【友達≦】幼馴染み萌えスレ14章【<恋人】

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1名無しさん@ピンキー
幼馴染スキーの幼馴染スキーによる幼馴染スキーのためのスレッドです。

■■ 注意事項 ■■

*職人編*
エロパロ板のスレですが、エロは必須ではありません。
ラブラブオンリーな話も大歓迎。
書き込むときはトリップの使用がお勧めです。
幼馴染みものなら何でも可。

*読み手編*
つまらないと思ったらスルーで。
わざわざ波風を立てる必要はありません。

前スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ13章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187193091/

12代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ12章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179023636/l50
11代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ11章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171471579/
10代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ10章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161975824/
9代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ9章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153405453/
8代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ8章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147493563/
7代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ7章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1136452377/
6代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ6章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1130169698/
5代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ5章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1117897074/
4代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ4章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110741092/
3代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ3章【<恋人】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1097237524/
2代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ2章【<恋人】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1078148899/
初代スレ:幼馴染みとHする小説
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1073533206/
2名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 13:17:27 ID:oxjuAFGG

*関連スレッド*
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第8章(派生元スレ)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1188575544/
いもうと大好きスレッド! Part4(ここから派生したスレ)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1188824773/
お姉さん大好き PART5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1186239004/

*これまでに投下されたSSの保管場所*
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/
3名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 13:18:05 ID:oxjuAFGG
次スレはレス数950or容量480KBを超えたら立ててください。
では職人様方読者様方ともに今後の幼馴染スレの繁栄を願って。
以下↓
4名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 14:21:49 ID:uFewZ5m1
>>1
乙!!
さて、『三人』と『その幼馴染み、驚異のメカニズム』の続きを待つぜ!
5終わりのエロ無し帰省ネタ:2008/01/01(火) 21:37:42 ID:VOsPewZf
前スレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187193091/435-436
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187193091/541-545
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187193091/608
の続きです。


無理やり今日投下に内容を合わせたという説もありますが、気になさらないでください。

では投下します。
6終わりのエロ無し帰省ネタ:2008/01/01(火) 21:38:33 ID:VOsPewZf
 結局、俺のクリスマスは熱と悪夢にうなされて終わった。
 ……それどころか、ようやく熱がある程度下がり、外を出歩けるようになった時には、
もう2007年が終わりを迎えようとしていた。
 だがまあ、そんな事は問題じゃない。
 問題なのは、その間ずっと、歌乃から何の連絡も無い事だった。
うちに様子を見に来るどころか、電話の一つもよこさない。
当然ながら、こちらからかけた電話にも、全く応答が無い。
「ちょっと、ヒロ。まだ熱あるんでしょう? 大丈夫なの?」
 まだ軽く熱と頭痛と吐き気と眩暈がしたが、何とか歩けるようになった俺は、
歌乃の家に行ってみることにした。
 日はもう傾き始めていて、一歩外に出ると、ダウンジャケットの下にも感じる程の冷たさが俺を包む。
「心配すんなって。五分かからねえんだからさ」
「もう……歌乃ちゃんの顔見るか、親御さんに会うかしたら早く帰ってくるんだよ?」
「オッケー」
「具合悪くなったらうちに電話するんだよ?」
「了解了解」
 お袋は心配そうにしていたが、俺は自分の事よりも、アイツの事ばかりが気になって、
軽く感じる熱も頭痛も吐き気も眩暈も、気にならなかった。気にする余裕がなかった。
 あの夜、考えてしまった最悪の想像。
 それを打ち消す事ができないまま眠りに落ちた俺は、その最悪の想像を夢に見た。
具体的な内容は何故かあまり覚えていなかったが、目覚めた時の最悪な気分と、
頬に残っていた涙の跡が、その夢がどういう夢だったかを、俺に教えてくれていた。
「……さぶ」
 まもなく新しい年を迎えようとしている街の空気は、ひたすらに冷たい。
 思いっきり厚着をしてきたはずなのに、寒さがしみこむように肌に突き刺さる。
 腕を組むようにして背中を丸め、俺は足を速めた。
 その冷たさによるものではない、そして熱によるものでもない寒気を、必死に振り払おうとするかのように。
「えっと、確かこっちだったよな」
 数年振りに向かう、歌乃の家。
 あの頃から、アイツはいつもあの大きな家で、半ば一人暮らしのような生活をしていた。
 たまに友達が来る事もあったようだが、学校からやや距離のある歌乃の家には、
本当にごく稀にしか、友達がやってくる事はなかった。だから、アイツは……家に帰ると、いつも一人だった。
 俺が夜、自分の家を抜け出して遊びに行ってやると、凄く喜んでくれた……ように、思う。
まあ、最後は俺がイジワルをして、むくれたアイツに追い出されるというのがお決まりのパターンだったりしたんだが、
翌日になるとアイツは何事もなかったかのようにケロっと笑っていて……。
 ……本当に、何があったんだ?
 心臓が早鐘のように鳴り響く、その音が聞こえるようだった。
 不安ばかりが募っていく。その募った不安を振り払う為に、俺はとうとう走り出した。
「……はぁ……はぁ……」
 頭がグラグラする。道が、まるで船の上に走っているかのように波打って見える。
まだ完全に風邪が抜けきっていない俺の足は、いつものスピードを出せない。
 次第に、目の前がボーっとしてきて、グラグラしていた頭はズキズキし始める。
 それでも、俺は走らずにはいられなかった。
 ほとんど歩くのと変わらないようなスピードで、それでも俺は走った。
 歌乃。
 歌乃。
 歌乃に――
 歌乃に――――
 歌乃に――――――会いたい!
 あの日自覚した俺の気持ちは、もうこれ以上無い程にはっきりと、俺の中に根付いていた。
 もう会えないなんて、そんな事があってたまるか!
 約束すっぽかして、俺に合わせる顔が無いって、家で塞ぎこんでるに決まってる!
 そんな事で――そんな事で俺が怒らないって事を、怒ってないって事を、直接会って
しっかり伝えてやるっ!!
7終わりのエロ無し帰省ネタ:2008/01/01(火) 21:39:02 ID:VOsPewZf
「はぁ……っ! はぁ……っ! ごほっ……く……はぁ……っ!」
 叫びの代わりに、吐息を吐き出し、吸い込み、時には咳き込み、俺は走り――そして、辿り着いた。
「……つい……た」
 俺の目には、陽炎の如く揺れているように写る、土壁の日本家屋。
 その二階が、歌乃の部屋だ。俺は、その部屋を見た。
「……点いてる、な……」
 いつも、アイツは一人であの部屋にいた。一人で、小さな卓上スタンドを灯して。
 そして、それは今日も同じ。
 そして、俺が下からアイツの名前を呼ぶと、アイツは窓から顔を出して、ニコっと笑って――
「……すぅ」
 俺は大きく息を吸い込むと……叫んだ。
「歌乃っっ!!!!」
 叫んで、俺は、アイツが顔を出すのを待った。
 だが……アイツは、アイツの部屋の窓は、開かない。
「……っ!」
 それどころか、それまで灯っていた小さな卓上スタンドの明かりが、消えた。
 つまり……歌乃は、間違いなく部屋にいる。
 やっぱり、俺との約束をすっぽかして、合わせる顔が無いと塞ぎ込んでた、って所なんだろうな。
「ったく……アイツは……」
 俺は文字通り頭を抱えながら、何気なく玄関の扉に手をかけた。
 当然、そこには鍵がかかっているから、何とかして歌乃に降りてきてもらい、鍵を――
「ぬぉ!?」
 ――扉は、ガラガラと音をたてて、あっけなく開いた。
 ……無用心というか何というか……。
 だが、これはむしろ好都合。
「……歌乃、入るぞっ!」
 俺は声をかけると、家の中へと足を踏み入れた。
 入ってすぐの階段を昇り、右に曲がる。まっすぐ歩いて、突き当りを左。
 その先にある部屋が、歌乃の部屋だ。場所は変わっていない。ひらがなで「かの」と
書かれた可愛らしいネームプレートがぶら下げてある所も。
「歌乃、いるのか?」
 声をかけても返事は無い。
「いるなら、返事してくれないか?」
 やはり、返事は無い。
 だが、気配はする。それに……何か、聞こえる。
「……歌乃?」
 これは……泣いてる、のか?
 しゃくりあげるような声が、微かに聞こえる。
「………………」
 俺はドアノブに手をかけると、ゆっくりと捻った。やはり、鍵はかかっていない。
「……入るぞ」
「駄目っ!」
 初めて返ってきた応えを無視し、俺は扉を開いた。
「歌乃」
「だめ……だめだよぉ……」
 そこに、歌乃はいた。
 ベッドの上で、小さく震える背中を俺に向けている姿が、月明かりに照らし出された。
「……怒ってないから、さ」
「……な、なんで……?」
 歌乃は、泣いていた。
 泣きながら、振り向いた。
 目は真っ赤に腫れ、頬には涙の跡が残り、髪もボサボサだ。
 だが、間違いなく、歌乃だ。
「ヒロ君……だってぇ、わたし……わたし、やくそくして……なのにぃ」
 目を擦りながら、しゃくり上げながら、歌乃は何とか言葉を継ぐ。
「……とにかく、俺は怒ってない。だから……あー、その、なんだ……泣くなよ」
「…………う」
8終わりのエロ無し帰省ネタ:2008/01/01(火) 21:39:47 ID:VOsPewZf
「へ?」
「うわぁあああああああん!!」
 歌乃の瞳から、珠のような涙がボロボロと零れ落ちる。
 な、なんでさらに泣くんだ……? 俺なんか変な事言ったか!?
「だから泣くなって!」
「らってぇ、らってぇ……ヒロくん、ひっく……ヒロくん、やさしくて……うぇえええん!」
 子供のように泣きじゃくる歌乃を前に、俺はオロオロとする事しかできない。
 あー、もう、面倒だっ!
「きゃっ!?」
 俺は勢いに任せて、歌乃を抱きしめた。
「ほら、泣き止め……な?」
「う、あ、え、あ、お、うー?」
 びっくりしたのか、歌乃は言葉にならない言葉を発しながら、顔を白黒させている。
しばらく、俺はそのままの体制で、泣き止まない子にをそうするように、歌乃の頭を
撫でてやった。
「……落ち着いたか?」
「………………う、うん」
一先ず、泣き止ませるという目的は達成したようだ。
「じゃあ……話してくれ。なんで約束守れなかったのかと、なんで今まで連絡もよこさず
 部屋の中で塞ぎこんでたのか。……理由、あんだろ?」
「………………言わなきゃ、駄目?」
「駄目。怒ってはいないけどな……心配したんだぞ?」
「う……そ、そうだよね。……ごめん、ヒロ君」
「聞かせて、くれるよな?」
「……う、うぅ」
 ……なんでそこで赤くなるんだ?
「言う……言うけど、その前に、その……ああっ、ちょっと待って!」
 歌乃はそう言うと、涙の跡を袖で拭い、乱れていた髪を整え、俺と真正面から向き合う
ように、ベッドの上に正座した。
「……理由を話す前に、ヒロ君に聞いて欲しい事があります」
「おう、なんでも聞くぞ」
「……………………すぅ」
 大きく、大きく、これ以上無い程に大きく息を吸い込み、歌乃は叫ぶように――
というか、叫んだ。
「私っ、ヒロ君の事が好きですっ!」


「………………へ?」
「……うわ、百年の恋も冷めそうな間抜け面だぁ……」
「え、いや、だって……え、ああ?」
「はぁ……ま、いいけどね。いきなりこんな事言われたら、誰だって驚くだろうし」
 それが告白であるという事にすら、俺はすぐには気づけなかった。
そして、気づいた瞬間、頭が真っ白になった。
思考が止まり、歌乃の言葉が脳内をエンドレスでリピートのヘビーローテーションな
JFKを来期先発陣が岡田監督目指せワールドカップはBby歌乃。
ああ、最早何がなにやら。
「……もう言っちゃったから、後にはひけないし、全部言うけど……あの日はね」
歌乃は少しだけ俯きながら、あの日……クリスマスイブの夜に、何故自分が
行けなかったのかを語り始めた。
「本当は、あの日、言うつもりだったの。前の日……その、ヒロ君が、あんな冗談言う
 からさ……もう、これは思い切って告白して、駄目なら駄目で諦めようって思って、
そんで約束したんだけど……なんか、怖くなってきちゃって、さ」
「歌乃……」
「……断られたら、もう仲のいい幼馴染でもいられないんだ、って。家に帰ってから、
 それに気づいちゃって……もう、それが、凄い……凄く、怖くて……行けなくて……。
電話も、できなくて……かかってきた電話もとれなくて……家にも、行けなくて……
どうしよう、どうしようって、ずっと一人で考えてて……何もできないまま、部屋に閉
 じこもってて……自分勝手だよね……弱虫だよね……こんな私なんか……ヒロ君も、
 きっと……私の事なんか、もう嫌いに」
9終わりのエロ無し帰省ネタ:2008/01/01(火) 21:40:03 ID:VOsPewZf
「ならねえって」
 俺は、歌乃の自分を責める言葉を遮った。
なんだよ。
こんな簡単な話だったなんて。
「嫌いになんかならん。だいたい、勝手に人の感情まで決め付けてくれるなよ。それこそ
 自分勝手の極みじゃないか?」
「う……ご、ごめん」
「いや、違う……そうじゃなくてだな……俺もお前に言う事があるんだ」
「……?」
「……この前『冗談だ』って言ったろ? なんか、そのせいで色々お前を悩ませちまった
 みたいだけど……あれが『冗談だ』っていうのが、ホントは『冗談』なんだ」
「………………???」
 ……遠まわしだと、さっぱり伝わらないらしい。
 まあ、俺もはっきり言われるまで、さっぱり気づかなかったんだし……同じか。
「……つまりだなぁ……俺も、その、な……好きなんだよ、お前の事が」
「………………」
 あ、ポカーンとしてる。
俺も似たような顔をしてたんだとしたら、そりゃ確かに間抜け面だ。
「だから、本当はあの時……本気だったんだ。冗談なんかじゃなくて。お前から連絡が
 来ない間、お前に何かあったんじゃないかって……お前がいなくなったらどうしよう、
 って……そんな事ばっかり考えてた」
「え、いや、だって、それって………………」
「驚くべき事に、俺達は両想いという事になるらしい」
「……私が、ヒロ君を、好き」
「うん」
「……ヒロ君が、私を、好き?」
「うん」
 唖然としたまま固まっていた歌乃の表情が、次第に崩れていく。
驚きから、喜びへと。
「……………………う」
 そして――
「うぇぇぇええええええええええええん!」
 ――歌乃の両の目から、再び溢れ出る、涙。
「……泣くなよ、歌乃」
「らってぇ……ホッとして……うれしくてぇ! なによー! もぉ、バカぁ!」
「俺だって、イブの日に会ったら言うつもりだったんだぞ?」
「そんなのしらないもんバカぁ! いままれ一人でうじうじしてた私もバカだけどぉ!」
 言葉とは、そして両の瞳から溢れるものとは裏腹に、歌乃の顔には笑顔が浮かんでいた。
「もう、バカぁ! ヒロ君のバカぁ! けど……けど、大好きっ! わぁぁぁぁんっ!」
「……いつから?」
「ずっとぉ! ずっとだよぉ! なのに……なのに、ずっと気づいてくれなくてぇ!
 でも、やっと……やっと……うわぁぁぁあああああん!」
「そっか……気づいてやれなくて、ごめんな」
 ずっと……ずっとか。最初から、ずっと歌乃は俺の事を想ってくれてたのか。
「歌乃……」
 嬉しさが溢れて涙になっている、そんな、幸せそうな泣き笑い。
それだけ、歌乃が俺の事を想っていてくれたんだと、くれているんだと思うと――
「ひゃっ!?」
 知らず、笑顔で泣きじゃくる歌乃を、俺は抱きしめていた。
 服の上からでもわかる、女の子らしい柔らかい身体が俺の腕の中に収まる。
さっき泣き止ませる為に抱きしめた時には感じなかった、歌乃の『女』を妙に意識して
しまい、俺は自分の鼓動が次第に高鳴っていくのを聞いたような気がした。
 鼓動の導くがまま、俺は口を開く。
「『冗談』の続き……しても、いいか?」
 驚きが、歌乃の涙を止める。残ったのは、笑顔。
「……いいよ。ヒロ君なら、いいよ」
 穏やかな笑みと、涙の跡はそのままに、歌乃は瞳を閉じた。
「歌乃……」
10終わりのエロ無し帰省ネタ:2008/01/01(火) 21:41:18 ID:VOsPewZf
 俺は、歌乃の両肩に手を置き――ゆっくりと顔を歌乃のそれに近づけて――
――あれ?
 歌乃の顔が、歪む。
あれれ?

なんで

            めのまえ、が

      まっしろ


                      に?

















まあ、率直に言って、歌乃と口付けを交わそうとした、その瞬間――俺はぶっ倒れた。
 次に俺が目を覚ました時、そこは歌乃の部屋でもなければ、俺の家でもなかった。
病院のベッドの上。横を見れば、心配そうに俺を覗き込む歌乃の顔があった。
倒れた俺は、歌乃が呼んだ救急車で運ばれ、念の為2日程入院する事になった。
 ……まあ、治りきったわけでもないのに全力疾走してれば、そりゃ風邪もぶり返すわな。
歌乃を抱きしめた時に感じた鼓動も、半分くらいは風邪による動悸だったのかもしれない。
 ちなみに、気を失っている間に年は明けたらしい。なんつう正月だ。体調自体は、
点滴したりでもうほとんど快調に近いんだがなー。
「もとはと言えば、私がヒロ君との約束守らなかったから、ヒロ君風邪ひいちゃった
 わけだし、あの日も無理して私の所に来てくれたんだしね?」
「……いや、まあ……すまんな、歌乃」
「それは言わない約束だよおとっつぁん」
「誰がおとっつぁんやねん」
 そう言って笑う歌乃は、もうすっかり元の明るさを取り戻したようだった。
「しかし……クリスマスも正月も、こうやってベッドの上か……」
「クリスマスとは違うでしょ?」
「……だな」
 そうだ。クリスマスの時とは違う。
不安に駆られて悪夢を見る事は、もう無い。横に……コイツがいてくれるから。
「それに……なんだかんだで、二人きりでいられるしねー」
「……恥ずかしい事言うなよ」
「……えへへ」
「俺が治ったら、二人で買い物行こうな」
「買い物?」
「ああ……一週間くらい遅くなったけど、クリスマスプレゼント。何が欲しいか
 わからなかったから、イブに一緒に行こうと思ってたんだ」
11終わりのエロ無し帰省ネタ:2008/01/01(火) 21:41:56 ID:VOsPewZf
そんな俺の言葉に、歌乃は意外にも首を横に振った。
「……いらないよ」
 嬉しそうに、照れくさそうに、笑いながら、歌乃は俺を見つめている。
「……なんで?」
「……だって、もう……一番欲しい物は、ここにあるから」
「そっか」
 釣られて笑みを浮かべながら、俺も歌乃を見つめた。
「俺もだよ、歌乃。……最高のクリスマスプレゼントが、ここに、ある」
 きっと俺も、嬉しそうに、照れくさそうに、笑みを浮かべているのだろう。
今日、この瞬間、俺達は二人とも最高のクリスマスプレゼントを貰ったわけだ。
「……けど、風邪治ったら、したい事は……あるよ?」
「そっか……俺もだ」
 皆まで言わずとも、それが何かはわかっている。
俺も、歌乃も。
「実は……ちょっとだけ、今でもいいかなぁ、とか思ってたりして……」
「……風邪、うつるぞ」
「うつったら……ヒロ君のは治るでしょ?」
「今度は、俺が看病する番か?」
 言葉を一つ一つ紡ぐ度に、少しずつ近くなる俺と歌乃の距離。
ベッドの上に上がり、膝を立てた歌乃の肩に手を置き、俺は歌乃の目を見た。
その丸くて大きな瞳が、瞼に少しずつ隠されていく。
それを確認すると、俺は――段々と顔を歌乃のそれに近づけて――
「佐野さん、検温ですよー!」
 ――瞬時に開く、俺と歌乃の距離。
だが、真っ赤になった俺達の顔と、何故かベッドの上に正座している歌乃を見れば、
俺たちが何をしようとしていたかは一目瞭然だろう。
「おや、お邪魔でしたか? けど、そういう事はちゃんと治ってからにしてくださいねー」
 看護師さんはニヤニヤ笑いながら体温計を俺に手渡すと、
「じゃ、計り終ったらコールしてくださいねー」
 そう言って、何故か颯爽と帰っていった。
「………………」
「………………」
「……そ、そうだよね! ちゃんとヒロ君が治ってからにしよう、うんっ!」
「だな。焦らなくても、いいよな」
「そうだよ! これから、時間はいっぱいあるんだし。……ずっと、ずっと好きだったん
 だから、これからずっとずっと……幸せにしてくれなきゃ、嫌だよ?」
「……ああ、わかってる。約束するさ」
「……嬉しい。私も、ヒロ君に幸せになってもらえるように頑張るね」
「お互い、幸せになろうな……って、冷静になってみると、なんつう会話してんだ俺らは」
「ちょ……今更照れないでよ……こっちまで恥ずかしくなるじゃない……」
「はは、わりぃわりぃ……お」
「あ」
 その時、俺達は二人同時に気付いた。
「……雪、降ってきた、ね」
「……雪、降ってきた、な」
 雪が、降り始めた事に。
俺と、歌乃の、本当の始まりを告げるように。
俺と、歌乃の、これからを見守るように。
「あ、そうだ言うの忘れてた」
「何?」
「あけましておめでとう。そんで……メリー、クリスマス」
 今日言わなくてはいけない言葉と、あの日会えず、言えなかった言葉。
その二つが、俺達の幸せを物語っていた。
そりゃ幸せさ。なんせ、正月とクリスマスが、最高のプレゼントと一緒にやってきたんだから。
「うん……あけまして、メリークリスマス!」
                                                   〜終わり〜
12終わりのエロ無し帰省ネタby唐突に(ry:2008/01/01(火) 21:42:22 ID:VOsPewZf
ここまで投下です。
13 【中吉】 【1862円】 :2008/01/01(火) 23:45:17 ID:Pdu32YQh
あけおめ
>>6 年越しGJです
新年早々ハラハラしました
14名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 00:24:17 ID:8BHnlqa/
素敵でした…
15名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 02:47:25 ID:453aGYGl
クリスマスの待ち合わせに来ないというネタだとイブ(24日)をクリスマス(25日)と
間違えてたっていうベタなネタでくるかと思ったら、そう来たか
何はともあれGJ
16名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 02:02:36 ID:jlQ8Y80H
>>6 乙です
微笑ましいです
17名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 04:09:51 ID:hPVfcmeS
18名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:43:33 ID:APa8ubkl
どうも、優也と友梨の作者です。
これはネタが被ってしまったことで俺的黒歴史に入りかけてたから……
でも前スレを見たら好きでいてくれた人もいたみたいなのでまた書き始めました。
とりあえず、出来たかな?と思うので投下してみます。
19名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:44:53 ID:APa8ubkl
 彼女の事だから昼前には連絡が来ると思ってた。ところがどっこい今は午後二時。
 昼飯くらいは一緒に、と思ってたんだけどな……
 まぁ、しょうがないか。あくまで、俺が考えたものだしな。
 とりあえず、メールくらいは送っておこうか。
 
 気付けば午後二時。
 シャワーを一時間(も)浴びて、何を着ていこうかを悩み始めたのは午前八時半。
 勝負下着で行くかどうかを決めたのは九時半。優也は黒が好きだから、黒の勝負下着に決めた。
 スカートかズボンかは、スカートが勝利。これは十時。ロングスカートに決めたのが十時半。
 上着は彼が「似合ってる」と言ってくれたこともある着慣れたものか、新しく買ったものか。
 人生は挑戦。新しく買ったものに決定。
 ここまでで十二時。
 それから、化粧をいつも通り薄くするか、それとも少しだけ気合いをいれて口紅くらいは濃くするか。
 髪はいつも通りか、結んで行くか。
 そして今、靴をどうするかと悩んでいて、ふと時計を見ると午後二時。
 お昼御飯を、あわよくば夕飯も一緒に食べて……そのまま、私も食べて貰えたら……ってな、何を考えて…
 で、でも、結婚報告が最高のプレゼントだ。とかは親に何回も言われてるし、そろそろ…しちゃっても……
 唐突に流れ出す有名なラブソング。
 着メロ。しかもこの曲なら
─優也だっ!
 出来るかぎり早く携帯を取り出して、見る。
『まだ出なくて良いのか?』
 これだけ。
 優也から来るメールは無条件で嬉しいし、保存確定なのだけどさすがに思わずにはいられない。
─こっちの気も知らないで……
20名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:46:43 ID:APa8ubkl
 
『そろそろ来て』
 彼女からの返信。
 少しばかり短い気もするが、あのメールじゃこれくらいしか返答出来ないか。
 それじゃ、迎えに行きますかね。愛しの人を。
 
 友梨を乗せて、法定速度内で道路を走る。目指すは近隣市内の百貨店。特に急ぐ用でもない。
 信号はたまにある程度で、そこで曲がれば何分かは直線が続く田舎道。そんな道が、俺は嫌いじゃない。
 少し離れた市に通勤して、田舎で日常を過ごす。そんな生活が、俺は好きだ。
 何より彼女が、側に居てくれるから。
「何を買う気なんだ?」
 一応付き添いとして、それくらいは聞いてもバチは当たらないだろう。
「腕時計、かな。だいぶ古くなってるみたいだから」
「あれ?おじさんがおばさんから貰ったっていまだに自慢してるの、なんだっけ?」
 青信号、右に曲がる。
「ネクタイ、真っ黒のね。いっつも付けてくの。いい歳して、まだまだデレデレだから」
「今度の誕生日でなんぼだっけ?五十くらい?」
「うん、丁度五十歳。二人ともね。結婚生活二十六年」
「丁度、歳は俺らの倍か。てか、二十四で結婚してんのか」
「うん、私達二十五歳、もう過ぎちゃったよ」
 助手席で彼女がクスクスと笑っている。
「はぁ、そろそろ結婚とか、考えないといかんのかね?そういうの、苦手なんだがな……」
 車が多くなってきた。市が近い。赤信号、止まる。
 少しだけ、ほんの少しだけ、彼女を覗き見る。目に見える変化はない。
「あの、さ……」
 彼女が呟く様に言う。
「……なんだ?」
 少し、ドキッとする。
 少しの沈黙
 耳をつんざくようなクラクション。後ろの車から。いつの間にやら信号は青。
「やばっ」
 急いでアクセルを踏む。真っ直ぐ直進。
 気まずい沈黙。
「も、もう、ちゃんと前見なきゃダメだよ?」
 明らかに誤魔化しを含んだ叱責。
「悪いな」
 その誤魔化しに俺は乗るしかない。
 その先を聞くのが、恐かったから。
21名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:48:02 ID:APa8ubkl
 
 考える必要なんて無いのに。
 だってすぐ横に、今までずっと側にいて、この歳になってもまだ純潔を守って、君の事を大好きな女の子がいるんだよ?
 それともなに?君の目はそんな女の子が見えないくらい老眼なの?
 
「ところで軍資金は?」
「二万円、高すぎてもあれだけど、安すぎても、ねぇ?」
「ねぇ?って聞かれてもな。ま、妥当なとこじゃないか?」
 そんなことを言い合いながら百貨店の時計屋へ。
 「お手頃品も高級品も、この店で」の売り文句通り、子供用からそこらの金持ち用まで数多く取り扱っている。
 五万を越えるような腕時計は完全無視、一万から二万の範囲で探す。
 探し始めてから十分ほど。
「……こんなのどうかな?」
 そう言って友梨が指差したのは、時計から腕に巻く部分までメタリックシルバーで統一された一万強の腕時計。
「ちいっとばかしピカピカしすぎじゃないか?それなら、俺はこっちを勧めるな」
 そう言って俺が指差すのは時計盤がシルバー、腕に巻く部分は黒い革で作られた腕時計。
「…君の趣味も混じってるでしょ?」
「…分かるか?」
「うん、なんとなくね」
 彼女が笑顔で答える。
22名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:49:29 ID:APa8ubkl
 
 君の趣味は分かってるつもりだよ。
 派手な色は苦手、黒とかの暗い色が好き。
 ホントに小さいときから、二十年以上君の横にいるんだから、君を見てきたんだから、分からない訳ないじゃない。
「で、どうかな?」
「良いとは思うけど……二万円越えちゃってるし………」
 彼が指差した時計は二万七千とちょっと。
 買えなくは無いけど、それじゃあ流石に財布の中身に影響が出てくる。
「そのくらい俺に出させろ。一応金は持ってきてんだ」
「え?でも……」
「おじさんには小さいときから世話になってるからな。お礼だよ。お礼」
 ちっと少ないけどな、と言いながら彼は笑う。
 彼は律儀だ。律儀で、優しくて、ちょっとだけイジワル。
 そんな優也が好き。そんな優也だから好き。
「ほれ、そういう訳で、買え」
 そう言って一万円札を差し出してくる。
「……うん」
 店員を呼び、この時計を買う旨を伝える。
 
「はい」
「んあ?」
 俺の目の前に差し出されたのは千円札が二枚と硬貨数枚
「さっきのお釣り」
「あぁ、別に良いって、そんくらい」
「でも……」
 律儀なもんだ。見習いたいくらいだね。
「んじゃ、外の店で軽くなんか食おうや。そんな何千も使う店じゃないから、二人でもそんくらいで間に合うだろ」
 そういって俺が口に出すのは全国に店舗を持つ有名なファーストフード店の店名。
「……だね。うん、食べよう!」
23名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:51:10 ID:APa8ubkl
 
 周りにいるのは高校生らしき団体やカップル。
 周りから見たら、俺たちはどう見えるのだろうか?
 友人?親友?恋人?夫婦?
 後に上がるものほど、現実味が無い。
 そうなれたら良いな。と、そうは思える。だが、そうなるために踏み出す勇気が無い。
 分かっている。友梨は魅力的な女性だ。何もせずに俺の隣にいつづけてくれる筈がない。
 だからこそ─
「うぅ……」
「……どうした?」
 ハンバーガーの最後の一片を口に放り込む。
「多い……」
 彼女はまだ半分程しか食べていない。それでも多いのか?
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない……」
 そう言ってストローをくわえてドリンクを飲む。
「……無理なら食べてやるぞ」
「ホン、ト……?」
「こんな嘘つくかよ」
「じゃ………その……お願いします…」
 彼女から残りを受けとる。心なしか頬が赤い。
「顔赤いぞ?どうした?」
「え!?……そ、そう?」
「うん、だいぶ」
 
 予想外のところで、デートみたいな流れになっちゃったんだから、しょうがないじゃない。
 それにだって、私が残したのを食べるって事は、かん、その……か、間接キ、ス……
「ちょ、ちょっとここが熱いから、かな」
「ああ、確かに。外に比べたらな」
 そう言って彼は、私が残したものを頬張る。
「ん……こっちのも美味いな………どうした?」
「……………」
 わ、私が食べてたものを、つまり、私の唾液、とかがついちゃったのを、彼が飲み込んでる訳で……
「おい?」
「ひゃい!?」
 つい、すっとんきょうな声をあげてしまう。
「………どうした?」
「な、なんでもない!なんでもないよ!うん!」
24名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:52:53 ID:APa8ubkl
 
「しっかし、お前ってあんなに少食だったか?」
 ブレーキ。左折。アクセルを踏み込む
「む、なに?私はもっと大食いだっていいたいの?」
 そのむくれた様な言い方につい笑みがこぼれる。
「そんなんじゃねえよ。ただ、あれはいくらなんぼでも少ないだろ」
「そう?結構大きいのだったよ?」
「そうだったか?」
「そうだよ」
 彼女の笑顔は、綺麗だ。それをずっと隣で見続けていたい。
 信号は青。真っ直ぐ行くと友梨の家、右折で俺の家。直進。
「…えっ!?」
「………なんかしたか?」
「え、あ、えと、その、ど、どこ、行くの?……」
「どこって……帰るんだからお前さんの家だろ。それ以外あるか?」
「…その……やの…………とか…」
 よく聞こえない。
 
「…その…優也の…部屋、とか…」
「なに?」
「な、なんでもない……」
 女の子にこういう事言わせるのはずるいと思う。
 少しくらい、そっちから誘ってくれてもいいじゃない。
 さすがに今までのスルーっぷりを思い起こすと少し苛立つ。
 だいたいそうだよ。いつもいつも赤面するのは私で、彼はいつもそれを見てニヤニヤしてさ。
 いや、まあ、その、そんな笑顔も、まぁ、その、好きだけど、好きなんだけどね……
 私の気持ちにも全然気付く様子は無いし……
 でも、好きって想えてる事が、幸せで、彼の側に入れることがまた、幸せで……
「友梨?」
「ななななに!?」
「……着いたぞ…さっきからどうした?」
「な、ナンでもナイよ」
 テンパった。
 この際、片言なのは許して欲しい。
 なんでもないなんでもないと連呼して恥ずかしさを誤魔化しながら車を降りる。
「今日は、ありがと。じゃあ、ね」
 小さく手を振る。
「はいよ。あ、そうだ」
「どうかした?」
「その服、似合ってるぞ」
 油断したところに言葉と笑顔のダブルパンチ。彼は手を振り、そのままアクセルを踏み込んで車を発車させる。
 
 数分後。
 立ちっぱなしでニヤニヤしながら虚空を見上げ、ブツブツと何かを呟いている不審度全開の私を、母が発見した。
25名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 02:57:59 ID:APa8ubkl
投下終了
 
数ヵ月も置いといて一日しか進んでない点は、うん、ごめんなさい。
 
誤字脱字がなかったらいいな。書き続けれたらいいな。常留スレのネタも進めばいいな。
26名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 03:32:58 ID:Nt4pCiDT
GOD乙!
27名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 09:42:36 ID:MmaD1BhW
>>25
GJ!
相変わらず上手いね。常駐スレの作品も楽しみに待ってる。
28名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 01:59:11 ID:NQB8Xy/2
>>25
イイネイイネ  続きが気になりますわぁ

常駐スレってどこなんだろ  そっちも気になる
29名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 10:33:58 ID:mEUD0NsR
ほしゅ
30 ◆NVcIiajIyg :2008/01/13(日) 05:23:15 ID:YFKyPicU
なんか変なあれですが書いてしまったので投下します。
珍味ということで箸休めに僅かでも楽しんでいただければ幸いです。
31 ◆NVcIiajIyg :2008/01/13(日) 05:24:13 ID:YFKyPicU
メリマルの幼馴染みは出稼ぎに行った。
ずた袋ひとつ抱えて、12の歳に出稼ぎに行った。

メリー・マルー。ぼくはいつか帰ってくるよ。
きっとおまえみたいなノッポのグズは誰も貰ってくれないんだろうから、お金持ちになったぼくが結婚してやる。

そんな格好いい台詞を残して人買いに売られていった。

――そう。
あれは人買いだったのだと今なら分かる。
出稼ぎといったってきっと帰ってはこない。
お金を数年送り後は途切れて戻ることはない。
女性一般のそれより高いが、しかし大抵の男性よりは既に低くなった背丈がウインドゥに映っている。
肩でまとめてとめた髪は、朝風に吹かれてほつれている。
雲の流れる冬空を仰ぐ。
落ち葉を掃く箒もそろそろ雪掻きスコップに取り替えなければならない時期だ。
太陽も地平線から離れ、今日も店を開ける準備であわただしい。

メリマルの家は生活に必要な団子を売る店だったので、食べるだけならどうにかやっていけた。
一方幼馴染のイノコウダは煙草栽培の7男で、食い扶持を減らすための最初の手段だった。
だからあの口約束も忘れていい。
本当は忘れていいはずなのだった。
隣村の五穀商人に結婚を申し込まれても、断る理由なんてなかったのに。
「イーノが夢になんか出るからだよ」
呟いて箒に手を載せ、顎を預けた。
溜息はほんのり白かった。


(1)

32 ◆NVcIiajIyg :2008/01/13(日) 05:42:03 ID:YFKyPicU
あれ、書き込めない…連投していたら大変申し訳ありません。
エラーでなくなったら戻ってまいります。
33「花と煙」2/3 ◆NVcIiajIyg :2008/01/13(日) 05:47:27 ID:YFKyPicU
大きな池がある山間の街は、冬も霧が深くなる。
出て行くものが多くて、入ってくるものは少なく、帰ってくるものはさらに少ない。
最近は地元の客も少しずつ減ってきている。
波も途切れてきたので、メリマルが病気の父の薬代が幾ら余っているか落書きのように計算をしていると、ストーブの火が揺れた。
ベルが鳴る。
「はい」
「やあメリー。おひさっし。郵便だよ」
「お久しぶりって、昨日も会いましたよね?郵便ないのに」
席を立つと郵便屋だった。
最近は郵便物がなくてもなぜか立ち寄ってくる。
昔はいじめっこのお兄さんだったのになんてことだろう。めんどうくさい。
途中でちりとりに躓いて、でもなんとか転ばずにやり過ごしてドア口まで歩み寄る。
「メリー宛てだよ。珍しいね」
陽気に手を伸ばしてくるので後ろに一歩下がってかわした。
(こういうときには流石に転ばなくなった。
 彼女も我ながら進歩だ!と密かに自負している。)
見覚えのない筆跡に眉をひそめて、裏返して糊付けの痕を丹念に確認する。
「ホック兄さん。まさか、中身見てないでしょうね」
「うわ、何疑ってんの。見てないぜ。もうここクビになったら終わりなんでさぁ」
同じくらいかやや上の背丈をちらりと見やり、メリマルは肩をすくめた。
前に別の小包配達人に中身を見られたことがあるのだ。
ホック兄さんはしかし、どうやら本心から見ていないようだ。
そういうところはまともらしい。
「外、寒いでしょう。お茶でもいかがですか」
「おお嬉しい。嬉しいなあ。心がもう温まった」
「おおげさです」
「しかし今日は霧が濃いね。きっとこれから数日、郵便も人の出入りも止まるだろうよ。」
寂しい?寂しい?と言いたげな顔がうざかったので前言撤回、つま先で蹴りだした。
昔はブスだのグズだのいじめてきたくせに。
村に同年代の独身女性が少なくなってきたからだろうか、調子がいいにもほどがある。
34「花と煙」3/3 ◆NVcIiajIyg :2008/01/13(日) 05:49:04 ID:YFKyPicU
とはいえ、寒いのも本当なので一応入れていたお茶を保温容器に入れて窓から渡してやった。
去っていく姿も桐ですぐに見えなくなった。
もう一度封筒を眺めて、彼女は窓を閉めた。
桟が古く、閉めるたびにギリギリと軋む。

メリマルは精算台の椅子に戻り、あまり見たことのない柄の封筒を裏返した。
差出人がなかった。
「んー」
見つめて、悩む。
宛先の筆跡もどう考えても見覚えがなく、どうしたものか悩んでとりあえず机の端に放っておいた。
冬の訪れはいつでもゆっくりだ。
じわじわと、気づいた頃には深みに嵌って春を待つばかりの厳しさは、
人の生きる様にも似ているのだ。だから冬が訪れる前には覚悟をしなさい。
仕立て屋の老人がいつかそう言ったのを思い出した。






『親愛なるメリー・マルーカ

 契約期間が終わった。
 帰ろうと思う。

      イノー・コウデロイ』


腰を抜かすとはこのことだ、と台所にへたり込んでメリーは手紙をくしゃくしゃにした。
夕餉の鍋がことことと湯気を吹き上げ、猫のククがそれを狙っているのを目端に見ても何の力もわかなかった。
35 ◆NVcIiajIyg :2008/01/13(日) 05:50:41 ID:YFKyPicU
途中変なのが入ってすみません。
続きは時間の出来ましたときに、また。
36名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 07:26:41 ID:aV43IrXM
確かに珍味ですな・・・
なんというかとても独特な世界(イメージ的には中世ヨーロッパ)みたいな感じだな。
つまり人買いに買われた幼馴染みの男が戻って来るってことだよな?
これからに期待してます
37名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 04:24:43 ID:vUz2QnXo
お、◆NVcIiajIyg氏ではないですか、お久しぶりです。
氏の文が個人的嗜好に一番マッチするので期待しておりまっす。
38名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 07:07:52 ID:+ClKIEAo
今日は成人式、楽しみで昨日からムラムラして眠れなかったから少し書いてみた。
もし良いことがあったら帰宅後妄想の塊をうpします。
3938:2008/01/15(火) 01:14:53 ID:KW0ckO/g
うわああああ、もう寝る。
40名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 02:30:30 ID:0+LW7emN
何があった?
41名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 06:20:07 ID:GQEip1Z4
投下がうまくいかない、というのであれば、
最近エロパロスレに導入された規制に引っかかった可能性がある。

・22行以上ある長文を投下する際、最初の一行目が『空白の改行』だったばあい、AA嵐とみなされて投下スルーされる。
・回避するには、冒頭の一行目を『全角スペース』にするか、空白改行無しで本文に突入する。
42名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 01:56:07 ID:wmxefaHY
>>35
うわー、お久しぶりです。嬉しいなあ。
ふらりと現れて下さるのを心待ちにしていました。
時間ができたら続き、待っていますよ。
43名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 08:09:46 ID:9OSri5do
報告です。
前スレに三人がきてます。お帰りなさい。
そしてGJです。
44名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 06:18:46 ID:q6ZhXnmH
45 ◆NVcIiajIyg :2008/01/19(土) 23:28:08 ID:9ge56B0f
>>31-34の続きです。
46「花と煙 第二話」1/4 ◆NVcIiajIyg :2008/01/19(土) 23:30:28 ID:9ge56B0f
 
イノコウダの話をしよう。
正式筆記名称はイノー・コウデロイ、通称はイノー、煙草農家にできた予定外の七男で末子だった。
彼の攻撃的で世話焼きな性格と小柄でがりがりの身体には出自が深く関係している。
出自故に、献身的な溝鼠(どぶねずみ)になったといってもいい。

――雲が重く、火山灰が冷害を起こした、よりにもよって大凶作の秋だった。
食い扶持の増加はコウデロイの家にとって大打撃だった。
既に上の六男を養子にまで出したというのにと両親は嘆息して食べ盛りの長男次男は憤り、
仕事の増加に長女は水でひび割れた手肌を晒して祈った。

ああ、生まれなくても良かったものを。

イノーが卑屈にならなかったのは奇跡というほかない。
両親が嘆きつつも彼を外に出さなかったことが善悪どちらに傾いたかは分からない。
少なくとも、末っ子で厄介者の少年は兄姉を見返したい一心で戦い抜くことにした。
侮ってくる同世代の友人たちを必死に制圧して食料を確保し、空いた時間で家の仕事をできる限り手伝った。

疲れると、友人のところにたびたび通った。
団子他、主食となる穀物を扱う店によく使いにやらされた少年は、
メリー・マルーカという少女がいつもお茶をくれることに気づいた。
初めて舌足らずな「イーノ」という呼び方で笑いかけられたときには、なぜだか急に泣きたくなったのだった。
初めての友人がメリーだった。

――イノコウダは12の歳まで畑と家の手伝いに明け暮れた。
暦が一巡りし、虫の大群が空を暗く染めて十年ぶりに不作の兆しがやってきた。
少年は、畑より楽で稼ぎのいい仕事を両親に紹介された。
そうして、いつか少女を迎えに来るために見知らぬ大人についていった。
育ち盛りの溝鼠が体よく厄介払いされたことに気づいたか、定かではない。


イノコウダの少年期は以上である。


(2)

47「花と煙 第二話」2/4 ◆NVcIiajIyg :2008/01/19(土) 23:32:01 ID:9ge56B0f
雨音が屋根を打ち、薬缶が湯気を吹き上げている。

「メリー。酒はないんか」
しわがれた父の声に、メリマル―正式筆記名称メリー・マルーカは現実に引き戻された。
父は俯いている。
咳が掠れ、薄い髪が抜けて肩に落ちた。
猫のククがおかずを横取りしようと前足を膝元にかけている。
「もうないよ。お医者さんが言ったじゃない。お酒を飲んではいけないの」
「そうかね」
野菜汁を音を立てて啜り、老いた父は余計に小さくなった。
メリマルは干魚の包み焼きをつついて黙殺し、我慢してもらった。
父は老いた。
物心ついて初めての凶作のあと、母が父のとろさに愛想をつかして出て行った。
以来二人暮しをしていたが、身体を壊してから父は妙に頼りなくなった。
煙草はやめたものの、酒には懲りずに手を伸ばすのでそのたびメリーが取り上げる。
至極頼りないとは思っているが、自分も似たところがあるためか母のように見切ってしまうこともできなかった。
結局、今は自分中心に店を何とか切り盛りしている。
イーノが帰ってきたらきっとびっくりするだろう。
魚の骨を飲み込んだ気がしたが、錯覚だった。
そう、イーノだった。
彼は読み書きができなかったはずだ。
だから、本当に彼からの手紙なのか分からない。
不安と興奮とがない交ぜになったまま胃の中に沈み、
いつもの日常をこなすことで現実逃避をしている気がした。
足首に爪を立てるククの喉元を撫でて宥める。
「お父さん」
「なんだね」
「昔、お使いに来てた男の子、いたじゃない。コウデロイさんのところのイノー」
猫を抱き上げることで父の視線を逸らした。
胸の隙間で肉球が暴れる。
「あの小坊主が、どうかしたんかい」
「帰ってくるらしいよ」
口にすると薬缶の湯気にまぎれた。
父は、喉元で唸った。
信じていないのは分かる。
メリマル自身も、半信半疑のままだったのでよく分かった。
嬉しいような気もしたけれど、うきうきするには実感がなさ過ぎるのだ。
猫を片腕に抱いたまま、薬缶を取り上げるために椅子を立った。
お茶っ葉を取り、雨漏りをふさいだ跡を見上げる。
このくらい雨音が弱くなると、とうとう季節も冬に近づく。
48「花と煙 第二話」3/4 ◆NVcIiajIyg :2008/01/19(土) 23:33:15 ID:9ge56B0f
 
手紙が来てから幾日か後の夕暮れ前、店の窓を伝う水滴がみぞれに変わった。
本格的に雪になる前に買出しに行くことにし、コートを羽織ると外に出た。
一旦看板を裏返す。
傘の下で息が染まった。
イーノはまだ帰ってこない。
もっとも都会からここまで、どのくらいかかるかも分からないものだから指折り数えることもできないのだった。
分かりそうなのは一人いるが、最近急がしいのか探しても中々会えない。
八百屋と豆屋と雑品堂を巡ってから、お昼を済ますために街中の店に入った。
人の多い時間から多少ずれていたので席が幸運にも空いていた。
しかも例の探し人が立ち上がって目立っている。
耳の下辺りでくせのない髪を切りそろえ、大雑把な格好をした少女が分厚いメモ帳を振りかざして熱弁していた。
向かいでは子供といってもいいくらいの大人しそうな少女が黙々とお粥を食べている。
その隣には付き人が座っている。
残念ながら近くの席は埋まっていた。
「お魚を」
ウェイトレスに注文し、テーブル越しに二人の様子を眺める。
少女らはどちらも湖のほとりに家があり、本来このような下町にはいないはずである。

ヤユム地方は古くから水運業で財を得た土地である。
数年前から下流域にある都会では海運取引が主となってきているため、
次第に衰えてきてはいるものの今でも財力のあるもの・名士・古い一族などは湖周辺の地区に住んでいたし、外部との交流も盛んだった。
ちなみに湖からやや下って、宿場兼陸路の中継地点としてある区画にメリマルの店がある。
さらに山間部に沿って開けているのが農業地帯で、イノコウダの畑はそこにあった。
ともあれ、そういうわけで町長の姪でありこの地方きっての放浪娘、ミル=ダッタミルの外国周遊暦なら、
どのくらいの時間で帰ってこれるのか分かりそうだとメリマルは考えていた。
49「花と煙 第二話」4/4 ◆NVcIiajIyg :2008/01/19(土) 23:35:12 ID:9ge56B0f
喧しい少女の方がミルダだった。
出会った時から圧倒されるバイタリティだったが久々にみても全く衰えない。
『あのですね、水運業が廃れてしまったのはしょうがないんですよ!そういう時代なんだから。
 これからはぁ、過去の使い方にこだわらないで、別の価値を与えてかなくちゃ生き残れないんですよっ』
とかなんとかいいながら親の仕事にくっついてあちこち飛び回り、勉強し、
何気にこのような下町にも訪れてしまっている。
どうやら地域復興が野望のようだ。
働く親父や老人老婆にも真剣に話を持ちかけ、持ち帰り、数ヵ月後にまた検討して持ってくる。
とにかく元気である。
女性が髪を短くするのもこの辺りの風習にはなかったのに、あるとき「動きやすいの」とばっさり切って帰宅した。
親類が卒倒したそうだ。

妙な縁があり、メリマルはいつの間にか彼女の友人になってしまった。
というのも、ミルダの向かいでスープをすすっているサチがメリーの異父妹だったことによる。
母は、父と別れて暫くすると町の名士と再婚したのだった。

「メリー!メリーじゃない、元気にしてました?」
お魚を食べ終わった頃に席が空いたので近づくと、ようやくミルダも友人に気づいたらしい。
妹のサチも付き人に促され食事から顔を上げた。
若干栄養過多で頬がぷっくりしているが、ぷにぷにすると気持ちいい(ミルダ談)くらいで太っているというほどでもなかった。
「あ、お姉さん」
「こんにちは。サチ」
最初は複雑だったものの、小さな妹ができたのはやはり嬉しい。
サチに笑いかけ、向かい側に顔を向ける。
「ミルダに教えてほしいことがあるんだけれど」
「幼馴染のイノー君がいつ頃帰ってくるかですか?」
にっこりとお嬢様は口の端を上げ、人差し指をつきつけてきた。
50 ◆NVcIiajIyg :2008/01/19(土) 23:37:24 ID:9ge56B0f
以上です。
続きは、また時間ができましたら。
51名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 23:44:37 ID:51NyZSLQ
GJ
わくわく感が、じんわりと湧きだしてきた。
52名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 03:22:21 ID:0sXPhhmE
保守
53名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 18:55:13 ID:lJTTHwf9
初めて投下させていただきます
お眼鏡にかなえばいいのですが
54名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 18:55:38 ID:lJTTHwf9
「…お、そっちも今出たのか」
「うん、ちょっと服に手間取って」
隣り合う家から出てきた、18歳ほどの少年と少女。
少年はティーシャツにハーフパンツ、少女は水色の浴衣という姿だ。
「よし、それじゃ行くか」
「うん」
時刻は午後4時。もうある程度は人も集まって、賑わいを見せているかもしれない。
そう、今日は年に一度のお祭りなのだ。

二人が一緒に祭りに行くのは今年で13回目となる。
家が隣同士の二人はいわゆる幼馴染というやつで、学校も小中高と一緒だ。
何となく一緒に登校し、何となく一緒に昼食をとり、何となく一緒に下校し、
たまには何となく一緒に夕食を食べたりテスト勉強をしたりと、二人の関係には惰性も見え隠れする。
夏に行われる地元の祭りに行くのもそうで、別に二人の間に約束があるわけではない。
祭りに行こうとするときに、たまたまお互いが暇だから一緒に行っているだけだ。
……別に、お互い友人からの誘いを断っていることなどは断じてない。はずである。
とにかく、今年も二人はいつものように、祭りの中心となる神社に向かった。

「さすがにこの日は人が多いな」
「普段はめったに見かけないのにねぇ」
二人が着いたとき、もう神社には人だかりができていた。
この地域では比較的大きな神社ではあるが、これだけの人が集まるのはこの日と正月くらいである。
元々は土地神を祀る儀式が祭りの発祥らしいが、そんなことより騒ぎたい人間のほうが多いのだ。
二人もそれは例外ではなく、
「よし、じゃあ最初は何しようかね」
「んー…私はりんご飴が食べたいな」
「りんご飴か。お、さっそく見つけたぞ。200円か」
「え、おごってくれるの?」
「……それはオレの財布の中身を知っての発言か?」
いつもと変わらず、楽しげに会話していた。
55名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 18:56:21 ID:lJTTHwf9
りんご飴を買った二人は、それから今度はお面を買った。
スーパーボールもすくったし、焼きそばも食べた。
アイスやベビーカステラ、ポテトも買った。
少女はそれこそ出店を全制覇する気かもしれない。少年は彼女の食いっぷりに苦笑しつつ、それに付き合う。
それはいつもの、毎年変わらぬ二人の祭りのすごし方。
ただ、ちょっとだけ違うのは。
「焼きそば、おいしかったね」
「さっきから食べてばっかな気もするけどな」
「いいの、せっかくのお祭りなんだし。じゃあ次は、つ…」
「おっ…ととと」
石畳につまずく少女。その細い腕を、少年が掴んで引き寄せる。
少し勢いが強すぎたのか、少女はそのまま少年に寄りかかる形になった。
「あ……」
「え……」
そのまま固まる二人。その姿は傍から見ると少年が少女を抱き寄せているようにも見える。
「…行くか」
「…うん」
歩き出す二人。でも、少年の手は少女の腕を掴んだままだ。
「ね、腕…」
「…あ、スマン」
「ううん、違うの」
慌てて離した少年の手に、今度は少女の指が絡む。
少女は顔を赤くしつつも照れくさそうにはにかみ、少年は自分の手を見て、それから幼馴染の顔を見て、再び前を向いて彼女を引っ張るように歩き出した。
その顔が彼女に劣らず真っ赤なのは、彼自身もよくわかっていた。
56名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 18:56:56 ID:lJTTHwf9
祭りの最後には、花火の打ち上げが行われる。
打ち上げ場所こそ街を流れる川なのだが、比較的山間にあるこの神社からも十分見える。
本来はなかったイベントだったらしいが、華やかな催しを、という意見が集まってできた企画だそうだ。
もちろん二人はそんな事情は気にせず、夜空に開く大小さまざまの光の花に目を向けていた。
「わーっ、今の見た!?」
「見た。すごかったな」
「だよねっ。あっ、今のもきれい…」
「あぁ」
少女は目の前で繰り広げられる情景に見入っている。この花火は彼女が毎年楽しみにしているものだ。
一方少年は、少女の言葉に相槌を打ちつつ、心ここにあらずといった雰囲気を醸していた。
正確には、彼は花火そのものではなく、今、この時間を楽しんでいた。
楽しそうな彼女を見るのが好きだったから。
いつからか、彼にとってこの幼馴染はそれ以上の存在になっていた。
家が隣、学校が同じ、クラスも同じ。幼い頃からずっと一緒だった。
ただそれだけ。彼と彼女は何となく一緒にいた。
今日だって、特に約束していたわけじゃない。たまたまお互いが暇だから一緒に行っているだけだ。
でも、それはもう終わりにしよう。
もう二人は18歳だ。お互いの進む路次第で、今度こそ分かれ道になる可能性はある。
この何となく続いた関係が、唐突な終わりを迎えてしまうかもしれない。
でも、それは嫌だ。彼女とずっと、一緒にいたい。
「…来年も」
「え?」
何か、確かなつながりが欲しい。でもそんなものは少年には思い浮かばず。
だから、せめて今までしなかったことを。
「…来年も、一緒に来ような」
「…え?」
約束を、しよう。
何となくじゃなくて。今までから一歩を踏み出して。
「再来年も、その次の年も、その次の年も…」
彼の声が一瞬詰まって。
「…ずっと、一緒にいたいから。お前と」
そう、口にした。
少女はしばらく呆然としていた。それから顔を真っ赤にして俯く。
「嫌、か?」
少年の声に首を振る。それから、蚊の鳴くような声で、
「…わ、わた…、私も、一緒に…いっしょにいたい、です」
とだけ言った。

祭りの帰り道。
行くときと同じように、二人が歩いている。
違うのは、二つだけ。
彼と彼女は、お互い顔を赤く染めて微妙に視線を逸らしていることと。
それとは対照的に、しっかりと手は握られていることだ。
まるで彼らの今のつながりを示すように。
57名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 18:57:42 ID:lJTTHwf9
以上です
さて逃げるか
58名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 19:14:31 ID:VxE4uZ4Q
そうは問屋のおろし大根!おじさん、この幼なじみについてもっとよく知りたいんだわ〜
59名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 20:31:33 ID:txFNpBxI
とにかくGJ!!
60名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 21:27:44 ID:OIu2NrfQ
>>57
甘いな。
地獄まで付き合って貰おう。中途半端で逃げる事の罪を味わってもらうよ…

何?続きがある?
しゃーない、放免
61名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 21:47:31 ID:79ZStS4c
>>58-60
ID変わってますが、投下した者です
ありがとうございます。喜んでもらえて本望です

いや本当は一発芸で終わらせるつもりだったんだけどね。続き、何か考えてみますわ
全然別の話になってるかもだけどそのときはごめんなさい
でも幼なじみは永遠
62名無しさん@ピンキー:2008/01/24(木) 03:26:56 ID:TSgfRSKY
63名無しさん@ピンキー:2008/01/24(木) 18:52:54 ID:BUCze51X
>前スレ最後
ちょ、おまwwww
涙腺緩ませんなコラwwww
64名無しさん@ピンキー:2008/01/24(木) 22:18:49 ID:LFhfqMI3
前スレに書けよ。
65名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 00:37:04 ID:uqHoIuhr
エロパロ板 過去ログ倉庫
http://ninjax.dreamhosters.com/ascii2d/
66名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 15:50:59 ID:zMRBe0j0
>>64
見てきたけどその埋めネタでちょうど500kb埋まっちゃったみたいだな
だからこっちに書いたんだろう

ていうかまだ埋まってなかったのかw
67名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 18:39:39 ID:foItWAtk
優也と友梨の二人が、このままいくと前スレ最後みたいなカンジになりそうだなw
68名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 07:29:02 ID:eX5wajti
69名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 22:16:31 ID:YuNb1OOr
保守
70名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 01:44:03 ID:8pCwxjIc
まあ、しかしなんつーか幼馴染ってのはマイナージャンルだよな
幼馴染キャラは多いけど幼馴染好きは結構少ないって言うかさ
別に悲しくはないけど
71名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 05:19:18 ID:iUt8qcQu
幼馴染って一口に言っても、そのキモみたいなものって
複数あるだろうし、人によってどれが重要だか分かれる
ってあたりが原因じゃないのかなぁ。

友達以上恋人未満のあったかいようなじれったいような距離感が
イイんだ!ってひともいるだろうし
もう見飽きちゃって家族同然でそんなことには絶対ならないと
おもってたのがある瞬間を境に異性に見えちゃって
どうすんだよ俺どうすんだよこれからっていう狼狽がいいと
言う人もいるだろうし
言葉に出したわけでも約束したわけでもないんだけれど
お互いが隣にいるのがあんまりにも自然で相棒のように
気持ちが通じ合っちゃってる空気が心地よいという人もいるだろうし
胸に秘めた思いが隣り合う時間の長さで封印されて
膨れ上がっても言い出せない胸が固まるような想いの強さが
心打たれるんだって人もいるだろうし
以上のような幼馴染なんてのは成功例であって
どんなに固く幼い誓いをしたところで思春期になれば
お互いの道は離れてすれ違うのが当たり前なんだよ本当だよ
でもそんな別れともいえない別れの切なさも幼馴染の醍醐味だと
思う人もいるだろうし。


つまりなんだ。貴様ら。幼馴染はイイモノなんだよっ!!
72名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 08:36:15 ID:bA6Nzoh3
ほぼ同意
だがまぁ、オレが話を書くならば、別れの物語は書かないだろうなぁ
そういう話があること自体は否定できないし、する気もないけど
やはり結ばれて欲しい
73名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 15:40:42 ID:jxftqcD5
一瞬どこぞのスレと間違えて「あれ、こいつらまだ斬られないのか?」
と思ったのは内緒だ
74名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 21:36:19 ID:8pCwxjIc
いやさ、幼馴染系スレで細々続いているのはココとエロゲ板とラノベの某スレぐらいだろ
エロ漫画板とかにもないし例が悪いが角煮にもない(そもそも一枚絵で幼馴染表現はむずいかも)
幼馴染オンリー即売会とかもないし、やはり少数派なんだろうと思うぜ

考えてみりゃ幼馴染がいなかったのに架空の世界の幼馴染に萌えまくる変態とか
実際に幼馴染がいたのにフィクションの幼馴染に萌える変態なんて、そうはいないよな
しかも更に、その中でも>>71で挙げられた分類以上にバイアスが掛かり得る
こう考えると幼馴染萌えというのは"特殊性癖"だと思う


だが、それがいい………!
75名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 23:57:07 ID:7PTlRAz8
どこぞのスレw
副会長と会長は元気かなあ……
76名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 00:18:13 ID:fhFt052O
奥深いな、幼馴染みは。
77名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 01:18:35 ID:hUrY77Sx
むしろ業だろう
78名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 02:18:56 ID:6fJGE7Bu
それでも俺は、幸せになる幼馴染を妄想せずにはいられない……ッ! 早く書かないとな……。
79名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 21:13:54 ID:poM2ihZj
>>78
がんばってくれ 応援してる

ところで
十数年ぶりに会った、昔よく遊んでた女の子は
幼馴染でおkなのか?

