1 :
名無しさんだよもん:
保守
松田勇作
セガサターンのスレか
4 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:26:01 ID:32pX8Bk50
LeafやkeyのSS(二次創作小説)を書きたい人
難しく考えずに書きたくなったら書いてみませんか。
5 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:35:20 ID:32pX8Bk50
ちょっとした小ネタが浮かんだ時。
6 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:38:39 ID:32pX8Bk50
キャラスレに投稿しようとしたものが長くなりすぎてしまった時。
7 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:45:37 ID:32pX8Bk50
投稿しようと思ったらスレの空気が悪かった時。
8 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:48:36 ID:QLo+V7AN0
11日ぶりに便通があり、肛門を少々切りながらもこの上ないスッキリ感を得られた時。
9 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:48:37 ID:32pX8Bk50
誰かの感想を聞きたい時。
10 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:50:55 ID:32pX8Bk50
熱い萌え衝動を抑えきれない時。
12 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:53:10 ID:32pX8Bk50
SSを書いてみたいけど書く場所がない時。
13 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:55:09 ID:32pX8Bk50
そげん時ゃこんスレば利用しる。
14 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 01:57:48 ID:32pX8Bk50
書いたことない人もとりあえずやってみるのはどうか。
15 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 02:05:15 ID:32pX8Bk50
#エロ・グロ等の描写がある話は注意書きを添えてください。
16 :
名無しさんだよもん:2005/06/30(木) 02:06:52 ID:32pX8Bk50
#基本的にマターリ進行でお願いします。
ムント「ムントと〜」
オガム「オガムの!」
2 人「胸キュンはぁとふるラジオ〜!!」
(SE) ヒューヒュー♪ ワーワー♪ ドンドンドンドンパフパフ
ムント「えー、早速始まりましたこの番組ですが……」
オガム「始まりましたな」
ムント「正直、私、何を話してよいかわかりませんが……カミュ様が『やれ』とおっしゃるもので……」
オガム「困りましたな。私もです。アロウン様が面白がって『やってみろ』とおっしゃりまして」
ムント「書いてる人も、本編はやったそうですが、私の口調を憶えていないようですし……」
オガム「私の方も、つい最近本編をやっていただいたようですが、お忘れになられたようです」
ムント「困りましたな……」
オガム「ええ、全くです」
ムント「………」
オガム「では、撤収ということでよろしいですかな?」
ムント「そ…そうしますか! では、皆様、お名残惜しいですが……」
オガム「ふむ」
ムント「この番組はこの辺で ── ぬおっ!? カミュ様! 物を投げないでくださ ぐあっ!?」
オガム「おやおや」
カミュ「みなさーん、お便りお待ちしてまーす」
ムント「なっ!? カミュ様、そんな御無体なっ! 待ちません! お待ちしておりませんぞ!」
カミュ「むーっ……!」
ムント「重ねて言いますが、お待ちしておりませ ぐあっ!?」
ちょっとした小ネタが浮かんだので書いてみた。
ヤマもオチもないが、
>>1よ、これでいいのか?
とりあえず、寝る。おやすみなさい。
イミもない
ああ、意味もないスレに終わったな。
試合前は大口叩いてたのに1ラウンドでなす術もなくKOされて、その後存在が消えちまう格闘家のような>1だった。
22 :
えいえんの格闘家:2005/07/01(金) 01:13:48 ID:TdnhA6m80
23 :
【SS投稿者のお約束】:2005/07/01(金) 01:15:37 ID:TdnhA6m80
※SS投入は割り込み防止の為、出来るだけメモ帳等に書いてから一括投入。
※名前欄には作家名か作品名、もしくは通し番号、また投入が一旦終わるときは分かるように。
※書き込む前にはリロードを。
※割り込まれても泣かない。
※ここは、七厨板として名高い、葉鍵板です。
容赦無い酷評、また、特定キャラシンパによる、苛烈な叩きレスが付く場合もあります。
投降前には、覚悟の完了を。
※容量が480kを越えたあたりで次スレへ移行。
スレ立て人は重複防止のため、宣言と誘導をお願いします。
24 :
【トリップとは?】:2005/07/01(金) 01:16:57 ID:TdnhA6m80
名前欄に「名前#任意の英数字や文字」と入力すると、
「名前 ◆******」と表示されます。
「******」の部分は逆解析できないので本人証明になります。
25 :
名無しさんだよもん:2005/07/01(金) 01:20:19 ID:TdnhA6m80
26 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/07/02(土) 00:39:35 ID:L7hT3gSM0
27 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/07/03(日) 00:18:42 ID:xjT7YRl10
28 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/07/04(月) 01:07:37 ID:aq6O6omu0
Q:Leaf,key板なのに、tacticsのONEの話題等があるのは何故?
A:
板創設時から、暗黙の了解という形で、keyのスタッフがtactics在籍時に手がけた作品は
この板で扱うようになっています。
具体的には、「ONE」「MOON.」「同棲」がこれに該当します。
また、板の使い分けについては、エロゲー板ローカルルールに準拠しています。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~negikamo/guide/ >6.Leaf,Keyのゲームについての話題は葉鍵板へ逝きましょう。
>なお、葉鍵板で扱われるゲームは、Leaf、Keyのすべての作品、
>およびTacticsのMOON.、ONEが該当します。
>MOON.とONEは葉鍵の作品でありませんが、現Keyのスタッフが制作し、
>Keyのゲームの前身となったゲームであり、葉鍵板で扱うことになっています。
31 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/07/05(火) 00:34:20 ID:wTrPMAJy0
32 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/07/06(水) 00:30:13 ID:ig/r4od20
33 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/07/08(金) 01:07:57 ID:2gXKSE6V0
34 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/07/09(土) 00:51:46 ID:GDQfNxxz0
35 :
名無しさんだよもん:2005/07/09(土) 23:33:37 ID:pJyDPyw+0
36 :
【ネタに困ったら、こちらへ】:2005/07/14(木) 00:45:34 ID:JcCCGq2h0
37 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/07/20(水) 23:45:53 ID:gg6b115z0
39 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/08/03(水) 23:27:32 ID:7IXoOfsq0
40 :
【葉鍵板内SS関係スレ】 :2005/08/20(土) 00:06:00 ID:94LBV8g50
ハクオロ「あー暇だー」
エルルゥ「ハクオロさん!アルルゥが、アルルゥが!」
ハクオロ「タリイマンドクセ」
エルルゥ「アルルゥが木から落ちて死んじゃって……わー(泣)」
ハクオロ「契約シヨウ。汝ノ心ト体ヲ我ガ物トスル代ワリニ肉塊ヲ蘇ラセテヤロウ」
アルルゥ「おとーさん、おねーちゃん、生き返ったよ。」
エルルゥ「これで3度目の生還ね。」
アルルゥ「きゃっほう」
蘇るSSだろ?間違ってないよな
43 :
【葉鍵板内SS関係スレ】:2005/09/27(火) 01:21:31 ID:tWdE7d+T0
44 :
【葉鍵板内SS関係スレ】:2005/10/12(水) 23:59:10 ID:ZvkK+eyn0
45 :
【葉鍵板内SS関係スレ】:2005/10/25(火) 01:42:49 ID:sZMIHGqB0
………
47 :
名無しさんだよもん:2005/12/09(金) 15:45:04 ID:y4W3SBFQ0
蘇れ
スレの趣旨とは違うかもですが、最萌の支援SSで使わせていただきます
片桐恵支援SS 注意と事前の言い訳
・急所は遠回してるつもりですが、どうみてもネタバレです。ありがとうございました。
・このSSは本編の某ED後を舞台にしています。
・作中でてくる「あの歌」ってのはは、鎖のEDテーマです。
12月末まではsuaraの公式サイトで無料ダウンロードできます→
ttp://www.fixrecords.com/suara/seiza.html 本編中で流れるのは、歌なしのインストでしたけど・・・
・けっこう長いので何度かに分割して貼ります。割り込みとか気にしないでください
・シーン冒頭の時間は単なるシーンの開始時刻です。トリックとか別にないです
・まだ未完成なので途中で力尽きたら嗤ってやってください
んでわ
1日目 10時25分
ふと、歌が聴こえてきた。
不安になって、俺は恵を捜した。
「あら、今日はまた一段と早いのね」
「…いかにも待ち疲れました、って顔をしながら言う台詞じゃないよな、それ」
「別に疲れてないわ。私が勝手に早く来ただけだし。行きましょ」
恵は、店の入口に置いてある、犬の置物の陰に立っていた。
小柄な体が、台座を含めれば自分の背丈ほどもある物体の陰から出てくると、俺の腕を取って歩き出す。
この店の前で待ち合わせるのが、俺と恵の定番になったのは最近の事だ。
実のところ、俺はこの場所を避けたいのだが、恵はここがお気に入り。
その理由はおそらく同じで、店の前で流れているBGMにある。
新しいものでもない、さしてメジャーでもないこのタイトルは、何故か良く此処で流れている。
恵は、待ち合わせの間この歌を聴くのが好きで、此処を指定してくるのだった。
「うーん、CD買おっかな」
何度目か聞く台詞に、俺はいつもの嘘で答える。
「止めはしないが、俺はこの歌は嫌いだ」
「はいはい、わかってる。でも何故か聴きたくなるのよね」
恵が「何故か」と言う、その理由も、たぶん俺は知っている。
この曲は、今はもう無邪気な恵が、まだ無邪気でいられた時間の最後に、口ずさんでいた歌だから。
約400日前 10時15分
「何の曲?」
いつの間にか傍らに恵が来ていた。
「え?俺?」
指摘されて自分が口ずさんでいたことに気づく。
「あ・・・確かに」
「ふふ、変なの」
恵はごく自然に俺と肘を並べ、手すりに頬杖を突いた。
「いい感じのメロディ。何の曲?」
・
・
・
洋上で交わされた、何気ない会話。
1年と、もう少し前、俺と恵は、共通の友人のツテにより、高速クルーザーの試験航海に便乗する機会を得た。
当時、二人は別に恋人同士ではなく、船旅も二人きりのものではなかったが、
俺も恵も、お互いが気の合う相手である事は認識していたので、
船上で交わされる会話も既に「ちょっといい感じ」だったと自負している。
俺があの歌を口ずさんだのも、それに興味をもった恵の言葉も、そんな会話のひとつだった。
・
・
・
「何の曲?」
聞かれて初めて自分が唄っていることに気づいたのか、
恵は自分の口元に手を添えた。
「あら・・・うつった?」
だが、そのわずか数時間後、世界は暗転した。
偶然だったのか、必然だったのか、何が悪かったのが、それはわからない。
ただ、クルーザーが拾った一人の漂流者、いや、一体の野獣によって、
船上は、逃げ場のない地獄と化した。
俺達が気づかない程のわずかな時間で、船員達は全員が殺された。
残ったのは、俺と恵、俺の妹と、数人の友人達。
女は犯す。男は殺す。奴の行動は首尾一貫していた。
無差別の暴力が吹き荒れる中で、俺は奴から逃げ、対峙し、戦い、最後に辛うじて、奴を殺した。
友人達もまた、様々に行動した。多くは俺と共に戦った、奴に従う途を選んだ者もいた。
恵の行動は、どうにも単純なものではなかった。その分析も評価も、俺にはできない。
確かな事は、彼女もまた極限状態の中で必死に戦い、生き延びた事。
その過程で、俺と恵の関係が、めまぐるしく変化していった事。
そして、物語の最後に、彼女は記憶を失った。
だから、あの歌は、二人が今の二人になる前に交わされた、最後の共感。
5日目 21時00分
「っ・・・んっ、んんぅ・・・あ、はぁ・・・あっ・・・!」
腕の中で、恵が身悶える。
俺はブラウスの中をまさぐっていた右手を、そのまま下方に落とす。
「・・・ぁっんっ?」
クチュッ
下履きに指を潜り込ませると、恵のそこはもうだいぶん潤んでいた。
襞を掻き分け、膣内に進入させた指を小刻みに動かすと、
恵の腰が、俺の脚の間で揺れる。
怒張に押しつけられた柔らかい尻が、股間に擦りつけられる。
俺は両足で恵の体を挟みつけると、その背中にのしかかるようにして、腕を深く差し入れる。
「あ、ふあ、あ、あぁ・・・んっ!ち、ちょっと…」
恵の言葉に、俺は彼女の内部をまさぐる手を止めた。
恵は、俺の腕の中でくるりと体の向きを変えると、正面から俺に口づけ、
そしてすぐに頭を潜り込ませるように下げる。
「・・・恵?」
「これ以上弄られると、余裕なくなっちゃうから」
二人が完全に密着しているため、俺には恵の頭の下が見えない。
唐突に、ぬるっ、と湿った柔らかい感触が怒張を包み、俺の背筋に電流が走った。
「んっ、はんっ、んむっ」
腕の下で、蠢く恵の頭、両手を俺の腰に回して抱きつく。
アリジゴクに銜えられた蟻のような格好で、俺のモノは恵の口腔に捕らえられている。
先端に喉の感触があるほど深く吸い込まれた状態から、
唇だけで亀頭をくわえ込まれるとろまで一気に口を引き抜かれる
過程で舌が根本から雁首までをずるっと舐めあげ、ちろりと鈴口を刺激する。
「くっ、恵っ、もう…」
「ちゅ・・・む・・・んんっ・・・」
限界に近づいたことを知ってか知らずか、恵は頭を勢いよく前後させ、口全体で竿をしごく。
俺は思わず恵の頭を押さえつけ、腰を浮かせて喉の奥に突き立てる
次の瞬間、俺の体から出た白濁であろう液体は、恵の咥内へとなだれ込んだ。
「ん・・・んくっ・・・」
白い喉がこくこくと動き、恵は俺の精液を飲み下す。
「う・・・恵・・・っ?」
恵は俺のモノを口から解放していない。
そのまま唇を表面に押しあて、頭を回転させながら口淫を続ける。
口腔に唾液を溜めて、洗濯機の水流のように俺のモノを洗う。
唇の間から零れた涎が、肉棒の表面を伝って俺の股間を流れた。
「はぁ・・・んぐ・・・はぐ・・・ふふっ」
(今、笑ったな。)
恵の表情は見えないが、荒い息遣いの影で俺はそう感じた。
これは放っておくと延々と嬲られそうだ。俺は恵の体に手を伸ばした。
2日目 22時30分
小さな浴室に、シャワーの音が響く。それと、荒い息遣い。
二人して散々抱き合った後ではあったが、そこは若さというべきか、
お互いの体を洗っているうちになんとなくそんな気分になって、
なんというか、まあ、そういう事になっていた。
「うっ・・・!あ・・・っ!うぁ、ふああぁぁ・・・そひょは」
浴槽によりかかった姿勢の恵に脚を開かせ、覗き込みながら秘所を弄ぶ。
今日に関しては、はいささか主導権を握られたような感覚もあり、俺は少し意地悪になった。
「ぁ…!はぅっ!・・・や、ひゃう・・・らめ…ひょほらめぇ…」
興奮が極度に達すると舌足らずになるのは、恵の癖だ。
しかし普段は冷静な彼女がこうも混乱した様子を見せると、嗜虐心が頭をもたげる。
体が冷えないように上半身に湯を流していたシャワーを肩に引っかけ、
俺は恵の手を取って、彼女自身の乳房に添えさせる。
恵の手ごと包むようにして、上から何度か乳房を愛撫すると、
彼女は自分で胸を揉みしだき、尖った先端を指で刺激した。
そうしておいて、俺は再び恵の下半身に集中する。
「はぁ・・・ぁぁ・・・っっ!・・・ふぁふぅっ!」
「うぁぁ・・・らめ、もう、あふぁぁ・・・おはひふ・・・はぅあああ・・・ふあぁあっ?」
唐突に、恵の脚が一瞬縮こまり、口を開いていた花弁が微妙にひくつく。
「あ・・・ほへん・・・ひょっほ・・ふあっ・・・あぅぉ・・・はんは・・・ひょうふへっ?」
恵がちょっと焦った声を上げて俺を制止するが、俺は愛撫を止めない。
「あひっ、らめ・・・へひゃふ・・・へひゃふほ・・・」
せめて脚を閉じようとする恵、だが体と腕で両足を押さえられていては、それすらもままならない。
恵が何を言いたいのかは理解しているが、
俺は構わず肉壁を広げ、膣口をまさぐり、上部の小さな突起を指で振動させ、
そして止めとばかりに、恵が今最も触られたくないであろう部分に息を吹きかけた。
「ふあぁぁぁあっっぁんんっ!」
押さえつけているにも関わらず、腰が一瞬跳ねると、次の瞬間、恵の体から力が抜ける。
それに合わせて、恵の脚の間からは、黄色い液体が公園の水飲み口のように湧き出た。
・・・むしろ小便小僧、いやそれだとそのまんまか。
3日目 0時14分
ホテルを出て、二人で寒空の下を歩いた。
駅前まで来ると、赤いランプが点滅しているのが見えた。
駅近くのビルの前に、パトカーが連なっている。
「なにかあったんですか?」
遠巻きにしている野次馬に聞いてみると、暴力団関係者が人質とって立て籠もったらしい、との事。
「物騒ね。」
「全くだ。・・・あれ、恵の終電大丈夫か?」
「あと5分。普通に歩いて間に合うわ」
パンッ
駅に入ろうとした矢先、背後から乾いた音が聞こえた。
「発砲!?」
思わず振り向いた。
パンッ パンッ
続けて二発ほど、その後は、サイレンの音、野次馬のざわめき。
以前に一度だけ聞いた事がある銃声に、俺は驚くほど敏感だった。思わずその場に立ちつくす。
「あ、恵、電車の時間」
自分を失っていたのは、さほど長い時間ではない筈だ。
だが、我に返って声をかけたとき、そこに恵はいなかった。
ピリリリリリリィー
警笛の音に慌ててホームを見ると、いつのまにか、最終電車が動き出していた。
当然、恵は乗っていたろうが、俺にはその姿は見つけられなかった。
>52の日付間違えた。2日目です。とりあえずこの辺で寝ようorz
5日目 2時35分
クレゾー>チンチン
クレゾー>マダーマダー
A太>クレゾーうるせー
あきお>あげたよ。passはいつもの
クレゾー>キター
A太>あ、俺もこれは持ってるや
クレゾー>ハァハァ
あきお>うーん、まあ新作は上がらないわなぁ
A太>まあ、まさか本物とは思わなかったよな
クレゾー>ハァハァ
クレゾー>ちはやタンハァハァ
A太>お前そればっかだな>クレゾー
「…っ。勝手な事を。」
俺はモニタに流れる会話をぼんやり眺めながら、軽く舌打ちした。
こいつらは、岸田が流していた陵辱ビデオの動画をダウンロードしていた連中だ。
岸田が死んで、動画の供給が止まってからも、未練がましく会話を続けている。
俺がここを覗くようになったのは、あの事件の後しばらくしてからだ。
ドラマチッックな事件に、ここぞと群がる報道陣に揉みくちゃにされた間、
未成年という事で俺達の名前は一応伏せられていたが、
あれだけ露出が多ければ情報は止めようもない。
むしろごく自然に、俺達のプライバシーは流出していった。
差出人不明の中傷・悪戯は無数、励ましの手紙やメールなんてのも随分届いた。
まあ、受け流すしかないのだが、少しは相手らしきものを把握しておくべきかと、
俺は苦手なネットを多少積極的に回って情報収集するようになった。此処の存在を知ったのはその頃だ。
もっとも、事件から1年以上が経過した今では動画のやりとりもすっかり下火になっていて、
俺も、数少なくなったチャットの参加者も、最近は単なる惰性でアクセスしているようなものだった。
流れてゆく良心のかけらもない文字の羅列に、嫌気を通り越して眠気を覚える…
が、次の瞬間、目が覚めた。
余市>この画像、あるか?
