ここは人間の住む世界とはちょっと違う、ケモノ達の住む世界です。
周りを見渡せば、そこらじゅうに猫耳・犬耳・etc。
一方人間はというと、時々人間界から迷い込んで(落ちて)来る程度で数も少なく、
希少価値も高い事から、貴族の召使いとして重宝がられる事が多かったり少なかったりします。
けど、微妙にヒエラルキーの下の方にいるヒトの中にも、例えば猫耳のお姫様に拾われて
『元の世界に帰る方法は知らないにゃ。知っていても絶対帰さないにゃあ……』
なんて言われて押し倒され、エロエロどろどろ、けっこうラブラブ、
時折ハートフルな毎日を過ごすことを強要される者もいるわけで……。
このスレッドは、こんな感じのヒト召使いと、こんな感じのケモノ耳のご主人様との、
あんな毎日やそんな毎日を描いたオリジナルSSを投下するスレです。
このスレッドを御覧のヒト召使い予備軍の皆様、このスレッドはこちらの世界との境界が、
薄くなっている場所に立てられていますので、閲覧の際には充分ご注意ください。
もしかしたら、ご主人様達の明日の御相手は、あなたかもしれませんよ?
それではまず
>>2-6 を。
【FAQ】 Q.なにこのスレ A.人権がある獣人が人権が無い人間をキャッキャウフフするスレです。 Q.猫耳少女スレは猫耳以外もOKとな A.おもしろければいいじゃない スレタイ変更は語呂が悪いのでしません永遠のスレタイ詐欺です Q.これは、エロですか? A.萌えかもしれません。エロかもしれません。 膝枕とか肩叩きとかチッスとか射程範囲内です。エロは手段の1に過ぎません。 でもエロパロだからエロを自重する必要はないですよ? Q.シェアワールド? A.『世界観の共有』をしています。節度を持ってネタを振り合いましょう。 このスレでは設定を相互参照して発展する傾向がありますが、 だからといって全ての設定が網羅的に参照されているわけではありません。 よって各作品では大筋はともかく詳細で矛盾があります。気にしたらダメです。 みんなが無茶振りだと思うような設定は、そのうち無かったことやパラレルワールド扱いになってゆきます。 Q.どこまでが共有設定? A.後述します。 Q.ホモレズグロスカ鬱蟲とか書きたいんだけど? A.書くのは自由。嫌われるのも自由。 グロスカ蟲他はアップローダーに投稿してスレにはアドレスを貼るという手があります。 そのときに注意属性を挙げておくのがいいです。 挙げ忘れは、書き手の責任。挙げてある属性に吐き気を感じるのは、読み手の責任。 でもノーマルはみんな大好きだよ。 Q.属性は? A.メイン属性:獣人 x ヒト その世界観を活かせるなら必須ではありません。 サブ属性:闇鍋 あらゆる性癖・属性がアリですが、 あんまりアブノーマルは事前警告推奨で。 Q.こちむい機軸以外のシェアや独立はあるの? A.別に禁止じゃないけどシェアしないならこのスレである必要なくね?という風潮。
【簡単な設定&用語集(1)】 こちむい世界: あちら側。様々な獣が人の姿をとり、人語を解し、人権を持ち、逆に人間が奴隷である世界。 人間世界での人と動物の関係が逆転してる感じ。空は青く昼夜もあるが、月が二つある。 人間世界からは様々な物体が「落ちて」来るが、一方通行であり、人間世界へ行く事は出来ない。 (「こちむい」の名称は草分けタイトル「こっちを向いてよ!ご主人様」から) 人間世界: こちら側。いわゆる普通の世界。現代の地球。 何かの拍子で異次元への窓が開いて神隠しにあうと、こちむい世界に「落ちる」。 人間以外にもコーラ一本から戦艦一つ神隠しにあうことが出来る。 こちむい世界は人間世界で認知されていない。 その他の世界: こちむい世界と人間世界以外にも色々な世界があるみたい。でもスレ的に重要じゃない。 落ち物: 「他の世界からこちむい世界に落ちてきたもの」の総称。滅多にない。 雑誌一冊が来ることもあれば建物ひとつやってくることもある。 希少であるため高値で取引されることが多いが、 使い方の判らないもの、危険なものも当然混じっている。 ヒト: 地球人の、こちむい世界での呼称。人権なし。器物〜ペットに分類される。 落ち物であるため希少で高価、特にオスは性奴隷として価値が高いらしい。 専門知識を持っていた場合はそちらを重宝されることもあるという。 こちむい世界の環境は、こちらの人間にとってはかなり過酷なもので、 あちらの住人の庇護無しに生活することは難しいとされる。 国家: こちむい世界には犬、猫など種族ごとに国家がある。 地球でメジャーな種族は大国な感じ。昆虫とか魚類とか鳥類とかもいる。 子作り: 基本的に同一種族同士でのみ子作り可能。 地球人とこちむい世界住人との間で子供を作ることは不可能。
【簡単な設定&用語集(2)】 あちらの住人: 種族ごとに大きな差があるが、 ヒトより遥かに優れた身体能力を持ち、魔法のような超常の力を使う者もいる。 また、総じてヒトより長い寿命をもつ。 男性(♂):こちむい世界の男性は見た目は獣に近く、種族の特徴や習性が強く表れる。 人間世界の伝説にあるライカンスロープの類に近い。 女性(♀):こちむい世界の女性は、種族を象徴するような特徴(耳や尻尾が代表的)や習性を持つが 見た目はヒトに近く、ヒトがコスチュームを纏ったようにも見える。 マダラ:♂だが、通常と異なり♀に近い外見をした者。 一般的には希少で、一般的にこちむい世界では美形とされる。 ケダマ:♀だが、通常と異なり♂に近い外見をした者。 マダラよりも更に希少だが、一般的にこちむい世界では不細工とされる。 魔法関連 魔法:まんま魔法。様式や効果は種族・流派によって千差万別。 しかし、根本となる理論は同じであるとも云う。 誰もが使えるわけではなく、また、使えたとしても個人差が大きい。 魔素:こちむい世界に存在する魔力の源。 生物が利用する為には対価を要するが、魔法を使用するのに不可欠なエネルギー源である。 魔力:魔法使いが魔素を体内に取り込んで精製し、生み出す力。 魔法を使用する際に必要なエネルギーとなる。 魔洸:ネコの国で開発されたエネルギー。魔素を用いるのは魔力と同じだが、 発動が個人の能力に依存しないので、一部に産業革命をもたらしている。 魔力枯渇:魔素を魔力に変換しすぎると発生し、主に精神への負荷を強いる。 重度の魔力枯渇は、死に至る危険性有り。 魔力疲労:魔力を使用しすぎると発生し、主に肉体への負荷を強いる。 重度の魔力疲労は、死に至る危険性有り。 ※もっと詳しいことが知りたくなったら関連Wikiへどうぞ。
これにて終わり。 ニア 名無しに戻る
8 :
とらひと :2009/10/08(木) 05:59:06 ID:Z8cELj08
乙です! 事実上の所有者なのに、バラムはその他扱いなのかww
新スレおつ。 チヒロ、強いな。
12 :
鋼の山脈 :2009/10/10(土) 00:44:40 ID:wiBfFq+L
わっかりやすい蛮王じゃのう
14 :
名無しさん@ピンキー :2009/10/10(土) 09:38:40 ID:KRF9EEK4
匂いで♀だとバレないものかとヒヤヒヤ
>>8 チヒロの心の強さに対抗できる奴はそうそう居ないんじゃないだろうかとか思えてくる
ブルックの今後の動向に期待
>>12 息を呑むわー……緊迫感がすげえ
しかしまたマニアックな得物をもってくるな山脈さん
新スレが即死したらシャレにならないので保守。 直接投下の勇者求む!
保守ついでに。 ムササビって、まだ出てなかったっけ。 もし出てないなら、狐や猪の国の山岳非定住民でだしてみようかなとか。 山の民で、普段は簡素な衣服を着てるけど、空を飛ぶときは全裸で着物を頭の上にでもゆわえつけて手足の膜を広げて飛ぶ、と。 確かムササビは日本固有種だったような。
ムササビは日本固有種で、モモンガはリスの親戚として世界各国に居るようだ。 しかし全裸て。
いや、ムササビは膜を広げること考えたら、V字水着みたいな服しか着られないなあと。 けど、そんな変態種族にするぐらいなら全裸で飛行したほうが野性的でいいかな……と。
唐突にスーパーマリオブラザーズを思い出したのは俺だけでいい ムササビをウィキペディアで調べたら色々とすげーのな…・・・
スパイラルペニスと貞操帯自動作成能力持ちか…… うん、普通に怖いw
我輩はベアである。 名前はまだない。 肌はピンクでもちもちとしている。 すこしの水とたくさんの食物を摂り。 もっちもちな体を持ち (食)欲はあり 意外と怒りっぽく そして忘れっぽく 西に冷蔵庫あれば行って空にしてやり 東に特製大プリンあれば行って泳ぎながら食し みなに無為徒食と呼ばれ たのしいなたのしいな ベアには学校も試験もなんにもない
即死回避ネタで主従シャッフルしてみる。 秒の1桁がご主人様、IDの最初に出てきた番号(出てこなければ分の1桁に秒の1桁を足した数の1桁)が召し使いくん。 ご主人様/召し使いくん 1 マナ様/ぼく 2 サーラ様/サトル 3 ジーきゅん/あたし 4 ラヴィニアたん/りょー 5 シュナたん/フユキ 6 アリス様/マサミ 7 朱風さん/カルト 8 アカブ/チヒロ 9 がっくん/キヨカ 0 フェイレン/ミコト
が…がっくんとりょー? なんとなく、楽しいコミュニティが形成されそうだけど、ジャックさん涙目すぎるな…w ご主人様と召し使いの性別をそれぞれ統一したほうが良かったかな…
しょっぱなからナイスな結果がw 参加してみよう
アカブ/キヨカ ……その、なんだ、この組み合わせはヤバくないかキヨちゃん……
やってみる
原作どおりじゃ面白くないな。やり直すか。
……ID変わらないから何回やっても同じか。 分+秒を使ってもう一度だけやってみよう。
ラヴィニアたん/ミコト ……これはこれでどんな話になるか読めないなw ものすごく百合百合しくなりそうだけどw
乗ってくれる人がいてなによりです。
>>27 もしかしたら、キヨちゃんみたいなタイプだとかえって父性本能フルバーストするかも。
「こいつに指一本でもふれてみろ、明日の太陽は拝めねえと思え!」みたいなw
>>28 原作通りになれば、ご主人様そのままで召し使いくんだけ分+秒にしてみたらいいかも。
このばあい、アリス様とりょー…ですかね。
>>28 …違った、アリス様とキヨちゃんか。
…なんという鬱コンビw
>>32 父性じゃなくて母性だろう。
毎日が癒しのフルモッフ生活とか非常にハートフルじゃないか・・・・
そろそろ主従男でヒロインと3Pみたいなのを見たいな。 通販生活は大変良かった。
36 :
シャコ担当 :2009/10/22(木) 00:12:14 ID:hcn+273P
37 :
シャコ担当 :2009/10/22(木) 00:16:37 ID:hcn+273P
そして主従シャッフルはラヴィニアたん/サトルか… 叔父様がとてもとてもひどい目に遭いそうな気がする
おつおつ。 そしてシャッフル。
アリス様/サトル ある意味楽しみな組み合わせではあるな。
40 :
sage :2009/10/22(木) 17:56:07 ID:TcMcYxUT
どーれ
朱風/あたし どっちも小柄だのに従は主の何十倍の戦闘力なんだ… (胸的な意味で) 唇を噛み締める様子が目に浮かぶ
そろそろ即死も回避したかなと思いつつもシャッフル
>>41 あたしはアレでまだ中学生なんだぜ、戦闘力に差が出るばかりだな
がっくん/ミコト 異様に静かそうな話になりそうだな
>>39 サトルにはマサミほどの強烈な主体性はないからなー。一見似てるように見えて真逆だもん、あの二人。
その辺をアリス様がどう理解してどう突っつくかがカギだと思う。
組み合わせたら酷い主従が出たら楽しいなっと。ぽち
がっくんと「ぼく」…? 美少年と美ショタですかそうですか。 ある意味こいつはヒデェな(キヨカが内心大喜びのビジュアルで)
これもっと人数増やしたら面白そう。 ゆかりんとかキャパとか、個性的なキャラだと特に。
マシロお嬢様だと無双になる。 トリアさんだとほのぼのか百合になる。 ところでチヨコさんの場合、せんせいとウエダ、どっちが妥当なんだろうか。
…サーラ様とチヒロだと、一話で終わりそうだな。
マナ様とサトルも、そもそも拾ってもらえなそうな悪寒 これ誰かJavaスクリプトかなんかでもっと多いキャラのやつ作ってー
51 :
24 :2009/10/23(金) 16:26:34 ID:9NxSUSiA
皆さんに楽しんでいただけているようで嬉しいです。 >人数増加 IDの最初のアルファベットと二番目のアルファベットを使えば、26組の主従でやれますね。 でもさすがに26組も出すのはちょっと大変なので、誰かやってみたい人がいるならお任せします。 …さて、このレスだとどんな主従になってるかな…
>>43 だがちょっと待ってほしい、それはキヨちゃんとほとんど変わらないのではないだろうか
>>51 ラヴィニア/キヨカ
最初ががっくん/りょーだったし、逆になっただけかw
54 :
鋼の山脈 :2009/10/23(金) 22:38:59 ID:KY3IcqQK
>>54 吹き溜まりは吹き溜まりで必要なもんだが、でかすぎるよなー。
さてレムは糞でできたダムに針穴をあけるか。
ゼダの活躍に期待。
57 :
鼠担当 :2009/10/26(月) 20:55:53 ID:OFz4SZsE
最終話を書いている途中ですが、生存報告代わりのネタを一つ投下したいと思います 「無垢と未熟と計画と? おもいでのほん」 では、投下します。 誤字脱字、文法がおかしい所があったらごめんなさい。
「……早く寝なさいとお医者さまに言われただろう、ロレッタ?」 「あ……」 暖炉のある暖かいリビングのソファで本を読んでたら、父さんがわたしの隣へ座って心配そうに声をかけてくる。 横目で時計を見ればもう12時前。寝るのが早いねーさんならもう夢の中の時間だ。 ……でも、まだ寝るわけにはいかないかも。 「えっと、この本読み終わったら寝るー」 「ダメだ。今すぐ寝なさい」 普段は無口で危ないこと以外は黙っていてくれるけれど、一度口を開くとなかなか折れてくれないところは嫌いじゃ ないけれど、こんないい所で止められたら気になって眠れなくなっちゃう。 「――」 せめてこのお話が終わるまでは……と、心を込めてじぃぃぃと父さんの丸くて大きな目を見る。 けれど、全く揺れない。 頑固なとこはねーさんそっくり。というか、ねーさんがそっくり? 「今読んでる話まで……ダメ?」 「それならいいぞ」 「ぇ?」 これでダメだったら諦めよう。 そんなあきらめ半分の気持ちだったけれど、意外に簡単にOKされてびっくり。 もううれしいやら信じられないやらで心の中はごっちゃごちゃで、声も出ない。 「そんなにおかしいか?」 「ちょっとだけ」 控えめに正直にそう言うと、微妙そうな表情で髪がくしゃくしゃなりそうな位に私の頭を撫でてくる。 撫でられるのは好きだけど、ごめんね父さん。 「で、何を読んでいるんだ?」 「この前の誕生日でバッカス老から貰ったヒトのお話まとめた本だよ」 「ほう」 そんな事を気にした様子もない父さんは珍しそうに本に視線を向けて、すっと目を細めてちょっと怖い顔変わって、 ビクっと無意識に体が震える。 「そういえば、何か貰ったという話聞いてないな」 うわ。 「ロレッタ」 「えっと、貰ったんだけどバッカス老から『貰ったことは言わないように』って……でもでも、言わなかったわたしも 悪いし……」 バッカス老が後で困らないようにと色々言い訳してみるけど、最後の方はもう自分で何を言っているか分からなくなる ぐらい小さな声になって俯いてしまう。 「全くあの人は相変わらずな……ロレッタ、泣かなくていいぞ」 「え?」 そう言われて顔を上げて、同時に手に落ちてきた冷たい感触で初めて気づく。 なんで、泣いてるんだろ? 「バッカス老が俺かヘーゼルに叱られるとでも思ったのか? ……優しいな、ロレッタは」 「そんなこと、ない」
本当にやさしいなら最後まで泣かずに言えるはずなのに、それが出来なかった。 だから…… 「まぁ、俺が勝手に言ってるだけで、いつもの事だから気にするな」 わたしを慰めるように荒っぽいものから髪を梳くような感じの撫で方へ変える父さん。 「う、ん」 それ以上涙を見せたくなくてパジャマの袖で涙を拭って、なんとか笑う。 「よしっ、いい子だ」 「そ、そんなに撫でなくていいから〜」 「悪い悪い」 体の大きな父さんが手加減せずにわたしを撫でると、体ごと揺れて頭の中がぐるぐるかき回されてしまう。 うぅ、気分悪くなりそう……あ、そうだっ。 「ねぇ、父さん。"シンデレラ"って知ってる?」 「シンデレラ? ……ガラスの靴の話か」 『うん』と言う代わりにわたしは首を縦に振って、"シンデレラ"のページをめくる。 継母とその娘達にいじめられて舞踏会にいけなかったシンデレラという女の子が、魔法使いさんの力を借りて幸せに なるというヒトの世界のお話だ。 「それがどうかしたのか?」 「舞踏会へ行く時に魔法使いさんが助けてくれるんだけど、なんでそんなことしたのかなぁ? って思うの」 今持ってる本の中じゃ、『シンデレラは幸せになりました。めでたしめでたし』でそれ以上は無し。……すこしくら い書いてあってもいいと思うんだけどなぁ。 「……王子様とシンデレラが幸せになったから。で、どうだ?」 「!」 父さんのその言葉にわたしの中の"何か"が嵌る。 その"何か"はよく分からないけれど、とてもしっくりくる。 「眠そうだな」 「まだまだ大丈夫っ」 腕を振って意地は張ってみたけれど、ずっと考えてた事が解決したからか、妙に瞼が重い。 それにしても、何で分かるんだろ? 「そんなにわたし眠そう?」 「ヘーゼルと一緒で、眠くなると目元が二重になって目がパッチリしてくるからな」 「えぇぇ!? それは初めて聞いたよっ」 わたしを見て、手の込んだイタズラに誰かが引っ掛けたような笑みを浮かべる父さん。 「そりゃあ、誰にも言ってないからな……ほらほら、寝た寝た」 そう言うと、わたしを本ごとひょいっと抱き上げる。 今まで座っていたソファが少しだけ小さくなり、父さんのおひげが震えているのが分かるくらい近くなる。 「怖くないか?」 「これくらいなら大丈夫っ! これで怖がるのはねーさんくらいだよ」 ずっと前は"こわいこわい"って呟きながら泣いてしがみ付いてたくらい筋金入りの高所恐怖症だからなぁ、ねーさん は。 「……お前達は本当に似てないな」 と、父さんはちょっと変な苦笑いをして続ける。 「似てない姉妹がこの世に一組くらい居ても問題ないだろ、ロレッタ?」 「だねー、あははっ」 そう冗談めかした言葉に笑って答えるわたし。 ――今はもう、そう言っていた父さんもいっぱい本を読んでくれた母さんも――今は居ない。 けれど、優しくて、ちょっとだけ頼りになるにーさんがいる。 ……似てない姉妹がこの世に一組居てもいいなら、種族が違う家族がいても……問題、ないよね。父さん、母さん?
60 :
鼠担当 :2009/10/26(月) 21:03:08 ID:OFz4SZsE
「無垢と未熟と計画と? おもいでのほん」 これにて終了です。 最終話はエロ込みで凄い量になりそうですが、年内までにを目標にしたいと思います。 それでは失礼します。
生きてたー!! なら俺も頑張らにゃあな。
ずっと心待ちにしてたけど、もうすっかりあきらめてた。 これは年末までは生きるしかないな。
なんという僥倖… 生き恥を晒した甲斐があったというもの!
そういえば、犬とか猫とかはメジャーだからいいとして、 何故シャコとかそういう(失礼だが)ある種のマイナーというかそういうのがいて 牛とか馬とかないんだろ? 最近では豚とか出たし、やっぱり書かないと出てこないのかなぁ?
メジャーすぎて逆に自分が1から設定作ることに気後れがあるというのもあるかな。 自分しか書かないようなマイナー種だとかえって好き放題できるけど。
馬とかは馬車とか単語が出ちまってるからやりずらそうなのは確か がら空きなのは淡水魚とか爬虫類とか両生類とか(ry
>>65 つまり気後れしなければ書けばいい、ということかな
>>66 あれ、馬車ってあったっけ?
獣人がいる世界に普通の馬がいるのは結構妙な感覚だが、まあいるなら仕方ないな
確かに国やら文化やらを1から作るのには抵抗あるな。 少し前に、アライグマの国でオスカルって少女が革命に身を投じるのってどうだろうとか考えてたんだけど、 自分には難しすぎて無理だった。 んな暗い話で、タイトルだけギャグなのもアレだしね……
>>67 ごめん、馬車出した。
だってスレイプニールがいるんだから馬がいてもおかしくないじゃない。
ここまでマイナー種のことを有名に対する無名じゃなくて上位下位の意味で見てた俺 (ウマ国の人間に対しての乗用馬みたいなニュアンス) 日本語ムズカシイネー
>>67 ふつーに第一話で馬出した上に、駱駝も羊毛も出したなあ……。
ま、ヒトが落ちてくるならふつーの動植物も落ちてこないと理屈が通らないのでいてもおかしかないのですが。
まぁ普通の馬でも多分寿命が50年とかだったりするんだよ。 きっと。 毛が紫とか、緑だったりとかさ。
砂海の珍味と同様に、馬や馬車って言っておいて、家畜としての用途が同じだけど 違う生物を指してると思ってた。スレイプニールだって八本足の馬なんて とってもファンタジーだから、絵に描くとタコだの蜘蛛だのの亜種かも知れない。 ヒト世界に猿がいるようなもんで荷馬も駱駝もいるよってもひとつの回答だと思う。
まあ、世界平均はわからないが、身長2メートル越えの獅子あたりが乗る馬なら、平均サイズがすでに黒王か松風レベルかもしれんw で、ウマ獣人は獣の馬よりちょっと小柄とか。
ブーメランと空手を組み合わせたまったく新しい乗用動物を開発するときだな
自分もそんな感じに思ってた。
言葉は同じでも挿す概念が違ってる、という。
しかし、スレイプニールが蛸・蜘蛛の仲間っていう発想はなかったw
>>70 いや、それ難しいのは英語じゃないか?
風雲再起はなにげに可変式なんで、思い付いたが馬族は生体的に人形から獣形に変化できる術を持っているとか ただ国があるか、もし知能がなかったら、、、ってさ思ったけど国民総派遣社員で首都以外はただの野原な牧場国家、各国にサラリー馬を派遣している 今までの馬族は話しべたで無口なため仕事中は人間世界の馬と変わって見えなかったという筋で
79 :
名無しさん@ピンキー :2009/11/02(月) 10:20:54 ID:cXB7i6h2
大規模規制であちこちガラガラだな
馬でなら、ファンタジーお馴染みのユニコーンがいるじゃないか 馬(獣)と耳や尻尾が酷似しているせいで大昔に他の種族から迫害(奴隷狩りとか)を受け、今では少数が細々と辺境で暮らしているとか…… 誰か書いてくれねぇかな
ユニコーン=処女厨 の連想を押さえきれない俺である。
ユニコーンと聞くと真っ先に「大迷惑」連想する俺。
>>80 まずはユニコーンは偶蹄目か奇蹄目のどちらか?から決めようか
>>84 ところが犀も正しくユニ(一つの)コーン(円錐)でなー。
って調べたら犀も奇蹄目か。しかも二本持つ種類もいるし。
偶蹄目はウシ・イノシシ・ラクダ・カバか そういやラクダも乗り物としてしか登場してないなー、ヘビとは砂漠同士縁が深そうなんだが
いや、そもそも初期のユニコーンの特徴は偶蹄目でな 奇蹄目として描かれるのは結構後になってからの筈
ってか、ユニコーンの設定そのまま適応すると非常に楽しい種族になるな。 子孫を残す為に合体したら♂は消えちゃうんだぜ……ユニコーンの♀はどうなんだろうか、消えてしまうなら勝手に絶滅する種族になってしまうっ
もうさ、好きに生物創作すればいいんじゃね?と思い始めた。
もちろん性的な意味で。
人食い花 雌しべが一輪の背の高い草に見える。実際はその周りに 八枚の花弁がある。 大きな花弁で雌しべに近づいた人間をすっぽりと包んでしまう。 包み込んだらしばらく離さず、花弁の裏側から熱い水蒸気を出す。 そうして人間から溢れる汗、その他の体液から栄養を吸収する。 人間側は一時間につき180kcalを消費する。 万一捕まったら水などを多目に摂取すること。 こうですかわかりません
人食い花 上半身はヒトに似てて、髪の毛の代わりが葉っぱ。下半身はまんま植物。 地面に生えてて動けないと困るので、植木鉢を使用。(ヤドカリみたいな感じで) 移動するときは、植木鉢を引きずって腕の力で動く。 こうですかわかりません
なんか諸星の短編漫画思い出した
>92 新しいダイエット法の予感!
取り敢えず牛の話を書いてるんだが、未だ設定しかできてない罠orz 設定だけでも先に載せた方が良い?
設定を出した時点で満足する人は少なくないので設定はある程度本編を書いた後にしていただきたい。
設定を先出しして書けなくなった僕のことも忘れないでください
設定は自分で確認するためのものだと思ってる俺。
とりあえず導入部だけでも書いてくれたらあとは適当に何とかされるw 華蝶楓月とIBYDなんて、たったあれだけしか書いてないくせにどれだけ後人を縛っていることかw
いや、縛ると書くと不適切なんで撤回するけど、 とにかく導入部だけでも投下するのと、設定だけ晒すのでは他の人への影響力は全然違うということ。
縛られてるって表現が一番正しいだろ。やっぱさ。 その意味じゃ、設定の書き逃げ状態に繋がる事はしない方がいい。 つか、設定なんか自分がわかりゃ良いんだよ、一切説明無しで。読者は知ってるって前提で良し。 事前公開するなら、キャラの名前と立位置だけで十分。 先ずは投下しよう。話はそれからだw
しかしこの大規模規制にはまいったな。 すっかり閑古鳥だよ。
規制狐さんも帰ってきて早々規制食らってるのがまたさすがと言うべきか。 避難所があるとは言えこっちがこんなだと、ちょっとなぁ。
実際に書き込めるプロバイダってどれくらい生き残ってるんだろうな? 自分のメインISPは多分永久規制されそうな気配 ●買ってまでやりたくないし、避難所常駐しかないかな。
アトシャーマに羞恥プレイは存在するのだろうか。 人口のほとんどが淫乱な場所で。
羞恥プレイのイメクラ みたいなものはあってもおかしくない気はする あ、ただのROMな俺はローカル光ですハイ
>>106 PINKチャンネルの管理人JIM兄貴は、PINKを全部有料化する方針じゃ無かったっけ?
●を買わないとログインすら出来ないって事になったら、それはかなり問題な気が。
ん?てす
あ。規制解除されたっぽいw 数ヶ月ぶりに書けるような気がするww
なんか本気で過疎なんじゃないか? みんな何処へ行ったんだろう。
あっちの世界に行ってしまったのでは
ごめんよう、ネタに詰まってるんだよう…
115 :
名無しさん@ピンキー :2009/11/21(土) 18:49:30 ID:2VFXFpaR
なんか格調高い本格小説と勘違いした文学作品ばかりになってツマラネ ウツな展開の俺ってばスゲー的書き手様オナニーはウンザリなんだよ
オナニーしに来てる奴にオナニーするなと怒られたでござるの巻 意見の押し付け合いにしかならなそうなので反応はお控えください
すいません、エロを入れる場所がありませんでした。 次こそエロを入れるつもりです。次こそ。
扉を開けると、私の奴隷が床に寝転がっていた。 仰向けに寝転がっているヨゼフ・ラドヴァーは私の方を見上げると、 「出たか、ご主人」 楽しそうに言って、にい、と笑う。奴隷を自称するにしては、実に不敵な笑みだ。 それもそうか、と思う。実際にこいつは私よりずっと強いのだ。 ヨゼフは分厚いコートの懐から一枚の紙を出し、 「そちらはどうだった? 俺は『歯をよく磨きましょう』だったんだが」 「そんな子供みたいなことを書かれたの……」 「良いじゃねえか。あんたが完治するまで歯の磨き方でも勉強するとするよ」 「そうかもね」 呆れ混じりにそう言ったが、そうだよ、とヨゼフは笑う。 「あんたの傷はウサギの国でも、ちと長くかかるだろうが。暇で仕方がないからな」 「暇なら来なきゃ良かったんだ。森番を任せるなんてことをせずにな」 実際、それは本音だった。来なくても良かったのだ。 ライオンの国からネコの国まで行って治療するほど資金があるわけではない。かと言って他の物価の低い国では治療の技術がほとんどない。そもそもこれだけ重なった傷を治そうとも思えなかった。 この自称奴隷が言い出さなければ、ネコの国を超えたこんな辺境まで来たいとは思わない。 しかしこの奴隷は眉根を寄せ、ひどく不機嫌そうになる。 「馬鹿を言うんじゃねえよ」 「誰が馬鹿よ」 「ご主人に決まってるだろうが」 ふん、と鼻を鳴らす。ご主人と呼ぶ割には扱いが軽すぎる、と思うのは私だけだろうか。 ヨゼフはコートから一枚の紙を出すと、それを見せるように指で摘み、トントンと叩く。 「ネコの国よりかはずっと格安だし、何より俺が働けるだろうが。見ろよ、これ」 「……何回も聞いたわよ、その言葉は」 「じゃあ納得するまで言うけどな。ここでは俺の肉体労働が許されるんだぜ。奴隷が何ヶ月か働くだけでご主人のお相手が見つかるんだ。これ以上に良い計画があるか? 何も問題なんかないだろうが」 「……そうだとして、私がお相手を探しているという根拠が何処にあるのよ?」 私は辟易しながらも、いつもの議論を繰り広げる。 間違いではない。お相手など必要ないのだ。この自称奴隷さえいれば良いとさえ思えるくらいだ。 そんな思考を見透かしたヨゼフはばっさりと切り捨ててくる。 「何度も言うけどな、俺はただの家族なんだぜ。ペット、愛玩動物、家畜」 「……そんなこと」 「そういうものだ。それに同族の配偶者は悪くないぜ」
「独り身のあんたが言わないでよ、そんなことを」 私はそっぽを向き、歯噛みする。 しかし仕方がないこととも言える。ヒトがそんなにいるはずはないのだ。私の場所に来たこと自体が奇跡のような確率だったのだから、もう一人、それも女が来ることなどほとんどありえない。 それに来られても、資金的な面はもちろん――精神的な面でも、女は困る。特につがいになれる女は。 ヨゼフは私を睨みつけていたが、ふう、と溜息をつく。 「まあ、こんな話をしても平行線だしな。そもそも治療に来てくれたんだから、俺が文句を言う筋合いでもないか」 そして紙を仕舞うと、再びウサギからもらった検査報告書を眺める。 「結局、どうだったよ。俺はさっきのと――ああ、それと『爪は適度に切りましょう』とも書かれたな」 「どっちにしても子供っぽいことは変わらないのね……」 「良いじゃねえかよ。それくらいで済んでたんだから」 「……甘く見ないほうが良いですよ?」 何処かから丁寧な口調の言葉が返ってくる。 おりょ、とヨゼフが視線を下げ、私も同じ方向へと眼を向ける。 「虫歯などの口内から出る細菌は内臓疾患の危険性を上げます。そうでなくとも健康な歯でないというのはそれだけで健康に害を与えますよ? 爪は皮膚病を知らせてくれる重要な器官ですし、大事にした方が良いと思いますがね」 ちみっこいくせに、かなり怖いことを言うウサギだ。 にこにこと笑うウサギに対抗するように、ヨゼフは不敵な笑みを浮かべる。 「男は太く、短くだからな」 「そうですか。では勝手に早死にしてくださいね?」 「残念ながら、俺はあと二百年は生きる」 「可能な生存よりも短い寿命を早死にと呼ぶんですよ」 バチバチと火花の飛び散る視線をぶつけ合う二人。 何しろまあ、ヨゼフはウサギにとっては天敵とも言える思考をしているヒトだから。 それは暴力が好きだ嫌いだとか、そういう次元にあるものではない。 種族としての性質そのものへの侮蔑、軽侮だ。 どちらが正論なのかはともかくとして、ヨゼフの思考がウサギと真っ向から対立するものであることは間違いがない。前提からして真っ向から対立するのだ、彼らは。
ヨゼフはじろりとウサギを見つめた。 「……で、結局治療費は幾らくらいになるんだ?」 「700セパタくらいですか。検査代も含めて」 「700セパタということは――ああ。貯金を出せば、一ヶ月で済むな」 普通に言うヨゼフだが、私はその換算に疑問を抱く。 「……ヨゼフ、そんなに貯金を持ってた?」 「商人の真似事もしたんだよ。獅子の国からここまで結構な時間があったし」 「それにしても多くない? 一ヶ月ということは――50セパタで済むということでしょ?」 「結構に悪いこともしたからな」 にししし、と悪党の笑みを浮かべる。右手でピースサインを作り、実に楽しそうだ。 ……こういうのを見ていると、自分たちよりよっぽど強いように思えてしまう。 そういえば、と思い出す。こいつと会ったのは確か冬の森の中だった。 専用装備もなしにあそこを歩くのは獣人にとっても危険だと言うのに、確か―― 「ねえ、ヨゼフ。あの森のことだけれど」 「何だよ、ご主人。森番が恋しくなったか?」 元から恋しい。旅をする前の生活ほど恋しいものはない。 しかしそんなことは口に出さず、私は茶化すヨゼフを睨みつける。 「そうじゃなくて、あんたがあの森で歩き回ったって、どれくらいだったっけ?」 「ああ――確か、三日くらいかな。あのときは大変だった」 ヨゼフは懐かしそうに言った。 「あのときは色んなことがありすぎて、事態も把握できてなかったからな」 「どうやって生き延びたのよ。あんたのあの薄い服で」 「頑張ったとしか言いようがねえな」 「……あの、何の話をしているんですか?」 ウサギが話に突っ込んでくる。 ヨゼフは話すのも嫌そうにしていたが、 「良いじゃないの。話してあげなさいよ。私も詳しいところまでは聞いてなかったし」 「……ご主人の言うことなら、しょうがねえな」 ヨゼフは心底嫌そうにしながらも頷く。 「……詳しい話と言ってもあんまり詳しいことは判らんから、感覚の話だけをするぞ」 「別に良いわよ、それで」 了承すると、ヨゼフは溜息をつき、話を始めた。 「まず、俺が最初に落ちた場所は――」
××× 既に何処かは判らなかった。 「はっ、はっ、はっ……!」 荒い息を吐く。ただ走り続けるだけだった。 全くの森の中だ。それがずっと続いている。もう何キロ走っただろうか。 「はっ、はっ、はっ……!」 後にヨゼフ・ラドヴァーと名付けられる彼は、ただただ走るばかりだった。 彼は逃げているのだ。ネコとヤマネコの獣人から。 何しろ自分を買ったヤマネコを殺したのだから、当然のことと言えるだろう。 悪い奴ではなかった。こいつなら飼われてもいいかと思った。 (でも、あんなことを言うから、だから――!) でも、それでも殺してしまった。ならば逃げなければならない。 「また、また――!」 それだけではなかった。彼のトラウマは走っている最中に幾度も甦っていた。 フラッシュバックする映像から逃げるように、彼は無我夢中で走っていた。 「ここでも、ここでも――!」 何時間ほど走ったのだろう。もう何処だかも判らない。 しかし森の中でも相当奥深い場所であることは変わらない。 ネコとライオンが追ってこないのだから、それだけ奥深いのだろう。 そんなことを考えていたとき、やっと彼の足は痺れを伝えた。 「…………ふう」 彼はひどい疲労を感じ、樹に寄り掛って座り込む。 空を見上げると、いつのまにか時刻は昼から夜へと変わっている。 赤い方の月は天頂に達し、青い方の月は赤い方よりも少しだけ西に傾いていた。基本的には青い方の月が時刻に使われるらしいので、もう深夜は過ぎているということだろう。 未だフラッシュバックする映像を消すように頭をガリガリと掻く。 「くそ、くそ、くそ!」 誰でもない何かを罵る。強いて言うならば運命だろう。 何処かで堪えていた涙を流す。流さなければ、やっていけない。 言葉にすらならない泣き声を上げながら、彼の意識はゆっくりと落ちていった。 夢は見なかった。良い夢も悪い夢も。
「ああ――」 疲れた、とは言わない。言えばきっと、魔素とやらに影響するだろう。 言葉が魔素に影響するならば、ヒトが影響させることが、出来ないわけはない。 それでも、言わなくとも疲れる。流石に数時間ほど寝たとは言え、半日は走りっぱなし、一日は歩きっぱなしと言うのは、実にきつい。 けれど、とヨゼフは頷き、 「痛いよりはマシか」 そう思う。他のヒトは痛い目にも遭っているのだ。 自分はそれに遭わないことが出来るのだから、これくらいは大したことではない。 「にしても」 ここは何処だろう。見上げれば、昨晩より星が綺麗な気がする。 もしかしたら山を登っているのかもしれない。もしそうなら、万々歳だ。 山は街からかなり遠くにあったはずだ。流石にここまで探すわけはない。 「逃げ切った、のか?」 そんなわけはない。 ぼんやりとする頭を振り、ゆっくりと立ち上がる。 「逃げなきゃ、な」 少なくとも、隣国のキツネまでは。そこまで行けば、流石にヤマネコもネコもやってこないだろう。 ネコだって幾ら通り道とは言え、キツネの国まで逃げているとは思わないはずだ。 そもそもキツネの国は半鎖国状態だと聞く。自分がいることが判っても、探すことは出来ない。 そこまで計算すると、ヨゼフは空を見上げ、方向を確認する。 「……売られたのが、都市部で助かったな」 全体的に都市部の方がヒトは売れるらしいし、ネコの国に近い方が都市部になるらしいから、当然と言えば当然かもしれない。 もしヒトが高級奴隷と言う扱いでなかったら――そう思うと、ある意味ではぞっとする。 「ただ壊されるだけで、終わってたかもな」 しかし逃げられる。自分が奴隷だろうと何だろうと、苦痛から逃げられる。 それだけで彼は充分だった。 どれだけ今は苦痛でも、こちらでの奴隷と言う立場も、それに比べれば構わなかった。 そうだ。あれに比べれば――。 「いかん、いかん」 フラッシュバックが再発しそうになり、慌てて頭を振る。 先程よりも鬱になりながら、痺れる身体に鞭を打つ。 「さっさと国境を超えないとな」 東のキツネの国へ向かって、緩慢ながら歩き出した。 ×××
「……それで、三日目の夜には疲労で身体が動かなくなったというわけだ」 そんなに面白い話ではなかっただろう。 要約すれば、悪いことをして、逃げて、そして行き倒れになったと言うだけだ。 普通の犯罪者の話であり、それがヒトのものだったというだけだ。 「そう――そうだったわね」 「俺からすれば、ご主人との出会いの方が驚きだったぜ」 アカギツネの美女で俺のご主人こと、アレナ・ラドヴァーにウインクする。 「そもそも、あんな場所にキツネが出歩いてるなんて、思いもしなかったからな」 「――アレナさんは、キツネの国の出身ではないんですか?」 鬱陶しいウサギだ。しかしご主人は普通に答える。 彼女や他のキツネも基本的に、イヌとオオカミを除いた他種族の人間に対して好き嫌いがないからな。 俺が変なだけだとご主人は言うが。 「ライオンの国にはアカギツネの自治区があるのよ。あんまり知られてないけどね」 「自治区――ですか。キツネの国と接しているのに?」 「そこが奇妙なところなんだけどねえ。キツネはトラとは仲が良いけど、ライオンとは仲が悪いから」 そう言うとご主人は眼を閉じて、ぶつぶつと呟いた。 呪文だったのだろう、ゆっくりと魔力が展開されるのが判る。 「――おりょ?」 「本当は空間に投影する方が判りやすいんだろうけど、そうするとかなりの魔力を消費するからね」 「視界投影の方が判りやすいんじゃねえか。気分は変な感じがするだろうけどな」 「ああ、そういうことですか――」 くい、くい、とご主人は指を動かす。 コンピュータのマウスを動かしているようなものだろう。ご主人も感覚を共有しているらしいし。 「まず、ここがネコの国でしょう? そして左隣がキツネの国」 「その左隣がヤマネコの国で、下がトラの国ですよね」 「そう。で、ヤマネコはネコと仲が良いけれど、トラとキツネとは仲が悪い。キツネはトラとは仲が良いけれど、ネコとヤマネコとは仲が悪い」 俺は視界投影されていないので、自分でイメージを頭の中に浮かべる。 視界に扇形のイメージが浮かび、 「アカギツネの里――つまり自治区は、ヤマネコとキツネの友好政策の一つよ」 「ゆうこう、せいさく」 ウサギが嬉しそうな声を上げる。ウサギは仲良しでいられればそれで良いのだろう。 まあ、俺もキツネとヤマネコが仲が悪くなることは避けたいが。戦争になると改造された俺も駆り出されるだろうし、ご主人の利益になること以外は出来るだけやりたくない。 「元々はヤマネコの国領だったんだけどね。あんまりアカギツネ――キツネの中でも、最も人口が多い種族の一つなんだけどね――それが、移住しすぎて」
「……移住、というのは?」 「キツネは大戦からイヌが嫌いだから、出来るだけ離れたいって思ったんでしょうね。現在のキツネの人口減少は、そのせいもあるかも」 「……国一つは離れているのに、ですか」 「まあね。最近はネコの国に移住したイヌもいるし」 先ほどまで嬉しそうな声を上げていたのに、見る影もないほど悄然とした様子のウサギ。 俺は少しだけ可哀相になり、助け舟を出してやる。 「まあ、それだけじゃないだろう。キツネは基本的に生物の限界を超えやすいし、ネコやトラよりも長命だから生殖本能が低いんじゃないか?」 「まあ、そういうのもあるわね。あと、アカギツネは元々ヤマネコの国領に住んでいたしね」 私とかは、特にそういう一族だし。 ご主人がそう続けると、少しだけ持ち直したウサギは訝しげな顔をする。 「どういうことですか? 一族というのは――」 「森番の一族というのがあってね。ヤマネコはキツネは嫌いだけど、アカギツネは嫌いじゃないのよ」 「だから友好政策という名目も、あながち間違いじゃねえな――っと、こんな時間か」 視界のイメージを切ると、ウサギはゆっくりとご主人に近づいていた。 大胆不敵なウサギの後頭部をとりあえず指で弾き、ご主人に向かう。 「そろそろ行くぞ、ご主人。遅くても早くても変わらないなら、早い方が良い」 「……そういえば、バイト払いと現金払いが込みでしたね。何処へ行く気ですか?」 「粘土掘りのバイト。俺はヒトだから、ご主人がついていないと行けないじゃないか」 そう言うと、ウサギもご主人も心配そうな表情をする。 ウサギの方が先に口を開き、 「あの吹雪の中を、ヒトが堪えられるんですか? 家事手伝いとかの方が、」 「出来るんだよ。あんたが気にすることじゃない」 ウサギが喋っている途中でばっさりと切り捨てる。 ウサギは嫌いなはずの俺を心配そうに見るが、そんな心配は無用だ。 (何しろ俺は、¨改造人間¨だからな) そんなことを考えていると、ウサギはふうと溜息をつく。 「まあ、あなたが構わないのなら構いませんけどね」 そして俺を興味深そうに見つめ、 「案内しますよ。行く途中で逃げないとも判りませんからね」 「逃げるなんてしないが、頼んだ――ほれ、ご主人も早く立て」 ご主人を立たせるとウサギと一緒に真っ白な部屋を出る。 病院のような建物の中を眺めながら、俺とご主人はウサギの後についていった。 ××× 『恐ろしいな、お前らは――愛が、全くない』 ここに来たヒト奴隷は笑いながら、そんなことを言ったらしい。 私も学会を辞め、受付をやるようになってから随分と経つが、こんなことを言われるのは絶対に初めてだと思う。 ヒト奴隷はもちろん、他種族の人間だってそんなことは言わないだろう。 まさかそれが本当だとは思っていなかった。
『ああ、言ったけど。それがどうかしたのか?』 そんな風に普通にされたら、逆に言葉がなくなるのは仕方がないことだろう。 私はひどく鬱々としながら、ぼそぼそと呟く。 「恐ろしい、とか。愛が全くない、とか」 ウサギに言う言葉じゃないだろう。そんな物騒な言葉は。 臆病とか言われたことはあっても、そんなことは言われたことがない。いや、別に言われたいわけじゃないが。 私は何となく悔しく思いながらも、ついてくるヒト奴隷とキツネの女性の方を見た。 「だって一週間で終わるんでしょう。残った二週間はどうすれば良いのよ?」 「まあ治療が終わったときのことは、そのとき考えれば良いんじゃないか?」 「そう言われればそうだけどね――と。そういえば、受付さん」 ちょうど眺めていたそのとき、キツネの女性が私に微笑みかけてきた。 「何でしょう?」 「あなたは私たちの担当になったのよね? 良かったら名前を聞きたいんだけど」 どうしようか、考える。考えて、そして口を開く。 「……アイシェ・ポースです」 躊躇いながらも名前を告げた。この二人が学会のことを知っているとは思えなかったからだ。 キツネの女性がよっぽど博識か、専門的な魔法使いであればともかく。 「アイシェ・ポース――うん、良い名前ね」 キツネの女性はふふ、と微笑む。 「そうかぁ? 何だか語呂が合ってない気がするけどな」 ……こっちはまた、随分と鬱になるようなことを言ってくれる。 ヒトのくせに、と思う。何故こうも飄々としているのだろうか。 自分が売り払うことだって出来るのに。ウサギだからと舐められている? 「いや――――」 自分から楽しそうにご主人と呼んでいる女性にすら、ずばずばとものを言うヒトだ。誰にでもこうだと見て、間違いないだろう。 私が頭を振っていると、ヒトは声をかけてきた。 「なあ。あんたは俺たちの担当になったんだよな?」 「まあ――そうですね、はい」 「なら俺はバイトの方の先輩に聞くから、ご主人の相手をしてやってくれないか?」 先輩、だと。そんなものを聞けるだけの余力が残っているだろうか。 もし残っていたとしても、答えるだけの余力が相手に残っていないだろう。 まあ役得だと内心で暗い笑みを浮かべながら、頷く。 「構いませんよ。何なら今からでも――」
しかしキツネの女性は焦ったように話へと割り込んでくる。 「ちょ、ちょっと待ってよ。相手って、¨あれ¨でしょう? あの、その……」 「別に良いじゃねえか。どうせ操を誓った相手もいないわけだし。俺は気にしないぜ」 ヒトはげらげらと下品に笑う。 ……こういうときはたとえそういう対象として見ていなくとも、こういうときは独占欲を見せるものではないだろうか。 男として何処かが壊れているのだろうか、とさえ思う。 「普通に観光するよりはずっとウサギのことが判るだろうが。一石二鳥と思った方が良いぜ」 「でも――私は、その。そういうことをしに来たわけじゃないし――」 「つまらない観光をするくらいなら、そういうのも悪くないだろうが。女同士に嫉妬するほど俺も度量が狭くないぜ」 判っていてやっているのか――やっぱり、よく判らないヒトだ。 しかし、そこでヒトは私を見つめてくる。見つめると言うより睨みつけるの方が正しいかもしれない。 「ウサギにこんなことを言うのもどうかと思うけどな――泣かせるんじゃねえぞ?」 「……は?」 私が聞き返すと、ヒトは猛禽のように鋭い目つきで私を睨みつけた。 「ご主人を泣かしたら、ウサギの国ごと潰す――よく覚えておけよ」 私はその眼つきにびしりと固まってしまった。 しかしそれも無理はないと思う。どちらが恐ろしいと言うのだろう? 獣人とは言え臆病なウサギと、奴隷のはずなのにとても強靭な意志を持つヒトの、どちらが恐ろしいと言うのだろうか? 出来る出来ないではない。絶対にやると、その鋭い眼は言っていた。 私が固まっていると、キツネの女性は呆れたような困ったような表情をして、ヒトを宥める。
「ちょっとちょっと――ヨゼフが連れてきたのに、何を言ってるのよ」 「いいや、これだけは言わせてもらうぜ」 そう言うと、ヒトはひどく真剣な目つきで私を睨みつける。 「俺は、ご主人を愛してるんだ。一ミリでも傷を付けやがったら、承知しないからな」 それだけ言うと、ヒトはふんと鼻を鳴らし、廊下を先に行ってしまった。 「俺はもう大丈夫だから治療に行ってこい、ご主人」 「い、いや――でも、見張っていないと、駄目なんじゃないの?」 顔を赤らめている彼女の生真面目さと鈍感さに、私は弱々しい笑みを浮かべる。 「大丈夫ですよ――彼は、あなたを置いて行ったりはしない」 それは判る。あれほど強靭な意志は、ウサギにはない。 ああいうものなのだろうかと、私は思う。 愛とはああいうものなのだろうか? しかし、だとしたら、何と――。 「大丈夫? 顔が真っ青だけど」 「い、いえ――大丈夫です。早く行きましょう」 私は話しかけられて、慌てて思考を案内へと戻す。 しかし私の意識にはヨゼフと言うヒトの、遠ざかる背中が焼きついていた。
途中までsageとsageを間違えていたという恐ろしい事態に。 ほんとすみません、いやほんとに。ヨセフ・ラダに申し訳ないです、ほんとに。 厚かましいのですがタイトルは『きつねものがたり』で。
おおー、掴みはばっちりだ。 続き楽しみにしてる。
乙〜 場面転換多いせいか、ちと混乱するかな
カルトといいヨゼフといい、狐の召使いって我が強いなw むしろ主人を振り回してる感がたまらない。 狐も狐で玄成のような強いのがいるし、バリエーション豊かだ。 最近狐が豊作で狐好きとしては嬉しい限り。 続きに期待してます。
>>131 >狐の召使いって我が強いなw
>狐も狐で玄成のような強いのがいるし
景佳くん「……都会ってこわいね」
かなえたん「山の中の方がようございます」
最近の狐耳国、この二人↑が都に出たら半日で身ぐるみはがされそうだw
レムがメドウズにイタズラされそうな予感! 処女を失う前にモノマ氏族から離脱できるだろうか……
規制軽くなってる?
規制は大幅に解除された模様
本当に規制は勘弁してもらいたいよな。 避難所があるからまだいいけど、やっぱりこっちが本スレなんだから。
137 :
鋼の山脈 :2009/12/01(火) 02:09:07 ID:7yXoSmUd
ろだ見ると結構な頻度で作品が(ネタ話含めて)投下されてるな。 規制に加えて避難所で投下宣言されてるのに本スレで感想書くのも変な感じがするのもあって、こっちに書き込む人が減ってるんだろうけど。 作者の方は規制されてる場合は本スレへの投下宣言を書き込める人に頼んでみて欲しい。 せっかく作品投下が多いのに勿体ないよ。
139 :
名無しさん@ピンキー :2009/12/01(火) 18:23:34 ID:qSRpmlVT
いっそ完全に避難所へ移行も妙案かと。
ある日なんの前触れもなく消滅する確率は避難所のほうが高くね? プラス、初めてこの板に来た人が、過去作の感想を書けるふいんきが欲しい。
新規が見込めない状態は衰退を加速化するよ
>>137 いつレムがやられてしまうのかドキドキ。
しかし、「今さら〜〜」の開き直りはもはやすげぇw
完全移行はいらんだろう。のんびり行こうぜ。過疎なんて今まで何度もあった。
むしろ、ここ最近の投下作品は保管庫に入れられてないことの方がな。 現保管庫は実質管理人不在なんだから、書く人が自分で保管庫に入れてもらうしかないんだが。
それは違う wikiなんだから誰でも入れられるの
作者でなくても有志が入れていい。143も手伝ってくれ。 いつもはだいたいスレの終わり頃に棚卸的にそのスレの投稿を有志が入れる感じだったんだけどね。
作者が自分で纏めて保管するって言ってる作品もあるのを忘れずに。 そういうのも尊重しないとな。
そうなのか、最近に投下のでは誰のをまとめちゃだめってのはある?
ああ、だから更新されてないのか。 ……読みたい作品がまだ保存されてなくて、過去ログもなかったときとか涙目過ぎるが
ふと思いつきで投下して、書いたことすら忘れていたのを、 有志の人が更新してくれてビックリしちゃう俺のようなズボラもいるぜ! すんません、ありがとうございます…まず書いたこと忘れてる自分に驚くわ。
さぁ、思い出したなら続きを書け!書くんだ!ジョー!
とりあえず前スレまでの(17スレまたは避難所5で長編を投下されてる作者の作品のぞく)は 保管されたはずだから、スレとロダを見れば涙目はないと思う。
旧保管庫にも細かな更新してくれてるみたいだけど、 あっちも現役でok? あれ本来の管理者が不在だから、 一度うぷしちゃうと二度と消せなくなる仕様だよね? もしかして新保管庫wikiを知らない人も多い…?
過疎ってるようなのでこちらに。 >ろだの匿名希望さんの小話 実に猫らしい話だった しかし前半と後半の落差がwww
規制狐さんは自分で保管って言ってたような… いや、ご本人がやってるなら別にいいのですが。
155 :
鋼の山脈 :2009/12/09(水) 22:36:52 ID:bqaNsHtk
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http://adder.sakura.ne.jp/nkmm/clip/img/177.txt
>>155 ああ、Mさんはそんな感じで吸収されたのかww
エナジードレインかと思っていたが、まさかダイレクトとは
>>155 乙ー
色々と突っ込みがいのあるAAは置いといて
バルフィンかっこいいねバルフィン……とか思った俺
後、順調にフラグ立てしてる気がするゼダの明日はどっち何だろうか
158 :
名無しさん@ピンキー :2009/12/10(木) 02:05:38 ID:So7LOEL7
ゼダがかわいくて仕方ない
漏らした小便の匂いから牡牝の区別がつきそうなモノだが モノマの狼達はイヌ科なのに鼻が利かない様子 レムちゃん貞操が無事でヨカッタネ 今後いつ犯されてもおかしくないけど
まるで鉄壁ミニスカのようなレムの貞操。
精霊のご加護です。 レムたんはわしのもんじゃああああ! という精霊の叫びが聞こえてきましたので間違いありません。 おや、来客かな…?
