【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part11【改蔵】

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1名無しさん@ピンキー
久米田康治作品のSSスレです。
週刊少年マガジンに大好評絶賛連載中の「さよなら絶望先生」ほか
「かってに改蔵」「行け!南国アイスホッケー部」「育ってダーリン」など
以前の作品も歓迎。


前スレ
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part10【改蔵】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191831526/

過去スレ
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part9【改蔵】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1190512046/
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part8【改蔵】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1189391109/
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part7【改蔵】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1186778030/
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part6【改蔵】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1167898222/
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Partご【改蔵】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147536510/
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part4【改蔵】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1123772506
【改蔵】久米田康司エロパロ総合 Part3【南国】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1105319280
かってに改蔵 Part2 【久米田康治総合】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1083582503/
【かってに改蔵〜天才エロ小説〜】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1035829622/


これまでに投下されたSSの保管場所
2chエロパロ板SS保管庫
ttp://sslibrary.gozaru.jp/


あぷろだ(SS保管庫付属)
http://www.degitalscope.com/~mbspro/userfiles_res/sslibrary/index.html
2名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 13:25:59 ID:ep1ZIShg


                  , ´  ̄ ` 、
                      l__   l
                ...-‐:::<:::::::::::::::::<__
           /:::::::::::::::::::::::::::>:´ ̄::::::::::::::`ヽ、
          /:::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::、:::\
      , ´ ̄`く:::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾヽ、>
     |       Y::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::>
     !        l::::::::::::::::::::::::_|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
     ゝ、_,ィ '::::::::::::::::::::::::::糺:::::::::::::::::::::::::::::/〆
       /:::::::|::::::::::::::::::::::::::::::ネヾ::::::::::::__z<  乂
      /::::::::l::::::::::::::::::::::; -‐ ミ、 ヾ;;;:イ0。;)     `7
      /:::::::::N:::::::::::::::::::l f‐-、゙    ゝ-‐´     '〈
      /:::::::::::| ヾ:::::::::::::八 ヽ__ヽ_         _ /
      /:::::::::::::|  `ミ:::::::::::::`ゝ、_ノ            /         n
     /::::::::::::::|    ` <::::N      __ ィ     r──‐H
    /:::::::::::::::|        Y       ∧::::::|:::::〈      |___.ロ|
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3名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 21:57:19 ID:moFf+Us8
>>1さん、乙です!
戻ってまいりました430ですこんばんは。

すごいですね、いつの間にか前スレ終わってるし…。
えー、というわけで、放置プレイにあっていた長編を投下させていただきます。
いつもながら完全に原型とどめてなくて申し訳ないですが、毎度の捏造設定で、
CPは先生×可符香(赤木杏)、久藤君×倫、すでにそれぞれ恋人同士です。

えー、無駄に長いので13レスずつ2分割で投下させせていただきます。
4旅立ちの時 前編 1/13:2007/11/02(金) 21:59:20 ID:moFf+Us8
可符香は、白い靄の中を歩いていた。
―――ここは、どこだろう…。

なんとはなしに不安な気持ちにさせる、白い靄。
可符香は、その中で、一生懸命誰かを探していた。

―――どこに…どこに、いるの…?

と、靄を通して、袴を着た背の高いシルエットが霞んで見えた。
「先生…。」
可符香は、小さく呟いた。

―――そうだ、私は、先生を探していたんだ…。

可符香が歩み寄ると、その姿…望がゆるゆるとこちらを振り向いた。

「可符香…あなたと、お別れしなければなりません。」
「え…?」
望は、それだけ言うと可符香の視線を避けるように目をそらせた。

可符香の喉は、からからだった。

―――何を、言っているの?先生!?

問い質したいのに、声が出ない。

急に、2人を取り巻く靄が濃くなった。
望の姿が霞んでいく。
いつの間にか、その首にはロープが巻きついていた。

「…さようなら、もう、会うこともないでしょう…。」

靄の向こうから、望の声だけが聞こえてきた。

「―――先生!!」



可符香は、自分の叫び声で目を覚ました。
5旅立ちの時 前編 2/13:2007/11/02(金) 22:00:21 ID:moFf+Us8
「……夢…?」

可符香は、自分のベッドで寝ていた。
心臓が激しく動悸を打っている。
汗をびっしょりかいていて、気持ちが悪かった。

―――なんで、あんな夢なんか…。

のろのろと起き上がり、台所で水を飲んだ。
何故か、先ほど夢の中で感じた不安感が消えなかった。

可符香は、台所の窓から見える月を眺めると、呟いた。
「先生…。」


* * * * * * * *


その頃、糸色望は、宿直室で執事の時田と向かい合っていた。
腕を組んで執事を睨みつける望に対して、時田は涼しい顔をしている。

「何度言っても同じです。見合いはしません。」
「ぼっちゃま。そうおっしゃいますが…。」
「だいたい、あの儀式なんて、所詮、時田の憂さ晴らしじゃないですか。」

時田は、望の言葉にモノクルをきらりと光らせた。
「ぼっちゃま、今回の見合いは、『見合いの儀』ではございません。」
「…なんですって?」
「きちんとした、本格的なお見合いでございます。」
そういうと、時田はカバンから大きな封筒を取り出し、望の前に置いた。

「さる代議士のお嬢様です。優しくお美しく、お年もぼっちゃまと頃合い、
 これほどの良縁はございません。」
「じょーーーーだんじゃありません!!」
望は大声で叫んだ。

「だいたい、見合いだったら私よりも兄さん達の方が先でしょう!
 なんで、いつも、私ばかり結婚させようとするんですか!!!」
6旅立ちの時 前編 3/13:2007/11/02(金) 22:01:15 ID:moFf+Us8
激昂する望に、時田は、首を振った。
「ぼっちゃま…ぼっちゃまには、糸色家の正当な継承者として、
早くに身を固めていただく必要があるのです。」
「木目糸売の件ですか!?あれは、お父様の悪ふざけでしょうが!」

時田のモノクルが再び光る。
「本当に、そう、お思いですか…?」
「え…。」
「旦那様は、自分の地盤を継がせるには、望ぼっちゃま、
あなた様しかおられないと、前々から考えておられるのですよ。」
「な…、私なんかに、政治家なんか務まるわけないじゃないですか。」
望は、あきれたように時田を見た。

時田は、首を振ると鋭い目を望に据えた。
「縁様は、確かに実力はご兄弟で一番ずば抜けていますが、何せご縁の薄い方。
 景様は、才能ある方ですが、常人には理解し難い。
 命様は、怜悧すぎて、やや人情味に欠けるところがございます。
 あなた様が、一番、大様の地盤を継ぐのにふさわしいのですよ。」

「…つまりは、私は、一番出来が悪くて平凡だってことですか。」
傷ついた顔をする望に、時田は諭すような目の色になった。
「ご両親は、あなた様に、糸色家の未来を託しておられるのです。」
望は、思わず時田から目をそらせた。
「ぼっちゃまは、そのご両親のご期待にお応えなさらないのですか?」
「…………でも、……私は……。」

言いよどむ望に、時田の表情が厳しくなる。
「例の女生徒の件であれば、それは考慮の範囲外ですぞ。」
「―――!!!」
「私の調査能力を見くびってもらっては困ります。」
望の顔から、ゆっくりと血の気が引いていった。

時田は、悲しげな目で望を見つめた。
「…ぼっちゃま。その場限りの関係であれば、相手が教え子だろうが構いません。
 しかし、あなた様は江戸時代から続く糸色家の、大事な跡継ぎなのです。
 ゆめ、ご軽率な行動は取られませぬよう…。」
「………。」
7旅立ちの時 前編 4/13:2007/11/02(金) 22:02:03 ID:moFf+Us8
時田が宿直室を辞したのは、真夜中を過ぎていた。
1人残った望は、封筒を前に、無言で腕を組んでいた。

秋の夜長の虫の音が、うるさいくらいに辺りに響いている。
暗い部屋の中で、望の横顔を、月が照らしていた。

月が校舎の影に沈んだ後になって、ようやく、望は立ち上がった。
そして、封筒を見下ろすと、深いため息をついた。


* * * * * * * *


翌朝。

可符香は、昨日から消えない不安にいたたまれず、早朝に学校の門をくぐった。
そのまま、まっすぐに宿直室に向かう。

宿直室の前の中庭から、煙がひと筋昇っていた。
「…?」
可符香が、中庭を覗き込むと、望がなにやら焚き火をしていた。

「…先生、こんな朝っぱらから、何やってるんですか?」
可符香が呼びかけると、望は、大げさなくらいに驚いて飛び上がった。
「か、可符香!どうしたんですか、こんな早くに!!」

「…ちょっと、眠れなくて…それより先生、何を燃やしてるんですか?」
可符香は、望の手元を覗き込んだ。
炎の端から白い、封筒らしきものが見える。
望は、慌てた様子で焚き火をかき回した。
「べ、別に、単にゴミを燃やしていただけですよ!早くに目が覚めたもんですから!」

「…。」
可符香は押し黙った。
望の行動はどう考えても怪しかったが、それ以上突っ込んでも
素直に答える性格ではないことは、長い付き合いで良く知っている。

―――放課後、ゆっくり探ってみるしかない、かな…。

可符香は、心の中で呟いた。

8旅立ちの時 前編 5/13:2007/11/02(金) 22:03:02 ID:moFf+Us8
可符香は、放課後、すぐにでも宿直室に行きたかったのだが、
そういうときに限っていろいろと用事が重なるものだ。
結局、可符香が宿直室を訪れたのは、すっかり日が暮れてからのことだった。

「先生…います?」
扉をそっと開けて中を覗き込んだ可符香は、目を丸くした。

この学校の宿直室は風流なことに、中庭に面して縁側が作られている。
望が、そこに座って、一人、杯を傾けていたのである。

望は振り向くと、驚いたような顔をした。
「可符香……?どーしたんですか、こんな、時間に…。」
少し酔っているようだ。

「…珍しいですね、先生がお酒を飲むなんて…。」
可符香は、上がりこむと、望の隣にすとんと腰を下ろした。
「交君は、どうしたんですか?」

望は、ゆらゆらと杯を上げながら答えた。
「交ですか…交はですねぇ…。」
ふと、望の表情に苦々しさがよぎる。
「…時田が、実家に、連れて帰りました…。」
「時田さんが?また、どうして?」

望は、それに答えずに杯を干すと、ふーっと息をついた。

「…先生、お酒、飲めないんじゃなかったでしたっけ?」
「…余り、得意ではありませんねぇ…。」
「だったら、何で飲んでるんですか?しかも1人で。」

絶対、今日の望は何かおかしい。
可符香は思った。

「先生…。」
可符香が言いかけたとき、望が口を開いた。
「あなたも、飲みますか?」
「…生徒にお酒勧めるなんて、問題ですよ。」
9旅立ちの時 前編 6/13:2007/11/02(金) 22:04:02 ID:moFf+Us8
可符香自身も、余り酒を飲みつけてはいない(まあ、当然だが)。
しかし、望から何かを聞きだすためには、とりあえず調子を合わせたほうがいい、
そう考えた可符香は、望の手から杯を受け取った。

可符香の手の中の杯に酒を注ぎながら、望が呟く。
「この杯を受けてくれ、どうぞなみなみ注がしておくれ…か。」
「勧酒、でしたっけ…?」
可符香は、その有名な訳詩の先を思い出して、ヒヤリとした。

―――サヨナラダケガ ジンゼイダ…。

「せん…」
「さ、飲んでください、可符香。」
「…。」

大きめの杯に満たされた酒に、月の光が反射している。
可符香は、それを見つめると、一気に飲み干した。

喉を熱い塊が下りていき、体がかっと熱くなる。
可符香は、ほぅ、と息をついた。

と、望が可符香の手から杯を奪い取った。
「先生?」
顔を上げた可符香に、望が乱暴に口付けてきた。

「んんっ!」
望の息は、甘い、酒の香りがした。
可符香は、そのまま縁側に押し倒された。
「せ、先生…?」

望の表情は、月の光を背にして、はっきりとは分からなかった。
次の瞬間、望がいきなり可符香の首筋に顔を埋めてきた。
「…っ!?」
可符香は、混乱した。

望は、普段体を合わせるときは、優しく焦らすような愛撫を繰り返し、
可符香が何もかも分からなくなるまで、ゆっくりと追い詰める。

しかし、今の望には、そんな余裕は全く見られなかった。
何かにすがるように、可符香にしがみついていた。
10旅立ちの時 前編 7/13:2007/11/02(金) 22:04:55 ID:moFf+Us8
「先生…。」
呼びかけても、望からは答えはない。
「や、…んっ!」
首筋を強く吸われて、可符香はのけぞった。

「先生、待って、私、先生に聞きたいことが…。」
可符香は、望の胸を押し返した。
望は、一瞬、動きを止めて可符香を見たが、何も言わずに
再び、可符香の首筋に顔を埋めた。

「やっ、ちょっと、先生、待って…!」
望の指が、セーラーのリボンをほどき、前襟のスナップを外していく。
可符香は、両腕を上げられ、あっという間に上着を脱がされてしまった。
ブラもむしりとるように取り去られ、顕になった素肌に、
望が紅い跡を散らしていく。

可符香は、既に息が上がっていた。
望に、話を聞かなければと思いながらも、何も考えることができない。
自分の上を行き来する、望の指と唇の触感だけが可符香を満たしていた。

望が、スカートのファスナーを下げる。
スカートと一緒に下着も下ろされた。

「え…。」
望が、袴を乱暴に脱ぎ捨て、可符香の上に覆いかぶさった。
「っ、ぁぁぁあああ!」
望が、前触れも無しに可符香の中に侵入してきた。

既に、十分潤っていたとはいえ、さすがに痛みを感じる。
「先生、痛い…!」
望の性急な行為に可符香は恐れを感じた。

望から、こんなにも強引に体を開かれたのは、前に一度きり。
合意さえなかったあのときは違うとはいえ、それ以来、望は
可符香が痛みを感じるようなことは一度もしたことがなかった。

それが、今は、可符香の抗議が聞こえているはずなのに、
動きを止めようとする気配もない。
11旅立ちの時 前編 8/13:2007/11/02(金) 22:05:51 ID:moFf+Us8
望の顎から、可符香の上に汗が落ちてきた。
望は、着物さえ脱いでいなかった。

―――どうしたの、先生、ねえ、何があったの…!?

可符香の疑問は、段々と湧き上がってきた快感に押し流されてしまった。

「くっ…!」
「…ぁっ!」
2人、小さく叫んで、可符香は望と同時に果てた。

2人は、虫の音の中、しばらく無言で呼吸を整えていた。
月の光だけが照らす部屋で、互いの息遣いが響く。

可符香は、隣でごろりと横になっている望に顔を向けた。
望は、手の甲を目にあて、上を向いていた。
その姿が、何となく泣いているように見えて、可符香は声をかけた。
「先生…?」

望は、ピクリと体を動かすと、手を顔からどけた。
そして、ゆっくりと、可符香の方を向いた。
望の目は、乾いていた。
しかし、その瞳は暗くよどみ、可符香を不安にさせた。

「先生…。」
口を開いた可符香に、望が手を伸ばした。
ぐい、と引き寄せられ、再び望の唇が強く押し付けられる。
「んっ、せん、せ…。」
可符香の抗議は、絶え間なく与えられる口付けに封じ込められた。

可符香は、息が苦しくて朦朧となりながらも、
望の欲望が再び盛り上がっているのを感じた。

望が、可符香の細い体を組み敷いた。
「え、まさ、か、せんせ…。」
可符香の声を無視するように、望が再び可符香に押し入った。

―――先生…!!

望の狂おしい表情を目に、可符香の意識は遠のいていった。
12旅立ちの時 前編 9/13:2007/11/02(金) 22:06:48 ID:moFf+Us8


* * * * * * * *


「…。」

夜半もだいぶすぎた頃、望はそっと起き出した。
立ち上がり、ぐっすりと寝入っている可符香を見下ろす。

飲みつけぬ酒を飲んだところに、何度も激しく求められ、
可符香は、いつになく深い眠りについているようだった。
ちょっとやそっとでは目を覚ましそうにない。

望は、押入れから布団を出して可符香にかけると、
旅立ちセットが入ったカバンを取り出した。
そして、大きな音を立てないよう、その中身を入れ替えていった。

最後、カバンを閉め、手に持って立ち上がりかけ、
望は、再び可符香を見下ろした。

「…。」
望は、カバンを置くと身をかがめ、寝ている可符香の頬をそっとなでた。
可符香が、くすぐったそうに身じろぎをする。

望は、はっと身を引き、息を殺して可符香を見守った。
どうやら、可符香は再び眠りに落ちたようだ。

望は、ほっと息をついた。
しばらく可符香をそのまま眺めていたが、引き寄せられるように顔を近づけ、
可符香に口付けしようとして……直前で止まると、体を起こした。

そして、小さくため息をつくと、今度こそカバンを手に立ち上がった。

「さようなら、可符香…。」
望は、呟くと、音も立てずに宿直室から出て行った。


* * * * * * * *


13旅立ちの時 前編 10/13:2007/11/02(金) 22:07:32 ID:moFf+Us8
翌朝、可符香は宿直室で目を覚ました。

―――あ、あれ!?まずい、私、そのまま寝ちゃったの!?

慌てて起き上がり、辺りを見回す。
「…先生…?」
そこに、望の姿はなかった。

ふと、押入れが少し空いているのに気づき、近づいて、開けてみる。
そこにあったのは、望がいつも「旅立ちセット」と言っていた小物たち。
「何で、これがここに…。」
旅立ちセットが入っていたカバンは見当たらない。

―――先生!?

急に、得体の知れない不安が可符香を捉えた。
この「旅立ちセット」は、実際には旅立てない見せかけだけの代物である。
それを置いて、望は、いったい代わりに何をカバンに詰めて行ったのか。

―――そもそも、先生は、いったいどこに行っちゃったのよ!!

宿直室の押入れをもう一度覗く。
着替えが入った行李には手はつけられていないようだった。

―――着替えも持たないで、どこに…?

心臓の音がうるさいくらいに鳴っている。
可符香は宿直室を出ると、隣りの用具室の扉が僅かに開いているのに気が付いた。

覗くと、壁にかかっていたはずの、丈夫で太いロープがなくなっている。

可符香は、息を飲んだ。
「先生!!」
可符香は、望の姿を求め、廊下に飛び出した。


14旅立ちの時 前編 11/13:2007/11/02(金) 22:08:17 ID:moFf+Us8
「えー、どうやら、糸色先生は、また失踪中のようです。」
新井智恵は、朝のホームルームで、うんざりした顔でそう告げた。
生徒達の反応も、慣れたもので、誰も心配していない。

その中で、1人、可符香だけが青ざめた顔をしていた。

と、教室の扉が開いて、袴姿の少女が現れた。
「あれ…まといちゃん?先生についていったんじゃないの?」

不思議そうな顔をするクラスメートに、まといは顔をしかめた。
「先生がくれたコーヒーを飲んだら急に眠くなっちゃって…。
 気が付いたら、保健室で寝てた。」

頭を振りながら席につくまといを見て、生徒達が呟いた。
「それって、睡眠薬?」
「先生、今回の失踪は、随分手が込んでるねぇ…。」

ガターーン!

可符香は、思わず椅子を引っくり返して立ち上がっていた。
教室の皆が、可符香を振り返る。まといが、す、と目を細めた。
智恵も、教壇から驚いたような顔で振り返った。

「あ…、と。すいません、智恵先生、お手洗いに行きたいんですが。」
可符香は、慌ててその場を取り繕った。
「え、ええ、もうホームルームは終わりなので、どうぞ。」
智恵が、面食らったような顔で答えた。

クラスの皆も、いつにない可符香の態度をいぶかしんでいるようだ。
可符香は、皆の目を避けるように教室から出ると、宿直室に向かった。

無人の宿直室に入ると、
「先生…。」
可符香はちゃぶ台の前にへたり込んだ。

と、後ろから聞きなれた声がした。
「杏ちゃん、いったいどうしたっていうのさ。」
15旅立ちの時 前編 12/13:2007/11/02(金) 22:09:01 ID:moFf+Us8
「准君…」
可符香は振り向いた。

「先生に、何かあったの?」
尋ねる准に、可符香はうつむくと、ぽつりぽつりと話し始めた。

昨日、朝から望の様子がおかしかったこと。
可符香に何も言わず姿を消してしまったこと。

さすがに、昨日の夜のことは話せなかったが、
旅立ちセットの中身が入れ替わっているようだと話したとき、
黙って可符香の話を聞いていた准の表情が変わった。

「…それって…。」
准は、眉根を寄せて、可符香を見た。
可符香は、准が、自分と同じことを心配しているのだと分かり、
不安がさらに高まってくるのを感じた。

准は顔を上げた。
「倫ちゃんに、何か分からないか、聞いてみるよ。」
「…倫ちゃん?」
「うん。時田さんが交君を実家に連れて行ったって言ってたろ。
 先生の実家の方で、何かあったのかも知れない。」
「…うん。ありがとう、准君…。」

気にしないでよ、と笑顔で手を上げる准を見送ると、
可符香は、再び、ちゃぶ台の前に座り込んだ。

―――先生、なんで、何も言ってくれなかったの…?

可符香は、両手をちゃぶ台の上につき、その中に顔を埋めた。


* * * * * * * *


16旅立ちの時 前編 13/13:2007/11/02(金) 22:10:04 ID:moFf+Us8
倫が、喫茶店で待つ准のもとに、息せき切って走ってきた。
「准!分かったぞ!」
「良かった!…どうもありがとう、倫ちゃん。」

「時田の奴、はじめはしらばっくれていたが、締め上げたら吐いた。」
倫は准の向かいに腰を下ろした。
准は、「締め上げた」の言葉が気になったが、あえて尋ねないことにした。

「お兄様、どうやら見合いの話があるらしい。」
「ええ!?また!?」
「いや、今回は『見合いの儀』ではなく、本格的な見合いだ。」
「…だって、先生には、杏ちゃんが…。」

倫は、ふむ、と腕を組んだ。
「お父様は、どうやら望お兄様を本気で跡継ぎに、と考えているようだな。
 いくら、冗談好きなお父様でも、さすがにそうなると…。」
「杏ちゃんは、糸色家にはふさわしくないってこと!?」
気色ばむ准に、倫はムッとした顔をした。
「私が言っているわけではないぞ。」
「あ、ごめんよ倫ちゃん、つい…。」
准は、倫に謝りつつも、口を尖らせた。
「…でも、てことは、先生は杏ちゃんに内緒で見合いに出かけたってわけ?」

倫が首を振った。
「それが…お兄様、実家にも姿を見せていないらしい。」
「え…。」
「時田の口ぶりだと、かなり見合いに抵抗していたらしいから…。」
「じゃあ、本当に、失踪…?」

准と倫は顔を見合わせた。
倫が、表情を曇らせて、呟いた。
「これは少し…心配だな。」


* * * * * * * *


17430:2007/11/02(金) 22:10:55 ID:moFf+Us8

と、ここまでで半分ですが、
他の職人さんの投下もあるでしょうから、とりあえず退避。
残りは、明日、投下します。

なんて言ってるうちに、例のヤツが戻ってきてまた規制されたりして。
これから出張も増えそうだし、いい加減、WILLCOM加入しようかなぁ…。
18名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 00:19:42 ID:rI9yB22W
亀ですが、
>>1 さん乙です!


>>17
おかえりなさい430氏。
・・・とりあえず、続きが気になって寝付けませんw
19名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 00:41:38 ID:G6shis98
前スレ>>637さんへ
お菓子あげるからイタズラさせろ! GJでした。
20名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 00:42:47 ID:PczZgU+k
そういえば、明日が先生の誕生日だったっけか
21名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 00:46:09 ID:vcb+nb+Z
百合板が急に活発になってきている気がする。
ここと掛け持ち組もいるのかな?作者。
22名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 01:26:46 ID:NKJGqiCl
久しぶりに来てみたら、もう新スレ立ってたのか、、
前スレ>>636>>642 超GJ!
おあづけくらってる、このじれったさがたまらん
23名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 01:56:21 ID:DdzTlvAV
>>17
あなたの文がとても好きだ
続き待ってるぜ


全裸で
24430:2007/11/03(土) 10:07:10 ID:hHyXEEu3
おはよーございます(って、もう「早い」って時間でもないか…)。
なんか職人さんもいらっしゃらなかったようなので、
とっとと後半落としちゃいますね。お待たせするほどのもんでもないしorz
えー、ちなみに、後半にはエロがありません。
相変わらず軸がぶれていてすいません。

あと、前編にも一部あって申し訳なかったのですが、
以前書いた自作SSのエピソードを勝手に入れ込んでいるので、
読んでいて「??」となった部分は読み飛ばしていただければ。
25旅立ちの時 後編 1/13:2007/11/03(土) 10:08:18 ID:hHyXEEu3
宿直室で、倫を伴って戻ってきた准から事情を聞いた可符香は、青ざめた。
見合いの話に、ではない。
その見合いを前に、望が姿を消した、という事実にだ。

何だかんだ言いながらも、望は、律儀な人間であった。
「見合いの儀」のときも、文句を言いながらきちんと実家に帰っていた。
それが、今、実家にも帰っていないということは…。

可符香の表情を見て、准が憤懣やるかたない、といった顔をした。
「まったく、あの馬鹿教師、何度杏ちゃんを泣かせたら気が済むんだ!」
と、倫を見て謝る。
「あ、と、言いすぎだったね、ごめん。」

倫は、首を振った。
「いや、准、お前が正しい。お兄様は、大馬鹿者だ。
 だいたい、お兄様ときたら、子供の頃から人に心配ばかりかけて…。」
と、倫の言葉が止まった。
准と可符香が、何事か、と倫の方を見る。

「もしや…。」
「なに?どうしたの?倫ちゃん。」
「お兄様の、行き先に、心当たりがある。」
「―――!!」




1時間後、3人は、望の実家の方向へと向かう列車に乗っていた。
その中で、倫が話し始めた。
「お兄様は、子供の頃、体が弱くてな…。
 夏はいつも、奥の別荘に、1人で静養にやらされてたんだ。
 人の出入りが多い本宅では、体が休まらないだろうと言われてな。」

准が意外そうな顔で相槌を打つ。
「へえ、そうなんだ……先生1人だけで?」
「まあ、もちろん手伝いの者はいたけどな。」
「子供なのに、寂しくなかったのかな…。」
26旅立ちの時 後編 2/13:2007/11/03(土) 10:09:34 ID:hHyXEEu3
倫は、苦い笑いを浮かべた。
「寂しい、といえば、本宅の屋敷にいても同じだったからな…。」
「え…?」
「お父様もお母様も、お忙しくてめったに姿をお見かけしなかった。
 我々を育ててくれたのは、時田と、乳母や達だ…。」
「…。」
「特に、お兄様は、体調を崩して奥座敷で寝ていることが多かったから、
 友人も少なかったし…。」
「…知らなかった。先生も、倫ちゃんも、ある意味寂しい子供時代を 
 過ごしてきたんだね…。」
「ははは、まあ、人は沢山いたんだがな。」

准と倫の会話を、可符香は意外な気持ちで聞いていた。
―――先生に、そんな子供時代があったなんて…。

今まで、可符香は、望は自分とは違い、誰からも愛されて
幸せな人生を送ってきたんだとばかり、思っていた。
体が弱く、大人だらけの大きな屋敷の奥で1人、
ぽつんと寝ている子供の姿など、想像もしたことがなかった。

―――私、先生のこと、何も知らなかったんだ…。

「それにしても、先生が、病弱だったなんてね…。
 でも、確かに、見るからにひ弱そうだもんなぁ、先生。」
准の言葉に、倫は苦笑した。
「いや、見た目はあれでも、今では随分と丈夫になったんだぞ。
 上のお兄様達に、よってたかって鍛えられたからな。」

可符香は、ぼんやりと思い出していた。
―――そういえば、前に、泳ぎを散々鍛えられたとか言ってたっけ…。

そのおかげで、自分は、望に命を助けられたことがあった。
2人が、初めて心を通わせたときの、北の果てでの遠い記憶。

―――先生……会いたい…どこにいるの、先生…。
可符香は、膝の上で両手を握り締めていた。
27旅立ちの時 後編 3/13:2007/11/03(土) 10:10:26 ID:hHyXEEu3
望や倫の実家がある蔵井沢駅を過ぎ、列車はさらに山間部へと進んでいく。
列車は、やがて、小さな駅で止まり、可符香達はそこで列車を降りた。
秋の湿った落ち葉の香りが、ホームに降り立った可符香達を包む

倫は、駅でタクシーを拾うと、行き先を告げた。

タクシーの中で、准は倫に尋ねた。
「ところで、なんでここに先生がいるって思うの?倫ちゃん。」
倫は、小さいため息をついた。

「この別荘は、私やお兄様にとって、両親との幸せな思い出の場所だから…。」
「…?」
「夏の間、両親は、必ず1度は、幼い私を連れてここを訪れるようにしていた。
 …さすがに、お兄様のことが不憫だったのだろうな。
 そのときだけは、客も来ず、本当に家族だけの水入らずの生活ができたんだ。」
上の兄達はいないことが多かったけどな、と倫は笑った。
「本当に、楽しかった…。子供時代では、ほとんど唯一の、両親との思い出だ。」

倫は遠い目をしてタクシーの窓から外を眺めた。
「だから…お兄様が、家族のことで悩んでいるのだったら…
 一番に、ここに来ているのではないかと思って…。」
「…。」

准は黙り込んだ。
可符香も、痛む胸を押さえて外を眺めた。
外は、既に夕闇が濃く降りており、白い靄があたりに漂っていた。

―――どきん。

白い、靄。
夢の中で見た光景が蘇る。

―――さようなら、もう、会うこともないでしょう…。

遠くに消えていく、後姿。
首にはロープが巻きついて…。

「…いや。」
可符香は思わず、声に出して呟いていた。
28旅立ちの時 後編 4/13:2007/11/03(土) 10:11:14 ID:hHyXEEu3
「杏ちゃん?」
「やだ…先生…だめ…。」
可符香が両手を口に当てて震え始めた。
―――だめ、もうこれ以上、ポジティブな考えなんか、できない…!

