,iハ .i i ヽヽ ヽ
/ ⌒ヽ〈 i i i .ト、 ii { ー イ iヽ ヽヽ ヽ
| V i i 〉ヽ、 | i i .i iヽ ヽ ヽ
.\ 「>、i/ \ ー ― イハ i i } i ヽ ヽヽ
/ /へ レ' 〉、_,, --、_ー / i i .i i i ヽ ヽヽ
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