最近やったエロゲで出てきて
自分の考える幼馴染と違うから
気になって仕方ない
80名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 22:36:10 ID:JtlW/jzs
>>79
オレの中では幼なじみの範疇だな
まぁ要素としては若干薄いかもしれないが、「幼なじみとの再会」という要素は魅力的だと思う


「まさか、転校先がお前と同じ学校とはね」
「私だって、アンタがまた私の家の隣に引っ越してくるとは思わなかったわよ」
「どうやら家は残してたらしい。戻ってくる予定だったんだろうな。
 ……それにしても、この辺はほとんど変わってないな。あの公園、まだあるのか」
「昔は一緒によく遊んだよね。懐かしいなぁ」
「……お前も、あの頃から大して変わってないな」
「なっ!?」
「背は伸びてるみたいだが、それだけだ。体つきに大した変化は見られない」
「し、失礼な!ちゃんと成長してます!小学生のときと一緒にするな!」
「すぐムキになるのも一緒。あぁ、髪型もか」
「うぅ……か、髪型は昔アンタが似合うって言ったから……」
「ん、なに?」
「な、何でもない!」
「そうかい」
「……あ、あのさ、私との約束、覚えてる?」
「約束?」
「お、覚えてないならいいの!大した話じゃないし」
「……『ぜったい、ぜったいかえってくるからなかないで。
 アカネちゃん、だいすきだ。かえってきたらけっこんしよう』」
「あ……」
「……生憎、まだ結婚できる年齢じゃないんでな。もうしばし待て」
「……バカ」


みたいな。いや、微妙か
んー、期間が長いと幼なじみ成分は補給できないかもなぁ
でも、「幼い頃の約束」とかで十分挽回できる気も
81名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 22:54:22 ID:r0517lxv
それなんて、わたしの沖田くん?
82名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 05:01:45 ID:Pox5SAJV
ちゃはははは
83名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 13:12:24 ID:o3BAkOKv
>>81
それ、知らない作品だ
ナジミスト的にどんな感じ?いいなら買ってくる
84名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 14:28:11 ID:Q8g+Q+sP
>>79
アフタヌーンで連載してる「宙のまにまに」がそんな感じで、
己はあれを幼馴染みものだと思っている。
甘酸っぱい高校生活ものが好きなら、おススメだ。

>>71が非常にうまいことポイントを整理してくれたのに触発されて、
2つめのお題で一本書いてみた。書いてるうちに、元のお題から
かなりズレた気もするが、えいやっと投下。
他のお題でも、それぞれ一本ずつ書けないか思案中。
85I'm the one to watch over you 1/8:2008/02/02(土) 14:29:53 ID:Q8g+Q+sP
 
「あ。そーいや、こないだコクられちった」
 沙織のやつが、なんかのついでのようにぼそりと呟いたのは、昼休みの教室で向かい合って食べてた弁当も、そろそろ終わろうかという頃合いだった。なんだ、自慢話かい。それにしても、こんな色気のないやつにコクるなんて、物好きもあったもんだ。
「ふーん。で、だれ」
 けだるく訊いてはみたものの、別に大して興味があったわけじゃない。沙織も、どうでもいいことのように答えた。
「あんたのお隣さん」
「ふーん……って、はあっ?」
 あやうくスルーしかけて、あたしは目を剥いた。今、なんつった? あんた。
 沙織は、そんなあたしに向かって、にやりと邪悪に笑い、
「言ったろ? あ、ん、た、の、お、と、な、り、さ、ん」
 そんなに莫迦丁寧に言わなくたって、聞こえてるよっ。
「って、……須藤慶太?」
「そーそー。たしか、そんな名前」
「あんたね」
 あたしは、がくりと肩を落とした。沙織はよろず物事にこだわらないやつで、そこがいいとこでもあんだけど、さすがにコクられた相手の名前くらい、憶えとけよ。
「どーゆーことだよ」
「いや、あたしに訊かれてもさ。こっちだってびっくりだよ。中坊だし」
「いつ」
「んー。おとつい、かな」
「どこで」
「校門出たとこ。待ち伏せされた」
「なんて」
「好きです、てさ」
 沙織はげらげらと笑い出した。
「いやー。このトシまで生きてて、あんなもん見れるたあ思わんかったわ。真っ赤でどもってよ。純情って題付けて額縁に入れて飾っときたかったぜ。欲求不満のオバハンにでも高く売れんじゃねーか」
 言ってろ、このオヤジ女子高生。慶太も、どういうつもりなんだ。こんなロクでもない女に。いや、あたしの友だちでもあんだけどよ。あたしは笑うべきか憤るべきか態度を決めかねつつ、
「で。どーすんだよ」
「んー?」
 沙織は、行儀悪く箸をくわえてぶらぶらさせながら、弁当箱の蓋を閉めた。
「付き合うよ? とりあえず。もったいないじゃん。かーいいし。あんたにゃ悪いけど」
「はー」
 あたしは、机の上につっぷした。上目遣いで沙織のやつを睨み付けながら、
「なんでよりにもよって。姉代わりとしちゃあ、ぜってーおすすめしたくねー。つか、断固阻止してえよ」
「友だちがいのかけらもねーな」
「胸に手え当ててみな」
 神妙な顔して、ほんとに胸に手え当てやがった。
「やっぱ、どんより欲望に曇った目えしたどっかの剣道バカとは違って、純真でつぶらな瞳には、あたしのキレイな心はちゃんとお見通しだったのねっ。沙織、うれしいっ」
「げー。言ってろ。バカ」
 何、胸の前で手え握って、目え輝かせてんだ。そんなのは、幼稚園に入る前に卒業したはずだろが。
 沙織は、またもやげらげらと笑ってから、あたしに尋ねた。
「で。あんたは?」
「あたし? が、なんだよ」
「いや。どーすんのかなー、って。姉代わりなんだろ。説教こいて止めるとかせんの?」
 あたしは深くてでっかいため息をついた。
「ヤボはしねーよ。どーせ、すぐ目え覚めんだろーし。慶太もかーいそーに」
「ふふーん?」
 いやに余裕かました笑顔見せてくれんじゃん。あたしは舌打ちし、ふと思いついたことを訊いた。
「それにしても、あんた。いつの間に」
 あたしの知る限り、慶太と沙織の間に、そんな接点なんてないはずだ。だが、沙織はあたしの険しい視線なんてへっちゃらって感じで、しれっと答えた。
「さーて、ねえ?」
86I'm the one to watch over you 2/8:2008/02/02(土) 14:31:27 ID:Q8g+Q+sP
 
「ただいまー」
 玄関で、慶太の声がした。あたしは料理の手を止めず、答える。
「おう。上がんな。風呂、沸いてっから」
「ああ」
 ダイニングキッチンの入り口で、どさりと重たいものが床に置かれる音がする。火を弱めて振り返ると、背をちょっとかがめるようにして、道着入れと竹刀袋をさげた慶太がこっちを覗き込んでた。また、背が伸びたんじゃないか。こいつ。
「今日、なに」
「肉じゃが」
「またかよー」
「うっさいよ。文句あんなら食うな」
 あたしは、かすかに漂ってきた匂いに顔をしかめて、
「こら。とっとと風呂入ってこい。それまでこっち来んな」
「へいへい」
 慶太は、ひょこひょこと浴室に向かった。まだまだ、あーゆーとこはガキだな。あたしは、ダイニングの入り口に置き去りにされた道着入れを、足で玄関の方へ蹴りやった。臭いんだよ。他人のは特に。
 慶太がこっちで晩飯食うのは、珍しくもない。マンションのお隣さんで、ちっちゃい頃から親同士が仲良しで、あたしと慶太も姉弟みたいにして育ってきて、どっちの家も共働きで帰りが遅いから、週末以外はほとんど、あたしが慶太のエサの面倒を見ることになってる。
 あたしがテーブルの上を片づけて、食器を出して、最後の味見をしてると、浴室のドアが開いて閉まる音がした。もう出たのか。いつものこったけど、カラスもいいとこだ。
「あー、さっぱり」
 ダイニングに顔を出した慶太の上半身は、肩からバスタオルをかけただけの裸だった。あたしはちっと呆れて、
「あんた。寒くないの」
「えー? 暑いよ」
 バスタオルでぱたぱたと顔を仰ぎながら、イスに座る。ま、いっけどさ。風邪でもひかなきゃいいけど。あたしはテーブルの向かい側で、腰に手を当てながら、しげしげと慶太を眺めた。道場だの部活だので、オトコの裸なんて見慣れてるけど、こうして見ると、
「あんた。けっこう、いいカラダになってきたね」
「きゃあっ。里香がエロい目で見るっ。やめてっ」
「あほ」
 わざとらしく腕で胸なんかかばうなっての。あたしはこめかみに指を当ててため息をついた。慶太は、へへへ、と笑って、胸なんか張って見せる。
「だろ? 最近、がんばってっからよ」
 確かにここんとこ、道場から帰ってくるのが遅いのは知ってた。
「今度の審査、受けんだ?」
「ん。これでやっと追いつくな」
「受かりゃね。中坊で二段て、欲張りすぎてねえ?」
「いーじゃん。挑戦すんのは自由だろ」
 ま、そりゃそうだけどさ。
「メシにすっか。ご飯、よそりな」
「おう」
 慶太は立ち上がり、あたしの横で炊飯器のふたを開けた。なんか……この台所って、こんなに狭かったか。あたしと二人並ぶと、妙に窮屈だった。ほんとに慶太のやつ、こんなにがっしりしてたっけか。背も、女にしちゃのっぽのあたしを何ヶ月か前に抜いちゃったし。
 なんか急に憎たらしくなって、肘で脇腹をこづいてやった。
「うお。なんだよ」
「別に。ジャマなんだよ。ガタイばっかでっかくなりやがって」
「なんだよ。手伝ってやってんだぜ」
「あー? 誰のおかげでメシ食えんだ?」
 あたしが薄目で凄むと、慶太はひきつった笑いを浮かべて、頭を下げた。
「あー……里香様の、おかげです。あっしが悪うござんした」
 分かりゃいーんだ。黙々と配膳を終えると、さすがに少し寒くなってきたのかTシャツを着た慶太とあたしは、向かい合って腰を下ろした。
「そーいや、里香。師匠、ちょっと気にしてたぜ。最近来ねえなって」
「部活でね。二年は何かと忙しいんだよ。師匠にも断ってある」
「そりゃ、知ってっけどさ。なんか、里香がいねーと、こう……調子出ねえんだよ。あっこ。じゃ、いただきます」
「いただきます。そーかい。そのうちに、顔出すよ」
 道場に通い始めたのは、あたしが先輩だ。小さい頃は体が少し弱かった慶太を誘ったのもあたしで、中学までは道場で一緒に汗を流す時間も長かった。そういや最近は、お互いに時間が合わなくなってきてんだな。トシ取りゃ、あたりまえだけど。
 まあ、そんなことよか。
「ところで。あんた。コクったんだって?」
87I'm the one to watch over you 3/8:2008/02/02(土) 14:32:39 ID:Q8g+Q+sP
 
 慶太はちょうど味噌汁をすすってたとこで、かわいそうに、盛大にむせた。あたしは生温い視線で、その様子を見つめる。慶太は、涙までにじんだ情けない目でこっちを見ながら、
「な……?」
「三島沙織。あたしのダチ」
「げ……」
「知らんかったんだ。んとに」
「なんだよそれ……」
 慶太はテーブルの上に、ごん、と額を打ち付けた。こら、メシの最中だぞ。あたしはため息を一つついて、
「まー、あたしとしちゃあ、あんたの女を見る目のなさに絶望したー、っちゅーかね。そんな子に育てた覚えはねーぞ、っちゅーか」
「悪いかよ」
 追い打ちをかけようとしたあたしは、でも口をつぐんだ。こっちを睨み付けた慶太の口調と表情の何かが、あたしを思いとどまらせた。あたしは目を落として、肉じゃがに箸をつける。
「悪かねー、けど、さ」
「オレ。マジなんだ」
「そ……っか」
 こいつの声って、こんなに低かったろうか。こんなに、力強かったろうか。なんか、初めて話す相手みたいだった。んなわけあるか、とあたしは頭を振り、
「いきさつくらい、教えろよ。友だちと弟分に勝手にコソコソされたんじゃ、あたしも顔が立たねえから」
 慶太は、しばらく無言でメシを食ってた。それからぼそりと、
「文化祭」
「は?」
「里香んとこの」
 ああ。先月の。そういや、こいつも来てたんだっけ。あたしは部の模擬店で忙しくて、ほとんど相手なんかできなかったんだけど。
「たまたま、絵の展示してるとこ通りかかったら、じっと絵見てる人がいて。すげえ長いこと、身動きもしなくてさ。なんなんだ、って、オレも立ち止まって見入っちゃって」
 慶太は、また少し黙った。そしてそっぽを向いてから、
「横顔が。すげーキレイだった」
「はー……」
 なんて返事していいやら。そりゃ、沙織のやつも、鼻筋がわりかし通ってて瓜実顔だから、大人しくしてりゃ角度によっちゃ美人に見えなくもないけど。一目惚れするほどか? あたしにゃ、よーわからん。
 それにしても、絵の展示ってことは、美術部か。あいつ、確かこないだ、美術部は辞めたっつってなかったけ。なんでそんなとこにいたんだ。
「んで?」
「いや。思い切って、声かけてみた。ちょっと話して、名前も聞いて。そーいや、知り合いがいるんで来た、って里香の名前出した時に笑ってたの、こーゆうことかよ」
 ああ。あんたのこと、何度か話したことあるからね。沙織のやつなら、さぞかしにやにやしてたろうよ。
「そんだけ?」
「絵。の、話……を、してた」
「あんた。絵なんて、分かんの」
「分かんねーよ。分かんねーけど……絵の話をしてる三島さん、なんつーか……すげー眩しくて。うまく言えねえ」
「……」
 なんとなく、思い出す。部活のランニングの途中で見かけた、河原で一人きりでキャンバスに向かいあってた姿。怖いくらいに張りつめてたその背中を、教室の中でも見つけたのは、そのしばらく後だった。
 まあ、声かけてみりゃ、とんでもないバカでグータラでオヤジな女だったけどな。
「それで……三島さんの絵も、見た。一枚だけ、かかってて」
「それで、惚れた?」
 慶太はあたしのこと見つめながら、一度だけうなずいた。なんの迷いもなく。
 あたしは、箸の先で味噌汁をかき回す。
「あんた……もう受験だろ。ウチ、そんなに甘くねえよ。昇段審査だって」
「分かってるよ。オレだって、考えた。里香ンとこに入ってからにした方がいいんじゃないか、って。それまでに、いろいろカタ付くし。同じガッコにいりゃ、なにかっちゃ機会も多いもんな。こっちゃ、今ンとこ中坊だしよ。でも、待たねえ。待ちたくねえ」
「……」
 こいつは、ほんとに慶太なんだろうか。このあたしが、保育園に手エ引いて連れて行ってやって、一緒に遊んでやって、べそかいたらゲンコで泣きやませてやって、竹刀の握り方から教えてやって、おざなりだけどメシなんか作ってやった、その慶太なんだろうか。
 違う。あたしの目の前で、これ以上はないってくらいマジな眼差しで恋なんか語ってやがんのは、あたしが知らない男の子だった。
88I'm the one to watch over you 4/8-A:2008/02/02(土) 14:39:16 ID:Q8g+Q+sP
 
 どうして……あたしの胸は、痛いんだ。息が、苦しいんだ。あたしは、羨ましいのか。妬ましいのか。寂しいのか。なんなんだ。これは。いったい、何が起こったっていうんだ。
 あたしが、言葉なんか見つからずにぼっとしてたら、慶太は照れくさそうに笑った。
「びっくりするよな、そりゃ。オレもだ。なんか、オレらしくもねーこと言ってんな、って思うよ」
「いや……そりゃ」
 あたしに、何が言えるだろう。こんなに覚悟を決めたやつの前で、いったい何を。
「ま……悪いやつじゃ、ないよ。沙織もさ」
「そりゃそうだろ。里香のダチだってんなら」
 お世辞にしても、嬉しいこと言ってくれんじゃん。あたしは、ようやっと、にやっと笑えた。
「すぐバレっだろーけどさ。がさつだぞ。中身、オヤジだし。女らしさなんて、かけらもねーぞ」
「んなの、分かってるよ。ちょっと話したときも、愛想なんかなかったし。里香見てりゃ、オンナに夢なんて持てねー」
「悪かったな」
 苦笑しか出てこない。慶太が、とても冗談で言ってる顔じゃなかったから。
「……それでも、か」
「うん」
 慶太は、まっすぐにあたしを見た。
「いいな、って思っちゃったんだ。仕方ないだろ」
「そっか」
 あたしは、箸を置いた。もう、話したいことも、聞きたいことも、なかった。それなのに、慶太はぽつぽつとこの週末のデートの予定のことなんか話し出して、あたしはただ、それをぼんやりと聞いてた。
 県立美術館。土曜の午後二時。フリーダなんとか展。ふーん。そうかい。

 そんな訳で、土曜日の午後二時、あたしは県立美術館のロビーにいた。ふだん着ないようなロングのワンピなんざタンスの奥から引っ張り出して、爪先が痛いパンプスなんざ履いて、つばが大きめの帽子かぶって。さすがに、グラサンは怪しすぎるんで止めたけど。
 しっかし……そんな訳って、どういう訳で、あたしゃこんなとこにいるんだろうな。美術館なんざ中坊の頃の社会見学以来だし、普段のジーンズと違ってあちこちスースーするし、レストランがバカ高いもんだから昼メシ抜きで腹が鳴りそうだし。なんか、バカみたいだ。
 ただ、なんつーか、確かめたかったんだ。沙織のやつが、どれぐらい本気で慶太のこと相手にしてんのか。もちろん、完璧にマジ、ってこたないだろう。なんせ、相手は知り合って何ヶ月もたたない中坊だ。コクったのも慶太の方だしな。
 それでも、あんまりフザけたマネすんなら、あたしも黙っちゃいられない。慶太はバカなガキだけど、それなりに大事な弟分なんだ。好きにもてあそぼうってんなら、こっちにも考えがある。
 で、そいつを確かめるに、こうやってお二人さんのデートをこっそり遠目に観察しにきたわけだ。あたしも、一体ぜんたい何やってんだかな。いいかげん、バカなことしてるよ。くそっ。それもこれもみんな、あのバカのせいだ。
 そのバカは、ロビーの柱に寄っかかって、そわそわしながら入り口の方を見てた。もう、二時から十五分は過ぎてる。沙織のやつ、初手からフけるつもりじゃあんめーな。あたしがじりじりしながら待つうちに、いきなり、慶太が笑顔を見せた。
89I'm the one to watch over you 4/8-B:2008/02/02(土) 14:40:21 ID:Q8g+Q+sP
 
 あたしは、その笑顔に突き飛ばされるようにして立ち上がると、そそくさと展示室へ向かった。後ろから尾けるよか、前から待ち伏せる方が、よく見える。沙織がどんな顔をして来たのか見逃したのに気付いたときは、もう入場してて手遅れだった。まあ、しゃーねえ。
 展示室の中は、けっこうな人出だった。少し奥の、わりかし人が少ない場所に陣取って、絵を見るフリしながら、入り口の方へ視線を飛ばす。どーゆうわけか、自分がとてつもなくどきどきしてるのに気付いて、その音が周りに聞こえるんじゃないかってヒヤヒヤした。
 二人が入ってきたのは、たっぷり数分もしてからだった。ちっ、やっぱ中に入るのが早すぎた。ロビーで、どんな話してたんだろ。遠目に見ると、沙織のやつ、イロケのかけらもねえセーターにジーンズ姿だったけど、いつもに比べりゃ、こざっぱりはしてた。
 ふだんは適当に束ねてるだけのセミロングの髪も、ちゃんと梳かして、赤い髪留めでまとめて背中に流してるあたりなんざ、沙織にしちゃえらく上出来だ。さすがのあいつも、オトコの前じゃあそれなりに気ィ配んのかね。
 その沙織が先頭に立ち、後ろ手を組みながら主催者挨拶のパネルをじっと見上げてて、慶太はその後ろでぼうっと突っ立ってた。特に会話してるふうもなく、パネルを読み終わったらしい沙織はさっさと絵の方へ向かい、慶太もあわててその後に続く。
 なーんか、なあ。あれ、ほんとにデートか? あたしは、ことさらにゆっくりと歩きながら、二人が近づいてくるのを待った。その間、他にすることもないから、絵も見てた。フリーダ……何だっけ。そうそう、フリーダ・カーロか。
 なんてーか、まあ、濃い絵だった。たいがいが、眉がつながった女の絵で、その顔立ちとか色使いとか、しばらく見てるとクラクラきちまう。あたしは絵はこれっぽちも分からんし興味もないけど、なんか、異様な迫力があって疲れる絵だった。
「なんか、スゴいな」
 そんなあたしの内心を代弁するかのように、小声でしみじみと言う声がして、そちらに目をやると、慶太だった。うわ。いつの間に、こんなに近くまで来たんだ。あたしは、さりげなく二歩ほど引いて、二人の視界から外れる。それでも、会話は聴き取れた。
「んー」
 沙織は、絵から目を離さない。慶太は、そんな沙織を気づかうように、
「こーゆーの、好きなんだ」
「あー……どーかな」
 沙織は、そこで初めて慶太の方へ目をやり、ちょっと照れくさそうな声で言った。
「慶太にゃ、退屈か」
「んなこた、ねー」
 慶太が不自然なぐらいに即答する。どーでもいいけど、もう呼び捨てかよ。おい。沙織のやつは、そんな慶太をからかうように、
「無理しなくていーんだよ」
「してねー。いや、そりゃ、よくは分かんねーけど……スゴいってのだけは、なんとなく分かるよ。オレでも」
「ふーん」
 また絵に目を戻した沙織の相づちには、どことなく面白そうな響きがあって、でもそれは、なんつーか、嫌味じゃなかった。そのまま、沙織は、食い入るように絵を見てて、慶太は、そんな沙織をずっと見てた。
 あたしは……もう、十分だった。絵も。沙織も。慶太も。だから、そうっとその場所を離れて、足早に立ち去った。目的は、果たしたんだ。だから、もういい。もう十分だ。
 いいことなんだ。慶太がマジで。沙織もそれなりに悪い気はしてなさそうで。だから、あたしとしても、とりあえず文句なんかない。そのはずだ。よけいな口出し手出しなんかせずに、姉としてダチとして、見守ってやりゃいいんだ。
 そうだよ。胸の中がじれったいぐらいにもやもやして、むしょうにかきむしってやりたくなんのは、何もかもが見慣れたものと違ってて、驚いただけなんだ。あんな慶太は知らねえ。あんな沙織は見たことねえ。
 でも、そのうちに慣れるんだ。当たり前になるんだ。それで、何の問題もねえ。ねえよ。ただ、それまではちっとばっか、頭を冷やさなきゃ、って、それだけなんだ。

 その晩は、週末だったから、慶太はウチには来なかった。あたしは素振りを千本ばかりこなして、ぬるい風呂に二時間ばかりつかって、それでも空が白むまでなんだか眠れなくて、次の日曜はずっと、うつらうつらしながらつぶしちまった。
90I'm the one to watch over you 5/8:2008/02/02(土) 14:41:46 ID:Q8g+Q+sP
 
「里香じゃないか」
 ガッコの帰り、買い物袋をさげながら歩いてたら、声をかけられた。振り向くと、
「あ。師匠。オス……ごぶさた、してます」
「おう」
 道場の師匠と、後輩の子たちが何人か連れ立ってた。最近ちょっと白髪の目立つようになった師匠が、からっと笑って、
「ほんとに、ご無沙汰だな。何してんだ。部が、そんなに忙しいか」
「はあ、まあ……そんなとこっス」
「たまには、こっちにも顔出せや」
「そーっスよ、里香さん。あたしたちだって、待ってんスよっ」
「すんませんっス。そのうちに」
 師匠と後輩たちに頭を下げながら、どうやりすごそうか、考える。道場に行けば……慶太といっしょに居る時間が、増える。それは、今のあたしにとっちゃ、いいかげんツラい。まだ、も少し時間がほしい。
 晩メシの間の二、三時間だけでも、ここんとこ、えらく気詰まりなんだ。会話も、あんまりない。まあ元から、互いにそんなに喋らねえから、慶太のやつは平気な顔して大メシかっくらってる。照れくさいのか、沙織との話はほとんどしねえ。あたしも、訊かねえ。
「そういや、ちょっと訊きたいこともあったんだがよ」
 師匠の声に、あたしは顔を上げた。
「なんスか?」
「いや。慶太のこったけどな」
「はあ」
 あたしが少し身構えたのには気付かれなかったみたいで、
「最近、ヘンなんだよ。様子がな。おまえなら何か知ってないか、ってな」
 心当たりなら、ある。あるけど。ここで、話したくねえ。
「さあ……特に何も、ないッス」
「そうか。おまえも分からねえか。審査も近いんで、心配してんだけどな。本人に訊いても、大丈夫ですって言うばっかしだしよ」
「そーなんですよ。あたしたち、こりゃー里香さんとケンカしたんじゃないか、って」
「んなこた、ねーよ」
 何だよ、その興味津々なツラと声は。不機嫌になって目を細めたあたしに言い返されて、顔をビミョーにひきつらせた後輩どもを見ながら、師匠が苦笑いした。
「いや、何もねえならいいんだけどよ。そうか」
「はあ」
 どーせ、沙織のことで頭ン中がお花畑にでもなってんだろ。んなの、面倒みきれねーよ。できるだけ表情を殺して黙ってるあたしに向かって、師匠はにやっと笑い、
「ま、審査くらいは見に来いよ。弟分の晴れ姿くらい、見てやらにゃあ」
「そっスね。それは、何とか」
「やたっ。あたしたちも、何人か受けるんス。約束ッスよ。絶対ですよっ」
「分かった分かった」
 あたしは後輩たちにひらひらと手を振り、師匠に丁寧にお辞儀をして、家路についた。ふん。昇段審査か。そんなに腑抜けてんなら、いっそのこと、落ちちまえ。

 昇段審査はその週末で、審査会場に着いたら、もう実技が始まりかけだった。二階席に上ってあたりを見渡し、師匠の姿を見つける。
「すんません。遅くなって」
「おう」
 師匠は、腕組みをしながら、じっと会場を見下ろしてた。
「そろそろ、始まるぞ。あの組で、今から立ち会うやつだ」
「っスか」
 遠目でも、慶太の立ち姿は何となく見分けが付く。けど……なんか。なんだろ。
「どんな、感じスか」
 いつもと肌触りの違う雰囲気をまとってるみたいに思えて、師匠に訊いてみた。師匠も、なんか思うところがあるらしい。案外に真剣な顔で、
「まあ……見てな」
 始まってみれば、師匠の言いたいことはすぐに分かった。なんつーか、気負いすぎだった。動作のいちいちが早すぎるし、有効打にこだわりすぎて体が崩れてるし、残心もなってない。勝ち負けしかない試合ならともかく、審査であれは、ダメだ。
 二回の立ち会いが終わったところで、師匠が軽くため息をついて、首を振った。
「な。ヘンだろ」
「……」
 確かに、いつもの慶太じゃねえ。面をかぶると、中坊とは思えないくらい、どっしりと落ち着いた所作を見せるやつなんだ。たぶん、小せえ頃の引っ込み思案なとこが、うまく化けたんだと思う。それなのに、あれはどーゆーこった。
 あたしは、会場を隅から隅まで見回した。もしかして沙織のやつが来てて、それでいいとこ見せようとでもしてたのか。けど、沙織らしい姿は見当たらなかった。美術館のあたしじゃあるまいし、変装みたいなカッコしてる訳もないから、いりゃすぐ分かるはずなのに。
 なんなんだ。いったい、何がどうなってんだ。
「行くか」
 師匠に誘われて、あたしも一緒に、道場の仲間がたむろってる控え場所に下りてった。慶太は、ちょうど正座して面を取ったところだった。えらく、むずかしい顔をしてた。
91I'm the one to watch over you 6/8:2008/02/02(土) 14:43:06 ID:Q8g+Q+sP
 
「よう」
 あたしが声をかけると、慶太はちらっとこっちを見て、少しだけ微笑ってみせた。
「来たんだ」
「そりゃ。あんたの晴れ姿だしな」
 慶太は、苦笑いしただけだった。自分でも、分かってんだな。
「あのさ。もちょっと、肩の力抜けよ」
「師匠にも言われた。分かってるよ。でも、受かりてーんだ」
「そりゃ……」
 師匠に目をやって、軽く首を振って見せられて、あたしは黙った。慶太はそんなことにも気付かない様子で、
「見てな。午後の形と筆記で取り戻しちゃる」
「ああ。そうだな」
 ほんとは、ひっぱたいてでも、目え覚まさせてやりたいとこだった。でも、今のあたしが、そんなことをしてもいいのか、迷った。ええい、あたしらしくもねえ。ただ……それは、あたしなんかより、もっと近くにいるやつの役目なんじゃないか、って、思ったんだ。
「そーいや、沙織はさ」
「来ねーよ」
 当たり前みたく言われて、その瞬間は、意味が分かんなかった。はっとして慶太の顔を見て、でも、そこには、なんの表情もなかった。
「あんた。それって」
「オレ、トイレ」
 慶太は素早く立ち上がり、袴の裾であたしとの間の空気を断ち切るようにして、行ってしまう。呆然とその後ろ姿を見送ったあたしに、師匠が近づいてきて、言った。
「ま、しゃーないな。これも経験だ。焦るこたねえ。まだ、中三だしな」
「……」
「それにしてもよ。やっぱ、心当たりはねえのか」
「……分かんねえっスよ。あんなの」
 本音だった。いったい、何がどうなってんだ。見当もつかねえ。いや……まさか。そんなこた、ねえはずだ。だって、あんなにいい雰囲気だったじゃねえか。ちくしょう。ありえねえよ。でも。
 昼食の間じゅう、慶太はずっとあたしを避けてた。あたしも、あえて話しかけたりしなかった。後輩どもにつきまとわれてるのをいいことに、慶太からずっと目をそらしてた。
 そうして、午後の形で、慶太のバカが何度もトチるのを見届けたところで、携帯を取り出して、かけた。

「よう。どったん。いきなし呼び出したあ」
 行きつけのモスで、あたしの向かい側にどさりと腰を下ろした沙織は、のほほんと挨拶をよこした。あたしが睨み付けるのも気にしないふうに、コーヒーシェイクなんかすすってやがる。
「あんたに、訊きたいことがある」
 そのくせ、あたしに向けた目は、妙に落ち着いてた。こいつ。分かってやがんな。だったら、こっちも遠慮なんかしねえ。
「慶太と、なんかあったのか」
「本人から、なんか聞いたんじゃねえのかよ」
「とぼけんじゃねーよ。とっとと吐け」
「んー」
 あたしから視線をそらして、窓の外なんか見てやがる。その耳でも引っ張って、強引にこっちを向かせようかと思ってたら、
「別れたよ。あたしからフった」
 あたしは、目を細めて腕組みをした。そんなことじゃないか、って思ってた。そうじゃなきゃいい、って思ってた。でも、どーしてなんだ。
「ワケ。聞かせろ」
「んな義理は……ま、あるか」
 沙織は、肩をすくめて、小さくため息をついた。
「別に大したこっちゃねーよ。ちょっと遊んでみて、やっぱガキの相手はヤだな、って、そんだけだよ」
 自分の目元の筋肉がひきつるのが、分かった。それでも何とかガマンして、
「そんだけか」
「ヒマつぶしにゃ、なったかな」
 ガマンできなかった。気付いたら、テーブルごしに沙織の胸ぐらを掴んでた。向こうも、あたしの目を挑戦的に見返してくる。こいつ。
「なんか、文句あんのかよ。よくあることだろーが。ちょっとお試しに付き合うくらい」
「あいつは、マジだった。それは、分かってたよな。それを、てめえの気まぐれで」
「ああ。悪いかよ」
 開き直る沙織を前に、なんだか、あたしの怒りは急に冷めた。こいつは、こんなやつだったのか。今まで、あたしはこいつの何を見てたんだ。なんで、こんなやつをダチだなんて思ってたんだ。
 あたしは、沙織の胸を突き飛ばすようにして、手を離した。沙織はイスの背にもたれかかりながら、ちょっと意外そうな目をした。
「なぐんねーのかよ。口よか手が早えくせに」
「んな値打ちもねー」
 あたしは、自分のトレイを手に立ち上がった。
「てめえとは、これきりだ。じゃあな」
 吐き捨てて、立ち去ろうとしたときだった。沙織が、呟くようにして、言った。
「……仕方ねーんだよ」
92I'm the one to watch over you 7/8:2008/02/02(土) 14:44:37 ID:Q8g+Q+sP
 
 なんでそこで足が止まったのか、よく分かんねえ。ただ、どういうわけだか、聞き捨てならねえ、って思ったんだ。
「……なんだって?」
 沙織を見下ろす。沙織は、あたしの方なんか見ずに、下を向いてた。髪の毛が顔にかかってて、表情なんか分かんなかった。
「だめなんだよ。だめだったんだ。うれしかったよ。コクってもらえて。あたしなんかに。ああ、これで忘れられる、って。でも」
 こいつ。何を言ってんだ。じっと立ち尽くすあたしの前で、沙織は返事も相づちも待たずに、続けた。
「でも。あの子に好きって言われて。あの子といっしょに絵を見て。思い出しちゃったんだ」
「……」
「あたしは……先輩が好きで、先輩の絵が好きで、絵が好きなんだ。どーしようもなく、好きなんだ。忘れるはずだったのに。諦めたはずだったのに」
「……あんた」
 あたしは、沙織の表情を確かめたくて、その向かい側に、また腰をおろした。沙織は、そんなあたしをちらっと見上げて、少しだけ笑う。泣き笑いみたいな、顔だった。
 あたしは……こんな沙織を、知らない。知らなかった。ほんと、あたしは、今まで、こいつの、何を、見てたんだろう。ちくしょう。あのバカ笑いの下に、こんなもんを隠してやがるなんて。こっちがバカみてーじゃねーか。
 沙織は、も一度、目を伏せる。
「ああ。ひでーことしてんのは、分かってんだ。でも、あたしは……こんなんじゃ、あの子にこたえられない。こたえちゃいけないんだ。そうだろ?」
「……」
「もっと、いーかげんな子なら……よかったよ。そしたら、あたしだって、もっとテキトーに付き合ってさ。テキトーにごまかせたのによ」
「いーかげんなやつのワケ、ねーだろ。あたしの、弟分だぞ」
「そっか……そーだったよな」
 肩をすくめる沙織に、あたしは目を据えた。
「一つだけ、教えろ。今の話……あいつには、ちゃんとしたのか」
 沙織は、あたしの目を見た。そして、小さくうなずいた。あたしはそれで、肩の力を抜いた。
「そうか。だったら、いーんだ。あんたが、マジでフってくれたんなら」
「……いーのかよ。あの子」
「あいつなら、大丈夫だ。あたしは、知ってる」
「ふーん」
 沙織は、なんか眩しそうに、目を細めた。
「あんた……ひょっとして、あの子のこと」
「ああ。好きだよ」
 言ってしまってから、それがほんとだってことに、気付いた。ああ。なんだ。そういうことか。バカバカしい。そんな、単純なことだったのか。あたしが苦笑いしてると、沙織も少し目を見張ってから頬笑んで、
「そ、か……悪いこと、したな」
 あたしはかぶりを振る。
「あんたは、悪くねえ。あたしが好きになったのは、あいつがあんたにコクった後だからよ」
「へええ」
 沙織は、人の悪そうな笑い方をした。こりゃ、ちょっとまずったかもな。あたしが頬をひきつらせてると、どういうわけか、沙織は細いため息をついた。
「ちぇっ……あんたなら、殴ってくれるって思ったんだけどなあ」
「んなことまで面倒見るか。てめえのバカで痛い目にあいたきゃ、よそ当たってくれ。いや。そーだな」
「何だよ」
「さっきの話。いつか、あたしにも聞かせろ」
 沙織は、びっくりしたような顔で、あたしのことを見た。なんだよ。いーだろが。
「話してくれる気になったらで、いい。でもあたしは……あんたのこと、ちゃんと知りたい。あいつが好きになったあんたのこと。あたしのダチの、あんたのこと」
 沙織は、じっと黙って、あたしを見てた。それから、にんまりと笑った。
「そーだな。そんときゃ、ふた晩ぐれえ、寝かさねーぞ」
 おお、こわいこった。全く、面倒な女だよ。あんたも。あたしも、人のこた言えねえけどな。ったく。自分のことだって、ひとつも分かっちゃいねえんだから。

 夕方、家に帰り着いて、でもあたしが立ったのは、隣の家のドアの前だった。インターホンを押すと、慶太の小母さんが出てくる。
「あら……里香ちゃん」
「慶太、いますか」
「いるわよ。なんだか、うまくいかなかったみたいで、不貞寝してんのよ。里香ちゃん、良かったら喝入れてやってよ」
「ええと……ちょっと、話があるんです」
「どーぞ、おあがりなさい」
 あたしを招き入れると、小母さんは台所に引っ込んだ。このあたりさばけた人で、助かる。あたしは迷わずに、慶太の部屋へ向かった。ドアの前で、一応声だけはかけてみる。
「慶太。あたし。入るぞ」
 返事なんて、なかった。あたしは構わず、引き戸を開けて、中に入る。薄暗い部屋の中で、慶太は、ベッドの上で仰向けに横たわって、両腕で顔を覆ってた。
「……なんだよ。出てけよ」
93I'm the one to watch over you 8/8-A:2008/02/02(土) 14:47:18 ID:Q8g+Q+sP
 
 あたしは、そんな慶太のセリフになんか取り合わず、無言で勉強机のとこからイスを引き寄せると、背もたれを前にして座り込んだ。そうして、告げた。
「沙織に、会ってきた」
 慶太は、ぴくりとも動かなかった。ただ、少ししてから、苦々しい声で、言った。
「バカみてーだな。オレ」
「そうかい」
「舞い上がってさ。すぐにヘコまされて。せめて審査くらい、って思ったら、あのザマでよ」
「ああ。そうだな」
「オレ……なにやってんだろーな」
「後悔してんのか」
 慶太は、答えなかった。あたしは、静かに言った。
「後悔なんかしてやがったら、あたしがぶっ飛ばす」
「……」
「あんたは、自分で決めたことをした。その結果も、ちゃんと引き受けた。だったら、前向いてろ。あんたは、だれにも恥じることなんてない。沙織にも。師匠にも」
 それに、あたしにもな。
 慶太は、ずっと、黙ってた。ほんとに、長い間。あたしも、ずっと、待ってた。慶太が、ぽつりと呟くように言うまで。
「……好きになってくれてありがとう、って……言ってくれたんだ」
「……」
「あたしに勇気をくれてありがとう、って。……なあ」
「なんだい」
「オレ……迷惑じゃなかったよな?」
 腕で目のあたりを覆ったままの慶太は、ひどく弱々しく見えて、まるで、あたしが昔からよく知ってる、お隣の頼りなくて情けないガキみたいだった。
 でもな。もう、騙されねーよ。あんたは、もう、弱っちい弟分なんかじゃない。あたしになんか助けてもらわなくたって、自分の足で立ち上がれる。ただ、ちょっと時間が必要なだけなんだ。
 それでも、あたしの言葉は、きっかけぐらいにはなるだろうか。こんなあたしでも、あんたが立ち上がる時に、手ぐらいは貸せるだろうか。そうだと、いいんだけどな。あたしは、柄にもなくおずおずと、でも力をこめて、言ってみた。
「んなこと。ぜってー、ねえ」
 慶太は顔から腕をどけて、あたしを見た。その顔は少し笑ってて、だからあたしもにやっと笑ってみせてやった。
「ま、そう気ィ落とすなよ。まだまだ、世の中いい女はたくさんいらあな」
 あたしとかな。
94I'm the one to watch over you 8/8-B:2008/02/02(土) 14:48:55 ID:Q8g+Q+sP
 
 なのに、そんなあたしの気なんから知らずに、
「三島さんよりいい女なんて、いねえ」
 慶太は天井を見ながら、きっぱりとそう言った。ふーん。そうかい。
 あたしはその横顔をしげしげと眺めながら、思う。こいつ、いつの間に、こんなオトコに育ったんだろ。人を真っ直ぐに好きになって、迷わずぶち当たって、玉砕してヘコんで、なのに、自分をフった女のことなんか堂々とほめるよーな、そんなオトコに。
 だから、しみじみと、言ってみたんだ。
「あんたも、いい男だよ」
「バッ……なに言ってんだ」
 慶太は怒った顔になってこっちを見た。ふふん。耳が赤えよ。ガキめ。
「からかうと、承知しねーぞ。いくら里香でも」
「へへ」
 あたしが片目をつむってメンゴしてみせると、慶太はそっぽを向く。
 そうだな。今んとこは、あたしの気持ちを口にすんのは止めとこう。あんたの弱みにつけこむようで悪いし、あたしも、心臓がばくばくいってて、うまく言葉にできそうにないしな。
 でもね。あんたより、いい男なんて、いないよ。少なくとも、あたしにとっちゃ、さ。そいつは、こっから、ゆっくりとっくり教えちゃる。覚悟しとけ。
「慶太」
「なんだよ」
「受験はコケんなよ。あたし、待ってるからな」
「おうよ。見返してやらあな」
 ああ。沙織のためにも、こいつは頑張るだろう。自分はもう大丈夫だ、って、惚れた女に向かって胸を張ってみせるだろう。意地っ張りで、頑固で、でも優しいこいつは、そうするはずだ。
 ほんとに、あたしは、今までにいろんなことを見落としてきたんだな。沙織のことも。慶太のことも。なんて、バカだったんだろう。なんて、ガキだったんだろう。
 だから、これからは、何も見逃したくない。ずっと、こいつを見ていたい。子どもの頃から、そうしてきたんだ。それがちょっと、互いにじーさんばーさんになるまで続くだけのこった。なんてこたねーよ。
 だから、手始めに、なかなか起き上がらねーバカを叩き起こすために、あたしは、その上に飛び乗ってみたんだ。
「わ、バカ。やめろ。こら。ヘンなとこ触んじゃねーよっ」
 おお、なかなかの反応。ま、そのうちに立場が逆になってくれると、お姉さんうれしいね。……いや。このままでも、それはそれでいいのかもな。などと思ってしまったあたしは、実は相当ヤバいのかもしれねえ。
 ま、それもこれも、あたしのせいじゃねえ。このバカのせいだから、仕方ねーだろ?
「この……バカ里香っ。……胸、当たったじゃねーよ……」
 んー? 今、なんか言ったかい? わざとだよ。それぐれえ、早いとこ気付け。この、バカ。
95名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 14:50:13 ID:Q8g+Q+sP
以上でおしまい。
96名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 15:15:55 ID:M0srdHj0
リアルタイムでキテタ

いあー、これは上手すぐる
上手いだけじゃなくて、幼馴染萌えスキーなのが
良く伝わってくるなあ
97名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 22:07:56 ID:ggIaGGU4
ボーイッシュな年上の幼馴染みもいいっスね。なんか姐さんとか姉貴って感じで
GJ!久々の作品、楽しめたよ。
98名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 19:41:23 ID:7FaWI4Zs
サーバー移転だかなんだかに気付いてなくて
本当に過疎ってるなあとか思って部屋の隅っこで体育座りしてた
そしたら作品投下があって良かった
GJ!
99名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:30:00 ID:qcqS1kj6
ちょっと投下しよかな
100名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:32:29 ID:qcqS1kj6
 俺には幼馴染がいる。家が隣同士の縁で出会ってからもう十年以上になるので、呼び方もひどく気軽だ。
 俺があいつのことを『みー』
 あいつが俺のことを『ゆーちゃん』
 クラスメイト野朗共の評価ではみーはかなり可愛い部類に入るらしい。
 ん? 可愛い女の幼馴染がいてうらやましいだって? あのなぁ、結構大変なんだぜ? 幼馴染って奴は。
幼馴染に面倒な嗜好がある場合は、なおさら特に。


 ある日の下校時。俺は唐突に明日がみーの誕生日だったことを思い出した。慌てて財布を除く。中には何かの
レシートと十円玉が三枚入っていた。
 これは、非常に、まずい。
 横目で隣を歩いているみーを見た。
「なぁ、みー」
「なに? ゆーちゃん」
「明日の誕生日のことなんだけど……」
「うん、どうかしたの?」
 みーが短めのサラサラの髪を揺らしてにっこりと笑いながら俺を見た。
「いや、その、なんだ。プレゼントのネタがもういい加減尽きちまってさ。何か欲しい物は無いか聞こうと思って」
 何を口走ってるんだ、俺は。
101名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:34:47 ID:qcqS1kj6
「え、うーん……そう言われると何が欲しいかなぁ」
 みーは右手の人差し指を頬に当てて思案顔だ。
 おい、どうするんだよ俺。金無いくせに。ばっか、だからといって、あんな笑顔向けられて「今年は誕生日
プレゼントなくていいよな!毎年なんかプレゼントしてるし!」なんて言えるわけねぇだろうがぁぁぁァッ! 
まぁ、小遣いを前借りすりゃなんとかなるよな。二ヶ月分くらい既に前借してるけどなんとかなるよな。
……本当になんとかなるのか?
「あ、そうだ!」
ぴこーん、という電球の音が聞こえてきそうな嬉しそうな声だった。
「ね、ね。ゆーちゃん物じゃなくても良い?」
「おう、勿論良いぞ」
 俺としては願ったり叶ったり……
だが、俺は次の言葉を聞いて、ある事を忘れていた事に気付いた。

「じゃあ、ゆーちゃんと一日中ちゅーしてたいっ」

 そうだった、真性のアホだったんだこいつ。
 ちなみに、俺とみーは付き合っていない。
 いやいやいや、嘘じゃないんだぜ? ただ、みーが昔からキスすんのがが好きなんだよ。いやマジマジ。本当。
まぁ、俺以外とはしたことないらしいが。自慢じゃねぇって。いつぐらいからやってたって? ……幼稚園ぐらい
からしてた記憶はあるなぁ。その頃は意味わからんでやってたけど。なんかツバが付いて汚ねぇなぁ、ぐらいしか
思ってなかったし、そもそも言い始めたのは俺の方じゃないし。キスは気持ちいいなぁ、とか思ってないぜ。
いやこれホント。
102名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:36:22 ID:qcqS1kj6
 待て待て、落ち着け俺。とりあえず真偽を問いただそうじゃないか。
「えー……っと、みー、何だって? ワンモア」
「だから、ゆーちゃんとちゅーしてたい」
「一日中?」
「うん」
 頭痛を引き起こすようなことを平然と言いやがるな。
「別に形ある、こう、何と言うか、ぬいぐるみとかでも良いんだが」
「ゆーちゃん、今お金ないんじゃないの。さっき財布覗いてたし」
「う」
「どうせ、今の今まであたしの誕生日忘れてたんでしょー。ひどいなぁ」
「ぐ」
「いっつも、あたしはちゃんとプレゼントあげてるのになー」
「むむむ……」
「傷付くなぁー」
「うぐぐ」
 幼馴染って奴はデフォで幼馴染の仕草から心を読み取ってくるから非常に厄介だ
 考え込みながら、横を見た。みーは少し前かがみになって両手を後ろに組んでこっちを見ながらにやにや笑っている。
 どうやら、俺に拒否権を行使する権利は無い様だった。
 ……役得なんて思ってねぇぞ! 本当だからな!?
103名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:38:34 ID:qcqS1kj6
 と、ゆうわけでみーの誕生日――の翌日の早朝。俺はみーの家(といっても俺の家の隣)を訪れていた。
誕生日の日は友達とかパパとかママとかが邪魔だから、と誰も余計な人がいない次の日ね、と言われたのだ。
 勝手知ったる人の家。植木の下に隠されている合鍵を取り出し、中に入る。正面の階段を上って二階の
突き当たりのドア。妙にぬいぐるみが多い部屋に入る。部屋の右にあるベッドでみーは無防備な姿をさらしていた。
「おーい、みー。起きろー」
 ぽんぽんと布団の上からみーを叩いた。あーあ、本当にいつもいつも寝相わりいなぁ。
「ううん……あと五分だけ……」
 なんというテンプレートな言葉。ったく、こいつは。
「早く起きないとプレゼントの一日が無駄になっちまうぞー、良いのかー」
「困る……困るからだっこー」
「全く、毎度毎度」
 呟きながら、俺はみーをベッドから持ち上げてやる。相変わらず軽い。そのまま階段を下りてリビングへ。
「んふー」って幸せそうな吐息を漏らしやがって。
すると、みーが両手を俺の首に回し
「ゆーちゃん」
と言った。俺はやれやれと思いながら、約束の履行を果たした。唇にしっとりとしたみーの頬の感触。フレンチキス。
ああもう、みー、笑うんじゃねぇよ。俺がこっぱずかしいんだよ!
104名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:40:41 ID:qcqS1kj6
 朝食は冷蔵庫の中にある物を適当に出してやった。トーストにイチゴのジャムとヨーグルト。以上。
「ね、ね。ゆーちゃん」
「うん?」
 トーストを食べ終わったみーが唐突に口を開いた。
「ヨーグルト、食べさせてー」
「……んん? まぁいいけど」
 俺はみーの手からヨーグルトとスプーンを取り、ヨーグルトをすくってみーに食べさせ――ようとして止められた。
「そうじゃないよぉ」
「へ?」
「口移し」
 自分、俺、と唇を交互に指差した後、みーは目を瞑った。
 え、マジでやるの? しばし呆然。てか、口移しってどうやってやるの? 今まで通り軽いキスをするだけと思ってたのに。
いや待て、なんでこいつこんなに元気いっぱい? よし、とりあえず落ち着け俺。クールになれ、クールになるんだ。
 俺は考えた。そして名案を思い付いた。そーっと右手を持ち上げて、みーの顔に近付け――思いっっきり額に
デコピンをかましてやった。
「あだっ」
「限度があるだろ、常識的に考えて……」
 搾り出すように声を出して反論すると、みーは額を押さえながら再反論した。
「うー…そんなのウソに決まってるじゃない、ゆーちゃんのばかー!」
105名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:43:02 ID:qcqS1kj6
「わかりやすいウソを付けよ……」
「あっれー、ゆーちゃん本気にしちゃったの?」
「っ! バ、バカ言ってないで早く食えよ、ほらっ」
 畜生、赤くなるなよ、俺の顔! クソ、みーもくすくすくすくす笑うなっての。これは何かの拷問か。畜生家に帰りたい
帰らせてくれ!

「で、どうするんだよ」
 朝食を食べおわったみーに紅茶を煎れてやり、俺は皿を洗っている。時刻は午前九時。何かをしようとするなら
最適の時間だが。
「って、おい?」
 返事が無いので不審に思って振り向く。みーは両手で頬杖をついてこっちを向いてにこにこ笑っている。なんか
今日は笑顔が多いな。
「みー、どした?」
「べっつにー、なんでもー」
「なんだよ、気持ち悪いな……」
 サクッと皿を洗って、みーの向かいに座る。改めて聞く。
「どうするんだよ、今日」
「うん、とりあえず――」
「とりあえず?」
「ちゅー」
106名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:44:54 ID:qcqS1kj6
 ああ、今日はずっとこんなノリなんだな…オーケー、もう諦めた。覚悟完了ってか。
 目を瞑ったみーにキス。今度は唇に。ふわっとした感触。息の漏れる音を妙に大きく感じながら、口を離す。
「……えへ」
「何笑ってんだよ」
「なんでもなーいよっ、ね、ゆーちゃんもっかいしてよ」
「はいはい」
 言われるままにもう一回唇を付ける。さっきと変わらない感触の後――ぺろ、とみーが俺の唇を舐めた。
「っっ!」
 びっくりして顔を離した。掌で唇を押さえた。わずかに湿っているということが事実を証明していた。
 みーを見る。顔を真っ赤にしていた。
「え、えっと……自分でやっといてなんだけど、恥ずかしいね、コレ」
「は、恥ずかしいと思うならやんじゃねぇよ」
 あー、やべぇ、俺も顔赤いだろうなぁ。それにすっごいドキドキしてるし……って、おい、おかしいぞ。みーとのキス
なんて腐るほどしたことがあるじゃないか。なんでちょっと舐められたくらいでこんなに。
 横目でみーを見た。かっちり目が合った。何でか、目が逸らせない。そして、その勢いのまま、唇を合わせて――がちっ、という音ともに痛みが走った。
「あいたっ」
「うぎっ」
 二人して口を押さえる。涙目でみーが言った。
「いったぁ〜…ゆーちゃん、ガツガツしすぎだよぉ。歯ぶつけるなんて」
107名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:47:12 ID:qcqS1kj6
「う、うっせーよ! 仕方無いだろ!」
 内心、何が仕方ないんだよ、と自分でツッコんだが何なのかわからない。
「ほら、とりあえず着替えてこいよ。いつまでもパジャマって訳にはいかないだろ」
「あー、ごまかしたー」
「やかましい! 良いから着替えろ!」
 きゃー、こわーいと声をあげてみーは部屋を出て行き、ぱたぱたという階段を昇る音が聞こえてきた。
 畜生、なんか今日は雰囲気がなんか浮ついてるな。流されそうになったぜ、あぶねぇ。みーも見たこと無いくらい
顔が赤かったしな。
 ふぅ、と溜息を付きながら椅子に座りなおし、思った。
 いきなりこんなんで今日一日持つのか俺。いや、まぁ、別にちょっと期待で胸が膨らんだりしてないぞ……
本当ですヨ?
108名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:48:05 ID:qcqS1kj6
状況終了。レスがあれば続きを書きたいと思う所存。
あーばよとっつぁーん
109名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:52:34 ID:RMbQdnHw
>>108
わっふるわっふる
110名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 00:19:07 ID:xo71mhdM
>>108
GJ
なるほどキス魔(?)ね
何がしか習慣化してるってのも、確かに幼なじみっぽいな
さてこっからどうなるか楽しみ、つーわけで
わっふるわっふる

あ、>>95さんもGJ
姐さんな幼なじみってのも悪くないと思ったぜ
二人のこれからに期待
111名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 00:33:53 ID:DeY46PBV
>>80
わっふるわっふる
112名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 00:54:31 ID:DtWK0bVV
>>108
これはいいな

なんつーか……いいな

GJ&wktk!
113名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 08:07:54 ID:s6jMhS53
>>108
むさぼり読んでしまった。このまま山や谷がなくたって構わない。
語り手でないはずのみーちゃんの幸せな気持ちが画面いっぱいに
広がってるのが分かる。時間よ止まれっ!
114名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 23:50:30 ID:XjKaeOC6
と、ゆうわけで>>100-107の続きを書いてみた。
でっちあげみたいなもんだからくおりちーは低いかも

以下、状況を開始する。
115名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 23:52:31 ID:XjKaeOC6
 あたしには幼馴染がいる。家が隣同士の縁で、気付いた時から一緒にいて、呼び方もその頃からずっと
変えていない。……そう、変えてない。
 ゆーちゃん、って呼ぶのが好き。
 みー、って呼ばれるのはもっと好き。
 ゆーちゃんが、そんな風な呼び方をしてくれるのはあたしだけ……だし。


 階段を駆け上がったので、心臓がドキドキ音を立てていた。
 それだけじゃないくせに、と思う。
本当に、昔から、数え切れないほど、ゆーちゃんとちゅーをしてるのに、未だに慣れないなぁ……しかも、
今のキスは――うう、顔が熱い。
 顔の火照りを実感しながら、パジャマの上着のボタンを外す。下は何も着けていない。お世辞にもボリュームが
あると言えない胸がそこに現れる。タンスから下着を出して付ける。お洒落なブラなどではなく、タンクトップ系のものだ。
 やっぱ男の人っておっきいほうが好きなのかなぁ……と幾度となく感じた疑問を抱きながら普段着に着替える。
部屋を出てリビングに行く。
 普段通り普段通り……あー、だめだ。顔がにやけちゃう。でも、しょうがないよね。ゆーちゃんと一緒だもん。
 リビングに入る。ゆーちゃんはさっきと同じ位置に座りながら、テレビを見ていた。
116名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 23:54:18 ID:XjKaeOC6
「あ、おい、みー」
「なーに? ゆーちゃん」
「朝飯食ったばっかりでいうのもなんだけど、冷蔵庫の中身なーんもないぞ。昼飯どうするんだ」
「え、そうなの?」
 台所の方に行って冷蔵庫の中身を改める。
「ほんとだ、なんにもないや」
「昨日のみーの誕生パーティで使っちまったんだろ。どうする?」
「外に食べに行く?」
「……みー、どうして俺が今日ここにいるか解ってて言ってるんだろうな」
 そうだった。ゆーちゃん懐がさびしいんだった。
「じゃあ、買い物かな。お金はあとでお母さんに払ってもらうから、立て替えとくね」
「よし、んじゃ行くか」
「あ、でも、その前に」
「ん?」
「行ってきますの、ちゅー」
「……は?」
 ゆーちゃんがあっけにとられた顔をする。ゆーちゃんをからかうのは私のライフワークなのだ。
「いや、一緒に行くんだよな?」
117名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 23:56:18 ID:XjKaeOC6
「うん、行くよー。だからちゅー」
 あたしは目を瞑って促した。はぁ、という観念したような響きの音と共にぽわっ、と暖かい感覚が唇に触れる。
さっきと同じく心拍数がまた上がる。とくっ、とくっ、という音が胸から聞こえる。でも、心はふんわりと、何かで
満たされて落ち着く。ふ、と感触が消えた。目を開く。
「ぷはぁっ」
「何で息止めてるんだよ……」
「たまにそうゆうのってない? 集中したいっていうか」
 ちょっと照れながら言う。なんかあたし、気持ちが高ぶっちゃってるなぁ……危ない危ないセーブしなきゃ。
「わけがわからん。ま、ほれ、いくぞ」
「うん」
 コートを部屋から取って来て着る。玄関、靴を履く、外に出て鍵を閉める。並んで歩き出す。
「確か今日、駅前のスーパーで安売りやってるからそこでいいよな」
「タニイシ?」
「そこそこ。と、そうだ、ほい」
「ん?」
「手」
「え?」
「どうせ繋げってんだろ、いつも通り」
118名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 23:58:19 ID:XjKaeOC6
「あ、うん」
 右手を差し出す。ゆーちゃんの左手があたしの右手を迎えた。てのひらだけを合わせるのでなく、指を一本一本
交互に、みんなからめる。
「みー、なーに、またにこにこしてんだ」
 ゆーちゃんがあたしの顔を覗き込む。あたしは手にちょっと力を込めながら言った。
「内緒だよー」
「手を振り回すな! ガキか!」
「へへー」
 そのままスーパーへ。中に入った時に手をどちらともなく離す。……名残おしい。
「さて、何を買うか」
 安売りの日だけあって、店内は人で賑わっている。
「うーん」
「冷凍庫に冷ごはんが余ってたぞ、そういえば」
「じゃあ……焼き飯とか?」
「ま、昼飯だしその線だろ。具どうすっかなぁ」
「えっと、豚肉、卵、タマネギ、ニンジン……」
「もう一味欲しいとこだな」
「これとかどう?」
119名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 00:00:26 ID:XjKaeOC6
 あたしは野菜売り場の一角を指差した。
「レタスか。うん、いいんじゃないか」
「じゃ、はい、っと」
 4/1玉のレタスをカゴに入れる、ネギとたまねぎ、ニンジンもついでに。
「豚肉と卵の前に――お菓子もっ」
 ゆーちゃんの袖を引っ張って強引に行き先変更。
「こら、引っ張んな!」
 ゆーちゃんの叫びもなんのその。お菓子コーナーに到達。好きなチョコ系のお菓子を二つにポテトチップに――
「みー、太るぞ」
 ゆーちゃんがにやにやしながらあたしに言う。
「う。いいじゃない、あたしそんな太ってないんだし」
「まぁ、増やすとこは増やした方がいいからな、みーは」
「ゆーちゃん……どこの事言ってるの……」
「どこって、そりゃあ胸とか背とか」
「あー! 口に出して言ったー!」
「だっはっは! 怒んな怒んな。残念ながら真実だ」
「もー! ひどーい!」
 カゴを持ってるゆーちゃんの胸をぽんぽん叩く。それでもゆーちゃんは笑い続ける。
120名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 00:02:25 ID:LYR206+n
 うー…気にしてるのにぃ。思わず、薄っぺらい自分の胸を見下ろしてしまう。はぁ、現実ってヤダなぁ……
「ほれ、行くぞ」
 ゆーちゃんはそう言ってとんとん、とあたしの頭を叩いて先に言ってしまう。
 あたしの頭を軽く二回叩くのはゆーちゃんの昔っからのクセで、ごまかしたい時によく使うのだ。ゆーちゃんのばか。
その後、必要だった物も全部買って、袋詰め。カゴを返して外に出る。
「あのなぁ……機嫌直せよ」
「あたしが背低いのとか気にしてるの知ってるくせに」
「だから悪かったってば」
「ごまかそうとしたし」
「いや、その、すまん」
「……本当に悪いと思ってるの?」
「思うって、だからさ……」
「じゃ、ここでちゅー、して」
「……は?」
「早く」
「って、ちょ、おま、ここ人が……」
「しなきゃ許さないもん。ほーら」
 目を瞑って、ちょっと爪先立ちになる。手を後ろで組んで、あごをちょっと上げる。
121名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 00:04:47 ID:XjKaeOC6
「くぁぁ、マジか……」
 あたしは心の中で笑った。ゆーちゃんのとまどいが見えていないのに伝わってくるようだった。ホント、ゆーちゃん
はいっつも面白いほどひっかかるなー。それがいつも嬉しいんだけどね。
「ウソだって。うーそ。また信じちゃって」
 あっけに取られた顔のゆーちゃん。思わず、にひひと笑いが漏れる。
 ゆーちゃんが頭を抱えてうずくまった。
「また引っ掛かった、欝だ……」
「いんがおーほー、ってね、反省しなよー」
「くそぅ、帰るか……」
「はーい」
「ふう、荷物貰うぜ」
「うん」
 買った物が入ってる袋を渡す。こうゆう時、ゆーちゃんは無理してでも荷物を持ってくれる。
「ほら、手、繋ぐだろ」
「……うん」
 互いの指を絡ませる。すごく、落ち着く。並んで歩き出す。ゆーちゃんの顔を見上げた。不意にゆーちゃんが
振り向いて目が合った。
122名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 00:06:54 ID:LYR206+n
「どした、ちょっと俺の足速いか?」
 ゆーちゃんは、いつも、いつだってあたしを気にかけてくれてる。何をしても笑って許してくれる。いつだって一緒に
いてくれる。
「ううん、だいじょーぶ。普通だよ」
 首を振って答えて、あたしは思った。
 やっぱりもうちょっと背丈と胸が大きかったらなぁ……
123名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 00:08:36 ID:LYR206+n
状況終了。またまたレスが付いたら投下するかもだぜ。
ちょっと読みにくいやも知れぬがかたじけない。
124名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 00:50:41 ID:0h31ilVH
>>115-122
バカップルに乾杯!
125名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 01:12:31 ID:1talFLXr
>>123
恋人つなぎktkr
くそ、これで付き合ってないとか絶対ウソだろ!

ほのぼのしてていい感じと思いますぜ
ま、焦らずゆっくり書いて下さいな
126名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 01:26:39 ID:KB0gpyXn
これで付き合ってないとか、お前らいい加減にしろよ?
って周りの心の声が聞こえてきそうだwwww
127名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 02:20:00 ID:fwdmEtTL
>>126ちょwwww俺の心完全に読まれたwwwwwwww

>>123こういう名作があるからこそ幼馴染みが好きなんだなと改めて実感したよ。
照れくささとか優しさとかが、ひしひし伝わってきた。
二人がいつか一線を越えるのを願って全裸待機in札幌。
GJ!
128名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 03:16:35 ID:oicYxMo3
>>123

GJ !!
バカップルに幸あれかし

>>127
一同、雪祭り会場での全裸正座に敬礼!
129名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 02:42:15 ID:jLYu5Sfy
お前さんからはいつかの捕獲部隊の匂いがするw
130名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 12:50:38 ID:sq9xuYIV
小ネタとして。
∞プチプチ ぷち萌え「幼なじみ編」
ttp://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0802/07/news033.html
このテのグッズにしては比較的珍しく幼馴染Verが発売されるみたいだが、おまえらどう思うよ?
どうも台詞設定が若干間違ってるような気がするんだが・・・
131名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 17:29:35 ID:JPVp5dld
そもそも「幼馴染み」を表現する端的な台詞というのが思い付かない。
「お兄ちゃん」「ご主人様」「か、勘違い(ry」ですぐに分かってもらえる
他の属性と比べれば一目瞭然(優劣の問題ではないので念のため)。

むしろ>>71が的確に指摘しているような、二人の関係全体が醸し出す
温かいような切ないようなドキドキするような空気こそが肝なのだろう。
そのあたりのとっつきづらさが、幼馴染みキャラはありふれているのに
属性としてはマイナー感があるという上の議論にもつながる気がする。
132名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 21:12:17 ID:uHknyKWH
俺が幼馴染で好きなのは、呼吸と距離感だなぁ。
台詞だけで表現するには難度が高そうなんぜ?

まぁ、「ちょwwwwwそれで付き合ってないのかよwwwwwwwうはwwwwwww」
って言うのが大好きなだけかもしれんが。
バカップルとかも大好物なんよ
133名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 00:21:57 ID:DSeWD3LQ
うん、シロクロは俺の大好物だ
134名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 02:25:36 ID:hy24+hJG
   _、_
| ,_ノ` ) ……



   _、_
| ,_ノ` ) そいつは付き合ってるのに付き合ってるとはあんまり思えないようなカップルしか書けなくて



   _、_
| ,_ノ` ) なおかつシロクロの中の人を勝手にライバル視してる俺に対する挑戦状だな、そうなんだな



135名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 02:48:23 ID:6KzBB2XQ
>>134
せっかくだから投下をwktkで全裸待機するぜ。
136エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/09(土) 03:49:30 ID:JZVDYu37

 生まれてからずっと続いてきたことを今更になって変えるのは、なかなか難しい上に、
結構な勇気がいる
 言うだけなったら何でもない。でもこれが今現在も進行形な体験談だと、色々面倒臭くなる。
付き合ってる相手となると尚更だ。
 いやぁ、もちろん大事にしたいと思ってるぜ。だって、あいつがいない人生がどんなもの
なのか、あの時嫌というほど思い知らされたわけだからな。
 時間が経てば、大抵の辛いことは今思えば何とかなると思えたりもする。でも、何となく
生きてきた人生の中で、あの数ヶ月間だけは今でもやっぱり思い出したくない。

 まあ、なんだ。だからっつーかなんつーか、俺にとってあいつは絶対必要で、だから俺も
惚れたんだっていうこれ以上ないきっかけにもなったんだけどな。自惚れになるけども、
あいつにとって俺は必要な人間だったと思う。それと同じように、俺にとってのあいつも
絶対に必要な存在だった。
 それが分かったから、あの時、早朝の駅前で、躊躇いもせずにあんなこと出来たんだと
思うんだよな。理性とかじゃなくて、ただ、気持ちが爆発した感じだった。

 昔のことに思いを馳せれば、実感が湧かなくなる。けど今に至る過程を思い起こせば、
この状態が必然で、最高の結果だった。あの時の選択が間違ってなかったっていう思いは、
消えるどころか霞むことさえない。
 色々行き違いがあったり欲に忠実でいたりしたら、何度か浮気まがいなこともしでかした。
そのせいなのか単に年を重ねたからなのか、以前と比べて随分逞しくなったし落ち着いた。
そしてそれでも、変わらず俺のことを好きでいてくれてる。だから今、思うこともある。

 そろそろ、その答えを出してやらないといけないってな――――




ピリリリリリリリリッ


ピリリリリリリリリッ



 ………………あー。

 朝かー……ちくしょうまだ寝ていたい。でも今日はバイトがあるから起きないといけない、
誰だこんなダルい気分な時にシフト入れたのは。俺じゃねえか馬鹿野郎、ああめんどくせぇ。
「あ、起きたんだ崇兄」
「んー…」
「おはよ」
「おー…」
 起き上がり頭をぼりぼり掻いてると、流しに立っていた紗枝に声をかけられる。味噌汁の
匂いを嗅ぎながらぶっきらぼうに返事をすると、「凄い寝癖だよ」と苦笑を洩らされる。
着替えを済ませ髪も梳かされているから、随分早くに目を覚ましてたらしい。……こいつも
後ろ髪の一部が少し跳ね返ったまんまだが。
「よく寝てたね。朝ご飯出来るまでほっとこうと思ってたんだけど」
「昨日夜更かししたからなぁ…」
「思ってたより盛り上がったからね」
「ふぁぁぁ…ねみぃ」
 腋(わき)を掻きながら欠伸をかみ殺し、乾いた目を瞬かせて眠気を追い払う。
部屋には、二組の布団が隣り合わせに敷かれてある。まぁこうして朝飯作ってる時点で
言う必要もないかもしれんが、昨晩こいつはここに泊まったのだ。
137エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/09(土) 04:11:45 ID:DEP01Mxe
「はー…」
「? 何だよ」
「……」
「何だよー」
 話が盛り上がったせいかおかげか、結局昨日は事に及べなかった。まあ盛り上がらなくても、
あんなもん持ってこられて見せられた時点で萎えてたっつーかやる気削げてたけどな。
というか、元々それが目的だったんだろうが。
「どうしたんだよー」
 自分の思い通りの展開になったことに満足してるんだろう。天真爛漫な口調とは裏腹に、
口元が清々しくニヤついている。良い度胸だ、そのうち腰が抜けるくらい犯してやる。
枕元には、昨晩を健全な意味で盛り上げたものが無造作に置かれてある。紗枝の成長を
辿ったアルバムだった。赤ん坊から高校の卒業した頃までの写真を、三冊程度に纏めてある。
当然お向かいで幼なじみだった俺も結構な割合で映りこんでいるわけで、表紙のタイトルには
「紗枝(と崇之君)の成長アルバム」と記されてある。大きなお世話だコノヤロー。

『ほら見てみろ紗枝、この眠っそうな面』
『崇兄のこの顔さ、昔と全っ然変わってないね』
『そりゃーお前が物心ついた頃から惚れてた顔だしな』
『別に顔だけが理由だったわけじゃないもん』
『そりゃどーも。お前は今と昔じゃ全然違うよな』
『色々努力しましたから』
 そりゃ楽しくなかったって言ったら嘘になる。また布団二つ並べて被って丸まって、
懐かしみながらアルバム眺めたいと思う気持ちがあるのもまた事実だ。
『ほらこれー、何だよこの抱き方。これであたしのことお守りしてたって言えるの?』
『豪快だろ。というか、そうしないと持ち上げられなかったんだよ』
『軟弱者め』
『うるせぇ、この写真撮った時七歳くらいだぞ俺』
 しかしだ、そういうことをするなら時と場合を選べと声を大にして言ってやりたい。
前回悪戯が過ぎて怒らせてしまったから、今回はちゃんと優しくしてやろうと思ってたのに。
具体的に言うと、主に言葉で責めようと思ってたのに。
『これは…小学校の卒業式か、校門の前で並んで撮らされたんだったかな』
『この頃にはもう河川敷で遊ばなくなってたよね』
『よく遊んでた奴とクラスが違って疎遠になったからな。つーか、なんで俺じゃなくてお前が
泣いてんだ』
『うるさいなぁ、いいだろ別に』
『気になるもんは気になる』
『えー…』
『言わんというなら、こっちも手段を選ばんが』
『崇兄と一緒に学校通えなくなるのが寂しかったからだよっ』
 途中そういう方向に話をもっていこうとしても、向こうがすぐに折れたり話を転換させて
それっぽい雰囲気を作れなかった。ずっと玩具にしてきた弊害か、こっちの意図を上手く
かわされることが多くなった。
『これは中学の制服か。この頃がいっちばん生意気だったな』
『そーなの?』
『そーなの。口調ががさつになってきたのもこの頃だな』
『……』
『反抗期ってやつかなーと思ったりもしたもんだけどな。そこんところどうですかお嬢さん』
『……だって崇兄、他の女の人と付き合ってたから』
『…あー、その時期と被るわけか』
『それだけならともかく、あたしに惚気てきたりするしっ』
 しかも自爆までかましてしまったり。一度拗ねさせちまうと、こっちが折れるまでずーっと
口尖らせ続けるから厄介だ。まぁ、そーいう時の紗枝が一番可愛いんだけどな。以前ほど
そういうところを見せてくれなくなってきてるから、嬉しい誤算でもあったわけだ。
138エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/09(土) 04:17:10 ID:DEP01Mxe
『…? これ誰だ?』
『えーっと…あぁ、その時仲良かったクラスの男子だね。学園祭の準備の時に撮ったんだ』
『ほー……』
『? どしたの?』
『なかなか澄ましたお顔のお友達だな』
『そうだね、結構モテてたし』
『距離近いな』
『写真に写るためだもん』
『軽薄そーな奴だなぁ、なんでこんなのと仲良くしてんだ』
『別にいいじゃん、あたしが誰と仲良くしようと……って、崇兄』
『ンだよ』
『妬いてる?』
『……は?』
『へー、妬いてるんだー!』
『あぁ? 調子乗んなよお前』
『妬いてるんだ、崇兄妬いてるんだぁ。ふへへー』
 中には自爆じゃないレベルのことやらかしたりしたけどな。あれはマジで失態だった。
紗枝に主導権握られるとか、屈辱以外の何物でもない。「崇兄に軽薄とか言われたらおしまい
だよねー」と言われて言い返せなかった自分が悔しい。
『これは……あん時のか』
『うん、崇兄が写ってるのはそれが最後だよ』
『……ふーん』
『どうしたの?』
『いやー…お前のこと泣かしてばっかりだと思ってな、これもそうだし』
『……前の晩、ずっと泣いてたんだ。そしたら、崇兄の前じゃ泣かなくてすむかもしれないって
思ってたんだけど』
『そっか……ごめんな』
『…ううん』
 まあ、途中なかなか良い雰囲気になったりもしたんですけれども。頭を撫でてやって、
そのまま肩を抱き寄せてやったら、それまでの態度とは一転して、急に大人しくなった。
ちなみに写真の内容は、俺がこのボロアパートに引っ越す時に、こいつの家の前で紗枝と
一緒に撮ったものだ。確かこの時も頭を撫でてやったんだよな。この頃は他人同士なのに
兄妹みたいな関係がしっくりきて当たり前で思い込んでいたから、あの時は慰めの意味しか
込めてなかった。

「はい」
「おぉ、悪いな」
 テーブルの上には味噌汁、納豆と卵焼きというオーソドックスな朝食のメニューが並んでいる。
炊飯器から炊きあがった米をよそってもらい受け取ると、お茶を汲んで箸を取る。
 朝が強い紗枝は、泊まった翌朝には決まって飯を用意してくれる。ロシアンルーレットの
ようだった料理の腕前も、あれから随分と上達した。大学には進学しなかったから、おばちゃんに
家事を習ったりそしてそれを手伝ったり、卒業と同時に始めたバイトで金貯めて、料理学校に
通ったりしてるそうな。
 それを聞いて思わず「花嫁修業じゃねーか」って突っ込んだらエラい目に遭ってなぁ、
顔真っ赤にしてうるさいことうるさいこと。その時いつもの手を使って黙らせたら、過剰反応
示して茹でダコになって骨まで抜けてしまったのはとても面白かったが。
139エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/09(土) 04:24:49 ID:JZVDYu37
「バイト何時からだっけ?」
「今日はちょっと遅めに入れたからな。あと二時間くらいは余裕ある」
「そっか、じゃあ掃除だ」
「せめて飯食い終わってからにしてくれ。埃を被った米や味噌汁食いたくないぞ」
「食べてからの話だよ。膳ももう一式置いてあるだろ」
「おやそういえば」
「……食べる前に顔洗ったら?」
「せめて飯食い終わってからにしてくれ」
「もー」
 四つ年の差があったから今まで気付かなかったが、実はこいつ人の世話を焼くのがかなり
好きらしい。それが少しばかり鬱陶しくもあり、楽をさせてもらってありがたかったりする。
まあなんにせよ、朝起きたら既に飯があるってのは良いもんだ。
「でもお前、飯作るのうまくなったな」
「そうかな。ありがと」
 ポン酢をかけた卵焼きをおかずにご飯を頬張り、咀嚼しながら料理の出来映えを褒めると、
はにかむように照れ笑いを浮かべる。普段は礼を言ってもその言葉を素直に受け取ってくれない
困ったお嬢ちゃんだが、家事に関しては照れ臭さより嬉しさの方が勝るらしい。ま、料理の腕
磨いてんのは俺のためでもあるだろうからな。こう頑張ってくれてると自惚れたくもなる。
 それでなくても、こいつも成人を迎えて色々成長してるしなぁ。精神的な意味でも、身体的な
意味でも。

