オリックスバファローズバトルロワイアル第4章

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1代打名無し@実況は実況板で
前スレ
オリックスバファローズバトルロワイアル第3章
http://sports11.2ch.net/test/read.cgi/base/1176382428/

オリックスバファローズバトルロワイアル第2章
http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/base/1162281481/l50
オリックスバファローズバトルロワイアル
http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/base/1160222136/l50
2代打名無し@実況は実況板で:2008/02/21(木) 16:32:38 ID:i3tiV+9O0
3代打名無し@実況は実況板で:2008/02/21(木) 18:54:23 ID:gQucY/NaO
>>1
禿乙です
4代打名無し@実況は実況板で:2008/02/21(木) 19:11:38 ID:heBOS9zN0
>>1
乙です。
5代打名無し@実況は実況板で:2008/02/21(木) 21:38:35 ID:gqzVDpwSO
ほしゅしましゅ
6代打名無し@実況は実況板で:2008/02/22(金) 01:38:29 ID:sTxp/4BXO
いちおつです
7代打名無し@実況は実況板で:2008/02/22(金) 12:29:32 ID:g0bWIvi40
1乙です 保守
8代打名無し@実況は実況板で:2008/02/23(土) 04:27:01 ID:aIBPmAd3O
ほしゅ
9代打名無し@実況は実況板で:2008/02/23(土) 09:15:25 ID:3f5Uoglm0
hosyu
10代打名無し@実況は実況板で:2008/02/24(日) 03:33:11 ID:W27q7eVNO
ほつ
11代打名無し@実況は実況板で:2008/02/25(月) 09:22:56 ID:a6RerDUZO
しゅ
12代打名無し@実況は実況板で:2008/02/26(火) 22:57:56 ID:Y4qJ8pHP0
ほしゅ
13代打名無し@実況は実況板で:2008/02/28(木) 01:51:47 ID:UQxNsakEO
川越さん頑張れ保守
14代打名無し@実況は実況板で:2008/02/28(木) 23:12:55 ID:49pVJJOC0
職人さんまた風邪引いたりしてたら無理しないでね保守
15代打名無し@実況は実況板で:2008/03/01(土) 23:16:38 ID:4fIIvbJo0
wktkほしゅ☆
16代打名無し@実況は実況板で:2008/03/02(日) 20:57:47 ID:Eo8p5GrvO
投下待ちほしゅ
17代打名無し@実況は実況板で:2008/03/03(月) 18:57:26 ID:jT0UdVgsO
星野
18代打名無し@実況は実況板で:2008/03/05(水) 00:27:25 ID:ivwbqpnr0
ほしゅ
19代打名無し@実況は実況板で:2008/03/05(水) 23:51:09 ID:K3moBHPjO
日高
20代打名無し@実況は実況板で:2008/03/06(木) 11:07:25 ID:iyrM0q7CO
前田
21代打名無し@実況は実況板で:2008/03/06(木) 16:47:13 ID:gvn+kR5VO
横山
22代打名無し@実況は実況板で:2008/03/06(木) 20:25:27 ID:Z1duw8J60
どんどん書き込め
23 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/06(木) 21:09:55 ID:klbkd6dH0
いつも保守ありがとうございます。
お察しの通り、風邪&仕事の疲労からほぼ復活しましたので、
今週末辺りより投下します。
お待ちくださっている方にはご迷惑をおかけして申し訳ありません。

ここ数日のクシャミと鼻水はきっと風邪の残りです。
決して花粉では……orz
24 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/06(木) 21:15:59 ID:klbkd6dH0
テンプレ、追加しておきます。

【現行スレ】

東京ヤクルトスワローズバトルロワイアル
ttp://sports11.2ch.net/test/read.cgi/base/1199071603/l50

阪神タイガースバトルロワイアル第十一章
ttp://sports11.2ch.net/test/read.cgi/base/1194950397/l50

2323バトルロワイヤルルール 2本目
ttp://sports11.2ch.net/test/read.cgi/base/1177781220/l50

プロ野球バトルロワイアル統合スレ
ttp://sports11.2ch.net/test/read.cgi/base/1201848028/l50


各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ11
ttp://sports11.2ch.net/test/read.cgi/base/1194538810/l50

野球バトルロワイアル総合雑談所5
ttp://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1199854720/l50
25 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/06(木) 21:19:00 ID:klbkd6dH0
【まとめサイト】

讀賣巨人軍バトルロワイアル
ttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/5499/

横浜ベイスターズバトルロワイアル
ttp://www003.upp.so-net.ne.jp/takonori/
ttp://doubleplay.hp.infoseek.co.jp/ybbr05/(2005年版保管庫)

広島東洋カープバトルロワイアル
ttp://brm64.s12.xrea.com/
ttp://www6.atwiki.jp/moriizou/ (2005年版保管庫)

中日ドラゴンズバトルロワイアル
ttp://dra-btr.hoops.jp/ (2001年版保管サイト)
ttp://dragons-br.hoops.ne.jp/ (2001年版・2002年版保管サイト)
ttp://mypage.naver.co.jp/drabr2/ (2002年版保管サイト)
ttp://cdbr2.at.infoseek.co.jp/ (中日ドラゴンズバトルロワイアル2 第三保管庫)
ttp://cdbr2004.hp.infoseek.co.jp/(中日ドラゴンズバトルロワイアル2004保管庫)

福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/fdh/
26 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/06(木) 21:25:31 ID:klbkd6dH0
阪神タイガースバトルロワイアル
ttp://kobe.cool.ne.jp/htbr/
ttp://homepage2.nifty.com/sorasouyo/(旧虎バト保管庫・若虎BR紅白戦進行中

