【ドラマ】セクシーボイスアンドロボ3【マンガ】
393 :
Nico 3:2007/12/09(日) 14:18:49 ID:aqCBZo5n
「変なロボー」
ここまで来て俺はようやく腰をあげた。もう限界だ。
「ニコ」
「ん?な、何?恐い顔して」
「……や、別に」
俺、何しようとしてんだろ。そのままぐっと拳を握り締めてニコに背を向けた。
「何?言いたい事あんなら言えば?」
言いたい事。
「……ニコがいると落ち着かない。何でうちに来てるの?」
何か胸が苦しい。
「……何それ、あたしがいるとなんかだめって事?」
「ううん、俺ニコと一緒にいると楽しいよ。でも時々なんかこう……」
何て言えばいいんだろう?どうしたらこの関係を壊さずにいけるんだろう。
「じゃあ何?……ハッキリしないなあ」
「だっていつも暇なんでしょ?なのに一体何が楽しいのかなって」
俺は楽しいよ。だけどニコは違うの?うだうだ考えてるうちにニコは
「……もういい!お邪魔しました!」
と吐き捨てて出て行ってしまった。
ニコが出て行ってしばらくの間しんとした部屋に1人しゃがみ込んだまま、俺は
じわじわと溢れて来る後悔と呼ぶ気持ちをどうしようも出来ずにいた。
苦しかった。前にもこんなふうに部屋がだだっ広く感じた事を思い出す。俺馬鹿だ。
やっぱりニコに謝ろうと携帯を手にする。
「もしもしニコ?今どこ?……さっきはゴメン。戻って来て欲しいんだけど」
『……さっき来るなっつったじゃん』
「そこまで言ってないじゃん!……話がしたいんだ。迎えに行くからね、どこ?」
しばらくの沈黙の後だった。
『角のコンビ……』
パーーーーン!!!!
その瞬間乾いた音が向こうから響いた。同時に何かが倒れる音、ガラスの割れた様
な音がして電波が途切れた。
「ニコ!ニコ!?」
聞き覚えのあったあれは……銃声!
あの時あんな言い方をしなければ、あんなふうに帰さなければ、俺がもっと素直に
なっていれば。
恋をする楽しみも失う怖さも知った俺なのに、いや、だからこそニコを失くす事ば
かり考えて。
じゃなきゃ守る事が出来たのに。
自分に正直に俺らしくぶつけてみれば良かったのに。
そしてそれがニコと交わした最後の言葉になってしまった。
394 :
Nico 4:2007/12/09(日) 14:20:19 ID:aqCBZo5n
ガラス越しの集中治療室の中にニコは眠っている。
「どういう事なの!?あなたニコと一緒にいたの?何でこんな事になっちゃったの!?」
久しぶりに会った一海ちゃんは妹の変わり様に俺を激しく責め立てる。
慌てて俺が駆け付けた時には人だかりが出来ていて、緊迫した空気が流れていた。
運悪くコンビニ強盗に遭い、犯人はすぐ取り押さえられたが、ニコは犯人が脅しに
撃った銃弾に倒れてしまった。巻き込まれたのだ。
現場に来た救急車に勿論一緒に飛び乗った俺は、そのまま今まで病院でニコの家族
を待っていた。そして一海ちゃんにこうして問い詰められている。
「君、一海の次は二湖か!一体何を考えてるんだ!?」
「そうよ、どういう事なのか説明してちょうだい!」
ニコの両親もこんな事信じられないと、彼女の姿に泣きながら俺をなじる。
当然だ。
「とにかく、話はまたにしてくれ。今日は帰ってくれないかな。……今君の顔は
見たくないんだ」
何も言えなかった。ガラス越しに眠るニコを一目だけ見ると、病院を後にした。
翌日もその翌日も俺は病院に足を運んだ。 命は助かったものの意識が戻らず、当然会わせては貰えないまま追い返される。
だけどいてもたってもいられなくて、諦めずに通い詰めて、ずっと待合室で居座り
続けていた。
数日後、意識は戻らないままだが集中治療室から個室に移る事になったと一海ちゃ
んが見かねて声を掛けてくれた。一応一番危険な時は越えたらしい、良かった。
「あなた、ニコの事好きなんでしょう?」
口にした事のなかった言葉を一海ちゃんから聞かされて、俺はやっと自分の中の霧
が晴れた気がした。
「だったらあなただって辛いでしょう?」
黙って俺は頷いた。俺はニコが好きだったんだ。なのにそれを伝える前にこんな事
になってしまった。
「ニコ最近休日になると楽しそうに出かけるの。彼氏?って聞いても答えないから
知らなかったけど、あなたと会ってたのね」
ズカズカと遠慮なく上がり込んで来るニコを思い出す。気が付けば戸惑う一海ちゃ
んの顔があった。
涙が止まらなかった。
395 :
Nico 5:2007/12/09(日) 14:21:56 ID:aqCBZo5n
肩を叩かれたのは翌日の事だった。
「ちょっと、出ないか?」
中庭のベンチに座って、ニコのお父さんは俺にパック牛乳を差し出してくれた。
「一海から聞いたよ。君は二湖と付き合ってるのか?」
いいえ、と言うと驚いた。だったら何故毎日ここにいるのかと問い詰められた。
「あの日ちゃんとニコに僕の気持ちを伝えていれば、もしかしたらあんな目に遭わせ
ずに済んだかもしれないんです。俺大事な事ちゃんと言えなかったから。だから目
が覚めたらちゃんと謝って、僕の気持ちを伝えたいんです」
「君は……真剣に二湖が好きなのか?」
お父さんの目をまっすぐ見据えると、俺は大きく頷いた。
「ニコの事好きです。許してもらえなくても、ちゃんと償いたい。本当にすみません
でした。僕のせいです!」
「いや、君のせいじゃないよ。たまたま、運が悪かったんだ……俺も言い過ぎた」
そう言って俺の肩をポンと叩くと、
「須藤君と言ったね?二湖が大事なら、ちゃんと会社へ行きなさい」
「えっ?」
思わぬ言葉にうなだれていた頭をあげた。
「二湖の気持ちは知らんが、男として社会人としてちゃんとしてる奴じゃなきゃ親と
しちゃ大事な娘は任せらんないだろ?」
何かあったら連絡するから、と約束してくれた。俺はただ頭を下げる事しか出来な
かった。
数日休んだせいでもう席がなくなる寸前だった。無職になったらニコに好きだなん
て言えやしない。必死で頭を下げて、その日から死に物狂いで働いた。それはニコ
を想う苦しみから逃れたい気持ちも確かにあって、また罪の意識は溢れて来る。
会社から病院へ直行してはニコの様子を見るのが日課になった。面会謝絶は解けた
ので会う事も許された。時間ぎりぎりまで側にいて時々はそのまま居眠りしてしまっ
て看護婦さんに怒られたりしていたら、お母さんから何かあったら必ず連絡するから
と言って貰えたけど、それでもニコに一目会いたくて毎日通い続けていた。
夢の中のニコはいつもの様な生意気な口を聞いて俺をムッとさせる。なのに目覚め
る度に動かない姿に涙が溢れて、切なくて。
396 :
Nico 6:2007/12/09(日) 14:23:37 ID:aqCBZo5n
必死で働いた成果が形になって手元に残った。今までになく頑張ったお陰で新規契
約が取れて報奨金が出たんだ。
そういえば家と会社と病院の往復で、ロボット収集がご無沙汰になっていた。さす
がに今はそんな気分にはなれない。マックスを取り出すと眺めては鞄に戻す。
お金、減らないなぁ。珍しく財布が重い。
よく考えたらそれとテレクラ以外にお金遣う事あまりないかもしれない。それは全
部俺の楽しみと寂しさを紛わすためだけにしていた事、いわゆる自己満足。
街はクリスマスの飾りで賑わい始めてる。今年は一緒に過ごせるかと思ったのに……。
『女の子って何喜ぶの?』
それとなく会社の女の子に聞いてからかわれたりした。せめて何かしてやりたかった。
ニコはそんなもの望みはしないだろうけど、例えそれも自己満足でもいいと思った。
お陰で貧乏逆戻り。それ自体は毎度の事だったけど……。
残りの小銭をかき集めて、ニコと話した神社に行って手を合わせた。
願う事しか出来ない自分が情けない。
病室の窓に外のイルミネーションが映る。
「ニコ」
動かない手は少し細くなった気がした。その左手をゆっくり包むとその温もりを確
かめる。
それからスーツのポケットから取り出した物をゆっくりとその指に捧げた。
「クリスマスには早過ぎるし、素直に喜んじゃくれないだろ〜し」
でもそれでもいい。
「早く、目を覚ましてよニコ」
他には何もいりません。
「戻って来てくれたら、俺何よりもお前を大事にするからさ」
だから、神様。
「レアフィギュアだってもう諦めてもいい」
お願いです。
「引き換えに全部捨てろって言うならそれでもいいから」
ひとつだけ、ただひとつだけ。
ニコを俺の所へ返して下さい。
「俺ニコが好きだ」
ただひとつだけ、俺の願いを叶えて下さい。
「………………ボ……?」
これは奇跡?
