1 :
作者の都合により名無しです:
直径2m程の水槽に、左脳・右脳・中脳・小脳・延髄が、わずかばかり離解した状態で浮かんでいる。
水槽の周りにはそれに関連しているものか、コンピューター類が円形に並んでいる。
暗く、狭い部屋だった。水槽と各種コンピューターの他には複雑に絡み合ったコード類が走っている
だけだ。その暗い部屋に水槽の中を見つめる形でコンピューターに向かっている二つの人影が見える。
一人は白髪を左右に分け、ゴテゴテとした機械的な眼鏡をかけた男だ。その額には、上部の欠けた円
の様なマークが刻印されている。もう一人は、Kのマークの入ったサンバイザーをかぶった少年。この
少年も眼鏡をかけているが、こちらの眼鏡はシンプルなもので、耳にかけるテンプルの部分が紐ででき
ている。
「見たまえキテレツ君。ニューロンが再びファイアダンスを始めた」
白髪の男、ディスティ・ノヴァが助手の木手英一――ノヴァはキテレツと呼んでいる――に話しかける。
「すごい!すごいですよ教授!」
キテレツのはしゃぎっぷりを見て、ノヴァは満足そうに微笑んだ。よく見ると、その左手には焼きプリン
ののった皿が持たれており、右手にはデザート用の小さなスプーンが握られている。
「部位にもよるが、脳組織の総質量の40%が消失しても残りのニューロンのタンパク質構造が破壊され
ていなければ、ナノマシンのニューロ解析と私の持論『業子力学論』によるシナプス構造予測の組み合わ
せによってニューロマップモデルを再構築し……それを元にほぼ完全に生前のままの記憶・情動・知力
を持った脳を再構成することができる。すなわち、人間を死から蘇らせることができるのです」
ノヴァはキテレツに対して説明した。キテレツは「う〜ん」と漏らし、うなずいた。
「『業子力学論』。概念上の情報単位『業子〈カルマトロン〉』の動きで動的な現象を説明する。ノヴァ教授
の提唱する情報理論ですよね」
ノヴァ教授はプルプル震える焼きプリンにスプーンを挿し、一欠けらすくうと口の中にかきこんだ。
「おいちい!」
ノヴァはもう一欠けら、プリンを口に運んだ。
「うん!私は焼きプリンが大好物でしてね。これを食べると思考が冴え渡る!」
「ところで教授、この脳、一体何者なんです?」
「キテレツ君、君の作った新・回古鏡で彼の戦いぶりを拝見させていただきました。彼はですね……」
ノヴァはキテレツに向き直った。
「地上最弱の戦士です」
「名前はスペランカー君。大学時代には考古学を専攻し、遺跡探索をしていました。その後はファミコン
ウォーズに志願し、ベトナムで戦死します。あの地上最強の生物『オーガ』と戦闘してね」
「地上最弱の戦士?」
キテレツは誰に訊くともなく言った。
――そんな人間を生き返らせて、どうしようっていうんだろう?
「次のフェイズへ進みますよ。脳の再構築開始!」
ノヴァはスプーンでキーボードを叩いた。
命令を与えられたコンピューターが機械的な音声で作業の進行状況を伝える。
『大脳辺縁系と脳幹及び小脳、接合。左右大脳新皮質、接合。脳梁再生中……再生完了。各部ドーパ
ミンレベル正常』
「……すごい。まさか本当に死んだ脳を再生できるなんて!」
キテレツは感嘆の声をあげた。
「以前私は日本でミカムラ・カッシュという博士と出会い、彼の研究する『DG細胞』を見学させていただき
ました。私はその『DG細胞』からヒントを得、新たなサイボーグボディを開発しました」
「つまり、この脳にはサイボーグの体を与えるということですね?」
ノヴァはそれに答えない。言うまでも無い、ということだ。
「ミクロレベルの『業子力学』は既に完成の域にあります。しかし、マクロレベルの『業子力学』は、まだ
完成には遠い。マクロ、つまり『巨視業子力学』とはいわば人間の運命の科学……。この宇宙に存在
するものは全て、それが存在するというだけで『業子』を発し、相互に影響しあっている。その中でも
人間の脳は自然が作り上げた最高の業子力エンジン……」
ノヴァは再びプリンを口にした。
「そしてこの脳、スペランカー君は類稀なる業子ポテンシャルを持っている。地上最弱の肉体を持ちなが
ら地上最強の生物に大切なもの全てを奪われ、怨み続けながら殺されたのです。そのような脳に私の
開発した最高のボディ、『イマジノスボディ』を与え、何の制約もつけずにこの世に解き放つ。彼が
判断し行動する、その一つ一つがこの世界にダイナミックな業子の交換をもたらす。……くっくっく、
なんだかワクワクしてきませんか!」
「ノヴァ教授。あなたの研究はやっぱりすごい!あなたほどの科学者は、奇天烈斎さまの他には知りま
せんよ!」
バレ氏へ。
名前 出典作品
ディスティ・ノヴァ 銃夢
銃夢LastOrder
木手英一 キテレツ大百科
ザク氏は腕を数段上げてますね。
バトルだけでなく、話に膨らみがあって先が楽しみだ。
スペランカーには復活して勇次郎にリベンジして欲しいな。
最弱が最強を倒すなんて、ロマンティックじゃないか。
>>4 ブラックキング氏
更新をお待ちしております。
遅れましたが、1さんスレ立て乙。
ザクとスぺランカーは別人なのか!?
てっきりスペの無念の魂が今のザクを動かしてるというオチだと思ってたので、この展開は意外だ
しかし、よもやバキスレで「おいちい!」を拝もうとは(笑)
あ、忘れてた。>1氏、新スレ乙
第6話「悪・即・斬」
東京都千代田区、警察病院。
近年のテロリストの活動の活発化を受けて、日本全国あらゆる所で警備体制が強化され始めたこのご時世。
ここ警察病院も例外ではない。特別な訓練を受けた猛者達が、警備員として多く配属されている。
深夜2時。その警察病院の厳重な警備網を、いとも簡単に破り不法侵入を始める男がいた。
脱獄死刑囚の一人、ドイルである。病院内の廊下を歩き、見回りをしている警備員達を尻目に
彼は天井づたいに目的地へと向かっていく。スパイダーマンも顔負けの技術だ。
地下3階。病院内の、一部の人間しか知らない特別な病室がそこにはある。
大犯罪人や、命を狙われている要人のために特別に作られたその病室。ドイルの目的地はそこだった。
現在、その病室を利用している人間は一人。柳龍光の毒手によって重傷を負った烈海王。
大地の神、ガイアにこの場へと連れてこられた烈は、対猛毒専用の特別な治療を受けていた。
「サテ・・・」
ガチャン・・。烈のいる、特別病室の前に来たドイルは堂々とそのドアノブを回す。
地下3階の病室。当然窓もない。殺風景なコンクリート打ちっ放しの部屋。それとは対照的に豪華なベッド。
鎮静剤を打たれていた烈は、その中ですやすやと眠っていた。中へと入ったドイルは烈の様子を確かめる。
「スヤスヤト眠ッテイル・・。ドアノブヲ回シタ瞬間ニ、蹴リノ一発デモ飛ンデクルカト思ッタガ・・」
半ばあきれた様子のドイル。ふぅ・・・と軽くため息をつくと、ドイルは左手の指をコキコキと鳴らし始めた。
すると、両肘から鋭利な刃物が現れる。彼の十八番、全身に仕込んだ刃物攻撃・・。
「オヤスミ 烈海王」
すやすやと眠る烈に向けて、ドイルは右肘を振り下ろす。卑劣に仕込んだ大鎌が、ベッドの白いシーツを
ズタズタに切り裂く。ズバッ・・ズバッ・・。少しして、ドイルは違和感を感じ始める。烈の姿は、確かに
ベッドの中にあり、自分はその身体を切り刻んでいる。だが手応えが全くない。なぜだ・・・。
彼は烈の・・・いや中国4000年の大きさに気づくのが遅かった。違和感を感じ、攻撃をやめる。
するとどうだ。ベッドに眠る烈の姿が、うっすらと消えていく。まさか・・・これは残像・・・・?
ドイルが自分は愚かだった・・烈海王は自分の攻撃などいとも簡単にかわしていると気づいた瞬間、
彼の背中に鈍痛が走る。「ゲハァッ」 烈の跳び蹴り。ドイルの口から吹き出した鮮血がベッドのシーツを真っ赤に染める。
ドイルが烈の病室に入った瞬間、勝負はすでに決まっていた。ベッドですやすやと眠る烈の
姿を確認したドイルは、何の疑いも無くその寝こみを襲ってしまう。
自分が、すでに後ろをとられているとも知らずに。亀仙人直伝の技、残像拳。
烈の残像拳は、師のそれを遙かに上回っていた。武器に魅了され、生身のファイトから遠ざかっていた
ドイルに、その洗練された技を見破ることは不可能だった。
敗因は、中国拳法・・・そして烈海王という男を嘗めたこと。
蹴りを受け、床に叩きつけられたドイルはしばらく起きあがれなかった。衝撃で人体内部にしこんだ
鉄骨やパイプが破損して、内臓を圧迫しているのだ。たった一撃の打撃でこれほどのダメージ。
この相手、烈海王と自分とは格が違う。(これが敗北・・・)そう思い始めるドイル。
この先の攻撃で意識を失う前に、自分に敗北を与えた者の顔を見ておきたい・・。ドイルは苦痛に耐えながら
後ろを振り返り、烈の顔を見る。するとどうだ。烈は攻撃をする気配も無しに、ただじっとこちらを
うかがっているだけ。
「勝負はついた。勝者は私だッッ!」烈からの勝利宣言。
甘い・・・甘いなぁ・・・。ドイルは思う。(コレハ格闘技ノ試合デハナイノダヨ・・・烈海王)
生きるか死ぬかの生存競争。生身の真剣勝負に興味の無いドイルにとって、闘いとは常にそういうものだ。
「烈サン・・・僕ノ負ケデチュ・・・」
そう言うと、ドイルはおもむろに来ているスウェットを脱ぎ、烈の足下へ投げ捨てる。ドサッ・・。
重量感のある音。スウェットの中からだ。烈の目からは当然見えないが、この中には
6発の手榴弾が隠し混まれていた。ドイルがスウェットを脱ぐと、安全装置が外される仕組み。
「中国人ハ最後ノツメガ甘イ。勉強ニナッタ」パチンと指を鳴らすドイル。それに呼応するように
スウェット内に隠された手榴弾6発が一斉に炸裂する。
「烈海王・・・アレホドノ実力者ダッタトハ・・・ダガ・・」
病室の通風口から、ドイルは脱出していた。自分の行った攻撃で敗北を知っても意味がない。
確実に逃げられる手だてを思いついたからこそ、隠し武器の使用に踏みきったのだ。
「マタ・・・勝利シテシマッタ・・・」
狭い通風口内部をはいつくばりながらたどりついた先は病院の屋上。
英国製のタバコを吹かしながら、勝利の余韻に浸るドイル。屋上の強い風に煽られ、
タバコの煙が勢いよく横へ流れる。チッ・・・。マッチを擦る音がする。誰かもう一人
この屋上でタバコを吸い出したようだ。この時間にわざわざ病院関係者がタバコを吸いに来る訳がない。
その者が追ってであることは容易にわかる。コツコツと足音を立てながらドイルに近づく男。
「ヘクター・ドイルだな?」
「イカニモ・・・君ハ?」
「警視庁 特別攻撃隊3番隊組長・・斉藤一」
「サイトウ・・・日本ノポリスニハ侍ノ血ヲ受ケ継グ者ガイルト聞イテイタガ・・君ノコトカ・・」
キンッ・・・という刀の抜刀音。月明かりに照らされたその刀は、まぎれもない日本刀。
斉藤一・・。警視庁の特別攻撃隊の一員として日本刀の帯刀を許され、日夜世にはびこる悪を
斬り続けるこの男。闇世界の人間からは、殺人鬼として呼ばれ恐れられている。
新撰組最強と言われた男、斉藤一から数えて5代目にあたる。
初代斉藤一から、受け継がれてきた信念と技。子孫達は、先祖の言いつけを忠実に守ってきた。
この世に悪がはびこる時、その時代に生きる新撰組の狼の子孫として、その悪を粛清する。
そして今、平成の時代に生きる斉藤一(5代目)は現時点での最大の悪である死刑囚を粛清するために
動き出す。「悪・即・斬」の信念と共に、長年受け継がれてきた剣技を振るって・・・。
「サムライソードノ使い手・・・一度戦っテミタカッ・・・タァッ!!!」
言葉を発し終わると同時に、斉藤へ向かっていくドイル。烈の蹴りの被害を逃れた左手首、
両膝の刃物を使い斉藤に攻撃をしかける。ガキィィン・・暗闇の中で鳴り響く金属音。
すれ違い様に技が激突。両者は互いの位置を逆転させそして再び向き合う。
ドイルは一瞬自分の目を疑う。露出させていたはずの各所の武器がものの見事に消えているのだ。
恐らくは斉藤のあの日本刀に落とされたのだろう。しかし、その攻撃の様子がドイルにはまるで
見えていなかった。
「阿呆が・・・」斉藤はそう言うと、すっと腰を降ろして左手に持つ刀を前へ突き出す。
初代斉藤一が得意としていた技「牙突」の構えだ。
武器を失ったドイルは丸腰である。己の身体を使って、徒手空拳のみで闘わなければならない。
ただ一度の手合わせでわかった事はただ一つ。目の前で刀を構える男の実力は自分より遙かに上。
ドイルは両手をあげ、バンザイのポーズをとる。参りました・・・という意味を込めたこのポーズ。
用意していた隠し武器は、烈戦で使ってしまった。腹部に仕込んだ爆薬を使うという最終手段も
あったのだが、烈の攻撃により起爆装置を操作するパイプが破損してしまったようだ。
手のスイッチをいくら動かしても、うんともすんとも言わない。これは、明らかな「敗北」である。
初めて知る敗北。それは自ら降参をするという最も惨めな物だった。ギリッ・・と歯ぎしりをするドイル。
だが斉藤は、その最も惨めな敗北すら認めなかった。負けを認めたドイルに対して、斉藤は刀を向けたまま。
「死刑台に送るのも面倒だ・・。この俺自らが貴様を裁いてやろう。貴様に無駄に命を奪われた人々の
無念と、敗北を知ることすら許されなかった貴様の無念・・どちらが重いかを教えてやる」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!」
「待ちなさい斉藤君」
この世で最強の突き技、牙突がドイルの身体を貫かんとしたその時。闇の中から小柄な男が現れた。
大地の神、ガイアだ。その実力を買われ、ガイアは自衛隊から警視庁の特別隊に引き抜かれていた。
斉藤とは同僚である。
「殺すのは君の役目じゃない。残念だが今は平成なのだ。その男からは色々聞きたいことがある。
君のお得意の「アレ」ならばすぐに吐いてくれるだろう。その後も利用価値はある」
「その方が得策・・・か。よかろう。新撰組直伝の拷問術。見せてやろうか、ドイルさんよ・・」
斉藤とガイア。2人はドイルの肩を持ち、警視庁本部へと歩き始めた。
「敗北」に続きドイルはこの日生涯で初めての経験をする。それは失禁。
今までに無い程、間近に見た「死」への恐怖。そしてこれから起こるであろう拷問への恐怖・・。
2つの恐怖を感じた時、彼の足下は尿でびちゃびちゃになっていた。
その夜、警視庁の一室からはこの世の物とは思えないほどの異質な悲鳴が鳴り続けたと言う。
警察病院隣の高層ビル・・。その屋上から、ドイル対斉藤の闘いを興味深く観察する男がいた。
毒手の使い手、柳龍光である。
同じ死刑囚であるドイルの無様な負けっぷりを見て、あきれた表情だ。
「日に2度も不覚をとるとは・・・」やれやれと言わんばかりに、ふぅ・・と大きなため息をつく。
「斉藤一。新撰組の狼の子孫。あの剣技、ただ者ではない。だが・・」
ゆら〜っと動き出す柳。屋上にある貯水タンクの目前まで来ると、柳はそれに平手打ちを放つ。
パンッ・・・。ただの平手打ちにしては大きすぎる音があたりに響く。と同時に
コナゴナに砕け散る貯水タンク。大量の水があふれ出す。
「・・・・・所詮私の敵ではない」
「相手間違えとりゃせんか?柳よ」
流れ出た水に足を浸らせた老人。達人、渋川剛気がそこにはいた。
「ワシもなめられたもんじゃな。アンタが脱獄したと聞いて、まず最初に
ワシの元を訪れるじゃろうと思っていたのだが・・・」
「腐腐腐・・・お楽しみは最後までとっておくもの・・・とでも言っておこうか」
「丁度いい広さじゃなここは。柳さん・・どうです?久々に立ち会ってみましょうか・・」
続く
>超格闘士大戦
残像拳会得したんだね、烈。そう簡単にはやられないかと思ってたけど、流石だ。
>僕ノ負ケデチュ
克己に聞かせてやりたい。
>新撰組最強と言われた男、斉藤一から数えて5代目にあたる。
本人そのものじゃないのか・・・
徐々に他作品キャラが絡んできてるね。これからスパロボ状態になるんだろうか?
そして柳VS達人に期待。
イイヨイイヨー。
量も質も素晴らしいな。
本当に新人とは思えぬ技量だ。
各方面で評価が高いのも分かる。
かっこいい柳を期待してるよ。
ナポリ市警巡査、レオーネ・アバッキオ。19歳。
それが俺だ。
高校を卒業後、俺はすぐさま警官になった。
俺の中の正義が、そうしろと叫んでいた。自分を、自分の正義を全うしろ、と。
そんな俺だから、この南部一の糞犯罪都市ナポリでわざわざ職についたんだ。
我ながら無謀で無知なガキの発想だとは思う。だが、何もしないよりはずっといい。
何の行動も起こさずに、犯罪の波の中へ流されていく。何より、何の罪も無い一般市民が巻きこまれる。
そんなことは我慢ならなかった。
そうして今の俺が出来あがった。
ここ、ナポリでは、市長を選出する選挙を二週間後に控えていた。
候補者は5人いたものの、そのうちのカンディダートとポデスタ、市民の支持をほぼ二分するこの二人の争いになる。それが一般の予想だった。
ミラノ市長となれば、いったいどれほどの利益を被ると言うのか。
二人は少しでも支持率を上げようとし、せかせかと市民へのアピールを繰り返している。
落選すれば、今までのことがパアになる。負けられない。
そして今夜も客寄せのパーティが開かれる。
嫌な街だ。
「キャッ」という、女性特有の短く鋭い悲鳴が耳へ突き刺さった。
カンディダート主催のパーティでのことだった。
カンディダートの「市民の安全を守るため」とかいうご大層な名目で、何人かの警官が警備に駆り出された。
運悪く指名されちまった俺は、特別手当でも出せよなと舌打ちながらも、市民のためだと無理やり納得させていた。
ホール内に設置された各テーブルには、美味そうな料理が並べられている。料理を口に詰めこむと共に、カンディダートへ感謝を口々に唱える人々。
カンディダートは、彼らの中に混じって市民様とのスキンシップを取っていた。
そんな中、俺達警官はただただ直立不動を保つ。そんな退屈な時間が過ぎていた時だった。
料理への関心が少しでも薄れればと、俺は声の主へ駆け寄った。
彼女は東洋系の顔をしていた。インド辺りだろうか。
褐色の肌、きりりとした濃い眉。流れるような黒髪。
彫りが深く、眼窩の影に隠れた黒い瞳に俺は吸いこまれそうだった。
苦痛に歪む唇は、逆にエロティックな雰囲気を醸し出している。
西欧人の俺から見ても、十二分に美しい。パーティにいるのだから、どこかの令嬢だろう。
「どうしましたか?」
「皿を落として……手を切ってしまいましたの」
なるほど右掌からは血の筋が垂れ、絨毯に滴を落としていた。隣には皿の破片。
「傷をよく見せて……」
「おー、おー、おー、大丈夫かね、君?」
目敏く彼女を発見したカンディダートがドタドタと中年太りの体を揺らし駆け寄ってくると、俺を押しのけ彼女の手を取った。
「ふむ、とりあえずこれで止血したまえ」
純白で、いかにも高価そうなフリースのついたハンカチを懐から取り出し、手渡す。
なるほど、売名のためにはおいしいことなのか。
わざとらしく、かつカンディダートには見えないよう、奴に触られた部分を手ではたく。
俺の偏見も混じっているが、どうもこういうお偉いさん方は好きになれなかった。
裏では何をしているのやらわかったものではない。表向きで善人面してるぶん、単なるギャングよりも腹立たしい。
心の中で悪態をついていると、彼女はハンカチを受け取り、カンディダートの首筋を出血たままの右手でそっと撫でた。
そしてカンディダートの頭を近づけさせ、笑みを浮かべて甘い声で囁いた。
「ありがとう……ございます」
このシンプルな言葉にどんな魔力が込められていたのか。カンディダートの顔が年甲斐もなく赤くなるのを目撃し、俺は失笑を隠せなかった。
すっかり魅せられたか、数秒固まった後、
「で、では、お、お大事に、ね……」と、滑稽な捨て台詞を吐くと、撫でられた時に付着した彼女の血を気に留めず、ささやかな喝采を受けながら壇上へ歩いていった。
次は市長候補のスピーチだったっけな。
俺はニヤニヤ顔のまま、壇上までカンディダートが上がるのを見守った。
ふと振り向くと彼女はすでに居なくなっていた。
翌朝、新聞の地方ニュース一面を飾ったのはカンディダートの死亡記事だった。
先日のパーティを終え、帰宅するといつものようにカンディダートは自分の部屋に入っていった。
カンディダートは部屋に据え置きのソファーで一時間ほど仮眠を取るので、シャワーを浴びに来るまで篭ったままである。
それがいつものことだと、カンディダートの使用人は証言している。
しかし昨日は2時間ほど経っても彼は出てこない。
よほど疲れたのかと、主人の様子を見に行くと、そこには血溜まりの中に仰向けで倒れるカンディダートの姿があった。
死因は出血死。ナイフで首を裂いたのだった。
「市長選を目前にして、カンディダート候補、謎の自殺」
見だしにはこうあった。そのナイフはカンディダート自身のものであり、しかも刃の刺さった角度等を考えるに、自らの手で自らの首を抉ったとしか考えられないというのだ。
発見時にも凶器はカンディダートの右手に握られていた。指紋も彼のものしかついていない。
右手にナイフを握り、ためらい傷を幾つも造りながらも、ついには左の首筋を一気に切り裂いた。
実際に死体を見た者は寒気を感じたと言う。
「なんでも、首の三日月型の裂傷が、人の口みたいに見えたそうだ。小さなためらい傷も合わせて見るとと、まるで大きな口をあけて笑う人の顔のようだったんだと」
同僚の警官、レットがそう言う。
そいつは怖いもんだね、と俺は笑い飛ばした。話にせびれ尾びれがつく。良くあることだ。殺人事件とあっては無理もない。
自分が警護をしていた奴が死ぬとなると、なんとも嫌な気分だが、俺にはどうしようもなかったのだ。自殺ならなおさらだ。
そんなことよりも、心に引っかかるものがあった。
「なんでも、首の三日月型の裂傷が、人の口みたいに見えたそうだ。小さなためらい傷も合わせて見るとと、まるで大きな口をあけて笑う人の顔のようだったんだと」
同僚の警官、レットが口の両端をきゅっとを広げてみせてそう言う。
そいつは怖いもんだね、と俺は笑い飛ばした。話にせびれ尾びれがつく。良くあることだ。殺人事件とあっては無理もない。
自分が警護をしていた奴が死ぬとなると、なんとも嫌な気分だが、俺にはどうしようもなかったのだ。自殺ならなおさらだ。
そんなことよりも、心に引っかかるものがあった。
彼女だ。 あの東洋の美女。
彼女の美は完璧だった。しかし、何処かもろい気がする。完璧過ぎるのだ。
本来ならば趣向の違うはずのイタリア人を、ここまで魅せるとは。
彼女が俺の脳内であのまぶしい笑みを浮かべている。
俺はいつか美術館で見た絵画を思い出した。人種は違えど、彼女の印象は、ダヴィンチらがカンパスの中に生み出した美女達と近い。
例えば、美女の描かれた絵画と向き合うとしよう。真正面からの見てくれは最高だが、体を横へ横へ円を描くようにずらして行けば、眼に映るのは、いつしか薄い板になっている。
見る位置を変える、それだけの行為で絵画は美を失ってしまう。だから彼女に対しても、視点を変えれば……。
くだらないことを考えているな、と思う。
一目一言を交わした程度の見ず知らずの他人に、こんなわけのわからない考察をするとは。
それほど俺は彼女に惹かれていた。
結局自殺として片付けられたカンディダートの事件の一週間後、今度は対立候補であるポデスタが講演会を開くことになっている。
そのポデスタが、市長の地位を確実なものとするため、カンディダートを暗殺した。
そんな黒い噂が立つのは自然だった。
だが、現場証拠の何処をとっても他殺の線はありえない。
カンディダートは市長候補となるまでに様々な汚い工作をしてきたであろう。他殺で無いとすれば、何者かに悪事を暴かれ脅迫され、自ら命を絶つをえなくなった。
表向きにはでないが、署内での噂だとそういう落ちがついている。よほどな秘密を抱えていたのだろう。
裏のカンディダートを暴いたのこそポデスタの仕業なのかもしれない。利口な手だ。
だが、そんな方法を取るあたり、ポデスタ自身もそれなりの裏の顔を隠し持っているはずである。
そんな連想が用意にできちまうあたり、俺もこの町に染まってきちまったかと思う。糞。
また市長候補に関する事件が起きた。
今日の昼下がり、ポデスタが街頭演説を行っていた。内容は今後の抱負、そして亡き戦友カンディダートへの弔辞だった。
涙混じりに語るポデスタに対し、聴衆の中から何かの詰まった風船が飛んだ。
とっさに顔をかばったポデスタの右手にあたり、風船は破裂、中の赤い液体が腕を染めた。
演説は中断、投げつけた浮浪者の男はすぐさま捕まった。
赤い液体はなんと人の血であり、事情聴取によると男は見知らぬ女に金を渡され頼まれたと言う。
「俺が寝てたらよ、顔がひしゃげたみてえな、蛙みてえなチビの女がよ、金と風船を俺に渡したんだよ。なんかうす汚え顔色してたな。
断る理由もねえし、ひきうけた。しかし、ありゃあひでえ顔だったぜ」
そう言った話だった。その後男が留置所にブチ込まれたのか、警官のストレス発散のために殴られ有り金も奪われ放り出されたのか俺は知らない。
ポデスタには何の怪我もなかった。悪戯、もしくは残る対立候補の微々たる抵抗だろう。
ポデスタとで、票をほぼ二分していたカンディダートが死に、もはや彼の勝利は揺るぎ無いものに見えた。
俺は、証言を元に作られた似顔絵を見せてもらったが、なるほど醜悪な顔がスケッチされていた。
縦につぶれたような山形の頭。細い目に、大きく横に裂けた口。蛙というのは的確に彼女を比喩している。
一目見ただけで顔は脳裏に焼きついた。年齢こそ計り知れないものの、薄茶色をした超個性的な面、そう簡単に見間違えれるわけもない。
薄茶色か。肌の色だけ見れば、あの彼女に近いものがある。それ以外は似ても似つかないが、と彼女に謝罪するかのように俺はすぐさま考えを打ち消した。
インド系の移民もいるのか。そう思いながら俺は拳銃の手入れを丹念に行った。
ポデスタの講演会当日、会場にはカンディダートの際よりも多めの人員が廻されていた。あんな事件が立て続けに起きたのだから正しい選択だろう。
やはり俺も言いつけられた。今回はレットも配属されていて、幾分俺は気が楽だった。
俺の持ち場は、全部で四つある入り口のうち、北側の一つの警護。レットは東の一つだった。
ポデスタ関係の招待客と、今回は抽選で選ばれた一般市民も何十人か入場する。
それらの来客も程よく集まり、会場がだんだんとざわついてきた時、司会のコールと共にポデスタが舞台袖から登場した。
カンディダートと対称的に、彼は痩せ型でいて背もヒョロリと高い。
会場の誰もがポデスタの右腕に注目した。彼の右手はすっぽり包帯で覆われていたのだ。黒いスーツでまとめたポデスタの中で、右手だけが白を放っている。
再び人々の囁きが場を支配する。まさか襲われたのだろうか。
「皆さん、お静かに、どうぞお静かに」
壇上にあがったポデスタがマイクを取り、仕切る。
「いやはやお騒がせしまして……。皆さんの注目は私よりも私の右手へ注がれているのでしょう。いやあ、右手も照れてしまって、この通り隠れてしまいましたよ」
一流とは言えないジョークで会場に笑いが生まれた。
「事の真相は今朝の洗面台でした。私は剃刀を愛用するのですが、うっかり腕の上に落としてしまいましてね……」
「ウソツキ」
そう聞こえた。壇上のマイクを通して。
くぐもった声だが、口調と高音からして女のようだった。
ポデスタの大きく窪んだ眼窩の奥に、焦りに滲む目が見えた。
沈黙。
「いや、いや、ははは……。さておき今夜は私のために来ていただき、感謝感謝でございます……」
苦し紛れに話を変え、本題を切り出した。
あの声はなんだったのだろう。皆疑問を抱えたろうが、話に耳を済ませ、料理に舌鼓を打つと次第に究明をやめていった。
つっ立っている以外にやることもない俺は考え続けた。
客の誰かが放ったのではないのは確かだ。壇上のマイクが拾うような位置から発せられたはずである。
あのとき周りに居たのは男の警備員のみ。いったい何処から。
なぜか俺は褐色の彼女を思い出していた。女、という接点だけでか? こいつは重症だな。
令嬢という俺の推理が合っているのならば今日も来場しているだろうか。
俺は首を振るが、会場全てを見渡せるわけでもない。
ポデスタに視線を戻す。包帯に見取られて気付かなかったが、ポデスタの細い顔が、さらに痩せこけて見えた。
投票者との交流時間が始まった。
これがプログラムに組み込まれているのを知った人々は、前前から皆彼が客に紛れた暗殺者を危惧していたが、「そんな妨害工作にまける私ではない」とポデスタが先日に公表すると、すぐさまそれは彼の勇気に対する賞賛に変わった。
完全に民衆を味方に付けていた。
逆に困惑したのは警察署である。警備中にポデスタを死なせたと合っては沽券に関わる。大動員にはそんな裏もあった。
ポデスタは、その左右を屈強なガードマンに固めさせ、来場客を渡り歩き影のある笑顔と簡単な挨拶を振り撒いてゆく。
招待客へも一般客へも公平に接し、イメージアップの最後の仕上げというわけらしい。
えらく慎重なやつだ。そうでもしなけりゃあんな地位にはなれないかね。
無駄な気苦労を嫌う俺には、下っ端がぴったりなのかもしれない。
「おい、悪徳議員さんよ、あたしにもメシ食わせなよ!」
最初、酔っ払いが迷い込んだのかと思った。
「オナカすいたよ! オナカすいたよ!」
耳を傾け、声の出処を探す。
ポデスタだった。確かにポデスタから声はする。
甲高い、中年女性のような下品な口調だった。
「ウソツキ」、「ウソツキ」、「ウソツキ」、先ほどの壇上の声が頭のなかでリピートする。あの声だ。
「うるさいっ、うるさいっ!」
ポデスタが、その右手をテーブルに打ちつけはじめた。
一回、二回、三回。
包帯が内から染み出た血で赤く染まって行くのがよくわかる。肉が裂け骨が折れるのを気にもかけない。
自分の腕を、本気で忌み嫌い打ち付けていた。
四度目はテーブルへぶつかる寸前でストップした。
「痛いじゃないのさ」
包帯の隙間から、小さな二本の腕が飛び出ており、それが激突を止めたのだった。
ポデスタの腕から、更に腕が生えていた。
俺は目を疑った。
「そ、そんな、今朝は顔だけだったのに……」
なんだと。
何を言っているんだ、ポデスタは。
右手に巻かれていた包帯の中身が完全に露になった。
人が、生えていた。
赤ん坊ほどの大きさをした人の腰から上が、ポデスタの腕から生えていた。
毛髪を持たない、薄茶色をした赤子だ。
小さなナリをしているが、先ほど見せたようにポデスタ自身の腕力を上回っている。
その腕には、いつのまにか銀色に光るものが握られていた。テーブルの上にあったフォークだ。
奴のにごったような眼が釣りあがった。
誰一人動かない。動けない。
「えいっ」
寄生人の持つ三叉矛だけが、ポデスタの胸へと走った。
「アハ、アハハハ」
宿主の胸から噴出する赤いシャワーを浴びながら、しばし茶色の赤子は血と戯れ狂気の笑いをあげ続けた。
客人達は沈黙を続けた。目の前に突如出現した怪物と、それによって生まれた死に対し、脳の処理が追い付いていないのか。
寄生人の笑い声は次第に弱まっていく。それに合わせて上半身だけだった体も溶け出し、ついには何も無くなった。
あるのは不可解な死と、目撃者の沈黙だけ。
皆、無言でポデスタの死体を眺めていた。
俺は、一人後ろを振り向いた。
彼女は笑っていた。
ああ、俺は見つけてしまった。
ぞくぞくとするほど美しい。東洋の女神のような残酷さを垣間見させる笑みだった。死の女神である。
俺の足は彼女へ向かって動いていた。
彼女はただ二つの会場に居ただけだ。
なんの証拠もない。
疑わしいところすらない。
だが、俺は動いていた。
ポデスタの死を介せず、自分の方へつかつかと近寄ってくる俺に気付いたか、彼女も背を向け歩き出した。
異質なのはあんたと同じさ。
人込みを掻き分け進むため男女のハンデはない。距離をなかなか詰められず、追い着くことができない。
そうしているうちに、彼女は東出口をくぐり出た。
数秒後に俺も続く。
「おい、アバッキオ、なにやってる、何処へ行く!」
レットが叫んだ。
ホント、なにやってるんだろうな。
外に出ると、俺は走り出していた。
外はすっかり暗くなっていた。闇に彼女の黒いワンピースとは、ぴったり過ぎた。
必死に彼女の背を追おうとするが、路地に入りこまれてしまった。
だが地の利は俺にある。
この道を行けば、たしか三叉路へ通じるはずだ。
うち2つは、別の大通りへ出る。
寂しげで隠れるのに最適なのは。
ほら、見つけた。
俺を撒けたと思ったか、彼女はもはや急ぐそぶりは見せていない。
隠れ家なのか、それとも単に逃げ込んだだけなのか、彼女にはおよそ相応しくない廃屋へ入っていった。
足音を潜めて俺もそこへに近づく。
息を殺し、入り口の横に背を預ける。
生活感のまったくない、淀んだ臭いが鼻を突く。
腰にかかるホスルターへ手を廻すと、そこには確かな拳銃の感触。
あんな女性相手に使うことはないと思うが……、近代兵器にどことなく安心した俺はそっと耳を澄ませた。
「トロいわね、まったく。もうちょっとで捕まるところだったじゃない」
彼女の声だ。
声こそ以前聞いたように何処か高貴さを含んでいたものの、口調は俺がイメージとして抱いていた令嬢のそれとは考えにくい。
待ち合わせていた仲間と喋っているのか。
面倒なことになりそうだ。
音を立てずに銃を抜き、首だけを向けて中を覗いた。
狭い部屋だった。腐りかけのテーブルに、やはり変色した据え置きの棚。わずかに空いた床には木材が散乱していた。
テーブルの横に、こちらに背を向けて彼女は一人立っていた。
「年を取るのってホント嫌ね。その点あたしには関係無いけど」
そう言い、誰かに見せびらかすように黒髪を手でとかした。
限界まで首を回し見まわしたが、他に誰か居る気配は無かった。
独り言を言っているのだ。
精神関係の病気なのだろうか。ヤク中なのかもしれない。
だから自分に非が無くとも逃げた。
そんな俺の推理を、甘い甘いと嘲笑うかのように彼女は次の行動を取る。
「あなたの上にいるのも疲れたわ。ちょっとおろしてちょうだい」
あなた、と言われてドキッとしたが、すぐに俺のことではないとわかった。
いや、何倍にもました衝撃を受けた。
「はい」、と何処からかくぐもった声がした。
『彼女』は『彼女』を脱ぎ出した。
ペリペリという耳につく音を立てながら、彼女の胴が上へと伸びて行く。
その音と共に俺の理性も裂け始めたようだった。
音と上昇が止まると、『彼女』はワンピースを着たままの上半身をテーブルの上へそっと乗せた。
俺の思考はストップし、ただただ眼前の事実を受け入れるしかなかった。
先ほどの比喩を使うならば、一人の女の上に『彼女』は『生えていた』のだった。
銃を持つ手がかすかに震える。
「ふう」
テーブル上の『彼女』が息をつく。
「まあ、まずまずの仕事よね、ネーナ」
『彼女』は、自分の下になっていた女性をネーナと呼んだ。
俺はネーナに見覚えがあった。ポデスタに血入りの風船をぶつけるよう仕向けた女だった。
闇の中に浮かぶ、醜い蛙の顔、忘れるわけも無い。
「次はもうちょっと楽な仕事しましょうね」
「もう……もうやめにしないかしら……」
ネーナの声が低いのは、服の下から声を出していたからだと思っていたが、実際に彼女の声は擦れ濁っていた。
「……?」
『彼女』が無言で促す。「どういう意味かしら」と。美女の無言は少しばかり怖かった。
「もう人を殺すのはやめましょう。昔は違ったわ。あのお方に頼まれて、従ったのですもの。でも今は……」
「黙りなさい、ネーナ」
『彼女』が冷たく言い放つ。
「また前の生活に戻ってもいいの? あんな惨めで、惨めで、惨めしかない生活……」
「でも……」
気が萎えたか、ネーナの声が小さくなっている。
「あら、逆らうの? 別にイイのよ、あたしは。足を生やせばいいだけですもの」
無い足をばたつかせるように、『彼女』がテーブルの上で動く
それを聞いて完全に折れたニーナはうつむき、黙った。
「大体あんたは楽じゃないの。あたしの足やってるだけでしょ? あたしなんて糞親父の相手したり、ときにはその身を削って血を流すのよ。もっとも、もともとはあんたの血だけどね」
そして笑い声。
上品とは言えない『彼女』の笑いの中、俺は悟った。
血。
ポデスタの手に生えた化け物。
カンディダートの死。
俺の中で全てが繋がり出してゆく
ポデスタは演説中に血を投げつけられた。咄嗟に右腕で防いだそうだった。
先ほどの講演会。右腕に巻いた包帯。その下から飛び出た怪物。
そして先週、パーティの時。カンディダートの首筋に付着した彼女の血。
どちらだったか。
彼女は右手を割れた皿で切ったはず。となれば、向かい合って触れるのは首の左側。
カンディダートがナイフで裂いたのは、左の首筋。
なんていう空想をしているんだ俺は……。
あの肉の怪物は、今ニーナと呼ばれた女が、自らの血を使って作り出した。
そして、今の今までニーナに被さっていた美女。彼女もまた血の肉人形……。
ニーナはそれによって自分の醜さをひた隠していた。
本来ならば想像主に忠実であったはずの肉人形。
だが。
いつしか美しき人形は自意識を持ち始め、そして主導権ののっとりを企てた。
ニーナはそれに負けた。
自分には決して無いものを、『彼女』が持っていたから。
偽りとはいえ、美を捨てたくなかったのだろう。
あの顔を見れば、どんな思いをしてきたのか、容易に想像ができる。
ニーナの、美にかける情熱、憧れ、執念、いったいどれほどのものなのだろうか。
意志も、生活も、人生そのものすら。
この女は他の何物も捨て、美を取ったのだ。
こんな状況下、とっぴな想像ですら俺には信じれた。
「動くな」
俺は入り口へ出ると、銃を『彼女達』へ向けた。
「あら、お巡りさん、またお会いしましたわね」
テーブルに乗った上半身だけの『彼女』が、驚いた様子も無くニッコリと笑みを作る。口調が上品なそれに戻っている。
うす暗い部屋の中で、『彼女』の白い歯が光り目立つ。
先日のパーティの時と寸分違わず美しい。隣にいる、先ほどネーナと呼ばれていた女性とのコントラストが、更にそれを際立たせている。
その美貌と、今の体躯とのギャップが恐ろしくグロテスクだった。
吐き気を催すシチュエーションだった。
「そんな物騒なものは、どうかお捨てになって」
「黙るんだ」
俺は銃口を『彼女』に向けた。
すると美しかった彼女の顔が、あっという間に憎悪に染まった。
眉間にしわが寄り、眼輪筋が膨らんで美しかった瞳を捻じ曲げた。ボリュームのあったエロティックな唇を歪ませ、怒りに歯を食いしばる。
「殺しなさい」
怒りの表情でぼそりと言う。
「ニーナ、あいつを殺しなさい」
「黙れ!」
『彼女』の憤怒がさらに露になる。美しくも冷ややかな死の女神の面影はもう無い。
内に潜んでいたどす黒い悪魔が顔を出していた。
「ニーナ、はやくしなさい。それともいいの? 前みたいな蔑まされる人生で……」
悪魔の顔をしたまま、子供に言い聞かせるように優しく囁いた。
ニーナの細い目がうつろになった。その懐から鈍く光るナイフを取り出した。
右手に携えた刃が薄暗い部屋のなかで煌く。
そしてゆっくりとこちらへ歩み出す。
「動くな、落ち着け、落ち着くんだ」
何とかなだめようとする。ニーナを撃ちたくなかった。
殺人者ではあるが、彼女自身も被害者に近い。複雑な心境だ。
「ニーナ……早くして」
『彼女』が甘え声を出す。
「落ち着けよ、ニーナ。聞きなよ」
声が震えてるな。
「俺みてえな下っ端警官が言うのもなんだが、誰かに従いつづける人生なんかに
生きがいなんてもんはあるのか? 何も考えずに誰かの兵隊として生きる。そんなもんは『生きる』なんて言わねえ。違うかい?」
俺は前々から思っていたことを付け加えつつ、ニーナへぶつけた。
ニーナの足が止まった。
「そうだ、さあ、ナイフを捨ててくれ」
もう少しだ。さあ、頼む、あんたを撃たせないでくれ。
「行きなさい!」
「黙りやがれっ!」
叫ぶ『彼女』を俺は撃った。
黒を主張とした、美しいワンピースに、どす黒い赤が加えられた。
胸に2発、銃弾は肉を抉り貫通した。致命傷だ。
肺へ注がれた熱血が、『彼女』の喉を通って口からも漏れ出す。
何かを言おうとしているのか、俺を見つめながら口をパクパクと開閉し、血のあぶくだけをたてていた。
「いやああああ!」
代わりに叫んだのはニーナだった。
ナイフを落とし、胸を押さえて悲痛な絶叫を上げる。
「いやっ、いやっ、いやあああ……あ……」
息が尽きたか、次第に声にならない叫びと変わってゆく。
二つの苦悶の顔が俺を見ていた。
『彼女』とニーナ。
俺に向けられたのは二人分の悪意だった。
何故?
何故?
突然、『彼女』が破裂した。血と肉片が辺り一面へ飛び散り、へばり付いた。
当然俺にも振り注ぐ。血なまぐささが全てを包み込んだ。
俺は、生物の胃の中に居るかのような錯覚を覚えた。
ニーナはその場へ崩れ落ちた。
「おい、あんた、大丈夫か!?」
ようやく足が動き、駆け寄る
意識が無い。仲間を呼ばなくては。
俺は路地裏に踊り出た。
>アバッキオの奇妙な職務作者氏
ジョジョ好きだし、数レス読んだところで筆力の高い実力者だという事はわかった。
しかし、ちょっと待て! 一気に更新しすぎだよ。もっとゆっくり楽しませてくれ。
せっかく面白そうな作品なのに、長さで読む人が引いてしまうなんて勿体無いぜ。
すごく実力のある人みたいだから、俺はあなたが来た事に喜んでいるんだからさ。
出来れば数回に分けて、長い期間楽しませてくれ。生意気言ってすまん。
数分もすると、レットら仲間の警官たちと現場へ戻り着いた。
だが、肉人形の破片や血痕は跡形も無くなっており、廃屋の中には倒れ伏すニーナだけしか居なかった。
その時気付いたが、俺についていたはずの肉片も消えていた。
ポデスタ氏の開催した講演会を警備中、ナイフを持った不信人物を発見し、追いかけた。
廃屋へ追い詰め、事情を聞こうとしたらナイフを取り出したので『何も無い空間』へ威嚇射撃すると、心臓発作を起こして死亡した。
不信人物の身元は不明。パーティへもどうやって進入したのかはわからない。
そんな風に、俺にとっては良い様に話はまとまってくれた。
あんな素っ頓狂なことを話したところでどうにもなるまい。
実際、ポデスタの死因も、「狂乱し、自分で胸をフォークで刺した」とされてしまった。
目撃者全てが、現実を拒否したのだった。少しでも現実味を帯びたことへと、自己補完してしまった。
俺だってあんなことは忘れたかった。
あの日のうちにシャワーを三回浴び、着ていた制服は捨てた。
それでも、いつか、俺の体にも肉人形が生えてくるのではないか、そんな不安は消えなかった。
そして市長選は、数人居た残りの候補たちで何事もなく行われた。
結局だれが彼女を雇ったのかはわからない。
まったく嫌な街だ。
『終』
>アバッキオの奇妙な職務
巧い。一気に読んでしまった。
ニーナ(スタンド名忘れた)とスタンド能力に目覚めていないアバッキオのやりとりには
ぐっと引き込まれるものがある。面白かった。
短編小説をまるごと載せたかのようなボリュームで読み応えもあった。
ただ、できればいくらか分割してもらえれば長く楽しめたかな、とw
出来れば連載にして欲しかったね、本当に。
実力の高さは間違いなさそうな人だから。
お風呂入ってきました。
息抜きに書いたものです。
漫画的要素が薄いので、途中で切るとつまらんかなと思って全て張らせてもらいました。
>>ザク氏
スレ立てと更新お疲れ様でした。
書き忘れ
レット/retto……正義
カンディダート/candidato……候補
ポデスタ/podesta……市長
のイタリア語訳です。
ネーナはジョジョ三部のエンプレスのスタンド使いでした。
ユル氏乙。文章うまいですね。後で全部朝鮮します。
ところでこのスレの職人さん達は、どんな小説を読んでるんですか?
急に気になってしまいまして。スレ違いですが。
51 :
47:04/08/02 23:56 ID:FcJQ/QsX
なんだ、ユルか。気を使って損した。
というか、あなたも少しは気を使ってくれ。頼む。
一気に15レス投入なんて蛮勇過ぎるぞ。
52 :
作者の都合により名無しです:04/08/03 04:02 ID:PScrcpt1
ユル氏の実力は、猛者揃いのバキスレでもトップクラスと思う。
だけどもう少し読み手や他職人、そして保管するバレ氏への配慮を
してくれるとありがたいのだが。
アバッキオ半分読んだが面白い。だけど、一気読みはこの分量じゃ無理w
あとみゅう氏、まだかな。作品の内容も勿論、一回ごとに上手くなっていく
その真面目な姿勢にすごく好感を持っているんだが。
○氏復活しましたね。早くこっちでも更新してくれないかな。
>>52 お題スレでデビューした職人が、バキスレで連載してくれるといいな。
第十七話「武器と武器」
若干の血痕を帯びつつも、なおも鋭利な輝きを放つ右肘の刃。
「手品師が真価を発揮するのは、タネで観客を魅了する時だ。甘く見たな」
ドイルは指に仕込んだスイッチを起動させ、刃を体内に収納させる。眼前に立つガイア
の出血量は、明らかに死と直結しているからだ。勝敗は決した、はずだった。
「甘いのは君の方だよ。強くはあるが、命のやり取りに関しては経験不足のようだ……」
またもや不可解な言葉を吐き出すガイア。直後、ガイアは地面に生えている雑草を目に
も止まらぬ速さでむしり出した。激しい動きにもかかわらず、出血は最小限に抑えられて
いる。
数秒と経たぬうちに、ガイアの両手は雑草で一杯になっていた。すると今度は、その雑
草群を両手で挟むようにして擦り始める。やがて、ガイアの手に緑色の粘液が出来上がっ
ていた。行動の意味が読めぬドイルは、なかなか踏み込めない。
仕上げとして、ガイアは傷口に粘液を貼り付ける。全工程終了にまで要した時間は、お
よそ七秒。
「止血……完了」
これだけだった。これだけの作業で、ガイアは生命の危機を脱してしまった。
「まさか、雑草で止血を出来るとはな」
「ここに生えている草は、全て私が植えた特殊な薬草なんだよ。我々ホームレスは、医者
に診てもらうことも満足にいかないのでね」
ガイアの目の色が変わる。戦争に飢えた超軍人が、更なる高みへ足を踏み込む。筋肉が
能力を最大限に発現するよう膨張し、全身の細胞が充実していく。
「アドレナリンを分泌させてもらった。さて、そろそろ私も出し惜しみは止めよう」
シャツを脱ぎ去り、恍惚に満ちた笑みを浮かべつつ両手を広げるガイア。彼から発せら
れる気配は自然そのもの。肉体が大気と同化しているような錯覚すら覚える。
「少々血が足りんが、十分なコンディションだ。環境利用闘法……お見せしよう」
ガイアの闘志に応え、ドイルも全身の刃をまとめて弾き出す。中堅戦、真の闘争はここ
から始まる。
先に動いたのはドイル。全身を屈伸させ、左肘に仕込まれた刃で再び頚動脈を狙う。が、
ガイアとて同じ手を喰う男ではない。最小限の動きで刃をかわし、反撃体勢に移る。ドイ
ルは左肘に意識を集中させすぎたためか、姿勢を大きく崩している。勝敗を決する局面は、
意外に早く訪れた。
だが、肘にある刃を誇張するように、大げさに前へ突き出された左腕。これには意味が
あった。左腕の陰に隠れる位置に、ドイルは右拳を構えていたのだ。ガイアにとっては死
角である。そして、指のスイッチを──起動させた。
右腕全体に仕込まれたスプリング。収縮され蓄積されたエネルギーが、指の合図により
解き放たれる。弾丸と化した右拳は、ガイアの顎を叩き割った。
「ぐっ……今の金属音。強化スプリングか!」
冷静な分析力は保っているものの、ガイアの眼球は振り子のように揺れている。ドイル
もここが勝機と、全身の刃にて迫る。形勢は逆転した。
刹那の判断。ガイアはついさっき地面に捨てたシャツを掴み、ドイルに投げ付ける。視
界を封じられるも、ドイルは刃でシャツを八つ裂きにし、一瞬でボロ雑巾へと変える。
「ふん、こんな布切れなどに頼るとはな」
ガイアは既に移動していた。公園に広がる砂漠、次なる舞台に選ばれたのは砂場だ。
思考を巡らせるドイル。砂場で武器として使えそうなものは、やはり砂以外にはあり得
ない。砂など、いくら浴びても物の数ではないだろう。ドイルは決断した。攻めよう。
長い歩幅を利用し、ドイルは砂場との距離を着実に詰めていく。無論、飛んでくるであ
ろう砂への警戒も忘れてはいない。
「そう来るかね。では望み通り、砂の恐怖を教えてやろう」
ガイアは砂を一掬いすると、全身を振り被ってそれを投げた。柔らかいはずの砂が、塊
となってドイルの肉体を襲う。痺れるような激痛。砂の威力は予想以上だった。が、耐え
られない痛みではない。目に入らぬよう顔面をガードしつつ、ドイルが走る。
「この程度なら問題にはならない! 次でお前を仕留めるッ!」
「バカが……」
ガイアが呟く。とその時、ドイルの肩に抉り込むような衝撃が生じた。スコップである。
ドイルの右肩には、スコップが根元まで深々と刺さっていた。
目をカバーするため、顔面を固めていたのが裏目に出た。砂しか武器はないと決め付け、
他の可能性など考慮にすら入れていなかった。
「スコップとは……うぐっ! 考えもしなかったぜ……」
「子供の忘れ物だ。これでトンネルや城などを造っているところが、容易に想像出来るだ
ろう。そして、この私が所持したなら、ひとたび強力な武器となる」
その手には、第二のスコップが握られていた。再び放たれるスコップ。動揺していたド
イルは、ろくに反応も出来ずそれを喰らってしまう。左膝が破壊された。
「グアッ!」
戦局は転々としながらも、徐々にガイアへと流れは向かっている。ようやく勝利を見ら
れると安堵した本部が、愉悦を隠し切れぬ表情で笑う。
「クックック、ガイアにとっては公園全てが武器と同義。武器使用を認められたところで、
最初から黒服に勝ち目などなかったワケだ。なぁ、ジャックよ」
「俺に武器は必要ない。素手で十分だ」
自らの巨大な拳に視線を集中させ、ジャックは自他に言い聞かせるように呟いた。
当然ながら、しけい荘の住人達の表情は今までになく重いものとなっていた。スペック
がやり切れない怒りを鉄拳に変え、ついシコルスキーにぶつけてしまう。
「コノママジャア、ボロボロニ壊サレチマウゼ。ドウスンダヨ、コノッ!」
「ぐはァッ! 俺を殴ったって、何も解決しねぇよ! でも、確かにこのままじゃ……」
こと闘いに関しては滅多に弱みを見せぬ柳も、ガイアの闘法に驚嘆の念を覚える。
「人を殺傷する目的で作られた武器での武器術ならば、私も遅れを取るつもりは毛頭ない。
しかし、あのガイアという男。日常的な道具を武器へと昇華させる技術のみならば……私
の遥か上を行くであろうな」
公園内では更にガイアが優勢に立っていた。ドイルの脇腹に三本目のスコップが突き刺
さったのだ。彼の黒服が血と混じり合い、何とも形容しがたい色を放ち始める。
だが、ドイルはうっすらと微笑んだ。ほんの一瞬。対戦相手であるガイアですら、視認
出来なかったに違いない。
「ここから……手品の開始だぜ……」
第十七話終了。
新スレ乙です。うんこSSもぼちぼち書きます。
>>50 読書家ではありませんが、色々読んでます。
推理物や時代物が多いですね。
不況でか、万引きでか、近所の本屋が潰れまくり。
>>ザク氏
前回までが硝煙漂う戦場。今回は清潔な研究所(?)。
がらりと雰囲気が変わりましたね。
前スレのスペランカーの「怨」には思わずゾクッとしました。
>>ブラックキング氏
好きなキャラだけに、ドイル無念。
まぁ斉藤は原作でも、私が目を付けたキャラをことごとく惨敗させてました。
柳VS渋川の達人対決、期待してます。
>>ユル氏
冷めた視線で熱く職務をこなす、アバッキオが格好いい。
何というか『ジョジョ風味』満喫いたしました。
あと、レットはオリキャラだったんですね。
>「ここに生えている草は、全て私が植えた特殊な薬草なんだよ。我々ホームレスは、医者
>に診てもらうことも満足にいかないのでね」
ただの雑草で止血したのか?と思いきや仕込んでたのね。
さすがホームグラウンドであるだけガイアには有利だ。
そしていじめられっこのシコルw あわれ。
今回の試合は先が見えない。
優位に立ってるのはガイアだけどドイルには奥の手があるみたいだし(ブレストファイア?)。
熱い戦いだ。
それにしても、しけい荘がここまで本格的なバトル物に化けるとはw
子供の忘れていったスコップっていうのがリアルだ
>>60 確かに。10話までの話と10話からの話を知らん人間に見せたら、
違う作品と勘違いするだろうw
熱いな。しかしドイルはともかく、シコルは勝てるのか。
あと、オリバは誰かと戦うのかな?
目を覚ますと、スペランカーの目の前にどこまでも青く澄んだ空が広がっていた。どれだけ長く眠ってい
たのだろうかと思った刹那、そもそも「目を覚ました」という事実に疑問が湧いた。
――確か、俺は死んだはずだ。範馬勇次郎に殺されて。
しばらく目をぎゅっと閉じ、再び開く。風景はなんら変わりなかった。
――夢か?夢を見ていたのか?
左肘を地面につき、ゆっくりと体を起こして座位をとる。その過程でスペランカーは信じられない光景を
見、目を疑った。
自分の足のあるはずのところに、モビルスーツ・ザクの緑色の機械の足が生えていたのだ。
背筋がぞっとした。末梢血管が収縮し汗腺が開いて冷や汗が出るように感じたが、実際にはそれらに
あたる器官がもはや自身には存在していないということも、直感的に悟っていた。
スペランカーは自身の手を目の前に掲げた。節くれだった機械の手。意識すると、その手は握ったり
開いたり、考えたとおりに動く。――俺の手だ。
スペランカーは恐怖のあまり悲鳴をあげた。だがそれはスペランカーの脳内で反響するのみで、声帯を
震わせて外部へと漏れることは無かった。声帯は今の体には存在しなかった。
――ああ、ああ!俺の体……俺の声……
無意識にスペランカーは周囲を見回した。360度密林が広がっているのみだった――少なくともまだ
ベトナムにいるらしかった――が、右手数キロ先にテント群が見える。そしてそれよりももっと手前、すぐ
目の前にはコンクリート造りの小さな建物がある。何の施設だろうか?