見たことのない、しかし聞き覚えのあるハンドルネームの参加者が、そういってアドレスを示す。
思わずアドレスを辿った先には、あの船の中で、奴に、犯される、恵の、姿が写っていた。
5日目 14時10分
翌日、俺は件の事件を担当していた警察署を訪ねた。
昨夜の画像が、今頃になって現れたのなら、
原因として疑わしいのは押収された証拠ビデオの流出だ。
少なくとも、チャットのログを捜査してもらえばアップロードした当事者は特定できるだろう。
そう思って署の玄関をくぐったのだが、廊下の入口で小柄な体とぶつかった。
「きゃ…あ、恭介?」
「め、恵!?なんで?」
「ちょっと…聞きたい事があって…長瀬さんに…」
「お疲れさん、んー?、彼氏のお迎えか?」
噂をすればなんとやらで、俺達の事件を担当した長瀬刑事が姿を現した。
「…そうなの?」
「…まあ、それでもいいけど」
何故か俺は、その場で自分の用件を切り出す気がせずに、
そのまま恵と連れだって警察署を出た。
「今頃になって、なんなんだ?」
「うん…ちょっとね」
「…」
「…話でしか、聞いてなかったから」
その言葉に、殴られるような衝撃を受けた。
「!お前、もしかしてビデオ!?」
「…しかし…改めて…やっぱ来るわね。正直、吐きそう」
恵は、自分が陵辱された際のビデオを見てきたと言う。
しかし何故、今頃、しかもこんなタイミングで…
その答えを、俺はおそらく知っていた。だが、目を背けた。
「しかし良くそんなもん見せてくれたな。いいのか長瀬さん」
「融通の利く人だから。後の事は知らないけど。」
「疲れただろ。ちょっと、そこの茶店で休んでいくか?」
「・・・うん」
続きに期待。
11日目 1時52分
A太>これも見たことねーな。
クレゾー>黒髪ロング!黒髪ロング!
あきお>しかしなあ…ヤバくね、これ?
あれから数日、件のチャットでは、引き続き俺達の事件の画像が散発的に上げられていた。
俺の立場からすれば、通報すべきところなのだが、やはり躊躇している。
間もなく、俺の下に、手紙が送られてきた。
「香月 恭介 様」
活字の切り抜きで作られたシンプルな便箋には、時刻と住所だけ。
そして同梱されていたのは、1枚のCD−R。
内容は、やはり例の事件の画像が数枚。
事件の際に直接目撃したわけではない画像もあったが、
写っているのが皆知り合いでは間違いようもない。
何故今頃、そして誰が。
その答えも、知っていたのかも知れない。
だから、さしたる準備も警戒もせずに、俺は指定の場所に赴いたのか。
11日目 23時51分
奥の方は蛍光灯がついているようだ。
「・・・電気が生きてるってことは、使われてる建物なんだ、よ、な?」
呼び出された場所は、見るからに胡散臭い倉庫風の建物だった。
内部には、どこで使うのか判らないような建築資材が積み上げられており、
どうやら倉庫風、ではなく倉庫そのものであると主張している。
警備もろくにされていないのか、人の気配のしない倉庫の内部には、しかし騒音が満ちていた。
すぐ近くを高架が通っている。交通量はなかなか多いようで、電車と車の振動はひっきりなし。
加えて建物内部の反響は、可聴域ぎりぎりの低音を生みだし、耳栓でもしたように音が聞きづらい。
「人を襲うには絶好の場所だな。」
むしろ俺は襲われるのに絶好の獲物か。
そんな事を考えながら、資材の間を縫って歩いた。
「・・・へ?」
灯りの守備範囲まで歩いてきて、俺は間の抜けた声をあげた。
テレビが置いてある。床の上に。
今どきな、7型くらいの小画面TV。繋がってる機材は、ビデオカメラか。
なにか映ってる。
なにか・・・人影のようなものが絡みあって・・・
『うぐ・・・! あ、痛っ・・・!』
なにか・・・なに?
『い、痛いっ! やめて、腕が折れ・・・』
映像の内容を認識したとき、俺は思わず画面に駆け寄った。
『許して、もう許してよぉぉ!!』
見たくもなかった光景が、画面に映し出されている。
そこには忘れもしない陵辱者と、組み敷かれているのは、恵。
目をそらすこともできず、映像を見つめていた俺は、別な方向に違和感を覚える。
あれ・・・これは・・・でも・・・時間が・・・
画面が切り替わる。ここは、船底か?機関室?あれは。?岸田と?、恵?。あれ?、なんだ?
映像の衝撃が強すぎて、音声が耳に入らない。
なのに、思考は働いていた。
あの時、泣いていた恵。
岸田は消え、事件は幕を下ろす。その間際に向けられた、言葉と殺意の意味。
あ、今、俺は、どんな顔をしているのだろう。
ガンッ!
突如、目の前が真っ暗になる。
殴られた、と思う間もなく、意識も暗闇に沈む。でも、
そういうことだったんだ。やっと、意味がわかったよ、恵。
>64はシーン7の1/2でした。
12日目
「・・・つっ!」
頭が、ずきずきと痛む。無意識に押さえようとした右手が、ガチャリと何かに引っ掛かった。
「手錠?」
俺は、冷たい床の上に、壁に寄りかかるように座っていた。
両手が、頭の上で何か金具のようなものに固定されている。
「・・・はぁ。」
妙に力の抜けたようなため息が聞こえて、俺は顔を上げた。
建物はさっきと同じだろうが、電気は消えている。外はまだ夜だ。
月が出ているかどうかは覚えてないが、天井近くの採光窓からぼやっとした光が差し込んでいる。
そこには、小柄な恵が、俺を見下ろしていた。手にはナイフか何か。
「いきなり殴られるとは思わなかったな」
「それ、本気で言ってる?」
ちょっと呆れたような表情で呟く。
「記憶、戻ってたのか。」
「1週間ほど前に。心当たり、あるでしょ。」
「あのビデオは?」
「岸田に解放された直後に、私が自分の鞄に隠してた。降船する時は意識なかったけど、見つけない警察も警察ね。」
「チャットに画像を上げたのも?」
「あ、恭介も見てたんだ」
こんな状況下で、会話は淀みなく流れた。
「警察に行ったのは、押収資料のなかに映像がないことを知るため?」
「ええ」
「ビデオを見せたのは、俺が知らなかった事を確認したかった?」
「そうね。話が恭介だけで済みそうで良かったわ。」
お互いの認識の確認が終わる。そして、
「俺の事は、信用できないか?」
俺はさらりと口にする。
「ええ、できないわ」
恵は平然と言い放つ。
「そうか、力不足で済まない」
だが、俺の言葉に、恵の顔は急激に歪んだ。
「・・・なんで・・・」
「・・・」
「なんで怒らないのよ!!」
「恭介は何も悪くないんでしょ!船での事も、今まで誰にも言ってないんでしょ!
ビデオの事は、何も知らなかったんでしょ!私が勝手に思い出して、勝手に教えて、
それで、恭介を信用できないって言って!!それでなんで平気なのよ!」
堰を切ったように泣き喚く恵に、俺も頭に血が昇る。
「平気なわけ・・・ねーだろこの大馬鹿野郎っ!」
怒鳴り返されて、恵はビクっと体を震わせ、涙を溜めた目で俺を見る。
俺は深呼吸をひとつ、ふたつ。
「恵・・・お前が取り戻した記憶が、どれ程のものなのか、俺にはわからない。
俺はお前のした事を少し知ったけど、その意味は、それは恵が決める事だ。」
「けど・・・これだけは、理解してくれ。俺は変わらない。」
自分が助かろうなんて思わない。恵を説得しようという気持ちもなかった。
「これからも、俺がお前を守る」
ただ、俺は事実を告げた。
「・・・夜にね」
恵は俯いたまま続ける。
「・・・目が覚めると、泣いていたの」
「この1年、恭介と一緒にいて、抱かれて、幸せなはずなのに、ずっと、何かが壊れてた」
「記憶がないのが不安だったわけじゃない」
「あのことを思い出して変わったわけじゃない」
「今度は、ただ、理由がわかっただけぇ」
声が詰まる。
「・・・さっきの、嘘だよぉ・・・」
恵が顔をあげる。赤子のような泣き顔。
「信じてるよぉ、恭介のこと。見てたもん、この1年も、その前も、初めて会った時から、見てたもん。
わかってるよ、私の事絶対裏切らないって!ずっと、私の事守ってくれるって、信じてるよ!
でもダメなの!同じ世界に、私のこと知ってる人がいるのが、ダメなの!
直らないよ・・・私は、あの時壊れたの・・・私を守るって言うなら、あの時、助けて欲しかった!」
泣きじゃくりながら、床にむかって叫ぶ。
そして顔をあげる。泣き笑いのような表情。
「わたし、呼んだんだよ」
「助け、呼んだんだよ」
「・・・恭介のこと、呼んだんだよ・・・」
「恵」
応えはない。
「今から、じゃ駄目なのか?」
恵はうつむいたまま。
「時間は、いくらでもある筈だ。」
肩を震わせる。
「お前の時間は、もう、動かないのか?」
顔を上げたが、言葉はでない。
ただ、涙を溜めた瞳を見つめて、俺は答えを知った。
好きにしろ、とは言わなかった。ただ、これ以上言葉を探すのを止めた。
恵が、夢遊病のような足取りで近づいてくる・・・
ぐらり、唐突に世界が揺れた。
「地震!?」
かなり強い。恵が、あっさりとよろけ倒れる。
「恵っ!」
俺は叫んだ。両側に積み上げられた鉄骨が、衝撃で崩れかけている。
金属が擦れあうような音に、恵は呆と上を見上げ、しかし動かない。
妙にゆっくりと、巨大な影が降りてくる。
「恵ぃいぃぃぃっっっっっ!!!!」
叫んで俺は弾かれたように立ち上がる。
手錠は、玩具だった。プラスチックの鎖を引きちぎり、恵に駆け寄る。
突き飛ばしても間に合わない。俺は恵を抱きしめて、その小さな躯を、全身で包んだ。
脇腹に鋭い痛み、恵が持ってた刃物が刺さったか。
「き、きょうすけ!?」
顔を出そうとする恵を押さえつける。刹那、轟音。衝撃。激痛。暗転。
それっきり、俺の記憶は途絶えた。
94日目 16時45分
病室の扉が、中から開いた。
「わっ、と、と、ごめんなさいっ!…あ、恵さん」
「こんにちわ。お邪魔したかしら」
「いえ、いつも有り難うございます…」
出てきたのは、恭介の妹、香月ちはや。
同性の私から見ても魅力的な女の子だけど、最近は表情に疲労の色が濃い。
「お兄ちゃん、恵さんだよ」
「・・・ああ。いつも悪い。」
「他人行儀はやめてよね。具合は…悪くなさそうね」
「そうだな。」
「あ、わたし電車の時間があるので、これで…」
「気をつけてな。」
「お疲れさま。」
かちゃりと扉が閉まり、病室には私と恭介の二人きり。
「・・・医者からは、もう退院してもいいって言われてるんだ。」
「もう一人で動けるんだっけか?」
「なんとかね。ただ普通通りに生活するのは難しそうだから…」
「妹さんに負担をかけたくない?」
「それもあるし、自分が怖いってのもある。」
「家に戻っても、自分の家のような気はしないんだろうしな。」
「ま、恋人の事も思い出さないくらいだもんねえ。」
「すまない。」
「ううん。いいの。」
あの時、私は恭介に手をかけた。自分の安心のために。
彼は、崩れた資材の下敷きになった。私を庇って。
奇跡的に一命を取り留めたけど、喪ったものは大きかった。
肉体的に、彼の四肢には完治しても重度の障害が残ると宣告されている。
そして精神的には、彼は、記憶の殆どを失っていた。
まるで、私がそう望んだ事を、知っているかのように。
「そうそう、ひとつ報告があるの。私、就職決まったわ」
「へえ、おめでとう。うーん、事務系?」
「まあね。会計士事務所の雑用係。」
「営業向きじゃなさそうだしな。」
「こう見えても、猫かぶるのは巧い方よ?」
「どうだか。」
しかし恋人としての記憶がない割には、彼の言い草は失礼だ。
もちろん、イヤじゃないけど。
「・・・それで、相談なんだけど、」
「・・・?」
ちょっと言い淀む。でも、言葉を選んでもしょうがない。
「私、恭介の家に、住んじゃだめかな?」
「!?」
「ええっとね、仕事場が、恭介の家の近くなの。」
「・・・」
「私の部屋からだと、電車の時間が不便だし。」
「・・・」
「恭介の家、一軒家で部屋余ってるじゃない?家賃は払うわよ」
「・・・」
「ごめんね突然、でもちはやちゃんがいると遠慮されそうで」
「・・・」
「・・・」
まずい、台詞が止まっちゃった。
「・・・責任を感じる必要は、ないぞ」
「え?」
「事故の時に一緒にいたから、原因の幾らかはお前にもあるのかも知れないけど、
そうだとしても、これは俺の行動の結果だから、お前が責任を取る必要はない」
「俺はこんな状態だし、お前の事も思い出せてない。こんな俺にこれ以上関わる必要は・・・っ?」
言葉の途中で、私は恭介の首に腕を巻き付け、ベッドの横から抱きついた。
「あなたの事情は、関係ないわ」
「お前・・・」
「大人しく、面倒見られなさい」
あなたは私を、守ってくれたんだから。
100日目 10時25分
退院の日、空は綺麗に晴れ渡っていた。
私は、家までタクシーを使うよう奨めたんだけど、彼が駅前にも出てみたいと主張したので、
駅まで車椅子を押して、電車に乗る事にした。荷物は既に宅急便で送ってある。
「視線が低いってのは、落ち着かないな」
「歩道って車道の方に傾いてるんだね。けっこう怖いかも」
恭介の言葉に、車椅子を押しながら、少女が呟く。
「ちはやちゃん、替わろうか」
「いえ、大丈夫です!・・・あ、でもちょっと待ってて貰っていいですか?」
恭介を私に預けて、小走りに近くのビルへ。
「…トイレね。」
「出がけにバタバタしてたからな」
ため息ひとつ。
なんにせよ、これから越えなければならない壁は少なくない。
車椅子を端に寄せて二人、手持ちぶさたに空を見上げる。
ふと、歌が聞こえてきた。
私は、思わず瞳をめぐらし、そして視線を彼に下ろした。
恭介も、同じ歌を聴いていた。
「これ、どこかで・・・まあ、判る訳ないか。」
「そんなに新しい歌じゃないから。聴いた事はあってもおかしくないんじゃない?」
さりげない会話の後ろで、少し落ち着かない私の姿に、恭介は気づいただろうか。
そういえば、この辺りには良く流れていたんだっけ。タクシーにすればよかったと、少し後悔した。
このメロディは、それにしても私たちにつきまとう。
「でも、いい歌だな」
彼は呟いた。私は嘘を付いた。
「私は、この歌嫌いだわ」
以上です。長々と失礼しますた。
もういっちょいってみます。今度のは完全に即興なのでオチはないかも。
「めぐみ、めぐみぃ〜」
とびっきり間の抜けたのんきな声が掛かる。
「あのね、あのねえ〜、8月の予定あいてない〜?」
「8月のいつよ。期間と用向きは?」
「ふえ、ふえぇ?そんないっぱい聞かれても〜?」
極めて基本事項だと思う。
この子は折原明乃、私のクラスメート。
近頃じゃ珍しいくらいに邪気ってものが皆無な娘だが、
今の会話のとおり、その知能は率直にいって1,2,の次がたくさん、なレベル。
その代償、かどうかはわからないけど、ルックスはかなりのもので、
顔も十分に可愛いが、少しぽっちゃりした身体は、最近とみに女づき、
クラスの内外問わず、男子生徒の視線を、主に胸と腰に集めている。
ちなみに本人には全く自覚がない。忠告しても、理解できないだろうし。
もちろんその辺を気にしてるのは男子だけではなく、
女子からは羨望と嫉妬の眼差しを向けられているのだが、当然そっちにも自覚がない。
私も、自分の体型には少し…いささかコンプレックスを感じている一員であり、
影で明乃のことを「エロ豚」などと呼ぶ連中とおつきあいはしていないが、
時と場合によっては、ちょっと共感してしまったりもする。
「ええっとねえ〜、一週間くらい〜、お船に乗らない〜?」
こういう時とか、ね#
「志乃さんとこで開発してる高速巡洋船の実験航海があるんだとさ、
で、乗客用の設備が勿体ないから良ければ便乗しないかって。」
良かった、日本語だ。
「ふうん、いつ?」
「10日から一週間。洋上回って帰港するだけだと。」
「今の所メンツは?」
「明乃と俺とちはやと友則。他に予定では綾之部姉妹
料金無料。ただし食事は自炊。」
「・・・行く。」
我ながら、あっさり答えてしまったものだ。
「即決かよ。親に相談しなくていいのか?」
「お金かからないんでしょ。問題ないわ。」
会話の相手、香月恭介とは話がしやすい。波長が合うのかな。
だから、なんとなくできた流れに乗ってしまった。
私が恭介と良く話すようになったのは、共通の友人として明乃がいたことだけじゃない。
同じクラスになったあたりから、似た者同士という感覚があった。たぶん、お互いに。
生き方が似てるという程、恭介の事は知らない。
ただ、少なくとも、周囲に対するスタンスは近いと思う。
私は人と接するとき、とかく正対して構えてしまう性質で、それでよく壁を作ってしまうけど
恭介と話している時だけは、肩を並べて同じ方向を向いているように思える。
「あのね、あのね、船、すごいんだよ、こーんなおっきいの!