握り締めていた手にかすかに力がこもり、綺麗な瞳が俺を見上げている。
「ダメだよ……」
弱々しくもきっぱりとその声は言い放つ。
「ニコ!!!」
大声で俺は叫んだ。
397 :
Nico 7:2007/12/09(日) 14:25:51 ID:aqCBZo5n
「ロボ……捨て……ダメ」
ニコは必死で俺に何かを訴えている。口元に耳を寄せると、ゆっくりと言葉を続けた。
「捨てちゃ……ダメ……んな事……たら許さな……ら」
「こんな時に何言うの?俺これからはニコを大事にするって決めたから」
「だ……ら同じに大事にして……だって、そしたらこれからロボの事……何て呼べば
……いい?……」
俺をそう名付けたのはニコ。
宇宙で君だけが、今俺をそう呼ぶ事が出来る。
「ねえロボ……これ、ちょっと大きいよ?……」
俺の精一杯の気持ち。
「気に入らない?」
「……ていうかさ、あたしにはちょっとババ臭い」
「はあ〜〜!?ちょ、え〜何その感想!俺凹む〜」
ああ、やっぱりニコだよ。
「そのうち似合う様になるかな?……」
俺の手を握り返す。生きてるって実感が嬉しい。
「……あの日『迎えに行く』って言ってくれて、本当は嬉しかったの」
ニコの指にゆっくりとくちづけて俺は告げた。
「お帰り」
この手を離したくない。ずっとその温もりを忘れない様に。
それから数週間後ニコは退院し、日常生活に戻った。今では以前以上に当たり前の
様に俺達は一緒にいる。
そして更に数ヶ月後、目の前で座って俺を待っているニコの姿は、純白の衣裳に包
まれて。
あれからずっと病室の前で入るに入れないで待っていた、ニコの家族に叱られた。
叱られついでにニコをくれと言って益々怒られた。
きっと普通に考えたらいきなり過ぎるのだろう。だけど俺達はもう互いに代わり
がいない事を知っている。
ニコの元に跪いて抱き締める。
「ずっとこうしたかった。……綺麗だ〜♪」
「ありがと……でもロボ、七五三みたい」
「はあっ!?」
相変わらずの生意気振りに腰が抜ける。
「くっそ〜、でも俺は愛してるぞニコ!……悔しいけど」
「うん」
本番前に誓いのキスを交わしながら考えた。
神様。
この世でたった1人きりの『取り替えられない人』
側にいる事が当たり前の幸せに気付かせてくれてありがとう。
そして、ニコをありがとう。
* * * * * * *終
つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
GJ!
わわっ、ちょっと感動した…
ロボのニコを想う気持ちもじ〜んとくるし
ニコ家族の優しさもいいなぁ
GJ!
みつきの「ひとつだけ」とのシンクロ率が半端ないです。
GJGJ!
前にロボが昏睡する話があったけどニコが昏睡する話も感動した。
GJ!
ちょっと大人になった(17〜18歳くらい)のニコとロボが
初めて一緒に夜をすごした次の日の話です。
ロボがやたらグダグダ考えて、いちゃいちゃしてるだけのような…。
直接的なエロは無しだけど示唆する場面はありますのでご注意下さい。
**********************************
すごく幸せで官能的な夢を見た。夢から覚めるのが勿体なくて、浮上する意識に俺は必死に抵抗した。
だめだめだめ、まだ眠っていたい。この夢から出たくないよ。
だけど、いつの間にか朝の光や鳥の声が部屋の中に溢れ出して、俺は仕方なく目を開けた。
すると、君の頭がすぐ近くにあったので、あの夢はどうやら現実だったらしい。
ニコは俺に背を向けて、少し体を丸めるようにしてまだ眠っている。
俺は半身を起こして寝顔を覗き込んだ。
まつげ長いなあとか、ほっぺがぷくぷくだなあとか、髪が長いのも結構いいなあとか思った。
愛おしさがこみ上げてきて、どうしていいかわからなくなって、
思わず「ニコ、愛してる」とか囁いてみる。起きていたら恥ずかしくてきっと言えない。
「二個アイス食べる…?」
彼女は相変わらずトンチンカンな寝言を言って、すごく嬉しそうに口元を綻ばせた。
ニコの頭の中が俺じゃなくてアイスクリームのことでいっぱいだったとしても
この微笑みだけで俺は満足した。
意識がはっきりするにつれて、俺は昨夜の出来事を甘い疼きと共に反芻した。
震える指で一つ一つボタンを外した時に、睫毛に涙を溜めて恥ずかしそうに俯いたこと。
掠れた声で俺の名前を呼びながら背中に回した手にギュっと力をこめたこと。
香水も付けていないのにいい匂いがして、唇を滑らせると甘い味がしたこと。
母親が赤ちゃんをあやすように何度も頭を撫でてくれて、俺は安心しきってただただ
うっとりしながら甘えてしまったこと。
月明かりに照らされたニコの身体は、まるで白く発光しているみたいだったこと。
まるで体中の器官全部に君が深く刻まれたみたいなんだ。
一生癒えない傷跡のように、もう、忘れたくても忘れられやしない。
それから、もっとずっと昔の記憶も蘇ってくる。
テレクラで出会った変な女の子の「救えるのは宇宙で私だけなの!」という叫びが
矢のように心に刺さって、あの瞬間からもう目が離せなかったこと。
どんなに喧嘩しても振り回されても、一緒にいるとなぜか楽しかったこと。
それなのにとてもとても傷つけてしまったこと。
自分の心にずっと矢が刺さったままなのに、会えなくなってから気づいたこと。
次に出会った時には、走り出す気持ちを止められなかったこと。
自分の感情が友情という言葉で説明しきれないと気づいた時に、
フィクションみたいに楽しい日々は痛みをともなったリアルに変わり、
それでもニコと一緒なら、この街の公園通りを走り抜けたように軽々と、
世界中どこまでも行けると思った。
何年か前、「幸子」に言われた言葉は相変わらず棘のように残っていたけど、
たとえ自分がニコの未来を奪うことになっても、もう後戻り出来ないと思った。
俺が体を起こしたまま考えごとをしていたので、毛布がずれて、薄いTシャツ一枚を
羽織っているだけの君が少し肩を震わせる。
「寒い…」
「あ、ごめん」
もう一度俺は毛布にもぐりこみながら、君の肩に毛布をかけ直す。髪に唇で触れる。
昨日のことは後悔はしてない。
後悔はしてないけれども、咲いたばかりの花を自分が摘み取ってしまったという罪悪感はあった。
自分なんかでよかったのだろうか。
社会のジョーシキだとこういう時には「責任を取る」っていう話になって、
それはつまり結婚するって意味らしいけど、欲しくて欲しくて、とうとう摘んでしまった花を、
将来もずっと自分のものにしてもいいなんて、そんな願ったり叶ったりの責任の取り方、いいのか?