「お前は今日バイト無いのか?」
「うん。真由と遊ぶんだ」
「あー…いたねぇ、そういう娘も。相変わらずなのか?」
「まぁね、あの性格が簡単に変わるわけないよ」
 いつも何考えてるのかよく分からないあの狐面を思い出し、思わず頬を引きつらせると、
紗枝には苦笑を漏らされる。
 俺達が付き合うきっかけを作ってくれたその女の子は、地元の大学に進学してるらしい。
ちなみに出来は良いが要領の悪いバイト先の後輩も、同じキャンパスに通っているとか
いないとか。本人の弁では、これといって目立った進展は無いらしいが。
「どれくらい会ってないの?」
「お前らの卒業打ち上げの時が最後だよ、もう二年くらい会ってねーな」
「あぅ…あの時はごめんなさい」
「はっはっは、気にすんなよ」
 そうそう、今まで酒とか飲んだことないくせに、打ち上げでカクテルやら何やらを勢い良く
飲みまくり、すっかり酔っ払った紗枝を迎えに行って介抱したのも、もう二年前の話になる
わけだ。
 普段以上に俺との仲を聞かれまくり、誤魔化しに飲んでたらいつの間にかぐでんぐでんに
なってしまったらしい。動かなくなったこいつをどうにかしようと考えた真由ちゃんに、
ちょうどバイト上がりだった時に呼ばれてな。
『あなたの大事な大事な愛しい恋人さんが、あなたのことを想いすぎて潰れちゃったんで、
迎えに来てその分しっかり愛情注いであげてください』
 あの狐っ娘にそんなこと言われてな、急いで迎えに行ってな。こいつのより俺の家の方が
近かったから、背負ってこの部屋まで連れ帰ってな。
「…あのさ」
「ん?」
「……もしかして、思い出してる?」
「はっはっは、そんなことないぞ」
「うぅぅ……やだなぁ」
 そこで話が終わったなら、こいつもここまで気になんかしない。でも面白いのはここからでな、
背負って帰る途中に意識を取り戻した紗枝の態度に、色んな意味で振り回されたわけだ。
 赤ら顔で酒臭い息をまき散らしながら、匂い嗅いできたり頭撫でてきたり無い胸押しつけて
きたりずーっとうなじにキスしたりとかな。そんなこと普段は絶対やってこないから、
にやけてしまうとかそういう以前に驚かされた。家に着いて寝かそうとしたら、抱きつかれて
迫られて押し倒されかけたのは流石にびびった。
140エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/09(土) 04:27:11 ID:JZVDYu37
 まあその時のことを本来こいつは覚えてないはずなんだが、俺がしっかり悪戯心と嫌味を
交えて伝えてやったから、こうして目の前で唸っている。最初はまるで信じなかったんだが、
俺の首筋がやたら赤くなってたり、見ていた夢の内容を思い出すうちに黙り込んじまってな。
 今思えばこっちももっと乗り気になっときゃ良かった。据え膳食わぬは何とやらと言うし、
こっちから酒飲ませようとしても中々飲まないし飲んでもちょっとだけでなぁ。

「ごちそーさん。あー食った食った」
 食器を重ねて流しに持っていき、再び腰を下ろして軽く腹を撫でる。おもむろにテレビを
つけると、朝のニュース番組がブラウン管に映し出される。こういう雰囲気が、なんだか最近
いちいち懐かしい。
「あたしもごちそうさま。さ、掃除掃除」
「飯食った直後にすぐ動くのは身体に良くないぞ。急ぐわけでもないし、ちょっと休んで
からにしたらどうだ」
「あ、そっか。バイトの時間までちょっと余裕あるんだっけ」
「そういうこった」
「じゃあ…」
 欠伸をかみ殺しながら答えると、紗枝はわざわざ俺が使っていた方の布団に倒れこむ。
起きぬけに家事をして気を抜くと、やっぱりそれなりに疲れるらしい。こういうことを恩に
着せない性格は、俺みたいな人間にはとてもありがたかったりする。おかげで毎日図に
乗らせてもらってるわけだが。
「はふー…」
 ため息をついて、丸まって枕に顔を埋めている。相変わらず寝顔だけは文句なくあれだなー
可愛いなー。どうしてもちょっかい出したくなる。
「二度寝すんのか?」
「しません」
「でもまたちょっと眠たくなったろ」
「なりません」
「?せ我慢すんなって」
「してません」
 ……なんという生意気な態度、これは悪戯して俺の気分を晴らさざるを得ない。

「紗枝…」
「うわぁ!」
 添い寝するように俺も傍に寝そべり耳元でそっと囁いてやると、過剰に反応を示してくれて
満足感を覚える。やはり紗枝はこうでなくちゃいけないと思う今日この頃。
「なっ、何すんだよっ」
「なんとなくだ」
 耳を押さえ逃げようとした身体を、お腹の前に腕を通して固定する。
 付き合う時間が二年にもなれば、流石に多少なりとも熱は治まる。座椅子もしなくなったし、
こいつも落ち着いた雰囲気を見せるようになった。最近になってまた髪型を戻してくれたが、
それ以前はロングヘアーになるくらいまで伸びていた。だから、余計にそんな風に見えていた。
 そもそも、髪伸ばして欲しいっつったの俺なんだけどな。色んな紗枝を見てみたかった
わけで。
「…ちょっと」
「ん?」
「…離れてよ」
「なんで」
「…こんなことしてたらこれから掃除できないだろ」
「今度でいい」
 ひどく冷たい台詞だが、こんなのいつものことだ。右から左へ軽く受け流す。そもそも、
こいつがこういった台詞を吐く時は大抵照れてる時だ。
「そもそも後ろから抱き締めたはずなのにお前の顔と身体がこっち向いてるのは何故だ」
「……知りません」
 言葉とは裏腹な態度をわざわざ言葉にしてやると、つっけんどんな口調と裏腹にもぞもぞと
身体を丸めていく。
 まあ人間、根っこの部分はそう簡単には変わらないと言いますし。腕に力を込めても、
もう文句を言ってこない。ふふふ可愛い奴め。
141エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/09(土) 04:30:27 ID:JZVDYu37
 三月になったばかりとはいえ、まだまだ寒い日が多い。今日もご多分に漏れず、朝から
随分と冷え込んでいる。窓からは晴れ間まで差し込んでるっつーのに何でなんだまったく
家でもっとゴロゴロしてぇ。
「あー! バイト行きたくねー…」
「今日行ったらしばらく休みなんじゃないの?」
「だから行きたくねーんだよ」
 しかも今日のシフトは中抜け挟んで半日ときている。終わった頃には真夜中だぞ真夜中。
店長の鬼シフトによくここまで耐えてきたもんだ。
「あたしはバイトすっごい楽しいけどな」
「どーせ客少なくて同僚とお喋りして終わりだろ」
「そんなことないよ。これでも看板娘って評判なんだから」
「誰が」
「あたしが」
 あー? 舐めた発言しやがって。そんな「あたし可愛いんだよ」的な発言を自分からする
お前なんか認めんぞ。
「お好み焼き焼くのも上手くなってきたんだから。今度作ってあげよっか?」
「そういやお前の職場はお好み焼き屋だっけか」
「そうだよ」
「広島風と大阪風、どっちだっけ」
「広島風だね」
「……あぁ、なるほどな。“おたふく”娘ってことか」
「もー、またそんなこと言うー」 
 自惚れるお嬢様に皮肉を叩きつけてやったら、頬をぷーっと膨らませて本当におたふく面に
なる。頬を柔らかく抓ると、その表情がいよいよ不機嫌なものになる。
「あにふんだよ」
「お前のほっぺって柔らかいよな」
「うー、ひたひー」
「ぷにぷにしやがって。気持ちいいぞこの野郎」
「はなへー」
 朝っぱらからシングルサイズの布団に二人で寝っ転がって抱きしめあって色々悪戯するのは
ダメ人間を極めつつあるかもしれん。しかしこれがまた俺の気分をゆっくり落ち着かせて
くれるんだから仕方ない。快楽主義の四文字が俺の座右の銘だ。

「もうっ」
「うおっ」 
 堪忍袋の緒が切れたのか、思いっきり手を振りほどかれる。身体もぐいっと押されて
距離を取られ、そのまま上半身を起こしてしまう。
「いい加減にしてよね」
「んだよー、つれねえな」
「前にこんなことしててお互いバイト遅刻したじゃん。これからは厳しくいきます」
「えー」
「えーじゃありません、ビシバシいきます」
「固いこと言うなよ、ヤろうぜ」
「しません!」
「昨日の晩ヤらなかったんだから良いじゃんよー」
「朝からとか絶対やだ」
 くそー、相変わらず身持ちが固ぇ。なんて面倒臭い女だ、もっとこう俺のために色々と
気を利かせてだな…
「…今、何て言ったのかな?」
「言葉のアヤだ、聞き流してくれ」
 おおお危ねぇ、にっこり笑いかけてきたら本気で怒りかけてる合図だからな。こうなったら
逆らわん方がいい。

「そもそも崇兄だってさ、あたしのこと相変わらず考えてくれないじゃん!」

 やべ、スイッチ入っちまった。これは早いこと脱出しないと被害が甚大になる。
「会うのはいっつもここだし、最近デートしてないし、これからのことだって…」
「おっとこれはいかん! 気付いたらバイトの時間が迫っておる! 早く準備せねば!」
142エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/09(土) 04:31:45 ID:JZVDYu37
 枕元にあった携帯を掴んで開いて時間確認して、紗枝の言葉を遮るように声を張り上げる。
こいつも何か言いたげに一瞬口を開きかけたが、無駄だと思ったのかそれは溜息となって
口から放たれる。ちなみに、まだ時間的に全然余裕あるのは内緒の話だ。

「……だったら早く準備してください」
「いやスマンスマン」
 まあ平日はほぼ必ずシフト入れてるし、バイトリーダーだから土日も穴埋めで入ることも
少なくないからな。こいつの方もバイトしてるとはいえ、俺ほど忙しくはない。その時間を
埋めてやれないのは、やっぱり申し訳なかったりする。

 まあ、だからっつーかなんつーか。用意してるわけなんだけどな、答えを。そう言い表す
にはちょっと大仰かもしれんが。そしてそれは今、紗枝には見つからないよう押入れの奥に
しまってある。
「まったく。こんなことならとっとと掃除すればよかった」
「悪かったって。ちゃんと埋め合わせすっからさ」
「どんな?」
「秘密」
「どうせうやむやにするんだろ」
「ははははは」
 顔を洗って着替えを済ませ、出かける準備を済ませる。そしてバレないよう、こっそりと
それを取り出してコートのポケットに忍ばせる。

 今までは確かにそうだった。時間置いたり機嫌とったりして、そのうちうやむやにするのが
いつもの手だった。埋め合わせなんて、合コン行ったのがバレてた時くらいなもんだった。

 今日渡そうと決めてたわけじゃない。でも、延々とタイミングを掴み損ねてたら気持ちが
萎んでしまいそうだったし、何より「あたしのこと考えてくれてない」という紗枝の言葉に、
挑発されたような気分になった。そうじゃないってことを見せつけてやりたくなった。
俺だって本当は、その、なんだ。まあ……色々とな、あれだよあれ。
 
 最初に告白したのは紗枝の方で、俺が告白したのは、それから何カ月も経った後だった。
 けど年は俺の方が上だし、こっちは男だ。もう一回くらい言っておかないと、埋め合わせに
ならないと思うわけで。だから俺は、今からガラにもないことをやろうとしている。
「よーし、行くか」
「忘れ物ない?」
「ねーよ」
 ポケットの中の答えを、突っ込んだ掌で握り締める。そして同時に心を決める。


 二度目のきっかけは、俺が作ってやる――――


143名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 04:34:51 ID:JZVDYu37
   _、_
| ,_ノ` ) ……



   _、_
|; ,_ノ` ) ギコナビじゃ書き込めなくなったり、最初に一行空けてたら投下できないことを忘れてたりして申し訳ない



   _、_
|; ,_ノ` ) しかも一度で投下するつもりがこの冗長な文章のせいで持ち越し……本当に申し訳ない

144名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 07:40:32 ID:f3GSqO1O
GJの極み
145名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 07:53:18 ID:6KzBB2XQ
>>143
VEEEEEERRRRRRY GOOOOOOOOOOD!いわゆるGJってヤツだぁーっ!

会話のノリがいい、非常に良い
146名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 09:16:41 ID:UCXVajx7
この二人もとうとう行き着くところまで行くことになりましたか……感慨深い。
大団円を楽しみにさせてもらいます。
147名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 15:58:15 ID:v6EcuXQa
わぁ、GJ!
徹夜して起きたら投下があったとは!
148名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 03:21:14 ID:T+MNxqpf
ああ…ついにこのシリーズも完結か
楽しませてもらったぜ、GJ!
149名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 14:07:37 ID:7yKm9kw6
と、投下するぞ! 予告もないけどしちゃうからな!
途中。エロなし予定。長いかも。
季節遅れの正月ネタ。
150年の差。:2008/02/10(日) 14:08:44 ID:7yKm9kw6
/0.

――そうなのだ。気付いてしまった。
自分とアイツは、同等だってコトに――――。

……Ten years after.


/


/1.

十二月三十一日――大晦日、午後四時。太陽は分厚い雲に隠れ、既に夜に等しい暗さだ。
そういえば、毎月三十日は晦日と言うんだったかな――と、どうでもいい知識を唐突に思い出す。
壁際。背には柱があり、尻には座布団があり、眼前には湯飲みがあり、湯飲みには熱い緑茶がある。汲みに行くのも汲みに来てもらうのも面倒くさいので、貧乏臭くちびちびと飲みつつ、宴会の準備でバタバタしている眼前の観察を続ける。
……ウチ――衛山<えやま>家は、昔々この辺の大地主だったそうで、実家と言うべきこの家は豪華な純日本家屋だ。
お盆、そして年末から正月にかけては一族がこの家に集合する。
年近く、親しい従兄弟も数人いたりして、お年玉とともに少しは楽しみにしている行事ではあるのだが、――唯一。
そう、唯一――この家に来たくない理由があった。
勉強が忙しいから、と、中学から高三の今年まで、この家に寄り付かなくなった理由が。

「久しぶりじゃない、春巻<はるまき>」
「……よう、六年ぶりだな――秋菜<あきな>」

背後からの声に、首だけで振り返る。
そこにいるのは、細身の女だ。
名を、衛山・秋菜。俺――衛山・春巻の従姉であり、そして、女主人と言うか、御主人様、と言うか……とにもかくにも、俺の天敵だ。

「髪、染めたのか」
「ばーちゃんが許してくれたからね」
「……そうかそうか」

六年。
歳月と言うものは凄まじいと思わざるを得ない。
六年前も客観的に見れば可愛い部類に入るとは思っていたが、現在では客観的でなくても美人と言いそうになる。
肩口辺りでばっさりそろえた暗い茶髪に、常に鋭く光る明るい瞳。相変わらず、と言うべき倣岸不遜な腕組み姿勢。
151年の差。:2008/02/10(日) 14:09:27 ID:7yKm9kw6
まさに、自信満々。に、と笑う唇の光沢が妙にキレイだ。
……あー、いや。腕の組み方が少し変わって、寄せて上げるような感じになっている。なってはいるが、寄せて上げる脂肪分が全く無いようで、全然効果がない。
……とりあえず今は、体にフィットするセーターとジーパン姿を可愛いと思ってしまった自分を殺してやりたい。

「アンタは……変わらないわねぇ。そのまま拡大したみたい」
「うるさいな。とりあえず背は抜かしてやったぞ」
「は? ――抜かしてない方がおかしいってモノよ、このハルサメ」
「はるッ……!?」

いいや待て、落ち着け、俺。これはまだ手探り、偵察だ。ここでブチ切れたらせっかくのチャンスを潰してしまうことになる……!
一瞬の激昂をそう抑え込んで、笑ったままの秋菜、その目を睨み返す。

「ひでぇ暴言だ。俺、この名前気に入ってるのによ」
「……そうだったの? 叔父さんもネーミングセンスないなって思ってたけど、……遺伝するのね」
「……そうらしいなぁ」

お前の性格の悪さは突然変異らしいが、と心の中で毒づきつつ、緑茶を少し飲む。

「まったく、六年経てば少しは変わるかと思ってたのに――アンタは小学生から進歩してないみたいね」

大げさな動作だ。はぁあ、とため息を吐く動きも入ったそれは、十分な挑発。俺だって一言くらい言い返したくなる。

「お前こそ、胸囲は――」
視界に足の裏が映りこんだ。それは一瞬で拡大し、
「――そげぶッ」

……衝撃。しかも眉間に爪先で。柱に後頭部がブチ当たり、衝撃が眉間との間で反響する。
いたたたたたたた。あいたたたたたたたたた。場合によっては死ぬぬぬぬぬぬぬ。うぁいてぇえたたたたた。

「……確信したわ。アンタ、本ッ当にまったく変わってないみたいね」

降ってくる声は、六年前と変わらない、吐き捨てるような冷酷な響き。……昔の彼女と今の彼女が一致する。感想は一言、変わってない、というオウム返しだ。

……年齢がたった一つ上だからと、俺をこき使ってきた従姉。しかも彼女の家はここなので、来る度に百パーセント出会う。
だが。だがしかし、だ。気付いてしまった。
明日――そう。明日だけは、俺は秋菜の奴隷ではないのだ。
秋菜の誕生日は、一月二日。
そして、明日、一月一日は俺の誕生日。その日だけは、秋菜と対等である――。
152年の差。:2008/02/10(日) 14:10:07 ID:7yKm9kw6
/

そも。あの女と出会ったのは、十五年ほど前――俺が三歳の頃――になる。
忘れもしない。……あの女、二番目に年下だからって、一番年下だった俺に会って早々、『アンタ家来ね!』と宣言をして、そのまま奴隷のように扱ったのだ。
ばーちゃんがわざわざ買って来てくれた誕生日のケーキをわざわざ俺から奪い取って食べやがったし。それを筆頭に、三歳の誕生日は悲惨な思い出に占められている。
次に古い記憶は三歳半のお盆。今度はスイカを奪われ、川に突き落とされ、セミを額に付けられ(未だにセミが苦手だ)、裸に剥かれてそのままお医者さんごっこで血を見た。その後で風邪もひいた。
……これ以上トラウマを思い出すのは止めておこう。とにかく、秋菜に関わってろくな思い出はなく、そんな思い出が毎年二回、十二歳まで欠かさずあるのだから、俺の歪みも当たり前と言うものだろう。
……年上の女性、と言うものが苦手なのだ。
その範疇はその辺のおばちゃんにまで及ぶ。学校でも同級生が年上――俺は早生まれになるので半分以上の女子になるが――だと分かってしまうとどこか引いてしまう。
……克服する方法は、ただ一つ。原因の解消――つまり、あの女に、『ぎゃふんと言わせる』――と、言うのは死語か。とにかく明日、俺は、あの女に打ち勝つ。
が、

「……相変わらずアンタ弱いのね」

……画面に踊る『YOU LOSE』の文字。
格闘ゲーム――十年ほど前からシリーズが続くタイトルは、秋菜の影響で始めたものだ。
中学以来特訓を続けてきたが、やはり……と言うべきか、無理だった。
最新作というコトもあり、秋菜も不慣れだろうと思っていたが、そこは同タイトル、全く問題は無かったようだ。
初戦は偵察のように手加減を。そこで手抜きをするなとばかりに瞬殺された。
クセも見抜けず第二戦、今度は俺も若干の抵抗を見せたものの、ガードの隙間から瞬殺。
第三戦も俺は若干の抵抗を見せたものの以下同文。
……うん。とりあえず、格ゲーでの復讐は無理らしい。

「……お前が強すぎるんだよ」
「このゲーム、買ってから二、三回しかやってないんだけどね」
「馬鹿野郎、反応速度がまず違うだろうが」

ケ、と毒づくものの、内心、相変わらずの反射神経に舌を巻いていた。
何せ昔、飛び立ったバッタを上昇中に掴み取って笑顔で俺に……ああいや、トラウマを穿り返すのは止めておこう。うん。

「だぁあ」

くそ、と転がった。
ここは、秋菜の部屋だ。
生活感がないわけではないが、女の部屋としては殺風景な部類に入るだろう。
日本家屋においては当たり前と言うべき和室。あるのは小さな文机と、その横にある教科書やCD、ゲーム、雑多な本を集めた小さな本棚。タンスや布団は全て押し入れの中で、妙に広いような印象を受ける。
和の空気を壊すようなものは、大型プラズマテレビ――なんでも、夏の間にバイトして、貯金と合わせて買ったらしい――とその下のゲーム機、背後にある石油ストーブ。その三つだ。
一つくらい人形でも持て、と言いたいところだ。
153年の差。:2008/02/10(日) 14:11:08 ID:7yKm9kw6
 
「だぁあー」

くそっ♪、とおちょくるような口調で、秋菜も寝転がった。音符を付けるな、と言ってやりたいところだが、言ったら後で踏まれるだろうと容易に想像できるので思うだけにしておいた。

「……相変わらず、弱いのねぇ」
「しみじみとした口調で言うな。……お前さ、そんなんじゃ彼氏もできてないだろ。男はプライド高いんだから、少しは勝たせるってコトを覚えないと駄目だ」
「……確かに、彼氏いない暦イコール年齢だけど――まあ、そうね。確かにそうかも知れないわね。……だからと言って、アンタには手加減しないけど」
「うわキッツー」

質量満点の心情を、せめて溜息を吐くコトで軽くする。
この無駄な自信はどうにかならんものか。もう秋菜も十九になるワケだし、性格の矯正も効かなさそうだが。
……と言うか、客観的に見て美人のクセに彼氏無しとは、……良かった。俺の性格観察眼はきちんとした物みたいだ。こんな自信満々な女、彼女にしたら最悪だって事は万人の共通理解であってくれるらしい。

「……世間の目は厳しいんだな」

は、と機嫌悪そうに聞いてくる声を軽く無視する。
……あ。天井に傷発見。確か六年前には無かったものだから、秋菜が付けてしまったんだろう。
ごまかしに丁度いいので、聞いてみることにする。

「いや、天井に傷あるからさ。六年前には無かったと思うんだが」
「え? ああ、あの傷? 何でだったかな……今思い出すからちょっと待って」

思い出そうとしている間に、俺は起き上がってテレビ画面を見る。
そこには俺の扱うバランス型キャラと秋菜のパワーキャラが先ほどの対戦を再現していた。
……リプレイでもボコボコにされる俺のキャラがいい加減可哀想なので、ボタンを押してキャラクター選択画面に戻した。
……そろそろ、夕食の時間だろうか。
横を見て声をかけようとすると、秋菜も起き上がっていた。
思い出した、という訳ではないようで、

「何? もう一戦やる気なの?」

ニヤニヤと余裕の笑みを浮かべつつ、秋菜は腕組みをした。

「やらねーよ。勝てない勝負ほど面白くないものはない」

154年の差。:2008/02/10(日) 14:12:40 ID:7yKm9kw6
画面を戻した理由まで話したら笑われそうなので、そこで口を噤んだ。
……目を見ていたら考えを見透かされそうなので、目をそらした。

「ふーん……それじゃあ、今度は協力しましょうか? ほら、コレ」

と、秋菜は俺の上を四つんばいで通り、本棚からアクションゲームを取り出した。
……膝を曲げれば腹に付くような姿勢だ。ちょっとだけ劣情を覚えてしまった俺を全力で殺したい。

「そろそろメシだろ、んな時間かかりそうなのはメシ食った後にしようぜ」
「……それもそうね」

秋菜は軽やかに立ち上がると、襖を開ける。
そこには何人かのお子様<ガキ>と子供のハートのままな大人<クソガキ>がいた訳だが、秋菜は蹴散らすようにして追い立てていく。
溜息を吐きつつ、秋菜とは比べ物にならないくらいに鈍重な身のこなしで立ち上がり、居間へと向かう。

/

居間は現在、襖を外され、温泉の宴会場のようになっている。
実際に温泉の宴会場よりも広く、しかも料理も豪華と言うのが笑えないところだが。

「昔はこれが当然なんだとか勘違いしてたなぁ」

番茶を飲みつつ、周囲を眺める。
大地主の家系というだけあるのか、親戚がやたら多い。
厨房にも奥様方が何人も行っているようで(そのせいでかおかずごとに味がちぐはぐで、しかもあまり美味しくないものもあったりする)、未だに料理が運ばれて来ている。

「よくやるなー……」

ずず、とまた湯飲みを傾けた。
上座の方ではジジイとババアが騒いでいるし、もう少し下がると三十代から四十代くらいのおっさんどもが二十代の親類を相手に酒飲み比べの真っ最中。
結局平和なのは一番の下座である俺の座る辺り、子供が寝ていたりゲームをしていたりする場所だ。クソガキども、庭に出て健康的に雪だるまでも作ってやがれ。

「さて」

十分に飯は食った。海老や蟹は美味いが、もうあまり未練はない。上座からじーさま方がやってきても即逃げできる。
十二時になる前に、神頼みしてこよう、と思う。
トラウマの大本だ。クラスメイトに感じる苦手意識など屁でもない。その女に打ち克とうとするには、自力だけでは不安だ。

「……いかんなあ」

……大晦日の、独特の空気。年の瀬が、俺を高揚させている。不安だ、とか言っておきながら、湧き上がって来たのは腹からの武者震いだ。
155年の差。:2008/02/10(日) 14:13:12 ID:7yKm9kw6
茶が無くなったので、従弟――じゃない、こいつはハトコか――にハンバーグと茶の交換を持ちかける。
ハトコはまだガキだ。交渉はあっさりと成功し、俺は茶を手に入れる。
茶をすすりつつ思うのは、冷静にならねば、と言うコトだ。
……復讐。とは言っても、具体的に何が可能なのか。それが問題だ。
俺の女性に対する自尊心を回復できる程度でなくてはならず、しかし秋菜が相手であっても可能である、そんな都合のいい手段。
……いやはや。本当に、マズい。

「……格ゲーで勝負付けばよかったんだが」

負け続けの象徴――とまではいかないが、マグレ以外で勝ったことがない。ちっぽけなプライドを満たすには十分とも言えた、が。
あの反射神経を見る限り、見事な格闘技の腕前も全く衰えていないと見るべきだろう。
元々そんなつもりはないが、腕力的な解決も不可能というコトだ。
口では勝てるわけがないし、第一そんなもので勝っても全く嬉しくない。
困った。……本当に困った。
後の手段が、酒に酔わせるコトくらいしかないというのが問題だ。
ウチの家系は代々ウワバミだ。俺も例に漏れずそうなのだが、……問題は秋菜もウワバミ、と言うコトだ。
六年前は、確か、辛うじて勝ちはしたものの大変な目に――いやいや、トラウマトラウマ。
落ち着こう、と茶を飲みつつ、上座の方を眺める。
そこには、老人どもの中に咲く華一輪。いや、ババアどもの中にいるせいか、主観的にも美人に見えてしまう。

「……やれやれだなー」

ずず、と飲み干して、……遠くから聞こえてくる柱時計の時報を耳にした。
一、二。……合計十一回。そろそろ神社に向かうべきだろう、と立ち上がる。
昔は両親や秋菜の父親に車で連れて行ってもらったが、流石に飲酒運転などさせるわけにはいかない。その程度には倫理観も育っている。

「あ、春巻君? 神社行くの?」

赤ん坊を抱えた女性――ええと、確か親父の従姉妹――が話しかけてくる。
体重が後ろによったり表情が作り笑いになるのは、まあ、仕方ないとしておこう。

「行くんだったら、ウチの神棚にも手を合わせてからにしなさいね」

……古風だね、全く。神社に行こうって俺も、人のコトを言えた義理じゃないが。
頷きを返して、上座方向にある神棚に向かう。
行なうは覚悟。……ジーさん達の野次が来る。

「おう、春坊ォ! 彼女出来たかァ!?」
「エッチはしたんかぁー?」

とりあえず軽く無視し、神棚の前に立つ。
……なんだったかな、一拍二礼――
156年の差。:2008/02/10(日) 14:13:58 ID:7yKm9kw6
「二礼二拍一礼だったと思うけど?」

……と、背後から声。
案の定――と言うべきか。覚悟はしていたが、やっぱりこの女だった。

「何? 神社に行くの?」
「そうだ。……お前はついてくるなよ」
「私も神社に行こうと思ってるんだけど? 車は誰に出してもらうつもり? 雪も降りそうだしね」

酒の入っていない大人がいると思うか、と秋菜は言ってくる。
……いないだろう、ああ、いないだろうさ。
ケ、と心中で毒を吐き、俺に割り当てられた客間に向かう。

「五分以内に表門にね」
「了解」

車で行ける、となると時間には余裕がある。多少遅れても構わない。
だがしかし、俺は早足に廊下を歩いていた。
廊下は寒いというコトもある。が、

「……奴隷根性全開だなぁ」

自嘲の笑みを浮かべ、俺は自室――客間の障子を開いた。

/

その昔、宇宙にはエーテルと言う物質が満ちているとされていた。現在では姿を変えダークマター――暗黒物質とかそういう学説になっているそうだが。それがそうだからどうなんだ、というレベルの、身近からは程遠い話だ。
……宇宙にそんなモノがあるのなら、この車内にあってもおかしくない。沈黙と言う形で。

「…………」
「…………」

満ちる沈黙、失われていく俺の余裕。
女と車内で二人っきり――その点だけ抜き出せば甘酸っぱいユメ状況だ。女がコイツである、となれば途端に最悪の状況に様変わりするわけだが。
……家にあれだけ人数がいて、大晦日のうちに神社なんかに行く酔狂な人間は俺とコイツくらいらしい。
爺様方は一時頃になってやいやい騒ぎながら来るのだろう。

「……の?」
157年の差。:2008/02/10(日) 14:14:20 ID:7yKm9kw6
誰も歩いていない、人家すらまばらな田舎道を車窓より眺める。
……雪が降り始めている。朝まで降り続けるような勢いでの雪だ。
溜息を吐いて、……白く曇ったのでコートの袖で拭いて、どこを見るでもなく外を眺め続ける。

「……うの?」

シャクなことに、秋菜に感謝しなければならないらしい。
三十分も――帰りも考えると、一時間以上になるか――歩いていたら、流石に凍えるだろう。こんなところで行き倒れになるほど恥ずかしい事もなさそうだ。

「……春巻」
「うぁいたたたたたた痛い離せなにしやぁがる!」

つねられた右腕を左肩の位置まで一気に持っていき、秋菜に抗議する。
……感謝なんてするものか。絶対に。

「だから、何願うの、って聞いてるでしょう」
「どうでもいいだろうが」
「気になるでしょう、教えなさい」
「……大学合格だよ、あそこの神社が学業の神さま奉ってるかどうかは知らんが」
「本当のことを言いなさい。推薦でもう受かってるっていうのは知ってる」

そうじゃなきゃ、受験生がこんなところに来る筈ない――と秋菜は続ける。
……いやあ、俺は明日のためなら三日くらい無駄にしたって構わないが。その辺までは、秋菜でも分からないらしい。

「……目的は特にない。来年が不安だから、神さまに祈っておくくらいしたっていいだろ」
「そう。……大学と言っても、周囲は大して変わらないわよ。たまに定年後のおじさんとかいるけど」
「いや、環境は変わるだろ」
「……そうね」

秋菜はそう言って、目を細くした。
正面は、ヘッドライトに雪が照らされ、少し眩しい。

「……神社、か」

吐息に混じって、そんな呟きが聞こえた。
……神社。
ああ。そう言えば――と、トラウマを思い出しかけた瞬間、加速Gが来た。

「と、お前、待て! 若葉マークのクセにこの天気と路面で速度出すな馬鹿! 夏に取ったばかりなんだろ免許!?」
「黙ってなさい。放り出すわよ」
「馬鹿馬鹿大馬鹿止めろド馬鹿何不機嫌になってるんだってもしかして俺のせいか俺何もしてないよな今ァ!?」
「さっき反論したじゃない」
「そんなことでか!?」
「うるさいわね。電柱に突っ込むけどいい?」
「よくねェよ馬鹿! あ、いや、止めてください秋菜お姉様!」
「お姉様? 三十点ね。もうちょっと可愛くなってから言いなさい」
158年の差。:2008/02/10(日) 14:14:44 ID:7yKm9kw6
無理でしょうけど、と秋菜はアクセルを緩める。
こ、コイツ憂さ晴らしに俺を恐がらせやがったのか……!

「……な、なんて性格の悪い……!」
「今度はボンネットに縛り付けて走るわよ?」

ごめんなさい、と適当に謝って、縮まったであろう寿命を想う。
……新手だ。新手の恐怖だ。車という新たな凶器を手にした秋菜に抗う術を俺は持たないようだ。
怜悧な色を浮かべ続ける横顔は、雪に照らされ一層白い。
……その唇が、ゆっくりと開いた。
放つのは一音だ。

「……あ」
「あん?」
「行き過ぎた」

……ため息を吐いて、

「ボーっとしてるんじゃ――」

急ブレーキッ。

「ぐぇえっ」
「ボーっとしてないでね」

……くすくすと笑う声がする。
あー、と深く深くため息を吐いて、性格わりィ、と呟いた。

「何? もう一回やって欲しいの?」
「あーあー、止めといてください。今度はスピンターンになっちまうだろうしな」

その後は間違いなく雪の深く積もった畑に車ごとダイヴ。場合によっては逆さになって。そんなのは流石にゴメンだ。

「……それもそうね」

納得したように超絶馬鹿は言い、道のど真ん中でUターンをしはじめる。
路面は、真ん中だけ盛り上がった圧雪アイスバーンだ。若葉マークがあと三ヶ月はとれそうにない秋菜は苦戦し、……と言うか、まあ、明らかに試験は奇跡で通ったと分かる技能でなんとかかんとか神社に向かう。

「……酒飲んでても、じーさんがたに送ってもらえばよかったぜ……」
「捕まるわよ」
「いいだろ、そうすりゃ三が日騒ぎっぱなしだなんて馬鹿もしなくなる」
「…………ふぅん」

何か無駄に色々と考えてしまうような間があって、秋菜は言う。
159年の差。:2008/02/10(日) 14:15:13 ID:7yKm9kw6
「でも、……懐かしい場所よね」
「ん? まあ、こっち自体俺には懐かしいが、……まあ、そうだな」
「……今年のお盆も来るつもり?」
「わからん。大学入ったらバイト始めるつもりだしな」

金も欲しいし、と言うと、秋菜がクスリと笑った。

「いいバイト紹介してあげようか?」

悪戯っぽい笑みだ。
……トラウマのニオイがする。

「夏休みの間中、私のペット」

……声音が冗談じゃないです、秋菜おねーさま。

「あ、えーと。ほら。神社見えてきたぞ神社」

月明りが木々に遮られた暗闇の中。境内で熾る焚き火に照らされた鳥居が見える。雪の積もった、巨大な鳥居だ。
寂れた小さな神社だが、焚き火の近くにいくらか人影が見えた。

「ああ、本当。――遠かったわね。心情的に」
「遠かったな、心情的に」

秋菜はスピードを緩め、脇にある駐車場へと車を向かわせる。
流石に小走り程度の速度では危なっかしいところもなく、……と思っていたら駐車が思いっきり斜めだった。

「……盆までには練習しとけよ」
「もちろん」

厳然――そう言い放ち、秋菜はシートベルトを外した。
秋菜は灰皿に手を伸ばしつつ、問いを送ってくる。

「お賽銭持ってきた?」
「当たり前だ」

灰皿の中には、小銭が入っていた。タバコは吸わないらしい、と知り、少し安心する。
そう、と秋菜は小銭を取り出し、ドアを開け放つ。
寒風。吹き込むそれは、体外と外界、境界を示すように感覚を送ってくる。

「寒いな」
「そうね」

俺も秋菜に倣い、車外へと出る。
当然、息は白い。露出する手と顔が、一気に熱を失っていく。

「おおお、マジ寒……」

ポケットに手を突っ込み、ザクザクと雪を踏みしめ、先を行く秋菜を追う。
160年の差。:2008/02/10(日) 14:16:05 ID:7yKm9kw6
/

……いよいよ神社が近い。
秋菜の後姿は、颯爽としたものだ。
揺らめく火に輪郭が照らされ、……ひどく、まぶしい。

「――ああ」

そのまぶしさに、俺は――憧れていたのかもしれない。
たった一年の年の差で、こんなにも遠いから。

「……負けてるんだなぁ」

まあ、と思考に前置きをする。だから、勝ちたいんだが、と。

「春巻」

……外気を凌駕する低温の声が、鼓膜を振動させる。

「……何、願うの?」
「さっき言っただろ? 来年の事だ」
「……そう」

秋菜は、速度を緩めない。振り向きもしないし、足取りに迷いもない。

「分かった――」

宣言は氷。
溶けぬ意志で、彼女は言い切る。

「――私も、……ううん。私は、アンタの幸せを願うコトにする」

……木々のざわめきに消えるような声だ。
だがその声は、耳腔に残り続ける。
心臓が重い。肺腑に侵入する寒風が、思考すら凍りつかせていくようだ。
秋菜の背中は変わらず、ブレることなく、神社へと――先へと進み続けている。
……何を、と思う。何を迷おうとしている、と。
実感する。――秋菜は、変わった。
常識を得たからとか、大人になったからとか、そことは違う部分で、だ。
だが、変わっていないのは、――変わっていないように見せているのは何故なのか――。
その結論を出さず、俺は境内へと踏み入る。
時刻は十一時四十三分。
迷いを振り切るには――短すぎる、時間だった。
161年の差。:2008/02/10(日) 14:16:34 ID:7yKm9kw6
新年の瞬間、と言うものを自覚した事はない。
だが、その節目と言うものはある。
携帯電話のデジタル時計が、無味乾燥にゼロを並べる。

「新年――か」
「あけましておめでとう、春巻」

思うのは、どう振舞うのか、という迷いだ。
……俺は、秋菜をどうしたいのか。どうすればいいのだろうか。
答えを出しておくべきだった。
漠然と、なるようになる、と思っていた。
だが、こうして俺は迷いを得たままで――――その瞬間を迎えた。

「――ああ。あけまして、おめでとう」

機械的に挨拶を返して、賽銭箱の前に立つ。
焚き火にあたる人達は甘酒を持ちながらの談笑が忙しいらしく、参拝に来る様子はない。
綱が無遠慮に握られ、僅かに鈴が鳴る。

「……願いは決めた?」

顔を見せぬ確認に、俺は無言を返した。

「……そう」

初速よく、腕が振られた。
がらん、と大きく鈴が鳴る。二度、三度と鳴らして、秋菜は賽銭を投げ入れた。
ゆっくりと、手を合わせるような拍。僅かに頭を垂れ、息を止める。
合わせ、俺も賽銭を投げ入れた。
そのまま手を合わせ、……迷った。何を願うべきなのか、と。

「……ん」

秋菜が顔を上げ、目線を送ってくる。
……あの。俺、まだなにも願ってないんですけど。

「帰ろう、春巻」

寒いし、と、有無を問わず秋菜は歩き出す。
……秋菜は、何を思ってあの願いを口にしたのか。
疑問は解決しない。しこりを感じつつ、俺は立ち止まる。
雑音は多い。しかし、彼女はその停止を感じ取り振り返った。
162年の差。:2008/02/10(日) 14:17:34 ID:7yKm9kw6
「……春巻?」

――目が合った。
振り返った秋菜の視線は、蒼く光るようだ。
凍結する空気は、その目線に及ばない。
……俺の瞳は、濁ってしまっただろうか。
秋菜のそれは、昔より鋭く、強く光っている。

「秋菜」
「なに」

短い言葉の応酬。
焚き火に照らされ、蒼い瞳が揺らめいている。

「俺は歩いて帰る」

周囲の音は消え去り、代わりに静寂が聞こえた。
足元からは雪の音が。口元からは息の音が。体内からは心臓の音が。
秋菜は息も吐かず、俺の目だけを見続けている。

「……そう」

頷き、秋菜は眼を閉じた。
そう、と彼女はもう一度言う。

「分かった」

なら、もう用は無い――とばかりに、鳥居へと歩き去る。
……立ち止まらない。
秋菜は、最後までそのまぶしさを減衰させなかった。

「……ああ、くそ」

最悪に惨めだ。
ほう、とため息を吐き、走り去る秋菜の車を見送る。
――加速していく。彼女は、真っ直ぐに走り続ける。
163名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 14:18:18 ID:7yKm9kw6
投下終了。
ネタ出したのはクリスマスで……ここまで書くのに二ヵ月かかったんだぜ……
164名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 14:30:17 ID:nzfmrmar
>>163
そんながんばり屋さんな君を私が褒めないわけないだろう?
165名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 15:03:03 ID:vHuR0IVh
>>163
当然ゴールまではそのままの頑張りやさんでいてくれるよな?
166名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 20:06:18 ID:vHuR0IVh
なんというがんばり屋さん・・・
一目見ただけで13レスあるとわかってしまった

と、ふざけるのはこれぐらいにして、おれなんて去年中に思いついて全く書いていない
下には下がいると言うことで安心して続きを書いてくれ
167名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 20:26:45 ID:wuwp7t4/
思いついた時に書かないと、後で面倒になる法則
168名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 23:15:35 ID:D/QiloTi
つ、続きが気になる…!
169名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 23:29:39 ID:FAQCI7+W
なかなかやるじゃないか……

わ、wktkなどしておらぬぞ!
170名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:07:30 ID:1E2f64k3
誰もいないよな……
1210より>>115-122の続きを投下するぜ
171名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:09:48 ID:1E2f64k3
 そして、家に帰ってきた俺とみー。みーが我先に門開けカギ開け扉開け、先に家に入り、靴を脱いで……
振り向いた瞬間に俺は言った。
「次にみーは『おかえりなさいのちゅー』と言う」
「おかえりなさいのちゅー……あっ!」
「パターンだな」
 俺が冷淡に事実を告げると、みーはむくれた。
「だって……したいもん。好きなんだもん。」
「悪い悪い。あんまり予想通りなもんだから、つい」
「ゆーちゃんのばーか」
 みーは言って、目を閉じた。俺はゆっくりと一歩近付いて、みーの後頭部に右手を回し、口付けた。
ちょっと湿った唇。ん、という声。呼吸音。なんだか凄く気持ちが昂る。みーがキスが好きな気持ちが少しわかる。
たっぷり五秒ほど経ってから離す。
「ゆーちゃんの……ばか」
「笑いながら言うなよ。説得力ねーぞ」
「えー、無理だよー。それに、ゆーちゃんも笑ってるよ、顔」
「な、なにっ! いつの間に!?」
 思わず両手で顔を挟む。なんたる不覚。いつの間にかみーのペースに乗せられていた!
「ほーら、まだお昼まで早いから、その荷物冷蔵庫に入れて、あたしの部屋行こうよ。見せたいものがあるの」
172名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:11:49 ID:1E2f64k3
 くそっ、これだから幼馴染って奴は。油断もスキもならん。でも、みーが俺に対して「ばか」って言う時の
笑顔。いつも、その、なんだ……可愛いんだよなぁ――っておい! 俺は何を考えてるんだ!? 俺って
実はマゾなのか!? いやだ! そんなのいやだぁぁぁ!!! うぎゃー!
玄関に階段上からみーの急かす声が響くまで俺は悶えていた。


 冷蔵庫に買って来た物を入れて、みーの部屋へ。なんだかよくわからないが見せたい物があるらしい。
「みー、入るぞー」
 声をかけてノック、入る。一般的な女の子の部屋。それがみーの部屋だ。(といっても、他の女の部屋
なんて入ったこと無いが)ぬいぐるみがちょっと多いか?とは思うけど。
「ゆーちゃん、ほらこれ」
 部屋の中心に座ってるみーが緑の装丁のやたらぶあつい本を見せた。
「ん、アルバムか」
「うん、ずーっと、どこ行ったんだろうと思ってたらこの前、掃除した時に見付かったの」
「どれどれ」
 みーの横に座って、アルバムを開く。
「まずは赤ん坊の頃からか……」
 写真にはサルのような顔をした赤ん坊が二人並んでいる。
「もうこの頃から一緒だったんだねー」
173名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:12:24 ID:DbYaglmt
いよっしゃあああ!!!!11!
かかってこいいいん!!!!
174名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:13:32 ID:1E2f64k3
「この歳まで縁が続くのも凄いよな、良く考えたら」
「ねー」
 次をめくると、ビニールプールで遊んでいる俺とみーの写真が目に留まった。2,3歳ってとこか? ただ、みーが……
「すっぱだかだな」
「いーやー!」
「……別にガキの時分なんて二人全裸で風呂入ったりしたろうが。何を今更」
「忘れて! 今すぐ忘れて!!」
「わかったわかった。3.2.1ポカン! ほら忘れた」
「ホントにぃ〜?」
「ホントホント」
 今でも結構覚えてるけど、ややこしくなるから言わないでおこう。次のページ。
「幼稚園の入園式か。もうこの辺から……」
 多分幼稚園の門の前で、にゅうえんしきと書かれた看板の前に俺とみーが並んでいる。既にみーが俺にキスを
していた。(頬だが)
「思い出した。この時くらいからみーが俺にところかまわずキスしまくりやがって、友達とかからすげぇ冷やかされた
んだった」
「え、えっと……そうだったかな〜? 覚えてないなー」
 こいつ、覚えてるな。まぁ、いいや。次。
175名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:15:32 ID:1E2f64k3
「幼稚園の年長の……あれ、これなんだっけ」
「ああ、こりゃお泊り保育とか言って、幼稚園に泊まった時のやつだろ。この時もみーが悶着起こしたんだよな、
主に俺に」
「ど、どんな?」
「確かな、この時、俺とみーは違う組で寝る場所も違うはずだったんだけど、お前が夜になってから『パパとママが
いない』つって泣き出して、偶然通りかかった俺が必死になだめて、泣き止ましても、俺が自分の組に戻ろうとしたら
今度は『ゆーちゃんが一緒じゃなきゃやだー!』って泣き出すもんだから仕方なく、俺がみーと一緒の場所で寝――
ってどした」
 みーが顔を赤くして俯いてる。
「うう、すごく恥ずかしいよ……」
 まぁ、この類の思い出の在庫はまだあるのだが勘弁しといてやろう。みーが早く忘れたいのかページをめくった。
「小学校の入学式かな?」
「だろうなぁ」
 この辺は別に大した思い出があるわけでもないが、ところどころの写真で思いでを語りつつ、みーがぺらぺらと
ページをめくり、小学四年のところで手が止まった。あー、これなんだっけ。なんか山みたいなとこでって……やばい!
 慌ててページをめくろうとして、みーにその腕を掴まれた。
「ゆーちゃん、この時のこと覚えてる?」
 にっこり、とみーが笑う。ただし目は全然笑ってない。こ、このプレッシャーは……!
176名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:17:48 ID:1E2f64k3
「い、いや、何かわからん。さっぱり忘れちまったなぁ!」
「そ、じゃー思い出させてあげる。小学四年の時、この林間学習でゆーちゃんは女子のお風呂をのぞこうとして――」
「アーアー! 聞こえなーい!!」
「ゆーちゃん、現実と戦わなきゃダメだよー」
 だって、生涯の痛恨事なんだよー、今まで忘れてたのによー、畜生。昔の俺は坊や過ぎるだろ、いくら他の奴の案に
のっかったからといって!
「他の奴が俺をおいてきぼりにしただけで、別に俺の単独犯じゃ……」
「あたしが庇ってあげたから助かったんだよね〜」
「うっ、ぐっ。わ、わかった。その時の借りの代償として、俺がなんでもしてやる」
「……ホント?」
「う、うむ。でも限度はあるぞ」
「その借りキープしてもいい?」
「構わん」
「そっかー……そっか。何か考えとこー、っと」
 大丈夫か俺。こんな口約束して。みーなら大丈夫……だよな? 猛烈に悪い予感もするけど……仕方ねぇ。
「あ、もうこんな時間」
 みーの声で時計を見た。既に十一時半だった。ノーガードの殴り合いをしていると時間は経つのが早い。
「じゃあ、昼飯作るかぁ」
177名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:19:48 ID:1E2f64k3
 みーの声で時計を見た。既に十一時半だった。ノーガードの殴り合いをしていると時間は経つのが早い。
「じゃあ、昼飯作るかぁ」
 ようやく安堵を得た俺。階段を下りて二人して台所へ。
 さて、焼飯か
「みー、玉葱と人参のみじん切り頼む」
「うん」
 とんとんとん、というリズミカルな音が台所に響きだした。その間にさっき冷凍庫から出しておいた一膳ずつ
ラップに包んであるご飯を、ザルに開けて水で洗って置いておく。ボールに卵を割って、かきまぜておいて、と。
フライパンを一応洗って、火にかけて水気を飛ばして……
「みー、切れたか?……ってうわ! 泣いてるし!」
「うう、玉葱が目にしみるよー…ぐすっ。はい、切れたよ……」
「あ、ああ。ありがとう」
 さて、気を取り直して、フライパンに油を引いて玉葱を炒める。色が変わってちょっとホントに軽く焦げ目が出るまで炒める……うむ、玉葱の良い匂いがしてきた。
「みー、人参」
「はい」
 同じとこに人参も入れて、適当に炒める。火が通ったと思ったら皿に戻して……
「後豚肉とネギも切っておいてくれ」
「りょうかーい」
178名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:21:53 ID:1E2f64k3
 よし、ここからが本番だ。スピードが勝負。木べらを持って、まず一気にとき卵を入れる! で、数秒して
すぐにご飯! 木べらで切る様に混ぜて混ぜてフライパンを返して、とにかく卵が焦げ付かないように。玉葱と
人参を入れて皿に炒める。次に豚肉。流石に長年の付き合いだけあってみーとは阿吽の呼吸だ。肉と玉葱と
ご飯の重く良い匂いが部屋に広がっていく。肉に火が通ったら塩胡椒で味付けして……こんなもんか? 
用意しておいた小さ目のスプーンでちょっとすくって、と。
「みー、あーん」
 無言でみーがぱくり。頷く。
 最後にレタスを適当な大きさにちぎって入れて火を止める。
「ゆーちゃん、お皿出しといたよー」
「おう」
 食卓の上に出ている二枚の大振の皿に1:1.5の割合で盛り付けてネギを散らして完成! 水を二つ分入れて――
あ、それとこの匂いは。
「はい、わかめスープ。インスタントだけど」
「お、いいじゃないか。食おう食おう」
 二人向かい合って座って、手を合わせて。
「いただきます」
「いただきまーす」
 まず一口。
「うん、上等上等」
「おいし」
179名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:23:54 ID:1E2f64k3
 玉葱とレタスがしゃきしゃきして、人参も歯ごたえが残り、豚肉は旨みを出し、卵はきっちりご飯を覆ってパラパラだ。
 やっぱ焼き飯は簡単にできる割には旨いのがいいよな。今回はともかく、冷蔵庫の掃除的な意味でも作れるし……
 腹が減ってたのもあって俺は結構な勢いで食べる。みーと色々話ながらも、十分もかからず完食。
「ごちそうさま」
「ゆーちゃん、もっと味わって食べなよ」
「腹へってたからな、仕方ないだろ」
「もう」
 みーは別に食べるのは遅いほうではない。人並だ。まぁ、女の子だしな。あんまり早すぎるのもアレだが。よし、
試しにみーの食べる姿を観察してみよう。
 ふーむ、一度に食べる量が少ないなぁ。口の大きさがそもそも大きくないしな。女の子だしな、うん。
「ゆーちゃん、じーっと見てなに?」
「ん、ああ、気にするな。食え食え」
「気になるよー……」
 困り顔のみー。ちょっと躊躇してまた食べる。しばらくして、少し残して手が止まった。
「うー……お腹いっぱい」
「む、入れすぎたかな? じゃ、その残ったの食べるわ」
「うん、ごめんね……はい、あーん」
180名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:25:54 ID:1E2f64k3
良いって、仕方ないだろ」
 言いつつ、みーがスプーンで差し出した焼飯を頬張る。繰り返し。
「ふう、腹いっぱいだ。もう食えない」
 最後の二口……あれが効いたな。
「あ、ゆーちゃん変なとこにご飯粒付けてるー」
「何、どこだ?」
 顔をまさぐるが、それらしき物に手が当たらない。
「こーこ」
 みーの手が俺の顔に伸びて、目元に。そこか。
 その取った米粒を、ぱくりと食べるみー。
「全く、そんなん捨てりゃいいのに。ばっちいだろ?」
「三秒ルールだよー」
「いや、どう考えても三秒以上経ってるだろ」
「あたし基準」
「全然意味がわからん」
 何が楽しいのかみーが微笑む。……と、いかんいかん、何を和んでるんだ俺は。
「とりえあず、後片付けしようぜ」
二人分の皿を重ねて取り、コップを片手に二つ持つ。
「あたしお皿洗おうか?」
181名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:28:22 ID:1E2f64k3
「いや、良い良い。俺が洗っていくから拭いていってくれ。別に大した量もないしな」
「おっけー」
 果たして、食器洗いはすぐに終わった。拭いて収納してお終い。ま、ちょっと食休み。のんびりいこう。
横のソファーに座る。
 あ〜昼に腹いっぱい食ってだらだらできるなんて俺はなんて幸せ者なんだ…… なーんて思ってるとみーも
ソファーに座る。ただし、俺の股の間に。ソファーでなく、俺にもたれかかるみー。
「あー、そこの娘さん何してるのかね」
「ゆーちゃんいすー」
「おりろ、問答無用で降りろ」
「いいじゃーん。さっきの借りでひとつ」
「ぐぬ……くそ、今回だけだぞ」
「さっすが、ゆーちゃん。太っ腹」
 畜生、このアマ何言ってやがる。そのままみーは嬉しそうに体を俺に擦り付ける。気持ちよくなんて無いぞ。くれぐれも
断っておくが!
 いや、待てよ。逆に考えるんだ。『今は復讐の機会』と考えるんだ。すばらしいじゃないか。そう考えた途端、
いたずら心がむくむくと――ふへへ、さて何をしてやろうか。そうだ、思い付いた。
 とりあえず、逃げれないようにして、っと。そう考えた俺は右腕をひょいと上げて、みーの首に回した。
気付いたみーが首だけを捻って俺を見ようとする。
「んっ、ゆーちゃん、何?」
182名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:29:58 ID:1E2f64k3
「かかったなアホめ! くらえっ」
 ぎゅーっと両腕で抱き締めてやった。
「ひゃぁっ! ゆ、ゆーちゃん!?」
 更に俺の頬をみーの頬にくっつけてやる。
「え、え、え……!?」
 混乱してるみー。頬から熱が伝わってくる。へっへ、みーはこっちから行動を起こすと馬鹿みたいに照れる
んだよな。更に頬擦りまでしてやる! どうだぁ!
「やぁ、ゆーちゃん、離して……!」
 今度は頬と言わず、俺とみーが触れてる部分の全てが熱を持ってきた。ふっ、今日はこれぐらいにしといてやるか。
いさぎよく両腕も頬も開放してやった。
「どうだ、思い知ったか。みー、これに懲りたら俺をからかうのは――」
「ゆーちゃんの……ばかぁっ!」
「うぼぉっ!」
 傍にあったクッションで振り向きざまに顔をはたかれた。そのままぼふっぼふっと一方的に殴られる。
「最低! バカ! 信じらんない! 変態! スケベ!」
「スケベとか変態なんて思われることはしてねぇ!」
「物凄くされたぁっ! ゆーちゃんのごーかんま!」
「うげぇっ!」
 クッションで頭に横薙ぎ一閃。痛みは全く無いが衝撃は凄い。
183名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:30:40 ID:1E2f64k3
「ふんだ、ゆーちゃんのばか!」
 そのまま勢い良くリビングを去っていくみー。どかどかどか、という足音が上に昇って行った。
 俺はソファーに寝転びながら思った。
 あれでスケベとか変態とか……どんなだよ……がくっ。
184名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:32:17 ID:1E2f64k3
投下終了。
……長くてすいませんとしか言えないんだぜ。
どうしてもここまでやっておきたかったんだ。
とりあえず、これでやっと午前中終了。

ところで、そろそろタイトルを決めるべきだろうか?
185名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:34:19 ID:nhB5KfhN
リアル投下ktkr
>>143>>163>>184も、超GJ。
一気に読めた俺はどうやらかなり幸せ者らしい。
いやね、決してここ最近仕事が忙しくて家に帰ったら死んでたことに対する悲しみとかじゃなくてだね。

タイトルは【みー×ゆー】とかそんなのでもいいから決めておくと色々便利だと思う。
186名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:37:32 ID:Qtlwu0QQ
>>184
何という幼なじみ
「あーん」とか、「おべんとを食べる」とか素でやるなんて……
前半の思い出しもいい感じね。これで何故付き合ってn(ry

タイトルなぁ。オレは氏の好きなようにしたらいいと思うぞ
ま、あるほうが判別はしやすいが
187名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:08:30 ID:oHgklP3G
幼馴染みを描くには思い出の共有がミソなのだな。GJ!!
188173:2008/02/11(月) 01:41:17 ID:DbYaglmt
ごめんね
いくら誤爆だからってタイミング悪すぎたね
練炭焚いてくるよorz
189名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:57:41 ID:2EGAeQls
>>184
なんといういちゃつきぶり
俺は…夢でもみているようだ……
190名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:58:20 ID:mvLKPy2q
>>188
練炭など必要ない
君の刑罰は妄想を投下する事だ
191名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 05:20:26 ID:7fHl2qu3
>>184あなたの作品を読む度に気が狂いそうなほどほのぼのして癒される。たまらんねぇこれは。
またの投下を待ってます。超GJ!!
 
後タイトルだけど、贅沢を言わせてもらうなら、つけていただけると嬉しい。
192名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 10:35:55 ID:1E2f64k3
話は聞かせて貰った! タイトルを決定する!
いつもいつもレス感謝。ちなみにこれまでタイトルが無かった理由は
そもそも一話完結形式でいつでも放り出せるようにしてたからで。
ここまでこれたのは皆のレスのおかげなんだぜ。

とゆうわけでタイトルは>>185をの提案を変形させて
『You is me』
でいこうと思うのでこれからもよろしく
193名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 11:34:03 ID:mQCXyMm8
2ch的にタイトルを略すと湯泉になると予想
194名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 12:30:55 ID:mvLKPy2q
>>193
ゆ、いずみ……じわじわ来るw
195名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 21:47:11 ID:xrUN3Jv2
「恋人になっても、他人になっても、ずっと友達だよ」って


いいなぁ
196名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:11:55 ID:M88jlCa/
>>195
俺にはそれが幼馴染の血を吐くような言葉に聞こえるんだぜ…

個人的には幼馴染は友達とか他人ではなく、やっぱり幼馴染なんだよな。
他では代えが効かない感じ。
197名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 03:31:31 ID:aQ1r/o7y
198名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 09:53:51 ID:M88jlCa/
夜中に書いた物を朝になって見直すと
とんでもないものを書き上げてる件
199名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 11:31:00 ID:HePDJR3o
>>198
さあ、投下するんだ!
200名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 12:19:39 ID:0/ELYgDj
>>198
誰もが通る道
201名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 17:40:27 ID:w0W41vCm
これは?携帯だけだけど
ttp://courseagain.com
202名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 21:04:01 ID:Bqcxi0fF
203名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 21:11:39 ID:Bqcxi0fF
ミスった。
>>198
つい最近同じことやった
204温泉:2008/02/12(火) 22:47:09 ID:M88jlCa/
よ、よし、せっかくなので修正せずに……やぁぁぁってやるぜ!

誰もいないようなら三分後から投下
205You is me:2008/02/12(火) 22:50:13 ID:M88jlCa/
>>183からの続き。

 あたしは自分の部屋で緊張していた。さっきのいきなりゆーちゃんに抱き締められて緊張したのもあるけど、
それだけじゃない。
 目の前には女性ファッション誌。最新号ではない。結構前の号だ。
 中身を確認して、うんと頷いて部屋を出る。階段を下りてまたリビングへ。ゆーちゃんはさっきまでと同じくソファー
にいた。
 今度は大人しく横に座る。
「あのね、ゆーちゃん」
 ゆーちゃんがあたしをもう機嫌直ったのかみたいな目で見る。緊張してるからそれに応じる余裕はないけど。
 声が震えそう。どきどきしてる。
「ちゅー、しよ?」
「なんだよ、かしこまって。みーなら確認せずに不意打ちでするだろ、いつも」
「う、うん、そうなんだけど……そうなんだけど。今回はその、ちょっとね……」
「なんだ、歯切れ悪いな」
 あたしは勇気を出して言った。
「舌……で」
 静寂。空気が固まる。凝固。ゆーちゃんの表情がびしりと固まった。
206You is me:2008/02/12(火) 22:53:01 ID:M88jlCa/
「えーと、俺の認識が間違っていなければ、ディープキスをしてくれ、と言うように聞こえたが」
「そ、そうだよ。……して、ほしい」
「ま、まぁ、うん、やる分には良いが」
 ゆーちゃんが顎を右手で擦りながら言う。
「ずっと前に、一回やろうとして、みーが恥ずかしがって逃げ出してからやってないだろ、大丈夫か?」
「恥ずかしいけど、でも……ゆーちゃんとしてみたい」
 言った。言っちゃった。心臓がどくどく言う。多分顔は真っ赤。あたしより少し高めの位置のゆーちゃんの顔を、
目を、見つめる。ゆーちゃんは解った、というように小さく頷いた。あたしから、見上げれば顔が触れ合うような
距離まで近付いた。こぶしふたつ分くらいの間を空けて、互いの顔が向かい合った
 とくん、とくん、とくん、と胸の内から響く音。目を閉じた。何故か背筋がぴりぴりする……触れ合った。
 どっちが先に動いたかはわからない。唇が開いて、互いの舌が触れた。
「……っ! ふ、ん、んん……」
 触れた瞬間、電撃の様な感覚が全身に突き刺さる。
 う、あ、ゆーちゃんの舌、ざらざらしてる……。
 ぴちゃ、と水音が聞こえた。お互いの鼻息の音も聞こえる。
「ふぅ、ん、は……ん、ぅぅっ!?」
 突然、ゆーちゃんの舌の動きが変化した。あたしの舌を一気に押し込んで、口内に。
「ゆーひゃ、ん、ひゃめ、んぐっ!」
207You is me:2008/02/12(火) 22:55:07 ID:M88jlCa/
 ぐちゃぐちゃという粘着質の音。ゆーちゃんの舌があたしの舌を一方的にねぶる。かきまぜる。歯茎を
さっとなぞり、更にあたしの舌が舌でつつまれる。
 絶え間なく、ぞく、ぞく、ぞく、と寒気が走り抜ける。頭にもやみたいなものがかかって……体も細かく反応して動く。
「ゆー、ひゃ……ゃ、ん、ん、ぅ、やぁん……」
 あ、あ、はぁぁ……きもち、いい……すごい、よぉ……っ!
 口内につばが溜まる。それをこくり、と飲み干した。
 ゆーちゃんの、つば……
 体が震える。抵抗できない。
 唇が離れた。力なく瞳を開けると、つぅ、と唇の間に橋ができて曲線を描いて落ちて行った。口の周りも唾液で
ぐちゃぐちゃになっている。
 あ、だめ、ちからが……はいらない。ながされ、ちゃ、う……。
「お、おい。みー大丈夫か?」
 声に応じれない。まだ体がぴくぴく動いてる。や、ん……ちゅー、って、こんなに……すごい……。体を思わず動かした、その時。
ちゅく、という粘っこい水音がした。
「!!」
 一気に意識が覚醒した。あ、あ、あ、そんな、うそ……!
「ちょ、ちょっと、その……そ、そうだ! 二階の窓開けっ放しだったから閉めてくる!」
「お、おい!」
208You is me:2008/02/12(火) 22:58:01 ID:M88jlCa/
 ゆーちゃんの声を無視してあたしは居間を駆け去って、階段を自分でもどうやったかわらないぐらい早く
昇り、部屋のドアを音を立てて閉めて、そのドアにもたれかかった。
 おそるおそるスカートの裾を持ち上げて……。
「う、わぁ、やっぱり」
 それ以上は言葉に出さずに心の中で呟いた。うう、これじゃゆーちゃんの事が変態とかスケベなんて
言えないよー……ゆーちゃんは気付いてない、よ、ね?
 心臓が破裂しそうな程に波打つ。もしも、気付かれてたら、もしも、もしも――
 あたしはそのちょっとキスをされただけで酷い有様になってしまった物を脱ぎ捨て、新しい物を取り出した。
スカートにしみなくて良かった、なんて思考が情けない。手が惨めなほどに震える。
 これは後でこっそり洗濯……部屋においておけば大丈夫だよね。よっし、平常心。平常心でゆーちゃんのとこに
行かなきゃ……何食わぬ顔で、うん。
 部屋を出て、階段を降りて、リビングへ入って。
「あー、ゆーちゃん、ごめんねー、どこも開いてなかったよー」
 少し棒読み気味になった……けど、押し切らなきゃ!
「お、おう。そうか」
「うん、勘違いでー」
 そこまで言って、ゆーちゃんが座っているソファーの、さっきまであたしが座っていた場所に、大きいシミが
出来ていることに気付いた。
 うそ……
209You is me:2008/02/12(火) 23:00:29 ID:M88jlCa/
 思わず硬直。そーっとゆーちゃんの顔を確認すると、ゆーちゃんは後頭部を掻きながら顔を少し赤くして言った。
「いや、その……個人差はあるし……別にいいんじゃないか」
 頭の中になんかよくわからない大爆発の画像。
「ま、まぁ! 気にするなよ! 俺は気にしないし、ほら!」
「ゆ」
「ゆ?」
「ゆーちゃんの……ゆーちゃんの! ばかー!!」
 思い切り大声で叫ぶ。ゆーちゃんが耳を押さえてうずくまった。
「お、おま、声がでかすぎ……」
「ゆーちゃんのばか! ゆーちゃんのばか! ばか! ばか! ばかぁっ!!」
「やめんか、近所迷惑だ!」
「ゆーちゃんが悪いんじゃない! 言わないでよぉ……うう……ぐすっ、ひぐっ、ゆーちゃんのばかぁ」
「あああ、泣くな泣くな」
「ゆーちゃんのばか、ぐすっ、う、ひくっ、ゆーちゃんのばかぁ……」
「たく、ほれ、泣き止めよ。な、俺が悪かったから」
 ゆーちゃんがあたしの頭を抱いて胸にうずめた。あたしはその胸を両手で叩く。もちろん……軽く。八つ当たり
なのはわかってるくせに、ゆーちゃんのせいにするあたしは本当に子供だ。
 自分のあまりの情けなさにまた涙が出そうになる。
210You is me:2008/02/12(火) 23:03:06 ID:M88jlCa/
 勢いに任せて、ゆーちゃんの胸板に顔を押し付ける。
「ゆーちゃんのばか……」
 呟いて、黙り込む。とんがった気持ちがすっと落ち着いていく。抱き締められたくらいで気分が落ち着くなんて
……あたしっのほうがよっぽどばかだよ……っ
 そっと距離を置いた。
「落ち着いたか?」
「う、うん」
「みー、悪かったな。デリカシーがなかった。すまん」
「違う、ゆーちゃんは別に、そんな、あたしが」
「いいんだよ、こうゆう時は男がこうで」
 ゆーちゃんがあたしの頭をぽんぽん、と叩いた。
「さ、落ち着いたとこで、さっきみーが買った菓子でも食おうぜ。紅茶煎れてやるよ」
「あ……うん」
 あたしは椅子について、ゆーちゃんは慣れた手並みでティーパックじゃない紅茶を煎れた。レモンが一切れ
浮かんでいる。お茶請けはさっきスーパーで買ったチョコチップクッキー。紅茶はすごくさわやかで、すっきりした。
「おいし……」
「ああ、今回はうまいこと煎れれたな」
笑顔でそう言うゆーちゃん。なんかその姿を見て、また涙が込み上げそうになってしまった。あたしはそれをぐっと
我慢して、懸命に口を動かした。
211You is me:2008/02/12(火) 23:05:39 ID:M88jlCa/
「ゆーちゃん、ありがとう」
 ゆーちゃんは、ん、という顔をした後、笑顔で「おう」と返してくれた。
 今度は涙は出なかった。でも、何だか、とても胸がぎゅっ、と締め付けられる感じがした。
 なんだろう、この感じ……今までとは、違う。あたしは――
212温泉:2008/02/12(火) 23:06:52 ID:M88jlCa/
投下終了。夜中に書いたのを誤字修正だけで出したので
整合性も取れてないかも……
ま、まぁ、よろしくなんだぜ。
213名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:11:32 ID:XxJWN797
>>212
おうGJ!! まぁそういうのは投下している内に慣れていくものさ! しかし濡れすぎて恥ずかしがるみーちゃん可愛いな!!
本番の時にはどうなってしまうのか、今から期待してるぜ!!
214193:2008/02/12(火) 23:22:58 ID:Bqcxi0fF
>湯泉
ふふっ さっそく あいことばをつかっているな。
そうやって ひとびとのこえに みみをかたむけるのだ。

……失礼しました。GJ!
215名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:24:50 ID:mAo5SZnH
>>212
GJ!
一瞬失禁したかとオモタw


216名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:26:57 ID:Bqcxi0fF
うおっ、気付いたらID末尾がfFだった……
217名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:27:58 ID:lfr1JrL2
>>212
GJ!みーちゃんがかわいすぎるの
218名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:30:42 ID:YKN5A7cs
>>212
GJすぎる。GJすぎる。
219名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 03:23:18 ID:8K8oNbyy
ああもう筆早くて羨ましいなぁGJ!
220名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 03:44:51 ID:G4WT54+n
>>212
いい仕事だ……!