千葉マリーンズ・バトルロワイアル
ttp://www.age.cx/~marines/cmbr/

ソフトバンクホークスバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/

ヤクルトスワローズバトルロワイアル
ttp://f56.aaa.livedoor.jp/~swbr/

プロ野球12球団オールスターバトルロワイヤル
ttp://www.geocities.jp/allstar12br/

アテネ五輪日本代表バトルロワイアル
ttp://athensbr.fc2web.com/

鷲バト
ttp://www.geocities.jp/trgebr/

ビリオネア・バトルロワイヤル
ttp://tokyo.cool.ne.jp/birioneabr/index.html

公バト
ttp://fsbr.no.land.to/
27代打名無し@実況は実況板で:2008/03/07(金) 22:18:27 ID:ZQ6b0v5tO
職人さんいつも乙です
健康第一ですよ、無理はなさらず

私はアレルギー性鼻炎なもんで、
ありとあらゆる花粉や埃や黄砂やらで
この時期は悲惨ですorz
28「191・走れ!白旗組 1/4」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:27:54 ID:bVx35VHt0
(あれ?)
奇妙な音が聞こえたような気がして、高木は足を止めた。高木が立ち止まったことで、続いて
後ろを歩いている光原たちも足を止める。ドン、と光原の背中に下山がぶつかった。
「す、すまんすまん、突然止まるから」
何かを誤魔化すかのように下山が笑いながら詫びた。まるで居眠りから覚めたような表情だ。
「高木、どうした?」
光原が声をかける。
「ミツさん、なんか変な音聞こえませんか?」
「音?」
「ええ、なんか……低い音。機械みたいな」
「機械?」
光原が耳を澄ます。確かにこのうららかな風景には似合わないような音が聞こえた。
「ホントだ。シモさんも聞こえますよね?」
下山が近くにあった木に寄りかかる。そのまま目を閉じた。
「……うん、なんか聞こえるな………車っぽいか?」
「そうだ、車の音みたいな……誰か乗ってるのかな」
「ひょっとして、誰かが車を見つけてみんなを回収してくれてるんじゃ……?」
「車があったらかなり楽になりますよ!」
「だったらラッキー!高木!白旗!」
下山が高木に指示を出す。高木は握っている銃をベルトに挟み、両手で白旗を高く掲げ、揺ら
した。振ったのではなく軽く揺らす程度だったのは、まだ心のどこかに疑問があったからだ。
(味方とは限らない。やっぱりすぐに銃が握れるように……)
まだベルトに手を伸ばす。銃を片手に持ったまま、白旗を握った。安定感は悪かったが、この
方法がベストだと考えた。
少しずつ、バイクの排気音が近くなってくる。着実にこちらに近づいてきている。まるでここ
をピンポイントで狙っているかのように。
「ほら高木!もっとしっかり振れよ!」
微かに見えた希望に喜びを隠せない下山が高木と一緒に旗を持ち、左右に大きく揺らした。下
山の左肩が目に入る。肩に巻かれたタオルにぽつんと赤い斑点があった。下山が旗を揺らすと
またひとつ、小さな赤い水玉模様が浮かんだ。
29「191・走れ!白旗組 2/4」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:28:41 ID:bVx35VHt0
「……シモさん、肩……」
高木が小声で呟く。下山は口だけの動きで「内緒」と告げた。下山は痛みを堪えて、それでも
笑顔で頑張っているのだ。その心意気を理解し、高木も一緒に旗を振った。
車の排気音がますます大きくなる。確かにこちらへと向かって来ている。
「ペーさん、もう少しですからね!もう少しで車に乗れますから!」
下山が声をかけると、光原に寄りかかった状態のまま北川が小さくうなずく。意識はまだしっ
かりしているようだ。ただ、体に力が入らないだけ。怪我で弱った体には、オーナーのいうウ
ィルスとやらが影響しやすいのかもしれない。ウィルスはまだ島の南側に留まっているとは言
っていたが、少しずつこちらに流れてきていてもおかしくはないのだ。
(早くペーさんに解毒剤とやらを飲ませられたらいいのに……)
だが1個でその役割を果たすのは青のカプセルのみ。今ここで青を持っているのは光原しかい
ない。まだカプセルを外していい合図は無い。外したら、光原の首輪が爆発する。
ガサガサと木々を打つ音が聞こえてきた。車は着実にこちらに近づいて来ている。荒々しい音。
それらが少しだけ光原を怯えさせた。
(本当に味方だといいけど……)
キィーッと車のブレーキの音。バン、とドアの閉まる音。誰かの足音。それは複数だった。葉
を避け、ぶつかる小枝をしならせてこちらへと歩いてくる。
(誰だ?!)
高木は白旗を握る右手に力を込めた。と同時に左手を自由にし、銃を手にした。握った銃はい
つでも動かせるようにし、前方へと銃口を向けた。
ガサリ。
緑の葉を分けて現れたのは、巨漢の外人3人だった。
「ガ、ガルシア!ブランボーにグラボースキーも!」
思わず下山が声を出す。彼らの首を見た。首輪は無い。つまり、彼らは自由行動が出来るのだ。
ひょっとしたら、彼らは自分たちを助けに来てくれたのかもしれない。
喜びに満ちた下山とは正反対に、外人3人は冷静な目で彼らを見回した。ガルシアが下山と北
川を交互に見返す。下山の横にいる高木の右手が目に留まった。銃がある。
「北川カ下山ヲ貰ウ」
静かな口調、片言の日本語、下山たちは言われている意味を理解するのに時間がかかった。
「………北川」
30「191・走れ!白旗組 3/4」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:29:24 ID:bVx35VHt0
ガルシアが呟くと、彼らは一斉に光原に支えられた北川へと襲いかかった。
「な……ええっ?!や、やめ、やめて下さい!」
慌てて光原が抵抗するが、その細い体では巨漢3人に抗えるはずもなく、簡単に地面へと転が
された。北川も驚いて抵抗をするが、体力の落ちた体では充分な力が出ない。ただ手足をもが
かせるだけだった。
「ペーさんに何するんだ!」
下山が駆け寄ろうとする。途端にガルシアの右手に握られた銃が下山を狙った。下山の動きが
止まる。
「ペーさんを離せ!」
今度は光原がグラボースキーに飛びつこうとする。突然ガルシアの右手から銃声が鳴った。ビ
クンと光原の動きが止まる。光原の頬に、ゆっくりと一筋の赤いラインが生まれた。驚きのあ
まり、腰の力の抜けた光原がその場にヘナヘナとしゃがみこむ。
「てめえっ!」
高木が思わずガルシアに向かって駆け出そうとする。
「ストップ!」
突然の北川の声に、全員の声が止まった。
「……俺が行く。これで解決や」
半ばブランボーとグラボースキーに抱え上げられた北川が告げた。
「だ、駄目です!ペーさん!」
泣きそうになりながら光原が叫ぶ。再びガルシアの銃口が光原を狙う。慌てて高木が光原に駆
け寄ろうとしたが、今度は高木に銃口が向けられた。カラン、という音がして、白旗が地面に
倒れた。
「お前らは前へ進め。シモの具合が悪そうや。なんとか支えたって、進め」
「駄目です!」
「ええから行けっ!俺のことは構うな!」
「ペーさん!!」
「GO」
ブランボーの声と共に、北川を抱えた3人が再び木々の間へと消えて行く。高木が後を追おう
としたが、後ろを向いた体勢のグラボースキーが銃で彼らを警戒していた。高木の目の前で北
川がジープに押し込まれる。ジープが高木に砂をかけるようにしてターンをし、走り去った。
31「191・走れ!白旗組 4/4」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:30:19 ID:bVx35VHt0
砂煙りに思わず目を覆う。これでは追うことも出来ない。
「た、高木!」
腰の抜けた光原を支えた下山が歩み寄る。
「大丈夫か?!」
「俺は大丈夫です。ミツさんは?」
「だ、大丈夫。ちょっと驚いただけだから」
言いながら右手の甲で頬を拭う。甲を見て血が出ているのを知り、またビックリしたようだっ
たがそれを慌てて取り繕った。
「だ、大丈夫。大丈夫。シモさんは?」
「俺は平気だって。とにかくペーさんを……」
言いながら、下山は数メートル先に1枚の紙が落ちていることに気づいた。歩み寄り、それを
手にする。
それは手書きの地図だった。彼らの手元にある地図をもっと拡大したような地図。漠然として
はいるが、一箇所に大きな丸が記されていた。
『Cafe Bs』。その丸印に←が書かれており『here! Kitagawa or shimoyama  Come to help
before he is killed.』との文が添えられていた。
『killed』
その文字が彼らの背筋を冷たくした。
「……ペ、ペーさんが殺されちゃう……!」
「追うぞ!この地図見ながら追うんだ!タイヤの跡も見逃すな!」
「は、はい!」
「で、でもこの地図、誰が……」
「あの外人連中のうち、誰かにはまだ良心が残ってたんだろ!急ぐぞ!」
下山の掛け声に彼らは駆け出した。だが光原が一端立ち止まり、慌てて元いた場所へと駆け戻
る。そして地面に転がっていた白旗を握ると、再び2人に追いつこうと走り出した。