それじゃあんまり俺にとって都合が良すぎじゃないか。
神様がとんでもないオチを用意していたらどうしよう。
俺は今度料理を作る時には砂糖と塩をわざと間違えようとか、
外を歩いていてバナナの皮や犬のウンチがあったらわざと踏もうとか、バカなことを真剣に考えた。
そうしないと幸福すぎてワリが合わないと思ったから。
それとも。ニコは「責任」なんか取ってほしくないかもしれない。
その考えが浮かんだ時、冷水を浴びたように心がさっと冷えた。
俺との出会いも再会も恋も初めての夜も、全部大人になるまでの通過点の一つ、
経験の一つに過ぎなくて、いつか記憶の底に仕舞い込まれて、時々郷愁と共に思い出す。
ニコにはそれだけの出来事なのかもしれない。
俺にとってあの年上の凜とした人との短い生活が、あの時は本気だったのに、
今となっては一つの通過点になってしまったように。
「続かないって知ってるから」
爽やかに笑ったあの人の痛みが、今の俺には分かる。
歳の離れたニコと一緒にいるなら、その覚悟はしておかなくてはいけないのだろう。
1年前、偶然ニコと出会わなかったら、俺はたぶん14歳のニコの思い出の中で、
少しずつ忘れられていく存在だったのだから。
ぐだぐだと考え続ける俺の思考を遮るように、ニコがまた寝返りをうつ。
向き合う格好になって、すぐ近くに呼吸音が聞こえてドキドキする。
眠っていると、出会った頃と変わらないくらいあどけなく見える。
俺はニコのおでこに自分のおでこをくっつけて「おはよ」と声をかける。
「んん……」
「朝、だよ」
「んー? ロボ?」
寝惚けた顔で薄目を開けて、ごしごしと目をこする。
「わぁっ」
「何?」
「顔近いよ」
「いいじゃん近くても」
俺はそのままふざけて顔を寄せて、ほっぺたにキスの雨を浴びせる。
「やだー」
「なんでぇ」
「だって髭がジョリジョリする」
「そりゃ髭くらいあるさ、昨日土曜だから剃ってないし」
「髭伸びるとおっさんくさいよ」
「いいの、もうおっさんだから」
もう一度顔を摺り寄せると、「やだもう、バカ」とか言いながら、俺の顔を避けて
肩に顔を埋めた。そして、そのままの姿勢でまた眠ってしまった。
「おーい、もう朝ですよ?」
「ん、もうアイスはいい…」
嬉しそうに言って、腕を俺の首に巻き付ける。そしてまた眠る。
ニコは昔から寝覚めが悪くて、寝惚けるとおかしなことを言ったりするのがとても可愛い。
あまり可愛いのでこのまま一緒にまた眠ってしまおうかと思ったが
あいにく俺の意識ははっきり覚醒してしまったし、覚醒している時に
お互いTシャツとパンツくらいしか身につけない状態で、こういう姿勢が長く続くと
たぶん俺としては、非常に非常に非常に困ったことになるのだ。
何が困るのかは男なら分かってくれると思う。
仕方がないのでまたニコを起こす。
「ちょっとぉ。起きよー。ねー」
「もー、うるさいな…」
また薄目をあけてぼーっとこっちを見る。
俺はここぞとばかりにニコのほっぺたをつついたり引っ張ったりした。
ニキビ一つ無く、赤ちゃんみたいにすべすべで餅のように伸びるのが面白かった。
ニコはクスクス笑っていたが、そのうち「人の顔で遊ぶなー!」と怒って起きあがった。
俺は笑いながら一足先に布団から出て、とりあえず着替えをする。
「あ…、痛っ…」
「どうしたのっ?」
「ん、ちょっと」
立ち上がろうとしたニコは顔を歪めてベッドに座り込んだ。
そして、余り見せたことのない、不安そうな気弱な微笑みを浮かべて俺を見た。
「なんか体が変」
「まだ痛む…?」
「少し。でも、大丈夫だよ」
「ごめん!ごめんよ。ごめん。俺のせいだ」
自分が何かとても酷いことをしたような気がして、胸がいっぱいになって、
駆け寄るとニコの小さな頭を胸に抱えて、何度も何度も謝った。
「なんで謝るの。何も悪いことしたなんて思ってないのに」
「ごめん、ありがとう。ごめん。俺ニコが好きだ。本当に好きだ。ごめん。好きなのに」
「あたしも好きだよ…。謝らないでよ」
「うん…」
今これを言わないと、ずっと言えなくなると思って、無理に言葉を絞り出した。
「俺これからもずっとニコが好きだと思う。
マックスロボを忘れた自分は自分じゃないみたく、
ニコが好きなことが自分らしさになってる。この気持ちは変わらないと思う。
…でも。もしニコが、またいつかみたいに、変わる時が来たら。
俺の存在が必要なくなる時が来たら。罪悪感を持たないで…
変わって、俺を忘れてもいいからね。
たぶん今の思い出があれば、俺、どんなことも耐えていけると思うから……」
「えっ…何言ってんの? なんであたしがロボを忘れて当然みたいなこと言うの?