にしてもこのスレは作品が沢山投下されてていいよなあ。
もう一つの常駐が過疎スレだからたまに恨めしくなるよ。
221名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 03:53:24 ID:lZYhu3dP
>>212回を重ねる度に神になっていってる気がする。
普通の小説読んでもここまで興奮しないのに、僅か数レスでここまで気持ちが高ぶるとは・・・
この二人はこの後どんな関係になるのか、そんな事を考えながら続きを待ってます。
超GJ!
222名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 18:20:39 ID:jM1FJ8Cb
>>212
あーもうお前らさっさと付き合え馬鹿野郎!
……と思うくらいGJだな、これは
甘くて死にそう

バレンタインネタを投下してみる
エロなし、つかあんまりラブラブしてない……
嫌な人は「幼馴染とチョコレート」をNGにしてね
では開始
223幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:21:14 ID:jM1FJ8Cb
2月14日。
世間一般では「バレンタインデー」と呼ばれるこの日、
日本ではチョコレート業界の卑劣な策略によって、少数派の喜びの声と、それ以外の怨嗟の声が聞こえることになる、らしい 。
こういうふうに大げさなことを言っている俺も、少数派に入っていないことは間違いない。
一応何個かアテはあるのだが、それだってカウントに入れるかどうかは微妙……というか、普通は入れない部類の相手からである。
一つは母親からの分。こんなものをカウントに入れるのはせいぜい小学生までで、高二となった今ではむしろみじめな気分になる。
そしてもう一つ。こちらは一応、同い年の女の子からもらっているのだが、まさしく義理を果たしているといった感じだ。
何せ昔から隣に住んでいて、兄妹(姉弟ではないと思う、たぶん)のように育ってきた相手である。
親からもらうのと大した違いなどない。やはり、ありがたくない。
そういうわけで、普段はあまり気にしないけれど、この時期になれば俺だって寂しくなるし、世の不条理を嘆きたくなる。
誰か可愛い娘が俺にチョコをくれないかな、なんて、そんな下らないことを考えてみたりするのだ。
だがしかし、現実は厳しい。結局、俺は毎年その二個だけを一人寂しく口に入れることになるのだ。
だが今年は一味ちがった。いや、実は昔からそうだったのかもしれないけれど、それは今だからこそ思うこと。
とにかく、今年のバレンタインはいつもとちょっとちがったのさ。
224幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:21:49 ID:jM1FJ8Cb
寒さも本格的になってきた冬の朝、登校した俺たちはいつものように靴箱を開ける。
と、見慣れた上履きの上に何やら紙が置いてあるのが目についた。
「……なんだこれ?」
手にとって確認する。どうやら便箋のようだ。しっかり封もしてある。
差出人の名前は……ない。
「ん、何それ」
隣から声がかかる。そちらを振り向くと、いつの間にかあいつが俺のそばまで来ていた。
「さぁ、何だろな。手紙みたいだけど」
手紙?と訝しげな表情を返してきたこいつの名前は葉山美貴(はやまみき)。俺の幼馴染だ。
まぁ、幼なじみってより腐れ縁って言ったほうがしっくりくる仲なのかもしれんが。
「で、誰から?」
「さぁ、名前がないからわからない」
しかし、このまま放っておくわけにもいくまい。何かしらの用事があるから手紙を入れたんだろうし。
美貴の視線を感じつつ、便箋を開封する。中には紙が入っていて、こう書いてあった。
『相澤悠斗様
 入学したときからあなたのことをずっと見ていました。
 あなたを見ているとドキドキして、あなたに声をかけられると胸がキュッとなってしまいます。
 恥ずかしがり屋の私は、今までずっと遠くで見ることしかできませんでした。
 でも、それもおしまいにしたい。弱気な私とはさよならをして、ちゃんとあなたに伝えたい。
 放課後、裏庭の桜の木の下で待っています。』
……何だろうこれは。女の子の可愛らしい字でたどたどしく書かれているこの文面は、つまり。
「よかったじゃない、ラブレターでしょ、それ」
再び美貴の声。ただ、さっきの興味を表に出したのとは少しちがった声音だった。
「……え、あ、あぁ、そうだな」
あやふやな返事をしつつ美貴のほうを見る。
ドキッとした。怒っているわけじゃないようで、むしろ寂しそうな表情をしている。その顔の、何と切ないことか。
「そうか、あんたもそんな物をもらうようになったのね……」
何やら感慨深そうに呟く。失礼な。物珍しそうに言うな。確かに初めてだけど。
「で、どうするの?」
急に聞いてくる。いつもと同じ表情だけど、少しだけ違和感がある。何故だろうか。
「どうすると言われても。とりあえず会ってみないことにはなぁ」
差出人不明とは言え、さすがにすっぽかしては相手に失礼だろう。きちんと返事をするくらいはしないと。
「そう」
すると美貴は興味が失せたような声で相槌をうち、それから後ろへ向いて、
「じゃあ、今日は私、先帰るから。ちゃんと返事するのよ」
そんなことを言って先に行ってしまった。
遠ざかるポニーテールを眺めながら、俺の混乱した頭がようやく話に追い付いてきた。
今日は確かバレンタインだ。日本では男が女からチョコレートをもらう日。
そしてこの手紙。相手はたぶん、こっちに好意を持っている。
この二つから導き出される答え、それは。
……もしかして、俺にもついに春が来たんじゃなかろうか、ということだった。
今は冬だけど。
225幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:22:32 ID:jM1FJ8Cb
「相澤、何だか機嫌良さそうじゃないか。何かあったか?」
昼休み。仲のいいクラスメイトに声をかけられた。そんなに浮かれて見えるのだろうか?慌ててごまかす。
「え、いや、何でもない」
さすがに「ラブレターをもらいました」なんてばか正直に答えたら、クラス総出でネタにされること間違いないし。
「ふぅん……。ま、いいけど」
ニヤニヤしながらそう返される。何だか腹が立つけれど、ここは我慢だ。ムキになったら負け。
「……お、何の話だ?」
そこに別の二人が寄ってきて、結局俺たちはいつもの四人で昼飯を食うことになった。
ちなみにメンバーの名前は佐藤、田原、東。この三人と俺は一緒に行動することが多いのだ。
四人で各々の昼食(弁当やパン)をぱくつきながら談笑するのが、お昼の俺たちの過ごし方。
「……で、お前らいくつもらった?」

今日のお題は、やっぱりバレンタインのチョコの話になるようだ。
「僕は三つ。部活の娘から」佐藤が答える。そういえば吹奏楽部は女子が多いよな。役得、ってやつだろうか。
「俺は一つ。恵から」田原が答える。彼は四人の中で唯一彼女がいる。ごくたまに惚気るからムカつく。
「くそ、うらやましいなお前ら……、オレは0だよ」東が悔しそうに言った。こいつは基本的に女の子と無縁なタイプ。一番飢えてもいるのだが。
さっき声をかけてきたのもこいつだ。
「で、相澤は?」
三人がそれぞれ成果を出しあって、必然的に視線はこちらにきてしまう。
ふと、先ほどの手紙を思い出したが、首を降る。今の成果だけ伝えることにしよう。
「俺も誰からももらってないよ。たぶん0個になると思う」
そういうと、佐藤と田原の二人が意外そうにこっちを伺ってきた。
「0ってことはないでしょ、だって彼女がいるじゃん」
「あぁ、葉山からはもらわないのか?」
そう言いつつ、二人の視線は女子のグループ……その中にいる美貴に向く。
自然、俺と東もそっちを見た。
226幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:22:54 ID:jM1FJ8Cb
葉山美貴は、先ほども説明したが、俺の幼なじみである。
背は女子にしては高めだが、俺と大差はない。スラリとした体型は可愛いというよりカッコいいと表現したほうが似合う。
長い髪はまとめてポニーテールにしている。
中学時代は陸上部に所属していて、その時によくしていた髪型を高校に入ってからも続けているとのこと。
整った目鼻立ちで、大きくて、ちょっとつり目だからか、その顔つきは何となく猫を思わせる。眉は描いたりしているわけじゃないのに細い。
クラスでは明るくて行動的、責任感も強い委員長として、みんなから慕われている。
運動ができて成績も良いという、そこはかとなく完璧人間臭がするチートみたいな女だ。
だがこいつ、ことあるごとに俺に絡んでくるのが玉に瑕だ。
朝は毎度俺の睡眠を妨害しに来るし(母親は美貴をすぐ家に入れるのが困る)、
委員長が受け持つ雑用(主に力仕事)を手伝わされたのは一度や二度ではない。副委員長もいるのに、だ。
オマケに放課後も暇なときはなぜか帰る時間が俺とかち合うし、ひどい時には、俺が自分の部屋で満喫している至福の時間を邪魔して勉強までさせようとしてくる。
いつも絡んできて、正直うっとうしさ通り越して空気みたいに思えてきてしまった。
そしてこいつは毎年、当たり前のようにチョコを渡してくる。
さすがに衆人環視の中でそんなことはやらかさないが、もらうほうとしては気まずいことこの上ない。
正直勘弁してくれと、もらう度に思ってしまう。義理チョコなんてもらっても嬉しくないし。
……そういや、まだ今回はチョコもらってないな。さすがに飽きたか?
227幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:23:17 ID:jM1FJ8Cb
そんな話はさておき。
……しかし佐藤に田原、未だにそういう勘違いしてるのかよ。それともからかってるのか?
「あのな。今一度言っておくが、俺とあいつは単なる腐れ縁で、付き合ってないから」
「でもたいがい一緒にいるじゃん。行き帰りとか」
「時間がたまたま合うだけだ。そうじゃないときも多いだろ?」
「休み時間は」
「ノート写させろって言ってるだけ。あいつ頭いいし」
「でもチョコくらいもらうだろ」あぁもう、あぁ言えばこう言う。うっとうしいことこの上ない。
「あのな、例えば母親からもらったチョコはカウントに入れるのか?俺にとってはそれくらいの意味しかないんだよ」
そう言い切る。そうだ、美貴からのチョコなんて親からもらうのと大差ない。
ふぅん、と俺の台詞を流した佐藤と田原、そして何だか恨みがましい東の視線を感じつつ、俺は話題の転換を図る
「そんなことより、テストの後をしよう。お前ら春休みの予定は決めたか?」
結局、こいつらには例の手紙の話はしなかった。内容如何によっては明日さんざん自慢してやるつもりだが。
今年の俺は一味ちがうのだ。いつまでも美貴のことでネタにされたりしないからな。
228幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:23:37 ID:jM1FJ8Cb
と、いうわけで放課後。俺は手紙の指示通りに裏庭の桜の木の下にいた。
春になったら綺麗な花を咲かせ、初夏には多くの毛虫を降らせてくるこの桜。
何かのおもしろいジンクスがあるかといえば、そんな物は全くない。
そんな何の変哲もない、今はほとんど丸裸の桜の木の下で、俺はこれから来る相手のことを考えていた。
いったいどこの誰だろうか。特に部活も委員会にも入ってない俺に、そんなに仲のいい女子とかいないし。美貴は除外だ。
いや、でも手紙には「ずっと遠くから見ていた」ってあったな。つーことは全く知らないやつの可能性もあるな。
つまり先輩とか後輩かもしれないわけだ。こうなるとも特定は無理だな。個人的には同い年がいいんだけど。
……どんなやつが来るんだろう。
背は俺より高いのか、低いのか。
あんまり高いと悔しいし、やっぱり低めの人がいいかな。あーでも、同じ目線で話したりしたいかも。
個人的には細身のほうが好きなんだよな。スラリとした体型ってなんかカッコいいし。
髪型は長めだといいな。で、後ろでまとめて垂らしてたりすると、なおよろしい。
顔は……そんなに選り好みするつもりはないけど、やっぱり目は大きめの娘がいいかな。可愛らしい感じがするし。
性格は明るい人がいいよな。一緒にいて楽しいだろうし。それでたまに俺相手に照れる顔を見せてくれたら最高だな。
そんな下らないことを考えてたら、何だか寒くなってきた。チラチラと白い物が舞ってるし。
「……雪、か。どうりで寒いわけだ」
時計を見る。待ちはじめてからけっこう時間がたっていた。
「……そういや相手さんはいつ来るんだ?」
手紙には「放課後」とだけあって、時間の指定は特になかった。だからこそ、授業が終わってからすぐ来たのだけど。
どうしよう。コートとか教室だし、荷物を取りに一回戻ろうか。
いやしかし、ここを離れている間に件の人物が来た場合、失礼なんじゃなかろうか。
こんな寒空の下で待たせるのはかわいそうだ。もうしばらく待ってみるか。

と、そのまま二時間、俺は寒空の下で待ちぼうけを食らうことになる。
しかし、待ち人は来ず。俺が騙されたことに気付いたのは、学校の門限を知らせるチャイムが鳴ったときだった、と。
229幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:24:20 ID:jM1FJ8Cb
日も暮れて、すっかり暗くなってから教室に戻ったら、なぜか美貴がいた。
何でここに、と思ったのも束の間、美貴は俺にコップを差し出してきた。
「朝に入れたやつだから、もう冷めてるかもしれないけど」
中身はウーロン茶だった。湯気が立ち上っていることからまだ温かいことがわかる。
俺は美貴の気配りに感謝しつつ、中身を一気に飲み干す。冷えきった体が暖まっていくのがわかる気がした。
「で、どうだったの」
今それを聞くな。タダでさえ自分の間抜けさ加減に腹が立ってるのに。
俺は美貴の言葉を無視して机に向かう。鞄の上に何やら紙が置いてある。
手にとってみると、こうある。
『だまされてやんの』
思わず破り捨てる。この筆跡は東の物だろう。あの野郎明日殺す。
「無視しないでよ、どうだったか聞いてるの」
再び美貴の言葉。あーもうムカつく。
「東の野郎のイタズラだったみたいだよ」
「……イタズラ?」
微妙な空気が漂う。その間に俺は帰り支度を済ませて教室を出ようとする。
「ちょ、ちょっと待って」
呼び止める声。振り返ると、何やら美貴が下を向いて、珍しく気弱な感じで話しかけてきた。
「え、えーと、その。チョコ……あるんだけど。食べる?」
……何だそれは。嫌味か。今まで寒空の下、来るはずもない相手を待ち続けていた俺を馬鹿にしているのか。
「いらねーよ、お前からのチョコなんて、仮に本命だとしてもお断りだ」
ただでさえイライラしていたから、そんな言葉が口から出てしまう。
美貴の顔がさっと朱に染まった気もするが、俺はかまわず続ける。
「大体な、お前が俺にチョコ寄越すのも腐れ縁ゆえの義理だろ?そういうのはな、男のみじめさを増幅させるんだ。
 そういうのは女同士でやるか、さっさと彼氏見つけるかしやがれこのバカ」
そうだ、こいつが毎年俺にチョコを渡してくる度に、こいつも俺も周りの連中からからかわれるんだ。本人にその意図はないのに。
お前だって、俺なんかに構わなかったら男なんかいくらでもできるだろ。顔もいいし、ちょっとおとなしくしてりゃあっちからよってくるだろうしよ。
「そういうわけだから、お前からの気づかいはいらない。
 俺は今機嫌が悪いんだ。放っておいてくれ」
そんな捨て台詞を残して教室を出ようとする。
「……何よ、私の気持ちなんか知らないくせに」
美貴が小さく呟いた。その声が震えているような気がして、何事かと振り返ってしまう。
「私が、私がいったい、どんな気持ちで、毎年アンタに、チョコ渡してると、思ってるのよ……」
「ちょ、おま」
何故だか美貴は顔を真っ赤に染めて、下を向いて泣いていた。
こいつが泣くところを見るのは何年ぶりだろうか。
俺に対してはいつも強気に振る舞って、こんな弱みなんぞ全く見せなかったというのに。
「わ、私だって、好きでもない男に、ち、チョコなんて、渡したりしないわよ!」
……は?
いきなり顔をあげたと思えばそんなことを叫ぶ。それって、いったい。
「な、何を」
「アンタが、私のことなんて、何とも思ってないことなんか知ってる。知ってる、けど!
 けど、私はそうじゃない。いつも一緒にいて、いるのが当たり前で、だから私も何もできないけど、
 毎年この日だけは、ちょっとだけでも素直になろうって、いつもドキドキしながらチョコ、渡してるのに。なのに!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも、美貴は言葉をぶつけてくる。えー、と。これは、つまり。
「……あー、美貴?それって」
とりあえず全部言い切ったのか、肩で息をしている女に話しかける。
そこでどうやら我に返ったらしい。はっとした表情になると、すぐに袖で涙を拭って、再びこちらをきっとにらむ。
「もうアンタになんか絶対にあげないんだから!アンタなんか……、アンタなんか大っ嫌い!」
それだけ言って、美貴は俺を突飛ばし、逃げるように教室を出ていった。
残されたのは間抜けが一人。しばらく俺は教室で呆然としていた。
……何というかアレだ。今年のバレンタインは悪い意味で一味ちがったらしい。
ラブレターは偽物で、毎年もらえていたチョコも逃してしまったようだ。そして、あいつも傷つけて。
今までの自分に言ってやりたい。自分を思ってくれる人がすぐそばにいるぞ、と。
いや、いたぞ、か。自分の馬鹿馬鹿しさに怒りを通り越して呆れてきた。
「……帰ろう」
ふらふらとした足取りで教室を出る。家までの道のりがこんなに遠く感じたのは初めてだった。
230幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:24:53 ID:jM1FJ8Cb
「おかえり、これちょっと葉山さんのところに持っていってくれない?」
帰ってくるなり母さんがそんなことを言ってくる。勘弁してくれ。
「ごめん、俺疲れてるからパス」
「って言っても、私は手がふさがってるし。晩ご飯が遅くなってもいいならかまわないけど」
……確かに、ここで母さんが葉山家に行くと、一時間は帰ってこない気がする。
美貴のお母さんとうちの母親でそのまま喫茶店とか行きかねない。というか一回あったし。
ただでさえ色々疲れているのに、晩飯まで遅れたら死んでしまいそうだ。
「……わかったよ」
荷物を置いて、母さんが持っていたビニール袋を受け取る。みかんか。
「じゃ、行ってくる」
葉山家は相澤家の隣にある。母さんと美貴のお母さんは、よく家の間で長いこと喋っている。よく話題が尽きないものだ。
チャイムを押してしばらく待つと、美貴のお母さんである薫おばさんが出てきた。
「こんばんは。あの、これ、母からです。親戚からたくさん送られてきたので……」
あらあら、ありがとう、とビニール袋を俺から受け取った薫おばさんは、それからちょっと黙り込んで、
「ね、悠斗くん。もし忙しくなかったら、ちょっと美貴に会ってほしいんだけど」
なんてことをのたまった。
思わず固まる。ギクリ、なんて効果音がしたような気がした。
「あの子、帰ってくるなり部屋にこもって、ご飯もいらないっていうし。私どうしたらいいかわからなくて……」
まさか原因は俺です、なんて言えるはずがない。俺は無言で話を聞いていた。
それにしてもあいつ、そんなに傷ついていたのか。俺も、何だかすごく苦しかった。
「こういうときは悠斗くんに任せたらうまくいくから、お願いできる?」
あいつが傷ついたのは俺が原因だ。そのことについて、俺はちゃんと謝罪しなければいけない。
そして、あいつがぶつけてきた想いにも、ちゃんと返事をしないと。
「……わかりました。じゃあ、おじゃまします」
そうして、俺は葉山家にあがらせてもらった。
231幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:25:19 ID:jM1FJ8Cb
美貴の部屋の前。ノックをしてから声をかける。
「美貴、俺だ」
「……帰って」
部屋の中から返事がくる。その声音は普段の美貴の声とは全くちがっていた。
「その、すまなかった。お前の気持ちなんて考えたこともなかったからさ。
 いつもずっと一緒で、毎年チョコくれて、それが当たり前なんだ、ってうぬぼれてた」
そう、いつの間にか、そういう風に思っていた。
こいつが俺のそばにいるのは当たり前で、チョコをくれるのだって単なる習慣だと考えるようになっていたんだ。
でも、そんなわけはない。幼馴染だからって、そんなにずっと一緒にいるわけがないんだ。
「お前にはほんとに感謝してる。
……その、お前の気持ちにちゃんと応えられるかは、いきなりだから、ちょっとわからないけれど」
何せ今までずっと一緒だったから、いきなりそんな関係になれるか、なんてこっちだって想像できない。
それでも。
「今までよりも、お前のことを大切にする。これからもずっと」
これが俺の今の気持ちだ。自分勝手な話だとは思うけど。
しばらく待っても返事はない。そりゃそうだよな、調子よすぎるし。
「あー、ひどいことしたのはこっちなのに、何だかえらそうだったな。
悪かった。許してくれなんていわないから。……また、明日な」
気まずい沈黙が嫌で、その場を離れようとする。つくづくヘタレだな、俺。
と、部屋の扉が静かに開いた。隙間から美貴が体をのぞかせている。
「……今の、ホント?」
そんなことを聞いてくる。さっきとは違って、何だか照れ混じりといった風だ。
「あぁ、絶対に大切にする」
そうだ、これだけ俺を思ってくれるやつなんて、こいつ一人くらいだろう。
その一人を、大切にしないとな。
しばらくその姿勢のまま黙っていた美貴だったが、やがて扉をいったん閉めた。
しばらく待っていると、再び出てきた美貴の手に、綺麗に包装された四角い物が握られていた。
「し、仕方ないから許してあげる。今度いらないとか言ったら瞬殺だからね!」
そういって、毎年くれていたそれを突き出してくる。
何だかいつもと違う心地で受け取った「それ」は、何だかとっても暖かく感じられたのだった。
232幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:25:43 ID:jM1FJ8Cb
余談
次の日、東の野郎を問い詰めたら、
「いつも当たり前のようにチョコをもらっているお前にむかついていた。
 お前の思い上がりを正してやろうと思ってやった。今も反省していない。
 つーか何でより仲良くなってんだよ、死ね」
とのこと。散々しばき倒してやった。
東にはどうやら協力者がいたみたいだが、それが誰だかはわからなかった。
昼飯は屋上で食べるといったら、佐藤と田原はずっとニヤニヤとこっちを見てきた。
事情を知らないくせに、その顔はやめろ、むかつく。
「見てればわかるよ、お幸せに」
にらんでいたら、佐藤からそんなありがたい言葉をもらった。ほっとけ。

そして、昼、屋上。俺は美貴と一緒に飯を食べていた。
今日登校するときに、こいつが「お弁当作ってきたから、一緒に食べよう」と言ってきたからだ。
「なぁ、何か恥ずかしくないか?」
今までずっと一緒だったが、二人きりで昼飯なんて初めてだ。周りには誰もいないが、何だかとても気恥ずかしい。
「いいの、私も昨日恥ずかしかったし。」
そんなことを言っているが、アレはお前の自爆じゃねぇか、という突っ込みは控えた。
「私はね、もう自分の気持ちに遠慮なんてしないの。だから……」
俺の隣から目の前に場所を移す美貴。こっちをじっと見つめて、
「だから、アンタがちゃんと私を『好き』って自覚するように、ずっと一緒にいるんだから!」
そんな真剣な、でもちょっと赤らんだ表情が何だかとっても可愛くて、思わず顔をそらしてしまう。
……何というか。
俺がこいつに陥落するまで、そんなに時間はかからないんだろうな。

余談
母さんからのチョコは、今年はなかった。
「だって、一人が本命くれたらそれでいいじゃない」
とは母の弁。見たのか、見ていたのか!?


終われ

233幼馴染とチョコレート:2008/02/14(木) 18:27:34 ID:jM1FJ8Cb
以上。
投下してから気づいた。段落の区切りがめちゃくちゃだ……orz
お目汚し、大変失礼。さて逃げるか
234チョコっとの勇気:2008/02/14(木) 19:23:27 ID:qXK164ni
>>233
GJ!!
間をおかずに悪いが、俺もバレンタイン支援
235チョコっとの勇気:2008/02/14(木) 19:23:56 ID:qXK164ni
 指がふるえていた。
 インターフォンまで数センチ。指先がボタンにつくと、私は弾かれたように手
を引っこめた。引っこめた手を、そのままの恰好でさまよわせる。
 インターフォンには私の影が落ちていた。まだ宵の口だが、あたりは真っ暗闇
につつまれている。
 私は、左手のチョコの包みを持ち替えた。手にかいた汗で、包みがちょっとふ
やけていた。ためらうような気持ちが、心の中にある。
――やっぱり学校で渡しておけばよかった……。
 後悔が、いまさらになって出てきている。学校でなくても、行きと帰りの通学
路でも、渡すタイミングはいくらでもあった。渡せなかったのは私の悪い癖が出
たからだ。もう十一年も続いている、悪い癖。
 行きの通学路では、学校に着いてから渡せばいいと思い。学校に着いてからは、
昼休みに。昼休みになってからは帰りの通学路に。気が付けば家に帰り、夕食の
下ごしらえが終わった時間になっていた。夕食の下ごしらえもしないままにだ。
 もう一度、インターフォンに手を伸ばした。引っこめる。私はつまらない心配
事を、また心の中で反芻しいていた。一成以外が出てきたら、なんと言い繕えば
いいのか。
 心臓の音がうるさかった。チョコの包みを、少しだけ握り締めた。
――やっぱり、チョコ渡すのは明日にしようかな……。
 私はその場でうつむいた。それに、わざわざ自宅に訪ねて渡すなんて、本命だ
と言っているようなものじゃないか。しかし、明日はバレンタインですらない日
だ。違う日に渡すなんて、一成に対しても失礼な気がする。なんだか泣きそうに
なった。
 不意に、眼の前で明かりが洩れた。玄関扉が開いている。
 一成だった。片手に、青い字の印刷されたゴミ袋をぶら下げている。眼が合う
と、私の心臓は飛び跳ねるように動いた。
――なっ、なんでこんな時にゴミを捨てにっ!
「なんだ、真紀奈か」
 一成が言った。
「こっ、こんばんは……」
 私はまぬけなことを言っていた。一成の視線が私の手もとにきた。チョコを背
後に隠すには、遅すぎる間があった。
「おっ。手に持ってるの義理チョコ?」
「ほっ……!」
――本命に決まってんでしょっ!
 心で叫んだ。口には、出せるはずもない。一成が怪訝な顔をした。
236チョコっとの勇気:2008/02/14(木) 19:24:22 ID:qXK164ni
「ほ?」
「ほ、本命じゃないけど……」
「だから義理だろ。日本語すっ飛んだか?」
「あぁ! もおぉっ!」
 言ったときには、私は一成に向かって包みを思い切り振りかぶっていた。チョ
コが迷いなく飛んでいく。
――しまった!
 私は目をつむった。束の間、落ちたチョコの包みが頭をよぎった。恐る恐る、
眼を開く。しかしチョコは地面ではなく、一成の掌に収まっていた。足下に、投
げ出されたゴミ袋が転がっている。
「これ、もらっていいのか?」
 一成は笑顔だった。胸が、きゅんとなった。
「ちゃっ、ちゃんと食べなさいよ! それ……」
「あぁ、ありがと。毎年貰ってたからさ、今年はもうくれないのかなぁ、て思っ
てたよ」
「そ、そう……」
「ありがと。ありがたく貰っとくよ」
 一成が微笑んだ。私は、心が暖かくなるのを感じた。この笑顔を見るために、
毎年チョコを渡してるという気がする。
「じゃ、じゃあね。またあしたね!」
 言うと、私は駈け足で自宅に戻った。自宅といっても隣の家だ。
 自宅の玄関まで行くと、もう一度一成の家を見た。玄関先で一成もこちらを見
ていた。眼が合う。
 私は慌てて自宅に飛びんだ。

    




237チョコっとの勇気:2008/02/14(木) 19:26:34 ID:qXK164ni
支援終了
238温泉:2008/02/14(木) 21:57:44 ID:MxMwIL/3
>>233 >>237
激しくGJ! いいっすねぇ、恋焦がれる幼馴染。
一挙一動に一喜一憂する…いいですねぇ、本当にいいですねぇ。


とゆうわけで投下しまっす。本編とは全く関係無い、
バレンタインデー限定特別編ってことで。
239You is me 番外編:2008/02/14(木) 22:00:02 ID:MxMwIL/3
 2月14日はバレンタインデー。チョコをもらえて、運が良い男は彼女も貰えるという、天国と地獄が毎年渦巻く
カオスな日だ。
が、俺には縁が無い。俺はモテないのだ。幼稚園ぐらいの頃には結構もらったような記憶がある。いや、小学生の
低学年ぐらいまでなら貰ってた記憶がする。しかし、高学年からさっぱり貰ったことが無い。何故かはわからない。
母親からも貰えない。うちのかーさんは「なんで息子になぞやらにゃいかんのだ」と言いやがる。
つまり、結局俺が貰えるのは――
「はい、ゆーちゃん。今年のやつだよー」
みーのやつしかないのだった。
 俺はみーの家にいる。そして目の前におわすのはみーとチョコレートケーキ。そのケーキは小さい。直径10cmに
届くか届かないかくらいのちっこいやつだ。当然だ。これはみーの手作りのチョコレートケーキだ。
「さ、今年のケーキはどうだ」
 見た目は至って普通。形が崩れているわけでもなく、彫刻などがなされてるえわけでもなく。
「ふっふっふ、ゆーちゃん、覚悟!」
 そう叫びながらみーはケーキを一口大に切り……
「はい、あーん」
 みーが差し出したケーキをぱくっと一口。口の中にカカオの良い匂いとスポンジの柔らかい歯応えが広がる。
「おいし?」
「……うん、うまい。チョコとスポンジのバランスがいいな」
「よかった、今回は全体の一体感に的を絞って作ったの。甘さも丁度いいでしょ」
 みーはそう言いつつ、またケーキを一口大に切り、差し出す。俺がまたぱくり。
 そう言いつつ、またみーが差し出したケーキを食べる。
「なぁ、みー」
「なーに」
「毎年いつも思うんだが」
 そう言いつつ、またみーが差し出したケーキを食べる。
240You is me 番外編:2008/02/14(木) 22:01:29 ID:MxMwIL/3
「一回、自分で食べさせてくれんか?」
「やだ」
「やだ、って、おい」
「えへへ、やーだ。毎年一回の楽しみなんだもん。絶対やだ。はい、あーん」
 笑いながらまたひょいとみーが出す。俺はやれやれと苦笑しながら、みーが嬉しそうにケーキを出すのを
口で受け止め続けた。
 ケーキが小さいこともあって10分程度で食べ終わった。うむ、なかなか旨かった。
「あ、ゆーちゃん口の周り、チョコ付いてる」
「おっと、ティッシュは……」
「えい」
「むぐ、おい、みー」
 俺が止める間もなく、みーが右手の人差し指が少し強めに俺の唇をなぞる。みーの指にチョコが付く。
で、どうするのかと思うと。
 そのままなぞった指を口へ。ちゅっ、という吸う様な音を一瞬響かせて、すぐ口から指を抜いた。
「……何やってんだか、そんなの食べるなよ」
「だって、もったいないし」
 照れた様な笑いをみーは見せる。俺はみーの頭をぽんぽんと叩きながら思った。
 本当にこいつは……ったく。
241温泉:2008/02/14(木) 22:02:17 ID:MxMwIL/3
以上。投下終了。
構想5分、打ち込み30分の代物でした。お粗末。
242名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 23:31:33 ID:iRMKgMiX
ああもうなんですかこのマカロンをハチミツで煮込んだ後にマシュマロと合わせてチョコレートソースをかけた甘党空間はw

>>232
よく纏まってる王道はやっぱりいいものですね。こういうシチュはいつ見ても飽きませんねw
この構成力が欲しい……。

>>236
短編乙です。心情表現が丁寧で、頬が緩みました。

>>241
どう見てもバカップルなのに……
これで付き合ってないと申しますかw
243 ◆6Cwf9aWJsQ :2008/02/15(金) 00:05:07 ID:EkT3/mQ3
ここか、祭りの場所は・・・。

投下ラッシュで歯が浮きそうなってるところ申し訳ありませんが、
とりあえず少量ですが和菓子も追加させてもらいます。
244シロクロ番外編『手を変え品を変え』:2008/02/15(金) 00:09:31 ID:EkT3/mQ3
2月13日深夜。
「どうしよう・・・」
私は自宅のキッチンで1人頭を抱えていた。
時計の長針はもうじき『11』を指そうとしており、
私にタイムリミットが迫っていることを知らせていた。
「どんなチョコなら、啓介に気に入ってもらえるだろ・・・」
今、私の頭の中はバレンタインのチョコをつくろうかで一杯だった。
3歳の頃はチ○ルチョコ。
4歳の頃は板チョコ。
5歳の頃はチョコレートケーキ。
6歳の頃はお母さんに作ってもらったチョコレート。
7歳の頃ははじめての手作りのチョコ(失敗作で彼のお腹を壊してしまった)。
8歳の頃は渡せずじまいだったけど、
去年の17歳の時はハート形のホワイトチョコと、
毎回違うチョコをプレゼントしてるので、違うパターンを考えるのも一苦労だ。
「これ以上のチョコってのも思いつかないわね・・・」
子供の頃からこうやって彼に渡すチョコのことで頭をひねらせるのは楽しみだし、
そもそもどんなチョコでも啓介は喜んでくれる自信もあるけど、
同じものをプレゼントするのもサプライズが無くて芸がないし、
それにどうせなら好きな人にとびきり喜んでほしいというのも乙女心。
いや、私もう乙女じゃなかったっけ。
この前啓介にあーんな事やこーんな事されて奪われたんだし。
でも、悔いはない。
彼にしか渡したくなかったから。
髪の一房に巻き付いた白いリボン――啓介にもらった大切なもの――を撫でながらそう思う。
「・・・はっ、しまった!?」
ようやく正気に戻った頃には、既に日付が変わっていた。
245シロクロ番外編『手を変え品を変え』:2008/02/15(金) 00:10:29 ID:EkT3/mQ3
そして当日。
啓介の自室で、私は啓介と唇を重ねていた。
「・・・ふぅん・・・、ちゅっ・・・」
「・・・うぅん・・・、ぢゅるっ・・・」
ただ触れ合うだけではない互いの味を確かめ合うキス。
だけど、今日のそれはいつものものと違っていた。
やがて、味を堪能した私たちは唇を離す。
「口移しで食わせようとするとは思わなかったな・・・」
「こういう食べさせ方は初めてでしょ?」
少し顔を赤らめてく血の端に突いた唾液を手の甲で拭う啓介に、
私はエッヘンと胸を張ってそういった。
結局、チョコ自体は小さなハート形のものをいくつかつくっただけなんだけど、
食べさせ方を変えることで変化を付けることにした。
ホントは前から――思い出すのも苦労するくらい昔から――したかった食べさせ方でけど、
こういう恋人らしいことは『恋人』になった今しかできないから。
そして、最後の一個も食べ終わる。
「ふぅ。ごちそうさん」
「お粗末様でした」
とても満足そうな啓介の表情を見て、私も満足しそうになる。
でも、まだ終わりじゃない。
「啓介」
「ん?」
「あと一つプレゼントするものがあるの・・・」
私はそういうと、身につけていたセーターやジーンズを脱ぎ捨て、
その下に隠していたものをさらけ出した。
黒髪に巻き付けた白いリボンとは対照的な、黒いリボンに包まれた身体を。
「裸リボン・・・」
啓介がそう呟いたあと、生唾を飲み込む音が聞こえた。
何てわかりやすい反応。そこが可愛いんだけど。
「定番で悪いんだけど、私も食べる?」
そういった直後、私は啓介に押し倒された。
246 ◆6Cwf9aWJsQ :2008/02/15(金) 00:11:57 ID:EkT3/mQ3
以上です。
エロシーンは今週末にでも。
247名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 00:31:37 ID:k0q6Ai57
GJ!
248名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:28:36 ID:Hu/qZPZP
なんかいっぱいきてるーーーーー
どれもGJ!

あまりの甘々空間にめまいがしてくるぜw
249名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:36:47 ID:k66Gc+ri
ぬおお、皆さんGJです! では私も久しぶりに投下します!
250絆と想い 外伝3:2008/02/15(金) 01:37:37 ID:k66Gc+ri
今日は二月十四日。俗に言うバレンタインデーである。
この日、世の男子は二つに分かたれる。勝ち組と負け組。まぁつまりはチョコをもらえる者ともらえない者、という事であるが。
そして周りから見れば勝ち組どころか超・勝ち組といえるであろう少年、高村正刻は、しかし登校途中の通学路で盛大な溜息をついていた。
「あーあ……。遂にこの日が来ちまったか……。」
彼の足取りは重い。何故ならば、これからいかに阿鼻叫喚な光景が展開されるか予想がつくからだった。

そう、毎年バレンタインデーは、正刻にとってはかなり辛い日であった。それはチョコをもらえないからではない。むしろ、その逆ゆえに、
であった。
彼の幼馴染二人は必ずチョコをくれる。だが、やや問題のある渡し方をする事が多かった。

特に酷いのはやはり舞衣で、幼稚園の頃から段々と渡し方がエスカレートしていた。去年などは、大きなメロンのような球形のチョコを二つ
持ってきたかと思えば、「さあ正刻! 私の胸から直接型を取った乳型チョコだ!! 私の愛がたっぷり詰まっているぞ!! 遠慮なく食べる
いい今ここで! さあ!! さあ!!!」……とあまりにもな暴言を吐いた。その直後に唯衣と鈴音に取り押さえられたためにその場は収まっ
たが、後に残された空気は気まずいなどというレベルを遥かに超えていた。友人達も冷やかす気力も湧かなかったようで、ぐったりと俯く
正刻の肩を皆無言で叩いていった。

では唯衣はまともかと思うとそうではない。彼女は学校でそのような行為に及ぶ事は無いが、その分家に帰った後が凄かった。
大体バレンタインの日は宮原家で食事をする事が多いのだが、その日、夕食に呼ばれた正刻が見たモノは、何層にも積み上げられた見事な
……見事過ぎるチョコレートケーキであった。
唯衣の場合、積極的なアプローチを出来ない鬱憤が、どうもチョコ製作の方にいってしまうようで、毎年凄まじいチョコを作り上げてしまう
のである。対して舞衣は、チョコを上手く作れない鬱憤が、過激な渡し方に繋がっているようである。

そして正刻は、巨大なチョコを二個(しかも舞衣の胸型)、更に巨大なチョコレートケーキを一人で食べる羽目になったのである。
ちなみに残す事は許されない。これも毎年の事であるが、必ず二人の前でチョコを食べなければならず、しかも「完食しろ」というオーラ
を二人で撒き散らすのである。食べたら食べたで「美味しかった? 美味しかったでしょ?」という無言のプレッシャーを放ってくる。
そのプレッシャーに抗う事など出来る訳がなく、毎年正刻は笑顔で「美味しかったぞ、二人ともありがとな!!」と言うのである。
まぁもちろんその気持ちに嘘偽りは無いが、しかし毎年バレンタインの日から一週間以上胃薬の世話になる事を考えると、もう少し何とか
してほしい気も当然する。

「でも……二人とも俺のためにわざわざしてくれてるんだもんなぁ……やめろ、とも言えないしなぁ……。」
はぁ、と再び溜息をついた正刻であったが、いきなりその背中をばしんと叩かれて仰け反った。
「いってぇな!! 何すんだ鈴音!!」
「おはよう正刻! いやー、朝っぱらから煤けた背中をして歩いているもんだからさぁ、つい元気を注入したくなっちゃって!」
あっはっは、と正刻の背中を叩いた張本人……鈴音は、悪びれた様子もなく笑った。
251名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:38:22 ID:k66Gc+ri
その笑顔をむすっとした様子で眺めていた正刻であったが、やがて彼女につられたように苦笑を漏らした。
「まったく……お前には敵わないな。」
「そいつはどーも。あ、そうだ正刻、はい、これ。チョコだよ! 甘さ控えめの奴だから、胃にも優しいよ?」
そう言って手渡されたチョコを正刻は笑顔で受け取った。
「おう、ありがとな! 毎年義理なのに気をつかわせちまって悪いな。」
そう、鈴音は唯衣と舞衣に比べ、チョコは割りと普通の物を、普通に渡している……ように正刻は思っていた。確かにチョコは、唯衣と舞衣
の物で手一杯の正刻の事を考え、少量で甘さ控えめな物を選んではいたが。

「良いって別にー。ボクが好きでやってるんだから、さ。」
義理じゃなくって本命なんだから、それくらいの気配りは当然だよ、と鈴音は心の中で付け加えた。
ちなみに一見普通に渡しているようだが、実は鈴音なりの拘りがあった。彼女がチョコを最初にあげたのは正刻で、正刻が今日最初に受け取
ったチョコも、実は鈴音の物である。つまり彼女は、バレンタインの日に正刻が初めて受け取るチョコを、自分の物になるようにしていたの
である。準備に時間がかかる唯衣と舞衣は朝一番から正刻にチョコを渡しはしないので、今のところここ数年間は正刻が最初に受け取るのは
彼女のチョコとなっている。その事に軽く満足感と勝利感を得ながら鈴音は言った。

「で、そんなに暗くなってる理由は、やっぱり唯衣と舞衣のチョコが原因?」
「まぁな……。本人達に悪気がないのは分かってるんだが、でもなぁ……。」
そう言う正刻に、鈴音は意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「ふぅん……。ふふ、それじゃあ正刻、今年は結構予想外の事が起きるかもよ? 色々と、ね。」
その鈴音の意味ありげな物言いに、正刻は不審そうな顔をして言った。
「おい鈴音……お前また変な事してないだろうな? お前がそういう言い方する時って、大概ロクでもない事考えてる時だよな? ええ?」
その正刻の詰問に、猫のような笑顔を浮かべた鈴音はおかしそうに言った。
「さーてねぇ? 心配しなくても、キミに不都合な事は起きないよ、多分ね。」
「……今でも十分不安になったんだが……。」
そう言って三度溜息をついた正刻を、鈴音は面白そうに眺めていた。



「おかしい……。」
正刻は洗い物をする手を止めて呟いた。既に帰宅し、夕食を終え、更には後片付けまでしている正刻だが、実はまだ唯衣と舞衣からチョコ
を受け取ってはいなかった。
学校では舞衣からどんなアプローチをされるかと戦々恐々であったが、彼女は正刻に何のアプローチもしなかった。
その事を不審に思いながらも帰宅した正刻であったが、またも予定外の事が起こる。
唯衣から、今日は夕食は自分でとってくれとメールが送られてきたのだ。それ自体は何てことはないのだが、バレンタインに宮原家で食事
をしないのは随分久しぶりなため、何だか調子が狂ってしまっていた。

いや、それよりも、この時間になるまで唯衣と舞衣からチョコをもらえない時など無かった。いつも学校で、遅くとも夕飯の時にはくれて
いて、それで……。
……と、そこまで考えた時、正刻はとある事に思い至り、ぽつり、と呟いた。
「そっか、俺……何だかんだ言って、あいつらからチョコをもらうの楽しみにしてたんだ……。」
最近があまりにもな事が多かったためにバレンタインが辛いなどと思ってしまっていたが、それでも自分はバレンタインにあの二人にチョ
コをもらうのが楽しみだったのだ。

過激な行動を取りつつも、受け取ってもらえるか不安な目をした舞衣が可愛くて。
チョコを食べる自分をじっとみつめる唯衣が健気で。

今まで当たり前過ぎて気がつけなかった、忘れていた事に気がついて。正刻は、ぽりぽりと頭をかいた。
「全く俺って奴は……。もらえなくなって気がつくなんて、な……。」
明日、二人に何て言おう、そう考えていた正刻の耳に、玄関のチャイムの音が飛び込んできた。
252名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:40:22 ID:k66Gc+ri
「はい、どちら様……って、お前ら……。」
玄関の戸を開けた正刻の目に入ったのは、唯衣と舞衣であった。二人とも、制服の上からエプロンをつけている。よく見ると、所々に茶色い
物体……チョコがついていた。
「……どうしたんだお前ら? そんな格好で……。」
呆然と呟く正刻に、舞衣が口を開いた。

「うん、そのな? 実は、今年は唯衣と二人でチョコを作ろうという話になってな? いや、話せば長くなるんだが……。」
舞衣の話を要約するとこうであった。ニ週間程前、バレンタインの計画を練る二人に鈴音が釘を刺した。去年あれだけの事をしでかして今年も
また酷い事をしたならば、正刻といえどもチョコを受け取ってくれないかもしれない、と。
去年の正刻の有様を見ていた二人は流石にやりすぎた感は持っていたらしく、その意見を否定出来なかった。そこで鈴音から出された案が、二
人で一つのチョコをあげる事であった。今まで二人で一つのチョコをあげた事は無かったため、新鮮であるだろう、と。更に彼女からはもう一
つの案がだされた。正刻の方ももらう事に慣れているようだから、あげる時間を遅らせてやるといい。そうすれば彼も、キミ達のチョコの有り
がたみを思い出すだろう、と……。
ちなみに「貸し一だからねぇ、忘れないでよ?」と言われた事は、流石に言わなかったが。

話を聞いた正刻は、苦笑を禁じ得なかった。
(野郎……ハナッから全部こうなるって分かってやがったんだな……! まったくあいつは一度お仕置きしてやらなくっちゃだな……。)
脳裏であっはっはと笑う眼鏡っ娘にどう報復してやるかを考えつつ、正刻は言った。
「で、ここに来たって事は、チョコを俺にくれるんじゃないのか?」
正刻にそう言われた二人は、ぴし、と身を固まらせた。不思議そうに首を傾げる正刻に、唯衣が言い難そうに切り出した。

「その、ね? 二人で作るのって、案外難しくって……その……。」
そう言いながら唯衣はおずおずとチョコを差し出した。
「…………。」
正刻は無言で受け取り、それを見た。おそらくハートを模した形なのであろうが、ひどく歪になっていて、でこぼことしていた。表面もざら
ざらなままだ。
「あ、無理に食べなくていいんだぞ? 流石にこれは……どうかと思うし、な……。」
舞衣が力なくそう言った。だが。
253名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:41:18 ID:k66Gc+ri
ぱくり、と正刻は齧りついた。

驚きに目を見開く双子の前で、正刻は続けて齧っていく。
やがて全部を口に納め、飲み込んだ正刻は二人を見ると、にっと笑って言った。
「美味いぜ、このチョコ。ありがとうな、唯衣、舞衣!」
その笑顔に二人は見蕩れたが、すぐに表情を暗くし、俯いた。
「いいんだよ正刻、無理しなくても……。」
「そうだ。そんなもの、美味いはずが……。」
しかし二人はそれ以上何も言えなかった。正刻が、二人をそっと抱きしめたからだ。

「美味かったぜ、本当にな。……それによ、俺……嬉しかったんだ。お前らからチョコをもらえてさ。今年はもう、もらえないんじゃないかっ
 って思ってたから、さ。」
そう言う正刻に、唯衣と舞衣は驚いたように言った。
「そんな、正刻……!」
「そんな事……!」
だがそんな双子に笑いかけると、正刻は続けた。
「いや、さ。正直に言うと俺、ここ数年はバレンタインの日はちょっと憂鬱だったんだよ。けどさ、今日気がついたんだ。いや、鈴音の奴に
 気付かされたのかな? まぁとにかく、俺はお前たちからチョコをもらうのが、楽しみだったんだよ。なのに、バレンタインが憂鬱だなんて
 思っちまってさ。だから今年もらえなくても、それは仕方が無い事なんだって思った。自惚れた俺への罰だってな。……だけど、お前達は
 チョコをくれた。それが凄く……嬉しくってさ。だから、さっきのチョコが不味いだなんて、そんな事は無いぜ。本当に……美味かった。
 心に沁みたよ。」

正刻の独白を黙って聞いていた二人であったが、やがて、二人ともぎゅっと正刻を抱きしめ返した。
「全く馬鹿だね、あんたは……。私達があんたにチョコをあげないだなんて、そんな事ある訳ないじゃない。あんたにチョコをあげる物好きは
 そう多くないんだから、私達があげなくなっちゃったらあんたはきっと、誰からももらえなくなっちゃうんだから……だから、私達はずっと
 あげるわよ。あんたが嫌だって言っても……絶対あげるんだから……!」
「全く君は相変わらず私達の愛を過小評価しているな。もっと私達の事を信頼しろ。私達の、君への愛が薄れる事は無い。君が君である限り、
 私達が私達でいる限り……ずっとだ……!」
二人の言葉を聞いた正刻は胸が一杯になり、黙って二人を抱きしめた。二人もまた、正刻を抱きしめ返した。

二月の夜に相応しい寒い夜であったが、この時の三人は、そんな寒さなど感じない程に暖かかった。



ちなみに佐伯道場の双子からとんでもないチョコをもらったり、京都からメッセージと写真付きのえらく豪華なチョコが送られてきたりして、
また一騒動あったりしたのだが、それはまた別のお話。
254名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:42:31 ID:k66Gc+ri
以上ですー。本編も早く投下出来るよう頑張りますー。ではー。
255名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 03:23:41 ID:ql5Cythx
このスレこんなに人いたんだ(ヲイ

職人の皆様GJです!
甘過ぎてもう死んでもイイ…
256名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 04:05:08 ID:a9UInHFD
あま〜〜〜〜い!w
皆さん甘すぎw
我々を糖尿病にする気ですか〜
皆さんの本編の方もワクワクしながらまっております!
257名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 12:31:58 ID:muKK84H9
さて、インシュリンはどこにあったかな……
258名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 12:34:25 ID:818q/0zp
なんだこの無差別飽和攻撃はw
ちょっと口腔外科行ってくる。
259温泉:2008/02/15(金) 15:24:10 ID:6ukrkTYh
昨日の今日でなんだが……投下させていただく!

本編です。>>211からの続き。
260You is me:2008/02/15(金) 15:26:11 ID:6ukrkTYh
 そして夜。俺は風呂に入っていた。もちろん、自分の家でだ。しかし、みーは今日俺の家に泊まることに
なっている。今日、みーのとこのおじさんとおばさんは旅行で不在。で、俺のかーさんが「晩ご飯にみーちゃんを
連れてきなさい」と俺に命令。食事終了後、女の子が一人きりは危ないから、とうちに泊まるよう押し切った、
と……以上、状況分析完了。
 只今の時刻、二十三時半。いつも晩飯後すぐに風呂に入る俺としては思い切り遅い時間だ。しかし、家族の
団欒にみーが加わったことで馬鹿騒ぎが起こったり、風呂の順番が変わったり、なんだかんだやってるうちに
とばっちりを食ってこんな時間に。親父とかーさんは既にお寝むの時間。多分、みーも客間で寝ている事だろう。
「まぁそれはいいけどな」
 なんて呟く。今日の昼のキス以降、どうにもみーとの間がぎくしゃくしてしまったのが気になっていた。
 やっぱ、こっちからみーの中に入れたのがまずかったよな……いや、その後か? いやいや、どっちも
まずすぎるか? とりあえず、俺自重。反省しよう、うん。
 とりあえず、明日になってからまた謝って――待て待て、触れずに放って置いたほうが良いのか?
 すると、突如、ゴンゴンと風呂の扉をノックする音が聞こえた。
「うおっ、かーさんか?」
 返事は無い。が、多分かーさんだろう。
「ごめん、かーさん。うるさかったならすぐ上がるから――」
「ご、ごめん。ゆーちゃん、あたし」
「みー?」
261You is me:2008/02/15(金) 15:28:23 ID:6ukrkTYh
 戸惑いを含んだ確かなみーの声。まだ寝てなかったのか
「ちょっと……眠れなくて。そしたらお風呂が音がしてたから」
「そか、すまん。うるさかったみたいだからすぐ上がる」
「ち、違うの。そうじゃないの」
 浴室の扉のすりガラス越しにみーのシルエットが映っている。ピンクのパジャマだ。
「ゆーちゃんに……謝りたくて」
「俺に?」
「うん、お昼のことで……ごめんね」
「何がだよ、さっぱりわからん」
「あっ、あたしがっ、その、ゆーちゃんと、あの……キスしただけで、あんな風になっちゃって、ゆーちゃんは、
気にしないようにしてくれたのに、あたしは、ゆーちゃんに八つ当たりしちゃって……ごめん」
「ば、ばっか、何言ってんだ」
 俺はえらく焦った。本当に焦った。
「悪いのは俺だろうが。俺が勝手にあんなことをしなけりゃ――」
「そうだけど、でも、八つ当たりしちゃったから……ごめん」
 くそっ、好みじゃない。こんな展開は俺の好みじゃないぞ。
 なーんてことを考えてたら、思わずとんでもない言葉を口から出してしまった。
「むしろ、俺は嬉しかったけどな」
262You is me:2008/02/15(金) 15:30:23 ID:6ukrkTYh
「……え?」
「嬉しかったんだよ。みーがキスする前に言ったじゃないか、『ゆーちゃんとしてみたい』って。興奮した。
ああ、物凄く興奮したさ」
「ゆ、ゆ、ゆーちゃん?」
 状況を把握できてないみーの声。俺も状況を把握出来ていない。ええい、かまうものか。後は野となれ山となれ――!!
「それに、極み付けは、キスの後のソファーのあの様だ。あれで、興奮しない男なんているはずが――」
「ゆーちゃん、やめて!」
 その言葉にハッとなる俺。……俺は今何を言っていた? …………死ぬか。
 俺が思わず頭を抱えた直後、扉の向こうからかぼそい声が聞こえてきた。
「ね、ねぇ、ゆーちゃん、あのさ」
「何だよ……」
 くそぅ、次の言葉はなんだ。変態か、言われても仕方ないな……死にてぇ。
「あたしに、興奮、したの……?」
「……はい?」
 この女の子何をおっしゃる。
「ど、どうなの? したの? してないの?」
「い、いや、したかしてないか、で言ったらしたけど……」
 混乱してるからつい俺も正直に答えてしまう。
「ふ、ふーん」
263You is me:2008/02/15(金) 15:32:33 ID:6ukrkTYh
 しばし沈黙。みーはすりガラスにもたれて座り込んだのか、みーの背中が映っている。沈黙を破ったのは
みーだった。
「……男の子って、えっちな女の子が好きなの……?」
「えっと……一般的にはそうじゃないか、とは思うが……」
「そう、なんだ……」
 また沈黙。
 もうだめだ、この空気に耐えれない。なんだこの落ち着かなすぎる空気は!? なんかこう、じっとして
られない、っていうか……その、とにかく嫌だ。よし、俺。ここはウィットに富んだジョークで場を和ませるんだ。
きっと俺にはできる。いけ!
 そして、俺は完全に地雷を踏む一言を発した。
「よし、どうだ、みーも一緒に俺と風呂入るか? なーに、昔は一緒に入ったんだから問題無いって!」
 そらこい! 次にお前は『ゆ、ゆーちゃん! 何言ってるの!?』と言うのだ! フハハハハ……
「じゃ、じゃあ、体もちょっと冷えちゃったから入りなおそうかな」
 ……はい?
 すると、すりガラスに映っていた、シルエットがゆっくり立ち上がったと思うと上着に手をかけ――おいおいおい! 
 なんて思いつつも、目を逸らすことの出来ない俺。
 上着が落ちた。次にズボンが足元に落ちる。そして、最後の場所に手がかかり、ゆっくりと足を抜き―― 
「ば、ばっかやろ! 何してんだ!?」
264You is me:2008/02/15(金) 15:34:33 ID:6ukrkTYh
 我に帰った俺はそう叫んで慌てて後ろを向く。その言葉は、効果が無かったようだった。何故なら、後ろで
扉がカラカラカラ、と開く音がしたからだ。ごく、と息を呑んでしまう。ぺた、と足が降りる音。必死に理性を働かせる。
 振り向いちゃダメだ振り向いちゃダメだ振り向いちゃダメだ不利剥いちゃだm……
 その努力は全くの無益だった。
 今度はちゃぽん、と湯に何かが入る音がしたからだ――それもすぐ隣で。そーーーっと横目で確認しようとして
即座に目を逸らした。みーでなければ有り得ない真っ白な足がそこにあった。落ち着け、クールになれ、クールに
なるんだ……! クールになれっってんだろうがぁ!!! さっきからバックバクにうるさい心臓を拳で叩く。
 すると、今度はとん、と背中に何かがもたれかかる。肉質な、それでいて幅広な何か――みーの背中だ。つまり、
今俺とみーは背中合わせなわけだ……全裸で。
 もう頭の中は真っ白だ。興奮だとかそんなのは通りこしている。
 またしても沈黙を破ったのはみーからだった。
「……ねぇ、ゆーちゃん、振動、伝わってきてるよ……凄いどくどくしてる」
「し、仕方ないだろ」
「あたしに……興奮、してるの……?」
「っつ……!」
 その問いに更に心臓が激しく動く。破裂しないだろうな……?
「えへ、また振動が、すごい……」
「そう言う、みーからも伝わってくるぞ」
 口からでまかせだ。もう俺は何が何だかわかってない。多分、そうだろう、と思っただけだ。みーはそんなやつだ。
経験上、わかる。
265You is me:2008/02/15(金) 15:36:35 ID:6ukrkTYh
「やっぱり……わかるよね」
 そのまま二人黙り込む。音はしない。ただ互いのどくっどくっという振動だけ聞こえる。少し冷静になってきた。
そういえば、と俺は思い出した。
「なぁ、みー、こんなこと前にもあったよな……」
「え?」
「ほら、何歳くらいだったかな……風呂で互いの裸を見せ合いっこしたじゃないか」
「あった……ね。そういえば」
 今でもしっかりと覚えている。あの頃と今じゃ違うだろうが、それでも、下半身の――って馬鹿、俺は何を考えてるんだ。
「ね、ゆーちゃん、今、もう一度する?」
「……本気かよ?」
 何を、と聞くほど野暮ではない。幼き日の行為をもう一度、だ。
「う、ん……あたしは、したい」
「そう、か。じゃあ立てよ。俺も立つ」
 水が湯船に落ちる。もう、みーの声以外聞こえない。目を目一杯に見開いて――
「じゃ、いくぞ。いち、にの――」
「さん」
 合図で振り向いた。
 見慣れたみーの顔、唇。徐々に下に。もちろん、まず注目したのは胸。おどろく程白い肌の自己主張の弱い
ふくらみの上に、ピンク色をしたものがあった。……見惚れるのは男として仕方がないことだ、と言い訳しておく。
名残惜しげに胸から視線を下ろす。程よくくびれた腰、へそ、そして――
266You is me:2008/02/15(金) 15:38:36 ID:6ukrkTYh
 と思った時、みーの体が崩れ落ちた。
「お、おい! どうした!? ――ってあらまぁ……」
 みーはのぼせて目を回していた。
 まぁ、みーも緊張しまくってたってことなんだろう、な。なんて冷静に分析してる場合か。
 俺は慌ててみーを引っ張り上げ、脱衣場に出した。って、待てよ、拭いてやらないといかないのか……。
ちょっと視線を下に向けると胸が視界に――って駄目だ駄目だ駄目だ! 見ないで荒っぽくとりあえず拭こう……。
バスタオルを手にとって、そっと拭き――
 ふにょん、としか表現しようのない手応えをタオル越しに感じた。
 ああああああああああ、落ち着け!落ち着け俺!落ち着くんだ!やめやめ!やっぱやめだ!
 俺は大きめのバスタオルをみーにかけて、そのまま運ぶ計画に変更した。居間のソファーに寝かす。急いで
脱衣場に戻って自分の服を身に付ける。あまりの状況のおかしさに頭がどうにかなりそうだった。よーし、
落ち着けよー……落ち着け、本当に落ち着け。クールになれクールになるんだ……よし。二回深呼吸して居間へ。
「う、うーん……」
「お、気が付いたか」
 みーがうっすら目を開ける。
「急に崩れ落ちるからびっくりしたぞ」
「あ、あたし……?」
「のぼせたんだよ、大丈夫か?」
267You is me:2008/02/15(金) 15:40:36 ID:6ukrkTYh
「あ、うん……きゃ、やだ……!」
 そこでみーは自分が服を着ていないことに気付いたようだった。
「服取ってくる」
 一言言って脱衣場。床にくしゃくしゃに脱ぎ捨てられたみーのパジャマが。意識するな、意識しちゃいかんぞ俺……。
呪文の様に呟きながら戻って渡す。
「あ、ありがと……」
「おう」
 後ろを振り向く。タオルがぱさ、と落ちる音。そして布が擦れる音が、っていかんいかん。意識するなっての俺。
思わず床に座り込む。やっと落ち着けそうだった。今度こそ何か言わないと。
「なぁ、みー、さっきのことだけどさ」
「……なに?」
「俺、別に気にしないからな」
「……な、なにを?」
「みーのやる事なら、俺は何も気にしないから。俺は大丈夫だから」
 何を言ってるかは無茶苦茶かもしれないが、本心から言っている。
「だからさ、かけろよ迷惑。俺に。なんでもどんとこい。俺はそこまで狭量じゃない」
「で、でも――」
「良いんだよ。それに、今日程度のことで迷惑とか言われたら、俺はその三倍はみーから貰ってる恩について
どう礼を言えば良いんだ?」
「そ、れでも……」
268You is me:2008/02/15(金) 15:42:36 ID:6ukrkTYh
「許す。かけろ」
「う、ん……」
 俺は後ろを向いているのでみーがどんな表情をしているのかは解らない。だけど、俺は、もう大丈夫だ、と思った。
「じゃあ、迷惑かけて、良い……?」
「ああ、いいぞ」
「今すぐ、でも?」
「おう、どんと――え?」
 振り向くと、そこには真っ赤なみーの顔。口が開かれる。
「ゆーちゃんと一緒に寝たいな」
 ……余計なことを考えるな俺。普通に一緒に寝たいだけと考えるんだ。とりあえず、言うべき事は言う。
「……みー、俺も男だから限度ってもんが」
「あたし、ゆーちゃんなら」
 消え入りそうな声でみー。ゆーちゃんなら……の後は聞こえなかった。うん、聞こえなかった。
「それに、まだあの誕生日プレゼントの時間内だから……」
 みーは今度は呟くようにしかし、ちゃんと聞こえるように言った。
「ゆーちゃんが一緒じゃなきゃ、やだ。ちゅー……、して、ほしいよ」
 ホントに俺は甘いな、みーに。約束も……あるしな。
「わかった、勝手にしろ」
「……ありがとう」
 さっき落ち着いたはずなのにまた気分が高まっているのは……もうどうしようもない。俺の部屋に向かう。
ぎし、と床板がきしむ音が妙に大きい。あっと言う間に部屋についた。
269You is me:2008/02/15(金) 15:44:36 ID:6ukrkTYh
 電気など点けない。俺はそのままいつも自分の寝床としているベッドに潜り込んだ。俺だけでも少し狭く感じる
シングルベッド。今夜はそこに、もう一人。布がすれる音。ベッドのスプリングが重みを受け止めてゆっくり沈んだ。
横向きに寝転がる、俺の横に真っ暗でもわかるほどの距離にみーの顔。
 みーの瞳が、窓から射し込む月の光を反射して、潤んでいた。
「ん……」
 その瞳の光が瞬いた瞬間、自然に唇を合わせていた。触れるだけの拙いキス。なのに、背筋が震えるくらい
気持ちよかった。また触れる。離れる。触れる……ちゅっちゅっというくぐくもった音が小さく響く。
 顎がだるくなってきたので一回やめた。息も荒くなっている。でも、目は逸らさない。みーしか、見えない。
「ね、ゆーちゃん、手繋いで」
 頷いてみーの手を握った。じんわり暖かい。安心する暖かさだ。そこまで思って、俺はさっきと同じ様にまた昔を
思い出した。
「こんなこともあったなぁ、昔。今日の昼に言ってたあの話で」
「……あったね。ゆーちゃんに言われて思い出した」
 みーがくすくすと笑う。
「懐かしいなぁ……」
 きゅっきゅっとみーが手を握ってくる。俺も握り返してやった。
「あたしが、パパとママがいなくて寂しくて泣いて、ゆーちゃんがなぐさめてくれて、一緒に寝て、手を繋いでくれて」
 また握ってくる。握り返す。
270You is me:2008/02/15(金) 15:46:38 ID:6ukrkTYh
「あの時も今みたいに握ったらゆーちゃんが握り返してくれて、ほっとしたの覚えてる」
「……そうだな」
 昔を思い出す。ただひたすらに毎日走り回るだけで楽しかったあの頃。みーが追いかけてきて、手を繋ぐ。
ただそれだけで良かった。他に何もいらなかった、あの頃。
「奇跡ってヤツかな」
「……どうゆう意味?」
「昔と全く同じことを何年も後に同じ事をやって思い出すってことが」
 俺から手を握る。
「うん……」
 身長が変わった。体付きにどうしようもない程男女の差が出た。声なんて聞き分けもできない。考え方も変わった。
でも。それでも――
「って、おい?」
 気付くと規則正しい息の音が。
「寝てる……ん、あれ?」
 今更気付いた。緊張も、興奮も治まっていた。その安心は繋いだ手のぬくもりから伝わっていた。
 疲れたもんな。今日はどっちも、色々ありすぎて。
 そう思うと同時に俺も猛烈な眠気が襲ってきた。……寝よ。
 でも、と俺は意識を手放す前に思った。
 ――本当に幼馴染ってだけだったんろうか、俺は?
271温泉:2008/02/15(金) 15:47:31 ID:6ukrkTYh
以上、投下終了。
もうちょっとだけ続くんじゃ……
272名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 15:59:20 ID:QHtwyfY0
>>271
GJ
あー、ついにここまで……
その調子で、最後まで突っ走ってください!

バレンタインデーに投下された職人様もGJでした
すっかり虫歯になってしまったよ……
273名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 16:30:20 ID:FxHk9zko
>>271
GJそして乙。ここ数日投下なさった方々も乙。

投下ラッシュのせいか、それとも風邪で熱があるせいか目眩がします。
274名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 19:33:19 ID:Db6REbPu
お疲れでした。寸止めが憎い……w
275名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 21:04:56 ID:LHbIKiKC
絆キター!!
>>271
GJ!!
276Tokyo Lights 1:2008/02/16(土) 01:23:46 ID:15WjgzXC
ピリリリリリ



ピリリリリリ

…?!