新保管庫wikiってのは
>>5 のやつでいいんですか?
>>162 Exactly!(そのとおりでございます)
どんだけ幸せなんだよあの馬鹿犬www
ばあさんや、万獣の詩の更新はまだかいのお
おじいさん、ほらそこに柱の角があるでしょう (読んだ記憶を失えば何度でも新作の気持ちで読めるお☆)
柱自慰の快感でメモリーロストしろって意味だよね お爺さんだけに
じゃあ俺はここに意味ありげに角のしっかりした豆腐を用意しておこう
お豆腐でなんて、わたし初めて・・・
せめて巨根蛇君による溺死にしてやれよw
172 :
規制狐 :2009/12/22(火) 11:30:38 ID:eatP2fAw
どうも、食べる事を規制された規制狐です。 この年になって虫歯放置とかどんだけー… ところで今年はクリスマスネタって何かやりますか? まあ中止なら中止で別にまったく問題は無いのですが(笑)
あと2日半しかないじゃないか。 だが逆に考えるとあと75時間ほどあるという計算になる。 これだけの時間があればポケモンを一周すらも可能 ちなみにバレンタインまではあと一ヵ月半ほどなわけだが
おりしも明日は休日か。
おしりも に見えた
あーもう 何でこういうどうでもいい内容の時だけ規制ににひっかからないんだよ!
>>172 一回だけツッコミを入れさせてくれ。
ラブプラスネタかよ!w
タイトル 僕の奴隷は愚鈍で困る プロローグ 昨日は人生有数の厄日だった。 始まりは学生時代の友人たちにばったり再会し、飲みに行こうと誘われたことだ。 彼らは猫の資産家のどら息子達で、狼の貧乏学生であった僕になんやかやと絡んできては、 まあいろいろといざこざをおこしたものだがそれも今は懐かしき日々。 僕もかつて青春の一時を共有した友と旧交を温めることになんら異存はなく、ともに街に繰り 出したわけだ。そこまではいい。 一軒、二軒とハシゴし、ずいぶんと酒が回りそろそろお開きにしようとしたところで、 彼らはあと一軒だけ、と執拗に僕を引きとめた。 この時に、僕はおかしいと感づくべきだったのだ。 半ば引きずられるようにして連れて行かれた先は賭博場だった。 しかもその時は気付かなかった(酔っていたのだ、僕は)が、明らかに違法の地下賭博場である。 僕は今も昔も貧乏だ、博打は好かないと渋る僕を彼らはまあまあ1ゲームだけとねじり倒すよう にして卓につかせ、仕方なく僕は酔った頭でカードを繰り、
勝ってしまった。 博打の打ち方を知らない(本人たちはそう思っていないだろうが)素人である彼ら3人を 一切の情け容赦なく叩きのめし、尻尾の毛までむしり取る勢いで勝ってしまったのである。 (繰り返すが、ひどく酔っていたのだ僕は!) ひげをぶるぶると震わせ尻尾を全開に膨らませた彼らを見てこれは少し勝ちすぎたかと反省 したものの、何せ彼らは金持ちのボンボンである。後で詫びに一杯おごればいいだろうと 酔った頭で結論付けたところで、美しい白猫のディーラーが告げた僕の勝ち分、 即ち彼らの負け分に冷や水を浴びせられた。 一人頭1800セパタ。総額5400セパタ。 茫然とした。5400セパタと言えば僕の年収よりも大きい金額である。 何の冗談かと問う僕にディーラーが答えることには、僕たちの打っていたレートは最初の時点 で何と一般の10倍、最後の方でやけくそになった彼らがさらにレートを引き上げたため、 倍率10倍さらにドンの100倍であると。 彼らがそれを僕に黙っていたこと、恐らくは「堅物ウォルター」をカモにしようともくろん でいたのだろうことには腹が立ったが、それ以上に博打でそんな金を動かすなどあまりにバカ バカしかった。その勝負はまとめてお流れということにしようとしたのだが、そうは問屋が卸 さなかったのが瘴気をまき散らす毒花の如きディーラーの笑顔である。 『負け分は体を売ってでも都合するのが、この賭博場での唯一絶対のルールですわ』 体を売るとは貞操的な意味合いではない。4人まとめてガクガク震えながら頭を寄せ合って 妥協案を捻り出し、渋るディーラーもどうにか承服させたわけなのだが……。 きーんこーん ドアベルが鳴る。酒のせいばかりでなく軋みを上げる頭を抱えながらのろのろと玄関まで体 を引きずる。
扉を開けて目に入ったのは嫣然とした笑みを浮かべる白猫の美女。 「おはようございますミスター。昨夜の勝ち分をお届けにあがりましたわ」 ……そうかい、ディーラーである君がわざわざ。昨日の今日で、全くご苦労なことで。 彼女の肩越しに覗けば、確かに黒いマントと外套を体に巻きつけた勝ち分が幽霊のように 佇んでいる。 白猫が黒マントの勝ち分を僕の前に押しやり、その頭をすっぽりと覆い隠しているフードを 背後からおもむろに取り去った。 「本当によろしいのでしょうかミスター。美しくないとは言いませんが、中古でその上ひどい 傷物。あくまで私見ですが、ミスターの得た勝ち分の支払いとしてはいささか物足りないかと」 「いいんだそれは。合意の上なんだから」 本当ならそれだって好き好んで受け取りたいものじゃないんだと、わかっているだろうに この性悪猫が。まったく、なぜ僕がこんなモノを。 「……まあよろしいでしょう。こちらが権利書になります。では、確かにお届けしました」 茶封筒を僕に押しつけて、肩を竦めて踵を返す白猫。尻尾の先まですらりと美しいのが余計 勘に触る。 「ああ、そうでした。最後に一つ」 「……まだ何かあるのかい」 もういいからさっさと帰ってくれないか。 「昨夜は痛快な出し物をありがとうございました。ミスターのような方を当賭博場はいつでも 歓迎いたしますわ」 昨夜とは違う白薔薇が咲き誇るような笑顔だが、生憎僕は既に固く決意していることがある。 「僕は、今後絶対に、博打だけは打たない」 それは残念、と大して残念そうでもなくため息をつくと、今度こそ白猫は万人が見とれる だろう腹立たしいくらい優雅なパ・ドゥ・シャで去っていった。 (断わっておくが、僕は断じて見とれたりしていない。歩調に合わせ優美な曲線を描いて揺れる 白い尻尾などもってのほかだ) 残されたのは、重い重いため息をつく僕と、佇む勝ち分。 「……まずは入りなさい」 「はい、旦那様」 急いで静かに扉を閉める。こんなところご近所に見られたら事だよ、全く。 「……ウォルター・グィンガムだ。見ての通りの狼で、不本意ながら今日から僕が君の主人に なる。君の名は?」
そ、そそそそうだ! ヒト奴隷! 最近親父が飽きたお下がりの、いや譲ってもらった使い 古しの、じゃじゃなくて中古の……と、とにかくヒト奴隷持ってんだよオレ! 若いメスヒト でさ! ちょこっと、ほんとーにちょこっとだけ小さい傷がついてるかもだけど、具合は保証 するから! そいつで負け分の代わりになるだろ? なるよな? なるって言ってくれぇ!』 小さな頭が僅かに傾ぐ。ヒトの頭に耳は無い。いやあることはあるが、髪が肩まであれば 十分隠れてしまうくらいに小さいのだという。あるべきものがあるべきところに見当たらない というのは、どうにも違和感がある。 外にいて冷えたのだろう、血の気の引いた唇がか細い声を紡ぐ。 「私は奴隷です。旦那様のお好きなようにお呼びください」 なんてひどい棒読み。希望とか生気とか、そういう生きるために必要な要素の一切が抜け落 ちている感じだ。目玉なんか腐ったサバと競っても負けそうなくらい生きが悪い。 何より、顔が 「いや、あるだろう。前のところでの呼び名とか、……落ちる前の名前とか」 光の全くないぼやけた瞳の焦点が、ほんの少しだけ絞られる。 「落ちる前は、中山 雪華。こちら風に申し上げれば、ユキカ ナカヤマ と」 「そうか。ではユキカと呼ぼう。構わないかい?」 「旦那様のお好きなように」 僕はこれまでヒトの境遇に大して興味を払ったことなど無かった。新聞で博物館でのヒト少 年餓死ショーの記事を見たときだって、ただ『かわいそうに』と思った、それだけだった。 だというのに、この腹の底から湧きあがってくる衝動は何なのだろう。 ……せっかく、可愛い顔をしているのに。 「そうか。ではとりあえず、これからよろしくだ。ユキカ」 差し出した右手をぼんやりと眺めるユキカの手を強引に握り、形ばかりの握手を交わす。 触れた瞬間彼女の体が強張ったのは無視。 ユキカの額から左頬にかけて走る、猫の爪で引き裂かれたかのような一本の傷跡を意識しない ように努めながら、僕はあいつを金輪際友人と思わないことを決めた。
あえて聖夜にこれをもってくるセンスに乾杯
183 :
規制狐 :2009/12/24(木) 23:59:19 ID:68tinEVB
そういえば今日は聖夜でした……。 清しこの夜になんてもん書いてんだ自分KYにもほどがある。 これからちょっとずつ幸せになっていく予定ですので、よろしければしばらく お付き合いください。
今日は降誕節。猫神ニャハウェがこの世に降り立ち、猫族100万年の繁栄を約束したとされる 日である。星々は祝福を称えて輝き、木々は主を迎える喜びに打ち震える。そして人々は世界に 感謝し、家族を労い、慎ましい宴と祈りで我らが父を寿ぐ。 そんな降誕節本来の姿を、たまには思い出せ学生ども。 僕は誰もいない研究室で、深く、深ぁーくため息をついた。 別にいいんだよ。商魂たくましい猫たちが降誕節商戦に血道をあげようが、本来の意義とか意 味とかはるか彼方にうっちゃって、国を挙げての資本主義&恋愛主義応援フェアになってようが 。イルミネーションに彩られたお祭りムードの町並みを眺めればもう若者とは言えない僕だって どこか心が浮き立つものだし、取るに足りないものとはいえ「先生、めりくりー」とか言ってプ レゼントを寄こしてくれたりすればやはり嬉しい。「これあげるから単位ちょーだい」と続こう がね。本当に馬鹿な学生ほど可愛いものだよ。 しかし、しかしだ。「じゃあアタシ彼氏と約束が」「彼女と約束が」「恋人が」「嫁が」「召 使が」「奴隷が」と異口同音に、揃いも揃って、一人残らず早引けするとなれば話は別だ! まだ午前中だぞ! せめて夜まで待てないのか色ボケどもが! 特に最後、若いのに爛れた関係 にどっぷりハマってるっぽいのは先生どうかと思うわけだが! 「グィンガム先生まだいらっしゃったんですか? 俺もカミさん待たせてるんで早く帰りたいん ですがね」 「……ああすまない。すぐに出るよ。……はぁ〜」 見知った警備員にこれ見よがしに鍵束をチャリチャリ回されるにいたって、僕は仕方なく重い 腰を上げた。 いや、別にいいんだよ本当に。学生どころか学校中が浮かれて機能停止するのは毎年恒例のこ とだし、僕も相手がいる年には便乗して十分楽しんだものだ。ただね…… 「どんな顔して家に帰れというんだ……」 「どんなもこんなも、先生の顔はその凶悪な狼面一つでしょうが。ほら寂しい独り身はとっとと 帰った帰った」 ……凶悪って、寂しいって…… 「……いや、僕もつい最近同居人ができてね? それで少し戸惑ってるわけだ」 嘘はついていない、僕の腰が重い理由はまさにそれだ。嘘は確かについていないがなぜこんな 悲しい見栄を張っているんだ僕は。もうこの手の虚勢に意味を見いだせる年でもないのに。虚し い。 「ほへえ、そいつはめでたい。なら尚更早く帰ってやらなくきゃですね。女はこういうイベント にはうるさいですから」 「……ああ、そうだね」 どうあっても僕をとっとと追い出したいんだね、わかったとも。帰るともさ。 ……女はイベントにうるさい、か。彼女にもそんな感性が残っているのだろうか。
例年は買わない花束とケーキを抱えて自宅の玄関前に立ったところで、僕ははた、と一つの問 題に気付いた。 彼女は、ユキカは本当に家の中でバカ正直に待っているのだろうか? 僕は結局あの後、今日は早目に戻るから細かい話は後で、とりあえず好きにするように、とそ れだけ言って出てきた。無論玄関は施錠してきたが、逃げ出そうと思えば窓からだって逃げ出せ る。人間の手から逃れたいと願うならば絶好のチャンスではないだろうか。いや、あの様子では そんな願いを抱けているものかも怪しいが、しかし……。 彼女が消えているのが怖いとか、そういう話ではない。もしそうなら正直僕としてはすっきり と気が楽になる。そうではなくて、この場で真に差し迫った問題とは即ち、 普段食べもしないケーキを持って年甲斐もなくはしゃいで帰って見せて、いるかどうかも分か らない相手とのコミュニケーションを試みるか否か、である。 ユキカが居ればまだいい。その試みの成否はともかくとしてだ。もし彼女が居なかったら…… それは、かなり寒くはないだろうか? 僕はもう100歳を超えているのだが……。 「ぶえっくしょい!!」 くしゃみと一緒に鼻の上に積もっていた雪が飛んだ。いつのまにか随分と立ち尽くしていたよ うだ。うんまあ、体が冷えるか、心が寒くなるか、悪くしても現状と大して変わらないな。 一つ深呼吸をして、ドアノブに手を掛ける。 よし、やるぞ。がんばれウォルターお前は強い。 ゆっくりとドアノブを回して、そうして一気に……! 「Merry Merry X’nyass!! 降誕節おめでとう! どうだいユキカ、我が 家には慣れたかな!?」 ………… 寒い。心もそうだが室温も寒い。彼女がこの家にいるのならば暖房の一つくらい焚くだろうか ら、つまりは出て行ったのだろう。はは、馬鹿だな僕は。 「心も体も寒かったらただのダブルパンチじゃないかアホめ……!」 何が現状と大して変わらないだ。こんな辛くて侘しい降誕節は初めてだぞ。くそっ、いい年こ いて涙が出そうだ。 「お帰りなさいませ旦那様。お出迎えが遅れて申し訳ありません」 「うおっ!?」 しばし空を眺めてホワイトクリスニャスの感慨に浸っていた僕に(他意は無い。人間どんな時 も空を眺めるくらいの余裕は欲しいものだ)、唐突に声質は良いのにガランドウな声が掛けられ た。 「な、何だいたのか……。逃げ出したのかと思ったよ」 「私は奴隷です。何事も旦那様のお気に召すように」 そう言うのならまずその意思やら生気やらの欠片も感じられない目をどうにかしてほしいのだ が。 「しかし寒いな。暖房を焚かずにいたのか?」 ヒトは寒さにも弱いと聞くが君は大丈夫か、と続けようとしてぎょっとした。 な、なぜにそんな顔面を蒼白にして全身を引きつらせてガタガタ震えているんだ!?。
「おいどうした!? やっぱり寒いんじゃ」 「も、もうしわけありません……。愚鈍なヒトゆえに……気が利かず……!」 寒さに震えているわけじゃ無かった。ただでさえ胡乱な目の焦点が悲しいくらいさまよってい る。空っぽな声に初めて彼女の感情が色濃く滲んだ。 「旦那様のものに……勝手に触れてはならないと……そればかりで……!」 寒い日に部屋を暖めておかなかった。それが、そんなことが、歯の根が合わなくなるほど恐ろ しいことかい……。 「別に僕は怒っていない。ほら、降誕節のお祝いだ。一緒に食おう」 できるだけ優しく言ってケーキの箱を差し出す。少しは安心してくれたろうか。ほら大丈夫だ とも、わざわざケーキ箱で殴りかかるバカはいないだろう? ユキカは怒られないことに面喰っていたようだが、次第に緊張を解いて血の気の引いた震える 指でケーキ箱を受け取った。まだ恐怖が抜けていないのか……って、ちょっと待て。 「ヒッ!?」 思わずユキカの青白い手を掴む。ユキカの全身が再び強張り、ケーキ箱が落ちて転がった。 掴んだ手は氷のように冷たい。ヒトのまともな体温など知らないが蛇並みだぞこの冷たさは。 「こんなに冷え切っているのに暖房も付けずにいたのか!? 馬鹿か君は!」 よく見れば血の気が無いのも歯の根が合わないのもそれこそ恐怖のせいだけではない。唇なん か完全に紫色に染まっている。 「あ、あ……申し訳……」 「ええい、来なさい!」 僕の剣幕にユキカが怯えるのがわかったが、構っていられない。手を掴んだまま彼女をバスル ームまで引きずっていく。 「え……え……ひぃっ!」 バスルームの扉を蹴り開けたところでユキカが暴れ出した。が、知らん。 「やだ……やだぁッ! ごめんなさい! ごめんなさいぃ!」 「黙れ動くなそこにいろッ!」 ヒトメスの力は本当に弱い。本人は渾身の力で暴れているつもりなんだろうが、その辺の子供 がじゃれついてくるのだってもう少し力強い。バスルームに引きずり込んで首根っこ押えたまま 一喝すると、しゃくりあげながら大人しくなった。大変な誤解を受けているような気がするが、 僕は今この時だけ気にしないことに決めた。 蛇口のバルブを開き、魔洸湯沸かし器のスイッチを入れて(蛇口を開いたあたりでまたユキカ がわめき始めたが当然無視)、ちょちょいと魔法陣を展開すればあら不思議、あっという間にバ スタブがお湯で一杯に。狼の僕でも魔洸機器と併用すればこのくらいの小技はできるのだ。念の ため指を突っ込む。うん、適温。 そうしてこの世の終わりのような顔をしているユキカの襟首をひっつかんで、 バスタブの中に叩き込んだ。
「いやーッ!!」 「やかましい!」 はたから見たら鬼畜だな、僕。ユキカの小さな体がバスタブに沈み、しぶきが舞い上がって僕 もろともずぶぬれにした。 「ぶあっ……!? はっ……はっ……、はあっ……!?」 溺れはしないだろう。首からは上はお湯に沈まないよう、気を使って手を離さずに叩きこんだ のだから。おかげで僕まで服ごと入浴したようなありさまだ。 「いいか!? 頭の天辺から足の先まで、芯から温まるまで出てくるな!」 ユキカはまだこんらんしている。 「わかったかッ!?」 顔をひきつらせてがくがくと頷くユキカを後にバスルームを出た。 すっかり忘れていたが、暖房はまだつけていない。 被った湯は暖かかったが、世の中には気化熱というものがある。 結果。 「う、うおおおお! 寒いッ、冷たいッ!!」 服の下に毛皮があろうと、寒いものは寒いし冷たいものは冷たい。ぺっとり地肌に張り付く毛 皮がむしろ不快だ。全く、それもこれもユキカのせいだ。あの様子では僕が出て行ってからまと もに暖をとろうともしなかったんだろう。ああ、確かに愚鈍だ認めてやろう。君は愚鈍なヒトメ スだよユキカ。くそったれが! 急いで濡れた服を脱ぎ、ダイニングに暖房を焚きに行ったところで嗅覚に何かが引っ掛かった。 香ばしいというか食欲をそそるというか、とにかくそんな匂い。 匂いのもとを辿ると、順当にキッチンに辿り着いた。なかなかおいしそうな、後は温めるだけ といった感じの料理が数品。僕には一切身に覚えがないが……。 「なるほど、自分がどうでも奴隷の仕事だけはきっちりやりおおせるわけか」 行動原理は理解した。したが納得はできない。率直に言って不快だ。それは僕ら狼が最も蔑む 在り方である。まさかもとからそんな人格でもあるまいに、どういう教育を施したらあれだけ徹 底して不快なヒトが出来上がるのか想像もできない。 とりあえずユキカの元主人に会ったらまず一発殴ろう。次会うまでに何発分溜まるか分かった ものじゃないが、死にはしないよな。うん、きっと大丈夫。 「あ、ユキカの着替えどうしよう……」 しまった服は剥ぐべきだったか。
ユキカには僕の服を着せた。無理でも着せた。素肌に男物の巨大なシャツ1枚だけという、防 寒という観点からは余りに頼りない格好だが、部屋はもう暖まっているし上からドカドカ毛布を 羽織らせているから問題ない。問題ないったら問題ない。 今は2人でユキカの作った料理をつついているところだ。ケーキも、箱から出した時点で原形 をとどめていなかったが、降誕節の主役としてテーブルの中央に陣取っている。 ……いや、多少潰れても食えないことないし、二つで800センタもしたし…… ちなみに、最初ユキカは一緒のテーブルに着こうとしなかった。先に食べたのかと聞けば食べ てないという。もしやと思って聞けばやはり僕が出てから何も口にしていなかったそうだ。「食 べていいと言われなかった」かららしい。本当に死ぬ気かこの馬鹿愚鈍ヒトメスめ、と一通り怒 って叱りつけて、僕は心底疲れ切った。帰ったらヒトメスの凍死死体に出迎えられなかっただけ 僕は幸運だったようだ。聖夜の奇跡をありがとうニャハウェ神。 ……なんだろうね。召使って一般的に、いれば生活が楽になるものなんじゃないのだろうか。 僕は今日だけで1週間ぶんの気力体力を使い果たした気分だ。こんなモノを好き好んで飼うなん て、金持ち連中はきっと頭がおかしいんだろう。 「……旦那様……」 「なんだい」 ごめんなさいも申し訳ありませんも、僕はもうお腹いっぱいだ。 「……私などに、お情けを、掛けて、下さって……? ありがとうございます……?」 突っ込みどころはたくさんある。怯え以外の感情だってこもってやしない。けれど 「謝られるよりはマシか」 ゆっくりと手を伸ばす。身を竦めるユキカの頭を掴んで、わしわしとかき回した。 手を伸ばされたからって、必ず痛い目にあわせられる訳じゃない。そんなことから教え直さなけ ればいけないとは、本当にため息が出る。僕はまだ未婚なのに、何が悲しゅうてこんな手足が伸 びきったでっかい子供をもたなければならないんだ。ニャンタクロースのプレゼントにしては余 りにスパルタ過ぎる。 しかも、なにかもう放り出せる気がしない当たりが本当にどうしようもない。 「なにはともあれ、メリークリスニャスだユキカ。少しずつ頑張っていこう」 「私は奴隷です。旦那様のお気に召すように」 よし、元主人殴る。
>>183 とうとうやりおった!
今後どうなるんだこの二人w
>>185 新作キター
キヨカと同系統の奴隷さんだな。
ぜひ幸せになって頂きたい。
192 :
規制狐 :2009/12/26(土) 23:16:53 ID:090stfcd
今年最後の投下です ↓
「今日は君の部屋を作ろうと思う」 今年最後の朝。対面の少女が我が家に来てから急に味の良くなったコーヒーを流し込みながら、 内心前々から決めていた予定を告げる。 「私の部屋、ですか」 お、反応したな。 「そうだ。いままでは客間で寝起きしてもらっていたが、いつまでもそういうわけにはいかないだろう。 一つ物置になっている部屋があるんだが、そこを片して使ってもらおうと考えていてね」 僕の書斎に入りきらない本やら資料やらを放り込んでいた部屋なのだが、長年の蓄積の結果やすやすと 手をつけられない魔窟と化している。 この休みを丸々一日費やして、一気に決着をつけてしまおうというわけだ。 「ですが、私は奴隷です。部屋など」 「そのフレーズは禁止したぞユキカ。いいから手伝いなさい」 なんだかんだで年頃の女の子だ。本来部屋の一つも無くては色々と困るはずだろう。 ……なぜ普段以上に陰鬱な顔をしているんだ?
扉を開くと、薄暗く埃っぽい室内を埋め尽くす本、本、本に資料や書類、草稿、紙束。 薄暗いのは書棚が窓を塞いでいるからなのだが、それでもなお収まりきらない本が床に山と積みあがっている。 紐でとじた原稿用紙や新聞のスクラップが適当な箱に放り込まれたまま、埃でまだらに染まっていた。 足の踏み場もないとはこのことだ。こんなに酷かったか? この部屋。 「……とりあえず、僕の書斎に全部運ぼう。入りきらなかったらその時だ」 「はい、旦那様」 持ちあげた本の表紙に溜まった埃を吹き散らす。舞い上がる埃が口の中に入り込み、思わず咳き込んだ。 こうなると、もう少し気を使って掃除しておかなかったことが悔やまれる。 ぐ、気に入っているセーターの袖にべったりと埃が。 「旦那様がこんな仕事をなさらずとも……」 「君一人で全部終わるか? そもそも、こういう作業には家人で協力して当たるものだ」 そう。だから、八つ当たりしたりしないからさりげなく距離を取るのをやめてくれ。 起居を共にして今日で七日目。ユキカのこういう振る舞いにも多少は慣れてきたが、それでもこう、 地味にじわじわとだね……。 ここのところ、ため息が増えて困る。 こちらの気も知らず、ユキカは重い本を抱えててきぱきと動き回っている。 以外にもこの子は家事に関してならば実に手際よく働くのだ。 いつの間にか用意していた固く絞った濡れ雑巾で、一つ一つ埃を拭き取りながら速やかに運びだしていく。 ああ、不用意に触らずそうすればよかったのか。 しかし、それは当然僕がそんな指示を出したのではないわけで。 「ユキカ」 「はい、旦那様」 いや、文句があるんじゃないんだ。ただ、彼女が自分で考えて雑巾を用意していることに驚いた。 考えてみれば料理なんかは僕が何も言わずとも色々作っているわけだから、丸っきり思考力判断力が欠けている わけでもないんだよな。 「……僕の分の雑巾も持ってきてくれ」 「はい旦那様。ここに」 彼女のとは別に既に用意されていた雑巾を受け取る。こう、なんだ。この子に関することで、 こんな気持ちになるのは初めてだな。 「ありがとう。気が利くな君は」 ユキカの目がほんの少しだけ見開かれる。 「……ありがとうございます」 「さて、張り切っていこうか」 「はい、旦那様」 なかなか悪くない気分だ。早くも毛皮が埃まみれになっているが、こういう作業も悪くない。
あれから一時間、意外と早く床の上が片付いた。やはり2人でやると作業が早い。 次は書棚だ。みっちりと詰まっている本を残らず取り出して、しかる後に書棚を部屋の外に運び出す。 同じだけのペースで臨めばそう時間がかかるものでもないが…… 「おお、ナツメ・ソルキットの『吾輩は猫である!』じゃないか。学生時代に読み込んだものだ」 『吾輩は猫である!』は猫国の政治学史上に燦然と輝く名著である。猫の民族的気質を詳細に明らかにした上で猫国の経済国家としての 発展の可能性を説き、猫こそ全民族のうちで最も繁栄を享受しうる民族であると高らかに述べている。僕は狼として思うところが無いでも ないが、今読み返してなお新鮮味を失わない経済への先見性を見せ、偏狭なナショナリズムに陥るのでなく堂々とした論理展開で猫族の可 能性を論じて見せたこの著作には敬意を払わざるを得ない。ソルキットが当時「獅子の誇りも虎の牙も持たない、金と小手先に縋る小動物 」とどこか侮られていた猫族たちを『我々は獅子でなく虎でなく、猫として生まれたわが身をこそ誇るべきである』と啓蒙しなければ、後 の猫国の発展は無かったことだろう。猫国がリュカオンの大侵攻に際して兵力で負けようとも経済を武器に抗い通したのだってこの本に著 された思想が大いに関係している。このように今日の猫国の発展の基盤をフローラ女王個人の功績にのみ依ると見るのは極めて近視眼的歴 史観と言わざるを得ず、そもそも僕に言わせればフローラ女王の政策思想の源流こそがソルキット以来脈々と受け継がれる民族哲学を高純 度に集積したものであり…… 「と、と、いかんいかん」 今は、片付け中だった。 どうにもさっきから懐かしくも素晴らしい著作の数々が目について、つい手に取って開いてしまうために 片付けが進まないのだ。 その分ユキカが頑張ってくれているらしく、ふと気が付くたびに書棚の中段以下の空白はどんどん広がっている (ユキカの背丈では天井まである書棚の上の方には手が届かないのだ)。 僕も真面目にやらなければと分かっているんだがつい……。 よし、今からでも気を引き締めて片付けに集中しようじゃないか。 ……お、この本は、すっかり失くしてしまったものとばかり思っていた……
「あの、旦那様……」 ……うん、うん…… がた、がた、がたん ……そうか、今読み返してみれば確かに…… がた、がた、がたり、がた ……ここの矛盾を補完する理論は確か…… がたん! どさどさっ! 「!!」 何だ、何の音だ!? 異音に慌てた僕が振り返るとそこには、 椅子の上に爪先立ちになって書棚の最上段に精いっぱい手を伸ばして掴まっているユキカと、 床にぶちまけられた数冊のハードカバー。 そうだ! 片付けをしていたんだよ僕は! 「すまないユキカ! というか大丈夫か!?」 「あ……も、申し訳ありません……本を」 椅子と書棚の間で精いっぱい突っ張った足と腕を震わせながら、青い顔でつぶやくユキカ。 あの音は本を落とした音か。 「いいから。ほら、降りれるかい?」 明らかに苦しそうな体勢を戻さないあたり無理なんだろう。ゆっくり腕を伸ばして、ユキカを抱えて床に下ろす。 「本当にすまない。つい夢中になってしまって……。無理せずに声をかけてくれればよかったのに」 「一度おかけしましたが、聞こえていらっしゃらないようでしたので」 「そ、そうかい」 それで椅子を持ち出して一人で頑張っていたわけか。見れば、すでに最上段以外の書棚はきれいに空いている。 この子にもう一度大きな声で呼びかける勇気を要求するのは余りに酷だ。 一回呼びかけただけでもかなり頑張ったのだと思う。本当に、心からすまない……。 「落ちた本でぶつけたりはしていないか?」 「はい、旦那様」 それはどっちの意味…ああ、額が少し赤くなっているね。悪かった、本当に、悪かった。 「少し休んでいなさい。後の作業は僕がやろう」 というかやらせてくれ。そうでもしないと主人の面目が立たない。 今度こそ、今度こそは真面目にやるぞ僕は!
書棚を全て運び出し、部屋中の埃を拭いて、途中で配達を頼んでおいた家具類を受け取って。 そうして片付け開始から5時間。やっと人の部屋らしき部屋が出来上がった。 といっても家具はベッドとクローゼットしかなく、床にカーペット、窓にカーテンを引いただけの殺風景な代物だが。 「ともあれ、こうして君の部屋ができたわけだ」 ユキカは戸口に立ち尽くしている。例の光の無い視線で茫洋と部屋を見渡したまま微動だにしない。 「どうした。不満かい?」 少しは喜んでいるのか、いないのか。能面のような表情からは全く伺い知ることができない。 確かに客間よりは手狭で殺風景で家具も安物だが、客間は客間である。 せっかく作った彼女だけの部屋なんだから、もう少し反応が欲しいところだが……。 視線の焦点を遠くに置いたまま、ユキカの唇がかすかに動いた。 「なにも」 「ん?」 「なにもありませんね」 …………。 ……まあ、他に要るものがあるなら後から買い足せばいいんだが…… 「ベッドに皮枷がついてない、首輪に繋ぐチェーンがない、窓に鉄格子が嵌ってない、壁に卑猥な道具がかかってない」 …………。 「なんにもない部屋ですね」 ぼんやりと虚ろな顔で、ぼんやりと虚ろな声。 目の焦点は陽光と風が吹き込む窓のさらに向こうにとんで行って、どこを見てるのかさっぱりわからない。 いつも通り、生きているくせに幽霊のような物腰である。 だがまあ、それなりに喜んでくれているようで僕は満足だ。
連続投稿超乙! ユキカちゃんが笑ってくれる日は来るのか、頑張れ旦那様ww
年末進行を彷彿とさせる連続投稿乙! ご主人様じゃなくて旦那様なところが個人的には激しくポイントです 彼女に笑顔が戻る日まで、がんばれウォルターくん
なんかこう、ユキカちゃん抱きしめて頭なでなでしてやりたくなる。がんばれ旦那様。
>>200 何かこう、不幸っ子に旦那様と呼ばれるのはぞくぞくくるものがあるよなw
>>192 神に誓って無関係と言えるんですか、言えるんですか?
一日中イチャイチャしてたのかこやつら、さりげなく凄いこと口走しってる朱風
が後で悶えるのに1ペセタ
絵板におみくじが来てる Xmasに続き企画者乙!
204 :
鋼の山脈 :2010/01/01(金) 10:10:02 ID:19Is+GAz
205 :
とらひと :2010/01/02(土) 04:34:17 ID:ONSNZ18r
>>204 レムたんが魔法のステッキで変身ですね。わかります。大好きです。
>>205 触手!触手!
江戸の時代から触手エロ本を作っていた日本人にとっては、触手は心の郷です。
明けましておめでとうございます。 世間は新年=姫はじめだというのにエロさのかけらもない。 悩みどころです。どうか気を長くお付き合いください。 ↓ 「……旦那様、何をなさっているのですか」 ユキカが僕の行動に興味を示したのは初めてだ。 背中からかけられるか細い声に、軽く目を見開いて振り向く。……ああ、睨んだ訳じゃ ないからそうびくつくんじゃない。 にっこりと歯を見せて笑って見せたらさらに一歩後ろに下がられた。なぜだ。 まあ、いつものことだからな、うん。仕方ない。僕の笑顔が極端に怖かったとか、そう いうことではきっとない。 気を取り直して目の前の鍋の中身をかき混ぜることにする。 「すまないが台所を少し借りているよ。新年を祝って今日の昼飯は故郷の料理にしたいん だ」 「私などに断っていただく必要はございませんが……料理、ですか? 旦那様の故郷の」 「その通り」 最近発見したことだが、ユキカの反応が得られると妙に嬉しい。 壊れた音封石じみた定型句ではない、彼女の生の声を聞くたびに意味もなく何かに勝った ような気分になるのだ。 鼻歌を歌いながらぐつぐつと煮立つ鍋の中にぶつ切りにしたケールを放り込んでいると、 ユキカがおそるおそる近づいてきた。珍しい。 「旦那様、……鍋の中を、拝見してもよろしいでしょうか?」 「ああ、構わないよ」 なんだ、興味津津じゃないか。この料理はそんなに当たりだったのかい。 この料理は僕の故郷で毎年新年の祝いに食べてきた、いわば思い出の味である。彼女も 気に入ってくれたのならば実に喜ばしい。 猫国の友人たちは匂いだけで吐きそうだと言って逃げてしまうので、僕は常々寂しいと 思っていたのだ。 鍋の中ではブッフー(なんとニセではない)のレバーの塊が山盛りの野菜と共に煮込ま れている。煮汁にブッフーの血と脂を加えているのもポイントだ。大量に入れられたケー ルも体を温めてくれる。 狼国辺境で過酷な冬を乗り切るために食べられる、貴重な獲物の血肉を余すところなく 使った栄養満点のスープである。 血肉はブッフーでなくとも構わないのだが、一年に一度のことなので奮発したのだ。そ の辺もユキカの興味を引いた勝因の一つになっているのではないだろうか。 ユキカが覗き込む鍋の中、多少粘度の高い煮汁が沸騰してぼこんぼこんと気泡がはじけ、 どす黒い血の色の上に溶けた脂が玉と浮きでている。うん、もうすぐ煮えるだろう。 「……旦那様」 「何だい?」 「これは、私の分もあるのでしょうか……?」 こわごわと聞いてくるユキカ。はは、相変わらず察しが悪いというか、何というか。 一週間やそこらで改善されるものではないだろうが、余計な心配だよそれは。 「いい加減覚えなさい。君だけ粗末な食事をさせるとか、そういうことをするつもりは一 切無いと以前にも言っただろう」 苦笑して彼女のサラサラと柔らかい髪の毛をかき回すと、ユキカはよろりとよろめいた。 む、少し力が強かったか? 「…………ありがとうございます旦那様…………」 「礼を言われることじゃない。美味い物は分け合った方がより美味いものだしね」 ユキカは俯いていて、表情がうかがえない。 今のところは光の差すところを見せない顔だが、いずれは期待や喜びに素直にきらめく様 を見せてほしいものだ。
口をつけて最後の一滴まで飲みほした、空の丼ぶりを下ろして余韻に浸る。 美味かった。 やはりこのスープを食べないと新しい年を迎えた気がしない。このスープで今日から一 年間頑張るエネルギーを蓄えている気がするのだ。 決して洗練された味とは言わないが、食べたものが残らず自分の血となり肉となるこの 感覚は最高級のレストランでだって味わえない食の極地の一つだ。と僕は勝手に思ってい る。 いつもは極めて大人しく食事をするユキカも、一口口にして固まってからは必死にかき 込むようにして食べてくれた。彼女もこの料理をよく分かっている。 おかわりを勧めたら、満腹だからと固辞されてしまったが。 「君は食が細いな。体も軽いし、もう少し肉をつけた方がいいんじゃないか?」 ユキカはかなり細い。 よく恐怖で青くなる少女だが、普段の顔色からしても血色が良いとはとても言い難い。 彼女がこれまで良好とはいえない栄養状態にあったことは明らかで、(やはりユキカの元 主人とは一度決着をつけなければならないと思う)このスープなんか特に滋養に溢れてい るのでお奨めだったんだが。 ユキカは自分の胸元をぼんやりと見下ろしている。 「やはり旦那様も、胸の大きい方をお好みですか」 突っ伏した。 「……今の話の、どこがどう転べば僕の性癖の話になるんだ」 「旦那様が一度も私にお相手を命じられないのは、そういうことかと考えたのですが」 違いましたか、と首を傾げるユキカ。 全身にのしかかる凄まじい脱力感。 せっかく貯めたエネルギーが一瞬でパーになってしまった。 「そうか。つまり君は先の僕の発言を、『早く太って僕好みの肢体になれよ。そうしたらお いしく食ってやるぜゲヘヘ』と、そう解釈したわけだな。そうかそうか、そんなに君は僕 を変態にしたいのか」 「え」 ようやく自分の耳が酷い誤変換を起こしていたことに気づいたようだが、遅すぎる。 「あ、あの、でも私はヒトですから」 「それが何だと言うんだ馬鹿者」 言い訳なんぞ聞いてやらん。僕は大いに腹を立てたぞ。 真面目に心配してやっていた自分が馬鹿みたいじゃないか。 「ユキカ、頭出せ」 ユキカの身体がびくりと震えるが、今度ばかりは許さん。 一発思い知らせてやらなければ僕の気が済まない。 君は知らないだろうが、君が来て以来僕は食料品の買い出しに倍の時間をかけているん だぞ。 雑食よりのヒトに合わせて、野菜を買う量もかなり増やしているんだぞ。 ブッフーの血やレバーだって例年より良い物を買ってきていたんだぞ。 「お、お許しください……」 「ダメだ許さん。さっさと頭を出せ」 カタカタ震えながらも素直に小さな頭が差しだされた。 予想される痛みにぎゅっと目をつぶって唇を噛み締めているそこに、デコピン一発。 思い切り痛そうな音を立ててやった。思い知れ。 「え、え?」 よっぽど驚いたのか目をまん丸にしてこちらを見上げてくるユキカ。頭の上にハテナマ ークがいくつも飛んでいるのが見えるようだ。 「あんまり僕と、それと君自身を貶める発想をするんじゃない。不愉快だ」 牙を剥いて睨みつけてやると、ユキカは鳩が豆鉄砲を食らったような顔で額を抑えたま ま、コクコクと頷いた。 ……本当にわかっているのかね、この子は。 はあ、今年も先が思いやられる。
余談。 ユキカはその後胸やけと胃もたれで動けなくなった。 明らかに具合が悪そうなのに働こうとする彼女を、部屋のベッドに文字通り叩きこんで やって今に至る。 「食べ過ぎか? 本当に食が細いな君は」 「申し訳ありません旦那様……」 ベッドサイドに胃薬と水差しを置いてやる。 確かに少々腹に重いスープだが、皿一杯でこんなになるとは本当に繊細で面倒くさい生 き物だ。 「だが、食べ過ぎるくらい喜んでくれたなら作った者としては嬉しいね」 「……え、」 何だ、何か言いたそうだな。 「あの、旦那様。あの料理、なんですが」 「うん、何だい」 「……………………ありがとうございました……………………」 「ああ」 ブッフー肉は高いから今日みたいな祝い事の日くらいにしか作ってやれないが、また作 ってやることにしよう。
>>鋼の 良い奴ほどすぐに死ぬというが、これは…… 報われないな…… >>虎の 声が高い(ショタ)巨大蛸とか嫌すぎるwww だが、エロいな >>僕の うわーお、ほのぼの系のはずなのに口元がスプラッター! 紳士的でもやはり肉食獣だなっ!
>>192 通常モードに戻った二人がどう顔つきあわせるのかニヤニヤ
>>205 チートスペック吹いたw
>>207 エロがなくても充分好みなんで、ぜひ長くお付き合いさせて下さいの心境
でこぴんは生徒にも罰でやってんのかねとか想像した
「私の分も…」の下りは、よっぽど嫌でつい口に出しちゃったんだろうなw
地獄への道は善意で舗装されている…
>>213 ワン○で味噌汁吹いた
>>214 いろいろ考えたけどワン○に落ち着いた。後悔はしていない。
>>205 ショタコがクソガキかわいい
そしてハンスの新たな魅力にときめく、何この攻めキャラ属性
田中先生wwww
>>217 タンノ君が進化するとそうなりそうだな。
220 :
鋼の山脈 :2010/01/17(日) 11:15:59 ID:OJSy/CuL
A 「上様がこのような所に来られるはずがない」 B 「上様の名を騙る不届き者だ」
C 「上様でも構わぬ」 D 「上様、お手向かい致しますぞ」
E 「上様、お命頂戴致します」 F 「ここで死ねばただの徳田新之助」
G 「悪党らしく死に花を咲かせてくれるわ」 H 「飛んで火に入る夏の虫」
I 「我ら幕臣あっての上様ではないか」 J 「八代将軍もこれで終わりぞ」
K 「もはやこれまで」 L 「笑止千万」
M 「吉宗の首を我が殿、宗春公に差し出せ」 N 「上様の顔を忘れた」
O 「もはや上様の命に従う必要はない」 P 「腹を切るのは拙者ではなく、上様である」
Q 「どうせ上様には死んで頂くつもりでした 覚悟なされ」 R 「御役御免で一度は死んだ身」
S 「そこまでばれているのなら、毒を食うは皿まで」 T 「何をほざくか吉宗。良い所に現れたものよ」
Z その他
http://adder.sakura.ne.jp/nkmm/clip/img/195.txt
本編乙 レムの脳内画像が白馬の暴れん坊将軍になって困る。
決着ktkr 徹頭徹尾、バルフィンは自分のカルマで死んだな。
ぱぱぱー。ぱーぱーぱーぱー(オープニング)
>>205 GJ! タコ良いキャラしてたw
中で吸い付くのエロい。
226 :
名無しさん@ピンキー :2010/01/26(火) 23:21:23 ID:2+MOUSha
たまにはあげてみる
そして下げてみる
インド人を右に!
馬獣人の人気が少ないのは何故だろう。
1.馬耳少女って今一つイメージわかない 2.馬男が馬並みなのにヒトが出ても 3.馬マスクの裸人が一年前の卵食ってるイメージが 4.人間の体に馬の頭って、仏典の獄卒ぐらいしかいないんじゃね? 5.馬刺しおいしいです 以上の点から馬獣人を使う人が少ないと思われる。
馬耳だったら烈火の炎の十二支の司会姉ちゃん達にいたね
馬で出てくるイメージっていうと 足が速い、巨根、草食、蹄鉄、遊牧民、騎乗戦闘…… いろいろあることはあるけど、それをヒロインないしヒーロー化しにくいのかね ケンタウロスというメジャー所がいるのも関係あるだろうか?
世界観資料wikiがまた書き換えてたんで直したんだが、狗国見聞録だけしつこくやられて戻せないんだがどうにもならない?
自分が馬獣人でうすらぼんやり考えていたのは 「女子高生のメスヒトが落ちてきてとってもウマナミな盗賊団に集団でアッー!」(地獄エンド) もしくは 「男子高校のオスヒトが落ちてきてメスウマさんの性奴隷にされてアッー!」(極楽エンド) だったことをひっそりと告白する
じゃあ間を取って 「男子高校のオスヒトが落ちてきてちてきてとってもウマナミな盗賊団に集団でアッー!」(涅槃エンド) だな
完全にBADだろwww >233 あれはもうダメっぽいから、世界観も保管庫戎の方へ統合するという 流れになってたんじゃなかったっけ?
小さすぎて同族の(ピー)が入らない美少女とかどうだろう。
「入れたことはないけれど、しゃぶったことならあるんだから……」 はちょっとマニアックだと思うな。
239 :
鋼の山脈 :2010/01/31(日) 17:25:10 ID:Ab9uVeFC
>>239 GJー
一段落ついてちょっとはほのぼの気味になるかと思ったら……w
ああっ!ハイファンタジーの雰囲気がが一気にカウボーイビバップにw GJ!
珍しいことになんの前触れもなくチヨコ(とおまけ)が家にやって きた。 律儀なところのあるチヨコは、アポなし訪問などしない。というこ とは確実に後ろの灰色の都合だろう。しかもなんだろうかこの衣装 は。チヨコの服ではなく衣装。赤紫の矢羽パターン模様の上衣とそ れにあわせたスカートのような下衣に両足そろって長靴。よくサバ トラが義足をはかせたものだと思うが、キモノっぽいものに編み上 げ長靴? 「キモノに長靴って正解なのか?」 「正解です。それとちょーかじゃなくてブーツって言ってくださ い」 「春にむけて予約受付中です」 意味のわからぬことを言うなサバトラ。それとあまり重たい履物を 履かせるな。まさかここまで歩かせてきたとか言うのか、この寒そ うな格好で。ついジト目でサバトラを見てしまう。 サバトラはにやっと笑って、コートを広げる。お前のではないのか。 「チョコの外套ならここに」 外套…コートじゃだめなのか。長靴といい外套といいなにかこだわ りでもあるのか。胡散臭いものを見るような表情になってしまう。 「外は冷えますからせんせいもなにか着てください」 「なんだ飯でもおごってくれるのか?」 チヨコに雪が降りそうだから早く、とせかされる。ならば壁にかけ たコートもマフラーも戦闘準備ができている。チヨコも外套に包ま りサバトラに担がれる。 はなれて生活し始めても、三日に一度はいっしょにチヨコとすごし ている。これは、とても、うれしいことだ。昨日の昼も来たばかり だ。 「チヨコは何が食べたいんだ?」 「「恵方巻!」」 なんだそれは。おいこら、サバトラハモるな。私はチヨコに訊いた のだぞ。 恵方巻…酸っぱい米の中に生の魚介やら卵焼きやらが包まれ、さ らにノリという海草を乾燥させた物に包まれた棒状の食べ物。それ を一息に食べるとなんか一年イイ感じ、というチヨコの大雑把すぎ る説明に私は頭を抱えたくなる。 チヨコの食の好みはよくわからなくなることがある。なぜ、海草を 食べる。なぜ、生で魚介類を食べようとする。どうして米は主食だ と言えるのに、豆と芋は主食ではないと主張するのか。あと豆をわ ざと腐らして食べようとするな。それでチーズが嫌いってなんなの だ。豆のほうがくさいぞ。グルタミン酸中毒とはなんだ、そんな症 例聞いたことがない。 チヨコの言う、ノリが手に入らなかったため、恵方巻は完成しなか ったらしい。コケで代用する案がでたらしいが、実行されなくて良 かったと思う。 その恵方巻に代わって、皿の上に鎮座するのはロールケーキだ。 通常売られているロールケーキよりもずいぶんと細い。が、それが 丸々一本皿にのっているというのは妙な絵だ。しかも各一皿。 「これを食べるのか」 生クリームがたっぷり入っている。これを一息に、か。ため息が出 そうだ。 「せんせいは生クリーム苦手でしたか?」 「ぼくのバタークリームのと交換します?」 ちがう、そうじゃない。不安げな顔のチヨコに手を振る。 「で、エホウってどっちなんだ」 「え、王城の方角でいいんじゃないですかね」 だいたいあっち、とチヨコが指差した方向にみな向き直る。だから 何かが変だって。
せんせいシリーズで節分ネタでした 撒いてもなく食べてもなくエロもない、と本当に申し訳ないが投稿したかったんだ ゆるしてください
えろう巻きもメジャーになったなあ
メジャーになったのか……
菓子類ってどーなってんの?高いの? 狐国だったら和菓子ぽいのかなやっぱり
「ぼく」がよく手作りしているから、原料は安いと思われ。 ちなみにタイヤキは70〜100センタで売られてる。
砂糖自体は結構安く生産で来てるんだろうな。 澱粉から作る技術ぐらいはありそうだ。
江戸時代風な感じで遊廓モノを書きたいんだけど、和風で未だ出ていない種族って何がいる? 今ある国につくるのは難しそうだから、いっそ新しくつくろうと思うんですが。 ネコの国かどこかに江戸風テーマパークをこさえて、そこに遊廓をつくることも考えたけど、それだと雰囲気出ないので。
狐国に建てちゃうって手も、ほら、和風の国だし……ああ、そういや女性の方が地位高めだったりするから厳しいか? 和な生き物で出てないとか雉しか浮かばない俺は知識がねぇorz
四の国島の狐は、まだ詳しい設定はされてないのでやりたい放題ですよ。
和風な生き物……錦鯉とか、鈴虫とか、鵜? 哺乳類はわりと使い切られてるね
シラサギとかトキは?
哺乳類ならウマ、ウシ、シカ
鳥類なら上記もいいがツル、キジ、スズメ、カラス、ハト
ならば和風という事にしても大丈夫じゃないか
>>242 チヨコ適当過ぎるwww
そこで現わる オ オ サ ン シ ョ ウ ウ オ
和風種族か。 ムササビとかだと忍者のイメージ? いっそ和風なクマにするとか和犬のイメージとか むしろ発想の転換で、種族の文化特性に幅があるんだ!と言い切って 和風なトラとかイヌとかネコとか強引に展開 オオカミでも可w
ぱっと思いついたのがイタチ、オコジョ
狸って国家としての設定はもう出てたっけ? 出てないなら狐:和風平安系、狸:和風江戸系で住み分けられそうな気が。 狸と狐自体、なんかそういうイメージがあるし。 あと、遊郭ネタなら既存国家でも、 銀魂の吉原みたく、社会の表舞台に出られない者が集まった、存在非承認の地域とすれば出来るかと。
259 :
249 :2010/02/04(木) 00:28:55 ID:E2H+7b2H
ご意見ありがとうございます。 キツネやタヌキでもいいんですが、既存国家だと他の作品の方に迷惑がかかるんじゃないかと。 特に、投下予定で試行錯誤してる所に横から新設定を出してしまって、妨げになりたくないので。 それにしても、和風なイメージって結構たくさんいるもんですね。 1つの種族が1つの文化とは限らないという発想の転換や、承認されていない地域の存在等、参考になりました。 投下がいつになるかはわかりませんが、試行錯誤してみます。
262 :
名無しさん@ピンキー :2010/02/05(金) 18:14:19 ID:sQ60QMhD
この節分を見ると、明らか誕生日でも全力投球されそうで困るwwww 「ハァッ……ピィバァァァァァスデェェェェェエエエエエッ!」とかはさすがにないと思うが
>>260 理屈は間違っちゃいないんだがwww
しかしユキカちゃんはだいぶ打ち解けてきたなあ
>>258 > 狸って国家としての設定はもう出てたっけ?
一番偉いひとと一番田舎の村なら
266 :
名無しさん@ピンキー :2010/02/06(土) 12:31:42 ID:vg5kRavL
あ
ふと思ったんだが、こちむい世界には扇の大陸+いくつかの島しかないっていう設定はないよね? シェアワールドである以上はいろいろと考慮しなきゃいけないことがあるけど、 これだけ作品が増えると細かな設定の把握も大変だし、矛盾しないようにするのも大変だと思う。 それが書き手にとって足枷になってたり、ハードルを上げてるとも思うし。 そこで、いっそ思い切って新しく別の大陸をつくってはどうだろう。 扇の大陸の住人がまだ発見していない大陸ってことにすれば、今ある設定を考慮する必要もないし、矛盾も生じない。 ハードルも下がって、書き手も増えるんじゃないだろうかと思うんだが、どうだろう。
<<267 新大陸・・・ となると扇の大陸にはいない新たな種族が出てくることになりますね 二本の角にでかい翼を生やして、火を噴いている彼ら みたいな空想生物達がメインになるんでしょうか? あくまで、単なる一個人の予想ですが、それしか思い浮かばない自分が・・・orz
んー、新大陸良いんじゃないかな。その前に今の大陸のきちんとした地図を作ってみたくもあるがw 海の中もいいかもしれん、ヒトをどう理由付けて潜らすかになるけどな で、空想生物以外はいっぱいいると思うんだがなぁ、爬虫類系とか両生類とかry また鳥種族足すってのもあるし、渡り鳥系を 両生類の人とかスリッピーが真っ先に出てくるなぁ……
じゃあ大陸の南に呪われた島でも
長い事暖めているのがあるけどなかなかどうして全体の設定が把握できない なんていうか取材というか情報収集目的の場が欲しいな
>>271 とりあえず出して、矛盾を指摘されたら辻褄合わせる話を書けばいいんですよ。
何も新種族ばかり出す必要なくね? 別に和風のライオンやカモシカがいたっていいし。 考えて見れば、ネコだって日本猫とペルシャ猫じゃ全然違うし、イヌだって秋田犬とプードルじゃ全然違う。 同じ種族でも、和風や洋風やその他いろいろいて当たり前なんじゃないかな。
土佐犬とか甲斐犬とかだとビジュアル的には羽織袴の侍ってイメージで行けそうだけど、 大きな体躯の秋田犬の場合はマワシを締めて四股名の入った浴衣姿になってしまうw ごっつあんです!
