裁鬼さんが主人公のストーリーを作るスレ その2

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1名無しより愛をこめて
裁鬼は人知れず戦っている

裁鬼、その実力は鬼の中でも1,2を争うが、連戦に次ぐ連戦で
その実力を出し切れず、敗北を重ねつつある

今日もまた癒えない傷を庇いつつ
正義と平和のため、裁鬼は戦う

(裁鬼メインストーリーは前スレで完結)

○色んなな鬼のSSドシドシ募集中

現在連載中 仮面ライダー裁鬼(完結)
      仮面ライダー弾鬼(連載中)
      仮面ライダー剛鬼(連載中)
2名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 00:21:57 ID:y1PuUiHE0
3名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 00:23:29 ID:ZckQC0YdO

最近、いろいろなスレができまくりだけどサバキさん好きだから別にいいや。
4弾鬼SSの筆者:2006/01/24(火) 00:27:06 ID:8YWf6kLi0
すみません、容量制限の事すっかり忘れていました。
独断専行して皆さんに迷惑をかけてしまました。
申し訳ございませんでした。

>1 スレ立てご苦労様です。
5名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 00:29:34 ID:zZqFhx/O0
前スレが抜けてる・・・。
6名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 00:35:51 ID:y1PuUiHE0
7名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 00:36:11 ID:d6Xq2jdf0
>>5

前スレ「裁鬼さんが主人公のストーリーを作るスレ」

http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1131944389/l50


>>1乙です!
これくらいのお手伝いはさせてくれぃ
87:2006/01/24(火) 00:37:43 ID:d6Xq2jdf0
・・・・ゴメン、>>6 orz
9名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 00:40:15 ID:y1PuUiHE0
いや、サンクス。こっちのミスだからね。
SS作者の皆さん、期待してます!
10名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 00:40:23 ID:d6Xq2jdf0
そして、弾鬼SSの中の人、乙です!楽しみにしてますよ!


・・・・・あああ、連カキだよ orz
11名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 00:47:16 ID:JAs2qbdR0
裁鬼メインストーリーの作者の方お疲れ様です!有難うございました!
響鬼本編で物足りなかった点が見事に補完されました。
12名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 19:56:44 ID:qCoS/tEc0
鋭鬼スレで誘導してくれた人感謝!!!!
続きが出ないけど職人さんに続き希望とは遠慮して
なかなか書けなかった・・・

さすがに我慢し切れなくてカキコしようとして容量オーバーに気付きますた。
13名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 20:18:37 ID:Mc85CNrl0
昨日ここを知って、裁鬼メインストーリーをついさっき読み終わりました。
まずは執筆お疲れさまでした。
本編では語られなかった設定や、消化不良な設定などを上手くオリジナル設定と絡めてまとめてあり、
感動を通り越して呆れました(いい意味で)
特に、公式設定で蛮鬼さんは裁鬼さんの弟子となっていますが、頭の形が違うことに違和感を感じていたのですが、
それをちゃんとした設定をつけたカバーしてあったり、謎のミニギターまでカッコイイ武器に仕立て上げてあったりしたところには、魂が抜けていくほどに痺れました(笑
他の方々も言っていますが、素人(そうですよね?汗)でもここまでのものが書けるというのに、何故本編はあんなことになってしまったのでしょう。
プロって一体何なんでしょうね・・・(遠い目
本当に、この作品は後世に残したいくらいすばらしい作品でした。
感動をありがとうございました! 

他のSS執筆者の皆様も、がんばってください!
鋭鬼SSの「ときわ荘」と「いしもり先生」にはニヤリとさせてもらいましたよ(ニヤニヤ
闘鬼SSの「見るんじゃねぇ・・・」カッコイイです。管の鬼はクールなイメージがあるんだけど(偏見
そのイメージを覆させられました。
剛鬼SSは・・・剛鬼さんすばらしいオタクだ(笑 子供の頃からあんなにまでオタしてたら今頃は・・・。
今後の展開も楽しみにしてます。
弾鬼SS、弾鬼さんのおちゃめっぷりがなんとも(笑 冒頭の電話のシーンは本編とリンクしてるんですね。
すばらしいです。

響鬼本編は終わったのに、まだまだこれから始まるような感じがしてならないです。
俺からはこんなことしか言えませんが、皆さん、がんばってください! 感動を待ってます!!
14番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 20:45:19 ID:az/Y0Mry0
>『再会する弾女』(中)は前スレ713から

再び妙な空気に包まれる。やけにおとなしく聞いていると思ったら・・・・ダンキは怒りゲージを少し貯めた。
それよりも驚いたのは、口外しないという約束で話してもらうよう約束した吾妻だった。
「・・・・・とりあえず何回かコレを聞いて・・・・レポートに纏める・・・・」
ダンキゲージ上昇。
「・・・・ッ・・・ッ・・・フッフッフ・・・有難うダンキ君・・・・おかげで私の正当性は証明できたわ!
貴方の名前、いずれ出る私の自伝に残してあげるわ!」
さっきのしおらしさは何処へ飛んだか、天に拳を突き上げかねない勢いではしゃぎ出した。
戸惑う吾妻。吾妻はダンキと千明を見比べた後に、エイキを見た。エイキは完全に人事のように笑っている。
と、そこでエイキの携帯が鳴った。エイキはジェスチャーで『失礼』と合図し、その場を去った。
「先輩!来ましたよ!私達の時代が!」
「ちょ・・千明・・・」
「見てろよあンのハゲ編集長!いつもアゴで使いやがって!今度は私と先輩がアゴで使ってやるわ!ウフフフフ!」
ダンキゲージMAX!
ダンキはゆらりと立ち上がると、一瞬の早業で千明のレコーダーを取り上げ・・・
「だらあぁぁ!」
両の拳で粉砕した。
「あああああああああああああああああああああ!私のレコーダーァァァ!」
千明の絶叫の前にレコーダーはコナゴナの破片へと姿を変えた。そしてダンキは千明の目を見据えて叫んだ。
「今の話はなぁ!そんな自分の為に利用するような話じゃねぇんだよ!!」
ダンキは本気で怒っていた。
「・・・・判るか?俺等の仕事は人助けだ!でもな助けたくても助けらんない・・・間に合わない・・手遅れ
そういう時だってあるんだ!!そんな中で犠牲になった人たちの事を・・・。何が正当性だ!自伝だ!時代だ!
ふざけてんじゃねぇ!」
「・・・・・・・そ・・それは」
「俺は・・ジャーナリストってのは誰かの為に真実を暴く・・そういうヤツらだと思ってたよ」
「・・・っ・・そうよ、行方不明になった人の家族恋人の為に・・・正義の為によ!」
「お前のドコにそんな正義がある!」
ダンキのその言葉に・・・・千明は完全に打ちのめされた。
15番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 20:48:58 ID:az/Y0Mry0
それから暫くして・・・
うな垂れる千明に吾妻は付き添い慰めている。
エイキは電話から戻らない。
ダンキは野草を口に咥えてイライラを静めている。
そこへ、吾妻がそっと歩みよりダンキに謝罪した。
「ゴメンね・・あの娘・・・」
「・・・・・・・・あぁ」
会話が続かない。吾妻はムリに話題を作った。
「でも、信じられないな・・・段田君が鬼だなんて・・・」
「・・・・」
「・・・・・・・・・・んと」
「言い過ぎちまった・・かな・・俺。・・あぁ・・もう」
「え?」
ダンキは吐き出すようにそれだけ言った。
再び静寂の空間に戻るが、吾妻は・・・以前と同じ・・短気で
がさつで、粗暴なまま変わってないダンキに懐かしい
ものを感じた。

「まずい事になった・・ココを離れたほうがいい」
電話から戻ったエイキは開口一番そんなことを言った。
「どうして?」
吾妻の問いかけにエイキは
「日菜佳ちゃんからだった。この近くに魔化魍が・・出るかもしれないらしい」
「マカモウ・・・ってさっき話してた・・妖怪のことよね・・・なんでこんな場所に?」
「話は後!チャッチャと降りて、お茶飲んでここ離れましょう!」
慌ててその場から移動する4人。移動しながらダンキはエイキに尋ねた。
「ネクラのクグツのせいか?」
エイキはは辺りを見回しながらそれに返す。
「たぶんね。昨日浅間山の近くでウブメとヤマアラシが出たんだけど・・・もしかしたらクグツはほぼ同時期に童子
と姫を生み出してたんじゃないかって」
16番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 20:51:02 ID:az/Y0Mry0
ダンキも同様に周囲を警戒し・・・・
「・・同時にねぇ・・・よくもまぁ隠れてたもんだね・・・お前らは!」
ダンキは腰のDAホルダーから茜鷹を取り出し、手裏剣の様に投げつけた。
だが、それは目標を切り裂く事無く・・・・木の枝に登って待ち構えていた童子に受け止められていた。
「・・・・・ヒッ!」
「・・・・・・え・・・蜘蛛男女と・・同じ顔・・?兄弟?」
脅える吾妻と、ややズレた反応の千明。
「あちゃ〜。こりゃ下りてお茶ってワケには行きそうに無いねぇ」
エイキはゆっくりと腰の音叉に手を伸ばす。
『ウチの子がおなかを鳴らしてるんだ』
『餌になってくれるよね?』
オオアリの童子と姫は、枝から飛び降りると同時に衣服を巻き取り、怪童子と妖姫に変化した。
「きゃぁぁぁぁ」
「・・・・同じ・・・あの時と・・・」
千明は・・ダンキを見る。
ダンキはエイキの手を制して・・前に出る。
「ま〜ったく。昨日からツイてないよ・・・・もう。吾妻とその後輩!せっかくだから見せてやるよ・・俺の・・・」
『お前・・人間じゃないね?』
『鬼!鬼!鬼!』
「『鬼』をなぁっ!」
腰から素早く音叉を取り出し、展開させる。
エイキは・・・ダンキの変身の際の影響を思い出し、吾妻と千明を自分の後ろに下がらせる。
ダンキはメガネのフレームに音叉を当て音を放つ。
キィ・・・ィィィィィィン!
17番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 20:51:58 ID:az/Y0Mry0
音を放つ音叉を額に当て・・・鬼の紋様がダンキの額に印される。
ダンキは音叉を離しつつ、右足少し上げ・・・・踵を地面に叩きつけた。
それを合図にダンキの周囲に異変が起きた。
地面から錐状の岩石が突き出てきた。石錐はダンキの姿を覆い尽くすほど現れ、破砕した。コナゴナの破片はダンキ
に吸着するように合わさり・・・
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
人の形をした石像と化したダンキの低い声が響く・・・
周囲には大地の象徴である石が大小問わず散乱する。
そして、その中でダンキは弾鬼へと変わってゆく。
高まる気!
呼応するように力強くなる弾鬼の声。
鬼と成るのは・・人助けの為。
唯それだけの意志をもって『鬼』と成る。
鍛えているのはこの時の為。
今、裂帛の気合をもって・・・・・・・・・・ダンキは弾鬼へとその身を変えた。
「うぉぉぉおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

周囲へ飛び散る石。土煙の中現れるは単角の『鬼』。

全身は漆黒。頭部の隈取は蒼天のごときスカイブルー

弾鬼は、変身直後の調子を見るかのように右手を振る。

そして、倒すべき敵の姿を見据えるべく、その顔を上げた。
18名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 21:12:56 ID:qCoS/tEc0
コレだよ、コレ!
激情弾鬼に会いたくて鋭鬼スレの人に教わったりして
とうとう此処に・・・
19名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 21:29:48 ID:/xAIz6fe0
>>18
・・・・鋭鬼さんのことも忘れないでね・・・・・・・


そして弾鬼SS中の人!GJ!うぉぉぉぉっ!!
20名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 21:47:00 ID:qCoS/tEc0
>>19
もちろんです!
駄洒落は実は照れ隠しなんかじゃなく笑顔が見たいから…
吹雪鬼姉さんとのラブコメも気になるし!ww
21番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 22:49:00 ID:az/Y0Mry0
『再会する弾女(後)』

『へへ・・行くぜ』
弾鬼は、前傾姿勢をとった。右手の指先を軽く地面につけ、左手を水平に持ち上げる。
童子は先ほど掴んだ茜鷹を弾鬼目掛けて投げ放った。
『ハアァァァァァァァァァァァ!!』
その瞬間に弾鬼は地を蹴り、童子と姫に肉薄する。
投げ放たれた茜鷹を危なげも無くかわすと、そのまま右側の姫に膝蹴りを叩き込んだ。
その衝撃に堪らず、くの字に身を折る姫。だが、弾鬼はその隙を逃さず延髄に肘打ちを打ち込んだ。
『ギィ・・・ィ』
苦悶の呻きを吐き出す姫。それを聞きながらゆっくりと、膝と肘を離す弾鬼。姫は前のめりに崩れ落ちた。その
まま、次は童子に裏拳を叩き込み、振り払った左手の勢いを利用し、すぐさま腕を回すようにしてアッパーを放
った。弾鬼の拳は的確に童子の顎を打ち砕き、姫同様その場に崩れさせた。
『さてと・・・ここは足場が悪いな・・・・オラ、場所かえるからよ・・・』
弾鬼は衣服を巻き取って形成されるマフラーをそれぞれ掴むと、足場の横・・・すなわち崖を見て・・・
『・・・・崖下まで付き合いやがれ!!』
マフラーを引っつかんだままその場から跳躍し、崖下へと飛び降りた。
「ちょ・・段田君!」
吾妻は崖へ近寄り飛び降りた弾鬼を探したが既にその姿は無くなっていた。
「段田君・・・大丈夫なのかしら・・・・いえ、それ以前に・・・あれが『鬼』なんですか?」
吾妻はエイキの襟を掴みガクンガクンと揺さぶった。
「うわわわわ!落ち着いて!・・・ふぅ、そう・・あれが鬼・・『弾鬼』だよ。それに、弾鬼のことなら心配ないよ。
なんなら追いかけようか」
エイキは首を摩りながらそんなことを提案した。
22番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 22:52:08 ID:az/Y0Mry0
落下しながら、何度か地面に足を擦り付けて、戦闘に適した場所へ方向修正した。
そして、幾度目かの方向修正でようやく開けた場所が眼下に広がった。
『お!あそこがいいねぇ!オラァ!バカ童子にアホ姫、着いたぞ!先に下りてな!でぇりゃぁ!』
未だ滞空中の弾鬼は、マフラーを引っぱってココまで誘導した童子と姫を力いっぱい眼下の広場に叩きつけた!
『ォォォォォオオオアアアアア』
『ァァァァァァァァァアアアアア』
砂埃を巻き上げて大地に激突する童子と姫。相変わらずの男女逆転声で苦悶の声を上げる童子と
姫に再び『鬼』の声が降りかかった。
『ラ〜ウンド2!行くぜェ!!おぉぉりゃぁ!』
投げた反動で空中一回転し、落下スピードそのまま右足で姫を、左足で童子を踏みつけた。
『――――――――――――――――!!』
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!』
もはや鬼の耳ですら聞き取れないような声で悲鳴をあげる童子と姫。小規模な爆発を起こして童子と姫は消滅した。
『あ〜らら。根性の無いこった。さて・・残るはオオアリだな・・・・・・』
弾鬼は腰に手を当てて辺りをキョロキョロと見回した。
『あの辺・・怪しいねぇ。そら、行ってきな!』
弾鬼は腰につけていたDA浅葱鷲と黄赤獅子を起動させると、予想を立てた場所へと2匹を飛ばした。

エイキは吾妻と千明を連れて弾鬼が下りた場所へと向かっていた。
「あの・・・ダンキ・・さん・・大丈夫かな」
千明は再会当初の元気さはまるで無く・・消沈した声でそう呟いた。
「ん〜大丈夫でしょ。あいつ、だいぶ丈夫に出来てるから」
エイキは軽く返した。
「心配じゃないんですか?あなたも鬼なんでしょ!?」
「鬼だよ。ん〜手助けしてもいいんだけどねぇ、ヘタに手助けすると逆切れして俺まで攻撃しかねないからねぇ」
ゆっくりと、足場を確保しながら山道を下る。
「鍛えたから・・鬼になれたって言ったけど・・・やっぱり段田君が大学辞めたのは鬼に成る為だったのかしら」
「さぁねぇ。アイツ誰にも言わないんだよ・・・鬼に成った理由とか切っ掛けとか。知ってるのはアイツの師匠位じゃないかな」
ひょいひょいと、Q&Aが続く。そんな中、エイキにだけ小規模な爆発が聞こえた。
23番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 22:53:15 ID:az/Y0Mry0
「お!弾鬼のヤツ童子と姫を倒したみたいだな」
「・・・なんで判るんです?」
千明の問いかけに『爆発音が二つ。それもほぼ同時に聞こえたからね』と返すエイキ。
「・・・・・・・信じられない・・・なんて聴力してるのよ・・鬼って・・・・」
吾妻の呆れたような呟きに「鍛えたからねぇ」と簡潔に事実を述べるエイキ。
と、そこへ今度は吾妻や千明にまで聞こえるほどの爆音が鳴り響いた。

『ちっ!オオアリめ随分とおっきくなっちゃって』
弾鬼はオオアリの前脚攻撃をバックステップでかわし距離をとった。
全身は灰色に近い白。蟻をそのまま大きくしたスタイルに不気味に光る八つの眼。
鋭い顎。そしてその奥の口からは、全てを溶解させる蟻酸が垂れ流れ、オオアリの立つ地面を次第に溶かしていった。
『よっしゃ、いっちょヤルかぁ!』
弾鬼は前かがみになり、その姿勢のままオオアリへと疾駆した。
低襲態勢から一転、宙へ飛び空中で蹴りの態勢を取る。
『ぉぉぉぉぉ・・・・・おぅりゃぁぁ!』
刹那!蒼き流星と化した弾鬼はオオアリの顔面に蹴りを叩き込んだ。
余りの衝撃にその巨躯をもってして衝撃を消し去る事は出来ず僅かに後退する。
着地と同時に今度はオオアリの周囲をかく乱するように走り回る弾鬼。
『今のは壊された浅葱鷲の分だ・・・・ンでこいつがぁぁ!』
オオアリは8本の脚を振り回し弾鬼を振り払おうとするが、弾鬼は走るだけでなく跳躍も加えさらに翻弄する。
『黄赤獅子の分だぁぁ!』
腰から取り出した音撃棒・那智黒/吽をしっかりと握りこむと、右前脚目掛けて振り下ろした。
その一撃・・元々そこに障害物など無いかの様に・・自然にすり抜け・・・・根元からブチ折った。
弾鬼は続けて右側の残った脚に那智黒を叩きつけた。やはり同様の結果を迎えるオオアリの脚は既に
左側のみとなっていた。
『じゃ、盛り上がってきたけど・・お別れだぁ!』
弾鬼はオオアリの体に音撃鼓・御影盤を張り付けた。輝きながら巨大化し、三つ巴の太鼓が現れた。
弾鬼は那智黒をくるっと一回転させ・・・・
『行くぜッ!音撃打・・破砕細石の型ァ!だりゃぁぁぁ!』
太鼓目掛けて右手の那智黒を叩きつけた。
24番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 22:54:58 ID:az/Y0Mry0
『ハッ!タッ!ゼイャ!ハアッ!』
右手のみを素早く、且つ力強く叩きつける弾鬼。
その一撃一撃に含まれるは、魔化魍を塵芥へとへ還す清めの音!
その波動に苦しむオオアリは残った左足を使い逃げようとするが、清めの音により脚を動かす事も出来ず苦しむばかり。
だが、弾鬼にも焦りはあった。本来の破砕細石真価は左右の音撃棒を高速かつ連続で叩きつけるところにある。
だが弾鬼の音撃棒は片方のみ、これでは真の破砕細石とは言えない。それが、僅かに弾鬼を焦らせた。
『ギィギィギりギりギリギリ』
その時オオアリは何かに反応し、大口を空けて大量の蟻酸を吐き出した。
『何ッ!?』
弾鬼は一瞬気を取られ、その蟻酸が吐かれた場所へと目をやった。
その場所にはエイキと吾妻と千明が今しがた到着した所だった。
『エイキィィィィィ!』
弾鬼のあらん限りの叫びに、エイキは素早く変身音叉を叩き額にかざした。
25番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 22:56:20 ID:az/Y0Mry0
既に蟻酸はシャワー状に成っており完全回避は不可能。吾妻と千明は迫り来る何かに恐怖し地面に崩れた。
その中でエイキは全身から緑の炎を噴出し、跳躍した。跳躍位置は吾妻と千明の真正面。
正に蟻酸が二人に降りかかる寸前、エイキはその身を盾にし二人を死の雨からガードした。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
燃え盛る炎に蟻酸は悉く蒸発し、その一滴すらも大地と二人に届く事は無かった。
未だ炎を纏いながら着地し、着地の衝撃を完全に逃がした瞬間・・・・エイキは鋭鬼へと変身した。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・でぃっ!」
両の手を広げるようにして、未だ降りそそぐ蟻酸から二人を護る鋭鬼。やがて蟻酸は・・文字通り一滴も
吾妻と千明にかかる事無く・・・噴出を終えた。
「・・・え・・えい・・き・・さん?」
吾妻は身を盾にした鋭鬼に・・・恐る恐る声を掛ける。
「二人とも・・・大丈夫かい?」
鋭鬼は振り向かずに言った。
後ろからでは顔は見えないが、茶色の体にアサギ色の角・・・・。吾妻の中に鋭い鬼は強烈な印象を刺し穿った。
『弾鬼!・・・・・使え!』
鋭鬼は未だ片手で音撃棒を振るいつづける弾鬼に腰から音撃棒・緑勝/阿を抜き取ると弾鬼へと投げた。
クルクルと回転し緑勝は見事弾鬼へと投げ渡され弾鬼は右手の那智黒で叩く速度を僅かに遅くすると左
手で握りこんだ緑勝をタイミングよく叩き込んだ。
『うぉぉぉ!破砕!細石の型ァ!』
その速度は今までの比ではなかった。先ほどまでを『高速』とするならば今のは正に『光速』!
その連打にオオアリが耐え切れるはずも無く・・全身にヒビを生み出し・・崩れ・・・そして・・・
『終わりだぁぁ!でぇりゃぁぁぁ!』
左右同時に音撃棒を叩き込み・・・魔化魍オオアリを爆砕させた。
その体は・・塵芥となり・・・風に運ばれて・・・清えた。
26番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻:2006/01/24(火) 22:57:20 ID:az/Y0Mry0
顔の変身を解くダンキとエイキは吾妻と千明を助け起こす。
いつのまにか・・・空は茜色を帯びつつあった。
ダンキは千明に向かい、
『よう?いいのかい・・?写真撮らなくて?』
そんなことを言って・・一笑した。


都内・千明の家/
その夜奥多摩から戻った千明は、真新しいノートに一枚の写真を張り付け、ボールペンでスラスラと何事か書き付けた。

そのノートにはこう書かれていた。

『私、安藤千明は『鬼』に変身して人助けをする青年『ダンキ/弾鬼』と再会し、記者としての何かが変わった気がしました』
といかにも記者のような書き出しだった。
そしてその下には、何も飾らない女性の言葉でこう書かれていた。
『また・・逢えるかなっ!』

番外編『仮面ライダー弾鬼』一之巻『再会する弾女』    終
27名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 23:42:28 ID:qCoS/tEc0
タイトルの細かい表示が変化してるが
鬼ストーリーまとめ の管理人さん(ってか編集長?w)が
校正してくれるでしょう!

さて、感想だが
何この純愛熱血路線?コバルト文庫化かよ??
一番悔しいのは「音撃打・・破砕細石の型」のシーンで
弾鬼に「行ったれやああ!」と心で叫んでる自分が居た・・・orz

いや、ハマるわ!
28名無しより愛をこめて:2006/01/24(火) 23:51:10 ID:Mc85CNrl0
弾鬼さん漢だわぁ・・・。
本編では語られることのなかった鬼達のエピソードがこんなところで見れるなんて・・・。
本当になんていうか、感動の一言に尽きる つД`)
各所では響鬼批判の嵐が渦巻いてるけど、そんなこと全然気にならないような素晴らしさ。
俺マジで泣きそう・・・。
29名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 00:02:46 ID:0VCwVDl10
ところでまとめサイトが二つある意味は?
30名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 00:17:08 ID:ETKR4y0w0
>>29
どちらの管理人さんでもないんだけど、特に意味は無いと思う。
お二方とも鬼SSに惚れ込んでまとめていらっしゃる。
どちらでも、お好きな方を(もしくは二つとも)お気に入りに入れると
いいんジャマイカ。
31名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 00:19:43 ID:CtHWeYAN0
スレ違いスマソ…
フラで有名な NIGHT MARE CITY の音楽提供してた403氏の音が合うよ!

つ ttp://www.muzie.co.jp/cgi-bin/artist.cgi?id=a003884#music

とくに 夜雲流 〜闇風〜 がハマるかも?
32名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 02:12:16 ID:YUAl3kmi0
>>29
マジレスすると片方のサイトの人がスレ読んでなかっただけのような・・・
って一名無しがとやかく言うことじゃないか
33名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 13:18:44 ID:qLdAJ0I10
裁鬼さんの最終回キタ-----!!
ttp://meganeinu3.exblog.jp/2570215/
34名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 13:34:59 ID:MOE7i5wq0
あの”オロチ”から一年と数ヵ月後・・・新たな鬼が姿を現す。

その名は、仮面ライダー歌舞鬼。
一ノ幕 「超える時」
35名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 18:24:46 ID:CtHWeYAN0
36名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 19:53:33 ID:9adnz2aZ0
>>29
片方が阿、もう一方が吽
37名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 21:22:29 ID:0VCwVDl10
高力士だったとは……
38名無しより愛をこめて:2006/01/25(水) 23:26:24 ID:CtHWeYAN0
もれこのスレじゃ蛮鬼SS「僕が鬼に成った日」が一番すきだな!
もちろん他の話しでもどれだけ涙流したか・・・

で、話しはマイク・オールドフィールドのチューブラーベルズって曲が
「僕が鬼に成った日」BGMにいけるんじゃね?

エクソシストのテーマで有名になったアルバムだが
本来は-子供の頃に見た夢-が主題なのね!
エクソシストで使われなかった後半部とか結構イケルよ!
39名無しより愛をこめて:2006/01/26(木) 19:55:49 ID:a3BWN5A/0
>>33
師弟フォーメーションワロスww
こういう正当派ヒーローものもいいですね。
そして敏鬼テラロスwww
40番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/26(木) 21:29:37 ID:TW8ecpBNO
番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻『染まる腕』(前)

山奥の静かな朝。只ならぬ神秘性を感じさせる神社の境内に一人の青年が居る。
青年は一心不乱に設置された太鼓を叩いている。
その響く音は朝露に濡れた木々をすり抜け、山全体へと響き渡る。
やがて叩く力を強め、気合い一閃!
「はぁっ!」
両手のバチを振り下ろし最後の音を響かせる。
青年はゆっくりと手を下ろすと、なにかしらの感覚を掴んだのか、満足げに笑うと、その場から離れた。
「ダンキさ〜ん!大変だぁ〜!」
とそこへ一人の老人が現れた。
「飯田さん!どうしたのさ」
飯田と呼ばれた老人は肩で息をしながらダンキに告げた。
「昨日サバキさんがカッパにやられたそうなんじゃ!」
「サバキさんが?ホントかよ?」
ダンキはタオルで拭いていた顔を跳ね上げて飯田に詰め寄る。
「今たちばなの親父さんから連絡があって、カッパ自体はヒビキさんが倒したそうなんじゃが、今日シフトに入るのは避けさせる為に、ダンキさんには迎えをよこしたから、すぐにシフトに入って欲しいそうじゃ」
飯田のその言葉にダンキは嫌がるばかりか、
「丁度いいぜ!鍛えた新型、早めのお目見えと行きますか!」
不敵に笑い朝日目がけてバチを振るった。
41番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/26(木) 23:44:45 ID:TuJkhvLE0
10時過ぎにバンキが車でやって来た。ダンキは飯田に礼と別れを言うとバンキの車に乗り込んだ。

何事も無く車は進み、都市部へと入った。
「やはり、込みますね・・・さっきの道を左へ行くべきでした」
バンキはハンドルを指でトントンと叩きながら、一向に進まない道を睨んだ。
だが、隣のダンキから返事が無い為、横を向くとダンキは
「ZZzzzzzz・・・ん〜みどりちゃ〜ん・・・俺・・・・Zzzzzz」
「真昼間からなんて夢見てるんですか!!」
バンキはダンキの顔面にタオルをたたきつけた。だが・・・
「あぁ〜もう・・・Zzzzz・・・・・我慢できないよ・・・Zzzz」
効果なし。むしろ加速!
バンキは仕方なく、後方車に注意してブレーキを踏みつけた。速度は出てなかった為、タイヤの悲鳴は無かったが、激しい縦揺れが車内を襲った。
「うぉっ!何だ!事故か!」
ダンキは飛び起きて周囲を見回した。
異常なし。平穏無事。
「・・・バンキ・・・」
「ダンキさんがどんな夢を見ようと勝手ですが、僕の車で!昼間から!淫猥な夢を見ないでください!!」
バンキは若干キー高めでダンキにぴしゃりと言い放った。
だが、反応は無い。
「ダンキさん。聞いてますか?ダンキさ・・・」
「Zzzzzzzzzzz」
再び睡眠に入るダンキ。
バンキは、もうだめだ。と言わんばかりの表情で放置する事にした。
車はようやく進みだし、目的地へと急いだ。
42番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/27(金) 00:08:34 ID:PY6G7ufv0
都内/
ダンキはたちばなに都内に入り待機準備が出来た事を継げた。
『すまないね〜。鍛えに入ってる時に急な出動で』
おやっさんは、すまなそうな声でダンキへと告げた。
「いえ。一応サバキさんが気になるんで、一旦サバキさんトコに顔出します。その後は自由待機でいいでっすか?」
『そうだねぇ。何かあり次第また連絡します』
電話を終え、ダンキはバンキに携帯を返した。
「これから、どうします?家に帰るなら送りますが?」
バンキは難しそうな参考書を閉じるとダンキに問い掛けた。
「一件夜って欲しいトコあるのよ。サバキさんトコにね」
「成る程。お見舞いですか」
「まぁ、そんなトコ」
ダンキは助手席に乗り込み。バンキは運転席へと急いだ。
「一応サバキさんのご自宅に連絡しておいたほうが良いでしょう」
バンキは再びダンキに携帯を渡した。
車を走らせ、サバキの家へと進む。
ダンキは後部座席に置いてあるリュックから手帳を取り出すと、Telリストからサバキの自宅番号を探した。
「・・・・ダンキさん?サバキさんの自宅ならアドレス帳に登録してありますよ」
「・・ん〜。俺使い方判らないし・・・壊したら後々面倒だから・・・・」
ダンキは書かれた番号と打ち込む番号を一つ一つ確認しながらボタンを押した。
「・・・・・・・・何故でしょう。鬼は電子機器に弱いという特性でもあるんでしょうか」
「・・・・・あ〜モシモシ、ダンキですけど・・・・おぉ、石割!おぅ、お疲れ」
「・・・・・それともヒビキさんやダンキさん、サバキさん達だけの特徴なんですかね・・・興味深い。年齢と実力に何か関係があるのでしょうか」
バンキの考察癖は独り言となり、狭い車内にブツブツと流れた。

都内・佐伯家/
「おじゃまします」
ダンキはサバキの妻、春香に軽く挨拶しサバキの寝室へと通された。
扉を開けて入ると、サバキはベッドに体を起こして、石割はその横の椅子に座って写真を眺めていた。
「ちゃ〜す!サバキさん」
サバキは写真から顔を上げてダンキを迎えた。
「おぉ、ダンキ。なんだ・・すまないな。鍛えに入ってたんだろう?」
43番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/27(金) 00:26:42 ID:PY6G7ufv0
石割は立ち上がり、ダンキに椅子を薦めた。
ダンキは腰を下ろすと、今しがた見ていた写真を一枚拾い上げ眺めた。
「・・・・亮太の結婚式の写真だ。昨日あってな」
サバキは虚空を見つめながらダンキに教えた。
「へぇ〜!よかったじゃ〜ん!サバキさん、おめでとうございます」
「おぅ。アリガトな・・ダンキ」
「へぇ〜!コレが嫁さんかぁ。かぁ〜美人だねぇ!早くも孫が楽しみなんじゃないスか?」
ドッ!と起こる笑いに包まれる三人。
だが、ひとしきり笑い終わるとサバキは石割に目配せした。事前に打ち合わせたのだろう。石割は部屋から出て行った。
「一つ頼まれてくれるか・・・・何、大した事じゃないんだが・・・」
「何スか?」
「バンキに渡しておいて欲しいものがあるんだ」
ちなみにバンキは学友と電話の為車の中で待機している。
「サバキさんお待たせしました」
石割が戻ってきた。手には細長い箱と正方形の箱を持っている。石割はその二つをダンキに手渡した。
ダンキは箱に張られた紙を見る。紙には『勺拍子』と『爆熱』と書かれていた。
「音撃棒と音撃鼓じゃないすか・・・これをバンキに渡せば良いんですね」
「あぁ・・・そろそろ一つ上の段階の棒の使い方を教える頃だと思ってな。自分用の道具があれば・・精神的にも引き締まるものがあるだろう」
ダンキは桐の箱を撫でながら、修行時代の自分を思い出した。
初めて変身し・・・・
初めて童子と姫と戦い・・・・
初めて魔化魍と戦い・・・・
初めて音撃を決め・・・・
初めて『鬼』としての名前で呼ばれた事・・・・。
それらを思い出し、師匠としての優しさを見せるサバキに、自らの師匠を重ねた。
『なってないなぁ〜ダイスケ!』
『よくやった!ダイスケ!』
『そろそろ、お前も自分の型を持ちたいだろう?ダイスケ!』
「・・・・・・・・・断鬼(タツキ)さん」
「うん?」
僅かな呟きにサバキが反応した。
「・・・!あ、いや、スンマセン。ちょっと師匠の事を思い出しちゃって」
44名無しより愛をこめて:2006/01/27(金) 00:37:57 ID:XW/TyD8x0
>43
裁鬼さん来ましたね!!こうやって作品の世界観が広がって行くのは面白いです。
続きも楽しみにしてます!
45番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/27(金) 00:41:47 ID:PY6G7ufv0
「うん?」
僅かな呟きにサバキが反応した。
「・・・!あ、いや、スンマセン。ちょっと師匠の事を思い出しちゃって」
ダンキはそう言いつくろうと、箱を持って立ち上がった。
「じゃ、コレ。確かにバンキに渡しますよ」
「あぁ、よろしく頼む。それと、明日にでもたちばなに顔を出すと、おやっさんに伝えておいてくれ」
ダンキは頭を下げ部屋を後にした。
それを眺めていた石割はサバキに尋ねた。
「タツキさんというのは・・・」
「ダンキの師匠だ。強い人でな・・・・」
サバキはそれ以上何も言わなかった。

「おまたせ〜」
ダンキは先ほど同様、参考書を読んでいたバンキに声を掛けた。
「もう、よろしいんですか?」
「あぁ。あ、そうそう!ホイ」
ダンキは脇に抱えていた箱をバンキに渡した。
「これは・・・勺拍子!サバキさんの音撃棒じゃないですか!」
サバキは音撃弦だけでなく太鼓と管も使いこなせる、数少ない鬼だ。
「お前もソレの名前は聞いたことあるんだっけか?」
ダンキは運転席のドアの前にいるバンキを押しのけると運転席へと座った。
「はい!サバキさんの音撃棒は『炎夏』ですが、それと同様同質同精製の鬼石と、同じ霊木から削りだした木で作られた・・・いわば兄弟棒・・それが『勺拍子』だと聞いたことはあります」
バンキは慌てて助手席に乗り込む。
「ん〜半分正解。ソレの本来は持ち主はソウキさんだ。ソウキさんが音撃震・極楽をサバキさんに譲り渡したときに、後から受け継いだんだって」
「そんな・・大切なモノを・・・」
「お前さんはサバキさんの弟子だからな・・・だから託したんだろうさ。良かったじゃ〜ん!」
46番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/27(金) 01:02:29 ID:PY6G7ufv0
バンキは手にした勺拍子をじっと見つめた。
ダンキは車を発車させる。規則的な揺れが興奮したバンキを落ち着かせた。
「この・・音撃鼓は・・特に変わったところはなさそうですね」
『音撃鼓・爆熱』を手にとったバンキはマジマジと見つめてそう言った。
見た目は普通の音撃鼓だ。紅い縁取りに、金の巴紋。
「これも、ソウキさんの音撃鼓でしょうか?」
バンキはダンキに尋ねる。
「さ〜ぁねぇ。音撃鼓は・・・ぶっ壊れやすいからなぁ。まぁ、みどりちゃんに見せれば判るんじゃないかな?」
ダンキはメガネの位置を直しなが軽く返した。
バンキは笑みを浮かべながら『勺拍子』と『爆熱』に手を合わせた。
「サバキさん、ソウキさん。音撃棒・勺拍子。音撃鼓・爆熱。ありがたくお借りします」
「は?おいおいおい!お借りしますは違うんじゃない?」
ダンキはバンキの思わぬ発言に驚いていた。だが、バンキはきっぱりと
「いえ、正解ですよ。音撃鼓はともかく、音撃棒・勺拍子はいずれお返しします」
「はぁ!何でよ!!せっかくサバキさんが弟子のお前の為にくれたってのに!あぁ〜もう!本当は俺が欲しいぐらいなんだぞ!!」
ダンキは益々驚いた。コイツは話を聞いていなかったのかと!
「いずれ、石割さんが・・・独り立ちしたときに、お渡ししようと。僕もサバキさんの弟子ですが、やはりサバキさんの弟子といえば石割さんですから」
バンキは迷い無く・・・ハッキリと言い切った。
ダンキはその秘めた思いに・・・戸惑い・・・苦笑いし・・・そして、バンキの優しさを理解した。
ダンキはその思いに感動し、照れ隠しに大声で提案した。
「バンキ!!ハラ減ってない?メシ!メシ喰いに行こうよ!メシ!」
バンキも、そういえば!と言った表情で返す。
「そうですね、思い出せば朝から何も食べていません・・・・中華そば戎の五目そばが気分ですね!」

時刻は昼の2時。慌しい一日はまだ半分も残っている。
47名無しより愛をこめて:2006/01/27(金) 18:42:08 ID:M4twlusV0
弾鬼さん話、楽しみにしてます。
ちょっとした事なのですが>職人さま

>>40
実際「〜じゃ」という口調のお年寄りはあまりいないものです。
「山奥」よりも具体的に関東のどこか一地方を決めて、そこの方言を交えると雰囲気が出るのでは。
(ぐぐるだけでも、語尾の特徴ぐらいなら調べ易いかと)
かつて本編で登場した「歩」の皆さんは、いずれもそういう描写で「実在しそうな佇まい」を表現されていたと思うのです。
関東だと殆ど標準語になってる地方が多いですが、そこは年齢に合わせて。

>>41
>「ダンキさんがどんな夢を見ようと勝手ですが、僕の車で!昼間から!淫猥な夢を見ないでください!!」
前半と後半が相反するので、
「〜淫猥な寝言を口にしないでください!!」
ぐらいかなあ。

以上、生意気申し上げましたm( )m
48名無しより愛をこめて:2006/01/27(金) 19:05:54 ID:GD8t5DNI0
裁鬼ストーリーの設定と世界がちゃんと受け継がれている・・・
他人事ながら嬉しいねえ。
49弾鬼SSの筆者:2006/01/27(金) 19:10:40 ID:Uc9iWWEz0
>47
貴重なご意見有難うございます。
そうですね、確かに語尾で印象は随分変わってきます。
おっしゃる通り、調べることをしなかった手抜きの結果がこれですね。
次からは調べ、『実在しそう』感を高める事ができればと思います。
バンキのセリフに至っては完全にミスですね・・・何故気がつかなかったのやら(´Д`;

生意気などとんでもないです!!
改善点が明確に見えるので、ありがたい位です。

最後に、感想など書いてくださる皆さんへ
ご声援有難うございます。次もがんばって書こう!と、意欲が湧いてきます。
誤字脱字、引用ミス多発のSSですが、これからも読んで頂けたら嬉しいです。
50名無しより愛をこめて:2006/01/27(金) 22:29:39 ID:JTvxjSR+0
なんだかスレタイと中身が違ってきてるよなぁ・・・。


いえいえ、別に異存は無いですよ?w>弾鬼SSの筆者の中の人
51名無しより愛をこめて:2006/01/27(金) 23:13:56 ID:IppiOOy60
裁鬼さんのストーリーが完結してスレがいっぱいになった時点で、
次スレは響鬼の脇役の鬼のストーリーを作るスレにすべきだったね。
時間がなくてばたばたしちゃったから仕方ないけど。
52名無しより愛をこめて:2006/01/27(金) 23:31:52 ID:13/FCrh00
でも裁鬼のSS書く人が出てくるとも限らないけどな
53名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 00:14:27 ID:LxJtXNje0
おや、裁鬼は"響鬼の脇役の鬼"などではないと?w
54名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 01:06:01 ID:UtSMGbPq0
主役さ
少なくともこのスレではな
55名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 10:00:35 ID:fAMXfs5C0
やはり、裁鬼さん“たち”が主人公
にしておけば・・・

朱鬼さんの大河ドラマだって
56名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 12:15:01 ID:qzHJTiqh0
※このスレは移転しました

「裁鬼さんが主人公のストーリーを作るスレ その2」
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1138029584/
57名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 12:16:30 ID:qzHJTiqh0
↑すまん、その1に貼るつもりが・・失礼。
58名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 12:36:40 ID:ZT2QgFec0
桐谷がダークサイドに落ちる話ってつまんないかな?
明るい鬼SSシリーズが台無しになるかな?

響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」
運命は少年を闇へと突き落とした。
59響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」:2006/01/28(土) 12:45:59 ID:ZT2QgFec0
運命は少年を闇へと突き落とした。

第一話 桐谷 京介
「変身するなってどういうことですか!」
たちばなの地下室で京介はヒビキに向かって怒鳴った。
確かに許可は下りていなかったが、明日夢とひとみを守るための変身したことは、
正しかったと思っていた京介に、変身禁止の通告はこれ以上ないショックであった。
怒りを抑えられない京介にヒビキが静かに諭しはじめる。
「二人を助けたことは良くやったと思う、けどな、未熟な体に鬼への変身は負担が大きすぎる。だから、それに耐えられる体を作ることが大事なんだ。」
京介には納得がいかない。
「変身できたんですよ。それに、この通り僕の体はどこも壊れていませんよ!」
「平気なのは短い時間で変身が解けたからだ。まだ戦うには早すぎる。」
「僕はもう戦えます。現に戦えたじゃないですか。」
「しかし、すぐにやられたじゃないか。」
京介はサトリに返り討ちにあった事を思い出した。
「仮にあのまま戦い続けたとして、お前はどうしたんだ?」
「…」
「音撃もできない、破壊できるほどの力も無いだろう。」
ヒビキの言ってることは正しかった。
京介自身もあの時にできたことは、ただの時間稼ぎだった事は分かっていた。
力不足を素直に受け止めた京介は肩を落とした。
緊張が一気に解けたのか京介の顔から怒りが消え、
変わりに泣きそうな情けない顔になった。
60響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第一話:2006/01/28(土) 12:49:02 ID:ZT2QgFec0
しかし、落胆した京介にヒビキは言う。
「だけど、俺はうれしいんだよ、お前の成長が…。」
やっと出たヒビキからお褒めの言葉だった。京介の表情は少しだけ明るくなった。
「時間をかけてじっくりと俺の持てる全てを教えたい。だから、あせらずに進んでいこうぜ。」
まだ、気持ちの整理はつかなかったが、京介はひとまず落ち着いた。
「はい。」静かに返事をした。
「良し、じゃあ、香住実と先に行っててくれ。」
そう言ってヒビキは階段を駆け上がり、どこかに出かけた。
誰もいなくなった地下室で京介は静かに深いため息をつく。
深いため息は、自分の無力さに対する悔しさと情けなさ、
それらをすべて吐き出すかのようだった。

いつかヒビキに認めてもらいたい。
いつかヒビキ以上の鬼になりたい。
いや、僕なら最強の鬼になれる…。
京介は天井を見つめていた。
61響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第一話:2006/01/28(土) 13:41:11 ID:ZT2QgFec0
城南高校は下校する学生で校内が慌しかった。
明日夢は一緒に帰ろうと同じクラスのあきらを誘ったが、あきらは別のクラスの
ひとみと二人で買い物に行く約束をしたらしく、一人で下校することになった。
一年以上前にブラスバンド部をやめた明日夢にとって、病院でのアルバイトがない日は、二人と帰らない場合、
このあとは一人で過ごすしかなかった。
予備校にも通っていないため、真っ直ぐに家に帰り、夜遅くまで勉強をする。
今のご時世で予備校にも通わず医学部を狙うのはかなり困難な話だが、経済的に負担が掛かるため、より効率の良い勉強ができるのはわかっていたが、
明日夢は母の進めを断り、一人で勉強していた。
単語帳を取り出そうと、カバンに手を突っ込むと、明日夢の目に懐かしい顔が映った。ヒビキだった。
「よっ!」いつものポーズをしてヒビキは明日夢に近づいた。
「ヒビキさん、どうしたんですか?」
「急に顔が見たくなってな。」
二人はちょっと散歩することにした。

以前に再開した時はお互いの近況などはゆっくり話せなかった。
二人はお互いの空白の時間を話し合った。
受験のこと、鬼の仕事のこと、将来のこと、そしてヒビキから京介の事も聞かされた。
「変身したらいけないんですか?」明日夢はたずねた。
「まあ、体は平気なんだけどな、鬼ってのは文字通り鬼だからさ。」
「心を鍛えておかないとすぐに自分の鬼に支配されるんだよ。」
ヒビキは京介には言わなかった事を明日夢に話した。
「京介の志はいいんだが、あいつは少し暗いと言うかさ、必死だろ?」明日夢はうなずく。
「でも、結構良くなったんだぜ。」ヒビキは笑う。
「あきらを変身させなかったのもそういう理由だし、あきらは
 そんな自分に気が付いたんだけどな、京介にはまだ無理かな。」
明日夢はヒビキに大事にされている京介が少しうらやましかった。
「立派な鬼になってくれるといいですね。」
「そうだな。明日夢も立派な医者になってくれよ。」
「はい。」明日夢は気持ちのいい返事をした。
62響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第一話:2006/01/28(土) 13:43:39 ID:ZT2QgFec0

城南高校は下校する学生で校内が慌しかった。
明日夢は一緒に帰ろうと同じクラスのあきらを誘ったが、あきらは別のクラスの
ひとみと二人で買い物に行く約束をしたらしく、一人で下校することにした。
一年以上前にブラスバンド部をやめた明日夢にとって、病院でのアルバイトがない日は、二人と帰らない場合、
このあとは一人で過ごすしかなかった。
予備校にも通っていないため、真っ直ぐに家に帰り、夜遅くまで勉強をする。
今のご時世で予備校にも通わず医学部を狙うのはかなり困難な話だが、経済的に負担が掛かるため、より効率の良い勉強ができるのはわかっていたが、
明日夢は母の進めを断り、一人で勉強していた。
単語帳を取り出そうと、カバンに手を突っ込むと、明日夢の目に懐かしい顔が映った。ヒビキだった。
「よっ!」いつものポーズをしてヒビキは明日夢に近づいた。
「ヒビキさん、どうしたんですか?」
「急に顔が見たくなってな。」
二人はちょっと散歩することにした。

以前に再開した時はお互いの近況などはゆっくり話せなかった。
二人はお互いの空白の時間を話し合った。
受験のこと、鬼の仕事のこと、将来のこと、そしてヒビキから京介の事も聞かされた。
「変身したらいけないんですか?」明日夢はたずねた。
「まあ、体は平気なんだけどな、鬼ってのは文字通り鬼だからさ。」
「心を鍛えておかないとすぐに自分の鬼に支配されるんだよ。」
ヒビキは京介には言わなかった事を明日夢に話した。
「京介の志はいいんだが、あいつは少し暗いと言うかさ、必死だろ?」明日夢はうなずく。
「でも、結構良くなったんだぜ。」ヒビキは笑う。
「あきらを変身させなかったのもそういう理由だし、あきらはそんな自分に気が付いたんだけどな、京介にはまだ無理かな。」
明日夢はヒビキに大事にされている京介が少しうらやましかった。
「立派な鬼になってくれるといいですね。」
「そうだな。明日夢も立派な医者になってくれよ。」
「はい。」明日夢は気持ちのいい返事をした。
63響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第一話:2006/01/28(土) 13:46:52 ID:ZT2QgFec0
↑重複スミマセン 続き↓
奥多摩の山奥で京介は戻ってきたディスクアニマルのデータを整理していた。
ヒビキが明日夢の様子を伺ってくるので、京介は香住実の運転でに先に送ってもらっていた。
「また、はずれか。」
地図に書き込んだディスクアニマルの番号にバツ印をつける。
得意な作業であったが、京介はこの地道な作業が嫌いだった。
仮に魔化魍を発見しても、退治するのは自分ではなくヒビキだ。
現場でサポートすることはあっても、退治はさせてもらえない。
修行でも本格的な組み手などは行ったが、
まだ、魔化魍を清める為の音撃は教わってなかった。
早く一人前の鬼になりたい、僕はもう変身できる。
音撃を伝授されれば、どんな魔化魍にも負ける気はしない。
昼間の落胆を忘れるように京介は気持ちを強く持とうとするため、
自らをそう思い込んだ。
64響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第一話:2006/01/28(土) 13:51:35 ID:ZT2QgFec0
「これもだめか」
戻ってきたディスクを違う捜査地点に再び送ると、
他のディスクアニマルが戻ってくるまでの間、
京介は練習用の音撃棒で空を叩き、音撃の基礎練習を始めた。
ヒビキに教えられている太鼓が無い時の練習法は、
目の前に太鼓があるとイメージをして叩くと言う古典的な方法だった。
初めて教わったとき、京介はくだらないと反発した。
そこで、ヒビキが実際にやってみせると、
初めはただの素振りがスピードとパワーが
加わり始めると、空気の壁を叩き始め、その衝撃音が聞こえた。
さらに叩き続けると、衝撃音ははるか後方にまで伝わる衝撃波へとなった。
そんな光景を目の当たりにした京介は黙って練習をする事を約束した。
しかし、三ヶ月以上たっても、京介には空気の壁を叩くどころか、
空気の感触すら掴めって無かった。。
65響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第一話:2006/01/28(土) 13:52:29 ID:ZT2QgFec0
一時間以上も練習をしていると、一体のディスクアニマルが京介の元にもどった。
それがきっかけになり、一時、休息を入れることにした。
テントから水を取り出し、椅子に腰掛けてディスクを再生する。
「また、はずれか…。」
ディスクは電池が切れ掛かっていたので、一旦戻し、他のディスクを放った。
しかし、アカネタカが空に飛び出した瞬間、アカネタカは粉々に砕け散った。
緊張感がはしった。京介はすぐに辺りを伺う。
後ろを振り向いたその時、何かが京介に飛んできた。
すぐさま、体を捻りよける、飛んできたものを確認すると、そこには
ぐしゃぐしゃにつぶされたディスクアニマルが転がっていた。
投げられた方向を振り向くと、その先には身なりのいい男女がたっていた。
「おまえたちは!」京介は音撃棒を構えた。
二人は不気味な笑みを浮かべる
「鬼がいるかと思ったが、鬼じゃないみたいだな。」
「僕は鬼だ。」京介は音叉を手に取った。
「ほお…。変身できるのか?」男はあざ笑う。
「なれるなら鬼になってみなさい。」女も笑う。
しかし、京介にヒビキとの事がよぎった。
幸い襲ってくる様子もない。京介は音叉を腰に戻した。
「なんだ、変身しないのか。」「できないの?」二人は笑った。
「見世物じゃないからな。」京介は言い返した。
「じゃあ、用はない。」男は笑う。
「つまんないわ、帰りましょ。」そういって男女は消えていった。
「おい!まて!」叫んだがもうすでに居なかった。
気配も辺りから消えた。
「くそ!」逃がした事へのくやしさではなく、
相手にすらされなかった事が一番の屈辱であった。
「変身さえできれば…。」ギリギリと奥歯をかみ締める。
ヒビキが到着したのは、この一時間後だった。
66名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 14:38:28 ID:+a7HTwD70
>>59-65
GJ!GJ!

他の職人さん方もGJ!です。
続きが楽しみ〜
wktk
67名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 17:02:21 ID:cerjvVfZ0
ほお〜〜☆
桐矢君を逆に主人公にするって
こいつぁいいですね!!
「狂鬼」って桐矢変身体に名前を付けるスレで見た事あるような?
今後が楽しみです!応援してます。
68名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 19:59:20 ID:wCZhPF3K0
桐矢がダークサイド化したら
今度こそ鬼払い成功するぞ〜と
イブキが張り切るな。

そしてヒビキに横取り四拾萬
69名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 20:09:51 ID:tCBrI7gp0
狂鬼を倒すのは明日夢変身体ですか?
70名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 20:27:45 ID:9yNzbuFb0
「鬼払いしか京介を救う道は無いんですか?・・・」

人を救うため鬼の道をあきらめた明日夢に告げられた友を救う道は

    ―鬼払い―

・・・とか、辛いよ!違うよね?
71名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 20:34:03 ID:YK7q38QC0
京介は成長して見せたと思ったんだが……嫌われてるのかな?やっぱ
72名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 20:47:50 ID:tCBrI7gp0
明日夢がフルムーンレクトで京介を救済。
73名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 21:18:00 ID:9yNzbuFb0
>>72
判らずググったらウルトラマンコスモスだったか・・・
74名無しより愛をこめて:2006/01/28(土) 23:11:09 ID:wCZhPF3K0
>>70
鬼払いってのは、文字通り鬼を払うわけで・・・

ある鬼が他の鬼をヌッコロスことに限らない。
鬼本人が自分の中の鬼を払えれば良いわけで。
75京介の話考えた人:2006/01/28(土) 23:21:39 ID:9ue7vE+y0
どうも、ID違いますが、作者です。
もっと「桐矢の話なんかすんな!」ぐらいは言われると覚悟してたんですが、
予想と反して、反響が良かったので驚いてます。
ちなみに桐矢と桐谷を間違えました。
たぶん皆さんの想像以上のストーリーにはできませんが、
なんとなく納得できる話にはなると思います。
SWのアナキンを見守る気持ちで見ていただけたら幸いです。
ちなみに第二話は1/30に掲載予定。
76名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 01:06:17 ID:8bfV59dU0
>>75作者さん乙!
桐矢の事好きになったとこだったので、こういう話があるのは嬉しいよ
期待してます!
77名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 08:36:14 ID:mQSM0o1f0
>>75
いや、マジに京介キライだったから叩くつもりだったのね!
でも良い展開と感動してりゅ30日が待ちどおしい!ww
78名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 10:19:06 ID:8COigCXk0
裁鬼さん同様、本編では十分説明し切れずに、釈然としないものが残った桐矢。
それを補完してくれるようなストーリーを期待してますよー。
79名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 10:45:42 ID:D000xaVJ0
裁鬼職人さんが他の鬼のストーリーもUpしてくれるのを期待してます。
80名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 11:29:56 ID:HL8gZY9x0
在りし日の斬鬼や朱鬼や小暮さん現役時とか
傀儡さん物語とか題材は尽きないしな。
81名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 16:40:52 ID:IXc0yBOP0
>>80
・・・・DAはダメかな?ダメかな?鬼じゃないからダメかな?
節分に向け、DAメインの小ネタを準備しているんですけど・・・・
82皇居の守護鬼:2006/01/29(日) 17:52:38 ID:vXqZ5b6v0
 東京地下、百六十米。
 闇の中、妖しく輝く、光、光、光。床となく天井となく不規則に蠢く十八対の瞳。獲物を仕留めるべく、隙無く付狙う憎しみの焔(ほむら)燃ゆる眼(まなざし)。拳ほどもある、仄白い異形の眸(まなこ)が睨(ね)めるもまた異形。
「童子は?」「おりませぬ!」「姫は?」「見失いました!」「やむをえぬ。こやつらをここへ追い込んだだけでもよしとしよう」
 鉄(くろがね)のごとき屈強の体躯は、淡光を弾き炯々と。額に生ゆるは鋼(はがね)のごとく、折れぬ心と闘志の証。異形三匹、それぞれが背を背に負い十八の異形を迎え撃つ。
 なぜに我等の邪魔をするか?
 なぜに我等を傷つける?
 父(おと)はどうした?
 腕をもがれた──
 母(かか)はどうした?
 額を割られた──
 ──おお…。
 ──ああ…。
 我等は力を手に入れる。
 我らは増えねばならぬのだ。
 なのに、ああ…
 ああ……!
 何故にうぬらは我等を阻む?
 何故にうぬらは我等を殺す?
 ええ、口惜しや。
 あな悔しや。
 喰うてくれよう。
 啜ってくれよう。
 許さぬぞ──鬼めらがっっ!
「来るっ!」十八の異形は怒涛のごとく。三匹は波面に漂う花弁(はなびら)のごとく。双眸は唸りをあげ一直線に。鉄の影は迅雷の疾さで全てを逃れる。
 静寂(しじま)。
 どくん。闇の最奥聞こゆるは、誰の血潮の高鳴りか?
「いざ!」一匹が呼ばわる。
「応、いざ!」他の二匹が応える。
83名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 18:05:39 ID:vXqZ5b6v0
 凛!一匹の持つ剣が、清浄なる音をあげ、吼えた。
 ぃいよぉおーおっっ!二匹が撥を振り翳す。
 怒涛──。
 迅雷──。
 すれ違いざま、奇妙な軌跡を描き「音」が奔(はし)った。重い刃が薙ぎ走る。異形の肉が切り裂かれ、骨を絶ちながら清き波動が流れ込む。
 爆散。すれ違いざま片手で何か貼り付け、返しの撥を振り抜いた。二つの鼓動が見事に和す。凄まじき衝撃。異形の細胞が紫電の疾さで自壊する。
 爆散。 十八が十五に。
 ざわ。異形が驚愕した。
 おお、斬られた!
 砕かれた!
 我等の疾さを凌駕するというか?! 
 鬼め!
 鬼めぇ!
「さかしい。魔化魍がヒト並みの知恵を持つかよ」剣持つ鉄(くろがね)が吐き捨てる。「日に日に戦いにくくなってまいりますな」「これも龍脈の影響でありましょうか」 撥持つ鉄が呟く。
  ──一気にゆこう。反撃の隙は無い。与えない。
 どくん。心の昂ぶり。荒ぶる心。清音が疾り、鼓動が闇に響きわたった。
 十五が十二に。瞬き一つ。
 十二が九に。瞬き二つ。
 九が六に。瞬き三つ。音に斬られ砕かれ、数を減らしてゆく。
 六が三。
 ──そして。 闇は闇へと還った。暫しあって。鈴鳴り。金属か、それに近い物質同士の触れ合う音。遠ざかって行く三人分の足音。足
早に。
 古より時代の陰にて暗闘を続ける者達ありその者達、人にあって人に無く、魔にあって魔にあらざる。清音奏でる楽器を武器とし、魔に立ち向かうものなり。己(おの)が心と身体鍛えぬき、魔すら取り込み戦うものなり。その者達、自らを陰に住まう者と呼ぶ。
 ──すなはち《鬼》と。
84名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 18:07:08 ID:H/JETZhnO
>>81
クグツが出る位だからいいんジャマイカ?

ピカ中のなつやすみ的な話だったり…(^^)
85名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 18:49:48 ID:Ac+pckQs0
>>82-83
うおおっ!何か、かっこいいんでない?
期待してるッス!
86名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 19:14:47 ID:AlsDLNO30
現代の鬼払いはアレだな
銀開発の、筋肉を低下させる薬で強制的に変身能力を無くすんだな
87番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/29(日) 20:07:07 ID:djHL4wrc0
番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻『染まる腕』(中)

都内・中華そば戎/
少し遅めの昼食を取るダンキとバンキ。
互いに無言で麺を啜る。
そこへ、電子音が響く。バンキの携帯だ。バンキは箸を置き携帯をとり画面を見た。画面には『たちばな』と表示されている。
「はい、お待たせしました。バンキです」
通話ボタンを押し、丁寧な口調で電話に出るバンキ。
『バンキ君ですか〜?日菜佳です〜』
「どうも、お疲れ様です」
『今、どちらにいらっしゃいます?』
「今はダンキさんと一緒に戎で昼食を取っています。・・・・・・もしかして」
バンキはそこで一旦置き、周囲を見た。店内には数人の客がいた。主婦、サラリーマン、学生とさまざまだ。
「出ましたか?」
人前で『魔化魍』の事は話せない。それを第一に考え、バンキはあえてそう尋ねた。結果は想像通り魔化魍が発生したらしい。
『そうなんです〜。ただ、今回出たヤツが・・・ひっじょ〜ぉに珍しいヤツでして・・一度こっちに着て欲しいと父上が言ってます〜』
「判りました。では、今から急いで向います」
バンキは通話を終了させるとダンキに「出番です」と簡潔に言った。
ダンキは口にくわえたメンマを飲み込むと
「新型お披露目だな」
と言い。残ったスープを一気飲みした。

都内・たちばな地下/
たちばなに着いたダンキとバンキは、早速今回現れた魔化魍のデータを見せられる。
プリントアウトされた紙に『魔化魍・ガシャドクロ』と書かれている。
「ガシャドクロ・・・僕は初めて聞く名前ですね。夏のヤツですか?」
「あぁ・・見た目は人の形をした白骨なんだけど・・・これが、厄介でね〜。一旦分裂してから、再度合体して大きくなるんだ」
おやっさんは古い資料をめくりながらそう説明した。
88番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/29(日) 20:08:39 ID:djHL4wrc0
「一番最近に現れたのは・・・13年前の九州ですね。その時は先代の砕鬼さんと爪弾鬼さん。あと戦慄鬼さんの三人で倒されてますね〜」
日菜佳がパソコンを操作しながら一番最近の出現履歴を呼び出した。ちなみに今回の出現場所は群馬県の榛名山である。
そこには三人の鬼の名前が表示されている。
「力押しで倒せるんでしょうか?大きくなるというと・・ヤマビコ程度ですか?」
バンキの質問に日菜佳は、画像データを呼び出してプリントアウトした。
「当時の写真をデータ化したんで見難いと思うけど、ココに見えるのが先代の爪弾鬼さんでぇ、目の前にあるデカイのが、ガシャドクロの脚だそうですよ〜」
鬼とわかる人影の前に巨木のようなモノがある。コレが脚とするならば全体像は・・・
頭で計算するバンキ。そこから導き出された答えは、
「・・・信じられません。20mを超えるじゃないですか」
バンキは、紙をダンキへと渡す。ダンキはそれを軽く眺めると
「デカイじゃ〜ん!」
「・・・それだけですか!!コレをみて不安になるとか無いんですか!!」
軽い反応をするダンキにバンキは声を上げる。
だが、ダンキはバンキの頭に手を置きグシャグシャと撫で回す。きれいにセットされた頭髪が乱れた。
「無いね。そうならない様に『俺達』は鍛えてるんだろ?データに負けてどうすんのよ〜!」
ダンキは迷い無く言った。それを聞いたバンキは、口に出さなかったが、ダンキの自らに対する自信を羨ましく思った。
『・・いけませんね。データが大事なのは昔から言われてますが、そのデータに押し負けるようじゃまだまだ未熟ですね』
バンキは反省反省と言わんばかりに深呼吸した。
「で、おやっさん。メンツは俺とバンキの二人だけ?誰か他に居ないの?」
ダンキはおやっさんにそう質問した。
「今ねぇ・・・・妙義のほうで・・ショウキ君がヒトウバンを追ってたんだけど、さっき無事倒したって報告があったんで、ショウキ君にもお願いして向かってもらう事になってます」
「お!ショウキかぁ。コレで三人。13年前と人数は一緒になったな!これで、倒せなかったら『最近の鬼は!!』って怒られるな!気合入れて行こうぜバンキ!」
ダンキは、腕をグルグル回してバンキに発破をかけた。
89番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/29(日) 20:09:24 ID:djHL4wrc0
と、そこへみどりが扉を開けて現れた。その手には三つの箱を持っていた。
「あら、ダンキ君にバンキ君。ちょうど良かった。コレショウキ君用の音撃棒と音撃鼓ね」
みどりはダンキに音撃棒と音撃鼓の入った箱を手渡した。箱に張られた紙には『風切』と『向風』と書かれていた。
「あぁ〜、そういえばバンキ君用の音撃棒も渡さなきゃね!ちょっと待ってて」
みどりが再び研究室に戻ろうとしたが、それをバンキが呼び止める。
「僕の音撃棒なら、先程サバキさんからお借りしました」
その言葉におやっさんが「ほう」と言葉を洩らす。
「バンキ君、それは〜・・・もしかして?」
「はい、『勺拍子』です」
「そうか・・・大事にしなさい」
おやっさんは穏やかにそう言った。
みどりは、その言葉の後に再びダンキに箱を手渡した。この箱は先ほどの二つと同じ様な箱に入っていたが、名前がかかれていなかった。
「それ、前に言ってたヤツね。試作型の余りだから耐久度は弱いけど、威力は完成版と同じくらいだから、気をつけて使ってね」
恐らくダンキは何事かみどりに相談したのだろう。
「ありがと、みどりちゃ〜ん!」
ダンキは三つの箱を重ねて持った。
「じゃ、おやっさん行ってくるよ!!」
「では事務局長、行ってきます」
階段を上る二人。その後を日菜佳が追う。
表へ出て車に荷物を積み込むダンキ。積み込みが終わるとダンキとバンキはお得意のポーズを決め
「行ってくる」
「行ってきます」
日菜佳に告げた。日菜佳も火打石をカッカッ!と鳴らしてゲン担ぎをして見送った。
90番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/29(日) 20:10:26 ID:djHL4wrc0
群馬県・榛名 天目山付近/
榛名湖より僅かに下ったところにベースを構え、ショウキとの合流を待ちながらDAを展開させた。
ダンキは音叉で。バンキは鬼弦でそれぞれDAを展開させた。
「よろしく〜!」
「頼みますよ!」
DAたちを見送ると、ダンキはバンキの太鼓の練習を見てやることにした。
『勺拍子』を手に素振りをするバンキ。一通り素振りを見た後に、ダンキは那智黒を構え素振りを見せる。そして、またバンキに素振りをさせた。
ダンキは口でアレコレ教えるのではなく、体現動作をもってバンキに棒の使い方を教えようとした。
「バンキ!俺を童子と思って打ち込んでみ!」
「・・・はぁ・・はぁ・・加減できるほど・・・・はぁ・・・まだ勺拍子に慣れてません・・・怪我しても、知りませんよ!」
「そういう事は、上がった息を抑えてから言うもんだ!来い!」
「はぁ・・・・はぁ・・・っ!」
バンキは右の勺拍子をダンキ目掛けて振り下ろす。ソレを左の那智黒で受け止めるダンキ。即座に右の那智黒を振るう。バンキは左の勺拍子で受け止めようとしたが、その一撃はバンキの想像を上回る攻撃だった。
ダンキは音撃棒に着いている指通しリングを使い音撃棒を回転させながら打撃を繰り出した。回転により連続で叩き込まれる衝撃。バンキの手から勺拍子が離れ、地へと落ちた。
「ま、こんな感じ。正統派な攻撃が全てじゃないって事!」
ダンキは勺拍子を拾い上げ、バンキに手渡した。バンキは複雑な面持ちでダンキから勺拍子を受け取った。
そこへ、車のエンジン音が聞こえた。
続いて、停車音とドアの開け閉めの音。
車から降りたのは短髪の青年。人懐っこそうな顔が印象的だが、それ以上に印象的なのはその服装だった。
白いTシャツに筆文字で大きく『土星』と書かれている。
「やぁ!ダンキ君!遅くなってごめんよ!バンキ君も悪かったね、待たせちゃって!これ、お土産のこんにゃくね!終わったら皆で食べよう!」
快活に話す青年こそ、ショウキ。ダンキやバンキと同じく鬼の一人である。
バンキはそんなショウキを見て思わず小声で呟く。
「・・・・・今回の服も強烈ですね・・・さすがショウキさん」
91名無しより愛をこめて:2006/01/29(日) 20:11:24 ID:H/JETZhnO
>>86

それか某星雲仮面のカタルシ○ウェーブみたいな光線で鬼に変身出来ることを記憶から綺麗さっぱり消すとか…?

薬と併用なら完璧か?
92番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/29(日) 20:11:36 ID:djHL4wrc0
折りたたみ式のテーブルで作戦会議をする三人。
魔化魍ガシャドクロの情報を頭に叩き込む。
が、ダンキは早々にリタイヤした。
「あぁ〜もう!コイツ面倒だよ」
バンキも珍しく困り顔だ。
「そうですね。個体から分裂し合体。その合体したヤツの体を砕けば、また再度等身大に分裂。一定数に達すると再度合体・・・・・これは厳しいですね」
ショウキも困惑気味だ。
「う〜ん、夏のヤツと普段の巨大なヤツを同時に相手するようなもんだよね」
「短期決戦がポイントですが・・・・せめてヒビキさんの紅があれば、その限りではないでしょうけど」
といってダンキを見るバンキ。その視線に気がついたダンキは
「そんなこと言っても、俺はまだ成れないんだからしょうがないじゃ〜ん!」
「・・・・・いえ、そうではなく。今回のカギは出際にみどりさんから渡されたモノがポイントだと読んでるんです」
バンキが言うのは、ダンキに渡された箱の中身だろう。
「ん?あぁ、あの箱?」
「違いますか?」
そこへDA瑠璃狼が帰還した。ショウキが立ち上がり瑠璃狼を迎える。
「まぁ、アレに関しては今のところ秘密だな」
「意味深ですね。そうとうな秘密でも?試作型とかも言ってましたが」
引き下がらないバンキ。魔化魍だけでなく、音撃の研究をも精力的に行うバンキにとって、その謎の物体は興味を引かれるのだろう。
だが、ショウキが音笛とDAを持ったまま戻ってきた。
「当たりだよ。青の7番だからココから少し北だね」
「よっしゃ!それじゃ、行きますか!」
ダンキがショウキと肩を組みバンキが頷く。
三人の鬼はそのポイントへと移動した。
93番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/29(日) 20:14:29 ID:djHL4wrc0
群馬県・榛名湖付近/
三人はポイントに着くなり顔を顰めた。
そこは既に地獄絵図と化していた。めちゃくちゃに荒らされた大地と木々。
そして明らかに人間ではないモノの気配。
『鬼さんこちら〜手のなるほうへ〜』
『鬼さんこちら〜手のなるほうへ〜』
童子と姫が木々の陰から現れた。
「あぁ〜もう!面倒なヤツを生み出してくれたね!テメェ等は!いいかげん懲りやがれ!」
ダンキがジャージの上着を脱ぎ、投げながら童子と姫に言う。
「それに、同じ事か似た事しか言わないしね」
ショウキも両手をプラプラと振りながら言う。
「貴方達お子さんののデータ。採らして頂きます・・・・むろん、その後はしっかりとお灸を据えてあげますがね!!」
バンキは早くも童子と姫のデータを眼で採取している。
『我々の子が、肉を求めています』
『我々の子は、血を求めています』
童子と姫は怪童子・妖姫にそれぞれ変身するとしゃがみ込み、地面を擦った。
『起きなさい、食事の時間ですよ』
『起きよ・・食事の時間だ』
刹那ダンキ達の周囲の地面に異変が起きる。ボコボコと土がうねり、その中から頭蓋骨が!
あちこちで似たような現象が起きる。その数既に20を越している。
「ちぃ!分裂は始まってたわけか!あぁ〜もう!」
「来るよ!ダンキ君!バンキ君!」
「・・はい!」
三人はそれぞれ音叉・音笛・鬼弦を取り出し
叩き!
吹き!
弾き!
それぞれの音を発した。
94番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/29(日) 20:15:42 ID:djHL4wrc0
ダンキは脚を地面に叩きつけ!
ショウキは下から巻き上げるかのように腕を振り!
バンキは天へ拳を突き上げる!
隆起し、石推が乱立する中に佇むダンキ!
竜巻の中。荒れ狂う突風を纏うショウキ!
全身から吹き上がる黄炎を纏い佇むバンキ!
彼らの姿はそれぞれのエネルギーに護られ、『鬼』と呼ばれる存在へその身を変えてゆく。
高まった力は、それだけで威圧を与える。

時折見える鬼の面が無言の語りを突きつける。
所詮は塵芥に戻る運命の軍勢に、『鬼』を止められるものか。

それでも阻み 人を襲おうというのならば

『うぅぅぉおおおおおりゃぁ!』
弾鬼が全身の石を破砕させ、
『はぁぁぁぁぁぁ――――でやぁっ!』
勝鬼が手刀で風を裂き、
『トゥッ!』
蛮鬼が炎を振り払い、

我らが『鬼』となり、人々を護ろう!