それより気になるのは視線の高さだ。座位の姿勢であるにもかかわらず、森を上から見下ろす形で眺
めているのだ。まるでジオラマの中に身をおいているかのような感覚だった。
――しっかりしろスペランカー。どうやら、死んだことは確かなようだな。それから何かがあって……
何らかの想像も及ばないような過程があって、俺はここにいる。俺の身に、何が起きた?
「目が覚めたようですね、スペランカー君。いや、ザク君とでも呼びましょうか。スペランカー君は戦場で
死んだ身ですからね」
地面についている右手元、10m近く下から声が聞こえてきた。スペランカーは見下ろした。
ディスティ・ノヴァ教授。スペランカーを再生させた、スペランカーがまだ見知らぬ科学者だった。
「どうやら混乱しているようですね。私が説明してさしあげましょう」
「私はディスティ・ノヴァ教授。この近くにある野戦病院の負傷者にサイボーグ化手術を施しているサイ
バネ医師であり、ナノテクノロジーの研究者でもあります。君は、君の頭部は偶然にも助手のキテレツ君
に拾われてここの施設に運ばれました。君の脳の損傷度は7以上、つまり普通の医療技術では絶対に
助からないはずでしたが、私がナノ技術を駆使して完全に修復しました。器質的な損傷は修復されたの
で記憶は完全なはずです。君の身に起きた悲劇、覚えているでしょう?」
ファミコンウォーズ、サムス、範馬勇次郎。様々な場面がフラッシュバックする。
――そして俺は、死んだ。
「君を修復したのは個人的欲求からです。本来ならば君には肉の体を返してあげるべきなのでしょうが、
いかんせんあの体には致命的な欠陥がありました」
スペランンカーは聞いていなかった。己の手をまじまじと見つめる。俺は、サイボーグになったのか。
「神経系統、特に末梢神経に異常が見られました。小さな衝撃が心臓に大きな負荷を与え、即座に
ショック状態に陥ってしまうようになっているのです。さらに骨密度の薄さも目立ちました。ですが、もしか
したらこれは良い意味での特異点かもしれないとも私は考えます。神経系統の異常、これには感覚器の
異常発達が見られています。物事を鋭敏に察知することができるということですね。これはあくまでも
推論に過ぎないのですが……君はニュータイプの突然変異なのではないでしょうか?ニュータイプとは
物事を正しく把握する能力を持った者、あるいは感覚の異常発達により他者の意思を、果ては死者の
意思さえ感じ取ることができる人間のことをさします。まぁ、この際ニュータイプ論はどうでもいいでしょう。
君の置かれた状況について説明します」
ノヴァはまたもやプリンを持っていた。一欠けらすくい、食べる。
「うう〜、おいちい!」
「ということで君には機械の体をプレゼントしました。そのボディは私がナノ技術の粋を結集させて造った
傑作、『イマジノスボディ』。君の認識に応じて原子レベルで構造を変化させ、無限のバージョンアップを
可能としています。さらに『業子力学理論』を応用した暗号化技術の発明により君の記憶を含むボディの
構成情報を空気中の分子運動の中に埋め込み、いつでも取り出せるようにしました。活動固体、つまり
君が死亡した時には空気中のナノマシン・ネットワークがただちに活動を開始し、君を完全な状態で再構
築します。つまり……」
ディスティ・ノヴァは微笑んだ。
「君は全人類で最も不滅に近い存在になったのです」
ノヴァの話を八割方聞き流していたスペランカーだったが、最後の言葉だけは耳に残った。
――俺が……全人類で最も不滅に近い存在?
「本来ならば元々用意してある人間サイズのボディを提供してさしあげるところなんですが、いかんせん
それはある人物のために用意してあるものでしてね。君には、見ての通り戦場でほぼ無傷の状態で残っ
ていたザクTのボディを改造したものをあてがいました。いささか大きな体ですが」
ノヴァは「キャハハ」と、いささか狂人めいた笑い声を発した。
スペランカーは自身の胴体、腕、脚をみつめる。――俺は、ザクそのものになったのか。
「先ほど私は個人的欲求から君を修復した、と言いましたね?私は君が自身の業(カルマ)とどう闘う
のかを見届けたいと考えています。それではザク君、君はこの新しい体を得、何をやりたいですか?
何をすれば満足できますか?」
スペランカーの心に真っ先に浮かんだのは憎き範馬勇次郎の顔だった。次いで、愛しいサムスの姿。
――俺の……俺のやりたいことは……
「君の心の底に潜む願望を見せなさい!」
――復讐だッッ!!俺は範馬勇次郎を殺したいッッ!!復讐だッッ!!
ザクが両手を振り上げたのでノヴァはその場から後退した。直後、拳が振り下ろされて大地が揺らぐ。
――復讐ッッ!!復讐ッッ!!復讐ッッ!!
何度も何度も両手で大地を殴り、地面が拳の形に陥没していくのを見てノヴァは満足そうに笑った。
「キャハ。声帯が無いので声を聞くことができないのが残念ですね。ですが、声帯もまたバージョンアップ
していく中で徐々に形成されていくことでしょう。まだ説明していないことがいくつか残っていますが、今は
それどころではありませんね」
ザクは大地を殴り、殴り、殴った。殴り続けた。憎き仇を想って、憎しみを大地に叩きつけた。
ノヴァはそれを遠目に見、笑い続けた。
戦士ザク、誕生。
明後日あたりには多分、最終回をお出しできるかと。最近、帰宅できない日が
多くて……ぅぅ辛い。とりあえず、今宵は感想のみです。
>>1さん(ザクさんですね)
おつ華麗さまです! 盛況の今、元気良く新しい一歩、という感じです♪
>>ザクさん
遂に壊滅宣告のFCWS。勇次郎、意外と高評価してはいますが、結局楽勝
でしたね。マリオたち無念。
そしてスペランカー。言い切られてます再弱だと。でも何だかいい方に解釈されて
ニュータイプ。そしてザクに。ここから昔書かれた大暴れ編へ、ですね。そして……?
>>ブラックキングさん
う〜ん嬉しい。懐かしの残像拳が、高度かつカッコ良く使われてたのが、何だか嬉しい。
斉藤が本人ではない、というのも何だか嬉しい。ちょっと若めで、初代を心から尊敬
してる五代目君を想像してしまいました。まだまだいろいろありそうで、楽しみです!
>>ユルさん
一気に読まされてしまいましたよ〜。それほど面白かっただけに、やっぱり分割して
下さった方が、楽しみが長引いて良かったなと。で、原作ではあまり怖くなかった
「女帝」ですが、このユルさんのはなかなか。ポデスタが、手をテーブルに
叩きつけてた辺りなんか、包帯の中の予想がつくだけに「ぅわ……」でした。
>>サナダムシさん
スコップが来るか、とは予想できたんですが、まさか突き刺さるとは。武器へと昇華
させる能力、の凄みですね。その辺、原作のガイアよりレベル高く感じます。
しかし敵味方とも、驚いたり解説したり、殆ど男塾のノリですね。シリアスバトル。
そんな中、やっぱり相変わらずのシコルが、なんとも愛しかったりしてます。
>>52 お題スレいい感じだな。飛葉飛火バキスレにきてくれればいいのに
>>70 まだ一人だろ。前の時も4人程来てた。まずそれを超えんとな。
ただ、飛葉飛火氏はいい感じだな。
こっちで本格時代物なんか書いてくれると面白いな。
ザク氏乙!
いよいよ真章突入って感じだな。復讐劇、なるか?
最期まで頑張ってくれ。俺は君と君の作品を見届けるからな。
>>50 小説は一度も読んだことがありません。学校で朗読させられただけです。
どうも向いてないみたいなので。
小説なんかをたくさん読んでたりしてれば、文を書くのにこんなに困らなかったのかな
とかと思ったりもします。
さて、今年はなんとかまともな夏休みをとることが出来ました。今日から6日間です。
なので今から旅行に行って来ます。
5、6日ほど留守にしますが、旅行先にネットカフェなんかがあったら
更新しようかと思っています。では皆さんもいい夏休みをお過ごしください。
>>46 >>53 >>58 >>69 簡単な返事で済みませんが、感想をどうもありがとうございます。
さんざ叩かれてる連張りについてなのですが、展開遅い4x5がすこぶる不評だったので
漫画的要素が更に薄いものをぶつ切りにしたらもっと悲惨な結果になっていただろうかと思います。
長文読むのがだるいという人には、私のSSは合わないでしょうし。バレ氏が行ってくれている補完作業も、
こっちの方が、SSの長さ等もはっきりとわかりますし、まとめやすくて良いかなと思っています(あくまで勝手な想像ですが)
未読の方、どうぞお暇でしたら読んでやってください。それではまた。
>しけい荘物語
加速度的に激しくなっていくホームレス軍団対しけい荘。
10話までのギャグと10話からの激闘の2部構成とは、
最初から計算されておられましたな?
ドイルもどうなるかわからないけど、シコルがやっぱり心配だw
>ザク誕生編
スペランカーリボーンですか。復讐を屋台骨に物語が展開していくのですな?
なにか大長編になりそうな予感がしますね。一年前から楽しみにしてたので
嬉しいです。お体に本当に気をつけて、最後の最後まで諦めず頑張って下さい。
>ふら〜りさん
最終回ですか。連載陣が減ってしまうのは哀しいな。人魚姫も終わってしまうし。
ふら〜りさん、次は出来ればメジャーどころの作品を。幽遊白書とかどうです?
>ユル
市ね
ところでうみにんさん音沙汰ありませんね。みゅうさん・誇り高き希望作者さんともども、心配。
>>74 うみにんさんはアク禁喰らってるんじゃなかったっけ?
76 :
誤爆した:04/08/04 12:22 ID:u9aOKk7X
銃夢ってマイナー作品なのかな?
LastOrderはともかく無印はかなりの傑作だと思うんだが。
結構有名だと思うよ>銃夢
スペインでは最も有名な日本の漫画なんだそうだ
俺もノヴァ教授とかすごく好きだし
/ 、 ニ ,
ノ ヽ _ノ ュ ツ
,.,,.._,....、
,-へヘ^/´ / /^'"'ヽ
, ,/ ヾ ` ! / ' /~`、`、 、._从人/し._,.
、i`、_ノ i'¨~"``・〃 '' "~'; '^ ヽ、_;,ノリ, 、.j (__,
ミヽ、___ノ,'j u `:,ミ. ノノ _) お (_
、ミ゛-ニニ彡 イ.____,,.〜、__,jト 、.~_ _ 彡 ) い (_
`ヾ、_,,.. 彳=((◎))-t((◎))=.it ミ__ニ-'´ノ ―=ニ ち (_
ヾ、二ニ'-';|: ~ _,.-+!‐!+-、.,__`| |ミー― '", ) い (_
`-tニ三`ト'", ^^` 、Tィミ 三ニ-'彡 '") (_
r''""~ ̄⊇==き三≡ー''~,イミヾー,,ニ=' '⌒∨^W⌒`
( '´ ,: ~ 冫キヽ ハ ヾ ;' .j'λニ=―-―、_
/ r〜ヾ、 / ∫`ト、 ' ノ ̄~"ヘ ,ゝ .' !
/ )丶,、!ミ j / ヾ、 `"./~ ヘ'、. , `i
/ / / `ー-∠、. `;,/⌒ゝ./ ____ヘ ! ハ
/ / / `y i , ‐" ̄  ̄"ー 、 ヽ、
教授のAAあったんだな。
このスレで野婆教授が出てくるとは思わなんだ。
80 :
バレ:04/08/04 22:32 ID:WRVyv3l4
>ユルさま
お気遣い有難うございます。
73の書き込みを見る前に既に分割して作成しておりましたので、
今回はあのような形で補完致しました。
4×5についても今は分割していますが、まとめた方が良いのであれば
対処します。
(補完作業的には、どちらも変わりません)
>>79 IDがすごい。zを無理矢理2と読めば22222。
>>
ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1088986819/588 二号機の復帰後、初任務。親子喧嘩でレイバーが暴れているとの通報で、太田たちが
やってきた。二号指揮の熊耳が、キャリアの脇で地図を見せながら太田に作戦を説明する。
「いい? こちらから一号機が当該レイバーを追い込む。そこを太田くん
が取り押さえる、と。解った?」
「はっ。了解しました」
「……ふうん。当日は随分荒れてたそうだけど、もう立ち直ったみたいね」
「立ち直るも何も。7号が最初と最期に敬礼した太田功は、何があろうと職務第一の
男なだけです」
「ふふ、そうね。じゃ早速、搭乗して頂戴」
太田は、キャリアに横たわる二号機の操縦席に乗り込んだ。久しぶりの感触である。
《そうそう、一つ言い忘れてたわ。今からさっき見せた地図をそっちに送るけど、》
レシーバー越しに、熊耳の声が聞こえる。
《指揮車から送られた図面などを、そっちで更に整理したり表示方法を変えたり
できる、新しいアプリケーションをインストールしてあるから》
「は? 急にそんなことを言われましても」
《大丈夫、使い易いものだそうだから。早速立ち上げてみて。じゃ、地図送るわよ》
はあ、と言いつつ太田はイングラムのシステムを立ち上げた。各部の表示ランプが
点灯する。コンディションオールグリーン、正面のメインモニタには熊耳の送った
地図が映る。OSが立ち上がり、新アプリケーションも立ち上がった。
二号機の向きと画面上の地図の東西南北を合わせるために、地図を回転させる……
【えい、っと。回せましたよ、太田さん♪】
「……え……っ!?」
メインモニタの中で、地図の端っこを掴んで、「えい」と回転させたのは。
モニタ脇のスピーカーから、小さな鈴を振ったような声で語りかけてきたのは。
二頭身の、いわゆるディフォルメされた画像の少女。エナメルホワイトの制服に、
長い黒髪の……7号(二頭身)だ!
「な、7号っっっっ?」
【はいっ。お久しぶりです、太田さん!】
ぴっ、とモニタの中の二頭身7号が敬礼する。
「お、お前、どうしてそんなとこに、というかその、えと、一体何なんだ?」
【……後藤隊長が、篠原重工に頼んでくれたんです】
モニタの中の7号が、語った。
【わたしのメモリユニットの中身を、二号機のOSに移植できないか、って。
これはこれで新しいシステムの実験になるから、やる価値はあるぞ、って】
「い、移植しただと? あ、でもお前、確か、殆どのデータはロストしたって」
【はい。ですから正直言いますと、二課の皆さんのこと、あんまりはっきりとは
覚えていないんです。……でも】
7号がモニタの中で、そっと胸に手を当てた。
【太田さんのことは、何だか、ここに残ってるんです。わたしのために、一生懸命に
なってくれたって。とっても良くして下さったって。『7号ぉぉっ!』って声、
わたしの中に、何だか、残ってるんです】
「……お前……」
【あ。でも一つ、残念なことも覚えてます。もうわたし、お茶は淹れてあげられ
ないんですよね。せっかくいろいろ考えてたんですけど、この体では】
太田は、こつん、と拳でモニタを叩いた。
「……バカ」
そしてその拳に額を乗せて、モニタに突っ伏した。
「お前って奴は……変わらないな、そんなことろに行っても……全然、変わらないな……」
《ちなみに太田くん》
唐突に、熊耳の声が割り込んできた。
《その7号は、モニタ上部の極小カメラと各種センサーであなたを見てるわ。だから
そうやって会話ができるの。……当然、あなたのその泣きっ面もしっかり見てるのよ?》
ばっ、と太田が体を起こした。今更のように慌てて、ごしごしと涙を拭く。
モニタの中の7号が、くすりと笑った。
「こ、これはだな、最近、徹夜が続いてたから目がしょぼしょぼして、だからそれで、」
【変わりませんね、太田さんも。こんなところから見てても、全然、変わってません】
「い、いや、だから、」
《はいはい、恋人同士の語らいはその辺で終わりにしてね》
「じゅ、巡査部長殿っ!」
【あは、熊耳さんったら♪】
「はしゃぐなっ!」
とかやってる間に、野明の乗る一号機に追い立てられたレイバーが、二号機の前方に
姿を現した。
《よし、始めるわよ。お昼ごはんまでに終わらせましょ》
「はっ、了解しました! ……じゃあやるか、7号!」
【はいっ!】
イングラム二号機の操縦席から、晴れ渡った大空に向かって、太田の威勢のいい声が
響き渡った。
「二号機、起こせええええぇぇっ!」
再会した太田と7号。二次元と三次元とに隔てられてはいても、
♪ハート 繋げばスパーク 上がるボルテージ……♪ というわけで。
OVA版パトレイバー主題歌、『未来派LOVERS』などを口ずさみつつ、
これにて幕とさせて頂きます。長々とおつき合い下さり、ありがとうございましたっ!
これにて、しばしSSはお休みします。が初心に帰って刃牙絡みで一つ、考えては
います。ので、またいずれ。必ず。
>>74さん、幽遊白書なら知ってますので、そちらも考えてみますね。(でも期待は
しないで下されい)
乙。
モニター画像になったか。
つまりは、まとめサイトのGIF画像みたいになったと見ていいのかな。
ハッピーエンドでよかった。
でも二次元の存在になっちまったって事は少しさびしい気もするが。
次回作楽しみにしてる。原点回帰してバキか。
ふら〜りさんお疲れ様です。
やはり基本はハッピーエンドですよね。
次回作、バキもいいけど幽白どちらかというと希望で〜す。
それにしても、うみにんさんと、誇り高き希望作者氏と
みゅうさん、憑依作者さん来なくなってしまいましたねえ。心配。
待ってますよ〜。
89 :
バレ:04/08/05 21:12 ID:PPgx3Dlu
>ふら〜りさま
てっきり、「すもも」みたいに記憶を無くした7号が復帰して、
太田との対面で記憶を取り戻すようなラストを想像してました。
(というか、誰も「すもも」は知らないか)
モニターキャラとなったラストは意外でしたが、個人的にはGJです。
しかし、二号機にもしAIがあったら、自分の体内で太田と7号が
いちゃついている様子を見て、どんな気持ちになるんでしょうね‥
SSはしばしお休みですか、自作に備えてじっくり充電して下さい。
私も月末はネットをお休みするかも。
ふら〜り乙
楽しく読めたよ俺は。
バレさん。無茶な願いだと思うがついでに
新生お題スレの方も補完してはもらえんだろうか?
>ふら〜りさん
連載乙でした。新作に備え、じっくり休養して下さい。俺も次はゆうはく希望かなw
>>91 無茶な願いすぎるだろそれは。
「ついでに」とか言える量じゃないぞ、あれは。
バキスレがもうひとつ出来たようなものだ。
93 :
バレ:04/08/05 22:37 ID:PPgx3Dlu
>>91 今日明日が動き取れませんので、週末で宜しければ保管します。
部外者の私が勝手にそういう事をして良いのか、やや不安ですが。
>>93 いえいえ。こちらこそ身勝手なお願いなのにありがとうございます。
是非お願いします。
nnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnn
>>80 お疲れ様です。適当なこと言ってすみませんでした。
補完に関しては、バレ氏にお任せします。
あまり負担のかからないよう、どうぞがんばってください。
97 :
人魚姫:04/08/06 07:02 ID:faTWnzua
機械仕掛けの人魚姫 エピローグ・風のそよぐ場所
>
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/ningyo/b10.htm 「に、似合うかな、わ、わたしなんかにこんな衣装が」
少しの照れ臭さと、至上の幸福感を感じながらわたしは真っ赤に顔を染めている。
わたしが纏っている衣装。一生に一度、その大切な時にしか着られないその純白。
子供の頃、ほんの少し憧れた事はある。いや、女なら誰だって憧れるはずの衣装。
だけどある時を境に、わたしの中でその憧れを消した。
いや、片隅に追いやったという方が正しいだろう。半人半機の怪物に改造された時だ。
こんな日が来るとは、思いもしなかった。女として、人としての幸福は諦めていた。
わたしを受け止めてくれる人がいる、なんて。 ……思いもしなかったから。
わたしの前で、わたしを優しく受け止めてくれた人が口をポカンと開けている。
「な、なんだよ。なんか言え、クリリン」
クリリンは小さな、だけど鍛えられた体を、真っ白いタキシードで包んでいる。
わたしの衣装と同じ色だ。わたしの目が羞恥に虚空を泳ぐ。ようやく彼は言った。
「い、いや、あの、その、あんまりさ、お前の、ウェディングドレス姿がさ、
…綺麗過ぎてさ、その、つい、見惚れちゃって」
照れながら頭を掻くクリリン。わたしは彼から視線を逸らして、顔を更に赤くする。
「な、何を言ってるんだ。もう、3ヶ月も一緒に暮らしてるっていうのに。
わ、わたしの事なんか、もうとっくに見飽きてるだろ」
照れ隠しに毒づくわたしを、穏やかに微笑んで見守るクリリン。それはいつもの事だ。
今日のような特別な日でなくても、その光景はもう日常になっている。
かなわないな。わたしは決して、この人にはかなわない。
98 :
人魚姫:04/08/06 07:04 ID:faTWnzua
セルとの戦いが終わってから、わたしとクリリンは一緒に暮らし始めた。
でもわたしは最初の頃、黙って彼の元から去ろうとした事がある。
生き長らえたとはいえ、ガラクタ同然となった体では、彼の負担になると思ったからだ。
ブルマは言った。全力を尽くすけど、わたしの科学力でも治るかどうか分からない、と。
カプセルコーポレーションでそれから1ヶ月、出来うる限りの治療を受けた。
でも、体は鉛のように重いまま。怪物のようだった力が、子供にすら劣ってしまっていた。
とある夜。わたしは治療中のカプセルコーポレーションから姿を消そうとした。
わたしに与えられた部屋で、クリリンが座ったままベッドの端を枕にして、眠っている。
この一ヶ月間、彼はわたしに付きっ切りでずっと看病してくれていたのだ。
わたしは彼を起こさないよう静かにベッドを脱げ出した。鉛の体を引きずって。
寝息を立てているクリリンの頬にキスをした。起こさないように、軽く触れるように。
ごめんな、と声に出さずに言った。しばらく顔を見続けていると、決心が揺らぎ始めた。
それを振り切るように、立った。そして彼に背を向け、ドアに向けて歩き始めた。
もう、わたしは彼を振り返らないつもりだった。
だってもう一度振り返れば、2度と決心が出来なくなるから。ドアノブに手を掛けた。
「何処へ行くんだ? お前は、俺の女房だぞ」
後ろから優しく声が掛かった。怒っているふうでもない。ただ、包み込むように。
「だって、わたしはもう、お前に、迷惑を掛ける、だけで」
「いいから。オレはお前がそばにいてくれるだけで、 …いい、から」
わたしは振り返った。わたしの大好きな、陽だまりのような笑顔がそこにあった。
99 :
人魚姫:04/08/06 07:05 ID:faTWnzua
その時以来、わたしの体はブルマが驚くほど奇跡的に回復していった。
やがてカプセルコーポレーションを離れ(退院といっていいか)、ごく自然に
わたしとクリリンは暮らし始めた。彼の恩師、亀仙人の家内に居を構えて。
彼は限りなく優しかった。
わたしはわがままを言ったり、時に癇癪を起こしたりして彼を困らせたりもしたけれど、
結局は彼に甘えているだけに過ぎなかった。その甘え方が、人より下手なだけだった。
彼はそんないびつなわたしを、陽だまりのような微笑でいつも包んでくれていった。
そして、今日。
純白のウェディングドレスに、わたしは身を包んでいる。彼の目の前で。
100 :
人魚姫:04/08/06 07:07 ID:faTWnzua
さっきまでの騒がしかった会話が嘘のように、2人の間を静寂が包んでいる。
お互いが何か言おうとするのだが、声が出ないのだ。もじもじとした時間が過ぎる。
わたしが何か話そうとした、その時。ドアの向こうから、とん、とんとノック音がした。
次に元気だが、礼儀正しい少年の声が聞こえてきた。孫 悟飯の声だった。
「クリリンさん、18号さん。そろそろ時間ですよ、急いで下さい」
わたしとクリリンの視線が重なった。そしてクリリンは、ゆっくりと手を差し伸べた。
「行こう、みんなが待ってる」
わたしは、クリリンの手に自分の手を重ねて、わたしらしくない返事をして微笑んだ。
「………はい」
悟飯やブルマ、ヤムチャや天津飯、ピッコロやデンデたちが祝福に来てくれていた。
なんとべジータまでいた。どうやら、ブルマに無理やり引っ張って来られたらしい。
バージンロードを歩き、神父の役を買って出た亀仙人の前で誓いのキスをした。
仲間たちに冷やかされるクリリンの横で、わたしは顔を赤らめたままそっぽを向いていた。
フフ。 …こんなに幸せでも、素直に表現することはまだ出来ないらしい、な。
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/illust/index8.htm (イメージイラスト/うみにん様より)
101 :
人魚姫:04/08/06 07:08 ID:faTWnzua
そしてわたしたちが一緒に暮らし始めてから、ちょうど半年が過ぎた。
クリリンと暮らしたこの半年は、どこを切り取っても幸せな記憶に満ちていた。
例えば、生命が息吹く雪解けの春のある日。
わたしたちは、道端に顔を出し始める植物を眺め、手を握りあってどこまでも歩いた。
例えば、灼熱の太陽が輝く夏のある日。
わたしたちは、海辺ではしゃぎながら、子供のように水を掛け合っていつまでも遊んだ。
そして、今の季節は秋。幸せはこのままずっと続いてくれると思っていた。
だが、異変は突然現れた。機械仕掛けの体のわたしが、猛烈な吐き気に襲われたのだ。
わたしはこの幸福が壊れる恐怖に怯えながら、ブルマの元を訪ねた。
カプセルコーポレーションの研究室で、ブルマはわたしのレントゲン写真を見て唸った。
「変ねえ。どこにも異常は見られないけど。18号、あんたは健康体のはずよ」
そのブルマの言葉に一瞬ほっとする。けど、相変わらず胸のムカつきは込み上げてくる。
「あんたの腕を疑う訳じゃないが、以前の治療でどこかミスをしたんじゃ…」
「あのねえ、あたしは天才よ。そりゃ最初はあんたの構造のあまりの複雑さに
根を上げそうになったけどさ、今はもう、 ……あ」
ブルマの言葉が止まる。わたしの心臓も止まりそうになる。やはり何か、重大なミスが?
そう思ったのも束の間、ブルマは弾けたように笑い出す。わたしの肩をバンバンと叩いた。
「アハハハハハ、そうかそうか、なるほどね〜。お・め・で・と・うッ」
あと1レスか2レスなんですけど、投稿規制のため30分時間開けます。
うみにんさん、イラストありがとうございました!
事後報告で申し訳ありませんが、作内で使わせて頂きました。
ところで、うみにんさん最近来られませんね。本当に心配。
103 :
人魚姫:04/08/06 07:42 ID:faTWnzua
小さな家の小さな部屋で、わたしは一生懸命に拙い編み物をしている。
真っ赤なベビーショーツ。今まで壊すだけだった手を、懸命に作る為に動かしている。
「たっだいま〜。あれ、お前また編み物やってるのか」
クリリンが汗だくになって帰ってきた。現場仕事がひとつ終わったのだ。
彼は今、たくさんの仕事を掛け持ちでこなしている。わたしは心配げに言った。
「大丈夫か、クリリン。眠る時間くらい取らないと」
「大丈夫だって。家族ももうすぐ3人に増えるから、少しでも稼がないとな。
それにオレ、今すっげえ幸せだからさ。 ……なッ」
悪戯っぽい顔で、クリリンはわたしにウインクする。わたしは顔を赤くして呟いた。
「………バカ」
104 :
人魚姫:04/08/06 07:44 ID:faTWnzua
クリリンは微笑みながら、わたしの編んだベビーショーツに目をやって言った。
「相変わらずへっただな〜。毛玉だらけだぞ」
「う、うるさいッ! 着心地は、きっといい…はずだッ」
むくれるわたしをなだめるクリリン。それはいつものやり取りだ。彼は疑問気に言った。
「なあ、なんで女の子用の服なんだ? 生まれてくるのは男かも知れないし」
わたしは目を閉じて微笑んだ。その質問を待っていたのかも知れない。静かに言った。
「女の子さ。生まれてくるのは。天使みたいな、いい子だよ」
彼はほんの少し黙っていたが、やがてにっこりと笑って、語り始めた。
「実はさ。昨晩、夢を見たんだ。夢の中に天使みたいな女の子が出てきてさ。
お世話になるね、パパって挨拶したんだ。その子見て、名前ももう決めたよ」
「…そうか。実はわたしも、名前は決めてるんだ。せーの、で一緒に言おうか?」
「ああ。せーの、だな」
せぇーのッ、マ……
その瞬間、薫風がわたしたちをゆっくりと包んでいく。
穏やかな風のそよぐこの場所で、わたしとクリリンの言葉は重なった。 …その名前、が。
わたしは心地よい風にしばらく身を任せながら、やがてくる3人での生活に思いを馳せる。
優しくそよぐ薫風が、まるで未来を祝福してくれるかのように、また吹いた。
(機械仕掛けの人魚姫 了)
まああれですな。この作品は一言で言えば、「まぐれの大当たり」ですな。
8話9話は自分でも良く書けたし、そこそこ受けるだろうな、と思ってましたが、
予想外に楽しんでいただいたみたいで、喜んでおります。
敬愛するらもさんが無くなったり車上嵐にあったりと、最近辛い事多かったんですが、
皆様方のレスは力になりました。ありがとうございます。
あと、まあ別に隠してた訳でもなく、コテ使ってもしも荒れたらとか思っただけです。
大丈夫みたいですね。気の回しすぎだったか。途中からばればれだったし。
あっちの更新滞っててすみません。落ち込んでたりしてたもので、色々と。
感謝の気持ちを込めて、これからおまけとしてボツエピローグを載せます。
実は続編を書こうとしてましたが、ここで終わるのが一番美しいと思い止めました。
ですから、このボツエピローグは、ボツSSのプロローグでもありました。
ま、人魚姫超えられる自信が無くて逃げましたがw
では、またお逢いしましょう。
最後に、長々とお付き合い下さりありがとうございました。
特にうみにんさん、イラストのプレゼント本当に嬉しかったです。
おまけ ボツにしたエピローグ
ボツエピローグに至る前提として。
18号はセルに貫かれた光線により、瀕死の重傷を負っている。
夢の中で18号は未来の我が娘、マロンからこう言われる。「パパを信じて、待っていて」
クリリンは必死で意識のない18号を呼びかける。
18号はその呼び掛けに意識を取り戻し、クリリンへ美しい微笑を浮かべる。
18号が助かったと思って喜ぶクリリン。だが、次の瞬間、18号は帰らぬ人となる。
そして3日後。カプセルコーポレーションのとある一室。
クリリンは18号が眠っているベッドの横で、じっと彼女を見ている。
そこへ入ってきたブルマ。
ブル 「きれいな顔ね。同性として嫉妬するわ」
クリ 「へへ、オレの女房になってもらう女ですからね」
ブルマは懐から時計のような機械と丸い玉を出し、クリリンに渡す。
ブル 「ハイ、悟飯くんから借りた四龍球とドラゴンレーダー。でも本当にいいの?
悟飯くん手伝いたがっていたわよ。どうしても一人でいくの?」
クリ 「ええ。だってこいつはオレを一人で探してくれてたから。オレの、女房だから」
ブルマはその言葉に頷き、次にドラゴンレーダーを開く。
ブル 「見てクリリン君。残りの6つ、変なの。東と南の果てにあるひとつずつの
球はともかく、一ヶ所に4つ集まってるわ。誰か、他に探している人がいるわ」
クリ 「関係ありませんよ。オレが必ずドラゴンボールを全部集めます。
そして、必ず18号を生き返らせる」
クリリンの言葉に、改めて18号を見るブルマ。美しさにため息をつく。
ブル (まるで、おとぎ話の眠り姫、みたいな美しさね)
いつの間にかべジータが入ってきた。べジータは18号を一瞥すると、クリリンに言う。
ベジ 「フン、たかだか人形にご苦労なこったぜ」
ブル 「ちょ、ちょっとベジータなんて事いうのよ、クリリン君に謝まり…」
その言葉に、今まで18号を見ていたクリリンがベジータの方を向く。鬼神の眼光で。
クリ 「ベジータ…、オレはともかく、女房を悪く言うのは、絶対に許さない」
ベジ 「て、てめえ…」
不穏な空気が流れる二人。ブルマが中に割って入り、事なきを得る。
ベジータはチッと舌打ちをして、部屋から退室する。
ベジ (オレの半分の戦闘力も無い地球人の分際で…。殺されるかと思ったぜ)
ベジータが去ったあと、また静寂が訪れる。だがやがてクリリンはブルマに言う。
クリ 「ブルマさん、いってきます。 …女房のこと、よろしくお願いします」
ブル 「必ずドラゴンボールを集めてきてね。気をつけていってらっしゃい」
クリリンは18号にキスをした後、爽やかな顔で大空に飛び出す。ここでエンド。
18号サイドストーリー・機械仕掛けの人魚姫・完。
クリリンサイドストーリー・眠り姫に捧げる龍 に続く。
こういうエピローグ、そしてクリリン主役の続編を考えていました。
続編は話も半分出来ていたんですが、人魚姫があまりにも予想外に受けたんで
ヒヨって止めました。それにクリリンて、名脇役だから生きるキャラなんですよね。
主役は難しい。予定ではピッコロとかも活躍する、アクション風味な話だったんですが。
ちなみに中ボスはピラフと堕ちるとこまで堕ちたヤムチャ、ラスボスは17号でした。
この話は元々ヤムスレでやる予定でした。ドラゴンボール3部作最終作として。
ですが「復讐の狼」で自らの不徳であちらにアップ出来ない状態になってしまい、
お蔵入りしてましたが、18号の話題が出てたので蔵から引っ張り出しました。
復讐の狼・ベジータ主役の「血に縛られし呪われ王子」・そしてこの人魚姫で
ドラゴンボール3部作です。ベジータのやつは、やるかやらんか分からんですな。
人魚姫がここまで人気出るとは思わなかったもん。ヒヨる。
ラーメンマンどうしよう。いえ、ちゃんと書きますよ。では、失礼します。
乙。出勤前に楽しませて頂きました。
>>人魚姫作者氏
いや〜乙でした。
エピローグもまったりとそして愛の溢れたいい出来だったと思います
やっぱりあなたの描くクリリン×18号は俺的にツボです
後半の8話以降は正に完璧でしたね。5、6話あたり(だっけ)のエロシーンのときは「これ必要あるのか?」と感じつつかなりヤだったのでもう読むのやめようかと悩みましたが最後まで読んで正解でした、素晴らしかった
ところで前スレでも尋ねたのですが、娘の名マーロンがマロンになっていたのは?(しつこくてスマソ、気になったもので
111 :
みゅう:04/08/06 09:14 ID:fusnAR4w
人魚姫感動しました!
パオ氏、お疲れ様です!そしてありがとう!
110さんも書いてましたが、8話からエピローグまでは完璧でした。
8話で泣かせくれて、9話で感動させてくれて、エピローグで暖かくさせてくれました。
うみにん氏のイラストも雰囲気に有っててよい感じですね。うみにん氏、お疲れ様です。
本当に素晴らしい作品だったと思います。(ただ、前編の自慰シーンだけは嫌だったな)
またこういうのを書いて欲しいです。
あと、魔界編も楽しみにしてますので、そっちの更新も「鬼更新」でお願いしますw
それにしてもおまけの没エピローグ、そして続編も面白そうでしたね。
これ、もうひとつのアナザーストーリーとして書いて欲しいのですが。
>>ふら〜り様・人魚姫作者様(パオ様?)
お二人ともついに完結ですか。お疲れ様です。しかし、完結は寂しいですが
お二人とも次回作への意欲満々のようで、今後の心配はいらなさそうですね。
SSの感想はじっくり読んでから今晩くらいに書き込もうと思っています。
>>ふら〜り様
感想書く前に僕もこっそり幽白の方を希望してみたり・・・。
もちろん、ふら〜りさんの書きたいものを最優先してもらうのが一番ですが、
もしも悩んでいるのでしたらぜひに。幽白は格闘でも恋愛でも面白そうなので。
>>人魚姫様
むぅ。なにやらイラストを反映していただいたようで・・・
実は時間がなくて下書きなしの一発書き(しかも資料なし)なので凄まじく
穴だらけです。ブルマやチチの顔が微妙に思い出せなかったので、窮余の策で
「むさい男たちの祝福にちょっとひいてる二人」の図にしてしまいました。
さらに今気付いたのですが、とんでもないことに餃子の耳がないです。
手落ちだらけで申し訳ないですね・・・。
イラストの僕の脳内裏設定ではベジータが仲人やってたりします。
飛影の話はとてつもなく読みたいです。気分がのればぜひともお願いします。
幽白の飛影、パッパラ隊のとびかげちゃん、どちらの飛影もかなり好きです。
で、お二人の作品の完結のドサクサに前スレの残りを利用して出木杉帝国の1〜11を
修正させてもらっています。一度うPしたものを後から修正するのもどうかとは
思ったのですが、どうしても納得いってなかった部分なため、お許し下さい。
具体的にはタイトル横のレス番で4・5のしずかの戦いを大幅に修正しました。
他2・6・7・11には説明文追加のみです。勝手な修正にも快く
ご了承くださったバレ様に、もう一度感謝します。(本当にお手数かけます。)
これからは誤字脱字・放送禁止コード以外での修正はしないと思います。
>>最近来てない
仕事柄、人が休みのときほど忙しいので、夏休みはちょっときついのです。
でもコツコツと着実に続きは書いてますよ。少しでも読んでくれてる人がいる以上、
投げだしはしないつもりです。
うみにん氏乙かれ。久しぶりの更新かと思ったら修正ときましたか。
でも前のよりしずかちゃんが小学生らしくなって良くなってますね。
続きも楽しみにしてますので、ゆっくりでいいので頑張ってくださいね。
116 :
作者の都合により名無しです:04/08/06 13:48 ID:Ceqdg7bF
>人魚姫作者さま
いいものを本当にありがとうございます。後半は本当に感動させて頂きました。
個人的にもこの作品は保管しておきます。パオさんのは、死刑囚編も個人保管してますよ!
出来れば次もこういう話が読みたいな。楽しませて頂いて、本当にありがとうございました。
>うみにんさま
本格復帰を心からお待ちしております。仕事の負担がかからない程度に頑張って下さい。
あなたの潜在エネルギー数値化プログラムつけてみました。。。
名前の欄に『地空海川山崎渉水石谷気』と書き込めば
【1850】とか【4803】とか記録が出ます。
数値は書いた日付とか時分秒とかレス番号で反映され0〜10000くらいまでありますよ。。。
意見が割れた時にジャンケン代わり使ったりお暇なら遊んでください。
>人魚姫作者さま(パオさま)
エピローグを一読した後、じんわりとした温かさに胸が一杯になりました。
うみにんさまのイラストもクリリンと18号の結婚式の雰囲気が良く出てて、
祝福される2人の幸せそうな顔が思い浮かぶようでした。
最後の、ほんの少し余韻を残して終わるような形も印象的です。
8話9話であれほど盛り上げておいて、少しずつフェイドアウトしていくような
映画のような終わりました。本当にパオさん、お見事でした。
そして心から名作を描ききって下さって、お疲れ様と申し上げます。
でも、読み終わってしばらくしたらぽっかりと心に穴があいたような感覚が残りました。
もうこの物語を読めないのか、と寂しくなりました。でもそれは贅沢というものですね。
でも、おまけの眠り姫と龍も読みたかったなぁ。番外編、という事でどうですか?
パオさんの次回作、期待しております!次はべジータ編ですか。それも楽しみです。
書かないかもなどと仰らず、出来ればまたここで感動させて下さい。
多くのファンがきっとまた名作を待ってますよ!
最後になりましたが、BBSの掲示板でバレさんが書いておられましたね。
もうすぐ職人2年目ですか。3年4年と活躍される事を心から祈っております。
第十八話「総力戦」
手品の開始。窮地にあるドイルから放たれた不敵な言動。まだ切り札を持っているのか、
はたまた単なる虚勢か。だが、ガイアはあえてそれを無視し、戦力分析を実行する。
ドイルに刺さったスコップ、計三本。右腕を使用不能に陥らせ、左膝を破壊したことに
より機動力も封じ込めた。また、脇腹からの出血は確実に進んでおり、失血で自滅するの
も時間の問題である。
以上の分析をもって、ガイアは確信する。自己の勝利が限りなく近いことを。
「このまま一気に決めたいところだが、あいにくスコップが打ち止めだ。そこで、そろそ
ろ次のステージに移ろうと思う」
砂場を離れようとするガイア。が、ドイルとしては、何としてもそれを阻止せねばなら
なかった。これ以上、公園の遊具を使用されると対応し切れなくなる可能性が高い。すな
わち、敗北である。
決して距離は遠くない。滅びゆく膝を酷使し、決死の覚悟でドイルが踏み込む。間合い。
ドイルは左腕のスプリングを作動させる。脅威の初速を得た左拳は──すり抜けた。
「は、外した……ッ!」
「強化スプリングとはなかなか愉快な発想だが、所詮はバネにすぎん。軌道が直線だから、
多少警戒しておくだけで回避は容易いのだよ」
自身の武器を完全否定され、ドイルの心がギシギシと悲鳴を上げる。その隙を、ガイア
が見逃すはずもない。すかさず、握り込んでいた少量の砂を両目に浴びせる。
「あぐっ!」
もはや、ドイルの心身はガイアの手中にあった。また、それは戦局が完全に傾いたこと
を意味していた。
ガイアは悠々と場所を変更する。「もえないゴミ」という札が掲げられた、金網製のゴ
ミ箱。その中から取り出されたものは、何とスポーツ新聞であった。
「ゴミの分別もまともに出来ぬ人間が多くて困る。だが丁度いい、これを利用させてもら
うとしよう」
ようやく視力を回復しつつあるドイルに、刃物が刺すような感触が連続で発生する。自
分の肉体に何が起こっているのかを確かめるべく、まだ砂の残る目を強引に開く。
「紙……新聞紙か!」
ガイアはスポーツ新聞を細かく千切っては、手裏剣の要領で放っていた。紙ですら、ガ
イアの手に掛かれば刃に化ける。
近付かねば、むざむざと新聞紙の餌食となる。少しでも距離を詰めようと試みるドイル。
が、足は全く動かない。左膝が完全に壊れたようだ。しかも、血が決定的に不足している。
スコップと新聞紙による裂傷は、急速にドイルの身体から血を奪っていた。
「おやおや、どうやら勝手に自滅してくれそうだな。では、無理に攻め込むことなく、守
りに徹することにしよう」
瀕死のドイルに対し、無情にも言い放つガイア。決着は秒読み段階に入った。
幕を引くに相応しいと選ばれた最後の舞台、ブランコ。公園を代表する遊具の一つであ
る。鎖からぶら下がる三つの椅子を手に取り、ガイアはそれを高速で操り始める。まるで
ガイアの手足と化したかのように、椅子は彼の周囲を舞う。鎖と椅子とで構築された、結
界が出現したのだ。
ドイルは試しにと小石を拾い、投げ付ける。案の定、小石はガイアに到達することなく、
彼を守護するブランコによって粉砕された。地面に空しく散っていく小石を見つめながら、
ガイアは見下すような拍子で敗北を宣告する。
「これで、君は完全に勝ちを失った。私に攻撃はおろか、近付くことも出来ぬまま、出血
多量で自滅していくのだよ」
「フフ……視界が薄れてきやがった。でも、ここから逆転するのが手品師……」
「クックック、無理をするな。私が操るブランコは、たとえ弾丸でも通さんぞ」
ブランコの前に仁王立ちするドイル。直立しているだけで、全身の傷口から血が滴り落
ちていく。もう時間は残されていない。ドイルは心を静め、親指のスイッチを入れる。
「ファイア……」
途端、公園中を強烈な光と音が包む。まるで、公園内に恒星が新しく誕生したかのよう
だ。ドイルの胸部から噴き出た爆風は、火炎の柱となってブランコの椅子と鎖を一瞬にし
て吹き飛ばした。
渦巻く硝煙に紛れて揺らめく、小さな人影。かろうじて難を逃れていたガイアだ。全身
に軽い火傷を負っているが、致命傷には至っていない。
「まさか爆薬とはな。火薬の匂いに気づいていなければ……やられていた」
勝利寸前にあって手痛いダメージ。計算外の事態に、自分の甘さを悔いるガイア。だが、
ドイルにこれ以上の武器は残されていないはず。敵の手札は出し尽くされたのだ。今度こ
そはと、ガイアは安堵を噛み締める。
そこへ──煙の向こうから響くドイルの声。
「子供の頃は信じていたよ。手品にタネなんかないって、全て真実なんだってね……」
「……貴様ッ! まだ生きていたのか!」
「一度やってみたかった。タネも仕掛けもない、手品ってやつを!」
ドイルに残された最後の手品。それは、全力で握り締めた拳で、全力で殴ることだった。
タネも仕掛けもない純粋な手品。そこに邪念はなく、すなわち危険もない。ドイルの力
任せの連打が、ガイアには全く読めない。打たれ続けるガイア。だが、彼に苦痛の色はな
い。むしろ、心地よさそうにも見える。
「思わなかった……こんなにも素敵な敵兵と出会えるなんて……」
ドイルのアッパー。スプリングによって割られていたガイアの顎が、この一撃にて完璧
に粉砕された。その目が虚ろなものと化す。あと一撃で倒れる。
「ガアァッ!」
吼えるドイル。しけい荘の底力、手品師としての矜持、全てを左拳を込める。自分の手
でフィナーレを決めてこそ、胸を張って舞台を降りられるというもの。
──が、届かず。
肺に残された空気。拳が当たる寸前、ガイアはそれを声帯を通し吐き出したのだ。一秒
にも満たぬ間、ドイルの動きが反射的に止まる。命取り。もっとも与えてはならぬ時間を、
ドイルは奪われてしまった。
瞬時に、ガイアはドイルの背後を取る。そして、機械の如き精密な動作で裸締めの体勢
に移る。しかし、裸締めは実行されなかった。
ドイルの意識は既に失われていたのだ。ガイアが手を放すと、ドイルの全身はゆっくり
と地面へ伏した。敬礼するガイア。そして、オリバが決着を告げる。
「勝負ありッ!」
第十八話終了。
ふら〜り氏、パオ氏、お疲れ様です。
そして、完結おめでとうございます。
まだ読んでいないので、あとでゆっくり楽しみたいと思います。
前回まで
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora021_02.txt ======================================================
「先生! やっぱり生きちょったでごわすかセンセイ! ドラは信じておりも
したぞ!」
タヌキの時もそうだったが、ドラえもんは先生の前ではなぜか薩摩弁になる。
非常にうさんくさいものを感じたのび太であったが、師弟の再会に水を差すよ
うな無粋な真似はしなかった。ドラえもんはSAIGOの太い足にしがみついて泣き
じゃくり、SAIGOは窓の外に目をやってボケーと突っ立っている。
「ドラどん」
SAIGOはドラえもんの頭を鷲づかみにして、足からひっぺがして窓の高さまで
持ち上げた。
「あれは何でごわすか」
開け放した窓からは、遠く小さく高層ビルの明かりが見える。林立するビル
群に混じって、ひときわ背の高い鉄塔のシルエットが闇の中に浮かんでいた。
SAIGOはその鉄塔のことを聞いている。
「は。あれは東京タワーと言いもして、若い処女を塗り固めて建造した日本一
の……」
「幕府じゃな」
「は?」
「おいどんが心血注いで打倒した幕府が、あげなどえらか化け物になって復活
しとっちゅう。ドラどんはみすみすあれを見逃しとったでごわすか」
「じゃっどん先生、あれは幕府じゃのして東京タワーちゅうて、日本中の中小
企業の社長があん中で一心不乱に肉体改造を……」
「問答無用ー!」
SAIGOはドラえもんを窓から投げ捨てた。ドラえもんは偶然通りがかった海
賊船の甲板の上に着地して、伝説の幕府の財宝を求めて大海原へ旅立っていっ
た。
「ほんのこつ気に食わん! 幕府もそうじゃが、幕府の犬まで生き返っちょる
のはどげんしたことか!」
SAIGOは首を室内にねじ向けた。ドラえもんを掴んでいたのとは反対の腕に
はISAMIがぶら下がっていた。
「死ね! 死ね! ジュテームと百回叫んでミンチになって死ね!」
ドラミとの闘いで根元から折れた刀を、そうとは気づかずブンブン振り回し
ている。SAIGOの長いリーチに阻まれて、柄だけになった刀はひたすら空を切
るばかりである。
「SAIGOさん、ISAMIを離してやってくれませんか。この通り」
HAJIMEがSAIGOに向かって頭を下げた。SAIGOはもちろんHAJIMEの言う事など
きかない。
「おんしらの頼みなど聞く耳ごわせん。ここでおんしらを取り逃したら、日本
はたちまち未開の蛮国に逆戻りですたい」
「日本は変わったんですよ、SAIGOさん。もはや拙者どもの出る幕はどこにもな
い。過去の遺恨は水に流して、これからは原宿に店でも開いて仲良くやってい
きませんか」
「黙らっしゃい! おいどんの目の黒い内は、幕府に好き勝手な真似はさせん
でごわすよ! このSAIGO、命に代えてもおんしらを倒す! そう絶対に!」
「おい」
HAJIMEの手には、いつの間にか日本刀が握られていた。空間を飛び越えて現
れたとしか見えない、神速の抜刀だった。HAJIMEはSAIGOの喉元に白刃を突き
つけて、静かに言った。
・パオさま
正直いってヤムチャの下りや過度のHシーンは蛇足とも思いました。
おそらく、パオ氏のサービス精神が裏目に出てしまった結果と思います。
でもそういった蛇足分の(失礼)マイナス面を差し引いても、
この「機械仕掛けの人魚姫」は漫画SSの中で燦然と輝く名作と思います。
何人もの方が書いておられますが、8羽からのクリリンと18号の濃密な愛は
本当に読んでて涙が出ました。感動しました。
クリリンの大きさと18号の一途さがいきいきと描写されていて、そのシーンが
アニメになって私の頭に思い浮かぶようでした。
クリリンの田中真弓さんと18号さんの声優さんの声ではっきりと。
本当に感動をありがとうございました。お疲れさまでした。
・サナダムシさま
人間兵器のドイルと、精密機械のごときガイア。凄まじき熱闘でしたね。
でもしけい荘の無敗圧勝とはなりませんでしたか。ドイル好きなので悔しい。
しかし、漫画のバキよりよほど盛り上がってる5対5決戦ですね。
残り2戦、本当に期待。
・うみにん様
お仕事お疲れ様です。復帰をお待ちしております。
「コールタールぶっかけは許してやるっつってんだからよ、テメエは素直にハ
イ分かりましたって言えばいいんだよ。幕府幕府って、あんまりくだらねえ事
ぬかしてっと刺すぞ、コラ」
「おいどんが悪かった」
SAIGOはISAMIを脇に放り出して、蜘蛛みたいに床にはいつくばった。
「ISAMIどん、暴力はよくない。刀はやめて話し合いで解決しよう。の」
「悪いと思ってんなら謝れや」
「おいどん、ほんまに反省しとる。許してたもっせ」
HAJIMEはSAIGOの太ももを刀の切っ先でツンと突っついた。SAIGOは子犬のよ
うな悲鳴をあげて、土下座したまま後ろに飛びすさった。
「許して下さい、プリーズ、だろ?」
「許して下さいでごわす。ポキールでごわす」
「よし」
HAJIMEは刀を鞘に収めた。SAIGOは何事もなかったかのように立ち上がって
雀荘の奥に向かって大声を張り上げた。
「ドラミどーん!」
ドラミはジャイアンベッドに潜り込んで高いびきをかいていた。SAIGOはも
う一度、やや苛立った調子でドラミの名を呼んだ。
「ドラミどーん! 師匠のピンチに弟子がふて寝をぶっこいとるとはけしから
ん! 起きんしゃい!」
「うっさいわね」
ドラミはベッドから半身を起こして、SAIGOに火炎放射器の銃口を向けた。
「先生の分際であたしに指図するんじゃないわよ。タヌキん時みたいにまた燃
すわよ」
「おいどんが悪かった」
SAIGOは床に大の字に寝っ転がって、反抗の意志がないことを示した。首だ
け持ち上げてドラミを見て、熱弁を振るって許しを請うた。
「そげなもんで燃やされたらSAIGO死んでしまう。欲しいものなら何でも買っ
たるじゃって、武器を引っ込めて笑っしゃんせ。の、笑っしゃんせ」
「笑ってほしかったらさっさと用件を言いなさいよ」
「ドラミどんの例のカラクリな、あれを貸して欲しいんでごわすよ」
「プリーズが足りないわよ」
「ポキールでごわす」
「おらよ」
ドラミはポケットからテーブルを取り出してSAIGOに投げつけると、不機嫌
そうに布団を頭からかぶって再び寝てしまった。結局最後まで笑わなかった。
SAIGOはケロリとした顔で起き上がって、のび太達が対局中の雀卓を脇にどか
してテーブルを据えた。テーブルの盤面にはモニターが埋め込んであった。
「オッサン、本当はムチャクチャ弱いんだろ」
一部始終を見ていたのび太の指摘には取り合わず、SAIGOはHAJIMEとISAMIに
向かって言った。
「HAJIMEどんの言うことももっともじゃが、やはり物事には順序というものが
あっでごわす。ここは一つ、長年の争いに決着をつけようではごわせんか」
「どうやって?」
HAJIMEの質問を受けて、SAIGOはテーブルの端から伸びたコンセントを壁の
ソケットに差し込んだ。モニターに光が灯って、BIOSの起動画面が表示された。
「雀荘で雌雄を決すると言えば、勝負は麻雀に決まっとりもす。HAJIMEどんに
ISAMIどん、二人まとめて地獄に叩き落としちょっちょるまいやー!」
「シチョッチョルマイヤー?」
首を傾げるのび太をさらりと無視して、SAIGOはテーブル側面のスタートボ
タンを押した。HAJIMEとISAMIはモニターに表示された画面を見て、しばし言
葉を失った。
>ふら〜りさん
人魚姫に先駆けてのA・L最終回でしたが、人魚姫の山場が
前回だったということもあってか、最終回としての余韻は
A・Lの方が深かったように思います。ども、お疲れ様でした。
>パオさん
人魚姫、めでたく完結いたしましたな。おめでとうございます。
緩急をつけたストーリー展開に、朝日の昇るようなエンディング。
面白かった。
オナニーシーンが賛否両論のようですが、パオさんとしては
あそこの描写に一番力を入れたかったんじゃないのかな、と
ワタクシは勝手に思っております。違ってたらゴメンチャイ。
130 :
作者の都合により名無しです:04/08/07 00:23 ID:2j9axuXv
ドラ麻雀もしけい荘も素晴らしい作品で、今回もすっごく面白かったけど
やっぱりここ最近の人魚姫が神掛かってたなあ。8話よりこっち。
パオ氏は汗臭い作品より、こういうのが美味いかもね。終わって寂しい。
ところでVSさんとパオさんがらもさんのファンという事がわかって嬉しかった。
らもさん亡くなって悲しいね、本当に。でもあの人らしい死に方でもあるかなあ
パオ氏
確かに過度なアダルトシーンはまったく削ってしまっても問題なく話は展開できたかと思われます
勝負に負けて動けなくなった時点で死を受け入れあきらめかけたその時に娘の声が……
っていう感じでスッキリ行った方が、読者にとってもまったく疑問点や不快感のないものとなっていたかもしれません
オナニーシーンについては私個人としてはあっても特に問題はないかと思いますが。
しかし私は前半のアドベンチャー的ストーリーも大変楽しんで読んでましたし、何よりさんざん既出ですが
後半部の18号とクリリンの深い愛と暖かさはこれまでの誰よりも豊かに表せていると思います。
私も田中真弓と伊藤美紀(18号の声優)の声でアニメーションを脳内で上映しながら涙を流しました。きっとあなたが18号とクリリンのことをとても大切に思っているからこそここまでの出来に仕上がったんでしょうね
これでもう続きがこのスレに投下されないと思うと残念でなりませんが、このカップリングでの小説をまた暇なときにでも是非もう一作読みたいなと思います
短めの作品で18号スレへの投下でも構わないので
では最後になりましたがお疲れさまでした。感動しました
ちょいまち
らもさん死んだの!?
一週間以上前じゃんか・・・・・・orz
>>134 それはちょっとあまりにも失礼な意見。基本的に職人さんはいつでも来て欲しい。
俺も人魚姫の感想多めに書いたけど、最終回だから盛り上がるのは当然す。
VSさま、サナダムシさま、これからも期待しておりまっせ。
スレと関係ないんだけどさ、俺「釣り」とか「釣り師」っていうのは、
釣り師 ↓
/| ←竿
○ / |
. (Vヽ/ |
<> |
゙'゙":"''"''':'';;':,':;.:.,.,__|_________
|
餌(疑似餌)→.§ >゚++< 〜
の組み合わせだと思ってたんだけど、
最近自称釣り師がダイレクトで自分の本音を攻撃されて「釣れた!」とか
言ってるの多いよね。
これは、どっちかというと、
,〜〜〜〜〜〜 、
|\ ( 釣れたよ〜・・・)
| \ `〜〜〜v〜〜〜´
し \
゙'゙":"''"''':'';;':,':;.:.,., ヽ○ノ
~~~~~|~~~~~~~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ト>゚++<
ノ)
かと思うんだけど、どうよ?