【残り・17人?】
32「192・あの人と野球を 1/5」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:31:17 ID:bVx35VHt0
デイビーの運転するジープが一件の小屋の前で停止する。再びガルシアとグラボースキーに抱
えられるようにして北川は車から降ろされ、その家の中へと連れ込まれた。
コーヒーの香りのする室内を見回す。蒼褪めた顔の相川がいた。北川と目が合い、慌てて目を
逸らす。その表情は申し訳なさそうな、今にも泣き出しそうなものだった。
そのまま奥の部屋へと放り込まれた。バタンと扉が閉められる。この部屋に入ったのは北川だ
けのようだ。自分の鞄は光原が持ってくれていた。何一つ持たない状態で、この部屋へと残さ
れた。
「こんばんは」
どうやらこの部屋には北川だけではなかったらしい。声に導かれて顔を上げる。
「お久し振りですね。レギュラー選手の北川さん」
「………田中」
「この部屋の案内文、読みました?」
楽しげな口調の問いかけに、北川は首を横に振る。
「でしょうね。多分ものすごい勢いで連れてこられたんでしょうから。ここ、決闘部屋なんで
すよ」
「……ええ匂いのする場所やと思ったら、その奥は決闘か」
「血の臭いのする決闘現場ですよ」
「こんな怪我人と決闘か」
「怪我人だから呼んだんですよ」
邪悪な笑み。北川は力の入らない体に必死で支えながら膝立ちになった。鈴木に刺された左足
が痛む。それでも田中を見上げた。無邪気そうな童顔がこれほど歪んでいるとは思わなかった。
「ここでどっちかが死ぬまで戦うんです。どっちかが死なないと、外に出るドアは開きません」
北川は横目でドアを見た。恐らくこちらから開けることは出来ないようになっているのだろう。
「大丈夫。あなたは人柄というか、顔で得してますよね。なんか憎めない」
「せやったら決闘なんてやめろ」
「駄目です。生き残るのは1人ですから。オーナーもそう言ったでしょう?」
どこか夢を見ているような口調で語る。恐らく田中は正気ではないのだと北川は思った。じっ
と田中を見据える。
「残酷な殺し方はしたくないって思わせちゃうのが北川さんのすごいところかな」
田中は右手に握っているヌンチャクをチラリと見た。
33「192・あの人と野球を 2/5」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:32:07 ID:bVx35VHt0
「でもたいした武器もないんで、じわじわ殺してあげます」
「やめるんや!こんなことしても何の解決にもならへんぞ!」
初めて北川が大声を上げた。それでも田中は笑っていた。
「解決になりますよ。俺1人が生き残ればいい。行きますっ!」
勢いよく北川の体に飛びつく。受け留めることが出来ずに北川の体が仰け反るようにして不自
然に倒れこんだ。
(戦わん、俺は戦わん、嶋村と約束した……言葉で言うたらきっと……わかってもらえる……)
もうひとつの考えが北川にはあった。自分がここで田中を引きつけておけば、下山たちを少し
でも遠くへと進ませることが出来る。外人たちがまたここを出発したとしても、往復する時間
の間に彼らの足ならきっと身を隠せる場所へと逃げ延びてくれるだろう。時間を稼ぎたかった。
大きな抵抗もしないが巧みに田中の攻撃をかわす北川に業を煮やしたのか、田中が北川の襟首
を掴み、勢いよく壁へと叩きつけた。体勢を崩した北川の足が奇妙な方向へと曲がると。と同
時にあまりの痛みに田中を突き放した。今度は田中が床へと転がった。北川は立ち上がろうと
したが、足に力が入らなかった。
「畜生!レギュラークラスがなんだってんだ!」
腕力で簡単に負けた田中が怒りの形相で立ち上がり、後ろのズボンのポケットへと手を回した。