弾鬼・勝鬼・蛮鬼は背中合わせの陣形を取り・・・・・
『来い!!』
弾鬼は右手を額近くに、右足を腹のあたりまで上げ、
『行くよっ!』
勝鬼は脚を開き爪の付いた右手を天へと突き上げ、
『覚悟!
蛮鬼は軽く跳躍し、着地と同時に右手を前に左手を後に突き出し、魔化魍ガシャドクロを迎え撃った。
95名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 00:08:02 ID:15AOD6ZT0
おっ!職人さん、待ってましたよ!今回もGJです。
『土星』Tシャツで、一気にショウキさんファンにw


そこで、職人さんに一つお願いが・・・・・
続きをワクテカして待つ身として、「本日の更新はこれまでだよ」の
サインとして、文末に「続く」等の言葉を入れて欲しいのです・・・
そうしてもらうと、「おお、次回が楽しみじゃのう」と安心できるし、
感想が書きやすくなるのですが。
ワガママ病で、スンマセン・・・・・・
96弾鬼SSの筆者:2006/01/30(月) 00:27:00 ID:gmM4U6JW0
>95
ご声援有難うございます。
そうですね、確かにそのほうがよさそうですね。次回からはそうさせてもらいます。
ワガママ病なんて事は無いです、私が考え無しなだけでして(´Д`;)
ご指摘、有難うございますm(__)m

折角なんで予告でも置いていきますw
30日の夜辺りにでも投下できるかと思います。

『えぇ、今僕も同じ事を考えました・・・・・・集合体かもしれません』
『弾鬼さん!その腕は!?』
『さぁ、終いだ。破片残らず清えやがれぇ!』
「ここに来れば・・逢えると思って」

二之巻『染まる腕』(後)
97名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 00:33:03 ID:15AOD6ZT0
>>96
おおう、早速ありがとうございます。今後とも宜しくお願いします。
うう、しかも次回予告まで!
なんだか嬉しいので、今夜は持ってるDA展開して枕元に並べて
寝ます!
98名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 00:42:40 ID:C9x4drgp0
>爪弾鬼
>戦慄鬼
このネーミングはギャグ・・・・・・なのか?
99剛鬼SSの中の人:2006/01/30(月) 00:54:42 ID:e/VJWvbj0
桐矢の職人さんも弾鬼の職人さんもクグツの職人さんも激しくGJです!!!
このタイミングで私の駄文を投下するのも忍びないですがどうぞ。

あと、何度も質問して申し訳がありませんが
裁鬼SSの職人さんへの設定に関することでの質問なのですが
榊鬼が引退して石割くんが裁鬼さんの弟子になったのは
大体何年前のいつごろなのでしょうか?
100番外編「仮面ライダー剛鬼」三之巻:2006/01/30(月) 00:55:55 ID:e/VJWvbj0
三之巻 「唸る声」

「んじゃな。ジャイアン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
剛は少し頷いたあと、自転車にまたがりペダルを漕ぎ出す。自転車置き場から見て右の辺りにある校門を抜けて、
いつもの通学路へ出たころにはもう西の空に夕日が沈みかけていた。頻繁に医院に通っていたせいか完治こそしていなかったものの
彼の足はなんとか自転車を漕げるまでに回復している。この3週間は帰宅したあとバスに乗って柴崎医院まで通うのが
もう彼の日課のようなものになっていた。足を治すため頻繁に通い続けているというのは当たり前だが、
彼が毎日のようにそこへと通い続ける本当の理由には、あのときに出会ったソウキが風邪で医院に通い続けているということがあった。
医院が彼にとっての唯一に近いソウキに会える場所だったからだ。
少し時間が押しているせいか300m程進んだ後、剛はいつもの道から家への近道へと加速しながら入った。
道も狭く通り難かったが、剛のようなふだんから慣れている人間にとってはまったく問題はない・・・はずだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
突然剛の前にそれなりに大きな犬が飛び込んできた。狭い道だ。自分がそのまま進めば犬を撥ねてしまうだろうという事は
剛にしてみれば分かりきったことだった。だからといってブレーキをかけようにも間に合わない。
「・・・・・(ライダーブレイク!!)・・・・・」
意を決した剛は自転車で横っ飛びした。だがそんなことが上手くいくはずも無く、道のふちの側溝に
自転車の後輪がはまりそうになり体勢を崩す。なんとか前に向けて力を入れて自転車の後輪部分を持ち上げようとするものの
無理な力がかかって、結局側溝を挟んだ先にあった空き地に突っ込んで横転した。犬がそれを見て足を止める。
101番外編「仮面ライダー剛鬼」三之巻:2006/01/30(月) 00:56:48 ID:e/VJWvbj0
「・・・・・大丈夫か・・・・・。」
剛は右足を押さえながら、側溝をジャンプで跳び越えて犬に駆け寄り抱き寄せた。犬はきょとんとしている。
犬には今自分の面前で何が起こったかということが分かっていないようだ。
「ボスってばもう。逃げるなって言ったじゃないのよ。ありがとうございます。って、あれ?君は4組の。」
剛はそこに現われた犬の飼い主と思わしき長い髪の少女を見て、はっとなった。心臓がドクンドクン脈を打つ。
体中に巡る血の流れるスピードがだんだんと早くなる。少々大げさな例えだが彼の頭部は今にも噴火しそうだった。
彼女の名前は成美。剛とは同学年の中学3年で、目鼻立ちが整った顔こそしているがまだ美人というよりは可愛らしいと
表現した方が適当なような女の子だ。当然、学年では男子にチヤホヤされており剛もその内の1人だった。
しかし剛と彼女のクラスが一緒になったことが1度も無かったし、ましてやただでさえ無口な剛が彼女と接触する機会は皆無に等しかった。
「ボスはね、親戚のおばさんの犬なの。今日からおばさんが旅行に行ってる間だけ預かることになってたんだけど逃げ出しちゃって。
 まったく凶暴なのよねーこの犬。私だって昔、おばさんの家で噛まれたことあったもん。おばさんにしかなつかんから困ったもんよ。」
やたら自分にまとわりついてくる犬も、辺りの風景も、ボロボロの自転車も彼の眼中には無かった。
剛の脳の持つ処理能力では、彼女の言葉の一つ一つを処理していくことができなかった。完全にあがっている。
このときばかりは「表現が乏しい」だとか「ポーカーフェイス」だとか周りから言われまくっていた自分の顔に感謝した。
「たけしさん、案外優しいんだね。ボスになつかれるなんて相当のもんよ。」
「・・・そ、そ、そソノナマエデよばないでくれる・・かな。・・・た、たタケシジャナクテ『ゴウ』なんだよ、ゴウ。・・・・・・」
「だったら、ゴウって呼んでいい?」「・・・・・い、いいけど。・・・・・」
「なら、私の事も成美って呼びさいね。分かった?」「・・・あ、ああ。・・・」
この一連の会話における彼女の態度は誰とでも分け隔てなく接する彼女の明るい性格ゆえのものだったが、
同世代の女の子とまともに話したことの無かった剛にとってそれは衝撃的すぎた。
102番外編「仮面ライダー剛鬼」三之巻:2006/01/30(月) 00:59:16 ID:e/VJWvbj0
「ヤマアラシねぇ。ふぁっ・・・ぶぁっくしょん!!」
名古屋市にあるうどん処『げんじろう』の2階で、ソウキとおやっさんがなにやら話している。
そのおやっさんこと田宮源次郎という人物もまたソウキ達鬼が所属する猛士の一員である。
猛士中部支部支部長である彼は中部地区の猛士をまとめながらも、このうどん処『げんじろう』を経営している。
ソウキが入れた紅茶をすすりながら、おやっさんが魔化魍ヤマアラシの説明を始める。
「ヤマアラシが一番最近現われたのは・・・ん〜と。確か、関東の榊鬼が倒してるはずだ。今年の春に。」
「サカキさんですか・・・。サカキさんって今年で36歳でしたよね。36でまだまだ現役って、まさに鬼の中の鬼って感じじゃないですか。」
「そ〜か。もうサカキも36か。前会った時はまだ20ちょっとだったのになぁ。娘さん・・名前は五月ちゃんだったけな?
 その子が生まれたときだったかに会ったっきりだよ。時の経つのは早いというかなんというか。」
「また、随分とオヤジ臭いことを・・・。んなこと言ってるうちにおやっさんもすぐ50、60、70って歳とってくもんなんですよ。」
「お前だって人の事は言えんぞ。日々鍛えとかないとな。じきに引退だぞ。って、ヤマアラシの事話すの忘れとった。」
「ヤマアラシ・・・。これで4匹目か。」 ソウキが地図を広げる。
「戦い方は分かってるな。出たのは養老山の辺りだ。歩の白土さんが見たらしい。気温湿度ともに条件は揃ってる。
 あとキャンプセンターの大槻さんがモウウウウって音がを山で響いてたのを聞いたらしいから奴がいるのはまず間違いないだろう。」
「なら今日はこの養老の滝の辺りから攻めてみましょうかねえ。んじゃ、いってきます!!」
ソウキは大きなリュックサックに地図を入れると、それを背負い階段を駆け下りていった。
103番外編「仮面ライダー剛鬼」三之巻:2006/01/30(月) 01:01:23 ID:e/VJWvbj0
帰宅した剛は時計を見た。受診時間には間に合わないと悟った剛は机に向かう。
少し時間がたった。時計の短針が8の方を指している。
だが、まったく勉強が手に付かない。もし、3週間前ソウキに出会わなければこうはならなかっただろう。
そしてもし、今日彼女と会わなかったらこうもならなかっただろう。普通なら12月のこの時期は他の中学3年生と同じく
志望校合格に向け勉学に邁進しているはずなのだ。たとえ無気力で志望校もろくに決めていない剛であっても
彼の性格からして、いつものように周りに流されて勉強しているはずだったのだ。でも、この3週間での出来事が彼の中では大きすぎた。
「たっだいま〜。」玄関のドアが開いた。母親が仕事を終え帰宅したようだ。
「どうしちゃったのさ〜。そんな、変な顔して。もしかしてなんかあった?」
成美と会って数時間。剛は自分ののポーカーフェイスがあの彼女と会った時間の緊張から解き放たれて
明らかに少し浮ついた顔になっているのに母に言われるまで気付いていなかった。
「・・・医者でソウキさんと会ったんだ。・・・」 剛は嘘を言って誤魔化し、なんとかその場を切り抜けた。

辺りは暗い。聞こえる音もこの滝の音か風の囁きかというくらいのものだ。ソウキはバイク「弥勒」を停めると、
それのシートの横に取り付けてあった皮のバッグを開き、徐に中のディスクを取り出した。
「頼んだぜっ。」起動した数枚のディスクが山奥へ向かったことを確認したソウキはベースキャンプの設営に入った。
テントを広げ杭でそれを固定し床部分をポンプで膨らませた後、折りたたみ式の小さな椅子と机を広げ、
ランプを取り出すと、机の上に地図を広げた。この一連の流れからは、どこかの工場の流れ作業かといったぐらいの
段取りの良さが感じられた。そして最後にソウキはリュックからスケッチブックとペンを取り出し滝のほうに向かい椅子に腰掛けた。
右手に持ったペンを滝をじっくりと観察しながらもスケッチブックの上で動かす。そうして時間が経つうちに
1枚の滝のスケッチが出来上がった。「絶景かな。絶景かな。よしと、もいっちょいくか。」スケッチブックのページが捲られた。
104名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 01:02:20 ID:e/VJWvbj0
椅子の位置を変えたソウキが、大まかな風景を描きだす。しかしその時スケッチブックが大きくぶれる。
ディスクの反応をキャッチした左手の変身鬼弦が震えていたからだ。ソウキはキャンプに向かって駆けて来るルリオオカミを手に取った。

「鬼ごっこか。好きじゃないな。」山の奥深く。ディスクアニマルの攻撃を受けた童子と姫が
それなりの大きさ成長したヤマアラシを見つめて呟いた。鬼にまだ成長しきっていないヤマアラシの位置を悟らせないよう、
ヤマアラシだけを逃がした2人は、迫り来る鬼の存在を確認し怪童子と妖姫に変化した。山にはヤマアラシの唸るような鳴き声が響く。
「ひさしぶりじゃねぇか。ヤマアラシさんよう。」
怪童子の針をかわしたソウキが釈迦を地面に突き立て鬼弦を鳴らす。
ソウキの全身が燃え上がりその姿が送鬼へと変わった。そこに間髪を入れない妖姫の攻撃が入る。
正面からの針での攻撃を避ける送鬼に背後から怪童子が襲い掛かる。送鬼は針を避けながら軽くジャンプし
背後の怪童子に回し蹴りを見舞うと、腰の3枚のディスクを放って妖姫の針を打ち落としながら、
助走をつけながら跳び上がり、さらに枯れ木を踏み台にして2段ジャンプした。
空中で姿勢を変えた送鬼の右足が蒼い炎で燃え上がる。「おらっ。」鋭い跳び蹴りが妖姫に命中した。
妖姫は体を蒼い炎で燃やしながら息絶えて枯葉と土くれになって消えた。妖姫を倒した送鬼に
怪童子が体から崩れ落ちる枯葉を押さえながらも必死の攻撃を仕掛けてきた。不意を付かれた送鬼の顔に針が命中する。
怪童子の針は偶然にも風邪を引いていた送鬼の鼻を刺激した。
「ぶぁっ・・・ぶぁっくしょん!!」
くしゃみとともに鼻より出た鬼火が怪童子を焼き尽くした。

つづく
105次回予告:2006/01/30(月) 01:03:03 ID:e/VJWvbj0
「山を降りろ・・・。里には人がいるぞ。」
「とにかく2人が分かり合えばいいんだから。」
「作戦、開始ッ。」
「それがお前の正義か!!!」

四之巻「駆ける壱円」
106名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 02:33:09 ID:OL21J79UO
>>99さん

石割がサバキと出会ったのは11年前(1995年)、サカキ引退はその翌年(1996年)です。

……慌ててまとめサイトに行って来ました。深謝。

裁鬼メインストーリーに御感想を頂きました皆様、ありがとうございます。
今更ですが、他の鬼の話を希望される方に申し上げます。

当方、既にゼクトルーパーに心奪われ、本編にたった4回登場してボコられた、愛すべき鬼以外の話を書き込む程の発想も持ち合わせておりません。

『裁鬼メインストーリー零之巻』とでも題する話を妄想しておりますが、ご要望にお応え出来るだけの内容でもなければ(朱鬼ぐらいは出ますが)、
皆様が愛された『仮面ライダー響鬼』との関係も無い、裁鬼メインストーリー以下のオリジナルストーリーに過ぎず、現段階で書き込む事を自粛しております。
「何言っとんねん? 話有るなら見せんかい!」 とご要望を頂くまでは、一名無し、一読者として、他の作品を楽しみたく思います。

SS作者の皆々様、頑張って下さい。陰ながら応援させて頂きます。
107響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第二話:2006/01/30(月) 10:00:01 ID:mn/P81dA0
第二話 出会う二人 

ママ、どうして泣いているの?
若い女性は焼け焦げた遺体の前で泣き崩れている。
パパ、ママが泣いているよ、慰めて
なんで起きないの?ママがかわいそうだよ。
女性の横にいた男の子に親とは違う大人たちが次々に話しかける。
うん!わかった、僕がママを守るよ。
ご飯も残さないし、怖くても一人でトイレにいくよ。
勉強もたくさんして、えらい人になってママとおっきなお家にすむ。
そうしたこの間、拾えなかったポチも一緒に住めるね。
だから、ママ。泣かないで、僕が守るから。
どんなやつからも守るからさ…。
108響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第二話:2006/01/30(月) 10:01:03 ID:mn/P81dA0
「こっち。」喫茶店に入ってきたイブキにバンキは手を上げた。
イブキはバンキの正面に座るとコーヒーを注文した。
「あきらちゃんが弟子をやめてから二人だけで会う機会が増えたな。」
「そうですね。休みの日はいつも三人でしたしね。」
「さみしくないのか?」
「いえ、あきらが新しい道を進んでるからうれしいですよ。
 友達もできたし、新しい目標もできたし。」
「そうだな。そのうち彼氏とかもできるかもな。」
バンキは外を見ながらつぶやいた。
「!?」イブキの顔色が変わった。もっていたコップがカタカタと揺れた。
「あれだけ、かわいいからな男はほっとかないな。あれ?」
イブキは少し泣き顔になっていた。そんなイブキの心情を察したのか、
バンキは話題を変えた。
109響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第二話:2006/01/30(月) 10:01:36 ID:mn/P81dA0
「と、ところでさ、京介くんが変身したって本当なの?」
イブキは正気に戻り、水を一口飲む。
「本当ですよ。すごいですよね。一撃鬼さんとか轟鬼さんは
もともと体がある程度できてたから、すぐに変身できましたけど、
彼は生身の人間ですからね。」
バンキは初めて京介に会ったときのことを思い出した。
「すぐにやめると思ったんだけどな。」
「人は変わるんですね。」
イブキはあきらとの日々を思い出し、笑顔を浮かべてた。
「そういえば、明日夢くんだっけ?ヒビキさんの弟子だった子。」
「はい、そうです。」
「連絡先わかる?」
「はい、どうかしたんですか?」
「いや、ヒビキさんに家庭教師を頼まれたんだよね。」
大学生のバンキは、鬼と学業の両立に悩んだ事もあったが、
師匠であるサバキや、他の鬼のお陰で現在は、
どちらも充実した生活を送っている。
最初は経済学部にいたのだが、
文系と理系、両方において類まれなる才能を持つバンキは
あらゆる研究室から誘いが掛かり、気付けば全ての研究室を
自由に使えるようになっていた。
少々困惑ぎみであったが、鬼の仕事をする上で、
様々な情報を網羅できる現在の状況は、バンキには都合が良かった。
「ああ、彼は医学部志望だからね。」
「そうか、いずれは猛士の医師になってくれるとありがたいな。」
バンキはイブキから携帯の番号を教えてもらった。
明日夢とバンキ、意外と気が合いそうな二人かもしれない。
イブキはそんなことを思った。
110響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第二話:2006/01/30(月) 10:02:08 ID:mn/P81dA0
背中にトラック用のタイヤを二つ背負い断崖絶壁を登っていく二つの影。
ヒビキと京介の師弟だ。
一年前に比べると修行もかなり常人では不可能なものになりだした。
ヒビキに相当離されてはいるものの、京介も難なく崖を上っていく。
岩肌をつかむ腕は筋肉が付き逞しくなったが、それ以上に自分自身と
競い合う気持ちを持った事が大きな成長であった。
先に登りきったヒビキは適当な小石を広い、京介に投げる。
それを京介は、手で払ったり、時には避けたりしながら登っていく。
結局、無傷のまま京介は崖を登りきった。
「だいぶ、できるようになったな。」ヒビキは笑顔で言った。
ハアハアと息が上がっている京介もニコリと笑った。
「よし、今日からは本格的な音撃の練習をするか!」
「本当ですか!」京介は喜んだ。
音撃の練習といっても、今までの練習と大差が無かった。
まずは型を覚えさせられる。
ヒビキの演奏を体で覚えて実演し、京介が再現する。それが延々と4時間続いた。
そのあと、京介の叩く太鼓を無数のロウソクが囲んだ。
「あのう、これは?」不思議そうな京介にヒビキは説明した。
「まずは、太鼓の振動を周囲に広げるんだ。振動が空気を伝わってロウソクが揺れるだろ、
 最初に周囲のロウソクをすべて揺らすように叩く、それから徐々に範囲を狭めて、最後には
 太鼓の真後ろにあるロウソクだけを揺らすんだ。」
「わかりました。」
これを、さらに2時間続けたところで、今日の練習は打ち切った。
111響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第二話:2006/01/30(月) 10:02:54 ID:mn/P81dA0
京介は本格的に鬼の修行を始めてから学校に通うことはめっきり少なくなった。
京介自身は別に行かなくても構わなかったが、行ける時にはできるだけ、
学校に行くようにヒビキを約束をしたため、仕方なく行くことにした。
明日夢やひとみ達とは違うクラスになり、特に話す相手もいない、
クラスメイトも、たまにしか来ない京介にどう接すればいいのかわからず、
当たり障りのない距離感を保つだけであったが、京介は特に気にしなかった。
自分は他の人とは違う、大儀がある人間だ。
修行をはじめ、心は鍛えられたが、京介にそんな感情が芽生えていた。
「桐矢くん!」
たちばなに続く商店街を一人歩く京介に明日夢は駆け寄り話しかけた。
「ああ、安達か…。どうかしたのか?」そっけなく答えた。
「どうもしないけど、ひさしぶりだからさ。」
「そうだな、本当は修行に専念したいんだけどさ、ヒビキさんが言うから…。」
「君はどうなんだい?医者になるって鬼をあきらめたんだろ?」
「あきらめたっていうかさ、人を助けるにも色んな方法があるだろ?」
「鬼が魔化魍から人を守るならば、俺は病から人を守りたいんだよね。
 そういう意味では鬼と同じじゃないかな?」
「同じじゃないよ、自ら危険に飛び込む鬼と、ただ座っているだけの医者とでは
まったく違うよ。」
明日夢はムッとしたが、言い返そうとはしなかった。
二人の間に居心地の悪い沈黙がしばらく続いた。
112響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第二話:2006/01/30(月) 11:46:51 ID:mn/P81dA0
しかし、沈黙はすぐに破られた。
「まてー!」本屋から怒鳴りつける声が響いた。
立ち読みをしていた主婦を数名吹き飛ばし、だらしない格好をした学生らしき
三人の少年が逃げ出していた。
「あ、あいつは」明日夢には見覚えのあった万引き少年もいた。
「やれやれ、しかたないな。」京介と明日夢はバックを置くと、三人の逃げ道に立つ。夢中で逃げる先頭にいた少年は明日夢に
体当たりをしようとした、しかし、明日夢はさらりと流し、足をひっかけると少年の一人は止めてあった自転車に激突する。
それを見た他の男は、京介を腕で押し倒そうとしたが、その腕を中心にくるりと空中を一回転し、地面に寝転ばされた。
最後に走っていた少年は先の二人をみて、明日夢達の方を避ける。
変わりにゆっくりと移動してた車椅子の男の子を突き飛ばして逃げようとした。
「あぶない!」京介は飛ばされた男の子をすばやく助ける。それを見て明日夢は
自分のバックを逃げる少年の足元を狙って投げると見事命中した。
高校生の華麗な活躍で商店街は拍手喝さいになった。
本屋の店主は明日夢達にお礼を言い、少年達を警察に連れてった。
「怪我はないか?」京介は助けた男の子を車椅子に戻し、声をかけた。
「うん、ありがとう。すごいねお兄ちゃん。」子供の目は尊敬の眼差しで
京介を見つめていた。
「鍛えてるからな。」京介は優しい笑顔で笑いかけた。
そんな京介をみて、明日夢は関心していた。
「なに笑ってんだよ?」京介は明日夢に見られ、少し恥ずかしかった。
「別に?」明日夢が意地悪そうに笑う。
京介はムッとして、「じゃあな!」と子供にヒビキのようなポーズをして
そそくさと歩き出した。
「じゃ!」明日夢もヒビキポーズをして歩き出した。
「まねするなよ。」「俺もヒビキさんの弟子だよ。」「鬼でもないくせに!」
そのやり取りを車椅子の少年は二人が見えなくなるまで見続けていた。
113仮面ライダー高鬼「気高い歌」:2006/01/30(月) 16:30:08 ID:5vDs65Ki0
最終回の日にこのスレを見つけて以来、今までずっとROMってきていました。
呼んでいくうちに自分にも何か書けないかと思い、気が付くとキーボードを叩いていました。
長いうえに拙い文章ではありますが、投下させていただきます。

1975年、夏。
紀伊半島のリアス式海岸沿いを一台のバイクが疾走していた。
コウキと呼ばれるその人物が乗ったバイクは、何かを探すかのように海岸地帯を走っている。この辺りは潮風が強いから早くしないとバイクに錆びが生じるな、そんな事を考えながらコウキは遠く離れた水平線を眺めていた。
海は、静かだった。だがコウキは知っていた。これが嵐の前の静けさに過ぎないという事を……。
事の発端は数時間前。猛士四国支部から関西支部へと緊急連絡が入った。ウシオニが一匹、紀伊半島方面へと逃げていったというのだ。急遽、その時手が空いていたコウキが退治に向かう事となった。言わば四国支部の尻拭いである。
物事がきっちりしていないと気が済まない性分のコウキは四国支部の怠慢に腹を立てたが、仕方なく出撃する事となったのである。
と、その時、静かだった海に波が立ち始めた。経験からそれが海の魔化魍の現れる前触れだと気付いたコウキはバイクを止め、バッグを抱えると海辺へと下りていった。
コウキがごつごつとした岩場に下り立ったと同時に、海中から巨大なウシオニがその姿を現した。蜘蛛と牛を掛け合わせたような異形の姿をしている。
コウキは変身音叉を近くの岩に当て、額へと翳した。炎がコウキの体を包み込み、彼の体を鬼へ、仮面ライダー高鬼へと変えていった。
「破っ!」
気合いと共に炎を吹き飛ばす。変身完了だ。
「行くぞ。すぐにケリをつけてやる!」
音撃棒・劫火を構えた高鬼は、身軽な動きでウシオニとの間合いを詰めていった。
114仮面ライダー高鬼「気高い歌」:2006/01/30(月) 16:31:25 ID:5vDs65Ki0
高鬼とウシオニとの戦いが始まってから一時間近くが経とうとしていた。と言うのも、ウシオニはピンチになると毎回海に潜って高鬼の攻撃を回避してしまうのだ。高鬼の属性は炎である。水中の敵に炎での攻撃は厳しい。
(伊達に育ってはいないという事か。妙な知恵を付けているな)
ウシオニが海中から顔を出し、高鬼の方を眺めている。まるでこちらを馬鹿にしているかのようだ。
と、その時上空を巨大な影が横切った。見ると空を巨大な魔化魍・イツマデが飛んでいた。
イツマデとはたくさんの死体に溜まった邪気から自然発生する魔化魍で、養育係となる童子や姫は存在しない。こいつはある程度成長するまで姿を人に見せないため稀種扱いとなっている。
また、イツマデが現れる時は決まって誰かが死ぬと昔から忌み嫌われてきていた。
(この大きさ、ざっと3年は経っているな。3年前大阪でデパート火災があったが、それで生まれたと考えるのが妥当か……)
だがイツマデは高鬼ではなくウシオニに向かって攻撃を開始した。自分の縄張りを荒らされたと思ったのだろう。イツマデに追いやられるように、ウシオニが再び岩場へと上がってきた。
「好機到来!」
高鬼はウシオニの傍へと駆け寄り、その背に飛び乗ると音撃鼓・紅蓮を貼り付けた。あっという間に大きくなる「紅蓮」。
「音撃打・刹那破砕!」
たった一撃の打撃から生じた清めの音が、ウシオニの巨体を駆け巡りこれを塵に帰した。
「あとはイツマデだな」
そう言うと高鬼は持ってきてあったバッグの傍へと駆け寄り、中から音撃管・蒼穹を取り出す。彼は鼓・管・弦、三種類全てに精通しており、常に全ての武器を携帯しているのだ。
空気弾を発射し、イツマデを攻撃する高鬼。相手が弱ったのを見計らうと、鬼石を打ち込み音撃鳴・蒼天を取り付ける。
「死ぬのはお前の方だったな。音撃射・熱風乱流!」
爆発と共にイツマデもまた、塵へと帰った。全てを終えた高鬼は顔の変身を解除し、一息吐いた。
115仮面ライダー高鬼「気高い歌」:2006/01/30(月) 16:33:21 ID:5vDs65Ki0
奈良、吉野にある猛士本部。そこの研究室に、当時流行の長髪スタイルの男性が入ってきた。戦いを終えたコウキが帰ってきたのだ。彼は関西支部所属であると同時に、本部付きの鬼でもあった。
「あら、お帰りなさい、コウキくん」
研究室内のデスクに向かい、何やら作業をしていた白衣の女性がコウキに気付き声をかける。歳は四十台半ばといったところか。
「ウシオニ退治してきたんだ。ああ、その顔を見れば分かるよ。ところで途中でアカツキくんに会わなかった?イツマデが出たらしくって出撃したんだけど」
「イツマデなら私が倒してきましたよ、あかねさん」
コウキはそう南雲あかね……ここ吉野本部の開発局長に告げた。
「あら、すれ違いになっちゃったか。まいったなぁ、次の定時連絡の時間までアカツキくん、ずっと居もしないイツマデを探し続けだよ。イツマデだけにいつまでも……なんてね。うふふふ」
自分のギャグがコウキに通じなかったのを悟るとあかねは、手軽に電話を携帯できるようになれたらいいんだけどね、と言うと再び作業を続けはじめた。
「ところであかねさん、式神の件ですがまだ何とかなりませんかね」
「またそれ?」
コウキはあかねに、紙製の式神は海辺のような湿気の多い地域では使用するのに支障が出ることを再三告げていた。
「私一人じゃ無理!もう少し技術が進歩するのを待たないとね」
コウキは何か言いたげな顔をしていたが、ぐっと堪えた。自分を最も可愛がってくれている恩人とも呼べる人物にきつい事は言えなかったのだ。
「仕事も終わったなら一休みしてきたらどう?」
「いえ、それよりも個室を少しお借りします」
「また機械いじり?ホント、コウキくんってそういうの好きね」
あかねが小さな子どもを見る母親のような顔で笑う。
コウキはあかねに一礼すると、個室へと向かっていった。
116仮面ライダー高鬼「気高い歌」:2006/01/30(月) 16:35:25 ID:5vDs65Ki0
その日の晩、とある山中の怪しげな洞窟の前に一人の考古学者が立っていた。
「ここだ……。ここに間違い無い。きっとここに古代史を覆す何かがあるに違いない……」
そう言うと男は手にした中世の古文書の写本に明かりを当て、パラパラとめくった。目当てのページには地図が載っており、この山の位置に印がついている。
男は洞窟の入り口に張られた注連縄を外し、さらに貼り付けてあった御札をも剥がし取った。
この学者、どこをどう曲解したのか、この洞窟内に古代史を覆す何かがあると思い込んでいるらしい。だが実際は違った。
その本の原本は猛士本部に保管されている。そしてその本に記された内容とは、かつて、まだまともに音撃が使えなかった頃の古の鬼達が呪術を駆使して封じ込めた魔化魍についての事だったのである。そう、この洞窟こそが魔化魍の封印された場所だったのだ。
夜の山中に、憐れな犠牲者の悲鳴が木霊した。

午前零時少し前に、コウキはあかねに叩き起こされた。少しのつもりが結局あの後ずっと個室で機械いじりをしており、疲れでそのまま眠ってしまったのである。
「どうしたんです……」
寝惚け眼を擦りながらコウキが尋ねる。
「魔化魍が出たの!それも『歩』の人からの連絡じゃ、ざっと四十匹も!」
「……夏の魔化魍ですか?」
確かに多少数は多いが、そんなに驚く程の事ではない。いつもの事だ。
「違うの。いい?よく聞いてちょうだい。……巨 大 な 魔 化 魍 が 四 十 匹 現れたの。関西支部の手の空いている鬼全員に出撃命令が出たわ」
流石のコウキも我が耳を疑わざるを得なかった。
117仮面ライダー高鬼「気高い歌」:2006/01/30(月) 16:40:41 ID:5vDs65Ki0
草木も眠る丑三つ時、コウキは式神が当たりを知らせた場所へと急いだ。真夜中の山中は不気味な程静まり返っていた。
そして闇が全てを飲み込んでいた。一歩脇道へ逸れたら、それこそ異界へと落ちてしまいそうな気にさせた。
ふいに夜の静寂が破られた。鳴き声がする。この声は……ヤマアラシか。音叉を掲げ変身すると、高鬼は音撃弦・五月雨を取り出し、構えた。
足音がする。着実にこちらへと近付いてくる。前方の木々の間から、巨大なヤマアラシが姿を現した。間髪を入れず針を飛ばしてくるヤマアラシ。それらを全て「五月雨」で切り払うと、接近して一気に斬りかかった。
足をやられ転倒するヤマアラシにすかさず「五月雨」を突き刺し、音撃震・氷雨を装着して掻き鳴らす。
「音撃斬・豪火絢爛!」
爆発音が山々に木霊した。その音に誘われるかのように、空から、木々の奥から次々と魔化魍が姿を現した。
「全く……。話が本当ならあと三十九匹もいるのか」
まだ自分以外の鬼は魔化魍を見つけられていないようだ。だが、今の爆発音を聞いていずれはここに辿り着くだろう。それまで自分一人で何とかするしかない。
高鬼は覚悟を決め、魔化魍の群れに突っ込んでいった。
118仮面ライダー高鬼「気高い歌」:2006/01/30(月) 16:43:00 ID:5vDs65Ki0
音撃打・炎舞灰燼!」
魔化魍の体に貼り付いた「紅蓮」目掛け音撃棒を乱打する。
ヤマビコの巨体が爆発すると同時に、二本の「劫火」が根本からぽきりと折れた。
数時間に及ぶ戦いの中で合計五匹の魔化魍を仕留めたが、「五月雨」の刃は刃こぼれし、「蒼穹」の鬼石は全弾撃ち尽くしていた。そして今、「劫火」が両方とも折れたのだ。
救援はまだ来ない。おそらく他の場所で同じように巨大魔化魍と戦っているのであろう。
「一時撤退するしかないか!」
オオヌエの攻撃をかわしながら、高鬼は悔しそうにそう呟くと踵を返し、後方へと駆けていった。

本部へ戻ると、真っ先にコウキは研究室へと向かった。新しい音撃武器を調達するためだ。だが、あかねが言うには最低でも明後日にならないと使えないという。
武器はあるのだが清めの音を放つために必要な鬼石のスペアがあと一個しかないというのだ。
「明後日まで待てというのですか!」
「落ち着いて、コウキくん。今も鬼のみんなが戦い続けているわ。あなたは休んで。責任感が強いのは分かるけど、音撃武器の無い今のあなたじゃあの数は無理よ」
「私が役立たずだと言うのですか!」
コウキの声が荒々しくなる。
「誰もそんな事は言ってないわ!言葉を慎みなさい!」
あかねが怒鳴りつけた。温厚なあかねが怒りを顕わにする事は滅多にない。これにはコウキも黙ってしまった。
「……落ち着きなさい。落ち着いたらとりあえず体を休めなさい。今のあなたに出来るのはそれだけよ」
コウキは無言のまま研究室を後にした。だが、言われた通り大人しく体を休めるつもりは無かった。
(何か、何か今の私が戦えるためのヒントは無いか……)
コウキは本部内にある図書室へと足を運んだ。そして、戦うためのヒントを得るため古い文献を片っ端から調べ始めた。
119仮面ライダー高鬼「気高い歌」:2006/01/30(月) 16:45:03 ID:5vDs65Ki0
早朝六時、既に夜は空けていた。小鳥の囀りが聞こえる。
コウキは足早に研究室に入ると、「機材を借ります」と言って個室へと引っ込んでいった。その際、残り一個の鬼石を持っていってしまった。
慌ててあかねが何事かを尋ねると、コウキは黙って一冊の本をあかねに手渡し個室のドアを閉めた。
あかねが付箋が挟まれているページを見ると、そこにはこう書かれていた。
「言霊……」

二時間程度でコウキは個室の中から出てきた。手には一本のマイクが握られている。だがこのマイクが普通のそれと違うのは、鬼石が取り付けられていた点である。
「コウキくん、あなたが何をしたいのか分かったわ。ホント面白い人ね」
あかねは笑いながらそう言った。だがすぐに真顔に戻るとこう付け加えた。
「……私としてはリスクの大きい事をやらせるわけにはいかないわ。ちゃんとやれると思っているの?実験は?もし本番で失敗したらあなたは魔化魍の餌食よ」
一睡もしていないんでしょう?そう言うとあかねは心配そうにコウキの顔を見た。
だがコウキは笑顔でこう言った。
「大丈夫。天才ですから」
「呆れた」
あかねは声をたてて笑った。
「今みんなが魔化魍を一箇所に追い込んでいるわ。残り二十五匹。……本当にやれる?」
「二度も言わせないで下さい。行ってきます」
そう言うとコウキは敬礼にも似た独特の挨拶をし、研究室を後にした。
120仮面ライダー高鬼「気高い歌」:2006/01/30(月) 16:47:13 ID:5vDs65Ki0
古来より日本では、言葉そのものに霊的な力が宿ると言われてきた。それが言霊である。良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされた。それは言霊が声を発する者の心の有り様に影響されるからである。
今のコウキは純粋に魔化魍を倒したい、人を、仲間を守りたいと願っていた。その気持ちはきっと応えてくれる、そう強く信じていた。そして自分が今まで培ってきた技術にも全幅の信頼を寄せていた。
無数の魔化魍の真っ只中に、変身を終えた高鬼が飛び込んでいった。ぶっつけ本番。試しにマイクに向かい喋ってみる。
「あ〜、あ〜、只今マイクのテスト中。本日は晴天なり」
……何も起こらない。
「そ、そんな!私の設計にミスは無い筈!それとも私に言霊を使いこなすだけの技量が無いというのか!?」
じりじりと包囲を狭めてくる魔化魍の群れ。単独で、それこそ勝手に飛び込んできたため、当然周りに仲間の鬼は誰もいない。今頃はおそらく、一箇所に集めた魔化魍をどうやって倒すか全員で協議中なのだろう。
(言霊を使うには心を……。私の今の心を表現するためにはどうすれば……)
その時、高鬼の脳裏にある出来事が思い出された。ほんの数年前、まだカラオケが誕生して間もない頃に、吉野のみんなで歌いに行った事があった。その時、あかねや皆に言われたのが、
「君は歌が上手い。声に伸びがある」
というものであった。
(歌……。そうだ歌だ!私の今の心を表現するには!想いを込めた歌を歌う事だ!)
だがいざとなると何を歌えばいいのか分からない。オオアリが酸を吐きかけてきた。それをなんとか回避しつつ、意を決してマイクを握りなおす。
(ええい!ままよ!)
高鬼は歌った。高鬼の想いが天に通じたのか、彼の歌声は清めの音となり、彼の周囲に波紋のように広がっていった。
途端に苦しみだす魔化魍の群れ。効果があると分かるや、高鬼はなおも声高らかに歌い続けた。彼が歌うのは今年の春に大ヒットした曲、「シクラメンのかほり」だ。彼の大好きな曲である。
アカペラで歌い続ける高鬼の周りに、次々と魔化魍が倒れていく。そしてラストワンフレーズを歌い終わると同時に、全ての魔化魍が爆発し、塵へと帰っていった。
121仮面ライダー高鬼「気高い歌」:2006/01/30(月) 16:48:19 ID:5vDs65Ki0
コウキが本部に戻ってきた時には、すでに正午をまわっていた。研究室に入るとあかねが抱きついて祝福した。
「やったねコウキくん!トータルで三十匹よ!新記録だわ!」
嬉しい反面、少し残念だった。コウキはあかねに自分の発明の事も褒めてもらいたかったのだ。そんなコウキの気持ちを察してか、あかねがコウキのマイクについても褒める。
但し、マイクは清めの音の衝撃に耐え切れず、歌い終わった直後に魔化魍同様爆発してしまっていた。
「耐久性はまだまだのようね。……でもこれは将来全く新しい音撃武器が生まれる可能性を提示したわ」
そしてそれはあなたが作りなさい、そうあかねは続けた。
「えっ?」
「鬼を引退したら私の元で本格的に技術を鍛えなさい。……いずれはあなたに私の後を継いでもらいたいと思っているの」
あかねが笑う。彼女の笑顔にはまるで十代の少女のようなあどけなさが残っている。
コウキ、後の吉野本部開発局長、小暮耕之助の若かりし頃の話である。 了
122名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 17:46:44 ID:UlmhbbtV0
小暮さんキ(・∀・)ター
123名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 18:50:01 ID:/TssbtfL0
これが伝説の
「ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」ですね!
言霊ってなるほど。小暮さん超カコイイです。GJ!
狂鬼も引き続き楽しみな感じっすね!
124番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/30(月) 22:12:17 ID:b2sMItMD0
番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻『染まる腕』(後)
中篇は>87から

弾鬼は自らに向かい突進してきたガシャドクロに合わせ飛び蹴りを放った。肋骨部分を蹴り砕き、二匹目のガシャドクロに連続で拳を叩き込む。四肢を砕かれたガシャドクロは起き上がることも出来ず、地面に伏しもがいている。
『ヘッ!脆いじゃん!カルシウム不足だなぁ!』
弾鬼の呟きを受けて勝鬼が笑う。
勝鬼は笑いながら腕に装備している爪『風牙』を用いて、ガシャドクロをナマス切りに仕立て上げる。ガシャドクロは見るも無残な姿へと変わり、地面にバラ撒かれた。
『骨粗しょう症ってヤツかもね!』
勝鬼の発言に蛮鬼は『えぇっ』と唸った。
蹴りと拳打でガシャドクロを粉砕し終えた蛮鬼が呟く。
『魔化魍にもそんな症状があるとは・・・・世も末ですね』
彼らの周りには既に数体のガシャドクロの残骸が散らばっており・・・・・・
『我らの子はそんなに柔ではないぞ?』
『さぁ、八分目と言わず・・大量に食せ』
童子と姫の呟きに、地に散らばった破片がカタカタと揺れ
『何だァ!』
弾鬼の叫びを無視し、骨たちは元の姿へと組みあがり・・・・完全復活した。
しかも細かい破片からは、新たに別のガシャドクロが生まれている。
『復活した!?』
蛮鬼の叫びに勝鬼が続く。
『しかも、増えてる。やっぱり・・話がうますぎると思ったよ!音撃じゃないと!』
勝鬼は腰の後ろに手を回し『切風』を引き抜く。
『そうですね!裁鬼さん!送鬼さん!力をお借りします!!』
同じく『勺拍子』を手に構える。
『響鬼さん流、太鼓祭りってな!仕切りなおしで、行くぜぇ!!』
弾鬼も『那智黒』を握ると手近なガシャドクロに向かい接近した。
125番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/30(月) 22:12:48 ID:b2sMItMD0
勝鬼は破片を無闇に飛ばさないように攻撃したが、どうやっても破片は飛び散ってしまう。
『それならっ!』
勝鬼は装備帯から音撃鼓『向風』を取りガシャドクロへと張り付けた。
ガシャドクロの体に巨大な太鼓が展開される。
『弾鬼君直伝!音撃打・破砕細石の型!行くよっ!』
勝鬼は弾鬼と同じように両手を使い素早く『切風』を振り下ろす。素早い連打からの清めの音を受け、ガシャドクロの体はガタガタと揺れ、
『ハアッ!』
トドメの両手打ちであっさりと爆発四散した。
空中から振って戻る『向風』をキャッチすると、次のガシャドクロへと標的を定めた。

蛮鬼も応戦していたが、どうやっても破片をバラ撒き・・・結果、再生という図にハマってしまった。
『攻撃力がありすぎて困ると言うのは、初経験ですね・・・・ならば!最大戦速で倒させてもらいます!』
音撃鼓『爆熱』を装備帯から取り外しガシャドクロへと張り付ける。
『僕のはまだ型とは言えませんので』
巨大化した音撃鼓を前にして、『勺拍子』を振り上げる!
『このまま行きますよ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
一撃一撃を確実に確りと叩き込む!
まるで教科書のような叩き方だった。
『トドメです!てやぁぁ!』
両手で最後の一撃を叩き込む蛮鬼。ガシャドクロはやはり勝鬼の時と同様に全身を震わせた後、爆発四散した。
『爆熱』をキャッチすると『成功は自信につながりますね!』と呟き、二体目のガシャドクロへと向けて地を蹴った。

二人に比べ弾鬼は流石に慣れた様子で音撃を決めてゆく。
脚払いをかけて転ばすと同時に音撃鼓『御影盤』を張り付ける。
『さて、ウォーミングアップはコレくらいだろ・・・・いくぜっ!音撃打!』
巨大化した御影盤を前に両手で構えた音撃棒を真後ろに振り・・・
126番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/30(月) 22:13:27 ID:b2sMItMD0
『粉骨砕身の型ぁ!でりゃぁぁぁああああ!』
振った反動を利用し、加速した腕で強かに御影盤を叩いた。
その轟音!周囲に広がる音そのものが音撃ではないかとばかりに鳴り響く。
高速で叩く『破砕細石』と違い、一撃一撃を重く叩きつけるのが新型『粉骨砕身』。
前者が響鬼の『火炎連打』ならば後者は『猛火怒涛』に相当する。兄貴分である響鬼からヒントを受けた、それが弾鬼の新型だった。
『ラストォ!おぉぉぉりゃぁああああ!』
最後の一撃を叩き込み、爆発四散するガシャドクロ。『御影盤』を回収すると弾鬼は勝鬼と蛮鬼に大声で叫んだ。
『勝鬼!蛮鬼!お前らは童子と姫を!こいつ等は任せろ!』
その言葉を受け、勝鬼と蛮鬼は走り出す。何故か静観していた童子と姫は向ってくる二人を見ても何も行動を起こさなかった。
音撃棒の一撃を受け吹き飛ぶ童子の体に『風牙』が突き刺さる。
最後に、ニヤリと嫌な笑みを浮かべ・・・童子は爆発した。
そして姫のほうも同じように蛮鬼によって倒された。
『どういうことでしょう?』
『ヤツら・・・手ごたえが無いと言うよりは・・・』
疑問を持つ勝鬼と蛮鬼。
『とりあえず弾鬼君のところへ戻ろう』
弾鬼の加勢に向おうとした、その時!巨大な白い何かの塊が勝鬼と蛮鬼を吹き飛ばした。
『がっ!』
『ぐぅ!』
宙へと舞い上がる勝鬼と蛮鬼。地面に落下する寸前に、勝鬼は自らと蛮鬼の周りに風を生み出し、落下の衝撃を抑えた。
127番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/30(月) 22:14:46 ID:b2sMItMD0
『済みません、助かりました勝鬼さん!』
『あぁ・・・でも、今のは何だろうね?もしかして!?』
『えぇ、今僕も同じ事を考えました・・・・・・集合体かもしれません』
勝鬼と蛮鬼は背中合わせの形を取り次の攻撃に備えた。
だが、次の攻撃は真下から。つまり地中から現れた。
白く、自らの腕と同じくらいの指が地中から現れ、確りと捕まれた。
『ぐっ!こいつ!』
『なぁ・・なんて力だよっ!』
背中合わせのまま握られる勝鬼と蛮鬼。見ると巨大な頭蓋骨に怪しく輝く紅い眼。魔化魍ガシャドクロの集合体が四つんばいの格好で地中から現れた。
童子と姫は、既に成体となったガシャドクロを護る必要がなくなった為に、あえて無抵抗で攻撃を受け、勝鬼と蛮鬼に隙を作らせたのだった。
『ぐっ・・ああ・・・・こ・・のぉ』
『こっ・・のままじゃ・・・やられる・・』
呻く蛮鬼と勝鬼。ガシャドクロはいよいよ握りつぶそうと手に力をこめる。そこへ、救いの手は差し伸べられた。
周囲にいたガシャドクロを倒し終えた弾鬼が木々を跳ねるように移動し、ガシャドクロ集合体の腕へと飛び乗った。
『二人とも待ってな!粉骨!砕!身!の型ァ!』
勝鬼も聞いた事の無い音撃打により、勝鬼と蛮鬼を掴んでいた手は爆砕した。
開放された二人は着地と同時に膝をついた。
『無事か?勝鬼!蛮鬼!』
『ゴメン、助かったよ弾鬼君』
『済みません。助かりました』
弾鬼は集合体を見上げた。
『やっぱ、実物もデカイなぁ』
『どうしよう弾鬼君・・・こんなヤツ初めてだよ・・』
勝鬼は『切風』を構えながら、隣でのほほんとガシャドクロ集合体を見上げている弾鬼に言った。
『そうだな・・・よし一旦バラそう!』
128番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/30(月) 22:15:24 ID:b2sMItMD0
弾鬼は事も無げに言うと、勝鬼の返事を待たずに突っ込んだ。
『蛮鬼!さっきの場所に俺のジャージがある。ポケットの中身を取ってきてくれ!お前が気にしてたアレだ!』
弾鬼は両手で音撃棒を回転させながら蛮鬼へと叫ぶ。蛮鬼は意味が判らなかったが、気にしていたアレ!と言われようやく理解する。
『判りました!すぐ戻ります!』
走る蛮鬼。だがその前にガシャドクロ集合体の肋骨部分が飛来し、個体に分裂した。その数5匹。
『くっ!お前達に構ってる暇は!』
『勺拍子』を構え、迎撃しようとした瞬間・・・・蛮鬼の体がふわりと浮き、ガシャドクロを乗り越えた。
『勝鬼さん!』
『蛮鬼君!行くんだ!こいつは僕が!』
蛮鬼を風で浮かせた勝鬼は『向風』を投げ、ガシャドクロへと張り付ける。即座に接近し『切風』を叩きつける。
蛮鬼は急いで走り、変身した場所へと急いだ。

蛮鬼はその場所に着くなり、弾鬼のジャージを引っつかみすぐさま駆け戻った。その最中、ポケットを漁り目的のものを引っ張り出す。
『これは・・・・これが・・切札・・・・・・』
蛮鬼は自分の手にある何の変哲も無い『音撃鼓』に少々落胆した。
『しかし、考え無しにみどりさんがこんなものを渡すはずが無いですし・・・気になりますね。ぜひ後で分解したいものですが』
蛮鬼は全速力では走り、弾鬼と勝鬼の元へと戻った。

『うらぁ!』
弾鬼の雄叫びと共に放たれた『粉骨砕身』により、ガシャドクロ集合体の背骨は割り砕かれた。
勝鬼も負けじと『向風』を張り付け部分破壊を手助けして居る。20mもあった巨躯はバラバラに解体され四分の一程度のサイズになっている。
だが、飛び散った破片からは再びガシャドクロが際限無く復活している。
『だめだぁ!蛮鬼君!このままじゃジリ貧だよ!』
『弱音を吐くな!まだまだ行くぜぇ!』
弾鬼は勝鬼の弱音を切り捨てると、ついに頭蓋骨へ『御影盤』を張り付けた。
『粉骨砕身!でりゃぁぁ!』
そのまま脳天をカチ割るような打撃に耐え切れず爆発する頭部。ついに全身は崩れ落ち、集合体から個体への分裂に成功した。
129番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/30(月) 22:17:06 ID:b2sMItMD0
『個体数を減らすぞ!勝鬼!』
『う・・うん!』
技のキレが弱くなっている勝鬼に発破をかけ、特攻する弾鬼。この時点で分裂したガシャドクロの数は60体を超えていた。
数の暴力に押され気味の弾鬼と勝鬼。そこへようやく蛮鬼が戻ってきた。
『弾鬼さんっ!』
弾鬼へ音撃鼓を投げ渡す蛮鬼。弾鬼は手近なガシャドクロを踏み台にし、宙を舞う音撃鼓をキャッチする。
『サンキュー蛮鬼!』
さて、とばかりに着地して両足を大きく開き大地に立つ。
『勝鬼!蛮鬼!今から勝負に出る!少しでいい時間を稼いでくれ!』
弾鬼は関取のように四股を踏み、大地を叩くように脚を叩きつける。
『ふぅ〜!――――――――――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!』
弾鬼は低く声を出し、全身に気を集中させる。それに呼応するかのように大地は揺れ・・・変身前と同様、石推が隆起する。
だが、隆起した石推が砕けると変化がおきた。まるでサファイアのように青く輝く飛沫となり、弾鬼の周辺に漂った。
ガシャドクロは隙だらけの弾鬼を見逃すはずも無く、飛び掛り、あるいは体の一部を外し弾鬼へと投げつける。
それに反応した勝鬼は、
『させないよっ!』
弾鬼の前へと立ち、風を周囲に生み出し盾にして弾鬼を守護した。だが、数が多すぎた。数体のガシャドクロを吹き飛ばし、数本の骨矢を弾き飛ばしたが
『くっ・・あぁ!』
風の防御壁が薄くなった所へ飛来した骨矢に勝鬼の肩、太もも、腕は貫かれ血が飛び散った。
『勝鬼さん!』
一体でも多く数を減らそうと、ガシャドクロを確実に仕留めていた蛮鬼が勝鬼へ駆け寄ろうとする。だが、勝鬼は骨矢を抜き、投げ捨てると再び『切風』を握る手に力を入れて振り回した。
『こんなダメージが何だってんだ!』
気合で傷を塞ぐが、その腕は赤く染まっている。
『っ!弾鬼さん!勝鬼さんが!』
蛮鬼はガシャドクロを爆砕させ、戻ってくる音撃鼓をキャッチしながら弾鬼へと叫ぶ。
弾鬼の周辺は、輝く飛沫で覆われていた。
『―――――――――ぁぁぁあああああ!おぉぉおおおおおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!』
両腕を交差させ・・・・一気に振りほどく!
周囲に浮遊していた飛沫は、一斉に広がり・・・半径20m地下くを覆った。
そして、弾鬼の姿を見る。
130番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/30(月) 22:18:10 ID:b2sMItMD0
弾鬼は言った。『そんなこと言っても、俺はまだ成れないんだからしょうがないじゃ〜ん!』それを指すのは、響鬼で言う紅の状態に。
確かに、弾鬼の姿は紅の様にはなっていない。だが、その腕は蒼く染まり輝いている。
響鬼は夏の時期になると鍛えなおす。それは紅への変身の為。鍛えが足りないと、二の腕が紅く染まる程度しか変身できない。
関東最強の鬼ですらソレが精一杯なのだ。
そして、弾鬼は鍛えに鍛え・・・・ついに響鬼の領域まで近づく事に成功したのである。
『弾鬼さん!その腕は!?』
蛮鬼の呟きに、弾鬼は『那智黒』をクルリと回す。
『まだ、中途半端だけど・・・コレでいけるぜ!』
弾鬼は光り輝く領域の中で、身を低く構えるとガシャドクロの軍勢に向けて地を蹴った。
『りゃあぁぁぁ!』
『那智黒』を二度三度叩きつける。すると、破片すら飛び散る事無くガシャドクロは吹き飛ばされた。そして、そのガシャドクロの前に蒼く輝く飛沫が収束し、音撃鼓の形を形成した。
その数は、弾鬼がガシャドクロの間をすり抜ける度に、ガシャドクロが吹き飛ぶ度に増えていく。
『あ・・・あれは・・・』
『多分・・・弾鬼君の・・・紅だね・・・まだ未完だけど・・・それでも凄いよ!』
蛮鬼と勝鬼は弾鬼の不可思議な攻撃に見とれている。
そして、全てのガシャドクロに蒼い太鼓印を付け終わると、手近な一体に例の音撃鼓をさらに叩きつけた。巨大化し、太鼓としての姿を表す・・・謎の音撃鼓。
『さぁ、終いだ。破片残らず清えやがれぇ!』
弾鬼は那智黒を構え
『行くぜっ!音撃打・爆裂細石の型ぁ!』
その音撃鼓目掛けて『那智黒』を叩きつけた。
131名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 22:19:09 ID:lVy4BPGL0
これがアームドセイバーの元になったわけか!
すっごく納得してしまった。
皆様すばらしいです。ほんと。
132番外編『仮面ライダー弾鬼』二之巻:2006/01/30(月) 22:20:05 ID:b2sMItMD0
刹那!広がる清めの音。謎の音撃鼓から発せられる清めの音は波紋状に広がり、50体近いガシャドクロに印されている太鼓印へと到達する。その音は太鼓印へ届くとさらに共鳴するかのように広がり・・・いつしか、50体全てのガシャドクロが一斉にガタガタと体を振るわせる。
破砕細石の様に光速で連打を繰り出す弾鬼。
後に判った事だが、弾鬼が使用した音撃鼓の正体は、みどりが製作した『音撃鼓・爆裂火炎鼓』の試作型だった。
『爆裂火炎鼓』は清めの音を最大限引き出せるように改造された物であり、弾鬼は未熟な自分でも夏のヤツに対抗する術として、試作型を譲り受けたのだった。
そして、未完成ながらも二段変身を習得可能な状態まで鍛えた弾鬼は試作と未完を足して、限りなく完成の状態の力を引き出せるようにしたのだった。
『ラストォ!ダリャァァァァァァァ!』
両の手で『那智黒』を叩きつける弾鬼。一際強く清めの音が広がり・・・・・50体近いガシャドクロは、一斉に爆発し・・・塵芥へと化した。
『ふぅ・・・・・まぁ、こんなモンかな』
弾鬼は、顔の変身を解き・・・・呆気に取られている勝鬼と蛮鬼にVサインを送った。
空は黒く染まり・・・明りの無い世界を生み出していた。だが、その場には暗くとも判るほど蒼く輝く光が、雨の様に降っていた。

都内某所・商店街/
『たちばな』に無事退治した事を報告した後、ダンキは家に戻ったがインスタントのコーヒーが切れている事を思い出し商店街まで出た。
時刻は22:08分。普通のスーパーなら閉まっている時間帯だが、ダンキ行きつけのスーパーは24時まで空いている。ダンキはお決まりのジャージ姿で店へ急いだ。
「ん?あいつ」
ダンキは見知った顔を見つけた。スーパーの入り口で誰かを待つように立っている女性。女性はダンキに気がつくと、小さく手を振り駆け寄ってきた。
「吾妻・・何してんのこんな時間に?」
女性=吾妻は安堵の表情で
「ここに来れば・・逢えると思って」
そんな事を言って、エヘヘと笑った。
                 二之巻『終』
133名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 22:20:38 ID:lVy4BPGL0
すみません、タイミングが悪かったですね・・・。
>>131は仮面ライダー高鬼へ、です。
134名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 22:31:33 ID:wDOzp6o10
職人の皆さん、乙です!GJです!ありがとうっ!
ほぼ毎晩、興奮のあまり鳥肌立ってますよ。
明治鬼さん、狂鬼くん、剛鬼さん、高鬼さん、弾鬼さん、カッコいいッスよ・・・・

そして、裁鬼SS中の人、オレはいつでも読みたいですよ。
ワクテカしながら、時機を待ちます。

まとめサイトの人も、毎度乙です。本当にありがとうっ!
135名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 22:40:52 ID:hTBC1xlH0
最終回の後、明日夢が鬼になったら・・って考えたのがあるんだけど、どうかな?
136皇城の守護鬼:2006/01/30(月) 23:07:20 ID:9AFH052n0
  序、

 東京地下、百六十米。

 闇の中、妖しく輝く、光、光、光。
 床となく天井となく不規則に蠢く十八対の瞳。
 獲物を仕留めるべく、隙無く付狙う憎しみの焔(ほむら)燃ゆる眼(まなざし)。
 拳ほどもある、仄白い異形の眸(まなこ)が睨(ね)めるもまた異形。

「童子は?」

「おりませぬ!」

「姫は?」

「見失いました!」

「やむをえぬ。こやつらをここへ追い込んだだけでもよしとしよう」

 鉄(くろがね)のごとき屈強の体躯は、淡光を弾き炯々と。
 額に生ゆるは鋼(はがね)のごとく、折れぬ心と闘志の証。
 異形三匹、それぞれが背を背に負い十八の異形を迎え撃つ。
137皇城の守護鬼:2006/01/30(月) 23:08:01 ID:9AFH052n0
 なぜに我等の邪魔をするか?
 なぜに我等を傷つける?
 父(おと)はどうした?
 腕をもがれた──
 母(かか)はどうした?
 額を割られた──
 ──おお…。
 ──ああ…。
 我等は力を手に入れる。
 我らは増えねばならぬのだ。
 なのに、ああ…
 ああ……!
 何故にうぬらは我等を阻む?
 何故にうぬらは我等を殺す?
 ええ、口惜しや。
 あな悔しや。
 喰うてくれよう。
 啜ってくれよう。
 
 許さぬぞ──鬼めらがっっ!

「来るっ!」
138皇城の守護鬼:2006/01/30(月) 23:09:07 ID:9AFH052n0
 十八の異形は怒涛のごとく。
 三匹は波面に漂う花弁(はなびら)のごとく。
 双眸は唸りをあげ一直線に。
 鉄の影は迅雷の疾さで全てを逃れる。

 静寂(しじま)。

 どくん。

 闇の最奥聞こゆるは、誰の血潮の高鳴りか?

「いざ!」
 一匹が呼ばわる。
「応、いざ!」
 他の二匹が応える。

 凛!

 一匹の持つ剣が、清浄なる音をあげ、吼えた。

 ぃいよぉおーおっっ!

 二匹が撥を振り翳す。

139皇城の守護鬼:2006/01/30(月) 23:10:17 ID:9AFH052n0
 怒涛──。
 迅雷──。
 すれ違いざま、奇妙な軌跡を描き「音」が奔(はし)った。重い刃が薙ぎ走る。
 異形の肉が切り裂かれ、骨を絶ちながら清き波動が流れ込む。

 爆散。

 すれ違いざま片手で何か貼り付け、返しの撥を振り抜いた。
 二つの鼓動が見事に和す。
 凄まじき衝撃。
 異形の細胞が紫電の疾さで自壊する。

 爆散。 

 十八が十五に。
 
 ざわ。

 異形が驚愕した。

 おお、斬られた!
 砕かれた!
 我等の疾さを凌駕するというか?! 
 鬼め!
 鬼めぇ!

「さかしい。魔化魍がヒト並みの知恵を持つかよ」
 剣持つ鉄(くろがね)が吐き捨てる。
「日に日に戦いにくくなってまいりますな」
「これも龍脈の影響でありましょうか」 
 撥持つ鉄が呟く。 
140皇城の守護鬼:2006/01/30(月) 23:10:48 ID:9AFH052n0
 ──一気にゆこう。

 反撃の隙は無い。与えない。

 どくん。

 心の昂ぶり。荒ぶる心。

 清音が疾り、鼓動が闇に響きわたった。
 十五が十二に。瞬き一つ。
 十二が九に。瞬き二つ。
 九が六に。瞬き三つ。
 音に斬られ砕かれ、数を減らしてゆく。
 六が三。
 ──そして。 
 闇は闇へと還った。
 暫しあって。
 鈴鳴り。金属か、それに近い物質同士の触れ合う音。遠ざかって行く三人分の足音。足
早に。


 古より時代の陰にて暗闘を続ける者達あり

 その者達、人にあって人に無く、魔にあって魔にあらざる。
 清音奏でる楽器を武器とし、魔に立ち向かうものなり。
 己(おの)が心と身体鍛えぬき、魔すら取り込み戦うものなり。
 その者達、自らを陰に住まう者と呼ぶ。

 ──すなはち《鬼》と。
141名無しより愛をこめて:2006/01/30(月) 23:13:15 ID:9AFH052n0
 皆様申し訳ありません。
 前回の書き込みは改行の関係で非常に読みにくいものとなっておりました。
 うっとおしいかとは思いますが、読みやすく新たに書き込ませていただきま
したので今回に限りご容赦ください。
142弾鬼SSの筆者:2006/01/31(火) 00:33:47 ID:fnbIlzSX0
遅くなりましたが、今回も長々とした文章を投下してしまいました。
本当は短く要点を纏めたかったのですが、説明文章多し。ラストは不完全燃焼と
なにやらグダグダに・・・・
他の職人さんは凄いなぁ、と実感しています。

各SSの職人さんも素晴らしい作品GJです!!
これからもよろしくお願いします!
143高鬼SS作者:2006/01/31(火) 00:51:15 ID:TryfltpH0
色々と感想ありがとうございます。
正直不安もあったのですが、好評で何よりです。

小暮さん話は時代も場所も響鬼や裁鬼達関東の面々とは大きく異なり、自由度が高い分難しいものとなってしまいました。
また、1970年代前半は日本赤軍やベトナム戦争等、社会的に不安定な時代だったので広げようと思えば結構広がるのではないかと思います。
あまり本編とは接点の無いような話でよければ、また投下してみようかと思っています。
144名無しより愛をこめて:2006/01/31(火) 01:27:55 ID:maLVwxve0
>>141
どっかの掲示板で見た気がするが…
転載?それとも作者本人ですか?
145響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第二話:2006/01/31(火) 09:12:07 ID:xihhsEax0
第三話 目覚める秘技
「こんにちわー!」「あら、ひさしぶり」たちばなの地下の研究室で
明日夢は一年ぶりにみどりと再開した。
「元気にしてた?」「ええ、みどりさんも元気そうで。」
「まあまあ、お茶でも」みどりは椅子を取り出し明日夢に差し出した。
「みどりさん、こいつは部外者ですよ。」京介は不機嫌そうな顔をした。
「まあ、元兄弟弟子でしょ?いいじゃない。」久々に会った二人は会話が弾む。
京介はそれが気に入らなかったが、テーブルにある硬貨のような物を見た。
「みどりさん、これはなんですか?」「ああ、それね。キトウジュツって分かる?」
「爪を出す技でしょ?」「そうじゃなくてね。鬼が投げる術って書くの。」
「裏鬼道って言ってね。中には禁止されているのもあるんだけど、
鬼投術は 飛んでくる攻撃を避ける練習の為の技なの。」
みどりは人差し指と中指ではさみ、はじき出すように投げてみた。飛んで行った硬貨はコツンと壁に辺り、床に転がった。
「これは鬼円っていうの、一応、鬼石でできてるんだよ。」
「なんか弱そうですね。」京介は言った。
「鬼がやると壁ぐらいは壊せるんじゃないかな?でも、練習用の技だし、音撃管もあるからね。」
みどりはポテチの袋をビリッと破いた。
「最近は使う人も殆どいないみたいだよ。轟鬼くんは知らないかもね。」
京介は指で挟み、投げるポーズをしてみた。不思議なくらいに手に馴染む気がした。
「京介くん、それほしい?」「いいんですか?ほしいです。」京介は即答した。
「いいよ、中古品だけど。練習用のゴム製のもあるし、確か鬼投術の本もあったよ。」
「本当ですか、ありがとうございます。」
京介はみどりに頭を下げ、散乱していた鬼円をかき集め、うれしそうに専用のホルダーにつめた。
146響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第二話:2006/01/31(火) 09:12:52 ID:xihhsEax0
夕日も沈みかけた頃、自分を助けたヒーローについて熱く語る子供と、それをうなずきながら歩いている母親。二人は自宅に続く、道を仲良くあるいていた。
子供は車椅子の車輪を一生懸命回して、できるだけ早く走ろうとしていたが、「追いつけないからやめて」と、母は優しく微笑んで言う。
「すごいんだよ。くるっとひっくり返したんだよ。」
「そっか、正義の味方っているんだね。」
車椅子に乗り始めてから、しばらく暗い表情が多かった子供が笑顔で話している。
助けられた事もうれしかったが、子供に笑顔が戻ったのもうれしかった。
もし会える事ができるなら、言えるだけの感謝の言葉を言おう。
母親はそう思った。
147響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第三話:2006/01/31(火) 09:14:54 ID:xihhsEax0
早朝の公園で、組み手をする二人の姿があった。
流れるような動きで当て身を繰り出す京介。それを紙一重で受け止めるヒビキ。
かなり戦闘ができるようになったといっても、スピード、パワー共にヒビキには相当劣っていた。不用意に殴りかかれば、自分の力を利用され投げ飛ばされる。
ローキックを打っても、より強く速いローキックで打ち落とされる。
すべてにおいて上を行かれるヒビキに、ここ最近、京介は成す術を失っていた。
「はあ!」左足でヒビキの顔面を狙う、ヒビキはそれを見切り、顔をそらす。
外れた蹴りの勢いを使い、今度は裏拳をする。回転技が外れた時は大体、回転技でフォローするのが京介のパターンだった。
ヒビキは飛んでくる甲を、腕を掴んでとめた。
「はい、おしまい。」そう、ヒビキが気を抜いたとき、掴んだ腕の指が奇妙な動きをした。
ヒビキが驚いた顔をすると京介は戦闘中に指に忍ばせた鬼円を飛ばした。
本能的に危険を察知したヒビキは急いで首を捻り、鬼円をよけた。
そして京介を背負い投げして投げ飛ばす。
一回転して京介は地面に叩きつけられた。
148響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第三話:2006/01/31(火) 09:24:53 ID:xihhsEax0
「あー、これも効かないか!」「そんなことないぞ、結構、やばかった。」
ヒビキは手を引っ張り京介の体を起こした。
「鬼投術か、よく知ってたな。」「みどりさんに教えてもらったんです。」
「へえー、古い技を良く勉強したもんだ。」「でも、ちょっと卑怯ですかね?」
「そんなことはないんじゃないか?太鼓の鬼はどうしても懐に潜る必要があるからな。
こういう技は良い牽制になるぞ。」
リュックから水を取り出し、京介に渡し、自分も水を取り出した。
「この分だと大分、鬼に近づいたなかな?」
「僕はもう鬼になれます!」京介は思わず立ち上がりヒビキに迫った。
「まあ、待て。焦るなよ。」興奮した京介をなだめた。
「焦る気持ちはわかるけどな、だからこそしっかりと足をつけないと。
 上ばっか見て走ると転んじまうぞ。」
「…はい。」「今日はやけに聞き分けがいいな。」
「そんなことないですよ。」真面目に答える京介をヒビキは笑う。
「良し、じゃあ。行くか!」ヒビキは立ち上がり荷物をまとめた。
「え?どこですか?」「今日は四年に一度のスーパー得々市の日だ!」
「ええ…。」京介はあきれた顔をした。そんな京介を尻目にヒビキはそそくさと出発した。
「得々市はぁ〜、いいもの安い〜♪」
へんな替え歌を歌うヒビキの後を京介は追った。

次回 「生まれる不信(仮)」02/02ぐらいに掲載予定。
お詫び、第三話のところを第二話として掲載してしまったことを
深くお詫び申し上げます。m(__)m
149名無しより愛をこめて:2006/01/31(火) 11:17:54 ID:qcnkj2TR0
なるほど言霊かあ〜!
布施明=木暮さんのヒット曲はシクラメンだけじゃないんだが・・・
そう思ったら妄想広がりんぐ・・・

オロチ若しくはそれに似たシチュで

満身創痍の鬼たちで唯一攻撃可能なのは吹雪鬼であった。
・・・鋭鬼が身を呈して直撃を塞いだ結果だった。
「鋭鬼君の馬鹿・・・」心が折れていた吹雪鬼にはそれが精一杯の言葉だった。
「此処で吹雪鬼さんの腕の中でって俺のキャラじゃないからマブダチのトコに行くよ・・・」
よろけつつ転び、仕舞には這いずりながらショウキとバンキが倒れてる側に向かう。
意識が薄れる中誰かに肩を支えられる・・・「しっかりして下さい、・・・お兄さん!」不敵鬼だった。
「今なんて?」「着きましたよ!」不敵鬼は何か感じてた様だ。
「惚れた女より俺達かよ!」「まあな!」蛮鬼が「三バカ大将揃い踏みですね!w」「三バカ言うな!w」

二人に耳打ちして鋭鬼がヘリに向かい叫ぶ
「木暮さん、いや高鬼さん!お願いします!!!!!」

蛮鬼が弾き出したイントロは「君は薔薇より美しい」のイントロだった。

こんなんどうですかね?
150名無しより愛をこめて:2006/01/31(火) 18:27:06 ID:vEWr/aK70
>>144
うん、それはここで見たのだよ。>>82,83
そして>>141さんは作者ご本人さんだよ。

151名無しより愛をこめて:2006/01/31(火) 19:48:35 ID:4vZw9Rf80
弾鬼さん!強化形態出た!乙です!
勝手なことを言いますが、
「紅」みたいな名前が弾鬼さんにも欲しくありませんか…
すみません、生意気でした!
152剛鬼SSの中の人:2006/01/31(火) 22:32:45 ID:qc6NdBFv0
何か京介が嫌に爽やかで良いです。サブタイを見ると来週何か大きな展開があるのでしょうかね。楽しみにしてます。
高鬼SSもGJです。小暮さんの本質的なところは今も昔も変わってないんですね。何か可愛くて良いです。
1970年代前半における鬼っていう視点も興味深いですね。
弾鬼さんもついに強化形態ですか(腕だけですがw)吾妻との関係もそうですが先が気になります。無理せず頑張ってください。
皇城の守護鬼もかなり雰囲気が伝わってきて良いです。昔の鬼ってこんな感じだったんだろうか。

>>106
前回も今回も本当にありがとうございます。
私も>>134氏と同じくまたいつか職人さんの作品を読める時を楽しみに、そして気長に待ってます。
153高鬼SS作者:2006/01/31(火) 22:41:20 ID:TryfltpH0
>>149
裁鬼SS読んだら、石割がシクラメン歌って簡単に解放されてたから
小暮さんにとって何か思い入れのある曲なのかなぁって思って。

…そうじゃなきゃあの状況ならもっと派手な歌にしますよw
154149:2006/01/31(火) 22:51:30 ID:qcnkj2TR0
>>153
あっしの書いた雑文なんぞ気にせんで下さい!

