【ドラマ】セクシーボイスアンドロボ5【マンガ】
書き込めた…かな?
乙ですー
保守
乙です!
>>1 スレたて乙です
この良きスレがマターリ続くことを願う
7 :
熱帯夜 1/6:2008/09/21(日) 21:51:44 ID:G1uomT4V
前スレ
>>442のその後のふたり。エロ要素薄めですがそれらしき描写あり。
新スレになっての投下になってしまい中途半端ですみません。
××××××××××××××
うだるような熱さが支配する部屋の一角で怒り渦巻く嵐が容赦なく叩き付ける。
「もう、信じらんないッ。ロボのバカ!サイテー!
ほんとはあたしなんていないほうがよかったんでしょ!?」
絶対そうだ!とプイッと横を向いて膨れるニコの乱雑に崩れた髪、
鮮やかだった着衣は埃に塗れて薄汚れ、擦りむけて赤く血が滲む白い脚。
こんなはずではなかったのに。
夏祭りデートのロマンチックな気分そのままに濃密な夜のひとときを過ごすはずが。なぜ?
「と、とにかく怪我の治療しようよ」
「あたし、自分でやるからいい」
ひどくトゲのある言い方にビクつきながら、そうはさせてはなるものかと
「いいから、おとなしくしてなさいッ」
と、救急箱を手にやたら偉そうな口振りの俺にムッとするニコを
ベッドに押し付けて座らせ不慣れな手付きで傷口の消毒をしたまではよかったのだが。
「……っ!」
「ごめん、しみる……?」
細い指がぎゅっと捲り上げられた裾を掴み、目を閉じて僅かに表情を歪ませる。
なのに、俺ってヤツは。本当にどうしようもない男で。
治療のためとはいえそのあまりにも無防備に明かりの下に晒されたニコの白い素足の艶かしさに
元来のスケベ心が邪魔をして俺は釘付けになってしまって、
その結果、鈍い動作は余計に疎かになってしまった。
触りたいなぁ。いやいや、今はダメでしょ〜。怒鳴られるだけじゃすまないもんな。
ああ、余裕でスルーできない自分が悲しい。
「ちょっと、どこ見てるのよ?」
そんな俺の煩悩を見透かしたように届く抑制の効いた低音にハッと我に返る。
「え、えっ、どこって、俺は純粋に傷の治療をですね……。決してやましいことなんかッ」
「スケベ」
確信をついた一言を突きつけられ俺は返す言葉もなくただただ愛想笑いを浮かべて
床に跪いたまま項垂れるばかり。
8 :
熱帯夜 2/6:2008/09/21(日) 21:52:39 ID:G1uomT4V
わかってるよ。充分すぎるほどわかってる。この失態は簡単に言い逃れできる問題じゃないって。
ニコが不機嫌になるのも当然といえば当然で、すべての原因はこの俺にあるのだから。
数年ぶりに出かけた夏祭り、しかも好きな女の子と一緒というシチュエーションに繋いだ手には
変な汗を湿らせ、チラっと盗み見たニコのつやつやと光る唇にドキドキしたり、
いつにもましてそわそわと落ち着きがない俺はそのつどニコに窘められたりしていた。
が、露店が立ち並ぶ喧騒に触れた途端、幼い頃の熱き魂が呼び覚まされニコそっちのけで夢中になり
そんな俺に彼女は振り回されてはぐれてしまい疲れ果てて、華やかな明るさを放つ雑踏の渦に
ひとり巻き込まれてしまった。
姿が見えないことに気付き、焦りまくって探しまわりようやく見つけた俺は
呆然と立ち尽くすニコのありえない惨状?に動転して、苦情は後で受付けるから!と
MAXダッシュで家へと連れて帰った。
ずっと黙り込んで俯いたままのニコの顔色を窺いながら。
心弾ませてやって来た夏祭りはこうして笑顔の花を咲かせることなく後味悪く終わったのだった。
憮然としている横顔を前にここはもう誠心誠意、謝るしかない。ただそれだけ。
「ニコ、ごめん。頭下げて済む問題じゃないけど、本当にすみませんでした」
ひたすら額を床に擦りつけて。
どれくらい時間が過ぎただろうか、しばらく経って一呼吸おいたニコが沈黙を破り
「あの…さ、別にそこまで大げさにしなくていいよ。かすり傷だし大した怪我じゃないから」
先程とは違った穏やかな声につられて俺は顔を上げた。
「でも……」
そういうわけにはと続けようとした俺を遮って
「そりゃあ、思い出しただけで頭にくるし、どう言い訳しても問答無用で一発お見舞いしてやるッとか
ここへ帰る間に色々考えてたわけよ。
でもね、ロボだって必死であたしを探してくれたでしょ。汗だくになってさ。
今もこうやって真っ先に手当てしてくれてるし」
そんなあたりまえのことどうして言うんだよ。
ニコに何かあったらって居てもたってもいられなかったんだよ、俺は。
自分勝手に行動して、そのせいでニコに怪我させて。
「つらい思いなんてさせたくなかったのに…」
情けない気持ちが口をついて出て、へこみまくる俺に二コは時折視線を寄越しながら、
ひとつひとつ静かに言葉を連ねる。
9 :
熱帯夜 3/6:2008/09/21(日) 21:53:40 ID:G1uomT4V
「ありがと、ロボ。あのね、これはこれで嬉しいんだよ?
ほんの少し血が出ちゃっただけの怪我なのに気遣って労わってくれて。
そして同じようにあたしの不安や憤りも癒してくれた。
ロボは心の痛みがわかる人だから。
けど、もう一方ではやらしーこと考えてたりするでしょ?
なんか自分だけ怒ってばっかりで馬鹿馬鹿しく思えてきて、拍子抜けしたっていうか…。
やっぱりそこがロボがロボたる所以だよねーって」
俺が何?やらしいってこと?それは否定できないけど。
「よくよく考えたらあの状況下に置かれたロボが熱中しすぎてまわりを
顧みなくなってしまうなんてこと予想できたはずだったのに、
ツメが甘かったってことだよねぇ、あたしも。まだまだだなぁ」
と、ひとり大きく頷くニコの表情はそれまでにあったわだかまりはすでに消えたように見えた。
……もしかして?もしかしなくても。
「…ニコ、許してくれるんだ?」
「んー、今日だけ特別にね。でも、こんなこともう二度と御免だからねッ」
軽く俺の鼻先を弾いてしかたないといったふうに口元を綻ばせた。
和らいだ笑みに胸を撫で下ろして、許してもらった安堵感に嬉しさのあまりニコに抱きつく。
「ありがとう〜、ニコ〜」
「んもう、何よー。そんなにくっ付かれたら暑いんですけど」
俺にとっては喜びに満ちるときでさえニコは相変わらずのクールな言動で、
天と地ほどの温度差を感じさせる。
でも、いいんだ。だってさ、それはあくまでも表面上だけのもので、
天邪鬼な彼女の本心はわかってるつもりだから。
「あのね季節は夏だよ、夏!暑いのはあたりまえでしょ。
男と女はね、そんなこと関係なくふれ合うことが大切なんだよッ。わかる!?」
「ロボは今だけじゃなくて年中そうなんじゃないの?」
うぅ…冷静に痛いところをついてくる。
「な、何言ってんだよ!暑いからこそ、理性という名の衣服を脱ぎ捨てて
迸る情熱をぶつけてアドレナリン全開で燃え上がるんだよッ。
それが夏の醍醐味ってやつだ!」
「いや〜、なんかそれってこじつけじゃん?
あっ、でも一海ちゃんも似たようなこと言ってたな。意外と間違ったことでもないのかなぁ?」
「そうだよ!」
ベッドに腰を下ろしたまま可愛らしく小首を傾げるニコと膝をついて立つ俺とお互いの吐息が鼻に
かかりそうなほどの目線の高さで、それをいいことに俺はじわりと頬を重ねて
「だから……ね?」
襟元から色っぽく覗かせてそそるそこを啄ばむように唇をあてた。
「ちょっ、ダメだって!」
「いいじゃん」
俺を押し戻そうとするニコを制止して、実にいいタイミングではだけている浴衣の裾から、
手を滑りこませると傷口を避けてふくらはぎから太ももを撫で上げる。
10 :
熱帯夜 4/6:2008/09/21(日) 21:54:38 ID:G1uomT4V
「ん…いや、ロボ、やめて…よ」
否定の声は完全なものではなく、虚勢の中に甘さを含み俺を昂らせる。
「待って…あたし、まだシャワーしてないから…」
「気にすることないよ。どうせ汗掻くんだから」
自らを恥じるように身を捩り逃れようとするニコを唇が追いかけ、ときに鼻をくすぐる
柔らかい匂いに虜になり、欲望が溢れだす指先は更に奥を目指して進む。
我慢ならなくなって、脚を割り入れゆっくり体重をかけていった矢先。
「いやー、もーっ!調子にのるんじゃないッ!!」
「いてててッ、ちょっ、痛いってば!」
すべすべした太ももの感触を余すところ無く味わっていた手を思いっきり抓られて
本日二度目の手酷いしっぺ返しをくらう。
「何すんだよ〜、ニコ」
ヒリヒリと感じる痛みを胸に庇いながら、ささやかな抗議をしてみたものの
「がっつくんじゃないの、バカ!少しは自重しなさいッ」
「え〜、そんな俺、がっついてなんか…!」
冷たく見下ろす眼差しに怯んで口を噤む。
「ふーん、あっそう。じゃあ、あそこの引き出しに大量に仕舞いこんでいるものは何?」
へ?あそこ?何だ?とニコの指差すほうへ目をやると……
「あ〜、見たんだ…」
「ええ、見ましたとも、しっかりと。ロボが熟睡してる間にね。
ハサミが見当たらなかったから、あのあたりを探し回ってたら偶然に……」
そっか。バレちゃったのか。
つい先日買い込んだあるモノ。
営業の途中で立ち寄ったドラッグストアで手にした特売品のアレの小箱。
でも、これはさ弁解することではないでしょ?俺達にとって必要なモノなんだから。
「ほら、もう残り少なかったし、ニコだって知ってるだろ?」
「え?あ、まあ、それは……」
突然投げかけられた問いに戸惑ったようなどことなく気恥ずかしそうな表情を浮かべた。
まずいこと言っちゃった?そんなつもりはなかったんだけどね。
「だからって、あんなにたくさん…」
「あって困るものではないよ?第一一晩で使ってしまえる数じゃないし、
さすがに俺もそこまで体力が持たないからなぁ」
「あ、あたりまえじゃんッ」
声を荒げてニコが言い返す。耳まで赤くして。照れてるんだ?ニコらしい。
「だったら試してみようよ〜。ねえ〜、ニコぉ」
と、懲りずに触れようと伸ばした腕を払いのけられる。
「うるさい!このスケベオタク!」
ああもう君はなぜそんなに横暴なわけ?目をつり上げてさ、可愛い顔が台無しだよ?
って俺がそうさせているのはまぎれもない事実なのだけど。
「何よ!?」
「いえ、何でもありません」
鋭い睨みを利かせた威圧感に臆してあえなく降参。
今日は、というか今に始まったことではないけど怒られてばっかりだな、俺。
自業自得とはいえ本能の赴くままに突っ走るのは楽じゃない。
ったくとブツブツと文句をこぼして、乱れた裾を整えるニコを未練がましく見届けながら
心の中で切ない溜息を飲み込む。
空振りにおわったこの続きは後で必ず達成してみせる!と密かな誓いをたてて
俺はへばりつく汗を流そうとバスルームへ向かった。
11 :
熱帯夜 5/6:2008/09/21(日) 21:56:58 ID:G1uomT4V
暖かい柔肌の記憶が残る掌を水しぶきに浸すとひんやりとした刺激が走る。
それは一瞬だけの冷たさで一度湧き上がった熱いものは俺の身体をなかなか鎮めてはくれない。
「あのさぁ、ロボー」
「んー、何?」
遠くからニコの声が扉を隔てて耳に響く。いつもと変わらないトーンで。
「何か着る物貸して」
つい数分前に落ちたカミナリがウソみたいだと思いながら、
「お好きなのどうぞ〜」
自分も同様にゆったりと返事をする。
毎度毎度、ニコと違った意味で口より先に手が出てしまう俺をしょうがないヤツだと
憐れんだのか諦めたのか。
とにかくニコの中ではなかったことにしてくれたんだ。と、おめでたい俺はいいように解釈して
ほっとしながらシャツを脱いでベルトに手をかけたが
「あっと、タオルがないや」
そういえば昼間、ニコが畳んでくれてたっけと暢気に口笛を吹きながら、
特に気に留めることもなく一旦戻った俺は目前に映し出された思わぬ光景に歩みを止めた。
「えーっと、タオ……えっ…あ」
止めざるを得なかったのだ。
そこには、ほどかれた帯がベッドの上から床へと流れ落ちるように置かれていて
こちらに背中をむけたニコのしなやかな肢体が外気に晒され、全貌が明らかになろうとしていた。
束ねられていた髪が無造作に下ろされて肩にかかり揺れる黒髪と浴衣の深い青とが相まって
肌の白さを強調させていて、目が眩みそうなほど。
「えっ、あ、ロボ!?」
俺の存在に驚いたニコが慌てて浴衣の襟を合わせた。
「あ、あのね、浴衣汚れちゃってたから着替えたほうがいいかなぁと思って、だから、その…
これ借りていいかな?」
立ちすくんだまま無言を貫く俺に耐え切れなくなったのかニコは掛けてあったTシャツを拡げて
もう一度問いかける。
「……あの、ロボ?」
心捉えられ熱を帯び沸騰する意識は理性とともにどこかへ飛んでしまい、何も耳に入らない。
白い誘惑に俺はフラフラと吸い寄せられ近付くと迷うことなく力の限り抱きすくめた。
「ど、どうしたの……?」
全身を強張らせるニコに構わずに耳たぶから首筋と唇を落とし、同時に鎖骨に指を這わせる。
「待ってよ、ロボ」
「……ダメだよ。ニコが誘ったんだから」
今度は逃がさない、止められるもんか。
「そんな…ちがっ」
弱々しい反論を唇で塞いで退けるとしだいに小刻みに震え始めたニコを支え、
羽織っただけの浴衣をなんなく脱がせて足元へ落とす。
しっとりと汗ばむ背中を弄り始めた熱い掌に
「ロボ、ね…ぇ…明かりは消して……」
頬を紅潮させ呟くニコは、やや強引に進んでいく一方的な行為を咎めるすべもなく、
もうなんの抵抗もみせずに力なくもたれて俺に身を委ねる。
暗闇に濡れたキスの音が紛れて待ちきれずニコの邪魔なものを残らず剥ぎ取り、ベッドへと沈む。
夜だというのに凍りつくことを知らないむせ返るような熱気は部屋の温度を更に上昇させて、
互いの感情をさらけ出し、玉のような汗が雫となって流れ落ちる。
「やぁ…ん……は…ぁ」
切なげに喘ぎ響くニコの声、絡み合い共鳴する肌と肌。
淫らな感覚が俺を違う世界へと誘う。
離れたくない、離したくない。
蕩けるほどの甘い蜜を滴らせ融合する繋がりを。
「んああぁ…ロボッ……!」
とめどなく押し寄せる熱い波に身体中すべてが侵食され溶けていき
どこまでも途切れることのない快楽に幾度も昇りつめ溺れていった。
12 :
熱帯夜 6/6:2008/09/21(日) 21:58:03 ID:G1uomT4V
月明かりのおぼろげな光りに照らされて、甘美な夢の余韻に息をつき寄り添う。
「あたしね心細かったんだ。ロボがいなくなちゃって…
耳をすませば聞き慣れた声は入ってくるのに、ロボの影は見えなくて。
皆が思い思いに楽しんでいる夜にひとりぼっちになるのはイヤだったの」
俺の胸に顔を埋めニコは閉じていた瞳を開けたかと思うとまた再びゆっくりと閉じる。
「ロボといると強くもなれるけど、こんなにも弱い人間にもなっちゃうんだ。あたしは」
乱れて頬に纏わりつく髪を一本一本撫で梳かし慈しむ。そっと優しく。
「俺、ニコを一人にしたりしないよ。たとえこの先ニコの姿が消えてしまったとしても
俺は絶対、探しだす自信はあるんだ」
「…ほんとに?」
うん、絶対に。
どんなに寂しくて苦しくて憂鬱で眠れない夜でもニコがいるだけで色褪せない景色があることを知った今、
神の配剤のごとく、再び巡りあった天使を見失って彷徨うだけなんてできるはずがない。
「ニコは耳がいいだろ?俺は鼻でニコを見つけだすんだ。嗅覚で発見!確保ってね」
「えー、犬じゃないんだからさぁ。なんか変。
あたしがまるで追われてる容疑者みたいだよ。全く根拠ないでしょ?それ」
くぐもって聞こえる呆れ返った声に細い身体にまわした腕を解いて覗き込み、
「あ、バカにしたな〜。ほんとにほんとにウソじゃないんだからね!」
なんてうそぶきながら。
ごめんね、本当はちょっとだけニコに対抗してみたんだ。
そう告げたら、彼女はまたご機嫌ナナメになりそうなのでやめておこう。
だけど、半分は本気だよ。非科学的とか痛いヤツだと言われるかもしれないけど
俺自身知りえない力がどこかに隠されていて、二コのためならいつか必ず発揮されるはずだと
真剣に考えている自分がいる。
「まあいいや、ロボがそう思ってるんだったら、あたしだけでも信じてあげないとね」
よしよしと意地を張る子供をなだめるみたいにニコは俺の頭を撫でて笑う。
「言ったな〜。そのうち君は俺の凄まじい才能を目の当たりにして、
神と崇めるようになるんだ。くれぐれも覚えておきたまえ!」
「はいはい。えらいえらい、すごいねぇ」
「くぅ〜」
結局、また適当にあしらわれてしまった。小憎たらしいヤツ。でも、愛しくてたまらない彼女。
傍目から見ればどうってことない些細なやりとりに緩やかに浸って、幸せに酔いしれる。
確かめあったばかりの存在を深く心に刻み込むかのように再び熱い抱擁を交わし
「来年も一緒に夏祭りに行こうな」
「うん。約束ね」
どちらともなく指きりをして願う。次の年もその次の年もずっと永遠に。
「ニコ」
微笑み顔を寄せてくっつけたあった額に口づけるとニコはうっとり俺を見つめて潤んだ瞳と唇で訴える。
「ねえ、ロボ…もっとキスして」
君が望むなら何度も何回も飽きるほどキスをしよう。
小さな蕾のようにどこか儚げで、ときに大胆に俺を惑わせる不埒な唇。
ふたつの鼓動が重なり合って火照る肌にキスの雨を降り注ぎ、闇を焦がす灼熱の世界は果てしなく続く。
無限に広がる宇宙の片隅で。
終わり
超GJ!
陰と陽の使い分けがすごいです!
文学作品読んでるみたいだった・・・
ロボは良くも悪くも、熱中すると周りが見えなくなるんだよな〜
そこが魅力でもあるんだけど
もうニコを探し出さなくてもいいように捕まえててね…
新スレ初投下乙そしてGJです!
しばらくご無沙汰しているあいだに新スレですね!
只今更新滞り気味の保管庫管理人であります。(すみません!)
1さん乙です&7の職人さまGJです。
保管庫もテンプレに加えていただきありがとうございました。
前スレで少し話にでていた本スレに書き込みのあった続編話?ですが
まとめに保管させてもらったらまずいでしょうか?(過去ログに埋もれたままなのも惜しいので)
作者の方にご連絡とれて了解いただくのがいいんですけどね…。
では長々と失礼しました。
5スレ目も楽しくマターリやっていけたらいいですね。
落ちちゃイヤなのだー!
取りあえずほしゅしておくでつ!
前スレ落ちてたのね‥orz
18 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 22:49:43 ID:FJIN27bU
保守age
19 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 07:02:10 ID:D6gmaJ++
保守
エロ無し一応スパイ物。
むーちゃん絡みですが少しばかり悲しいお話になってしまいました。ファンの方ごめんなさい…
あとかなり長いので3回に分けて投下します。適当に間を見てしますので他の書き手様も
気になさらず投下があればお願いします。
* * * * * * *
【prologue】
朝の林家は忙しい。
朝食の用意をする母、それを摂るのもそこそこにメイクにかかりっきりの姉。そんな中
身支度をさっさと整えてニコが席に着くと、父はコーヒー片手にテレビを見ている。
『……こちらの教会では、未明建物の前に現金で1億円相当が置かれてあったとの事でした。
また別の養護施設でも同様に現金で8千万入りのバッグが……』
「ああ、またか。最近流行りの『足長おじさん』てやつだな」
「えっ?何それ」
「いや、そういう施設なんかにな、ポンと大金を置いていく事件?つうのが何件かあるんだと。
きっとどっかの金持ちの仕業だな。盗難届けもないそうだからねずみ小僧じゃなくて
足長おじさんって言われてるんだそうだ。何だ二湖知らないのか?」
「知らない」
姉の一海はそれを聞いて
「素敵よねぇ。そんな大金を惜しげもなくポンと寄付するなんて、名前も告げない所が
いいわよねー。どっかの資産家とか、富豪とか?ジョニー・デップみたいな人だったら……きゃー」
なんて騒いでいる。
「ないない」
それを見てこっそり突っ込むニコ。
「そうねえ、きっとどっかの物好きのお金持ちにしたって、きっとおじいちゃんよぉ。
そんな映画みたいな話……あったらどうしましょ?ねえお父さん」
「どうしようって……何お母さん、自分がどうこうするつもり?なに急に顔塗りたくって、ねぇ」
「えっ!?いや、やあだそんな……」
「ちょっとなに考えてんの?ってお母さん、私の口紅使わないでー!」
「おい俺を忘れ……」
「いいじゃない貸してよ、新色」
相変わらず騒がしい家族だ、と思う。化粧品を巡って騒ぐ母娘、そばでおたおたする父。
もうとっくに変わってしまった画面を眺めながら何となく、昔読んだ物語を思い出す。
「足長おじさんか……」
イメージしていた通りの挿し絵にあった、長い手足に高い背丈の紳士。
「ちょっと似てたかなぁ……あいつに」
元気かな、と想う。心の片隅の輝きを。
* * *
ガッシャアアアン!!!
やった。やってしまった、と思った。
信号待ちで歩き出した途端に躓いて、得意先に運ぶ途中の部品をバラまいてしまった。
「うあぁぁぁ……やってしまったっ!!」
渡り急ぐ人の足に慌てながら彼は大事な商品を拾い集めていた。
チラチラと同情的な視線を送りながらも他人には構っていられない人間の、何と多い事か。
わかってはいても
「みんな冷たいよなあ……」
と愚痴の1つでもこぼしたくなるのも無理のない話だろう。
その時、彼の目に地面に落ちた物を拾う華奢な白い手が映った。
「大丈夫ですか?あの、これで全部ですよね?」
「あ、ああ、すっすいません。ありがとうございマックス」
「マッ……?あ、いえ、それじゃあ」
箱に拾った部品を入れると、その手の主は微笑んで小走りに去っていった。
「可愛いなあ……きっとデートだろうな。遅れなきゃいいけど」
悪い事しちゃったなぁ、と呟きながら肩を落としてまた足を速めた。
「うう、また騙された……」
公園のベンチにどんよりとした空気をしょって座る男が1人。
須藤威一郎27歳独身。金無し、オタク、彼女無しの三重苦である。
「オタクで悪いかっ!?」
……あ、すいません。と、語りに対するツッコミはさておき、また出会いの為の
某手段に失敗した模様。
あーあ、と手元で愛してやまないマックスロボをいじりながら
「よし、こうなったら再度挑戦するのみ!」
と気合いを入れて立ち上がろうとしたその時、歩いてきた2人組に目が止まった。
女子高生が仲良く喋りながらこちらへ向かってくる。
何気にその顔を見ると
「あっ」
と思わず声を上げた。
言われた相手も声の主をちらりと見て同じように驚き、声を出す。
「ああ、あなたこの前……」
そうだ、この前助けて貰った……いやしかし、と彼は思う。
それよりも、その側にいるもう1人に目を奪われていた。
「に、ニコ!?」
同時に彼女も驚きを隠せないようだった。
「ロボ?」
もうすぐ4年。会わなくなった、あの日から。
「まさかニコの知り合いだったなんて……」
片側にロボ、反対側にはニコとその友達という女の子が座っていた。
「へえ、むーちゃんが言ってたドジサラリーマンてロボの事だったんだぁ」
「ニコってば……」
「ドジ!?ドジって言ったな!それ絶対今、今付け足しただろう?」
「何よ。何か間違ってる?」
「いいえ……」
間違ってないんだから仕方がない、とそれ以上は逆らわずに口を尖らせてそっぽを向いた。
だが、こっそりとロボは微笑んでいた。約4年の隙間などなかったかのように
ニコはニコらしく、その姿を失ってはいなかったから。
「あの、今日はここで誰かと?」
むーちゃん、と呼ばれた彼女は場を取りなすようにロボに話を振った。制服だと
随分印象は変わる。
「あ、いやあの、一応待ち合わせしてたんだけど……」
「来ないの?電話すりゃいいじゃん」
ニコの言葉に、そうなんだけど、と小声で呟きながら気まずそうに目を逸らす。
「ああ、初対面だからだ?」
全てを見透かしたようなニコに返す言葉もなく、ぬるくなりかけた缶ジュースを啜りつつ
『あ、また呆れてる……』
と、若干の情けなさを感じながらも何故かその方が良かったような気がしてしまっていた。
「あ、家から……ちょっとゴメン」
ふいに鳴りだした携帯にニコは席を立った。残されたのはロボとニコの友達、むーちゃん。
『何を話したらいいんだ?女の子と2人なんてそうないからなぁ……。しかし可愛いなぁ』
ニコなら変に意識しないで自然に話せるのに、なんて考えていると、彼女の方から
声が掛かった。
「あの、それ持ち歩いてるんですか?」
「あ、ああこれ?マックスロボって言うんだよ。他にも色々あるんだけど、こいつは
特別なんだ」
「へえ、レア物、とか?」
「うん、それもあるけど、これはニコのお陰で手に入ったんだよね。言わば友情の
証というか……とにかく大事な物なんだよ」
「宝物なんですね」
微笑むその顔は、ロボには何だか嬉しそうに見えた。
「ニコとは随分久しぶりなんですよね……可愛くなりました?」
ぶっ!とロボは飲んでいたジュースを吹きそうになってむせた。
「なん……」
「高校生になってから何度か告白されたみたいですよ。結構もてるみたい」
「あ、そうなんだ。ニコがねえ……ふ〜ん」
「気になります?」
悪戯っぽく笑いながらむーちゃんはロボの表情を確かめる。
ロボは落ち着かない様子でマックスロボを握り締めるが、無意識に力がこもった。
「ふふふ、大丈夫。安心して下さい。私もずっと何で彼氏作らないのかなって思ってたん
ですけど、多分自分でも気が付いてないだけなんじゃないかな。あんまり男の子と喋る
方じゃないんですけど、ロボさん?でしたよね、何だか納得したって感じ、うん。
だから頑張って下さいねっ」
「は、はあ……」
知らぬ間に励まされながら、何だかロボの気持ちは複雑に絡まっていった。
「あ、メール……ごめんなさい」
今度はむーちゃんが携帯を手にした。急に訪れた沈黙が今のロボにとっては救いだった。
「ごめんね。お待たせ」
戻ってきたニコの姿を改めて見ると、確かにあの頃とは違い、伸びた背丈と大人びた
顔つきや短めのスカートから伸びた脚に、無意識にロボの気持ちがかき乱されていた。
「なに?」
「あ、いや、別に」
どうしよう、変に意識してしまう。
ロボの喉はからからに渇き、あっという間に缶は空になっていった。
「あ、ニコごめん。彼からなんだけど、この近くにいるみたいで、その……」
「いいよ。デート?」
ニコの言葉に顔を赤らめて頷くと
「あの、じゃあ私これで……ロボさん、後はよろしくお願いしますね♪」
ニコッと笑うとむーちゃんは2人を残して行った。
「なに?何なの?……変なの」
「さ、さあ?」
いきなりニコが違う女の子に思えてきて、ロボは戸惑いながらも必死で平静を装っていた。
いざ2人きりになると何となく落ち着かなくなって、ロボはニコを促して歩き出した。
特に何をするわけでもなくブラブラしていたが、
「あっ」
とニコが小さく叫んだのを聞いてその方向へ目を向けた。
むーちゃんとその彼氏らしい男を見たのだ。メールを受けた時のように彼女の顔は赤く、
優しい笑顔をしていた。
「むーちゃんいいコでしょ?」
「え?うん、そうだな」
「あたしね、ロボと会わなくなってから色々あって、ちょっとクラスから浮いたり
した事あるんだよね。でもその時支えてくれたものの1つがむーちゃんだったんだ。
最初は戸惑ってたけど、結局は味方でいてくれた」
「そうか……いい友達だな」
きっと色々あったんだな、俺の知らない辛いことや、悲しいこと。
「他にも何かあったの?御守りとか」
「えっ!?あ……うん、まあね」
でもロボには内緒。
そう言ってニコは先を歩き、笑った。
「そんな事言われると……気になるじゃないかぁ!」
後を追って走るロボとふざけ合いながら、ニコの心も急速に過ぎた時間を取り戻していった。
「ロボいる?」
「わかってんでしょ?」
それからまたニコがロボの部屋に足を運ぶようになるのにも、時間は掛からなかった。
ロボは相変わらずのロボット貧乏で、更に増えたフィギュアに狭さを増した部屋で
1日中一緒に過ごす事もごく自然な事だった。ニコも当たり前のように部屋を自由に使っている。
そんなある日。
「あ、雨降ってきた?」
「えっ?……あ、俺さっき手すりに洗濯物干した!!」
慌ててロボがベッドに乗っかって窓を開けると、いきなり強く降り始めた雨が
吹き込んでくる。
「うわっ、濡れる〜!!」
「大丈夫?手伝うよ」
2人で慌てて掛けてあった衣類を取り込んでホッと一息ついた時だった。
「ニコありが……うわっ!?」
「きゃっ!!」
洗濯物の絡まったピンチに躓いてよろけた拍子に、ロボのその体はバランスを
崩して前のめりに倒れてしまった。
そして気が付くと目の前にニコの顔があった。
しばらくの間固まったままどちらも動けずにいた。
「……っ!?ごっごめん!」
やっと我にかえるとロボは慌ててニコの上から飛び退いた。
「あ、うん……」
偶然とはいえ、ニコを組み敷く形になってしまっていたのだ。
ニコは再会してからベッドにむやみに乗っからなくなった。互いに何となく無意識に
避けていた領域で起きた必要以上の接近という出来事に、今までにない緊張感が生まれていた。
「あ……あたし、もう帰ろっかな」
「あ、うん。遅いから送るよ」
その後家までニコを送り届けたロボは、密かにある決意をした。
「ニコ、来週さ、空けといてくれる?」
2人にとってその日がどんな意味を持つ物か、ニコにもわからない筈はなかった。
静かに頷いて手を振るニコを見つめながら、ロボは拳を握り締める。自分を奮い立た
せるために……。
だが、この日こそが後々重大な意味を持つことになってしまうとは、どちらも知る由はなかった。
約束の日を明日に控えたその日、ロボは普段より遅い時間に帰路についていた。
「はあ〜、疲れたなぁ……。でも今日休日出勤したから明日は休めるぞ。いや、何がなんでも
休んでやる!」
大事なその日を無事に迎えるために、残りの仕事を頑張ったのだ。
その時だった。
「キャーッ!だ、誰か!!」
すぐ近くで女性の悲鳴がした。
その方向へ足を走らせると、突き飛ばされて地面に倒れ込んだ女性がいる。
「あ、あの男が後ろからぶつかってきて……」
見ると走り去る人影があった。慌ててその後を追う。
「待てー!」
必死で走り、相手に追い付くと肩を掴み、その勢いで転倒した。
だがその顔を見て怯んでしまい、一瞬の隙を突いて逃げられてしまった。
「そんな……」
ロボは中身のぶちまけられた男の物と思われるバッグをそのままに、呆然とその場を立ち去った。
その夜遅く、ロボを訪ねる者があった。
「須藤さんですね?定期落としてましたよ」
ロボは静かにそれを受け取る。
「側にあったバッグの中身なんですが……」
無言のままロボは首を振った。
翌日ニコは約束の場所でロボを待っていた。
だが時間を過ぎても一向に現れる事はなく、携帯も全く通じなかった。
「何してんのよ、もう!」
2時間を過ぎた所でとうとう痺れを切らしたニコは店を後にした。
まっすぐ向かったロボの部屋で目にした物は、信じられない光景だった。
いつかの様に白い布だらけの主を失った部屋は、冷たく暗かった。
ショックを隠しきれずに、へなへなと階段に座り込むと無表情のまま俯いた。
涙も出ない。
だが、しばらくしてその耳に届いたのは、更に衝撃的な内容だった。
『……ちょっと変わってるけど、いい人そうだったのに』
『ねえ。でもあれでしょ、ああいう人形とかって結構高いらしいじゃない?噂じゃ
とんでもない額つぎ込んでたらしいわよ』
『人は見掛けによらないわね』
「そんな……!?」
信じない。そんな話、信じられるわけがない。
「ロボが、警察に……」
もう一度ガラス戸越にテーブルに置かれたマックスロボを見つめた。
** 中編へ続く **
続きが気になるよー
wktk
ロボがそんな事をやらかすような人間でないのは自分がわかっている。
どんなに貧乏でも、そんな事をするくらいなら道端の草を摘んででも頑張るような男なのだ。
ニコはその足で、吸い寄せられるようにとある場所へ向かっていた。
『地蔵堂』
主を失ったこの場所もまた、ニコの心を切なく締め上げる。
「結局あたしって、1人じゃ何もできないんだなぁ……」
誰かと関わっている。どうしようもなく世の中と関わっているのに、こんな時
どうやってそれを生かしていいのかわからない。
佇んで唇を噛みながら俯くニコの耳に、聞き覚えのある歌声が届いた。
「よお、久しぶりだな。何か面白い事になってるみたいじゃん」
懐かしいその姿に思わず過ぎた時間を忘れて走り寄った。
「ロボを助けたいの!力を貸して、お願い……よっちゃん!!」
髭面を弛ませて彼は笑った。
「本当にお前がやったんじゃないのか?」
「ち、違います!」
「でもこれはお前のだな?」
ロボは今警察にいた。
あの時定期を現場に落としたのに気づかぬまま帰宅し、それを証拠品として出された。
「じゃあ先週の日曜、どこにいた?」
「日曜……は、家に」
「誰か証明する者は?」
あの日一緒にいたのは……。
「いません。僕1人でした」
もう何度もこの繰り返しだ。数時間に及ぶやり取りにかなり疲れていた。
あの時の女性もまともに顔を見ていない為に、逃げたのがロボではないのだと
いう証明もできない。
「いい加減に……」
その時ドアが開いて入ってきた刑事の耳打ちに取り調べ官の顔色が変わった。
「……面会だそうだ。とりあえず一旦終わりだ」
わけがわからず連れて行かれた部屋で待っていたのは。
「あ……あ、な、何でっ!?」
「何でとは何だよ。せっかく差し入れ持ってきてやったのに。お前こそ何てザマだよ」
「よっちゃん……」
周りを確認すると声を低くしてロボに詰め寄った。
「正直に話せ。ニコが心配してる」
ロボはその言葉に涙を堪えた。
ニコは1人、学校の屋上で手すりにもたれて佇んでいた。
「バテレン、レンコン、トマトはマーックス……」
拳を振り上げて呟くが、徐々に声は力無くか細くなってゆく。
「ロボ……どうして?」
旅先に社長の真境名を残してきたと言う名梨。
『お前等の事は常々社長も気にしててさ、時々調べさせて貰ってたんだよ。大事な
スパイ仲間だからな』
まるでニコには救世主のように思えた。その真境名の名を使い彼は警察で
ロボの事も調べた。
何かを隠している事はわかった。だが、ロボから聞き出したはずの答えを教えてはくれないのだ。
『俺がお前に話しちゃったら、あいつを裏切る事になるんだよ』
でも知りたい。何故ロボは私には何も話してくれないのだろう、とニコは途方に暮れた。
「ニコ、ここにいたんだ?」
「むーちゃん」
声を掛けられて初めて気が付いた。
近づく足音さえ聞き取れない程、今のニコは沈んでいた。
「ねえニコ、さっきのって時々呟いてるよね?あれってなんかのおまじないなの?」
紙パックの牛乳を飲みながら、2人は並んで手すりにもたれて座っている。
「ああ、あれ?あれは……まあ、そんなもんかな。ある人に教えて貰ったんだ。
でも出鱈目なんだよ?適当に他の人のために作ったやつなんだって」
「ふーん。……でもニコにとっては大事な言葉なんだよね?」
「まあね」
ずっとむーちゃんと並んで支えてくれた、ロボには内緒のもう一つの物。
「ところでロボさんは元気?」
「へっ!?」
「だってそれはロボさんの言葉なんでしょ?」
「なんで、わかるの……?」
話した事ないのに。ロボの存在だって、再会したあの日まで教えてなかったのに。
「わかるよそれ位。ニコの事話すあの人って、すごく優しくて綺麗な目してたの。
そんな人と一緒にいた時のニコも、私でさえ見たことない位自然で……きっと
すごく信頼しあってるんだろうなって思ったんだ」
「そうかな」
「そうだよ。あの人もニコをずっと忘れなかったようにニコの中にもあの人がいたんだよ。
あの言葉……あれを時々呟くようになって、少しずつニコ自身も強くなっていった気が
するの。ロボさんが護ってくれてたんだね」
そうだ。自分はロボを忘れた事は1日だってなかった。それは確かに挫けそうな時、ニコを
奮い立たせてくれた魔法のような物だと思ってきた。
「好きなんでしょ?素直になればいいのに」
「えっ!?そんなこと……だってあっちは10歳上なんだよ?あたしの事なんか未だに
子供としか思ってないかもしれないし、友達だし。それよりむーちゃんこそ、
ちゃんと紹介してよ」
すると今まで明るくはしゃいでいた彼女は急に寂しげな目をして俯いた。
「……なんかね、私の片想いぽいんだよね。仕事の事とか、住んでる場所とかあまり
話してくれないの」
「そうなの?どこで知り合ったの、そんな人」
「この前学校帰りに携帯落としたのね。で、慌てて来た道を戻って探したんだけど
なかなか見つからなくて……そしたら拾ってくれてたの。返して貰ってその時は
それだけだったんだけど、それから何日かしてまた道端で会って、今度は私が彼の
落とし物を拾ったの。すごく慌てていて『助かった』って。その時のアリガトウ、
が何だか嬉しかったの。一目惚れ、かな」
恋は理屈ではないという。何がきっかけになるかわからないのだ。
ロボとあの人もそうだったのだろうか、とニコは何気に考えて、今までになく
ロボの事を想う心が痛むのを感じた。
チャイムがなり2人は屋上を後にする。
「ねえニコ、ロボさんてさあ……」
続く言葉にニコは思わず飲み干した紙パックを握り締めた。
『ニコか、どうした?』
人影のない廊下の隅で電話を掛ける。
「……知りたいの。助けたいの」
『お前には酷かもしれねえ。知ってしまうと後戻りできない……それでもいいんだな?』
「あたしが今度はロボを護りたいの。だから何でもする!」
電話の相手――名梨の言葉に、ニコは力強く頷いた。
『……尚任意同行を求め事情を聞いている会社員は容疑を否認しており……』
テレビでは連日「足長おじさん逮捕」のニュースが流れている。
あれからロボの家の周辺に時々足を運んではみたが、手がかりなど得られるはずもなく。
ニコは詳細を調査中の名梨からの連絡を待っていた。
ロボが警察に拘束されてしまってから、例の事件はぴたりと治まってしまった。だから尚更
疑いは深まってゆく一方なのである。それ故にニコも焦っていた。たが、どうにもできない。
ふとテレビを見るとお金が置かれていた教会が映っていた。
「神様……」
何気に呟いた自分の言葉に何かを思い付くと、座っていた椅子から立ち上がった。
「二湖、どこいくの?もうすぐご飯よ」
「どこ行くんだ?」
「……約束」
父の質問に独り言のように答えてドアを開ける。
「一海はまたデートか?……お母さん、肉余るかな?」
「もう!いやしいわね」
「いやらしいとは何だ!」
「誰も言ってないでしょー」
変わらない日常。その中にあってニコの世界は確実に変化を遂げようとしていた。
「神様、どうかロボを返して下さい。……ううん、きっと助けます」
神様との約束。
神社で必死に手を合わせながらニコは祈った。
「あたし何でもします。頑張りますから、だから……」
ロボを返して欲しい。
「本当に何でもするか?」
背後からの低い声。
「よっちゃん……」
「ちょっと面白い事が解ったんだ。来い、話はそれからだ」
顎をしゃくって促すと階段を降りてゆく。その後にニコも続いた。
「どこ行くの?」
「元・地蔵堂」
以前とは違い、がらんとした店内にぽつんと置かれた机を挟んで2人は1枚の 地図を見ていた。
「この赤い×印がお金の置かれてた施設ね?」
「ああ、で、こっちが金額のリスト」
置かれていたというそれぞれの大金の額の書かれた紙を渡され、それを眺めていたニコの
目にふとある物が留まった。
「なに?この日付」
よく見ると地図の×印のそばに書かれている小さな日付とは別に、青い△印が幾つかあり
それにも日付が付いている。それが金額リストにもあるのだ。
「お、気付いたか」
「ていうかこのリストの日付、地図のと同じのがあるよ?ねえこの△印ってなに?」
「惜しいな。何か気づかないかな?ん?」
「何かって……」
「んじゃヒント」
そういうともう1枚住所と名前、その肩書きの書いた紙が渡される。
「まだあんの!?……んーと、あれ?この日付と住所多分一致してる?それにこれってみんな
どっかの事務所とか偉い人の家とかばっかり……」
まさか。
「正解。つまり、その金額リストの通りの額がそこの△印の場所から消えている。つまりこれは」
「……盗んだお金?でもだったら警察が」
「だから、内緒にしときたいお・か・ねなわけだよ。下手に届けたら自分らもヤバいからな」
「じゃあそれをわかってて……」
「だから捕まえられないんだよ」
痛い腹探られたくないからな、と名梨は呟く。
リストを無言で眺めながら、ニコはある事に気付いた。
「あ、盗難のあった日とお金が置かれてあった日ってよく見たらみんな……土日に集中
してるよ。そっか会社は休みだし、外出してたら自宅でも……」
そう言いつつある日付に目が止まる。
約束を交わした日。その日も日曜日だった。
「5月15日……」
翌週の日曜日、待っても待っても来なかったロボ。そしてそのまま……。
「あれ?」
その日もとある場所で大金が無くなっている。が、問題はその時間帯。
「15日……って、あの日はずっとあたしといたよ?それ以外の日も、ここにある日付は
ほとんど。時間だって……」
犯行時刻もほぼ絞り込んであった。その時間帯のほとんどはロボは自分といたであろう
時間だ。だったらアリバイが……。
「なんで?ロボ……」
「それを証明しようぜ」
名梨が肩を叩いて言った言葉に、無言のままニコは頷いた。
** 後編に続く **
最後投下します。長くてすみません…
今更ですが、某誌のロボのヒトの言葉から思いついたものです。もう少しだけお付き合い下さい。
カチャリ、と音がして扉は開いた。暗闇の中で息遣いだけが聞こえる。自らのそれさえ耳障りに
思いながら男は中を開け放つ――が。
「なん、だ、と……?」
その瞬間パッと明かりが灯り、机の並ぶ事務所に人影が浮かび上がった。
「よぉ、流石だ。これだけの金庫をあんな短時間で破るとはな。……ま、俺のプロフェッ
ショナルな腕前には負けるけどよ」
「ちょっとー何言ってんの?あたしだって役に立ったじゃん!」
「まあまあ。確かにお前がいたらあれは必要ねえなー」
髭面の男が、外された壁の額縁裏の空の金庫の前に呆然と立ち尽くす賊の首にかかる
聴診器を指さしてニヤリとする。その視線の先にいるのはまだ若い女。
「なんだお前ら……?」
「正義の味方?つか、まあスパイとか言われてっけど。そろそろこの辺りに来ると睨んだ俺の勘も
まだまだサビちゃいねえな。……ところでそちらも良かったらお顔を拝見できませんかねぇ?」
「くそっ!」
賊は逃げようと女スパイの脇をすり抜けた。
「きゃっ!?」
だがそれより早く男が身を翻し、賊を捕まえ床に押し倒し帽子を剥ぐとマスクを取った。
「く、そっ……」
悔しげに呻いて上げた顔を見て、暫くの間訝しそうに見ていた女が
「あっ」
と声をあげた。
「あ、あなた……嘘っ!?」
女――ニコは驚愕の表情を浮かべて晒された賊の顔を見ていた。それを怪訝そうに見ていた
賊が今度は顔色を変えた。
「お前……は」
互いに苦しげな顔で見つめ合う2人の間で男スパイ名梨は吐き捨てるように呟く。
「足長おじさんつうよりねずみ小僧だな。大した義賊だよ……。ニコ。これが俺の言ってた
酷なことってやつなんだよ」
「……あたし、むーちゃんに何て言えばいいの?」
震える唇からやっとの思いでニコの絞り出した言葉に、親友の恋人である筈の男はただ
黙って俯くばかりだった。
「どうしてこんな……」
「は?何だよ。どうせこんな金、汚い事に使われるんだ。その証拠に警察に届け出る事も
出来ねえんだ。だったら役に立ててやった方が金も人間も喜ぶだろ?いいじゃねえか。
……それで助かるんなら」
「そうかもしれないけど。でもそんなお金で幸せになんてなりたいって思うのかな?