「シモさん!掴まって下さい!」」
「大丈夫だ!」
「んなこと言ってもバレバレです!」
徐々にスピードが落ち始めた下山の右腕を光原が無理矢理掴み、自分の肩にかけた。
「俺、先に行きます!」
「高木!」
答えを聞かないまま高木が走るスピードを上げた。左手に銃を握り、タイヤの跡を辿って走り
続ける。もうそれほど遠くはないはずだ。スポーツ選手の足で走り続けた。それなりの距離を
進んでいてもおかしくはない。
(ペーさん!)
あの時、高木が銃を持って下山のそばにいたから、外人勢の狙いが北川へと移ったのに違いな
い。どちらかを連れて行くと言った。選ばれたのは北川だった。
34「192・あの人と野球を 3/5」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:32:56 ID:bVx35VHt0
(俺がちゃんとペーさんの方もフォロー出来ていれば……!)
後悔の念に駆られる。自分はここまで何をしてきたのだろう。誰かの役に立てたのだろうか。
山口とはぐれ、死なせた。エレベーターで金子らしき死体を見た。高木の指先が阿部健太を殺
した。そして今、北川の命が危ない。
(俺は………俺は………っ!!)
無我夢中で走り続ける。
(俺はここまで何も出来ていない。ここでペーさんまで死なせたら……俺は……!)
北川は近鉄時代からの恩人だ。マウンド上で高木が不安を感じると、すぐに歩み寄ってくれた。
あの笑顔で高木の背中を叩いた。いまでもその時の言葉を思い出せる。
(急げ……!)
途中、タイヤの跡が薄れた場所があった。迷わず周囲を走り回り、すぐに続きを見つけた。小
石を拾って地面に『←こっち』と下山たちにもわかるように記録を残し、また走りだす。
しばらく走り続けると、下り坂になった。体勢を気にしながらも走る。そしてタイヤの先に一
件の小屋を見つけた。見覚えのある小屋。タイヤの跡は一度そこで止まり、また走り出したこ
とを示していた。
「ここの………決闘部屋か?!」
事態を飲み込み、勢いよく中へと飛び込む。コーヒーの香りが一斉に高木を包み込んだ。
「高木さん?!」
相川がカウンターから飛び出してくる。
「決闘部屋はどこですか!」
「お、奥だけど」
「どいて下さいっ!」
駆け寄る相川を突き飛ばす。慌ててデイビーが相川の元へ走り寄った。理解出来ない英語や謎
の言葉が高木の背中にかけられる。背後の騒ぎをものともせず高木は一番奥にあるドアへと真
っ直ぐに走った。外から下ろされている鍵を外し、ドアを開けた。
「えっ?!」
ドアの目の前に『64 TANAKA』と書かれた背中があった。
「どけえっ!」
力一杯その背中を突き飛ばす。不意を突かれて田中は首をしならせて目の前の床へと倒れた。
「ペーさん!!」
35「192・あの人と野球を 4/5」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:33:45 ID:bVx35VHt0
叫びながら駆け寄る。北川はすぐそばの壁の下にうずくまるようにして倒れていた。頭部から
おびただしい量の血が流れており、顔の左側を幾筋もの血が伝っていた。右側の頬にも青痣と
出血。容赦のない打撃を受けたことが明らかだった。
そして、北川の体の下には血だまりがあった。見るとその腹部も血に染まっている。床には先
の鋭く尖った太い枝が血に濡れて落ちていた。
ようやく田中が身を起こす。途端に高木は両手で銃を握った。その銃に怯えたのか田中はすぐ
さまドアの外へと飛び出していった。
「ペーさん!しっかりして下さい!すぐ手当てしますから!」
その叫び声が聞こえたのか、相川が決闘部屋の中へと飛び込んでくる。
「相川さん!手当てを!」
「て、手当てって……大したものも無いし……」
「包帯とか!」
相川はキュッと唇を噛み締めると、拳を握った。
「………この部屋に入った人を、俺たちが手当てしちゃいけないんだ」
つらそうな表情で俯く。
「それが、俺たちに与えられたルールなんだ」
「じゃあ……じゃあ包帯はどこですか!応急処置セットとかあるでしょう?!俺が取りに行き
ますから!」
「駄目だ!」
救急道具の置いてある部屋には岸田がいる。高木を行かせる訳にはいかなかった。
「畜生!!」
高木が吐き捨てるように叫ぶ。そして北川の体を抱き上げようとしたが、一人では無理だった。
「ペーさん!しっかりして下さい!すぐにシモさんたちが来ます!それまで待って下さい!」
「………あぁ………」
「ペーさん!」
微かな返事と、ゆっくりと目を開ける様子に思わず声が出た。
「………耳元で……大声…………」
「あ、す、すみません」
北川が左目を開けづらそうにしている。血が入りそうだと気づき、高木は慌てて自分の鞄から
タオルを取り出し、北川の顔を拭った。少しだけ、北川が安心したような顔になる。
36「192・あの人と野球を 5/5」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:34:57 ID:bVx35VHt0
「相川さん、タオル濡らして来て下さい。それくらいはいいでしょう?」
「あ、ああ」
高木からタオルを受け取り、相川が部屋を出る。と同時に入り口のドアの開く音がした。
「ペーさん!」
「高木は?!」
下山と光原の声が聞こえた。
「こっちです!ペーさんが!!」
声に導かれ、2人が部屋に突入してくる。そして2人同時に足を止めた。
「ペ、ぺーさん!!」
2人同時にしゃがみこむ。そんな2人を見て、北川は楽しそうに笑った。
「………ええか……みんなで協力するんや……きっと……助かる道はある………」
「何言ってんですか!」
「そうですよ!ペーさんも一緒に頑張るんですよ!」
「………ガルシアたちを責めるな………きっとあいつらも……脅されて…………」
笑顔を絶やすことなく、北川が途切れ途切れに語り続ける。
光原の唇が震えていた。目にいっぱいの涙を溜めて、震えていた。
「………信じるんや……諦めるな………絶望したら……負けや…………」
フッと北川が天井を仰ぐ。
「…………お前との約束………守れたかな……嶋村…………」
穏やかな瞳。その目は遠くにいる誰かを見つめている。
下山が北川の手を握った。続いて高木と光原もすがりつくようにして北川の手を掴んだ。まる
でその魂を引き留めるように。その心にすがるように。
「…………天国で………仰木さんと………野球してくるわ…………」