>>134 人魚姫作者さんですか?
頭おかしいだろてめえ。
>>人魚姫さん こと パオさん
いやははは。何かこう、肘で小突きたくなってきますな。18号。このこのっ、と。
今までもそうでしたが、18号視点で語られるとクリリンが凄く「いい男」に見えて
きますね。ある意味その究極形である、「いいお父さん」に到達してますし。
そして「お嫁さん」から「お母さん」になっていく18号……これこそ一番の幸せ、
これこそ何よりのハッピーエンド。お疲れさまでしたっ!
あと。おまけについては、ベジを睨み倒すクリリンが良かったです。愛の力、ですねぇ。
>>サナダムシさん
>しけい荘の底力、手品師としての矜持
ここでアレですね。仲間たちの顔が順番に浮かんで、最後に自身の、手品師としての
人生が走馬灯になってその全てを込めて……と。タネも仕掛けもない手品で勝負に出た
ドイル、それを正面から受けて立って打ち砕き、そして敬意を込めた礼を送るガイア。
漢、でした。二人とも。拍手!
>>VSさん
おぉ、久しぶりの麻雀教室。今となっては大河ドラマの方の映像を思い浮かべつつ
読んでしまったりして、なかなか味わい深い気分な感じです。あと、
>刀はやめて話し合いで解決しよう。の」
この、最後の「の」が……妙ぉ〜に気にかかるというか。ここだけトーンが上がって
そうで。シナつくってそうで。SAIGOどん。ポキール。
>>うみにんさん
私も、盆休みなど遥かなる時空の彼方な職場におりますので、多少なりとお察しします。
そんな中でも「投げ出しはしない」とは嬉しいお言葉。お待ちしておりますよっ。
第7話「達人敗れる!」
深夜2時。東京都内の高層ビルの屋上で、対峙する2人の男。
達人、渋川剛気と柳龍光である。以前にも立ち会ったことのあるこの2人。
当時の勝敗は、渋川の敗北に終わっていた。この時柳に奪われた彼の左目は、今は義眼になっている。
渋川のとって、この日はその借りを返すチャンス。いつものようにおちゃらけた顔をする達人
だが、その内に秘めたる闘気は最大トーナメント時以上に燃えたぎっていた。
2人は、構えも無しにじりじりとお互いの間合いへと近づいていく。それこそ、10秒に1センチ
ずつ程のゆ〜っくりとした動きで。両者が近づくと共に、張りつめていく緊張感。
ビル真下を通る首都高のトラックの音が、うるさく鳴り響いているが、2人の耳には一切その音は入ってこない。
その沈黙を破ったのは柳の言葉だった。
「渋川よ・・。武道家って奴ぁ とろけそうに甘い・・。立ち会いたいのならいつでもかかって
来い・・。 このようにナァッッ!」
張りつめていた緊張感が、糸を切るように解き放たれる。本番開始!と同時に柳から放たれた2本の鎌が渋川の
顔面に向けて飛ぶ。不意に放たれた飛び道具。達人、渋川。鎌の動きを一瞬で見極めて回避。
先にいる柳へと視点を向ける。「いい身のこなしだ渋川・・」対する柳はすでに渋川の目の前に迫っていた。
放たれる打撃技。空手でもない、ボクシングでもない、ゆら〜りとした柳独特の動き。
恐らくは世界のどの格闘技にも属さない、柳龍光独自の技。比べて単調な動きである空手やボクシングに
慣れた並の格闘士では、まったく受けきる事が出来ないだろう。しかし相手は百戦錬磨の実戦経験を持つ
渋川。彼の合気は、古今東西 どんな格闘技にも柔軟に対応出来る技。ましてや柳龍光は一度立ち会った
事のある相手。その動きを見極めるのはたやすい。幾度も放たれる柳の打撃を、渋川は紙一重の所で
受け流していく。そして隙を見ての合気技。顎をとられた柳はコンクリートの地面へと叩きつけられる。
「ホッ その技は以前の立会いの時に見切っておるわあッ!こちとら大〜事な左目を犠牲にしたんじゃからな!」
空道という異質な格技を極めた柳の技、空掌。真空空間を作った手のひらで相手を攻撃する技。
まともに決まればコンクリートの壁を粉砕することもたやすい。かつての果し合いで渋川の左目を
奪ったのもこの技だった。戦闘開始時から、柳の左手にはすでに「空掌」が作られていたのだ。
「腑腑腑・・・老いたな渋川。」 自身の技を封じられたにも関わらず、柳の顔には余裕が溢れていた。
そして、再度渋川に向かっていく。左手手のひらは真空状態。空掌再び発動。渋川にとっては
先ほどと同じ光景。向かってくる柳の手の打撃を見極め、それを自身の両手で受け流していく。
するとどうだ。今度は渋川の両手が弾かれている。先ほどとは段違いの「空掌」が、幾度も
渋川の両手を削っていく。
「渋川よ・・。以前の立会いの時、あんたが見ていなかった物を二つ、私は今身につけている。
その一つは以前使わなかった。否・・・使う必要がなかった・・・。」
そう言うと、柳は攻撃をやめる。度重なる真空拳を受け、渋川の両手はすでにボロボロの状態だった。
もうその腕は使えまい・・・・。そう悟った柳はすう・・っと手のひらに真空を作り、「空掌」を発動させる。
柳にとっては、この立会いが始まってからの最大の一撃。
「一つは「空掌」の完成型。 さっきのは以前の立会いの時の「空掌」だ。
それから数十年・・ 刑務所内の受刑者の命を糧に 「空掌」は完成を見たッッ!」
ほぼノーガードの状態の渋川。そのがら空きのどてっ腹に、柳は渾身の「空掌」を命中させる。
と同時に曇る渋川の顔。衝撃でその小さい体は10メートル程吹き飛ばされ、皮膚の破れた胴体からは
血しぶきが舞う。ドサッ・・・。受身を取ることなく、その小さな体はコンクリの地面へと落下する。
「私の知る渋川は、まだまだやれる男だったはずだがな・・・」と柳。その言葉に反応するように
倒れていた渋川はすっと立ち上がる。だが勢いのあるその動きとは裏腹に、体はまさにガラクタ状態。
「空掌」によって受けた衝撃で上半身の衣服は破れ、重度の火傷を負ったように体が血で真っ赤に染まっている。
「そ・・その通りじゃ・・。まだまだ勝負はついとらん・・ぞおッッ!」
傷ついた体を引きずり、柳へ攻撃をしかける渋川。だが合気を極めた彼は、自ら攻撃を仕掛ける手立てを
知らない。傷により動きのにぶっているそんなにわかパンチやキックが、柳に通じるわけがなかった。
「そして・・・もう一つ・・・」 そうつぶやくと、柳は毒手を仕込んだ右手を、柳の右目へ叩き込む。
右手が目から離れた瞬間・・・。渋川の目は光を失っていた。猛毒によって一瞬のうちに失明したのだ。
何が起こったのかわからずに、もがき始める渋川。 「達人もこうなっては惨めだな・・・」柳がつぶやく。
「あの時・・・やはりとどめを刺しておくべきだった。こんな惨めな貴様を見るはめになるのなら・・・。
もはや我慢ならんわ・・」
そう言うと、柳はもがく渋川の顎と股間を取り、そのまま屋上から外へ乗りだす。
「しばしの空中遊泳を楽しもうじゃないか」渋川の体を下に、柳は地面に向かって落下を始める。
このビルは地上20階。高層に分類されるであろうこのビルの屋上から、このまま下へ叩きつけようというのだ。
「柳さん・・・すまんのぉ・・・」
柳の聞いた渋川の最後の言葉だった。ドオンッ!100メートルの高さから落下した両者。
絶妙なタイミングで地面への直撃を逃れた柳と違い、渋川は直撃。そのダメージは死へ直結する。
仰向けになって動かない渋川。アスファルトの地面にはヒビが入り、衝撃の強さがわかる。
「二度目の敗北だ・・・いや、三度目か・・・」倒れこむ渋川にそう吐き捨てると、柳は暗闇の中へ姿を消した。
ネットカフェを見つけたので更新してみました。雨だし。
続きます。
>しけい荘物語
ブレストファイアはずれちゃった・・・で、敗北か。
接戦だった。ガイアが薬草使わなければ勝てたのにね。
>ドラえもんの麻雀教室
>「許して下さい、プリーズ、だろ?」
>「許して下さいでごわす。ポキールでごわす」
ワラタ。ポキールってなんだよw
もうつぼだ。ポキールでごわす。
おお、感想書いてる間にキター!
>超格闘士大戦
でもタイトルで内容が・・・
Gガンの「さらば師匠 マスター・アジア暁に死す」みたいなもんだw
柳強ぇ。やっぱバキ以外のキャラがこいつを倒すのだろうか?
太陽が天上に昇った頃――3時間後のことだ――、ザクの怒りはようやくおさまりかけた。
それでも人工心臓の拍動は依然強かったし、コックピットにあたる部分に納められた脳はずきずきして
いた。ザクは仇の名前を心の中で反芻している。
――範馬勇次郎……範馬勇次郎……
ある程度ザクが落ち着いたところでノヴァ教授は再びザクの手元に近寄り、笑顔で話しかけた。
「君の認識はモノアイ、つまりそのピンク色の単眼を通してモールス信号という形で発現されます。復讐、
おおいに結構。自分の欲することを為したまえ!……ですが、今の君ではおそらくオーガには勝てない
でしょう。まだボディに馴染んでいない上に武器もないのですからね。ということで、武器の製造をキテレ
ツ君に頼んでおきました。そろそろ彼の手伝いロボットが運んでくることでしょう」
ノヴァはプリンにスプーンを挿そうとした。が、その時になってようやくプリンが砂埃にまみれてしまった
ことに気がつく。
「わ……私のプリンが……」
その時、ザクはコンクリート建造物、つまり研究所の方から小さな人影が現れ、何かを抱え、叫びなが
ら駆けて来るのを見た。
――いや、あれは人じゃない。あれは……
「ノヴァ教授〜〜!!持ってきたナリよ〜〜!!」
それは亜麻色の丸い顔とオレンジ色の胴体、ホースの腕とゴムマリの手から作られたロボット、コロ助
だった。ザクの高性能レンズはコロ助の抱えているもの、人の持てるサイズの斧とマシンガン、それから
懐中電灯のようなものを捉えた。
「彼がキテレツ君の作ったロボット、コロ助君です。かわいいものでしょう。キャハハハ」
コロ助はノヴァの元へ辿り着くと持っているものを降ろし、呼吸を整えた。
「これがザクさんの装備、ヒートホークとザクマシンガンナリ。ヒートホークは標準のものよりも出力を上げ
たってキテレツは言ってるナリよ」
「ご苦労さまですコロ助君」
――これが俺の装備?
ザクはコロ助の持ってきた武器をあらためて眺めた。
――今の俺が使えるサイズじゃないぞ。
「こんにちは〜ナリ!ザクさん!」
コロ助はザクに向かって元気よくあいさつをした。ザクもモールス信号で返礼する。
――こ、こんにちは……コロ助君。
信号は通じなかったようだが、コロ助はかまわず続ける。
「あと、ワガハイと教授の他にキテレツがいるナリが、キテレツは今、新・回古鏡でザクさんの過去を見て
るナリよ。新・回古鏡っていうのは〜、えと〜、つまり〜、その〜……」
コロ助がしどろもどろ説明する。
木手英一の先祖に発明家の奇天烈斎という人物がいる。彼は自身の発明の数々を「奇天烈大百科」
という4巻から成る書物に書き記し後世に残したが、その中に、被写体の過去を写真に映し出すことが
できる回古鏡というものがある。木手英一はこれをさらに改良、静止画ではなく動画として過去を録画
できる道具を発明することに成功した。それが新・回古鏡である。
ディスティ・ノヴァはこの発明によってスペランカーの闘いの全てを見た。そして今は、キテレツがそれを
見ているのだった。
「というわけで、ワガハイ達はザクさんの過去を知っているナリ。ワガハイ達はザクさんの味方ナリよ」
――それを信じろというのか。見も知らぬお前達が味方であるということを。
ザクはじろりとノヴァを睨んだ。
「純真な子どもの言うことです。私はともかくとして彼らは信用してやって下さい。私も、できるかぎりあな
たの闘いをサポートしたいと考えています。ということでまず、これをプレゼントしましょう」
ノヴァは懐中電灯のようなもの、如意光を手にするとコロ助とともに後退し、ヒートホークとマシンガンに
向けて赤い光を照射した。するとどうだろう、光を当てられた二つの武器はみるみる大きくなり、ついには
ザクの手に馴染むサイズにまでなったではないか。
「如意光。物質の大きさを変化させることができる発明です。まったく、奇天烈斎は便利なものを発明した
ものですね」
ザクは大きくなった武器を手に取り、信じられないといった面持ちでそれらを眺めた。
――サイボーグ化手術、過去の映写ときて、次はこれか。全く、何がなんだか。
「ヒートホークの柄の真ん中あたり、ちょうど人差し指のあたる部分にあるボタンを押してごらんなさい。
すると刃の部分が加熱する仕組みになっています。対人戦では必殺の武器となることでしょう。マシン
ガンの方は、サイズの大きいただの銃ですがね」
ザクは言われたとおりにヒートホークの柄にあるボタンを押してみる。なるほど、刃の部分が赤熱化す
る。これならば鉄さえもチーズのように斬ることができるだろう。
――だが用意が整いすぎていないか?あんたは何でここまでするんだ?
ザクが問うが、ノヴァは「先ほど言ったでしょう」と返す。
「業(カルマ)の研究のための実験です。君と私の関係はあくまでもサイバネ医師とその患者、実験者と
被験者に他ならない。そして君がカルマを克服するためには、より強くならなければならない」
ノヴァは汚れたプリンを地面に落とすと、さらに続けた。
「そう、言い忘れていました。『イマジノスボディ』は進化を続ける体です。発展の途上でなんらかの武器を
生み出すことがあるかもしれません。例えば、今現在そのボディにプラズマ発生機関は存在しませんが、
イメージの喚起によって機関が造られることもありえます。さらに助言しましょう。進化をするためには
今言ったイメージの喚起が重要な要素となってきますが、特に進化を促すであろうイメージは『死のイメー
ジ』です。自らの身を危機に置き生存本能を呼び覚ますことによって強烈なイメージが喚起され、『イマジ
ノスボディ』の変形機能を引き出すことがあります」
ノヴァは皿をコロ助に渡し、「プリンを持ってきてください」と命令した。コロ助が返事をして研究所に戻る
のを見届けると、ノヴァは再びザクに向き直った。
「まだボディに馴染んでいない、と言いましたね。ちょうどいい訓練相手を紹介しましょう。その人物は私
の命を狙いここを目指しているので、君を私の放った刺客と考え対峙することでしょう。彼女はガリィ君と
いう名前のサイボーグです。今までにマカク、電といった自身よりも巨大なサイボーグを相手に闘い、全
て打ち負かしてきています。君の勝ち目は0でしょうが、経験をつむためにも闘ってみる価値はあります」
――おい、教授。勝手に話を進めないでくれ。
ザクが訴えたが、ノヴァはザクを説得する。
「範馬勇次郎に勝つためです。彼に勝つためには闘いの場数を踏み、サイボーグのボディに慣れ、より
強くなる必要があります。つまりは修行です。君は範馬勇次郎を倒したいのでしょう?」
――当然だ。だが、その為に関係の無い人間と闘うなど。しかも相手は女性だと?
「心配することはありません。先ほども言ったとおり、今ガリィ君と闘ってもまず君に勝ち目はありません。
万が一君が勝つようなことがあったとしても、手心を加え、とどめを刺さなければいいだけの話です」
ザクはしばらく考えた。それから、答える。
――本当にそれで強くなれるんだな?範馬勇次郎に勝てるんだな?
「一度の対戦でいきなり強くなれるとはいえません。ですが、もしこの先も戦闘能力の高い人間達と闘い
続け、修行をする意思があるのならば、いつかきっと君は範馬勇次郎を倒すことができるでしょう」
その一言がザクに決心をさせた。範馬勇次郎を倒すためなら何だってやる。
――分かった。あんたの言う通り、そのガリィとかいうサイボーグと闘ってこよう。だが、場所は?
「実は以前、彼女と敵対する前に会ったときにガリィ君に発信機をつけておきました。場所は……」
ザクが飛び立ってからしばらくすると、キテレツが研究所から出てきてノヴァの元へとやってきた。
ノヴァはコロ助の運んできたプリンを食べながら、キテレツに訊く。
「どうでした?彼の闘いっぷりは」
「小学五年生にはキツイですよ」キテレツは右手で頭を押さえて答えた。
「でも教授、いいんですか?ザクさんにあの事を話さなくて。彼の過去を知ってからというもの、僕はあの
事を黙っていることがとても悪いことのように思えるのですけれども……」
「それも彼のカルマです。君にも分かってもらいたいものですね」
二人の間で、二人にしか分からない会話が繰り広げられる。コロ助はそれを傍目に眺めているだけだ
った。
「一体何の話をしてるナリか?」
一方その頃、研究所の水槽内ではある人物の脳の再構成が進行していた……
あれ、いつのまにか人魚エピロってた。いいラストですね!
感動しましたよーパオさん。特に9話のラストでは泣きました(T_T)
それと田中真弓さんと伊藤美紀さんに脳内吹替えした人は私だけでないか。
本当にお疲れさまでしたパオさん。
ラーメンマンはしょうじき読んでませんが、またこういう恋愛感動物を
書いて下さる事を切にお願いしますm(__)m
サナダムシ様、VS様、ブラックキング様、ザク様お疲れさまでした。
今回は人魚姫の最終回ということで感想が偏ってしまいましたが、
いつも楽しんでよんでますよ。頑張って下さい。
みなさん、お疲れさまです。開けます。
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/dekisugi/10.htm そのころ・・・地底の荒野には、ふよんふよんと漂う謎の赤い
飛行物体が浮かんでいた。
「あーあ、退屈ったらありゃしない。せっかく新しいお城で贅沢して
遊べると思ってたのに楽しいことなんて、なぁーんにもありゃしない。
お馬鹿のバイキンマンも、あのキスギーとかいうじいさんと一緒に
なんかわかんない研究ばっかしてるし。あーもーいや――――っ!!」
と、なにやらわがままなことを絶叫しながら飛行物体を操縦している
のはドキンちゃん。退屈に堪え切れずにドキンUFOで脱出してきたのだ。
もう少し要塞にじっとしていれば今の騒ぎにも気付いていたのだろうが、
今も要塞は静かなままだと思っているらしい。
「そういえばアンパンマンたちも地底に来てるはずなのよねぇ。
しょくぱんマン様に会いたい・・・もう帰っちゃったのかな。」
ドキンちゃんは初めて出会った時以来ずっと、しょくぱんマンのことが
大好きなのだ。一人で慣れない地底にいる不安に、思わず会いたい気持ち
が強くなってしまったようだ。と・・・!
「・・・!? あれは・・・?」
その想いに応えるかのように偶然にも目に飛び込んできたのは・・・
なんと地底の空を颯爽と飛び行くしょくぱんマンの姿。
とは言ってもかなり遠くを飛んでいるのでまだ豆粒のような大きさにしか
見えていないのだが、あの白いシルエットは間違いない。
「あれは・・・しょくぱんマン様ぁ!!」
目が思いっきりハートになり突然のラブラブモードに切り替わる。
愛しのしょくぱんマンにわかりやすい恋する乙女モード全開である。
「ああ、こんな地底でまで偶然出会うなんて・・やはり運命の二人なのね。」
一人で運命を感じながら悦に入るドキンちゃんであったが、よく見ると
しょくぱんマンが一人ではないことに気づいてしまう。一緒にいるのは・・・
「ってちょっと待って!・・・んなによう!?あの女!あーっ!?
しょくぱんマン様にあんなお姫様みたいに抱きかかえられちゃって
抱きかかえられちゃって・・・!くーやーしーいー! キーッ!!」
その乙女の嫉妬の炎が燃えあがる視線の先には、確かに
颯爽と飛び行く白い妖精、しょくぱんマンの姿があったのだが・・・
その両の腕にしっかりと抱き抱えられているのは・・・リルルである。
すぐ近くでドキンちゃんがもだえているのも知らず、突然二人で切ない表情で
空を見上げて見たりと、なんだかラブラブな雰囲気に見えないこともない。
ドキンちゃんは嫉妬の炎をまといまくったまま、気づかれないよう
二人の後をつけ始めた。真っ赤なドキンUFOでふよふよと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「えっほ。えっほ。えっほ。えっほ。」
反乱軍の拠点に元気な掛け声が響いている。
「おおう。暑苦しいやつじゃのう。なにをそんなに頑張っておるのじゃ?」
「いつ、敵が攻めてくるかもわかんないんだ。守りをまかされた以上、
万一に備えて体を鍛えておかなくっちゃな。」
そう言いながら室内を汗だくでグルグル走り続けているのはジャイアンである。
その程度では気休めにもならないと思うのだが、ジャイアンは本気だ。
「まったく暑苦しいのう。まろの一番苦手なタイプじゃ。
もっとまろのように優雅に風流にまったりと過ごせぬものかのう。」
ジャイアンの行動に不快感を隠そうともせずにボヤいている雅なお子様は
坂の上おじゃる丸。平安京から現代にタイムスリップしてきた本物の公家の
お子様である。まだ幼児であろう。小柄な体にぷっくりとした頬。クリクリっと
した目はなかなかに愛らしい。一言で言うなら“癒し系”のお子様である。
大事なアイテム“しゃく”をバイキンマンに奪われ、それを取り返すために
ジャムおじさんたちの世話になっているのだ。もっとも、その“しゃく”は元々、
地獄のえんま大王の大事な仕事道具だったものを、おじゃる丸がドサクサに
奪っていったものであるのだが・・・。
ジャイアンは張り切っている。燃えている。
「バタ子さん!万一のときも必ずこのボクが守ってあげますからね!」
「うふふ。ありがとう。頼りにしてるわ。」
「ケッ!ペッ!よくもまぁこんな時に能天気にのぼせてられるもんだ。
ボクみたいにデリケートな人間には理解できないね。全く!」
バタ子に対するジャイアンの浮かれっぷりに吐き捨てるように毒を吐くスネオ。
まぁ気持ちはわかる。地上に無事に帰れるかどうかもわからない不安な状況で、
ジャイアンの能天気さに羨ましいと同時に腹が立ってしょうがないのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回分の更新終了です。
本当は昨日投下する予定だったのですが、偶然にも直前に2つの長編が完結。
それもどちらも感動的なラストを迎えた直後ということもあり、いくらなんでも
その後にドキンちゃんはないよなぁ、と思って自粛させていただきました。
しょくぱんマンの声はナウシカやカリ城のクラリス、ドキンちゃんの声は
無印初期の若くてわがままなブルマとほぼ同じような感じです。(声優が同じ)
158 :
作者の都合により名無しです:04/08/07 23:25 ID:2j9axuXv
おお、うみにんさん復帰されましたか。
しかし各職人さん爆進モードですな。
この調子がなるべく続くように願いながら、あげ。
うみにんさんお疲れ。本格復帰嬉しいです。いつもより更新少なめのようで
まだ心配ですが、投げ出さないという言葉を信じてますので頑張って下さい。
登場人物の動きが激しくなってきてますね。全員がバラバラに動いてるよう
でも、一つのストーリーとしてつながっているのが素晴らしいです。大長編
仕様のジャイアンもいい味出しまくりですし、期待してます。
ブラックキング氏、ザク氏、うみにん氏乙です。
しかし昨日4作品で今日も3作品か。
しかも全部長編で別作品とは相変わらずの好調ぶりですな。
この勢いだと今スレもあっという間になくなりそうだ。
161 :
作者の都合により名無しです:04/08/08 07:16 ID:KNbKJL4q
相変わらず絶好調ですな。
ブラックキング氏、ザク氏、うみにん氏お疲れ様です。
皆様方の個性が溢れた素晴らしい作品の数々に、唸ってしまいました。
本当にスレ開くのが楽しみだなー、最近。
しけい荘も佳境だし、ドラ麻雀も本格復帰してくれたし。
でも、ここまで好調だと逆に少し怖くなるかも。作品、一気に終わったらなんて。
遅れましたが、ふら〜りさんお疲れ様でした。パオさん、感動を有難うございました。
162 :
161:04/08/08 07:32 ID:KNbKJL4q
ところで『誇り高き、希望』作者氏、みゅう氏、憑依作者氏、ユル氏は投げ出しかな。
それぞれの作品を楽しみにしてたのに、ヤバい感じで悲しい。どういう形でも決着させて欲しい。
ユルさん、もうあのスレには関わらない方がいいよ。才能ある人が潰されるのはたまらない。
ウンコブリブリ
マンコグチョグチョ
>>162 他の人は昔から読んでるわけではないので分からないが
ユル氏はかまってほしくなれば来るだろう。
話題にされたいためだけに露骨にタイミングを計ってそうな
気分次第な更新状況は
続きを待つ身としてはいい感情を持っていないが
職人には定期的に書く義務があるわけでもないからな。
>>162 >>165 スレの住み分けが出来ない人は書き込まないほうが良いですよ。
私があそこを覗くのは勝手。あそこで私を叩くのも勝手。
ですが、こっちには話を持ちこまないでください。
他の住人や作者の方々の迷惑です。私が元凶となっているようなので頼みます。お願いします。
逃げてないよ
>>167 どなたですか?
『誇り高き、希望』作者氏か憑依作者氏?
>>166 162はあのスレって言ってるようだが
165に関してはあっちとは関係ないんだけどな。
ここでの言動はここで話題になったり叩かれたりもするだろう。
何でもあっちのスレに責任転嫁せず
そちらこそスレの住み分けをしてくれませんかね。
ユル氏もみんなももちつけ!>165は>165で煽り的な要素を含んでいる。
今回は痛み分けということでいいじゃん。
ただしユル氏、>162は純粋にユル氏のことを心配してくれてるだけだと思うぞ。
ユル氏にとっては余計なお世話だったにしても、そういう言い方はないと思う。
それにわざわざこのスレで指摘する必要もないな。住み分けを要求するのなら
あちらのスレに書き込むべき内容だった。
とりあえず、ユルは誌ね
173 :
作者の都合により名無しです:04/08/08 20:57 ID:GBIUfKDo
ま、いいじゃん。
ユル氏の作品は個人的に好きだし、
ユル氏がどこで何をしようとかまわないけど、ほどほどにね。
遅れたけど、4×5のサイト長編カテゴリ移行おめでとう。
ところで、きのう一昨日と凄かったのに今日は無いねえ。
なぜか作品、まとめて来るのが多い気がする。シンクロニティ?
日曜日はいつも少ない。逆に金曜日はいつも多い。
このスレの住人の数はROMも含めてこんな感じだと思う。
金曜>土曜=平日>>>日曜
175 :
作者の都合により名無しです:04/08/09 06:56 ID:7WvyR5iU
一気に金曜とかは3本くらい来るよね。でも日曜が少ないなんて、変なスレw
『誇り高き、希望』作者氏、みゅう氏、憑依作者氏、連絡下さいよー。
○さんもこっちでも復帰すればいいのにね。
私は常にこのスレを見守っております。
日曜に人が少なくても、私がいるので安心してください。
177 :
憑依:04/08/09 13:35 ID:AErNe0s7
今週中に続き書きます。
おお、楽しみにしてます。
>>177 う〜ん、わがまま言うと週末にその言葉を聞きたかった。
月曜日に「今週中に」っつわれたら丸一週間あるもん。
こんなこと言ったけど、あわてず良く練って作品を書いてください。
わがままばっかでスマソ
しけい荘で、シコルが本部に勝つ姿だけが思い浮かばない。
オリバ乱入か?でもこの作品では本部は最強キャラなのかw
181 :
ふら〜り:04/08/09 19:51 ID:yzlrJHyG
感想だけの身でトリップつけるのも何ですので、とりあえず外しました。
……し〜ば〜ら〜く、かなり忙しいです。ので骨休みにだけ、来させて頂きます。
>>ブラックキングさん
これは……いやいや、渋川先生はきっとまだ大丈夫。烈だって刃牙だって
やってくれたんですし、きっと渋川先生も。ビルから落ちたぐらいで、死んだり
するような亀仙流+渋川流ではないはず! ……と思うんですが。はたして?
>>ザクさん
イメージ次第で進化、変形もアリですか。これからいろいろ、能力も外見も変わって
いきそうですね。そのスタート地点がザクというのは、考えてみればピッタリなのかも。
元スペランカーの、超進化パワーアップザク。こう書いただけでも、何だか凄そうです。
>>うみにんさん
開幕から可愛いですね〜。思いっきりドキンちゃんらしくて。愛しい人(パン)を、
ふよんふよんと追っていく。恋する乙女の思慕、&嫉妬。相手がリルルなところがまた、
逆にドキンちゃんの可愛さを引き立ててるような。微笑ましいです。
>>憑依さん
お待ちしておりますよっ。あの、オカルトとは違う意味でぞくっとくる、ある意味
夏向きなのを期待してます。
ふむむ。
一気にまとまってくると後が来なくなるんだな。
出来れば、一日一作な感じでじっくり読みたいんだが。
職人さんわがまま言ってすみません。
第十九話「託された二人」
勝利の女神が微笑んだのは、地の利を最大限に生かした大地の神であった。勝敗は決し
たにもかかわらず、ガイアはうつ伏せに横たわるドイルに敬礼を続ける。
沈黙する両者によって生成された、黄昏にも似た空間。そこにオリバが歩み寄り、地面
に倒れるドイルを肩に担ぎ上げる。無念や敵意を一切出さず去って行こうとする彼に、ガ
イアが砕けた自らの顎に手を添えつつ、こう切り出す。
「ずいぶん冷静だね。お宅のアパートの住人を、そこまで壊されたというのに」
「私はあくまで審判だよ。その私が中立を崩すような真似をすれば、君の勝利だけでなく、
ドイルの敗北をも汚すことになる」
「なるほど……」
公園を出ようとするオリバの背中に、再びガイアの声が追ってくる。
「彼が起きたら伝えてくれないか。軍人の模範たるべき私に、よりにもよって敵に敬礼を
させるとは……とね」
「あぁ、伝えておくよ」
振り向いたオリバの表情は、いつもの陽気さを満面に浮かべたものであった。
運ばれてきた重傷のドイルに、しけい荘一同が駆け寄る。仲間の気配を察してか、ドイ
ルがうっすらと目を開く。心配そうな皆の表情を見て、自分の状況を悟ったようだ。
「手品師失格だな……。全勝すると誓ったというのに……すまない」
か細い声で四人、特に試合を残している二人へ謝罪するドイル。しかし、ドリアンとシ
コルスキーはそんな彼を責めることはしなかった。
「君はよく戦ったよ。あとは私とシコルスキーに任せ、ゆっくり休みなさい」
「コンテストの時より腕を上げたな。特に最後の手品は最高だった」
二人の励ましを受け、全てを託したかのように再び気を失うドイル。そして、スペック
が彼の身体を丁重に抱え上げた。
「ドイルハ俺ガ病院ヘ連レテ行クゼ。戻ッタ時ニハ、イイ結果ヲ聞カセテクレヨッ!」
病院目指し走っていくスペック。老人とは思えないスピードだ。これで、ひとまずドイ
ルは安心だろう。残る課題は、これからの二戦である。どちらかが勝たなければ、しけい
荘の敗北である。
一方、ホームレスの首領である本部は、凱旋したガイアを鼻高々で迎えていた。
「よくやったぞ、ガイア。まぁ、所詮は奇術師よ。戦闘と武器の専門家であるお主の敵で
はなかったということだな。クックック……」
故意に大声で話す本部。そんな彼の高笑いに我慢ならず、飛び掛かろうとするシコルス
キー。が、その肩が強い力によって掴まれる。ドリアンであった。
「よせ、シコルスキー。まずは私が団体戦の勝利を決めてこよう。その後、君はゆっくり
あの男を叩き伏せればよい」
「あぁ……分かったよ」
「心配するな。死んでも勝ってみせるよ」
思い切り両手を叩き、気合いを入れるドリアン。命をもいとわぬ、並々ならぬ決意。そ
して、小さな丸い包みをシコルスキーに手渡した。
「これは……」
「キャンディだ。私が勝って戻ったならば、それを褒美として与えて欲しい」
己の命と宝物を預け、ドリアン海王が死闘へと臨む。
小さな公園に、睨み合う巨大な筋肉二つ。ドリアン対ジャック、もはや待ったなし。
「始めィッ!」
どちらも動かない。動きたいのは山々だが、何せ互いに相手の情報を持っていない。そ
うたやすく先手には出られない。すると、ドリアンが突然泣き出した。
「うぅ……っ! すまんね、年を取ると涙腺がもろくなってしまって……」
直後、ドリアンは強烈な中段突きを見舞う。不意の初弾は、的確にジャックの心臓部を
捉えた。さらに、巨大な足裏で顎を蹴り上げる。そして、練り込むような裏拳を顔面に放
つ。三連撃はいずれも綺麗に入った。
ぐらつくジャックだったが、打倒までには至らない。即座に踏みとどまった彼の表情は、
ダメージを感じさせぬ平然としたものであった。
「なるほど、大した筋力と咬合力だね。打撃耐久力は相当なものだろう」
機先を制したドリアンの技術と、それを受け止めたジャックの肉体。思わず両陣営から
はため息がもれる。戦いは振り出しに戻った。
しけい荘キターーーーーーーーーーーーーー
マジバトルおもしれえ。
ドリアンがんばれ!
今度は自分から攻める、と言わんばかりにジャックが前傾姿勢を取る。理性と野性を兼
ね備えた、二足歩行の猛獣がそこにはあった。むき出された牙の迫力に呑まれぬよう、ド
リアンも神経を研ぎ澄ませる。
「さァ……来たまえ」
誘うドリアン。それを引き金に、砲弾の如く飛び出すジャック。身体の大きさに比例し
た瞬発力により繰り出される、高速の低空タックル。
短く一呼吸し、ドリアンは渾身の下段蹴りで迎え撃つ。狙いは、もちろん顔面。だが、
ジャックは巨躯に似合わぬしなやかな動きで、タックルの軌道を変える。蹴り足をすり抜
け、一気にドリアンの懐へと入り込んだ。
組み付かれる、と判断したドリアンの脳細胞は対策を練り始める。しかし、予想に反し
てジャックが仕掛けたのは打撃技。低姿勢から放たれた、全体重を乗せたチョップブロー。
左右どちらの拳だったのか認識する前に、ドリアンは鼻骨は粉々に潰された。
さらに、豪腕を大胆に使ったアッパーカットが続く。砂埃をも巻き上げる一撃は、軽々
とドリアンの巨体を宙へ浮かす。
血と歯とを吐き散らし、背中から地面に崩れるドリアン。
「強いな……ジャック。感動すら覚えているよ」
口の周囲に付着した血を拭いつつ、ドリアンが笑う。と見せかけ、彼は髭を一本抜いて
いた。そして、長さ数センチの毛を、吹き矢のように吐息で飛ばす。
髭はジャックの眼球へ一直線に飛ぶも、直前で手刀に弾かれてしまう。この期に及んで
小細工を使うドリアンに、心の底から失望するジャック。
「こんな姑息な手段では、俺を倒せるハズがないと分かっているだろう」
「そうかな、私は勝てるつもりでいるのだがね」
この減らず口に、ジャックは激昂した。鍛え抜かれた四肢から出でる必倒の打撃が、ラ
ッシュとなって襲い掛かる。ドリアンも全身を丸め、防御を固める。が、耐え切るには、
相手の攻撃力と持久力はあまりにも絶望的であった。
公園外。仲間ながらジャックの実力に言葉を失うガイアに、本部が嬉しそうに語る。
「わしはジャックに勝ちなど期待しとらん。決まり切ったことに期待する馬鹿はおるまい。
わしが期待するのは──ジャックがあの老いぼれ西洋人を、どのように破壊するかのみよ」
本部はその体格には余りある殺気と邪気を、醜悪な笑みに変えていた。
第十九話終了。
三レス目がエラーを喰らい、時間が掛かってしまいました。
しけい荘の本部は怖すぎる
この本部なら柳を倒しても納得してしまうほど
本部怖ええよ。
感想ありがとうございます。
>>187 12行目
ドリアンは鼻骨は粉々に潰された。→ドリアンは鼻骨を粉々に潰された。
の誤りです。
どっちにしろ、ドリアンは鼻骨を潰されましたが。
本部がグラ刃牙初期の本部だ・・・。それ以上か?
初め優勢なほうが負けるのがバキの法則だけど、この試合はどうなるかね。
ドリアンの奇襲失敗するし。ジャック強いし。
193 :
作者の都合により名無しです:04/08/10 15:47 ID:vOG37YFK
そういえば、しけい荘には漫画の主役である
勇次郎と副主人公のバキが出てないよね。これから出るのかな?
職人さん期待上げ!
195 :
作者の都合により名無しです:04/08/11 07:19 ID:o5rpcpPj
最近は以前みたいに一日に1作以上来るパターンじゃなくて
示し合わせたようにまとめて来るパターンが多いね。
「お二人はーん!助けにきましたでぇー!って・・・ありゃ?
ワンダー・ガールはん? またけったいな格好してまんなぁ。」
勢い良くオリの中のドラえもんたちの前に現れたその男はパーやんだった。
その強さ、恐ろしさを知る二人は目に見えて慌てふためいている。
「!? パ・・パパパ、“パーマン”!?」
「まずいわね。しっかりこの腕につかまって。」
「え?」
オリの中に差し出された細腕に、思わず条件反射でしがみつくのび太たち。
ちゃっかりミニドラもいっしょにしがみついているその腕の持ち主は謎の
変態少女、ワンダー・ガール。
「ごめんね。パーやん。私この子たちの味方につくわ。」
胸のハート型のブローチをつかみながらそういい残すや・・・
・・・シュンッ!
一瞬にして、その姿がかき消える。オリの中のドラたちまでも。
ただ一人、キョトンとした顔のパーやんだけをその場に残して・・・。
「助ける?味方?ワンダーガールはんが?ふーむ。どういうことや?
・・・ま、いっか。助けてくれはるんやったらそれはそれでええやろ。
さてと、そんじゃはよ1号はんたちと合流せなあかんな。」
ポリポリと頭をかきながら再び外へと向かうパーやんであったが、
途中しみじみとあきれたように独りごちる。
「・・・・しかし・・・。超能力って便利なもんやなぁ・・・。」
常に余裕のあるパーやんならではののんきな発言である。
しかし、それも束の間。パーやんの表情が一気に緊迫したものへと変わる。
不適な笑みを浮かべ、パーやんの前に立ちはだかったのは・・・
「さっきはよくもやってくれたじゃねぇか。
お返しはきっちりさせてもらうぜ!?」
「ははは、なかなかタフでんなぁ。それどころかこんな短期間に
そんなごっつい体になって。なんぞドーピングでっか?」
セリフは余裕でも表情は余裕とはほど遠い。大粒の汗を大量に滴らせ、
自分が窮地にあることを悟っている。目の前にいるのはげんごろう。
ただし、その姿は――顔こそげんごろうそのままではあるものの――
不自然に膨れ上がった筋肉が生み出すシルエットは、人間というよりも
もはや動物に近い。いや、むしろ魔獣と呼んだほうが相応しいか。
その魔獣が眼をギラつかせ襲い掛かってくる。
パーやんは覚悟を決め、戦闘に応じるべく固く拳を握りしめた!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
要塞内部の味気ない通路を、顔面に布をまきつけた竜人の兵士が
一人、巡回している。しかし、様子がおかしい。
「上手く潜り込めたか。思ったより順調だな。内部の警備が手薄なのは
外の混乱に気を取られてくれているのか、普段からこんな感じなのか・・・。
さてと、ドラえもんの閉じ込められてる大広間ってのはどこだろう?」
・・・出木杉である。どうやら、うまく要塞内に忍び込めたらしい。
どれほどの度胸の持ち主なのか、この極限状態にあっても冷静さを全く
失っていない。バンホーが初見で参謀に抜擢したくなるのも無理はない。
敵の懐に潜り込んだ出木杉は慎重に確実に歩みを進めていく・・・!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同じく要塞内。ギラーミンは既に要塞外部への扉の前にまで到着していた。
今、まさに扉を開かんとするその瞬間、一人の男が必死に駆け寄ってくる。
「待てぇい!待ってくれギラーミン!パーマンは殺しちゃいかん。
・・・いや、殺してもいいが、パーマンセットだけは傷つけないでくれ!
私はどうしてもアレが欲しいのだ!頼む!」
必死に懇願する魔土に対するギラーミンの返答はにべもない。
「くだらん。貴様のつまらぬ研究など知ったことではない。」
「いやん、ギラーミン。そんなこと言わないでお願い!
そうだ!ほら。ほら。これ、あののび太が持ってた銃。2丁あるよ?
ショックを与えて敵の動きを封じる高性能の光線銃らしいんだ。
これ使えば無傷で倒せるって。ね?ね?ダメ?」
魔土がこびるように差し出したのは単なる2丁のショックガンである。
しかし、それにギラーミンは魔土が思った以上の反応を見せる。
「・・・ノビ太の銃!?」
(え?あれ?食いついてきた?)
「そ、そそそ、そうだよ。戦利品だ。研究用に預かってたんだが、
キミにあげようじゃないか。なんとかこれで一つ生け捕りに!」
ギラーミンは、しばしの沈黙の後、無言のまま静かにそれを受け取り、
必死の形相で返答を待つ魔土に向かって呟いた。
「・・・・・・よかろう。この銃は預かっておく。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これで今回の分の更新は終了です。暑いですね。
お盆過ぎれば少しは涼しくなるのでしょうか。
今日は更新量少なめだね。それでも十分読みごたえあるけど。
出木杉、随分度胸あるな。でもすれ違いの形になるのかな?
それにしてもこの物語、どう終幕を迎えるのだろうか。予想が出来ない。
あ、前話は
>>156です。(なぜいつも忘れる?) あまり大差はないのですが、
>>196の11行目は語尾に「である」をつけるの忘れてました。
>>200 感想サンクスです。更新量ですが、長文の連続投下は読みにくいようなので
3〜5レスくらいに分けてうPすることにしました。すみません。
げんごろう強そうだな。
こいつをジャイアンが倒すのか?
皆さん乙。
少し開けます。
>出来杉帝国
パーマン軍団は次回で全員かませ決定か。さよならパーやんだな。
ギラーミンとのび太の対決路線はやはり確定っぽいな。
だとするとげんごろう対ジャイアンもあるんだろうけど
どうやって勝つんだろうな。
ブラックキング氏期待age
第8話「Dark Side」
柳対渋川。その対決は柳の勝利で幕を閉じた。
地上100メートルの位置から地面へと叩きつけられた渋川。意識の無い彼を乗せた救急車が
夜の東京を駆け抜ける。明けて翌日。懸命の治療の結果、渋川は一命を取り留める。
しかし全身に受けたダメージは計り知れず、この先の生活に支障をきたすことは必死だった。
何より意識が戻っていない。このまま植物状態に突入するかもしれない。そんな状況。
VIP専用の病室のベッドに横たわる達人を見舞う徳川光成。。
渋川の小さい身体は、包帯でグルグル巻きにされ まるでミイラのようだ。体中には様々な
チューブが取り付けられ、周りには生命維持装置が複数機存在している。
見るも無残なその姿を見て、光成は無念の表情を隠せない。自然と涙が頬を流れる。
そんな光成を呼ぶ声・・・
「徳川さん・・」
病室内へと入ってきた男。本部以蔵だった。脱獄した柳龍光と最初に戦い、そして敗れたこの男。
敗北後、柳の存在を伝えに光成の屋敷へやって来た本部は、そのまま屋敷内で治療を受けていた。
「渋川老の敗北。心中お察しする。私も無念だ。だがこんな時だが、あなたに聞きたい事がある」
本部の表情からは、並々ならぬ決心のようなものが感じられた。「何じゃ?」光成はかえす。
「この世界で、現在最も過酷な戦闘が行われている場所。それを聞きたい。」
「それを聞いて、どうするつもりじゃ本部よ」
「それがし、今回の一件で、自分の未熟を思い知らされた。
ここで一つ初心に戻り、常に身を危険に置くコとで、自らを鍛えたい。そして同時に世界の
平和のためにも戦いたい…」
本部以蔵の決心は固かった。かつては範馬勇次郎を倒すため、毎日のように道場破りをして
自身を鍛えていた時期もあった。しかし、今の自分は負抜けている。度重なる敗北が
彼の精神を彷彿させることなく、逆に腐らせていったのかもしれない。。
世界のため、自分自身を一から鍛えるため。旅立つ先はオーストラリア。
今も尚、冥竜王ヴェルザーのモンスター軍団残党が残る、世界で最も過酷な戦場。
場所は変わって、神心会総本部。
いつもは門下生で賑わっている道場。今日は何故か薄暗く、人の気配がない。
そんな中で一人座禅を組む一人の男。武神、愚地独歩だ。一人たたずむその男の脳裏にある
ものは唯一つ。シコルスキーにさらわれた妻、夏江の安否。
「押忍。失礼します、館長」スーツ姿の男が、道場内へと入ってくる。
男は独歩の耳元で何かをささやき、すぐに道場を後にした。同時にすっと立ち上がる独歩。
「さて、行くか」
スーツの男は神心会関係の探偵であった。入ってきた知らせはシコルスキーの居場所。
夏江のいるであろう場所が判明したのだ。身支度を整えた独歩は、一人総本部ビルを出る。
高級そうなジャケットに身を包み、頭にはベレー坊。彼の外出時の私服だ。
向かう先は某一級河川の河川敷。その川の巨大な堰の近くに、シコルの姿は確認されていた。
一目散に現場へと向かう独歩。自分で守れなかった妻。自分ひとりで助けに行きたかった。
現場近くへと到着した独歩に、声をかける男がいた。
「水臭いぜ 親父」独歩の養子、克己である。彼にとって、夏江は愛する母。
血は繋がっていないとはいえ、大切な人だ。救出を願うのは当然である。だが独歩はそんな息子の思いを拒絶する。
「克己、悪いがおめえじゃついて来れない世界だ。このまま帰ってくれや」
「もう遅いぜ親父。やっこさん、こっちの存在に気づいてるようだ」
目の前にある大きな堰。そこから流れ出る大量の川の水。轟音があたりに響く。
水の中から突如現れる黒い影。シコルスキーだ。堰から流れ出る水をシャワー代わりに浴びていた彼は
全裸のまま独歩達に近づいていく。だが、この時この場所にいたのは3人だけではなかった。
もう一人の客の存在に気づくシコル。「アンタカ…」そうつぶやくと、シコルは川の向こう岸へと
目を向ける。アメリカからの脱獄死刑囚、ドリアンであった。およそ2、30メートルはあるであろう
巨大な川幅を、彼は一足飛びで跳び越し、独歩達の前に姿を現した。見覚えのある顔に独歩も構える。
「会いたかったよ。ドッポ・オロチ。だが…」パーカー姿のドリアンが、全裸のシコルに目を向ける。
互いににらみ合う二人。明らかに友好的なムードではない。
「ドッポ・オロチと戦うのは私だと決まっていたはずだ。シコルスキー君」
「口約束ヲ信用スルナンテ、海王トヤラモアマインダナ…コウイウコトハ、早イモン勝チナンダヨ」
口争いを始めるシコルとドリアン。話の内容から見ると、両者は以前にも出会っていたようだ。
世界中で同じに脱獄した5人。単なる偶然では無いのか。会話を聞きながら、独歩はそう思う。
「ソレニ、君ハココニ来テカラスデニ1人喰ッチマッテル。1度ニ2食ハズルイゼ」
シコルがそうつぶやいた直後、独歩の後ろに立っていた克己が突然倒れこむ。
ドサッっという音を立てて、地面にめり込む克己の顔。白目をむいている。
「克己ッッ」叫ぶ独歩。首元からは、噴水のように吹き出る鮮やかな血。
同じく血に染まっているドリアンの足元。革靴からは、鋭利な刃物が突き出ている。
向こう岸から飛んだドリアンは、着地直前に克己の首元に蹴りを入れた。足を出すと同時に
飛び出した隠し刃物は、克己の動脈をばっさりと切り裂いた。その攻撃の動作は
独歩の目にも確認出来ない程、速いものだった。
「ハハ。思わず手を出してしまったよ。ドッポ・オロチの息子がどれくらいの力を持つのか。
ためしてみたくなってね」
にこやかな笑顔を見せるドリアン。その表情はまるで幼稚園の子供のように無邪気なもの。
「キミハ欲張リダ。ココニ近ヅイテイル巨大ナ闘気。コレニモ覚エガアルノダロウ?」
「…確かに私は欲張り過ぎてしまったようだ。ここで君と一戦やりあうのも悪くないが・・・
とりあえず、ここは私が引くとしよう。ドッポ・オロチ。また会えるのを楽しみにしているよ」
無邪気な表情を見せたまま、去っていくドリアン。ここに近づく闘気。
その存在に、独歩も気づいていた。ドリアンを目指していたその闘気は、彼の移動と共に向きを変えた。
それが誰か等どうでもよかった。無邪気な笑顔だったドリアンとは対照的に、動揺を隠せない
独歩の顔。克己の出血量は尋常ではない。並の人間じゃないとはいえ、すぐに手当てをしないと
危ない状況。だが目的は夏江を救出すること。何より目の前の敵、シコルスキーは克己を手当てする
時間等与えてくれないだろう。独歩は構える。虎殺しの構え。目の前の敵を倒すしか道は無い。
「邪魔ガハイッテシマッタガ、仕切リ直シダ、ドッポ・オロチ」
花山組事務所…
日本一の喧嘩士の組。その日、組始まって以来の大事件がそこでは起きていた。
腕利きの武闘派ヤクザが、事務所内に倒れこんでいる。身体は血まみれ。腕や足。
身体の一部の無い者も少なくない。その数およそ30名。事務所内の全ての構成員だ。
死刑囚、ドリアンの襲撃である。日本有数の暴力団の構成員が、一瞬で蹴散らされてしまった。
「く、組長…」
連絡を受けた組長、花山薫はすぐに事務所へ。中の惨劇を目にする。同時にこみ上げる怒り。
事務所のドアから外へとつながる血の匂い。彼はその跡を追う。
「20歳前にしてその風格…さすがだな花山君…」つぶやくドリアン。
ドリアンを追っていた巨大な闘気。花山薫、その男であった。
もうちょっとだけバキキャラ同士の戦いが続きます。
夏休み終り。皆さんいいお盆休みをお過ごしください。
>超格闘士大戦
渋川一命を取り留めたのね。良かった。
けどもう闘えないんだろうな・・・
こっちだと独歩が夏江の心配してるけど、本編の夏江はどうなったんだろうなw
そういや冥竜王ヴェルザーって何の漫画のキャラ?
>>211 ダイの大冒険
大昔にバーンと魔界の覇権を争ってたほどの大物だったが、若い頃のバランに負けて石にされてしまった
キルバーンの本当の主人でもある
213 :
ふら〜り:04/08/11 17:52 ID:sI8qavSp
>>サナダムシさん
前にも言いましたが本部、単に迫力や威厳があるというだけではなくて、本っっ当に
「悪の親玉」っぽいですね。しけい荘側がアットホームなだけに、余計に際立ってます。
キャンディを渡して戦いに赴いたドリアン。応援してはいますが、はたして……?
>>うみにんさん
潜入の出来杉、対ギラーミンののび太、そして対げんごろうのジャイアン。それぞれ決戦と
いうか、見せ場の用意が整いつつあるような。……スネ夫も何かありますかね? あと、
>謎の変態少女、ワンダー・ガール。
当たり前のように言われておりますな。ちゃんと美少女なのに。何とも。
>>ブラックキングさん
お、やはり生きてました渋川先生。ならば復活の可能性は充分ある! と期待です。
で。しけい荘とは反対に、こちらの本部は正義の味方してますね。どらちも威厳あります。
克己は随分あっけなかったですが、本部みたいに奮起・修行・再起するのかも?
214 :
螺旋独房:04/08/11 21:13 ID:R69a22le
1
「僕は、もうすぐ死ぬんだ」
ナランチャ・ギルガの幼年時代は、裏切りに満ちていた。
幼くして母親に先立たれたナランチャは、父が放任主義だったこともあいまって、親からはほとんどものを学ぶことなく育った。
そんな彼が堕ちゆくのは時間の問題だった。
学校へ行くのをやめ、友人達とふらふらと街をうろつき、盗品で食いつなぐ。
そんな決して誇ることの出来ない生活の中、ナランチャが得たものこそ『友情』だった。
『友情』こそが、自分の全てなのだと思いこむようになった。だが彼はその脆さを知らなかった。失った時の反動を知らなかった。
信頼していたはずの友に罪を擦り付けられ、裁判沙汰になった。
父は息子の無実を信じず、叱咤すらもしないで、自分は知らなかっただの、息子は家出同然だっただのとひたすらに世間への自己弁護をしただけだった。
実の父親にすら裏切られた。
結局少年院にぶち込まれたナランチャは、規制や厳罰という、本来親から受けるべきであった一般教養を最悪の環境で叩きつけられた。
一年の後に出所する際、ナランチャは左目を患っていた。殴られ負った怪我が院内で化膿し、治癒を遅らせていた。
ナランチャは家には帰らなかった。帰れなかった。一度も面会にも現れなかった父のいる家になど。無言の勘当だった。
親友だった者は、皆、病を抱えるナランチャを避けた。
ナランチャの居場所は、院で過ごしたわずか一年の内に消え去ってしまっていた。
215 :
螺旋独房:04/08/11 21:15 ID:R69a22le
薄幸な少年は、仕方なしに、また自暴自棄となって、路上や裏通りでホームレス当然の生活を始めた。着ていた服をそのままに、薄汚い毛布が一切れ、左目には包帯が巻かれている。それだけが少年の全てだった。
独り昼夜を過ごすうちに、ナランチャは恐怖を覚え始めた。母の死因は眼の病気だ。それならば自分も母と同じく死ぬのではないのかと。この孤独のまま、切なく一生を終えるのではないかと。
その暗示は『運命』という単語で完成を迎える。死とは僕の運命なのだ。
運命と言う名の見えない何かが、僕を死という終焉へと後ろ押しするのだ。逃れる術は無いんだ。
若き運命論者となった彼は、いつしか母すらも自分を裏切ったと考え込むようになった。
全ての裏切りは始まりから予定されていたのだ。そして自分の死も。
遂には神も自分を裏切り見放したと信じ込んだナランチャは、内から迫る死と、冷たい外気に震え、ただただ怯えていた。
彼の人生は放棄された。
十五歳だった。
216 :
螺旋独房:04/08/11 21:16 ID:R69a22le
2
「探したぜ、ナランチャ」
いつものように寒い夜だった。
路地の端に膝を抱えてうずくまり、自分の末路を嘆き呟いていたナランチャは、ふとかけられた声に聞き覚えがあることを思い出した。
インガンノ。年上ながらも、一番の親友だった男。いつも世話と相手をしてくれた兄貴分。そしてナランチャに濡れ衣をかけた卑劣漢。
だがナランチャにとって昔のことなどどうでも良かった。こそこそと口を動かし、
「あんたのせいじゃない」
と、ほとんど聞き取れない音量で呟いた。
……運命なんだ。後半部分は口にすら出さずに、心の中のみで唱える。
幾日幾度と繰り返される呪文。だが反復の末の平安は無い。死への流れを自覚する。たったそれだけが、今のナランチャに許された抵抗だった。
「ナランチャ……。糞最悪の一年間だったろう? 寂しかったよなあ。辛かったよなあ」
色ボケた金髪頭を振り、インガンノはうんうんと自分で相槌を打つ。
ナランチャが追求しないのを良いことに、インガンノは勝手気ままに語っていた。自分は疑われてすらいないと自負しているようである。
「ああ、ナランチャ、俺に手伝わせてくれよ。おめえに立ち直って欲しいんだよ」
インガンノの、どこか厭わしい言葉がナランチャの脳へと入り込んでゆく。友人だったときにもこんな耳につく嫌な口調で彼は話していたのだろうか。
「そのために会わせたい人がいるんだ。な、ちょっと来てくれよ」
話を聞いてはいるものの、ナランチャは眉一つ動かさずただ一点の闇を見つめていた。黒の空間は視線を呑み込むばかりで、なにも返してはくれない。
やがて、心の内で復唱が始まった。
全ては運命なんだ。運命なんだ。全てを受け入れろ。全てに流されろ。
ナランチャは無言で立ちあがった。
217 :
螺旋独房:04/08/11 21:18 ID:R69a22le
3
「つまりだクソガキ、ココらにいる以上は俺に従うんだよ」
案内されたのは路地のとある行き詰まりだった。無秩序に積み重ねられたガラクタが、不恰好な椅子を形成している。
椅子の天辺には鋭く光る電球がくっつけてあり、唯一の光源はそこに座る小汚い中年の男を照らし出していた。闇夜の裏路地でも、脂肪の皺の陰影までくっきりと見える。男のかけたサングラスだけが黒い反射を投げかけている。
インガンノを含めた数名のティーンエイジャーが男の両サイドに整列していた。彼らの中にはかつてナランチャの友人だったものもちらほらと見て取れる。
大勢の前に引き出されたナランチャは、一年前の法廷を思い出していた。被告役はまた僕で、裁判長があの椅子に座った中年太りの親父だ。自嘲する気にもならなかった。
そんな中でナランチャは違和感を感じた。インガンノと再会した時にも涌き出た違和感だ。視覚対象が増えた今、疑惑は次のステップへと成長する。
そうだ、彼らは変わっていないのだ。ナランチャが少年院へ収容される以前と彼らはまったく変わっていない。一年前の思い出の像そのものなのだ。
成長期の若者に一年ぶりに会う、本来ならば彼らの成長と変化に驚嘆するはずである。だがそれが無かった。
「いいか、俺はココのボスだ。テメエらは俺直属の兵隊なんだ。わかるか?」
ナランチャの疑問を尻目に、だぶついた顎の肉を震わせて、中年男が説く。声までも脂ぎってベタベタと耳に纏わりつくようだった。
「メシ、毛布、金、従えば褒美をやるぜ。だが、もし、このアレッシー様に逆らったら……」
意味深な含みを込めた言葉に、子供達がクスクスと笑い出す。幼さの残る嘲笑と夜の風とが冷たく混ざり合ってナランチャの周りで渦を巻く。
何を笑うのか。気付いた時には、影が伸びていた。どっしりと座すアレッシーとか言う男の足元から、いつの間にやらナランチャの足元へと。
先ほどまでは今の半分にも満たない長さだったはずの影である。アレッシーは微動だにしていない。
218 :
螺旋独房:04/08/11 21:19 ID:R69a22le
増長した影は、ナランチャの細い足を体積の無い蛇のごとく這いあがり、「うわっ」と、ナランチャが声を張り上げた時には、何の変哲も無い人影に戻っていた。電球の光明に磔されるただの影だ。
「とりあえず、これは戒めってやつな、ヒヒヒ……」
疑問より先に変化が起こった。腕が縮み、脚が縮み、脊が縮んだ。慣れ親しんだ体がほんの少し退化した。数値にして3cm足らず、または一年間ほど。
ようやく頭の中に異常への対応策が飛び交うが、決定的な選択肢はいつまで経っても現れない。それもまた影に呑まれてしまった。
ナランチャもまた、楽園の思い出に相応しい年へ戻った。若返ったのだった。
「もし俺に逆らいでもしやがったら、見えなくなるまでチビに戻してブチつぶしてやる」
右手の指と指で虫を押し潰す振りを付けつつ言う。その手のまま、男はかけていたサングラスを下方へずらす。
「わかった? えらいねぇぇぇ」
肉と皺に埋もれた、やはり粘着質な細い眼で、もはや十四歳となったナランチャを見つめながら、やけに緩い抑揚で念を押した。
僕が死ぬのには、こんなことが必要なのか?