准は、驚いたように可符香を見ていたが、無言でその肩に手を回した。
倫は、自分も手を伸ばして可符香の膝をぽんぽんと叩くと、呟いた。
「…あの馬鹿兄……絶対に許さん…。」


タクシーは、瀟洒な別荘の前で止まった。
倫は、タクシーを返すと、懐から鍵を取り出した。

「さて、と…。」
倫が別荘の鍵を開けようとしている間、可符香は辺りを見回した。
と。
向こうの木立に、靄の中にぼんやりと佇む人影が見え、息を飲んだ。
「―――先生!!」

倫と准が驚いたように可符香を見た。
可符香は、人影に向かって走り出していた。

人影が振り返り、驚いた顔でこちらを見つめた。
「可符香…何故…。」
可符香は、望に体当たりした。
「わふっ!」
そのまま、ぎゅっとしがみつく。
「先生の馬鹿!なんで、何も言わずにいなくなっちゃうんですか!」


* * * * * * * *


望は、自分に抱きついている少女を見ながら、驚愕していた。

何故、ここに可符香がいるのか。
顔を挙げ、遠くに准と倫が立ちすくんでいるのを見て理解した。
「ああ…倫が……うかつでした…。」

望は、相変わらずの、自分の脇の甘さに苦笑した。
29旅立ちの時 後編 5/13:2007/11/03(土) 10:12:10 ID:hHyXEEu3
望にしがみついたままの可符香が、顔を上げた。

「お見合いの話…聞きました。」
「え…。」
「先生、どうするつもりなんですか…。」
「…。」
「先生、私…大人しく身を引くから、お見合いを受けてください。」
可符香の言葉に、望は、目を見張った。

「なっ…、あなたは、いったい、何を言って…!?」
うろたえる望に、可符香は、目に涙を湛えて言った。
「私、たとえ、先生と二度と会えなくなったとしても、それでも、
 先生が、元気で生きててくれるんだったら、それだけで、いいから…。
 だから…。」

望は、思わず可符香から顔をそらした。

「いなく、ならない、で、ください、先生…!」

その場に、沈黙が落ちた。

望は、ゆっくりと、ため息をついた。
そして、可符香の腕をそっと外すと、別荘を見上げた。
可符香も一緒に、瀟洒な建物を見上げる。

「ここで…私は、両親から沢山の愛情をもらいました。」
「…倫ちゃんに、聞きました…。」

望は、別荘を見上げたまま続けた。
「私は…両親の恩に、背くことはできません。
 かといって、教師をやめて、政治家になるなど…
 ましてや、愛していない人と結婚することなど、できはしません。」

そう言うと、可符香を振り返った。
心から、愛しいと思っているのは彼女1人だけ。
しかし―――。

「私は、あなたを、この糸色の家のしがらみに巻き込む勇気もない。」
30旅立ちの時 後編 6/13:2007/11/03(土) 10:13:06 ID:hHyXEEu3
「私は、そんな、心の弱い大人なんです…。
 こんな私は…この世にいる価値もない。
 却って、私なんかがいるから、両親もいらぬ期待をするのです。」
望は自分の手を見下ろした。

「私がいなくなれば、両親も、あきらめるでしょう。
 だから………。」

可符香の唇が震え始めた。

と、そのとき。

―――どげしっ!!!
あたりに不気味な音が響いた。

望は、後ろから思い切り蹴り飛ばされ、地面に顔面から突っ込んだ。
望の後ろには、怒りマークを貼り付けた倫が、足を上げて立っていた。

「な、何をするんですか、倫!」
望は振り返ると、痛さの余り涙目で抗議したが、倫の怒声に遮られた。
「だまらっしゃい!この、馬鹿兄!!」

「ば…。」
望は、絶句して、年の離れた妹を見上げた。
倫は、顔を真っ赤にして怒っていた。
妹がこんなに激昂するのを見るのは、久しぶりだった。

「何を勝手に自己完結なさっておられるのですか!
 いいかげんに目を覚ましなさい、お兄様!」
「…。」

望の顔を見て、倫の表情が、少し和らいだ。
「お兄様…お父様も、お母様も、お兄様のことを愛しています。
 お兄様を苦しめてまで、跡を継がせようとは思ってませんわ。」
「いや、でも、お父様は…。」
「お兄様。」
倫がまた怖い顔をした。
31旅立ちの時 後編 7/13:2007/11/03(土) 10:14:25 ID:hHyXEEu3
「だいたい、お兄様は、今までに一度でも、お父様にご自分のお考えを
 お伝えになったことがありまして…?
 本当に、なんたるチキン!
 それでは、お父様も、お兄様のお気持ちを測りようがないじゃないですか!」

望は、唇を噛み締めた。
確かに、倫の言うとおりだった。
自分は、昔から、親に対して心からの要望を述べたことがない。

子供時代、元気で優秀な兄達に比べ、病弱で寝込んでばかりいる自分は、
この家の厄介者だと、いつも負い目を感じていた。

親に心配されればされるほど、申し訳ない気持ちが膨らみ、自分など、
この世からいなくなってしまえばいいのに、とさえ思うようになった。
思えば、望の自殺癖は、子供の頃からのこの思いの発露なのかもしれない。

厄介者の自分は、これ以上、親の期待に外れるようなことはできなかった。
たまに文句を言ってみたり、軽い抵抗を試みたりはするけれど、
兄達や倫のように、親に対し、自分の我侭を突き通すことはできなかった。

それでも、どうしても、親の期待に応えることができないのであれば…。
―――私は、消えるしかないじゃないですか…。


と、そこに、もう1人の教え子が、倫の後ろから現れた。
「そうですよ、だいたいにおいて、先生は、自分が身を引きさえすれば
 それでいいと思ってる、それは大きな間違いですよ。」

望は、むっと准を睨み上げたが、准は気にしていないようだった。
「そんなの、一番、卑怯な解決方法だと思います。
 残された者の気持ちを何も考えない、自分勝手で、非道で、我侭な。」
「…そこまで言われると、さすがに腹が立ちますね…。」

「腹が立ってるのは、僕の方ですよ。
 …杏ちゃんの顔を、見てご覧なさい、先生。」
准の言葉に、望は、愛する少女の方へと目を向けた。
32旅立ちの時 後編 8/13:2007/11/03(土) 10:15:21 ID:hHyXEEu3
可符香は、事の成り行きに呆然としているようだったが、
その顔は依然青ざめており、眼の下には心労からくる隈ができていた。

「先生に、お見合いを受けてくださいって、さっきの杏ちゃんの言葉。
 杏ちゃんが、どんな気持ちで言ったと思ってるんです?」

准の言葉に、可符香がうつむいた。

―――可符香…。

望の胸に、後悔が波のように押し寄せてきた。

―――私は、自分のことでいっぱいで……、彼女の気持ちなんて…。
   
言葉もなく、可符香を見つめている望に、准が畳み掛けるように言った。
「杏ちゃんに、あんな顔させているのは、先生です。
 これで、先生がいなくなっちゃったら、杏ちゃんはどうなるんですか。
 いい加減に、ダメ大人から卒業してくださいよ、先生!」
准の語気が荒くなった。

望は、准を見、倫を見て、最後に、愛する少女を見た。
可符香が、顔を上げると、真剣な目で望を見つめ返した。

倫が准の後を続けた。
「教え子に意見されて腹が立つのだったら、
 見返してやればいいじゃないですか、お兄様!
 一生に一度くらい、逃げずに正面突破してご覧なさいませ!」

望は、もう一度、可符香の顔を見た。
―――可符香…。
私は、何度、あなたを泣かせれば気が済むんでしょうね…。

望は、決心した。

「…分かりました。お父様に、会いに行きましょう。」



33旅立ちの時 後編 9/13:2007/11/03(土) 10:16:39 ID:hHyXEEu3
翌朝、望は、緊張の面持ちで、実家の敷居をまたいだ。
後ろに、准、倫、そして可符香が望の後を押すように続いている。

―――教え子や妹に守られているようで、情けないですね…。

望はため息をついたが、実際にそうなのだから仕方ない。
望の姿を見て、驚いたように駆け寄ってきた使用人の一人に尋ねた。
「お父様は?」
「旦那様なら、今日は書斎で書き物をしておられますよ。」

父親が家にいるとは、これは珍しい。
望は、この幸運が何か幸先の良さを告げているような気がした。
続いて尋ねる。
「時田はいますか?」
「時田様なら、今、旦那様のご用事で外出中でございます。」

―――しめた。

今、時田と対面したくはなかった。
あの老執事は、いつも望に、両親の期待に応えることを望んでいた。
ここにいたら、きっと大騒ぎをするに決まっている。

「では、あなたからお父様につないでくれませんか。
 ―――望が、大事な話がある、と伝えてください。」
「は、はい…。」

慌てて屋敷の中に駆け込んでいく使用人を見送ると、望は振り返った。
「あなた達は、別室で待っていてください。」

「先生…。」
不安そうに見上げる可符香に、望は微笑んだ。
「大丈夫ですよ…もう、逃げたりはしませんから。」


* * * * * * * * *

34旅立ちの時 後編 10/13:2007/11/03(土) 10:17:41 ID:hHyXEEu3
可符香達は、応接室の1つで落ち着かなげに茶を飲んでいた。
「随分、時間かかってるね…。」

と、そこに、外から戻ってきたらしい執事が通りかかり、驚いたように足を止めた。
「これは、倫様…?それに、ご学友の方達も…。」
と言いつつ、その目は鋭く可符香を見やる。
「もしや、望坊ちゃまも、こちらに?」

「…お兄様なら、今、お父様と大事なお話中です。」
倫の答えに、時田のモノクルが光った。
「…そうですか…、では、私は、これにて失礼をば。」

「…お待ちなさい、時田。」
倫の静かな声が響いた。
時田が無表情のまま、ゆっくり振り返る。
「お父様のところに行こうというのでしょう。…いけません。」
倫は立ち上がると、時田の前に回った。

「お前が、お兄様を大切に思って…期待しているのも分かります。
 お兄様は、お前が育てたようなものだもの。」
時田の表情が、小さく動いた。

倫は、時田にはっきりと告げた。
「でも、お兄様の人生は、お兄様のものだ…お前のものではない。
 お前の期待は、お兄様を苦しめているだけです。」
時田の顔が悲しそうに歪んだ。

准と可符香は声もなく二人を見つめていた。

倫は時田の手を取った。
「時田…。私も、お兄様も、子供の頃から、お前のことが大好きだった。
 お前は、いつも私達を助けてくれた。
 だから…これからも、私達を助けて欲しいのです。本当の、意味で。」
時田の肩が、がっくりと落ちた。

ちょうどそのとき、応接室の扉が開き、疲れた表情の望が顔を出した。


* * * * * * * *

35旅立ちの時 後編 11/13:2007/11/03(土) 10:18:47 ID:hHyXEEu3
望は、目を丸くした。
応接室の扉を開けたら、目の前で倫と時田が手を取り合っていたのだ。
「倫?………時田?あなた方、何をしているんです?」

時田が、こちらを向いた。

「望ぼっちゃま…。」
自分のもとに歩み寄って来る時田に、望はやや怯んだが
ぐっと歯を噛み締めると、時田に向き直った。

「時田。お父様に、見合いはしない、跡も継がない、とお伝えしました。」
「…。」
「お父様は……、私の気持ちを、分かってくださいました。」

望は、挑戦的な目で時田を睨みつけた。
何か小言を言われたら、すぐさま言い返してやるつもりだった。

しかし、時田は、望に深々と頭を下げた。
「……時田?」
時田は、顔を上げると望に微笑みかけた。
「ご立派に、なられましたな、ぼっちゃま。」
「…!」

望は、混乱した頭で辺りを見回した。
つい先日まで、あんなにも頑なだった時田が、どうしたというのだ。
と、倫と目が合った。
倫は、望に向かってにっこりと微笑んだ。
望は、何があったかを、だいたい理解した。

―――どうやら、倫には、一生分の借りを作ってしまったようですね…。

ため息をつくと、時田の方を向いた。
子供の頃から父代わり、母代わりであった時田に認められるのは、
本当のところ、何よりも嬉しかった。
「…時田……ありがとう。」

望は、嬉しそうに時田に微笑んだ。



36旅立ちの時 後編 12/13:2007/11/03(土) 10:19:44 ID:hHyXEEu3
「では、本当に、世話をかけましたね、時田。」
「とんでもないことでございます。お車は、よろしいのですか?」
「ええ、たまには、駅まで歩いてみようと思うので…。」
「さようでございますか。」

一同は、糸色家の門を出ると、駅に向かって歩き始めた。

先頭を歩いていた可符香が、望を振り返って笑いかけた。
「先生。私たち、これからは、もっともっと色々お話しましょうね。」
望は、まぶしそうに可符香を見返した。
「ええ…そうですね。」

望は、会見の最後の父の様子を思い出していた。

少し悲しそうな顔をしながらも、その目は慈愛に満ちていた。
―――お前も、やっと、自分の守りたいものができたのだな…。

そのときの父の言葉を思い出しながら、望は可符香をそっと見た。

―――守りたいもの。
自分の命よりも、大切に想っている少女。
なのに、自分は、またしても、この少女を自ら傷つけてしまうところだった。

―――可符香を、守りたい。
彼女を守るために、自分は、もっと、強くなりたい…。

望は、生まれて初めてポジティブな考えが自分の中に生まれてきたのに気づき、驚いた。

―――あなたが、私を、ここまで変えてくれたんですね…。

望は、前を行く可符香の後姿に、小さな声で呼びかけた。
「可符香…あなたが、高校を卒業して…教師と、生徒でなくなったら、そうしたら…。」

可符香が、振り向いた。
「ん?先生、何か言いました?」
37旅立ちの時 後編 13/13:2007/11/03(土) 10:21:59 ID:hHyXEEu3
望は、一瞬口ごもると、可符香に微笑みかけた。
「…いいえ、なんでもありません…。」

焦ることはない、と望は心の中で微笑んだ。
自分は、まだ、ようやく親離れしたばかりのひよっこだ。
これから、まだまだ壁に突き当たることもあるだろう。

―――それでも、あなたと一緒なら、私は…。

望は、空を仰ぐと、太陽に向かい、思い切り明るい笑顔を見せた。




38430:2007/11/03(土) 10:23:16 ID:hHyXEEu3
以上です。
だらだら長いお話にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
テーマは「望君の親離れ」、副題「ダメ大人バンザイバンザイ!」でした。
本当に、お前ら一体誰なんだという状態ですね。

うーん、ラストシーンが微妙に真昼さんの『午後の紅茶』とかぶっているような。
…でも、けっして真似したわけではないんじゃないんですよぉ…orz

んで、以下は、オマケ小ネタです。
今回この2人は振り回されてばかりで気の毒だったので、ラブラブさせてみました。
こっちも完全に原型崩壊してますなぁ…。
39おまけ小ネタ:2007/11/03(土) 10:24:09 ID:hHyXEEu3
「いやー、しかし、ホントに毎回毎回、先生は何かしら騒ぎを起こすよなぁ…。」
「…すまないな、准。お兄様が世話をかけて。」
「って、何で倫ちゃんが謝るのさ。倫ちゃんだって被害者じゃないか。」
「いや、そこはやはり妹だし…。」
「…なんか、気に入らないなぁ…。」
「ん?」
「だって、倫ちゃん、僕が先生に迷惑かけたって、先生に謝ったりしないでしょ?」
「はぁ…?お前がお兄様に迷惑かけることなんかないだろう?」
「結局、僕より先生の方が倫ちゃんに近いってことか…。」
「な、お前、何を言ってるんだ!?」
「寂しいなぁ…。」
「おい!ちょっと待て、准、どこに行く!?」
いつになく渋い顔をして、倫に背を向けて歩き出す准に、倫は焦った。
慌てて追いかけたが、躓いて転びそうになる。
「きゃっ!!」
地面に激突する、と思ったが、准がはっとした顔で振り向き倫の体を抱きとめた。
倫は、自分が准の腕に包まれているのに気がつくと、
次の瞬間、がばっとその腕にしがみついた。
「り、倫ちゃん…!?」
准が驚いたような声を上げたが、倫は黙ったまま必死で准の腕をつかんでいた。
「…。」
と、頭の上から、准の小さなため息が聞こえた。
「……ごめん、倫ちゃん。さっきの泣き言は忘れて。」
倫が顔を上げると、准は苦笑を浮かべて倫をぎゅっと抱きしめた。
「考えたら、そういうところも全部含めて僕は倫ちゃんが大好きなんだよね。
 あーあ、惚れた弱みとは、よく言ったもんだよ…。」
「…!!」

―――何を勝手に自己解決してるんだ…お前、お兄様より性質が悪いぞ…!

倫は心の中で叫ぶと、赤くなった顔を准の胸にそっと埋めた。
40430:2007/11/03(土) 10:25:28 ID:hHyXEEu3
…今気がついたんだけど、交を連れてかえるの忘れてた…。

では、戻ってきていきなり大量レス消費、どうも失礼いたしましたm(__)m
41名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 11:39:33 ID:cP++EX5r
もうこれで一本ドラマを作るべきだ。GJ!!
42名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 13:45:35 ID:DV8MV9yd
もはやパロの領域を越えて一つの作品として見れるぐらい秀作!
このくらいうまく書けたらなぁと思っちゃいますね!GJです!!
43名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 14:18:10 ID:7XbCqlNo
この二つのカップルすごくいい!GJ!
44名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 15:04:58 ID:7ubIKLQO
何か別々に保管されてるけど不知の涙って作品もn6w50rPfKwさんの作品らしいな
45名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 19:17:03 ID:ZDWo7N8A
久々の430氏の可符香×望キテターーーーー
46名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 02:27:09 ID:IRLmFVdv
もう430さん以外の人は投下しなくてもいいよ!
47名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 04:05:06 ID:XIz/A4zq
よくないよ!

さて
糸色先生誕生日おめでとう糸色先生
48 ◆n6w50rPfKw :2007/11/04(日) 08:05:57 ID:Dgg6wRQs
>>44
おっしゃるとおりです。「不知〜」を上げたときには、トリップをつけていなかったんで……

>>46
投下させちくりよー

おっと、肝心なことを。430さんGJ!
49名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 10:14:29 ID:lUdBJbsa
>>46
貴様…何て事を…
50名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 10:48:26 ID:baq443eF
角煮に居た荒らしと同じ人種だろ
スルー汁
51名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 12:09:36 ID:rO9sBXuH
友達のトモダチは大抵自分 by改蔵
52名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 12:49:36 ID:rTAWmD02
>>51
それは・・・つまり・・・
53名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 12:53:29 ID:iT5dYunz
アルカイダの構成員がミンスに居たのか
54名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 18:48:57 ID:dvrwMXBK
あやつは民主ではなく自民であろ
55名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 20:37:57 ID:IEIKl9V2
マズい流れになってきてるな……
56名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 20:39:39 ID:eutHD0X9
ともだちで連想

もしも羽美が20世紀少年の世界にいたら
57名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 21:35:33 ID:gk4IL0ZE
>>46 おねがいだからしんでください
58名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 22:02:33 ID:pvoehw3Z
そうですね、じゃあもうしません。
59名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 22:07:44 ID:zv3NDL8m
まずい流れだ
60名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 22:14:32 ID:baq443eF
誕生日なんだから誕生日ネタSSの一本や二本期待してもいいですか・
61名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 22:24:59 ID:+Lw+n3Be
投下止まってるな・・・
本気で>>46はテロリストだな
62430:2007/11/04(日) 23:17:10 ID:IV2yqb3f
何で戻ったとたんにこんなことになるんだろう…orz
何か却って申し訳ないです…。

本当に、マジでどなたか投下、お願いいたします…!
63名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 23:32:00 ID:baq443eF
あんま騒ぎ立てると>>46が調子に乗るから気をつけましょう
64名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 23:40:14 ID:IV2yqb3f
あ…ごめんなさい…。
65 ◆n6w50rPfKw :2007/11/05(月) 00:03:37 ID:Dgg6wRQs
うう、私にも責任が……

では、誕生日祝いという訳でもないのですが、今書いているものの序盤をアップします。

この間ちらっと申したように戦隊物で、明るく爽やかなえっちを目指しました。
今回投入分は非常にライトなので、特にNGワードはありません。
66名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 00:05:32 ID:Ui6xLoYk
>>46の下らない発言を真に受ける方がおかしいんだよ
67絶望戦隊ノゾムンジャー 1:2007/11/05(月) 00:11:37 ID:im3dC1bV
 ここは糸式望女子問題調査隊、略して絶好調である。隊長はもちろん我らが糸色望。スウィーツ好きのイケメンである。
元禄時代より続く名家である糸色家の後継者として将来を嘱望されている身でもある。
それなのに、望は高校教師などという稼業に手を染めてしまっている。
それだけならまだしも、年の離れた妹と同じような年齢の娘子たちとのトラブルに巻き込まれてばかりいる。
これでは、糸色家、ひいては旧糸色家領地内の民草の安泰が危うい。

 そこで、彼の日常生活を監視し、可能な限り未然に、やむをえない場合は事後にトラブルを解決し、
もって糸色家の安寧を図ることを任務とする、絶好調が生まれたのである。
いわば糸色家防衛隊の一部として活動していると思ってもらってよい。

 隊員は、望の教え子や同僚のうち、彼と関係を持った者の中から厳選されている。
普段は女子高生・職員として望と同じ学校に通っているが、ひとたび事件が起きると、特殊コスチウムに身を包み、問題解決のために尽力するのである。

     ☆

「おお、新規開店の案内が!」

 絶好調の隊長室で、望がいつになく喜色満面といった調子で何やらチラシを持っている。
隊長を囲むのは隊員のうち、当番として絶好調に詰めている、千里・晴美・あびる、そして奈美。特に望と親しい面々だ。

「どうしたんですか、隊長?」
「銀座の有名洋菓子店『アルフォンス・ミュシャ』が小石川に支店を開くんですよ。
 開店初日にこのチラシを持っていくと、特製ピスタチオプリン1パック10個入りをを無料でプレゼントしてくれるんですって。
 それでですね、開店日が今日なんですよ」
「先生は本当に甘いものが好きですねぇ」
奈美が呆れたような声を出す。
「普通の反応ありがとうございます」
「普通って言うなぁ!」
「はいはい。他にも美味しそうなスウィーツがたくさんありそうですから、よく見て選んで来ますね。三時のおやつは任せてください」
 奈美のいつもの反応をさらっと受け流し、望は身支度を整えた。

「じゃあ行ってきますね。皆さんの分もありますから、どうぞお楽しみに」
「ちょっと、隊長!」
「書類が溜まってますよ」
 晴美とあびるの声が聞こえなかったようなふりをして望が部屋の外へ向かう。
「隊長〜!」
 千里の僅かに怒気を含んだ声にも耳を塞いだまま、望はいそいそと出かけていった。

     ☆

「本当にもう、先生ったら! 帰ってきたらきっちりお仕置きしないといけないわね。」
千里が額に青筋を立ててプリプリしている中、あびるがくだんのチラシにふと目を留めた。
「あら?」
「どうしたの? あびるちゃん」
晴美が尋ねた。
「この店の名前なんだけど」
あびるが封筒を指さした。
「先生が言っていた名前と微妙に違ってるわ。ほら」

 彼女が指さしたところを一同が覗き込む。
「本当だ!」
「アノレフォソス・ミュツャ」
「ばったものみたい」
「隊長、大丈夫かなあ……」
「まあ、いい年をした大人だからだいじょうぶでしょう。」

 だが、それきり望は三時のおやつ時どころか、夕食時を迎えても帰ってこなかった。

     ☆
68絶望戦隊ノゾムンジャー 2:2007/11/05(月) 00:18:34 ID:im3dC1bV
「遅いわねえ」
「隊長、どうしたのかしら。」
「もしかして、大人街で悪い遊びでも……」
「なんですって! 許さないんだか…」

 ここで突然ドアが開いき、まといがよろめきながら入ってきた。着衣がひどく汚れ、ところどころすり切れていて、髪もいつも以上に乱れている。

「うう……」

 まといが床にへたり込んだ。皆が弾かれたように立ち上がって彼女を取り囲む。

「大丈夫? しっかりして」
「何があったの?」

 まといは声を絞り出した。

「うう……ご、ごめんなさい。目の前で、た、隊長を……」
それだけ切れ切れに言うと、ガクリと首を垂れた。気を失っていた。

「医務室に連れて行くわ!」
「お願い!」

 ストーキングの達人として、望の日常生活の監視を続けているまといをここまで虚仮にした者はこれまでいない。
望を拉致した者は只者ではない。
いったい誰が、何のために!? 突発的な事態に浮き足立つ絶好調。
だが、間もなくさらなる激震がもたらされることになる。

「いったい、何が……」

 奈美が不安になって呟きかけた言葉は、けたたましい館内緊急警報によってかき消された。

「緊急警報! 緊急警報! 隊長の位置情報発信装置からの電波が途絶えました! 隊員は直ちに作戦会議室へ集合して下さい! 繰り返します。隊長の……」

 皆が一斉に立ち上がった。
「ああ、やっぱり!」
「だからあれほど言ったのに!」
「帰ってきたら、きっちりお仕置きね。」

     ☆

 絶好調の全員(三六協定で休暇中の可符香を除く)が作戦会議室に集合した。
手当を受け、意識を回復したまといも簡易ベッドに横たえられたまま、部屋の隅にいる。
室内には、既に副隊長の智恵(教職員で唯一の隊員であるが、実質的に絶好調の影の隊長である)が待機している。
内勤で文書作成を任務としている霧が、集まってきた面々にてきぱきとレジュメを配付する。
皆がざわつく中、突然、正面の大型ディスプレイに外部からの強力な通信が混入してきた。
通信係の芽留がしばらく格闘していたが、智恵に指示を仰いできた。

『副隊長! 異常な波形の通信で、遮断が困難です』

 智恵は腕組みをしていたが、眉一つ動かさずに指示を下した。

「いいわ。おそらく敵からの通信でしょう。スクリーンに映しなさい」

智恵は最後に目配せをした。芽留も智恵の意図に気付いたようだ。

『……はい』

69絶望戦隊ノゾムンジャー 3:2007/11/05(月) 00:26:20 ID:im3dC1bV

 芽留が装置を操作していると、突然画面に女性の顔が映し出された。長身の艶やかな美人である。
ブロンドはカエレのものよりさらに艶があり、緩やかに波打っている。

「あ、あいつ、う……『最高の女』だわ……」
 簡易ベッドから首をもたげたまといが呟く。

『絶好調の皆さん、ごきげんよう』
「くっ……」

 何とも艶っぽい声が流れてきた。その媚びを含んでいるようなベタッとした甘い声色は、妙に智恵たちを苛立たせた。

『こちらは〆布家望獲得プロジェクト、略して希望プロ。
 用件だけ言うわね。そちらの隊長、望さんは私たちが預かっています』

ここで画面が切り替わり、女の全身が映った。
最高の女が、ぐったりとして目を閉じた望をお姫様だっこしているように見える。
だが、よく見ると、望の両手足には細いワイヤーがかけられていて、画面上方に延びている。
そして、上半身は赤いロープで幾重にも括られている。服が所々はだけ、青あざが見え隠れしているのが痛ましい。

「かなり拷問されてるわね……」
あびるが冷静に分析する。

 ここで最高の女は望の袴をめくり上げ、妙に生白い太腿を露出させると、柔らかそうな内腿におもむろに接吻した。

『あふぅん』

 望の喘ぎ声がした。絶好調の全員が聞き覚えのある、隊長が本気で感じているときのものであった。

 最高の女の目に邪悪な光が宿る。手がすうっと望の股間に伸びると、妖しい動きでまさぐる。手の微妙な動きに合わせ、望が
「あっ、あぅ、ん」
と押し殺した声を漏らしているのが聞こえてくる。

 望をいたぶりながら女が言葉を継いだ。

『要求は簡単よ。糸色家が我々に無条件降伏し、望さんを我々〆布家に婿入りさせること。
 そして、ここ小石川と蔵井沢にある糸色家の利権をすべて我々に譲り渡すこと。
 そうすれば我らの「希望」プロジェクトは第一歩を踏み出せます』
「な、何ですって!」
『それまで望さんは預かっておくわ。そちらから意思表示があるまで、そうねぇ……まぁ婚前交渉の一環として、せいぜい楽しませてもらうわね』

「くっ!…………」
千里やまといが歯噛みをして悔しがる。

『どう?さっさと降伏する? それとも、実力でこのコを取り戻しに来るぅ? どちらにしても早くしないと……』

 ここで最高の女は望の袴をぱっとはだけ、局部を露出させた。
下着は既に取り去られていて、ありのままの絶棒がスクリーンに大映しになった。
そうしてどういう指技を施していたのか、早くも先走りの露を滲ませて屹立している絶棒に顔を寄せ、いとおしげに舌を這わせ始めた。

「あっ!」
「や、止めてぇ!」
70絶望戦隊ノゾムンジャー 4:2007/11/05(月) 00:32:50 ID:im3dC1bV
 だが、最高の女は固くなった茎を上から下へねっとりと舐め下げ、下から上へいやらしく舐め上げていく。
その舌捌きは真夏に美味しいソフトクリームを急いで舐め取るように、一点の隙もない。
女は幾度となくピンクの舌先を望の茎に往復させていた。
が、不意に、透明な涙が一滴滲んだ頭に妖艶な唇をぱっくりと被せ、そのまま深く飲み込んでいく。

「いやあ! それ私の!」

思わず何人かの隊員が悲鳴混じりの声をあげた。

 ディスプレイの中で、最高の女はまるで絶好調の面々に見せつけるかのように、ゆっくり顔を上下させている。
おそらくは口の中でも、舌先が敏感なくびれや裏筋を的確に舐め回しているに違いない。
しかも、絶品の舌技を施しつつ、指先を絶棒の根本に添え、男の芯に微妙な刺激を送り込んでいるのを智恵は見逃さなかった。

――あれは、古来より伝わる禁忌の房中術、筒涸らしの術!
智恵の顔色がわずかに変わった。

 早くも達するのか、望が緊縛された全身をしきりに捩っていたが、ぴくぅんっっと大きく痙攣したのを境にぱったりと動かなくなった。
最高の女は、何かを美味しそうにほおばっていたが、やがて絶棒から口を放すと、ごくりと喉を鳴らして望の屈服の証を嚥下していく。

『うっふふ……美味しかったわよ♪』
「く、悔しい!」
「おのれぇ!」
『早く来ないと、このままぜ〜んぶ絞り取っちゃうわよ。それとも、私たちの僕として改造しちゃおうかしら』

「本音はそっちね」
智恵が低く呟く。

『じゃあ、待ってるわよ〜』
ここで通信が途絶えた。

 会議室に重苦しい沈黙が広がりかけたが、すぐに智恵が指示を出した。

「仕方ないわ。すぐに隊長の救助に向かってちょうだい。なんとしても改造される前に救い出すのよ!」
「はいっ!」
「音無さん!」
『解析できてます。奴らは小石川区内ポイントC地点にいます』
「流石芽留ちゃん。よくやったわ。そうね……木津さん、小節さん、加賀さん」
「はい」
「あなた方が出撃して。フォーメーションH、パターン69」
「了解っ!」

 かくて絶望戦隊ノゾムンジャーは、隊長救出という史上かつてない重要な任務を帯びて出撃することになった。
頑張れ、絶望戦隊ノゾムンジャー! 負けるな、絶望戦隊ノゾムンジャー!!
71絶望戦隊ノゾムンジャー 5:2007/11/05(月) 00:45:00 ID:im3dC1bV

 通信を終えた最高の女は、望をベッドに投げ出すと、改めて四肢を革バンドで大の字に拘束した。
望はある程度はベッドの上で身を捩ってみたものの、とうていそこから逃げ出すことは出来ない。

 望の全身の青あざは、もちろんキスマークによるものである。
ケーキ屋に似せて造られた罠にまんまと吸い寄せられた望は、あっさり〆布家本部アジトに連れてこられた後、すぐに衣服をはぎ取られた。
そして、宇宙の真理を知っている団地の奥さんに望の性感帯を全て探査・発見された。
その憎いほど的確な指示の基で、須寺夫人や目尻に小皺のある妙齢のメイドを始めとする微妙な女性たちによって、
それらをことごとく青あざが出来るほどキツく吸い上げられたのだった。
この刺激により、望の性感は体の芯の奥の奥から掘り起こされることとなった。
今や望は全身を快感スポットに覆われていると言っても良い状態になっている。
つまり、どこを触られても快感で悶えるほどえっちな体になってしまっているのである。



「うう……もう、放してください」
「あらぁ……うっふふ、この人質さんは面白いことを言うわねぇ」

 女はますます笑みを深くしながら望の耳たぶをてろっと舐め、うひゃぁという声を上げさせた。
そうしておいて、そっと耳たぶを摘み、顔を寄せると耳元で優しく呟いた。

「なめるんじゃねーぞ、このウスノロ」

驚愕した表情の望を見下ろしながら、女はあくまで優しく、だが絶望的に宣言した。

「お前はこれからすぐ改造手術をしてやる。我らの従順な僕として、死ぬまでこき使ってやるわね。
 いや、死んでも使い続けてあげるわ。
 ……うふふ……あっはははぁ………お――っほっほほっほほほ……」

 女の高笑いはしばらく続いた。


72名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 00:53:41 ID:66uIa/BV
やっぱ430さんのでないとおもしろくないや。
430さん、傑作の投下お待ちしています。
73 ◆n6w50rPfKw :2007/11/05(月) 01:05:42 ID:im3dC1bV
 木津千里は、レッドチリに変身した。赤いセーラー服(これが千里の特殊コスチュームである)に身を包んだレッドチリが、C地点の正面突破を図るべくダッシュしかけたその時である。

「木津さんじゃない。何してるの?」

 突然声を掛けてきたのは准であった。

「今忙しいの。後で!」
彼の脇を駆け抜けようとしたレッドチリだったが、その腕を准がはっしと掴んだ。

「ちょ、ちょっと、久藤君! 何をするの!」
「木津さん。ボク、お話を聞いてほしいんだ」
「え!? この非常時に、何を……くっ……」
手を振り解こうとするが、まったく准の力は緩まない。変身後のチリのパワーは常人の5倍はあるから、これは明らかに異常事態である。

「お願いだから、聞いてよ」

 准の声は相変わらず淡々としている。
 おもわず准の顔を覗き込んだレッドチリの目に飛び込んできたのは、彼の目に妖しく輝く邪悪な赤い光であった。
吸い込まれるようにその光を凝視しているうちに、レッドチリの力がすうっと抜けていった。

――こ、これは!
「じゃあ、話すよ。
 『私こと木津千里は、糸色望先生のことを考えると身体が火照って仕方がない。
 いけないことだとは分かっていても、つい手がアソコに伸びてしまう』

――な、なんて破廉恥な! ああ、でも、手が!

 驚いたことに、千里の意志に反して、手が秘所に伸びていった。

――ああ、駄目よ、ダメ! 私ったら、どうしたのかしら……。

74 ◆n6w50rPfKw :2007/11/05(月) 01:07:00 ID:im3dC1bV
さきほどのが6番目ですな。

では、今晩はここまでです。また後日投下に来ます。
75名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 01:29:09 ID:nakcqKAh
千里が・・俺の千里が・・・
>>74GJ!!
続きを楽しみに裸待機!
76名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 01:31:06 ID:zb8yxB5P
お疲れさま。続きもよろしく。
77名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 02:42:00 ID:/qQ2q8Gh
はじめまして、初めてお話を考えたので聞いてください。
エロくはないです。3レスの予定です。
78さよならティエリア先生 1:2007/11/05(月) 02:43:30 ID:/qQ2q8Gh
気が付いたらその青年は、姿見の前に立ち尽くしていた。
私は一体何を‥‥ 思い出せない‥‥
紫味を帯びたストレートの髪が美しい。切れ長な瞳に知的な眼鏡が光る。
何だこの格好は‥‥
昔存在した日本の文学者が好んだ服装のようだ、自分にはとても古臭く思えた。
着替えを探し、自然と在り処がわかった普段あまり開けることの無い洋服箪笥を引き出す。
チャラチャラした服の中からピンクのカーディガンを身に纏う。
何故だろう、とても落ち着く。

  少女は憂鬱だった。原稿に追われて今年のハロウィンの準備が出来なかったのである。
  当日の夕方もぽてぽて参考資料を読みながら帰路に付くだけであった。
  どかっ! 住宅街の角で何者かと出会い頭にぶつかってしまう。

  見上げた先にどこかで観た事があるような青年が立ち尽くしていた。
  紫味を帯びた髪、切れ長な瞳に知的な眼鏡。
  その美しさに不釣合いなファンシーなピンクのカーディガン。
  (えっ?ティ‥‥  ・・・・・先生?)
  彼女に圧し掛かっていたメタボな憂鬱は、絶望砲の衝撃に吹き飛ばされた!