貰った子供とか、感謝してると思うんだよね。……この前、通った施設の庭で聞こえたんだ。
ありがとうって言いながら、あなたに届くかわからない手紙や絵を書いてる子達の嬉しそうな
声。もしそれがこういう事だって知ったら……」
「お前に何がわかるんだよ!!」
いきなり大声をあげてニコを睨みつけた。その顔は若いであろう年齢にはそぐわない程
疲れているように感じられた。
「何がわかるんだよ……お前にも、あの娘にも」
「あの娘って……」
ニコの脳裏に親友の恋する笑顔が浮かび上がる。
「……俺は、あの教会で育ったんだ」
「あの教会って、ニュースで出てた?」
「ああ。産まれてすぐにあの前で捨てられてたらしい。孤児院もやっててな、そこでそのまま
でかくなった。神父様は優しかったよ。みんな仲良くてあそこは幸せな場所だった」
名梨も黙って腕を組んだまま男の話を聞いている。
「……でもな、世間は自分らより足りない奴らを見下して踏みつけたり傷付けたりしなきゃ
気が済まねえんだよ。俺もずっと外では蔑まれバカにされてやってらんねえって思った。
親がいねえのは俺のせいじゃねぇ、施設育ちだって……。そういうのが何もかも嫌んなって
グレて、挙げ句あそこを飛び出しちまった」
「そんで、あっちの道に入っちまったわけか」
「……生きていかなきゃなんなかったからな。元々手先は器用なんだ。飛び出した原因も
ケチな万引きだしな。絶対失敗した事無かったのに、仲間がしくじりやがった」
自嘲気味に笑いながら伏せた目は、ニコには辛く重く刺さった。
「なんでこんな事しようと思ったの?」
「ある日ふらっとこの街に戻ってきたら、教会が借金に追われて潰されそうになってるって
知った。確かに俺がいた時からギリギリだった筈なんだ。ワルになったのはそれもあるしな……。
だがあそこが無くなったらみんな行く所がなくて、父さんが……神父様が悲しむだろ?
だから、手近な腹黒社長の裏金を今みたいにして贈っておいたんだ」
「じゃあ、それでやめときゃ良かったんじゃねぇか?」
「ああ。そのつもりだったさ。……けどよ、神父様がさっさとそれをサツに届け出やがったん
だよ!ったく、ばか正直なんだからよ。だからまた違う所捜してやってやった」
「ねえ、他の施設は?」
「あんまりやると教会そのものが疑われっからな。だから同じ様な施設捜して同じ様に……。
ついでだよ、ついで。だからマスコミで良いように取り上げられてとんだ美談にされちまって
こっちも迷惑してんだ。笑っちまうぜ『足長おじさん』」
ふはは、と膝を抱えて渇いた笑いを浮かべる賊の頬をニコが張った。
バシッ!
「てっ!何しやが……」
「これ見てよ」
ニコが差し出した白い紙。それを頬をさすりながら渋々受け取り睨み返しつつ広げると、
じっと見つめたまま動きを止めた。
「あたしが聞いた施設の子にお願いして貰ってきたの。絶対届けてあげるからって」
昼間とある建物の前を通りかかった時、風に偶然運ばれてきたそれを拾い上げたニコは
小さな女の子の落とし主に頼み貰い受けた。
嬉しかったのだろう。『きっと届けてね』って笑っていた。
「あなたのしたのは決して正しい事じゃない。だけどそれで救われた人も確実にいるの」
「……だから何だよ。何だってんだよ!!俺はただの金庫破りだ。足長おじさんなんかじゃ
なくてねずみ小僧みたいな真の義賊でもねえ、ただのこそ泥だぞ!?それを知っても
俺の事有り難いとか、嬉しいとか言えんのかよ?どうせどこにいたって俺を必要とする
やつなんかいやしねぇよ!」
「そんな事ないよ!」
ニコは叫ぶ。
「なんだよ」
「まだわかんないの?あなたに感謝してる人いっぱい……きっといっぱいいるよ。誰かが
自分たちのためにこんな事してくれた、って。それに、あなたの事理屈抜きで大切に想って
る人だって……」
「あのよ。お前の身替わりになってる間抜け野郎いんだろ?あれな、俺らの仲間なんだよな」
それを聞くとハッとして名梨を見たが、すぐに
「……んなの知るかよ。わかってんなら助ける位出来んだろ?」
と答えた。
「ところがあいつ、言わねえんだよ。お前の顔だって見てるはずなのにな、黙ってんだ。
……わかんだろ?庇ってんだよ」
「……何でだよ。何で」
「ニコ、お前の大事な人のためだ。つまりは……お前のためだ。お前が悲しまない
ためにな」
「そんな……ロボ」
「俺にも親はいねえ。だからお前の気持ちもわかんなくはねえ……。けど俺はそれに負けない
位信じられる物を見つけられたよ」
ニコは黙って名梨と共に男の顔を見ていたが、やがてぽつりと漏らした。
「あなたの事、本当に好きなんだよ。理屈抜きに大切に想ってるんだよ……むーちゃんは」
「…………」
静かに男は立ち上がると、出口に向かった。
「あなたの事何にも知らないって言ってた。だけど、それでも好きなんだよ?」
「……」
「大切な人がどこかにいるって想うだけで生きていけるんだよ。人を想うと強くなれるの」
「……俺は」
「あなただってそれになれるんだよ!」
唇を噛んでドアを勢いよく開けると何も言わず男は飛び出した。
「待っ……!」
「行かせとけ」
追おうとするニコの腕を名梨は掴む。
「あいつは多分逃げねえ。もし逃げても俺らの方が上だ。……それよりお前にはそろそろ
話しておくよ」
「……よっちゃん?」
とりあえず、と促されて地蔵堂へ向かった。
教会の中、十字架の前で跪き俯く若い男がいた。
「……お帰り」
はっとその声に振り向いた男の目の前に初老の神父の姿があった。
「父さん……」
「やっと帰ってきてくれたんだな」
「いや……これからまた行くんだ。いつまた帰れるかわかんねえよ」
「そうか」
「ああ。今度はもう少しまともになって帰るから……」
「……待ってるよ。お前の帰る家はここだ。だから必ず帰ってきなさい」
「……ありがとう。父さん……」
「どこにいても必ず神様はいるよ。必ず、お前を見守って下さるから」
跪いたままの頭の上にゆっくりと優しい手が載せられる。
その時、足元には小さな雫がぽつんと落ちた。
地蔵堂でニコは名梨から話を聞いていた。
「ロボはな、あいつに自首させたくて黙ってんだ。サツに踏み込まれた方が騒ぎも大きくなる。
その方がお前の友達も余計傷つくと考えたんだよ。ま、他にも理由はあるみたいだが、
……どっちにしろ大した罪にはなんねえよ」
「なんで?」
「不法侵入した先になんも無かったから盗みは未遂だろ?他は届け出てないし、むしろ
内緒にしといた方が互いの為ってな。ロボが疑われたのも、あんな大金落としゃ普通怪しまれて
当然だろ?ま、あれも届け出はないからそのまま謎の落とし物って事に」
「……バカなんだから。もしあの人が自首なんかしてくれなかったらどうすんだろ。
……だけどきっと信じてる。ロボはそういう奴だもん」
2人は呆れた顔を見合わせて笑った。
夜が明けてから警察署の前でニコは名梨と待っていた。胸にマックスロボを抱き締めて。
「ねえ、結局あの教会どうなるのかな?」
「それなら心配要らねえ。社長の名前で無利子無期限無催促で全部立て替えてやった」
「えっそうなんだ!……でもあの社長がそれで納得すんの?それに他の施設だって……」
「勿論返す当てがあるからに決まってんじゃん。あの教会含めてあんな金に落とし主が現れる
と思うか?」
「思わない……あっ!そういう事!?……でもそれだけじゃチャラってだけで何の得もしない
んじゃないの?」
「あの空の金庫の金はどこに行ったか言わなかったよな?」
「……まさか」
「おっと誤解すんなよ?俺はただ金庫の持ち主から盗難を防いだ礼を頂いただけだぜ。交渉
済みで」
転んでも只では起きない人間達の事だ、とニコは納得した。もう慣れたもんである。
「あ、でもあたしはどうしたらいいの?」
元々はニコがロボを取り戻すために今回の事件解決があったのだ。
「その報酬はあいつから貰う約束になってる」
名梨が顎でしゃくった先を見ると、とぼとぼと歩いてくるロボがいた。とん、とニコの
肩を押すと
「行けよ」
とニヤリと口元を弛ませる。
ロボがふとうなだれていた頭を上げると、マックスロボを抱き締めて待っているニコがいた。
今にも泣き崩れてしまいそうに見えるその顔を目にして立ち止まるが、ニコはニコで戸惑った
様子で相変わらず立ち尽くしている。
と、次の瞬間ロボは思わぬ行動に出た。
「はぁ!?」
ニコの驚くのも無理はないのか。
だってロボが数メートル先に両手を一杯に広げて大の字になって待っているのだ。満面の
笑みを浮かべながら。
「ばっか……何やってんだっつうの!」
膨れっ面で物凄い勢いで向かってくるニコを抱き止めようとする。が、ロボの胸元に
マックスロボを押し付けると脇をすり抜けられてしまい、勢い余って前のめりに倒れそうに
なったロボはそのままがっくりと肩を落としてまたうなだれた。
だが、ふと背中に感じる温もりに気付く。と同時にウエストに回された自分より華奢な白い
腕に自らの手をマックスロボごと重ねる。
「……どうせならさあ、前においでよ〜」
「いやだ」
「そんなじゃさあ、顔見れないじゃん」
「いい!見なくて」
「ニコぉ〜」
そう言いつつも口元は自然と弛んでゆく。背中に感じる熱と雫の感触に、彼女がどんな顔を
しているのかなんて本当はよくわかるから。
その時バイクの音がして、2人はそっちに意識を向けた。
「ありがとう!」
ニコの叫びに軽く手を挙げて返すと、ゆっくりと走り出した。
「……よっちゃん!またな、また帰って来いよな!」
軽く挙げた手を振りながら去っていく。
「約束、必ず守るからーー!!」
小さくなるバイクを見送りながらニコは聞いた。
「ねえ、何約束って?」
「内緒。男同士の話」
ずるい!と怒るニコの頭を優しく撫でながらその言葉を思い出す。
『二度とニコを泣かさないこと』
一生を掛けても払うと約束した報酬を。
【epilogue】
結局いつの間にか「足長おじさん」は不思議な事件として迷宮入りし、流れの速い世間
からはすぐに忘れ去られてしまった。
ロボが釈放されたのは勿論真犯人が自首したからだが、それも報道はされずに処理されている。
ロボが捕まったあの晩の大金の真相も、真境名の名で何らかの力に闇へ流れたのだろうか……。
「ねー二湖どこ行くの?お弁当なんか作って……あっデート?そうなんでしょ!」
「何二湖がデートだって?相手は誰だっ!誰なん」
「あらやだお父さん取り乱しちゃって……ってそうなの?二湖」
どう見ても2人分の食事の入ったバスケットを見て、一海をはじめ両親まで出しゃばってくる。
『あたしじゃそんなに珍しいかな……』
一海ならそうでもないのだろうが。
「誕生日、一緒に祝えなかったからね」
ニコの言葉に3人ともしばしぽかんとするが、やがてその顔は驚愕?に変わる。
「えーーーーーっ!?」
その声を聞きながら
「行ってきまーす♪」
と玄関を後にする。
新緑の眩しい道を歩きながら、あの時のロボの言葉を思い出す。
『ニコに助けて貰ったら確かにすぐ帰れたかもしれない。でもそうすると、今度はまだ高校生の
ニコがあれこれ言われる事で、傷が付く事になるって。だけど俺はこれでも少しは世間を
知った大人だから……ニコを守りたかった。会わない4年間、俺はマックスを通して
ニコに励まされてきたんだから』
何かに縋るのは悪い事ではないと真境名は言った。確かにそれに心を預ける事で、自分が
強くなる事も出来るのだ。
車にもたれて待つロボを見つけると、向こうもニコを見つけて駆けてくる。
「待った?」
「ううん。で、どこ行く?俺思い付かなかった〜」
「あたしも」
「んじゃとりあえず乗って」
むーちゃんはその後、一時落ち込みはしたものの何とか元気を取り戻した。
『遠くへ行く事になってしまった。君の事は忘れません。ありがとう。君に恥じない人間に
なります』
最後の電話を心に刻み込んで。
ニコは今ロボの隣で風になびく髪を撫でながら、彼女があの日屋上で言った言葉を思い出す。
『ロボさんてさあ、ニコにとって神様のような人なんだね』
* * * * * * *終
GJでした。ありがとう。
前編が投下されてから楽しみにここをのぞいてました。
ドラマ本編っぽい二人の描写もよかったし、切ない別れ方を
しちゃったけどむーちゃんもよかったです。
ロボとニコ、やっぱり好きだなぁ。
GJ!
ドキドキハラハラな展開でしたね
ロボニコ、よっちゃんの変わらない信頼関係がイイ!
むーちゃんも頑張れー
ロボは神様のような人かあ・・・
最後にお〜って唸ってしまいました・・・
なんか気の利かない感想でごめんなさい
とにかくおもしろかったです
GJでした!
待機
本スレで妄想語る人こっちくればいいのにね‥
ともかくほしゅ
ロボとニコ再会後、友達以上恋人未満な二人&ロボ母ちゃんのお話。
エロ無しなうえ少し長めです。
×××××××××××××
「あれー、今、帰り?ロボ」
日も落ちかけた秋の夕暮れ時、駅の改札を出るとばったりと制服姿のニコに出くわした。
「うん、ニコも?」
半年ほど前、ニコと数年ぶりの再会を果たし、それまで言葉を交わすことのなかった日々が
嘘のように、付かず離れずな不思議な関係を取り戻していた。
「ねぇ、土日は特に予定ないよね?家にいる?あたし、遊びに行ってもいい?」
畳み掛けて自分から、聞いといて
「あ、返事はいいや。どうせこれといった予定もなくてヒマしてるだろうから、適当な時間に覗くわ」
昔ながらの少しばかり生意気な性格はちっとも変わっていない。
それでも少女らしい可愛さの中に女らしい雰囲気が感じられるようになったのは俺も認めざるを得ない。
「ロボんちのお母さん、元気にしてるの?もうそろそろ訪ねてくる頃なんじゃない?」
「それは言わないでくれ……」
近頃の母ちゃんは愛しのカン様のファンの集いはもちろんだが、
それ以外たいした用事があるわけでもないのに気まぐれに我が家に顔を出す。
ヒマを持て余しているのか?
「いつも何かしら文句言ってるけどさ、ロボの世話焼くの楽しそうだよ」
とニコは屈託なく笑って言うけれど。
頻繁にやって来るということは、当然ニコとも鉢合わせするわけだが、
俺が若い娘をたぶらかして部屋に連れ込むなんて考えは毛頭持ち合わせていないらしく
それどころか母ちゃんはニコとは気が合うようで何かといえば彼女の肩を持つ。
まあ、仲が良くてなによりってことだけどさ。
「じゃ、ここで。また、あした」
「ん、気をつけて帰れよ」
バイバイと手を振るニコと別れて、馴染みの店で調達した惣菜の袋を提げて商店街を歩きながら
今夜はどのロボットのご機嫌を窺おうかと頭を捻っていると、ポンと後ろから誰かが俺の肩を軽く叩く。
「え…あ、ああぁ〜〜〜!で、出たぁ〜!!」
そこらじゅうに響き渡る叫び声をあげる俺。
「なんて驚き方してるんだ、人をバケモノみたいに」
振り向いた先には、ニコが予言したある人物が澄ました顔して佇んでいた。
「母ちゃん!!」
「はいはい、そのとおり母ちゃんだよ。またまたお邪魔するよ。
それより威一郎、その手にぶら提げている小さな包みは晩御飯かい?」
うんと頷く俺に母ちゃんは大きな溜息を吐いて
「給料日までまだ日にちはあるっていうのに例のおもちゃにつぎ込んで、とっくにお金が底をついて、
ロクなもの食べてないんだろ?社会人として情けなくはないのかい?おまえは」
ズバッと言い当てられ、通りの真ん中で説教される始末。
「母ちゃんが栄養のつくうまいもの食べさせてやるから、さっさと帰るよッ
ほら、荷物持っておくれ。重たくて仕方ないんだよ」
母ちゃんのカバンの重量まで俺のせいにされそうで、不満たらたらに帰路につく。
突如来襲した母ちゃんによって、ロボット達と共に過ごす有意義な週末は脆くも崩れ去った。
「こら、威一郎!テレビばっかりに集中しないでよく噛んで食べなきゃダメだろッ」
朝から忙しなく動きまわり、俺のペースは乱れっぱなし。
「あーっ、何で切っちゃうんだよ!今、いいとこだったのに〜」
ふいに視界から行方を晦ませたマックスロボにご飯粒を飛ばしながらの抗議もどこ吹く風。
「早いとこすませるんだよ。なかなか片付かないじゃないか。朝どころかもうお昼だっていうのに。
お天道様もとうにお目覚めだよ」
ブツブツ言いながら母ちゃんは卓袱台に頬杖をつくと
「休みだからって、ダラダラといつまでも布団の中にいるような堕落した生活は改めなきゃいけないね。
ま、しばらくやっかいになるから、母ちゃんがおまえの緩みきった根性を叩き直してやるよ」
「しばらくって、いつまで居るんだよ?」
「なんだい、不満なのかい?30近いいい歳した息子の面倒をみてやろうっていう
こんな優しい母親がどこにいるっていうんだ。贅沢いうもんじゃないよ!」
「う……」
それを言われると…。母ちゃんに心配かけっぱなしなのはわかっちゃいるけどさ。
母ちゃんの愛しい永遠の君、カン様とやらに対する未だ冷めやらぬ熱烈ぶりはうちに来ても
いつ何時お構いなく発揮され、当然テレビは四六時中カン様に占領される。
時の流れは残酷で世間では一時的に持ちはやされてとっくに忘れ去られた過去のモノに扱われがちで。
現に母ちゃんのファン仲間もかなり減ったらしいけど、ニコに言わせれば
「周囲に惑わされずにずっとひとつのことを好きでいられるロボのお母さんは素敵で格好いい」
のだそうだ。そんなもんなのか?
なら俺だってずーっとロボット一筋だけど?
まあそれは置いといて、あと数日は母ちゃんがここに居座っているというのは変えようのない事実。
ああ、さよなら俺の穏やかな日常。
「それはそうと今日はニコちゃんは来るのかい?」
「多分。来るとは言ってたし、母ちゃんのことは一応連絡はしといたけど。何、ニコに用事でもあんの?」
「ん?まあ、ちょっとね。……フフフ」
……ゾクッ。
うわッ。ど、どうしたんだ?全身に寒気が…。
ヤバいな。何か妙なこと企んでるんじゃないだろうな?
茶碗を持つ手にごく小さな緊張を覚えながら、意味深な微笑を浮かべる母ちゃんに眉をひそめる。
「威一郎、おかわりは?」
「あ、うん」
言われるがまま、差し出して戻ってきた茶碗を受け取ろうとした時
軽快なリズムで階段を駆け上がってくる音がして、
「こんにちはー」
とニコが爽やかな挨拶で玄関の扉を開けた。
「あらー、いらっしゃいニコちゃん。また一段と可愛くなって。さあ、あがってこっちへお座んなさい。
ほら、おまえはよそ見してないでさっさと食べる!」
おじゃましますと一言告げて、丁寧に靴を揃えているニコの動きをぼーっと
目で追っていた俺に母ちゃんのゲキが飛ぶ。
ちぇっ。どうでもいい扱いされてるよな、俺って。
「ロボ、今お昼なの?うわぁ、おいしそうなのがたくさん並んでる〜」
ニコは卓袱台の上をひとしきり見渡したあと、俺を見てぷっと声を漏らして表情を崩す。
「ご飯粒ついてるよ、ロボ」
「へ、どこに?」
ここにとふいに伸びてきた手が顎のあたりに触れたかと思ったら、ニコがそれを躊躇うことなく
自分の口の中へと運んだ。
「え!?」
ちょっと待ってくれッ。それはマズいでしょ!?
こういうの子供の頃母ちゃんにしかされたことないから、どう切り返したらいいかわかんないよ〜。
なんかドキドキしてきた。
なのに緩やかに脈打つ動悸を加速させた張本人は何食わぬ顔をして、ちょこんと座っていて
明らかに俺だけが焦っている。
「あらあら、本当に子供みたいだねぇ、おまえは。
今からニコちゃんの手を煩わせるなんて、先が思いやられるよ」
あ、そうだった。母ちゃんがいたんだ。お、落ち着け、俺!
ん?今からって、どういうこと?
「ニコちゃんは食事はすませてきたのかしら?よかったら、一緒にどう?」
「えー、いいんですか?実を言うとこの時間帯を狙って来てたりして…」
と、小さく呟くと可愛く舌を出して笑った。
「抜け目ないなぁ、ニコ」
素直に感心する俺に向かって
「だってさ、ロボのお母さんの作る料理はどれもこれもおいしいんだよ」
「まあまあ、どうしようかしら。そんなに褒められて」
「ほんとですよ。ロボも料理はうまいけど、それはお母さんゆずりだから、あたりまえのことなんですよねー」
「うまいわねぇ、ニコちゃんたら」
用意してきたニコの分の器を手渡しながら嬉しそうな母ちゃんは艶のある顔色で
「その言葉、素直にありがたく貰っておくわね。…そのかわりと言ってはなんだけど、
後で私の頼みを聞いてくれるかしら?」
「何ですか?痛いとか怖い思いするとか余程のことじゃなかったら構いませんけど」
「ありがとう。それほど苦痛なことじゃないよ。詳しくはこの後でね。さあ、食べて」
「はい、いただきます」
頼みってなんだろう?イヤな予感がするんだよなぁ。うーん……。
気分がモヤモヤして晴れないまま、途切れることのない会話は次第に二人だけのものになり
「あの、この間教えて貰った筑前煮、家で作ってみたんです」
「あら、そう。どうだった、ご家族の評判は?」
俺の存在は無視されて和やかに談笑は続く。
「あたし的にはイマイチかなと思ったんですけど、他の皆はおいしいって言ってくれて」
「ニコちゃんは元々素質があるのよ」
「いやー、そんなことないですよ〜」
楽しそうに話に花を咲かせるニコと母ちゃんは友達のようで親子にも見えて。
「ロボ、今お昼なの?うわぁ、おいしそうなのがたくさん並んでる〜」
ニコは卓袱台の上をひとしきり見渡したあと、俺を見てぷっと声を漏らして表情を崩す。
「ご飯粒ついてるよ、ロボ」
「へ、どこに?」
ここにとふいに伸びてきた手が顎のあたりに触れたかと思ったら、ニコがそれを躊躇うことなく
自分の口の中へと運んだ。
「え!?」
ちょっと待ってくれッ。それはマズいでしょ!?
こういうの子供の頃母ちゃんにしかされたことないから、どう切り返したらいいかわかんないよ〜。
なんかドキドキしてきた。
なのに緩やかに脈打つ動悸を加速させた張本人は何食わぬ顔をして、ちょこんと座っていて
明らかに俺だけが焦っている。
「あらあら、本当に子供みたいだねぇ、おまえは。
今からニコちゃんの手を煩わせるなんて、先が思いやられるよ」
あ、そうだった。母ちゃんがいたんだ。お、落ち着け、俺!
ん?今からって、どういうこと?
「ニコちゃんは食事はすませてきたのかしら?よかったら、一緒にどう?」
「えー、いいんですか?実を言うとこの時間帯を狙って来てたりして…」
と、小さく呟くと可愛く舌を出して笑った。
「抜け目ないなぁ、ニコ」
素直に感心する俺に向かって
「だってさ、ロボのお母さんの作る料理はどれもこれもおいしいんだよ」
「まあまあ、どうしようかしら。そんなに褒められて」
「ほんとですよ。ロボも料理はうまいけど、それはお母さんゆずりだから、あたりまえのことなんですよねー」
「うまいわねぇ、ニコちゃんたら」
用意してきたニコの分の器を手渡しながら嬉しそうな母ちゃんは艶のある顔色で
「その言葉、素直にありがたく貰っておくわね。…そのかわりと言ってはなんだけど、
後で私の頼みを聞いてくれるかしら?」
「何ですか?痛いとか怖い思いするとか余程のことじゃなかったら構いませんけど」
「ありがとう。それほど苦痛なことじゃないよ。詳しくはこの後でね。さあ、食べて」
「はい、いただきます」
頼みってなんだろう?イヤな予感がするんだよなぁ。うーん……。
気分がモヤモヤして晴れないまま、途切れることのない会話は次第に二人だけのものになり
「あの、この間教えて貰った筑前煮、家で作ってみたんです」
「あら、そう。どうだった、ご家族の評判は?」
俺の存在は無視されて和やかに談笑は続く。
「あたし的にはイマイチかなと思ったんですけど、他の皆はおいしいって言ってくれて」
「ニコちゃんは元々素質があるのよ」
「いやー、そんなことないですよ〜」
楽しそうに話に花を咲かせるニコと母ちゃんは友達のようで親子にも見えて。
先月だったか、仕事が終わって家に帰ると何の連絡もなしに来ていた母ちゃんとニコが一緒に
台所に立っていてビビったことがあったっけ。
こういう状況で微妙な空気を醸し出していたら、やっぱ大変じゃん?
会社の結婚している同僚の話では男は右往左往するばかりで、気苦労が耐えなくて
すげー敏感な問題みたいだからなぁ、嫁姑の関係って。
…はっ!?いやいやいやッ、ちがーう!嫁姑って、ナンだ!?おかしいだろ!?
だいだい俺とニコはまだ付き合ってもいないだろ〜。
うわーっ、まだって何だよ、まだって!?
「…威一郎、おまえ、何やってるんだい?とうとう頭がおかしくなったのか」
慌てふためく心の内を打ち消すように激しく首を振る俺に母ちゃんの呆れた視線が突き刺さる。
「べ、別に!何でもないよ。大丈夫」
「そうかい、だったらいいけど」
少し怪訝そうな面持ちでそう言うと再びニコと話は弾んで、やがてその合間にカン様なる単語が
ちらほらと紛れるようになり、母ちゃんのボルテージが段々と増していくようになると、
勘の鋭いニコは何かを察知したのか、相槌をうちながら俺のほうへ度々目で合図を送る。
これはまずいと隙を狙って、母ちゃんに呼び掛けてはみたものの
「話かけるんじゃないよッ。今、カン様の魅力をニコちゃんに説明している
大事ところなんだから、邪魔するな!」
あえなく一蹴され、やっぱり相手にされない。
「はあ〜、ニコちゃんとお喋りしていたら、楽しくて時が経つのも忘れてしまうわ。
やっぱり持つべきものは女の子よねぇ。うちは男だけの一人っ子だから、余計にそう思うわ。
小さな頃は可愛いけど、大きくなったらなんの面白味もないからね」
チラリと俺を見て、あてつけがましく言い放つと
「でもいいわ。いずれニコちゃんがうちのお嫁さんに来てくれるんだから、
私にも待ちに待った娘ができるわ」
「え?」
「は?」
ほとんど同時に声が被る。
たった今、聞き捨てならないことを言ったような……?
「あ、あの、母ちゃん?その今なんて言っ…」
「なんだい、食べ終わったのかい?ニコちゃんも?じゃあ済まないけど後片付け手伝ってくれるかしら」
俺の質問には耳を貸さずにニコを伴い素早く立ち上がる。
そうこうしているうちに台所仕事を終えた母ちゃんは姿勢を正すとようやく本題を切り出す。
「それで、ニコちゃん。頼みって言うのはね…」
「はい、どうぞ」
「ちょっと、あっちへ行きましょうか」
奥の部屋を指差してニコの動きを急かす。
「威一郎、母ちゃんがいいって言うまで部屋を覗くんじゃないよ」
俺にはしっかりとクギをさして。
「え、あぁ…うん」
母ちゃんの意図することが、全く理解できないのだけれど一応返事だけはしておく。
次の指示を待ちながら、俺は仕方なく食事中に消されたマックスロボの続きに見入っていた。
背後から襲ってくるなんとも形容しがたい不穏な空気を感じながら。
「おい、威一郎!おまえはこれに着替えといておくれ」
突然、降りかかった声に顔を向けると何やらコートらしき衣装を渡される。
それに、青いマフラーとメガネ……?これはいったい??
「そうそう、これも忘れてたよ」
「わッ!?」
茶色い物体が母ちゃんの手から、飛んできて顔面を直撃して落下した。
「何だよ、もう〜。……て、え?これはまさか……ヅラ?」
拾い上げたそれは、まさしく疑いようもないカン様のヅラだった。
「ああッ、カン様〜!カン様〜!!」
保存版の宝物『冬のソナチネ』ポスターを広げて見ているこっちが恥ずかしいぐらいに
黄色い歓声をあげ、頬を摺り寄せている母ちゃんに唖然とするより他はない。
「ほーら、早く着替えて。つっ立ってる場合じゃないだろ」
「あのさ、このポスターのマフラーと俺にくれたやつ色が違うんじゃない?
これじゃ、完璧なカン様にはなれないよ?だから母ちゃんの要望に答えられないと思うんだけど」
「つべこべ言うんじゃないよッ。今日はこれでいいんだよ。
そうだ、ほっぺにもホクロ書いとかなきゃいけないね。はい、じっとして。これでカン様に変身変身と」
「ちょっ…やめろって!」
驚異的なパワーで押しまくる母ちゃんと決死の攻防を繰り広げている最中
「あの〜、こんな感じでいいでしょうか……?」
戸惑いがちに間に割って入ったニコの声に振り返ると
「あぁ〜〜!ニコちゃん!すごいわッ」
「ええ〜〜〜!!?」
な、な、何が起こってるんだ!?
俺の目の前に現れたのはニコであってニコじゃない……。
そのどこかで見覚えのある容姿はもしかして?
「ステキだわ!よく似合ってる。まさしくヨジンそのもの!」
そう今のニコはこのポスターのカン様に寄り添う女性・ヨジンのそっくりの衣装を身につけていて
「あ、はあ、そうですか…似合ってますか…」
「母ちゃん!何のマネだよ、これは〜」
詰め寄る俺にどさくさに紛れてメガネとヅラを強引に装着させ、してやったりの母ちゃん。
「何のマネって、カン様の恋人のヨジンじゃないか」
「だ〜か〜ら〜」
こんなものわざわざ用意してきたのかよ!?まさか今回の目的はこれか!
「この間から、冬のソナチネを観ていたら、ヨジンの少し俯いた横顔がニコちゃんに似ていると思ってね。
どうして今まで気付かなかったんだろうねぇ」
「似てないだろッ」
つい口答えしてしまった俺に眉間に皺を寄せて
「いつまでもネチネチと往生際が悪いよ。男らしくないぞッ、威一郎!」
「そういう問題じゃない!」
「ならどういう問題なんだい?言ってみろ。さあ、早く」
俺の反発は口先だけのものだと最初からわかりきっている母ちゃんは屈するこもとなく
ピクリともせず睨みを利かせている。
「あのッ、ロボもお母さんも程ほどにしておいたほうが…ケンカはよくないです」
なかなかケリがつきそうにない諍いを見るに見かねた(呆れた?)ニコが俺達親子を嗜める。
「ニコ、イヤならイヤだって言わなきゃダメだろッ。
甘い顔するとすぐつけあがるんだからな、うちの母ちゃんは」
「まーた、おまえは生意気にそうやって知ったふうな口を聞く」
「何年親子やってると思ってるんだよ。母ちゃんの性格なんてイタイほど身にしみてるんだからな」
おかげで何度ヒドイめにあったことか。
「もう、ダメダメダメ!ロボ、あたし全然平気だから、お母さん責めないのッ」
少しきつい口調で二人の間隔を遠ざけると、俺を見て
「正直いうとコレに着替えてって言われたとき、変なコスプレでもさせられるのかなって一瞬考えてさ。
やっぱりロボのお母さんだな、血は争えないなぁて思ってたんだ。
だけど、渡された服を見たら、予想に反して普通のモノだったから安心したっていうのがホントのところで
まさか女優さんに変身するなんてびっくり」
「そんなこと思ってたの?コスプレだなんて、私は威一郎とは違うよ」
心外とでも言いたそうに俺を流し見た後、ニコをそっと覗き込む。
似たようなもんだろと口に出してブチまけたいけれど、ここはグッと我慢して心の中で悪態をつく。
「でも、やっぱり似てます。なんて言うかうまく説明できないけどホントはお互いわかりあってて
物凄くあったかいところとか、お母さんとロボみたいな関係……あたし好きです」
「ありがとう。私はともかく、世の中からズレてるようなバカ息子をわかってくれるのは貴女だけよ」
にっこりと微笑み、ニコのヨジン仕様の服装を綺麗に整える。
その姿は知らない人が見たら、本当に仲睦まじい母と娘に映るかもしれない。
そんな二人を前にしていたら、さっき母ちゃんが言った“お嫁さん”という言葉がふっと脳裏をよぎって、
変に意識してしまい、カァと身体中の血が熱くたぎる気がして
「そ、それで母ちゃんッ、この後どうすんの?俺とニコにこんな扮装させてさ。
これで気が済んだんなら、もう脱いでもいいだろ?」
早々に終わらせようと母ちゃんをせっつく。
「まあ、待て。そう慌てるもんじゃないよ。まず記念撮影は忘れちゃいかん。
それで最後のメーンイベントは……」
不気味な笑みをこぼしてテレビの前に陣取ると慣れた手付きで再生ボタンを押す。
「あ、カン様……ス・テ・キ」
窒息でもするんじゃないかと思うほど、微動だにせずに恍惚として見つめる先には
その名に偽りなくのカン様の姿が。
「ああ〜、これこれ、ここだよ」
母ちゃんが指さした画面には、その昔、大事な大事なマックスロボのビデオに重ね撮りされた
冬のソナチネのとあるシーンが流れていた。
「ここが私が一番のお気に入りなんだよ。この場面をおまえとニコちゃんに再現してほしくてね」
はい?幻聴?再現って…
「えーっ!お母さん、あたしとロボがやるんですか?このドラマの二人を!?」
「そうよ。お願いできない?」
予想外の申し出に目を丸くするニコに母ちゃんは臆面もなく答える。
「いいかげんにしろよ、母ちゃん!俺達、役者でもなんでもないんだぞッ」
「いいじゃないか。本物に会うのは無理だから、似ている人間でもいいんだ。
母ちゃんだって夢みたいんだよ。親孝行だと思ってさ」
マジですか?あのシーンの二人って、どの角度から見ても抱き合ってるだろ…
あれをやれと?勘弁してくれよ〜。
「あ、ほらほらニコちゃんの立ち位置はこっちだね。で、おまえはこう背中を向けて…」
って、おいおい、やるなんて誰も言ってないのに早速指導かよッ。
「よし、準備OK!そうだ、一回セリフの確認をしとかないとね」
リモコン片手に朗々としている母ちゃんを視界の隅に置きながら
「どうするよ、ニコ?本当にやるのかよ。無理しないで今のうちに逃げてもいいんだぞ?
何も母ちゃんに気使うことないんだからな」
さすがのニコもこの展開は選択肢にはなかったようだが、時間が経つにつれ落ち着いてきたのか
「うん…。でも、ここまできたら今更、後に引けないというか…。
本物じゃないのはお母さんの承知してるんだし、さわりだけやっても納得してくれるんじゃないかなぁ」
「いいの?ウソだろ?」
ヒソヒソと小声で囁きあう俺達に母ちゃんの気合の入った声が掛かる。
「じゃあ、このシーンからいくよ。……よーい、スタート!」
…名監督気取りだな。あーもう、こうなりゃヤケだ!
『お願い。チュンサン…』
てな、ニコ=ヨジンの懇願するセリフがあって、こう俺が振り返ってだな…
あれ?えーっと、次どうするんだったっけ?そうそう、抱きしめるんだったよな?抱きしめる……。
い、いいのか?いいんだよな?演技だから、仕方ないし。うん。
そう自分に言い聞かせると、ええいッ、なるようになれッ!とニコの背中に腕をまわして引き寄せた。
女の子と…ていうかニコと触れ合えるなんて、振って湧いたまたとないチャンスなのに
何が悲しくて母ちゃんの前でラブシーンをやらなきゃいけないんだよ〜。
なんて羞恥プレイ……!
ニコも同様に緊張しているのか、微かに震えているように思う。
腕の中にいるニコは暖かくて想像していたよりも華奢でとてもいい匂いがして。
なんだろう?柑橘系の甘くて優しい香り……。
ああ〜、このまま時が止まってしまえばいいのに。
「ロ…ロボ…」
胸のあたりで息苦しそうなニコの呼吸が夢見心地の俺を呼び覚ます。
「な、なに?」
「…セリフ、抜かしてるよ」
へ?セリフ?このシーンはまだだった?早すぎたのか。は、恥ずかしすぎる…。バカな俺。
「はい、ストップ!ダメだろ、威一郎。ここぞというときにセリフを忘れるなんて。NGだよNG。
使えない子だねぇ、まったく」
「うるさいなぁ〜。しょうがないだろう」
素人の演技にケチつけるなんて、見当違いだっつーの。
「今はチュンサンとヨジンに成りきるんだよ。
熱い抱擁なり接吻なりは後で素に戻った時に思う存分いくらでもやっておくれ」
げッ、何言いだすんだよ〜、この母親は!
「ちょっと!こっち来てくれ」
「あぁ?どこに行くっていうんだい?」
慌ててニコのそばから引き離して奥へと連れて行くと、不服そうな母ちゃんに
「あのな、母ちゃん。俺は息子だからさ、こんな柄でもない芝居の真似事なんて百歩譲って我慢するよ。
でも、ニコは関係ないだろ?変なことに巻き込まないでくれよ」
「おまえは妙なとこで頭が固いんだからニコちゃんはもう少し経ったら私の娘になる子だよ。家族も同然じゃないか」
あの、さっきからお嫁さんとか娘とかいったい??
「ニコちゃんみたいないいお嬢さんがおまえとお付き合いしてくれるなんて、奇跡としかいいようがないよ」
待て。いつ、どこで、誰がニコと付き合ってるなんて言ったよ!?
いくらなんでも飛躍しすぎだよ、母ちゃん……。
「数年後には二人が結婚して、新しい命が授かって可愛い孫に恵まれる。そんな日が待ち遠しいんだよ。
まあ、おまえがヘマして逃げられないことが大前提だけどな。
それまでは母ちゃんはカン様で夢見とくんだよ」
肝心な当事者たちは置き去りにして、意気揚々と独りよがりな将来設計をひけらかす母ちゃん。
危ない。こりゃ暴走する前に訂正しておくべきだなと口を開きかけたら、何か物体が落下した鈍い音が響いて、
その方向へと意識を傾けると
「あ…ご、ごめん。マックスロボ落としちゃって……あはは…」
手が滑ったのかニコは足元に落ちているマックスを拾おうとするが取りこぼしてまた床に転がる。
見るからに動揺しているようで、ごめんねと謝罪を繰り返すその視線は落ち着きなく泳ぐ。
あー、聞こえちゃったかな、今の話。低く小声で喋っていたつもりだったけど、ニコに筒抜けか。
「ニコちゃん、そんなおもちゃは放っておきなさい。邪魔になる所に置いている威一郎が悪いんだよ」
「母ちゃん!あいつにはなぁ、魂が宿ってるんだぞ!それをおもちゃなんてッ」
よく知りもしないで勝手なことを〜!俺にとっては本当にただのロボットじゃないんだからな!
「訳がわからない事言うんじゃないよ。……おっと、電話じゃないか」
俺の憤りなんか眼中にないようで、はいはい、ちょっと待っておくれよと独り言を呟きながら、
自分のカバンから携帯を探り出す。
「おや、これはカン様の愛のテーマ。父ちゃんからだな。ハイ、もしもし」
愛のテーマ?へぇ〜、それを父ちゃんからの着信にしてるんだ。
なんだかんだいって仲いいよなぁ、父ちゃんと母ちゃんは。
俺もああいうふうになりたいなって、最近特にそう思う。
それはニコの存在が俺の中で必要不可欠になっているからだと気付いたから。
だから、母ちゃんの誤解もありがたくはあるけど複雑な気持ちで、あの豪快な懐の持ち主に
首突っ込んで引っ掻き回されたら、まとまるものもまとまらないですべてが空回りしそうな気がする。
いや、ちょっと違うか。そう考えるより先に俺自身が一歩踏み出さなくてはいけないはずで。
「ちょいと突然で悪いけど、これから家へ帰ることにしたから」
「え、どうしたんだよ。何かあったの?父ちゃん?」
急なことに事態を飲み込めずにいる俺に母ちゃんは
「ああ、腰をやったんだとさ。もう若くないんだから、無理するなって言ってるのに。
息子の世話はおろか父ちゃんまでとは、なかなか楽じゃないねぇ」
やれやれといった顔でそう言うと慌ただしく荷造りを始める。
見送りはいいからと頑な母ちゃんを、じゃあ階段下までと言い伏せて
「バタバタして迷惑かけてごめんなさいね、ニコちゃん。
今度来たときにゆっくり貴女のご両親に挨拶に伺うわ」
「え、あ、はあ」
「あー、母ちゃん、忘れ物ない?」
帰り際のいきなりな言動に困惑して、曖昧にそれに頷くニコから話を逸らそうと咄嗟に聞いた俺には目もくれず
「ニコちゃん、頼りない息子でどうしようもないだけど、いたらないところがあったら遠慮しないで厳しくやって頂戴。
貴女がそばにいてくれたら私は何も心配することはないわ。どうか末永くよろしく頼むわね」
ま、また、母ちゃん!そういうふうに押し付けられたらニコが困るだろ…
「……はい、お母さん」
え…?はいって…ニコ?