ナランチャは体を震えるに任せて、そう考えていた。
219 :
螺旋独房:04/08/11 21:20 ID:R69a22le
続く
おお、また新作がきた。
文章力も高いし雰囲気もいい。ユルさんかな?
一輪のバイクを駆り、ガリィはベトナムの密林を走る。超常的な視力と身体能力で木々をかわし、茂み
を飛び越える。まるで障害物の無い平坦な道を走るかのように無駄の無い、軽やかな動きだった。
『ノヴァ教授の研究所まで残り9km、トラップ類などはありません』
機動ユニットのスピーカーからガリィ専任のオペレーター、ルゥの声が聞こえてくる。ルゥは20代前半の
若い女性で、スピーカー越しにしかガリィと接したことが無いものの、その憎めない愉快な性格からガリィ
の信頼を得ている、ガリィの数少ない友人の一人でもある。
「ノヴァのやつ、私をなめているのか?」
ガリィは一言つぶやいた。が、それから気分を一転させ、笑顔でルゥに話しかける。
「ルゥ。私、この任務を終えて自由になったらさ、フォギアの所に行くつもりなんだ」
『ガリィさんの恋人ですよね』音声に続き、手を叩く「パンッ」という音が響く。
『いいなぁ、ガリィさん。私も恋人ほしいなぁ。私、この年になってもまだ男の方とお付き合いしたことって
無いんですよねぇ。そういえばガリィさん、フォギアさんってどんな男性なんですか?』
「フォギアは漁村生まれなんだ」ガリィが答える。「数年に一度、海に出てくる体長20mを越すオオウミヘビ
を銛で仕留めることもあるそうだ。私、海を見たことが無いからぜひ行ってみたいなぁって――」
そこまで話すと、ガリィは唐突にブレーキをかけてバイクを止めた。何者かがガリィの元を目指して飛ん
でいることを察知したのだった。
『どうしたんです?ガリィさ……』
言いかけて、ルゥもまたレーダーで敵影をキャッチした。いつのまにか1km以内にまで接近している。
『すいませんガリィさん!私ったら全然気がつかなくって……』
「いいよ、ルゥ。相手はどうやら一機だけみたいだ」
ガリィは空を見上げた。そこにはバーニアを噴かして中空に浮いている、ザクTの姿があった。
「モビルスーツ……ノヴァの手下か?」
ザクはバーニアの噴出量を徐々に減らし、密林の中に着地した。それから、モノアイを点滅させる。
ガリィには、それがモールス信号であることが即座に理解できた。答えは――Y・E・S。
「そうか」ガリィはバイクから飛び降り、両手を胸の前まで挙げて構えをとった。
「なら相手をしてやる!」
ザクTはいきなりヒートホークを大上段に構え、刃を加熱させるとガリィに向けて一気に振り下ろした。
木々をなぎ倒し、大地を裂く。地響きが轟き、倒木は燃え上がった。
ガリィの姿が、土埃の中に消えた。
『ガリィさん!』
ルゥが叫ぶ。まさか今の一撃でやられてしまったのでは……
心配には及ばなかった。土埃が晴れるとともに、ガリィの無事な姿が浮かび上がってくる。ガリィは今の
一撃を、わずかばかり身をよじらせるだけで避けていたのだ。
――木々の密集した地形。大型のサイボーグやモビルスーツは圧倒的に不利だ。
ガリィは考える。
――さらに今の一撃から推測するに、このザクは電に比べスピード・戦闘技術・闘志のいずれの点でも
遠く及ばない。……私の敵じゃない!
「機甲術(パンツァークンスト)を見せてやる!」
ガリィはザクめがけて駆けていった。
ガリィは跳躍すると、ザクの腕の周りを螺旋状に回転しながら昇っていく。
――1つ(アイン)、回転体術!
ザクは自身の右腕を昇ってくるガリィを左手で叩き潰そうとした。だが、叩いたのは己の腕のみ。
己よりもはるかに小さい標的を捉えるのは至難の業だった。
――2つ(ツヴァイ)、敵の身体そのものを盾とする!
その間にもガリィはザクの腕を回転しながら昇っていき、ついにはザクの眼前まで跳躍した。
そして腰から銃を引き抜き、素早い射撃でザクの単眼を潰す。
――3つ(ドライ)、最短距離から最大弱点への攻撃!
メインカメラを潰されたザクは右手で己の顔面を押さえる。だが、ガリィは油断しなかった。
――電との闘いではここで油断し、危うく命をとられるところだった。念には念を押して。
ガリィは落下中に体を一回転させると、勢いをつけてコックピットに両掌を叩き込んだ。
周破衝拳・双掌打(ヘルツェアハオエン・ドッペルト)。拳に100Hz以上の振動を込めて打つことにより、
目標内部に運動エネルギーを集中させて破壊する技だ。
これでコックピットの操縦系は破壊されたはず。ガリィはふっと息を吐くと、着地した。
ザクTは膝から崩れ落ち、地響きとともにうつぶせに倒れた。
立ち上がる様子は、無い。
『やったぁ!ガリィさん、余裕の勝利ぃ!』
ルゥが無邪気に喜ぶのを尻目に、ガリィは倒れたザクを見つめていた。
「『機』の練りが全然成ってない」
ガリィがぽつりとこぼす。ザクの指が微かに動いた、ように見えた。
「私と闘いたければ『機』を習得することだな」
ガリィはそう言い残すと、バイクにまたがり再びノヴァの元へと走り出した。
後には意識を失ったザク一機、いや、一人が残された。
意識を完全に失う直前、ザクはガリィの言葉を聞いていた。
「私と闘いたければ『機』を習得することだな」
『機』? 『機』って、何だ?
考えながらザクは意識を失っていった。
目を覚ましたとき、既に日は西の端へと傾いていた。空も雲も森の木々も斜陽で朱に染まっている。
周破衝拳(ヘルツェアハオエン)を喰らっていたものの脳自体に損傷は無く、機体も無事だった。壊され
た単眼も既に自己修復している。通常のサイボーグ体よりはるかに頑丈な『イマジノスボディ』でなければ
脳は破壊されていただろう。たとえ破壊されたとしてもナノマシンの働きによって修復されることだろうが。
――負けた。
ザクは心の中で呟き、力なく地を叩いた。
――負けた。この体の十分の一にも満たない背丈の女性に。あっさりと。
無力感がザクの心を支配した。地面に伏したまま、木を雑草のようにむしりとる。
ザクは心の中で、涙を流していた。
――何がイマジノスボディだ!こんなにでかい体を持ちながら小娘一人にもかなわないなんて!こんな
ことじゃあ範馬勇次郎への復讐なんて夢のまた夢だ! ちくしょうッッ!!
木をむしり、むしった。そして日がとっぷりと暮れるまで、ザクは啼き続けた。
星がちらつき始める――落ち着きを取り戻した――ころ、ザクは座位で空を見上げていた。
――俺は弱い。人間の体だったあのころと何も変わっちゃあいない。
拳を目の前で握る。巨大なはずのその拳も、心なしか小さく見えた。
――だから、強くなるんだ。これから。今回の敗北は決して無駄にはしない。俺はきっと、強くなる。
そしてふと、ガリィの言っていた『機』のことを思い出す。結局あれは、どういう意味だったんだろうか?
――それだ。まず、『機』について知ろう。強くなるための足がかりが、きっとそこにあるはずだ。
ザクは立ち上がった。もう一度ガリィに会い、『機』について教えてもらおうと心に決めて。
そのためにはノヴァ教授の元へ急がなければならない。ガリィがまだそこにいてくれればいいのだが。
ザクはノヴァの研究所を目指して飛び立った。
ガリィ強え…つーかザクが弱いのか……
確かに中の人が素人のザクじゃ巨人戦闘のスペシャリストであるガリィには歯が立つまい
あの、ちょっと質問なんですが。
今ドラえもんと某エロゲーとのクロスオーバーSS(エロゲーとのクロスだけどエロは無し)を
書いてるんですが、結構な分量になりそうで完成までちょっと時間がかかる(10〜11月までには仕上げるつもり)
うえに、エロ無しとはいえエロゲーとのクロスってのを投下してもいいものか悩んでます。
なんかスレの流れを無視して質問してごめんなさい。
>>226 エロパロ板でいいじゃん。
あそこはエロ無しも扱ってるんだから。
>227
エロゲーネタ板とエロパロ板とここと、どこに投下しようか迷ったんですが、
エロゲーとクロスさせるならやっぱそっちの方がいいですか・・・。
ありがとうございます。
>>226 エロ無しならここでもOKだと思うけど。
(エロパロでエロ無しは叩かれるだろうし)
ただ、元ネタのエロゲーが有名なやつじゃないと厳しいかも。
元ネタ知らなくても楽しめる奴を期待。
230 :
226:04/08/12 18:29 ID:DG+ndwxP
>229
元ネタのエロゲーはNavleのSHUFFLE!です。
知名度は普通程度・・・かな(エロゲーやる人は知ってるでしょうが、一般人にも知られてるレベルではない?)
知らない人はちょっと理解しにくいものになるかも(その辺はなんとか頑張ってみます)。
オリキャラや自分設定はNGでしょうか?
別にエロパロでエロなしでも内容があれば叩かれないでしょ
>>231 いや、叩かれるよ。
ドラえもんじゃないけど、ダイ大エロスレで書かれたSSが「エロが少ない」
って理由で追い出されてた。割と読ませる内容だったのに。
>230
そのゲームは知らないなあ。
オリキャラはNGじゃないだろうけど、反応は厳しいかもね
>232
ああ、そうなの、俺が住人のスレではエロなしでも絶賛されてたけど
キャラとスレによるのか
234 :
作者の都合により名無しです:04/08/12 21:00 ID:cpHMqi1G
>>231 人魚姫はエロパロ18号スレでも絶賛されてたよ。
泣いたって奴が続出してた。
(誰かがバキスレHPの人魚姫へのリンク貼ってた。パオ氏本人か?)
泣いた奴の中に、人魚姫の作者は女性って推測してる奴もいたw
>>234 まさか。パオ氏がそんな自演まがいなことする人だとは俺は思いません
>>235 あれ、パオ氏は男性なんですよね?
それとも本当に女性?俺もよく分からん
238 :
パオ ◆w/9ws2V0DU :04/08/12 23:43 ID:xQ3IkafW
>>234 違う違う。エロパレの18号スレってあるのも初めて知った。
マロンの18号スレは住民だったのですが。今から見てきます。
>>235 どうもありがとうございます。人魚姫は、まぐれ当たりの大ホームランですよ。
自分でも少し引いた位好評だったから。女性が主人公だから照れながら書いてました。
>>236 男です。いやむしろ、漢。
すいませんバレ様、人魚姫の作者名を「パオ」にして下さい。
ラーメンマンは名無しのままでもいいです。
「とりあえずあんた、死ねよ」
後ろからかけられた悪態に山崎が返事すらしないまま、男は山崎の脳天
を撃ちぬいていた。
脳漿が飛び散り、事務所内の一角が暗いピンクで染まった。
「な、なんだテメエ」
異常事態を前にして、次の構成員はしごく一般的な脅し文句を漏らした。
そして、その場違いな文句を遺言に胸の臓を撃ちぬかれ、絶命する。
花山組の事務所一階にある、受け付けとは名ばかりである組員の溜まり
場に、早々と2つの骸が転がった。
唖然とする者、泣き出す者、拳銃を取りだし狙いを定める者、多様の反応
が見られたが、結局は上階からの応援を待つ前に皆逝った。
階段からは、もはや任侠の顔つきとなった男達が黒光りする銃を構え次々
と流れ出てくる。
当事を起こした男は、自らに向けられる銃口に対し、薄ら笑いを浮かべた
だけだった。
ドスの効いた罵声が飛び交うが、場違いなほど静かな、かつ突き通る一声
で収まった。
「黙れ」
音の波が掻き消え、理性を取り戻しかけた組員達は、数分までは仲間だった
肉達を前に吐き気を思い出し始めた。
その声の主が、スーツ姿の人海を割ってずいと前に出た。
「俺の、お客かい?」
巨体が、ゆっくりと千切り捨てるように言う。
花山薫の問いに、テンガロンハットを被るガンマン、ホル・ホースは「ヒヒヒ」と
笑うだけだった。
愚地独歩は自分の拳に問う。
……なんなんだこれは。
あるいてて、おいらに絡んできた未のほど知らずをちょちょっと懲らしめた
だけだったじゃねえか。ええ?
怪我させねえように撃ちこんだ拳は、チンピラの顎を掠めた。
顎が割れたんだ。肉が弾けたんだ。
混乱してるな、と思う。
最小限最低限のパワーのジャブは、チンピラの意識を消し飛ばす。
はずだったじゃねえか。
顎が割れたんだ。たかがジャブ一撃で。パッカリと。
個人的には ここまではオーケイだったんだがな。その後がいけねえ。
拳に付着したチンピラの肉片は、グチャグチャと不快音を立てながら、独歩の
右拳に食らいついていた。
「なんだんだ、これはよぅ」
今度は地面にへたり込むその顎が抉り飛んだチンピラに問う。
そのチンピラの顔が徐々に崩れていった。リアルすぎて逆に信憑性を逸する
SFXのように梳けていった。
ラバーソウルの自称美顔が露になる頃には、独歩は痛む拳を固め、構えを
取っていた。
……まあ、まずはこいつをぶっ倒そうじゃないか。
脳内電子が正拳を発射させた。
続きます。
242 :
作者の都合により名無しです:04/08/13 00:03 ID:Rtsdj1sp
新作ですか。
ユルさん、頑張って下さい。違ったらごめん。
トリップいりますか。すみません。
ネクスト作者氏おつかれ。期待してるよ、頑張って。
みゅう氏や誇り高き希望氏や憑依氏は投げちゃったんだろうか。心配。
○さんもそろそろこっちへきてよ。
憑依さんは今週投下って言ってたし、そろそろかも。
みゅうさんと誇り高き希望作者さんはどうしたんだろ。
どっちもこれからってところなのに。
初めてナルトを読んだ。ロック・リーって濃い顔してるのな。
ジョンス・リーみたいのを想像してたんだが。
第二十話「それぞれの明日」
公園中に轟音が鳴り響く。骨と肉とがぶつかり合い形成された、闘争内にしか存在しえ
ぬ合奏である。重厚な筋肉に包まれたドリアンが、ジャックの猛攻により確実にダメージ
を蓄積させている。
数分間に渡りラッシュは続くも──ドリアンは見事に耐え抜いた。
流石のジャックも息を乱す。絶対の自負を持つ打撃。それも相当数を打ち込んでおきな
がら、倒すことが出来なかった。少なからず動揺しているようだ。
「絶命してもおかしくないはず……何故だ」
「フフ、答えは簡単だ。君の打撃レベルは程度が知れているということさ」
そうドリアンが言い終わると同時に、ジャックがアッパーを放った。が、ドリアンも刹
那で見切り、がら空きとなった脇に掌底を食い込ませる。衝撃は内臓にまで侵食し、先の
奇襲ではピクリともしなかったジャックの表情が歪む。
「ぐっ……グアォッ!」
両手を広げ、極限まで口を開くジャック。彼から発せられる闘気は、まさに獅子そのも
の。ライオンの牙にも匹敵する硬度を誇る歯が、今をもって解禁されたのだ。
噛み付きの連続。獅子が舞い狂う。急所こそ避けているものの、ドリアンの肉体が少し
ずつ食い千切られていく。そして、今一度ジャックが噛み付かんと飛び掛かる。
「そろそろ反撃の頃合いかな、ジャック君」
強烈な右フックが、ジャックの頬を直撃した。口を開くと、人間は打撃に極めて脆くな
る。そこを突いた一撃であった。──が、ジャックは倒れない。拳を振り抜けない。
「ふん。闘争に小細工を持ち込むような男が、真の暴力に通用すると思うのか」
ジャックの左ロー。流麗な動きに破格の威力、豪快にドリアンの右足が砕け散った。ぐ
にゃりと曲がった脚からは、健康的な白く太い骨が露出している。
脂汗こそ流れているものの、声一つ上げぬドリアン。片足は完全に破壊されたが、まだ
立っている。震える両手を、緩やかに上下左右に動かし始めた。
攻めでも守りでもない彼の行動を、半ば呆れながら見つめるジャック。
それから数秒後──ドリアンが両手を叩いた。そして、哀れむような口調で呟く。
「これで……君は幻覚の世界へと旅立った」
ドリアンの行動の正体は催眠術であった。対象者の心にある弱さにつけ込み、脳内に幻
覚を植えつけるという恐るべき術だ。魂が抜けたような表情をしているジャックに、ドリ
アンがゆっくりと近寄る。
「私のペテン師としての最高峰の技だ。君の強さは、私が手段を選んでいられる領域には
なかった。許してくれたまえ」
神妙な面持ちで、ドリアンは右手を一本拳に握り込んだ。狙いを人中に定め、高速の突
きを放ち──受け止められた。あり得ないことであった。
ジャックは左手で一本拳を掴み、そのまま圧倒的な握力で骨ごと握り潰してしまった。
「あぐっ……くゥッ! 信じられん、催眠術が効かぬとは……」
「俺は格闘士として明日を捨てたトレーニング、ホームレスとして明日すら保障されぬ生
活を日常としている。この俺に、その場凌ぎに過ぎんペテンなどが通用すると思うか」
ジャックの中段蹴りが、腹筋に突き刺さる。あっけなく胃袋が破裂した。
吐血を繰り返すドリアンに、容赦のないラッシュを浴びせるジャック。先程とは違って、
ドリアンは全くガードを出来ていない。ひたすら打たれるのみ。だが、決して倒れない。
攻め続けるジャックの脳裏に、一抹の疑問が浮かぶ。あまりに異常なタフネス。肉体や
精神だけの作用ではない。ガイアのように、格闘を超越した何らかの力が働いていること
は確かなようだ。と、そんな彼にドリアンが細々と言う。
「……分かっていないな、君は」
「何だと?」
「ペテンとは……明日を築く行為。私にとってのペテンとは、明日への道を切り開く力な
のだッ!」
虫の息だったドリアンの瞳に生気が宿る。そして、あらぬ方向を指差して大声で叫んだ。
「あそこに幽霊がいるぞッ!」
同時に、折れた右足でドリアンがハイキックを放つ。が、あっさりと太い腕に阻まれて
しまう。
「まるで幼児だな。あんな下らぬ嘘で──ぐあッ!」
ガードに使った左腕には、ドリアンの右足から飛び出した骨が食い込んでいた。
「少しは見直してくれたかな……ジャック」
左腕から大量に流れ出る血を見て、露骨に憤怒を表面化させるジャック。
「大したものだ。では、その明日を切り開く力とやらが、どこまで持つか試してやろう」
怒涛のラッシュが再開された。いや、ジャックの打撃は目に見えて威力が上がっている。
皮膚を切り裂き、肉を押し潰し、骨を叩き割る。もはやドリアンに反撃の余地はない。し
かし、なおも倒れず立ち続けている。
早く倒れろ、と祈りながら試合を見守る二人。シコルスキーと柳。
「シコルスキーさん、彼が倒れぬ理由に心当たりはないかね。あのままでは、確実に殺さ
れるだろう」
「心当たり……」
シコルスキーは、試合前のドリアンとのやり取りを思い返した。「死んでも勝つ」と宣
言した直後、両手を叩いたドリアンの行為。あれがもし、単に気合いを入れるためだけの
ものでなかったとしたら──導き出る結論はただ一つ。
「まさか……強力な自己催眠!」
気づくと、シコルスキーは絶叫していた。今まさに試合をしているジャックに対して。
「頼むッ! ドリアンを殺さないでくれッ! そいつは死ぬまで戦い続けるよう、自己暗
示を掛けているんだァッ!」
涙ながらの懇願。だが、本部はそれをあざ笑うかのように、冷酷にも言い放った。
「ジャック、聞く耳を持つな。せっかく催眠術を駆使してまで勝ちを得ようとしているの
だ。最後まで戦わせてやるのが、人情というものだろうよ」
両者の相反する意見を受け、ジャックの動きがわずかに止まる。眼前には、全身を破壊
されながらも闘志を絶やすことなく立つドリアン。
何を思ったか、ジャックはドリアンを肩に担ぎ上げた。そして、野球の投球フォームに
て全力で投げ飛ばす。ドリアンは地面と平行に飛び、公園外にある道路上に放り出された。
このスペシャルマッチでは、公園の敷地を出てしまっても敗北と見なされる。
「勝負ありッ!」
ルールに従い、審判の職務をこなすオリバ。副将戦を制したのはジャック・ハンマーだ。
「まさか、自分自身をもペテンに掛けていたとはな……」
公園に一人残されたジャックは、ドリアンを評して独り言のように呟いた。
ようやく二十話までやって来ました。
いよいよ、ヤツの出番です。
そして……オリンピック開幕ッ!
台風が上陸する前のような高揚感に襲われています。
251 :
作者の都合により名無しです:04/08/14 03:14 ID:4Frkb6oO
魔王みたいな本部の前に、チワワみたいなシコルがどう戦うんだw
ジャック対ドリアン熱かったが、何気にこの台詞に笑った。
>俺は格闘士として明日を捨てたトレーニング、
>ホームレスとして明日すら保障されぬ生活を日常としている。
ホームレスって凄いんだなw
あと、まとめサイト70000ヒット突破おめでとう。
>バキ:ネクストステップ
ぞくぞくするような雰囲気がいい。花山と独歩という2大暴力をどう書ききるか楽しみだ。
ただ、状況がどんな状況なのかさっぱりわからん。物語のバックグラウンドとか、
何と独歩たちは戦っているのかとか。なぜ、いきなりホルホースが出てるとかもわからん。
でも、おそらく少しずつ明かされていくという事でしょう。期待して読みます。
>しけい荘物語
ドリアン負けた----------。やっぱジャックは別格に強いのか。
描写は素敵にかっこよかったがやっぱり格違いの感がしましたな。
ドリアン死刑囚の中で一番好きなんだが。そしていよいよ大将戦か。
ホームレス代表の本部とヘタレ代表のシコルスキー。
この絶望的な戦力をどうするのか?いよいよ佳境ですな。
253 :
ふら〜り:04/08/14 09:49 ID:W6awvm8b
>>螺旋さん
そ、そこでアレッシーですかっ。てことは、もしかしたら既に何人か「紛れ込んでる」
のかも? 誰かが。……でもこうやって読んでみると、環境がシーザーと似てますね。
ジョセフもジョナサンも条太郎も恵まれているんだなぁと、しみじみ。
>>ザクさん
ふーむ……本人の心情は殺伐としてはいても、一応ザク(=スペランカー)の成長物語、
という感じですか。でも復讐より大切なものを見つけた、とかいうのもアレですし、
復讐を成し遂げてハッピーエンド、となると勇次郎の敗北でそれも難しい。はたして?
>>ネクストさん
バキチーム対スタンド使い、ですか? 単純に考えると設定上、どう足掻いても
バキチームに勝ち目はないわけですが。一体、どう戦うのか? もし、普通に戦える
ようになったら、「世界」と勇次郎の真正面からの殴り合いとか……面白そうかも。
>>サナダムシさん
「ペテン師」「ホームレス」を、ここまでカッコ良くっぽく描かれるとは流石。双方の
生き様がぶつかり合い、制したのはホームレス。そして「見守るヒロイン」と化した
シコルの叫びを背に受けつつ、力尽きたペテン師……壮絶でした。
>>251 ……チワワ、って。いや実際、サナダムシさんのシコルはそれぐらい可愛いですが。でも
パオさんの魔界編ではその座にいる本部が、しけい荘では魔王。いろいろですねぇ。
ネクストさんのはバキ軍団対スタンド軍団か。面白くなりそうだ。
サナダムシさん、シコルに勝たせてやって下さい。シコルは本当はいい奴なんですw
私はオリンピックよりプライドの方が楽しみだ。ハッスルハッスル
シコル死にそうw
職人お盆休みか。それともオリンピック休み?
プライド小川優勝キボン。ハッスルハッスル!
いくらなんでも小川がヒョードルに勝てるとは思えんけど勝って欲しいな。
職人さんたちもハッスルしてくれ!
あまりにも順当だったね。
さすがに小川にはガックリ
職人さん、面白い作品で俺の心を癒してくれ
よりにもよって柔道技で秒殺だもんな〜
さすがにどんなコアなファンでもフォローできん
261 :
作者の都合により名無しです:04/08/15 23:08 ID:4NdKfPtT
さすがに神モードは脱したか。
あの状態が異常だったもんな。
職人さん期待上げ!
263 :
作者の都合により名無しです:04/08/16 18:31 ID:GJF4B9iq
通常モードに戻っちゃったね。
ショボン
264 :
作者の都合により名無しです:04/08/16 19:19 ID:bgZ+0PEc
<超人アーリーデイズ ラーメンマン編 中編2>
>
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/ra-men/02.htm 「まったく地に足付かぬ男じゃのう。こんな夜中に出発するか」
朴念が呆れたようにラーメンマンにそう言った。
山奥のこの寺は、近くの街まで下りるのに昼でもゆうに2時間掛かる。
しかも今は夜の10時、この辺りでは深夜といっても差し支えない時間である。
山の夜は深い。闇がまるで世界を取り仕切るかのごとく、光を奪っている。
「ですが、一刻も早く帰りたいのです。不動心の意味を知る為に。
御坊は仰った。拳士は拳の道を歩いてこそ光が見えると。
私は、一刻も早く里へ帰り、もう一度基本の修行をしたいのです」
「ふむ。この闇を潜り抜けてでも早く帰りたいと」
「ええ。夜通し歩けば、朝には超人拳法の里へ着きます。
一切の光無い夜道でも、厳しかった拳の修行を思えば容易きこと」
「光無き道か。若いのう、ふひゃひゃひゃひゃひゃは」
下品な笑いに、再度ラーメンマンは疑念が沸く。本当に、中国でも指折りの高僧なのかと。
先ほどの問答ではこの老僧の見識の高さは垣間見えた。だが、普段が普段である。
拳の道においては陳。仏の道においては朴念。
多くの中国人がそう称え、2人の老人を拳聖と名僧と呼ぶ。
だが間近に2人に接した(たとえ、朴念と接したのは一日だけとしても)ラーメンマンの
感想は、 ……朴念、わが師・陳 宗明に遠く及ばず、であった。
265 :
ラーメンマン青年記:04/08/16 19:20 ID:bgZ+0PEc
古寺の門まで朴念が見送りに来た。ラーメンマンは丁寧に頭を下げる。
「やれやれ。朝まで待てと言っても聞かんか。夜山を甘く見てはいかんのう」
ラーメンマンはその言葉を聞き流し、胸の前で右拳を左手で包み込む手形を造る。
「朴念老師、謝謝。一日とはいえ恩義は恩義。忘れません」
「嘘こけ。怪しいジジイに似つかぬ世評と、いぶかしんでおったんじゃろ」
顔を真っ赤にするラーメンマン。恬然と笑う老僧。問答ではどうやら勝てぬらしい。
門を出て、数歩行ったところで、再度ラーメンマンは振り返り一礼する。
大きく欠伸をして応える朴念。一瞬カッとするラーメンマンに、朴念は笑う。
「ひゃはははは。若い若い。どれ、ひとつ拳士のお前さんにひとつ助言をやろう。
言葉や仕草も兵法のうち、じゃ。こんな事で心が動くようじゃ、修行が足りぬ。
不動心なんぞ、まんだまんだ、とてもとても」
ラーメンマンはその言葉にまた顔を紅くして、怒ったように前を振り返る。
眼前には闇。果てしなく広がる闇。原始の恐怖を呼び覚ますような、漆黒の闇が広がる。
ほんの少しその闇にラーメンマンは躊躇する。やはり、朝になって出立する方が、と。
だが、彼の気位が赦さなかった。朴念の手を振り解いた以上、後戻りは出来ない、と。
一歩一歩、闇の懐へ踏み込んでいくラーメンマン。心細くなる心を、彼は叱咤する。
こんな事で、陳老師の言っていた「不動心」が掴み取れるか、と。
背後からのんびりとした声が聞こえてきた。朴念の声である。
「やれやれ、危ない足取りだのう。都会暮らしにこの暗闇を抜けるのは無理じゃ。
仕方ないのう。しばらくしたら、送り火を焚いてやる。待っておれ」
ラーメンマンはその言葉を無視し、ずんずんと山道を下り始めた。
266 :
ラーメンマン青年記:04/08/16 19:21 ID:bgZ+0PEc
暗い。心細い。
一歩踏み出すたびに、黄泉に沈んでいくかのごとき感覚。
どこからか、ほうほうと得体の知れない鳴き声がする。足元が覚束ない。
右手に持ったたいまつの光は余りにも脆弱で、圧倒的な闇の前では蟷螂の斧に等しい。
ザワリ、と木立がそよぐだけでラーメンマンは過敏に身構える。
無論、彼に対して何の敵意を持った者ではない。風か、小動物が横切る音だ。
俺は、こんなに弱くて臆病だったのか。
超人拳法界の麒麟児と言われ、幾多の修行を潜り抜けてきた自負が崩れ去っていく。
この暗闇と大自然の前では、修行中の超人など知れたものだ。小娘と変わりない。
まるで大海原の如き広い迷霧の中を、無力な男が震えながら歩いている。
そうだ、空を飛ぼうか。そんな考えが彼の脳裏を横切る。
だが彼は首を振りその考えを頭から追い出す。陳に禁じられていたのだ。
有事の際以外、空を飛ぶ事まかりならぬ。地を歩き、人の視点で超人たるのだ。
昔、陳に言われた言葉がありありと頭を過ぎる。そうだ、私は陳老師の弟子。
弟子が例え師の前で無いとて、師の言葉を裏切ることは出来ぬ。
歯を食いしばり、もう一度闇に足を踏み出す。心は既にボロボロになっていたが。
267 :
ラーメンマン青年記:04/08/16 19:22 ID:bgZ+0PEc
もう、3キロは歩いただろうか?
ラーメンマンは後ろを振り返って愕然とする。遭難しないように先ほどつけた傷が見える。
暗闇の中でも判別出来る距離、という事である。それだけしかまだ歩いていないのだ。
いかな超人の視力でも、せいぜい数十メートルの距離であろう。
思考が、まるでクリームのようにドロドロと溶け始める。闇が、彼の精神を侵食し始めた。
(私は、もしかしたらこの闇から抜けられ無いのではないか?)
後ろ向きな考えが脳を支配し始める。まだ、闇に入って数十分というところだろう。
歩いた距離にして、1キロあるかどうか。まだ、下山まで3分の1も歩いていない。
駄目だ。もう限界だ。飛んで下山しよう。また明日から真剣に修行すればいい。
ふわり、とラーメンマンの足が地を離れようとする。だがその時。
背後の山が真っ赤に染まり始めた。めらめら、と空を焼くほどの火が上がっている。
山火事? ラーメンマンはその火に向けて駆けた。必死で走った。
場所は、ちょうど朴念のいた山寺の場所あたり。まさか……。嫌な予感が走る。
火は彼の足元の虫の姿すらくっきりと浮かび上がらせるほど、赤々と照っている。
数分で山寺に着いた。火の猛威のお陰で、迷う事無くまっすぐ走れたからである。
ラーメンマンは立ち尽くす。燃えている。先ほどまで禅を組んだ古寺が焼けている。
火は煌々と闇夜を照らし、火の粉を高々と天へと吹き上げている。
ラーメンマンは我を取り戻し、辺りを見回した。朴念を探したのである。
程なく朴念は見つかった。火元より10メートルほど離れた場所で、悠然と座しながら、
のんびりと酒を呷っていたのである。
268 :
ラーメンマン青年記:04/08/16 19:23 ID:bgZ+0PEc
「御坊! ご、ご無事でしたかッ。どうしたのですか、この山火事はッ」
ラーメンマンは朴念に駆け寄ると、開口一番そう叫んだ。が、朴念は笑って応える。
「こんな所に戻って何やってるんじゃ、お主。せっかく明るくしてやったのに」
「……え? 今、なんと仰ったのですか?」
「拙僧がせっかく送り火を焚いてやったのに、何でここにいるんじゃ、と言った」
呆けた表情で朴念を見るラーメンマン。朴念はちびちびぐい呑みを呷っている。
「こ、これは御坊が、わざと、火を付け、て……?」
「そうじゃ。明るくて歩きやすかったじゃろ、ひゃひゃひゃひゃひゃ」
巨大な炎に、老僧の哄笑が溶けていく。ラーメンマンは震えながら尋ねた。
「わ、私を送るために、寺を焼くなどと、馬鹿な事を…」
「馬鹿な事? 若いのう。大切な事は今、何が必要かじゃ。今必要なのは、
ボロ寺などではなく大きな炎じゃろう。ひゃひゃひゃひゃひゃは」
静寂が辺りを包む。火勢が少しずつ弱まり始めた。朴念が酒臭い息で言った。
「ほりゃ、早く行かんか。たいまつが消えてしまうぞ」
「た、たいまつですと…。目の前で、寺が燃えているのですぞ」
「御仏から見たら寺もたいまつも変わりないわい。お主が迷わねば、結構」
ラーメンマンはしばらく絶句した後、先ほど蔑んだ老僧へ自らの膿を吐いた。
「私は暗闇の中で、己の無力さを知りました。自信を無くしてしまいました。
不動心など掴める男では無いと、己の限界を知ってしまいました」
その血を吐くようなラーメンマンの絶叫に、朴念はにっこりと笑ってこう応えた。
「じゃあ、死ね」
269 :
パオ ◆w/9ws2V0DU :04/08/16 19:29 ID:bgZ+0PEc
私のSS職人人生の中で、初めてといってもいい
記念すべき空気SS、それがこのラーメンマンです。
ほとんど住民の皆様方からスルー。わははははは。
ただ、どんな出来の悪い作品でも可愛い子供たちなので、
一生懸命書いて完結させます。最後まで投げません。
退かぬ媚びぬ省みぬ。頑張りますのでご笑覧の程を。
でも、自分の中では人魚姫より好きだったりする。
読んでますよ。
でも人魚姫みたいに熱狂的はファンはつきにくいでしょうね。
ラーメンマンは読んでませんが人魚姫でパオ氏を応援する気になりました
がんがってください
春休みに暇になったら読んでみたりするかもしれないのでやっぱりがんがってください
いや、地味だけど禅問答面白いよ。
キン肉マンといえば良くも悪くもアクションSSばかりの中で
こういう作品をあげるパオ氏のセンスの良さを感じる。
人魚姫は多くのSSの中でも滅多に出ない大ホームランでしょ。
パオさん魔界編、コラム共々頑張って下さい。
でも本音言うとやっぱり人魚姫みたいなの、もう一回書いて欲しいなw
超格闘士大戦がいつの間にか
SSサイトの長編カテゴリに移動してるね。
ブラックキングさんおめでとう。これからも頑張ってね。
「ドラえもーん! 悪い政治家がボクの小遣いを狙ってるよー!」
「ハイ、ソウイレバー」
ドラえもんは巾着袋から総入れ歯を出してやった。ドラえもんの背中には大
きな蝶ネジがついていて、体中からサビ臭い水が漏れ出している。なんだかい
つもと雰囲気が違う。
「わーい! こんなもの役に立ちませーん!」
のび太は総入れ歯を投げ返した。総入れ歯はドラえもんの頭に当たって、ド
ラえもんは白目を剥いてケケケと笑って爆発した。ポップコーンのように弾け
飛ぶにせドラえもんの部品に混じって、一枚の紙切れがのび太の手元に落ちて
きた。紙切れにはドラえもんの字でのび太宛てのメッセージが書いてあった。
『のび太くんの大物ぶりには愛想が尽きました。捜さないで下さい』
「なんですとー!」
のび太はビックリ仰天して、畳の上の総入れ歯を拾い上げた。かすかに温も
りが残っている。まだそれほど遠くへは行っていないようだ。
「のび太様から逃げられると思うなよ、ドラえもん!」
非常用のタケコプターを装着して、のび太は窓から飛び出した。
「はっくしょい!」
アラスカに到着した。自宅付近を捜索するつもりが、出来心でこんな所まで
来てしまった。半そで半ズボンののび太はとにかく寒くてしょうがない。そこ
へ地元の老人が通りかかった。フード付きのぶ厚い毛皮を着込んでいる。のび
太は老人の目の前に降り立った。
「やいジジイ! アンタのコートとボクの総入れ歯を交換しろ!」
「ぶえっくしょい!」
老人は大きなクシャミをして、口から総入れ歯を吐き出した。総入れ歯はよ
だれの糸を引いて宙を飛び、のび太の鼻に噛み付いた。
「む!」
鼻先の総入れ歯は、のび太の部屋で拾った総入れ歯よりも温かかった。ドラ
えもんが近くにいる何よりの証拠だ。
「総入れ歯は借りていくぞ! ジジイサンキュー!」
モガモガと口を動かす老人に礼を言って、のび太はアラスカの寒空に舞い上
がった。総入れ歯の熱で体もすっかり暖まった。
のび太はアラスカ中を飛び回った。雪原、集落、軍事基地、ストリップ小屋
と、行く先々で総入れ歯を発見した。感動の再会を間近に感じて、のび太は興
奮のあまり何度も尿意を催した。だけど一生懸命ガマンした。そして最北端の
断崖にやって来た。
「ここだな」
あたりはすっかり暗くなっていた。夜空に広がるオーロラの光が、のび太の
姿を幻のように照らし出した。のび太は風呂敷の包みを解いて、総入れ歯の山
を眼下の北極海に投げ込んだ。
穏やかだった海面に激しい波が立った。突如荒れ狂った北極海に大きな渦が
発生して、渦の中心から巨大な総入れ歯が浮かび上がった。
「とうとう見つけたぞ! お前が総入れ歯の親玉だな!」
のび太は力の限りに声を張り上げて、海の上の総入れ歯に向かっていった。
のび太の最後の闘いが幕を開けた。
「ベロベロベロー!」
総入れ歯は大口を開けて長い舌を伸ばした。舌先が槍のように鋭くとがって、
のび太目がけて襲いかかる。危うしのび太!
「のび太くん、危ない!」
赤いマントが翻って、舌の軌道が大きく逸れて空を切った。マントを手にし
て総入れ歯の前に立ちはだかった声の主は、笑顔で後方ののび太を振り向いた。
「のび太くん、化け物退治はボクに任せてくれたまえ!」
「えーよー。ドラえもんの好きにやっちゃってー」
のび太は途中で面倒くさくなって、元の崖に引き返して寝ころんで鼻くそを
ほじっていた。ドラえもんは総入れ歯に向き直って、ポケットから一撃必殺の
最終兵器を取り出した。
「棒ー!」
「ベロー!」
棒でぶっ叩かれた総入れ歯は、バラバラになって鉛色の北極海に落ちていっ
た。闘いは終わった。
崖の上に戻ってきたドラえもんを、のび太はボケーと見つめている。ああ、
そういえばドラえもんを捜しにきたんだっけ。すべてを思い出したのび太は嬉
し涙を流してドラえもんに抱きついた。
「ドラえもーん! 悪い政治家がね、ボクの小遣いをね!」
「はい、総入れ歯ー」
のび太がみなまで言い終わらぬ内に、ドラえもんは総入れ歯を取り出して空
高く放り上げた。総入れ歯は宙を横切って、物陰で様子を窺っていた男の頭に
かぶりついた。男は悪い政治家だった。
「痛ーい!」
総入れ歯は泣き叫ぶ政治家を丸飲みして、大きなゲップを一つして夜空の彼
方に飛び去った。
「さあ、悪い政治家もやっつけたことだし、ボクらもそろそろ帰ろうか。家ま
で二人で競争だ!」
「よーし! ドラえもんには負けないぞー!」
のび太とドラえもんはアラスカの地を飛び去った。すぐに総入れ歯に追いつ
いて、三人並んで空を飛んだ。
「そういえばドラえもん、どうしてボクから逃げようとしたんだい?」
「知らね」
「ふーん。まあどうだっていいや」
のび太、ドラえもん、総入れ歯。日本に向かう三つの影がオーロラの揺らめ
きに重なって、やがて光に溶け込んで見えなくなった。
278 :
作者の都合により名無しです:04/08/17 08:08 ID:y4MdWv2j
>ラーメンマン
いや、面白いですよ。未熟なラーメンマンと老獪な坊主の対話が楽しい。
いくらパオ氏でも、そうそう大ヒットは無理でしょう。
俺は楽しみに読みつづけるんで、投げ出しだけはしないで下さい。
>ドラえもんの麻雀劇場EXTRA
いや、相変わらずすごいセンスだな。
「総入れ歯」とドラえもんを絡ませてでこんなギャグが書けるのは、
世界であなたしかいまい。いや、楽しかったです。でも麻雀全く関係ないw
ところで本編の最終回は遅々として進みませんねw
そちらも期待してます。
279 :
テンプレ:04/08/17 09:20 ID:5i0HBSos
漫画系の板内のSS(ショート・ストーリー)スレについて語るスレです。
荒らしを育てるスレではありません。荒らしに対しては『 徹 底 無 視 』でお願いします。
職人と楽しく交流し、SSを真面目に批評し、住人同士で仲良く話し合いましょう。
無意味なランク付け・個人叩きは禁止。
しかし、これらはあくまでも理想論です。実際には無意味な叩きたがりがスレの8割を
占めていますので健全にSSを楽しみたい方は各種SSスレで直接お楽しみ下さい。
前スレ
SS総合雑談スレ Part 6
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1091612849/l50
誤爆した
ちくしょうめ
職人期待age
VSさんはやっぱり言葉にキレがあるね。
言葉選びのセンスや常人ではマネ出来ない発想は
まさしく妖怪の域。がんがれ。
パオ氏、お疲れ様です。
また人魚姫みたいな泣ける作品、期待してます。
それから語ろうぜスレでのコラム、楽しみにしてますよ。
ラーマンマンより。
ブラックキャットを少しだけ変えたSSを書きました。
題して、「ぼくのかんがえたブラックキャット」
知り合いには好評でしたが……投下しても良いでしょうか?
>>283 OK。頑張れ。
ふざけたのでなければ大歓迎。
「―――僕はね、昔からいじめられっ子だったんだ」
ルナフォートタワーの最上階、クリード=ディスケンスはそう呟いた。
その独白を静聴するのは二人――
覆面と見たことも無い衣装の矮躯の男―――シキ、と呼ばれていたか。
立ち並ぶ柱の一つに鎖で繋がれた女―――リンスレット=ウォ―カー。
「……だって、皆酷いんだ。僕の事を“狂ってる”ていうんだよ。
クラスメイトも、教師も、クロノスの上司も、部下も……そうそう、実の両親にも。
…………みんな殺してやったけど」
―――有る国の貴族の息子として生を受けた彼は、生まれながらにして全てを持っていた。
財力だけではなく、常人以上の全能力、素養、容姿、両親の愛も含む全て。
ただ一つ持ち得なかったのは―――――――――人の心。
老若問わず僅かでも障害になる人間全てを、それぞれの破滅に追い込んだ。…実にこの時十二歳。
それゆえに彼は孤独だった。……だからこそ誰を殺しても何の感慨も湧かなかった。
「でもね、クロノスに入ってから………僕は一人じゃなくなった」
当時の時の番人(クロノナンバーズ)No1に拾われて、No1の鞭撻の元、彼は組織の殲滅要員になった。
それでもいつも通りの事を言う奴がいるので、やはり自分の痕跡を完全に消して、殺した。
だが、在る時―――
何でも無いいつも通りの殲滅(シゴト)―――いや、その時は違う。
自分の他にもう一人の殲滅要員があてがわれた。
――――トレイン=ハートネット。冥い眼の銃使い(ガンスリンガー)。そして、自分と同様嫌われ者。
自分よりも速く標的の居城に殴りこみ、精密に、獰猛に、銃弾を撃ちこんでいく。
襲い掛かる雑兵を切り捨てながら、その銃技に感動したものだ。
なにより、クリードが創り出す惨状を見ても眉一つ動かさない所に興味を持った。
「……キミは、なにも言わないんだね」
二人で成した屍山血河の中、クリードは銃を収めるトレインの背中に問うた。
いつもの連中ならここであの科白が飛び出すのだが。
対する彼はただ一言―――
「……別に、普通だろ」
「――――――嬉しかったよ、凄く。
生まれて初めて僕を認めてもらった気がしたよ。」
良く言っても水底、悪く言えば深淵の闇の様な眼から涙が零れる。
リンスは信じられなかった。あの太平楽がこの気狂いの同類だとは。
「僕は悟った。僕等が狂ってるんじゃない、この世界の方が狂ってるって!」
――オペラ歌手の様に手を差し上げる彼の目は明らかに常軌を逸していた。
「……でも、アンタはアイツの大切なヒトを殺したんでしょ?」
―――クリードの事を聞いた時、トレインはそれだけ言った。
「アイツは……オレの大切なヒトを、殺したんだ」
寂しさと憎しみの混ざった告白をリンスは忘れない。
モデムがぶっ壊れたんでもう少しお休みします。
今携帯から書いてます。
あと2 3日で再開出来ると思います。
ブラックキャット乙。
>>286-288 元がネタ漫画なだけにシリアスさが際立つね。
今のところ序盤の序盤にすぎないってとこか。ここからどう原作を改変していくのか見物。
シリアスSSになるのか、パクリネタSSになるのかw
あと、投げ出しは勘弁。
>>289 「乙」のみは「読んでません」と同意義なのでいちいち書き込むのは無礼だと思う。
読んでないならスルーして。
ああそれか、とつまらなそうにクリードは返した。
「当然だよ。あの魔女は、トレインを殺そうとしたんだ。」
「……え?」
それではおかしい。トレインは恩人だとか何とか言っていたのに(女だった事を初めて知った)。
「いいかい?あの女はね……」
「来たぞ」
シキがクリードの言葉を遮った。
耳を澄ませばエレベーターの起動音。数字が若い方から点り、消え、徐々にこの階に向かってくる。
そして、場違いな電子音と共に扉が左右に開き、そこに居たのは男が一人。
「………トレイン!」
クリードは嬉しそうに彼――トレイン=ハートネットの名を呼んだ。
「―――キミはもっと派手に来ると思ってたんだけど、でもまあ…いいか。
トレイン、良く来てく」
――言葉を中断する様にトレインは銃を抜いた。狙いは―――
「クリード!!」
シキが叫ぶ。しかしそれより速く放たれる二連射。
音速突破の殺意の飛礫(つぶて)がクリードに迫る。
―――――――――が、
「キャアッ!!!」
その悲鳴と重なる金属音がクリードの後ろで響いた。
>ブラックキャット作者さま
お、いい感じですねブラックキャット。
正直、原作での見所はセフィリアだけでしたが、
書き出しからシリアスで期待が持てます。
これからの展開に期待。
でも、タイトルくらいは決めておいた方がw
あと、前回からの続きのためのアンカーも
付けてくれるとありがたいです。(>>○○とか)
振り向けば、両手の拘束具から解放され蹲るリンス。
「……帰るぞ、リンス」
トレインは事も無げに呼びかけ、クリードを無視して彼女の所まで歩いていく。
「何だ、この位で腰でも抜けたか?以外としおらし…」
…その言葉を、リンスの腰の入った右フックが鈍い音を立てて遮った。
「ぷあっ!!おま…ちょ、何すんだこのアマァ!!」
「アンタねぇ…アタシの繊細で白魚の様な手に傷つけるつもり??!!
アタシの仕事は手先が命なのよ!!ぶっ殺すわよ!!!!」
「……その繊細な手で口ン中切れたんだけどなぁ」
「話を差し替えてんじゃないわよ!!」
「うわっ!開き直ったよこいつ…」
先刻の電子音など比較にならぬ場違いな会話が花開く。
そして取り残されるクリードとシキ。
「……ああ、もういい!話は帰ってからだ!」
トレインは彼女の手を引いてエレベーターに向かう。
「…待ってくれよトレイン」
クリードの言葉を敢えて無視し、突き進む………筈だったが。
急にリンスの足が止まる。
「……ねえ、アタシ……もうちょっとここに居たいなー……なんて思っちゃったりして」
正気かこの女は、そう思って振り返ると――
すでに原作より面白いが、どういうスタンスで行くのか不明な作品ではあるな
そのあたりも含めて期待
295 :
作者の都合により名無しです:04/08/18 21:21 ID:1x1ZQBov
うん面白いよ。いい感じ。
でも
>>292に加えて、出来れば一度に作品レスを上げてほしい。
せめて30分以内に、一まとまり。
朝に一回、夜に一回って言うのは多く読めて大歓迎だけど、
今みたいに一時間に1レスずつ上げられると、
どこが終わりなのか分かり辛くて感想も上げにくいし、
何より他の作品とゴチャる可能性が出てくる。
メモパッドか何かにまとめて書いて、一気に上げてくれると嬉しいな。
いろいろわがまま言ってすみません。
本当に楽しみにしてるので、頑張って下さい。
296 :
ふら〜り:04/08/18 22:13 ID:znYVPKTk
>>パオさん
禅の道に於いては、物心両面で執着を捨てることを目指す。……とは言いますが、
寺焼きますか。たいまつ代わりに。朴念禅師、本当に昔話というか、法話に
出てきそうなお方です。そんな人を相手にして、ラーメンマンがどう悟りを開くのか?
夜道を怖がったり、結局空飛ぼうとしたり、まだまだ甘いようですが。はてさて。
>>VSさん
総入れ歯に始まり総入れ歯に終わる。なぜ悪徳政治家? なぜアラスカ? とか
言ってる間もなく読み終えてしまいました。異次元空間名捻じれっぷりと、
ツッコミを許さぬ勢いはさすがです。で何の疑問もなく「三人」並んで空を
飛んで幕引き……今、何が起こっていたんだぁぁな気持ちで一杯でした。
>>ブラックキャットさん
初めまして、の方でしょうか? 原作は知らないのですが、退廃的というか
危うげな雰囲気が伝わってきました。静謐さに満ちてるラーメンマンと対称的に、
血生臭さと殺気が迸ってる感じです。でも後半で少し軽くなったので、この先の
針路がまだ読めませんね。楽しみにしています。
6
彼女は奇妙なネックレスをしていた。
いや、良く見れば甲虫――自然界に有り得ない狂乱極彩色の巨大なクワガタが
これまた巨大な顎をリンスの首に引っ掛け、ぶら下がっていた。
「―――“飛鋏蟲(ひきょうちゅう)”人の首なぞ簡単に落ちるぞ」
シキが静かに呟いた。
「無視しないでくれよ、友達だろ?」
「………ちっこいの。今すぐこいつを外せ」
クリードを未だに無視してトレインはシキに殺気を送る。
「……私は下等民族などどうでもいいが、同志がお前を所望なのでな。状況次第では手間は取らせん」
けんもほろろに突き返され、トレインは嫌々クリードのほうを向く。
「やっとこっちを見てくれたね、トレイン」
「………見たくもねェがな」
仕方無しにクリードと対峙する彼は明らかに機嫌が悪い。
「率直に言おう、僕たち“星の使徒”に入って欲しい」
「率直に言うぜ、クソして寝ろ」
場はますます険悪になる。それでもクリードは笑顔のままだ。
「……キミだって、あの老人達に世界を牛耳られるのを良しとしないはずだ」
「テメェに牛耳られるよかマシだけどな」
ぼくのかんがえたブラックキャット、略して〈ぼくブラ〉の作者、
ネットビギナーなのでNB…とでも言っておきましょうか。
皆さんの意見に極力答えたいのですが、なにぶんブラインドタッチも出来やしねー
ぺーぺーなので方法詳しく教えてもらえれば幸いです(例えばメモパッドとか)。
その上他にも連載持ってるもんで遅れるかもしれません。
……ナンバーズの武器とか、道とかも結構変えると思いますので不評を買うかもしれません。
それでも皆さんのお声がある限り粉骨砕身する覚悟です。
今日はここまで、ではでは。
>>298 デスクトップ等で右クリックし、新規作成からテキストドキュメントを選んで下さい。
それが「メモパッド」です。そこにある程度書き溜めし、それから数レス程度まとめて
掲載してください。その方が見やすいです。
>ナンバーズの武器とか、道とかも結構変えると思いますので不評を買うかもしれません。
元ネタがアレなんで、不評とかは無いと思いますよ
外伝氏復活!?
黒猫の新人さん頑張れ!原作より面白いぞ!w
今度は一度にまとめてくれるとありがたいな。
302 :
作者の都合により名無しです:04/08/19 17:14 ID:dD7V0mH1
とりあえず上げとこう。
あのーここにSS投下するとき、元ネタがあまりにもマイナーだったりする場合、
その作品の設定や登場人物について最低限の説明を本編とは別枠でした方がいいでしょうか?
304 :
作者の都合により名無しです:04/08/19 19:29 ID:dD7V0mH1
>>303 あんまりマイナーな作品の場合は、
作品投下後、作者のコメント欄で解説するか、
作品と別枠で1レス位使って書いた方が親切かもね。
ていうか、マイナーさの度合いにもよるな。
看板娘とかはチャンピオンだからOKだけど、
コミックAとかボンボンとかからは正直勘弁して欲しい。
ガンガンでもパプワと鋼の錬金術師以外は個人的に勘弁。
でも、マイナーでもSSが面白ければいいけどね。
知らない人は例えドラゴンボールでも知らないんだから。
ようはがんがれって事ですw
もし説明が書きにくいなら、そのマンガの公式サイトへのリンクを貼ればいいと思います。
ところで、みゅうさんはまだかいな。憑依さんも。
306 :
303:04/08/19 21:01 ID:LCyuwywb
>304 >305
どうもありがとうございます。主軸にしているのは(多分)誰もが知ってるマンガなんですが、
クロスさせている作品(PCゲーム)があまりにも一般的とは言いがたいので不安だったので・・・。
元ネタ知らなくてもなんとかなるものを書こう、とは思っています(むしろ元ネタ知ってると罵詈雑言が起こりそうな
作品に仕上がってしまいそうです。後半のプロットは相当原作無視してるし・・・)。
完成させないことにはなんとも言えないので、まずは完成目指して頑張ってみます。
>>198 「ふう。これでとりあえず、お城は脱出したわ。」
「こ、これは・・・?」
「うふふ。凄腕のエスパー美少女って言ったでしょ?