青年は夕刻迫る街を彷徨っていた。自分が何者なのか糸色 いや糸口を掴むために。
住宅街の辻でてれてれと漫画を読み耽ける少女にぶつかられた。
セミロングに眼鏡、少し私に似ているかもしれない。
彼女は私を見つめしばし驚いたような顔をしていた。やはり私に縁のある者だろうか。
自分の事を問おうとしたその刹那セイエ‥ はしゃいだように叫んだ。
  『ティエリア先生っ!』
「私はティエリアではありませーん!!」
不思議なことに自然と突っ込みが出た。
79さよならティエリア先生 2:2007/11/05(月) 02:45:00 ID:/qQ2q8Gh
はて、ティエリア‥ 先生? そうだ、確か私はティエリアという名だった。
師と仰がれるような尊い活動を先導していた気がする。
  『先生、嬉しいです!あんなに嫌がる素振りをしていたのに
   私がプレゼントしたウィッグ愛用してくれているんですね!
   しかもピンクのカーディガンなんて用意周到!』
「わ、私はヅラなど愛用していませんから!」
また自然と言葉が出た。
「大体あなたはどちら様です?私はティエリアです、多分。あなたとは初対面ですよね。」
  (そうか、ちょっと微妙だけど先生なりきってるつもりなのね!)
「実は私、記憶を無くしてしまったようなのです。あなたの話からティエリアという名を思い出しました。
. 私について知っている事があるなら教えてもらえませんか?」
  (ははあ、記憶喪失の振りをして特徴を聞き出すつもりね。じゃあ私も応えてあげなきゃ!)
  ニャマリ
  『はじめまして、私は藤吉晴美、あなたの大切な存在なんですよ。
   先生は悪の秘密結社、それ廃れてるビーイングのガンダムマイスターなのよ。
   力には力で対抗してジャイアンみたいに世界を改革しようとしているのよ!』
  (ちょっと間違っていてもわかりやすいようにさらっと極端に教えるほうが効果的ね。)
「ありがとう、大切な事を思い出しました。」
  『先生、今日は私間に合わなかったけど、今度一緒に行きましょう。先生がその気になってくれて嬉しい!
   それじゃ私、また締め切りあるからこれで、さよならティエリア先生。』

断片的な情報の中から思い出した記憶があった。そうだ、私は革命活動をしていたのだ!
ティエりあ!?のようなものは使命感に燃え、猛然と夕闇を駆けていった。
  『先生、頑張って!似る似ないは関係ないわ、その勢いさえあれば今夜の主役になれるのよ。』

「私はティエリア先生!ソ連スタイルのガンダムオイスターだ!俺がマンダムだ!」
. ジークイオン!岡田ミニストップ!僕が政界を一番上手く扱えるんだー!」
80さよならティエリア先生 3:2007/11/05(月) 02:46:30 ID:/qQ2q8Gh
 朝刊 
ハロウィンの夜更け 安田講堂占拠のお騒がせコスプレ教師御用
昨晩、安田講堂によじ登り「自分は人気アニメの主人公だ!」 などど仮装姿で
意味不明な声明をわめき散らしていた教師が、駆けつけた警官隊に取り押さえられた。
同容疑者は以前にも類似の手口で謎の垂れ幕を提示するなどの事件を起こし、
工作員の疑いもあり引き続き取調べを行い余罪の追及に当たっている。


留置場に押し込められ、頭上の紫が地に堕ちた瞬間、望は帰ってきていた。
はっ、私は一体何を!?  ‥そうだ、藤吉さんに押し付けられたこのヅラ、
コスプレなんてどこが良いのかと鏡を見たところまでは覚えているのですが‥

              ⌒ヽ-、_
             _,.--`‐ヽ \、_  
        ,r " ̄ ̄  __      ` -,        /\   /\   /\   /\   /\ 
       v'  /     ゙‐-、  ヽ  \     /.  \/   \/   \/   \/   \  
     /  /    /'´/  /  /  . | ∨  .ノ   幺ク 亡 月 |  ┼‐ .|] |]       
.   _,/   //     / //    /   ヽ \  小巴 三l三. ヽ_ノ / こ o o
    ̄ `'ヽ /      /'´/  /  /  .| ∨∧  ヽ 
      / '  / | //   // / ィ /| /┤|  / 試しに被ったヅラの因縁に絶望した!!
      / /  | | |/ /∠、 彡 ´/ /∠イV  / 
    l//  | |/代汀ヘ≧='彡ィfjアノ / イ  /    神谷のアホっ!お調子者〜! 
      |/| ( ト l|`/  ̄   ´ヽ__,_i' ̄イイ l|   ̄ ̄.|     /ヽ、  /\   /\    /
      ′ | しゝ ゝ、   rソ⌒V` / イ|   (ヽ、//\/   \/   \/   \/
        |ヘヘ     ̄  - / イ l /     ヽ´ヽ、ヽ
         V|ヽ   ,. __¬ /| /|/  (,ゝ、  \ ヽ l、
         _V >     /        ヽ、 ヽ、 | | ! l
        /\ /\   ̄ |          ヽ ヽ/  l | l
        / # ヽ   >,--|\           〉  `ヽ l/ 
      /#    #\/  O /ヽ ヽ          /      ,!
81ティエリア先生 後記:2007/11/05(月) 02:47:31 ID:/qQ2q8Gh
絶望した!容姿といい中の人といい、ハイレベルキャラクターポータビリティーに絶望した!
という印象が発端となってこのティエリア先生は埋まれました。
藤吉さんが先生に無理矢理ヅラを被せる原案が発端となり、
ティエリアのAAを絶望先生に勝手に改造している時にこのお話を思い浮かべました。
それでは。
82名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 03:06:15 ID:WEQ2jSJV
ワロタwwGJ!
83名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 03:15:42 ID:sQpSOEKG
>ティエリアのAAを〜
ワロタ
84名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 03:29:33 ID:N6HaWkM8
>>74
>略して絶好調 ってwwww。
>>81
ティエリア先生 wwwwwww. 。

ダメだ、この人達天才すぎるw。GJ!!
85名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 08:49:19 ID:gnbq7OvF
>>81
うますぎwwGJ!
86名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 13:01:03 ID:ZM9k7Mfo
こんなに反響が大きいとは思わなかったwww
このスレを紹介した甲斐があったってもんだwww
87名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 14:09:59 ID:EE+9/UGz
>>86
元スレ見てきたw
住人達の自由さにワロタww
88名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 22:29:51 ID:xBBA8VjU
絶望した! 元ネタがわからない自分に絶望した!
89名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 22:56:59 ID:W/YkInn8
>>88
さよならティエリア先生
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1192383772/
90名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 01:21:04 ID:EtrEF86u
絶好調wwwww
91名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 01:56:13 ID:OtiNd7ZE
おお、GJ!!ギャグっぽくておもしろいエロだった!!
92名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 02:14:06 ID:gKZ2j5ng
ティエリア先生はこっちが元ネタじゃなかったのか…

ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1185118696/498-502
9377:2007/11/06(火) 02:42:00 ID:vTVwFzis
すみません、混ぜてました。エロくないんでここでいいのかな?と迷った挙句の
ティエリアには先生視点を、藤吉さんには藤吉さん視点という形にしていました。
結果的に推敲されここで完成となったのですがマルチっぽくなってすみませんでした。
94名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 12:34:41 ID:+Ze6CDPH
まったく付いていけん。
95名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 16:20:09 ID:y5SBjiHk
>>74
面白くてどんどん読んじゃったよ
続きを待つ!
96名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 22:16:30 ID:zDNjOra8
エロパロ保管庫って
非エロ作品は保管されないんですか?
97名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 23:35:33 ID:f1QSPDxj
とりあえず、聞く前に保管庫の作品を読んでみるといいんじゃないかな
98名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 00:01:43 ID:ryaXi9OU
最近は、1日投下がないだけで禁断症状に陥る自分がいる
慣れとは恐ろしいものだナミアムダブツナミアムダブツ…
99名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 00:03:04 ID:qmRqIGT/
>>96
たぶん保管されているかと。


一応「エロくない作品はこのスレに」というのもあるが、ジャンルはバラバラのようだ。
100名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 01:25:52 ID:NGNNCpZk
>>97否エロは真昼の雪やさぼてんの花位感動するのしか保管されないのかと思ってましたがコミカルなのもありましたすいません


>>99エロパロに投下したSSで一括りでジャンルはバラバラなんですな


エロなしでシリアスな旧姓の続編書いたんですが大丈夫そうですね
101名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 01:50:07 ID:qmRqIGT/
>>100
むしろシリアスなのもあった方がいいと思う。期待。
102名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 04:05:47 ID:sDANF0pj
>>98
>ナミアムダブツナミアムダブツ…

ワザとなのか本気で間違えたのか、きっちりしなさい!
103305:2007/11/07(水) 18:19:15 ID:/wUQBlaw
お疲れ様です。

>>62 >>65
すいません! すいません! 私が遅筆なのが悪いんです・・・・・・って、加害妄想ですから! お二方!ww

◆n6w50rPfKw氏、保管庫でしか見れないと思ってましたが、まさか立ち会えるとは・・・!
305と申します。よろしくです。 
簡単に挨拶だけさせて頂きます。


えーと、真夜で短編作ってきました。
・・・エロなしですが、よろしくお願いします。
104真夜:全力で伝えたい私がいる:2007/11/07(水) 18:21:07 ID:/wUQBlaw
ガラ、ガタカタ・・・コト・・・・・・

人気の無い放課後の廊下。通りがかりの保健室の中から聞こえてきた物音に、先生は足を止め、怪訝そう
な顔をして入り口の方を振り返った。

(・・・おかしいですね。智恵先生は今日はもう帰られたはず。―――小森さんは宿直室にいましたから、多
分違いますよねえ・・・・・・)

先生は入り口に近づき耳を澄ます。・・・パサッ、という軽い布のような音が聞こえる。取っ手に指を掛け、
僅かに力を入れると鍵が掛かっていない事が分かった。
中に誰かいる事は確かのようだった。先生は一呼吸置いて、ゆっくりと引き戸を開けてみる。

「えー ・・・誰かいるのでしょうか?」

まだ夕暮れには早い時刻だったが、照明の点けられていない室内は少々薄暗い。その室内に、入り口に
背を向けて佇んでいた少女がこちらを振り返った。
睨まれたような錯覚を受ける鋭い目線に、先生は一瞬怯むが、すぐにその相手が誰なのかを思い出した。

「ああ、三珠さん。・・・どうされました? 怪我を・・・・・・されているのでしょうか?」

先生は真夜の手元に視線を置いて、戸惑いながらそう尋ねた。
智恵先生のデスクの上には、包帯や、ガーゼ、脱脂綿などが取り出してあり、その脱脂綿には血を拭いた
様に赤い色で染まっている物が混じっている。
真夜は先生に尋ねられて、首を捻ってデスクの上に広げた物に視線を落とした。
―――と、その真夜の前髪の間から、赤い筋が眉間の間を通り、鼻筋の上へと流れ落ちた。

「み、三珠さん・・・・・・!?」

驚いた先生の言葉でそれに気が付いたのか、真夜は慌てて、流れ落ちた血をガーゼで押さえた。



指で髪を掻き分けながら丁寧に消毒した傷口を、先生は脱脂綿で押さえた。
「・・・傷自体は深くないようですが・・・・・・なにぶん頭ですからねえ。気分が悪かったりはしませんか?」
真夜は丸椅子に腰をおろし、先生に手当てをしてもらいながら、軽く首を横に振った。
先生は片手でパッケージを開けて包帯を取り出し、片端を、傷口を押さえた手で摘んでゆっくりと伸ばす。
「しかし・・・三珠さん、どこかで頭をぶつけられたのでしょうか? 他に怪我は?」
包帯を巻きながら先生に尋ねられ、真夜は再び、首を横に振る。

数回巻きつけ、適当なところでハサミで切ると先生は紙テープを取り出した。包帯をテープで固定しながら
ちょっと冗談めかした口調で、
「まさか、誰かに殴られた――― なーんて・・・・・・」
苦笑混じりのその言葉に真夜の両肩が ビクリ! と大きく震える。
その反応に先生の動きが止まり、手に持っていたテープを落としてしまった。

「ま、マジですか!? いや、ホントに誰かとケンカしたという事なのですか!?」

強張った表情で自分の顔をのぞきこむ先生に、真夜は、やや間を置いてから首を横に振った。

「三珠さん! 正直に言ってください。ケンカしたんですか? ・・・もしくは、イジメられたのですか?」

真夜は何も答えず、気まずそうに先生から視線をそらした。
先生は一つ咳払いすると、屈みこんで真夜の肩にそっと手を乗せる。
105真夜:全力で伝えたい私がいる:2007/11/07(水) 18:22:08 ID:/wUQBlaw



真夜は息を弾ませながら自クラスの教室に辿り着くと、少し震える手で自分の机の中に手を突っ込んで、詰
め込んであるものを引っ張り出そうとする。
掻き出すように集めた所で、ハッと気が付いたように顔を上げ、何かを探すように忙しなく教室内を見回す
。その視線が、部屋の隅にあるくず入れで止まり、真夜はくず入れに駆け寄ると、容器に被せてあるゴミ袋
を外し、再び自分の机に駆け戻る。

「三珠さん?」

ちょうどそこで、真夜を追いかけてきた先生が教室に姿を見せ、それに動揺したのか、真夜は机にぶつか
ってしまった。
その拍子で傾いた机から、出しかけていた物がバラバラとこぼれ落ち、真夜は反射的に手を伸ばして、最
初に落ちてきたバットを掴む。
しかし、勢いが付いていたらしく、机の中の物は次々と音を立てて床に落ち、散らばってしまった。

バットがもう一本に、ハサミが数本と、着火マンがいくつも転がっていた。
すべてに「まよ」と書かれた名前が貼り付けてあるのが見える。

先生は言葉を失ったように呆然と床に散らばった品を見ているようだった。

真夜はのろのろと、先生の顔と床を交互に見て、

―――じわり と、その瞳に涙がにじむ。

「・・・・・・あ」
先生が声を掛ける間もなく、真夜は掴んだままのバットを持って身を翻し教室を飛び出して行ってしまった。


「三珠さん・・・・・・」
しばし、一人きりになった教室に立ちすくんでいた先生は、困ったように頭をかきながら真夜の落としていっ
た物に近寄り、バットを手に持ってみる。
「・・・わりと丸い文字なんですね。名前―――ひらがなで書くのがお好きなんでしょうかね・・・・・」
指で文字をなぞり、苦笑を浮かべて肩をすくめると、先生は落ちている物を拾い集め、真夜の机に戻してい
った。



106真夜:全力で伝えたい私がいる:2007/11/07(水) 18:23:29 ID:/wUQBlaw

日が落ちかけた空は一面が茜色に染まっている。遠くを飛んいる二つの黒い影はカラスだろうか?
彼方へと寄り添うように飛び去って行く影をぼんやりと眺めながら、真夜は橋の上に佇んでいた。
手に握り締めたままのバットを見つめた。
所々が変形して窪み、やや汚れているが、何度も巻きなおしたグリップはすっかり手に馴染み、隙間なく握
り締める事が出来ている。
目線に持ち上げたバットのの向こう側に、飴色に染まった川面が見えていた。
流れは緩やかで、あまり水深も無いのか、鯉のような魚が泳いでいるのが見て取れる。

真夜はしばらく川面を見つめていたが、やがて、バットを持った手をゆっくりと後ろに振りかぶった。

―――と、大きく振りかぶった腕を誰かに掴まれ、真夜は少し後ろに仰け反り慌ててバランスを取り直す。

腕を掴まれたまま首を捻って後ろを見ると、そこには困ったような笑みを浮かべた先生が立っていた。

「・・・・・・悪い子ですねえ。」

ぽつりと言った先生の言葉に、真夜は先生から目をそらした。
先生は掴んでいた真夜の腕をそっと離した。真夜は、腕を下ろしたが、先生には背を向けたまま振り向こう
とはしない。

「・・・駄目じゃないですか。・・・不法投棄ですよ?」

真夜は困惑した表情を浮かべて振り返り、先生を見上げる。そして、自分の持っているバットに気が付き、
少し肩をすくめた。
再び、背を向けて川面を見つめる真夜に、先生は苦笑を浮かべてその肩に手を置いた。

「分かってますよ三珠さん。・・・先生は、分かっています。・・・・・・あれは、あなたじゃ無いんでしょう?」

返事をしないまま、真夜は顔をそむけたまま、唇を強く横に結んでうつむいた。
先生は少し口を開いて笑みを浮かべたように見えた。 ポンポンと、その肩を手で叩く。

「・・・・・悪い子ですねぇ。ほんとに。」

うつむいて、ただ川面を見つめ続ける真夜を見ながら、先生は、そっと後ろに隠し持っていた物を取り出し
た。

―――コツン

何か硬い物が自分の頭に触れた感触に、真夜は驚いて振り返る。

見覚えのあるバットが頭に当てられていた。
それを握っている先生は、真夜が自分を見つめたタイミングに合わせるかのように、あっ、と口を開いて見
せて、わざとらしく慌てて頭を掻いた。
107真夜:全力で伝えたい私がいる:2007/11/07(水) 18:24:14 ID:/wUQBlaw

「―――はは。・・・先生も意地悪しちゃいましたよ。」
一瞬の間を置いて、驚いた表情のままだった真夜の顔がほんのりと赤く染まった。
先生は少し、はにかむように頬を指で掻いて、真夜の頭に手を乗せた。包帯の下の傷口には触れないよう
に、優しくその頭をなでる。

「三珠さん。先生は、余計な事を言わない子は大好きですから―――ね?」

頭を撫でられながら、真夜は恥ずかしそうに先生から視線をそらした。


ボチャン・・・

不意に川面から聞こえた重い水音に反応し、先生は川を覗き込んだ。
「・・・おや。この川、魚がいますね。・・・フナ・・・・・・いや、鯉でしょうかね?」
誰とは無しに呟いた先生は、いつ間にか正面にいたはずの真夜の姿が無くなっている事に気が付いた。

「・・・・・・え?」

真夜の姿を確かめようとする間も無く。

ゴッ!!

唸りを上げてフルスイングされたバットが先生の背後から襲い掛かり、鈍い音と共に先生の体は宙に浮き
、橋の欄干を越えて飛び出して頭から水面に突き刺さる。

激しい水音に掻き消されたのか、先生の悲鳴は聞こえなかった。
先生の姿は一旦水中に沈み、しばらく泡立つ水面だけが見えていたが、

「死んだらどうする!?」

叫び声と共に、水しぶきを上げて先生の上半身が水面に生えた。
水位は腰までしか無い様で、水を滴らせて川の中に立ち上がりながら、先生は橋の上を振り返った。

夕日が逆光になっていて、ほぼシルエットしか見えないが、真夜がバットを片手に、そこに佇んでいる様子
は分かった。
その顔は影になっているが、真夜の口が嬉しそうに笑みを浮かべているように見える。

「・・・犯人なわけが無いです!」

先生は一言叫んで、仰向けに倒れ、そのまま水面に浮いて見せた。
その表情には苦笑が浮かんでいる。
真夜は手すりから身を乗り出して先生を見つめると、紅潮したその顔に満面の笑みを浮かべ、

―――先生に向かって、力一杯バットを投げつける。

夕暮れの川辺に、悲鳴と水音が響き渡った。



108305:2007/11/07(水) 18:25:48 ID:/wUQBlaw
お粗末でした。

では、また。 礼。
109名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 18:45:36 ID:Q74XPGhG
保管庫のアドレスおしえて下さい
110名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 19:34:30 ID:flHwuSZL
111名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 00:17:04 ID:Bb2G93sO
真夜かわいいよ真夜

しかし無粋なこと言うが、智恵先生はSCなんだよな
112名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 00:52:53 ID:C5HUQfbN
真夜かわいいー、本編でもこのくらい出番ほしすGJ!!
113名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 05:20:08 ID:Z5x7gdk+
 川のほとりで、千里はお姉さんの側に座って、することがないのでとても
退屈になってきていました。お姉さんの読んでいる本を覗きこんでみたけれ
ど、そこには猟奇的な絵や暴力的な会話もありませんでした。「猟奇も暴力
も無い本なんて、ちっとも面白くないわ」千里は考えました。

 千里はひなぎくのジュースを作って、お姉さんに注射したら楽しいだろう
けど、立ち上がってひなぎくを摘むのも面倒だし、どうしたらいいものかと
考えました。昼間で暑いし、眠いので考えるだけで大変でしたが。すると突
然、ピンクの目をした白いうさぎが千里の側を走っていったのです。

それはそんなに言うほどのことはありませんでした。さらに千里は、うさぎ
が「大変だ! 大変だ! 生肉になっちゃう!」と呟いているのを聞いても、
たいしておかしいこととは考えませんでした。
うさぎがチョッキのポケットから懐中時計を取り出して、それを見て、また
仕舞い、急いで走りだしたとき、千里も手にスコップを持って駆け出しました。
チョッキのポケットに懐中時計を入れているうさぎは見たことがないし、うさ
ぎの生肉を見たこともないのに気が付いたのです。千里は好奇心いっぱいに
なってうさぎを追いかけて、うさぎが茂みの下にある大きな穴に飛び込むとこ
ろにちょうど間に合いました。

つづきません、保管庫にも入れないでね。
114名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 10:26:01 ID:nDdMp1ec
アリス千里キター!
115305:2007/11/08(木) 10:31:04 ID:fZd0zoST
ごめんなさい! やっちゃいました!

>>104 と >>105 の間に 1レス入れ忘れてました!
申し訳ない・・・orz

いまさらですが、レスさせてください。 土下座。
116真夜:全力で伝えたい私がいる(104.5):2007/11/08(木) 10:33:13 ID:fZd0zoST

「大丈夫です。先生に話してごらんなさい。・・・心配しなくても、誰かに話したりしませんから。」

そう言って、真夜に微笑んでみせる。真夜は少し困ったように眉を寄せながら、先生の方に向き直った。
先生は一つ頷いて、真夜の肩をポンポンと叩く。

「安心して下さい。先生はそういった、乱暴したりとか、誰かに意地悪する人は、大嫌いですから。何でも話
してごらんなさい。」

ビックゥ!

真夜は、目を見開き体を大きく震わせて息を飲み、その場に硬直した。
ゴクリとその喉が鳴り、小さく震えている。

「三珠・・・さん? どうしました? 気分でも悪いのですか?」
顔色が変わった真夜の様子に気が付き、先生は首をかしげた。
真夜はしばらく、口を小さくパクパクとさせていたが、やがて何かを思いついたように椅子を蹴って、突然そ
の場に立ち上がった。

「ど・・・・・どうしたんですか!?」

先生の問いには答えず、真夜は戸を開けて廊下に飛び出すと、一目散に何処かへ駆け出していった。
静かな廊下に反響する足音が遠ざかってゆく。

「三珠さん!?」

一瞬遅れて、訳が分からないといった顔のまま、先生も保健室を飛び出した。


117305:2007/11/08(木) 10:34:19 ID:fZd0zoST
ごめんなさい・・・・・・orz
以後、注意いたします!
118名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 10:40:14 ID:ZVMphj80
>>117
ああ、これで納得
昨日から首をひねっていたのさ GJ!

>>113
再現率高いな!GJ!
千里アリスに魚目で「こうもりは猫を食べるかしら?」とかやって欲しいw
119名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 12:37:15 ID:bujkWndR
先生とカフカは付き合っていました
夏休みには2人で島に行く計画も立てていました
なのにカフカはトラックに引かれて死んでしまいました
先生は絶望して自分も死のうと首を吊ろうとしました
すると死んだはずのカフカが現れて先生を止めました
先生はカフカの想いに心を打たれて死ぬのをやめました
そして強く生きようと心に誓ったのでした ちゃんちゃん
120名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 22:02:04 ID:nDdMp1ec
>>116真夜はまさに乱暴したりいじわるする人だからなあ〜切ない


>>101様の意見に後押しされ「旧姓」の続きを投下いたします
前回はコミカルに終わりましたが今回はシリアスでエロ抜き
凄惨で繊細な感じにしてみました
121ヤンデレな神が支配する 前編壱/六:2007/11/08(木) 22:04:59 ID:nDdMp1ec
問題、
一生癒える事のない傷を負ってしまいましたどうすればいいでしょうか?

答え、
その傷を負わせた者の一生を終わらせればいい


こんな道徳感ゼロ社会適応性ゼロ
まるで野蛮な原始時代の住人の様な答えをする少女木津千里


その傷を負わせた者はさっきダム建設により水底に沈む村で刺して切って刻んで掘って叩いて埋めてきた

だがその者の一生を終わらせても一向に心は晴れない
「うっうっうっ先生・・・・・」

最愛の教師とは初めから何もなかった
全て自分の勘違いだった北極で遭難した先生が真っ先に自分の前にも現れたり
前世で夫婦だったと知り今でも愛し合っていたと思っていたのに

心に大きく開いたこの穴はなんでもできちゃうキッチリスコップにさえ埋める事は出来ないんだ


ダム予定地は山奥だったため戻って来た時辺りは開いた穴の様に真っ暗な闇夜に包まれていた


「うっうっひっくうぐう・・・・・」
ガラガラガラガラガラ

泣き声とスコップが引きずる音は夜の町に響くばかり
その悲哀の二重奏に気が着いた少女が一人

「えっ千里!?こんな夜中にどうしたの!?」
122ヤンデレな神が支配する 前編弐/六:2007/11/08(木) 22:07:48 ID:nDdMp1ec
晴美は戸惑いの色を隠せなかった
珍しく学校を休んだ親友がこんな夜中に血塗られたシャツを着てスコップを引きずり
一人で泣いてるだなんて

「千里!一体どうしたの!?」

急に聞き慣れてた声が耳に入り千里は涙で揺らめく幼じみの姿に少し驚いた

「は・・るみ?」


「そんな格好おまわりさんに見られたらどうすんの!
私の家近いし来て」


晴美はやや強引にぬぐった涙に濡れ震える手を引き自宅まで連れて帰った
夜遅くまで同人誌を描きコンビニでコピーを取った帰りの思わぬ再会
両親は既に寝ており
幸い上の兄も帰ってこない

「顔はびしょ濡れだし泥だらけだしシャワー浴びなよ
服は私のに着替えて良いから」


スコップは玄関に置き
半ば強引に血塗られた服を脱がせて風呂場に入れる
「ひっ!手に血がついた
なんか暖かいし!!」

一体何がどうなってるんだろう訳がわからない

シャワーと手を洗うため捻られた蛇口から出た水
二つの水音が鳴り響く中混乱しつつも晴美はとてつもなく嫌な予感はしていた
123ヤンデレな神が支配する前編参/六:2007/11/08(木) 22:11:43 ID:nDdMp1ec
涙と泥と血を洗い落とせたのか千里は晴美が置いたパジャマに着替えた

しかし目の焦点は定まらず眉はいつもの様な気丈な釣り上がりを失っていた
左右対象だった真ん中分けも整える様子はない
髪だって几帳面なはずなのにきちんと拭かれず
水滴がポツポツとしたっていたのだ


そのまま行き慣れた晴美の部屋に入ったがまるで幽霊の様に生気がなかった
「きょ・・今日はどうしたの?
風邪でも引いたの?
それとも交通事故にでもあったとか・・・・・」


幼い頃からよく知る彼女がまるで別人の様に様変わりしている
きっと何か相当な理由があるに違いないと問い質す
「・・・・・」

「あっ話したくないなら話さなくて良いのよ」

「・・んを・・して埋めたの・・・・・」

「えっまた先生埋めたの?」

彼女が先生をよく埋めてるのはよく知っている
だがいつも埋めた後は喜んでいるとゆうのに
何故なんだろう


「私、一旧さんを殺して埋めてきたの・・・・・」

「ええぇーーーッ!?
なんで一旧さんを不自然消滅させたの!!!!
旧ザクのプラモからポロロッカしてガンダムアニメに入ったから!!??」

「違うわ、昨日帰りに河原で無理矢理レイプされたから。」
124ヤンデレな神が支配する 前編四/六:2007/11/08(木) 22:14:36 ID:nDdMp1ec
幼なじみ千里は昔からきちんとしていない人を殺してるかの様な節は多々あったがなんとか見て見ぬフリを通して来た

しかしそんな彼女が強姦され復讐のために殺すなんて
悪い予感はしたがこれほどの事だとは

「私ん家からの帰りに・・そ・・そんな・・・・・」

「しかもね、復讐しようと千里眼で一旧さんの居場所突き止めたら倫ちゃんにも乱暴していて、
先生にまで暴力奮っていて・・・・・
旧姓が欲しいだなんて理由でよくも!よくも!
殺しても殺したりないわよお・・・・・」

「・・千里・・・・・」


再び泣き始めた親友にどう声をかけて良いかわからない
どんな慰めをかければいいのかわからない程むごい事実を黙って聞く他なかった


「私馬鹿よね、
犯されながらあいつの口から先生とは何もなかったと聞かされるまでずっと初めてが先生だと、
責任を取れと先生に迷惑かけていたなんて。

ごめんね晴美、こんな話聞かせてごめんねごめんね・・・・・」


委員長とアダ名されるほどしっかり者の彼女が顔を真っ赤にして泣き崩れている
125ヤンデレな神が支配する 前編伍/六:2007/11/08(木) 22:18:01 ID:nDdMp1ec
慰める言葉を選んでる場合じゃない
一番苦しい時支えてあげなくちゃ
親友なんだもの
晴美は千里の肩をそっと抱いた

「うっううっううっ・・・・・」


震える肩ごしに伝わってくる彼女の憎しみが、苦しみが、悲しみが、弱さが、切なさが、
彼女の負った深い深い心の傷を自分は癒す事も引き受ける事も出来ない

だからせめて少しでも私の胸の中で楽になってほしい
どうか・・どうか・・


「うううごめんね、こんな私でごめんね・・・・・」

「いいのよいいのよ、
例え世界中が敵になっても私は千里の味方よ

だから千里は千里のままでいいんだよ」


「は・・るみ・・」


その夜はずっと親友の胸の中で泣き続けた
この世の誰よりも優しくて
何よりも暖かくて
何処よりも安心できる場所だったから


「あれ千里、泣き疲れて寝ちゃったの?
しょうがないなあフフフ」

ベットに寝かせ電気を消し布団を被り藤吉晴美は眠りにつく
赤ん坊の様にうずくまる木津千里を守る様に抱き抱えながら
126ヤンデレな神が支配する 前編六/六:2007/11/08(木) 22:27:21 ID:nDdMp1ec
翌朝千里を家に送り届けた
彼女の両親に本当の事を話せるわけもなく

「少し体調が良くなり気分転換に散歩していたら
交通事故で野良犬が死んでいたので
一緒に埋めてあげたら彼女の気分が悪くなり
家で一旦休ませたら眠ってしまった」


と嘘をつくと娘の親友とゆう事もありすんなり信じ聞き入れた


「ほらスコップと服も洗っといたよ
じゃあ学校行くね
千里は調子良くなってから来て」


「・・うん・・・・・」


彼女はスコップと服を受け取り
憂いの中に微笑を浮かべると自宅に入っていく


―でもその日、千里は学校に来る事はなかった―
127名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 22:29:54 ID:nDdMp1ec
はい、最初からいきなり重くて後半は若干百合入ってすいません
中編と後編は百合なしなので
よろしこうお願いします
128名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 22:35:08 ID:2Eel7uJN
>127
お疲れ。かなり長そうですね。
129名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 22:39:38 ID:aOkzSuVL
>>127
どうか最後は千里が幸せになれますように…!
130名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 22:50:26 ID:j3jZa1Tu
ところで倫は誰がなぐさめてくれのかな?のぞm

この後は汚れていて読めなくなっている
131名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 23:58:40 ID:PhsvCiMi
GJ!なんだかシリアスな展開・・・?

>旧ザクのプラモからポロロッカしてガンダムアニメに入ったから!!??
のはずなのにここで笑わせるなwww
そんな理由で殺されたら浮かばれんわ
132430:2007/11/09(金) 00:12:53 ID:1gW7Wfd1
>>305さん
はい、確かに加害妄想だったかも。逆に良くないですよね。
しかし、すっかり真夜エキスパートですね!真夜可愛いよ真夜。
そして、305さんの書く余裕のある大人な先生が大好きです。

>>127
これは、またシリアスな…っ!
千里がカワイソ過ぎて心が痛くなります。
どうかどうか、千里を幸せにしてあげてください…!

えーと、改めましてこんばんは。
懲りずに投下させていただきます…。
試験前に何故か机の上を片付けてしまうように、
仕事でテンパるとSSを書いてしまう今日この頃。
人として部下として、かなりヤバイです。

最近キャラの中で先行きが一番心配な、大草さんのSSです。
またしても無駄に長いです。
133As it will be 1/14:2007/11/09(金) 00:14:57 ID:1gW7Wfd1
私は、高校に入ると同時に結婚し、間もなく子供を生んだ。

大恋愛の末の結婚だったし、当初は反対していた親も最後は認めてくれ、
順風満帆、幸せな結婚生活を送る……はずだった。

夫に、あんなに生活能力がないとは思わなかった。
夫は、決して悪い人ではない。心が優しすぎるのだ。

仕事で何か嫌なことがあるとふさぎ込み、家にこもってしまう。
そして、パチンコなどの遊興に逃避する。
結局仕事は長く続かず、我が家の家計はいつも火の車だった。

最近は、家に帰ってこないこともある。
帰ってくるときに香水の匂いをさせていることもあった。

親には、必ず幸せになって見せると大見得を切った手前、
今の状況を知られたくなかったし、絶対に頼りたくなかった。
そんなわけで、私は今日も、学校の昼休みに内職の造花作りに
精を出していた。

「麻菜実ちゃん、精が出るね。」
風浦さんが私を見て、「手伝うよ。」と一緒に造花を作り始めた。
それを見て、他のクラスメート達もわらわらと集まってくる。

「どう?この芸術的なシルエット!」
「晴美!そこは、こうやってきっちり作らないとダメでしょ!」
「…千里のは直線的過ぎて、もはや花じゃないよ…。」
「マリアもできたヨー。ほら。怪獣花!」
「だめよ、マリアちゃん。私に貸してみて。」
『…お前のは、可もなく不可もなく、ホントに普通だな!』
「普通って言うなぁ!」

…皆の気持ちは嬉しいんだけど…余り、役に立ってないかも…。

そこに、
「なにやら楽しそうですね。私も混ぜてください。」
このクラスの担任の、糸色先生が、ひょいと顔を覗かせた。
134As it will be 2/14:2007/11/09(金) 00:16:16 ID:1gW7Wfd1
千里ちゃんが立ち上がって先生にビシっと指を突きつけた。
「お気楽なこと言わないで下さい!遊びじゃないんですよ!
 これには、大草さんの生活がかかってるんですから!」
「え、そ、そうなんですか…。」

先生は、怯んだように千里ちゃんと私を見比べた。
……事実ではあるが、余りはっきり言われると傷つく。

「だいたい、先生、担任なら、大草さんの窮状を助ける、
 何らかの動きがあってしかるべきでしょう!」

え、ちょっと待って。
それは、だいぶ話が違う。

しかし、私が何か言う前に、風浦さんが立ち上がった。
「それなら、いい方法があります!」
風浦さんは、両手を高く差し上げた。
「先生の下に会員(子)を募り、またその下に会員(孫)を募り、
 倍々で増やしていくのです!!」
「その方法は、すでに経験済みです!!
 またマルチ商法で逮捕されるのはまっぴらですよ!」
「だったら、先生が教祖になって、信者からお布施をもらうとか!」
「それだって、結局は詐欺ですからあぁぁあ!!
 風浦さん、あなた、どうしても私を犯罪者にしたいんでしょう!
 絶望した!生徒が教師を罪に陥れる現代社会に絶望した!!」
「それって現代社会とは関係ないから…。」

なんだか、話が横に逸れていったようで、私は内心ほっとした。
皆が、楽しみ半分に造花作りを手伝ってくれるのと、
他人から援助を受けるのとでは、全然話が違う。
それくらいなら、とうの昔に、親に頼っている。

私は、すっかり風浦さんに手玉に取られている先生を、ぼんやりと眺めた。

―――ダメ大人の典型みたいな人なのに、けっこう人気あるよね…。

頭を振り、造花の片づけをしようとして、ふと視線を感じて顔を上げた。
…先生が、私のことを気遣わしげな目で見つめていた…。
135As it will be 3/14:2007/11/09(金) 00:17:17 ID:1gW7Wfd1
週末、私は野球場でビール売りのバイトをしていた。
このバイトは、サーバーが重くて腰に来るし、背中は冷たいしで、
けっこう辛いのだが、その分バイト料は、造花作りなどとは比較にならない。

今日は朝から暑く、ビールが飛ぶように売れていた。
サーバーを交換しながら、足元がふらつくのを感じる。
朝から、ロクにモノを食べていない上に、この炎天下。
―――これは、少し、何か口に入れたほうがいいかもしれない…。

そのとき、ファウルボールがこちらに向かって飛んでくるのが見えた。

―――危ない!
と思ったが、打球は思ったより前方に落ちた。
誰かに思い切り当たったみたい…鈍い人がいるものだ。

「…ん?」
よく目を凝らすと、それはうちの担任教師だった。
ファウルボールの直撃を受けたらしく、めそめそと泣いている。
―――ああ、もう、本当にこの人は…。

声をかけると、先生は振り向き、
「痛かったよぉぉぉぉお!」
と抱きついてきた。
私は、つい、息子にするように、
「はいはい、痛かったですねぇ。」
と頭をなでたが、腰に回された先生の手の存在が、何故か気になる。

下腹に埋められた先生の顔が、涙を拭くように、すり、と動いた。
「…っ!」
思わず、反応してしまった自分に、次の瞬間赤くなった。
最近、夫に触れられていないせいかもしれないけれど
こんな場所で、しかも先生相手に、なんて…。

私は、頭がくらくらして、目の前が霞んでくるのを感じた。
先生が、顔を上げて何か叫んだ。

最初は、恥ずかしさの余り気が遠くなったのかと思ったけど、
どうやら、貧血らしい。
そう思った次の瞬間、意識がブラックアウトした。

136As it will be 4/14:2007/11/09(金) 00:18:18 ID:1gW7Wfd1
気が付くと、私は、自分の家の畳の上に、布団を敷いて寝ていた。
「…あれ…?」
「…気が付きましたか。」

驚いて振り返ると、先生が壁に寄りかかって胡坐をかいていた。
「せ、先生…?なんで…?」
先生は苦笑した。
「あなたが、しきりに自宅に運べと言い張ったんじゃないですか。」
全然、記憶がない。
「球場の方が、こちらまで運んでくださったんですが、
 ご家族の連絡先が分からなくて…。私が担任だと言ったら、
 残ってあなたを看るよう言いつけられました。」

申し訳ありませんが、勝手に財布を探らせていただきましたよ、
と言いながら、先生は家の鍵をぶらぶらさせた。

と、先生は、いきなり表情を改めた。
「それにしても、貧血なんて…きちんと食事はしているんですか?」

私は先生から目をそらして時計を見て、あっと声を上げた。
「どうしました?」
「大変、子供を迎えに行く時間が…!」

息子を預けている託児所の引き取り時間はとうに過ぎていた。
慌てて身支度をしようとして、再び眩暈に襲われる。

そんな私を見て、先生が立ち上がった。
「IDカード、財布の中にありましたよね。」
「え…。」

先生は、私の財布から託児所のIDカードを取り出した。
「私が、代わりに迎えに行ってきます。」
「ちょ、ちょっと待ってください、先生!」
しかし、先生は、さっさと部屋を出て行ってしまった。

私は、さっきより強い眩暈を感じて、布団に倒れこんだ。
137As it will be 5/14:2007/11/09(金) 00:19:24 ID:1gW7Wfd1
先生は、程なくして戻ってきた。
その頃には、私の眩暈は、なんとか治まっていた。

息子は、先生の腕の中ですやすや寝ている。
「どうも、すいません…。」
「いいえ、どういたしまして。可愛い息子さんですね。」

息子を先生から受け取り、2階に寝かせると、私は下に降りて行った。
先生は、台所の椅子に座って、辺りを見回していた。
「先生、本当にご面倒をおかけしました。」
深々と頭を下げる。

先生は、私のバイトの予定がびっしりと書き込まれたカレンダーを
ぼんやりと見ながら、呟いた。
「大草さんは、なんでこんなに頑張ってるんですか。」
「なんで、って…。」

先生が、私の方を向いた。
「もう少し、気楽に生きたっていいじゃないですか。」
「…気楽に生きてたら、一家が路頭に迷います。」
「そうでしょうかね?」
先生の言葉に、私はムッとした。

「先生みたいな真正のお坊ちゃまには分かりませんよ。」
私の不機嫌が伝わったらしく、先生は、小さい声で呟いた。
「私は…。ただ、あなたが随分無理をしているように見えるので…。」

…無理は、してますとも。
でも、そうしなきゃやっていけないんだから、仕方ないじゃないですか。
この間は追証までかけられちゃったんだし。

「あなたには、ちゃんと、夫君がおられるのでしょう?」

…そのことは、今、触れられたくなかった。
ここのところの夫の不在の事実が、痛みを伴って胸に蘇る。
私は、両腕で体を抱えるようにして、先生から顔をそらした。
138名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 00:20:07 ID:sdF+6YFm
私も無駄に長いの書いていますが、過疎ってきたら穴埋めに投下します。
というかまだ完結してない...
139As it will be 6/15:2007/11/09(金) 00:20:49 ID:1gW7Wfd1
ははは、14レスじゃなくて15レスもあった…orz



と、先生が、椅子から立ち上がる音がした。
足音がして、私の横に、影が落ちた。
見上げると、すぐ隣に先生が立っていた。

先生は、囁くような声で尋ねた。
「ねえ、あなたは、今、幸せなんですか…?」

私を見る先生の目には、質問以上の意味が、含まれていた。
私だって、初心な小娘ではない…それくらいは、分かる。

私は、一歩後ろに下がった。
先生が、その分、前に歩を進める。
我が家は狭い。すぐに、私の背中は、壁に突き当たってしまった。

先生が、私の両脇の壁に手をつき、私の退路を塞ぐ。
「どうなんですか、大草さん…。」

はい、幸せですと答えれば、きっと先生は私を解放するだろう。
でも、ここで、違うと言ったら―――。

私は、先生を見上げたまま逡巡していた。
言葉が出てこない。

自分がどうしたいのか、よく分からなかった。

先生は、立ち尽くす私をしばらく黙って見下ろすと
「分かりました…いいですよ、答えなくて…。」
そう言って、私を抱き寄せた。

私は、形ばかりの抵抗を示してみた。
「先生、だめです…夫が…上には、息子も…。」
ほとんど機械的に呟いた言葉は、先生の唇にふさがれた。
140As it will be 7/15:2007/11/09(金) 00:22:11 ID:1gW7Wfd1
「んっ…。」
…何故、私はこんなことになっているんだろう。
先生からの口付けを受けながら、私は不思議な気持ちで自問した。

貧血で倒れてからの流れが、どうも理解できない。
最初から、先生は、私と、こうしたかったの…?