きっと楽しいよ、恭ちゃんもちはやちゃんもいるし、あ、えと、早間君も、
あと可憐ちゃんと珠美ちゃんも呼ぶつもりだから、ね、恵もいこう?」
まあ、世の中には壁とか気にしない性質の人間もいるけどさ。
しゃべった努力は認めてあげたいけど、話きいてないのね明乃。
「もうOKとったぞ明乃」
「ふぇ?わっ、恭ちゃん女たらし」
「いきなり何をいいさらすかこいつは…」
あ、たぶん今、「明乃の体型の方が…」とか心に浮かんだ、っぽい。
「そうなの?」
なんか悔しいのでちょっとカマを掛けてみる。
「そうかも知れないぞ?」
うーん、この手のやりとりならもうちょっと続けたい気もしたけど、
万一止まらないと進退に窮するのは私の方なのでやめておいた。
・・・こういうのは、そのうち機会を見て試してみよう。
「じゃ、集合場所決まったら連絡頂戴。」
「うんっ♪」
「できれば恭介から。」
「わ、恵ちゃん積極的。」
「お前は待ち合わせ場所を異次元に指定しかねんだろ」
「ぶ〜、よくわかんないけど悪口言われた気がするぅ〜」
恭介達と船旅、か。ちょっと楽しみかな。
GJ、事件前だとなんて楽しそうな…
「お、おはようございます。」
場所は港の駐車場。
おずおずと挨拶をすませると、彼女は恭介の背中に引っ込んだ。
「こら、隠れるな。」
恭介が彼女を叱る。
「う、うん…」
「こいつ見るからに堅物だもんな、ちはやちゃん、こっちおいでよ」
早間に声を掛けられて、彼女、香月ちはやは、早間とは逆方向に出てきた。
つまり、私の正面に立ってるわけで。
「そんな硬くならなくていいわ。」
「あ、はい…」
うわ、可愛い。早間が惚れているというのも納得。まあ、釣り合わないだろけど。
恭介の妹である彼女は、当然私や明乃よりも年下だが、年以上に幼い印象を受ける。
これは生まれつきじゃない。近くに守ってくれる相手がいて育った、そういう幼さだ。
とにかく、せっかくなので情報収集。
「ねえ、家での恭介ってどんなの?」
「恵、それ禁止」
ちっ。
「…明乃」
「なぁに〜」
「恭介持ってっていいわよ」
「わぁい〜恭ちゃん貰った〜」
「ちょ、ちょっとまて、お前こら、引っ張るな!」
なんのかんのいって、恭介がこういうのに逆らえないのは織り込み済み。
「い、家で、ですか・・・」
恭介が離れて、急に不安なそぶりを見せる。
ちょっと媚びたような目線。なんか、この子反則っぽい。
幼い顔つきなのに、明乃よりも女らしい雰囲気、独特の媚びがある。
しかも私より胸が…思考停止。
「学校での兄を知らないので、比較はできないですけれど、
平日は本読んでる事が多いですね。なんだか判らない数学とか科学の本たくさん持ってます。」
時々見せる妙に役立たずな博識ぶりはそのせいか。
「あ、私の部屋で少女漫画読んでることもありますよ。
私の方が遅く帰ってきたら、床に座って電気も付けずに読み耽ってたことが。」
「・・・出禁にしたら」
「でも、私も兄の部屋に勝手に入ってますし・・・」
そこでどうして頬を赤らめるのかな。
「それから、毎日通販で買ったトレーニングマシンで運動してますね。」
「ガタイ良いわよね」
「はい、って他の男の人の裸は普段見ないからわかりませんけど…」
妹って兄の裸を普段見るものだろうか
「えっ、あ、いや、そういうわけじゃ。」
思わず声に出していたようで、回答が返ってくる。
「べ、べつに見ようと思ってるわけじゃなくて、その、まあ日常的に、
洗濯物もいっしょだし、あ、そういえばこの前お風呂・・・あひゃぁ!」
なんだかボロボロと凄い事実が発覚しそうなところで、
明乃から脱出した恭介が彼女の脇腹をつっついた。
「なにを不穏当な発言をしてるんだこら。」
「え、えーと、いや家庭の環境を・・・あうっ、や、やめてお兄ちゃんやめてぇ」
訂正、つっついたのではなく、恭介は妹の脇腹、肋骨のあたりを指で擦っている。
・・・これは一般的な兄妹のコミュニケーションの範疇なのかなあぁ・・・
「たいしたことは聞いてないわ」
「ちはやちゃんがお兄ちゃんっ子だって事はわかったけど」
「え、えっと…ふぇっ…んっ…な、なにも言わないよぉ」
「まあ、否定はしない」
恭介がちはやから手を離す。
「うぅ・・・それじゃ、また」
ちろっと恭介に視線を向けて、彼女は明乃の方に歩き出す。
怨みがましいというより、名残惜しい感じの視線だったと思う。
「いい子じゃない。ちはやちゃん」
「ん、ああ。」
びくぅ
わざと彼女に聞こえるように恭介に振ってみたら、彼女の背中があからさまに緊張した。
お兄ちゃんっこ、ね。
「仲良さそうね」
「親父が死んだのが早かったからな。」
「可愛いわよね。」
「まあ、否定はしない。」
「血が繋がってて残念ね。」
「ああ・・・って何を言わすんだっ!」
あんまり冗談にも聞こえなかった、今の。
「ほお」
「うわぁ、凄い」
「すっげぇ…」
「ふぅん」
「えっへん!」
「お前が威張るな」
「えぇ〜」
「す、凄いわね・・・ってどこに昇ってるのよ!」
「おおおぉぉぉおおぉぉ、やっほーーーーぉぅっ!」
「・・・猿となんとかは。」
「高い所が好きなのは猫だがな。」
「猫も登りそうよ、ほら。」
高速巡洋船バジリスク号。
クルーズ船としては最小の部類に入るんだろうけど、
客船なんか縁のない私たちには、とてつもなく豪華にみえる。
みんなの言葉は、それぞれ字面は違えど、驚きと感動を表現している
で、驚きと感動を煙突に昇って身体で表現しているのが約一匹、もとい、約1名。
それを何故か追いかけている赤のワンピース、と、黄色の下着。
「こ、こら、さっさと降りなさい!危険でしょ!」
「ねーちゃんの方があぶないぞ!しかも下からパンツ丸見えだぞ!」
「へ、あ、こ、こら、早間!覗くな!、って、きゃあ!」
ハシゴを昇ってる最中にスカート押さえるのは危ないと思う。
「あいたた・・・」
煙突を登りかけて途中で落っこちたのは綾之部可憐。旧家のお嬢様。
私たちのクラスメートで、恭介や明乃とはなにかと行動を共にする間柄。
私とも、教室でのお上品な仕草が地でない事を知っている位には交友がある。
外見は背が高くて清楚な美人。スレンダーというには肉付きが良すぎるか。
緩やかなワンピースの上からでもはっきりと主張する胸のラインは・・・やめやめ。
「姉ちゃん、だいじょーぶか?」
大した高さじゃなかったけれど、心配そうに降りてきたのは綾之部珠美。可憐の妹。
ちんまい、という言葉がぴったりだが、身長は私と大差ない。はいはい、私が低いだけ。
可憐と遊びに出かけるともれなくオプションとしてついてくる。オプションだけあって、くるくると良く動く。
姉のパンツをどうこういっていたけど、妹も黄色のワンピース、しかもミニなので
「水色っては色気がないよな、恭介」
「あの色ならストライプの方がいいな」
「うぉっ、縞パン好きかお前」
男って、下賤。
・・・ストライプの下着、あったかな・・・
「うう…」
屈んだまま動かない可憐に、珠美が近づく。
「まさかうちどころが悪・・・わきゃっ!」
射程距離に入った瞬間、可憐の手が珠美を捕まえる。
「あんたは少し大人しくできないのっ!」
「わー、わー、姉ちゃん卑怯っ…じゃなくて勘弁、かんべんっー!」
「まったく、少しは大人しく…きゃっ!」
頭を押さえつけて説教態勢に入った可憐のスカートを、珠美が思いきりまくりあげた。
慌てた隙に、機関室の天井から飛び降りてこっちに駆け寄ってくる。
「こ、こら!待て!」
走り寄る黄色。追いかけてくる赤は、階段経由で遠回り中。
「きょーすけかくまえ…ぷぎゃ」
恭介にすがりつこうとして、逆に脳天チョップで撃墜される珠美。
まあ、いつもの光景
「さっさと荷物置いてこい」
「やだ、まだ走り足りない」
「じゃあ、どれだけ走れば気が済むんだ?」
「それは勿論、夕日をバックにキックの応酬・・・ぺぎゃっ」
そんなやりとりの間に、息を切らして可憐が追いついてきた。
珠美は恭介から離れると、何故か私の後ろに隠れた。
「ふっ!姉ちゃん!これを見ろ!」
そういって私の首になにやら突きつける。玩具のナイフ・・・本物!?
「この娘の命が惜しくば、そこでストリップだぁ!」
「馬鹿、危ないからやめろ」
どこで持ってきたのかナントカに刃物を振り回す珠美から、恭介がナイフを奪う。
「ほれ、可憐」
頭をつかんで姉に引き渡そうとする恭介に、珠美は私に抱きついて抵抗した。
「いやじゃいやじゃあ…、お?」
「・・・」
抱きついた珠美の手が、私の胸を掴んだ。
「んー、んーむ、むーう」
掴んだ、というか、掴むところがなくて彷徨ってる、というか、そう言いげな手つき。
私は振り向いて珠美に正対した。
「・・・・・・・・・なにか?」
「・・・・・・・・・正直、すまんかった」
背中に抱きついてた珠美のも、大きくはないんだけど・・・
・・・イツカコロソウ
客室は、今まで私が泊まったどんなホテルの部屋よりも立派だった。
調度品も質の良いものが揃っていて、ありがちな薄っぺらい豪奢さは感じない。
「この船、採算とれるのかな。」
ラウンジに降りてきて、恭介に振ってみる。
「お偉いさんを接待して売り込もうって船らしい。単独の採算は計算外じゃないか?」
「そんなの成立するのかなあ。」
「大人の世界は良くわからんな。」
「は〜い、みんな集まったぁ?」
白衣の女性が、ラウンジに声をかける。
折原志乃、明乃の母親にして、今回の企画者兼スポンサー。
「うひゃあ、白衣の下にボディコンスーツかよっ。」
「友則、よだれ拭け」
「出てねぇよっ!」
涎は垂れていないけど、垂れてないだけって表情の早間。無理もない。
血は争えないというと逆だろうが、流石に明乃の母親だけあって、
なんというべきか、その、一言でいえば、私の正反対な体つき。うぅ…
「あらぁ、恭介くんこそ涎が垂れてるんじゃなくて?何かおいしいものでも見たのぉ?」
前開きのゆるい白衣には、ボタンもついていない。
志乃さんが恭介の肩を抱くと、ふわりと翻って恭介の身体に降った。
「そんなことないです。」
いいつつ恭介も頬が緩んでいる。あーあ、あれ、私じゃ絶対無理だなあ
志乃さんは明乃よりも頭半分高く、しかもハイヒール。見た目、恭介とさほど変わらない。
ちなみに私は、シークレットシューズを履いても人並み未満。履かないけど。
「さて、冗談はこれくらいにして、と」
「し、志乃さん、俺にはっ?」
「ようこそ、バシリスク号へ。歓迎するわ。」
早間の台詞は当然のように無視して、説明を始める志乃さん。
そう、彼女は今回の試験航海の責任者にして、開発チームの重要人物。
「現在、バシリスク号は港を出て外洋に向かっているわ、
航海期間は1週間、途中、港には寄らないから、ずっと海の上ね」
血は争えないといったが、それは身体的特徴だけのことで、流々とした話しぶりは、
率直にいって明乃の母親とは思えない。もっとも、言動自体には、確かに母娘と思うふしもある。
基本的な注意事項を聞き流しながら、私は、同行者達に視線をめぐらせた。
明乃、恭介、ちはやちゃん、可憐、珠美、早間、志乃さん、もっぺん恭介。
あまり交友範囲が広くない私には、概ね知り合いだけで居られるこの空間は、とても心地よい。
「ということで、航海終了までは泣いても喚いても陸には帰れないから、覚悟しなさいよお〜。」
志乃さんの台詞に皆が笑う。私も、ちょっと笑う。
楽しい旅に、なるといいな。それと、恭介と、もうちょっと喋れると嬉しいな。
私の旅が、始まった。
終わり。タイトルは先に付けたので内容とあんまり関連ないですな。
乙、恵も大好きなもんで楽しませてもらってます。
GJ!
ここまで読んだ、昨日は夜PC前にいられなかったよ
96 :
名無しさんだよもん:2006/01/11(水) 12:43:53 ID:YwTGt2Fz0
gj!
今初めて読んだ。
原作に興味持った
97 :
名無しさんだよもん:2006/02/10(金) 22:37:05 ID:7SU84sYu0
鎖
明乃支援ss入れさせてもらいます。支援になってるか自信ないけど
「交換日記」〜鎖 明乃エンドより
いつからだろう、恭ちゃんの背後に女性の・・・きっと恵の影を感じるようになったのは。
珍しく帰るコールが守られなかった、あの夜だろうか。
それとも、酔って帰ってきた恭ちゃんに、恵の好きそうなシトラスの移り香を感じた日からだろうか。
もう、思い出せない。
***********************
帰るコールからちょうど45分後、恭ちゃんは帰ってくる。今日も、それは守られて。
「ただいま。飯できてる?芳乃は起きてる?」
「おかえり、ご飯はできてるよ、芳乃は寝ちゃったけど」
「そっか、せっかく読みたいって言ってた絵本、買ってきたんだけどな、ま、いいや」
恭ちゃんはいつものように、上着をソファに投げ捨てると、食卓につく。
ご飯をよそい、手渡す。私に背を向けたまま、恭ちゃんが声を掛ける。
「明乃、俺の携帯で梅田武彦、高校のときのクラスメートでいたろ、あいつのTELとか調べてくれるか」
「うん」
背広から携帯を取り出し、電話帳を開く。相川隆一、浅田悟――あ、あった梅田君、何の気なしにそのまま
ページをめくる。手が止まる。「M」とだけ記載された、携帯番号。M――めぐみ。偽名でも男名前でもなく。
その不器用さが彼らしい。私に問い詰められたらどうするつもりだったんだろう。あるいは、何気なく返した
かも知れない。『うん、この間、本当に偶然、会ってさ』恭ちゃんらしい、私はもう一度思う。私に検索させた
のも、これを見せるつもりだったのかな――それでも、私は前の画面に戻し、泣きついてみせる。
「やっぱり使い方わかんないよぉ」
私のことを、きっと、昔のままだと信じている、あなた。
「仕方ないな・・・・・」
あなた自身、気付かずに漏らした安堵のため息すら、私にはもう聞き逃すことは出来ないのに。
「明乃も携帯持てよ」
「子育てと、ご近所づきあいで目一杯だもん。家にある一台だけで充分」
明乃『も』か。
「それに、出会い系とかはまっちゃって、浮気しても知らないよ」
「ははっ、まさか」
笑い飛ばされる。うん、それは正解。私には恭ちゃんしかいないから。でも、細胞の一つ一つまでも、こんな
にも熱く、あなたを求めていることまでは気付いてないでしょう?
***************************
「ごちそうさま、風呂に入るよ」
「ん」
背広を整えようと、持ち上げる。あれ?いつもは使われない内ポケットに何か入っている。探って、取り出す。
え?イヤリング。思わず、取り落とす。恐々と拾い上げる――天使の羽根の・・・あのころの記憶が甦る。そう、
まだ恵と出会ってまだ間もない頃。放課後。私が恵が持っいた画集のことで話し掛けた。
『あ、それ天使の画集だ。きたのじゅんこのだよね』
『え、ええ、そうよ』
『いいよね、透明な瞳に、重さを感じさせない翼、本当に綺麗』
『うん、でも・・・』
『でも?』
私の何気ない質問に、、恵は『しまった』という顔を見せたけれど、答えてくれた。
『ずるいなって思う、その存在が、定義が』
『定義?』
『天使がそれにふさわしい行動や考えをしなかったら、それはもう、天使ではなく”堕天使”で、つまり』
何気なく、恵が眼鏡を外す。少し、目つきが悪くなる。その分、視線に熱がこもったような気がした。
『けして、天使が穢れないのではなくて、穢れてしまえば、天使ではなくなる、ということ』
明らかに私宛のイヤリング。掌に載せて、その重みを確かめる。
この天使の羽根は皮肉なのだろうか、最後まで手を汚すことが出来なかった私に対する。
それともこれは、隠し通すことを善しとしなかった、恵のプライドの象徴、まっすぐな情念。
私は確かに受け止める。
************************
夜、二人は抱き合う。互いに知り尽くした体。キスを愛撫を互いに繰り返しながら、服を脱がせていく。
私は期待に屹立しているそれに、あたりまえに口を近づける。根元のほうから先端に向かい、ゆっくりと
舐め上げていく。くびれの輪郭に沿い、舌を円周上に這わす、じらすように。更なる奉仕を期待する先端に
透明な液体が滲む。そっと舌の先で液をすくい上げると、恭ちゃんが小さくうめき声を上げる。
「明乃、俺、もう入れたい」
直接の要求に、私は仰向けになり、手を広げ、笑顔を見せて答える。
「来て、恭ちゃん」
遠慮なく、私の中に熱い塊を割り込ませる。私自身もまた熱く濡れ、抵抗も見せずにむしろ誘い込むように
彼のものを根元までくわえ込んでいく。
「明乃、入っちゃたよ、俺の」
「うん、一杯なの明乃のなか、恭ちゃんで」
はじめはやさしく、でも、じきに腰の動きは激しいものに変わる。まるで内臓ごとかき回さすように、
力強く私を突き上げる。子宮にまで届く快感。それは、そのまま全身へと拡散していく。
「うそぉ、やぁ、こわれちゃうよ」
熱い吐息を耳元に浴びせながら、私に聞く。
「奥まであたってるよ、気持ちいい?」
脳の中までしびれるような気持ちよさの中、私は夢中になってあえぐように言う。
「うん・・・もっと、もっと、して、明乃をおかしくして」
私は快楽に溺れる。ためらい無く爪を立て、恭ちゃんの背中に血を滲ませる。口と口だけのキスでは
足りずに、首筋に胸元に、私の印をつけていく。
「気持ちいいいよ、明乃、今日はなんだかすごく感じる」
「私もなの。おちんちん、すごい、あついの」
私もまた、彼の動きに合わせ、腰を回す。半ば無意識のうちに。
「俺、もう出ちゃうよ、このままだったら、明乃の中に・・・いいの?」
「・・・うん。出して。恭ちゃんの子供、もっと欲しいもん、だから、いっぱい出して・・・」
「あ――だすよ、ん!」
「あ、あ、あ――!」
どくっ、どくっ、どくん
夢中でしがみつく。足を彼の腰に絡め、精液を漏らさぬよう、すべて受け取るように腰をひきつける。
彼のうごめきを私の中で感じる。吐き出される精が受け止めきれず、溢れ出し、二人の間をさらに濡らす。
「すごい、こんなにいっぱい」
夢見ごこちで私は呟く。恭ちゃんはそんな私のことをあらためて、抱きしめてくれた。
***********************
「これ、跡ついちゃいそうだな」
私がつけたキスマークを指で触れながら恭ちゃんが言う。
「困る?」
「え・・・ていうか恥ずかしいかな」
「――そう」
予想した通りのはぐらかし方なのが嬉しいようで、つまらないようで、自分の気持ちをもてあます。
私は刻み付ける。恭ちゃんの体に唇で、爪で、直接、愛の言葉を。今度はなんて返してくれる?