【×北川博敏 残り・16人?】
37 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/08(土) 23:35:50 ID:bVx35VHt0
今回は以上です。
38代打名無し@実況は実況板で:2008/03/09(日) 00:15:09 ID:fZf391pGO
乙です!
ニ…ニコおおおおおおおおおおお。・゚・(ノД`)・゚・。
39代打名無し@実況は実況板で:2008/03/09(日) 00:17:35 ID:bVXF6yzU0
早速投下乙です
白旗組に厳しい道が続くなと思ってたら、北川。・゚・(ノД`)・゚・。
仰木さんと一輝があたたかく迎えてくれるよ…

野暮な話ですが、>>34中段の「高木さん?!」→こちらも相川が年上では?
40代打名無し@実況は実況板で:2008/03/09(日) 08:20:22 ID:RbE4Ilba0
乙です!

みんな必死すぎて泣けてくる
41 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/09(日) 20:38:39 ID:+LHN1AVQ0
>>39
あああああああああ、またやらかしました……すみません。
本当に相川のお顔立ちは(ry
42代打名無し@実況は実況板で:2008/03/09(日) 23:00:55 ID:wr0VlD9T0
相川ww

職人さん乙です。
きたがわああああ
まだまだ大丈夫だと思ってた人たちが次々に…・゚・(ノД`)・゚・。
43代打名無し@実況は実況板で:2008/03/10(月) 19:33:10 ID:OToVG5bYO
職人様乙です。
残り16人?か…ずいぶん減ったな…
44代打名無し@実況は実況板で:2008/03/12(水) 09:46:58 ID:nBsJ26HJO
保守
45代打名無し@実況は実況板で:2008/03/13(木) 07:53:22 ID:KiekGiMqO
46代打名無し@実況は実況板で:2008/03/14(金) 23:45:18 ID:EVh7+Rgn0
保守
47代打名無し@実況は実況板で:2008/03/15(土) 22:06:50 ID:eUvoij2OO
48代打名無し@実況は実況板で:2008/03/16(日) 23:38:04 ID:nOaXczJ0O
49代打名無し@実況は実況板で:2008/03/17(月) 21:50:01 ID:2B6xMZq8O

50代打名無し@実況は実況板で:2008/03/18(火) 18:37:00 ID:SKSw7zIPO
51代打名無し@実況は実況板で:2008/03/21(金) 00:57:59 ID:PXMBjTZx0
つ☆
52代打名無し@実況は実況板で:2008/03/22(土) 03:12:52 ID:tK6tHGyS0
続きwktk捕手
53代打名無し@実況は実況板で:2008/03/22(土) 09:25:41 ID:SCoenw8Y0
バトルロイヤル
54代打名無し@実況は実況板で:2008/03/22(土) 09:38:21 ID:uhAz4B3v0
<お知らせ>