すぐ隣で微笑みあうニコと母ちゃんには女同士にしかわからない相通じるものがあるのか
要領を得ない俺はただ漠然と二人を眺めていた。
「威一郎、おもちゃ…もとい、ロボット弄りもいいがニコちゃんも大事にしてあげるんだよ。
いざというときに好きな女も守れないような男は本物の男とはいえないからなッ」
と肩を握り締めた拳でつかれて
「うぐぅ……いってーなぁ、少しは手加減しろよな〜」
相変わらず半端ないなぁ。わかってるよ、そんなの。
「大丈夫です、お母さん。ロボは情けないときのほうが多いけど、困ってる人は絶対見て見ぬ振りなんてできないし
少なくともあたしには信頼できて頼りになる人です」
「ニコ」
そう語りながら彼女のまっすぐに俺に向けられる真剣な眼差しが何を表しているのか
女心に疎い自分でも気付かないはずはなくて。
気持ちは通じ合ってる?これからも同じ道を歩んでいける?
じっと逸らすことのないニコのはにかんだような柔らかい笑顔にぼんやりとした予感は確信に変わり、
俺の顔も自然と綻ぶ。
「あんたたちー、ケンカしないで仲良くするんだよ〜!」
距離をおいてこだまする声にハッとしてすぐそばにいた影を捜す。
「母ちゃん!風邪ひくなよー、身体に気をつけろよー」
「また、来てくださいねー。待ってますからぁ!」
振り返ることなく上げた手を左右に振って小さくなっていく後姿は凛として格好よかった。
「あっというまに行っちゃった。口ではああ言ってたけどさ、
お父さんのこと心配でたまらないんだろうな。お母さんらしいね」
「そうだな」
好き勝手やっているようにみえるけど、それなりに微妙なバランスを保っていて家庭円満だよなと
いつまでも見送りながら、つくづく思っていた。
一夜限りとはいえ、俺とロボット達の生活を脅かした元凶はあっけなく消えて平穏を取り戻したというのに
なぜだか気の抜けたような、落ち着かないガランとした部屋が物足りなく感じた。
「ロボ、お母さん帰っちゃって寂しいんでしょ?そう顔に書いてあるよ」
「はあ!?なあに、バカなこと言ってくれてんのかなぁ。冗談でしょ?うるさいのがいなくなって、清々するよ」
「そうなんだ、ふーん」
ニヤニヤしながら俺の反応を探るニコにはすべてがお見通しのようで。
だったらと軽くお返し。
「俺はニコが居てくれるなら、それでいい。寂しくなんかないよ。ずっと一緒にいたい」
間違いなく嘘偽りのない本心をこのときとばかり告げてみる。
案の定、ニコは顔どころか耳まで赤く染まっていく。
「あの、その…あ、そうだ、今日の夕食はお母さんの代わりにあたしが腕を奮っちゃおうかな!」
照れ隠しなのかわざとらしい大声をだして、冷蔵庫を漁り始めて、あれこれと献立を組み立てている。
「俺、ニコが作った筑前煮が食べたいな。うまくできなくて自信ないみたいなこと言ってたけど
これまでニコが作ってくれた料理でまずいものなんて何一つなかったよ。だから、食べたい」
「…ほんとに?じゃあ、わかった。そのかわり万が一まずくても全部食べてよね。
絶対だからね!残したら許さないから」
勢いよく身体をこちらへ翻したニコはまだちょっぴり頬が赤い。
そのくせ勝気な笑みは絶やさずに俺に念を押す。
するとニコがあっと表情を変えて
「…ねえ、ロボ。あたしら、すっごい変じゃない?」
「変?」
どこが?とニコの問いかけに内心首を捻りつつもしばし互いを観察しあう。
数秒後、思いっきり吹き出した。
それもそのはず、俺達は冬のソナチネコスプレのまま不自由さを感じることもなく過ごしていたのだった。
いやに身体に馴染んでてすっかり忘れてた!いつまでこの格好してんだよッ。
「母ちゃんがいたら大喜びしそうなシチュエーションだなぁ」
「そうかも」
渇いた笑いを交わしながらそそくさと普段の姿に戻るはめに。
「んじゃ、あたし買出し行ってくる」
玄関先で靴を履きかけるニコの後に続くと
「俺も行くよ。ニコ一人じゃ寂しいでしょ、俺がいないとね〜」
「な!そんなことないよ。それはロボのほうじゃん!もう、早く行くよッ。ほら、テレビ消して」
「はいはい」
やや乱暴に背中を押されて、リモコンを向けた画面には幸せそうな家族の映像が。
若い両親との小さな小さな愛の結晶。
「可愛いねぇ、赤ちゃんって」
そのまま見とれていた俺の横でいつのまにかニコが目を細めている。
「うん、ちっちゃくて可愛いよな」
目前の情景が未来の自分とニコに重なって、ふとある言葉を思い起こす。
『二人が結婚して、新しい命を授かって可愛い孫に恵まれる』
母ちゃんの思い込みから生まれた家族計画がまるっきりの夢物語じゃなくなる日も遠くないのかもしれない。
どうして俺とニコがデキてると思ったのか聞きそびれてしまったけど、今となってはもうその必要はないか。
そのうち機会があれば聞いてみようか。などとあれこれ考えていたら
「ロボ。今、このテレビ画面を邪まな気持ちで見てたでしょ!?」
「エッ?言ってる意味がびた一文わかりません」
唇を尖らせて、問い詰めるニコに何が何やら。
「可愛いって言いながら、赤ちゃんじゃなくて若くて美人で綺麗なお母さんのほうに目線がいってた」
「はあ?そんなことないよ、あるわけないだろう?バカも休み休み言えよ〜」
そりゃ見ていたのは否定しないけど、それはニコと重ねて見ていたからで
やましい感情なんてこれっぽっちもありませんてばッ!
「何よ…バカって!いいもんッ、お母さんに言いつけてやるー!」
「えぇ!?ちょっ、ニコ!」
恐ろしい捨てゼリフを残して走り去るニコを追いかけて、もつれそうになる脚を引きずりながら
部屋を駆け出していく。
この先、俺はニコと母ちゃんの強力タッグに頭を悩ませることになるのだろう。
けど、それもある意味理想の形で幸せの巡り合わせに思えてくるからおもしろい。
「おーい、ニコ〜、待ってくれよ〜!」
あかるい未来はすぐそこに?
終わり
あー、もうなんか色々とすみません!
初っ端からタイトル忘れるわ、3を4としてダブって投下してしまうわ…
本当に本当に失礼しました!
そんな些細なこと気にしてないぜ!
Good Job!
おお、リアルタイム遭遇!!
>>57 大丈夫ですよWちゃんと最後まで楽しませていただきました
ロボ母ちゃんのやや強引な思考がそれっぽい。
もっと喝を入れてやってください、ロボにW
GJでした!ニコとも仲良し母ちゃん大好き
60 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/01(土) 18:40:47 ID:8wJfWdQu
保守
以前、ねずみ男を書いたものです
新作を日を開けながら投下していくので、どうぞ職人さんは気にせず投下を
62 :
パンダ男前編:2008/11/02(日) 16:11:57 ID:r0q7DkAo
○学校
○クラス
ムーちゃんのカバンにアップ
その側をニコが通る
ニコ「ん?あれ?むーちゃんさ、カバン変えた?」
むーちゃん「さすが我が友!よくぞ気づいた!!」
ニコ「しかもこれ今すごい流行ってるやつじゃん!!」
むーちゃん「そだよ〜!このパンダのがかわいいでしょ」
そのカバンには愛ラブパンダと描かれている
続々と集まってくるクラスの女子達
女子1「うわ〜かわいい!」
女子2「いいなぁ〜!」
ニコNA「女の子にとって、流行についていくことは大事なことだ。
とみんなは思っているかもしれないが、私は別に思わない」
○街
○店
ムーちゃん「ここで、買ったんだぁ」
近くの品々を手に取るニコ。
ちょっとした小物を見る
ニコ「わっ!高っ!」
ムーちゃん「ちょっとニコ!・・・声でかい」
ニコ(小声で)「ごめん。だってさ、これなんかこんなちっちゃいのに4000円もするんだよ?」
ムーちゃん「貧乏臭いこと言うのやめなさいよ。ブランドなんてこんくらいするって」
ニコ「ふーん。私には無縁だなぁ」
ムーちゃん「ニコもこんなのつけたらかわいいのに」
パンダの飾りのついた髪留めをニコにつけるムーちゃん
ムーちゃん「似合ってるよ」
ニコ「ちょっと笑ってるじゃん」
少し怒るニコ
ムーちゃん「ムスっとしないの!」
ニコ「ごめん・・」
ニコNA「みんないつかは捨てるくせに、他人を気にして流行に飛び乗っては高いものをたくさん買うのだ」
63 :
パンダ男前編2:2008/11/02(日) 16:12:36 ID:r0q7DkAo
○ロボの家の前
歩いているニコ
ロボのマーックスという声が外まで響く
○ロボの家
ニコ「う る さ い!!」
ロボ「んあ?にこ?」
ニコ「外まで響く大声出さないの!」
ロボ「ご〜めん〜。ちょっとはしゃいじゃってさ!」
ニコ「何?なんかあったの?」
ロボ「いや、ん・・」
ニコ「ちょっと言いなさいよ」
ロボ「新しいロボット買ったんだ〜」
呆れるニコ
ニコ「もう〜。お金ないのになんで買うかな」
ロボ「だってこのロボ流行ってるんだよ?」
ニコ「もうロボなんか知らない」
ロボ「ご〜め〜ん〜ってば〜に〜こ〜!」
ニコNa「みんなして、流行がどうだのといいだして、馬鹿みたいだ」
○ニコの部屋
ニコ「あ〜。少し言い過ぎたかな」
携帯液晶にロボの文字
ニコ「謝ろっかな〜・・まぁ・・・でもなぁ〜
いっか、たまに叱るくらい」
○ニコの家(リビング)
ニコの父「あれ?一海は?」
ニコの母「あら、いないわね。
ニコー!!一海知らないー?」
二階に問いかける母
ニコ「しらなーい!」
ニコの父「なんて?」
ニコの母「知らないって」
ニコの父「遅いなぁ、ご飯食べちゃおうか?」
ニコの母「う〜ん・・・そうね」
64 :
パンダ男前編3:2008/11/02(日) 16:13:10 ID:r0q7DkAo
○ロボの家
ロボ「なんで怒られたんだろ?」
液晶画面にニコの文字
ロボ「何かあったのかな〜、聞こうかな〜」
○ニコの家
二階から降りてくるニコ
ニコ「一海ちゃん遅いね」
ニコの母「そうね、どうしてかしら」
ニコ「また、どうせ、男でしょ?」
冷蔵庫をあけながらニコ
ニコの父「・・・・・・」
ニコの母「あなた一海だって大人なんだから、何もムスっとすることないじゃない」
ニコ「そうそう。一海ちゃんモテるんだし」
ニコの父「ニコはそんなことないよな?男と出来てるなんて」
ニコ「な、なにいってんの?あるわけ無いでしょ」
ニコの父「あるのか?あるんならお父さん、お父さん辞めるぞ?」
ニコ「無いって。安心してよ」
ニコNa「私がここで、ロボと付き合ってるなんて言い出したらどうなるのだろう?
お父さんは気を失ってしまうかもしれない。言い換えればそれだけ私のことを気にしてくれているということだが」
○地蔵堂
社長「よっちゃ〜ん!ちょっとここにホコリが溜まってるんだけど!」
よっちゃん「はいは〜い」
下から上がってくるよっちゃん
ほうきを持っている
社長「あら、仕事の速いこと」
よっちゃん「社長の言いそうなことならなんとなく分かりますから」
社長「わかるんなら先に掃除しておきなさいよ」
よっちゃん「・・は〜い」
ニコNa「なんでみんなそんなに他人や世間のことを気にし続けられるのだろうか?
昔はこんなこと思わなかったのに、今思ってる自分がいた」
65 :
パンダ男前編4:2008/11/02(日) 16:13:43 ID:r0q7DkAo
○ニコの家(リビング)
3人でなべをつつく
ニコ「これおいしいね」
ニコの母「でしょ?ちょっと奮発していいお肉買っちゃった」
ニコの父「俺の稼いだ金で食う肉は旨いなぁ!」
ニコの母「やだお父さん!みすぼらしいこと言わないで」
ニコの父「なにがみすぼらしいんだ!誇りに思いなさいよ。誇りに」
ニコ「お父さん、ありがとうございます」
ニコの父「なんだか、・・・照れるな」
テレビではニュースをやっている
ニュースキャスター「では、続いてのニュースです。
昨夜未明から、都内のパチンコ店で、男が押し入り現金約300万円を奪い
未だ逃走中とのことです。男はパンダの柄の入ったTシャツを着ており、
そこには愛ラブパンダと書いてあるそうです。
ニコの母「あら、やだ、物騒ね」
ニュースキャスター「ちょ、ちょっと待ってください
えー、只今入りました情報によりますと、人質を独り連れて逃走中とのことです
しゃ、しゃしん?写真があるそうなので
えー、こちらです」
でかでかと移る一海ちゃんの写真
ニュースキャスター「都内在住、林一海さん、25歳 とのことです」
ニコ「ん?」
ニコの母「ん?」
ニコの父「ん?」
○ニコの家(外観)
3人「エエエエエエエエエエエエエ!!!!!?」
揺れる家
○ニコの家(リビング)
ニコ「嘘でしょ!?」
ニコの母「ちょっとお父さん?」
気絶する父
ニコ「警察!警察!」
ニコNa「そういえば、私は他人のことを考えないなんてカッコをつけれるほど大人じゃなかった。
くだらないことを考えていた自分が嫌になるくらい一海ちゃんのことを心配している自分がいた。」
タイトル「セクシーボイスアンドロボ2」
66 :
パンダ男前編5:2008/11/02(日) 16:14:28 ID:r0q7DkAo
○地蔵堂(外観)
地蔵堂の前を走り去るトラクター
それと入れ違いにフレームインしてくるニコ
○地蔵堂
まだ掃除をしているよっちゃん
どたどたと入り込んでくるニコ
よっちゃん「おい!はしりまわるんじゃねぇよ!
掃除したばっかなんだからよ!」
ニコ「それどこじゃないの!!」
社長「なに?どうしたの?大声出しちゃって・・・」
ニコ「一海ちゃんが・・・一海ちゃんが・・・!」
○ロボの家
携帯の画面を見ているロボ
ロボ「あー、どうしよっかな・・・何があったか気になるな・・
・・・・
・・よし!聞こう!!」
○地蔵堂
ニコの携帯が鳴る
ニコ「一海ちゃん!?・・・なんだ、ロボか」
○ロボの家
ロボ「あのさ、ニコ?今日・・」
○地蔵堂
ニコ「ロボ!!いいから早く地蔵堂に来て!!!」
○ロボの家
ロボ「ええ!?いきなし何!?」
○地蔵堂
ニコ「理由は後で話すから!」
67 :
パンダ男前編6:2008/11/02(日) 16:15:00 ID:r0q7DkAo
○車内(トラクター)
一海「ちょっと!離しなさいよ!!あんた自分で何してんのか分かってんの?!」
両手を縄で縛られている一海
パンダ柄の男「っるせぇよ!ちょっと黙っとけ!!」
一海「そっちこそ黙んなさいよ!!パンダ野郎!何!?逆恨み!?」
パンダ野郎「今、流行ってんだよ!このブランド!」
一海「女物じゃない!それ!」
パンダ野郎「し・・・知ってるよ!馬鹿野郎!男が着たら逆におしゃれなんだよ!」
一海「あんた昔っからそういうとこあるよね」
パンダ野郎「いいから黙っとけ!」
一海「あっ・・・!」
パンダ野郎「なんだよ!?」
一海「こっち環七出れないよ!」
パンダ野郎「ああ!?てめぇがこっちって・・・馬鹿野郎!!」
○地蔵堂(外観)
地蔵堂の前をさっきと逆方向に走り去るトラクター
それと入れ違いにフレームインするロボ
○地蔵堂
ロボ「なに!?どーしたの!?」
ニコ「か、一海ちゃんが誘拐されちゃった!!!」
ロボ「えええええ!?嘘でしょ!?ど、ど、どどどうすんの?」
よっちゃん「落ち着けよ。警察の馬鹿に任せてる暇あるんなら俺たちで探したほうが早いぜ」
ニコ「いま、社長に探してもらってるの」
ロボ「探すって、ど、ど、どうやって?」
後ろのほうで電話をかけている社長
電話を切るとすぐにこっちを向く、ピントが社長に合う
社長「白いトラクターに乗ってるって。まだ、この近くにいるらしいわ!」
ニコ「さすが!ロボ行くよ!!」
ロボ「ロボ出動します!!!」
○ロボの車
ロボ「ちょ、狭い狭い!!みんな乗んなくてもいいでしょ!」
ニコ「早く!ロボ!」
社長「とりあえず真っ直ぐ行ってでっかい通りに出なさい」
ロボ「でもせま・・・」
よっちゃん「いいから早く出せよ!」
○地蔵堂(外観)
トラクターとさっきと同じ方向に動き出すロボの車
68 :
パンダ男前編7:2008/11/02(日) 16:16:36 ID:r0q7DkAo
○車内(トラクター)
一海「あんた、何?さっきの銃本物?」
パンダ野郎「本物だよ、騒いだらぶっ放すからな」
一海「なんでこんなことしてんのよ」
パンダ野郎「うっるせぇなぁ、運転に集中できねぇだろ馬鹿野郎」
一海「ってゆーかこの縄はずしなさいよ!」
パンダ野郎「外したら逃げんだろうが」
一海「逃げないから」
パンダ野郎「……それ付けてないとてめぇ共犯扱いされっぞ」
一海「・・・・・・。あっそ」
パトカーの音が聞こえる
パンダ野郎「くっそ、こりゃカーチェイスになるんかな?」
一海「安全運転しなさいよ!」
パンダ野郎「ゆっくり走って捕まったら終わりじゃねぇか!」
一海「なら私を巻き込まないでよ!」
パンダ野郎「ああ、もううっせぇな、人質いたほうが犯人っぽいだろうが」
一海「ほんとあんた何にも変わってない」
パンダ野郎「るせぇよ」
○ロボの車
ロボ「ニコ?あのさ、一海ちゃんの声とか聞こえる方向わかんないの?」
ニコ「しーっ!今やってる」
静かになる車内
ごみごみとした街の音と映像が点滅する
ニコ「だめ。ノイズが多すぎてわかんない」
ロボ「くっそー。どっち行きゃいいかわかんないよ!」
社長が窓の外を見ている
社長「あら、あそこのあれ?」
よっちゃん「あ!あれ、白いトラクターじゃん!」
前の道路を白いトラクターが走り去る
ニコ「ちょっと待って。」
再び聴覚を集中させるニコ
一海とパンダ野郎の会話が途切れ途切れ聞こえる
ニコ「一海ちゃんの声が聞こえる!間違いない!あれよ!」
ロボ「よーっし!マックスッっっ!スターット!!」
社長「あ!そういえば・・・これつけていい?」
パトランプを取り出す社長
よっちゃん「さすが社長!準備がいい!」
社長「ありがとう、よっちゃん」
よっちゃん「そんな、お礼なんて・・」
ニコ「いいから行くよ!」
○大通り
サイレンを鳴らし、追跡するシトロエン・2CV
それから逃げるトラクター
69 :
パンダ男前編8:2008/11/02(日) 16:19:10 ID:r0q7DkAo
○車内(トラクター)
パンダ野郎「んがああ!!くそっ!!
どけっ!どけっ!」
右へ左へ車体を揺らしながらスピードを出し逃げる
一海がそれにつられ左右に揺れる
パンダ野郎「なんで分かったんだよ!」
ミラーから車を確認するパンダ野郎
パンダ野郎「んあ?あれ面パトじゃねぇか!」
一海「ちょ・・・ちょっと!スピード出しす・・・気持ち悪い・・」
窓から顔を出す一海
○ロボの車
後部座席から身を乗り出す社長とよっちゃん
ニコ「あれ!?一海ちゃんだ!ほら」
社長「あらほんと」
よっちゃん「ロボぉおおお!!いけええええ!!」
ロボ「マックスダーッシュ!!」
窓から顔を出し、手を振るニコ
ニコ「一海ちゃーん!!」
○車内(トラクター)
一海「ん・・・?ニコ!?」
○路上(歩道)
取締りを行っている警官2人
警官1「君ねぇ・・・いくら急いでるからって言っても
こんな大通りでスピード違反なんて、みっともないよ?
俺たちだって他の仕事あるんだからさあ」
取締りを受けている男はずっとよそ見をしている
警官2「てめぇどこ見て・・」
そう言った瞬間警官2人の後ろを猛スピードで走りぬける2台の車体
警官2人の帽子が飛ぶ
取締りを受けている男「警官さん!早く!捕まえないとあいつら!」
○警視庁(外観)
○警視庁
鳴っている電話
それをとる刑事A
刑事A「え!?なにぃ?うん、おう、おう!分かった今行く!」
○警視庁(外観)
数台のパトカーが建物から出ていく
70 :
パンダ男前編9:2008/11/02(日) 16:20:03 ID:r0q7DkAo
○ニコの家(外観)
○ニコの家
ニコの母「ええ。そうです。ええ、うちの娘が。はい」
ニコの父「ねぇ、なんて?見つかったって?」
ニコの母「ちょっと!静かにしてよ!何言ってるか分からなくなるでしょ!」
ニコの父「もう〜!心配なんだよ〜!」
ニコの母「なら静かにして!」
喧嘩を続ける2人
○大通り
サイレンを鳴らし、追跡するシトロエン・2CV
それから逃げるトラクター
さらに後ろから来るパトカー
○パトカー
刑事1「なんだぁ!?こんな大通りでバカ騒ぎか!?
あの面パトはどこのだ!?」
刑事2「あんな面パトいないっス!」
刑事1「なぁにぃ?なおさらだ捕まえろッッ!!」
○ロボの車
バックミラーを覗くロボ
ロボ「あれ?パトカー来てない?」
○パトカー
スピーカーを使って叫ぶ刑事
刑事1「おい!そこのエセ警察!止まれ!!捕まえるぞ!」
○ロボの車
ロボ&ニコ「ええええええええ!?」
ニコ「まずいんじゃないの!?ロボ!」
ロボ「俺に言うなよぉ!!」
社長「しーらないっと」
続き待ってます!
72 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 02:44:48 ID:Requ3C5B
保
73 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/14(金) 11:04:20 ID:4vg6c3Jd
守
投下まちの繋ぎ保守小ネタ
勢いだけで書きました、エロ無し(エッチしたいロボと受けニコ)
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
ちゅっ。
「ニコが欲しい…」
「ロボ…」
ごそごそ。
「ん、どうしたの?」
「ん…あの、や、やっぱりその」
「…怖い?」
こくん。
「あのさ、嫌じゃないんだよ?ロボならいいって思ってる。でも今はまだ…」
「ん〜…」
「ごめん」
「わかった。ニコが大丈夫って思えるまでしない。高校生のうちは我慢したっていい」
「ロボ…」
「俺ニコの事本ッ当に好きだから。だから、結婚するまで待てってんなら、ま、待つよ(ツライけどぉ〜)」
「うん、ありが…えっ!?」
ぎゅっ。
「だから、絶対俺と結婚してね」
「……」
「ニコ?」
「いやだ」
「えっ!?」
ガーーーーーン!!
「ロボ…」
「……orz」
「…そこまでは、私の方が待てないよ」
「♪」
イチャイチャ。
《おわり》
♪〜
いつもピンク板永久規制のdionなのでレスできませんが
堪忍袋の緒がきれそうなので金のかかるモバイルで...
はやくしてぇ?・
>>74 会話がまんまニコロボみたいだw
ナイス!小ネタ
よかったらまた書いてください!
ほしゅ
保守小ネタ:幸子のおねがい
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
しくしく。
「ん?どうしたの、さっちゃん。ママに叱られたのかな?」
「あ、よっちゃんのおじちゃん。あのね、ママがパパに『ロボのバカー!!』ってね、ひっく」
「なんだ夫婦喧嘩か」
「ううん。パパはずーっと『ごめんなさい』って。あたらしいおともだちがくることかくしてたから、
ママがおこっちゃったんだって」
「(相変わらずだなロボ…)そうか、ママも色々大変なんだよ」
「さちこ、パパもママもだいすきだから、なかよくしてほしいのに…うぇーん」
「Σああっ、ほら泣かないで!よしよーし(しょうがねえなぁあいつら…)おっ、
そうだ。おじちゃ…お兄さんにいい考えがあるぞ」
ひそひそ…
「うん、わかった。ありがとうよっちゃんのおじちゃん」
「あ、ああ、じゃあ頑張るんだよ」
「うん。ありがとう、よっちゃんのおじちゃんバイバーイ」
「じゃあねー(せめてよっちゃんだけで呼んで欲しいよ…)ロボに注意しとくか」
※幸子には弱いよっちゃんだった。
*その夜*
「さっちゃん何書いてるの?」
「あ、ママ。あのね、サンタさんにおてがみかいてるの。あしたようちえんに
もってきなさいって」
「へぇー何て書いてるの?」
「はい」つ手紙
「……」
*翌朝*
「オハヨウございマックス!!」
「せんせえ〜」
「おはようございます。あらー幸子ちゃん今日はパパに連れてきて貰ったの?」
「うん。けさはパパはママとラブラブだったんだよぉ〜」
「あ、あら良かったわねぇ」
「ハハハ。こらぁ幸子、はずかしいだろぉ〜。パパとママはいつだって仲良しだぞぉ!
じゃあパパ行ってくるからね〜」
「はぁい。あ、せんせ、はいサンタさんへのおてがみー」
「はいはい。幸子ちゃんは何をお願いしたのかし…えっ?(赤面)」
「パパいってらっしゃーい」
「〜〜〜♪」スキップるんるん。
「…幸子ちゃんのお願い叶うと良いわね」
「うん♪」
『さんたさんへ おとうとかいもうとがほしいです。 ゆりぐみ すどうさちこ』
《おわり》
幸子に弟も妹もたくさんきょうだいをお願いしますw
おとうさん、おかあさんがんばって下さいww
>>78 GJ!
夫婦喧嘩の絵が容易に想像できました
よっちゃんおじちゃん頑張れw
ちょい投下させて頂きます。エロ無し。
※会話が噛み合わない箇所が多々ありますが仕様です
* * * * * * *
6年あれば変わる。人も、その環境も。
そして――自分との関わりも。
* * *
もう30歳になった。周りはどんどん幸せになっていく。今日もまた同僚がまた1人結婚という人生の
スタートを切った。
「また今月も赤字だよ……」
御祝儀貧乏でここんとこ毎月ピンチ続きだ。いや、金がないのはいつもの事なんだけど、今までの
様にロボットにつぎ込んでいた分はほぼそっちに流れてしまって、これ以上は切り詰めようがない。
これじゃあ今月はあれとあれ、諦めなくっちゃな……。
冷蔵庫にあと卵幾つあったっけ?と明日からの哀しい独身男の食生活を思いながらふと目を向けた
先には、式場内にあるジュエリーショップがあった。
「いいなあ、幸せそうで」
俺も早く可愛い奥さんが欲しいな〜なんて考えながら、何組かのカップルに羨ましさ全開の視線を
送っていた。
その時だった。
「あれっ?」
ふとその中の1組に目を留めた。俺の記憶が正しければ、あの顔には見覚えがある。良く知っている、
間違いない。
多少老けてはいるが、あの立ち姿と振る舞いは絶対そう、彼だ!
「よっちゃん!?」
へえー、こんな所で会うなんて。しかも指輪なんか見てるって事は、そうか!
もう少し近づいて驚かしてやろう、その前に相手がどんな人が見てやろう。そんな事を企みながら
物陰から様子を窺った。
よっちゃんの隣で試しに嵌めた指輪をかざして眺めている彼女を見ていて、何かふと変な気がした。
若い。すごく若い!あれはきっと10……まではいかなくても多分ハタチそこそこだっ!くそう、
よっちゃんの奴ぅ〜。羨ましすぎるっ!!
……だけどそれだけじゃなくてなんか引っかかるんだよな、とできる限り目を凝らしてちらちらと
確認できる横顔を眺めていた。そして、ふと記憶の断片にあったある想い出に辿り着く。
大切な、大切な――俺の友達。
「嘘だぁ……」
あんなにも変わってしまうものなのか。
子供の姿から一気にその姿を変えて、ニコは再び俺の前に現れた。
あれがニコ。
よっちゃんと並んでる姿から、背が伸びたんだなーってわかる。ちょっとゆるーく巻いてあった髪は
黒くて艶々して、肩の上で揺れてて、化粧なんかしてんのな。唇も何だかこれまた……っておいっ!
何を言ってんだ俺!!
ニコだよ?あのニコ。一海ちゃんならともかく。
……一海ちゃんは元気かなぁ?きっと綺麗になってるんだろうな。えーっと多分今25歳として、
もう結婚しちゃってるかもなぁ。ニコもする位なんだから。
あのニコが。しかもよっちゃんとって……。
いつからなんだろう?よっちゃんてばいつの間に帰ってきたんだろう。社長も一緒かな?いつの間に
ニコと……。
ニコ、可愛かったよなぁ。当たり前だけどもう子供じゃないんだ。恋とか愛とか、結婚なんか
しちゃうようになっちゃったのか。
よっちゃんがその相手で、2人は一体いつ再会して付き合ってたんだろう?ていうかよっちゃんが
まさかニコを好きになるなんて!あのニコを。
……あのニコがあんなに綺麗になるなんて。
「はっ!?お、俺はさっきから何を言ってるんだ?」
どうかしてる。
何となく携帯を眺めてはもう何年もそのまま使用せずのアドレスを呼び出して、発信できずにいる。
「どうしたいんだ、俺は」
久しぶり、元気?今日見たよ、いつからなの?もう水臭いなぁ、式には呼んでよ!
「って、普通に掛けてみりゃいいんだよ、変じゃないよな、うん」
だって俺達友達だし。
「友達……だもんな」
そう思ってたニコは何だか知らない人みたいに見えて、またもう1人大事な友達である筈のよっちゃん
は当たり前のようにその側にいた。
俺だけが、そこに居なかった。――それがとても寂しかった。
「俺、忘れられちゃったのかなぁ……」
そう思うと何だか恐くなってやっぱりやめようと携帯を閉じかけて、
「ふ……ふぁっくしょん!!」
――ピッ。
「ん?……うわあぁぁぁーーーっ!?」
やばい!コールしちゃったよ。
思わず慌てて切ってしまって暫く置いておいたけど鳴ることはなくて、俺はそのまま眠ってしまった。
「あれっ?」
翌日営業所回りで重い足を引きずりながら階段を上ると、すらっとした白い脚が目に飛び込んできた。
「おおっ!!」
思わず生唾を飲み込み見上げる……その瞬間。
「!?」
がたがたっと音を立てて手すりにもたれかかり、かろうじて転がり落ちるのは免れた。
「どこ見てんのよ!スケベ」
ああ、変わんないなぁ。
「ニコ……どうしたの?」
「どうもこうもない!夕べ電話……くれたよね?だから」
突然の別れからまた突然に俺の目の前に現れたニコ。
「だから、ロボに会いに来た」
間近で見るニコの姿はとても懐かしくて、でもとても眩しくて。
俺は今度は眩暈を起こして階段から落っこちてしまいそうな気がした。
「電話くれたら良かったのに」
「何言ってんの。何度も掛けたんだよ!けどロボ出なかったから」
あ、そうだ。うっかり充電切らして会社からもしっかり注意されて帰ってきたんだった。
「……ってあたしも夕べは忙しくて携帯見てなかったんだよね。ごめんねロボ。で、用って何?」
「え、っと別に……」
「はあ!?」
なんだっけ?何か話そうとか色々思ってた筈なのに、いざその相手が目の前に来たら何を言ったら
いいのかわからなくなった。
「あ、あたしやる」
お茶を淹れようとしてニコにそれを取り上げられたから、やる事がなくなった。
「着替えたら?」
「あ、うん」
奥へ向かうと普段着に着替えてちゃぶ台についたら、ニコは
「はいお茶。なんだ、ステテコじゃないんだ」
なんて昔と同じような口調で話しかけてくる。
「別にいいじゃん」
「別にいいけど!」
何だよ。すっかり大人になったもんでちょっとドキドキしてたのに、やっぱり中身はニコじゃんか。
これならいつものステテコだって良かったのに、気遣って損したよ。
……って何言ってんだ?俺は。
何気に見たニコの顔はほんのりと薄化粧されて、思わず淡い口紅の塗られた唇を凝視してしまって、
慌てて視線を髪に移すと艶々の黒い髪にどきんとして、俺は湯飲みを見下ろしたまま顔が上げられ
なくなってしまった。
「なあニコ。最近どう?何か変わった事とかあったりとか」
「え?……ううん。別に。ロボは?」
「え?俺は相変わらずだよ」
「ふーん。そうだろうね。ロボット、増えたよねえ」
そう言いながら笑ってぎっしりと仲間達の並んだ棚を見上げるニコに、あの頃のセーラー服姿のニコ
が重なった。そして、よっちゃんと並ぶ今のハタチのニコから目が離せなくなる。
「ニコは変わったよ」
「え?そうかな」
「変わった」
大人になったんだ。同じ筈はないのに、それが何故かもの悲しく思えて。
「そりゃ、あたしだってもう大人だもん。お酒だって飲めるし。あ、この前初めて居酒屋行ったんだよ」
「そうかぁ〜」
何気なく交わしていた会話の内容も、あの頃とは少しずつ違っている。そんな事を考えながら、暫くの
間ニコの話を聞いていた。
「もう、さっきからあたしばっかり。ロボは?」
「え?俺は別に〜」
「テレクラは?……好きな人とか、いないの?」
きゅっと胸のどこかが絞められた気がした。
「……ニコこそどうなんだよ。彼氏とかいないのかよ」
「えー?あたしはいないよ。っていうかなかなかそういう気が起きないっていうか……」
「ふうん」
屈託無く笑う顔には一点の曇りも感じられなかった。なのに……。
「ニコ、ごめん。俺明日早いから」
「えっ?あ、ごめん。忙しかったんだ……じゃ、帰るね」
靴を履いて振り向いたニコはちょっと遠慮がちに呟いた。
「あのさ」
「ん?」
「あ、あのね。また……会いに来てもいい?」
「……当たり前じゃん。俺達はトモダチだって言ったろ?」
「……うん。ばいばい」
小さくなって消えてゆく足音を聞きながら、2つ並んだ空の湯呑みを見つめてるうちに苦しくて堪ら
なくなった。
ニコは大事な友達。その筈だった、なのに。
「何で嘘付くんだよ……ニコ」
何で嘘付いちゃったんだよ……俺も。
それから何日かして俺はふとそこへ行ってみようと思った。
久々に見たその扉は開いており、以前のように多くはないが色々な骨董品が並んでいる。その奥に
よっちゃんはいた。
「お客さんかな?」
女の人と何やら話し込んでる。商談中だったら邪魔しちゃ悪いかと出直すつもりでいたら、そうも
いかなくなってしまった。
「!」
女の人がよっちゃんに抱きつき、そんでそのまま……。
う、羨ましいぞ!美人じゃんか、って、そんな場合じゃない!!
「ち、ちょっとちょっと!」
思わず慌てて突入してしまったせいで、くっつきかけた唇が離れた。
「……ロボぉ!?」
唇を尖らせた間抜けな顔(ごめんよ)で目を見開いたよっちゃんを突き飛ばすようにして、女の人は
店から飛び出してった。
「びっくりしたなー。おい、なんだよいきなりお前は!つうか久しぶりだな、おい」
「久しぶりじゃないでしょ。何やってんの!アンタ外から丸見えだったんだぞ!!ていうかいつからなの?」
「ああ、1月程前かな?……いーじゃねぇか、減るもんじゃなし」
「そういう問題じゃないでしょ!?」
いつからって、店もだけどニコとの事も……って。
「いっかげつぅ!?」
「うるせーなお前。相変わらずだな」
「そんなに早く……?」
よっぽど好きだったんだな。いや、だけど。
「……よっちゃん、今の人は?」
「ん?ああ、ちょっとな」
はぐらかすように奥へ行くと、カップを持って戻ってきた。
「まあ、座れよ」
コーヒーを淹れて貰って売り物の椅子に腰掛ける。
社長からやっぱり勿体ないからと店を譲り受け、この度よっちゃんが新たに店主になったんだそうだ。
「連絡くれたら良かったのに。スパイはもう廃業したの?」
「いや。ん、まあそのうちにと思ってな。……お前今仕事忙しいのか?今日だって外回りの途中じゃ
ねえのかよ」
「 あ、まあね」
ほんっと相変わらずだな、って笑う顔はあの頃とほんとに変わりなく思えた。
「ロボットも相変わらず大好きだよ。今でもモテないしお金もないしさぁ〜……よっちゃんは?」
「俺か?俺も特に変わりねぇな」
「……ニコは?」
なかなか出ないその名前に痺れを切らして、思い切って言ってみた。
「ん?ああ、ニコな。まあ落ち着いたらその内連絡取ってみようと思ってるよ。あいつだって色々
あるだろうしさ。お前は?ニコとは」
「会ってないよ。会うわけないじゃん」
「会いたいと思うか?」
タバコをくわえながら俺と見たよっちゃんから何故か目を逸らした。
「……まあね。あ、この日何かやるの?」
机の隅に置かれたカレンダーの○印に目が留まるが、よっちゃんは軽く頷いただけだった。
「俺そろそろ仕事戻るよ。じゃあね」
「おう!また来いよ」
結局俺は、よっちゃんからも嘘をつかれてしまった。
それから、俺も本当の事を聞き出すことも、伝える事もできなかったのだ。
「ロボ、いる?」
その日の夕方、部屋に帰り着いて着替える気持ちにもなれずにぼうっとしているとニコがやって来た。
「あのね、これお土産。ここのパン美味しいんだよ。相変わらずミミばっかり食べてんでしょ?一緒に
食べよ!」
流しにある袋を見ながらニコはちゃぶ台に紙袋を置いた。
「あれ?サンドイッチ嫌いだっけ」
「ううん。ありがと……美味い!」
「あ、ちょっと勝手に食べないでよ!」
何だか間がもたなくてパンを口に詰め込んだ。呆れながらそれを見てニコはお茶を淹れてくれた。
それにしても、ニコはどうして俺に会いに来てくれたんだろう。
単純に友達だから?
暇つぶしとか。
それとも……。
「なあニコ。何か話でもあんの?」
「え?なんで……来ちゃいけなかった?あたし」
「ん〜、そんな事ないけど。最近何か変わった事とかないの?とか思ってさ」
「ああ、うん。あのさ、あたし今服作る仕事したくてそういう学校行ってんの。今日はバイトもないし……」
学生なんだ。それにバイトかぁ。
「それだけ?」
「えっ?」
「俺になんか黙ってんだろ?」
目を丸くして俺を見たニコは目が合った瞬間俯いた。
「別に」
言ってくれる気はないんだ。
どうして?よっちゃんもニコもなんで俺には何も話してくれないんだろう。
俺達友達じゃなかったのかよ!
……寂しくてやりきれなくなった。
「バイトって何?」
「んっと、簡単な店番とか……」
「骨董品の?」
逸らしていた目を向けてニコは驚いた表情を見せた。……やっぱりな。
「俺知ってるんだよ。今日よっちゃんに会った」
「知ってたの!?」
「うん。何となく気になってたから確かめたよ。……何で隠してたんだよ。何で黙ってんだよ」
「ごめん。それは、あの、えっと」
「いいよ」
赤い顔してしどろもどろになりながら言葉を探すニコを見ているのが、急に辛くなった。
「もういいよ。俺には関係ないよ」
「そんな……ロボ」
膝を抱えながら、俺はニコに背中を向けた。
「ニコやよっちゃんが黙ってたって事は、そういう事なんだよ」
「ごめん。そんなつもりじゃ……。その内話すつもりだったんだ。本当だよ?」
「もういいって」
暫くの間沈黙が続いてどっちも何も出来ずに気まずい空気が流れる。その時昼間のよっちゃんと
知らない女の人の姿が頭を掠めた。
「……ニコ」
「何?」
「や、何でもない」
言えなかった。
きっとニコを傷つける。いや、それ以上にニコが俺を信じてくれるかどうかわからないと思った。
――あの時の俺のように。
「とにかくさ、もう良くないかもしれないよ?ここに来るの」
「……」
何も言わなかった。小さく「ごめん」と呟いた以外は。
ニコの出て行った後の部屋で1人泣きながら膝を抱えて、初めて気づいた。
話してくれなかった、その事だけがきっと悲しかったわけじゃない。
ニコと具のあるパンを食べながら俺は……
――時間が止まればいいのに――
そう思った。
「いらっしゃ……なんだロボか。どうした?」
「ニコから聞いてないの?」
店番していて椅子から立ち上がったよっちゃんに勢いよくたたみかけた。
「会ったのか? 」
「まあね。でも肝心な事は聞いてない」
そうか、と呟いて髭を撫でていたが
「ま、そういうこった」
とタバコを取り出した。
「悪いな黙ってて。ま、ニコの気持ちを考えるとよ……」
ニコが?
そんなに俺はあいつに必要とされてなかったんだ。
でもそうだとしても黙ってるわけにはいかない。
「よっちゃんこの間の女の人だけど。ニコはどうなるの。どうするつもりなんだよ!」
「は?……ああ、あれな。あれはさ」
「もしニコを泣かすような事したら許さないから。いくらよっちゃんでも……よっちゃんだから信じて
たのに。裏切るような事だけは」
「おい、ロボ?」
「ニコには言わなかったけど、このままだったら俺だって黙ってないからな」
よっちゃんは口を開きかけたが、ふと思い直したように顎を撫でながらしばし考え込んだ。
「で、お前どうしたいんだ」
「は?」
「もしかして悔しいのか?ニコ取られて」
「なっ……!?」
「悔しいんだろ」
図星だ。そう言うと俺の肩をぐっと掴んで顔を引き寄せ低い声で囁いた。
「だったらどうすんだ?」
「ど、どうって……」
けっ、と言って手を離すとタバコに火を点け目線を移す。その先にあるものを見て俺はあっと息を呑んだ。
「無理なら指くわえて見とくんだな」
「……ニコを頼むよ。よっちゃん」
そう言うのが精一杯だった。
店を出て、俺は結局無力なんだと肩を落とした。
黙ってることでニコが幸せになるなら、俺は何も見なかった、聞かなかった事にしようと思った。
だってニコはもう他の誰かのものになってしまうんだから……。
会わないって決めたんだ。
もう二度と近づく事のない星を想って、また1人部屋で膝を抱えた。
俺は何て諦めの悪い奴なんだろうか。
地蔵堂にあった○印の日、朝から式場を客に紛れてうろついてやっとそこを突き止めた。
神父の他には誰もいない2人だけのチャペルにいた純白のドレスを着たニコを、心から美しいと思った。
いや、今だけじゃない。
あの日6年振りに見かけたニコはすっかり大人の女の人になっていて、目の前で笑ってたニコは
とっても綺麗になっていて、俺の胸を締め付けた嘘つきなニコは、できることなら捕まえてしまい
たいと思った。
だけどそれはできない。
ここから連れ去ってしまいたいと願うニコは目の前のよっちゃんと誓いの口づけを交わそうとしている。
そう、もう人の奥さんになってしまうんだから。そう考えて諦めようとする。
諦める?ニコを?