「ん…ふっ…む…。」
先生の舌が、私の口内をゆっくりと探る。
久しぶりに感じるこの感覚に、私は恍惚となった。

最近、随分夫と肌を触れ合っていない。
考えたら、キスも…いや、手を握ってさえいない。

繰り返し、執拗に与えられる先生からの口付けに、体が疼いて止まらない。
だんだん、何も考えられなくなってきた。
―――ああ…先生!!


―――とうとう、私の中にある何かの箍が外れた音がした―――


私は、先生を見上げると、熱い息を吐いた。
「先生…もっと…もっと、強くキスして!!」

そのときの私は、とても淫乱な顔をしていたと思う。
でも、もう、どう思われてもかまわなかった。
今はただ、この欲望に流されようと思った。

先生は、一瞬驚いたような顔で私を見下ろしたが、目を細めると、
今度は前より激しく私に口付けた。

強くなる体の疼きに、口付けだけでは飽き足らなくなって、
「ん…っ、はぁ、先生、もう…、ねぇ…。」
私は先生の襟元に手をかけて、シャツのボタンを外そうとした。
先生が、私の手を取ると、
「脱がすのは、私が先ですよ…。」
と、和室まで連れて行き、私を布団の上にゆっくりと押し倒した。
141As it will be 8/15:2007/11/09(金) 00:23:26 ID:1gW7Wfd1
一瞬、頭の中に夫の顔がよぎる。
でも、私は頭を振ってそれを振り払った。

先生の手が、私の服のボタンにかかる。
バイトの制服は単純な構造のワンピースで、簡単に脱げてしまった。

先生は、下着だけの姿になった私の肌に、唇を寄せると囁いた。
「残念ですが、さすがに、跡を残すとまずいですからね…。」
そういいつつ、優しく唇を触れていく。

触れるか触れないかのタッチで肌の上を這う唇の感触がもどかしい。
私は、先生と肌を触れ合わせたくて、先生の襟に再び手をかけた。
今度は先生も抵抗しなかった。

「難しいですよ…大草さんに、脱がせることができますかね。」
先生は布団の上に起き上がると、余裕の表情で含み笑いをしている。

「…。」
私は、先生の着物の襟を開くと、シャツのボタンを外した。
そこで、我慢ができずに、開いたシャツの下の先生の胸に口付けた。

これは想定外だったらしく、先生の体がびくんと跳ねた。

「ああ…先生…。」
私は、そんな先生の反応に気を良くして、
さっき先生が私にやっていたように、その肌に唇を這わせた。

「…っ、大、草さん、っ!」
先生が私の肩をつかんで私を止める。
私は、熱を込めた目で先生を見上げた。
「まったく、油断がならないですね…。自分で脱ぎますよ。」
そういうと、先生は自分で着物を脱ぎ始めた。
142As it will be 9/15:2007/11/09(金) 00:24:40 ID:1gW7Wfd1
全てを脱ぎ終わった先生を見て、私は胸が高鳴ってくるのを感じた。
―――この人の腕に、早く、抱かれたい…。

私の願望は顔に表れていたんだろう。
先生は私を見ると、手を伸ばして私を胸元に抱き寄せた。
肌と肌が密着する、この安心感。
私はうっとりとその感触を楽しんでいた。

先生が、手を私の背中に回した。
あ、と思う間もなく、ブラのホックが外されてしまった。
この間、授乳を終えたばかりの胸が、顕になる。

恥ずかしくて真っ赤になって胸を隠す私に、先生は賞賛の目を向けた。
「何を恥ずかしがっているんですか…きれいですよ、大草さん。」
体温が、上がったような気がした。

先生は、再び私を布団に横たえると、私の胸の頂を口に含んだ。
「ぁあ!」
快い戦慄に、背中が反る。

「なんらか、大草さんの、子供になったような気分になれまふね…。」
先生が、私の胸を口に含んだまま囁いた。
「馬鹿…。」
私は、呟きながらも、胸に吸い付く先生の頭をゆっくりとなでた。

でも、この子供は随分と性質が悪かった。
いきなり、強く吸い上げるかと思うと、軽く歯を当ててくる。
その間に、もう一方の乳房に手を伸ばして、先端を手の平でさわさわと撫でる。

「や、んぁ、こ、こど、もは、こんな、こと、しま、せん…っ!」
途切れ途切れに叫ぶと、先生は顔を上げてにやりと笑った。

「そうなんですか…じゃあ、こんなことは、どうですか?
私は、好奇心旺盛な子供なので…。」
そういうと、手を下着の中に滑り込ませ、一気に引き下ろした。
「ここが、こんなに濡れてるのは、どうしてなんでしょうね、大草さん?」
そう言いつつ、指を私の中に差し入れる。
143As it will be 10/15:2007/11/09(金) 00:25:23 ID:1gW7Wfd1
「あ…やぁん…。」
先生は、ゆるく、優しく突起をなでるかと思えば、
ぐっと奥まで指を入れ、その中をこね回す。
私は、先生の緩急をつけた巧みな指の動きに体を震わせた。
「先、生…あっ…上手…っ!」

先生は、私の言葉に嬉しそうに笑った。
「お母さんに褒められると、子供は張り切るんですよ。」
そう言って、今度は、さんざん指で弄ったところに顔を埋めた。

「…んんんっ!ああっ!!」
先生が舌で執拗に私の中をさぐろうとする。
尖った舌が、私の突起をつついた。
私は、湧き上がる快感に我を忘れた。
―――ああ、先生、もっともっと、感じさせて…!
   そして、何もかも、忘れさせて…!

どんどん体の中の感覚が高まってくる。
「ん…来る…先生、いっちゃ、う…!」
私の喘ぎに先生の動きが加速した。
「あああああ!!」

私は体をそらせて上り詰めた。

先生が、口をぬぐいながら、息を切らして私を見る。
「大草さん…どう、ですか?」
「…。」

私は、絶えて久しかった快感に、しばらく返事もできなかった。
代わりに、先生の顔を引き寄せると、濃厚に口付けた。
「ん…ふ…っ。」

しばらく舌を絡めあい、唇を離すと、私は先生を熱く見つめた。
「先生…今度は、私にやらせて…。」
そういうと、顔を先生の下肢へとずらせた。

大きく張り切った先生自身が目の前にある。
私は、期待にどきどきしながらそれを口に含んだ。
144As it will be 11/15:2007/11/09(金) 00:26:04 ID:1gW7Wfd1
「…っ!」
先生が、声にならない声をあげる。

いつも、夫にしてあげていたように、奥までしっかり咥え込んだ。
夫のときよりも、ちょっと苦しいけど、我慢する。
同時に、指で、袋をゆっくりと優しく揉んであげた。

「あっ…あふっ、お、大草さ…ふぁ…。」
先生が、私の動きに合わせて声を上げるのが何となく可愛らしくて、
私は、舌を這わせながらのストロークを開始した。

「へんへいが、悪い子らから、おひおきをひてるんれふ…。」
「そ、そんな、…あぅぅ。」

口を離すと、先生の先端ににじみ出てくるものがある。
「先生…お仕置きされて、泣いてるの…?」
ちゅっと音をさせて、それを舐め取った。
「あふぅ…。」

一心に口を動かしていると、先生が
「ちょっと、…ちょっと待ってください、大草さんっ!」
と叫んで、私の頭をがしっとつかみ、先生自身から引き離した。

「このままじゃ、イっちゃます…!」
「イっても、いいんですよ?」
「いや…だって…。」
先生は、言いよどんだ。

私は、そんな先生を上目遣いに見上げた。
「先生…私と、したい…?」
「…あなたが、大丈夫なら…その…。」
先生は、何やらためらっていた。

「避妊だったら…心配しないで下さい、大丈夫です。」
これ以上、子供ができても困るので、だいぶ前から避妊措置をしている。
私も、できれば、先生をもっともっと感じたかった。

私は、先生に向かって囁いた。
「先生…来て…。」
先生は、引き寄せられるように、私に手を伸ばした。
145As it will be 12/15:2007/11/09(金) 00:26:54 ID:1gW7Wfd1
「…では、あなたが、上になってください。」
「ん…。」
自分から、横たわる先生の上に腰を沈めていく。
「あっ…はぁ、ん…っ!」
体の奥まで、先生自身が埋め込まれ、私は背を反らせて喘いだ。

「ああ…大草さん…いいですよ…。」
先生が、かすれ声で呟きながら私の腰をつかんだ。

「あああああ、やっ、ああ、先生…っ!」
強く揺さぶられ、体の奥から頭まで快感が突き抜けた。
余りの刺激に、壊れそうになる。

私は、気がつかないままに、膝で先生を締め付けていた。
「く…っ、大草さん…っ!」
先生が、体を起こすと、私の両膝を抱え上げた。
「…ぁっ!」
私の中のものが当たる角度が変わり、私は再び背をそらせる。

「もう、限界です…っ!」
しばらくすると、先生が、私の胸に顔を埋めながら叫んだ。
私も先生の首に腕を回し、足を絡めると答えた。
「私も…先生…!」

私と先生は、その姿勢で、同時に果てた。

事が終わった後、私は、先生の腕の中でうつらうつらしていたけれど、
だんだんと、自分が何をしたかが心に染み渡ってきた。

―――どうしよう…夫がいるのに、こんなこと…。しかも先生と…。
後悔と恐怖が波のように押し寄せてくる。

そのとき、先生が、私の心の中を読み取ったかのように囁いた。
「いいんですよ、大草さん。たまには、こうやって自分を解放したほうが…。
 あなた、頑張りすぎなんですよ。」
「…え…?」
146As it will be 13/15:2007/11/09(金) 00:28:16 ID:1gW7Wfd1
思わず、先生を見上げた私に、先生は赤くなってわたわたと手を振った。
「ち、違います、決して浮気を推奨しているわけではないんです。
 そうじゃなくて、これは単に自分を解放する1つの手段であってですね、
もちろん、浮気なんてしないにこしたことはなくて…。」

なおも先生を無言で見上げている私に、先生は、黙り込むと、
しかつめらしい顔で、こほん、と咳払いをした。
「ですから…あなたは、もっと、肩の力を抜いたほうがいい…。
私もそうですが、心の弱い大人は、身近な人間に頑張られてしまうと、
 逃げるしかなくなってしまうのですから。」
「…!」

目を見張った私に、先生は頷いた。
「自分の愛する人が、自分のために無理をしている、頑張っている、
 と思えば思うほど…、情けなくて、申し訳なくて、
私のような人間は、そこから逃げ出したくなってしまうんですよ…。」

私が、無理して、頑張りすぎて、それが夫を追い詰めている…?
先生は、そう言いたいんですか…?
だから、先生は、私の肩の力を抜くために、私と…?
私は、呆然と先生を見つめていた。

そのとき、2階で、ふぇぇぇぇえ、という泣き声が聞こえた。
息子が起きたらしい。

私は慌てて布団から出ると、そこら辺に脱ぎ捨ててあった服を羽織って
2階へと駆け上がった。

泣いている息子をそっと抱き上げると、
息子をあやしながら、今の先生の言葉を噛み締めていた。

私は、いつも、自分だけが頑張っていると思っていた。
自分は、彼のため、子供のために我慢しなければと思っていた。

でも、それが、彼にとってプレッシャーになっているなんて、
思っても見なかった。
147As it will be 14/14:2007/11/09(金) 00:29:25 ID:1gW7Wfd1
造花の代金を受け取るときの、彼の卑屈な目。
私の「大丈夫よ。」との言葉に目をそらせる彼の背中。

確かに、あれは、結婚する前には、なかった彼の姿だった。

「そ、っか…。」
私は、小さい声で呟いた。

―――大丈夫よ、私が頑張るから。
―――あなたは、自分のできることだけやってくれれば十分。

そんな言葉が、彼を傷つけていたんだと、今になって分かる。

私が、彼を追い詰めていたんだ。
私が、彼を、他の女性のもとに追いやっていたんだ。

私は、息子のミルクの匂いのする柔らかい髪に、顔を埋めた。

今度、彼が帰ってきたら、甘えてみよう。
そして、2人で思いっきり馬鹿げた大騒ぎをしよう。
株も、やめる。
生活が苦しくたっていいじゃない。
夫と息子さえいれば―――人生、なるようになれ、で生きてみよう。

私は、泣いている息子をあやしながら、下に降りていった。

先生が、息子を抱く私を、優しい目で見上げた。
私は、先生ににっこりと微笑みを返した。

―――皆が先生を慕う理由が、分かった気がします…。

先生が、微笑みながら、先ほどと同じ質問を私に聞いた。
「大草さん。あなたは、今、幸せですか?」

私は、笑顔のまま、先生を見てしっかりと頷いた。
「―――ええ。私、今、とても幸せです。」
148430:2007/11/09(金) 00:32:11 ID:1gW7Wfd1
あれぇ…?やっぱり14レスだった。
ということで慌てて最後に帳尻を合わせてみたり。
まったく、どんだけボケてんだ自分…orz

で。ホントに長いよぉぉぉぉぉお!
もうちっと短く推敲できないのか、って感じですね。
これでもだいぶ削ったつもりだったんですが…。

お付き合いいただきどうもありがとうございました。

>>138
他の方の長編を読むのは大好きです!
過疎ったらなどとおっしゃらず、是非お願いします!
首を長くしてお待ちしております!!
149名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 00:36:16 ID:sdF+6YFm
>>430
了解です。  あと流れ区切ってすまない。

完成したら投下したいのだけど、この作品の後に続ける気がしない......もっと真面目に書こう。


長くて、しっかりした作品でした。上手すぎです。 そんでエロい。
150名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 01:01:21 ID:qbK2LGlt
うむ、上手くてエロい。素晴らしい。
ところで入学と同時に結婚て誕生日は四月の入学式前なんだろうか?
151雨があがれば:2007/11/09(金) 01:51:15 ID:Xb+hbnTd
どうもです。やっと最後を落とします。
なんだかちょっと長いです。落ちがないとは言わないで…
久米田先生を倣ってるだけですから!
152雨があがれば:2007/11/09(金) 01:51:57 ID:Xb+hbnTd
「どうですか?」
霧に尋ねる望。料理を作っている間にどうにか平静を保てる様になったようだ。
「うん、おいしいよ。」
笑顔で答える霧。有り合わせの野菜や肉の炒め物だが喜んでくれているようで望はほっと胸を撫で下ろした。
「そう言ってもらえるとうれしいです。このところずっと食事はあなたに任せっきりでしたからね。」
「いいよ。家事は好きだから。それに先生頼りないし…」
「心外ですね。現にこうしてちゃんと作ってるじゃないですか!」
ちょっと拗ねた調子で怒ってみせる望。
「うん。そうだね。」
おかしそうに笑う霧。
「まぁ確かに小森さんが作った方が美味しいですよ。」
まだ拗ねた振りをして続ける望。
「え…そ、そう?」
また嬉しそうな顔をして照れる霧。それを見た望は何故か自分も照れてしまう。
「ほ、本当ですよ!というか冷めないうちに食べてしまいましょう。」
「うん。」

望の手料理という事だからか、普段は小食の霧もいつもよりよく食べたようだ。
余り物を処分する目的もあり多めに作ったが、結局全部を平らげてしまった。
「ごちそうさまぁ。」
手を合わせて満足そうに霧は食事を済ました。それに望も答える。
「ごちそうさまです。じゃあ片付けをしますので小森さんは休んでてください。」
「え?私がやるよ。作ってもらったんだし…」
自分でやるとばかり思っていた霧は意外そうな反応を返した。
「まぁ、今日は私に任せてくださいよ。たまにはこういうのもいいでしょう?」
「そうだけど…」
霧はどことなく寂しそうにしている。元より世話好きなため世話を焼けないとそう感じてしまうようだ。

珍しく渋る霧をなんとか諭して望は料理を片付けていた。霧は居間でぼーっとテレビを見ている。時々あくびをしては眠たそうに画面を眺めている。
望が宿直室暮らしになってから随分とたつ。それ以来ずっと家事をやってきた霧にとって今の時間は退屈なようだ。
153雨があがれば:2007/11/09(金) 01:52:49 ID:Xb+hbnTd
「小森さん?」
片付けを終えて居間に入ってきた望は霧に話かけたが返事が無い。代わりに静かな寝息が聞こえてきた。
望が片付けを終える間に眠ってしまったようだ。
「寝てしまいましたか…この時間はテレビも面白くないですしね。」
昼ドラが流れているTVのスイッチを切って霧の傍に座る。
毛布に包まり、横に寝転んで膝を丸めて眠っている霧の横顔を隠す長い髪。
それをかきあげて望は顔を眺めた。
安らかな寝顔。そのままずっと見ていたいと思えるくらい愛らしい。望にはそう感じられた。
「一枚だけじゃ寒いかもしれませんね…」
そう言って霧にもう一枚毛布をかけてやる望。
望はしばらく眠っている霧を眺めていたがやがて語りかける様に話しはじめた。
「さっきはすみませんでした…私は怖いんです。…大切なものって替えが利かないでしょう?それでもいつかはいなくなってしまう…雨がやむ様に。」
霧の頬にそっと触れる望。霧を見つめるその瞳は悲しみを帯びている。
「それでも雨はまた降ってくれますが…人はそうもいかない。だから今までのぐらいがちょうど良かったんですよ。疎遠でもなければ、心が近づきすぎて傷つく事もない。
ましてや教師と生徒です。この先をどうして求めていいんでしょうか?そう…今までがちょうど良かったはずなんですよ…」
言葉に詰まる望。
ひと呼吸おいて、意を決した様に次の言葉を放つ。

「小森さん…私はあなたをとても大事に思っています。」

霧の髪を無意識の内に梳きながら続ける望。
「今日ではっきりしました。私はきっと…生徒以上の存在として見ているんでしょうね…あなたの事を…って、へ?」
154雨があがれば:2007/11/09(金) 01:53:52 ID:Xb+hbnTd

一瞬固まる望。
眠っていたはずの目の前の少女が目を見開いてこちらを見ている。霧は申し訳なさそうに望の方を上目遣いで見ている。
「あの…ごめんね先生…」
予想外の展開に頭がついてこない。やっとの思いで言葉を放つ。
「い、いつから…?」
「えっと…あんな風に触られたりしたら起きちゃうよ…ずっと寝た振りするのも悪いし…」
もじもじしながら消え入りそうな声で霧は答える。
「という事は……」
一瞬で頭に血が上っていく。
(あれもこれも聞かれていたって事ですかぁ!?)
「うわぁぁ!絶望したぁ!!あ…あんな恥ずかしい言葉を…ぜ、絶望的です!!」
頭を抱えて取り乱す望。彼の人生の中でもこれほど取り乱す事は珍しいだろう。それほどに語った言葉に偽りがないという事を示している。
「先生…!あの…私もす、好き!先生の事…好き…だよ…」
そんな望の様子を見ていた霧は想いを告げる。今まで一度も口にする事のなかった想い。
その言葉を聞いて我に返ったがより顔が紅潮していく気が望はした。
「先生が言ってくれたから…私も言わなきゃって思った…」
「小森さん…」
なんていじらしい娘だろう。霧の前では先に待ち構えていると思われる暗い不安も霧散していく。
「もう我慢しなくていいんだよね…?」
感極まった表情を見せる霧。目からは大粒の涙があふれている。
今まで口にする事のなかった想いを口に出していった事で堰を切った様に抑えきれない感情が霧の中にあふれていく。
その様子を見た望の頭からはネガティブな思考は完全に引っ込んでしまった。ただ目の前の愛しい少女を愛したいと、その想いで胸が一杯になった。
「いいですよ。もう何も我慢なんてしなくていいです…おっと。」
言い終わらないうちに霧は望の胸に飛び込んでいた。泣きじゃくる霧の頭を優しく撫でる望。その手はそのまま背中に降りていく。
手が背中を上下するたびに霧の呼吸に僅かな乱れが生じるのを密着する体で感じた。
155雨があがれば:2007/11/09(金) 01:54:46 ID:Xb+hbnTd
「ん…ふっ」
辛抱ならないと言った様に望は霧と唇を触れ合わせる。触れるだけのキスからすぐに舌を絡ませ合うキスへと移行していく。
霧はそれに応えてぎこちない様子で舌を絡ませていたが、すぐに体の力が抜けた様に望にもたれかかってきた。
「ふぁ…あん…ん…」
霧はなされるがままに望に口内を弄られていく。霧の味を堪能したのか望は顔をそっと離した。二人の間に銀の糸が引く。
「キスってこんなに気持ちいいんだ…」
ぼおっとした表情で呟く霧。
「初めてでしたか?」
「うん…」
少し恥ずかしそうに答える霧。
「…すみませんもっと優しくすればよかった。」
「ううん…すごく…よ、良かったからいいよ。」
俯き気味にそう話す霧を見て望は羞恥心を煽ってみたいという欲が頭をもたげてきた。
「じゃあ…もっと気持ちいい事を教えて上げますよ。」
「……えっち。」
霧は蚊の鳴くような声で抗議したが望には聞こえていないようだった。
「毛布を羽織らなくても平気ですか?」
「うん。ちょっと不安だけど平気だよ。」
「では…」
そういうと望は霧が羽織っていた毛布を床に敷きその上に霧を横たわらせた。やはり何かに包まっていないと不安なのだろうか落ち着かない様子でそわそわしている。
「せんせぇ…手、繋いで。」
「ええ。これで平気ですか?」
「うん。ありがと…」
霧の両の手に自分の手を重ね合わせる。霧は安心した様に目を閉じた。その様子を見て望は再び霧と唇を交わす。そしてそのまま首筋へとキスの痕を残しながら舌を這わせていく。顔にかかる髪の香りが脳を痺れさせる。
「あ…ふぁ…ダメぇ…!」
霧は思わず肩をすくめた。
「首が感じやすいみたいですね。」
そう言うと望は白く透き通った首筋に軽く歯をたて甘噛みをした。
「ひゃう!?」
思いがけない強い刺激に声が裏返る霧。
普段は淡々とした口調の霧からは想像できないほど調子の飛んだ声。霧自身も自分の声に驚いた様子だったが、望から次々と与えられる快感に休む間もなく可愛らしい声をあげる。
「ひゃんっ!…やあぁ…きゃう!!」
何とか逃れようと身を捩る霧だが手を絡ませ合っているために身動きが取れない。むしろその動きは打ち寄せる快感にアクセントを与えて逆効果になっていた。
「可愛いですよ。…とても。」
「はぁ…はぁ、せんせぇ…」
ようやく解放された霧は暫しの休息に安堵したが、物欲しそうな惚けた顔で望を見つめる。覚えたてのこの快楽に初めは恐怖を感じていたが、それももう欲求の方が上回りつつあるようだ。
156雨があがれば:2007/11/09(金) 01:55:48 ID:Xb+hbnTd
「小森さん…脱がしますよ。」
「う、うん…」
望は霧に腕をあげさせシャツをまくり上げる。
「小森さん…きれいですよ。」
「……いやぁ…」
霧はあげた両腕で顔を隠している。そうする事で胸はよりその豊かさを誇張している。望はその膨らみを包むブラを背中に手を回して外そうとした。
自然と顔が胸の目の前へ近づく。僅かに霧の体から甘い香りを感じた望ははやる気持ちでブラのホックを外した。
プルンと音を立てる様に震えて姿を露にする双丘。先端はうすくピンク色に色づいている。望はそのまま顔をすり寄せてその柔らかさを満喫する。
「ん…せんせぇ…!」
霧は抱き寄せる様に望の頭を抱え込んだ。高鳴る心臓の鼓動、体の温もり、汗とそれに混じる甘い匂い。それらがよりはっきり望に伝わる。
「あなたを食べてしまいたい…」
望はそう呟くと、霧の胸を少し乱暴に揉みしだいて乳首に吸い付く。
「痛ッ!痛い、よぉ…あんっ、やん、んんっ!音たてちゃ…あん!」
霧の抗議に望は多少揉む手の力を抜いたが今度はわざと聞こえる様に乳首を吸い上げる。
柔らかく吸い付くような弾力を楽しみながら、合間なく胸の頂を舌で転がし、甘噛みをして刺激を与える。その度霧は可愛らしい嬌声をあげて望の劣情を刺激する。
「小森さんは胸も弱いんですね。」
少し意地の悪そうな口調で言いながら望はツンとなった乳首を摘む。
「ひゃん!せ、先生の…せいだよ…」
霧は休みのない悦楽に呼吸を整えるだけで精一杯になっている。
「おや?そうでしたか?」
霧が太腿をもじもじと擦り合わせているのを動きで感じた望はそう言うと胸への責めを止めて徐々に下へと舌を這わせていく。
霧も意図を察したのか体が強ばっていくのがわかった。沈黙が訪れる。二人の荒い息と雨音が混じり合う。
ジャージを脱がし、裏腿に口づけをしていく。霧の下着は近くで見なくても湿り気を帯びているのがわかるほど濡れていた。足の付け根からは媚香が漂ってくる。
157雨があがれば:2007/11/09(金) 01:56:22 ID:Xb+hbnTd
望は下着に手をかけて尋ねる。
「いいでしょうか?」
「うん…あ、でも…」
「何か?」
「先生も脱いで…ずるいよ…」
「あ…そうですね。」
僅かにはにかみながら霧は言った。
望は自分の貧相な体格にコンプレックスを抱いていたが霧にはそれを晒すのに抵抗を感じなかった。
「なんだかあなたには全てを晒せるような気がします。」
照れ笑いしながら下着一枚になった望は言う。
「私も先生にならいいよ…じゃあ…脱がして…」
そう言うと霧は望の手を握り自分の腰へと導く。
「…わかりました。…では小森さんは私のをお願いしますね。」
「えっ?」
思わず霧は意識的に視線を避けていたモノへ視線を向けてしまう。
というのも今までの行為で望のものは痛いほどに充血し、そり立っていた。そのため天幕を張っている様になっていたからだ。
「…うん。わかった。」
小さく霧は頷く。
「脱がしますよ…」
望は霧の下着を下ろしていく。下着と秘部の間に透明な糸が引く。下着は水気を持っていくらか重たく感じられる。
「やだぁ…」
霧が消え入りそうな声で呟く。感じ易い事を恥じているのか、両の手で顔を押さえながらいやいやといった風に首を振っている。
「先生は素直に感じてくれる娘の方が好きですよ。」
「………」
返事はなかったが霧は嬉しいやら恥ずかしいやらといった表情を見せた。
「ではこっちも…」
少し緊張した面持ちで望は霧に囁く。
「うん。」
そう答えると霧はおずおずと望の下着に手をかけた。片目だけ薄く開けながらおそるおそる下ろしていく。やがて望の絶棒が現れると霧は大きな瞳を見開いて、固まった様にじっと見つめて視線を外さない。
「あ、あのそんなに見られるとさすがに恥ずかしいのですけど…」
「あ…あ、ごめんね先生…あの、その初めて…初めて見るから……」
「あ…そうなんですか。」
「や、優しくしてね…」
「当たり前じゃないですか…」
望は霧を抱き寄せ頭を撫でた。
「えへへ…頭撫でられるの好きだな…私。なんだかすごく安心する。んっ!」
望は頭を撫でつつ、秘部へと指を侵入させていく。
十分濡れていたためにスムーズに指を滑る込ませる事が出来た。
「あんっ、はぁん!」
初めてにしては、霧は敏感に反応する。さっきまでの責めのために霧の秘部は十二分に神経が過敏になっている様だ。とめどなく愛液が溢れ、望の手を濡らし、内股へと伝っていく。
(この分だとすぐに達しそうですね…)
快感に喘ぐ霧の横顔を見ながら望は思った。
霧の秘部は指にしっかりと絡み付き締め上げてくる。指でこの窮屈さだ、望自身が入っていたらどれほどのものか。早く一つになりたいという衝動を堪えて、霧の秘部をじっくりと責めていく。
「んんぅぅ…ふぁ…ん、あっ…!!!」
霧がひと際甲高い声をあげる。
「今の所が良かったんですか?」
「うん…」
どうやら霧のスポットを探り当てたようだ。そうなれば話は早いとばかりにそこを集中的に責めていく。
「はぁ…あん、はぅ…やぁ…変に、なっちゃ…うぁぁあんっ、ひゃううう!」
あと一押しで霧は絶頂に達するだろう。望は指のスライドを加速させ、余っている指で赤く充血したクリトリスをこすった。
「〜〜〜〜〜〜!!!」
言葉にならない声をあげる霧。どうやら達したようだ。
158雨があがれば:2007/11/09(金) 01:57:16 ID:Xb+hbnTd
ぐったりと望に寄りかかる霧を再び横たわらせる。
「小森さん…まだ大丈夫ですか?」
「ん…平気だよ…次は先生と一緒にね。」
とろんとした目で答える霧。
望は頷くと霧の頭を撫でて軽いキスをした。そして霧の足を広げさせると絶棒を秘部へとあてがった。
「痛かったらちゃんと言ってくださいね。」
そう言うと望はゆっくりと霧の中へと入っていく。
「んくぅ…はぁ、はぁ」
霧は毛布をギュッと握りしめ痛みをこらえている。望は一旦動きを止めて霧を気遣う。
「大丈夫ですか?」
「…ちょっと痛いけど平気だよ。」
「もう少しで一番痛いのが終わりますからがんばってください…」
「もっと痛いの?…あ、でも平気だよ。先生のだったら平気…」
「わかりました。」
男をまだ受け入れた事のない霧の中は想像した以上に締め付けが強い。
迸る射精感を必死に堪えて奥へと進んでいく。
やがて望は引っかかるものにつき当たったのを感じた。
「小森さん…ここを我慢すれば後は楽になりますから。」
「…うん。」
瞳には不安の色がありありと浮かんでいる。
ここでもたもたしても不安がらせるだけだ、望はそう思いすぐに奥へと進み始める。
「あ…あうぅ!痛っ…はぁ…はぁ、んぅ!」
痛みを和らげようと深呼吸をする。
少しずつ、確実に奥へと侵入していく。そして何かを突き破るような感覚があった。
「ふああぁぁぁん!」
霧が叫び声をあげる。のけぞる霧の体を慈しむ様に抱きしめる望。
「がんばりましたね。もう平気ですよ。もうじきに和らいでくれるはずです…」
「あ…せんせぇ…!せんせぇ…!」
霧は甘える様に頭を望の胸にすり寄せる。
望は自分を受け入れてくれた霧を優しく包み込んだ。暫くして霧がそっと囁いた。
「先生が私の中にいる…なんか暖かい…」
「ええ…今私と小森さんは一つになっているんですよ。」
「先生…また恥ずかしい事言った。」
「え?そうでした?」
意外そうに言う望。自覚というものが全くないらしい。
「そうだよ…先生、動いていいよ…」
「大丈夫ですか?」
「まだズキズキするけど…先生の、なんだか大きくなってる気がするから…」
そういうと霧は自分の下腹部をさする。
「いいのですね?」
「うん…来て…」
159雨があがれば:2007/11/09(金) 01:58:17 ID:Xb+hbnTd
その先に言葉はなかった。ただ互いを無言で求め合い、二人は同時に果てた。
幸い霧は一度達していたため、すぐに痛みよりも快感が勝ったようだ。
二人はその後幸せの余韻に浸りながら浅い眠りにまどろんでいった。
それと同時に雨はすっと引いていき、空は晴れやかな青を広げていった。

「ひょっとしたら私は大変な事をしてしまったんじゃないでしょうか?」
情事の後二人は同じ毛布に包まっていた。
「だいじょうぶだよ。」
「そうだといいんですが…ってすいません。こんなことを言って。」
「いいよ。いつも通りの先生だから。」
「ふぅ、もう少し前向きに生きてみますかね…おや、あれは虹ですね。」
窓の奥を見やると虹が七色のアーチをかけていた。
「きれいだね。」
「そうですね。」
ふと向き合う二人。自然と笑みがこぼれる。
望にもさすがに二人を祝福してくれていると感じたようだ。
160雨があがれば:2007/11/09(金) 02:08:16 ID:Xb+hbnTd
これで終わりです。

430氏の後でびびり上がっておりましたがかまわずやっちゃいました☆

まぁ、山なし落ちなし意味なしですね。
今度機会があったら今度こそ意味アリのSSを書いてみたいと思います。
読んでくださった方々には多大なる感謝。スルーしてくださった方にはその優しさに心打たれる思いです。


あとちょっとした質問なんですけど皆さんがやっている様に
コテつーかレス番を次に書くときにつけたほうがいいんでしょうか?
161名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 02:19:04 ID:PKwrl7eu
>>160
おおおおお待っていたぞ!そしてどうやら待っていた甲斐が十二分にあった!!
GJっ!!GJっ!!!
162名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 02:55:16 ID:kQOT+F4W
>>160
やっとラスト来たか
期待どうり良いssだったぜ!!GJ!!