……前の時だって、忘れたから会わなくなったわけじゃないよ。
ロボはもうあたしが信用できなくなっちゃったたの?」
「違うよ。でも、俺達は時間の進み方が同じじゃない。それは仕方のないことでしょ。
今すっごい幸せで、ずっと続けばいいと思ってて、このままずっとニコを独占したくて。
ニコの気持ちにお構いなしに独占したくて。心も体も全部、俺が独り占めしたくて。
何も言わないと、そういう勝手な自分に負けそうで。
俺、ニコをがんじがらめに縛りたくないのに」
「だからって、そんなこと考えないといけないの? 今好きってだけじゃ駄目なの?」
「俺弱いんだ。怯えてるんだ。全て捨てて、ニコもマックスロボも捨てて走った本気の恋が
ずっと続くよう願ったのに、続かなかった経験があるから。
だからニコに同じようにされても仕方ないって、覚悟決めてるんだ。
そういうこと考えるのは怖いけど、覚悟を決めてないともっと怖い。
ニコは変わり続けていて、俺たち何年も会えなかったし、今もまだ変わり続けてる…」
普通に話そうと思ったのに、声が震えてしまった。涙だけは流さないように必死で耐えた。
「ロボは本当に怖がりなんだね。昔からだけど」
ニコは俺の頬を手のひらで挟んで顔を向けた。
「いつでも会えると思ったから、離れていても平気だった。
今は、離れていても平気だって分かったから、ずっと一緒にいられるよ。
だって、相手に寄りかかるために一緒にいるんじゃないって、あたし達知ってるもの。
一人でも立っていられるけど、二人だともっと楽しいから一緒にいるの」
「ニコ」
「それにロボといるといつも変なことが起こって退屈しないじゃん。
あたし退屈が苦手なんだ。きっとこれは、一生変わらないと思う、だから…」
ニコは俺の耳元で優しく囁く。
「ロボのそばにいたい。いさせて」
うん、うん、と俺はバカみたいに何度も頷いた。 うん、うん、うん。
ニコが俺の顔に手を添えたまま、伸び上がってキスしてきたので、
思わずぎゅっと抱きしめたら
「わっ ちょっとタイム!やっぱ先に髭剃って!」とか言い出すから
ずっと泣きそうなのを我慢してたのに、おかしくって泣き笑いになってしまった。
それから朝食のパンがきれていたので、俺はひとっ走りコンビニに買いに行って、
ニコのためにアイスクリームも買おうとして、いろんなアイスを選ぶのに夢中になって
肝心のパンを買うのを忘れて帰ってきた。
ニコは呆れ笑いをしながら
「ほらやっぱり退屈しないよ。ロボって、普通ありえないことするんだもん」と言った。
「だってニコ、アイス食べたくて夢見てたじゃん」
「なんで知ってるの?」
「マックス超能力で心を読んだ」
「うっそだー」
でもアイスクリームが朝ごはんてやばいよね、太りそう。とニコが気にするので
「それ以上痩せちゃだめ!」と俺は真剣な顔で言った。
「ニコは別に太ってないじゃん。それに俺、今はスラリ系より断然ぽっちゃり系なんだ」
「・・・なんで?」
「だって触った感触が気持ちい・・・ぎゃっ」剛速球で枕が飛んできて顔面に命中した。
そんな感じで、一日が始まって。
未来のことは誰にも分からなくて、幸せはリアルな苦しさと背中合わせだけど
結局、俺達は今日もとても仲良しです。
******************************
終
いいな〜ロボ〜
GJ!
ニコみたいな健気でいいコはいないよー
ロボはホント幸せ者だよ
GJ!
ロボは頼りないとこあるけど、ニコよりは大人だし
いろいろ考えちゃうんだろうね。
でも、この2人は一緒にいることがすごく自然に思える。
GJでした!
>>391 初夜モノで埋め始めに1つ。あんまりエロくは無いけどそういう描写有り。
* * * * * * *
薄灯の中手を伸ばすと、温かい身体に触れる。
何度も俺の名を呼びながら髪を撫でる君の声が胸を焦がす。
「…………ろ……ぼ」
柔らかな膨らみに頬をすり寄せながら、肌に残る痕を指でなぞる。
君の身体を貫き、君をを奪っていったかもしれない今は小さな傷跡を……。
「ごめんねニコ。なんか俺ばっかり……ニコには痛い思いばっかりさせて」
背中に回した手に力が入るのがわかるから、幸せと快楽に酔っている自分が
とんでもなく酷い奴に思える。
大丈夫と首を横に振りながら耐える君を抱き締めて、やっと1つに繋った悦びは
正直とても大きくて愛しさで一杯になる。
もうすぐでやっと19歳になるニコと一生一緒に生きる事を約束して迎えたこの日を、
ずっと忘れる事はないだろう。
「ロボ、ずっと待たせてごめんね」
「ううん。それより大丈夫?」
うん、と恥ずかしそうに頷きながら閉じた瞳にキスを落とす。
この数ヶ月間の間にこういう事をする機会がなかったわけじゃないけど、生死を
彷徨ったニコを大事にしたい気持ちの方が強かったのと、正直どこかでニコを壊して
しまうのが怖かったのと、焦らなくても大丈夫という自信が持てたのと……。
理由は色々あれど、生きていてくれた事だけで感謝してたから。
薄れていきそうになる意識の中で、ニコの唇が震えてる。
「なに?」
潤んだ瞳をして俺を見上げながらううん、と首を振る。
「何でもない……」
早く終わらせてあげようと思わなくてももう限界は近かった。再び意識が遠のき
そうになったその時、
「…………――――うっ、!!………」
耳元でかすかに聞こえたニコの声。
「えっ?………………あっ……」
聞き返す間もなく、ニコの中で俺の感覚が薄れていった。
腕の中でニコが眠る。その安心しきった寝顔を確認するとホッとする。
真夜中目が覚めて真っ先にニコの姿を探してしまった。その温もりは確かに腕の
中にある筈なのに、姿を見るまでは夢を見てるのではないかと怖くなって。
「もうちゃんと戻って来てくれたのになぁ……」
1度猫の温かさを知ってしまうと、その温もりのない生活には耐えられなくなると
聞いた事がある。幸せを知ってしまった今は、それを……二度とニコを失いたくない
と思う。
生きてさえいてくれたらと願った気持ちは嘘じゃないけど、人間は贅沢だな、それ
とも俺だけなのかな?幸せに貪欲なのは。
『ねえニコ新婚さんなんだからさ、あなた〜とか呼んでみたくない?ねえねえ』
『はあぁ!?やだそんな恥かしいの!』
『え〜いいじゃん、1回だけっ』
『やだったらやだ!』
……昨夕の自分を思い出してちょっと恥かしくなった。いつも以上にテンションが
上がっててニコにおねだりを一蹴された。いい歳して何してんの?とかあの調子で。
まあそれでこそニコなんだけどさ。
本当は何だっていいんだ。あれはちょっと気分出ちゃって調子に乗っちゃったけど、
ニコが呼んでくれるならどんな風だっていい。
俺を呼ぶ声が聞こえたらどこにいたってニコの元へ飛んで行こうと決めた、あの頃
からその気持ちはずっと心の底から変わらない。
もうあんな顔をさせないと何度だって誓うよ。
ニコを起こさない様に注意しながらこっそり鼻の先に「チュ」をする。
「ローボぉ?」
「は、はいっ?」
しまった起こしたか?
「……スケベぇー……んふふふー」
ニヤニヤ笑うとまた静かな寝息を立て始めた。何なんだよもう!てかどんな夢だよ。
いや否定出来ない自分が悲しいけどさ。
ゆっくり横になって目を閉じながら、さっき聞き返せなかったニコの声を思い出す。
『好きだよ…………イイチロウ』
人生で今日ほどこの名前を誇らしく思った日はないだろう。
* * * * * * *終
直接的な表現ではないのにすごく色っぽい感じがしてドキドキしました。
GJ!
ニコのセクシーボイスでイイチロウなんて
呼ばれたら、ドキドキもんだろうね
GJ!
414 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 03:29:53 ID:BEs89TJQ
容量いっぱいまであとちょっとなので今のうちに
次スレはスレタイやテンプレは変更や追加なしでOKですか?
超いまさらな話ですが、ふと思ったもので
長編を書いたんだけど、ここに投稿しても大丈夫だろうか?
9レスぐらいでテキストファイルのサイズは18,125バイト。
それとも新スレ立てて投稿した方がいい?
うーん、ギリギリ大丈夫なような気もするし
次スレが無難な気もするし…
どっちつかずでごめん。
現在このスレは、471kbでござる。
残りは、29kbくらいあるんじゃないの?