テレポーテーションしたの。どう?見直した?」
唖然とした様子でコクコクうなづいているドラとのび太はワンダーガールの
テレポーテーションで、一瞬にして要塞の外周にまで移動していた。
ちょうどパーマンたちが暴れている場所の裏手にあたる場所であるが、
爆撃音と喧騒はこちら側にも十分に届いている。
「続けて一気にこの帝国の領内からも脱出するわよ。
しっかり捕まってて!」
「は、はい・・・」
超能力の凄さを目の当たりにしたドラたちは、警戒の念も忘れ、思わず
素直に従ってしまっている。二人は慌てて少女の元へと駆け寄っていく。
「ふっふっふ・・・。そううまくはいかんぞ。小娘。」
・・・脱出は順調だったはずである。テレポーテーションを使って
警備の薄い場所を渡り歩いていけば、まず捕まる心配はなかったはずなのだ。
しかし、現実にそれを邪魔する声が響き渡り、3人の動きを停止させる。
刹那・・・!上空から降り注ぐ黒い人影。かなりの人数である。
ザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!
奇襲にひるむ3人の周りを赤い忍び装束の集団がグルリと取り囲み
それぞれなにか武器を構えている。どうやら飛び道具のようだ。
3人を取り囲む集団の中から、首領格と思われる巨大な頭の持ち主が
ズズイと歩み出て口上を述べ始めた。
「ふっふっふ。忍びをなめるなよ。小娘ども。
このドクタケ城忍者部隊棟梁・稗田八方斎、
貴様らの不穏な動きなど手にとるようにわかっておったわ。」
「偶然ひまつぶしに散歩してただけです。」
「余計なことは言わんでいい!」
傍らの忍者をどつきながら八方斎は再び視線を3人へと戻す。
「忍びは情報収集が命。そのハート型の“ぶろおち”とかいう飾りを
使って瞬間移動をするらしいな。ならば、その前にけむり玉で視界を
ふさぎ、八方から飛び道具でその身を狙えばどうなるかな?」
「・・・クッ。間が抜けてるようでもけっこう考えてるじゃない。」
頬に一筋の冷や汗を滴らせ、わずかな動揺を見せるワンダーガール。
テレポーテーションに必要なのは自分に向ってくるスピードのあるなにか。
ハートのブローチはその役目を果たす仁丹を発射する装置になっているのだ。
もちろん、せまりくる武器のスピードを利用してテレポートを行うことは
可能である。しかし、忍者の投げる武器のスピードに、しかも視界を
さえぎられた状態で反応できる保障はない。うかつには動けない。
ワンダーガールはそう判断したらしい。・・・状況は膠着し始めた。
「わっはっはっはっはっは。このままおとなしく捕まっておくがよい。
わっはっはっはっは・・・は!?」
『八方斎様!?』
例によって重過ぎる頭をそらしすぎて後ろに倒れる八方斎。
全く手のかかるおっさんである。
チャリチャリーン・・・!その際になにやら小気味の良い音が鳴り響く。
「おっと、いかんいかん。ワシの小銭入れから中身がこぼれてしもうたわい。
後でちゃんと拾うからな。お前たち、勝手にネコババするんじゃないぞ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同時刻―――――
「きりちゃんは本当に働き者よねぇ。」
「いやぁ、そんな。照れますわ。ゼニのためなら・・・
あ、いや、働くことが大好きですのよ。ホホホホホ」
ここは工場。地底にあるとは思えぬほどに明るく快適な作業場である。
なにやらパートのおばちゃんを集めて、お団子の大量生産を行っているらしい。
別の場所では竹とんぼのようなものが同じく大量生産されている。どうやら今は、
休憩中のようだ。年配の主婦連中とほのぼのと談笑しているのは一人のまだ若い、
というよりも幼くさえ見える女の子で「きりちゃん」と呼ばれているらしい。
主婦層が大半を占める作業場の中では少し浮いた存在である。
その容姿はかわいらしい村娘といったところだ。
「・・・むむ・・!?」
その村娘が急に会話を止めて、なにやら聞き耳を立て始める。
瞬間、その耳はなぜか不気味なほどに大きくなっている。
・・・リ・・ ・・リィ・・ン チャリーン・・・ チャリーン・・・!
「・・・小銭!?小銭の音が・・・」
「小銭の音?そんなもの聞こえないけど・・・ヒッ!?」
主婦の方が村娘の顔を見るや、その顔は・・・
うへらうへらと口からよだれを垂らし、目玉がゼニの形状に変化した
ゼニの亡者へと変貌していたのだ。
「コゼニィ〜♪ コゼニィ〜♪」
彼女にだけは聞こえてきたというかすかな小銭の音に向って
村娘は駆け出していったのだった。
唖然としているパートの主婦たちを置き去りにして・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ・・・」
ドラたちとドクタケの忍者衆が対峙し、膠着しているその場所に・・・・
「コゼニ♪コゼニ♪コゼニ♪コゼニ♪」
目玉が小銭状に変化した村娘が・・・
「えひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ・・・」
人間の常識を遥かに超えた速度で・・・・
「ゼニヤ♪ゼニヤ♪ゼニヤ♪ゼニヤ♪」
うへらうへらと舌を出し、若い娘らしからぬ、少々品のない顔で・・・・
「おひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ・・・」
奇妙奇天烈な笑い声と共に遠くから駆けてくる!
「小銭はっけーん♪オレのもーん♪オレのもーん♪」
村娘は、呆然とするその場にいる全員の目の前で小銭目玉のまま、
八方斎の落とした小銭を掴んで喜びのダンスを踊り出す。
ポカンと口を開けて眺めるだけだったドラたち3人の脱出組と
忍び集団であったが、いち早く立ち直った八方斎が口を開く。
「ぬぅ・・・こんな行動、確かどこかで見たことあるぞ・・・。
お前はもしや・・・?」
ハイテンションで浮かれていた村娘が我にかえり八方斎の顔を見るや
驚愕の声を発す。どうやら知った顔であったらしい。
「げげっ!お前は“冷えたちんげん菜”!」
「“ひえたはっぽうさい”じゃ、ボケェ!お前こそ、その小銭に対する執着っぷり。
そして、わしのことを知っているとは、タダものではないな!?」
「はーい!タダほど好きなものはありません。でもタダ働きは絶対イヤだ!
忍術学園一年は組、ドケチのきりちゃんとはボクのことでっす。」
村娘が着ている着物を裏返すと・・・なんとその姿は村娘ではなく――娘ですら
なく――青い忍び装束の少年忍者の姿に早変わりしたのであった。
★今回の更新分終了です。続きは9月以降になるかもしれません。
きり丸は知らない人も多いと思うので簡単に人物補足しておきます。
【きり丸】忍術学園1年は組の名物3人組のうちの一人。両親を戦でなくし孤独な身のため、
10歳にして学費などアルバイトで工面している頑張り屋でもあります。タダ・小銭などの
言葉に弱い。現在、身寄りがないのを心配した担任の土居半助先生のもとに居候中。
声はワンピースのルフィやクリリン、古くは魔神英雄伝ワタルのワタルなどと同じです。
312 :
作者の都合により名無しです:04/08/19 21:39 ID:LD3sNny+
うみにんさんお疲れー。
なんか
>>310の文章のリズムに笑えてきた。
しかしうみにんさんの漫画知識は凄いな。
出来るだけ早い復活をお待ちしております。
>>303さん
がんばれー応援してるぞ。
俺は元ねた知らない作品でも気にならないけどね。
でも、どんな漫画かゲームか興味出てくるから
なんか解説か作品リンク付けてくれるとありがたい。
うみにんさん久々の大量更新で乙かれ。
うみにんさんのSSはチビチビより、一気に来たほうが読み応えありますね。
しかしキャラをよく掴んでる。
314 :
303:04/08/19 22:35 ID:LCyuwywb
>312さん
ありがとうございます。まだ冒頭部分しか出来てませんが、頑張って書いてます。
もし投下する時が来たら、元ネタゲームの解説はつけようと思います。
ちなみに主軸のマンガはドラえもん(大長編ノリ)ですが、ドラえもんネタは出来杉帝国とか麻雀劇場とか
面白いの書いてる人がたくさんいるので結構不安・・・。
315 :
312:04/08/19 22:42 ID:LD3sNny+
>>314 お、もう書き始めているのですか。ナイス。
題材がかぶるのは気にしなくてもいいと思いますよ。
その人なりの個性が楽しめればOKです。楽しみ。
でも、投げ出しは勘弁ね。
自分のペースでいいから、最後までお願いします!
もう一度、頑張れ!
>>314 そう気負わないで、気軽にどうぞ。
麻雀劇場はドラえもんネタのもので確かに面白い作品ですが、
それを気にしていては良いものは書けませんよ。
がんばってください!
麻雀劇場はVSさんにちと失礼かもな。ドラえもんの麻雀教室だよ。
出来杉も正確には出木杉だね。こっちは出来杉がデフォになってるけど。
EXTRAのことですね>麻雀劇場
NBさん、新人なのに結構面白い、期待大々。
本当だ。こっちが失礼だった。いや、スマソ。
麻雀劇場も楽しく読んでますよ。
うみにん氏乙!だけど正直続きが9月以降ってのは長いなぁ。
でもまぁそっからの鬼更新期待しちょります。内容に不満はないんだけど
早く先の展開が知りたいっつーかもどかしさもある。頑張って!
>NB氏、303氏
またまた期待の新人の登場ですな。バキスレの好調モードはまだ続きそうだ。
それにしてもみゅう氏はどこいったんだ?
みゅう氏、憑依氏、誇り高き希望作者氏、ねえ。
3作品とも読んでたのに、正直危ないよね。
そういえばザク氏もまだ今週来ないね。心配。
ユル氏はもう4×5の続き書かないのかな?
322 :
ラーメンマン青年期:04/08/20 18:56 ID:xvIlIoQT
<超人アーリーデイズ ラーメンマン編 中編3>
>>268 「死ね、ですって…?」
朴念はラーメンマンのその言葉にぷい、と顔を背け、ぐい呑みを仰いでまた笑った。
「ひゃひゃひゃひゃ。クソみたいな悩みで何時までもウジウジとしおって。
死ね。死んでしまえ。お主など生きておっても、なんの役にも立たぬわ」
ラーメンマンの顔に殺気が篭る。だが目の前の老僧は、虎の如き気迫をそよ風のように
受け流して淡々と口に酒を運ぶ。ラーマンマンはハッとする。
(まさか、御坊のこの静かな構えこそが、不動心…?)
しばらくの間、2人の間に風が吹く。寺を焼く火の勢いが少しずつ弱まっていく。
意を決してラーメンマンは朴念に尋ねた。
「もしやあなたは、私に不動心を教えてくれているのではありませんか?
私の殺気を変わりなく受け流す、その自然なる態度で」
朴念がその言葉に、ほろ酔い加減の顔を再度ラーメンマンに向けて呟いた。
「え? お主、いまワシになんかしたの?」
唖然とするラーメンマン。どうやら、朴念は殺気に気が付いてなかっただけらしい。
呆然と立ち尽くすラーメンマンに、朴念はのんびりと言った。
「やれやれ、仕方ないのう。ほれ、あれじゃ。不動心とは、あれの事じゃ」
朴念は面倒臭そうにアゴを突き出して、目の前の光景を示す。
そこには、赤々と燃ゆる業火が寺を焼き、炎が次々と木材を屠り倒す光景があった。
323 :
ラーメンマン青年期:04/08/20 18:57 ID:xvIlIoQT
「あれが、不動心ですと? あの暴力的に燃え盛る炎の姿が?」
ラーメンマンは目の前の惨景に釘付けになる。炎が猛り狂っている。それだけだ。
「お言葉ですが不動心とは、山のように揺るがぬ心、水のように静かな心と
思って参りました。しかしあの光景は」
まったく逆ではないか。 …そう言葉を継ごうとした時、朴念は老獪に笑った。
「ひゃひゃひゃひゃひゃ。若い若い、そして愚かな事じゃの」
時がゆっくり過ぎる。既に目の前の火事は収束に向かっている。朴念は言った。
「ほれ、早く行かんか。たいまつが消えてしまうぞ」
「しかし御坊。あの炎が不動心などとは、私には到底」
「不動明王像は顔に憤怒を浮かべ、炎を背負っている。そういう事じゃ」
朴念はそう言ったきり、黙ってしまった。答は自分で探せ、という事だろうか。
どれだけ時間が立っただろうか。火は収まり、炭と化した柱が転がっている。
酒が尽きたらしく、朴念はごろんと仰向けになる。眠たそうに唸った。
「辛気臭いのう。何時までそこに立っておる。せっかくのたいまつも、
無駄になったではないか」
ラーメンマンは木偶のように立ち尽くしたまま。朴念は独り言のように言った。
「お主は出発の際に言ったな。光無き道と」
「え、ええ」
「だが拙僧のように寝転がってみるがいい」
言われるがまま、朴念に倣い土に寝そべるラーメンマン。
息を呑んだ。広がっていたのだ。無限の空に輝く、無数の星たちの光が。
324 :
ラーメンマン青年期:04/08/20 18:58 ID:xvIlIoQT
日頃は何も感じぬ見慣れた星の海。だが今宵は、彼が初めて見る光景のように心に響いた。
「悩みに満ち、縛られた心では、人は天に星が輝く事さえ忘れてしまうのう。
あの星々に比べれば、人の悩みなどごく小さな事であろうに」
まるで詩でも朗読するかのように、朴念は叙情的に語った。満天の星が輝いている。
「お主は大した御仁じゃ。だが、囚われた心では答は導けぬのう。ほれ。
感じるままに自然と合一するがいい。 ……さすればお主は、無限じゃろう?」
星の光の美しさに、ラーメンマンの心の闇が溶けていく。彼は立ち上がった。
そして朴念に敬礼をする。先ほどの、やや嘲りを含んだ礼ではなく、真摯な礼である。
「御坊。ありがとうございました。御坊と出逢えた一期一会に感謝します。
いまだ不動心の意味は分かりませんが、何かを得た気がします」
「ひゃひゃひゃ。若造が生意気に。 …だがお主なら、もう大丈夫じゃな」
ラーメンマンはもう一度最敬礼を朴念にし、闇に踏み込もうとする。朴念は尋ねた。
「おい、暗闇の中大丈夫かや? もう一刻半もすれば夜が明けるぞ」
ラーメンマンはその言葉に笑いながら、天を指差した。
「大丈夫。空に充分、光は満ちています」
ラーメンマンの姿が見えなくなった。朴念はあぐらを掻いて、ボソリと言った。
「見所がある若者を拾うてきたのう。陳」
林の木陰の暗闇から、ふらりと人民服の老人が姿を現す。拳聖・陳 宗明である。
陳はふわりと朴念の隣に座り、どぶろくを取り出して朴念のぐい呑みに注いで聞いた。
「朴念よ。あの男は、ワシの跡を継ぎ、超人拳法を継承出来る器かのう」
陳の言葉を聞き朴念。狂ったように笑い出す。心の底から楽しそうに。
「お主の目も曇ったの、陳。あの男に超人拳法継承? 無理に決まっておる」
「そうか。 ……資質は、ワシより遥かに上のはずじゃが」
「そうじゃ、無理ムリ。あいつは、いずれ超人拳法を離れ……。
もっと大きな戦いに巻き込まれる運命じゃ。中国だけに収まる器で無いわ」
325 :
ラーメンマン青年期:04/08/20 18:59 ID:xvIlIoQT
朴念は音も無く立ち上がり空を見上げる。瞬く星々を柔らかな表情で見詰めている。
「お主の弟子の宿星は、ホレ、あの北に輝く龍仁星じゃ」
朴念の言葉に、陳は理解する。この老僧は星の動きにて世の命脈を観る術を知っている。
「朴念。お前の得意な星観術か。星の動きに、ラーメンマンの運命を見ゆるか」
「別に。ジジイの戯言と思って聞き流せばいいわい。お主も立派なジジイじゃが」
年老いた世に名高い仙人2人が、肩を並べ天を見上げる。朴念の声が朗々と響く。
「龍仁星。その名の通り、昇竜の力強さと仁の心を併せ持つ星。中々出ぬのう。
こんな星を背負える英傑は。数十年に一人といったところか」
「ホウ。我が弟子が。それほどまでの宿業を」
「だがのう。ワシも70年生きてきたが、ここ数年の星の動きはおかしいのじゃ。
数十年に一人の星の持ち主が、同時期に何人も現れているようなのじゃ」
「む? ならば、ラーメンマンもその内のひとつに過ぎぬと?」
陳の問いに、今まで飄々としていた朴念の表情が僅かに厳しくなる。
「南の空に貴賢星。ワシには、その星を背負う男の姿がボンヤリ見える。
紳士の国にて鉄の鎧を身に纏い、戦いの理を解する賢者の姿が見えおる。
そして西の地雄星。美国(アメリカ)にて、野生と情に満ちた男が背負う。
いずれも、ラーメンマンの背負う星に負けず劣らずよ」
陳はしばらく黙っていたが、静かに朴念に問うた。
「余り良い事ではないな、朴念。いくさが起こるという事か」
「うむ。本来、英雄の星など生まれぬ方がいい。世が平安である証拠じゃからな。
龍仁星・貴賢星・地雄星。数十年に一度の星が同時期に3つ。多過ぎる。
いや、これから先も増え続ける気がするのじゃ。つまり陳、これは」
「そうか。平和なる千年紀の終わりが来る、という事か」
326 :
ラーメンマン青年期:04/08/20 19:00 ID:xvIlIoQT
千年紀。神々と悪魔が、束の間戦いを休んでいる平和なる時。
それが終わりつつある。そして次なる大いなる戦へ、ラーメンマンは放り込まれる。
陳は大きく深呼吸をして、朴念に訊いた。
「巻き込まれているのか、すでに我が弟子は」
「だろうな。魔は近いしの。ひゃひゃひゃひゃひゃ、楽しくなってきたのう」
「勝ち目は、あるのかの。ラーメンマンたちに」
「今のままでは厳しいのう。星の光が強くなる以上に、闇は深くなっておるわ」
のんびりと他人事のように応える朴念に、苛立つ陳。ニヤついて朴念は言う。
「これ、陳。お主が不動心を失ってどうする。巌のようにしとらんかい」
「嬲るな、朴念。不動心とはそんな意味では無い事位、お前なら判るはず」
「ひゃひゃひゃ。確かにな。 ……心配するな。希望が無い訳でもないわ。
あの、東の空に今は薄暗く輝く天鳳星。あれが鍵になりおる。
あの星は強く輝けば数百年に一度の稀代の英雄。そうでなければクズ星。
あれが輝き鳳凰になれば、魔とのいくさは勝つ。薄暗いままなら負けじゃ。
それだけの事よ。まあ先の話しだしの、ひゃひゃひゃひゃ」
2人の老人は再度腰を下ろす。朴念は眠そうにまぶたを擦りながら陳に言った。
「不動心の答。あ奴ならじきにお主の満足いく答を出す。だがのう、陳。
本当の試練は今回ではない。数年後あ奴は、魔に喰われ非道に堕ちる。
それを救えるのは、お主でも拙僧でもない。あの、天鳳星の男だけじゃ。
今はその男、豚みたいな顔でくすぶっておるようだがのう。ひゃひゃひゃ」
327 :
パオ ◆w/9ws2V0DU :04/08/20 19:16 ID:xvIlIoQT
むしゃくしゃして空気SSをあげた。今は反省している。本人は結構気に入ってるがw
あのスレのコラムは、今日はお休みです。土曜か日曜に魔界編上げるんで、その時に。
一期一会
@たった一度の出会いが、その人の人生を左右するほど影響を及ぼす事。
Aこの人とはこの場限りで、2度と会えない事になるかも知れないから、
自分の出来る限りのもてなしを精一杯する、という茶道の考え。
この作品では@の意味です。
ふら〜りさん
>寺焼きますか。たいまつ代わりに。朴念禅師、本当に昔話というか、法話に
>出てきそうなお方です。
この寺を焼く話、実話を基にしてますよ。お話では自分の家になったますが。
ま、本当かどうかは怪しいですが。
>うみにんさん
しばらく読めませんか。うーん。9月からのパワーアップしての再登場、お待ちしております!
>NBさま、303さま
NBさま、お疲れ様です。ブラックキャットはあまり知らないんですが楽しめました。
でもやはり、一度にまとめて頂けるとより読み易いですね。
303さま、頑張って下さい。もう書き始められているのですか。期待して待っております。
>>321さま
心配ですよねえ。のんびりでいいから、書き続けてほしいですね。
パオさん、ラーメンマン面白いですよ。俺はお気に入り。
ロビンとテリーの話もやるのかな?
魔界編、ラーメンマン、コラムと3つの連載で大変でしょうが頑張って下さい。
NBです。
予想外に待ってる人が多くて吃驚しています。
今、バトルの推敲してます。待っててくださいね。
……ところで、今執筆しながら悩んでいます。
つまりまあ……資料の意味で本屋で原作読んでる訳ですが。
いやね、
初読目―――ただただ痛ェ。
二読目――――――…とにかく辛ェ。
三読目――――――――――――……何故か殺意が(いや、トレインにですよ。勿論)。
…………………拷問ですか!!?
勇午も音を上げますよ、これは!!!
ていうか………この電波がびっしりの子供騙し漫画に、金出す奴の気が知れません。
……怨みをタイピングに込めて打ってます。
ではでは。
>>329 原作がアレだからこそ、あなたに期待してます。がんがれ。
でも、黒猫ごときの話題で勇午を出して欲しくないなw
今度はまとめてうぷお願いしますね。
>ラーメンマン青年期
やっぱ雰囲気を楽しむSSですね。
満天の星が綺麗だった。
これからどう展開されてくんだろう?
>ぼくブラ
ブラックキャットはネタ漫画として読むべし。
パクリ検証サイト(今は縮小気味だけど)を見ながら読むと楽しみ方が分かります。
そのネタパクリ漫画をどう調理するかがとても楽しみです。
そういや昔、「ブラックキャットによろしく」という摘発系SSを書こうとした事があったなぁ・・・
ノヴァの研究所は何事もなかったかのようにその姿を留めていた。窓からは光がこぼれている。
ザクが眠っている間に、一体ここで何が起こったのだろうか?
――ガリィは教授を殺したのだろうか。それとも、教授がガリィを捕らえたのだろうか。
何にせよ、現状を知らねばなるまい。ザクはサーチライトを灯して窓を照らし、中にいる人間に己の存
在を示した。
――教授を殺したガリィがいるのか?それとも、教授はまだここにいるのか?
しばらくすると両開きの扉から人影が現れた。ザクはそちらにライトを向ける。
その人物は眩しそうに右腕で目をかばい、左手を掲げていた。そしてザクに向けて、
「明かりを弱くしてください!まぶしくてそっちが見えません!」
と叫ぶ。ザクの聞いたことがない、少年の声だった。
ザクが光を弱くすると、少年はザクに正面から向き合った。サンバイザーを被り眼鏡をかけた男子だ。
「はじめまして、ザクさん。僕が木手英一、キテレツです。」
キテレツはザクに軽く会釈をした。ザクも頭を下げ、これに答える。それからザクは、キテレツへ向けて
信号を送った。
――ノヴァ教授はどうした?ガリィに殺されたのか?
この言葉にキテレツは苦笑した。
「いえ、まぁ、なんていうか、ノヴァ教授も僕も、ガリィさんに殺され――」
「私もキテレツ君も、一度ガリィ君に殺害されました」
研究所の入り口に新たな人影が現れた。ザクはそちらに微灯を向ける。
ディスティ・ノヴァその人だった。
「ですが私にもキテレツ君にも、君と同じく自己修復機能を持ったナノマシンがインストールされています。
つまり何度殺されようと私達は蘇ることが出来るのです。さらに、不老長寿技術の開発によって、私達二
人はほぼ不老不死といった有り様でしてね。キャハハハ」
ノヴァはまたもやプリンの乗った皿を持っていた。スプーンでプリンをすくいとり、口に運ぶ。
「おいちい!」
「任務を終え自由の身となったガリィ君はここから南西へとバイクを走らせて行きましたが、その先には
私がトラップを仕掛けてあります。おそらく、そろそろ彼女がトラップにかかって爆死するころでしょう。
これから私とキテレツ君はばらばらに散るであろうガリィ君の脳を拾い集めに行くところなんですが……
何か私に用事でもあるのですか?もはや君は自由となったのですから――」
――ガリィに会いたいんだ。
ザクは一言、表した。
――彼女に教わりたいことがある。ある戦闘技術の概念に関してだ。
「ほう」ノヴァはプリンを食べながら答えた。たいして関心もなさそうに。
――ガリィを再生させるつもりなんだろう?だったら彼女に会わせてくれ。強くなるためには、彼女から
『機』について教わらなければならないんだ。
「ですが」ノヴァはスプーンを皿に置く。「脳の再生にはある程度の時間が必要となります。その間、君は
それを待っているというのですか?」
――必要とあらば、いつまでも。
「時間の無駄です。それに、あのガリィ君が敵である君に素直に戦闘技術を伝授するとは思えません」
――じゃあどうすればいいんだ!
ザクは地団駄を踏んだ。地響きが夜の密林に轟く。鳥が何羽か、羽ばたいていった。
――範馬勇次郎に勝つためにはおそらく『機』の習得が必須。そして、『機』について習熟しているのは、
俺はガリィ一人しか知らない……
その時、キテレツがパチンと指を鳴らした。「そうだ!」
「その『機』とやらに精通している別の人物を当たればいいんですよ!」
――そんな人間に心当たりがないから困ってるんじゃないか!
「僕に一人だけ、心当たりがあります。その人物は戦闘技術に精通していて、しかも日本で私塾を開いて
いるんです。彼が『機』について知っているかどうかは分かりませんけど、可能性は高いと思います」
――それは一体誰なんだ?
「男塾塾長、江田島平八です」
キテレツは自身ありげに答えた。
ザク氏お疲れ。今度は塾長対裕次郎かな?
でも塾長相手じゃ流石の裕次郎もキツいのでわ?
ていうか裕次郎ごときに塾長負ける訳ないから、
ザクが塾長に奥義を教わるのか。
>>331 >「ブラックキャットによろしく」という摘発系SSを書こうとした事があったなぁ
激しく読みてえw お暇が出来たら是非。
ザクと塾長もうやった
337 :
ふら〜り:04/08/20 21:45 ID:WQ4jmKy0
>>303さん
読み手を意識し、気遣っておられる姿勢はご立派の一言。期待しておりますよっ。
>>うみにんさん
偏った地獄耳、鬼のような執着心……うみにんさん、ナイスです。きり丸の魅力と
いうか、味がしっかり出てますね。「巨大な頭の持ち主」なんてのも、改めて字で見ると
何だかムダなほどに面白い。次回は遠いようですが、ずっと楽しみに待っております!
>>パオさん
こ〜れ〜で〜す〜よ〜! 今まで何回か言いましたが、「二次創作作品の醍醐味」って
やつです。ラ−メンマンの未来も、星々が指している男たちも、全部熟知しているから
こそ生まれる感動っっ。しかも「ラーメンマン編」とあるからには他の面々のも……でも
魔界編も書いて頂きたいし……うぅ。これまた前にも言いましたが、パオさんが
複数居られれば良いのにと。つくづく。
>>NBさん
何と言うか……そう感じられる漫画でSSを書ける、というのはある意味凄い能力なの
かもと。あるいは逆に、ベタ好きな人には書けないものがあるかも、ですかね。
>>ザクさん
なるほど、そこで塾長に繋がって……段々解けてきました。にしても、あまりにも軽々しく
不老不死やってる二人が、何とも恐るべし。だからこそスペランカーザクなんてものを
作れるワケですか。あと地団駄踏むザク、というのはナカナカ壮観かつ可愛いです。
というか塾長信者丸出しのレスがキモい
釣りか?
340 :
303:04/08/20 23:09 ID:HBWSgkD4
ここに投下されるSSってやっぱかなりレベル高いですね・・・。
パオさんのラーメンマンSSは元ネタが筋肉マンって事以外分からないけど面白かったです。ザクさんの
ザクSSもザクVS色んなキャラ、という構図が好きです。
で、僕自身なんですが。
な、なんか期待されてしまっている・・・?(汗)
嬉しい反面すごいプレッシャーです。なんとか期待に応えられるよう頑張りますが、
箸にも棒にもかからない大駄作が出来てしまったときには、どうか鼻で笑ってやって下さい・・・。
なんせ書いてる最中って誰の反応もないから「俺って、なんか間違ってんじゃないのか?」と思いつつ
書くしかないわけです。他の皆さんのSSとか読むと、「どう考えても俺の書いてんのよりおもろい・・・」
とも思いますし。
なんて愚痴ってばかりじゃいられないので、やるからには投げ出さず、きっちり書こうと思います。
とりあえず中盤〜後半ぐらいまで書けたら投下することにします。時期的には9月前半辺りに
なると思います。
それでは。
>パオ塾長
いや、こういうしみじみとした深さは好きだ。
なんかラーメンマン編が壮大なプロローグにも思えるな、星占いで。
人魚姫も大好きでしたが、この作品も好きなので頑張って下さい。
>ザク氏
いよいよ塾長始動ですか。半年前の登場以来ですなw
最強キャラの登場でどうなるか楽しみです。
あと、もう少しハジけてもいいと思うよw作品じゃなく、ザクさん自身が。
>NB氏
いや、冗談でもお世辞でもなく原作よりいい。
のんびりとでいいんで、何とか完結させて。でも、原作ウロ覚えかい!w
>ふら〜りさん
いつも暖かい感想お疲れ様です。でもそろそろ作品も読みたいな。
>303氏
いや、そんなにプレッシャー感じなくてもいいですよ、気楽にやって下さい。
だけど、もう書き始めてるなら3レス位ずつでもいいから、早く発表して欲しいな。
人の感想を聞きながら修正していった方が、最後まで一気に書き上げてから発表するより
楽しいと思うし、良い作品になると思いますよ。勿論ご本人のご自由ですが。
342 :
303:04/08/20 23:29 ID:HBWSgkD4
>341さん
ありがとうございます。個人的には多少書き溜めがあるほうが安心なんですが、
確かに感想・批評を受けながら少しづつ書いた方がいい作品が出来るかもしれませんね。
ふんぎりがついたら、少しづつ発表していこうと思います。
塾長、ザク氏乙。面白かったですよ。
303さん、頑張って。別にそんなに気張らなくてもいいですよw
早朝あげ
344 :
作者の都合により名無しです:04/08/21 19:17 ID:H8OSqkCc
土日は来ないのかね、職人さん。
第9話「始まりは晴れと雨」
愛し合う2人は、お互い産まれた時と同じ姿で何度も何度も抱き合った。
範馬バキと松本梢江。隣同士に住む二人は無意識のうちに惹かれあい、そして付き合い始めた。
スペック戦直後…。傷を負ったバキの脳裏に最初に浮かんだのは梢江のまだ見ぬ裸体。
女を知らぬ少年は、男の本能に身を任せ傷ついた体を引きずらせて愛する女のもとへと走った。
そして女は少年の欲望を、ただただ受け止める事にした。否、それを望んでいた。
梢江がバキの部屋を深夜に訪ねたその時…。2人の長い戦いはスタートラインを踏み出した。
すでに布団に包まっているバキの大きな背中に、梢江はゆさっと寄りかかる。「バキ君…」
梢江がバキの背中に対して放ったその言葉。バキにとって、戦闘開始の合図となった。
背中にあたる、柔らかい梢江の胸をもみしだきたい気持ちを抑え、バキは突然立ち上がった。
勢いでかぶさっていた布団がビリビリッと音を立てて破れた。布団内の綿毛が、ふわふわと部屋中に舞う。
突然の行動に驚いた梢江が、大口を開けてバキを見た。しばし見つめ合う二人。
「大昔、親父が俺に言った。いずれ…お前にも女を知る日がやってくる。
子孫を増やすため、猿人類の頃から行われてきた生殖活動。まさに戦い…だ。
セックスとは戦いッ!それは強敵と拳を合わせる事よりも、熱く、濃密な戦い。
その戦いを乗り越えたのち、お前には新たな境地が現れる…と。 今ならわかる。これは戦い。
これから始まる戦いを、俺はこれまでの戦い以上の気持ちで望みたいと思う。梢江…。
君にもこの気持ちをわかってもらいたい。受け止めて、くれるよね?」
バキの問いに梢江がうなづいた。首を軽く縦にふった梢江は、ゆっくりと立ち上がりバキに抱きかかる。
バキは彼女の柔らかい唇にキスをした。と同時に、梢江の瞳が濡れた。
溢れた涙がつつーっと頬を伝わって、一粒の水滴となりバキの体へ落ちた。
潤んだ瞳から流れ出る涙を、バキが優しく手でぬぐう。これは…嬉し涙。
2人が始めて1つになる。そのことに歓喜している証拠。バキの気持ちもまったく同じだった。
お姫様スタイルで梢江を抱きかかえたバキは、そのまま梢江の体を敷布団の上へ仰向けに置いた。
その上に、ばさっと乗りかかるバキ。2人を止める力はどこにも存在していない。
戦闘…開始。
バキと梢江…。2人の長い戦いの始まりだった。長く、そしてつらい戦いの…。
同じ頃、都内のとある河川敷で対峙する2人の男がいた。
拳神、愚地独歩と脱獄死刑囚、シコルスキーである。
独歩は戦いを急いでいた。共にこの場へ来た息子、克己の負傷。
その怪我は、頚部動脈切断という深刻なものだった。
息子のためにも、この戦いははやく勝たねばならない。
そして独歩は腹を空かしていた。妻、夏江がシコルにさらわれて以来、彼はまともな食事をとっていない。
独歩にとって、この世で最もうまいごちそう…それは夏江の作る手料理。
夏江を取り戻して手料理を作ってもらうその時まで、思い切り腹を空かせておこう。
子供のような独歩のその思い。裏には妻に対する愛情がめいいっぱい込められている。
「あ〜腹減った〜」
そうつぶやくと独歩は、近くにポツンと立つ小さな小屋の方を見た。恐らくは堰を管理するためのもの。
神心会所属の探偵によれば、夏江が幽閉されているのはその小屋の中だという。
(待ってろよ〜夏江〜)と小屋を見つめながら心の中で叫ぶ独歩。
同じ頃、都内のとある河川敷で対峙する2人の男がいた。
拳神、愚地独歩と脱獄死刑囚、シコルスキーである。
独歩は戦いを急いでいた。共にこの場へ来た息子、克己の負傷。
その怪我は、頚部動脈切断という深刻なものだった。
息子のためにも、この戦いははやく勝たねばならない。
そして独歩は腹を空かしていた。妻、夏江がシコルにさらわれて以来、彼はまともな食事をとっていない。
独歩にとって、この世で最もうまいごちそう…それは夏江の作る手料理。
夏江を取り戻して手料理を作ってもらうその時まで、思い切り腹を空かせておこう。
子供のような独歩のその思い。裏には妻に対する愛情がめいいっぱい込められている。
「あ〜腹減った〜」
そうつぶやくと独歩は、近くにポツンと立つ小さな小屋の方を見た。恐らくは堰を管理するためのもの。
神心会所属の探偵によれば、夏江が幽閉されているのはその小屋の中だという。
(待ってろよ〜夏江〜)と小屋を見つめながら心の中で叫ぶ独歩。
だがその一瞬の目の動きを、シコルスキーは見逃さなかった。
川のほとりに立っていたシコルは、数メートル先に立つ独歩との間合いを一瞬で制す。
その接近に気づいた独歩もすかさず反応。すでに目の前にあるシコルの胴体に、正拳を…。
が、その攻撃はコンマ一秒反応不足だった。手の指の関節部分を使用した切り裂き攻撃。
シコルの十八番であるそれが放たれ、独歩の上半身を服ごと十字に斬った。
揚げたてのトンカツを切った時のように、サクッサクッと音を立てて切り裂かれた肉体。
傷口からは、鮮やかな血が吹き出し夜空に舞った。独歩が正拳を構える前の攻撃である。
シコルのすさまじい身体能力が、こんな技を可能にしていた。川のほとりには
大きな穴が開いていた。独歩の方へ突っ込む際に、軸足が地面にめり込んで出来た穴だ。
シコルの身体能力の高さを示している。筋力、動体視力…。格闘技における重要な身体能力の
全てにおいて、シコルスキーは独歩を凌駕していた。目の当たりにした独歩も、そのことはすでに悟っていた。
並の闘士なら卒倒して倒れこんでしまう程の攻撃であった。しかし、拳神愚地独歩は倒れない。
大傷を負ったにも関わらず、仁王立ちする独歩の襟を掴み、シコルはそのまま上へ放り投げた。
踏みとどまろうと抵抗する独歩の力は、シコルに及ばず。数メートル上空まで飛ばされた独歩の体は、
地面へと落ちてくる途中で、シコルの蹴りを受けて川の方向へ飛ばされた。
サッカーで言うオーバーヘッドキックであった。
サッカーの経験等ないシコルのその蹴りは、プロ選手以上の見事な放物線を描き
独歩の体へと命中した。弾かれた独歩の体は、まるで子供が行う水切りの石のように
バシャッバシャッと何度も水面をホップしながら、向こう岸へと叩きつけられた。
地面に降り立ったシコルは、川の向こう岸へと目を向ける。暗闇でよくは見えないが
もぞもぞと動く黒い影が見えた。時間がたつにつれ、わずかな月明かりに照らされた
その黒い影は、川の中を歩きながらシコルの方へと近づいてきた。
「ソウコナクチャナ…」シコルはそうつぶやくと、近づいてくる独歩であろうその影に
足を向ける。
「軽い…拳だぁ…」
独歩からささやき声が聞こえる。近くにある堰の轟音で、よく聞き取れないその言葉。
シコルは精神を集中して、その言葉の解読に力を注ぐ。
「腕力、脚力、脳力…。どれをとってもおまえさんはオイラより上だ…。だが、それだけだ…」
独歩が近づくにつれ、はっきりとしてくる言葉。シコルはじりじりと後退を始める。
自分でも、何故後ろへ下がるのかわかっていなかった。特に恐ろしい声の持ち主でもない。
身体能力は相手のほうが上だとある意味負けも認めている。後退をするほどの相手ではない。
そう思いつつも、近づいてくる独歩の影を見た目と、声を聞く耳は、その情報を脳に送り
脳からは無意識のうちにシコルの足に後退しろという命令を発していた。
川岸から5メートル程下がったシコルの前に、独歩が姿を現した。水から上がったその体はずぶ濡れ。
傷口も痛々しい。だが、傷ついた独歩にシコルは恐怖を感じていた。流れるのは冷や汗。
目の前にいる先ほどとは変わらない男が、やけに大きく強力に見えた。
「のど元を撃つよ…いいね…?」
ゆ〜っくりとした独歩の拳が、忠告どおりにシコルののど元に軽く触れた。
かわせなかった…。あっけに取られるシコル。川から独歩が上がった瞬間、しゃべりだした瞬間。
仕掛けるチャンスはいくらでもあった。だがシコルの動きは完全に止まっていた。
その後も同じようにゆ〜っくりと攻撃を仕掛けていく独歩。直前の忠告も変わらない。
脳天、心臓、腹、そして金的…。人体急所の数々を、ゆっくりとした拳が触れていく。
「だんだん強くいくよ…」
サッカーで言うオーバーヘッドキックであった。
サッカーの経験等ないシコルのその蹴りは、プロ選手以上の見事な放物線を描き
独歩の体へと命中した。弾かれた独歩の体は、まるで子供が行う水切りの石のように
バシャッバシャッと何度も水面をホップしながら、向こう岸へと叩きつけられた。
地面に降り立ったシコルは、川の向こう岸へと目を向ける。暗闇でよくは見えないが
もぞもぞと動く黒い影が見えた。時間がたつにつれ、わずかな月明かりに照らされた
その黒い影は、川の中を歩きながらシコルの方へと近づいてきた。
「ソウコナクチャナ…」シコルはそうつぶやくと、近づいてくる独歩であろうその影に
足を向ける。
「軽い…拳だぁ…」
独歩からささやき声が聞こえる。近くにある堰の轟音で、よく聞き取れないその言葉。
シコルは精神を集中して、その言葉の解読に力を注ぐ。
「腕力、脚力、脳力…。どれをとってもおまえさんはオイラより上だ…。だが、それだけだ…」
独歩が近づくにつれ、はっきりとしてくる言葉。シコルはじりじりと後退を始める。
自分でも、何故後ろへ下がるのかわかっていなかった。特に恐ろしい声の持ち主でもない。
身体能力は相手のほうが上だとある意味負けも認めている。後退をするほどの相手ではない。
そう思いつつも、近づいてくる独歩の影を見た目と、声を聞く耳は、その情報を脳に送り
脳からは無意識のうちにシコルの足に後退しろという命令を発していた。
川岸から5メートル程下がったシコルの前に、独歩が姿を現した。水から上がったその体はずぶ濡れ。
傷口も痛々しい。だが、傷ついた独歩にシコルは恐怖を感じていた。流れるのは冷や汗。
目の前にいる先ほどとは変わらない男が、やけに大きく強力に見えた。
「のど元を撃つよ…いいね…?」
ゆ〜っくりとした独歩の拳が、忠告どおりにシコルののど元に軽く触れた。
かわせなかった…。あっけに取られるシコル。川から独歩が上がった瞬間、しゃべりだした瞬間。
仕掛けるチャンスはいくらでもあった。だがシコルの動きは完全に止まっていた。
その後も同じようにゆ〜っくりと攻撃を仕掛けていく独歩。直前の忠告も変わらない。
脳天、心臓、腹、そして金的…。人体急所の数々を、ゆっくりとした拳が触れていく。
「だんだん強くいくよ…」
独歩がそう言った瞬間の攻撃。今まではただ触れるだけだった攻撃が、重みを帯びたものに変貌した。
場所は性器。重みを帯びた足蹴りが、シコルの玉にぐにゃりと食い込む。
「グアッ」叫ぶシコル。玉を抑える。抑えた手にべたっとつく血。1個つぶれてしまったようだ。
「次は目を刺すよ」独歩の忠告。とっさに玉を抑えていた手で、顔面をガードするシコル。
「グアアッ」必死のガードもむなしく、ビチャッという小さな音を立てて破られるシコルの瞳。
血の涙が瞳から溢れ、頬をつたり落ちたそれは地面に赤く小さな水溜りを作った。
「もう一段強くいくよ」 「もう一段…」 「さらにもう一段…」
もう一段…の言葉が発せられるにつれ、シコルを襲う痛みは増していった。頭は反応しているのに
かわせない攻撃。かつてない程の恐怖が、シコルの頭を支配していった。
来るッ 来るッ 来るッ…! 少し前まであったシコルの闘争本能は、恐怖心に完全に食われ、
戦意は完全に消えていた。
「力が強い奴ぁ山ほどいる。だがその中で本当に強ぇ奴の拳には、ちゃんと思いがこもっている。
それが体を通して相手にも伝わるぐらいのな…。兄ちゃん、おめえにはそれが全く無い。
ただの馬鹿力の不良と同じだぜぇ。「空手」という思いのこもったオイラの技を全くかわせない…
よくわかっただろう…」
独歩の言葉にも耳をかさず、ただうずくまってブルブルと震えるシコル。数分前とはまるで
別人のような、無様な姿だった。「やれやれ…」とため息まじりにつぶやいた独歩は
はじめに外された胴体への正拳を、再びシコルへと放った。渾身の一撃は、シコルの内臓全てに
とてつもない衝撃を与え、その体はドサッとうつぶせに倒れこんだ。勝負ありである。
「ま、初弾をかわされたのはオイラの油断だったわ。とりあえず借りは返したぜ…」
ピクピクと症撃するシコルに対してそうつぶやくと、独歩はくるりと体の向きを変えた。
目線の先にはポツリと立つ小さな小屋。夏江の監禁場所だ。倒れこんでいる克己のもとへいき、
それを肩に抱えて、独歩はその小屋へと走った。鉄製のドアが中をさえぎっていたが
一撃でそれを破壊。中へ入ると同時に独歩は叫んだ。「夏江ッ 夏江はいるかッッ」
「ドッポちゃん…」
小屋の奥から聞こえてくる声…。その声を聞いた瞬間、独歩の心にはいとおしさにも似た
暖かい思いが湧きあがった。独歩はその声が空耳ではないかを、直接触って確かめた。
「い、痛いよドッポちゃん…」
「な…夏江…なんだな?」
そこには最愛の妻、夏江がいた。いるのはわかっていた。恐らく無事であることも。
わかってはいたものの、独歩のその時の嬉しさは想像を絶するものだった。
無事に助けられた…。あふれ出るその思いは独歩の行動をいい意味で狂わせた。
痛い痛いと嫌がる夏江の体を、独歩はガッシリと掴み、高い高いのポーズを何回もとった。
痛いと言いながらも、夏江自身も喜びを隠せなかった。
目からは涙がこぼれ、独歩の傷ついた体へとポタリと落ちた。
しばらく再会の喜びをかみしめる2人。少しして、独歩は家へ帰ろう…とつぶやいた。
「ドッポちゃんの好きな肉じゃが作ったげる」独歩の背中に乗った夏江がそう言った。
再び克己を肩に抱き、小屋を出た時。独歩達の前に立ちはだかる男がいた。シコルスキーだ。
「ふ…ふしゅる…」奇声を発するシコル。その顔は、先ほどとはまた違った狂気に満ちたものだった。
最後の正拳突きは、まぎれもなく渾身の一撃だった。しばらくはまともに歩く事も出来ないはず。
目も、常人とは明らかに異なる奇妙な目をしていた。さっきとは明らかに違う…。奇妙に思う独歩。
「ヘッ しょうがねぇなぁ…」
そう言って、独歩が克己と夏江を降ろす。再びシコルを倒しにいこうと前へ出た瞬間だった。
「グゴオオオッッ」突然肺のあたりをおさえて苦しみだすシコル。目は完全に白目を向き、
口からは大量の泡が吹き出ている。泡と同時に口から出る叫び声は段々と大きくなり
あたりに響く。突然の出来事に、動きを止める独歩。後ろにいる夏江は目をそらしている。
「グゴオオオオオォォォぶkdjふぁうあいえぁうkぁうdsfkッッッッッ」
これまで以上の叫び声があがった次の瞬間、シコルの筋肉の壁をつきやぶって彼の体内…
肺のあたりから黒く丸い形をした物体がボコッと姿を現した。と同時に仰向けに倒れこむシコル。
その物体は、シコルの肺のあたりに付着したまま、黒い光を放ち始める。
正体不明の危険を感じ取った独歩は、物体を破壊せんと足に力を入れ、飛び出そうとする。
だが時すでに遅し。黒い物体はドンッという大きな音を発して大爆発。独歩の目の前には
まばゆい光の世界が広がった。
「独歩…独歩よ…」
聞き覚えのある声だ…。これは…徳川のじいさんか…。夏江…。夏江はッッ!
「ガハッ」
徳川光成の屋敷の一室…。
独歩は光成のささやき声で目を覚ました。少し開いたその部屋の障子の隙間からは、日が差し込んでいた。
朝日…?夕日…?どちらにしても、目前に光が広がったあの時から、数時間がたっている。
下半身を布団の中に入れたまま、独歩はまわりを見渡す。横には光成の姿。独歩は問う。
「夏江は!夏江はどうしたぁぁぁッ!」
光成は黙って目をつぶると、独歩に語り始めた。
「警察から、連絡があってな。昨夜未明に起きた河川敷での大爆発…。その現場に
あの愚地独歩がいると…。警察に発見されたお主は仰向けに倒れこんでピクリとも動かなかった。
なんでもお主がいたあたりは半径数百メートルに渡って吹き飛んでいたそうじゃ。
お主が生き残れたのは奇跡。まさに武天老師どのの修行のおかげじゃ…」
そう言うと、光成はポンッと独歩の肩を叩いた。独歩はその手を振り払い、再び問う。
「質問の答えになってねぇッッ!夏江は、夏江はどうしたあああああッッ」
光成はもう1度、独歩の肩を叩いた。今度は2回。ポンポンと。何かを察知した独歩は、光成の
顔を見つめた。そこには涙でうるんだ光成の大きな瞳があった。
「数百メートルが吹き飛んだ大爆発…と言ったはずじゃ。お主以外、あの場所で生きていた生物は
いない。夏江も…。克己も…」
言葉につまる光成。そんな光成を鬼気迫る顔でしばらく見つめた後、独歩はガバっと布団から飛び出し
障子を突き破って部屋を出た。長い渡り廊下に足をつけた独歩は、何かに取り付かれたかのように
一目散に廊下を走り出した。しばらく走った後、独歩は「出入り禁止」と張り紙の張られた部屋を
見つける。とび蹴りでドアを破り、その部屋へと入る独歩。ねじの切れたブリキ人形のように動きが止まった。
真っ暗な部屋の中に2つのベッド。そしてその上に乗る2つの人体。顔には白い布がかぶせられている。
1分程した後、独歩はゆっくりと動き出し、フルフルと震える手で顔にかぶさっている布を取る。
その瞬間、独歩の狂気にも満ちたうめき声が、光成の屋敷内に響いた。
横たわる2つの遺体。全身にヤケドを負い、見るも無残な姿の遺体は、克己と夏江のものだった。
「見てしまったか…独歩よ。出来ればその姿だけは見せたくなかったが…」
後を追ってきた光成が、独歩に声をかける。遺体発見の連絡を受けて、光成は
警察に根回しをして、遺体を自分の屋敷へと運んでいた。独歩の意識が戻る前に、密かに
葬儀を行う予定だった。夏江の眠るベッドに顔をうずめ、泣き叫んでいる独歩。
「アメリカ軍の燃料気化爆弾並の爆発じゃ。気づいてないかもしれんが、お前さんも
体中にダメージを負っている。
気絶していたとはいえ、常人以上の力を持つ克己でさえ耐えられんかった爆発じゃ。
普通の人間が…耐えられるわけがなかった…」
光成がそう言った直後、独歩は光成の胸ぐらをつかんで、小さな体をゆさゆさとゆすった。
「どうしてェェェェェッッ!どうして…こんなことに…ッッ」
再びうずくまる独歩。胸ぐらを掴む手から、どんどん力が無くなっていく。
「爆発現場で見つかった破片があってな…。恐らくは爆発物の破片。
以前にある人物に見せてもらったものに酷似しておった。オーストラリアで見つかった物体らしい」
「オーストラリア…」
「だからと言って、昨日の爆発物がオーストラリアで作られたとは限らん。
脱獄した死刑囚、シコルスキーのバラバラ遺体も近くで見つかっておる。状況が錯綜しているんじゃ」
あの物体は、シコルスキーの体に埋め込まれていた。だとすれば、それを埋め込んだ奴がいるはず。
手がかりはオーストラリア。恐らくはそこに、シコルの体に物体を埋め込んだ奴がいる。
独歩はそう結論を出した。すっと立ち上がった独歩は、後ろに眠る夏江と克己の遺体を
しばらく見つめる。「仇は…取る」そう言うと。独歩は光成にこう言った。
「バキ達には、よろしく言っておいてくれ。俺はオーストラリアへ行く」
愚地独歩の、過酷な復讐戦の始まりであった。
非常に申し訳ありません。
サーバーの調子が悪いらしく、いくつかレスがだぶってます。
>>347と
>>348 >>350と
>>351 の内容が全く同じです。見苦しくなりすいません。
調子直るまで様子を見ます。長文規制にも気をつけます。
すいませんでした。
ブラックキングさん、どんまい。
サーバーの調子が悪いのはあなたのせいじゃないから、気にしなくてもいいですよ。
これからゆっくり楽しませて頂きます。お疲れ様です。
ブラックキング乙
361 :
作者の都合により名無しです:04/08/22 04:00 ID:SxCZVLnm
ブラックキング氏乙。
独歩の復讐劇、武道家らしい凄惨なものを期待。
362 :
螺旋独房:04/08/22 05:45 ID:KBP/aQOX
>>218の続き
4
「金を出せ」
出きる限りの低い脅し声をインガンノが発した。手にもった刃は、人間の喉元ほどの高度の宙に当てられている。
「こういうふうでイイんだよ。わかったか?」
通過礼式を行った翌日、ナランチャは教育を受けていた。ここで生きていくための教育だ。
そして今インガンノによる物剥ぎの演技指導が行われていたが、ナランチャは手にしたナイフの重さと、鋭い輝きにすっかり気を取られてしまっていた。
一年前、万引きこそ毎日のように行いはしたがこんなものは持ったことは無かった。自分の手中にあるものは、いともたやすく人命を奪うであろう。
死を前にした自分がこんなものを持つのもなんとなくおかしかった。
「返事くらいしやがれ、糞ったれ」
うっすら聞きこえる程度の悪態だった。ナランチャは動じない。この自分の名誉など無いのだ。
そのそっけない態度にインガンノが逆にキレた。
「聞いてんのかてめえ。てめえのせいで俺はこんな糞一文にもならねえことやってんだぞ! この病気持ちが!」
罵声を叩きつける。言葉尻には、一度と無く「病気持ち」と付け加えられた。
負のイメージがナランチャの空の心を埋め尽くしていった。だがそれらは数秒と留まらず、何かに呑み込まれていった。
後にはやはり空っぽの魂。
「本当なら今度こそヤク仕事やらせてもらうはずだったってのによお、わかってんのかよ!」
小刀を振りかざしながらだが、決してナランチャには近づかず、一定の距離を置いて罵り叫んでいた。
伝染を恐れているのか。インガンノは、彼なりに必死となって生きようとしているのだった。
それがおかしかった。少し羨ましかった。
「いいか、今夜にでも決行だからな。わかったな」
唾を吐きステ、そしてそそくさと彼はナランチャから離れ去っていった。
363 :
螺旋独房:04/08/22 05:46 ID:KBP/aQOX
月夜だった。
満月の反射光が闇を緩和する、淡い夜だった。
裏路地の入り口。ひとけもない、街との境界線にて二人はスタンバイする。
「来たぜ、良いかよ?」
一人の男がやってきた。背は高く、それもあいまって細い体つきに見えた。大きなアタッシュケースを引き歩いていた。
カモだと判断したか、インガンノはゴーサインをナランチャへだす。
ナランチャがまず飛び出て注意を惹くと、すかさずインガンノが背後を取る。
「荷物置いて失せろ」
男の背後に回ったインガンノがナイフを突き付け囁く。
「おまえ、幾つだ?」
何の抑揚もない、男の返答は場違いなものだった。
「未成年か、おまえ」
「黙りやがれっ」
とりあえずインガンノがキレた。男の頬を凶刃が薙ぐ。
だが実際、インガンノの空の手が空を薙いだだけだった。ナイフが手中から消えていた。
「これか?」と、男の手には消えたナイフが握られている。
「てめえ……」
殴りかからんとインガンノは拳を振り上げるが、いともたやすく男に受けとめられる。
「おまえらのボスに会いたいんだがな、連れてきてくれるかい?」
インガンノの苦悶の表情が、彼の手首にかかる力を知らしめていた。
男が解放すると、彼は路地の中へと消えていった。
「ガキには棒付きキャンディのほうが似合ってるぜ」
「坊やもな」と、唖然としたままのナランチャのほうへ向き直ると、やはりナイフを取り上げた。
「僕は十五だ」
不平を漏らしつつ、ナランチャは初めて男を直視した。
細い印象は近くで観れば不適当だったと気付く。男の腕はぎっしりと筋肉が凝縮し形成されていた。
最低限の肉量と最大限の研磨がそこに息づいている。
彼の青い瞳の中には月明かりが映り込んでいた。ナランチャは母が付けていたサファイアのペンダントを幼い記憶の中に思い出した。
男の銀の髪もまた月光の金が混じりプラチナのような光沢を出していた。
「おまえにも付いてきてもらうとするか」
男はナランチャを目で促すと、共に路地へと入っていった。
364 :
螺旋独房:04/08/22 05:49 ID:KBP/aQOX
そこにはすでに憤慨するアレッシーが姿を表していた。
来客の男とは比べることすら酷なほどその格好はみすぼらしい。
老化の影響のみでなく肉の重みで目じりはダラリ垂れ下がっている。
古臭いサングラスから覗く目は、限りなく嫌らしいベタベタとした視線を放っていた。
伸ばし放題の髪は四方へ分散し、塵芥を付着するがままにしていた。
服の上からでも、だらしなく膨らむ腹がわかる。
男とアレッシーは薄暗闇の中でじっと睨み合った。
「おめえ、俺のシマでなにやってんだよ」
男は問いに答える様子は無い。
「なにやってるん……」
硬い何かが地面を削った。やけに大きな音に驚いたアレッシーは言葉を噤む。
それによってようやくナランチャは気付いた。淡い月の光の中、いつの間にやら影が男へ向かってぐんと伸びていた。
ちょうど男の前方一メートルたらずの位置。地面もそこで削られていた。男が影を制したのだろうか。
「相変わらず狡い手だな、アレッシー」
突飛に自らの名を呼ばれ、アレッシーは肉付きの良い喉を大げさに動かし唸った。
「てめえが組織の下っ端やってるとはよお」
組織、その言葉がよりアレッシーを揺さぶった。
「お、おまえ……」
光が見えた。光の軌道が。
アレッシーの返事は断ち切られた。彼の頬が断ち切られた。
光に対応するように男の右腕がピンと前方へと伸びていた。
「あふ……」
アレッシーの呻きと共に血が漏れる。
「てめえは、てめえの組織が何をやったのかわかってやがるのか!」
365 :
螺旋独房:04/08/22 05:50 ID:KBP/aQOX
男の右手から伸びる針のような一本の光線が、次々とアレッシーへと襲いかかる。
剣。ナランチャはそうイメージした。いつかTVで見たフェンシングに近い。目には見えない剣劇だ。
必死の防御を掻い潜り、一振り一振りで鮮血が散る。
アレッシーが後ろ手に隠し持っていた手斧を取り出すも、戦況はまったく変わらなかった。
空いている右目は男の体技にすっかり魅了された。
軽快なダンスのような脚捌き。完成された技。幾度と無い反復がそれを生み出したのだろうか。
月光だけが明かりの暗い路地、そんな狭長の場は小さな小さな舞台。
光と闇、白に赤、金と銀。汚臭漂うこの空間にナランチャは美しさすら感じた。
この男はヒーローなのではないだろうか。押し殺していた希望が顔を覗かせる。
この男なら、自分を運命の輪から抜け出させてくれるかもしれない。
崩れかけた魂が再び寄り合い、そこにポツリと生への執着が生まれた。
重い音が耳に届く。アレッシーの手斧が弾かれ地に落ちたのだ。
そして演舞が終了した。
366 :
螺旋独房:04/08/22 05:55 ID:KBP/aQOX
5
「話、聞かせてもらうぜ。よおくな」
男は萎縮したアレッシーを引き、路地を出ようとする。
放心していたナランチャは、ようやく決意し彼を引きとめ問うた。
戻ってきてくれるか、と。僕を助けてくれるか、と。
「んー、俺は忙しいんだけどなあ」
わざとらしい悩み顔になったと思うと、すぐさま釣りの来るようなとびっきりの笑顔が弾ける。
「ひとまず大事な用事が済んだら、な。いや、すぐに済むさ。すぐに、な」
その時の男に一瞬深い顔が現れたのをナランチャは見逃さなかった。怯えとも取れるものが体に走る。
男はそれを打ち消そうとしてか、ふけが付くのも構わずに、ナランチャの頭を無造作に撫でた。
細そうに見えて、重い手だった。
「悪いことするんじゃあないぜ。それじゃあな」
キザっぽい動作でさよならを告げると、アレッシーを突っつき突っつき去っていった。
まったくの初対面、たかだか数度の会話を交わしただけだ。
自分を救ってくれる確証などあるはずもない。
だがナランチャに纏わりついていた死の不安は拭い去られた。
たった一つのきっかけだったが、衰弱しきったナランチャにとってそれは限りなく力強かった。
絶望の淵から1歩引き下がるのにはそれで十分だった。
その日からナランチャは待ちつづけた。彼とわかれた路地の入り口で、昼と無く夜と無く、他に何もせずにただ待ちつづけた。
膝を抱え座り込んで待つ。不快感や苦痛はほとんど気にならなかった。期待感が全てを包んでいた。
一日日も経つと、もともと栄養失調気味だったナランチャの腹は嫌でも鳴りつづけた。
その日一日放っておくと、警告音は自然と消えてしまった。
今生きる目的を持っているナランチャは、それだけでもう満たされていた。
楽しくてしょうがなかった。
……彼が戻ってくれば僕はどうにかなるんだ。
そう思った。
367 :
螺旋独房:04/08/22 05:56 ID:KBP/aQOX
そのまた翌日の昼下がり、アレッシーが帰ってきた。
アレッシーだけだった。嫌な想像が少年の脳裏に過る。
注意に注意し、何かに追われる幼子のようなアレッシーの態度には、ナランチャですら同情を覚えた。
かつてインガンノたちの前で見せたの凄みはかけらも伺え無い。
「死んじまった……」
「だから俺は警告したんだ」
「次は俺が……」
「ほんのちょっと喋っただけなんだ……」
「助けてくれ。見逃してくれ」
ゆっくりと歩みながら、アレッシーはそんなような呟きを順不同で繰り返していた。
そして裏路地の奥に消えていった。
「死んだ……?」
実際、アレッシーが漏らした方法は微々たるものだったのだろう。
それでも男は触れたのだ。組織の本質に。そして、死んだ。消された。
あの男も運命に呑まれてしまった。螺旋のように渦巻く運命に。
死がよりリアルに覆い被さってくる。あの男は死すべくして死んだんだ。そして僕もそうなのだ。
死は死を呼ぶのだろうか。震えを思い出した。恐怖を思い出した。
何故自分は抵抗したのか。逃れられるはずが無いのだ。自分は、この世界そのものに縛られているのだから。
ナランチャもまる一夜かけて事を理解し呑み込んだ。
腹は膨れるどころか忘れかけていた飢えを叫ぶ。
お腹が空いた。食べ物を探さなくては。
餓死は、違う。
レストランが近くにあったはずだ。
久しぶりに動かす脚はひどく軋んだ。
おしまい
>超格闘士大戦
二転三転する展開。そして、惨劇へ。
シコルは倒したというのに、そういうどんでん返しで来るとは・・・
これで本部と独歩がオーストラリアへ行くというフラグが立ったわけね。
他のメンバーもオーストラリアへ行くのだろうか。その旅の過程とかもあるのかな?