女の子同士の内緒の交換日記のように、私は恵の返事を待ち焦がれる。
〜了〜
保守
───妹なんか、いないわ。
「や…やだ、私ったら寝ぼけてたみたい。まるで名雪みたいじゃない」
昨日遅くまで○○○○なんかしてたから。ああどうしよう…
「しょうがないわよ…ね。あの子と生活の時間帯が合わないんだもん。最近本当に会ってないし」
「忘れてたわけじゃないのよ。ええそうよ」
「ちょっと忘れてたけど」
「でも相沢くんたちにはフォロー入れとかなきゃ。どうしたら…」
ええっと…こういう時は座禅を組んで…ポクポクポク…
「足痺れた!」(ごろごろ)
んー。ええっと。うぬー。
「そうだ!」(パン!)
「あの子は虚弱体質に偏食薬漬けだし、アイスとか冷たいもんばっか食って下痢ばかりするし」
「しょっちゅうリ○カして血が足りないし、登校拒否に半分ひきこもりで日にあたらないし」
「だからいつも顔色最悪で知らない人が見たら末期重病患者一人ホ○ピス歩く死人なのよね」
「ええと、本当に生きてたわよ…ね(;・∀・)」
「命短い妹と向き合うことに耐えられなかった姉っ、彼の前で崩れ落ちる心の壁っ」
「これよ!これよ!」(ドンドンドン!)
「騒がしいぞ香里、またご近所から…」
「邪魔よ父さん、あっち行ってて!」
「うおっ」←出番終
「○×高校の深山雪見と呼ばれた、この私の演技力があれば、おっしゃあああああ!」(壁に向かってガッツポーズ)
「栞!栞!」
「なーにお姉ちゃん。呼んだ?(もぐもぐ)久しぶりだね」
「良かった生きてたか、わが妹よ」(はぐっ)
「なになになに?」(ポッ)
「また演技の練習をするの。手伝って」
「えー? また町ん中で変なセリフ叫んだりするんでしょ? もうやだ〜っ」
「そんなこと言う栞…嫌いです」
「あっ…私の決め…」
「とにかく聞きなさいってば(もぐもぐ)」
「わ、私のカールっ」
「だいたいね…んがんぐ…いつもこんなお菓子とかアイスばっかり…」
お菓子とかアイスとかお菓子とかアイスとかお菓子とかお菓子とかアイスとか。
「おいしいわよね」
「そうだよね」
「…(もぐもぐ)」
「…(もぐもぐもぐ)」
「…(もぐもぐもぐもぐ)」
「…(もぐ(中略)もぐ)」
くしゃくしゃっ
ぽいっ
「…とにかく体に悪いのよ。って、またご飯前に全部食べちゃったじゃないの!」
「しょうがないよ好きなんだから。お姉ちゃんだっていつも食べてるじゃん」
「偏食し過ぎなのよあんたは。だから体壊すの…ああこんな話は後でいいわっ」
・
・
・
「え〜?信じられない。そんなこと言っちゃったの〜?」
「ごめん。あはははっ」←結局白状した
「うーうー。いないなんてー。ひどいー」
「許せ。今度奢ってあげるから」
「百花屋?」
「おk」
「イチゴサンデーモンスタースペシャル?」
「あんたどうせまた残すでしょう?まあ私も一緒に食べるんだからいいけど」
「でもなあ…私ってただの登校拒否だし…学校行きたくないよ」
「言うこと聞かないと…もう…してあげないわよ」
「え…そっそんなあ…」(顔が赤くなる)
「どうするの? 今度から自分で…する?」
「う〜っ」(もじもじ)
「ほら…ね…」
「あっ…」
「いいでしょ? ね?」
「ああ…いやあ…」
「いやなの?やめていい?」
「やめ…ないで…」
<以下長くなりそうだから略>
──翌日昼休み中庭
「アイスクリームがいいです」
「寒くないのか?」
「ほら早く食べないとアイスがしたたっちゃう」
「したたっちゃうのか」
「本当は百花屋のイチゴサンデーモンスタースペシャル」
「あれ食べれるのかよ」
「大丈夫です。いつもお姉ちゃ…」
「お姉?」
「あ、おね、ええっと、おねはおね2とは違いますよ」
「そうだな。で?今確か、お姉ちゃんと…」
「お姉ちゃんぱんちっっっっっっ!」
どごぁっ!
「ぐはっ!」(ばたん)
「あ、お姉ちゃん」
「危ない危ない、だめじゃないの、私と仲が良いこと話しちゃ」
「ゆうどうじんもんだったんだよ」
「ど、こ、が!とりあえず彼は階段の踊り場へでも運んでおきましょう」
「いいの?」
「きっとやさしい先輩たちが介抱してくれるわ」
「ふうん、よくわかんないけどじゃあ百花屋」
「放課後ね」
「えー」
「えーじゃない」
「あー」
「あーじゃない」
「えあー」
「えあーはいい」
「いいんだ」
「どっかで切らないと、話」
「お、ここはどこだ?って、何で俺は弁当食べてるんだ?」
「…」(じー)
「ここは階段ですよー」
「あんたたち誰?」
「…」
「フラグが強制的に変わったって舞が言ってますねー」
「フラグ?」
「…」(顔が赤い)
「で、まだ続くのか?」(見ないふり)
「いえ、もう終わりだそうです、オチもないですから」
「そうか、ないのか」
「明日から昼休みはここですよー」
「…」(こくこく)
「よくわからないがそうしないといけない気がしてきたよ」
「痛っ、痛たたたたたっ」
「ほらー、だから腹壊すって言ったじゃないの、はい薬」
「ゲロピーだよお姉ちゃん…布団とトイレ往復だよ」
「ケロピーとどっちがいい?」
「ケロピーの方がいいよ!ケロピーの方がいいよ!」
「でもこれでまたご飯食べられないのよね。そりゃ太らないし顔色悪くなるわ」
「ダイエットにいいよ」
「…」
「今ちょっと考えましたね」
「別に」(目がうつろ)
「学校行かなくてもいいんだよ」
「どうせ行ってないじゃないの、私が母さんから怒られるんだけど」
「痛たたたた、今度はもう少し小さいのにする」
「懲りないわね…まあいいわ、母さんにはうまく言っておくから」
「えへへへ、お姉ちゃんありがと」
「で、私は結局フォローできたのでしょうか?」
おわり
>>109 GJ!
明乃の話から流し読みしてたんで、最初可憐と珠美の話かと思った。
以前に、最萌支援で投下したものの、加筆修正版です。
ちと蛇足気味かもしれませんが、よろしかったら。
『鎖』 綾之部珠美SS〜それから〜
あれから5年、『好きこそものの・・・』じゃないが俺は映画評や、その
周辺よろず請負のライターになっていた。
今日は、原稿の受け渡しのために喫茶店にきたところ。
「ありゃ、待たせたか――あぁ、私はレスカで」
約束の相手がきた。珠美だ。高校在学中の頃から、映画情報系の編集
部にバイト半分に出入りしていて、見事、編集部員となった。映画への
情熱は俺より勝ってると思う。
「あぁ、ちょっとだけ、でも、他のとこの原稿やってたから。じゃ、これな」
俺はテーブルの上に封筒を置く――手渡しではなく。珠美もいつものこと
と、それを手にして、原稿のチェックを始める。
「・・・なぁ、可憐、元気か」
「うん。この間も、子供の顔見せにきとったよ。旦那は相変わらずいい人して
るようじゃな・・・ちはやちゃんは?」
「あぁ、大学のサークルとかで今、合宿行ってる、元気してるよ」
「そうか・・・」
あの事件以来、俺は女を抱けないでいた。珠美相手ですら、指さえ触れら
れない。それは多分、自分の中にも又、岸田のような獣がいるかもしれないと
いう恐れから――いわば奴の呪い。
原稿の確認を珠美は終え、丁寧に封筒にしまう。こちらに顔を向け、たずねる。
「そう言えば、連絡先が変わるかもって聞いたが、なんでさ?」
「あぁ、言ってなかったか。俺、アメリカ行くんだ、1年ぐらい。テーマは
ハリウッドで頑張る日本人の職人たちって奴でさ、ぎりぎりの滞在費と、すずめの
涙ぐらいの取材費を何とか援助してもらえることになってさ」
「ふーん、よかったじゃないか、それじゃ」
ストローをかみながら、こちらに向かって笑って見せ、言った。
「旅立ちの記念に日本の女でも抱いていくかの?」
ホテルで珠美の後にシャワーを浴びる。夢みたいだ、とは言わない。ただ、現実
とも思えない、風景。
なんとなく、シャツとパンツを着なおして、浴室を出る。
「あれ、また、パンツはいてきたのか。二度手間なんだから、脱いでくれば良かっ
たろうに。私も、もう脱ぐよ」
羽織っていたバスローブを、ためらいも無く脱ぎ捨てる。俺はしばし目を奪われる。
外回りの仕事も多いはずなのに、相変わらず、きめ細かい白い肌。普段は隠されて
いる箇所の、例えば、綺麗に上がった尻や、緩やかなくびれを見せる腰の辺は、さな
がら雪像を俺に思いださせた。
乳房はけして大きいわけじゃないが、それでも、俺を誘惑するには充分な形良い
ふくらみをみせる。
不意に珠美がこちらを向き直り、言う。
「どうした。手伝わなきゃ脱げない?」
「い、いや、自分で脱ぐよ」
期待のあまり、半勃ちになってる自分のを見られるのが恥ずかしく、背を向ける。
と、珠美はすばしっこく俺の前に回り込んでくる。
「なにゆえこちらを見ないのかの。ふふん、臨戦態勢までには、後もう少し?」
股間を覗き込まれ、不甲斐なくも、羞恥のために身動きできない俺を尻目に、
珠美は中途半端な状態の俺のものをいきなり咥えると、そのまま吸い上げてきた。
所々に舌を絡ませてくる。カリに、中央の割れ目に丁寧に舌を這わせてくる。
ぞわぞわした感触が俺の背筋までも震わせる、もちろん快感で。
右手は逃げようとする俺の足にしっかりとしがみつき、左手は優しく、俺のフクロ
をもみほぐす。
たちまち、おれの肉棒は高まる欲望のままに形相を変えていく。珠美を容赦なく
貫ける形に。
「う・・・あ・・・珠美、こんなの、やり方知ってたんだ」
そうでなくても積極的な珠美に戸惑っていた俺は、思わず呟く。
珠美は俺の先端に軽くキスすると、あやしげに笑い、つと、俺から離れた。
それから、ベッドに寝転び、言った。
「処女だと思ってた?お生憎、初めてなんかじゃないさ。もしかして恭介は
まだだった?おいでよ、可愛がってあげる」
「え・・・」
俺の戸惑いに、小馬鹿にしたように片頬で笑いながら言う。
「どうしたの、私が怖い?――それとも女が怖いのかな?」
「――そんな訳あるかよ」
お笑い種だ。俺は多分信じてたんだ。珠美も同じ思いだと。異性とのセックス
どころか、わずかな触れあいすら――例えそれが戦友とのであっても―――恐れる
気持ちを共感できていたと。
「ねぇ、明かりは全部消して」
「あぁ」
「お願いだから、乱暴にしてよ。そのほうが感じるんだ」
「あぁ!」
――言われなくたって。頭の中が朱一色に染まる。胸への愛撫すらせずに、珠美の
両足首をつかみ、持ち上げ、V字に広げると、中への侵入を試みる。俺は怒りの
ためにか、欲望のためにかもわからずに、赤黒く、痛みを感じるほどに猛り狂う、
自分の分身を入り口にあてがい、予告も無く、一息に突っ込む。わずかな抵抗を感
じながら、当然か。さほど濡れてもいないところに無理に割り込んだのだから。
「くぅ・・・・・・」
くぐもった声が耳に届く。構わずに律動を続ける。徐々に珠美は濡れてくる。
頑なに感じられたそこが、俺の肉棒の形に馴染んでいくのがわかる。だが、それが
俺にはわずらわしい。俺を包み込み、時には締め付けてくる快感すら。
「――いいよ、もっとして、好きに動いて」
もっとか、いいさ、嫌というほどやってやる。射精の寸前まで突いてやるさ。
手を足首から放し、珠美を四つん這いにさせ、腰をつかむ。半ば破壊願望にとら
われながら突き上げる。
「・・・・・・そう、かき回して、私を中から壊して!」
「まだ、足りないのかよ、いやらしい女だな!じゃあ逃げるなよ。尻を突き出せ!」
「ん・・・うん」
さらに激しく、子宮の入り口を感じるほどにまで、さらに奥まで届くように、
肉棒を押し込む。ぐちゅぐちゅとぬかるみの音を闇に響かせてやる。
時折、珠美が痙攣するように震える。――さぁ、早く言えよ『もう、駄目』って、
『許して』って――珠美は言った。
「ねぇ、もっと、もっと私を・・・・・・」
喘ぐような声に、俺の黒い炎は煽られる。
バックで繋がったまま珠美を抱き上げる。珠美の太腿を抱え込む。それから、
俺は胡座をかき、珠美を揺すり、動かす、欲望の高まりに忠実に。昔、遊びすぎ
て壊した、おもちゃのように自分勝手に、上下に動かす。珠美の耳朶を舐りながら。
「あうっ!・・・んっ!・・・ん――!」
珠美がうめき声を上げる。
俺は更に支配欲を満たすために、強引に唇を奪おうと、顎に手を掛ける。指先に
頬が触れる。湿った感触、濡れてる・・・思わず、明かりのスイッチに手をのばす。
気配を感じ、珠美が叫ぶ。
「駄目だ!点けたりしたら!」
構わず、つける。珠美の泣き濡れた顔が照らされる。下を見ると、控えめながら
もシーツに赤いしみがあるのを見つける。
俺は体を放し、二人は向かい合わせで座り込む格好になる。両手で珠美の頬を
はさみ、こちらに顔を向けさせる。
「お前、慣れてるなんて、嘘ついて・・・・・・初めてだったのかよ」
困ったように、俺の手に自分の手を重ね、呟く。
「もう、ばれちゃったか。演技が下手だな私は――でも、良いだろ、続けてほしい」
何もできずにいる俺に、珠美が哀願する。
「怖気づいちゃったの?私なんか、もっと、痛くしていいんだ。私はもっと痛い思い
しなくちゃいけないんだ、お願いだから、恭介、ねぇ」
俺だけじゃなかったんだ。呪いを受けていたのは。鎖に縛られていたのは。
何も言わずに、俺は頬に口づける。それから、首筋に、少しとがった乳首に。珠美は
たまらず甘い息を漏らす。
「あ・・・ん、駄目だよ、私を感じさせたら。それじゃ罰にならない」
胸元への、耳元への、軽い口づけを続けながら、俺は言う。
「感じることがいけないなら、罪になるのなら、二人で落ちればいい、地獄でもどこでも」
俺の背に手をのばす。とても回しきれないが、それでも精一杯、しがみつく。俺の胸
に自分の顔を押し付ける。嗚咽が漏れる。
「ごめんなさい・・・罰を受ける気なんか、本当はなかったんだ・・・だって、処女を乱暴に
捨てる機会なんていくらでもあったはずなんだ・・・だけどできなかった・・・恭介以外の
人にされるのなんて、やだったんだ・・・」
懺悔の言葉。あの時に乗船していたみんなへの。俺もまた両腕を珠美の背に回し、
しっかりと抱きしめる。
「――俺もだよ。女を抱くのが怖かったんじゃないんだ。本当は、お前をこうして
抱きしめたかったんだ。それが怖かったんだ。傷つけてしまいそうで、壊してしま
いそうで」
やっと、俺たちは口付けを交わす――やさしく、柔らかな唇にそっと触れ合うだけの。
二人はそれから眠りについた。
鎖が解けたわけじゃない。それでも、その重さを互いに感じ取れた安堵から。
あれから二月経った今日、俺はちはやに見送られ、日本を発つ。珠美は外せない
仕事があるとかで空港には来られなかったけれど。
そっと、ジーンズのポケットに手を触れる。中には昨日珠美と見た映画の半券。
儚いようで、頼もしいような、絆の証。俺は少し微笑み、飛行機へと乗り込んだ。
席を探す。無論エコノミー。えーと、もう三つ前の席。あれ、先客か。そこ、俺の
席なのに。座ってるのは・・・この見慣れた、こちらに向かって笑いかけて、小さく手を
振ってる、ちんまい奴は・・・・・・え、夢?本物?
とりあえず確認。
バシン!
