【友達≦】幼馴染み萌えスレ13章【<恋人】

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608名無しさん@ピンキー
「べっくしょいっ!」
 我ながらど派手なくしゃみだ。
 俺は身体を起こすと、枕元においたティッシュ箱から無造作にティッシュを取り、
思い切り鼻をかんだ。ちょっとグロい鼻水の色に顔をしかめながら、丸めてゴミ箱へ投げ入れる。
 見事にゴミ箱にゴール。ナイスシュート、俺。
 枕代わりのアイスノンの位置を直し、再びそこに寝そべる。
 ひんやりとした感触が、熱に浮かされた頭に心地いい。
 心地いいんだが……。
「……何やってんだろうなぁ、俺」
 ――昨日の晩、待ち合わせの時間になっても、歌乃は来なかった。
 連絡を取ろうにも、その時になって初めてお互いの携帯番号を教えあっていない
という事に気づく有様で――帰ってきてからこっち、ちょくちょく顔を合わせていたから、
強いて電話とかで連絡を取る必要が無かったからだ――仕方なく、時間になっても
来ない歌乃を、俺はひたすらに待った。
 今になって思えば、歌乃の家の方に電話をかけてみれば良かっただけだったのかもしれないが、
その時の俺にその考えはなかった。"アイツが俺を待たせる"という異常事態が、
俺から冷静さを奪っていたのかもしれない。
 アイツは、昔から約束だけは守る奴だった。待ち合わせの時間に遅れた事も無いし、
むしろ俺の方が遅れて謝るというのが、俺達のいつものパターンだった。
 だから、俺は待った。日付が変わっても、人通りが途絶えても、イルミネーションが消えても。
 結果、歌乃は……いつまで経っても来なかった。
「げほっ! ごほっ! ……うー、喉痛いな……」
 そして、寒空の下、待ちぼうけていた俺は……ものの見事に風邪をひいてしまったというわけだ。
 親父とお袋には「何か調子が悪くなってきたんで帰ってきた」とだけ説明しておいた。
変に詮索されたくなかったからな。
「……あー」
 熱に浮かされた頭で、ぼんやりと考えるのは歌乃の事。
 なんで昨日に限って、待ち合わせをすっぽかすなんて事をしたんだろう?
 今朝になってから何度か歌乃の家に電話してみたが、留守のようで誰も出ない。
 歌乃の家は、両親共家を空けている事が多いから、歌乃がいなければ電話はまず繋がらない。
「……何か、あったのかな」
 思い浮かぶのは、事件や事故などの不安な原因ばかり。
「うー……げほっ、げほっ!」
 悪い想像はどんどん広がっていく。
 ……自動車で事故……歩いていたら轢かれたり……いや、家に強盗……。
 もしも。
 もしも、だ。
 もしも、もう、アイツが……この世にいなかったとしたら。
 そんな想像すらも、俺の熱にやられた脳味噌は始めてしまう。
 もう、二度とアイツに会えないのだとしたら。