    ,、                            ,,r‐---、,_ .,
    .|`゙'ー、,、                        ,/゜    ,/”,メ-,,、
    l゙   `'''ー、,,,                _,,,,,,―ー'''",,,-┤ .,/ .│  │
    `''ーi、    │广''ー、  __,,,,,-‐'''゙二r‐-x、  .l゙  l ,i´ 丿   |
      |  .广''''","   ゙l-ーl" .│ ,/゜_,,,,、 │ l゙  | ,/ /′  ,i´
.,,,,,,,,,,,,,,,,,,|  ,ド''゙゙゙`l゙ .,、 ││ │ ,/` ,r'"  ゙l  │ l゙  l,i´ .,/   ,,i´
     │ l゙   .l゙ .l゙|  .|.l゙  l゙ /` .,/   ,!  .l゙ ,l゙  ″ /`  .,,i´
     .l゙ .l゙   ,l゙ / ゙l  .″ / .l゙  l゙   ./  ,l゙ ,i´ .,、 │ .,,r″
     l゙  |   .|  |  |   ,i´ |  ゙l_ ,,/ ,ん┤ /゙l  .T"`
    .|  l゙   l゙ .l゙  │  /  \,、 `^ ._,/` │ .│ |  |
    l゙ .|   .|  l   .―''″._,,,,--'““''~`   .(,,,,_l゙  ゙l  .|
    │ .l゙   ←″ _,,,,―¬"゛           `  !,,、.|
   ,,,|,,-←―''''" ̄^                     ゙゙''"

HTNスレには上記のTNOKマークをテンプレに張ることが義務付けられています。
TNOKマークの無いスレを立てた場合、8点の減点または免許の剥奪となります。
55代打名無し@実況は実況板で:2008/03/23(日) 00:12:16 ID:nDqBlYa10
56「193・ボクニデキルコト 1/2」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/23(日) 00:13:20 ID:nDqBlYa10
「うわあああああああああっ!!!」
絶叫が聞こえた。いつもは野次将軍としてベンチで叫ぶ元気者の下山が、北川の体の上に突っ
伏して号泣した。
つられるようにして光原が肩でしゃくり上げながら、嗚咽を漏らす。
高木もこみ上げてくる涙を堪えることが出来ず、北川のユニフォームを握り締め、体を震わせ
ながら泣いていた。
相川はそれを見ていることしか出来なかった。
自分は何をしているのだろう。
何かをしたら殺される。だから何も出来ない。
だが出来ないなりに何か出来るはずだ。それは一体何なのか。
意味の通じない言葉を自分の中で何度も繰り返す。これまでも繰り返してきた。
「ペーさん………ペーさん……っ!!」
下山が何度もその名を呼ぶ。
「返事して下さい!……ぺーさん!」
しゃくり上げる声が途切れ途切れになる。
「どうすりゃいいんですか!………俺ら、どうすりゃいいんですか!!」
(俺だって泣き叫びたいよ)
心の中で呟く。相川は黙ったまま、その光景を見つめていた。
ポンと肩に手が置かれる。振り返るとデイビーがそこにいた。慰めるように、小さくうなずく。
デイビーの目にも涙が溜まっていた。2人して鼻をすすりながら、決闘部屋から眼を背けた。
(もう………こんなのは嫌だ………!)
相川の中で限界が近づいている。もともとこんな状況に放り込まれて冷静でいられる方がおか
しいのだ。だから田中は狂ったのだ。自ら喜んで狂ったのだ。そして平野佳寿も。
(他にヤバい人って誰がいるんだろう)
カウンターの下に置かれた小さなパネルで地図を見る。16個の数字が島の中に散らばっている。
いや、散らばっているというよりも不思議とこの『Cafe Bs』近くにいる者が多いようだ。
(中立地帯って噂が伝わってるのかな……)
ここまで日にちは進んだが、今だに一匹狼を貫く者もいる。よく孤独に耐えられたものだ。相
川だったらきっと不安に押し潰されてしまうだろう。
57「193・ボクニデキルコト 2/2」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/23(日) 00:14:10 ID:nDqBlYa10
順番に、パネル上の赤い数字は消えていった。相川が見ていたその瞬間に消えた数字もあった。
ショックだった。たったひとつのランプが消えただけのこと。それが命の消滅を意味している。
それをオーナーは楽しげに見つめている。消えていくことを期待して、パネルを見つめている。
(選手は商品だから)
商品に意志はいらない。性格も、精神も、個性も、夢も、希望も。
(夢のプロ野球、憧れのプロ野球選手)
おかしい。絶対におかしい。ここで立ち上がらなければ男ではない。
(………俺………)
立ち上がりたいと思う。以前デイビーに語った気持ちは本物だ。
ほんの少しの勇気が欲しい。
ほんの少しの自信。
ほんの少しの確信。
「………相川さん」
背後から声をかけられ、驚いて飛び上がる。振り返るとそこには目を真っ赤にし、流れ続ける
涙を隠そうとしない光原がいた。
「お願いが………あります」
「な、なんだ?」
「ペーさんの体を………どこかに寝かせておいてあげたいんです………その……奥の部屋にで
も………」
「………ああ」
(奥の部屋には筧も迎も村松さんも中村ノリさんもいるから。きっと寂しくはないよ)
相川は決闘部屋へと目をやった。泣き崩れた下山は、まだ北川の体にしがみついたまま身を起
こそうとはしない。その横で高木も正座をしたまま俯いて、膝の上で拳を握っている。
「………1時間、気をつけろよ」
相川に言えることはそれが精一杯だった。