そして
>バキと梢江…。2人の長い戦いの始まりだった。長く、そしてつらい戦いの…。
バキ、つらいのかw
369 :
作者の都合により名無しです:04/08/22 10:16 ID:f31aDiV6
ユル氏はやれば出来る子
俺は面白いけど、動きが(展開的な)少ない分なかなか受け辛いかもね。
中身は充分以上に濃いんだけど。ある程度の年齢以下にはスルーされるかも。
でも他の人がどうあれ俺は応援してますので、頑張れ!面白いぞ!
4×5の続きも期待してます。
>>358 加藤死ななかったり、渋川死ななかったり、
いきなり猪狩やザコ闘士を殺したのに、最近のヌルい展開は心配になっていたが、
やってくれたな。
後味は非常に悪いが、そこがよい。
371 :
作者の都合により名無しです:04/08/22 11:46 ID:GiSc6/wG
ブラックキング氏とユル氏は実力者だね、まじで。
頑張れよ。
372 :
作者の都合により名無しです:04/08/22 18:47 ID:ohi/xeuM
ユル氏の次回作と
ブラキン氏の展開大盛り上がりと
職人さんうぷを願って、上げ!
皆さん、口だけで済みません。
NBです。
メモパッドからここに持っていく方法を教えてもらえんでしょうか。
どうするのかさっぱり判りません。
……なんかえらく長いので、出来てる分だけ……とか思ってます。
…………にしても、俺のバトルはパッとしねえな。
とうとうSSを投下することを決意しました。
タイトルは「ドラえもん のび太の神界大活劇」
元ネタとなるのはドラえもんと、PCゲーム「SHUFFLE!」です。
ドラえもんはともかく、SHUFFLE!に関しては知らない人が大多数でしょうから、
ちょっと長いけど解説入れときます。
元ネタマンガ
ドラえもん。もはや説明不用でしょう。
本編SSでは別世界に飛ばされてしまったのび太を救いにきたドラえもんたちが、その世界
で敵と対決する、といった展開で、大長編ドラ風。
各キャラの性格もそれに準じているので、ギャグはあんまなしです。
元ネタゲーム解説
PCゲーム「SHUFFLE!」メーカーはNavle
詳しくは NavelオフィシャルHP
http://www.project-navel.com/ 18禁ですが、本編のSSにはそういった描写は一切なしです。
ちなみにコミック版も出ており、一巻が発売中。
世界観
基本的には現代日本を舞台としたオーソドックスな学園恋愛物。
ただし、人間のほかに神族・魔族という種族がいる。
彼らは本編の10年前に開いた<門>を通って人間界にやってきた。彼らは魔法が使えると
いう設定。
本編SSの後半には、かなりの量の戦闘シーンが描かれる予定ですが、この作品には敵と戦う、といった
シーンは皆無なので、そういったものに拒否感を持つ方には噴飯ものかもしれません(汗)。
>>373 え?
普通に右クリック→文章この書き込み欄にコピー→貼り付けでいいんじゃないの?
でも続きあるんだね、早いな、よかった!がんばれ!
登場人物(大体本編SSで活躍する順?)
土見稟――ゲームの主人公。幼いころに両親を亡くして、
それ以来幼馴染の芙蓉楓の家にいる。基本的に善良で、相手を思いやれる性格。
顔はかなりいい方。本編SSでのポジションは大長編ゲストキャラといったかんじか?。
プリムラ――神界・魔界共同で作られた人工生命体。強大な魔力を持つが、
魔法の使い方を知らない。稟が買ってあげたネコのぬいぐるみをいつも持っている。
無表情のせいで、感情はあるのだが分かりずらい。本編SSではのび太と一番仲良しのキャラになる。
仲良くなる過程ははっきり言って結構強引に書いてしまいました。
時雨亜沙――稟と仲のいい先輩。ショートカットの髪型で行動的な性格と、
いい姉貴分、といった感じだが、意外と純情。
料理の腕は相当なもの。なぜか魔法が嫌い。
ネリネ――魔王の娘。通称リン(稟と混同して紛らわしい)。子供の頃に稟に出会い、
それ以来彼を慕い続けていた。歌が上手いのだが、歌は嫌い?学校に親衛隊があるほどの人気者。
神王――オッサンキャラのくせして、ヒロインよりもインパクトが強い男。
和風趣味の大男で、性格は体育会系を絵に描いたようなかんじ。本名ユーストマ。
基本的に腕力で物事を解決しようとする悪癖がある。魔王とは大親友で、とんでもない親バカコンビ。
二人揃うと大暴走を始める。彼にとって神罰=鉄拳制裁である。
本編SSでも全編通じて活躍させるつもり。はっきりいって魔王と並んで作者が一番気に入ったキャラです。
魔王――クールな二枚目だが、ノリは結構軽めで基本的に温厚。フェミニストで、家事が大好き。
真面目な顔でアホらしい発言をすることが多い。本名フォーベシイ。
神王とは大親友で「まー坊」「神ちゃん」と呼び合う。やはりとんでもない親バカ。
本編SSでもかなりの活躍を予定。神王とツートップで作者お気に入りのキャラ。
芙蓉楓――主人公の幼馴染で、一緒の家に住むヒロインで、親衛隊があるほどの人気を誇る
・・・けど、本編SSでは、後半全く出番無しになる予定。
主に作者の能力と好みの問題。ほんとにごめんなさい。
リシアンサス――神王の娘。通称シア。子供の頃に稟に出会い、それ以来彼を慕い続けていた。
やっぱり親衛隊があるほどの人気を誇る・・・のに、本編SSでは後半は楓と同じくフェードアウト。
ゲームではメインヒロインなのに、ほんとにごめんなさい。
その他の登場人物
緑葉樹(いつき)・麻弓=タイム――稟のクラスメートで、悪友という単語がぴったり当てはまる二人。
樹は美男子だが、超ナンパ師でもある。
麻弓はデジカメを常に持つ情報局系むすめ。美人で気さくだが、致命的な貧乳。本人も諦めている様子。
紅薔薇撫子――稟たちの担任。美人・ナイスバディで生徒からの受けもいい。堅苦しいわけではないが
結構厳しい。個性的な生徒に囲まれて苦労している。
カレハ――亜沙の親友で、神族の少女。とてつもない妄想癖があり、勝手に
恋物語を想像しては盛り上がるある意味危険人物。
時雨亜麻――亜沙の母親だが、どう見ても美少女にしか見えない女性。
実はとんでもない秘密がある。
グロキシニア――オリキャラ。本編SSにおける敵役。典型的な子悪党、といったイメージで書きたい。
名前だけは結構大層。
アザミ――オリキャラ。本編SSにおける敵役その2。グロキシニアよりは色々抱え込んでるキャラ?。
作者の戯言
この「SHUFFLE!」という作品は、作品内での設定の説明が足りない、とか、ストーリーが
短い、とかの批判も受けてますが、個人的には大好きなゲームです。上の欠点も、逆に自分の
脳内での空想を広げる結果になり、おかげでこんなSSを書いてる始末です。
「ドラ達がこの世界に来たらこんな感じだろな」「大長編なら敵が出て来るんだよな」
「よし、そんな話を書いてみよう」
みたいな流れで妄想を広げた結果、設定を改竄したり、付け加えたりもしたせいで、
後半は元のゲームとはかけ離れたSSになってしまう予定です。
そんなこんなですが、自分で書いたSSのこと、それなりに愛着もありますので、
最後まで投げ出さないことを目標に書いていきたいと思います。
批判・批評・罵詈雑言も常時受け付けております(笑)。
それでは本編をどうぞ!
「ククク・・・ついに見つけたぞ。この日を待っていた!」
「期待していたほど早くは見つかりませんでしたが・・・覚悟していたほどの時間はかかりませんでしたね」
ここは神界と呼ばれる世界。そこに点在する遺跡の一つの内部で、人影が二つ、言葉を交わしていた。
一人は魔族の証である長い耳に、端整な顔立ちをした壮年の白衣を着た男。
もう一人はやはり白衣を着て、サラサラとした黒髪を腰にまで伸ばした、冷たさを感じさせる美貌の女性だった。
その耳は、魔族ほどでないものの、人間のものよりも長く尖っている。
「魔界にあったアレも使えば、もはや恐れるものなど何もない。問題はどうやって使うかだが・・・
それは人間界にいるあの連中を利用するだけだ」
興奮気味な男に対し、女は冷静な態度を崩さない。
「アザミよ、いよいよだ。我々が新たな世界を創るのだ!」
「そうですね、グロキシニア・・・。まずは人間達を滅ぼして、ですが」
アザミと呼ばれたその女の顔は、どこまでも冷え切っていた。
「ドラえも―ん!<らくらくお話つくり機>出してよー!」
7月20日。今日から夏休み、という夏真っ盛りのある日。
部屋に入ってくるなり、いきなりドラえもんにそんなことを言うのは、当然、野比のび太である。
こういうムチャな注文は聞きなれているので、ドラえもんは大して驚きもせず答える。
「どうしたのさ、いきなり。言っとくけど、そんなのないよ」
「夏休みの宿題が、<自分でお話を一つ作ってみなさい>っていうんだよ!ぼくにどうしろってのさ」
ため息をつくのび太に、ドラえもんは笑って言う。
「ま、頑張りなよ。夏休みは長いんだからさ」
「あ〜あ・・・。こんな宿題やらなくていいところに行きたいなあ・・・。」
「ほらほら、そんなこと言わないの。タケコプターを貸したげるから、いろいろ外を見回して考えるといいよ」
<こんな宿題やらなくていいところに行きたい>そんなのび太の願いは、思いもかけない事態により、
実現することになる・・・。
「いろいろ考えるっていってもなあ・・・」
とりあえずタケコプタ―で裏山まで来たものの、アイデアは何も浮かばない。
「あーあ・・・。木陰はさすがに涼しいや。昼寝でもするか」
そうやってのび太が寝転んだ、その時だった。のび太は、とんでもないものを見た。
空に、突然真っ黒い穴が開いたのだ。それは、とても暗い、あまりに暗い穴だった。
「な・・・なに!?なんなの、あれ!?」
驚くのび太に、さらなる衝撃が待ち受ける。その暗い穴が唸りをあげ、のび太の体を
恐ろしい勢いで飲み込もうとするかのように、凄まじい風が巻き起こったのだ。
「うっうわああああっ!」
必死に身近な木にしがみ付くのび太だったが、その抵抗は虚しく、彼は空中の穴へと放り出されていった。
「ドラえも―――――んっっ!!」
その絶叫を最後に、のび太は完全に穴に飲み込まれた。
のび太は、柔らかい蒲団の中で目を覚ました。なんだか怖い夢を見た気がする。
巨大な穴に吸い込まれたような、そんな夢だっただろうか?
体を起こしたのび太は、そこが自分の部屋でないことに気付いた。
「こ、ここはどこ!?」
軽いパニックに陥るのび太。そこへ、ドアが開いて、一人の男性が姿を見せた。
「やあ、起きたのか。大丈夫かい?」
そう言って安心させるように笑いかける男性。高校生くらいだろうか、見慣れない学生服を着ていた。
少なくともどう見たって悪人ではなさそうだ。少し安心して、のび太は答える。
「は、はあ・・・。別になんともないですけど・・・。ここ、どこなんでしょう?ぼく、裏山に・・・」
そこで、思い出す。あの、暗い暗い穴に飲み込まれた事を。
「そ、そうだ!なにか・・・変な穴に吸い込まれたんです!」
「変な穴・・・?きみが出てきた、あの真っ黒な穴か?」
「そ、それです多分!あれ、なにか知ってるんですか!?」
「いや・・・俺は知らない。ただ、この家の居間の天井に突然穴が開いて、キミが出てきたんだ。
気絶してたから部屋に運んだんだけど・・・」
「そうですか・・・。何だったんだろう、あれ・・・」
首をかしげて考え込む二人だったが、ふと思い出したように男性が言った。
「そういや、名前も言ってなかったな。俺は土見稟っていうんだ。きみは?」
「ぼく、野比のび太・・・のび太でいいです」
「のび太、か。ひょっとしたら、魔王と神王のおじさんなら例の穴について知ってるかもしれない」
「魔王・・・神王!?な、なんなんですか、それ!?」
「知らないのかい?魔族と神族の王様だよ」
「魔族に・・・神族!?そ、それって一体・・・!?」
のび太の態度に怪訝な顔をする稟。この世界では、既に魔族と神族の事は常識となっているのだから、
当然とも言える。
「魔族と神族の事を知らないのか・・・?」
「は、はい・・・。けど、その二人だったら、なにか知ってるかもしれないんですね!」
「ああ、二人とも、ちょっと変わってるけど、物知りだからな。じゃあ、
ちょっと準備してくるから、待っててくれ」
「はい・・・」
「ぼく・・・どうなるのかな・・・。ママやパパやドラえもん、心配してるかな」
窓の外を見ながら呟くのび太。当たり前だが、さすがに不安そうである。
そこにノックの音がして、反射的に返事をすると、入ってきたのは綺麗な女の人で、その人は芙蓉楓と名乗った。
稟からのび太が目を覚ましたことを聞いて、様子を見に来たそうだ。
のび太は早速稟に聞きそびれたことを聞いてみた。
「楓さん、ここ、どこなんでしょう?ぼくのいた町と、なんだか違うんです。
魔族に神族なんて、ぼくは聞いたこともないし・・・」
「ここは光陽町というところだけど、のび太くんはどこから来たの?」
「ぼくは東京都練馬区にいたんです」
のび太がそう言うと、楓は怪訝な顔をした。
「そこだったら、たくさん魔族と神族がいるはずなんだけど・・・どういうことなんでしょう」
「さあ・・・正直、ぼくが聞きたいくらいなんです」
その後、楓は色々話してくれた。10年前、神界と魔界に通じる門が開いたこと。
魔族と神族が人間界に移住してきたこと。もちろんのび太にとっては全くの初耳だった。
さらには、今日は7月12日ということだった。明らかにのび太の知る世界とは、何かが違う。
話が終わったとき、稟が部屋に入ってきた。
「二人に話してみたら、心当たりがあるってさ。ここにすぐ来るそうだ」
リビングに場所を移し、会話を続けるのび太達三人。
「あの・・・魔王様と神王様って、どんな方なんですか?」
「う〜ん・・・。まあ、ちょっと強烈だけど、悪い人達じゃないから大丈夫だよ。・・・多分」
実に不安になる解答だった。なにせのび太の感覚からすれば、魔王だの神王だのなんて、
ゲーム機の向こう側の存在なのだ。いかに数々の冒険を乗り越えてきたのび太とはいえ、
普段は並の小学生である(それ以下という見方もある)。そんな方々に会うと考えるとドキドキする。
「まさか、角が生えてたり、尻尾があったりなんてことは・・・」
「はは、まさか。魔族や神族は、姿形は耳が長い以外は、人間と一緒だよ」
「そうですよ。そんなに心配しなくっても、とって食われる、ってわけじゃないんですから」
「それならいいんですが・・・」
そんなことを話していると、リビングに女の子が入ってきた。のび太よりは少し年上だろうか。
ネコのヌイグルミを抱いて、無表情でのび太を見ている。彼女の耳を見て、のび太は驚いた。
明らかに、人間の耳よりも長かったのだ。
「あの子はプリムラっていうんだ」
「はあ・・・。あの、はじめまして、ぼくはのび太っていいます」
「・・・はじめまして」
それだけ言うと、プリムラはさっさとソファに座ってしまう。
「リムちゃんは、ちょっと人見知りなとこあるから・・・気にしないでね、のび太くん」
「いえ、別に気にしてませんが・・・」
とは言ったものの、さすがにちょっと引き気味ののび太だった。
いくらなんでも、人見知りしすぎじゃないか?
こんな見も知らぬ場所へいきなり来てしまって少々ナイーブな気分になっているのび太には、
自分を拒絶するような冷たいプリムラの態度は正直キツかった。
なんか、連投規制かかったみたいです・・・。
これからは気をつけないと。
変なとこでぶつ切りになってすいません。
<ピンポーン>「稟殿ォ!邪魔するぜ!」
そんなちょっと気まずい場を取り繕うようなチャイムと同時に、実に力強い声が響く。
あまりに力強すぎて、のび太はビクッと震えた。
「い、今の声は!?」
「ああ、今のが神王のおじさんだよ。はーい、どうぞ入ってください!」
どうやら、いよいよ神王様のおでましの様であった。自然、のび太も背筋を伸ばす。
ドスドスと実に力強い足音が響き、リビングのドアが開く。そこに立っていたのは、
声に違わず見るからに力強い偉丈夫だった。筋骨隆々、という単語が否応無しに浮かぶ
(のび太はその四字熟語を知らなかったが)逞しい肉体を、純日本風の着物で包んでいる。背も高く、
のび太がその御尊顔を拝むには、相当首の角度を急にしなければならなかった。
のび太の神王に対する第一印象はズバリ、<特殊な自営業を営む怖いオジサン>である。
そんなのび太を尻目に、神王は馬鹿でかい声でマシンガンの如く喋る。
「おう、稟殿!なんでも妙なガキがいきなり出てきたんだって?ほうほう、
おめえがそうか!なんだなんだ、シケた面しやがって!」
そう言ってグシャグシャッとのび太の髪をかき回す。のび太はその迫力に圧倒されて、声も出ない。
「おう、ガキ。おめえ、名前は?ちなみに俺の名前はユーストマ。
一応神王をやってる。まあ一つよろしく頼むぜ」
「え・・・?あ、あの、ぼくは野比のび太って言います。・・・あの、おじさんが神王様なんですか?」
「ふむ、のび太か。いかにものんびり屋ってかんじだな。うん、悪くねえ名前だ」
バシバシとのび太の肩を叩く神王。のび太は正直、誰かこの人を止めてくださいお願いします、と思った。
そんなのび太の心の声が届いたのか、ドカッと大きな音が響き、神王は何故か床に倒れた。
その背後から現れたのは、ビックリするような美少女だった。
何故かその手には、イスが握られていたりする。
「もう、お父さんったらダメでしょ。この子が怖がってるじゃないの。
・・・ごめんなさいね、えっと、のび太くん」
「は、はい・・・。あの、お姉さんは・・・?お父さんって、ひょっとして・・・」
「はじめまして、私はリシアンサス。神王の娘よ。言いにくかったらシアって呼んでね。」
そう言って実に魅力的な笑顔を浮かべる彼女。のび太も男の子であるからには、
見惚れてしかるべきなのだが、それより気になるのは彼女の持つイスであった。
「あ、あはは・・・。こうでもないと、お父さん止まらないから・・・」
笑顔はやっぱり可愛らしかったが、のび太はこの人を怒らせないようにしよう、と、密かに誓った。
それにしても、神王様がこの調子では、魔王様はどんな有様なのか。
「うう・・・シアよう、ヒデェじゃねえか、毎度毎度親父の頭をイスでぶん殴るなんて・・・」
涙目で神王が立ち上がると同時に、またしてもチャイムの音が響く。
「稟ちゃ〜ん!来たよ〜!」
チャイムと同時に、恐ろしく緊張感のない声が聞こえた。
「はーい、入ってください」と、稟が答える。
「あの・・・今の声の人が・・・?」
「うん・・・。魔王様だ」
あの緊張感のない声には突っ込むまい、とのび太は思った(というより、突っ込みたくないと思っていた)。
代わりに、疑問に思っていたことを尋ねる。
いやいやいや。何を恐縮してらっしゃるのですか。
俺はゲームを知らないけど、なんか壮大な感じの出だしで楽しめそうだ。
文章も読みやすくていい!あと、連続投稿規制は確か6回じゃなかったかな?
マジ期待。がんがれ!!
「・・・ところで、こんな偉い人達が、どうしてこんな早く、普通の家にきてくれるんですか?」
その疑問に答えてくれたのは、シアだった。
「あ、稟くん言ってなかったんだね。私の家と魔王様の家、稟くんの家の両隣なの」
「おう、三軒揃って、家族ぐるみの付き合いだ!」
「・・・・・・」
そんなんでいいのかこの世界は。のび太はため息をついた。
神王様と魔王様と人間が家族ぐるみで付き合うなんて、当たり前だが聞いたこともない。
しかも、神王様はこれだし、ついさっき聞こえてきた魔王様の声はじつにアレだ。先行きがますます
不安になるのび太だったが、そんな心情を無視してドアが開き、耳が長く尖って端整な顔をした、
どことなく妖しい雰囲気の男がリビングに入ってきた。
「やあ、稟ちゃんに楓ちゃん、それにプリムラも元気そうだね!おっと、神ちゃんにシアちゃんも
もう来ていたのかい。いやあ、私も急いで来たのだけれど、少し遅れちゃったかな?おや、そこにいる
男の子が、例の空中から現れたっていう子かい?名前はなんていうんだい?あ、そうそう、
私はフォーベシイ、魔王をやらせてもらっている」
入ってくるなりマシンガントークを繰り出す魔王に目をパチクリさせながら、のび太は自己紹介する。
と、魔王の後ろに、シアや楓にも劣らない美少女が立っているのに気付いた。のび太と目が合った彼女は、
礼儀正しく自己紹介をする。
「あの、私はネリネと申します。魔王様の娘です」
「そう!のび太ちゃん、覚えておいてくれたまえ。彼女こそ私の自慢の娘、ネリネちゃんだ。
いずれ稟ちゃんの花嫁さんになる子だから、そうなると稟ちゃんは私の息子ということになるね」
「ちょ、ちょっと、お父様・・・」
「え〜っ!それって、稟さんの婚約者ってことですか!?」
「あ、いや、のび太、それはな・・・」
「ちょっと待った!まー坊、そいつは聞き捨てならねえな。稟殿はうちのシアの未来の花婿なんだぜ?
わりいが、これだけは譲れねえな!」
「ちょ、ちょっと、お父さん・・・」
「シアさんも!?それって、どういうことなんですか」
「いや、あのなのび太。別に婚約してるってわけじゃなくて・・・」
「おいおい、何を言ってるんだい、神ちゃん!稟ちゃんは私の後継ぎとして、立派な魔王になるんだよ!」
「いや、稟殿は次期神王になる男だぜ?魔王にするわけにゃあいかねえ」
「あの、お二人とも、のび太くんのことで話があるんじゃ・・・」
「・・・・・・別にどうでもいいけど、騒がしい・・・・・・」
もはや混沌のるつぼと化した芙蓉家のリビング。楓だけはなんとか話の方向を元に戻そうとしているが、
徒労に終わっていた。が、そんな騒ぎも、
「「いい加減にしなさいっっ!」」
という、シアとネリネの一喝によって、なんとか静まった。神王と魔王も娘には弱いらしく、
ピタッと言い合いをやめた。
「今は二人とも、のび太くんのことで来たんでしょ?」
「お・・・おう、そうだな。じゃあまー坊、本題に入ろうぜ」
「そ、そうだね・・・。じゃあのび太ちゃん、キミがどうやってここに来たのか、
詳しく話してくれないかい?心当たりはあるんだが、キミの話を聞かないと、確信とまではいかないからね」
とりあえず今日はここまで投下します。
>387さん
いきなりお褒めの言葉を預かり恐縮です・・・。
今のままの感じで書き続けられるよう頑張ります。
設定からしてなかなか本格的ですね。かつ面白そう。
個人的にはこのSSの世界になれるまで時間がかかりそうなので
できれば一通り世界観がわかってくるまで更新ペースを確保してもらえたらと思います。
期待してますので頑張ってください
おお、夜も遅くにお疲れ様です。
執筆宣言以来、楽しみにしていたので投下されてて嬉しい限りです。(本音)
(メロンパンさんの18号クリリンは結局来なかった・・・)
こちらもなんとか先に完結されないよう頑張ります。(←かなり本音)
(本音)って何だよ
実は建前なのか
楽しみで嬉しいのが本音という意味ですけど、
なにか誤解があればすみません。深い意味はないです。
下の文章にかかってるわけではないですよ。
いや、普通わざわざ(本音)なんてただし書きなんてしないじゃん。
からんでごめん。
コテハンが303のままだと次スレ行ったとき紛らわしいんで
もじってサマサと名乗ることにします。
それにしても暑くて寝られねえ〜(汗)
>391さん >出木杉帝国さん
応援ありがとうございます。正直、元ネタ知らないと作中の描写の意味が分かりずらいかな〜、と
思ってるんですが、その辺の未熟さもなんとかしていきたいです。
あとはキャラクターの本質だけはなんとか外さないよう、頑張って書きたいです。
更新ペースは何とか週一くらいでやっていきたいなあ、とは思うんですが・・・
正直、九月いっぱいまである夏休みで、どれだけ書けるかが問題です。
今のペースで書ければ10月末までには完成出来るかなー?ってぐらいでしょうか・・・。
>ドラえもん のび太の神界大活劇
のび太単独か。ドラえもん達は来ないのかな?
コメディタッチで読んでて清々しい。おもしろい。
今回の出来事を宿題の「お話作り」で書くのかな?
399 :
作者の都合により名無しです:04/08/23 08:17 ID:whwXpoCl
>サマサさん
前に謙遜してたから、あまり期待してなかったけど(失礼)
上手いじゃないですか!ノリノリで書いてる感じですね。期待!
当然ゆくゆくドラえもんも出るはず。楽しみだ。
VS氏とうみにんさんとは別方向で楽しくなりそうですな。
>うみにん氏
出来杉続きお待ちしておりますよー。
出来れば今月、もう一回くらいw
いえいえお忙しいですね。お手すきになったらお願いします。
400 :
ふら〜り:04/08/23 09:39 ID:JC+tC023
>>ブラックキングさん
……。さすがに、克己と夏江では「実は生きていた」もできませんね……肉じゃがも、
おソバも、もう食べられなくなった独歩。彼には悪いですが、仇と相対した時が
非常に楽しみになってきました。一体どんな修羅場になるのか?
にしても、こんな時にバキは。そりゃ別に罪があるワケではないですが。ねえ。
>>螺旋さん
ふ〜む。三部では三枚目役を引き受けていたP氏ですが、こうやってみると殆ど
条太郎並ですね。渋い。ここまで渋くていいのかってぐらい、渋い。「ヒーロー」と
名言されてますし。その死に様が重く感じらるれるのもまた、ヒーローの条件。
その辺のツボを心得ておられますな。お見事っ。
>>サマサさん
原作は全っっ然知りませんが……巧いですよサマサさん! 性格(言動)描写が外見描写に
繋がって、セリフと動きから外見が浮かんできます。説明もテンポよく充分で、多人数の
割に混同せず読めました。むしろ最初の人物紹介、なかった方が良かったと思える程です。
さて。後はこの先、物語がどれだけ盛り上がるか、ですね。楽しみにしてますよ〜。
>>で私は
まだしばらくSSは書けそうにないです。しかも幽々白書、いくつか考えはしましたが
どうも今ひとつ……なので次はおそらく、前に言いました刃牙の短編になるかと。
まだ判りませんが、そうなりましたらご容赦のほどを。
>398〜400さん
感想ありがとうございます。結構好評なようでほっとしています。
あ、今はのび太だけですが、ドラ達もちゃんとのび太を助けにやってきますよ。
のび太だけじゃさすがに敵と戦えないですし(笑)
サマサさんは出来る人だな。
俺も正直あんまり期待してなかったから吃驚したw
俺もゲームは知らんけど、親切な誘導レスと人物紹介のおかげで
抵抗無く読めた。サンクス!
結構長くなりそうな良い予感だ。また〜りがんがって下さい。
>うみにんさん、ふら〜りさん
お2人とも復活待ってるよ!暇になったら書いてね。
>ぼくブラさん
原作を超えたブラックキャット、今夜あたりかな?
バトル全快かな?待ってます。
秘密結社クロノス―――
どの国の歴史の教科書にも載る、千五百年前の世界大戦――――その終結の折に結成されたと噂される
世界政府公認―――と言うより現在はそれさえ裏から使役する巨大組織。
時を司る神の名を冠する彼らの存在理由はただ一つ――――――世界のパワーバランスの維持。
実際彼らの活躍で、幾度の世界大戦の蒸し返しを回避できた事か。
そしてその事実が、各国に余す所無く太すぎるパイプを成していった。
――――――それは事実上クロノスが世界の支配者である事を示していた。
「判るだろう?結局今この世界を維持した気になっているのは、たった数人の死に損ないだ。
そんな不安定なモノに安寧秩序を任せられるか?そんな奴等の為に命を張れるか?
――――――無論、否だ。だから僕は…」
「黙れ」
冷たすぎるトレインの言葉がクリードの熱弁の腰を折る。
「オレにはンなモン知ったこっちゃねーよ、お前等の体裁なんぞ聴きたくも無ェ。
とにかくさっさとリンスを解放しろ。用件はそれだけだ」
……本当にこの男はトレイン=ハートネットなのだろうか。
リンスは思い出す、自分の知る彼を。
――太平楽で、明るくて、ツッコミ所満載で、万年金欠病で、だがそれでも荒事の達人――
だが今の彼は、先刻の会話を帳消しにする様な殺気を惜しみなく放っている。
それを何時の間にか自分の横にやって来たこの覆面はどう思っているのだろう。
「………トレイン、なんか戦いたいっぽいよねェ」
――ズバリ言った。……トレインの限界ギリギリの堪忍袋の緒が遂に切れた。
「……テメエはサヤを殺した。……………親友の仇と握手したいとでも思ってたか?オレが!」
絶叫と共に愛銃“ハーディス”を抜き、構え、撃つ!しかも4発。…その間1.2秒。
誰の耳にも雷鳴の様な銃声が飛び込んで来た。
だが、クリードは体を斜に構えただけで回避した。
「…駄目駄目だよそれじゃ。何処に来るか、いつ撃つか、キミが全部教えちゃう。
………でも、開幕ベルにはいい感じだね………見せてもらうよ、今のキミを」
――クリードは一際悪辣に笑った。
――トレインは次弾を込めながら更なる殺気を瞳に込める。
「―――その前に面白い物を見せてあげるよ、トレイン」
そう言ってクリードが右手を振った。
と、同時に現れる三振りの刀。
宙に浮くそれは右から――
―――――柄も鍔も鞘も普通の刀。但し、拵えは一級品。
―――――柄も鍔も鞘も真っ黒の、闇を削り出した様な漆黒の刀。
―――――全体を奇妙な呪符と鎖に縛られ、鞘鳴り震える………恐らくは刀。
「―――道(タオ)か」
――この世界最大の面積を誇る大東海なる海に「邪馬島(やまと)」と言う名の島
(というより大陸に近い程大きいが)が有る。
そこに住む極少数の人々がどういう理屈で編み出したか知らないが、己の精神力と生命力で
戦う術を見出した―――……とか何とかを以前、話半分に聞いた事がある。
「…驚かないんだね、僕は結構衝撃だと思ったんだけど」
…殺意が優先し、邪馬島の服装の人間が居る以上何を驚く事がある。
トレインにとっては予想の一つが当っただけだ。
他人とは違う種という程度の手妻使いが何ほどの事やある。
そんな事より、今は―――
問答無用で銃撃。
勿論全弾急所に向けて。
だがしかし、三本の忌々しい刀共が全て盾になる。
「……せっかちだね、僕は逃げやしないよ」
そして、ゆっくりと刀に手を伸ばす。
「………だから、キミも逃げないでくれよ」
地獄の番犬さえ竦み上がりそうな笑みで取ったのは、普通の刀。
「…冥刀“幻影(あやかげ)”、まずはこれだね」
――抜くと同時に二刀が消えた。
刃に特に異常はない、敢えて云うなら美しいだけ。
「……行くよ、トレイン」
―――クリードが飛んだ。
いや、そう錯覚する様な強烈な踏み込みだった。
一瞬で次弾を装填し終えたばかりのトレインに肉薄―――大上段に斬りかかる。
銃身で受けた……――だが、予想外の圧力に膝をつく。
「……いいこと教えてあげるよ。道士(タオシー)はね、常人の数倍の身体能力を得るんだ。
…チャクラの活性化でね。……このままだと死ぬよ、トレイン」
ならば、かつてのデタラメ身体能力の数倍か。
だからと言って、この男に負けてやる道理が何処に有る!
その気持ちを込めて、銃身で刃の運動ベクトルを斜めにずらした。
クリードの刀は滑り、押し切る筈の一刀が床に落ちる―――瞬間、
「おおぉっ!!」
今度はこちらの渾身の掌底を彼の横面に叩きこんだ。
そしてその反作用と足のバネで大きく間合いを取る。
――クリードの剣域から逃れ、しかも奴の態勢は崩れている。
何をしようと側頭部への銃撃は防げない。ならば―――
そこまで考えるより速く空中で向けた銃身を、何かが上方へ弾いた。
「!!?」
その驚愕は弾かれた事よりも弾いたモノのために生じた。
それは――――――クリードの刀。……但し、刀身が二メートル以上伸びている。
「いけないなぁ、道の刀を普通のと一緒にしちゃあ…」
…口から血を垂らしながら凄絶に笑った。
冥刀“幻影”、それは長刀であり太刀であり短刀。
最大延長二メートル強には勿論理由が有る。
仮に何十何百単位で伸ばしても、力学とバランスが切断を許さないのだ。
ならば十メートル以内……それでは上記に加え、受けるに避けるに易すぎる。
何より、それでは折角の剣技は使えぬ、という事を彼が知っているが故か。
「……久々に見せてあげるよ」
普通のサイズに縮んだ刀を肩に担ぐ――剣道で言う所の崩し櫓(やぐら)――構えで再び対峙。
「……その前に、殺すさ」
今や灼熱の氷刃さながらの気迫でトレインはハーディスを腰のホルスターに収め、目を閉じる。
297から…のつもりです。
今のところはここまで。
なんかあっさりしすぎな気がします。
そして、教えて下さった皆さん。有り難う御座います。
おかげで駄文テロを敢行出来ました。
303さん、劇場版みたいでいい感じです。楽しみです。
次はもう少し読み易くなる様努力します。
>ぼくブラ氏
うまいね、緊張感出すのが。
銃の戦いはあっさりし過ぎるかと思いきや
うまく描写して読ませる。
クリードの殺気を書くのも上手い。
>>406まで読んだけど、まだ続くのかな?
やっぱり一気に上げてくれると読み甲斐あるね。
しかし、そろそろ正式タイトルと
あなたのコテハン考えた方がw
>>408 コテハンはNBでしょ。本人がトリップの付け方知らないだけで。
NBさんみたいな人が原作をやっていれば、知欠もアニメ化ぐらいは出来たかも知れんな
411 :
408:04/08/23 21:06 ID:+0E4O5lH
>>409 そうだね。忘れてたw
でも、タイトルが「僕が考えたブラックキャット」じゃもったいないよ。
もっとかっこいいのつけなよ。せっかく面白いのにさ。
乙。
原作未読派ですが面白かったですよ。
NB氏は戦闘があっさりと言ってるけれど、結構練られてるように思う。
ただ、「…」や「――」が多すぎる気がします。
使用度を半分くらいにすれば、もっと読みやすくなると思う。
あと関係ないけど最初の一行目
>秘密結社クロノス―――
これで一瞬「ガイバー」を連想してしまった。
>>407 俺は未読者なんだが、そういう人にも読んでもらいたいのなら
もう少し説明を足したほうが良いかと。よくわからないところが
結構あった。
アドバイズウゼェー
NBです。
412さん、413さん、いやまったくもってその通り!……猛省します。
408さん、タイトル……ですか。
・BlackCat AA(アナザー・アトラクション)
・BlackCat SC(シャープ・カスタム)
・武羅津駆伽津斗 喧嘩上等
・ぶらっくきゃっと 北大西洋でタンゴを踊れ!
・=)’%$#”*}_$!|〜*‘><(電波語でブラックキャットらしい)
とまあ、少々はっちゃけて考えてみました。
なんか上手いタイトル無いですかねえ・・・
>NBさん
神界大活劇はドラ劇場版をイメージして書いてるので、>407のように言ってくださるのはうれしいです。
今は僕もいいテンションで書けているので、近く続きを投下出来そうです。
NBさんもぼくブラ執筆頑張ってください。オリ設定とかもいい感じだと思います。
優秀な職人さんが2人も誕生したか。祝賀上げだな。
これは私が中学生くらいの頃に母に聞いたお話で、母曰く実話とのことでした。
しかし、その後母は「幽霊なんて見たことないわ」などと言うなどその真偽は怪しいものです。
それでもこの話、子供を怖がらせる話にしては嫌に生々しいので、あるいは母も誰かにこの話を聞いたのではないかと思います。
では本題へ。
私の母は、看護師(当時は看護婦と呼んでいましたので、以後看護婦で進めます)をやっていました。
看護婦になるには医者と同様国家資格が必要でして、それを取得するために看護短大に通っていたそうです。
看護短大を出た看護婦は、実地研修代わりにその学校の大学病院に行くケースが多かったそうで、母もそこで勤めていたそうです。
余談ですが、「君たちみたいなぺーぺーが他所の病院で使い物になるわけがない。うちで使ってやる」のような高圧的な態度だったとか。
今も昔も病院というのはどうにも気に入らないところのようです。
第二十一話「五人目参上」
道路に投げ出されたドリアンからは、あれだけ堅固に保たれていた意識が消え去ってい
た。敗北が確定したことにより、彼を取り巻いていた催眠術が解けたためであろう。
シコルスキーが、ドリアンの口へと預かっていたキャンディを入れる。勝利のために自
己と対戦相手を偽り続け、死をも承知で戦い抜いたペテン師。そんな彼に対し、シコルス
キーは最大の褒美を与えずにはいられなかったのだ。
存分に実力差を見せつけ、勝利を収めたジャックは堂々と帰還を果たす。だが、彼を待
っていたのは祝福ではなく、絶大な怒気に包まれた本部であった。
「ジャックよ、わしは殺すまで戦えと命じたはずだ。あのような生温い決着を選択した理
由を……聞かせてもらおうか」
しばしの沈黙。やがて、ジャックは弁解する素振りすら見せず、ゆっくりと右腕を突き
出した。
「折ってくれ」
とても勝利した直後とは思えぬ、荒涼とした緊張感が両者を包む。本部とジャックの迫
力は、他のメンバーが口を挟むことを許さない。そして、右腕を献上する覚悟のジャック
に、思わず本部も苦笑する。
「ハハハ、わしのことを少し勘違いしているようだな」
どうやら本部に腕を折る気はないようだ。場を支配していた緊迫した空気が、若干では
あるが緩む。──が、それは束の間でしかなかった。
「斬ってくれ、の間違いだろう。わしが骨折程度で許すと思っているのか」
危険な眼光を放つ本部、一切動じぬジャック。睨み合いは数秒間続いた。無数の修羅場
を潜り抜けたガイアでさえ、冷や汗を流すほどの重圧。ズールは本能のままに怯え、ショ
ウはまたもや失禁してしまっている。
このまま同士討ちに発展すると思いきや、本部の方から視線を逸らした。
「まずは、あの小僧を喰うのが先だ。この件については、また別の機会に話し合おうじゃ
ないか」
本部以蔵、出陣。老いた背中にホームレスの誇りを背負い、スペシャルマッチ最後の大
一番を迎える。
そして、対戦相手であるシコルスキー。彼はここに来て、自らに課せられた立場の重要
性を改めて実感していた。
試合前までは、四連勝で出番が回ってくるとばかり思っていた。そうなれば、たとえ自
分だけ負けたとしても、しけい荘全体の敗北とはならない。だが、現実は二勝二敗。決着
は大将戦にもつれ込んでしまった。
今までの四人の戦いぶりが、シコルスキーの中に鮮明な映像となって蘇ってくる。仕組
まれた罠を文字通り粉砕したスペック。技量にて本能を凌駕した柳。過酷な闘争において
も手品を魅せたドイル。己の信念を命を賭して貫き通したドリアン。いずれも全力であり、
いずれも容易ではなかった。
──無様な試合だけは絶対に出来ない。
かつてない使命感が津波のように押し寄せる。一瞬でも気を抜くと、意識を丸ごと消し
飛ばされてしまいそうだ。
「いよいよですな……」
柳がしみじみとした口調で声を掛けるも、シコルスキーはどこか上の空だ。いや、彼は
既に戦っているのだ。自分を押し潰そうとする、見えない力と格闘しているのだ。何も言
うべきではないと判断した柳は、必要最小限のことのみを告げる。
「私はドリアンさんを病院へ連れて行きます。……武運を祈っておりますよ」
シコルスキーは真剣な面持ちで、一言も発さぬまま公園へ入っていった。
最終決戦を見届けたいという気持ちを抑え、柳は倒れているドリアンに手を差し伸べる。
だが、その手は思わぬ人物によって制止された。意識を取り戻したドリアン自身によって
である。
「私は大丈夫だ。頼む……このまま試合を見させてくれないか」
「それは無理というもの。怪我の具合は、自身が一番よく分かっているでしょう」
「確かにな……。だが、シコルスキーにはキャンディの礼をしなければならない。最後ま
で……自分の眼で結末を確かめたいのだ」
死の直前にいるとは思えぬ、強固な意志の込められた言葉だった。もはや、柳の頭には
彼を説得する文句は思いつかなかった。認めるしかない。ドリアンの身体を、公園内を見
渡せる姿勢に動かす。──と、二人に向かって大声が飛んできた。スペックである。
駆けつけてきたスペックは、信じられないことに半死半生のドイルをまだ背負っていた。
当然ながら、柳が荒々しい語気で問いただす。
「アンタ……病院へ行ったんじゃなかったのかッ!」
「イヤ、コノ地図ヲ見ナガラ走ッタンダケドナ……病院ガ見ツカラナクッテヨ」
スペックの左手にある紙切れを強引に奪い取る柳。しわくちゃになった長方形に眠って
いたのは、思わず目を疑いたくなるような事実であった。
「スペックさん……これ、世界地図……。何をやっているんだァッ!」
いくら百年近く生きている老人でも、流石に許されないミスである。容赦なく責める柳
に、今にも泣き出しそうな表情で謝り続けるスペック。
「いや、かまわない……。しけい荘の一員として……大人しく入院しているわけにはいか
ないだろう」
二人を諌めたのは、弱々しいドイルの願いであった。自分達の置かれている状況をいち
早く察知した彼もまた、命よりも試合の見物を優先した。柳もスペックも、笑って彼を受
け入れる。こうなれば、全員でシコルスキーを見守ろうではないか。
そして──四人が一斉に吼えた。
毎日のように聞いてきた声。半ば聞き飽きた声が、応援となって公園を駆け巡る。使命
感に縛られていたシコルスキーの精神が、吹っ切れた。
呪縛から解き放たれた雄と、老齢なる熟成された雄。並ぶだけで、挟まれた空間が歪む。
地上最自由と称されるオリバとて、今ここで許されるのは試合開始の合図のみ。
「始めィッ!」
お久しぶりです。
甲子園が終わり、オリンピックも半分を過ぎ、八月も下旬……寂しいですね。
NB氏
なんか、元ネタのブラックキャットが名作に思えてくるなw
剣対銃の戦いの緊張感が伝わってくる。セフィリア早く活躍して欲しいなw
サナダムシ氏
いよいよ最終決戦か。魔王本部に、昆虫のようなシコルがどこまでやれるのか。
しけい荘のみんなが見守る中、シコルには勝利して欲しい!
本部が1〜2巻の頃の雰囲気だな。
勇次郎とも戦えそうな頃の。
原作は・・・・・
「―――成程ね、やはりそういうことか・・・」
「ああ。どうやら間違いねえようだな・・・」
のび太の話を聞き終えた神王と魔王は、さっきまでのハシャギっぷりが嘘のように神妙な顔で頷いた。
「あの・・・ぼくが吸い込まれた穴がなにか、知ってるんですか?」
「ああ、知ってるよ。―――のび太ちゃん、これから話すことは、キミにとって相当酷な話に
なるだろうけど、それでも聞きたいかい?」
魔王は真剣な顔で、のび太に問う。そのいつにない真剣さに、嫌が応にも緊張が高まる。
「―――聞きたいです」
のび太は、決心したようにそう言った。そんなのび太を見て、魔王は説明を開始した。
「のび太ちゃん、キミが飲み込まれた穴は、我々が俗に<次元断層>と呼んでいるものだ」
「次元断層・・・何ですか?それ」
「そう、それはつまり、次元に生まれる歪みと言えばいいかな。それは極まれに、この世界に現れることがある。
その歪みを魔法によって安定して使えるようにしたのが、人間界・神界・魔界をつなぐ<門>なんだが、
本来その歪みは不安定に荒れ狂っている。その歪みに飲み込まれた者は、次元と次元の狭間―――
超空間へと飛ばされてしまうんだ」
それを聞いて、稟が口を挟む。
「飛ばされるって・・・その後、どうなるんですか?」
「そのあたりのことはまだ研究途上だが、運が悪ければ、永遠に超空間を死ぬことも出来ずさまよい続ける。
運がよければ、どこか別の世界への出口へと辿り着くことができるらしい。
実際、ごくわずかながら、次元断層に飲み込まれて異世界人がこの世界に来た例はあるんだ。
のび太ちゃんは、そのごくわずかなうちの一人、ということになるね」
「その、よく分かんないけど・・・。やっぱりここは、ぼくのいた世界とは別の世界っていうですか!?」
「そういうことだね。地球だってことは同じで、地名も一致している部分はあるにせよ、
キミのいた地球とはまるで別物だろう」
その場の全員が、突拍子もない展開に押し黙り、のび太に注目する。
のび太はつばをゴクリ、と飲み込み、一番聞かなければならない質問をした。
「あの・・・それで、ぼくはどうやって帰ればいいんでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・・」
沈黙の魔王。その態度にのび太は嫌な予感を覚えた。のび太の嫌な予感はよく当たる。
テストの点が悪い気がしたら、実際に悪いし、犬に噛まれるかも、と思っていると、やっぱり噛まれたり・・・。
しかし、今のこの状況はその比ではない。普段の嫌な予感がハイキングなら、
今のこの感覚は、パンツ一丁でエベレスト登頂、といったところだ。
長い沈黙の後、魔王の話の続きを神王が語り始めた。
「のび太、落ち着いて聞けよ・・・。おめえみたいな例はわずかながらあるが・・・、
そいつらは全員、帰れなかったそうだ・・・。帰る方法が、見つからなかったんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
リビングを、重い沈黙が支配する。のび太は恐る恐る、口を開いた。
「じゃあ、ぼくは、もう元の世界に戻れないんですか!?」
「ああ・・・残念ながら、帰る方法はまるでないと言い切っていい。
次元のことについては、まだまだ未知数が多すぎるんだ」
「で、でも神王様、お父様」
ネリネが口を開く。
「<門>のように次元を固定する、というのはダメなんですか?あれを応用して、
のび太くんのいた世界とを繋げるというのは・・・」
「それは出来ないんだよ、ネリネちゃん」
答えたのは、魔王だった。
「人間界と神界・魔界は、言ってみればお隣さんなんだ。それらをつなぐ<門>を開く行為は、
お隣さんのドアを開ける、ということでね。場所も分かるし、距離も近い。それに対して
のび太ちゃんは、いわば誘拐犯に目隠しされて、外国に拉致された状態なんだ。のび太ちゃんのいた世界が
次元のどこにあるのか、この世界からどのくらいの距離にあるのか、
それすら分からないのでは、手の打ち様がないんだ」
「・・・・・・じゃあ、やっぱり・・・・・・ぼくは・・・・・・」
絶望的な現実を突きつけられ、のび太は呆然と呟く。頭に浮かぶのは、
友人達の顔で、ママの顔で、パパの顔で、そして、ドラえもんの顔だった。
「う・・・うう・・・わあああああん!」
のび太の泣き声がリビングに響く。
無理もないだろう。まだ十歳かそこらの子供には、辛すぎる事実だ。
その様子を沈痛な面持ちで見つめるしか、稟達には出来なかった。しかし・・・。
「・・・・・・え・・・・・・?」
のび太は、泣きながらも驚きの声を上げた。プリムラがのび太の側にきて、
慰めるようにのび太の頭を撫でていたのだ。そして彼女は、のび太にハンカチを差し出す。
「顔、これで拭いて」
表情は全くの無表情ではあったが・・・のび太は確かに、彼女の優しさと、気遣いを感じ取った。
そしてほんの少し、本当に少しではあるものの・・・心が軽くなった。
「・・・ありがとう、プリムラさん・・・」
「・・・プリムラで、いい」
やはり素っ気無くそう言って、イスに座りなおすプリムラ。けれどのび太は、
そんな彼女に冷たさを感じることはもうなかった。
「―――大丈夫だよ、のび太」
そんな二人を見て、他のみんなも少し気が楽になったのか、まずは稟がのび太に話し掛ける。
「今までは帰る方法が見つかってないっていうだけだろ。これから先、見つかるかもしれないじゃないか。
そうなればきっと、親御さんや友達のいるところに帰れるさ」
シアも口を開く。
「そうだよ。諦めちゃだめだよ。未来の事は分からないけど、どうにかなるよ、きっと」
「うん・・・そうですよね、きっと元の世界に帰れる方法が・・・・・・」
言いながら、のび太は何か引っかかるものがあった。未来。未来の事。未来の世界の・・・
「そうだ、ドラえもんだ!」
突然大きな声でそんなことを言ったのび太を、皆は驚いて見ている。神王が代表するように尋ねた。
「ドラえもん?なんだ、そのケッタイな名前は?」
「ぼくの友達で、未来から来たロボットなんです!」
「未来から!?」
全員(プリムラ以外)が声を上げる。
「はい、ちょっと抜けてるけど、頼りになるやつだし・・・すごい道具をたくさん持ってるんです。
ドラえもんなら、ぼくを助けに来てくれます!今までだって危ない目に何度もあったけど、
その度にドラえもんが助けてくれたんです。きっと・・・いや、絶対に、
ここまで来てくれるはずです!」
一気にまくしたてたのび太。そんなのび太を見て、稟が言う。
「そんな風に信頼出来るなんて、ドラえもんってのは、のび太にとってそんなに大事な友達なんだな」
「はい、一番の友達なんです!」
さっきまでとはうって変わって明るい顔を見せるのび太だった。
「―――気に入ったぜ、のび太!」
神王がそんなことを言いながらのび太の肩をバシバシと叩く。
「そんな風にダチを信じられる奴に悪い奴ァいねえ。そのドラえもんってのがいつ来るのかは
分かんねえが、こうやっておめえが稟殿の家に落っこちてきたのもなんかの縁ってもんだ。
俺が出来る限りのことをしてやっから、大船に乗ったつもりでいな!」
「は、はあ・・・どうも・・・」
どうやら神王はどういうわけかのび太を気に入ってくれたようだ。
面食らいながらものび太が返事を返したところに、魔王がのび太の肩に手をやる。
「のび太ちゃん、私も忘れてもらっちゃあ困るな。困ったときはお互い様、
助け合いの精神は大切だよ。さあ、泣きたいときには遠慮なく私の胸で泣きたまえ!」
「・・・・・・」
沈黙の、のび太。そりゃ沈黙するしかあるまい。
「あの、お父様・・・・・・」
ネリネが顔を赤らめて言う。
「あまり、その、恥ずかしいことをなさらないでほしいのですが・・・」
「ええ!?」
愕然とした顔で、愕然とした声を発する魔王様だった。背後にイナズマが光り、
ガガガガーン!という効果音が流れたような気がした。
「ネ、ネリネちゃん!パパ、恥ずかしかったのかい?ネリネちゃんに、
恥ずかしい思いをさせちゃったのかい!?ご、ごめんよお!お願いだからパパのことを許しておくれ!」
滝のような涙を流しながら、ネリネを抱きしめる魔王であった。
「―――な、強烈な人達だろ?」
「はい、分かります・・・」
凛の言葉に、ただ頷くしかないのび太だった・・・。
とりあえずのび太は、芙蓉・土見家に居候することになった(神王と魔王は、自分の家に
居候しても構わないとおっしゃったのだが、あの二人のうちの一人とでも四六時中一緒にいるのは
相当なパワーが必要になりそうだったので、のび太は丁重にお断りしたのだった)。
そして今、のび太はリビングで、プリムラと二人だった。
楓は買い物に行ったし、稟は部屋で明日の宿題をしているのだった。
そしてのび太は―――少しばかり、困っていた。
「プリムラは、ネコが好きなの?」
「・・・よく分からない」
「そうなの?ネコのヌイグルミ持ってるからそうかなって思ったんだけど・・・」
「りんが、くれた」
「あ、そうなんだ・・・」
この調子で、どうにも話が弾まないのである。のび太も話し上手な方でないし、プリムラは
どうにも口下手とかそういうレベルではないのだ。泣いていた自分を慰めてくれたように、
本当は優しい子なんだと分かっているものの、これにはのび太も少々困っているのである。
何とかコミュニケーションを図ろうと、のび太は話題を探す。
「あのさ・・・あやとりでもして遊ばない?」
「・・・あやとり?それ、どういう遊び?」
「・・・何って、糸を使って色々な形を作るんだけど。じゃあ、ぼくがちょっとやってみるね」
そう言ってポケットからあやとり用の糸を取り出すのび太。
「じゃあ、いくよ」
そう言って、手早く<さかずき>や<はし>を作ってみせる。
「わあ・・・」
プリムラは意外といい反応を見せた。
「のび太、すごい」
「そ、そう?プリムラだって、練習すればすぐ出来るよ。はい、糸貸してあげるからやってみなよ」
そう言って糸を渡すのび太。プリムラは見様見真似で糸を操っているが、
なかなか難儀しているようだ。見かねてのび太が助け舟を出す。
「こうやってこうすれば・・・ほら!」
「・・・出来た」
自分の手の中の<さかずき>を見て、プリムラは―――確かに、ほんの僅かながら、笑った。
「のび太は友達のこと、好き?」
その後もあやとりに二人して熱中していると、プリムラは突然そんなことを聞く。
「え・・・?・・・うん、そうだね。ほら、さっき話したドラえもんは頼りになる奴だし、
それに、ジャイアンとスネ夫ってのがいてさ、いつもぼくをいじめてばっかだけど、なんだかんだいって
いつも一緒に野球したり、本当に助けて欲しい時には、二人とも絶対にぼくを助けてくれるんだ。
しずかちゃんって子も、可愛くて優しくてさ・・・」
嬉しそうに友人の事を話すのび太を、プリムラはどことなく羨ましそうに見つめた。
そして、思いつめたような口調で話し始める。
「のび太、私ね―――実験体として作られたの」
「え・・・?実験体って・・・」
「人間でも魔族でも神族でもない―――人工生命体。生まれた時から、友達もいなかった。
だから―――のび太が少し、羨ましい」
「・・・・・・」
突然の告白に、のび太は一瞬絶句して、ようやく言葉を返す。
「で、でもさ、今は稟さんとか、楓さんとかがいるじゃない」
「―――だけど、ヤキュウっていうのをしたことないし、こういうふうにあやとりを
一緒にしてくれるような友達は―――」
「じゃあさ、ぼくと友達にならない?」
「え・・・?」
「その、野球とかは二人じゃ出来ないけどさ・・・こうやって一緒にあやとりしたり、お話したり・・・」
「・・・・・・」
「だからさ・・・ぼくの、友達になってよ」
プリムラはその言葉を聞いて―――にっこりと、笑った。
「うん・・・。そうだね。のび太と私は、友達」
こんな見知らぬ世界にいきなり飛ばされて、不安なのは間違いない。けれど、のび太はこうも思った。
こんなに親切で、心優しい人達に出会えたのは、きっと幸運なんだと。
所変わって、のび太が元々いた町では、大騒ぎだった。
のび太が昨日から家に帰ってこないのだから、当然とも言えるだろう。
「ドラえもん、のび太がいなくなったって、ほんとかよ!?」
いつもの空き地でドラえもんに詰め寄るのはジャイアン・スネ夫・静香の三人だった。
「丸一日家に帰ってないなんて、心配だわ」
「なんとかドラえもんの道具でさ、見つけられないの?」
言い募る三人に、ドラえもんは難しい顔をして語る。
「そう思って、タイムテレビでのび太くんが昨日どこに行ったのかを見てみたんだ・・・きみらも見てくれ」
ドラえもんが取り出したタイムテレビに全員が注目する。そこに映っていたのは、
空中に開いた暗い穴に飲み込まれるのび太の姿だった。
「こ、これはなんなんだよ、ドラえもん!」
「多分・・・これは<次元断層>だよ」
「次元断層?だからなんなんだ、そりゃ」
ドラえもんは三人に対し、次元断層の説明を行なった(大体は魔王がのび太に語った内容と同じであった)。
「つまり・・・のび太さんは別の世界に行っちゃったってことなのね!?」
「運が良ければ、ね・・・。下手をしたら、超空間で迷いつづけてるのかもしれない」
「どっちにしても、早くみんなで助けに行こうぜ!」
「え、あの・・・ぼく、宿題が・・・」
「バカやろう!のび太と宿題と、どっちが大事なんだよ!」
「いや、みんなに無理強いは出来ないよ。確かにタイムマシンとぼくの道具を使って、
のび太くんの行き先へ辿り着くことはおそらく可能だけど、危険なのは変わりない。
下手をすれば、ぼくらが超空間で迷ってしまうかもしれないんだ」
ドラえもんの言葉に、押し黙る三人。ドラえもんは言った。
「決行は今日の四時、裏山で・・・。行きたいというのなら、覚悟を決めておいてくれ」
結構好評だった勢い任せで投下しました。
ただ、今回投下した部分、自分ではあんまりいい出来とは思えないですね・・・。
なんか説明ばっかでウザイかも。
>「そんな風に信頼出来るなんて、ドラえもんってのは、のび太にとってそんなに大事な友達なんだな」
>「はい、一番の友達なんです!」
いや、信頼しているのはドラえもんの『道具』だろ?