275 :
名無しさん@ピンキー :2010/02/09(火) 20:22:26 ID:stXc38lY
新大陸で思いついたのがカンガルーとコアラの二大種族 他にはワラビー、ウォンバット、カモノハシかな……
>>260 体育会系豆まき、気合入りすぎの掛け声に吹きましたw
近所迷惑なオチもまたw
ご主人様、読む限りは基本思慮深く落ち着いた印象なんだけど、根には
熱さも持っているのかw
面白かったです
究極には面白ければ正義ではある。 パラレルという逃げ口もある。 最初は誰もが首をかしげる矛盾した世界観でそ知らぬ顔で 書き抜けて、ラストでポンと膝を打つ展開で落とせたら神。 大陸も世界も同じでも時間軸は別とか宇宙進出後だったとかね。
別話で出た固有名詞のイメージを崩す展開でもない限りは面白いほうが正義だろ
あんまりやり過ぎてもイメージが拡散して、何でもありになって結局衰退するんだけどな 匙加減が難しい・・・
パラレルワールドがたくさんあっていいし、大陸や島もたくさんあっていい。 種族単位国家から脱却して、多民族国家やら合衆国的な感じにしてもいいし、 海に海賊がいたり、地下都市や水中都市があってもいい。 せっかくのシェアワールドなんだから、できるだけ寛容でいたい。(よっぽどひどいのは別として)
馬獣人の手に指がなくても別にいいよね
指の先が黒い感じもあるよね
ろだのスパムが気になって投下できん 削除権だれか持ってないかしら
この様子だと管理者いないから、このままスパムでロダが埋め尽くされて終わりじゃないのか? どうしようもないね
リアルで多忙なだけかもしれんだろ >>管理者さん 早とちりはよくない
>284-285 そんなにひどいことになってるのかと思って見てみたら、わずか3日で3件か。 この程度のSPAMでどんだけ気にしいなんだ。
スパム対策されたようだから、
>>284 は心置きなく投稿してくれ!
11月から溜めてた鋼の山脈4章の一気読み終了 少女の淡い心とその結末、誇りの為に全てをかけた戦士達……途中から涙をこらえきれませなんだ そして殺伐としていた雰囲気をガラリと変えての新章、まだまだ状況が伏せられているものの新キャラ達のかけあいが笑わせてくれてwww 個人的にかなり好きなあのキャラも出てきて、続きを楽しみにせざるをえない。いやあ、雰囲気変わったなあ…… GJ!
ずいぶん前にウシとか言ってた奴です 取り敢えずプロローグだけできたんでうpしてみます
土のにおいが嫌いだった。 湿った土、乾いた土、腐葉土。化学肥料にまみれた土、牛糞を混ぜた土、粘土質の泥。 何もかもが嫌いだ。アニキは好きだっていうけど、オレは嫌いだ。大っ嫌いだった。 だから、逃げ出してやった。何もかも捨てるつもりで。 そして、オレは全てを失った。 ※ 太陽は既に風車小屋の翼を逃れ、遠く見える山々に向けて傾き始めていた。青い空の下、影は徐々にその長さを伸ばし始める。 「もうこんな時間か。おーいガキども、メシにすっぞー!」 オレがそう呼びかけても、ガキどもはひとりも姿を現そうとしない。そうまでしてオレに見つけて欲しいか、おい。 「タリィな、ったくよぉ」 ガリガリと髪を掻きむしりながらオレはひとつ盛大にため息を落とした。こいつらにメシ食わせねえと親御さんたちに怒られるのはオレなんだぞ、全くよぉ。 好かれてる? 冗談じゃない。ガキはガキなりに、自分たちと長く遊んでもらうにはどうしたらいいか、ずるがしこくもちゃーんと知ってやがるってだけだ。オレはそれに付き合わされてるに過ぎない。 「ほれ、早速ふたり見っけ」 「きゃーっ」 「見つかっちまったぜ」 もっとも、ガキがかしこいのは遊んでもらうための理由付けだけで、肝心の隠れ場所についてはいっつも同じ。 だから普段どおり、オレのいた広場にある箱の陰にふたり、茂みにはひとり。大人たちが中身を持っていって空の用具入れにはさんにん、曲がり角の向こうにふたり。 それぞれ早々に見つけては、抱えてオレのいた広場まで連れてくる。見つけられた後は勝手なもんで、さっき呼んだ時はまるで反応しなかったくせして、今は「メシよこせー」とピーチクパーチクうるせえ。 「あー、はいはい。すぐ食わしてやるからちょっと黙っとけ。えーっと、ひぃ、ふぅ、みぃ……」 黒いの白いの白黒斑。赤茶に灰に焦げ茶の双子。名前は覚えてねえが、ざっと数えて……あれ? ひとり足りねえ。しかもそいつだけは名前が言える。 「……マリーがいねえな。アイツ今日はどこに隠れやがった?」 唯一毎日隠れ場所を変えるマリーだけがまだ見つかっちゃいない。またか、と思う。もう今日は茂みも倉庫も屋根も煙突の中も、取り敢えず思い当たるところなら全部探したんだが……。 「マリーなんていいじゃん! ほっといって早くめしにしようぜ!」 「そーよ、おなかすいちゃったよ」 ガキどもが図々しくも叫び始めるが、当然無視。呼んだ時に出てこないテメエらが悪い。少しは飢えとけ。 そういうことで喚くガキどもは無視し、オレは再びマリーを探しに広場を出る。もう一度さっきも探した場所をまわり、それでもいないマリーを探して右往左往。
そしてしばらくした後、もしやと思ってある家の扉を開けると、そこには思ったとおりの姿があった。 「……マリー、かくれんぼの時は外だけって言わなかったか?」 「いわれた」 「なら隠れるなよ……」 ガクリとうな垂れるオレの目前、自分の家の椅子にちょこんと腰掛けたマリーはまるで悪ぶれた風もない。 むしろ本当にオレの言ってることを理解出来ているのかを悩むほどの仏頂面でオレを見ていた。同年代のガキどもはあんな笑ってるっていうのにすごい違いではある。 だがそんな仏頂面でも、マリーなら様になるとオレは思う。 ぷっくりと柔らかそうな色白のもち肌に、良く映える髪色はキャラメルのような亜麻色。ふんわりとしたボブカットはその幼さをより強くして、まるで人形のようにも見える。 整った面立ちは、今からでも将来が楽しみな可愛らしい幼女のそれだった。それまで仏頂面だったそこに、マリーはうっすらと柔らかい笑みを浮かべる。 「それでも、マサミはみつけてくれたよ? やっぱりマサミは、わたちのことなんでもわかってくれるのね」 「ま、まあな」 ハハハと、オレは乾いた笑いを浮かべる。本当は探しまわった末にようやく見つけたんだが、間違っても本当のことは言えない。 嬉しそうな美幼女の幻想を壊してはいけません、どっとはらい。 「ありがとう! それでこそ、マサミはわたちのたいせつなどれいね」 「……ああ、そうだぜ」 オレは答える。乾いた笑みももはや消して、マリーの述べた残酷な現実を、受け入れるための答えを。 そう、マリーはまるで人形のような少女だ。いや、幼女という方が正しい。小さなマリーの体は、未発達でまだ背丈はオレの腰にも届かない。 そんなマリーの、人形とは決定的に違う場所。亜麻色の髪の間から覗くマリーの耳はその肌と同じ純白だが、その形状は細く長く、どう見ても人の持つソレではない。 当たり前だ、マリーは“ヒト”じゃない。オレと同じヒトではなく、この世界の人間・獣人。ウシの幼女。 「さ、そろそろメシにしようぜ。オレの小さなご主人様?」 「うん!」 これ以上なく微笑んでオレの手を取り、早く早くと急かすマリーに連れられオレは家を出る。 オレの所有者でありご主人様である幼女のおぼつかない足取りに従いながら、腹を空かせて待つガキどもの元へと歩いていった。
おお、牛幼女の発想はなかった。GJ ところでマサミ二人目?
幼女かわいいよ幼女 やっぱり成長するとばいんばいんになるのだろうか……
>ぷっくりと柔らかそうな色白のもち肌に、良く映える髪色はキャラメルのような亜麻色。ふんわりとしたボブカットはその幼さをより強くして、まるで人形のようにも見える。 この2行から、マサミにはロリコンになれる素質を感じた
ウシを書いてる者です。 記載したところで、ちょっとしたアンケートと質問を。 1.長さはどうか? ちょうどいい or 長い or 短い 2.文章はどうか? 読みやすい or 普通 or 読みにくい このくらいです。 あとそれから、世界観の方でトラの国って、結局どのあたりになるんでしょう? 世界観設定wikiの方だと東南部なんですが、絵版の地図だと東北部に近いですし…… >ところでマサミ二人目? あ、ホントですね; うっかりしちゃいました、すみません。 変えた方がよろしいでしょうかね? こちらも意見をお願いします。
プロローグで長さはどうか、なんて聞かれても困る。1話が長くても短くても問題ない、としか。 文章は普通だからとりあえず続けてほしい。
名前かぶりは別に気にしなくていいんじゃない? リアルに珍しくない名前だし。
あんまり短いのはどうかと思うけど、長い分は構わないんじゃないか? 連投がきつい長さならアップローダーもある。短いならそのぶん日を置かずに 続きが投下されると嬉しいかなと。 名前かぶりは大丈夫だろ。牛のほうのマサミ、ロリのほうのマサミと、板で話すぶんには どうとでもなるから。
>ロリのほうのマサミ それ、マサミ自身がロリに見えるな。
落愕病の一種でロリに性転換とかそれなんて俺オンリー得
この世界には正確な地図が存在しない、ってのがこちむいワールドの設定 だから大体東の方にトラの国がある、としか言えないんだよね
矛盾したら「扇の大陸は一つじゃないんだよ!」とか「パラレルワールドなんだよ」とか言えばいい。 もしくは短編で辻褄合わせるとか。
名前に関しては漢字にするとかすれば良いんじゃないかな? カタカナだと混乱する事もあるかもしれないし
305 :
鋼の山脈 :2010/02/21(日) 23:33:34 ID:ddkQ7Z7v
>>305 よっしゃぁこっち側で一番乗りGJ
良いわ、この三人に+一人の掛け合い良いわ。朝っぱらから笑えるなんて新鮮
ゼリエさん、楽しくやってんなあw
出来そうにみえて出来ないゼリエさんかわいいよ
モグラってまだ出てきてないよね?
モグラはまだでていないな
よかった。ありがとう 暫く前から少しずつ書いてたんだけど急に不安になってしまって
「ヤギも四足、馬も四足。ならば馬にできないことがあろうか?」 「リナ様、四足じゃないです」
「放浪と芸の民ヤギの中で、極地や秘境における運び屋を生業とする一族がいた 彼らの脚力はヤギ随一であり、寒冷地に適応したその毛皮もあいまって イヌとオオカミの国境山脈を軽々越え、ウサギ国の果てしない雪原を渡る能力を得た。 彼らは畏怖と尊敬をこめてこう呼ばれる『ヤギさんゆうびん』と」 ここまで妄想した。 野生のヤギすごいよね
山羊の伝書使。 途中で食われそうだな。
無事に届いても読まずに食べた。
山羊さんを性的な意味でか……
「こんばんは、やぎさんゆうびんです。アトシャーマからお手紙です」 「あ、どうもご苦労様です」 「郵便物の確認ができましたら、お手数ですがこちらに受け取りの御署名をお願いします」 「はい・・・あれ、足から血が出てますよ?」 「ああ、ただの切り傷ですからご心配なく」 「そんな、放っておいたら悪化してしまいますよ。私が手当てして差し上げましょう」 「いえ、せっかくですがまだ仕事が」 「駄目ですよ、今後の仕事に差し支えます。何より私が気になって困るんです」 「し、しかしですね・・・」 「手当てさせて頂けるなら、中身の確認と署名をしてあげます」 「う〜ん・・・わかりました。よろしくお願いします」 「構いませんよ。ささ、どうぞ中に入ってゆっくりしていって下さい」 明くる日の夜明けまで、ヤギさんの喘ぎ声は絶えませんでしたとさ。
気づいたら体が勝手に動いてました。 後悔はしてませんが、すごく反省・・・・・・しています。
ウサギに食われオオカミに襲われイヌに押し倒される、 トロくさい新米ヤギちゃんの研修日誌…… すごく、読んでみたいです……。
何て言うか、凄く……あれだよ、大変なお仕事頑張ってるんだから無理矢理とか流されとか止めて上げて! とか思ってしまう俺はおにちく成分が足りない
鬼畜な職人さま揃いのこのスレでそんな弱キャラなんか、 秒殺でで身ぐるみ剥がされて美味しくいただかれるオチに決まっとろうがw
じゃあ逆に行く先々で現地の女を食らいながら 旅する屈強な運び屋 ヤギ版・俺の空でひとつ。
受け取り主も送り主もおいしくとって食うヤギ美女とな
ウサギの国で……ねぇ
ヤギも淫乱だからなんとかなるはず 好みさえ合えば
今更だけど、売春禁止法とかそういう感じの法律ってどうなってんだろう? (ヒトはペットだから法外として、それ以外ね)
色町とかあるていど都市内で領域決められてるってかんじじゃないの?
フローラ様ならある程度規制しそうな気はする。 ガチガチなのはイヌの国で。
売春禁止法とかは恐らく無いと思う 売春に関する事細かな法律はありそうだが 個人的に、江戸時代みたいな「営業認めてやるから治安維持に協力しやがれ」だと大雑把に思ってる
あのレベルの治安で売春を規制しても摘発できずに終わるだろうな。
どうせ踏み込んだトコロで和姦になってるんだから・・・ byセレーネ
333 :
とらひと :2010/03/12(金) 04:34:40 ID:cXwsK80U
チヒロはもしかすっとすげー残酷なことしてんのかも、と思ったり。
チヒロすげえ、と改めて思った。 女傑にもほどがある。
空気読めてなかったら申し訳ない。 キツネ男とメスヒトの話です。 ------------------- 大陸道中膝栗毛 ――――絵を描くのが、好きだった。 人より少し太っていて、嫌いでは無いけど運動が苦手なわたしの特技といったら絵ぐらいしかなかった。 しかし美大に行くほどご大層なものでもないから、普通に進学して、普通に就職して、仕事の傍ら絵を描いて。結婚して、子供を産んで、その子供が成長するのを、日々のなんでもない生活を。少しずつ、少しずつ。自分の絵で描き残していけたらと。 …そういう未来設計はあるのだ、確かに。 「…そりゃ、非現実的だとは思いますけどぅ?」 帰り道、県道ぞいの歩道の縁石を渡りながら独り言を呟く。高校二年生、来月からはもう受験生のわたし。 「将来やりたいことは?」…これこれこういう。「そう。で、希望学部は?」…そんなの、わけわかんない。わたしは、絵を描きたいだけだから。 「あーあ、やだなあ、進路なんて」 ふうっと溜め息をついて、A3サイズのスケブをぎゅっと握りなおし、縁石から飛び降りた。一瞬の浮遊感ののち、 「…へっ?」 着地した感触はなかなか訪れなかった。 下を見ると、なぜか、足元からはるか下に、青々とした森が広がっていて。 「あえっ?」 前を見る。上を見る、右を見る、左を見る。もう一度下を見たとき…がくん、と、わたしの体は急降下を始めた。 「わあああああああああああああ!?」 ちょうど、遊園地のアップダウンするアトラクションのようだ。しかし椅子もベルトもない。あ、死ぬ、死ぬよこれ…そう思った瞬間、わたしの意識はブラックアウトした。 ……それから、どれぐらい経っただろうか。 「おーい、とうちゃあーん」 幼いこどもの声で気がついた。はっと目を開けたけど、起きたての目は焦点が合わない。小さなこどもがわたしをのぞき込んでいるのはわかったけど…って、そうだ、わたし、落ちて! 慌てて起き上がろうとして、腰に激痛が走った。 それに弾かれたように、こどもは「おーい」と声をあげながらどこかへ行ってしまった。 あ、と思ったが、ゆっくり、ゆっくり起き上がる。45°ほどでもう痛くて起き上がれなくなってしまった。でも、代わりにだんだん目の焦点が合ってきた。 …森だ。それはもう、鬱蒼とした。わずかな木の隙間から、オレンジ色の光がもれていて、今が夕暮れ時だと知る。ていうか、わたし、生きて…? ほうっと安堵のため息をついて、命があってよかったと思ったけど。 …どうしよう、ここ、どこ? ポケットを探ってみるが、携帯がない。鞄も消えてしまった。持ち物と言えば…両手で抱きしめているスケブだけ…? わたしはがっくりと途方に暮れるしか無かった。 ********
(脚注・名前欄振り分け間違えました申し訳ない…) ********* そのとき俺は、夕焼けに光る山があんまり綺麗だったんで、写しておこうと思い、街道沿いの岩に腰掛けて絵筆を走らせていた。 「ちッ、こうじゃあねえんだよなあこうじゃ…この構図じゃあ前と一緒だァ」 腹の虫の鳴き声を無視して、相棒であるキセルを噛み噛み、今し方写生し終えた紙をぐしゃぐしゃと握りつぶす。そのクズをゴミ袋に入れ、溜め息と一緒に煙を吐き出していると、 「おーい、おうい、とうちゃあん?」 ガサガサと街道横の茂みをかきわけ、適当に遊ばせていたはずのチビが、耳をぴこぴこ、しっぽをふりふり歩いてきた。 「あーん?」 「とうちゃん、落ち物みっけた!」 「ふーん…落ち物ォ!?」 特に感情も籠もってない、いかにも「報告!」ってな感じの、ガキにありがちな話し方だったので、俺は一瞬聞き逃すところだった。 「なっ、バッカ、なんで拾ってこねえんだ!!」 金になるんだぞ金!!と鼻息荒く顔を寄せれば、 「だってでっけえんだもん」 こんぐらーいと全然わからん手振りをつけてしれっとほざきやがった。…まあ、こいつはチビだし。俺の膝より少し上くらいまでしかない。 「しゃーねえ、拾いに行くかァ」 「いくかぁ!」 億劫だったが、それ以上に金は欲しい。俺は岩から腰をあげ、荷物を背負いなおすと、チビの後を歩いていった。 ******* 腰が辛かったので、中途半端に起こしていた体を地面につけた。 あの高さから落ちて生きているなんて奇跡だ。それはきっと、今見上げている広葉樹のおかげなんだろう。 てっぺんは見えないほどの高さからところどころ伸びている枝に引っかかりながら落ちたおかげで、地面に直撃することだけは避けられたらしい。 腰は強打したが、コートを着ていたおかげで手足に傷はほとんど無いみたいだし、唯一無事な荷物であるスケブも、みたところ端が折れている程度だった。しかし。 「なんで落ちたんだろう…」 わたしはあの、よくある20センチ弱の縁石から歩道に降りようとしただけなのだ。それが何故…。 1、あの瞬間車に跳ねられてわたしは死んだスイーツ(笑)。…でも体痛いし。 2、全部夢。上と同じ理由でロング。感触、五感がリアルすぎる。 3、異世界トリップ。 「…いやいやいやいや、ないでしょ…」 同人サイトの回りすぎだ。ていうかマジ体動かないし、どうしたらいいんだろう。 「ほら、とうちゃんあれだよあれ!」 さっきの子の声…だよね?よかった、助けを呼んできてくれたんだ…。 わたしが右腕を使って少し体を起こしたのと、彼らが茂みの間から姿を表したのは同時だった。 「なっ!落ち物だろ!」 「…」 「…」 真っ黒い瞳。黄色い毛。長い鼻。頭のてっぺんにピンと生えたふたつの…耳? 「キツネェェェエエエエエ!?」 「ヒトォォォォオオオオオ!?」 うわしかも喋る! ********
******** 「キツネェェェエエエエエ!?」 「ヒトォォォォオオオオオ!?」 なんだあれ。ヒトだ。ヒトだよな。耳ねえし。ぱっと見尻尾もねえし。見たことねえ服着てるし。 「へーえすげえ初めて見た」 「おれもー」 「よーお前よく見つけたなァ」 「えへへへえ」 チビの頭をぐりぐり撫で回していると、ヒトから震えた高めの声が挙がった。 「あああああ、あの、ななななな、なんなんですか」 「あン?…なんだおめえさん、メスかよ。」 「どこにスカート履いてる男性が…」 「メスなら売ってもそこまで大した金にはなんねえって話だよなぁ、んでも…」 「か、金!?売る!?」 驚いたように叫んでから「いつつ…」とメスヒトは腰を抑えて呻いた。 そーかそーか、そういや誰か酒場で言ってたな。ヒトはこっちのことなんか何一つ知らないで「落ちて」くると。枝や木の葉が散っている周りの状況から見るに、こいつは空から「落ちて」きたのか。 「よし、じゃあ話してやんよ。と、その前に、アンタ腰出しな」 「ええっ!?」 「痛めてんだろ、ちっと治療してやんよ。おらサク、剥いちまいな」 「おうよ!とうちゃんわるだね!」 「ありがとよ!」 「えええ!?」 チビとお決まりの応酬を交わしつつ、がしゃがしゃ鳴る荷物を下ろして湿布と漢方と、符術用の短冊を取り出す。腰痛には温湿布だろ。えーとあと痛み止めになんかあったっけか? うしろからはメスヒトの「ぎゃー」とか「うわー」とか「いてー」とかいう声が聞こえてくる。 いる物を出して振り返ると、メスヒトが分厚い外套を脱ぎ、腰だけ出した状態でこちらに背中を向けて横たわっていた。涙目で。 「おい、そんな目すんな、いくらヒトだってったって俺はそんなことしねえよ」 「そ、そんなこと…?」 「…ま、聞いてな」 俺はこいつに話してやる義務がある。のかもしれない。 ********* それを忘れないようにと言われるよりも、英単語帳丸々一冊覚えてこいと言われたほうがまだマシだった。内容的には。キツネさんはわたしに、淡々と状況を説明してくれた。 一に、ここは別次元であるということ。人が住む世界とは違う、動物の世界だということ(ここではこちらが人間、わたしはヒトという動物)。 二に、わたしはその向こうの世界から“落ちて”きた“落ち物”という希有な存在だということ。 三に、わたしたちヒトは動物であるが故に、奴隷…特に性奴隷として、高い値段で“取引”されているということ。人権はない。 (つまり今の状況も、道端で怪我をしている猫をみかけたらお節介焼きたくなるのと同じ…なんだと思う。わたしが猫だ。) そして最後に…二度と、人の世界へは戻れないということ。これが本当に、ショックだった。 「つまり“そういうこと”ってぇのは、まあ性奴隷としての“そういうこと”だわなァ」 「…そう、なんですか」 湿布を貼り貼り、キツネさん(このキツネさんも着ぐるみではなくマジモンということだ。)はそう教えてくれた。わたしはショックで放心してしまっていた。 ぺとり、キツネさんの手(この場合前足?)が改めて湿布越しに腰に触れた。 「おし、ちょっと黙ってろよ。…〜〜〜〜、」 ボウ、とそのあたりから熱が発せられるようだった。気持ちよくて不覚にもとろんと眠くなる、貼るホッカイロみたいなあったかさ。キツネさんはそのあともしばらくブツブツなにか呟いてから、手を離した。 「おう、痛み止めは終わったぜ。もう起きあがっても大丈夫だ。つか起きてみろ」 「はあ…」 眠気を頭から振り払い、そっと起き上がってみると、確かに腰の痛みは消えていた。 「あ、すごい…」 「おし、そんじゃもう大丈夫だな。達者で暮らせよ」 「えっ!?」 キツネさんは荷物を背負い直した。置いて、いかれてしまう。 「んだよ」 「い、行っちゃうんです、か…」 キツネさんは両目を眇めて、冷たい目をした。 「あ、連れてけってか?わりィが見ての通りの二人旅でね、アンタ飼える金なんざねえんだよ。こっから市場は遠いし売りにいくのも面倒だしな。怪我治してやっただけありがてェと思ってくれ」 「そ、そんな…」
「おい、とうちゃん、みろよこれー」 ぶちょ。 そんな擬音で冷たい空気を打ち砕いたのは、ちょっと存在を忘れかけていたおチビちゃんだ。サク…とか呼ばれていたっけ。そのサクちゃんが、ニコニコしながらわたしのスケブを開いてキツネさんの顔にに押しつけていた。あ、鼻が潰れてる。ぶっ。 「すいこまれそうだぜ!」 それはよく見るとわたしの苦手な風景スケッチだった。街路樹の並木道を描いたものだ。よくある一点透視図法。うわ、やだ恥ずかしい、あんなパース狂ってるの… 「とうちゃん、すげえなこれ!」 「…」 返してもらおうと手を伸ばす前に、キツネさんはその絵をガン見していた。スケブを両手でしっかりと握って。あれは返してもらえる空気じゃない。ていうかそんな鼻のすぐ先で見て焦点合ってるんだろうか。 そんなことを考えていると、キツネさんは絵から目を逸らさずにわたしに話しかけた。 「これ…アンタが描いたのか?」 「は?…はあ、ええ、まあ。遠近法っていうんです…よ」 こっちにも画法というものはあるんだろうか、と思いながら恐る恐る答える。質問はまだ続いた。 「…アンタ、料理は」 「え?まあ、好きですけど…」 「体力に自信は」 「なんとも…」 「掃除洗濯」 「やればなんとか…?」 そこまで言うと、キツネさんは溜め息をつきつつボリボリと首の後ろを掻いた。もしかしてつれてってくれるのだろうか。だったらあの答え方じゃいけなかったかも…いやでも、嘘をつくのはよくないし。 数秒の後、キツネさんはこちらを向いた。そして真っ黒できれいな目で、まっすぐわたしを見て一言。 「…アンタ、絵は好きかい」 「…はい」 それだけは、はっきりと。ざわっと、風が吹いた。夕焼け色していた空がいつの間にか暗くなっていた。 キツネさんはふーっと大きく息をついて、言った。 「おい、サク、喜べ。まともな飯が食えるかもしれねェぞ」 「ほんとかとうちゃん!」 「え、あ、あの、それって…」 キツネさんはぐるりとスケブを閉じて、 「俺たちゃ旅の身の上だ。俺はアンタを守ってやる。そのかわり、…まあソッチ方面で使う気はねえが…、炊事洗濯、こき使うぞ、いいな」 「はい!」 「それと…」 「はい」 「…俺に、その絵を教えてくれ」 …わたしに差し出した。それを、ゆっくり受け取る。 「…はい!」
「わーい!!めし!!」 行き倒れない嬉しさにひたる間も無く、ぴょんぴょんとサクちゃんがわたしの周りを飛び跳ねた。さっきはメシ、今もめしってどんだけひどい飯食ってたのかと。 「ねーちゃん、ねーちゃん、おれサク!!あっちとうちゃん!!ねーちゃんは!?」 あ、男の子だったんだ。見た目普通の三歳児男子に、キツネの耳としっぽが生えている。ふさふさのしっぽをぱたぱたゆらして、頬を真っ赤にして、黒目がちの目で見上げてくるサクちゃん…ううっかわいい。 「えっあっ、ええと、私はリン。長瀬リン。果物の梨って書いてリンだよ」 「ナシ…ってなあに?」 「あ、もしかしてこっちには無いのかも」 「…高いから食わせたことねえだけだよ。あァもういらんこと教えやがって…」 顔がモロ獣のソレなので表情は読み取れないけど、目を眇められたから睨まれたんだろう。でもさっきのような冷たい空気ではなくて冗談めかした柔らかい空気で、なんだかすごく安心した。 「ご、ごめんなさい」 「ま、いいや。おれはヤナギ。俺達は…ま、旅の画家だな。ペンネームはヤナガワヒロシゲ」 「ぶっ!?」 まさかのビッグネーム!偶然だろうか。 「ンだぁへんな声出して…ま、俺のことは…」 呼び名のことだろう。ええと、「この世界でヒトとは奴隷」。今日からわたしは彼の召使い的なものなのだから… 「えっと、ご主人様?」 「きもい」 「ひどい」 即答。 「とうちゃんはとうちゃんだよ!」 「父ちゃんはお前の父ちゃんであってリンのとうちゃんじゃねェからなァ」 リン、という言葉にどきどきする。自分の名前だけど、学校ではみんな名字だったし…。 「え、じゃあ…旦那様?」 「お前は嫁か!…ストレートに名前だ名前」 「ヤナギ様」 「様いらねェ」 「ヤナギさん」 「…ん」 キツネさん…ヤナギさんが、柔らかい声を出した。わたしの中でも、ストンときれいなところにはまった。ヤナギさん。ヤナギさん。…いい名前。 「じゃあ、よろしくな、リン」 リン。改めて呼ばれた自分の名前に、なんとなくドキドキした。 「…はい。よろしくお願いします、ヨシさん、サクちゃん」 「よろしく!リンねえちゃん!!」 サクちゃんはにっこり笑って、わたしの左手を、ぎゅっと握った。 ******* かくて狐二人と人一匹の旅は始まる。 月は東に日は西に、彼らの旅はふらふらと。 絵筆を握り、飯握り、時には手と手を握り合い、どこへと知れず津々浦々。 それでは扇大陸三人旅珍道中、“扇道中膝栗毛”始まり始まり〜… 第一話・おわり -------------------
割り振りヘタすぎて申し訳ない… しかもうっかり梨とか出しちゃって…orz いつかエロも目指しつつ、こんな感じで続けてゆきたいと思うんですが 大丈夫でしょうか?
面白かったですw 設定の事は良く分かりませんが、この三人ほのぼのやかましい良い家族になれそう。 嫁になる日も遠くないよね!
343 :
名無しさん@ピンキー :2010/03/12(金) 21:19:17 ID:D5ddoDDS
テンポの速い掛け合いが面白い ほのぼのぶらり旅楽しみ
いやいや、「こんな感じ」がいいと思う。 梨を出したのは問題ないと思いますよー。 植物の種が落ちてないってのも不自然だし。
ときめくね
347 :
膝栗毛の人 :2010/03/13(土) 14:59:23 ID:SCfwHgMM
336です。 うわわこんなにレスもらえるとは思っても見ませんでしたありがとうございます! 早々に続き書き上げます すみません、ひとつ質問なんですが 二話以降も今回ぐらいの長さになってしまうと思うんですが、うpろだ使うべきですか? すみません投下するの初めてなもので全然勝手がわからなくて…
>>347 直接投下でもupろだでも、長さはわりと果てしなく長くても問題ないけど、
これ以上短いとちときつい。
upロダ投下は簡単だったり、他にいろいろ理由があってそうしてるだけなので、
特に理由がないなら直接投下でかまわないと思いますよ。
349 :
膝栗毛の人 :2010/03/13(土) 21:42:01 ID:SCfwHgMM
>>348 そうなんですか、なるほど
では次も直接投下でいきたいと思います
ありがとうございました!
場違いな質問失礼しました o...rz
大変お騒がせしました。二話です。 あと前回の一番最後の主人公のセリフ、名前間違えてましたすみません。 では以下より。 ------------------- ヤナギさんが、なぜ一度置いていこうとしながらもわたしを拾ったのかというと、あのス ケブの遠近法にいたく感動したから、らしい。 この世界にその概念が無いのか、ヤナギさんが知らないだけか、私が一通り説明すると感 心したような声を上げていた。 街道沿いの岩に腰掛けたヤナギさんに今日も説明の続きをすると、それを実践するべく、 早速綴られた紙束をひざの上に乗せて、筆でサラサラと景色を描き始めた。 サクちゃんはというと、とっくの昔に一人で街道沿いの森に遊びにいってしまった。 「サクちゃん、追いかけなくていいんですか」 「いつものことだからな」 とは三日前同じ状況になったときの会話である。 そういうわけで私もヤナギさんが座る石の隣に座り、スケブを広げ、貰った鉛筆を使い、 スミレみたいなどっピンクの花をスケッチすることにする。 周りはひどくのどかな田園風景だ。遠くに山が見える。鳥のさえずりが聞こえる。合掌造 りの家がその辺にニ、三軒あっても違和感無いぐらい。…いや、それよりちょっと西洋っ ぽいかな? しかもヤナギさんやサクちゃんの格好が時代劇の旅人そのものだったり、ここまで二人以 外のこの国の人を一切見ていないので、なんだかただ迷子になってしまっただけな気もし てきてしまうからどうにも困る。 こちらに来てから、あっという間に数日が経っていた。その間にわたしはこの世界のこと を色々と知った。例えば、サクちゃんは男の子だけど女の子と同じ見た目をしているマダ ラという存在だとか。なるほどそれで二人には違いが。 それに加えて男女の違い、この世界のこと、魔法のこと、ヒトのこと…。 語り部はヤナギさん、話に色を添えるBGM(笑うところ)はサクちゃん。学校で授業を聞い ているより、ずっと楽しい。知らない世界知るというのは。 …ここまで開き直れるまでは大変だったけど。 そして、それとは別に、知ったというよりも心の底から感じたことは。 サクちゃんはわたしがとても優しくなれる存在で、 …ヤナギさんは、サクちゃんにもわたしにも、とても優しい。
…ヤナギさんの召使い兼絵の講師兼サクちゃんの遊び相手となった、最初の夜。 私が落ちてきたところがちょうどいい窪地だったので、今夜はここで野宿となった。 「野宿なんて初めてです!」 「これからはほぼ毎日外だからな、慣れろよ」 実は小学生の時のキャンプも、運悪く風邪をひいて行ってなかったりするので、野外で寝 るのは本当に初めてだったりするのだ。わくわくする。 ここで寝ると決まると、サクちゃんはその辺の枝を拾い集め、枯れ葉を数枚のせて、ヤナ ギさんの荷物から何か紙のような物を取り出し、それを使って手際よく火をつけた。ここ まで、約三分。 「うわ、すごい」 「リンも覚えるんだからな」 ヤナギさんがニタリと牙を見せて笑った…んだと思う。まだ獣そのものの顔に慣れないし、 なによりちょっと怖い。 「え、わ、わたしにできるでしょうか」 「できるよ!簡単だもの!」 ぱっと笑ったサクちゃんの笑顔は、とてつもなく私を癒やしてくれた。 ぱちぱちと、火のはぜる音がなんだか心地いい。うっとりと見つめていると、ヤナギさん が木の実の入った皿をよこしてきた。 「食いな、味は悪ぃが腹は膨らむぜ」 ありがとうございます、と小さく言って受け取った皿の中には、豆らしき物が入っていた。 …三粒だけ。 …仕方ないのだ、わたしは奴隷なんだから、と思いながらも諦めきれずに、ちらっと隣の サクちゃんを見ると、彼の皿にも同じだけしか入っていなかった。 「たべないの?」 と小首を傾げて聞いてくる。その様子に不自然なところはない。いつものことなんだろう。 いただきます、と呟いて、アーモンドみたいな形したソレを一つぱくりと食べる。 がり。 ……。 「………うびゃああああ!?」 すごい。これは、やばい。例えるなら、まったりとしたそれでいてクセもある究極のまず さ!!そうかあれはこういう!! あまりのまずさに悶える私の様子を見て、ヤナギさんとサクちゃんが私を指差してゲラゲ ラ笑った。そして私と同じように口に入れて、同じように悲鳴をあげた。私も笑ってやる 。三人でそれをもう二回繰り返した。たった三粒だけど、確かにお腹 いっぱいになった。 …いやでも、これさ、腹が膨れるっていうより、もう何も食べたくないに近いんじゃ…。 「いつもこんなん食べてるんですか?」 「料理めんどい時はな」 「今日はおこめがないし〜」 …そりゃ飯めし言うわな…覚えよう、料理。 わたしは静かに決意した。
「そういや、お前さん歳はいくつなんだ?」 ヤナギさんはキセルをふかしながら言った。 「あ、17歳です、ハイ」 「…はァ?あ、あ、あーそーか…」 「おれと七つしかかわんないんだな!」 「あ、10歳なの?てかいや"しか"ってレベル…?え?」 「俺たちの寿命はンなもんだよ。おめぇらヒトよりゃずっと長い」 「へええ…え、サクちゃんはほんとに10歳なんですか?全然そうは見えないんですけど…」 「単に比較するなっつーの。ヒトの寿命は…80だっけか?それと比べりゃえーと…サクは 三つ、俺は二十歳とちょっとってとこか」 「へー!」 そんな感じで、しばらくこの世界や国のことについて教えてもらいながら談笑していると、 途中からうとうとしてきたサクちゃんは私の膝を枕にして眠ってしまった。 時折耳がピクピク動いて、しっぽがぱたんと揺れる。加えて天使の寝顔。 「うっわ、かわいい…」 そっと、茶色い髪を撫でる。ふわふわ。 「だろ。いつもは俺と二人旅だから、他の遊び相手ができて喜んでんだよ」 目一杯かわいがれよ。そう言って焚き火の向こう側からサクちゃんを見つめるヤナギさんの 目は、…なんていうのかな、父親らしい慈愛に満ちていた。もろ狐顔でもわかるぐらいに。 そういえば、サクちゃんのお母さんはどうしているんだろう。どうして父と子だけで旅を? 聞きたかったが、まだそれを聞いてもいいほど親しい間柄ではないような気がしたので、何 も言えなかった。何も言えなくなって、パチパチと燃える焚き火を見つめていた。 …お父さん、お母さん…か。 「お、おい、どした、リン」 わたしの様子がおかしいのに気付いたのか、炎の向こうからぎょっとしたような声が届く。 けれど、わたしはそれに答えられなかった。目に水の膜が張って、口を開けば聞くに堪えな い嗚咽が漏れるであろうことはわかっていたから。 けれど。けれど。 「…な、なんでもな…です、ごめ、な、さ」 おかあさん。おとうさん。おにいちゃんおばあちゃんおじいちゃんいとこのみっちゃんさっ ちゃんたつにい、ともだちみんな―――もう、会えない。 突然の落下、狐と狐耳猫耳少年との邂逅、そして告げられた残酷な状況。 ああ、今まで忘れられていたのに。さっきからいろんなことが自分の身に起こりすぎて、何 も考える余裕など無かったから。 でもいま、こうして静かな炎の前で何もすることが無くなったとき、心にゆとりができた瞬 間。 最大限まで引いていた波が、怒涛の如く押し寄せて来たのだ。 もう、みんなに会えない。 わたしは、何もかも置いてきてしまったのだ。 今のわたしには、なにもない。
あ、やばい、と思ったときには遅かった。 「…う、うぇ…、ふっ…」 ぼろぼろ、ぼろぼろ、堰を切ってしまった涙は止まらなかった。 やばい、だめ、泣き止まないと涙がサクちゃんにこぼれてしまう。でも、この悲しさが止め られない。今泣いてしまったら、サクちゃんが起きて、サクちゃんにも迷惑かけてしまう。 泣き止みます、ごめんなさい、でも苦しい。どうしたら。 次の瞬間、ひょいと膝の重みが消えて―――右肩にサクちゃんを抱えたヤナギさんが、わた しの右隣に座った。 「いいよ別に。泣きたいなら泣けよ。」 ぽん、と頭に手が乗せられる。あったかい。 「我慢すンな」 優しい声だった。 「…っひ、」 …あとは言うまでもない。わたしは家族や友達の名前を叫びながらわんわん泣いた。 その間、ヤナギさんは何も言わずにわたしの背中を撫で続けていてくれたのだ。あったかい 、大きな手で。 あまつさえ、ハンカチとして自分の左肩を提供してくれたのだ。半ば抱き込むようにして体 を揺らし、わたしを落ち着かせてくれる。少しケモノ臭いのはご愛嬌だ。 …何より、すごく落ち着いた。 わたしは、お父さんとも違う、お兄ちゃんとも違う、暖かくて安心する手を背中に感じなが ら眠りについた。
次の朝目覚めると、わたしはヤナギさんを枕にして寝ていた。…しかも大分際どいところ。 足の付け根、ってところだ。 「ぎゃっ」 妙な悲鳴で跳びすさったわたしに気がついたのか、ヤナギさんもゆっくり目を覚ました。 「…うあ、おはようさん」 「お、おはようございマス…」 寝起きの掠れ声がなんかちょっと色っぽい。のと合わせて、昨夜大分お世話になってしまっ た恥ずかしさからちょっとカタコトになってしった。 「っぶ」 不意にヤナギさんが吹き出した。 「リン、おめえすげえ不細工になってる」 「もっ!元々です!知ってます!昨日も見たでしょう!」 「いや、瞼真っ赤に腫れてるぜェ?」 「うぎゃあ」 一晩中泣いた後プラス寝起き。 …み、見ないでえええ… 「ッさー、今日も1日歩くぞー!おら、サク!顔洗いにいくぞ!」 「おー…ぐぅ」 「はら」 「ま、いいか、行くぞリンー」 「は、はあい…」 なるべく両手で顔を隠して歩いていたら、振り向いたヤナギさんに爆笑された。 焚き火から100メートルほど歩いたところにあった湧水で顔を洗い、水筒に水をくみ、ヤナ ギさん曰わく「大分マシになった」顔を晒して焚き火あとまで戻り、もう一度火をおこして 汲んできた水をわかして、白湯を飲んだ。 「…おいし〜、なごむ〜…」 ふーっと大きく息をつくと、ヤナギさんが怪訝そうな声で聞いてきた。 ちなみにサクちゃんはヤナギさんの膝の上で同じように白湯を飲んでいる。 「まァ白湯はうまいがそこまでとろけるかァ?」 「いえあの、向こうにいたときはこんなのんびりとした朝を味わったことあんまり無かった んで…」 あ。しまった。昨日あんなに泣いたばっかりだというのに。「向こう」のいつもの朝を思い 出してまた鼻の奥がツーンと…。 うつむいて嗚咽をひとつ飲み込んだとき、「リン」と静かに呼ばれて「はい」と返事しなが ら顔を上げれば… ピン、と口に放り込まれたアーモンド的なアレ。…がり。あ、思わず噛んでしまった。 「うがあああああああ」 完璧不意打ちで味に対する姿勢が全く整っていなかった私がまずさにのたうちまわるのを、 二人がまたゲラゲラ笑いながら見ていた。おかげで涙は収まったが。 そして三人で夕食と全く同じメニューを朝食として食した。悶えながら。
豆を食べ終わると、ヤナギさんが木の枝を拾いながらわたしをちょいちょいと手招きした。 「リーン、ちょっとこっちゃこい、座れ」 「はい」 ヤナギさんの左側へ座ると、彼は地面に木の枝でなにか描いていた。…なんだろうこれ?あ えて表現するなら、二切れぐらいとったあとのホールケーキのような…。 首をかしげていると、ヤナギさんがその絵を枝で指しながら説明を始めた。 「これはこの世界の地図な。扇の大陸だ。 いいか?今いるのがココ、狐耳国を抜けたところな。これから市場のある町を目指す。食い 物と、あとお前さんに必要なものも買わなきゃいけねえからな。 ンで、この辺を通って西へ、猫の国へ行く。やっぱ買い物ったら猫の国だからな」 あ、わたし売られないんだよかった。とか、わたしになんか買ってくれるんだ。とか、咥え たキセルがしゃべるたびにぴこぴこ動くのがかわいいとか思ったけど、それより気になるこ とがひとつ… 「…猫ってあれですか、耳が三角で尖ってて目がくりくりしててにゃーと鳴く」 「それ以外にどの猫がいるってんでェ」 「きゃー!!素敵!!!」 思わず立ち上がりながら叫ぶと、驚いた二人がビクッと震えた。 「あ、…ごめんなさい…」 ちょっと気まずくなりつつそろそろとしゃがみなおしたが、わたしの頭の中はにゃんこでい っぱいだ。 猫の国。猫の国かあウフフ。 ヤナギさんは狐である。二足歩行だし私より背は高いし指は五本あるけど、どこからどう見 ても狐だ。たとえるなら鳥獣戯画みたいな感じ。服は着てるけど。 そして、女性は大体サクちゃんのような姿をしているというし。つまりヒト女性on猫耳猫尻 尾。 で、そんな感じで猫がたっくさんいる国… 「…ゆ、夢の楽園か…」 「何言ってんだお前。いいか覚えとけ、猫のやつらは怖ェぞ?商売しか頭にねェ奴らがうよ うよいるんだ。…とにかく気をつけろ。で、次だ次。」 「あ、はい」 「まずお前の服を買おうと思う。その服だと悪目立ちするからな」 その服、とは学校の制服であるセーラー服だ。 「はぁ」 「それでだが」 そこでヤナギさんは一度、サクちゃんという幼い子には見せたくないぐらい(つまり教育上 大変よろしくない)悪い顔をしていやらしく舌なめずりをした。え、なんですか。 「できればその服売らせてくれ」 「せっ、セーラー売れるんですか!?」 現役女子高生(残念ながらイコールかわいい女の子ではないけど)のセーラー買う奴とかど んだけ変態だよ!と思ったが、 「だってそれ向こうのモンだろ?落ち物として売りゃ大分高値がつくぜ」 ああなるほど。…でも、このセーラーには思い入れがある。 初めて袖を通した時の喜び…二年間の思い出。だけど、こっちでは悪目立ちするというし、 なにより動きづらい。…それにもし帰れたとしたならまた買ってもらえばいいわけだし… 「…うっ、売ります!」 …向こうの思い出を身に着けていると辛い、という部分もある。これでわたしの気持ちを少 しでも昇華できたらいいな、という気持ちも込め… 「いやっほォーい!!サク!!肉が食えるぜぇぇえ!!」 「てやんでーい!やったなとうちゃん!!」 いえーい、と両手でハイタッチする二人が超かわいい。わたしはこみ上げる何かをぐっと飲 み込んだ。萌え、という気持ちだったかもしれない。
「とにかく第一目標は猫の国だが。その後…どうする?」 「え?」 「いや、だからどうする?」 いやそんなんわたしに言われても。 「…この旅目的無いんですか?」 「無い」 きっぱり言われてしまった。まじですか。 「でもとうちゃん絵ばっかかいてるよー」 「まァ敢えて言うなりゃそれだな。だから、どこか行きたいところはねえか?連れてってや るよ、どこでも」 …多分、微笑んでいるであろうその顔に。その、あの、…すごく、ときめいてしまったんで す。 いやもう狐ヅラとかどうでもよくなるぐらい。 「…喪女にそんな優しく笑いかけたらいかんて…」 「あ?なんだって?」 「い、いや、なんでもないです。というかわたしどこに何があるとか知りません」 「山とか海とかそういうのでいいよ。なんかねえか」 「おれどこでもいいー」 「俺もー」 サクちゃんの真似をしてそういうヤナギさんに思わず笑ってしまった。 「…えっと、じゃあ、」 「おう」 そっと浮かんだのは…女の子なら、一度は憧れると思う、アレ。いや17にもなってなに言っ てんだわたし。 「…う、やっぱなんでもな」 「おいこら言え」 「うぐぐ…」 「いえいえー」 「うぐぐぐぐ…」 口にするのが、若干、というか大分恥ずかしいが。 「…あ、あたり一面、お花畑…みたいなとこって、あります?」 二人はきょとんとした。うわほらやっぱ恥ずかしいぃぃい!! 「それならどこにでもあるよ!」 返ってきた答えは、意外なモノだった。絶対笑われると思ったのに…。 「ああ、流石に犬の国や蛇の国はわからねえが、この辺ならなあ」 「リンねーちゃんも、あれきれいっておもうか!? とうちゃんな、いつでもみれる、っていつもとおりすぎちゃうの!」 そう言ってきゃっきゃとはしゃぐサクちゃんは最高に可愛かったし、 ヤナギさんも馬鹿にするなんて事はせずに「それじゃ行きがてら適当に寄るか。あとのこと はあっち着いてからって事で」なんて言ってくれて、ああ、勇気出して言ってみてよかった と思う。
「じゃ、出るぞ」 「はーい!」 「はい」 ヤナギさんが荷物を背負お…うとしてやめた。 「やっべ、大事なこと忘れてた。なんかあったかな…」 がちゃんごとんと、荷物(櫃とか言っていた)をひっくり返して…あーあーあー見てられな い! 最終的に荷物を全部ひっくり返して、お目当てのモノは見つかったらしい。 「おっ、あった!」 「とうちゃんきたねー」 「父ちゃんが汚えみたいだろそれ。…リン、いっぺんそっちむいてろ」 「あ、はい」 くるりと振り返ると、首元になんか感触…って、つめてー! 「うびゃっ!?な、なんですか!?」 「まあまァいーから…よっ、とっ、と」 …何かわたしの首に巻いているらしい。邪魔かなと思いポニーテールを少し持ち上げた。首 の後ろでなにかこちょこちょやっているのがたまらなくこそばゆい。 「うは、ははは、やだくすぐったいですー」 「だからちっと黙ってろって…〜、…うん、できた、いいぞ」 回れ右ー、となんか体育みたいノリで言われたので、律儀に綺麗な回れ右をする。 気をつけーぇぴっ。 触ってみると、何かコロコロしていた。まるで真珠のネックレスみたいだ。 「ああ、それ、水晶の数珠な。…ヒトってなーな、“飼われてる”時はその目印として首輪 しなきゃいけねえ決まりなんだ。ホントは皮がいいらしいんだがよ、あいにく持ち合わせて ねぇし、その方が魔除けもあっていいだろ。まあとにかく外すなよ」 く、首輪代わりに数珠ですか。そのセンスに脱帽した。 しかしまあ、首輪とは…。最初はわけもわからないまま自分から懇願したとはいえ、ほんと のほんと、正真正銘の召使いになってしまったという感じだ。 …でも、だけど、別にいいかなと思ってしまう自分もいた。 だって、この人たちは、ほんとのほんとに優しい。一晩という短期間でわかってしまった。 感じてしまった。 …わたしは、この親子が、好きだ。 「…精神誠意、お勤めさせていただきます」 「…ああ、よろs」 「たのむよ!!」 「…サクゥう〜…」 がっくりと肩を落とすキツネと右手を挙げてにこにこしているケモ耳ショタという対比が面 白かったので、声に出して思い切り笑ってやった。 さあ、出発だ。
そんなわけで、四日目の今日。のどかな昼下がりに、わたしは驚くほどのんびりしている。 あの夜の後も不意に泣きたくなってめそめそしたとき、ヤナギさんはいやな顔もせずに、何 度か肩を提供してくれた。うざがられている雰囲気も無い。サクちゃんもなんだかすっかり 懐いてくれて、私としては本当快適な毎日である。 不意にぱたんと画帳を閉じたヤナギさんが空を見上げた。 「そろそろ出るか」 「はい」 ヤナギさんは森に向かってサクー、と一度だけ呼びかけて、荷物の中に画帳をしまいこんだ 。 わたしも描き上がったスミレをざっと見直し、スケッチブックを閉じて鉛筆をしまった。 「ま、今出れば…明日の夕方には、街に着くな」 「わかりました」 そのときサクちゃんが森から出てきて一直線にわたしの元へ走ってきたので抱きとめて、尻 尾についていた葉っぱを取る。サクちゃんは一度大きく身震いして、私の左手を握った。 「ねーちゃん、いこう?」 「うん」 先に歩き出していたヤナギさんの背中を小走りで追いかける。 ああなんか本当に、これはこれで幸せだ。 二話・終 ------------------- 「まったりとしたそれでいてクセもある究極のまずさ」という言葉が好き
乙! ニヤニヤしたw
もっさりとしていてこくもなく、なおかつ口の中に残る違和感。 という文学的表現を目の前でされたことがある。 GJ。
乙です! 一口でのたうちまわるって、どんだけw 三人ともかあいいなあ
ふと不安になったんだが、ヒト年齢に換算して何歳まで少年とか少女と言ってもセーフなんだ?
本人次第だよ、きっと…… そう、きっと300以上であっても見た目が少年少女ならセーフのはず!
ヒト換算で19までだろ。 なにせショタジジイやロリババアの闊歩する世界だから外見さえ繕えば…おや、誰かきたかな?