「あぅ、いたい。いきなり頭を叩くでない」
「こらっ、小猿は許可無く機内に入ってたら、怖いところに連れてかれるぞ」
「あのねぇ。まぁよい、隣に座りたまえ、遠慮せずともよい」
「・・・・・・てか、俺の席はそこだ」
「細かいこと、気にするでない。時に恭介、君によいニュースと、悪いニュースが
ある。まずは悪いニュースから」
「そこは普通、俺に選ばせるんじゃないのかっ!」
「実はだな・・・」
「無視かよ」
「おぬしのスポンサーになってた出版社、先日倒産したそうな、な、訳で君への援助は
そこからは一切、出ない」
「嘘っ!」
ベタながらも、俺は思わず叫ぶ。
「本当。で、いいニュース。色々あってだな、恭介の企画、うちの出版社が引き受ける
ことになった」
「まじっ?」
「まじ。んで、だな、とりあえずサポートしてこいと、一ヶ月ほど。若いのが、本場を
見てくるのもいい経験だろうとな、ほれ、切符もある」
俺に搭乗券を見せびらかす。
「やだ、雇用側の意見に逆らうでない」
「・・・・・・」
「あまり、経費は出なそうでな、通訳として役に立ってやってもよいぞ、伊達に字幕
無しの洋画のシャワー攻撃は受けておらん。住む所も・・・一緒のほうがいいかも、な。
あ、ほれ、けいひさくげんで」
顔を赤らめ、両手をパタパタさせる。――じゃあ、もしかして。
「お前、ここ一ヶ月ほど、やたらと忙しそうにしてたのって、俺のために、ずっと
動いてくれてたのか」
珠美は赤い顔のままで、俺から目をそらし、頬を人差し指で掻きながら言う。
「ん、まぁ、そんなとこ」
「昨日、お別れの日だってのに、変に元気で。シャワー浴びてる時も上機嫌で、
『Over the rainbow』歌ってたのも。ベッドで・・・」
慌てて、俺の口をふさぐ、珠美。
「わぁ、そんなディテールはいいから、と、ほらアナウンス、聞かなきゃ・・・」
アナウンスの流れる中、俺はぎゅっと自分の右手で、珠美の左手を握り締める。
「飛行機は苦手だったかの」
「違うって」
目を閉じる。右手に伝わる暖かさをより、感じるために。
「私はここにいるよ」
珠美が囁く。きっと、俺と同じように目を閉じている。飛行機が滑走を始める。
それにしても。
「あほらしいぐらいの、ハリウッドエンディングだな」
「おや、ロシア映画のほうが好みだったかの?」
「何だっていいさ、『俺たちに明日はある』んだから」
〜 fin 〜
118 :
111:2006/03/05(日) 08:37:56 ID:YF2y+exy0
どじった。
117の先頭 「あ、俺の隣の席。ってお前、通路側じゃん、席を返せ」
一行抜け かっこわる。
>>118 エロさに乙。
本編に詳しくないので内容の評価は出来ないが、
エロさは堪能しました。
保守
121 :
名無しさんだよもん:2006/03/22(水) 08:55:49 ID:BfAW6nZB0
test blank
香月ちはや支援SS『狂気の行方』投稿します
結論から言おう。
岸田は確かに死んだ。だが船内の空気は最悪だった、俺とちはやにとって。
殺ったのは――友則だ。
岸田が、丁度、弄ぶのに飽きた虫けらをひねりつぶすように、友則を殺
そうとして、逆にやられた、らしい。
とにかく俺たち皆が見たのは、血の海に沈む岸田を前に、自身も血塗れに
なってへらへら笑う友則だった。
それから、皆はめいめいに刃物を手にとり、岸田の死体を更に殺し続けて
いった。
生き返らないように呪詛をこめて、あるいは純粋に恨みを込めて、あるい
は、ここに居る者全てが共犯者となるために、皆は刃物を振るった。後で
友則が笑いながら言っていた。
『なぁ、あいつ、どこを一番刺されてたと思う?』
『さぁな』
『そこだけ見たら、女かと思うぐらいだったぜ』
ちはやは刺すことが出来なかった。直接、岸田に襲われなかったからかも
しれないし、たとえ、犯られていたにせよ、ちはやには無理な事だったの
かもしれない。
肉に刃が突き刺さる音に耐えられず、ちはやはロビーから逃げ出した。
俺はその後を追いかけた―――こうして俺とちはやは、共犯者にもなれ
ない卑怯者へと成り下がった。
少女達が泣き叫ぶのを、ただ黙って見ていた俺は卑怯者。そして友則は
英雄、所業は全て赦された。ちはやとの一件すら!処女を奪われたわけ
ではないのだから、いいのではないかと。
俺たち二人は船内で息を潜めるように暮らし、救援を待ち焦がれた。
漂流生活6日目の事。珠美考案の釣竿で俺は釣りをしていた。何かしら
食糧の足しになるように。そんな時、友則が声をかけてきた。
「恭介、ちはやちゃんが呼んでるぞ」
「え、どこだ」
「こっちだ」
友則の後をついて行く。そして、重い扉の前に立つ。
「ウインチルーム?何だってこんな所」
「お前の事驚かせたいみたいだぜ、開けてみろよ」
扉を開ける。薄暗い中、誰かが台の上に横たわっているのが見える。女、
下着姿で、まさか。
「ちはや!―――グァア!」
部屋に飛び込もうとした瞬間、後頭部を激痛が走った。
「どうだい、まさにサプライズだったろ」
友則の声が遠くに聞こえ、俺は意識を失った。
「起きろよ、おい!」
乱暴に脛を蹴られる。その脛の痛みと後頭部の鈍痛を感じながら、俺は目を開ける。
台の上には、下着姿で寝かせられた少女。
手は紐で縛られ、動けないようにされ、口にはガムテープ。
おびえきり、体を震わせる少女は俺を見ると、それでも、健気に必死に目で訴え
かけてきた。
――助けて・・・・・・おにいちゃん。
「ちはや!ん、何ぃ!?」
後ろ手を何か金具で固定されてる…手錠か?あげくに柱に通されていて、くそっ
……動けない。
思わずしゃがみこんだ俺を、満足げに友則が見下ろす。
「よぉ、おにいさま。お目覚めはいかが?俺はこれから、ちはやちゃんを女にさせて
もらうぜ」
友則はちはやに近寄り、気ぜわしげにベルトを外しながら、俺の方を向き言う。
「大体よ、お前ら生意気なんだよ、いつも寄り添ってこそこそしやがって、軽蔑
したような目で見やがってよ!聞けよ、恭介。今からこの女を犯す。たっぷり精液
を注ぎ込んでやる。よがり狂わせ服従させる。お前はその一部始終を見るんだ。
目を逸らしたりなんかするんじゃねぇぞ」
「おい、何言ってるかわかってんのか」
今度は、友則はちはやに言った。
「安心しろよ、痛いのなんて最初のうちだけだ、じきにしたくて、たまらなくなるぜ。
そうすりゃ、お前らも諦めるだろ、認めるだろ、この群れのリーダーは俺だと、オス
は俺一人なんだと!」
「……おい、お前、岸田にでもなったつもりか」
自分の言葉に酔いしれ、興奮する友則に、俺の声は届かない。トランクスを脱ぎ捨
て、怒張する男根を露にさせる。
「悦びさえ知ってしまえば、女なんて自然に強い男を選ぶんだよ」
無造作に口のガムテープを外す。
「いやぁ――――――っ!!!!」
ちはやの叫び声。満足げに、友則が口の端を持ち上げ、笑う。
「く、く、く、さぁ、契りを結ぼうぜ。立会人はお兄ちゃんだ」
「友則ぃ!!」
ガシ――ン、ガシッ!手錠と柱が打ち合う音が響く。
「悔しいか、悔しいか?壊してみるか、手錠をよ、緑色の化け物みたいに、ほら、
見ろよ、愛する妹の女の部分を」
友則がちはやのブラをめくり上げる。俺以外の異性には、ろくに見せたことが
ないはずの乳房が、薄汚い手で揉みほぐされる。舌で乳首を舐め上げられ、本人の
意思にかかわらず、いやらしく、乳首が尖りを見せていく。
「いやあ!おにいちゃん、おにいちゃんっ!」
こちらを向くちはや、涙顔で頬を赤らませる、羞恥からくるものだろう、わかっ
ているのに俺はそんなちはやの表情に色香を感じる。
「さぁ、いくらなんでも、こっちまでは恭介に見せたことねぇだろう。初のお披露目
だ。ちはやちゃんの処女の、未開通のおまんこだ!」
「やだ、お兄ちゃん。見ちゃ駄目!今の私のなんて、綺麗じゃないの!」
目をそらせない。いや、むしろ凝視してしまう。子供の時、ふざけてみせっこ
していた頃とは違う、大人になったちはやのそれ。俺が何度も妄想したそれと
同じように、控えめで柔らかそうな茂み。
その奥に潜む、男だったら誰でも引き寄せられずにはいられない、蜜壺。ほの
赤く、わずかに濡れ光るそれは、なんとも言えず、綺麗で卑猥で。
友則の頭の中も真っ白になっているのだろう。愛撫すら忘れ、挿入を試みる。
「やめろ、友則・・・」
怒りの中に欲情が混じる。股間を見れば俺のものも友則と同じように、いや、
それ以上に激しく主張しているのがわかる。
「くっそ―――!!」
さまざまな怒りの感情が混ざり合う。俺は叫び、ただ、あがく。
ガチャ、ガチャ、カチッ、カチッ―――あれ?手錠が・・・もしかして、外れる・・・俺の
表情の変化は友則に気付かれずにすんだ。今の奴の頭の中には自分自身をちはやに
突っ込むことしかない。
「畜生、ここだろ、ここでいいんだろ?動くなよ」
友則自身のあせり、ましてや相手が死ぬ気で抵抗しているのだ、そう、うまくいく
ものか。
「少しはおとなしくしろよ、終いには殴るぞ」
ガツンッ!
俺は今度は自分が後頭部を殴られ、気絶する友則に向かって言った。
「誰が、誰を殴るって?ほら、お返しするぜ、お前が気付かず使ってたおもちゃの手錠」
友則を台から落とすと、急いでちはやの縛めを解いてやる。
「お兄ちゃん、怖かったよぉ」
泣き声と共に胸に飛び込んでくる。俺は、布切れ一つまとわない、裸のちはやを
受け止める。ちはやは言う。
「怖かったよ。あのまま、襲われてたら、お兄ちゃんの前で・・・」
更にぎゅうっと抱きしめる腕に力を入れてくるちはや。Tシャツ一枚ごしの俺の肌に
ちはやの胸が感じられてしまうのに気付きもせずに。いや、もしかしたら逆に・・・・・・。
そして、ちはやは天使のような唇から、悪魔の言葉を俺の耳元で響かせた。
「ねぇ、お兄ちゃん・・・・・・私のことを抱いて」
「え?」
「あんな奴にやられるぐらいなら、私の処女を奪って」
「待てよ、ちはや」
「だって見たでしょ!このままでいたら私、又、襲われる。そしたら今度こそ」
そんなことは無いだろう、皆にも気をつけてくれるよう頼めばいいだけの話だ。
だが、ちはやは訴えを続ける。
「知ってた?私たち本当はきょうだいじゃないんだよ。血が繋がってないの。
入学の書類提出するとき戸籍を調べたんだ。だからね・・・」
「そんなこと・・・・・・」
嘘に決まっていた。俺もかつて戸籍を調べたことがあるのだから。ちはやも
恐らく同じようにしたのだろう。そして、俺と同じ眠れぬ夜を過ごしたのだろ
う。だから、俺は答える。
「――とっくに知ってたさ」
互いの嘘に騙されていく。
腕に巻きついた見えない鎖を絡めあい、二人は距離を近づけていく。
二人の唇が近づいていく。ライトなキスは、ほんの一時で、すぐに濃厚な
ものへと移っていった。互いが互いの舌を味わう。競い合うように、相手の
口中を探り合う。何年もの間、積み重ねてきた密かな、それでいて激しい思いを
二人はぶつけ合う。
「お兄ちゃんも脱いで」
もどかしげに俺は脱いでいく。すでに勃起しているので、ジーンズが引っ掛かる。
俺の裸を恥ずかしそうに、それでも目を逸らす事なく、見るちはや。そそり立つ
股間のものを見て息を呑む。
「すごい、大きくなってる、こんなになっちゃうの?」
「あぁ、ちはやの裸を見せ付けられてたから」
上に覆い被さり、抱きしめ、胸元にキスをする。
秘所を中指で探る。そこはすでに溢れるほどに、濡れ、熱い。
「ちはやだって、友則に触られて感じてたの?こんなに・・・」
うろたえながらも、俺に誤解されたくなくて、ちはやは必死に言う。
「違うもん、私だって、お兄ちゃんに見られてたから、ちはやの全部見られ
ちゃってたから・・・・・・」
「それだけで濡れちゃったんだ。エッチだな、ちはやは」
「でも、きっともっとエッチになっちゃう、お兄ちゃんがしてくれると思っ
ただけで、もう、私」
「かわいいよ」
欲望のままに、ちはやに入れてしまいたくなる気持ちを押さえ込む。
ちはやをもっと感じさせたい、乱れさせたいから。
壊れやすいガラス細工に触れるように慎重に、ちはやの太ももを両手で掬い上げ、
広げていく。案の定、拒まれる。
「やだ、足を広げたら見えちゃうよぉ」
「いいだろ、俺になら」
「・・・・・・」
答える代わりに、ちはやはわずかに太ももの力を緩める。俺はゆっくりと広げていく。
じらすように、本音を言えば、自身のはやる気持ちをなだめるために。
さっきと違い、間近でちはやの秘所を見る。
「あ、あ、見られちゃうの、お兄ちゃんに」
ちはやがきゅっと目を閉じる。
両手の親指で、割れ目を軽く広げる。それだけで、ちはやはビクリと体を震わせる。
「ここの尖ってる所が感じやすいんだろ?」
人差し指の腹でやわらかくさする。そこがますます熱を帯びる。
「あ!・・・・・・そんなのわからないもん」
「ほら、ちょっと触れるだけでピクってなってる。自分で触ったりもしてるんだろ」
「や、ん・・・触ったりなんて、して、な、い」
ちはやが陰唇を擦られるのにあわせ、身をくねらせる。
「嘘だよ。きっと、そのかわいい指でいじってたんだろ、クリトリスを、襞を。
自分で慰めてたんだろ、体の火照りを」
「意地悪なこと言っちゃ駄目・・・」
「――俺はしてたよ」
「え?」
「毎夜のように妄想の中でちはやとセックスしてた、いろんなやり方で。犯す
ようにしたこともある、それで、いつも一人で果ててた」
ちはやも俺の告白につられて言う。
「私も、一人でエッチなことしてた・・・お兄ちゃんのこと考えると、どうしようも
なくなって・・・だって、もう、子供のころとは違うもん、心も体も」
「本当だね、ちはやのここも、凄く襞がビラビラしててやらしくなってる」
「うぅ・・・・・・言っちゃ駄目ぇ」
俺は両手の指でちはやの襞を広げる。奥がうごめく。俺を求めて。
「ぐちょぐちょだよ、広げるだけで、汁が流れてきちゃってるよ」
「恥ずかしいのに・・・・・・」
軽く、指で秘所を愛撫しながら囁く。
「キスしちゃおうかな、ここに」
ちはやは額を汗でにじませ、息も荒くさせながら、それでも、半泣きの表情で言う。
「・・・汚いよぉそんなところ」
言われて、逆に欲望が高まっていく。
ちはやの弱々しい声に、俺は優しく太ももの辺にキスをしながら答える。
「見てるだけで我慢なんかできないよ、こんなにおいしそうなのに」
舌先が入り口の襞をなぞる。
「あ!ぅ――ん」
少し驚いたような声。
くちゅくちゅと音を立てて、舌を入り口にもぐりこませる。
「あ、あ、そんな、だ、め・・・・・・」
ちはやが俺の両肩に手をおき、うめくように言う。
「おいしいよ、ちはやのおまんこ、ほら、指も入っちゃうよ。もっと、とろけてく」
「ん、あーん、ん、ん、やだぁ感じちゃうの」
出し入れさせてみたり、中でくねらせてみたり、指の動きに思わずちはやは背を
のけぞらせる。
「指なんてだめぇ・・・・・・恥ずかしい」
「なめられるほうが好きなの?」
俺は再び口でちはやに奉仕する、夢中でちはやの秘所をむさぼる。舌で秘唇を広げる。
愛液を掬い取る。
「ん・・・あ、恥ずかしいのに・・・感じちゃうよぉ」
ちはやの手が俺の肩から離れ、俺の頭の上に置かれる。
俺は、敏感な尖りを口に含み、そっと吸い上げながら、舌で、尖りの中の敏感な
果実を刺激する。
「ひゃぅん!あぁ・・・・ん、だ、め、お兄ちゃんの前でこんな、声出ちゃって、
濡れちゃって・・・おかしくなっちゃって・・・」
言葉では抗いながらも、体は快感に支配され、ちはやは俺の頭を狂おしげに
撫ぜてくる。時折、体をピクン、ピクンと震わせながら。
「こ、ん、な・・・・・・や、じんじんしちゃうの・・・奥まで・・・お兄ちゃんに、こんなになっ
てるの・・・見られて・・・」
俺は顔を上げ、わざと耳元で囁くように言う。
「エロくてかわいいよ、ちはや」
「わたしだって、お兄ちゃんの・・・・・・したい」
目を潤ませながら、ちはやは俺の首筋に左手を巻きつける。
俺の胸元を右手の指でなぞり、かるく、乳首を刺激させる。思わず、体を震わせ、
吐息を漏らしてしまう。
そんな俺の反応を楽しみながら、更に下へと移っていく。その手をそっと抑える。
「嫌なの?私にされるの」
不安そうな顔で俺に尋ねる。俺は首を横に振って答える。
「違う。今そんなことされたら、それだけで出ちゃいそうだから」
ちはやは誘う目で、微笑みながら言った。
「うん、それなら・・・お兄ちゃん、もう、来て・・・ちはやの中に」
俺は台から降り、ちはやの膝を掴み、開かせる。
「あっ・・・・・・」
散々愛撫された後でも、恥ずかしげな戸惑いを見せ、声をあげるちはや。
俺はキスをしながら、ちはやの腰を持ち、自分の方に引き寄せる。
「ん・・・ん・・・あぁ、あたってる。お兄ちゃんの、かたいのが・・・」
「・・・早く入りたがってる、いい?」
これから始まるであろう痛みへの恐怖を押し殺すように、答える。
「うん、わたしも入れてほしいもん」
そう言って、ちはやは俺の両手首を掴んだ。
力の加減も分からぬまま、できる限り穏やかに俺は自分のものを、ちはやの中に潜り
込ませようとする。
先端にぬめりと熱さを感じる。俺の手に力が入り、ちはやの身体はこわばる。
「あ、おにいちゃん!」
結ばれるのを望むちはやの心。しかし、身体はそれに反し、健気にも処女を守ろ
うと、柔らかくも弾力を持って、抵抗してみせる。
そんなちはやの処女膜を、俺の敏感な先端が感じとる。
「ん・・・ん、ん・・・!」
息を止め、痛みに耐える顔。ちはやを本気で泣かせないように。いつもそれ
ばかり考えてた俺は、自分がちはやに苦しみを与えているという事実に、少し怯む。
「つらいか?ちはや、どうする」
目尻に涙を浮かべながら、それでも、ちはやは必死に首を横に振る。
俺の両腕を握り締める、俺の腕が爪で傷つくほどに強く。
そして、俺の目を見て、ちはやは言う。
「やだ、やめたら・・・・・・痛いけど。ずっと、夢見てたんだから、おにいちゃんと
こうなるの」
「・・・俺だって・・・わかった。しっかり、俺の事を捕まえてな」
「うん、離さない・・・」
痛いだろうに、ちはやは微笑んで見せる。俺にできるのは、多分、ためらわない事だけだ。
「いくぞ、くっ!」
押し返そうとする、ちはやの中の襞、純潔を奪おうとする俺を否定するように。
それでも、俺は、更に力を入れ、互いの腰をひきつける。
ちはやの手のひらの汗まで感じながらも。苦しげなちはやの眉根を見つめながらも。
本当に、ちはやを俺のものにしてしまうために。
「あ、お兄ちゃんはいってくる、ん・・・・・・!」
「ああ、俺も感じてる、ちはやを・・・全部入るよ・・・」
ちはやは痛みのあまり無意識にそらしていた背筋を懸命に戻し、こちらに向き、囁く。
手は俺の腕を掴んだままで。
「動いていいよ。もうちはや、お兄ちゃんのものなの、ちはやの中で気持ちよくなって・・・」
「じゃあ、動くよ、痛いかもしれないけど」
くちゅくちゅという湿った音と、二人の息づかいを感じながら、俺は腰を振り続ける。
最初は、ちはやを気遣いながら動かしていたはずだったのに、段々リズミカルな動きに
なっていく。膣の中のあまりの気持ちよさに負けて。
男根を包みこむ。伝わってくる脈動は破瓜の証なのだろうけれど、俺に確かな快感を伝える。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・ちはや、ちはや・・・愛してるよ・・・」
無意識のうちに、しっかり、ちはやの顔を俺の胸に押し付け、抱きしめる。ちはやが
動けないように、俺自身の欲望が果たせるように。
ちはやは懸命に、俺の背に手を回す。自分が痛みのために逃げてしまわぬように、健気に
自分の足を俺の足に絡ませてくる。
俺は自分の男根で、ちはやの膣を蹂躙しつづける。
「・・・くっ・・・あ・・・ちはや、俺止まらない、すげぇ、気持ちいい」
うわ言のような俺の呟き。
今にも、射精してしまいそうになる。
「いいの?気持ちいいんだ・・・お兄ちゃん」
艶やかに、そして優しく響く声、
俺は隠すことなどできず、ちはやに言う。
「・・・ん、俺を締め付けてくるよ、もう、出しちゃいそうだよ」
「うん・・・だして・・・中に欲しいの、お兄ちゃんの精液」
素直な、けれど、欲情の色を残したお願いの声に、抗う術などなかった。
「あ、出すよ、全部、ちはやの中に!」
ドビュ、ドクッ、ドクッ、ドクン!