【残り・16人?】
58「194・ひとときの再会 1/4」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/23(日) 00:15:33 ID:nDqBlYa10
打ち寄せる静かな波の音を聞きながら、後藤は歩いていた。
なかなか上に上がる道が見つからない。だが、所々にゴミ箱が見つかり始めた。人が定期的に
遊びに来る場所だったのだろう。ならばこの崖の上に上がる道があるはずだ。もう少し、もう
少し歩けばきっと道が見つかる。そう信じて北の方向へと歩いていた。
黙々と歩くのもつまらないので、独り言のように歌を口の中で呟きながら歩いた。
「………あーあーオリックス……バファローズ………」
元気な球団の歌も、呟くように歌うとどこか寂しい。この曲はカラオケで元気に歌いたいもの
だ。しかも選手が登場するタイプのものなら、自分が沢山映っている。
「光りー輝く明日―に向かえー」
歌っているというよりも、どこか棒読みな感が否めない。この状況では仕方のないことか。仲
間が聞き取ってくれたらいい展開だ。だが敵に聞かれてしまったら一巻の終わり。
(命がけで歌を呟くなんて、生まれて初めてだな)
最初は気になっていた右足首の違和感も感じなくなっている。心配したほどの怪我ではなかっ
たようだ。少々歩きづらいので巻いているタオルを取ろうかとも思ったが、まだ残しておくこ
とにした。用心するに越したことはない。もう少し様子を見てみよう。
「あーあー、オリックス・バファローズ」
また呟きながら歩く。
「君はー行けるだろうー」
「ゴッツさん?!」
突然頭上から降ってきた声に顔を上げた。崖の上から小さな顔が覗き込んでいる。
「恵一か?!」
「やっぱり間抜けた歌はゴッツさんですか!」
「間抜けとはなんだ間抜けとは!」
「ゴッツさん何してるんですか」
再会した平野恵一の素朴な質問に、後藤は前方を指差しながら答えた。
「崖から落ちたんだ。正確には落とされた。だから上がる道を探して歩いてる」
「誰に落とされたんです?」
「………平野」
「俺じゃないっすよ」
「馬鹿。もう1人の平野だよ。佳寿の方」
59「194・ひとときの再会 2/4」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/23(日) 00:16:29 ID:nDqBlYa10
遠目に見える平野恵一の表情が、あからさまに不安そうになった。
「あいつ………やる気なんですか」
「ああ………早川さんがヤバイ。一緒に襲われたんだ」
「………え?」
平野がキョトンとした顔をする。じっと後藤の顔を見つめている。後藤は続けた。
「恵一、早川さんに会ってないか?それから佳寿。あいつは腹黒だぞ。危なすぎる。なんとか
して説得しないと………」
「ゴッツさん」
どこか寂しそうな声で平野が呟く。
「今まで何してました?ひょっとして、放送聞いてませんか?」
「あ、えっと、崖から落ちて気を失ってたんだ。さっきの朝の放送はぼんやり聞いたけど、ト
ラップタイムのカプセルの話辺りから意識がしっかりし始めたんで、その前のことはちゃんと
聞けてないんだ。だから禁止エリアのこととか教えてもらえないか、メモするから」
「…………わかりました。まず、禁止エリアから」
平野が順番に立ち入り禁止となったエリアを読み上げる。後藤はそれらを急いで地図に書き込
んで行く。自分がこれから行こうとしている方向に禁止エリアを見つけ、背筋に冷たいものが
走った。歩くことに夢中で無用心になっている自分に気づいた。敵に出会うことばかりを気に
して、禁止エリアのことを失念していた。
「じゃあ……次は、アウトになった人です。どこまでメモしてあります?」
やはり平野の口調は重い。後藤は地図を裏返して選手一覧を見た。
「村松さんまで」
「じゃあその後から……」
淡々と、平野はチームメイトたちの名前を読み上げ始めた。
「大久保さん、吉井さん、的山さん…………早川さん」
平野の声はまだ続いていた。けれど、後藤の耳はその後を聞き取ることが出来なかった。
(早川……さん………)
暗闇の中で見た光景。日本刀が月の光に一瞬きらめき、早川の体から何かが噴き出した。崩れ
落ちようとするその体。そして平野佳寿が振り返る。その形相は影になっていて見えなかった
が、後藤を震撼させるには充分なものだった。きびすを返して逃げ出し、崖から落ちた。
60「194・ひとときの再会 3/4」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/23(日) 00:17:58 ID:nDqBlYa10
(…………ダメだったのか…………早川さん…………)
崖から落ちたお陰で自分は助かった。なんという皮肉だろう。
「ゴッツさん……聞いてますか?」
平野の声に我に返った。
「あ、ああ」
「いいですか、もう一度言いますよ」
今度こそ、平野の読み上げる名前を書きとめた。涙は出なかった。泣いている暇があるなら、
自分たち生き残った者が脱出できる道を探さなければ。そう思った。きっと無念の思いを抱い
て死んでいった仲間たちなら、そう言ってくれるだろう。
『俺たちの死を無駄にするな』
早川ならきっとそう言うだろう。
同じ意志を持つ誰かが、きっと道を作ってくれる。そう信じてくれるだろう。
だから後藤は泣かなかった。泣きそうになったがグッと唇を噛み締めて、目に力を入れて、
こみ上げてくる全てを堪えた。
「ゴッツさん、出来れば合流したいですよね」
崖の上から平野が言う。後藤も同じ気持ちだ。
「ああ、もう少し先に行けば上に上がる道があると思うんだ」
「先って、北の方?」
「ああ、恵一は?」
「俺は南に行きたいんです。南の小島にある研究所、そこに行くんです」
「そう言えばそんなこと前も言ってたな」
2人の選んだ方角は逆。
「ゴッツさん、俺、ちょっと体力が落ちてて歩く速度が遅くなってるんです。合流できませ
んかね?」
「俺、阿部ちゃんを探すんだけど」
「………とりあえず、合流しませんか?1人だとやっぱり心細いし。合流してから、改めて方
向を決めませんか?」
後藤は目をこらして平野の表情を見た。そしてその口調から平野の疲労を感じ取っていた。滅
多に自分の感情を話さない秘密主義の平野が、素直に体調の悪化を告げている。それだけ大変
な状態なのだということが伝わった。実際喋り方も、普段より息継ぎが多く感じられる。
61「194・ひとときの再会 4/4」 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/23(日) 00:19:10 ID:nDqBlYa10
「……わかった。じゃあ俺が急いで上に上がる道見つけるから、恵一はその辺で待っててくれ」
「はい、この辺で休んでます」
それぞれが笑顔になる。軽くサムアップをして合図を送った。
「あれ、お前ユウキと一緒じゃ……」
言いかけて止めた。さっき平野から聞いた死亡選手一覧の中にユウキの名前があったから。
平野は唇を噛み締め、悔しそうに呟いた。
「……はぐれたんです。俺、走って行くあいつを止められなかった」
「……そうか。じゃあ、今度こそ俺と一緒に行動だ」
「はい!」
「じゃあ、俺は急いで上に上がるからな!」
「はい!」
互いに手を振る。平野の顔が崖の向こうに消えた。
後藤は鞄を持ち直し、小銃を肩に構え直すと再び前を見た。
もう今までのような不安定な気持ちではない。仲間が出来た。その仲間に会う為に前へと進む。
そして、阿部真宏を見つけるのだ。先に平野と一緒に研究所へ行って、それから阿部を見つけ
る方法もある。研究所のある小島には、何かあるかもしれないのだ。ひょとしたら、外部との
連絡手段もあるかもしれない。そこまでの道のりで阿部と出会えたらそれこそ願ったりだ。
「よしっ!」
自分自身に掛け声をかけて、後藤は北へと歩き出した。