次投下するときは付けた方がいいと思うよ
163名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 12:54:30 ID:igLaqw0Y
>>160
GJ!!


脳内で谷井ボイスに変換して悶えてた俺はどう見ても変態でs(ry
164名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 15:00:03 ID:fP4dgwSj
たまたま自分も大草さんで書いていてかぶっちゃいました。
とりあえず投下します。
165不貞の愛:2007/11/09(金) 15:01:08 ID:fP4dgwSj
今日も今日とて閑古鳥の鳴く、絶命先生こと糸色命の診療所。
兄の経営するその診療所に、高校教師糸色望は入院していた。
いつものような和服ではなく、パジャマ姿で頭側の角度を上げたベッドに横たわっている。
ずいぶんと気温も下がってきた窓の外の景色を眺め、望は誰にとでもなく呟いた。
「両手骨折で入院してしまいました…」

--両手骨折で入院して大草さんが訪ねてくる--

糸色医院は名前の不吉さゆえに患者の入りには恵まれず、現在望以外に患者は居ない。
今日は、というわけでもなくここ数日である、入院している間ずっとだ。
これで大丈夫なのかと心配にもなるが、おかげで他人に気を遣う必要もない。
むしろずっとこのままであって欲しい、などと思っていた所を不意に命に話しかけられる。
「今、なんか失礼なこと考えてなかったか?」
「いや、そんなまさか、ただ落ち着ける良い所だな、って。」
「やっぱり考えてたんじゃないか…まあいい、お前にお客さんだ。」
命に促されて顔を見せたのは、望の受け持つ2のへの女生徒、大草麻菜実だった。
166不貞の愛:2007/11/09(金) 15:02:03 ID:fP4dgwSj
「これ、みんなからです。」
そう言って、麻菜実はバスケットに盛られたフルーツを差し出した。
「ありがとうございます。そこ、置いといてもらえますか。」
「はいはい。何か剥きましょうか?」
「それじゃあ…梨をお願いします。」

今日、麻菜実は日直だったので代表としてお見舞いに来た、ということらしい。
実は2日前にも大勢で来ていたのだが、命に気を遣って今日は彼女一人だけだった。
しゅりしゅりと慣れた手つきで梨が剥かれていく。
望は綺麗に剥かれていく梨と、麻菜実の手を見つめている。
心の弱い望は、麻菜実の持つ包み込むような雰囲気に呑まれてしまう事がある。
今、彼の頬が緩んでいるのもそのせいだ。
167不貞の愛:2007/11/09(金) 15:03:04 ID:fP4dgwSj
「はい、剥けましたよ。あーんしてください。」
梨を指でつまんで望の口元に差し出す。
「ん…あ、じゃあお言葉に甘えて…」
恥ずかしかったが、手が使えないんだから仕方ありません、と自身に言い聞かせ口を開いた。
実際は単に彼女に甘えたかったからなのだが。
しゃりしゃりと小さな音を立てて梨を食べる。いや、食べさせてもらう。
差し出される麻菜実の綺麗な指と、その柔らかな笑顔を前に、もはや望は骨抜きにされていた。
もし骨折でなければ、嫌だー行かないでー、と帰り際に抱き止めかねないほどにデレデレだ。
しゃりしゃりがぶ。
「いたっ!」
「うあ、すいません!」
状況に酔いすぎていたか、望は麻菜実の指ごと噛んでしまった。
「ふぅ…大丈夫ですよ、気にしないでください。」
噛まれた指を咥えてちゅー、と吸いながら言う。
ただそれだけの事なのだが、自分の噛んだ指を咥える麻菜実に望はドキッとしてしまった。
(か、間接キ…って、中学生ですか私は!?)
168不貞の愛:2007/11/09(金) 15:04:06 ID:fP4dgwSj
馬鹿なことを考えてしまい、恥ずかしくなって望は麻菜実から視線を逸らした。
「すいません…」
今度は二つの意味で謝る。
「もう、いいですってば。」
そう言いながら麻菜実は切った梨の一つを口にした。
申し訳なさそうに顔を背ける望を見つめながら、梨を食べる。
「でも、先生お元気そうでよかったですよ。」
梨を飲みこみ、望にごく普通に話しかけた。
「ッ…な!?」
驚き、望が麻菜実の方を見やると、彼女の手は自分にかかるシーツの上にあった。
ちょうど局部のある位置に乗せられている。
さっきの事でほんの少し反応してしまったが、まさかそれがバレてしまったのだろうか。
困惑する望にいつもの柔らかな笑みを向け、麻菜実はシーツを剥ぎ彼のズボンに手をかけた。
「え!?な、ちょ、ちょっと大草さん!?」
「しー。先生、静かにしないとお兄さんに見つかっちゃいますよ?」
169不貞の愛:2007/11/09(金) 15:05:06 ID:fP4dgwSj
それはまずい、いやでもこのままの状況もまずい、なんにせよまずい。
どうしようどうしよう、逃げれない、腕も動かせない。
「や、やめてください大草さん。ダメです、ダメですってこんなの。」
「悪いようにはしませんから…」
麻菜実の手によって衣服は脱がされ、望の男性器が姿を現した。
少々皮が余り気味のいわゆる仮性包茎、まさか生徒に見られることになろうとは。
「見ないで、見ないでください!っはぁ…!」
ちゅう、と茎の側面にキスをされ反応してしまう。
そんな望に麻菜実は嬉しそうだ。
「ダメです、ダメですよ。私は教師で…あ、あなたは生徒で…」
懸命に口で止めようとするも麻菜実は止まらない、そうですねえ、と適当な相槌をうつだけだ。
茎にキスを、袋にもふにふにと刺激を、抵抗むなしく望の硬さは増していく。
「それに…あなた、旦那さんがいるじゃ…ないですかぁ…」
「ええ…そうですね…」
寂しそうに答えながら、望の余った皮の間に舌を差し入れていく。
170不貞の愛:2007/11/09(金) 15:06:06 ID:fP4dgwSj
「あぁ…はっ…それから…んぅ!」
「はい、剥けましたよ。」
綺麗に剥かれてしまった絶棒を握って、いつもとは少し違う艶の混じった笑みを見せた。
麻菜実のそんな表情に背筋がゾクゾクしている、呼吸は荒く、硬度はさらに増していく。
言葉が出てこない、止めなければならないのに。
何も言えないでいるうちに、麻菜実は次の行動に移る。
すっかり大きくなってしまった絶棒を口に含んだ。
「ん…ふぅ。」
舌が絡みつき、頬の内側に亀頭を押しつけられ、強烈な刺激が望に快感の波を生み出していく。
袋はやわやわと揉まれ、玉をくりくりといじられる、快感を与えることにまるで容赦がない。
望の理性がどんどん溶けていく中、麻菜実は視線を彼の方に向けた。
不意に視線が合う、自身を咥え込み満足そうな表情の麻菜実と。
「大草さん…あ、は…ッ!」
瞬間、絶頂に達した望は大量の白濁液を麻菜実の口内に射精してしまう。
「ふ…じゅるる。」
少し驚いたようだったが、麻菜実はそれをすべて飲み干した。
171不貞の愛:2007/11/09(金) 15:07:08 ID:fP4dgwSj
「ずいぶん溜まってたんですね、先生。」
舌をぴちゃぴちゃと這わせ、絶棒を綺麗にしていく。
「す、すいません…」
「謝らないでくださいよ、いっぱい出してくれて嬉しかったんですから、それに…」
「それに?」
「まだですよ、次は私の番。」
麻菜実はベッドに上がり、望の上に跨るようにして座り込んだ。
今までで一番お互いの顔の距離が近くなり、望の顔が赤くなる。
「ふふ…それじゃ先生、お願いします。」
セーラー服をまくりあげ、ブラを上にずらすと、白く綺麗な胸が露出した。
「えーっと…口で、ですか…?」
「他に動かせる所あるんですか?」
「そう、そうですよね…失礼します…」
そう言って目の前の白い胸の中央に位置するアクセントを口に含んだ。
172不貞の愛:2007/11/09(金) 15:08:05 ID:fP4dgwSj
ちゅうちゅうと乳房を吸う望の頭を愛おしそうに抱き、麻菜実は吐息を漏らす。
「はあ…先生、赤ちゃんみたい。」
(やっぱり言われたぁー!?)
予想通りの流れ、望はさっきからずっとやられっぱなしだ。
ずっと年上であるというのに情けない、仮に両手が無事だとしてもどうなのだろうか。
想像してみたが、やはり勝てる気がしない。
つうと唾液の糸を引かせ、望は唇を麻菜実から離す。
急に胸への愛撫を中断され、自分を見つめる望に麻菜実は不思議そうな顔をする。
(こうなったら全力で甘えにいきます!)
余りに勝ち目のない状況に、望が選んだのはノーガード戦法。
「大草さぁーん。」
目の前の柔らかな丘に顔をうずめてぐりぐりする。
「もう、またですかあ。」
「はああ…柔らかいい…」
仕方なさそうに、よしよしと頭を撫でる麻菜実。
173不貞の愛:2007/11/09(金) 15:09:11 ID:fP4dgwSj
「もしかして、今までもお腹じゃなくてここが良かったんですか?」
「すいません、その通りです…先生ずっとこうしたかったんです。」
「しょうがない先生ですね。でも正直に言ったのでサービスしてあげます。」
ふよん、と望の両頬を柔らかな感触が包む。
二つの胸に挟まれて少し苦しいが、望はたまらなく幸せだった。

充分堪能し、再び麻菜実の胸への愛撫を再開する。
「ん…先生、気持ちいいですけど、もっと強くしてくれますか。」
こくりと上目づかいで頷き、望は麻菜実の乳首に軽く歯を立てた。
挟んだ乳首を舌先で撫でさすり、すりつぶすように歯を擦らせる。
「あっ…いいです…んぅ、もっとお…」
胸とは別の場所で、もう一つ水音がしている。
麻菜実がその指で自身の秘部を慰める音だった。
望からはその様子はよく見えない。
だが、スカートの中に伸びる彼女の指と小さく響く音に望も興奮させられていた。
174不貞の愛:2007/11/09(金) 15:10:10 ID:fP4dgwSj
「さて、それじゃあ。」
するすると、望の下半身の方へと身を下げて、麻菜実は絶棒を前にした位置で止まる。
それを白い指でさわさわと擦りながら、膝を立てる。
「いきますよ。」
ごくっ、と望の喉がなった、彼も今更止まる気はない。
麻菜実がスカートの中に手を入れ、つっと横に動かした。
どうやら望を受け入れるために下着を横にずらしたようだ。そのまま、腰を沈める。
くちゃ、と音をさせながら絶棒は麻菜実の中へすんなりと入っていった。
望は、ただ包まれているだけで息を荒げてしまっている。
「動きますよ。」
水音を立てる二人の接合部から上る感覚が麻菜実に快感を与えていく。
「んぅっ!?…え?」
「…あら?」
予想をはるかに超える強烈な刺激に、望は早くも果ててしまった。あまりの早さにお互い予想外。
175不貞の愛:2007/11/09(金) 15:11:19 ID:fP4dgwSj
「す、すいません…まさかこんなに早いなんて自分でも…」
これが17歳の体に人妻のテクニックのハイブリッド!?と驚嘆する望。
申し訳なさそうに謝る望に微笑みかけ、麻菜実は動きを再開した。
粘り気を増した、グチャグチャという音が麻菜実のスカートの中から聞こえてくる。
隠れて見えない接合部が奏でる卑猥なその音が、余計に望の想像力を掻き立て興奮させる。
(搾り取られる!今日私は搾り取られてしまう!)
明日は大丈夫だろうか、と心配しながらも与えられる快楽に望は溺れていった。


「さあ、帰ってお夕飯作らなきゃ。」
濃厚な行為も終了し、麻菜実は身支度を整える。
「ああ…はい、あの、今日はどうも…ありがとうございました。」
なんと言ったらいいのか、とりあえず感謝の言葉を告げる望、何に対してだろうか。
「それじゃ先生、また学校で。お大事に。」
176不貞の愛:2007/11/09(金) 15:12:15 ID:fP4dgwSj
一人残った病室で望は考える。
今日のことは何だったんだろうか、大草さんはなぜあんなことを?
旦那さんとうまくいってないのだろうか、もしや私のことが?
たとえそうだとしても、教師と生徒、あぁ世間の目が…
旦那さんが乗り込んできて間男教師として…
そもそも美人局という可能性も…
何より兄さんにバレてないかが一番不安です!
でも、それよりなによりともかく
「きもちよかったぁ…」
177名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 15:14:24 ID:fP4dgwSj
以上です。

人妻のテクニックなんて自分の文章力じゃ書けませんよ。
濁した表現で誤魔化してすいません。
178名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 17:41:45 ID:KxM8iY/R
あぁ…僕も両手骨折したいです!どうしたらいいですか!?
179名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 17:56:43 ID:LYNrKNwh
夢がある話ダナ-
18010-478:2007/11/09(金) 18:35:34 ID:Xb+hbnTd
大草さんはエロいですね。ホントにあまえてぇぇ!!

雨があがれば書いたものです。
161−163さんコメントありがとうございます。自分ももちろん谷井ボイスで台詞を考えてましたw

これからは名前をこれで行くことにします。
次があるかが問題ですけどね〜w
181305:2007/11/09(金) 23:43:24 ID:XLwqn+Ko
お疲れ様です。

>>148
読後、しばし考え込んでしまうssでした。
深いのに後味が良い印象です。

・・・氏のエロは、すんなりと入ってくるのがイイですw


>>127
旧姓氏、一旧さんでss書けるのすごかったですが、今回は何ともシビアな展開に・・・・・・
千里、このまま壊れてしまう・・・・・・!?  




えーと、芽留で短編書いてきました。
エロ無しですが、そこはかとなくえっち。・・・かもしれませぬ(ry

では、よろしくお願いします。
182芽留:天は人の下に 下の人作らず:2007/11/09(金) 23:44:22 ID:XLwqn+Ko

ぴろりぱらぴりろら

メール着信 1件 
  音無さん

「? 何だろう? 夏休み中にめずらしいな・・・」
彼はそう呟きながら、読みかけの本を閉じると、メール本文の画面を開いた。

『 母さん オレのあの帽子 どうしたものでせうね? 』

「・・・・・・詩のパロディ? なぜ僕に?」
メール文の意味を測りかね彼は立ち止まった。癖なのか、片目を軽く閉じて小首をかしげ、文面をもう一度読み
直すが、やはりその意図は見えてこないようだった。

ふと、顔を道の先に向けると、並木道の木立に隠れるように自分を見ている人影を見つけた。
春には一面の桜畑となるこの並木は、今は、青々とした葉を茂らせ、その木漏れ日は剥き出しの地面に点々と
光の模様を映し出している。

蝉たちの大合唱に紛れて、再び携帯からメール着信音が鳴った。

『 ええ プールへ行った帰り道で 突然消えたあの帽子ですよ 
  だって いきなり風が吹いてきたから               』

メールを読み終わらないうちに、その小さな人は木立の影から走り去り、並木道を少し走って遠くの木陰にまた
身を隠した。

彼は、少し眉を上げて柔らかい表情を見せると、閉じた本を鞄にしまいゆっくりとその後を追う。
また、携帯が鳴った。

『 そして 取ろうとして ずいぶん骨折りました
  だけど とうとうだめでした            』

その文を読んでいる時、また小柄な少女の姿が走り去るのが視界の隅に映った。小さな頭の両端で括られた長
い二本の髪が揺れていた。

『 向こうからやってくる 若い書生さんの姿が見えました
  あの人なら取ってくれそうです  たしか久藤くんと いいましたか 』

その文を読み終わって、久藤くんは小さく肩をすくめた。
並木道の先には、少し道から外れてそびえ立つ、この辺りで一番大きな桜の木が見えた。


183芽留:天は人の下に 下の人作らず:2007/11/09(金) 23:45:14 ID:XLwqn+Ko


その広がった枝を隠し、一面に広がる緑は時おり吹き抜ける風に揺られ、ざわざわと音を立てている。
緑の中に見える白い麦藁帽子は、ちょうど芽留の身長の倍ほどの高さにあった。
彼女の荷物だろう。青いビニールのトートバッグが根元に置かれており、本人は幹に片手を当てて久藤くんが到
着するのを待っているようだった。

涼しげな、水色のチェックのワンピースとミュール姿で立ち、片手の携帯を操作していた。

『 ここは ひとつ よろしく な 』

久藤くんは携帯を閉じるとポケットにしまいながら、あらためて青い桜の木を見上げ、
「・・・そうだね。これはちょっと、跳ねても届かないかな? 何か、長い棒でもないかな。」

『もう探した 何もねーよ』

すばやく携帯の画面を差し出した芽留に、久藤くんは首を捻って、持っていたカバンを地面に置いた。
そして、姿勢を低く崩し、膝立ちの格好になって芽留を手招きする。

「じゃ、これだ。肩車するよ。音無さん、乗って。」

芽留は一瞬考えたようだったが、すぐに携帯を打ちながら、すたすたと近寄って来た。

『変なトコ 触ったら コロスゾ』

肩をすくめてちょっと笑った久藤くんの背後に回り、ミュールを脱いでゆっくりと肩に足を通す。芽留の足首をしっ
かり掴むと、彼はそっと立ち上がった。

『ニオイ 嗅いだり すんなよ』
「ん? 大丈夫だよ。プールの塩素の匂いは抜けてる。・・・いい香りしかしないよ音無さん。」
『そーいう意味じゃねーよ! タコ!』

目を吊り上げて目前に差し出した芽留の携帯を、久藤くんはスッと手に取る。
携帯が手から離れ、驚いた顔をした芽留に言い聞かせるような口調で、

「だめだよ、片手じゃ危ないから。僕が持っておくよ。」

そう言って、自分のポケットに芽留の携帯を畳んで入れた。
芽留は泡をくったように、しばらくおろおろしていたが、不本意そうな顔で上を向き、帽子の位置を確かめる。
手を一杯に伸ばそうとするが、あと腕一本くらいの高さで届かないようだった。

「・・・・・・うー・・・・・・・・・」

困った顔をして小さく唸っていたが、やがて両手を久藤くんの頭に置いてしっかり掴むと、足をそろそろ抜いてゆ
っくりと彼の肩を踏みしめる。

「音無さん! 危ないよ!」

芽留の動作に気が付き久藤くんは声を上げるが、芽留は耳を貸さない様子で、片手で近くの枝を掴み、彼の肩
の上にふらふらと立ち上がった。
芽留が掴んで揺れた枝に驚いた蝉が、一匹、短く鳴いて逃げていった。
184芽留:天は人の下に 下の人作らず:2007/11/09(金) 23:45:59 ID:XLwqn+Ko

「音無さん、気をつけて・・・・・・」

心配そうな声で上を向いた久藤くんの動きがそこで固まった。

芽留は空いている片手で、今しも帽子を掴む所で、まったく気が付いていない様子だが、そよぐ風が二本の垂ら
した髪をなびかせる傍ら、薄手のワンピースの中に入り込んで大きく膨らみ、筒状の服を通して襟首の穴から芽
留の顔が見える状態になっていた。
「あー・・・・・・・・・」
当然、普通なら服で隠されている部分は、彼の視界に全て納まっている状態で、ちょっと気の抜けた様な声を出
しながら、それでも彼は目をそらさず眺め続けている。

帽子を桜の木から取り返し、踏み台になっている久藤くんに笑いかけようと首を下に向け、

二人の目が合った。

一瞬の間があり、芽留の顔が朱色に染まり、怒りとも恥じらいとも取れる表情で大きく暴れ、

「わ!」
「・・・ぃ・・・!」

即座にバランスを崩し、芽留は足を踏み外す。
同時に体勢を崩した久藤くんだったが、仰向けに尻餅をつきながら、とっさに両手を差し出して落ちてきた芽留
を受け止める。



久藤くんを下敷きにする形で二人は折り重なって倒れていた。
「・・・音無さん? 大丈夫?」
落ちた時のショックからか、目を回している芽留を抱き起こして軽く揺さぶると、芽留はすぐに気が付いた。

素早く立ち上がって幹の向こう側に隠れようとしたが、その手に携帯を持っていない事を思い出し、おろおろと両
手を漂わせて久藤くんの方をうかがっている。
その芽留の様子に気が付き、彼はポケットから芽留の携帯を取り出して笑いながら差し出す。

おずおずとした動作で携帯を受け取ると、芽留は ささっ と身を隠し、一拍置いて幹から携帯の画面だけを差
し出した。

『 見たな!?  どこまで見た!? 』

「ん? うーん・・・・・・・・・  全部かな?」

事も無げに言った久藤くんの返事に、芽留の手から携帯が ぽろり と落ちた。
慌てて拾い上げ、

『さらりというな!』
『ってゆーか 目を逸らすだろ フツー!?』
『タダ見しやがって! 金払え!』
185芽留:天は人の下に 下の人作らず:2007/11/09(金) 23:46:56 ID:XLwqn+Ko

続けざまに非難の言葉を見せる芽留に、久藤くんはちょっと首をかしげながら微笑んだ。

「ごめんごめん。じゃあ、何か、冷たいものでも食べに行くのはどうかな? 今日は、暑いからね。・・・どう?」

『・・・・・・ モノ次第で 手をうってやる』

芽留は、幹の端から顔を半分覗かせ久藤くんの顔を見ている。
久藤くんは、少し考えると口を開いた。

「・・・・・・トコロテンとかは?」
『何でだ  もっと甘いモノにしろ』
「じゃ、とりあえず甘味処に行こうか。」

立ちあがり、ズボンについた汚れを払いながら言って、カバンを手に取った。
芽留は木陰から出ると、彼の目の前に携帯の画面を突き付けた。

『ゼッテ−に 誰にも言うなよ!』

久藤くんは小首をかしげる。

「・・・グンゼの事かな?」
『コロス!!  って、オレのはグンゼじゃねーよ!  テキト−な事言うな!』
「ごめん、ごめん。見なかった事にするよ。ね?」
『本当に分かってんのか!?』

芽留はまだ不満そうだったが、とりあえず帽子を頭に載せ、横に並んで歩き出した。


久藤くんは前を向いたまま、しばらく黙って歩いていたが、やがて芽留に顔を向け、

「そうそう、音無さん―――」

話しかけられ振り向いた芽留に、

「・・・『帽子と鬼ごっこした女の子』。 ―――それは、とても暑い夏休みのことでした・・・・・・」

『 コ ロ ス !!』


携帯をかざして追いかける芽留と、笑いながら早歩きで逃げる久藤くんの姿は遠ざかり、
やがて二人は見えなくなり、辺りには再び、蝉の合唱が再開されていた。




186305:2007/11/09(金) 23:50:46 ID:XLwqn+Ko
おそまつでした。

最近思った事・・・・・・
私は、ここの所、奈美より芽留に片寄ってルー!?

そんな、秋の夜長w


では、また。 礼。
187名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 00:01:36 ID:yIZgcGFL
なんという豊作…やっぱ、このスレは凄いわ。
>>186
GJ!!
久藤くんの天然ぶりがよく現れていますねw。
しかし、芽留の最初のメール……イカス。
188名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 01:30:15 ID:KpvwxohZ
なんか本当に豊作ですね。
皆さんのSS , GJです。
189名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 19:38:39 ID:j8tHi6Ji
>>181様、芽留と久藤くんとゆう組合せでSS書けるの貴方も凄いですよ!
微笑ましいSSの後に悪いんですがヤンデレな神が支配するの中編を投下します
前編読んで心を痛めた方、中編は色んな意味で痛みます

まだ繋ぎなので倫の出番はしばしお待ちを
190ヤンデレな神が支配する 中編壱/八:2007/11/10(土) 19:40:42 ID:j8tHi6Ji
―千里が登校したのはあれから数週間後だった

いつも通り前髪は綺麗に真ん中分けされ髪も朝からセットしたのか真っ直ぐストレート
でも釣り上がらない眉と力ない眼はまだ傷が癒えていない事を物語っていた

「千里ちゃんおっはよ〜♪久しぶりだねもう大丈夫なの?」

拍子抜けする程明るく第一声をかけてきたのは風浦可符香だった

「・・うん、もう大丈夫よ。・・・・」

精一杯の微笑みで返事すると満面の笑顔を浮かべるポジティブ少女
あの日憎い一旧と何かを話していた気がするが
今はこのなごむ笑顔だけで充分だ

「ち・・千里・・・・・もし気分が悪くなったら早退しても良いんだよ?」

「・・ありがと晴美・・」

唯一事情を知るだけにそっと気遣ってくれた親友に感謝するとカバンを開けて教科書と筆記用具を出した

あぁ私は2のへに戻って来たんだな
糸色先生の顔を見る事が出来るんだろうか?


そうこうしている間にチャイムが鳴り
想うだけで胸が締め付けられるその人はいつも通り教壇に立った
191ヤンデレな神が支配する 中編弐/八:2007/11/10(土) 19:43:49 ID:j8tHi6Ji
「さて皆さん、
今日もまた中央線が止まりましたね
別に深い意味はありません」

朝っぱらからいつも通りネガティブな挨拶をすますと望は千里に気がついた

「木津さん、
今日は来てくれましたか几帳面な貴女が長い事休んで先生心配してたんですよ?」

彼が心配してくれていたのは知っている
家に何度も電話してくれたし直々に家庭訪問もしてくれた
でも電話に出る勇気はなかったし
会えばどんな顔すれば良いかわからなかった

今も眼を合わす事すら出来ないのだから・・・・・

「どうしました、まだ本調子ではないんですか?」

「・・いえ、大丈夫です・・・・・」


そう答えながらも声にはいつもの気丈さはなかった
少し心配しつつも
望は授業が始まり自分が何かきちんとしてない事をすればいつもの気の強い彼女に戻るだろう
その時はそう考えていた

「では授業を初めますよ
教科書の三十八ページを開いて下さいドフトエススキーの罪と罰の続きです」
192ヤンデレな神が支配する 中編参/八:2007/11/10(土) 19:46:54 ID:j8tHi6Ji
いつもの通りタイトルと著者名を黒板に書いていくとある事に気がついた

「おっとドストエフスキーなのに今までドフトエススキーって思って書いていました
今まで気がつきませんでしたよ〜ハハハ」


だがいつもの声が聞こえない
いつもなら千里が
「ハハハじゃありません!国語の教師なのにロシアの文豪の名前を間違えていたなんて!」

と指摘してくるはず
だが今日は何も聞こえない
彼女をチラリと見ても教科書を眺めているだけ

きっちり平等な共産主義運動が広がりつつあるロシアで犯される殺人
これほど千里が食いつきそうな話はないのに・・・・・

「ハハハ木津さん、ロシア作家の名前て覚え辛いですね」

「・・そうですね・・・」

名指しでふってもそっけなく流された
望は首をかしげたが
千里は指摘出来ない程
罪と罰の主人公に感情移入していた

「私も大地に接吻し、
世界の人々に罪を叫べばラスコーリニコフみたく救われるんだろうか・・・・・」


自分は何もないのに責任を取れと先生を脅迫し
何もない事を教えた者を殺害し
何もなかった苦しみで勝手に休み
益々先生に迷惑をかけているのだから
193ヤンデレな神が支配する 中編四/八:2007/11/10(土) 19:54:40 ID:j8tHi6Ji
するとカエレが金髪を振り乱し指摘とゆうより抗議を始めた

「先生!生徒に間違った名前を教えていたなんてゆゆしき事です
訴えてやる!!」


「ちょ、木村さん間違えた事に気がついたし良いじゃないですか・・」

「先生、私もソーニャの様に流刑地にまでついていきます」


「先生似合うでしょうねえ〜シベリアに る け い♪」


「ちょ常月さん風浦さん!絶望した!
有罪になった前提で話を進められる自分に絶望した!」

「そうよ、先生流刑になったら担任誰になるのよ〜」

「日塔さんは相変わらず普通な意見ですね」


「普通って言うなーッ!」

ネガティブ教師と癖者女生徒によって授業はいつも通り馬鹿騒ぎとなってゆく
晴美は呆れ気味に口を開いた

「またはじまっちゃった
千里これじゃ授業進まないね〜」

「・・私には関係ないわよ・・・・・」

いつも真っ先にこの騒ぎに抗議するはずなのに
千里は入っていかなかった

関係ないはず
なのにその心の傷口は塩を塗られたかの様に疼きはじめていた
194ヤンデレな神が支配する 中編伍/八:2007/11/10(土) 19:58:39 ID:j8tHi6Ji
傷?そんな傷つく事はないじゃないか
きちんと生理も来たし
良い成績を取れているし自分を理解してくれる親友もいる
そして楽しい高校生活を送らせてくれるみんながいるじゃないか・・・


「先生、テールスープが美味しい店見つけたんですよ一緒にいきましょう」

「先生!恩着せ強盗なんて言わずに今日こそクッキー食べて下さいよ〜」

「先生、夫が最近相手してくれないんです」


「ちょ先生は一人なんですよ?一辺に言わないで下さいよハハハ」


一番猛烈にアプローチする千里が久しぶりに学校に来てもおとなしい事をチャンスとばかりに女生徒たちは先生に迫ってゆく

だがおとなしい理由を痛い程知っている晴美は参加せず
苦しむ千里を見てるだけで自分の胸も切り裂かれる様な気持ちだった

「千里大丈夫?前髪が乱れてるよ・・」

「・・ぅうぅう・・」


先生は皆に迫られて楽しそう
私といる時はあんな顔してくれないのに
私はやっかいさんでしかないの?
三珠さんの暴力は証拠過多とか言って信じないのに
みんなや智恵先生との恋愛はアリアリで私だけ
「それはない」
あの殺し足りない程憎い一旧でさえアリアリでも私だけは・・私だけは・・・・・・
195ヤンデレな神が支配する 中編六/八:2007/11/10(土) 20:02:03 ID:j8tHi6Ji
もう張り裂ける心を繋ぎ止めてくれる絆はない

そして千里の脳裏にある一つの答えが浮かんだ


授業も終わりのHRの時間となった

「こうゆうのやっぱ千里ちゃんじゃないと務まらないよね〜」

「そうね、いるのかいないのかわからない委員長よりずっと頼りになるし」

「そんな!僕がいるかいないかだわからないなんて!!」

普通少女も包帯少女も先生に指摘しなくてもホームルームだけはきっちりやってくれる物だと思っている

千里もそれを察したのかそっと立ち上がった


「出来る千里?無理しなくていいのよ」

何も答えず幽霊の様に教壇に向かう千里の姿に晴美は再び凄く嫌な予感がしていた

カツカツッカッ

千里は無言のまま黒板に何処かで見た事のあるアフルァベット二文字と漢字一文字を書くと振り向きざまに口を開いた


「これから皆さんには、
殺しあっていただきます。
このクラスに女生徒は
一人で充分、
殺しあって下さい。」


切なく狂おしい苦痛の中で千里が導き出した答え
それはあの憎い憎い一旧の如く自分を嬉々として苦しめ続けるみんなを
抹殺する事だった。
196ヤンデレな神が支配する 中編七/八:2007/11/10(土) 20:05:48 ID:j8tHi6Ji
いたいげな少年少女達に殺戮を強制させるあの映画の様な事を言い始めた千里に2のへはどよめきはじめた


「そんな事したら経験豊富な千里ちゃんの圧勝じゃない!」


だが魚の様に冷たい眼をしはじめた千里に理屈が通じるはずはない


「いや・・・・、
女生徒どころかこの学校には人間が多すぎます!間引きしなくては・・・・ゲームスタート!!」

「いやあああああああああああああああ!!!!!!」

スコップを何処からともなく取り出した事により生徒たちは悲鳴を上げ逃げ惑う
だが一人猟奇に走る千里に怯まない女生徒が


「久しぶりに来たと思ったらまた猟奇!?訴えてやる!!」


木村カエレだ


「訴える?すると私は警察に捕まるのかしら?」


「そうよ今警察に通報するわよ!!」


カエレは千里によく見える様に携帯電話を取り出す
大抵の者ならこれだけで怯むはず
だが千里は邪々しい笑みを浮かべた


「警察、呼んでみなさいよ
そんなの全員纏めて殴殺してやる!!」


最初ダムで沈む村とゆう最適な埋葬スポットを見つけたもののうっかりスコップを置き忘れ警察が学校まで来た事があった
だがすぐにパトカーから脱走し刑事は始末したのだ
197ヤンデレな神が支配する 中編八/八:2007/11/10(土) 20:08:16 ID:j8tHi6Ji
国家権力さえ物ともしない態度にカエレの方が戸惑いはじめる

バキイィ!

鈍い音を響かせ千里はあの刑事の様にスコップで殴打しカエレの大きな体は床に伏せた
すると腰を抜かした太った女生徒が涙を浮かべて言い放った


「ネットアイドルに乱暴すとファンが黙ってないよ!」
「じゃあそのファンごと殺してあげる!
てか地球の毒たる人類そのものごと殺してデトックスしてあげる!!!」

ザクウッ!