「あ、来てる、一杯来ちゃうのぉ!」
「ちはや、すごい、俺の出てる、とまらないっ」
俺の精液が吐き出される。今までの思いとともに。ちはやの膣は俺のものを
放さない。すべて搾り尽くそうとするように、それでも。
「ちはや、俺、まだ、おさまらないよ、もっとしたい」
「私も、まだ、熱いの、もっと欲しいの。おちんちん・・・」
どれくらい経っただろう。
「・・・・・・う、いてえ」
友則の呻き声。俺は、仰向けになっていた自分の体を少し起こした。 見ると、
奴はぼんやりと目をこちらに向けている。口元をだらしなく緩めて。もしかしたら
自分がちはやとやってる気にでもなっているんだろうか。が、ふと友則は正気の
眼に戻り、そして、叫んだ。
「お、お前ら、何やってんだよ!」
ちはやが友則の方を見もせずに答える。
「見てわからない?」
友則がまた喚く。
「みんな呼んで来るぞ、お前らの変態振りを見せてやる!」
「好きにすれば」
ちはやは冷たく言い放つ。背を向けたまま。
俺にまたがり、自分の中に俺のものを出し入れさせる事の方が重要だとばかりに。
「あ、ん、お兄ちゃん、そんなに突き上げたら、ちはや、また、いっちゃう」
ちはやは尻を後方に突き出し、くねらせ、精液や淫汁でてからせている、
二人が繋がっている箇所をわざと友則に見せつけながら続ける。
「それでどうするの。お兄ちゃんのこんなに立派な、おちんちんとあなたの粗末な
ものを見比べてもらうの?」
友則ははっとして、丸出しになった自分の股間に目をやり、慌てて服を着る。
「ぐっ、勝手にしやがれ、このキチガイ兄妹」
憤怒に顔を灼熱させ、友則は飛び出していった。俺は立ち上がり、扉を閉め、
鍵を掛けようとして、手を止める。
「ちはや、行こうか」
「・・・もう、やめちゃうの、やっとよくなってきたのに」
「ああ、友則に報いを受けさせようと思ってね――ちはやを2度も襲った報いを
――大丈夫だよ」
ちはやの方へ腰をかがめ、そのおでこにそっとキスをして、囁く。
「大丈夫。続きはちゃんとしてあげるから」
ロビーに行くと、みんなが集まっていた。友則が呼んだのだろう。しかし、何をどう
話せばいいかわからず戸惑っているようだ。相変わらずパニックに弱い奴。友則や、
他のメンバーが俺たちに気付く。
「よぉ、全員いるみたいだな」
振り返る友則は、ほっとした表情を浮かべる、まるで援軍が来たかのような。笑わ
せてくれる。
「お、おまえらのことを言ってやろうと思ってたんだよ。な、何してたか、こいつら
はさっきまで、ウインチルームで・・・・・・」
俺は、友則の言葉をひったくり、言う。
「慰めていたんだよ、ちはやを」
「なぁ、みんな聞いたか、こいつら・・・・・・あれ?」
友則は皆のほうを振り返り、冷たい視線に気付き、こちらの方をを向く。
ちはやは目を真っ赤にして震えている。破けた服。自身をしっかり抱きしめて。
まるで強姦された後のように。
俺は、ちはやの両肩に後ろから手を置き、みんなの方に顔を上げ、ゆっくり言う。
「やってしまえば、こっちのものと思ったんだろうな」
「な、しょ、証拠は、あるのかよ・・・・・・」
友則の反論の声は小さい。半ば真実だから。
「ちはやは襲われても従わなかった、作戦失敗だ。先手必勝でどうにかみんなを
集めて、嘘で丸め込もうとしたんだろう。俺たちの立場が弱いのをいいことにな」
俺は優しくちはやの肩を抱き、みんなに宣言する。
「ちはやは今日から俺と同じ部屋だ――まだ怖がっているから。友則、荷物は
適当に出しとくから、後は自分でどうにかしろ」
ロビーのざわめき――友則を詰問する声――を背に俺たちは出て行く。
岸田よ、友則よ、教えてやろう。狂気は、剥き出しの刃と一緒で、いかに脅威的で
あれ、強力なものであれ、ただ、振り回しているのでは、いつかは破滅の道を歩む。
狂気は自らで操るものだ、そう、猫が自在に爪を出し入れするように。
俺はちはやの肩を抱いたまま、部屋に向かって歩いていく。そっとちはやが
俺の耳元に頬を寄せ、囁いた。
「今夜もいっぱい抱いてね、お兄ちゃん」
―― 終 ――
「おとーさん、おしごとやすんじゃだめだよ」
ぼくは、ふとんのなかからいった。
「どうして」
おとうさんは、だいどころからこたえた。
「おしごとやすむひとはえらくなれないんだよ」
って、ともだちがいってた。
「いいんだよ」
おとうさんは、ふとんのそばにきてわらった。
「ずうっと<ひらしゃいん>だよ。おとうさんかわいそうだよ」
「おとうさんはね、えらくなるより、おまえとちはやに会う方が幸せなんだよ」
おとうさんは、だいどころからリンゴをすってもってきてくれた。
「ほれ、あーん」
「じぶんでたべる」
「そっか、えらいな」
のどがいたかったけど、リンゴはつめたくておいしかった。
「じゃ、おとうさんはちはやをねせてくるから、恭介も少し寝なさい」
へやをでていくおとうさん。
「おとうさん」
「なんだい」
「おとうさんは、ぼくとちはやにあえたらしあわせなの?」
「そうだよ」
「ずっと?」
「ずっと」
「いっしょう?」
「いっしょう」
おとうさんは、いりぐちからもどってきて、ぼくのあたまをなでた。
「おとうさん、きょうはしごといかなきゃだめだよ」
ぼくはまた、かぜをひいてしまった。そのせいでおとうさんは、さいきんおやすみばっかり。
「これいじょうやすんだら、おとうさんクビになっちゃうよ」
そういっても、おとうさんはきかないんだけど。
「はいはい、わかったよ」
あれ?きょうはあっさりうなずいたぞ。そして、いえをでていくおとうさん。
ぼくは、おとうさんがしごとをやすまなくてうれしかったけど、
ちょっとさみしくなって、ふとんをかぶった。ちはやがおきたら、どうしよう。
ガチャ。
すこしたって、げんかんのとびらがひらいた。
なんだ、けっきょくおとうさん、もどってくるのか。
ぼくはがっかりしたようなうれしいようなきもちで、ふとんのなかでおとうさんをまった。
ぴたぴたと、スリッパのおとがこっちにくる。
「香月恭介くんだね」
「?」
へんなこえで、はなしかけられた。
ぼくはふとんからかおをだした。
そして、ふきだした。
おとうさんがたっていた。へんなぼうしをかぶって、へんなひげをつけてた。
「おとうさん、なにやってるの?」
「わたしは、おとうさんではない」
まじめなかおで、おとうさんはいった。
「わたしはアンクル・パピィ。お父さんの親友だ」
「仕事で手が離せないお父さんに、子供たちを頼まれたのだ。」
「でも、母さんとちはやには内緒だよ」
ぼくはわらった。
それから、びょうきのときにぼくのめんどうをみるのは、おとうさんでなくアンクル・パピィになった。
「・・うっ・・・うぇっ・・・ひっく・・・ひっ・・・ぐすっ・・うぁあ・・・」
ちはやは、まだないてる。ぼくは、なくのをやめてた。きょうは、おとうさんのおそうしき。
「ちはやちゃん、ほら、なみだふいて」
「う・・・うあああ・・・ぐっ・・」
「ほら、お菓子食べようよ」
「・・・ひっ・・ふ・・・」
<しんせき>のひとたちが、ちはやにこえをかける。
おかあさんは、どこかにいったっきり。おそうしきって、いそがしいんだ。
ちはやは、おとうさんが<れいきゅうしゃ>ではこばれて、
<かそうば>でもやされて、<ほね>になってもどってきても、まだないてた。
おかあさんは、いそがしい。ぼくは、おかあさんに、ようじをたのまれた。
もどってくると、ちはやがいない。
「おばさん?ちはやはどこ?」
「あら恭介ちゃん。ちはやちゃんはね、おそとの空気を吸いにいったわ」
ぼくはくつをはいてにわにおりた。
だれもいない。でも、ちはやがないてる。こえがきこえる。
こえのほうにいってみた。にわのすみっこで、きのかげで、ちはやがないてた。
「ああ、恭介くん。丁度よかった。ちはやちゃんを見ててくれないかな」
<しんせき>のおじさんがいった。ぼくはうなずいた。
「そっとしておいてあげれば、落ち着くと思うから。よろしくね」
おじさんはそういって、いえのなかにはいっていった。
めのまえで、ちはやがないてる。
ぼくは、なにかいおうとした。
「・・・すっ・・・おと・・さん・・・ぐっ・・・ぅっ・・・」
なにもいえなかった。
ちはやがさがしてるのは、ぼくじゃない。でも、なにかいわなきゃ。
「ちはや・・・」
「ぐすっ・・・と・・さ・・・い・・・そぅ・・・」
「ちはや?」
「おとさ・・・か・・・い・・・そ・・・ぐすっ・・・」
おとうさん、かわいそう。ちはやは、そういってないていた。
ぼくは、あたまがあっつくなった。
ぼくは、じぶんがかわいそうでないていた。
ちはやは、おとうさんがかわいそうでないていた。
だから、ぼくじゃだめだとおもった。
だから、はしってうちにはいった。ぼくじゃない、だれかになりたくて。
ぼくは、うちにはいると、おとうさんのへやにいった。
おとうさんのへやは、まだ、おとうさんのへやだった。
ぼくは、タンスをあけて、おとうさんのふくをとりだした。
おっきなせびろと、くろいぼうし。
ぶかぶかのせびろをきて、ぼうしをかぶって、ちはやのところにいった。
ちはやは、まだないていた。
「ちはや。」
ぼくは、こえをかけた。
「えぐっ・・・ぐすっ・・・」
ちはやは、まだないていた。
「ちはや。なくことはない」
「すんっ・・・?」
ちはやがかおをあげた。
「・・・おにいちゃん?」
「おにいちゃんじゃない。」
まじめなかおで、ぼくはつづけた。
「わたしは・・・」
なんっていえばいいんだろう。ぼくはまよった。
「・・・わたしはアンクル・パピィ。」
そして、ぼくしかしらない、もうひとりのかぞくのなまえをなのった。
アンクル・パピィは、ちはやにはなしかける。
「おとうさんに、たのまれてた・・・ていたのだ」
ちはやは、おとうさんっていったとき、すこしびくっとした。
「もしも、こどもたちが、おとうさんのためにないていたら」
ちはやがもういちどぼくをみた。
「おとうさんのために、なくことはないといってくれと。」
ちはやは、じっとみている。
「おまえが、おとうさんにあえてしあわせだったように」
ちはやがぶんっ、とくびをたてにふる。
「おとうさんは、おまえにあえてしあわせだったはず」
ちはやが、ちいさくうなずく。
「だから、かなしいことはない」
ちはやのめに、またなみだがたまる。
「じぶんのぶんをかなしいだら、おとうさんのぶんはなかなくていいんだよ」
ちはやはめをまるくひらく。そこからまた、なみだがおちる。
「いまは・・・もう・・・あえないけど」
ちはやがぼやける。めのまえが、ぼやっとなる。あっつい。
「おとう・・・さん・・・は・・・」
こえがでなくなる。ほほになにかがながれてる。ちはやがどんなかおをしてるのか、ぜんぜんみえない。
「おまえに・・・であえて・・・」
「いっしょう・・・ぶん・・・も・・・しあ・・しあわせ・・・だった・・・ん・・・だから」
まえをみてたのに、じめんがみえた。かおをあげたら、そらがみえた。
そらは、うみみたいになってて、おひさまが、みずのなかみたいに、ゆらゆらしてた。
とんっ。むねがあったくなる。かおをさげると、めのまえにちはやのかみのけ。
ぼくは、ちはやをぎゅっとした。ちはやは、ぼくにぎゅっとくっついた。
アンクル・パピィはなかなくていいっていったけど、ふたりで、ずっとないた。
「じゃあ,お母さんそろそろ出るわね」
「はーい」
「恭介、ちはやの事ちゃんとみてなさいよ」
「わかってるよ」
「なにかあれば私の携帯か、おばさんの家に電話しなさい」
「うん」
「ちはやは,恭介の言うこと聞くのよ」
「うんっ」
「じゃ、いってくるわ」
「「いってらっしゃーい」」
お父さんがしんでから、お母さんはいえにいないことがおおいです。
きょうは日よう日なのに、よるまでおしごと。
「あ、カギしめるからいいよ」
「ありがと、じゃあね」
「きをつけてね」
パタン、カチャリ、かぎをかけてちゃのまにもどる。
「いっちゃった」
こたつにはいって足をのばす。
「・・・なに?」
ちはやがじっとぼくをみている。
「いうこと」
「いうこと?」
「ちはやは、おにいちゃんのいうことをきくんだもん」
「いうこときくってのは・・・」
「えへへー。なんでもめいれいしてー。」
そういってにこーとわらう。
「あのね。いうこときくってのは,ちゅういしたらやめるっていみで
ぼくがちはやにめいれいするわけじゃないの」
「えー、つまんないのー」
なぜかほっぺたをふくらませるちはや。
こたつから足を出してうしろをむいた。
「だから、かってにどっかいったりしなければいいんだよ」
くるっとこちらをむくちはや。あれ、またうれしそうになってる。
「どっかいっちゃだめなんだ?」
「え?うん」
「じゃあ,どっかいっちゃだめっていって」
「なんで?」
「なんでもっ。いわないとどっかいっちゃうもん」
ちはやは立ってあるきだす。
「わかったよ。じゃあ、どっかいっちゃだめ。」
「うんっ」
くるっとふりむいて、とびついてきた。
「うわっ、なにすんだよ」
「どこにもいかないよー」
ぎゅうっとせなかにくっついて、ほっぺをぼくのくびにすりつけるちはや。
ぼくがふりむきかけると、ちはやはななめにおんぶするようにのっかってきて、
そのままコタツとぼくの間にわりこんだ。
ヒザの上で、ペトっとだきついてにこにこうれしそう。
なにかいおうとおもったけど、そのかおをみたらなにもいえなくなった。
うれしくなって、そのままずっと、ちはやをだっこしてすごした。
ちはやのたんじょう日がやってきた。
プレゼントは、おかあさんといっしょにえらんだ。
きれいなパスケースに、ちはやはとてもよろこんだ。
そのあと、ぼくのほうをみた。
「これはお母さんと恭介の二人からよ」
おかあさんがせつめいした。
ほんとうは、ぼくもないしょでプレゼントをかってた。
でも、おこづかいでかったプレゼントは、いかにもちゃっちくて、
それに、こっそりかってたから、おかあさんにわるくて、ぼくはうなずいた。
ちはやもうなずいた。すこし、さびしそうだった。
やっぱり、あとでわたそう。
さんにんだけのたんじょうパーティーがおわった。
ぼくはちはやのへやをたずねた。
コンコン。
へやをノックする。ドアをあけたちはやが、めをまるくした。
「おに・・・」
「おにいちゃんじゃない。アンクル・パピィだ」
ぼくは、おとうさんのせびろと、やまたかぼうをもちだしていた。
「よいこのちはやに、アンクルパピィからのプレゼントだよ」
そういって、ちはやのてに、てのひらくらいのつつみをわたした。
おみせでつつんでもらうのをわすれたので、こうこくがみでつつんだ。かっこわるい。
「たいしたものでなくてすまない。わたしもおかねがなくてね」
ちょっとなさけないアンクルパピィ。ちはやはつつみをあけた。
わたしたのは、ちっちゃなかみどめ。おねだん500円。
ちはやは、ぼくをみた。わらいそうになって、なきそうになって、けっきょく、わらった。
「ありがとう、えっと、あんくるぱぴー?」
はてなマークは、やめてほしい。
「アンクル・パピィは、いっつもどこにいるの?」
「どこにいても、ちはやをみまもっているよ」
「あははっ、せいぎのみかたみたーい」
「そうだな。ちはやのための、せいぎのみかた」
「ピンチのときは、たすけてくれる?」
「もちろん」
プレゼントをわたしたあとは、ちはやのへやで、しばらくアンクル・パピィをやった。
そのうちに、ねむくなったちはやをねかしつけて、タンスのへやにもどった。
「なにやってるのっ!」
こえがした。おかあさん。どうして、こわいこえ?