精神年齢で換算して17歳までと言ってみる。
やっべ、続き書けなくなる。
見た目次第に一票
成人向けメディアに一本10円の税金かけて、 児童ポルノ被害者救済にあてるとかやればいいのに。
最近ショタ受け成分が少ないと雑談振って見る。
「自分で書け」という神のお告げかもしれない
雑談に乗ってやれよw
ヒトショタを書こうと思っていたら、(こちむい世界の)女性でも「男性」でも性的興奮する主人公になっていた な、なにを言っているかわからないが獣耳スキーだとか、ケモナーだとかの範疇を超えた恐ろしい片鱗を味わったぜッ
>>371 そりゃあれか、久しぶりに「光速の異名をもたず槍を自在に操る煩悩多い女聖堂騎士」
の話を書けということか。
逆に考えるんだ。 これまでショタ受けじゃなかったキャラを脳内でショタ受けに変換してみるんだ。 がっくんとかカルトとかげんせーさんとか。 …ごめん、自分で言っておいてなんだけど無理だわこれw 強いて言えばレムならなんとかならんでもない。
もうショタ化の薬でも作ればいいよ
>>373 こちむい世界のノーマル男性に欲情するヒトショタだと
俺にはある
多種多様なニーズに応えるにはどうしたらいいか考えた。 前にどっかで読んだんだが、某携帯会社のCMはいろんな意見があってまとまらないから、 家族、ペット、国際化等、全部混ぜてみてあんなことになったらしい。 本当かどうかは知らんが、とりあえず人気なのは確かだ。 つまるところ、混ぜちゃえばいいんじゃね?と思って、やってみた。 ……地獄絵図にしかならんから諦めたorz
某東方で書くときのタブー全部あえて詰め込んだのとかあったな
まぁ、絵の具とは違うから、神憑り的な構成力さえあれば……いける
混ぜて共通部分だけ使えば…という事で要素を抽出してみた。 まず属性が ショタ受け ヒトショタ ノーマル男性に欲情 で、名前が出ているキャラが 荒野のテンプラナイトの二人 がっくん カルト げんせー ウル ここから共通要素を抽出していくと ショタ化したカルト(ヒトショタ)がショタ化したウル(こちむい世界のノーマル男性)に欲情して襲い掛かる という事か。 …確かに地獄絵図だなw
387 :
ツキノワ :2010/03/30(火) 22:15:41 ID:t1SAWrt5
ヒトショタに好かれるウルは作者でも全く想像が出来ないのですが
(ホモが書けないという意味で)
単に懐かれて、それが若干行きすぎている、という事なら何とか。
それとは別のエピソードとして、ウルはショタクマであった幼少期に
ヤリ手のヒトメスに誘惑されてふらふらと筆おろしをしてしまい、
その後もさんざん弄ばれたあげくにヒトメスにしか欲情しないという
最悪のトラウマを植え付けられたが故にヤスコにも
* *
* うそです +
n ∩_∩ n
+ (ヨ( ´(ェ)`) E)
Y Y *
【ツキノワ】6.熊とヒトとハートブレイク
ttp://adder.sakura.ne.jp/nkmm/clip/img/221.txt
クマキター! ウルさんの手料理食べたい。
ヤスコさんは裏目引く人だなあ
保守
白いスカートに咲いた交差点の泥水というフレーズを思い出す 強く見えるよう振舞うひとは、支えや張りが崩されるととても激しく崩れ去るんだよな…… 挿入されてる神話にも目を輝かせつつ、続きを楽しみにしております。しかしこんな美味そうな謎肉はじめて見たw
新人さんだー!おつー。
乙です! ハードボイルドですね。先が楽しみ。
395 :
名無しさん@ピンキー :2010/04/10(土) 20:00:07 ID:s3k8m97x
乙ー! 最後におおっ!?ってなった。 続きも見たいです。
396 :
395 :2010/04/10(土) 20:01:12 ID:s3k8m97x
すまない。あげてしまった…
初投稿乙です! いやいや、普通に上手いですよ 続き待ってます(^-^
外道を蹂躙する外道、胸が熱くなるな
いいな、こういうのも。続きが楽しみだ。乙です ただ、欲を言わせてもらえば、ちょっと改行しすぎかな? そういう風に改行して印象強くする、ってところはいいんですが…… 普通の場面で一行に収まる文を二行も三行も使われるとちょっと読み辛い感じがします 一人の読み手からの戯言なんで無視してくれても構いません
サカナとかトリって、ひょっとして卵から生まれたりするんだろうか?
>>400 まだ決まってないが基本的には萌えるほう
そのとおり。萌えればそれで良し! ただ、卵だとダチョウどころの騒ぎじゃない、バカでかい卵じゃないといけなくね? パンダ並みに大きく育つなら別だけど、ヒトとそんなに変わらない女なんかが手のひらサイズから育つとは思えない。 人口が増えすぎる問題もあるし、卵なら一度に生まれる数が多いと困るかと。 つーか、某ニワトリも昔は可愛いヒヨコちゃんだったんだろうか……想像できないけど。
雄々しいヒヨコだったのだろうと推測する。
ちょっと質問。 こちむい世界で使われている言語は一つ? それとも複数ある? もし国によって言語が違うとしたら、自動翻訳機能搭載のヒトは通訳としてかなり役に立つんだが。
なるほど、通訳ですか・・・ 今まで投下された話を見る限り、他種族間でも普通に言葉は通じている気がするので、 通訳として役立つ機会はあまり多くはないかと(大陸共通言語?) とある国で、他に誰も知らない独自の言語をしゃべる部族がいるとか、 共通言語があったとして、それ以外に国ごとに母語があって、地方部ではそっちが主流の国があるとかなら、 ヒトの通訳、もっすごく役に立つと思いますです 何なら、自分で世界観壊さない程度に設定作っちゃってm(ry 一個人の勝手な意見なので聞き流してもらって構いません
>>404 国ごとに言語が違うって、二度書きしてしまいました
すいませんでした
m(__)m
こっちと同じで、英語みたいな準共通言語はあるけど、国によって喋れる人とそうでない人が色々いるとか 人間がどの種族とも話せる、誰とも言葉が通じないっていうのも、落ちた時の異変云々で片付きそう
いつの間にかロダに新作きてれぅ ババアかわいいよババア 幼女かわいいよ幼女
作品続々キター乙 読んでてアソコが熱くなりました そして絵板とうpロダの管理ありがとうございました!
質問です。 こちむい世界で人間が空を飛ぶ技術って出てる? 今、少なくとも猫国ではほとんど発達してない&知られていない事を前提にして書いてるんだが、 大丈夫かな?
説明しよう 特定の薬品を注射することにより、人は自由にトぶことができるのだ!
ありがとう、それはそれとして使いたいネタはある。 もし飛行機・飛行船・気球など乗り物系で既出があったら教えてください。
銀輪
気球はあったはず
ただ、一般的には普及してないはず。 てゆーか普及されてたらトンボ集落涙目ってことになるw ついでにいうと、書き手の片隅にいる俺も涙目になるw
>413 >414 >415 ありがとうございます。おかげで構想がまとまりました。 さあ、後は書くだけだ。
頑張れ 書いたのに投稿できない俺みたいなチキンになるなよ
そろそろ書かないともうすぐ最後の投下から半年になっちまうorz
鳥と虫が飛び放題、魔法のジュータンなんでもござれだもんなあ。 鬼太郎よろしく大量のカラスが吊り下げたブランコで空中遊泳なんて手もあると 考えると、空とぶ乗り物への開発意欲は格段に低そう。
飛べる奴はどこの国に行っても仕事に困らなそう
ついに俺のニャン斗人間砲弾が日の目を見るときが
ばあさんや、見聞録の続きはまだかいのう
少なくとも自分の脳内ではあたし妊娠したよ
むしろジークが懐妊したよ
ぞーきんー!?
見聞録大好き! 作品を書いてくださっている方々ありがとう …イノシシの続きも読みたいぜよ
立ち去った後の顔面う゛みっが、薬をあげた手前、連中が無事かどうか 水晶玉で覗き見して、その瀕死の耐久レースっぷりに唖然としてる まで読んだ
428 :
とらひと :2010/05/23(日) 18:19:40 ID:Xd8fNjQu
乙ー 誇りって難しいな
格好付けるって大変なんだよ 意地を張って生きるって美しいな
大丈夫、きっとあいつらはうまくやれる 一人のヒトメスのおかげで
あんまり期待しないで本スレ来たら、物語がアップされてて嬉しい。 でも、なんで評価されないんだろうね。書いてて大変だと思うのに。 良い書き手さんがどんどん減ってくなぁ とらひとさん 乙でした
規制じゃねーかなあ 俺は投下あってGJしたくても大抵規制で(´・ω・`)状態だった まぁ避難所行きゃいいんだけどもさ
434 :
規制狐 :2010/05/31(月) 10:23:48 ID:GAyjISFP
乙です 躾ポイント早速登場か
朱風はマゾかわいい
尻尾派か。もふもふだなあ。尻尾。尻尾。
>>428 GJ! すげえ。面白すぎる。
なんか、こう……かっこいいな。
あとハンスはケーキを食べてみるべき。
六 俺は、深夜、里長の部屋に呼ばれていた。 双子はとっくに寝静まって、虫の音しか響かない。 それも、きっちりと閉められた板戸の向こうだ。 里長はゆっくりと酒を呑んでいる。 ご主人様と同じような仕草で呑むのは、やはり付き合いが長いからだろうか。 着流しに包まれた太腿が、立て膝で露になる。日に焼けないのだろう、そこはやたらと白い。 俺は唾を飲み込み、手招きされるままに、股間へと顔を埋めていく。 何も身に付けていない、その茂みの中に舌を伸ばして、低く笑い声を上げる里長を押し倒していきながら、舌の動きは止めない。 視界の隅で酒が床に零れ、一旦顔を離した俺は、それを指ですくって、濡れてきた茂みの奥に塗り込む。 途端、反応がよく濡れ始めるそこに、さらに舌をはわせ、両足の間で、ずずっといやらしい音を立ててやる。 すぐ傍には一組の布団が敷かれていて、その枕元には黄表紙が見えた。 あれを見て一人慰めるよりも、『冬』の準備は、直接の方がいいだろう……。 それにしても、こう、茂みって、剛毛だよな。だれもかれも……。 と思ったら、目が覚めた。 俺は、板間に鼻をこすりつけていたらしい。 よだれのしみが出来ていた。 布団がずれて、俺の頭と足は完全にはみ出して回転している。 すでに、朝の光を取り込む為か、板戸は開け放たれていて、周囲には誰もいない。 いいにおいが、囲炉裏のほうから漂ってくる。 なんか、昨日の今日で、あの場所に行きにくい。 双子と、どんな顔をして会えばいいんだ? だが、結局腹の虫が鳴って、俺は渋々、身繕いを整え、井戸で顔を洗った後、囲炉裏へと出向いた。 囲炉裏には里長だけがいて、朝の夢の生々しさから俺はそっと視線を合わせないようにした。 あの後、『冬』の説明を淡々と受けたから、あんな夢を見たんだ。そう思う事にする。 「おはようございます……」 視線をそらしたまま、頭を下げる。 「寝坊助だな、ゴボウ。食事を終えたら、出向いてもらいたいところがある」 里長は俺を見上げた後は、囲炉裏の傍に置いてあった盆を指差し、自分はお茶を飲んでいた。 お盆の上には箸と茶碗、お椀があった。俺は近くのおひつと、囲炉裏にかけられた鍋から、芋栗南京ごはんと、炒め菜の味噌汁をよそり、黙々と食べた。 味噌汁からはごま油の風味がしてうまい。 「ごちそうさまです」 手を合わせて、食事を終えると、里長が話を切り出した。 「里外れの竹林に庵がある。そこに、ミクルのところで土産を預かった後、よってもらいたい。いいか、竹林の中で怪我をしてはならぬぞ、くれぐれもな」 俺は承知して、食器を洗って片付けると、早々に、屋敷を退散した。
また、ミクルのところで微妙に気まずい思いをし、風呂敷包みを受け取った後、俺は竹林に足を踏み入れた。 竹林は広くて、俺は一向に見えない家屋に、迷ったかと思いかけたところだった。 ぽつん、とその家は物陰に姿を現した。ちょうどそこだけ土地が低くなっていて、俺が来た方からは見えない位置にあった。 これが、庵か。 すべてが竹で出来ていて、押し出し窓の下に、つっかえ棒がしてある。 通風はよさそうだ。 回り込むと、一段高くなった入口に、竹製の把っ手のついた扉があった。軽くノックをする。 「どうぞ、扉は開いていますよ」 中に入ると、竹の匂いがより一層強くなった。 青竹の床はスニーカー越しでも足に心地よい。 扉を閉めると、竹の匂いに混じって、古書の匂いがしてきた。 「靴は……?」 「靴? ああ、履物ですね。そのままどうぞ」 声だけが、天井高く積み上げられた本の山の向こうから聞こえてくる。 「よくいらっしゃいましたね。僕が庵主のレンアンです」 そこにいたのはヒゲが一切生えてない童顔に、丸眼鏡をかけた、背の低いおっさんだった。 M字に生え際の後退した剛毛伸び放題の髪。俺の目線からは、くっきりと薄毛の進行具合が見える。 耳は確かにイノシシの耳だけど、本当にこんなのがイノシシの男? 俺は目を疑った。 イノシシの成人した男を見たのは初めてで、判断材料がない。 服装は、書生風で、スタンドカラーのシャツを着物に合わせている。袴なんてここにあったのかという感じだ。 でもそれ以外は、里の他の女より背が低そうだし、首短いし、なんか背中丸まってるし。迫力ゼロだ。 「あ、ぼ、僕は全然一般的ではないですからね。チビハゲデブの3拍子揃った上に、10万人に1人といない落ちこぼれのマダラですが……」 喋る口元から牙が覗く。 ずいぶんと卑屈な人だ。 「マダラ?」 「僕のように、女性と同じ顔をしている男です。イノシシ族は特にこの割合が低いのですよ」 「はあ」 他にも獣顔の種族がいるってことだよな。それ。 あまり想像したくない。 「ええと、そうですね。この本で解説しましょう」 レンアンのおっさんは横に積み上げてある本棚の中から、一冊の本をとり出した。 「ええと。これがイノシシの一般的な女性。それから20人に1人の門番相です」 イノシシの女性、とされた絵は里の女達やご主人様と変わらぬ姿。そして門番相は老婆の姿だった。 「それで、こちらが一般的なイノシシの男性です。僕みたいのは極々例外です」 イノシシが服を着たって感じの男の絵が載っている。うりぼう達が大きくなったらこんな感じだろう。 「それで、こちらが『白膚』、それからこれが『黒膚』と『赤膚』ですね」 レンアンのおっさんは、3カ所の絵を指差した。 「まあ、黒と赤は普通のイノシシの男達と区別がつきにくいかもしれませんが、一応牙が短いんですよ。それと、脱げば一目瞭然です。一物の形状が違いますからね。白含め黒と赤は細長くて螺旋状なんだそうです」 指し示された絵に、俺は目を疑った。 「……待ってくれよ、これって」
「これって?」 「ブタ、だろ? どう見ても」 俺は『白膚』を指していった。 レンアンのおっさんはしまったという感じで自分の額を叩いた。いい音がする。 「侮辱と取る方もいるので、その呼び方は本人たちの前では言わないでくださいね。一応町の住人ではありますが、この国の人達なので」 「なんで?」 「言いにくい話ではありますが、かつて落ちもののヒトがそう、『白膚』を侮辱したのです。最初侮辱されているとはわからなかったそうですが、その後問題になりまして」 確かに、あまりいい意味の慣用句を俺の世界で聞いた覚えは無い。 「……説明、どうも。あ、忘れてた。これ、茶屋の主から預かった土産」 俺はミクルから預かってきた風呂敷包みを、放り投げた。 レンアンのおっさんは慌てふためいて、それをキャッチする。 「み、みみみみみミクルさんの、お土産ですかっ! 手作りですね、手作りに相違ありません。素晴らしい、なんと素晴らしい」 風呂敷包みに頬擦りするおっさんは正直、キモい。 「いつもお斎を作ってもらってるけど、確かにうまいよな。あいつの料理」 「だだだだだだ駄目ですっ! ミクルさんのことをあいつなどと言っては! 貴方の贅沢な物言いは到底許されるものではありませんっ」 俺は、おっさんの慌てように、目を細めた。 「好きなんだ」 言ってから、すごく後悔した。 M字剃り込みまで茹で蛸みたいになるおっさんなんて、正直絵にもならない。 レンアンのおっさんは震える手で風呂敷包みを開け、中身の匂いを存分に鼻に取り込んでから、少し冷静さを取り戻した。 「ミクルさんは、『赤膚』の母とイノシシの父を持つ、間の子です。ですから、イノシシである里人からはやや離れて里外れに暮らしています」 あいつが、イノブタ? 「元々は、『赤膚』である母親が、今の里長に願い出て、『冬』に参加し、もうけた子です。母親の方はその後、ここの暮らしが合わずに出て行ってしまいましたが、ミクルさんの方は里長の保護もあって、ああして立派に成長なさって……」 「待て。なんで、あんた、里長に敬称つけないの?」 「ああ。……憚りながら、僕は、里長の不肖の弟に当りまして」 「つまり、里長が、あんたの、お姉さん?」 「はい、そういうことになりますねえ」 レンアンのおっさんは、お茶をすすった。 いそいそと風呂敷包みの中身を取り出そうとしている。俺にお茶を入れる気は毛頭無さそうだ。 なんか、今日はいろいろなことが身に起こりすぎて混乱している。 里長は娘二人にあんなことさせるし、このモテなそうなレンアンのおっさんはそれを自分の姉だと言うし。 「でさ、『冬』って何なの?」 「簡単に言えば、繁殖期です」 うわ、ずばり言ったよ、この人。 「御山の戒律に従い、里では、イノシシの男が暮らすことは許されません。僕みたいのは、もてないから極々例外です」 風に薄毛がそよぐ。 「毛並みが生え変われば、男は成人したと見なされ、若者組で集団生活を営んだ後、各地へ散っていきます。里に少年が少ないのはその為です。少年期になれば、すでに若者組の範疇ですからね」 冷静に説明口調でおっさんは話す。何か、話し慣れている感じだ。 「僕は、この化性竹の庵で、若者組にイノシシ国の成立を説いて聞かせる役目をしています。この為だけに、姉上が渋々置いてくださっている訳で」 おっさんは頭をぽりぽりとかく。 「でも、姉上は公正な方です。けして、無体な真似はいたしません。あなたも、こうして半年近く、健康そうではありませんか。それも里長である姉上の差配の賜物です」 そうなのか? 確かに、奴隷とか、いろいろと恐ろしいことも聞いた。 人身売買とか、そんなのがまかり通る、獣が人の姿をしているこの世界。 俺は、まだ、長い夢を見ていると心の中で思っている。 でも、夢だから、と思うには、この世界は整然としすぎている。 夢だから、と羽目を外しているのは、エロい方向だけだ。 俺は、そんな中でもがいて生きている。 ご主人様の名前がわからないのは、夢だからなのか。 夢だから、うまく聞けないのか。 わからない。 ただ、匂いがするこの夢は、俺には、手に負えない。
考え込んだ俺の耳に、悲鳴が届いた。 視線を上げると、おっさんの顔にさっと緊張が走るのが見えた。 「何事でしょう。竹林の外ならばいいのですが……」 二人して、庵の外に飛び出した。 「あちらの方向でしたね」 耳がいいのか、レンアンのおっさんは迷わずある方向を指し示した。 「見に行って来ます」 俺は駆け出す。 「僕は応援を」 「頼みます」 俺は再び竹林を飛び出した。
どのくらい走っただろうか。 竹林の外から、街道筋に出て、獣道どころではなく、へしゃげられた薮を見つけて、その中に分け入って。 目の前に現れたのは、異様な、光景だった。 なぎ倒された枯れ草。 へしゃげた茂み。 あちらこちらに倒れ込んでるイノシシが数頭。 その前に仁王立ちして背中の毛を逆立てた満身創痍のイノシシ。 そして。 その背後に、ぴくりとも動かない白い足。 俺は慎重に、足音を殺して、回り込んで近づく。 汗で張り付いた黒髪。 ケモノ耳は見えない。 むき出しの太股からも、尻尾は覗かない。 わずかに、わずかに、ちらりと見えた丸い肌色の耳。 ヒトだ。 人だ。 人間なんだ。 その構図を見た瞬間。俺の中で何かがぷつりと切れた。 腹の底から、怒りがこみ上げる。 とっさに草むらにあった手ごろな木の棒を取り上げて、叫びながら突進する。 振り向くイノシシ。 怒りに燃えた俺が振り降ろした棍棒が、狙い違わず脳天に直撃する。 奴は腕でかばうこともしなかった。 だが、俺の攻撃によろけもしなかった。 頭を振って、驚いたように俺を凝視する。 その眼は片方が傷跡で塞がっていた。 「おまえは……ヒトかっ?!」 怒号のような大音声が、俺を圧倒する。 俺は、思わず飛び退いて、バランスを崩してしりもちをついた。 木の棒は折れていた。 「それがどうした。そっちこそ、何やってんだよ」 震えるな、俺。震えるな。そこに人がいるんだぞ。 足下に小石が当った。気付かれないようにそれを握りしめる。 『冬』っていうのが来るというのは聞いていた。 大乱交パーティーみたいになるって。 それで気の立った男達が集まってくるって。 でも、それが。 「こんなちいさな女の子争って、傷つけることが、『冬』なのかよっ!」 俺は再び叫んで、またイノシシの男に殴りかかった。 石を先に投げつける。 イノシシは鬱陶しげに目をかばった。 庇った方とは反対側の肩に、傷を負っていたのが目に入った。 俺は、そこを狙って、裂けた木の棒の先を突き込む。 イノシシの男が、押し殺した呻きをあげる。 「莫迦が……」 低い声でイノシシの男が唸って、俺の腕を掴んだ。 万力に締めつけられるような痛みが襲う。 俺は棒を手放す。 棒はぶらりと男の肩からぶら下がった。細い木切れは入り込んだが、刺さるほどではなかったらしい。 「ぐっ」 上背は同じくらい。いや、奴の方が若干高い。 体の幅は二倍以上、体重は3倍じゃきかないだろう。5倍は差があるかもしれない。 「ヒトだと思って舐めるんじゃねえっ」 「ヒト……」 腕を掴む力が緩んだ。 イノシシの眼に迷いが浮かぶ。
「ヒトの男……どこから現れた? おまえの主はどこだ?」 「主? どいつもこいつも人のことを奴隷だと決めつけやがって。俺は供え物なんだから、奴隷じゃないんだよ!」 「どういうことだ?」 イノシシの男が眉を寄せた。 その隙を狙って、俺はぶらさがった棒めがけて、蹴りを放った。 下から、傷口へと棒が食い込む。 「むぅ……」 イノシシ男が俺を離して、傷口を押さえる。 「やめよ!」 俺は聞きなれた声に動きを止める。 ご主人様の、声だった。 まだ帰ってこないはずじゃ。 何故。 とっさに振り向いたそこには、確かにご主人様と、レンアンのおっさんがいた。 おっさんの方は、すっかり息が切れていたが、ご主人様には呼吸の乱れなんて、まったくない。 俺は驚いて、ぽかんとご主人様を眺めたままだった。 イノシシ男も、また、ぽかんとご主人様を眺めていた。 ご主人様は、そこらへんに転がっていたイノシシ達を足蹴にして、踏み越えてこちらにやってくる。 それでも倒れたやつらは動かない。その向こうでレンアンのおっさんがうろたえている。 「……なんでだよ!」 俺はようやく我に返って叫んだ。 なんで。 ご主人様がまだ遠くに行ってなかったのなら、なんでこんな事になる前に、こいつらを止めてくれなかったんだ。 女の子が。 そうだ、女の子! 俺は慌てて女の子に近寄った。 唸るような声でイノシシ男が威嚇した。 ご主人様が制してくれると俺は確信して、女の子の傍に跪く。 どこからどう見ても、人間の女の子だった。 耳も俺と同じだ。尻尾もない。 「それ以上、触るな!」 イノシシ男が突進してきた。 俺は避けられずに、撥ねられる、そう、思った矢先。 俺とイノシシ男の間に、ご主人様が瞬時に割り込んでいた。 「やめよ。儂が分からぬか。白継山のヌシなるぞ」 イノシシ男を低い声で諌める。 イノシシ男の身体は、ご主人様に食い込んでいた。 行く時に纏っていた服は、牙で切り裂かれていた。 でも、ご主人様は傷一つ負っていない。 そうだ。女の子を。 「触るな!」 イノシシ男の怒鳴り声が響く。 「うるせえ! てめえらがやったんだろうが!」 俺はイノシシ男に怒鳴り返した。 「ヌシなれど、なせに触れる輩は許さぬ!」 イノシシ男が一旦、身を引いて方向を変えて、俺に躍りかかる。 「……目をさまさぬか」 呆れたような声音が、響いた。 ご主人様が、深く身を沈めて、イノシシ男の鳩尾に拳を突き込んでいた。 イノシシ男がゆっくりと呻いて、横倒しに倒れる。 きれいに、女の子は避けていた。 地面に横たわった、そのイノシシ男に、俺は唾を吐きかけた。 「ゴボウ」 ご主人様が睨む。 俺は睨み返した。 「こいつらは、俺等の敵です」
それよりも女の子の容態が心配だった。俺は彼女に向き直る。 よろよろと、レンアンのおっさんが近づいてくる。 「触んなよ! 折れてるかもしれないだろ!」 気が立っていた俺は、レンアンのおっさんにも怒鳴り散らした。 レンアンのおっさんは周囲のイノシシの顔を覗き込んでは、考え込んでいたが、女の子のすぐ近くに倒れ込んだイノシシ男の顔を見て、はっとした顔になった。 「バジさんではありませんか」 顔色をうかがうように、ご主人様を見る。 「……そのようだ。他の奴らには見覚えが無いが」 ご主人様は、着物の襟を直すと、髪を指先で払う。 知り合い? だとしたらなおさら許せない。 「その娘は生きている。里の空き家に運ばせよ。儂は戻る」 女の子を一瞥して、そう告げたご主人様に、俺は安堵の息を漏らした。 「どこへ?」 「言ったろう?」 一旦出かけていたのを、戻ってきたってことか? 「あ、ゴボウさん、意識を取り戻しそうですよ、このお嬢さん」 俺がご主人様を見ている間にちゃっかり女の子の反対側でいろいろやっていたらしいレンアンのおっさんが顔を上げて微笑みかけた。 俺はあわてて、女の子の顔をみた。 うっすらと、目が開く。 焦点の合わない瞳が、俺を見る。 ああ、人間の女の子だ。 久しぶりに見る、傷だらけの。 今、助けてあげるから。里に運ぶから。 そう口にしようとした時だった。 「何奴!」 最初に女の子が示したのは、俺へのあからさまな警戒心と、拒絶だった。 レンアンのおっさんにも拒絶感を示し、周囲を、自由の効かぬ身体で見回す。 「ぬしさま?」 そして、膝元に横たわる、イノシシ男を見て、それまでの緩慢な動きが嘘であったかのように跳ね起きて、イノシシ男にすがりついた。 ヌシ様? このイノシシのオスが? 「いやじゃ、ぬしさま……目を開けて」 少女は昏倒したイノシシにすがりつく。 「ぬしさまっ、ぬしさまぁ……っ」 これじゃ俺が悪者みたいだ。 何故だ? なんで、こんなことになったんだ?! 冷たい風が、薮の中を吹き抜けていった。 (イノシシの国 ヒト編 六 了)
446 :
イノシシ :2010/06/05(土) 14:41:42 ID:g1Z/1lkB
ご無沙汰しておりました。 次回は七。最終回です。 では、またいつか。
繋がるとは……! ううむ、やりとりの続きが楽しみに。 しかしゴボウ、意地を見せるなあ
イノシシキター! ゴボウが意外と男らしい事に驚愕
「ヒトだと思って舐めるんじゃねえっ」 良い事言うね〜 惚れる!マジでw なんかこう熱くなったね。 最終回に期待!
設定量が多くて、勇気がいるな
>>450 ダイジョウブコワクナイヨサアホラオイデオイデ
キツネ♀ヒト♂長くなったうえキスだけですorz 如月アキラはまだ到底、諦めがついていなかった。身体は泥水の様に重く、この国で紛争が始まってからすっかり持ち馴れたはずの自動小銃も、今日は身体に食い込むスリングが強く痛む気がしていた。 信頼を置く仲間達は、敵と自分達の上官により殺された。撤退の許されない孤児部隊は最前線に立たされ、愚かな上官に突撃を命じられ、壊滅した。 生き残った仲間達は二つの敵に銃弾を浴びながら方々へ逃げ出したが、恐らく絶望的な結末が待っているだろう。 既に足は、前に踏み出す事を拒否している。季節は冬、突き刺さる風が体温を奪っているのが分かる。 反射的に一つ歩み出す。太股に違和感。構わず一歩。遅れて聞こえた銃声と、倒れ込むタイミングは面白い様に重なった。 薄らぐ意識の中、金属の擦れる音と人が近付く気配が感じられた。「きさらぎあきらか」 幼い声で問われ、小さく首を振る。霞む視界には見慣れたAKの銃口。「ころせ」別の幼い声。 別に死ぬのは怖くはない。 ただ、故郷に残した幼い妹への送金が途絶えてしまう事、それだけが恐ろしかった。 柔らかな喧騒と瞼の裏から伝わる優しい光に、少年は目を醒ます。久しく忘れていた深い眠りのせいか、普段ならすぐ覚醒する意識が、この日はまだはっきりとしない。 しかし手をまさぐり、肌身離さず装備しているはずの小銃が手元に存在していない事を確認すると、瞬間的に意識は浮上し、素早く上着から自動拳銃を抜こうと腕を動かす。 だが着慣れたミリタリージャケットは消え失せ、代わりに変な生き物の刺繍が入った上着らしき物が目に入った。 激しく混乱する思考を落ち着かせようと辺りを確認し、素早く今寝ていた何かから降りた時点で、それが写真でしか知らないベッドだという事が解り、混乱に拍車が掛かるのを感じた。 それに立て掛けてある小銃を慌てて掴み、マガジンに弾が装填してある事を確認すると、少しだけ冷静さが帰って来る。 セレクターはフルオート。薬室には一発の弾丸。理解できたのはそれだけで、自分の生死についてはまったく理解できていない。 木の軋む音が聞こえ、反射的に銃口を簡素なドアに向けた。軽やかなノック。返事の代わりにトリガーを引き絞った。 「うごくなっ!」ドアの隙間から覗く半身に怒鳴り付ける。 「目、覚ましたんだね」鈴の様に美しい、少し高めな女の子の声。 「だまれ!ここはどこだおまえはだれだっ。おれをころすのか」 「わっ、オチモノって本当にこんなんなんだ」 「だまれっ!」 「命の恩人に凄く失礼な奴だなぁ・・・・・・とにかくその危なそうなもの降ろして?ご飯用意したから、食べながらゆっくり話そ?」
自分に向けられている銃口にはまるで興味なさそうにアキラに歩み寄る女の子。 「うごくなといっている!」 「まぁまぁ。っこいしょ」 女の子は構わず隣に座り木製のスプーンから何かを掬い取り、ちょっとあっついなと眉をしかめ、結局合点するとそれをアキラの口元に向ける。 「はい!あーん」 「なにをっ」 「あーん」 「ひ、ひとりでたべれるよ」 「それ、手放せないでしょ?冷めちゃうから、あーん」 「・・・・・・」 結局少女に押し切られ、一口。その味は全く知らない味だったが、感想を言わずにいられない味だった。 「これおいしいなっ!すごくおいしい」 「そっ?ならよかったよ」アキラの素直な言葉に少女は顔を綻ばせる。 数え切れない疑問があったが、空腹には耐えられず綺麗に器を空にしたアキラは、少女の言葉に促されるまま生まれて初めて、満腹になるまで食事をした。 「ごちそうさまでした」 「美味しかった?」 「うまれてはじめて、こんなにうまいものたべた」 「素直に言われると照れちゃうな」 少女は白い肌を少しだけ紅くし、金麦色の毛に包まれた、まるで犬の様な耳をぱたぱたと動かした。 「なんっ!?い、いまうごいたのはなんだ」 女の子はあからさまに慌てた表情に浮かべると、小さな声で呟いた「参ったな」 もう一度小銃を握り、少女に声を張り上げる。 「いったいなにがどうなってんだ!ここはたちかわじゃないのか?おまえは、はんせいふぐんなのか?なにがなんだかさっぱりだっ」 「ん」女の子はぱたぱたと動くそれを細い指で弄りながら 「何から説明したらいいのかな」うんうんと暫く悩み、急に顔を上げた女の子は真っ直ぐにアキラを見詰める。 「覚悟はできてる?」 「もうなんかいもしにかけてる。かくごはずっとまえにすましてる」 「そっか」 少女はゆっくりとこの世界の事を、なるべく解り易い言葉を選びながらアキラに教えていく。落ち物の意味、この世界における生物世界、人間のヒエラルキー。他にも、様々な事が星の数程存在するが、とにかく状況を伝える事に専念した。 「じゃあ、ここは、おれのしってるせかいじゃない。たちかわとかは、ぜんぜんべつのせかい」 「うん。ここは猫の国」 「おれはそこにきて、ひとみたいなキツネとしゃべってる」 「正確には一つの種族だね」 「にんげんは、ものみたいなもの」 「残念ながら」 「たちかわには、かえれない」 「ほぼ確実に」 これを悪い夢だと理解したアキラは素早く銃口を口にくわえ、右足の親指を引き金に掛けた。
「わっ馬鹿!」少女はアキラから小銃を取り上げようとするが、歳不相応に鍛え上げられた彼の力が、それを安易にさせずにいた。 「はなせ!おれはぶたいにもどって、かねをかせいでいもうとにをおくらなきゃいけないんだっ」 「だからこれが現実なんだってば!」 「うそだ!おれががっこうにいってないからうそをついてるんだっ」 「人間って力弱いんじゃないのっ?!もうっ、こうなったら」 とてつもない暴れ方をするアキラをなんとか組み伏せた少女は、突然その唇を少年の荒れた唇に合わせた。アキラは突然の事態にますます混乱し腕を振り回したが、己の唇を割って侵入してきた柔らかい何かが自分の舌に当たると、一度身体をビクリとさせて動かなくなる。 「んっ、ふ」 耳に伝わる甘い声に、アキラは思わずきつく瞼を結ぶ。 これがキスである事。キスが不思議な快楽で出来ている事。コツコツと当たる柔らかい何かは、きっと妹に酷く叱られる原因になる事。この三つだけが、アキラの頭を支配した。 「っはぁ」永遠にも一瞬にも思える口づけを終えた少女が顔を真っ赤にしながら深呼吸。 「っ、なにを」アキラの声が裏返る。 「本物でしょ?」 「・・・」 「このキスは本物でしょ?」 少女の意味深な笑顔がとても魅力的に思え、アキラは咄嗟に目線を外しながら短く一度頷く。 「解ればよろしい。って、なんで泣いてるの?」 「ないてないっ」 「びっくりしちゃったか」少女は言いながらアキラに顔を近づけ、少しだけ溜まった涙を舐め採った。「姫巫女様の気持ちなんてさっぱりだったけど、確かにこれは可愛いかも」 アキラはぼんやりとしながら己の足元でぱしぱしと揺れる、たっぷりと毛を蓄えた美しい尻尾みたいな何かが揺れているのはきっと、キスの余韻みたいな物だろうと考えていた。 クスクスと笑う女の子、目線を絡め取られまいとするアキラ。二人の世界は余りに空気が濃く、新たな来訪者がドアをノックする音も遮断していた。 「うるさいぞ要芽(かなめ)朝からばたばたと・・・・・・あ、はい。早速お楽しみだった様で」 「わっ!?ココ!?違うの違うのっ」 「はいはいはいはい」 アキラは深く溜め息をつきながら、なにがなんだかさっぱりだ。と、心の中で呟い。
とりあえずここまでです なにかあったら、バシバシ言ってください
むおお、新作投下乙! 最後の抜け字が気になったけど、文章自体には気になる所はないと思われ 少年兵の今後を気にしつつ、続き待っとります
ぬけじ・・・次がんばります
>>457 細かすぎてすんません
(;´д`)
一個人の感想なんで気にせんでください!
新作、二人とも可愛いなw 猫の国で狐とヒトだと規制狐さんが書いてるから、設定擦り合わせとくといいかもね。 狐耳国からの輸入品を扱う雑貨屋とかあるし今後書き易くなるかも。
いいですね朱風。ちょっと借りてみます
キツネ・ヒト 続きです。ちょいエロ・・・なのかな
結局アキラは、三日間暴れたりちょびっと泣いたりしながらこの世界で生きる決断した。三日目の夜、二つの月に馴れている自分に驚きながら、自然と小銃の分解を始める。 「今日は騒がしい奴が居ないから静かだな」 「ココさん」 「君の服に入ってたヤツだ。えーと」 「アキラです」 「私の名前は?」 「ここなーとさん」 アキラはココから煙草のパッケージを受け取ると、一本取り出し、彼女の顔を見て元に戻した。 「あ、煙草かそれ?洗練されてるなぁ。あ、気にしなくていいよ私も煙草を吸うから」 「はい」結局アキラ煙草をくわえ、ライターを取り出し火を点ける。 「あの子は」細巻をくわえたココにアキラが自然と火をかざす「おお凄いなコレ」 二人で煙を吐き、ココが言葉を続ける。 「あの子は良い子だよ。真剣な話、君はカナに拾われなければ奴隷か死ぬか、きっと酷い事になってた。この世界での人間の扱いは、まぁカナから聞いただろ」 「しんじられないけど、きっとそれが、しんじつです」 「最後に決めるのは君だ。もしかしたら兵士になる事も出来るかもね?犬の国では、未来の兵士を作ってるらしい」 アキラはもう一度二つの月を見る。 「ふたりは、どうしておれに、こんなきちんとしたことをしてくれるの?」 「興味無いんだよ。奴隷やら何やらが欲しい程、別に忙しくも無いし」 「よくわからないよ」 「特にあの子は、生い立ちが複雑でね。きっと君に自分を重ねたのかも知れない。それに・・・・・・」 少なくなった細巻を持ち込んだ小さな瓶に入れ、ココはアキラに顔を寄せる。眼鏡の奥に見えるショートボブの髪と同じ色の黒い瞳に捕らえられ、アキラは瞬きが出来ない。 「それに君は、とても可愛らしい顔をしているね。人の気持ちを掻き乱す・・・」 ココの滑らかな指がアキラの頬に触れる。二人の視線が絡まる。少年は初めて銃口を向けられた感覚を思い出していた。
「お楽しみ中ごめんなさい。ご飯ができたから、お呼びに来たのですが、お邪魔だったでしょうか?それとも買い物から戻らない方がよかったでしょうか」 扉の前にちょこんと佇む要芽は満面の笑みを浮かべながら尻尾をゆらゆら揺らしていた。 「お、良い匂いだなカナ。今日は故郷の料理と見た」ココが手を離さぬまま答える。 アキラは叱られる前の子供の様に縮こまり、顔を真っ赤にしていた。 「なに冷静にオカズ当ててるのよっ!」 「怒るなよ。別に良いじゃ無いか、気持ちイイ事は二人でシェアすれば」 「うーうーっ、そう言う問題じゃないの!猫は盛ると見境無いから、だから、ほら・・・・・・」 「冗談だよ冗談。真面目な話をしてたのさ」 アキラは自分の股間にもそもそ触れる何かが、ココから伸びる黒い尻尾だと知り思わず跳び上がった。 「ココッ!!」 「ち」 終始ココにペースを握られる形でコロコロと表情を変える要芽を見ながら食べた食事は、何処と無く自分の知る味だった事が起因し、見る物を幸せにする勢いでアキラは胃袋に納めて行った。 「じゃぁ行ってくるよ」薄く化粧を乗せたココが玄関で二人を向き返る。 「行ってらっしゃい」アキラの食べっぷりに機嫌を良くした要芽がニコニコしながら答える。 「どこにいくんだ?」アキラが煙草を取り出そうしながら質問し、要芽に取り上げられる。 「仕事だよ仕事。知り合いの賭博場の近くの飲み屋でね、稼がにゃ稼がにゃ」 肩を二回叩いたココは急にいやらしい笑みを浮かべる「なぁカナ。しっかりリードしないとな?それにベッドを壊すなよ」 一瞬不思議そうにした要芽が、大声に狼狽をふくませた。「バカ!!アキラ君はまだ子供」 「じゃ、行ってきまーす」「いってらっしゃい」 「ばかココっ、帰ってくるなっ!」 何故か少し怒ってる様な要芽に促され、風呂に入ろうと服を脱いだアキラは太股に違和感を覚え、見ると不思議な文字が書かれた紙が大量に貼られている。 「ごめんアキラ君!札札っ」 脱衣室に突入して来た要芽は短く悲鳴を上げ、でも本人しか剥がせないし・・・などとブツブツ言いながら膝を折り、丁寧に札を剥がして行く。 「はずかしいよ」アキラが前を抑えながら呟く。 「私は、恥ずかしくないよ?」アキラから見える要芽のおでこは、ほんのりとした桜色。 「まだ痛む?」 「んんすこしだけ」 「人間には効きにくいのかな」 「カナメがなおしてくれたの?」 「へっへっへ凄いだろ」 血で赤黒く染まった最後の札を剥がすと少女は立ち上がり「まだ無理はダメだなー。よし。背中と頭流してあげる」と嬉しそうに宣言した。
嫌がるアキラを無理矢理バスチェアに座らせ、調子っぱずれの鼻歌を歌いながらシャツとパンツの袖を捲ると勢い良くアキラの頭にお湯を掛ける。 「熱くない?」 「ちょうどいいよ」 「うっわ凄い砂!」 「さくせんがつづいてたから」 細長の陶器から液体を手に取る要芽をアキラが横目で見る。あれは、シャンプー? 丁寧に三回頭を洗われたアキラは気持ち良さから度々声を上げ、その度に要芽が小さく笑う。 「はい!次は背中っ」 「じぶんで」 「いいからいいから」 「くくくすぐったい」 「こう?」 「あ、きもちいい」 「筋肉凄いね」 「こじぶたいはみんなだよ」 ふと気付いた背中と肩の傷跡にそっと指を当てる。 「これは?」 「せなかのは、いもうとをかばってできたんだ。おなかから、だんがんがぬけてる」 アキラが俯く。 「かたのは、たぶんにねんまえのだ。たいちょうがばかで、てきにほういされたんだ。ちびがまちがえて、しゅりゅうだんをばくはつさた。そのときできたんだ」 「たくさんしんだ。たくさん、ころした。おんなのこも、ころしたひどいたたかいだ。ほんとうに、ひどかった」 ゆっくりと背中を流していた要芽は、理解出来る言葉だけを摘み取り、それだけで少年の苛酷な人生を垣間見た気がして、しかし掛ける言葉が見付からず、そっと、壊れてしまわない速度で抱き締める。アキラはぴくりと反応したが、嫌がりはしなかった。 「おれは」 「おれは、いましんだなかまや、いもうとに、すごくもうしわけないんだ。きちんとねれて、おなかいっぱいたべられて、ひとにやさしくしてもらえる。」 「ななさいでおなかをさかれたやつがいた。ごさいで、ばくだんがわりにされたやつがいた。おはかも、つくれなかった」 「おれは、しんであたりまえだったあたまのわるい、いしころみたいなこじだっおれはずるいやつだっ!」 アキラの慟哭に合わせて要芽の腕の力がどんどん強まる。ぽろぽろと泣きながら、少女は自分の心と会話する。別にヒエラルキーに興味は無い。言葉で疎通できる相手の心を犯すなんてヘドが出る。 でも、どうしてこの少年に、優しい感情が溢れるのだろう。子供だから?苛烈な戦災孤児だから?捨て犬みたいなもの? 何とも言えない。これが導かれるタイミングと、アキラの小さい声は殆ど重なった。あの、むね、すけてる。 「きゃっ!あ・・・えへへへ」 「あはははは」 「笑った顔。初めてだね」「う、なんかすごくはずかしい」 「もう汗だく。一緒に入っていい、かな?」 「せまいよ」 「うるさいうるさい入っちゃえ」 後ろからアキラを抱える様に服を着たまま湯舟に浸かる要芽。これは、ココに見せられない。 「ねぇアキラ君」 「なに?」 「あの、この先どうなるか分からないけど、私達と、生きてみない?もちろん働いてもらわなきゃだけど、奴隷とかじゃなくて、生きてみない?」 「おれ、じゅうくらいしかつかえないよ」 「ちっちゃいから、大変だと思うけど必要な事はすぐ覚えるよ」 「おれ」 「おれふたりにかりをかえさなくちゃいけない。かえせるなら、なんでもやる」 「それは、了解の意味?」「うんっ」 「じゃあ約束して?もう、自分を石ころなんて言っちゃダメ。ココが聞いたら引っ叩くし私は、凄い悲しいよ。多分、妹さんも」 「約束できる?」 「・・・・・・はい」 「よろしい!」 要芽が立ち上がり腰に手を当てる。量感のある胸にアキラは目を丸くした。 「仕事その一!背中流してほしいな?」 「わかった」 「そうそうそれをつけて、良く泡立てて、痛たイタタタタ!」 その後二人で歯を磨き、寝る間際にアキラは要芽を呼び止め、踵を揃えて直立した。「たくさんひどいこといってごめんなさい。これからよろしくおねがいします!」真っ直ぐな瞳で要芽を見る。 何故か少し頬を赤くした要芽は目線をアキラに合わせ、輝く笑顔を浮かべた。 「こちらこそ!」
とりあえず導入終了です!何かあったら、ばしばし言ってください。 エロじゃない・・・
なにこの初々しいの。 アキラ、代われ
ネタですがキャラクターシェアをさせてみたいんですが、規制狐さんと、そのファンの皆様いいですかね?
書き手同士の相談なら避難所のほうが規制がないよ! 人様の書いたキャラの借用は微妙な問題だから、 せいいっぱいの敬意と愛情と原典再三読の礼の上でヨロシク
作者だけでなく、ファンにまで了解をとるという発想はなかった。 そうか、これが心か――。
キツネ・ヒト 作者様とファンの皆様が背中を押してもらえたので、続き投下します。 もし気に入らない点があればさくっと削除してしまってください。
喧騒の厨房。様々な話し声。恐らく自分に対する汚い言葉。アキラは少しだけサイズのデカイ白衣に黒いサロンを巻き、持てる数限界の皿を持ち店内をちょこまかと走り回る。 バー・アルビオン。アキラの職場であり、学校でもある。 「この料理人間くせぇぞ!」 「はい!ごめんなさいいまからおふろ入っててきますっ」 「ねぇアキラ私のトコ来ない?毎日気持ち良くしてあげる」 「いえ!おれにはもったいなすぎるお言葉です!」 「なぁアキラ、ココナートさん今日空いてるかな?」 「ココナートはよていがあるみたいで、大変もうしわけありませんっ」 「アキラ大変にゃ!お金と術符がすりかわってあー嘘にゃ怖い顔するにゃ」 要芽との約束を果たすため何とか仕事を探したが、ヒトオスの仕事は要芽に叱られる様な物ばかりで、最後に助け船を出したココの提案から、多少は健全な仕事に就く事が出来ていた。 季節は夏。アキラが落ちて来てから二年と半年が過ぎていた。 「よぉアキラ君。レダはきちんと金を払ったか?」 ランチの多忙時間を越え、ターンテーブルからCDを取り替えながら巨大な牛がアキラに話し掛ける。 その牛は立派な二本の角に派手な墨を入れ、短く苅られた黒い体毛の下には筋肉がうごめいている。 鼻に通された巨大なピアスを鳴らしながら、スピーカーから流れる曲に合わせ「ロメオー」と満足気に笑った。 「よくわからないいいわけをして帰っちゃいました。つかまえたんですけど、なんかすごく、かわいそうなかおされて」 「あの猫め何回目だ!ローストビーフにしてやる」 彼の名前はD,D。本人から聞いた訳では無いが、客に呼ばれている所を聞いて、アキラはそう認識している。 「あれは許される天才だな!しかし俺は違う」D,Dが蹄で器用にマッチを擦ると、無駄に太い葉巻に火を点けた。 「ローストビーフだ!」 「それは無理だね」ココがニヤニヤしながらグラスを拭く「レダの駿足にお父さんの鈍足は追い付けないよまず無理だね」 「ココナート!猛牛と言う言葉が向こうにあってな」「ちょっと、デカイ図体で暴れるな!」 既に解っている事ではあるが、二人が親子だという真実だけは今だにアキラは信じられなかった。 「お!疲れたかアキラ君。元兵士も子供は子供だなっ」サロンの端で額を拭くアキラを見たD,Dが笑う。 「べ、別につかれてません!」 「それは頼もしいな!」 「こーひー入れたから一服しよう」落ち物のインスタントコーヒーをココが器用に入れる。 「激甘で頼む」 「あ、あまめで」 「軟弱者共め」
何時もの時間、何時ものタイミングで彼女はアルビオンのチャイムを鳴らす。 「お疲れ様アキラ君」要芽がフレアスカートから伸びる尻尾とシャツから伸びる少しだけ日焼けした腕を同時に振る。 「カナ?あと少し!たぶんあと少しでおちつくからまってて」アキラがぱたぱたと答える。 「こっちで待ちなよ」働いてる風のココがバーカウンターから手で招く。 じゃあ。と言いながら要芽がアルビオンに足を踏み入れると途端にガヤと鋭い口笛が飛び交い、本人は照れ臭そうに落ち物のパイプ椅子に腰掛ける。 「良いのう良いのう、わしのカルトもアキラくらい可愛らしければ良いんじゃがのう」 要芽が声の主を見ると、酔っ払った子供みたいな女の子がバタバタと騒ぎ、やたら迫力のある男に思い切りゲンコツを喰らい引き擦られていくスリリングな展開繰り広げられた。 「ちょ、大丈夫なのかな?」ココに耳打ちする。 「ん?あれ?平気平気。あれが二人の良い状態」 ココが何やら爽やかな香りを放つ緑色の果実をグラスに搾りながら、顔の前で空いた手の平をパタパタとやる。 「これなぁに?」 「うちの新作落ち物メニュー。もひーと」 「もひーと?」 「はい!酒は抜いてあるから」 「ありがと」 「ど?ど?」ココの瞳が眼鏡の奥で輝く。 「あ、おいしい・・・」 「だろ?暑い季節に最高だろ?」 調子が良い時のココは疑問符が付くよね。要芽は心の中で呟き、「最高だね」と笑顔で返した。 「アキラ君、大分馴れてきたね」 「ああ。それに此処は、何となく常識から外れた・・・自分に屈託のある連中が集まってるから、多分それが良いのかもね」 「みんな何かを抱えてる」要芽がグラスの中の氷を弾く。 「でも進む以外道は無い」ココが細巻に火を点ける。 オーダーが重なったのか厨房から野太い悲鳴が響く。「ココナート!お父さん乳が張ってもう駄目だっ」 厨房の入口から熱気のせいで軽くシェイプしたD,Dがブンブンと前足を振る。要芽と目が合うとニヒルな笑顔を浮かべ、ココと目が合うと瞳を潤ませた。 それを見たココはシャツのボタンを二つ外す。形の良いバストが顔を見せ、ゲスト達からおおと声が上がる。 「みんなゴメン。お父さん半泣きだから手伝わなきゃ」少しだけ眼鏡を下げたココが薄い笑みを向けながらわざとバストを強調させた。 「D,Dだらしねーぞ!」 「いかちぃのは見た目だけか!」 「ココはかわいいなぁ!」 「これカルト。おぬしは見るでないぞ」 集中放火を受けたD,Dがただでさえ小さい目を更に小さくし、まぁまぁと前足を動かす。 「いいか?俺に、任せろ」 猛然と厨房に消えるD,Dをニヤニヤと見るココに要芽が声を掛ける。 「大丈夫なの?」 「平気平気。あいつ汗臭くなるのが嫌なだけだから」 要芽がグラスの底に残った液体を音を立てない様に飲み干した時にアキラが声を掛けた。 「カナおまたせ。おそくなってごめん」アキラは歩み寄るとお疲れ様ですとココに頭を下げる。 「白衣のアキラ君見れたから大丈夫」きっと盛んに揺れている尻尾がぱしぱしと音を立てた。 「ココも帰る?」 「いや、今日はこのまま研究所に行く」 「そっか、倒れないでね?あ、お会計」 「大丈夫。アキラの給料から天引き」 「だいじょうぶ。おれにまかせろ」 「じゃあ・・・甘えちゃえ」 帰り際ココがアキラに重大な表情で「良いか上手くやれよ?」と囁いたが、アキラには何の意味か良く解らなかった。
蒸し暑い夜の空気に混ざる冷たい風に、私は目を細めた。二歩先には後少しで自分の身長を抜いてしまいそうなアキラ君が、身体の一部の様にも見える自動小銃を持って歩いている。 彼の首には、木製の輪。この世界での奴隷の証であり、所有者と所有物を決めるつまらないアイテム。 アキラ君は気にしていなかったけど私はこれを付けるのが嫌だった。でも昔、帰りの遅い彼を心配してココと外で待っていた時「ああ」と辛い声を出した彼女の目線の先に居る、彼の姿を見た事が私に決断させたのだ。 ぶすぶすと煙りを上げる小銃。彼とそれ以外の血と、何かが焦げる臭い。月に照らされた彼の白目だけが異様にギラギラと輝いて、私は初めて彼を怖いと思った。 「何、があったの?」彼は視線を合わせず、入れ違い様に「さらわれたからにげた」とだけ答えた。 結局この件は、下町とは無関係の人売業者の仕業だったらしく、ココの友人と、レダという女の子達が「困った時はお互い様にゃ」と手を回してくれた。 その日以来、外出の時はあれを直接、私の手で付ける様になった。ちくりと痛む私の心を見透かすのか、あれを付ける時アキラ君は必ず私を気遣ってくれるけど、私にはそれが辛かった。 「背、伸びたよね」私は彼と一歩距離を詰める。 「二人がおいしいごはんつくってくれるから」彼は振り向かない。 「私とココの料理、どっちが美味しい?」少しだけ意地悪な質問。 「うう、カナはいじわるだ」彼が少し怒った様に振り向いてくれる。可愛いな。 そのうち上手く切り替えされちゃうかな?と考える。ちょびっとだけ寂しくなる。 「カナのおみせはどう?」 「良い感じだよ?お店の人も優しくしてくれる」 私は最近、ココの紹介で故郷の輸入雑貨を扱うお店で働き始めた。ホント、ココには貸しを作りっ放しだ。 「カナはやさしいしきれいだから、しぜんと人があつまるんだよ」 アキラは自然と人を照れさせるよね。と、心の中で突っ込んだ。 「じっかにはかえらないの?」 「私はもう橘の人間じゃないから」 「そうなの?」 「そうだよ」 いっそ如月要芽になっちゃおっか?と言いかけたけど、自分の首を絞めそうなので飲み込んだ。 もう一歩近付いてアキラ君の隣を歩く。昔は私を見上げていた彼も、今は顔を向ければ視線がぶつかるくらい大きくなった。 カッコイイな、と素直に思う。勿論可愛いのが大きいけど、たまに見せる横顔が私をドキドキさせてる事に彼は気付いていない。 「アキラ君彼女とか作らないの?」 「おれにんげんだ」 「そうだけど、ほら、ココとか」 「あの人、おれのことからかうのにじかんをかけすぎだよ」 「常連客の犬の女の子は?」 「このまえマウザーにこくはくされてオーケイしてた」 「えっ、アキラ君の先輩のあのマウザーさん!?」 「うん」 「そ、そっか」 酷く安心している自分に私は驚く。最近、彼を見ている私の情緒は随分不安定だ。彼は子供?弟?友達?それとも・・・・・・と言うかどうしたんだ今日は!変に熱いし、上手く考えられない。 「カナふらふらしてる」 多分、なんの感慨も無く腕を捕まれ、絡まるアキラ君の指の感触に、私の尻尾がぼわっ!と膨らむのが解る。 「カナはかれしとか作らないのか?おれ、カナのかれしならなかよくする」 尻尾の変わりに激しい感情が膨らんでいく。私は彼の手を振り払うと更に一歩前に出て、通せんぼしていた。 「どうしたんだカナ」 「アキラ君は、私の事どう思う?」私は何を言ってるんだろう。 「かおまっかだよカナ」君のせいなんだよ。 「私は、お母さん?お姉ちゃん?友達?」私は何て言って欲しいの? 「たいせつなひとだ」 「私もアキラ君が大切だよ?でも、上手く説明出来ないけど、大切な人なの」 私の身体が勝手に動く。アキラ君を抱き絞めて、鼻先が触れ合う距離で彼の瞳を見詰めている。流石に恥ずかしいのか、彼の顔がどんどん赤くなって行く。もう駄目だ。熱い。もう、あ、だめだ・・・・・・。 「私、多分、アキラ君が・・・」
良く知っている匂いに、若い汗が混ざった不思議な香りが意識をくすぐり、私は目を醒ました。膝裏とお腹に優しい熱、そっか。私、今アキラ君におんぶされてるんだ。 「おんぶ?」 「あ、すごいびっくりしたんだよ?」 「わっわっわ!」 「あばれるなよ落ちちゃう落ちちゃう」 「あ、う、うん」 「きゅうにたおれたからびっくりした」 「私が?」 「たぶん、ココがおさけを入れてたんだ。あたま、いたくない?」 「す、少しだけ」 「よっぱらっちゃったんだな。あるける?」 私は少し考える。「ごめん頭痛い」この温もりを手放したくないよ。 「わかった」 「ごめんね?」 「おれに、まかせろ」 会話が途切れて、静かになる。彼が少し考えてから「おぼえてる?」と。私は「えっと、なにかな?」と嘘を付いた。残酷な現実を突き付けられそうで、私はしらばっくれた。 「そっか」彼の顔は見えない。 「どうして?」踏み込んでみる。 「な、なんでもないよ」見えない表情の変わりに彼の体温が上がる。 「そっか」それが可愛くて、私は捕まる腕の力を強める。 「ねえアキラ君」 「なに?」 「私達の前から、居なくなったりしないでね?」 「ほかにいきれないよ」アキラ君が笑う。 「いいから。居なくならないでね?」 「・・・・・・やくそくする」 「うんっ」私は嬉しくて彼を強く抱き締める。恥ずかしいけど、今は、これで良いのかな? 「あ、あのカナ、あの」 「ん?」 「むねが、すごいあたるんだ」口にしたのが原因か、また彼の体が熱くなる。 「ん?もしかして、えっちな気持ちになっちゃう?」 「ちっちがうよ!」 「アキラなら、いいよ?」わざと呼び捨てにしてみる。 「ば、ばか!」もうそういうのが解る年頃になったんだね? 結局二人で笑って、私は「大丈夫だよ」とアキラ君の背中から下りて、変わりに手を繋ぐ。ココやこの世界の人から見たら不思議な関係、もしかしたら頭がおかしいなんて思われるかもしれないけど、私は幸せを逃したくなくて少しだけ強く彼の手を握って歩き出す。 「あついよカナあついよ」 「いいのいいのっ!」 私がココに借りを返すため彼女の眼鏡を隠すのは、また別のお話。
とりあえずここまでで。次がラストです。初体験です。 協力、助言してくれた皆様、本当に、ありがとうございました!うまくいってなかったら削除しちゃってください!