ちなみにこのレスは、128バイトだってさ
じゃあ大丈夫かな。途中で切れたらハイそれまでとういことで。w
本スレで自分で妄想したことをネタに書いてみた。
エロもなければラブもない、強引な展開の冒険物。
タイトルは「セクシーアイ」。
----------------------------------------------------------------------
「ロボいるぅ?!」
私はいつものように階段を駆け上がり扉を開きながらロボを呼んだ。
私はもう高校3年生になっていた。
一年前に偶然ロボと出会い、こうして前のようにロボの部屋を頻繁に尋ねるようになっていた。
地蔵堂も戻って来て私たち二人はまたスパイとして駆り出されるようにもなっていた。
玄関に入ってもロボからの返事はなく、私は玄関で立ち止まったまま部屋の中を眺め回した。
ロボはベッドの上に座って窓の手すりに両腕を載せて空を見上げていた。
私はベッドの前に立って
「なにしてんの?」と聞いたけどロボは黙ったまま空を見ていた。
私はベッドの上に正座してロボの横に座った。
「ね、ロボどうしたの?」
それでもロボは私の存在に気が付かない様子で空を見上げていた。
怪訝に思いながら私も窓から顔を出してロボの顔を見た。
ロボはただ空を見上げてるだけでなく鼻の下を伸ばしていた。
そして
「マユコちゃん…。」と呟いた。
「え?なに?どうしたの、ロボ。」
と言いながら私はロボの肩を揺すった。
「あ、ニコぉ。いつ来たの?」
「え?なに?気が付いてなかったの?」
「あ、う、うん。ちょっと考え事してたから。」
「誰よ、マユコちゃんって?」
「あ、え…。なんでもないよ。」
「またテレクラ?」
「いや、そんなんじゃないよ。」
「じゃあ、なんなのよ?!」
「あ…、えっとぉ…。」
と言いながらロボは渋々話し始めた。
ロボの話では、今朝気持ち良く青空が広がっていたから散歩に出たはいいけど
足を大きく上げながら歩いていたら石に躓いて転んだらしい。
手にしていたMAXロボを庇いながら柔道の受け身のようにコロッと回って地面の上に仰向けになったそうだ。
その時、若い女性が「大丈夫ですか?」と声を掛けてきて
ロボの腕の怪我を見て自分のハンカチを渡して
「気を付けてくださいね。」と言って去っていったらしい。
そのハンカチには「MAYUKO」と刺繍があった。
「とても魅力的な目だったんだよなぁ。
優しくて可愛くて。
ニコと同じ高校生くらいかな?」
私は何故かその話を聞いてムッとしてベッドから降りて目に付いた枕をロボ目掛けて投げた。
枕はロボの背中に勢いよく当たった。
「なにすんのぉ、ニコぉ?!」
「ロボなんか知らない!」
私はフンっと横を向いた。
「もうニコは乱暴なんだからぁ。同じ女子高生とは思えないなぁ。」
「どうせ私は乱暴な凶暴女よ!」
私は怒りながら台所に行ってお湯を沸かし始めた。
「ニコぉ、ごめぇん、言い過ぎた。」
しばらくしてロボはテーブルの辺りから台所にいる私に向かって言った。
私は自分がどうしてこんなに腹が立つのか分からず黙ったままだった。
しばらく気まずい雰囲気が二人の間に流れた。
私はお湯が沸くまでシンクにあったお皿を洗っていた。
『なんで私がロボのお皿を洗わなきゃならないのよ!』
ロボはオロオロと立っていた。
ピーッ!
ヤカンがお湯が沸いたことを知らせると私はお茶を炒れた。
一応ロボの分も。
そして私はコップ二つを持ってテーブルに向かった。
途中ロボとすれ違う時にロボのコップを出して
「はい。」と言って渡した。
ロボはオドオドしながらコップを受け取った。
私がテーブルに座るとロボも座った。
「ごめん、ニコ。本当に気付かなかったんだ。ごめん。」
「もういいよ。別に気にしてないから。」
「ホント?」
「ホントだって!」
「そうか、良かったぁ。
それで何か用があったの?」
「あ!そうだった。それを話に来たんだった。」
「え?なになに?」
「さっき地蔵堂に呼ばれて調べて欲しいって頼まれたの。」
「え〜、また〜。」
「うん、私も初めは断ったんだけど…。
どうも私の学校のことみたいなんだよね。」
「え?ニコの高校?」
「そう、私の高校。」
地蔵堂の依頼はこうだった。
この前行われた中間試験の問題が漏洩していたらしい。
それが分かったのは直前に変わった数学の問題で何人かの生徒が同じ間違いをしていたからだ。
「え〜!それってカンニング?」
「ううん。カンニングじゃない。
その生徒たちはクラスも違ければ席も離れてるの。」
「そかぁ、だから事前に問題が漏れたと考えたわけか。」
「そう。だからその調査を依頼されたの。
それと再来週から始まる期末試験の問題が漏れないようして欲しいって。」
「え?じゃあまた高校に潜り込むの?俺。
流石にもう無理だよ。」
「大丈夫。それはちゃんと考えてあるから。」
私がそう言うとロボは怪訝な顔した。
そして
「でも、良かったぁ。ニコの機嫌が直って。」と笑みを浮かべて言った。
「別に機嫌なんか悪くなってないよ。」
私はロボから顔を背けた。
『なんであんなに苛々したんだろう?』
ロボが私の学校に来るのは一週間後。
私はそれまでの間、情報収集することにした。
普段学校では自分の能力を使わないようにしていた。
盗み聞きをしているようだったから。
でも今回は仕方なかった。
休み時間の度に屋上に出て耳に神経を集中していた。
「…裏サイトに問題が…。」
不意にその言葉が耳に入った。
『裏サイト?』
私はそれがなんなのか分からなかった。
その日の夜、電話で裏サイトについてロボに聞いてみた。
「あぁ、裏サイトね。
最近問題になってるよ。
学校とかの噂とかを匿名で書く掲示板があって、しばしばそこで虐めが行われてるって。
ニコの学校にもあるかもしれないよ。
なにか裏サイトの案内みたいのもらってない?」
「う〜ん、分からない。」
「でも生徒だったら何かあるはずだよ。
過去のメールとか調べてみなよ。」
「うん、分かった。」
私はロボの言うとおり入学以来自分に届いたメールを確かめることにした。
そして根気よく探した結果一通の怪しいメールがあった。
そのメールは、本文には何も書かれてなくただ添付ファイルだけがあった。
私はロボから教わった手順で、その添付ファイルを仮想化PCの中で開いた。
添付ファイルには意味不明な文とURLが書かれていた。
嬉しいお知らせです。
ライバルも見てます。
さぁ、早く、あなたも。
急がないと。
取り残されちゃう。
私は取り敢ずそのURLにアクセスした。
するとパスワードを入力する画面が出て来た。
「え?パスワード?分かんないよぉ。」
私はブツブツ言いながら添付ファイルの文章を何となく見ていた。
そしてあることに気が付いた。
「もしかして縦読み?」
文章の各行の初めの文字を入力した。
「う」「ら」「さ」「い」「と」
実行ボタンをクリックすると画面が変わり掲示板が現れた。
「これだ!」
書込み内容は酷いものだった。
匿名をいいことに誹謗中傷だらけだった。
私は名前が書かれたものは極力避けて掲示板の過去ログに目を通した。
それでも自分の名前が出ているとつい読んでしまった。
大抵は「ニコ萌えぇ〜」とか「付き合って下さい」とか呆れるものばかりだったけど
中には口にはできないものもあった。
「最低!バッカじゃないの!」
そしてついに私は見付けた。
『予想問題集売ります。』
「これだ!」
そこには振込口座が書かれていた。
入金を確認してから予想問題集をメールで送るシステムになっていた。
次の日私は地蔵堂にその口座について調べるように依頼した。
しかし、口座の名義人を特定することは出来なかった。
「ま、そう簡単に足が着くようなことはしないわね。
やっぱロボが来てからじゃないと駄目かぁ。」
一週間後の月曜の朝、臨時の先生が紹介された。
「え〜、物理の丸山先生が急病で暫く休むため代わりにこの須藤先生が物理を教えるから。」
と担任が説明してロボが挨拶をした。
「えっとぉ、みなさんこんにちは。
今日から少しの間物理を教える須藤威一郎です。
好きな言葉は愛と勇気と正義です。
日夜その実行に励んでいます。
そして夜空を見上げて宇宙に想いを馳せることです。
みなさんは星空が好きですか?