震えることのんの肉厚な体にスコップを深々と突き刺すとドスンと崩れ落ちる

二人の女生徒が地に伏せた中
男子生徒たちは男のプライドなど忘れて女生徒以上に情けなく怯えていた

「ひ、ひどい・・・・・」

存在感も頭も薄い臼井はただ呆然と立ち尽くした

「三次元のヤンデレ妹は嫌だーーーッ!!!」

硬派オタクなはずの万世橋は泣きわめいた

そして天才ストーリーテラー少年の久藤は以前映画の本で見掛けた恐ろしい記述を口にした


「一人殺せば殺人者

百人殺せば英雄となり

全人類を殺せば神となる

彼女はその神になろうとしているとでも言うのか?」
198あとがき:2007/11/10(土) 20:11:37 ID:j8tHi6Ji
百合板では千里の暴走をコミカルに書いたので
今回はシリアスに書いてみました

後編はやはり凄惨度アップです、
ではまた
199名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 00:09:11 ID:7sg9eIDg
GJ!
うーむ、ここまで来ると千里にも同情の余地がないというかw
彼女はどこまで突っ走っていくのだろうか
200名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 00:35:31 ID:V9tq4VvC
>>180
三度の飯より霧が好きな私にとってはあなたは神に等しい存在。
次は霧以外でも楽しみに待っております

>>186
芽留のメールのセンスのなんと素晴らしいことか!
久藤君に子供の相手をさせるのはいいですな〜

>>198
こ、怖い…既に3人死亡じゃ千里に救いなんて…
なにより恐ろしいのは極限状態で冷静な発言をする久藤君ですが…
いや彼なりにテンパっているからこそなのか…


さて当方、先程述べた通り重度の霧信者にして霧厨であります。
そんな人間が書く文章なので、どうも気持ち悪いものになってしまいます。
よって大作の後に出し、日陰者なろうと思います。
つまりスルー推奨

では、投下いきます
201だめんずは彼女のほうもダメなのです 1/14:2007/11/11(日) 00:37:47 ID:V9tq4VvC
「ようやく新居が見つかったんですよ」

何気ない望の言葉に、霧はピタリと箸を止める。
始まりは宿直室。交は当番制で他の女子の家に居るため、二人で食卓を囲んでいる時だった。

「中々いい物件なんですが、安く借りることが出来ました。
急ですが、明日にでも引っ越しの準備をして、明後日にもここを出ようかと思います。」
「へー。そうなんだ…良かったね、先生。」

平静を装い、笑顔を作り、再び箸を進める霧。
言葉の裏の僅かな動揺を、望は気付かない。

「ええ。これでもう小森さんに迷惑をかけずに済みそうです」
「そんな、迷惑だなんて…。私どーせヒマだし家の中のことは好きだし…」
「しかし、いつまでも生徒である貴女に甘えているわけには行きませんから…」

『生徒』
その言葉が鉛のように霧の中に落ち込んで行く。

「小森さん、今までありがとうございました。」
「そんな、先生。いいよ御礼なんて…」

頭を下げる望。
彼に今の霧の表情など見えていない…
202だめんずは彼女のほうもダメなのです 2/14:2007/11/11(日) 00:38:29 ID:V9tq4VvC



夜。
食事の後片付けをし、自分の部屋へと戻った霧は、
テレビを見る気にも、そのまま寝る気にもなれず、じっと窓の外を見ていた。

楽しかった時間がもうすぐ終わってしまう。
望が引っ越せば、以前と同じ退屈な日常が戻って来るだろう。

些細な義務感から始めたことだった。
まるで夫婦みたいだ、なんて馬鹿なことを思ったりもした。
望との距離が、少しずつ縮まっているという自信があった。

「…本当に…?」

そんなこと、ない。
あの人にとって私は、他の皆と同じ…結局ただの生徒の一人でしかない。
自分が、恥ずかしくて堪らない。

「私…今まで何してたんだろ…」
203だめんずは彼女のほうもダメなのです 3/14:2007/11/11(日) 00:39:07 ID:V9tq4VvC
思い返すは糸色家であった『見合いの儀』
あの時先生に拒絶されてから…
もうそんな思いをするのが嫌で、他の皆みたいに積極的になるのが怖くなった。
元々自分の殻に篭っていただけの臆病者。先生のことが好きになって、場所を変えたけど、それだけだった。
私がしたのはずっと守っていることだけ。
『距離が縮まっている』だなんて、思い上がりもいい所だ。結局先生が宿直室を出て行ったら、またゼロに戻るだけ。
朝、目が覚めたように、何事もなかったみたいにいつもの日常が始まるだけ…
そう、夢だったんだ。楽しいけど、現実には何も影響なんてない。
ただの楽しいだけの、幻…







その夜は殆ど眠れなかった霧は、翌日大失敗をしてしまった。
朝、いつも通りに起き、望の朝食を作ったまではよかったのだが、
眠気が襲い、自分の部屋で仮眠を取ろうとして、目が覚めたら…

「うそ…」

窓の外は赤く染まっていた。

情けなさすぎる自分に泣きそうになりながら、慌てて宿直室へと急ぐ。
到着すると、望は外套を羽織り、外出する準備をしていた。
204だめんずは彼女のほうもダメなのです 4/14:2007/11/11(日) 00:40:11 ID:V9tq4VvC
「先生…?」

今日は準備だけだと聞いていたのに、もう行ってしまうのかと焦る霧

「ああ、小森さん」

望は霧に気付き振り向く。
「実は急に出張が入ってしまって…今日は向こうに泊まるので夕食は用意しなくていいです。
後、終わったら直接新居の方へ行きますので」
「あ…そうなんだ…」
「すみません…っと、電車の時間が…それでは!」

靴を履き、鞄を手に慌てて駆け出す望。
霧はその背中を黙って見守っていた。

「……」

宿直室の扉を開け、中に入ると、その様子が様変わりしていることに気付く。
部屋にある物で、望の私物は全て、昼間のうちに新居へと運ばれていったのだ。

「…あぁ…」

力が抜けていくのを感じ、その場にへたり込む。

「夢、もう終わっちゃった…」
205だめんずは彼女のほうもダメなのです 5/13:2007/11/11(日) 00:41:44 ID:V9tq4VvC



夜。
料理をする気にもなれず、冷凍庫の中に残っていた冷凍のパスタを温めた。

フォークで巻き取った麺を何度か口に運ぶも、全く食は進まない。
一人での食事がこんなに寂しいと感じたのは、今までで初めてだった。
…嗚呼、夢から覚めたからといって、全てが元通りになるわけではなかったのだ…

戻れない。
自分以外の全ての人間を遠ざけていた頃は言うに及ばず、
放課後の誰もいない校内で一人で過ごしていた頃にさえ、もう戻れなくなっている。

「…っ…」

ここに来て初めて涙が溢れ出す。
襲い来るのはどうしようもない自己嫌悪。

「…、なんで…どうして私…」

どうしていつもこうなのだろうか…
最後に見た望の背中にさえ、何の声もかけられなかった。
自分が情けなくて、恥ずかしくて、憎かった。
この後に及んで見苦しいと、
解っていながらそれでも、言わずにはいられない自分が…

「…かえってきてよ…せんせぇ…」
206だめんずは彼女のほうもダメなのです 6/13:2007/11/11(日) 00:42:49 ID:V9tq4VvC



目を開けると、世界が横倒しになっていた。

「…あ…」

泣き疲れて眠ってしまったのか、床に寝転がっていた。
気付けばもう窓から朝日が差し込んでいる。
ちゃぶ台の上にはあまり手をつけなかったパスタがそのまま残っていた。
たった一晩だが、もう食べられないだろう。
生ゴミとして捨て、皿を洗った。

宿直室は家が放火された望が、学校側からの特別なはからいで借り受けていたものである。
望が引っ越してしまった以上、生徒である自分がいつまでも居ていい場所ではない。
にも関わらず、出ていく気にはなれなかった。
そのまま朝食も取らずに床に寝転がる。

ここに居たかった。
まだ夢の残り香があるうちは出ていく気になんて、なれない。
207だめんずは彼女のほうもダメなのです 7/13:2007/11/11(日) 00:44:23 ID:V9tq4VvC
何時間経っただろうか。
廃人のようにただ床に横たわっていた霧は体を起こす。
足音が聞こえたからだ。
この部屋に誰かが近づいてくる。新しい宿直当番だろうか?
だとしたら、もう出ていかなければならない。無理に居座っても追い出されるだけだ。
それにこんな姿、誰にも見らたれくない。
立ち上がり、扉を開く。後は自分の部屋へと一直線。
しかし彼女は見てしまった。
足が止まる。呼吸が止まる。
もうここへは戻らないと思っていた人の姿が今、そこにあった。


「おや、小森さん。」
「せ、先生?どうして…」

霧は舞い上がりそうになっていた自分を必死になって抑えた。
話が出来すぎている。こういう場合は大抵ぬか喜びに終わるものだ。

「それが、まあ色々ありまして…とりあえず中に入ってもいいですか?」
頭を掻きながら苦笑する望。

「う、うん」
208だめんずは彼女のほうもダメなのです 8/13:2007/11/11(日) 00:45:42 ID:V9tq4VvC



「それで、どうしたの?先生」

茶を二人分淹れ、ちゃぶ台の前に座る望に一つ差し出し、自身もまた一つ取って対面に座る。

「それがですね…」

望は昨日出て行ってからの出来事を語り出した。

駅まで行こうと乗ったタクシーの運転手が定年で最後の仕事だったので海まで付き合ったり、
夕食をとったレストランで見ず知らずの他人の誕生会に巻き込まれたり、
宿泊したホテルで新成人を祝うイベントに巻き込まれたり、
顔がおかしなカップルの喧嘩に巻き込まれ不良扱いされたり…

その他にも尽く他人のドラマに巻き込まれてしまったのである。
そして荷ほどきに行った新居も例外ではなく、
そこは変死したカリスマ的ロッカーOZEKIの聖地として、ファンの交流の場となっていたのだった。

「あれではとても静に暮らせませんよ…ファンの方々の聖地に居座るのも何だか悪い気がしますし…」

ちなみに交はOZEKIファンと仲良くなり延々と語り合っているという。
209だめんずは彼女のほうもダメなのです 9/13:2007/11/11(日) 00:46:47 ID:V9tq4VvC
「まあ、そんな訳ですので…また暫くはここに住ませてもら…って小森さん!?」

「…っ…、ぁっ…」

いつのまにか霧の眼からは大粒の涙が流れ落ちていた。

「ちょっ!OZEKIの話はそんなに感動的でしたか!?
いえ、じゃなくて、先生が戻って来たのがいけないんですね!すみません!!」

そう言って、慌てて立ち去ろうとする望。

「ダメ!待…っ…待って!ちが…違うの…っ!」

霧は袴を掴みその足にしがみついた。

「え?えぇ!?ちょっ…小森さん!?」

困惑する望。霧は袴に顔をうずめて鳴咽を漏らす。

「こ、こういう場合はどうすれば…」

慌てふためく望を置いて、霧はただ泣き続けた。




「落ち着きましたか…?」

ようやく泣きやんだ霧の顔を覗き込むと、彼女は望と眼が会ったことで顔を真っ赤にし、うつむいてしまった。
その拍子に、長い前髪で表情が隠れる。

「それで、一体どうしたのです?」
「え、あの…その…」

ようやく頭が冷え、冷静な思考が戻る。霧は再び自らを恥じた。
先生が戻るのが嬉しいからと、感情に任せて泣き付くなんて、なんて短慮だったんだろう。
理由なんて恥ずかしくて言える訳が無い。
210だめんずは彼女のほうもダメなのです 10/13:2007/11/11(日) 00:47:57 ID:V9tq4VvC
「何でも、ないよ…先生。お腹空いたでしょ?待ってて。今何か作るから」
「えぇ?ちょっ…」

慌てて声をかけるも霧はすでに台所に入ってしまっていた。

「これは…まいりましたね…」

しかし望も一応教師であり、霧が自分に好意を抱いているということも知っている。
そのために、涙の理由も何となく察しがついた。
(まさかたった一晩であんなことになるとは…元々引きこもりの割に攻撃的な娘でしたし、あまりストレスを溜めすぎたら…)

望は、始めて霧と会った日のことを思い出し、身震いする。
あの少女は、あんな華奢な腕にもかかわらずテレビを投げ、一撃のもとに板張りしたドアを粉砕したのだ…

「か、考えないことにしましょう」

望は頭を振って浮かび上がってくる最悪のシナリオを消し去った。
ヤンデレなやっかいさんは一人で充分迷惑なのだ…
211だめんずは彼女のほうもダメなのです 11/13:2007/11/11(日) 00:49:04 ID:V9tq4VvC



早く作れるもの、ということで霧は炒飯を選んだ。
これなら、部屋に置き忘れたDSも使わずに何とか作れる。

「あの、味つけ大丈夫かな…?」

しかしやはり不安は残る。
味見はしたが、もし変だったらどうしよう…?

「ふむ、大丈夫。ちゃんとおいしいですよ。」

一口食べて笑顔になる望を見て、ようやく安心することができた。
霧も自分の分の炒飯を食べ始める。

(…ああ、やっぱり…)

昨日感じた寂しさはもはや完全に消えて失せていた。心には再び温かい火が燈っている。
…でも、と霧はスプーンを止める。
これはまた夢を見始めただけ。ただの夢の続きにすぎないのだ。
……変わる必要がある。一歩、距離を縮めるための一歩が必要だ。
212だめんずは彼女のほうもダメなのです 12/13:2007/11/11(日) 00:49:55 ID:V9tq4VvC
「ねえ、先生。」

半分ほど食べ終わった所で切り出す。

「何ですか?小森さん」

「私…今日からここで寝てもいいかな?」
「ぶはっ!」

予想外の一言に飲もうとしていた水を吹き出しそうになる望。

「い、いきなり何を言い出すんですかあなたは!?」
「だって、家事するのに一々部屋を移動するの大変だし…私の部屋エアコンもこたつも無いし…」
「だ、だからと言って…いくらなんでも教師と生徒が同じ部屋で暮らすというのは…」
「駄目…かな?」

俯く霧。再び前髪によって隠れた顔に、望は再び、あの最初に会った日を思い出す。

(て、テレビで頭をかち割られるのは嫌だ…!)

しかしいくらなんでも一緒に暮らすのは教師として本当にマズすぎる。
そして悩んだ末、一つ妥協点を見つける。
213だめんずは彼女のほうもダメなのです 13/13:2007/11/11(日) 00:51:03 ID:V9tq4VvC
「で、では…小森さんが交当番の時だけ…というのはどうでしょう?」
「…!」

霧の顔がぱっと明るくなる。
言ってはみたものの、答えはイチかゼロか、そのどちらかしかないと思っていた。そして帰ってくる答えは十中八九ゼロだ、とも。
しかし望が提案したのはゼロではなかった。これほど嬉しいことはない。

「うん!じゃあ、それでいい」

今思うと踏み出した一歩はとんでもない大ジャンプだったかもしれない。でももうどうでもいい。
夢なんかじゃない。ようやく確実に距離を縮められた感触。それは今までで一番嬉しいことだったから。


…一方望は…
(絶望した!きっぱり断れない自分に絶望した!!
…いえ、小森さんがヤンデレになってしまうよりはマシだと考えるのです!)

言ったことを少し後悔しつつ、なるべく自分に可能な限りポジティブに考えるよう、思考の海に沈む。


だが…彼は気付いていない。
扉の外でストーカーの持つ包丁がキラリと煌めいたことに…
窓の外の釣り目の少女が持つチャッカマンが淡い火を吹いていることに…
ヤンデレ予備軍は一人だけではないのだ…
望の苦悩の物語はまだ続く。
214名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 00:54:03 ID:uR1Qpskz
>>201
かなり良かった。まとまっていて、ちゃんと原作の雰囲気が生きている。
オチがいいな。
215あとがき:2007/11/11(日) 00:54:12 ID:V9tq4VvC
あああああ!!!!エロ無しって書き忘れた!!!
ごめんなさい!ごめんなさい!!
途中まで最大レス数間違ってました!!ごめんなさい!
長すぎでした!ごめんなさい!!


スルーして下さった方々ありがとうございます
読んで下さった方々、ありがとうございます
へんな文章ですみませんでした。
不自然な部分は不自然保護してくださると助かります。
216名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 02:53:47 ID:5gmuJKY3
イイヨ〜!イイヨ〜!次も期待してますよ!
217名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 03:46:37 ID:Bkw0eGMx
>>215
やぁ、俺も霧厨だ。
霧可愛いなぁ…。本当に可愛いなぁ…!
次の投下が楽しみだよ。
218名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 16:45:15 ID:uIvuTmRp
エロが無くても問題ないぜ
良かったよ
219名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 23:06:32 ID:qYZrBYYL
『高値舟』


望「絶望した!
 オチのないこの漫画に絶望した!」
あびる「出オチ?」
マ太郎「オチてナイヨ」
倫「もはや二段底どころか、底なしですわお兄様」

望「――と、いつまでもオチがない底なしも怖いのですが――
 本当に怖いのは、青天井なのですよ!」

奈美「青天井?」
望「物事の上限が一切無くなって、延々と上がっていくことです
 無制限インフレともいいます」
奈美「そういや最近物価高だったっけ
 でも、それがそんなに怖いんですか?」

大草「物価高をナメちゃいけませんよ・・・」
望「大草さん」
大草「ちょっとでも値上げされても、その月の家計には物凄い負担になるんです
 かつての石油危機では、物価高と品薄でチリ紙買うのに命がけの争いが起こったそうです
 第一次大戦後のドイツにいたっては、トランク一杯の札束で買えるのがたったコーヒー一杯ですよ!」
奈美「それはまた極端な例を・・・」

大草「絶望した!
 家計を圧迫するインフレーションに絶望した!」
望「それ私のセリフ・・・
 でもあなたが言うと重みが違います」
220名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 23:11:11 ID:qYZrBYYL

藤吉「確かにインフレって怖いですよね」
望「今度はあなたですか」
藤吉「私が昔好きだった漫画の話なんですが・・・
 どの漫画も主人公の強さが、最初は素手で石の床を割る程度だったんですよ」
望「それでも十分強いと思いますが・・・」
藤吉「それが、話が進むにつれて、超高速で移動したり、空飛んだり、 
 変身したり、ブロンズ銀金とランクが上がって冥界までいったり
 挙げ句の果てには全裸で宇宙遊泳ですよ!」

藤吉「強さだけじゃありません!
 どの漫画も話が進めば、いろいろインフレするのです!」

●あの漫画の女性キャラの体型
●あの漫画のギャンブルの進行速度
●あの漫画の美形男キャラの比率
●あのアニメの次回予告のテンションの高さ
●あの漫画の休載の確率
●あの漫画の猟奇オチの確率


千里「ちょっと、いい加減にしなさいよ。
 インフレだデフレだ、勝手に上げ下げしないでよ!いらいらする!
 きっちり一定に保ちなさい!」
221名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 23:20:08 ID:qYZrBYYL

可符香「別にいいじゃない千里ちゃん
 たとえインフレしたって、ものの価値はほとんど変わらないわよ」
千里「どういうこと?」
可符香「つまり、たとえ天井が際限無く上がっていっても、
その時は床も同じように上がっていくから、相対的には変わらなくなるの!
 さっきのドイツの例では、たとえコーヒーの値段が急騰しても、
 給料も同時に上がって、月給の札束で塀ができるくらいもらえたらしいわ!」

望「ま・・・また訳のわからないことを
 それじゃあその理屈なら、例えばテストでクラスの最高点者がさらに上がれば、
 最低点者も点が上がって偏差値は変わらなくなるというのですか!」
可符香「うーん、そうなりますかね・・・」

千里「・・・なるほど、よくわかったわ。」
藤吉「ち・・・千里?」
千里「つまり、クラスのトップレベルをさらに上げれば、
 下位レベルは労せずして上がれるのね・・・」
芽留「・・・・・・!!
 めるめる『奴か?やる気ならオレも手を貸すぜ!』」
222名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 23:29:08 ID:qYZrBYYL

カエレ「ちょっと!やめなさいよ!離しなさい!」
千里「駄目。さあ、飲んで。」
カエレ「そんな生臭いの、飲めるわけないじゃない!
 ちょっと!どこ触ってんのよ!訴えるわよ!」
芽留「めるめる『暴れるんじゃねーよパンツ係』」
千里「生臭くても我慢なさい。 さあ、この白いのをゴックンなさい。
 それと動かないで。マッサージできないでしょ。」
カエレ「だから胸触んなよ! 嫌だっつってるでしょ!
 そこ!携帯震えさせてそんなとこにあてるな!」
千里「・・・あら、暴れるからこぼれちゃったじゃない。
 もう胸元がびしょびしょ・・・
 濡れた服は脱がないと・・・」
カエレ「やめなさいよ寒いでしょ!
 なんで貴女逹がわたしのバストを大きくしようとするの!
 牛乳は嫌いなの!
 テメェだからぶるぶる震えるのをあてんな!
 本気で訴えるわよ!」
千里「あら、こんなところが固くなってる。
 おまけにちょっとたってるわ」
芽留「めるめる『なに携帯マナーモードで感じてんだこの淫乱』」
カエレ「服脱がされて寒いんだよ!!
 だからそんなとこ揉むなぁ!!!」


マ太郎「・・・で、この話どうやってオチつけるんダ?」
望「・・・・・・・・オチチ、ということで・・・」
マ太郎「・・・・・・」

カエレ「それが言いたかっただけかコラァ!!
 訴 え て や る ぅ ! ! 」
(完)
223名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 23:35:31 ID:WZSFWC/g
オチチはねえよwwww
224名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 23:50:12 ID:CmAhsH5M
わろたw最高ww
225名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 23:50:21 ID:V9tq4VvC
オチチwwwww
笑わせてもらいました!GJ!!!


ところで私の作品という名の駄文ですが
タイトルが絶望的にセンスが無いと気付いた!今!
しかも適当に考えたって予防線張り忘れた!
保管される前ならまだ変更とかできますかね…?
226名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 00:45:59 ID:b/Y32SQQ
オチチて(笑)
下手な原作より面白かった
227名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 01:01:57 ID:cjjtVZ9H
なんというセンスだ
228名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 01:31:31 ID:cpW/F+Zw
オチチGJww
おもいっきり笑ったww
229名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 02:57:26 ID:n7ZDA2yI
オチチかわいいよオチチ
230名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 05:25:43 ID:5JJhyZaI
>インフレだデフレだ、勝手に上げ下げしないでよ!いらいらする!
>きっちり一定に保ちなさい!

例の最後を見ろwお前がいうなwww
231名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 12:45:50 ID:mdXMk8v0
>>198
句読点をきっちり付けなさい!
232前々スレ42:2007/11/12(月) 18:41:18 ID:MYUM9pWR
お久しぶりです。前々スレ42です。
今からあびる短編を投下させて頂きます。
233愛し合う二人に祝福を@:2007/11/12(月) 18:48:21 ID:MYUM9pWR
土曜の夜。
宿直室に二つの影が揺れる。

「望さん…」
「あびる…」
二人は触れ合うように唇を重ねる。

「ん…ふぅ」
すぅ、と一呼吸おいて二人はどちらからともなく激しく舌を絡み合わせる。

「ぴちゃ…ぴちゅ…っ」
卑猥な水音が室内に響く。
「ん、んふぅ…のぞむさ、息苦し…」
あびるの言葉が終わるのを待たずに望の舌があびるの口内を蹂躙する。
激しいキスが終わる頃にはあびるはぐったりとしていた。

「もう…望さんの、意地悪」
「こうして夜、二人きりになるのもずいぶんと久しぶりですからね」
そういうと望はあびるの頬に軽くキスをする。

「ふふっ、じゃあ次は私がしてあげます」
そういうと同時に望の袴を手際よく脱がし絶棒を口に含んだ。

「ん、むっ、んちゅ…」
あびるの舌先が絶棒を刺激する。
あっという間に絶棒は大きくなった。
「ふふっ、先生のしっぽ、元気一杯ですね…あむっ」
あびるのフェラにより望にとろける様な快感が与えられる。
「ぺろっ、ぴちゅ…?…ぷあっ」
望があびるの肩に手をかけフェラを止めるように促す。

「望さん?」
「いや、えっと…そのやっぱり…最初は…あの…あびるの…中で…」
言いだしにくいのか、どんどん言葉が弱くなっていく望。
それをみてあびるはくすりと頬笑んだ。
234愛し合う二人に祝福をA:2007/11/12(月) 18:57:52 ID:MYUM9pWR
「いいですよ、望さん。ほらさっきのキスで私もこんなに…んっ」
あびるが秘所に望の手をそえさせる。
つぅ…と、指先に卑猥な糸を引く。
もう準備は出来ているようだった。

「いきますよ」
望が腰に力を入れる。
「はい…っくぁ!」
ずぷんっ
充分に濡れたそこに絶棒が深く沈み込んだ。

「動き…ますよ」
「は…はひぃっ!」
今まで押さえ付けられていた欲望を吐き出すように腰を振る望。

「あ、あ、あ、望さん、は、激しっ…」
「あ、あびるっ!私も、もう…」
「の、のぞむさ…あ、ああぁぁーっ」
二人はお互いの名を呼び合いながら同時に果てた。

「もう、望さんたら久しぶりだからってあんなに激しくするなんて」
「まあ、その、私達は表立って交際できる関係ではありませんからね。たまにこういう事になると、タガがはずれてしまうというか…その」
バツが悪そうに弁明する望にあびるが耳元で囁く。
「別に怒ってませんよ。それに…わたしも気持ち良かったですから」
そう言うと望に満面の笑みをあびるが向ける。
それにつられて望も自然と笑顔になる。
望の心の中にいつも巣食っていた絶望はもうどこかに消えてしまっていた。

教師と生徒。
愛を育むには禁忌の関係である。
しかし深く愛し合う二人にはそんなことは問題ではないのだろう。
夜空に瞬く満天の星が二人を祝福するように輝いていた。
235前々スレ42:2007/11/12(月) 19:01:54 ID:MYUM9pWR
終わりです。
久しぶりだったんでちょっと緊張しましたw
読んでくださった方々。ありがとうございました。
236名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 22:36:39 ID:fuVgKpcY
>>235
佳品ですな。GJ!
237名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 23:46:37 ID:b/Y32SQQ
>>235様の美しいSSの後に悪いですがヤンデレな神の後編を投下させていただきます

千里ちゃんは追い詰められたら自殺ではなく他殺をする娘なので益々凄惨になりました

なので苦手な方はスルーお願いします
238ヤンデレな神が支配する 後編壱/十壱:2007/11/12(月) 23:48:52 ID:b/Y32SQQ
純潔は愛する人に捧げたいとゆう夢を踏みにじられ
その傷跡は癒えるどころか再び痛みだす

その繊細さは刃物へとすりかわり振り向きざまに血を浴びる
触れた者は傷を負う事となる
望むと望まざるとに関わらず

逃げ惑う者のうれしい悲鳴につられ千里は廊下に出ると既に傷を負った少女小節あびるが立っていた


「千里ちゃんここまでやるだなんて、
もう許せない!」

開けっ放しの扉から見える動かなくなったカエレとことのんを見るなり
荒れ狂う猟奇少女を捕縛せんと
包帯はふりほどかれ触手が如く襲いかかった

シュッシュッシュッ

ギチギチ


が千里は勘づいたのか
一瞬早く後ろに引き
包帯は前に突き出したスコップに巻きついた


「えっ!?」


驚きで包帯少女に隙が生まれるやスコップを握り締め
大柄なあびるをまるで砲丸投げのハンマーの様に遠心力をつけ思い切り投げ飛ばす

「うなああああああああああああ!!!!」


「に゙ゃーーーッ!!!!!!」


あびるはまるでドラ猫の様な悲鳴をあげ十数メートル先の二番底に転げ落ちていった
239ヤンデレな神が支配する 後編弐/十壱:2007/11/12(月) 23:52:41 ID:b/Y32SQQ
すると今度は真夜が何処からともなく取り出した松明に着火りさんで火を点け投げつけて来た


今まで彼女の暴力は好意の者にのみ向けられている
故に敵意によって攻撃するのはこれが初めてだ


ボオオォオォ


が猟奇少女は松明をスコップの刃で野球打者の様にきっちり真夜に打ち返すときっちり命中した


あついよ!あついよ!


普段人の家に放火する見たまま少女だが
今回は自分自身が炎に包まれた


「うれしい悲鳴が今日も聞こ〜える〜♪」


狂喜に満ちた歌声をあげ猟奇少女は階段を降りていく
すると

ザクウゥ!!

突如後ろから脇腹を硬い何かに貫かれ階段を踏み外しそうになった


「何がこのクラスに女生徒は一人で充分よ・・
保健室で先生に転がり込んだだけで籍を入れろと先生を困らせる
あんたが一番いらないのよ!!」


殺意を持って後ろ脇腹を出刃包丁で躊躇なく突き刺したのは
望に常軌を逸した愛情をそそぐもう一人のヤンデレ
常月まといであった
240ヤンデレな神が支配する 後編参/十壱:2007/11/12(月) 23:56:36 ID:b/Y32SQQ
以前自分のセカンドオピニオンが愛する教師に付き纏っていた際は心臓を一突きした
だが今は脇腹に包丁を刺しえぐる様に徐々に回す

先生との愛を邪魔するこの女は悶え苦しませた後死にいたらしめたいからだ

だが何故か千里は痛がる様子もなく
静かに冷たく口を開いた

「まといちゃんたら
私の事随分嫌いみたいね、
でも安心して、
私とは顔を合わせなくてすむ世界に連れてってあげる、
先生も後で送るわ。」


身を貫く強烈な意志と
心を引き裂く事実の言葉にあの悪夢の夜がフラッシュバックし
怒りをあらわにした顔を背後のまといに向けた

「ひいいぃ!!」


ストーキング少女が思わず悲鳴を上げた形相はもはや猟奇すら超越していた
几帳面少女の中に眠る
黒き殺戮の女神が再び姿を表したのだから


「うなあっ!!」


殺戮の女神は慟哭を上げ恐怖で包丁を持つ手が緩むまとい目掛け
円を描く様にスコップを叩きつけた


ゴキャアアァバタバタバタ


凄まじい衝撃にストーキング少女は階段から転げ落ちた
それを見下ろすと彼女が刺した包丁を一気に引き抜き足で踏み割った


「こんなの先生に嫌われる苦痛に比べたら痛いうちに入らないわ!!」
241ヤンデレな神が支配する 後編四/十壱:2007/11/13(火) 00:04:47 ID:ic7l4wRO
修羅地獄と化す2のへを尻目に甚六は呑気に職員室でパチスロからポロロッカして入った漫画を読んでいた

「う〜むこの漫画の緊迫感は凄いのう戦場にいた頃を思い出すわい」


「キャーッ!!」
「うわああああー!!」
「いやああああああ!!」

「おぉ悲鳴すら聞こえてくる様じゃ!」


「『聞こえてくる様じゃ!』じゃありません!甚六先生!」


ふと声がする方を見ると普段冷静な智恵先生が慌てふためいていた


「どうしたんですか?
一体なんで悲鳴が聞こえるんですかな?」


「大変です!
2のへの木津さんが暴れ狂って手がつけられないんです!」


甚六は耳を疑った
何故なら2のへ担任の望の教師力を高く評価していたからだ

進級間もない頃彼の生徒の進路希望は非現実的なほど夢があったし
ガンコな引きこもりの生徒を登校させたり
授業も人数以上の熱気にあふれていたからだ


「でもそんな先生にも手がつけられない事態なんですな・・・・・」


すると甚六はロッカーに入れていたゴルフケースを出した
その中に納められているのはクラブではない


いまだ学生運動がやまぬ昭和82年現在
暴徒鎮圧用に麻酔弾を装填したライフル銃だった
242ヤンデレな神が支配する 後編伍/十壱:2007/11/13(火) 00:08:08 ID:ic7l4wRO
不逞の輩を無力化するために置いていたライフル
まさか尊敬する後輩教師の教え子に向けねばならぬとは

唖然とする智恵先生に構わず薬室に麻酔弾を装填すると
席を立ち悲鳴がする方向に向かう

だがその殺気は凄まじく戦場でも感じた事のない程
すると髪を振り乱し血がしたたるスコップを持つ殺戮の女神が見えた


距離は約十メートル
甚六の技量なら眼をつぶってもはずさぬ射程

だがまるで劣化ウラン弾を装填した戦車に狙われているかの様な気分だ

「南無三・・・・・」


ズギューンッ!