仲間外れになったのがそんなに悔しいのか?俺は。
『悔しいんだろ』
よっちゃんの言った言葉の意味を考える。
「……悔しいよ」
ニコに何て思われてもよかった。
気が付いたら俺は、唇がくっつく前に張り付いてた扉を開けて中に飛び込んでいた。
「ニコ!」
「ロボ!?」
完全に一目惚れだった。
成長した相棒は少女から女になって俺の前に現れた。その瞬間からきっと、心は掴み捕られてしまったのだ。
その感情を認めた途端稲妻に打たれたような衝撃が体を貫く。
――好きだ。ニコが好きになっちゃったんだ!
何も考えてなんかいなかった。だけど、黙って奪われていくのを指をくわえて眺めているのだけは
絶対に嫌だとおもった。
やっと気付いた自分の気持ちに嘘を付くのは辛かった。たとえ届かなくても、何もしないで諦め
たくはなかったから。
無言で差し出した俺の手を見つめて、ニコはただ立ち尽くす。そしてその瞳は隣のよっちゃんを
戸惑いながら見ていた。
よっちゃんは軽く何かを促すように頬を動かして俺の方へ目線を送った。
その瞬間ニコは俺の手を握った。
「ロボ……」
「ニコ!?」
見上げながら口を真一文字に結んだニコの顔に俺の気持ちは決まった。
「よっちゃん……ごめん!!」
強く握ったニコの手を引きながら、俺達はヴァージンロードを出口に向かって走った。
どんっ!!
開かれた扉をくぐり抜けると、新たに飛び込んできた人影に勢いよくぶつかる。
「うわっ……えっ!?」
振り向き様に見た顔は女性だった。どこかで見たことがある、と一瞬のうちに頭を巡らせるが走り
だした勢いは止まらず、ニコの手を引いたままチャペルの外へ飛び出していった。
最後にちらりと見た肩越しの風景は、ニヤニヤと肩をすくめたよっちゃんと、そんな彼と俺達とを
交互に見ながら呆然と立ち尽くすもう1人の乱入者の姿だった。
「ちょ……ちょっと待って、ロボ待ってぇ!」
あっ、とニコはその場に崩れるように膝から倒れ込んだ。
「大丈夫!?」
「ハァ、ハァ……大丈夫……じゃ、ないって」
空いた方の手で腰の辺りに手を回して抱き起こす。ぐっ、と俺の体に引きつけるような形になって、
思わずその細い感触にどきんとした。
よくよく見ると、胸元とか背中ががっと開いていて、案外露出が高いもんだというのに気が付いた。
「ちょっと!い、いつまで触ってんのよ、スケベ!!」
「え?いや、何だよ、別に俺はっ!?」
慌てて離れるが、ニコは何かを見透かしたようで冷めた目を向けてくる。
「なんかへんな事考えてない?」
「な……なわけないだろっ!?」
「鼻血出てるよ」
「……」
疑いの眼差しを痛いほど浴びるのは、『ウェディングドレスって案外エロい?』という俺のエロ
センサーによる新発見のせいだろうか……。
カバンからティッシュを取り出し詰めながらニコを促す。
「行こう」
まだ敷地内だ。捕まるわけにはいかない。
「ああ、そんなに急がなくても追ってなんか来ないから」
「そんなわけないだろっ!だってよっちゃんはニコのこ」
「あー大丈夫。愛されてなんかないから」
あっけらかんと言い放ったニコに驚いて言葉をなくした。が、ふっとさっきの女性が頭を掠め、同時
にとある場面がはっきりと頭の中に思い出された。――あの時の!
「ニコ、もしかして知ってたの?あの女の人の事」
「うん。まあね」
知ってたのか……。だったらどんな気持ちで今日の日を迎えたんだろう?
「だから俺に付いてきてくれたの?」
「え?」
「……辛いんだろ。泣いたっていいんだ!さあ、俺の胸で泣け!!」
「はぁ?」
「愛した男に裏切られ愛を憎みたくなるその前に……この俺が癒やしてみせよう。さあ、今すぐ飛び込」
「いや、別に愛してもないけど」
ハァ!?と言う前に両手を広げたまま俺は、前のめりにすっころんだ。
その時小さくプルル、と音がした。俺の?じゃないなー。あれぇなんてキョロキョロしてたら、ニコ
がいきなりドレスの胸元に手を突っ込んだ。な、なんと大胆な!!……ん?
ピッ
「もしもし。よっちゃん?わかった、じゃあ後でね」
超薄型の携帯を使って早口でまくし立てると、それをまた胸元に押し込む。う、羨ましい……じゃなくてぇッ!
「あーあ、よっちゃんのバカ!!何やってんのよーったく」
「あの、何を……?」
「もう、またなんか考えなくちゃじゃない!……ん?どうしたのロボ」
「いや、だからその、よっちゃんは?後でって何?」
えーっと、俺、たった今奪ってきた花嫁をどうしたらいいんですかね?
「あ……ああ、だってこれ、実は全部お芝居だから」
「はあ!?」
「だから、よっちゃんとあたしのウソ結婚式なの。つまり、スパイ作戦だったんだよね」
ポカーン。
これが幸子の漫画なら、俺の頭には今「?」が山ほど浮かんでいるに違いない。
「あの〜、読者にわかるように説明してもらえますぅ?」
「は?誰読者って……。あのね、この式場で最近頻繁に式場荒らしが現れてるの。何組かのカップルが
今みたいな感じで破談に追い込まれてる。つまり『壊し屋』。縁起が悪いってんでお客が減って
困ってるんで依頼があったわけよ」
「で、こんな……」
「下手に潜り込むより手口がわかるしいいかと思って。で、よっちゃんとカップルを装って餌を撒いた
ってワケ。案の定よっちゃんの浮気現場を押さえた写真があたしの元に送られてきたし、式場に女が
乱入してきたのよね。その前に花嫁が逃げちゃったけど」
「うわっごめん!!俺邪魔した?しちゃった!?でもニコは」
「よっちゃんが行けって小さく呟いたから。不意をついて犯人を捕まえるつもりだったんじゃないかな?
ま、失敗しちゃったらしいけど。チャペルの階段から転げ落ちたらしいから、あの人」
よっちゃんめ。でも悪いけど、その絵は簡単に頭に浮かんでしまった。思わずウンウンと頷いた俺。
目立つ場所でのラブシーンも写真を撮らせるためだったわけね。
「それより、あたしこの格好じゃ目立ってしょうがないから、ロボ車あるよね?早く行こ……っと」
ニコはそう言うといきなりスカートを膝までたくし上げ、高いヒールの靴を脱いだ。
「ちょ、何やってんの!?」
「だって走れないんだもん。足痛いしさー」
ナマ足…ではないもののちらりとみえるのが却って……。
「ごほん、しょうがないなぁ……ほれっ」
しゃがんで背中を向ける。
「は?ロボ何やって」
「だってそんなじゃどのみち走れないだろ?裸足じゃ辛いよ。……ほらあっ!」
少しの間戸惑っていたものの、暖かく柔らかい感触が背中に感じられて、思わずニヤけた。
「……重い」
「!!」
頭をはたかれ降ろせ!と暴れられスイマセンと謝るしかない俺。ドレスってフワフワしてるくせに
意外と重いという知識を得たのだった。
「俺が連れ出したからだからね、その責任はとりマックス」
「……了解」
胸の辺りで交差するニコの腕に揺れる靴の音が、軽くコンコンなるのがちょっと心地良い。
「にしてもさ〜、何で俺に相談してくんなかったのさ。俺じゃ役立たずと思った?」
「違うよ。よっちゃんはロボに連絡しようとしたの。でもあたしが止めたんだ」
「なんで?」
「……だって、ロボだって色々あるんだろうなって思ったんだもん。だから巻き込んだら悪いかな
とか考えちゃって……」
「そんなの」
調べりゃすぐにわかるじゃないか、と言いかけて口をつぐんだ。
「……知りたくないって、思っちゃったの。だってあたしだって」
「変わったもんな。色々と」
俺だって確かめたかったのに、怖くて胸にしまい込んでた。ニコが黙ってる限り知らないふりをしようと思った。
知ってしまうと、後戻り出来なくなるのがわかってしまっていたから。俺はそこから逃げたんだ。
「でもロボ知らなかったんだよね?何でここにいんの」
「うっ。それは、その、俺の中にたぎる愛の友情パワーがだな……」
「はあぁ!?……でもさー、こんな格好知り合いにでも見られたらかなりマズいよね。ロボ、この
責任はちゃんととってよね」
「へっ!?」
「だって任務遂行はしてないんだから、手伝って貰わないと」
「あ、そっちか……勿論喜んで任務に当たるであります!それに……」
「え?」
「……ん?いや、あ、そうだ、とりあえず俺んちに帰る?詳しく聞きたいし〜」
「そうだね。よっちゃんに服持ってきて貰わなきゃ。……あーあ、今度はいつ着れるのかなー」
「え?着られるつもりでい……いてっ!?」
「うるさいな、とっとと歩く!!」
またはたかれた頭の痛みをこらえてへいへい、と姫を背負って歩く俺は、いつか君の隣で手をとる
日が来るのだろうか。
ニコには多分聞こえていたかもしれない俺の呟き。
『未来の責任はとりマックス』
俺が着せてやろうじゃないの!
「で?何か解ってる事は?」
「それがさあ……」
宇宙よりトキメく君との日々が今始まる。
* * * * * * *終わり
ハタチのニコ・・・
口は悪いが可愛くてそこはかとない色気も感じさせて
ロボが惚れない訳がない!?
よっちゃんが相変わらずよっちゃんなのもワロタw
楽しく読まさせてもらいました。GJ!
ロボのセリフがロボの声で脳内再生されました。口調とかに違和感が無いから。 GJです!
☆
1年ぶりにここにきました。
GJです。
とてもよかったです。
ちょっと失礼して投下させていただきます。
季節ネタ絡みのエロ未満。最初と最後だけロボ視点となっています。
××××××××××××
寒さも厳しくなってきた何かと慌ただしい冬の夜、久々に上京してきたケロ山を
囲んで心ばかりの宴と洒落込んだ。
相変わらずの貧乏オタクで年中懐が寒い仲間だが何年たっても変わらぬ友情に
胸を熱くして互いの近況も交えながら語り合う。
時間が経つにつれ、皆それなりにいい感じにアルコールが身体に馴染んできたせいか、
しだいに口も滑らかなってきて、ケロ山はすでにほろ酔い加減だ。
「そういや、もうすぐクリスマスだな。須藤はあれか、例の彼女と一緒に過ごしちゃったりするわけ?」
「まだ約束はしてないけどそのつもり」
「去年までは独り者同士、朝まで酒を飲み明かした仲だというのに
今年はおまえ一人だけ恋人達のクリスマスってやつを地で行くというのか」
「いいよなぁ、女子高生の彼女なんて」
言い終えるや否や霧丸を筆頭に三人の醒めた視線が俺に注がれる。
「しかしなぜこいつだけなんだ?色々な方向性から読み解いてもおかしな話だ」
「そろそろ飽きられる頃じゃないか?」
どこがおかしいんだよッ、地底元帥!それにケロ山まで!
揃いも揃ってそれでも友達かよっと憤慨しながらも
「合コンが全滅の俺と地底元帥と見合いがダメだったケロ山と振られたばかりの
シリウスと…俺らには一切関係ないイベントだよなぁ」
「……ああ、本当だな」
冴えないツラをつきあわせてかなりブルーな連中に軽い優越感を覚える俺も結構薄情かも。
すると重苦しく沈む空気を打ち破って、地底元帥が唐突に気勢をあげた。
「おい、須藤を始めおまえ達よく聞け。この俺が男と女の愛について
とっておきのアドバイスをしてやろう」
いや、人に助言できるような恋愛スキルがあるんだったら、とっくに結婚でもしてるんじゃないのか?と
どこか釈然としないものがあったが、興味津々で聞き入る他の二人を前にツッコミを
入れる隙もないこの雰囲気。
「いいか、男と女に余計な言葉は要らない。まず相手の目をじっと見つめて手を握りしめる。
それで女が拒む素振りをみせなかったら、そのまま押し倒せばいいのだ」
「そんな無茶してボコられて、はいサヨナラってオチになったらどうするんだよ」
まだまだコイツらみたいに酔っちゃいないと自負する俺の追及にも
「そこはそれ、縁がなかったと思って諦めるしかない。去るものは追わずだ」
なんという無責任な発言。そんな目にあうのはまっぴらゴメンだ。
「格好いいな〜!よっ、男前!」
テンション高く俺をそっちのけで浮かれまる中、遅れていたシリウスが飄々とした調子で現れた。
「すまぬすまぬ、こんな時間になってしまった。何やら、盛り上っておりますな」
「おお!いいところに来たシリウス。今、須藤に恋愛指南してたとこだよ。
ほら、おまえも座れ座れ」
「ほほう、それはそれは。私もぜひ参加せねば」
当然のごとく手をあげたシリウスを交えて、再び俺は話題の主役に祭り上げられ、
騒々しくも陽気な夜は更けていく。
カチカチと時計の音だけが部屋に響く。
チラッとその主に目をやり、あたしは膝を抱えながら深く溜息をついた。
「ロボ、遅いなぁ」
今夜はあのオタク仲間の人達と飲み会だっていうのは知ってる。
『ケロ山も来るんだ』ってロボが嬉しそうに言ってたことも。
「やめとけばよかったなぁ」
こんな日に限って両親も一海ちゃんも誰も家にいないんだもん。
一人きりはつまんなくて、ロボに会いたくなって躊躇つつも結局来てしまった。
留守なのはわかっているのに勝手に訪ねてきて遅いなんて責めるのはあたしの我がままだ。
楽しくしているところにメールしちゃ悪いかなって、ただ眺めているだけの携帯をつつく。
もしかしたら、今晩はもう帰ってこないかも?明日は日曜日だし。
「うーん、帰るべきか。どうしようか?」
なかなかふんぎりがつかないまま、テレビのリモコンを弄っていると
この時季定番の曲が流れてきて
「クリスマスかぁ…」
ぽつりと呟きながら、つい2,3日前に交わしたむーちゃんとのお喋りを思い出す。
『クリスマスプレゼント?』
『うん。ちょっと悩んでるんだぁ。身につけるものっていっても、ロボはお洒落なんか無頓着だし』
『だったらさ、究極のプレゼントはどう?』
『何、どんなの?』
むーちゃんは意味ありげに微笑むと小声で囁いた。
『あのね……』
『えっ!?そ、それは』
あたふたするあたしとは対照的にむーちゃんは大人な対応で、
『難しく考えないの。それもありじゃないって提案しただけだから。後はニコしだいだよ』
『はあ……』
ロボのベッドに転がって、むーちゃんの言葉を反芻する。
「プレゼントは……あたし?」
いや〜、絶対ムリだよ!恥ずかしくてそんなセリフ言えるわけがない!
そりゃあ一応男女のお付き合いをしているわけで、そろそろいいかなぁとは思ってはいるけれど。
あーでも想像しただけで顔から火がでそうだ。
「ダメだぁ!ありえなーい」
と手足を激しくバタつかせて身悶えたあと
「……何やってんだ、あたしは?」
スッと我にかえり、とりあえず頭を冷やそうと窓を開けた。
凍てつく夜風の冷たさに肩を竦めていると聞き覚えのある声が耳に届く。
「ロボだ」
目を凝らして暗闇を窺っていると、足元がおぼつかない人影が薄っすらと姿を現した。
はずれまくった音程でマックスロボの歌を機嫌よく轟かせながら。
「あーあ。酔ってるねぇ、あれは。こんな遅くに近所迷惑だって」
急いで玄関先に陣取るとロボより先に扉を開く。
「おかえりー」
「おお、これはニコリン大佐!お越しになっていたでありますか!」
しまりのない赤い顔してふらつきながら額に手をかざして決めるポーズはとことん格好悪い。
「ちょっと、もう…ロボ!」
靴も脱ぐのもそこそこに床に倒れこんだロボは寝転んだ体勢で伸びてしまった。
乙女のか弱い?細腕じゃ泥酔状態の大男を抱き起こすのは並大抵ではなくて
「この酔っ払い!こんなとこで寝るなッ」
「え〜、俺酔ってないよぉ。それにここはベッドでしょ〜?」
とあたりまえのようにその場でロボは上着を脱ぎ始める。
「違うってば!風邪ひいたらどうするのッ。お水持ってくるから待ってて。寝ちゃダメだからね!」
冷蔵庫からペットボトルの水を取り出しながら、キツく言い聞かせて叩き起こすと
ロボがゴクンと飲み下したのを確認して、ひとまずほっと一安心。
「さ、ロボ。ちゃんとあっち行って寝よ?」
傍らに座りそっと背中を支えて気遣いながら諭すと、ロボは子犬みたいな人懐っこい表情を見せる。
「ほんっとに優しいよなぁ、二コは。今日あいつらにさぁ、俺の彼女は思いやりがあって可愛くて
すっごくいいコなんだって、自慢してやったんだぁ〜」
そんな自慢しなくていいって。ハズいよ……。
「ねえ、ニコ」
「んー?」
ふいに名前を呼ばれて、何気なく返事をしたあたしにロボがぐいっと顔を寄せてきた。
え?なに??
「あの、ロボ。あんまり近づかれたら、お酒臭くて仕方ないんですけど?」
突然のことについ吐き出した意地の悪い指摘も気にする素振りもみせずに
まじまじとあたしを見つめてロボは全く目を逸らさない。
「…ニコ、俺のこと嫌いなの?」
「へ?なんで!?そんなことないよ」
「じゃあ、どうして逃げるの?」
じわじわとにじり寄ってくるロボに動揺を隠し切れない気持ちが
無意識に身体を後退させていく。
「な、なんとなく」
あ、マズイ。背後に当たる固い感触に行く手を阻まれて逃げ場を失ってしまった。
「ロ、ロボ」
どうしたの?って聞き返す間もなく、迫ってきたロボに唇を塞がれた。
うぅ…変な味。お酒の匂いの入り混じったキス。なんだかこっちまで酔ってきそう。
ぼーっとしているあたしの唇を割ってロボが生温かいものを差し入れてきた。
「んんっ!」
侵入してきた舌に執拗にかき回されてちょっと息苦しい。
初めての経験にどうしていいかわからなくてロボの肩を力任せに掴んでいると
一段と強くぎゅっと抱きしめられてそのまま押し倒された。
うそ、やだ、まさか?
どうにかして逃れようともがくあたしをロボが押さえ込むようにしてお互いの脚が交差する。
今日はスカートじゃなくてよかった…って、そうじゃない、そんなこと考えている場合じゃなくて。
さんざん嬲られた唇をロボがようやく解放してくれたと思ったら、荒い息遣いとともにそれは
首筋に吸い付いてきて
「あ…」
全身を電流のようなものが駆け巡る。
耳たぶから首筋、鎖骨を行き来していた痺れるような動きが一旦とまって
「ニコ」
熱っぽく見下ろすロボがあたしの名を呼んで再び強く唇を押し当てて、
同時に背中から太ももと辿る手が愛撫を繰り返す。
普段のロボだったら、こんな強引なことはしない。いつだって優しいもの。
酔ってるからなの?酔っていてもその気になるのかなんてよくわからないけど
お酒の力を借りての行為だとしたら、ちょっとズルイよ……。
「ロボ……っ!」
やめてって口を開こうとするのにうまく言葉にならなくて吐息だけが漏れる。
本気で逃げようと思えばいくらだってできるはずなのに、それすらままならない。
心と身体がバラバラに反応して、自分が自分じゃないみたいな感覚に陥って
やがてそれはロボによって完全にひとつに支配されていく。
「好きだよ」
低く囁いて素肌を這う唇や舌に気が遠くなりそうになる。
大きな掌で膨らみを揉みしだかれ、その中心がしだいに尖っていくのがわかる。
「あっ…やぁん!」
我慢できずに溢れてしまった声に戸惑って混乱して、けれど気付いたときにはキスを
交わしながら纏わりつくロボの舌の動きにあたしはぎこちなくも必死についていこうとしている。
「ん、んんっ」
いつのまにかロボの指先が服の裾から忍び込みなんなく捲り上げていって
肌も露に夢中で求め合った唇がようやく離れたのも束の間、胸のあたりへするりと下降していく。
湿った舌先でブラのラインに沿って舐められて、片方の手が布越しの突起を器用に弄ぶ。
整わない呼吸は段々と速さを増していき身体中を走る甘い疼きに意識が朦朧としてくる。
このままどうなってもいい…ロボと最後まで……。
もう引き返せない熱い感情に胸に埋もれるロボの頭を抱きかかえるようにして
両手をまわした途端、今までにない重みが急激にあたしの身体にのしかかる。
「え…っと、ロボ……?」
小さく絞りだした声にもロボはまるで人形のように動かない。
それどころか、とても心地よさげな寝息が聞こえてくる。
もしもし?
「ぐふふ、もうお腹いっぱぁい……ムニャムニャ…」
寝る子は育つってやつですか?
「……重い」
放心状態で天井を見上げていたあたしはしばらくたって
やっとの思いでロボの重みから抜け出した。
何なの、この男は!?幸せそうな顔して、さぞやいい夢をみてるんでしょうねッ!
一瞬でも人をその気にさせておいて、自分は高いびきで!
「ロボのバカ!」
そうだよ。冷静になって考えてみたら、こんな形でロストバージンだなんて冗談じゃない!
怒りに任せてぐっすり眠るロボを置き去りにもう寝てやる!とベッドに向かおうとしたけれど
1ミリ程残る情けで毛布だけは掛けてやった。
明日覚えてないなんて言ったらどうなるか覚悟しといてよね!
ああ頭が重い。すっきりしない。
「マカロニグラタンにクラブハウスサンドでしょ」
ついでにニコにお灸を据えられた頬にも鈍い痛みが。
「アップルティーにそれと…」
窓から差し込む陽射しが二日酔いの身には眩しすぎるとあるファミレスで
向かいに座る彼女はメニュー選びに忙しい。
「ニコ、それ全部食べるの?年頃の多感な女の子といえば、
僅かな体型の変化も気になる今日この頃かと…」
っていうかそのまえに俺、あまり持ち合わせが……。
「悪い?」
「……いえ」
口答えはやめましょう。
なぜって?俺が昨夜二コにやらかした振る舞いのせいで、只今非常に肩身が狭いのだ。
せめてものお詫びにと連れ出したのに再び機嫌を損ねられてはたまらない。
朝、なぜか冷たい床の上で目覚めた俺は起き抜けにニコに厳しく詰問された。
昨夜の記憶はあるのかと。
「ふーん、覚えてないんだ。へぇー」
状況が把握できずにいる俺にその声は不満そうで。
はっきりいって家に帰りついてからのことはあまり覚えていない。
思いがけずニコが出迎えてくれたサプライズに更に気分がハイになった記憶はある。
だがそこから先の肝心な内容がごっそり抜け落ちていて、何かとても柔らかい温もりに
包まれて眠りに落ちていったような……。
ニコはあまり詳しくは教えてくれなかったけどあれは夢だったのかな?
未遂で済んだからよかったようなものの酔っていたとはいえ不覚。
……まあちょっと惜しいことしたかなという気持ちもなくはないが、
深酒は禁物だと自分の行動を省みながら、ふと店内を彩る鮮やかな
デコレーションに目に奪われる。
そういえば。とまだ不確実な約束を彼女に恐々訊ねてみる。
「あのさニコ、クリスマスは一緒にお祝いしない?」
「クリスマスぅ?あれー、ロボってクリスチャンだったっけ〜?」
これって嫌味?やばい。またもやニコの神経を逆なでしてしまったかもと後悔していたら
「……別にいいけど」
「え?」
「いいよって言ってるの。何度も言わせないでよ」
と無愛想にそっぽを向いたけど、窓ガラスを通して見るニコの顔にほんの少しだけ
映し出された笑みを見逃しはしなかった。
すまん、みんな。やっぱり俺は幸せものだ
そうと決まれば!ケーキ用意しなきゃ。プレゼントも買わないと(お金ないけど)
……それと。
「二コ。俺、今度は絶対忘れたりしないし…優しくするから、ぶたないでね」
「ばっかじゃないのッ!」
すぐさま怒鳴られてまたまた冷たい視線に早変わり。でも怒った顔も可愛いけどね。
「ロボ、抹茶アイスも追加」
「……承知致しました」
来たる聖なる夜に思いを馳せながら、ニコにバレないように
こっそり財布の中身を確かめる俺がいた。
終わり
ニコカワユス♪
酔っ払いロボはこんなこともありえそうとオモタw
GJでした!
ニコ、かわいっ!
すんなり最後までいかないところがロボらしい?!
GJでした。
105 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 22:48:35 ID:rRhzJAb7
ぬおおぉぉグッドジョブ!
ニコの戸惑いやドキドキやちょっと?がっかりに
キュンときますた。
胸キュンGJ!な勢いで書いてみました。
3年後、高校生のニコとロボ。エロなし。
*****************************
「ロボ、起きてるー?」
土曜の11時。玄関のガラス扉を揺らして、一応外から声をかける。
「お母さんから煮物……」
いつもはどーせ寝てるし鍵も開いてるしで、勝手に入ってタッパーだけ玄関先に
置いていったり。リモコン握ったままTVの前で寝てる時には、け飛ばして起こしたり
するんだけど。
「おはよう〜」
と出てきたロボは、スーツ姿で歯を磨いていた。
「いつも悪いなぁ、月末は助かるよー」
「味付けはロボの方が上手だけどね」
「こら! そんな口きいちゃイケマセン」
「へーい」
愛と正義と、行儀にも結構うるさいロボに生返事しながら、冷蔵庫にタッパーを
しまう。流し脇には朝食の食器が片付いていた。
休日出勤?という問いには、みたいなもん、と応えたくせに、嫌そうじゃない。
見覚えのない派手めのネクタイを締めながら、ちらちらと、こっちを見てる。
……おニューを褒めてほしいとか? その割に、悪い事した子供みたい。
変なの。まあ、ロボはいつも変だけどさ。
地蔵堂閉店から3年。
高校生のあたしとロボは、また出会って「友達」を続けている。
流石にもう、男の一人暮らしの部屋で昼寝をするほど子供じゃなくて、
昔の自分を思い出して赤面することがある。
そんなガキを笑って許していたロボは、大人だったんだなと思ったり。
目の前のロボは相変わらずなんだけどね。
「ねー、お仕事終わったら一緒に」
そう言ったところで、ロボの携帯に着信が入った。返答の様子だと誰か偉い……会社の人?
ロボは片手で『ゴメン』のポーズをすると、お辞儀をしながら部屋の奥に行ってしまった。
そんなロボは知らない人みたいだ。
TVでも見ようっと振り向いた拍子に、つまづいた営業カバンから出てきたのは……
お見合い写真だった。
走って、ただ走って、赤の信号にひっかかってやっと止まった。
帰るねとも言わずに出てきた。
お見合い写真、本物って初めて見た。演歌歌手みたいな着物の、でもきれいな人。
さぞ鼻の下のばして承知したんだろうな。
「ロボのくせに!」
隣の人がぎょっと振り返る。しまった、声に出ちゃってるよ。
ちょうど青になった信号をそそくさと渡りながら、やっぱり波だった気持ちは収まらなかった。
戻ってちゃんと問いただしてみようかな、でももう出てるかも。美女と会いに。
ウィンドウにしかめっ面の自分が映る。
一海ちゃんとさえ比べなかったら、お年頃になったあたしは結構イケてるのに
ロボには相変わらず子供扱いされて、相変わらず「お友達」のままだ。
だから、恋人が出来たんなら応援できる。
でも、お見合いだなんてさ。
「結局一緒じゃん、テレクラと!」
今度は口の中だけでつぶやくと、足はなんとなく繁華街に向かった。
ロボなんかミアイでもプロポーズでもしてたらいいんだ。
「じゃねー、サンキュー」
送ってくれた車に手を振ると、夜道を家に向かう路地に入る。そこまではごきげんだったのに、
思わぬ人影に出迎えられて酔いが一気に醒めてしまった。
「遅いよー、ニコ」
「ロボ! 何してんの!?」
昼前と同じスーツ姿のロボは、いつものカバンを抱えていた。
そういえば着信あったけど無視してたっけ。
「……さっきの車、誰?」
「誰でもいーじゃん」
口答えに突然、顔を寄せられて固まると、くん、と匂いを嗅がれただけだった。
「未成年に酒呑ますような奴」
「二十歳だって言ったモン」
「えー、見えないだろうー」
「見えるよ!ロボだけだよ、子供扱いするの!」
ロボのあひる口が、何かいいたげにとんがった。
そうだよ。街で声かけて来る人は、大学生?可愛いねってちやほやしてくれる。
どっかのバカだけじゃない、11時には寝なさいって言うの。
ちょっと離れて向き合ったまま、沈黙。
「だから、用事はなんなのよ」
「し、したでしょー? 落書き!」
バレた。見合い写真の美人に猫のヒゲ。猫系の顔で似合ってたんだよね。
「ふーんだ。大事ならちゃんとしまっといてよ。
で、どうだったのお見合い!」
さぞ鼻の下が伸びるかと思ったのに。
「……行ってない。ていうかしないよ、見合いなんて」
「えー? なんで? 美味しいもの食べて”若者同士あちらで”話せばいいじゃん?」
おぼろげなイメージで応えると、ロボの眉間にしわがよった。普段がふにゃけているだけに、
そんな時のロボは怖く見える。
「会って、話してからどう断るの。貴女じゃダメですって? 失礼でしょ」
「そういうもんなのー?」
「そう。で、特に文句なかったら、婚約だからね」
「えー?」
相変わらず不機嫌な顔のロボは、盛大にため息をついて
「そーんなことも知らないんだ」
と、言ったきり足下の砂利を蹴ってまた黙り込んだ。
当たり前じゃん!ぴちぴちの10代には関係ないもん!!
でも、悪態をつくにはロボが険しすぎて、あたしも黙り込んだまま時間が過ぎる。怒るなら、
さっさと怒ってくれたらいいのに。
「……とにかくさ、断ろうと思って。今日は写真を返しに行ったんだ」
ホッとしたのは、沈黙が破られたせい。多分。
「なのに部長が広げたら、猫のヒゲでさ」
「あ、怒られちゃった?? ゴメンねー」
必殺!上目遣いの一番カワイイ顔で誤魔化そうとしたのに不発。
「怒られるとかじゃなくてさぁ。
お断りする時には返すんだよ、こういう写真は。また他の人に回すから」
「ふーん。 え?」
「なのに落書きって。一体どーいうつもりかなって」
「え、まさかロボ、返せないと、お見合いで、婚約なのー??」
あたしの落書きのせいでー??
「……しちゃってもいい?」
「だ、駄目に決まってるじゃん!そんな理由でー」
「じゃあ何。ヤキモチ、妬いた?」
「バ」
ばっかじゃない、と威勢良く言い返したかったのに図星だったから。探るようなロボのまなざしの前で
みっともなく言いよどむ事になった。
と、何軒か先の我が家の玄関に灯がともって『ニコなのー?』と母が顔を出した。
ロボが腰を折って会釈する。途端に笑顔になったロボ贔屓の母は、会釈を返してひっこんでしまった。
帰れって呼んで欲しかったよ。
「う、うちの両親も見合いだったのに隠してるの。恋愛結婚でしたーって」
とりあえず話を変えてみる。
「ふーん、出会いはなんでもいいと思うけど。俺達が最初テレクラで知り合ったのも、やっぱり
内緒にしなきゃかなぁ」
はぁ?内緒って誰に??
見上げたロボはいつのまにか、いつものふにゃっとした笑顔だった。
「部長がさ、落書きの件、先方に謝ってくれる代わりに仲人させろって言うんだよ。
俺とヤキモチ妬きの…」
ロボの指がなんとあたしに向いて
「…『彼女』の結婚式で」
ぴん、とおでこを弾いた。
口がぱくぱく開くだけで言葉が出ない。ケ?ケッコン??
「そんなの、もーっと先の話だと思ってたのにさ、
ニコは勝手に二十歳になっちゃって、誰かと酒呑んで帰ってくるし。焦るじゃないか」
何、この突然の流れ。
「あ、あたし帰るっ」
「ダ〜メ。俺が呑ませたと思われるでしょ〜。醒めるまで、明日の話でもしようよ、どっか行く?」
腕を掴むな!
…と、ポケットの携帯にメールが届いた。 見れば?という仕草に促されると、
案の定さっきの人からで、楽しかったね、明日も会えるかなって。
うん、楽しかった。
ヒマだったら明日も会っても良かった。
でも、真ん前に立ちふさがるロボが、あたしの選択を待っている様なのよ。
腰に両手を当てて、胸はってクビをかしげて、そいつと俺とどっちにするのかって。
結構自信ありげでむかつく。
「も、もしかして、この人が運命の人で、明日の誘い断って、もう2度と
会えなかったらどうしてくれる?」
「そーゆーのは、運命の人って言わなくない?」
俺達は会えたじゃん。照れもせずにそういうと、ロボはお得意のポーズで決めてくれた。
ああ、こんなやつがあたしの?
<運命の人? 終わり>
結構どころか完全に自信満々なのがロボらしい!?
まちがいなく運命の人だもんね。
最後までテンポのいい話でおもしろかったです!
GJ!
ヤキモチ妬いて、悪戯してしまうニコかわいすぐるっ。
ほほえましくてGJでした!
いぃね。ニコのヤキモチ。かわいい。ロボのきりっとした姿?新鮮かも。
GJでした!
クリスマスの話が読みたい!
「17回目のクリスマスかー」
「俺は初めてだけどね」
「?」
「好きなひとと過ごすのは」
「……」
「……」
「…ロボ」
「ん?」
「二度目も一緒に過ごせるかな?」
「二度目だけ?」
「…ずっと」
「うん」
ずっと一緒にメリークリスマス。
皆様メリークリスマス。
というわけでネタ待ち保守♪
さげわすれたorz
メリークリスマス!
ロボ&ニコ
圧縮近しらしいので保守小ネタ:オトナのアソビ?
※10年後の須藤家、マニアックネタ?
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
「懐かしいなー」
「どうしたの?」
実家に幸子を預けて大掃除の2人。
「ほら、これ。中学の時のセーラー服が出て来たの!こんな所にしまってあったんだ…」
「ホントだ!そういえばニコと知り合ったのもこの頃だよなぁ」
ピーン!(何かを閃くロボ)
「ねぇニコ、最近太ったんじゃない?」
「えっ!?そんな事ないよ!失礼しちゃうー」
「へーそう?でもさすがにコレは着られないよね。ニコももう若くないし…」
「はあ!?あたしまだ24ですけどっ!わかったわよ、着るわよ!見てなさいよ!!」
ごそごそ。
「ほら、丈は短いけどあたしだってまだまだ大丈夫…」
「……」ニヤリ+生唾ごっくん。
「わかったでしょ?もう脱ぐからね。…なんで窓閉めてんの?まだガラス拭いてないのに。ちょっ、
カーテン閉めたら暗いし。早く済ませて幸子迎えに行かなきゃ…え、あの、いやあぁ〜!?」
*数時間後*
「あら威一郎さん。さっちゃんいい子にしてたわよ〜。ニコは?」
「お義母さんすいません。ニコはちょっと疲れたみたいで…あの、終わらなかったんで明日も幸子を」
「あらいいわよぉ〜。随分念入りねぇ?今夜は焼き肉するから食べていらっしゃい。さっちゃーん、
パパ来たわよ」
「パパ〜」
「お〜、幸子いい子にしてたかぁ?」
「うん。さちこ、おじいちゃんとがっこうごっこしてたんだよぉ」
「そっか〜、パパ達も…いや、何でもないゴホゴホ」
「?」
※その頃須藤宅のベランダには1着のセーラー服が…。
「疲れた…っ、ロボの…変態っ!!」
大人の学校ごっこ♪
《終わり》
ニコをうまいことのせてコスプレに持っていくロボはさすがだw
GJ!
保守しまっくす!
保守
エロ有りで投下
但しとある理由によるニコ攻め有り
多少アブノーマルな要素があります(エロ自体はソフトだと思いますが…)
※普段あっちに関してははロボ>ニコ気味だと想像して書いてるので、かなり主観的だと思います
なので気に入らないという方もいるかと考えているのでスルーも視野に入れて下さると有り難いです
* * * * * * *
カーテンを引いた薄暗い部屋の中、響くのはかすれた吐息。
シーツの擦れる音。
そして、俺を呼ぶ艶やかな声。
「ロボぉ……っ、んん……」
「イキそう?」
「……ん」
「いいよ」
甘い甘いふたりの時間…………。
「ニコ、いい?」
「ん……うん」
きて、と俺の背中に手を回してすり寄るニコを今度はこちらが腰に手を回して
抱き寄せると、触れ合う下半身はとてつもなく熱い。
「お願いがあるんだけどな〜」
「何?」
俺には軽い白い躰をうつ伏せに返し、その背に汗ばんだ胸板を押し付けると
戸惑ったように振り返って俺を見つめる潤んだ瞳が、色っぽい。
「このまましていい?」
「え……や、恥ずかしいし」
「でももう我慢出来ないよ」
そう言って目一杯に高ぶった俺自身をニコの太ももに押し当てた。
「膝立てて」
「えっ!?だめ。絶対変な格好になっちゃう……」
「大丈夫だよ」
お腹に手を回してよっ、と持ち上げるとそれにつられて立ち上がった膝に俺の
体が割り込んだ。
「入れるよ」
「んもう……あっ、……ん」
「痛い?」
「大丈夫」
ゆっくりとその感触を味わいたかったはずなのに、思った以上の興奮と快楽に
堪えきれず腰が動いてしまうのを止められなくなっていた。
「えっちな格好だね」
「いや……見ないでよぉ」
「やだよ。恥ずかしがるニコすごく、可愛いよ」
時折背中を反らしてのけぞるニコの顔が覗けないのが残念でたまらない。だけど
漏らす声のいやらしさに想像力をかき立てられるのも、悪くないと思う。
うつ伏せになったせいで一層豊かに揺れる胸の膨らみを後ろから包めば、その
重みと柔らかさに気持ちは益々高まっていく。
「あ、ダメだぁ、俺イクかも……イキそうだよ」
「ん、いいよ……イッて」
「うん。ごめんもう……」
少しだけ、胸を掴む掌に力がこもった。
「俺の事好き?」
少し頬を朱くして、こくんと頷きながら寄り添ってくる。潤んだ瞳で見上げながら
微笑む仕草が本当にもう、なんというか、悶え死にしそうな位可愛い!
……ええ、バカですよ。バカで結構!
思いっ切り力強く抱き締めたらこっちのもの。気の済むまでそのツンと尖った
柔らかな唇にキスの嵐を浴びせる。軽く触れたり、舌を絡ませたり、強く押し当てたり。
何度も何度も飽きる事無く味わって。
「ん〜、たまにはニコからも迫って欲しいなあ」
「えー!?やだよ、そんなの」
「何でぇ!?」
「だって女の子からなんて恥ずかしいじゃん……」
きゅん。
普段は俺の方が手下扱いで引っ張られてばっかりなのに、こういう時は受け身なのが
ちょっと残念。
でも。
「もう、そういう所が可愛いんだからっ♪」
「ばか」
軽く小突かれたおでこの跡をその手で撫でてくれる。
そして今度は俺がその手を取ってまたキスの応酬。
俺の攻めにもめげずに付き合ってくれるニコは、本当に愛おしい。
「よっちゃん終わったよ〜」
「おう、悪いな」
地蔵堂によっちゃんが戻ってきたのは、ニコと再会して付き合う
ようになってすぐだった。
社長は引退してそのまま旅行中。せっかく引き継いだスパイのノウハウを無駄に
すまいとよっちゃんに半ば強引に跡を任せたのだろう。(この辺は容易に想像がつく)
なので再びスパイに駆り出されるようになった俺達。今日は探知機の修理を頼まれて
会社帰りに俺だけ来たというわけ。
「しかしアレだな、単なるスケベオタクにもそれなりの取り柄はあるもんなんだな」
「ちょっと!人に物を頼んどいて何それっ!?だいたいよっちゃんが『出来なぁい』って
泣きついてきたからなのに!プロフェッショナルの名が泣くねっ」
「るっせえな!大体お前の造り方が訳わかんなすぎんだよ!!このロリコン変態オタク野郎が」
「変態じゃないしロリコンじゃない……と思う、け、どぉ……。だってニコは今18歳。
来年には高校生じゃなくなるんだぞ。そしたらもっと堂々と出来るしけっ、結婚だって……」
「はぁ、結婚?貧乏オタクリーマンのお前がっ!?俺だってしてねぇのに、大体ニコが
承知するとは限らねえだろがっ!」
オタク貧乏はともかくリーマンは関係ないだろ?それによっちゃんはしないんじゃ
なくて出来……まあいいや。
「ダメかな?やっぱり」
俺はいいけどニコはまだ18歳だもんな。捕まえておきたいっていうのは自分勝手な
考えなのかもしれない。
「それにしてもお前がニコにそこまで惚れ込むとはな。ニコが相手してくれるとも思わな
かったけど。お前大事にしなきゃバチが当たるぞ」
「わかってるよ」
何だかんだ言ってもよっちゃんは俺達を応援してくれてるし、ニコに至っては
妹みたいに大事に思ってるらしい。……無理もないかもしれない。あの事件ではどちらにも
散々迷惑や心配かけたし、ニコの事も随分悲しい想いをさせてしまったから。
「なぁ、礼といっちゃ何だけどよ。ちょっと面白いもんが手に入ったからやろうか?」
そう言うと俺の目の前に小瓶が2つ並んだ。
「なにこれ?」
瓶の中にはそれぞれ白い粒と赤い粒のカプセルが入っていた。
「とあるルートで手に入った秘薬だ」
怪しい!あまりにも怪しすぎるぅ!!そういえばニコも昔変な薬買ったとか言ってたな。
「何の薬?」
するとよっちゃんは白い薬を指すと小声で囁いた。
「惚れ薬」
しばしキョトンとする俺。
「……へえ〜、さすがというかなんというか、よく手に入ったね」
「ん?何だやっぱ欲しいのか?」
「いらないよっ!そんな事しなくたって俺はニコをっ」
「いや、飲むのはニコだろ。どっちかつうと」
「なっ……そんな事ありません〜っ!ていうか一番必要なのはよっちゃ」
吸ってたタバコを目の前に突きつけられて、思わずのけぞってしまった。その拍子に
椅子ごとひっくり返って、こけた。
ガッシャーン!!!!
「おい商品壊すなよー」
誰のせいだよ誰のっ!!