削除人、そんなに暇じゃないよ
おつー。 もしかして2ch自体の経験が少ないのかな?
ROM歴は長いのですがこの手の投稿はほぼ初めてです。 とりあえずラストの前に勉強してきます
>>アキラ君の人 ラスト楽しみにしています。 あまり固い事気にせず頑張ってください
乙〜 ラストに向けて頑張ってください! 気長に待っとりやす
今キツネ・ヒトのラストを書いているのですが、二人が正式に付き合うきっかけに戦闘を挟むか別のきっかけを挟むかで悩んでいます。性質上どうしても、近代戦になっちゃって世界観違うかな?とか思ってみたりで・・・ 自分の話に感心を持ってくれてる人に、ちょっとアドバイスを頂ければな、と思って書いてみました。不快な思いをした人達には、大変申し訳ありません。
近代戦の規模によるのでは? 燃料の問題もあるし、そこらへんを巧く行かせると面白いですよね。
>>483 設定たぐって考えて出てきたのは、紛争で孤児になったカモシカのマダラをリーダーに据えた武装強盗とアキラが倉庫で銃撃戦→弾切れ→兵士卒業→童貞卒業
みたいな流れを考えてんですが、
今は、なんか自分の小説、なんか文字数多いので、もっとギャルゲ王道な感じにして、流れを変えた方がいいのかな?
みたいな感じに・・・なんかすみません纏まってなくて
485 :
鋼の山脈 :2010/06/15(火) 23:44:25 ID:NBMduL8H
あの思想だから筋肉が発達するのか 筋肉が発達したからあの思想なのだろうか
>>484 別に文字数多くてもいいよ。
無理に文体を変えることも無い。
書きたいように、書きやすいように書いてくれれば。
なんという脳筋www
うおお今更気付いた
>>485 お疲れ様ー
おい、闘牛って皆あんななのか!それとも奴だけ特別なのか
そして連れてかれたかー。果たしてどうなることやら
キツネ・ヒト ごめんなさいラストと言いつつアクションパートとラストが文字数多くてわけました。とりあえず前半投下します。
その日、給料日前の穏やかな営業を終えたアキラは少しだけ早く仕事を切り止め、カウンターに座り要芽を待ちながら一週間後に迫った彼女の誕生日についてココと密談していた。 しかし彼女は中々現れず、ココと共に迎えに行こうとしたその時、アルビオンの扉を強く開ける音がした。 「パコ?どうしたのそんな慌てて」ココが上着に袖を通しながら尋ねる。 パコと呼ばれた寅猫の少女は肩で呼吸しながら何か言おうと顔を上げ、二回えずいてから声を絞り出した。ああ、たしかココにお熱の常連客だとアキラは少女を見た。 「か、カナメが!」 「パコおちつけ」アキラが水の入ったグラスを渡す。 しかしそれを突っぱねたパコが声を荒げた。 「カナメがさらわれたにゃっ!」 「どうゆうことだ!」アキラがパコの胸倉を掴む。 「パコ、今日狐の雑貨屋に用事があって、行ったら店がぐちゃぐちゃで、店長が倒れてて、」 「おちついてしゃべろ!」 「落ち着くのはアキラ。パコから手を離して。深呼吸」 ココに窘められたアキラがのろのろと手を離す。深呼吸がしたくても呼吸が浅い。 「パコ。続けて」ココが優しく囁く。 「お店の人、肩を撃たれてて、符術を使う暇も無かったって言ってたにゃ」 「強盗?」 「何も盗られてないらしいにゃ。カモシカのガキの集団で、リーダーは右目が潰れてたらしいにゃ」 アキラの身体がびくりと動くのをココは見逃さない。 「アキラ。節が有るの?」 アキラはそれに反応せず、パコに静かな声で質問した「みぎめがなかったんだな?」 「う、うん」 うたれたと、いったな?」 「見たことも無い銃だったらしいにゃ」 納得がいった。そう、何処にでも自分みたいな、どうしようもない、ガキが居るのだ。 アキラ!ココの呼び掛けは届かない。撃ち出される様に走り出した少年を止めるため彼女も店を出ようとしたが、背中から聞こえる啜り泣きに小さく舌を打つ。 「・・・・・・怖かったにゃっ、あんなの初めてで、沢山血が出てて、怖かったにゃ、怖かったにゃ・・・・・・」 捨てられた子猫の様にその場に座り込み、肩を震わせるパコの姿があった。その今にも壊れそうな少女の姿にココは己の過去が映し出されている気がしていた。 不必要に生まれて、捨てられうちひしがれ、毎日泣いていた自分の姿が。 「大丈夫」 「あっ」ココに優しく抱き締められたパコが声を上げる。 「怖かったね?」腕の中で少女が短く頷く。 「でも、私達に伝えなきゃいけないと思ったんだね?」更に二回、少女が頷いた。 「ありがとう。頑張ったね?ありがとう」 堰を切った様に泣き出したパコが落ち着くまでココは優しく頭を撫で続け、その間、己のすべき事をフルスピードで考えた。 厨房を見た。きっと全てお見通しの、黒い牡牛がのしのしと近付いて来る。 「お父さん」 「解ってる。この子をよろしくだろ?」 「良いの?」尾行とか、パコの実家への襲撃とかは、きっとお父さんは織り込み済み。 「娘の願いを叶えたくない親父かいるか?・・・俺に任せろ」 「ありがとう」滅多に下げない頭を心を込めてココは礼をする。 「止めろよ娘でも気持ち悪いぜ」D,Dがココの頭を蹄で優しく撫でた。 「君がパコちゃんか?」 黒く巨大な塊から差し出された逞しい腕に、少女が思わず一歩下がる。 「大丈夫。私のお父さんは、凄い強くて、優しいから」ココが確信を持って、パコの背中を押す。そう、お父さんは、ろくに言葉も使えなかった捨て猫の私を、此処まで育ててくれたんだから。 躊躇いながらも繋がれる蹄と小さい手に、二人の短い嘆息が重なった。 「ココナートはどうする?」D,Dが真剣な表情を向ける。 「灰猫に行ってくる。レダの友達に人間と暮らしてるら子がいるの」 「ココナート」 「ん?」 「大きくなったな」 「ちょっと恥ずかしいから止めてよ!っ・・・行って来ます」 ひらひらと手を振りながらアルビオンを出ようとしたココに、パコが不安気に声を掛ける。 「こ、ココ、大丈夫にゃ?」 彼女は答える代わりにひらひらさせていた腕を少女に突き出し、良く手入れされている親指を上げた。 「私に任せろ」
土足のまま自分の部屋に辿り着いたアキラはこの世界に持ち込んだナップサックを開く。 9ミリサブマシンガン一丁と、フル装填されたマガジン二つ。鞘に包まれた軍用ナイフ。ワイヤー。どれも毎日整備し、万全の状態。 狙撃用スコープを持ち込むべきだったと一瞬激しく後悔したが、すぐそれを払いのける。 ナップサックを背負い、ベッドの下からブーツを引っ張り出し素早く履き変えるとクローゼットを開ける。 FN.FAL。初出撃で支給されたAKを失くし、三日間上官に殴られ手に入れた大型の自動小銃。最近持っていなくても出歩ける様になり、要芽に褒めてもらえたのが、アキラには随分昔の事に感じられた。 スリングに腕を通し、三つのマガジンから残弾五発のマガジンを装填。残り二つはカーゴパンツのポケットに捩込む。 レバーを思い切り引く。弾丸が薬室に装填される。ふと鏡を見る。残虐な少年兵が写る。 気持ち悪い顔だなと他人事の様に思い、もう考えは戦いへ向かった。 強武装した人間の子供を通行人が意にも介さない事を気にしないままアキラは目的地へ走る。 恐らく敵は、以前自分を誘拐した武装強盗の生き残り。リーダーは逃げる間際、自分に額を割られた美しい顔の青年だろうとアキラは考えた。 だとしたら目的地は恐らく自分が連れて行かれた倉庫群。要芽だけをターゲットにしたのは、きっと自分を誘うため。自分が報復するならきっと、この汚い手を使うだろう。 二つの月がアキラを照らし、肌寒い風が少年の頬を打つ。季節は、冬に向かっている。 朦朧とする意識の中、激しい口論に引き上げられ彼女は目を覚ます。強烈な眠気に視界がおぼつかず、身体を上手く動かせない。 「どうしてヤッちまわない!」 「この女はえさだ。ガキをころして、あとは生かす」 「ほうふくされるぞ!?ヤッて殺しちまえ!」 「俺がリーダーだ。女はころさない!きりつをまもならいならお前をころす」 「やってみろ。お前もすぐ、俺にあずかりたくなる!」 胸を強く掴まれ、痛みと嫌悪感から急速に彼女の視界がクリアになる。直後に映る傷だらけの犬と、その太い腕に悲鳴を上げかけるが、銃声によりそれは喉に支えてしまう。 「お前らもそうだ。ルールをまもらないなら俺がころす!しょうかいにもどれ!」 つんのめる様に倒れた犬は激しく痙攣しながら要芽のスカートを大量の血液と、それ以外の様々な体液で汚していく。 異様な暖かさから逃げ出そうとするが、上半身が鉄柱に縛り付けられている事を動けない身体が要芽に伝える。 「うごくな」濃い煙りを吐き出す銃口を眉間に向けられ、要芽はビクリと動けなくなる。 以前アキラに向けられた物より更に大きなそれは、持ち主に使いこなされ微動だにしない。 「さわぐな。泣くな。そうすればころさない。コール、したいをかたづけろ・・・聞こえないのか!?」 静かな、しかし刺す様な怒気を孕んだ声に、コールと呼ばれた羊が、ずるずると要芽の上から死体を引き擦って行った。 要芽は余りに近い死の存在から呼吸が浅くなり、頬を涙が濡らしている事にさえ気付かない。 「泣いているのか。こえさえ出さなければころさない」 青年は膝を折り、要芽に目線を合わせる。その無機質な左の瞳に要芽は吸い込まれる。美しい顔のパーツ。額から右頬に伸びる真っ直ぐな傷痕。短く刈られた頭髪から覗く鋭角で短い角。カモシカ?今の要芽には良く分からない。 「お前のどれいはおっかないな。にんげんのくせに、とんでもないベテランだ。まるで、ふつうなことみたいに、俺の右目と弟をうばっていったよ」 青年が表情を変えぬまま上着から落ち物の煙草を取り出し火を点ける。 「べつにそれは良い。だがやつのせいですっかりぶたいはひへいした。もう長くないだろう。そのオトシマエは払ってもらう」 青年の表情は変わらない。しかしゆらゆらと輝く白目が、あの日の彼を想像させ、要芽は思わずその名前を口にする。 「アキラ君」 「あのにんげんの名前か」 要芽はぴくりと肩を動かし目線を逸らす。 「やさしい、名前だ。きっと、ほんとうなら、とてもやさしいやつの、なまえだ」 青年は煙りを吐き出し、口だけで薄く微笑みつぶやいた。 「でも、こじぶたいはやつをころす。俺が、かならずころす」
部隊の上官に命じられ、子犬のセルゲイは小走りで配置に付く。ずっと炊事当番だった自分が実戦に立たされるのは、一人の少年がもたらした混乱と、その後何者かによる漏洩が原因の大規模な摘発である事は、何となく理解していた。 「でも、にんげんの男の子、ってじょうほうだけじゃな」セルゲイ秋風に身体を震わせる。 ふと風の中に異質な匂いを嗅ぎ取り視線を向ける。背の高い秋草に紛れているが、そこには人の気配が有った。 「うごくな!うごけばころす」自分の変声期前の高い声が、セルゲイが大嫌いだった。 昨日支給されたばかりのAKを構えながらセルゲイは影に近付く。良く目を凝らすと、そこには人間の男の子。 「ガキかよ。まさかこんなチビが・・・わけないか。リーダーにわたせばおかねもらえるぞ」 セルゲイは自分の犯した大きすぎるミスを挽回するチャンスがもう訪れない事を、この直後に理解する事になる。 その影は、セルゲイが後二歩で接触するその瞬間、蛇の様に地面に延びると一瞬で擦れ違い、子犬の足首を切り裂いた。 瞬く間の攻撃。膝を落としたセルゲイは反応出来ない。背中に絡み付く影は子犬の四肢を的確に捕らえその動きを封じる。 「なにがっ」 「動くな。おれのしつもんにだけこたえろ」 セルゲイはもう反撃の機転が無い事を、喉に感じるぬるぬるとした感触で知る。 「お、お前が」 「何も聞いていないぞ。あたまとどうたいを切りはなされたいか?」アキラがナイフを子犬の喉に食い込ませる。 「やめろ!答える!」 「カナを・・・女の子をつれて来たな?」 「つれてきたっ」 「どこにいる?」 「い、いちばん奥のそうこだっ」 「まだころしていないな?」 「リーダーの命令で、さわることも出来ない!」 「・・・・・・そうか」 「お、俺をころすのか?」「しつもんしていない。おいルーキー名前は」 「るーきー?」 「こたえろ!」 「せ、セルゲイだっ」 「よしセルゲイ。お前の首にばくだんをしかけた。死にたくないなら目をとじてひたすらあるけ!ひがあけるころかってにはずれる」 「おかしなまねをしてみろ?おれとおれの仲間がかならずお前をころす」 「わ、わかった」 「AKをすてろ」 「すてたぞっ」 左足首のアキレス腱を断たれたセルゲイが立て膝になる。ナイフを突き付けたままアキラは拳銃を取り出し、セルゲイを解放すると同時に後頭部に銃口をめり込ませた。 「おまえはもうしゃべるな。行け」 何とか立ち上がったセルゲイは足を引き擦りながらふらふらと歩き出した。やがてその姿が見え無くなるのを照門から確認したアキラは短く嘆息しながら拳銃を懐に戻し、ナップサックとFALを掴み取る。 何故殺さなかったのか。子供だから?かつて敵部隊の孤児を生きたまま切り刻んだ時は何も思わなかったのに? 「くそ」 アキラは走りながら苛立ちを仕舞い込む。50m先に歩哨が一人。どうせ直ぐにバれる。やっぱり死ぬのは怖くない。 FALを構える。連続する四回の銃声。振り向いた羊の顔にその全てが吸い込まれる。飛び散る鮮血。素早くマグチェンジ。 アキラの放った開戦の狼煙に対し、直ちに反撃が開始される。詰所からの猛烈な銃撃も、応戦しながら走り回る少年を捉らえられない。 遮蔽物を利用しながら詰所の裏口に辿り着いたアキラは飛び出して来たマダラ猫の青年を、銃床で思い切り殴り倒す。 こめかみに銃床がめり込み、崩れ落ちる相手の眉間に7.62弾を叩き込んだアキラは激しく痙攣する死体を掴み上げ、そのチェストに括り付けられた二つの手榴弾のピンを抜き取り詰め所に返してやる。 「やばいっに」 誰かの悲鳴は爆音に掻き消された。飛び散る破片と爆風が、アキラの前髪を揺らす。 首筋に寒気を感じたアキラは本能的に這いつくばる。二回の銃声と共に弾丸がアキラの頭髪をちりちりと引き裂いた。 「ちくしょう!」 アキラは小さく叫びながら、そのまま伏射の体制をとる。引き金を引き絞りながら視線を前方に集中。周りの騒音すら霞んでいく。倉庫屋上にうごめく影を発見し、アキラは指を引き切った。 影からライフルが落下するのを確認したアキラは再び走り出す。頬や足に多数の銃弾が掠めるが、まるで痛みは感じない。 ふと要芽を助けた後の事を考えた。自分の事、ココの事、アルビオンの事。しかし将来の事なんてさっぱり想像が付かなかった。
間断無く響き渡る銃声と、火薬に混じる血の臭いに要芽は身体を強張らせる。 「マスード始まった。なかなかやるみたいだよあの子」予想外の声色に要芽がその主を見る。 「君の奴隷はさしずめ狼だね?一人で私達を食い殺すつもりみたい」 そこには軽機関銃を下げた長身の女性が立っていた。闇に浮かぶ白い頭髪は肩に掛かるくせっ毛で、彼女のおおらかな美貌をぼんやりと浮かび上がらせている。 「俺をころしに来た奴だ。おおかみどころか、キマイラだよクリスタル」彼が笑顔に皮肉を込めた。 二人の名前を要芽は頭の中で反芻する。マスードとクリスタル、二人にある不思議な絆を要芽は感じていた。 「副長だめだ!ちょこまかとうごいて、気付いた時はまとめて殺されてるっ」カモシカの青年が肩で息をしながらクリスタルに報告する。 「落ち着きなさいコンラッド!奴をここに駆り立てて」クリスタルが彼の頬を撫でる。 「キマイラは強敵だから、チームプレイで消耗させて、最後は首を落とすの」 囁く様に命令された青年は、見る見る内に瞳に獰猛さを取り戻す。まるで何かの魔法かと要芽は驚いた。 「ずいぶん楽しそうだな?」マスードが呆れた声を出す。 「あら。私はご主人様に怪我をさせた悪い子にお仕置きしたいだけ」 「うそつけ、久々の人間ごろしが楽しみでしかたがないだろ」 「落ち物同士で殺し合い」クリスタルが恍惚と呟く。 「へんたいめ」マスードが楽し気にこき下ろす。 「愛してるわマスード」クリスタルの笑顔はどこか肉食昆虫を思わせ、要芽は深い底冷えを覚えた。 間近で起きた爆発に要芽はきつく目を閉じる。 「来た・・・わぁ凄い反応、アキラ君だっけ?あの子凄いわよマスードっ。オラくたばれ!」 けたたましい銃撃。クリスタルの笑い声。想像すらできない戦争の熱気に、要芽は自身の存在が酷く希薄に感じていた。まるで全く知らない未知の世界に、一人放り込まれた感覚。 そうかアキラ君もそうだったのか。誰も自分を知らない世界に無理矢理引っ張られ、それでも何とか順応して、私やココに笑顔を見せて、迷惑を掛けまいと仕事を見付けて働いて。 今は自分を助けるために、せっかく手放した銃を再び手に取り戦っている。優しいアキラ君が、暴力の渦中に身を落としている。 「お願いです」要芽の口から自然と言葉が出た。 「しゃべるなと言ったが?」マスードが銃口を要芽の額に押し付ける。 「アキラ君を殺さないで・・・・・・私は何でもします。本当に何でも、だから、アキラ君を殺さないで」 「わるいが女も、まりょくの無いきつねもきょうみがない。ほうふくはかんすいする」 「何でっ」 「わかる。においでわかるんだ。お前から、そのにおいはほとんどしない」 「子供が子供を殺すなんておかしいよっ」 「ああ。おかしい」 「でもお前たちは何もしてくれなかった。ふんそうで俺やなかまのりょうしんが死んだ時」 「はらがへってすなを食べた時妹がわるいびょうきで死んだ時。何もしてくれなかった」 「だから俺たちは強くなった。きっと、アキラという奴も」 マスードは少しだけ視線を落とした。 「あいつはついてる。こんなふつうの女に、拾ってもらったんだから」 「君も、本当は死んだ仲間のために、涙を流せる優しい子なのに」要芽がマスードを覗き込む。 「もうおそいんだ。俺にはこのぶたいしかない。ほうふくはかんすいする。俺のりょうしんは」 突然銃声が鳴り止み静寂が訪れた。 「あれ?あの子死んじゃった?案外呆気無かったなーつまんないの」クリスタルがコロコロと笑う。 マスードは話は終わりだと顔を上げ、死体を確認しろとクリスタルに命令した。 「嘘、アキラ・・・・・・」 俯き肩を震わせる要芽を無機質な瞳で見下ろすマスードは、彼女の拘束を解き放ち耳元で囁いた。 「ほうふくは好きにしろ。次は、お前が俺を、ころしに来い」 倉庫の入口から辺りを確認したクリスタルがマスードに振り向いた。 「うわーこれ私達以外皆殺しじゃない?やっぱりあの子、もう人間じゃなくなってる」 「死んだらいっしょだ」マスードが立ち上がる。 「久々に本気でやれると思ったのに・・・え?」 「おいどうした」 「あの、マスード」 「はっきりつたえろクリスタル!」 「ご主人様、私、先に待っていますね」
クリスタルが笑いながら立っている。鼻をヒクつかせたマスードが弾かれる様に立ち上がり拳銃を構えた。 「やってくれるな。したいにでもかくれていたか!」表情は変わらないが、その瞳に憎悪が宿るのを要芽は見た。 クリスタルは答えないが、その下腹部は鋭利に膨らんでいる。 「カナをかえしてもらう」 その呼び名に要芽の鼓動が早まる。しかしその声はまるで別人の、心を不安にする不気味な物だった。 動かなくなったクリスタルが人形の様に走り出す。マスードの指に力が入るが、後1mmが動かない。 「クリスタルっ・・・」 五発の腹に響く銃声。クリスタルの身体が踊る。一発が頭部に命中し美しい顔を吹き飛ばす。しかし死体は止まらない。 マスードが流れる様にAKを構えたが、肉薄したクリスタルの身体が邪魔をする。影が腕を伸ばし、拳銃をマスードの腹に押し込んだ。 「アキラ君だめっ」その声は届かない。 三発の乾い銃声。マスードの手から拳銃が落ちる。突き飛ばされたクリスタルと抱き合う様にマスードが崩れ落ちた。 「カナ!ぶじでよかった」血で濡れる白刃 「おいだいじょうぶか」ぶすぶすと煙る小銃 「アキラ君?」様々なもので汚れた少年を、要芽は本人とは思えない。 アキラがマガジンを再装填しながら近付くと要芽はその場にへたりこんでしまう。 「っ・・・」アキラの表情が歪む。 がたがたと震える要芽の肩に触れようと少年が手を伸ばした。 「く、クリスタル・・・」 瞬間反応したアキラが拳銃を向ける。 「クリスタル、クリスタル」 死体の名前を呼びながら、何かを掴もうと腕を伸ばすマスードに、アキラが歩み寄り、銃口を向ける。 もはや言葉にならないマスードの呟きにアキラは首を傾け、引き金を絞る。 「アキラ君だめっ、その人を殺しちゃだめ!」 要芽が抱き締めアキラを制止する。腕にぬめる血液が気持ち悪い。 「なぜだ!こいつはカナを殺そうとしたっ、わるい奴だ!」アキラが声を荒げる。 「私は生きてるよ?この人は君と一緒なのっ。この人を殺したら、アキラ君きっともう戻れない!」要芽が叫ぶ。 「カナは何も知らないんだ!生かしておけば必ずほうふくされるっ。これはせんそうだ!」 要芽を突き飛ばしたアキラが再び銃を向ける。要芽がその腕にしなだり付く。 「絶対殺させない!」要芽が泣き叫ぶ。 「そうやって逃がした奴に、なかまはころされたんだ!」アキラも泣き叫ぶ。 バンと銃声。アキラの身体から力が抜け、崩れる様に要芽に引き寄せられる。アキラが視線に驚愕を込め銃声の先を見やると、子犬が一人、銃を向けながら腰を抜かしていた。 「セルゲイ・・・」 くそと毒づきアキラは銃を向けるが、もう指に力が入らない。震える銃を見たセルゲイは、転がりながら走り去った。 「アキラ君!アキラ!」 名前を呼ばれ目を向けると、要芽が涙を流しながら見下ろしていた。返事をしたかったが、喉に支えてしまう。 「血が、すごい・・・」 上着をめくられ、お腹の辺りを這う柔らかい指の感触が心地好い。直後傷口を強く押されたが、余り痛みは感じなかった。 「全然止まらないっ、符が足りないんだ・・・アキラ、アキラ!」 死にたくないな。そう思うと勝手に涙が流れて来る。 「絶対に死なせないよ!?私が君を死なせない・・・!」 「アキラ・・・!」 もう痛みは感じ無かった。自分を呼ぶ要芽の声が、恐怖を和らげてくれる。 もうその顔は見えないが、きっと鼻水でも垂らしているんだろうと間抜けな事を考えた。 要芽の声が遠くなる。せり上がる血の味も感じない。 「ココ?」 「ごめんカナ!遅くなった」 「ココ、この人達は」 「話は後じゃ。アキラを灰猫に運ぶぞ」 「身体がどんどん冷たく、アキラ!アキラ!」 「主がアキラを信じんでどうする!死なせないと言うたのは主じゃろうしっかりせい!」 「う、うん・・・」 「朱風、こいつまだ生きてるぞ」 「主が決めい」 「助けたい。マスードを死なせちゃだめ・・・・・・」 「カナ・・・」 「うむ。頼んじゃぞカルト」 「おう」 誰かに持ち上げられる感覚を最後に、アキラの思考は深い闇に沈んで行った。
とりあえずここまでです。スレ占領、失礼しました。
乙 場面転換をわかりやすくするともっと読みやすくなると思う。 二行空けるとか、レスを分けるとか。
あぷろだに新着 固唾を飲んで読んでる
がっくんが出た瞬間に涙が流れるのは確定的に明らか
501 :
サルカニ :2010/06/27(日) 01:27:48 ID:S6FCrt9a
>>500 ほのぼの(?)短編イイ!
かわいいよ。天然たまらん
>>501 待ってましたー!
しかしカニ……シャコとは仲がよくなさそうだな。なんとなく
>>501 >サルの国の宝はイメージチェンジ
キサンのキャラだから?かもしれないけど、この言い換え方が好きです
このスレに参加させてもらう決心がついたので、投下します。 今回は短い導入部だけで、その後の全ての展開を安価に任せていければと考えています。 安価に反応したくなるよう感じてもらえるよう頑張りますね。
自宅へと向かい夢中で歩いていたせいで気付かなかったが、いつの間にか空が白くなり始めている。 じんわりとした蒸し暑さが体を包む。全身が汗ばんでいた。胸も股も蒸れて下着が当たる感触が痒い。 もうかなり長い時間、蒸し暑い夏の夜道を進んだはずだ。ハイヒールを履いた足が痛む。 彼女はウェーブの掛かった金髪を撫で上げる。浅黒い頬に汗が滴り、顎からぽたりと垂れた。 淡い桜色の唇が小さく開き、「はぁ」と、小さなため息が漏れた。どうしてこうなったのか。頭を抱えて舌打ちをする。 お気に入りの白いワンピースはすっかり汗で濡れてしまった。歩き続けたせいで喉も渇く。 終電なんてとっくに過ぎているし、この辺ではタクシーもそうそう通らない。携帯もどうやら忘れてきてしまったらしくタクシーを呼べない。 コンビニも見当たらないし、せめて休む場所ぐらいないだろうか。息を切らして肩を落としながら、彼女は周囲に広がる団地の風景を眺めた。 ようやく見覚えのある景色が見えてきている。このままあと一時間も歩けば我が家に着くだろう。しかし今は休む場所が欲しかった。このままでは靴擦れを起こしてしまう。 だが求めるような場所は中々見つからない。女性にしては長身の彼女も、疲れきってとぼとぼと歩く姿は、どうも小さく見えた。 足の痛みを気にしながら、そうしてしばらく歩き続けるが、不意に足が止まる。自販機の明かりが見えた。小走りで近寄ると、自販機の向こうには公園も見えた。 これで冷たいジュースを飲みながらひと休みできる。彼女は不機嫌そうにへの字にしていた口元に笑みを作り、お洒落な手提げかばんから財布を取り出した。 「……もうっ」 だが、すぐにその表情が忌々しげに歪められる。財布の中には一万円札と十円玉が2枚ずつ。これでは自販機など使えないではないか。 彼女は頭を抱えながら、公園の奥にあるベンチへと向かう。飲み物はなくても休むことはできるのだ。幾らか救われている。 そう思うように心掛けるが、しかし自分がこんな目に遭う原因となった相手たちへの呪詛を心の中で呟かずにはいられなかった。 「はぁ、やってらんないわ……。あいつら死ねばいいのに」 大人びたハスキーボイスで、子供のように悪態をつく。ベンチに座り背もたれによりかかると、彼女は脚を組んで目をつぶった。
座った途端、全身を押し潰すような疲労感がのしかかってきて、立てなくなってしまった。 次会ったら、今日無駄に使わされた代金をきっちり返してもらおう。彼女は大きく息を吐く。 艶やかな唇から熱の篭もった吐息を漏らすその姿は、中々に官能的である。そしてその色気が、この不運の理由の一つでもあった。 スラリと伸びた長い脚や、出る所の出たグラマラスな体つきは、女性的な色気に溢れている。 母方の遺伝を強く残した小麦色の肌やウェーブの掛かった金髪、それに異国の情緒を感じさせる整った顔立ちは、彼女を常に異性からの視線で悩ませてきたのだ。 今日もそのせいであった。たまに話す程度の知り合いから飲みに誘われ、特に予定もなかったので行ってみれば、それは所謂合コンというものだったのだ。 『ハーフの子が来るよ』などと抜かして男を集めたらしい。 それでも普通にお酒を飲んで楽しめればとも考えたが、断っているのに続けられるアプローチに嫌気が刺し、酒の勢いもあって飛び出したのがいつ頃だろう。 酔いが冷め、携帯でタクシーを呼ぼうと思う頃には、もう随分と歩いた後だった。 本当に嫌になる。やっていられない。 心の中で再び悪態をついた。まぶたが重たくなる。疲労感とアルコールから来る眠気が体を包む。 さすがに野外で寝てしまうのはどうかと、頭の片隅にアラート音が聞こえるのだが、しかし今は抗うことができそうになかった。 ゆっくりと、体全体が泥沼に沈んでいくような感覚が広がる。体がとても重たくて、いよいよ眠ってしまいそうなのが自分でも分かった。 世界が一瞬無音になる。まるで地面がなくなるように下へと落ちてゆくような心地が感じられ―― 「あだっ!?」 どさりと、盛大に尻餅を付いてしまう。 まさに眠ろうとしていたところであった彼女は、受身すら取れずに臀部を強打し、その痛みに顔を顰めつつなんとも情けない悲鳴を上げてしまった。いったい何がどうなったのだ。 眠気などすっかり吹き飛び、彼女は困惑しながらまぶたを開けた。
________________________________
この後の展開をまず安価してみたいと思っています
>>509 主人公の名前と作品のタイトルをお願いします
>>511 落ちた先にはどんな景色が広がっていたかお願いします
>>513 落ちた先に居合わせた相手をお願いします(種族・年齢・性別・性格。希望があれば名前も)
>>515 落ちた主人公がまずどうなるか、希望の展開をお願いします。
こちらの力足らずで安価が達成できそうにない場合は、先着順でお願いします。
では拙いながらこれからよろしくです
無茶振り職人待ちと聞いて
名前 金子 満子 タイトル ボインボイン物語
安価だと? ダンジョンの廊下
ドラゴンの背中
ドラグくんとボインちゃんだと (ガタッ
種族、トカゲか蛇(爬虫類系であれば嬉しい) 性別、男性(マダラでもいい) 年齢、60〜80あたり? 性格、うるさくはないが陽気な方でよく喋る。逆に緊張すると黙ってしまったりうまく口が動かない。 落ちもの文化に興味を持つ。ヒトが少し怖い なんてどうでしょう(>_<)
爆発する
アトマーシャ国境付近、ポイント523にて長距離偵察を行うウサギケダマ♂三名(性欲抑制済み)と、寅猫♂一名で編成されたの特殊作戦チームのキルゾーンど真ん中に落下して蜂の巣にされかける所からスタート
>>508-515 みなさんありがとうございました。
タイトル:ボインボイン物語
主人公:金子 満子(カネコ ミツコ)
ドラゴンの背中の上に落ちたらそこでトカゲのお爺ちゃんと出会ったと思ったら
そこはアトシャーマ付近のキルゾーンど真ん中で蜂の巣にされかける感じで書いてきます。
今日、29日の内に投下出来るよう頑張りますね
517 :
513 :2010/06/29(火) 01:52:42 ID:8t6aBrlL
ありゃ。種族設定のヘビのとこ見て人間の二倍位ならこんな感じかな、と 自分としては人間換算で20〜30代かなと思って書いたんだけど。 でもおじいちゃんでも面白いかなと思うし、 なにより使っていただける事に喜びを感じるので 涎こらえつつ鱗妄想しつつ待ってる。
>>517 あ、そうですねすっかり忘れていました。
それで本格的に書いちゃう前で助かりましたツッコミありがとうございます。
wikiの設定見ても蛇やトカゲはヒトの2倍ぐらいの寿命でしたね確か。ほんとにどうもです。
正しくはトカゲの兄ちゃんとであってですね。
>>517 楽しみにしてくれてるのも本当にありがたいです。頑張ります
おまいらもうちょっと書きやすい属性にしてやれよw カオス過ぎるだろそのシチュエーションw
おー設定入ってる!!すげぇ! これは楽しみだ!
最凶の武器「性欲」を封じられているウサギがどう描かれるのか非常に気に なる所であります 性欲あらずんばウサギにあらず!と普通の戦闘員になっているのか ウサギオナベ(ケダマの♂なので手術済?)属性で新たなウサギの道を切り 開いてしまっているのかw
>>522 ウサギの最凶の武器は性欲はだが、最悪の武器は博愛だ。
ウサギ、あいつら避妊と父親判定の技術完璧だからこそ貞操概念がなくて、 出産制限あるかわり社会保障ばっちりで、国土狭くて周り吹雪で 逃げ場がないから孕まされた女だけ泣き寝入りってことになんないし お互いとお互いの本命パートナーの同意はきっちり取るわで、 文化的な道徳概念・貞操概念が発生する余地がないんだよな。
どうも、完成したので投下させていただきます。
>>520 なんとか出来ました。これからも頑張ります。
>>522 主人公に焦点を当てているので、セリフが少なくてごめんなさい
主人公の名前ですが「満子」と漢字表記だと
どうしても「まんこ」と読んでしまうので、カタカナで「ミツコ」と表記させていただきます
でも犯罪が無い国は無いから、何らか罪を犯した連中は魔を剥奪されて、兵士にされんのを考えた。なんせ時間までいじれる連中だからそれぐらいできるかなって。 んで争いの絶えない世界だから絶対移民はいるから、そーゆー連中の魔を見えなくするビジネスもあるかなって。 せんな連中への対抗策として実弾兵器を使う兵士を偵察に出す。 ちなみにその部隊を作ったのはかつて落ちてきたアメリカ人、チャーリー・ベックウィズ なんてどうかなって。
〜ボインボイン物語 第一話〜 彼女――金子満子は、混乱しながらもまぶたを開く。そしてまず最初に、小さく悲鳴を上げた。彼女を乗せた地面が、空を飛んでいるのだ。 まるで意味が分からない。いったい何が起こっているのだ。そして彼女は次に、大きく身震いをした。今までに感じたことのないような寒さが襲ってくる。 空から舞い降りる雪が体に当たり、凍えるような風が頬を吹き抜けた。 彼女を乗せた何かが、雪の降りしきる銀世界の上を滑空していたのだ。己の理解の範疇を超えるような事態に、思わず卒倒してしまいそうな心地であった。 状況を飲み込める要素が全くない。幼稚園に入学したばかりの園児に専門知識を要求される国家試験を受けさせるようなものだ。 すっかり混乱した様子で目を回しながら、彼女は必死で眼球を動かした。空を滑る足場はひどく不安定で、立つどころか身じろぎする勇気も出ない。それ以前に体が凍えて動けない。 錯乱し憔悴しながらも、彼女はゆっくりと前方へと目を向けてゆく。風が強くまぶたを開いていることも困難だが、なんとか薄目でその光景を確認することができた。 彼女が尻餅をついた空を飛ぶ床は、青い色をした滑らかなウロコに包まれていた。そして彼女の両サイドには、ゴツゴツとした翼が生えている。 そしてさらに前方には、紐によって固定された数々の荷物、そして乗馬用のものに似た鞍が設置されていた。 何よりも彼女を救ったのは、その鞍には毛皮製の防寒具に身を包む、大きな後ろ姿が見えたことであった。 人がいる。この状況を説明してもらえる。まるで理解できず、混乱しかもたらさない状況であったが、ようやく希望が見えたのだ。桜色の艶やかな唇が、自然と笑みを作っていた。 だが、次の瞬間にはその笑顔も凍りつく。防寒具に身を包むその人物が、自身の真後ろに着地した女の気配へと気づいたらしい。 「なんだ……!?」 生気の漲った若々しい声が放たれるのだが、空を駆け抜ける風音の中で掻き消され届かない。しかし、声を放ちながら振り向いた彼の横顔は、ミツコを大いに驚かせるものだった。 「トカゲ……」 彼女はすっかり気の抜けた声でぼんやりと呟く。すっぽりと被った暖かそうな毛皮のフードからは、まさにトカゲそのものである鼻面が飛び出し、その顔についたギョロリとした目玉が、縦に割れた瞳孔に彼女を映していた。 それがトカゲ以外の何者なのか。小学生時代、よく公園で捕まえて虫かごの中で飼ったりしていた、あのトカゲにしか見えない顔である。
何かの撮影だとか、その手の強引な理屈で現状を飲み込もうとする気力すら出てこない。彼女はただただ驚き、呆然とトカゲの横顔を眺めていた。 トカゲの方も、彼女と同様にあっけに取られた様子で、口をあんぐりと開け、爬虫類らしいギョロ目が見開かれている。 まるで愛しあう男女のように互いの顔を見つめ合い、そしてその瞬間は不意に訪れる。 「キャ……っ!?」 ミツコの両サイドに見える翼が、大きく動かされ、そして空を飛ぶ床は、まるで曲芸飛行をする飛行機のように、大きく旋回した。 体を支えるベルトも腰を落ち着ける鞍も、手綱すら持たない彼女が、その急激な旋回に耐えられるはずもない。 慣性に抗うことすらもできず、彼女の体は空中に投げ出されていた。一気に数メートルほども離れ、彼女は自分の乗っていた何かの全体像を、ようやく見ることができた。 青いウロコに包まれたドラゴンと、その長い首の付け根辺りに取り付けられた鞍に座り、手綱を握るトカゲの姿であった。もはや驚きを通り越して呆れるほどにファンタジーな光景である。 彼女を襲っていた混乱も一線を超えてしまったのか、その光景を見ているとむしろ冷静になりそうだった。 しかし、そうはさせないということであろうか。自由落下を始める彼女の目の前で、何処からかまばゆい光を放つ光弾が駆け抜け、先程まで彼女を乗せたドラゴンのいた位置を射抜いていた。 中学生の頃大好きだったバトルモノの漫画で主人公が手から放っていた、ああいうものである。 いったいどういうことであろうか。 再び頭がパンクして、遥か下の地面へと向けその体が落下している事への恐怖すら忘れてしまう。とにかく、全てが彼女の持つ常識で判断できる範疇を超えていた。 もはや思考放棄するしかあるまい。烈火のごとく振りかかる異常事態に、ミツコの頭は完全に真っ白になってしまう。 彼女がそうして思考停止しているとき、遠方から先程の光弾を放った射手は、空中を落下する人影へと向け、確実なる止めを刺そうと狙いを定めていた。 遠目からでは彼女がヒトであるとは理解できず、そしてあの程度の高さから雪の積もった大地へと落下し命を落とす種族は、この世界においては寧ろ少ない。降り積もる雪の中に身を隠された方が厄介だ。 相手の方も、それを避けたいと思うのは当然である。空を飛ぶ竜を狙っていた射手は、長いウサギの耳をピクピクと動かし、風を読む。赤い瞳は、落下する人影をしっかりと見つめていた。そしてその傍らには、三人の男が控えている。 ヒトの知識で言うところの、銃のようなものを構え、真っ白なウサギの男が一人、茶色い体毛に包まれたウサギの男が二人、そしてスラリとした細い体を持つ、虎猫の男。 「照準は定まった。念のために散弾で撃つから、外れることはないはずだ。俺の狙撃を合図に、各自榴弾を叩き込め」
まるでライフルのような長い砲身には、奇妙な文字が彫り込まれていた。リーダーらしき白いウサギが、他の4人に指示を出し、グリップを握る手に魔力を込めると、砲身に刻まれた文字がうっすらと発光する。 注いだ魔力を弾丸のように変形し撃ち出してくれる、試作型の武器であった。制作協力にあたったヒトの知識を元にして、各種の弾丸の形状と能力も記憶されている。 魔力自体の総量は多くとも、それをコントロールする技術に難を持つ者へと向け開発されたそれは、使用者の魔力総量によっては絶大な能力を発揮するのだ。 それが認められ、国境付近で長距離偵察を行う特殊部隊へと貸し出されていた。そして、今回はその記念すべき最初の実戦使用でもあった。 しかし、よく誰も気づかなかったと言うべきか、狙撃を行うには重大な欠点も内包する武器だ。発光する砲身が、敵に居場所を知らせてしまう。 落下しながらも、目の端にキラリと発光する何かを捉え、ミツコはそちらへと視線を向けた。 人の視力では降りしきる雪に阻まれた遠くの景色をハッキリと見ることはできないが、しかし発光する棒のようなものがぼんやりと見え、それが自分へ向けられているのは分かった。そしてそこに四人の人影も見える。 彼女とて頭が悪いわけではない。自分へと向けられる奇妙な棒と、さっき竜とそれに乗るトカゲを襲った光弾とを結びつけることは容易かった。 なんだかよく分からないが、自分はもしかして死にそうなのではないだろうか? 地面へと落下しているというのに、彼女はいまさらそれを意識した。 ただただ混乱することしか出来ずにいた頭に、恐怖という感情がようやく芽生え始める。 自由落下という、自分ではどうしようもできない状況の中で、頭の中には幼い頃からの記憶がパノラマのように蘇っていた。走馬灯というやつである。 全てがスローモーションに感じ、地面へと向けていく速度が、驚くほどに遅い。死に際特有の奇妙な感覚に襲われながら、彼女はただ落ちて、そして射手が引き金を引いた。 砲身に浮かび上がる文字の輝きが、一瞬だけ増す。そして次の瞬間には、一纏まりとなった光る散弾が、ミツコの体を目掛けて放たれていた。 間違いなく命中するであろう弾道に、白ウサギが口元に小さく笑みを浮かべ、それを取り囲む他の者達も引き金を引いた。拳ほどの大きさに圧縮された魔力の塊が、それぞれから放たれる。 それらを続けて受ければ、脆弱なヒトの体どころか、虎の大男でさえも跡形もなく吹き飛んでしまうだろう。 だが、運良くも彼女はバラバラの肉塊にならずには済んだようであった。彼女が何も分からずに混乱し続けているその時、迫り来る散弾と彼女の間に、青い影が割って入った。 さっき彼女を振り落としたドラゴンである。その背に乗るトカゲの手には、防寒具のポケットから取り出した一枚のカードがあった。 魔術の素養を持たない彼が、護身用として持ち歩いている魔符である。鼻を鳴らしながらそれを迫り来る魔力の弾へかざすと、カードが弾け見えない壁が形成される。 ミツコを狙っていた散弾はその壁に阻まれ、音を立てて消し飛んだ。だが、あとから飛んでくる榴弾は、市販の防御用魔符程度で防げるレベルではない。
「おい、掴まれ!」 あの壁が耐えていられる一瞬のうちに、弾道から一気に遠ざかる必要があった。 トカゲはミツコへと向けて叫ぶのだが、この状況で相手の声をハッキリと聞き取り、ましてや反応できる筈がない。 何の反応も示してくれない彼女へと舌打ちをすると、踵を使ってドラゴンの首を軽く押す。乗馬などでも使われる、馬に発進を伝える合図だ。だが、竜が相手では意味合いも違う。 青い竜はその背から生える巨大な翼を、ばさりと大きく振るった。巨体が一気に動き、トカゲはミツコの細い腕を力強く掴む。 その直後、後続の榴弾が魔符によって形成された壁へとぶつかり、轟音を立てた。 透明の壁にぴしぴしとヒビが入る光景は、さながら空間にヒビが入っているようにも見えた。トカゲはその間に、腕に力を込めてミツコの体をぐいっと引き寄せ、その腰に腕をまわして、がっちりと固定する。 「きゃあぁあああっ!!?」 響き渡る轟音と、目前に迫ったトカゲの顔に、ミツコの甲高い悲鳴が響く。キンキンと耳に残るような悲鳴に、トカゲは顔をしかめるが、今はそれどころではなかった。 「気張れよ、ここを抜けなきゃ目的地には辿り着けねェぞ!」 トカゲは自身の跨る竜の首筋を撫でながら言う。 竜はその呼びかけを受けると、理解したかのように小さく頷き、ミツコを振り下ろした時よりもさらに殺人的な旋回を行ないながら、魔符の防御壁を突き破り飛んできた榴弾を避ける。 だが、それで終わるわけもない。4人の射手は、空を舞う竜へと向けて次々に砲撃を開始する。 最初に飛んできた巨大な光弾や、レーザーのような鋭い一陣の光、多少遅いが追跡までしてくる魔力の塊。様々なバリエーションを持った弾が、彼らを襲った。 だが、トカゲは片腕でミツコの体を抱えながらも、もう片方の手で絶妙な手綱さばきを見せ、竜はその指示に従って縦横無尽に宙を旋回してみせる。 曲芸飛行だなんてレベルではない。これでは板野サーカスだ。かつて乗ったジェットコースターなど比べ物にならない。もはや声すらも出ず、ミツコはひたすらトカゲの体にしがみつき、再びそこから振り落とされないように耐えていた。 竜はそうやって狙撃を避け続けながら、射手たちの射程範囲外へと向けて一気に宙を駆け抜ける。 時間にすればほんの1分や2分程度の出来事であるのだが、その短い時間は、20年になるミツコの人生で、最も時間の流れが遅い瞬間であった。 あの特殊部隊のキルゾーンを通過し、狙撃の心配がなくなったあとも、ミツコは寒さと恐怖に体をビクビクと震わせ、トカゲの首に腕を回して身を寄せている。 彼の着込む分厚い毛皮製防寒具の柔らかくて温かい感触が、今この瞬間彼女を癒してくれる唯一のであった。
だがせめてもの安心を求めるその行動も、抱きつかれる本人にしてみれば、色々と思うところがある。トカゲはどこか緊張し、上ずったような声で、ミツコに呟いた。 こう体を寄せていれば、風音にかき消されてしまうこともない。 「お、おまえヒトだよな……? つーかいつまで抱きついてるんだよ……っ、もう急に動いたりはねーぞ……?」 先程のような緊急時の時は、相手が誰かを気にしているような余裕などなく、淀みなく言葉を放っていたそのトカゲであるが、ホッと気が抜けた今は、そうもいかないようだった。 分厚い防寒具ごしとは言え、柔らかくて大きな胸の存在感も感じるし、健康的な小麦色をした肌は艶めかしい。 何より彼は落ちもの文化というものに興味があり、ヒトは誰よりもそれに詳しい存在である。彼女がどんな話をするのかと、子供のように好奇心が湧きもした。 ならばどうして、こうもぎこちない対応しかできないのかというと、彼の過去にちょっとしたトラウマを残す、ヒト関係の出来事が原因である。 だいぶ克服したつもりではあったが、70歳にも達しトカゲという種族として、いい大人になった今でも、彼は少しヒトが怖かった。 その少しばかりの恐怖と、大きな好奇心に揺さぶられていると、どうにも緊張して口下手になってしまう。続けて何か話そうにも、言葉が浮かんでこない。 トカゲは困ったようにミツコから視線を逸らし、頼むから何か言ってくれと、彼女の返答を祈った。やがてそれが通じたのだろうか、ミツコは震える声で話す。 「手が凍えて……、動かせないのよ……ッ」 「あ、そういやお前そんな薄着で……」 今になって気づいたと言わんばかりの声色で、トカゲは唖然として呟く。真夏の夜の公園から、年中雪の振り続ける北の国へと落ちてきたのだ。その格好で凍えないはずがなかった。 ならばどうすればいいのか。防寒具は一着しかない。積荷から何か探そうにも、こんな上空を飛びながら袋を開ければ、中身が飛び散ってしまう。 どうしたものかと、彼は頭を抱える。先程の修羅場とは打って変わって、情けない一面を見せていた。そんな彼の真理を見透かしたような声が、その場に響く。 『だったら君の防寒具を着させてあげればいいんだよ』 「変温動物舐めんな! こんな寒いところで防寒具外したら俺が死ぬ!」
もう一人いたのだろうか? 寒さの中でおぼろげになってゆく意識を繋ぎとめ、ミツコは声の聞こえた方へと視線を向ける。そこには、あの青い竜の顔があった。 攻撃的な形状の尖ったウロコに包まれ、頭に一対の角を持っている。ぼんやりとその顔を見ていると、竜は察したように長い首を動かして頷いて見せる。 人間に近い体型をしたこのトカゲより、よっぽど知性がありそうだなと、ミツコはぼんやり考える。 視界が暗くなり始めていた。まぶたがとてつもなく重い。眠い。 『彼女も相当つらそうだよ。脱がなくてもいいから、上着に入れてあげなよ。それ中古で買ったやつだしかなりブカブカだったでしょ? それに二人で身を寄せてれば今より温かいハズだから』 「お、おう……。そうだな、それがいいな……」 随分とおっとりして、どこか子供らしさも感じさせる言葉遣いだが、巨体ゆえかその声は非常に低く、口調と不釣合な印象を受けるものだ。 だが、トカゲはこの竜からのそうした助言には慣れているらしい。 すぐに納得してみせると、防寒具の上着の金具を外し始める。自分の太ももの上にミツコの体を体育座りさせるような大勢で抱え込み、その上から防寒具を羽織って金具を留める。 これでなんとか彼女が凍える心配はないだろう。その代わり、ヒトとこうして密着しあうなんて、彼にとってはそれなりの勇気を要する行動であった。 「もう少し飛んだら、雪に隠れ穴作って野宿だ」 『今日は早いね?』 「俺にもこう、頭の整理が必要なんだよ」 『君のスカスカの頭に整理するほどの荷物があるとは思っても見なかった』 「うるせー」 何も突然の出来事に混乱していたのはミツコだけではなく、あのようななタイミングで落ちてきたヒトに遭遇した彼も同様だ。 ともあれ、彼らは出会ってしまった。二人を乗せた竜は、目的の場所へと向けて飛んでゆく。 続く
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>>535 トカゲとドラゴンの名前をお願いします
>>537 第二話の展開をお願いします
物語の強制終了以外は何でもアリのつもりで頑張ります
これはからは、週に一回か二回程度のペースでやれたらと考えています
トカゲ:オベルジーヌ ドラゴン:ドラ次郎 ダメだ中身まじめなのに驚くほど不真面目なタイトルで笑っちまうw
乙! タイトルwwwwwwwwww
しっかり安価をこなすだけでなく、526の要素までほの匂わせてる作者さんスゲーとか思った。 本当にgjです。これからも楽しみにしてます。
雪洞の中で燃料が尽きる。 アルコールと人肌でこらえろ。
>>535 トカゲとドラゴンの名前が出てくる度に吹きそうなことになってしまった
>>535 これはやっぱりトカゲが「乙!」でドラゴンが「タイトルwwwwwwwwww」になりますよね
頑張ってみます・・・・
名前と認識できず安価失敗だしどうしようと思ってましたが
>>538 さんの発想はありませんでした
>>537 把握しました。
次回はその方向で書いてきます
おい待て、はやまるな
>>535 です
すまぬさすがにこりゃだめだ。
トカゲ・ユーリ
ドラゴン・ガガーリン
で。真面目に真面目に・・・
>>541 あ、了解です
ではその名前で書いてきます
wktk
544 :
僕の奴隷は愚鈍で困る 5話前編 :2010/07/06(火) 13:22:56 ID:k2Es1fEI
待ってました! 拳で肉を勝ち取るグィンガム先生がかっこよすぎます ユキカちゃんが感情を取り戻す兆しがたまらん 新キャラ続々でますます楽しくなるなあ、おつです!