携帯が鳴っている。寝ぼけた意識の中、電話に出る。

「もひもひ」
「メールしたから見て」
「は?」
「寝てた?○○駅にいるから」

名前を確認する前に、一方的にやり取りを終了されてしまった。
メールを確認した。

−新着メールあり−

アドレスを見て、眠気が一気に吹っ飛んだ。

件名:こんばんは

本文:こっちに戻ってきてるんだ。今、○○駅。
   迎えに来てくれないかな。

ジーンズを履き、ジャケットを羽織り、マフラー片手に車の鍵、携帯を持ち玄関下りていった。

「出掛けるのか?」

父親が遅い晩酌をしていた。

「うん。車借りる」
「雪の後だ。気をつけろよ」
「わかった」

玄関を出ると、冬の夜の寒さが襲ってきた。吐く息が白い。
車に乗り込むとエアコンをフル回転させた。
ガムを手に取り、包みを捨て口に含む。レモンが口に広がる。
まだ寒いが車を発進させた。

返信はしていない。あいつの性格なら多分ずっと待ってる。
この時間なら駅まで数分で行ける。でも、急な電話だったな。
というか、電話もメールもしばらくしていなかった。
信号待ちがいじらしい。車内は暖まってきた。
ラジオをつけた。FMでは静かな洋楽が流れている。駅入り口の信号でもつかまった。
ロータリーに白いコート、黒のロングブーツの彼女がいた。
縦列タクシーの横につけるとハザードを焚いた。プップッと軽くクラクションを鳴らした。
この車がうちに来て、もう十年近く経つ。気付くはず。
内側から助手席ドアを開けた。無言で乗り込んできた。
277Tokyo Lights 2-1:2008/02/16(土) 01:24:20 ID:15WjgzXC
「ふぅー」

第一声は安堵の一息だった。

「ねえ…」
「…」
「…?!」
「寒いね〜」

彼女はそう言うと両腕を摩った。その仕草はかわいかった。

「…酔ってる?」
「ごめん。バスも無ければお金も無かったから。寝てたよね…」
「それより、そんなカッコで…」
「マフラー置いてきちゃったみたいの」
「どこに?」
「あっ今、高校の時の友達と飲んでいて、多分そこ」

ブー

タクシーがクラクションを鳴らしてきた。

「ここまずいからとりあえず出すよ」
「おっけ」

車内は静かだ。ずっと会ってなかったとは言え、特別話すことも無い。
ラジオが流れている。家の角まで来て車を停めた。

「どうする?」

隣同士だが、家の前で降ろすのはなんだか気が引けた。
父親に出掛けるのを見られているし、彼女を迎えに行っただけだと思われる。
だからって別に隠すような事でもないんだけど。

「ドライブしない?」
「はい?」
「ドライブ!」
「こっちに帰ってくる予定だったんだろ。いいの?」
「もともと朝まで遊ぶつもりだったのを抜けてきたから。明日なんかある?」
「いや、ないけど」
「じゃあ決定。行き先は…」
「…」
「横浜!」

進路を西に、湾岸を目差しとりあえず車を出した。
セルフスタンドに寄る。給油中、彼女の後姿を見つめた。
278Tokyo Lights 2-2:2008/02/16(土) 01:24:50 ID:15WjgzXC
真崎惠子。同い年でうちの隣りに住んでいた。
いわゆる幼馴染というやつだ。親同士も仲が良く、家族ぐるみの付き合いをしている。
しかし、最近は正月や盆位にしか会う事はなかった。
気まずいとかそういう事は無かった…と思う。

スタンド内のカフェで、ミネラルウォーターと缶コーヒーを一緒に会計をした。

「○○リッター入りまして、こちらと合わせて○○○○円になります」

財布を覗く。今月はヤバいな。

スタンドの照明が反射して良く分からなかったけど、
レジからフロントガラス越しに惠子が見えた。その顔を見たら、出費の痛手も吹っ飛んだ。

寝てる。

ミネラルウォーターを頬に当てた。

「ひやっ」

彼女はびくっとして起きた。

あ、余計な事したな。気が利かないな、俺。帰りは寝かせてあげよう。

「これ飲めば酔いが覚めるかもよ。冷えるとあれだからこっちも」
「ありがとー」
「じゃ、行きますか」

車は再び走りだした。
279Tokyo Lights 3:2008/02/16(土) 01:25:17 ID:15WjgzXC
高速入り口を見つけ車線を右に移った。遊園地を左手に川を越える。
しばらくすると観覧車が見えてきた。惠子が口を開く。

「昔話しようか」
「なにそれ」
「保育園のさぁ」
「うちらの?」
「そう。あれ覚えてる?あの膝ぐらいまでしかないプール」
「あったな。夏になると、校庭に、あっ校庭?保育園の場合なんて言うんだっけ?
 広場?お外?まあいいや。そこに骨組み作ってビニールを張ったようなやつ」
「そうそれ。相当大きかったよね」
「そうそう。でも今見ると小さいんだろうな」
「プールの後のあれは覚えてる?せーので言おうか」

せーの

「シャワー!」「シャワー!」

〜俺は小柄でおとなしい園児だった。話す相手も決まっていて
あまり話さない子達が来ると大人しくなる。家では正反対だった。
いわゆる内弁慶だった。プールは水泳というより水遊びに過ぎない。
そしてプールの後、シャワーで体を流す。そのシャワーというのが可笑しくて、
水道にホースで延長し、先生がシャワーヘッドを持ってるだけ。
そして、園児はスッポンポンで並んで待つ。それが男女交互に並んでいるのだ。
もちろん順序を守らず、仲間同士、女の子同士になっている所もあった。
俺はそういうの駄目でちゃんと順番を守っていた。
隠す奴も隠さない奴もどっちもいた。隠さない奴の事は全く理解できなかった。
俺の前には女の子のおしり。もちろんそんな意識はない。
ただ自分の番になって体を流すのが嫌だった。だからずっと股間を隠して並んでいた。
俺の両肩に手が乗った。後ろは恵子だった。
恵子は四月生まれ。俺は翌三月生まれ。同学年だがほぼ一年違う。
頭半分くらい大きい恵子は動じない。手を乗せてるので隠す事なく待っているんだろう。
俺は振り向く事ができなかった。〜

「今考えると問題になりそうだよな」

同じ映像が浮かんでいるのだろう。恵子は微笑んだだけだった。

〜俺の番になると頭上から冷たいシャワーが降ってきた。
首から肩から、そして手を挙げるように促されると股間が晒された。
脇から足にかけて流す。そして、一番嫌な事。それは後ろを向き背中を流される事。
後ろを向くと恥ずかしさから下を向いた。恵子の足しか見る事が出来ない。
また手をどける様に言われると、そうするしかなかった。顔から火が出そうだった。
最後に頭からシャワーを浴びせられる。これも耐えられない。
俺は頭から水を浴びると、アップアップして息が出来なくなるような感じになる。
それから逃れる様にしたら、躓いて後ろの恵子にもたれ掛かってしまった。
恵子は俺をしっかり支えてくれて、後の事は覚えていない。〜
280Tokyo Lights 4:2008/02/16(土) 01:25:54 ID:15WjgzXC
二つ目の観覧車。そこを過ぎると大きな海底トンネルが口を開けている。

「コーヒー飲む?手を温めてたからちょっとぬるくなってるけど」
「あー俺はいいや。トイレ近いし」
「そうだったね」

〜うちの地区では保育園、幼稚園、小学校低学年時に子供会なる催しがあった。

「洋ちゃん、ジュース飲む?」
「ちょだい」
「駄目よ。寝る前に冷たいもの飲んだら」
「でも洋ちゃん、欲しいってさ」

その年は湖畔でのキャンプだった。
各バンガローに二家族が泊まる。俺のバンガローはもちろん真崎家とだった。
この子供会、父親は殆ど参加しない。うちも恵子のうちもそうだった。
お互い一人っ子のため母親が二人、恵子、そして俺。
定番の飯盒炊爨、カレー、簡単なアスレチック、夜はキャンプファイヤー。
楽しかったな。布団の中。背中をトントンされる。何かを渡された。
水筒だった。振り向くと、恵子はいたずらっ子のようにしめしめと笑う。
中身はレモンジュースだった。声には出さずアリガトの口を作った。恵子は笑った。〜

「今もそう?」
「あのね…」

〜翌朝、俺は布団から出る事を拒んだ。

「やったな」

さすが母上、良くお気づきで。下半身はいい感じに蒸れていた。
恵子はまだ寝ていた。おばさんはすぐにわかったようだった。
母親に掛布団を剥がされると、夏とはいえ股がひんやりした。

「早くしな。恵ちゃん起きちゃうぞ」

それを聞くと行動しないわけにはいかない。
しかし、母親は濡れたパジャマを持ち外に行ってしまった。
母親同士の暗黙の了解か、おばさんが手伝ってくれた。
タオルで下半身を拭いてくれた。隠しても無駄と分かると従った。

「おねしょだ…」

見られた。

「恵子そこのタオル一枚取って」

俺は股間を隠し、惨めにパンツを履いた。〜
281Tokyo Lights 5:2008/02/16(土) 01:26:28 ID:15WjgzXC
空港の明かりが車窓を流れる。先を行く。

〜恵子の家で遊んでいた時、いいもの見せてあげると言われた。
そこは、普段遊びに行っても踏み入れる事のない、秘密の扉という感じだった。
ベッドがある。おじさんとおばさんの寝室だ。
そこに入った時の感じは、なんとなくいけないことをしているようなものだった。
ガラス扉の棚には飴色の酒の入った瓶や、ジャンボジェットの模型が並んでいた。

「洋ちゃん、こっちこっち」

俺は飛行機の模型の方に興味があった。名残惜しかったけど恵子の方に行ってみた。
ビックリした。恵子の上半身が無くなっていた。
そうじゃなかった。恵子の上半身は、ベットの下に潜り込んでいた。
恵子はお尻をふりふりしながら出てきた。
平型のダンボール箱だった。開けると見たことも無い物が色々入っていた。
「これこれ」と言い、本を取りだした。エロ本だった。写真中心の物だった。
まだそういうのを知る前だったので、二人して興味津々。
実際、女の裸を見ても母親のそれというような感じだった。

「なんでみんなはだかなんだろね」
「おんなのひとをいじめてるんだよ」
「ちがうよ」

恵子が否定した。

「これえっちしてるんだよ」
「なにそれ」
「テレビで見たもん。好きな人ができるとえっちするって」
「こんなことするの」
「そうだよ、たぶん」
「なんでこことここ黒くなってるんだろ」

俺は結合していない男女の陰部の黒塗りを指差した。

「おちんちんはうつしちゃいけないんじゃない」
「おんなも黒くしてあるよ。おんなはちんちんないよ」
「わかんない」〜
282Tokyo Lights 6:2008/02/16(土) 01:26:57 ID:15WjgzXC
あのダンボールはまだあるんだろうか。

「おじさんはまだ飛行機好きなの?」
「そうみたい。最近は国際空港近くの公園で離着陸を見るのが楽しいんだって。どうしたの急に」
「あ、いや、さっき空港通ったから」

〜寝室にはその後も何度か行った。またいつもの様に本を取り出した。
俺はもう見飽きたのでベッドに大の字になった。
すると恵子が馬乗りになってくすぐってきた。
今だ体格で勝てないので抵抗しても歯が立たない。
両手を取られた。恵子の顔が近づいてきた。

「ちゅーしよ」
「やめろよ」

本でも見た。このままいくと本の通り、俺の口に恵子の口がくっつく。
その感覚がどうにも理解できなくて、人の顔がこんなに近づくのも
俺の今までの人生では有り得ない光景だった。
なので俺は、恵子の顔がくっつく瞬間、左右どちらかに顔をそむけた。
恵子はそれでも構わない風で、頬にぶちゅうっとされた。
感覚としてはよくわからなかった。
やめろと顔を反対にそむけても今度はこっちの頬に。その繰り返しだった。

この頃の俺は男同士で遊ぶ方が楽しかった。今日本当は、友達と自転車で
些細な冒険をするのを断ったのもあって、こういう女女な遊びはしたくなかった。〜

今思うと、こんなにキスを迫られたのはこの時だけだな。ははは

「なんか、思い出し笑いしてない?」
「へ?」

顔が緩んでたかも。
283Tokyo Lights 7-1:2008/02/16(土) 01:27:22 ID:15WjgzXC
「保育園か。懐かしいよね」
「うん」
「小学校はどんな事あったっけ?」
「っと、その前に、ここちょっと寄るよ」
「うん」

大黒PAで休憩。めでたい名前だな。

〜両家共通の知り合いの結婚式のため、どちらの親もいない。俺達は惠子の家で留守番。
俺も結婚式に行きたくて、すねた事を良く覚えている。
別にやる事はなかった。おじさんのエロ本も見飽きた。
俺はこの頃、自分の性器が勃つ事に興味を持ちだした。
性的な意味ではなくて、珍しい現象という意味で。その行動は自然だった。

「ねーねー」
「?」

俺はズボンの前を指で引っ張った。ゴム紐なのでズボンは簡単に開いた。
不意の為、恵子はそのまま視線を落とした。

「すげーだろ」
「なにそれ!」
「ちんちんってでっかくなるんだぜ」

小さい性器は皮を被ったまま勃起している。

日曜の朝は普段より若干遅くまで寝ていられる。
でも平日通り目が覚めてしまうため、布団の中でまどろむのが好きだった。
その時、性器が勃起しているのに気付いた。
昔から勃起はしてたんだろうけど、意識した事はなかった。
あったかい布団の中で、パジャマの上から性器を揉んでいるのが好きだった。
余計布団から出れなかった。

「ねー、えっちしようよ」
「なにそれ」
「あの本みたいなこと。行くぞえい!」

恵子を抱きしめた。けど良く分からなくてベッドで跳ねる事にした。
恵子も加わる。テレビで観たトランポリンを思い出し真似る。
手を伸ばしたり足を広げたり。二人で大笑いした。
それがだんだん変な方向にシフトした。跳ねながらズボンを下ろしたり戻したり。
ズボンを脱いだ。恵子もスカートを捲ったりした。
跳ねるのに疲れると、また変な行動にかわった。
体を屈め、足の間から顔を出す。多分エロ本の描写からの真似だと思う。
俺はパンツを脱いで尻を広げた。大笑い。保育園のシャワーの時の恥じらいが嘘の様。
そして、この時初めて女性器を見た。もちろん恵子の。
どういう成行きか、恵子からそうしたのか忘れたけど、恵子もパンツを脱いだ。
同じように足の間から顔を出した。そして尻を両側から開いた。
そこにちんちんでないものを見た。どちらかというと肛門の印象の方が強かった。

そのうち、親達が帰って来て「ばいばーい」と言って家に帰った。〜
284Tokyo Lights 7-2:2008/02/16(土) 01:28:27 ID:15WjgzXC
「バレンタイン過ぎちゃったね」
「あー、14日だっけ」
「もらった?」
「ノーコメント」

〜小学校五,六年だったかな。義理だろうがなんだろうが少なからず貰えた。
というか、ただ渡したいだけみたいな、バレンタインに酔っている雰囲気が女子連中にあった。
俺はチョコは甘いからレモンの飴が欲しいと、分けのわからない事を言った。
学校帰りに友達と一緒に帰ってたら女子が数人来て、「ほらチョコ」と渡してきた。
友達は普通にチョコ。かわいいピンク色のラッピングをされていた。
俺のは飴の袋を包装紙で包んである不恰好なもの。後悔した。この飴くれたの誰だっけな。〜
285Tokyo Lights 8:2008/02/16(土) 01:28:59 ID:15WjgzXC
トイレを済ませ、一足先に車に戻る。

−メールガキマシタ−

聞き慣れない着信音。助手席に携帯が置いてある。
着信ランプは綺麗な桃色だった。

〜中学の入学式の朝。恵子と家の前で記念写真を撮った。
学ランとブレザー。正直女子の制服は味気ないと思う。リボンでもあったら様になるのに。
俺のは袖口から辛うじて指が出ている。制服は大きい方がいいと言うから。
校門でも一緒に写真を撮った。ちょっと恥ずかしかった。
桜は、二人が写った卒業式の写真とは違い八分咲き。〜

恵子はメールを確認する。

「友達」
「?」
「マフラー忘れたでしょって」
「そう」

〜中学三年。受験の年。この時期の二人は今までで一番親密だった。
親同士もなんか笑って、何か言いたげな雰囲気を出している。
互いの家以外にも良く遊びに行った。
中一の時、同じクラスだったけど、学校では話す事は少なかった。
そもそもクラスは男同士、女同士という構図が出来上がっていた。
その頃とは違い、とても自然になった。〜

大黒を後にし、みなとみらいを右手にベイブリッジを渡る。
三つ目の観覧車。

〜恵子の家で勉強をした。リビング横の和室にコタツのテーブル。俺はしないけど。

「麦茶ちょうだい」
「勝手にどうぞ」

恵子の了解は関係なくて、いつもの様に勝手に冷蔵庫を開ける。
おばさんがいない時だけだけど。恵子の分も持って戻る。

「勉強しないの?」
「まだ大丈夫」
「何がまだなんだか意味わかんない」
「ギリギリまで粘るのが男!」
「意味不めーい」
「うっさい」〜

この考えは高校でも変わらなかった。だから後々後悔する事になった…
286Tokyo Lights 9-1:2008/02/16(土) 01:29:25 ID:15WjgzXC
〜合間の休憩。俺はニ杯目。

「うちのクラスの由佳いるでしょ」
「うん」

岸田由佳。一年の時同じクラスだった。小柄でかわいい子だった。
みんな好きな人の話になると、大抵岸田と答える。
好きな人に求める条件をしっかり備えていた。
俺も好きだった。
誰が言っても冗談と取れてしまうため、浮いた話は無かった。
みんな本命がいても、言いたく無いための逃げ道の名前ともいえた。
浮いた話がないので、その曖昧さが心地良かった。
その心地良さが中ニの時に崩れた。三年と付き合ってるという噂が流れた。
ちょっと嫉妬した。ちょっとだから本当に好きだったのか分からない。
ただ、今の心地良さにずっと浸かってても何も起きない。
少なくとも行動しないと、付き合うとかそういう事に発展しないとわかった。

「こないだ、ホテルから出てきたって」
「!…それって…あん時の奴?」
「そう。先輩が高校に行っても付き合ってるんだって」
「つーか、どっからの情報?」
「噂。先輩は制服で行ったから補導されたとか、自転車で行ったから、
 自転車に貼ってある学校のステッカーで分かったとかそういう話。
 噂になってるよ。由佳と同じクラスだから結構気まずいよ。男子には広まってないの?」
「聞いたことない。つーか自分も噂を広めてるねー」
「…そうかも。一応内緒ね」
「ホテルってさ。あんのかな…」
「なにが?」
「…回転ベッド」
「あーあれ、丸いやつ?なんか古くない?もしかして一面鏡張りとかも想像した?」
「あははは、想像した!」
「頭ん中バブルか!まー私もあると思ったけど」
「行ってみない?」
「…?!」
「…」
「え?ちょっ…」
「うっそ〜ん」
「……かっ、ちょっとねー、そういうのやめてくれる!」
「お怒んなって。勉強しなよ」
「わ、わかってるよ!」
287Tokyo Lights 9-2:2008/02/16(土) 01:30:01 ID:15WjgzXC
沈黙

冗談言ったのに冗談じゃない空気になってしまった。
平静を装って雑誌読んでるけど、なんか意識してしまう。
ずっと一緒にいるけどそんな目で恵子を見たことはなかった。
ちらちらっと恵子を見た。顔はノートを取っているためうつむき加減。
視線には気付かないはず。首筋から胸元に移る。
膨らみが二つ、肘をついた腕の奥にある。
腰をひねった感じに座っている。時折足を掻く。

「ねえ」
「な、なに」

返事がぎこちなくなってしまった。

「好きな人いないの?」
「俺?」
「うん」
「いないっちゃ、いない」
「なにそれ」
「そんなホテルの話されて僕、泣きそー」

わざとふざけた。

「え、もしかして、由佳好きだった一人?」
「そうよん。だから付き合ってるの聞いた時はショックだったなー」
「でも、みんな岸田がいい。岸田、岸田って言うからみんなどこまで
 本気かわからないよね。本気だった?」
「…」
「なんだ。返事に詰まるんだ」
「なんだよ。自分はどうなんだよ」
「…いないな。勉強忙しいし。勉強しなよ」
「いいのいいの。でも俺らガキの頃からずっと一緒だよな。好きな人の話なんか女にしたことねーよ」
「それって女として見てないってことでしょ」
「腐れ縁っつーの?それだよ」
「余りにも日常だよね。お互いがいる事が。空気って言うか。
 普段意識しないけどなきゃ困るみたいな。でも腐れ縁は使い方違くない?
 それは好ましくない時に使うんじゃなかった?」

なんか凄い事言ってるような気がするんだが。
288Tokyo Lights 10:2008/02/16(土) 01:30:31 ID:15WjgzXC
「でもそれって理想の関係かもね。ねっ」
「…」

答えず惠子を見つめる。

「な、なに?!」

コタツ越しの告白。その言葉は自然に出てきた。

「キスしていい?」
「えっ」
「ダメ?」
「…」

長い沈黙。空気が完全におかしくなった。

「するから」
「待って。心の準備が…」

惠子の方に周り、肩に手を置き、唇を合わせた。
恵子の匂いと感触と熱が唇に広がる。
唇を離すと恵子はうつむいた。恥らっている様に見えた。見つめ合う。

「ちょっと、もうやめようよ」

恵子を押し倒した。再びキスをした。胸を触った。
シャツを首まで捲くり、スカートをたくし上げた。
白い下着。恵子は両手で顔を覆っている。
俺はシャツを脱ぎズボンも脱いだ。手をどけると、恵子と目が合った。
その目は、俺には同意と映った。パンツを脱ぐとペニスは完全に勃起していた。
避妊なんてどうしていいかわからないし、持ってないし。
心臓が信じられない鼓動を繰り返す。顔が火照る。
どうしていいかわからないので、恵子の股間に自分のモノを近づけようとした。
俺はペニスを握っていざなうつもりだった。

「!」

白い液体は、恵子の下着と畳を汚した。
体中の血の気が引いていく。

惠子は片腕で両目を覆い、

…泣いていた。

「…ご、ごめん」
「帰って…」
「でも…」
「帰って!」

そうするしかなかった。〜

深夜の山下公園。自販機でジュースを買って戻る。

〜あれから数日全く会わなかった。
電話で謝った。惠子はもういいからと言った。怒ってはいないけど、後悔してるという。
惠子は俺と目を合わせなくなった。そのまま卒業を迎えた。
289Tokyo Lights 11-1:2008/02/16(土) 01:31:01 ID:15WjgzXC
卒業式の朝。二人で記念写真は撮らなかった。

入学式の朝。二人で記念写真は撮らなかった。
俺は、家の前の道を左へ自転車で行く。地元の公立高校。
恵子は、家の前の道を右へ駅へ向う。都内の女子高。

あの日を思い出してオナニーをした。
人生最悪の射精だった。
その日も、それを済ませると、手を洗うため一階に下りた。
恵子のおばさんが来ていた。

「恵子が……連れてきたのよ」
「あらそう!」
「あ、洋ちゃん…」

おばさんは俺に気付くと、口篭もった。

「それじゃね」

肝心の部分は良く聞こえなかったけど、俺も薄々感じていた。
高校に入ると、恵子と会う事は少なくなった。
あの時を思い出し自分を慰めた直後に突きつけられた、惠子の恋人の事。
自分自身を嫌悪した。大切なものを失った感じがした。〜

−心地よさに浸っていても何も始まらない−

車内。下道で帰ることにした。都内に向け北上する。
軽快な着信音。J−POPだ。

「ごめん、出ていい?」
「あ、うん。いいよ」

〜東京に来たのは久しぶりだった。現地待ち合わせ。
海外アーティストのドーム公演に誘われた。
そのアーティストにはあんまり興味無かった。
誘ってきたのは恵子だった。急な誘いだった。どうして?と思った。
惠子は恋人がいるのに、俺とも昔の様に話すようになった。

コンサートが終わりトイレに行くから待っててもらった。
トイレから戻ると電話をしていた。なにか緊迫した感じを受けた。

「ゴメン、お待たせ」
「…」
「どした?」
「帰ろ」

その目は泣いた後のようだった〜
290Tokyo Lights 11-2:2008/02/16(土) 01:31:30 ID:15WjgzXC
外で話したいからと車を停めた。歩道の端で話している。
ハザードの点滅が惠子の白いコートを、一定の間隔でオレンジに染める。

〜惠子の様子が変わった。早足で先を急ぐ。

「どうしたの?」
「なんでもない」
「なんでもないなら、どうして泣いてるの」
「…」
「彼…氏?」

抑えていた物が堰を切った。惠子は、人目をはばからず泣き出した。

地元の駅まで一言も口をきかなかった。家まで歩く。
大分落ちついたようだ。相変わらず、惠子は俺の数メートル先を行く。

なぜこのタイミングだったか良く分からない。

「俺、恵ちゃんが好きだ」
「…」

惠子の足が止まる。

「付き合って欲しい」
「ゴメン」
「子供の頃からずっと一緒で、あまりにも身近にいたから気付かなかったけど…。
 あの時…あの時、お互いが空気のような存在、それが理想の関係って言ったの覚えてる?
 あの事が恵ちゃんをとても傷つけた事。高校に進んで恵ちゃんに恋人が出来た時、
 取り返しのつかない事をしたと後悔した。大切な何かが遠くに行ってしまったと思った。
 恵ちゃんの事は忘れようとしたけど…出来なかった。
 俺にはこんな事言う資格ないんだけど…恵ちゃんを大切にしたい。だから、」
「ゴメン…無理だよ…」
「…」
「私…、先行く…」

惠子は走り出した。俺はその場に立ち尽くした。拳を強く握り締めた。〜
291Tokyo Lights 12-1:2008/02/16(土) 01:32:02 ID:15WjgzXC
「ごめん、お待たせ…」
「うん」

〜俺は大学受験に失敗した。恵子は上京し家を出た。
二人の関係は致命的に薄れていった。
浪人生活が始まり、予備校とバイトの日々が続く。バイト代はパチンコと風俗に消えた。
東京で大学生活を送る恵子を思うと、情けなくて死にたくなった。〜

いろいろあったが、これからを決心した矢先の電話。

車内に戻った恵子は喋らなくなった。

何度目かの信号待ち。

「私…結婚するの」
「…!」

後続車がクラクションを鳴らす。信号は青になっていた。動揺を隠せない。

「約束した人がいるの。いつか結婚しようって」
「…」

恵子の方を向く事が出来ない。視界の端にうつむく恵子が写る。

「でも…今、ふられちゃった」

反射的に恵子を見た。目にいっぱい涙を溜め、今にも頬を伝いそう。

「…」
「重いんだって…」
「…」
「本当は駄目になるってなんとなく分かってた。今の電話も、合鍵を返してだって…」
「…」
「私、やり直せないか聞いてみたけど…」
「もう、」
「無、」
「もう…言わなくていいよ」

俺は、恵子が他人と結婚しても祝福できると思っていた。
一瞬だけその相手を心底軽蔑した。
292Tokyo Lights 12-2:2008/02/16(土) 01:32:32 ID:15WjgzXC
車内。沈黙。川崎の夜景。信号待ち。青になる。アクセルを踏む。
車が左にブレた。急ブレーキ。後続車はいない。
恵子がハンドルを左に切った。

「まだ帰らない」
「?」
「あの日の続きする?」

切られたハンドルの左前方。ネオン看板。

−Hotel Tokyo Lights−

「恵子おまえ、やけになるなよ」
「そうかもね…」
「そうかもって…だったら思ってもない事言うな!」
「…」
「帰るぞ」
「洋ちゃん」
「?」
「私ね…」
「…」

惠子は涙を拭いながら続けた。

「私、小さい時から洋ちゃんの…、へへ…、お嫁さんになるって思ってた。
 子供の頃お父さんの本とか見たよね。小中でもいろいろ知ったし、
 …初めては洋ちゃんだと思ってた。そうなれたらうれしいなって思ってた」
「…」
「あの時、強引にされて本当にショックだった。あれは嫌悪の対象にもなるって思った」
「…恵ちゃん」
「高校の時も彼氏いたけど、なんか違ったんだよね。
 高校の頃は洋ちゃんの事、露骨に避けてたよね。ゴメンね」
「恵ちゃんが謝らないでよ」
「告白された時、本当はうれしかった。でも踏ん切りがつかなかった」
「俺…恵ちゃんがずっと好きだった。思えば恵ちゃんが隣りに越してきた時から。
 高校で恋人ができたって知った時、もう、諦めようと決めた。
 受験に失敗して、これでもう恵ちゃんに合わせる顔も無くなった。
 大学諦めようと思った。悪い方に悪い方に考えるようになった」
「洋ちゃん…」
「今日連絡貰って、恵ちゃんに会って、もうちょっと頑張ってみようって思った」

自然と、本当に自然と涙が溢れてきた。

「キスして」

助手席に体を持っていき、唇を合わせた。
293Tokyo Lights 13:2008/02/16(土) 01:36:15 ID:15WjgzXC
Tokyo Lights 13

「ベッド回転してないね」
「うん」
「鏡もないね」
「うん」
「体逞しくなったね」
「そう?」
「うん」
「恵ちゃんも、綺麗だね」
「本当?変じゃない?」
「全然」
「うれしい」

−Crazy For You!!!−

大田市場から海底トンネルで臨海エリアに抜ける。前方にテレビ局。

「あ、そこのコンビニ寄ってくれる?」
「あ、うん」
「何飲む?」
「え、じゃあ烏龍茶」
「おっけ。ちょっと待ってて」

レジを待つ惠子が見える。自分でドアを開けた。助手席に座る。
ちょっと照れ臭い。

「はい。ハッピーバレンタイン」

コアラのマ○チ…

「これも好きだったでしょ」

レモンの飴。
そう言えばなんだかんだいって、あの時、飴をくれたのは一人だったな。
ずっと覚えてたんだ。

「帰ろ」
「うん」

下道はさすがに無理があった。こんな時間になってしまった。
夜明けが近い。地元の川に掛かる橋を渡る。恵子が口を開く。

「随分遠回りしたね」
「え」
「ドライブ」
「うん」
「それと…」
「それと?」
「私達」

3月14日には、とびきりのお返しを!

おわり
294名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 01:57:18 ID:Ma+vC3EI
こ、ここで終わりとな
むごい、その仕打ちはあまりにむごい
つづきを たのむ

しかしGJせざるをえない
295名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 18:19:59 ID:PEuhDLua
GJと言わざるを得ない
296名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 23:52:21 ID:Te93bLOf
GJだな
紆余曲折の果てに結ばれるというのも悪くない
ただまぁ、もうちょっと最後に甘い展開があればもっとよかったかも
あ、いやあくまで個人的意見よ?
297名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 06:32:05 ID:4MTIi3dk
終わり方はこれでいいと思うけどなぁ。

298名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 06:52:37 ID:sPtFHGrR
小説は少なからず読者に空想の余地を持たせるものだからこれでGJ。
299名無しさん@ピンキー:2008/02/17(日) 22:29:46 ID:HNVrM9Ht
GJ!

それはそうと、NVcIiajIyg氏を未だ心待ちにしているんだが…
氏は何処へ…
300 ◆6Cwf9aWJsQ :2008/02/18(月) 04:51:54 ID:yKCL4vKD
投下いきます。
バレンタインネタの続きです。
301シロクロ番外編『手を変え品を変え』:2008/02/18(月) 04:53:37 ID:yKCL4vKD
「・・・あうぅ、あんっ・・・・」
既にパンツ一枚になった啓介がベッドに横たわりリボンに包まれた私のカラダを愛撫する。
私は恋人のその行為に身を任せていた。
普段とは逆の構図になってるけれど、
私が啓介にどうすれば喜んでもらえるかがわからないのでこのようにされるがままになっている。
悔しいという想いはない。
啓介が私のためにしてくれることはいつだって嬉しいことだから。
ただ、それに答えられないのが歯がゆい。
だから、少しでも啓介に尽くそうと思って彼に口付ける。
「んむぅっ・・・、くちゅっ・・・」
舌と舌を絡ませ合い、互いの唾液を味わう。
「・・・チョコの味がする」
「そりゃさっきまで食ってたしな」
しばらくそうしたあと唇を離すと、リボンに覆い尽くされた私の胸が啓介に揉まれ、形を変える。
「んぅっ・・・」
初めて揉まれたときは痛みも伴ってたその行為も、
何回か行為を重ねた現在では私にただ快感を与えてくる。
そして、啓介は私の胸のリボンをずらして乳首を露出させると指で摘み始めた。
「はぅ・・・」
コリコリと彼の指の腹で愛撫され、思わず声が出た。
そうして胸の先端が攻められると同時、啓介は私の鎖骨、二の腕、ウェストや太ももに唇を寄せ、
少し強めに吸い上げてキスマークを付けていく。
「うっ、はぅ・・・!」
私はどうやら感じやすい体質のようで、それらが与える刺激に敏感に反応してしまう。
そして、啓介の指が私のクレパスに触れ、なぞり始めた。
「綾乃のここ、濡れてる」
「はぁっ・・・はぁっ・・・うん・・・」
激しい責めで息も絶え絶えになりながらも、私は何とか返事をすると、
お返しに私も啓介の股間に触れた。
「啓介のも、大きくなってる」
「うん」
頷いた啓介は最後に残ったパンツを脱いだ。
302シロクロ番外編『手を変え品を変え』:2008/02/18(月) 04:54:24 ID:yKCL4vKD
「ちょっと待って」
私はそういうと枕カバーの中に手を入れ、そこからあるものを取り出した。
「はい。ゴム」
「おう」
啓介がいつも避妊具を隠している場所はこれまで何度もえっちをした時に覚えている。
啓介もそれを承知しているので素直に差し出されたコンドームを受け取り、自分のものに付けた。
それを確認した私は脚の間を覆っていたリボンをずらして秘所を剥き出しにし、
「・・・いれていいよ」
啓介は頷くと私の割れ目に自分のゴムに包まれた肉棒を押し当て、一気に貫いた。
「ん、くぅ・・・!」
啓介の性器が私の膣内に入り込み、一体になる。
そのときにいつも感じる強烈な快感に苛まれた私は喘ぎ声を漏らしてしまう。
「んはぁっ、今日は、私が、上に、なるね・・・」
啓介が頷くのを見ると、私たちは繋がったまま体勢を逆転する。
「んぅっ、あぁっ!」
「ぐぅっ、ふはぁっ!」
身体を動かすたびに互いの性器がこすれあって、圧倒的な快感が襲いかかってくる。
それに耐えながら位置の交換を完了させると、私はゆっくりと腰を動かし始めた。
「あふっ、ああん、あうぅ、あんっ・・・・!」
「くうっ、あうっ、かふっ、うあっ・・・・!」
私が腰を動かすたび、私と啓介は同時に喘ぎ声を漏らしていく。
私の中に啓介が何度も出入りし、その度に感じる摩擦すらも愛おしく感じてくる。
それを何度も繰り返していくうちに、絶頂が近くなってきた。
「啓介、私、そろそろ・・・」
「俺も・・・」
互いに頷きあうと、私は腰の動きを速めた。
「くううぅっ!!!」
「やああああぁっ!!!」
その叫びを合図に、私と啓介は同時に果てた。
303シロクロ番外編『手を変え品を変え』:2008/02/18(月) 04:55:28 ID:yKCL4vKD
「えっちのときにはなんであんなに積極的なのよ。
普段は照れまくってて自分からはなにもしてくれないのに」
「・・・仕方ないだろ。俺だっていろいろ溜まってるんだから」
「いろいろ?」
「ああ、普段は恥ずかしいけど出来ることなら綾乃とイチャつきたいし
特にえっちしてる時にはそういう気持ちが抑えられなくなって暴走してしまうというか
・・・って何言わせてるか!」
「別に言えって言ってないけど」
行為後の心地よい疲労を感じながら私たちは裸のままベッドに横たわって雑談をしていた。
子供の頃もこうやってベッドの中でおしゃべりはしていたけど、
こういった恋人同士のビロートークでは同じような行為なのにものすごく新鮮に感じる。
そのことと先ほどの啓介の自爆から思わず苦笑が漏れる。
「もっと好きにしてもいいんだけどね。私的には私はとっくに啓介のものなんだし」
「・・・やかましい」
「あっ、赤くなった。かわいい〜♪」
「やかましいっつーに!」
そう叫ぶと啓介は彼の頭を撫でていた私の手を掴んだ。
もしかして怒って手を振り払っちゃうかなと考える。
が、それも一瞬のことで啓介は掴んだ私の手を引き寄せ、
それに引っぱられた私のカラダを抱きしめた。
「ありがとな」
そういって私の頭を撫でる。
「うん・・・」
愛しい人の肩口に顔を埋めながら私はそう答えた。
ひょっとしたら、私って啓介に思った以上に愛されてるのかなと少し自惚れた考えをしながら。
304 ◆6Cwf9aWJsQ :2008/02/18(月) 04:58:16 ID:yKCL4vKD
以上です。
どうしてもバレンタイン当日に投下したくてこんなことになったんですが、
こんな分量だったらまとめて投下すればよかったですねすみません。
305名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 17:14:49 ID:PP2DbiQl
ムヒョー
306名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 21:43:27 ID:Eku2PiWJ
エロス
307名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 22:56:58 ID:wynQODbD
>>304
ご馳走様でした……
308“年の差。”を書いてる人:2008/02/19(火) 01:56:25 ID:Urz0HZVB
思いつきのネタ、投下しますよ。
勢いのまま書いたんですがどうかという話。
『年の差。』も進めずに何やってるんだろうね全く……

なお、タイトルの『勢い全開喧嘩友達』は存在しない架空の作品です。
309続・勢い全開喧嘩友達 ◆tsGpSwX8mo :2008/02/19(火) 01:57:18 ID:Urz0HZVB
「聞いてるぅ、くずはァ」
「聞いてる、聞いてるから、まずは落ち着きなさい」
 しなだれかかる酔ッパー。対処に困る私。
 ……しなだれかかると言うには、なんとなくポーズが危ないけれど、まあ、私の部屋だ。誰も見てない。
「あ、あいつは、もうあたしのコトなんてもうどうでもいいとか思ってるンだァ……絶対……」
 あ、泣き出した。しかもなにやら大泣き。ぐじゅぐじゅいう音も聞こえる。
 もしかしたらコイツうわぁ汚ねぇハナミズだァとかそんなハナシだろうか。
 だが、離れろ、と直で言ったら余計酷いことになりそうだ。
 ああ、お気に入りのセーターよ、さらば。幼馴染のものとは言え、他人の鼻水が付いた服は即洗濯籠行きだ。
「待て。いいか、落ち着け。落ち着け」
 落ち着け、と三度言うと、彼女――雪津・春猫<ゆきつ・はるねこ>は大泣きをすすり泣きに変えてくれた。
 酒の席。お互いもう大学生で、既に十七年の付き合いになる。
 お互い大学は別だが、住んでいるのは同じ街だ。
 しかしあまり会う機会が無いのは、地元の観光名所にはあまり行かないのと一緒だろうか、などとたまに考えていたのだが、唐突に春猫の方から連絡があった。
『お互い二十になったし、酒飲もう』
 ……至極単純な文言だった。
 しかし、その理由……と言うか言い訳は、既に三回ほど使用されており、お互いもうすぐ二十一になるのであった。
 ぐすぐす泣く、酒に弱い親友の頭を撫でつつ、天井を見上げる。
 ……こうなった経緯は、彼女と私、共通の幼馴染にして、ついこの間春猫の恋人になった馬鹿にあるらしい。
 元々、二人をくっつけたのはこの私――季野・葛葉<きの・くずは>である。
 ならば、私がどうにかせねばなるまい。
 そんな風に意気込みつつ、私は春猫の持ち込んできたビールを飲み干した。
/
310続・勢い全開喧嘩友達 (2):2008/02/19(火) 01:58:00 ID:Urz0HZVB
 ――夏島・涼見<なつしま・りょうけん>は、その名前とは裏腹に暑苦しい馬鹿である。
 高校時代、体育祭でエキサイトしすぎて肋骨を折り、しかも『翌年に悪い影響を与えぬため』と我慢するという伝説――もっとも、春猫がすぐにそれを露見させたのだが、それはまた別の話だ――を持つほどに。
 当然器用さなんてものは望むべくもない。恩を着せるような言い方だが、もしも私が後押ししなければ、今だって涼見と春猫は喧嘩友達の関係だっただろう。
「……と言うワケでだね、君は私に何が起きたのかを説明する義務がある」
 と、私が持参したスルメを噛む馬鹿に言う。
 昨日の報告を聞いてから即日。襲来に面食らったであろう彼は、やっぱりか、と言う顔をした。
「……酒とスルメの代金は払うから喋らんでいいか? 枝豆もオレがゆでるから」 
「駄目だ。私の方にも解決する義務がある。そしてその最適手が君から話を聞くことなんだ」
 視線がかち合う。
 大学に入ってからオールバックにしはじめた髪は、今は自室だからか昔のようにボサボサだ。
 顔つきもどこか疲れているようで、目の下にはクマがある。
「……そうかよ。で、春猫はなんて言ってた」
「君が、距離を置こう、と言ってきたと」
「……そうか」
 声に覇気がない。そも、コイツは三点リーダを使わなければセリフを表現できないような空白時間を作らないような男だ。
 ――攻めれば落ちる。
 普段であれば抱けないような確信を持つのも、ある種当然だ。
「なあ、頼むよ涼見。君達が喧嘩をしているのを見るのは、実に心苦しい。喧嘩に他人が介入するのは無粋かもしれないが、喧嘩しっぱなしでいいというワケではないだろう」
「……まあ、そうだけどな」
「涼見。まさか、彼女の事を嫌いになったというワケでもないんだろう? 何か狙いがあるなら、もう少し穏便な方法を提案できるかもしれない。話してみてくれないか」
「嫌いになんかなってねェよ。むしろ愛してる……ん、だが」
 さらっとノロケつつ、涼見はスルメをかじる。
「だが、なんだ。やはり何か理由があるのか」
「……ああ」
 彼は深くため息を吐き、理由を語る。
 訥々と――大真面目に、静かに。
/
311続・勢い全開喧嘩友達 (3):2008/02/19(火) 01:58:26 ID:Urz0HZVB
 ……十数分ほどだろうか。
 程よく酔いも回り始めた頃、彼は語り終えた。
 終わりだ、との言葉に頷き、
「……終わりだな? それ以上、例えば、何かどんでん返しのオチは無いんだな?」
「……ああ。ねェよ」
 オーケー、と深く頷き、
「ぅわーはっはっはははははっ!」
 腹の底から笑う。本当に、聞いている最中から笑いたかった。
 堰を切った笑いに、馬鹿が――否。超絶馬鹿が怒鳴る。
「な、何がおかしいんだバカキツネ!」
「ははは、何がおかしい……!? 何がおかしいだって!? 実に面白いな君たちは! ははは……!」
 涙が出てきた。
 腹が痛い。
 こんなに笑うのは久しぶりだ。
「は、はははは、ひ、はは、シリアスに語っているから何事かと思えば! ははは……!」
 ああ、こうしてはいられない。
 このおかしさを、もう一人の当事者へと伝えなければならない……!
「あ、こら待てばか!」
 唐突に立ち上がった私を見て何かを感じ取ったのか、超絶馬鹿が私を捕まえようとする。
 が、
「馬鹿に馬鹿と言われる筋合いはないなぁ!」
 はははははは、と笑いつつ軸足を蹴る。
 彼は宙に浮き、
「ふ」
 テーブルの端に、思いっきり頭を打ちつけた。
 ふ、とか気まずい声だった。ゴスッ、とかやたら鈍い音がした中で、そのただ単に息が抜けただけのような声が妙によく聞こえたのもなにやら気まずい。
 ……やりすぎただろうか。
「あー……まあ、死んではいないだろう」
 うんうんと頷き、動かない涼見に二秒だけ手を合わせる。
 ……さて。今度こそ、こうしてはいられない。
 くつくつと笑いつつ、私はタクシーで春猫の家へと向かう。
/
312続・勢い全開喧嘩友達 (4):2008/02/19(火) 01:58:48 ID:Urz0HZVB
「やあ春猫。理由が分かったぞ」
 開口一番。私はおさまらぬ笑いをこらえつつ言った。
「……理由って何さ」
 雪津・春猫は悪酔いする性質だ。
 今回は特に二日酔いが酷いのだろう。
 髪の毛に櫛も通っておらず、長い前髪と悪い顔色も相まって、以前涼見にチケットを送ったホラー映画のキャラクターに見える。
「彼が君を避ける理由だ」
「……そんなのどうでもいいよ。アイツ、距離を置こう、なんて……あたしのコト嫌いにでもならなきゃ、出てこないでしょ」
「いや、違う」
 できる限り、自信満々、と言った風で言い切る。
 彼女は怪訝な顔をし、疑問を送ってくる。
「……なんでさ」
「ああ、今から説明する。よく聞いてくれ」
 そうして、私は語り始める。双方の話を聞いて、多少脚色した、しかし真実である話を。
/
 彼は悩んでいた。
 が、ひとまずは目の前の問題だ。
 胸の中には最愛の人がいる。
 長い前髪を、胸板にこすりつけるような動きだ。
「ぎゅーってして……」
 心臓に語りかけるような声は、まさに殺人級。
 ……オーケー、と思う。鼻血出してもいいですか神さま。
 勿論、その要求に答えるのはやぶさかではないと言うかお願いしますぎゅーってさせてくださいと足の裏を舐めたくなるくらいに魅力的だが閑話休題。
 よし抱きしめよう、と思った時には、腕は彼女の背と後頭部に回っていた。
 流石俺、と頷きつつ、至極優しく力を込め、その体温を実感する。
 ……今日はいいか。
 穏やかに思っていると、胸元から、ああ、と吐息のような囁きが聞こえた。
「心臓の音、優しい……」
 だからなんでお前はイチイチ俺の残機を落していくんだ、と落ち着きかけた心臓が再度十六ビートへと向かっていく。
 ……いかん、と彼は思う。
 世には、熟年離婚という例がある。
 彼の両親は、彼が幼い頃離婚した。その後父親に引き取られ、紆余曲折があってこの場にいるワケだが、
 ……昔は、両親だってラブラブだった筈だ。
 駆け落ちらしいし、と思い、身をすり潰すような苦しみを進行形で味わいながらも、両の腕から力を抜く。
 何の合図と思ったのか、彼女は顎をあげ、目蓋を閉じた。
 ……ぐああああああ!
 悶絶。心の中で超悶絶。分かっている。幼馴染だ、以心伝心、というかこの状況でキス以外の何を求めていると言う……!
 腕を、意志を持って彼女の肩に置く。ともすれば貪りそうなその唇を見つめつつ、
「は、――春猫。いいか、よく聞け」
 ……い、言うぞ俺! 言っちゃうからな!
 心の中で盛大にヘタレつつ、彼は言う。
「――春猫。ちょっと、距離を置くようにしよう」
/
313続・勢い全開喧嘩友達 (5):2008/02/19(火) 01:59:14 ID:Urz0HZVB
「……それが、どうかしたの」
 情感たっぷりに語ったが、彼女の反応は至極冷たいものだった。
「……この、距離を置こう、と言う発言だが――彼にとって見れば、『物理的に』とのことだ。先ほども語ったように、彼は心の中でいつも悶絶しているらしい」
「…………」
 赤くなるな。無言でノロケているように見えるから。
「それと、もう一つ理由があるらしい」
 と、どたばたと廊下を駆ける音。
 もう一人の当事者の登場だろうか。来たらどうせ騒ぎになるワケだし、先に言っておかねばならない。
「――彼は馬鹿だろう。自分の底が浅い、といつも己を卑下している」
 春猫は無言で同意する。
 合鍵があるのだろうか、一度閉められた筈の鍵が回る。
「近づく事は、より深くを知ろうとする事だ。――彼は、底を全て知られたら、己が飽きられてしまう、と恐れていたそうだ」
 苦笑し、涙を流す春猫を見る。
「……そんなわけ、無いのに」
 ……続く言葉を先に言われてしまった。
 まあ、春猫も理解してくれたようだし、これ以上は流石におせっかいだろう。
 私は開くドアの方向へと向かい、入ってくる馬鹿とすれ違う。
「――本当、そんなワケないのにな」
 私の事は眼中に無しか、と一直線に春猫へと向かう馬鹿の背中を見送る。
「お互い、底どころか、表も裏も、過去も真実も、全てを知り尽くした――」
 ――――幼馴染だからな、と、私はドアを閉めた。
314“年の差。”を書いてる人:2008/02/19(火) 02:00:22 ID:Urz0HZVB
投下終了。
以下、言い訳。
保管庫にあるのとか結ばれるまでのばっかりだから、結ばれた後のがあったっていいと思うんだッ……!
とにかく勢いで書いた。書いてる途中はなんかやたら楽しかった。
楽しんでいただけたら幸いなんだが、どうですかよ……?
なお、最初の投下はトリップ機能を全力で忘れていたためなんだぜ。

前のにGJくれた人、本当にありがとうー。
ちなみに、名前の由来は動物から(猫、妖狐、猟犬)。苗字は季節(冬、季節、夏)。
315名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 02:18:41 ID:anUnQEnu
>>314
一番槍でGJ
なるほど、こういう切り口もありなのか。短いからさっと読めるのもいいね
同じ職人(ってほど大した数も質もこっちにはないが)として勉強になりました
今後もよろしくお願いしますね
316名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 02:40:24 ID:vb4rwPyt
>>314
前のとテンションが違いすぎる……なんという勢いSS
うん、GJ。
続じゃないのも気が向いたら書いてほしい
317名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 22:03:45 ID:6edQd84m
ところで、リアル幼なじみいる奴は今どんな関係?
たまに会って酒飲んで、とかあるん?
318名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 22:47:00 ID:X10Ju8K0
>>317
休みに地元に戻った時に酒飲んだりカラオケしたりするぜ。
趣味とかも合うから朝までぐだぐだに語り合ったりとかな。


……これで男同士じゃなかったらよかったんだが。
319名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 23:24:10 ID:x/hlLViZ
>>318
あれ、俺がいる
320名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 23:27:01 ID:XEatjPPb
幼馴染み欲しいな…

どこかに落ちてたり、売ってたらいいのに。
もちろん可愛いおにゃのこ限定で!!
321sage:2008/02/21(木) 00:23:29 ID:3bjFtH3E
>>317
付き合いが小学校からだから幼馴染とは言わないかもしれないけど、年3回くらいカラオケに行って歌いまくってる。
322名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 00:27:21 ID:Key4PabW
>>317
約10年位の幼なじみがいる。よく家で飲む。まあその場合他の友人も込みだけど
恋愛感情はお互いにないと思う。
323名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 00:40:34 ID:bIa1d1MF
>>317
地元がド田舎なお陰で保育所〜中学卒業までずっと同じだったのが20人ほどいるが、
帰省したときに飲みに行くくらいの付き合いでしかない。
324名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 00:56:24 ID:zG04i9re
PCの中には一杯居る。
友達のままだったり、セクロスまで行ったり、結婚したりと様々だよ。
大抵の場合、俺に惚れてるんだよな。
325名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 01:07:59 ID:1ET7IueN
>>324がかわいそうです(´;ω;`)

そんな俺の幼なじみは『選挙前』だけ電話してくる/(^o^)\
326名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 01:27:42 ID:pkteuVCT
家が隣でベランダも柵があるだけでほぼ繋がってて
物心ついた時には知り合ってた同い年の幼なじみの娘いたよ

けど幼稚園は別でな、遊ぶのはいっつも帰ってからだった
小学校は一緒になったけど、一度も同じクラスにはならなかった
小4の時に(すぐ近くだが)引っ越すことになって、そこから疎遠になった

中2の時に初めて同じクラスになり、家庭科で同じ班になったり
隣の机になったりもしたけど、お互いに気恥ずかしくて一度も話さなかったよ

上京したし、今では連絡先すら知らない
現実はこんなもの
327名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 01:46:01 ID:w/68uGUI
だからこそ、俺達はここで妄想を炸裂させるのさ。
328名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 02:46:22 ID:qjYGCUUy
>>327
うまいことまとめやがってw
329名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 11:31:45 ID:tFCduDgC
なんかこのスレ見ながらゴーイングアンダーグラウンドのトワイライト聞くと何故か泣ける
330エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:34:56 ID:CklJClmN
「そういやさ」
「ん?」
「大学とか短大とか、行きたいとは思わなかったのか?」
 並んで歩きながら、唐突に湧き上がった疑問を口にしてみる。そこの角を曲がれば、昔よく
遊び場にしていた河川敷に出る。それを過ぎれば、駅前にあるバイト先はすぐそこだ。
「お前の友達のほとんどは大学か短大かに進んだんだろ? それか就職か」
「まあね」
 内容的にちょっと嫌がるかとも思ったが、穏やかな表情を崩さずに相槌を打ってくる。
こいつの中では既に、踏ん切りがついていることらしい。
「でもそういうのって、友達と一緒にいたいから通うもんでもないでしょ?」
「まーな」
「なりたい職業とか、やってみたいこととか無かったしね。崇兄と一緒」
「……」
 にひひと笑う紗枝の顔を見て、気付かされる。
そういう暇が無かったんだろうってことを。
一番根っこにあった気持ちに構うことで精一杯になって、その時その時がギリギリで、
将来のことを考えてる余裕が、あの時の紗枝にあったとは思えなかった。
 やっぱり、逞しくなったなぁ。その結果が職業家事手伝いなわけだが。
「お母さんにも言われたしね、『今のうちに家事全部叩きこんでやる』って」
「まあ、昔のお前の料理の腕は恐かったからなぁ」
「うるさいなあ、やってないことを最初から上手く出来るわけないじゃん」
「でも、自覚あったんだろ?」
「……あたしの料理食べて真っ赤になったり真っ青になったりする崇兄の顔を見たら、
自覚したくもなります」
 全部の料理が不味いってわけじゃないが、昔のこいつの腕前はとにかくムラがあった。
美味いものとそうでないものの差がとにかく激しくて、そうでないものを食べる時は胃と
血圧に多大な負担をかけたもんだ。
「まぁその結果、俺は美味い飯食えてんだからありがたい話だけどな」
「ふへへー、ありがと」

 本人が気にしてないならいいか。そもそも学費出してもらえそうもなかったみたいだし。
『大学とか短大通わせても今のあんたにゃ暇潰しにしかならないでしょ。それなのに何十万も
払うなんて馬鹿げてるよ』
 進路に迷っていた時、おばちゃんにそう言われたようなのだが、明らかに他意がこもり
まくっているように聞こえるのは何故だ。
 この前飯一緒に食った時も、またちっさい頃の思い出話されたからなぁ。「崇之君が家に
帰っただけでこの娘涙ぐんでたんだよ」だの「『崇之君のお嫁さんになりたい?』って聞いたら
すぐ頷き返してきてねぇ、可愛かったねぇ」だの。いやまぁ、紗枝の方が大変だったとは
思うが。


「崇兄に喜んでもらえるなら、それで良かったと思うよ」
「どーも」
 恥ずかしがることもなく、さらりとそんなこと言ってくる。以前なら、こんなセリフ
絶対に言わなかったのにな。嬉しいやら寂しいやら。
「大人になったなぁ、紗枝」
 けどまあ、以前のようにちょっとしたことで浮気の疑いをかけられなくなってきたのも
事実だ。ここはありがたく思っておくとするか、半分諦められてるだけなのかもしれんが。

「……そうかな」
 う、そんな目でこっち見んな。相変わらずお前のそういう顔は苦手なんだよ俺は。
「身体の方も」
「……言うと思った」
 突っ込まれるとやばかったので、ふざけてかわす。俺の方はなんだかあれからちっとも
変わってないような気がする。どうなんだそれって、男として。
「崇兄が色々あたしに変なことするからいけないんだろ」
 あ、やべ。家出る時にも同じ手口使ってたんだった。不満を溜めさせてたのをすっかり
忘れてた。
331エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:36:47 ID:CklJClmN
「つってもなぁ、あそこまで身持ち固くされたらな」
 拒まれると、あの手この手を使ってどうにかして身体を開かせたくなる男の性というものを
こいつはどうにも理解できないでいるらしい。
 ただ単に恥ずかしいだけなのかもしれんが。
「う、うるさいなぁ。しょうがないだろ」
「何なら今ここで…」
「ばかぁ!」
 生意気な態度も、がさつな口調も、あの時だけは影を潜める。涙目で、しおらしくて、
普段とのギャップがあるからいつものことながら燃えてしまう。口では身持ちが固いだの
なんだの不満げに言ってしまうが、だからこそ紗枝なわけで、あけすけになってくると
ぶっちゃけ嫌な部分もある。っつーか嫌だ。
 ……俺って本当にワガママだな。

「まったく…本当にエロですけべでそういうことしか考えてないんだからっ」
「男という生き物は例外なくそう生き物でして」
「……崇兄は特別だと思う」
 付き合う前からセクハラとかしてたしなぁ。胸揉んだり尻触ったり着替え覗いたり色々
楽しませてもらったことを思い起こす。付き合い始めてからはそういうことしなくなったが、
あれはあれで実に楽しかったなぁ、ふはははは。
「大体さ、妹と思いこんでた相手にそういうことするの?」
「あの時だけお前を一人の女として見てんだ。可愛かったぞー、ちょっと触るだけですげー
反応してくれるからな」
「……」
 じろりと軽蔑の眼差しを向けられても、堂々と言い返す。最近主導権を握られる機会が
増えてきたからな。こういう時は今まで通りでいたい。
「はぁー…」
 そしたら、心の奥底から吐き出すような深い溜息をつかれる。半ば呆れられてるような
気がしないでもないが気にしない。気にしたら負けだ。
「…まさか崇兄がこんなに変態だなんて思わなかったっ」
「変態だぁ?」
 おいおい穏やかじゃねえな。エロだのすけべだの言われることにはもう慣れたが、そう
言われるのは初めてだ。俺は単に自分の欲望に忠実なだけだぞ。
「あんなことされるなんて! 思いませんでした!」
「……あんなこと?」
「あんなこと!」
「……」
「もうっ!」
 あんなこととかそんな抽象的に言われてもだな。ボディタッチのことなら既に言ったし
他のこととなると心当たりがありすぎてどれのことなのか……うーん、さっぱり分からん。
 
 幾つか挙げるなら、紗枝が高校卒業したっていうのについつい悪乗りしてブレザー着せて
前から後ろからやりたい放題したこととか、珍しく無実だったのに浮気の冤罪かけられて
その弱みに付け込んでスカートを本人にめくらせてそれを眺めたりそこに顔つっこんだりして
楽しんだこととか、あまりにも生意気な口調にちょっとカチンときた時に手首を縛って抵抗
出来ないようにしてから吊り責めして最後の最後まで半ば無理やりに事に及んだこととか、
俺が窓縁に座って紗枝は立ったままの状態で抱きしめ合ってた時に隙をついて紗枝の下着と
スカート思いっきりずり下ろして一瞬で下半身だけ真っ裸の状態にしてその後は言わずもがなな
展開に持ち込んだこととか、多分そこら辺になるんだろうが……どれだ?

「どれもだよ! このド変態!」
「えー」
 心の狭い奴だなぁ、そういう時は精一杯その状況を楽しんだほうが楽しいぞ。
「そうかぁ? 俺はすっげー楽しかったぞ」
「崇兄はそうだとしても、あたしは嫌なの!」
「大人になれよ、紗枝」
「ついさっき『大人になったなぁ』って言ったくせに」
332エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:38:38 ID:CklJClmN
「でもお前だってそういう風にした方が普段より濡れt」

「   何   か   言   っ   た   ?   」

「あ、いや、その、なんでもない…です、スイマセン」
「まったくもう」
 おおお…怖ぇ。ついつい調子に乗ってしまった。最近なんだか尻に敷かれてる気がする。
ここんとこ構ってやれてなかったからなのか、それともふざけ過ぎだからか、なんだか威圧
されることが多い。

 互いに砂利を踏みしめて、流れる川を横目にゆっくり練り歩く。子供の頃、毎日のように
通ったこの道は、昔はもっと長かった。道端に備え付けられた自動販売機やごみ箱も、今より
ずっとでかかった。小さくなったと実感した頃には、もうこの河川敷で遊ぶことはなくなっていた。
 いつまでと続くと思っていた交友関係も、クラスや学校が変われば簡単に途切れてしまった。
中には気まずくなって、話をすることも無くなった奴もいて。新しい友人を作る度に、昔の
友人の数は減っていった。
 そんな中で、ずっと変わらず傍にいてくれた奴もいるけれど。その結果、お互いにとてつも
ないくらいに傷ついた。変わることのないものなんて、あるはずないのに。
「? どしたの?」
「……」
 さっきまでの怒りはどこへやら、無垢な表情でこっちの様子を訝しがってくる。今なら
分かる。こいつにどれだけ助けられてきたかってことが。
「…ちょっとな」
「うわっ」
 不意打ち気味に、ちっちゃい身体をぽすんと腕の中に閉じ込めてみる。
柔らかい髪の匂いが鼻腔を擽った。実は俺も、こいつの匂いは嫌いじゃない。
「な、なんだよぅ…」
「んー?」
「いきなり何なんだよぉっ」
 付き合い始めた頃のような初心な反応に、一人満足する。心の準備をさせなければ平静を
保てないってことは、やっぱり普段は懸命に背伸びしてるってことだよな。
「匂い嗅いでる」
「……やっぱり変態だ」
 すーっと鼻から息を吸い込んでいると、また厳しい言葉をかっ食らう。いっつも人の布団に
縋りついてんのは誰だと言いたくなったが、今はそういう空気じゃないので止めておく。
「嫌なら振りほどけよ」
「フンだ」
「……」
 言葉とは裏腹に、暴れる様子は一向に見られない。

 ……

 折角の雰囲気だし、な。

 やるか。

 畔道の終わりも近い。ちょうどこの辺りが、あの場所だった。俺達の関係が終わって
変わる、きっかけになった場所だった。
「ちょっと降りようぜ」
「わっ」
 それを思い出した途端、紗枝の腕を掴んで引っ張って、道を外れていく。
「え、でもバイトがあるんじゃ」
「まだ時間に余裕ある。いいから来い」
「あ、ちょっと!」
333エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:40:33 ID:CklJClmN
 雑草だらけの畔坂を、滑るように駆け下りていく。夏の暑い日ならともかく、春一番が
吹いたばかりのこの時期じゃ、まだまだ冷え込む。そんな寒さの中、ここで遊ぶような
子供達は見かけない。
 ざしざしと地面を踏みしめて、川辺にまで来て立ち止まる。さすがに今回は、腰を下したり
しないが。

「やーっぱり嘘だったんだね」
 開口一番、紗枝は口を尖らせる。不満げな顔をしてるが、実のところあまり怒ってない
んだろうってことも、表情から読み取れる。
「ははは」
「都合が悪くなるといっつもこれなんだから」
「ははははは」
 乾いた笑いで誤魔化すと、隣の拗ねた表情をまた覗き込む。目線だけ一瞬こっちに向いて、
ふいと背かれた。

「あん時は、夕暮れ時だったか」
「……」
「もう三年近く前か。早いもんだな」
 今でもはっきり思い出せる自分が情けない。あの時まで、自分はもっといい加減で大雑把な
人間だと思っていた。
「あたしは……よく覚えてないなぁ」
 ここから、ここから始まった。それは今考えれば、まさに夢だった。頭に「悪」っていう
文字がつくけどな。
「俺はよーく覚えてるけどな」
「どうして?」
「お前が幼なじみだろうとそうでなかろうと、女の子からの告白を忘れるほど野暮じゃないぞ」
 オレンジと紫が入り混じった奇妙な色をした大空と、夏から秋に変わることを告げる
冷たい風と、その風が揺らすススキの擦れる音と。そして肺に覚えた、一瞬だけ面倒なことを
忘れさせてくれる煙たさを。
「……告白、だったのかな」
「まあな。お前だって少しくらいは覚えてるだろ?」

 俺は、覚えている。ずっと、覚えている。

「……」
「…思い出したくないか?」
「え…」
 流れ続ける川へ顔を向けたまま、片方の手を紗枝の頭の上にぽすんと置いて問いかける。
覚えてるから、聞かざるを得なかった。
 だって俺より、こいつの方が…な。

「首を横に振ったら嘘になるけど」

 空っぽのコルクボードと。捨てることもアルバムにしまうことも出来なかった思い出写真と。

「けど、あの時が無かったら今が無かったんだからさ」

 電気が点くことのなかった部屋と。曇り空が広がった早朝の駅前の交差点と。

「大事な思い出だよ」

 全部が全部、脳裏にははっきりと刻み込まれていて。あんまり覚えてないんだけどね、
苦笑しながらそう呟く紗枝に、あの頃の脆さはもうほとんど残っていない。
 幸か不幸か、俺の浮気癖が紗枝を強くしてしまった。無責任にも嬉しく思うが、一方で、
以前ほどころころと表情を変えなくなってきたことが、やっぱり少しつまらない。
334エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:42:26 ID:CklJClmN
「でもあんまり覚えてないんだろ?」
「揚げ足とらないでよー」
 不安もあったし、それが的中したこともあった。一度距離を置こうと真剣に考えたこともある。
大人に成りきれてなかったのは紗枝だけじゃなかった。苦悩していたのは俺だけじゃなかった。
けど、それを乗り越えたから今がある。幼なじみでも、付き合い始めてからは知らない表情を
見せられることも少なくなかった。

「あんまり覚えてなくても、大事な思い出なの!」
 
 しかしまあ本当に逞しくなったと思う。というか、なりすぎたような。
「そうか」
 照れと幼さが、今は照れと凛々しさが入り混じった表情に絆される。くしゃくしゃと髪を
撫でて手を離すと、髪型を乱されたことに、文字通り少しだけ口を尖らせる。
「うぅぅ、ちゃんとセットしたのに」
「俺のための髪型なんだしいいじゃねーか」
「崇兄のためじゃないよ、お洒落だもん」
 よく言うぜ、俺がまた髪型戻して欲しいって言ったら、「崇兄が言ったから伸ばしたのに!」
って言いながらボカスカ殴ってきたくせに。
余談になるが、いざ切ってきた時に「やっぱりその髪型が一番可愛いな」って素直に言ったら
また殴られたんだけどな、そん時も笑いが止まらんかったが。

「ま、幼なじみだからな」
「……」
「付き合う前から、本当に大事な奴だったからな」
「もー、またそうやってふざけたこと…」
「そう思うか?」
「……」
 今度は優しく、手のひらをきゅっと握って微笑み返す。戸惑った色が、今度は消えない。
照れ臭さより悪戯心より、強く宿った感情が、頭の中を覆っていく。
今から、嘘は言わない。
「…そう、思うか?」
 同じ質問を、少しゆっくり問い直す。答えは分かっている。紗枝の性格を考えれば、
どう答えるかなんとなく分かっている。

「……思う」
 やっぱり、どれだけ変わっても紗枝は紗枝だ。

「だろうな」
「フンだ」
 返事はどうでも良かった。俺の中の紗枝と、本当の紗枝が重なってくれたことが、何よりも
嬉しい。

「でもあたし、崇兄の考えてること、よく分かんないよ」
 
 そんな俺の様子を察したのか、少し沈んだ様子で言葉が続く。
「? そうなのか?」
 そう言われることは意外だった。
 俺だって、行動や思考パターンを読まれることは少なくない。だから、大体の性格は
掴まれてるもんだと思っていたんだが。
「いっつもふざけてばっかりだし、あたしの気持ち分かってて無視するし」
「……」
 
335エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:43:57 ID:CklJClmN
 そうした方が、可愛いお前が見れるからなんてとてもじゃないが言えなかった。言えば
必ず鉄拳が飛んでくる。正直に言ったところで、信じてもらえなかったら嘘と変わらん。

「崇兄がこれからどうしたいのかぜーんぜん分かんないし!」

 ……

 やっぱり、そこか。

「あたしだって、ほんとは…」

 今しか、ないよな。

「ほんとは……ほんとはね?」

 鉛のように重かった、ポケットの中に入れてあった答えを、そっと握りしめる。

「俺は、やっぱりいつものお前がいい」
「でも…それじゃ」
 穏やかな口調を装って、続きを遮る。
 幸せの中にも辛さがあることに、違和感をずっと拭えなかったんだろう。泣きそうに
焦った顔は、初めて重なった日にも垣間見せたものだった。

 そんなに、心配するなよ紗枝。

「ほれ」

 お前の気持ちはもう全部知ってる。それを捨てることなんて出来ねえよ。

「……?」
「わはははは」

 用意していた答えを、頭の上にぽすんと載せてやる。
「わっ…」
「じゃ、そろそろ時間だから行くわ」
 ずり落ちかけたそれを慌てて手で支えたのを見届けてから、一人先に雑草を踏みしめ
坂の方へと向かっていく。
「あ、ちょっと崇兄!」
 焦ったように呼びかける声にも、敢えて反応せず振り向かない。そのまま無視して坂を
上りきり、バイト先へ向かう。

「ちょっと! 待ってってば!」

 服の裾を後ろからぐいっと引っ張られ、無理やりその場に押し留められる。振り向くと、
肩を上下させた彼女がいた。右手に裾を、左手に答えを握って。
「開けたのか?」
「え?」
「それ」
 顎をしゃくって左手に握られたものを指し示すと、釣られるようにそちらを向く。その瞬間、
捉えた瞳が大きく見開いた。
「え、え…」
「まだなんだろ?」
 それだけ言うと、掴まれた手を振り払い再び歩き始める。坂の上の畔道は、もうすぐ
終わりを迎える。
「…あ、もう!」
 そしたらまた同じ箇所を掴まれた。どうやら今の彼女の最優先事項は、昔からの親友と
待ち合わせることでも、渡した答えを開けることでもなく、俺と一緒にいることらしい。
336エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:48:47 ID:CklJClmN
「…なんなの?」
「追いかけるなら、中身見てからにしてくれ」
「……」
 訝しげな表情になって、今度は向こうから手を離す。
 その答えの中身は、開けなくてもこの箱さえ見ればほぼ確実に分かるものだ。だけど、
やっぱり実際にその目で見て確かめて欲しいわけで。
「……っ」
 こくりと喉を鳴らせながら、震える手で、彼女はスリットの入った箱を開けた。それと
同時に、俺も歩みを止めてその様子をじっと見つめる。

「これ……」

 けどそれがどうしても出来なくなって、川の方へと視線を逃がしてしまう。
眩しくなんかないのに、顔をしかめて目を細める。

 何だかんだ言いながらやっぱあれだ、なんかあれだ。
「え…え、でも、え?」
 その中身と、俺の顔を何度も交互に見返す様子が、視界の端に映り込む。

 慌てふためいてしどろもどろになる彼女が何よりも好きで、それを見るたびに落ち着けてた
もんだが。流石に今回ばかりは勝手が違う。
違って当たり前だ。俺だって初めてのことをする時は、こんな心持ちになる。

「紗枝」

 生まれた頃から、一緒に育ってきた。年が離れてたから、向かいの家に住んでる妹だった。
そんな考えが間違ってたと気付いたのはほんの数年前で、その時だけこいつは一緒じゃなくて、
傍にもいなかった。
 そしてその僅かな時期が、僅かとはいえないくらいに長く感じられ、気付かない振りを
し続けていたこの気持ちに、真正面から向き合うきっかけにもなった。
「これって…その……」
「……」
 まだ、視線は戻せない。名前だけは何とか呼べたけど、その次に何をどう言えば良いか、
混乱して分からなかった。

「その……崇兄…?」

 戸惑った表情をそのままに、問いかけるような言葉をこぼしながら、紗枝の顔が視界の
中心に入りこんでくる。

 耳が跳ね、心臓が爆ぜる。

「……ま、好きに受け取れ」
 気付かれたくなくて、敢えて軽口を叩いて頭を撫でる。
「小遣いが欲しけりゃ、換金しても構わんぞ」
 それだけならまだしも、臆病にも保険までかけてしまう。
 普段からずっとぬるま湯に浸かり続けてるから、こういうことが、どうにも上手くできない。
337エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:51:05 ID:CklJClmN
「……」
 両手でその小箱を握りしめ俯くその顔が、みるみる顔色が赤くなっていっていく。こんな
紗枝を見るのは、ちょっと久し振りだった。

「こ、これって、その…」

「……」

「そういう…ことなの……かな…?」

 頭が、痺れる。

「……」

 耳が、熱かった。

「まあ、お前がどうしてもって言うんならな」

 鼓動が、身体全体から発せられてるようだった。

「そういう意味で渡してやってもいいぞ」

 視界がひどく狭くて、開いてるはずの目が閉じているようにも思える。

 顔を隠すように眉尻を親指で掻く。
 いきなり紗枝が目の前に来たもんだから、顔はまだそっぽを向いたままだった。
当初考えていた台詞とは全く違う言葉が、意識する暇もなく飛び出していく。こんな情け
なくて恩着せがましい言い方をするつもりなんてなかった。事前に色々考えてたのに。
本当はもっとこう、なんだ、えー……どう言いたかったんだっけか。
「……」
「……」
「……じゃあ」
 後になって、この時の紗枝の表情を見てなかったことを、俺は死ぬほど後悔することに
なるんだろう。

「そういう意味で……受け取っても、いい…?」

 でも今は、それどころじゃなかった。

「崇…兄……」

 そこでようやく、向き直れる。見たかった表情は、既に俯いてしまっていた。

「…好きにしろ」

 涙ぐみながら笑った顔が、一瞬だけぼやけて見える。それがまた、情けない。

「でも、知らねーぞ?」
「……」
「これからも、苦労かけるぞ?」
 渡すのは、満を持したタイミングじゃなくて、何か用事がある直前にと決めていた。
「……分かってる」
 一緒になることはできても、いつでもずっと一緒にいることはできないから。
「色々辛いことが、あるかもしんねーぞ?」
「…分かってる」
 たまにしか見れないから、その価値が分かることだってあるよな。

338エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:52:41 ID:CklJClmN
「……そか」
「……うん」
 渡した小箱を、胸の前でぎゅっと握りしめる。

「心配すんな紗枝!」

 さっきは緊張しすぎで言えなかった。だから今度は言ってやる。

「一緒なのはこれからも変わらん!」

 やっぱりまた、今度は身体ごと川の方に向いてしまっていたけれど。耳の真横で心臓の
鼓動が聞こえていたけれど。

「……うん」

 頷いた紗枝の声は、確かに聞こえた。

 何だろうこの異常なまでの達成感と爽快感は。
 それが何なのかは分からんが、俺が今、とてつもなく幸せだということだけは確かだ。
もう何を言われても大丈夫で全てを許して受け入れることができそうな気がする。
「でも、あのさ」
「ん?」
 目尻を拭いながら、鼻を啜りながら、紗枝は口を開く。そんなに喜んでくれたのか、
勇気を振り絞った甲斐があった。もうお前の顔から視線を逸らさないぞ。

「そしたらもう……もう崇兄、浮気なんかしないよね?」

 ……

「え゛?」

「しないよね?」
「……」

 思わず顔を背けた。

「……ふへへへー」
 笑いかけてくる紗枝の両手が俺の首に絡みつく。
「するの?」
 そしたら、今しがたまで涙ぐんでた声が、一気に低くなった。
 いや、ちょっと待て、なんだこれ。
「ははは馬鹿言うな」
「じゃあしないよね?」
「……」

 どうしよう、正直、自信無い。とまでは言わないが、合コンぐらいは行ってしまう可能性が
無いというか低いとは言い切れないのがちょっとあれだ。

「それは、あれだ」
 どうにか言い訳しようと考え抜いたその結果。
「お前が俺のこと、ちゃんと名前で呼べるようになってからの話だな」
 口から出たのは苦し紛れの方向転換。
339エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:54:01 ID:CklJClmN
「えええ、だって」
 ところがどっこい、これが功を奏したらしい。
「旦那になった時が来ても兄呼ばわりはちょっとなぁ」
 反撃の糸口を掴んだ俺は、途端にふんぞり返って居丈高になる。
「と、時々呼んでるじゃん…」
 その時々っていうのがいつのことなのか、言わなくても分かるよな。
「いつも呼んでくれんことにはなぁ」
「ううう…」
 ニヤニヤしながら言い返すと、頭から湯気が出そうな勢いでその顔色が染まっていく。
抱きしめられることにも甘い言葉囁かれることにも、抱かれることにさえ慣れてきてるって
いうのに、なんで名前一つ呼ぶことに慣れないんだか。
 ま、だからこそ紗枝なんだろうけどな。

「…じゃあ、今呼ぶ」
「ほほう、それは嬉しい」
 出来ないことは言うもんじゃないぜお嬢さん。
「そんなことないもん! 言えるもん!」
 ここにきて唐突に口調まで幼くなるのはどういうことなんだろうなぁ、いやはや、これは
楽しい。

「い、いくよ」
「おう!」
  満面の笑顔で、両手を大きく広げて言葉を待つ。その瞬間、鳩の群れがバサバサと
羽音を立てながら空を駆け抜けていった。
「たっ……たっ……」
 案の定どもる。
「た……たっ…」
「ちなみに俺の名前は崇之っていうんだぞ」
「知ってるよっ!」
「あ、忘れてなかったのか。ごめんな!」
「…う〜〜〜」
 あーあ、顔押えてしゃがみこんでしまった。ほんの少しだけもしかしたらとも思ったが、
こりゃやっぱり無理だな。

「無理すんなって」
「だって……だって…」
 今になって泣きそうな顔を見せる紗枝を、にやけたまま宥める。
「ゆっくりでいいって。子供ができた時くらいまでに言えるようになってれば」
「こどっ…!?」
「はっはっはっはっは、どーした紗枝」
 フフ、なんとか誤魔化せたな。しかもこんなに楽しい思いまでさせてくれるとは、なんて
良い奴なんだお前は。

「もう! さっさとバイトに行ってこい!」
「おお、そういえばそうだったな。じゃあ行ってくるぞ妻よ」
「まだ妻じゃない!」
「でも将来は決まりだろ」
「まだ決まってない!」
「またまたー、照れちゃってもー可愛いなぁお前は!」
「言っとくけど、もう許してあげないからね」
「何を」
「合コン。行ったらこれ突っ返すから」
 げっ、しっかり覚えてやがった。面倒くさい奴だなまったく。
340エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:55:09 ID:CklJClmN
「それは反則だろー」
「嘘じゃないからね! 半分諦めてたけど、これ貰ったからにはまた厳しくいくからね!」
「……心が狭い」
「何なら今返してもいいけど」
「あーウソウソウソウソ! それじゃバイト行ってくるわ!」
 ふー、危ねぇ危ねぇ。折角渡したのに突っ返されたら意味がなくなってしまう。
 まー仕方ないか。これからは俺も少しは身持ちを固めないといかんかな。でないと、
未来の嫁をまた泣かせてしまう。

「じゃあバイト終わったら、お前の家行くぞ」
「え、なんで」
「先に既成事実をおじさんおばさんに言っておいて、いざという時お前が断れないように
するためにだな…」
「ピッチャー第一球…」
「というのは冗談でな! もちろんこのことの報告にだ!」
「……ならいいけど」
 ったく、冗談が通じないなんて頭が硬いったらありゃしねえぜ。やっぱり、紗枝は紗枝
だな。根っこの部分は変わりようもない。

「それじゃな」
 くしゃりと頭を撫でて、鼻腔を擽らせる。
「……うんっ」
 少しの沈黙の後、元気な返事が返ってきた。

 軽く手を振りあって、紗枝と別れる。名残惜しそうな表情を見せたが、それを言葉には
出さなかった。俺がどうして、バイトに行く直前なんていう妙なタイミングであれを渡したのか、
その理由をちゃんと分かってくれているみたいだった。


 生まれた頃から、一緒に育ってきた。年が離れてたから、向かいの家に住んでる妹だった。
そんな考えが間違ってたと気付いたのはほんの数年前で、その時だけこいつは一緒じゃなくて、
傍にもいなかった。
 けど、これからはもう一緒にいられる。ずっと、ずっとな。その「約束」を交わすことが
出来て、良かったと思う。

『さえー! はやく来ないとおいてくぞー!』

 もう、置いていったりなんかしない。それだけは自信を持って、確実に言えることだ。

『うわああああん! まってよー!』

 なるべく泣かせたくない。悲しませて辛い目に遭わせたくないのもまた本心だ。今まで、
ずっと我慢し続けてくれたんだからな。


 余談にはなるが、この一ヶ月後、俺は渡した小箱を中身ごと突っ返されることになる。


 理由はもちろん、合コンに行ったのがバレたからだ。


 更に余談になるが、それから二年後、俺はまた紗枝を泣かすことになる。


 俺が黒のタキシードを、紗枝が白いドレスに身を包んだその場所で、だ――――


341エピローグ 〜親しき人へ〜:2008/02/21(木) 14:58:39 ID:CklJClmN
ということで、>>136-143の続きでした
何度も何度も続き書いてしまって、往生際が悪くてごめんなさい
今度こそ終わりですので
あまりにも書きやすい性格だったんで、いつまでもダラダラと続きを
綴ってしまいました、重ねて本当にすいません


それでは、別の作品でお会いできたらと思います
ちょこちょこ投下はしてますが
342名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 16:16:11 ID:WkTBaSQy
>>329
ランブルもいいぞ!!
343名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 20:42:26 ID:UupYHkBN
>>341

GJ!GJ!GJ!GJ!超GJ!