数あるヒット曲でラブバラード選んだら女鬼さんへの繋がりが出来たら
面白いかと思いまして・・・余計な事でしたね
155皇城の〜:2006/02/01(水) 01:05:42 ID:9V9dKj0N0
>144
本人です。以前に書いたものを改稿してこちらに投稿させていただきました。
156名無しより愛をこめて:2006/02/01(水) 01:31:05 ID:qIb1bWC40
このスレ、ホントに充実してきましたねー。嬉しい限り。では、ザザッと感想をば。

剛鬼SS・・番組開始当初の響鬼本編に雰囲気が似てますね。
      内気な特撮マニアな少年が、関東で響鬼に次ぐ実績を誇るNO.2の鬼にどうなっていくのか期待してます。
      公式では大男みたいなことが書いてありますが、この少年時代の剛は、私の中では東京ガスのCMに
      出て来るあの少年のイメージなんですよねぇw

弾鬼SS・・トリオのバランスがいいですね。そして紅化はやっぱ読んでて燃えますね。確かに名前が欲しいところですが・・。

狂鬼SS・・マジで、続編を見ている思いです。頭の中に映像が出てますよ。
      ただ個人的には暗い方向に話を持っていってもらいたくないかなw

高鬼SS・・今回の大穴(失礼)!まさに「ちぎっては投げ」ですなw。若い頃から小暮さん、あんななんだなー。
      時代設定も難しいけど、上手いです。DAは多分小暮さんが作るんでしょうね。

皇城〜・・スキのない文章で引き込まれます。紙で一気に読んでみたいものです。
157名無しより愛をこめて:2006/02/01(水) 02:29:37 ID:a+flD5900
>>狂鬼SS
最終回後なら互いの呼び方は明日夢と京介じゃないか?
最終回でお互い認め合ったということは、響鬼との修行でいい影響を受けたということだし
その辺の彼の成長した部分も書かれると嬉しかったり
>>弾鬼
名前がまだ出ていないのは腕だけの強化だからかと

158響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第三話:2006/02/01(水) 09:37:59 ID:M93A1+UC0
>>151
ども狂鬼職人です。実はご指摘の通りなんですよ。
二話目を投下した時、設定を確認するためWikiに行ったら焦りました。
ぶっちゃけた話、実は京介に対してあんまり感心がなかったんすよw
何で選んだとかは、まあ、機会があれば話しますが。
正直、止血したくらいで京介が簡単に認めるのも釈然といかないし、
パネルシアター襲撃の謝罪もないし、
どうして、あの程度の事で二人がいきなり和解できるのか…。
これ以上はただのアンチなのでやめます、
ただ、この辺については削除しようとしてた話を追加して修正します。
ちなみにモッチーを救出してから呼び合ったんでしたっけ?
すんません、教えてください。
>>156
すみません、響鬼と思えないくらい悲しい話にする予定ですw
159響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第三話:2006/02/01(水) 09:39:56 ID:M93A1+UC0
すいません!!!
>>151→157です!
160157:2006/02/01(水) 12:35:37 ID:a+flD5900
モッチーを助けて3人で逃げるときに初めて呼び合ってましたね。たしか
和解云々はそれをきっかけにして進んでいくのでは、と思ってます
>>止血したくらいで京介が簡単に認めるのも
唯一の友達(多分)で、(一方通行の)ライバルだった明日夢を認めたいという気持ちはどこかにあったんじゃないでしょか

「な、何よ、友達いなくて寂しかったから認めたわけじゃないんだからっ!!」
みたいなw
161響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」:2006/02/01(水) 13:10:41 ID:M93A1+UC0
>>160
ありがとうございました。
その辺の話をうまくまとめときます。
162響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第四話:2006/02/01(水) 14:48:16 ID:M93A1+UC0
第四話 生まれる不信
しまった!そう思った時には遅かった。
ヒビキはバケガニの酸で膝をやられてしまった。
川でバケガニに襲われたのは、ちょっとした油断が原因だった。
ヒビキと京介はこの数ヶ月、ヤマビコを立て続けに六体倒した。
同じような事例と同じような条件が続いた為、
二人はなにも考えずにヤマビコだと思い込み、
ディスクアニマルを山と森にしか送らなかった。
他の魔化魍の可能性を考えなかった事、それが最大の油断だった。
「はずれ、かな?」と言ってベースキャンプを片付け、
車に乗った瞬間をバケガニに狙われていた。
川から飛び出してきたバケガニは、車をひっくり返す。
天地が逆転した二人は、脱出しようとしたが、
曲がった車体のドアは開かず、ヒビキは苦しい体制で変身をし、
車体を突き破り脱出した。
しかし、飛び出した瞬間、バケガニのはさみに吹き飛ばされた。
空中で体制を治し着地したが、さらに追い討ちをかけるように、
バケガニは強酸性の泡を吐く、
横に回転してよけた響鬼だがわずかに泡を浴びてしまった。
「ヒビキさぁぁん!」京介は叫んだ。
163響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第四話:2006/02/01(水) 14:49:56 ID:M93A1+UC0
狭い車内の中で京介は音叉をつかみ、
腰に巻きついているディスクアニマルを起動させる。
起動したリョクオオザルとアカネタカは車外にでて、
後部にあったディスクアニマルのケースを引っ張り出し、
京介の前で蓋を開く、京介はなんとか手を伸ばし、
すべてのディスクアニマルを起動させた。
パワーのあるディスクアニマルは車体を戻そうとし、
空を飛べるディスクアニマルはバケガニに襲い掛かり時間稼ぎするが、
バケガニに次々を叩き落された。
響鬼は烈火から炎を放つ、だが、バケガニは泡を吹いてそれを消火した。
「おいおい、なんか賢いぞ。」感心とは裏腹にバケガニは襲ってくる。
「うぁぁぁ!」逃げる術のない響鬼はバケガニに挟まれた。
「ヒビキさん!」車から脱出した京介は、鬼円を力一杯投げつけた。
鬼円はバケガニの足を貫通し、そこから足が砕け、
バケガニは体制を崩し、響鬼を放した。
響鬼が落ちた場所はちょうどバケガニの真上だった。すばやく音撃鼓をセットする。
「音撃打!一気火勢の形!」激しく叩きはじめた、が、すぐに振り落とされた。
「大丈夫ですか!」京介は響鬼の元に駆け寄った。
「ちぃ、ちと、やばいな。」二人は完全に劣勢を強いらていた。
164響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第四話:2006/02/01(水) 14:51:37 ID:M93A1+UC0
京介は近づいてくるバケガニを見つめ、音叉を手に取った。
コツンとそばの岩にぶつけると、静かに額に近づけるが、
響鬼は音叉を握り、振動を止めた。
「なにするんですか!」「その必要なないみたいだぞ。」
その瞬間、バケガニの頭上から黄色い鬼が飛び掛った。
一振りして甲羅に傷をつけ、素早い動きでバケガニの足を切っていく。
流れるような動きで全ての足を切り落とすと、音撃弦「刀弦響」を突き刺した。
「音撃斬!冥府魔道!」辺りに激しいギターの音が鳴り響き、バケガニは爆発した。
「サンキューな!」響鬼はポーズをシュッと決めた。
「いえ、たまたま追っかけていただけですよ。」
蛮鬼も自分のポーズを決める。
「ヒビキさん、なんで?」京介は変身と止められた事が理解できなかった。
「もう今日で六回目だな。」「でも、今日は危なかったじゃないですか!」
「なんで、鬼円を使わなかったんだ?」京介は黙った。
「あれが効いた事は分かっていたよな。だったら、あれで、できる所まで
やるべきだったんじゃないのか?」「ですけど…。」
「いいか、次に変身しようとしたら破門だ。」
「え!破門!?」京介は言葉を失った…。
三人は壊れた車の荷物をバンキの車に積み込み帰路につく。
後部座席では寝息を立ててヒビキが眠っていた。
京介は意図的にそれを確認した訳ではなかったが、
寝ていると分かると運転しているバンキに話しかけた。
「バンキさん…。」「ん?どうしたんだい?」
しばらく、黙ってから再び話を始めた。
「僕が鬼に変身してはいけない理由ってなんですか?」
「さあ、わからないな。けど、ヒビキさんから見て何か足りないんだろうね。」
その後は東京に着くまで、何も会話はなかった。
165響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第四話:2006/02/01(水) 14:57:47 ID:M93A1+UC0
それから、二人は五回出動した。ヌリカベが二回、ヤマビコが一回、化け猫が二回。
その度に京介は変身しようとしたが、響鬼に阻止された。
確かに京介の力を借りる必要がない戦いが続いた。
しかし、言い換えれば、京介が変身し、実践を経験するには良い機会とも言えた。
それはヒビキはもちろん、京介にも分かっていた事だった。
そして、気付けば、京介はヒビキに不信感を抱くようになってきた。
本当は自分の最短記録での変身を更新されたのが悔しいんだ。そんな事まで思い始めた。
溜まりに溜まった不満をぶつけた先は勢知郎だった。
開店前の「たちばな」で京介はヒビキへの不満をぶつけた。
勢知郎は京介の不満を大人しく聞いて、
京介が一通り文句を言い終わると静かに話し始めた。
「んー、確かに弟子が成長を師匠が止めるのはおかしいね。」
「そうですよね!」
「ところで、京介くんはなんで鬼になりたかったんだっけ?」
「それは父を超えたいからです。」
「なるほど、立派な父を超えたいという気持ちはすばらしいね。
 僕も父親は偉大な人だったからな。よーく分かるよ。」
「そうなんです、だから、乗り越えたいんです。」
勢知郎は席から立つと、箱にきびだんごをつめ始め、作業しながら話を続けた。
「では、仮にお父さんを超えたとしたら、そのあとはどうするんだい?」
「え?」常に父親を超えることだけを考えていた京介には思いもしない話だった。
「…それは、まだ…。でも、それは話が違います!」
「そうだね。違うよね。」勢知郎はまっすぐに京介を見つめた。
「じゃあ、お父さんは何で消防士になったんだろうね?」
「え…。知りません…。」
「せっかくだから、考えてみたらどうだい?
 もしかしたら、お父さんを超えるヒントになるかもよ。」
勢知郎はお土産用のきびだんごを京介に持たせ、住所の書いてあるメモを渡した。
「じゃあ、お使い宜しくね。」
「…はい。」難しい顔をしたまま京介は店を後にした。

次回 再会する未来(仮)
166仮面ライダー高鬼「神住みし山」:2006/02/01(水) 23:58:38 ID:LJWLIJ5Y0
1975年、卯月。
この日、猛士本部のある吉野山では関西支部の面々による「花見の会」が開かれることになっていた。
吉野の桜は「一目千本」の異名を持ち、卯月、即ち四月の初旬から末までの間に満開の桜が山を彩る。
関西支部では、毎年四月中旬の平日に関係者全員が集まって「花見の会」を開くことが恒例となっていた。コウキも、日本の四季を肌で感じる事のできるこの行事を毎年楽しみにしていた。
時間は午前十時を少し回っていた。「花見の会」は昼過ぎに始まる。コウキはそれまでの時間をいつもの研究室内の個室で機械いじりをして潰していた。
と、そこへあかねが珈琲を持って入ってきた。
「精が出るね、コウキくん」
そう言うと珈琲を差し出す。礼を言ってそれを受け取り、一口飲むコウキ。
「……出たのですか?」
あかねが何か差し入れを持って個室に入ってくる時は、決まって自分への出撃命令も一緒に持ってくるのだ。
「うん。実は童子と姫が出たらしいんだけど……」
どうも奥歯に物が挟まったような言い方をする。
「……それがね、出た場所が問題なのよ。……三輪山に出たらしいの」
「魔化魍が『聖域』に出たと言うのですか?」
あかねが言い難そうにしていたのも無理はなかった。
ここ奈良には大神神社と呼ばれる神社がある。
そこには古事記にも登場する大物主神が祭神として祭られているのだが、その神社の御神体は三輪山そのものなのである。つまり山そのものが強い霊力を持っているのだ。そのため、この山に魔化魍が発生した事は歴史上一度も無かった。
「大神神社の宮司さんが目撃したらしいんだけど……。念のため調査に向かってくれる?」
「待ってください。事が『聖域』に関する問題ならば宗家の鬼が行くのが筋ではないのですか?」
「うん……その、イブキくんは……出撃中なのよ。ほら、彼のシフト今日の昼までだから……」
「今日でしたかね?まあそういう事なら……」
あかねはコウキに本当の事を言えなかった。
よもやイブキ、後の猛士総本部長・和泉一文字がサポーターの立花勢地郎と一緒に、「花見の会」の席上で披露する隠し芸の練習のために昨日から姿を眩ましているなど、口が裂けても言えようか!
コウキの性格上、例え相手が宗家の鬼だろうと容赦はしないはずだ。
167仮面ライダー高鬼「神住みし山」:2006/02/01(水) 23:59:44 ID:LJWLIJ5Y0
「じゃあ行ってきます」
「気をつけてね。あの場所は……」
「知っています」
敬礼に似たポーズを取って部屋を出て行くコウキを、あかねは火打ち石を打って送り出した。
三輪山。
到着したコウキは早速宮司に会って姫と童子を目撃した場所の近くまで案内してもらった。
山中は静かだった。だがそれと同時に、何者をも寄せ付けぬ圧倒的な「何か」を湛えていた。今まで色々な山に篭って修行をしてきたコウキだが、こんなに気圧されるのは初めての事だった。
宮司と別れ、式神を放とうとしたその時、目の前に一組の男女が現れた。
「参ったな、本当に『聖域』に出てくるとは……」
間違いなく童子と姫である。だが、明らかにいつもと違う。まず衣装だ。よく歴史の教科書で見るような、具体的に言うなら古墳時代のような衣装を身に纏っている。そして雰囲気というか、漂う気配というか、これも明らかにいつもと違っていた。
「鬼か」
「鬼がこのような場所に何用じゃ?」
いつもとの違いが決定的になった。声だ。この二人は男が男の声を、女が女の声を出している。
「……お前達は一体何者だ」
コウキの問いかけに、男の方が嘲笑の笑みを浮かべながら答える。
「我が名はオオモノヌシノミコト」
「そしてわらわがイクタマヨリヒメじゃ」
「大物主命に活玉依比売だと!?」
コウキは驚きを隠しきれなかった。その名はこの山の祭神とその妻の名前である。
「嘘を吐くな!」
音叉を近くの木に当て、額に翳す。コウキの体が炎に包まれる。
「破っ!」
気合いとともに炎を吹き飛ばし、中から高鬼が姿を現した。
「時間をかけてはいられん。一気に決めさせてもらう!」
「鬼如き下等な存在が神に挑むか。それもまた一興……」
そう言うと男女が手を前に翳した。その瞬間、閃光が走り爆発とともに高鬼の体が後方へと吹き飛ばされた。童子と姫がこのような攻撃を仕掛けてくるのは高鬼にとって初めての事だった。
「おのれ!」
音撃棒・劫火を手に、高鬼が二人の下へ跳びかかる。だが、男女は文字通り地面の上を滑るように移動して高鬼の一撃を避けた。さらに高鬼の周囲を移動しつつ攻撃を仕掛けてくる男女。
(まずい、このままでは……)
168仮面ライダー高鬼「神住みし山」:2006/02/02(木) 00:01:39 ID:LJWLIJ5Y0
高鬼が短期決戦を挑みたがる理由、それはこの山にあった。
前述の通りこの山は山そのものが霊力を持ち、強い「陽」の気で満たされている。片や鬼は変身すると、僅かではあるが魔化魍と同じ「陰」の気を体内に持つ事になる。つまりこの山では鬼になると長時間の活動が出来なくなるのだ。
(こいつらが童子と姫なのは間違いない)
顔がいつものあの男女の顔である。だが、
(それなのに何故この山で活動出来る!?)
攻撃が止んだ。高鬼は何とか凌ぎきる事が出来た。
「この鬼、我らの攻撃に耐えるとはなかなかやりおる……」
「だが無駄な事。大人しく黄泉路へと旅立つがよい……」
(二体を同時に相手にするわけにはいかない。各個撃破を)
再び手を翳す男女。だが高鬼は素早く男女が放つ怪光線を回避すると、標的を女の方に定め反撃を開始した。
「はあああああああ……」
気合いとともに炎の気を二本の「劫火」の鬼石に集中させる。
「鬼棒術・小右衛門火!」
鬼石の先端から、二つの火の玉が女目掛けて飛びだした。だが女は片手で火の玉を二つとも弾き飛ばしてしまう。余裕の笑みを見せる女。しかし次の瞬間、
「何!?」
弾かれた火の玉は空中で軌道を変え、女の頭上まで飛んでくると一斉に爆発し、まるで流星群のように女目掛け降り注いだ。その身を焼かれ悲鳴を上げる女。その一瞬の隙を突き、高鬼が女の傍へと接近し音撃鼓・紅蓮を貼り付ける。
「喰らえ!音撃打・炎舞灰燼!」
両の「劫火」を使い、目にも留まらぬ速さで「紅蓮」を連打する高鬼。最後に二本の「劫火」を同時に叩き込む。清めの音が女の体を駆け巡り、次の瞬間、彼女の体を塵芥へと変えた。
169仮面ライダー高鬼「神住みし山」:2006/02/02(木) 00:03:00 ID:LJWLIJ5Y0
「次はお前だ」
「……自分が何をしたのか分かっているのか?神の伴侶を討ったのだぞ」
「残念だがお前を神とは思っていない。音撃で倒れた以上、お前達は魔化魍だ」
「神を侮辱するか!」
突風が巻き起こり、高鬼の体が吹き飛ばされ近くの巨木に激突した。その拍子に二本の「劫火」が高鬼の手から離れてしまった。
「くっ」
慌てて「劫火」を拾いあげる高鬼。だが片方を拾いあげたところで高鬼の体に異変が起きた。力が抜けていくような、そんな感じだ。
(来たか!)
鬼としてこの山で活動できる限界に近付いたようだ。
「ヒメを討った以上、手を抜くわけにはいかぬ。我が真の姿をもって仕留めさせてもらう」
そう言うと男の姿が見る見るうちに巨大な白蛇へと姿を変えた。そして高鬼の体に巻きついてくる。力を失いつつある高鬼には、この攻撃を避ける事が出来なかった。渾身の力で締め付けてくる白蛇。堪らず悲鳴を上げる高鬼。
「鬼よ、そなたは人間を守るために戦っているのであろう?だが人間どもは何をやっている?ここより遠く離れた地では人間同士殺し合っておるではないか……」
どうやらベトナム戦争の事を言っているらしい。
「そのような種族、最早神である我々も加護を与えようとは思わぬ」
滅びてしまえばよい。白蛇は冷たい、抑揚の無い声でそう言った。
「……仮にお前が本物の神だとしよう。そして、人を見捨てるというのが神々の総意ならば、我々鬼が神に代わって人々を守ろう!」
「まだ喋るか!」
白蛇がさらに力を込めて締め上げようとしたその時、白蛇の体にも高鬼と同じ異変が起こった。
「ぐあああああ!」
締め付けが緩くなる。
「や、やはりお前は神じゃなかった……。いつからこの山にいるかは知らないが、知らないうちにお前の体もこの山の『陽』の気に少しずつ侵されていたんだ……」
白蛇が最後の力を振り絞って高鬼を絞め殺そうとする。だが高鬼も負けてはいなかった。
「お前が先に力尽きるか、私が先に力尽きるか、勝負だ!」
高鬼の叫びとともに、彼の全身から炎が噴きあがった。鬼法術・焦熱地獄だ。但しこの技は、体力を著しく消耗し、且つ高鬼自身の体にも多大な負担を与える、言わば諸刃の剣であった。
170仮面ライダー高鬼「神住みし山」:2006/02/02(木) 00:04:41 ID:LJWLIJ5Y0
どれだけの時間が経っただろうか。一時間のようでもあり、僅か十秒足らずのようでもある。最早時の流れを感じる感覚さえも麻痺していた。
先に根を上げたのは白蛇の方だった。炎に耐え切れず、高鬼の体に巻き付けていた体を解く。その瞬間を高鬼は待っていた!
「好機到来!」
大地を蹴って跳び上がると白蛇の頭部に「紅蓮」を貼り付けた。そして……。
「神を名乗る者よ、消えろ!音撃打・刹那破砕!」
残った全精力を一本の音撃棒に込めて、最初にして最後の一撃を白蛇へと叩き込む!
刹那……。
大爆発とともに白蛇の体は塵芥へと変わっていった。後には、全精力を使い切り、強制解除の末全裸の状態で地面に倒れたコウキの姿があった。

その一部始終を遠くから眺める二つの影があった。怪しげな風貌の一組の男女である。その顔は、さっきの神を名乗った者を含む、姫や童子と瓜二つであった。
「やはり我々の技術をもってしても神の複製は作れなかったか……」
男の方がそうぼやく。
「でも面白いものが見られたんだもの、今回の実験は良しとしましょう」
そうだな、と男が頷く。
「当面の問題は鬼の使う清めの音への対抗策、という事になるな」
「焦る事はないわ。私たちには幾らでも時間があるのだから……」
踵を返し立ち去ろうとする男を女が呼び止める。
「あの鬼は?」
「神を模した童子と姫を討った鬼だ。生かしておいてやろう」
その方が面白い、そう言うと男は静かに笑った。
「さあ行こう。まごまごしていると我々もこの山の霊気にやられてしまう……」
コウキが意識を取り戻したのは、謎の男女が立ち去ってから実に数時間後、心配した宮司が様子を見に訪れてからだった。
171仮面ライダー高鬼「神住みし山」:2006/02/02(木) 00:06:23 ID:LJWLIJ5Y0
関西支部恒例、「花見の会」はコウキの帰還を待った後、滞りなく執り行われた。
「全く、三途の川が見えたよ」
酒を飲みながらコウキがあかねに愚痴る。予定の時間をとっくに過ぎ、もう日はすっかり沈んでしまっていた。だが夜桜もまた風流なものである。
お疲れ様、と言いながらあかねが酌をする。桜の花弁がコウキの持つ杯に一枚、はらりと落ちた。それを一気に飲み干す。体を酷使した後の酒は実に五臓六腑に染み渡る。
風が吹いた。桜吹雪が辺りを包み込む。それはほんの一瞬だった。そしてその刹那の時間の中、薄桃色の幕の向こう側に、コウキは笑顔で佇む神々の姿を見た……気がした。

余談ではあるが、この「花見の会」の席で怪我人が一人出た。まだ若い弦使いの鬼だ。彼は酒に酔って、ほんの数日前に起きたロックバンド・キャロルの解散について、時に泣き時に怒りながら延々と語り続けていた。
同じく酒に酔いながらそれを聞いていたコウキが「鬼としての自覚が足りん!」と絡み、正座させて懇々と説教をした挙句、「劫火」で思いっきり彼の尻を叩いたのである。結局これが元でこの年の「花見の会」はお開きとなってしまった。

翌日、あかねのフォローも空しく、イブキが出撃出来なかった本当の理由がコウキの耳に入り、哀れイブキは勢地郎共々正座で説教と相成ってしまった。但し、昨夜の失敗を考慮してか尻を叩くのは音撃棒ではなく警策になっていたが。

なお、三輪山での一件は色々あって猛士総本部の最重要機密扱いになってしまい、その詳細が後世に語られる事は二度と無かった。

同月三十日、十五年にも及んだベトナム戦争が終結を迎えた。時代は着実に動いている。 了
172名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 00:10:39 ID:Yz9HHlcs0
高鬼SS第二弾キター
今回も面白い内容ですな〜ベトナム戦争絡めてきましたか〜。
尻を音激棒で・・・(;´Д`)
そういえば先日発売された特写写真集【魂】によると、どうやらイブキさんのお父上は「導鬼」というらしいです。
とはいっても、俺が自分の目で確かめた情報じゃないのでなんともいえませんが・・・。一応報告だけでも。
173高鬼SS作者:2006/02/02(木) 00:12:37 ID:/Rzo+H2K0
前回以上に自由に書かせていただきました。
奈良を舞台にしたものを何か書いてみようと思った結果、このような話になりました。
自由に書いた分、不安も前回以上です。

あと>>167で一つミスが。
場面転換があったので
>あかねは火打ち石を打って送り出した。

>三輪山。
の間は一行分空けておかなければなりませんでした。まとめサイトに掲載される場合は手直しお願い致します。
174高鬼SS作者:2006/02/02(木) 00:18:57 ID:/Rzo+H2K0
>>172
うえっ!それは調査不足でした。「導鬼」ですか。「ミチビキ」かな?
しかしそれだと今までの法則(名字と名前の頭文字が同じ)に当てはまらないような…。

ううむ、とりあえずイブキの所はお手数ですが脳内で変換していただくしか…。
陳謝致します。

高鬼話はとりあえずあと一本は書くつもりです。以降の予定は今のところありません。
もう少しお付き合いお願い致します。
175名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 00:56:40 ID:/Ome+7Ui0
狂鬼くんSS中の人、高鬼さんSS中の人、今回も楽しませて戴きました!

>狂鬼
暗〜いハナシになるとか・・・なんだかドキドキですよ。
DAがわっせわっせとボックスを取り出したり、車体を起こそうとする描写
がテラカワイス。

>高鬼
そうか、そして小暮さんは警策を持つように・・・・
それにしても、若かりしおやっさんと和泉本部長の芸は、何だったのでし
ょうw
威吹鬼の名前を長男に譲り、導鬼になったってことにすれば、問題は無
いような・・・ダメ?
176番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:03:50 ID:/Ome+7Ui0
トントントトンコ トトンコ トン
トントントトンコ トトンコ トン

真冬の三日月が、冴えた光を地面に落す。
どこか遠くの山の中、林の間、砂浜、河原、はたまたビルとビルの隙間
の暗がりから、小さな小さな太鼓の音が聞こえてくる。

トントントトンコ トトンコ トン
トントントトンコ トトンコ トン

そこはもしかすると、人気の無い神社の境内かもしれない。寂しい墓地
の片隅かもしれない。普通の人間の目には触れない場所で、動物のよう
で動物でない、機械のようで機械でない生き物達がひっそりと集い合う。

177番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:05:48 ID:/Ome+7Ui0
トントントトンコ トトンコ トン
トントントトンコ トトンコ トン

「よっ!久し振り!」
「お久し振りです」
「お前またカラダを新しくしてもらったのか」
「この前童子にやられちゃいまして」
タカがワシが、ヘビがカエルが、オオカミがカニが、シシがオオザルが
挨拶を交わし、笑いさざめき、輪を作り、踊りを踊る。
彼等の存在を知る古い世代の人間達は、この不思議な生き物をオンシキ
ガミと呼ぶ。人間に害をなす悪しき魔物を倒す鬼達と契約を交わした魂。
そのカラダを機械式のディスクに替え、DA(ディスクアニマル)と呼ば
れるようになってからも、契約は有効であり、オンシキガミ達は鬼の命
を受け、彼等と共に闘い、人を護り続ける。
しかし、今夜は節分。
今夜だけ、特別の夜。
『鬼は、外!』
家々で清めの豆が撒かれ、家人達が身の内の穢れを祓う為にそれぞれ歳
の数だけ豆を食べるその晩は、オンシキガミ達にとって特別の宵。
音角、音笛、音錠等の力を借りずとも、節分の月の光を受けて、その身
を物言わぬ円盤から、生き物の形へと展開させる。
178番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:06:53 ID:/Ome+7Ui0


「ええーっと、今夜はDAを窓の側に置くんスよね・・・」
まだ鬼になって日の浅い若い男が、独り言を言いながら腰にぶら下げて
いた5枚のDAを外し、窓辺に置いた。
普通、鬼や彼らの側にいて鬼を助ける者、鬼の訓えを受けている者が身
につけるDAは2〜3枚。彼のように5枚携行している鬼は、珍しい。
3枚は、自分の為に誂えられたDA。
2枚は、自分の師匠の遺品であった。
「いつもご苦労さんッス。今日はゆっくり遊んで来ていいッスよ」
男は古い友人に語り掛けるように、優しくDA達にむかって呟いた。
折から月を隠していた雲がゆっくりと移動し、痩せた三日月が姿を現し
た。
青年は師匠から節分の夜の話を聞いてはいたが、まだそれをこの目で見
た事が無い。鬼の間でもその現象を目の当たりにした者は、ごく僅かだ。
今年こそは、と部屋の明かりもつけず、わくわくとその不思議な変化を
待ち構えていた青年だったが、そのうち昼間の魔化魍退治の疲れも手伝
って、その場で眠りこけてしまった・・・・・・
179番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:08:46 ID:/Ome+7Ui0
トントントトンコ トトンコ トン
トントントトンコ トトンコ トン

この場所でもオンシキガミ達が集い、その踊りの輪を拡げていた。
「声刃は重くて」
「・・・また装甲し損ねた」
「ゴウキは自分の『飛車』に頭が上がらんのだ」
「新しいカラダを考えていますよ、バンキは」
「ショウキはまたメスと別れたぞ」
「イチゲキはどんな感じ?」
「サバキのムスメと一緒にいる時間が増えてきているな」
「おい、ダンキのところの仲間はどうした」
「エイキのと一緒に山の方です」
「小さな鬼がかわいくて」
「トウキの『と』か」
「あれは『と』だがムスコとも呼ぶのだ」
「イブキはヒビキの『飛車』と仲が良くてな」
「あれはもうじきイブキの『飛車』になるのでしょう」

トントントトンコ トトンコ トン
トントントトンコ トトンコ トン

二匹のオンシキガミだけがその輪から離れ、高い空を見上げている。
「なぁ、あの鬼は、どこへ行ったんだ?」片方が尋ねる。
「どこへも行っていない。でも、もう逢えない」
「何故?どうして逢えない?カラダが壊れたのか?それなら、ヨシノで
直してもらえばいいじゃないか」
「鬼は、我々とは違う。壊れても、直せない」
そう答えたオンシキガミは、ため息をつくかわりにケロリ、と鳴いた。
180番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:11:26 ID:/Ome+7Ui0
トントントトンコ トトンコ トン
トントントトンコ トトンコ トン

踊りの輪はますます拡がり、二重、三重に輪を重ねた。
今夜はどのDAのケースも空だ。鬼から指令を出されたDAは魔化魍を
追っているし、そうでないDAはどこからか聞こえてくるシキガミの祭
囃に浮かれている。
だが、この二匹だけは・・・・・
二匹は同じ鬼に仕えていた。一匹はその鬼がまだ若く、正式な鬼になる
前からずっと。もう一匹は、ほんの数ヶ月。仕えた日は浅くても、その
鬼の身体の一部になれる特別な機能を持っていた。
「何故だ!」金色にカラダを輝かせ、特別な機能を持ったオオカミが吠
える。「どこに行けば、あの鬼に逢える!どうやったら、あの鬼のため
に働ける!」
黄金のオオカミは、鬼の身体の弱っていた部分を補強できる自らの能力
を、何より誇りに思っていた。だが、今はその能力を生かす必要が無い。
現状に不満がある訳ではない。ただ時折急にいなくなってしまった鬼を、
彼の身体を護っていた時期を思い出し、遠くの空に向かって長く尾を引
く吠え方をしたくなるのだ。
「オオォォォォォォォン・・・・・・」
181番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:12:28 ID:/Ome+7Ui0
黄金のオオカミは、月に向かって機械の信号音ではなく、オオカミの魂
が持つ声で吠えた。
踊っていたオンシキガミ達の動きが止まった。
皆がオオカミの方を向く。
「・・・・・・お前も、わかっているのだろう?あの鬼は、命を落した。だか
ら、もう、逢えない」
青磁のカエルが、静かに言った。いつの間にか、彼と同じカラダを持つ
仲間達が、集まっていた。
真冬に、カエル達が鳴き始める。
「何度もカラダを変えて、色々な鬼達に仕えた。幾人も、幾人も。若い
鬼に後をまかせ、人間に戻っていった者もいた。我々が命を護ってやれ
なかった鬼もいた。そうやって我々は主を変えてきた。それが我々と鬼
の間に交わされた契約だったから。いや、魔物と闘い、人間と鬼を護る
事が我々の使命であったから」
オンシキガミ達は静かに、主を喪くした青磁のカエルを、厳かに鳴くそ
の仲間達を見守った。
「・・・だが、オレはもう疲れた・・・・もう、鬼を見送る事に、疲れた」
青磁のカエルの声は、消え入りそうだった。
空には相変わらず、白く蒼く、三日月が輝いている。
182番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:15:26 ID:/Ome+7Ui0

と、青磁のカエルの前に差し出された手があった。

見覚えのある、銅色の手・・・そして、特徴のある親指の爪。
あの鬼が、そこに立っていた。
黄金のオオカミは、自分でも気が付かない内にはたはたと尻尾を振って
いた。
青磁のカエルは、くるりくるりとその目を回していた。

「どうしたんだ?今夜は節分だろう」

聞き覚えのある声が、カエルに語り掛ける。
カエルは彼に伝えたい事がたくさんあった。だが、言葉が出なかった。
替わりに、黄金のオオカミが口を開いた。
「おい、オレを連れて行け。オレはまだお前と一緒に闘いたい」
鬼が、ゆっくりとかぶりを振る。

「俺はもう、闘わないんだ。お前は地上の鬼と共に生きろ」

鬼の姿は、向こう側が透けて見えた。その儚い影が、人間の姿に変わる。

「若い鬼達に闘い方を教え、もしその鬼が傷つくような事があれば、俺
を護ってくれた時のように、そいつを護ってやってくれ。お前には、そ
れができる」
183番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:17:21 ID:/Ome+7Ui0

後ろで見守っていたオンシキガミの群れから、一匹のオオザルがおずお
ずと黄金色のオオカミに近付いた。
「そうッス。またトドロキのヤツがケガでもしたら、あなたの力が必要
になるッス」
他のオンシキガミ達も同調する。
「バンキがあなたをもっと研究したいと言っていました」
「うちのゴウキも無茶するからな」
「もしもの時は、お前がいないと」
「ボク達には無い機能があなたにはあるんです」
「オレ達と共に」
「ワタシ達と共に」
黄金のオオカミは、仲間達の声に振り返った。黄赤が、鈍色が、緑が、
瑠璃が、茜が、黄蘗が、浅葱が、そして青磁が、キラキラとそのカラダ
を節分の三日月に輝かせている。いや、それは、オンシキガミ達の魂が
その機械のカラダを輝かせているのかもしれない。
オオカミ自身は気付いていなかったが、その黄金色のカラダも一層煌い
ていた。

鬼と共に。
仲間達と共に。
オレは闘い、護る。

オオカミは仲間達に向かって、「応ッ!」と一声吠えた。
それはまぎれもなく、使命を持ったオンシキガミの声であった。
184番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:20:49 ID:/Ome+7Ui0

「お前も仲間のところに戻れ。トドロキを、護ってやってくれ」

朧な影が、かつて自分に仕えていたカエルに優しく声をかける。
しかし、カエルは戻らなかった。消えかかる影の後を追い、跳ねる。
「そうしてまた、オレは鬼を見送るのか!お前の時のように!いつまで
見送り続ければいいんだ!オレはもうイヤだ!」

「連れて行ってやれ」

別な鬼の声が、消えかかる影に向かって言った。
朱色の温かい光が、一輪の花を持つ美しい女鬼の姿になる。

「お前は随分長い間、式神として鬼の為に働いた。もう、交わされた
契約を解いてやってもいい頃だ」

朱色の鬼が、手にしていた野の花をカエルの頭上にかざす。
ぼうっ、とカエルのカラダが発光し、小さな緑色の光りの玉が浮き上が
った。そしてその光りの玉は、まっすぐに自分のかつての主の元に向か
う。



185番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:22:56 ID:/Ome+7Ui0

「いいのか?お前はもう自由なんだ。俺と共に来れば、もう地上には戻
って来れないんだぞ」

緑色に輝く光の玉は、主の手の上で、機械のカラダではない小さな青蛙
の姿になった。
「もう充分に生きた。たくさん闘った。これからは誰の事も見送らず、
お前と共に、迎える側になりたい」
主が微笑んでいるのが、青蛙にはわかった。青蛙は笑みを返す代わりに、
ケロリケロリと鳴いた。
機械のカラダのカエル達も鳴いた。
「さらば」
「さらば」
「いつの日か」
「いつの日か」
「彼の地で逢おう」
「彼の地で逢おう」

「踊れ、式神達。今宵は節分。契約から解き放たれた魂を、天に送れ」




186番外 「踊る獣」:2006/02/02(木) 01:24:36 ID:/Ome+7Ui0
朱色の鬼が古い型の印を結び、手にした花で虚空に炎の色の文字を記す。
たちまち細かな光りの粒が地上のオンシキガミ達に降り注ぎ、彼等の魂
を色鮮やかに煌かせた。

「戻るぞ、ザンキ」
「はい、先生」

鬼の姿は霞んでいき、幾つかの光りの粒になり、誰かが漏らしたため息
のように白く昇り・・・・・そして、消えた。
後には、もう二度と起動する事の無い鉛色の円盤が一枚。
黄金色のオオカミが、悲しげにその円盤の匂いを嗅ぎ、小さな宝石のよ
うに美しかった青蛙の為に、もう一度遠吠えした。
「オオオォォォォォォォォォォォン・・・・・・」

トントントトンコ トトンコ トン
トントントトンコ トトンコ トン

再び踊りの輪ができる。
だが、踊っているのは機械のカラダのオンシキガミではなく、様々な動
物の魂達の姿だった。
鷹が鷲が蛙が歌い、蟹が大猿が拍子を取り、獅子が狼が蛇が踊る。

今夜は、節分
ヒトには見えぬ
鬼さえ知らぬ
式神の、宴──────

                       =完=
187名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 02:50:40 ID:IPL0s+rMO
昔の夢枕獏ふうだね。
好きだよ、あんたの文。
188名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 07:26:42 ID:Unq2ywaH0
年中行事ネタGJ!
映像化したら色と音が綺麗だろうなあと思いました。
かわいいよ狼、かわいいよ蛙。
189響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」番外編:2006/02/02(木) 10:02:35 ID:T5Wiscsy0
−200X年 猛士関東支部慰安旅行にて−
舞台の上手からリズムに乗って登場するダンキとバンキ−

「オニエンタルラジオです。」「お願いします。」
弾ちゃんいつものやったげて!聞きたいか俺の武勇伝!
その武勇伝を言ったげて!俺の伝説ベストテン!レツゴー!

一日、3ミリ、バス停ずらす!すごい!途中でブチ切れ、自宅に投げ込む。
武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。レツゴー!
音撃弦でも戦うぜ!すごい!コードがわからず、そのまま叩く!
武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。レツゴー!
ドロタボウに田植えをする!すごい!自分で畑を管理した!
武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。レツゴー!
バケネコ捕まえペットにしたぜ!思った以上に自分になついた!
武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。レツゴー!
腹はへっては戦はできぬ!すごい!バケガニを茹でて、そのまま食べた。
武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。レツゴー!
アームドセイバー使ってやるぜ!すごい!あまりにオンチでセイバー爆発!
武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。
弾ちゃんかっこいいー!

静まり返る会場、そそくさと二人は逃げ出した。
−舞台裏にて−
「なんでウケないんだ!バンキ!」「全部実話だからですよ…。」
舞台上で大爆笑を生んでいるエイキをダンキはうらめしそうにみつめた…。
くだらんネタですんませんした…。
190名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 10:35:15 ID:l/TGN3VR0
>>176
なんて健気な…。
しゃべる獣には弱いもんで、涙腺が刺激されてしまった。
作者さんGJ!
191名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 10:46:46 ID:59542kAT0
弾ちゃんかっこいいー!
192名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 10:54:20 ID:bYKvvIFbO
前スレの裁鬼さんのSSが携帯で読めるトコないかな?>>2のサイトは観れなくって‥‥‥
193名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 11:40:00 ID:ppiViqcm0
>>189
熱いコーヒー鼻から噴いた。

タイトルと内容が違うがな!
194名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 12:24:16 ID:V6cB3m0YO
195名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 12:25:59 ID:NHC9JVh+0
弾鬼さんカッコヨス。
自宅で飼ったのか、バケネコ。
196名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 12:42:16 ID:bYKvvIFbO
>>194
おお!ありがd!!
197弾鬼SS筆者:2006/02/02(木) 15:13:11 ID:FSkOiwWOO
>189
爆笑させてもらいました!!
弾鬼武勇伝ネタを、私の話の中で実話として書いてもいいですか?w

後、弾鬼強化形態名ですが、157さんのおっしゃる通り、腕だけだったのであえて名前はつけませんでした。
198狂気SS筆者:2006/02/02(木) 16:15:24 ID:T5Wiscsy0
>197
別にいいんじゃないですか?バンキも事実って言ってるしw
しかし、どんな話になるんだ?
では、まったくテンションの違う本編レツゴー!
199響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第五話:2006/02/02(木) 16:41:32 ID:T5Wiscsy0
第五話 再会する未来
配達に向かう途中、京介は勢知郎の言葉を考えていた。
父が消防士になった理由…。今まで京介が考えもしなかった話だった。
父も自分の父を超えたかったのか?
もっと違う理由であったはず。父はそんな理由ではないと京介は思いたかった。
しかし、そう考えてしまうと、
父を超えたいと言う目標が、やけに小さく幼稚な考えに感じられた。
父を超える事が、今まではとても大きな目標に思えたが、
それは父の大きさが見せていた幻影ではなかろうか。
そんな気がしてしまった。
200響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第五話:2006/02/02(木) 16:42:43 ID:T5Wiscsy0
お使いに出かけた京介と入れ替わるように、
ヒビキはたちばなに来月のローテーションを確認するため、
地下で勢知郎とミーティングしていた。
「一年前に比べるとだいぶ楽になりましたね。」
「ああ、あの時は大変だったからね。」
「そう思うと少し物足りないですね。」
「まあ、平和が一番だよ。」「そうですね。」
勢知朗は二人分のお茶を注いだ。
「ところでさ、ヒビキくん。」「なんすか?」
「どうして京介くんに変身させないんだい?」ヒビキは勢知郎を見た。
「いや、君の弟子だから、僕が言うのもおかしいんだけどね。」
「そうですねぇ」「彼は成長したと思うし、体力もついた。」
「あいつはすべてが成長しましたよ。心も体も。」
「じゃあ、なんで?」
ヒビキは静かに話し始めた。
「明日夢を救った時の京介は自分が守らなければならない、
 自分がやらないといけない。そんな気持ちで変身したんです。
 だから、変身できたのかも知れません。
 でも、今の京介は人を守りたくて変身したことを忘れてしまい、
 自分が一人前である事を示す為に変身したいだけになってしまった。」
201響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第五話:2006/02/02(木) 16:45:42 ID:T5Wiscsy0
「勿論、俺を守ろうと変身しようとした事もありますが、
それは俺に余力があることをわかっていての変身なんです。
いざとなったら助けてもらえる。自覚して無くても、
そんな事を考えていると思います。」
「なるほどねぇ、人を守る為の変身が、本来の目的を忘れさせた…。」
「口で言えば済む話なんですけどね。京介が自分で気付いてほしいんですよ。」
「確かにこれは師匠から注意を受けて気付く事ではないからね。」
「まあ、若くして鬼になる奴には良くある話ですね。」
「そうだねぇ。」二人はお茶をズズズとすすった。
202響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第五話:2006/02/02(木) 16:47:30 ID:T5Wiscsy0
街の中心にある病院は相当大きいためにセキュリティは厳重で身分照会は厳しく行われていた。
これまでに三回も名前と住所を書かされ、京介はうんざりしていたので
きびだんごを受付に渡すと、足早に帰ろうとした。
「お兄ちゃん!」突然、京介は呼ばれた。
一体誰だ?辺りを探すと、車椅子に乗った男の子が、車輪を漕いで近づいてくる。
最初は誰だかわからなかったが、京介は思い出した。「ああ、あの時の。」
「どうしてこんなとこにいるの!?」奇跡的な再開がうれしかったのか
子供は目を輝かせて京介に聞く。
「ああ、アルバイト先のお使いでね。君こそなんでいんだ?」
「僕はここの病院に通ってるんだよ。」
「あら、こんなとこにいたのね。」
受付で会計の手続きを終えた母がやってきた。
「お母さん、この人だよ、前に助けてくれた人!」
「まあ、あなたが、その節はありがとうございました。」
母親は深々とお礼をした。
「気にしないでください。ああいう奴らが、許せなかっただけです。」
京介は笑顔で言った。
203響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第五話:2006/02/02(木) 16:50:03 ID:T5Wiscsy0
その後、三人は病院の喫茶店で仲良く話をした。
京介は子供の名前が三谷未来で、母親は美紀と言う事、現在、小学二年生であることや、
通っていた体操教室で事故を起こし下半身不随になった事を知った。
父親は偶然にも消防士で火災現場でなくなっていたらしく、
京介と未来はお互いに親近感を持った。
このまま何時間でも話していたかったが、
仕事がある事を思いだした京介は未来と再開する事を約束した。
「またね。」未来は京介に手をふった。
京介はシュッとポーズを決めると、笑って小走りにその場を去った。

その日から京介に新しい日課ができた。
割と二人の家は近く、京介は暇な時に未来の家に顔を出すようになった。
二人は遊んだり、テレビを見たり、食事をしたり、時には喧嘩もしたが、
いつしか二人はお互いの親子や兄弟になり始めていた。
京介にとって初めての家族ができた。

そんな未来と過ごす時間が、京介を少しずつ変えていった。
以前までは、仕事の度に変身しようとしていたが、
最近ではヒビキのサポートに徹するようになった。
初めは破門の言葉が効いているのかとヒビキは思っていたが、そうではなかった。
未来と接するうちに、心にゆとりができはじめ、過信せず、
今の自分にできる事をするひたむきさが生まれていたのだ。
「最近、いい目になったな。」ヒビキはヌリカベを倒した帰りの車で言った。
「そうですか?」褒められたが京介には自覚がなかった。
「ああ、なんかさ明るくなったっていうかさ。」
「僕は真剣なだけですよ。」まるで自分が暗いかのように言われたのに腹がたった。
「まあまあ、その調子でいけば、すぐに鬼になれるぞ。」
「僕なんかまだまだです。」今までの京介からは考えられない言葉だった。
「ふーん、そっか。」
自分では自覚してない京介の変化がヒビキは嬉しかった。

次回 それぞれの日々(仮)
204名無しより愛をこめて:2006/02/02(木) 20:32:36 ID:LYo2nScl0
>>193
ある意味、タイトル通りの“狂った”鬼だから良いんじゃね。

だって全部実話ってw
205DA節分:2006/02/02(木) 21:26:51 ID:CTCSQUbt0
>199
おお、ホントにテンション違う・・・
もー狂鬼ったらよぉー、ともぎもぎしながら読んでます。GJ!
立派な鬼になって欲しいんですけどねぇ・・・

そして、武勇伝。しょっぱなの「オニエンタルラジオ」からキました。
ダンキさんたらまったくもって、武勇伝。バケガニ食ってるしw
>197さんには是非SSにからめて欲しいです。

次回は「雛祭り」の頃に・・・DAか、たちばな女性陣&鬼サポーターズで。
206番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/02(木) 21:33:56 ID:MlINPJ2F0
番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻『深まる繋がり』(前)

都内某所・ファミリーレストラン/
24時間営業のファミレスに入り、適当に注文し・・・・改めて顔を付き合わせる。
吾妻 里美。先日6年振りに再会したかと思えば、2年前に鬼としての姿を見た女、安藤 千明とも再会し、二人揃って魔化魍や鬼のことを知った女。
あの後、絶対に口外しないように硬く口止めさせ、それ以来会う必要の無かった女と、1ヶ月も経たずに再会した。
しかも待ち伏せである。
「もしかして、ココの所ずっとあそこで待ち伏せしてたワケ?」
「え・・・うん。正確には先週からね」
吾妻は照れくさそうにそう言った。
マズイ。動揺してる。
ダンキは自分の脈拍が上がっている事を自認した。
『これは、もしかして・・・もしかすると、もしかするんじゃないの?』
ダンキは平静を装いながら、内心浮かれた。好意を持たない相手をずっと同じ場所で待ちつづけるはずが無い・・と。
ふと見ると吾妻のほうも、様子がおかしい。服装は前回と同じスーツ姿だが、頬が微かに赤みを帯びており、さらに言うと挙動不審とまでは行かないが、そわそわして落ち着きが無い。
注文のコーヒーが届く。ウェイトレスは、黙してニヤケる男と、恥らう(ように見える)女のコンビに『?』マークを浮かべる。
「んで、用件はなにさ?」
コーヒーをお互い一口飲み、話を切り出す。
「あ・・うん。えと、まずは改めてこの間のお礼。助けてくれて有難うね」
言って頭を下げる吾妻。
そして千明がまた逢いたがっていることを告げた。
207番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/02(木) 21:34:42 ID:MlINPJ2F0
「それから千明・・・・少し変わったんだ」
バックから週刊誌を取り出し、とあるページを見せる。そこには『特集!人助けとは!正義の所在!』と銘打ってあった。
そこには、人助けをする職に就く人間のインタビュー形式の記事が書かれており、随分と深く・・・正義とは!と言う部分を根底にした質問と答えが書かれていた。
「・・・・あの娘ね。元々、ウチのホラー系雑誌の担当だったんだけど、廃刊になって・・・私の部署に来たのね。この間までは、ホラー雑誌の復刊を目指して無茶ばかりしてたんだけど、段段田君のお説教で堪えたみたい。次の日から体当たり取材よ・・ソレの」
ダンキは始めは流し読み程度だったが、最終的にはしっかりと読んだ。一通り読み終わると雑誌を返し
「とってつけた感はあるけど、いい記事じゃ〜ん!」
「そうね。いきなりは変われないけど、何かしらの火種にはなったみたい。まぁ、命を2回も救ってくれた恩人のお説教だから、何も残らなかったら・・・ソレこそ問題ね」
二人して笑う。
「・・・・・・あ〜。ソレが本題?」
「え・・・・・。いや・・・・ここから・・・・なんだけど・・・・」
場面一転。一瞬で静かになる空間。
『さぁ、来い!俺の春よ!イヤ・・そうじゃない。二つ返事でOKするほど俺は安くないぞ!でも、何年ぶりの春だ!田舎の親父・お袋・ねぇちゃん!大輔は、大輔は久しぶりの春がそこまで来てる!さぁ、早く!あぁ〜もう!早く!早く言いなよ〜〜!!』
暴走するダンキ!鬼とは言っても何だかんだ言って、やはり人間である。
そして・・・・ついに。
「あの・・ね・・・」
「・・・お・・おう?」
裏声で返すダンキ。
「エ、エイキさん・・・って・・・ど、どんなものが・・ス・・スキ・・・かな?」





「あ?」
時よ止まれ!もとい、時が止まった。
エイキ・・・とはダンキの同僚の一人で、吾妻&千明と再会した時に一緒に居た鬼だ。
208番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/02(木) 21:36:14 ID:MlINPJ2F0
「・・・・・・・実は・・・この間、エイキさんが体を盾にして私を助けてくれたでしょ。あの時はあまりの事に動転したんだけど・・・家に帰って落ち着いてから思い出したら・・・・その・・ね」
「・・・・・・・・・・・・・」
「なんか・・・キタ!って感じになっちゃって・・・ソレからは毎日夢に出てきてくれるの。そしてね、『里美!大丈夫かい?』って・・・・私もうだめ。このままじゃ仕事も手につかなくて」
しどろもどろから一転やたら饒舌になる吾妻。一方ダンキは・・・・口を半開きにして固まっている。
「・・・・・アイツの何処がよ?ダジャレしか言わんのに?」
「それよ!あのダジャレも意味があるのよ!多分・・・誰かを幸せにさせる為・・・・どんなくだらないダジャレでも・・・万に一つも笑ってくれれば良い。そんな想い・・慈愛に満ちた想いでもあるんだわ」
「なわきゃね〜じゃん。エイキがだぞ?そんな事あるわけないじゃ〜ん」
ダンキは全身の力を抜き、ぐったりとなりながら言い返した。
ちなみにダンキは自己嫌悪の真っ最中でも有る。
「そんなわけで・・・教えて欲しいの!エイキさんのスキなもの!何でもいいわ!」
身を乗り出してダンキの手を掴み懇願する。
「お前・・なんか変わったぞ・・・・」
「女子三日あわざれば刮目して見るべし!よ」
一部改変引用でダンキに懇願を続ける吾妻。クールビューティのイメージは綺麗に消えている。
さて、ダンキは仕方なくエイキの好きなものを思い出す。
該当一件。
「・・・・スキねぇ・・・。フブキかな」
口に出すつもりは無かったが、つい口にしてしまった単語をしっかりと聞き取る吾妻。
「吹雪ね・・・・・って、吹雪?」
「あ!ヤベ」
「困ったなぁ・・・吹雪なんて時期的にまだ早いし。そもそもどうやってあげるの・・・」
209番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/02(木) 21:36:49 ID:MlINPJ2F0
本気で吹雪をプレゼントする方法を悩みだす吾妻。だが、暫く悩みつづけた結果、恋する乙女は盲目な彼女もさすがに気が付いた。
「ねぇ・・・それってもしかして・・・モノじゃなくてヒトなんじゃない?」
「当たり」
「もしかしてその人も・・・鬼?」
流石に『鬼』の部分は声を潜めてくれたが、問い詰める眼光はハンパなく怖い光を放っている。
頷いて肯定を表すダンキに、吾妻はソファへと倒れこんだ。
「最悪・・・・判った事は・・・・ライバルが居るって事じゃない・・・しかもエイキさんが惚れてるということはそのフブキってのに一歩リードされてるわけよね・・・」
吾妻は先週からの努力がフブキという鬼に押しつぶされた事にショックを受け半泣き状態である。
「何よ・・そのフブキっての・・・・一体どんな方法でエイキさんを誑かし・・・誘惑したのかしら・・・・いっぺん顔見てみたいわね、そのフブキっての!!」
かと思えば、突然暴言を吐きまくる始末。流石のダンキも冷や汗を流しながら、宥めるべきかどうか迷っていた。
「でも、まだ負けと決まったわけじゃないじゃん?とりあえずアタックしてみるのも良いんじゃない?」
ダンキは炎を吐かん勢いでまくし立てる吾妻に向かい、とりあえずそう言った。
それが、意外にも効果ありだった。
「・・・・・・・・・・・・・・そうね。戦う前から負けてどうするのよ。段田君の言う通りだわ!見てなさいフブキ!私は私の力であなたを倒してみせるわ!フブキ!いざ勝負!」
「私がどうかした?」

時が止まった。
止めたのは、通路を歩いていた女子大生っぽい女性。
「・・・・・・・・・よう、フブキ」
「ハァイ!ダンキ君」
シュタ!シュタッ!と手を上げて挨拶する二人。
その女子大生こそがフブキだった。ジーンズにTシャツと、いたってラフなスタイルに。背中まであろうかという長さの黒髪。白磁の肌。だが何よりもその顔!その美貌!外見を飾らずにナチュラルな美しさを振りまく彼女こそ、関東11鬼の一人『吹雪鬼』その人であった。
210番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/02(木) 21:37:40 ID:MlINPJ2F0
「何してんのここで?」
「ん?レポート纏め。隣の住人がうるさくってさぁ。明日までなのに・・・集中できなくてここに避難したわけ。で、今から眠気覚ましに顔洗おうかな?って時に、フブキ、フブキ叫ぶ人がいたから、気になって見てみたらダンキ君が居るじゃない。ビックリよもう」
そして、フブキは固まっている吾妻を見る。
「・・・・?コレ?」
小指を立ててちらつかせるフブキ。
「・・・・違う。大学ン時の同級」
あ、そう。とだけ言って吾妻をよ〜く観察する。その瞳を受けて
「段田君・・・・・・ダメ。人間の素体からして勝ち目が無いわ」
吾妻は、がっくりとうな垂れて、敗北宣言を掲げた。

洗顔から戻ったフブキは何故かダンキの隣に座り込み、吾妻から事の顛末を聞き出した。
吾妻も、意外にすんなりとエイキに思いを寄せている事を話した。
「はぁ〜。エイキ君をねぇ。そっかぁ」
フブキはアイスティーを口に含みながらため息と一緒にそんな事を言った。
「いいわ。とりあえず、あの時のお礼だけでも渡したいし。その後の事はその時になってからよ!でも、何処に住んでるんだろ?」
吾妻はとりあえず立ち直り、戦意を復活させた。
「ねぇ、何処だったらエイキさんに逢えるかな!!」
お願い教えて!のポーズでダンキとフブキに懇願する。ダンキとフブキは、互いに顔を見合わせ・・・仕方なく『たちばな』の住所を教えた。
吾妻は手帳にしっかりと住所を書き加えると、ご機嫌な様子で伝票を手に取った。
「今日は有難う段田君。フブキちゃん」
フブキの名を呼んで暫く・・・・意を決して告げた。
「私・・・あなたには負けません。エイキさんの事、諦めませんから!」
言って一礼し、レジへと去っていった。

吾妻が去ってから10分ほど経過した。フブキは自分の席からカバンを持ってきて、ダンキの前に座り、レポートを纏め始めた。
意外に筆圧が強いのか何度もシャーペンの芯を折っている。
ダンキはそんな様子を見かねて言った。
211番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/02(木) 21:39:51 ID:MlINPJ2F0
「・・・・機嫌悪いじゃん」
「へ・・?誰が」
「フブキにきまってるでしょ〜が」
「私が・・・なんでよ!」
「ホラ!口調がキツイ」
「ッ!」
「吾妻がエイキに惚れたのがよっぽどショックだった?」
フブキは長い髪の毛を掻き揚げてダンキに言い放つ。
「なんでよ!誰がエイキ君を好きになろうと私には関係ありません!」
明らかに不機嫌な様子で言い放つフブキ。
「おちょくるなら帰って。コレ明日の10時〆なの」
シッシッ!と手で追い払う仕草をするフブキに、ダンキは笑いながら立ち上がり帰ろうと立ち上がる。
「・・・・・そんなに機嫌悪そうに見えた?」
ダンキの背中にフブキの声がかけられる。
「どっちかって言うと・・・そう感じただけよ。当たってビックリしたよ」
「何よ・・・動物的感だったわけ」
このナチュラルな肉体派め!フブキは心の中で突っ込み・・・・ため息をついた。
ダンキの姿は既に出口へと去っていた。

余談その1。
数日後ダンキの家にエイキが押しかけ、フブキさんに元気が無く相手してもらえないと泣きついてきた。
だが、ダンキはファミレスでの一件をすっかり忘れていた為、他人事のように『駄洒落ばっかり言ってるから、愛想つかされたんじゃないの?』としか考えなかったとさ・・。
             三之巻『深まる繋がり』(前)  終
212名無しより愛をこめて:2006/02/03(金) 14:22:39 ID:GtzCa/DK0
エイキ×フブキついに弾鬼ストーリーに出た!
213名無しより愛をこめて:2006/02/03(金) 14:57:08 ID:kDXwau+g0
関東支部に存在する幻の12人目、山吹鬼メインストーリー。

第一話「怒れる龍」

214名無しより愛をこめて:2006/02/03(金) 16:22:46 ID:RHV3HUFY0
>>189
伊藤さんがやってるのを想像して大爆笑w
最高ですた
しかしその後のエイキさんが笑いを取ってるってのが解せません!w

職人さん大豊作で嬉しい限りです。皆さんがんがって下さい。
215響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第六話:2006/02/03(金) 19:10:09 ID:Fm0qy6630
第六話 それぞれの日々
「へえ、なんだ殆どできてるじゃないか。」
問題の採点を終えると、バンキはペンを置き紅茶を一口飲む。
「僕の出る幕なんてなかったな。」バンキは優秀な生徒に物足りなさすら感じた。
「ありがとうございます、バンキさん、教え上手ですね。」
ヒビキの紹介は明日夢にとって新たなる師匠との出会いになった。
「ありがとう。まあ、学校でも後輩に教えることが多いしね。」
明日夢はケーキを紅茶で流し込むと次の英語の問題に取り掛かった。
それを待つ間、バンキはバックから本を取り出し、読書を始める。
『鬼面の発生と異常』と書かれた割と真新しい本。明日夢はその本が気になった。
「なんですかそれ?」「ああ、吉野から頼まれているんだ。」
バンキは本を閉じて明日夢に説明する。
「鬼の額にある鬼面って、修行の過程でいつの間にかできているんだ、
でも、その発生については謎が多いし、朱鬼のような異常に大きい人もいるんだ。」
「あれって、病気だったんですか?」
「それもわからない。だから、あの事件もあったし、
改めて原因解明をする事になったんだ。」
猛士の他の一面は明日夢の興味をそそる。
「ところで明日夢くんさ。医学部に受かった後、どうするの?」
216響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第六話:2006/02/03(金) 19:10:59 ID:Fm0qy6630
「え、医者になるつもりですよ。」「そうじゃなくてさ、お金だよ。」
「えっと、それは…。」
「国立とは言え、医学部は君の想像以上にお金ってかかるんだよ。」
「…」「しかも、医者として生活できるようになるまで、何年もかかるよ。」
「でも、なんとかします。」
「それじゃ駄目だよ。もう努力でどうにかなるものじゃない。」
明日夢は暗い顔をする。
「あ、ごめん。そう言うことを言いたかったんじゃない。」
バンキは慌てて、本題の話を始めた。
「猛士の専属の医者にならないかな?鬼専門の。」
「え、鬼の医者ですか?」
「うん、もちろん普通の病院だけど、鬼も診る医者ね。」
「鬼専門ですか?」「そう、そうなると学費を猛士から貰うこともできる。」
バンキの提案は明日夢にとって良い話だった。
「君の場合、元猛士だからね。悪い話じゃないと思うよ。」
明日夢には夢のような話だ。条件もさることながら、
ヒビキや京介達をサポートできる事が明日夢にとって最大の魅力になった。
「まあ、大学に受かることが先決だね。」「そうですね。」
明日夢は再び机に向かった。

217名無しより愛をこめて:2006/02/03(金) 19:14:40 ID:/56SK2th0
>>213 お、うまいエビマヨの山吹鬼さん!
ワクワクテカテカして待ってます♪
218響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第六話:2006/02/03(金) 19:21:48 ID:Fm0qy6630
「ごちそうさま。」京介は未来の家で晩御飯をごちそうになっていた。
あらゆるご馳走を食べ尽くしていた京介に、普通の家庭料理は口に合わないはずだったが、
美紀の料理は今までに食べたことのない程においしく感じた。
母さんの手料理か…。京介には母親の料理を食べた記憶がない、
そのため、ここでの料理こそが、彼にとっての母の味になった。
「兄ちゃん、ゲームやろうよ。」弟が言う。「未来!宿題してないでしょ!」
「えー!」、「ほら、終わったら遊んであげるからさ。」
宿題を嫌がる弟を京介は優しく説得した。
「わかった、絶対だよ!」兄の言う事を大人しく聞き、部屋に戻った。
「ありがとうね、京介くん。」「いや、勉強は大事ですから。」
母親は四人分の食器を片付け始める。
最初に三人で食事をした時、四人分の食事が用意されていた。
すぐに一人前多い理由に気付いた。しかし、京介と食事するようになって、
しばらくして、四人目は食器だけが並ぶようになっていた。
もう、聞いてもいいのだろうか?
「あのう…。」「なあに?」
京介は聞くべきか悩んだが、おもいきって訊ねた。
「亡くなった旦那さんってどういう方だったんですか?」
何年も前に心の整理が終わっていた美紀は普通に質問に答えた。
「厳しかったけど、やさしい人だったな、
消防士という仕事も向いていたと思うわ。でも、ちょっと無謀なところもあったかな。」
食器を一通り片付けると、お茶を入れて美紀はテーブルに座った。
「最後に亡くなった時なんかも、子供は助けられないって、みんなが思っていたのに、
飛び込んで行ったの、で、自分の防火服をその子に着せて救出したからね。」
「なんで助からないかもしれないのに飛び込んだんですか?自分の家族もあるのに?」
「なんでだろう?わかんないな。でも、自分にも家族があったからできたのかもね。」
京介には父親の気持ちがわからなかった。
そして理解できない自分が少し恥ずかしかった。
時計の針の音は静かに時を刻んでいた。
次回 つながる絆(仮)
219ヒビキ任侠伝「山吹鬼」:2006/02/03(金) 19:47:48 ID:kDXwau+g0
第一話「怒れる龍」予告

ここは眠れぬ街、歌舞伎町。
邪気が満ちたこの街、欲望と憎しみ、そして愛情。
全てが交錯するこの街で、今大きな変化が生まれようとしていた。

路地裏・・・闇に蠢くそのバケモノは静かに獲物を待っている。

「サトダ」

「サトニオリテキタゾ」

オロチと呼ばれる大異変の前触れか。
街に次々と現れる「邪」。

この街に住む、1人の男・・・彼の名前はヤマブキ。
かつて「鬼」として関東最強とまで言われた伝説の男。
そして・・・関東支部「永久欠番」の12人目の鬼。

「・・・邪気か。久々に暴れるとするか。」

第一話「怒れる龍」

今、龍の如き男が甦る。
220217:2006/02/03(金) 19:49:29 ID:/56SK2th0
すみません、かぶってしまいました!orz
221名無しより愛をこめて:2006/02/04(土) 00:12:17 ID:kqDIjA/G0
今更ですがここを知り、裁鬼さんメインストーリー読まさせていただきました!
僕の中の響鬼がやっとエンディングを迎えることができました!感動です!
作者さんGJ!!
222響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第七話:2006/02/04(土) 10:55:08 ID:96ldt30k0
第七話 つながる絆
明日夢達がボランティアでやっているパネルシアターの会場に京介は居た。
自分が馬鹿にし、けなした劇をまさか見にくることになるとは夢にも思わなかった。
事の発端は未来が明日夢の事を聞いてきたので、正直に答えた事だった。それがまずかった。
未来は「どうしても行きたい!」と言い、母親にも頼まれてしまった。
断りきれなくなった京介は渋々、明日夢に電話をし、
結局、見せてくれと言うまでに三時間かかった。
「いらっしゃい、桐矢くん。それと初めまして、未来くん。」
ひとみとあきらが迎えてくれた。
「まさか桐矢くんが来てくれるとは思いませんでしたよ。」
明日夢に一部始終を聞いた二人は、意地悪く笑ったが本当は嬉しかった。
「僕は別にくだらない劇なんか見たくなかったんだ。」
「えー!見たくないの!」
「え…。いや、見たくない訳じゃなくてさ。」
未来の悲しそうな顔にタジタジなってる京介を、二人はおもしろがる。
「ほら!いくぞ!」京介は逃げるように未来の車椅子を押して、会場に入った。

手作りの会場と劇はあいかわらず安っぽかった。
かつて自分が滅茶苦茶にした時と何ひとつ変わっていない。
こんな所に居て良いのだろうか?正直、気まずい。逃げたい。
そんな後ろめたさのある京介は、最後尾で見学するつもりだった、だが、ボランティアの人々は、
車椅子の未来の為に椅子を退かし、一番前の席を用意した。断ろうとしたが、
未来の為にしてくれた心遣いを無駄にするのは、あまりに失礼だと思いその好意に甘えることにした。
劇は相変わらず、素人のレベルだったが京介は以前と違い好意的に見学できた。
完成されてない動き、タドタドしい語り、それらの全てに暖かさを感じられる。
一本めの「金の斧、銀の斧」が終わると、次は明日夢が「三匹の子豚」をやった。
途中で読み間違えたりすると、京介は「へたくそ!」と野次を飛ばす。
その言葉で会場はどっと笑った。
未来の笑顔で段々と京介も笑顔になり、最後にはみんな笑顔になった。
223響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第七話:2006/02/04(土) 10:57:31 ID:96ldt30k0
「おもしろかったよ!」未来の率直な感想だった。
「また、見にきてね。」喫茶店で五人はパネルシアターの反省会をしていた。
未来は京介たちに、具体的にどこが楽しかったなど熱弁した。
子供らしい発想、鋭い視点は時折、明日夢たちを感心させた。
「そうだ、未来君もやってるみる?」そんな未来の熱意を買ってか、ひとみは言った。
「え。できるかなあ?」「大丈夫だよ。練習すればうまくなるよ。」
団員が増えることは喜ばしい事だった、特に未来ぐらいの子は同世代の子に良い刺激になる。
未来は少し考え言う「兄ちゃんもいっしょにやるならいいよ。」
「だってさ、桐矢クン。」三人は京介の方をみた。
「え…。やだよ。」さすがに参加はしたくなかったようだ。
「ええー!、嫌なの?やろうよ!」
「ほらほら、こう言ってるしさ。」「僕は色々と忙しいんだよ。」
未来は説得するが、京介は嫌そうな顔をしていた。
そんなやりとりが微笑ましかった。
「ちっくしょう!また停学かよ!」店の置くからテーブルを蹴飛ばす音が聞こえた。
態度の悪い客に店中の視線が集中する。「なにみてんだよ!」他の客は目を逸らした。
「あ!あいつら。」明日夢と京介は態度の悪い客に見覚えがあった。
以前、未来と初めて出会った時にいた万引き少年だった。
「あ!お前達は!」
224響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第七話:2006/02/04(土) 10:58:29 ID:96ldt30k0
少年達は明日夢たちに気付くと、五人のいるテーブルに近づいてきた。
「あの時はひでぇ目にあったな。」少年は一生懸命睨みつける。
「てめえらのおかげで俺らは補導されちまったんだぞ!」
京介と明日夢は立ち上がると少年に反論した。
「万引きなんかセコイ事してるからだろ、僕達のせいじゃないだろ。」
「うるせえ!」「もう少し、反省したらどうなんだ?」
「うるせえ!」「うるせえしか言えないのか?」
「うるせえ!」少年は拳を振り上げ京介に襲い掛かった。
京介は殴りかかった腕を掴んで、さっと、少年の後ろに周る。
「いててててて…。」少年は動きを封じ込められた。
その京介の動きを見て、他の二人は戦意を無くす。
「お店で騒ぐなよ、迷惑だろう。」
京介は二度を悪さができないように、そのまま腕を折ろうとした。
「だめだよ!桐矢くん!」しかし、明日夢が止めた。
京介は不満そうだったが、未来が見ている事を思い出すと手を離した。
解放されると少年たちは京介たちを睨みつけてさっさと退散した。
「兄ちゃんすごい!」未来は改めて京介を尊敬の眼差しで見つめた。
あきら達は京介の変貌振りに驚いた。
随分といい人になったな…。言いたかったが言えなかった。
225響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第七話:2006/02/04(土) 11:00:07 ID:96ldt30k0
明日夢と京介は未来を家に送ったあと、なんとなく土手をふらついてた。
「いきなり、お願いして悪かったな。」「ああ、気にしないでよ。」
「あいつの事よろしくな。」「うん、未来くんが楽しめたらいいね。」
未来は京介にとって、大事な弟である事を明日夢は感じる。
「あのさ、なんか未来の為に言う見たいなんだけどさ、」
「何?」「なんていうかさ…。」「何だよ?」
「前に劇を台無しにして悪かったな。」「え?ああ、あの時か。」
鬼の修行を中断してまで、明日夢がやりたかった事がこんな遊びだと知った時の絶望感と怒りは凄まじかった。あの時はすべてにおいて明日夢が勝っていた。どうしても負けたくなかった。ランニング、水泳、懸垂、いつも勝負を挑んでいた。
しかし、明日夢には勝負ではなかった。相手にされていなかった。
そして、こんな遊びを選んだ。
−自分はこんな遊びよりも下の存在だったのか?
悔しかった、腹が立った。
初めてのライバルだと思っていた。
初めての仲間だと思い始めていた。
裏切られた。
そう思った時には暴れていた。
226響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第七話:2006/02/04(土) 11:04:18 ID:96ldt30k0
「あれから後悔してさ、あの時は裏切られたという気持ちだったし、
ヒビキさんたちも大変な時だったから、ついカッとなって…。」
「別に未来の為とかじゃないんだ、本当に悪いことをしたと思ってる、ごめん。」
京介の言葉に偽りはなかった。
未来の事など関係なく、パネルシアターに真剣に打ち込む人々を見て、京介は心から後悔した。
「いや、もう昔のことだろ、気にしないでよ。」
その時は激怒したが、今となっては何も思ってはいなかった。
「それより、俺の方こそ、突然やめてごめん。」
明日夢も京介を結果的に裏切った事を今でも引きずっていた。
しかし、心のどこかで京介は分かってくれるとも思っていた。
二人は黙っていた。
その時の事、その時の自分と相手。
未熟で自分勝手で相手の事なんて少しも考えなかった。
しかし、それらが今の自分達を創り出したと思うとすべてが許せた。許せるようになっていた。
二人は気付くと少し、笑顔になっていた。
「明日夢。お腹空かないか?」
「じゃあ、ラーメン食べに行こうよ。」
二人は立ち上がった。
「京介のおごりだぞ。」「はあ?ふざけるなよ!」
お互いに、こう呼び合うのは久しぶりだった。
少しだけ、こう呼んだ事もあったがすぐに戻った。
失った物が再び戻るか?それが不安だったから呼べなかった。
だが、今ここに戻った事を二人は感じていた。

しかし、それは失われていた訳ではなかった、
ほんの少しだけ見えなくなっただけで、今までずっとそこに在った。

笑いながら土手を歩く二人を、沈みかけた太陽は温かく照らしていた。
もう二度と見失わないように−。
227狂鬼SS筆者:2006/02/04(土) 11:26:07 ID:96ldt30k0
忘れてた。
次回 進化する京介(仮)
いつも駄文を暖かく見守っていただきありがとうございます。
最近ちょっとした中学生日記になっておりますがw
ちなみに後半では新鬼。終盤ではあの鬼との対戦も予定してます。
もう少しだけお付き合いください。
228高鬼SS作者:2006/02/04(土) 14:52:52 ID:A4zWsohG0
これより投下させていただきます。
今まで以上に自由に書いた結果、今までで一番長い話となりました。
そこの所をどうかご承知下さい。では、どうぞ。
229仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 14:55:20 ID:A4zWsohG0
1976年、弥生。
四国支部から吉野本部に補充人員についての問い合わせがあった。
太鼓使いの鬼が一人、怪我でしばらくの間戦線を離脱する事となり、現在の人数ではシフトに無理が生じるため太鼓使いを一人派遣してほしいというのだ。また、新人の育成も兼ねて、なるべくキャリアのある鬼を希望するとの事だった。
本部による協議の結果、コウキに出向命令が下される事となった。

「しばらく会えないと思うと、寂しくなるね」
出発の日、コウキは本部の関係者や鬼仲間に挨拶に来ていた。
そして最後にあかねの下を訪れたのである。
「……まあ体に気をつけていってらっしゃい。それと、向こうの『銀』の人にもよろしく言っといてね。くれぐれも迷惑かけちゃ駄目よ」
まるで母親みたいだ、そうコウキは思った。
「……それと、これ、餞別ね」
そう言うとあかねは大きな桐の箱をコウキに渡した。
「開けてみてもいいですか?」
「どうぞ」
中から出てきたのは、真新しい音撃弦と音撃震だった。
「最近作った新型。コウキくん、専門は太鼓だけど、音撃棒は新しいのがあるから……」
去年の夏、今なお語り草となっている「三十匹殺し」の際に折れた「劫火」に代わる新しい音撃棒があの後支給されていた。コウキは修理してくれるだけでいいと言ったのだが、あかねがご褒美にと新型を作って渡してくれたのである。
そのためコウキは今、音撃棒・大明神を使っている。最初のうちは手に馴染まなかったが、二ヶ月程度でコウキは「大明神」を自在に扱えるようになっていた。
「音撃弦・宵闇と音撃震・斜陽。『五月雨』も結構金属疲労が激しくなってきてるからね」
礼を言って頭を下げるコウキ。
「さ、行ってきなさい。そろそろ行かないと船の時間に間に合わないでしょ?」
「では行ってきます」
敬礼にも似た得意のポーズをすると、コウキは研究室のドアを開けて出て行った。
230仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 14:57:23 ID:A4zWsohG0
四国へは大阪からフェリーで向かう。徳島に着き、その後案内役と一緒に四国支部のある高知へと向かう手筈だ。なんでも、その案内役の鬼は自ら進んで立候補したらしい。
デッキから海を眺める。
自分が関西を離れるのはそう珍しい事ではない。
ただ、自分が誰かの代役として、いつになるか分からないその者の復帰の日まで別の場所で鬼として戦うというのは初めての事だった。しかも新人の指導までする事になるとは。
弟子はおろかサポーターすら付けず、常に単独で行動してきた自分にそんな事が出来るのだろうか、コウキは正直不安であった。