僕は大好きです。
宇宙には僕たち人間がまだ知らない…。」
「ゴホン!」
ロボの話が長くなりそうなので担任は咳払いしてロボの話を止めた。
「と言うわけだから、みんな言うこと聞くんだぞ。いいな。
それでは須藤先生よろしくお願いします。」
と言って担任は教室を出ていった。
ロボは多少緊張しながらもちゃんと教えていた。
一週間特訓した甲斐があった。
クラスメートからも評判は良かった。
「教え方上手いよねぇ。
なんでもロボットアニメに結びつけちゃうところがちょっとオタクっぽいけど。」
『いや、だから、正真正銘のオタクなんだって。』
と私は心の中で思っていた。
それにしてもロボは日頃の復讐のためかワザと難しい問題を私にあてたりした。
『この借りは百万倍にして返してやるんだから!』
「今日はこれにするか。」
私はいつものように自動販売機で牛乳を買っていた。
屈んで牛乳を取ろうとしてると「マユぅ〜!」と呼ぶ声が聞こえた。
私の後ろを歩いていた女子がその声に反応して振り向いた。
一瞬目が合ったためつい私たちは会釈を交わした。
そしてそのマユと呼ばれた子は走ってきた友人二人と一緒に廊下を歩いていった。
「今の子…。なんて魅力的な目をしてるんだろう。」
顔は前から知ってたけど3年間同じクラスになることがなかったから名前は知らなかった。
今日初めて間近で顔を合わせた。
なんとなく前々から気にはなってたけど、今日その理由が分かった。
あの目だった。
理知的だけどそれだけじゃない何か言いようのない魅力がある目だった。
「そう言えば最近『マユ』って言葉を聞いたなぁ。どこでだっけ?」
そして私は牛乳を持って教室に入ろうとした。
その時だった廊下からロボの叫び声が聞こえたのは。
「あーっ!」
ロボはあのマユと呼ばれた子を指で指しながら叫んでいた。
「あ、ここの先生だったんですか。」
ロボは口を開けたまま首を立てに何度も振っていた。
「よろしくお願いしますね、先生。」
と言ってその子は友人達とロボの横を通りすぎていった。
私はその時になってようやく気が付いた。
「あの子がマユコさん?ハンカチの女子高生だったんだ。」
ロボは鼻の下を伸ばして彼女の後ろ姿を見ていた。
「バカロボ!」
金曜の夜、ロボは宿直だった。
私は夜の9時にロボと約束をしていた。
9時を少し過ぎて宿直室に近付くと中から話し声が聞こえてきた。
「…ふ〜ん、そうなの。
でももう大丈夫ね。
それで頼んでいたものを持ってきてくれた?」
女の人の声だった。
「あ、はい。これですね。金庫の中にありました。」
ロボの声だった。
「そうそう、これこれ。
まさか学校も私のことを調査に来たあなたがこんな事するとは思ってなかったでしょうね。」
そして女の人は笑った。
私は男の人の声色を使って
「須藤先生?そこにいるんですか?」と言った。
すると宿直室の電気が消えて扉が開いて小さい影が廊下を走り去っていった。
私は急いでその影の後を追った。
その影は3階の私の教室に逃げ込んだ。
私は直ぐに教室に入ってその影を探した。
「いない。何処行ったの?」
と独り言を言っていると突然教室の電気が点いた。
「あなたが林二湖さんだったのね。」
私はその女性を見て唖然とした。
「あなたは…。」
「そう、フクダマユコ。
あなた達が探してる犯人よ。
それにしても見事な声色だったわ。
流石七つの声を持つ女子高生ね。
見事に騙されちゃったわ。」
「どうしてそれを?」
「須藤先生から全部聞いたわ。
あなた達がスパイだということも。
今までも色んな事件を解決してきたこともね。」
「嘘!ロボがそんなこと軽々しく話すはずない。」
「嘘じゃないわ。
もう須藤先生は私の言いなりなの。
そしてあなたも。」
そう言うとマユコさんは私に顔を近づけた。
目と目が合い私はマユコさんの目に引込まれそうになった。
軽い目眩を覚え私は慌てて視線を逸らして頭を振りながらマユコさんから離れた。
「流石ね。
あなたには効かないと思ったわ。」
「なんなの?今の?」
マユコさんは薄ら笑いを浮かべるだけだった。
すると教室の扉が開きロボが入ってきた。
「ロボ、良かったぁ。
この子が犯人なの!捕まえて!」
でもロボはゆっくり私に近付いてきた。
どこか様子が変だった。
「どうしたの、ロボ?早く捕まえて!」
私は少し声を荒げた。
でもロボはゆっくりと腕を上げ私の首を両手で握った。
段々力が入り私は苦しくなった。
「く、苦しい…。ロボ…。なんで?」
「だから言ったでしょ。
須藤先生は私の言うことだったら何でも聞いてくれるの。
悪いけどあなたにはここで死んでもらうわ。
そして須藤先生にも。
生徒と先生の叶わぬ恋の結果としてね。」
マユコさんは冷たい笑みを浮かべて私たちを見ていた。
「ろ、ロボ…。お願い…。やめて…。」
しかしロボは私の首を絞め続けた。
私は段々意識が朦朧としてきた。
私は途絶え途絶えに望みの言葉を口にした。
「ろ、ロボ…。しゅ、出動だよ。お願い…。」
するとロボの手は止まった。
次の瞬間ロボは
「うおぉ〜!」
と叫び声を上げながら両手で自分の頭を叩いて壊れたロボットのようにグルグル回った。
「俺はぁ!なんてことをしたんだぁ!
ニコ、ごめん。」
ロボはそう言いながらマユコさんの腕を掴んで逃げられないようにした。
「どうして?どうして、私の術が解けたの?どうして?」
とマユコさんは呆然としていた。
「ロボ、どうしたの?何があったの?」
私が聞くとロボは説明を始めた。
「宿直室でニコが来るのを待っていたらマユコさんが来たんだ。
初めはたわいのない話をしてたんだけど段々意識が遠くなって…。
そしたら自分の思ってることと違うことを…。
勝手に体が動いて言いなりなってしまったんだ。
ニコの首を絞めてる時も『だめ!だめだ!』と意識してるのに体が勝手に。
ごめん、ニコ。ホントにごめん。
俺、もう少しでニコを…。」
「いいよ、大丈夫だったんだから。」
と私はロボに言ってマユコさんに向かって言った。
「催眠術ね?そうなんでしょ?」
「そうよ。」
マユコさんは私を睨みながら言った。
「私は目を見るだけでその人が何を考えてるのか直ぐに分かっちゃうの。
そして念じると大抵の人は催眠術に掛かっちゃうの。
あなたみたいな人には掛かりづらいけどね。」
「どうしてこんなことをしたの?
お金のため?」
「そうよ。悪い?