終わってしまうのはすこし寂しいが、ここまでありがとう!

次回作も楽しみにしてるよ
344名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 20:44:15 ID:kaK+UM2d
>>341
GJ!
お互い変わった所もあるけど二人はやっぱり変わらない所があるままっていう終わり方でしたな

シロクロの御方をライバル視しているのを見て、じゃあおれは作品投下するなら
>>341氏と張り合えるような作品を書こうと密かに思ってた名無しだったりする
トリ付けない人だから確証はないけどクリスマス前にも世話になった覚えがある
また別の作品の投下も楽しみにしてます
約束を守ってこその幼馴染スキーになりたいぜ。もう一度改めてGJ!
345名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 22:32:14 ID:U/vM9+Ep
>>341
GJ!
お疲れ様でしたーーー!
幼馴染萌えスレの中でもトップクラスの長さと萌えを持つ崇兄と紗枝シリーズも遂に終わったか・・・
素直になれない紗枝とそんな紗枝をついからかってしまう崇兄のやりとりとっても好きでした
付き合いから紆余曲折を経て結婚までこの二人を見守れて本当に良かったと思います
何だか少し寂しくなります。また番外でも良いのでこのお二人は時々顔を見せてほしいですね
それでは最後に作者様にもう一度GJを贈りたいと思います。完結お疲れ様でした
346名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 00:32:55 ID:K2ShbA5t
>>341
超GJ!
連載当時から見てきただけに感慨深いなぁ…
次回作にも期待してます!
347名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 12:52:03 ID:wcGpX4AW
>>341
お疲れ様でした。そして、ありがとうございます。
……この二人の後の話も見たいなあ。別の作品に脇役として出てくるとか……ダメですか?
348名無しさん@ピンキー:2008/02/24(日) 09:30:36 ID:SpUJV/xs
>>341終わり・・・ですか。寂しくなりますなぁ・・・
 
でも嘆くより、お礼を言わないとな。
今まで長い間楽しませてくれてありがとうございました。
神GJ!
349温泉:2008/02/25(月) 01:08:52 ID:dhWGthKy
誰もいない…投下するなら今のうち。
ちょっと展開早めです、今回。
>>270からの続きです
350You is me:2008/02/25(月) 01:10:53 ID:dhWGthKy
「なぁ、みー」
 とんとんとんとんとん……包丁がまな板にぶつかる音が響いている。
「ゆーちゃん、なに?」
「あのさー」
「うん」
「俺たち、料理上手くなったよなぁ……」
「そうだね、最初の頃が懐かしいねー」
 思わずしみじみ二人で言う。台所で並んで料理をする俺達。話しながらもお互い手は止めない。
『あの日』から数週間。休日に、また俺とみーは朝から一緒に過ごしていた。今は、昼ごはんを作っている最中。
「焦がしたりなんて当たり前、塩やら砂糖の量を間違える」
「調味料間違えたり、配分考えないで作って食べ切れなかったり、ね」
「あったなぁー……」
 それでも互いに作りあったり、味見し合ったりして徐々に腕を上げて――互いの好みも把握するほどに更に作って、
今度は二人で作るようになって。
「えへ」
 溢れちゃった、そんな感じの笑い声。俺はニンジンを切っている。半月切り、と
「何笑ってんだよ」
 みーはあの日以来、ますます甘ったれになった気がする。
「だって――」
 みーがこっちを向いて目を細める。みーはタマネギをくし形に切る。
351You is me:2008/02/25(月) 01:12:48 ID:dhWGthKy
「今まで、ゆーちゃんと色々あったなぁー、って、思って」
「……ああ」
 脳裏を色々な風景や情景を映し出す。本当に、色々あった。前にアルバムで話した出来事。まだ話しきれて
いない出来事。まだまだ一杯ある。
「ね、ゆーちゃん」
「ん?」
「これからも続くかな、こうゆうこと」
 こうゆうこと。
 みーが指した、こうゆうこと、とは、この料理を作るという行為だけではなく、二人でいる時間を指しているのか、
と思った。
 互いに手を止めない。みーが沸騰した湯の中に適当な大きさに切って、水にさらしたジャカイモとタマネギを
入れていた。肉ジャガを作るらしい。
 実際、いつまで続けれるのだろう?
 少し考える……さっぱりわからない。色々な事柄で続けれなくなるのかもしれない。可能性だけならそんなの
いくらでもあるんだろう。だけど、だけど――なんだろう。
「駄目だ、思い付かない。」
 思わず言葉が出ていた
「何が?」
「こうゆうこと、が終わった時をさっぱり想像できない」
352You is me:2008/02/25(月) 01:14:48 ID:dhWGthKy
 なんでだろうな、と呟く。何回考えても無理だった。どうやっても俺はみーと一緒にいるようにしか思い浮かばない
「いっしょ、だね」
 くつくつという沸騰したお湯の泡が弾ける音が響く。
「あたしも、ゆーちゃんのいない時なんて想像できない」
「そか」
「うん」
 無言。
 冷蔵庫から豚の細切れを取り出した。みーはにこにこしながらジャガイモとタマネギの入った鍋を見詰めている。
「何笑ってんだよ」
「…………」
 みーは答えない。けど、顔はまだほどけたままだ。
「答えろよー」
「やーだ。えへへ」
 身をよじるふりをするみー。鍋の火を弱めて調味料を投入するのも忘れない。
 実は、みーが初めて作ったのはこの肉じゃがだ。作った理由は……なんだったかな。
 そうだ、思い出した。テレビのコマーシャルだかドラマだったかで、肉じゃがで男をオトす、とか説明してたのを
見て、つくりたいー、とか言い出したのだ。「ゆーちゃん、かくご!」とか言ってたなぁ。
 よせばいいのに、誰の助けも借りずに本だけを見て作り――苦い経験になっちゃったんだよな。
「あ、ゆーちゃん何笑ってるの?」
「ん、ああ、いや、ちょっとな」
353You is me:2008/02/25(月) 01:17:22 ID:dhWGthKy
「なーんか、あたしの変なこと思い出してそうな笑いだったけど」
「違うって」
 本当に、幼馴染はカンが良い。なーんて今更な事実にびっくりする。
 みーが俺の胸をトンと叩く。お返しに俺はみーの頭を軽くぽんぽんと叩いてやった。
 ふざけて叩き合って、笑いあって、ふざけて、また笑って――
「ね、ゆーちゃん」
 笑いをこぼすみー。
「んー?」
「こうしていられるのって、いいね」」
「ああ、そうだな」
 言って、また沈黙が広がる。でも、やっぱり顔は笑っている。
 それを見て、俺も何故か笑いが込み上げてしまった。この前、思ったことを唐突に思い出した。
『本当に幼馴染ってだけだろうか、俺――』
 あの日あの時から形容しがたい気持ちが胸にこびり付いていた。俺は一体、何をどうしたいんだろう、って。
俺はみーとどうしたいのか。
 突然、気付いた。
 こうゆうことなんだ。
「ずっと、続いたらいいのにな、こうゆう事が」
 びっくりしたようにみーが俺の顔を見た。俺は言葉を続けた。
354You is me:2008/02/25(月) 01:19:12 ID:dhWGthKy
「俺はずっと続けたい」
 まぁ、と俺は一言付け足した。
「みーが先に嫌になるかもしれないけど」
「あ、ひどーい、ゆーちゃん」
 みーは手を振り上げて、怒ったような仕草を見せて。
「あたしは、絶対に嫌になんてならないよ。ゆーちゃんの方こそが先に嫌になるかもしれないじゃない」
「ばーか、俺が嫌になるもんか。さっきも言っただろ。こうゆう事、が終わる時が想像なんてできない、って」
「ゆーちゃん、何言ってるの」
 そう言いながらみーが鍋に豚肉を入れる。ちらと見えたみーの横顔が赤くなっている気がした。
「それじゃ、プロポーズだよ?」
「……プロポーズ?」
 プロポーズか……そうか。そうだな。
 俺はさっき気付いたことに確信を抱いた。そうか、俺は――
「今気付いた。そうだな、プロポーズかもな、これ」
「……否定しないの?」
「なんで否定しなきゃいけないんだ。俺は嘘は言うが冗談は付かないってこと知ってるだろ」
「ゆーちゃんが嘘を言わない〜? えー、嘘ばっかり」
「ばっか、俺以上に正直な人間なんて早々お目にかかれないっての」
「それだったら世の中、みーんな正直者になっちゃうと思うけど」
「何だとコラァ」
355You is me:2008/02/25(月) 01:20:52 ID:dhWGthKy
 俺は怒った風に声を荒げるが、顔は笑っているだろう。みー笑顔だ。そのままふざけあっているとみーが
料理を完成させた。肉じゃが、味噌汁、ご飯。昼飯なので品数は少ない。いただきます、といって食べ始め、
しばらくしてみーが口を開いた。
「ね、ゆーちゃん」
「ん?」
俺はご飯を頬張りながら応じる。
「あたしね」
 みーが恥ずかしそうにして俯いた。
「ゆーちゃんが嫌になるなんてことないけど……良いの?」
「そうでなきゃ、俺が困る」
 言った後で、とんでもなく恥ずかしいことを言った事に気付いた。照れ隠しにご飯をかき込んだ。
「みー、おかわり」
 茶碗を出すと、みーがたんまりとついでくれる。ほにゃっとした幸せそうな笑顔。
「なーににやにやしてんだ」
「ゆーちゃんこそ顔崩れてるよ」
「ばっか、嬉しいのに真顔でいられるわけないだろ」
「へへ、いっしょだね」
「ああ、いっしょだ」
 俺とみーは笑い合って、体を乗り出してキスを交わした。

 ……俺はみーと暮らす日常をずっと続けたかったんだ。
356温泉:2008/02/25(月) 01:22:21 ID:dhWGthKy
とゆうわけで今回の投下は終了。
……唐突でゴメンナサイゴメンナサイ。

次回はラブシーンに入る!……かも。
357名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 01:48:39 ID:uZO1tziu
甘い。こんな時間にも人は見てるもんなんだぜ。GJ!
エロはカモンッ

しかし遅くに投下するの好きだね、湯泉の旦那?
358名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 04:00:18 ID:MYrqcBnc
この世界の甘味を全部混ぜたより甘い作品はどうにかならんのですか?終いにゃ小説だけで糖尿病になりそうじゃまいか。
 
そして、この二人の暖かい夫婦みたいな雰囲気には本当に癒される。見ていて癒されました。超GJ!
 
>>次回からラブシーンに
ちょwwwこれが前座っすかwww本番とかどうなるんだよww
wktkして期待してますぜ!
359名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 10:12:37 ID:W+dnEKiW
>>356
あンまァ〜いッ!
こりゃァもうおかわり必至だねェッ!

……いやまあごめんなさいテンション下げます。
ところで、
>俺はニンジンを切っている。半月切り、と
この文章、もしかして途中で切れたりしてません?
360名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 13:02:39 ID:eY1H1Hdl
>>356
GJです!!相変わらず甘い。ニヤニヤが止まりません。

このシリーズ好きなので続きを楽しみにしております。



ただ一つ気になった点がありまして、
>俺は嘘は言うが冗談は付かない
ここは嘘と冗談が普通は逆だと思うのですが。
361温泉:2008/02/25(月) 13:15:21 ID:dhWGthKy
ちょっとだけレスを…

>>357
考えながら書いてると、完成したのが深夜ってことが多い……ですね

>>358
ご期待に添えれるようにがんばります、ハイ

>>359
一応、切れたりしてはいないのですが、ちょいと表現が切れ切れでわかりにくくてごめんなさい。

>>360
GYAAAAAAAAA! 何回も見直したはずなのに間違ってる……
ご指摘どおりでございます。ごめんなさい。


誤字の自戒として次もとっとと投下するようにしますorz しばしお待ちを
362名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 02:18:37 ID:QIjd3qY0
ところでさー、さっきまで幼なじみと長電話してたらさー、何の話の流れか「お互い30まで売れ残ったら結婚するかー」とかなんとか。
今俺達20なんですけどね。
……コレ、フラグ?
363名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 02:26:49 ID:XfHVR80C
>>362
フラグですからもうちょっと期限を短くしてもらっってください
364名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 02:33:22 ID:VQf1o1FD
>>362
少なくとも結婚するのが嫌ではない、ってことだ
展開次第ではお前…
365名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 07:46:14 ID:sW6jPpgM
>>362
もちつけ。お前と一緒になるのがイヤではないけど可能なら別の相手がいい、
とも受け取れるぞ。ここでがっついたらアウトだ。
366名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 09:13:58 ID:ojlb2iZA
>>361
GJでした
「隣にいないことが想像できない」ってのはまさしく王道ですよねー、いいですねー
この調子で最後まで突っ走っちゃってください。あ、あわてずともいいですけど
>>362
今までよりちょっとだけ距離を詰めてみてもいいかもね
地道なアプローチを重ねてみたり
367362:2008/02/26(火) 12:53:45 ID:QIjd3qY0
レスサンクス。
「せめて5年後にしようぜ」って言ったらおk貰った。
……マジモンのフラグだ。
マジメに行くわ。これから。
368名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 14:28:07 ID:ojlb2iZA
>>367
……スレ違いだが、バッサリ斬ってしまってもよろし?

ウソだけど。結ばれたら報告な
369名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 15:21:22 ID:Pka8FoPg
>>367 RPG-7を家にぶち込んでもおk?
あ、 答 え は 聞  い て な い から安心して逝ってくれ。
それが嫌なら、実生活をSS化するんだ。5年を費やす超大作を書くんだ。
370名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 16:34:05 ID:9TOT2bxv
>>367
それよりも何よりも、幼馴染を幸せにする為の甲斐性を身に付けるんだ。

その上で余力があれば、その日々の光景をSS化して貰えれば何も言うことは無い。
371名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 16:47:58 ID:/c63XtPf
きさまらどこからわいてきたー!

>>367
sneg?
372名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 16:53:12 ID:QIjd3qY0
>>370
そもそも甲斐性ってなんだよ?
女って言えば幼なじみくらいしか身近にいなかったからよくわからねぇ
373名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 16:53:56 ID:QIjd3qY0
>>370
そもそも甲斐性ってなんだよ?
女って言えば幼なじみくらいしか身近にいなかったからよくわからねぇ

……いやはや、これなんてエロゲ、だよなあ。
誰か妄想書いてみて。
374名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 16:55:20 ID:QIjd3qY0
>>372
おおっと中止したと思ったら書き込んでやがったか!
連レスとかスマンorz
375名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 17:02:05 ID:/c63XtPf
>>373
一ヶ月に一度は豪勢な食事。年に一度は旅行にできるくらいの稼ぎと
必要なら許してやり、叱ってやれるだけの度量、でどうよ
376名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 17:44:10 ID:XfHVR80C
>>373
とりあえず週末にでも一緒にお出かけしてこい
他の男に取られないようにブロックブロック
377名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 23:16:51 ID:ojlb2iZA
>>362があまりにうらやましいのでネタにしてやった
反省はしていない……けど、気分を害したら申し訳ないので先に謝る。本当にごめんなさい
他の人も嫌な場合はスルーでお願い
では投下

「今年で俺らも二十歳かぁ」
「長いようで短かったわねー」
「これからは酒も堂々と飲める」
「まぁ今までも飲んでたけどね」
「煙草も吸える」
「まぁ吸う気はないかな」
「……あと何があったっけ」
「税金を納めたりとか?」
「……夢のない話だな」
「そうね」

「あー、そういやもう少しで就活とかしないといけないんだよな」
「先輩とかも大変みたいよ、色々説明会行ったり」
「仕事とかするのは、もっと大変なんだろうな」
「今だけだろうからね、こんなに時間があるの」
「そのうち自立して家も出ないといけないしな」
「会社が近場ならしばらくは家にいてもいいと思うけどね」
「そういうものか?」
「そういうものよ」

「社会人になったら、身を固めろー、なんて親に言われたりするのかね」
「さぁね、少なくともアンタの親は言いそうだけど」
「あり得るから怖い。お前のところはそういうのないの?」
「わからない。でも昔から私の好きにさせてくれたし」
「あぁ、そういやそうか。確かにし」
「……そうなのか?」
「今のところは。一人のほうが楽だと思うし」
「無難だけど夢がないな」
「ま、これから出会いがあれば別かもしれないけどね」
378名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 23:19:09 ID:ojlb2iZA
「なら、さ。こうしないか?」
「何を」
「もし30歳までにお互い結婚してなかったら、いっそのこと俺らで結婚するとか」
「……?」
「ほら、俺らって昔からずっと一緒だったわけだし。
 余るようなら売れ残り同士でくっつくのも悪くないんじゃないか?」
「……私は結婚する気ないって言ったけど?」
「あ。」
「人の話はちゃんと聞きなさいよね」
「……ま、まぁ、厳密な約束じゃないしな。聞き流してくれても構わないけどな」
「……それ、プロポーズとしては最悪」
「ん、何か言ったか?」
「何でもない」
「で、どうだ。乗るか?」
「……30歳でいいの?」
「は?」
「30歳って言ったらけっこう周りの目が厳しいと思うんだけど」
「でも、最近は晩婚化も進んでるらしいしなぁ」
「私はともかく、アンタのとこは大変じゃないの?」
「あ」
「またそれ?ちゃんと考えて発言しなさいよね」
「……あー、じゃあ25歳とかどうだ?」
「それならいいんじゃない?父さんと母さんもそれくらいだし」
「えらく即決したな」
「こういうことはグダグダ考えても仕方ないわよ」
「さっきと言ってることがちがうぞ」
「うるさい。だいたい、結婚するって決めたわけじゃないんだからね」
「お互いが余れば、だからな」
「それに、これからだってしばらくは顔合わせることになるんだしね」
「大学まで一緒じゃ、嫌でもな」
「ま、そういうわけだから」
「あぁ」
「「これからも、よろしく」」
「で、どうだ。乗るか?」
「……30歳でいいの?」
「は?」
「30歳って言ったらけっこう周りの目が厳しいと思うんだけど」
「でも、最近は晩婚化も進んでるらしいしなぁ」
「私はともかく、アンタのとこは大変じゃないの?」
「あ」
「またそれ?ちゃんと考えて発言しなさいよね」
「……あー、じゃあ25歳とかどうだ?」
「それならいいんじゃない?父さんと母さんもそれくらいだし」
「えらく即決したな」
「こういうことはグダグダ考えても仕方ないわよ」
「さっきと言ってることがちがうぞ」
「うるさい。だいたい、結婚するって決めたわけじゃないんだからね」
「お互いが余れば、だからな」
「それに、これからだってしばらくは顔合わせることになるんだしね」
「大学まで一緒じゃ、嫌でもな」
「ま、そういうわけだから」
「あぁ」
「「これからも、よろしく」」


以上。もちろんフィクション
個人的には25歳って結婚適齢期どストライクだと思うんだ
……次回はオリジナルを投下できるようにするよ
>>362、フラグ折るなよ
さて逃げるか
379名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 23:20:57 ID:+D1KR8Vj
グッジョブ。だがなぜ2回言う?
380名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 23:26:23 ID:ojlb2iZA
>>379
大事なことだから


編集ミスだよorz
これは情けないよなぁ……次頑張るわ
381名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 23:32:33 ID:bWy1HnGR
>>379
恐らく

「大事な事は2回言う主義だ!」
「ほう、何故だ」
「1回目は相手に。2回目は自分に言う為だ!」
「それはすごい」
「そう!私はすごいんだ!お前はこんな私と婚約出来た事を誇りに思うべきだ!」
「まだ婚約ではないと思うけど……」
「私は25まで独り身でいるつもりだ!」


こうなると予想
382名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 23:34:34 ID:QIjd3qY0
>>380
GJだ!

冗談を真に受けてくれるのがいるとは。
なんかかなり幸せ。
じゃ、ROM専に戻るよ。
383名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 00:49:00 ID:5z1BjR7I
>>377
ぬあ速度で負けた!
しかもいい出来なので更に悔しい!
グダグダだが、お蔵入りさせるのも勿体無いので投下するぜ……
>>362、まあ、なんだ、こう……スマン。だがお前のエピソードは美味しすぎる。
384(1):2008/02/27(水) 00:49:25 ID:5z1BjR7I
 その電話は、唐突にかかってきた。
「……あん?」
 携帯電話のディスプレイにあるのは昔馴染みの番号。
 深夜、日付も変わる、という時間になっての電話だ。
 メールのやり取りこそあったが、電話とは――。
 ……珍しい。
 急ぎの用事だろうか、と思いつつ、通話を開始する。
『――私だ。』
「……はァ? もしもし?」
『私だ。と言えば、そっちも用件から話し出しなさいってば。洋モノ映画だとそうでしょうがー』
 けらけらと何やら変に軽い声が聞こえてくる。
 酔っているらしい、と頷き、
「どうしたんだ。何かあったのか」
『んー。フラれたぁ』
「……そうか」
 はぁ、と電話口の向こうからため息が聞こえてくる。
『いやー、結構辛いねー、コレ。勝手に玉砕しただけなんだけどさー』
「……彼女がいたとか?」
『んー、そんなもん。分かってたからなんて言うか諦め悪くて最悪だけど。
 サークル同じだから、これからちょっとサークルに行きづらいかも』
「そうか」
『ん』
 小さな、気の抜ける音が聞こえてくる。
 ビールか何かのプルタブを開ける音だろうか、と思った瞬間には、嚥下の音が聞こえてきていた。
「……あまり飲みすぎるなよ。二十になって堂々と飲めるとは言え」
『へぇーきへぇき。どーせ明日は休むつもりだし』
「そういう問題でも無いだろ」
『んー、まあ、そうかもね。でもまあいいじゃん。フラれちゃったんだし』
「…………」
 互いのため息がシンクロする。
「不景気なため息だな」
『辛気臭いため息ね』
「お互い様だ」
『その言葉丁重にお返しいたすー』
 向こうは盛大に酒を飲んでいるらしい。
 こちらだけ飲まないのもシャクだ、と冷蔵庫を開け、缶ビールを取り出した。
『んー? アンタも飲むのー?』
「そんなには飲まん。弱いし、明日もある」
『んー。……いやまあなんかゴメンねぇホント。同情するわ』
385(2):2008/02/27(水) 00:49:50 ID:5z1BjR7I
「どの口が言うんだ馬鹿。今更謝るくらいなら電話するな」
『ヒドいなぁ、全くもう』
 けらけらという笑いは、明るい響きなどでは無かった。
 ……無理をしているのか。
 酒の力に縋って、家族よりは遠い、しかし、友人よりも近い立場の者に縋って――
 一口酒を飲むと、一気に胃が熱くなった。
 口から出るのは、抉る、とも言えるような質問だ。
「……なあ。その男、そんないいヤツだったのか」
『そーね。
 ……いっつもスーツ着てる変人で、スゴいてきぱきしたひとだったけど、どっかでミスるのね。
 で、それをフォローする人が隣にいてね、……俺の隣は、彼女しかいないって、はっきり言われたさ』
「玉砕だな」
『うん。ホントばかみたい。……負けるのが見えてて突っ込むんだものなぁ』
「誰かに惚れてるヤツばっかり好きになる、お前の一直線ばかっぷりにカンパイ」
『んー。かんぱーい』
 あはは、と笑う声は、涙混じりだ。
『……ちょっとゴメン』
「ああ」
 鼻を乱暴にかむ音が聞こえて、十秒ほど後、何か小太鼓を叩いたような音がした。
『……あー、うん。もしもし。ゴメン』
「いや、いい。……ワインか?」
『ブランデー。安物だけど』
「飲みすぎるなよ」
『んー。これ飲みきってももうちょい行けるから大丈夫』
 そのまま、しばらく沈黙がある。
 酒量限界は、缶ビールにしておおよそ三本。一本を大事にするように、ちびちびと消費していく。
 ……この量を知ったのは、一年半前か、とふと思う。
 地元から離れ、大学に来た。サークルに入って、その歓迎会の席だった。
 彼女も似たような経緯で知ったのだろうか、と思っていると、向こうから声が来た。
『……アンタの方はどうなのさ。そう言えば、結構久しぶりだけど』
「変わらない。工学部なんて野郎ばっかりだ」
『まーそうでしょうねー。入試より倍率高いんでしょ、そっちの美人は』
「確かにその通りだが嫌なこと思い出させるな馬鹿」
『彼女いない暦=年齢?』
「お前こそ毎回玉砕してるだろうが」
『うるさいなぁ』
 はぁ、と吐くため息の質量は、最初のそれよりも軽くなっているのだろうか。
 ……そうであればいい。
 思い、酒をもう一口あおる。
「お互い、結婚は出来そうにないな」
386(3):2008/02/27(水) 00:50:49 ID:5z1BjR7I
『希望が全くない理系ど真ん中に言われたくはないなぁー』
「最近は女性も増えてるらしいぞ。……本当だからな」
『……はいはい。でも、ホントに売れ残りそうだよね、あたしたち』
「お互い運が悪いからな」
『そーね』
「三十路まで売れ残るかもな」
『そこまで行ったらキッツいなー』
「……賭けるか?」
『どっちが先に結婚するか?』
「ああ。負けた方は何でもする、とかそんな大胆ルールでどうだ」
 ……自覚する。今日は少し、酔いの回りが早い、と。だからこんなコトも言えてしまうのだ、と。
 それが何のためかは、よく分からない。だが、分からないなりに、思うところはある。
『オーケー。いいよ、これから十年。――これまでで一番長い勝負だね』
「ああ」
 頷き、口を噤む。
 ……前を向いてくれればいい。そう思っての沈黙だ。
 すぐに前を向くほど、彼女は強いだろうか、――そう自問し、
『ところで、どっちも三十まで売れ残ったらどうする?』
 その声に、その考えが一瞬飛んだ。
 酒のせいだろうか、出かけた結論が出てこない。
 とにかく、返答をする。
「あ、ああ。……そういうコトもありえるか。ドローじゃつまらないな」
『んー。じゃ、お互い買い取るってコトにしとく?』
「……そりゃあいい。売れ残り同士に相応しい、最高のルールだな」
『んー、あたし天才?』
「そりゃあもう、……天災すぎるな」
『うははははは』
 遠慮ない笑い声が響いてくる。
 最初から比べれば大した進歩だ、と思い、彼は酒を一気に飲み干す。
「それじゃ、俺はもう寝る。お前もほどほどにしておけよ」
『んー。ありがとねー』
「別にいいさ。もう四度目だ」
『……そうだっけ。
 キッツいコトとか恥ずかしいコトはすぐ忘れるようにしてるから、あんまり覚えてないなー』
「……全く。最悪だな」
『最高と言ってよ。過去にこだわらない女っていいでしょ?』
「そうかもな」
 ……強がりでも、それだけできれば上出来だ。
 思い、それじゃあ、と別れの挨拶をする。
『――うん、それじゃあ。十年後、覚えてなさいね』
387(4):2008/02/27(水) 00:51:50 ID:5z1BjR7I
「お前こそ」
 ツ、と電波の途切れる音。
 缶をビニール袋に入れて、電気を消す。
「…………は、ぁ」
 俺は、と思う。
 ……俺は、どうして喜んでいるのだろうか、と。
 ため息を吐き、布団に転がった。
 アルコールが思考にもやをかける。
 その中で思うのは、彼女のコトのみだ。
 ……彼女が悲しんだなら、共に悲しみ、彼女が喜ぶのなら、共に喜ぶ。
 昔からそうだったように思う。
 だが、こと恋愛に関してはそうではなかった。
 今だって、表面上は元気付けようとしているくせに、内心では喜んでいる。
「……最悪だな」
 自嘲するように笑い、携帯を開く。
 キー操作の結果表示されるのは、とある掲示板だ。
 打ち込んでいく。
388名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 00:52:25 ID:5z1BjR7I
……そして>>362に続く。
と言うワケで投下終了。
とりあえず俺も逃げるぜ。

もう一度。
>>362、マジスマン
389名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 00:55:11 ID:w9ayDj6p
いつからここはVIPになったんかと驚いたが
>>377-378>>384-387に更に驚いた。GJ!
しかし>>384-387の流れだと5年短縮は無理なような。
390名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 01:09:24 ID:6pIY5glh
>>388
GJ
何か雰囲気出てていいな。オレもそういうのを書けるようになりたいわ
心情描写とか特に好み

……あと、こういうのは速さじゃなくて中身だよ
オレのは焦りすぎて色々ビミョーになってるし。脱字とか編集ミスとか
391名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 11:38:09 ID:KHkeNLrI
>>378
GJ!25歳は確かになんかいい感じ
しかしどうしても獣神演武を思い出すw

>>387
こっちもGJ!雰囲気が好みだ
392名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 22:59:26 ID:X1KjvTgw
秒速5センチメートルを見て心が死にそう

誰かif話でも書いてくれないかなぁ…
393温泉:2008/02/27(水) 23:26:48 ID:J/Sow1yv
深夜にならないうちに投下させてもらう……!
えっと、今回ラブシーンの予定……だったのですが
長くなりすぎまして一度に投下すると時間も幅も凄くなってしまうので分割して投下します。

誰もいないようなら半からいきます
394You is me:2008/02/27(水) 23:29:46 ID:J/Sow1yv
 あんな恥ずかしい事をやらかした後、二人してみーの部屋にいた。
 ほら、とみーが自分の足をぽんぽんと叩いた。俺は頭をみーの太腿に乗せる。
 じんわりと暖かさが伝わってくる。
「最近してなかったから、おっきいのが溜まってそう」
 嬉しそうな声。今の俺からは角度的に見えないが、きっと笑顔なんだろう。
「最近って……二週間くらい前にしたばっかりじゃないか」
「あたしは三日に一回くらいするけど」
 そんなにして、よく耳がおかしくならんな、と思う。声に出して言いはしないけど。
みーが持っているのは耳かき棒。状態は膝枕。となると、する事は一つ、耳掃除だ。みーの手が俺の耳に
そっと触れる。なんだか妙にくすぐったい。
「じゃ、いくよ」
 みーの合図。耳かき棒が耳の中に入ってこしょこしょ音を立てた。
 頭の下にある、みーの太腿が柔らかく暖かい。
「うーん、あんまりないなー」
「いっつもやってるのに、そんなに溜まるはずないだろうが」
「もしかしたら、ってこともあるかも」
 笑い声。
 全く、毎度毎度……
395You is me:2008/02/27(水) 23:31:57 ID:J/Sow1yv
 俺はみーにしか耳掃除をしてもらったことが無い。本当に、昔からみーだけだ。まぁ、料理と同じで昔は
力加減とかも出来てなくて酷かったけど。
 しゅっしゅっと耳かき棒が耳の中で動く。
「ゆーちゃん、痛くない?」
「大丈夫、眠くなるくらいだ」
「そっか、ありがと」
 穏やかな声。目的の物を見付けたのか、耳かき棒が引いていく。そしてまた中に……
 さっさっさ……
 リズムの良い音が響き続ける。あー、眠くなる……
「大物はなーし」
 最後に耳かき棒の後ろのふわふわでさっさっ。
「ゆーちゃん、反対」
 ん、と頭を逆に向ける。
 うっ!
 まずいことに気付いた。膝枕をしていて、今まで外側を向いていた。では反対の耳を掃除する為に頭を
逆にしたらどうなるか?
 ……みーにその、あの……顔をうずめる様な感じになる、と……
「こっちはどうかなー」
 みーの明るい声。
そーっと目線だけを上に向ける。耳掃除に夢中で気付いていないようだ。
396You is me:2008/02/27(水) 23:34:40 ID:J/Sow1yv
 急に背中が汗で濡れた気がした。息を呑むと音が大きくてビックリした。……気付かれてないよな。鼻から
息を慎重に吸う。何か、甘酸っぱい匂いが……って、いかんいかん!俺は何をやってるんだ!
 思い切って目を閉じる。みーの手が俺の顔に触れている。さっきと同じこしょこしょという耳の感触。変わらない、
みーの感触。顔の状態をなるべく気にしないようにする。
「ゆーちゃん、何だか顔が赤いけどー?」
 不思議に思ったのか、手を止めて尋ねてくるみー。
「なんでもないって」
「そう、ならいいけど」
 再開して、またこしょこしょ。こっちの耳もすぐ無くなったのか、同じ手順をまた繰り返して――
「はい、おしまい」
 みーの声と共に、耳かき棒と触れていた手の感触がなくなった。息を吐く。どうしてこんなに緊張してるんだか、俺は。
 とりあえず、首を上に向け目を開けて起き上がろうとした。が、額を軽く押さえられて止められる。
 ばちり。目が合った。
 胸がざわめくような感じ。みーが頬を微かな朱色に染めてが微笑んだ。
 あ、やばい。なんでだ。すごい可愛い。おかしい。目が離せないほどに可愛い。
「みー……」
 呟きが空気に吸い込まれた。手をゆっくりと伸ばして、みーの頬に触れた。なんか普段より熱い気がする。
「ゆーちゃん、あたしね」
 すっ、と。
 俺の頬に触れてる手をみーの手が包み込む。なんかいとおしい、と言う様な、なんだか、そんな。
397You is me:2008/02/27(水) 23:37:01 ID:J/Sow1yv
「ゆーちゃんのこと……好きだよ」
そのままみーの顔がゆっくりと俺の顔に近付いて――合わさった。
「ふ、ぅ……」
 どちらともない息の漏れる音。しっとりとしたみーの唇。ぷにぷにした感触になんだか妙に興奮した。
 胸がざわめく。もっとざわめく。感情が暴れるような。
 どれくらい触れていたのか。五秒? 十秒? それとも一分? やけに長い一瞬が過ぎて、ゆっくり唇が離れた。
でも、顔はそれほど離れない。静かな吐息さえも感じられるような距離。
 アップになるみーの顔。横で短い髪の毛が揺れた。後頭部の下の太腿の肉がやけに鮮明に感じられる。
重ねられたままの手。軽く、けれど、強く握った。つっかえそうになるのを懸命に堪えて、想いを声に乗せた。
「俺はみーの気持ちに負けないくらい」
 みーが好きだ。
 目の前の顔が驚きの顔をして――それから、目を細めてくすくす、とおかしそうに笑い出した。
「あたしの方が好きって思ってるもん」
「いーや、俺の方が想いは強いね」
「あたしだって」
「絶対に俺だ」
「あたし」
「俺」
 そのまま睨み合って――
「――ふふ」
「――はは」
 二人同時に吹き出して。また唇を合わせた。頬に触れたままの手を撫でるように動かすと、気持ちよさそうに
みーが体を揺らして、手の力を強めて俺の行動に答えた。
 その時の気持ちを一言で表現すると、こうだ。
398You is me:2008/02/27(水) 23:39:13 ID:J/Sow1yv
 穏やか。
 ああ、みーがキスが好きな気持ちがわかる、な……あ、神様。俺はもう染まってきてるぞ――
 唇が離れれないように、みーの後頭部に手を回して、引き付けた。もうちょっと続けていたかったからだ。
「んっ」
 みーが一瞬体を硬直させるが、すぐ力を抜いた。今までみーとした何百回、もしかしたら何千回のキスと同じ様に、
自然体のまま時間が過ぎ去る。みーはしばらくそのままだったが、物足りなくなったのか、唇を細かくずらしたりして
感触を増やそうとすると、くち、と水音がちいさく響く。
 それがきっかけに行為が一気にエスカレートする。
しばらく、唇を押し付けあって、唾液で唇が濡れ始めてから、初めに俺がみーの口内に舌を差し込んだ。舌に
ぐちゃぐちゃでぬるぬるな感覚。ちょっと舌を持ち上げると固いものに触れる。それも越えると、みーの舌先が
待っていて引っ掛けるように絡んだ。
「はっ、ふ、ゆー、ひゃん……」
 小刻みに震えるみーの体。後頭部から、顔から伝わってくる熱が増した気がした。すると、みーの舌が押し返してきた。
みーのとろとろの舌が俺の口の中に入ってきた。鼻息が互いに荒い。絶え間なく響く粘っこい水音がすごく興奮する。
もう口の周りがすごいことになっている。べっとべとだ。頭の中が痺れる。そこまでして、一旦顔が離れた。
 目を開けると、ちょっと有り得ないくらい真っ赤な顔のみーがまた至近距離に。目が潤んでいる気がした。
「ゆーちゃん……」
「みー……」
 呟き、返す。それだけの事がなんでこんなに――こんなに。
 膝枕の体勢のまま、見詰め合った。息がかかる。心臓は爆発寸前の様相。
 息が荒くなり、ごくりと唾を呑み、俺は言った。もう止める事は出来なかった。
「みー、俺、みーと……したい」
399You is me:2008/02/27(水) 23:42:05 ID:J/Sow1yv
 震えが後頭部から伝わってきた。緊張が手に取るようにわかった。けど、それでも、目を逸らさずに、みーの起
こす行動を見詰める。
 みーは困った様に視線を泳がせて、それから赤い顔のまま消え入りそうな声で俺に告げた。
「ゆーちゃんなら……いい、よ……」
 背筋が震えた。
 は、は、は、はははは。
 俺は変態に違いない。確信した。絶対に間違いない。ただ気持ちを確認しただけで、物凄い快感が広がるんだから。
 体勢を逆転させて、みーを床に押し倒した。みーの髪の毛がベッドに垂れて俺には妖しげに見える模様を描いた。
幼馴染を組み敷くという光景に頭がクラクラした。いよいよ、と手を出そうとした瞬間、みーが口を開いた。
「一つだけ、お願い、良い……?」
 その言葉にちょっとだけ冷静さが戻ってきた。危ない危ない、感情的になりすぎていた。
「何でも言ってくれ」
 目を見ながら言い返すと、みーは目を伏せがちに言った。
「手、ぎゅー、って握って」
 すぐに握った。みーもしっかりと握り返してきて、視線を交錯させて、笑う。
「…あは」
「はは」
 また笑って。またキス。本当に、軽く、一瞬。
 くっそ、なんでこんなに安心できるんだ。おかしいだろ。
 まだしたい、と思って、もう何度目かよくわからないほどのキスをもう一回。強く押し付けて、舌を挿れる。
400You is me:2008/02/27(水) 23:44:12 ID:J/Sow1yv
「っ、ん、はぅ、ぁふ……」
 もうわけがわからない。唾液が泡立つくらいかき回して、舌を絡めて、歯茎を、歯をなぞって、押し返されて、
また絡まって、唾液が口の端から溢れ出て……キリが無い。
 二人とも一心不乱だ。
 みーは俺の口の中が気に入ったのか、その中で舌を動かす。俺はいたずら気分でその舌を歯で軽く噛んで
動けなくし、吸い込んだ。
「ん、やぁっ!? や、ぁん、ん、ゆー、ちゃ……ん、は、う」
 みーの体が暴れる。が、それを抱き締めて無理矢理抑える。みーからもきつく抱き返してくる。ただそれだけが
とんでもなく気持ち良い。二人とももうどっちの物かわからない唾液でだらだらだ。みーが口の中に溜まった唾液を
む音が聞こえた。その唾液に自分の唾液が混じっているかもしれないと思ってますます興奮した。
 いい加減、やりっ放しだったので離した。
 呼吸も整えようとすると、みーが繋いだ手をにぎにぎして、口の唾液を空いてる腕の袖で拭いながら、何故か
恥ずかしそうにみーがちらちらとこっちを見る。
 なんだ?
「ゆーちゃん……ちょっと変態?」
「なんでだよ」
「だ、だって」
 ほら、とみーが指差した方を見ると――げっ。
401You is me:2008/02/27(水) 23:47:33 ID:J/Sow1yv
 俺の方が赤面してしまう。ズボンの前があまりにも雄々しく突っ張ってしまっていた。
「さっきから……その、太ももに……当たってて、すごいなー、って……まだちゅーしかしてないのに……」
 恥ずかしさで消え入りたくなるとは正にこの事。しかし、このままでは男として悔しいので反撃する。
「なら、みーはどうなん――だっ」
 繋いでいない手を素早くみーの下半身の足の付け根の間へ。
「きゃっ!? や、やぁ! ゆーちゃん、だめぇっ」
「っ!?」
 みーの下着の感触が手のひらに伝わってくる。しかし、俺が衝撃を受けたのは、その布地がたっぷりと水気を
吸い込んでいたことだ。
 なんだこりゃあ……!
 指を動かす。布地の中心を中指で軽く押す。
「っあん……」
 みーが妙に艶のある声を短く上げた。すごいドキドキした
 そして、押した所から、液体がこぷり、と溢れ出た。その粘りのある液体はまだ温もりを持っていた。震える手を
持ち上げて、目の前でかざす。
 触れた場所の全てが濡れていた。布地を押した中指を開くと、人差し指との間で糸を引いた。
 うわ……すげ……エロい。
 手のひらを陶然と見詰めていると、みーは顔を羞恥で赤く染め上げて叫んだ。
「ゆ、ゆーちゃんのばかー! いつまでも恥ずかしいことしてないでよー!!」
 握ってるほうの手をぎゅーーーーっと握りつぶさんばかりに握って、空いてるほうの手で下から俺の胸を叩いて、
顔を伏せた。
「他のとこ触らないの……例えば、その、胸、とか……」
402温泉:2008/02/27(水) 23:48:56 ID:J/Sow1yv
とゆうわけで前半部投下終了です。
続きもなるべく早く投下します。無駄に長いですがご勘弁を……
では御然らばー
403名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 00:10:38 ID:Jjt4S/4n
>>402
何という甘さ
これは間違いなく糖尿病にかかる

というわけでGJ
いよいよここまで……何か甘過ぎて死にたくなってきたw
本当にいい話書くよあなたは
404名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 01:07:25 ID:5cjw96Pt
だ、ダメだ……
普段なら惜しみないGJを送っている筈なんだ!
だが! だがしかし! 今は!
耳をすませばとか>>392見て『秒速うんたらってなんじゃ?』→ウボァーってなったから素直にGJと言えないんだぁあッ……!!!
405名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 03:10:56 ID:B9DL6QzY
>>404
いやそこは素直にGJといっておこうぜw

続き楽しみにしとります
406名無しさん@ピンキー:2008/02/28(木) 06:31:42 ID:ByPFGsvo
>>402
ラブと萌えとエロが上手い…甘い具合にミックスされた文章にGJ!
あなたの作品は甘々激ラブすぎて素直に自分を慰めることができないのです
なんかズボンを下げてしまうのが恥ずかしくなってしまうのです
でももうだめです。こんなに興奮してしまう気持ちを抑えられません
キスシーンだけで下半身に違和感が生じてしまってどうしようもないのです

つまりは全裸待機で続きマダー?
407名無しさん@ピンキー:2008/02/29(金) 20:37:24 ID:yxpfIEU6
湯泉待ってます
全裸でおこたに入って待ってます
408名無しさん@ピンキー:2008/02/29(金) 22:26:52 ID:5iXL6xS+
>>407
風邪引くなよ。
409名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 17:48:37 ID:+G8ioUsL
コタツの中でち○こたつ
それが>>407の隠されたメッセージと愚考致す
410名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 19:26:41 ID:IVw6YlOT
>>407から毒電波受けた

「…なんでこんな大事な所を低温火傷するのよ」
「…黙秘する」
「どーせエッチなサイト見てる内にこたつで寝ちゃったんでしょ?」

当たらずとも遠からず。俺は黙って横を向く。

そうだよ。恥ずかしいんだよ!!


全裸で新作SSをこたつで待っていた俺は不覚にも熟睡してしまい、
男の大事な部分に低温火傷を負ってしまった。で、通院した先の対応看護婦が
俺の幼馴染みである直子。……運命は非情で悪戯心に満ちている。

「いい?独り暮らしだからってあんまり羽目外さないのよ!」
「へいへい」
「ちゃんと自炊とかしてるの!?栄養バランス考えてる!?」
「う…ま、まぁ」
「嘘ね。顔でわかる!!」

診療も終わり、支払いの段階で直子に捕まりお小言をくらう羽目に。
今日の運勢では…大吉だったはずなんだが。
「いい!?ちゃんとしなさいよ!!」
「善処します…」
「…お大事にね」



なんとも間抜けな再会だが、俺と直子の騒がしい日常の始まりだった。
411名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 19:36:17 ID:vQbqrPnR
>>410
バカスwww
でも実際湯たんぽでやっちゃった馬鹿を知ってるからイマイチ笑えない
412名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 22:59:28 ID:zH9MZV40
>>410
もちろん続くんだよな?
413名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 01:50:25 ID:WBT0OwYw
>>410
続きを期待してるよ

>>411
つまりこたつ編→湯たんぽ編→ストーブ編と続くわけですね
414温泉:2008/03/02(日) 03:01:03 ID:2f4ZmYQ7
やっとできたんで深夜だけど投下するんだぜ……

今回の話書いてて思ったのですが、どうやら私はラブシーンの才能が欠如しているようです。
あまりご期待せずにお読みください…orz

三時より投下します。
415温泉:2008/03/02(日) 03:03:30 ID:2f4ZmYQ7
 胸……
 この前のあの日、未遂に終わったあの見せ合いでちらっとだけみたみーの姿がフラッシュバックする。
 触れるのか。そう思うだけで心が躍った。その後ちょっと事故で触った気もするが……あまりにも一瞬だったので
覚えていない。
「って、きゃー! ゆーちゃん何してるの!?」
「……え?」
 どうやら、ぼーっとしてしまったらしい。気が付くと俺はみーから掬い取った液体を指ごと口に含んでいて――え!
本当に俺何してるの!?
「あ、え、いや、これは、その……えっと……自然に?」
 叩いてくるかな、と予想として俺は身構えたが、みーは耳まで赤くして顔を抑えて唸っている。どうやら、恥ずかしさが
臨界点を突破して言葉が出ないらしい。
 ああ、こんなみーも可愛いじゃないか……って何を考えてるんだ俺は。
「ゆーちゃんのへんた――んぅっ!?」
 口を塞いで無理矢理黙らせた。すると、さっきの態度が嘘のようにみーがキスに応じてきた。叩きつけて押し潰すように
顔を擦り付けてくる。素直じゃないよな、俺もみーも。
何回も繰り返し唇が合わさる中、俺はみーの胸に服の上から触れた。
「あ、ぅ……」
微かにみーの体が揺れるが、妨害しようとしない。許しが出て、俺は親指と手のひらを使って挟むようにみーの胸を
触った。ブラ越しだからか、若干固く感じるような気がするが、それでも極上の柔らかさというような感触だった。
416You is me:2008/03/02(日) 03:05:23 ID:2f4ZmYQ7
「っふぁ……ん…んん! や、ぁっ!?」
 みーが叫び声を上げたのは親指の腹ぐらいの位置に偶然、固い物が触れた時だった。
 乳首だ。
 直感でそれを察知した俺は親指の先で、素早くもう一度探り当ててボタンを押すように押し込んだ。
「きゃぁうっ! あ、くぅ……!」
 いじるたびにみーの体が跳ねる。嬌声が上がる。
 服越しでこれで、直ならどんな……
 欲望の赴くままにみーの上着に手を掛ける。一番上に羽織っているブラウスの前をはだけ、横にどけて、
下に着ているシャツの裾をみーが何か言う前にめくり上げた。
 真っ白な肌。小さいヘソ。視線を上に上げると水色のレースの下着。つつましげに膨らんでいる胸。
 す、げぇ……
 俺の貧困な表現力ではその言葉だけで精一杯。今更ながら男と女は別の生き物だということを俺は再確認していた。
 で、みーはと言うと――赤い顔のまま、抗議するような視線を俺に向けている。まだ握ったままの手は
痛いばかりに強く握り締められている。
 でも、さっきと同じ様に止めようとはしてこない。口の中が妙に乾く。唾を飲み込んで、ブラと肌の間に指を
差し込んで、そして、全てを、一気に、露出させた。
「うう……」
 みーの声が妙に頭に響く。今の俺にはそれすらも興奮の要素だった。その胸の頂上で既に固くなっているものを
片方つまんだ。
「っ!」
 全身を震わせるみー。何度も何度もいじる。その度に体を震わせる。
「ゆ、ゆーちゃん、あんまりおもちゃみたいにいじらないでよ……!」
417You is me:2008/03/02(日) 03:07:00 ID:2f4ZmYQ7
「いや、だって、顔真っ赤にしてるみーがあんまりにもエロいもんだから」
「え、えろい……って、あたし、胸こんなにちっちゃいのに……?」
「ほら、こんなふうに」
「え……ひゃんっ!?」
 可愛く叫ぶみー。胸をまた触っただけでこうだ。
「みー、ってすげぇ敏感だよな……」
「やぁ、そんなこと……あ、う……な、いよ」
 喋りながら触る。みーの中では『敏感』というのは恥ずかしいことのなか、声を我慢しようとする。
 なんとか声を出させれないか――何か方法はないか。ちょっと考えて、すぐ思い付いた。
 空いている方の胸に顔を近づけて、吸い付いた。
「やあぁっ!? ゆーちゃん、ちょ、ちょっとぉ……んぅ!」
 ちゅっちゅっ、と音が出る。少し汗ばんでいたのか、しょっぱい味がした。ついでに肌から微かな石鹸の匂い。
 みーがいやいやとするように体を暴れさせるが、それも無視して押さえ付ける。乳首を吸い続けて、もう片方を
手で胸をもんだりいじったりしていると、次第に力が抜けてきて、もう観念したのか、そのままされるがままになった。
「は、ふ、ゆーちゃんの……えっち、変態……」
 切れ切れ声で悪口。迫力はさっぱり無い。
「好きな女の半裸を前にして我慢できるほど男捨ててないから仕方がないだろ」
「あ、う、だめだよ、ゆーちゃん……そんな……」
 みーが俺の奇妙な力説を聞いて恥ずかしがる。――が、思わぬ言葉をみーが言い始めた。
「ゆ、ゆーちゃん、先に言っておくけど、ごめん、ね」
418You is me:2008/03/02(日) 03:09:00 ID:2f4ZmYQ7
「ん?」
 何を謝る必要が?
「あたし……あたし、さっきゆーちゃんにえっち、って、変態、って言ったけど……」
 ぶるりとみーが体を震わせた。それは緊張だけから来る震えだったのだろうか? 言葉を切った。すると、
みーの手がスカートの端を掴んで。
 まさか、と思って、息を呑んだ。まさかだった。
 スカートの生地がゆっくりと上がって、そしてみーのショーツが部屋の明かりに出て。
 俺は頭をカナヅチで殴られたかと思うぐらいの衝撃を覚えた。
「あたしも、同じくらい……ううん、もしかしたらそれ以上におかしいんだよ」
 前にキスだけでソファーの下にシミが出るほどみーが濡らしたことがあった。つい今もキスした後に触って
それを俺は実感した。しかし、実際に目にすると。
「え、っと……これ、は、あー、おもらしじゃ……ないのか……?」
 ぶんぶんとみーが首を横に振った。
 ――凄かった。
 ショーツの一部分、などではなく、クロッチの前から後ろ、お尻の方まで色が変わって、更に下のスカートまで
シミを作っている。
「……みー、俺さ」
「な、なに?」
「今、みーが可愛くてたまらん」
「……え?」
 何だか戸惑っている様子のみー。だが構うことは無い。俺は最高にハッピーだった!
419You is me:2008/03/02(日) 03:10:39 ID:2f4ZmYQ7
「なんて言うんだろこの感情……そうか! これが愛ってやつなのか!?」
「……ぷ、くくっ、あは、あははは」
「な、なんだよ! 笑うなよ、俺は真剣なんだぞ」
「ごめんごめん、つい、うっかり」
 笑うなよ、と言いながら俺も笑ってるけど。それから潤んでる瞳を細めて、俺に微笑んで、口を開いた。
「……うん、あたしもゆーちゃんのこと好き……愛してる」
 ちゅっ、と口を合わせた。もう一回。もう一回。もう一回。もう一回……
 口を合わせるごとにこらえきれないものが込み上げてくる。すぐにその感情は溢れ出した。
「……いいか?」
 短い言葉。でもみーはわかるだろう。何故なら、幼馴染だから。
「して」
 熱の篭った言葉が、短く、放たれる。
 それから中途半端に残ってた互いの服を脱ぎ捨てた。無言で向かい合う。そして更にゆっくり、みーの性器に
俺のそれを、当てがった。
 最終確認。みーが、俺の手をしっかり握って、頷いた。
 ぐっ、と俺が腰を前に突き出した。長くかけて痛みを一瞬でと考えていたので一気に挿入。ぷつ、と肉が
切れる表現しようのない感触。
 とんでもない快感が下半身から伝わってくる。我慢我慢我慢我慢我慢……!
「あっ、っつ、っく、うぅ……いたっ、いっ……!」
 手が握り締められる。手の甲に爪が食い込んでくる。全身が震えている。顔が苦痛で一杯に歪んでいる。
「はっ、う、いっ、ゆーちゃん……ゆーちゃん、ゆーちゃん……!」
「大丈夫、ここにいるから」
420You is me:2008/03/02(日) 03:12:39 ID:2f4ZmYQ7
 そのまましばらく抱き合って……やっと激痛が少しマシになったようでみーが顔を上げた。
「あ、う、痛かったよぉ……」
「ごめん……でもありがとう」
「うん……ゆーちゃんは痛かったりとか……そんなことないんだよね」
「まぁ、男だし」
「……男の子って良いなー、生理とかもないし、それに……」
 言い掛けてみーが顔を真っ赤にして黙り込んだ。
「それに……なんだ?」
「な、なんでもないよっ。それより、その、あたしの中、気持ちいい……?」
「それはもう……凄いとしか表現できない」
 みー、いや、女の子の体ってなんでこんなに凄いんだろう。男の体とは大違いだ。さっきから凄い凄いとかしか
言ってないが、本当にそれしか思い浮かばないので仕方が無い。
 俺のものはどろっどろの柔らかいひくひくうごめく肉に抱き締められていた。何もしていないのに出そうになるくらいだ。
 ――ちょっとぐらいなら動かしても。
 腰をとん、と突き上げるように小さく一突き。
「あうっ!?」
 みーが軽く叫びを上げる。
 続けて横に揺するように緩やかに動かす。たたそれだけで歯が浮くような感触が引き出せる。時間をかけて
動きの幅を増やす。負担をかけないように。
「や、ん……くっ、はぁっ、あんっ」
 まだ時々痛そうにするみー。手はさっきからずっと力一杯に握られている。こんな時にすることは決まっている――
特に俺たちは。
421You is me:2008/03/02(日) 03:14:43 ID:2f4ZmYQ7
 またキスだ。一回頬に。みーが目を開いた。二回目は唇に。三回目からは舌も。下半身はとびっきりの
快感を俺に与え続けている。みーの中はきゅ、と締め付けたり、ゆるまったり、うねったり、ざらざらしてたりで
凄まじい限りだ。上では俺が一方的にみーの口内をねぶっていた。
「は、ぅ、ゆー、ひゃんっ! ん、ん、んぅっ!」
 そのせいか、いつの間にかみーの声も苦痛が薄くなっている。反面、快感が尻上がりに止められなくなってきた。
突き上げるたびに奥から熱い液体がどっと流れてきて、ひくひくと中が動く。俺はもう歯を食いしばってそれに
耐えている。
「あ、あっ、ゆーちゃん……あたっ、し、う、やぁ、こんなの、おかしいよぉっ」
 みーが泣く様な切羽詰った声を出した。
「はじめて、あっ、なのにっ、こんな、こんなぁっ……!」
 感じているのか。
 その本音を聞いて、ここまでした我慢の堰が一気にぶち切れた。
「悪いっ、出るっ……!」
「あ、はうっ、ゆーちゃ……、う、あぁ…………!!」
 中で思わずぶちまけた。背筋に寒気が走るほどの、目の前が点滅するほどの快感。自慰ではありえないぐらいの
量が、出る。
「う、あ、やぅ、すごい、あったかい……」
 腰が浮き上がるように、興奮や熱などを抽出されていくような、別次元の高まり。目が眩む。
 精液がみーの奥に吸い込まれていく。互いに荒れた呼吸を落ち着かせて、気持ちも落ち着かせて、よ
うやく視線が合わさった。
「ゆーちゃん……」
「みー……」
 俺たちはその儀式を完結させる合図のようなキスを、交わした。
422You is me:2008/03/02(日) 03:16:43 ID:2f4ZmYQ7
 そして後始末……で、俺は青ざめることを思い出した。
 避妊が頭に無かった。
 慌ててみーに確認を取り……生理はもう終わってるよと言ってくれたので落ち着きを取り戻したが、
今度するときがあったらきっちり対策をしなければいけないだろう……
「ふー、慌てた……」
 二人、産まれたままの姿でベッドに寝転がる。脱力感で体を起き上がらせるのも億劫なのだ。
「もー、男の子ならそれもちゃんと考えてからモーションかけないと駄目でしょ」
「う、すまん。返す言葉も無い」
 行き当たりばったりは本当にやめないとなぁ……
 でも、とみーは言葉を続けた。
「次はゆーちゃんにあたしがしてあげたいかも」
「次は、って……やる気アリアリだな」
「ち、ちがっ、そんな意味じゃないよぉ……いや、そんな意味だけど……ゆーちゃんのばか」
「いや、嬉しい。楽しみだ」
 ならいいけど、と顔を赤くして照れるみー。いかん、本当に可愛い。
「にしても、あたし達……結ばれちゃったね……」
「そうだな……」 
 脳裏に今までの思い出が駆け巡った。何かのゲームで見た言葉を思い出した。
 思い出が蘇る。思い出してみれば、つい昨日のことのようだ。思い出が蘇る。思い出してみれば、色々あった――、か
「……ちゃった」
「え?」
423You is me:2008/03/02(日) 03:18:10 ID:2f4ZmYQ7
 物思いにふけっていると、みーが突然に何か囁いて、きゃーと小さく声を上げて少し暴れた。俺がなんだよと
思って向くとみーは恥ずかしそうに言った。
「ゆーちゃんに、はじめて、あげちゃった……」
 えへへ、とみーが微笑んだ。
 くっ、顔が直視できない。その発言は可愛すぎる……
 すると、隣から内緒の話をするような押さえた声が聞こえてきた。
「ゆーちゃん、あたし」
 語尾はくすぐったくなるような小さな響き。
 しあわせだよ、って。
424温泉:2008/03/02(日) 03:21:49 ID:2f4ZmYQ7
終りです。ああ、脈絡が無い……

次回からは「バカップル炸裂! イチャイチャ突撃編」が始まります。お楽しみに(ウソ予告)
425名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 03:23:09 ID:JHd+Q10n
>>424
やあ深夜野郎・湯泉。
ええとね? こうね? アンタはいくら砂糖を吐かせれば気が済むのかね?
だがしかしそのウソ予告を真実にしなかった場合、次からGJは無いと思え……!
426名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 03:48:40 ID:WBT0OwYw
>>424
GJ!甘すぎて上も下も真っ赤になってとろけそうだ…
みーかわいいよみー

>>425
お前は次のセリフは『GJ!』という!
427名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 04:47:23 ID:JHd+Q10n
そう言えば『GJ!』といい忘れて――ハッ!?


>>426
・お前は次に『GJ!』と言う
・お前の次のセリフは『GJ!』だ
混ざったのか?
428名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 07:33:29 ID:3/RQE1oP
み、みんな。お、俺はもうダメだ。まさか砂糖に埋もれて死ぬことになるとは思ってなかったぜ。 
俺が死んだらこの先投下される神作を俺の墓に供えてくれ。

最後にみんなにこれだけは言っておく。
こんな神作を読んで死ねるなら、俺は間違いなく幸せだったんだ!!!
429名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 08:02:32 ID:TRdP2IRV
>>428
お前の遺志は受け取った。
>>424
GJと、GJと言わせてくれッ!
あんたになら掘られてもいい。
430名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 13:03:09 ID:WBT0OwYw
>>427
打ち間違えただけです…ううっ、恥ずかしい…
431名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 21:57:33 ID:vNS27pm0
1日のロスタイムライフが幼馴染み編だった

涙が止まらないぜ
432名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 23:53:52 ID:Z3iw5/zu
見逃した……
どんな話だったんだ?
433名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 00:40:45 ID:FJMBuEwj
第14回幼馴染検定 過去問題集より抜粋
問8:幼馴染属性と親和性の高い属性を挙げよ   (10点)

解説
好きに書けば良いがニヤニヤしたら残心があるということで失点になるという
ルールで行われたため殆どの人間がミスをした悪問。心せよ。


なんてな……
434名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 02:26:38 ID:bmeJmM6+
>>433
ツンデレ・姉・妹・ポニーテールとか?