徳島港に着いたコウキは、愛車とともに四国の地へと降り立った。と、そこに一人の若者が駆け寄ってくる。年の頃は二十歳そこそこであろうか。おそらく確認のためであろう、ポケットから鬼笛を取り出してこちらに見せた。コウキも音叉を取り出して見せる。
と、若者はコウキの下に走り寄ってきて、いきなり土下座を始めた。そして。
「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!」
突然の出来事にコウキは唖然としてしまった。
231仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 14:59:06 ID:A4zWsohG0
若者はウズマキと名乗った。四国支部の中では主に徳島を担当している。なんでも、去年の夏にウシオニを紀伊半島方面に逃がしてしまったのは彼なのだという。
「本当は太鼓使いの人が行くはずだったんです。でもその時手が空いていたのは自分しかいなくて……。それで……」
ウズマキはその事をずっと気にしていたらしい。今回出向してくるのが、その時ウシオニを倒した鬼だと聞き、謝罪するべく自ら案内役を買って出たというのである。
「ちょっと待ちたまえ。太鼓使いはここには何人いるのかね?」
「全種類とも三人ずつ、計九人の鬼がここにいます」
流石のコウキも面食らってしまった。鬼の人数が十人未満の支部など初めて見たのだ。
「ところで君、サポーターは?」
「おりません。うちの支部は万年人手不足でして……」
どうやらとんでもない所に来てしまったようだ。コウキは色々と覚悟をした。

「……その怪我をした鬼というのはベテランなのかね?」
四国支部へと向かう途中、両者は一軒の喫茶店に立ち寄り休憩を取っていた。
「コンペキさんの事ですか?ご存知ありませんか?コンペキさんの事」
正直に知らないと答える。
「そっかぁ、コンペキさんもまだまだだなぁ……。中国四国地方じゃ有名なんだけどなぁ……」
ウズマキの説明によると、そのコンペキ──変身後は紺碧鬼という──は主に香川を担当している鬼で、香川を発祥とする少林寺拳法を習得しており、格闘技術に関しては猛士内最強との呼び声も高い人物だという。
「自分たちみんなコンペキさんに頼り過ぎていた所があるんです。あの人はこの支部で唯一、三種類全てが使える人でしたから……」
そして連戦での疲労が祟って些細な事で怪我を負ってしまったというのである。こればかりは一概に修練不足だと言うわけにもいかないだろう。
珈琲を飲み終わるとウズマキが言った。
「さあ行きましょう!親父さんを待たせるわけにはいきませんから!」
そう言うとウズマキは、お勘定自分が払っておきます!と言って会計へと向かっていった。
232仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:02:38 ID:A4zWsohG0
四国支部は、高知県香美郡物部村にあった。かなり年季の入った大きな屋敷、ここが猛士四国支部である。そしてこの屋敷に猛士四国支部長・小松辰彦が住んでいた。
「やあいらっしゃい、コウキくん。私がここの支部長の小松と言います。ウズマキくんもご苦労様でした」
白髪に白髭の、柔和な感じがする老人が出てきて二人を迎えた。親父さんこと小松辰彦その人だ。
徳島から高知に入り、さらにここ物部村に辿りつくまでに要した時間はそれ程でもなかった。物部村は徳島と高知の県境の山間部にあるのだ。そんな高知市内からは遠く離れた場所に四国支部がある理由、それはこの地にあった。
ここ、物部村には今なお陰陽道・いざなぎ流が継承されている。小松自身もいざなぎ流の太夫だというのだ。
猛士の基盤となっているのは修験道だと言われている。この修験道は日本の山岳信仰と神道、仏教、道教、陰陽道などが習合して確立した日本独特の宗教であり、その基盤の一つとなった陰陽道の伝わる地に猛士の支部が置かれるのは当然と言えば当然であろう。
コウキはウズマキとともに囲炉裏のある部屋へと通され、そこで四国支部に関しての説明を受けた。
まず、四国支部は全国で最も魔化魍の出現率が高いという事。これは四国の丁度ど真ん中を走る四国山脈がまさに魔化魍のメッカとも呼ぶべき所であり、年がら年中何かしかの魔化魍が湧いているためである。
さらに、周囲を海に囲まれているため、海に住む魔化魍がよく海流に乗ってやってくるというのだ。
ここでコウキは疑問を口にした。それなのに何故こうまで鬼の数が少ないのか、と。
答えは四国という土地にあった。弘法大師ゆかりの四国八十八箇所霊場、四国をぐるりと取り囲むように建っているかの地が、四国そのものを強力な結界で守っていたのである。
「結界内にいる魔化魍は他の地域のものと比べると明らかに成長速度が遅く、力も落ちております。また、固体が増えるのを抑制する働きもありまして夏の魔化魍も他の地域に比べると数が少ないのです」
だから私達は必要最低限の人数で今まで何とかやってくる事が出来ました、そう小松は続けた。
233仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:05:00 ID:A4zWsohG0
次に小松は四国に現れる魔化魍に関して話し始めた。こういう特殊な環境故か、他の地域とは異なった魔化魍がよく現れるという。また、他地域では十年に一度しか現れないノツゴも、ここでは年一、二回のペースで現れるらしい。
「ここに最も多く現れる魔化魍は何でしょうか」
このコウキの問いにはウズマキが答えた。
「あ、それはムジナです。化け狸の事です」
「と言うと、夏の魔化魍か」
そうです!とウズマキは威勢良く答えた。続きを小松が話す。
何でも、昔四国には犬神刑部と名付けられたムジナの親玉がおり、仲間達を引き連れて四国中を荒らしまわったという。その数なんと八百八匹!
四国支部はおろか、中国支部、九州支部の鬼全員がこれに挑み、七日七晩かけてこれらを倒したという。但し、犬神刑部はあまりにも強大であったため倒す事が出来ず、呪術を駆使して要石に封印したという。
「結界に対し免疫があった。突然変異というやつですかな……」
小松が言うには、猛士側にもたくさんの死傷者が出たという。コウキも猛士に入りたての頃、過去の記録をあかねに見せてもらって漠然とではあるがその事件については知っていた。
「……ところで封印されたと言いましたよね。よもやその封印が解かれるなんていう事はないでしょうね」
「それは心配ありません。要石がある場所は我々が管理しております。しかし妙に封印という言葉に食いついてきましたな?」
「……去年ちょっとしたごたごたがありまして」
コウキは去年の夏の「三十匹殺し」の一件を思い浮かべていた。ウズマキが思い出したように声を上げる。
「あっ、そう言えばコウキさんって確か自分がウシオニを逃がした日の翌日に巨大魔化魍を二十匹倒したんですよね!」
「……三十匹だ」
正直もう勘弁してほしいというのがコウキの願いであった。
234仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:08:48 ID:A4zWsohG0
一通り説明が終わった後、コウキはこの支部の研究室の見学を希望した。許可が下り、ウズマキの案内で離れへと向かう渡り廊下を進んでいく。
研究室として使われている離れは、コンクリートでできていた。元々は木造だったらしいのだが、実験中の事故を警戒して建て直されたのだとウズマキが説明する。
離れの中には二人の男性がいた。一人は眼鏡を掛け、ボサボサ頭に不精髭を生やした少し神経質そうな白衣の男。おそらくここの「銀」であろう。そしてもう一人は……。
「あっ、先輩!先輩もここに来ていたんですか?」
「ようウズマキ!」
革ジャンを着た体格の良い男だ。年はコウキと同じくらいであろうか。左腕に鬼弦が付いている事から察するに弦使いであろう。外見的な特徴として、髪を茶髪に染め、耳にはピアスを付けている。
当時はまだまだ茶髪=不良という観念が定着しており、そのためコウキはこの男性に対してあまり良い第一印象を得る事が出来なかった。
「ウズマキくん、そちらの方は?」
「本部から応援に来てくださったコウキさんです」
白衣の男性の質問にウズマキが答える。
「ああ、あなたが噂の『二十匹殺し』の……。初めまして、僕はここの『銀』で多々良勝彦と言います」
そう言うと椅子から立ち上がり握手を求めてくる多々良。その手を握り返してコウキは改めて自己紹介をする。
「コウキです。……あと二十匹ではなく三十匹です」
235仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:10:36 ID:A4zWsohG0
「細かいねぇ、あんた」
茶髪の男が茶々を入れる。これにはコウキも黙ってはいられなかった。
「君、人が自己紹介をしたのだ。君も名乗るのが礼儀ではないのかね?大体いい年して何だね、その赤い髪は?風紀の乱れは精神の乱れでもあるのだぞ!」
「名乗れと言うのなら名乗らせてもらうぜ。俺はキリサキ。言っておくが髪形の事でとやかく言われる筋合いは無いね。ここに来たばかりの新入り風情によぉ」
「何だと!?」
「おっ、やるか?」
今にも一触即発な二人の間に多々良が割って入る。
「あ、あの、ところで先輩はどうしてここに?」
「キリサキくんの音撃弦の調子が悪いというので、僕が診てたんです」
成る程、作業机の上には、工具や機材とともに音撃弦が置かれている。キリサキの愛用する「霧雨」だ。
「で、ウズマキくん達こそどうしてここへ?」
「ああ、実はコウキさんが……」
ウズマキはコウキがここを見学したがっている旨を伝えた。笑顔で許可する多々良。
「俺は行くぜ。ありがとよ、先生」
そう言うとキリサキは机の上の「霧雨」を取り上げると、ウズマキを連れて出て行ってしまった。
236仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:11:10 ID:A4zWsohG0
一方コウキは机の上に置かれていた色とりどりの紙細工が気になっていた。鳥や人の姿をしたものが何枚もある。
「それが気になりますか?それは式王子と言います」
多々良が説明する。式王子とはいざなぎ流の太夫が使役する式神の事であり、式神よりも強力な力を持っている。猛士の中でこれを使っているのはここ四国支部のみである。
いいですか?見てて下さいよ、そう言うと多々良は音叉を鳴らし、式王子に近づけた。と、人型のものは起き上がって机の上を走り回り、鳥型のものは翼を羽ばたかせて飛び上がった。
「どうです?式神はその性質上、折り鶴ぐらいにしかなれませんが、式王子は紙を切り抜いて作る御幣を依代としているのでその形態は千差万別です。こういう風に空と地上の両面から魔化魍の探索が可能です」
多々良が少し得意気に話す。
「ちなみにこの御幣は、海辺でも使う必要があるため耐水性の高い和紙を使用しております。それと……」
多々良の説明を受けている間も、コウキは式王子が宿った御幣の原色の美しさにずっと目を奪われていた。いつか自分も今の式神に変わるものとしてこのようなものを作れたら……、そう思った。
「あ、そろそろ時間かな」
腕時計に目をやり、多々良が呟く。
「時間?何のです」
その質問に多々良は笑顔で答えた。
「いや、あなたは実に運が良い。実は今、いざなぎ流の大祭の真っ最中なんですよ」
237仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:12:12 ID:A4zWsohG0
いざなぎ流の大祭は市宇十二所神社という所で執り行われていた。
この三月一日から四日までの間に執り行われる大祭を始め、この村で行われる祭礼は全て秘祭であり、地元の人間以外が目にする事は滅多に無いのだという。ちなみにこの現地での大祭が一般公開されたのは、実にこれから二十二年も先の事であった。
「やあ、来ましたね」
多々良と共に祭りの場所へやって来たコウキをウズマキが迎える。その横にはキリサキの姿もあった。
大祭はすでに厳かに執り行われていた。男の太夫は祭文を読みあげ、女の太夫は神楽舞を舞っている。その中には小松の姿もあった。
五メートルはあろうかという祭壇には、さっきの式王子と同じく色とりどりの御幣が並べられてあった。
「実は色が付いているのにもちゃんと意味があるんです。色霊と言うんですか、ああやって結界を張っているんですよ」
そう多々良が説明した。何から何まで理に適っている。ショーアップされた祭りではなく、純粋に神とのコミュニケーションを図る神事の姿がそこにあった。
「これが日本なんだよなぁ……」
キリサキがそう呟くのを、コウキは聞き逃さなかった。

祭りは恙無く終了した。まだ午後六時を少し回ったところである。だが、季節柄周囲はすっかり闇に溶け込んでしまっていた。
「これから市内へ戻るのは厳しいでしょう。コウキくん達はここへ泊まっていくといいですよ」
祭礼用の装束からいつもの服に着替えた小松が、そう声をかけてきた。コウキはその申し出をありがたく受ける事にした。
地元の公民館では、関係者による宴席が開かれていた。コウキ達もそこにお邪魔をし、食事をとる。土佐湾から運ばれた新鮮な魚を使った皿鉢料理や、この村の特産品である柚子を使った料理に舌鼓を打つ。こうして、一日目の夜は過ぎていった。
238仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:14:09 ID:A4zWsohG0
翌日、魔化魍出現の報が入りウズマキが出撃した。高知市内へ向かう予定のコウキとキリサキも、ついでに付いていく事になった。
「相手はウブメらしいぞ。童子と姫は俺がやるから、お前は魔化魍に専念しろ」
「はい、先輩!」
目撃地点の付近を走る三台のバイクの前に、突然ウブメがその姿を現した。ただ、昨日小松が話した通り、他の地域に比べると明らかに大きさが違う。背後からは童子と姫が現れた。
「鬼か」「鬼だな」
「そうさ、俺たちゃ鬼だ!行くぜ!」
キリサキの合図と共に、ウズマキが鬼笛を、キリサキが鬼弦を鳴らす。コウキも音叉を自分の腕に当てた後額に翳した。
ウズマキの体を、足元から噴き出した水流が渦を巻いて包んでいく。一方、キリサキの体は霧に包まれシルエットだけとなっていた。
気合いと共に二人がそれぞれ水の壁と霧を腕で吹き飛ばす。ウズマキの飛ばした水飛沫が童子と姫にかかる。
二人はそれぞれ、仮面ライダー渦巻鬼、仮面ライダー霧咲鬼に変身していた。その横に同じく変身を終えた高鬼が並ぶ。
童子と姫もまた、それぞれ怪童子、妖姫の姿となって襲い掛かってきた。
239仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:15:28 ID:A4zWsohG0
「渦巻鬼!ウブメは任せたぞ!いいな!」
そう言うと「霧雨」を手に妖姫を迎え撃つ霧咲鬼。「はいっ!」と威勢良く返事をすると、渦巻鬼も音撃管・潮騒を手にウブメに向かっていった。高鬼は怪童子へと向かう。
怪童子の拳撃を最低限の動きでかわすと、高鬼はそのまま懐に跳びこみ、二本の「大明神」を使って攻撃を仕掛けた。
尻に一撃を叩き込み、怯んだ隙に顔面にさらに強烈な一撃を叩き込む。
「成る程、確かに歯ごたえが無いな」
そう言うと高鬼は「紅蓮」を貼り付けずに炎舞灰燼を叩き込んだ。爆発し塵と化す怪童子。
他の二人の様子を見る高鬼。渦巻鬼はウブメを「潮騒」で攻撃している最中だ。そして霧咲鬼もまだ妖姫と戦闘中だった。
「おらぁっ!」
「霧雨」を叩きつけ、さらに空いた右手でも妖姫の顔を殴りつける。かなり荒々しい、容赦の無い戦い方だ。
反撃に転じようとする妖姫の腹部に強烈な蹴りを叩き込むと、右手の親指に付いたピック上の爪を妖姫の左目に突き刺した。
悲鳴を上げる妖姫。それを意に介さず「霧雨」で殴り続ける霧咲鬼。
装備帯から音撃震・濃霧を取り外し、「霧雨」に装着すると、今度は展開した刃で妖姫の体を切り刻んでいく。
「トドメだ!過激に行くぜぇ!」
「霧雨」を妖姫に突き刺すと、構え、右手を挙げて叫ぶ。
「おぅらぁ!音撃斬・天威無法!」
高速で弦を掻き鳴らす霧咲鬼。なかなかのテクニックだ。
「フィニッシュ!」
最後に一回弦を弾くと、妖姫の体は爆発し、童子同様塵へと帰った。
「センキュー!アンコールは無しだぜ」
そう言うと霧咲鬼は「霧雨」から「濃霧」を外し、再び装備帯へと付けた。
一方、渦巻鬼もウブメに幾つかの鬼石を撃ち込む事に成功していた。装備帯から音撃鳴・渦潮を取り外し、「潮騒」へと取り付ける。
「音撃射・風光鳴媚!」
清めの音が高らかに鳴り響き、ウブメは大爆発を起こして塵となった。
「さて、どうよ?本部のエリートさん?」
霧咲鬼が高鬼に向かって自信たっぷりにそう言った。
240仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:17:33 ID:A4zWsohG0
徳島へと戻るウズマキと別れて、コウキとキリサキは高知市内へとやって来た。道中、コウキはキリサキの戦い方について苦言を呈していた。
「君の戦い方は荒っぽすぎる。あれでは音撃弦の調子が悪くなるはずだ。それに、戦闘中の無駄口が多すぎる。師匠には何も注意されなかったのかね」
だがキリサキはコウキの説教も何処吹く風といった感じで、相槌一つ打たずに全て聞き流していた。
猛士が用意したコウキの下宿先へと向かう途中、キリサキがこう提案した。
「ちょっとうちに寄って何か飲んでいかないか?」
この男と二人きりになるのは、正直コウキにとっては苦痛以外の何物でもなかったのだが、だからと言って無下に断る事も出来ず、結局その申し出を受け入れた。
キリサキは独りで1LDKのアパートに住んでいた。彼の私室に通される。そこには大きなスピーカーの付いたプレーヤーと、沢山の洋楽のレコードが置いてあった。
壁には海外のロックバンドのポスターが貼られてあり、彼の私物であるギターが何本も立てかけてあった。
コウキは近くにあったレコードを一枚手に取って見る。ジャケットにはクイーンの「シアー・ハート・アタック」と書かれてある。
他にもエアロスミス、キッス、ディープ・パープル、ブラック・サバスといったハードロックバンドのレコードが大量に置いてあった。
五年前のレッド・ツェッペリンの初来日公演にも行ったんだぜ、とキリサキは嬉しそうに語った。
だがコウキはそういった楽曲には大して興味が無かった。他に何か無いか探してみると、邦楽のレコードもちらほらと目に付いた。昨年解散したキャロルのアルバムもある。
「やっぱり俺は日本人なんだと思うよ。確かにロックは洋楽の方が優れてるけどさ、ジャパニーズロックってやつも気になっちゃうわけよ。」
最近はキャロル解散後ソロでやり始めた矢沢永吉が注目株かな、と続ける。
241仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:18:43 ID:A4zWsohG0
ふと見ると、キリサキの手にはビール瓶とジョッキが二つ握られていた。
「お前、まだ夜にもなっていないというのに酒を飲むつもりか!」
「酒じゃないって、ビールだよビール。心配すんなよ、ちゃんとタクシー呼んでやるからさ」
それともお前、下戸か?キリサキが笑いながら聞いてくる。
全く非常識な奴だ。いつものコウキなら有無を言わさず尻を叩いていたことだろう。しかしどうした事か、今のコウキはこの男と二人で飲んでみたい気持ちを少なからず持っていた。
小さなテーブルの上に置かれたジョッキを無言で手に取るコウキ。
「おっ、頭ガチガチの堅物かと思ったが案外そうでもないようだな」
嬉しそうにビールを注ぎだすキリサキ。
「全く、お前といると調子が狂う」
そう言うとコウキは注がれたビールを一口飲んだ。
「へへへ、高知の男は酒に強いぜ。覚悟しろよ」
キリサキもまた、美味そうにビールをグビグビと飲んだ。

結局その日は二人して真夜中近くまで飲んだ。酔ったキリサキはずっと土佐弁で喋り続けていた。
エレキギターをアンプに繋いで掻き鳴らすキリサキ。周りに迷惑じゃないのかと聞くと、隣も下も空き部屋だから大丈夫と言われたので、これまた随分と酔っていたコウキは歌を歌い始めた。エレキギターの伴奏で歌謡曲を歌う、妙なセッションであった。
数十分後、近所の住民から苦情を受けた大家が部屋に乗り込んできて、二人が説教を受けるまでそれは続いた。
242仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:21:00 ID:A4zWsohG0
それから暫くの間、二人は別々に出撃を重ねたため会う機会が全く訪れなかった。ただでさえコウキには、他の太鼓使いの指導という仕事もある。また、この当時は高速道路が四国内に無かったため、一度他県に出撃するとなかなか戻ってこられなかったのである。
コウキとキリサキの関係は、酒宴を経たとは言えまだまだぎこちなく、互いを信頼しきれていなかった。
そんな中、二人が久し振りに出会う事となった。魔化魍を倒し帰還中だったコウキの下に、キリサキが使っている藍色をした隼の式王子がやって来たのである。スピードのある隼型は緊急連絡の際に使われる。事態を把握したコウキはすぐさま隼の後を追ってバイクを走らせた。
現場に辿り着いたコウキが見たものは、弦が切れ、激しく破損した「霧雨」と、ノツゴに捕らえられた霧咲鬼の姿だった。
「……よぉ。誰か来てくれると思っていたが、まさかお前が来るとはな……」
苦しそうに霧咲鬼が言う。
コウキは直ちに変身するとノツゴ目掛けて小右衛門火を放った。だがノツゴの硬い体には炎が通用しない。
「おのれ……。待ってろ、今助けてやる」
バイクから自分の音撃弦を取ろうとした次の瞬間、ノツゴが霧咲鬼を高鬼目掛けて投げつけてきた。飛んできた霧咲鬼をまともに食らう高鬼。そしてあろう事か今度は高鬼の体を捕らえたのである。
「ぐっ、おのれ……」
焦熱地獄を使おうかとも思ったが、炎が効きそうにない事が分かっている以上、無駄に体力を消耗するだけのような気がして使えなかった。
「おい!何をしている!早く私を助けろ!」
「うるせえ、馬鹿!『霧雨』が壊れてんだぞ!どうしろってんだ!」
「だから私は言ったのだ!あんな戦い方をするなと!」
「そんな事言ったかよ!?」
ノツゴが高鬼を喰らおうと口を大きく開ける。
「おいお前!そのバイクに私の音撃弦と音撃震が積んである!それを使え!」
霧咲鬼が言われた通りバイクを見ると、積んであったバッグの中に確かに音撃弦と音撃震が入っていた。あかねが餞別にと渡してくれた「宵闇」と「斜陽」だ。四国に来てから一度も使っていなかったため、綺麗なものである。
「何だこりゃ!新品の音撃弦か?本当に大丈夫なのかよ!」
「それを作った人の腕は確かだ!ぐずぐずするな、急げ!」
243仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:23:30 ID:A4zWsohG0
「斜陽」を「宵闇」に装着し、ノツゴ目掛けて突撃する霧咲鬼。まずは自分に襲い掛かろうとするノツゴの視界を奪う。
「鬼法術・霧隠」
霧咲鬼の全身から霧が噴き出し、周囲を包み込む。ノツゴ周りは、まさに五里霧中状態となった。
と、高鬼のすぐ傍から霧咲鬼の声がする。霧に紛れてもうこんな近くまでやってきていたのだ。
「コンサートはこれから第二幕だ!行くぜ!」
言うや否や、開いたままになっていたノツゴの口中に「宵闇」を叩き込む。
「音撃斬・天威無法!震えろハート!燃え上がれヒート!刻め!清めのビートぉ!」
激しく「宵闇」を掻き鳴らす霧咲鬼。
「もっと、もっとだ!うおおおお、過激にファイヤー!」
数分にも及ぶ霧咲鬼の魂の演奏が終了した。それと同時に木っ端微塵に爆発し、塵芥に変わるノツゴ。
霧が晴れた。その中から「宵闇」を抱え、顔の変身を解除したキリサキの姿が現れる。
「こいつは……名器だ」
そう言ってまじまじと「宵闇」を眺める。
と、同じく顔の変身を解除したコウキがやって来てキリサキに文句を言った。
「馬鹿者!私がまだ捕まっているのに爆砕する奴がいるか!」
「うるせえ!助けてやったんだ感謝しろ!」
「何だと!」
ほんの少しの間を置いて、二人は同時に大声を上げて笑い出した。
「助けに来てくれてありがとよ、コウキ」
「それはこっちの台詞だぞ、キリサキ」
「じゃあさ、お礼にこの音撃弦くれよ!なっ、いいだろ?」
「馬鹿者!それは大事な品なんだ。……まあしばらくの間貸しておくだけならいいがな」
「そうこなくっちゃな!よっしゃ!一杯飲みに行こうぜ!」
二人は笑いながらその場を後にした。コウキが他に着替えを持ってきていないのに気付いたのはその直後だった。

それから数ヶ月の間、コウキは四国支部で戦い続けた。コンペキの復帰に伴い関西支部へと戻ったのだが、「宵闇」と「斜陽」はキリサキに貸したままであった。
その後も二人の間でやり取りは続いたのだが、暑中見舞いや残暑見舞い等をまめに書いて送るコウキと違い、キリサキの方は年賀状すら来ない年もあった。
そして年賀状の内容も、ロック関係の事ばかりで肝心の近況報告や、場合によっては年始の挨拶すら書かれていない時もあった。
そして月日は流れていった……。
244仮面ライダー高鬼「霧裂く鬼」:2006/02/04(土) 15:24:46 ID:A4zWsohG0
2006年、コウキこと小暮耕之助は高知龍馬空港に降り立った。今では四国支部長の座に就いた、嘗ての盟友に会うためである。
本来ならオロチの一件の直後に、四国支部から援軍を派遣してもらった礼を述べるべく高知に行く予定だったのだが、事後処理のごたごたでなかなか行く事が出来なかったのだ。
そこで小暮は、どうせすぐ行けないのなら初めて二人が知り合った三月のあの日に行こうと決め、ずっとその日を待っていたのである。そして今、彼の目の前には……。
「よお、元気にしてたかコウキ」
「そっちこそな、キリサキ」
頭に白いものが混じるようになったキリサキこと現四国支部長・城之崎恭二は、幾つになっても変わらぬ態度で盟友を迎えた。
「『宵闇』と『斜陽』、返してもらいに来てやったぞ」
「へっ、あれはもう若い鬼が使ってらぁ。今更返せねえな」
しばしの間の後、二人は大声で笑い出した。周りの人々が怪訝そうな顔で二人を見ている。
「飲みに行こうぜ!あれから高知の街も随分変わった。好きな所へ案内してやる!」
「おう!今夜は飲むぞ!」
三十年振りに会った二人の「元」鬼は、三十年前のあの頃と全く変わらぬ感じで空港のロビーを後にした。 了
245名無しより愛をこめて:2006/02/04(土) 19:33:09 ID:9jhYMx9/0
狂鬼×高鬼の作者さん乙っす!
狂鬼の対決…楽しみにしてます。
高鬼の童子の尻に一発笑わせて頂きました。
応援してます!
246番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/05(日) 00:19:23 ID:x3Qo1n9T0
番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻『深まる繋がり』(中)

甘味所たちばな・地下/
吾妻との再会から4日後の午後。ダンキはたちばなにて、おやっさんに報告をしていた。
魔化魍が現れそうな地点での探索・調査を終えて戻ってきたのだった。
「ご苦労様だったねぇ〜。しかし、魔化魍が現れなかったのは良かったけど、日菜佳の予想が・・・今年はどうも当たりにくいというのは気がかりだよねぇ」
おやっさんのセリフに、パソコンに向っていた日菜佳が激しく講抗議する。
「父上〜!私だってしっかりやってますよ〜!気象、立地条件、伝承、あらゆる方角からシュミレートかけて予想を立ててるのに・・・魔化魍が勝手にイレギュラー起こすんですからぁ!」
作務衣の袖を口に咥え「くやしぃぃ〜」と奇声を洩らす日菜佳を見て笑うダンキとおやっさん。
「わかってます。まぁ、この調子でしっかりたのむよ」
日菜佳を宥めるおやっさんにダンキは続ける。
「期待してるよ〜日菜佳ちゃん!日菜佳ちゃんの魔化魍予報がなきゃ、俺達お手上げじゃ〜ん!」
「うぅ・・有難うございますダンキさん・・・・・よ〜し、こうなったら大物見つけてやりますよぉ〜!」
気合を入れてパソコンに向かい予想を立てる日菜佳。
「いや、大物を呼び出されても困るんだけどね」
おやっさんがわが娘の背中に投げかけるが、仕事の鬼となった日菜佳には届かなかった。
と、そこへ音を立ててアルバイトの少年が下りてくる。
「お客さんです」
「私に?誰だろうねぇ」
少年に言われ上へと上がるおやっさん。部屋にはダンキと日菜佳、少年の3人が残った。
「・・・・あ!」
ダンキが突然大声をあげる。
「キミだろ?こないだの電話のアルバイト!」
少年が突然話題を振られてビクリと体を震わす。
「え・・・」
「ほら、覚えない?俺だよ俺!」
ダンキは立ち上がり少年の肩を掴みガクガクと揺らす。
「え・・・えと・・・ダンキ・・さんでしたっけ」
「そうそう!悪かったなぁ、この間は!アラチ君だったっけ?」
247番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/05(日) 00:20:07 ID:x3Qo1n9T0
「安達君ですよ!安達明日夢君」
日菜佳が間違いを指摘する。
バイトの少年=明日夢は初めて見るダンキに少々困惑気味だ。
「じゃ、明日夢でいいな!改めて俺は、ダンキ!よろしくな!」
「はい、よろしくお願いします」
明日夢とダンキはがっちりと握手する。
明日夢はダンキに無理やり座らされ、ダンキに振舞われた団子を無理やり手渡された。団子を食いながら談笑する二人。
ただ今高校生。部活はブラバン。ドラムがやりたい等、明日夢の日常の話で盛り上がった。
「そっかぁ、イイね学生!明日夢は将来はドラマー志望?」
「いや、そこまでは・・・・まだ将来の目標とか無いんで」
「ふ〜ん!じゃさ、弟子入りしなよ!ヒビキさんに!で、俺とヒビキさんの3人で太鼓やろうぜ!太鼓!」
「え・・・え・・ええええ?」
突然の提案に狼狽する明日夢。そんなことを構わずにダンキは「ホラホラ、どうよ?」と勧誘する。だが、そんなダンキに日菜佳がピシャリと釘をさす。
「ダメですよ〜!明日夢君は、ヒビキさんの友達なんですから!ムリな勧誘お断りです!」
「いいじゃん!ヒビキさんの友達なら、弟分の俺の友達でもあるでしょ〜!なぁ、明日夢!」
「あ・・・あははは、考えときます」
笑いながらかわす明日夢。追い込みをかけるダンキ。そんなやり取りを見て日菜佳は
『それなりにウマが合ってるみたいですねぇ〜。これならヒビキさんも安心ってトコですかねぇ〜』
ヒビキも、ダンキと明日夢のファーストコンタクト以来、何かと気にしていたようで、日菜佳にそれとなく様子を見てもらっていたらしい。
「ダンキ君〜!ちょっといいかな?」
上からおやっさんの声が響いた。
「・・・今行きます!」
ダンキは階段を駆け上り、店へと移動した。
テーブルには、おやっさんと・・・・
「あぁ〜!吾妻の後輩ィ!?」
吾妻の後輩こと安藤千明が座っていた。服装はこの間と違い、スーツ姿で髪を下ろしていた。
「お久しぶり、ダンキ君」
「・・・なな、なんで・・ココに?」
ダンキは珍しくうろたえて、千明を指差す。
「まぁ、座って。実はね、このお嬢さんが鬼を取材したいと言ってきてねぇ〜」
248番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/05(日) 00:24:46 ID:x3Qo1n9T0
おやっさんは、コトの経緯を説明してくれた。
千明が何故か鬼のことを知っている事を含め、前代未聞の鬼の取材申し込みを『条件付きで受けた』事まで。
「もちろん鬼と魔化魍の事は完全に伏せて貰うけどねぇ」
「でも、写真とか撮られたらどうすんスか?」
「もちろん取材中に撮った写真、インタビューの中身は全て確認してもらい、使用可能な物のみ渡して貰うと言う形で、OKをもらいました」
「それで、取材になるのかよ!?」
「それは大丈夫。あくまでも人助けの志を取材するだけだから。鬼の部分は隠します」
前回とは全く違う雰囲気で受け答えする千明。
「じゃ、別に俺達じゃなくてもいいじゃん!」
至極当然の話だ。志の取材ならば、その他の職業でも事足りるハズだからだ。
「そこなんだけどねぇ。どうしても、鬼をということでね。まぁ、我々の事を『何故か』知っている人を、野放しにするよりは・・・むしろ本人の納得のいくようにやって貰うほうが、無用な口外は少ないと判断しての事なんだ」
おやっさんはそこで一旦止めて、ダンキをちらりと見る。ダンキは全身から冷や汗を掻いている。
『目・・・目が怖ぇぇ・・・』
だが、そんなダンキから目を放し事の説明を続ける。
「撮影に使用する機材はこちらで用意した物を使って貰い、使用可能なモノだけ渡し、不可のモノに関しては廃棄する。これならば、問題はそう起きないはずだしねぇ」
納得がいかないダンキだったが、思い起こせばダンキが鬼の姿を見せたのが最大の原因であるので、何も言い返せなかった。
「あと、ダンキ君には色々と聞きたい事がありますから・・・」
「・・・・う・・スンマセン」
おやっさんのいつも通りの口調が逆に怖いダンキは素直に謝ったのだった。
「では、立花さん。言われた通り、明日よりダンキ君に張り付いて取材させていただきます」
249番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/05(日) 00:26:22 ID:x3Qo1n9T0
「はあぁぁぁぁぁぁ?俺にぃ!?」
ダンキは椅子からガタリ!と立ち上がりおやっさんを見る。
「そりゃねぇ・・・顔合わせも済んでるわけだし」
おやっさんはダンキの耳元に囁く。
「こうなったのも、ダンキ君の不用意な変身のせいなんだ・か・ら!それに・・・」
「う・・・それに?」
「いや、この件はあえて言う必要は無いかな・・・・」
おやっさんはソコで改めて千明に向き直り、「くれぐれも約束は護るように」と念を押し、ダンキに送っていくように命じた。
ダンキは渋々ながら千明と外へ出た。

ちなみに彼らは知らない。
「念のため〜・・・ワシとシシを消して張り付かせておこうか・・・・」
「そうですねぇ・・・・こんな事前代未聞ですからねぇ〜」
「バッテリー切れに注意して、絶えず監視を付けるように・・・みどりちゃんに伝えておいてくれる?」
「了解です・・父上!!」
千明の去った後、このような事が行われていた事を。

都内某所・路上/
「そっか・・やっぱり吾妻かぁ」
「うん。教えて貰っちゃって・・・ゴメンね急にこんな事お願いしちゃって」
ダンキと千明は横一列で歩いている。時刻は夕刻。買い物帰りの主婦や、仕事上がりのOLでにぎわっている。そんな中でスーツ姿の千明とジャージ姿のダンキは妙に目立った。
「全く。命知らずと言うか・・・この間ので懲りたと思いきや・・・益々加熱しちゃってどうすんのよ!」
「だって、切っ掛けはダンキ君の一喝よ?」
「記事は読んだよ・・・イイ記事とは思ったさ。だからって俺等を取材ってのはよ?」
「だって気になるし!」
千明は長い黒髪をポニーテールに纏め上げながら、キッパリと言い放つ。
「鬼もだけど、やっぱり魔化魍ね!架空と思われてた妖怪が実は存在してたなんて、ロマンチックじゃない!夜な夜な人気の無い道を徘徊するロクロクビなんて想像しただけで・・・」
恍惚の表情を浮かべる千明。ダンキは全身の力が抜け・・・空を仰いだ。
何故こんな事になったのか・・・・。
それは数年前にうっかり千明の前で変身をしてしまい、ついこの間、再び変身を見せてしまった。一回目は不可抗力だったが、二回目はほぼ自分の意思でだ。
こんな事なら・・妙なサービス精神を発揮するのではなかったと・・・心の底から悔やんだ。
250番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/05(日) 00:27:26 ID:x3Qo1n9T0
埼玉県・武甲山/
調査にきたダンキとダンキの取材にきた千明は、早速写真を撮っている。
ダンキは黙々とDAにデータを入力している。
「何それ?」
千明はDAの写真を撮りつつ、ダンキに尋ねる。
ダンキは無言で変身音叉を取り出し、DAを叩いた。キィィンと音を立てたかと思うと、ダンキの手の中のDAが銀色から、鮮やかな茜色へと変色した。
「わ!色が変わった!」
千明は子供のようにはしゃぐとすぐさま写真を撮った。
ダンキはさらにDAを投げ飛ばした。空中で鷹へと変化した茜鷹を見て、千明のはしゃぎ様は更に跳ね上がった。
「カワイィ〜〜〜〜!ナニコレ?全部あんな可愛い姿になるの?」
千明はBOXに収められたDAを指してダンキに尋ねる。
「まぁな・・・見てろ?」
ダンキは入力が済んだDAに変身音叉を滑らせるように鳴らした。
一斉に色が変わり、地へ、天へと駆けて行くDA。そのDAに向けてダンキは
「よろしく頼むよ〜!」
エールを送った。

その後、千明はかまどを作るべく手ごろな石を集め、薪になりそうな枯れ木を集めた。
その間ダンキはテントの設営と戻ってきたDAのチェックにかかり切りで、食事の事を失念していた。
「はい」
「ん?お!サンキュ」
千明の差し出したカップを受け取り口をつけた。
「どう?味は?」
「んあ?あぁ、美味いよ」
「そ、良かった。食事・・もう少しで出来るから・・といってもレトルトだけどね」
千明はご機嫌な様子で、かまどへと戻っていった。
ダンキは普段一人で行動する事が多く、誰かと共な行動はそう多くは無かった。その為か、修行時代を思い出した。あの時は修行に着いていくのが必死で、泊りがけの時など食事が喉を通らない事が多く・・・よく師匠に笑われた。
『また、ヘコたれたか?鍛えが足りないぞ?ダイスケ!』
『喰え!とりあえず喰うんだ!いいかダイスケ?栄養の補充は必要な事だ。聞いてるかダイスケ?』
ショウキと共の行動の時もあるが、その時は互いに食事の事など忘れて、調査か鍛錬に没頭する事が多い。その為、鬼でない誰かがいてくれる事に・・妙な安心感を覚えたのだった。
251番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/05(日) 00:28:29 ID:x3Qo1n9T0
そこで、もう一度千明を見る。
一番最初の出会いは・・駅で。その次は山で。印象は『可愛いじゃねぇか』と直球だった。
二回目の出会いは・・・怒り半分。もう半分は何だろうか・・・・。
そして三度目。鬼としての自分を知っており・・・・・・
山の中、夜は冷え込むと言うのにタンクトップにホットパンツと薄着だ。だが、それを気にもせずにテキパキと動き回り食事の支度を済ませてゆく。
「・・・・・・・・・ふぅ。何安心してるのかね俺は・・と」
そこへ、黄赤獅子が戻り一声吼えた。ダンキは戻ってきた黄赤獅子をディスクへ戻し再生させる。ディスクには獣のような鳴き声が録音されていた。
「・・・・・・・・・・・・・当たりだ」
ダンキはのそりと立ち上がり、戦闘準備のストレッチを手短に済ませる。
「・・どうした?」
「当たりが出た。ちょっくら行って来るわ」
「待って、私も!」
デジカメを取ろうとテントへ戻る千明にダンキは厳しく言い放つ。
「ダメだ!残ってろ・・危険だ」
千明はそれを聞いて表情を崩す。
「そんな・・なんで・・・」
「いいから。ココを離れるなよ!」
ダンキはそれだけ言い残し、その場から走り去った。

黄赤獅子の後を追い現場へと急ぐ。木々が乱立する中、童子と姫が待ち構えていた。
『鬼だね?』
『お前・・鬼だね?』
童子の方は額にバンダナ状のモノを巻きつけている。
「チッ・・。ヤマアラシじゃねぇかよ。予想の崩れもいよいよ節操が無くなってきたねこりゃ」
ヤマアラシの童子と姫はニヤリと笑い、体を変化させていく。
ダンキは内心焦った。ヤマアラシは太鼓の担当ではなく、弦の鬼。蛮鬼や裁鬼、轟鬼の担当だ。太鼓でも倒せない事は無いが、一度も相手した事の無い相手に・・・果たして自分の技が通じるか・・・・。
「やるしかないよね・・あぁ〜もう!」
ダンキは音叉を気に当て額へとかざす。
現れる鬼面を感じ、ダンキは大地を踏み鳴らす。隆起する石錐に囲まれてダンキは弾鬼へと変身した。
『そんなに頑張ってどうする?』
『鬼は外だ。判ってない奴め』
252番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/05(日) 00:29:32 ID:x3Qo1n9T0
『ダリャァァァァ!』
纏った石を散らばしながら、弾鬼は音撃棒・那智黒を構える。
『そんなセリフは、節分に言うもんだ!行くぜっ!』
身を屈め、音撃棒で大地を一叩きして宙へと舞う!もうもうと粉塵を上げる中から蒼い閃光となった弾鬼が飛び出し、童子へ飛び蹴りを喰らわせた。
だが、普段とは違う・・なにか硬い感触に、着地した弾鬼は首をかしげる。
童子と姫の体は急速に硬化し、その皮膚は鎧のように硬質化した。
『チィ!武者童子・・鎧姫かよっ!』
弾鬼は響鬼や裁鬼から聞いた武者童子・鎧姫と遭遇した事に更に焦りを感じた。
自らの唾液からそれぞれ剣と槍を生み出し、童子と姫は襲い掛かってきた。
剣の一撃を左の那智黒で受け止め、右の那智黒を叩き込もうとした。だが、想像以上に重い一撃で、左手の那智黒は弾き飛ばされ・・・・
背後へ移動した童子の槍が、弾鬼の右肩を穿ち・・・姫の剣が弾鬼の腹を薙いだ。
『ぐぅぁ・・・ガハッ』
よろり、と倒れ膝をつく弾鬼に童子と姫は口から更に針を打ち出す。それを右手の那智黒で打ち返そうとするが、先ほどの一撃で思うように動かせず、針は無情にも弾鬼へと突き刺さった。
『鬼の血は餌になるだろう』
『肉も滋養となろう』
弾鬼の面を掴み引きずり揚げる童子に、弾鬼は力を振り絞り左手の鬼爪を叩き込んだ。
硬い・・・何かが砕ける音が周囲に鳴り響いた。
         三之巻『深まる繋がり』(中)  終
253弾鬼SSの筆者:2006/02/05(日) 00:44:58 ID:x3Qo1n9T0
ようやくメインヒロイン『千明』を弾鬼に固定させる事が出来ました。
進みは遅いですが、弾鬼スレが健在の頃の住人さんやコレを読んでくれている住人の皆さんの期待に添えれるほどの内容では有りませんが
精一杯やらせていただきます。

他のSS職人さんへ、遅くなりましたが感想を。
高鬼SS>時代背景をしっかりと反映させた内容が、素晴らしいです!
剛鬼SS>ライダーブレイクがツボに来ましたw剛君の未来に大期待です!!
狂鬼SS>156さんと同様映像が頭の中に流れてきます!
踊る獣>青磁蛙に涙が・・・・雛祭り編楽しみにしています!
皇城の守護鬼>文章が引き込まれるようで凄いです。次があるなら是非読みたいです!
254名無しより愛をこめて:2006/02/05(日) 00:47:18 ID:110wCt1y0
>246
弾鬼SS中の人、乙です!
タンキなダンキの今後が楽しみです。それと、師匠との物語りも・・・
気になりつつも、どうぞご無理をなさいませんように。

こちらにはSS職人さんが、まとめサイトには絵師さんが増えて、
嬉しい限りです。
255名無しより愛をこめて:2006/02/05(日) 02:08:12 ID:MrrWe4dH0
弾鬼ss毎度ながら楽しみにさせてもらってます
ヤマアラシの経験が無いといってるあたりやはり弾鬼は若い鬼なんだな、と

で、考えてるんですが何で猛士は魔化魍関係を公表いないんでしょうか。思いつくのは
@定番の公表に伴うパニックを避けて
A通常の科学的技法では検証できない
(捕獲できない、通常の生物のような肉体を持っていないetc)
B猛士も対処法は分かっていても魔化魍そのものについては分かっていない
    +
Css中で弾鬼が言ってた被害者心理を考えて

あるいはクグツ関係とか劇中で語られていない所に答があるのか・・・
256狂鬼SS筆者:2006/02/05(日) 09:10:20 ID:AW0FlWDX0
>>255
狂鬼の最後に猛士以外の組織も少し話をしようと思ってたので参加します。
たとえばイギリスだとジェームスとか、アメリカならチャーチルとか。
お互いに協力はあっても、関与しない関係である。
資金源とか考えると、国営か、なんかすごい財団の管理下にあり活動しているのでは?
で、魔化魍の存在については、過去に魔化魍がらみの事件があり、
その責任追及の際、政府が魔化魍の存在を否定する事で責任逃れをした。
その為、公表はできなくなり、猛士は裏の顔として活動することになる。
そう考えるのはどうでしょう?
過去の関係上、魔化魍はいない事になっている。
でも、魔化魍退治の組織は必要だから、極秘で存在し、資金も国から出すと。
過去の事件は特に考えてないので誰か考えてw
257名無しより愛をこめて:2006/02/05(日) 10:41:24 ID:0MltfsOB0
↑うまい!
258狂鬼SS筆者:2006/02/05(日) 12:11:04 ID:cU4RJ0HV0
時代的には江戸末期とか明治の初めとか。
そうすると洋館夫妻はその時の犠牲者とかどうだろう?
政府がその事件を公にしないことによりその存在を消された。
その為、魔化魍を利用して復讐しようとか?
割りとありかも。
259番外編「仮面ライダー剛鬼」四之巻:2006/02/05(日) 17:28:51 ID:JPs6F6Q00
四之巻「駆ける壱円」

「山を降りろ・・・。里には人がいるぞ。」怪童子が断末魔の叫びをあげ息絶えたころ、
ヤマアラシの鳴き声はもう鬼の聴力でも聞き取れないほどの小さなものになっていた。送鬼はキャンプへと戻る。

日が昇り、また沈もうとしたころ。校門からたどたどしく歩きながら剛が出てくる。昨日の出来事が予想以上に右足に悪い影響を
与えていたらしい。そこから100m、200m、300m、400mとずっと歩いていく、あれに懲りたのか近道は通らなかった。
というか、もう通りたくなかった。というのが剛の気持ちだろう。500mほど歩くと大通りに入る前の坂道に着いた。
西村という表札が右に見える。剛のいつもの通学路だ。
「ダ、誰か、止めて〜〜〜。」目の前の光景に剛は唖然となった。ベビーカー2台が坂道を勢い良く下ってきたのだ。
身を挺して止めに入る剛。しかし、1台は止めたものの、距離を考えると2台までは止められない。
「・・・・・・(まずい!!)・・・・・・」その時、そこに現われた男がもう一台のベビーカーを止めた。
「どうもありがとうございます。」母親があたふたしながら出てきた。どうやらベビーカーのロックをかけ忘れていたらしい。
男はベビーカーを母親に渡すと一度地面に右手を置いて何かを拾うような仕草をして俯きながら歩き始め、どこかへ去っていった。
その姿がどこかソウキと重なって見える。「あの〜。」「・・・・・・・・・・・・・・あっ!、はぁ。・・・」
その男のことばかり考えていたせいか、剛はベビーカーを母親に渡すのをすっかり忘れていた。また悪い癖が出た。
母親は剛にベビーカーを渡されると剛にもう一礼してから2つのベビーカーを引いて西の方へ向いて歩いていった。
多分、最近できた郊外のスーパーにでも行くつもりなのだろう。
男のことが気になった剛はなんとか男に悟られないように彼をつけた。良く見ると男の右手には1円玉が握られていた。
男がさっき拾ったのは1円玉だったらしい。
260番外編「仮面ライダー剛鬼」四之巻:2006/02/05(日) 17:34:21 ID:JPs6F6Q00
「おわっつ!!」
テントの中で就寝していたソウキが跳ね起きる。左上の鬼弦が震えている。テントに入ってきたアカネタカがソウキの頭を突いた。
ソウキはテント内に置いてあったディスクのケースを開け、ピンがいたるところに刺してある地図を取り出した。
ディスクが変形してソウキの手元へと来る。それを右手でキャッチしたソウキは鬼弦で解析を始めた。
「タカの5番ハズレ。残りは11枚。そう遠くには行ってないはずなんだがな・・・・・・。」
枕もとの目覚ましはまだ鳴っていない。キャンプへの帰還が午前1時。その後ぎりぎりまで探索を続け就寝したのが昼の12時。
そして今が午後3時だ。ソウキは青色のピンを地図上の1地点から抜いてケースの中のピン刺しに差すと、また束の間の睡眠時間に入った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」「だ〜れだ。」「・・・・・ごめん。今急いでるんだけど。・・・・・」
「まったく。雰囲気っていうか、ムードっていうか、そんなのぜんぜん分かってないのね剛って。」「・・・・・成美か。・・・」
男が大通りに入ると、剛もそれを追っていっていた。だが、ここで思いがけない人物と遭遇したことに剛は驚愕した。
「あの人つけてんでしょ?」「・・・・・えっ、違うよ。・・・・・」「ねぇ、どうして?もしかしてワケアリとかw。」
強引に話を進めてくる彼女のペースに剛も巻き込まれる。「・・・・・・・・・・・あの、ほら、1円玉・・・・・・・・・・・」
ソウキに似てるからつけた。と言うにしてもなにか変ではあるし、いちいち嘘を考えようとしても、それが浮かんでこないし、
というような自分の頭の中に咄嗟にあの1円玉が浮かんできたので彼は即座にその単語を口から出した。
「はっきりせんかい!!」「・・・・・ん〜と、とにかく、1円玉ネコババする人って珍しくない?面白いっていうか、奇妙っていうか。・・・・・」
後戻りができなくなった彼は事実を元に適当な理由をでっち上げた。確実に彼女からは変な奴だと思われているだろう。
これなら、ソウキに似てるからつけた。と言った方が幾分かましだったかもしれない。剛は自らの言動を呪った。
「さっすが、学年一の変人の剛!!それぐらいは言ってくれなくっちゃね〜w。私も付いてって良い?」
「・・・い、いいけど。・・・」「よし、じゃあ追跡作戦、開始ッ。」
成美の意外な答えに辟易しつつも、剛は心の中で狂喜し顔をぐっと引き締めながら成美と2人で男を追った。
261番外編「仮面ライダー剛鬼」四之巻:2006/02/05(日) 17:42:26 ID:JPs6F6Q00
モゥゥゥゥ
モゥゥゥゥ

ヤマアラシの鳴き声が響く。その声は若干高い。まだ成長しきってはいないようだ。
弥勒を数分走らせ声のほうへソウキは山を少し下る。先導していたアカネタカの動きが止まった。釈迦を止めると目の前の林の奥に
何かが動いているのが確認できた。それが林の奥の奥へと行くのを追っていくと、最終的に木々のあまり無い場所に出た。
その瞬間、ソウキをヤマアラシの針が襲った。すかさずソウキは鬼弦を引き側転してそれをかわし体を包んだ炎を払う。
送鬼への変身が完了した。
見たところヤマアラシの大きさは送鬼の体の2倍はあるかないかぐらいの比較的小さいもので成長も完全ではなかったが、
その背中を通常のヤマアラシの5倍はあろうかともおもわれる数の針が覆っており、攻撃力は申し分ないように思われた。
いくら撃っても減りそうも無いヤマアラシの針が送鬼を襲う。懐にさえ飛び込めば勝機はある。だが、その針が行く手を阻む。
突っ込んでいこうにも、いかんせん針の数が多すぎる。意を決した送鬼は飛んできたヤマアラシの針を2本キャッチしその内の一本に
炎を纏わせ、針の数が減って地肌が見え始めたヤマアラシの前面に向かい投げつけた。ヤマアラシにその針が刺さる。
苦しむもヤマアラシを尻目に針の発射が止まった一瞬の隙を見計らい、送鬼は極楽をセットした釈迦を右手に
先程の針を左手に持ち天高く跳び上がり、釈迦の弦を弾き、同じように手に持ったヤマアラシの針も弦のように弾いた。
それを見たヤマアラシも空中の送鬼目掛けてミサイルのように針を撃ち出した。
「究極音撃斬!! 『天地廻り』!!!・・・・・・・モドキ」
送鬼の体から発せられた清めの音が釈迦と針を伝わり音撃波となって襲い来るヤマアラシの針を次々に打ち落とした。
送鬼の「天地廻り」は『修羅』になっていない状態で繰り出され、しかも送鬼とその兄弟弟子の裁鬼の前で2人の師匠である
天鬼がほんの数回だけ強力な魔化魍たちに使用しただけだけのものを見よう見まねで送鬼が修行時代に習得したものであったが、
ヤマアラシの針を落とすのには十分すぎるほどの威力を発揮した。打ち落とした針とともに降下した送鬼が釈迦をヤマアラシに突き刺す。
「音撃斬・浄土送り!!!」
清めの音が流れると、辺りには落ち葉が舞った。
262番外編「仮面ライダー剛鬼」四之巻:2006/02/05(日) 17:52:20 ID:JPs6F6Q00
もう1時間は歩いただろうか。多分この近辺を一通り周ったのではあるまいかと思うほど歩いた。
八百屋の自販機の前で男がふと足を止めた。剛はこちらのほうを向くような動作に焦った。
しかし、男はまったくこちらに気付くこともなく自販機のつり銭レバーを回し「つり銭」のところに手をいれ
何も中に無いことを確認すると男はしゃがんで自販機の底を覗いた。
男は少しにやけた顔で底に手を入れると何かを掴んでまた歩き出した。剛たちは、その見事なまでに完成された一般的に
「つり銭チェック」と呼ばれる一連の男の動作に唖然としながらも追跡を続け、男が自販機から6mほど先の
うどん屋に入っていくのを確認した。男を追って剛たちもうどん屋の手前までやってくると中からあの男のものと思われる声と
初老の男と思われる声が聞こえてきた。
「おやっさ〜ん。俺の1円玉貯金箱知りません?店に置いてったはずなんですけど。」
「これのことか。でもな、お前いい加減ジャムのビンを貯金箱にするのは止めた方がいいと思うぞ。」
「何を言ってるんですか。バブル崩壊の真っ只中、こういうケチ精神こそが日本を救うんです。そう金銭にアバウトだから
 この『げんじろう』も儲けが少ないんですよ。おっ、それでは今日の収入を2枚ほどMy貯金箱に投入しましょうかねぇ。」
「収入って、その1円玉2枚何処で手に入れた?」
「何処って、道で拾ったに決まってるじゃないですか。まぁ町中歩いて2枚ですから今日の収入はボチボチですかね。」
「何がボチボチだよ。拾ったんならすぐ交番に届けて来い。」「1円玉ぐらいは別に交番に届けなくてもいいでしょうが。おやっさん。」
「バカヤロー!!!それがお前の正義か!!!1円だろうが100万円だろうが拾ったものは人のもの。交番に届けるのが筋ってもんだろうが!!
 早く交番へもって行け!!!!!!わかったか!!」「わわ、分かりましたよおやっさん。シシシシ失礼します。」
うどん屋の店先から先ほどの男がおびえたような顔で出てきて交番の方向へと走っていった。その後にさっきの初老の男が出てくる。
「ったく、マタタキの奴め。鍛えとらんと言うかなんと言うか・・・。やはり免許皆伝は早すぎたかもしれん。」
現われた男がさっきの怒鳴り声の持ち主だと思うと2人は恐怖した。
263番外編「仮面ライダー剛鬼」四之巻:2006/02/05(日) 17:57:09 ID:JPs6F6Q00
「お客様でしたか。どたばたしててすいません。どうぞ中へ。」剛と成美にそのおやっさんが話しかけた。
折角話しかけられたのだから断るのもなんだというよりは、さっき頑固親父の顔を見せたおやっさんが怖くて
しょうがなかった剛は成美と一緒に半ば無理矢理だったが、うどん処『げんじろう』へと入った。
幾つかある古い机とカウンター奥のほうにある調理場と壁にかけられたお品書きが、いかにも老舗のうどん屋という雰囲気を
醸し出していた。だが、そこには従業員以外の人気はなく『げんじろう』の現実をまざまざと見せつけられた。
「ご注文はなんでしょうか?」おやっさんが椅子に腰掛けた剛に聞いてきた。
「・・・・・・・・・ウーロン茶おネガ。」成美が剛の口を塞ぎ、彼に耳打ちする。
「折角うどん屋に来たんだから『味噌煮込みうどん』私の分と剛の分頼みなさいよ。」剛が小声で返す。
「・・・うどん2つなんて誰がお金払うんだよ。・・・」「もちろん剛に決まってるじゃない。女性におごってあげるのが男ってモンでしょ?」
「・・・・・そんな・・・・・。」「あら?払えないって言うの?」「・・・・・払いますよ・・・・・。」
剛は女性の理不尽さを身をもって感じた。
「ただいまー。おっ、剛じゃねーか。何で此処に。」ヤマアラシを退治し終えたソウキが『げんじろう』へと帰還した。
「剛って、この子知り合いなのか?」おやっさんが目を見開いて驚く。
「ええ、バケガニを退治したときに助けた子で、まぁ友達みたいなもんですね。」
「バケガニってお前まさか猛士のことばらしたりしてないだろうな?」
ソウキの顔が曇った。「まぁ、他言無用とは言ってあるので・・・・・・。」
「お前、柴崎の医者でこの子に猛士のこと詳しく話したろ?今日検査言った時にお前が中学生ぐらいの子供に『猛士』だとか『DA』だとか
 言ってるのを見たって先生に聞いたぞ。」
「あのー。それは・・・・・・・・・・・。まぁ、とにかく2人が分かり合えばいいんだから・・・・・。」

「2人とも『たけし』『たけし』って言ってるけど、名前『たけし』だったけ?剛って?」「・・・・・いや、違うけど・・・・・」
ソウキとおやっさんの口論を尻目に成美が場違いな質問をした。

つづく。
264次回予告:2006/02/05(日) 17:57:51 ID:JPs6F6Q00
「・・・・・鬼のサポーター。・・・・・」
「相手は多分オオニュウドウだ。」
「蝿叩鬼さんが魔化魍にやられたそうです。」

五之巻「揺れる山」
265名無しより愛をこめて:2006/02/05(日) 21:40:36 ID:l+opwXwO0
ちょとマテwwwwwww>蝿叩鬼
266名無しより愛をこめて:2006/02/05(日) 22:30:59 ID:j2weZV2d0
ある意味カコイイかも!
何か業を背負って「俺には名前なんて要らない、・・・ハエタタキで充分です!」
なんてな!
267名無しより愛をこめて:2006/02/05(日) 23:44:17 ID:0MltfsOB0
センセーショナルw
268名無しより愛をこめて:2006/02/06(月) 00:51:48 ID:VUi4Wbo4O
こりゃきっといそうだなw
管使いの鬼・扇風鬼ww
269名無しより愛をこめて:2006/02/06(月) 01:59:45 ID:VnnHjK8c0
乾燥鬼とか?w
270響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第八話:2006/02/06(月) 10:03:08 ID:FdJMb/nk0
第八話 進化する弟子
「へえ、そんな事があったのか?」
ヤマアラシを見つけに来たヒビキと京介はベースキャンプを作りながら、
以前あった高校生との出来事を話していた。
「本当に成長しない奴らで困りますよ。」
「まあ、そういう奴もいるってことだな。」
ベースキャンプが一通り組みあがると、京介はディスクアニマルのケースを開き、
綺麗に並んでいるディスクを音叉で撫でた。
ディスクは次々に色と形を変え、様々な方向に散る。
「ヤマアラシって本当は弦が担当するんじゃないんですか?」
「まあ、そうなんだけどな、
この時期は針が成長しきってないからさ、太鼓の鬼でも充分通用するんだよ。」
京介はカセットコンロの火を起こし、お湯を沸かし始めた。
ふと気付くと川原に一般の人がちらほらいることに気がついた。
「まだ、夏になってないのに人が多いですね。」
「キャンプするのにちょうどいいぐらいの季節なんじゃないのか?」
「ちょっと危険ですかね?」
「まあ、山奥の方にいるはずだから平気だろう。」「そうですか…。」
ちょっと嫌な感じはしたが、ひとまず京介は薪を集めに森の中に入って行く。
271響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第八話:2006/02/06(月) 10:05:04 ID:FdJMb/nk0
空は晴れていたが森の中は暗かった。
昨日の夜に雨が降った為、使えそうな薪はなかったが、
それでも使えそうなものを何本か拾い集めた。
「こんなもんかな、帰るか。」あきらめて帰ろうかと思った時、不気味な気配を感じた。
振り向くとヤマアラシの童子と姫が背後に立っていた。
「鬼か…。」童子は京介に向かって言った。
「まだだけどな。」京介は持っていた薪をすてると、すばやく左手に音撃棒を構えた。
そして右手で鬼円を数個握り締め、腰の辺りからすばやく指ではじいた。
指から放たれた鬼円は、一瞬の内に姫の額を直撃する。
反応すらできなかった姫は額を抑えてうずくまる。
それに気を取られた童子の腹を京介は音撃棒で叩く、そして返す刀で今度は、下がってきた頭部を打つ、
そして回転して足払いで童子を転ばせ、追い討ちをかけるように童子に京介は飛び掛る。
しかし、すでに立ち直った姫にとび蹴りをくらい京介は飛ばされた。
272響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第八話:2006/02/06(月) 10:06:08 ID:FdJMb/nk0
二回転ほど転がされたがすぐに体制を整え、起き上がりを狙ってきた姫の腹に一発叩き込む。
そして京介は回転して、裏拳で姫の顔を狙う。だが、姫は京介の拳を捕まえた。
すかさず、京介は薬指と小指で挟んだ鬼円を飛ばす、しかし、わずかにあった距離が姫に避ける時間を与えた。
姫は顔をそらして、鬼円を避けた。だが、京介の攻撃は二段階だった。
反らしきった顔面に人差し指と中指で挟んだ鬼円を力いっぱい投げる。
鬼円は見事に命中して、姫は頭から砕け散った。
「やった!」しかし、京介は油断し、童子がいること一瞬忘れてしまう。
背後から京介は吹き飛ばされた。
音撃棒と鬼円のホルダーは別々の方向に京介から離れていく。
「しまった!油断した!」すかさずもう一つの音撃棒に手を伸ばす。
だが、目の前で童子は炎上した。
「大丈夫か!」ヒビキが駆けつけてきたのだった。
「ありがとうございます。」ヒビキは京介を引き起こした。
「すごいな、姫を一体倒したのか。」
「作戦がうまくいきました。あいつらでも油断するんですね。」
「そうだな、でも、相手に油断させる作戦は危険だな。」
「そうですね。もう中間距離の技が必要です。」
飛び散ったホルダーと音撃棒を回収する京介に明らかな進化をヒビキは感じ取っていた。
次回 助ける理由(仮)
273皇城の守護鬼:2006/02/06(月) 17:31:59 ID:ZWY3ZuJi0
『皇城の守護鬼』 一之巻「飛沫く鬼」


  壱、

 HONDAスーパーCUB50スタンダードが初夏の風を切って走って行く。
 身長150cmそこそこ、TシャツとGパン姿の小男がまたがっている。

 東京都中央区。

 新大橋通りを汐留方面に向かって上ってゆく。左手に聳え立つ本願寺のインド様式を横
目に築地四丁目交差点の黄色信号をぶっちぎり、次の市場橋交差点で赤信号につかまって
停車すると、セミオートのギアをニュートラルに戻して──フリーザー搭載長距離トレー
ラーの排ガスと輻射熱を存分に浴びながら──青信号を待った。
 大量の汗が胸元を伝い落ちてゆく。肌に張り付いたシャツとトランクスの感触にうんざ
りしながら交差点を行き交う仕入れ客や一見客の流れをぼぅっと見送る。
 築地場外売り場の入り口、一方通行の狭い道路を老若男女の買い物客、場外店舗の店員、
乗用車、トラック、ターレット──正式名をターレット式構内運搬車と言い、台車の親分
のような姿をした三輪車両だ。乗り心地などというやわな言葉とはまったく無縁の、実用
一辺倒の代物だ。前輪上部の円筒形のボディ内にエンジンと燃料タンクがあり、そのボディ
上部全周にハンドルがある。この部分がこの奇妙な特殊車両の名前の由来で、ハンドルは
円筒ごと三六〇度回転し、狭い通路でもほぼ直角に曲がることが出来る構造をしている─
─が、入り乱れ、のろのろと青信号の向こうへと吐き出されてゆく。
 初夏ともなると、ここ築地の暑さは半端ではない。
 バイクで風をきって走っているのにちっとも涼しくない。むしろ熱い。熱風だ。
 まだ七時前だというのに、無駄に張り切る太陽にこんがりと焼き上げられたアスファル
ト──大型輸送車に苛め抜かれて表面積が普通より多い──。大型車両の発するエンジン
音とコンテナ部分の照り返し。人いきれと喧騒。街路樹の柳が、ときおり熱風にあおられ
て揺れ動く様がまた、余計に暑さをかき立てる。
 市場の敷地の東端に立てられたビルに書かれた「中央冷凍」の文字が、これでもかとい
うくらい嫌味に見えた。
274皇城の守護鬼:2006/02/06(月) 17:32:29 ID:ZWY3ZuJi0
 そら変わるぞと警告を発する歩行者信号を視界の端に捕らえながら、左足のギアを一段
踏み込むと、程なくして進行方向の表示が進めの合図を点灯する。 
 瞬間、真後ろにいた東京無線がいらだたしげにクラクションを鳴らした。
「るせえ、バカヤロウ!1秒も待てねえのか!」
 振り向きざま、不遜な顔をした運転手に、イライラしてるのはてめえだけじゃねえんだ
よとばかり、たっぷり3秒かけてガンをくれてやる。当然のことながらそいつ以外からも
抗議の合唱を背中に浴びる羽目になったが意に介す風でなく、逆にわざとゆっくり発進し
てやった。

 だーめだ。仕事やる気しねぇ。
 
 男──江川大介は暑さでとろけかけた脳みその奥でつぶやいた。

 月島あたりでサボるか。

 横断歩道を渡ってゆく中国人観光客の間をぬい、市場正門を通過しながら考える。

 今日最後の配達先が文明堂だから埠頭あたりがちょうどいい。
 ほかの連中の配達ルートからも外れているから後からばれて咎められる心配はない。
 うん、そうしよう。そうと決まればさっさとやること済ませてしまおう。
 
 勝手に決め込んだ。

 滞りがちな車の流れにさらなるイライラを募らせながらアクセルを吹かすとターレット
を3台、ごぼう抜きに抜き去りさらに路線バスを追い越した。
 隅田川から潮風に乗って漂ってくる怪しげな気配に、江川は気づくことはなかった。

275皇城の守護鬼:2006/02/06(月) 17:33:20 ID:ZWY3ZuJi0
 築地中央市場。

 総面積約23ヘクタール。日本最古の歴史を持ち、十の卸業者と約一千の仲卸により、
水産物・農産物のせりが行われる総合市場。『魚河岸』の二つ名は伊達ではなく水産物の
取扱量は日本一を誇る。
 築地市場の愛称で親しまれてるこの市場は、いまや都心部の流通を担うだけに留まらず
観光地としても中央区の経済をささえ、東京のみならず日本を代表する市場へと成長を遂
げている。
 戦後直ぐに立て直された魚市場の棟は現在も当時そのままを保ち、そこを基に増改修を
繰り返すことで現在の概観を成すようになった。
 南東を隅田川、南西を築地川に囲まれた旧海軍省所有地に立地し、北東から北西に走る
新大橋通りをはさんで右手に国立ガンセンター、左手に朝日新聞社を望む位置に市場正門
がある。正門を通り右手に青果卸、左手に魚河岸横丁を見ながら三階建ての駐車場をくぐっ
て場内へ抜けると旧時計台通りにでる。通りとはいうものの少々広めの駐車場というとしっ
くりくる。
 その正面に、大小さまざまのトラックひしめく魚類買荷荷受所、通称「茶屋」があり(
市場内外からの中卸、納め屋からここに集められた荷物は市場と契約を結ぶ運送業者によっ
て都内および近県に配送される)、更にその奥が魚中卸、第一大路を越え隅田川に接岸し
て水産物卸である。
 その一角。
 魚卸、第一大路から内へ二十米ほど入ったあたりに『魚重』と言う仲卸がある。市場が
まだ日本橋魚河岸と呼ばれていたころから代々続く由緒正しい──零細企業だ。
 魚卸は市場内での配置取りがその店の売り上げを大きく左右する。大通りに近いほうが
売り上げがあがるのだが、当然入り組んだ通路の奥にある店もあれば大外にある店もある。
その不公平をなくすため数年ごとに大引越しを行う恒例がある。引越し後の配置決めはく
じ引きで行われ(最近では二〇〇四年に行われた)抽選は初春、移動は市場の機能上、ゴー
ルデンウイークの一日だけを狙って一斉に行われるのだ。
276皇城の守護鬼:2006/02/06(月) 17:34:40 ID:ZWY3ZuJi0
 魚重はまったくもってくじ運に恵まれていないようで、築地市場が出来て以来九十余年、
一度も大通り付近を取れたことが無い。
 曰く──

 今までが運が悪すぎたんだ。この代替わりによって少しでも風が変われば。

 曲がりなりにも四百年近く、店を切り盛りしてきた先代たちに対してえらい言いようだ。

 曰く──

 新社長、次こそは大路に面した場所を引いてくださいね。
 一円でも売り上げが上がりますように。

 曰く──

 よーし、これで我が社の未来は明くなる!