しかしのび太のくせに順応早いなー
>NB氏
原作はどうしようもないクソだけど、臨場感ある描写で
冒頭からクライマックスという感じだな。
この勝敗でこれからの展開が変わるんだろうが、
個人的にはクリードに勝って欲しいな。あとセフィリア様出して
>サナダムシ氏
いよいよ我らがシコルスキーの登場か。
原作でも、この作品でもオチ役だったw彼が一体
どう鬼みたいなホームレスに対抗するか。楽しみだ。
最後には勝って、しけい壮勢で彼を胴上げ?
でもなんか最終回近そうで、悲しい。
>サマサ氏
連日力作乙!
原作まったく知らないけど、それでも楽しめるな。
俺はドラえもんのみの新作SSと捉えてる。
でも、のびたは自力で脱出して欲しいな。男らしく。
映画版ののびたバージョンで書いて欲しい。
>436
ああ、やっぱしそこ突っ込まれたあ〜(泣き)
正直自分でも書いててちょっと違和感あるなあと思いつつ書いちゃいました・・・。
その辺は多少自己弁護すると、使えるのは『道具』なんだけど、実際にそれを使って助けに来てくれるかどうかは
まるで別問題。むしろ「どうでもいい」とほっとかれるかもしれない。
それでもドラえもんが助けに来てくれると信じられるから、のび太にとってドラえもんは
それほど大事な友達なんだな、と稟は思った。
のび太の順応能力は大長編基準ならこんくらいあると思って書いたけど、高すぎるかなあ?
>437
俺はドラえもんのみの新作SSと捉えてる
そう思っていてくれた方が絶対にいいと思います(笑)。
下手に原作知っちゃうと、後半は絶対楽しめなくなると思うので。
書き忘れ
>437
自力脱出はないですが、のび太の見せ場もきっちり後半に予定してますよ。
「これでこそ大長編のび太!」みたいなシーンを書きたいと思っています。
ただ、一番扱いに困りそうなのがスネ夫かなあ・・・。
大長編だとただのへタレにしか見えないし(失礼)。
その意気込みに期待してるよ。がんがれ。
ただ、自分語りが多いと反感喰らうぞ、と忠告しておく。
どうしても語りたい場合は、まとめサイトの掲示板をお薦めする。
>440さん
耳に痛いお言葉です・・・。
確かに自分語りはウザイし控えた方がいいですね。
早いうちに忠告してくださってありがとうございました。
442 :
作者の都合により名無しです:04/08/24 21:52 ID:f6wZp33M
>サマサさん
ドンマイドンマイ、面白かったですよー。
NBさんともども、頑張って完結させて下さい。
期待の新人さん2人も現れたのはいいけど、
もうすぐしけい荘終わっちゃうんですか?
サナダムシさん。すっごくこの作品好きなのになー。
シコル、本部をやれ!
ARMSは科学知識が多くてああ―…ムズッ!(挨拶)
…バンダ―スナッチも裸足で逃げ出すNBです。
サマサさん、スケールでっかいですね。腰引けそうです。
437さん、大したモノにはなりませんので期待しないで待っててください。
……執筆しながらタイトルをかなりマジに考えてます。
変更していいものかどうか、迷ってます(いえ、気に入ってんですよ)。
俺もそろそろタワー編終わりまで投下しようかと思ってます。
あと、オリキャラとかもいれようかな―――…とか。
済みません、皆さんの意見をちょーっとだけ聴かせてもらえんでしょうか。
>>443 オリキャラはよほど自信がないと受けが悪いと思うよ。
俺はいいけどね。
>>443 必然性があるのならば、オリキャラくらい出してもいいと思う。
オリキャラが既存キャラを喰うような展開は、
そのキャラのファンに叩かれる恐れあり。
NBです。
いえね、イヴがあんまりにも要らない子供になってしまうんですよ。
そのためのオリキャラなんですが…
まあ、445さんの云う通り必然性次第で後付けキャラが出るかも、です。
で、マジにタイトルどうしましょう?
やっぱ変えた方がいいですか?
自由にすればイイ。アンタが作者なんだ。
>NBさん
感想頂きありがとうございます。
オリキャラとかオリ設定はぼくは気にならないです(自分のSSにも出しますし)が、
やはり嫌だという人も多いんじゃないかと思います。
けど、既存キャラだけでは話を転がしにくいという時に、話の展開を無理無くするため
出すのならOKなのでは?
ぼくブラさんは何て言ってもらいたいんだ?
例えば答えたのが俺一人だったら、俺に従うのかい?
451 :
作者の都合により名無しです:04/08/25 19:18 ID:5nPoVVnG
NBさんとサマサさんには本当に期待している。
だけど、お2人のレスのやり取りがえんえんと続くと
他職人さんたちがあげにくくなる、という事も配慮してほしい。
きつい事いって申し訳ありません。
作品は面白いので、頑張って下さい。
406から
―――所変わって、トレイン一行の今宵の宿。
眼帯と帽子がトレードマークの自称紳士、スヴェン=ボルフィートは嘆息した。
「あの野郎……やっぱり一人で行きやがった」
やっとの思いで部屋の鍵を開けてみれば、開け放しの窓から吹き込む夜風が居る筈のトレインの代わりに彼を歓迎した。
「たすけにいくの?」
後ろから唐突に呼び掛ける舌足らずの声は、長いブロンドの少女―――イヴ。
「仕方無いだろ、救い様の無い馬鹿でも助けなきゃいけない相棒だからな」
先に寝てろ、と言い含め、愛用のアタッシュ・ウエポン・ケースを持って部屋を出ようとするが、イヴがスーツの裾を捕まえる。
「駄目だ」一瞬で意図を把握したスヴェンが拒絶する。
「いや。わたしもいく」それでも彼女は強行する。
「……あのな、場違いなんだよ。色んな意味で」
当然だ、トレインの話の断片から察するクリード某はこれまで遭ったあらゆる犯罪者とは決定的に違い、
且つ遥かに上位の怪物だ。彼女を守りながら戦えるとは思えない。それに―――
「スヴェンがいくなら、わたしもいく」
彼女にしてみれば、兵器であった自分にヒトの暖かさを教えてくれた恩人が死地に向かうのだ。
それが、帰ってこない可能性を孕んでいるのを彼女は知っている。
「…たたかえるから、連れてって!……連れてかないならひとりでいく!!」
――正直辟易していた。寝食を共にして判ったが、かなりの頑固者なのだ(そのおかげでトレインとは仲が悪い)。
おそらく、今回の事に自分の意志は無い。ただスヴェンが行くから、と云うだけだろう。
「……言葉を選ぶなよ。何の為に行くんだ?」
敢えて意地悪な質問をした。内容によっては、或いは沈黙するなら振り切るつもりで。
「……スヴェンがいくから」
予想通りか。――――――――……但し、そこまでは。
「………だって、トレインとリンスお姉ちゃんをたすけにいくんでしょ?
だったら……待ってられない、わたしも一緒にいく。わたしも、二人を助ける!!」
予想以上のイヴの思慮にスヴェンは振り返る。彼の隻眼が今にも涙を零しそうな眼と合った。
自由になった彼女にとって、三人との数日間が世界の全て。その全てが消えようとしている今この時は地獄に等しいのだ。
予想外に悲痛な決意に、スヴェンは溜息の後一言―――
「……締めて掛かるぞ」
――――――例うるに、静謐が張り詰めていた。
一秒が永遠に感じ、空気が粘度を持った様に吸い込み難い。それは見守るリンスもシキも同じ事。
向かい合う二人は先刻のまま寸毫たりとも動かない。
唐突に銃声が沈黙を引き裂いた。
殺意はおろか視線まで排したクイックドロウ。されど狙い過たずクリードに向かうコンマ一秒の絶技。
さしものクリードも肩に受け、ショックで緊張が解けた。
当然トレインは勝機、と判断。だが、彼の取った行動は――――――意外にも走った、クリードの元へ。
「トレイン!!!」
リンスは叫ぶ。無理も無い、距離のアドバンテージを捨てる愚行を彼は犯したのだ。
最早トレインを待つ因果は両断のみ。素人考えならば。
トレインは走りながらハーディスの銃把のツマミを操作、銃床と銃口周囲に短いスパイクが飛び出した。
ハーディスの近接戦闘形態、爪(クロウ)。
殺気を読むクリードには、距離は寧ろ回避の余裕を与えてしまう。今の一発は僥倖に等しい。
ならば剣の死角の懐に飛びこむ事こそ正解なのだ。
刀を弾き飛ばし、瞬時にがら空きの腹に鉄槌の如き銃床を叩き込む―――…筈だったが。
弾き飛ばす筈の刀は脇差程度の長さとなり、突き込んだ銃口を器用に受け止める。
トレインは青ざめる。もう懐は死角ではなく、共有する距離。
「行くよ」
愉しそうにクリードが宣告する。そして―――
鞭の様な蹴りが側頭部に炸裂し、すぐにクリードは距離を取る。
そして尻餅をつくトレインに、先刻とは違うコンパクトで何倍も速い上段――
転がって回避。そして外れ覚悟で撃とうとする彼の行動を、追いかける様な連続突きが阻む。
立ち上がった瞬間、顔面狙いの逆袈裟を銃身で受け止めた。
「………ッッツッ!!!」
勿論膂力の差は忘れていない。徐々に刃は頬に食い込んでいく。
だが彼は銃身を刃上に滑らせ、クリードに体当たり。更に彼の膝を踏み台にして大きく飛ぶ。
――――――こうなれば次は…!!!
黒猫の異名よろしく鮮やかに着地したトレインは戦術をスイッチした。
三発撃った。
一発のみをクリード狙い、残りは左右の未来予測位置へ。十字槍の副刃の様に。
クリードは一瞬で深く深く沈んで回避。そして撓めた足腰で、沈んだままトレインに突っかける。
対してトレインも走る。クリードに向かって。
クリードの狙いは両足首。彼の流派の怪技(くせわざ)の一つ、「氷馳(すがばせ)」。
トレインの両足が不意に消失した。まだ斬っていないのに。
彼は跳んでいた。
ヘッドスライディングの要領でクリードの真上に跳び、空中で回転しながら無防備な背中に
照準を合わせる。――回避射撃。それは拳銃戦闘の究極の反撃法。
しかし、クリード=ディスケンスはその程度で死ぬ男ではない。ましてや彼は道士なのだ。
クリードの脇下からトレインの顔目掛け、凄まじい速度で刀の切っ先が迫る。
止む無く射撃を中断し受け止めた。
勢いは予想を超えて激しく、トレインは弾き飛ばされて床に転がった。
斬りかかられる、そう思って慌てて立ち上がる。だが、クリードは意外な行動を取っていた。
――棒立ちしていた。トレインの方を向いて、放けた様な顔で。
それには場の全員が呆気に取られた。
一瞬銃のやり場に困ったが、慌てて構え、残り二発を撃ち尽くすと同時にシリンダーを解放、装填。
クリードはそれを刀で危な気なく弾き、また突進する。
今度は銃身を刀に叩き付ける様に受け止める。
金属音の後、圧力。しかし何故か先刻より心なしか軽い。
ならば、とクリードの頭に照準を合わせようと必死に押し返す。………だが、
「………でだよ」
クリードがいきなり意味不明、と云うより用途不明の言葉を俯きながら発した。
その言葉に気を取られた瞬間、それは起こった。
トレインの横面にクリードの拳が突き刺さった。
NBです。
お詫びに推敲が済んだ分だけ投下します。
自信が無かったもので……済みません。
以後は慎みます。
本当に済みませんでした。
>ぼくブラ
殺陣描写がとてもいい。
コミック持ってないからわからないけど、オリジナル技も随所散りばめられてるのかな?
少なくとも爪形態がオリジナルとは分かるけど。元ネタの方で「黒猫の爪」とかいう技があったけど、
爪形態のあるこちらの方がはるかに説得力がある。
つうかスヴェン、イヴうざがってるなw
>NBさん
いえいえ。お気になさらず。あと、自信をもって下さいな。
描写もうまいし、テンポもいい。
剣対銃という、ある意味ハンデ戦みたいな戦いを(ま、相手はクリードだけどW)
面白く書ききってると思いますよ。
銃知識が無い俺にも、銃の扱いのシーンが目に浮かぶ。
イブの活躍を特に期待してます。
原作もパクリ云々を別にすれば、この頃はそれほど酷い漫画でもなかった
この漫画の恐ろしさが分かるのは、まだまだこれからだった
>451さん
いえ、厳しいこと言ってくれた方がありがたいです。
なにがやっちゃいけないことなのか教えてくれるうちにそういう所は
直さないといけないと思いますし。
申し訳ありませんでした。
「わしが男塾塾長江田島平八である!」
鋼ごしにソニックウェイブが伝わり、ザクの脳を揺さぶる。ザクの単眼が一瞬、×印に変わった。
ここは桜の花咲く男塾の校庭の中心。正座しているザクの目下に江田島平八は腕を組んで対峙する。
磨き上げられた江田島の禿頭が、日光をまぶしく反射している。
しばらくすると、ようやくザクは気を持ち直してあいさつをした。キテレツの発明『通詞器』により、ザクは
諸外国語を理解することが出来るようになっている。
――お……私がディスティ・ノヴァ教授と木手英一よりご紹介を受けましたザクです。
「わしが男塾塾長江田島平八である!!」
校舎の窓ガラスがいっせいに割れ、桜の花がどっと散った。ザクの目が、今度は渦巻き状になる。
――声がでかい……
「確かに、ノヴァの奴から連絡を受けておる」江田島はかまわず話しかける。「貴様がそのザクか」
頭を振り、メインカメラの調整をしてからザクは答える。脳が揺さぶられるような感覚が残っている。
――は、はい。あなたに教えていただきたいことがあって参りました。
「それも聞いておる。『機』について、であるな?」
――はい。
江田島は右手で顎をさする。「修行中の身か」
――勝たねばならない男がおりますれば。
顎をさすりながら、ふむ、と漏らす。「それも聞いておる」
――ご存知ありませんか?『機』については。
「この江田島、こと戦闘技術に関しては何者よりも一日の長がある。無論『機』に関しても、である」
ザクの目が輝いた。見つけた、『機』を知る者を。
――では!ぜひともご指導願えますでしょうか?
「……年間授業料53万8千円。規格外の巨体につき寮には入れん」
――は?授業料?寮?というと……
「ただで教えるわけにはいかんだろう」江田島はにやりと笑った。そしてザクを指差し、言う。
「貴様、男塾に入塾せい!」
大学時代に古代遺跡を発掘したことによる蓄えもあり、ザクは問題なく授業料を支払うことができた。
ちなみにこの頃、まともに授業料を納めている生徒はザクの他、数えるほどしかいなかった。
数年間を男塾で過ごすことには何の抵抗も感じなかった。強くなるためならば、何年だろうと費やしてや
るとザクは決意を固めていた。
初日の授業――小学校並の内容だった――を終えた放課後、江田島に呼び出されたザクは再び校庭
の真ん中で正座をしていた。塾長が直々に課外授業を行うというのである。
その内容とは、つまるところ戦闘訓練であった。
校庭では小竜巻が巻き起こり、砂塵が風に舞う。ザクは時々、関節に溜まる砂を掃う必要があった。
そうしながら待つこと約30分、ようやく江田島平八が校庭へと姿を現した。その顔は、汗ばんではいる
ものの、非常にすっきりとしたものだった。
「でかい糞であった。便器が一面埋もれおったわ!」
ザクは呆れながら信号を送る。
――そんなことで30分も遅れて……
江田島は額を拭い、表情を引き締めた。「さて、課外授業の始まりである!」
「古来より二つの『キ』の概念有り!即ち『気』と『機』である!前者は人間に元来備わっている、生命エネ
ルギーそのものである。これを自在に操ることにより人間はどこまでも強固になり、また波動として繰り出
すことによって遠方の敵を攻撃することが出来る」
――なるほど。それで、『機』は?
「『機』とは、格闘におけるタイミングと集中力の概念である。いかなひ弱な人間であろうとも、必要な機会
に、必要な集中力をもって攻撃を仕掛けることによって大男さえ打ち負かすことができる」
――俺に欠けているものは、それなのだろうか?
「さらに、行動を起こす直前に生じる微妙な心理的・身体的予兆として『機兆(きざし)』というものがある。
これを読むことが出来れば、術者は対戦において圧倒的な優位性を得ることが出来る!」
『機』の説明を受けたザクはいささか懐疑的だった。果たして、タイミングと集中力だけでそれだけの
戦力差が本当に出るのだろうか?肉弾戦において重要視されるのは、圧倒的なパワーとスピードなので
はないだろうか?
――本当に、それが『機』の正体なんですか?
ザクは率直に意見を出した。
「疑っておるな」
江田島の鋭い視線が突き刺さる。それから目を閉じ、静かに語る。
「格闘において大切なのは肉体的な強さのみではない。精神の力、速度、そしてそれを生み出す集中力
なのである。どれ」
江田島は右腕の袖をまくりあげた。筋骨隆々としたたくましい腕があらわれる。
無駄な肉が極限まで削げ落とされた、筋繊維そのものであった。
「腕相撲でもしてみるか、ザクよ。『機』の本質、見せてくれよう」
ザクは地面に右掌の小指側をつき、垂直に立てる。対して江田島は右手を開いてぴたりとザクの手に
つけ、踏んばりの利かないよう直立不動の姿勢で相対する。
江田島を押し倒せばザクの勝ち、江田島が右手の力のみでザクの手を押し倒すことが出来れば江田
島の勝ちである。
試合開始の合図を出すレフェリーとして、王大人が呼び出された。王大人とザクは軽く互いに自己紹介
をすると、再び腕相撲の方へと意識を戻す。
――塾長は何をお考えなのだろうか。
ザクは思う。
――いかに腕力に優れた戦士といえど、踏んばりの利かない状態でモビルスーツの手を押し返すこと
など出来るはずもない。だが、そこに『機』の秘密があるのだろうか……
「ルールは通常の腕相撲に準じたものである。ただし、江田島は右腕のみの力で押し返さなければなら
ない。……いいのだな?江田島よ」
「『機』の力を実践してみせるのだ。問題無い」江田島はにやりと笑った。
「では、始めるとしよう」
ザクは緊張しながら右手に意識を集中させた。当然、勝てるはずだ。いかなる豪傑が相手であろうとも
素手でイマジノスボディの力に勝てるわけが無い。
「準備」
江田島の表情が変わった。余裕の表情から、集中力を極限まで研ぎ澄ませた、境地に達した人間の
それへと。
「始斗ッッ!」
ザクは全力で江田島を倒そうと、右腕に一気に力を込めた。江田島の生命力の強さは知っている。殺
すつもりで挑んだ。江田島を押しつぶし……
だが気がついたとき、ザクの右手の甲は音も立てずに地面についていた。刹那の出来事であった。
「勝負有り!」
――え?
ザクはあっけにとられた。もう終わってしまったのか?
「見事な『機』の練り。衰えておらんな、江田島よ」王大人は袖の中で両腕を組みながら言った。
江田島はそれに答えず、表情を崩さないままザクに言う。
「これが『機』である。相手の『機兆』を読み、適切な機会に、充二分に練られた集中力をもってして挑む。
それが顕著に現れる対戦方式として腕相撲を選んだのだが、理解できたか?」
ザクは己の右掌を眺めながら、呆けていた。単純な力で押し返されたのではない。そして力を入れよう
とした時、俺は既に負けていた。
タイミングと集中力、か。単純そうだが、その実奥は深そうだ。
「『機』に習熟するには相応の年月が必要である。これから何年かかけて貴様に『機』を習得させてやる」
そう言うと、江田島はにかっと笑った。
「ものはついでである、『気』の力も貴様に授けてやろう。強くなるに越したことは無いからな」
次回の「江田島平八(三)」と「終幕」をもって誕生編終了。
その次からは香港編(現代)。しょっぱなから東方不敗VS範馬裕次郎の予定。
はっちゃけバトル書きてぇ。
×裕次郎
○勇次郎
メモ帳だと一発変換されるのに。
468 :
作者の都合により名無しです:04/08/25 23:01 ID:fit2NW54
NB氏
原作をほとんど読んでいない俺にとってはオリジナル小説みたいな感じで
読んでるが面白い。戦闘シーン上手いな。スピード感があって○。
あと、自信がないとか言うけど大丈夫だよ。
サマサさんともども新人さんとは思えない出来。胸を張って更新してくれ。
ザク氏
塾長の無敵っぷりが現れてていいな。
なんか「合気」みたいな感じだね、気と機。この怪物からザクが何を学ぶのか楽しみだ。
でも東方不敗VS範馬裕次郎ってw東方不敗って確かモビルスーツを素手で壊す奴だよね?
塾長クラスの怪物に、勇次郎がどう戦うか見ものだな。
469 :
ふら〜り:04/08/26 09:30 ID:ti4MpJuO
>>NBさん
銃と刀。性能的不利・外観的有利な刀の方が、普通は主人公側に似合うものですが。
今回のNBさんのは、刀の「妖しさ」で敵キャラらしさを出してますね。
他の方も言っておられますが、展開を考えるのも描写するのも難しいであろう銃・刀戦
で、ここまで迫力ある描写ができるのは凄いと思いますよ。続き、待ってます。
>>サナダムシさん
最初はただ『アホ』。それが、じわじわと『可愛い』。そんな風に変わってきた、
サナダムシさんとこのシコルですが……『カッコいい』! 堂々たるヒーローでは
ないですかっ! ♪敗れた 友の 魂が 黒い罠に迷い込んだ 俺を救い出す……♪
正にこの歌詞の通り! 迫力あるラスボス、見守る仲間たち、戦え主人公・シコルっっ!
>>サマサさん
あやとりについては宇宙開拓史を思い出しました。別れ際にはやっぱり……ですかね?
のび太がジャイアンやスネ夫のことを信頼し、ジャイアンも(劇場版仕様、という気も
しますが)なんだかんだでのび太を助けようとしている。この辺り、いい雰囲気です。
>>ザクさん
腕相撲でモビルスーツに勝ってしまう人間。それでも納得できてしまうのが、塾長の塾長
たるとこですね。押し勝ってるところが、すんなりとイメージできます。そんな塾長の下
で修行すればさぞかし、はっちゃけたバトルができるようになるでしょうなぁ。期待!
470 :
作者の都合により名無しです:04/08/26 15:22 ID:IoJ1IFZe
NBさんとサマサさんはそのまま頑張って欲しいな。十分面白いから。
ただ、職人さん同士の語り合いは、まとめサイトのBBSでやった方が安全かもね。
自由に発言できるし、誰に気兼ねすることも無い。
俺は職人さんたちの作品後書きは好きだけど、あんまり個人のやり取りが多いのはちょっとねw
ザクさん、塾長全快だなあ。俺は塾長ならザクどころかジオングにも勝つと思うw
どんな塾長の戦闘講座が聞けるか楽しみだ。
今日は誰も来ないのかな。
さすがにNBさんもサマサさんも毎日更新というのは無理か。
>ザク氏
『機』と『機兆』という銃夢独特の概念を知らない人にも分りやすいように説明してるのがいい
腕相撲で教えるというのも、原作でジャシュガンがガリィに同じ事を教授したシーンを上手い具合にオマージュしててグッド
結局みゅう、誇り高き希望、憑依、勝てないワケは投げ出しか。
HPの長編移行されてから投げられるよりマシか。4×5も危なそうだ。
NBさん、サマサさん、本当に最後まで頑張ってくれ。
474 :
作者の都合により名無しです:04/08/27 18:48 ID:ir2dreYy
サイヤンキラーに「島流しの隔離スレ」とか馬鹿にされてやがるw
>>473 みゅう氏、4氏の中では礼儀正しく成長性もあったみたいなのにな。残念。
投げ出し後もしばらくこのスレを見てるかもしれないから、もし見てたら連載再開してくれ。
ユル氏はもともと執筆に時間がかかる方だから問題無いっしょ。
午後四時、裏山。そこには、結局四人とも集まっていた。
「みんな、本当にいいんだね?」
「おう、友達を見捨てられますかってんだ」
「そうよ、早く助けに行かなくちゃ」
「まあ・・・毎度のことだしね」
そしてドラえもんは、そこに揃った全員に説明を開始する。
「まずはタイムマシンで超空間に入り、のび太くんが飲み込まれた次元断層を探す。
次元断層は発生してからしばらくは消えないから、まだ残っている可能性は高い。
そしてそれを探し当てたら飛び込んで、のび太くんの残した時空の流れを追うんだ」
「なんかサッパリ分かんないぞ」
「とにかく、これはすごく手荒な方法で、危険なことなんだ。みんな、覚悟はいいね!?」
「「「おう!」」」
「よし、行くぞ!」
四人はタイムマシンに乗り込んだ。その目的は一つ。
のび太を、助けるために。
「ふあ〜あ・・・」
のび太は目を覚ました。眼鏡をかけて、部屋の様子が違うことに気付き、同時に思い出した。
「そっか・・・ここは、稟さんの家だったな」
いつもはドラえもんがいるのに、今はいない。そのことに寂しさを覚えつつ、
昨日稟が用意してくれたおさがりの服に着替えて部屋を出て、一階に向かう。
「のび太、起きるの遅い」
そこにはプリムラがいた。よほど気に入ったのか、飽きずにあやとりをしている。
稟と楓はどうやら既に学校に行ったようだ。
「起こしたけど起きないし、疲れてるんだろうからってそっとしといたけど、
もう八時半。寝すぎはよくない」
「もうそんな時間!?ママがここにいたら怒るだろうなあ・・・」
「・・・のび太のママって、怖い?」
「うん、怒るとスッゴク怖いんだ。・・・けどやっぱり、会えないと寂しいよ」
「そう・・・。早くドラえもんっていうのが迎えに来てくれるといいね」
そんなことを話していると、のび太のお腹がグーッと鳴った。
「朝ご飯、そこに用意してあるから、食べて」
「はあい・・・」
少しばかり気恥ずかしさを感じつつ、のび太はご飯を食べる。ふと、テーブルの上に
四角い袋が置いてあるのに気付いた。
「楓、自分のお弁当忘れてる」
「ホントだ。しっかりしてそうなのに、意外とドジなんだね」
なんとなく親近感を覚えつつ、のび太は袋を見る。そして、元来お人好しの
のび太であるから、こう言った。
「じゃあ、どうせ暇だし、ぼくが届けてくるよ」
「大丈夫?学校まで結構あるし、のび太、道に迷いそう」
どうやらそういう風に見られているらしいが、反論できないのがのび太の辛いところだ。
苦笑しながら、のび太はポケットからタケコプタ―を取り出す。
「大丈夫さ。これはタケコプタ―っていって、空が飛べるんだ。学校までひとッ飛びすれば
道になんて迷わないよ」
「それで、空が飛べるの?」
「そうさ、これがドラえもんの道具なんだ。じゃあ、ちょっと行ってくる」
「わあ、ほんとに飛んでる」
自分の頭上で空を飛んでいるのび太を見て、プリムラは感嘆の声をあげる。
「どう?ドラえもんの道具はすごいでしょ?」
「・・・私もやってみたい」
「うん、帰ってきたら貸してあげるよ。じゃあ、行ってくるね」
そう言って学校の方に向かって飛ぼうとして、魔王宅の上を横切ったその時だった。
「おーい、のび太ちゃん!それは一体、どうやって飛んでるんだい!?」
忘れっぽいのび太でさえ、一度見たら忘れられないインパクトを持つ御二人のうちの
一人(もう一人は言うまでもない)声が聞こえた。
「あ、魔王さん!これはタケコプタ―っていって、空を飛べる道具なんです」
庭に降りて、自分の頭のタケコプタ―を指差して答えるのび太。
「ほお・・・。そんな小さなプロペラで飛べるなんて、便利な道具だね。我々も魔法を使えば飛べなくないが、
そうとう魔力を使うというのに。それが例のドラちゃんの道具とやらかな?」
「はい」
「ふむ・・・。それほど科学が発達しているのなら、確かにこの世界まで来てくれるかもしれないな。
そんな素晴らしい道具を持っているのなら、自慢の友達だというのも頷けるね」
「・・・そうじゃありません」
のび太は、少しだけムッとして言った。
「ドラえもんがぼくに道具を貸してくれるから友達っていうわけじゃありません。たとえ道具なんて
持ってなくっても―――ドラえもんは、自慢の友達なんです」
「・・・そうか。けど、ロボットなんだろう?」
「ロボットだけど、人間より人間らしいロボットなんです!」
むきになって叫ぶのび太。そんなのび太を見て、魔王は好ましげに笑う。まるでのび太のそんな言葉が
聞きたかった、とでもいうように。
「そうか・・・よかったよ。キミが友人の道具ではなく、友人そのものを信頼していると分かって、
本当によかった。キミは、ちゃんと友人を愛せる人間のようだ。
それに、キミは、人間ではない魔族や神族を見て、驚きはしてもそれを拒絶しようとは
思わなかったようだしね。相手が人間でなくとも分け隔てなく接する―――素晴らしいことだよ、それは」
「え・・・?」
急に誉められて面食らうのび太だった。
「今でこそ人間とは共存しているが、我々がこの世界に現れたとき、人間は我々を恐れていた。
悲しい限りだが、それも仕方ない。そうそう魔族や神族を受け入れろ、というほうが難しい。
子供は特にそれが顕著だ。子供の頃は、ありとあらゆる理由で他者を差別しようとするものだからね。
だから、キミのような人間にはそうそう出会えないんだ」
「・・・・・・」
「キミが優しい子だということはよく分かった。今朝稟ちゃんから聞いたが、あの人付き合いの苦手なプリムラが、キミとはもう打ち解けているぐらいだしね」
にっこりと笑って語る魔王。どうしてそんな風に自分を評価してくれるのか、よく分からないのび太
だったが、とりあえず
「どうも」とだけ言っておいた。
「―――ところで、なにか用事があったんじゃないのかい?」
「あ、そうだ!お弁当届けに学校行くんだった!それじゃ、行ってきまーす」
「ああ、行ってきなさい」
手を振って飛んでいくのび太を見守る魔王。その顔は、実に満足げだ。
「ふふ・・・本当に、おバカなくらい優しい子だね。そういうところ、稟ちゃんに似てる
かもな・・・」
稟たちが通うのは、国立バーベナ学園。神族・魔族の登場により変化していく世界情勢に対応すべく
創られた学校で、そこには神族・魔族も多数在籍している。
チャイムが鳴った直後の廊下。
紅薔薇撫子。美人でスタイル抜群、生徒の受けも上々の熱血系女教師である。
少々のことでは驚いたりしない肝の据わった彼女だが―――窓の外で空を飛んでいる子供には、
さすがに驚いた。その未確認飛行少年(?)がのんきな声で言った。
「あのー、ちょっと聞きたいんですが、芙蓉楓さんのいる教室ってどこか知りませんか?」
聞かれて、やっとこさ答える。
「・・・あ、ああ・・・。彼女なら私の受け持ちだ。この上の教室にいると思うが・・・」
「あ、そうですか。ありがとうございます」
そのまま上に飛んでいく少年。残された撫子は、狐につままれたような顔だった。
「・・・疲れてるんだな。今日は早く帰って寝よう・・・」
「ふーむ、なるほどねえ。別の世界からきた男の子、か。また随分なお客さんが
きたもんだねえ、稟。またも一波乱ありそうだね」
「うんうん、何だかトラブルの予感がするのですよ」
教室で稟や楓からのび太の話を聞いて、稟の友人である緑葉樹と麻弓=タイムはそんなことを言った。
「あのなあ・・・勝手に人をトラブルメーカー扱いしてやるなよ。着の身着のままで知らない世界に
ほっぽり出されたもんの身になってみろ」
「そうだよ。不謹慎だよ」
シアにもたしなめられて、二人もちょっと反省したようだが、じきに樹がこんなことを言い出す。
「しかし、その子の話じゃあドラえもんとかいうロボットが便利な道具を出してくれるってことだったな。
もしそいつが来たら、是非とも紹介してもらいたいな。きっと世界中の女性を俺のものにする道具も
あるに違いない!」
「お前はそれしか言うことないのか」
「さすがの私も呆れるなあ・・・」
凛と麻弓がため息とともに言った直後、ざわめきが起こった。
「な・・・なんだありゃ!?」
「子供が空を飛んでるぞ!?」
そんな声につられて稟たちが窓を見ると、そこにいたのはのび太である。おかしなことに、頭に竹とんぼの
ようなものを付けていた。
のび太の方も稟たちに気が付いたようで、声をかけてくる。
「稟さ〜ん!楓さ〜ん!よかったあ、ここの教室で合ってたんだ」
「のび太・・・なんでここに・・・っていうか、なんで飛んでるだ!?」
「それは、楓さんのお弁当を届けに・・・。あ、飛んでるのは、このタケコプタ―っていう
ドラえもんの道具のおかげです。これだけポケットに入れて持ってたんです」
「す、スゴイなそりゃ・・・。あ、弁当か。ほら、楓」
「あ、はい・・・。けど、空を飛べるなんて、素敵な道具だね」
「へへ、そうでしょ?もっとすごい道具だって、ドラえもんはたくさん持ってるんですよ」
そんな彼らのやり取りを見て、教室の連中(主に男子)がさらに騒ぎ始める。
「おい、あの子土見や楓ちゃんの知り合いみたいだぞ」
「一体どういう関係なんだ?」
「よし、私がちょっと聞いてこよっと」
最後は麻弓のセリフである。元々スクープ好きの彼女のこと、目の前で飛んでいる少年を見過ごすなんて
もったいないことは出来ない、と考えているのである。
「ねえねえ、ちょっときみ!きみが例の別世界から来たっていう子?」
「え?ええっと、はあ、まあ・・・」
「麻弓ちゃん、そんな風に聞いてはのび太くんが困ってしまいます」
いきなり話し掛けられてしどろもどろなのび太に、ネリネが助け舟を出して、のび太に
「おはようございます、のび太くん」と、礼儀正しく挨拶する。
「あ、ネリネさん!おはようございます」
その様子を見て、ますます騒ぎがでかくなる教室。
「なんだあ!?リンちゃんとも知り合いなのか!?」
「・・・うらやましい〜〜〜!!」
そんな異様な様子に気付かないで、シアも気さくにのび太に話し掛ける。
「のび太くん、おはよう!今朝はお寝坊さんだったのかな?」
「ええ、朝は弱いし、昨日は色々あって疲れてたから・・・」
シアとも親しげに話しているのび太を見て、とことん男子のボルテージが上がる。
「し、シアちゃんとまで・・・!おいきみ、一体きみはなんなんだ!?」
凄い剣幕の男子生徒の追及に、のび太はちょっとびびって答える。
「え・・・あ、ぼく、のび太っていって、昨日から稟さんの家にいさせてもらってるんです」
「何〜〜〜!?てことは、楓ちゃんとも一緒に暮らしてるってことか!?」
「はあ、まあそういうことですが・・・」
「な、なんてこった・・・!しかも、つまりはシアちゃんとリンちゃんの隣人ってことじゃないか!」
「おい、そういや楓ちゃん家には、あのプリムラって可愛い子もいたぞ!」
「な・・・!!ゆ・・・許せ――――ん!!」
「皆の者、武器を持て!奴は俺たちの敵だあ!子供といえど容赦するな〜〜〜〜!」
もはや殺気すら撒き散らす男子生徒。このままでは殺し屋に金を振り込む者もいそうだ。
のび太も自分が失言してしまったことに気付き、おののいた。
稟が慌ててのび太に言う。
「お、おいのび太!すぐに逃げろ、こいつらはいっちゃ悪いがバカなんだ!
理屈は通じん、とにかく逃げろ〜〜!」
その言葉には実感がこもっていた。彼自身、この狂信集団ともいうべき連中に追いまわされた経験が
いくらでもあるのだ。
「は、はいぃぃぃっ!」
慌てて逃げ出すのび太。彼は一つ学んだ。
美人とお知り合いになるっていうのは、意外に大変なんだなあ・・・と。
その日の午後三時過ぎ。
のび太はあてもなしに、一人商店街を歩いていた。
プリムラや神王、魔王には案内してあげても構わない、と言われたのだが、何となく一人でブラブラと
考え事をしながら歩きたい気分だったのだ。
もちろん、自分の行く末についての不安もある。これまでも訳の分からない世界に放り出されたことは
数え切れないほどあるが、それでもいつもドラえもん達と一緒だった。
だけど今は、自分一人だ。それが、辛かったのだ。
「迎えに来てくれるよね・・・ドラえもん」
と、その時。もの凄い大音響の泣き声が聞こえてきた。
その声の方へ行ってみると、一人の小さな女の子がわあわあと泣いていた。
おそらくは親とはぐれたのだろう、助けを求めるように泣き喚くが、周りの人間は関わりたくない、と
いうように女の子から目を逸らす。
そんな中、のび太の足は自然と女の子の方へ向かっていた。何か考えがあったわけではない。
ただ、一人ぼっちで泣いているその子が、今の自分とよく似ている、と思った。
そう思ったからこそ、放ってはおけなかったのだ。
「ね、きみ、お母さんとはぐれちゃったの?」
のび太がそう声をかけると、女の子は返事の代わりにますます激しく泣き出した。
それをなんとかなだめつつ、のび太は言う。
「ほら、泣いてちゃ分かんないよ。一緒に探してあげるから。さ、行こう」
そして、女の子の手を引いて歩き出した。
「あ〜あ・・・」
のび太はため息をついた。親探しは難航している。
お母さんいませんかー!と声を出しても返事はないし、通行人に聞いても、「知らない」と
そっけなく言われるのはまだいい方で、中には露骨に迷惑そうな顔をして無視していく者もいた。
「もう・・・みんな冷たいんだから・・・」
「ホントだね。迷子の女の子が困ってるってのに」
「わあっ!?」
突然かけられた声に、のび太は驚いて振り向く。そこにいたのは、バーベナ学園の制服を着た美少女だった。
ショートカットの髪が似合う、いかにも活動的な少女。そんな彼女は、驚くのび太を見てくすくす笑う。
「ごめんごめん、おどかしちゃった?」
「い、いえ・・・あの、ひょっとして、この子の知り合いですか?」
「ううん、そうじゃないけど、きみがあんまり一生懸命だったからさ、おねえさんも手伝ってあげちゃおう
かな、なーんて思ったわけ」
思わぬ申し出に、のび太は喜んだ。こういうことは一人でやるより、二人でやった方がいいに決まってる。
その相手が美人のおねえさん、とくればなおさらだ。
「いいんですか?」
「いいよ。どうせボクもヒマだったし」
にっこり笑って、自分をボクと呼んだ彼女は女の子に優しく声をかけつつ、頭をなでる。
「ほらほら、泣きやんで、ね。おねえちゃんとおにいちゃんが、きっとお母さんを探したげるから。
じゃ、お母さん探し再開しようか。ええっと、きみ、名前は?・・・あ、こういう時は自分から
名乗らなきゃね。ボクは時雨亜沙」
「ぼく、野比のび太です」
「ふうん、じゃあのびちゃんって呼んでいいかな?」
「ええ・・・別になんて呼んでくれてもいいですけど」
「よっし、じゃあのびちゃん、早くこの子のお母さんを見つけてあげなきゃね」
そう言って時雨亜沙は微笑んだ。
今日はここまで投下します。
まだまだ前半、これからも気合入れて書いていきます。
487 :
作者の都合により名無しです:04/08/27 20:55 ID:mpYwS2CY
サマサさん鬼更新モードだな。嬉しいがマイペースでいって欲しい。
完結出来るペースで頑張ってね。
そしていよいよドラえもんとのび太の仲間たち、始動か。
個人的に劇場版の漢・ジャイアンが好きなので彼に大活躍させてね。
ベースのひとつの18禁ゲームはさっぱり知らないが、楽しく読んでます。
455から
咄嗟に跳んだから転がるだけで済んだ物の、そうでなければ首が折れる様な打ちだった。
上半身だけ起こしてクリードを見れば、殴った態勢のまま固まっていた。
「……んでだよ」
またあの言葉。但し、洩れる言葉は形容し難い感情に染まっている。
そして、
「なァんでだよオオオォォォ――ッッツ!!!!」
吼えた。ようやく上げた貌は怒りそのもの。いや、悲しみも寂しさも入り混じった複雑怪奇な滅茶苦茶の憎悪。
刀が絶叫と共に掻き消え、これまで以上の速さでトレインの前に立ち…………激しく蹴った。
腹にサッカーボールキックを受け、蹲るトレインの胸倉を無理矢理掴み、引きずり上げる。
「……なんなんだこれは。こんな物がキミだって云うのか…信じられない」
涙。滂沱と涙を流しながらクリードは血を吐く様に呟いた。
――――そしてまた殴り付けた。
「…以前のキミはこんなじゃ無かったじゃないか!!!」
――殴る。
「もっと撃てた筈だ!!!もっともっと僕を追い詰められた筈だ!!!!!!!」
――更に殴る。
「もっと鋭かった!!!もっと速かった!!!もっと強かった!!!!!」
―――更に更に殴る。
「もっと!!!もっともっと!!!!もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと!!!!!!!」
――――殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るなぐるなぐるなぐr――――
…最後に投げ捨てた。
感情と言うのは、行き過ぎた時点で狂気に代わる。
クリードの友情がこんな形に発展するように。
リンスは青ざめながらそれを見た。今ごろ実の両親でさえも言い放ったものの正体を知る。
だがそれ以上に、あの神域の戦いですら「こんな物」と断ずるのか、この男は(彼女には早回しにしか見えなかった)。
「……そうか、やはりキミはもうあの女に殺されてしまったんだね。
もう僕が知る黒猫(ブラックキャット)は、死んでしまったんだね」
弱々しげに立ちあがるトレインを前に、刀を抜いた。そして刃はみるみる伸びていく。
「もういい、これ以上の無様を見せないでくれよ。……せめて奥義で殺してあげる」
そして刀を突きの態勢に構えた。
傍観する二人には殆ど見えなかった。
一陣の風が如くの踏み込み。そして防御を縫って腹への刺突。
最速殺傷の奥義「虚一矢(うつろいっし)」。
鍔元まで一気に貫き通す程の威力を止まるまで打ちこんだ―――――――……止まるまで?
貫けていなかった。
切っ先が腹の半ばまで潜ったところで、トレインの左手が驚異的な握力で刃を握り締めていた。
足腰も威力をしっかりと受け止め、微動だにしない。
何か違う、そう思った瞬間―――――
何故か場の全員が死んだ。
実際に死んだわけではない。そして、死んでいない者がただ一人。
そう感じるほど凄まじい殺気を放ったトレイン=ハートネット。
俯いているのとクリードの体で表情は見えない。
見えたのはクリードにゆっくりと向けられる右手の銃。
刹那―――
銃声。一にして六なる轟雷。
クリードの腹部――トレインと同じ箇所――に一点の穴…ではなくトンネル。
容赦無い集中連射がゴルフボール大の貫通銃創を成していた。
「がっ……はあ……!!」
流石のクリードも刀を維持出来ず、吐血して倒れる。だがその顔は満面の笑み。
「………ぐぅ」
対するトレインも軽傷ではない。穴を開けられ、その周囲を衝撃で損傷しているのだ。
足は倒れそうなほど覚束ない。
今しかない。
リンスはそう確信し、隠し持っていた小型拳銃を静かに素早く取り出した。
5.56ミリ高性能徹甲弾が手の平サイズに10発も収まるそれは、防弾車のボディをも撃ち抜く。
こっそりと、しがみ付くクワガタの側面部に当てる。―――その弾道の先には状況に驚愕する例の覆面。
安全装置を外すと同時に撃った。
「があぁッ!!」
シキの絶叫よりも速く、まず蟲が消える。
それを合図とばかりにリンスはトレインの元へ走り出す。
「おのれ……女アァ!!!」
急所じゃないのか、と頭のどこかで冷静に思考しつつもタックルの要領でトレインの腰を抱え、走る。
火事場の馬鹿力というやつだろうか。
やがてリンスに壁一面の風防ガラスが迫る。
「あ、あああああああぁぁぁぁあああァァァ!!!」
吼えた、そして銃を構えた。
綺麗な六角形に撃ち、真ん中にありったけの連射。
「……ァあああああぁぁぁあぁ!!!!!!」
そのまま二人分の体重と慣性ともろもろの力で思いきりブチ当たった。
――――――ガラスは砕け、二人は虚空に投げ出された。
予想通り眼下は池、しかしあまりに高すぎる。到達すればコンクリート並の衝撃が待っているのは自明の理。
それでも一縷の希望を信じ、トレインの頭を抱き締める。
重力に引かれ六階に差し掛かった時、思いもよらぬ奇跡が起きた。
六階の窓が開き、ワイヤー付きの捕縛ネットが二人を捕らえた。
「スヴェン!!」
床にネイルガン(釘撃ち銃)で固定した射出機から撃ち出したのだが、それだけでは危機を脱せない。
なおも致命的なベクトルが振り子の原理で二人を五階のガラス壁に肉薄――――しなかった。
窓が開け放たれ、そこに飛び込んだ二人を柔らかく、細い網がやんわりと受け止めた
「イヴちゃん!!!」
一瞬でネットのワイヤーを髪で構成した刃で切断し、やはり髪で成した網に二人を包み込んだ。
致命的な勢いは殆ど殺され、床に投げ出される。
リンスは慌てて起き上がった。
イヴは窓の傍にへたり込み、小さな背中を上下させていた。呼吸も荒い、全力疾走の後の様に。
「だ…だいじょうぶ、ふたりとも?」
弱々しく二人に振り返る。
「アタシは平気!でも……トレインが………!!」
「なら急ぐぞ、ここは危険すぎる」
その声に振り向けば、奥からスヴェンが走ってきた。そして軽々とトレインを担ぎ上げる。
ブランド物の白スーツに血が付いても気にせずに。
「三分以内に出るぞ、急げ!!」
スヴェンは走る。リンスもイヴを抱えて後を追った。
「……追わなくていいよ」
クリードは手傷を負わされ憤慨するシキに寝ながら告げた。
「……お前もそんな傷を負わされたのにか?」
クリードは嬉しそうに微笑む。
「こんな嬉しい事はないよ。だって、死んだと思った友達が生きてたんだ。
…そう、あんな女に殺せるはずがないんだ。……一瞬でも疑った僕が恥ずかしいよ。それよりも、シキ」
シキは無言で歩み寄り、クリードの上に手をかざす。
――手から何かが落ちる。……それは異形の蛆虫。
クリードの傷にあとからあとから潜りこみ、完全に埋まると同時に傷穴が消えた。
彼は何でも無かった様に立ちあがる。
「…失血で気分が良くないが、見事だ」
「無茶は当分控えてもらう。定着するまでは、な」
そんな会話をしていると、二人の視界の端にこちらに接近する飛行船を見咎めた。
「やれやれ、本当はあれに彼を乗せたかったんだけど…ま、いいか」
携帯電話を取りだし、操舵手に指示する。そのまま割れた風防ガラスから下界を見れば、
大急ぎで発進する一台の車。通話を切ってもその車をずっと眺めていた。
「…まだ始まりだ、死なないでくれよトレイン」
薄く笑うクリードを見て、シキは考える。
(友達、か。私にはただの怪物にしか見えなかったがな………)
―――トレインが目を覚ますと、そこは宿のベッドの上だった。
窓の外は暗い。まだ夜か、と思った。
「やっと起きたわね。おめでとう、死に損なったわよ」
声の方を見れば、目の下真っ黒のリンスが立っていた。「やっと」とは何の事だ。
「…アンタね、三日も寝てたのよ。その間アタシらに寝ないで看病させてね」
成る程、全身の包帯と湿布が三人の悪戦苦闘を物語っていた。向こうのベッドには最後に見た服装のままのイヴが
うつ伏せになって眠っている。
ふと有る事に気付く。
最大の重傷、腹の刺傷が跡形も無いのだ。けして三日で癒えるものでは無いだろうに。
「それ、驚いたでしょ。あたしもよ」
―――あれからすぐ、ここに連れてこられた闇医者がトレインの惨状を見て匙を投げた。
この位置は絶対に助からない、例え正規の病院でも―――彼はそう云って出て行った。
諦観の空気が立ち込める中、イヴが力強く宣言する。自分なら出来る、と。
有無を問う前にトレインの傷口に手をやった。
二人は驚いた。まるで逆回し再生の様に傷口が消え、痣も消え、あちこち腫れ上がった部分も萎んでいく。
終わる頃には土気色のトレインの顔にも赤みが射してきていた。
「――――修復用ナノマシン……だったか、何とかを少しアンタに送ったんだって」
話に寄れば、イヴの体内には新陳代謝と同様の原理のナノマシン生成器官があるらしい。
それに過剰生成を促し云々―――――…かいつまんで言うと体を正常化するものを送った、という事らしいが。
それでもひとまず死神の接吻を捌いただけで、危ない状態に変わりは無かった訳で。
「それからアタシら全力稼動…ってワケよ。……感謝なさい、アタシが無償で働くなんて有り得ない話なんだから」
やれやれと言う感じの溜息をついてリンスは一人用のソファに座った。
NBです。
隙有り!とばかりに投下です。
ハンパで悪いですが、今はここまで。
もうちょっとで第一話完です。
題も考えていますので……引かないでね(はぁと)
まとめサイト読ませていただきました。
……すげえ人達に褒められてたんだ……俺。
サマサさんは会話というか、キャラの個性を引き出すような展開がうまいね。
この先ドラえもんがどう絡んでいくのか、非常に楽しみだ。
俺もゲームは知らないが、気にせず読める。
一方NBさんは、描写がうまいな。前回の銃対剣の戦闘シーンから感じていたんだけど、
読み易くて、描写が目に浮かぶようだ。正直原作は女の子がエロカワイイだけのクソだったが、
NBさんのは最初からクライマックスシーンを持ってきて先の展開が気にかかる。
イブとリンスのコンビ、活躍しないかなあ。
有力な新人さんが2人も同時に現れて非常に嬉しいけど、お2人とも更新ハイペースなのでちょっと心配だ。
頑張って簡潔させてね。見届けますので。
ぼくブラは躍動感があるな。トレインとかアニメで俺の脳内で動く。
はやくセフィリア活躍しないかな。これから出るの?
SSの最初にどの番号からの続きからと書くのを今まで忘れていたので、蛇足かも
しれませんが一応書いておきます。
神界大活劇1〜9 379〜389
神界大活劇10〜19 425〜434
神界大活劇20〜29 476〜485
ぼくブラ乙。
こっちのクリードはラスボスらしい強さだな
描写も上手いし、これからの展開に期待が持てる
こっから先の着目点は、やっぱタオだな
原作では穴だらけの設定を、どういう風に調理し直せるかが、この作品に成功にかかってくる気がする
サマサさん、NBさんお疲れ様。
やる気があるみたいだし、何よりお2人とも面白くてイイ!よ。
このペースならあっという間に長編カテゴリだな。>サイト
がんばれ、応援してるぞお2人とも。
更新量が多いと、ストックがなくなったときの反動が怖いんだが。
そのままやる気が失せて未完ってことにならなければいいけど。
サマサさん、NBさんの活躍は目覚ましいけど、
先輩職人さんたちにも頑張って欲しいな。
格闘大戦、出来杉、ドラ麻雀、ラーメンマン、4×5、
みゅう、憑依、誇り高き希望が読めなくなって長い気がする。
しけい荘とザクはつい最近更新されたけど。みんな頑張れ!