いや、ポニーテールは俺の完全な趣味だけど……。
435名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 03:13:55 ID:PXcoK7G0
>>432
「ロス:タイム:ライフ」スレより。
----ここから------------------------------------------------
<第5節あらすじ>
森保甫(伊藤淳史)は幼いころからの夢がかなって、自作の漫画が漫画誌の新人コミック大賞でグランプリを受賞し有頂天だった。
受賞作が載っているその漫画誌を何冊も買っては母親にあきれられている。
ある日、新作漫画を編集部に届けるため家を出た甫は、大型書店の前を素通りできず、
つい入ってしまった挙げ句、また例の漫画誌を手に取っては、たまたまそこにいた他の客(温水洋一)にまで自慢する始末。
甫がレジに向かったとき、大爆発が起こった。
審判団にロスタイムを提示され、自分が死んだことに気付いた甫。
編集部に向かって猛然と走り出したが、途中で行き先を変更し、幼なじみの由香里(美波)の家に向かった。
甫はそこで由香里の結婚話を知り、ショックを受ける。落胆し、あてもなく歩いていると、近所の公園で、由香里とばったり会う。
しかしロスタイムは刻々と過ぎていき…!?
----ここまで------------------------------------------------

少し付け足すと、
今回はビル爆発&崩落事故なので同時多発ロスタイム発生。
二人は中学あたりから段々疎遠になり、最近は会うこともなかった。
しかし、甫が漫画家を目指したのは幼い頃の由香里との約束を守るためだった。
そしてもう一つの「約束」も二人は覚えていた。
やっと互いの想いに気付いたのに現実は更に非情で…

正直今回は目から汗が… (;´д⊂ヽ
作品でもないのに長文スマン。
436名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 05:45:41 ID:614TFA/6
女とヤってお金が貰える♪
まさに男の夢の仕事!
出張ホストっておいしくない?
ttp://neets.net/2ch/01_info.html
437名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 07:46:49 ID:vgCQvtGX
>>433
・世話やきでお人好し
・学校一とかではないにしろ可愛い人気者。
ファンが多く、クラス一の男子が告白するも玉砕が王道

・胸は大きくもなく小さくもなく。只、本人的に
もう少し欲しいと思ってるパターンが半数以上。

・髪型は性格にもよるが、活発ショートに控え目ロングが多い。



採点求む。
438名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 14:17:54 ID:5zoHZaBl
439名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 20:19:45 ID:FJMBuEwj
>>434
ポニーテール、大いに結構じゃないですか。おれはロングかな

>>437
10点!10点!
マジレスするなら2番目と3番目は「属性」じゃないかもネ
440名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 20:39:17 ID:fjqadhzw
>>439
ばっきゃろ、チチ小さめコンプレックス付きという立派な属性だろうが――!
それでさらに貧乳の友人に『胸大きくなりたい』とかうっかり言っちゃってこんにゃろわたしより大きいくせにとか百合展開ハァハァ……い、いかん今妄想垂れ流しですかよ!?
441名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 21:00:59 ID:Vjtjtnyp
>>440
川上作品スレの方ですか
442名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 21:03:59 ID:MjlIZhUa
そういえば、このスレでも胸が大きい幼馴染は少ない気がする。
443名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 22:01:02 ID:AEDE2rC2
>>437 性格控えめで髪型ショートも捨てがたい
444名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:00:39 ID:U+k+1qo+
>>442
シロクロの綾乃や絆と想いの舞衣くらいかなぁすぐ思いつくのは。
445名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:17:35 ID:9ZjZSS0D
>>440
百合ではないがこんなの妄想した

「なーなー、あたしの体どう思うよ?」
「どうって……」
「ほら。こう……尻はでかくて腰も細いけど胸無いよなとかそんな感じで――って誰が胸無いだぁッ!?」
「待て馬鹿俺は何も言ってない落ち着け落ち着け馬乗りになるな馬鹿ぐああ!」
「巨乳一家なのにあたしだけフツーだとか思ってるんだろ!?知ってるぞこの野郎ウチに来たらねーちゃんとか妹のチチばっかり見腐ってこの助平野郎がぁー!!」(強打)
「ぐあ痛ェ!? いいか、とにかく落ち着けそして聞け! 言うぞ!? 俺は――貧乳派だ! だからお前のチチも――」
「誰が貧乳だぁー!!!」(強打音連打)

ああ、俺は暴力系が好きなんだな……
こうさ、殴っても関係が崩れないのを無意識に確信してて素でノロケてみたり、
そのうち主人公が初めて本気で怒ってなにやら関係が壊れて、
離れてみて初めて離れたくないってことに気付いてみたり、
でも一度関係が壊れたから歩み寄るのが恐かったり、
それで仲直りしたと思ったらなんかちょっと近すぎてあるェー? ってなってドキドキしてみたり――ああ! ああ!
……いかん俺もダバダバだ! 一緒に帰ろうか>>440
446名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:29:10 ID:tAps2fCu
>>445
あいや待たれよ
そこまで書いて、物語化しないとか言わないよな



……ちょっと書いてこようかな、それ
447名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:32:36 ID:9ZjZSS0D
>>446
え? 書かないよ?
そもそも今書いてるのを終わらせないと次に取り掛かれないぜ、という話。
448名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 03:43:15 ID:UTx1xdin
>>446このスレという妄想のダムが決壊する位の妄想もといSS投下待ってる。
 
>>447こっ・・・この鬼畜野郎!>>446が居なかったら俺たちどうなっていたと思う!?
・・・・・・はい、妄想だけという悲しみの余り悶え死んでたかもしれませんな。
449名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 21:11:41 ID:iQsv0FEv
ここでなぜか、おバカ小説を投下

ただのパロなので保管は不要っス
450ナジミマスターヤマト(最終話 希望を胸に):2008/03/06(木) 21:13:18 ID:iQsv0FEv
「チクショオオオオ!くらえサイアーク!新必殺音速馴染斬!」
「さあ来いヤマトオオ!オレは実は一回幼馴染小説見せられただけで死ぬぞオオ!」
ザン!
(攻撃シーン。貴方の好きな幼馴染作品を見せ付けているところを想像して下さい)
「グアアアア!こ、このザ・ナジミと呼ばれる四天王のサイアークが…こんなナジミストに…バ…バカなアアアア」

「サイアークがやられたようだな…」
「ククク…奴は四天王の中でも(ry」
「人間ごときに(ry」

(省略)

「やった…ついに四天王を倒したぞ…これで魔龍城の扉が開かれる!!」
「よく来たなナジミマスターヤマト…待っていたぞ…」
「こ…ここが魔龍城だったのか…!感じる…ベルゼバブの魔力を…」
「ナジミストよ…戦う前に一つ言っておくことがある。
 お前は私を倒すのに『幼馴染のえろシーン』が必要だと思っているようだが…別になくても倒せる」
「な 何だって!?」
「そしてお前の好きな幼馴染ゲーはプレイしたことがあるので、お前の部屋へ解放しておいた。
 あとは私を倒すだけだなクックック…」
「フ…上等だ…オレも一つ言っておくことがある」

「このオレに可愛い幼馴染がいたような気がしていたが別にそんなことはなかったぜ!」

「そうか」
「ウオオオいくぞオオオ!」
「さあ来いナジミスト!」
いつか可愛い幼馴染が出来ると信じて…!
451名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 21:15:25 ID:9ZjZSS0D
>>450
わかっちゃいたが最後の一文で全俺が号泣した

俺? 幼馴染なんていませんよ。四人の従姉妹と小さい頃からよく遊んでましたけど。
452名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 21:17:17 ID:iQsv0FEv
おわり。そして風のように去る
453名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 22:08:50 ID:/hnBb7Xp
>>451
それなんて学校の階段?
454名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 22:25:32 ID:KMLqnaDo
>>451
こりゃこりゃ。
君は幼馴染みの法則を忘れたのかね?


姉妹=幼馴染みは成立しないが
従姉妹=幼馴染みは成立するのだよ。

この「従姉妹優性の法則」を忘れるなんて…
ゲフンゲフン
455名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 12:20:59 ID:sK7laXwx
幼馴染みで居られる期間って決まっている気がする
仮に22年として、ある人は生まれた時から大卒までの22歳
別な人は中学3年間離れていたから25歳まで幼馴染みみたいな

自分は前者だったけど
456名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 12:27:12 ID:0nvkTjmS
>>450
幼馴染撲滅委員会を思い出したのは俺だけか
457名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 20:19:19 ID:mId0IG35
>>456
こりゃ驚いた。実は幼馴染好きと撲滅委員会との死闘という題で
軽いおバカな話を書いていた時に思いついたものなんで遠からず近からずといった感じ

というか、お前おれの思考を読んでいるな?
458名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 09:16:00 ID:tXR0dxt8
幼馴染みと卒業式
459名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 18:41:00 ID:6MjwL9J8
>>458
新作のタイトルかと思って正座して待ってるんだけど・・・・?
460名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 18:52:06 ID:yT+mnPWH
>>459

脱げ! そして背筋を伸ばせ!

全裸で正座、それが基本だ。
461名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 21:39:17 ID:Sw0o4wg8
幼馴染みを卒業して恋人同士という新たなステップに至るんですね。分かります!
462名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 01:28:27 ID:XFcN0G1H
>>458に強烈なインスピレーションを受けたのだが、書いたらgdgdになった
反省はしているが投下する。嫌な人はスルーで
463幼なじみと卒業式:2008/03/10(月) 01:30:50 ID:XFcN0G1H
「卒業式、終わっちゃったね」
「あぁ」
人がいなくなった教室。残っているのは二人だけ。
「この教室を使うことも、もうないね」
「そうだな」
ある者は学友と語らって笑い、ある者は別れを惜しんで泣き、ある者は変化を想って遠くを見つめ。
「みんなとも、しばらく会わなくなるんだね」
「だろうな」
その喧騒も今はなく。静けさの中、二人の声だけが教室に響く。

「……拓哉とも、しばらく会えなくなるんだよね」
少女の声音が少し沈んだ調子になる。
今までの、寂しくも温かな気持ちを感じさせる物とは少しちがった。
「……あぁ」
言葉を返す少年の声は、やはり少しだけ寂しそうだった。
彼は春から地方の大学に進学することが決まっていた。
大学の場所はここからは遠すぎる。自然、向こうに下宿することになった。
「引っ越しの準備はできてるの?荷物まとめたりとか」
「まぁそこそこ。だいたい、まだ一週間はあるんだけどな」
彼にとって、その地は全く未知の世界である。
そのため、早く慣れるようにとすぐに向こうに行くことになっていた。
「早いこと向こうに馴染めるといいね」
「同じ日本だし、さして問題はないだろうよ」
「視点が広すぎだよ、それは」
他愛ない会話。今までと同じ、とるに足らない、そんな時間。
だがそれも、もうすぐ終わる。

「それにしても、とうとうこの日が来ちゃったんだなぁ」
「何が?」
「ほら、私たちって今までずっと学校一緒だったじゃない」
「おまけにクラスまで一緒だったな」
他人に話せば冗談と思われるかもしれないが、本人たちにとっても信じられない話であった。
同じ学校に通っていた友人たちも、最後はなまあたたかい視線を向けるようになっていた。
「それでさ、長い休みとかでもずっと一緒に過ごしたでしょ?」
「正確には宿題を手伝わされたんだけどな」
彼女は宿題などはあとから一気にするタイプで、長期休暇の終盤ともなれば、
提出物を堅実に一つずつこなし、ほぼ全てを終わらせた彼にすがることがいつもだった。
「けど、さ」
少年の抗議は右から左に流し、少女は、どこか遠くを見るような目で。
「そういうのも、これからはなくなっちゃうんだなぁってさ」
寂しそうに、つぶやいた。
464幼なじみと卒業式:2008/03/10(月) 01:32:43 ID:XFcN0G1H
ずっと一緒だと思っていた。今までがそうだったのだからと、何の根拠もなく。
でも、それは勘違い。本当は、歩いてきた道がたまたま隣り合っていただけだ。
これからは、二人の道は別々の方角を向くことになる。隣り合う道はなくなるのだ。

教室を静寂が支配する。何とも言えない空気があたりを包む。
「まぁ、今生の別れってわけじゃないけどさ。ちょっと違和感があるよね」
打って変わって、少女は明るい声で話を続けようとする。
いつもの空気じゃなかったから。二人の間に、こんな雰囲気は似合わない。
「でも、これがきっと『卒業する』ってことなのかもね」
今まで続いた習慣、当たり前と思った出来事との別れ。
新しい一歩を踏み出すための、一つの終わり。
「……そう、かもな」
短く返し、少年はしばらく考える素振りを見せる。
「どうかしたの?」
「……ん、あぁ、いや。もう一つ、個人的に卒業したいことがあってな」
「……何、それ?」
「お前との、この関係、かな?」
「?どういう……」
少女の疑問に対し、少年は真面目な顔で彼女を見る。

「茜。俺は、お前が好きだ」
突然の告白。少女の思考が一瞬止まった。
「……へ?」
「正直、いつか言おうと思ってた。けど、お前の隣はいつも俺がいたから、
 今さら別にいいかとも思ってたんだ」
思考の追い付かない少女に構わず、少年は一気にまくし立てる。
「けど、これからは俺はそばにいられなくなる。
 俺がいない間に、誰かがお前の隣に立つかもしれない。
 そんなの俺は、嫌だから」
二人の道が隣り合っていたのは、単なる偶然かもしれない。
しかし、いやだからこそ。これからも隣に立っていたかった。
偶然ではなく、確固とした繋がりを持って。
「だから、幼馴染みの関係は卒業しようと思ってな」
そうして、新たな一歩を踏み出そう。いつまでも、同じ場所には止まれないから。
465幼なじみと卒業式:2008/03/10(月) 01:33:49 ID:XFcN0G1H
「……私もね」
少女はうつむき、ぽつりと言葉をもらす。
「私も、本当は拓哉と同じことを考えてた。
 でも、怖くて。それを言ったら今までの何もかもが崩れる気がして、言えなかった」
「茜……」
「でも、それじゃダメだよね。何もかもが変わっていくのに。
 終わらせたくないと思っていても、いつかは終わっちゃうんだから」
学校生活などはその最たる例だろう。
皆、名残を惜しみつつ、それでも先に進むのだ。自分たちだけ残ることなどできない。
「やっぱり拓哉はすごいね、私が怖くてできなかったこともやって見せちゃうんだから」
「じゃあ、茜……」
彼女は顔を上げた。その顔に浮かぶのは、とびきりの笑顔。
「うん、私も卒業する。私も、拓哉が大好きだから!」
その表情に、少年は思わず見惚れてしまったことは、いうまでもない。

「ね、拓哉。ちょっと思いついたんだけど」
「ん、何だ?」
隣り合ってた二人の道は、これからは分かれていくことになる。
「二人の卒業記念と、新しい門出を祝って、ちょっとやりたいことがあるの」
「やりたいこと?別にいいけど」
それでも今までよりも強い絆が、二人の間にできたから。
「うん、それじゃ目、つぶって」「こうか?」
分かれた道は、いずれ再び近づいて。
「うん、それじゃ……」
「……ん、んむっ!?」
「……ん、終わり」
「……お前なぁ」
「いいでしょ、せっかく恋人同士になったんだし」
「恥ずかしいわ、ったく……」
やがて一つに、寄りそうのだろう。
466名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 01:37:00 ID:XFcN0G1H
うん、まぁ何だ
とりあえず>>458、タイトルパクってごめん
誰かオレにうまく短くまとめる方法を教えてくれ、まとめようてするとgdgdになるorz
さて逃げるか
467名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 01:40:38 ID:wTDI1m4c
大儀であった……!

いやあ普通にまとまってると思いますけどね?
これ以上削ると今度は文章が少なくなるような気がしないでもない。
468459:2008/03/10(月) 06:31:36 ID:S9OoiyHh
>>462-466
ありがとっ! やっと正座解除できるよっ!
代わりに顔のニヤケが止まらなくなっちまったが。
469名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 10:14:51 ID:l6zfmqfB
乙、普通にまとまってるし面白いよw

で、二人の処女童貞卒業式篇マダー?
470名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 13:33:43 ID:MJvzWe3B
>>466正直ほんの少しだけ期待してた。
でもまさか俺の妄想を本当に書いてくれるなんて、予想外だった。 
ありがとう!GJ!そしてこんな甘いほのぼのを途中で終わらせないでくれ!
 
・・・てか白状すると、こんなこと書いたのも息子がもうすぐ卒業して、【男の】幼馴染みと離れ離れになるって嘆いてたからなんだぜ。
471名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 20:45:14 ID:9ddqAxMl
>>470
アッー?
472名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 23:16:03 ID:XFcN0G1H
>>470
やっぱり寂しいだろうな、そういうのは
同性なら友情とか強そうだし

自分が書く物は「幼なじみと〇〇〇」にしたい人からちょっと質問なんだけど、
やっぱりその、二人が肉体的につながる場面ってあったほうがいいのかね
エロパロスレだからもちろんあったほうがいいんだろうけど、
本気で未知の領域だからうまく書けるかわからないのよね
>>1にはなくてもいいとはあるが、やはり今回そういう要望があるみたいだし……
まぁこうやって妄想を投下するのもここ最近はじめたことなんだけど
473名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 23:17:34 ID:XFcN0G1H
>>470
やっぱり寂しいだろうな、そういうのは
同性なら友情とか強そうだし

自分が書く物は「幼なじみと〇〇〇」にしたい人からちょっと質問なんだけど、
やっぱりその、二人が肉体的につながる場面ってあったほうがいいのかね
エロパロスレだからもちろんあったほうがいいんだろうけど、
本気で未知の領域だからうまく書けるかわからないのよね
>>1にはなくてもいいとはあるが、やはり今回そういう要望があるみたいだし……
まぁこうやって妄想を投下するのもここ最近はじめたことなんだけど

あ、忘れちゃいけない。読んでくれた人ありがとうね
感想あるとそれだけで頑張れるぜ
474名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 23:24:30 ID:XFcN0G1H
長い上に二重投稿とかorz
連投になるけど、ごめんなさい
475名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 00:19:56 ID:AyGQOiJc
>>473
見せ方によってはキスとか手を繋ぐだけで、下手なラブシーンよりエロいんだぜ?
まぁ、言うまでもないが、ここは幼馴染を萌えるスレなので、萌えれるシチュならなんでもいいと思う。
エロくて更に萌えれるんならそりゃ凄いが。
476 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 00:46:04 ID:2ZARaFPU
SS投下します。
幼馴染ものですが同時にお姫様もので歴史もの。
スレ違いとの指摘がありましたら発表場所を移します。
477名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 00:50:03 ID:gZoyiNsk
幼なじみであるのなら、拒む理由はどこにもない
さぁカモン!
478 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:00:07 ID:2ZARaFPU
『ラピスラズリ』


第一章


午前の講義を終えて私は急ぐ。
厨房に入ってしばらくしてそこから飛び出すと先ほど以上の勢いで今度は裏門を目指す。その手に抱えているのはお手製のランチだ。
「アンナに料理なんてできるのかい?」
そう言ったあいつを見返したくて城のシェフに無理を言って、昨日の内から準備をし始めて、つい先ほど完成したもの。
なんでもそつなくこなす姉のテレジアと違って自分は、決して器量がいいとは言えない。厨房は戦場の如く乱れ、今は給仕人たちが後始末に追われている頃だろう。
そもそも王族なんだから料理をする必要なんてないんだしと思って、今までは姉のスイーツ作りの誘いもことごとく断ってきた。しかし、
「絶対見返してやるんだから……」
幼馴染みのヨハネに焚きつけられては黙ってはいられない。
このお弁当がなくても今日は彼に伝えたい事があるのだ。自然に足取りは軽くなり、城の裏門を出る頃にはすでに駆け出してしまっていた。
城の正面には大きな城下町が広がっているが、裏門のほうはすぐに山林に至るためそれほど人の手は入っておらず人影は皆無だった。
もっともこの姿を見られたところで、またおてんば姫が何かやってる、と呆れられるだけで呼び止められもしないのだが。
小川を飛び越えた先、城と山のちょうど中間の小高い丘の上に目標の場所はある。
急斜面は視界の半分が青く染まるほど。
「ちゃんと整地しなさいよね、まったく」
悪態をつきながらも足取りが緩まる事はない。土に着くドレスの裾も今日はいつも以上に気にならない。
鼻腔をくすぐる甘い匂いと周りを飛び交う蝶々たちが目指す所が近い事を教えてくれる。
斜面を登りきる。目の前には一面の花畑。
築城のとき本来ならこの辺りまで範囲を伸ばすつもりだったらしいのだが、そこは貧乏領主。
見事に計画は頓挫し中途半端に整地した土地は野生の植物と、人の手による観葉植物が入り混じる節操のない花畑になっている。
その中心、打ち捨てられた作業小屋におっかかるようにして彼はそこにいた。本を手にしているがそれを読むでもなく、ただ目の前の花を見つめ静かに佇んでいた。
その仕草に思わず鼓動が高まってしまう。運動によるそれとは明らかに異なる動悸。
少し悔しい。本当なら彼にこういう想いをさせて、自分は高みから見物というのが主従関係に基づいた正しい関係だろうに。
悔しい。
だから駆け出して、
「ヨハネー!!」
名前を呼びながら彼に思いっきり飛びついてやった。
479 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:00:56 ID:2ZARaFPU
ごん、とあまり好ましくない音が聞こえた。
抱きついた胸から顔を上げて、彼の様子をうかがってみる。
「つっ〜〜〜ぅ……」
頭を抱え悶絶するヨハネ。どうやら抱きついた反動で後ろの壁に頭をぶつけてしまったらしい。
いい気味だ。分不相応にも私をあんな気持ちにさせるからそういう天罰が下るのだ。十字を切って神様に感謝。
「いきなり何をするんだよ!」
「あら、お姫様の熱烈な抱擁を受けての第一声がそれ? 臣下としての身分をわきまえなさい、ヨハネ」
「じゃあ君はもう少しお姫様の自覚を持ってくれよ、アンナ」
皮肉を返しながらも、ヨハネの腕は私の背中に回されてる。それだけで私の中は満たされてさっきまでの意地悪な気持ちはどこかにいってしまった。
「あはは、ごめんね。急いでたから。そんなに痛かった?」
「うん。目の前を火花が走った。凄い威力だったよ……ひょっとして少しふとっ」
「それ以上言ったらここより綺麗なお花畑に連れてっちゃうわよ?」
また別の私が顔を出す。ヨハネの顔が引きつっていく。
「アンナ……冗談だから、その壮絶な笑みを引っ込めてくれ。怖すぎる」
「あなたが悪いのよ。変な事言うから……っとこんなことしてる場合じゃなかった」
私は右手で持っていたランチボックスを……あれ? さっきまであったはずなのに今私の手は空だ。きょろきょろと辺りを見回す。
「あー、ひょっとして探し物はあれかい?」
ヨハネが指差す先、私の後方にランチボックスは無残にも打ち捨てられていた。
そうか、さっき飛びついた時に落としてしまったのか。いそいそと拾いに行き、箱を覆っているクロスを解く。何もはみ出してはいないし、どうやら中身は無事のようだ。
「何それ?」
ヨハネが不安そうに訊いてくる。
「お弁当」
「お弁当?」
「お弁当」
「誰の?」
「私とヨハネの」
「作ったのは? テレジア?」
「姉さんは今病床だもの」
「じゃあ、城のシェフ?」
なんだか会話を重ねていくごとに、ヨハネの声がトーンダウンしていくような気がするのだけれど。
「私」
「…………」
「わたくし、アンナがヨハネのお弁当を作ってまいりました」
妙な間が私とヨハネの間に流れる。ヨハネはすくっと立ち上がると、
「さあ、午後は武芸の訓練があるから急がなくちゃ」
そんなことを言って歩き出そうとした。それを、
「待ちなさい」
腕を思いっきり引っ張ってこちらに引き寄せる。
480 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:01:28 ID:2ZARaFPU
「あなたこの前なんて言ったか覚えてる?」
目の前にヨハネを強引に座らせ、私はその前に鎮座して彼を問い詰める。少し考えて彼は、
「テレジアの焼いたクッキーはおいしい」
「その後」
「今度会えるのは三日後の昼休みからだね」
「その前」
「えーと……」
「もう、いいわ。私が説明してあげる。あなたが姉さんのクッキーをあんまりほめるもんだから、
私だってそれぐらいできるわよって言ったの。そしたらあなたったら、アンナに料理なんてできるのかい? そう言ったのよ」
「そうだっけ」
「そうよ。だから今日はお弁当を作ってきたわけです」
すっ、とランチボックスをヨハネの目の前に差し出す。手でふたを開けるジェスチャーをしてヨハネに先を促す。彼は目を一度閉じて、勢い良く私の手作り弁当と対面した。
「あれ?」
その第一声がこれだ。さっきもそうだったがこの男時々凄く失礼だ。
「あれ? って何よ?」
「いや、意外にまともだなって思って……多少盛り付けが乱れてるけど、ちゃんと火は通ってるみたいだし、いい匂いもする」
主従関係をわきまえない物言いに腹が立つがそれはおいておく事にする。今は一刻も早くお弁当を食べて欲しい。
そんな私の気持ちを感じ取ったのかヨハネはおずおずと手を伸ばし、それでも最後は一気に料理を口に運んだ。
もぐもぐと咀嚼して、ごくりと飲み込む。そんな彼の動作を見ているとなんだかとても幸せな気分になれた。
「……おいしい」
そうしてヨハネはやっと私の満足する答えを返した。少し自信がなかっただけにその反応は本当に嬉しかった。
「あったりまえじゃない! この私が作ったものがおいしくないわけないでしょ!」
それでも動揺は見せまいと虚勢を張る。ヨハネはというと、
「特別おいしいというわけではないけど、十分に及第点というか、期待してなかっただけにおいしさ倍増というか……この際城のシェフの味付けにそっくりだという事は黙っておこう」
なんだかぶつくさと独り言をつぶやいていた。いまいち釈然としなかったが、おいしいと言ってくれた事だし、まあよしとしよう。
481 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:02:51 ID:2ZARaFPU
そうして二人きりのランチタイムとしゃれ込み、すっかりランチボックスを空にしたところで、のどが渇いたのでヨハネに水を汲みに行かせ、
その後は二人で寝転んで何をするということもなく、初夏の暖かな日差しの中でただ呆然と空を眺めていた。
「ヨハネ」
唐突に話しかける。ヨハネは「ん?」と呼びかけに応えこっちを向く。
「好きよ」
「僕もだ」
短いやり取り。それでも私達の想いは十分に通じ合ってる。手を動かし彼の指先に触れる。握り返される指。その確かな感触に自分がとんでもない幸せ者だと自覚する。
「話があるの」
「なんだい?」
一回息を大きく吸い込んで、それから今日の本題を口にした。
「姉さんの結婚が正式に決まったわ。予定通り相手は隣国のカール皇太子」
「……おめでとう」
そう言ったヨハネの口ぶりは暗く、心から結婚を喜んでいるのではない事が伝わってくる。正直私もこの結婚には賛成できない。
「大国との縁談だ。これでこの国も安泰かな」
全く気持ちのこもってない口調。ヨハネもきっと私と同じ気持ちなのだ。
「そうね、でも私は納得できない。姉さんにも想い人の一人ぐらいいるでしょうに、こんな政略結婚……姉さんが可愛そうよ」
「しょうがないさ。こういう時代だ。君の父上も国の未来を案じて出した結論だろ」
「でも姉さんの未来はどうなるの? こんな望みもしない相手との契りなんて私だったら堪えられない」
声を荒げてしまう。跡取りの男児が生まれなかったこの国を守っていくにはそれが最善の方法だと頭では理解できても、心は静まってくれなかった。
「テレジアの未来がどうなるかなんて誰にもわからないさ。彼女は賢く優しい人だし、誰からも好かれる。強国の女王としてそこで新しい幸せを見つけられるかもしれない」
それに、とヨハネは付けたし、
「これで僕達は無事に結ばれる事ができる」
 核心に触れた。
そうなのだ。隣国との同盟が成立し、この国が安定すれば私のヨハネとの結婚も認められる。王女と一家臣の次男坊に過ぎない私達の十五年越しの恋が実る。
それは普段何の要求もしない姉さんのたった一つの望みでもあった。姉さんはことあるごとに、
「私は国のために生きます。でもアンナは彼女の想う人と結ばせてやってください」
とお父様に訴えていた。今回の結婚もお父様がその要求を呑む事で、姉さんも了承したのだ。
「だからよ、なおさら姉さんが可愛そうだわ……それに私さっきみたいな事を言っててもやっぱり、心のどこかで安心してる。
ああ、これで私はヨハネと結ばれるって、まったく嫌な妹よね」
隣でヨハネが立ち上がる気配がした。握っていた指はいつの間にか解かれている。さえぎられる陽光、目の前にヨハネの顔があった。
「でもだったら、いや、だからこそ僕達は幸せにならなきゃいけない」
「そう、よね」
頷いてみせる。それは姉さんの優しさに託けた都合のいい自己愛に過ぎない。それでも、姉妹の愛情よりも、国の未来よりも、どうしようもないほどに私はヨハネのことが好きなのだ。
どんどん視界が暗くなっていく。彼以外何も見えなくなる。
つぶれていく花の上で、解かれた指は先ほどよりも強く握られていた。
482 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:03:46 ID:2ZARaFPU
キスの続きをせがんでくるヨハネ。胸に当てられた感触を拒絶しようとお腹を蹴飛ばして、距離を開ける。
「結婚するまでキス以上は駄目だって言ってるでしょーがっ!!」
「何だよ、今日は大丈夫だと思ったのにな」
ヨハネはお腹をさすりながら不満を漏らした。
まったくしんみりとした雰囲気にすっかり油断してしまった。こともあろうに婚礼前の娘の懐に手を入れようとするなど何を考えているのだ。
しかもこちらはプリンセスだ。無礼にもほどがある。
「絶対駄目なんだからね」
ちぇっ、と舌を鳴らすヨハネに近づく。
「今はこれだけで我慢して」
今度は私から唇を重ねた。そのまま彼を後ろに押し倒す。私達は抱き合って、花畑を転がる。汚れていくドレスも、乱れていく髪も気にならなかった。
互いの温もりと唇の感触を堪能した後は仰向けでまた空を見る。私はこうやって空を見上げるのが大好きだった。
流れていく雲、咲き誇る花の薫り、肌をくすぐる草の感覚、繋いだままの手から伝わるヨハネの鼓動と温もり。その全てがどうしようもなく心地よかった。
「それにしても急だな」
心地よさのあまりまどろんでしまっていた、意識が呼び戻される。
「んー、何が?」
「テレジアの結婚が、さ。彼女最近体調を崩してるんだろ? 何もこんなときにそんな事決めなくていいだろうに」
「それは、そうだけど……お医者様の話じゃそれほど酷くはないみたいだし、父様もこういうことは早いほうがいいって」
私もそれは気になっていた。でもただの風邪だという話しだし、なにより今朝の姉様はそれほど体調が悪いようにも見えなかった。
「それならいいんだけど」
なんだか急に不安になってきた。私はそれを打ち消そうと、
「ねえ、街に出てみない? 最近南からのキャラバンが来たらしくて、城の給仕たちが噂してたの。何か珍しいものが見れるかも」
無理やりにも明るい声を出した。
「ああ、それは面白そうだ。早速行ってみようか?」
ヨハネは勢いよく体を立ち上がらせる。手を繋いでいる反動でこちらも半身を引き起こされた。
「さあ」
彼に習って私も立ち上がる。そして二人で駆け出した。その足取りは軽く、先ほどまでの不安はすっかり薄れていた。
483 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:04:41 ID:2ZARaFPU
街の真ん中に位置する広場、城への通りのすぐ近くにそのキャラバンは屋台を構えていた。人々がごった返す中やヨハネと二人で歩いていく。
「や、姫様。ごきげんよう」
「ああアンナ様、こんにちは」
街の人たちも馴れたもので王女である私が現れてもなんら驚いた様子もない。こちらも気さくに挨拶を交わし、屋台に近づいていく。
「わあ、綺麗ね」
どうやらここは貴金属や宝石を扱っているらしい、遠方からのものなのか王族である私ですら目にしたこともない珍しいものが並んでいる。
「うん。本当に綺麗だ……ひょっとしてここにあるものは新海路から来たものなのかな?」
「いや、今回持ってきているものは陸路、東南からのものがほとんどだよ」
ヨハネの疑問に答えたのは店番をしている青年だった。一見したところまだ年若い。私達からほんの二、三歳しか離れていないだろう。
「あなたこのキャラバンの一員なの?」
「ああ、こっちに来るときはよく同行させてもらっている」
「ふーん……」
先ほどよりもじっくりと観察してみる。行商をしているわりには綺麗な肌をしているし、物腰も柔らかだ。それに着ている服も旅商人のそれではあるが高級感漂う生地を使ってる。
大方どっかの大商人の後取りか何かで今は修行中だったりもするんだろう。
南方は例の大国の領土を越えれば商人の領域だし、ひょっとしたらそのあたりの出身かもしれない。
「こっちの宝石も綺麗だなぁ。ねえアンナ?」
ヨハネの声で意識が宝石に戻される。南方からの奇妙な来訪者は気になったが、それよりも今はこの宝石たちの方が重要だ。
ふと、視界の隅に移った宝石に目を奪われた。それを指差しながら話しかける。
「ねえヨハネ、あれって……」
「ああ、あの丸くて青いの? 
……なんだろう? サファイア、じゃあないよね。なんていうか……」
青い、深い青色。もはや藍との区別がつかないほど色が濃いのにそれでもどこか透明性を持っている。それに白や金色のまだら模様が混じっている。だからそう、まるでさっきまで眺めていた、
「空のかけら、みたいだね」
ヨハネの言葉に驚いてそっちを向く。
「私もそう思ってた。まるでさっきまで眺めてた空みたいだなって……」
「僕もだ。同じこと考えてた」
世界中に二人だけしかいなくなったような錯覚に襲われる。
「ヨハネ」
「アンナ」
見つめ合う。彼の碧眼の中に映る私の顔、そして私の金髪、それはまるであの宝石みたいで、
「はははっ」
吸い込まれそうになったところを素っ頓狂な笑い声が呼び止めてくれた。
余計なことを……。
484 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:08:10 ID:2ZARaFPU
「二人とも仲が良いんだね。それに石を見る目もある、サファイアってのもあながち間違いではないし、それにその比喩、まるで古代の学者だ」
「古代の学者?」
「ああ、古代帝国の博物学者はこの宝石のことをこう呼んでる“星のきらめく天空の破片ってね。もっともこれは夜空のことを指してるんだけど……。
うん。なるほど、そういう見方もある。色々な用途、色々な姿を持つのがこのラピスラズリの特徴でもあるし」
ラピスラズリ? 私はその聞きなれた名前に驚いた。
「ラピスラズリですって? この綺麗な宝石が?」
城にもラピスラズリを使った装飾品はいくつかある。しかしそのどれもがこのような綺麗な姿ではなかった。なんだか煤けたぼんやりとした印象しか与えられなかった。
「言ったろ、いろんな姿があるって。こんなに綺麗な色合いと模様のものは結構珍しいんだよ。もっとも交易路の発展のおかげでそれほど価値は高くないけどね」
へえー、とヨハネと二人して感心する。同じ宝石でもこうまで印象が変わるものなのか……。
「気に入ったわ、これ頂くわね。おいくら?」
「代金はいいよ」
「は?」
「ああ、失礼しました……」
ここで店番の青年はわざとらしくかしこまり、咳払いをすると、
「お代金など受け取れません。第二王女アンナ様」
そう仰々しく言ってのけた。
「気付いてたの?」
「別に隠してもなかったでしょう。この国のアンナ王女様はとんでもないおてんばだと話には聞いていたけど、
いや、実際その通りでしたね。一人しか護衛もつけずにこんなところにくるなんて」
かんらかんらと笑いながら青年は無礼な口をきく。正直少し腹が立ったが、それよりも疑問だった。
「なんでよ。それなら世間知らずのお姫様に法外な値段をふっかけよう、とかは思わないわけ? 商売人根性が欠けてるんじゃないの?」
「思わないさ。ここではもう随分と儲けさせてもらったし、今回の行商は今日で終わり、帰りの荷物は少ない方がいい。そして何より、その宝石は君にふさわしい」
まだ少し言いたいことはあったがこれでは素直に受け取るしかない。
「ありがとう」
そうお礼を言ってそのラピスラズリを受け取った。すると彼は肩をすくめ両手を上に向けると、
「あー、お礼はいいからその御付の彼をどうにかしてくれないか?」
そんな変な事を言ってきた。
「ヨハネを?」
横を見れば普段は温厚なヨハネが鋭い目つきで青年を睨んでいた。視線を下げればその右腕は剣の柄を握っている。今にも切っ先を目の前の男に突き出しそうだ。
まったく、こういう時の忠誠心は人一倍なのだから。
「ヨハネ、控えなさい。もう用事は済んだのだから戻るわよ」
騎士に接する王女の口調で私はヨハネを制した。すっと彼の体から緊張がとかれる。
「わかったよ、アンナ」
彼のいつも通りの返事を聞いて、私は微笑む。そうして最後に店番の青年に別れを告げ、広場を後にした。
「お幸せに、お二人さん」
遠くからかけられたその言葉で、ヨハネがまた不機嫌になったのは言うまでもない。
485 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:09:38 ID:2ZARaFPU
「ねえ、なんでさっきはあんなに怒ってたの? 確かにあの人の態度は褒められたものではなかったけど」
広場から城への帰り道、私はヨハネに理由を問いただしてみた。
「なんでも何も、一国の王女に向かってあの態度は無礼すぎるよ」
「でもあの人最初っからあんな感じだったじゃない、なんでまた急に」
「最初は気付いてなんだからしょうがないって思ってた。でもあの人は気付いてたんだ。
それなのにあんな態度……君に仕える騎士としては許せない」
ヨハネの言う事はもっともなのだけど、建前ばかりで本音を隠してるような気がする。
「でも街の人だって似たようなものじゃない。あの人たちみんな私のことおてんば姫って呼んでるわよ」
「親しみを持つ事と無礼な事とは違うよ。街のみんなそう言いながらもちゃんとアンナに敬意を払ってる。でもあの人の口ぶりはまるでアンナを見下すようだった」
「そう? 私はそんな気は特にしなかったけど」
私の言葉にもヨハネは、
「いや、彼は無礼すぎた」
と語気を荒げた。
やっぱりおかしい。あれぐらいの言葉でヨハネがそれほど腹を立てるとはどうにも思えなかった。私はもう一歩踏み込んで訊いてみる。
「本当はそれだけじゃないでしょ? あなたが丸腰の旅商人相手に剣を握るなんてありえないもの」
「…………」
気まずそうに沈黙するヨハネ。
「答えなさい、ヨハネ。これは王女としての命令よ」
口調はあくまでもアンナのままで私は彼を詰問した。
「……あの人、宝石を渡すとき直接アンナに渡した。その時君の指にも触れた」
「へ、そんなことで?」
意外なヨハネの言葉に間抜けな声を返してしまう。
「そんなこと、なんかじゃない。旅商人風情が王族である君に触れるなんて本来あってはならないことだ。
君も軽率すぎる。あの時は僕が近くにいたんだからそういうことは僕を通すべきなんだ」
大層な言い分ではあるが、つまるところヨハネは、
「妬いてたんだ」
騎士としての忠誠心、そして恋人としての愛情の両方からヨハネはあの青年を睨んでいたわけだ。
横を歩くヨハネは何も言わなかったが少し早くなった歩調がその推測が正解である事を示していた。
「それにしても剣を抜こうとまでするなんて、少しやりすぎよ。あのときのヨハネったら模擬戦のときよりおっかない顔してたわよ」
その何気ない一言にヨハネは歩みを止めこちらを振り向いた。
すでに傾き始めた太陽に照らされたその顔は息を呑むほど真剣な表情だった。
486 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:11:15 ID:2ZARaFPU
「帯剣していた」
「え?」
「アンナはさっき丸腰っていったけど彼は帯剣していたよ」
突然のことで思考がまとまらない。大体彼はどこにも刃物なんて身に付けてなかったと思うのだけれど。
「腰の後ろの方、正面から死角になるところに、多分短剣を差していた。
始めは気が付かなかったけど、宝石を取りに行くときの体の重心がおかしかったから」
良くない想像が頭を過ぎる。武力の象徴である刃物をわざわざ死角に隠す、それの意味するところは……。
「あん、さつ?」
こくり、とヨハネは頷く。
「僕もそう思った。だから少しでもおかしな動きをしたらいつでもその首をはねてやるつもりだった」
背筋が凍る。王族として育ってきたからにはこういうこともありえるだろうと覚悟はしていたが、まさか本当に……。
「か、考えすぎじゃないの、ほら彼の屋台は貴金属を扱ってたしそれで護身用に、とか」
焦燥感のせいか声が上擦っている。そんな私を見てヨハネは大きく息を吐くと、
「多分ね。交易路が整備されているといってもこの辺は未だに物騒だし。
遠方からの旅なら短剣の一つや二つを身に付けているのはむしろ当然といえる。
何より彼はそんなそぶりは微塵も見せなかった。今考えれば過ぎた心配だったと思うよ」
そう言って、いたずらっぽい微笑みをこちらに向けた。
「へ?」
「いや、ごめん。もう少しアンナに王女としての自覚と慎ましさを持ってもらいたくてね。ちょっと意地悪してみた」
張り詰めていた糸がぷつりと切れた。脱力感、次いでわきあがってきた感情は岩をも溶かすような激しい怒り。
「ヨハネーーっ!!」
私が叫び走り始めたとき、ヨハネはすでにトップスピードへ達し城の庭園へと向かっていた。
今日三度目になる全力疾走。それでも疲れた感じは全然しなかった。
487 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:13:40 ID:2ZARaFPU
なだらかな上り坂を進み街と城を隔てる川を越えれば、そこは色とりどりの花に飾られた正面庭園だ。今の季節は特に薔薇が綺麗に咲いている。
でも私達がそこまで行く事はない。
庭園にはいつだって人が多いし、ヨハネと一緒にいるところを見ると、城のみんなはいい顔をしない。
走ってきた私達は橋を渡り終えると斜面を下って川べりに向かう。
「待ちなさいってのっ!」
声を張り上げる。下り坂にもひるまずスピードは緩めない。それがいけなかったのか、
「あっ!」
少し大きめな石に躓いてしまった。
それでも私の体が地面に着く事はない。当然のようにヨハネが私を支えてくれていた。
「お気をつけくださいませ。アンナ様」
彼はわざとらしく言ってそのまま私の体を持ち上げた。
「ひゃっ」
膝と脇に手を差し込まれる形で抱き上げられる。少し不安定な感じがして怖い。
「な、何をするのよ! 降ろしなさい!」
「そういっている割には君の腕は僕の首に巻きついているんだけどな」
さっきはずみで抱きついてしまったのだ。決してヨハネのことを許したわけでも、こんな抱かれ方が好きなわけでもない。
私の更なる抗議の声も無視してヨハネはどんどん進んでいく。結局私が降ろされたのは橋の下に至ってからだった。
「はい、到着しましたよ。お姫様」
「到着って何よ。あれぐらいじゃ、さっきのことは許してあげないんだからね」
「ごめん。ほら、なら昼のあの体当たりでおあいこってことで」
「あの借りはお弁当で返したでしょ! 今度はそっちが返す番なんだから」
ヨハネはやれやれと首を振って呆れたように笑った。そして、
「じゃあ、これで」
唐突に私の唇を奪った。
「んっ」
お昼のキスとは違う。私の中にヨハネの舌が侵入してくる。
「やっ、ちょっ……ん〜〜」
後頭部を抑えられて私の逃亡はあっさりと阻止される。それで、もう逃げようという意思はなくなった。
私の方からも舌を伸ばしヨハネの口内を愛撫する。
「ん、ちゅっ、ふぅ……はぁっ」
舌を吸いあって、唾液を送りあう。
まるで耳のすぐ後ろに心臓があるかと錯覚するぐらい鼓動が高まっていた。頭に血が上って意識が霞みがかる。
気持ち良い。こうやってヨハネと深い口付けをしているだけで下腹部は疼きを覚え、私の奥の方は潤ってしまう。
ひょっとしたらズロースにはすでにしみができているかもしれなかった。
長かったキスはそれでも終わってみれば刹那の出来事のようだった。離れていくヨハネの感触が名残惜しくて舌を伸ばす。
そんな醜態を見られたことが恥ずかしくって私は地面を睨む。
「可愛いなアンナは」
今度は正面から抱きしめられる。私は抱きしめ返すか一瞬迷ったけれど、やっぱりそれは一瞬だった。
気付いたら私の腕はヨハネの背中に回されていた。
橋の下で涼しいはずなのに、二人分の熱のせいで私の肌はじっとりと湿っていた。
488 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:14:32 ID:2ZARaFPU
「ヨハネはずるいよ……いつも」
そうだヨハネはずるい。自分はいつも飄々としていてあせった様子もみせないのに、王女である私をこんな気持ちにさせるなんてずるい。
「そんなことないさ」
ぐいっと胸に引き寄せられる。聞こえてきたヨハネの心音は私に負けないぐらい高まっていた。
「僕が普段どおりに見えるのはアンナと会っているときはずっとこんな感じだからさ。
 十二年前の君の誕生日に初めて会った、そのときからずっと」
やっぱりずるい。こんな事を言われたらもう何も言えなくなってしまう。
私はせめてもの仕返しにと、彼の背中に回している手に目一杯力を込めた。

夏だというのに橋の下はひんやりと涼しかった。
あの花畑と並んでここは私のお気に入りの場所だった。橋のおかげで二人の姿が見られることもなし、わざわざこんなところに下りてくる物好きもいない。
たまに上を通る馬車の車輪の音が聞こえるだけで、城と街の中間点であるこの場所はとても静かだった。
キスの後は二人で座り込み他愛のない話をして、笑いあった。
太陽の光で水面が紅く染まりだしたころ、私達は立ち上がって城に向かった。
橋の側で私はここまででいいと言ったのだけれど、ヨハネは騎士の義務だからと言って正門まで送ってくれた。
「今度会えるのは五日後の昼からだから」
「ああ、わかったよ。あの花畑で待ってる」
いつも通りの約束を交わして私たちは別れた。

そして、

その約束が果たされることはなかった。
489 ◆Ms/Pnuh3DY :2008/03/11(火) 01:16:44 ID:2ZARaFPU
長くなりますのでとりあえず今回はここまでで。
二章以降も順次投下していく予定です。

感想等ありましたら、聞かせていただければ幸いです。
490名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 01:23:13 ID:gZoyiNsk
>>489
GJです
本当は身分違いなんだけど、幼なじみってのはそれすらも超越するから実にいい
ちょっぴり不穏な感じですが、wktkしながら続きを待ちますぜ
491名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 03:34:51 ID:BcPzb6x+
>>489
続きが気になる締め。
この後、どうなるんでしょうか?
おてんば王女さまに萌えながら第2章を待ちます!
492名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 06:57:05 ID:JVVhTv50
GJだけど、何でお姫様スレじゃなくて幼馴染スレなんだろ?
お姫様スレって幼馴染作品多いからあっちのスレの作品
見てるみたいだ
493名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 11:20:19 ID:sC+vHu9k
そんなこと言ったらおめー>>2にある関連スレとも条件が合致する幼なじみ話も
たくさんあるぞ

書いた人がどちらを重点的に書きたいかで変わってくるんだろう
494名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 21:50:55 ID:BcPzb6x+
幼馴染スレでのSSに初挑戦します。
短いですが、よろしくお願いします。
495ずっと、いっしょ:2008/03/11(火) 21:51:41 ID:BcPzb6x+
「また、そのブランコ乗ってるんだあ」
高校の制服姿のまひるは、公園でひとりたそがれる竜太をからかった。
「だって、懐かしいじゃん。ここ」
そんな、言い訳をしてポーンと蹴ってブランコを漕ぎ出す。
「わたしも、乗ってみようかな」
開いている横のブランコに、竜太と並んでまひるは腰掛ける。
「公園ってこんなにちっちゃかったんだね」
まひるは、辺りを見回しながら懐かしそうに語るが、少し憂い気な表情を時折見せる。
「昔、一緒に遊んだ公園にはもう行けないけど、ここってホラ、
そっくりすぎて思い出すんだよね。あの大きな木とか」
「ああ。あの木の前で幼稚園の頃、お前がおにごっこでイヌのウンコ踏んだ事とか」
「うるさいな!竜太だって、水鉄砲をベンチにおいて帰ったのを忘れて『なくなったよお』って泣いてたくせに」
ぐいぐいとブランコを思いっきり漕ぐまひる。ボブショートの髪が一緒に揺れていた。

「でも、あのことが無かったら、ずっといっしょにならなかったのかも」
「そうな、腐れ縁かあ」
「そんなのじゃないよ。わたし、あのときの竜太に感謝してるんだしね。ちょっと…うん。なんでもない」
まひるは、何か言おうとしたが、照れくさくなってやめた。
さらに空気が読めない竜太がフッと笑い、まひるを追い詰める。
「何だよソレ。もともとは、まひるがドンくさいからだよ」
「うるさいな!もう!」
まひるは、プーっとふぐのように膨れた。だが、立ち直りの早いまひる。
「ねえ、いつものトコ。久しぶりに行かない?」
ふと、思い出したように竜太を誘ってみる。
「そうな、オレもそろそろ行きたいなあって思ってた所だよ」
まひるは、竜太の手を引っ張り駆け出し二人は公園をあとにする。
496ずっと、いっしょ:2008/03/11(火) 21:52:08 ID:BcPzb6x+
いつもの歩きなれた大通り。人はまばら、車は殆ど走っていない。
広い歩道を、竜太が車道側、まひるが内側を一緒になって歩く。
「この先だっけ、ネットカフェ」
「あの交差点の先だよ」
交差点で信号を待つ。信号が変わるまで、二人はじっと赤く光る信号を見つめていた。
青信号。まひるは、一歩進む事をすこしためらった。
「ねえ、一緒に手をつなご」
ちょっと先に進んでいる竜太を呼び止める。
「うん、そうな」
まひるは、まるで恋人同士のように竜太の腕をしっかり握り、寄り添いながら横断歩道を渡る。
横断歩道を渡り終えると、ゲームセンターが入居するビルの入り口が見えてきた。
そのビルの8階に目的地があるのだ。まひるは竜太を引っ張るように、自動ドアに向かう。

8階、ネットカフェのカウンター。
ここは30分単位で利用でき、お手ごろ価格なので評判の店。
「えっと、30分のコースだと…うん、余裕余裕」
しかし、竜太は自分ポケットをまさぐりながら、少し焦っている様子。
「…やべえ、オレのサイフ…」
「おやおや?竜太のうっかり屋さん。忘れ物大王だけは、ちっちゃい頃から変わんないね。安心したよ」
「うるさいよ!うーむ…」
「はいはい、わたしが貸してしんぜよう」
「なま言うな。まったく」
竜太はまひるの顔を見るのをわざと避けながら、1000円札を受け取った。
「今度会った時、返すからさ」
「ふふふ、いつでもいいよ。なんせ、まだ駄菓子屋さんの10円チョコの貸し、まだ返してもらってないからね」
竜太は、よくそんな小学生の頃の話覚えてるなあ、とまひるに感心しながら呆れている。
497ずっと、いっしょ:2008/03/11(火) 21:52:41 ID:BcPzb6x+
この店の客層は、若い人たちが多いのだが、年配の人間もちらほらと見受けられる。
「ここにしよっ」
まひるの一声でブースを決める。
「久しぶりだから、ちょっとワクワクするね」
PCの前に座り、カチャカチャとキーボードを叩くまひる。
隣の席で、竜太がコーラをストローでちゅうちゅうと飲みながら眺めている。
「この住所を思い出すのも、何ヶ月ぶりかなあ…」
まひるの手が、一瞬止まり寂しそうな表情をする。
横顔を見ていた竜太、また空気を読まずに横から割り込み、まひるに続いてキーボードを叩く。
「えっと、城北区桜ヶ丘5丁目…」
竜太もこの住所を口にするのも何ヶ月ぶりだろう、と懐かしむ。
「おせっかいなんだから、竜太は」
キーボードの入力を終えると、検索ボタンをポチっと押す。モニターには町の上空画像が広がる。
「あっ、桜高校じゃん。変わんねー!」
「コレコレ!私の家だね」
ごく普通の一般的な一軒家。それでも、自宅が写るとちょっとわくわくする。
「そうそう、コレつけなきゃ」
装備されているヘッドフォンを取り出し、プラグに差し込む。残念ながら一つしかないので、まひるに譲る事に。
マウスを動かし、ホイールを回しながら画像をズームアップすると、屋根を突き抜け家の中が映し出された。
画像はリアルタイムで更新され、中の人物が動いている所まで分かる。
さらに、ヘッドフォンからは人物の声、音が伝わってくる。
二人はしばらく画像をじっと見つめる。
「あれ、おまえの母さんと兄貴だろ…」
「うん」

まひるの母親と兄は、何か話しているのを娘は静かに聞いている。
「あれから3年ね。この季節なるとなんだか…」
「母さん、あんまり思いつめると体に毒だよ」
「うん、分かってる。今頃は高校を出てるはずなんだろね、きっと。」
まひるは、涙でいっぱいになった瞳をぬぐう。
「お母さん…、お兄ちゃん…、元気そうだね…」
音は聞こえないが、竜太も一緒になってモニターに食い入る。
「最近、お母さん『コレが現実なんだね』と思えるようになったんだよ」
「うん、ぼくらができることは、まひると竜太君のことを忘れないことなんだよね」
「でも、まひるを助けようって飛び出した竜太君に、申し訳なくてね」
「あれは、信号無視のダンプが悪いんだって…」
モニターの画面をまともに見られないまひるは、号泣する。
隣の竜太も黙って、コーラをチュウチュウと飲んでいる。
「おかあさん…。また会いたいな…」
吹っ切れたように、まひるの涙は止まらない。マウスパッドに一滴一滴こぼれるものが。
無情にも、30分が過ぎ二人はネットカフェを後にする。
498ずっと、いっしょ:2008/03/11(火) 21:53:14 ID:BcPzb6x+
店から出た二人は空を見上げた。真っ青な空には雲がひとつ無い。
まひるは、ほんの少し今までの元気を取り戻す。
「下界のみんなも、元気そうだったね」
「うん、ここに来ればいつでも会えるしね。しっかし、便利な世の中になったもんだよ」
「うん。ここに来るまでは天国って天使が飛んでたり、神殿があったりするのかなあ、って思ってたけど、
下界とおんなじだからびっくりだなあ。だけど、逆に安心したよ。この世界」

今は、あの世もネット社会。
衛星を使った動画配信で、いつでも今後一生会うことの出来ない人たちをリアルタイムに見ることが出来る。
「コレ、発明したヤツ天才だよなあ。たしか、ネットのニュースで取り上げられてたっけな」
「そうそう、ナントカ製作所の元・技術者だっけ。こっちにきても研究熱心な人だった、て
関係者のブログに書いてたよ。きっと死ぬ気で開発したんだろうね」
下界の家族達を見て安心したまひるは、お寒い冗談を飛ばす。
そのギャグにげんなりした竜太は、突っ込む気力もなかった。
突然、ふと思い出したようにまひるは竜太を指差した。
「それはそうと、お金…」
「分かってるって、今度は早く返すから。1000円な!」
まひるは、首をブンブンと振る。
「ちがうよ。チョコの10円、早く返してよ」


おしまい。
499名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 21:54:31 ID:BcPzb6x+
投下終了です。それでは
500名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 22:03:30 ID:afmZctIZ
全俺が泣いた


GJだ、この野郎!!!!

転生した二人がまた幼馴染みにならないと許さないからな!!
501名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 22:47:03 ID:mdoFe5Uy
>>489
GJです! でもちょっと気になるところが。
>私達の十五年越しの恋が
>十二年前の君の誕生日に初めて会った
矛盾してね?

>>499
天界かよ!w
物悲しいんだけど、死ぬ時まで一緒だったってのはいいなあと思った。

果てしなくGJだぜ。
502名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 22:55:52 ID:GekRdoSY
いいなこれ。なんだか温かい気持ちになるわ
GJ!こういうの大好きです
503名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 06:02:42 ID:aF0NyvXC
三度の飯より幼馴染が好きであろう同行の士よ・・・
この幼馴染の行動を補完して、萌える展開で表現してくれ・・・

ttp://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-329.html
504名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 13:07:24 ID:6L2TD2FL
>>503
koeeeeeeee!!
俺の技量ではあるがままの補完は無理だ…
途中からフィクションにしてもいいならできるけど(誰だってできる)
505名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 14:36:58 ID:J2f24Sgm
両親が浮気してるってのも拍車を掛けるんだろうな。
いつ他の人に目移りするのか分からないという恐怖が更に加速させてるんじゃないかと。
506名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 17:03:50 ID:57QolUQ1
亀だが>>475、アドバイスありがと
萌えシチュを頑張りつつエロも精進するぜ
>>499
GJ
死んでも一緒か……ちょっぴり切ないな
でも二人は仲良さそうだから、いいのかな?
>>503
萌えシチュ化は難しい(ヤンデレは守備範囲外)なので、
そこの最新記事の「彼女を作ってみる」で心を癒すんだ
途中から幼なじみルートだから
507名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 20:43:31 ID:M6Fbb6g5
ヤンデレじゃないし萌えない

そんなことより野球しようぜ!
508名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 20:48:54 ID:cmtFAfV8
やっと3on3出来るくらいしか人はいないと思うが
509名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 21:38:45 ID:qaVjJ0om
>>508
ピッチャーとバッターさえいれば真似事は出来る、問題は無い

……と書いて、フと妄想が。
・ソフトボール部ヒロイン(熱血
・主人公帰宅部(無気力
・学生最後の試合直前とかそんな時期で。
1、主人公、ヒロインの熱心さをからかう
2、ヒロインと主人公、超喧嘩。むしろ冷戦?
3、試合、ヒロイン精神的にボロボロ。サヨナラ負け。
4、主人公、ヒロインに辛く当たられないことで深く自己嫌悪(俺のせいじゃね? 自意識過剰? いやいや…
5、謝りに行ってもダメでした!
6、引退の挨拶を遠くから眺める主人公、漂う哀愁。
7、次の週、放課後まで残って後輩たちの練習姿を見るヒロイン、いつの間にか眠ってしまう
8、夜になって、主人公もう一度謝ろうとするも部屋にいない。どこ行ったと探しに行く
9、学校でヒロインを見つける
10、ヒロイン、心情吐露。負けちゃったよぅ。(主人公)のせいにしようとしてる自分最悪だよぅ。
11、主人公、「……それじゃあ、今からやり直しだ」
12、誰もいないグラウンドで、ソフトボールの真似事を――
終わり。
こ、こんなんどうよ!?
510名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 22:05:50 ID:UnlEHgM7
>>509
なぜお前は文章にしなかったのかと小一時間(ry
511名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 22:53:08 ID:qaVjJ0om
>>510
……それもそうだな。
ちょっと書いてくるわー
512名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 00:43:09 ID:/MVICvkq
>>511
期待して待ってるぜ
513名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 01:32:36 ID:HWp8DOip
幼馴染なら何でもOKということは刻淫ワルツみたいな
ストーリーでも問題ないのだろうか?
514名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 01:42:31 ID:xt1aci/H
良く分からんが一番強い要素に幼馴染が含まれていれば良いんでね?
どうしても気になるなら投下前にジャンルを宣言すれば良いと思う。
515名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 02:06:51 ID:xf9+TZXM
>>509
これは大変に楽しみです
516名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 11:01:28 ID:KTfMtjEg
>>513
アレか・・・。

うーん、ジャンル宣言は必須だと思う。
いや、漏れは嫌いではないが。
517名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 19:56:42 ID:rXp1IBEf
>>513
調べてきた。
このスレ、ガチエロ少ないからな……ちょっとそういうのも見てみたい。
いやまあ、他のスレに行けって話だが。
518名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 23:20:25 ID:ihaHRh8G
>>513
幼馴染でNTRとかマジ勘弁、てか寝取られスレでよくね?
あそこに投下されるSSのヒロインってほぼ幼馴染だし。
他に該当するようなスレは調教スレくらいか?

まぁ寝取られ無しの幼馴染調教ならぜひ見たいけどさ
519名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 23:28:00 ID:WvpKVvgO
>>503
これよりもその下にある
ttp://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-303.html
こっちの方が面白い。禁止スレで見つけたものだけどな。
520509:2008/03/15(土) 00:09:46 ID:LMFYRy/w
書き終わったが、ものっそいスポ根になってる件\(^o^)/
推敲して今日中には投下したいと思うんだが、スレの趣旨に全く合わないスポ根部分は削るべき?
521名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 01:11:31 ID:sTbVPXnq
>>520
是非そのままで。
522名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 08:01:10 ID:4dsk07Ss
>>520君の最高の魂の結晶を投下してくれ。それ以外は許可できない。いや、しない。
523名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 09:59:08 ID:UrOuOBzV
今日は暖かいから全裸正座も楽でいいな。
524名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 10:15:06 ID:phLya+oV
おれ夜勤明けで少し寝るけど、一応は全裸だから
525509:2008/03/15(土) 11:47:41 ID:LMFYRy/w
最後に誤字脱字チェックだけして一時くらいに投下するよー\(^o^)/

ところで、スレって何kbまでだっけ?
なにやら40kbくらいあるんですが。
526名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 11:57:06 ID:XofsOzrb
>>525
現状427kb。500までのはずだから大丈夫じゃね?
527名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 12:35:51 ID:c8kJxK86
>>524
 
昨日は夜勤だ、とあいつはいった。

さっき、隣の家から、バタンと乱暴にドアを閉める音が聞こえた。
あたしが推測するに、夜勤疲れのあいつが限界くたくたの身体を引きずって帰ってきて、最後の力を振り絞ってドアを閉めたんだろう。
まぁ推測って言うか、いつものことなんだけどね。

さて、いつもの通りなら今頃は、隣の家のあいつの部屋で、爆弾が落ちても目が覚めないくらいの爆睡真っ只中だろう。
これはあたしにとっても、チャンスである。

何がチャンスかって?

んー、まぁ、ここだけの話、ね。

あたしは、あいつとつきあいが長い。
つきあいといってもそれは、恋人同士のつきあいというわけではなく、小学生の頃にこの家に引っ越してきてからの、お隣さんとしてのつきあい、ってこと。
小学校、中学校、高校と、もちろん同じ学校さ、だって隣同士だもの。

で、小学生の頃に友達になったあたし達は、中学生の頃にあいつが色気づいちゃってあたしと一緒にいるのを照れたせいで少し疎遠になり、
それでも高校生にはそのあたり開き直りが出来てようやく友達の関係が修復できて、卒業してからもたまにみんなでご飯食べたりするようになって、
二十歳を超えた辺りからそれにアルコールが加わった、みたいな。
そんな、腐れ縁的悪友で、男女の仲を超えた親友みたいな感じ。

でもまぁ、あたしはその関係に少しばかり、いや、大いに不満を抱くわけで。


あたしが小学生の頃に立てたプランでは。

小学生の頃に仲良くなった二人は、中学生にあがった辺りからお互いを異性として意識しだし、
卒業と同時にあいつがあたしに告白、そして恋人同士として送る高校生活。
お互いの愛を深く育てた頃合いにとうとう二人は結ばれて、ラブラブイチャイチャのストベリーエッチライフを満喫しつついよいよ迎える卒業シーズン。
ところがその時、なぜか穴があいていたコンドームのせいで、あたしは見事妊娠、善は急げってことで卒業即結婚。
そんな人生ゲームの双六が出来上がっていた。

なのに現実はというと、スタートからルーレットを回して1マス進み、そのままそうだなぁ、30回休みくらいの感じだろうか。

つまり何がいいたいのかというと。

あたしはあいつのことが気に入っている、いや、大事に思っている、というか、好きだ、もとい、愛しているのだ。


だからチャンスなのである。

・・・え? わからない?


いやあんた、ちっとは想像力を働かせてご覧なさい。

自分の部屋の窓を挟んで、隣の家には大好きな彼の部屋。ちょっぴり華麗なルパンアクションで、簡単に忍び込める距離。
そしていつも不用心に鍵もかけない窓を開けると、そこにはあいつが、ベッドの上で熟睡中!!

わかる?
好きな相手が無防備に寝てたりしたら、取るべき行動は一つでしょ?

もうこれで決まり、つまり、それは、

『S O I N E』、つまり添い寝よ!!
528名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 12:36:18 ID:c8kJxK86
 
これからのグローバルスタンダード、SOINE!!
大好きな、だけど友達以上恋人未満の彼に、可愛い幼馴染みがとる行動はといえば、これしかない!!
彼の眠るベッドで、彼の匂いに包まれながら、その吐息を間近に聞きつつ過ごす至福の時間。
普段の無愛想な表情からは想像もつかない、想像つかないけどたぶん意外と可愛いだろう寝顔を眺めてるうちに、なんか無性にムラムラしちゃって、
ついつい出来心でまぁキスなんかしちゃったりなんかしたりして!!


・・・・・・はっ、いけないいけない、過去に何万回とリピートしてきた夢想空間に、またしても捕らわれてしまうところだった。

というわけでそろそろ作戦決行時間、諸君、あたしの武運を祈っていてね!


%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%


・・・・・・ただいま。

結果?
うーん、なんて言えば良いんだろう。
まぁとりあえず、起こったことをありのままに話すね?
あたしが部屋に忍び込んだらさ、案の定あいつは爆粋してたんだ。

でもなんでかさ、全裸なのよ。

ベッドの上に大の字で、それでなんでか素っ裸でさ、オチンチン大きくしてるのよね。
それでなんか寝言でさ、『スポーツ少女〜』とか、『全裸待機〜』とかいってるわけ。
あたしは想定外の出来事にちょっと正気の糸が切れちゃってさ。

SOINEをしようと忍び込んだら、いつの間にかオチンチンを写メで撮っていた!!

しかも、あんまりにも元気に立ててるものだから隠そうとして、白いタオルを拡げてかぶせてみたら、なんだかそれがお山のように見えちゃってさぁ。
つい、

『 細雪(ささめゆき) つもりて富士も 白化粧 』

とか、一句詠んじゃった。




はぁ、いつになったらあたし達、先に進めるんだろう。
ねえ、どう思う?


END OF TEXT
529名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 12:45:01 ID:4TSxdh/2
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwwwwwww写メってる場合じゃ無いでしょwwwwwwwwwwwww

530509 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:50:43 ID:LMFYRy/w
>>528
GJだぜ!
二時間で書いたとは思えねェ……!