 零細企業の切実な願い。
 裏を返せばまったく持って根拠の無い単なる希望的観測。
  
 魚重は社長・事務員を含めて社員五人の有限会社である。
 この規模の中卸としては大体平均的な社員数なのだが、営業と経営に差しさわりの無い
ぎりぎりの人数でもあるのだ。
 その貴重な社員が今日、二人いっぺんに辞めようとしていた。社長とバイト──被雇用
者と雇用者。会社のヒエラルキーでは対極の立場の二人である。
 そのヒエラルキーの底辺側の人間が店の二階の控え室にいた。
277皇城の守護鬼:2006/02/06(月) 17:39:19 ID:ZWY3ZuJi0
 四間四方、天井の低い屋根裏は、壁に染み付いたヤニの匂いと、全開の換気窓から流れ
込む魚臭でむせかえっていた。
 天日で焼かれた鉄の屋根は、蓄えた熱をむき出しの鉄骨に伝導し室内はさながらオーブ
ンのごとく。ボディの黄ばんだ扇風機が天井からぶら下がり、この仕事は誰にも渡すもの
かとばかりに四枚羽をぶん回し懸命に首を振っているが、偉大なる太陽の恵みとヒートア
イランド現象(主に後者)に対しては所詮は蟷螂の鎌。正にドン・キホーテの風車。加え
て、年代モノのモーターは彼が釈迦力になればなるほど輻射熱を増し、室温を引き上げて
いる様は哀愁を誘う。
 居住性とか快適さなどという言葉は半世紀前に捨ててきたような空間に、錆の浮いた数
数人分のロッカーがすえてある。
 その対面に所狭しと積み上げられたダンボールは保存義務期間をとうに過ぎた書類束で、
それに混じって数種類の梱包材。その他雑多なもの。もう名前も覚えていないAV女優が、
斜めの天井に貼られたカレンダーの中から媚びた笑みで男を見下ろしている。年代を表す
数字は一九九一とあった。 
 ──いつの思い出だよ。
 汗だくの体から五年間着古したウエットスーツを剥ぎ取り、鉢巻替わりのタオル、生臭
い匂いの染み付いたGパンをナップザックにねじ込んで、パンツイッチョの男が苦笑した。
 一八○を少し越える肉体は素晴らしい肉(しし)置きをしていた。
 魚市場の人間は江戸っ子が多い。長じて祭り好きの神輿担ぎも多く、人並み以上の体格
をしている者が少なくない。
 だが、青年のそれはそういった規格を大きく超えていた。
 肩から前腕に掛けてのラインは隆々と、大きさの違う鞠を三つ繋ぎ合わせたよう。
 胸板はブ厚く鳩胸。左の肩から袈裟懸けにはしる古く大きな傷跡。せり出して丸い腹は
弛んでいる風はなく強靭な筋幕が覆う。樹の幹のような脚を大臀筋が繋ぎ、そこから続く
後背筋は見事な逆三角形を描いていた。
 全身を覆う脂肪は多すぎず少なすぎず、絶妙のバランスである。
 質量は百キロを優に上回っているだろう。
 一介の仲買いごときの、ましてやアルバイトレベルの人間の持ちうる身体ではありえな
い。
278皇城の守護鬼:2006/02/06(月) 17:40:11 ID:ZWY3ZuJi0
 明確な目的を持って鍛錬された肉体。
 戦闘をするために造られた筋肉。
 それはまるで古代の力士、相撲人(すまいびと)を思い起こさせた。
 ロッカーの扉の裏側にとり付けたエチケットミラーを背をかがめて覗き込むと、愛嬌の
ある丸顔が写った。丸い目。厚い唇。太く濃い眉。丸い鼻。体つきに似合わず結構幼く見
える。
 短く刈り込んだ金髪を後ろになでつけて整えると、ミラーを取り外そうとして、やめた。
 ロッカーの中身は昨日全て処分した。もともと仕事着以外は、雨が降ったときに使う合
羽と着替えくらいしか入っていなかったから苦にもならなかった。 
 頭を天井にぶつけそうになりながら、築地─丸に魚の字─魚重とロゴの入ったタオルで
汗をふき取り始める。
 ふき取るそばから滲み出す汗とのいたちごっこに一分ほど掛かって漸く気がつき、ため
息を一つ、着替えのTシャツを頭から引っかぶる。キングサイズの布地でももてあます大
きな背中に汗の斑点を背負いながら、ゆったりとしたカーキ色のカーゴパンツにぶっとい
脚を押し込み押し込み、これまた大きなワークブーツに足を突っ込んだ。意外と器用な手
つきですばやくブーツを編み上げると、見慣れぬアクセサリー──ホルダーに止められた
三枚の銀板をベルトに取り付け、
「おしゃ!」
 諸手で頬を張りロッカーを閉め、ザックを担ぎ上げて急な傾斜の階段を下った。
279皇城の守護鬼:2006/02/06(月) 17:41:39 ID:ZWY3ZuJi0
「重さん、まだいたのかよ」
 頭髪の残骸を頂いた五十がらみの中卸が、錆だらけのターレットの上から大声を張り上
げた。素肌にゴム製ロングエプロン、短パン・ゴム長履きと市場ではよく見かける格好で、
大人二人が漸くすれ違える程度しかない通路を器用にすり抜けながら魚重脇に乗り付ける。
「なんだぁ?爺ぃ一人追い出したところで、てめぇんとこの売り上げが上がるわけじゃね
ぇだろう」
 狭い店舗の片隅。壊れかけの折りたたみ椅子に窮屈そうに尻をねじ込んだ格好で、白木
重蔵は怒鳴り返した。こちらはヒエラルキーの頂点…だった人間だ。御歳とって五十五歳。
世間一般で言うところの定年退職である。
 中卸しという職業、社長といえばほとんど自営業近いわけであるから定年などというも
のは実質無きに等しい。働きたいだけ働いてやめたいときにやめるというのが慣例のよう
になっている。であるから六十・七十でまだ現役なんてのはざらだし、逆に定年になった
からといってすぐにやめてしまうことのほうが少ない。だから、腰を壊したのを期に、と
いうもっともらしい退職理由をつけた。
「鮮魚屋が店先に干物並べてたんじゃ、都合悪いんじゃねえかと思ってよぅ」
 ちがいねぇ、と買い物客を含めた周りじゅうが爆笑した。
「親方は干物じゃないっすよ。活蛸ですよね」
 狭く急な階段を下って、先ほどの青年がこれまた窮屈そうに姿を現した。
 再び笑いが巻き起こった。
「おう、史郎。いくべぇか」
 きれいに剃りあげた頭をぴしゃりと一つ。苦笑いする。
 ゆるり。
 立ち上がった体躯は、史郎と呼ばれた青年に匹敵する圧力を持っていた。歳相応、多少
たるんではいるものの、その身のこなしから衰えはあまり無いように思える。日に焼けて
赤銅色の肌。重蔵のほうがやや背が低いか。好々爺然とした顔には深い皺が刻まれている。
史郎が上手に歳をとったらこんな感じになるのかもしれない。
「ほら。お父さんも志村君も、準備が出来たらさっさと出てくださいね。狭いんだから」
 たった今お客を送り出した男が神経質そうに振り向いた。重蔵に良く似た目が、ふちな
し眼鏡の奥で非難がましくこちらを睨んでいる。
280皇城の守護鬼:2006/02/06(月) 17:42:10 ID:ZWY3ZuJi0
 お世話になりました、と青年──志村史郎が慌てて頭を下げた。
「どうもお疲れ様」と男は返した。重蔵の息子で魚重の新社長、白木重美である。
「まあそういうな、重美。最後になんか手伝おうか?」
「結構です。せっかく定年なんですから、好きなことにでもやりたいことにでも集中して
ください。さあ、行った行った」
 しっしっと追っ払う。「ただでさえ忙しい時期にやめられて迷惑しているのに、この上
狭い店内に居座られたんじゃ営業妨害もはなはだしいというものです」
「オオコワ。判ったよ。じゃあな、後は任せたぜ社長?」
 反撃に、ことさら「社長」を強調してやる。そして一瞬だけ寂しげな表情を浮かべると、
よく似た体格の(元)バイト共々、のしのしと場外へ向かって歩き出した。その後ろ姿を
重美は無言で見送った。その目はもう先ほどの非難がまし気な目ではなく、どこかうらや
ましそうな眼差しだった。ずきり、と右の胸が痛んだ気がして手を添えた。
281皇城の守護鬼:2006/02/06(月) 17:42:52 ID:ZWY3ZuJi0

 七時半を回っていよいよ本格的な夏の日差しを投げつけ始める太陽。発泡スチロールの
屑を巻き上げながら吹き抜ける、生臭さと微かな潮の香りの入り混じった風。さまざまな
車両のあげる轟音の中、巨体を聳やかしながら進む二人とすれ違うたび、一般客の足が止
まる。あいつどっかで見たことあるな。俺知ってるよ、何とかってプロレスラーだ。ああ
そうか。そういえばこないだテレビに出てたっけ。
 適当だなぁと、と史郎は思った。もういい加減なれた反応ではあったが。
「親方」
 波除神社の前を通り過ぎたあたりで、史郎がぶっきらぼうに切り出した。
「重美さん、ちょっときつくないスか…失礼なようですけど」
 重蔵がちょっと困った顔つきをする。 
「あ〜〜……あれな。あいつなりに気を使ってくれてるのさ。『こっちの仕事は引き受け
た。親父は気兼ねしないでお勤めに精を出せ』ってな。だから、『後は任せたぜ』なのさ」
「そんなもんスか?」
「そんなもんスよ」
 そういう風にとっていいんだよな?うん。と自問自答。史郎は納得していないようで、
鹿爪らしい顔でうんうんうなっている。
「昔色々あってな。お互いまだちぃっと気まずさが残ってんのさぁ。
 まあ、気にしてくれてありがとよ。でもな、こいつは俺ら親子の問題だ。おめえがそん
なに悩むこっちゃねえのさ」史郎のでかい背中をごつい手でばんばん叩いた。
「そんなもんスか」
「そんなもんスよ。……それにしても漸く独り立ちまでこぎつけたな。何年掛かった」
「五年スね。」長いようで短かったな、と重蔵は遠い目をした。
「俺にとっちゃ地獄の五年だったっスけどね」
282皇城の…の中身の人:2006/02/06(月) 17:50:35 ID:ZWY3ZuJi0
 遅まきながら続きであります。皆様どうぞお読みくださいませ。
 わたくしの話は少々飛んだソース(設定)を加えておりますれば、
映画版とでもお考えくださいまし。
 「7人の戦鬼」よろしく時代劇テイストを絡めておりますが、なるた
け整合性を保って書き綴ってゆくつもりです。
 よろしくお付き合いお願いいたします。
283名無しより愛をこめて:2006/02/06(月) 22:29:35 ID:5iu9KLkE0
>>266
朽咲鬼とか鏝裂鬼とか侍暴次鬼とかはもっとネガティブ
284響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」番外編:2006/02/07(火) 09:41:20 ID:yNpLtVnz0
200X年 ときわ荘 202号室にて−
「こんばんは」バンキが言うと、すぐにダンキはドアをあける。
「おう、まあ入れ、そして座れ。」ダンキはまとめていった。
「なんすか話って?」
「ああ、来週のサバキさんの家でのパーティーだけどな、また、アレやるぞ。」
「え?オニエンタルラジオですか?」「ああ。」「えー!もうやりたくないですよ。」
「前回の番外編が好評だったからな。また、やろうって事さ。」
「そんなのエイキさんとやってくださいよ。」
「あいつとは笑いの方向性が違うんだよ。」
「だからってなんで俺が…。」「しょうがないだろ、作者が決めたんだ!」
自分ではどうしよもないと思って、バンキはあきらめた。
「実話はドン引きするから、だめですよ。」「大丈夫、ちゃんとネタを用意したさ。」
リズムに乗って練習を開始する二人。
285響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」番外編:2006/02/07(火) 09:42:34 ID:yNpLtVnz0
玉ねぎ引っ張りネギにする!すごい!もっと伸ばしてニラにした!
武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。レツゴー!
非常ベルでピンポンダッシュ!すごい!ある意味、自分が非常事態!
武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。レツゴー!
勇気を出して王で王手!すごい!男らしいけど、ただのバカ!
武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。レツゴー!
アイドルの追っかけやってみた!すごい!石川以外の名前を知らない
美勇伝!美勇伝!美勇でんでんででんでん!チャーミー!
男だったらチョンマゲ!着物!すごい!白塗りにしたらバカ殿になった!
志村けん!志村けん!志村けんけんけけんけん!アッイーン!

弾ちゃんかっこいぃ…。バンキは泣いていた。
「すでに響鬼のネタでもなんでもないじゃないですか!」
「うるせぇ!せっかく考えたのに!」
「もうやだ!やめてやるぅぅぅぅ!」
「あ!まて!」バンキは泣きながら逃げ出した。
「まいったな…相方がいない…。」困り果てるダンキ。
そして気付いた。「お!いいのがいるじゃねえか!」

−そしてサバキのホームパーティーにて−

武勇伝、武勇伝、武勇でんでんででんでん。レツゴー!

そこにはリョクオオザルとコンビを組み、爆笑王となってるダンキの姿があった。
俺の代わりがディスクアニマル…、しかも、爆笑…。
バンキは悲しくなった。END
286名無しより愛をこめて:2006/02/07(火) 10:19:52 ID:4NQ5iJj30
皇城の守護鬼続きキター!乙です!
なんかこれから楽しみな感じっすね!
287名無しより愛をこめて:2006/02/07(火) 16:09:39 ID:34Gm3D8/0
>>285
前作も今作も、ダンキさんのネタは面白かった
爆笑取れて良かった良かった
288裁鬼メインストーリー作者:2006/02/07(火) 19:12:40 ID:icAdq6J8O
先程、鋭鬼スレで、鋭鬼作者さんと狂鬼作者さんのレスを読みました。

3ヵ月前。
前スレに、思い付きと行き当たりばったりで書き込んだ裁鬼一話ですが、『石割の方が強いんじゃね?』と、ツッコミを期待していたら、返ってきたレスは『職人登場』……
エエッ? と思いながらも二話を書き込む自分に呆れていると、中々の好印象。それならばと……
『閻魔』なのに『極楽』って何故?
石割がカッパにやられた裁鬼をフォローしたっていうけど、何者?
あの玩具ギター、どう使うの? 
……等の疑問を、無理矢理解決しただけの駄文が、まさか此処まで支持されるとは思ってませんでした。
更に、強引に作った女性鬼・吹雪鬼を鋭鬼に絡め、重厚な設定を作り上げた鋭鬼作者さんが登場。
闘鬼や剛鬼の話も書き込まれ、蛮鬼の今更な設定に慌てふためき、どうせなら未消化設定絡めるかと欲を出し……
『テレビはナマモノ、基の話が終わってからやられキャラを書いてもなぁ……』
と、本編のペースに合わせるつもりが正月休みを蛮鬼話に費やしてしまい、焦って3連休に四十四〜最終話を書き込みました。響鬼最終話は徹夜明けで試聴。
……よくもまぁ、こんなスカスカな話を書けたなぁと自嘲しつつスレッドを見ると、『感動』の文字。
当方の後先考えない莫大な書き込みで前スレが容量の限界に達しても、このスレッドが誕生し、大勢の作者さんがそれぞれの『響鬼愛』でストーリーを紡がれているのが現状です。
前置きが長くなりましたが、お知らせです。

また、裁鬼の話を書き込みます。

スレッド名にある鬼の話が無いのも(考えてみますと)不自然ですし、その責任は当方に有ります。
そして、前スレッドに御感想を書き込んでくれた方々、此処を『裁鬼達が主人公のストーリーを作るスレ』に進化してくれた作者さん達への『お返し』に、裁鬼を主人公にした駄文に、決着を用意しました。
これまでの裁鬼メインストーリーとは全く違った内容となりますが、御目汚しご容赦下さい。

では…… ↓
289予告:2006/02/07(火) 19:15:07 ID:icAdq6J8O
2011年――

真夜中。渓谷に架かる吊橋を、激しい暴風と豪雨が揺らしている。
2つの影が、足場を更に不安定にさせながら、打撃と斬撃を交差させていた。
雷。
稲光。
長剣を携えている武者童子は、雨に濡れる硬質的な顔に有る口腔の闇を三日月型にしている。
弱った獲物であるもう一つの影は斬撃を躱すが、避けた剣は橋を支える縄を切り裂いた。
雷光が、空中で分解しながら墜ちる橋と、2つの影を照らした。
木片に続き、無言のまま墜ちてゆく武者童子と―― 音撃双弦。そして裁鬼……

裁鬼メインストーリーの過去と未来。かつての笑顔も幸せも、残されていない……
有るものは、許されない結末。 深き絶望。 唯一思い出す鬼への道。
そして、冷たい最後――

裁鬼メインストーリー最終章 『零之巻、斃之巻』 全十回予定。

一之章『雨の街』
近日、連載開始。
290名無しより愛をこめて:2006/02/07(火) 20:35:34 ID:HjAC7rFe0
 うわあ。裁鬼メインストーリー最終章楽しみです。
本編最終回直前にここを知り、本当に心を癒されました。
 皆さん、設定や土地勘、バトル、物語どれも素晴らしいので
どきどきしたり笑ったり読まさせていただいております。
 こちらの皆様に刺激を受けて、お目汚しですが
私も明日夢の夢オチで『仮面ライダー天邪鬼』
今週か来週に投稿させていただきたいなと思います。
291名無しより愛をこめて:2006/02/07(火) 20:44:35 ID:/WfF8EpaO
裁鬼職人さん復活ですね。楽しみにしてます。

それにしても、いろんなSSがあるのに
どれもちゃんと読ませるのがスゴいね、このスレ。
292皇城の守護:2006/02/07(火) 20:58:52 ID:Q0i83Kce0
  弐、

 志村史郎が白木重蔵と始めて出会ったのは五年前、営団地下鉄東西線のホームだった。


 真っ暗闇の中、史郎は蒸し暑さで目を覚ました。
 身体のあちこちがずきずき痛む。口の中は鉄の味がした。
 自分はどうやら立ったままの姿勢らしい。

 ──ここ、どこだ?

 ぼうっとした頭で記憶を掘り起こしてみる。
 確か道路工事のバイト帰り、友人と新橋で飲んでいたはずだった。終電近く、山手線か
ら東西線まで全力疾走して──あれはやめたほうが良かったな。危うく階段でリバースす
るところだった──それから…トイレで吐こうと思ったら、前で酔っ払いに絡まれてる女
の人がいて──。

「嫌がってるじゃないスか。やめてあげてください。」
 絡んでいるのは二十代くらいの若者三人組みだった。自分よりいくらか年上か。今風に
ピアスやアクセサリーをジャラジャラさせたストリートファッションをしている。絡まれ
ているほうはスーツを着ていることから、どうやら新橋あたりのOLのようだ。
「関係ねぇだろ?!」
「無いこと無いス」
「なんだ?お前ぇ知り合いか?!」
「ちがうっス」
293皇城の守護:2006/02/07(火) 21:02:05 ID:Q0i83Kce0
 お定まりの台詞。ろれつが回っていない。相当飲んでいるようだ。そのことに関しては
人のことは言えないが。
 体格では三人組の誰よりも史郎のほうが勝っていた。しかし数と酔いに任せてか、皆か
なり強気であった。ひとりは自分の目線くらいの高さにある史郎の胸倉を掴み、いきまい
ている。
 とりあえずこの隙に──OLを見れば、二十米先のホームへと続く階段を、今まさに駆
け下りんとするところであった。
 よかった。
 自らのおかれている立場にそぐわない場違いな台詞。助けに入ったにもかかわらず見捨
てられたことはどうでもいいらしい。
 構内アナウンスが独特の調子で西葛西方面への最終電車であることを告げていた。

 あ、しまった。俺もこれに乗らなきゃいけなかったんだ。どうやって帰ろう。
 明日は休みだし、歩いて帰ってもいいか。

 とっさにそんなことを考えた。
「聞いてんのかよ?!」
 史郎の無反応にじれたか、女に逃げられた腹いせか三人組の怒声に凄みが増した。それ
に答えた「あ、スンマセン。聞いてませんでした」という史郎の台詞がまたさらに怒りを
煽ったらしい。よく聞き取れない罵声を吐きかけながらトイレへ連れ込まれ、暴行が始まっ
た。
 喧嘩をしたことが無いわけでもない。それにこの体格だ、やり始めたら弱いというわけ
でもない。
 ただ、今日は酔いが回りすぎていた。これから袋叩きにされるというのは莫迦でも判る。
だが身体がだるい。応戦するのが面倒くさい。何より思考が働かない。殴られるかもしれ
ないが、多分死ぬことは無いだろう。
 考えているうちにボディに一発もらった。
 しらふの時だったらなんでもなかったであろうレベルの打撃だが、思いのほか効いた。
 膝を折る。それでも応戦する気はわいてこなかった。
294皇城の守護:2006/02/07(火) 21:03:19 ID:Q0i83Kce0
 一人の膝が顔面を捉えた。鼻腔内を生暖かい液体が伝わり下りてくる感覚。謝ったら許
してもらえるだろうか?
「スンマセン、悪気は無かったんス。勘弁してください」鼻を押さえながら呻いた。
「おらぁ終わりじゃねえぞ!」
 貧困な語彙に辟易とする。この手の人種の口から出る言葉はあまり変わり映えがしない。
 図体の割りに弱気な反応に増長したか三人掛かりで立たせ、代わるがわる殴りはじめた。
四順ほどして崩れ落ちたところへ三方から蹴りの雨が注いだ。

 二○発までは覚えている。
 
 ──あのまま気絶しちまったのか。
 身体の周りに色々なものが触れる。どうやらトイレの清掃用具入れに詰め込まれている
らしい。死んだと勘違いされて詰め込まれたか。トイレの用具入れが棺桶ではぞっとしな
い。頭の上に左腕を感じ、その格好のまま腕時計の文字盤を覗き込んだ。デジタル表示は
深夜二時を表示していた。やっぱりGショックにしてよかった、などとのんきなことを考
えた。
 意識が戻ったとたん、息苦しくなってきた。
 全身汗だくだ。
 その汗がいやな冷たさに変わり、心臓が早鐘を打ちはじめる。
 意識が遠のきかけた。
 ここでまた意識が途切れたら、もう眼を覚ませないかもしれない。

 このままではまずい。

 きしむ身体に鞭打って狭すぎる個室から何とか脱出を試みることにする。暫く藻掻いて
いるとやがて、雑多な物とともに外に転がり出ることが出来た。
 足元に散乱した道具を蹴散らし蹴散らし、トイレからよろよろと通路へまろび出たとこ
ろで、段差で足がもつれ、床に倒れこんでしまう。
 湿度が高いのか空気が身体にまとわりついてくるような感じがした。
295皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:06:08 ID:Q0i83Kce0
 動悸が治まるのを待って仰向けになった。床の冷たさが心地いい。
 終電時間もとうに過ぎ、最低限の照明でのみ照らされた深夜の通路は仄暗く不気味で、
地下墓地──生まれてこの方そんなものは見たことが無かったが──を連想させた。
 暫く仰向けのままで暫く喘いでいたが、無人とはいえ通路の真ん中に寝ているのも何か
落ち着かない気がして、身体の故障を確認しながらホームを目指すことにした。
 ゆっくりと立ち上がる。
 腰はなんとか立つ。息をするたび脇腹が痛むがアバラは折れてはいないようだ。
 腕も問題なく動く。
 左脚を引きずるが力は入る。これも捻挫程度で済んでいるだろう。しかし、身体を壁に
預けながら歩くことしか出来ない。
 顔中が熱を持っていた。右目が開かない。さっき洗面台の鏡で確認してみればよかった
か。相当腫れているようだが、まあ、もとより気にするような整った造りをしているわけ
ではない。
 舌で内側から歯を触ってみたが一応全部そろっている。
 鼻血ももう止っているようだ。
 ただ、シャツの胸周りの布地が血でへばりついていて気持ちが悪かった。
 一〇メートルがえらく長く感じられた。進むのに五分くらいかかる。酔っていて箍が外
れたか、もともと加減というものを知らない奴等のか、相当な暴行を加えられたようだ。
大きく頑丈な身体が幸いしたか。史郎でなければ死んでいたかもしれない。やはり少しく
らい抵抗しておくべきだったか。
 手すりを使って苦労して階段を降りてみると、構内は完全に照明が落とされていて更に
暗かった。眼が闇に慣れるのを待たずに手探りで進み、漸く一番近いベンチを探り当て重
い身を横たえた。
 ゆるゆると空気が流動していた。トンネルの向こうから流れてくるのだろう。ここも蒸
し暑いが用具入れの中に比べればましだ。
 向こうに非常口の明かりが見える。
 あの女性(ひと)は終電に乗れたかな。
 裏切られたにもかかわらず安否を気遣った。四年前に嫁いだ姉にどこか似ていて、なん
となく放って置けなかったのだ。
 苦笑。
296皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:07:34 ID:Q0i83Kce0
 自分でも可笑しいと思うが仕方が無い。そういう性分に生まれついてしまったのだから。
 地下鉄のダクトの上を通ってゆく車の音が、遥か遠くで聞こえていた。
 此処は大手町駅だから上を通っているのは日比谷通りか。
 振動、小刻みに。だんだん大きく。
 大型車両でも通ったか。皇居のあたりで大規模な工事でもあるのだろうか……いや違う。
いくらなんでもこんなところにまで地上の振動が伝わってくるはずが無い。
 そこまで考えた時、左手の換気ダクトの奥で大きな音がした。何事かと半身を起こし、
確認しようとする。

 刹那。

 ダクトのフェンスをぶち破り黒い塊が飛び出した。「こんちくしょーっ!」の声勇まし
くプラットホームで大きくバウンドすると、あわやホームの縁ぎりぎりで静止し、今しが
た飛び出してきた方向に立ち膝で向き直った。

 どぉおんっ!

 先ほどより更に大きな音。そして振動。何か落下してきたのか?ぽっかり口をあけた通
風孔から、非常口の薄明かりに透かして、埃がもうもうと舞い上がるのが見える。その埃を
巻き、闇の最奥より何かがにじり出した。
297皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:10:30 ID:Q0i83Kce0
 先ずは両の腕(かいな)。大きく伸ばして壁面に手を突き、続く部分を引き出しにかか
る。
 続いて首。そして胸。「何か」はゆっくりと頭(こうべ)を廻らし何かを探すような仕
草をした。
 黒い塊が跳躍した。勢いきってダクトから突き出た首にかじりつくと、

 ぃぃよいしょおっ!
 
 垂直の壁面を足場に一気に引きずり出し、反り投げでプラットホームに叩きつけた。そ
のまま反りの運動エネルギーを殺さずにくるりと蜻蛉を切ると、レールの上にしゃがみこ
む格好で着地。続けて腕を使い大きく反動をつけ、もう一度大きく跳ねた。そしてくるく
ると回転をしながら天井すれすれに跳び、再びホームの縁に立ち膝で着地する。そのとき
にはすでに片手は腰の後ろに回されている。
 影がホームに着地した瞬間、点くはずの無い照明がまるで舞台上に役者はそろったとい
わんばかりに一斉に点灯した。
 突然の明転に瞳孔が悲鳴を上げ、咄嗟に目を閉じる。
 スライド音。間髪いれず、鼓膜を振るわせる轟音。立て続けに三度。
 絞りの調節が終わり見えるほうの目をゆっくりと開いたとき、史郎は自分が舞台の観客
であることを切望した。
 演技区域(プレイエリア)はホームの端から二十五米、史郎のいるベンチからは九米の
距離にあった。
 右手(かみて)に立ち、銃に似た金色の道具を油断無く構えたこの登場人物は、ライダー
スーツとフルフェイスヘルメットで身を固めたプロレスラーのように見えた。
 がっしりとした体躯。
 圧倒的な圧力を放つ肉の質量。
 身の丈は二米を優に超えているだろう。
 金色をしたベストのようなものを羽織り、褌のにも見える革のベルトを締めている。
 フルフェイスのバイザー部分は、スモークが掛かっていて顔はまったく見えない。その
代わり、紺碧の帯が六条、放射状にまるで隈取のように走っていた。極めつけは額に輝く
一本角。金色(こんじき)の鬼面だ。ほとんど黒に近い緑色をした全身は照明を弾き、金
属かエナメルのような光沢を放つ異様な姿……果たしてこれはヒトなのか?
298皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:11:02 ID:Q0i83Kce0
 左手(しもて)に配された俳優は一層の異様を放っていた。
 白い体液にまみれ、まろびつ立ち上がろうとするその姿は──。
 ヒトによく似た半身。その皮膚の色は濃く蒼く。腰から下は強(こわ)そうな赤黒い体
毛に覆われ、二股の蹄が大地を踏みしく。
 そして見よ、その首はヒトのソレに在らず。
 いびつな形をした頭側からは一対のとがった角が横向きに張り出し、大きく前にせり出
した口の端からは涎がぼたぼたと溢れ落ち地を汚す。それは偶蹄目牛科の生物によく似て
……いや待て、似てはいるがそうではない。口元から覗くあれは何だろう?史郎の知る限
り、牛にはあんなものは存在しない。
 逆しまに生えた大きな牙。それは肉食獣の持つ武器だ。
 完全に立ち上がった身の丈は、舞台右手の異形よりもさらに三十センチは高いであろう。
 その外観は神話の中にのみ垣間見ることの出来る怪物に酷似している。記憶が確かなら
ば、あれはヒトを喰う。地球上にこのような歪んだ進化を遂げた生物が存在しえたのか。
 口の中が急速に乾燥してゆく。
 こんな狂った脚本には付き合っていられない。
 逃げ出してしまいたかった。
 しかしどうにも身体が言うことをきかない。尻がベンチに張り付いたように動かない。
 となれば、後は息を殺して主演俳優達の邪魔にならないようにしているしか手はない。
 あんな奴らと絡んだ日には、どんな気の利いたアドリブをもってしても、無事に切り抜
けられるはずがないのだから。
 角持つ獣が跳んだ。いや、跳ぼうとした。逆向きの関節が大きくたわみ、蹄がプラット
ホームを蹴った瞬間、黒ずくめの持つ黄金の武器が素早く二度咆哮し、空中で押し止めた。
たたらを踏んでなおも前へ出ようとするところを続く第二射が阻み、そのまま地下鉄の軌
道内へと叩き落した。 
 ホーム下から、低い唸り声が地響きのように轟く。
 手負いの獣がゆっくりと立ち上がろうとしていた。
 身体のそこかしこから白い体液を吹き上げていることから、ダメージは相当なものと思
われる。しかし、まだ生きていた。暗い炎をたたえた眸は爛々と輝いている。
299皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:12:30 ID:Q0i83Kce0
 よじ登ろうとホームの縁に掛けた左手を、三度目の咆哮が吹き飛ばした。

 ぎひぃっ!

 獣が啼いた。
 飛び散る白血。
 手首から先を失い、バランスを崩しかける。
 先ほど獣が手をついていた部分のコンクリートが、三十センチほどの広さにわたってえ
ぐれていた。どうやら黒ずくめの持っている武器は散弾銃かそれに近い構造をしているら
しかった。
 あわてて残った右手を突き出したが、金色(こんじき)の咆哮はそれすらも無慈悲に打
ち砕いた。
   
 ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっ!

 獣が雄叫びを上げた。
 怒りと憎悪の咆哮は、大気を震わせ、床を、壁を、天井を揺るがす。
 そしてついには史郎の心臓を鷲掴みにし、最後に残っていたわずかな理性をも一緒に握
りつぶしてしまった。

 うああああああああああっっっっ!

 まるで子供のように叫んでいた。
 生まれて始めて腹の底から恐怖した。
 史郎は今、完全にプレイエリアの住人となってしまった。もう、この気違いじみた舞台
から降りることは叶わない。
 獣と黒ずくめの異形がそろってこちらを向いた。   
 異形が喚いた。
「なんでこんな時間に人がいる?!」
300皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:14:57 ID:Q0i83Kce0
 獣が目を細め歯をむいた。薄い唇の隙間からぞろりと並ぶ牙の列。
 あれは笑っているのだろうか?だとすれば今まで見た中で一番醜怪な笑顔である。
 史郎の悲鳴は止らない。
 獣が今一度咆哮した。今度は短く。歓喜の声か。
 くつろげた口元から涎の飛沫を撒き散らし、史郎を目掛けて跳躍する。
 異形の反応がほんの一呼吸、遅れた。
 この瞬間、史郎はこの舞台での自分の役割をはっきりと悟った。
 ──俺は、餌だ
 固まったままの史郎の上に獣の巨体がのしかかった。
 体液と涎と生臭い息が降り注ぐ。大きく長い顎が袈裟懸けに喰らいついた。 

 激痛。

 重さに耐えかねばりばりと音を立ててベンチが崩壊した。

 悲鳴。

 肉を破り肋骨を押し砕き、太く硬いものが体内に侵入してくる感触。

 ひゅう。

 息を吐くことしか出来ない。
 喉の奥から熱い塊がこみ上げ、喀血した。獣の牙は肺にまで達していたるようだった。
 更に加わる圧力。肩の後ろ辺りでばきりと音がして、新たな痛み生じた。肩甲骨を噛み
砕かれたらしい。
 耳元で、じゅるじゅると音をたて獣が血を啜りはじめた。

 死ぬ……!

 ひと啜りごとに獣の体液の噴出が止り、異形の攻撃によって受けた身体の損傷がみるみ
る再生してゆく。一体どのような肉体の構造をしているのか。
301皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:17:07 ID:Q0i83Kce0
「これ以上、あたら若いモンの未来を奪うな真似はさせねえ!」
 黒い異形の大音声。
 叫んだ手に持つ武器が形状を変えていた。それは武器というより楽器──金管楽器のト
ロンボーンのように見える。
「音撃射・一吹怒濤(いっすいどとう)!」
 異形がマウスピースを口(と思われる部分)にあてがうと、バスの歌声のような音色が
高らかに響き渡った。ピストンを深く、浅くスライドさせ力強い音を紡いでゆく。大気を
震わせ、床を、壁を、天井を揺るがし、清音が空間を満たす。聴いていると痛みが和らい
で行くような気さえした。
 史郎の左肩に喰らい付いている獣に異変が起こった。
 突然史郎を放し、身を起こしたかと思うとがくがくと震えだし、次の瞬間爆散、波打ち
際の泡(あぶく)のごとく散り去った。
(俺…助かった…のか、な……?)
 安堵の為か急速に遠のいてゆく意識を、何者かが強引に引き戻した。
「よう…若いの、目ぇ空けろぉ!戻って来い!!」
 ごつい手が史郎の肩を捕まえ、力任せに揺すっていた。
「い…た……い。いたい…ス」
 うっすらと目を開ける。
 海坊主のような禿頭の親父が、涙でくしゃくしゃの顔で自分を覗き込んでいた。
 どうやら黒ずくめの正体はこの人物らしい。
 その表情があまりにも子供っぽくて、思わず吹き出してしまった。

 史郎が次に目覚めたのは病院のベッドの上であった。
 目を開けた瞬間、あの顔が視界いっぱいに広がっていた。
「よう、目が覚めたっ!
 よかったなぁ。後遺症が残るような怪我じゃねえってよ、治りゃ普通に生活できるんだっ
てよ!よかった…ホントによかったよぅ……お前ぇまであんなことになっちまったら、俺ぁ
もうどうしようかと…」
 悲しいのか喜んでいるのかどちらともつかない表情で、いい年をした大人が子供みたい
にぼろぼろと大粒の涙を流して泣いていた。
302皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:17:56 ID:Q0i83Kce0
 この人はどうしてこんな顔をするんだろう。
 『お前まで』、ということは俺の前に誰か自分のような目にあった人間がいたのだろう
か。
 切なげな表情を見ていたら、どう答えていいのか判らなくなってしまい、
「ホント…よかったっスね……」
「おいおい、青年。人事じゃないだろ?
 魔化魍に喰われかかったんだぞ?もう少し緊迫感持てよな」
 禿頭の後ろから声。よくよく見れば、ミイラ男のような状態の自分を、三人の男達が囲
んでいた。 
 禿頭のマッチョ親父。その後ろに和服姿で長身痩躯の品のよさそうな壮年の男。並んで、
高そうなブランド物をラフに着こなした口髭の男。シチリアあたりのマフィアにも見える。
声の主はどうやらこの男のようだ。
「ヒラメキ、彼は被害者だ。巻き込んでしまったのはこちらだぞ」
「は、ソウデシタ。こりゃ失礼」 
 髭面は和服の男に制されて軽薄そうに肩をすくめた。ヒラメキは名前だろうか名字だろ
うか。口調からして、和服の男がこの奇妙な一団のリーダーなのだろうか。
「はじめまして…志村史郎さんでよろしいのですよね。失礼ながら、お名前は寝ている間
に免許証で確認させていただきました。
 先ずは謝らせてください。揉め事に巻き込んでしまい申し訳なかった。心からお詫び申
し上げる」
「すまんかった、若いの。儂のへまだ。儂のせいでそんな大怪我負わせちまった。ホント
に申しわけねぇ…」
 深みのあるバリトンが真摯な言葉を投げかけ、塩辛声がうなだれた。口髭も胸に手を当
て、深々と一礼する。揉め事とかいうレベルの事件ではなかったような気がすると思った
が、言葉には出さなかった。
痩身の美丈夫が口を開いた。
303皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:18:53 ID:Q0i83Kce0
「私はハバキと申します」
 次に、左を指し、
「こちらの伊達男がヒラメキ。そしてこのごつい男はシブキといいます。
 あなたの入院費用や、入院中のその他の金銭的な保障は、私共の方で負担させていただ
きます。それから……あなたにはここから退院した後、二つの選択をしていただくことに
なります。
 一つ。昨夜のことは全て忘れて元の普通の生活に戻る。
 二つ。全てを知り、我々と共に普通ではない生活を始める。
 どちらを選ぶかは、迷うべくもないとは思いますが……」
 丁寧だが有無を言わせぬ響きがある。そこまで喋って、史郎の反応を窺うかのように黙っ
た。
 普通の生活。平穏な日常。
 毎朝、五畳のワンルームからバイト先に通う。泥だらけになりながら土を掘り起こし、
掘った土をまた埋め戻し、疲れ切って家まで帰る。平凡な生活だがこれはこれで気に入っ
ている。
 両親は早くに死に別れた。唯一の肉親である姉は既に嫁いで、新潟にいるから気兼ねす
る必要もない。今、ほんの些細な好奇心だけが、史郎の心を揺り動かしていた。
 シブキと呼ばれた男の見せた表情。
 同時に聞いた「お前まで」という言葉。
 怪我をさせてしまったとはいえ、どうしてああも他人のために一心を捧げることができ
るのか。
「仲間なら……仲間になったら、教えてもらえますか」
 知りたい。どうしても。
「おいおい、正気か?こっち側は半端じゃなく辛いぞ?!」
 ヒラメキが叫ぶ。
「まあ落ち着いて。結論は今すぐにでなくて構いません。退院までに決めていただければ
結構です。それまでじっくり考えて…」
「俺…どうしても知りたいんス」
 何でそんなにこだわるのか自分でも良くわからなかった。
 もしかしたら顔も覚えていない父親にシブキを重ねているのかもしれない。
304皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:19:24 ID:Q0i83Kce0
 シブキ──重蔵が困ったような嬉しいような表情でハバキを振り返った。
 ハバキは目をつぶってしばし考えていたが、やがて、
「後戻りはできません。それでもよろしいのですか?」
 鋭い光をたたえた眸が史郎を見据える。史郎に躊躇はなかった。
「判りました。志村君、今からあなたは、我々『御所守』の仲間です。訓練は怪我が癒え
次第始めましょう」
 よろしくお願いします、と訳も判らず答える。
 その言葉が、地獄のような修行の日々への第一歩であったことを、史郎はこのときまだ
知らなかった。
305皇城の守護鬼:2006/02/07(火) 21:20:56 ID:Q0i83Kce0

「まあ、頑張ったさ。儂らの修行は並みの鬼候補なら音を上げちまう内容だからな。
 結構無理難題押し付けたような気がするんだが、文句一つ言わなかったしな」 
「いや、俺何度も言いましたよ、そんなん無理だって。でもそのたんびに目の前でやって
見せられたんじゃ、それ以上何にもいえないじゃないスか」
 例えばこんな具合だ。百米を五秒で走れ、と言われたとする。
 当然、無理だと答える。
 すると何故無理だ、と聞かれる。
 常識的に無理だと答えると更に、常識とは何を基準にした話だ、と問われる。
 少し考えて、人間ですと返す。
 シブキはにやりと笑い、じゃあ俺はなんに見える?と問うてくる。
 「海坊主」と答えたいのを我慢してまた、人間ですと答える。
 上出来だ、という言葉とともにストップウォッチが手渡され、いつでもいいぜ、とクラ
ウチングスタートの姿勢をとるシブキ。
 戸惑いながら発した、史郎のよーいどんの合図でロケットスタート。二百米のトラック
をきっかり十二秒で戻って来たうえ、まあこんなもんか、と息一つ切らさず、
「な?人間がんばりゃ何でもできるもんだ。ちなみに俺ぁ今年で五十だぜ」
 ──できるわけねえだろ、この化け物。
 思ったが口には出さない、出せない。万事がこの調子だった。
 余談ながら史郎がそれをできるようになるまで一年半を要した。

「……途中、何度やめときゃよかったと思ったことか」
 訓練中に気絶したことも数え切れない。
「ほんとになんで逃げ出さなかったんだ」
「逃げ出したほうが良かったんですか?」
「いや、ついてきてくれて嬉しかったがな」
 シブキの見せたあの表情と言葉の意味を知るまでは、というちっぽけで些細な理由だけ
が地獄の修行に史郎をしがみつかせて来たのだった。
 おそらく聞けばすぐに教えてくれた筈だ。だがなぜか、まだ自分にはそれを聴く資格がな
いような気がして…。ずっと質問することを避けてきた。
「で、この五年で知りたいことは判ったのか。誰かに教わることができたか」「いえ、まだス」「ふうん?」
 今日、独り立ちのテストに合格したら聞いてみよう、と史郎は思った。
306名無しより愛をこめて:2006/02/07(火) 21:34:15 ID:TALg0ncX0
・・・・いいかい?もう書き込んでもいいかい?
皇城さん、おもしれぇぇぇぇ!こなれてるよ、文章が。すごいよ。
次回を待ってますよ。
307皇城の…の中身の人:2006/02/07(火) 21:46:33 ID:Q0i83Kce0
「半蔵、そなた鬼になってくれ」

「…恐れながら。上様の意図、若輩の拙者には計りかねます」

「鬼よ、頼んだ」

 ──鬼?今、上様はこれを鬼と申されたか?

「手前、大和国吉野より参りました鬼にて、名を『いぶき』と申します」


 思いは過去へと回帰する。


長文失礼いたします。
次回は少し時代を超えた話を織り交ぜることになると思います。
308仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:10:34 ID:kvCMq6YT0
皆様のSSに触発され、ついに手を出してしまいました。
自分は東北在住なのですが、皆様は覚えているでしょうか?
仮面ライダー響鬼三之巻に名前のみ登場した東北の鬼、凱鬼を。
今回は、地元ということもあって、その凱鬼のSSを書いてみました。
物語は響鬼さん達の会話に出てきた「去年の11月に青森でヤマビコを倒した」
という情報を元に、そのときの話を書きました。
まだまだ素人の駄文ですが、楽しんでいただければ幸いです。


初冬の良く晴れた朝、一人の男がケヤキの立ち並ぶ街道を駆けて行く。
スポーツウェアを身に纏い、短く切られた髪がいかにもスポーツマンといった雰囲気を感じさせる。
そう、傍から見ればただのスポーツマンだ。
故に、店前の掃除をする人も、会社に出かけていく人も、朝の散歩を楽しむ人も、ケヤキ並木の元を駆け抜けていくその男の正体を知らない。
彼が人知れず悪しき魔物と戦う「鬼」だということなど、彼とすれ違ったどの人も、知ることはないのだ。



仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】

309仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:11:58 ID:kvCMq6YT0
 2004.11/22

 東北は宮城県仙台市、こじんまりとした印象の牛タン屋、「よもぎ」の店内は朝から慌しかった。
この店の店長の中年女性、早坂晴美が寝坊してテールスープの仕込みが遅れてしまっているためだ。
店内では晴美のほかに、従業員の高橋太助と佐々木美紀もせっせと働いている。
「もう、店長が寝坊なんて他の店に知れたら笑いものですよ?」
 後ろで束ねた長い髪が印象的な青年、太助は鍋の様子を見ながらしかめっ面を浮べて言った。
昨日仕入れたばかりのタンを抱えてきた晴美も、負けじと強気な声で返す。
「いつまで経っても髪を切らないあんたに言われたくないわよ!」
「それとこれは関係ないでしょ〜」
 どうでもいいような言い合いを始める二人を、座敷のテーブルを拭いていた美紀は微笑ましく眺めていた。
パッチリした瞳とショートカットの黒髪が美しいと、地元でも評判の美人だ。
「太助さん、店長は昨日夜遅くまでシフト表の調整してたんだから、大目に見てあげてくださいよ」
 テーブルを拭き終え、座敷から出てきた美紀は晴美を庇って言った。
晴美はそれに大きく頷き、太助をじろりと軽く睨んだ。
「わ、わかりましたよ! 責めてすみませんでした!」
「わかればよろしい!」
 晴美はそう言うと偉そうにふんぞり返ってタンを運んでいった。
そう、ここは自然が生む影の存在、魔化魍と戦う組織、猛士の東北支部である。
晴美はここの店長であり、また支部長でもあるのだ。
先日新人の鬼、鉄壁鬼が加わったことによってシフト表の見直しがされたのだ。
晴美はそういう事務的な仕事が苦手なため、夜遅くまでかかってしまったというわけだ。
ちなみに太助と美紀は東北支部の金として働いている。
310仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:12:46 ID:kvCMq6YT0
 そんなこんなでなんとか仕込みを終え、開店時間を待っていた三人のところに、一人の男がやってきた。
引き戸を開けて店内に入ってきたその男は大きな声で一言、
「おっす! おはよう!」
 スポーツウェアに短髪の髪。どこかの体操選手の様ないでたちのその男の名はカチドキ。
そう、彼は東北支部を拠点に戦う鬼戦士の一人だ
「おはようございます! カチドキさん!」
 太助が元気良く挨拶すると、カチドキはもう一度おはようと返した。
美紀も丁寧に頭を下げて挨拶をする。
「おはようカチドキくん。あ、忘れないうちにアレ渡しとくわ」
 そう言うと晴美は店の奥へと姿を消し、すぐに一枚の紙を持って現れ、それをカチドキに手渡した。
「お、新しいシフト表ですね。どれどれ・・・俺と鉄壁鬼が重なってますね。これは俺がサポートしてやれってことですか?」
「そう、太鼓使いで一番年齢が近いしね。やりやすいかと思って」
 晴美の言葉を聞いたカチドキは彼の決めポーズとして定着している右腕だけのガッツポーズをとって、任せてくださいと答えた。
すると突然、店内に電話の呼び出し音が響いた。
美紀が急ぎ足で電話に駆け寄り、受話器を取った。
「はい、牛タン屋よもぎです。あ、はい、少々お待ち下さい。店長、歩の杉山さんからです」
 美紀が神妙な顔つきで晴美に受話器を渡す。
受話器を受取った晴美はその杉山という人との会話を手早く済ませると、今度は晴美も神妙な顔つきになって、カチドキの方に向き直り、
案の定、といった調子で言った。
「カチドキ君、青森にヤマビコよ」
 その一言を聞いたカチドキの目は闘志に燃えだした。
彼は魔化魍退治の話となると気力が何倍にも増すのだ。
「久しぶりだな〜。でも、身体は鈍ってないから大丈夫です、すぐに行けますよ。場所は?」
「四角岳よ。今日の朝方に5mくらいの大きさで見つかったらしいから、そろそろ人を襲う時期ね。すぐに大田に連絡するから、準備してて」
 晴美はまたすぐに受話器を取り、カチドキのサポーター、大田巧に電話を掛け始めた。
カチドキは店の奥間に行き、スポーツウェアを脱ぎ、私服に着替え始めた。
猛士東北支部の忙しい一日は、まだ始まったばかりだ。
311仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:13:20 ID:kvCMq6YT0
青森県四角岳山中。知る人ぞ知る山道を、一台の4WD車が走り抜けていく。
猛士本部からの支給品、「紅葉」は、オレンジとシルバーのツートンカラーのボディを日光に照らされながら、
もう一時間ほど山道を走り続けている。
「慣れない山は時間掛かるなぁ流石に。大田、あとどれくらいかかる?」
「杉山さんから貰った地図によると、あと30分くらいで着くよ。もう少しだからヘタレんなって」
 車に揺られ続けて精神的に疲れ始めたカチドキをよそに、サポーターの大田は至って平然とした口調で言う。
はてしなく続くように見える道を見て、カチドキは「ほんとかよぉ」と疑いの声を上げたが、
大田の言ったとおり、30分後にはちゃんとキャンプ設営予定地に着いた。
「ほら、言ったとおりだろ?」
「・・・いいから早く設営するぞ!」
 2人はテキパキとテントを張り、折畳み式のテーブルを広げ、車からディスクケースを取り出し、わずか15分で設営を完了させた。
そして休む間もなく大田は地図を広げ、カチドキはディスクケースを開けて音叉を鳴らした。
途中渋滞に見舞われたせいで時刻はもう午後の3時を回っている。
夕暮れまであまり時間が無い。
できるだけ早く魔化魍を見つけ出したいのだ。
「頼んだぞ!」
 逸る気持ちを抑えながら、カチドキは行動を開始するディスクたちを送り出した。
312仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:14:25 ID:kvCMq6YT0
 カチドキの予想通り、日が暮れてあたりが暗くなっても当たりのディスクは無かった。
レトルトの夕食をとりながら、戦闘の脳内シュミレーションを始めていたカチドキはハッと何かを思い出したかと思うと、
自分のリュックから今朝方晴美から受け取ったシフト表を取り出し、隣でカレーをほおばっている太田に見せた。
「これ、新しいシフト表だってさ。お前も目を通しとけよ」
 太田はカレーを置き、渡されたシフト表に目を移した。
ふむふむと小さく頷きながら一通り目を通すと、それをカチドキに返した。
「少し待機日数が増えたな。ま、鉄壁鬼くんのことを考えると、妥当だろうけどな」
「あぁ、先代の鉄壁鬼さんのシフトを受け継がせるには、まだきついだろうからな。その分は俺がサポートしてやるってわけさ」
「期待されてるな、がんばんないとな!」
「あぁ、任せとけ!」
 自信満々の顔でガッツポーズをとるカチドキ。
彼の顔に迷いは無かった。
 
 それから約2時間後に、遠くのポイントまで行かせていたリョクオオザルが戻ってきた。
今までのディスクが全部ハズレだっただけに、期待が高まる。
結果は、当たりだった。
「こりゃあ結構でかくなってるな。よし、パパッと片付けてくるか。太田、留守番よろしく!」
 カチドキは再び先ほどのリョクオオザルを起動させ、その後を追って暗闇の森の中へと姿を消した。
「がんばれよ!」
 火打石を鳴らして見送る太田に不安は無かった。
慣れている、といえばそれまでだが、太田には絶対な自信があった。
カチドキは必ず勝って帰ってくる。
たとえ負けても、敵を倒すまでは帰らない。それがカチドキといういう男だった。
今日もきっと勝利を担いで帰ってくる。
それを信じて待つことが、太田の仕事だ。
 夜は更け、晴れた空には大きな満月が輝いている。
吹き抜ける風が草木をなびかせ、風のそよぐ音以外は何も聞こえない。
嵐の前の静けさが、森を覆っているかのようだった。
313仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:15:48 ID:kvCMq6YT0
軽快な足取りで獣道を駆け抜け、先導するリョクオオザルを追いかけるカチドキは、すでに敵の気配を察知していた。
敵は既にこちらを狙っているようだ。
(タイミングを見計らってるってわけか。なら!)
 カチドキは突然足を止めた。
その行動にリョクオオザルは混乱して首をかしげている。
カチドキはそれに構わずそのまま動こうとしない。
「わざわざ隙を突かれるくらいなら、こっちから挑んでやるぜ。さぁ出て来いよ化け物!」
 カチドキの声が森に木霊する。
それに反応するように、今度は低く長い唸り声が木霊する。
カチドキの前に、2人の男女の人影が現れた。
「鬼だ」
「鬼の声を貰おう」
「貰おう」
 見た目はただの人間と変わらないが、一つだけ違うところがある。
声が逆転しているのだ。
そしてそれは、彼らが人外の存在であることを意味する。
「出たな・・・お二人さん」
 カチドキが身構えると、男女は・・・ヤマビコの童子と姫はゆっくりと前進し始めた。
その身体に纏っていた衣服は形を変えて襟巻きとなり、身体は不気味な異型の姿へと変化を遂げた。
314仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:16:22 ID:kvCMq6YT0
「じゃ、こっちも化けさせてもらうぜ。あんたらとは違ってカッコイイ姿にな」
 ベルトに取り付けてある変身音叉を手に取り、カチドキはそれを指で軽くはじくと額にかざした。
甲高い音と共に額に浮かび上がる鬼の面。カチドキの周りを強い気が覆う。
途端、カチドキの足元が小刻みに揺れだしたかと思うと、その足場が隆起し、
地面から飛び出してきた無数の小さな岩がカチドキの身体を覆いつくした。
岩はカチドキの体の周囲を取り囲むように渦を巻き上げ、その中でカチドキは気合を込めて念じる。
「はぁぁぁぁぁ.......ぁぁぁああああ!!」
 渦巻く岩の中で、カチドキの身体は徐々にその姿を変えていく。
カチドキもまた、人外のものへと姿を変えていくのだ。
「.....ァァァああああっ!! でいやぁぁ!!」
 気合を込めて腕を振るうと、カチドキの身体を覆っていた岩は砕け散り辺りを一閃。
その破片は童子と姫の身体にも直撃した。
倒れこんだ童子と姫はすぐに起き上がり、身構える。
童子たちにも緊張が走る。目の前にいる敵は既に人間ではないからだ。
彼らが最も恐れる宿敵、魔を清める存在。正義の戦士。
「鬼め・・・」
 正面に向かって伸びる太い一本角、緑色の隈取に灰色の体色。
異型の姿をしたその者の名は・・・大自然の力により鬼となりしその者の名は、凱鬼。
仮面ライダー凱鬼である。
そのギラついた身体は月明かりに照らされて不気味に輝いている。
「さぁ来い! 2人まとめて山の塵に変えてやる!」
 童子たちに向かって走り出す凱鬼。
凱鬼に向かって走り出す童子と姫。
2種類の異型の存在が、静かな山の中で激しくぶつかり合う。
戦いは始まった。
315仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:17:13 ID:kvCMq6YT0
姫に先行して飛び掛ってきた童子を、凱鬼は軽い身のこなしでかわし、続いて殴りかかってきた姫の腕をがっしりと押さえ込んだ。
姫は必死に抵抗するものの、ガッチリつかまれた腕は振り解くことが出来ない。
「なんだぁ、あんまり力はついてないな」
 余裕の口調で言うと、凱鬼はそのまま姫を振り回し、背後から迫ってきていた童子に投げつけた。
不意を突いた攻撃を避けられずに、同時と姫は正面衝突して重なり合うように倒れた。
「鍛えてないなぁお前ら。なんなら俺が鍛えてやってもいいけど、耐えられるかな?」
 凱鬼の挑発に乗った童子と姫は更に闘争心を燃やして凱鬼に向かってきた。
腕を大きく振りかぶり、二人同時に凱鬼に殴りかかる。
だがその拳は空を切り、凱鬼はくるりと宙を舞い、童子たちの頭を飛び越えてその背後に着地した。
童子たちは慌てて振り返るも、それよりも早く凱鬼の回し蹴りが2人に直撃。
童子と姫は大きく吹き飛ばされて8mほど先の大木にぶつかった。
息を荒げてよろよろと立ち上がる童子と姫。
二人の目線が上がったときには、もう目の前に凱鬼は立っていた。
「残念。終わりだ」
 凱鬼の両手の鬼爪はそれぞれ童子と姫の胴体に深々と突き刺さり、その身体は木の葉となって爆散した。
316仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:18:02 ID:kvCMq6YT0
「まったく、童子と姫は張り合いが無くていけねぇな。ま、強かったら強かったで大変だけど」
 鬼爪を収納し、凱鬼はあたりを見回した。
童子と姫を倒したのだから、もうお目当てのものはすぐ近くまで来ているはずだ。
「どこかな・・・ヤマビコ」
 耳を澄まし、眼を凝らして目標の位置を確かめる。
修行で鍛えられた精神力が役に立つときだ。
風に乗ってかすかに聞こえる足音は、徐々に大きくなっていく。
もうすぐそこだ。
「・・・・・・・・・きた!」
317仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:19:10 ID:kvCMq6YT0
地鳴りを呼び起こすほどの大きな足音を立てて、ヤマビコの巨大な体が、生い茂る木々の隙間から覗いた。
けたたましい雄たけびを上げ、凱鬼に向かってくる。
その大きさはもはや10m近い。
「一日で良くこんなに大きくなったもんだな。よし、ちゃちゃっと片付けるか!」
 少し足首を回してウォーミングアップをすると、凱鬼も勢い良くヤマビコへ向かっていった。
敵の巨体に向かってひるむことなく真っ直ぐに駆け抜け、その目と鼻の先まで来たところで大きくジャンプした。
「せいやぁ!!」
 その跳躍はヤマビコの顔の高さにまで至り、目の前に現れたヤマビコの顔面に、凱鬼は回し蹴りを叩き込んだ。
蹴りは眉間にぶち当たり、走る激痛にヤマビコはその大きな腕を振り回して暴れだした。
流石の凱鬼も着地する前に腕の大振りに当てられ、巨体から生み出されるパワーによって激しく吹き飛ばされた。
「ぬぅぁっ・・・っつぅ」
 凱鬼は10mほど吹き飛んだところで地面に叩きつけられた。
激しい痛みが体の節々を襲うが、その程度で挫けるようでは鬼ではない。
すぐさま立ち上がり、再びヤマビコのほうを見る。
ヤマビコは痛みを怒りに変えたのか、もはや痛みにもだえることなく唸り声を上げながらこちらに向かってくる。
「これくらいじゃ倒れてはくれないか・・・なら」
318仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:19:57 ID:kvCMq6YT0
次々に繰り出される叩き攻撃や蹴りを縦横無尽に跳ね回ってかわしながら、凱鬼は次の作戦に移ろうとしていた。
少しずつ少しずつ、凱鬼はヤマビコとの距離をとっていく。
追いかけるようにヤマビコが一歩歩くたびに木々はへし折られ、無残な木屑に姿を変えていく。
「自然から生まれたお前らが自然を大事にしないでどうするよ? それとも、お前は『アイツら』に作られたのかな?」
 何を話してもヤマビコが返事を返すわけは無く、返ってくるのは大きな平手による攻撃だけだ。
それを横に反転してかわすと、ヤマビコから一気に距離をとり、凱鬼は腰の装備帯から二本の撥を取り出した。
緑色の柄に黒い鬼石。音撃棒『黒雲母』だ
凱鬼は黒雲母を構え、気合を込める。
その周囲を大地の気が覆い、凱鬼は黒雲母が十分二機を纏ったのを確認すると、思いっきり地面にたたきつけ、鬼棒術『岩烈波』を放った。
すると、黒雲母を叩きつけたところからヤマビコのいる方向へ向かって地面に亀裂が走り、
更に亀裂の中から無数の岩の柱がせり出し、ヤマビコを襲った。
柱の一つがヤマビコの右足に突き刺さり、ヤカビコは悲鳴にも似た雄たけびを上げてじたばたと暴れ、やがてバランスを崩して仰向けに倒れた。
「よぉし、倒れたな!」
 凱鬼は猛スピードでヤマビコとの距離を縮め、跳躍してその腹の上に飛び乗り、
装備帯から音撃鼓『白雲母』を取り外し、ヤマビコの腹に取り付け、黒雲簿を構えた。
「次に出てくるときには足元に気をつけな! 音撃打! 驚天大隆起の型!!」
 要らぬ台詞を吐き、凱鬼は黒雲母を勢い良く白雲母に叩きつけた。
二本の黒雲母を速く、そして重く叩きつけるのが音撃打・驚天大隆起の型の特徴である。
 ドドン、ドドン、ドドン、ドドン
清めの音がヤマビコの体の中に響き渡る。
夜の森に響き渡る。
 ドドン、ドドン、ドドン、ドドン
音は次第に速さを増し、凱鬼は止めの一撃を叩き込む。
「はぁっ!!」
 ドドドン!
その一撃を受け、断末魔を上げることも敵わず爆散するヤマビコ。
木屑と化したヤマビコの破片を浴びる凱鬼を、満月が照らし出す。
月明かりを浴びて、凱鬼は勝利のガッツポーズを取る。
山に平和が戻った瞬間だった。
319仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:20:45 ID:kvCMq6YT0
「おつかれさ〜ん」
「ふぅ、ちょっと遠かったから疲れたぜ」
 顔だけ変身を解除して、凱鬼は太田の待つキャンプに戻ってきた。
テントに入って手早く服を着ると、太田が用意していたコーヒーをすすってホッと一息ついた。
「これでヤマビコは3度目か。最初はひっくり返すのに苦戦したけど、大分慣れてきたな」
 初めてヤマビコと戦ったときに腕にしがみついてじたばたしていた自分を思い出し、苦笑する凱鬼。
太田もそれを思い出してニヤニヤと笑う。
「ま、成長してもらわなきゃこっちも困るからな」
 太田の言葉に、凱鬼は少しむっとした表情になった。
「お前、俺を誰だと思ってんだよ。負けて帰ってくることは絶対に無いからな。なんせ俺は・・・」
「凱鬼だからな!」
 途中まで言いかけた凱鬼の言葉を、太田がつないだ。
二人の笑い声が森に響く。
勝利のあとにこそ味わえる、ささやかな平和のひと時だ。
320仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】:2006/02/07(火) 23:21:19 ID:kvCMq6YT0
11/27

 カチドキが仙台に戻ってきてから五日が過ぎた。
いよいよ冷え込んできた朝の通りを、今日もカチドキは走っている。
毎日欠かさぬこのランニングも、彼の勝利を生み出す原動力となるからだ。

カチドキは走る。平和を守るため。
カチドキは戦う。たとえ人に知られることが無くとも。
カチドキは勝つ。どんなことがあろうとも、必ず。

それが、カチドキという男。それが、凱鬼という鬼。



仮面ライダー凱鬼 一之巻【勝利の鬼】 完
321皇城の…の中身の人:2006/02/07(火) 23:31:49 ID:Q0i83Kce0
カチドキキタ〜〜
322名無しより愛をこめて:2006/02/07(火) 23:33:26 ID:L32a+lvbO
カチドキさんか
鋭鬼SSでも一回出てたね
職人サンたちはホント何でも拾うなぁ
323名無しより愛をこめて:2006/02/08(水) 00:28:32 ID:/3Ztw+ib0
前に誰かが書いてたけども
皇城の人も名前欄に第何話とか、最後に「続く」とか書いて欲しいんだ
この怒涛のペースじゃタイミング逃すと感想も書けないんで
それに多分まとめサイトの方でも拾いやすいと思うし
324仮面ライダー歌舞鬼外伝 「甦る思い」:2006/02/08(水) 00:33:20 ID:T94Xf6+c0
「ここは・・・」

東京、浅草。かつて、人を守る道を捨て、鬼である事を捨てた男。
彼が響鬼に敗れ、そして目を醒ました世界。
そこに広がっていた光景。

見知らぬ鉄の馬が走る整理された漆黒の道。
自分が知らぬ色とりどりの着飾られた服を着て歩く人々。

人を守ることを捨てたはずの男。
だが、彼は出会う。たくさんの人の思いに。
鬼であることを見失った男がもう1度、鬼を目指す。

第一話 「甦る思い」
325凱鬼SSの中の人:2006/02/08(水) 00:41:37 ID:VJfK0vHm0
な、なんてこった・・・・たった今鋭鬼さんのSSを読みきりました・・・。
そんな、凱鬼が出てたなんて・・・。
しかもキャラ全然違うやん・・・。
俺の不手際です。鋭鬼SSの中の人、ごめんなさい・・・。

続きも書こうと思ってたんだけど、これじゃあなぁ・・・。
残念無念
326名無しより愛をこめて:2006/02/08(水) 01:31:37 ID:donpKx2W0
いいんじゃない?ソレはソレ、コレはコレで>凱鬼
鋭鬼SSの人も、このスレに戻った方がいいのか迷ってるみたいだなぁ
327狂鬼SS筆者:2006/02/08(水) 09:30:27 ID:X+EE+A3i0
裁鬼職人さん復帰を待ち望んでました!
エイキスレでは本当に住人の方々に失礼な発言をしたと思ってます。
自分でも何様なんだろうと反省してます。

皆さんのSSは本当におもしろいです!
スタイルがまったくかぶらないのもびっくりします。
それに歌舞鬼や凱鬼などの新作、裁鬼職人さんの復帰など、まだまだ、楽しめそうですね。
で、各SS職人さんに提案させて頂きたいのですが、作品の投下を曜日とかで規制しませんか?
曜日でなくても次は何時頃になると宣言したり。
つまり、バッティング回避と言う事でいかがでしょう?
基本的に個人の自由である掲示板ですので、ルールを付けるのもなんですが。
今後もまだ少し大きくなりそうなので、ここら辺で少し取り決めを作るのはどうですか?
323さんの発言のようにSSのフォーマットなんかも決まるといいかもしないっす。
お手数ですが職人さんの意見をください。
328皇城の…の中身の人:2006/02/08(水) 15:08:01 ID:7wO25lwE0
>SSフォーマットの件につきまして。

 申し訳ありません。その点失念しておりました。
 次回以降「続き」を入れるようにいたします。

  投下規制につきましてはワタクシはなんとも申せあげようがございません。
  少々不規則な生活でして、この日(この曜日)に必ず…というのでなければ
それに順ずることはできます。
329狂鬼SS筆者:2006/02/08(水) 15:34:32 ID:X+EE+A3i0
>皇城SS様。
その日に必ずというつもりではありませんよw
話を一本作るのは大変ですからね。
投下規制によりクオリティが下がってしまっては意味がないですし。
某漫画のように作者急病か、
取材の為、休載しますとでも書けばいいんじゃないっすか?
ただ、作品をすぐに投下できなくなる難点はあるんすよね。
貴重な意見ありがとうございました。
よろしければ職人以外の方もご意見ください。
330名無しより愛をこめて:2006/02/08(水) 15:58:02 ID:fpJNYwjj0
一読者です。いつも楽しく読ませていただいております。
さて、投下規制ですが、それはしなくてもいいと思います。
これから投下しますよ、と書いてくだされば十分だと思います。
今まで特に読みにくいこともなかったので、私としては大丈夫だと思います。
331名無しより愛をこめて:2006/02/08(水) 16:30:59 ID:z6GdohX70
>>330さんに同意。
不定期連載だからこその楽しみってぇのもありますよ。
なので「本日予定日だったけどゴメンね」みたいなエクスキューズも不要。
そういう書き込みがあったら、逆にガッカリするけどなぁ。
バッティングも投下する前にリロードすれば防げるだろうし。

ちなみにまとめサイトの中の人は
・名前欄を作品名にする。(感想レスや雑談レスと区別がしやすい。)
・作者さんがトリップをつける。(偽者が出ると困ることもある。偽者でもそのまま続けば面白いが。)
・投稿の間隔が空いたときは、どのレスNo.からの続きなのかを「>>レスNo.」で明示。
(何本も平行して投稿されてるとリアルタイムに見ていないと混乱してしまう。)
「こうしてもらえるとラクだなぁ」と、書いておられます。
332狂鬼SS筆者:2006/02/08(水) 16:50:11 ID:X+EE+A3i0
330、331さん。
貴重なご意見ありがとうございます。
どうもSSのフォーマットを決めれば良さそうですね。
333凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/08(水) 20:25:03 ID:VJfK0vHm0
早速トリップ付けてみました。
で、凱鬼SSですが、俺としては今後も続けていきたいのですが、
もしよろしければ鋭鬼SSの中の人の意見を聞きたいです。
多分鋭鬼SSのほうでも東北支部については色々と決まっているだろうし、
凱鬼の設定こそ違えど、同じ世界観で書いてもいいのか、それともまったく別のパロディワールドとして書くべきなのか、
悩んでいます。
どうかよろしくお願いします。

あ、フォーマットについてはまとめサイトのほうで掲載されている通りにやれば問題ないと思います。
とくに付け加える必要もないかと。
334弾鬼SSの筆者:2006/02/08(水) 21:24:58 ID:ii4KIkhk0
>SSのフォーマット

遅くなりましたが自分の考えです。
自分も331さん、333さんと同様にまとめサイトに掲載されてるとおりで良いかと思います。
投下規制ですが、なんか〆きりっぽい所があるんで、各職人さんが次回予告等で次の投下
予告などを付け加える等で良いかと思います。
335名無しより愛をこめて:2006/02/08(水) 21:32:13 ID:Q80qjqsX0
作者さん達の負担にならないように!

こんな素晴らしいストーリーを楽しませてもらって
これ以上なんの望みがあるものですか・・・
336番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/08(水) 22:18:41 ID:ii4KIkhk0
>中篇は246から
番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻『深まる繋がり』(後)
『ぐっ・・・へへ・・どうだい!?』
弾鬼の鬼爪は4本中3本がへし折れ・・その破片を大地に散らばした。
そして、その内の一本が童子の硬い体に突き刺さっていた。だが、浅い。薄皮一枚目を貫通した程度だった。
『そんなに頑張ってどうする?』
その攻撃が癇に障ったのか、童子は弾鬼の顔を掴んだまま腹部に蹴りを入れ、その体を数ある木の一つへ叩きつけた。
弾鬼はそのまま大地に崩れ落ちた。だが、全身に活を入れ何とか立ち上がる。右肩、腹部、左手・・そして胸部・・既に満身創痍だ。
『ちっ・・・響鬼さんは時間切れを待ったって言ってたけど、こりゃ時間切れまで持ちそうに無いぞ・・・・・しゃあねぇなぁ!アレ行くか!』
弾鬼は全身に走る痛みに耐えながら気を集中させ、大地を踏み鳴らした。
隆起する石錐・・・そして破砕し蒼く輝く飛沫・・・・
『っ!』
だが、その飛沫を払うようにして姫が突進し手にした剣を振るう。何とか身を捻りかわすものの、童子の針が脚へと刺さりその場に倒れこんでしまった。
『っくそ!集中する暇もねぇ!?』
起き上がろうとするも、姫は弾鬼の首を一刀両断すべく剣を振りかぶり・・・・振り下ろすと同時に口から針を吐いた。
転がるようにして針攻撃と、剣撃を回避する。だが同様の連続で襲い掛かり、立ち上がる時間すら手にする事は出来ない。
遂に林の中の一本の木に体がぶつかり、回避行動を阻止された。
『終りだ』
姫の剣が容赦なく弾鬼に振り下ろされた。だが、弾鬼も逃げ回るだけではない。
振り下ろされた剣をあえて受けた。
337番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/08(水) 22:19:32 ID:ii4KIkhk0
ガッ!と金属を噛む音が響いた。刃は弾鬼の肩と胸を守護している襷で止まっていた。
『っらあぁぁぁぁぁ!』
姫の手を掴み、剣を触れないように固定すると、空いたもう片方の手で地面を殴りつけた。
拳の振動を受け、大地が隆起し、御馴染みの石錐が突き出ると共に姫の腹部へと突き刺さった。だが、鎧姫となった姫には致命傷を与えることは出来なかった。
『まだまだぁ!もう一丁くらいやがれぇ!』
再度石錐を出現させ、腹部へ集中して石錐を叩き込んだ。怒涛の攻撃により姫の腹部に、僅かでは在るが亀裂が走る。弾鬼はそれを見逃さず、姫の手を離し
『破ぁ!』
両の掌を亀裂目掛けて叩き込んだ。風圧を伴う掌底により亀裂は内部より捲り上げられ、鎧に護られていない内部がさらけ出された。
弾鬼はそのスキを逃さずに、残った最後の鬼爪を姫の腹部に叩き込んだ。
鬼法術・石錘と、鬼闘術・風圧掌底のコンビネーションにより鎧を剥ぎ取り、鬼爪でのトドメが利き・・・・鎧姫はその命を散らした。
『っかぁ〜。いてて・・・さぁて、コレでサシだな。男ならタイマンと行こうぜぇ!』
弾鬼は、痛みに耐えつつも・・・あえて童子を挑発した。
状況的には、弾鬼が不利なのだが・・・ここで逃げられては追撃が出来ないうえにヤマアラシを逃がしてしまう。さらに成長でもされたら厄介だ。
故にこの場で童子を仕留め、ヤマアラシの成長を食い止める。その為にも童子はココで倒しておかなければならなかった。
全身の筋肉は軋み、悲鳴を上げる。
血が流れ出し目は霞む。
酸素が足りない・・肺が酸素を求めて呼吸を荒げさせる。
『っそ・・持久戦はムリだな。なら・・リスクはでけェが・・・速攻でブチのめす!』
弾鬼はヤリを振り回し威嚇する童子から目を離さず、気を集中させ・・・・大地に脚を叩きつけた。今日二度目の石錐が突出し、飛沫となった。
蒼く輝く飛沫の中、全身からは血が再び流れ出す。弾鬼の体はボロボロだ。
それでも弾鬼は気の集中を止めず・・・・
童子はヤリを突き出す形で突進してくる。狙いは心の蔵。このままでは、先の戦闘と同じく集中を解き・・振り出しに戻ってしまう。
ぞぶり・・と音を立てて胸の前で交差した弾鬼の腕にヤリが突き刺さる。
338番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/08(水) 22:20:44 ID:ii4KIkhk0
『・・・・くぅ・・・っぁ・・・ぁぁぁぁぁああああらぁ!』
顔をやや伏せがちのせいだろう。童子の眼前に、弾鬼の額の鬼面が無言の言を突きつける。
童子は何かに脅えるかのように、身をすくませる。

恐れたのは何か?

それは、高まりつづける気の奔流か。
                     
それは、このモノが天敵『鬼』だからか。
                     
それは、餌でしか無いハズの人間のはず。

それが、何故こうも立ちはだかるか。

それが、何故に

弾鬼の腕は『蒼』く染まる。そしてその上から流れ出る『赤』。
蒼赤織り交じる腕に、力がこもり・・・輝く飛沫を飛び散らす。

童子の失点はただ一つ。
狙うならば心臓では無く。
剥き出しの頭部にするべきであった。

故に・・・・勝敗はここに定まった。

両の腕を蒼く/赤く/染め、飛沫を振り払う。
腕に刺さったヤリをゆっくりと抜き取ると、がら空きの腹に蹴りを叩き込んだ。
やはり硬い体で防がれたが、僅かにたじろいだ。続いて拳による打撃が連続で打ち込まれる。弾鬼の腕は、蒼い輝きが跡を引き・・童子へと吸い込まれるように流れる。
威力が通常より増しているのは明白で、くの字に体を折り数歩引き下がる。
弾鬼は先ほど打ち飛ばされた那智黒を拾う為にその場から跳躍する。
339番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/08(水) 22:21:21 ID:ii4KIkhk0
『よっと・・・いってぇ。』
身を屈み那智黒を拾い上げ、ゆっくりと童子へと歩み寄る。童子はヤリを払うようにしてその歩みを止めようとするが、弾鬼は踵を大地に押し付け石錐を呼び出た。
飛び出した石錐は童子の手首に集中して突き当たった。貫通はしなかったが、衝撃だけは逃がす事は出来ず、結果ヤリを手からこぼしてしまった。
弾鬼は今だ残る石錐を那智黒で叩きつけ、粉々に破砕し、大小の石つぶてへと変えて童子へと飛来させる。
威力の程はさほど無い。だが、これ以上ないほどの弾幕となり・・・・・
弾鬼は跳躍し童子の背後に着地する。
そして―――――
『行くぜ。好き勝手突っついてくれた例だ』
那智黒を手に・・・くるりと回し・・・・・一撃を叩き込む。

飛沫が集まりだす。

『今から言う事に、特に意味は無ぇが』
更にもう一撃。

童子は飛沫により身動きを封じられる。

『ムシャクシャしたからよぉ・・・あんたらのせいで』
続けて二撃!三撃!