「ところがこれは普通の惚れ薬とは違うんだな」
「へ?飲んだら最初に見た人に恋するとかじゃないの?」
そう言うと白いカプセルをひと粒つまんで俺の目の前に突き付けた。
「惚れるのは当たり前。既にオチてる場合は更にメロメロってとこ。まあニコなら
あのツン娘がデレデレってとこじゃね?……どうだ、見たくね?」
「ふうん」
よっちゃんからカプセルを受け取るとまじまじとそれを眺めた。
「ま、尻にしかれてばかりじゃなくてたまには……って冗談だよーって……おいっ、
いないしっ!」
店の中から『そういやこっちの薬は何だっけ?まあいっか』とか何とか聞こえた
ような気もするけど、半信半疑なのとちょっとした好奇心が渦巻いてしまって
ドキドキしたまま部屋に戻った俺をニコが待っていた。
「今日このまま泊まっちゃっていい?」
わざわざ私服に着替えて来てるからもしかしたら、とは思ったんだけど。
「聞くまでもないじゃん。何ならずっといていいんだぞ〜」
「もう、冗談はロボットだけに言ってよ」
結構本気なんだけどなぁ。
ニコの作ってくれた夕飯を食べながら、ずっと毎日がこうならいいのにと心から願ってる。
「お風呂先に借りるね」
ご一緒したいところだが後が恐いので我慢して、ニコが入浴してる間にいそいそと寝床を
整える。その間も俺の顔はこの後の事で緩みっぱなしになっていて、多分ニコが見たら
「スケベ」どころの罵倒じゃ済まないだろうなと思いつつも、頬を引き締める事ができなかった。
「ロボ……」
「ん?何……」
振り向くとちょっと暗い顔したニコが申し訳なさそうに俯いていた。
「どうしたの?」
「ん……なんか頭が痛くなって来ちゃって」
おでこに手を当てるが熱はなさそうだ。
「大丈夫?あ、服、服着て薬!薬飲んで横になりなよ、ね」
「ん……。あ、自分でやるよ。いつものあるよね?」
水の入ったコップを渡すと
「ありがとう。ロボも入ってきて……ごめんね」
そう言って申し訳なさそうにまた俯いた。
「いいよ……じゃすぐ済ませるから、一緒に早めに寝よう、ね?」
軽くキスすると濡れた頭を軽く撫でて風呂場へ向かった。
正直、この状況は辛いモノがある。
久しぶりのお泊まりだし、明日は休みでゆっくりできるし、何よりさっきのニコってば
バスタオル1枚ですよ!鼻血もんですよ、ええ!!普段の俺なら確実に押し倒してるな。
……あ、なんか罪悪感がチクチク。
でもやっぱりちょっと勝ち気で元気なニコが大好きだから、大事に想ってるから。
ちょっと、いや大分、本音はかなり……残念だけど、1日位我慢我慢だ!俺の愛は
これ位じゃ挫けないぞ!!
……とは言え、早く何とか落ちつかさないと、俺の体は心に忠実過ぎて困るのであります。
今俺はものすごい状況にいる。
ベッドの上でニコと熱いチューの真っ最中。
そんなの別に大したことじゃないだろう。そうなんだよな、もうえっちまでしてる俺達が
ベッドで重なってキスしてたって「ふ〜ん、で?」って思うよな。
けどいつもとは全く状況が違う。だって……。
「ん……ロボぉ……」
「ニコ?……ん」
柔らかい唇に塞がれて俺の思考はうまく働かなくなっていく。
一体何が起こっているんだろうか。これは夢か?夢なのかっ!?
「ニコ、どうしたの?」
「……いや?」
「ううん、そんなことっ!」
ないっ!絶対あるハズがないっ!!むしろ大歓迎。
「だってぇ……シたいの。ダメ?」
「そんなわけないじゃん!でも具合が……」
「ん、もう大丈夫」
タオル1枚を隔てたニコの肌の温かさに包まれて、何度も何度も濡れた唇を味わいながら、
ベッドを背にした俺は甘い夢に溺れた気持ちになる。
だって押し倒されてるのは俺の方だから。
風呂から上がったら、ニコはまださっきのままの格好でベッドに乗っかっていた。
「風邪引くよ?早く寝ようね」
すぐ側に並んで腰掛けた俺をじっ、と眺めたと思うと、いきなり肩に手を回して
キスをしてきた。
初めは軽いものだったから
『ニコからなんて珍しい。ラッキー』←(ちょっとうるうる)
なんて喜んだのも束の間、段々激しくなってきて、気づけば互いの舌を絡ませあっていた。
「どうしたの?ニコ」
「どうもしないよ?」
着ていた白いTシャツをゆっくり捲り上げられて。
「はいロボ、ばんざーいして?……」
静かにゆっくりと耳元で囁かれる声にぞくっとして言われるがままに脱いだ(脱がされた?)。
潤んだ熱い瞳で見つめられたら逆らえるはずもなく、そのまま倒れかかってきたニコに
押し倒されるような形で今に至る。
「ねぇ、ロボ」
「ん……んん!?」
俺の胸をニコの唇が滑り始めた。
えっ!?ちょっと、マジですか?
「ニコ、何を……」
戸惑う声とは裏腹に先端は堅く尖ってる。そこをニコの指がすうっと撫でた。
「あっ」
「気持ちいい?」
「う、うん」
ふふ、と小さく微笑むと中指の腹で片方を撫でながら空いた方は唇をあてがわれて
そのねっとりとした温かさに肌が勝手に震えてる。
「ロボ、可愛い……」
「あ、ダメだよ、んっ」
「もうやめちゃうの?でも今日はダメ」
今度は舌で転がすように苛められる。いつも俺がしてやる事をそのままやり返されてる
みたい……。
くそっ。こうなったらこっちだって、とのしかかるニコに巻かれたタオルを解いて
滑るようにずらすと、その胸へと手を伸ばした。
「やっ……んもう。ロボの意地悪ー」
「お返し」
すると躰を起こして俺の耳元で囁いた。
「もっといいコトしてあげる」
「えっ?…………うわっ!?」
余りの事体に一瞬電気が走ったような気がして、裏返った悲鳴をあげてしまった。
「だめだよ、そんなトコ」
「嫌なの?」
「そうじゃないけど……」
ニコの左手が俺の下着、つまりアレの上にあてがわれていて、温かいその感触に
どんどん自身を主張している状態なのだ。
「堅いね」
ゆっくりその5本の指の腹で撫でられるとそれは意思とは裏腹にどんどん大きくなってしまう。
「くっ……」
「気持ちいい?じゃ、もっと、ね」
ウエストのゴムに手を掛けた、と思うと止める間もなく引き下ろされて、そこは全ての
姿を晒された。
あ、もうされるがままじゃん、俺。
直にニコがその手を触れようとした時だった。
「ニコ……っ!」
「え?」
完全に抑えが利かなくなった俺はその手首を掴んで抱き締めると、体を捻って今度は
ニコを組み敷いた。「形勢逆転!」
邪魔なタオルと下着を投げ捨てるように取り去ると、胸を揉みしだきながら強く舌を
絡み合わせた。
「は、ぁん、ロボぉ……ん」
「ん、んん……はあっ」
激しいキスを繰り返し浴びせあっているうちに、もう何が何だかわからなくなってきた。
今日のニコは変だ。
積極的なのは嬉しいけど、いつもとは全然違う。油断すると呑まれてしまいそうだ。
何というか、その分どこか欠けてるみたい。恥ずかしがるニコもそれはそれで好きなんだ
けどな……。
なんて頭の隅っこでそういう事を考えながらも、愛してやまないニコの躰を滑る俺の
指の動きは止まらない。止められない。
「もうダメ、来て?」
「うん」
一刻も早く昇り詰めたくて、半ば余裕無くゴムを取りに立った。
だが、そこで目に付いた物が一瞬で俺の狂いかけた熱情を一気に冷やしていった。
「ニコ。頭痛治った?」
「うん」
ベッドへ戻ると、少しずつ冷めてきた自身を抑えるように着衣を身に付け始めた。
「今日はもう止めよう」
「なんで?」
「出来ないよ……」
がくっと肩を落とした俺をニコが不思議そうに見てる。
「どうして?」
「好きだからだよ。心から」
「だったら……」
「ニコは俺の事好き?」
「うん、好きだよ」
「……そっか」
変なの、というニコにタオルを掛けるとネクタイを差し出した。
「これで俺の手を縛ってくれる?」
戸惑って俺とネクタイを交互に見つめてる。
「じゃないと俺、抑えがきかなくなるかもしれないし」
「なんで?あたしが……あたしの事嫌いになったの?」
「違うよ!違うんだよ……」
抱いちゃいけない。いけないんだ。
「わかった」
そう言って俺の手を縛った。これであとは俺自身が鎮まるのを待つ……だけだったんだけど。
「ならあたしが気持ち良くしてあげる。ロボにしてあげたいの」
「えっ!?ちょ、だめ!うわっ」
しまった!手が使えないのを良いことに(?)ニコは今度は一気に下着に手を掛け……
た筈だったんだが。
「や、やめっ……はぁ?」
「ロボぉ……」
そのままがっくりとベッドに倒れ込んだと思うと、何と。
「嘘だろぉ〜!?」
いきなり眠り込んでしまったのだ。
時計の針が12時を廻った。
あれから2時間以上経つけどニコはまだ眠ったままだ。もしかしたら副作用かもしれない。
好き?と聞けばいつだって好きだと応えてくれた。何度も求めたが恥ずかしがりながらも
俺に総てを預けてくれた。
それは一体何だったというのか。
あんなのニコじゃない。
本心からああして俺を求めてくれたのなら、それ以上に俺はニコを求め返しただろう。
だけどあれは多分あの薬――おそらく同じようなカプセルだったために間違えられた――
のせいだ。
ニコの本心じゃない。
ほんの冗談というか軽い気持ちだった。普段俺の方がベタベタしがちなのが、不満じゃ
ないけどほんの少し物足りなくて、ちょっとだけ違うニコを見てみたくなった。
結果は効果てきめんどころか、はっきり言ってやりすぎたと思えるくらいだ。男なら
正直悪い気はしない。
好奇心からとはいえ、あんなもの持ち帰ったりするんじゃなかったと激しく後悔している。
わざと飲ませたわけじゃない。だけどまさかあんな事になるとは。
今だってこうして両手を使えなくしておかなかったら、眠っているニコにさえ何かして
しまいそうだ。
だけどあんな形で迫られたなら、どんなに欲望が高まろうとそれに甘んじてはいけない。
本当にニコを心から愛していると思えるなら、後々傷つくような事はしてはダメだ、
ニコも自分も。
どんなにニコを信じていてもときに不安に押しつぶされそうになるのは、きっと俺が
かなり年上である事や、よっちゃんの言うとおりのいわゆる甲斐性無しである事の引け目
なのかもしれないけど。
「ロボ?……どうしたのそれ!?」
いつしか目覚めていたニコが、尋常じゃない俺の姿に驚いて飛び起きていた。
「もしかしてあたしがやったの!?そうだよね、自分じゃ無理だよね」
いや半分は正解だけど違うから。
「何か色々あったような気がするけど何も覚えてないんだ。ごめんすぐ解くね!
ねえ……あたし何か変な事してないよね?」
俺にとってはイイコトでしたが。言わなきゃ駄目だろうなやっぱり。
でもそれでニコが離れていってしまうんじゃないかと考えると恐くて、溢れてくる涙を
どうする事も出来なかった。
「あのねニ」
『マーックス!だだんだんだ……』
「あ、電話だよ?」
がくっ。誰だよこんな時間に!!
無視しようかとも思ったけど相手がよっちゃんらしいので、慌てて両手で挟んで携帯を
耳に当てた。
『おう、あの薬な。赤い方と説明書読み間違えちゃった〜♪』
「は!?何それっ、間違えちゃった〜♪じゃないでしょ、もうっ!」
『あ?何言ってんだよ。勝手に持って帰っといて。……ところでアレまさかもう使っちまって
ねえだろな』
ドキッ。
「くれるって言ったのそっちでしょお!?……なんで?」
ふんふんとよっちゃんの話を聞いてるうちに、みるみる自分で顔色が変わっていくのがわかる。
「な、何それっ!!そんな事ちゃんと調べてから頂戴よぉ……」
『だからさっさと持ってったおめーも悪いっつうの!!ま、使うときはちゃんと考えて使えよ。
尚責任は持ちませんつう事で。じゃっ♪』
じゃっ♪じゃないだろ!マジかよぉ……。ニコに何て説明すればいいんだろうか。
「ローボ」
ぎくっ。
「な、何でしょう?」
「あたしにも詳しーく説明してく・れ・る?」
おおっ、久々のセクシーボイス。っておい、何だか語尾がきついんですけど?
「……わかりました」
「よろしい」
いろんな意味でこの後が怖い。
* * 数分後 * *
床の上で土下座状態の俺とベッドに腰掛け腕組みするニコ。
「惚れ薬ねえ……」
未開封の薬箱の横で空になった小瓶を眺めながら、ニコははあーとため息をついていた。
「今度ばかりは呆れて物が言えない。ロボのバカ!あたしがどれだけ怒ってるかわかる!?」
「うん。本当にごめん。わざとじゃないとは言え、へんな薬――」
「違う!あたしが怒ってんのはそんな事じゃない」
「へっ?」
カプセルはとりあえず捨て忘れた使用済みの空瓶に放り込んであったから、何も知らない
ニコは常備薬とよく似たそれを「最後の1粒」だと思って飲んだんだ。
「けど俺がうっかりしてたんだし……」
「わざとじゃないんだから。それに確認せず飲んだあたしも悪いんだし。それより
ロボがあたしの気持ちを信じてくれなかった事の方が許せない!……悲しい」
「そんなつもりは……」
「あたしそんなにロボに冷たい?可愛くない?一海ちゃんみたいに……」
「いや、そんな事ない!ニコはちょっと気の強いとことかクールなとこが魅力的で、たまに
恥ずかしがるとこなんかすっごくギャップがあって可愛くて、だ、だからそのままの
ニコが俺は好きなんだよ!!」
見上げる形になったニコの顔は涙で潤んでるような気がしたけど、月明かりの
逆光でよく見えない。だけど少し声が震えてて、それは俺の胸を締め付ける。
「……あたしがどれだけロボの事想ってたか知ってる?再会してそれに気づくまでの間、
ロボの存在が心の中でどれだけあたしを勇気づけてきてくれたかわかる!?」
ぎゅっと俺の両手を包んでそれに頬を当てながら、涙を拭うように瞳を閉じた。
「ロボが一海ちゃんじゃなくあたしを見てくれるなんて思わなかったから、怖くなった事
何度もある。でもこんな状況でちゃんとブレーキ掛けてくれるなんて普通無理だと思う。
あたしの事大事にしてくれてるってよくわかったから、手放しでロボの事信じる事が出来るよ」
「……俺、ニコを一海ちゃんや違うひとと比べた事なんか1度だってないよ」
自分に少しでも不安があれば、相手にもそれは伝わってしまうのか。
「ニコが大好きだよ」
「うん。あたしもロボが好きだよ」
ありがとう。こんなにも想われて、俺って幸せ者だったんだな。
「ね、ロボ。……続き、どうする?」
「えっ!?つ、続きって……」
ばか、と言いながら俯いて合わせ目をモジモジと弄んでる。そうなんだ、
ニコまだ結局あのままタオル姿なんだよな……。
ごっくん、と生唾を飲み込むと同時にまたもや欲望がふつふつと沸き上がってきた。
「いいの?」
「何度も言わせないで……知らないっ」
そりゃ困る。
「そうしたいのは山々なんですがニコりん大佐、ネクタイを早いとこ外して欲しいであります」
あ、ごめん!と今まで忘れ去られた枷を外しに掛かって貰った。どんだけ気が散らかって
たんだ……。
「あーそれにしてもロボの差し金で良かった。あたしが変態なんじゃなくて」
ま、目覚めたらパンツいっちょで縛られて泣いてる男がいたら驚くよな……。
「差し金って……さっきはもっと凄いコトしてく」
「言わないで!ふ、普通じゃなかったんだからっ!!」
ちょっとだけ残念な気はするけど、今位でニコにとっては精一杯の大胆さなんだな、と思うと
せがまれたキスが嬉しくて理性がとろけてしまいそうになる。
「ロボ。今日はゆっくり朝寝坊したら、後で地蔵堂に行こうね」
「ん?……いいけど」
「じゃ、決まり」
解いたタオルの中の滑らかな肌を感じながら、腕の中の温もりを愛おしく想う。
「んじゃ、いただきマックス。飢えすぎて死にそう」
「はぁ!?もうっ……何がっついてんの、バカ!」
「何と言われても構わん!」
今夜はなかなか解放出来ないかも。ずっとずっと甘い時間を味わっていたい。
※終り…と言いたいけど、余計なおまけ?
↓↓↓↓
【夕方の商店街】
「今なんか悲鳴が上がらなかった?」
「私も何か聞こえたような……」
ざわつく商店街の面々をよそに静かに佇む一軒の店。
「あの店じゃない?大方またわけのわかんない品物でもぶっ壊しちゃったんでしょうよ」
やれやれまたか、といつもの流れに戻ってゆく。
店の中にはひっくり返った若店主と、側に転がる
『媚薬:性欲の増進:稀に極度の眠気による記憶の欠如に注意』
のラベル貼りの小瓶がひとつ。
建物の名は『地蔵堂』……。
* * * * * * *終わり
エロエロGJです!
たまにはこういうニコもいいっす
おお!攻めニコ受けロボですね。
(理由はあれど)逆のパターンも結構新鮮だ〜。
グッジョブ!
ほしゅ
あああ最高
果てしなくGJ
137 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/29(木) 15:41:36 ID:Q49MSqbW
友情age
タイトルは「セクシーボイス」
エロなし。
------------------------------------------------------------------------------
「くそぉ〜ニコの奴ぅう!」
ロボはテレクラの一室で電話の前に座っていた。
ロボはここ一週間毎日テレクラに通っていた。
「バカにしやがって!
思い出しただけでも腹が立つ!今に見てろよ!ニコの奴。」
それは一週間前のことだった。
ニコはいつもの様にロボの部屋にいた。
ロボットを弄ってるロボにニコは少々呆れ顔で話しかけた。
「ね、ロボ。今年もチョコもらえないんでしょ?」
ロボの手が止まった。
「お前なぁ、いきなり何を言うんだよぉ。人が考えないようにしているというのにぃ。
思い出しちゃったじゃないかぁ!」
ロボはムスとした。
「だって、事実じゃん。去年だって私がわざわざ来てあげなかったらゼロだったんだよ。」
一年前、ニコは突然数ヶ月ぶりにロボの家の前に現れ
「誰もくれなかっただろうからあげる。」
とぶっきらぼうに言ってロボにチョコレートを渡した。
「深い意味はなんだからね!誤解しないでよ!」と念もおしていた。
しかしそれ以来二人は以前のように会うようになり独自にスパイ活動を行っていた。
町内の小さな事件の調査だったけど二人は楽しんでいた。
「あ〜、もう何もやる気がしない…。ニコのせいだ。」
ロボは項垂れた。
「なんで私のせいなのよ!もてないロボがいけないんじゃん!
ま、安心しなよ。今年も私が、あ・げ・て・あげるから。」
ニコの勝ち誇った顔を見てロボは立ち上がった。
「いや、いい!今年はニコからはもらわない。絶対!もらわない!」
「いいの?そんなこと言っちゃって。」
「大丈夫!バレンタインまでまだ一週間ある。それまでに恋人を見付けてやるから!」
「一年かかっても見付からなかったのに一週間で見付かるわけないじゃん。」
とニコは少々呆れ顔で指摘した。
「今までの俺は本気じゃなかった。だからなんだ!
見てろよ、ニコ!俺が本気を出したらどんなに凄いか見せてやる。」
ロボはニコを指差しながら断言した。
「はい、はい、とくと拝見させていただきます。」
ニコは小馬鹿にした態度で頭を下げた。
「くそぉ〜!よし!かけよう!俺がバレンタインまでに恋人見付けたらニコは…、ニコは…。」
「いいよ、映画を奢ってあげる。」
「じゃあ、俺は…。」
「いいよ、ロボは。どうせロボの負けで落ち込んでいるだろうから遠慮しておいてあげる。」
「くぅ〜、目に物言わせてやるからなぁ!」
「はい、はい。」
140 :
2/3:2009/02/05(木) 21:00:19 ID:noXeezFW
「あの勝ち誇った顔ぉ〜!絶対ギャフンと言わせてやる。」
と言いながらロボは握り拳を前に突き出した。
しかし、次の瞬間項垂れた。
「でも…。毎日通ったのに全然だもんなぁ。電話取った瞬間に切られるし…。
上手く約束できてもすっぽかされたり…。世の女性はそんなに見る目がないのか?」
ロボは落胆した。
「う〜、このままだとニコの言うとおりになっちゃう…。」
ニコの勝ち誇った顔が目に浮かんだ。「ちくしょお〜。」
すると目の前の電話がけたたましく鳴った。
突然だったためロボは一瞬体をビックとさせ慌てて受話器を握った。
「もしもし。須藤威一朗です。」
ロボは精一杯気取って受話器に向かって話しかけた。
「あ、か、カオリです。は、初めまして。」
受話器の向こうから聞こえる声は儚げで微かに緊張しているようだった。
「初めまして、カオリさん。今どちらにいるんですか?」
ロボはまだ気取って話していた。
「え?今ですか?部屋です。自分の…。」
『くわぁ〜、なんてお淑やかなんだろう。』
段々ロボの鼻の下が伸びた。
「カオリさんの趣味はなんですか?」
「趣味ですか?特にこれといった趣味は…。須藤さんのご趣味は?」
『くわぁ〜、ご趣味だって。なんて礼儀正しい人なんだ。』
「僕はですね。僕の趣味はロボットアニメです。カオリさんはロボットアニメをご存じですか?」
「いえ…。あまり存じ上げておりません。申し訳ございません…。」
「そうですか…。ロボットアニメには宇宙のロマンが溢れているんです。」
「宇宙のロマンですか。素敵ですね。」
「ですよね!そうなんです。その素敵な宇宙のロマンに満ち溢れているんです。
特にですね、数あるロボットアニメの中でマックスロボが飛び抜けてロマンに溢れてるんです。
マックスロボというのはですね。」と、こんな感じでロボはマックスロボについて熱く語り始めた。
受話器の向こうから絶妙なタイミングで入る相槌が更にロボを熱くさせていた。
「というわけでマックスロボは最高なんです。分かります?」
「はい、分かります。須藤さんのお話を聞いたらよく分かりました。」
ロボは受話器を耳に当てながらウンウンと頷いていた。
そして受話器を握りしめる手に力が入った。
ロボは次に言う言葉を思い緊張した。
「あのぉ…。カオリさん。」
「はい?」
「あのですね。」
「はい。」
「こ、これからお会いしませんか?」
ロボはゴクリと唾を飲み込んだ。
緊張の瞬間だった。
「は、はい…。喜んで。」
ロボは思わずガッツポーズを決めた。
そして約束の場所を決め、ロボは受話器を置いた。
「やったぜ!これでニコの鼻をあかしてやれる。俺だってやればできるんだ!
ニコどんな顔するかなぁ?俺に負けて悔しがるだろうなぁ。」
とロボは高笑いをした。
しかし、その瞬間、フラッシュバックのように昔ニコが見せた悲しい顔が浮かんだ。
目に涙を溜めてマックスロボを突き出しているニコの顔が。
「ん?あれ?なんだろう?このチクッとするような痛みは?」
と言いながらロボは胸に手を当てた。
141 :
3/3:2009/02/05(木) 21:04:13 ID:noXeezFW
約1時間後。
ロボはワクワクしながら噴水の前に立っていた。
時々鼻の下を伸ばしながら
「くぅ〜、カオリちゃ〜ん。」と口にしていた。
「あれ?ロボじゃん。何してんの?こんな所で。」
「お、ニコ。ちょうどいい。今から俺の恋人を紹介するよ。」
「へぇ〜、そう。じゃあ一緒に待たせてもらおうかなぁ。」
「どうぞ、どうぞ。」
「ところでニコ。約束忘れてないだろうな。」
「覚えてるよ。私が負けたら映画でしょ。」
「うん、うん。覚えているんだったら、それでいい。」ロボは鼻高々だった。
しかし、1時間近く経っても女性どころかロボに話しかける人は現れなかった。
ロボは項垂れ噴水の脇に座り込んだ。
「ま、ロボ。そんなに落ち込むなよ。人生色々あるよ。」
「来るって約束したんだ。来てチョコ渡してくれるって…。」
「うん、分かった信じるよ。」
「本当に?本当に信じてくれるの?」
ロボはニコを見上げると冬の日差しにニコの白い服が反射し眩しかった。
髪を下ろして優しく微笑んで光に包まれたニコは、まるで天女のようだった。
「うん、信じるよ。だから私の負けね。映画奢るよ。ほら。」
とニコは言ってロボに手を差し出した。
そしてロボがニコの手を握るとロボの体に軽く電撃が走った。
ロボの顔から先ほどまで落ち込んでいた表情は消えていた。
「よし!何見る?」
「なんでもいいよ。ロボが見たいので。」
「じゃあ、マックスロボの映画にしよう!」
「うん、いいよ。」とニコは頷いた。
「そういえばニコ。今日感じ違うね。おしゃれしてる?そんな服着てるの初めて見たような気がする。」
ニコは白いワンピースを着ていた。
「うん、今日はね。たまにはこんな服もいいかなぁと思って。それにちょっと特別な日だし。」
「え?何?特別な日って。」
「内緒。そうそう、ほらこれ。」ニコは持っていた手提袋をロボに差し出した。
「これって…。」
「そう、チョコだよ。」
「でも…。俺…。ニコからはもらわないって宣言しちゃったし…。」
「じゃあさぁ、そのカオリさんからもらったことにすればいいじゃん。ロボの勝ちなんだし。」
ロボはしばらく考えてから
「いや!これは、やはりニコからのだ。ニコからもらったチョコだよ。」
力強く言いニコから手提袋を受け取った。
「じゃあ、行くよ、ロボ!」とニコは言ってからスタスタと歩き始めた。
ロボに背を向けたニコの顔は微笑んでいた。
「ちょっと、ちょっとぉ!待ってよ!ニコぉ!」
ロボは慌てて小走りでニコを追いかけた。
そして
「でもカオリさんは、どうしたんだろう?」と口にしてから足取り軽く歩くニコの後ろ姿に目をやった。
「ま、いいか。」と一人頷いた。
中学卒業を控えた15歳のニコ。
彼女のコードネームはセクシーボイス。
七つの声を持つ女の子。
おわり
しまった!
2月にワンピースは寒すぎる…スマソ
しまった!ver2
×七つの声を持つ女の子。
○七色の声を持つ女の子。
ごめんなさい
>>142 言われてみればそうだw
違和感なく読んでたから気付きませんでした
ロボは色んな意味で幸せ者だ
GJ!
いいね。ニコの優しさが、大好き。がんばれロボ!
幸せは近くにあるさっ。
GJでした。
146 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 18:34:55 ID:4fzaiP2F
乙
ニコ(高校生)は相変わらず毎日ロボの家に入り浸っている。エロなし
**********
【ある日の夕方】
ロボから助けてってグズグス声で電話が入った。
急いで荷物をまとめて、服を着替えて、グロスをつけて、鏡の前でよしっ!!とか言ってるアタシ…
ロボに会いに行くだけなのに、最近は少しずつお化粧して行くようになった。
「行ってきま〜す!」
返事も聞かずに、ロボの家に向かった。
【ロボ宅】
ガチャ
「ロボいる〜?」
いつもの合言葉で部屋に上がると、ベッドで倒れてるロボ。
「風邪大丈夫!?…じゃないか。」
ロボにしっかり布団をかけてあげる。風邪で弱ってるロボって口元ネコみたいにで可愛いじゃん。
「ありがと」
消えそうな声で、ロボが言った。
「毎日ロンパースきて、チャンチャンコきてて、何で風邪引くのかな〜。」
布団に顔をうずめているロボを覗きこむ。
「ニコ、ごめんな。」
「仕方ないでしょ?」
こんなバカで、どうしようもないロボに構ってあげれるのは、アタシだけなんだし!
「じゃあ、お粥作るね!そしたら薬飲むんだからねっ!」
台所に立って、なんだか微笑んでる自分。今日は奮発して卵使っちゃお〜っと
コンコン
ノック?誰か来た?
「こんばんわ―。」
玄関から女の人が覗いている。勧誘?
「は〜い!ロボ、アタシが出るよ。」
ロボは布団から乗りだして玄関の様子を伺ってる。
ガチャ
花とケーキの箱を持ったロボくらいの歳の綺麗な女の人が立っていた。
「あの。私、」
「はい!?はいはい!」
ロボがベッドから飛び起きて玄関にスライディングしてきた。
「やっぱり―。声で分かった。しょうこちゃんじゃん!」
「しょうこ!?」
誰よこの女!?しかもよりによって何でしょうこなわけ?
「須藤君!風邪引いてるんじゃないの?」
真っ赤な顔に鼻水を垂らした間抜けなロボに、しょうこちゃんって人が鞄からティッシュを渡す。
「ありがとう!」
ロボってば嬉しそうな顔しちゃてさ。風邪本当引いてんのかよ?
「ロボ、アタシ邪魔だよね?帰る!!」
何だかすっごい気分が悪くなってしょうこちゃんの後ろを通り抜けて、ロボの部屋を飛び出した
お粥に火つけたままだけど、知んないんだからっ。バカロボ!
階段を降りた所で「ニコ〜!」って風邪声で呼ぶロボの声が聞こえた
そのまま無視して歩いたけど、何回も呼んでるから、少し可哀想になって振り向く。
窓からロボが身を乗り出してる。危ないっつうの。
「ニコ〜!どうすんの?お粥〜?」
…お粥かよ。
「バ、バッカじゃない!?勝手にすれば?」
「ちょっと、ニコ〜。」
心配してバカみたい。訪ねて来てくれる人、いるんじゃない。
「ああ゙、イライラする!」
家に帰って、お風呂から上がったら、ロボから着信があったけど、かけなおさかった。
【次の日】学校
「やっと昼休みだね〜。」皆で机を寄せてお弁当を広げる。
「ニコ?どうしたの?」
ぼっとして聞いてなかった。
「ん?ぁ…ごめん。」
「大丈夫?顔色よくないみたいだし。」
そういえば、何か体調悪いし、風邪移ったのかも
「うん。何かね………ごめん。アタシ今日早退する。」
お昼を食べずに学校を出た。
こんな事でロボの事で頭がいっぱいになって、弱って…早退する女だったなんて自分でも思ってもみなかった。アタシってダサい…
のど飴を買ってコンビニを出た。
「あ、ニコ?」
前からロボが歩いて来てる。何で会っちゃうのよ。
無視してロボを通り越した。ロボが追いかけてくる
「ニコ、学校は?」
「早退した。」
「何で?」
「別に…」
ロボがアタシを追い越して、目の前に仁王立ちに立った。
「あのさ、昨日会ったしょうこちゃんのこと『いいの!!』
何がいいんだろ。アタシが大っきい声で、ロボの話を切ったから。びっくりした顔をしてる。
「ニコ??」
「ごめんロボ。アタシ頭痛いんだよね。また今度聞くから。」
ロボが心配そうな顔をした。
「頭痛いって風邪移したんじゃ?」
「…かもね。だから早く横になりたいんだよね。」
冷たくロボに言った。ロボにどう言いたくて、どうしたいか分からなかった
「そっか!ごめんな。引きとめて!じゃあまたな〜!」
ロボがアタシのポンポンって頭を触って、コンビニのほうに歩いて行った。
「……て、本当に行くなよな。バカロボ。」
のど飴を口にほおりこんで、アタシも歩き出す。
家について、救急箱をあけた。
「げ?風邪薬ないじゃあん!」少し寝てからあとで買いに行こう。
起きると外はもう薄暗くなっていて、風邪はさっきより楽になってる。
何だか家が静かだと思ったら、今日は皆出掛けてていないんだっけ。
「淋しい…。」
お昼に食べなかったお弁当を食べたら、すぐに眠たくなってまたベッドに横になった。
頭が…冷たい?
ゆっくり目を開けると、ロボがいて頭にタオルを乗せてくれていた。
ロボかっ…て!ここアタシん家だし!
「なな、何してんのよ。」急すぎてありがとうも言えないじゃん!
「風邪の様子どうかなって思って。」
「だ、だからって忍びこんだの?」今日が皆がいないからいいけど。
「うん!心配じゃん!風邪どうなの?」
ロボってば本当、バッカみたいに優しすぎだよ。
「自分で決めつけてるんだろ。体温計!」
ロボが真剣な目をして言うから。
「分かった。そこのハサミとか入ってる所にあるから取って。」
ロボが急いで取りに行って、アタシに手渡す。
身体を起こして、体温計を脇にはさむ。
「だからさ〜、ニコ聞いてよ!しょうこちゃんがさ〜。」
「何またその話?聞きたくないよ。」また風邪がひどくなりそう
「何で?まだ言ってないじゃんよ。」
「ど〜せしょうこちゃんっと俺が結ばれる可能性ってどれくらい?っとかの話でしょ?聞きたくないよ」
「だって大事な話だから、聞いてほしいんだって。」
「…嫌だよ。そうゆう話しは他でしてよね。」
「何で怒るんだよ〜。ニコに話したい事なのに!」
何でアタシなのよ。アタシはロボの目をそらした。
ピピッ
「ほら、平熱でしょ?もう帰ってくれる?」
布団を被って、壁のほうを向いた。
「あ〜。寝たふりだな?話し聞いてくれるまで帰らないぞ!」ロボが背中をぐいぐい押してくる。
「も〜!勝手にすれば!?」ロボの手を振り払うと、しばらく沈黙が続いた
怒ったかな…
「ニコ?ニコはさ。俺がさ、遠くに行ったらどうする?」
ズキッて心臓の音が本当に聞こえた。
「…どこか行くんだ?」
「うん。そうなるかな。」
また出てくのか…またアタシ一人になっちゃうんだ
いつかこんな時が来るんじゃないかって、どこかで思ってた。
アタシ…やっぱりロボが好きなんっ
「アパートさ!取り壊すみたいだしさっ。」
…
「はぁあああ!?何それ?聞いてないよ!」
布団蹴飛ばして、ロボのほうを見た。ロボは体育座りして、泣きそうな顔してる。
「聞いてないって…言おうとしてたけど、ニコが話聞いてくれなかったでしょ?。」
「だってさ。だって、しょうこちゃんって人全然関係ないじゃん!」
あの人の所に行くんじょないの?
「しょうこちゃんは、大家さんの娘さんじゃん。」
大家の娘…?
「ニコも大家さんは見たことあるだろ?まあ似てないよな〜。」
あの、マルチーズいつも散歩させてる。大阪のおばちゃんみたいな大家さんの娘?…
「引っ越して来た時は、よく前の通りで会ったんだけどさ。見ないな〜って思ってたら、結婚してた!」
ロボは泣きそうな顔をしてて、毛布の端をグリグリしている。
「じゃなくて!アパート取り壊すの?」
「うん!実家の近くに新居を建てたいんだって、で俺のアパートをって、それで話に来てたんだ。」
しょうこちゃんは、その話をしに来てたらしく。
「でも、ロボは?」
遠くに行っちゃうの?
「大丈夫!近くにいるよ。新しいとこ紹介してくれるって言うし。」
近くにいるよ…って、普段はバカじゃない?って言うことも、今は弱ってるからから嬉しい。でも、そうゆ〜ことだったんだ。
「…アタシ勝手に勘違いして、ごめんね。」
アタシがバカだよ。頭をかかえてまたベッドに倒れこんだ。
暗く落ち込むニコに、ロボはタオルをまた頭に乗せてくれた。
「風邪もし大丈夫ならさ。明後日付き合ってよ。物件めぐり。」
ニコはコクリと頷いて、ロボの顔を見た。
「そうゆうことなら、協力してやってもいいよ。」
アタシが笑って答えると、ロボは嬉しそうにうなずいた。
【次の日】
駅前でしょうこさんと、待ち合わせ
アタシはいつもより大人っぽく見えるような格好で来た。ロボは全然気付いてないみたいだけど!
「あっ!しょうこちゃん!こっち〜。」
おっきい声で皆振り返る。恥ずかしいな〜。
しょうこさんは、旦那さんを連れて来たみたいで、仲良く腕を組んでた。
「お待たせ。私の旦那さん。是非挨拶しときたいって。」
隣にいた背の大きな男の人が頭をさげた。
「始めまして、私達の我が儘で、この度はすいません。」
爽やかで、すっごいいい人そう。
「いえいいんです!私、須藤威一朗です。以前からしょうこちゃんにはお世話になっていまして。あっ、この子?ニコは何ていうか…。」あっアタシか。
「林ニ湖です。」
友人でもおかしいし、彼女って訳でもないし、挨拶が終了してしまった。
歩いてく方向が、駅からアタシん家の帰り道で
「ここなの。」
しょうこちゃんが足を止める。前よりは断然綺麗なアパート
「てか、アタシん家のすぐ近く…。」
「たまたまでしょ〜。」
ってロボはルンルンで階段をかけ上がって行く。
次の所も、その次も
「ニコ?次行くぞ〜?」
「あぁ、アタシ歩き疲れたからさ、ロボ見て来なよ。」ヒールで足が疲れちゃったよ。
「じゃあ私も、ニコチャンと待ってる。じゃあファミレスで休もっか。」
アタシはしょうこちゃんと休憩、ロボは旦那さんと次のアパートに向かった。
【ファミレス】
コーヒーとオレンジジュースを頼む。
アタシはブーツを脱いで、足をブラブラする。
しょうこちゃんは痛くないんだ…やっぱ履こう。
「痛いの?」
「いえ、大丈夫です。」
アタシは急いでブーツのジッパーをあげた。
「てゆうか、あの!ご結婚おめでとうございます。」「うん。ありがとう。」
店員が間を割って飲み物を運んできた。迷わずに、珈琲をしょうこちゃんに、オレンジジュースをアタシの前に置く
「あと、それにすごく良い旦那さんだし、幸せそうだなって。」
しょうこちゃんは恥ずかしそうに大きく頷いた
「うん。とっても幸せよ。ニコちゃんも幸せものじゃない。須藤くんイイ人だし!」
「あたしとロボは…」
オレンジジュースの氷をストローでつつく。
「そんなんじゃない…?とか」
アタシは焦って、オレンジジュースをイッキ飲みする。
しょうこって名前の人は、何でこうアタシの考えてる事が分かるんだろ。
「須藤君にね、この話をした日。ニコちゃんの心配ばかりしてたのよ。」
「アタシ…ですか?」
「そうよ。ニコちゃんに聞いてみなきゃって!今日回ったとこ、ニコちゃんのお家から近いのも、ニコちゃんのこと考えてなのよ。
」
やっぱり、たまたまじゃないんだ。
「須藤君にとったら、家にいるイコールあなたがいる事なんだなって。彼と暮らし始めた時の事思い出しちゃった。」
しょうこさんが本当羨ましいって呟きながら、アタシを見た。
ロボが、そんなふうに…
アタシは思わず顔がゆるんだ。
「幸せ者じゃない、ニコちゃん。」
本当、自分でも思った。
ロボはアタシの気持ちなんて何にも考えないって思ってた。でも、本当はちゃんと考えてくれてた事が嬉しかった。
「ありがとうございます。アタシ、全然知らなくて…。本当ロボには、ありがとって言わなきゃいけない事ばっかりで。」
「威一朗くんに、言ってあげてよ。」
「はい!ちゃんと伝えてあげたいって思います。」
アタシはやっぱりまだ子供だなあ。
物件を見終わったロボ達と駅で待ち合わせして、しょうこさんと旦那さんを見送る
【駅前】
「じゃあ、私達はここで。今日はありがとう。」
しょうこさんが頭を下げると、アタシ達はそれ以上に頭を下げた。
「あんな素敵な部屋ありがと〜!」
ロボはアタシの家から歩いて一番すぐの部屋にしたらしい。
「気に入ってくれたみたいで嬉しいよ。こちらこそ迷惑掛けて。」
旦那さんがまた深々と頭を下げた。
「それじゃ、また。」
しょうこちゃんと旦那さんが腕を組んで帰って行く。「ばいば〜い!」
人混みで見えなくなっても、ニコはしょうこちゃん達が消えたほうをずっと見ていた。
「ニコ〜。お〜いニコ?」ニコの周りをウロウロする。
「よし!帰ろっか〜?」
「何だよ〜?」
【ロボの家】
アタシは晩ご飯を作って、ロボは段ボールに少しずつ片付け初めた
ご飯を食べて、お笑い番組を見る。CMに入った所で何だかシーンとなる
「ねえロボ?」
「ん?」
ロボが目線をテレビからアタシに向ける。
「ありがとう。言いたくなったの。アタシの事、いっつも考えててくれてありがとう」
ロボは顔をくしゃしゃにして笑ってうなずいた
「ジーンときちゃった。ニコからそんな言葉が聞けてさ。何か幸せだなあ〜」
ってロボが泣き出す。
「何よ、アタシが冷たくて、お礼も言わない女みたいじゃない。」
子供みたいに声を出して泣くロボに近づいて、アタシはロボをギュッと抱きしめた。
「アタシも幸せなんだよ。」
ロボを力いっぱい抱きしめても、大きな背中には手が周りきらなかった。
「ニコ〜、ありがとう。」ロボがアタシの倍の力で抱きしめて、もっと泣いた
泣き止むと腕をゆるめて、見たときない大人っぽい顔で、アタシの顔を覗きこんだ。
アタシが驚いて首をすくめると、ロボは唇を噛みしめた。
ロボはキスがしたかったんだって分かった。
「いいよ?しても。」
目を閉じてロボを待つと、唇が重なって、ロボの唇はやわらくて、暖かくて唇をあわせるだけの行為がこんなに愛が伝わってくるなんて
ロボの唇が離れると、ロボは指先でアタシの唇をいとおしそうになでた。
「ニコ…可愛い〜!もう大好き!」
いつものテンションで、せっかくの雰囲気台無しじゃん!
でも…
「アタシも…好き。」
ロボが笑って、アタシも笑った
それから新しい部屋に引っ越した
ガチャ
「ロボいる?お〜、やってるなあ!」
綺麗にロボット達を並べている所で
「お母さんがさ、引っ越しそば持ってけ!って言うから持って来たよ。」
ご近所になる訳だし、いつもお世話になっってるからって
「お腹減ってたんだ!食べる〜!」
「よしっ!じゃあ作ってあげようじゃない!」
台所に立って、火をかける
「ニコ?」
ロボに呼ばれて振り返える。
「何?」
「ありがとっ!」
ロボが満面の笑みで笑う。「はいはい。」
また台所に向かって、ロボと自分の色ちがいの器を並べて微笑む。
ほんと幸せ者だな。アタシって
「なにぃ?」
ロボが返事をする。
「ううん。ひとりごと」
「そっか、なあニコ?」
「ん?何よ?」
また振り返ると真後ろにロボがいる。
「今日も、すっごい可愛い!」
ロボが後ろから抱き締められて、アタシの足は宙に浮く
「も〜!バァカ!」
終わり
幸せな感じが伝わってきてイイ話ですね。
GJ!
(*´ω`*)
いい、とってもいいっ!