「こんなもの持ち出して・・・」
アンクル・パピィの、いや、おとうさんのせびろをつかむ。
「えっと、これは・・・」
「いいからさっさと脱ぎなさい!」
おかあさんは、なぜかおこってた。そして、なぜかすこしかわいそうだった。
アンクル・パピィがふくをぬいでぼくにもどると、
おかあさんはせびろをかかえてタンスにしまいなおした。
そのあいだ、おかあさんは、だまったままだった。
ぼくも、だまってそれをみていた。
おかあさんとぼくとちはやは、おとうさんのおはかまいりにでかけた。
お父さんのおはかは、でんしゃとバスをのりついだやまの上。
バスていからさかみちをのぼる。
もりのなかにぽっかりとあいた、うみのみえるおはか。
「おとーさん・・・」
ちはやがおはかにだきつく。
「ほら、お父さん綺麗にしてあげましょう。恭介、お水汲んできて」
「はーい」
三人でおはかにみずをかけて、おはなをあげて、
おせんこうをあげて、おかしをあげた。あげたおかしは、ぼくがたべた。
「じゃあ、もどりましょう」
「・・・・」
ちはやは、おはかのまえからうごかない。
「ほら、このあと事務所に寄らないといけないから、バスの時間に遅れちゃうわ」
おはかの<かんりじむしょ>はさかをおりたバスていのとこ。
「・・・やだぁ」
いつまでもここにいられるわけじゃないけど、ぼくももうすこしお父さんといたかった。
「おかあさん、さきにじむしょにいって。ぼくとちはやはあとからおりるから」
おかあさんは、すこしまよったけど、おはかにくっついてうごかないちはやをみてうなずいた。
「わかったわ、30分くらいで終わるから、事務所の入り口でまってなさいね」
おかあさんは、かけあしでおはかからはなれた。
それからしばらく、ぼくとちはやは、お父さんのところにいた。
「ちはや、もうもどらなきゃ」
「・・・」
「・・・おとーさんには、またあいにこようよ」
「・・・うん」
はんぶんなきべそかきながら、ちはやはうなずいた。
「おそくなっちゃったな、おかあさんまってるな」
たしかじむしょは、こっちのさかをおりたところだから…
「まっすぐいけば、ちかいよね」
おはかのわきに、やまのなかにおりるみちがあった。
きっと、ここはじむしょへのちかみちだ。
「こっちいこう、ちはや」
ちはやは、すなおについてきた。
いつだって、ちはやがぼくのいうことをきかなかったことはない。
ふたりで、やまみちをおりた。じめじめして、あるきにくい。
「ちはや、ぼくにつかまって」
べとっ。
「だきつくんじゃないの、てをつなぐの」
ぎゅう。
おもいっきり、てをにぎられた。
なんだかみちがほそくなってきて、ふあんになってきた。
「おにいちゃん、あれ」
ちはやがなにかをみつけた。
「おはな、きれい」
みちから、すこしはなれたところ、もりがひらけて、
すこしあかるいところに、はながたくさんさいていた。
とっとこと、ちはやがはなのほうにかけよる。
「あぶないよ」
ぼくはあわてておいかけて、ちはやをだっこした。
はなは、ちいさながけの上にさいていた。だからひあたりがいいんだ。
「ふさふさ〜」
ちかくでみると、ちっちゃなはながいっぱいあつまって、
なんだかふわふわした、ちはやのかみのけみたいなはなだった。
ふと、ぼくはおもった。
「おとうさんにもみせてあげようか?」
ちはやも、おなじことをかんがえてた。
「うんっ」
そうして、ぼくたちはおはかにもどった。
もどったらおかあさんがまってて、ものすごくおこられた。
おこられながら、ちはやがこっそり、おはかにおはなをそなえた。
ぼくは、おちゃのまで、ちはやとおるすばんしていた。
テレビがおわったあとで、ちはやがいった。
「ねえねえおにいちゃん」
「なんだ?」
「もうすぐクリスマスだよね」
「そうだね」
ちょっとはずかしそうに、ちはやがななめしたをむく。
「どしたの?」
「あの・・・さ・・・くるかなあ・・・アンクル・パピィ」
「ぶほっっ!」
おちゃをふきだしてちはやを見ると、えへへわらいをしてる。
ちはやのあの目は、おねだりの目。ちょっとはずかしがってる赤いほっぺ。
「・・・」
「・・・」
あのあと、お母さんにおこられたんだよな。
そうおもってだまってたら、ちはやはそのまますこし下をむいた。
「いそがしいから、こないのかな・・・」
さびしそうなこえをきいた。ぼくはとっさにこたえた。
「くるよ。ぜったい。」
「!」
ぱっとあかるくなるちはやの目。
「ありがとうおにいちゃんっ!」
とびだしそうなえがお。よかった。
でもさ、そこでぼくにおれいをいうのは、へんなんだぞちはや。わかってる?
さて、どうしよう。
きょうはクリスマス。タンスのまえで、ぼくはこまっていた。
プレゼントもかって、いざアンクル・パピィになろうとおもったら、
たんじょう日のときにきた、お父さんのせびろとぼうしが、どこかにしまわれていた。
せびろとぼうしだけじゃなく、お父さんのふくが、ほとんどなくなっていた。
お母さん、お父さんのふくどっかにやっちゃったんだ。
でも、あれがないとアンクルパピィになれない。
とりあえず、タンスのひきだしをかたっぱしからあけてみた。
ひきだしは、上からじゅんばんに、お母さんのだん、ぼくのだん、ちはやのだん。
ちはやのだんの下のだん、あまりつかわないふくがはいってるところ、
そのいちばんおくに、まるめられたあかいものがはいっていた。
なんだろこれ、ひっぱりだしてひろげてみた。
「・・・おとーさんサンタさん」
お父さんが、サンタさんにへんそうするときのふくだ。
クリスマスはいつも、これをきてサンタさんになっていた。
なつかしくなった。これがいいかな。
あたまからかぶってみた。うわ、だぶだぶだ。
あるいてみようとして、ふと、かがみにうつったじぶんがみえた。
ぼくがふくをきてるっていうより、ふくのなかにぼくがいる。
ぼくはじぶんが、すごくたよりなくて、かっこわるくみえた。
こんなんじゃ、ちはやにみせられない。
ぼくはへやからはさみをもってきた。ながいすそを、はさみできってみる。
ちょっきん。なんか、ながさがあわない。ちょっきん。
ふとすぎる。きってテープでとめたらほそくなるよね。ちょっきん。
あながあいちゃった。ガムテープ、どこだっけ・・・
そでとか、どうとか、みじかくしようとおもって、いろいろきっているうちに、
サンタのふくは、ぼろぼろになってしまった。
こまったな。どうしよう。
とりあえずふくをしまおうとおもったとき、へやのとがあいた。
「おにーちゃん、なにやってるの?」
「あ、ち、ちはやっ!?」
ぐずぐずしてるうちに、ちはやがおきてしまったみたい。
ぼくはあわててサンタのふくをかくそうとしたけど、おそかった。
「え?」
ちはやが、めをまんまるにして、ぼくのほうをみる。
「あー、えーと、これは・・・」
「おとーさんっ!」
ちはやは、ぼくじゃなくて、サンタのふくにだきついた。
そのままなきだす。
ぼくはどうしたらいいかわからない。
ちはやがないたことはたくさんあったけど、ぼくがちはやをなかせたことはなかったから。
「あさからどうしたの?」
なきごえをききつけて、お母さんがやってきた。
「なにこれ?恭介、なにをして・・・」
お母さんのことばも、とちゅうでとまった。
お母さんもサンタのふくをみた。
そして、お母さんは、いつかとおなじ、こわくてかわいそうなかおをした。
お母さんは、ちはやからサンタのふくをとりあげた。
「やだっ!」
ちはやは、ふくにしがみついた。
「はなしなさいっ!」
お母さんがおこった。お母さんもちょっとないてるみたい。
「みつからないと思ったら、あなたが隠してたのね」
ぼくでもお母さんでもなければ、こたえはひとり。
サンタのふくは、ちはやがじぶんでかくしてたんだ。
たぶん、お父さんのみがわりに。
「うあああああっ!」
ふくをとりあげられたちはやは、すごいこえでなきながら、いっかいにおりていった。
ぼくは、おいかけられなかった。
サンタのふくをとりあげたお母さんは、
ふくがボロボロなのにきがついて、へんなかおをする。
へやにちらばったふくのきれはし。
「恭介?まったく、なにやってるの」
お母さんは、きれはしをあつめて、ふくといっしょにデパートのふくろにいれた。
すてるのかな?でも、お母さんはふくろをタンスの上にあげた。
もしかしたら、せびろとかもそこにおいてるのかもしれない。と、おもった。
ガタン!
そのとき、げんかんのとびらがとじるとおとがした。
「え?」
「誰?」
お母さんと二人で下におりる。げんかんに、ちはやのくつがない。
「ちはや!?」
そとにでたら、ちはやはもういなかった。
ちはやは、そういえば、かくれんぼがうまかった。
ぼくとお母さんは、いちじかんいじょういえのまわりをさがしたけど、みつからなかった。
「寒いから、家に入ってなさい。おかあさんはもう少し探すわ」
「さむくないよ。きっと、ちはやのほうが、さむいよ」
「そうね・・・じゃあ、一度家に戻って、上着をもってきましょ」
「・・・うん」
ちはやは、どこにいったろう。
きんじょにいないとすると、となりのまちに出たんだろうか。
ちはやがいつもかけているパスケースには、Suicaとバスカードがはいってる。
でも、ちはやがひとりでいくところ、いけるところなんて…
あ。
「おかあさん!」
「えっ?ちはやいた!?」
「ううん、でも、もしかしたら…」
お母さんとぼくは、あつぎをしていえをでた。
もしちはやがもどったときのために、となりのおばさんに、いえにいてもらうことにした。
むかいのおばさんも、うらのおじさんも、いえのまわりをさがしてくれるって。
ぼくたちは、えきにむかった。
お母さんが、えきいんさんに、ちはやのしゃしんをみせた。
「自働改札ですから、ちょっとわからないですね…」
けいびいんさんに、おなじことをきいた。
「あ、二時間くらい前に、これくらいの子が一人で改札を通ったかも知れません。
親御さんと待ち合わせかと思ってたんですが…」
「ありがとうございますっ」
ここででんしゃにのれば、おそらくいきさきは、お父さんのところ。
バスていでは、ちはやがきたかどうかわからなかったけど、
とにかくぼくとおかあさんは、バスでお父さんのおはかにむかった。
お父さんのおはか。そこには、おはなのかわりに、ちっちゃなくさがそえてあった。
まちがいない。ちはやはここにきた。
じゃあ、どこにいるんだろ。
「ちはや〜」
「ちはや〜」
ぼくとお母さんは、手わけしておはかのまわりをさがした。でも、いなかった。
かえったのかな。でも、くるとちゅうにあわなかったし・・・
きゅうに、なつにおはかまいりしたときのことをおもいだした。
たしか、ちかみちしようとしてやまのなかで、おはなをみつけた。
あそこにいったんだろうか。
いまはふゆだから、はななんてさいてるわけないのに。
でも、山におりるみちには、ちはやの足あとがあった。
そして、
「・・・ぐすっ・・・ひっ・・・くっ・・・」
下のほうから、ちいさなこえがきこえた。
「ちはやっ!」
ぼくは、かけだした。
お母さんにこえをかけるのも、わすれた。
ぼくは、やまみちを、こえがするほうにはしった。
山のなかは、なつよりもじめじめして、はしりにくかった。
かすかなこえ、ないている。
みみをすまして、おいかけた。
「恭介!どこ!あぶないわよ!ちはや!いるの!」
うるさいなあ。ちはやのこえがきこえないよ。
そして、ちいさながけにでた。
なつにきたとき、はながさいてたところ。
もちろん、はななんてひとっつもさいてない。
がけの下。すこしとおくに、ちはやがたってた。
「すんっ・・・ぐすっ・・・」
ないてる。なぜか、うしろにあとずさってきている。
グルルルルル
うなりごえがきこえた。ちはやのまえに、おっきないぬがいた。
<<野犬出没注意>>
やけんしゅつぼつちゅうい。のらいぬにきをつけましょう。
おはかのいりぐちに、たってたかんばん。おかあさんによんでもらった。
「のらいぬにあったら、おっきなこえで叫びなさい。走っちゃだめよ」
いぬなんておくびょうだ。
おっきなこえをだせば、びっくりしてにげていく。
でも、ちはやのほうがにげだした。せなかをむけて、はしって。
いぬがガウワゥとほえて、ちはやをおいかけだした。
ぼくは、がけをすべりおりた。おしりがいたい。
下におりるまでに、2かいころんだ。
「ちはやっ!」
「おにいちゃん!?」
ちはやがたちどまった。のらいぬがとびかかった。
ぼくは、ちはやといぬのあいだにはいった。
がんっ!
めのまえに火ばながとんだ。
そのまま、ひだりのうでに、かみつかれた。いたい。
そのまま、ぼくはたおれた。めのまえに、いぬのかお。こわい。
けど、ちはやがみえた。なみだめを、まるくして。
だから、ぼくは、まけなかった。
「うわあああああっっ!!」
ぼくは、からだをおこした。よこから、いぬをたたいた。
ぼよん、と、あまりかたくないてごたえ。
うでにかみついたくちをつかんで、ひきはなす、はなれない。うでがあつい。
「わあああああああああああああああ!」
おっきなこえがした。
がんっ!
なにかが、いぬのあたまをたたいた。
かたいおとがした。石だ。ちはやが、石でいぬをたたいた。
ギャン!
いぬがひるむ。ぼくは、石をつかんで、ふりあげて、
「うわあっ!」
たたきおとした。
がきっと、すごくかたいてごたえ。
もういちど。
ごきっと、なにかがこわれるおとがした。
いぬが、うでをはなした。よろっと、ぼくはからはなれる。
きゅうにうでがいたくなって、ぼくはよろけた。
でも、こんどはちはやが、石をりょうてでつかんで、いぬをたたいた。
がちん。
ぼくのてのそばにも、おっきな石があった。ひろって、いぬをたたいた。
ぐちゃ。がちん。ぼこっ。ばきっ。
なんだか、とちゅうでてごたえがなくなった。
なまあたたかいものが、ぼくのかおにかかった。
ちはやのかおにも、あかいのとか、くろいのとかついている。
うでをふりあげると、ひだりうでがいたかった。まっかになってる。
でも、ふたりともやめなかった。
ぼくはむちゅうで、ちはやのてきをたたいた。
ちはやもむちゅうで、ぼくのてきをたたいた。
きがつくと、てきはぐったりして、よこむきにたおれてた。
それで、ようやく、ぼくとちはやはたたくのをやめた。
ふたりとも、かたでいきをした。
ちはやが、ぼくのケガにきづいて、びっくりした。
「おにいちゃん!うでっ!」
「へーきだよ。いたくない」
いたくないのはウソだけど、へーきなのはホント。
「よかった…」
ちはやは、ほっとしたみたい。
「ちはや、かおまっかっか」
ちはやのかおには、いぬのちか、ぼくのちかが、べったりついていた。
「おにいちゃんもまっかだよ」
ぼくはじぶんのからだをみた。あちこちに、あかいものと、なにかネトっとしたものがついてる。
「あかいおはな。サンタさん」
はながあかいのはサンタじゃなくてトナカイ。
「サンタさん、たすけてくれてありがとう」
でも、それよりもいいことがある。
「サンタじゃないよ」
「?」
「アンクル・パピィ」
「ピンチのときにちはやをたすけるのは、アンクル・パピィだよ」
たんじょう日のはなしを、ちはやはおぼえてるかな?
「・・・うん、・・・せいぎのみかた、だもんね・・・」
おぼえてた。
「ありがとう、アンクル・パピィ」
ちはやはべたっとだきついた。おたがい、ちのついたほほを、すりよせた。
「恭介っ!ちはやっ!」
がさがさと足おとがした。お母さんが、はしってきた。
「だいじょう・・・っ!」
ちかくにきて、いっしゅん、ぴたっととまる。
ぼくとちはやをみて、びっくりしたみたい。あわててかけよる。
「だ、だいじょうぶ!ケガ!いたくない!?」
あわててぼくとちはやをだきよせる。
「だいじょうぶだよ。」
「でも、その血まみれで・・・」
「これは、いぬのちだよ」
「犬?」
「ほら」
ぼくは、あしもとにころがるぐったりしたものをゆびさした。
いぬだったかな。なんだか、あたまのあたりがボコボコへこんで、へんなかたち。
めんたまがなくなって、くちから、はがボロボロこぼれてる。
お母さんは、いきをのんだ。
「あたしとおにいちゃ・・・アンクルハ・゚ピィ・・・おにいちゃんでやっつけたんだよ」
ちはやはうれしそう。ぼくもにこにこ。
お母さんは、ホラーえいがをみるときのめで、ちはやとぼくをみた。
そのあと、ぼくのうでのけがにきづいて、あわててハンカチをだした。
かえりみち、お母さんは、なんだかきもちわるそうだった。
けど、ぼくとちはやはきにしなかった。
ぼくは、ちはやといっしょならしあわせだから。
ちはやは、ぼくといっしょならしあわせだから。
もしもこのよに、ふたりぼっちでも。
鎖・綾之部可憐支援SS『好きに届くまで』 投下させていただきます
ガッ、ガッ、ガッ、ガッ
土煙を舞い上げながら、青年が爆走する。ひたすらに。
運転手の篠崎さんに頼んで、日舞の先生のところまで送ってもらっている途
中。香月君がなんだかがむしゃらに走っているのを見かけた。妙に気になり、
篠崎さんに車を止めてもらい、車の窓から声を掛けてみる。
「あの、どうしたの?」
こちらのほうを向く。額にはすごい汗、前髪が張り付くぐらいの。
「あ、クラスメートの、と、わりい!車で送って欲しいところがあるんだけど」
運転席を見ると、案の定、不審気な視線を香月君に送っている。わたしも
何事かと思ったけれど。
「いいわ、乗って」
とにかく真剣な顔だったから。
「恩に着る!」
慌ただしく乗り込みながら、香月君が叫ぶ。
「すいません、運転手さん、県立病院まで、至急で!」
・・・・・・キキ―――ッ
「着きましたよ」
「ありがとう!」
着くや否や、とんでもない勢いで病院に飛び込んでいく。わたしも成り行きで
後を追う。受付のテーブルに噛り付かんかの形相で香月君は走り寄る。
「あ、えと、友則!友則じゃわかんねえか、あの、ここに早間友則が運び込まれてる
んです。事故とかで。今日、会う約束してて、そしたら事故ってここにいるとかで。
えーと、あいつの血液型はわかんないけど、俺の血でよかったら使ってください!
前、400ccで全然平気だったから、多分2リットルぐらい抜いても大丈夫です!」
そんな、無茶な。多分、受付のお姉さんも同じ気持ちだっただろう。
とにかく、香月君の勢いはすごく、誰も口をはさめない。と、その時。
ビシッ。
香月君の後頭部をチョップしたのは・・・早間君?