次第に飛沫は音撃鼓の形を象る。

『ビンタじゃすまねぇぞ?』
両手で那智黒をクルリと回し・・・・・・

『行くぜ?音撃打――――』
両腕を天にかざし・・・・・

『粉骨!砕身!のォ・・・・型ぁぁぁ!うおりゃぁぁぁぁぁ!』
蒼く輝く音撃鼓へと叩きつけた。
340番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/08(水) 22:22:39 ID:ii4KIkhk0
ベースキャンプ/
「うわ・・ボロボロじゃない。前に比べて、カッコワルイね?」
帰ってきての第一声がコレでは余りにも報われない。弾鬼は危うく全身の変身を解除してしまいそうになった。
「あぁ〜もう!コレでも必死でやってきたの!はぁ・・・っと」
血を流しすぎたせいか、足元がふらつきその場に崩れ落ちる弾鬼。
「ちょ・・ちょっと・・大丈夫?」
千明も、流石に冗談事ではないと感じたのか、弾鬼に駆け寄る。そして間近で見て、その傷の多さと酷さに息を呑んだ。
「わりぃな・・・タオル水に濡らして持ってきてくれる?とりあえず血だけでも落としたいからさ」
千明は口元を抑えながら頷き、水を貯めたポリタンクへと走った。
弾鬼はその様子を見ながら、気を失わないように気合を入れた。
今、気を抜いたらえらい事になる。
「わひゃぁ!」
突然の悲鳴に弾鬼は声の主を見る。タオルを洗面器に入れ水を入れようとしたら、盛大にハネて服にかかったらしい。
今ので、気力が少しばかり抜けてしまった。
「はい・・・・ううん」
洗面器を弾鬼の横に置き、タオルを絞って手渡そうとしたが、千明は背中側にまわり血をふき取りはじめた。
「いってぇ!・・・ちょっと〜、もう少し優しくしてよ〜!痛くて死んじゃったらどうするのさ?」
「うるさいわね!死んで貰っちゃ困るわよ!」
「え?」
弾鬼の声が一オクターブハネ上がる。
吾妻の時と同じように、春の到来を予期する弾鬼。だが、現実は小説よりも奇なものであり・・・・
「だいたいねぇ、取材一日目から死にかけで帰ってくるってどういう事よ!アンタねぇ、そんなに私に取材させたくないわけ?」
「はぁ?」
あぁ、やっぱりね・・・と、気落ちする弾鬼。はじめから期待しなければ良いだけの話だが。重ねて言うが・・彼も、やはり男で人間なのだ。
341番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/08(水) 22:23:53 ID:ii4KIkhk0
「私だって妖怪見たかったんだから!なのに危険だ!とか一人で行くなんてズルイ!」
「あのなぁ。この状態見てソレ言う?お前が着いてきたら、確実に死んでるよこのバカ!」
「うるさいわよ!半死人に言われたくないわよ!この大バカ!」
「あぁ〜もう!だまれ、メガトン馬鹿!」
小学生の言い合いを続けながらも、千明は血をふき取ってゆく。背中を拭き終わり、前面へと移動する。
弾鬼の目の前に座り込む位置あいだ。
「アンタこそ怪我人なら、らしく大人しくしてなさいこの、超ばか」
「んだとぉ!?この貧乳!」
グリッ!
「あだだだだだだだだだ!」
千明はその言葉を聞くやいなや、タオルを肩口の傷に捻り込んだ。本気の悲鳴を上げる弾鬼に千明はさらに力をこめる。
「ちょっとぉ・・あいてて・・・やめろって・・・あだぁぁぁ」
「だぁ〜れぇ〜が貧相だって・・・証拠も無く言うんじゃないわよ!」
弾鬼は慌てて千明から離れると、本気で構えた。身を屈め、右手を軽く地面に、左手を水平に・・・例の構え方である。
対する千明はタオルを握り締め・・・飛び掛らん勢いだ。
「待て!おっ・・・落ち着け!根拠なら有る!」
弾鬼は右手をゆっくり上げて・・千明の胸元を・・指し示す。
先ほど水をかぶってしまった時だろう。素肌にぴったりと張り付いて、体のラインをはっきりと浮かび上がらせてしまっている。
そのラインは・・・彼女と同年代の女性に比べ僅かに劣って・・・いた。
千明は弾鬼の指先をなぞるように見た。その指す点は自らの胸。
「・・・・・・・・っ・・・・・・ぅぅぅぅぅぅぅ」
ばっ!と両手で隠し、瞳には悔し涙を浮かべて・・・・弾鬼へと歩み寄る。
「・・・ま、まて・・今のは言い過ぎた・・悪かった!」
只ならぬ殺気を感じたか・・・弾鬼は、一転して謝罪を始める。この後には、再びヤマアラシの退治をしなければ成らない。ここで、殺されるワケには行かないのだ。
「こ・・のぉおお」
右手を震わせて・・・・弾鬼の間合いへと入る。
「変態ヤロ〜〜!!!!!!」
地を駆ける千明。それから本気で逃げる弾鬼。
空中にステルスで隠れている浅葱鷲。千明に付けられている、監視用のワシである。浅葱鷲はその二人を追いかけるように高度を落とし、追走する。
342番外編『仮面ライダー弾鬼』三之巻:2006/02/08(水) 22:25:37 ID:ii4KIkhk0
後におやっさんや、香須実、日菜佳。ヒビキやみどり。果てはザンキやサバキにまでこの映像を見られてしまい、ダンキは暫くの間からかいの対象とされる事となった。
傍から見れば唯の喧嘩だが、彼らにとっては意味の有る喧嘩なのだ。
一度目は偶然の出会い。
二度目は偶然の再会。
千明にとって弾鬼は運命人と言っても過言ではないだろう。
ならば三度目は必然の再会。
二人が顔を着き合わせたのは今日で四度目。
四度目は予定された再会。
僅か四回で彼らは感情をぶつけるまでの間柄となった。それは決して珍しい事でもないだろう。
だが、確実にその繋がりは深まっている。
「悪かったから!勘弁してくれ〜!あぁ〜もう!」
「殺ス!!」
取材一日目・・・戦いは途中だと言うのに、ダンキと千明は盛大な追いかけっこをぶっ倒れるまで続けた。

        三之巻『深まる繋がり』(後)  終
343凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/08(水) 22:32:12 ID:VJfK0vHm0
リアルタイムで弾鬼SSキター
相変わらずな弾鬼さんが最高です、GJ!
ワイルドに戦う姿は想像しただけで圧巻ですよ。
四之巻も楽しみに待ってます〜。
344鋭鬼SSの中の人:2006/02/09(木) 02:00:00 ID:8PuJ/N4T0
>>333
クロスオーバーでも職人さんの好きなように書いても、どっちでも良いんじゃないかな?
一応、俺の中の東北・北海道支部はこんな設定です(即興で書き起こしたから、誤字脱字は見逃して


――地名――

【霊山】
猛士東北支部の本拠地。現在の福島県伊達市〜相馬市
その昔、従二位鎮守府将軍・北畠顕家が多賀城府から東北経営の中心に移した陸奥国府としての伝統がある
東北支部としては明らかに南に偏りすぎてる為、何度か支部移転の案もあがるが
基本的に各県に鬼は散らばってるので、指令を出すだけなら案外地理的にも問題が無いのでそのまま続いている
情報化社会の恩恵と言えるだろう
引退した十六代目煌鬼がアドバイザーとして気儘に後進の育成をしたりしている


【恐山】
日本三大霊場として有名な青森県下北半島にある霊山。曹洞宗(東北で一番多い宗派だそうです)の円仁が開祖
鬼石の産地として、又、鬼が鍛錬の為に使われている
魔化魍・天狗や雪女も多数棲息してる為、半端な鬼は立ち入りが禁止されてる(もっとも、天狗や雪女の多くは無害であるが)



345鋭鬼SSの中の人:2006/02/09(木) 02:01:32 ID:8PuJ/N4T0
――歴史――

【蝦夷の技術】
吉野を本拠として活動する猛士の陰陽技術の体系は大和朝廷や出雲大社に端を発している
しかし、アニミズムを奉じる蝦夷の民はより直感的に鬼やその他を力を使う才能があった
また、古くから渤海国からの交流がある東北地方は独自に音撃武器や変身、サポート器具を改良している
現在では散逸された技術も多く、それらは中世に於いて北方最大の港と呼ばれた十三湊から発掘される文献にあることが多い
又、鬼石等の産地が恐山にあることなどから、東北支部に置ける開発支局は霊山の他に青森にも置かれている


【北海道支部】
これも又、東北と同じく独自の歴史と体系を持つ支部である
(九州もかっては独自の技術を持っていたと思われるが、大和朝廷に吸収されたのが早く、その技術は今に伝わってない)
北海道支部は代々の凍鬼が支部長としての任についている
この人事は吉野の意思というよりは、北海道での実力者である凍鬼に追認という形で支部長の役を与えてる面が強い
が、今回初めて凍鬼ではない人間が北海道支部長についた(和泉稲妻→裁鬼SS四十ニ之巻参照)
この人事に関しては吉野による北海道支部の乗っ取りであると憤慨する者も多い



――東北・北海道支部の猛士たち――

【斗威鬼】(トイキ)
本名・冬木藤千代(フユキ フジチヨ)(旧姓)。北海道支部(出身は秋田)の太鼓の鬼だが、現在産休中。吹雪鬼の姉にして、十四代目凍鬼の妻
奮鬼の名前を譲った弟子が一人いる。豪放磊落、酒豪で大食い、結構我が儘、いい男と可愛い女の子が大好き
後先考えない様でいて、それなりに年長者としての配慮もある。黙っていれば吹雪鬼より美人
冬木家は名家だが鬼の家系ではなく、斗威鬼・吹雪鬼・不敵鬼の三姉妹は偶然にも別々に鬼になった
 ◆装備  音撃鼓『北斗』  音撃棒『破軍』   (北斗七星と、その星の一つ破軍星から)
 ◆必殺音撃  音撃打『獅子雷綴』(シシイカズチツヅレ)  (綴子大太鼓より。獅子舞は太鼓関連の祭りとは縁が深いそうです)


346鋭鬼SSの中の人:2006/02/09(木) 02:03:23 ID:8PuJ/N4T0
【不敵鬼】(フテキ)
本名・冬木芙実(フユキ フミ)。東北支部の弦の鬼。弱冠15歳中学生鬼。弱冠の霊能力を持つ。二藍の体に紅梅のライン
東北や近畿以外ならエースを張れる実力(東北・近畿は呪詛的な土地であるためか魔化魍のレベルが高い。故に鬼も実力者が多い)
斗威鬼のことは「藤姉ぇ」、吹雪鬼のことは「お姉ちゃん」、凍鬼のことは「義兄ちゃん」、鋭鬼のことは「鋭鬼」と呼ぶ
鬼として天賦の才能を持つが、どこか浮世離れしてて何を考えてるか良く判らない。いきなりボソっと物事を口にするが
脈略の無いことは余り言わない(が、彼女を意思を読み解くのもまた難解である)。義兄である凍鬼には猫のように懐く
鬼としてはストイックかつ感情を挟まない仕事人な面があり、現在唯一の音劇鼓の『手打ち』を出来る鬼
 ◆装備     音撃震『割菱』     音撃弦『麒麟』
          音撃装『風林』(ゆがけ)   音撃鼓『火山』
         (“ゆがけ”とは弓を引くときに用いる韋手袋の事。東北支部の独自開発。ネーミングは全て北畠顕家関連から。ダッテダイスキナンダモン…)
 ◆必殺音撃  音撃斬『龍面残夢』(リュウメンザンム)  音撃打『蘭陵円舞』(ランリョウエンブ)


【凍鬼】(トウキ)
第十四代目凍鬼。前北海道支部長で斗威鬼の旦那
外見、装備、音撃は全て七人の戦鬼の凍鬼に準拠します(つまり斬鬼さんソックリな外見)
気品があり、丁寧だが持って回ったような言い方をする。また思慮深く、あっさりと代々の北海道支部長の席を譲った
(イメージはガンダムのシャア=アズナブルな感じです)


【浪岡ナツキ】(ナミオカナツキ)
不敵鬼の同級生にしてサポーター。吹雪鬼に命を助けられたことがあり、それ以降吹雪鬼を「お姉さま」と慕い、弟子に志願するも
当の吹雪鬼に弟子を取る気持ちが無く、また吹雪鬼自身が転任の多い身であるため、彼女を弟子にして連れて行く訳にはいかないと考えている
いつか吹雪鬼の弟子になるために不敵鬼のサポーターとして雌伏、吹雪鬼が諦めさせようと繰り出す難題を数々クリアーする根性を見せる


【安東朝日】(アンドウアサヒ)
東北支部副支部長にして技術部開発局長。婆娑羅な感じな男だが、木暮さんとは旧知の仲(仮)
(まだ鋭鬼SSでも登場してない人物です。これから先も出るかどうか……)


347高鬼SS作者:2006/02/09(木) 03:09:52 ID:C5Mk77fT0
以前書いた通り「霧裂く鬼」以降の話は考えておらず、このままROMに戻るつもりでした。
ですが「霧裂く鬼」を書いている最中、四国での話はもっと膨らませられるのではと思い、また書き始めてしまいました。

上で議論されていた事に関してですが、高鬼SSは一話完結でしかも時系列もバラバラになっています(「〜歌」では夏だったのに「〜山」ではその年の春)。
ですので、このように予め書き込みをした上で投下、予告の類は無しという形式を取らせていただきます(場合によっては後書きのようなものを入れるかもしれません)。

それでは、夜分遅くに申し訳ありませんが投下させていただきます。明日は忙しくなりそうなので、今じゃないと投下できるか分からないもので……。

>>346
その安東という人物に関して、ご迷惑でなければこちらの方で少し触れておきましょうか?
348仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:11:58 ID:C5Mk77fT0
1872年、十二月四日、大西洋。
その日の朝、イギリスのグラチア号が海原に漂う一隻の帆船を発見した。その船内に乗り込んでみると、奇妙な事に乗員は誰一人としていなかった。
だがもっと奇妙だったのは船内の様子である。
船長室のテーブルに置かれた朝食は食べかけのままで、コーヒーからはまだ湯気が立っていた。
調理室では火にかけた鍋がグツグツと煮立っており、水夫の部屋には食べかけの料理がそっくりそのまま残っていた。
洗面所では、あたかも今までヒゲを剃っていたかのような形跡が、別の水夫の部屋には血のついたナイフが置いてあった。
そして上記の船長室にあった航海日誌には、十二月四日の記述が途中のまま走り書きされていた。
後の調べで、この船には九人の乗組員がいた事が判明した。だが、その九人の行方は不明であり、死体さえも見つからなかった。
世に言う「マリー・セレスト号事件」である。

1962年、三月二十四日、フロリダ沖。
数名の高校生が、霧の立ち込む中ダイビングをしていた最中に何者かに襲われ、死亡した。
生存者の話によると、「蛇のような頭をした怪物に襲われ、皆食べられた」のだという。
怪物の正体は、古代に絶滅したはずの海竜の一種ではないかと言われている。

海にはまだまだ未知な出来事、不思議な出来事が存在する。
今回は、そんな海にまつわるお話である……。
349仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:13:20 ID:C5Mk77fT0
1976年、葉月。
高知県桂浜沖。
鰹釣りの漁船が、三陸沿岸での漁を終え、地元高知へと戻ってきていた。波も風も穏やかな、夏の日の午後である。
船長と思しき、色黒の四十代ぐらいの男性が、乗組員の一人に笑いながら今回の漁の成果について話す。大量の鰹が釣れた。稀に見る釣果である。皆船長と同じで満面の笑みを浮かべていた。
だが一人、白髪の、いかにも「海の男」といった感じの年季を感じさせる老人だけが、神妙な面持ちでいた。船長が声を掛ける。
老人曰く、こういうやけに魚が獲れる時は昔からあまり良くない事が起こるというのだ。
そんなものは迷信だと、笑いながら船長は老人の背中を叩いた。そして再び仲間達の下へと戻り談笑を始める。
と、乗組員の一人が漁船の後方を見て「あっ」と声を上げた。他の乗組員も何事かと後方を注視した。
霧が出ていたのだ。いつの間にか。
そしてそこには、一隻の古びた船が浮かんでいた。それは余りにも異様な船であった。
まず、こんな船が航海出来るのかと言うぐらいボロボロである。その船体は、こんな穏やかな海なのにびしょびしょに濡れている。まるで嵐にでも遭ったかのように……。
そして船の甲板には、乗組員の姿は一人も確認する事が出来なかった。というよりも、生きている者の気配が皆無であった。
気味が悪かった。
屈強な海の男達も肝を震え上がらせた。
船長の号令により、漁船が速度を上げる。しばらく進んで、もう引き離しただろうと思い後ろを見ると……。
件の幽霊船はぴったりと後ろにくっついたままだった。むしろ、加速する前よりも両者の距離は縮まっているように見える。
恐怖心が船員達を支配した。一人、あの老人だけが一心に念仏を唱え続けていた。
「船幽霊じゃ……、船幽霊……」
べちゃりっ……。
漁船の船縁に手が掛かった。海中からである。一つ、また一つと手は増えていく。
漁師達の悲鳴が木霊する中、声が、抑揚の無い奇妙な声が聞こえてきた。
「我が子の……」「食事になっていただけませんか……」
数時間後、大量の鰹を載せた漁船が一隻、波間に漂っていた。乗組員は誰一人として残っていなかった……。
350仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:16:13 ID:C5Mk77fT0
フナユウレイが現れた。その報告を受けた四国支部は、出向中のコウキ、キリサキ、ウズマキの三名を桂浜へと派遣した。小松曰く、さらにもう一人助っ人を用意しているらしい。
これ程の人数で挑むには理由がある。相手は童子と姫だけでなく、水から兵隊を多数生み出してくる。さらに本体は基本的に沈没船の中に潜り込んでいる。一人だけでは骨が折れる相手なのだ。
桂浜へと到着した三人は、早速式王子を打って調査を行い始めた。
「そういや桂浜はまだ案内していなかったな」
キリサキがコウキに尋ねる。
「折角だからしばらく散歩してこいよ。上の方が公園になってるからさ。水族館もあるけど、行くなら早めにな」
351仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:17:39 ID:C5Mk77fT0
キリサキに言われるままに、コウキは散歩に向かった。半ば強引に追いやられた感じだった。キリサキなりの善意の表れだったのだろう。そう思うと断るのも悪い気がしたのだ。
闘犬センター脇の石段を登る。そこは竜頭岬。坂本龍馬の銅像が建っていた。しばらく像を眺めてから、コウキは岬の先端にある石段を下る。そこからは、目の前に広がる、まるで箱庭のような桂浜の風景を目の当たりにする事が出来た。
と、背後から子どもの声が聞こえてきた。今日は平日で観光客はいない。近所の子だろうか。もう一度石段を登り確認する。
「!」
その子どもは、欄干から身を乗り出して遊んでいた。高さがある。落ちたらただでは済むまい。コウキは慌てて駆け出す。だが、子どもの体は見事に傾いて欄干の下へ……。
と、次の瞬間、落ちかけた子どもの洋服の襟首を一人の女性が掴んで引き上げていた。母親だろうか。さらに一人の女性が何か喚きながら子どもの下へ駆け寄ってくる。どうやらこちらが母親らしい。母親は女性にひとしきり礼を言うと、子どもの手を引いて立ち去っていった。
コウキはその女性の外見をつぶさに観察した。タイトなジーンズを穿いた、長身痩躯の女性である。だが、引き締まった二の腕を見れば、その女性が体を鍛えているのは明らかである。
長い黒髪を後ろで束ね、化粧をしていないにも拘らず目鼻立ちの整った顔をしている。一言で言えば「器量良し」だ。
女性はこちらの方を一瞥すると、軽く会釈してそのまま立ち去っていった。その時見せた微笑は、爽やかな風を纏うかのようであった。
と、赤い色をした鷲の式王子がコウキの下へ飛んできた。発見の合図である。
「案外早く見つかったな」
コウキは浜へと向かって石段を駆け下りていった。
352仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:20:36 ID:C5Mk77fT0
チャーターした一台の大きな漁船が浜辺に泊められていた。ウズマキが運転するらしい。
「海上を飛ぶ魔化魍と戦う時は必要になりますから、船舶免許」
そう言うとウズマキは船を動かす準備に向かう。
「ところで親父さんが言っていた助っ人とは一体誰なんだい?」
コウキの問いにキリサキが答える。
「実を言うと俺も分からねえ。今の時期、手の空いてる奴が他にいたかなぁ」
いつでも出航可能ですよ、そう言いながらウズマキが二人の前に姿を見せる。後はその助っ人を待つだけだ。
と、そこへ一人の人物がやって来た。
「あら?」
「あなたは、さっきの……」
さっきの女性である。
「あっ!コンペキさーん!」
「コンペキ!お前怪我治ったのかよ!」
ウズマキが女性に手を振り、キリサキが驚いて女性に尋ねる。
コウキもまた驚きを隠せなかった。どうやらこの女性こそが四国支部最強の鬼、コンペキその人らしい。
353仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:22:02 ID:C5Mk77fT0
桂浜沖を一台の漁船が軽快に走っている。乗っているのは四人の男女、四国支部の鬼である。
「コウキさんには私の不在中に色々とご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
そう言って深々と頭を下げるコンペキを見てコウキは思う。
(この女性が四国支部最強の鬼……)
話ではコンペキは少林寺拳法の達人だという。コウキは酒の席でよくキリサキにコンペキの武勇伝を聞かされていた。そこから、コウキは勝手にコンペキの事を逞しい男性だと思い込んでいたのである。ところがいざ蓋を開けてみれば、出てきたのはこの美女だ。
人は見かけにはよらないとよく言ったものである。
本来、職場仲間が復帰したのだ。喜んでしかりだろう。事実、ウズマキはさっきから浮かれ気分である。……まあ彼の場合はそれ以上の思いがコンペキに対してあるようだが。問題はキリサキである。さっきから座ったままじっと海を眺めている。
コウキには彼の気持ちがよくわかった。
コウキが四国支部にいるのは、あくまでもコンペキの代理としてである。そのコンペキが復帰したのだ。それはコウキの関西支部への帰還を意味している。
コウキには、関西にはみどりという理解者はいても、心許せる友など誰もいない。一般的に見て「変わり者」と称される性格故である。かと言って自分の性格、信念を曲げるというのは彼自身考えられなかった。
キリサキも同じである。どちらかと言うと保守的な人間の多い今の猛士内において、彼もやはり浮いた存在には違いなかった。そんな二人が互いに惹かれるものを見出したのも自然な流れだったのだろう。
今では二人は盟友である。だが、今二人の目の前にはどうしようもない現実が立ちはだかっているのだ。キリサキも無理を言う程聞き分けの無い男ではない。だから今、彼は自分の心に整理をつけようと必死なのだろう。
354仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:24:35 ID:C5Mk77fT0
船はかなり沖合に出た。桂浜から見れば、この船など水平線にぽつんと見える程度であろう。
「来たわね……」
コンペキの言葉通り、目の前に霧が立ち込め、その中からフナユウレイが姿を現した。
「コンペキ、ブランクあるからって足引っ張るなよ」
「そう思うならフォローして下さいね、キリサキさん」
キリサキもいつもの戦士の顔に戻っている。
コンペキが音叉を取り出し、腕に当ててから額へと翳した。彼女の周りを煌く光の粒が無数に覆っていく。あれは水晶の欠片だ。
「はぁぁぁぁぁぁ……はあっ!」
気合いと共にコンペキが体を覆った水晶片を弾き飛ばす。仮面ライダー紺碧鬼の誕生だ。
紺碧色の隈取、聳える二本角、ここまでは鬼としての特徴をきちんと踏まえている。だが、唯一の例外は彼女の頭部だ。
……髪が生えているのである。長く、黒い髪が。
今までに色々な鬼を見てきたコウキも、これには度肝を抜かれた。変身が不完全なのではない。意図的にそうしている節がある。
「何ボケーっとしてやがる!俺達も行くぜ!」
「宵闇」を手にしたキリサキが鬼弦を弾いた。続けてウズマキも鬼笛を吹き、コウキも音叉を叩いて額に翳した。
355仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:26:47 ID:C5Mk77fT0
船上に姿を現した四人の鬼に、海中から現れた無数の水人形が襲い掛かる。指揮を取るのはフナユウレイの怪童子と妖姫だ。群がる水人形をちぎっては投げ、ちぎっては投げて海へと叩き落す四人の鬼。
「指揮系統を潰すぞ!うおおおおおお!」
「斜陽」を装着し、刃を展開した「宵闇」で水人形を次々と薙ぎ倒しながら怪童子へと突撃する霧咲鬼。
「あら霧咲鬼さん、いつの間に新型を支給されたの?」
無駄の無い動きで水人形の攻撃をかわし、海へと叩き落としながら紺碧鬼が尋ねる。そんな彼女に向かって妖姫が跳びかかっていった。
「ああ!紺碧鬼さぁん!」
渦巻鬼が「潮騒」で援護を試みるも、水人形に組み付かれ銃口を向ける事が出来ない。
「大丈夫よ渦巻鬼くん。こんな奴……」
音撃棒・乙女を構えながら紺碧鬼が答える。やはり華麗な身のこなしで妖姫の攻撃をかわし、的確に打撃を与えていく紺碧鬼。だが背後、そして左右から水人形に跳びかかられ、身動きを封じられたばかりか「乙女」を落としてしまう。
高鬼が加勢に向かおうとするが、こちらも水人形に行く手を阻まれて動けない。じりじりと紺碧鬼に近づいていく妖姫。と、その時。
「鬼闘術・舞踏髪!」
なんと、紺碧鬼の長い黒髪がまるで生き物の様に伸び、動き、甲板に転がった二本の「乙女」を拾い上げたのである。
「はあっ!」
号令とともに髪を操り「乙女」で妖姫を滅多打ちにする紺碧鬼。その間、本体は纏わり付いていた水人形を弾き飛ばしていく。そして髪の毛を元の長さに戻し「乙女」を両手に持つと。
「たあっ!」
息も吐かせぬ連続攻撃を叩き込んでいく。
とどめに強烈なハイキックを受け、妖姫は海上へと吹っ飛ばされ、そのまま爆散した。
「見たか高鬼?あれが紺碧鬼の『舞踏髪』だ。あそこまで自在に自分の肉体を動かせる奴なんて日本広しと言えど、そうはいないだろ」
霧咲鬼が「宵闇」の刃で怪童子の体を貫きながらそう告げる。刹那、怪童子の体も爆発し、水と化した。
そう言えば、以前読んだ資料によると昔愛媛県宇和島地方に「針女」という妖怪が出たという。その妖怪は髪の毛を自由自在に操ったというのだ。
ひょっとしたら昔の人が、紺碧鬼のように「舞踏髪」を使う女の鬼を見てそんな妖怪を創造したのかもしれない、そんな事を高鬼は思った。
356仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:28:40 ID:C5Mk77fT0
「やりましたね紺碧鬼さん!」
渦巻鬼が紺碧鬼の下へと駆け寄る。だが当の紺碧鬼はと言うと。
「ありがとね、渦巻鬼くん。……それより霧咲鬼さんこそ大丈夫?」
「馬鹿、復帰したての奴に心配される程俺は落ちちゃいねえぞ!」
「ふふふ、ゴメンね」
一人取り残される渦巻鬼。それを見ていた高鬼は、この三人の関係を瞬時に理解した。少なくとも霧咲鬼に関しては自分が四国を離れても大丈夫だろう。
「さてと、そろそろ親玉を仕留めないとな」
霧咲鬼が海上に漂うフナユウレイを見て言う。
「先行するぜ!」
そう言うや否や、霧咲鬼は船上から海へと飛び込んだ。だが彼の体が海に沈む事は無かった。……そのまま海上を走っているのだ。霧咲鬼の得意とする、鬼闘術・水駆けだ。「宵闇」を片手にフナユウレイ目掛けてまっしぐらに駆けていく。
「私達も行きましょう。渦巻鬼くん、船を近づけて!」
「アイアイサー!」
船がフナユウレイに向かって突き進んでいく。
霧咲鬼がフナユウレイの甲板に跳び移った。と同時に甲板を突き破って蛇のような巨大な顔が飛び出してくる。フナユウレイの本体だ。
フナユウレイはヤドカリの様に古い沈没船に住みつき、その中で成長する。最終的にはその船いっぱいに成長するのだが、この個体はまだ首を出せる程の余裕があるらしい。つまりは成長しきっていないという事だ。
霧咲鬼は、甲板の穴が開いている場所目掛け跳び込んだ。中から爆砕するつもりだ。一方高鬼達を乗せた漁船も、フナユウレイの横にぴったりと張り付いた。
船内に入り込んだ霧咲鬼をフナユウレイ本体の頭が霧を吹きつけながら襲って来る。
「馬鹿かてめえは!俺の名は霧咲鬼!霧を裂く鬼だ!」
「宵闇」を使い、視界を遮る霧を払っていく。「宵闇」の刃がフナユウレイ本体の頭に突き刺さった。外では高鬼が甲板に跳び移り「紅蓮」を、紺碧鬼が船体側面に音撃鼓・結晶を貼り付けていた。
357仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:31:12 ID:C5Mk77fT0
再び船内。
「そして俺は、霧の中に花を咲かす鬼だ!爆発という名のな!」
弦を掻き鳴らす霧咲鬼。
「……来た!中で霧咲鬼さんが音撃を使っているわ!」
「よし!我々も行くぞ!」
外の紺碧鬼と高鬼も、それぞれの音撃棒を構える。
「音撃斬・天威無法!ファイヤー!」
「音撃打・惑乱鮮花!」
「音撃打・炎舞灰燼!」
掻き鳴らされる弦が、打ち鳴らされる太鼓が、清めの音を共鳴させフナユウレイの巨体を包んでいく。そして。
爆発。
爆発と同時に漁船に飛び乗る高鬼。ふと横にいる紺碧鬼を見やると……。
爆風でたなびく黒髪が、日光を弾いてきらきらと輝く水飛沫を纏い、鬼面の女性を美しく彩っていた。その風景に高鬼も渦巻鬼もしばし見とれていた。
「よう、終わったな」
ざばりと音を立てて、霧咲鬼が海中から船内に上がってきた。
「先ぱ……」
「霧咲鬼さん!大丈夫でしたか!?」
渦巻鬼を押しのけて、紺碧鬼が霧咲鬼に駆け寄る。
「へっ、お前こそブランクの方は大丈夫のようだな」
「それは……勿論霧咲鬼さんがサポートしてくれたお陰です」
「俺はサポートなんてしてないぜ。お前の実力だ」
いつの間にか周囲が見えなくなっている二人の鬼を前にして、とりあえず高鬼は、一人立ちすくむ渦巻鬼の背中をぽんぽんと叩いてやった。
358仮面ライダー高鬼「紺碧の海」:2006/02/09(木) 03:33:00 ID:C5Mk77fT0
翌日、四国支部ではコンペキの復帰祝いとコウキの送別会を兼ねて、ちょっとした宴会が開かれた。その席上で、ウズマキを無理矢理付き合わせて大酒を飲んでいるキリサキに、コウキは告げた。
「お別れだな、キリサキ」
「へっ。お前の顔が見れなくなるのは寂しいっちゃ寂しいが、なぁに心配すんな。すぐに慣れるさ」
「キリサキ……。俺達はいつまでも親友だぞ」
「何を言ってやがる!そんなの再確認するまでもねえ!さあ飲め!今夜はお前とコンペキが主役だからな!」
その言葉を聞いて、コウキは心の底から安堵し、笑顔を見せた。
「よし飲もう!まめに手紙を書いて送るからな、返事を書けよ!」
「俺は筆不精なんだ、約束出来ねえぞ!」
「それと、コンペキくんを大事にしてやれよ」
「……あん?何か言ったか?」
その日の夜は、コウキにとって人生で最も愉快な夜だったのではないだろうか。
その後、吉野本部開発局長となったコウキ=小暮は、キリサキとコンペキが結婚したと風の噂で聞いた。さらにその後、キリサキが小松の後を継ぎ四国支部長になったとも聞いた。
何だかんだで再会の機会に恵まれず、二人が再び顔を合わせたのはあれから実に三十年後の事であった。 了
359名無しより愛をこめて:2006/02/09(木) 03:54:01 ID:zxPsZgDs0
うおおおお!!!!高鬼職人さんGJッス!
・・・なるほどねえ!古来より「女の髪は船をも繋ぐ」ってぐらい
強いものとされてきたけど、それを使う女鬼ねえ!
しかも少林寺の使い手とあっちゃ二代目管長の宗道臣(開祖の娘さんね)と
イメージが重なりことさらGJです!
360狂鬼SS筆者:2006/02/09(木) 08:00:48 ID:PIG16pf+0
皆さんご意見ありがとうございました!
結論 
●投下規制はしない。
●フォーマットはまとめサイトの方式で。
●話の終了のサインを入れとく。
こんな感じですね?
361響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第九話:2006/02/09(木) 09:45:47 ID:VSMQ6cup0
272から続き、(285は番外編)
第九話 父が見た風景
「夜行性の魔化魍?」
ヤマアラシを追ってキャンプを張っているヒビキの元に日菜佳から電話があった。
元々、魔化魍は夜になると強くなっていた、
しかし、最近は夜中に魔化魍の出る場所に人間が近づくことが少なくなった為、
自然と昼間に活動することが多くなってきた。
「分かった、気をつけるよ。」ヒビキは電話を切った。
「そんなに危ないんですか?」電話を切るなりヒビキに質問をした。
「まあ、強いけどな一体ぐらいならどうって事はないよ。」
「夜に襲われることなんてあるんですね?」
「前に、新潟の紫鬼が襲われたことがあるらしい。」
京介は川原にある一般人のキャンプが気になった。
一応、今夜は交代で寝る事にした。

正確な時間は定かではなかったが、深夜の三時ぐらいは回っていた。
ヒビキは一人焚き火をみつめながら、京介に免許皆伝した時の名前を考えていた。
キラメキ キサラキ キュウキ キリサキ キツツキ
もうすぐ、京介が自分の手から離れる事を感じ取っていた。
はっきりとは聞いていなかったが、京介の鬼に対する意識は、
昔とは違うものになり始めている。
それが京介の口から出たとき、初めて本当の鬼になれる。
ヒビキはうれしくも、少しの寂しさも感じていた…。
そんなヒビキの胸中を察するかのようにコーヒーもすっかり冷めていた。
ヒビキはそれを捨て、新たに淹れようかと思った。
しかし、その時、川の反対側の森からヤマアラシが現れた。
362響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第九話:2006/02/09(木) 09:46:30 ID:VSMQ6cup0
「夜遊びするやつは懲らしめないとな。」
京介もヤマアラシに気付きテントから飛び出した。
「ヒビキさん!」「心配すんな俺がやる。」
ヒビキは音叉を手で鳴らし、額に当て変身すると川の反対まで一気に飛び移った。
まだ、針の成長しきってないヤマアラシは尻尾で響鬼を攻撃した。
単調な攻撃はあっさり読まれ、軽やかに響鬼は交わす。
成長しきってないヤマアラシにしては強かったが、響鬼の相手にはならなかった。
響鬼は尻尾を掴み二〜三回程ヤマアラシを地面に叩きつけると腹に乗り音撃鼓をセットする。
「ハアッ!タアッ!」響鬼は全力で音撃を放つ。
京介はもう終わったと安心した。
だが、自分達の居る川原の森から今度は一回り大きいヤマアラシが現れた。
大きな振動にキャンプに来ていた人たちは目を覚まし叫んだ!
「なに!」新しいヤマアラシに気を取られてしまった響鬼は小さいヤマアラシに振り落とされる。
京介はすぐさまアカネタカを起動させ、ヤマアラシを攻撃した。
ヤマアラシは尻尾でアカネタカを叩き落し、京介に針を飛ばした。
「ちっ!」京介は間一髪でそれを避けた。
「そういえば、この時期でも成体になってるのもいるってバンキさんが言ってたな。」
ありったけのディスクを起動させるが、夜のヤマアラシの前に虫同然に扱われた。
それでも人を非難させるだけの時間稼ぎにはなった。
対岸の響鬼も体制を整え、再びヤマアラシを清めはじめた。
だが、京介の目に映ったのは逃げ遅れて転んでいる子供の姿だった。
小さいヤマアラシを倒した響鬼もそれに気付き走り出した。
京介はヤマアラシが気付かないうちに助けようと走り出した。
しかし、その行動が裏目にでヤマアラシは子供に気付いてしまった。
「まずい!」響鬼はあせった。
走る京介は音叉を握った。
363響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第九話:2006/02/09(木) 09:48:06 ID:VSMQ6cup0
一瞬だけ躊躇したが、すぐさま音叉をならして、額にかざした。
燃え盛る火炎と共に四本角の白い鬼が現れる。
まだ間に合う!
子供は目の前にいた大きな化け物に踏み潰されると思って目をつぶった。
だが、何時まで経ってもつぶされない。目を開くと白い怪物が大きな化け物の足を支えていた。
「はやく逃げて!」子供は夢中で逃げ出した。
子供が逃げたことを確認すると、京介変身体はそのまま力いっぱい押した。
しかし、びくともしない。「やばいっ」京介変身体はとっさに火を吐いた。
ヤマアラシは燃え上がった炎を消そうと川に大慌てで逃げる。
しかし、逃げた先には装甲響鬼が待ち構えてた。
「鬼神覚声」響鬼は構えた。
「はあ!」響鬼の声は増幅され音撃としてヤマアラシに響き、ヤマアラシは砕け散った。
「…助かった。」京介は砕け散るヤマアラシを見届け、
親元に無事に帰る子供の方を見た。泣きながら抱きしめあう親子の姿を見ていると幸せな気分になった。
これを見たかったのかな?
命を投げ出してまで守る理由をほんの少しだけ理解できたような気がした。
364響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第九話:2006/02/09(木) 09:49:16 ID:VSMQ6cup0
京介変身体は顔だけ変身を解除すると、響鬼に近寄った。
「すいません、変身してしまいました。」京介は深々と頭を下げた。
響鬼も顔だけ変身を解除して、京介を見つめ、静かに話し始める。
「破門されるとは思わなかったのか?」
「そう思ってためらいました…。」
京介はヒビキの目を見つめていった。
「でも、助けなきゃいけないと思ったら、気がついた時には変身してました。」
「これで破門なんだぞ、つらくはないのか?」
「つらいです。でも、後悔はしてません。」
ヒビキは目を逸らした。
「そうか…。」
「でも、最後に父さんを超えることができました。」
「ヒビキさん、今までありがとうございました。」
もう一度、京介は深々と頭を下げた。
ヒビキはふぅっとため息をついた。
そして、お辞儀をしている京介に言った。
「お前は父さんを超えたつもりだろうけど、きっとまだ超えていない。」
「…わかっています。」
「やっと、近づいただけだ。いや、父さんが見ていた方角を向けただけだ。」「…。」
「でも、やっとその向きがわかったんだ。その先も見たいよな?」「…はい。」
下を向いたままの京介に響鬼は決断を下した。
「今、ここで、俺は桐矢京介を破門する。」「…。」
「そして今から新しい桐矢京介を弟子にする。」
そう言うとヒビキはキャンプの方に戻り始めた。
京介は静かに泣いていた。あふれる感情を抑え切れなった。
ヒビキは振り返らずに言う。
「どうした?置いてくぞ?」
京介は涙を拭いた。そして、「はい!」と大きく返事するとヒビキの方に走っていった。
気がつくと目の前に朝日が昇り始め、新しい二人を照らしていた。
次回 迫る闇(仮)
365名無しより愛をこめて:2006/02/09(木) 15:07:11 ID:1Cw1nT3X0
>鋭鬼ssの設定
原作での設定が少ない以上オリジナル設定が必要なのはわかるが、まずオリジナルありきになってないか心配だ
特に斗威鬼、不敵鬼の性格、能力設定とか
15歳の女子中学生が年中鍛えてるはずの響鬼や裁鬼さんと同等なの?
なんかもう俺キャラマンセーなオナニーに見える

気に障ったら所詮名無しの言うこととスルーして欲しい。
366名無しより愛をこめて:2006/02/09(木) 15:26:22 ID:zxPsZgDs0
>>365
漏れは現設定でいいと思う!
先天的な天賦の才の持ち主ってヤシは居るわけで
不敵鬼がいわゆるエスパー少女だったら鬼になるのは必然じゃね?

で、普段が優等生的なんだったらどうかと思うが
コミュニケーションの下手さや思いやりに欠ける言動で
ああ、普段の生活を犠牲にして修行してきたんだと想像できるんだが、どうだろう?
367名無しより愛をこめて:2006/02/09(木) 19:03:53 ID:8LDfAYwDO
漏れも不敵鬼の立ち回りにはちと引っ掛かるものは感じたわな。

どうしてもオリキャラ出すとそっちの方にパワーバランスが片寄る傾向(妙に万能だったり全てを見透かしていたり設定を無視した強さだったり)があるよな。

確かに自分のキャラだから動かしやすいのかもしれないが、あくまでメインとなるキャラがいたり、ベースとなる話の中のオリキャラなのだから、名脇役として(石割君みたいに)動いてほしいわな。

上の戯言をどう捕えるかは職人さんの自由だけどね。
368366:2006/02/09(木) 19:27:10 ID:zxPsZgDs0
漏れのレスで気分を害したのなら謝る。
ただ、鋭鬼の成長=吹雪鬼及びその身内に認められるって展開を考えると
不敵鬼が強いとかでハードルが高いことに必然性を感じるんだな。

あまり書いて、おまい等を白けさせたり職人さんの迷惑になってもすまないから
ROMに戻るよ!
369皇城の…の中身の人:2006/02/09(木) 19:29:46 ID:qm1USqTX0
書き手として少々。

整合性があればどのような設定でもかまわないと思います。
ただ、原作の作品世界を尊重するのであれば、
そこから「大きく(あえてこう付けます)」逸脱するような設定、
パワーバランスを崩す設定は避けるに越したことはないと思いました。

自分で書いていて怖くて怖くて(汗
370名無しより愛をこめて:2006/02/09(木) 19:40:17 ID:RTAy3umS0
>どうしてもオリキャラ出すとそっちの方にパワーバランスが片寄る傾向

これ激しく同意。 オリキャラの方が愛着があるし使いやすいのは判るけれど、あまりにオリキャラが活躍すると
しらける…というのは読み手にはあったりもする。
371凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/09(木) 19:57:44 ID:UZkEleiq0
>>鋭鬼SSの中の人

ご意見&設定ありがとうございます。
ここからどう発展させるかはもう少し考えてから決めることにします。
もし鋭鬼SSとリンクすることになった場合には、そちらの設定を使わせてもらうかもしれませんので、
その際になにかおかしな点などがありましたらご指摘よろしくおねがいします。

>>オリキャラ
難しいですね。やっぱり書き手としてはオリキャラに肩入れしてしまうところはありますし。
まぁ凱鬼の場合はもともと名前しか設定が存在しないのでほとんどオリキャラなわけで、その点では凱鬼SSはやりやすいわけですが。
不敵鬼の設定が少々周りを食っちゃってるかな? って感じはしないでもないです。
最短期間で鬼になった響鬼さんより凄い気が。
とまぁ色々書きましたが、設定を使わせてもらう身になるかもしれない者があまりとやかく言うべきではない気がするのでここらで俺は終わりにしておきます。
372名無しより愛をこめて:2006/02/09(木) 20:27:35 ID:8LDfAYwDO
不敵鬼の取った行動、立ち回りを斗威鬼が取ったり、
姉妹の年齢構成が違っていたり
(吹雪鬼が末っ子とか)
構成そのままで不敵鬼は鬼ではなく、
母親が鬼で(不敵鬼は母のサポーターとか)
母親が斗威鬼みたいな性格で、
SS中の不敵鬼のポジションを
斗威鬼が受け持つとかだったら
(鋭鬼、吹雪鬼より年上なキャラ)
あまり不自然さや
パワーバランスの崩れを感じさせることはなかったかもしれない。

気分を害したなら、私は謝る、スマンカッタ

長文スマソ
373皇城の…の中身の人:2006/02/09(木) 20:44:10 ID:qm1USqTX0
「今、ほしいんだよね君の…」

枕が光る!音が出る!
変身寝袋とメザマシベルトで徹夜と戦え!

「おもちゃ屋さんでまってるぜ!」

仮眠ライダー 鼾 変身セット!!


バンザイ
374皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 20:51:51 ID:qm1USqTX0


  参、


 晴海通り沿いに店を構える飯処『熊野路』。
 熊野路は郷土料理をベースとした定食が売りの店だ。店構えは定食屋の面持ちなのだが、中に入る
と純和風の割烹のような装丁で、初めての客は一瞬びっくりする。常連客(七割の市場関係者と三割の
地元民)はそのミスマッチさと落ち着きのある雰囲気がいいという──史郎もその常連客の一人である。
 まだ時間が早いせいか店内の客はまばらで、市場でも特に早くから出てきているような人間だけが演
歌をBGMに飯を食っており、それらの間を和服に割烹着姿の女将が忙しく動き回っていた。
 女将の服部初音は小柄な美人である。
 小さいなりに負けずにまめまめしく動くのと、動きがどこと無くペンギンのそれに似ているのとで、年より
一回り以上若く見られることが多い。当然のながら店の看板娘としても幅広い年齢層に人気があり、店の
売り上げに半端でない貢献をしている。
 この店の常連客の三割近くは『猛士』と呼ばれる集団の協力者である。初音もまた、その猛士の一人で
あった。 
 『猛士』とは『魔化魍』と戦う者たちの総称であり、当然、『鬼』もこれに含まれる。
 鬼達の活動スケジュールの管理、および作戦立案を担当する支部統括長の「王」を頂点として、その補
佐役を「金」、兵器開発や研究、医療行為担当を「銀」、魔化魍との戦闘を担当する者、すなわち鬼を「角」、
角の現地までの送迎要員を「飛車」と呼称している。
「飛車」はまた、現地で「角」のサポーターとして行動する場合も多い。
 以上が猛士の正式な構成員であり、各支部においてチームを組んで活動している。
 そして構成員ではないが、「歩」と呼ばれる情報提供などで間接的にサポートする一般人の協力者がお
り、猛士の活動において重要な役割を果たしている。また次代の鬼候補として修行に励む徒弟達を「と」と
呼び、こちらはその性質上、同時に「飛車」としての役割を同時に果たすことも少なくない。これらの構成員
が連携することで始めて、『猛士』は『猛士』として機能するのである。
>next
375皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 20:54:44 ID:qm1USqTX0
 この店の地下に猛士関東支部・中央特区、通称『御所守』の支部があった。
 中央特区とは中央・千代田の二区にあたる。すなわち、江戸城近辺と旧江戸湊に当たる区域だ。玉兼角
のハバキを頭として、銀兼角のヒラメキ、角のシブキ、金の初音、との史郎、同じくハバキの息子肇という面
子でこの激戦区をしのいでいた。


 先にも述べたが、魚重は筋金入りの零細企業である。
 零細企業が四世紀をまたいでつぶれずに営業を続けてこれたのにはわけがあった。
 歴史は、東京がまだ江戸であり徳川の開幕により街としての整備が漸く始まった頃にさかのぼる。
 この店の初代は伊賀の流れを組む忍びであった。
 今から約四百年前。江戸の街を作る際、徳川家康は土地の名のある盗賊を片端から捕らえ、罪を許す代
わりに江戸の街に入る者出る者達を監視しろと命じたという。当然、盗賊たちは死罪になるよりは、とその条
件をのんだわけだが、もともとが荒くれ者、おとなしく言うことを聴くとは思えない。自然、その者たちのまとめ
役と監視役を措くという考えに行き着く。そこで伊賀服部党のなかから白木重左ェ門という中忍を選び、その
役に据えることにした。
 命を与えられた重左ェ門は、市井に住み店を持つことにした。元盗賊たちには、役目のためにさまざまな職
や身分を用意した。自分も商人であったほうが接触し易く、傍から見ても怪しまれずにすむ。店を構えていれ
ば客から色々な情報も入ってくるし、ついでに江戸への物資の出入りも監視出来ると便利だ。
 これには卸商が都合が良いのではないか?
 ならば何を扱うか
 魚はどうだろう。
 河岸にいれば海路からの出入りも監視できる。
 うむ、それがいい。ついでに、店はあまり大きくしないことだ。
 かくて重左ェ門は江戸日本橋に魚卸しの店を構えることとあいなった。──これがすなわち江戸『魚重』の成
り立ちであり、以後三百憂余年、江戸の街の治安を裏から支え、お上とのつなぎ役を果たし続けてゆくこととな
る。
>next
376皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 21:04:23 ID:qm1USqTX0
 この重左ェ門、忍びの割りに人懐こく人心を掴む法に長けていた。罪人達を恐怖で支配するのはた
やすいことだが、いつか必ずほころびが生じ支配は崩壊する。そうさせないためには先ず信を得るの
が寛容であると判断し、統轄下にある者達に対し家族同然の付き合いをしいた。
 重左ェ門どう振舞っても彼等にとって見ればお上の監視人。さすがに皆初めは警戒の色を示したが、
時間を掛けることによってその疑念を解きほぐすことに成功したのだった。

 重蔵は、この魚重十八代目であり、今も現役の江戸の守護者なのである。

 刻は流れ幕末。
 江戸服部家は三代半蔵正就(家康に仕えた半蔵正成は二代目であり、初代はその父半蔵保長)で
途絶えるが、子孫はその後紆余曲折を経て、桑名藩久松松平家に召抱えられ存続していた。
 明治維新も差し迫ったある日、桑名城代に就任したばかりであった半蔵(十二代正義)は主君の松
平定敬を通じて、時の将軍、一ツ橋慶喜に召喚され、江戸城で謁見した。
 半蔵よ。神君の代からの服部家の忠義、まことに大儀である。徳川の天下はまもなく終わりを告げよ
う。未だ幕府のために尽くしてくれているそなたの一族には大変感謝しておるが、大儀ついでに余の願
いをひとつ聴いてはくれまいか。
 其の方は未だ伊賀一党を束ねおると定敬殿より伺い聴いた。それらをを引き連れこれからの江戸の
街を守護してもらいたいのだ。いずれはこの街へお移りになられるであろう天
子様──天皇を含め、江戸の民を護ってくれ。理不尽な話であろうとは思うが最後の奉公と思い頼む、
と、なんと将軍自ら頭を下げたのである。
 禄の話は出なかった。なんの保障もうまみも無い話でった。確かに理不尽な話だ。それ以上に奇妙
な話だった。落日を目前にした専制君主がこの上なぜ、明日にも堕ちねばならぬ都の心配をするのか
──新時代の到来に戸惑い動乱するこの時期、一番剣呑な地は主君・定敬のいる京のはず。さまざま
の政争をしのぎつつ家茂の後を継いだ(もしくは強引に継がされた)慶喜だ。それがわからぬわけでは
ないだろう 。
>next
377皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 21:09:04 ID:qm1USqTX0
 しかし半蔵は頷いたという。
「御意」と一言。
 疑問はあったが即答した。将軍じきじきに頭を下げるのだ、生半な事情ではあるまい、と思った。
半蔵の中に流れる伊賀忍びの血が何かを察したからなのかもしれない。
 数瞬で案をめぐらし、
「惣目付様のご配下に白木というものが居るはずでございます。概知のことと存知ますが、そのも
のの先祖は伊賀者。神君の代からお江戸の街の裏を取り仕切ってきた家でございます。先ずこの
者の身分を永世保障くださいませ。
 その後、服部党のうちから特に武と軍略に優れた者五十人を選び出し、お江戸の警護に当たらせ
ましょう」
 慶喜応えて曰く。
「あい判った。しかし多すぎるな。十五人でよい」
 この返答には流石に面食らった。勿論、選抜を考えているのは皆、忍びの術を心得ているものたち
である。与えられる任務の内容を考えたら当然の人選なのだが、江戸の街の規模を考えたらこれでも
足りないくらいのはずだ。更に五十人はいま藩と国の置かれている事情を考えてぎりぎりひねり出した
人数である。
「なんと申されれました?」 
「多すぎると申したのだ。街を護るというのは其の方の考えているような意味ではない」
 ここまで話し、慶喜は眼で宙を追った。何から話したものか。そのような表情を浮かべる。趣旨を図り
かねた半蔵は、黙して続きを待った。
 ややあって慶喜の口から出た言葉は、半蔵を瞠目させるに十分なものであった。
「……半蔵。そなた、『鬼』になってくれ」ますますわけがわからなかった。鬼になれ、とは。
 祖先・半蔵政成はその戦働きから『鬼半蔵』の二つ名で呼ばれていたという。戦仕度をせよというのか。
いや、そうではあるまい。それでは最初に口にした願いとは違ってくるし、何よりわずか十五人では戦も
へったくれもあったものではない。半蔵は困惑した。
「…恐れながら。上様の意図、若輩の拙者には計りかねまする」
>next
378皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 21:10:26 ID:qm1USqTX0
 しまった、と半蔵は思った。語尾にごくわずかであるが侮蔑の色が浮かんだ。
 しかしそれも無理からぬこと。家老職にあるといえどこの漢、この年二十一。天下の趨勢が秒単位で
移り行こうという最中渦中を離れ、江戸くんだりまで来て公方様の暇つぶしの禅問答に付き合わされた
のではたまったものではないという考えがある。血気盛んな若者のたぎり、誰が咎めることが出来よう。
「許せ、半蔵。別にからかっているわけじゃないんだよ。儂もわざわざ京都守護の重職にあるものを呼び
出して、戯れの相手をさせるほど暇ではないからね」
 半蔵の腹を見透かしたか苦笑交じりで言った。一方見透かされた半蔵は己の迂闊さを恥じ、平伏する。
そうだ、上様はさきほど、たかが一、国家老の自分に頭をお下げになったのだ。下らぬ暇つぶしであろう
はずが無い。
「なにぶん手に余る事態でな……話が複雑すぎて上手く言葉が見つからぬ」
「将軍様。後はわたくしからご説明申し上げたほうがよろしゅうございましょう」
 その者は突如、広間の下座に出現した。
 ──いつ入ってきた。いや、そもそもいつからいた?
 半蔵は戦慄を覚えた。
 太平の間も武を怠ったことは無い。ましてやこの時節は動乱期、常に神経を尖らせている。半蔵にとっ
て人一人部屋に侵入する気配くらい、察知できて当然の所業のはずだった。
 ただ、敵でないことだけは、慶喜が騒がぬことでわかった。
>next
379皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 21:12:10 ID:qm1USqTX0
 その者は鈴懸(すずかけ)と水干の中間のような衣服をまとっていた。鈴懸とは山伏・修験者の
着る麻の上下を差す。衣の色が通常と違い深い紺色だ。
 頭巾(ときん)はかぶってはいないが、見たことも無い結袈裟を身につけていた。
 螺の緒(かいのお)の代わりに見慣れぬ形の革帯を締め、左の腰から短冊状の紙の束を結わ
えており、逆側には掌大の、金色をした見たことも無い形の道具が吊り下げられていた。
 その者は背中まで長く伸びた髪を軽く束ね、作法にのっとり頭を垂れていた。
「うむ。鬼よ頼んだ」
「あいかしこまりました」
 その者がゆるりと面を上げた。
「服部様。お初にご拝顔仕りまする」

 ──鬼?今、上様はこれを鬼と申されたか?

 その眼差しは炯々と。強き意志(こころ)の顕れか、心の奥を貫いて。
 紅き唇には淡き笑み。細き面は麗しく。

 ──これが鬼。

 見たところ普通のヒトと姿かたちは変わりなく。
 されど。
 身に纏いし気は幽玄の──。

「手前、大和国吉野より参りました鬼にて、名を『いぶき』と申します」
「桑名城代、服部半蔵正義にござる」
「将軍様御下知の内容につきまして、かいつまんでご説明申し上げましょう。
 古来よりこのひのもとの地は、『魔化魍』により狙われてまいりました。
 皆様が「妖怪」や「物の怪」などと呼んでおりますあやかしの類にございます。
 ソレ等と暗闘を続けてまいりましたのが、我等『鬼』なのでございます」

>next
380皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 21:14:39 ID:qm1USqTX0
 ソレがいつ頃からこの世に「在った」のかは定かではない。
 すめらみことを名乗る一族が王朝を築いた頃に「生じた」とも、それよりも遥か太古、伝説の中に
記されている神々と戦った魔物達が起源とも伝えられる。
 とにかくソレは「在った」。ヒトを脅かす存在として、闇のうちに「在り続けてきた」。
 ソレは「ヒト」を喰らう。ごく一部の例外を除いて「ヒト」のみを喰らう。「ヒト」を喰らって成長するの
だ。
 ソレには親がいる。雌雄一対、「ヒト」にそっくりの。
 しかしそっくりなのは外見だけだ。子の餌を獲るためのそれは擬態であり、餌をだまし、油断させ
るための姿かたちだ。ただ「ヒト」同様、生まれたばかりの子を大事に大事に育てる。その親達から
ソレらがどのようにして生まれてくるのかはよく判っていない。
 『魍(すだま)』という言葉がある。『すだま』とは山水木石の霊を意味し、長じて森羅万象の霊を表
す。
 ソレらは自然界にある動植物を模した形、もしくは複数の生物を合成したような姿で生まれてくるこ
とが多く、そのため鬼達はソレを、『魔化魍』と呼称していた。
 『魔』と『化』した『魍(すだま)』。すなわち超自然的な存在である。
 魔化魍は、いかなる手段をもってしても倒すことは出来ない。
 この世に存在する銃砲刀槍・薬品の類、何ものをもってしても傷つけることすらかなわない。
 よしんばその強固な防御を貫いて肉体を損壊させたとしても、その強靭な再生能力によりにたちど
ころに回復してしまう。
 普通に考えれば死に至るような肉体の損傷を負ったとしても、一時的に活動を停止するだけですぐ
に蘇生してしまうのだ。ヒトの常識から考えると不死に等しいといえる。
 では、鬼はいかにして彼奴らを滅ぼしてきたのか。

 それは、魔化魍の唯一の弱点「清めの音」を操ることでそれを可能にしたのである。

>next
381皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 21:17:38 ID:qm1USqTX0
 いぶきの話は続く。

 江戸の地は、街の形を成す以前から強力な結界がで守られているのだという。
 徳川以前、この地を治めていた扇谷氏に使えた太田道灌は、江戸城を建てる際、風水になぞらえ四神
相応の立地を図った。
 北(玄武)に駿河台、南(朱雀)に江戸湊、東(青龍)に隅田川、西(白虎)に東海道を望む地に城を立て、
更にそれを取り囲むように熊野神社を数多く建立し、霊的な結界を敷いたのだ。
 神君家康は江戸開府に際して、徳川の世の富貴繁栄を願い結界の更なる強化を試みた。以後の天下
の中心となる江戸城を改修、本丸の東西南北に門を設けることで結界を敷き、加えて江戸の地を覆う霊
的結界も寺社を増やすことでより強固且つ堅固に造り変えたのだった。そうすることにより、徳川家に仇な
す存在の進入や害異の発生を大幅に抑えること成功したのだが、同時に徳川家に直接害意を持たない
鬼の行動も大きく制限されることとなった。
 江戸の結界内で呪力に縛られずまともに活動できる鬼は、江戸出身且つ江戸で修行を終えた鬼か、も
しくは結界の力に負けぬ程の鬼力を持った者に限られた。
 発生の数が減り外部からの侵入は防げても、魔化魍がまったく発生しなくなったわけではなかった。江
戸の地で発生したものに関しては相変わらず人の天敵として猛威を振るっていた。
 初期の頃は全国から猛者を募り江戸に送り込んでいたが、どういったわけか江戸の魔化魍は年を経る
ごと加速度的に強さを増してゆき、開府百年余年を過ぎた頃には現行の鬼の数で
は対処に困るようになってしまった。そこで猛士は幕府に連なる組織に合力を申し出た。時の将軍吉宗が
紀州より随行した薬込役、すなわち御庭番衆である。
 接触を図った当初はまったく相手にされなかったが、猛士は辛抱強く時を待ち、鷹狩中、魔化魍に襲わ
れた吉宗を、裁鬼・斬鬼という鬼が救い出すことでついに信を得ることができた。
 その上で、かねてより吉野で開発していた「鬼の力を得る具足」を貸し出し、共闘体制を敷いたのだった。

>next
382皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 21:21:31 ID:qm1USqTX0
 半蔵が口を開く。
「して、御庭番衆は今…?」その疑問に答えたのは慶喜であった。
「残念ながら、御庭番衆は…鬼の言う『魔化魍』とやらの一群と戦い、苛烈な戦闘の末、只一人を除
いて全て討ち死にいたした。」
 魔化魍の一回の出現数が一匹や二匹程度で在れば、数に任せて押し切ることもできた。現にこれ
まではそれで凌いでこれた。
 だが今回のように複数種で出現した場合はもう駄目だった。鬼の力を得ることができるとは言え、完
全に同じというわけにはいかない。適応の無い者に道具を介して力を付与するため、その力は正規の
鬼よりわずかに劣り、一対一では余程の戦巧者でないと勝利は難しい。ましてやお庭番は本来、諜報
活動の巧者であっても戦闘の専門家ではない。
 それでも相打ちに収めたのは、公儀隠密としての意地があったからなのかもしれないと慶喜は言った。
 江戸の守備部隊の再構築と魔化魍なる害異に対する防衛の強化を一度に済ますには、このときを置
いて他にないのだという。「なれば、その『猛士』とやらをそっくり召抱えればよろしいのでは?」「それは
結界の『呪』の構造上、不都合が生じる恐れがございます」
 魔化魍に対する抑止力は鬼にも及んでいた。猛士の存在を結界内におおっぴらに許した場合、魔化
魍の存在をも許してしまう可能性があるということなのだそうだ。
「ですから少々手間のかかる手続きを踏んでいただきたく存じます。
 まず、服部様に江戸の守護に就いていただき、鬼となっていただきます。そうすることで、結界の鬼に
対する呪だけを少しずつ解いてゆくのです」
「鬼は害意の無いものと認識させようということでござるか」
「然様にございます。加えて、鬼となるにはいくつか特殊な条件がございます。その条件を満たせる方が
お手前の御家来衆に何人いらっしゃるか。上様仰せの十五人、妥当な数と存じます」
「しかし、何故に某(それがし)なのでござろうか」
「半蔵、今でも其の方は江戸城の守護者なのであるぞ。お城の西門はなんと申した?」
「されどそれは祖先・半蔵政成の…」
「恐れながら…それが大事なのでございます。半蔵のお名前を継いでこられたお手前こそ、この地の守
護者にふさわしいかと存じます。半蔵門の守護は服部様でなければ勤まりませぬ」
>next
383皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 21:24:42 ID:qm1USqTX0
 この地に住まわる者でなくとも、名前という呪的つながりによって江戸者として受け入れられ、守護に就
くことにより門の持つ呪力の強化に繋がる、という理屈らしい。
「更に申し上げれば、お手前は鬼になる為の条件を一つ、既に満たしております」
 半蔵はしばし思案を廻らせていたようだが、やがて、
「…承知仕りました。即刻国許の伊賀の庄に使いをおくりましょう」
「うむ。難儀かとは思うが、城下の白木共々よろしく頼む」
 この時点で魚重の存続は半永久的に約束されたに等しかった。
 半蔵は深々と頭を垂れた。

 時代は巡る。

 慶応三年、大政奉還により徳川の世は二百六十五年の歴史に幕を下ろした。半蔵は主君定敬に着き従
い幕軍として鳥羽伏見の戦いに従軍、その陣中で鬼となる。その翌年、勝海舟・西郷隆盛らにより江戸城
は無血開城し、帝の江戸移住により江戸城は皇居となった。明治維新とともに半蔵は時代の表から姿を消
し、江戸の闇に溶けた。その存在はごく僅かな者が知
るのみ。政府の主導が移り変わって行く中、彼等はいつしか御所守と呼ばれるようになる。
 人の歴史の裏で魔化魍は暗躍を続け、鬼達もまたそれに抗するため技を磨き技術を高め。江戸は東京
と呼び名を変え、市から都へと成長してゆく。ヒト同士の世界的な殺し合いを二度はさみ半蔵等は代を重ね
つつ、数を減らしながらも激化する戦闘をしのぎ続けた。
 そして平成──。悪意は増殖し続けていた。


  参 side A END             to be continued...... 
384皇城の守護鬼:2006/02/09(木) 21:29:14 ID:qm1USqTX0
「だからね、気に食わないわけだよ。ソウキって若造が最近、東北でブイブイ言わせている
みたいだけど、光の太鼓使いって言ったら、このヒラメキ様なわけだ」

「私の戴いたスケジュールが間違いでなければ、七時半からは確かミーティングの時間では?」

「なんだ、まだ八時前じゃねえか」
「びっくりした。遅れたかと思いましたよ」
「脅かさないでくれよお嬢さん?」

「チュウキのとこのはねっかえりか?!」

「ええ、その『はねっかえり』です」


ヒラメキ「俺の出番まだかよっ!」   次回 参 side B  …鬼たちは集った
385名無しより愛をこめて:2006/02/09(木) 21:41:11 ID:8LDfAYwDO
>>373

禿げワラ
386名無しより愛をこめて:2006/02/09(木) 21:45:57 ID:Wx/Ll/N30
皇城さん、CMをつけなすったねw

そしてヒラメキ様が気になり始めているオレガイル
387凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/09(木) 21:55:24 ID:UZkEleiq0
渋いなぁ〜。
いかにも江戸時代な文章が上手すぎます。
ほんと見習いたい。
こういう難しい言葉遣いを覚えてると役に立ちそうですね〜。
俺も覚えようかな・・・。
388皇城の…の中の人:2006/02/09(木) 22:36:14 ID:qm1USqTX0
皆様お読みいただきましてありがとうございますm(__)m
CMのネタは裁鬼SSさまから無断拝借させていただきました。スミマセン(汗

補足といいますか史実に沿ったフォローをば。
半蔵正義は実在の人物で、幕軍として戦いましたが維新以降、
許されて県令(知事職)を務めたそうです。さすがは徳川家の縁戚!
桑名藩の家老職にあったのは史実ですが、伊賀の庄とのかかわりはなかったみたいで…
それ以前に、戦国の終焉と共に忍者自体が衰退していったので、私の好きだった
「服部半蔵 影の軍団」などのシチュエーションはありえなかったようです。ちょっとショック…

元々「響鬼」自体、「変身忍者 嵐」を下敷きにしているそうで、
何とか史実の忍者とこじつけたくこのような話をでっち上げました(笑
ちなみに私は時代物の小説を愛読しておりまして、
このあたりを書いている間結構乗りのりでありましたことを追記させていただきます(苦笑
389狂鬼SS筆者:2006/02/09(木) 23:03:20 ID:t+yLKvcM0
突然の報告ですみません。
私事により投下できなくなりました。
中途半端で申し訳ないんですが、京介の話は一時終了させていただきます。
今まで、ありがとうございました。
390名無しより愛をこめて:2006/02/09(木) 23:09:24 ID:Wx/Ll/N30
>>389
おろろ〜、残念です。
また環境が整う日まで、気長にお待ちしております。
ひとまずお疲れ様でした・・・
391皇城の…の中の人:2006/02/09(木) 23:11:17 ID:qm1USqTX0
>>389

なんと?!もったいない。
復帰をお待ちいたします。お疲れ様でした。
392凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/09(木) 23:30:56 ID:UZkEleiq0
>>389
うぅむ、残念です。
復活なさるその日まで、お待ちしておりますです。
393鋭鬼SSの中の人:2006/02/09(木) 23:45:29 ID:8PuJ/N4T0
なんか色々言われてる……
まぁ、自覚症状のあることですが>オリキャラが動きだす
東北編を終わらせたのはその辺りを誰より私が感じていたという部分があるからです
尤も、このまま延々と鋭鬼と吹雪鬼でドタバタしてると手詰まりになる
また、鋭鬼を主人公としたくなった(最初は吹雪鬼が主人公なんです、アレは)
そういった諸々の事情、加えて伏線はりの為の挑戦的な要素が東北編でした
愛着云々の話をすれば私自身としてはあんまり不敵鬼は好きではないのです
鋭鬼が良いお兄さんでわかりやすいアッパーな性格で、実力的には吹雪鬼や響鬼に届かない
というのに対し、真逆の要素、かつ、女性キャラとしても吹雪鬼の逆をいくキャラとして生まれた消極的なキャラですから

強さ云々に関しては、響鬼が最強じゃなきゃイヤだ!みたいな人はよもやま居ないと思いますが……
才能にもいくらか種類があって、例えば剣道の試合に於いて響鬼は自己鍛錬の末に自身の渾身の一撃で相手の攻めごと打ち破るタイプ
それに対し、不敵鬼というのは恐ろしくカンがよく、小手先の技で間合いを取りつつ、大胆に銅を決めるタイプという(判りにくい例えですが)
要領を掴むのと発想が常人とは違うという感じで、身体能力的な強さでの凄さではない……というのを上手く書ききれてなかった部分はあります(東北編は全体的に文が荒いです)

せっかく関東以外ですから、もっと色々考えたいという面はあります
東北は本州の三分の一を占める広大な土地な訳で、当然そこで活動するからには効率良く魔化魍を倒さなくてはならないだろうとか
鬼が戦国以前からあるものならば、歴史・地理・民族・考古などの学問から色々推移できる部分が多々ありますし
例えば魔化魍が山や森に多く出るということは、日本最大の平野を誇る関東に於いては魔化魍の絶対数は他に比べて少ないのでは?とか
江戸時代中期までは京都・大坂が流通の起点であり、日本海側が開けていたということは、日本海側の魔化魍の多くは鬼に退治され、
逆に太平洋側の魔化魍は大いに繁殖が出来たのではないか?などと推移すれば、それに対して吉野はどう手を打ってきたのか?強い駒を配置しなければならない地方はドコなのか……
と、色々と「こうではないだろうか?」という設定が考えられます。ただ、非常に諸刃の剣である事は否めませんが
394凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/10(金) 00:30:58 ID:mMJ3FexP0
東北ネタを書くものとして、色々一緒に考えさせていただきたいところであります。
とはいっても、俺には難しい知識はこれっぽっちも無いのですが(ぇ
キャラに関しては、職人さんなりの考えがあればなんでもいと思いますので、
あまり深く考え込まなくてもいいと思いますよ。
395弾鬼SSの筆者:2006/02/10(金) 01:09:50 ID:StIUslZNO
>389
残念ですが、しかたがないですね!
また戻られる日をお待ちしてますね!
396名無しより愛をこめて:2006/02/10(金) 01:14:33 ID:KTHUjUCn0
>>393
SSそのものに文句はない。
だが「。」をつけてよ文末に。頼む。本当に気になるんだ。
397名無しより愛をこめて:2006/02/10(金) 01:34:34 ID:Hqc/y/TA0
普通小説の原稿には「」に。は付けない
2chでもSSでも付けないのが基本(これは少しでも文字制限などの容量を減らすため

ってか、ここの住人は少しマナーが悪いな
SSに気になった所があったら投下されたその時に言えばいいのに
あまつさえ鋭鬼SSの人は要望があったから設定を公開しただけで強制させるつもりもないのに
398名無しより愛をこめて:2006/02/10(金) 01:53:38 ID:71p3I4i10
>>397
>>396は会話中の「」内に句点をつけてくれ、と言ってるんでなくて、文章の方ですわな。

でも、句読点は文章のリズムの一つだと思うので、つけるつけないは書く人のスタイルだと
思うよ。鋭鬼SSの人のスタイルは段落変えの文末にはつけないタイプ。確かにつけなさいよ、
と習うけど、横書きの文章だし、句点が無いのもスタイル。オレは気にならないですよ。
縦書きでも一切句読点をつけない作家もいるし。

399名無しより愛をこめて:2006/02/10(金) 09:13:05 ID:8IMegORp0
>>397
マナーが悪いと言われるが、
鋭鬼SSは公開されたばかりなんで次が出るまで時間かかるだろうし、
昨日書いた時は携帯から見てて丁度その流れの時だったから書いたんだが…、
「それが気に食わないんだよ」と朝飯を食いながら文句を言う
響鬼さんみたいに言うならこちらも何も言わないが。

鋭鬼SSのことだから本来は鋭鬼スレに書くべきだったかもだが。
でも設定と言うのは公開(設定として出したり話の中で出したり)
してしまえばその世界(SS)の中ではスタンダードな事項に
なってしまうから、整合性を持たせるために強制する場合もある罠。

鋭鬼SSの中の人にはちとつらく聞こえてしまうかもしれないが、
少なくもと漏れはどうでも良い様な事に時間割いて
こういった事は書かない人間なんでね。
400狂鬼筆者:2006/02/10(金) 09:56:23 ID:hT0Vn0TB0
私事前に少し時間があったので少々。
突然の休載にもかかわらず身に余る程の暖かい言葉の数々ありがとうございました。

SSに関して。
個人的には関東以外の支部の話はおもしろいと思います。
で、オリキャラは自分の考えてる話において既存キャラでは対応できない為の物なので、
気に入ってるとか言う訳ではないと思ってます。
ですが、今はまだ「響鬼」で扱われたキャラを主人公にしていますが、
その内、すべてオリジナルとか出る可能性も否定できないと思います。
設定とかも30年後の未来とかにすれば、既存設定を無視できるし。
なので読者のこう言う意見はオナニー化を防ぐにはいいと思いますよ。
「私とザンキさんのラブラブ日記」とか出ても困るしw

思い切ってSS職人とは別に設定専門の職人とか作るのはどう?