【残り・16人?】
62 ◆UKNMK1fJ2Y :2008/03/23(日) 00:19:54 ID:nDqBlYa10
今回は以上です。
63代打名無し@実況は実況板で:2008/03/23(日) 09:34:41 ID:AFi6Ih980
乙でしたー!!

アイカーせつない……
64代打名無し@実況は実況板で:2008/03/23(日) 23:25:31 ID:SjKvuNu9O
職人さん乙です

ゴッツが何とか行動開始か〜
65代打名無し@実況は実況板で:2008/03/25(火) 01:32:39 ID:2VU+wHkWO
ミラノガンガレ保守
66代打名無し@実況は実況板で:2008/03/25(火) 13:31:28 ID:fDo54dWY0
ゴッツガンガレ!!

本拠地開幕記念カキコ
67代打名無し@実況は実況板で:2008/03/27(木) 00:46:31 ID:jij1emjEO
68代打名無し@実況は実況板で:2008/03/28(金) 02:26:18 ID:IebqxOXZ0
保守がてら…

暗黒キャラがハマってる平野佳だけど
こないだ黒門市場で話しかけたら思いのほか人当たりいい感じで
そのギャップに何となく戸惑ってしまったw
69代打名無し@実況は実況板で:2008/03/28(金) 12:11:12 ID:hVntx7q8O
気を許すな!
おまいが背中を向けた途端にひょっとして…
70代打名無し@実況は実況板で:2008/03/30(日) 01:03:08 ID:KFVv9LONO
その後、>>68の姿を見たものはいなかった……
71代打名無し@実況は実況板で:2008/03/30(日) 17:16:34 ID:Ql/P8Z9u0
川越50勝☆捕手

ごっつおひさしぶりごっつ
早く合流できるといいね!
72代打名無し@実況は実況板で:2008/03/30(日) 23:59:56 ID:t1hQlF9n0
bs
73代打名無し@実況は実況板で:2008/04/01(火) 01:37:05 ID:iLVf63nZ0
頑張れ光原!
続きwktk捕手
74代打名無し@実況は実況板で:2008/04/02(水) 12:32:22 ID:6z6iuVQWO
75代打名無し@実況は実況板で:2008/04/02(水) 21:58:21 ID:1FpIef2f0
琉球村のマスコットってネッピーに似てないか
76代打名無し@実況は実況板で:2008/04/03(木) 23:38:44 ID:jjlIKW9F0
ほしゅ
77代打名無し@実況は実況板で:2008/04/04(金) 23:51:22 ID:R5I0w4Pj0
Bs
78代打名無し@実況は実況板で:2008/04/06(日) 00:24:37 ID:3314ZK+W0
ほしゅ
79代打名無し@実況は実況板で:2008/04/06(日) 23:41:58 ID:r+1MBqld0
hosyu
80代打名無し@実況は実況板で:2008/04/08(火) 01:07:23 ID:qNEmV1yYO
81代打名無し@実況は実況板で:2008/04/09(水) 12:10:04 ID:3FnGN4ryO
ほしゅ
82代打名無し@実況は実況板で:2008/04/10(木) 14:51:26 ID:nsgwATpfO
ほしゅ
83代打名無し@実況は実況板で:2008/04/10(木) 22:38:17 ID:W8vmp81a0
職人さん元気かな?保守
84代打名無し@実況は実況板で:2008/04/12(土) 00:13:56 ID:NQ4dIhbaO
続き気になるお
85代打名無し@実況は実況板で:2008/04/12(土) 00:14:07 ID:+RjbdMUO0
ほしゅ
86代打名無し@実況は実況板で