……さて。
>>509の通りにはならんかったけど、勢いで書いてきた。
ついでに、酉付けてみた。>>149とか>>308とか>>383とか書いたんで、こう、よろしく?
なにやらスポ根気味。あと、長いよ。長いよ。
うわぁ、とか思う人は酉やらIDやらで華麗にスルゥしてくださいな。
投下開始。……期待にそえていればいいんだが。
531真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:51:26 ID:LMFYRy/w
/その一。

 白球が、夕空をカッ飛んでいく。
 沈む朱の太陽に向かって、夏の風を切り裂いて、伸びる。
「おおー……こりゃあ、ホームランかな」
 後出しジャンケンのような予想をして、反対側のフェンスを越えた打球を見送る。
 実にいい打球であった。いち野球ファンとしては、あのバッターが野郎でないことに涙を禁じえない。
「……衣鶴、男だったら本当にいいバッターになってただろうに……」
 いや、実際にとんでもないバッターだが。
 ため息を吐き、バッターボックスを見る。
 そこにいるのは、ヘルメットの下から髪の毛を少しだけはみ出させる女だ。
 身体は西日に照らされる位置にあり、白球を次々にカッ飛ばしている。
 打球感覚を刻み付けるための練習だ。この距離では表情までは見えないが、上下する肩や、ふらつき始めた下半身が疲労を物語っている。
 名を、海老原・衣鶴<えびはら・いづる>。
 この地方で最高とも言われる強打者<スラッガー>。女子としてはかなりの長身であり、百七十八センチの俺と視線がほぼ合う。
 ……一応俺の方が高いが、それでも一時期はかなりひやひやしていた。
「まだ伸びてるとかは言わんよな……」
 十八年の人生、その内実に十六年を共にしているが、身長で勝てるようになったのは中三の時期だった。
 ちょっと前に、身体検査の結果を聞こうとして、セクハラだ、とグーで殴られたのは実にいい思い出だ。その時に欠けた奥歯は、手加減無しだったという証拠として彼女の母親に提出済みである。
 と、再度の快音。
 彼女のスイングは、全身の力で豪快に振りぬく動きだ。俗に言うフルスイングだが、彼女がそうでない時など、俺は見たことがない。
 ……デカい乳を無駄に振り回すスイングなので、密かに『巨乳打法』なんて呼ばれているのは――知らぬは本人ばかり。この高校における公然の秘密なのであった。
 とにもかくにも、打球は地面に対し仰角四十度。これが悪夢でもない限り、再度のホームランは確実だろう。
 今度の打球はセンターへと落ちてくる。バックスクリーン直撃、と呟いて、寝転がる。
「……熱血女め」
 ため息を吐いて、目蓋を閉じる。
 ……三年生の、夏。彼女にとっては、最後の戦い。
 大学生になってもやれるだろうに、彼女は、ここで己の身体をブッ壊そうってくらいの練習を重ねている。
「だいたい、自分で『練習終わるまで待ってろ』って言っといて居残り練習するってのはどうなんだよ……」
 深くため息を吐いたところで、鈍音と振動が来た。発生は至近。やたら重い音だった。
 どうやら、こちら側にホームランをカッ飛ばして来たらしい、と目を開いて確認する。
 立ち上がり、思いっきり叫ぶ。
「ア・ブ・ないだろコラぁーッ!!!」
「そんなところで寝てるお前が悪いんだろーっ!!」
「責任を人に擦り付けんなぁーッ!!」
532真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:51:57 ID:LMFYRy/w
「黙ればかーっ!!! どこぞの萌えキャラと同じ名前のくせにーっ!!!!」
 ……いや、不毛だ。実に不毛だ。だがしかし、分かってても止められないのが喧嘩であろう。
 居残り練習なんで、止めてくれる人がいないのもヒートアップに加圧をかける。
「アレはこっちが先出しだ超絶アホーッ!!」
 ……いや、さすがはスポーツマン――あ、女だったらどう言うのか。とにかく、走りながらの声出しは伊達じゃないらしく、叫び声は大きくなるばかりだ。
「こ・の・ドレッドノート級凶悪犯罪ばかぁーっ!!!!!」
「分かった黙れ今そっちに行く!!!」
 不利を悟って叫び返し、バックネット裏へと走っていく。
 高校に入って二年と半分。運動らしい運動を続けていなかったため、速度も持久力も落ちている。
 ヘンに暑い西日もあって、フェンス越しに衣鶴と正対した時には汗だく、息も切れていた。
「……ぜー、ぜー、はー、ふー、はー、はぁ……」
「…………」
 フェンスによしかかって、息を全力で整える。
 無言が重い。というか、理不尽だ。なんで私は怒ってますオーラ出してやがる。そんなに練習邪魔されたのが嫌なのか。
 衣鶴の方が、悪い、……はずだ。
 口の中にたまった不味いツバを飲み干して、衣鶴の目を睨みつける。
「……あー。衣鶴。いつ帰るんだ? 明日の試合に備えて今日は休めって先生言ってたんじゃないのか?」
「まだ明るい」
 ……昔からたまに思っていたが、何のてらいも無くスパッと言えるコイツはひょっとして本物か。色んな意味で。
「あのな。ボール拾いの時間もあるし、お前、シャワー浴びないと結構汗くさいぞ。夜道は危ないし――」
「と言うと思って、待ってもらってたんだ」
 ……なにやら不思議な言葉に、首を捻る。二秒後に納得が来た。
 ああつまり、この女は、護送とパシリに俺を使おうという腹か。
「じゃあ俺帰るからな」
「まあ待ってよ、こなたん」
 フェンス越しに腕を掴まれた。
 制服ごしに来る感触は、全然女らしくない硬さ。マメでガチガチの、バッターの掌だ。
 ……万一にでも怪我させては困るので、抵抗をやめ、ため息を吐きつつ言う。
「……こなたん言うな。此方だ。雲野・此方<うんの・こなた>だ」
 このやり取りも何度目か。
 コイツだけはこなたんと呼ばないと信じていたのに、いつの間にかクラスに溶け込んでいたのであった。
「とにかくだ。お前、いい加減やめろよ。もう六時半になるぞ? 今日はミーティングだっただろ。今までの努力が徒労に終わっていいってんなら止めないけどよ」
 もっとも、コイツの努力は、他人の努力を徒労と化すための努力に他ならないが。
 知り合いじゃない人間に心を動かせるほど有情ではないので、その辺はキレイサッパリ忘れておく。
「徒労になんか終わらない。勝つ」
「……言い切れるのはいい事だがな、精神が肉体を凌駕するっての、期待してるならやめとけよ。お前も分かってるだろ、こんな、一時間や二時間の延長じゃ、微々たる効果しかないってさ」
533真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:52:21 ID:LMFYRy/w
「ばか。あたしはまだまだヨユーだ。このくらいの練習を毎日やってるから、このくらいしないと明日調子出ないよ」
 自信満々――否。喧嘩腰だ。
 自然、こちらもそれなりの対応になる。
「熱血も大概にしろ馬鹿。明らかにオーバーワークだ」
「熱血もって――」
「とにかくだ」
 ここでの熱血は必要ない。勢いを殺ぐため、かぶせるように言う。
「とにかく、休めよ。今日はもう」
「……ん」
 つかまれていた腕が放される、――と言うよりは、力が抜けて離してしまった、の方が正しいのだろうか。
 彼女は、化粧っ気がほとんど無い、よく日焼けした顔を伏せた。
「先にシャワー浴びてこいよ」
 ……言い終わった後で、状況によってはヤバくエロいセリフだと気付く。
 だが、衣鶴は気付かなかったのか、ごく普通の対応を返してきた。
「……ありがと。なるべく早く浴びてくる」
 部室棟に、彼女は駆けていく。
 ……さて。俺に残された仕事は、カッ飛ばされたボールの回収だ。
 下手に打ち損ねがない分、ボールは外周――フェンス際と客席に固まっている。
 だが、数が数だ。衣鶴が戻ってくるまでに終わることはありえないだろう。長嘆しつつ、カゴを持ち、歩いていく。
 ……こうやって後片付けを手伝うのも、何度目だろうか。
 高校入学以前――中学、小学でも、同じようなことがあったな、と――その時の事を思い出しながら、俺はボールを拾い始めた。
534真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:52:52 ID:LMFYRy/w
/その二。

「暗くなったなぁ」
「そうだな」
 結局、全てが終わったのは八時近くになってからだった。
 日は今頃、トルコあたりを全力で照らしているのだろうか――今ここにあるのは、街灯の頼りない光と、西の空に見える宵の明星だけだった。
「お前、明日試合だろ……本当、馬鹿なヤツだな」
「仕方ないじゃない、一球だけ見つからなかったんだから」
 ちなみにその一球は場外までカッ飛んでいたのだが。気合入れすぎである。
「……で。明日は勝てそうなのか? お前以外はぶっちゃけ弱小の、我らがソフトボール部は」
 衣鶴が一瞬怒気を放つ。
 横から風が押し寄せてくるような――肉体を放り出して、存在感だけが膨れ上がったような感覚だ。
「……と。悪い。弱小は撤回する」
「……いいよ。悔しいけど、事実だ」
 ギリ、と歯噛みの音が聞こえる。
 例え、衣鶴のようなオンリーワンがいたとしても――スポーツ漫画のように、上手くはいかない。
 野球は個人競技ではない。チーム能力の総合値が高い方が勝つ。
 ソフトボールについては門外漢だが、野球を基にした競技だ。その原則が変わる筈がない。
 それに、明日の相手チームは、この地区で上位常連と聞いていた。
「でも――明日は、勝つ」
 だが、彼女は言い切った。
「そう思わなきゃ、勝てる試合だって勝てない」
「……そうか」
 羽虫の焼ける音を聞きつつ、吐き出すように言う。
「……お前、明日から最後の大会なんだろ。ベストを尽そうとしろよ」
「だから練習してたんじゃない」
 右を歩く衣鶴は、憮然とした声で言った。
「ベストの定義が違うらしいな。……まあ、今言ってももう関係ないか」
 千の距離を埋めるには、一歩を踏みしめていくしかない。
 試合は明日であり、今更踏みしめの追加などできる筈がない。
 ならば、歩みを全力で発揮できるよう体力を回復するのが常道だと思うんだが。
 ……熱血が、いやに不愉快だ。昔は、俺もその熱血に浸っていたというのに。
 だからか、言わなくてもいい一言が出た。
「意気だけで勝てりゃ、苦労しないよな」
「此方、」
「いいだろ、もうさ」
 横を見ると、衣鶴は、理解できない、と言いたげな顔をしていた。
 疑問が怒りに変わる前に、言いたいことだけをさっさと言うことにする。
「お前、ちょっと頑張りすぎだろ。勝つためにやるってのは分かりやすいけど、お前の練習に誰もついてこないってのを考えてみろ」
535真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:53:17 ID:LMFYRy/w
「……どういう意味。空回りしてるって、言いたいわけ?」
「ザッツライト」
 ボディに拳が来たので避けた。
「こんな時に茶化すな!」
 怒号、と言うと豪傑らしすぎるか。
 だが、その言葉に負けぬほどの迫力が、今の衣鶴にはある。
 右拳を握り締め仁王立ち。柳眉は跳ね上がり、目にはなにやら殺意らしきものまで見える。
「いやいや、ふざけてなんかいないさ。心配六割、皮肉四割ってところだが」
 ……少し前に読んだ漫画を思い出す。
 ある悪役は、過去、正義の味方だった。
 そして、その周りの人間は、きっと正義の味方が助けてくれると思い込んで、何もしなかった。そうして、彼は悪役へと変貌していった。
 実に悲しいワンマンヒーローだ。そいつの行為が最期まで報われなかったのも、哀れさに拍車をかけていた。
「気づいてないフリすんのもやめろよ?」
「うるさいっ、分かってる!」
「分かってる、ねぇ――」
 は、と笑う。
 だが実際、ここらでフォローを入れておかないとマズいか。
 明日、肝心なところでチームメイトを信頼できなくなって負けました、って漫画みたいなオチはやっちゃいけない。
 ……それに、まあ。本気で殴られそうだし。
「――いや実際、お前以外のは付き合いたくても付き合えないってだけだと思うけどな」
 彼女のボルテージが最大値に達する直前に、そう言った。
「……は?」
「さっきのは、嘘と言うか、言葉を色々削っただけだぞ。だいたい、フツーの女子がお前についてこれるわけないだろ。体力的な意味で」
 男子部活野郎でもついて行けないヤツは多いだろう。
 なんだかんだ言って、愚直なまでの努力馬鹿なのだ。
「身体的にはともかく、精神的には決して空回りはしてないぞ」
 多分、と心の中で付け加えた。
 ……殺気じみた怒気は、俯きに伴い雲散霧消。
 や、助かったか、――と思った瞬間。右拳が握られたままであることに気が付いた。ちょっと遅かったが。
「あぐがっ」
 ――額に右拳がブチ当たる。フック気味のイイ一撃であった。
 のけぞる俺。盛大に揺れる視界。脳自体が揺れているから当たり前っちゃ当たり前、と変な納得をする。
「こ・の・おおばかぁーっ! マジで泣きそうになったじゃないかーっ!!!」
「おおお、痛い! 痛いぞ衣鶴! 蹴るな! 汚れるから! 落ち着け!!」
「黙れ! そして死ね!」
 ……話は聞いてくれないらしい。
536真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:53:48 ID:LMFYRy/w
 三十六計、逃げるに如かず――どんな計略でも、逃げてしまえば関係ないさHAHAHA、との言葉だったか。
 蹴られつつも背を向け脱兎。近所迷惑にも叫びながら追ってくるソフト部エース。頑張れ俺、速度を落したら飛び蹴りが来る。
「ふわはははははは!」
 アドレナリンがドパドパと出てくるのを感じつつ、更なる前傾姿勢。
 脚力、疲労度はおそらく俺が有利だが、コンパスはほぼ同じで、重量、心肺能力で衣鶴にアドバンテージがある。
 まあ、つまりは負け確定。半分くらいは無駄な抵抗である。
 曲がり角を高速でクリアし、カバンを使って姿勢制御。
 見えるのは長い直線だ。
 百メートルほど前方には俺の家があり、その向かいには衣鶴の家がある。
 そう、ただ百メートル。その距離が、途方もなく遠い――!
「だりゃぁーっ!!」
 ――殺気!
「うおッ!?」
 アスファルトに飛び込むようにして、飛び蹴りを回避。
 転がって起き上がった時には、眼前に衣鶴が腕組みをしつつ立っていた。
 動作の気配はない。ただ、仁王像のようにそこに在る。
 その意気、まさに天を衝く。背中は見えないが、天の字が浮かんでいそうな気がする。
 ……えー、と思考の無駄クロックを認識する。
 衣鶴との距離は一メートルもない。
 その表情はどう見ても晴れやかな笑みで、しかし背負う雰囲気は戦慄しか呼び起こさない。
 この間は、せめて最期に遺言くらいは聞こう、という事なんだろうか。
「……オーケー」
 今この瞬間、言いたいことができた。
 右手、親指を立てて突き出し、末期の言葉を口にする。
「――ナイスしまパン……!!!」
 直後、鼻面に全力の右アッパーが来た。

/

「……嫌われたかね、こりゃ」
 自室の窓際に座り、呟いた。
 連続の強打で傷む顔を押さえる掌。そこに感じるのは絆創膏の感触だ。
 ……試合後のボクサーみたいになっていないかどうか。鏡を見て確かめる勇気は、あんまりない。
 まあ、多分、息抜きにはなっただろう。……そう思っておかないと俺がちょっと哀れすぎる。
 既に、衣鶴の部屋の電気は消えている。寝ているかどうかまでは分からないが、とりあえず寝ようとはしているらしい。
 明日の試合、勝ってくれればいい、と思う。
 ――昔々の、大切な約束を破った大馬鹿の応援なんか、要らないかもしれないが――。
537真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:54:17 ID:LMFYRy/w
/その三。

 ソフトボールは、野球に似ているが、細かい部分で色々と違う。
 具体的に言えば、ボールの大きさ、グラウンドの大きさ、投球法などだ。
 しかし見る方としては、野球と同じような感覚で問題はない。
 野球部の試合と同じような盛り上がり方で、学校総出の応援だ。
 試合は進行し九回裏。二対一と一点のビハインドながら、満塁。
 ヒットさえ出れば勝てる――俗に言う、サヨナラ勝ちのチャンス。
 そのチャンスをモノにすべく立つは海老原・衣鶴。
 投手にとってみれば、これほどの凶運はないだろう。コトここに至って、最後の最後で、こんな最悪に出会うなど。
 投手の方も、衣鶴に負けず劣らずの選手だ。
 衣鶴の第二打席で本塁打を浴びてはいるが、走者を背負っても崩れることなく、打者を切って捨ててきた。
 制球は乱れてきたが、鉄腕とでも言うべき剛速球に一点の曇りもない。
 この九回、満塁ではあるが、それだって四死球と送球ミスからだ。まだ行ける、と――私以外にはこの女は抑えられない、と、その背が強く語っている。
 ――投手が、セットアップに入る。
 両足で投手板を踏み、左足を前に出していく。
 右腕を一気に加速させ、大きく回していく。
 太ももに手首をこすり、手首のスナップを加速。
 投球は、右足による加速をもって完成する。
 アンダースロー――いや、ウィンドミルと言うんだったか。
 下手投げ故に実際の速度はあまり出ないが、距離や軌道によって、百マイルにすら匹敵する体感速度となると言う。
 もちろん、この投手はそれほどの速度ではない。だが、高校生という括りで言うならば、十分にトップクラスだ。
 遠いため球種までは見えないが、衣鶴は打つ気らしい。
 放たれた時点で、バットは本格的な加速を開始している。
 応援席――ライト席まで風が伝わってくるようなスイング。
 しかし快音は生まれず、ボールはミットの中心へと叩き込まれた。
 ワンストライク。
 レフト側、相手高校の席から歓声が沸く。
 対してこちらは、じりじりとした不安の中、衣鶴を見守ることしかできない。
 捕手がボールを投げ返す。
 投手はグラブにそれを収め、一度、大きく肩を上下させた。
 ……ツバが硬い。炎天直下――倒れそうなくらいの熱気が、球場を支配する。
 セット。
「――!」
 叫びと同時のリリースだ。
 当然、コントロールは良くない。
538真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:54:44 ID:LMFYRy/w
 捕手は構えたところに球が来ないと見て、自ら動いての捕球に入る。
 その位置は、外角低め。ストライクかどうかは、距離で判別できないが――衣鶴はやはり打ちにいく。
「ぁ――!!」
 衣鶴が吼え返す。
 殺気には殺気を。本気には本気を。
 高速のスイングはボールを捉え、
「!」
 しかし力負けし、バットが砕けた。
 折れ飛んだバットがくるくると回転してグラウンドに落ち、衣鶴は顔をしかめた。
 打ち損じた、と理解したのか。それとも、どこかを痛めたのか――。
 ボールは一塁側のフェンスにブチ辺り、ファールとなる。
 ツーストライク。
 衣鶴は代えのバットを持ち、右腕を軽くふる。
 手を顔の前まで持ってきて、バットを握り、緩める。
 ……どうやら、右手指を痛めたらしい。
 マズい、と言う思いは学校の総意か。
 吹奏楽部と有志によって臨時編成された応援団が、声を張り上げる。
『え・び・はらッ! え・び・はらッ!』
 相手校も負けてはいない。同じように投手の名を叫び、あと一球、と今更のような事を言う。
 総勢二千。誰の声にも、熱意と同時に悲痛を感じさせる響きがある。
 投手がセットしても、張り上げられる声は加速度的に大きくなっていく。
 行け、と、打て、と――二つの声が、混ざりあって、まるでうねる波のようだ。
 ――あと一球。
 まさしくその通りだ。怪我の程度は分からないが、力負けしたのは衣鶴の方だ。
 紛れもない不利。それを悟っても、衣鶴は投手から視線を外さない。
 速度が投球に宿る。
「らァ――――!!!」
 崩れた、しかしこの試合最も力強いフォームから、剛速球が射出される。
 紛れもない最高速度。百マイルの体感速度が、衣鶴を襲う。
「ふっ…………!!!」
 だが、衣鶴は怖じけずスイング。
 それは高速であり、タイミングも位置も、ただ一点を除き何もかもが絶妙。
 ……そう。敗北の原因はただ一つ。
 そのスイングは、フルスイングではなかった。
 球場に響いたのは、鋭く、それでいてくぐもった音。
 投手が、ピッチャー返しを取った音。
 海老原・衣鶴達、ソフトボール部の夏は、終わった――――
539真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:55:08 ID:LMFYRy/w
/その四。

 三日後は雨だった。
 湿度こそ高いが、あまり暑くないためか過ごしにくくはない。
 静かな雰囲気のまま、朝の授業は粛々と執り行われる。
 なんだかんだでいい試合だったし、授業も休めた。やったぁラッキー――それが一般的な生徒の反応だ。
 衣鶴やソフト部と個人的に仲がいいヤツは、そこまで単純に喜べないようだが。
 実際――試合を見る限り、衣鶴はそれなりにいいキャプテンだったらしい。
 全員が最後まで諦めなかった。
 全力でぶつかっての敗北だった。
「青春してやがったな……」
 ため息を吐いて、窓の外を眺める。
 ―― 一つ。くだらない疑念がある。
「…………」
 衣鶴が痛めたのは、右の小指、薬指。
 何年前だったか、ベンチを殴って、同じ箇所を骨折した投手のニュースを見たことがあった。
 ……まさか、とは思いつつ、まだ少し痛む鼻を押さえる。
 人の頭や顔は意外と硬い。
 素人が人を殴ると、拳――特に小指、薬指を痛めてしまうことが多い。
 拳以外に手首を傷めることも多いが、それはインパクトの衝撃が手首に来るためだ。だから殴る瞬間に手をぐっと握りこむのが肝要だと、空手部の馬鹿に聞いたことがある。
 ハードパンチャーの握力が高いのは、インパクトの瞬間に拳がブレない――つまり衝撃をより大きく伝えられるから、だそうだが。
 ……衣鶴はバッターだ。手首は並みの格闘屋には負けない。だが、その手指はどうか。
「…………」
 くだらない、こじつけのような考えだ。
「…………」
 だが、否定しきれないのは――まるで泥のように疑問がまとわりつくのは何故か。
「……くそ」
 ため息を吐いて、教室に視線を移した。
 夏、大会時期。
 部活をやっているヤツの欠席が目立つ。
 で。
「……すー」
 隣では、衣鶴が全力で寝ていた。
 右手、薬指と小指には湿布と包帯が巻かれている。
 動かさなければ痛まない、と言っていたが、枕にするのは大丈夫なのか。
 胎内にいたときの音と雨音は似ていると聞くが、正直イイ夢見てそうで微妙に腹が立つ。
 普段なら机を軽く蹴って起こすところだが、
「……まあ、頑張ってたし、いいか」
540真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:55:32 ID:LMFYRy/w
 んぬー、となにやら寝言が聞こえてくるが無視。
 ソフト部は今日にでも引継ぎを行い、新人戦に向けて新たな努力を重ねていく。
 衣鶴の影響で、来年は有望な新人が入ってくるだろうか。
 それについては、来年、今日負けたチームにも勝てるといい、と思うのみだ。
「…………」
 試合について、衣鶴が言っていたのは指の事のみ。
 負けた事についての感想も無く、故に俺から聞く事もない。
 昔馴染みの、歯がゆい距離感だった。
「俺が女だったら、話聞けたんだろうかな……」
 もしくは、衣鶴が男だったら、か。正直あのチチは惜しいので、できれば俺が変身したいところだが。
 ……軽くふざけた思考を中断。深く嘆息して、窓の方に顔を向けなおす。
 昼には晴れる、と天気予報では言っていたが――。
「……信じられんなぁ」
 雨音に意識を集中すると、なにやら眠くなってきた。
 衣鶴と同じような姿勢になり、目蓋を閉じる。
 眠りはすぐに来た。

/

 で、なんで目が覚めたら夕陽が見えるのだろうか。
 時計を見ると、時刻は三時二十分。
 ちょうど放課後、HRが終わった時間だ。
「ほら、起きてよ雲野ー。掃除の時間だってば」
「……おう。悪い」
 女子の言葉で、こりゃいかん、と立ち上がる。既に俺の席以外は後ろに下げられていた。
 いや、いいタイミングだ。むしろ最高だ。
 ヒマな授業中、うだうだ悩まずにすんで良かった良かった。
「……何頷いてるの?」
「いや、ポジティヴシンキングは大事だな、と」
 そう、と女子は呆れ顔で言う。
 左手一本で机を下げ、カバンを掴んで歩き出す。
「――あ」
「何さ、雲野」
「いや、衣鶴のヤツは?」
「寝ぼけてる? ソフト部にいると思うけど」
 ……そう言えばそうか。
 寝る前になんとなく考えていたような気もする。
「ありがとう」
「どういたしまして」
 教室を、校舎を後にする。
541真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:56:13 ID:LMFYRy/w
 地には水溜りがあるし、空には朱に染まる雲があるが、空気は澄んでいる。
 涼やかな風が、僅かに木々を揺らした。
「……さて」
 足元に注意しつつ、部活棟へと歩いていく。
 部活棟は、体育会系部活のロッカールーム兼倉庫であり、ボロいが各部活兼用のシャワー室もある。
 と、よく通る強い声が聞こえてきた。
「これで、あたしたち三年生は引退するけれど――テキトーに頑張っていくべし!」
 部活棟の前にいるのはソフトボール部の面々で、衣鶴を先頭に三年生が立ち、その前に一、二年生が整列している。
 もう下級生も適応してしまっているのか。テキトー極まりないシメの挨拶に対し、ごく普通に、ありがとうございました、と礼を言って終わる。
 芝生にでも座って待ちたいところだが、生憎地面は塗れている。
 仕方なく、しゃがんで彼女たちを眺めることにする。
 ぐしぐしと泣いている下級生がいたり、衣鶴の背後でため息を吐く三年生がいたりするのは、まあ、人間模様は様々と言っておこうか。
 下級生が部活棟の中から花束を持ってきたり、色紙を持ってきたり、お菓子を持ってきたり――その辺は、さすがに女所帯か。来年こそは勝ちますから、とか色々と声が聞こえてくる。
「……ホント、青春してやがるなぁ……」
 ……三年生の一人が衣鶴の肩を叩き、俺を指差す。
 いいって、と顔の前で平手を振るも、馬鹿は一直線にこちらに来る。
 表情は、どこか力ない笑みだ。
「何? 用? 一緒に帰る?」
「後でいいっての。ほら、引退なんだし泣くくらいして来いよ。ってかまだ誰も帰ってないだろ」
「あたしも用はないよ。それに、泣くことなんてないし、あたしが帰らなきゃ誰も帰らなさそうだし」
 ……それもそうか、と取り残された集団を見る。
 中心人物さえいなくなれば、あとは適当に解散するだろう。
「じゃ、帰るか」
 ん、との頷きに、ゆっくりと立ち上がる。
「カバンは?」
「ロッカー」
「待ってる」
「あいあい」
 軽い返事と同時に、衣鶴は部活棟へと小走りに向かう。
 すれ違い様に、いつもと全く変わらないような別れの挨拶をして、そして、俺の方へと戻ってくる。
「帰ろう?」
「おう」
 肩を並べて、歩き出した。
 正門に向かう途中、背後から、意図不明の声が聞こえてきた。
「がんばれー、こなたーん、いづるぅーっ!!」
542真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:56:40 ID:LMFYRy/w
 ……いやはや、まったく。何を頑張れと言うのだろう、ソフト部の皆さんよ。

/

「……仮面ライダーとかでも、同じようなことがあったのかな」
「一文字さんが、何故かワザ師という事にになってたとかそういう話か?」
「そういう話。……此方の場合は、それが女の子で、しかも俗に言う萌えってのが不幸だけどねぇ」
 ……盛大にため息を吐く。幸せが逃げるとかどうとかより、この馬鹿に人の心の機微を読むって事を教えなければならない。
「……あのな。分かってるんだったらやめてくれよ」
「だって面白いんだものね、――こなたん」
 横にいるため表情は見えないが、声には喜色がある。
 本気で楽しんでいるから、本当に手におえない。
「お前な。……俺だからいいけど、他人にはするなよ」
「大丈夫。他人には今までだってしたことないから」
 そうかい、とだけ言って、もう一度ため息を吐く。
 足元、水溜りを避けるために下を向く、――フリをして、衣鶴の右手に目をやった。
「気になる?」
 ――が、あっさりと見破られた。
 視線を上げると、ちょっと得意げな笑みがあった。
 言い当てられて悔しいものは悔しいが、別に強がる場面でもない。素直に肯定する。
「……まあな」
「……ひょっとして、アンタを殴ったから手を傷めちゃったァ――とか、言うと思ってた?」
「考えてはいた」
 水溜りを突破し、再度合流する。
 衣鶴は手を顔の前まで寄せ、呟くように言う。
「……ううん。多分、万全の状態でも、あたしは負けてたよ。だから、いい」
 強かった、と彼女は言う。
「球が、すごく重かった。実は、二球目のあと、手首にも違和感があったんだ。寝たら治ったけど」
「…………」
「あれだけはっきり負けたら、悔しいって気持ちも――あんまり、無いかな」
 衣鶴は、言外に言う。
 気にすることはない、と。負けは全て、己の責任だと。
「……嘘言うなよ」
「……ん。嘘じゃないよ」
 浮かぶのは、緩い笑みだ。
 ……ああ、と思う。
「……衣鶴。すまなかった」
「だから謝らないでよ。今までは怪我したらマズいから使わなかったフランケンシュタイナーとか使うよ?」
 や、それはそれで幸せなんですが。
543真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 12:57:06 ID:LMFYRy/w
「……ソレはキツいな。首折れるだろ」
「大丈夫大丈夫、多分手加減するから。――しばらくやってないし、できるかどうかは分からないけど」
「俺以外には――いや、俺にもやるなよ、それ。ストレス溜まったら、せめて殴るようにしろよ」
 多分許すから、と付け加えた。
「多分ってなにさ」
「俺も男だから、【ピー】を殴られたら許す自信無いな」
「……うん。そこは殴らないように気をつけとく」
「ありがとう。体感は間違ってもできないだろうが、頭の片隅には入れておいてくれ」
 オーケー、との返事に頷き、――再度、右手を見た。
 ノートはきちんと取れたのだろうか、とか、箸を持てるのか、だとか、そんなどうでもいいような心配をする。
「……此方。あたしはさ、今、すっごい満足してるよ。彼女、全力だったからさ」
 その笑みから、思わず視線を逸らす。
 痛々しくて、見ていられない。
 コイツが目ざとく俺の視線を感じ取ったように、俺にもコイツの心情が分かる。
 ……間違いない。
 コイツは、己を、そして俺すらをも騙し通せると、本気でそう思っている――。
 衣鶴に聞こえぬよう嘆息し、空を見上げた。
 沈みかける西日の上空――宵の明星が、妙に輝いている。
544真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:00:16 ID:LMFYRy/w
/その五。

 一週間――試合が終わってから十日が経った。
 今日も天気は晴れ。一週間前と同じように、大会を終えた三年生が引退の挨拶をしている風景がある。
 ごく一部の有望な選手は、スポーツ推薦のため部活を続けているが――衣鶴は何もしていない。
 ただ、時間に余裕ができたので、帰りにゲーセンによってみたり、色々とモノを買ってみたり、夕食の買い物に付き合わされたり――変化と言えば、そのくらいだ。
 ただ、その距離が、近くなって来ているのは、感じていた。
「なんなのか分からないくらい――子供じゃないが」
 気付いたのは、衣鶴本人より、周囲の反応が大きい。
 用事があって早めに帰ろうとしたら、衣鶴が走って追いかけてきた。
 女子が俺を軽く避け始めた。
 男子が衣鶴にあまり声をかけなくなった。
 かと言って孤立しているかと言えばそうでもない。
 多少の願望が入っていることは認めるが、クラスが俺たちをくっつけようとしていて、しかも衣鶴がそれに乗り気だ、と解釈して問題は無さそうだった。
 部活も終わったし、青春の別面を満喫しようって気持ちもよく分かる。
 だが――
「……は」
 右手を夕陽にかざし、薬指と小指を握ってみる。
 一週間で、衣鶴の薬指は湿布を必要としなくなっていた。
 小指の方も、薄い湿布を医療用テープで巻いている、そんな状態だ。
 違和感はまだあるそうだが、あと二週間も経てば完全復調するだろう。
 ……あのスイングは完璧だった。
 もしも、指さえ完璧だったのなら――弾道は上向き、投手の頭上をはるか高く飛び越し、柵の向こうへ消えていた筈だ。
「……余計なコト、しちまったんだな」
 彼女は許すと言っていた。
 だから、俺も俺を許していいはずだ。
 ……俺の方こそ、自分を騙すべきだろう。
 ため息を吐いて、試合の前夜を思い出す。
「……衣鶴」
 ……そういう気持ちが、ない訳じゃない。
 昔馴染みとは言え――いや、昔馴染みだからか。彼女の存在は、あまりにも大きい。
 ……だからこそ。俺は、俺を許せない。
「…………帰るか」
 下駄箱で立ち止まっているなんて、どこの不審者だろうか。
 帰ろう、と思う。……そう、衣鶴が来ないうちに。
545真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:00:52 ID:LMFYRy/w
/

 飯を食って、二階、自室に上がる。
 ――そこで、若干の違和感を感じた。
 衣鶴の部屋――カーテンが閉まっておらず、電気がついていない。
 時刻は午後六時。雲野家においてはメシが終わった時間で、海老原家にとってはご飯の準備中、といった時間だ。
 おかしい。が、特別不自然でもない。
 居間にいるのかも知れないし、俺と一緒に帰らなかったから、クラスの女子と遊んでいるのかもしれない。
「……メールしてみるか」
 用件は――なんでもいいか。『今何してる?』などと送る勇気はないので、適当に『明日宿題あったか』と一文だけを送ることにする。
 ……しばらく待つも、返答無し。
「……電話だ電話」
 発信音の後流れてきたのは、電源が入ってないか云々、という決まり文句だ。
 寝てるのか――とは思うが、カーテンくらいは閉めるだろう。
 あるいは、まだ帰ってきていないのか。
「……ぬ」
 アイツだって子供じゃない、大丈夫……だろう……か?
「……ぬああ」
 なんとなくだ。
 そう、なんとなく――だ。
 部屋着のスウェットとシャツを脱いで、タンスから適当に服を引っ張り出す。
 時刻は六時十五分、学校まで走れば十五分、腹はきちんと八分目。
「……よ、様子を見に行くとか心配とかそういうのじゃないんだからな」
 ケ、と毒づいて、家を飛び出す。
 ……夏真っ盛り。夕陽はまだ、沈みきらない。
546真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:01:17 ID:LMFYRy/w
/幕間。

 何をやってるんだろう、と思う。
 教室の窓際で、ただグラウンドを眺めていた。
 野球部と、ソフト部、ラグビー部――運動系部活が、グラウンドにいる。
 つい二十分ほど前までは、グラウンドを所狭しと練習に使っていたけれど、今は片付けの最中だ。視線を切り、机に額を押し付ける。
「……は、あ」
 ……彼が――此方が帰ったのは、もう二時間くらい前になるだろうか。
 あたしはいつも待っていたし、先に行ったとなれば追いかけていた。
 だが、彼はあっさりと帰って行った。むしろ急ぐように、――逃げるように。
 十六年来の幼馴染だ。歩き方で簡単な心情くらいは分かる。
 空回り、と彼は言っていた。……確かにそうだ。あたしの想いは、とんでもない空回りをしているらしい。 
「……結構キッツいなー……」
 失恋フラグだろうか。
 あははは、などと、無意味に笑ってみたりもする。
「はは、は……」
 ――笑えない。本当に笑えない。
 最初の五年は、親友だった。次の五年は、なんだか気になるばかだった。それから――この五年は。
「…………」
 そうこうしてる内に、グラウンドから人がいなくなる。
「……うん。帰ろう」
 明日からは仕切りなおしだ、と考えを切り替えようとした瞬間、廊下の方からドタバタと足音が聞こえてきた。
 ……反応してしまう己が恨めしい。
 理性はそんな筈ないと叫ぶも、直感と感覚はこう言っていた。
 彼が、――雲野・此方がやって来た、と。
547真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:01:44 ID:LMFYRy/w
/その六。

 やはり、と言うべきか――それとも、予想通りと言うべきか。
 息を整えつつ、馬鹿女を睨みつける。
「馬鹿、」
 気が済まないのでもう一度。
「超絶馬鹿ッ、」
 息が切れて腹から声が出なかったのでテイクスリー。
「こ・の・超級覇王電影馬鹿ッ……!」
「な、なにそれ……!」
 どうもこうもあるか、と言おうとしたが、十五分間の全力疾走で横隔膜がうまく動いてくれない。
 今度からきちんと運動しよう、とか思いつつ、教室に足を踏み入れていく。
「な、なに? 用?」
「ああ」
 痛む腹筋を無視して背筋を伸ばし、試合以来一度も背筋が伸びていない衣鶴に言う。
「お前に、言う事と、言わせる事がある」
「……え?」
 眉をひそめる彼女の眼前、手を伸ばせば届く距離まで肉薄する。
 言うのは、ただ一言だ。
「……衣鶴。すまない」
「だから、それはもういいって――」
「嘘を言うな」
「嘘って――」
「お前の言葉は、俺に届いていないんだ。そんな言葉が、真実である筈がない」
 ぐ、と彼女が一歩引く。
 俺はその分だけ距離を詰め、勢いに任せて口を開く。
「衣鶴。――知ってるか。世の中にはな、誰かが自分自身を貶めると、傷つく人間だっているんだ」
 俺はお前だけだが――と、思いつつ、言葉を続ける。
「嘘はやめろ。その笑みもやめろ。俺は、お前をそんな風にしている俺を許せなくなる」
「…………ぅ、」
「衣鶴」
 ぐ、と眉に力を込める。
 彼女の視線は顔ごと下にあるが、俺は衣鶴の目から視線を切らない。
「うぅ、う」
 前髪の下から、小さな声が聞こえてきた。
 震えた、弱々しい声が。
「負けたんだ、……あたしのせいで」
「三年間、頑張ってきたのに」
「みんなでがんばろうって誓ったのに」
「あたし以外の、みんなが全力を尽して――あたしだけが違って、」
548真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:02:12 ID:LMFYRy/w
「負けちゃったんだよぅ……」
 一言と同時に、彼女は後ろに下がっていく。
 三歩目で壁にぶつかり、その後は、ずるずると床にへたり込んでいく。
 結果的に姿勢は体育座りに近いものになる。
「……衣鶴。近づくぞ」
「…………やだ。だめ」
「……分かった。無視する」
 宣言し、衣鶴の前にしゃがんだ。
 鼻をすすり上げる音が聞こえた。
「……衣鶴」
「……来ないでよ……」
「黙れ馬鹿。……下手に我慢しやがって。本当、馬鹿だな」
「ばかばか気安く言うなばか」
「気安くじゃないぞ。心を込めて言ってる」
 振り回すような左拳が来た。
 威力は弱く、しゃがんだ姿勢を崩す事すらできはしない。
「……さいあくだ」
「ああ。最悪だな」
 右手を衣鶴の頭に乗せた。
 今俺に出来る最大級の努力だが、効果を確認することはできない。
「……応援、してくれなかったしさ。実は、結構、期待してた。待っててって言ったのも、それを期待してだったし」
「……朴念仁で悪かった」
「……いいよ。それが、此方だから」
 衣鶴は、足の間に頭を埋めていく。顔を隠すように。
「……此方がふざけなければ、――此方が応援してくれれば、あたしも全力を出せてた、って思う。力を出し切れなかったのは、あたしの問題なのに、此方に責任を押し付けてる」
 ホント、最悪だよね、と、小さな自嘲の声がついてきた。
 俺は、衣鶴の頬に手をかけ、ちょっとばかり強引に顔を合わせる。
 視線は一瞬俺の目を見たが、しかしすぐにそらされた。
 己に不安を抱く目だ。何かに助けを求めるように、落ち着きなく周囲を見回している。
「いいぜ」
 俺は、笑いながら言う。
「恨め。それは正しい。全くの正当だ。俺が許す、お前は俺のせいにしていい」
 一拍置き、俺は言葉を続ける。
「……届いたか? お前に」
「…………」
 首は横に振られた。
 が、直感する。衣鶴は、俺の言葉に嘘を感じていない。
549真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:02:43 ID:LMFYRy/w
「……衣鶴。やり直すか」
「……え?」
 眉が上がり、何を言っているのか分からない、といった顔になる。
 立場が逆なら、俺だってそう思う。そんな、突拍子もないような一言だ。
「だから、やり直すかって言ってるんだ。最後の打席を」
「でも、二人じゃ――」
「真似事くらいならできるだろ。ピッチャーとバッターさえいればな」
「ピッチャーなんていないでしょ、此方の右腕は、三年前に――」
「忘れた。――他に文句はあるか?」
 強く視線を送ると、その目線はまたも外れた。
「……今更すぎるよ」
「ああ今更だ。だが俺は、辛気臭い雰囲気が苦手だ。ってか大嫌いだ。――特に、お前のはな」
 余計な一言が出たが、どうやら衣鶴は気付いていないらしい。
 返答は、無言の首肯。
 話は決まった。立ち上がらせようと脇に手を入れて力を入れた瞬間、素直な感想が出た。
「……うわ、意外と重いな、お前」
 ――頭突きが飛んで来た。

/

 ――勝負は、三球。それが約束だ。
「それじゃあ――はじめますか」
 暗闇の中――誰もいないグラウンドで、対面する。
 衣鶴はバットを重しに、軽く柔軟運動をする。数度それを繰り返したあと、バットを己に立てかけ、手指を伸ばしていく。
 まだ違和感があるという右手指は念入りに。三十秒ほどかけてから、彼女はバッターボックスに入る。
 ヘルメットと制服は、改めて見るまでもなくミスマッチ。
 だが、――衣鶴がバットを正しく握り締めた瞬間、その違和感は消失する。
 そこにいるのは、過去八年、最高と呼ばれた――最高と呼ばれ続けたバッターだ。
 例え意気を失っていても、その覇気は本物以外の何者でもない。
「――は、」
 息を大きく吐く。
 まずは呼吸を整える。
 己の拍を思い出す。
 身体に刻み込んだ技能が、――錆び付いていた機能が軋みをあげる。
 もう――三年。速球を投げていない。
 日常生活に限れば問題はない、と言われたその肩を、一度ぐるりと回した。
 ……やっぱり、医者の言葉なんか信用できない。三年も経ったのに肩には若干の違和感があり、ピリピリとした鈍痛を送ってくる。
 ――だが、いい。大丈夫だ。三球に限るなら問題は一切無い。そう決めた。
550真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:03:10 ID:LMFYRy/w
「…………」
 左手のグラブ位置を調節し、マウンドを踏んだ。
 右手には硬球。握り締める力の半分は恐怖からだ。
 三年のブランクに対し、三年の過酷な練習。打たれぬ方がおかしいとすら言える力量差があるだろう。
 だが、それによるコントロールミスは無い。
 状況は過去を呼び覚ます。投球のための機械であった己を。
 今、この場。ただ三球の間だけ――雲野・此方は、昔と同じく、海老原・衣鶴の好敵手だ。
「――――」
「――――」
 目線が合う。
 身長はほぼ同じ。互いの準備は完了し、もはや是非もなく勝負は開始される。
 いつだったか――まだ俺の右肩が壊れる前、きっとこういうことがあった。
 脳の片隅でその時を思い出しながら、両手を背へと持っていく。
 ヒュ、と呼気を吐いたのは昔のクセから。呼吸はそれで最後、次に行うのは、左足の振り上げだ。左足と両手がつくほどまで、身体を引き絞っていく。
 衣鶴には、俺の背が見えている。
 覚えているか、と視線を送る。俺の投球法を。
 左足を加速。
 スニーカーがマウンドに食い込み、速度が関節を伝っていく。
「……ッ!」
 ――振り抜いた。
 速度は精々六十マイル――時速で言えば百キロほどか。昔よりも二割近く遅い球速だ。
 だが、衣鶴のスイングは大きくズレた。振り遅れだ。
 俺の狙いは外角高め。もう少しズレるかと思ったが、案外いいところに入った。コントロールミスはない、と言っておきながら、安心する己が少しおかしい。
 息を大きく吸い、俺と同じように全身を振り抜いた彼女を見る。
 衣鶴は呆然とした顔で、
「回転が、昔よりも速くなってる……」
 ここが地球上である限り、空気抵抗と重力からは逃れえない。ボールは抵抗を受け速度を落とし、重力に引かれていく。
 だが、その影響を少なくする方法ならば、ある。
 ジャイロ――ライフル弾のような回転は、一途な馬鹿ガキの遺産だ。
「今は、調子がいいのさ。昔より腕力もついてるしな」
 二球目を拾いながら、故に、と言う。
「今のは調整だ。回転はもっと速くなるし、速度も昔と同じまで引き上げる」
 笑い、
「打ってみせろよ、衣鶴」
 セットポジションに入り、
「そんなテンションで、打てるものなら――!!」
551真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:03:39 ID:LMFYRy/w
 リズムを跳ね上げ、右腕がボールを速度に乗せる……!
 宣言通り、速度は七十五マイルに到達する。時速にして、おおよそ百二十キロ―― 一般レベルで見れば十分な速球。
 過去の己の最高速度であったが、……今なら、と思う。この好敵手が相手ならば、まだギアは上がる。
 ……まあ、この球どころか、一球目で振り遅れていた衣鶴では打ては――と。リリースの瞬間、ビジョンが見えた。

右の蹴り足、意気がないまま彼女は自動的に動き、その身に刻み込んだ動作だけでこの速球を打ち砕く、

「ッ、」
 奇妙な確信が背筋を走る。
 冗談じゃない。
 そんな状態の衣鶴に打ち砕いて欲しい球じゃない。
「――お、」
 既に力の伝達は指先に至っている。
 勢いに負け僅かにたわむ指に、無理な力を込めた。
 更なる回転をかける。
 結果は、一球目とは比べ物にならない剛速球の成立だ。
 彼女のフルスイングは、ボールの頭をかすって、このマウンドまで風を送ってきた。
 ボールがベースの向こうに激突して跳ね、勢いを失いつつ転がっていく。
 ……ああ。ようやく、衣鶴も起動したらしい。
 本気が来る。打つ、と。殺気に近い、その意志が。
 夏の夜。生暖かい筈の風が、身を切るように冷たい。
 ……ああ、そうだ、思い出した。この女は、投手に殺気をぶつけるタイプだった。
 爪は僅かに割れたし、右肩にも鋭い痛みが芽生えているが、あと一球ならまったく問題はない。
 再度砕けようとも、この投球さえ完遂できればいい――。
 三球目を拾い、宣言する。
「行くぜ」
 いつだったかの勝負の結末は、どうだっただろうか。
 ゆっくりと、両手を背へと持っていく。
 呼気を鋭く吐き出して腹筋を締めた。左膝を胸につけるように持ち上げていき、同時に背を見せるほど身体を捻る。
 スニーカーの裏から、砂が風に零れていく。左膝が頂点に達し、一瞬停止した。
 一連の動作は、拳銃のイメージに似る。弾丸を装填し、撃鉄を下ろすそれと。
 昔の漫画のように派手で大仰な、――彼女のスイングと同じく、全身を使う投球。
 フォームの名を、トルネード。かつて日本を沸かせた大エースの投球法だ。
「お、」
 左足を、とにかく前へ。
 つま先から指先へ。地からの速度は関節を経由し弾丸に集中する。
 体重移動、精神集中、関節駆動――紛れもなく過去最高。
552真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:04:09 ID:LMFYRy/w
 その弾丸は、確かにフォームの主へと肉薄する。
「おぁあああ…………!!!」
 ――瞬間。明確に、ビジョンが見えた。

/

 ――ふと、昔を思い出した。
 リトルリーグでは、戦友だった。
 同じチームで、投打のエース。
 リトル独特の連投規制ルールがあるため、全国までは行けなかったが――それでも、俺とアイツさえ出場すれば、どんなチームにだって勝てると信じていた。
 だが、中学で、彼女は野球をしなかった。
 野球部顧問の頭が異常に固かったせいもある。
 ソフト部が、彼女を欲しがっていたのもある。
 だが、一番の原因は彼女自身だった。
『……ほら。あたしは、やっぱり女だからさ』
 そんな風に、穏やかに笑っていた。
『ソフトボールも、元々は野球だしさ』
 知っている。その笑みを知っている。
『約束、破ってゴメンね。ずっと一緒に野球やるって約束さ』
 いい。そんなもの関係ない。
 ただ、俺は――そんな顔をさせない、と。もっと昔に、もう記憶の彼方に消えた小さな頃に、約束をした。
 その筈だった――――。



/



 ――白球が、夜空をカッ飛んでいく。
 昇る宵の明星に向かって、夜の風を切り裂いて、伸びる。


553真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:04:44 ID:LMFYRy/w
/盛大な蛇足。

 で。
 たまに思うのは、『シャワー』という名の由来だ。
 ……日本語にも、そういう言葉はあるが。まさか、『しゃわ〜』という効果音からなのではあるまいか。
 まあ、もうそんな名前になってしまっているので、考えたって仕方ない事だが。
「いででででで」
 ……冷静になると、また馬鹿な話だった。
 日常生活に支障がない、と言っても、……ギックリ腰みたいなものだ。重いものを持ったりしたら壊れるし、激しい運動をしてしまえば痛みはぶり返す。
 熱と痛みを持つ右肩を軽く揉みつつ、蛇口を捻る。
 ソフトボール部は女子の集まりであるせいか、シャンプーやボディソープが部室に常備されている。
 俺はそれを(衣鶴経由とは言え)拝借しているというわけだ。
 ちょっと遠慮気味に出して、頭にわしゃわしゃと。
 小さい頃のトラウマ――衣鶴がシャンプーを目に叩き込んできた――があるので、つい目をギッチリと閉じてしまう。
「あ、ごめん。あたしシャンプー忘れてきたから貸してー」
「おう」
 目を開かぬまま隣にシャンプーをパスして三秒後。――その異常性に気が付いた。
「……い、衣鶴……さん?」
「ん? なに?」
「あのね? 今、俺、全裸なんですけど」
「奇遇だね。あたしもあたしも」
「黙れ馬鹿。ここ男子用だぞ」
「んー、いいじゃんいいじゃん。あたしが幽霊恐いのは知ってるでしょ? 水場は幽霊が出やすいんだってー」
「初耳だそんな設定。いいから帰れ今すぐに!」
「嬉しくないの?」
 ……オーケー。出ていく気はないらしい。
 返答は盛大なため息。声の方向に背を向け、さっさと出よう、とシャワーへッドを手探りで探す。
「はい」
 手渡されるシャワー。
 ……素っ裸の衣鶴が背後にいるわけか、と思うと――なにやらムラムラと、こ、興奮が、興奮がっ。主に股間でデッドヒート直前ッ、むしろ暴発間近ッ。
「落ち着け俺落ち着け俺」
「いやあのさ。声に出てる時点でスッゴい動揺してると思うんだけどどう?」
「うおおおおおおおおお黙れェエエエエエ俺の理性を壊すなァアアアアアッッッ!!!」
「うるさいなー、シャワー室響くんだから」
「お前が出て行けば問題は全部解決するんだよ!」
「しないってば。ほら、あたしはスッキリしたわけだけど、こなたんはまだ言い足りないんじゃない?」
「こなたん言うな馬鹿!」
554真似事。 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:05:24 ID:LMFYRy/w
 目を閉じつつ、振り向いて叫ぶ。……思えばちょっと失敗であった。
「そろそろそのセリフもワンパターンですよ罰ゲームザバー!」
 顔面に来たのはシャワー出力最強・対艦並み(冷水)だった。
「ぐわぁつめてぇ! むしろ痛い! やめろ! やめろォ!!」
「頭流してあげてるんだから文句言わなーい」
「言わせろ馬鹿! ぐああああああ目蓋が! 目蓋が抉れる!」
「あはははははは。――さて、飽きた」
「お、お前性格変わってないか……!?」
 コイツ吹っ切れすぎてネジが数本吹っ飛んだのか。――と言うかそうとでも考えない限り不条理すぎる……!
「んー。多分、コレが素だよ。――あたしはさ、もう、大丈夫だから」
 痛む目を拭って、衣鶴を見る。
 その表情は、確かな笑み。
 ……確かに全裸ではあったが、辛うじてヤバい部分はしきりに隠れている。
 ああくそ、と思う。文句のつけようがない。
「ほらほら。言い足りないコト、あるんでしょ?」
「…………む、う」
 ……ため息を吐く。
 これなら、あの緩い表情の方が良かったか、と。
「……いいか、よく聞け」
「おう」
 目を合わせることができない。
 ああ、なんで俺は勝負前に言えなかったのか。あの時、あのテンションに任せておけばよかったか。
 後の祭りとか後悔先に立たずとか色々声が聞こえてくる。
 だが、この状況、――言うしかない。
「――俺は、お前が、……かなり、好きだ」
 ……かなり、と付いたのは照れだ。しかし、こんな状況にしては、うまく行ったほうだろうか。
「――ん。あたしもだよ」
 とりあえず、この場でキスだけはしておくことにした。

→The End.
555509 ◆1Bix5YIqN6 :2008/03/15(土) 13:06:11 ID:LMFYRy/w
/
投下終了。
もう言い訳しない。むしろできない……けど一つだけ。実はエロをカットした。直しようがなかったから。
この三日でLOTTEのBLACK BLACKってガムが空になっちまったぜ……
……どうしてプロットきちんと考えてないのは書くのが早いのか。
全裸正座の価値はあっただろうか。
楽しんでいただけたら、本当に幸いだ。



……今回、名前の元ネタはことわざから。
『えび』でた『い』を『つる』、『くもの』『こちら』す。
個人的な最萌えポイント。
ボロ泣きしてるのは百七十五センチの女の子。自分で書いておきながら、死ぬほど萌えた。
556名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 13:31:20 ID:c8kJxK86
いいなぁ、長身の女の子と、しきり越しのキス。
全裸シャワー室のもどかしさというか微妙な健全さというか。
とにかくGJ!
お疲れさまでした。
557名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 14:15:51 ID:r//zB2GM
いいねぇ…青春だね…GJです!
野球好きな身としてはかなり楽しめた
ジャイロでトルネードなガラスのピッチャーとかヤバいwどんだけハイレベルな中学生だったんだ
だがそれがいい。マジでおもしろかったよ
558名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 14:45:05 ID:zrwKo1UN
何かもう泣けてきた
燃えたし萌えた。GJとしか言いようがない
オレが何書いてるか意味不明だけど、本当ありがとう
559名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 20:18:48 ID:sTbVPXnq
遅くなったけどGJ
汗っていいよね
560名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 20:23:41 ID:oTQqcWmV
このスレには魔神がいるようだな
ホンの一言を切っ掛けに、これだけのSSを書けるとは……
たった3日で、ここまで書けるなんて嫉妬モンだ
今帰ってきたので、じっくりこれから読ませてもらうぜ。GJ!
561名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 21:06:32 ID:8wlPPuLh
【表現規制】表現の自由は誰のモノ【87】
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news2/1205420822/
562名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 23:27:54 ID:zrwKo1UN
>>560
>>446を宣言したオレには耳が痛い台詞だ……orz
563名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 23:47:40 ID:LMFYRy/w
>>562
マジ頑張れと>>445を書いた馬鹿からですね
564名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 00:04:57 ID:zrwKo1UN
>>563
あ、アンタ……自分で書k(ry


よし、絶対に書き上げてやるからな!
下手でも泣くなよ!だから今しばらくお待ち下さい後生ですorz
565名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 01:02:22 ID:NR9hWBSW
>>562=564
HAHAHAHA!
おれなんて約半年前に続き書くって言ったのに書いてないぜッ。HAHAHAHA!
……スマン開き直る事じゃねーよな

>>563
じっくり読ませてもらったぜ。
スレを読み返してみると、氏の書いた『年の差。』の後にも「おれなんて全く書いていないもんねww」
みたいなレス返してた。行動に移せるアンタは凄いよ。つーわけで
・スポーツって良いよな。全力で挑む姿勢が最高
・二人でシャワーってエロいよ。手渡されるシャワーヘッドを掴むとき
 間違えて胸触っちゃった、アッハ〜ンみたいなの期待しちまった
の2点と改めてGJ!を送るぜ
566名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 02:11:16 ID:SYq5jd+X
>>555
どうせ書く書く詐欺だろとか思ってた俺を許してくれ。
どうせ言うほどスポ根でもないんだろとか思ってた俺を許してくれ。
GJ!
567名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 05:38:15 ID:aCdeT5WN
>>555こ・・・これはいかん・・・
小説読み終えた後独特の爽快感が半端ない。興奮で脳みそ沸騰しそうだ。
神GJ!!もうシチュもキャラも展開も描写も最高だった。また読み返させてもらうよ。 
 
>>564今シベリアにいるんだが、お前のために今から全裸待機しようと思う。頑張れ!
568名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 06:52:35 ID:q4yH7ZO4
>>567
馬鹿者、紳士たるもの全裸などと破廉恥な格好ではいけない。
ネクタイと靴下、サングラスを着用するんだ。私はそうしている。

ところでこのスレ480kb超えてるが、次スレはどうするんだ?
569名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 09:00:06 ID:SPSpPVuT
……シチュエーションも描写もほぼ最高クラスなのに、
一部の小ネタが作品世界への没入を阻害しているような気が。
(ジャイロとかトルネードとかのことじゃないよ。念のため)
登場人物の裏に作者の顔が透けて見えてしまって、
熱くなりかけたところを我に返らされてしまう感覚がある。
あまりにもったいないと思ったので敢えて書いてみた。
570名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 09:17:44 ID:7hGRy01o
>>569
そんなのあった?
某きのこのにおいはしたが……
571名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 09:59:47 ID:LUAHwrRg
師匠の所かな。あそこは超ドレッドノート級で良かったんではないかと。
572名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 15:32:59 ID:7hGRy01o
>>571
あ、そういうのか。
確かに言われてみれば……
全体的にはいい出来だけどね。玉に傷とはこういうことか。
573名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 21:31:26 ID:LUAHwrRg
>>572
上でドレッド〜っていうのがあったら超ドレッド〜の方が締りがよさそうだしね。
ちょいもったいない感じがする。
574名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 22:40:25 ID:8tNHvZMB
かなりスレ住人の心をつかんだ作品のようだな
高いレベルでのダメ出しとかあまり見たことないぞ
575名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 23:45:50 ID:Y6viigd7
かわいそうなのは直前に投下されたネタSSだな。
住民総出でスルーするほどつまらない作品とは思わないが、いまさらレスしようとも思わない。
576名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 00:25:29 ID:ZnMTrLNN
と言うか結構面白かったような。
よし! 思い立ったが吉日だぜ!
今更ながら>>528GJ!
577名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 00:28:53 ID:+VEnbPzW
前の作品から一日くらいは空けて投下した方がいいんじゃないかね
やった方はともかく、やられた方はたまったもんじゃないし
578名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 00:44:10 ID:gx2L/0Lt
まあ確かに、そんな投下スピードが速いスレではないからね。
今回は定型レスをネタにしたものだから直ぐに投下してオッケーなのかダメなのか迷うけど

>>568
そろそろ立てた方が良いと思う
579名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 00:57:38 ID:CMCq/PFr
>>575
悪意はないのかもしれないがそういう言い方はやめたほうがいい。
580名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 03:32:16 ID:fKITsEks
ま、ここらでひとつ心機一転しようじゃないか。
たてた。

【友達≦】幼馴染み萌えスレ15章【<恋人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205778691/
581 ◆NVcIiajIyg :2008/03/18(火) 04:12:52 ID:fKITsEks
>50の自作ですが詰めていったところ、脇道がかなり長くなったりなんだりで
幼馴染スレから移動した方がよさげなので折をみてどこか別スレに落とす予定です。
前々作では幼馴染エロに行くまで急ぎすぎて構成でこけたので今回は反省しました。
その折はちゃんと最後まで書きますのでお許しを。

何章になってもレベル高くて良スレなので今後も楽しみにしております。
582名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 07:18:31 ID:yqdbiOWd
>>581
全裸蝶ネクタイで待つ。
どこかに投下したときにはこちらでも言ってくれるとありがたい。
583名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 08:15:00 ID:ZnMTrLNN
>>581
俺も待とう。
全裸にパンツとシャツとスーツと靴下とネクタイとサングラスとカチューシャでな。

残り13kb、埋める?
584名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 11:22:37 ID:W84H2Yhp
保管庫の更新依頼は、埋め終わったあとにしましょうか。
13Kbだと、まだなにか埋めSSが投下されるかもしらんし。
585名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 16:18:36 ID:cCcr037X
それでは埋め投下

***

「だあああっ、また駄目だった、振られたぜチクショー!」
「通算14人目お疲れさま。はい、労いのクッキー」
「ありがとよ。いっつも美味いなぁー。お前の作ったクッキーが俺の明日への活力だ。
15人目も頑張るぜ」
「もう当てがある訳?」
「昨日の晩にコンビニ行ったら可愛い子がいたんだ!春休み中にやるぜ今度こそ!」
「うんうん、春は出会いの季節だもんね。別れの時期でもあるけど」
「不吉なこと言うなよ〜。しかし、それしきで挫ける俺ではないぞ。伊達に数はこなしてないからな」
「そう、クッキー作ってあげるから。安心して行っといで」
「これさえあれば玉砕も何も恐れるものはないっ。もう1個もらう」
「全部持って行っていいよ。……ほら、口のまわりに付いてるじゃない」
「あ、払うな、もったいないだろ」

 そう言うとあいつは私の指に付いたかけらをぺろりと舐めた。

「お前の作ったもんはぜーんぶ食べてやる。捨てるなんて出来るか」
「はいはい。この私の応援する気持ちを無駄にしないように、気ぃ張ってよ」
「おう!次こそは笑って報告してやるからな、じゃーな」

 気取られないように呆れる振りをして、残りのクッキーを押し付ける。
 あいつはぶんぶんと手を振って走っていった。
 唇が触れた指先がいつまでも熱かった。

「相変わらず自分の行動が振られる原因とは、まぁーーーーったく思っていない訳ね」
「自分で見つけるのが大切でしょ、人から教えてもらったって意味ないもの」
「あんた達を知ってて、恋人じゃなくただの幼馴染みと思う人間は、誰もいないって言うのにねぇ」
「お互い恋人同士なんて思っていないから」

 恋人じゃ足りない、もっとずっと大切な相手だから。あいつは。

「いい加減目を覚まさせてやったらどう?このままじゃいつか十番台越えるわよ」
「本人のしたいようにさせるのが一番でしょ」
「そうやって都合のいい女してるから、いつまでもふらふらしてるのよ。
案外遊ばれてるかもよ」
「あはは、そんな甲斐性ないって」

 たぶん両親の次に物心ついた時から、あいつを認識してる。
 あいつが何を考えてるか、誰を見てるか、たぶん自惚れでも、わかってるつもり。

「本当に盗られたら泣くのはあんたなんだからね。慰めてはあげるけど、そうなったら遅いよ」
「その時は、その時」
「そんだけ信じてるのかも知れないけど、……迷惑な二人よね」
「ごめんね」

 あいつが戻ってくる場所は私の隣だから。
 迎える私を信じてくれてるから。

 今日は帰りに本屋へ寄って、お菓子の本を探そう。春休みだから、結果は早いかもしれない。

***
以上です
失礼しました

 
586名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 21:01:35 ID:gx2L/0Lt
14人目ってのはこのスレに掛けてるわけだな?
おれもこの手の待ち続ける幼馴染ものを書こうと思った事があるがどうやって主人公が相手の気持ちに気付いても
ご都合的というかズルいような気がして中々二人をくっつかせられない。
それはともかくとして>>585
587うめてみる:2008/03/18(火) 21:13:44 ID:paqBZ3Mt
 寂れた商店街のはずれにあるこれまた寂れたコーヒーショップの昼下がり。
 さっきまでカウンターにいたはずの近所の八百屋のおじさんがいつの間にか消えていた。
なんというミステリー! 意外に身近にトワイライトゾーン!! ……なわけはなく、単に居
眠りこいてただけなのはついてた頬杖ががくっときて目覚めたことからも明らかだ。
 そのわりに久しぶりの顔が眼前に迫っているのは一体どういうことなのか? 困惑しつつも
まばたき数度。消えない。幻ではないらしい。驚いてはいてもつい出てしまう欠伸はとめられない。
「ふわぁふ〜〜〜」
 相手はがくりと肩を落としぼそりといった。
「ったく、お前なぁ〜、目ぇあけたまま寝るなよ」
 ほっとけ人の勝手だ。とりあえず商売物のコーヒーで眠気覚ましをはかろうと立ち上がる。
「をぃ、こら、無視すんな」
 そういった声に幾ばくかの焦りが含まれているのは気付かないふり。
「ドチラサマデシタッケ?」
 振り向いていいかえすと途端に怯んだ顔になる。ビバ、積年の刷込効果! しかし相手はすぐに
「タカシサマデスヨ」といいかえす。
 ……ちっ、年々立ち直りが早くなりやがる。
「何の用?」
 確かあんたとは喧嘩してそれっきりだったような気がするんですけど?
 と、目の前にぐいと雑誌が突きつけられた。ご丁寧にもとあるページを広げて指し示されたのは
某週刊少年誌のまんが賞発表コーナー。佳作の項にひっそりとささやかに、気の利いたペンネー
ムでもなんでもない“タカシサマ”の本名が印刷されていた。
「ふーん」
 二杯分のコーヒーをいれるために背を向けると、タカシがいう。
「それだけかよ、他に何かいうことあるだろっ?!」
「わーすごーいー」
 振り向きもせずに棒読み。
「くそっ!」
 タカシは雑誌をカウンターに放り投げると振り向いた私に向かって涙目でいいはなつ。
「いつか絶対、お前にすごいっていわせてやるからなっ、絶対にいわせるからなっ! 覚えてろよっ、
その時になってから褒めたって遅いんだからなっ!!」
 走り去ろうとしてけっつまづく、その後ろ姿に声をかけたがタカシは奇声を発していってしまった。
「別に置いて行かなくてもいいのに」
 雑誌を取り上げるとカウンターの下の戸棚に放り込む。そこには既に同じ雑誌が山積みになって
いるのはここだけの秘密。
588名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 16:43:02 ID:7GSaCcvu
>>587
乙。

ところで、このスレで一番よかった、と思ったSSは……と聞くのは荒れる原因だろうか。
俺は最初の方の帰省ネタがツボだったんだが。
589名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 20:15:41 ID:WOKdPaq+
いいんじゃないのか、埋まり行くスレだし。
おれはみんながどう思ってるか聞きたいぞ。
590名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 20:59:42 ID:g9P45GCC
>>588
当然自分のは抜きだよな。
まあそれ以前に自分のなんかダメダメですが。

小ネタで言えば>>80が急所、SSだと温泉氏のが甘くて溶けそうだった。
591名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 21:50:30 ID:JaOKZwR2
どうしてもこういうのって自演乙ムードが漂っちゃうんだよなあ…
592名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 22:28:41 ID:TBbc9g8U
んなこと言ったら自分のSSに感想がもらえない奴の妬みにも聞こえてしまうぞ
593名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 22:34:58 ID:WOKdPaq+
>>591
そうか。じゃあ止めておくか・・・
594名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 23:59:15 ID:CIMJrLxZ
こうやってみんな疑心暗鬼になるから>>588みたいなのは嫌なんだ。
595名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 02:24:30 ID:hmaTRaij
じゃあ気を取り直して






ぬるぽ
596名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 02:31:30 ID:mpnu1hkT
リアルタイムで遭遇した時だけしか、GJを言えないってのも、それはそれで寂しいもんがあるけどな。
あんまり深入りすると問題の種になるのは分かっちゃいるんだけども。

一番良かったとかそういうんじゃないが、コトコの話の続きを書いてくれないかなー?とは思ってる。
あのグダグダ感というか、ぬるい空気が素晴らしく俺好みだった。
597名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 02:38:07 ID:UMHadyrx
>>594
疑心暗鬼にさせるようなこと言ったのは591じゃん
今まで梅がてら印象に残った過去作品のこと語り合ったりしたが、
このスレじゃそんな文句出たことなかったぞ
598名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 02:43:36 ID:mpnu1hkT
どうやったら角が立たないように、俺の意見と好きな職人のやる気を出させることを両立した書き込みができるのか?
そんなことをひたすら考えて、ああでもないこうでもないと何度も何度も書いては消し書いては消しを繰り返し。
結局三十分くらい悩んだ挙げ句できるだけ無難な書き込みにしたというのに、>>595のせいで俺が空気の読めない痛い子みたいではないか。
そういう訳で>>595には謝罪とガッされることを要求する。
599名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 04:33:46 ID:iCTLVL6h
じゃぁ、俺が

>>595
ガッ
600名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 06:23:39 ID:P/5eG7wP
>>595のぬるぽを返したのは、広いネットの中巡り合えた、運命の幼馴染みの>>599という電波が・・・

疲れてんのかな俺・・・
601名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 11:01:31 ID:vuxqDrdK
あと4kbか……

引越しシーズンだな。
お隣さんが幼馴染でしたヤッフゥ! とかねぇかなぁ……
あ、俺幼馴染、野郎しかいなかったか。
602名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 14:30:38 ID:ATkXIPEZ
覚えてないだけで、実は幼稚園児のころ結婚の約束をした女の子がいたりして
603名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 14:36:20 ID:q5Qr2+xO
15の時に引越ししてそのままブッツリ切れたな…俺の全幼馴染たち(男も女も)
604名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 20:14:50 ID:rHmEOuB3
>>600
凄いな。>>599のIDから連想したのか
iCTLVL6h

アイシーティーエル……

愛してる

つまり(ry


いや、偶然だと思うよ
605名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 02:41:16 ID:qAL5mkxb
um
606名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 08:54:21 ID:K9GmB92b
ごめんなさい多分次スレでスゲェ変なの投下します埋め
607名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 09:27:26 ID:3SHH9kSZ
>>606に期待しつつ埋め
608名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 13:27:08 ID:S8OSuWK9
よし、もう埋めよう。

埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
609湯泉:2008/03/21(金) 14:30:47 ID:B573jktI
今日か明日中に>>424で予告した「バカップル炸裂! イチャイチャ突撃編」を投下するッッッ!


ごめん、うそ。俺には無理だったんだ。「閑話休題編」今日か明日中には投下させてもらうぜ。
とゆうわけで埋め。
610名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 18:36:06 ID:K9GmB92b
>>609
さて、ネクタイ靴下全裸で待機させてもらおうか

保管全部やってないみたいだけど、埋めちゃっていいの?
あと、>>149>>383なんだけど、こういう間違いはどこに言えばいいのか。
611埋めネタ:2008/03/21(金) 21:10:38 ID:vNP1GOhw
「やほー、起きてる?」
「……ま、ね。せっかくの休日だってのに良くこんな早くに起きるよね、君も」
「いまさらそれを言うかな……、どれだけの付き合いだと思ってんの」
「僕としては皮肉を言ったつもりなんだけど。……寝かせてよ、ほんと。
 君が朝っぱらごそごそやってるからこっちも起きざるを得ない訳でさ」
「ま、諦めんさい。それこそわたしに関わった因果って事でね☆」
「でね☆……じゃないよ、まったく。はあ、……我ながらほんと付き合いがいいと思うよ」
「たはは、それでどーする? ご飯食べる?」
「……遠慮しとく。二度寝させてよ」
「ぶー。テンション低いなー。色々やれる事あるんじゃないの?
 若いんだからさー」
「……あのね。若いも何もないだろ?
 僕を何歳だと思ってるんだよ」
「ん? 来年で四捨五入したら三十路になる年齢に突入っしょ?
 十分若いって」
「……少なくとも、少年少女向けのメディアじゃ主人公にはなれない年代だろ、僕ら」
「ジジむさいねぇ。そんなんじゃーすーぐ枯れちまうよー?」
「別に構わないよ。どうせ、君以外にカッコつけるつもりなんてないし」
「……期待させるよーなこと言っちゃって。どーせ、」
「今更隠すことがないからじゃないよ。君以外の女性に興味が無いだけだ」
「なっ……! ちょ、いきなしなに言ってんのさ!!」
「……単なる事実だよ。それに、妻に対して浮気をするつもりがないって誓う事くらい別に変じゃないと思うけどね」
「うー……、正論しか言わないのは嫌われるよ」
「別に君ならその辺り分かってるだろ。第一、君以外の人間に嫌われたって興味はないよ」
「……はあ、これだから。ほんっと分かっててもどうしようもないもんってあるよね……」
612名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 23:11:47 ID:K9GmB92b
埋め
613名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 00:17:16 ID:cuknJhSh
あれ?
500kbではまだ書き込めるのか? さっきみた時には埋めネタで500kb行ってた気がしたんだけども。

>>611
行間に詰まる砂糖を幻視した
614名無しさん@ピンキー
埋まれええええええぇぇぇぇぇぇッッッ。
幼なじみバンザァァァィィィィイイイイッッッ。
俺も幼なじみが欲しかったァァァァアアアッッッ。