でも、UGのSSをまるで一般に公開されている作品の様に批評されるのは、
ある意味職人さんのレベルが高い証拠だと思ってます。
なので職人さんには自分流を貫き通してほしいっす。

では、去ります。長々とすんません。
401名無しより愛をこめて:2006/02/10(金) 12:24:16 ID:6ahdbiPq0
時代がまったく違うところのオリジナルキャラは仕方ないと思うけれど、現鬼とオリジナルキャラの恋愛とかそういうのは
とにかく勘弁して欲しい。それは自分のHPでやってくれ…。
402名無しより愛をこめて:2006/02/10(金) 15:01:32 ID:iw+ZPK50O
>>401
漏れはそう言うのも
(鋭鬼と吹雪鬼)
ありだと思うが
(現に関東の話は面白かったし)
オリキャラの活躍が突出してしまい、
パワーバランスが大きく狂ったものに関しては
同じ意見だな。

俺キャラマンセーな話が
書きたいなら、
自分で一から
世界を創って
やればいい。
それなら思う存分
マンセーできるからな、
なんたって自分が
つくった世界なんだから。
403名無しより愛をこめて:2006/02/10(金) 16:28:35 ID:hAvB1w9g0
なんか荒れちゃったな。
オリジナルのストーリースレでも立てたほうがいいんか?
404皇城の…の中の人:2006/02/10(金) 16:52:25 ID:2+av1XcO0
今、最強のライダーが目を覚ます…

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「起こすんじゃねぇーーーーッッ!」

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405皇城の守護鬼:2006/02/10(金) 16:54:18 ID:2+av1XcO0
「だからね、気に食わないわけだよ。ソウキって若造が最近、東北でブイブイ言わせているみたいだけ
ど、光の太鼓使いって言ったら、このヒラメキ様なわけだ」
 熊野路の地下へ続く階段を、シブキ、ヒラメキ、史郎が談笑しながら下ってくる。
「それがだよ?名器の伝承を許されたからって急に周りが持ち上げ始めちゃってさ」
「それは嫉妬してるってことスか?」
「ちっがーうっっ!俺はだな、正当な評価を下してほしい…」
「名器を許されたってことは、相応の実力を備えた鬼ってことでしょう?」
「ま、あれだ。意識してるってことは認めてるってことだろう、ソウキってののジツリキをよ」
「ばっ、ちがっ…」
「お取り込み中ですが」
 三人の会話に声が割り込んだ。よく通るメゾ・アルト。視線が一斉にそちらへ集中する。
 普段ハバキが座っているチーフデスクに、二十代半ば長髪の女が座っていた。この季節にもかかわら
ずワイシャツにニットタイという出で立ちが彼女の性格を如実に物語っていた。
「私の戴いたスケジュールが間違いでなければ、七時半からは確かミーティングの時間では?」
 眼鏡の奥の眸はパソコンのモニタに視線を落としたまま、忙しくキーボードを叩き続けている。
 三人が一斉に入り口の上に掛かっている時計を見上げた。七時四十五分を確認すると、また一斉に安
堵の息を吐く。
「なんだ、まだ八時前じゃねえか」
「びっくりした。遅れたかと思いましたよ」
「脅かさないでくれよお嬢さん?」
 はた、と作業の手が止まり三人をまじまじと見つめる。十五分も過ぎているのだが?
 年配の二人は史郎を見やると、それぞれの定位置へと移動しはじめた。
「あー…」
 冷たく鋭い視線にさらされながら史郎が頭を掻く。御所守は少人数であるため、スケジュールどおりに動
けないことが少なくないこと、そのため定められた時刻に前後三十分の幅を持って行動していることを、い
ろいろな意味でたたまれない気持ちになりながら説明する。
>next
406皇城の守護鬼:2006/02/10(金) 16:57:15 ID:2+av1XcO0
「了解しました。ご説明ありがとうございます」
 ため息ひとつ、目で会釈すると作業を再開した。「判ってもらえて何より」と、ヒラメキ。見ておけ青
年。女の扱い方を教えてやろう。
 史郎に目配せひとつ、
「…ところでお嬢さん、僕の記憶に間違いがなければお互い初対面だったはずだね?自己紹介とい
こうか。僕の名前は……」
 言いかけるのを遮って、
「ヒラメキ氏、ですね。通称御所守の伊達男。そちらの大きな方がシブキ氏。宗家に次いで古い鬼の
家柄と伺っています。若い方は志村史郎氏。シブキ氏の弟子、ですね」また視線を落とし、作業を再
開しながら畳み掛けた。ヒラメキが口をパクパクさせている。馬鹿でかい長椅子に躯を預けたシブキが
「そういうお前さんは何モンだい。ここに入れたってことは猛士のメンバーなんだろうが、初対面にしちゃ
ずいぶんお高いね。ま、そういう女、儂ぁ嫌いじゃないけどな」
 いたずらっ子のような表情でウインクを投げてやる。愛嬌のある顔が年甲斐という言葉を感じさせな
い。
 女はパソコンに繋がれたディスクリーダーに山積みのディスクの中から浅葱鷲を一枚、慣れた手つ
きでかませながら顔も上げずに答えた。
「思いのほかデータ処理が滞っているようなのでこのまま失礼します。本日付で中央特区に配属にな
りました葛嶋久美子です。長野の雅鬼(ガキ)のほうが通りがいいかと」
「チュウキのとこのはねっかえりか?!」
 ヒラメキがひっくり返らんばかりにのけぞった。何か後ろめたいことでもあるのか、伊達男の二つ名
形無しのうろたえ方を見せる。
「ええ、その『はねっかえり』です」
 こちらも思うところがあるらしく顔を上げ、半眼、口元だけの微笑みを投げかける。シブキは腕組みを
しながら左手で顎をさすりさすり、含みのある笑みを浮かべながらその成り行きを見守っている。史郎
だけが狐につままれた顔をして蚊帳の外だった。
 突如、部屋の奥よりハバキがひょっこり顔を出した。肇が「ただいまー」とそれに続く。
「いや、すまない。いつもより展開ポイントを増やしていたら時間を食ってしまった……おや?」

Said B END
407皇城の守護鬼:2006/02/10(金) 17:01:21 ID:2+av1XcO0
 まあ、方輪の老いぼれでも吉野との橋渡しぐらいはできるからな。

 あちらへ行ったらハバキの坊主に伝えてくれたまえ。ガサラキは息災だと。

 葛嶋。御所守をよろしく頼む。

……to be continued!!



今回かなり短めでした。
前回時間がなくて一度に投下できなかったつけです(汗
408名無しより愛をこめて:2006/02/10(金) 17:55:31 ID:KTHUjUCn0
>>401
弾鬼SSか。遠回しに言うよりハッキリ言うべきだ。
409皇城の...の中の人:2006/02/10(金) 18:10:57 ID:2+av1XcO0
 とりあえずこのあたりでやめておきませんか。
 今後の展開や設定などは作者個々の宿題ということにしましょう。
 
410名無しより愛をこめて:2006/02/10(金) 19:31:39 ID:iw+ZPK50O
>>404
テラワロス
411仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 20:18:03 ID:VwszMegR0
なんだか自分の独りよがりの文章を投稿するのが
気が引けますが、書いた分だけ少しずつ投稿します。
 明日夢の夢オチ的な話で、持田水槽事件後、
節分から少したった晩ということに
してあります。

『仮面ライダー天邪鬼(あまんじゃく)』

  冴え渡る月の光はいや増して、内なる心さらけ出させん……。

<1>

 『明日夢は出会った頃からずっと自慢の弟子だったよ。
  これからは俺のそばで自分らしく生きてゆけ。』
そうヒビキさんは言ってくれた。
 
 暖房をつけていても、かじかんでくる指先。ほうっと息で温めながら
明日夢は鉛筆を置いた。今日は母は長距離の客で泊まって帰ると連絡が
あった。少し休みたいような、だが休んでいられないような週末の夜。
机の引き出しを開け、いつものようにコンパスを取り出す。悩んでいた
時期が長かった分、このコンパスには今の自分が重なって感じられる。
(この間の節分は楽しかったなあ。)
 鬼達はお互い笑いあって豆をぶつけ合い、俺は内、お前は外!と、
たちばなの座敷で大宴会だった。持田もあきらも屈託なく参加し、
持田は「皆、自分のこと鬼みたいに言うのね」と笑っていた。
水槽に漬けられていたことを覚えていないようで、休ませた後、
曖昧な記憶や濡れた服に不安そうにしていたが、あきらが上手く
落ち着かせていた。
「恐怖で記憶が飛んでいるのなら、今は無理に刺激しない方が
良いでしょう」
従妹への危害に怒り狂うトドロキさんを、あきらが冷静にうながし、
そうだね、とヒビキさんとイブキも頷いていた。
412仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 20:24:54 ID:VwszMegR0
節分前に母親に会ってきたそうで、京介もあいかわらず嫌味に
ことかかないものの、ちょっと照れくさそうにパリみやげの菓子を
配っていた。
 あきらと持田は一次会で帰り、二次会では無礼講となった鬼達が
酒の勢いも加わり、変身しまくり、得意の型ではしゃぎ合い、
立花姉妹と勢地郎さんにいさめられながら雄たけびをあげていた。
明日夢は途中で帰ったので、後のことは知らないが。

 あんなふうに鬼として仲間に加わりたかった胸の痛みと、
後一年しかない医学部受験へのプレッシャーが、ふうっと喉元に
こみ上げそうになった。
 そんな考えを振り払うように、コンパスをかざしながら、
ぐるりと体を窓に向けた時、さっと窓ガラスに何かがよぎった。
413仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 20:30:59 ID:VwszMegR0
 「持田?」
(こんな夜中に馬鹿げている……14階だぞ、ここは。)
そう考えながらも明日夢の体は窓を開け、外を確かめていた。
馬鹿げている、こんな高いところに彼女が立っているわけがない。

 だが持田はそこに居た。
真っ白な銀のワンピース。いや、まるで葉脈を紡いだような
銀の布をまとい、風に舞う長い髪。裸足の足。
 空中にぼんやりとした表情のまま立っていた。
「見てないの。全然。」
そう呟くと糸の切れた凧のように落下しだした。
414仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 20:35:26 ID:VwszMegR0
「持田!!」
明日夢は叫ぶと、慌てて部屋から飛び出し、家の鍵を開け、
エレベーターに向かった。
だがエレベーターに向かう間も、ゆっくりと持田が落下
してゆく。待ちきれずに、非常階段を駆け下りる。
もつれるように足がいうことを利かない。こんなに俺の体
なまっちゃったのか!
415仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 20:37:32 ID:VwszMegR0
 まるで明日夢が来るのを待っているかのように、
非常階段の窓越しに持田の体が遠ざかってゆく。
 非常階段の無機質なカビたような蛍光灯に照れされ、
必死に駆け下りた。
416仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 20:42:31 ID:VwszMegR0
 「持田あ!!」

 1階の出口を飛び出し、名前を呼んだが、外はしんと
静けさだけが返ってきた。明日夢の声に驚いたのか、
暗がりをさっと猫が隠れてゆく。
 急に息苦しさとめまいが来て、地べたにへたり込んだ。
(夢にしては生々しすぎる!)
417仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 20:46:23 ID:VwszMegR0
 つばを飲み込むと、立ち上がり、自転車置き場に
よろけながら走った。
「持田の様子を見てこなきゃ。」
自分に言い聞かせるようにして気持ちを奮い立たせると、
明日夢は自転車のペダルに足をかけた。
 持田は洋館の男女に、水槽に漬けられていた。
猛士の関わる病院での検査で持田の体に異常は見られなかった。
だが水槽の中にうごめいていたものは、魔化魍に通ずる
何か得体の知れない生き物だった。
418仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 21:00:38 ID:VwszMegR0
持田を救出するとまもなく動かなくなり、壊れて消えていった。
だが、残された水槽の成分が解析しきれなかった分、
皆が持田の様子を定期的に診ていこうとしていた。
元弟子同士、あきらともそう打ち合わせていた。
 自分も気をつけて、だが今日の帰り道も、いつもどおりの
明るい彼女だった。
 汗が冷え、背筋をざわめくような不安が這う。
「ひとみ……。」
最高速度が出そうな勢いで、自転車は夜の町を駆けてゆく。
「まだ、そうだと決まったわけじゃない!!」
419仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 21:09:50 ID:VwszMegR0
<2>
「クグツはどこから来たと思う?」
たちばなの地下では、遊びに来たあきらにみどりが説明していた。
「なぜ持田さんがさらわれたか、に関係あるんですか?」
う〜ん、わかんないけれど、と言いながら、みどりは、
こきこきと肩を鳴らし伸びをした。
「彼女は鬼のすぐ側にいて、鬼のことを知らない人なんだよね。」
 あきらのいれたコーヒーを美味しそうに飲みながら続けた。
「でも、もし何か感じていて、鬼に不安や不信感を持っていたら、
案外、そういう気持ちって、悪意のある相手には利用されやすい
かも」
「持田さんは、そんなに弱い人じゃないですよ。すごくやさしい
人ですから。」
「そこが彼女が無事にすんだ一番の理由なのかもね。」
みどりは美味しそうに、お菓子をつまんだ。
「う〜ん、いい香り。あきらちゃんがいないと、
インスタントコーヒーばっかりだもん。」
「そんなたいしたことないですよ。」
「ごめんね。こんな夜中まで報告資料のまとめにつき合わさせ
ちゃって。」
「いいえ、資料の整理は好きですから。それに持田さんが
大丈夫だって分かって、ほっとしました。」
420仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 21:17:24 ID:VwszMegR0
「そりゃあ、たちばなの秘蔵っ子達だもんね。
トドロキ君なんか、『これからは自分が家のまわりを
見張ってるっす。』、って言い張るのを止めさせるの
大変だったんだから。いくら従妹だからって、かえって
迷惑かけちゃうもんね。本人は覚えてないんだし。」
 あきらが頷いた。静かにしているようでも、てきぱきと
みどりの散らかした菓子くずを片付けている。
「あきらちゃん、持田さんとパネルシアターがんばってるの?」
「ええ、今度「瓜子姫とあまんじゃく」をやるんです。」
「瓜子姫とあまんじゃく?」
「桃太郎の女の子版ですよ。川から流れてきた瓜の中から
可愛い女の子が産まれるんですけど、乱暴者のあまんじゃくが
嫌がる彼女をつかまえてしまって、おじいさんとおばあさんが
助け出してあまんじゃくをこらしめるんです。」
421仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 21:25:24 ID:VwszMegR0
「へえ、好きな女の子を苛めて嫌われちゃう鬼かあ。
まるで誰かさんみたい。」
「誰のことだよ」
ヒビキと京介が入ってきた。
「持田さんの様子はどう?」
京介はぶっきらぼうに尋ねた。
「今のところ大丈夫です。パネルシアターの小道具作りとか、
すごくがんばってますよ。安達君も今度の公演を見に来てくれる
予定ですから、あなたもいかがですか?」
「俺は安達のことなんか聞いてないよ。」
「や〜い。あまんじゃく」
からかうみどりに笑いかけると、あきらは二人の分もコーヒーを
たてだした。
422仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 21:37:14 ID:VwszMegR0
<3>
 持田の家の明かりは消えていた。
(馬鹿だな、俺。眠ってて当たり前の時間なんだから。)
表札の向こうには、穏やかに眠る持田一家がいる。
ほっとしながらも、念のために家のぐるりを回ってみた。
小さな小窓だけが開き、かすかにカーテンがそよぐ。
 興奮状態が途切れかけて、それでも何か冴えるような
おかしな気持ちが、空を舞うさえずりをとらえた。
「アカネダカ、お願いだ。あの窓を見てきて!」
 ステルス・バージョンの半透明になった茜鷹が
応えるように明日夢の肩に舞い降り、瞬時に小窓に飛び込んだ。
 明日夢の緊張の糸が切れかける前に、茜鷹がくちばしや体に
細い銀の糸を巻きつけてきた。
「持田は居たのかい?」
 明日夢の半端な弟子修行ではディスク・アニマルの言葉を理解
することはできない。ただ、さえずる様子やその響きから、
言葉にならない言葉が明日夢の心に伝わってくる。
「ありがとう。君も気付かなかったんだね。でも持田の家族は
無事なんだね。俺も探すから、ヒビキさん達に伝えて」
茜鷹にからまった銀の糸と長い黒髪を1本抜き取ると、
明日夢は足元にも声をかけた。
 青磁蛙が明日夢の靴に頭をこすりつけて鳴いていた。
「一人でも大丈夫だよ。見つけられたら君達を呼ぶから、
猛士の皆に知らせて」
 ディスク・アニマルを飛ばして、ずっと持田のことを
心配してくれていた鬼達のことを思えば、もっと踏ん張れる。
423仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 21:45:20 ID:VwszMegR0
 鋭敏になった感覚に、梅の香りが漂う。
(闇に梅香るだったっけ)
なにか国語の文章が頭に浮かんだとき、まだディスク・アニマル達が
いるか呼びかけた。
「セイジガエル!まだ居るかい?」
 ディスク・アニマルに通常の嗅覚を求めるのは間違っているかも
しれない。それに持田は空中に浮かんでいた。地面ににおいが
残っているわけがない。
だが、ここに持田の髪と彼女のまとっていた布と同じ糸がある。
これが魔化魍にかかわるものならば、ディスク・アニマルに宿る
式神には探す感覚があるのかもしれない。それに、この青磁蛙が
轟鬼さんのディスク・アニマルならば、血のつながりのような、
なにか絆が役立つかもしれない。
「探してもらえるかい?」
おそるおそる持田の髪と糸を地面に向けた。
424仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 21:58:10 ID:VwszMegR0
 グワッと鳴くと、束の間その青みがかった姿を現した青磁蛙が、
付いて来いとうながすように跳ねだした。
「連れていってくれ!」
ペダルをさらに激しく踏んだ。深夜の道を走り続け、
昼間のやさしさとは裏腹に撥ねつけるようなシャッターで閉ざされた
商店街を抜け、どこまでもペダルをこぎ続けた。
 橋を渡りこぎ続けた時、明日夢にも彼女がどこに居るか分かった。
「見てないの。全然。」
ひとみの言葉。
(そうだ、あの土手だ。)
(映画の約束を寝過ごした俺が不良に殴られて、走り続けて、
泣いて、持田が黙って来てくれたあの土手だ。)
「だからさあ、また今度一緒に行こうよ。」
あの時、持田はそう言ってくれた。
 凍えるような喪失感と熱い涙がとめどなく流れ、
いつの間にか降り出した雪が、青磁蛙の足跡を刻みつけてゆく。
425仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 22:09:37 ID:VwszMegR0
<4>
 雪は止み、うっすらと降り積もった白い雪が、土手の暗がりの中、
かすかに光る。
 土手にうずくまる持田。
暗がりで、その顔だけが白く光っている。
「ひとみ、今行く!」
土手を駆け下りようとした時、白い糸だまが明日夢の頬を掠めた。
わずかの差で糸だまが獲物をつかみそこねたように空中に広がり、
落ちた。
「ひいいっ!」
 明日夢を見て力を得たのか、糸だまに絡め取られた男が叫んでいた。
「青磁蛙たのむ!」
明日夢が投げると、変形したディスク・アニマルが男を絡め取る
糸を断ち切った。銀の糸が散らばる。
「早く土手を上がって!」
新しい糸だまが振るえ浮き立つ中を、赤ら顔の男が慌てて
駆け上がってきた。胸元に入れられた子犬がヒュッヒュッと
鳴いている。子犬を抱きしめるように胸を押さえながら
男は一目散に明日夢の横を駆け抜けていった。
 持田の体が暗く潜む網の下に、ばらばらに潰され
糸だまに絡められたバラックが見えた。今逃げた男が
土手で寝起きしていた家なのだろう。
426仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 22:14:54 ID:VwszMegR0
「ごめん。もう、体があたしの思い通りに動かないの。」
別の糸だまが明日夢の体を絡めとろうとした。
変形した青磁蛙に切ってもらいながら、明日夢は土手を降りていった。
 土手の暗がりの彼方、蜘蛛のように張り巡らされた銀の網が
水辺を越え、向こうの土手まで広がっていた。そして繭のように
ふくらんだ糸だまがその網中にいくつも散らばっていた。
網は生き物のように震え、明日夢めがけて、糸だまを吹き出してくる。
「安達君」
喋るたびに持田の口から糸が吐き出され、彼女を包み込んでゆく。
427仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 22:20:08 ID:VwszMegR0
「あたし、魔化魍になっちゃったんだ。でも何も分からなくなる前に
安達君に会えて良かった。」
 青白い顔に浮かぶ微笑が痛々しかった。
「大丈夫だよ!すぐにヒビキさんやトドロキさんが助けに来てくれるよ。
こんな糸だま、すぐに取っ払ってやるよ。」
「だめだよ。あたし、どんどんお腹が空いてきてるんだよ。
もう少したったら、安達君のことも餌にしちゃうよ。」
「大丈夫だよ!魔化魍なら響鬼さんが清めてくれ……!!」
夢中で持田を励まそうとした時、彼女の言った言葉が
急に頭に染みとおった。
「魔化魍って言ったのか?」
428仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 22:26:03 ID:VwszMegR0
伏目がちの大きな瞳が潤んでいた。
「安達君が清めてくれるならいいな、って、そう思ったら、
安達君の部屋をのぞいていたんだ。気付いたから来てくれたんだよね。」
「ひとみ……。俺は」
潤んだ少女の瞳から涙がこぼれた。
「明日夢君、こないだの節分楽しかったね。」
わずかな言葉でも、繭を紡ぐ糸が吹きこぼれる。

「だけど鬼って勝手だよね。」

「豆をまく時だけ現れて、豆を浴びたら、どこかに消えちゃう。
いつも側にいるなら教えてくれればいいのにね。」
 吹き出される糸が、少女の体をさらに覆ってゆく。
429仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 22:34:53 ID:VwszMegR0
「ひとみ、喋るな。俺は鬼じゃないよ。お前だって魔化魍なんかじゃないよ」
「明日夢君はどうして鬼にならなかったの?」
やわらかな口調の意外な鋭さに明日夢はこわばった。
「パネルシアターにあたしが誘ったから?病気の女の子に会ったから?
パネルシアターのせいで、オロチ退治に何もできない自分が
許せなかったから?」

「ひとみ、お前?……言わされているのか?」
お前の体に巣くっているモノに……、そう問いかけようとしたが、
持田の目はきれいだった。
「水槽から助けてくれた時、教えてくれるかと思ったんだ。
だから、わざと何も覚えてないふりをしたんだけど……。
安達君って、いつもあたしの知りたいことは教えてくれないんだよね。」
430仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 22:46:47 ID:VwszMegR0
<5>
「ひとみ、水槽のこと、覚えてないふりしてたのか?」
「あたし、元演劇部だもん。迫真の演技だったでしょ?」

「いつから知ってたんだ?」

「本気で調べだしたのは去年かな。とみぞうおにいちゃん、去年、
法事で会った時に、仏壇の前に一人残ってて、いろいろ仏様と
喋った後に、ザンキさん、おれ、鬼としてがんばります……、って
ぶつぶつ呟いてるんだもん。おにいちゃんや響鬼さんがたちばなで
仕事の話をしてたことって。甘味処で偶然、仕事の人達が集まったり、
安達君がバイトしたり、やめちゃったり変だなと思ってた。
 ひなかさんの論文とかあきらちゃんのオリエンテーリングのこととかも
調べたんだ。国会図書館とかインターネットとかも使ってさ。
もちろん鬼のことを書き込んである人なんていないけど、でもね、
なんとなくひっかかることが繋がっていくでしょ。
そうして不思議だったことをつなげていくと、なんとなくあたしに
起こったことも、不思議なことがあって当たり前なのかな、って。
 それに毎日少しずつ体の中に魔化魍の作り方とか変な記憶や気持ちが
わいてくるんだもん。
 でも知らないふりをしていれば、いつか安達君やおにいちゃんや
あきらちゃんが話してくれるかな、って、ずっと待ってたんだ。」
431仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 23:34:21 ID:VwszMegR0
 明日夢は息を呑んだ。そう、持田はおっとりして見えても
抜群に頭が切れるのだ。だからこそ天才肌の天美あきらとも
気が合うのだ。
「安達君。あたしね、小さい頃はお姫様になりたかったんだよ。」
432仮面ライダー天邪鬼:2006/02/10(金) 23:51:37 ID:VwszMegR0
<6>
「お姫様になって、悪者から王子様に助けに来てもらいたかった。
でも大きくなると、それはただの夢だって分かっちゃう。安達君も
正義の味方になりたくて、でも自分は違うって分かったの?」
「違うよ。ひとみ、医者は俺が心からなりたいと思ってるんだ。」
もやがかかったような糸の向こうで、やさしい笑みが見えた。

「そうだね。明日夢君らしいなって思ってたよ。
でもね、自分が悪者になっちゃった今は少し違うの。
どうせお姫様になれないなら、鬼になった明日夢君に、
清めてもらいたいんだ。」

「できないよ。やっちゃいけないよ。」

「ねえ、明日夢君。『瓜子姫とあまんじゃく』って、おとぎ話知ってる?
結末がいくつかあってね。何でも逆さまに行動しちゃう天邪鬼な鬼は、
瓜子姫と友達になれなくて姫を殺してしまうの。でも、ほんとはね、
あたし思うんだ。あまんじゃくは瓜子姫が大好きだから、鬼が魔化魍を
清めるように、楽にしてあげたのかもしれないな、って。」
433仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 00:04:16 ID:VwszMegR0
「俺は、鍛えても、魔化魍を清められるほど強くなれない」

「あまんじゃくだね。鬼になってみたかったくせに。」
持田の網から吹き出す糸が一斉に明日夢を絡め取った。
青磁蛙が断ち切ろうとしてくれたが銀の糸は鋼のように食い込んでくる。
「あたしがあたしでなくなっちゃう前に、一番かっこいい明日夢君を見せて。」
泣くのをけんめいにこらえて、持田が微笑んでいた。
 糸が全身を刺激し、激しく燃え上がった。明日夢の体を高く高く持ち上げ、
切り裂くような痛みを与える。自分の皮膚が引き剥がされ、変質してゆく痛みと
熱さに、明日夢は悲鳴を上げた。
「うあああああっ」
指がかぎ爪のように変形し、皮膚が甲羅のように光固まってゆく。
 銀の糸が明日夢の熱に耐えかねたように、彼を放り投げた。
自分でも信じられない身軽さで土手に降り立ち、暗い水辺を覗き込んだ時、
そこには響鬼さんによく似た鬼が映っていた。
「鬼は内。福は内。」
ほとんど虚ろになった表情で、少女が必死に自分を見つめていた。
(だめだよ。ひとみ)
434仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 00:18:26 ID:+tTaex190
<7>
「だめだよ。ひとみ!!こんな、俺のかなわなかった願いをかなえてくれたって、
お前を助けてやれないんだ!!しっかりしろよ!!お前ばっかり人のこと考えるなよ!!」


「かなえてやれよ。女の子の願いはかなえてやるもんだぜ」

顔を上げると、そこには懐かしい鬼達が立っていた。
「持田さんのご両親は休ませてきました。ひなかさんが付いてくれてます。」
「持田さんは、魔化魍に負けたりしませんよ。安達君」
京介とあきらが鬼達の後ろから現れた。
「大丈夫よ。明日夢君!」
土手の上から、かすみさんが見えた。不知火のシルエットが彼女の後ろに見えた。
「皆、あたしが家に送り届けてあげるから、かっこいいところ見せてあげなさい。」

「でも、この姿は、俺が鍛えてなったものじゃないんです!!」

「もっちーがお前にくれた贈り物だ。ありがたく受け取って、倍返ししてやれ。」
響鬼が音撃鼓と音撃棒を明日夢に差し出した。
 明日夢は皆を見渡した。そして、持田の消え入りそうな苦しげな顔を、
繭越しにそっとなでた。こくりと頷くと、響鬼さんの鬼の顔を見つめ、受け取った。
435仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 00:25:10 ID:+tTaex190
 明日夢は威吹鬼と轟鬼にも向き直った。
「イブキさん、トドロキさん、音撃鼓を貸していただけますか」
「えっ?」
「ええっ??!!」
 少し驚いたものの、威吹鬼の方がかすみさんに向かって声をかけてくれた。
「かすみさん、念のために用意してあった音撃鼓、僕とトドロキさんの分も
乗せてくれてますか?」
「あるわよ。ひとみちゃんにとり付いたものに、何が効くか分からないからって、
みどりさんが入れといてくれてるわ」
 間もなく、かすみさんが彼らの音撃鼓を持って降りてきた。二人とも響鬼と頷きあうと、
自分達の手から音撃鼓を明日夢に差し出した。かすみさんは黙って火打石を鳴らしてくれた。
436仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 00:31:54 ID:+tTaex190
「ありがとうございます。」
三枚の音撃鼓を受け取り、深く息を吸い込むと、ひとみを包む広がった繭に、
その三枚を離して取り付けた。
「持田さん、私もついています」
あきらが繭からかすかに出た持田の指を握り締めた。
「ひとみ、痛いだろうけど我慢してくれ!絶対にお前を助け出してやるから」
 明日夢はヒビキさんからきちんと太鼓の叩き方を教わっていない。他の楽器は
言わずもがなだ。だから、少しでも自分らしく叩ける方法は一つしかない。
 ドラムは父さんが教えてくれた大切な思い出だ。別の家族ができ、二度と父さんに
会うことがかなわなくても、手を取られ、はちきれるような愛情を込めて
叩き込んでもらったリズムは体から消えない。
437仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 00:41:42 ID:+tTaex190
 これが清めの音撃に通じるものなのか分からない。けれど、持田はきっと
俺のドラムを聴きたいと思ってくれていたんだ。

 鬼となった体から汗が飛び散り、天地を式神達が舞う。
また降り出した雪が月に輝き、鬼の上気した肌にとける。
 明日夢は音撃鼓を叩きながら、鼓よりも深い彼方から揺さぶられるような力が
返ってくるのを感じていた。
 コンパスが地球の磁力を感じ、時には強い磁力の障害に狂わされながらも
北を指すように、北極星が旅人を正しい道に誘うように、自分の体に響く、
この鼓動が、自分をなすべきことに向かわせてくれている。
だが、そんな想いすらも遠く、溢れるような静けさと熱さが心をうながしていた。
持田を傷付けるのではなく、彼女を覆う繭や網全体に、自分を通して流れる音色が響き、
その力を失ってゆくように、深い想いを込めて。
「ロック調音撃ですね。僕はジャズ調も好きなんですけどね。」
威吹鬼ののんびりした解説が聞こえた。だが、彼らが本当はわずかの隙も
気を緩めていないことも分かっていた。
その
438仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 00:47:28 ID:+tTaex190
 その静かで激しい時間。
 ぴりっと繭が敗れた。


「もっちー」
「持田さん!」
「ひとみ!しっかりしろ〜!!」(轟)

白い糸の織り成す布に包まれ、持田が浮かび上がった。その体を抱きかかえ、
あきらと共に鬼達の所へ飛び降りたとき、綱に張り付いていた残りの繭が砕けた。
439仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 00:55:06 ID:+tTaex190
「!?」

蜻蛉のように透き通る羽を持つ、大きめの妖精のような生き物が、濡れた羽を開き
舞い上がった。次々と卵が破れ、彼らは舞い上がっていった。
「魔化魍たちが産まれちまったってことか?」
「でも敵意はなさそうですね。」
その美しい生き物は、ディスク・アニマル達と戯れるように舞うと、
どこか持田に似た眼差しを向けると、静かに空高く姿を消していった。
「あ、行っちゃいましたよ。どうします?どうします!!」
慌てながらも、轟鬼自身は明日夢から託された従妹を抱きかかえていて
身動きが取れない。第一、可愛いひとみ似の魔化魍を傷付けられまい。
440仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 01:02:22 ID:+tTaex190
「安達、お前、鬼失格だ!!」
京介が空を見上げながら嫌味たっぷりに言った。
鬼化した顔のまま、明日夢は恥ずかしさに消えてしまいたくなった。
「鬼が清めの音撃で魔化魍作り出してどうするんだよ」
言い切らない内に、晴れやかに笑い出した。

「でも素敵ですね。あんなふうに美しい魔化魍が産まれるなんて、初めて知りました。」
「そうだね。」
見惚れるあきらにイブキがやさしく頷いた。

「きっと持田がやさしいから。だから……」
明日夢はいつもの気弱な性格に戻っていた。
持田もまだ青い、けれどやさしい笑顔で明日夢を見つめていた。
(あれ、視界がかすむ。)
明日夢の体はそのまま倒れ、視界が真っ暗になった。
「おい!明日夢。しっかりしろ!!」
頼れる声に安心すると、心が遠ざかった。
441仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 01:08:36 ID:+tTaex190
<8>
 (夢だったのかなあ?)
 なぜか全身寝違えたように痛む体のまま、明日夢は学校へ自転車を走らせていた。
昨日、目覚めると自分のベットで、朝日が差し込んでいた。
机の上に散らばった勉強道具。そしてコンパスは出した時のままだった。
「医学部に受かったら、一緒にどこかに行こうな。」
(ヒビキさん達も誘って……)
コンパスに語りかけてみたものの、ただただ猛烈に全身が痛く、休日は結局
ベットから一日中動けなかった。
「風邪をひいたかな?明日夢坊ちゃま。」
442仮面ライダー天邪鬼:2006/02/11(土) 01:20:13 ID:+tTaex190
粥を運んでくれる母に、携帯を取ってもらったが、着信は何もなく、
自分もかけそびれたまま月曜日を迎えたのだ。
 なんとなく自転車のペダルをこいでいると、向こうに持田が見えた。
白い繭に包まれた体が脳裏に浮かんで、頬が火照ってきた。
(やばい、夢とはいえ会いづらい。でも、とにかく挨拶を)
「持田。おは……」
「安達君、あたし、見てないからね……!!」
消え入りそうな声で囁くと、持田はものすごい勢いで、自転車を飛ばしていった。
「え?まさか」
「安達君、大丈夫ですよ。変身解除する前にヒビキさんがコートをかけてくれましたから。」
あきらが、からかうようにウインクして自転車を側につけた。
「な…。何のこと。俺、週末、変な夢を見たんだけど……、まさか」
「夢ですか。そうですね。そういうことにしてあげましょう。」
謎めいた微笑を浮かべると、その美しい顔を風に逆らうように向け、
軽やかに追い越していった。
                          完
443仮面ライダー天邪鬼・追記:2006/02/11(土) 01:30:02 ID:+tTaex190
 最後まで書かせていただきました。ありがとうございます。
 駄文ですが、今回を逃すと、もう投稿する勇気がわかないだろうなと思いましたので。
 東野圭吾『片想い』、夢枕獏『陰陽師』シリーズの虫好きの姫君の話などから
影響を受けてます。
 今後は読む方に徹します。いろんなジャンルの展開を楽しみにしております。
444名無しより愛をこめて:2006/02/11(土) 01:34:53 ID:Fo+XXyVj0
ほうほう、なるほどねえ!
オロチ前の「鬼だけに任せておけぬ・・・」の洋館男のセリフを
陽の魔化魍魎の伏線にしましたか。
GJ!
445名無しより愛をこめて:2006/02/11(土) 06:41:32 ID:70PSDhAM0
天邪鬼さんお疲れ様です。良いお話でした。
もし続編か番外編が放送されるならこれを
元に製作して欲しいです。DVD最終巻に後日談
で収録してくれればと夢をみてしまいます。
明日夢らしい音撃、まさに清めの音でした。
446名無しより愛をこめて:2006/02/11(土) 09:06:46 ID:53cATxoP0
連載じゃなくて、こんな感じの一話完結ならいいんじゃね?
GJ!
447凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/11(土) 11:53:32 ID:kPdjqYam0
なんだか俺の質問のせいでスレの雰囲気が悪くなってしまって、申し訳ないです。
この話題も終わらせたほうがいいのかもしれませんが、最後に一つ。
「叩き」と「批評」は違うものだと思うので、そこのところご理解をよろしくおねがいします。
鋭鬼スレのほうで「叩きにめげす」などの書き込みがあったのですが、どうかそうではないことを知っていてもらいたいです。
これは俺の勝手な解釈ですが、ここの住人さんたちの「批評」は決して悪意があっての事ではないと思います。
悪意があっての批評は「叩き」かもしれませんが、ここの皆様の意見は皆おもしろいSSを楽しみたいという思いから来るものだと思っています。
この批評を受け止めて、このあとどうするかは職人さんの考え方で好きに決めて構わないことだと思いますので、
どうか、今後もみんなが楽しめる素晴らしいSSを投下してください。
待ってます。
448裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/11(土) 13:27:31 ID:b01Xw3lOO
予告は>>289

一之章『雨の街』

2011年。
台風の中、一台の車が、闇夜をヘッドライトで貫きながら、佐伯家の庭に入る。
自宅に着いたイチゲキと、その妻・石割彩子は、明るさや笑顔が消え去ったリビングのドアを明けた。
「お帰りなさい。 彩子、身体は大丈夫?」
身重の娘を気遣う佐伯春香は、捜索から帰ってきた二人の為に夕食を作って待っていた。
「ありがとう、母さん…… 今日も…… ごめんなさい。」
笑顔で首を横に振り、春香は、大丈夫よと、彩子の頭を撫でた。サバキが行方不明と成り、三ヵ月が過ぎようとしていた。

その頃…… 山の奥。
吊橋から落下した裁鬼と武者童子は、谷底で戦いを続けていた。
音撃双弦を射ち出し、魔物に柄と刀身を繋ぐ特殊弦を絡ませる。無言で極楽を掻き鳴らすと、怯んだ武者童子に斬撃を浴びせ、倒れたその身体に閻魔と釈迦を突き立てた。
爆発し、枯葉や土くれと成った魔物の欠片は雨風に飛ばされていく。
音撃双弦を腰の装備帯に戻すと、裁鬼は次なる魔化魍を求め、再び彷徨い始めた。
449裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/11(土) 13:30:38 ID:b01Xw3lOO
石割夫婦の寝室は、彩子が自室として使っていた2階の東側にあった。ダブルベッドの上で、イチゲキは妻に話す。
「……お前が風呂入っている間、義母さんと話してたんだ。 サバキさんの事。」
「……お父さんが居なくなって、寂しくて悲しいのに…… 母さん、いつも笑ってるね。」
「……強いな。 あの人は。 ……義母さんの為にも、早く見つけないとな。」
「うん。 ……バンキ先輩達も探してくれてるし、きっと、見つかるよね? お父さん。」
イチゲキは、この温もりを、この幸せを与えてくれ、自分を導いてくれた師を、必ず春香の処へ帰す事を改めて決意した。
虚ろな情景の中に立つサバキの笑顔に笑いかけ、3年前の旅行を夢に見ていた春香は、いつの間にか、遠ざかっていく夫の背を追い続けていた。
目を覚まし、それが夢だと気付くと、静かに、涙だけが、頬を伝った。
誰にも見せない悲しみを拭くと、春香はカーテンの隙間から窓の外を見つめる。
雨は、まだ上がっていない――
450裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/11(土) 13:31:29 ID:b01Xw3lOO
1983年。
霧雨が繁華街の灯りを夜空に上らせ、音も無くアスファルトの地面を漆黒に濡らしている。
人混みの熱気から離れた路地裏だが、9月の蒸し暑さが、自然と汗を吹き出させてくる。
呻きながら倒れている十数人の高校生達の中、学生服を返り血に染めた佐伯栄と曽我尊児は、それぞれ最後の相手を殴り倒し、小さな原付に二人乗りした。
「……顔、覚えたぞ…… クソ餓鬼〜!」
倒された内の一人が恨めしそうに言葉を発すると、佐伯栄は原付を走らせ、タイヤをその高校生の手の上に停めながら言った。
「いつでも相手になってやるよ、センパイ! ザコは何人掛かってきてもザコだからな!!」

バー『四つ葉』に呼び出されたシュキは、カウンター席に居た若い姿をしたテンキを見つけると、その隣に座った。
若いマスターが注文を聞こうとしたがシュキに無言で制され、再びグラスを磨き始めた。
「……引退するのは本当か?」
飲み干したグラスを置き、テンキは頷いた。
「十分過ぎる程働いたんだ。 それにいつまでも若い姿じゃ、30も年下の嫁に怒られちまうからな。」
シュキは頭を横に振る。
「……お前の強さは衰えていない。」 「強さなんて、鍛えたり、道具使えば良いだけじゃねぇか。」
「違う。 私が使い熟せなかった『修羅』でさえ、易々と極めしたお前には、お前にしか無い強さが有る。」
テンキは笑みを浮かべ、決意を変えない様子だった。
「……弟子は? このまま取らず身を退くつもりか?」
「……他人のコトなんか知らねぇな。 強く成りたきゃ、自分で強く成りゃ良いだけじゃねぇか。」
451裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/11(土) 13:32:19 ID:b01Xw3lOO
シュキはテンキと同じウィスキーを注文し、一息で喉に流し終えると、違う、と言った。
「私は、私自身の技術を、後世まで残す為に弟子を育てている。 鬼に成る者は皆、思いは違えど、魔化魍を倒すという目的は同じだ。」
2杯目を飲み、シュキは続けた。
「……私は種を、残したい。 いつか私が朽ちても、私の技術、闘いが風化する事を防ぐ為、私は『鬼の種』を育て、その鬼が新たな種を育てる。」
「……輪廻、いや、螺旋? いつの時代でも、変わらねぇモン、忘れねぇモンでいたい…… ってか?」
「連鎖だ。 私という楔から、輪が生まれる。 その輪から、次代に繋がる輪が生まれる。 ……違うものだが、同じもの。 ……それが、私の『鬼道』だ。」
「……」
「お前に、その気は無いのか!?」
カウンターを叩くシュキを残し、テンキは一万円札を置いてドアに向かった。
「……無ぇな。 凄ぇ筋が良いヤツか、全く鬼に向いてねぇ馬鹿のどっちかを拾ったら分からんが。 ……ま、育て甲斐の有るヤツってのは、大抵育てる必要が有りゃしねぇモンだ……」
「……っ、勝手に老いるが良い!」
「そうするよ。 ……それとな、シュキ。」
怒りに顔を向けず、黙って3杯目を飲んでいる背中に、テンキは別れの言葉を残して出ていった。
「お前、もっと笑った方が良いぜ。 笑ってるのは、花いじってる時ぐらいだろ? ……俺は鬼の種より、ニカーッと笑える、『笑顔の種』の方が良いな。」
452裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/11(土) 13:33:13 ID:b01Xw3lOO
夜間徘徊を取り締まりに来た警官を殴り倒し、佐伯栄は屋根が有る場所、山道へ続く県道沿いに建っている廃工場で煙草を吹かしていた。
「……なぁ、ソンジ。」
曽我尊児は、開け放たれた入り口から、次第に強くなってきた雨を見つめていた。
「何だ、サカエ?」
家代わりの施設に戻る気が無い二人は、高校にも行かず、憤りと不満を喧嘩で発散する日々を続けていた。
「俺達、なんでこんなにムシャクシャしてるんだろうな……」
「……家族とか仲間が居ないからじゃねぇの? 俺達、フツーじゃないんだろ。」
「……そっか。 ……フツーじゃないからか。」
誰にでも反抗と悪態を繰り返してきたサカエだか、兄弟同然に育ってきたソンジの言葉だけは、吸収してきた。
「……ドコに行っても、俺達って『その他』だろ? 親も家族も居ねぇヤツなんか、信用されねぇんだろうな…… 働く所なんて無いしさ。」
「……畜生! 何でだよ!? どいつもこいつも、俺達を見る目がいつも浮ついてやがる!!」
灰皿にしていたコーヒーの缶が、雨の中に投げ捨てられた。
「……仕方無いだろ。 『人の気持ちを考えろ』って大人達が言ってくるけど、俺達の気持ちを理解しようとするヤツなんて、居ないからさ。」
ソンジは、制服のポケットから小さな鉛筆とメモ用手帳を取り出すと、扉の隙間に降り続ける雨を描き始めた。
「……」
入り口の外を過った人影は、暫くすると引き返し、工場の中に入ってきた。
「あ〜、ちきしょう! 傘持って来りゃあ良かった!! ……何だ、先客かぃ。」
453裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/11(土) 13:34:01 ID:b01Xw3lOO
濡れた髪を掻き上げるテンキに、ソンジはスケッチを中断した。
「……んん? お前達、中学生か? 餓鬼は早く帰って寝ろ。 親が心配してるぞ。」
テンキはそう言うと、勝手に段ボールを床に敷き、上着を脱いで鉄骨から突き出ていたボルトに掛けた。雨が止むまで、居座るつもりらしい。
サカエとソンジの視線も気にせず、テンキは段ボールに寝そべって脚を組む。
三人の間に、沈黙が流れた。時折、罅割れた屋根から落ちる水滴が、古いバケツの油膜に落ちる音だけが、静かな廃墟に響いた。
「……早々と、家に帰ったらどうだ?」
「うるせぇ。」 「アンタに指図される筋合いは無ぇ。」
二人の返事に、テンキは身体を起こすと、原付に座っているサカエに近づいた。
「坊主達。 大人の言う事は聞いとけ。 もう一度言う、早々と……」
サカエの右パンチが無言で、テンキの顔面に放たれた。
「!?」 「……家に帰れ。」
サカエの拳を、大きな掌で封じながら、テンキは穏やかな口調で言った。
「サカエ!!」
立ち上がったソンジの蹴りを脇に抱えると、二人を軽々と、先程取ってきた段ボールの上に投げ飛ばした。
「喧嘩ごっこは餓鬼同士でやんな。」 「……クソ野郎!!」
サカエは頭に血を上らせ、次々とテンキに攻撃をしかける。しかし一発も当たらない。中年の身のこなしに、ソンジは早くも実力の違いを抱き始めていた。
「暴れて殴ってして来ただけの技だなぁ。 おい餓鬼、当ててみろ。」
怒り狂ったサカエのパンチが大振りになった時、テンキのパンチが学制服にめり込んだ。
454裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/11(土) 13:38:57 ID:b01Xw3lOO
「ぐえっ!」
今まで受けた事の無い衝撃に、サカエは胃液を吐き出して、悶絶している。
「……大人が、ガキ殴って良いのかよ?」 「餓鬼が大人に殴りかかって良いのか?」
ソンジも腹を殴られ、胃の中を掃除された。
「おっ、止んだか。」
街を覆っていた雲に切れ目が出来、月明かりの中、テンキは上着を肩に、入り口へ向かった。その足を、先程まで蹲っていたサカエの腕が掴む。
「……待てよ、オッサン!」
ふらふらと立ち上がり、サカエはテンキに拳を握り締める。
「俺達はまだ、やられてねぇ! そうだろ!? ソンジ!!」
ゆっくり身体を起こすソンジだが、テンキの強さに足が震えていた。
「認めねぇ…… 俺は負けちゃいねぇんだ!」
「阿呆。 誰がいつ勝負してるって言った。 何度も言わせんな…… 早々と、」
「家も親も無ぇんだよ! 俺達には!!」
パンチを躱したテンキが、その言葉に笑みを浮かべた。
「誰にも認められねぇ、誰からも相手されねぇ…… 俺達なんか、生きてる事すら無視されてるんだよ!!」
「馬鹿。 お前が認めてねぇだけだろ、『現実』ってヤツを。 餓鬼同士の喧嘩ごっこに勝ってもお前達が、吠えてるだけの負け犬だって事は変わんねぇよ。」
瞬きする間にテンキのパンチが顔面に炸裂し、サカエの意識を飛ばした。
「サカエ!!」
ソンジは、テンキの強さに恐れすら抱き始めていたが、倒れる兄弟に駆け寄ると、巨大な敵を睨んだ。
「……アンタ、一体何者だ? どうして、そんなに強いんだ?」
テンキはニヤリと笑い、拳を構えた。
「人助け…… 生命の護り人だな。」
ソンジの意識も、そこで途切れた。倒れた学制服から、鉛筆と手帳が零れ落ちて転がった。
再び振り出した雨は止まず、二人が気付いた時には、テンキの姿は無かった。
「……痛てぇ。」 「……ああ。」
黒くて冷たい地面に、手帳のページが一枚、白く目立っていた。
「あのオッサン……」 「……の家か、コレ?」
県道から入る山の集落らしき住所が書かれ、『強くなりたきゃいつでも来な』と、達筆で添えられていた。
工場の外は土砂降りに変わり、数メートル先も見えない暗闇だけが、サカエとソンジを取り囲んでいた。

一之章『雨の街』 完
455次回予告:2006/02/11(土) 13:39:56 ID:b01Xw3lOO
2011年、行方不明となった裁鬼を探す鬼達の前に、引退していたヒビキが現われる。

1983年、テンキとの出会いから一夜明けた二人は迷い、雨の街を彷徨っていた。しかし……

二之章『雨宿り』 次週公開予定
456名無しより愛をこめて:2006/02/11(土) 14:52:28 ID:Fo+XXyVj0
GJ!とともに今まで名作をありがとうございました。
457皇城の...の中の人:2006/02/11(土) 19:34:19 ID:kkywHKn90
くっ…すばらしい。
自分にはかけない類のは無しだ。
GJ!
458凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/11(土) 19:48:14 ID:kPdjqYam0
うぉぉ裁鬼SS復活ですね。
裁鬼さん送鬼さんの過去話ですか。
何年も先の話なのにずっと昔の話と平行して書くとは。
おもしろいですね、GJ!
459響鬼過去話:2006/02/11(土) 23:19:48 ID:L7sA4hkI0
「ヒビキさんでも、やっぱ泣いた事とか・・・その、あるんですかね?」

夕日が鮮やかな初春。明日夢の不意な問いに、つい笑みがこぼれるヒビキ。

「まぁ・・・そりゃ、あるさ。最初から、強い人間なんていないんだし。
俺的にはまぁ、その。鍛えていても、辛い事があれば正直に泣けばいいと思うしさ。」

いつものヒビキさん。だが、その目には先程の笑みとは違う物悲しげな闇が見えた気がした。
気まずい空気をかき消すように話題を変えよう。そう思う、明日夢。

「やっぱ、ヒビキさんは明るいし、周りに気が配れるし。
昔から友達とかも多かったんですよね、やっぱ。」

友達、その言葉が放たれた瞬間、ヒビキの顔が再び曇る。
だが、すぐにいつもの笑顔で語りかける。

「まぁ・・・そうだなぁ。友達って難しいよな、ホント。
俺だって、今はこんなのだけどさ・・・昔は色々と悩んだりしてさ。
ハハ、まぁそんなにたいしたことじゃないんだけどな。」

夕日が広がる空、茜色の空に・・・ヒビキは「あの日々」を重ねていた。
自分がまだ見えなかった、透明な日々に。

−おい、日高。今日も、宿題。持ってきたぞ。明日は来いよな!約束だぞ。−

懐かしいあの声を。
460響鬼過去話:2006/02/11(土) 23:23:50 ID:L7sA4hkI0
次回 仮面ライダー響鬼序伝 壱乃巻「嘆く空」

461鋭鬼SSの中の人:2006/02/11(土) 23:37:18 ID:AAMV2C0+0
弾鬼さん置いていきますね 
つ【http://olap.s54.xrea.com/cgi/pal/imgdir/14.gif

二日で仕上げたので画が荒いですが
SSに関しては私は批評も叩きも(もちろん応援も)ありがたいです
怖いのは無反応ですから

絵師さんも増えるといいですね
462凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/12(日) 00:16:24 ID:/3ZxVUrE0
おお、これはすごい。
迫力が伝わってきますね〜。俺も絵が描けるようになりたいです。

>>怖いのは無反応ですから
同じく。批評でも反応があるってのは嬉しいもんですよね。
反応が無いと見てすらもらえてないかと不安ですし。
あぁそれと、凱鬼SSは鋭鬼SSの設定を使って書かせてもらうことにしました。
凱鬼の性格は流石にどうしようもないですが、他の点はなんとか合わせていきたいと思います。
設定の食い違いなどがありましたら、ご指摘をお願いします。

>>459
新職人さん登場ですね。
今後の発展に期待してます。お互い頑張りましょう。
463弾鬼SSの筆者:2006/02/12(日) 00:29:01 ID:p9kAnCx30
>461
鋭鬼SS職人さんGJ!です。
劇中でもこのシーンは無かったので、凄く燃え上がるモノがありますね!!

さて・・弾鬼SSの今後ですが・・・
401さんの言うとおり、本来ならチラシの裏にでも書いとくような代物なんで、
なんとも言い返せないんですが・・・さて、どうしたモンですかね(汗

鋭鬼SSの中の人同様、応援、批判、叩きはありがたい事だと思ってるのですが、
401さんのご意見で、果たしてこのまま投下を続けて良いものかどうか、悩みました。
投下する、しないを住人の皆様に決めて貰うと言うのも、手の一つだと思ったのですが、
自分で作った話を、それで決めると言うのは責任に欠けるのではと思いました。

結論としましては、今後もこのまま続行させて頂きたいと思っています。

住人の方々には、未だ誤字脱字の悪筆乱文ですが、見守っていただけたらと思います。
464番外編「仮面ライダー剛鬼」五之巻:2006/02/12(日) 00:34:55 ID:aC4Edjcs0
五之巻「揺れる山」

闇夜。
山中で声を上げながら魔化魍が藪の中を進む。
童子と姫がいない。多分鬼に倒されたのだろう。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

謎の黒衣の男が魔化魍の目に入った。黒衣の男が計器のついた杖を地面に一突きすると、
魔化魍は力が抜けたのか、大きな音を立てながらその場に倒れこんだ。
黒衣の男は取り出した毬栗のような物体を魔化魍の口に押し込むと、またどこかへ去っていった。
465番外編「仮面ライダー剛鬼」五之巻:2006/02/12(日) 00:37:28 ID:aC4Edjcs0
オオニュウドウの5尺はあるであろう手のひらが地面を叩く。唸りを上げて山が揺れた。
凄まじい地響きの中、立ち込める土煙の中で、誰かがすっ転んだ。
「いてててててててて」むくりと影が起き上がった。転んだのは女性のようだ。
「大丈夫か?」そこにもう一つの影が見える。こちらは男のようだ。
「はぃっ、大大大丈夫です。私、ガンバリますから」
「よし、その意気だ。って腰が引けてるぞ おい!」「ハ、ハイ。」
オオニュウドウが今度は拳で大地を打つ。2人の身の丈の数倍はあるオオニュウドウのその野太い腕から繰り出される一撃が2人を襲う。
「いくぞ」「ハィッ。由美子・・・じゃなくてユラメキ行きます!!」
ジャンプでそれを避けた二人がそれぞれ変身音叉と変身鬼笛を構えた。
男が音叉を打ち、ユラメキが鬼笛を吹き、それを額にかざすと蚊取り線香の煙ようなものとまばゆい光が2人をそれぞれ包んだ。
そこに、あたかも虫でもつぶすかの様にオオニュウドウが再度その大きな手のひらを振り下ろす。
手のひらが地面を打った。だが手ごたえが無い。闇雲に地面を叩くも、もうそこに鬼の姿は無い。
オオニュウドウの口腔が開き、その牙が見えた。オオニュウドウが怒りの雄たけびを上げる。
しかし、その顔に上からの音撃棒いや、ハエタタキの一撃が見舞われた。オオニュウドウは苦しみのあまり、激しく身を悶えさせた。
二つの影が煙にまみれながら着地する。それを燦然と照り輝く真昼の太陽が照らした。
その一つは身の丈六尺九寸。腰に『蝿』と字が書かれたバックルのついたベルトを巻き、
棒部分が長く、まるでハエタタキのような形をした特殊音撃棒『賦雷』を一本右手に持った鬼。蝿叩鬼だ。
光を浴びて揺らめくもう一つの影は遊楽明鬼。蝿叩鬼の弟子だ。
彼女の手には以前師事していた師匠から受け継いだ音撃管『光芒』が握られている。
腰を屈めたオオニュウドウが右手で2人を叩き潰そうととする。遊楽明鬼が素早くDA『チャイロギンバエ』を展開すると、
蝿叩鬼が『賦雷』でオオニュウドウの手を跳ね除けた。そのオオニュウドウにいかにも鬱陶しい羽音を立てながら
蝿のディスクがたかる。それにきりきり舞いさせられるオオニュウドウに『光芒』による集中砲火で
遊楽明鬼が追い討ちをかけると、そこに接近した蝿叩鬼が跳び上がり、『賦雷』でオオニュウドウの体を乱打する。
466番外編「仮面ライダー剛鬼」五之巻:2006/02/12(日) 00:38:28 ID:aC4Edjcs0
バシッ!! バシッ!!
と小気味よい音を立てながら『賦雷』がオオニュウドウを打つ。
オオニュウドウの鋼のようなにび色の筋肉が赤みを帯びて腫上がった。
今にも事切れそうなオオニュウドウが尻からゆっくり地面へと倒れる。
「音撃、いくぞ!!」
蝿叩鬼はベルトの『蝿』のバックルを取り外すとそれをオオニュウドウの胸板にめり込ませた。
遊楽明鬼も少し不慣れな感はあったがマウスピースとベルトの音撃鳴『射光』を『光芒』に取り付ける。
辺りが一瞬静まる。
しかしその時だった。オオニュウドウの体がみるみるうちに変化し、鎧のように変化した。
物凄い速さと勢いで放たれた平手打ちが蝿叩鬼を一瞬で、そしてまるで虫けらのように弾き飛ばした。
蝿叩鬼は山肌に直撃し地面へと崩れ落ちた。山肌が抉れそこには、はっきりと蝿叩鬼のぶつかった跡が残っていた。
オオニュウドウは蝿のディスクを軽く両手で叩き潰すとすぐさま音撃を開始しようとする遊楽明鬼を右手で掴み、腕に力を入れた。
遊楽明鬼を締め上げるオオニュウドウの握力は明らかに今までのそれより強い。
「・・・・・・・・・・・・」
ぎりぎりと体を締め上げられ声が出ない。ついに遊楽明鬼のパイプ状の襷パーツにもひびが入り割れ始める。
オオニュウドウが右腕に力を入れる。遊楽明鬼の体を激痛が襲う。だがその痛みもしだいに薄れていく。
ランナーズハイってやつだろうか?いや違う。オオニュウドウの様子がおかしい。何かに苦しんでいる。
「音撃打・一撃殺虫の型!!」
その隙を突いて蝿叩鬼が跳び上がり音撃を加えた。力の抜けたオオニュウドウの右手から遊楽明鬼が落ちた。
蝿叩鬼は彼女をキャッチし着地後を地面に寝かせると、再度オオニュウドウに立ち向かおうとを『賦雷』構えようとした。
だが、その体からふっと意識が抜けた。
「蝿・・叩鬼さん・・・・」
朦朧とする意識の中で遊楽明鬼が見たのは力なく地面へ倒れこむ蝿叩鬼の姿だった。
467番外編「仮面ライダー剛鬼」五之巻:2006/02/12(日) 00:39:29 ID:aC4Edjcs0
「足、崩してもいいぜ。ラフに行こうや、ラフに」
「げんじろう」の二階。そこにある和室に髭面の男が大の字になって寝転がっている。
一緒にいた少年が正座していた足を崩した。でも、逆にラフな姿勢では違和感を感じる。
そこはそんな部屋だった。『凄・橘』。そう書かれたそこにあったわけの分からない掛け軸からでさえ剛は威圧感を感じた。
これが「猛士」という組織なのだろうか。
「成美ちゃんって言ったっけ?あの子 やっぱ、剛の彼女なのか?」
「・・・・・・そういう訳じゃ・・・・・・」「じゃあ?クラスメイトかなんかかな」
「・・・そうでもないんですけど。同じ学年ってだけで・・・」「ふ〜ん。中3ねぇ」
将来のこと、成美とのこと話したいことは沢山あったが、なかなか剛は切り出せない。
恥ずかしいだとか、こんなことをソウキに聞いてもいいのかとかいう気持ちが邪魔している。
剛は部屋を見回す。なんでもよかったが、自分のこと以外で話の種を探した。
ふと、剛の目に小さな額に立ててある写真が目に入った。この部屋の雰囲気にどことなくマッチしている。
(・・・ソウキさんとおやっさん 横にいるのは・・・・・誰だ?何か80年代の特撮番組の主役にいそうな顔だ。
 その横は?もしかして『ヤマトよ永遠に』の「愛よその日まで」を歌ってた布施明?・・・)
「ん、どうしたんだ」
「・・・この写真に写ってるのって布施明さんですか?・・・」
ソウキはすこし笑うと、剛の質問に答えた。
「違う、違う。これは小暮さんって言う人。俺たちの武器だとかDAだとか 
 そういうのを作ってくれる人なんだ」
「・・・横の人は?鬼のサポーターみたいな方ですか?・・・」
「こいつは小暮さんの甥っ子のコウキ(荒鬼)っていう俺の後輩の鬼。俺と違って太鼓で戦う鬼なんだ。
 まぁ、俺も太鼓は使おうと思えば使えるんだけどね」
ソウキが説明をする中後ろからミシミシと階段を上る音が聞こえてきた。
468番外編「仮面ライダー剛鬼」五之巻:2006/02/12(日) 00:40:16 ID:aC4Edjcs0
「誰だよ、そそっかしい。この店、古いんだからゆっくり上れって言ってあるだろ?」
ソウキが和室を出るとそこにはバイトの寺島がいた。彼もまた過去に魔化魍に襲われ猛士に入った人間の1人だ。 
「蝿叩鬼さんが魔化魍にやられたそうです 今電話がユラメキさんから」
息も絶え絶えに寺島が言った。
「おい、電話代われ!!!」
大声を上げソウキが海段を走り降りた。さっきの言動と矛盾している。非常時とはそういうものだ。
「ソウキだ。ハエタタキさんの容態は?」
「重傷です。意識はまだ。敵は多分オオニュウドウだと思います」
「多分って、戦ったんじゃないのか?」
「最初はオオニュウドウみたいだったんですけど・・・。体が鎧みたいになっていきなり強くなったんです。それで私もハエタタキさんも」
「お前とハエタタキさんがやられたからには、ただの魔化魍じゃないとは思っていたが。オオニュウドウの亜種か変種かなにかか」
「私にも分かりません・・・・・・・・・」
電話からユラメキの声が聞こえなくなった。
「おい、どうした。しっかりしろ!!」
「・・・す、すいません。ぼ〜っとしちゃって、心配しないでください。それじゃこれで」
「無理すんな・・・。鬼は体が資本だ。今はハエタタキさんと一緒にゆっくり休んどけ。俺がカバーするから」
「ソウキさん・・・」
「じゃあな。治ったらまた『げんじろう』に来いよ。」
受話器を下ろしたソウキの顔は、明るかったが声とは逆に浮かない面持ちだった。
「どうだって、ハエタタキとユラメキは?」
あわてて飛び出してきたおやっさんが訊ねる。
「ハエタタキさんは重傷で意識はないそうです。ユラメキも辛そうでした・・・・・・・」
そこにいた全員の顔が曇った。階段を下りてきた剛もその雰囲気を感じ取った。
「そうか・・・・・・・・。それで、相手は多分オオニュウドウだ。って言ってたと思うが」
「相手はオオニュウドウの亜種か変種らしいんですけど、なんか良く分からない鎧みたいなのを着る強化されたタイプみたいです。」
469番外編「仮面ライダー剛鬼」五之巻:2006/02/12(日) 00:41:04 ID:aC4Edjcs0
ほかの太鼓の鬼が空いてないんで、シフト的にはお前が行くことになる。いいな」
「それも承知の上です。『勺拍子』と『爆熱』用意してきます」
「こっちとしても敵がオオニュウドウなのかなにかも分からん状態でお前を送り出すってのは心苦しいことなんだがな・・・・・すまん」
「なぁに大丈夫ですよ」
長年の経験からして、こういうことが起きた場合に一番、割を食うのが実際に魔化魍を倒す鬼であることが
おやっさんには痛いほど分かっていた。ハエタタキ師弟のこともあってかその顔を暗いままだ。
サポーターや弟子のいないソウキを誰が助けるんだろうか?誰かが助けてくれるのか?
ハエタタキという鬼には弟子がいた。もしソウキがやられでもしたら・・・・・・・・。そんな言葉達が剛の頭をぐるぐる回った。

ソウキは持ってきたサイドバックを「弥勒」に取り付けると、大きなリュックを担いだ。
「・・・僕も連れってってくれませんか?・・・」
「駄目だ」
剛がそう言うと出発間際のソウキがすぐにそう返した。
「・・・お願いします!!・・・」
剛が大きな声を出しソウキに頭を下げた。剛とソウキが出会ってからすでに1ヶ月が経っていたが、
こんな積極的な剛の姿を見たのはこれが初めてだった。
「つれてってやれ」
おやっさんがただその一言だけを呟いた。
「行くぞ」
ソウキが剛にヘルメットを渡した。

つづく。
470次回予告:2006/02/12(日) 00:41:47 ID:aC4Edjcs0
「悩んでたり、何か壁にぶつかってたり、そういうもんだよな」
「・・・何にもわかんないんです。俺・・・」
「・・・鍛える・・・」
「俺のサポーターにならないか?」

六之巻「送る魂」
471名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 00:56:44 ID:pF2ssVMC0
まるでハエタタキのような形をした特殊音撃棒『賦雷』・・・フライですか?
ある意味これほど辛い音激は無いわなあ!ww
まあ、最初ドン引き設定が徐々にってパターンですかねえ?
これほど展開が気になるのも狙いかも・・・

GJです!
472高鬼SS作者:2006/02/12(日) 01:04:01 ID:5FnbaTx30
これより投下させていただきます。
舞台は再び関西に戻っています。
以前の威吹鬼の父親=導鬼に関しても自分なりにフォローを。

あと「紺碧の海」で一つ大きなミスを…。
>コウキには、関西にはみどりという理解者はいても、
「みどり」じゃなくて「あかね」だろorz
誤字脱字ならまだしも、これは読む人を混乱させるであろうミスなので
まとめサイトの中の人、できたら修正をお願いしますm(_ _)m
473仮面ライダー高鬼「背負う威吹鬼」:2006/02/12(日) 01:06:02 ID:5FnbaTx30
1976年、神無月。
その日、威吹鬼は不思議な姫と童子を倒した。何が不思議かと言うと、肝心の魔化魍が一向に現れないのだ。
話を順に説明すると、イブキはサポーターの立花勢地郎と共にイッタンモメン退治に向かっていた。その帰り道、偶然新たな姫と童子に出会い、これを退治したのだ。
「お疲れ様」
勢地郎が笑顔で顔の変身を解除したイブキにタオルを渡す。
「やっぱり連戦はきついね。僕も年かナ」
顔の汗を拭きながら冗談交じりにイブキが言う。
「はい、飲み物。でもさぁ、年の話題が出たから聞いておくけど、イブキくんって結婚して子どもが出来た後、どうするの?」
「そりゃ宗家の鬼の子である以上、修行を積んで、ある程度成長して、鬼になれたらイブキの名を譲るに決まっているさ」
そうじゃなくて……、と勢地郎は言う。
「イブキくんはその後も鬼をやるのかって事さ。子どもに名前を譲るなら新しいコードネームが必要だよ」
「ああそうか……。戦える間は戦いたいからね。新しい名前は決めておかなくっちゃ。勢ちゃんも何か良いのがあったら教えてよ」
「その前に早く結婚しなよ、イブキくん!」
「勢ちゃんこそ!」
二人は顔を見合わせて笑いあった。その後も二人は色々と世間話を始めた。最近「犬神家の一族」という映画が面白かったとか、来月は天皇在位五十年式典があるね、とか他愛の無いものばかりである。
「そろそろ行こうか」
そう言うとイブキは立ち上がり車の方へと向かって歩いていく。新しい服に着替えるためである。彼は首から下の変身を解除しないままでずっと談笑していたのだ。さっき倒した姫と童子の育てていた魔化魍が、突然現れるかもしれないと警戒していたからである。
だがその必要はもう無いようだ。
と、イブキの背中を見た勢地郎が「あっ」と声を上げる。「どうしたの?」と振り向くイブキ。勢地郎はイブキの背を指差しながらこう告げた。
「イブキくん……、背中、変なのついてるよ……」
474仮面ライダー高鬼「背負う威吹鬼」:2006/02/12(日) 01:07:43 ID:5FnbaTx30
コウキがいつもの通り、あかねのいる研究室にやって来た時、周囲は既に慌しかった。
「何かあったのですか?」
あかねにそう尋ねる。するとあかねは険しい表情でこう答えた。
「……イブキくんが、魔化魍に……」
「やられたのですか!?」
宗家の鬼が魔化魍にやられたとあっては、他の鬼に示しが付かない。これも日頃の鍛錬を怠っていたせいに違いない!怪我が癒えたら尻を音撃棒で叩いてやる!そう思うとコウキはじっとしていられなかった。
「あかねさん、イブキは何処に入院しているのです!」
「落ち着いてコウキくん!彼は別に怪我を負ったわけではないわ」
「……じゃあ一体どうなったと言うのです?」
あかねが実に言い難そうにこう告げた。
「イブキくんね、魔化魍に……とり憑かれちゃったみたいなの」
475仮面ライダー高鬼「背負う威吹鬼」:2006/02/12(日) 01:08:24 ID:5FnbaTx30
研究室のすぐ横にある実験室にイブキは隔離されていた。傍にはサポーターの勢地郎がいて、何か話して励ましている。
イブキは顔だけ解除した状態のまま、実験室の床にしゃがみ込んでいた。そして彼の背中には……。
「グギャアアアアアアアア……」
実に醜悪且つ小さな魔化魍がとり憑いていた。
「あ、コウキさん……」
イブキの目は虚ろになっていた。声にも生気が無い。
「ここに隔離して彼此一時間は経つんだけど……イブキくんの話じゃ背中のこれ、どんどん重くなってきているらしいのよ」
「しかも目に見えてイブキくんの顔色が悪くなってきているんです」
あかねと勢地郎がコウキに説明した。
「あかねさん、こいつは一体何者なのですか……?」
コウキはこんな魔化魍、今まで見た事が無かった。
「古い文献を調べてみたら、どうもオンブオバケらしいんだけど……、それ以外に詳しい記述が皆無なのよね」
イブキの背中の醜悪な塊、オンブオバケは、コウキの顔を一瞥すると再び奇妙な声で鳴いた。
「……他の魔化魍のように倒す事は出来ないのですか?」
「コウキくんなら分かるでしょう?この状態だと無理な事が」
確かに、オンブオバケはイブキの背中に密着している。菅で鬼石を撃ち込んだり、弦を刺して攻撃するとイブキにもダメージを与える事になってしまう。太鼓だってそうだ。清めの音を響かせるための打撃をまともに喰らってしまうのである。
「私が思うに、以前コウキくんがやった言霊を使ってみるのが一番だと思うの」
「は?」
あかねの唐突な発言にコウキは面食らった。
「ちゃんとしたデータが取れる良い機会じゃない。機材も研究室も貸すから、早く作ってきなさい」
「いえ、ですが……」
「は、や、く!」
仕方なくコウキは実験室を後にした。ああなるとあかねを止めるのは無理だ。黙って従うしかない。
476仮面ライダー高鬼「背負う威吹鬼」:2006/02/12(日) 01:09:52 ID:5FnbaTx30
あの時と同じ、二時間程度で言霊マイクは完成した。
途中、オーバーホールに預けていた音撃管を取りに来ていたアカツキと擦れ違った。軽い会釈をしていったものの、彼の目は物凄く怒っていた。出撃が出来なくなったイブキに代わり、これから魔化魍退治に向かうのだ。
その気持ちは分からなくもないが、こちらを睨むのは筋違いだろう。後であいつも説教せねば……、そんな事を考えながらコウキは再び実験室へとやって来た。
二時間の間にまた少し重くなったようだ。イブキは精神的にもかなり参ってきている。
「あの魔化魍が重くなる毎にイブキくんの体重が落ちてるみたいなの。計算じゃイブキくんの体重が全て奪われるまで残り三十時間ってとこかしら……」
「それだけあれば充分ですよ」
コウキはあかねにそう告げると、マイクを構えイブキの前に立った。
今回コウキはラジカセを持ってきていた。再生ボタンを押す。流れてきたイントロは「シクラメンのかほり」だ。あの時歌った歌であり、コウキの最も好きな曲でもある。

真綿色したシクラメンほど清しいものはない出逢いの時の君のようですためらいがちにかけた言葉に驚いたように……

「ああもう、駄目駄目!」
突然あかねが叫んだ。驚いて歌を止めるコウキ。
「もっと派手な感じの曲は無いの?バラードなんかじゃ駄目よ!」
「前はこの曲でいったのですが……」
「駄目!もっと明るい曲じゃないと!別に泣きたいわけじゃないんだから」
「はあ……」
溜息ともつかぬ呟きを漏らすと、コウキはラジカセの早送りのボタンを押した。再生、停止、巻戻し、再生、また停止、今度は早送りを何度か繰り返す。ようやく次の曲の頭の部分が出てきた。
「では次、行きます。マイ・ウェイを……」
一体自分は何をやっているのだろう。歌いながら、そんな疑問がコウキの頭をよぎった。
477仮面ライダー高鬼「背負う威吹鬼」:2006/02/12(日) 01:12:28 ID:5FnbaTx30
どれだけの曲を熱唱したのだろう。もうあれから三時間は経つのではないだろうか。ほとんど休憩無しで歌い続けたため、コウキの喉はかなり調子悪くなっていた。
(これは……発声練習も日頃の鍛錬に組み込まねばならないようだな)
マイクの耐久性は以前と比べ格段に上がっていた。しかし、肝心のオンブオバケが清められる様子など全く無かったのである。
(あの時と心持ちが違うからなのか!?今の私はちゃんとイブキを助けたいと強く想っているぞ!)
どんなに自問自答して、どんなに力の限り歌っても、依然変化は現れなかった。
あかねに言われるがままに、勢地郎や本部のスタッフ達が私物のカセットを持ってきてラジカセに入れる。
知っている曲は歌えるが、知らない曲は当然歌えなかったし、海外のハードロック等に関しては物凄い剣幕で拒否した。ピンク・レディーの「ペッパー警部」を振り付きで歌うようにあかねに言われた時は泣きそうになった。……それでも結局やってしまったのだが。
あかねも勢地郎も、その他のスタッフも代わる代わるマイクを手に歌った。中には郷ひろみの声真似をしながら歌う者もいた。上手い歌、下手な歌、様々な歌が実験室の中に響いた。だが結果は同じだった。
ぽつりとイブキが漏らした。
「皆さん遊んでませんか……?」
確かに、傍から見ればただのカラオケ大会にしか見えないだろう。
こうなったら「聖域」に置いてくるか、という案まで飛び出した。と、そこへ一人の研究員が何かの報告書を持って、慌ててあかねの傍にやって来た。
「コウキくん、ちょっと来て」
報告書に目を通したあかねがコウキを手招きする。
「オンブオバケに関する研究報告なんだけど、これを見て」
「これは……」
「そう、イブキくんの背中にいるオンブオバケ、こいつには 脳 が 無 い の」
魔化魍と言えど生き物である。それなのにこのオンブオバケには脳が無い。という事は……。
「仮説に過ぎないけれど、オンブオバケって本体が別にいて、イブキくんにとり憑いているのは端末みたいなものじゃないかしら。栄養を補給するための」
「可能性は高いですね」
すぐさま、イブキ達がオンブオバケの姫と童子に遭遇した場所を中心に、大量の式神が捜索に投入された。だが、何時間経っても本体が見つかる事は無かった。
478仮面ライダー高鬼「背負う威吹鬼」:2006/02/12(日) 01:14:43 ID:5FnbaTx30
「考え方は間違ってないと思うんだけどなぁ……」
あかねがぼやく。残り二十四時間を切ってしまった。このままではイブキは衰弱死してしまう。
「僕の代で宗家の血筋は途絶えてしまうのかな……」
イブキが弱音を吐き、そんな彼を勢地郎が励ます。だがコウキはつかつかとイブキの傍に歩み寄ると、彼の頬を叩いた。
「馬鹿者!お前は宗家の鬼だろう!弱音を吐くな!むしろお前が周りを気遣うぐらいの気概を持て!」
頬を擦りながらコウキを見上げるイブキ。だがその目には相変わらず光が無い。
コウキはふとある事を思いつき、あかねに言った。
「電話お借りします」
数分後、電話を掛け終わったコウキが戻ってきた。全ては明日決着を付ける、どうか自分を信じてくれ、とそれだけを皆に告げた。
その日の晩、イブキは医務室へと移され、点滴を受けながら眠った。否、確かにベッドに横になったのだが、時間が経つ毎に重くなる背中に恐怖して結局一睡も出来なかった。
その間、勢地郎がずっと傍で励まし続けていた。あるいは気を紛らわせるためにしょうもない四方山話を続けていた。
翌日、一人の女性が吉野本部を訪れた。四国支部のコンペキだった。
479仮面ライダー高鬼「背負う威吹鬼」:2006/02/12(日) 01:15:20 ID:5FnbaTx30
「まさか君が来てくれるとは……」
コウキは驚きを隠せなかった。コウキが四国支部に出向している間、彼女とは一度しか顔を合わせていない。尤も、コウキは負傷した彼女の代理として出向していたわけだから当然なのだが。
「多々良さんもお忙しいみたいですし、それにいずれ改めてあの時のお礼に伺おうと思っていましたから」
そう言うとコンペキはコウキが頼んでおいたもの、式王子を数枚懐から取り出した。
「これが四国支部ご自慢の式王子かぁ〜」
あかねが興味深げに色とりどりの御幣を眺める。
「ありがとう、助かったよ。ではあかねさん、時間ももう無いし早速行ってきます」
コウキは式神よりも上位の式王子ならもしかして、と思ったのである。
と、そこへ一本の電話が掛かってきた。応対したあかねがコウキに告げる。
「オオクビが出たらしいの。今出撃可能な管の鬼は誰もいないそうよ」
こうなると、自然と三種類使えるコウキが出撃する事になる。
「良かったら私がそちらに向かいましょうか?私も管は使えますし……」
コンペキがそう告げる。
「確かにそうしてもらえると助かるけど、大丈夫?」
あかねが尋ねる。関西の魔化魍は、四国のもののように結界で弱っているわけではない。だが、コンペキは笑顔でこう答えた。
「大丈夫、鍛えてますから」
こうしてコンペキがオオクビ退治に、コウキがオンブオバケの本体を捜索に向かう事となった。関西の地に不慣れなコンペキのために、あかね自らがサポーター役を買って出ていた。どうやら以前話したコンペキの「舞踏髪」がよっぽど見たかったらしい。
480仮面ライダー高鬼「背負う威吹鬼」:2006/02/12(日) 01:17:08 ID:5FnbaTx30
イブキが姫と童子を倒した地で、コウキは式王子を打った。鳥と人の姿をした数枚の御幣がそれぞれ散らばっていく。
数十分後、一枚の式王子が戻ってきて地図上のとある場所を示した。当たりらしい。
式王子に案内させて、現場へと向かう。そこには、植物が表面を無数に生い茂った、ふた抱えもある巨石が鎮座していた。
「これが本体か……」
音叉を鳴らし、額に掲げる。炎に包まれたコウキの体は鬼へと転じていく。
「破っ!」
気合いと共に炎を払い、コウキは仮面ライダー高鬼へとその姿を変えた。
鬼の出現に反応して、巨石=オンブオバケが蔦を飛ばして襲い掛かってきた。それらを全て手刀で払い、炎で焼き払っていく高鬼。一歩、また一歩と距離を縮めていく。
ある程度距離が縮まった事を確認した高鬼は、一気にオンブオバケの懐へと飛び込み、「紅蓮」を貼り付けた。オンブオバケの体表で巨大化する「紅蓮」。すかさず二本の「大明神」を構える高鬼。
「叩き甲斐のある相手だな」
まだ飛び掛かってくる蔦を払いながら、高鬼は掛け声と共に炎舞灰燼を叩き込んだ。だが、いくら連打しても爆発する気配を見せない。どうやら持久戦になりそうだ。
「お前が砕けるか、私の『大明神』の鬼石が砕けるか、勝負だ!」

十数分は叩き続けただろうか。とうとう右の「大明神」の鬼石が砕けた。だが、オンブオバケの体にも無数のヒビが入ってきている。
「好機到来!」
この一撃に全てを賭ける!
「音撃打・刹那破砕!」
左の「大明神」を右手に持ち替え、全身全霊を込めた一撃を叩き込む!
刹那。
大音響と共にオンブオバケの巨体が砕け散った。
481仮面ライダー高鬼「背負う威吹鬼」:2006/02/12(日) 01:18:13 ID:5FnbaTx30
本部へ戻ったコウキを待っていたのは、同じく戻ってきたばかりだと言うあかねとコンペキ、そして勢地郎に肩を支えられたイブキだった。彼の背にあったオンブオバケの端末は綺麗さっぱり消滅し、顔色も元に戻りつつあるのが伺える。
「凄かったよコウキくぅん、コンペキくんの『舞踏髪』!」
あかねが嬉しそうに報告する。
「コウキさん、ご迷惑をおかけしました」
イブキが勢地郎と共に頭を下げた。それに対しコウキは、
「馬鹿者!日頃の鍛錬が足りんから背中に寄生されるまで気付かないのだ!体調が戻ったらみっちりしごいてやる!」
そう言って「大明神」を取り出した。
「とりあえず尻を叩いてやる!」
「あの……、去年それで怪我人が出たのでは……」
「心配するな、今はしらふだ」
笑顔で答えるコウキ。
その後、イブキの悲鳴が木霊した。

コンペキは持ってきた式王子を置いていった。それ以来あかねは研究室で毎日のように式王子のデータを取っている。コウキは別れ際、コンペキにキリサキについて尋ねた。どうやら相変わらずのようだ。
あれ以来、完璧にイブキはコウキに頭が上がらなくなってしまった。
その後、イブキ=一文字が総本部長に、コウキ=小暮が開発局長になってからもそんな力関係は続いた。小暮が頻繁に研究室から行方を眩ましても御役御免にならないのは、こういう事情だったりする。 了
482名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 11:08:16 ID:AVcPUtZq0
-ZANKI-
20年前 崖に立つメガネの少年。足元には書置きが・・・。
もう僕なんて・・・。少年は崖から飛び降りた。が、足を捕まれ岸壁に顔をぶつけた。
「なにするんですか!」少年は命の恩人を怒鳴りつける。
「目の前で死に行く人を黙って見ていられるか!」なぜかギターを持ってる金髪の白人男性は少年を怒鳴り返した。
「もう僕なんて生きる価値はないんです!」「馬鹿やろう!」男は手加減なくぶっ飛ばす。少年はゴロゴロと三回転した。
「スカンクだって生き抜く為に屁をこく!お前は屁をすることさえやめたのか!」「うるさい!いじめられっ子の気持ちなんて・・・。」
ボカッ!再び男は少年を殴る。少年は軽く意識が飛んだ。
「オケラだってカエルだってアメンボだって生きているんだ友達・・・じゃなくて生き抜く為に必死なんだ。」
「お前は生き抜く為に何をした?自殺することか?オウンゴールか!」「・・・」
その時、赤い鳥のようなものが男の傍に来た。「なに、ここか。」男はそう言って手首に巻きついた変な物を引く。
落雷と共に男は見たこともない格好になった。「あわわわ」少年は腰が抜けた。
「そこを動くな。」少年の後ろから巨大な蟹が現れた。男はその蟹に飛び掛ると持っていたを突き刺す。
「音撃斬!雷電激震!」激しいメタルサウンドが響き、蟹は吹っ飛んだ。
「ふぅ」男は顔だけ普通に戻る。「こんなもの見せてすまなかったな。」少年は混乱した。
「見ちまったついでだ。どうだ俺と一緒に鍛えないか?」どうせ死ぬんだ。少年は最後に面白半分で男と共にいることにした。
「OK!お前名前は?」「・・・財津原蔵王丸です」「へ、言い名前じゃないか。ロベルトバッジョぐらいいいぜ。」
男はギターを担いで歩き出す。「俺が苦いエスプレッソの旨さを教えてやるぜ。」「あ、待って貴方・・・。」
「俺の名はザンキ・・・そう呼ばれている。」「そうじゃなくて裸です。」
男はギターで大事な所を隠した。
不定期で続く。
483皇城の...の中の人:2006/02/12(日) 11:19:58 ID:jfhLRwFd0
しばしキーボードに突っ伏して笑いましたw

ロカビリー臭ぷんぷん……先代斬鬼さんと理解してよろしいのですか?
響鬼さんもこの方に弦を習ったことになるんですよねぇ。
キャラが合わなくて、確かに喧嘩しそうですw

しかし20年前にロベルト・バッジョってw
484名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 11:30:02 ID:AVcPUtZq0
むしろ叩いてくださいの設定紹介

出演 先代 斬鬼(本名ザルバトーレ・ザネッティ)役◆パンツェッタ・ジローラモ
   財津原少年役◆神木 隆之介
   レストラン店長と奥さん◆グッチ祐三 平野レミ
   少年のお姉さん◆鈴木 杏
謎の韓国人◆アンジョンファン
アシスタント◆山口もえ

主題歌 「魔弾」TMR
音撃弦 「烈雷」 Let's Light 火をつけようぜ!
音撃震 「雷轟」 Light GO 光はいく!
音撃斬 「雷電激震」 Raiden get a thing! ライディーンは何かを手に入れる!
叩き、罵倒募集中!
485皇城の...の中の人:2006/02/12(日) 11:47:12 ID:jfhLRwFd0
なぞの韓国人…謎のってw
486名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 11:49:30 ID:pF2ssVMC0
職人さん空耳好きでショ?ww
487名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 12:00:09 ID:+Kk8qzTC0
ちなみに先々代のザンキは石原裕次郎でw
488名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 12:01:47 ID:pF2ssVMC0
いや加山雄三エレキの若大将でww
489名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 12:04:37 ID:pF2ssVMC0
30分番組中、10分は料理コーナーだな!
490名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 12:07:27 ID:QuRW+YOg0
>>489
10分で済むのか?・・・・
491名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 12:12:04 ID:pF2ssVMC0
手早い料理が売りの2人だからね!
ただし先代斬鬼の試食が長そうだww
492名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 12:31:43 ID:pwdTuykm0
>489
絶対番外編でやるぞw
493名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 12:56:50 ID:pF2ssVMC0
レストラン店長「今日は蟹とエイを使ってパスタにします。」
一同「イッタンモメンとバケガニかよ・・・」
奥さん「こうやって食べると何でも美味しいのよ!!」

他に食材になりそうな魔化魍浮かばない・・・orz
494名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 13:11:57 ID:x1+h5ZtK0
>>493
ウブメは塩焼きで
オオナマズは胃袋を取り除き刺身で
アミキリは羽根を取り塩茹でで
ヤマアラシは牛っぽいな
オトロシは亀の部分はともかく・・サイってどんな味?
495名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 13:20:46 ID:pF2ssVMC0
大型哺乳類でやっぱり牛じゃね?