渇いた音とともに麻酔弾は千里の薄い左胸に命中した

「チェホンマンも止めれる特製麻酔弾、
この娘の体重を45キロとして覚醒には2週間かかるわい」


が千里は倒れなかった極度ストレスによりアドレナリンが異常分泌しており麻酔を無力化していたのだ

「ば、馬鹿な!」

ズギューン

「うなあああああああああーーーッ!!!」

ガリガキュグキュリ

音速で飛ぶ麻酔弾をかわしたかと思うと
千里はスコップでライフルの長い銃身をアルミカンの様に潰しながら
甚六の体を吹き飛ばした
243ヤンデレな神が支配する 後編六/十壱:2007/11/13(火) 00:13:14 ID:ic7l4wRO
「ヤンデレ大全に
『千里はクラスのちょっとしたモンスター』と書かれていましたが
もうそんなレベルではありませ〜ん!!!!」

最近アニメOPの影響で鬼畜キャラで通していた糸色望は本当の鬼畜を目にしてすっかり初期のヘタレに戻り逃げ惑っていた
すると情けない彼に声をかける少女が


「お兄様!?何故止めずに逃げているのですか!!」

「無理です!もう自衛隊か米軍でも呼ぶしかありませ〜ん!!」


自分と同じく兄の友に凌辱され自分の代わりに復讐を遂げてくれた千里をまるで怪獣の様に言う望に倫は激怒した


「お兄様!なんたるチキン!!
自衛隊も米軍も彼女を止める事は出来ません
眼に写る物全て破壊し
生きとし生ける者全てを殺戮しても彼女は決して救われません

何故なら彼女は血に飢えた怪物である前に一人の傷ついた乙女なのです
お兄様への愛で苦しむ彼女を救えるのは・・お兄様・・お兄様しか・・いないのです・・」


自分は三千の弟子を抱える華道師範なのだ
これしきの事で、
と自分に言い聞かせていた
だがもう涙を抑えきれなかった


「・・・・・倫、
解りました、
私は教師としては止めにいきません一人の男として彼女を救いにいきます」
244ヤンデレな神が支配する 後編七/十壱:2007/11/13(火) 00:17:58 ID:ic7l4wRO
「騒がしいな・・・・」


宿直室で交の勉強を見てやりながら自習していた小森霧は聞こえてくる悲鳴と銃声を気にとめた
すると突然宿直室のドアを開けて一人の女生徒がやってきた


「大変よ小森ちゃん!
なんと千里ちゃんがクラスの皆を血祭りに上げ始めたのよ♪」


以前引き篭っていた自分を外に出した時の様に恐ろしい事を嬉しそうに語る可符香に唖然としてしまう

「あびるちゃん、真夜ちゃん、まといちゃんまで倒されたの♪
次なる餌食は先生に心中候補になる程好かれてる小森ちゃんよ!うふふふ♪」


満面の笑みで告げられるその言葉に霧は凍りつき交はトラウマがフラッシュバックしはじめた

「恐いよ恐いよ・・」

「あぁ交君落ち着いて・・このままじゃ私どころか交君までやられちゃうよ!」


「う〜ん交君この年にしてこれ以上トラウマ増えるのも問題だし
第一小森ちゃんがやられたらこの学校滅びちゃうわね・・そうだ!」


可符香は手をポンと叩くと二人を連れだし核シェルターに避難させる事にした
ドスン!ギュッギュッギュッ

分厚い扉を締めると霧は内側から強く鍵を締めた
245ヤンデレな神が支配する 後編八/十壱:2007/11/13(火) 00:22:47 ID:ic7l4wRO
「可符香ちゃん!小森ちゃんと交君は何処!?」

千里は不気味な千里眼であっさり二人のいる場所を見つけたが不下校で先生に誰よりも気にかけてもらっている女生徒と先生が縮んだかの様な男児の姿はない


「あ〜なんかこの核シェルターに避難したわよ♪」

自分で避難させておきながら可符香はわくわくしながら核シェルターの扉を指差すと
千里は凄まじい速さで飛びかかった


「核シェルター?そんな物こじあけてやる!!」

「あけないでよ!」


ガツンガツンと分厚い扉に突き立てるが無数の血を吸ったキッチリスコップも核爆弾に耐えれるシェルターの扉には文字通り刃が立たず
先が次第に潰れていった

「ええい、こうなったら!」

潰れたスコップを捨てると千里は拳を握り締めて構えた


「うなああああああああああああああああああ!!!!!!」


ドゴオォオオォオ!!ズズウウウン


凄まじい音がしたかと思うと核シェルターの扉は破壊され内側に叩き落とされた


「うわ〜ん!!」


「こわっ!!」


千里の最たる凶器はキッチリスコップでもデチューン包丁でもない
世界すら真ん中分けする自身そのものだ
246ヤンデレな神が支配する 後編九/十壱:2007/11/13(火) 00:26:31 ID:ic7l4wRO
核攻撃に耐えうるはずの扉は核以上の衝撃によってもろくも崩れ落ちた

が開いたとゆうのに千里は入ってこない

攻撃を辞めたのかと淡い希望を抱いたがそれはすぐに掻き消された


ドスンドスンドスンドスンドスン


突如鳴り響く地震の様な地響き
殺戮の女神と化した千里にとって先生の愛を誰よりも受けてる霧と
隠し子に見える程先生の面影を持つ少年は普通には倒さない


地面を何度も踏み砕き
大地ごと核シェルターを壊して生き埋めにするつもりだ

「小森姉ちゃん恐いよー!!!」

「交くーーん!!!」


シェルターの天井にヒビが入り徐々に崩れゆく中で霧は交を震えながらも守る様に抱き抱える


「せめて・・この子だけは・・・・」


すると突然祈りが通じたかの様に地響きが止まった
殺戮の女神が見つめるのは大地ではなく部屋の扉を開けて現れた男


「木津さんやめなさい!
貴女の一番の目標は私のはず!
だから私を殺しなさい!!!」


気が狂う程に愛しき先生


糸色望だ
247ヤンデレな神が支配する 後編十/十壱:2007/11/13(火) 00:32:47 ID:ic7l4wRO
覚悟を決めた望は殺戮の女神に怯む事なく歩み寄りあお向けに寝転がり大の字となった


「さあ貴女の気が済むまで!!」


「うなあ!うなあああああああああ!!!!」


人とは思えぬ抱吠を上げ千里は躊躇なく望の上に乗り足踏みを始めた


ドスンドスンドスンドスンドスンドスン


「うぐぐぐぐ・・・」


強力な魔神たちを打ち倒しても殺戮の女神カーリーの興奮は止まず踊りで大地は砕けそうになる

困り果てた神々が助けを求めたのは最高神シヴァ

シヴァ自身も混乱と恐怖を巻き散らす破壊神であったが
世界を守るため己を下敷きにしクッションとなった
彼の献身により殺戮の女神は我に戻ったとゆう


それと同じく散々足踏みをした千里もついに正気を取り戻した

「あれ、私は今まで一体?」

シェルターから上がって来た霧は過充電後された自分が先生によって放電された時を思い出した


だがその時以上に望の体はボロボロになっていたのだ


「あっ、先生!?
ごめんなさい私ったら。」

殆ど動かず祖父の様にぐったりした望を気使う姿に殺戮の女神の面影はなく
千里はいつもの几帳面少女に戻っていた
248ヤンデレな神が支配する 最終編:2007/11/13(火) 00:38:11 ID:ic7l4wRO
すると望は静かに口を開いた

「木津さ・・いや千里
私は貴女が羨ましかった
信じる物を何の疑いも持たず一途にひたむきに愛する事が出来る貴女が・・・
でも世の中はうまくいかずいつも貴女はイライラしていてどう触れれば良いのかわからなかった
そんな貴女は旧校舎にて再会した旧友、いや一日友を殺した後も暴れ狂う程に追い詰められていたんですね」


望の言葉は千里の心の奥底まで響いていた
彼が私をそう思ってくれていたなんて


「しかし貴女のしでかした事は許される事ではありません
でも今は好きなだけ泣いて下さい

涙は私が全て受け止めますから」


流しつくしたはずの涙が溢れて来た
何故ならそれは今まで流した悲しみの涙ではなかったから


「ううあああ!せ、先生!先生!」


千里は赤子の様に泣いた今までの苦しみを洗い流すかの如く


それを開いたドアから晴美と倫は見ていた


「フフフかなわないな、先生には」


「私の分まで救われたのか」

混乱と破壊とゆう絶望を呼び
逆らう者に容赦なく苦痛と死をもたらす
でも憎みきる事が出来ないのは奥底にある優しさを感じれたから


残虐で愛らしい


ヤンデレな神が支配する

―終劇―
249あとがき:2007/11/13(火) 00:43:52 ID:ic7l4wRO
はい私の凄惨SSに最後までお付き合いいただきありがとうございます

旧姓では千里が自分を倫に重ねましたが

ヤンデレな神は倫が自分を千里に重ねる形にしました

今回もまた神話を絡めましたしツンデレラとか絶望先生でアレンジした昔話が面白かったので
次回は絶望先生で日本書記を書きたいと思います

では皆様本当にありがとうございました
250名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 00:58:03 ID:8hfck2lI
>>249
(((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル
なんか、八つ墓村思い出した……。
乙でした!
251名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 01:01:27 ID:YsqlLtKP
>>249
乙です。
なんだか霧の座敷わらし設定とかちゃんと使っているのがいいな。
252名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 02:59:08 ID:5oa+s5aO
>>249
長編乙でした
ただ「言う」が「ゆう」になってるのと ら抜き言葉が気になる・・・
細かいこと言ってスマソ
253 ◆n6w50rPfKw :2007/11/13(火) 08:05:26 ID:f9AZFRll
おはようございます。>>73の続きをアップします。

前回アップした分の冒頭で、よりによって先生の苗字を誤変換しました。
罰として、先生には今回分で当初の予定よりもう一段酷い目に遭ってもらう事にしました。
平にご容赦のほどを……

注意シチュ:1)女が男を嬲ります。2)女が女を嬲ります。(男が男をってのはなし)
それ以外は明るく爽やかな高校生のえっちになるように努力しました。

都合で全部はアップできないのですがご勘弁を。
254絶望戦隊ノゾムンジャー 7:2007/11/13(火) 08:07:56 ID:f9AZFRll
准の赤く光る目を見てしまって動きを封じられた千里。
それどころか、准の語りが進むに従って指が自分の意思に反して動いてしまい、自分を絶望的な状況に追い込んでいくのだ。

『先生が優しく撫でてくれたときのことを思い出すと、つい自分で恥ずかしいところを慰めてしまう』

准はあくまでも淡々と語る。

――ああ……久藤君に見られてるのに……だめよ、私! しっかりしな……くぅっ!

『くりくりっと小さな円を描くように……そしてそっと押しつぶしてみる』

秘密の場所に手を伸ばしているあさましい自分。そんな姿を凝視している准の視線を痛いほど感じる。
たまらず地面に膝を突き、さらに激しく弄ってしまう。
知らず知らず、もう片手はコスチュームの上から自分の胸を揉んでしまっている。

『ああ、もう愛する望さんの大きく固くなった物が入ってくる』

――じゅん……

 千里は自身の中で新たに蜜が大量に湧き出すのを自覚した。

「あう……はぁん……。」
『私の中で動く度、気持ちよさで気が狂いそうになる』

 夢中で指を動かすうち、いつしか視界から准の姿が消えていた。ただただ快感を追求していた。

『ああ、もう気持ちよすぎて意識が飛びそう』

 徐々に目の前が真っ白になってきた。そこに極彩色の虹が現れては消え、現れては消えていった。消えるたびに新たな快感の電流を脳髄に流し込んでいく。

『動きがますます情熱的になる。私は彼の大波に翻弄される哀れな小舟』

准の声が耳元でした。頭の中に響きわたり、快感で一杯の心の中と混ざり合ってしまう

『達すると意識が飛びそう……飛ぶ、飛ぶ、飛んでしまう』
「うああああああああああっ!」

こうして千里は准の目の前で自慰をしたあげく絶頂に達し、そのまま気を失った。
千里を抱え上げた准がすっとアジトに入っていった。

255絶望戦隊ノゾムンジャー 8:2007/11/13(火) 08:10:28 ID:f9AZFRll
     ☆

イエローアビルに変身した小節あびるは、尋常ならざる目つきで尋常ならざる能力を発揮している影郎と闘っていた。

「ふっふふ……いざあびるさん、勝負ぅ! シャドゥ・ヘアニードル!」

影郎が残り少ない髪の毛を一束毟り、あびるに投げつけた。
すると、それが一群の針となってイエローアビルに襲いかかる。
だが、あびるは難なく包帯でなぎ払った。

「くっ……もう一度、シャドゥ・ヘアニードル!」

これも余裕を持ってかわした。

 元来少なかった影郎の髪は完全になくなり、ついにスキンヘッドになってしまった。

「ち、ちくしょぉ」

焦る影郎。

「さあ、これであなたに勝ち目はないわ。おとなしく隊長……絶望先生の居場所を吐きなさい」

 イエローアビルが右手をさっと振り降ろすと、包帯が一筋影郎に向かって飛んでいった。
すぐに影郎の体に巻き付き、彼の動きを封じた。

勝利を確信したあびるは、獲物をぐいぐいと手元に引き寄せた。

     ☆

 包帯でぐるぐる巻きにされた影郎がイエローアビルの足下に放り出されている。
望の居場所を吐かせようと、あびるが影郎の額をブーツで踏みつけようとしたその刹那、影郎が不気味に呟いた。

「ふふふ……かかったなぁ」
「?」

今更何を、とあびるが影郎を見下ろしたその瞬間。

「シャドゥ・スキンヘッド・フラーーッシュ!」

影郎の禿頭がまばゆい赤光を発し、当たりを赤く染めた。

「くぅっ! し、しまった!」

すぐに遮ったとはいえ、まともに赤い光を見たあびるはたまらない。みるみる体中が痺れ始めた。

「ああ……うああ……」
――ど、どうしたのかしら、一体!?

 あびるは体がしびれたまま一歩も動けない。
それどころか、ますます痺れが増すばかり。
息をするだけでも上半身が疼く。
いつの間にか包帯の縛めから抜け出した影郎があびるに近づくと、コスチウムの一部である包帯を乱暴に解いていった。

「あ……あう……」
――な、何をするの? 止めて!

心の中で叫ぶが、どうしてもそれが声に出せない。解かれるたびに、体中に痺れの電撃が走り、抵抗もできない。
ついに全部解かれた勢いで、あびるは地面にくずおれてしまった。
256絶望戦隊ノゾムンジャー 9:2007/11/13(火) 08:12:06 ID:f9AZFRll
     ☆

「ふふふ……」

普段の彼らしからぬ不敵な笑みをたたえつつ、影郎はあびるを見下ろした。
いつの間にかカツラを手にしていた。毛が並々と植え付けられている立派なものだ。

「シャドゥ・ウイッグ・オン!」

影郎がスキンヘッドにカツラを装着したとたん、カツラの黒髪がざわざわと波打ち始めた。

「よーし、いいぞぉ……行けえ!」

影郎が一声発すると、髪がざぁーっと伸び、イエローアビルに襲いかかった。

――うああ……

避けることも出来ないままのあびるの四肢をカツラから伸びた髪が拘束し、空中に持ち上げていく。

「うははは……髪の毛フサフサって、何て気持ちいいんだろう」

うっとりした調子で呟くと、不意にあびるに呼びかけた。

「あびるサン、もう少しで楽にしてあげるからねぇ……シャドゥ・スペシャル・ショック!」

影郎が叫ぶと同時に、電撃があびるの全身に伝わった。

「うぐぁ……」

一瞬息も出来なかった。
そして、単なる痺れだけではない体の疼き、火照り――そう、望にたっぷり愛撫されているときに感じるものが体中を襲ってきた。

「ああ……あ……」
「どう? 気持ちいいでしょう……もおっと気持ちよくしてあげますよぉ」

影郎の髪から二束が分離し、あびるの豊満な乳房をぎりぎりしぼり上げ始めた。
そしてさらに一束が太腿に巻き付き、恥ずかしいところに密着した。

「シャドゥ・スペシャル・ショーック!」
「あぐぅ!」

先ほどの電撃が局部三カ所に集中して来た。あびるはたまらず軽い絶頂に達してしまう。
だが、影郎は容赦せず、さらなる電撃を叩き込んできた。

「まだまだっ! シャドゥ・スペシャル・ショオ――ックゥ!!」
「あああああ――――っ!!」

 再度の局部電撃で、さしものあびるの快感中枢が焼き切れた。
数回分の絶頂を一度に感じさせられたのだから無理はない。
自分が恥ずかしい蜜を股間から大量に滴らせていることも知らないまま、イエローアビルは気を失った。
影郎もぐったりしたあびるを抱え上げるとアジトへ運び込んでいった。

こうして、あびるも敵の手に堕ちた。

257絶望戦隊ノゾムンジャー 10:2007/11/13(火) 08:13:33 ID:f9AZFRll
     ☆

 ブルーアイに変身した愛が敵のアジトの裏手から侵入路を探っていた。
と、愛の肩を後ろからぽんと叩いた者がいる。

「やあ、愛ちゃん」

国也であった。

「この服着てくれないかな? きっと似合うから」

見ると、またあのタラバガニのTシャツである。

「あ、あの、今それどころでは……」

大事な任務の遂行中である。ブルーアイが自分の性格を押し殺して必死に断ろうとしているのを、国也が強引に遮った。

「まあそんな事言わずに……さぁ!」

国也が愛の目の前に大きくタラバTシャツを広げた。
すると、そのTシャツの意匠だったはずのタラバガニが光を煌々と放ち始めた。

「え? え……」

 突然の出来事にうろたえる愛。
だが、そのカニの発する真っ赤な光を見つめているうち、体中の力がすうっと抜けていくのを自覚した。

――あぁ、しまった……

 ここで国也がTシャツから手を離した。
だが不思議なことに、そのシャツは空中に留まったままで辺りを真っ赤に染めている。
国也の目も真っ赤な光を発している。

「じゃあ、そろそろちゃんと着て貰おうか」

 国也がゆっくり片手を振った。
すると、タラバTシャツが愛の頭からすっぽり被さってきた。

「いやあああああ!」

呼吸が出来なくなるのを恐れて、愛は頭に纏わりつく布を必死に手で振り払おうとした。
だが、シャツのほうではその動きを逆に利用して巧みに愛の頭を通り抜け、ひとりでに袖が通ってしまう。
ついにブルーアイは、青いコスチュームの上に、茹で上がって真っ赤になっているタラバガニの絵の入ったTシャツを着せられてしまった。
おまけに、そのTシャツからは、タラバガニの毛を模した物が表にも裏にも一面にびっしりとついていて、着心地が気味悪いことこの上ない。
なのに国也は
「よく似合ってるよ。さすが愛ちゃんだ」
などと一人満足げに頷いている。
258絶望戦隊ノゾムンジャー 11:2007/11/13(火) 08:16:36 ID:f9AZFRll
     ☆

「こうしたらもっとお似合いだよ」

国也の目がさらに赤く光った。
すると、タラバTシャツから生えていた毛が一斉に蠢きだした。

――もしょもしょ。わしゃわしゃ。ざわ……ざわ……
「あああ、いやああああ」

 コスチウム越しとはいえ、肌の表面をゴワゴワした毛が這いずり回る感触に愛は鳥肌が立った。
しかも、その毛がいつしか触手となって愛の肌をコスチウム越しにしきりに撫で回してきたのだ。

「いや、いや。脱がして」

愛は泣きそうになって身悶える。
すると国也はセクハラ発言で軽く迫る。

「ふーん、じゃあ愛ちゃんの着てる服は全部脱がしてもいいんだね」
「いやぁん。そうじゃなくて……あぁ……んっ……」

 ブルーアイの声が途切れがちになった。
触手が愛の乳房全体をわさわさと揉み込んでくると同時に乳首に絡みついてきたからだ。
――いやっ……こんなヘンなので感じちゃうなんて!

 だが、タラバガニの毛由来の触手は布越しなのに実に的確に愛のスイートスポットを攻め、愛の性感をとろけさせる。
おまけに、シャツの下の方から伸びている触手たちが、果敢に愛の股間へとチャレンジしていき、ついに隙間から中に入り込んでくる。

「いやあああ……ああ……あぁあん!」

一度侵入されてしまえば、もう逃げられない。
愛は無抵抗のまま、チクチクする触手に蹂躙されていった。

     ☆

 愛のぬかるんでいる中に潜った触手は数本がたちまち若芽に絡みつき、きゅっきゅっと締め上げる。

「ひゃううん!」

 愛は思わず甘い声を上げてしまう。
体の芯から電流が背筋を伝わって脳へなだれ込む。
無意識のうちに内股になる。
もう立っていられなくなり、跪いてしまう。

「もういやぁ。止めて、やめてえぇ……」

だが、無慈悲にも他の触手までが愛の中へ我先にと入り込んでくる。
そして妖しく蠢きながら、湧き出る新鮮な蜜を啜っていく。

――くちゅくちゅくちゅ……
 ――ぴちゅ。ぴちゃっ。ぴちゅ……

 愛はなんとかその動きを堪えようとして太腿の間に両腕を挟み込み、きゅうっと閉じる。
だが、その手が股間の触手を引き剥がそうとすると、愛の胸を襲っている触手の動きが活発になり、愛の僅かな抵抗さえも出来なくさせてしまう。
 
259絶望戦隊ノゾムンジャー 12:2007/11/13(火) 08:19:03 ID:f9AZFRll
     ☆

 もう胎内がふわふわと膨らむ感触がしてきた。望とえっちをしていて、達する前に味わう感覚だ。
それをこんなに早く、しかも得体の知れないモノによって味わわされる羽目になるとは……

「いや、いやぁ……」

 必死に首を左右に振り耐えようとする愛。だが、無機質な触手は、無情にも愛をどす黒い絶頂へ強制連行していった。

――いや、はじける、はじけちゃうぅ……

 ぴちゅぴちゅという恥ずかしい水音が辺りに響きわたる頃、ついに愛も国也の見守る前で生き恥を晒すこととなった。
胎内の風船が大きく膨らみ、後から後から押し寄せる快感でプルプル震え、……やがて弾けた。

「ああ、だめ、だめ……いやああああああああああん!」

 背を弓なりに大きくのけぞらせると、ブルーアイは気を失い地面に崩れ落ちた。

 こうして愛までもがまたしても敵の魔手に捕らえられてしまったのである。

     ☆

 隊長に続き、ノゾムンジャーのトップ3までが敵の手に堕ちた今、彼女らに挽回の手だてはあるのか。
それとも、このまま敵に思うように弄ばれる羽目に陥るのだろうか。

 頑張れ、僕らのノゾムンジャー。立ち上がれ、僕らのノゾムンジャー!

     ☆     ☆

 今、望は寝台の上に大の字に拘束されている。着衣は全て剥ぎ取られ、絶棒もやや元気を失っている。
 そんな望を冷たい表情で見下ろしているのは最高の女である。
白のボンデージルックに身を包んでいて、色気とフェロモンをあたりに放射している。
ふと、女が呟いた。

「ん――……ちょっと精子の数が平均より少ないかな? 運動能力もやや劣っているようだし」
「ど……どうしてそんなことが分かるんですかぁ!?」

 男として劣っているような烙印を押され、囚われの身である立場も忘れた望が絶叫した。

「うっふふ……さっき飲んだのを体内で分析したのよ」
「へ?」
――体内で分析?

 だが、これ以上の疑問を封じるように、最高の女が宣言した。

「じゃあ、先に性機能の強化をしちゃいましょっか。
 まずは精力を十倍にしてあげる。
 それからいろいろ洗脳して、最後にマッチョでムキムキな肉体に改造してあげる。
 ポジティブ思考で、おまけに常人の20倍の力持ちになれるわよ」
「いやだあああぁぁ! 改造はいやだああぁ! 手術はいやだああぁぁ!」

 かつてテレビで見た、ヒーローが手術台に乗せられ無理に改造手術を受けさせられる映像が望の脳裏をよぎった。

「あーら、心配しなくていいのよ」

最高の女が、望の喉をくすぐり、ついっと指先で顎をひっかけた。そして、耳元で囁いた。

「うっふふ……今時、外科手術なんて流行らないから安心して。
 トレンドなのは、遺伝子を操作する方法よ」
260絶望戦隊ノゾムンジャー 13:2007/11/13(火) 08:22:31 ID:f9AZFRll
「い、遺伝子!?」

 望は怯えた声をあげた。
が、最高の女はますます声を潜め、慄然とする内容を耳元に吹き込んでいく。

「そう。詳しくは教えてあげないけど、私と交わって気持ちよおぉくなっている間に、お前の遺伝子をちょこぉっとイジってあげるから」
「へ? いやだ……そんなのいやです……助けて下さい!」

 自分の遺伝子が組み替えられ、今の自分とは別物の何かにされてしまうというおぞましさに、首を必死に左右に振って抵抗する望。だが……

「あらあら、うっふふ……」

 女は望に馬乗りになると、哀れな虜囚に見せつけるように上半身の装いを解いた。
かつて望も堪能した最高の乳房が再び望の目の前に姿を現した。

「あ……あ……」
「あんまりワガママが過ぎると、こうしちゃうから」

 女はゆっくり上体を倒すと、自分の乳房を望の顔にむにゅうっと押しつけてきた。

「わむぐぅ! んむっ! んぐぅ……」
「んふふ……ほうら、ほうら」
――むにゅっ。むにゅうっ。むにゅっ。……

 最高の女の完全に理想的なフォルムを保った乳房。
ただそのバストで顔を覆われるだけではない。
むぎゅっ、むぎゅっと心地よいリズムで圧迫されることの心地よさといったら!
その圧倒的な迫力と至高の柔らかさ・暖かさを顔で体感し、成熟した女性の甘い体臭・フェロモンを嗅がされているうちに、徐々に望の抵抗が弱まってしまう。

「う……あぁ……」
「うっふふ……よーしよし、いいコね。ぱふぱふって気持ちいいでしょ? 
 さあ、前のように吸ってみて。優しくよ」
「う……わぷぅ……む」
「んっ……そうそう、その調子」

 望に乳首を含ませ注意を逸らせながら、女の手がそろそろと絶棒に伸びた。
きゅっと掴むと、またあの指技で瞬く間に固くさせる。
そうしておいて、徐々に体を下方にスライドしていき、いつの間にか絶棒を女自身の入口に迎えようとしていた。
下半身を覆っていた衣装はとうに外されている。

 亀頭に感じる女の恥毛の感触でそれと察したのか、望が最後に哀願した。

「ああ、いやだ……お願い、止めてぇ」
「うっふふ……さあ、一足先に結婚しちゃいましょう。……改造手術の始まりよぉ」
「いやあああああああぁぁぁ」
――ぴちゅぴちゃ……つぷっ。

 しばしの間入口で絶棒を馴染ませていた女が、ついに先端を呑み込んだ。

「あ……ああ……」

たまらない暖かさが分身の頭を覆った。それだけではない。

「ふふっ……これはどう?」
261絶望戦隊ノゾムンジャー 14:2007/11/13(火) 08:25:50 ID:f9AZFRll
――きゅっ……きゅううっ!

 女の中が、分身の頭を泣きたくなるような気持ちよさで締め付けてきた。
望は思わず喘いだ。

「はああっ! あぅん……」
――ずず……ずぬぅっ!

「ふふっ……全部入っちゃったわよ☆」
「あああ……いやだぁ、いやだあああ」

とうとう絶棒が根元までぱっくりと呑み込まれてしまった。

     ☆

 最高の女は艶然と望を見下ろしたまま、こう呟いた。

「そろそろ行こうかな」

 すると、女の中が急に蠕動を始めた。

――きゅっきゅっ、きゅううっ、きゅっ………
 ――にちゅ、にちゅ、ぬちゅ、……にちゅうう……

 絶棒に幾多の襞が絡みつき、きゅっきゅっと妖しく擦り上げてくる。
にちゅ、にちゅ、と何十匹、何百匹というミミズが絶棒を這い回る感触に、望は思わず悲鳴を上げた。

「ひぃっ!」
「ふふふ……まだこれからよぉ」

 ここで女の中の動きが変化した。
根元から先にかけてぐいぐいと絞り上げていく動きが加わってきたのだ。
望はその淫靡な動きがもたらす感触に我知らず声を漏らしてしまった。

「あ、あひ……あぐ……はぁん!」
「んっふふ……どう? そろそろじゃない?」

 最高の女のいうとおりだった。早くも腰の奥が痺れてきた。
絶棒の根元に濁流が押し寄せ、発射させろ、発射させろという雄たけびを上げ始めた。

――だ、ダメだ……出したら駄目な気がする。で、でもぉ……

望は出して楽になりたい欲求と、出したら破滅する、という自分の予感との間で苦悶した。
だが、女は自分は望に跨ったまま全く動かないで、さらに望を追い込みにかかった。

「さあ、もうお遊びはここまでよ。フェーズ1は間もなく終了!」
「フェーズ1って? ……ひ、ひやあああああ」

 最高の女が望の胸に手を置いた。そして乳首に指を這わせながら僅かに中を締めた。

「あ、そこはだめ、ダメ……いやああああああああああ!」

乳首を這う指のもたらす妖しい刺激に気を取られている隙に、発射の予感に震える絶棒が左へ、そして右へと大きく絞り込まれていった。
そして、張り出した部分の下や、首の裏の一番敏感な部分を容赦なく擦り上げられた。
ついに望は最高の女の中で大噴射を遂げてしまった。

――どぷぅっ! どくん! どくぅ、どく……とぷ……
「はうぅ……」
「よーしよし。いいコねぇ。……フェーズ1終了。続いてフェーズ2、いくわよ」
262絶望戦隊ノゾムンジャー 15:2007/11/13(火) 08:29:40 ID:f9AZFRll
     ☆

 発射間もない絶棒を、再び最高の女の淫卑なテクニックが襲った。
柔らかな極小のイボが無数に集まって、敏感になっている亀頭や茎を擦り上げてきたのだ。

――ぐにょ。ぐり。……ぐにゅぐにゅぐりぐり……
「ひぁ!? 止めて、出したばかりで今は……止めて下さいぃ」

 女は嘲るように言った。

「ふふっ、もう遅いわ。お前はね、常人の十倍の精力を発揮するように改造しちゃったわよ」
「へ? いやだああああぁぁ!」
「毎日だれかと交わってないと、気が狂って死んじゃうかもね。
 まあ、〆布家に婿入りすれば問題ないから」
「そ、そ、そんなのイヤですぅ! 元に戻してえぇぇ!」
「次は、お前の汚らしいペニスから、絶えず媚薬を分泌するように改造してあげる。
 フェーズ2、とくと味わいなさい」

女の言葉が終わるか終わらないかといううちに、イボイボの動きが激しさを増してきた。
「はあああ、駄目だめダメえええぇぇぇ!」

望は思わず悲鳴を上げた。
だが、既に改造手術フェーズ1が効果を発揮しつつあるのに加え、ただでさえ敏感になっているところを悪魔のテクニックで蹂躙され、
望はただただはしたない喘ぎ声を上げるだけの哀れなピエロと化していた。
その上、最高の女がついに望の上で動き始めた。
どことなく優雅で、だがとてつもなく卑猥な腰振りダンスがさらに望を絶望的な快楽の虜にしていった。

「はぅ……ああ……ああ!」
「さあ、どうかしら? ……ふふっ」

 最高の女が極上の微笑を浮かべながら望に問い掛けた。
望は見るともなく女を見上げた。

 男心を蕩かせる極上の微笑。
腰の動きに合わせて揺れる極上の乳房。
色白なのにほんのり赤味が差して、輝くように美しい極上の肌。

 目を閉じてみても、ますます快感が増すばかりなので慌てて開くと、極上の組み合わせが望の視界を覆う。
どちらにも逃げ道はなかった。

     ☆

 いつの間にか手に緑の液体を注いだグラスを持っていた女が、それを口に含むと望に覆い被さってきた。
そして望の顔を手で押さえつけると唇を合わせてきた。

「いやだ、止めてくだ……わむぅ!」

 女は無言のまま、望の口内に液体を流し込んだ。
濃厚な甘さが口の中を、そして喉を焼いていく。
望は為す術なく洗脳用の薬剤を飲み下していった。

 すぐに上半身がカアッと熱くなり、思考に濃い霞がかかってきた。
女に顔を押さえつけられたままの望は、とろんとした目つきで女の顔を見つめた。
最高の女の目が赤く光った。
望の体から力がすうぅっと抜けていった。
263絶望戦隊ノゾムンジャー 16:2007/11/13(火) 08:31:39 ID:f9AZFRll
「よしよし、いいコね……
 糸色望。お前はこれから私の忠実な僕となるのよ。よくって?」
「……はい、ご主人様……」
「私の言うことなら何でも聞ける?」
「……はい、ご主人様の仰ることなら何でも従います」
「よろしい。……では、私の中で果てなさい。
 主人の中で出せるのよ。光栄に思いなさい」
「はい……ご主人様の中で果てます。ご主人様の中で出せるのを光栄に思います……」

 最高の女の動きが激しくなった。
腰を上下に、そして前後に振る。回転を加える。ひねる。
中のイボイボも、リズムをもって絶棒を扱きたてる。

「ふふっ……イク時は言うのよ」
「はい、ご主人様……あああ、もう、もう……もうイキますううぅぅ」
「よおし……ん……私も一緒にイってあげるからね。
 ……くぅ……はうぅ……ああっ、はぁああん、もうイク、イクうううぅ」
「う……はぅ……わ、私も、イキますうううううぅっ!」
――どくぅっ! とぷ! どくぅ、どく……

     ☆

 こうして改造手術フェーズ2も滞りなく終了した。
改造手術はこのままフェーズ3まで続行された。

 哀れ、望は敵の最高幹部である最高の女にこってり絞り取られた挙句、洗脳までされてしまったのである。
囚われの身となっているノゾムンジャーに、彼を奪還し、洗脳を解く手立てはあるのだろうか? 
負けるな、僕らのノゾムンジャー! 燃え上がれ、僕らのノゾムンジャー!

     ☆     ☆

 望を奪還する任務に失敗し、逆に元同級生によって拉致されたノゾムンジャーのトップ3は、〆布家のある部屋に監禁されていた。

 三人は、部屋の中央に据えてある透明の低い台に固定されている。
無機質な部屋には他にも寝台が数台並んでいたり、隅に薬品棚や器具庫や拷問用具が置かれていて、不気味な雰囲気を醸し出している。

 小さな正三角形の台のそれぞれの辺に沿って、千里、あびる、愛の各人が固定されている。
両手に枷がはめられ、天井から吊り下げられている。
足首にもがっちりと枷が食い込んでいて、容易に動かせそうにない。

三人は気を失っている。
拉致された時のままのようだが、着衣を全て剥ぎ取られ、全裸の状態である。
どの三人からも、他の二人の様子が見えるように配置されている。

     ☆

 ふと三人とも目が覚めた。
すぐに、自分達が全裸で拘束されていることに気付いた。

「み、みんな無事って……いやあぁぁぁん!」
「く……」
「あう……。」

 脱出しようともがいているところに最高の女が現れた。
素肌の上に、薄桃色のシースルーのローブを纏っている。
左腕には色とりどりの宝石を散りばめた豪華な腕輪をしている。

「あら、お目覚め? 気分はどう? ノゾムンジャーのみなさん」
「くっ……」
「ここから離しなさいよっ!」
264絶望戦隊ノゾムンジャー 17:2007/11/13(火) 08:33:41 ID:f9AZFRll
「あらあら……男の子の前で恥ずかしい姿を晒したあげく、任務に失敗して敵のアジトに連れてこられたくせに、生意気な口を利くわねえ」

こう言いながら、女は千里の乳首を抓り上げた。

「あうっ!」
「すると、ここは?」

あびるが尋ねた。

「そうよ。私たちの組織の地下にある、特殊実験室。まぁ、拷問室とも言うわね」
「うう……」
「あなた方がおネンネしている隙に、コスチュームは全部回収したわ。今分析班が機能を調べているところ。
 それに、あなた達から細胞のサンプルも採って遺伝子を解析しているから、近い内にクローンをたーくさん造ってコスチュームを着せるわ。
 もちろん、私たちの戦闘員にするわね」
「な、何を!」

 卑劣な計画に思わず抗議の声を上げたノゾムンジャーだったが、最高の女はさらに悪辣な計画を三人に告げた。

「とりあえず、これからお前たちも私たちの実験に参加して貰うわ。
 ありがたくお思いなさい」
「何をバカな!」
「あの……いったいどんな実験なんですか」

 愛が恐る恐る尋ねた。

「あら、あなたは物分かりがいいのね。
 簡単よ。出来立てほやほやの改造人間の相手をしてもらうわ。
 改造がうまくいっているか、データを取りたいの」

――改造人間……まさか!?

あびるの脳裏を、いやな予感がよぎった。

――まさか、隊長がもう改造されているのでは……

     ☆

「データを取り終わったら、お前たちには用はないからね。
 お前たちを攫ってきた頼もしい戦闘員に褒美として下げ渡すわ。
 今の坊やたちの様子、見てみるぅ?」

 最高の女の言葉が終わると同時に、天井に大型のスクリーンが浮かび上がった。
三分割された画面のそれぞれに、等身大の白い女のコのフィギュアを愛撫している裸の若い男性……准、影郎、国也の姿が映った。
皆虚ろな目をしてフィギュアと一心に戯れている。

「あ、あのフィギュアは……」

愛が怯えた声を出した。

「そう。お前たちの等身大フィギュア。
 おネンネしている間にレーザーで隅から隅まで型を取って造ってみたの。
 植毛もしてあるし、抜群の再現率だし、アソコの中まで特殊シリコン製だから、手触りは人体そのもの。使い心地も抜群よぉ」

265絶望戦隊ノゾムンジャー 18:2007/11/13(火) 08:36:05 ID:f9AZFRll
 見るともなしに見ると、准は千里のフィギュアに後ろから抱きつき、盛んに薄目の胸を揉みしだいている。
そして腰を白い尻にすり付けながら、うなじを露出させ接吻している。

 影郎はあびるのフィギュアに正面から挑みかかり、豊かな胸に顔を埋めている。
埋めている間も、指を乳房に食い込ませて盛んにモミモミしている。
よく見ると、太腿に自分のものを挟んで腰を前後させている。
そのカクカクした動きは見ていてまことに滑稽だ。

 国也は愛のフィギュアをきつく抱きしめ、全身にキスの雨を降らせている。
かと思えば、両足首を掴んで左右にぐいっと開き、奥を覗き込んだりもしている。
たまらなくなったのか、本物の愛に似せて薄く植毛されている陰部にムシャブリつき、ベロベロとはしたなく舐め回し始めた。

 三人とも、まるで自分が彼らに愛撫されているような、奇妙な感覚に陥った。

「あの坊やたちにはちょぉっとキツいお注射をしてあるから、しばらくはあんな感じね。
 実験が成功したら、あの子たちの相手してあげてね」
「くう、こんなことをして許されると思ってるの?」

千里がいきり立った。だが、最高の女はどこ吹く風といった調子だ。

「さあ、どうかしら」

     ☆

 ここで、最高の女が薬品棚から怪しげな薬品を取ってくると、三人の全身にその薄くピンクがかった、やや粘り気のある液体を塗り込み始めた。
ただ塗るだけではない。
ねっとり、じっくりと執拗に塗り込みながら、とらわれの三人を悪魔の指技で喘がせるのである。
女の指が胸や敏感な秘密の箇所にまで容赦なく魔薬を塗り込めていくにつれ、思わず三人が喘ぎ始めた。

「く……う……」
「んんっ……む……」
「いやぁ……あんっ……」

 三人の喘ぎ声を楽しそうに耳にしながら、女が口を開いた。

「ふふっ……どう? 〆布家特製ローションの味は?
 中に皮膚吸収性の媚薬が入っているの。
 今、体がほてって仕方がないはずよ」
「くうぅ……」

 千里が口惜しがる。だが、女の言うことは事実だった。
体中がほてっている。
人肌を、人の手によって触られることを強烈に欲している。
つい望と愛を交わしたときのことを思い出してしまう。
あの接吻、あの愛撫、あの律動……

――いけない、こんな時に私ったら!