でもそれだけじゃない。
私は自分のこの能力が嫌いだった。
見たくもない人の本音が見える能力が。
なんの役にもたたない特殊能力が。
むしゃくしゃしてたの。
あなただったら私の気持ち分かるでしょ?」
「え?私?」
「そう、あなた。
聞きたくもないことが聞こえてしまう聴力。
そして物まねでしか役に立たない変幻自在な声色。
あなただって『なんで自分だけこんな能力があるの?』と何度も責めたでしょ?」
私はしばらく考えてから話し始めた。
「そうね。
私も自分の特殊能力が好きじゃなかった。
聞きたくもないことが聞こえて、
興味をそそられて首を突っ込んで周りから不思議な目で見られたり止められたり。
だからいつも封印していた。無難にやり過ごそうと思っていた。
でも…。でも、ロボと出会ってからは違う。
人のために使えば喜ばれることも知った。
私は自分のこの能力が好きになった。
だって、自分だけは自分の味方でいたいじゃない。
それをロボが教えてくれた。
だから私はあなとは違う。」
しばらくしてマユコさんは小さく呟いた。
「自分だけは自分の味方でいたい…。」
「そうですよ!」
ロボが握り拳を振りかざしながら力説した。
「折角この世に生まれたんですから
自分が自分のこと好きじゃなければどうするんです?
先ず、自分のことを認めましょ。
そして好きになりましょ。
他の誰でもない自分のことを!ね?
あなたのその能力、確かにあたなの望んだものじゃないかもしれない。
でも、きっとそれが世の中のためになる日がいつか必ず来るはずです。
愛と勇気と正義の心があれば、絶対に大丈夫!」
「自分のことを好きになる…。
愛と勇気と正義の心…。」
マユコさんは呟いた。
「そうです!愛と勇気と正義の心!」
ロボは力強く断言した。
そしてマユコさんは泣き崩れた。
期末試験が終わって最初の日曜、私はいつものようにロボの部屋の玄関を開けた。
「ロボいるぅ?!」
「あ!ニコ!
どうしよう?ね、どうしよう?」
ロボはテーブルの辺りで立ってオロオロと困ってるようだった。
「なに?どうしたの?」
と私が聞くとロボは目配せで台所を見るよう指示した。
台所に目をやるとエプロンを着た女性の後ろ姿が見えた。
「うん、これでOK。
はい、出来ましたよ。須藤先生。」
その女性はお玉を持ったままこっちを向いた。
「あ!フクダさん!」
「あ!林さん!どうも。」
マユコさんは私に会釈した。
私もつられて会釈を返した。
そして私は慌てながらマユコさんの手を取って一緒に外に出て階段を下りた。
「ね?どういうこと?」
と私が聞くとマユコさんは
「私ね。須藤先生のことが好きになったの。」
「え?!」
「だって今時珍しいでしょ?
あんなに純粋な人。
私ね須藤先生の目を見た時ホントに驚いたの。
あの歳であんな澄んだ目の人はいないって。」
私は夜空を一心に見上げていた時のロボを思い出した。
「そりゃそうだけど…。
でも…。オタクだよ。
それに…。女好きでスケベだよ。」
「そんなの男の人だったら普通でしょ?
それを表に出すか出さないかの違いで。
それにただ純粋なだけじゃない。
私の術を解く強い精神力の持ち主なのよ。
だからあの歳でも純粋のままでいられたんだと思うの。」
「で、でも…。きっと出世なんかしないし貧乏のままだよ。」
「そんなの平気よ。私が働けばいいんだから。
それとも、私が須藤先生と付き合うと林さんが困るの?」
「え?そんなことないに決まってるじゃん。
私はフクダさんのことを思って言ってるの。」
「ふ〜ん、ホントに?」
「当たり前でしょ。なんで私がロボなんかと。」
「分かったわ。ま、いいわ。今日はこのまま退散するわ。」
と言いながらマユコさんはエプロンを脱いで私に渡した。
「須藤先生によろしくね。
そしていつか必ずあなたから須藤先生を奪うからと伝えて。」
「え?どいうこと?」
私の問いに応えずマユコさんは後ろを向いて足早に歩いて行った。
私は呆然とその後ろ姿を見ていた。
『今は、須藤先生の心の中に私の入り込む余地がないことは知ってるわ。
だって、あの時、催眠術を掛けた時すべて聞いてしまったから。
でも、まだチャンスはあるわ。
林さん、あなたがまだ自分の気持ちに気が付いていない間ならね。
私、頑張るからね。
勿論、あの力を使ったりなんかしない。
正々堂々と女として須藤先生の気持ちを掴んでみせるわ。
手強いわよぉ、林さん。覚悟してなさい。
私とあなたは恋のライバルなんだから。
でも友達でもあるんだから。』
遠ざかるフクダさんの後ろ姿を見ながら何故か身震いした。
そして、なんだか嬉しくもあった。
「私たち、きっと良い友達になれるね。」
そんな予感がした。
そして私はまた階段を駆け上った。
玄関を開けるとロボはテーブルに座ってさっきフクダさんが作ったシチューを食べていた。
「なにしてんの?」
と私は少しムッとして聞いた。
「え?あ、お腹空いちゃったから食事してたの。
ニコもお腹空いたでしょ。一緒に食べよ。美味しいよ。」
「なんで私が食べなきゃならないのよ。」
「え?だって勿体ないじゃん。
ほら、ニコのも用意してあるからさ。食べなよ。」
私は仕方なくテーブルにつきフクダさんのシチューを食べた。
「あ、美味しい。」
「でしょ!美味しいでしょ!」
そう言ってロボもシチューを食べた。
ロボは食べる度に「美味しい!」を連発していた。
私は段々ムッとして
「そんなに美味しい!美味しい!って言わないでよ!」と怒鳴ってしまった。
「え?だって美味しいじゃん。
ニコだってさっき美味しいって言ってたでしょ。」
「言ったけど…。
なんかむかつくの!」
「なんで?」
「分からない。」
しばらく気まずい沈黙が流れた。
「よし!決めた!
今夜は私が腕によりをかけてご馳走を作るからね!
カレーにハンバーグにラーメンに餃子にトンカツなどなど。
いっぱい作るからね。
勿論材料費はロボ持ちだからね。」
「えぇ〜!そんなぁ。
それにそんなに沢山食べれないよ。」
「なに?
フクダさんが作ったのは食べれて私が作ったの食べられないって言うの?!」
「いや…。だから…。そんなことはないけど…。」
「残したら殴るからね。」
私は左拳をロボに見せた。
ロボは無言のまま首を縦に何度も振った。
「ほら早く食べて買い物にいこ。
いっぱい買わなきゃならないんだから。」
私がシチューを食べるのを見るとロボもシチューを口にした。
そして私たちは笑い合った。
才能に限らず性格も自分が望んだものじゃないかもしれない。
それでも自分だけは自分のことを好きでいようと思う。
ロボが言うように自分だけは自分の味方でいたい。
そして、いつの日か、もう一人自分の味方になってくれる人が現れることを信じてる。
誰にでも、そのもう一人は現れるはず。
私にとってのその人は今目の前にいる人、
なんだろうか?
おわり
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途中改行が多いと怒られてしまい11レスになってしまいました。m(_ _)m
おもしろかったよー、スパイものもいいぜ!
マユコは(ロボに)初めての料理がシチューかぁ。
カレーとシチュー、いいなぁライバルっぽい。
ニコの報告で社長がマユコのコト知ったら、スパイにスカウトされちゃうな。
ニコみたいな特殊能力を持った子が現れるという発想が面白かった。
本編でもそういう話があったらもっと良かった気がする。
中学でのニコは抑圧されっぱなしで気の毒な感じだったから…
GJ!