後は職人さんにまかせる!・・・無責任でスマソ
496名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 13:24:42 ID:KSmYCcv30
>>487
わが青春のアルカディアでつか???
497名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 13:38:20 ID:2GMPbpVo0
音撃かますと爆砕して木の葉みたいなのになるんだが・・・
狐か狸に化かされたみたいなレストランになる気がw
498剛鬼SSの中の人:2006/02/12(日) 13:59:41 ID:aC4Edjcs0
>>493
ヌリカベを使ったフランス料理(エスカルゴの系統)
ウワンとノツゴはフライにして
ロクロクビは鰭から鱶鰭スープをとって
といった感じでもいいと思われます。
499493:2006/02/12(日) 14:07:22 ID:pF2ssVMC0
>>482さん始め他の職人さんにスレ消費が申し訳無いから
鋭鬼スレで話してはどうでしょう?
500493:2006/02/12(日) 14:14:53 ID:pF2ssVMC0
スイマセンまた連投・・・

思いつきでした。あっちのが残り少なかった・・・orz
501名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 15:13:37 ID:sd6PWcbB0
ところで、何KB越えたら次スレ準備したらいいかな?

前回は500KB越えたところで書き込めなくなったようだから気になる。
基準があったら、次からは>>1に書いておいたほうが良いと思う。

次スレからは、響鬼SS総合スレにした方がいいと思うんだけど、
テンプレとか何か意見ありましたらよろしく。
502名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 17:45:21 ID:8guhcTR40
主題歌 「魔弾〜Der freischutz〜」TMR…

「♪外すこーとのない 恋の魔弾をー この胸にー打ち込んでーよ♪」

…あれ?!管の鬼w
503493:2006/02/12(日) 20:11:28 ID:pF2ssVMC0
>>501
漏れの常駐スレだと残り30レスぐらいまでに次スレ立ててるけど
容量だとどんなもんかな?
504名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 20:21:35 ID:dvHKYRZS0
>>503
前スレは714で容量オーバーでした
505凱鬼SSの中の人 ◆mx0L4IusB2 :2006/02/12(日) 20:25:46 ID:/3ZxVUrE0
>>501
スレタイトル変更には賛成ですね。
テンプレはまとめサイトとスレ建てについて、投稿のさいの必要事項などがあればいいと思います。
506名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 20:33:35 ID:QuRW+YOg0
現在450KBぐらいだから、あとおよそ60KBくらいなのかな?
感想レスと投稿があるから、一概にレス番いくつとは言えなさそうだけど、
作家さんもROMする人も投稿時にちょっと気にした方が良さそう。
507名無しより愛をこめて:2006/02/12(日) 21:36:13 ID:sd6PWcbB0
ホットゾヌに残ってたDATで調べた。
前スレ 513186byte/ 714レス   1レスの平均 約719byte
現スレ 459009byte/ 506レス   1レスの平均 約907byte
累計 972195byte/1220レス   1レスの平均 約797byte

正確に何バイトで容量オーバーかがわかってないんで不正確になるけど、
前スレとこのスレの506までのDATサイズの差から、あと何レス書き込めるか
を予想すると約75レス〜約59レスって感じになる。
小説が連投されれば実際はもう少し減るかもしれない。

レス数ではなくて、スレ容量が470KB超えたら次スレを立てて誘導するのではどうですか?
508響鬼序伝作者:2006/02/13(月) 01:11:34 ID:a5A96x0y0
容量の関係もあるんで投下は次スレからにします。
509名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 01:39:53 ID:9nvhVFPU0
>>507さん、dd!
て、事はあくまで単純計算だけど、15レスくらいのSSなら、2〜3本
投下できるという事ですね。

>>508さん、序伝楽しみにしてます。

作家さんが増えて、今回はスレの消費が早かったねぇ。嬉しい悲鳴だねぇ。
510名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 09:31:25 ID:cwRMwyLW0
-ZANKI- 次回予告
「どうせ死ぬんだから」そんな気持ちでザンキに弟子入りした財津原少年。
そんな少年を立派なジョカトーレにしようと
張り切って修行を始めるザンキの前に少年の姉と名乗る少女が現れて…。
番組の後半では今の時期においしい鶏肉を使ったあったか鍋を紹介。
511名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 11:45:54 ID:cwRMwyLW0
―ZANKI―
レストラン「コスタクルタ」で、ナポリタンを食べるザンキの前に一人の少女が現れた。
「あなたですね。うちの蔵王丸に余計な事をさせているのは。」少女は挨拶も無く言う。
しかし、ザンキはナポリタンを食べる手を止めない。見かねた少女が手を止める。
「おいおい、故郷のナポリを思い出してたんだぜ。」「ナポリにナポリタンはありません。」
少女のツッコミで、ザンキは仕方なく話を聞く事にした。
「あなたが余計な事を言うから、殴られてるだけで逃げようとしないんです!」
ザンキはニヤリと笑う。「逃げるな、殴られろって言った事か?」「そうです。」
「姉ちゃん、まだ、男を知らないね。」「な、なんですか!」少女は顔を赤らめる。
「男は借金みたいなもんさ、気付かないうちに大きくなるんだよ。」
ザンキはお会計をツケにして少女を連れて店を出た。
少女は連れて来られた川原で弟の蔵王丸が中学生に殴られてるのを見た。
「あ!止めないと!」助けようとする少女をザンキは制止する。
「アイツの目を見ろよ。殴られても立ち上がる熱い闘志が見えるだろ」
そこにはいじめっ子から逃げずに何度でも立ち上がる蔵王丸の姿があった。
「アイツが戦ってるのは相手じゃない、自分自身だ。常に自分に勝つこと、
それが生きると言う事だ、今までのアイツはあんな目をしていたか?」
少女は涙を流しながら、立ち上がる弟の姿を見つめていた。
「だが、四対一はちょっと汚いな。アルゼンチンサッカーより酷いぜ。」
ザンキは中学生達の前に現れた。「おいおい、その辺にしとけよ。」
「なんだお前は!」「殴るなら俺を殴れ、手なんかださねぇよ俺は鍛えてるからな」
「ザンキさん…」傷だらけの顔で蔵王丸はザンキを見た。
これが男…これが師匠…これが鬼か…
「うるせえ!ガイジン!」中学生は石を投げた石はザンキの頭にコツンと当たった。
「痛ぇな!ゴルァァァァ!」ガン!思わずザンキはフルスイングで中学生を殴る。
中学生はヒューッと五メートルほど打っ飛ばされた。
そんな仲間を見て他の中学生は慌てて逃げる。
白目で泡を吹いて倒れてる中学生を見てザンキたちも逃げ出した。
「なにやってるんですか!」「すまん!つい!」

暇だったら続く。
512皇城の...の中の人:2006/02/13(月) 16:01:31 ID:FBbtlYML0
先代のやんちゃっぷりが激しく笑えますw
513名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 17:24:23 ID:83pVcfTkO
かわいい「蔵王丸くん」がいかにしてあの「ザンキさん」と化すのかが楽しみだww
514名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 17:38:38 ID:cwRMwyLW0
>>512 私のチラシの裏以下文に勿体無い程のお言葉ありがとうございますw
申し訳ないので適当に考えた設定ですw

本名ザルバトーレ・ザネッティ(先代ザンキ)
イタリアのミラノ出身(らしい)
元はヨーロッパのモンスター退治組織「E.U.R.O」に所属(本人談)
当時はストリングスのWolf-MenでコードネームはZolf(なのか?)
ギターテクは世界一で世界中の有名ギタリストが彼の影響を受けた(?)
その後なんか色々あって日本に来て鬼になったらしい(詳細は知らん)
微妙に当ってる例え話が好き。20年先の事を予想するのが得意。
世界中の女を文字通り鬼の様に狼の様に猿の様に愛してきた(ここは実話)
ひでぇ設定w
515皇城の...の中の人:2006/02/13(月) 17:48:06 ID:FBbtlYML0
あのぅ…エルビスの格好(ステージ衣装。腕のとこにひらひらがたくさんついているやつ。
勿論白にスパンコール)をしたジローラモさんが何の臆面もなく町を練り歩き、喫茶店の
カウンターに座り、グッチさんの作ったナポリタンを箸ですすって中学生を本気でぶん殴っ
ている絵面が…

うすた京介の漫画みたいwwww
516名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 17:58:47 ID:cwRMwyLW0
自分で言うのもなんだが、ある意味、朱鬼に負けてないw
517名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 18:27:55 ID:1oZ6g2an0
>>516
むしろ、本来の師匠がこうだったから、あの朱鬼に耐えられたのではw
518名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 20:55:56 ID:BY9/k7du0
>>516 
…いや、先代斬鬼の考え(の一部)をかっこいいと思ったから、
恋に悩むトドロキにあんなアドバイスを…。
519493:2006/02/13(月) 21:01:18 ID:jFPKBKKa0
>>518
それだ!

ナポリタンは王様の仕立て屋かな?
520名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 21:17:43 ID:Okyr34bR0
>>518
そしてチョイ悪ファッションで味付けを・・・
521493:2006/02/13(月) 21:35:11 ID:jFPKBKKa0
挨拶はCiao(チャオ)〆!かな?
522名無しより愛をこめて:2006/02/13(月) 22:09:08 ID:hduagUyIO
>>521
それだ!

松‥じゃない、ザンキさんならばw
523名無しより愛をこめて:2006/02/14(火) 09:44:59 ID:Nn12yazS0
>521
それ使いますwただ自称だから本当にイタリア人かどうか。
ところで昨晩の投下が無かったのは、職人さんが次のスレ待ちなのかな?
小ネタで埋めた方がいいのかな?
524裁鬼作者:2006/02/14(火) 11:42:58 ID:/dU8lXGLO
取り敢えず、今夜23時頃に書き込む予定です。 残り容量大丈夫でしょうか。
525名無しより愛をこめて:2006/02/14(火) 12:42:13 ID:e1PU23Fg0
現在455KB。
この書き込みで残りが減るし、名前欄とかIDとかの容量(大体1スレ当り67byteぐらい)
を無視しているので不確かだが、前スレとの差分から1文字2byteとして計算すると
23000字(百の位は切り捨て)書ける。
400字詰め原稿用紙で57枚というところかな。
526テンプレ案1:2006/02/14(火) 12:54:43 ID:e1PU23Fg0
一応テンプレ案。
今書いてある説明は仮のものです。
スレタイと説明文やルールはセンスのある人が考えてください。

-----------------テンプレ1-----------------

「仮面ライダー響鬼」から発想を得た小説を発表するスレです。
舞台は古今東西。オリジナル鬼を絡めてもOKです。

【前スレ】
裁鬼さんが主人公のストーリーを作るスレ その2
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1138029584/l50

【まとめサイト】
http://olap.s54.xrea.com/hero_ss/index.html
http://www.geocities.jp/reef_sabaki/

次スレは、950レスか容量470KBを越えた場合に、有志の方が
スレ立ての意思表明をしてから立ててください。

過去スレ、関連スレは>>2以降。
527テンプレ案2:2006/02/14(火) 12:55:10 ID:e1PU23Fg0
【過去スレ】
裁鬼さんが主人公のストーリーを作るスレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1131944389/l50(DAT落ち)

【関連スレ】
--仮面ライダー鋭鬼・支援スレ--
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1124581664/l50
弾鬼が主人公のストーリーを作るスレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1133844639/l50(DAT落ち)
528裁鬼作者:2006/02/14(火) 13:08:39 ID:/dU8lXGLO
>>525さん
ありがとうございます。今回は約10000字。
何とか書き込めそうですが、夜までのテンプレ案等のレス数を見て判断したいと思います。
529名無しより愛をこめて:2006/02/14(火) 15:14:50 ID:Nn12yazS0
>>526
そんな感じで良いんじゃないですか?
スレタイは裁鬼職人さんに敬意をはらい
「裁鬼さん達が主人公の(ry)」ではどうだろう?
後発部隊用に出てきた鬼とか年表をまとめてくれる整理屋さんとか現れないかな。
530裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/14(火) 22:44:02 ID:/dU8lXGLO
前回は>>448から

二之章『雨宿り』

2011年。
悪阻の為、今日のサバキ捜索を渋々諦めた彩子を家に残し、イチゲキはバンキのベースに車を停めた。
「おはようございます。」
まだ朝の7時。雨上がりの地面もおとなしく、山の空気は冷ややかだった。
「おはよう。 ……今日は暑くなりそうだね。」
既に関東の各地では、今年もドロタボウやカッパが出現しており、ダンキを中心とした太鼓遊撃隊が活躍している。
現在、サバキを探している鬼はイチゲキとバンキの他、ショウキ、2年前に引退したトウキ、中部から駆け付けたトレーナー、ソウキ。津村努をはじめとした『歩』の人々も、それぞれ山野を調べている。
たちばなでは、幾分白髪を増やしたおやっさんが、初孫の疾風をおぶっていた。
「よぉしよぉし。 もうすぐ、お父さんとお母さん、帰ってくるからねぇ。」
イブキがウブメを倒し終えた報を、香須実から聞いたのが明け方の5時だった。電電太鼓を持ちながら、店内を右往左往していると、入り口が開いた。
「おっはようございます!」
「ああ、おはよう。 ……今日も、元気だねぇ。 日菜佳を見てる見たいだよ、コナユキちゃん。」
「事務局長! 『ちゃん』は要らんですよ! 『ちゃん』は!」
ソウキの弟子、コナユキは、今年の1月から関東支部に配属された、若干19歳の少女だった。普段はたちばなの店を手伝っている。
再び入り口が開けられた。イブキかと思い、振り向くコナユキの後ろから背伸びするおやっさんは、電電太鼓を床に落とした。
「……サバキさん、居なくなったって?」 「ヒビキ!!」
シュッ、とポーズをしたヒビキが、引退を宣言し、たちばなを出ていったのは半年前だった。
531裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/14(火) 22:45:26 ID:/dU8lXGLO
1983年。
朝の日差しも雲に阻まれ、薄暗い街をサカエは歩いていた。一気にテンキの住所へ突撃しようとしたが、ソンジに止められ、「昨日の男が何者か探ってからでも遅くねぇ」という言葉に従った。
商店街のアーケードは古く、所々に有る雨漏りの下に、水溜まりが出来ていた。ソンジは、昨日の男の特徴を説明し、何件もの店を回った。その結果……
「ああ、テンキさんの事かい。」 「テンキさんねぇ…… さあ、職業までは知らないねぇ。」
名前だけが判った。
サカエも、小雨降る県道の脇道を中心に、手当たり次第に道行く人々へテンキの事を訊いていたが、こちらも判明したのは名前だけだった。
ソンジは小さな公園で、トタン屋根のベンチに座ると、溜息を吐いた。
「……何者だよ、あのテンキってオッサン。」
目の前の小さな花壇では、萎れた向日葵が俯きながら、雨に打たれていた。
「……」
ソンジは、ポケットからメモと鉛筆を取り出した。
名前以外の手掛かりを掴めなかったサカエは痺れを切らし、喫茶店に入った。
ポケットの小銭を確認すると、学制服姿のサカエを訝しむウエイトレスにコーヒーを注文し、肩の雨粒を払った。
通りに面した窓の外は、まだツツジの葉が水滴を蓄えて続けている。

スケッチに鉛筆を動かしていたソンジは、後頭部に衝撃を食らい、濡れた地面に転がった。
「……探したぜぇ、クソガキ!」
右手を吊った不良が鉄パイプを持ち、9人の仲間を引き連れていた。
立ち上がったソンジは、唾を吐いて拳を鳴らす。
「……来いよ、馬鹿野郎!!」

コーヒーを飲み終えたサカエは、窓を叩く音に外を見た。
ニヤついた高校生が15人、人差し指で「出て来い」と促している。
「……チッ、ムシャクシャだけ増えやがる…………」
350円をテーブルに置くと、サカエはゆっくりとドアを開けた。
532裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/14(火) 22:46:17 ID:/dU8lXGLO
1時間が過ぎ、雨は昼前の街に降り注いでいた。
「どうした!? 来いや!!」
公園には6人の不良が倒れており、頭と口から血を流しているソンジのパンチが、7人目に水溜まりをプレゼントする。
「……おい、ヤベぇよ、タカマサ君!」
「うるせぇ! 向こうはもう、フラフラじゃねぇか! やっちまえ!!」
左手の鉄パイプをソンジに突き付けるタカマサという不良の合図で、2人がソンジにタックルを繰り出し、そのまま押し倒す。
反撃する力が残されておらず、藻掻くソンジの頭を目がけて、タカマサは鉄パイプを振りかぶった。
「……死んじまえ!!」
振り下ろそうとした瞬間、何故か鉄パイプが動かない。後ろを向くタカマサの視線が、テンキの眼差しとぶつかった。
「おい、糞餓鬼。 ……喧嘩ってのは普通、1対1でやるモンじゃねぇのか?」
「な、何だよ! おいオッサン! 離しやがれ!!」
「タカマサ君!」 「て、鉄パイプが……」
テンキが手を離すと、握っていた部分が圧縮されて平たくなっていた。
「ひ…… ひぃぃぃ〜!!」
逃げ出そうとするタカマサその他2人だが、テンキの両手と右足に捕まった。
「……友達、置いてくんじゃねぇ。」
高校生達が去った公園のベンチに寝かされたソンジは、雨でふやけたメモのページを捲るテンキを止めたかったが、力が出ず、奥歯を噛み締めた。
「……全部、お前が書いたのか?」 「……喧嘩じゃなくても、俺は落ち着けるから……」
友達思いなヤツだなと、テンキはメモをソンジのポケットに入れた。
「このままじゃ、風邪引いちまうな。 ……ウチに来るか?」

「畜生……」
大の字で路地裏に倒れていたサカエは、空に呟いた。テンキの言葉が脳裏を掠め続け、喧嘩に集中出来ず、9人を倒した時に金属バットのフルスイングで意識を無くした。
昨晩のテンキから食らったパンチを思い出し、もう一度雨雲に呟く。
「……畜生。」
足音が聞こえた気がしたが、サカエは再び意識を失った。
533裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/14(火) 22:48:24 ID:/dU8lXGLO
目が覚めると、サカエは見慣れた部屋の二段ベッドに寝かされていた。体には絆創膏や包帯が施されており、服も普段着に替えられている。
「お。 起きたか。」
6歳の時から育ってきた施設の園長が、ドアを開けて入ってきた。半年前に飛び出した時と変わらぬ、ソンジとの二人部屋。漫画雑誌や、3日で飽きたギター、ソンジのスケッチブックもそのままだった。
「ロクな物、食べてないんだろ? 待ってろ。」
「……」
暫くすると、温かい食事が運ばれて来た。しかしサカエは手を付けず、親代わりの園長に訊いた。
「ソンジは……?」 「一緒じゃなかったみたいだな…… いや、倒れていたお前を運んだのは昨日だったが、ソンジの居場所は知らない。」
「……」 「……どうだ、働いてみないか?」
唐突な言葉だった。知り合いの工場に住み込みで働けると、既にサカエの荷物をリュックに纏めていた。
今、その知り合いが近くまで来ているらしく、園長は部屋を出ていった。

「園長。 警察の方、もうすぐこちらに着かれるそうです。」
「そうか。 ……全く、迷惑ばかり掛けてくる疫病神め。 アイツもこれで、少しは反省するだろう。」
トイレに部屋を出たサカエの耳に、職員室の会話は届いていた。

リュックを手に施設を抜け出たサカエは、乗り場から発車する寸前のバスに飛び乗った。
やっぱり、誰も俺達の気持ちが解るワケねぇんだ……
山道を行くバスは、終点の集落入り口に停まった。
慌ててポケットやリュックを探り、乗車賃を出そうとするが見つからず、出口が遠退く感覚を覚えたサカエの背後で、一人の老人が、「二人分。」と運転手に千円札を渡した。
呆気に取られていると、老人が軽く背中を押す。発車していったバスは雨の曲がり道に消え、長方形の大きな木箱を抱えた和服姿の老人は、2本持っていた傘を広げた。
「……若いの。 テンキ、という男の家をご存じかな?」
サカエは先程の事も有り、暗記していた住所に向かって歩き始めた。最後に年寄りと話したのは何年前だったか、覚えていなかった。
534裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/14(火) 22:49:22 ID:/dU8lXGLO
「……なあ。 何で、さっき……」 「気にせずとも良い。 この案内の駄賃じゃて。」
白い頭髪は肩まで伸び、口髭が唇を隠している。かなり高齢の様だが、2つの木箱を脇に抱える手はしっかりとしており、雨道にもふらついていない。
暫く進んだ二人は、何故か集落を外れ、川原に出ていた。
「あれ? おかしいな……」 「……迷ったか?」
遠くに2つの人影を見つけたサカエは、老人に待っていろと言うと、テンキの住所を訊ねに近づいた。
「……何かご用でしょうか。」 「……これはこれは、美味しそう。」
雨の中、傘も差さずに岩場に立っている、妙に声の高い男と、低い女。否、声だけが男女逆に感じられた。
「……兄さん達、テンキって人のウチ、知らないかな?」
「……テンキ……」 「……テンキ……」
突然、サカエの身体が木箱に吹っ飛ばされた。いつの間にか男女の目の前に、老人が立っている。
左腕の袖を捲ると、その手首には、鬼の形をしたブレスレットが装着されている。
「テンキ……」 「……テンキ。」
老人はブレスレット下部の輪に指を掛け、2本の鎖で繋がれた弦を弾くと、サカエを見た。
「馬鹿野郎!! 俺ん家と反対方向じゃねぇか!!」
老人の顔が瞬く間に若返り、気付くと、テンキが立っていた。その身体は金色の炎に包まれ、目の前の男女が声を揃えた。
「テンキ…… 天鬼! ……鬼め!!」
サカエは、夢を見ている気がしてならなかった。今、目の前に―― 鬼がいる。
男女は、右手に鋏を持つ怪人に変化し、天鬼に襲い掛かった。怪童子の鋏は金の4本角に触れられず、妖姫の蹴りも肩に巻かれている銀色の弦に当たらない。
天鬼は、拳に金色の炎を纏わせると、一撃で怪童子の頭を砕き、逃げ出す妖姫の背に炎を発射して仕留める。
「……」
サカエの背後の林から、バケガニが現われた。天鬼は首をゆっくり回すと、「俺ん家の近くで巣作りたぁ、命知らずな魔化魍だぜ!」 と叫び、サカエと木箱を抱えて、素早くバケガニとの距離を取った。
「怪我、無いな?」
傘を失い、雨に打たれながら尻餅を着いていたサカエが頷く前に、天鬼は2つの木箱を開けると、中身を両手に構えた。
535裁鬼メインストーリー最終章:2006/02/14(火) 22:51:10 ID:/dU8lXGLO
ギターの形をした音撃弦、銀の刀身に金の弦『閻魔』と、その逆の配色の『釈迦』が、飛び出す天鬼に自在に操られ、数秒の間にバケガニを支えていた足を斬り払った。
天鬼は釈迦を地面に突き立てると、腰の装備帯から、赤い音撃震『地獄』を取り外し、閻魔にセットする。
刀身から半透明な赤い刄が4枚現われ、紅葉状に広がる。
「音撃斬! 閻魔裁き!!」
腹に刺さった閻魔が掻き鳴らされると、バケガニは土くれや落ち葉、水ゴケになって爆発した。
「……ふぅ。」
顔の変身を解除したテンキは、2本の音撃弦を肩に担ぎ、鬼の身体のまま、サカエに歩み寄った。
「……何なんだ、今の……」
「鬼と、魔化魍。ま、妖怪みてぇなもんかな。」
歯を見せて笑うテンキは音撃弦を置き、無表情のままのサカエに傘を差した。
「……俺の仕事だ。 いきなり見れるたぁ、運が良いな。」
「……俺は、何も……」
立ち上がったサカエは、鬼の身体を見つめた。鍛え抜かれた筋肉は、雨を蒸気に換える程、熱い。
「強くしてやるってのは、この『鬼』の事だ。 ……今は無理だろうが、変身出来るぐらいになると…… 解るぞ。」
何がだよ、と震える声で訊ねるサカエに、テンキは傘を持たせる。
「世の中ってのは、いつも土砂降りなんだよ。 冷たい雨に打たれ続けるヤツ、雨から人を守るヤツ……
 お前が世の中の雨に打たれても、傘を持ってりゃ濡れねぇし、鍛えてりゃ、風邪も引かねぇ。」
サカエの頭を乱雑に撫でながら、テンキは背を向けた。
「傘と身体。 手に入れるまで、俺ん家で…… 雨宿りしていけ。」

ゆっくりと歩き出すテンキの背中を見ていたサカエだが、リュックを手にすると、その後を追い掛けていった。

二之章『雨宿り』 完

【次回予告】
2011年。
イチゲキとバンキは、遂に裁鬼を発見する。しかし裁鬼は、二人を攻撃し……

1983年。
テンキに弟子入りしたサカエとソンジだが、掃除ばかりの日々が続く。ある日、車に乗せられた二人は、テンキからある試験を課せられる。

三之章『観る音』 3〜5日後公開予定(新スレに書き込みます)
536響鬼序伝作者:2006/02/14(火) 23:38:04 ID:lzZeEpFf0
とりあえず、さわりだけ書いときます。裁鬼ストーリー作者さん、乙です。
次回も楽しみにしてます!

物語はヒビキ=日高少年が中学生の頃の話から始まる。
何故、日高少年が「ヒビキ」となったのか。
そして、「少年」であった頃の彼の葛藤を描く。

鬼である意味、大人になること。何故、ヒビキは師匠がいないのか・・・

みどり「日高君、男なんだからクヨクヨしない!!」

日高「お前に・・・言われなくてもわかってるよ。」

救えなかった友、殴られても殴り返しはしなかったあの日。
弱かった少年が、如何にそれを乗り越え「大人」になったのか。


響鬼序伝壱乃巻「嘆く空」

誰もが、最初は少年だった。


537凱鬼SSの中の人:2006/02/15(水) 00:30:06 ID:1DwOqmMO0
裁鬼キター
話が濃いですね。読み応えがあります。
しっかり金は払っていく佐伯少年w
次回は色々波乱の予感ですね。
執筆頑張ってください!

>>響鬼序伝
「誰もが、最初は少年だった」に惹かれました。
キャッチフレーズ考えるのも面白そうですね。
作品がより引き立つ気がします。
次スレで待ってます!
538凱鬼SSの中の人:2006/02/15(水) 00:32:51 ID:1DwOqmMO0
あ、トリップうっとおしいので外してみましたが・・・やっぱ付けといたほうがいいですかね?
他の人たちがつけてないので、俺だけつけてるのもどうかと思いますし。
539名無しより愛をこめて:2006/02/15(水) 11:22:22 ID:RuSgY7vY0
これでいいのかな?次スレ立ててみた
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1139970054/l50
540名無しより愛をこめて:2006/02/15(水) 11:34:01 ID:RuSgY7vY0
>>538
なくてもいいんじゃないっすか?偽者が現れることもないでしょ?
てか、次レス早かったかな?
541名無しより愛をこめて:2006/02/15(水) 16:24:13 ID:wO7QS7rk0
>>539
容量が気になって、投下を控えてるみたいだから、丁度いいよ。
542名無しより愛をこめて:2006/02/15(水) 17:18:48 ID:4gLwoZKk0
>>539乙でした。
やっぱり残り容量気になってしまうものねぇ。
でも、こっちもまだもうちょいいけますよ。マタリとまいりましょう。
543名無しより愛をこめて:2006/02/15(水) 18:15:48 ID:RuSgY7vY0
このまま行ったら書籍化できそうないきおいw
裁鬼メインだけでも深夜枠でやらないかな。
弾鬼なら主演がそのままスーアクと言う世界初の試み。
544名無しより愛をこめて:2006/02/15(水) 19:01:37 ID:giPU7WnA0
age
545名無しより愛をこめて:2006/02/15(水) 21:23:52 ID:6m7ET3Vp0
>>543
主演がスーアクは一部だけだったと思うが
初代仮面ライダー(藤岡弘)ですでにやっている。
546名無しより愛をこめて:2006/02/15(水) 21:41:11 ID:lYOPuryS0
主演がスーアクも務めるといったことは
スーパージャイアンツやアラーの使者とかの作品のころからすでにある。
547名無しより愛をこめて:2006/02/15(水) 22:24:27 ID:uKWhP6xE0
というかウィキ見たら弾鬼のスーアクは伊藤さんじゃなくて押川さんて書いてあったんだが。
548仮面ライダー天邪鬼・追記:2006/02/16(木) 11:09:18 ID:HO/RAFsM0
 伊藤さんも押川さんも変身解除してほしいな。
このスレ大好きだから書籍化されたら欲しいよ。
バトルや熱い鬼達の連載も好きだし、「踊る獣」なんかの雰囲気も
すごく心にしみる。
549仮面ライダー天邪鬼・追記:2006/02/16(木) 11:42:14 ID:HO/RAFsM0
今頃ですが、感想くださった方ありがとうございました。
投稿直後も情けなかったり恥ずかしかったりしたのですが、
投稿させてもらって連載されておられる方々や
まとめてくださっておられる皆さんのすごさが
あらためてわかりました。
 これからも鋭鬼さんスレや皆さんの素敵な小説が読めるのを
楽しみにしています。
550DA節分改め年中行事:2006/02/17(金) 02:31:04 ID:x0Rm1CWU0
天邪鬼さん、ステキな話でした。またあなたの話が読みたいです。
機会があれば、是非。

まだ容量があるので、こちらで告知を。
2月も半ばを過ぎました。もう2週間ほどで、3月です。
3月の年中行事といえば、ハイ、雛祭りですねぇ。てなワケで、バレンタイン過ぎの
安売りチョコをばりぼりかじりながら雛祭りSS、準備しております。

(ホワッホワッ)予告(キュイーーーン)

鬼に放たれた音式神達は、魔化魍の跡を追っている。

「えぇっと、鬼、の方ですか?」

「あい、姫様。鬼にございます」

「見目良い鬼だのぅ」

「冗談ですよ」

姫様ァ、姫様ァ・・・・・疾く、そこは危のうございます、姫様ァ・・・・・・・

次回 番外「報いる獣」3月ド頭に「達の」にて投下予定です(ケロケロ)
551DA節分改め年中行事:2006/02/17(金) 02:42:16 ID:x0Rm1CWU0
ノゥッ!「達の」じゃなくて、「達が」じゃーん!orz
いや、もう、そんなワケです。うーむ、しかしまだあと30Kbは行けるしなぁ・・・
でも日があるしなぁ。うーむ。
552名無しより愛をこめて:2006/02/18(土) 15:39:32 ID:M8bmo3dd0
>>551
こちらただいま472KB。
皆さんガンガン新スレに投下されているので、3月頭にそちらでよろしいのでは。

しかし年中行事というと、エロパロ板の書き手スレを思い出すなあw
553DA年中行事:2006/02/18(土) 19:36:14 ID:8VCu8GgH0
おっ、ありがとうございます。そうですねぇ、投下場所については、
もうちょい考えます。

え?エロパロ板にそういう何かがあったんですねw
知らんかったですよ。
554名無しより愛をこめて:2006/02/22(水) 17:36:13 ID:DzzvLnBj0
年中行事職人さん
桃の節句(英語の複数形にしてはイクナイ)がもうすぐですよ!
555DA年中行事:2006/02/22(水) 18:31:38 ID:eN2AozKt0
>>554
おいッス!わかったッス!桃のセック(おやカタカナにしただけでえろすが漂う)が
もうじきです!今回ちと長いので、1日と2日で前後編にわけて投下する予定です。
なんたって桃の節句ですから、主役はあのDAですw
556名無しより愛をこめて:2006/02/23(木) 09:27:02 ID:BVp2X7SW0
>>555
投下待ってます。
桃の節句すげえー楽しみ。
桃の節句すてきだな。
桃の節句すばらしい。
557名無しより愛をこめて:2006/02/23(木) 12:20:08 ID:BVp2X7SW0
まだ、だいぶ余ってるから今後職人さんが登場して欲しいキャラでも書き込むか。
もっちーとか、みどりさんとか。吉野のOLさんの給湯室での会話とか。
558名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 04:34:41 ID:+xeJZfP10
 DA年中行事さん、投下楽しみにしています。
主役のDAってどれかなあ?
 ひなかさんの院生研究に付き合わされて、
過酷な実地調査でひーこら言う鬼達とか、
のんびりDA達と山登りする女性陣とか読みたいなあ。
 昔、旅館の流れてきた風呂焚きが実は凄腕料理人だった、という小説が
面白かったので(タイトルも作者も忘れてしまったけど)
イブキ実家の旅館の従業員達も実は各地の元凄腕鬼達で……みたいな
読みきり連作もいいなあ。少年イブキにいろいろアドバイスとか。
 
559名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 07:54:24 ID:wI4y3MZS0
イブキのメインの話ってないよね。
560名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 09:44:31 ID:DPiIDemo0
沖縄にも鬼っているのかな?
561名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 10:06:15 ID:w6WpdFH80
父島と母島と北方領土と小笠原諸島にも(ry

まるで空想科学読本w
562名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 10:16:10 ID:DPiIDemo0
竹島にもw
563名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 12:32:58 ID:AOpABksW0
魔化魍側の話とか番外編で読んでみたい

この前夢で、小暮さんの弟子が洋館の男で
その洋館の男にそっくりな男(明治ロマンじゃない)が
洋館の男をそそのかす、ってのをみたから
ちょっと敵側もいいかななんて思っちまった……
564名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 12:51:19 ID:DPiIDemo0
このスレのどっかにあった魔化魍を公言できない理由になった事件の話とか?
565DA年中行事:2006/02/24(金) 13:28:51 ID:tLxD2MQm0
あー、いいッスねー、魔化魍サイドのSS。読んでみたいなぁ。
あと、イブキの実家の話とか。お父さんは猛士の総本部長だから、お母さんがほぼ一人で
切り盛りしてるんですよね、きっと。んで、古株の従業員さんたちは元鬼とか元サポーター。
年に1度開催される宴会に呼ばれた全国の猛士幹部達が、妙に緊張した面持ちでお膳に
つく・・・。くつろげない宴会だなぁw

566名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 14:05:10 ID:DPiIDemo0
本編で洋館夫妻の謎は完全にスルーしましたからね。
魔化魍職人さん登場しないかな。
567名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 19:35:27 ID:+xeJZfP10
宇宙からの生命体が地球に根付いて魔化魍の元になってる、なんてのが
よくあるSF調ファンタジー風かな。
 まあでも漠然とした不浄の気の集まった意識体が海の中に産まれて、
浄化されることのないまま竜宮城と呼ばれる存在として漂い、
そこから産まれたオロチの童子と姫が知識を蓄え、試行錯誤をくりかえしながら
分身を増やしていっている、なんてのはどうだろうか?
劇場版狐面軍団は分裂する怪人型魔化魍の初期タイプだったとか。
568名無しより愛をこめて:2006/02/24(金) 21:13:11 ID:4yj234X50
日本書紀とかだと初期の日本には魑魅魍魎とかしかいなかったらしい。
その辺の世界観とかあるとサックリいくんじゃない?
569名無しより愛をこめて:2006/02/25(土) 12:58:58 ID:+Iu98Xne0
うしおととら風でちょこっとだけ

今は昔、西より白面の者あわられる。
九つの尾を持つ白面の者、邪であり凶である。

この地に住む鬼達、白面の者に怒り、その尾をちぎる。
一尾となった白面の者 力を失い何処かへ消えた。

主を失いし八つの尾 一つに固まり大きな蛇と化す。
それを人はオロチと呼び恐れた。

オロチ 半国を滅せし時 スサノオ現れこれを退治する。
きられたオロチの首 四方八方に散る。

切られしオロチの首 散った土地を汚し 己の邪を産む
その名 魔化魍と人は呼ぶ。

一尾の白面 人とまぐわい 子を二人産む
生まれりし子 人の姿であり 人にあらず
子は言う 「この身では子が産めません われらは滅びます」
白面は言う「この地には兄弟がいる それより子を作り 育むがよい」
子達は白面の言うとおりにした。
570DA年中行事:2006/02/25(土) 15:42:22 ID:K0kK8pTw0
>>569
おお!すごい!いいですね、大好きですよこの雰囲気!
571名無しより愛をこめて:2006/02/25(土) 18:53:05 ID:hGq5sTa30
>>568がさりげ鋭鬼さん
572名無しより愛をこめて:2006/02/25(土) 19:35:49 ID:KzmFh25D0
http://windmist.seesaa.net/article/13145879.html

ちょいとネットで見つけた。
後編まで読んで気づいた。
573名無しより愛をこめて:2006/02/25(土) 20:39:31 ID:xCVEDJXz0
ID違いますが569ことZANKIの人です。
好評なのでZANKIと同時連載で書こうかなw
574名無しより愛をこめて:2006/02/25(土) 20:45:47 ID:xCVEDJXz0
いやZANKIやめてこっちかw
575DA年中行事:2006/02/25(土) 21:22:19 ID:AzIU08Qn0
ZANKIやめないでZANKI

あれはあれでヒジョーに中毒w
576名無しより愛をこめて:2006/02/25(土) 21:50:11 ID:4nPR7u6U0
ID違いますがZANKIの人です。
でわ同時連載っすかw
あっしより皇城さんがやってくれる方が最強ですよw
原作あげるからやってくんないかな。
577名無しより愛をこめて:2006/02/26(日) 09:04:20 ID:kN8HTcil0
レーザープリンタ買おうかな?
縦書きで縦20文字、横17行で
下と外側10mm、ページ表示があるから上と中綴じ15mmの余白で
A6設定をA4両面印刷にしてペーパーバック作ってます!ww
さすがに会社の残業中にやるのは気が引ける・・・
578名無しより愛をこめて:2006/02/26(日) 09:33:52 ID:c7v4Zzb00
>>577
大丈夫wそのうちイラスト付きで発売されるよw
579名無しより愛をこめて:2006/02/26(日) 12:12:58 ID:V33CcXnY0
 ほんと保存用に響鬼アンソロジー本として出してほしいなあ。
各鬼話や項目別で読みやすくして、年表や設定、イラスト付けて。
でもスレの雑談部分もおもしろいからなあ。
 569の白面さま良いなあ。これはまとめている方に収録しといていただきたい。
白面ってインド、中国、日本(当時の仏教世界観)網羅してるから
説話好きにはたまらない。オロチと陰陽師ネタもしっかり盛り込んであるし。
 ZANKIの人様も職人様達はご自分達の都合の良いペースで投下し続けてください。
笑いも涙もあって、しっぽの先まで餡子の詰まったたい焼きのようなスレが
続いていておいしいです。
ですから。
580名無しより愛をこめて:2006/02/26(日) 21:16:16 ID:JL7M8NLR0
あー、いいねぇ、イラスト付きの本。保存用に欲しいねぇ。
それにしても、色んな鬼さん達のSSも投下されるようになったけど、
みんながそれぞれの設定を尊重しつつ、絶妙に絡ませてるってのはスゴイ
なぁ。そんで書き手によって味わいが違うんだよねぇ。
ホント、ここは長く続いて欲しい。

そして、まとめサイトの人も乙です。携帯から楽に見られるようにページの
容量を加減したり、鬼別・スレ別にSSを分類したり、ホント、頭が下がります。
リアルタイムでスレは見てるんだけど、まとめサイトを覗くのも楽しみなんス。
581名無しより愛をこめて:2006/02/27(月) 09:18:08 ID:NU4UX9qZ0
569ことZANKIの人です。
うしとらと天外魔鏡のノリで書けそうならやってみますね。
意外とZANKIも考えるの大変なんでwちっとも内容に反映されてませんがw
ちなみに諸説あるなかの一説と言う話にしたいので、
567さんのSF風の解釈話なんかも思いついた人は投下してください。
582DA年中行事:2006/02/27(月) 11:48:45 ID:InZ6ehHL0
>>581
ヨロシク!投下待ってますわ!
と、言いますか、オレも年中行事だから合間見て投下させておくんなさい。
できちゃった魔化魍とか、うっかり魔化魍とかがいてもいいような気がして
きた。悪さするでもなく、ぼーっとしてる童子・姫とか、天邪鬼さんが書いた
陽の魔化魍とか。
583名無しより愛をこめて:2006/02/28(火) 13:02:41 ID:TdbWyUgu0
あー!白面の話全然うまく書けねぇ〜。
古文みたいな書き方ができなねぇ〜。
とりあえず、白面の者が生まれるまで投下してみるね。
584名無しより愛をこめて:2006/02/28(火) 13:05:19 ID:TdbWyUgu0
魔化魍異聞録

この国のはるか西の国 天竺にアグニというものあり。
アグニ、己が邪心を捨て、悟りを開く為に
乾いた神木を組み、日の光で焼き、神炎を起こす
アグニ、神炎にその身を投じ、火の中で禅を組み、経文を唱える
火は髪を焼き、肌を焼き、邪心も焼く。
一日も寝ず、一口も食さず、アグニの経文は千日途切れず続く
千日と一日の夕刻 アグニ、神炎より問われる
「己は何故に苦行をし、悟りを開かんとするのか。」
アグニ 経文を唱えつつ 心で答える
「我、己が悟りの為に苦行をせず、我、悟り開かん事、すなわち人を救う事。」
神炎は問う
「人は争う、人は裏切る、人は怒る、汚れし人を救う事 これ無意味なり。」
アグニ、返す
「人は愛する、人は信じる、人は微笑む、我、悟りを開かん事 意味ある事なり」
「そなたの戯言 真か偽か 我、そなたと一身となり 見定めよう」
神炎とアグニ 一つになり、火の神アグニと名乗る。
585名無しより愛をこめて:2006/02/28(火) 13:07:37 ID:TdbWyUgu0
魔化魍異聞録

アグニの焦げた灰 これアグニの邪心
風の神ヴァーユ これを東方に吹き飛ばす
飛ばされし灰 東方の国の女にかかり この灰を吸う
女 男と交わらずに子をはらみ 強き法力を持つ寺院の僧にこれを話す
「我は男と交わらず子を身ごもりました この子は神の子か悪魔の子ですか」
僧は言う「その子は悪魔の子 我らがその子を滅しよう」
僧の長と天、地、人の三僧と、四方を守りし戦士 身ごもる女を囲い念を発する
念を受けし腹の子 女の腹を割り産まれる
その姿 白き顔の金色の狐なり 僧は白面の者と名づける
白面の者 僧の長を飲むと 尾は二つに
天、地、人の僧を飲むと 尾は五つに
終いに四方の戦士を飲み 尾は九つとなった。
九つの尾 厄災を生む尾 
大地を汚し、病を振りまき、空を塞ぎ、海を濁らせ、人に恐怖を与える。
白面の者 女に化け 国を滅ぼし東へ東へと向かう
586名無しより愛をこめて:2006/02/28(火) 20:53:55 ID:v/qw9sNc0
おお、インド神話風。わ〜い。次スレのZANKIさんも面白いし
(最後の一言がいつも絶妙(笑))、
桃の節句も楽しみです。567ですが、SF調じゃないんですが、
劇場版異聞ということで一つ。
 
587名無しより愛をこめて:2006/02/28(火) 21:29:36 ID:v/qw9sNc0
「海の甍(いらか)―竜宮城異聞―」

 昔、漁に出たる者、網にかかりし女を助けたり。
女、美しけれど、常のものにあらず。
 海から上がってきた女、漁師に語りていわく、われは竜宮城より戻り来たれりと。
女の村、古(いにしえ)より魔と約を結び、一年に一度、清き娘を生贄と捧ぐ。
 その女も生贄となり、竜宮城に送られし。城は泡で作られ、生贄の女共、
いずれも数多(あまた)の泡の糧(かて)となり、溶けて蜜となる。蜜と泡混ざりしより
童子と姫産まれたる。面をかぶり村を襲いし者共、いずれも竜宮城の童子・姫なり。
 されど、鬼なる異形の者達と、村の若者が来たりて、童子と姫を払い、城を滅したり。
蜜になりかけた女を見つけ、若者、名を呼び、その溶けた体をすくおうとしたり。
女いわく、我はすでに泡にとけたり。男の指間より流れ落ち、滅せし城と共に海の中を
流れ落ちけり。
 漁師、問う。女、なぜ海より上がれりと。
 我を溶かしし魔化魍、竜宮城と名乗れり。恐れ、憎み、怒り、されど勇み、悲しみ、
求むる心、真似れども分からず。人の体も心も糧とし、似せしもの作れども、同じものとはならず、
いと面白きと。我は水の中であれば、いつまでも居れりと。そなたが男の指間を蜜となり、溶け、
絡み合った時、我、男とそなたの体に宿りし。水無きところに宿りし我が、水にかえりしそなたを呼び、
また我が体が癒えし日まで、そなたら人の血潮の中で時を待てりと。
 女、語りて後、長く患い、やがて常の女のごとくなり、漁師のところを去れり。

 一説に、その女、もとの村に帰り、若者と添えども、常に海を眺め、ある日、
海に消えたり。
 一説に、傾(かぶ)きたる大名のもとに美しき女現われ、そのまま居れり。
その女、漁師の助けし女なりと。大名は鬼たるうわさありき者なり。
 一説に、別の魔化魍に襲われし人、美しき女に助けられたり。その女、かの者なりし。
 いずれの説も定かならず。

 草の庵に筆を置き、戦の音、人の世の煩いに耳を塞げども、面白き話を聞けば、
気の向くままに書き綴る。人の血潮の中に魔化魍宿り、海の水と引き合うならば、
海の底まで我が同胞(はらから)満ちたるか。あれこれとよしなしごとを考え、
明日をも定かならず、夢のようなれど、想い尽きることなし。
588名無しより愛をこめて:2006/02/28(火) 21:44:35 ID:v/qw9sNc0
<蛇足>
 蜂の蜜とかから考えました。
 「オロチ退治の明日夢達のことみたいですね、この女の人、って、
あの話の最初の生贄の人かな」、と別の古文書に読みふける少年に、
「ところで現代の明日夢君は、どっちか決めたのかなあ?」
と笑顔でオロチナミンCロイヤルゼリー(蜂からの贈り物)入りを
握りつぶしかけながら聞くおやっさんを想像しながら。
589DA年中行事:2006/02/28(火) 21:53:47 ID:vTbKoJC60
おおぅ、白面さまに竜宮城さんもおいでになりましたなぁ。
胸躍る話なのだけど、切なくなるような・・・
いいですねいいですね!

とりあえず明日から、雛祭りを投下したら、オレも真似して魔化魍話を書いてみます。
あー、でもお二人のように古文は書けないので、にほんむかしばなし風に。
590名無しより愛をこめて:2006/02/28(火) 22:51:08 ID:v/qw9sNc0
竜宮モノです。
DA年中行事さん、楽しみです。雛祭りは新スレの方が皆さん読みやすいと思いますよ。
うっかり魔化魍とか楽しそうですね。鬼達とうちの子話に花を咲かせる童子・姫とか。
591563:2006/03/01(水) 00:21:19 ID:1Wswhcit0
まさか本当に書いてくれる人がいるとは思わなかったよ。
ありがとう!!
「主役は鬼だろ」って叩かれるのを覚悟で言ってみてよかった……。
次も誰かが書いてくれるんだな。楽しみに待つよ!!
文才無い自分が悔しいorz
592名無しより愛をこめて:2006/03/01(水) 07:50:43 ID:HiHYUGw10
>591
裁鬼さん「達」が主人公だからな。次スレだが…。
593名無しより愛をこめて:2006/03/01(水) 16:24:30 ID:Tqpme7oB0
594名無しより愛をこめて:2006/03/01(水) 23:20:12 ID:IW0hkRXf0
593さん、情報ありがとう。いろんな職人さんががんばっておられるんだなあ。
 鬼達の替え歌が面白いので、魔化魍の歌もいかがかと。

(世界に一つだけの魔化魍 
 (原曲:スマップ 作詞・作曲・編曲:槇原敬之)

自然や都会に並んだ いろんな魔化魍みていた
ひとそれぞれ好みはあるけど どれもみんな食べ盛り
この中で誰が一番だなんて 争うこともするけど
自然の中誇らしげに しゃんと胸を張っている
それなのに君ら鬼達は どうしてこうも清めたがる?
一人一人違うから いろんな武器でやって来る?
そうさ僕らは 世界に一つだけの魔化魍
一人一人違う童子と姫 わが子を輝かせることだけに
一生懸命になればいい

(歌詞が思いつかないので中略)

小さな魔化魍 大きな魔化魍
一つとして同じものはないから No.1にならなくてもいい
もともと特別な Only one.

(気持ちだけ鬼と紅白競演で)
595名無しより愛をこめて:2006/03/02(木) 01:03:01 ID:F9HO8ssR0
食べ盛りワロス
いろんな視点があるなあと思うと同時に、何だか不思議に和みました。
596ZANKIの人:2006/03/02(木) 09:41:35 ID:75mxduXM0
>594
では二番 (唄:修二と彰と童子と姫)
困ったように笑いながら ずっと迷ってる人がいる
森に迷い込んだ人はどれも おいしそうだから仕方ないね
やっと森から出てきた その人は抱えられてた。
色とりどりの鬼達と 可哀想な横顔

名前も知らなかったけれど あの日僕は音撃かまされた。
誰も気付かないような場所で 散っていた仲間のように

そうさ僕らも 世界に一つだけの魔化魍
一人一人違う童子と姫 わが子を輝かせることだけに
一生懸命になればいい
597ZANKIの人:2006/03/02(木) 09:48:52 ID:75mxduXM0
ごめん白面の話のエンディングテーマにしてもいい?
この唄良すぎるw
598名無しより愛をこめて:2006/03/02(木) 12:51:46 ID:Jy8rpjfn0
594です。ZANKIの人様、ナイスな2番どうもです。
色とりどりの鬼達(笑いが……)。どうぞご自由に使ってください。
次は中国風でしょうか?
 ちょっと地味な歌ですけどDA替え歌も投下しときます。
ほんとはバビル2世の歌詞で、
 アカネタカ[アサギワシ他]は空を飛べ
 ニビイロヘビ[キハダガニ他]は海を行け
 ルリオオカミ[セイジガエル、キアカシシ他]は地を駆けろ!
とおちゃらけたかったんですが、続かないんでまじめ調で
599名無しより愛をこめて:2006/03/02(木) 13:15:07 ID:Jy8rpjfn0
DA−ディスクアニマルー
(原曲「WOMAN」 アン・ルイス
    作詞:石川あゆ子 作曲:中村英也)

 つわものどもが夢のあとだね
 静かな波が打ち寄せてる
 月の光を器(うつわ)に受けて
 とてもきれいな気持ちになる
 楽しかったね 探索の日々
 冬の海から萌える山河
 厳しく熱い鬼の魂
 今この器から離れてゆく
 アカネダカ ルリオオカミ
 悲しみを折り込んで 優しさに変えてゆく
 リョクオオザル キハダガニ 
 音式神(オンシキガミ)の永遠(とわ)の痛み

 砂も地球のかけらなんだと
 いつか鬼達が話してたね
 そんな言葉を思い出すたび
 皮肉だね 心救われるよ
 永遠(とわ)の命を投げ出して
 このままそばで眠りたい
 主をなくし透ける器(うつわ)達が
 せつない声をあげるけれど
 ニビイロヘビ キアカシシ
 淋しさを折り込んで次の鬼のため変じてゆく
 アサギワシ セイジガエル
 後悔の涙は流さないと誓おう
 時の流れを過ぎ越えて
 鬼のディスクアニマルとして
 今新たに狩りゆくために 
600名無しより愛をこめて:2006/03/02(木) 13:21:48 ID:Jy8rpjfn0
以上です。
これも良かったら、どなた様でもお使いください。
DA年中行事さんに気に入ってもらえたらいいんですが。
601ZANKIの人:2006/03/02(木) 14:22:59 ID:75mxduXM0
ディスクアニマルのテーマ(バビル2世の歌詞で)

みたらし団子で隠された
「たちばな」の地下で生きている
サポートモンスター ディスクアニマル
地球の平和を守る為
主の命令絶対だ。
アカネタカ 空を飛べ
ニジイロヘビは 海と池
リョクオオザルは地を駆けろ

東京都の柴又の
「たちばな」の地下で生きている
サポートモンスター ディスクアニマル
魔化魍退治をする為に
主の命令絶対だ。
アサギワシ 空を飛べ
キハダガニも 海と池
シシとカエルも地を駆けろ

老舗の味の甘味どこ
「たちばな」の地下で生きている
サポートモンスター ディスクアニマル
お店の経営守る為
お客様には接客だ
アカネタカ お茶を出せ 
キハダガニは ダンゴ焼け
シシとカエルはレジを打て

おそまつ
602ZANKIの人:2006/03/02(木) 17:22:15 ID:75mxduXM0
>598
中国編とか言われたので急遽作りました。
言葉遣いが変ですが、直せる人を待ちつつ投下します。
603ZANKIの人:2006/03/02(木) 17:24:03 ID:75mxduXM0
魔化魍異聞録
この大陸の東の端には多くの国々、国は互いに争い 大地は血で汚される
女に化けし白面は、その一つの国の姫に化ける
姫を愛する国王は 姫の望む物すべて与えた。 しかし、姫は微笑を持たない。
毎夜の宴 すばらしき唄 美しき芸にも微笑まん。
王は姫に尋ねる
「そのたの喜ぶ顔こそ 我が望むもの そなたは何をすれば微笑むのか?」
姫は不気味に笑い、王に答えん。
「我は人の悲鳴が聞きとうございます。毎夜五十の女と三十の男と
二十の子供の首を切り我の前に並べください。」
王は姫の欲するものを与えると姫は狂喜し喜んだ。 
王は姫が欲するものを与えんと毎夜、国の男と女と子供を姫に捧げた
人は王と姫を恐れ いつしか人は妖姫と呼んだ
この国のはずれに飛と言うものあり、その男 山で茶を育て 
町に下りてはそれを売り、その金で米を買い 家族を養う。
王は飛の子を姫に捧げんと 飛から子を奪いとる 飛は妻と悲しみ 
滝壷に身を投げ自害せんとした。
604ZANKIの人:2006/03/02(木) 17:26:22 ID:75mxduXM0
魔化魍異聞録
飛が滝壷に身を投げよう時 滝より大きな龍があらわれ 飛に言う。
「我は水神の使いなり、人が此処に命を落とす事、すなわち水を汚す事そなたこの滝入るなかれ」
飛は言う
「我は子を失いました。子は我の宝 それを失う事は生きる意味を失う事です。身を投げる事をお許しください。」
龍は飛に言う
「ならば子を救うが良い。」「それはできませぬ、姫は人間ではないのです」
「ならば我が力を与えん。我の鱗をそなたにやろう。さすれば人外の力を得ることができる、
しかし、この力、人では持余す力、二度と人に戻れん。」
飛は言う。
「子の敵を討てるなら、我が身など惜しくはありません。喜んで力を授かりましょう。」
龍の力を授かりし飛は 飛龍と名乗った。
飛龍とその妻は姫の下に参り言う。
「そなたは人ではない 物の怪が化けし姿なり 我そなたを滅する」
姫 狂喜し笑うと 蛇がその皮を剥ぐように人の皮を剥ぎ 中より白き顔の金色の狐現る。
「愚かなり人 我に牙を向く事 それ愚行なり」
605ZANKIの人:2006/03/02(木) 17:27:17 ID:75mxduXM0
魔化魍異聞録

飛龍 龍より授かりし鱗を使うとその身は銀の鱗を纏い 龍の如き顔となる
飛龍の妻 飛龍の為に笛を吹く その音色 優しき音 邪を沈める音なり
「我 人の恐怖を食らい 人の悲鳴を力に変える その音色 人が安らぐ音色
人に幸を与える音色 我にそれを聞かすな!」
笛の音 白面を怒り狂わせ 白面の力を奪う 
飛龍 力を奪われし白面を龍の滝で清めし剣で斬る
斬られし傷より音色が入り 白面は大気を震わし悲鳴をあげる。
白面の者 堪らず国より逃げん 飛龍と妻は止めを刺さんと手負いの白面を追いかける。
「この国は我を脅かす物がある 我はこの国から逃げん」
白面は海岸まで逃げると空を飛び はるか東に逃げていく
海に逃げてしまっては飛龍と妻は追いかけられず その姿を只、見つめるだけ
飛龍は言う
「我の体 すでに人にあらず このまま 蛇となり海に消える」
妻は言う
「ならば私も 蛇となり 貴方と一緒に海に消えます。」
「口惜しくは白面の者 奴を滅する事できぬなり」
飛龍は空を飛びし海鳥に己が剣を託し、妻も己が笛を託す
「東へ向かう白面を追い、奴を滅せんとする者に剣と笛を渡してくれ。」
海鳥はそれを掴むと日の出方角に消えていく
飛龍と妻 すでにそこにあらず 
砂浜に二匹の蛇のみが、互いに寄り添い波へと消えた
606ZANKIの人:2006/03/02(木) 17:29:48 ID:75mxduXM0
以上です、長々と失礼しました。
今回は次スレのザンキの後日談に出てきた"龍"を思わせる事も書いてみました。
「うしとら」のパクリですが、まあ、インスパイアされたって事でw
607名無しより愛をこめて:2006/03/02(木) 19:47:26 ID:Jy8rpjfn0
594です。ZANKIの人様。いやあ、バビル2世って書いといて良かった。
面白すぎて吹き出しました。海と池とか、3番までくると
いじらしくて可愛いなあ。落として壊さないでやってくださいね。
 中国編、飛龍の話は単独でも面白いですね。粋です。
魔化魍神話でも神話でなくてもいいから、海鳥の続きが読みたいです。
いよいよ日本編ですかね?
 職人さん同士が影響しあって、次スレも面白いですね。
といいつつ、自分はまた読むほうに戻ります。
608DA年中行事:2006/03/02(木) 22:03:30 ID:yH8AS5Pd0
>>599
うわああああ!GJですよ!つか、もったいねぇ!
あまりの嬉しさに、プリントアウトして小さく畳んで免許証入れに入れちゃいました。ひいっ。
年中行事のどこかに使わせてくださいぃっ!!

>>601
シシとカエルにレジを打たせるんかいっww
あまりの嬉しさに、松○の牛メシ吹きました。これも早速プリントアウトして小さく畳んで免
許証入れに入れちゃいました。これでいつでも一緒だよぅ。
先代と一緒に、年中行事のどこかに使わせて下さいっ!

魔化魍シリーズ、いいなぁ・・・実に、いいなぁ・・・・
609ZANKIの人:2006/03/03(金) 09:38:11 ID:9DFfMjLw0
>594
特にコメントもなく、かってに作ってごめんなさいね。
飛龍の話は中国の"龍"を想像して書きました。自分はまったく中国史に興味が無い為、
まともに書けるか謎でしたが、まあ、形にはなりました。もっと文系科目を勉強してればなぁ…。
ちなみに読み名は飛龍(フェイロン)です。たぶん仲間に烏龍とかもいるんでしょうねw
>DAさん
乙でした。次スレの感想をここに書くのも変ですが、やっぱり独特の雰囲気がいいですな。
で、次回はDA X ZANKIでやりますかw

このスレがゲームの「街」みたいになってきておもしろです。
話の時間軸と場所を合わせて、職人全員でできたらおもしろそうですな。
610DA年中行事:2006/03/03(金) 13:21:21 ID:9VEJuEtd0
>>609
ありがとうございます!
DA VS ZANKI。やりますかw つか、やっちゃいますよw
611ZANKIの人:2006/03/03(金) 13:30:36 ID:9DFfMjLw0
>610
おけ!後日談がんばるよ。
612名無しより愛をこめて:2006/03/03(金) 21:22:04 ID:yyaPU1bz0
594です。なんか楽しそうなので、時々応援させてください。
DA VS ZANKI 対決。心のサプリをありがとうです。
しばらく目が離せませんね。
 ネタに使えるかどうか分かりませんが、セイジガエル入手後も
DAの龍に心残りがあるならば「土龍」はいかがでしょうか?
吉野の試作品で、かっこよさげな漢字ですが、読みが「モグラ」だけに
使ってみると地中に潜って今まで帰ってきたものがいないので
結局開発中止になる、など。
 なんとなく大量処分されたクグツをモグラの魔化魍が地中に引きずり込んで
餌にしちゃう、みたいなイメージが浮かんで、漢字が面白いなと思ったので。
613ZANKIの人:2006/03/04(土) 09:37:56 ID:90eMJGYk0
>612
龍は一応、後日談で書く為にある程度ネタは練ってます。
まあDAさんがどう書くかで変わるんですが。
でも「土竜」は面白いですね。
ザッと考えると岩井川がピンチで使ってそのままどっか行くのが無難なパターンですね。
ところでこのスレはもう限界かな?
614名無しより愛をこめて:2006/03/04(土) 20:44:50 ID:1WwvTBVX0
>>612
そうか!土龍か!
ありがとうございます・・・・ああ、でもいつ書けるやら。
ZANKIの人、オレのコトなんか構わず、グッと行っちゃって下さい。
507kbくらいまで行けると思うので、もうちと書けるのではないかと。
615DA年中行事:2006/03/04(土) 20:46:05 ID:1WwvTBVX0
あ、名前書き忘れた。ごごごごめん。
616名無しより愛をこめて:2006/03/04(土) 21:16:36 ID:LwEx3X3W0
>>593
SUGEEEEEEE

描写細かいな
617名無しより愛をこめて:2006/03/04(土) 21:26:06 ID:hlBWzsrm0
すげえ!「龍」じゃないですか!こっちのスレ久々に来て見たらwwww
2日も前ですが;飛龍、烏龍wなるほどね〜www
おかげさまでぐっすり眠れそうですww G J ! ! !
618名無しより愛をこめて:2006/03/05(日) 11:19:36 ID:lNI4yaw70
替え歌シリーズ最高ですーw
職人さん同士が触発しあって、最高のSSスレになってますね。

ただし現在の容量ざっと499KBなので、投下の際は
お気をつけ下さいまし。
619名無しより愛をこめて:2006/03/06(月) 11:38:41 ID:BFzRS8Ly0
こんなん見つけた。
http://freestyle.jugem.cc/

テレビバージョンを弄って作ったストーリーとか、
ヒビキと明日夢が師弟として活躍する話とか。
620名無しより愛をこめて:2006/03/06(月) 11:56:15 ID:/xHLIcEc0
>619
音撃戦士なんだねw
真・響鬼とか良く見るけど、
裁鬼SSさんみたいにテレビ版を史実にしてるのってやっぱ少ないのかな?
621ZANKIの人
このスレの〆みたいな感じで。

NYの高層ビル街のとある一室
「書き込み完了…」男は立ち上がるとコーヒーを持ち、窓から街を眺める。
朝のニューヨーカーは慌しい。皆、自分を見下ろす者などに気づかないかのように走る。
「そうだ今度はザンキをNYに行かしてみるか…」

北海道のとある社内
パソコンに向かい残業する男二人。
「さてと、書き込むっと。」マウスをクリックすると向かいの机の男に声を掛ける。
「なあ、これから飲みに行かない?」「ええ?だって外は吹雪だぞ?」「え?吹雪鬼?!」
「そうだよ、さてと。」男はとあるサイトを除く(あ、鋭鬼が今投下されてる…俺も早く弾鬼を仕上げよう…。)

都内のあるスタジオ
「いやあ、先代と絡ませるのは面白い…。」男はモバイルパソコンをしまう。
その横で同じようにモバイルパソコンでなにか文章を作成している中堅俳優。
「なにか執筆活動かい?」「ええ?自分が演じた番組の補足みたいな感じですかね。」
そんな会話を遮るADの声、「布施さん、細川さん、リハお願いします!」

関東のとある山
電波のギリギリ入る場所で何やら携帯電話で長い文章を打つ少年。
「もう、行くぞ。」「あ、もう一文だけ。」文章を書き終えると少年は携帯電話を置いた。
「すいません、師匠。」「もういいか?」男はギターのようなものを担いで待っていた。
「最近なにやってんだ?」「へへ…」少年はにこりと笑い師匠と森へ消えていった。

今日も裁鬼は人知れず戦っている…。

容量の都合で全員の職人さんを書ききれなくてすみません。