さりげなく覚えてたけど、全裸で土下座とは・・・・・・ その心意気乙! しかし、こたつに入る猫学生に将来の俺を見た気がするのは、気のせいだろうか?
グィンガム先生…ウッ(´;ω;`) スープも台なし…ウッウッ(´;ω;`)
グィンガム先生マジカワイソス ユキカちゃんはだんだん回復してるようでおじさん目頭が熱くなってくるよ
ユキカちゃん頑張れッ頑張れッ(主に胃腸的な意味で)
先生との間で閉じてた世界が広がるといいなといってはみる。
グッジョブ! 安価なら道に迷ってシロクマの国に出る。
>>552 さんと同じだな。
シロクマの国見てみたい。
>544 加齢臭でディスプレイにおつゆとんだw ちぎってはなげ、さすがオオカミ 誕生日兼戦勝祝いですかw タックルード育成から入手のいきさつが面白すぎるw
乙 しかし次の話が不安で仕方ない
わぁい!乙!
乙でした 白熊の国で暴れるミツコさんの姿に期待
グッジョブ 次の話は宿代代わりに魔法の薬の運びを頼まれるとかどうでしょう。
>>560 すみません、次の話は先に避難所の方で出ていたので、そちらで書いてきます。
次の投下の後にまたその後の展開を書いていただければありがたいです。
リムペでトリ金楽勝とかトイレ監視員でクリ金すぐとか言ってる奴らは 相当の凄腕か、何戦も張り込んだんだなあと思った B2にはなぜか落ちられないし、ストレス溜まるから可能性のない試合は好き放題遊んでたらA5に戻っちまったい
すまん誤爆
最近ツンツンした犬耳を言葉攻めしたい衝動にかられるが きっと病気だよな
避難所のリクを見て、戦闘終了後のミツコが両手についた埃を叩きながら 「脊椎動物は、(攻撃すればいい部分や方法をイメージしやすくて)安心するわ」とか、 そんな恐ろしい事のたまってるシーンを想像してしまった。怖くなった。
>>565 脊椎動物以外との戦闘経験が豊富な地球人ってのもこわいぞw
褐色パツキンバインボインなハーフの忍者ってハイスペックだなぁ
>>565 人類の歴史はGとの戦闘の歴史でもあるとか言ってみる
>>569 エラーか、それともうpするテキスト間違えたのか、偽者か
三択ですね
削除キーを設定していなかったため、バグで別のファイルが表示されてるレスを消せませんでした 重ねてお詫びしておきます・・・・
ミツコさん無双www 顔半分を火傷した美女マフィアボスが、何かやっかいごとを持ち込む展開希望。
新うprpだも新絵板も、まだ完璧じゃないみちだから、 とりあえず旧を使っといたほうが安全かもしれんです。 旧が消えたら新にうpしなおすということもできるし。
>>574 了解ですー
第五話はそれで書いてきますー
踊りじゃワカラネエよ…
できるなら宿屋にいく最中にトカゲ男さんが物思いにふける場面が欲しいな
ssを作ってみたいとは思うのだが、勝手に人が作った設定とかを持ち出して来ていいんかな?
>>579 シェアワールドなのに何を言っているのかと小一時間ry
既存の設定を改竄するのはよろしくないが、別に他人の設定を使うぐらいなら全然構わない
ってか、既存の設定改竄でも、パラレルワールドです!で済んでしまう懐の深さがry
581 :
鋼の山脈 :2010/08/09(月) 21:01:55 ID:9cxfyUL/
ババア乙! 男運のない人だ・・・
乙です。 サルヴァさん完成www
乙です。章タイトルの川を打つ砂はあれのことなのかな。
585 :
キツネ、ヒト :2010/08/20(金) 17:05:31 ID:mkxDwXiq
夢を見ていた。楽しかった家族との夕食。普通な事の様に戦いに備え、落ち物の兵器に馴れていった事。 自分の目の前で、人間に両親が殺された事。クリスタルや孤児達と出会い、大嫌いなはずの落ち物に頼り、初めての殺人を犯し、走り続けて結局、それは落ち物の手により全て壊されてしまった。 随分と柔らかい感触に親しめず、マスードは目を醒ます。見た事の無い装飾が施された一室、質の良さそうな寝具、遠くから喧騒と様々な色の光が届いて来るる。 腹部に鋭い痛みを感じ思わず当てた手の平ごしに、大量の符が貼られているのをマスードは見た。 寝息を聞き取る。知っている匂い。身体を這わせて隣を覗く。穏やかに眠るアキラの顔が、そこにはあった。 体温が上がる。クリスタルの言葉を思い出す。武器を使わずに命を奪う方法なんて、幾らでもある。 「他にやる事ないの?まず命の恩人にありがとうございますって言ってみるとか」 咄嗟に銃を構えようとするが、直ぐに無い事を思い出す。 「残念でした・・・・・・重っ」 自分の銃を構えた猫眼鏡が顔をしかめ、それをバッグに仕舞う。 殺してしまおうかと思ったが、眼鏡の奥に映る隙の無い彼女の瞳に、マスードはそれを諦めた。 「たのんだきおくはない」 「魂は生きたがったてた。だから君は死ななかった」 「バカな話を」 「真実だよ」 女が近付き、細巻きに火を点ける。 「いる?」 マスードは答えない。 「素直じゃねーなぁ」 二人は縁側に座り、煙りをくゆらせる。言葉は無い。奇妙な時間が流れた。 「なかまはどうなった」マスードが呟く様に話し出す。 「アキラがみんな殺しちゃった。あ、セルゲイ?って子犬は無事らしいよ」 「セルゲイ。あいつは生まれつきうんがある」 「そっか」 「クリスタル、にんげんの女は・・・」 「死んでた」 「そうか。いや、かくにんだ」 再び沈黙が訪れた。少し寒さを覚える秋風が、上昇した体温と暗い憎悪の炎を何処かに飛ばしてしまったのか、穏やかな心をマスードは感じていた。
「謝らないから」次は彼女が沈黙をやぶった。「アキラが君の全てを壊した事、謝らないから」 マスードは驚いて彼女を見たが、そこには慢心も罪悪感も無い、穏やかな表情があるだけだった。 「君が、カナやアキラを深く傷付けた事も、別に考える必要無いから」ココが続ける。 「へんなことを、言う女だ」 「そう?でも本心だよ。成るべくして事は起きた。そして結果が残った。後はせれぞれが生きて行くしかない」 「俺にはもう、何もない」 「命だけは残った。また初めから作れば良い」 「かんたんに言うな?」 「難しい事だよ。でも私もアキラも、多分クリスタルって女の人も、そこから始めたんだ」 「俺にはころすぎじゅつしかない」 「なら、うちで働く?」 「いや」一瞬迷う。 「やめておく。それは、何かちがう気がする」 「そう」 ココが細巻きを瓶に入れ、新しいのを口にくわえる。 「いる?」 「ありがとう」 その一本が無くなる間、お互い何も喋らなかった。 「すまないがじゅうを返してほしい。その」マスードがゆっくりと立ち上がる。 「ココナート=リバティ。ちょうど重くてきつかったんだ」ココが微笑む。 「ありがとう」差し出された銃をマスードが掴む。 「ジャー=マスードだ」 「君もやっぱり、それが無いと眠れないの?」ココが辛そうな表情を見せる。 「いや。それもあるが、おやじのかたみなんだ」 「そっか」 随分と軽い銃。弾は抜かれていた。薬室を覗く。弾丸の鈍い輝き。一瞬ココを人質にしようかとも思ったが、良く見ると少しだけ震えている彼女。それを見たマスードは、何故か様々な事が過ぎ去ったのだと感じた。 「俺が、こわかったのか」 「少しだけ」 「そうか」 「はは、今になって震えて、格好悪ぃ」 「すまない」 「気にしないで」 マスードが踵を返す。 「もう少しだけ、ねどこをかりる」そのまま振り向かず付け加えた。 「いのちをすくってくれて、ありがとう」 「お礼ならカナに、君が人質にした女の子に言って?あの子、君がここで死にかけた時、大泣きしたんだから」 「今は、合わせるかおがない。きっと、こわがる」 「そのうちさ?」 「そのうち、な」 夜明けを待たず、短い置き手紙を残して、マスードは姿を消した。アキラが目を醒ます、一日前だった。
乙
乙でした マスード生きろ! そして、そろそろアキラくんがお目覚めですな ぐへへ
保守
そして一週間書き込みゼロ なぜか一週間投下もゼロ 全く前に進んでへん このスレ終わったか?
最近は避難所の方が盛況だよね 作品投下はFeさん(鋼の山脈)とか新規の人がしているけど ネタ不足なのか、それともみんな避難所に行っててスレしていないだけなのか
そして先週初めて読んだ獅子国伝奇 初めてパンダとカメという種族の存在を知ったんだぜorz
ただ、そこで俺は勝手に考えた 1 パンダは中国では熊猫と書く ならばそれは、熊と猫双方の身体的特徴(怪力と魔法使い)を備えたオールラウンダーな種族であるはずだ、と しかし、莫大なエネルギーを必要とするその巨躯ゆえに、面倒臭がりで暴食、すなわち戦う以前に食うことに生き甲斐を感じる人が多い だから、種族としての国はそこまで大成せずに、獅子国の中に取り込まれているんだろうな と、推測してみる 2 カメは甲羅を背負っている しかし、その甲羅はエッチする時に邪魔だから実は取り外しができる 首をすぐに引っ込める辺り、臆病で内向的な性格の人多そうだし、『鶴は千年亀は万年』てことわざがある位だから、カメの寿命って実はネコよりも相当長いんじゃ と推測してみる で、それについての感想をディンスレイフに聞きに行こうと思うので、みんなあとは頼んだ
スレ→× 書き込み→○
そして再び静寂の1週間が流れた
そして誰もいなくなったw 避難所は盛り上がってたが、本スレは全く音沙汰なかったな〜
規制かかったり解けたりを繰り返してるからなぁ……そのせいで、避難所在住になった人がそこそこいるんじゃね?
こんなときは好きなシチュエーションでも書き込めばいいんじゃね?
599 :
キツネ ヒト :2010/09/25(土) 11:50:45 ID:PM79ycON
「しかし良く寝るな」ココの呆れる様な声。 「生死の境をさ迷ったからの、当然じゃろうて」優しい声、誰だろう。 「こ、これでツケをチャラにしてもらうにゃ」 レダ、さすがにそれは・・・。 「ダメに決まってるだろ!」 「お父さんうるさいっ」 「ごめん・・・」店長弱いなぁ。 「おい目を醒ますぞ」男の人、初めての声だ。 「アキラ君・・・」ゆっくり瞼を開けた先に、泣きそうなカナの顔が目の前にあった。 「良かった・・・良かった」 そのまま顔をおれの胸元に落としたカナは、何回も良かったと言いながら、肩を震わせた。 俺はひどく重い気がする腕を上げ、カナの髪を、出来る限り優しく撫でてやる。昔妹に、してやった様に。んん、恥ずかしい・・・。 周りを見ると色々な人が居た。ココとレダはニヤニヤしながら見下ろしている。店長は泣きそうだ。 浴衣風の服を着たカナみたいな女の子は、多分凄く強い人間みたいな男の人と何か喋っている。ん? 「にんげん・・・」疑問を思わず口に出してしまった 「俺も落ち物だ」 答えを出してくれたその人の、沢山の何かを抱えた瞳の奥に、確かな優しさが垣間見える。 「ほらカナ。そんなに密着してアキラの顔が真っ赤になってる」ココがニヤニヤしている。後で覚えてろ。 まだ泣き止まないカナが鼻をぐずぐずやりながら離れて行く。ああ、なんか勿体ない。 「アキラ、今勿体ないと思うたじゃろ」 「お、おもってません!ええっと」 「朱風じゃ」 「あけかぜさん!」この人心が読めるのかな?! ゆっくりと上半身を起こす。チクリとした腹部の痛み。鼻に残る硝煙の匂い。記憶のフラッシュバック。 「セルゲイ!くそっ」やはり殺しておくべきだった。「アキラ君!」カナがまた抱き着く。お腹に彼女の手が触れたが、痛みは感じない。 「リーダーのガキもだっ。みなごろしにしないとほうふくされる!」それが戦場のルールだ。 「もう一週間も前の話だよ!」カナは離れない。 「でも!」カナがまた、危ない目に会ったら、おれはっ・・・・・・!
「アキラ!」 ココの一喝。彼女はおれの隣で腰を下ろし、机に仕舞っていたはずの煙草を一本取り出すと火を点けた。 「吸いなさい」 「今は!」そんな場合じゃっ。 「良いから吸いなさい!」 鋭い声。おれはどうも、ココに敵わない。良く解らないけど、何か彼女に怒られると酷く悪い事をしている気持ちになる。 久しぶりの喫煙、たっぷりと吸い込み吐き出すと、少しだけ頭が冷えてくる。あけかぜさんが少しだけ目をしかめたので、慌ててココに煙草を返す。 「落ち着いた?」 「少しだけ」 ココは煙草をいつもの瓶に入れながら、間を置いた。 「アキラは子犬一人とマスードを残して皆殺しにした」 マスード?リーダーの名前か? 「カナがマスードを助けた。彼はそれを認めた。それで手打ちになったの」 「うそだ」そんな上手い話、あるわけない。 「本当よ?最後私に、カナには手紙だけどありがとうって言ってた」 「そんなのおれだっていえる」 「彼は隣で眠る君を、殺さなかったわ」 「動けなかっただけだ」 「あら、私と一緒に煙草をふかしたわよ?」 「でも!」 おれなら必ず殺しに行く。最後までやり遂げる。喉まで出欠けた言葉は、カナの言葉で封じられてしまった。 「頼んでないよ・・・」 やっと聞こえるカナの小さな声。 「アキラ君が助けに来てくれた時、嬉しかった」 カナの腕にどんどん力が入る。 「でも、あんな危ない目にあって、あんな怖い顔して、私・・・」 「助けてなんて頼まない、頼めないよ、アキラ・・・」 「カナ」おれは上手い言葉が思い付かず、ただ名前しか呼べない。 重苦しい空気。何か言わなきゃ。店長が狭そうにココの隣に座る。 「二人とも生きて帰った。今は、それで充分だ。お帰り。要芽ちゃん、アキラ君」 店長が固い蹄とは裏腹な優しさで、おれとカナの頭を撫でくれる。いやさすがに蹄はイタ、イタタ。 「いたた」カナが耳をぴくぴくさせた。 「しかし本番はこれからだ!アキラ君。君はまだしばらく働けないね?」店長の眉間にシワが寄る。 「ご、ごめんなさい」お、怒ってる・・・クビ、か。 「だから、早く治して、またアルビオンを盛り上げてくれ。な?君のファンだって、心配していたぞ?」 「え?」クビじゃないの? 「お父さん何で素直にまた働いてくれって言えないの?」 「ココナート!物事には様々な段階と言うのがあってだな」 「暴れないでよ狭いなぁ!」 「ご、ごめん怒らないでよう」
ああ、いつもの親子漫才だ。これだけ色々な人に気を使わせて、また、働けるなんて、おれはそんな、大した人間じゃないのに。 くそ、なんか泣けてくる。おれはみんなに見付からない様こっそり布団で顔を、あれ?なんかカナがぷるぷるしながら布団に顔を押し付けてる 「二人共、ズルイ」そう言って堪え切れず、笑い声を零すカナ。萎んでいた尻尾が、今はおれの足元で元気に動いている。うん、カナは笑った顔が・・・。 結局カナを皮切りにみんなが笑い出す。ああ、やっぱり店長は、凄い人だ。 「さて、一応怪我人相手じゃ。余り騒がしくては身体に響くでの」 「あけかぜさん。あの、ありがとうございました」 「なに」子供みたいに小さな手が、おれの髪の毛くしゃくしゃとやる。 「これも縁じゃ」屈託の無い彼女の笑顔。それを見守る男の人の優しい表情。きっと、凄く仲が良いんだろうな。 「そういえば、ここは」凄く今更な質問だけど、ほら、なんか聞くに聞けなくて。 「わっちの城にゃ!」レダが踏ん反り返って鼻を鳴らした。 「こいつの、まぁ簡単に言うとお店かな?レダはここの店長」ココの何か秘密にした表情が気になるけど・・・ 「店長!レダすごいじゃないかっ、えらかったんだな!」真剣に感心してしまった。 「ま、真面目に褒められるとてれるにゃ」尻尾をうねうねさせたレダが続ける。 「今はただの空き部屋だから存分に使うといいにゃ。元々ここは来客の、その・・・」 あれ?レダの様子が・・・真っ赤だ。 「女の子に何て事説明させるにゃっ!!」 この変態!と付け加えたレダは走り去ってしまった。と、とにかくありがとう。
それからしばらく、おれは三人と久々の会話を楽しんだ。店の近況やマーゼルが手酷くフラれた事、雑貨屋の再開。店長が新しく拾ったCDの事を話そうとした瞬間ココに「つまんないからいいよ」とへし折られた時、思わず二人の中を勘繰ってしまった。 「さって、お父さん帰るよ」 そっか、少し寂しい気持ちもあるけど、お店があるもんな。 「嫌だ!お父さん息子の様子が心配すぎて働けない!働きたくない休みたい!」 それは店長の願望じゃないかと心の中で突っ込んでおく。あれ?なんか今凄く照れ臭い事を言われた様な。 「甘えるんじゃねー!それに」 ココが店長に耳打ち。正座しながら話を聞く牛の姿は、正直面白い。 「あー!はんはんはん何!?わぁお、ウシシシシ」 店長狙ってる。絶対狙ってる。 「成る程。ではココナート、私達は帰宅を」 「そうねお父さん」 二人同時の輝く笑顔、怪しいなぁ。 「あ、じゃあ私も」 「いやいやいやいや違うだろ!」 立ち上がろうとしたカナを制止する白い指と蹄、タイミングも腰に手を当てるポーズも全て一致。今、おれは奇跡を目前にしている。 「でも」 当然の様にうろたえるカナをサンドイッチした二人が同時に耳打ち。 「ごにょごにょごにょ」 「!」 「ぺらぺらぺらぺら」 「!!」 見る見る内に赤くなるカナ。その表情は前髪が掛かって見えないけど、肩越しに主張する尻尾はぴんぴんになっている。 「でも」 泣きそうなカナ。 「大丈夫!」踊る蹄 「勇気を!」踊る猫耳 薄っぺらいガッツポーズを取る親子。 「・・・・・・頑張って、みる!」 まるでこれから戦場へ向かう女の子の表情をするカナ。嘘、伝染してる? 一仕事終えた様な顔で部屋から出ていく二人が漏らした赤飯だとか犯罪レベルのショタコンだとかの言葉の意味が解らないのは、きっとおれが孤児だからだろう・・・・・・。
603 :
名無しさん@ピンキー :2010/09/25(土) 11:58:39 ID:PM79ycON
乱入すんません!次、ラストです。 本当長々とお邪魔しました。
直接投下おつ! ただ、もうちょっと改行を上手く入れて欲しいっす ラストに期待!
乙乙! 牛の正座見てみたいw
606 :
規制狐 :2010/09/29(水) 00:56:22 ID:Sugn4hm+
>>606 やるじゃないかカイト!かなり見直したよ。
あと、銃火器の戦闘シーンが面白かった。
ぶっちゃけ、自分の原稿よりおもしれぇしw
>>606 ありがとうございます!まさかこんな事してくれるとは・・・素直に嬉しいです!朱風さんにかいぐられるアキラが羨ましくなって死亡フラグ立てたくなりましたww
>>599 牛のお父さんに萌えた。何これ可愛い。
ていうかこの親子がいいwww
アキラ君はようやく幸せになれそうで何より。
続きを楽しみに待っています。
>>606 クロスオーバーが上手いなあ。
アキラ君側の視点と矛盾なく活躍させておいて、フォローも入れてる。
単体として見ても銃火器相手に戦うシーンとか角の扱いとか、いかにもな説得力があったのがいい。
そしてラストに吹く。
クライマックスフォームになるレベルの気の合い方w
二人とも乙乙。
楽しませてもらいました。
ハロウィンですねっと。黒とオレンジのストライプを妄想しつつ仕事してみる。
早い、早いよ!(ネタ振りが) まあ乗るけどねw ハロウィンと言えば仮装、つまりはコスプレ。 と言うわけで【テーマ:コスプレ】とかどうですかね、書き手の皆さん。
しっと団の皆さんがアップを始めたようです
見える、見えるぜ 襲い掛かったしっと団を壊滅させる女装主人公軍団が 女装もコスプレだと思うって言ったら変な目で見られた (´・ω・`)
ハロウィンだぜー!俺ハロウィンの服大好きだーイエアー!! 「え?何この服」 「ハロウィーンだよコーディー。小熊運輸ではー、毎年この季節には女の子がコスプレでお菓子配るんだよーみんなー。素敵だねーいやらしいねー」 だ、誰に言ってるのよアマシュう。 「ご主人様空気読んでよ。ただでさえエロ無しで用無しポワール状態なんだし」 ・・・・ 「「行ってらっしゃい☆」」 「ウォルターさんのお宅ですかー!?とりっくおあとりーと!とりっくおあとりーと!お菓子貰わないと食っちまうぞ!」 「ありがとう。しかし年頃の女性がその口調は如何な物か、だいたいうちの生徒もそうだが近頃の・・・」 ・・・・・・。 「ママー!ロリ金髪が犬に説教されてるー。きっとお仕事出来ない猫なんだねー?」 「見ちゃいけません!」 「ココナートさんのお宅ですかー!?とりっくおあとりーと!とりっくおあとりーと!お菓子貰わないと食っちまうぞ!」 「ありがとうございます。ねーねアキラ君チョコのケーキだよ?これ美味しいんだよねー」 「おれはカナメのケーキのがすきだ」 「アキラ君・・・ぎゅー!」 ・・・・・・。 「朱風さんのお宅ですかー!?r」 「何の用だ。朱風なら居ない」 「あら良い男。なんなら私を食べてみない?」 「シッ!」 「げふぁああ!尻尾はだめぇぇぇ!」 「ガエスタルさんのお宅r」 「うわーすごーいわいばーんだー!」 「ちょ、何このロリネズミ!お姉ちゃんと夜の謝肉祭してみない?ってそのロープで遊んじゃっ、あー!メルカバが荷物を置いて急速上昇ああ、ぁぁ、ぶるaaaaaaaaaa!!」 皆さんごめんなさいでした・・・
>>614 おお、皆さんお揃いで乙!
何故か少女の突っ込みに吹いたw
そしてアキラ、おまいはちょっとこっちに来い(パキッ、ポキッ)
本日未明、路地裏でズタボロの615が発見されました。 警察が事情を聞こうとしたところ「メイドさんが、謎のメイドさんが…」と恐怖に震えながら呟くだけだったため、容疑者の絞込みに難航している模様です。 この町では最近犯罪組織がメイドによって壊滅させられるという事件が発生しており、今回の事件においても関連が疑われています。
ちょw アキラに手を出すと粛清されるのかw というか何やってるんですかカ○トさんw
618 :
鋼の山脈 :2010/10/18(月) 00:53:40 ID:EVj1KUSh
おつー やっと到着か。
>>618 おお新作来てた!拾われた兎と三日月兎繋がって来たりすんのかな、楽しみだ!
凍月の続き・・・ないよなぁ
よし、五人以上から名前があがった作品はハロウィンの魔法で続きが読めることになりました …………万獣ェ……
狗国見聞録
獅子国伝奇 ミコトー俺だー!結婚しtうわ、ちょ、フェイレンさん何をすr・・・アッー!!
こちむい。 過去編とかどうなりましたかマジで
羊と犬とタイプライター
ばらばらじゃないかww やけがいもっとみたいのぉ!
不憫な旦那のバッドトリップをもっと見たいっす 偽羊に一票
獅子国伝奇 お願いです 続きを!
こちむい。たまに見直すたびに驚きの面白さ。
ツキノワ 薄幸OLさんとおっさんクマが大好きだった……。今も……。
シャコ嫁ェ・・・
ここまでがっくんとキヨカなし
狐分が… て言うか本当に皆好みがバラバラだな! 逆に言えばどんだけ間口が広いんだこのスレw 種族バラけ過ぎだろw
書けるかな? 上に名前が上がってるのも好きだし、数え出したらキリが無い位みんな好きな話ばかりだし イノシシの国、無垢と未熟と計画と、山羊と唄歌い、鋼の山脈、夜明けのジャガー 放浪女王と銀輪の従者、やけ買いなんかするもんじゃない、が今のマイブーム iPhoneに転送して暇な時間が出来た時にちょびちょび読み続けてる
好みがバラバラじゃねえか!
こちむいと見聞録と万獣の続きが読めたら本気出す。
ハロウィンは過ぎてしまったな…… クリスマスの準備でもするか。
……その、獅子国はこっそりと書いてます。 気がつきゃ一年以上投下してないけどw 以上、生存報告。
なん・・・だと・・・? あの物語の続きが・・・ミコトの○○な○○○○○が読めると言うのか!?
書き手は書きたいものを書く 読み手は読みたいものを読む
誤爆すまん
>>640 よし、俺の未来はバラ色に変わった。
これで年末、正月コンボに立ち向かえるぜ。
作者様の生存確認ができただけで満足な俺がいる
ここまで自作無し。 よし、心置きなく放置できるw
続きでなくてもいい、何か、何か新作ををを
これは、ネコの国の都からちょっと離れた小さな街の物語.... 「今日も良い天気だ!」 勢い良く開いたカーテンの向こうには空高く登って輝く太陽。やたら眩しいのはきっと気のせいだ。 昨日の夜も3時まで営業していた酒場のカウンターには、空いたグラスとか瓶が放置されている。 これを片付けるのは全部僕の仕事。多分まだご主人様は起きてこない。 「よっこいしょ」 椅子に登ってそっと割らない様に集めては流しへと運び込む。 出来るだけ音を立てないように、ちょっとだけ時間減速魔法を使うのは最近気が付いた便利な裏技だ。 試しに使った時はご主人様も驚いたけど、でも僕の正体を知っちゃうと、何も言わなくなった。 あ、そうそう。自己紹介がまだでした。 僕はメグス。フルネームはメンドクサイから省略ね。 魔界でも有名なメフィスト13世記念大学の付属学校で優秀生徒クラスに居たんだよ。 ちょっとだけ自慢してゴメン。 天使と闘う授業の真っ最中に空気読めない天使がおばかな大技使ったらゲートが開いちゃってさ。 気が付いたらここに来てたってわけ。こう見えてもまだ200歳だから子供なんだ。 なんかご主人様が言うには8歳くらいにしか見えないらしいけどね。 そんな訳で僕はご主人様に拾われたって事になってる。 一応ね。知らない世界に飛ばされて世話をしてもらったから、まぁ、しばらく居ても良いかなって思ってるんだけど。 でも、パパもママも心配してるだろうなぁって最近思うんだ。僕、これでも跡取りだから。 実は結構名家なんだって自慢したいんだけど、誰も価値をわかってくれなくてさぁ それが最近悩みの種かな。 あ、なんか気色悪い不細工なネコのおばちゃんとかおねーちゃんが営業時間に言い寄ってくるのも困ってる。 男日照りで日干しカラカラだからってさ、未成年の男の子に欲情立つのって変態だよね。変態。 僕の家に時々遊びに来てた淫魔のおねーちゃん達も、あいつらは手に負えない真性だって言ってたし。 やっぱ男と女が絡み合ってるところに介入してオドを吸い取るのが良いんだけどさぁとか言われると、あの業界も大変なんだなって思うよ。 まぁ人の好みは好き好きだからあんまり言わないけど、でも営業時間中にいきなり僕のズボン下ろすのはやめて欲しいよ。 このあいだなんかビックリして咄嗟に彫像の呪文使っちゃってさ。 僕まだこの魔法の解き方知らないんだ。 気色悪いにやけ顔で僕のおちんちんを弄ってたこのドブスがさ、このまま石になってるんだ。 重いから店から出すわけにもいかないし、邪魔だよねぇ。 いっそトンカチで壊しちゃおうかって思ってるんだ。 そのまま河原にでも捨てておけば、この邪魔なブス猫のお尻も漬物石位にはなるかも知れないし。 「ふぅ」 やっとグラスを洗い終わったぞ! 今度は空き瓶を片付けて....と。 前に一度だけ空き瓶に使い魔の魔法を仕込んだたらご主人様がビックリしちゃってさ。 それ以来やってないんだ。あのほうが簡単なんだけどねぇ。 瓶を片付けたらお店の中を掃除して、カウンターを水で拭いて終り。 さて、今日はご主人様何作ってくれるかな? 早く起きてこないかなぁ 昨日の夜はたっぷりと魔界の魔素をご主人様に注いであげたから、まだ起きてこないかなぁ そのうち僕無しじゃ生きていけなくなるよ。禁断症状で。 だって僕は悪魔だもん。手ぶらじゃ家に帰れないよ。 きっとご主人様はうちの家の使い魔と仲良くなれるよ。 みんなヒトの世界から連れてったのばかりだからさ。 楽しみだなー パパもママも褒めてくれるかなー あ、なんか2階がゴソゴソいってる。 時間転移の魔法も使っておいたから、目が覚めてからまた昨日の夜と同じ快感を2時間近く味わってイキっぱなしだね。 ご主人様。早く慣れてね♪ あー今日も良い天気だ。 多分きっと続かないw
おお、新作来てた乙! 読んでて、魔族繋がりでセリスくんと一緒にお互いのご主人様をハメ合ってる姿が脳裏に(爆)w
>>648 中々書き込めなくて何もいえなかったけどありがとー。
続き読みたいよ(ぇ
>>649 そこでハメ合ってるとか書かれて変な想像をしてしまった自分は大分毒されていると思うんだがどうよw
さて性夜ネタで小ネタを書き始めるかな・・・
651 :
名無しさん@ピンキー :2010/11/18(木) 19:05:42 ID:2lZqBYri
【社会】 「日本人はアニメ好きなので売れる」 "猫耳少女"抱き枕カバーを販売目的所持の中国人学生、逮捕…東京
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1290051380/ ・無断でイラスト「猫耳少女」を使用した抱き枕カバーを販売目的で所持していたとして、
警視庁万世橋署は著作権法違反の現行犯で、中国籍で東京都台東区清川、専門学校生、
許学良容疑者(25)を逮捕、東京地検に18日、送検した。
同署によると、許容疑者の自宅からは約400枚の少女キャラクター入り抱き枕カバーなどが
押収された。許容疑者は「(枕カバーは)中国からインターネットを通じて仕入れ、10月から
ネットで1枚1990円で約200枚売った。日本人はアニメ好きなので売れると思った」と
供述しているという。
つまりご主人様の抱き枕を売りさばく奴隷と
がっくんやぞうきんの抱き枕だと?
マナ様マクラはだんだん使用者が衰弱していきそうだ。
ぜひアカブお母さん抱き枕をですね…と思って アカブの名前でググったら…なるほど。
抱き枕より肉球枕と尻尾枕を切望する次第 抱き枕と聞くと真っ先に2階のベランダで干されている映像が脳裏に浮かぶのは何故だw
「抱き枕」と名札をつけた黒いオスウサギが ベランダで干されてる姿が脳内再生されたがなんともないぜ。
何故そんな事になったのかすらなんとなく分かってしまうな 問題は誰がターゲットだったかだ
そういえば来年はうさぎ年だな
おやつおいしいですもぐもぐ
誰か甘い物流すのに水をくれー
皆、水を探しに出掛けているみたいです のどパサパサの状態で、もう少し待ってみては?w
水ってことは、あまくないのか? すっきりしててこくがなく、すきっ腹を誤魔化してくれるけど なにも身にならないノンカロリーがいいのか?
それで、お願い、します もう、喉が、保ちません・・・・・・orz
世界は不思議でいっぱいだなあ……
ハリモグラの大男の上で腰を振る、4人のヒト少女・・・・・・ 想像したけどちょっと無理があるか
……畜生、一ヶ月も前にストーリーの展開は完成してるのに書く時間だけがとれねえ…… 休日ぐらい俺に自由な時間をくれ……。
俺、
>>670 の日は書き込んでいないはずなんだが…
ドッペルゲンガーか?
あらすじも終わり方も全部頭の中で出来上がってるんだけど、書く時間にも不自由してないんだけど つか、それで何も困ってないし、まずいってすら思ってない どこ行ってしまったんだ俺のパッション状態なうw
おいらも絶賛放置中なうw つか、もういいよね?状態
『南の島の黒いカップル』を連想したら、こんなものが書けました まあへたれな文章ですが、生暖かい目で見てやってくださいな そういや、これちゃんとオチてたかな?
月明かりがいつもより綺麗な夜だった。 突如訪れた絶頂感に身体をうち震わせ、俺は彼女の体内に己の欲望の権化を解き放った。 向かい座りの格好で繋がったまま、心地好い愉悦の余韻に浸っていると、彼女が俺の首筋に顔を押し宛ててきた。 「どうした?」 黒い獣毛に覆われた腰に腕を回すと、雇い主は静かに息を吐いた。 「不思議だな、と思って」 「何が?」 「最初は仲良くしようとも思わなかったのに。それが仕事が終わる今頃になって、こんな関係にまで発展するなんて・・・・・・正直、予想も出来なかったから」 右肩から左脇腹にかけて、胸元を斜めに走る巨大な傷痕。その太い線を、黒く細い指で這うようになぞられる。 「確かに、最初の頃は仲悪かったもんな」 当時を思い浮かべ、俺は軽く相槌を打った。 今回の仕事は、衝突の繰り返しから始まったようなものだった。事ある毎に反発しあい、一時は決裂寸前まで行ったこともあった。 それでも幾多の危険を潜り抜け、互いに助け合って困難をはね除けてきた。 植物学者のクロヒョウと、用心棒のセーブルアンテロープ。 全く接点の無かった俺達の距離は、いつの間にか手が届く位にまで縮まっていた。
「なるほど、護衛との別れがそんなにつらいのか」 「そ、そんなことないけど・・・・・・!」 「そう言うわりには顔が真っ赤だぜ?」 「え!?」 慌てて自分の獣顔に手を宛てる。その愛嬌ある仕草に、思わず吹き出した。 「冗談だ。真っ黒な顔してるのに、真っ赤かどうかなんて分かるわけないだろ」 「っ・・・・・・馬鹿にしないでよ、もう!」 「くっく、ほんとからかい甲斐のある奴だな」 ケダマ特有のしなやかな身体を抱いてベッドに押し倒し、有無を言わせず口を重ねあわせる。 ザラリとした舌を絡ませ合い、口内を蹂躙しつつ互いの唾液を交わらせる。 「ん・・・・・・ねえバライル、いつまでこっちにいられるの?」 「10日後の豊穣祭、までだ。仕事の契約が切れ次第、扇の大陸に戻る約束だったからな」 「それ、もう少し延ばせない?」 「もう少しって、どのくらいだ?」 「あと150年位」 肩から一気に力が抜けた。 「あ、あのなぁ・・・・・・」 「駄目?」 「当たり前だ! 俺に失職しろっつってんのと同じだぞ?」 「そしたら、私がボディーガードとして一生雇ってあげる。それで良いでしょ?」 「そういう問題じゃ」 「そう・・・・・・なら、バライルは私を初めて女にした責任は取れない、って言うのね?」 「ちょっと待て、それとこれとは話が」 彼女の相眸に涙が浮かび上がる。俺が女の涙に弱いことを知ってか、この半泣きの手をよく使ってくる。 「だあぁもう、分かった、分かったから泣くな!」 それでも本当に泣かれるとすごく困る。 嘘泣きだと分かっていても、結局は俺から折れる羽目になる。 「明日、本業のボスと相談するから。それで良いだろ?」 「うん」 ニコリと微笑んだ彼女の瞳には、もう涙の欠片も残っていなかった。 この感情の切替の速さに、俺は毎回精神的に振り回されているのだ。
「ねえ」 「今度は何だ?」 「なんで、私の事好きになったの?」 後ろに大きく反った角を優しく撫でられる。弾力のある肉球が触れて妙にくすぐったい。 「・・・・・・気が強くて肉付きの良い女が好みだから」 「それだけ?」 「でなきゃケダマ女と一緒に寝たりするかよ」 「なっ!」 黒い鼻先を指で突いてやると、ひどいと言わんばかりに睨み付けてきた。 「で、お前はどうなんだよ。こんな巨漢の俺のどこが気に入ったんだ?」 「教えるわけないでしょ!」 いじけたのか、そっぽを向いて目を合わせようともしない。冗談の通じない奴だ。 「そうか、なら力ずくで聞き出すまでだな、ユファ嬢」 「ひあう!」 腹いせに腰を曲げて突き込んでやると、見た目とは不釣り合いな可愛い声で啼いた。 結合部の隙間から溢れ出す白濁液が、潤滑油となって動きを滑らかにし、更なる快感を生みだす。 「だ、ダメよ、ずるいぃ!」 「へっ、言っとくけどな、俺の責めに耐えられないような奴に、そう簡単に雇われる気はないぜ?」 「ふぐ、ぅ、い、意地悪ぅ!」 打ち寄せる快感の波にユファ自ら腰を振り、顔をしかめて喘ぐ。 その悶える姿が、俺の内に眠る野獣の魂に火を点けた。 「っ、ユファ」 「なに、ぃ?」 「ぐぅ・・・・・・今夜は、眠らせねえからな」 半ばまで引き抜いた巨塊を一際強く挿し込むと、ユファが身体を仰け反らせて悲鳴を上げた。 内からせり上がってくる感覚に幸福を感じながら、俺達の濃密な夜はあっという間に更けていった。
投下終了しますた う〜ん、エロと言うにはおこがましい出来です(笑) 物語背景はガン無視 あと、ケダマ×男だってこと、普通に告知し忘れました すんません(・ω・`)
気付いたら クリスマスまで あと10日 投稿前の 嵐の静けさ
『クリスマス中止のお知らせ』 「なんだコレ」 「どうしたよ」 「いや、校門に貼紙がしてあってさ」 「どれどれ、って恒例のネタかよ。流しとけ流しとけ」 「ちょっと右下見てみろ」 「ん? ・・・なんだよこの『教頭承認印』って」 作者さんたちも皆きっとこんな事態になっちゃってるんだよ
とりあえずエロの直前まで書けた。 ……さて、ここからが大変なんだよな……。 え、クリスマス? すでに残業確定ですよorz 何とか年末年始には…… ていうか年末までには投下しなけりゃ、今年の投下本数ゼロになってしまうorz
682 :
めりくり :2010/12/21(火) 01:54:27 ID:SRz4L71n
フライングッジョブ! 陰で頑張るライカさんに、全俺が惚れた もっとご主人様を『色々な意味』で大切にしなきゃだめだぜ、ヨーw そして、幸薄い俺にも何か形あるプレゼントをくださ(ry
684 :
名無しさん@ピンキー :2010/12/27(月) 22:58:48 ID:vRjeW0TV
ライカさんみたいな犬がほしいよw ヨーももっと素直にかわいがったれや
素朴な疑問なんだけどウサギとヤギってどっちが変態なの?
686 :
sage :2010/12/29(水) 02:30:16 ID:0FW5zXiG
すみませんまちがえた・・・
た、探偵ものだとばっかり思っていたのに・・・・・・ しかも、不覚にもムスコがおっ起してしまった GJ!
>>686 せんせいとチヨコさんお久しぶり。
パックスさんがいろいろ可愛くて困るw
爆乙! 年内に続きが読めて本当に良かった(泣) 来年も続き待ってるぞ〜!
パックスさんは、くろいウサギに耐えられるのか・・・すげぇな。 そしてコウゼンさん、頑張れ超頑張れ。
鋼キテタ〜 豊富な文量と濃厚な内容でお腹一杯にさせてくれたぜ 今からウサギ達の動k・・・いや、性向が気になってしょうがないから、2011年も4649!
694 :
sage :2011/01/01(土) 00:50:36 ID:d2R2337/
おめでとうございます。 正月ネタを投下したかったけど無理でしたわ。 三が日中には出したい
あけましておめでとうございます。 今年はスレの再活性の足しになるよう、去年よりも投下本数増やしたいと思います。 ……増やすも何も、去年は年末ギリギリに一本だけじゃねえかとか言われそうですが。
696 :
名無しさん@ピンキー :2011/01/01(土) 02:05:40 ID:GUGT/CQK
あけましておめでとうございます。 物語冒頭をポイと置いて行っただけの去年とはちがう年にしたいと息だけは巻いております。 こちむいスレとこちむい世界に幸あれ!!!
謹賀新年 本年もよろしくお願いいたします 今年こそ書きなぐったままの断片を繋ぎ合わせて、 物語を終わりにしようと思います。 犬
そういえば、今年の干支はヤツらなんだな・・・
ウサギの純愛ものとか書いてみたいんだけど、なんかウサギはすっかり変態だし それに、なんかスレ的にはエロいの最優先な気がしてハードル高いっす
純愛とどエロは矛盾しない
でも、兎的常識から行くと純愛でも 他種族から見るとほぼマジキチレベルはありうるw
ヒトに紳士がいるように、ウサギにも異端児がいたっていいんじゃなイカ?
全盲のスナイパーとか?w でも、ウサさんは寂しいと死んじゃうんだぜ?
孤独を愛するスナフキンみたいなウサギとか 対人恐怖症で女性恐怖症な♂ウサギとか DV被害者で男性恐怖症になった♀ウサギとか
ウサギは心療内科、精神科系がすごく発達してるから そこまで悪化するまでに簡単に治っちゃいそう 個性としてわざと残してるとかそういう方向性?
症状発生 ↓ 病院に行くも、担当の先生の毒牙にかかる ↓ 症状悪化で別の病院へ ↓ そこでも担当の先生の毒牙に(略 ↓ 症状悪化し、また別の病院へ ↓ さらにそこの担当の(略 という無限連鎖にはまり、最終的に手の施しようがなくなってしまう そんなウサギさんが千人に一人位はいると思うんだよね、うん
お隣の国じゃレイプの被害者が担ぎこまれた医者にセカンドレイプされたって事件が山ほどあるらしいけど なんかウサギさんの場合だと治療行為=房事的な意味がありそうな気もするんだよなぁ どこぞの黒ウサギなお医者さんとかw
つまり医者撲殺事件が発生して、犬猫の探偵達が推理をせずに助手を自慢しあい 観光旅行に来た嫉妬深い狐が無駄に嫉妬し、大手衣料商御一行がコタツで七並べをしている最中 イヌの護衛を連れたフードの女が甘味屋を制覇し、三毛猫の医者の患者が増え、 カギ尻尾の猫夫婦がイチャイチャし、狼の先生と天才ネズミっこの助手君は気苦労し 第一発見者の運送業者が猫のお姫様達にエロ尋問され、 悪趣味な羊が一部始終を書籍化すると。
うむ。朝からモフモフしててたいへん宜しい。 ウサギの神殿の御神体って、やっぱ事の最中なんだろうか?w そしてケダマ!
交わりたまえ さすれば汝は救われたり なんか卑猥な石像が目に浮かぶようだ
まあ日本にもその類の御神体とか仏様とかあるしな ヒンドゥー教なんか最高神のうちの一柱の象徴がアレだしw ウサギの場合は逆に大人しいんじゃないかと思えてきた
出だしでちょっと期待してしまったじゃないか 全く以てラブラブでけしからんなあんた達は
寒いのでご主人様をモフモフしたい季節ですね
「お前寒いんだろ?」 「え?」 「寒いよな?」 「え、ま、まぁ…」 「暖めてやる」 と言って召使に抱きつくケダマを幻視した 誰かよろしく
他力本願よくない
書け、書くんだ
>>715 !
と、ここにも他力本願な俺がいるw
ケダマのお姉さんが 「あたためておいたわ」 とベッドに入って待っててくださる、冬 「アンタに凍死されたら大損だわ!」 とかけぶとんのごとくのしかかるケダマ様と過ごす、冬 ああ、ここはさむいなぁ…
待ってて もうすぐ・・・ もうすぐケダマのお姉さんが温めに行ってあげるからね・・・
>>720 ニヤニヤしてエロエロして最後にまたニヤニヤした
「お前」の経験豊富っぷりも半端ないけど、ご主人様の毛皮の下のケダモノも半端ない
寒かったけど滾って温まったよ
素晴らしいものをありがとう!電波GJ!
>>720 にやにやした。すごいにやにやした。超GJ!
>>720 やばいよやばいよすげーすげー
もうこれすげーしか言えない体になっちゃったよどうすんの
乙&GJ!!
素晴らしい電波じゃないか
>>720 にやけて読まずにはいられなかった
乙です!
>>720 いいよいいよ〜
んで、続きは?
当然書くよな?な?な?
>>720 GJ!
で、次は温泉に行く話だよな?期待して待ってる
おお…正しくケモエロ! ケモエロ!
729 :
720 :2011/01/20(木) 17:53:47 ID:H1BAJrQw
保管庫の編集が終わっているじゃありませんか。 やってくださった方、お疲れ様でした。ありがとうございます。 さて、720ですがまさかこんなに楽しんでいただけるとは思いもしませんでした。 びっくりです。 読切の予定がうっかり温泉編のプロットを立ててしまいそうな嬉しさなのですが、 奥さんに「調子に乗るのも大概になさいませ」としばかれそうなので予定は未定です。 こちむいスレは懐が深くてあったかいよ! 皆さん、ありがとうございました!
二人ともかーわーいーいー ライカさん、狼半分てウソだろあんた子犬だろw そしてヨーはなんてわるいヒトなんだww 大変にやにやさせていただきました。GJ!
保管庫整理ありがとうございました! 改めて見ると、短編SSってこんなにうpされてたのか
保管庫編集してくれたヒトには ご主人様を尻尾攻めする権利をやろう
「そうか」 「え、ちょ、わし関係な・・・アッー!」 最近尻尾攻めと聞くとこの主従が脳内でイチャついてくのでどうにかしてくれませんでしょうか
>>733 なら俺は攻めた後で逆襲される権利をそっと脇に添えておこう。
改めまして保管庫編集ありがとうございました!
はやとちり恥ずかしいです。
改めて保管庫を見返すと短編長編とんでもない量の作品があって、全部読むのは至難ですね。
すごいよこのスレ。
皆さんは今までの作品で心に残る名シーンとか、爆笑した珍シーンとかありますか?
車輪の唄を口ずさむサトル@銀輪従者 キヨカとガエスタルのすれ違い@太陽と月と星 掠れた声でにゃあと言うカギ尻尾@やけ買い 世界が変わる/世界へ落ちる瞬間@Sky Forever 戦闘描写@鋼の山脈 ……多すぎて挙げ切れねえよッ!ただのROMだけどひと通り好きだよこちむい世界!!
同じくRom専 以前読んだ獅子国の話で市場でミコトにフェイレンが 髪飾りを買ってあげるくだりでの店のおっさんとの丁々発止の会話部分が好き 本筋とは関係無い部分なんだけど、何故か凄く印象に残ってる
可笑しかったのは2つ 1つは、こちむい世界に2ちゃんが〜 読み進めるうちに、にやけ顔が止まらなくなった 嫁乙 もう1つは、放浪女王と銀輪の〜 船上でのサトルの言葉攻めの部分がツボにはまった 「生肉の・・・・・・」 に続く言葉、何なんだろうw
>>736-738 メモメモ。
まずは銀輪読んでないとかありえないっぽいから今から読んでくるよ。
名シーン
「太陽と月と星がある」のキヨちゃんが花束貰って喜んでるシーンにやられました。
パソコンの前で悶えたのはあれが初めて。
銀輪を久々に読み直したら、旨いラーメンが食べたくなった
ひゃっほうロダに新作来てる! 新婚さん万歳! 末長くお幸せに! 最近みんなラブラブだなあ バレンタインは夜道に気をつけろよ
新婚さん嫁が攻めだな!問題ない。 梅かと思ったら、桃かー
一月がすぎたと思ったら、今度は旧正月か こちむい世界的には旧正月の方を賑やかに祝いそうだ
ドSwww
ヨー、何かがほとばしってるねww きっとずっと色々したかったんだな。この変態がww
設定Wiki消えた?
>>727 ざっと見てみたけど消えてるページなんかはなさそうだよ。
すまん。うちだけか。
>>749 ごめん勘違いしてた。@wikiじゃなくて設定wikiな。消えてるね…
資料サルベージ本当お疲れ様です!寝る前に見て眠気消えてしまうww そして鋼新作kt いっつも続きの気になる終わり・・・得物は何を使うのか楽しみ過ぎる、乙でした
グィンガム先生カッケーっwwwwww 各所で吹いたwww
グィンガム先生のクールさに惚れた がっくんて常識的に見たらそういう風に見えてるんだなあww
何故か先生の声がロジャー・スミスで再生された。 素晴らしい。
がっくんが時々ぼそっとのろけて、それを聞かされた先生は どす黒いものを抱え帰宅して、ユキカちゃんに怯えられてそう。
ほしゅ
街の雰囲気が二分されているのが判る。一つはきっとバッグにチョコレートを忍ばせ歩く女の子達と、その手を握る男の子達の優しい、そして少し焦らされる様な幸せな空気。 もう一つは、それを見ながらどす黒い感情に身をやつす暗澹とした空気。 私? 私はもちろん。 「後者に決まってるでしょ全く」 「ココ誰に言ってんの気持ち悪い」 「うるさいわよコーディ。そんなだから胸がいつまでも小さな妖精なのよ?」 「ココの生意気なおっぱいも持ち腐れだけどね」 喫煙所でろくでもない会話をする私達。でもその胸中には共通の理想が掲げられている。 バレンタイン粉砕作戦。 恋愛にさえ多様化を見せる現代社会において、片やすぐそばに可愛らしい少年兵が居ても唾すら付けられない女。片や仲間の一人が明らかにフラグ建ててんのに続編も出ずキスすらしていない幼女操竜師。 私達を嫉妬団に加入させるのは、ロリ狐が鈍感強拳男をホイホイするよりはるかに簡単だった。 大学の校舎から怒声と共に煙りが上がる。 それは開演の狼煙。 よし。 「行こうか淑女諸君。我々の恐ろしさを奴らの目に焼き付けろ」 「焼き付ける前に股間から聞こえる振動音何とかしようぜ」 水注さないでよコーディ。ん? 「あーなんかお尻が切ないと思ったよ朝使って忘れてたワ」 「ココ、それバカになってるんじゃ・・・」 街は既に戦場と化している。死屍累々と言った感じだ・・・まぁ主に紙袋が。 「オープンファイア!新婚子連れのトカゲ野郎を始末しろ!」 「無理です!半分は凍り付けにされてもう半分はネズミの幼女に釘付けです!」 「だからロリコン部隊は嫌だったんだよおお!うわでも可愛いかもハァハァ」 「ファッキンダァイ!畜生隊長の隊長が暴発しちまった!」 「ガキの手に渡る瞬間を狙え。狐の女には当てるな?チョコレートを焼き尽くせ」 「照準は完璧です。さぁ早くバッグから獲物を出すんだ」 「・・・てゆーか早く出せし!ああ焦れるな!何やってんだ、頑張れ、頑張れ!」 「チョコレート渡りました!あの女やりやがった!全班聞け!小包は無事ガキの手に渡った!」 「「「イエーア!!今日のハイライトだぜ!」」」 「あの男、下手すりゃロリ狐と賭博場の女頭目合わせて二人分のチョコを貰う事になるぞ?確実に撃滅しろ」 「ターゲットが二人と接触」 「魔法陣を展開!しかし・・・なんか良いよな、三人で仲良くしてさ?恋人未満と明るい女の子の三人グループ。なんか、良いよな?」 「それを今から壊すとか、なんかキツイよな俺達。つかなんか引くよね、リアルに」 「俺幼なじみの女の子居るんだけどこの前結婚してさ?やっと告白して無事付き合って、俺まで嬉しかったよ」 「「「くそ、目からおしるこ」」」
とまぁこんな具合だ。しかし私達を止める事は出来ない、撃ち出された魔法は進むしかないのよ! 「はぁいお兄さん。彼女を待ってるの?そう・・・私と少し遊ばない?」 (この日のために入手したエロかっこいいスーツとあまーいシャンプーの香に酔いしれろ!後はモーテルにホイホイされた瞬間こいつの彼女と紙袋が現れて、救いのヒーロー見参!てめぇの顔も見飽きたぜ。となる算段だ。フフ、完璧過ぎる) 「うわ今時この誘い方は痛い、痛いわぁキス○ィス先生のコスプレか?」 「あん残念な目で見ないでジュンジュンしちゃう」 くそ失敗だと!?目からビームなんて出せないもん!そーいやコーディの様子は・・・。 「こら!小っちゃい子がこんな事しちゃいかんだろ!全く近頃の子供と来たら」 「私ゃ成猫してるっつの!胸か?この薄い胸で判断したのか?!」 「嘘を言っちゃいかん!!おじさんと一緒に警察に行くんだ!」 うわ普通に説教されてる、逃げよっと。 あーあ全然駄目だ、小っちゃい女の子に可哀相な目をされながら「寂しそうだからあげるね」って貰ったキスチョコが胸に刺さって苦しいぜ、チョコってしょっぱいんだね。祭も終わったみたいだし、紙袋に義理って帰るかくそ〜。 ん?何だこのタイミング・・・まぁ良いケヘヘヘヘ! おら今だ! 「いただ」 「甘い!」 見知った犬の首に腕を掛けた瞬間即座に反応、バイトは逆襲に出るが・・・。 「遅い!」 「ぐわっはぁ!」 間接を取られる前に私は体を入れ替えバイトの動きを奪うと一度そのコロッとした顔を壁に叩き付け、一気に引き倒した。 「悪くないわね。戦いの基本は格闘よ?武器に頼ってはいけない」 危なくもっと痛みをくれ!と言いそうになるのを我慢しながら、私はバイトを引きずって行った。
「ぐっ・・・此処は?確か俺はココナートさんに後から」 「ばぁぁっ!久しぶりねバイト君☆」 「うわあああぉあ夢で犯され今度は現実で!?」 「人を歩くR指定みたいに言わないでよ全く」 「こんな柱に縛り付けておいてさらっと言わないでくださいよ!」 「Mは縛り付けるもの、縛り付けられて気持ちいい。そうでしょ?」 「ネタがコアすぎますから!てか一体何の用ですか」 「ぷらぷらしてたからつい(笑)仕事は?」 「いや、まぁ終わってますけど」 やっぱりMだ。 「ふぅん」 「な、なんです?」 「これ上げる」 ハンドバッグから取り出すのは真っな赤な蝋燭。 「ひぃ痛くしないで!」 間違ったこれは入れる方だ!え〜っと、これこれ。 「はいっ。ハッピーバレンタイン」 ワインレッドの包み紙をシルバーのリボンで飾り付けた小さな箱。 一瞬ギョッとするバイトの表情。クレイモアでも仕掛けとくんだった。 「手作りって訳じゃないけど、良いブランドのやつよ?あげるわ。何時も構ってくれるし」 「クレイモアじゃないですね・・・本当に、俺が?」 「そっ」 小さな嘘。 一番送りたかったアイツは、私の親友から私が教えたレシピで、少し格好悪いチョコレートを貰って、私の知らない顔をして笑っていた。 とても幸せそうな顔で。 「あ」 消え入りそうな声でありがとうございます。そう言ったバイトは一度目線を絡ませ、跳ねる様に顔を伏せた。うぶいねぇ。 「で、味は?味」 「この状態で食べたら俺のプライドは死のドレスアップ」 からしブリーフなんて言わない。 「確かに・・・仕方ないにゃあ」 まさか自分で開ける事になるとはね。石畳と称された小さなチョコレートは、その一つ一つからお酒の良い香が仄かに漂っている。 「はいっ。あーん」 「ええ?」 「あーん?」 「・・・」 「あーん・・・もぐもぐもぐ、ごっくん」 「凄い恥ずかしいんですが」 「嬉しいくせに」
バレンタインに乗り遅れる〜イロイロ寸詰まりorz
テンション高ぇw 嫉妬団は裏切りがつきものだなww
嫉妬団ども、最終的に出刃亀集団になってないかw
ろだに来てた 虫系はまだまだ出てないのあるなぁ
どうでもいいけど猫の恋って春の季語なんだってさ
保守
ここの小説達が同人誌になればいいのに。絵師さんなんかついて。 落ちもの人まだら何でもありのイラスト集とか欲しいわー 四月になれば色々落ち着くから、そしたら頑張って何かするよー供給側へまわるんだい!