大後ちゃんと福田ちゃんの夢の共演だ!
見てみたいかも。
GJ!
続編
稀盆ヌ
ニコの嫉妬を極限値にさせてやってくださいw
例でいうと乱馬とあかねとシャンプーの関係みたいなry
なんとなーく読んでね、エロなし 1/3
ニコとロボはマキナに呼び出され地蔵堂にやってきた。
店内には、見知らぬ男がいる。
「あ〜おまえらか、
マキナの姐さんに呼ばれ、かなりのテダレと聞いたが。
フンッ ガキのおねえちゃんと頼りなさそうな男・・・
なあ、姐さん、本当にコイツら大丈夫なんですか?」
「社長!何なんですか、この感じ悪い人は!」
「・・・頼りないって」
「ちょっと、ロボ!ヘコんでないで何か言い返しなよ!」
「・・・お前!どうせまた、身の回りで怖い事とかおきて怖くて怖くて社長に泣きついて来たんだろう!
そうでなければ、殺し屋か?オレ達はな、こう見えても殺し屋には慣れっこなんだぞ!」
空しく響くロボの声、ニコは手探り状態で必死に走った日々を思い出す。
ゴン
男は「黙れ」と言いたげにテーブルに拳を落とす。
そして無言のまま椅子に座り、向い側をトン・トンと二人の座る場所を指差す。
「座れ」
「立ってたって話はできるでしょぉ」
「そうだ!偉そうに」
「す わ れ」
ニコとロボはすごまれ、渋々男の正面に座る。
キッチンにいた名梨もただならぬ雰囲気に社長の横に立ち、事の成り行きを見守っている。
「ああ、よっちゃん、いたんだ何?料理してたの?」
ロボの言葉に無反応の名梨。
「おい、須藤」
「ハイッ」
突然、本名で呼ばれロボは声を裏返らせ緊張する。
「呼んだだけだ」
「・・・」
状況の把握できないロボ。
フンッ
男は鼻で笑い、タバコに火をつけニコの前に煙を吐く。
「!」(ロボ)
「林二湖」
「社長、これは何なんですかっ何かのテストですか?っていうか不愉快です!」
男はニコの話など聞く耳持たずといった様子でマイペースで話す。
「林二湖、17歳、高校二年生。現在、スパイの相棒と交際中」
「なっなにを・・・いきなり」
キッチンにもどる名梨にマキナが聞く。
「よっちゃん、晩御飯は何?」
「今日はおでんです」
ニコとロボは自分たち以外の人物の動き・言動の一つ一つが、
何か自分たちを試そうとしていると疑心暗鬼になっていた。
「そうか、今日はおでんかぁ。
でもよう、マキナの姐さんにおでんは似合わねーな」
「そうかしら?そういえば、
よっちゃんが食事の支度をしてくれるようになっていろんなモノを食べるようになったわね〜」
「姐さん、あれぇ食べたコトあります?あれ何て言ったかな〜」
男はジャケットの中にある手帳を出そうとタバコを灰皿に置き、胸ポケットに手を入れる。
2/3
サッ、グググ
「なに?須藤 、ちゃん」
「煙をニコに、人に向けて吐くな」
ロボは男の吸っていたタバコを消し睨む。
「よう、須藤ちゃん、タバコはまだあるんだぜ?」
ロボの予想外の行動に動揺しタバコの箱のつもりで手帳をロボの目の前にチラつかせる。
「社長、失礼します」
「ああ、はい、え!?」
「よっちゃん、ごめん、これ捨てさせて」
「お、おう」
ロボは男のタバコの箱と社長のタバコの箱を取り上げ雑巾のように絞りキッチンのゴミ箱に捨て、
鼻息荒く椅子に座る。
「何それ、須藤ちゃん。それでオレに勝ったつもり?
何?なんならオレとこっち(殴り合い)で勝負するぅ?」
男は今までナメてかかっていた気弱そうな男に宣戦布告じみたコトをされ声を荒げる。
「そこまでよ、あなたの負け。落ち着きなさい!
本来なら勝ちも負けも無い話だったのに、何でそうなるの?」
「社長、不愉快です。
社長にどんな考えがあるのか分からないけど。
こんな・・・、社長もよっちゃんも、しかも知らない人まで遣って私たちを試すようなコトをして。
腹が立ちますっ!
よっちゃん!よっちゃんもこっち来て!速くっ」
「はいはい、そんな怒んなよニコ」
「そんなに怒るな?
社長はともかく、よっちゃんまで一緒になって・・・、仲間じゃないの?
私やロボが、こんな知らない人に馬鹿にされてるのに知らん顔しておでんって。
社長、もうスパイやめます!やってらんない!ロボ!帰ろっ」
「ニコ、落ち着けってぇ。話をすれば分かるからよ」
「よっちゃん、どいて!」
『ええ〜お前がこっち来いって呼んだのに〜』
「ニコ、待ってちょうだい
なにも、あなたたちを馬鹿にしようとか試そうとか思って呼んだんじゃないの」
「じゃあ、何なんですか?」
「この人、知らないわね?」
「知りません、知りたくもありません!」
「おいおい、随分嫌われちまったな〜」
「そりゃそうよ!あなたが二人を挑発するようなコトするから、こんなコトになったんじゃない。
ニコ、ロボ、この人は埋め屋」
3/3
「うめや?」
「聞いたコトない?容量が残り少なくなったスレを埋める仕事人。
レスに入り込み無理矢理、話を作ってしまうの」
「何でですか?放っておいてもその内埋まるんじゃないですか?」
「その内じゃ困るんだよ、容量少なくなったスレに投下して、
SSの途中でいっぱいになって1つの話が「スレ跨ぎ」ってカッコつかねーだろ?」
「だったら、こんな埋め屋さんなんか呼ばなくてもオレ達だけで何とかなるんじゃないの」
「何とかなるよ何とかなるけど、
お前ら二人ときたら「ニコがどうの」「ロボがどうの」って直ぐにノロケやがるじゃねーか!
ねえ、社長?」
「そう(頷きながら)」
「だから今回は埋め屋のオッサンに頼んでどっか他所でやってもらおうと思ったら・・・。
オッサン、ここでヒートアップしやがって。ったくよう」
「ニコにけむりをはくなぁ、ロボをばかにするなぁ」
マキナが茶化して言う。
「そんな言い方してないですよっ」
「そうだったかしら?ごめんなさぁい」
「どうやら、そこそこ埋まったようですね。私は帰らせてもらいますよ」
「勝手に帰ってちょうだい。目の前でノロケられ、スパイをやめるって言い出すはで散々だったわ」
「それでは失礼します」
「あ〜埋め屋さん!ちょっと待って」
ロボはキッチンに走りこみ、戻ってきて埋め屋に何かを手渡す。
「これ、すみません」
『こいつ、なんて真っ直ぐな目をしてやがるんだ』
「わるかったな、あばよ」
埋め屋は雑巾のように絞られもう吸えなくなったタバコを受け取り地蔵堂を後にする。
おわり
まだぁ?
書けるのぉ?
書き込めるんですかー?
オレ達はな、書きたがりぃなんだぞー!
新キャラ誕生だぁあああ!
埋め屋、最高
GJ!
まだ埋めが足りないようですぜ >埋め屋さん w
しまった、名無しに戻すの忘れた orz
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○ 。
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( ノ ) o あったかいネ・・・
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