ニコ、ロボの食事、これからも作ってあげてね
(^.^)b
GJでした。
捕手
このドラマ見てたなぁ
懐かしい
(`・ω・´)
HOS
短編エロ無し。一応マックスロボ視点といいますか…
軽い気持ちで読んで下さい。
×××××××××××××××
明日からの出張のための荷造りに悪戦苦闘しているひとりの男・須藤威一郎。27歳。
「マックスとガオガイガーも連れていこうかな〜」
どうも本来の主体からズレている気がするが大丈夫か?オレは必要ないだろ?ロボ。
あ、そうそう。オレを始めここにいる皆はフルネームは長ったらしいので、
いつも突然ふらりとやって来る可愛い訪問者に右へ倣えでロボと呼んでいる。
常日頃から、趣味>>仕事というモチベーションが確立している自他共に認めるオタクだ。
社会人としての自覚が少々足りない男ではあるが、そんな彼も人並に悩みを抱えている。
この数ヶ月、彼の行動は目に見えて以前と変化してきており、
たまの合コンの誘いもきっぱりと断って、あれほど入り浸っていたテレクラもいうに及ばず。
これまでとは180度違うありえない日々にオレ達は不思議で不思議でたまらなかったのだが
まもなくその謎も解けた。
自分の中にふつふつとくすぶっていた仄かな想いの正体が恋だと気付いたのだ。
気付いてしまったもののあまりにも身近すぎた相手との距離を縮めるには
今までのように突っ走っていいものかと思案に暮れている。
そこまで複雑に考えなくてもいいのではとオレは思うのだが。
「はあ〜、ここ何日かニコの顔見てないんだっけ。会いたいなぁ」
いつのまにか彼の心を占領していた小生意気な少女を思い浮かべる。
「最近、学校の行事とかで忙しいみたいだし、メールのやり取りだけじゃ物足りないよなぁ」
と溜息混じりのロボの表情がふっと陰り
「明日からは俺がいない……ってことはまたしばらく会えないんだ」
寂しいな…と小さく呟いて宙を見上げぽつりと零した。
「……ニコは俺の事どう思ってるのかな」
オレ達以外には誰にも聞こえない胸に秘めた想いが溢れる声。
もう何年も共に行動し、数え切れないほどの玉砕ぶりにも素知らぬふりをしてきたオレだが、
今回に至っては恋の成り行きを見過ごすわけにはいかない。
それにしても肝心のニコの気持ちはどうなのだろう?
「遅いなー。今日戻るっていうから、忙しい合間をぬって来たのにさ。
人を待たせといて途中で寄り道なんかしてたら、どうなるかわかってるんでしょうねえ?」
ロボが帰ってくる日。久々に部屋を訪れたニコはやっぱり普段どおりのニコで、
さすがのオレも乙女心までは計り知れない。
オタクの虚しい独り相撲にならなければいいのだけれどと気を揉むばかり。
「ねえマックス」
ふとニコが囁くようにオレの名を呼ぶ。
「何だかさ、物凄く静かだね。静か過ぎて逆に落ち着かないや。マックスはどう?」
少し振り向いた横顔が先程までの彼女と違いどこか憂いを帯びて見えるのは気のせいだろうか。
「ロボがいないからかなぁ……ひとりじゃつまんないよ」
え?それってオレの勘違いでなければ、もしかして……?
「……ロボはあたしのことどう思ってるんだろう」
ロボットだけのガランとした空間に頼りなげに切なく響く声。
ああそうなんだ。
ふたりは同じ想いなんだと、このとき初めて知った。鈍いなぁオレ。
すると
「あ…ロボが帰ってきた」
ニコの声がふわりと明るく色を成す。
オレに気配は感じないが、必死に耳を欹てている彼女にはわかるはず。
玄関先を見つめる瞳がしだいに輝きを増していくのだから。
「ただいマーックス!…って、あれニコ来てたんだ?どうしたの?」
「どうしたのって…何よ、来ちゃいけなかったの?」
ロボの態度にいささか拍子抜けしたように口を尖らせる。
「あ、いや、別にそういう訳じゃないんだけどさっ」
もごもごと口ごもりながらロボはニコの横をすりぬけて
「おおっマックス〜!俺がいなくて寂しかったか?」
いや、別に。つーかそのだらしなく緩みきった顔はなんなんだ?
もっと素直になれよ。来てくれて嬉しかったってさ。
なんとなく自分の気持ちを匂わすいいチャンスだというのに、何やらゴソゴソと探り出して
「喜べ!おまえ達に新しい仲間を連れてきたぞー。出張先で手に入れたんだッ」
得意気に新入りを卓袱台に立つオレの隣に並べた。……おまえは一体どこへ行ってたんだ?
「……ちょっとロボ、先に着替えたらどうよ」
ニコの呆れ顔を見れば全く同じ事を考えているのは一目瞭然。
「こいつらの挨拶を済ませてからな」
聞く耳をもたないロボにお手上げな様子。
「もうー、ホントに子供みたいなんだから」
そして
「でも、そういうところも……」
「えっ、なに?」
「ううん。なんでもない」
小さく首をふりながら、ロボの背中越しにオレに視線を落として内緒ねとでもいうように
唇にひと差し指を当て微笑んだ。
僅かに動いた唇がすべてを物語る。
『そういうところも好きなんだけどね』
こんなときオレがふたりの秘密の声を伝えられたらいいのだが
じれったいこの恋が成熟する日もそう遠くはないだろう。
それまでは暖かく見守っていくのも我々勇者にあたえられた使命なんじゃないかと思う。
終わり
ウ オ オ オ オ
最高です
心が震えた
GJ!
最後の1行がとてもセクロボらしくていいです!!
167 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 23:16:12 ID:a7QahomU
保守あげ
テスト
保守
つらつらと保守。エロなし
* * * * * * *
「あそこの歯医者閉院しちゃってたよー」
「えぇ!?もう〜、だから早く行きなさいっていったじゃない。もう〜お父さんったら」
「仕方ないいなぁ……駅向こうまで行ってみるかー」
すぐそこにあるものは、いつだって手に届くものだと思っていた。
だから、振り向けば必ず当たり前にそこにあるものだと
簡単に会えるものだと思っていた。
ある日ロボのアパートの前を何気なく通ったら、見慣れない看板が目に入った。
思わず駆け上がった階段の先には透明なガラスの扉が立ち塞がっていて、でもその向こうには……
ロボット達の姿なんかひとつもなかった。
「あれっ?」
「ニコ、どうかした?」
「ごめんむーちゃん!あたしちょっと……帰るね、ほんとごめん!!」
友達を放り出して慌てて走り出した帰り道。
入学式帰りの新しい制服が乱れるのも構わず、狭い路地裏の道を慣れない靴で走り抜けた。
あの時のように横倒しになった冷蔵庫が邪魔する事はなく辿り着いた先には、人気の無い裏道。
あの日――全てが始まった場所。
「誰も……いないんだぁ」
聞こえたのにな、確かに。
ロボットの居なくなったアパートに行った後、その足で向かった先で見たのは跡形すら無くなって
しまった地蔵堂。
みんな、みんな居なくなってしまった。
すぐそこにあるものだと思っていたものは、手を伸ばしてももう届かない。
ついこの間まで着られたセーラー服はもう今日からは着られない。
新しい何かを手にする事はそのための何かを捨てていくこと。
大人になるのはそういうこと。
もし私が、あの頃よりも私を好きでいられたら、胸を張って今を生きていると言えることができたなら……
あなたは、私を見つけてくれるのだろうか?
ほら、今だって聞こえてくるよ。
懐かしい歌声が、振り向いた先に見えるあの曲がり角の向こうから。
勇気を出して覗いたら、新しく懐かしいあの星とまた出会うことが出来るのだろうか。
確かに聞こえる。愛と自由と正義の歌が。
**終わり**
GJ!
あーなんか一話を思い出してしまった
ロボとニコが出逢った春がやってくるね
情景が浮かんできそうないいお話やわ・・・
最高です
低温だけど暖まる感じが良いなあ
良いですね。
そうか、ニコもこの春から高校生かっ!
ロボ、ニコに会ったら(ばったり偶然)驚くのかな?それとも、『おぉ〜ニコ〜』淡々と?
ともあれ、そろそろニコロボ再会の予感。
エロ無し
* * * * * * *
住んでいたアパートを出なければいけなくなった。
荷造りをしながらこの部屋であった出来事を思い出す。
そういえば、階段を元気に駆け上るあの足音が聞こえなくなってからどれくらい経つんだろう。
毎度毎度お構いなしに勝手に上がり込んできては、俺を不思議な時間へと誘ってゆくのだ。
ロボットと俺だけの静かな隠れ家は、春の風のように舞って去っていったあのコによって暖かな空間に
生まれ変わったような気がした。
あの日床に置かれたままのコーヒーを何も考えずに水に流した。その時のあのコの気持ちも考えずに。
流れていった時間ももう二度と戻ることはない。
もう、会えないんだろうか。
初めて友情の枷となる年齢の幅の厚さについて考えた。
『もうすぐここには居なくなるよ』
その一言が、長い間繋がることのなかったアドレスには送ることが躊躇われて未送信のまま今も残る。
思い切って家の近所まで足を延ばしてみれば、もうそこは何もないという。
もうあの窓から俺の名を呼んで貰える事は無いのだ。
二人を繋いだ地蔵堂は跡形も無くなり、全てが神様が見せた夢だったのかとさえ思った。
でも、俺の鞄の中、窮屈そうに揺れている青い勇気の印がある限り、この夢は終わらないと信じてる。
外回りのついでに久しぶりに来たこの町で、ふと足を向けてみる。
あの路地裏はどうなっているんだろう?
あの日、全てが始まった場所。
「マックス〜。俺達の記念すべき出会いの場所だぞ。覚えてるよなぁ?」
そしてあのコとの。
あの曲がり角を曲がったら、新しい世界はまた俺の前に開けるのだろうか?
またあの弾んだ足音が俺の耳に届く日々が戻ってくるのだろうか?
「〜〜♪マーックス!だだんだんだー……♪♪」
ニコ、お前耳がいいんだろう?
きっと聞き取って、そして俺を呼んで。
不思議な七色の音色を響かせて。
***
>>170へ…?
ニコロボ2周年
とっても爽やか。
感動しました!
心暖まるお話GJです。
うまくつながってるね。
ニコ、ロボの声を聴いて。ロボ、ニコを呼んで。
始まりの季節が、
今年もやってきたよ。
ほしゅ
180 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 11:34:49 ID:Lod1VL1v
ほしゅしゅ
保〜守〜
圧縮がきそうですね
てことで保守しときまつ
ちょっぴり甘めな二コロボ。ただいちゃついているだけの話だったりしますが。微エロ?
××××××××××××
恋人同士になってわかったことがある。
元々挙動不審な素行に反して、繊細で純粋な心を持ち合わせていて誰に対しても思いやりを
忘れない奇妙なオタクの顔を持つロボ。
暇さえあれば人をほったらかしにしてロボット弄りに夢中なこの男が
意外と過保護だったんだって気付いた。
友達だった頃には特に気にかけたことさえなかったのに、
彼女という存在にはことのほか心配性の内面を晒け出す。
これが恋愛の魔力というものかとつくづく思い知らされたものだ。
……とかなんとか一応前向きな解釈をしてはみたものの。
『二コッ、制服姿で遅くまでウロウロするのは禁止!』
『怪しい人と目があったら即座に逃げる!』
『あそこの古ぼけた館は幽霊がでるらしいから近寄ったらいけません!』
……等々。これはほんの一部に過ぎない。
学校の先生かよ!とツッコミたくなるような過剰対応の数々。
二人並んで通りを歩くときだって必ず自分が道路沿いをキープして
自転車が来ようものなら、ぶつからないように身を挺してあたしを庇ったりなんかするの。
「もうー、ロボは大げさだよ。そこまでしなくても大丈夫だって。
高校生のふりした幼稚園児じゃないんだからさぁ」
軽く冗談めかして訴えるあたしに
「だって二コが傷つくのは見たくないから」
ロボは真剣にそれがあたりまえだとでもいうようにまっすぐな言葉を綴る。
それだけ大切にしてくれているということなのかなって思うと実はものすごく嬉しいんだけど
気持ちとは裏腹になーに言ってるんだかっ!と
つい悪態をついてしまうやっかいな乙女心はどうしたものか。
素直になれないあたしをロボは見透かしたように小憎たらしい笑みを漏らして
やたらベタベタとひっついてくる。
もしかして…ううん、もしかしなくても触り魔なんじゃないの?って、いうぐらい。
それも付き合い始めて気付いたこと。
デート中はもちろん手をつなぐ。
月日の流れとともにいくらか慣れてはきたけど、ところ構わずひっついてくるはどうかと思うわけ。
「みんなやってるんだから気にしなくてもいいじゃん♪
いっつも生意気な口聞くくせに二コはこういうのからっきしダメだよなぁ。
……でもさ、その照れた顔もまた萌えるんだけどね〜」
こっちはどうアクションとったらいいのか困っちゃうのに、
「だってね、二コが可愛くってしょうがないの。これも愛情表現のひとつだよ」
そう言ってふざけ半分で肩に髪に絶妙に触れてきたりする調子のいいロボだけど
近頃はあたしの戸惑いを察してかそれなりにセーブはしてくれているみたいだ。
そのせいか部屋でのロボは少なからず大胆さを増す。
「二コ」
名前を呼ばれ振り返ると隙をつかれ、チュッとキスされてあっというまに全身を抱きすくめられる。
「なによ、ロボ?離してくれないとご飯の用意ができないよ」
「うん、わかってるって」
いつもそう。逆らわない素直さは口先だけ。
あたしを包み込むロボの長い腕はなかなか解かれることはない。
街中では手をつなぐだけで精一杯のあたしには巷で見かけるラブラブカップルみたいに
イチャついて人目もはばからずキスするなんて難易度の高いマネはもってのほか。
いくらロボだってそこまではしてこない。(一度だけ公園でされたことあるけど)
だからなのか誰の目にもふれない二人きりのときは多少のことは許してしまう。
他愛もない会話の最中でも、おいでと瞬く間に引き寄せられて
「待ってよ。先に後片付けを済ませないと…」
それを押し返して立ち去ろうとするといきなり視界が揺れてロボの膝の上になだれ込んでしまった。
「わっ!?びっくりするじゃんッ」
「行っちゃダメ」
息もでないほどの熱い抱擁にあたしは反論することも忘れてその身を任せてしまう。
密着する背中に伝わる温もりが心地よい安らぎを与えてくれる。
「何だかさ、お父さんみたいだね。ロボ」
くすくす笑うあたしの頭の上でロボは小さな抗議の口を開く。
「お父さんってなんだよ〜。おっさんくさいってこと?」
「そうじゃないけどー」
「お父さんだったら、こんなことできないだろ?」
そう耳元で甘く囁いて唇を奪う。
「……んっ」
優しい優しいキス。
好きな人と交わす口づけがこんなに愛おしいものだったなんて経験してみて初めて知った。
あれから何度もキスをしたけど、その想いは変わらないどころかますます募っていく。
ロボの唇は啄むようなキスから深いものまであたしを捉え続ける。
二人の息遣いと絡み合う艶かしい音が静まり返った部屋に溢れて
やがてロボの大きな掌が服の上を胸から下腹部へとゆっくり愛撫しながら滑り落ちていく。
カァと身体の芯を痺れさせる熱を抑えてロボの手を制止する。
「あ、あのロボ。ゴメン、今日はダメなの。今アレだから……」
「えっ、あ、そうなんだ。……んーと、俺のほうこそゴメン」
「何でロボが謝るの?」
怪訝そうに問いかけながら首を捻るあたしにロボはぎこちなく告げる。
「だってさ、今二コのこと少し乱暴に扱っちゃったから」
「え?」
さっき強引に腕を引いてしまったことを言っているのだろう。
「やだな。そんなこと気にしないでよ」
伏し目がちのロボの頬に両手をそえて明るく強調する。
「俺バカだからさ、女の子の体調とかよく理解できてないとこあるし…」
少し決まり悪そうに呟きながら、あたしの手を握り返して
「こんなときは二コのこと大事に労わってあげなきゃいけないと思うんだ」
こういうくさいセリフを真顔で言えるなんてすごいよ。
ロボ自身は全く意識していないであろうさりげない優しさにあたしは弱い。
この人を好きでよかったと心からそう思う。
「……ありがと」
「ううん。このまま二コのことぎゅってしててもいい?」
「いいよ。して」
再び抱き寄せられてロボの広い胸板に顔を埋めた。
トクントクンと波打つ心音を聞いているだけでとても落ち着く。
でも、あたしはこの温もりだけで充分満たされているけど、こんなとき男の人はどうなんだろうか?
ふとそんな疑問が頭をよぎって
「あのね、そ、その…ロボは大丈夫なのかな?」
「ん、何が?」
「うん、だから色々と……」
もの言いたげな様子を読み取ったのか、余計な気を使わないのって
あたしの髪をクシャクシャと撫でる。
穏やかに微笑む表情に胸がきゅんと締め付けられて今度はあたしから腕をまわした。
少しの間、何も語らずロボの体温を確認していると
「ねえ二コ。ちょっとだけじっとしててくれる?」
「うん?」
すぐ終わるからとにやりと口元を歪めるロボに妙な不安に襲われる。そして予感は的中した。
「ええ?ちょっ、あの、何やってんのよ!?」
ついさっき見せた男らしさはどこへいったのか、やらしー顔したロボが長い指でするすると器用に
服のボタンをひとつふたつと外していく。
「ロ、ロボッ」
「黙って。……大丈夫だから」
ふいに動きが止まり、中途半端にはだけた胸元からはブラのラインがギリギリ見え隠れしている。
微かに震える肌にロボが唇を落とす。
「ひゃぁ……っ!」
突然の刺激に無意識に声が漏れてしまう。
仰け反り身を捩るあたしをがっしり掴んで封じ込めるときつく押し当てられた唇は
より一層強く吸い付いてくる。
ロボと付き合い始めて数ヶ月。キスだけの関係を卒業したのはつい最近のこと。
当然この不意打ちともいえる予想外のシチュエーションは半ば動揺しながらも
羞恥心から目を閉じただ耐えることしかできない。
「ほら出来上がり!」
ご機嫌なロボの声に何が起こったのかわからずにほんやりと導かれた先には
くっきりと紅い痕が肌に刻印されていた。
「これってもしかして……?」
「いやー、初めてやったんだけど結構うまくいくもんだなぁ。キスマーク」
ちっとも悪びれた様子もなくロボは満足そうに笑う。
いやいやいや、キスマークってそんなあっさり言われても。
そこがロボらしいといえばらしいけどさぁ……。
まだ薄着の季節じゃないから普段はいいとして体育のときはバレないように着替えないと。
「……あの二コ、もしかして怒ってたりする?」
俯いて無言のまま反応がないことに心細くなったのかロボは恐々とあたしの顔色を窺う。
そんな寂しげな瞳で見つめられたら、何も言えなくなるじゃない。
「……別に怒ってないよ」
「本当に?」
うんと小さく頷きながら、胸元にぽつんと浮かぶ花の蕾のような痕にそっと触れてみる。
こういうのは話には聞いてはいたけど、まさか自分自身が経験することになろうとは。
「自己満足かもしれないけどさ、これは二コは俺だけのものだって証だよ。
いうなれば愛のしるしというやつかな。わかる?愛のし・る・し♪」
あたしがあまり怒ってないことを知って僅かな不安は解消されたらしく、
ロボはわかりやすいテンションでその笑顔は眩いばかりに輝いている。
だから面と向かって言われると照れるんだってば!
「……変なの。何のロボットアニメの受け売り?」
「ううっ、酷い。二コは冷たすぎるッ」
と、ぷいと横を向く。あれ?拗ねちゃった?
でも、そういう大人で子供な素顔を垣間見せるロボが可愛いって
思ってしまうのは宇宙であたしだけだろうな。
「ねえロボ。このキスマークはどれくらいで消えるの?」
「どれぐらいって。えっと2,3日?いや1週間ぐらいじゃないかな?……多分」
ずいぶん適当だな。
「なんせしたのは初めてだし、もちろん付けられたこともないわけで。
そんな相手いなかったし……。ってか、あ、あんまり詳しいことは聞かないでくれっ」
あらら、フラレまくりの過去を思い出させてしまったかな?ごめんね。
「あのさロボ、ちょっと腕貸して」
「はい?」
突拍子もなく話が飛んで、口を開けぽかんとしているロボのシャツの袖を素早く捲ると
唇を寄せて甘噛みをするようにキスをした。
「うわっ、二コ!?」
驚くロボには答えずに内側の柔らかい部分にできるだけ強く吸い付く。
もういいかな?とそっと唇を離した場所にはロボにつけられたものと同じ薄っすらと小さな痕が。
「ほら、お揃い」
「へ?いや、お揃いって……」
自分の腕につけられた痕を瞬きもせず凝視すると、やや不満そうに
「ねえねえナゼにここなわけ?二コと同じところにつけて欲しい〜」
ねだるような眼差しを送りながら胸のあたりを指先で示す。
「はあ?」
思わず視線を落とすと素肌に残された刻印を見せ付けるような無防備な姿に
ハッとして慌てて前を閉じて隠す。
胸元を押さえながら、ほんの数分前に自分の身に与えられた出来事がはっきりと脳内で再生されて
気恥ずかしさに身体中が火照ってくる。
こんなどうしようもない状態なのに同じところにって……。
絶対できない!無理だよー。
「やだ。ロボが自分でやったらいいじゃん」
「んな無茶な。ねえどうしてもダメ?二コじゃないと意味ないんだよ〜。ねえってばぁ」
「そんなの知らない」
喚くロボを無視して台所に向かう背後に
「ちぇっ。……まあ、しつこく言い続けてたらおのずと勝ちは見えてくるというものだ。
二コは心優しい娘だからな。なあ、マックス」
おまえもそう思うだろ?って、ぼそぼそと控えめな呟きが届いたと思ったら
「俺も手伝うよ、二コ」
と、しれっと何食わぬ顔してやってきて隣り合うロボをちらりと盗み見た。
あたしに聞こえるのわかっててわざと言ってるでしょ?それ。
ほんとに飽きないやつだなぁ。
ロボと共に過ぎていく日々は生ぬるくもあり刺激的でもあり、
明日はどんなことが起こるのだろうと想像するだけでワクワクして胸がときめく。
しょうがないか。負けたふりしてそのうち叶えてあげようかな。
あたしだけの大切なダイヤモンドに愛のしるしをね。
終わり
甘い甘い甘い甘い〜
友達じゃなくなった途端に過保護になるロボかあ…なんかありそう
ニコを大事にしてやって下さい。GJ!
>>188 11世てあんた誰だよw
最高っす
過保護良いなあw
191 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/07(木) 13:02:37 ID:IS105xe4
ほしゅ
いいね!
爽やかな感じもするぞ。
ニコロボに幸あれ。
このスレは無エロか微エロ推奨ですか?
そういうのが多いだけで、ガッツリしたのも歓迎されると思うよ。
ガッツリ歓迎です。
但し、エロ無しor有りの断り書きは最初につけてねって感じ。
がちで、恋愛。
あると思います。
てか、どうにかしたいのに。今一歩進めない。
ニコは、ロボに告白したのかな?それとも?
ロボはやるときゃやる男だぜ!
ニコからだと思いあまって…なんて展開になりそうな
僕はいいなーと思った女性と2分、目を見て話すと好きになっちゃいますねっ
とか言ってニコにマジ告白するも本気にしてもらえずあせるロボ。
7話観てたらそんな妄想してもうた…。
でも、実は、ニコは気付かないふりをしてるだけで、内心ドキドキ
二人の性格、年齢差、身長差、個人的になにもかもツボ過ぎる
カムイ外伝萌えほしゅ
保守がてら短いのをひとつ。
「ちょっとロボ!いつまで寝てんのよっ」
快晴の休日、部屋中に響き渡る二コの雷に夢の途中だったロボは重い瞼をこじ開ける。
「…え〜まだいいだろ〜」
「天気いいんだから、お布団干さないとっ。さっさと起きる!」
早く顔洗ってきなよっと追い立てられて身の置き所がなくなったロボは
溜息混じりに二コに逆らったら後が怖いからなぁと心の中で呟きながら渋々とベッドを後にした。
「うーん気持ちいいなあ」
一仕事終えてそよぐ風と暖かい陽気に二コはほっとひと息つく。
「おっと、そうだ。誰かさんのご飯を作らなきゃ」
そのつもりで来たんだしと威勢よく立ち上がった途端、不安定なベッドの上で
危うくよろけそうになった寸前のところでタイミングよく戻ってきたロボが慌てて受け止めてくれた。
「はあ〜、セーフ。大丈夫二コ?」
「うん、ありがとうロボ」
素直に感謝を述べる二コだったが、当の本人は何やら意味ありげに首を捻っている。
その可笑しな様子に…いや元々可笑しな男だけどと内心思いながらもどうしたの?と問う。
「いやー、こういう立ち位置もなかなか新鮮なもんだなぁと思って」
「へ?これが?」
二コは改めて今の状況を確認した。言われてみればそうかもしれない。
ベッドに立つ自分といつも見上げているロボとの身長差がなくなっている。
なにげに至近距離で絡み合う視線に二コは急に恥ずかしくなって思わず俯いてしまった。
「二コ」
ロボの指先が二コの触れると顎をくいっと持ち上げじっと見つめ返す。
「俺はいいなーと思った女性と2分、目を見て話すと好きになるな」
力強い眼差しに一瞬ドキッとした。と同時にどこかで聞いた台詞だなと二コは気付く。
「…さて、朝食は何がいいかなぁ」
「ええぇ!?なんでそうなるの〜」
あっさり受け流されたショックにロボは涙目で二コに訴えかける。
「ねえ、それさぁ、前に一海ちゃんにも同じようなこと言ってたよね?」
「え?あ〜」
そういえばそうだったかな?と気まずさに愛想笑いを浮かべるが
そこは二コの性格なんて知り尽くしているロボのこと、ただで引き下がりはしない。
「でも、二コもホントはちょっとドキッとしたでしょ?」
顔を覗きこみニヤリと口元を歪める。
「そ、そんなことないもんっ。あたしご飯の用意するから、いいかげん離してよ」
そう言って振りほどこうとした長い腕を逆に背中にまわされて、ロボが耳元で囁く。
「作らなくていいよ。二コさえいれば俺は満たされるから。ていうか、今日は外は熱くなりそうだし
部屋に篭ってずーっと栄養補給をしておくのが一番だと思うよ。ねぇ?二コ」
「はあ?何の関係がっ…て、ちょっ!?やだ押し倒さないでよ!もうっ朝っぱらから盛るなって!」
「まあいいじゃん♪」
「よくなーーい!!」
窓辺の陽だまりで小鳥達がさえずる穏やかな朝、ふたりの甘く長い時間は始まったばかり。
おわり
ニコロボ萌えっす
お盛んですなあw
エロ無し
恋する乙女なニコです
----------------------
「ニコ、ほら、あの人、なんていったけ・・・やたらテンションの高い・・・」
もしかしてロボのこと?
カルチャースクールでフラダンスを習い始めた母が
最近よくビル内でロボを見かけるらしい
今日後ろから大声で声かけてみたのに、気付かずに行ってしまったとか・・・
ロボ、何か習ってんのかな?
ロボと会わなくなってもうすぐ2年になる
あの頃はロボと一緒にいるのが当たり前すぎてわからなかったけど
こうして離れてみてハッキリ気づいてしまったことがある
------私、ロボのことが好きなんだ------
友達の間で恋愛話が持ち上がるたびに
どういうわけか頭の中にロボが登場してくる
最初はただ懐かしんでいるだけなのかも、と思ってみたけど、
私がロボのこと呼んでいるのに、背中を向けて行ってしまった夢を見た時は
飛び起きた自分が泣いていて、ビックリするくらい動揺してしまった
これって、ロボこと、異性として好きってことなのかな?
なんだか苦しいよ・・・ロボ!
そんな時、ロボの目撃談を聞いて、
無性ににロボに会いたくなって、思い切ってアパートに行ってみた
緊張しながらドアをノックしてみる・・・
「私、ニコだよ・・・ロボ、いるんでしょ」
灯りはついているのに返事はなく、静まり返っている・・・
寝てるのかな?
鍵はかかっているし、もう一度ドアを叩くのもためらわれて、その日は帰ることにした
次の日、例のカルチャースクールの前を通りかかったら、
偶然目の前をロボが歩いているのを見つけた
「ロボ!!!」
気づかないままロボはビルに入ってしまった
後を追いかけて私も中へ・・・
受付で
「さっきの男の人が習ってる教室・・・」
「見学をご希望ですか?」
「は、はい、見学させてください」
「教室は2階の・・・」
渡されたパンフレットには「手話教室」とあった
ガラス窓から中を覗くと、少し髪の伸びた懐かしいロボの姿があった
ロボは隣の女性と楽しそうに「会話」をしていた
滑らかに動くロボの手、指を見つめながら
頭をよぎる不安で押しつぶされそうになっていた
久しぶりに見るロボが私の知らないロボに思えて目の前が真っ白になり
気がついたらその場にしゃがみ込んでいた
授業が終わってロボが出てくると後ろから声をかけてみた
・・・やっぱり聴こえないんだ・・・
今度はロボの前に回って、「ロボ!」・・・
ロボは一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐにあのくしゃっとした笑顔を見せてくれた
「元気たった? 久しぶりたね! あ〜ニコ、高校生になったんだ〜
制服、似合てるね!・・・とうしてここに?」
「ロボに会いにきた。会いたくて、会いたくて、やっと会えたのに・・・」
「??? ごめん、ニコ、オレ、耳が・・・」
ロボはカバンからノートを出すと、ここに書いて、という仕草をした
(会いたかった。すごく会いたかった。どうして知らせてくれなかったの!---)
伝えたいことがありすぎて文字にするのがもどかしい
感情が抑えきれなくなって思わずロボを責めてしまった
「ロボのばかっ!ばかばかばかっ!!!どうして・・・」
ロボの胸をポカポカ叩きながら泣き出した私をロボはやさしく抱きしめてくれた
「こめんね・・・ニコ」
ロボも泣いていた
ロボの耳は1年ほど前、突然聴力を失ったようだ
いろいろ調べたけれど、原因も分からず、治る見込みもほとんどないと言われたそうだ
仕事は部署を変わって何とか続けているけれど、
不自由なことが多くて、精神的にも参ってしまいそうになったらしい
「内緒にしてたのは、その・・・心配かけたくなかた・・・それに
ニコ、受験とかあって忙しかったたろうし・・・
あの・・・高校生になってからはニコにはニコの新しい世界がてきたたろうし、
もうオレはかかわらないほうかいいんじゃないかって・・・」
「どうして・・・」
「ニコに会いたいな〜って、正直、思た・・・毎日マックスロボに話しかけなから
そんな衝動をおさえてた」
(バカだよ、ロボ! 私じゃあ何の役にも立てないかもしれないけど、ロボのそばにいることはできるよ?)
ノートに書いてロボに見せる
「だって、もうニコの声、聴こえないんだよ?ニコがとんなに呼んても、
オレ、ニコの元にかけつけてやれない・・・ニコを守ることもてきないオレじゃあ、
ニコの負担になるたけだ・・・」
(守ってほしいなんて、いつ頼んだ? 私は何もいらない、ロボがいてくれさえすれば)
「ニコ・・・」
(あたし、人の何倍も耳いいんだよ! あたしがロボの耳になる。
それでいいじゃん! ---------あ〜もう泣くな!!!)
それから私たちはまた会うようになり、ロボの家にも行くようになった
驚いたのはロボが自分で作った発明品(?)の数々・・・!
お湯が沸くと電気がチカチカして知らせてくれる装置や、
ロボ、それ、特許取れば?というような優れものもあって感心してしまった
中でも面白かったのは時間になると傾いて、体がずり落ちるようになっている目覚ましベット・・・
このあいだロボのおでこにコブができてたのはこいつせいだったんだ・・・と思うと
可笑しくて仕方なかった
(そこまでするなら、私が学校に行く前に起こしに寄ろうか?)
ロボは一瞬ニヤケたけど、
「そこまで子供じゃありません! 一人で何てもてきるようにならないとね!」
確かにそうだけど、少しは甘えてほしいよ・・・
ロボットをいじっているロボの背中につぶやいた
「ロボのバカ・・・私の気持ち、分かってるくせに・・・
分かってるから、わざと遠避けようとするの?
ロボは、ロボは私のこと・・・どう・・・」
「ん? とうした〜ニコ。あ、新しい仲間たち紹介するね。こちらは・・・」
「ホンット、相変わらずだね〜」ロボの横にちょこんと座ってロボットに話しかけた
「ねぇ・・・ロボから私のこと、なんか聞いてなぁ〜い?」
「ん? なに? なんか言った??? 内緒話はずるいよ〜」
ロボから手話を習うようにもなった。ロボは無理することはないと言ってくれたけど、
少しでもスムーズにコミュニケーションをとりたくてがんばった。
その甲斐あってか、なんとか少しだけど簡単な日常会話はできるようになった
夜遅くまで手話の復習をしてる私を見て、一海ちゃんに
「ニコ、最近楽しそうだね・・・生き生きしてるよ・・・
でも無理しすぎちゃだめだよ、ニコになにかあったら
あのオタクの世話、誰が焼くの? ニコの代わりに私が行こうか?」
「そ、それはダメ! 絶対ダメ!!!」
「(ニヤニヤ・・・)冗談だよ〜。ね、もう寝なよ。風邪ひくよ」
ベットに入った一海ちゃんが「・・・あぁでもそこまで一生懸命になれのって、
なんかうらやましいな」とつぶやいたのが聴こえた
休みの日にはなるべく一緒に買い物をしたりして、ロボを外に連れ出すことにした
ロボ、自転車だよ!危ないよ!とか、ロボ、テレビでこんなこと言ってたから気をつけて!とか、
私が一緒にいることで、少しでもロボの役に立ちたかった
ロボは「過保護すぎるよ〜。なんか、母ちゃんみたい」って膨れたり、笑ったりするけど・・・
か、母ちゃんって・・・
まあでも以前のあの明るいキラキラした笑顔を
私に向けてくれるようになったのはすごく嬉しい・・・
今日は数学と化学がヤバイことになってる私に
ロボが付き合ってくれて図書館で勉強・・・
ロボの教え方、先生よりもうまくて分かりやすいけど・・・なんか眠気が〜
ついついウトウトして眠ってしまった
目を開けるとノートにびっしり書かれたロボの文字・・・
ロボが手話で“やっと起きたかぁ〜”
その優しい眼差しに顔がカァ〜っと熱くなるのが分かって恥ずかしかった
“起こしてくれればよかったのに〜”
“ニコの寝顔見てるの、面白かったよ。寝言いってたみたい。
残念なことに何言ってるのかは分からなかったけど”
“面白い?面白いって何よ!”
“・・・怒るなって! ホントはすご〜く可愛かった”
やだ! 何、照れるじゃん! ロボの顔が見れないよ
“こ、これ、ありがとう。すごくきれいにまとめてあって、分かりやすいよ。
これで今度のテストはバッチリ!・・・だといいけど・・・
ついでにこっちの宿題もやっておいてくれれば良かったのに〜”
“ニコの役に立てたなら嬉しいよ。でも宿題は自分でやらないとね!
分からなかったらいつでも教えてあげるからさ”
帰り道
音程はずしながら陽気にマックスロボの歌を歌うロボ・・・
声、大きい!誰もいないとはいえ、恥ずかしいよ!・・・
「あ〜、ごめ〜ん!ニコといるとついついテンションあがりマックス!!!」
そ、そう?素直に嬉しいけど・・・
“ロボ、なんでそんなに明るくいられるの? 私もロボといると・・・た、楽しいけどさ”
「なぁに〜?」ニヤニヤしながらロボが私の顔を覗き込んできた
“そりゃぁ〜オレだって聴こえなくなって激しく落ち込んだよ〜。でもそのおかげで
ニコとこうしてまた会えるようになったんだって、今は思えるんた・・・”
“え?今なんて?早くてわかんない。もう一回言って”
“だからね・・・”
長くて綺麗な指・・・その流れるような動きに、ついつい見入ってしまって
ロボに“ちょっと、聞いてる?”と突っ込まれた
・・・不意にロボの手を止め両手で包んでしまった
ロボは一瞬驚いたけれどそっと手を抜くと、どうしたの?と聞いてきた
“私、ロボの手、好きだよ”
ロボはわざとらしく「え〜?!」という顔をして
“手だけ〜?”
ん〜どうしよう・・・“そう、手だけ〜”
ん?ロボ、どうしたの?
ロボが急に真剣な顔をして私の目をまっすぐ見てきた
“オレもニコの手、好きだよ”
そっと私の髪に触れるとゆっくり話し始めた
「この髪も・・・この目も、鼻も、唇も」
両手で優しく私の頬を包み
「今はもう聴くことてきないけと、ニコの声も大好きた
オレのために一生懸命なところも、人のこと、思いやれる優しいところも
みょうに大人びてるくせに弱くて、小さくて、涙もろくて・・・それと・・・」
え?何!?何??
「・・・つまり、その・・・オレはニコが好きだ」
「ロボ・・・」
「ニコに会えなくなて、ニコのいない毎日が、こんなに退屈なんたって知った。
耳が聴こえなくなて、ニコに会いたくて、会いたくてどうしようもなくなった。
ニコに再会して、ニコと一緒にいられるたけで、毎日が楽しくて・・・
でもたんたん苦しくなってきて・・・自分の中で何度も否定してみたけと、
これってやっぱり・・・好きたってことなんじゃないかって。
ても、オレ、今こんなだし・・・ニコと一緒にいちゃいけないんじゃないかとか
いろいろ考えた・・・」
“何いってるの! 私が・・・ロボがいいの! ロボじゃなきゃイヤだよ!”
ロボは私の両手を優しく包むと「好きだ・・・ニコのすべてが愛しくてたまらない・・・」
私はもう何も言えず、涙でくしゃくしゃになった顔でロボの胸に抱きついた
ロボは強く私を抱きしめてくれた・・・
「ロボ、私、2年前からずっとロボのことが好きだったんだよ
あの時はまだ子供で、それが恋なのか自分でもわからなかったけど、
ロボのこと思い出す度にどんどん苦しくなって・・・
ロボことが好きなんだって気付いてから、ホントに苦しかった。
バカだね私、もっと早くこうして伝えておけば・・・ちゃんと私の告白、
ロボに聴いてほしかったよ・・・」
しばらくするとロボは私の体を離し、肩にそっと手を置いた
ロボの顔がゆっくり近づいてくる
ドキドキしすぎてる心臓の音、ロボには聴こえてる気がして恥ずかしい・・・
あたたかいロボの唇がそっと触れた
------ギュルル〜〜〜------
うわっ!こんな時にお腹がなっちゃうなんて・・・
あぁぁぁ〜ロボに聴こえなくってよかった・・・
「プッ! 何、ニコ、腹へってんの?」
「だってお昼、軽く食べただけだし・・・」
「え〜オレの分まで食ってたじゃん」
「そ、それはロボが残すって言ったからじゃん・・・って、エッ???ロボぉ???」
「えっ?聴こえる! ニコの声が聴こえるぞ!!!」
「ホント、ホントにっ?!」
「ニコの腹の音もハッキリ聴こえた・・・イテっ!ちょっと〜叩かないでよ〜!」
気がついたら私たちは手を取り合って笑い、泣いていた
嬉しい時も涙ってこんなに溢れるんだって初めて知った・・・
「ニコ、もっともっとしゃべってみて!」
「ロボのスケベ!バカ!ヘンタイ!・・・」
「ちょっと、なによそれっ!ひどいっ!」
あれからやたらとキスをせがむロボ・・・
「だってぇ〜ニコのキスにはウルトラミラクルパワーがあるんだも〜ん」
ホント、子供なんだから・・・でも、そんなロボが愛しくてたまらないよ・・・
ロボには内緒にしあるけど、ロボの耳が音を取り戻した瞬間から
私の耳は人並みの聴力しか持てなくなった
でもその不思議な現象が嬉しくてたまらなかった
私がロボと出会ったことは偶然じゃなくて必然だったんだと分かったから・・・
もしかしたら、今回のことはそれを気づかせるために
神様が仕掛けたいたずらだったのかな・・・
ロボ、今日も空がきれいだね
ロボ、私の声、聴いていてね
・・・ずっとだよ
おしまい
ニコとロボが一緒ならきっとウルトラミラクルはこれからも起きるよ。
GJ!
あれ…目からナニカガ
ええ話しや〜
ニコロボには、笑顔が似合う!
二人の関係性がとてもいいです!
お互いに幻想を持ち合うような恋愛じゃなくて
一番の親友でなおかつ恋人、みたいな感じがらしくていい
>>212 そうだね。いい関係だ。
お互い思いやって、お互い大切な存在と感じる。
素晴らしきかな。
>>210、211、212、213
ありがとう!
こういうの書くのは初めてなんで、読んでもらえて嬉しいです
今度はこれのロボ視点のほうを書こうと思いますんで
またよかったら読んでください
待ってます
次回作、楽しみです。
エロ無し
205〜209のロボ視点です
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『威一郎、元気にしてるか? ちゃんと食べてるか?』
実家から米と野菜が届いた
最近はオレを心配してか、母ちゃんがしょっちゅうメールしてくる
時々こうして手紙を添えて食料を送ってくれたりもする
手紙には、伯父さんが仕事を世話してくれるから、とにかく戻ってくるようにとあって、
大きな棚の前で父ちゃん、母ちゃん二人並んで立っている写真が同封してあった
ロボットたちも一緒に帰れるように、どうやら父ちゃんが作ってくれたらしい
二人とも年をとったなぁ・・・母ちゃん、少し痩せたみたいだ
二人にはたくさん心配かけて、本当に申し訳ない・・・
オレも正直、そろそろ田舎に帰ろうかと思っていた矢先、
ニコが突然目の前に現れた
どうして?
驚きと懐かしさと、なんともいえない後ろめたさと・・・
いろんな感情が入り混じって、どうしていいかわからないオレに
泣きながら気持ちをぶつけてきたニコ・・・
オレの記憶の中のニコより随分大人になったようで戸惑った
でも・・・やっぱり嬉しかったんだ
ニコの真っ直ぐな目が眩しかった
大切な友達・・・これからもオレ、ニコの友達としてそばにいていいのかな?
ただ過ぎていくだけの音の無い日常が、再会を機に色を変えた
またニコと会うようになり、部屋にもやってくるようになった
手話も教えてほしいといい、真剣に練習するようになった
難しいなぁ〜といいながらも楽しそうに見える
学校であったことをオレに話してくれるのが嬉しかった
言いたいことをうまく伝えられなくて、もどかしいのか
だんだん手話というよりもゼスチャーみたいになってくる
それでもニコの言いたいことは大体分かるから不思議だ
ニコの言動から、なんとなくニコはオレを友達とはみていないのはわかっている
でも今は二人の距離を変えたくない
なぁマックス、オレって卑怯かな・・・
ニコと買い物に出かけた
立ち寄った雑貨店でニコがなにやら真剣に見ている
“なに? ん、マグカップ? ほしいの?”
黄色い大き目のマグカップ
ニコは
“ううん、ちょっとかわいいな、って思っただけ。行こっ!”
オレの手を取り店を出る
人通りの多い道では、こうしてニコは手を繋いでくる
照れるけど・・・嬉しいんだな、これが・・・
“ニコはこっちでしょ!”
一応男として車道側を歩く
こうしてるとまるで・・・まるで恋人同士みたいだな
こんな時間がずっと続けばいいのに・・・
いつもは必ず送るようにしてるのに、ある時部屋に来ていたニコが
仕事で疲れて眠そうなオレを見て、
“今日は一人で帰るからいいよ”と言い出した
“なんで? 遅いし、危ないでしょ!”
“まだ暗くないし、大丈夫だって! ロボ、疲れてるみたいだし、
明日また早いんでしょ? ちゃんと鍵掛けて早く寝なよ。じゃあね!”
オレを気遣ってくれてるのは嬉しいけど、心配で余計に疲れちゃうでしょ!
窓から下を見ると、気づいたのか、ニコが振り返って
「いいから、いいから」という仕草をした
仕方なく“家に着いたらメールしろよ”というと
大きく頷いて満面の笑みで手を振り、帰っていった
・・・やっぱり心配だ
急いで着替えるとニコの後をつけた
耳のいいニコに気づかれないように尾行するオレ・・・
ニコとのスパイ活動?を思い出してちょっとワクワクする
まあ、オレみたいな男が息を潜めて女子高生の後をつけるのって
はたから見たら相当怪しいな・・・職質されないかヒヤヒヤ・・・
ん? 道、こっちじゃないでしょ? どこかに寄るのかな?