魔物娘が流行ってるから、追い風ではあるよね
続き書いてるけど、上げていいものなのか・・・悩む。こんな時だし・・・
こんなときだからこそ平常運行しようぜ。思いやるのは良いことだけど必要以上に萎縮するのは逆効果 俺は影響を免れたクチだから呑気なこと言ってられるだけかもしれんが、暗くて不安を煽るリアルのニュースで心を埋め尽くされるより、 ジャンル不問な楽しいフィクションを読んで見て明日を生きる活力を蓄えたいって人は居るよ。それこそ平時下でも。
いいのよ
こんなときこそ娯楽が重要だと思わないかい
ま、
>>768 しだいだけどね
私が彼と出会った時、彼はごみ捨て場の片隅で、鉄の塊を抱えながらうずくまっていた。そこら中土塗れ傷だらけで、呼び掛けにも応えない彼を私は夢中で引っ張り出し、その男の子が噂の"オチモノ"だと気付いたのは、治療のため見た事の無い服を剥ぎ取った時だった。 ココに彼をどうするか聞かれた時、一緒に暮らす。と、答えた理由は今も判らない。でも、満足気に笑う親友の顔はその答えを予期していたのかもしれない。 彼はアキラと言う名前だった。私が彼を意識し始めたのはいつからだろう?年相応の笑顔を見た時?私を呼び捨てに始めた時?傷だらけで帰って来た時?身長が私と同じくらいになった時? 実は、勢いでキスしてしまった時にはもう? も、もももももう!? カナ、かおがまっかだ。ぐあいわるいなら、かえったほうが。 ちち違うのこれは今から自分がアキラ君にする事を考えたらもう・・・え? 「わーごめん!違うの気にしないで大丈夫だ問題無い!」 キョトンとした表情でそうかと頷く彼と、訳の判らない事を言う私。ああもう最悪だ・・・。 が!しかしだ!今日の私はここで折れないのです! ココ曰く、虎穴に居なずんば虎子を得ず。 相手が鈍感なら、谷間丸見えにして、首筋に舌這わせて、襲わせちゃえば良いじゃないっ☆ ココは何時も、決断力あるなぁ・・・。 「どうしたんだカナ、ボタンなんか外して、あついのか?」 「ううううん!ほら、この部屋さ、暖気の魔法が掛けられてるからっ」 本当は君の視線を奪うため。何て事は口が裂けても言えないよ! 「でも、ゆびふるえてる」 「え?!いやこれは緊張し」 「かぜじゃないか?」 私が座っている彼の足元が布団越しに動くのが解り、制止する前には、手を包みこまれる。想像より強い力で、だけど優しく引き寄せられ、おでこが重なる。 うわうわわわっ、近いよ顔が近いよ! 「カナすごいあついよ!」 そりゃ、熱くもなるよ・・・。え?待って待って、何で優しくほっぺたを触るの!? 「きず・・・うたれてたのか?」 キスかと思っ、何でも無い! 「掠り傷だよこんなの。直ぐに治るから大丈夫」 彼は返事もせず、頬のかさぶたをやわやわとなぞっている。それが何だか焦れったくて、ああ次親指が唇を霞めたら舐めちゃおう。 「ごめんなさい」 指気持ち良いな・・・え? 「何でアキラ君が謝るの?」 「やくそくをやぶってじゅうを使ったくせに、カナをたすけきれなかった」 「充分助けてくれたよ?」 「でも、きずが」 「傷だらけなのはアキラ君だよ・・・ばか。心配したんだよ?皆凄い心配したんだからね?」 また目頭が熱くなって来た。でも見られるのは嫌だから、目の前で困った様にしている朴念仁の胸を借りておく。ばかばかばか。 「ばか・・・いっつも一人で怪我ばっかりして」 「ほかにやり方を知らないんだ」 「知らないんじゃないよやらないだけだよ。もっと、ココや、皆に頼りなよ」 返事は無い。 「じゃないと、私泣いてばっかりだよぅ」 もう、何で涙は枯れないんだ。 労る様に遠慮がちに私の頭を撫でる彼は、小さな声で、やっとの声でわかったと呟いた。
肺一杯に彼の匂いを感じながら最後の一滴をその上着に染み付けて、もう大丈夫と顔を上げると困った様な笑った様ないつもの彼の表情とぶつかり、また目頭がじくじくして来る。もう・・・。 「泣かないで」 少し固い、大好きな指が私の涙を掬う。 「ばか、アキラ君のせいだよ?」 「ごめん・・・泣かないで」 何度も擦られ、次第にヒリヒリとして来たので、笑ってやる事にした。 「もう大丈夫だよ」 「うん・・・」 この困った様な顔、可愛いな。何て惚けていると彼の指は頬から伸びる傷を這う。 「いたくないか?」 「うん、違和感は有るけど痛くないよ」 確認する様に何度も動く指。少しだけぴりぴりして、だけど、好きな人に触れて貰える快感。 アキラ君の指が首に近い部分に触れ、私は思わずソレを我慢する。 でも、それが三回も続けば・・・。 「ぁ、んぅ」 声も、体も我慢出来なくなる訳で・・・。 「!」 ビクリと引っ込まる手を、私は無意識に捕まえる。 「もっと、首、もっと」 挙げ句おねだりなんかした訳で・・・。 「ひっ!ぁ・・・」 怖ず怖ずと差し出された手は、おっかなびっくり私の首を撫でる。 くすぐったさ半分と、切ない気持ち良さ半分。そしてまだ子供の彼にさせている事の恥ずかしさ。 不意に縋りたくなり彼を見ると、彼は顔を背け、でも瞳は私を放す事が出来ず、顔を真っ赤にしながらまだ変わらない高めの声で早く、短く呼吸をしている。 「アキラくん・・・っ」 私は知っている。もう彼が男の子から男になりかけてるのを。彼が私やココを使って自分を慰めているのを。 「カナ・・・」 そして彼も何処か気付いるはず。 私が彼のベッドで、自分を慰めていた事を。 その証拠に・・・。 「アキラ君の・・・かたい・・・」 布団の下からでも、時折びくんと動くそれが、はっきりとその存在を主張している。もう・・・。 「可愛いなぁ。って暴れちゃダメだよ傷開いちゃう!」 泣きそうな顔で暴れる彼の腰を両足できっちりと抑える。 口をぱくぱくさせ、今度はぶんぶんと首を横に振る。 「俺はっ」 「私の事、嫌い?」 そんな事無い。確証は無いけど、彼はそれが言えないのを私は知っている。 「私じゃ、イヤ?」 私は狐だ、口八丁なら負けない・・・負けない。 「私とは、シたく、ない?」 どんどん自信が無くなって、言った事を後悔。最低だ・・・。 駄目だ、返事が無いもん、駄目だ・・・。
「いやじゃ、ない」 「え?」 「いやじゃない。でも、俺はこの世界じゃ、にんげんじゃないんだ」 「ココから聞いた。みんな俺なんかのなんばいも長生きで、俺だけがどんどんおじいちゃんになってしまうって」 「俺はかまわない。じゅうぶんみんなに良くしてもらってる。でも、カナは」 それでも良いのか?きっとそんな言葉が出て来ると思った。だから・・・。 「良いよ」 「カナ・・・」 「良いよ。アキラ君なら」 本当に先の事なんて判らない。 「丁度良いくらいだよ。私は好きな人の成長を、一番側で見ていたいから」 けど、今この感情はもう破裂しそうだし、嘘なんかじゃない。吐き出してしまいたい。 だから。 「大好き、だよ、アキラ」 ずっと言いたくて、でも勇気が無くて言えなかった言葉。 返事が無いのが怖くて彼の顔を見ると。 何かもう、緊張が消え去るくらい顔が真っ赤で、ぷるぷると震えていて、もう、仕方ないなぁ。 そっと抱き締めると、耳元から小さい吐息。早い鼓動がしっかりと伝わり、それが愛しくて、そっと優しいキス。もう一度抱き締めると、今度は弱々しく彼の腕が回される。 「カナ」 耳元から震える声。 「なぁに?」 ぎゅっと抱き締められた。 「俺も、カナがだいすきだ」 泣きそうな顔にキス。 「ずっと待ってたんだから・・・」 「だ、だだだって、俺まだこどもだ」 「知らないよそんなの、アキラのばか」 「うあう、ごめ」 「大好きっ」 尻尾が振るえるのを抑えられない。子供みたいに感情からブレーキが外れて行く。 「アキラからも、キスして?」 まだ赤くなるんだ。でも、我慢しておく。 真っ直ぐ顔が近付いて、鼻がこつん。 慌てるアキラはやっぱりまだまだ子供で、拙くて、大好きな人。仕方ないから顔を少し傾げると、少し乾いた唇がちょこんと重なる。 「んっ」 物足りなくて強く重ねる。 「んん」 もっと欲しくなって舌でノックすると、初めてアキラから舌が伸ばされて、それが嬉しくて絡み取る。 始めは小さかった動きが段々大胆になって、鼻に掛かる様な彼の吐息といやらしい音が、私をどんどん満たしていく。 でも、もっと、もっと欲しいよ・・・アキラ・・・。 「っはぁ」 にるにると繋がれた舌が解けて銀色の糸が粒を作って落ちる。荒い呼吸は誰のものか、もう私には判らなくて、くらくらする視界で見る彼は辛そうに瞳を滲ませ、一つの事を欲しがっている。 きっと今の私みたいに。
ずっと我慢していた。その問い掛けに答えるのは自分じゃない、自分じゃいけないんだと。自分の知ってる言葉じゃ全然足りないくらいの[違い]は、きっと絶対消えないから。 ずっと怖かった。本当の好きなんて知らなかったし、彼女から向けられるそれはきっと、何か違うモノで、拒絶されると思っていたから。 でも、言ってしまった。 受け入れてもらえた。 生まれて初めて誰かに必要とされた。 それがこんなに幸せな事だなんて思わなかった。 そして、そのさきのこと、たくさんみてきたけど、ことばやそうぞうでしかしらなかったことも。 「っ、」 色々な感情がコントロールできなくて、情けなく目から滲むそれを、彼女が少しざらざらとする舌で消してくれる。 「怖い、かな?」 「何だか、すごく、わるいことをしている気がする」 「初めてだもんね?」 「あっちでは、たたかいにかつとじょうかんが女の子をつれて来たんだ。そこで、なかまたちがするのは、見たことがある」 そして、戦場で暴力的に行われるそれを、妹には絶対味合わせちゃいけないというのも判っていた。 「大丈夫・・・」 「あ・・・」 抱き寄せられて頭を撫でられる。普段なら恥ずかしいのに、今日は不思議と、嬉しい。 「私は君が大好きだよ?アキラは、どうかな?」 「大好きだっ・・・」 「なら大丈夫だよ、私は、一番大切な人としかしたくないから」 恥ずかしそうに笑う彼女は、今まで見てきたどんなものより可愛くて。 「私だけを考えて」 そして・・・どきどきさせる。 「んっ・・・ちゅ」 入り込む舌は、さっきより長く大きな動きで俺の舌を捕まえて。 離されると息苦しさから解放されるのに、それが寂しくてつい顎が上を向く。 「うんっ」 するとカナは、また俺を捕まえてくれる。 何回目かで唇を指で押さえられ、耳にそれが移った時は、何だか自分のじゃ無いみたいな声が出た。 「耳、気持ちいい?」 「わ、わかんな、いっ」 恥ずかしさと、勝手に体が動く不思議な感覚のせいで上手く声が出せない。 「うそ、女の子みたいな声出してる」 「そんな、こ・・・とっ、ない・・・」 「耳、気持ちいいんだ・・・可愛い・・・んっ」 自然に重なっていた手はひっぱられ、みんなの視線を奪うボリュームのあるソレに強く押し当てられたのがわかったのは、深く沈み込む指の感覚か・・・。 「ぁんっ!っ・・・」 聞いた事の無い彼女の鼻に掛かる悲鳴か・・・。 「か、なっ」 「・・・触って、お願い・・・」「で、でも俺、どうやるか!」 「優しくしてくれるなら、好きにして、良いから・・・ね?」
俺の指が身体に触れる度、ぴくんと小さく震えながら、それでも俺にシャツのボタンを外させて。 下着の無い、大きな白い"それ"が露出する。 「んん・・・」 「カナ?どうした、の?」 「ちょっと、恥ずかしい・・・」 彼女がもじもじと身体をよじると、それに合わせてふるふると揺れる"それ" 何だか見てはいけない気がして、でも視線が外せなくて。 「でも、アキラに、触ってほしいの・・・っ」 膝にあったカナの身体は、今や下半身同士が一つになりそうなくらい密着していて。 俺が逃げそうになると優しく、確実に捕まえる。 「こう、やって・・・そう、そおだよ、あきらっ・・・」「はぁっ、くっ・・・かな・・・」 俺の手を使って、掌から溢れ出る柔らかい塊を慰める彼女の姿は、どんどん俺を虜にする。 やがて俺は導かれなくても、その柔らかさ、温かさに意識を奪われていた。 「んんっ、やさ、しくて、あきらの手、きもち、いい・・・」 その柔らかさのてっぺんにある異質な硬さ、昔同じ部隊だった女の子が一人でしていたのを見た時、それを執拗に触っていたのふと思い出す。 「!あきらっ、あ・・・んん!」 指でそれを挟むと、一際鋭いカナの悲鳴。多分、正解。 そのまま、さらに指を走らせると、その度に途切れる声を上げる彼女。 まるで引き金の様に思え、そうすると変化が付けられた。 「あっ、きら・・・っ、もう、遊んでる、でしょ?」 「ご、ごめん・・・なんか、なんかくやしかった」 それに、もっと沢山聞きたかった。 「だぁめ、今日は、わ、私が・・・気持ち良くさせたいんだから・・・」 言いながら繋いでいない彼女のほっそりとした手が、ジジジとジッパーを・・・。 ジッパー? 「!?わっ!ちょっ!ままままっ」 だめだよ!何だか良くわからないけど、それは! 「暴れちゃだぁめっ」 「で、でもっ!」 「でも・・・?」 スカートの中にある、暖かい何かで、カーゴパンツ越しに、もう大変な事になってるのを強く動かされ、それだけで言葉が呻きに変わってしまう。 「ほら・・・」 さらに落ちる金具の音。「うううううっ」 「もうっ・・・でも、ちょっ・・・コの気・・・る、かも」 「お、おれをいじめるココの気分なんて、わからなくて、いい・・・」 開き切り、解放されたのが伝わり勝手に身体が震える。 「・・・結構、おっきい、よね?」 「知らない知らない知らないっ」 「あはっ・・・見えなくてもわかるよ?下着の中から、ノックしてる。欲しい欲しいって」 きっと俺は、今真っ赤なんだろう。 「でもっ、俺、きたないっ!」 「うん?アキラが寝てる間、ずっと身体拭いてたから、大丈夫だよ?」 「ぅぅぅぅぅぅ!」 反撃は、もう出来ないらしい。 「ほら、お尻、上げて?脱がせてあげる・・・」 「じ!自分でできる!」 「だぁめ、はい!上げましょうね〜」 俺はココに勝てなくて、カナには一生勝てない気がして来た。 カーゴパンツは簡単に下着ごと下ろされ、外気は篭って熱が有り、俺の腰は勝手にまだ見た事の無いそれを求めて動いている。 「今、あげる、から・・・」 カナは腰に手を入れ、少しすると何かが足の付け根に落ちてきた。それは温かく、そして、ひどく湿っている。 「アキラは、私だけのなんだから・・・」 ゆらゆらと揺れるたっぷりと毛を蓄えた金色の尻尾を見て、狐が狡猾に獲物を狩る姿が浮かんだ。 そして、きっとわざと、焦らす様にその入り口で、にちゃにちゃと遊ばれる感覚が重なり、不意に腰の奥が痺れ出した。 「!!だめっ、だ・・・!かな、やめてっ!」 もう、悲鳴もソレも、コントロールは丸で効かなかった。
生存報告もかねてまさかのキツネ・ヒト続きでした!駄文失礼です。 そして、みなさんの無事を心から祈っています。 しかし、シュナさんかわいいなぁ・・・。
GJ!とうとうエロ突入きた!
おつー! 続きを期待してます。
GJ かわゆす
もっと上手くなりたい・・・
書こう!
ビッチ分が足りない俺にお勧めを一つ
こちむいと虎の威 マナ様がビッチかどうか微妙だけど
召使love!いいから合体だ!結合だ!楽しいし! だよなぁマナ様
>>785 うむっ、良し!
だがジャック自重し(r
もっとむしゃくしゃしていいのよ
>>785 黒い兎に足腰立たなくなるまでやっつけられるコーディを書きたくなりました。
子犬のシーンありがとです!
幼女から見れば、二十代でもおじさん・・・
お二人さん乙! ジャックやべえwww
少ニャン隊。 すまない突然かれらがでてきたんだ。
鋼きたー!! 続きを、続きをよみたいですよう!
腕一杯に食べ物抱えて手放せないレムたんかわいい。 アトシャーマ出る頃には太っちゃいそうだが。
>>792 読んだ
ものすごいクロスオーバーで吹いた
昔の作品やらなんやらの記憶がぶぅゎーと吹き出して脳汁溢れた
やっぱりこのスレ侮れねぇ…
799 :
3 :2011/04/24(日) 20:23:27.21 ID:ohry5qO+
嘘だ、ジャックがかっこいい……!?
キヨカはやはりバレてたのか…
802 :
夢日記の人 :2011/04/30(土) 22:34:46.84 ID:Qp+9YpKO
乙! 死亡フラグらめえwww
>>802 この人の場合だけは洒落になってないからな。
この手の人情話も嫌いなじゃないです。
おつ〜
ライカたんが健気過ぎて生きてるのが辛いw
809 :
夢日記の人 :2011/05/11(水) 14:17:56.80 ID:dDoAg0ZP
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∧.....∧ 横で輝く星・・・ きれいだなぁ 希望の星かな?
( ::;;;;;;;;:) 輝きが毎日増してるような気がするんだけど・・・・
_.. /⌒:::;;;;;ヽ
-― ―'ー'-''―-''/ / ::;;;;;;;;:| |―'''ー'-''―
,, '''' . ''''' と./ゝ_;_;_ノヽつ 、、,
,,, '' ,,, ::;;;;;;;;;::: ,, ''''' ,
第12話第2部
http://nkmm-mana.sakura.ne.jp/clip/img/326.txt
だから、星が多い気がするんですけどw 毎回深く掘り下げてますね。 乙です。
ペース速いな。乙です
あまりに過疎ってるので、リクエストなどを募ってみようかと 100%とは言わないし小ネタレベルかもしれないけど、その中から何かしら書くよ。 どうぞ。
猫耳と犬耳の双子美少女が色違いのドレスでキャッキャウフフに振り回されたい
ショタがご主人様にもてあそばれる話がみたい
ロリ陵辱
長期連載完結済みの薄い本とか欲しいと思うのは自分だけか? エロエロだけど充分本にして手元に置くだけの物語だよなー 同人イベとかで売ればぜったい買うのにw
連載完結っていくつも無いんじゃないか? みんな途中で放り投げてる気がする。 放置中の職人さん。 まだ続ける意思はありますか?読んでたら反応してくださいw 続けるって言ってくれればいつまでも待ち続けられる
>>818 まず、お前のレスで「また書いてみよう」って思える職人は居ない
もしくは、レスくれる職人は居ない
なんかすっかり寂れたね、このスレも。
web小説を勝手に本にして販売して摘発された業者のニュースを ずいぶん前に見た時にガタタッてなった。 紙で手元に置きたいって、あるよね。
紙メディアだと読みたいときにパッと読めるからね。 そう考えると、iPadもまだまだなんだよなぁ。
忍法帳がなんとかなったら書き込みたいと思うけど、このスレ新規参加者でも大丈夫かな
逆に聞きたいけど、なんて新規参加を躊躇う? やっぱハードル高そうに見えるのかな?
自分の場合は種族設定とかを初めとして色々 そんなに気にしなくていいと言われてもその辺りで尻込みするのはあると思う ある程度勢いがないと落としづらい感じはするかな 半年ROMってろ、って言われるのはやっぱ怖いし
>>824 種族的に新規開拓は難しい。たぶん、普通に使えそうな動物系は出尽くした。
ガイシュツ(なぜか変換ry)の種の場合は、もう出来上がってるイメージを壊すのが怖い。
壊すのが怖いんじゃなくて、むしろ壊した事によって集中砲火・十字砲火を浴びるのが怖い。
シェアワールドって案外ハードル高いね。だから俺は読み専に徹してる。
書ける物なら書きたい。ただ、やっぱり書くのが怖い。
何処とは言わないが、別のケモスレのあの偏差的・閉鎖的な空気見てると本気で怖いよ。
むしろ自分は他人が作った設定の上に自分の設定乗せて書くのが好きだから あんまり抵抗なかったけどね 設定スキーな人のほうがやりづらいのかもしれん でも個人的には新規参入してほしいな。スレも過疎ってることだし
ある程度シェアワールドとして熟成されてくると、曖昧さを残したままの設定が参入障害化してくる様に思う。 つまり、何をやったらいけないのかとか、何処までやって良いのかの明確な線引きが難しいんじゃないかと。 ある程度の間、スレに係わっていれば、阿吽の呼吸で何となく線も見えるだろうけどw 既成設定を根底からぶち壊すお話は最初から叩かれまくるだろうけど、 微妙に従来のお話とリンクしてて、しかも曖昧な設定を踏み越えて大胆な話を書きたい人にゃ困る現状だろうね。
ちなみに何の動物をメインで描くか宣言したほうがいいのかな まだ出てない(多分)動物だと思うんだけど シカ(カモシカではなく)で
ずーっとネコ耳少女の話を書きたいって思ってるんだけど、ネコの国の普通の街中ってどんな感じか?とか、 そういう部分の資料を紹介して欲しいんだけど、やっぱ自分で調べろ系なんですかね? なんか俯瞰的に風俗を書き表した資料と言うか設定集が欲しいですよ。 極々日常の生活を淡々と書いたお話をイメージしてたんですが、 なんか些細な部分で先達に迷惑掛けそうで、ちょっと二の足を践んでました。
こちむい本文じゃ足らない? あとよほど他作品に絡める必要がなければ、「××地方なので」とかで乗り切れる。 むしろ乗り切りました。
猫の国の普通の街中が舞台って、こちむい以外だとどれだっけ? メイン登場人物の種族とは違う国が舞台ってけっこう多いよなー
>>833 ・太陽と月と星がある
・僕の奴隷は愚鈍で困る
とかかな
あとは短編にいくつかあったような・・・・・・
見落としてたら補足よろ
その辺なんとなくイメージで考えちゃってるなあ 猫→昔のアメリカ 犬→ドイツやイギリスなんかのゲルマン系諸国 的な
でも、面白ければ良いじゃない!的なノリで突っ走ると後が怖いよね。 ある程度先に書いてた人の邪魔をする形に成るのが怖いのは凄く同意。 自分もある程度書き溜めて何度も読み返して、他作品の話も何度も読んで、 整合性を取るのが一番長かった様に思う。 凄く些細な事だけど、例えばシュバルツの街に路面電車はあるみたいだけど、 それの動力源は電気?それとも魔法? 電気で動いてるなら電信柱があるだろうけど 魔法で動くなら機械的にはスタンドアロンだから電柱はありえない。電気運ぶ必要が無いから。 じゃぁ、各家庭の中に電気機器・家電製品はあるのか? 魔洸テレビは何で動いてる?洗濯機は?食器洗い機は?電話は?携帯電話は? 電気で動く家電製品があったとして、じゃぁ、路面電車は何でそれで動いてないの?とかね。 自分がそういう部分の矛盾を凄く気にするタイプだから、余計気になったんだろうけど(汗) ファンタジー物を書く時に良く言われる話だろうけど、魔術で病気や怪我が治る世界に 医者は存在するだろうか?って話しの一環かもしれない。 くだらねぇって言われると自分でも辛いけどw
そういうの全然気にした事なかったなw
御主人様、それは矛盾ではなく、単に描写されていないだけです。 そして魔術で病気や怪我を治す専門家が「医者」と呼ばれるのでしょう。
やってみればいいさ それが若さだ
>>833 上記以外だと
・トラの威(の最新〜数話あたり)
・今日よりも明日よりも(朱風さんの)
・せんせいのうそつき(ウエダ)
あたりが町内描写とかぽろぽろあると思う。
設定作って作品途中で投げ出して、後で書こうとした人が途方にくれる。
というのがシェア系で多いので、勘弁してほしい
>後で書こうとした人が途方にくれる ノシ
ノシ まぁ、そういう場合は、下地だけ借りて自身で設定追加しちゃうのが一番だけどな
自分の出来る範囲で風呂敷を広げるのが一番さあー 設定は一からつくるというより書く度に追加していくほうがいいのかもしれない
>>842 ノシ
>>844 でも、後付設定乙とか言われると凹むよ。マジで。
書き始める前に本気でアレコレ考えておかないと
必ず後になってボロと言うかミス・自己矛盾に凹む。
>>831 よっぽど違和感のある設定でなければ、大体のイメージ押さえとけばいいと思ってるアバウトな私。
些細な部分ならそれこそ時代や地方の違いで解釈できるんじゃなかろうか。
パソコンが普及してたり
超音速戦闘機が開発されてたり
人間界と自由に行き来できるようになっちゃってたらさすがにどうしようもないが。
ごめん、緩すぎて参考にならんね。
でも猫国ってメインの移動手段が馬車なのに家電が普及してる国なわけじゃないですか。
なんか今までの作品と違うな、と思ったら、ちゃんと穏便な理由を
考えてくっつければいいんじゃない?
フローラ様の政策で新技術開発特区に指定されているのです、とか。
……いや、これは我ながら安易過ぎると思うけど。
要はそんなに心配しなくても逃げ道はいっぱいあるよきっとと言いたいのです。
むしろお互いに考えた設定が影響を与え合うのが醍醐味だと思うのですよ
俺はこちむい本編さえきっちり尊重してりゃー 他の作品とは真っ向から矛盾しててもアリだろうという唯猫独尊主義 逆にこちむい内の設定を無視するならこのスレである必要はないわな
ショタ系が少し苦手だからこちむいを読んでいない俺は存在がアウトか
大丈夫!俺もろくに読んでないw ロリ/ショタは801よりキライって人も居るからね 自分の萌え所が他人の嫌い所って事もあるし 住み分けと言うかスレ内同居は結構シビアだと思う
他人の萌えには突っ込まない。けだし名言だねw スルー出来る事もコミュニティーの中で生きるには必要な能力だよ。
隣の便所は覗かない・・・・ってのもあるねw
・・・SS専用のフラッシュメモリなくして死にそうな俺が通りますよ・・・ 投下が遅れたのもつらいけど、すでに書き上げた部分を他人に見られたら首つりたくなる。
フラッシュメモリに保存はいいけど外出時に持ち歩いてんの?
創作系の人が一度は通る道だっていうな。 どこにあるかが問題じゃなくて、誰に見られたかが問題だってやつ。 思い付きのネタメモが流出なんて考えただけで悪夢だそうな。 別に名前書いてあるわけじゃないし、気にしなくて良いだろって思うけどw
投下してみます 作中のある生き物について、見覚えのある方は少ないと思われますが 半分ネタで半分伏線です どうかご容赦ください
00.雪と山と森とシカと ひゅん、と空気を裂く、小気味良い音がした。 「はッ!」 それに続くのは、気合の入った年若い女性の呼吸。 年の頃は――十代前半といったところだろうか。短い金髪の後ろでウマの尻尾のようなまとめ髪が少女の動きに合わせて揺れている。その下には幼いながらも整った顔立ち。意志の強さと精悍さ、そして可愛さを持ち合わせた顔。 「っ、やッ!」 ひゅんひゅん、と空気を裂く音がする。 音の出所は、少女の拳。白い包帯を巻かれたその小さな拳が宙を無尽に裂く度に、その小気味良い音が周囲の白い野原に響いている。 少女の格好は、およそこの場所――小雨のように雪の降る高山の原には相応しくないものだった。 顔を温めるものは自前の金髪しかなく、その細い身体といえば羽毛で作られたと思しき地味な外套と、胸元で赤光の輝きを放つブローチと、その下にある薄手の白のワンピースのみ。 それぞれの手は包帯ひとつのみで、下は靴下もなく、ただ雪の上に直接、小さな爪の整った綺麗な素足を下ろしている。 ただ、少女に寒がっている様子はまるでない。 小さく汗を流して、ただ見えない相手に徒手空拳で立ち向かっている。 「はッ、やっ、っあッ! ……ふう」 ひゅんひゅん、ひゅん。 左右の拳のコンビネーションの後、大振りではあるが鋭い上段蹴りを――ワンピースの裾が捲れ上がってその下の肌色が見えるのも構わずに――放ち、少女はひとつ息を吐いた。 小さな拳で小さな額の汗を拭い、視線を動かす。 その視線の先には、羽毛の塊としか表現の仕様がないものが転がっていた。 枝のそこかしこに小さな雪の塊を乗せた裸木。その下に転がる白く柔らかい羽毛の塊は、まさしく羽毛の塊であった。大きさは少女の五倍ほどはあるだろうか。これだけ羽毛があれば、これひとつで羽毛布団が数枚は拵えられるかもしれないと思わせるほどである。 ただ奇妙な点を挙げるなら、その羽毛団子の頂点に二本の角が――その隣に生えている裸木のような、幾重にも枝分かれした立派な角が生えていることか。 少女はその白い羽毛の塊に近付くと、すう、と息を吸い、 「司祭さん、起きて下さい!」 と、その小さな身体からは想像も出来ないほどに大きな声で叫んだ。 裸木の上に乗っていた雪の塊がひとつ、羽毛団子の上に落ちる。 声に反応したのか雪に反応したのかは定かではないが、羽毛団子が小さく震えた。 そこから見せた変化は劇的だった。 まず、羽毛団子のあるかどうか分からない両側面から手が生えた。クマのようなずんぐりむっくりとした形に長く鋭い爪を生やした手。それも羽毛だらけであったが、見る者が見れば、これはクマの手だと判別できたろう。 そして次に、羽毛団子の上、立派な角の下から顔が出た。ただの顔ではない。トリの――タカとワシを足して二で割り、そしてクチバシを控えめにしたような顔。その上には勿論、先程まで羽毛団子の上にあった立派な角が乗っている。 次に、その頭と手を生やした羽毛団子が縦に伸びた。少女の背丈がかなり小さいとは言え、その三倍強ほどもある高さだ。胴体は勿論と言うかのように羽毛が山盛りで、肥満体型を身長で誤魔化しているような状態だった。その様相はフクロウを連想させる。 最後に、その全てを持ち上げるように短く太い足が生えた。短く太く、先端だけが鋭い肉厚の爪の生えたそれは、まるで猛禽類の爪と偶蹄類の爪を足して、それにクマの足を付けたような――とにかく奇天烈な足だった。 そしてその珍妙で奇妙なケモノ――いや、人は、そのそびえ立つような巨体の割に小さくつぶらな青い瞳を少女に向けて、 「……もう、朝?」 「はい、朝です」 年若いボーイソプラノの声で、そんなことを聞いた。 少女は小さな微笑みと一緒に、そう答えた。 ざくざくざく、と羽毛の塊はその短い足を動かして、雪が覆う急斜面を軽快に駆け下りる。 その頭の上に腰掛けて、操縦桿のように角を握るのは金髪の少女。 「司祭さん、そう言えば何処に行ってるんですか?」 少女がそう問うと、司祭と呼ばれた人は、んー、と考えるような声を出し、 「取り敢えず、集会に。ふたつ向こうの山の麓だから、夕暮れには着くよ」 そう応えて、ぽーん、と崖を跳んだ。巨体が薄い曇り空を背景に宙を流れ、ぼすん、と雪の斜面に落ちる。しかし衝撃など無かったかのように、また司祭は走り出した。
「集会?」 「シカの集会。シカはね、国を持たないのさ。各国で神事を司っていて、定期的に何処かに集まって集会を開くんだ」 「シカの集会、ですか」 疑うようにな声色の少女。その視線は彼女が掴まっている角に向けられている。 「昨日、あれだけ説明したのに。セレンはまだ疑ってるんだね?」 「いえ、その、そういうわけじゃないんですけど、なんというか」 セレンと呼ばれた少女は言葉を濁す。無理もないことだろう。司祭のその姿にある、シカ、と言えなくはないものなど、頭の角しかない。 「まあ、着けば分かるよ。私は司祭の中でも古い方だから。皆覚えてくれてる、と思う」 「自信、ないんですね?」 「久々だからね」 それだけ言って、また司祭は、ぽーん、と崖を跳んだ。軌跡は綺麗な弧を描き、対面の崖に着地する。 「セレンは、護身の心得があるんだね。向こうで習ったもの?」 「あ、はい。まだまだ未熟者ですけど」 「ふうん…… 他には何か出来ることはある?」 「ええと…… ドイツ語とロシア語と、あと英語を少し」 「それは向こうの言葉かな? んー、他にはないかい?」 「ええっと…… これといって誇れるようなものは、あまり。学校以外では、殆ど道場に行っていたもので」 「そっか。うーん、せめて男の子だったら良かったのにね」 「え? それはどういう――わっ」 三度司祭が崖を跳んだ。 着地の際に跳ね上がった雪を受けて、セレンの言葉はかき消されてしまった。 昼を過ぎ、夕暮れ前になると、辺りの雪は消えて、針葉樹の立ち並ぶ森林地帯にふたりは差し掛かった。 「枝、気を付けてね」 「は、はい」 言って、司祭は突撃していく。その巨体で小枝をばきばきとへし折りながら。 とにかく立ち止まらない。慣性の法則を最大限に利用するかのように司祭は進む。 そしてややあって――急激にその速度を落とした。 「到着」 最後の一茂みを掻き分け、司祭は森の中の開けた場所に出た。 広間のようになった中央に、一本の立派な木が生えている。その大樹はそこかしこにその大樹自身のものではない蔦状植物を生やし、それでも幾ばくも衰えることなく立っている。 そしてその大樹を取り囲むように、無数のシカ達が跪いていた。誰も彼もがその頭に司祭ほどではないものの立派な対の角を生やし、ゆったりとした緑のローブを身に着けて、静かに祈るように跪いている。 その中からひとり、その中でも特に立派な角を持っているシカが顔を上げて司祭の方を見て、音もなく立ち上がった。 「微睡みの。よくおいでになった」 「久々だったからね。夢見の」 夢見の、と呼ばれたシカがふたりに歩み寄ってくる。 立派なシカだった。身長は角も含めれば少女の二倍程度あり、司祭には及ばないものの、十分に立派な体格をしている。精悍なシカ顔で、その身に纏った緑のローブといい、本を片手に持てばこれほど絵になるシカもいないだろう、といった風体だった。 「して、こちらのヒトは?」 「途中で拾ったんだ。見捨てるわけにもいかなくてね」 「幸運だ」 セレンか、司祭か、どちらに向けての言葉かはセレンには分からなかったが、シカは次にセレンに視線を向けて、 「私はエルトリュム。夢見の司祭とも呼ばれている」 と、片手を上げる挨拶のような動きと共に名乗った。 「宮野・瀬憐と言います。初めまして」 「ふむ。セレンか。汝の行く道に僅かばかりの幸運があらんことを」 「あ、ありがとうございます」 「うむ。 ――皆の者、今日はこれで解散とする」 セレンの返事に大様に頷くと、エルトリュムは踵を返し、跪いているシカ達にそう声を掛けた。 それを皮切りに、シカ達は森の中へとめいめいに散っていく。中にはセレンや司祭をちらと見る者や軽く一礼をする者もいた。
「では、立ち話も何だ。こちらへ」 エルトリュムも森の中へと歩き出す。司祭はセレンを頭の上に乗せたまま、その後ろに追随する。 三者はしばし無言のままに森の中を歩き、ややあって小さな祭殿のような建物の前に到着した。木々の中に紛れて建っている木造建築で、色褪せや老朽具合によって、建てられてから少なくとも数十年を経た風格を漂わせている。 そこに入り、広々とした居間のような空間でエルトリュムは腰を下ろす。司祭もその対面で同様に重そうな腰を下ろし、セレンも司祭の頭から降りて、その隣で正座の姿勢を取った。 「――さて、微睡みの。猫国はどうであったかな?」 「表面上はともかく、あまり安定はしていないようだね。狼狽えるような無様は見せていないけれど、やはり衝撃はあったようだ」 「ふむ。では狗国は」 「同様。 ――いや、という訳でもないか。先の件で意識的にそれなりの変化があったようだから、これから多少は良い方向に向かうのではないかな」 羽毛で包まれた顎を羽毛で包まれた手で撫で、司祭は答え、そして問い返す。 「そっちはどうだったかな。兎国だったっけ?」 「うむ。気質のせいもあってか、色々とありつつも安定しているよ。独学のための時間も十分に取れる。しばらくは逗留するつもりだ」 「そうかい。何かあったら寄らせて貰うよ」 「お待ちしている。他の司祭方からの報告では、狼も羚羊も大なり小なり騒動はあったがそれも程なく収まったようだ。狐はやや不明だが、あそこは相変わらずだろう」 「相変わらず、か」 「うむ」 会話が落ち着いたのか、しばし静寂が続く。 「――して」 そこで不意に、エルトリュムの鳶色の瞳がセレンを捉えた。 「微睡みの。彼女に説明はしたのかね?」 「ある程度はね」 「ふむ。貴方のことだ。大方、重要なところはまだなのだろう」 話題が自分のことに移ったことで、セレンは僅かに怖れを抱きつつもエルトリュムのシカ顔を見つめ返す。 「セレン。あなたは微睡みのからこちらについてどの程度説明を受けた?」 「え、あ、ええっと……」 「ああ。今は自分の置かれている状況について理解していることだけを言えばいい」 「……その、ここは地球ではないと。私は落ちてきて、帰るのは…… まず無理、だと」 「ふむ。やはり肝心なところが抜けているな」 「え?」 「君の立ち位置についてだ。 ……奴隷、という身分について君は詳しいかな?」 エルトリュムの深い知性を伺わせる瞳は、強い戸惑いに揺れるセレンの顔を見つめていた。 そこへ司祭がどこか咎める様子で口を挟む。 「――夢見の。あまり急くことはないと思ってたんだけど。セレンは落ちてきてまだ二日だから」 「そこは察している。だが、遠まわしにしていいものでもないだろう。特に貴方が首輪を付けるのでなければ」 「く、くび……?」 「ああ。まずはどこから説明するのがいいか…… 過酷な話になるが、君がこの世界から帰ることが出来ない以上は避けがたいものだ。心して聞きたまえ」 そう前置いて、エルトリュムはセレンにとってとても信じられない話の羅列を始めた。 ひとつ言葉を聞くごとにどんどんと色を失っていくセレンの顔を、司祭はそのつぶらな蒼い瞳で見つめていた。 セレンはふと、自分が毛布のようなものに包まれて眠っていたことに気付いた。 「あれ……?」 寝惚け眼を擦りながら身を起こす。身体の脇に着いた手は毛布のようなものにふわりと沈み、暖かい。 まだ薄暗い祭殿のような建物の中。扉も何も無い入口の向こうには、朝焼けと思しき朱色の光が差し込む森林が広がっている。 「あ、そっか……」 それをしばし呆と見つめて、セレンは思い出す。自分が異世界に落ちてきてしまったこと。そして、昨日エルトリュムに話してもらった“ヒト”についての信じがたい処遇。 「……う」 涙が溢れてきて、しかしセレンは腕でそれを拭うと、そっと毛布のようなものの傍を離れた。
「朝の練習、しよう」 ひとり呟いて、セレンは祭殿を出る。 日も登り切らぬ朝であることに加えて山中であるからか、空気はヒトの肌に対して刺すように冷たい。しかし気にする風もなく、セレンは土と草の地面に両足を下ろし、彼女の日課と定められている鍛錬を始めた。 手足を軽く伸ばす準備運動に始まって、そこそこの広さがある祭殿の周りをぐるぐると何周も駆け、続いて空拳を振るう。 それをしながら思い出すのは、セレンが敬愛していた祖父のこと。 『――泣くでない! そんな暇があったら少しでも早く手足を動かさんか!』 格闘武術道場を開いていた母方の祖父は、セレンに護身術と称して厳しい稽古をしてくれた。 跡継ぎにと期待していた自身の子供が女ばかりであっただけに、孫にこそ、と期待していた分もあったのだろうと母から聞かされたことがある。結局、その娘達が産んだ孫もセレンを初めとして女ばかりであったわけだが。 そんな中でセレンを一際可愛がってくれたのは、セレンの父に関係がある。 セレンの父はロシア人とドイツ人のハーフで、何故か日本中国の格闘技の熱心なファンだった。父は祖父と一晩殴り合って母との結婚を認めて貰ったという逸話があり、そんな経緯の間に孫として生まれたセレンが祖父に付き合わされるのはある意味で当然だったのかもしれない。 しかしそれらを計上しても、セレンは祖父のことが大好きだった。 稽古の時は鬼か悪魔かという厳しさではあったけれど、祖父が言うことには全て筋が通っており、理不尽なことは何ひとつ言わなかった。そしてその厳しさの裏で大変気遣ってくれていたのをセレンは知っている。 「……お祖父様、心配してるかな」 セレンにとって何より辛いのは、その祖父にもう会うことは絶望的であるということ。 酷い処遇だけならまだ耐えられた。いつか帰れるのなら、絶対に耐えてみせるつもりがあった。 でも、こちらに落ちてきたヒトで帰ることが出来たヒトはいないと改めて聞かされて、一気に心が折れそうになった。 「う……」 また滲んてきた涙が頬を伝う。 最後に見た祖父の姿は、学校に行くセレンを玄関先で手を振って見送ってくれた元気な姿。 きっといつものようにセレンの帰りを玄関先で待っていてくれているのだろう。 けれど、セレンはもうそこには戻れない。別れを言うことすら許されない。 「う、あぁ……!」 ぼろぼろと零れ出してきた涙は拭い切れずに、ついにセレンは赤子のように泣き出した。 こんなのってない。どうして。どうして。私が何をした。お祖父様に会わせて。お父さんに、お母さんに会わせて。 呪詛のように心の中で呟きながら、セレンは泣き続ける。 そして流石にというべきか、その悲痛な声に釣られるように、ぬう、と祭殿の中から羽毛の塊――司祭がその巨体を覗かせた。 司祭は億劫そうに祭殿を出て、セレンの傍に立つ。そしてそのどうにも珍妙な手をセレンの頭の上にそっと置いた。 「――もしも、この世界で生きるのが嫌なら」 嘴からゆっくりと声が紡がれる。 「私が食べてあげよう。セレンは美味しそうだから、特別だよ」 返事はすぐにはなかったが、ややあってセレンはぐしぐしと涙を手の甲で拭い、それから司祭を睨みつつ答えた。 「遠慮、します」 「そうかい。残念だ。じゃあ、これをあげよう」 鋭い爪を伴う司祭の手が胸元にやってきて、思わず一歩セレンは後退った。が、司祭は半ば彼女を捕まえるように背中からも手を回すと、前の手で白いワンピースの胸元を掴み、そして離した。 その跡には、セレンが元々持っていた赤光の輝きを持つブローチに加え、それよりもやや豪華に思える同じく赤色のブローチがもうひとつ。周りの模様は何を象ったのかはセレンには分からなかったが、複雑な意匠を凝らされている。 「あ、ありがとうございます」 セレンが反射的に礼をすると、司祭は満足気に頷いてのそりのそりと祭殿の中に戻っていく。 途中で不意に足を止め、くるりと顔だけがセレンの方を見た。
「明日にはここを発って、ネコの国に行こうか。君の引き取り手を見つけないとね」 「……は、はい」 返事を聞くと、司祭は今度こそ祭殿の中に消えた。 セレンはひとつ息を吐き、鍛錬を再開する。 ――死ぬなんて言ったら、お祖父様に怒られてしまうから。だから絶対に生きてやる。 何はともあれ、そうセレンは決意した。 その日は昼を少し過ぎた頃に、エルトリュムがやってきた。 「セレンか。 ――微睡みのは?」 「えっと、寝てます。ちょっと前まで起きてたんですけど」 「相変わらずか」 祭殿の中に上がる階段に腰を下ろしたセレンと、その前に立ったままのエルトリュムは言葉を交わす。 「……ふむ。先日は済まなかったな」 「あ、その……」 「重ねて言うが、遠回しにしてもいい話ではないと思ったのでな。微睡みのが気紛れでも起こしていればまだ良かったのだが」 精悍なシカ顔でセレンの顔を覗き込み、エルトリュムは言う。 セレンはそれに何とか微笑みを作って応じる。 「いえ、ありがとうございました。私、頑張ってみます」 「ふむ。そうか。それは前向きで好ましいと思うよ。ヒトと接するのは初めてだが、セレンのようなヒトなら私も好きになれそうだ」 「え、う……?」 好きになれそう、と言われて、セレンは面食らった表情になる。 父以外の男性からはっきりとした好意を示す言葉を貰ったのは初めてだったからだ。 惜しむらくはエルトリュムがシカであったことだろう。セレンはシカ顔についてある程度の良し悪しは分かっても、好意となるとまた別の問題であったからだ。少なくとも今はまだ。 「あ、ありがとうございます」 「そうだな、ふむ。私からもひとつ贈り物をしようか」 「え?」 セレンが驚いている間に、エルトリュムは自分のローブの懐に手を入れると、そこから青色の宝石が嵌ったブローチを取り出して、セレンの胸元、赤い宝石のブローチがふたつ付いているその下に青のブローチを更に付けた。 植物を象ったのであろう装飾部の中心に深い空のような蒼色の宝石が嵌め込まれているそれは、心なしかぼんやりと光を放っていた。 「あまり出来はよくはないが、良かったら身に付けていてくれ。きっとセレンがこの世界で生きる助けになるだろう」 「え、その、こんな……」 「気にせずともいい。微睡みのもその赤の宝珠を贈ったのだろう。ならば私からも贈るのが筋というものだ」 戸惑うセレンの声を遮って、微笑みを零しながらエルトリュムは言う。 「――古き精霊と神の祝福が、汝の往く道にあらんことを」 初めて会った時とは異なる祝詞を告げて、エルトリュムは踵を返す。 「あ、あの、司祭さんは?」 「微睡みのには昼過ぎに私が来たとだけ言っておいてくれ。それで通じる」 振り返ることもなく、エルトリュムは木陰に溶けるように姿を消した。 司祭はその後、夕方前に起きてきて、セレンが伝言を伝えるとひとつ頷いてまた眠った。 そして翌日の早朝。 ひとりの少女とひとりの自称シカは、ネコの国へと旅立った。
ひとまずはここまで 稚文によりお目汚し失礼致しました
おつ。文章読みやすいし今後が気になります。 続き楽しみ
新たな勇者に幸あれ。 続きを待ってまする。 投下お疲れ。
おつです。 これは不思議な司祭様たちに勇ましい少女。 続きがたのしみです。
夢日記の人乙〜 こんだけ深い話書いてくれてる書き手さんを追い出すような真似はできませぬよ (^-^)b 続きがロダに上がるのをこっそり待っとります
ライカさんの台詞が意味深だな。
あああちくしょうかわいいなあ。 罪悪感とか劣等感とかに人知れず苦しむ女の子が激しくツボな俺はきっと少し疲れてる。 それはそれとして、 ヨーはあんまり浮かれてエロエロしてると死亡フラグじゃあるまいか?
絵板を見たいんだけど、見つかりませんって出るよ
あれっ見られる ありがとう!
山羊と唄歌いの続きが読みたい… 関係ないけど嬉ションてかわいいよね ヒトがしたら人間達はどう思うんだろう
性癖による。 鉄の山脈の続きマダー?