503 :
作者の都合により名無しです:04/08/28 22:03 ID:jw6oQCkF
週末、皆さんはお出かけか。
ブラキンさんとかVSさんとかユルさんとか、元気かな。最近来ないね。
パオさんVSさんは他のスレでも見るし、うみにんさんは9月まで忙しいそうだけど。
みゅうさんたちは、本当に投げちゃったみたいだな(泣
NB氏、サマサ氏、ご自分のペースで頑張ってね。途中で潰れちゃやだよ。
ところでNBさん、本当にそろそろタイトル何とかしてくれ。
マジバトルの内容なのに、厨みたいなタイトルだw(失礼)
494から
唐突に部屋のドアが開いた。
「二人とも、もう休んだらどうだ。飯も禄に…………起きたかトレイン」
サンドイッチとスープを載せたトレイを手にワイシャツ姿のスヴェンが入ってきた。
「スヴェン……世話かけちまったな」
「気にするな、それより……」
部屋の真ん中のテーブルにトレイを置いて、改めてトレインに向き直る。
「どうだ、傷の具合は?」
「ああ、大体直ってる。痛みも殆ど無い。明日にでも歩けそうだ」
それを聞いてリンスはふかぶかとソファに凭れ込む。だが、
「―――…そうか。そいつは良かった」
言葉を終えると同時に、スヴェンはトレインの顔を殴り付けた。
トレインが壁にブチ当たる音でイヴも目を覚ます。
「ちょ…、スヴェン!アンタ一体……!!」「スヴェン………な、なに?なんなの!!?」
「黙ってろ」
静かだが強い静止が女性陣を黙らせる。
そして唇が切れたのも厭わずに、トレインの胸倉を掴んで自分の眼前に引き寄せた。
「この…馬鹿野郎が。ヤバいのを知ってて一人で行きやがって……死んじまったらどうするんだ!ああ!!?」
…確かに徹夜させた事は怒っていない。それ以上に彼の愚行にスヴェンは怒っていた。
「……俺はな、チームを組んだ以上絶対に死なせねェ。お前にそう云ったのを忘れたか?トレイン」
口調にこもるのはその事だけでは無さそうだ、もっと深いものを場の三人が感じた。
「そのクリード何とかにどんな因縁が有るかは知らないがな、良く聞け。
…相棒蔑ろにするのは許さねえ。
無駄に命張る真似は許さねえ!
悲しむ奴の当てが有るのに死ぬのは絶対に許さねえ!!
……忘れるんじゃねえぞ」
普段の慎ましさをかなぐり捨て、スヴェンは怒鳴った。言葉を心に刻み付ける様に。
鬼気迫る迫力に、トレインは殴られた事も忘れ只ひたすら頭を縦に振った。
射抜く様な目でしばらく睨み付けた後、ようやくトレインを解放する。
「……俺は寝る。ちょっと寝足りないんでな」
やはり彼の目にも酷い隈があった。……寝ていないだろうに。
部屋を出ようとするスヴェンの背中を、トレインが呼びとめた。
「そう言えばスヴェン、なんでオレ達を助けられたんだ?」
リンスも思う。そう言えばそうだ。どうやって落ちる位置もタイミングも判ったのか、さっぱり分からない。
だがスヴェンは振り返って一言、
「………企業秘密さ」
……そしてドアが閉じた。
イヴに訊こうにも再びぐっすり眠っているので、二人は考えるのを止めた。
とにかく今は、命拾いの安堵と夢魔の誘惑に身を任せて、眠った。
夢を見た。
まだナンバーズになる少し前、ある仕事で酷いポカをやらかした。
皆殺しにしたはいいが、六発も弾を浴びた体は鉛の様に重く、視界もどんどん暗くなる。
やがて、路地裏で遂に重力に屈した。
―――ああ、死ぬのか。
どうでも良かった。自分には何も無いから。
どうでも良かった。待ってる奴なんていないから。
だから、どうでも良かった。殺した奴等と同じ様に死んでも。
そう―――だからこそ驚いた。
気が付いたら暖かいベッドの上だった。
「おーやぁ、生きてた様ッスねェ」
声に驚き慌てて起きあがるが、痛みで動きが止まった。
「無理しない無理しない。弾抜いたばっかなんスから」
良く見れば目に映るショートボブの女の後姿。テーブルに付いて何かやっているのは
音から察して銃の掃除だ。
「お前は――――」
「私ッスか?」
そう言って女は振り向いた。
「サヤ=ミナツキ、なんと掃除屋(スイーパー)ッス」
――――春風の様な笑顔。そうだ、これがオレの本当の人生の始まりだった。
俺の柳龍光はここにしか居ない!!(挨拶)
NBです。
第一話「邂逅」終了です。
第二話「道士」はしばらくお待ちを。
そしてニュース、実は今回が最終回!!
次回から「AnotherAtoraction BC」
をお送りします。
乞う、ご期待!!
……スペル間違ってねえよな。
お疲れー。今日のうぷは全部揃ったかな?
これからゆっくり読ましてもらうよ。楽しみ。
知欠よりキャラ設定うまいからな、NB氏はw
ミナツキサヤ出てきたか。
原作では中途半端な印象だったトレインとサヤの関わりをどう書くのか楽しみだ。
NB氏は矢吹が考えなしで書いた萌えだけのキャラをちゃんと掘り下げて書いてくれそうで良いな。
ちょっとだけ小休止ですか。タイトルも正式なのになって、さらにパワーアップする事を期待してるよ。
ガンバレ。俺は多少テンション高めでいいと思うよ。多少ねw
第二十二話「恐怖を統べる者」
両者の対決は、これまでに二度も発生している。一度目はシコルスキーが逃げ切り、二
度目はオリバが割って入った。そして、今現在をもって開始された大将戦。逃走はルール
により即敗北、ましてや仲裁などあるはずもない。
しけい荘にとっても、ホームレスにとっても、何より立ち合っている当人同士にとって
も──この対決は全てを清算するための重大な通過儀礼なのである。
「今日はサムライソードを使えない……五分五分だぜ」
真剣を持たぬ本部に対し、挑発とも取れるシコルスキーの呟き。もちろん、本部とて負
けてはいない。
「貴様のような青二才を喰らうには、徒手が一番と相場が決まっておる」
じりじりと間合いが詰まる。シコルスキーの脚力ならば、一足飛びで踏み込める距離だ。
しかし、本部に対する恐怖心は彼の足が動くことを許さない。過去二度の対峙による精神
的ショックは、そう簡単に克服出来るものではない。
制空権が触れ合おうとする寸前──本部がふと構えを解いた。
「おい小僧、右手から血が出ておるぞ」
あまりに緊張感に欠けた、茶の間で談笑するかのような口振りであった。シコルスキー
も反射的に右手を確かめてしまう。が、これが甘かった。
本部は手を伸ばし、隙を見せたシコルスキーの左手首を掴んだのだ。
「おわッ!」
その感触を感じ取ったシコルスキー。熱湯に誤って手を突っ込んだ瞬間のように、大慌
てで本部の手を振り払う。これで危機を脱した──かに見えた。
「うっ……!」
だらりと垂れ下がったまま動かぬ手首。彼の左手首は関節を外されていた。
呆然とするシコルスキーだったが、すぐさま我に返る。残された右手で、強引に手首の
関節をはめ込んだ。多少の痛みが伴ったが、戦闘には差し支えない程度のものだ。
損傷こそリセットされたものの、シコルスキーの表情からは血の気が引いている。そこ
へ追い討ちを掛けるように、本部が嬉しそうに宣言した。
「ほんの挨拶だ。本当の地獄はここから始まるのだからな……」
手首を外されただけではあるが、シコルスキーは本部の恐ろしさを十分に理解していた。
技術面で勝負を挑んだとすれば、経験の差で敗北するのは明白だろう。ならば、攻め手に
迷うことはない。相手より圧倒的に恵まれた体格、世界的に見てもトップクラスであろう
身体能力、これらを存分に活用すればいいのだ。
「ほう、蘇生しおったな……来るか」
本部の読み通り、シコルスキーは全身を躍動させるように駆け出した。
長身から振り下ろすようなフックの連打。本部も両手を器用に使い、紙一重で捌いてい
く。今度は下半身から、鋭利な膝で蹴り上げた。だが、これも本部はバックスウェーで冷
静に対処する。
「へっ、全部かわされちまうとはな……」
「まだわしが若く、ホームレスになったばかりの頃、寝込みを金属バットを持った不良ど
もに襲われ不覚を取った。その悔しさから自らの肉体を実験台に、あらゆる打撃技を研究
したのだ。総入れ歯にはされちまったが、今のわしはバットどころか古今東西の格闘技の
打撃を捉えるほどになった」
歯を自慢げに見せながら、過去の苦い回想に浸る本部。安易な手段で手に入れた技術で
はない。だからこそ、それ相応の重みがある。
「だったら……これならどうだッ!」
不意を突くように、シコルスキーが本部の上着を乱暴に掴んだ。こうなれば、どんなに
卓越した技術であろうと力で押し切れる。しかし──本部に焦りは見えない。
「むんっ!」
短く呼吸する本部。すると、服を掴んでいるはずのシコルスキーが、急速に本部へと引
き寄せられた。大幅に崩された体勢を立て直す暇もなく、筋肉質の西洋人がふわりと宙を
浮く。
若き肉体の支配権は、完全に小さな老人へ握られた。シコルスキーは受け身すらさせて
もらえぬまま、高速で顎から地面へと墜落する。
「ガハァッ!」
視界が歪む。上下の認知すら満足にいかない。この状況では、せめて敵から離れるよう
に立ち上がることが精一杯だ。本部も追撃には出ない。
「柔術家にとっては地面さえも凶器よ。土で幸いだったな……クックック」
全細胞を総動員させ、シコルスキーは状態の回復に努める。五感を集中させるも、流石
に短時間での全快は望めない。反撃の体勢を整えるのが関の山である。
──しばしの休息。
大地を抉り込むように蹴り、またもシコルスキーが先手を仕掛ける。本部は余裕で迎撃
の構えに入るも──気づく。これは“打撃”ではない。
拳での攻撃には違いない。しかし、いわゆるパンチの類とは、全く軌道が異なる。
後退する本部だが、間合いからは抜けられない。何かを削り取るような、短い音が二つ
轟いた。空中に鮮血が舞う。
「くっ……小僧! やってくれたな……!」
「俺の拳は打撃ではない。あえて形容するなら……斬撃かな」
シコルスキーの握った拳。中指だけを突出させた、中高一本拳。強靭な中指で、相手の
皮膚を切り裂いてしまう。自分の全体重を預けられる指の力、それを持つシコルスキーだ
からこそ可能な技だ。
右前腕と左頬の一部を、大きく裂かれた本部。余裕の消えた顔面からは、冷えた汗まで
も流れ出ている。形勢は逆転した。
じわじわと背後を気にしつつ移動を始める本部。それに対し、恐れず距離を縮めるシコ
ルスキー。前蹴りが炸裂。両腕で防御するも、小柄な本部はいとも簡単に吹き飛ぶ。
だが、妙な違和感がシコルスキーを包み込んだ。
「まさか、わざとか……?」
本部が着陸したのは砂場であった。先にガイアが砂を武器として使用したため、大分荒
れ果てている。すると、本部は砂地へ一気に腕を突っ込んだ。
「徒手では少々手に余るようだ……。気が変わったぞ、小僧ッ!」
砂の中から這い出た手に握られていたのは、妖艶なる光沢を放つ日本刀であった。
「ちょっと待て! 武器の持ち込みは禁止なはずだろう!」
「ルールを覚えていないようだな。公園にあるものは全て使用可なはずだぞ……?」
心に芽生える真剣の恐怖。シコルスキーの表情が、みるみる情けないものへと変貌する。
長かった団体戦も、ようやくシコルスキーVS本部です。
気合い入れます。
最終決戦か、感慨深い。
シコル隙だらけと思ってたら、強いな。しかもなんか可愛い。
だが魔王本部がいよいよホームグラウンドの公園を利用するのか。
気合入れて書いて下さい!
>ぼくブラ
サヤってるろうに剣心でいう巴みたいな役回りだよね。
どうせ矢吹パクったんだろうけど。
ある意味、リンスよりイブよりヒロインらしい存在。
NB氏がどう料理するか期待が持てる。恋愛感情とか書くのかな?
ところで、「俺の柳龍光はここにしか居ない」って何読んだの?
サイトの作品?パオ氏?外伝氏?
>しけい荘
最終決戦、2対2。友の思いを一身に背負う最弱・シコルスキーと
それを迎え撃つ最強・本部。燃えるシュチュですね。
以外に強いシコルが本気に本部をさせたか。殺されそうだ、今までなら。
しかし、今回のシコルは違うな。やってくれそうな気がする。
でも最終回近そうだな、本当に・・。
>485より
はたして、すぐに女の子のお母さんは見つかった。
「本当にありがとうございます。ほら、お姉ちゃんたちにお礼言いなさい」
「あ、ボクは最後にちょっと手伝っただけですから。お礼ならこっちののびちゃんに言ってください」
「まあ・・・そうだったんですか。とてもよく出来た弟さんですね」
そう言って母娘が去っていったあと、のび太と亜沙は顔を見合わせ、笑い合った。
「僕らのこと、姉弟だって」
「ふふ、端から見たらそう見えるかもね」
ひとしきり笑ったあと、不意にのび太は二人が去っていった方に目を向ける。
その顔は、どことなく寂しげだった。
「のびちゃん―――どうかしたの?」
「え・・・?ううん、別に。ただ・・・ママの事を思い出して・・・」
その言葉を聞いて、亜沙は申し訳なさそうな顔をする。
「ひょっとして・・・お母さん、いないの?」
「ううん、ちゃんといるよ。いるけど、今はぼくは、家には帰れないんだ」
「・・・色々複雑みたいだね。ごめんね、変なこと聞いて」
「いえ、いいんです。・・・そうだ、そろそろ帰らないと、お世話になってる人達が心配するから
・・・色々ありがとうございました」
何時の間にか日が暮れて、西の空が赤く染まっていた。のび太は足を進め―――
ようとして、立ち止まった。
「・・・・・・」
「どうしたの?」
のび太は、実に悲壮な顔で言った。
「帰り道が分かんなくなっちゃった〜〜〜っ!!」
亜沙は、思いっきりずっこけたのであった・・・。
しかしながら、救いの神というものはいるらしい。その瞬間、のび太の知った声が聞こえてきたのだ。
「のび太じゃないか、こんな所でなにしてるんだ?」
「稟さん!よかったあ〜、迷子になってたところなんです」
「おいおい、しっかりしろよ・・・ん?」
そこで稟は亜沙に気付いた。
「亜沙先輩じゃないですか!」
「あ!稟ちゃん!ひょっとして稟ちゃんがのびちゃんの面倒見てるの?」
二人の親しげな様子を見て、のび太が声をかける。
「あの、二人とも知り合いなんですか?」
「ああ、そうだけど・・・。のび太は、なんで亜沙先輩と一緒にいるんだ?」
「ええ、実は・・・」
三人で帰り道を歩きながら、いきさつを話すのび太たち。
「―――なるほどなあ、迷子を助けてあげたのか。偉いぞ、のび太」
「そのあと、自分が迷子になっちゃうってのがのびちゃんのキャラクターっぽいよねえ」
「もう、それは言わないで下さいよ〜」。
「・・・そういえばさ、のびちゃんと稟ちゃんってどういう関係なの?」
ふと、亜沙はそんなことを尋ねた
「ああ、実はですね・・・」
のび太がやってきたいきさつを説明する稟。その内容には、さすがに亜沙も驚いていた。
「別世界から来たのかあ・・・。ものすごくスケールの大きい迷子ってわけだね」
「だから、そういうことを言うのはやめて下さいって」
「へへ、ごめんね。それにしても、早く元の世界に帰れるといいね―――
きっと、のびちゃんのお母さんやお父さん、それにお友達も心配してるもの」
「はい・・・そうですね」
そんなことを話しているときだった。
前を歩いていた亜沙が、突然体をグラっと揺らし、そのまま突っ伏してしまったのだ。
「!?先輩!?」
「亜沙さん!?どうしたんですか!?」
慌てて駆け寄るのび太と稟。亜沙は幸い、すぐに何事もなかったように立ち上がった。
「・・・大丈夫、ちょっとクラ―ってきただけだから」
「本当に大丈夫ですか、先輩」
心配そうに言う稟。確かにそこまで深刻には見えないけど、どうにも不安になる亜沙の様子だった。
「昔っから結構よくこうなってたの。ホントに大したことじゃないから」
そう言って、また元気よく歩き出す亜沙。しかし、どこか無理をしているように見える。
なんとなく気まずい空気が流れたその時だった。
「あらあ〜、あーちゃん、それにりっちゃんじゃない。もう一人いるけど、その子も
お友達なの?」
やけに間延びした声が聞こえてきて、のび太が振り向くと、そこにいたのは帽子とリボンで
耳が隠れているのが特徴的な美少女だった。少なくとも外見上はそう見えた。
「あ、お母さん!」
だから、亜沙がそう言った時、のび太は一瞬時間が止まったのを感じた。
「・・・・・・お・か・あ・さ・ん?」
「ああ・・・あの人は時雨亜麻さん。正真正銘、一児の母だ」
一児の母、という部分を強調して言う稟。のび太は驚きを通り越して亜沙と亜麻を見つめた。
どう見たって姉妹にしか見えない。世界七不思議に数えてもいいくらいだ、とのび太は思ったが、
さすがに失礼だと思って口には出さなかった。
亜沙はそんなのび太を母親に紹介する。
「お母さん、この子は野比のび太くん。ボクの今日出来たばっかりの友達なんだ」
「あらあ、そうなんだ。あーちゃんにかわいらしいお友達が出来て、ボクも嬉しいな〜。
よろしくね、の〜ちゃん」
「いえ、こちらこそ。それより、ついさっき亜沙さんが体の調子悪くしたみたいなんです」
その言葉に、ややボンヤリとした雰囲気だった亜麻が、顔をこわばらせた。
「あーちゃん!大丈夫なの!?」
「う、うん、大丈夫だって。ほら、もうこんな元気」
そう言って、腕をブンブンと回して見せる亜沙。
「・・・無理はしないでね」
「もお、そんな心配しないでってば。・・・あ、もう家の前じゃん!それじゃあ
稟ちゃん、のびちゃん、また今度会おうね!」
「それじゃあ、さようなら。また今度ね〜」
そう言って家のほうへ向かって並んで歩く母娘二人。その背を、のび太は
見つめていた。目には少し、涙が浮かんでいる。そんなのび太に気付いた稟は言う。
「―――やっぱり、家族がいないと寂しいかい?」
「・・・・・・」
のび太の沈黙を、稟はイエスと受け取った。そして、稟は語り始める。
「俺の両親と楓の母親は―――俺たちが子供の頃に死んだんだ」
「え・・・?」
「すごく―――悲しかった。あんな悲しい思いは、誰にもさせたくないって思った。
家族が離れ離れになるなんて、絶対に駄目だって思ったんだ」
「稟さん・・・」
「きっと、のび太は大丈夫だよ。それに、さ。ここにいる間は、俺たちを家族だと思って頼りに
してくれていいんだぞ―――わあっ!」
稟は驚きの声を上げる。のび太が、稟の胸に飛び込んで盛大に泣き出したのだ。溜め込んでいた感情が、
稟の言葉で爆発したのだろう。
稟は、そんなのび太を引き剥がそうとはしなかった。今は―――泣かせてやった方がいい時なんだと
分かっていた。ひとしきり泣いて、溜め込んだものは出した方がいい。
「泣き止んだら、家に帰ろうな」
稟は、そう言ってのび太の頭をくしゃりと撫でた。
きりのいいところで今回の投下分は終了です。
前回よりちょっと量は少ないですが、その分続きは早めに投下できるかも
しれません。
読んでくれる皆さんにはいつも感謝しています。
その感謝を形にするためにも、今は頑張って書くのみです。
524 :
作者の都合により名無しです:04/08/29 16:06 ID:A5+Sbups
・NBさん
サヤとトレインの悲しくも美しい回想シーンですな。
前回までが激しいバトルシーンだけに、対比が良い。
原作は作者の稚拙さゆえ大して印象に残らないシーンでしたが、
その分SSには期待できる。第2羽、期待してるぜ。
・サナダムシさん
今までのヘタレ振りを振り払って奮戦するシコの健気さに期待。
最初のポイントはとったけど、それが後の惨劇を増幅させるようなw
5VS5終わったらどうなるんだろう。終わり?
うんこSSもちょっと見てみたいようなw
・サマサさん
いえ、逆にこのくらいの量の方がサマサさんが負担無く掛けてちょうどいいかも。
大いにこした事は無いですけどね。でも、やる気満々で嬉しい。
原作知らないけど、なにかどこはかと無くもの悲しい雰囲気がありますね。
特に亜沙。なにか、体に爆弾を抱えているのかも。
のび太の漫画版のダメっぷりと、映画版の勇敢っぷりが感じられますな。
稟も悲しいほど優しくていい。
NBさんとサマサさんは、最速でまとめサイト長編カテゴリへ行きそうですな。
サナダムシさんのしけいそうはまだ続くのだろうか?
シコルの決戦楽しみだが心配だ。シコルがんばれよ。
サマサさん、絶好調ですな。無理せず頑張って。
のびたと異界の亜沙や稟との触れ合いが微笑ましいね。
でも、いずれ別れはやってくるんだな。亜沙は大丈夫だろうか、体。
>ぼくブラ
原作ではサヤの描写が不十分だったので、その分こちらには大いに期待。
それにしてもサヤの口調ってうざいな。勉三さんみたい。
知欠は何考えてんだか。何も考えてないか。
>しけい荘
シコル、一応は最盛期の力を持ってるみたいで安心した。
とはいえ本部もMAXパワーだからな。しかも日本刀装備。
腕の一本は覚悟せにゃならんのか?
>神界
ほのぼのした雰囲気でいい。空気の生み出し方がうまい。
にしても、これはクライマックスに近づくにつれバトル系SSに変化していくのだろうか?
先が見えない。
ザクが男塾に入ってから1年が経過した。課外授業は毎日行われ、技術の習得に貪欲なザクは真綿
が水を吸い取るように、ぐんぐん技を吸収していった。
とはいえ、やはり『機』も『気』もその奥は深く、ザクはこの1年間基礎技術の習得にいそしむばかりで
あった。とても奥義の習得にまでは至らない。
そんなある日、ザクは江田島に呼び出され、もはや使われなくなった3階建ての木造の廃校の前へと
姿を現した。割れずに残っている窓ガラスは一枚たりともなく、壁は腐り、所々板がはがれている。
――こんなところで一体、何をしようというのだろう?
ザクは辺りを見回した。ふと気がつくと、足元に江田島平八が立っていた。
――塾長、いつのまに……
「この校舎は取り壊すことになった」江田島は唐突に話しを切り出す。
「だが、経済的に苦しい我が男塾では取り壊しの費用さえ捻り出すことが出来ん。そこでだ、貴様への
奥義伝授のついでとして、わし自らがこれを解体することにした」
――奥義、伝授?
「いかにも。これからわしが見せるは『気』を使った奥義中の奥義。たかだか数年で習得できるとは思っ
てもいないが、これから幾年も幾年も修行を重ねることで必ずや習得してみせい。……ザクよ、さがれ」
江田島の言葉に従い、ザクは数歩後ずさりする。一体どんな技を繰り出すというのだろうか。
この校舎を、ただ一撃の技で壊そうというのか?
江田島は腰を低く落として上体をひねり、右腕を大きく後ろへ引いた。そして、フォー、フォーと大きく息
を吸い、吐く。息を吸い、吐く。
江田島の生命エネルギーが拍動しているようにザクは感じた。そして江田島が叫ぶ。
「見よザク!これが奥義『千歩気功拳』である!!」
江田島が右拳を繰り出すとともに、そこから唸りをあげて巨大な青白い気の拳が放たれた。千歩気功
拳は木造校舎に直径10mもの大穴を開け、校舎は音を立てて崩れ落ちていった。
――すごい。これが『気』の力なのか。
「この『千歩気功拳』は習得するに並みの天才で10年、このわしでさえ3ヶ月を費やす技である。だがザク
よ、貴様は出来るだけ早く、そして確実にこの技を身につけねばならない」
江田島は崩れる校舎からザクへと向き直った。
「ザク、範馬勇次郎への憎悪はいまだ消えていないな?」
突然の問いだった。だがその言葉に、ザクの体内のオイルは沸騰せんばかりに熱くたぎる。久々に耳
にした『範馬勇次郎』の言葉に、脳は焼けついた。
――当然です!あいつは、あいつは……くそっ、あいつは俺のすべてを奪ったんだッッ!!
「そうだ。彼奴を倒すために貴様は男塾の門戸を叩き、入塾したのである。その気持ちを忘れないまま、
貴様に聞いてもらいたい話がある」
ザクは桃色から赤に変わった単眼で江田島をにらみつけた。
――何です?
「今より30年後、地球を未曾有の危機が襲うと中国の古文書に記されている。『真苦露西手意』。それが
災厄の名である」
――真苦露西手意……
「天変地異が世界中を襲い、それに乗じて世界制服をもくろむ悪魔どもが次々と台頭する。まさに世界の
終末時代の到来である。そしてその『真苦露西手意』の鍵となる男が、あの範馬勇次郎なのである」
――勇次郎ッッ!!
口元の排気口から「フー」と、吐息に似たものが漏れる。
――塾長、分かりました! その『真苦露西手意』とやらが起きた時、俺に勇次郎を倒せとおっしゃるの
ですね!
「いや」江田島は首を横に振った。「違う」
――違う、と申しますと?
「わしはな、ザク。貴様には『真苦露西手意』そのものに立ち向かう、世界の救世主となってほしいのだ」
ザクは当惑した。復讐のみを考え生きてきた俺が、世界の救世主に?
――どういうことです?塾長。
「近い未来、『真苦露西手意』に抗うために多くの戦士達が生まれるとの事も古文書に書かれている。
その戦士の中にはザクよ、お前も含まれておる。各々の戦士達は、己が敵と闘うことで手一杯という状態
になるだろう。そうならざるをえないのだ。だがザク、お前のその力は打倒範馬勇次郎のみに用いられる
には余りにも強大すぎる。……自己再生、自己進化。ノヴァが造り上げたイマジノスボディの力をもって
すれば、『真苦露西手意』の刻に現れる数々の敵どもを葬ることが出来るのではないかとわしは考える。
ザクよ、来る時にはその力をもってして悪鬼どもと闘ってはもらえんか?」
1拍、間が空いた。それからザクがこぼす。
――俺に、世界を救えとおっしゃるのですか?
「貴様ならば可能である」
口元の排気口から空気が漏れる。ザクは右手を胸の前にあげ、握った。
――冗談じゃない。俺は範馬勇次郎を倒すためだけに修行を重ねているだけだ!俺は、俺はただ死ん
だみんなの仇をとりたいだけなんだ!『真苦露西手意』など知ったことか!
「このッ」
江田島平八が跳んだ。垂直に、17メートルを。
「馬鹿者がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
繰り出された右の鉄拳がザクの左頬に深々とめりこむ。常識的な鋼材をはるかに凌ぐ硬度を持つイマ
ジノスボディさえも容易に破壊する一撃だった。
痛覚が存在しないために痛みは感じなかったが、ザクは確かに頬を殴られたような感覚をおぼえた。
突き刺さった拳を引き抜き、江田島は身を翻して着地する。その表情は憤怒に歪んでいた。
ザクは大きくひしゃげた頬に手をあて、江田島を見下ろす。
――塾長……
「貴様には分からんのか!『真苦露西手意』が起きてしまえば、貴様らファミコンウォーズのような悲劇が
世界各地至る所で引き起こされるのだぞ!!」
その言葉に、ザクはハンマーで直に脳を殴られたようなショックを受けた。
――俺達の身に起きたことが……世界中で引き起こされる?
「そう、世界中でである」
江田島は腕を組み、厳格な面持ちで答える。
「だからこそわしは、残酷な運命を背負わされた貴様なればこそ、『真苦露西手意』に立ち向かえると
考えたのである。分かるな?ザクよ」
――俺は……
頬にあてた手を目の前に持ってくる。微かに震えていた。
――俺はどうすればいいんだ?塾長の言うとおりに闘うべきなのか?誰か、誰か教えてくれ!
『お前の……』
ザクは、はっとした。今、確かに聞こえた。サムスの声が。俺を後押しする、死んだ皆の声が。
『お前の正しいと思った道を歩めばいい。私達が望むのは、それだけだ』
震える手を握り、ザクは決意した。分かった。俺は範馬勇次郎を倒す。だが、それだけじゃない。
サムス達とはもう生きては会うことはできない。だけど、もうこれ以上俺達のような悲劇の犠牲者は出し
ちゃあいけないんだ!
ザクは江田島を見下ろした。
――塾長、俺は決心したましたよ。勇次郎は倒す。だが、『真苦露西手意』も阻止する。きっとそれが俺
の運命なんだ。
江田島は満足げに笑みを浮かべ、うなずいた。「決心してくれたか」
ザクはヒートホークを天高く掲げ、自身の心に誓った。
――人知を超えて荒れ狂うのが運命ならば、俺はそれに抗う!人の心と機械の体と刃で!
今回up分終了
533 :
作者の都合により名無しです:04/08/29 20:59 ID:h3JcsnRo
>神界大活劇
ほのぼのとした雰囲気に、なんとなく近寄る悲しい予感だね。
でも、まだ「大活劇」って感じじゃないな。
大いなるプロローグって感じだ。ドラえもんたちと合流し、
本当の活劇が始まるんだよね、きっと。応援してるから頑張れ。
>ザク誕生編
塾長さすがに桁が違うw17メートル垂直跳びかよw
次章の敵が見えてきた感じだな。黒幕がいるのか?
でも、塾長が出れば勇次郎も「真苦露西手意」も
簡単に潰せるというのは、禁句?大長編になりそうだね。
サイト見たら、サマサさんの神界大活劇が長編カテゴリに移動してた。
すっごい早い。新記録だな、これは。
ちなみに作品量が60KBを超えたら長編カテゴリへ移動するらしい。
NBさんも頑張れ。
>人知を超えて荒れ狂うのが運命ならば、俺はそれに抗う!人の心と機械の体と刃で!
このような台詞、どっかで見た事あんだけど何だったかなあ……
しかし、カコイイ台詞だよね
>>535 「蚕が桑を蝕むように人の心を蝕むものを神の機(はたらき)と奉るなら
俺は抗う 血と肉と刃で」
蛮勇引力はセリフが熱い。
ああ、それだそれ!
蛮勇は連載時に立ち読みしてたな
単行本買ってみるか
538 :
作者の都合により名無しです:04/08/30 08:06 ID:Lfbic+ce
サマサさん、長編カテ移行おめ。
NBさんもがんばれ。
サナダムシさんとザクさんのSS大好きです。
ザクさんはかなり続きそうだけど、
サナダムシさんのは終わっちゃうのかなあ?
539 :
ふら〜り:04/08/30 10:32 ID:CPeHThOj
>>サマサさん
のび太が、ほぼずっと敬語喋りなので前から思ってはいましたが、今回は特に感じました。
何をかというと、周りが全部お兄さん&お姉さんなこと。ただでさえ頼りないのび太の、
「子供」なとこが強調されている感じです。親と離れた寂しさに泣く、というのは
その最たるものかと。そんなのび太だけに、後半戦での成長・活躍が楽しみです。
>>NBさん
皆さんも言っておられますが、本当に描写が巧みですね。血の匂いやガラスの砕ける音が
感じられます。今回はクリードの狂気(妄執、というべきでしょうか)っぷりがなかなか
キてましたが、読んでてネジレブルーを思い出したのは私だけでは……私だけでしょうな。
すみませんヲタで。←特撮の話です
>>サナダムシさん
シコル、思いのほか地味に堅実に自分の立場を築きつつ戦ってますね。本部も同様、
派手さはないけど迫力はある強さを見せてくれて。……と思ってたら、いきなりの
卑怯な仕込み(と思えます)。でも、そういうのを跳ね返してこそヒーローというもの。
頑張れシコルっ。
>>ザクさん
いいですねぇ……ファミコンウォーズのみんなが語りかけているシーン。こういうので
戦いを決意する、というのは王道かつ頂点。じ〜んときます。
地上最弱の生物・スペランカーから世界の救世主・ザクへと生まれ変わりゆく彼。
まだまだ永いであろうその修行の路、見届けさせて頂きましょう!
このスレ、ふら〜りさんの他に各作品に必ず感想をつけるh3JcsnRo氏(29日)がいるね。
SS好きがずいぶん増えたな。
「ドラえもん、どうしたんだい、急に話があるなんて」
のび太はさっきまで読んでいたマンガを手にしたまま尋ねた。
ドラえもんは彼に背を向けて腕を組んで座っていた。彼がこういうポーズを取る時は、大抵のび太に説教を垂れる時だ。しかし、今回に限ってはのび太に心当たりはない。
「その様子じゃ、知らないようだね」
「何を?」
のび太は相変わらずアメリカのマンガのような間抜けな返事を返す。
「のび太くん・・・実は・・・」
その時、玄関の方面からいきなり大きな音がした。それと同時に、のび太のとってもっとも聞きたくない男の声がした。
「のび太!!いるか!!」
のび太はメガネまで真っ青になった。
「あわわわわわ、ジャ、ジャイアンだ!!ど、ど、どうしよう!!きっとまたなんか怒ってるんだ、ねえ、ドラえもん、助けてよ〜」
しかし、ジャイアンが来た理由を知っているドラえもんは何も言わなかった。
階段を力士が駆け上がるような音が響いて、そしてのび太の部屋のふすまが開いた。
いつもと違う顔のいじめっ子がそこにはいた。
「・・・ジャイアン?」
「のび太・・・出来杉が・・・死んだ」
「交通事故・・・か・・・」
スネ夫が空を見て言った。
いつもの空き地。永久に使われることの無い工事用の部品に腰掛けて、のび太たちは、虚無感に浮かんでいた。
「・・・あんまりだわ・・・急に、こんなこと・・・」
しずかが涙に震えて言った。みんな、悲しみに沈んでいた。そのなかで、もっとも動転しているように見えたのは・・・
「おい、のび太、大丈夫か?」
ジャイアンがのび太の肩を叩いた。のび太は死人のような顔でうなずいた。ひどい顔だった。もてる限りの絶望を背負ったような、これから泣く泣く人を殺しにいくような、そんな顔だった。
「しっかりしろよ!!おまえが・・・おまえがそんなんだと・・・俺たちは何を見て安心したらいいんだよ!!」
涙を溢れさせながら、ジャイアンが理不尽極まりないことを言う。
「たけしさん、そんな言い方・・・」
しずかはいつものくせで止めに入ったが、そこから先がどうしても言えなかった。
「のび太、本当に大丈夫か?」
スネ夫が言った。のび太の耳にまでは届かなかった。そこに響いていたのは、ついさっきのドラえもんからの一言だった。
「そんな・・・出来杉が・・・出来杉・・・」
床の上に大粒の涙を落とすのび太を目の前にして、ドラえもんはそのことを話すべきかどうか悩んでいた。しかし、言うなら今しかなかった。
「出来杉くんは・・・将来、外国の大学に入って・・・すごく勉強して・・・もっと大きくなったら、日本に帰ってくるはずだったんだ」
「なんだよそんなこと!!もう出来杉は死んじゃったんだぞ!!そんな未来はもう来ないんだ!!もう・・・もう・・・」
のび太が叫んだ。ドラえもんは何事も無いかのように続けた。
「出来杉くんは・・・工学部に進むはずだったんだ。そして・・・ロボットの研究をして・・・34歳のときに、画期的な・・・」
「ドラえもん!!いい加減にしろよ!!」
怒りに震えるのび太の前に、ドラえもんは一冊の雑誌のあるページを見せた。
「今から四十五年後に発売になる科学雑誌だよ。ごらん」
のび太は涙を拭き、そのページに載っている写真と説明文を見た。
「世界初の人間と同じ知能を持つ人間型ロボット 制作したのは月見ヶ丘工業大のロボット製作班、中心的役割を果たしたのは学長の出来杉・・・」
ずべしっ。
放り投げた。
「いい加減にしろよドラえもん!!出来杉は死んだんだ!!このロボットだって作られないよ!!」
その時、のび太は自分がたった今言ったことの意味に少し気付いた。
「ロボットが・・・作られない・・・?」
みるみるうちにのび太の顔は赤から青く変わっていった。
「ま・・・まさか・・・」
察したか。ドラえもんは大きく息を吸って言った。
「この出来杉くんの作ったロボットは、未来の歴史の教科書にも載ってる。このロボットによって、ロボットの研究は500年分一気に進んだんだ。出来杉くんの作ったロボットが、ね」
「じゃあ・・・」
「今、歴史が変わった。出来杉くんは未来から消えた。だからこのロボットは作れない。だからロボットの研究は進まない。そして・・・」
「・・・ドラえもんも・・・」
「ああ。生まれることはない」
夢から覚めたような顔をしているのび太に背を向けて、ドラえもんは言った。
「今すぐって事はないかもしれない。でも、近いうちに、僕も消える」
「そんな・・・そんなことさせないぞ!皆行こう!」
「行こうって、何処へだよのび太。」
ジャイアンが力なく聞き返す。
「なに言っているんだよ!出来杉君を助けに行くんじゃないか!」
「そうか!そういう手があった。」
「今なら、まだ間に合うかもしれない。タイムマシンに乗って助けに
行くんだ!」
「そうね、のび太さんの言うとおりだわ。」
「こんな所でのんびりしている暇はないよ。早く僕んちに行こう!」
「よし!行くぞスネオ!」
こうして、のび太の家に着いた5人はタイムマシンに乗り込んだ。
タイムマシンに乗り込んですぐにドラえもんの体に異変が始まった。
「すぐに引き返すんだのび太君!」
「どうして?ドラえもん?」
「僕の体が透けてきているんだ・・・」
「ドラちゃん・・・」
「でも、出来杉君を助ければ元に戻るんだろ!?」
「でも、僕が消えたら、このタイムマシンも消えちゃうんだ。」
「どうしてだよ。ドラえもん。」
「そうか!」
スネオが、真っ青な顔で叫んだ
「だって、ドラえもんが消えちゃうって事は、ドラえもんが持ってきた
このタイムマシンも僕らの手にない事になっちゃうんだよ。」
「ということはドラえもんが消えた時点でタイムマシンも消えちゃうのか!」
5人の乗ったタイムマシンは、まだ時空の狭間にいる。
「今すぐ元の時代に戻らないと、皆別の時間に取り残されちゃうんだ。」
ドラえもんの体はますます透けてきている。
>>541-545 正直、タイトルもないのでパッと見で荒らしかと思った。
が、読んでみると真面目なタイムパラドックス物で面白い。GJ!!(`・ω・´)b
でも、これで終わりじゃないよね?オチあるよね?
あと、やっぱりタイトルくらいはつけて。でもなんかお題スレっぽい感じの作品だね。
ところで今気づいたけど、メモリあと100しかないね。
次に誰かの作品が来たら、立てる時期か?
>>541-545 おもしろいね、結構。
歴史は簡単には変わらないはずなのに,出来杉が死んだことに
何か意味がありそうな気がするな。
>522より
「あれ、神王のおじさん家に誰かいるな」
稟の声に従って神王家の門を見ると、そこには神王と、見知らぬ男女が話していた。
一人は魔族の証である長い耳に、端整な顔立ちをした壮年の白衣を着た男。
顔はいいが、性格の悪さが滲み出ていて、好感を持たれるタイプではないだろう。
もう一人はやはり白衣を着て、サラサラとした髪を腰にまで伸ばした、冷たさを感じさせる美貌の女性だった。
そのあまりに冷たい眼に―――稟とのび太は、底知れぬ戦慄を感じるほどだった。
「それでは話も済みましたので、我々はこれにて―――おや」
男がこちらを見ているのび太たちに気付く。
「何だね君らは。ここは一般人が気軽に覗き見してもいい場所ではない。さっさと家に帰れ」
とんでもなく無礼な男の言い草には、のび太たちもカチンときたが、
「グロキシニア、彼らは俺の隣人だ。失礼な事を言うんじゃねえ」
と、神王がすかさず言ったおかげで、なんとか冷静さを取り戻せた。
「ほお・・・。するとこちらの方が例のシアお嬢様の婚約者候補というわけですか・・・。
もう一人、子供の方が次元断層で異世界からやってきた人間、と・・・。ふん、それにしても
下々の者を安易に身の回りに近づけるのは感心しませんな。何を企んでいるか分かったものではない」
「グロキシニアッッ!!」
神王の怒声が、グロキシニアの罵倒をさえぎる。
「てめえが何を思おうと勝手だがな・・・俺の友人を侮辱することだけは許さねえぞ。
用が済んだんなら無駄口叩かずさっさと帰れ」
「ふん・・・これは少々言葉が過ぎたようですな。しかしですな、私は・・・」
「もうおよしなさい、グロキシニア」
今度は横に控えていた、あの冷たい雰囲気の女性がさえぎった。
「神王様とケンカをしに来たわけではないでしょう。我々も帰ってやらねばならぬ仕事が
あります。あなたの愚痴を聞きたいと思っている者は、この場に一人もいませんよ」
丁寧だが反論を許さぬ口調に、傲慢な態度のグロキシニアも鼻白む。のび太はその声の冷たさに、
改めて震え上がった。
「さて、それでは帰りましょう。皆様方、色々と御無礼もありましたが、どうか気になさらぬよう」
「あ、ああ・・・気を付けて帰れよ」
その女に対しては神王もそれだけ言うのが精一杯だった。
そして彼女は最後にのび太と稟に向き直る。
「そうそう、言い忘れましたが、私の名前はアザミ・・・どうかお見知りおきを」
それだけ言うと、アザミはさっさと歩いていってしまう。その後を、グロキシニアは慌てて追っていった。
「・・・随分気分悪くさせちまったな。すまねえ、稟殿、のび太」
「いえ、おじさんが謝ることじゃありませんから・・・。けど、あの二人は
誰なんですか?」
稟の質問に、神王はやや気が進まない様子で答える。
「・・・あの二人は神界と魔界の合同魔法研究所の所長と副所長さ。グロキシニアが所長で、
アザミが副所長だ」
「それにしては、アザミって人の方が主導権握ってたみたいですね」
「そうだな・・・あいつの事はどうにも分かんねえんだ。グロキシニアは見ての通りのいけ好かない
野郎だが、アザミはまるで掴み所がない。8年ほど前突然現れて、16歳の若さですぐに副所長に
までのし上がったんだが、それまでの経歴についても、どこかの山村の出身ってことしか分からない。
行動にも謎が多いんだよ。自分の魔力を高めるために人工生命体の資料を読み漁ってただの、古代の文献を
かき集めてるだの、訳の分からん噂ばっか流れるような女なんだ。・・・ただ、優秀なのは間違いねえ。
ここ5年間の魔法研究所の成果の6割はあいつの手柄だって噂だからな。
グロキシニアも邪険に扱えないんだろう」
「へえ・・・すごい人なんですね」
「ほんと。ぼくなんて小学校落第しそうだってのに」
「それは話が違う気がするが・・・」
ゴホン、と咳払いして、神王は言う。
「まあ、嫌な気分は忘れようぜ。あいつらは誰に対してもあんなもんだから、気にしてたらきりがねえ」
「はあ、そうですか。・・・おっと、もうこんな時間か。それじゃあ俺たちもそろそろ帰ります」
「おう、気を付けて帰れよ・・・つっても、隣だから気を付けるもねえな」
神王と別れて芙蓉家の門をくぐると、そこにはプリムラが立っていた。
彼女は開口一番、こう言った。
「あの人たち、もう帰った?」
「あの、研究所の連中か?ああ、もう帰ったよ」
稟が言うと、プリムラは安堵したようにため息をつく。
「そう・・・。よかった」
「よかった?プリムラは、あの人たちは嫌いなの?」
「そういうわけじゃない。けど・・・なんだかあの人たちを見てると、わけもなく不安になってくるの。
いつか、あの人たちが、私をどこか暗くて怖い場所へ連れて行ってしまいそうで・・・」
「・・・大丈夫だよ」
のび太は言った。ドラえもんがいない今、自分に何が出来るわけではないけど、それでも
言わなければならないと思ったのだ。
それほどまでに―――今のプリムラは不安定に見えたのだ。
「もしそんなことになったら、きっとぼくらが助けに行くよ。ね、稟さん」
その言葉を受けて、稟も頷く。
「ああ―――そうだな。絶対に助けてやるさ。俺たちは、友達で―――家族なんだからな」
そう言った二人を見て、プリムラはほんの少し笑った。
「二人ともありがとう。嬉しい。―――じゃあ、約束してくれる?もし私がどこかへ連れ去られたら、
絶対に助けてくれるって」
「うん―――じゃあさ、3人で、指切りしよう」
「指切り?指を切るのは、痛い」
稟は笑ってプリムラの勘違いを訂正する。
「そうじゃなくて、ほら、こうやって小指を絡めて・・・そう、それで、こう言うんだ。
指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます、指切った。・・・これで、その人と、大事な
約束をしたってことなんだ」
「大事な・・・約束」
「ああ、俺たち三人の、約束だ」
「そう。僕たち三人の」
「・・・三人の、約束。・・・じゃあ、私も、約束する。のび太やりんが困っていたら、きっと
私が助けてあげる。これで、おあいこ」
プリムラは、今度ははっきりと笑った。その笑顔を見てのび太は、
彼女がとても綺麗な顔立ちをしていることに、今更気付いて、少しドキドキした。
「全く・・・神王や魔王の道楽にも困ったものだ」
神界の研究所の一室で、グロキシニアはアザミにそう吐き捨てる。
「バカ娘の頼みなんぞで勝手に人間界に移住を決めて、困るのはこちらだ。わざわざ
向こうまで出向かねばならん」
「まあ、そう愚痴るものではありません。どうせ計画を実行するまでのことではありませんか」
アザミは冷徹な顔を崩さない。
「ふん、まあそうだな。後はあの三号体の小娘が、魔力の制御を覚えるまでの辛抱だ。
もう一人・・・例の一号体の生んだ小娘はともかく、プリムラは今のままでは、計画には使えん。
まあ、散々気長に待っていたのだ。もう少しくらいは待とう」
「そうですね。私の見立てでは、彼女が魔力の制御を覚えるまでには、もう数ヶ月もかからない
でしょう。魔力は感情に密接に関係します。人間界に行ってから、大分感情が芽生えだしたようですし」
「くく、楽しみではないか」
「・・・では私はこれで」
部屋から出て行くアザミ。その顔に、わずかな嘲笑を浮かべ、呟く。
「・・・愚かな男ね。所詮、私利私欲でしか動いていない。まあ、利用価値が無くなれば、私が
直々に始末してあげましょう」
そう言った次の瞬間に、彼女は顔を歪め、口を抑える。その端から、真っ赤な血が零れ落ちた。
「・・・自分の体を無理にいじくった報い、か・・・。早くしなければ、私にも・・・あまり時間は
残されていないようですね・・・」
自嘲気味に、アザミは笑った。
今回の投下分は終了です。
「いつ大活劇になるんじゃゴルァ!」
とお思いの人もいるでしょうが、だいぶ先は長くなりそうです。
まだまだ量的には前半の前半といった感じですね(笑)
ラストまでのプロットは固めてあるんですが、いざ文章にすると結構むずいものがあります。
書きたいシーンはスラスラ書けるんですが、そうでないシーンはなかなか・・・。
そんなこんなですが、「神界大活劇」鋭意製作続行中です。
どうか最後までお付き合いください。
ではでは。
人魚姫以降凄い勢いだな皆。
また俺も書きたくなってキター!
557 :
作者の都合により名無しです:04/08/31 00:29 ID:aAiVTaP5
サマサさん、いつも全力投球お疲れ様です!
壮大なプロローグといったところですな。期待感が高まります。
HPの長編カテゴリ移行、おめでとう!最速記録だ!
>>556 どなたか知らないけど、頑張れ!!
俺は応援するぞ!!!
559 :
作者の都合により名無しです:04/08/31 08:19 ID:9C/HJcy/
サマサさん、ひとりひとりの心象描写がうまいな。
原作のゲームを知らない俺にも、キャラの個性がすっと入ってくる。
今は静かにな展開だが、活劇になったらアクションもふんだんにあるだろうな。
期待してるよ、がんばれ。
>>556 おお、○さんかな、違う職人さんかな?
とにかく、復帰大希望。
うみにんさん来ないな
現在424 KB。
>>600くらいまでいけるか?それとも無難にここらで次スレか?
バレさんが10日くらい更新出来ないみたいだからね。早目がいい。
一応、このスレ念のため落とさないようにしないといけないからね。
あと一人作品が来たら、位かな?
こんな尻詰まりな状況で投下するような職人はいないだろ。
だからさっさと建てたほうがいい。
なんか抜けてたり間違ったりしてないか?
ちなみに
>>567は新連載と、現スレで来た作品のみ乗っけてる。
みゅうや4×5、どうしようかと迷ったがな。
ていうか、次スレタイトル決まってないよw
【2次】漫画ネタSS総合スレ17【創作】 でいいの?
>>568 >ちなみに
>>567は新連載と、現スレで来た作品のみ乗っけてる。
OK。他は投げ出しみたいだし。
あと、スレタイもそれでいいと思う。
570 :
ふら〜り:04/08/31 21:12 ID:wD6iGutr
>>パラドックス(仮)さん
過去の世界で親が死んだから自分が消える、というのはタイムパラドックスの基本
ですが、のび太でなくドラえもんなところが微妙に新鮮。消滅の恐怖に包まれて、
淡々と語るドラえもんの姿は悲壮というか怖いです。特に、
>「ああ。生まれることはない」
この「ああ」が。「うん」じゃないところに重い緊迫感を浴びせられました。
お名前もタイトルも後書きもないのが少し不安なんですが、続き待ってますよぉ〜!
>>サマサさん
おぉおぉ。何だかじんわりと、危険ムードが忍び寄ってきているではないですか。
少女の過去と秘密、黒い幕の裏にいる者たち、そんな中で主人公に芽生えかける想い。
大活劇へのお膳立てがどんどん進んで、でもまだまだ先があるとのこと。楽しみです!
>>556さん
どなた様かは存じませぬが、いと頼もしき御言葉。その心意気にて存分に
腕を振るわれること、期待させて頂きますぞ。
>>で私は
すみません、もうちょっとで刃牙+某作品のが完成しますので、それを先に。
幽遊白書のもアイデアは纏まりつつあるので、↑の次には何とか。
で、次スレですか。今の元気&平和なまま、次いってみよう! ……ですね。
【総合】漫画SSスレへようこそpart17【SSスレ】
で立てていい?
このタイトルが今までで一番好き。
572 :
571:04/08/31 22:10 ID:2fKcVYbF
立てれなかったw
誰か頼む。
みゅうや4×5も一応入れてもいいんじゃない?
消しちゃったら本人も復帰しづらいし
螺旋階段ワラタ
いれなくて良いんじゃない?
やる気があるなら復活する。むしろ妨げられているほうがやる気がでるかもよ。
576 :
作者の都合により名無しです:04/09/01 08:24 ID:N58D319i
【総合】漫画SSスレへようこそpart17【SSスレ】 で次スレ立てたよ。
職人さん、住民さん移動よろしく。
誘導アドレスが俺のパソでは出ないみたいなので、誰か張ってね。
577 :
作者の都合により名無しです:04/09/01 08:28 ID:N58D319i
保守しとこ
579 :
作者の都合により名無しです:04/09/03 23:16 ID:yIWLGyPX
保守あげだい
バレさん支援あげ
age
582 :
作者の都合により名無しです:04/09/14 10:56:35 ID:V59VzyoI
あげ
保守
カキコテスト
コッ
ガッ
保守
こ
ヌルヌルぽ〜
なぜいまさらパート16をあげるw
とにかくwをつければいいと思ってる591
593 :
作者の都合により名無しです:05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
該当スレ消えちゃってるので教えてください。
590 名前: 作者の都合により名無しです [mage] 投稿日: 05/01/08 21:02:24 ID:SsXQPGO6
ヌルヌルぽ〜
591 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/08 21:16:05 ID:Wwhrsq+B
なぜいまさらパート16をあげるw
592 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/09 13:11:46 ID:M19S9jeq
とにかくwをつければいいと思ってる591
593 名前: 作者の都合により名無しです 投稿日: 05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
該当スレ消えちゃってるので教えてください。
593 名前: 作者の都合により名無しです 投稿日: 05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
該当スレ消えちゃってるので教えてください。
新着レス 2005/10/01(土) 18:46
594 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 2005/10/01(土) 18:47:08 ID:r7YVrReU0
590 名前: 作者の都合により名無しです [mage] 投稿日: 05/01/08 21:02:24 ID:SsXQPGO6
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591 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/08 21:16:05 ID:Wwhrsq+B
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592 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/09 13:11:46 ID:M19S9jeq
とにかくwをつければいいと思ってる591
593 名前: 作者の都合により名無しです 投稿日: 05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
該当スレ消えちゃってるので教えてください。
594 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 2005/10/01(土) 18:47:08 ID:r7YVrReU0
590 名前: 作者の都合により名無しです [mage] 投稿日: 05/01/08 21:02:24 ID:SsXQPGO6
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591 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/08 21:16:05 ID:Wwhrsq+B
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592 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/09 13:11:46 ID:M19S9jeq
とにかくwをつければいいと思ってる591
593 名前: 作者の都合により名無しです 投稿日: 05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
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新着レス 2005/10/01(土) 18:46
595 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 2005/10/01(土) 18:47:38 ID:r7YVrReU0
593 名前: 作者の都合により名無しです 投稿日: 05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
該当スレ消えちゃってるので教えてください。
新着レス 2005/10/01(土) 18:46
594 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 2005/10/01(土) 18:47:08 ID:r7YVrReU0
590 名前: 作者の都合により名無しです [mage] 投稿日: 05/01/08 21:02:24 ID:SsXQPGO6
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591 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/08 21:16:05 ID:Wwhrsq+B
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592 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/09 13:11:46 ID:M19S9jeq
とにかくwをつければいいと思ってる591
593 名前: 作者の都合により名無しです 投稿日: 05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
該当スレ消えちゃってるので教えてください。
597 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 18:49:09 ID:r7YVrReU0
596 :作者の都合により名無しです :2005/10/01(土) 18:48:18 ID:r7YVrReU0
594 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 2005/10/01(土) 18:47:08 ID:r7YVrReU0
590 名前: 作者の都合により名無しです [mage] 投稿日: 05/01/08 21:02:24 ID:SsXQPGO6
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591 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/08 21:16:05 ID:Wwhrsq+B
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592 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/09 13:11:46 ID:M19S9jeq
とにかくwをつければいいと思ってる591
593 名前: 作者の都合により名無しです 投稿日: 05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
該当スレ消えちゃってるので教えてください。
新着レス 2005/10/01(土) 18:46
595 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 2005/10/01(土) 18:47:38 ID:r7YVrReU0
593 名前: 作者の都合により名無しです 投稿日: 05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
該当スレ消えちゃってるので教えてください。
新着レス 2005/10/01(土) 18:46
594 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 2005/10/01(土) 18:47:08 ID:r7YVrReU0
590 名前: 作者の都合により名無しです [mage] 投稿日: 05/01/08 21:02:24 ID:SsXQPGO6
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591 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/08 21:16:05 ID:Wwhrsq+B
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592 名前: 作者の都合により名無しです [sage] 投稿日: 05/01/09 13:11:46 ID:M19S9jeq
とにかくwをつければいいと思ってる591
593 名前: 作者の都合により名無しです 投稿日: 05/02/24 17:30:27 ID:J3CvEdY/0
犯行予告をしたアフォはどんな漫画を馬鹿にされたんですか?
該当スレ消えちゃってるので教えてください。
600 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:00:57 ID:zA+ODI7N0
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作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:01:51 ID:zA+ODI7N0
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作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:03:59 ID:zA+ODI7N0
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作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:22:53 ID:zA+ODI7N0
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608 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:29:05 ID:zA+ODI7N0
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609 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:36:20 ID:zA+ODI7N0
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610 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:41:35 ID:zA+ODI7N0
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611 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:47:18 ID:zA+ODI7N0
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612 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:50:17 ID:zA+ODI7N0
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613 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:55:58 ID:zA+ODI7N0
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作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 19:57:49 ID:zA+ODI7N0
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615 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 20:01:29 ID:zA+ODI7N0
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616 :
作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 20:04:01 ID:zA+ODI7N0
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617 :
作者の都合により名無しです:
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