神社の前まで来ると二コは足を止めた
あ〜もう、こんな人気のないところ、危ないだろ!早く帰ろうよ!
後をつける
賽銭を入れると目をキュッと瞑り、一心に手を合わせるニコの姿があった
何をそんなに一生懸命お願いしてるのか・・・
だめだ、オレ、視界がぼやけてきた・・・
ようやく家に到着
灯りの点いた家に入っていくニコを確認し、帰ろうとした瞬間
後ろから肩を叩かれ、思わず声を上げそうになった
「こんなとこで何してるの?」
あ〜〜〜一海ちゃん! 相変わらずかわいいなぁ〜
あっ、やばい・・・
あたふたしてると一海ちゃんは手帳を取り出し
(何してるんです? もしかしてニコに用事?)
違う!違います・・・ここでオレに会った事、ニコに言わないでって頼んだ
一海ちゃんはニヤニヤしながら
(あなたのことはニコから聞いてます。
あのコ、去年くらいからボ〜っと空を見てることが多くって、ちょっと心配してたんです。
でも最近、急に明るくなちゃって、毎日楽しそうで・・・
それって、全部あなたのせいですよね?)
いや、あの、その・・・
一海ちゃんは手帳を閉じると手話で“ありがとう”と言ってくれた
「ニコから教えてもらったんだ・・・合ってるよね?」
あれ、違ったかな?とかやってる一海ちゃんに手話で返す
“オレはその10倍も100倍も1000万倍も楽しいです!
オレのほうこそ、ありがとうございます!”
訳がわからずキョトンとしてる一海ちゃんに一礼すると、家路を急いだ
途中、ニコからのメールを確認
『ちゃ〜んと家に着きました!
コンビニに寄ったから、ちょっと遅くなっちゃった
ごめんね
それと、さっき聞き忘れたんだけど、今度の土曜、暇?
数学と化学、全然わかんない・・・』
そうだよな、まだ16の高校生なんだよな・・・
コンビニなんて、寄らなかったくせに・・・
さっき神社で見たニコの姿が浮かんできて
涙をこらえることができなかった
翌日、母ちゃんからメールが来た
やはり早く戻って来いという内容だった
東京にいたい理由は仕事の他にもあるのかい?
もしかしてお前、「恋人」でもできたのかい?
・・・「恋人」かぁ
なぁマックス、オレもうニコのこと「友達」とは思えない
かといってそれ以外の関係になるのも恐いんだ
再会した時、泣きながらオレを叩いていたニコ・・・
何度も何度も繰り返し手話を練習している真剣な目、
笑顔でオレに手を振り、帰っていった小さな後ろ姿、
神社で必死に手を合わせていた横顔・・・
ニコがオレのために一生懸命になればなるほど
オレ、ニコのそばにいていいのか分からなくなってきたよ
臆病で駄目なやつだよな・・・
ニコ・・・ホント、ごめん
土曜日の朝、
母ちゃんにメールする
『オレ、来月中には帰るよ
今まで心配かけてごめんな
これからは親孝行するから』
ニコと待ち合わせの喫茶店へと向かう途中に
以前ニコと入ったことのある雑貨店があった
そういえば・・・
中に入ってニコが見ていたマグカップを探す
あった! 黄色いマグカップ!
可愛らしいヒマワリの花が描かれてる
このヒマワリ、ニコの笑顔みたいだな
ニコにプレゼントしようか・・・最初で最後のプレゼント・・・
これを見るたび二コはオレのことを思い出すのだろうか
・・・やめておこう
マグカップを戻し、店を出た
“ごめんね、遅れちゃって。
宿題も持ってきちゃった。見て、こんなにあるんだよぉ〜!
ん、ロボ、どうしたの? 元気ないよ?”
“あ、いや、別に・・・何か食べようか!”
“じゃあ私はサンドイッチ! ん〜飲み物は〜・・・”
サンドイッチがきて、二コが幸せそうな顔して食べ始めた
オレは食欲がなくてすすまない
“ロボが残すなんて珍しい! 雨が降るんじゃない?”
“なんだよ、その言い方! ニコ、それだけじゃ足りないんだろ、これ、食べていいよ”
“ちょっと!・・・そんなには食べられませ〜ん!”
フンッてしたあと、なんかブツブツ呟きながら、やっぱり食べるニコ・・・
可愛い顔してリスみたいに頬張るニコを見ながら
あの話をいつ切り出そうかと胸が痛かった
図書館でニコの勉強をみる
やる気のなさそ〜なニコ
ここはこうだから、こうして、こうで・・・
うんうん、と頷いていたと思ったら眠ってしまった
やれやれ・・・
取り合えず後で説明し易いようにノートにまとめてみる
こんな風に勉強するのって、何年ぶりだろう
田舎へ帰ったらこんなこと、もうすることもないだろうな
・・・そんなことを考えてると、消しゴムを落としてしまった
拾おうと立とうとした瞬間、突然左手を掴まれた
ビックリしてニコを見る
・・・まだ眠ってる
無意識に掴んだんだな
「・・・・・・・・・」なにやらムニャムニャ言ってるみたいだ
ニコの小さな右手をそっと離そうとする
けれどもその手は離れず、より一層強く掴んできた
「・・ ・・」
ニコの唇が「ロ・ボ」と2度動いたのが分かった
不安そうに眉を寄せるニコの寝顔・・・
ニコ・・・
初めて会った頃の幼い顔がそこにあった
前にもこんな不安そうな顔を見せたことがあったな
オレを行かせまいと必死だったっけ・・・
・・・バカだな、オレ、ホント、バカだ!
ごめんなニコ、オレ、どこへも行かないから、ここにいるから・・・
そっとその頬を撫でると、ニコの表情が柔らかくなって
安心したかのようにまたムニャムニャ言い出した
ニコの寝顔、こんなにマジマジと見るのは初めてだな
鼻先を軽く突いてみる・・・
頬も軽くプニプニしてみる・・・可愛いな・・・
それにしてもよく寝るなー
おデコに「肉」って書いてやろうか・・・
そっと髪に触れようとした瞬間、ニコが目を覚ました
「母ちゃん!」
「威一郎? お前、どうしたんだい!!!」
ニコとキスした瞬間、ウルトラミラクルなことが起きて
オレの耳は元に戻った
久しぶりに携帯で両親とも話し、帰るのをやめることを謝った
二人とも喜んでくれて、そっちで頑張れと言ってくれた
母ちゃんは「お前に奇跡を起こした人、今度連れておいで!」と言ってるけど・・・
やっぱ10歳も離れた女子高生連れてったら腰抜かすかな
「ただいマッ〜クス! あれ?あれ〜、チュウは?」
「も〜ホント、子供なんだから・・・え、何これ?」
「プレゼントだよ、プ・レ・ゼ・ン・ト!」
包みを開けたニコの笑顔がヒマワリのように輝いた
「ありがとう! 嬉しい・・・これ、見てたの、覚えてたんだ・・・
このヒマワリ、なんだかロボみたいだなぁ〜って思ってたんだ。お日様みたいでさ」
え? そんな風に思ってたの? お互い同じこと考えてたんだと思うと可笑しかった
「何笑ってんの? 早速使おう! コーヒーいれるね」
今日からオレのマグカップの隣に
黄色いヒマワリのマグカップが並ぶことになった
ニコ、二コはオレに言わないけど
ニコの人並み外れた聴力、今はもう普通になちゃったの、オレ、気づいてる
ごめんな・・・
でも、オレ、そばにいるから
オレの声、ニコに届く場所にいつもいるから・・・
おしまい
ロボのニコを想う心情が切なくてキュンときた。
声が届く距離ももちろんだけど、この二人はそれ以上に心が繋がってる関係が良いよね。
いい話だ〜また新作ができたら読ませて下さい!
あれ…画面が曇っ(∋_T)ゴシゴシ
なんかじーんときてしまった
これからも一緒に笑いあっていってほしいな
GJでした!
ニコ、ロボ
2人なら、大丈夫。
何があっても。
いい話しじゃん
暖かい気分になったよ。
エロ無し
---------------------
「初恋」
取引先から会社に戻る途中、ケーキ屋の前でふと気がついた
あ、そうだ、オレ、今日誕生日だ・・・
一人でケーキ食べるのも空しいしなぁ〜、と中を覗いていると
隣をすり抜けて女子高生が店の中へ入っていった
女子高生かぁ〜
アイツも今日なんだよな〜誕生日・・・
何かを買って出てきた女子高生・・・ん?
「久しぶりだね! ロボ!」
公園のベンチにニコと並んで座った
「お誕生日、おめでと〜! はい、これ」
さっき買ったばかりの小さな丸いお菓子を1個くれた
背も髪も伸びて、唇にも何か塗ってるみたい・・・
16になったばかりのニコが眩しくて、まともに見ることができなかった
「あ、ありがとう・・・覚えてたの?オレの・・・まあ、同じ日だから忘れないか。
ニコも、おめでとう!」
「ありがと! マカロンって初めて食べるけど、結構甘いね・・・」
マカロンとやらをもぐもぐさせながらニコが聞いてきた
「ロボはさ・・・誕生日を一緒に過ごす人、まだいないの?」
「いるように見える?」
「・・・見えな〜い」
「二コはどうなの? 高校生になって、ボーイフレンドの一人や二人・・・」
質問を遮るようにニコが
「ねえロボ、マックスロボたち、どうしてる?
・・・私、またロボんチに遊びに行ってもいいかな? 」
オレが断るとでも思ったのか、うつむいたままのニコ
「もちろん! みんな会いたがってるぞ!」
ホッとしたかのように大きく息をすると、あの頃と同じ笑顔を見せた
それからまた、オレたちは会うようになった
休みの日には部屋に遊びに来るけど、
2年前に比べて、ドキッとするくらい「女の子」になったニコに、
正直どう接していいのかわからない時がある
学校での出来事を屈託なく話してくれるのは嬉しいけれど、
そこに自分がいられないことに、寂しさみたいなものを感じてしまう・・・
「なぁ、二コはさ、好きな奴とかいないの?
オレんトコ来るより、同級生と遊んでるほうが楽しいだろ?」
「・・・なんでそんなこと言うの? 私が来ると迷惑?」
「そうじゃなくてさ・・・。二コ、かわいいからさ、
周りもほっとかないんじゃないかって・・・」
「え? ロボ、私のこと“かわいい”って思ってたの? ふぅ〜ん・・・」
なんか急に機嫌がよくなったみたい・・・
「クラスの男子なんて子供だもん。今週から始まった合唱の練習だって、
全然まじめにやってくれないんだよぉ〜。ふざけてばっかりで」
「まあ、高1の男なんてそんなもんだよ。いつもオレみたいなオ・ト・ナといるから、
余計、お子ちゃまに見えるんだよ!」
「はぁ? ロボだってじゅ〜〜〜ぶん子供だよ!」
「なんだよ、ひどいなぁ〜。・・・で、なに歌うの?」
「聴きたい? しょ〜がない、歌ってやるかっ!」
ニコは立ち上がり「あー、あ、あ、コホンッ」と咳払いをすると
「さぁ〜よ〜なぁ〜らぁ〜〜〜、ただ、ただぁ〜、いと〜しきぃ〜〜〜」と歌いだした
初めて聴くニコの歌声に固まるオレ・・・
1コーラス歌い終わると満足したように「どう?」と聞いてきた
「い、いいんじゃない・・・」
「ねぇ、ロボも高校のとき、合唱コンクールってあったの?」
「うん、あったねぇ・・・」
「プッ」
「なに? なんで笑ったの?」
「今、高校生のロボを想像しちゃって・・・
どんな顔して学生服着てたんだろうって思うと、可笑しくって・・・」
「し、失礼だな。オレにだって初々しい青春時代はあったんだぞ!」
「ねえ、その頃の写真ないの? 見てみたいなぁ〜。ロボ、全っ然モテなかったでしょ?」
「あのね・・・」
「え〜と、確かこの辺にあったよな・・・」
昔の写真なんて実家に置いてきたけど、
引き出しの奥に何枚かあったのを思い出して探してみた
「あった! ほれっ!」
ニコの前に突き出す
「どれどれ〜・・・・え?」
「なに、どうしたの?」
ニコがオレと写真の中のオレを交互に何度も見比べてる
「な!なかなかの美少年だろ?」
学生服のオレが、真っ直ぐな目でニコを見てる
「ロボって・・・かわいいかったんだね。うん、かっこいいかも・・・」
「だろっ! しゃべんなきゃ、きっとモテてたはずだ!」
「やっぱりモテなかったんだ・・・」
「・・・」
「変わってないといえば変わらないけど・・・
なんだか“純真さ”を絵に描いたみたいな顔してるね・・・」
「こんな子がクラスにいたらいいのになぁ〜って、今思ったでしょ?」
「は? 思うわけ無いじゃん! だってロボだよぉ〜」
かわいくないなぁ・・・
「あのね、これでも彼女いたんだよ」
「えっ?!」
笑ってたニコが急に真顔になった
「嘘だぁ〜」
「ホントだってば! ほら、これ」
もう一枚の写真を見せる
教室の中、何人かで写っている写真
ジャージ姿の日に焼けたオレと、その隣のセーラー服の女の子
「この子だよ」
<高校生のロボ>
母親に使いを頼まれて渋々いつもの帰り道とは違う道を歩いていると
一軒の家から聴き覚えのある曲が聴こえてきた
ついつい口ずさんでしまう
「マ〜ックス! ダァダァンダンダァン!」って、これ、マックスロボの唄だよな?・・・
でもなんだか気品漂う感じが・・・ああ、ピアノだからだ、誰かがピアノで弾いてるんだ
二階を見上げて聴いていると、その家の飼い犬に吼えられて、飛び上がりそうになった
すると二階の窓が開き、女の子が顔を出した
「あれ?」
「あ、須藤くん・・・」
同じクラスの・・・サヤカだ
大人しくて目立たない存在だけど、席替えする前はオレの隣で
教科書見せてもらったり、何度か話したことはある
探していた使い先の場所を聞いたら、案内するといって降りてきてくれた
一緒に歩きながら、初めて見る私服姿のサヤカをチラチラと横目で見てしまう
束ねていない長い黒髪が風に揺れて、いい香りがした
「ここだよ」
「あ、ありがとう。助かった!」
「じゃあね」
「あ、あのさ・・・さっき弾いてたのって、マックスロボの唄だよね?
なんで弾けるの?」
「あ、あれは・・・須藤君がよく歌ってるから・・・」
うぉぉぉ〜感激・・・!
次の日、教室でサヤカの姿を探した
目が合って、離れた場所から口パクで「昨日はありがとう」
小さく頷いたサヤカの頬が、ポッと赤くなったような気がした
それから時々一緒に帰るようになった
・・・夏休みを目前に、何かが始まった
初めて「デート」というものをしたときは
何を話していいかわからず、一方的にマックスロボの話をしてしまった
退屈だったろうなと思っていたら
「須藤君ってホント、面白いね。楽しかったよ」と言って笑ってくれた
サヤカはよくオレのこと、「須藤君ってヘン・・・」って言う
「じゃあさ、そんなヘンな奴と何で付き合ってんの?」って聞いてみた
「う〜ん、なんでだろうね・・・多分、ヘンなところがいいんじゃない?」
は? それって褒めてんの?
楽しい毎日が当たり前のように過ぎていく・・・
あっという間に時間が過ぎていく気がした
合唱大会が行われることになり、
指揮とピアノを誰にするかという話になった
指揮は何人かに推薦されてオレに決まった
「須藤は歌わないほうがいい!」
ひどいなぁ〜・・・オレって、そんなに音痴かい?
ピアノは・・・小声で「サヤカ、やれよ」と斜め前の席のサヤカを突付く
「ダメ・・・」
「何で? お前、弾けるじゃん」
「ダメなの・・・」
結局他の女子が弾くことに決定した
「何で弾かないんだよ〜」
一緒に帰りながらブツブツ言うオレ
サヤカの様子がいつもと違うことに気づいてなかった・・・
練習が始まった
いまぁ〜わたしのぉ〜ねがぁ〜いごとがぁ〜〜〜・・・プッ!!!
・・・ゲラゲラ
「おい、須藤、笑わすなよ!」
真面目にやってるのにぃ〜・・・
和やかな雰囲気?の中、いい感じで練習が進む
サヤカに目をやると、笑ってはいたけれど、なんだか元気がなさそうだった
間もなくしてサヤカから、父親の仕事の都合で引っ越すことになったと知らされた
「だまってて、ごめんね」
・・・言葉が出てこない
「お父さんに頼んだの、私一人だけでも残りたいって・・・でも、どうしてもダメだって・・・
須藤君とずっと一緒にいたかったのに・・・」
泣き出したくなるのをこらえて、
自分でも何を言ってるのか分からないような言葉を口にした
「きっといいことが待ってるさ。どこにいても、いつもサヤカは笑ってて・・・」
最後に「ずっと忘れない・・・」と言うと
首を横に振ったサヤカの目から涙がポロッと落ちた
指で彼女の頬を拭うと、目を伏せていたサヤカがオレを見た
粉雪が舞う夕暮れの中、サヤカが目を閉じた・・・
甘酸っぱい青春の思い出に浸っていたオレをニコが現実に引き戻した
「なにボーっとしてるの? 今、この人のこと、思い出してたんでしょ?
なによ、どこがいいの? 全然可愛くないじゃん!」
「そんなこと言うなよ!」
「・・・なんで別れちゃったの? いつ別れたの?
やっぱりロボが振られたんだよね?」
「あ〜もう、しつこいぞ!」
「まだ好きなの? 写真、大事に取ってあるんだし・・・」
「男っていうのはね、こういう物、なかなか捨てられないとこもあるの」
ジーッとオレを見るニコの目がちょっとこわい・・・
「なんだよ、急に黙っちゃって」
「その人、今、どうしてるかな・・・」
「・・・3年くらい前、東京駅で偶然見かけたよ」
「それで?」
「彼女、綺麗になってた・・・」
「話しかけなかったの?」
「うん。できなかった。なんか、こう、胸がキューッと痛んでさ・・・初めてキ・・・あっ」
「キ・・・って何? 何?」
「その・・・キスした相手だから、そりゃあね・・・」
「えええ〜〜〜!」
「そんなに驚かなくったっていいだろ! オレだってキスくらいするよ」
急にニコのテンションが落ちるのが分かった・・・
「・・・帰る」
「なんかニコ、怒ってない? ねえ、なんで?」
「別に怒ってないよ。ただ・・・自分がイヤなの!
ロボの昔の彼女に嫉妬してる自分がイヤなの・・・私、バカみたい・・・」
え、嫉妬? 今、嫉妬って言った?
ニコが目を合わせようとしてくれない
なんだかそんなニコがいじらしくて、思わず抱きしめてしまった
「あっ、ごめん!」
自分で自分のした行動に驚いて、すぐに体を離した
「謝らないでよ。嬉しかったんだから・・・」
・・・え?
「・・・帰るよ」
「・・・」
「帰るからね!」
「・・・」
「何か言うことないの?・・・ロボの鈍感っ!」
背を向けて行こうとする腕を掴むとニコがゆっくり振り返った
ニコの肩を引き寄せると、壊さないようにそっと抱きしめた
「はいはい、鈍感で世話の焼ける子供ですよ。
でもニコだってオレから見たら無防備でさ・・・」
腕の中のニコが
「ロボだからだよ」と小さく答えたのが聞こえた
キスしたくなる気持ちを抑え、ニコの髪に軽く口づけた
今はこうするだけ・・・ニコを大切にしたいと心から思った
ニコを送っていく途中
「さっきの話の続きだけど・・・話しかけられなかったのは、
彼女、男の人と一緒で、赤ちゃん抱いてたからなんだ。すごく幸せそうだった」
「・・・」
「安心した?」
「べ〜つにぃ〜」
もぉ〜かわいくないぞ!
「初恋なんてさ、切なくて、痛くて・・・それでも記憶の中で美化されちゃうもんなんだよ。
もうここにはないものだから。戻ってはこないから・・・」
「私は・・・戻ってきたよ。ちゃんとここに」
えっ? じゃあニコの初恋って・・・
オレの横で笑って泣いてたニコの姿を思い出した
あの頃は子供としか見てなかったなぁ・・・オレってホントに鈍感だ
「ねえ、ロボ・・・その人と私、似てるのかな?」
「似てないよ〜。二コは“ニコ”だろ」
「そっか。でもさ、やっぱり共通してるとこはあるよ」
「・・・?」
「ロボのいいところ、た〜くさん知ってるとこ。まだ16だけど、ちゃんとわかってるよ・・・」
“えらいでしょ”とでも言いたそうなニコ
「ニコのほうがたくさん知ってるだろ?
これから先、オレのこと、もっともっと知ることになるさ〜」
「例えばぁ〜? どんなこと?」
「ニコのいいところ、一番知ってるのはオレだってこと!」
照れ隠しなのか、ニコが小さな声でマックスロボを歌いだした
「・・・あのさ、ニコ、合唱コンクール、
二コは指揮をやったほうがいいんじゃない?」
「は? なんで?」
「・・・そうすれば男子も張り切って歌ってくれるさ!」
「そ、そうかなぁ〜・・・ねえロボ、今度カラオケ行こっか?」
「遠慮しときマックス!!!」
ニコにとって、今こうしてオレと過ごす時間が
後になって「甘酸っぱい青春時代」となるのだろうか
懐かしい思い出を振り返る時、隣にいるのは・・・
夕焼け色に包まれてるニコを、どこへもやりたくなくてその手を握った
二コもギュッとオレの手を握ってきた
二コは立ち止まると再会したケーキ屋を指差した
「来年の誕生日は、ロボがケーキ買ってよね!」
「ああ、来年も再来年もその次も・・・、大きなケーキ、一緒に食べような」
おしまい
嫉妬する二コは最高に可愛いすぐる!
ツボをくすぐられまくりっ
時事ネタで上手くまとめたな
あとIIは2と読んでくれ
233 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/25(木) 10:27:01 ID:xyQiiU+T
ほしゅしゅ
「ニコ」はともかく「ロボ」って人前で呼んでると、他人から見たらバカップルぽいなと何となくw
と思いつつほしゅ
バカじゃないです、オタクですぅ〜
七夕ほしゅ
エロ無し
-------------------------
「ふたつの背中」
お父さんと喧嘩した
ロボと会ってるって知ったら、いきなり怒られた
なんで? 中学の頃はなんにも言わなかったくせに、なぜ今はいけないの?
世間の親たちと同じこと言うんだね・・・もう口も利きたくないよ
ロボは友達の結婚式に行ってて、アパートにいないのはわかってたけど来てしまった
いつ帰って来るか分からないロボを、マックスロボを話し相手に待ってみる
「ロボは相変わらずロボだけどさ、やっぱりロボの隣にいる時が一番安心できるんだよね。
年の差とか、そんなことどうでもいいと思わない?」
半年ほど前、突然先輩から告白された
ちょっと憧れてた人だったから嬉しかったけれど・・・その場ですぐに断ってしまった
「私、こんなんじゃ一生恋なんてできないかも・・・ロボのせいだからね」
会いに行こうと思えばいつでも会えたはずなのに、なぜかそれができなくて、
結局2年も経ってしまった・・・
学校の帰り、急に降り出した雨を避けることもせず、
「今、名前呼んだら突然現れるかも・・・ロボが私の運命の人なら」
賭けみたいなものだった。もしも奇跡が起きるのなら・・・
「ロボッ!・・・って、そんなドラマみたいなことあるわけないよね・・・あっ!」
私の上に大きな傘が現れた
「どうしたの、こんなところで・・・風邪ひくよ」
「え〜〜〜っ?!」
「“ロボ”なんて呼ばれ方、久しぶりにされたよ」
「なんで? え〜なんで???」
「こっちが驚くよ・・・呼んだの二コだろ?」
会わなかった時間がまるでなかったかのように、ロボが隣にいた!
「ねえ、信じられる? これって凄いことだよね? ロボは『偶然だ』って言ってたけど・・・
それまで運命とか赤い糸とか、全然信じてなかったけど、その時、私・・・」
黙って聞いてるマックスロボを持ち上げるとベットに腰掛けた
「なのにさ、なのに・・・あれから半年も経つのに、全然進展無いんだよ〜
これってどういうこと〜? ロボはさ、私のことまだ子供としか見てないのかな〜
ねぇ〜私って、そんなに魅力ない?」
はぁ〜と溜息が出る
「お父さんには怒られるは、ロボには女として見てもらえないは・・・踏んだり蹴ったりだよ!」
ロボがいないのをいいことにベットにゴロンと横になった
「もぉ〜こうなったら・・・あっ!」
ロボの鼻唄が聴こえてきた!
慌てて飛び起き、マックスロボをテーブルの上に戻す
「ただいマ〜ックス!」
「お、お帰り!」
「あれぇ〜、二コ来てたの? 言ってくれればいいのに〜」
「いないのわかってて来たんだからいいよ。どうだった、披露宴?」
「はぁ〜そりゃ〜いい披露宴だったよ! 感動したなぁ〜
新郎の方が花嫁さんより先に泣いちゃってさ、俺もつられてオイオイ泣いちゃったよ〜」
「結局ロボが一番泣いてたんじゃないの?」
久しぶりに会った友達の話が始まった
結婚して子供ができた人もいたみたいで
「須藤も早く嫁さん貰えよ〜」と言われたらしい
「ロボって結婚願望とかあるの? 早く子供がほしいとか・・・」
「う〜ん・・・そりゃあ、ないこともないけど・・・子供はあんまり考えたこと無かったなぁ
俺が“お父さん”って、想像できる〜?」
「子供が二人いるみたいで、奥さんになる人、大変だよね・・・」
「しみじみ言うなよ〜。二コはさ、面倒見がいいし、きっといい奥さん、いいお母さんになれるよ」
「そうかなぁ・・・」
「何年先になることやら・・・だけど」
「何か言った? まだ17になったばっかりだもん、そりゃ〜まだまだ先の話だよ!
私のことより、ロボ、自分の心配したら? 寂しい老後にならないようにさ」
ロボの表情がこわばる
「奥さんも子供も貯金もない老後・・・うぁ〜〜〜恐ろしい想像をさせるなよっ!」
立ったままワナワナしてるロボがなんだか可愛らして、可笑しくて、「よしよし」となだめた
「二コはさ、旦那さんと幸子に囲まれて、きっと幸せな家庭を築くんだろうな〜」
「幸子? あ〜そうだね・・・女の子が生まれたら“幸子”・・・」
「男の子だったらどうするの?」
「考えてなかった・・・何がいいと思う?」
真剣に悩むロボ・・・
「う〜ん・・・“マックス”! マ〜〜〜ックス!・・・な、かっこいいだろ! 愛と勇気と正義のために・・・」
「どっからどう見ても日本人なのにマックスって、おかしいよ〜!」
「これから先、国際社会の中じゃあ珍しくなくなるんだよ!
純日本風な“幸子”と対照的でいいじゃないかっ!」
須藤幸子・・・
須藤マックス・・・
須藤・・・須藤二湖になる日が来るのかなぁ・・・
うわぁっ、私、何を想像してんだろ・・・!
隣でネクタイを緩めていたロボが「どうしたの?」と顔を覗き込んできた
「二コ、顔赤いぞ・・・熱でもあるの? 大丈夫?」
おでこを合わせようとロボが顔を近づけてきて・・・
「無いみたいだね」
結局手を当てて確かめただけだった
「う〜ん・・・のど乾いたな。ちょっと飲んじゃったからねぇ〜」
落ち着かない様子でロボはキッチンへ行ってしまった
シ〜ンとした部屋にロボが水を飲む音だけが響く
ゴクゴクゴクゴクゴクゴク・・・何杯飲むんだよ!
「さてと、もう遅いし、送ってくよ」
「・・・」
「どうしたの?」
「今日、お父さんと喧嘩しちゃった」
ロボの反応を見る
「なんで? 二コのプリン、お父さんが勝手に食べたとか?」
「も〜なんでロボはそういう発想しかできないの・・・とにかく、今日は帰りたくないの・・・」
「あぁー、・・・あ、えっっっ???」
「泊めてくれるよね?」
「ダメっ! ダメだよ! お父さんだって心配するよ」
「前はそんなこと言わなかったじゃない。なんで? 私が子供だから? ロボはさ、私のこと・・・」
「もう子供じゃないから泊められないの!」
「え?」
「ニコが好きだから・・・大事にしたいと思ってるから・・・その・・・俺だって、ホントは・・・」
掴んでいた私の腕を離すと、ロボは背を向けた
シャツの袖を引っ張ってみたけど、ロボはこっちを向いてくれない
「ロボ・・・」
その大きな背中に頭をそっと付けると、ロボの体温と鼓動が伝わってきた
「ごめんね、ロボ・・・困らせてごめん・・・今日は帰るから」
・・・大好き・・・大好きだよ、ロボ
足早に歩くロボに置いていかれそうになりながらも、なんとか付いて歩く
ロボはさっきからずっと黙ってる
気まずいなぁ・・・なんだか怒ってるみたい・・・
話しかけようとするけど、何をしゃべっていいかわからない
空気を変えようと明るく言ってみた
「ロボ・・・ロボとずっと一緒にいられたら、退屈しなくて毎日楽しいだろうね」
「・・・」
「ロボはきっといい旦那さん、いいお父さんになると思うよ」
ロボが急に立ち止まったので、背中にぶつかってしまった
「そうかなぁ〜。でも、俺にはまだまだ先の話だな・・・」
え・・・
やっぱり私は対象外ってことなのかな・・・私、何期待してたんだろ・・・
さっき「好きだ」って言われて、舞い上がってた自分がバカみたいに思えた
あぁ〜余計なこと言わなきゃ良かった・・・
「30過ぎるまでは結婚しない」
「そうなんだ・・・まだ3年あるね」
「う〜ん、長いよなぁ・・・」
「なんで“30”なの?」
「そん時、二コは何歳だよ?」
「え?」
「おれさ、いい加減な気持ちで“好きだ”って言ったわけじゃないからね」
「うん」
「友達の結婚式に出て感動したからとか、酔った勢いで言ってるわけじゃないから」
「うん」
「いつかちゃんと言わなきゃと思ってた」
「・・・うん」
「どうしたの、二コ?」
どうしよう・・・何も言えないじゃない・・・ロボ、ずるいよ
「泣くなよ〜。正直言うとさ、それまでにニコに振られてちゃうかもって、不安はあるんだよ・・・
二コは、俺にはもったいないくらい・・・」
「そんなことないよ。大丈夫、ちゃんと責任取りマ〜ックス!」
「・・・マ〜ックスって、それは俺のセリフでしょ!」
ロボがゆっくり歩き出す
私が並んで歩けるいつものスピードで・・・
そうこうしているうちに家が見えてきた
玄関の前で誰かがウロウロしている・・・お父さんだ
ロボが立ち止まり、私の顔を見て大きく「うん!」と頷いた
緊張してるのが伝わってくる・・・
ロボはお父さんの前まで駆けて行くと、直角に頭を下げた
「すみません! こんな遅くまで・・・けして、その、お嬢さんを、その、あの・・・
二コさんのこと、俺、真剣です! 大切にします! ですから、お付き合いさせてくださいっ!」
お父さんがロボの肩を掴んで顔を上げさせた
「二コは中に入っていなさい」
「でも・・・」
「入ってなさい!」
中に入る
ドアの隙間から外を見ると、今度はお父さんがロボに頭を下げていた
ロボが慌てて頭を上げさせようとするけど、お父さんはそのまま
「わがままで生意気で、口ばっかり一人前な娘だが、
私にはかわいくて仕方の無い、大事な大事な娘だ・・・
須藤君といったな・・・初めて会ったときから、なんかこう・・・こうなるような予感がしてたんだ。
私達がいるのに、アイツ、君のそばから離れなかった・・・親ってつまらないもんだよな」
顔を上げたお父さんがロボの両手をガッシリと握った
「アイツはまだ高校生だ。本来なら君を一発殴ってやりたいくらいだが・・・
大切にな・・・泣かせるようなことしたら、許さんからな!」
・・・お父さん!
外へ飛び出そうとした瞬間、お母さんに止められた
「今日ね、お父さん、二コが出て行ってから、あんたのアルバムずっと見てたのよ。
いつかこんな日が来るって分かってたけど、やっぱり寂しかったのね・・・。
お父さん、ニコが須藤さんと会ってること、随分前から知ってたの。
でも、昨日たまたま二人が一緒に歩いてるとこ見ちゃって・・・やきもち焼いちゃったのよ。
ニコがね、今まで自分に見せたこと無い顔をしてたって・・・」
そうだったんだ・・・
「けどお父さん、なんだかんだ言って、須藤さんのこと好きなのよ。
今夜だって、私は『二コは帰ってこない』って言ったのに、お父さんは彼のこと信じてたもの」
「お父さん・・・」
いろんな感情が一気にこみ上げて来て、お母さんの胸で声を上げて泣いた
まるで幼い子供みたいに
「二コ、須藤君が帰るって」
お父さんが外から呼んだ
私の肩を優しく叩くと、お父さんは中に入っていった
ロボが泣いた後みたいに真っ赤な目をして立っていた
「二コ、俺、お父さんと約束したから」
うん、と頷くとロボに頭をクシャクシャっとなでられた
たくさんの愛に守られてるんだね、私・・・
「お袋〜、親父、まだトイレから出てこないよ・・・」
「困ったものね・・・まったく」
「お父さん、もう彼が来ちゃうでしょ! 早く出てきてよ!」
今日、長女の幸子の恋人が、
いわゆる「お嬢さんを僕にください!」というのを言いに来る・・・
朝からロボが壊れそうで、長男のマックスも呆れている
---ピンポ〜ン
あ、来た!
ロボが悲愴な顔をしてトイレから出てきた
マックスと二人、客間の戸の隙間から中を覗く
ロボの足が震えてる気がして冷や冷やする
「あの、お父さん・・・」
「き、君にお父さんと呼ばれる筋合いはなぁ〜〜〜いっ!!!」
あ〜何言ってんの・・・
「って、一度言ってみたかったんだよね・・・頼んだよ、幸子のこと。
大切にしてやってくれ。泣かせるようなことしたら、許さないぞっ!」
ロボが泣いているんだか笑っているのか分からない顔で言うと、深々と頭を下げた
その夜、泣いているロボの背中にもたれて言った
「彼、どことなくあなたに似てたわね・・・」
少し猫背になってきたロボの背中が温かくて心地いい
「さっき、幸子に“ありがとう”って言われたよ。お父さんの娘で幸せだって・・・」
「そう・・・」
そういえばロボの元へ嫁ぐ前夜、
私もお父さんの背中に向って「ありがとう」って言ったなぁ・・・
もっとたくさん感謝の気持ちを伝えたかったけど、言葉が出てこなかった
お父さん、泣いてたっけ
「アイツとなら、お前、一生笑っていられるな。幸せになりなさい」って言って泣いてた
ロボに惹かれたは、お父さんとどこか似てたからかもしれないな・・・
「ねぇ・・・」
「ん?」
「ロボ!」
「・・・久しぶりに俺のこと、“ロボ”って呼んだな」
「ありがとう・・・」
「うん、二コも・・・ありがとうな」
ロボが向きを変え、私の肩を抱き寄せた
“幸せになりなさい”・・・お父さん言ってたとおり、私、すごく幸せだよ
おしまい
電車内で泣いちまったじゃねぇか!
GJ!
GJ!こういう話大好きだ
7話のニコパパとロボのやり取りは近い将来ニコを挟んで行われるんだろうなと思いながら見てた
この2人絶対気が合うよね
いい、とっても良い!
ニコとロボ、最高!
ほんわか、ほっこり、幸せな気持ちになりました。
エロ無し
-------------------------
「グッバイ マイ フレンド」
「じゃあな〜」
いつものようにニコとたわい話をして携帯を切ると、目の前に懐かしい顔が現れた。
「あ〜、よっちゃん!」
「よっ!」
「いつ戻ったの? あ・・・またヘンな依頼しにきたんじゃ・・・俺、忙しいんで・・・」
「おい、待てよ! 久しぶりに会ったってぇのに、冷て〜なぁ〜」
仕事の話ではなさそうなので、一緒にラーメンを食べることに。
「二コ、しばらく見ない間に綺麗になったなぁ」
「え? よっちゃん、ニコに会ったの? いつ?」
「3日前・・・そっか、やっぱりお前にはアノ話、してないんだな・・・」
「アノ話って?」
「ん〜実はな、今日はそのことで来たんだ。頼みがあって・・・」
「えっ!やっぱり仕事の依頼なんだ〜! ダメ、ダメ! 俺も二コも今は平穏な毎日を
のんびり、まったり過ごしてるんだから、かき回すような事しないでよ〜」
「まぁそうだな・・・。だけど、今度ばかりは・・・」
ラーメンのどんぶりを横へどけると、
突然よっちゃんがテーブルに額を貼り付けるように頭を下げた。
「頼む! この通り! ニコを・・・」
アパートに着くと、部屋の灯りが点いている。
二コ、来てるんだ・・・
どうしよう・・・
さっき、よっちゃんに頼まれたことが頭の中でグルグルしている。
ニコを・・・
地蔵堂の社長は今ロンドンにいて、向こうで仕事を始めたらしい。
「社長が俺にニコを連れて来いって言うんだよ。留学させたいんだとよ」
留学!? 二コは高校に入ったばかりだぞ
「一応3年間の予定で、費用は社長が全額出すし、日本で平凡な高校生活を送るよりも
後々ニコのためにもなるだろ。ニコの両親も賛成してくれたよ。
ま、語学留学ってことにしてあるけど、社長の本心はさ、ニコの才能を伸ばして、
将来、世界を股にかけるスパイに育てたいんだよ・・・。
まあこれは二コたちには言ってないから内緒だぞ」
「やっぱり・・・そんなことだと思ったよ。で、二コはなんて?」
「『行きたくない』って、即答だったよ」
ホッとした・・・
「だったら諦めれば!」
「でもさ、お前だって二コの才能埋もれさせるの、もったいないと思うだろ?
あいつなら、きっと一流のスパイになって・・・
まあ、最終的にそっちの世界に進むかどうかは二コ次第だ。
社長もそれは無理強いしないつもりらしいから、そんなに難しく考えなくていいんだよ。
半分遊びのつもりで、思いっきり青春を謳歌すればいいんだからさ」
「どうだか・・・それより、危険だろ! 『行け』とはとても言えないよ」
「大丈夫!それは任せろ。日本でお前といるよりよっぽど安全だ!」
「それ、どういうことだよ」
「あ、いや・・・。それにしても、なんで断るかねぇ〜。
悪い話じゃあないと思うけどな・・・なんでかねぇ〜」
なんでかね〜って、俺に言われても・・・
「お前たち・・・もしかして、デキてんの?」
「ブッ!」飲みかけていた水を吹き出してしまった。
「何言ってんの! そんなわけないだろー! ニコ、いくつだと思ってんだよ。
二コとはしばらく会ってなくて・・・中学の卒業式の後、
会いに来てくれたのをきっかけに また会うようにはなったけど・・・前と変わらず大切な友達だよ。
そりゃぁ〜最近綺麗になってきたなぁーとは思うけど・・・何? 何笑ってんの?」
「あ、いや・・・じゃ〜その“大切な友達”のためにもさ、協力してくれよ〜」
確かに今の高校生活もそれなりに楽しいだろうけど、
ロンドンに行って、いろんな経験したほうが二コのためにはなるんだろうな・・・
でも・・・二コ、何で断ったんだろう。
前に一度、海外で生活してみたいって話してたことがあったのに・・・
ロンドンかぁ・・・俺には縁のない場所だなぁ。
3年後っていうと、二コいくつだ?
今よりももっと大人になって、綺麗になって・・・
あぁ〜なに想像してんだ、俺・・・
大きなため息が聞こえたのか、部屋の窓が開いてニコが顔を出した。
「ロボ〜! 何やってんの?」
階段を上る足が重い。どんな顔してニコと話せばいいんだ・・・
よっちゃんに何度も頭を下げられて、結局ニコを説得する約束をしたことを激しく後悔している。
「ただいマーックス」
「お帰り〜」
「・・・何?」
「ん〜、なんかいつもの元気がないなぁ〜って・・・」
「たぁだぁいぃ〜マ〜〜〜ックス!!!」
「はいはい・・・。ねぇ、見てこれ!」
「おっ! うまそぉ〜!」
ニコが魚の煮付けを作ってくれてた。感激して涙が出る・・・
「こんなことくらいで泣くなよ〜。この前家で作ってみた時はイマイチだったから
あんまり自信ないけど・・・。今度はロールキャベツ作ってみよっかな〜。
ロボ、好きだよね? 私も大好きなんだ〜」
「・・・」
「どうしたの? おなか減ってないの?」
「実はさ、さっきラーメン食べちゃって・・・よっちゃんと」
「え?」
「聞いたよ・・・なんで断るんだよ。こんなチャンス二度とないかもしれないんだぞ!」
「だって・・・」
「二コ、この前、海外で生活してみたいとか言ってなかったっけ?
あれどこだったかな・・・アメリカだったけ・・・」
「あれは行ってみたいって言っただけ。留学は全く別でしょ! 3年もだよ・・・そんなのイヤだよ」
「3年なんてアッという間でしょ。英語もマスターできるし、何事も経験だよ」
「なんでそんなこと言うの・・・留学っていってもあの社長のことだよ、
何か裏があるに決まってるじゃん!」
「でもさ、日本にいて退屈で平々凡々な生活するより、毎日刺激があって楽しいかもしれないぞ。
俺も金と暇があったら行きたいよ。いいよなぁ〜二コは〜」
「ロボは平気なの? 私がいなくても平気?」
「あのね、俺だって子供じゃないんだから・・・」
「バカっ!!!」
「へ? バ、バカ〜? バカとはなんだよ! こんな話、断る二コのほうがバカでしょ!」
「ロボ、なんにもわかってない・・・3年も離れたら・・・今度こそ、今度こそ・・・」
「ちょ・・・泣くことないだろ・・・二度と会えないって訳でもないのに、大げさだな〜」
「そういうこと言ってるんじゃないの! ・・・不安なんだもん。
ロボ、きっと・・・私の知らない誰かに出会って、その人こと好きになって・・・」
「は? 何言ってんの?」
「卒業式の日、ロボに会いに行くの、けっこう勇気がいったんだよ」
そんな風には見えなかったけど・・・
「ロボが変わってなくて嬉しかった・・・だからもう二度と離れないって決めたのに。
でも、ロボは違うんだね・・・会えなくなっても平気なんだ」
「・・・俺たち、友達だろ? メールだってできるし、それに・・・」
「そっか、友達か・・・」
「二コ?」
「ロボのバカ! 大バカ! もういいよ・・・もういい
私、行くから。向こうで思いっきり楽しんで、ロボのことなんて忘れてやる!」
泣きながら出て行ったニコを追いかけようとして、結局やめてしまった。
友達なんかじゃない・・・ようやく気づいた。
いや、今まで気づかない振りをしてただけなのかもしれない。
でも・・・
これでいいんだ
ニコを傷つけたことは辛かったけれど、これでよかったんだと自分に言い聞かせた。
テーブルの上の魚に箸をつける。
これを作りながら俺の帰りを待ってたと思うと、胸が締め付けられるように痛んだ。
「うまい・・・こんなのいつから作れるようになったんだよ・・・うまいよ・・・うま・・・」
泣きたいのに涙が出てこない・・・
ニコの泣き顔が頭から離れなくて苦しかった。
数日後、よっちゃんから連絡がきた。
ニコが留学する決心をして、準備を始めたと・・・
あれ以来、ニコとは話していない。
もうそろそろ日本を発つ頃だ・・・
会いたいけれど、どんな言葉をかけていいかわからない。
結局メールすらできなかった。
あんなに気安くたわいない話をしていたのが遠い昔のようだ。
ニコがどんどん遠い存在になっていく。
また会える・・・本当にそうだろうか?