嬉ションじゃなくて我慢できずに発射とか。 ところで、不憫な旦那のバッドトリップの続きキボンヌ
レムちんの嬉ションと聞いてきたのだが… クマーはまだですかー
レムちんの嬉ションと聞いてきたのだが… クマーはまだですかー
二重スマソ
シカの話の続きを投下します 前回、題を入れるのを忘れておりました
01.人とヒトの違い 「――ふむ」 ネコの国、北の要衝ノーザンカッツェ。 イヌの国との国境沿いに位置するこの街で、巨大な羽毛の塊はひとつ頷いた。 「ええっと……」 「要するに、しばらく足止めだね。まあ仕方がないか」 金髪のヒト少女の疑問を制し、羽毛の塊は答える。場所は門前広場。 城壁沿いに座り込むその一組は、何か独特のオブジェのようにも見えた。 「そんなに危険な生き物なんですか? その――」 「ヨグロークは普段温厚なんだけれど、冬季だけは別なんだ。群れで行動する性質は変わらないけれど、動くものを見境なく襲って食べてしまう。あの巨体がチーターの陸上選手もかくやという速度で突っ込んでくる様は圧巻だよ」 その話を聞いて、セレンはヨグロークなる生き物の外見を想像する。しかし彼女に出来たのは、サイやゾウが凄まじい速度で走っている光景ぐらいのものだった。 変な想像を払い、セレンは恐る恐る司祭に問う。 「ちなみに、どれぐらい……?」 「まあ長くて一週間と少しかな。それだけあれば別のところに行くと思うよ。そうしたら改めてシュバルツカッツェを目指そうか」 言って、司祭はよいしょと腰を上げ、セレンを頭の上に乗せたままのっしのっしと歩き出す。 「取り敢えずはお昼ご飯にしようか。何か食べたいものはあるかい?」 「え、あ、ええと…… 特には」 しばしの逡巡の末、セレンはそう返した。遠慮したのが半分、何が食べれるのか分からなかったのが半分だ。 猫の国の食事、と考えて、生魚が丸々一尾、などと発想してしまう彼女には少々酷な質問だったろう。司祭はそんな少女の思考に気付いたかどうか定かではないが、言葉を続ける。 「――ああ。ちなみに落ち物文化というものがあってね。らあめん、とか、かれえらいす、というものも食べられるよ。そういうのでいいかな?」 「あ、はい。それでしたら」 「じゃあ向こうの方かな」 言って、司祭はその行き先を人の流れが多い方向へと変える。 セレンは司祭の角に掴まりながら、ちらちらと人の流れを、正確には人を見ていた。 そして呟くように言う。 「あの…… 凄く、見られてる気が」 事実、道行く人や路端で話している人の殆どの視線を、司祭とセレンの二組は集めていた。 「半分は私。半分はセレン、君かな」 「え、そ、そうなんです、か?」 「多分。君は贔屓目に見ても顔が良い方だからね。加えて幼いし、あと首輪を付けてないからかな」 「く、首輪、ですか」 「うん。首輪は所有の証だからね。今の君は路傍の宝石のようなものだよ。拾っても誰も咎めない。誰が拾うかで諍いにはなるかもしれないけれど」 司祭は視線を集めていることなど慣れているかのように、気にすることなくその巨体を人の流れの中に滑り込ませていく。 セレンもかつては人の視線を集めた方だが、流石にこれほど注視されたのは初めてで、しかもそれが獣面ばかりなのだから、多少の恐怖は仕方のないことと言えた。 加えて司祭がのんびりと話す首輪云々のことが、セレンの恐怖を煽る。 「ほら、正面左の建物の壁沿い。ああいうのがこの世界でのヒトのあるべき姿だよ」 言われて、視線に耐えつつもセレンは正面左を見遣る。 そこにいたのは男性のヒト。歳は二十前後だろうか。服はその辺りの人が着ているものとそう変わりはないが、首に無骨な革の首輪を巻いている。両手に荷物を抱えており、側に立つのは妖艶なネコの女性。 瞬間、そのネコ女と青年の両方と視線が合ってしまい、慌ててセレンは視線を逸らす。 「あ、あの。 ……こんなこと聞くのもなんですけど」 「何?」 「司祭さんは私に、首輪、付けないんですか?」 その単純な質問に、司祭はしばし沈黙してから答える。 「――うん。奴隷とか召使いを持つ必要も趣味もないしね」 「そ、そうなんですか」 「それにセレンには悪いけれど、ヒトは面倒くさいっていうのもあるんだ。色々とね」 「そう、ですか……」 何が面倒くさいのかは分からなかったが、たっぷりと貶されたような気がしてセレンは陰鬱な息をひとつ吐いた。 割と優しそうな司祭でこれなのだからと思うと、どうしても明るい未来など考えることが出来ずに、セレンは暗澹とした思いに駆られる。
「世の中にはその面倒くささや儚さが良いって言う人も多いけれどね。私は各地を割と転々とする身だから、ちょっと勘弁かな。盗賊団に襲われることもあるし、そうなったら流石に自分で生きられないヒトは連れていけないね。無くしちゃったら勿体無いし」 「も、勿体無い、ですか」 「うん。高いんだよ、ヒト。オスヒトならよっぽど状態の酷いものでもない限り、最低でも五千セパタ――楽に三年はのんびり食べて暮らせるぐらいする。 メスヒトはその十分の一ぐらいに安いけれど、それでも結構な額だよ。路銀にはしばらく困らない――っと、ここでいいかな?」 絶句するしかない話にセレンがやや呆然としていると、司祭が足を止めた。 慌てて見遣ると、そこには小さな屋台があった。暖簾にはセレンが見慣れた日本語で「らあめん屋」とある。 「あ、は、はい」 「じゃあ親父さん、らあめんふたつ」 「あいよー」 そんな声がして、しばらくの後に司祭が暖簾の中に手を突っ込む。出てきた手には湯気立つ丼がふたつ。 「はい」 「あ、ありがとうございます。――っ、熱っ」 「ああ、少しだけ熱いから気を付けて」 言って、司祭はその巨大な爪のついた手で器用に箸を操り、嘴へつるつると麺を運んでいく。 セレンもそれを見てから、恐る恐る食べ始めた。味は醤油に似ていないこともないが、少し違和感がある。独特のものだろうか。 そんなことを考えていると、暖簾の中からひょこりと猫顔――屋台の主人が出て、セレンを見て笑う。 「ほう、拾ったのかい。こりゃまた珍しい。どうするつもりだい?」 「うん。まあ、売って路銀の足しにしようかなと。あまり長くは連れていけないしね」 さらりと会話を交わす屋台の主人と司祭。 悪気はないのだろうが、司祭の言葉の端々がセレンに突き刺さる。 「ま、そりゃそうか。見るからに小さいし細っこいし、司祭さんが連れ回したらすぐ死んじまうわな」 「まあ、そうだねえ」 「それにしても、なんというか。何処かから逃げ出してきた養殖ヒトなんじゃないのかい? ちょっと雰囲気が違うし、人形みたいに綺麗じゃないか」 「多分違うんじゃないかな。ぱっと見てそれらしい印章が何処にもないし」 「へえ……」 セレンを眺め、最後にふと笑う屋台の主人。 別に悪意を感じるものではなかったが、セレンはそれに愛想笑いさえ返すことが出来ずに、さっと司祭の角の後ろに身を隠す。 「可愛いもんだ。観賞用には悪くないね」 「買うかい?」 「まさか。手伝い兼としても欲しいけど、まずはもっと立派な店を構えねえとな」 「それもそうか。 ――ご馳走様。美味しかったよ」 「毎度。メスヒトのお嬢ちゃんはどうだった? 美味かったかい?」 「は、はい。美味しかった、です」 「ヒトにそう言われるなら俺っちの腕前もなかなかだな。縁があればご贔屓に頼むよ」 実際には話の節々に出てくる単語があまりにも衝撃的で、ラーメンの味など途中からまるで分からなかったのだが、何とか無難に返すと屋台の主人はその猫面をやや満足気な笑みに変えた。 それからすぐに司祭が会計を済ませ、屋台の主人に見送られて司祭とセレンはそこを離れた。 セレンが思わず陰鬱な溜息を吐くと、司祭が反応する。 「疲れたかい?」 「いえ、その…… はい。ちょっとだけ」 「まあ基本的にどこでもこんな感じだから慣れた方がいいよ。身が持たない」 「そうみたい、ですね」 何とか答えを返し、しかし先行きの暗さに沈むセレン。 「じゃあ、ひとまずは宿を探そうか。その辺で寝転がってもいいけれど、迷惑になるといけないし」 「はい。 ――あの、司祭さん」 「何だい?」 意を決して、セレンは少し前、シカの集会の時にこの世界でのヒトの扱いを聞いた時から薄々考えていたことを口に出した。 「その、こんなこと言うのもなんですけど…… 私を、その、飼って頂けませんか?」 「自分から奴隷志願かい?」 「っ…… その、どうせなら司祭さんがいいな、って…… 駄目、ですか」 自分でも人としてどれぐらい変なことを言ったのか理解しているセレンは羞恥に顔を赤くしながらそれでも続けるが、司祭はあまり興味が無さそうに、んー、と呟く。
「さっきも言ったけれど、私は召使いや奴隷を持つ必要も趣味もないし、旅をする上では非常に面倒が多いからね」 「その、私、お役に立てるように頑張りますから…… 自分の身も、出来るだけ自分で守りますし」 「難しいと思うけど…… セレンが役に立てること、か。私は朝弱いから、目覚ましは助かるんだけれどね」 難色を示す司祭。しかし彼もセレンの為に考えてくれているのか、少しだけ歩く速度を緩め、顎と思しき辺りに爪の付いた手を添える。 ――その瞬間、司祭の巨体に猛烈な勢いで何かが衝突した。 「お、っと」 「きゃ、あっ!?」 司祭は一歩だけたたらを踏むに留まったが、セレンはそうはいかなかった。司祭の説得に身を入れていたせいで司祭の角に掴まるのが疎かになっており、結果、身長の三倍近い高さから落下する羽目になってしまったのだ。 ぐらりと身体が宙に投げ出され――どさり、と思ったよりも大したことのない衝撃に身を竦めながらも疑問に思い、しかしすぐに状況に気付く。 セレンは獣面の男――カモシカの男に抱えられ、人混みの中を急速に司祭から引き離されつつあったのだ。 「え、あ、え……!?」 「暴れるな」 どすの効いた声でそう脅されるも、素直に頷く訳には行かなかった。 これは誘拐――いや、強盗か。自分はきっとお金目当てに司祭から盗まれたのだとセレンは早々に気付き、理解した。 見れば、司祭との距離が徐々に離れ始めている。このままでは角を二つか三つも曲がればセレンも司祭もお互いを見失ってしまうだろう。それはセレンとしては絶対に避けなければならなかった。 ならば、とセレンは抱えられた体勢から軽く身を捻り、カモシカの男がその動きを押さえ込むためにセレンの二の腕から手を離したその瞬間、眉間に肘打ちを叩き込んだ。 「くっ!?」 全力で打ち込んだにも関わらず、男は声を上げただけで大した痛みを受けていない様子にセレンは驚きつつも、男が視界を奪われている間に足を振り、男が掴んでいる足首を支点にしてその太い首に身体を寄せる。そして両腕を絡め、全力に自身の体重を足して首を締め上げた。 「――っ!?」 流石にこれは効くようで、カモシカの男は足を止めた。セレンは男の首からぶら下がり、背中に覆い被さるような形になる。 獣じみた、しかし人型の手がセレンの締め上げに抵抗しようと彼女の細腕を掴む。瞬間、腕を引き千切られそうな痛みを感じて、慌ててセレンは男の背骨に膝蹴りを入れると、その反動を活かして男から離れた。 「メスヒトのガキがっ……!」 悪態を吐くカモシカの男が、すぐさま襲いかかって来る。 セレンはひとつ深呼吸をして、吐く息を止めた。こちらを掴もうとする手をすんでのところで避け、身体の小ささを活かして懐に潜り込むと、がら空きの顎を打ち上げる。 十分に手応えはあったが、しかしカモシカの男は動きを止めない。続く掴みを転がって避け、お返しに足裏を顔面に叩き込む。続いて内太股や鳩尾、側頭部にさえ手か足による一撃を食らわせた。 だが――まるで効いている様子がない。 「この、ちょこまかと――!」 カモシカの男は素人という感じではなかったが、セレンを捕まえるためなのか動きに遠慮がある。それ故に祖父の厳しい稽古をこなしてきたセレンには何とか避けることが出来ていた。 しかし回避はそれで良くとも、反撃が駄目。 身体の丈夫さや筋肉の量がまるで違うため、普通の人間男性なら有効打になりうる的確な打撃でも、この世界ではまるで力にならない。 「っ!」 これはまずい。攻めあぐねているセレンがそう思いながらも男の掴み掛かりをまた避けた瞬間だった。 「なかなかやるね」 司祭の声がセレンの後ろから聞こえた。恐らくは自分のすぐ後ろに立っているのだろうとセレンは思いつつも、カモシカの男から視線を逸らすことはしない。 「――っち!」 流石に形勢不利と見たか、カモシカの男が脱兎の如く逃げ出す。反射的に追おうとセレンの足は動きかかったが、締め以外は何をしても有効打にはならないのだ。追ったところでどうにもなるものでもないと足を止め――背後から更に声が掛かる。 「加護をあげるから、あれを捕まえてご覧」 「え? ――っ!?」 爪を備えた巨大な手が頭に触れた瞬間、セレンの身体は異常な熱量に包まれ始めた。 まるで身体の芯から力が際限なく湧いてくるような異常な感覚。戸惑うも、これなら行けると鍛えた勘は訴えていて――
「捕まえられたら、私の奴隷にすることも考えてあげるよ」 その言葉に、一も二もなく駆け出した。 地面すれすれを飛ぶような速度に、かなり離れていたカモシカの男との距離が刹那で詰まる。その無防備な背中をセレンの鋭い眼光が捉え、地面を蹴り、身体を捻りつつ、猛烈な膝蹴りを叩き込んだ。 「げはっ!?」 カモシカの男が妙な叫びを上げ、吹き飛ぶ。 もんどり打って地面に倒れ伏した男に、セレンは更に追い打ちを掛ける。速度と体重を活かした背中への踵落とし。 「ぐえっ!?」 それでカモシカの男はあっさりと沈黙した。 「っ、はっ、はあっ」 捕まえてみせたという喜びと共に、セレンは荒い息を吐きながら不快感を感じていた。 原因は身体から湧いてくる熱のせいだ。まるで夏日に直射日光に曝され続けているかのような苛立ち。しかし疲労感はまるでなく、それが故に苛立ちが暴力的な衝動へと変わる。 ――どうして私がこんな目に。こんなことを。この男のせいだ。もっとこの男を痛めつけてやらないと。 「っ!」 どこからか流れ込んでくるようなかつてない衝動に流されるままに、セレンはもう一度足を振り上げた。 しかしすんでのところで、振り下ろされたその足を羽毛に包まれた爪付きの手が受け止める。邪魔者は誰かと振り向けば、当然と言うべきかそこには司祭の姿があった。 邪魔をするな。とばかりにセレンが司祭を睨み付ける。その鬼気迫る視線を受けて、しかし司祭は平然としたものだ。 「効き過ぎているのかな。ちょっと落ち着いて」 「でも……!」 「仕方ないな」 溜息のようなものを嘴からひとつ吐き出して、司祭は再びその手でセレンの頭に触れた。 瞬間、身体の熱はそのままに、無尽蔵に湧き出していた力の感覚がさっと消え失せる。同時に立ち眩みがして、セレンは堪らず路上に尻餅を付いた。 「あ、あれ……?」 気付けば、思考を苛んでいた苛立ちも消えていた。あるのは熱病に冒された時のような倦怠感。 「魔法抵抗が低すぎる弊害かな。そんなに強くしたつもりはなかったんだけれど」 言いながら、司祭はセレンをひょいと小脇に抱え、のしのしと歩き始めた。 「ともかく場所を移そうか。ちょっと注目を集めすぎてるし」 「え……」 その言葉にセレンが周囲を見回せば、その近くの人間はほぼ皆、セレンと司祭を――特にセレンを見ていた。 当然と言えば当然かもしれない。幼く小柄なメスヒトが、頭ふたつ以上身長差のあるカモシカの男を圧倒的と言っていいほどに打ち倒したのだから。 最後の瞬間は司祭が魔法を使ったのだと分かった者も多いだろうが、それにしても十分に有り得ない光景であったことには間違いない。 「ご、ごめんなさい」 「別に謝ることはないよ。私の不注意でもあったしね」 自分のしたことをよく思い出して羞恥に頬を染めながら謝るセレンをそう制し、司祭は通りから細い路地に入って二つ三つと角を曲がる。 そうして人々の視線から逃れると、司祭とセレンはほぼ同時に、はあ、と息を吐いた。 取った宿のベッドの上で、セレンは金糸のような髪を広げて横になっていた。 大立ち回りからそろそろ一時間になるが、身体の熱と気怠さがまだ消えていないからだった。身体にまるで力が入らず、満足に身じろぎをすることもできない。 「ふ、う」 熱い吐息と共に、寝苦しそうに寝返りを打つセレン。 「多分、あと五時間ぐらいは身体が熱いままだと思うから。あの加護は強制解除するとそういう副作用があるんだ。ゆっくり休んでるといいよ」 「はい……」 司祭はそんなセレンの寝ているベッドの横で、先程から手元で何か小さなものを弄っている。 大きく長い爪の付いた手でそんなことが出来るとは、箸の件といい意外に器用なのかも知れない、とセレンはそれを眺めて思う。 「――よし、こんなものかな」 そう司祭が声を上げたのは、更に一時間後のことだった。 すっと立ち上がってセレンの方に向き直ると、その手をセレンの首元に伸ばしてくる。長く鋭い爪を備えた凶悪な獣の手。カモシカ男のものとは違い、完全に人の形を成していないその手が自分に伸びてくるのは、実のところセレンにとってあまり慣れるものではなかった。 司祭さんだから大丈夫、と恐怖を押し殺していると、首に何かが巻かれ、少しだけ締まる感覚があった。ひょっとして、とセレンが自身で首元に触れると、柔らかい革の感触があった。 セレンから視線を向けられた司祭が、事もなげに答える。
「奴隷用の首輪。まあ、仮だけれど」 「じゃあ――」 「いや、まだ決定じゃないよ。取り敢えず首輪がないと今日みたいな面倒が頻発しそうだからね。それさえあれば、幾らか頻度は下がるかな、と思って」 「そ、そうですか……」 思わず溜息を吐いてしまうセレン。 自分から奴隷志願というのはどうなのかと思うが、先程のようなことがあった後では抵抗感も失せていた。今はただ、一刻も早く誰かの――出来れば今一番見知っている司祭の庇護が欲しかった。 しかしそれはまだ叶わないようで、少なくない落胆があった。 「ところで、セレンのはてっきり護身ぐらいのものかと思っていたけれど、ヒトの中ではかなり強い方に入るのかな?」 「いえ…… 私なんか、まだまだです」 「へえ」 謙虚に答えたセレンに、司祭はどこか興味深そうな色を声に乗せる。 実際、セレンは自分の実力がどれほどのものなのかはよく分かっていない。格闘技の大会などに出場したことはないし、人助けと正当防衛以外で技を使うことを祖父に強く禁じられていたからだ。 学校でしつこいちょっかいを掛けてきた乱暴者をものの二、三秒で叩き伏せたことがあるぐらいで、カモシカ男相手に身体が動いたのはひとえに祖父との鍛錬の賜物だった。 「でも私の見た感じでは十分に強いように見えたけれどね。闘技場でもそれなりにやっていけるんじゃないかな?」 「闘技場?」 「シュバルツカッツェにあるのさ。セレンよりもう少し年上ぐらいのヒト奴隷がそこで見世物と殺し合いを足して割ったような催しをやってるんだ。怪我は絶えないし、寿命も縮むけれど、それなりに裕福な暮らしは出来るらしいよ」 「い、いえ。結構です、そんなの」 「そうかい? あとは―― ん、お客さんかな」 司祭がなおも話を続けようとしたその瞬間、部屋の扉をノックする音が響いた。 のっしのっしと司祭が入口に向かい、セレンの視界から消える。扉を開ける音の後、少し落ち着きのない見知らぬ声と、それに冷静に応じる司祭の声が聞こえる。 しばしの後、扉を閉める音がして司祭が戻ってきた。 「どなたでしたか?」 「官憲さんだったよ。窃盗事件の事情聴取に。仕事熱心でいいことだ」 「窃盗、ですか。 ……やっぱり、そういうことになるんですね」 「まあね。基本的にモノ扱いだってことは覚えておいた方がいいよ。要らない問題や面倒を起こすからね」 司祭はセレンの声に応えつつ、ふあ、と欠伸のようなものをして、ごろりと床の上に寝転がった。 「私が司祭さんの奴隷になったら、司祭さんも、私をそういう風に扱うんですか?」 「んー? うん、まあね。だからと言って君を遊び壊したりする趣味はないけれど。興味がないわけじゃないし、それらしいことはして貰おうかな」 「それらしいこと、ですか」 「うん。色々あるらしいよ」 言いながら、寝転んだ司祭は身体を丸め、羽毛団子へと変身していく。 最後にその立派な角を団子の上に直立させ、司祭は安らかな寝息を立て始めた。 それをしばし見つめて、セレンはまたひとつ寝返りを打つ。 熱のせいでしばらくは眠れそうになかった。
以上です お目汚し失礼
丁寧で良いねぇ!GJだ! 続きに期待してます。
角がある種族いいなぁ
GJー 司祭様の加護凄いなぁ。さすが魔法 続きが楽しみな作品が増えるのは嬉しいねぇ。
888 :
名無しさん@自治スレで設定変更議論中 :2011/06/24(金) 10:31:38.91 ID:zJsVRbeY
即死回避でカラ揚げ
翻訳屋キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!! 絶対ある職業だと思ってたよw しかも、鰐ですか。ワニ。アリゲーター。 そうくるかw 投下乙! で、ネコの国って電話有るんだっけ?
自分もそこは気になったが、時代がこちむいよりちょっと後くらいとか考えとけばいいんじゃね あったとしても、金持ちとか役場くらいにしか置いてないとか
893 :
889 :2011/06/28(火) 17:37:21.19 ID:++r8OQE7
そうですね、すごく迷ったところではありました>電話 が、調べてみた感じで有無を明示した表現は少なく、 むしろ、「ある」ようにほのめかす表現はいくつか見受けられました ですので、とりあえずこのお話では「有線式固定電話が存在する」として扱っております そのほかにも勝手設定大目ですが、ご了承お願いします
>>889 超GJ。しかしギュスターヴって実在する人喰い巨大ワニじゃないか
これはメイドさんを(性的な意味で)食っちまうフラグですね間違いない
あるよ。 遠話というネーミングで、こちむいホワイトデー短編。 ソラヤ君の方で。 電車があるんだから、電話もある程度あるんじゃないかなぁ。
肝心の感想忘れてた。 みっちり話がつまってて、今後どう転がるのか楽しみです。 続き期待してます
>>889 読んだー!!
ギュスターヴさんマジ紳士で萌える
教科書を手にアマネに向かって「よ、読めるか?」と
真剣な眼差しで尋ねてるとこを想像したら可愛すぎて軽くイキかけたぜ
アマネさんがプロ奴隷メイドでかっこいい
第1世代でこんだけ調教……じゃない、訓練されたって、実は相当じゃないかとw
63 名前: 名無しさん@自治スレで設定変更議論中 [sage] 投稿日: 2011/06/30(木) 18:25:17.70 ID:VxXPzBJ8 単に書き手を冷遇してきたツケがまわってきただけだろ 居心地がよかったら規制が解けたら戻って来るはず
ゴメン。誤爆した。
>>889 量乙! 内容乙!
ワニがキラッキラした生き物に見えたの初めてだ
ロダが開けないんだけど見れるって人いる?
まだロダが死んでますね ま、もうちょい様子見
ロダも絵板も開けねえ
なんか嫌ーな予感が 期間更新忘れで消されてたりして
自分も見れないなぁ……、むぅ、とりあえず前向きにいこうぜ前向きに
そうそう。前向きにムーンウォークで進もうぜ。
____ / \ / ─ ─ \ / (●) (●) \ ムーンウォークってバックしてるんじゃね? | :::::: (__人__) :::::: | \. `ー'´ /ヽ (ヽ、 / ̄) | | ``ー――‐''| ヽ、. | ゝ ノ ヽ ノ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
404notfoundなんだよなぁ 存在しねーよってさぁ
サーバー料金払わなかったのかどうか知らないがデータ消滅かな…
ロダにあげられてまだまとまってない作品はもはや見ることもかなわないのか…
ロダと絵板が復旧してるぜばんざーい (ノ´∀`)ノ どなたかは分かりませんが、ありがとうございます!
>>914 GJ!わくわくしながら読んだ。続きもすげえ楽しみにしてる!
>>914 文学ワニさん良い! 色つきで場面を想像しながら読ませて頂きました!
GJ 古代語で「だし汁」ワロタ
天然フラグクラッシャーww
919 :
914 :2011/07/05(火) 19:30:17.10 ID:NuucWNUb
申し訳ございません、重大なミスに気が付かないで投稿してしまいました 現在は、既に修正版をアップしております 修正箇所は以下の2点です ・冒頭会話末にセリフを追加 ・「お願い」の後にシーンを追加
2年でここまでなるってマジすげーな いったいどんな教育受けたんだ
重いコンダラ試練の道を的な
もしくは虎の穴的な修羅場
>>914 GJ
おい、早く新しい寝間着買ってやれ新主人w
だし汁シャツはギュスターヴのを拝借? それともアマネの私物? ひよこ色って書いてあったけど脳内で勝手にからし色って読んでたぜw 恐るべしだし汁シャツの影響力。
こんばんは。ご主人様方
ちゃっちゃか書き上げてその時にお返事しようと思ったらこの体たらくです
>>920 一応伏線というか、アマネに関する物語の最高機密です
納得させられる答えかはわかりませんが、そのうちギュスターヴが暴く予定です
>>922 アマネの私物です。体格差が甚大ですのでギュスターヴの服はさすがに着られません
ストーリーにこそ大して絡みませんが、もうちょっと出番があります
それでは、シー・ユー・レイター・アリゲイター第三話「シー・イズ・ノット・アベイラブル・アット・ザ・モーメント」です↓
http://nkmm-mana.sakura.ne.jp/clip/img/337.txt
風呂から上がって来たら新作来てた幸せ ギュスターヴさんかわええw 前掛けをして両手にナイフとフォークを立てて持ち テーブルの前でジタバタしながら「ゴハンまだー」してる SDギュスターヴさんを想像して悶えてしまった それと料理を作る者にとって完食と美味かったに勝る言葉は無いよね アマネも嬉しかろう あと濃緑のウロコにゴールドのチェーンは意外とカッコ良く合うかもと思ったり これで長く伸びた大きな口の上にチョコンとレイバンのサングラスでも載ってたら ちょっとワイルドなワニさんって感じでカッコ良さそう
某料理に大興奮したギュスターヴさんの描写に笑いました 画面向こうから声が聞こえてきそうでw
>>923 GJ
オムライスに興奮しまくりのギュスターヴさんに腹筋切れるかと思ったわw
さて、これからは、ギュスターヴさん出し汁シャツから解放されるのかな?寝間着も買っただろうと思いたい
927 :
名無しさん@ピンキー :2011/07/18(月) 01:33:41.95 ID:8BbXsG6L
>>923 アマネが二年かけて塞いできた心の扉が開いていく・・・・・・ <br> もう本当幸せになってほしいですぜ
ギュスターヴさんは首輪選びに時間をかけたんだろうなぁ
ろだが豊作だww 規制さんも蜘蛛の人も超乙! みんなまとめてもげればいい
新連載乙です! 続き楽しみにしてます。 あと、出来たらもう少し改行して頂けると助かります。
おつ すげー雰囲気が良かったよ
>>930 ブラウザで開いたら凄まじく見難かったので修正しました、本当気が回らなくてすいません。
新しい人の新しい作品だー GJ 狐ェ……、と続き楽しみにしています。
第3話を投下します。
02.奴隷の役目 「――軽く考えてみたんだけどね。はい、これ」 そう言って羽毛の塊――司祭が何処からともなく取り出したのは、一枚の布切れ。 「え、ええっと?」 金髪の少女――セレンはそれを受け取るも、表と裏にびっしりと文字のようなものが書かれているぐらいで、何がなんだか分からなかった。 そんなやり取りが起きたのは、ふたりが雪降る街ノーザンカッツェに入ってから三日目のこと。 「私が今欲しい品物の一覧。それを薬屋のザーツさんと、宝石商のヴィヴィオラさん、果物屋のガルツさんに見せて。三人とも市場通りでお店を出してるから。品物を受け取ってきたら戻ってくること」 「わ、分かりました、けど……」 セレンの脳裏に過ぎるのは、一昨日に誘拐――いや、窃盗されかかった時のことだ。 それを察したのかどうかは定かではないが、司祭は呑気そうに言う。 「面倒が起きそうになったら、下手に抵抗せずに逃げること。君の小柄さなら人込みの中や細い路地を突っ切れば逃げられるでしょ。もしも捕まったら、私の奴隷だってことを相手に言うか、叫んでみて。それでなんとかなる、と思うよ」 「そ、そうですか」 「それとも辞退する?」 「い、いえ。頑張ります」 セレンが司祭の奴隷という身分はまだ仮のものだ。考えてみた、というのは奴隷としての仕事を、という意味だろう。そう考えれば、セレンとしてはこの役目を断るわけにはいかなかった。 「ん、頑張って。地図はこっち。手描きで申し訳ないけれどもね」 「はい」 似たような布切れを受け取る。そこには手描きとは思えないほど正確な地図が両掌ほどの大きさの布にみっしりと描き込まれていた。今いる宿屋から市場への道と、広い市場の中にあるその薬屋と宝石商、果物屋の位置。 セレンは文字が読めないことを配慮してか、それぞれ薬瓶、宝石、果物のマークで記されている。 思わずセレンは司祭の手を見る。そこにあるのは人間とはかけ離れた、ずんぐりむっくりとした羽毛の手。五本の長く鋭い黒色の爪が生えている。 「どうかしたかい?」 「あ、いえ…… じゃあ、行ってきます」 「気を付けてね」 司祭に見送られて宿から出たセレンは、ふと振り返って借りている部屋の窓を見る。 そこに司祭の影がないことについ小さな吐息を漏らし、小さく頭を振ってからセレンは雪降る街の中へと歩き出した。 「ええ、と…… し、失礼します。ザーツさんはいらっしゃいますか?」 セレンが最初に訪れたのは、市場通りを少しだけ路地に入ったところにひっそりと佇む薬屋だった。 閉店中なのではないかと思しき暗い店内にそう声を掛けながら、セレンは一歩を踏み入れる。本当のところは回れ右をしたかったのだが、入口のところに「営業中」と小さな看板が掛かっているのだから仕方がない。 「――なんだ」 そんな低い声色での返事は、暗がりの奥、カウンターの向こうからあった。 ぞぞぞ、と何かを引き摺るような音と同時に、カウンターの影から、ぬう、と長身の人の影が現れる。 「え、えと。司祭さんから、買い物を頼まれまして、その」 言いつつ、セレンはカウンターに司祭から渡された買い物のリストを置く。暗闇の中、それを手に取ったザーツと思しき人影は、しゅるしゅる、とどこかセレンにとって耳慣れない音を発しながらリストを眺め、 「……少し待っていろ」 そう呟くように言うと、ぞぞぞ、と再び何かを引き摺るような音を立てながら、カウンターの向こうを小さく右往左往し始めた。 かちゃかちゃと響く小さな音からして、薬を用意しているのだろう。言われた通りに大人しくセレンが待っていると、ふと声がかかる。 「拾われて、何日目だ?」 「え?」 「あんたのことだ」 声は平坦で、感情は見えない。 相手の正体が分からないことに不安を覚えつつも、セレンは指折りしながら答える。
「十日ぐらい、です」 「そうか」 かちゃかちゃという音が途切れ、次いで布擦れの音に変わる。 「司祭は元気か?」 「え、あ、はい。元気、だと思います」 「ちっ」 舌打ちの音が聞こえたような気がしてセレンは戸惑うも、ザーツがそれ以上の反応を見せないためにどう続けていいのか悩む。 黙っているのが得策だろうと見て、セレンは再び沈黙した。 ややあって、準備が終わったのだろう。ぞぞぞ、という音と共にカウンターを回り込んでザーツがセレンの元にやってくる。 「――ほら、落とすなよ」 「あ、ありがとうござ――っ!?」 伸びてきた手が掴んでいた布袋を受け取ると同時に、その手がつるりと光沢を放っていながら妙にひび割れているのが気になって、セレンはつい視線を上げた。 瞬間、絶句する。暗闇から出てきたザーツの顔は、セレンが想像できる人の頭にはあり得ない流線型をして、全体がつるりとした光沢の鱗に覆われ、剃刀のように眼光が鋭く、口はセレンを頭から齧れそうなほどに大きく――つまるところヘビだったからだ。 渡された袋を落とさなかったのは幸運だった。もし落としたらこの場で喰われるかもしれない――そんな想像がセレンの脳裏を過ぎったのは無理もないことだろう。 「ヘビを見るのは初めてか」 「い、いえ、その、そういう、わけでは」 セレンの様子を見てか、ザーツは薄く口を開き、ちろちろと先分かれした真っ赤な舌を覗かせる。まさしく蛇睨みというやつで、それを目にしながら立ち竦んで逃げることも出来ずに震えて答えるセレンはこれもまさしく睨まれた蛙のようだった。 じりじりとにじり寄って来るザーツに、セレンは思わず上体を仰け反らせる。足が思うように動かないせいだ。 鼻先が触れ合うまであと数センチ。 そこまで近付いておいて、くっくっく、とザーツは笑うとゆらりと踵を返した。 「気を付けて帰れよ」 「……あ、え、う、あ、は、はい。あ、その、お代は」 「気にするな。司祭には借りがあるから問題ない」 それとも、と続けて、ザーツは振り返る。 暗闇の中でそのエメラルドの瞳と、つるりとした鱗に覆われた鼻先だけを光らせて。 「お前が払うか? その身体で」 「――し、失礼します!」 身体で払う。その言葉に恐ろしい想像しか出来なくて、セレンはすぐさま踵を返してがくがくと震える身体を無理矢理に動かしながら薬屋を出た。 その背中にまたひとつ、ドスの利いた声。 「おい」 「は、はい!?」 振り返った視界にあるのは薬屋の入口から覗く闇。 「お前、名前は」 「せ、瀬憐です。宮野・瀬憐」 「そうか。司祭によろしく言っておけ。あと次の用事もセレン、お前が来い」 「わ、分かりました」 「ならいい。 ――行っていいぞ」 その許しを得て、セレンは追われるように駆け出した。 小さな背中を見送って、ザーツはまたくっくっくと笑う。そうしてから思い出したかのように、くあ、とひとつ欠伸をすると、ぞぞぞ、ととぐろを巻いた身体を動かして、カウンターの向こうにある小さなソファに身を沈めた。 セレンが心臓の鼓動を落ち着かせながら次に到着したのは宝石店。 と言っても、そこは彼女が想像していたほど眩しさのある店ではなく。宝石商ヴィヴィオラが経営する店は、服飾店の軒先を借りた小じんまりとした露店のようなものだった。 「あの。ヴィヴィオラさん、ですか?」 「うん? そうよ。何かご用かしら、メスヒトのお嬢ちゃん」 セレンの問いに答えたのは、その露店に売り手として腰掛けていた妙齢のネコの女性。紫のローブに身を包み、フードをやや目深に被って、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。 そんな彼女のフードの奥、そこから覗く青と茶のオッドアイに、セレンは家で父が飼っていたターキッシュアンゴラを思い出す。 可愛く綺麗なくせに、やんちゃだった白毛の猫。見ればヴィヴィオラも雪のような白髪で、この世界のネコ達にもそういう種類があるのだろうかとセレンはつい考えてしまう。 「お嬢ちゃん? 私の顔に何か付いてるかしら?」 「あ、す、すみません。えっと、司祭さんから、これを」 そう言えば、ちゃんとした名前を聞いておいた方がいいのかな、と思いつつ、セレンは慌てて例のメモをヴィヴィオラに手渡した。 それを受け取った彼女は、その綺麗な眼をすっと左から右へと流し、それからセレンを――正確には、その胸元に付けている司祭からのブローチに視線を伸ばした。
「司祭さんたら。 ――ねえお嬢ちゃん、お名前は?」 「え、と。瀬憐です。宮野・瀬憐」 「セレンね。司祭さんに拾われて何日位になるの?」 「七日、ぐらいになります」 お決まりの質問なのだろうかと思いつつも、セレンは律儀に答える。 するとヴィヴィオラはくすくすと笑って、フードの下に嫌に上機嫌そうな笑みを浮かべた。 「な、なんでしょうか?」 「あなた、そんなに司祭さんに気に入られたの? 羨ましいことね」 「そ、そんな、気に入られた、なんて。売るって言われてますし、そんな――」 「それは仕方がないからよ。司祭さんは放浪の身だから、メスヒトなんて連れていけないわ。証拠を聞かせて欲しい?」 セレンの戸惑いを断じたヴィヴィオラは、流し目でセレンに回答を誘う。彼女が頷くと、ヴィヴィオラはその手を伸ばしてセレンのブローチを指差した。綺麗でやや尖った爪のある、ネコの淑女の指先で。 「そのブローチ。赤いのと青いのは司祭さんに貰ったものよね?」 「は、はい。青いのは、別の司祭さんですけど」 「ふうん…… ま、いいわ。そのブローチを私が買い取るとしたら、二つで、そうね。二万セパタの値を付けるわ。慎ましく生きれば四十年ぐらいは収入が無くても大丈夫な額よ?」 「四十年、ですか?」 言われて、ヴィヴィオラの視線に釣られるようにセレンはふたりの司祭から貰った胸元のブローチに視線を向ける。 四十年と言われても、まだ子供であるセレンにはその正確な価値は分からなかったが、それでも自分に与えられるには不相応だということは何となく理解できた。 「そんなものを、ただ売ってお金の足しにしようっていうメスヒトの奴隷に付ける人はいないわ。セレン、あなたは若いし見栄えもいいけど、それでもそのブローチの値段の十分の一もしないと思う。つまり、そういうこと。どう? 分かったかしら?」 「は、はい……」 「だから、司祭さんと別れるまではしっかりご奉仕しないと駄目よ? ふふ、まああなたじゃ司祭さんがその気にならないとご奉仕出来ないと思うけど、ね」 「ご奉仕、ですか」 「そう。頑張ってね? ――はい、しっかり持って、落とさないようにね」 言いながらヴィヴィオラはいつの間に用意したのか、巾着のような革袋をセレンに差し出した。 「あ、ありがとうございます。あの、お代は……?」 「要らないわ。司祭さんにはお世話になってるし」 ふふん、と得意げな笑みと吐息を漏らしながら言うヴィヴィオラ。 ザーツと似たような答えが返って来たことにセレンは少なくない疑問を抱きつつも、彼女のそんな雰囲気に押されて質問をするのは躊躇われた。 素直に受け取るに止め、ザーツからの布袋と共にしっかりと紐を握り締める。 「気を付けて帰りなさい。ここはあまり治安がいいとは言えないからね」 「あ、はい。ありがとうございます。でも、まだ果物屋さんに行かないといけなくて」 頭を下げながら言ったセレンのその言葉に、ヴィヴィオラがその長い睫をぴくりと震わせる。 「どこの果物屋かしら、って、まあ、決まってるわよね。ガルツのところでしょう。違う?」 「そ、そうですけど…… 何か?」 「気を付けなさいね。司祭さんのことだから、欲しい果物ってアレだと思うけど。ガルツなら勘違いはしないと思うけど、あいつのことだし万が一もあるわ。襲われそうになったらすぐに逃げなさい。あと、何か出されても絶対に食べないように」 「は、はい。分かりました」 一体なにがなんだと言うのだろう。セレンは言い知れぬ不安に襲われながらも、ヴィヴィオラに三度頭を下げ、その場を後にした。 その小さな背中を見送りながら、ヴィヴィオラは呟く。 「……それにしても、ねえ」 最後の一軒、果物屋に向かったセレンは、地図で示された場所に近付くにつれて威勢のいい声が聞こえてくることに気付いた。 「――そこの道行くネコのおねーさん! ちょっと見ていってよ!」 少年と青年の間にいるかのような、若々しい男性の声。文句の中身は呼び込みのものだ。
「ほら、あなたのほっぺたみたいに綺麗に熟れたコリルがおひとつ二十センタ! 三つで五十センタだよ!」 セレンが声のする店先を道端から覗き込むと、店主らしき見目麗しいマダラのネコ男性が、呼び込んだネコ女性を口説くかのように商品――セレンから見ればよく熟れた林檎に似た――を売っている姿が見えた。 そして地図と見比べる。司祭の描いた果物らしきマークが示しているのも、丁度この店だった。 「毎度ー! ご贔屓にお願いしまーす!」 早くも商談が終わったらしい。セレンが地図から顔を上げた時には、店主――ガルツのいい笑顔に見送られて、ネコ女性がコリル三つの入った紙袋を片手に店を立ち去るところだった。 ガルツの輝かしい笑顔を見ながら、セレンはヴィヴィオラの忠告を思い出す。どういうことなのだろうと思いつつも、セレンは彼に話し掛ける為に一歩を踏み出した。 途端、ぴくりと反応したガルツがさっとセレンの方を向き、笑顔のまま声をかけてくる。 「いらっしゃい、メスヒトの可愛いお嬢さん! ご主人様に頼まれて何かお買い物かな?」 「え、ええっと、はい。その、こちらを――」 満面の笑顔に気押されながらも、セレンは例によって司祭から預かったメモを差し出した。はいはい、と言いながらガルツはそれを受け取って、視線を滑らせ―― 「……あ、あの、何か変でしたか?」 そうセレンが思わず尋ねてしまうほど、ガルツは表情を一変させた。 まず笑顔が硬直し、次いで真顔に戻ってメモとセレンを見比べ、それからメモを見直して怪訝な顔に。きっかり三秒後に何かに気付いた顔になり、それから苦味の混じった笑顔へと。 「――いや、なんでもないよ。そっか、君のご主人様は司祭さんか。いやごめん、ちょっと早とちりしたよ、うん」 「そ、そうでしたか。あ、私は瀬憐と言います。ガルツさん、ですよね?」 「そうだよ。いやあ恥ずかしいな。ちょっと待っててね、詰めてあげるから」 言って、ガルツは手元にある薄茶色の紙袋ではなく、奥の棚から布袋を持ち出して、そこに商品――一見すれば拳大のココナッツのような果物を詰めていく。 しかしながら数が尋常ではない。一見して十個以上を詰め込み、袋が一杯になったところでガルツは紐を引いて口を縛り、その紐を更に結んだ上でセレンに差し出した。 「はい。ちょっとだけ重いから気を付けてね」 「ありがとうございます」 ガルツは平然と持っていたが、セレンが受け取ると、紐が手に喰い込み、やや腕が沈む程度の重量を感じる。 力を入れ直しつつ、この世界の人は獣っぽい姿をしているだけあって皆、力が強いんだな、とセレンは羨ましく思う。 「その袋だけど。司祭さんのところに帰るまで、絶対に口を開けちゃ駄目だよ?」 「あ、はい。 ……あの、お代は?」 何事もなく終わりそうで、セレンは内心安堵の息を吐きつつ、薄々答えの予想できる問いを発した。 「んー、いや、要らないよ。司祭さんにはお世話になってるからね」 そしてやはりと言うべきか、予想通りの答えを発するガルツ。司祭がセレンにメモと地図の他に何も持たせなかったのは、この答えを予想していたからなのだろう。あるいはセレンが金銭を持つことでのトラブルを避けるため、後払いにするつもりだったのか。 「そ、そうなんですか。 ……あの、司祭さんって、何をしてる方なんですか?」 「ん? 知らないの?」 どうしても気になった疑問を発すると、ガルツは意外そうに首を傾げた。 実際、セレンは司祭と出会ってから移動ばかりで、司祭について知っていることはそう多くはない。 司祭、という役職の意味はセレンにも少なからず分かる。神職の一階級だ。だがそれ以上の詳しいことはセレンには分からなかったし、この世界でも共通とは限らない。 「拾われてから、その、まだ日が浅くて」 「そうなんだ。ふーん。 ……司祭さんはね。というか、シカ全体がそうなんだけれど。彼らはあらゆる神と精霊、魔法に対する祭事を司るんだ」 少し考える風な素振りを見せてから、ガルツは神妙な顔でゆっくりと語り出す。 「僕が知る限り、彼らの神と精霊、魔法に対する知識は凄く深い。種族固有のモノ以外で執り行えない儀式はないんじゃないか、ってぐらいね。だから各国での祭事や、小さな集まりで司祭をやってたり、やってくれたりする」 セレンは地球でのいくつかの宗教を思い浮かべ、それら全ての作法や戒律、教義を知っているのようなものだろうかと想像する。
「司祭さんは、主に後者の方だね。世界中を旅して回りながらやってるみたい。外見はちょっと普通のシカと違うけど、僕の祖父がお世話になった時は普通のシカと同じ姿だったらしいから、何かあったのかな。 ――まあ、代々お世話になってるんだよ、僕のところ」 何かを思い出しているかのように瞼を閉じて、うんうん、と頷きながらガルツはそう締め括った。 「ええと…… 凄い人、なんですか? 司祭さんって」 「だと思うよ。他だと分からないけど、ここに住んでる人なら知らない人の方が少ないんじゃないかな。よく立ち寄るし、あの姿だし」 脳裏に『あの姿』を思い浮かべるセレン。 確かに赤の他人であっても、あの姿は一度見たら忘れられるものではないだろう。 シカの角。タカとワシを足して割ったような頭。フクロウの胴体。クマの手足。背丈は三メートルを優に越し、横幅もあるその巨体は柱というよりは壁の如しだ。 先程のヴィヴィオラのような女性や、目の前のガルツ――男性でもヒトに近いのをマダラと言うらしい――などどころか、まさに直立するケモノである一般男性と比較してもかけ離れた体躯。 『――やあ、大丈夫かい? 落ちてきたところ申し訳ないんだけれども、そこから退いてくれないかな。私のお腹の上なんだ』 初遭遇時の第一声を思い出し、思わず笑いを零すセレン。自分は運が良かったのだろうなと、またひとつ実感する。 「どうしたの?」 「いえ、私、凄い人に拾ってもらったんだなあって、改めて」 「ああ、そうかもね。でも、司祭さんの旅に付き合える?」 「頑張ります。これでも、身体は鍛えてる方ですから」 ガルツから受け取った袋をよいしょと背負い直して、セレンはふわりと笑う。ガルツもそれに応じるように人懐っこい笑みを浮かべた。 「じゃあ、気を付けて帰るんだよ。司祭さんによろしく」 「はい。ありがとうございました」 ひとつ礼をして、セレンは店を出ると通りを宿場街の方へと早足で駆けていく。 その小さな背中が見えなくなるまで見送って、ガルツは笑みをそのままに踵を返した。 「――そこのトラのおにーさん、今日はお肉に付けるロッツオの実が安いよ! どう、おひとつ!」 「ただいま戻りました」 「お帰り」 セレンが部屋に戻ると、司祭は彼女の宣言に声だけを返し、テーブルに向かって何かをしているようだった。 その巨体の背中を丸めて、いそいそと手元の何かを弄ることに専念している。やはり手先が器用なのは間違いないらしい。 司祭が何をしているのかを気にしつつも、セレンはベッドに腰掛けて、司祭が作業を終えるのを静かに待った。 「――ん、ご苦労様。ちゃんと受け取ってきた?」 司祭が動いたのは一時間近く後のこと。丸い背中を伸ばしてから振り向いた司祭に、セレンは受け取ってきたものを順に見せる。 「はい。これがザーツさんから頂いてきたものです。こっちがヴィヴィオラさんと、ガルツさんから。よろしくって言ってました」 「ん、よくできました。じゃあ、取り敢えずしばらくはゆっくりしてていいよ。もう少ししたらご飯を食べに行こうか」 「分かりました」 言いつつ、司祭はガルツの袋に手を伸ばし、爪先でひとつココナッツをつまみ出して、口元に運ぶ。 そして嘴を開き、そのままぽいと放り込んだ。ばきばき、ごりごり、もぐもぐと司祭の頬の辺りが蠢き、しばらくでごくりと一飲みに嚥下する音がセレンの耳にも響く。 「あの、それって、何なんですか?」 「これ? アフアの実だよ。ちょっと癖があって好きな人と嫌いな人は結構分かれるけど、私は好きだね」 「アフア、って言うんですか……」 茶色の筋に覆われたようなその外見は、セレンからすれば父親が何故か大好きだったココナッツによく似ていた。誕生日に作ってくれるケーキの中には必ず入っていて、自然とセレンも好きになった果物のひとつ。 父親と一緒に殻を割って食べていたことを思い出して、ついセレンは質問を続けた。 「そのまま食べるものなんですか?」 「いや? あんまり丸のまま食べるものじゃないんだけど、面倒だから」 「そ、そうなんですか…… 味はどのような?」 「味かい? さっきも言ったように癖はあるけど、アマーレンとかに比べるとさっぱりしてるよ。甘さ控えめ、というやつかな。もうちょっと熟してくると少し変わっちゃうけれどね」 言いつつ、司祭はさらにひとつを嘴の中へと運ぶ。咀嚼と嚥下の音。
「食べてみる?」 「あ、はい。宜しければ、是非」 「ん。ちょっと待ってね」 ひとつを取り出した司祭は、その手の鋭く長い爪をざくりとアフアの実に突き刺した。 「よい、しょと」 司祭がそのまま手を捻るとぱきぱきという乾いた音を立てて実がひび割れ、ついにはぱかりと大きく裂けた。 白い果肉の中に溜まっていた、白くどろりとした果汁が僅かに零れる。しかし気にする風もなく、司祭はそのまま割れた実をセレンに差し出した。 「はい。出来るだけ零さないようにね」 「あ、ありがとうございます」 受け取って、少し悩んだ後にまずは果汁を飲み干そうとするセレン。 割れた実の片割れをお椀のように持ち、口元でそっと傾ける。ココナッツを濃くしたような青臭い匂いが少しだけ気になったが、そういうものなのだろうと構わず飲み干した。 「んっ……」 匂いに反して、確かに口当たりは悪くない。 ココナッツとは微妙に違う、けれども似ている味がセレンの喉を潤した。 「どう?」 「美味しいです」 「それは良かった。はい、スプーン」 「あ、ありがとうございます」 ひとつ頷くと、司祭ももうひとつを取って嘴の中へと丸のまま放り込んだ。 それを横目に、セレンは受け取ったスプーンで中の白い果肉を抉り、ぱくりと食べる。 こちらは固めのナタデココとでも言うべきか。ココナッツよりは柔らかく弾力があり、ゼリーとコンニャクの中間のような触感だった。 もぐもぐとよく味わって食べ、続いてもう一切れを口の中へと運び―― 「……?」 身体が徐々に火照ってきて、次第にワンピースが肌に張り付くほどの汗が流れ、はぁ、と熱い吐息が自然に漏れるほどになり。 「あ、の。司祭、さん……」 セレンがよく覚えているのは、彼にそう呼びかけたところまでだった。
以上です。お目汚し+スレ圧迫失礼。 続きは、私も試しにUploaderを使ってみることにします。
おつ 街が丁寧ですごく素敵だな なんかどきどきしてきたよ
つ、つづきをっ!
ようやく今気付いたんだけど、アオバマキって種蒔きだよね。 つまりイカつい顔して童貞なのか。
しかし彼女いた発言があるぞ …彼女いたけど何もしてないヘタレか
逆に考えろ 文字通り大地に精液を撒き散らす儀式かもしれないじゃないか
随分ダイナミックなオナニーだなww
いやまてよ…まさか地面に穴を掘って其処に突っ込むのか
むしろ、大地に突起を作って突っ込まれるのかも
ああ…ワニがどんどん変態種族にされていく…
インナホワイル・クロコダイル! 今回も美味しそうな卵料理でしたn(ry
俺は毎度毎度卵を食べてると思ったら今回もまた卵を食べていた 何を言ってるのかわからねーと思うが、何が問題なのかと思ったら特に問題はなかったのでまた卵を食べるmgmg
954 :
名無しさん@ピンキー :2011/08/07(日) 16:24:52.22 ID:PqhdahEw
ほしゅ
わにわにGJ どんどん打ち解けて行きますなぁ こいつら付き合っちまえよ!って感じです 続きも頑張って下さい!
ほしゅ
ギュスターヴさんが男前ww ところでせんせいとかユキカちゃんとか鋼の人とかわるいひとは暑さでバテ中でしょうか
ほしゅ
通りすがりの読者ですが、保管庫wiki一部更新しました。 間違いなどありましたら訂正いたしますので、よろしくお願いします。 作者各位のますますのご投稿お待ち申し上げております。 追伸 普段作者本人が更新されていると思われる分と番外関係は、かえってご迷惑になるかと思い更新していません。 よろしくお願いします
一読者だけど、このスレ面白いな
編集乙! 雪見おおかみはすごくまとまりがいいから短編っぽい気がしないでもないんだが、続きますか? 続いたら嬉しいなあーチラッ
今年の夏もおわっちゃったけど、ここの薄い本ほしいなあ 誰か作って
963 :
名無しさん@ピンキー :2011/08/18(木) 16:30:31.62 ID:BbraDYFu
わるいひとの人ですが、正直待ってる人が一人でもいるとは思ってませんでした。 ありがとうございます。書きます。
朱風さんとヨーキター! 待つよ待ちますよ 続きが気になるのに待たないわけ無いじゃありませんか。
藤林丈司は裏切り者
藤波辰巳がなんだって?
朱風さん交友関係広いな どこに顔出してもおかしくなさそう
969 :
とらひと :2011/08/23(火) 03:41:28.74 ID:YvXPGs1F
虎キター! 読んでて軽くびびった。
虎だと…!待ってた! 超乙!
ハンス死んでなくて良かった…
ありがとう、そしてありがとう 虎もう来ないかと思った。
板のレスがストップしてから2週間以上が経過 ( ´∀`)/ アクセス規制? 住民達はまだ夏休みを満喫しているのかな?
……ごめん、書いてるんだけどブランク長すぎて展開が自分で読んでも酷いw 特にエロ描写があまりにも劣化しててどうしようもない。 定期的に書かなきゃだめだなぁと猛省中。 エロゲはいいよなぁ、「あ」と「ん」と「〜」の三文字の繰り返しだけで後は絵と声補正でごまかせるんだからw
>>975 いやいや、書くペースは人によって違うから、あがってくるまでまったり待ってる
焦らず納得いくまでがむばれ〜
( ´∀`)b
>>974 ゴメン。書いて投下しても反応薄いし、正直報われないんで見限ってたわ。
ガタガタ文句言われるよりは華麗にスルーのほうがマシなのは解ってるけどね。
自分以外の人のお話まで反応まばらだと、ぶっちゃけやる気起きない。
同上
上に同じ。 次スレ不要かと存ずる。
定期的に見に来てる全俺が泣いた。゜(゜´Д`゜)゜。
見にきてたっても見てるだけじゃどうにもならんし作者様がもう書きたくないとおっしゃってるわけだから、なおさらどうにもならんね
私はこのスレ好きだし存続してほしいし書くけどね。 正直感想も雑談もされなきゃ投下する気減るし、 なくなってから悲しまれたってねー。
このスレのせいである意味人生が明後日の方向に逝ってしまった 惜しまれる内に終るも良いかも知れない
見捨てないでご主人様ぁ! 一生懸命書きますからぁ!! 書きたくなくないよー ほんとお願いちょっと待ってお願いします。
見限ったのなら次スレがどうとか言わなくていいんじゃないの それはこのスレの住人が決めることでしょ 投下したい人、読みたい人が居るなら続けていいんじゃないかね
続けるのは吝かじゃないが、何かしらのてこ入れはしたい所だねぇ
新スレ立てても、ここ最近のように超低空飛行するようじゃアレだな かといって保守保守だけで場をつなぐのも不毛 なんか雑談でもなんでも燃料投下できる人がいてから新スレ立てた方が良いんじゃない?
職人がうんざりするのもわかる。 催促ばかりで、書いてみれば無反応とか心折れるわ。 しかし新スレは賛成。 ただスレタイ変えた方が、新規も期待できると思う。 猫耳少女限定じゃなく、獣人主人と召使いの創作系スレだとわかるタイトルで あと983はこのスレに会わなくても性癖は歪んでたと思うので諦めた方がいい。
スレタイ変えるなら 【獣人主人】猫耳少女と召使いの物語18【ヒト従者】 あたりか?猫耳少女〜自体はずっとこうだったし変えない方が良いと思う スレタイの文字制限って何文字だったか忘れたから入るかどうかは知らん
つうか、何で流れ止まってるの?新スレ立てるなら立てようよ。 俺はホスト規制なんで立てられないんで、誰か新スレよろしく。 誰も立てないのならこのまま終わろう。 避難所もあるし、サイトもあるし。当面問題なかろう。
文字数入るなら
>>990 のスレタイで立ててもいいのん?
良いんじゃない?表立って反対する人居ないし。
いかん、スレタイ入りきらんかった>< どうしましょ スレタイ変えたほうが良さげではあるんだよね? 【獣人】猫耳少女と召使の物語18【ヒト主従】 あたりではいかがか
なんか語呂悪いな 召使いって入ってるから主従って切っても平気か? それともヒトを切るべきか?
【獣人】猫耳少女と召使の物語18【ヒト】 【獣人】猫耳少女と召使の物語18【主従】 無意味に並べてみた。 どうだろう? 甲乙つけがたいが個人的には【ヒト】を推す
1001 :
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