「恭介、何やってんだよ」
「わぁっ!友則ぃ、なんでここにいるんだよ!」
「それは・・・俺が言いたい」
早間君は、どう見ても怪我をしているようには見えない。服すら綺麗なものだ。
「俺のバイクに乗ってた内田が目の前でこけやがってさ、付き添いで来てただけ
だよ。奴は足の骨折ってたけど、元気なもんだ」
「あ、そうだったんだ」
へなへなとその場に座り込む香月君に、早間君が上から声を掛ける。
「お袋に伝言頼んどいたんだけどよ、ちゃんと伝わってなかったか、それとも、
お前の早合点か」
「多分、両方」
腰を曲げて、早間君が香月君の顔を覗き込む。
「なんか汗だくだな。まさか、家から走ってきたのか」
「いや、途中で車に乗せてもらったんだよ。クラスメートの」
こちらのほうに頭を向けて、続ける。
「綾小路さんに」
綾之部だよ!私は心の中でつっこんだ。
それにしても・・・私はさっきまでの出来事を思い出す。一生懸命だったな、香月君。
あんなに必死になってたのは早間君が親友だから、なのかな。
とある日曜日。ピクニックに出かけた。珠美と明乃さんと恵さんと香月君とで。
本当にたまたま、流れで。珠美も誘われた。恵さんが言ったから。
『妹さんもご一緒にどうぞ。こちらの大変妹思いのお兄さんも連れてこられるそうだし』
『しょうがないだろ。ちはやがうるさいんだよ』
ふてくされたように香月君が言う。私が今まで見たことの無かった表情で。
原っぱでお弁当。早間君は『飲まねえの?じゃパス』だったそうだけど。ノンアル
コールだって充分楽しい。あ、また。ちはやちゃんと目が合う。私だけじゃなく、恵
さんも、明乃さんも、見比べてるような。やっぱり気になるんだろうか。お兄ちゃんの
女のお友達――もしかしたらお友達以上?って。
でもね。私はチェックの必要ないんじゃないかな。
明乃さんみたいに幼馴染じゃないし、恵さんみたいにウマがあう感じでもないし。
珠美みたいに人懐っこく、趣味が合う訳でもないんだから。
私はただのクラスメートなんだから。
あ、れ。何か胸が痛む。何ダメージ受けてるんだろ、自分の言葉に。
「姉ちゃん。私ら一寸厠へと急ぎたいでの、先に行く」
「ん、わかった」
帰路。珠美が、早々に仲良くなった明乃さんと恵さんと連れ立って、先に下りて
いく。私は何となくゆっくり降りていく。
前に香月君とちはやちゃんがいた。
「―――私、一寸このお花をね」
「じゃ、行ってるぞ」
香月君が先に歩いていく。私は声を掛ける。
「どうしたの。香月君行っちゃたけど」
「ちょっと、このお花見てて・・・お先にどうぞ」
行きかけて、振り返る。足を気にしてる、もしかして。
「靴擦れ?ちょっと見せてみて。簡単な応急処置ぐらいならできるから」
「え、いいです。大丈夫です。」
「あぁ、ほら、靴脱いで、遠慮しないで、えーと、消毒とガーゼと・・・」
「・・・私、新しい靴履いてきちゃって、言ったら、お兄ちゃんに怒られそうで」
「うん、でも、履きたくなる気持ちもわかるわ」
二人でしゃがみ、治療をしていると。
「ちはや!どうした!」
香月君が大声で、駆け寄ってきた。
「うわっ!」
私の声。
「・・・・・・あ」
ちはやちゃんの声。
カコ―――ン カサ カサ コ――ン
崖を落ちていく、ちはやちゃんの靴の音。
「・・・・・・俺、やっちゃった?」
沈黙が、そのまま、肯定を意味して。
「・・・・・・わかった、それじゃあ」
香月君は自分のリュックを下ろし、右手に持ち替え、しゃがみながら言った。
「ほれ、背中貸してやる、おぶされ」
戸惑っているちはやちゃんに香月君が重ねて言う。
「こんな道、裸足で歩かせるわけにはいかないだろうが」
「お兄ちゃん、またシスコンって言われちゃうよ」
「今更だよ」
ちはやちゃんと荷物で流石に重そうな香月君に声を掛ける。
「リュック持つわ」
「いや、悪いよ」
「それこそ今更よ。渡して」
「ありがとう、じゃ、これ」
荷物を持ち、二人の後について歩く。振り返らずに、香月君が言う。
「友則の時といい、また、迷惑かけたね、綾小路さん」
だからさぁ、私は綾之部だってば!
二人の背中を見ながら、思う。
なんだかんだ言って、とっても優しいのは、大事な妹さんだから?
それが私だったら香月君は同じことはしてくれないのかな・・・何で私はそんな事を
考えているんだろう。
帰りのHR。みんながすっかり放課後気分で浮かれる中、担任の先生が言った。
「あー、それと誰か悪いけど、後で一仕事してくれないか」
嘘のように教室が静まり返った。
結局、『目があったから、お前ら二人』なんていう、つまらない理由でプリント
の整理をまかせられた。私と香月君で・・・・・・こっちはつまらなくないかな。
「で、これを次のに挟んどけばいいのかな」
「うわっ、丁寧な仕事してんな。こんなのこうでいいだろ、で、終わりっと」
「ん、ま、いいよね」
てきぱきと言うか、適当というか、とにかく香月君の働きで仕事が早くに終わる。
ちょっと残念なような・・・。私は椅子に座り、教科書やノートをバッグに入れる。
香月君は、中に教科書が入ってるかもあやしい自分のバッグを肩に担ぐと、
私に向かって話し掛ける。
「最近、いろいろ縁があるね、俺と綾小路さん」
ん・・・・・・もういい、つっこまない。
「あんまり、話す機会は無かったけどな、面白そうな人だとは思ってたんだけど」
え、面白そう、私が。香月君が言葉を続ける。
「結構見てて、飽きないし」
「そんな事・・・・・・見てて!?」
わ、私のことを見てて?
「ほら、ピーマン食べるときさ」
「え?」
嫌な予感がする。
「苦手なんだろ。いつも一口目食べる時だけさ、うにゅっとした顔するだろ、で、
あとは、素早く何事も無かったような顔に戻るだろ、あれ、面白いなと思って」
う、見られた!そんな、いつもあれを食べなきゃいけない時は誰の視線も避けて、
素早く口に運んでいたはずだったのに!
「あとさぁ、高谷の英語の時、一寸寝てただろ、微妙に左右に揺れててさ」
「そ、それは」
「で、指された瞬間、何気なく教科書と黒板とノート、見まわしてさ、『あの、
すいません、ここがわからなかったんですけど』って、うまい具合に質問返し。
俺、あの時は拍手送りたかったよ。それに体育の時さ、土慣らし踏んで・・・・・・」
私は、言葉が出ずに、ただ口をパクパクさせる。
「ははっ、酸欠の金魚だ」
「私、そんなにドジして廻ってるつもり無いんだけど」
「うん、いつもは結構、完璧だよな。それなだけに、見っけたら、もうけ!って
いう気分になるんだよ」
「・・・へんなの」
その時の私は、拗ねた子供のような顔をしてたと思う。そんな口調だったから。
「そうかも。でもさ」
香月君が私の前の席の椅子に、またぐように座る。真正面に向かい合う。
「なんか見ちゃうんだよなぁ」
まっすぐ、私のことを見つめてくる。頬を赤らめていないか確かめる勇気なんて
私には無い。
「・・・聞いてる?綾小路さん」
またっ、もう!
「私は、あ・や・の・べ!」
「やっとつっこんでくれた」
ニカッと笑顔を見せる。一瞬、うん、本当に一瞬だけど、その笑顔に見とれる。
「まさか、香月君、今までずっと間違えてたのってわざと?」
「『恭介』」
「え?」
「恭介って呼んでくれよ、友達はみんなそうしてるから、『こうづきくん』じゃ
何か調子が狂う」
「でも」
「そう呼んでくんなきゃこれからも『綾小路さん』って呼ぶぞ」
「あー、もうわかった、恭介!私も可憐でいいから!」
「え、いいの?」
「これ以上、綾小路って言われ続けたらたまんないわよ」
「それなら・・・」
コホン、とわざとらしい咳ばらいを一つした後、こちらを見て言う。
「か・れ・ん」
私は頬杖をついて、まっすぐ、相手の目を見つめて言う。
「なぁに、きょ・う・す・け」
わずかな間の後。
「ぶ・・・ハハハハハ!」
「く・・・おっかしい!駄目、笑っちゃう・・・」
何故か、照れよりおかしさが二人の間を漂い、しばし、私たちは好きなだけ
笑い転げていた。
もし、それが私だったら、こうづ・・・恭介はどうするのか。
私の本当の気持ちはどうなのか。
・・・今は考えなくてもいいか。
ただ、恭介と一緒の時間を、この大切なひとときを今は抱きしめていよう。
おわり
結婚式。新婚旅行。実家に戻って、お土産配り。で、やっと新居に舞い戻って。
今日から、恭ちゃんとの新婚生活が始まる、香月明乃として。
うまく家事とかできるかなとか、二人っきりの夜ってどんな気分なんだろ
とか、色々な期待や不安で胸が一杯になる。
ピンポ―――ン
ドアチャイムの音。恭ちゃんはまだお仕事のはずだから・・・。
『こんにちは!お兄ちゃんの忘れ物、持って来ました』
「やっぱり、ちはやちゃんだ。今、鍵あけるね」
ドアを開ける。
「お邪魔しまーす」
「お邪魔します、よさそうなマンションね」
・・・って、え?
「め、恵!どうしてここに!」
ゆったりとした笑みを口元に浮かべ、恵が言う。目は笑ってないけど。
「あら、お友達のご新居を拝見しに来ただけど。おかしいかしら?」
「え、え、ううん、一寸驚いただけだから」
何かを察知したのか、ちはやちゃんが割り込んでくる。
「あの・・・さっき、入り口で会って、これ、お土産のケーキだそうです。お茶入れて
きますね」
言うだけ言うと、さっと台所にちはやちゃんは引っ込んでしまった。
「と、とりあえず座って、恭ちゃんはお仕事で遅いと思うけど」
私の向かいのシングルソファに座りながら、恵が言う。
「あら残念、せっかく今日は明乃にも立会ってもらって契約しようかと思ってたのに」
「契約って?」
「『愛人契約』」
「あい・・・って、ちょっとぉ!!」
フッと何故か余裕にも見える笑みを浮かべ、恵が言う。
「やっぱり、新しいマンションときたら、何てね。ま、冗談よ、冗談」
恵の澄ました顔に、おとなげ無いとわかっていながら、私は言う。
「・・・恭ちゃんはあたしのって言ったよね・・・」
「確かに聞いたわ、だから、苗字が一緒になったんでしょ」
「うん」
「あ、あのお茶が入りました」
気まずいながらも、私達の話が気になるらしい、ちはやちゃんがお茶とケーキを
運んできて、私の隣に腰掛ける。
「週末の夜も、そして朝も明乃が独り占め」
「うん」
「恭介との子作りも、大手を振って行える」
「・・・う、うん」
流石に顔が赤くなる。ふと横を見ると、ちはやちゃんは何故か顔を曇らせている。
「そのうち、おなかが大きくなって『あら、出産はいつですの』なんて聞かれて、
にこやかに『ええ、3月中旬です』とか答えて、やらしいったらないわね」
「う、うー」
更にうろたえる。ちはやちゃんの顔は青ざめる。
「ところで。妊娠中、恭介は性欲処理をどうするのかしら。恭介が自分で、なんて
かわいそうよね」
そ、それは、やっぱり・・・。
「今、じゃあ『お口で』って思ったでしょう」
「え!お口でもしちゃうんですか!!」
「ちょ、ちょっと、ちはやちゃん」
私は図星を指されたのと、ちはやちゃんに大声で言われたのが、二重に恥ずかしく、
耳まで赤くし、うろたえる。
「それでいつも済むと思ったら、甘いわね。『いや、俺はお前の中に入れたい、出したい』
という日がきっとあるわ・・・心当たりあるんじゃない?」
――う、否定しきれない自分がいる。
「妊婦、ましてや初産。激しい運動は控えたほうがいい、ましてやアレなんて、ねぇ」
「それはそうだけど・・・・・・」
言葉に詰まる私を眺めつつ、恵は紅茶を一口。
「そうでなくても、ふと、伴侶以外の人を抱きたくなる事が男にはあるものよ。
その時は、どうするのかしら・・・やっぱり、風俗?」
「え、やだ」
反射的に答える私。ふふんと、恵が笑う。
「そうよね、どこの誰とも知れない女を抱く恭ちゃん、想像したくなんかないわよね」
「う、うん・・・」
畳み込むように恵が言う。
「たまには私が恭介の相手をしたほうがいいんじゃない?」
「う・・・ん、じゃなくて!一寸待って、どっかで騙してるでしょ!」
危うく恵のペースに巻き込まれるところだった。
私の必死の反撃を、恵は軽やかにさばく。
「あら、まさか病気が心配?仕方ないわね、ちゃんと検査受けるから――どのみち
恭介以外とする気はないけど」
ピンポ――ン
私が返す言葉を無くし、固まっていると、突然、ドアチャイムの音が再び響いた。
なんとなく、安堵のため息をつきつつ、玄関へ向かう。
「どちら様でしょうか」
『おぉ、拙者、綾之部珠美と申す者・・・・・・』
ドアフォン越しにゴチッという鈍い音と誰かが怒っている声が聞こえる。
大体誰かはわかるけど。
『ごめんね、妹が相変わらずで、可憐です』
やっぱり、この二人。
「はい、はい、今開けるね」
二人が顔を覗かせる。
「お邪魔します、これ、私と珠美から」
玄関口で二人からプレゼント包装の箱を受け取る。
「はい、これ新居祝い、約束してたルームライト」
「わぁ、ありがとう・・・って」
可憐の足元を見ると、ただ遊びに来るには大きすぎるくらいの、布のバッグ。
私の視線に気づいた可憐が答える。
「あぁ、このバッグ。うん、嫁ぎ先のところから直接来たから。珠美とは途中で待ち合わ
せてね」
珠美ちゃんがすかさず補足説明。
「姉ちゃん、嫁ぎ先、また飛び出してきてさぁ、先週一度したばかりじゃというのに」
部屋に入りながら、余計なほどに、にこやかな笑顔を見せて可憐が話す。
「いやぁ、また、あの人、キャバクラの女の子の名刺を隠しこんでてね、つい、かっとなっ
て、ま、付き合いで仕方なかったみたいだけど」
ソファに座った珠美ちゃんが、手を頭の後ろに組んで、呆れ顔で言う。
「姉ちゃん、『つい、かっと』な割には、今も反省はしてないようじゃがの」
可憐は人差し指を立てて、振りながら、珠美に向かって言う。
「当たり前でしょ。隠そうとする態度が気に入らないのよ」
はじめこそ、悲壮な覚悟での結婚だった可憐だけれど、今はすっかり、お気楽主婦の座に
収まっている。なんだかんだと可憐が我侭を言っても、笑って許してくれるような、おおらか
な人らしい。可憐のやり方を見習う気は、まぁ、勿論、ないけれど・・・・・・。
可憐と珠美ちゃんとの会話が続く。
「これで、飛び出したのは七回目になるのかのう。日帰り入れると、もっと、かもしれんが」
「んー、八回かな。一回、実家に戻らなかったことあるし」
「それは初耳じゃ、ホテルとか泊まったのかの?」
可憐は首を横に振りながら答える。
「違う、恭介のところ、去年の6月くらいかな」
え、一寸、待って。私は可憐のほうを向き、問う。
「な、何で恭ちゃんのところに?」
何気なく、長い髪を耳に掛けながら、可憐が答える。
「だって、その時は一週間前に一度、飛び出したばかりだったから、実家には戻れないし、明
乃のところも、恵のところもお家の方にご迷惑かけるかなって」
詰問調で、ちはやちゃんが可憐に言う。
「あの、私、その話知らないんですけど!」
「丁度ちはやちゃん、お友達のところでお泊り会してたから」
可憐は笑顔すら見せて答える。
「ま、まさか、そこまで計算に入れて!」
ちはやちゃんの驚愕の声。
「さぁどうだったかしら」
あっさり、かわす可憐。
私も我慢できずに言う。
「・・・私、その頃にデート、恭ちゃんにドタキャンされたことあるんだけど。断り方が妙に歯
切れが悪かった覚えがあるんだけど」
「そうだったの?私もあの時は相当沈んでたから・・・」
「てたから、何?」
「やぁ、もう、気にしないで。昔の話よ、む・か・し・の」
私の背後からボソッとした独り言が聞こえる。
「こっちは現在進行形だったりして・・・」
「・・・恵・・・何か言った?」
近所のおばさんがするように、手首のスナップで、手をパタパタさせつつ、恵が言う。
「やぁねぇ、空耳か被害妄想よ」
嘘だ、絶対に嘘だ。
こちらの暗雲が立ち込めつつある空気に、まるで気づかないといった調子で、可憐が私に
言う。
「で、ね。新婚家庭に申し訳ないんだけど、しばらくの間、居候させてくれない?」
・・・え・・・・・・ええぇ!!
「流石に、明乃もさっきの話を聞いた後じゃ、可憐を泊めづらいんじゃない?」
恵が言う。こ、これは助け舟なのかな。
「私も一緒に泊まろうかしら」
・・・ちょ、ちょっ、待って。
「なんか面白そうじゃのう、私も参加しようかの」
明らかに現状を楽しんでる珠美ちゃん。
「それだったら私だって」
何か決意を固めたような表情でちはやちゃんが宣言する。
私は思わず叫ぶ。
「ちはやちゃんまで!?」
頬に手を当て、恵がわざとらしく思案顔で言う。
「じゃあ、客間三人と、寝室三人ということになるかしら」
そんな馬鹿な!
「お兄ちゃんは、寝室でしょ」
「なら、公平にあみだくじで決めるとしようかの」
バッグから珠美ちゃんがノートを取り出し、手早く線を引き出す。
「じゃ、わたしはここ」
「私はここにお願いね」
「明乃ぉ、参加しなかったら、自動的に客間になるわよ」
待って、それおかしいでしょ?
ね、ねぇ、恭ちゃんはあたしのもの、なんだよねぇ!?
以上です。
鎖で明乃エンドなのに能天気なのを書きたかったので。
>172
乙。恭介の取り合いというよりは某河野家みたいなノリになりそうだなw
GJ!!
鎖SS投稿してるのって、全部同じ人かは知らないけど
どれもかなり良い出来だったよ
恭介寝取られる明乃・・w
保守age
気になったんだけど、なんでここって「蘇る」SSなの?
177 :
名無しさんだよもん:
tes