もしかしたら、二コはもうここへは戻ってこないかもしれない。
向こうへ行けば、すぐに新しい出会いがあって、恋をして・・・俺のことなんて忘れるだろう。
今になって涙が出てきた・・・
今更遅い・・・なんてバカなんだろう、俺
ここのところ夜、眠れない日が続いていたけれど、昨夜は仕事で疲れてたこともあり、
部屋に帰るとそのまま崩れるようにベットに転がって眠ってしまった。
夜が明けたようだ。何時だろう・・・起きたくても体がだるい・・・
しばらくするとドアが開く音がして、誰かが部屋に入ってきた。
・・・二コだ!
ベットの横に膝をつくとニコが俺を呼んだ。
「ロボ、眠ってるの? ロボ・・・ねぇ・・・」
どうしよう・・・ニコと普通に会話できる自信がなくて、寝たふりを続けてしまった。
「ロボ・・・。今日はちゃんと話をしたくて来たのに・・・。
明日なんだよ・・・私、明日発つから。
ホントはね、ロボに止めて欲しかったの。『行くな』って言って欲しかった。
ロボは私のこと・・・好きじゃないの? 少しもそういう気持ちないの?
私は・・・ずっと前からロボのことが好きなのに・・・苦しいよ・・・ロボ」
「・・・」
「起きてるんでしょ? 何か言って・・・」
ニコの声が震えいる。今すぐ飛び起きて、ニコを引き止めたい。
でも、それじゃあニコのせっかくの決心が・・・
ニコの指が俺の髪を優しく撫でた。
「・・・さようなら」
ニコの吐息が近づいてきて・・・キスされた。
触れただけのキスだけど、ニコの柔らかな唇が涙でぬれていたのがわかった。
目を開けるとニコが無理に笑顔を作って見せた。
「やっと起きたか」
「・・・ごめん」
「なんか切ないなぁ〜。ロボからされたかったのに・・・ファースト・キスだったんだよ」
二コは涙を拭うと、もう一度悲しい笑顔を見せた。
「無理に笑うなよ・・・」
「泣いてる顔じゃあ寂しいもん・・・ロボには笑ってる私を覚えててほしいの・・・」
「二コ・・・」
「じゃあ行くね・・・さよなら、ロボ」
-----3年後-------
「卒業おめでとう!」
「ありがとう!」
昨日はニコの高校の卒業式だった。
・・・そう、二コは日本の高校を卒業したのだ。
昨日は両親に祝ってもらい、今日は俺と二人で卒業祝いをすることに。
迎えに行って助手席にニコを乗せると、まずチュ〜の挨拶。
「もぉ〜」
「今日は俺が腕を振るったからね〜」
「ロボの作る料理は何でも美味しいもん! 楽しみだぁ〜。
そうそう、昨日、お父さんがね、『あいつも呼べばよかったのに』って言うから
『ロボは仕事で遅くなるし、明日二人でお祝いするから』って言ったら、
急に不機嫌になっちゃってさ〜。おかしかったぁ〜」
「そりゃあ〜大事な娘をかっさらっていく奴だからさ〜、面白くないよー」
「でも、近いうちに連れて来いって言ってたよ。
ま〜たコレクションが増えたからさ、ロボに見せたいんじゃない?」
「よぉ〜し、とことん付き合いますよ〜。ん?どうしたの?」
「ロボ、うちに来るとお父さんとばっかり話してて相手してくれないんだもん。
つまんないよ・・・」
「それって嫉妬ですか〜?」
ニコを引き止めた日、二人でニコの両親に会った。
俺はただひたすら頭を下げた。それしかできなかった。
お父さんには殴られる覚悟もしてたけど・・・なぜだか感謝されてしまった。
どうやらお父さんも、ニコを行かせるのが寂しかったらしい・・・
途中、地蔵堂に寄った。
社長が日本に戻り、よっちゃんと二人でまた本格的に仕事を始めたのだ。
地蔵堂再開のお祝いと、ニコが留学をドタキャンしたことで迷惑をかけたお詫びを兼ねて
菓子折りを持って、恐る恐る訪ねると・・・
社長とよっちゃんがニコの卒業と大学進学を兼ねたお祝いを用意して待っていた。
「二コも4月から女子大生か〜。いいよねぇ〜。それにしてももったいねぇよなぁ〜。
婚約なんてやめて、大学でもっといい男、見つけりゃあいいのに・・・」
「ホントよね〜・・・もったいないったら・・・。
だいたいあの時ロンドンに来てたら、今頃二コは・・・」
よっちゃんが「ま〜た社長のお小言が始まった。今のうちに帰れ」と目配せしてくれた。
「じゃあ、これ頂いていきます。ありがとうございましたぁ〜」
逃げるように地蔵堂を後にする。
車の中で社長からもらった包みをニコが開けてみる。
「腕時計だよ! ロボの分もある・・・かっこいいけど、変わったデザインだね」
アパートに着くとニコを座らせ、食事の準備を始める。
「手伝おうか?」
「ダ〜メ! 今日は二コは座ってて!」
「わぁ〜、ロールキャベツ! さすがロボだね!」
「二コのほうが上手いだろ。栄養のバランスもちゃんと考えてるし、さすがだよ」
「これから大学で本格的に勉強するからね。まっかせなさ〜い!」
料理を頬張るニコを見ているだけで胸が一杯になる。俺、なんて幸せなんだろ。
ニコが手を止めた。
「どうした? お代わり?」
「ううん・・・ロボ、ありがとう。私、こんなに幸せでいいのかな・・・」
「嬉しいこと言ってくれるなぁ〜。泣けちゃうだろ!」
「私、後悔してないよ。平凡な高校生活だったかもしれないけど、
自分の選択は間違ってなかったって、胸を張って言えるよ」
俺は・・・
ニコを引き止めたことが正しい決断だったかどうか・・・正直、今でもわからない。
でも、今目の前で笑っているニコを見てると、
自然に溢れて出てくる笑顔に、その答えがあるような気がしてくる。
「よく考えたらさ、ロボと一緒に過ごしてきた月日って、
いろんな事ありすぎて、全然“平凡”じゃなかったよね?」
「まあな〜」
「これから先もそうなのかな」
「どうかなぁ〜。たまにはスリルがあるってのもいいかもな。
やっぱりさ、適度な刺激って大切だろ? ・・・ん?」
ピーピピ、ピーーー
社長からもらった箱の中で音がしている。
腕時計からだ! 嫌なな予感が・・・
取り出してよく見てみると、なにやら怪しいボタンのようなものがいくつか付いている。
箱の底に封筒が入っているに気づき、ニコと二人、恐る恐る開封する。
「ロボ、これって・・・」
結局その後、俺たちはめでたく円満な家庭を築くのだが・・・
もうひとつの顔「セクシーボイス アンド ロボ」として
スリルとサスペンスに満ちた経験を何度もすることになるのである。
「ロボ、出動だよ!」
おしまい
リアルタイムGJ!
本編では流れ星の如く去っていった社長達だけど、またニコロボの元へ降ってくればいいのにな〜。
平凡な中にもひと波乱ありそうな二人に幸あれ。
GJ!!!
「勝手にニコの留学を決めてるマキマキ」とか
「家に来るとお父さんとばかり話しているロボ」とか
「怒られると思ったのに娘を引き留めて喜んでるニコパパ」とかが
本編のキャラそのままで、映像が目に浮かびました。
254 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/05(水) 22:18:34 ID:nGDIXpj+
ニコかわいいよニコ
255 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/06(木) 00:14:45 ID:PPqqNhFL
age
ほしゅ
257 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 01:03:27 ID:OyVNgx/z
下がりすぎあげ
258 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/22(土) 21:01:40 ID:dL3TqtZ1
同じくage
259 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 10:45:50 ID:rqyeSxY7
ほしゅ
もう終焉らしいな
261 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 02:44:57 ID:lEdaTEk6
まだまだぁ〜
262 :
保守エロ皆無:2009/09/08(火) 12:52:46 ID:nOzpi4qK
目玉焼きの目玉がうまく真ん中になった。
牛乳ビンの蓋がキレイに取れた。
欲しかったワンピースが3割引になっていた。
信号がずっと青だった。
ホットケーキがキレイに焼けた。
「ママ」と初めて言ってくれたこと。
これが、今日の幸せ。
夕焼けに染まり始めた部屋に灯りを灯す。
美味しそうな匂いが漂う頃、るんるんと浮かれた足音が聞こえる。
そしてこの瞬間は
「ただいま、ニコ、幸子」
毎日の幸せ。
おかえりロボ。
今日は大好きなカレーだよ。
その言葉に嬉しいって笑ってくれるのが、きっとこれからもあたしの――。
「おわり」
GJ
短い中にセクロボらしさが凝縮されていると思います
そっかー、それがニコの…、幸せか(10話より)
GJ
エロなし
タイトル「南のホテルの一室で」
「はぁ〜、気持ちいい!」
ニコはノビをしながら大きいソファーに座った。
「それにしても社長とよっちゃんは何処にいるんだろう。
突然手紙寄越してここに来いなんって。
ま、こんな素敵な部屋を予約してくれたからいいか。」
ニコはソファに横になりながら部屋に置いてあったガイドブックを読み始めた。
すると携帯の着信が鳴った。
「あ、ロボからだ。今着いたのかな。懐かしいなぁ。」
ロボと会うのは2年ぶりだった。
ニコは嬉しそうにロボからのメールを読んだ。
『部屋にシャンプーついてる?』
「はぁ〜?これだけ?」
ニコは呆れながらロボに返信した。
『私はホテルの従業員じゃないのでホテルのことはフロントにお尋ねください。』
新たな二人の冒険はこれから始まる。
おしまい
>>265 なんだよ、ニヤニヤするじゃねーか、GJ!
>>
オシャレだなお前
共演記念保守
「ニコ、帰ろ!」
「あ、ごめんむーちゃん。あたし雨降りそうだから急いで帰んなきゃ、ごめんね」
「えぇ?傘なら持ってるじゃない」
「そうなんだけど……今日シーツ干して来ちゃったんだって。あと、ついでにご飯作っといてあげないと、
何か給料日前でろくな物食べてないみたいだし」
「……ニコって」
「え?」
* * その夜 * *
「あ〜お日様の匂いがするぅ♪ニコ〜取り込んでくれて、ベッドメークまでありがと〜」
「うん、何とか間に合ったからね。ところで味どう?」
「うん、美味しいよ〜。やっぱりニコのカレーは最高だっ!かたじけないでありマックス!!」
「そんな大げさな……」
「いやいや、本当だよ。(ボソッ)……ニコはいいお嫁さんになれる……んじゃないかな、うん」
「え……」
『ニコって世話女房だったのね』
あの時のむーちゃんの一言は、更に数年後確実なものとなるのです。
「おしまい」
やーい、世話女房、世話女房!
(/∀\)
271 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 17:42:37 ID:+HU5V6uL
age
272 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 23:20:49 ID:h1Eq8+zV
カムイ外伝 月日貝のシーン良かったよって保守
林家と須藤家における夫婦のお話。少ないけどエロ有り。
* * * * * * *
「よっちゃあん……」
海外で優雅な隠居生活を営む真境名から引き継ぎ、新装開店した地蔵堂。
その店の入り口に女の子が立っている。
「あれぇ。さっちゃんじゃない。どうしたの?」
「あ、あのね、よっちゃ……うぇっ、うぇ……ふぇぇぇん!」
「あああ、泣かないで!よしよし、お菓子あげるからこっちにお座り。(ボソッ)……ったく、ニコのやつは
何してやがんだ」
「あのねぇ、ママはきょうからおじいちゃんちにすむからって……だからさっちゃん、にげてきちゃった」
「え!?あ、ああそうなんだ(やばっ、聞こえてやんの……さすがニコの娘)はい、ジュースだぞー」
「ありがとー。ねえ、どうしたらなかなおりできるのかなぁ?パパとママがなかよくしないとあかちゃん
こないんだって。さちこ、おとうとがほしいんだぁ」
「そうなの!?(仲良くか……確かに)うーん。そうだなぁ、ようし、耳貸してごらん」
中年男と可憐な幼女が何やら密談を交わしていると、息を切らして駆け込んで来る者があった。
「……もう、やっぱりいた!こら幸子、勝手に居なくなっちゃ危ないでしょ!?」
「おお、ニコか。お前こそ何してんだよ。あんまり叱っちゃ可哀想だろうが!なーさっちゃん」
「よっちゃんは黙ってて!今日という今日は絶対許せないんだから!!なによロボのやつ……」
「またかよ」
やれやれ、と首を竦めて『ニコ』と呼ばれた『さっちゃん』の若いママを宥め席を勧める。
* * *
「よっちゃん!ニコ達来なかった!?」
親子連れが去って暫くの時間が経った後の事だった。店内にいた客は、その形相におののいて慌てて逃げた。
「あっ、ちょっとお客さ……おいロボてめぇ!」
「うあぁぁぁ〜だってだってさぁ、聞いてよよっちゃん」
「知ってるよ。嫁と娘に逃げられたんだろ?」
「逃げ……知ってんなら止めてよ!友達でしょお!?」
「知るか。夫婦喧嘩に付き合う程暇じゃねえよばか……いらっしゃいませー」
とぼとぼとヨレヨレになったスーツで立ち去る男の後ろ姿に
「しゃあねぇ奴らだなあ……あーあ、あんなにやつれて」
髭を撫でつつため息をつくのだった。
* * *
「幸子、勝手に電話おもちゃにしちゃだめ!」
「もう二湖。さっちゃんに当たる事ないじゃない……いいのよ、こっちいらっしゃい」
子機を手にした状態で固まったまま涙を浮かべている孫娘を抱き寄せながら、目の前で苛々ともやしの
ヒゲ取りをする娘を母の雪江が宥めている。
「だってぇ……悪いのはロボだもん。会社の人に勝手にお金貸しちゃってさ。あたしに何の相談も無しだよ!?」
「けどあれだろ?その相手って、銀行で下ろした給料みんな落としたって……」
「だからってうちの分勝手に渡さなくていいじゃん!全部だよ?全部!!……もうお父さんは黙っててよ!!」
八つ当たりされた父竹男はしょんぼりと隣室へ逃げる。
「……っとに、ロボなんかに頼まないで自分で銀行行けば良かったなー。今月どうしろってのよ」
「何とかなるわよ、そんなの」
幸子を膝から下ろした雪江は、ニコの手元のもやしをつまんで同じくヒゲ取りを始めながら言った。
「何とかって……」
「ご飯はうちに来てもいいし、まぁ他の生活費も……あんた達のひと月ぶん位ならどうにかなるから。
またゆっくり返してちょうだい」
「いや、そういう問題じゃないから。うちだってキツキツなのにさー、それも勝手にって……バカにも
程があるよ」
「でもその人困ってたんでしょう?」
はた、と手を止めて雪江を見る。弛んだ手からもやしがザルの外に落ちた。
「そういう人を黙って見とく事が出来ないんでしょうあの人は。そんな人が、二湖は好きになったんでしょう?」
無言のまま俯いて、人の好いあの崩れた笑顔を思い出す。
自分が呼べば応えてくれた。
臆病者のくせして、危険な時でも助けに来ててくれた。
何よりも自分を――自分達を愛してくれる。そう、お金よりも大切に。
普通の人なら綺麗事にしか聞こえないそんな言葉が、信じる事が簡単にできる。
そう、ロボの言う事ならば。
「お母さん」
「なあに?」
「昔、お父さんが内緒で50万人に貸しちゃった事あったじゃない?おまけに借金まで……。なのに、
それ許せた?ずーっと一生これからも信じて一緒にいられるって思えた?」
「いるじゃない一緒に」
「まあ、そうなんだけど……」
「……そりゃあねえ、腹が立ったし離婚だって考えはしたわよ?けど、それがお父さんのいい所だし。
人に優しく出来ない人は、自分にも優しく出来ないと思うのよ。だから甘いと言えば甘いんだけど、
強いと言えば強いのよねぇ」
「……」
ニコはちらりと襖の陰から覗く竹男の肩と幸子の体に目をやり、また雪江に戻す。
「お母さん、お父さんが信じるなら一緒に信じてみようかなって。別々の方向いて歩いたってつまんない
じゃない?どうせなら一緒に歩きたい。だってせっかく夫婦になったんだもん」
ニコの落としたもやしをひょいと拾ってザルに戻しながら、照れ臭そうに笑う。そんな雪江の姿に
思わず強張っていた頬も弛んだ。
「お母さんって、お父さんが好きなんだ?」
「まっ……やあね!もうっ。親をからかうんじゃないわよ」
恥ずかしそうに手をばたばたしながら笑う母を、ニコは少し羨ましく思う。
「……帰ろかな」
椅子を引き立ち上がった、が
「さっちゃん、子機持ったまま寝ちゃったぞ?」
「えぇ!?困ったなぁー」
と眉をひそめた。
「いいよ、置いてけ。明日にでも迎えに来なさい。……二人でな」
「お父さん……」
「たまには夫婦水入らずもいいもんだぞ?……おっと、トイレトイレ」
パタパタと部屋を出て行く背中を見送りながら、雪江とニコは顔を見合わせて笑う。
「もうお父さんたら。さ、あんたは帰りなさい。もし泣いたら連絡するから」
「……うん、ありがと」
玄関の扉が閉まり、雪江が幸子に毛布を掛け、夕飯の支度をしに流しに立つ。
――襖の向こうにある小さな丸い背中がぴくりと動いた。
* * *
「はあぁ〜……ダメだ、帰って来ないか。やっぱり迎えに行くしかないかなぁ。でも許してくれない
だろうな〜。なあマックス、お前ならどうする?」
『そんな事言われても』という顔に見えたかどうかは定かではないが、青い体を手の中に見下ろしながら、
物言わぬ仲間に救いを求める。と、大音量で鳴り響いた携帯を物凄い速さで掴んだ。
「も……もしもしっ!ニコっ?」
『あの……ロボ、あたしが悪かったわ。言い過ぎちゃってごめんなさい』
「……いいよ。黙って勝手な事した俺が悪いんだ。ごめんね」
『今から帰るわ』
「じゃあ迎えに……もしもし?あれっ」
ロボが話し終える前に電話は切れてしまった。
「えっと、あ、とにかく行かなきゃ」
慌てて出ようとして自分の格好に気が付き、ステテコパジャマの上からせっせとシャツとズボンを
身に着けようとしていると、玄関のドアががちゃりと開いた。
「ただいま……何してんの」
「あ、お、おかえり。えっと、あ、もういいやこれ」
でぇい!と服を脱ぎ捨て、再びステテコパジャマでニコに駆け寄り抱きしめる。
「ニコぉ〜!」
「あ、あのね、さっきそこでロボの会社の人に会ってこれ預かったの。うちに帰ったら鞄の底からお金の
封筒出て来たんだって。だからこれ返しに来てくれたみたい」
今月分の給料の入った封筒をニコから受け取ると、中身を確認し、再び抱きしめる。
「ロボが助けてあげた事、本当に喜んでた。……ごめんね、きつい事言って。あたし、ロボのそういう
所好きになったはずだったのに。ちゃんと話し聞いてあげたら良かった。家族なのに……」
「……ううん、こんな大事な事ニコに何の相談もしなかった俺も悪いんだよ。それこそ家族なのに……。
一家の主の自覚が足りなかったよ。よっちゃんにも怒られちゃった。ごめんね」
二人して何度もごめんなさいを繰り返したあと、目を合わせてぷっと吹き出した。
そのままどちらからともなく目を閉じると、静かにキスを交わした。
ぐうぅ〜〜〜〜。
「……」
「……」
「ロボ、お腹空いてるの?」
「あ、うん……そういえば何にも食べてなかった」
ニコは仕方ないなぁと言った様子で苦笑いすると、
「わかった。何か軽く作るね。あたしもお腹空いちゃった」
とキッチンに立った。
「幸子は?」
「寝てたから置いてきた。泊めろって言うし」
「そうかぁ……じゃ、二人きりだ?」
二ヤァ〜っと鼻の下を伸ばすとニコを背後から抱きしめた。
「えっ!?ちょっとロボ危ないっ!!」
「せっかく二人きりなんだよ?久しぶりなんだよ?というわけでお願いするであります、奥さん」
言うが早いか一気にスカートを捲り上げて下着を引っ張る。
「ちょ!やだ、だめだよこんな所……あっ」
「だって普段はこんな事デキないよ?ね、お願いニコ」
片手で抱きしめるように服の上から胸を掴み、下着を太ももまで引き下げられたお尻をもう一方の
手が長い指を巧みに動かしながら滑る。
「いいでしょ?ニコ」
「やぁ……ん」
「愛してる」
困った顔で振り向くと、にっこりと優しい顔で微笑む。
ああ、ずるい。こんな屈託無い笑顔を見せられたら怒るに怒れない。しかもロボはそれを計算ではなく
天然でやってのけるから始末が悪い、とニコはいつも思う。
「ご飯出来ないよ?」
「先にニコを……」
「もうっ……ぁ……ん」
引っ張り出したブラウスの裾から入り込んだ手が胸を弄り、思わず言葉を詰まらせる。
ん、と小さいため息を吐いて身を縮めるが、曲げようとした膝の間に後ろからロボの長い脚が支える
ように割り込んで、太ももを伝った指がその行き止まりまで這って探り出す。
「んあぁぁっ!」
「あ〜……何か濡れてるねぇ」
「……や……」
すくめた首筋に唇をあててちゅうと吸い付くと、肩をぶるっと震わせて呻く。それを目を細めて感じ
ながら、かき回して濡れた指で両脚の間を渡る裂け目の先にある蕾をついついと転がしては、子猫の
ようなか細いニコの泣き声にも似た吐息を堪能した。
「あ……っ、やぁ、ロボ、お願、ベッドいこ?ここじゃだめぇ……あぁんっ」
「ん……でもせっかくだからさ、それは後にしない?……ね?」
そう言うと、着ていたステテコパジャマをマックスのスピードで脱ぎ散らし、ニコの下着を足首まで
一気に落として片方を引き抜いた。
「え……うぁ!?」
「ごめんね。もう我慢できない」
ボタンを外してひん剥かれたブラウスから肩に口づけられ、のけぞって震える。その隙に背後から
支えられた細い腰を引き寄せ、ロボのモノがニコの中にのめり込んだ。
「ひぃ……ん……あぁぁっ」
「は……ニコ……すご……イイ」
「ああ、あ、あ、んん」
シンクに必死に掴まって躰を支える指先は、力が流れ込み爪がじわじわ白く濁る。そのそばに片手を
かけて同じく自らの躰を支えようと、ニコの背中に裸の胸を押し当てながら一方の腕をその腰に廻すと、
ロボは弾みをつけて腰を前後に揺らし始めた。
「く……う……ぁ」
後ろからずん、と突かれる度に喉から苦しげな声を交えた息が漏れ、押し上げられるような衝撃に
爪先立ちになった脚が震え、前のめりに躰をシンクに預けてそれに堪える。
「ロボ……ん……だめ、や、壊れちゃうっ……!」
「あ……ニコ……そんな事言われたらもう、んっ」
ロボは両腕でニコの躰ごと支えるように腰を抱くと、ゆっくりと深く中を掻き回した。
「あ〜……まだイキたくないなぁ……でも……ダメだ……ねぇ?」
「ん……?」
「後でもう一回……していい?ちゃんとベッド行く、から……」
ぐいぐいと押し当て肌が密着し、より深く結合する。
「……っ!いいよ……だから、お願い、はや、早く、イかせ……あっ、ああんっ」
がくがくと髪を振り乱しながら躰を小刻みに揺らし、目の前が白くなる――そうニコが感じた時、
ロボの呻きと共に彼の動きも静かにゆるやかに流れた。
「あ……」
どろりと躰の奥から温かな液が流れ出す。
「……ごめん。そのままシちゃった」
「え……あっ!?」
ニコの慌てた声にさっと体を離して手を伸ばし、ティッシュを渡す。
「んもうー!」
「だってすっごく……ヨかったから。それに」
「それに?何よ」
「もう少しだけ、幸せになりたいなあって、さ」
息を整えながらぺたんと床に座り込み、見上げたロボの顔は照れ臭そうに微笑む。
「ニコみたいな奥さんがいて、可愛い幸子がいて、今でも十分幸せなんだけど……何か欲が出ちゃってさ。
もう一つだけ……って」
「ロボ……そんなあたしなんか」
「ううん!今日だって大事な奥さんに一番に相談しないといけないのに勝手な事しちゃって、一家の
主の責任とか何も解ってなかった。なのにニコの方から折れてくれるなんて……」
「!?ちょっと待って、あたし知らない。謝って来たの、ロボの方じゃない!」
「えぇ!?いつ?」
「あたしが実家出てすぐだからえっと……」
「え〜〜〜〜!?」
暫くの間どちらも『自分は電話などしていない』と主張したため、須藤家はまたもや争いが勃発する事となった。
「もういいや。らちがあかない」
「そうだね〜。とりあえずシャワー浴びようか。ニコ、行こう」
「うん……って、えっ!?」
「綺麗に洗ってあげるから。……ま、その後また汚しちゃうけど♪」
「え……うそぉ」
ニヤニヤと腰に手を当てニコを舐め回すように眺めると、ひょいとその体を抱き上げバスルームへ向かう。
「ちょっ、や、嘘でしょロボ、ね?」
「なんで?せっかく二人きりなんだから。……今日は眠れないかもなぁ……」
「そんなぁ……スケベ、へ、変態、バカ、オタクっ!!」
暴れるニコに悲しげな目を向けて
「俺の事嫌い?」
と呟く。ちょっとうるうるしたその瞳に弱いニコは、仕方ないと諦めてため息をつく。
「……す、好き、に決ま、ってん……」
「♪」
真っ赤なその頬にキスをして、ロボは最愛の奥さんとご機嫌でバスルームに向かった。
* * *
その頃、表の通りに人影がひとつ。
「やれやれ、世話の焼ける奴らだな。にしても」
髭を撫でながらニヤリと笑うとこう呟いた。
「カエルの子は、カエルだな」
* * * * * * *終わり
作者もサチコもGJ!
でもロボはともかくニコの携帯には非通知で掛けないとバレそう。
さっちゃんエライぞ。さすがニコの娘!
エロウマなお話GJです!
保守シマーックス!
283 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 00:38:30 ID:W8qwse2C
ほしゅってsageでいいの?
284 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 15:31:44 ID:dZvaNEXh
きっとまた逢えるさ ってことでほしゅ
285 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 12:31:56 ID:zb/Nnv0s
ほしゅしゅ 救えるのは宇宙で ニコ だけ!!
エロも萌えもありませんが一応ほのぼの系?のロボニコ。
××××××××××××
「天気よくてよかったねー、ロボ」
「うん、ほんとだなぁ」
朝から爽やかな晴れ間が広がる休日、
ニコと連れ立って久しぶりに郊外の公園へやってきた。
デートといえば俺の馴染みのショップめぐりか部屋に篭って
ダラダラ過ごすだけのワンパターンそのもの。
『別に嫌じゃないよ?ロボといると退屈しないし』
いつもそうやってニコは一点の曇りのない笑顔でそばにいてくれる。
けれど澄み切った空の下、たまにはこんな健全なデートもいいかもしれない。
「どうしたの、ロボ?ぼーっとして」
「え?いや、今日も一段と青空が鮮やかだよなぁと思って」
眩しくてたまらない。いつもなにげに見上げている空の青さが。
近頃特にそう感じるのはどういうわけなのだろう。
「そう?普段と変わらない綺麗な空だと思うけど、ロボにはどこか違って見えるの?」
俺につられるように不思議そうにニコも宙を仰ぐ。
うーん、俺の気のせいなのかなぁ……。
その謎は解けそうでなかなか解けないでいる。
「これ全部ニコが作ったの?すごいじゃん!」
公園の芝生でひと休みして少し早めのランチタイム。
「うん、そうだよ。この日のために頑張って早起きしたんだから」
と、センスよく彩られた料理をシートに上に手際よく並べていく。
「あ、この卵焼きは結構自信作なんだよ」
「ふーん。じゃあ、その自信作とやらをいただきましょうか」
なんの迷いまなくここぞとばかりに俺は大きな口を開けた。
「はい……って、なにそれ?あたしにどうしろと?」
ニコの醒めた声にも都合よく聞こえないふりをして知らん顔。
「子供じゃないんだから自分で食べなよ」
いつものように冷静に言い返すも、結局はしょうがないなぁと口の中へ運んでくれた。
満面の笑みで嬉しさをかみ締めて味わいながら
「ん〜、うまい!最高にうまいよ〜!さすがだなぁ、ニコ。
えーっとね、今度はウィンナーがいいなっ」
彼女を褒め称えた後はちゃっかりと次の催促に移ると更なる願望が口をつく。
「それでさぁ、食べ終わったら膝枕してほしいなー」
「はいはい、わかりました……って、え?ええぇ!?」
昔から一度彼女にやってもらいたかったんだよね〜膝枕!
「はあ…どうせヤダって言っても聞かないんでしょ?いいわよ、やってあげるわよッ」
「やったあ〜!」
呆れ顔のニコをよそに胃袋を満たしながら俺の頬が緩みっぱなしだったのは言うまでもない。
「はあ〜気持ちいいなぁ、ニコの太も……あっ」
げっ、しまった!
念願の膝枕に感激のあまりついつい本音が飛び出してしまい慌てふためく。
「今、なんて言った?」
「い、いえ何でもありませんっ」
「…ったく、とりあえず5分だけだからね!」
きっちりと念を押されてしまったわけだがこの場はおとなしく妥協しておかないと
後々のおねだりにも影響してくること必死なので素直に従うしかない。
木洩れ日の下で程よくそよぐ風が頬を撫でて通りぬけていく。
「風が気持ちいいね」
束の間の至福のひとときに浸る俺の耳にニコの優しい声が伝わってくる。
幾重にも続く公園の木々は半分ほどがすでに色褪せて散り落葉樹となっていて
秋の終わりを実感しながら、ふと眺めた頭上の真っ青な色がやけに目に沁みた。
やっぱり眩しい。気のせいなんかじゃなく確実に。
「ロボ?」
なぜ?どうして?
そう思いながら柔らかな感触の心地よさにしだい意識は薄らいでいき俺の瞼は重くなっていった。
「………う〜ん…ニコぉ?」
寝ぼけ眼の視界に今にも倒れこみそうなニコの姿が飛び込んできた。
何とか状況を把握すると半身を起こして交代しなきゃとそっと身体を支える。
過去の経験からして、ちょっとやそっとじゃビクともしない娘だけれど、
できるだけ静かにゆっくりと起こさないように。
「これでいいかな」
ふたりで横になるには少し狭すぎるシートの上で彼女がはみ出してしまわないように
しっかり抱えて腕枕をすると目に映る白く綺麗な肌。儚げな花のようなピンク色をした唇。
こんなに間近でじっくりと改めてニコの顔を見るのは始めてかも。
普段の生意気ぶりもそれはそれで可愛らしくもあるのだが、何より今、目の前で眠る少女は
子供のように無防備で穏やかでそのギャップも俺の心を惹きつけてやまない。
誰の目にも触れさせたくない。自分だけが見ていたい。
俺って実は物凄く独占欲の強い奴なのかもしれない。
彼女の存在そのものが今まで知りえなかった自分の本質を気付かせてくれて
ニコがもたらす明るさが周囲に彩りを与えて輝いているように思う。
決してそれまでの日常を否定するわけではないけれど心が浮き立つ。
……あれ?ああ、そっか。そういうことか。
「なーんだ。こんな単純なことだったんだ」
今更気付くなんてマヌケ以外の何者でもないな俺は。
自嘲気味な笑みを浮かべると風になびくニコの黒髪にそっとキスをして再び瞳を伏せた。
数時間後。
「もう、ふたりして一緒に寝入っちゃうなんて…どうして起こしてくれなかったのよ?」
「だってニコがぐっすり眠ってたから無理に起こしたらかわいそうだと思ったんだよ〜
俺の心優しい気遣いがわかんないのかなぁ」
「だからってさー」
隣で可愛い唇を尖らせるその仕種が可笑しくて可愛くて頬が緩むのを抑えられない。
「ん?なんで笑ってんの?あたしの顔に何かついてるの?」
「あーゴメン。いやぁ、ここのところずっと頭にあった疑問がついさっき解消してさ、
今、猛烈にすっきりしてるんだよねぇ俺」
「さっぱり意味がわからないんだけど?」
納得顔で頷く俺に首を傾げて眉をひそめる。
「一言で説明すると、ぜーんぶニコのせいだったんだなあって」
「はい?ますます理解不能。何がどうしてあたしのせいなのよー?」
こちらに鋭い視線を向けてあからさまに憮然とした様子。
「内緒。それよりずいぶん風が冷たくなってきたなぁ。
これは早めに家に戻ったほうがいいかも。風邪でもひいたら大変だし」
さらりと話をすり替え、返事も待たずにその小さな手を掴んで歩き出す。
「今夜はニコのために身体のあたたまる美味しいものを作ってあげるよ。だから早く帰ろう」
何がいい?とたたみ掛けて聞く俺に
「なんかうまくはぐらかされたような気がする…」
ニコはどこかまだ腑に落ちない感じで複雑そうにぽつりと漏らす。
「まあいいじゃん。あんまり考え込むとハゲるよ?」
「なっ!?その言葉そっくりそのままロボにお返しするわ。そっちのほうがハゲる確率高そうだよ」
「うわ、ひどっ!なんてことをッ」
情けない声をあげる俺を見てたちまちにやりと口元が動く。
ああ、やっぱりニコだ。このまま穏やかに物事が終わるはずもないわけで。
「もう冗談だってばー、何本気にしてんのよっ。ほら早く帰ろ。
リクエストに答えて何でも作ってくれるんでしょ?」
いたずらっぽく表情を変化させて反対に俺の手をひいていく。
ぎゅっと力を込めて。
重ねた掌の温もりから伝わる、今、自分は満たされて幸せだと思う感情。
こうして他愛もない会話を交わしながら歩く散歩道もどんなに憂鬱で気が滅入る続く日々も
ニコがいるだけですべての景色が鮮やかに輝いて見えて。
この空が青いのも君のせいなのだから。
終わり
GJ!
二、ニコの膝枕なんて羨ましくなんかないんだからねっ!!
悔しいですっ!
ニコが本当に言いそうな言い方だな。
面白かった!
GJ! きっと書いてくれると信じて保守してました。
楽しく読ませていただきました。
マックスパーンチっっ!!
携帯から保守。
規制はいつになったらとけるのかな。
294 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/16(水) 14:48:26 ID:dCdJ8VPt
ほしゅしゅ
295 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/22(火) 09:48:43 ID:T0NR3vVI
保守
296 :
名無しさん@ピンキー:2010/01/08(金) 13:34:48 ID:W3midRxQ
ほしゅしゅしゅ
ツンデレなニコリン大佐が好きです
ロボを見てると心洗われる。
本スレに規制で書き込めないのでこちらへ
小西真奈美主演の「のんちゃんのり弁」によっちゃんとごぼ蔵が。
そしてあと2週間でカムイDVD発売ですな。
セクロボとは別だけど関わる人が元気だと嬉しい。このスレも残っててさらに嬉しっす。
バレンタイン小ネタ。エロ無し。
××××××××××××××
2月14日。
ロボの部屋を訪れた休日の朝、物珍しそうにニコが言った。
「今日は早起きだねぇ、ロボ」
いつもこの時間はまだ夢の中なのにロボはすでにマックスロボのアニメが
流れるテレビの前に鎮座していたのだ。
「雪でも降るんじゃないの?」
「え〜心外だなぁ。早起きしちゃ悪いのかよぉ」
不服そうに口を尖らせながらもロボの意識は大好きなマックスロボより
ニコが提げてきた見慣れない紙袋の中身が気になってしかたがない。
今日は年に一度のバレンタインデー。
もしかしたらニコからチョコが貰えるかもしれない思うと目が冴えて眠れず一夜を明かしてしまった。
バカで単純な理由なのだが気になる娘からチョコが貰えるなんて、これほどの幸せはないのだから。
他愛もない世間話を談笑しながら、盗み見るとピンク色の中身がチラリとロボの視界に映る。
あれはまぎれもなくバレンタインチョコに違いない!もちろん自分宛だ!!
根拠のないオタクの期待と興奮はマックスフルパワーで脳内を駆け巡った。
「あ、そうだロボ。チョコ食べる?」
「へ!?ああ、うん(ついにキターー!?!)」
「じゃあ手だして」
はいっとニコの声が聞こえたのと同時にロボの掌に転がる二つの丸い物体。
「あの、これは……?」
「あれ、チョコボール嫌いだった?」
「……いや」
ロボは内心溜息混じりに微妙に引きつった笑いを見せながら、チョコボールを口に放り込むと
おもむろに立ち上がった。
「どこ行くのロボ?」
「トイレ」
「あっそ」
いつものこととはいえニコの少々愛想のない言葉じりにロボはあれこれ考えあぐねる。
あのニコの性格からすれば多分照れてくさくて切り出せないはず。
ここは自分がさりげなく時期的な話題として振ってやるべきだっ。
なんて気がきくんだ俺は!と、ロボは一人でほくそ笑み納得した表情で頷くのだった。
「あのさ〜ニコ…って、あれ?あれれ?」
意気揚々と戻るとニコの姿はそこになく
「どうしたのニコ?」
「あ、あのごめん、急用思い出したから帰るわ。じゃ!」
ニコはどことなくよそよそしい感じでロボの顔をまともに見ることもせず忙しなく玄関を飛び出していった。
「なんなんだよ一体…」
さっぱり訳がわからず拍子抜けしたロボはその場に立ちすくむ。
そういえばあの紙袋もニコと共に消えてしまっている。
…ということは
「はあ〜違ったのかぁ。絶対チョコレートだと思ったのに」
しだいに虚無感がロボを襲う。
そもそも勝手にあれはチョコだとそして自分にくれるものだと思い込んだのが間違いなのだが。
「ん?」
軽くへこみ気味のロボがふとマックスロボに眼を向けるとその足元にどこか
見覚えのあるものが置いてあった。
リボンがかけられ可愛いらしくラッピングされたピンク色の小さな包み。
ニコが持ってきたあの紙袋に入れられていたピンク色の正体だ。
よく見るとロボへと書かれたメッセージカードが一緒に添えられている。
「俺に…?」
ロボは胸の昂ぶりを覚えながら丁寧に開けていく。
「あ…チョコレートだ」
それもハート型の。貰ったらやっぱり変に期待してしまう。
ロボはメッセージカードを恐る恐る確認する。
『頑張って作ったから食べてね。但し文句は受け付けないから!』
ニコらしく書き綴られているメッセージの隅のほうにもうひとつだけ小さな文字が見えた。
『義理チョコじゃないからねっ!』
これは食べるのが勿体ないかも。
ロボはその小さな文字を喜色満面でゆっくりと何度もなぞった。
ニコの帰り際の慌てっぷりはやっぱり照れからきていたのかもしれないと思うと
可笑しくもあり愛おしさも募る。
「うん、うまい」
チョコの味が口一杯にとけていく。
でもそれ以上にロボの胸に甘い想いが深く深く沁みこんでいった。
終わり
Happy Valentine
ニコ
ロボ
>>300 p.S.1日遅れだけど..
小学生男子かよw
ニコの素っ気なさも可愛くてGJ!
エロ無し
-------------------------
「ひとつだけ」
「あ〜もう!」
せっかく走ったのに、目の前で電車が出てしまった。
今日はホント、ついてないな・・・
朝、気に入ってたカップを割った
昨夜遅くまでかかって仕上げたレポートを家に忘れた
スカートのファスナーが開いてたのを男子に指摘された
お弁当を食べてたら、治療中の奥歯の詰め物が取れた
体育の授業で転んで膝をすりむいた
おまけにジャージに大きな穴があいて・・・
「も〜今日はなんでこうも寒いのよ! ハ、ハ、ハックションっ!!!
えっ! やだ・・・何でよぉ〜!」
右の靴の裏にべッチョリとガムが・・・
なんかもう泣きたい・・・
「え〜っ! ホントに〜? もぉ〜感激だなぁー。
ん〜? いやぁ〜なんかさ、オレってすっごく幸せだなぁ〜って・・・」
人がこんなに滅入ってる時に、何、の〜天気にはしゃいでんのよ!
あ〜ムカつく!・・・えっ? この声って・・・
向かいのホーム、大声で携帯で話してるのあの横顔は・・・ロボだ!
何年ぶりだろう
あの頃と何も変わっていないようで・・・でもコートを着たロボは、どこかずっと大人に見えた。
声を掛けようか・・・ここからじゃ聴こえないな。
恥ずかしいけど手を振ってみる。
気づかないロボにイラッとくる。でも自然と自分の顔が綻んでるのがわかる。
やっぱり嬉しかったから?
ずっと横を向いていて話していたロボが、正面を向いた。
寒いせいか、小刻みに体を揺らしている。
でもその顔は、これ以上ないっていうくらい幸せそうに見えた。
な〜んかいいことでもあったのかな〜? いいよねぇーロボは・・・あ、終わったみたい。
やっと気づくかも!
ロボっ! 小さな声で呼んでみる。
「・・・あっ!」
慌てて近くにいたおじさんの後ろに隠れた。
携帯をしまったロボの左手、薬指に光る物が見えたから・・・。
心臓がありえないくらい大きな音を立てていて、ロボをまともに見れない・・・
気が付くと、電車が入ってきていた。
乗り込んで、窓からホームにいるロボに恐る恐る目をやる。
懐かしい横顔・・・
何年か前、助手席から見たロボの横顔がふと浮かんできた。
頼りなくて、オロオロして、やたらと汗をかいてたっけ・・・
でも楽しかったなぁ
楽しかったこと、たくさんあった。
笑ったり、泣いたり、喧嘩したり・・・
ロボと一緒にいられた一瞬一瞬、今でもちゃんと覚えてる。
電車が動き出し、ロボの姿が小さくなっていく。
どんどん、どんどん小さくなって、ついに見えなくなった。
すりむいた膝が今になってまたヒリヒリと痛む。
こんなの、どうってことない傷なのに・・・
ロボ・・・ロボ・・・
・・・ロボの声が聴きたいよ
ベットの中から手を伸ばし、目覚まし時計を見ると、もう3時を過ぎていた。
眠れない・・・駅で目撃した光景が鮮明に頭の中で繰り返し再生される。
ロボは今、幸せなんだね・・・
ついてない1日だったけど、ひとつだけ、いいことがあったと気づく。
大切な・・・そう、私にとってすごく大切な人の笑顔に出会えた。
それだけで充分・・・
またどこかで偶然出会うかも・・・その時は隠れたりせずに、知らなかった振りして「おめでとう」と言おう。
・・・だから、今だけは泣いてもいいよね?
さよなら、ロボ
さよなら、
・・・私の初恋
つづく? or 終わり?
>>306 すみません、書き忘れた・・・
終わりです
308 :
名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 20:30:56 ID:9MN/TauH
ほしゅしゅ
>>307 やっぱり、終わりかぁ
ニコの涙が悲しかったので、もしかしたら、続くのかなと思って。
つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