そんな自分を打ち消すかのように、千里はキッと最高の女を睨み付けた。
だが、女はそんな千里の頭の中などお見通しだと言わんばかりに、ちらっと流し目をくれると、さらに言葉を続けた。

「それに、その中は特殊な微生物入りよ。
 その子たちは微弱電流を流すと、ある種の動きを再現できるようになっててね。
 早い話、こちらの養育次第で、任意の動きとシンクロできるのよ。
 ほら、こんな風に」

 女が腕輪の宝石に軽く触れた。
とたんにディスプレイに表示されたままの若い洗脳された三人の動きがノゾムンジャーの体を襲った。
266絶望戦隊ノゾムンジャー 19:2007/11/13(火) 08:37:51 ID:f9AZFRll
     ☆

「きゃあん!」
「な……何これ」
「ああ、いやああぁん!」

 傍目には、三人の少女が全裸で悶えているようにしか見えない。
その光景を楽しそうに眺めながら、最高の女が声を掛けた。

「どう? 元同級生の愛撫は。先生とどっちがお上手かしら」
「うぐ…はぅっ……ちょっと…止めさせなさいよ!」

 女は答えず、三人の胸を順不同に柔々と揉み始めた。

「あっ! ちょ、ちょっとぉ。……」
「……ん……くぅ……」
「あん……ゃぁ……」

 無造作なようでいて、周到な技術の下積みのある愛撫の仕方であった。
三人の体内に、拉致される直前の火照りが戻った。

「みんな、お肌がピチピチしてるわ。さすがに十代の小娘の肌だけあるわねぇ」

そう呟きながらも、女の指が、次々とノゾムンジャーのトップ3のバストに妖しげな技を仕掛けて、彼女たちを喘がせる。

――どうして? どうしてなの?

 魔法の指の作用で、ただ胸をいじられているだけなのに下半身まで疼いてたまらなくなる。
ひょっとしたら、もう濡れているかもしれない――

三人がこんなことを思い始めた頃。

「さぁーて、一番えっちでハシタナいコは、誰かな〜?」

魔法の指が、今度は三人の恥ずかしいところを襲った。

「ひゃあぁん!」
「そ、そんなとこ触らないで!」
「ぁぁぁぁ……ぃゃぁぁぁぁ…………」

――ぴちゅ、ぴちゅ、ぬちゅ……
 ――クチュクチュクチュ、クチュクチュクチュ……

 たちまち子猫がミルクを飲むような微かな音がし始めた。

「あらあら、みんな感度いいのねぇ。隊長さんと、やりまくりなのかな? 
 それとも毎日一人で指遊びしてるのかしら」
「きゃう……あぁん!」
「はうン……あふ……」
「いやいやン……ぁぁ……」

 からかいを含んだ調子に反応する余裕はなかった。
三人とも、最高の女の指が自分の秘部で蠢く度、その悪魔的な快感に我を忘れそうになる。
拘束された身体を捩り、たまらず嬌声を漏らしてしまう。
三人とも、蜜液が数筋、太腿を伝わり落ちていた。
267絶望戦隊ノゾムンジャー 20:2007/11/13(火) 08:38:53 ID:f9AZFRll
     ☆

「ほらほら、どうしたの? ノゾムンジャーって、みんなえっちで淫乱なコばかりなのかなぁ?」

 最高の女は非情な指の動きを速くした。

「くっ……」
「はぁうん……い、いやぁあ……」
「ひゃうん!」

 愛は色白の全身を真っ赤に染めて、しきりに首を左右に振っている。
千里の黒髪が、あびるのお下げが、女の指の動きにあわせてはらはらと揺れる。
抵抗の余地はまるでなかった。
そのままあっけなく、三人は敵の女首領の手で強制的な絶頂を極めさせられようとしていた。

「さっきから生意気な口を利いたお前から最初におイキなさい。……ほーらほら」
「ああ……いやあああ!」

 女は中指を千里の中に埋め込むと、奥にある秘密のスポットをいとも易々と刺激した。
――こりこりっ!
「きゃあああああ!」
――ぴゅううっ! ぴゅっ、ぴゅっ!

 たまらず千里は潮を吹いてしまった。
透明な露の軌跡が愛まで達し、愛の腹から太腿までを濡らしていく。

「まだまだ。こっちの包帯娘にもひっかけておやり」
――こりこりっ!
「あぐぅ……はああああああん!」
――ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅううううっ!

 最高の女の悪魔的な指技によって、再度千里自身が潮を吹いた。
女の目論見どおり、今度はあびるの胸から太腿にかけて大きく透明な蜜が飛び散った。
あびるの体に巻いてある包帯にも、蜜がぴっと降りかかり、その部分の色をくすんだものにした。

「あらあら、まるでお漏らしをしちゃったみたい。締まりのない小娘だこと」
「ああ……言わないで……。」
「若いくせにそんなに好き者な娘はさっさとおイキなさい」
――クチュクチュクチュ!
 ――ぐりぐりぐりりぃ!
「ひやっ! やあ、やん、やああああああっ!」

 恐るべきは二本指の魔力である。
中指で胎内をかき回され、親指で芽をぐりぐり押しつぶされた千里は体をガクガク震わせた。
天井と手の枷を繋ぐ鎖がガチャガチャ鳴った。

「いやああああああああああああん!」

 千里は背を大きく仰け反らせると、一瞬全身を強ばらせた。
そしてがっくり首を折った。全身から力が抜けたようだった。

 ついに千里は敵の首領によって強制的にどす黒い高みを極めさせられたのだった。
268絶望戦隊ノゾムンジャー 21:2007/11/13(火) 08:40:27 ID:f9AZFRll
     ☆

「ふっふふ、次はお前たちの番だよ」
「あ、ああ……」
「く……」
「うーん……お前はまだ目が死んでいないわね。次はお前よ。包帯娘」

 千里の次にあびるがターゲットにされた。
女が奥の棚から緑に染まった包帯を持ち出してきた。

「それは……」

あびるが思わず声を出した。

「勘がいいコねぇ。
 そうよ。お前の包帯をちょっと貰って、素敵なおクスリに漬けておいたの。
 今マキマキしてあげるわね」

 女は軽口を叩きながら、あびるの胸に緑色に染まった包帯を巻き始めた。
巻き終わって間伐をおかず、女の手がふっくらとした裾野をやわやわと揉み始めた。

「ん……」
――へ、変よ!? あう……

 あびるは、単に乙女の膨らみの端の方を揉まれているだけなのに、快感が尋常でないのに愕然とした。
すぐに女が声を掛けてきた。

「どぉ? 感じるでしょう? この薬を皮膚から吸収すると、そこを刺激されただけでエクスタシィに達しちゃうようになるの。……こんな風にね」

 女の手が、一気に激しく揉み込んできた。指が容赦なく乳首をなぞって来た。

「はあああああん!」

 あびるは思わず大声で快感を訴えてしまった。

 だが、女は手加減を一切しない。

――ぎゅむっ! ぎゅむっ! ぐにぐにぐに……
――くりくり。くりくりっ。くりくり。……
「あぐ……あぐ……」

 揉まれる度に、あびるの感じるポイントを的確に刺激されている。
すっかり大きくなった乳首を摘まれ、捻られ、指の腹で押しつぶされる毎に、目の前で極彩色の火花が何重にも飛び散る。

 腰が浮いてきた。
胸から発する激烈な快感は当然下半身にも作用し、中を潤ませているはずだったが、あびるにそれを感じる余裕はなかった。
瞬く間に体の中の透明な風船が膨らんできたかと思うと、あっけなく弾けた。

「ああああああああん! あぅ……」

ニ三度体を痙攣させた後、あびるは一瞬硬直した。
お下げがぴょこんと跳ねた。そして数秒後、がっくり首を折った。
269絶望戦隊ノゾムンジャー 22:2007/11/13(火) 08:42:36 ID:f9AZFRll
     ☆

 あびるは全身をほのかに桃色に染め、大きく息をついている。そんなあびるに女が声を掛けた。

「ふふふ……どう? 胸だけでイッた感想は」
「…………」
「これで許されると思ったら、大間違いよ」
 女がまた緑色に染まった包帯を持ち出してきた。今度はそれをあびるの両足の間に通すと、いきなり上へ持ち上げた。

「あぐ……く、食い込む……」

 あびるの呟きを無視し、包帯を前後に動かし始めた。

――シュッ、シュッ、シュッ、シュッ……
「ああ……いや、いや、いやああぁぁっ!」

 自分の秘所をざらついた布が往復する感触に、あびるは気が遠くなりそうだった。
緑の魔薬のせいもあるのだが、気の狂いそうなほど気持ちがよかったのだ。

――こ、これ以上続けられたらもう、もう……

 強烈な感覚の連続に、あびるの太腿がぴくぴくっと痙攣した。
 だが、女の責めはこれで終わることはなかった。
包帯越しに、あびるの敏感な芽をぐりぐりっと指で押しつぶしてきたのだ。

「ひゃううん!」
 あびるは思わず仰け反った。
ざらざらとした感触が、望に愛撫されるとき以上にあびるを喘がせた。

「ふふふ……お前も敏感な質のようね。さあ、仲間の前ではしたなくおツユを垂らしながらイッちゃいなさい」

 女は中指をあびるの中に埋め込むと、千里の時と同じように、奥のスポットを絶妙の動きで刺激した。
――こりこりっ!
「ひゃあああああ!」
――ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅううっ!

 あびるも潮を吹いてしまった。
露の迸りが気を失ったままの千里にまで達し、彼女の翳りから太腿までを濡らしていった。

「よしよし。いいコね。こっちにも掛けてあげないと、不公平だからねぇ」

 女が再度スイートスポットを強めに刺激した。
――こりこりこりっ!
「ああああ! ああん!」
――ぴゅううううっ! ぴゅううっ!

 再度の刺激で、あびるは派手に潮を吹かされてしまった。液の軌跡は、女の目論見通り、愛の胸から下半身までの広い範囲に達した。

「じゃあ、お前は最後まで包帯でイキなさい。ほーらほら!」

 最高の女が包帯を指に絡めたまま、あびるの中を撹拌し、若芽を押しつぶした。

――くちゅくちゅくちゅ……
 ――ぐりぐり。ぐりぐり。ぐりぐりぃっ!

「あああああああああああああああっ!」

ついにあびるも最高の女の魔手によってどす黒い絶頂へと連れて行かれてしまった。
あびるは太腿に蜜を幾筋もこぼしながら気を失った。残るは愛一人である。
270絶望戦隊ノゾムンジャー 23:2007/11/13(火) 08:44:39 ID:f9AZFRll
     ☆

「あ……あ……」

 目の前で、千里とあびるの二人が壮絶に達した様子を見せ付けられ、愛はパニックに陥っていた。
自分もああされたらどうなるのだろうという思いと、一方では自分も同じようにイかせてほしいという思いが交錯していた。
そんな愛に、最高の女が妙に優しい声色で尋ねた。

「お前は隊長……先生とはもう経験があるの? 素直に答えたら優しくしてあげるわよ」

 愛は顔を真っ赤にして俯いた。
女の目がすうっと細くなると、さっと愛の股間に指をくぐらせ、敏感な芽をぐりぐりし始めた。

「ほらほら! 望さんにここを愛してもらったことがあるの? どうなの? 言わないと一生このままよ」
「ひゃああああん! あう、あう……望さんと、……あうん!
 ……えっちしたこと、…あん!……あります」
「ふぅん……最初からそう言えばいいのよ」

 女の指の動きが緩やかなものになった。
だが、別の指が愛の後ろの蕾を撫で始めた。

「こっちはどうなの?」
「え……あの、あの」
「言わないと、こうしちゃうわよ」

 蕾の表面の可愛らしい皺を撫でていた指に力が篭ってきた。だんだん中にめり込みそうになった。

「いやぁ! か、堪忍してください……あの、まだ、で……す」
「そう、まだされてないのね……」

 いったん女の指が後ろから離れた。
愛はほっと一息ついた。

 だが、そんな愛の気持ちを打ち砕くような感触が愛を襲った。
尻たぶが開かれると、何かぬめっとしたものが自分の後ろに触れた。

「じゃあ、これから私がちょっと開発してあげる」

 女が愛の後ろにしゃがみこむと、後ろを舐めてきたのだった。

――ちろちろ。れろれろ。ちろちろ……
「ひゃあああん!」

 異様な感触に愛は身を捩った。手を吊っている鎖がガチャガチャ音を立てた。
だが、女は構わずに愛撫を続行した。それどころか、前の愛撫まで再開した。

――ちろちろ。ちろちろ。れろれろ。
――くりくり。ぐりぐり。くりくりぃっ!

「あん、あん、あん……いやぁ、やぁ、やん……」
「ふふっ……思ったとおり、お前は三人の中では一番敏感なコだね。ほら、二人に掛けられたんだから、こんどはお前が掛けておやり」

 そう言うと、女は空いた指を愛の中にすうっと差し込んで他の二人と同じ弱点を突いた。

――こりこり! こりこり!
 ――ちろちろ。ちろちろ。
――くりくり。ぐりぐり。
「ああ……はぁん……いやああああああ!」
――ぴゅううううっ! ぴゅうううううっ!
271絶望戦隊ノゾムンジャー 24:2007/11/13(火) 08:46:06 ID:f9AZFRll
 愛は華奢な風貌に似ず、大量の蜜を迸らせた。
千里とあびるの二人に掛けるのに十分な量であった。
そして、そのまま愛は体を震わせながら達してしまった。

 こうして、ノゾムンジャーの精鋭三戦士は最高の女の毒牙にかかり、仲間に自分の恥ずかしい蜜をたっぷり飛ばしたあげく、揃って悪魔的な絶頂を体験させられたのである。

     ☆     ☆

哀れな三戦士の愛汁がたっぷり付着した指を、彼女たちに見せつけるかのようにぺろりとなめ、軽くしゃぶった後、最高の女が言った。

「よしよし……だいぶ本気汁も出てる。かなりほぐれてきたわね」
「……」
「う……うう」
「あ……ああ」

 三人ともまだ体中に残り火がくすぶっていて、満足に声も出ない。

「では、これからお前たちには実験台になってもらうわね。
 改蔵手術を受けたてホヤホヤの改造人間の相手になってもらうわ。
 きっと死ぬほど気持ちいいと思うわよ。
 ま、本当に死んじゃうかもしれないけれど……
 さあ、入ってらっしゃい」

 女が後ろ向きに呼びかけると、壁が音もなく左右に分かれ、向こう側から背の高い痩せ形の裸の男がよろよろと入ってきた。
望だった。

「せ、先生!」
「隊長!」
「あ、あ……大丈夫ですか?」

 望は見たところ、背丈や体つきはなんら変わっていないように見える。
だが、頭に小型のヘッドギアを付けていて、何よりも目つきが悪くなっている。
元々の、いい所のボンボン風でどことなくヘタレで、それでいて根は生真面目な善人ぶりを思わせる目つきが見事に消え去っているではないか。
何より、目に生色がない。完全に何かに操られている目だ。

「お前たちの愛しい隊長は、予備的に性機能の一部を十倍に増幅させてるわ。
 とりあえず、精力が常人の十倍よ。
 スペルマも多くて濃いの。
 そしてペニス表面から少量の媚薬を分泌するようにしてあるわ。つまり」

ここで女がにっこりと微笑んだ。

「彼とえっちしたら、みんなとりこになっちゃうわね」
「……」

 ノゾムンジャーは声もなかった。
女が言葉を継いだ。

「今、望さんは軽く洗脳してあるの。
 ヘッドギアでいろいろとホルモンバランスを制御しているんだけど、あなたたちとえっちしている間にいろいろバランスを試させてもらうわよ。
 これでうまくいくようなら、二十倍にまで精力を高めてみるわ」
「うう……」

 千里が、あびるが、そして愛が望の顔とヘッドギアに目を遣った。

「これで分かったわね。
 ヘッドギアに送り込む内容次第で、彼を廃人にもできるし、強制的に死を迎えさせることも……
 くれぐれも軽はずみな行動は謹んでね。抵抗なんかしちゃダメよ。
 でないとお前たちの愛しい望の命は保証できないわ」
272絶望戦隊ノゾムンジャー 25:2007/11/13(火) 08:47:31 ID:f9AZFRll
 ここで三人の枷が外された。
三人ともその場にくず折れた。動こうにも、体が言うことを聞かなかった。

     ☆

「さあ、まずあの生意気だった小娘から犯っておやり」

 女が、手にしたグラスに注いである緑の液体を口に含むと望に接吻した。
望を洗脳するのに使った、あの魔の薬剤を再び望の口に含ませたのだった。
望はその液体を口に含んだまま、ゆっくりと千里に向かってきた。
そして床にへたり込んでいた千里を抱え上げると、奥の寝台に組み敷いた。
このまま正常位で犯すつもりらしい。

「あ……ああ……。」

 望が千里に顔を近づけてきた。
口中の液を千里に口移しで飲ませようとするのに違いなかった。
千里は弱弱しく抵抗しようとした。
だが、迂闊にも望の目を見てしまった。
生気がないのに鈍く赤く輝く瞳を見つめている内に、僅かな抵抗も弱まり、ついに口を塞がれた。

「むぅ……ん……。」
――ああ、甘い……

 千里はなす術のないまま、緑の魔薬を飲み下していった。
濃厚な甘ったるさが、千里の舌や喉を焼いた。
たちまち体中に、そして頭の中にまで濃い白霞がかかってきた。
ノゾムンジャーとしての明晰な思考力が奪われ、千里は望の従順なペットと化してしまた。

「千里。お前はオレの虜だ。いいな……お前はオレの言うことが聞けるか?」

 目はうつろなのに、声は少女の心を蕩かせるソフトヴォイスだった。
千里は陶然と答えた。

「はい……私、望様のおっしゃることなら何でも従います。」
「ん……いいコだ」

 望は再度千里と口を合わせた。千里の方から舌を絡めてきた。

 望が千里の全身に手を這わせていたが、やがて胸に手を伸ばしてきた。

「あん……気持ちいい……。」

 千里は思わず呟くと、早くも脚を大きく開き、そのまま望の腰に絡めた。
通常の時には絶対にしたことのない仕草だった。
とにかく、今は早く望の物で胎内を満たしてほしかった。

「望様。お願いです。もう、もう……。」

 千里が顔を真っ赤にして頼むと、望もそれに応えるかのように千里の両脚を抱え込んだ。
そしてそのまま挿入していった。

「はあああん!」

 絶棒を挿入されただけなのに、体の隙間を埋められた喜びで心が満たされた。
やがて望が動き始めた。
千里の全てを知り尽くした動きだった。
望が動くたびに、体中の強張りが解け、心が蕩けていくようだった。
273絶望戦隊ノゾムンジャー 26:2007/11/13(火) 08:49:09 ID:f9AZFRll
――ああ……私、もう望様から離れられない……ずうっと、ずうっとお慕いします。
「あぁ……あん! す、素敵です! はあぁん!……」

 同じ室内にギャラリーがいることなど、意識の底から消え去っていた。
そのまま情熱的な交わりがどれほど続いたことだろう。
千里は望の迸りを胎内で感じた。

「ああああああああぁぁぁぁぁっ!」

 千里も主人の後を追って果て、気を失った。

     ☆

 最高の女が千里を寝台から退かせると、あびるを連れてきた。

「さあ、望。……」

 最高の女が目配せをし、腕輪の宝石を触った。

「……はい。仰せのままに……」

 望はあびるを寝台に上げ、四つん這いの体制をとらせた。
そしてあびるの下に潜り込むと、腰を下から抱え込み、あびるのアヌスに舌を這わせ始めた。

「いやん! ……あぁ……」

 たまにしか愛されないところをいきなり責められ、あびるは喘いだ。
たまらずに腰を捩った。
だが、望が腰をしっかりと抱え込み、どこまでも正確に追尾しては丁寧に舌先を這わせいくので、背徳的な快感からどうしても逃げ出すことができなかった。

「ん……あぅん……」

たまらず、お下げが二度、三度と揺れる。
豊かな胸もぷるんぷるんと揺れる。
思わず目の前の絶棒を口に含んだ。

「むっ……」

望がうめく。

「よーし、もう十分解れたでしょう。
 ちょっとお退き」

 いつの間にか、最高の女が寝台の側に立っていた。
手に緑色のあの薬を満たした注射器を持っている。

「このコには小腸から吸収させてやるわ。
 その方が効き目が早く現れるし、長く保つから。
 ……動くんじゃないわよ。怪我するからね」
「え?……ああ、いや……」

 快感で頭がぼおっとしているところに、いきなり冷たいシリンダーの先を当てられ、あびるはうろたえた。
いつのまにか望は自分の下から消えていた。

――つぷっ。
「あ」
「ほぉら……入っちゃったわ。
 じゃあ、たっぷりお腹の中から飲んでね」
「いやあ……」
274絶望戦隊ノゾムンジャー 27:2007/11/13(火) 08:51:00 ID:f9AZFRll
 女が指先に力を込めた。みるみる魔薬があびるの腸内に吸収されていった。

「ふふふ……もうそろそろ……よーし、これで……全部入ったわ。どう? 気分は」
「はぅ……」

 あびるは言葉を発することが出来なかった。
手足から今にも力が抜けていきそうだった。

「じゃあ、望。……犯っておしまいなさい」
「はい、ご主人様」

 望がバックからのしかかってきた。

「あ……あ……」

 あびるが動けずにいると、絶棒がもうあびるの秘裂を割って入ってきた。
そして望の手ががっしり腰を掴み、最初から激しく動き始めた。

「ひぅ……あん、あん……あぅん!」

 心では必死に抵抗するものの、体がまったく言うことをきかなかった。
望が体の奥を突く度に、あびるの心と腰がくだけてきた。
眼前の中に無数の花火が上がった。

 望が腰を遣ったままで胸を下から掬い上げてきた。
そしてタプタプと音をさせて揉みしだいた。

「ひゃあああああうん!」

 先に最高の女に辱められた際の薬がまだ乳房にたっぷり沁み込んでいた。
あびるはひとたまりもなく絶頂へ駆け上っていった。
ぎりぎりっと絶棒を強く絞り上げた。

「む、うぐぅっ!」

 望は若い締め付けに耐えられず、あびるの中に大量の絶流を暴発させてしまった。
あびるもその発射を感じとり、激しく絶頂に達した。

「はあああ……あああああぁぁん!」

     ☆

 達してもなお、あびるの中は絶棒をぐいぐい締め上げている。
最後の一滴まで漏らさずに吸収しようとするかのようだ。

 だが、望の様子が変だ。
荒い息をついていたかと思うと、そのままぐったりとあびるに凭れかかった。
女が望の横腹を蹴ると、望はそのまま仰向けに倒れた。
両手をだらしなく広げているが、絶棒は屹立したままであった。

「先生! あ、隊長!」

 愛が思わず声を掛けた。

「ねえ、あなた、隊長を助けたい?」

 最高の女が愛に悪戯っぽく尋ねた。

「はい! お願いします。出来ることなら何でもしますから、お願いします」
275絶望戦隊ノゾムンジャー 28:2007/11/13(火) 08:52:36 ID:f9AZFRll
 愛は相手が敵の首領であることも構わず懇願した。
最高の女はしばらく考えていたが、やがて交換条件を出してきた。

「いいわ。それほど言うなら、助けてあげる。ホルモンバランスを安全な範囲に戻してあげるわ。その代わり……」

 ここで、女が愛に突きつけた交換条件は、愛にとって過酷なものであった。

「あなたもこの望と愛を交わしたんでしょう? 
 じゃあ、これからこの横たわっているタイチョーの上に乗ってみなさい。
 そして、きちんとイかせてみなさい。もちろん、あなたも本気でイくのよ」
「えぇ〜!?」

――ひ、人前でえっちをするなんて……

 愛は戸惑った。だが、最高の女は容赦なかった。

「どうするの? 自分から乗って、本気でイきっこしなさい。でないと、望さんはもちろん、あなたの仲間の命はないわよ。それでもいいの?」
「くぅ……」

この卑怯な脅迫に、ついに愛は屈してしまった。

 望の腹におずおずとまたがる。
そして腰を浮かすと絶棒を握り締め、徐々にそこへ腰を落としていく。

「く……ん……」

 愛が絶棒を全て胎内に収めたのを見て、最高の女が言った。

「ほらほら。見ててあげるから、しっかり動くのよ」
「ああ、いやぁ……見ないで……」

 愛が動き始めた。

――お、お互いに達しないと……一番感じたときの動きを……

 愛は望の腹に軽く手を置くと、腰の動きに変化をつけ始めた。

「あ……あん……」
――ああ、人前で、なんて破廉恥な……でも、でも……気持ちいいっ!

 愛が動くにつれ、ずちゅっ、にちゅっという水音が微かに響いてきた。

「ふぅん?……」

 女が見守る中、愛は本気で動いていた。
ただただ共に達することだけを考え、夢中で腰を振っていた。
いつの間にか、可愛い喘ぎ声を絶えず発していた。

「ああ……ん……っうん……あん!」

 動きが激しくなった。

「あん、あん、あっ、あぅ、……はぅぅ、はああああああああん!」

 顔を真っ赤にした愛が、ぐったりと望に凭れかかった。
276絶望戦隊ノゾムンジャー 29:2007/11/13(火) 08:54:01 ID:f9AZFRll
「どれどれ、お前はイッたようね。人前で恥ずかしげもなく達するなんて、なんて恥知らずなこと」
「ああ、……言わないで……」
「さあ、そこをお退き。望さんが達しているかどうか検査してあげます」

 最高の女が愛を退かせ、絶棒を覗き込んだ。
見ると、絶棒の先に、まさに今白い雫が一滴湧き出している。
愛の股間にも、望の迸りの名残が残っている。

「なるほど……二人とも、ちゃんとイッたようね」 

 最高の女の呟きを耳にする事なく、愛は気を失っていた。

     ☆

 こうして、ノゾムンジャーの3人は、改造された望とのえっちによって、頭にもやもやっとした濃い霞がかかったようになってしまった。
心の底では望を慕っているのに、体が無性に雄を求めて疼く。
あそこがひくぅ、ひくぅと時折ひくつく。
不意に蜜がしたたる。
――とにかく……したい!

このままでは、任務の遂行などおよびもつかない。どうなってしまうのか、僕らのノゾムンジャー! 負けるな、僕らのノゾムンジャー!

     ☆     ☆

「実験はまあまあ成功ね」
 データを手にした腕輪でザッピングしていた最高の女は、ノゾムンジャーの3人を寝台の端に四つん這いの姿勢で並ばせた。

「お前たちはもう用なしです。だから、お前たちを攫ってきた戦闘員に褒美として下げ渡します。
 坊やたち、入ってらっしゃい」

 女が後ろを振り返って呼びかけると、壁が音もなく左右に分かれた。少し間をおいて、全裸の少年が三人入ってきた。
そう、ノゾムンジャーを拉致した張本人である准・影郎・国也である。
三人の目はうつろだったが、足取りは確かである。
そのまま寝台の側まで来ると、准が千里の前に、影郎があびるの前に、国也が愛の前に仁王立ちになった。

「さあ、お前たち。自分がさらってきたお姫様に改めてご挨拶なさい」

こう最高の女が命じると、三人はうつろな目をしたまま、ノゾムンジャーたちの前で自分の肉棒を擦りだした。

「あ……ああ……」

 千里、あびる、愛とも目を背けることが出来ない。
恐ろしいことに、目の前の物が自分の体の渇きを癒してくれるのではないか、という思いさえしてくる。
中で思いっきりかき回して欲しい、心行くまで突いて欲しいという気持ちが湧いてくる……

「う……うぅ……」
「むふ……むふぅ……」
「ん……あひん……」

 准の完全に剥けきった肉色の肉棒、影郎の半ば覆われたピンクの若棒、そして完全に鞘に覆われ黒の細軸の万年筆のような形状で固くなった国也の欲棒。
それぞれの分身を、洗脳されたままの男子が一心に擦っている。
彼らもクラスメイトの前での自慰というシチュエーションに、いつも以上に興奮しているようだ。
望もいつの間にか起きあがっていたが、ただこの光景を眺めているばかり。
277絶望戦隊ノゾムンジャー 30:2007/11/13(火) 08:56:16 ID:f9AZFRll
「う……く……」

 やがて三人の肉棒がひくついてきた。と、真っ先に国也の息子が暴発し、愛の顔面に多量の精を浴びせた。

「あ……ああ……」

国也のそれは、愛の泣きボクロから鼻筋に至るまでべっとりとへばりつき、愛の端正な顔を汚していった。

「く、くく……おひょぉっ!」

 続いて影郎もあびるの顔面に発射した。しずくが眼帯にも容赦なく飛び散った。

「う……あぅ……」

遅れて、准も千里の整った顔面から黒い艶やかな髪にかけて白い毒液をぶちまけてしまった。

「ぐ……む……」

     ☆

 若い精を顔に浴びた囚われのノゾムンジャーに、女が残酷な命令を発した。

「ほら、何してるの。
 せっかくいいものを頂いたんだから、お前たちもお返ししなきゃ。
 ちゃあんと舐めて清めておやり」

こう言いながら、三人の秘所を後ろからくちゅくちゅと指でかき混ぜてきた。

「はああん!」
「望の命が……」

これを聞くと、三人娘は心ではいやがっているのに、目の前でまだ固さを保ったままの肉棒にふらふらと口を寄せ、含み始めた。
そうしてまるで望の絶棒に対してのように、舌で汚れを舐めとり、清めていった。

「うっふふ……こうなってはノゾムンジャーもただのアバズレ、そこらの淫乱女と変わらないわねえ」

最高の女が毒づくが、もう耳に入っていないようだ。

 男どもは気持ちよさそうに表情を緩めている。
若い肉棒はもうすっかり回復し、国也のものを除いてクラスメートの口内でその体積を増していた。
278絶望戦隊ノゾムンジャー 31:2007/11/13(火) 08:58:17 ID:f9AZFRll
     ☆

「さあ、仕上げよ……望」

望が頷くと、千里に言った。

「さあ、千里。お前の体でお客人を慰めて差し上げろ」
「……はい、望様、仰せの通りに。」
――ああ、千里ちゃん……だめぇ

 心の底では千里を止めたいのだが、あびるも愛も言葉にならなかった。
 望の言うことなら何でも従うよう洗脳された千里が、自分の貞操を踏みにじるお願いを自らしようとしていた。

「久藤君……どうか薄汚い雌豚の私で、気持ちよくなって、下さい。」

 ここまで言うと、再び四つん這いになって尻を高く掲げ、腰をふりふりしておねだりをしてみせた。
これに誘われた准は無言のまま千里の後ろに回ると、両手で腰をがっちり掴み、分身を露の滴る入口にあてがった。
影郎と国也もこれに従い、あびると愛の腰をぎゅっと掴むと、期待で打ち震える肉棒を蜜で濡れそぼつ入口に擦り付け、背中に覆い被さった。
三人とも、今にも挿入するばかり。
この体制からノゾムンジャーが逃げ出すのは不可能であった。

     ☆

 ノゾムンジャー、絶体絶命のピンチ! 
特殊能力も抵抗する力も奪われたまま、三人ともむざむざと元同級生の餌食となり、望一筋だった貞操を奪われ、踏みにじられてしまうのだろうか。
糸色家はなす術が無いまま〆布家の軍門に降ってしまうのであろうか。

どうなる、僕らのノゾムンジャー! 頑張れ、僕らのノゾムンジャー!

279 ◆n6w50rPfKw :2007/11/13(火) 09:00:27 ID:f9AZFRll
長くなったので、いったん休憩させてください。
続きは、数日内に上げることができればと思います。
280名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 16:51:40 ID:9kwQrq2S
sugeeeeee!
久しぶりに◆n6w50rPfKwさんのSSを読んだって気がするぜ!GJ!!!
281名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 20:39:17 ID:xiIDvvEX
臼井の攻撃に爆笑したww
GJ!!
282名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 22:22:56 ID:zTWAt7nY
GJ!楽しみにしてます。


それにしても、シリアス鬱長編からラヴラヴ、猟奇、コメディと、
このスレは書き手の種類が豊富ですな。
283名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 02:15:41 ID:AMo5M9Xh
GJ!
変身ヒロイン好きにはたまりませんな
284名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 06:02:56 ID:daWV2tOx
同じく臼井に爆笑
285名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 06:55:37 ID:1XbXKmyP
真性木野君に同情
286名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 20:15:38 ID:t3iravG5
小ネタ

絶望「逃走ー!!」
マ太郎「先生の生きたいオーラガ強くなっいくヨ」

可符香「逃げたって無駄ですよ先生
 少年漫画の鉄則!
 オーラを持つもの同士は引かれ合う!」

マ太郎「そういやこの前、甚六もオーラ出してたヨ」
絶望「え」

甚六「おや、糸色先生」
あびる「あ、言ったそばから現れた」

  ピキ―――――――――ン
可符香「あら大変、出会っちゃった」

甚六「・・・・・・・・・・・・」

 ゴ・・ ゴ・・ ゴ・・ ゴ・・

 ド ド ド ド ド ド ド ド
 ド ド ド ド ド ド ド ド
 ド ド ド ド ド ド ド ド

一同「( ゚Д゚)( ゚Д゚)( ゚Д゚)」

絶望「そ・・・
 それは違う方のオーラですから!!」
可符香「まあ大変・・・
 まさにオラオラバトル!!」
千里「うまいこと言ったつもりか!!」

甚六「・・・・・・・・・・・・」
絶望「いやあああぁぁぁぁ・・・」

to be continued…


藤吉「つーか、先生にも後ろに立つ人いるじゃん」
可符香「一人称は私だけどね」

(完)
287名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 22:11:47 ID:/k8gH43G
千里ちゃん何気にコスプレ似合うんだよなあ

魔女宅に不思議の国のアリスに
288名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 09:25:15 ID:DvrLWfmj
>>286
オラオラバトルwwうまい!!
まといがんばれ!!
289名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 19:47:58 ID:3YB/ehva
>>287
次はハイジとか赤ずきんとか
皿屋敷のお菊さんか貞子あたりで
290名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 21:53:14 ID:DvrLWfmj
真昼の人のSSが大好きなんだけど、また書いてくれないかな…
291名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 12:58:00 ID:Brw5N/3d
あら昨日投下なかったのね
やっぱり木曜夜って過疎るんだね・・・不思議
292名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 17:57:52 ID:lkdSKzfm
ってことは、週末にまたドバッと wktk

投下を予定してる職人さんたちに、「今、何書いてるのー」って聞くのは
・・・・・・やめた方がいいかね 多分
293名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 22:26:32 ID:/Lih/dy+
私はとりあえず長編を一つ書いていますが、完成率はまだ15パーセント。
誰か頼む。
294 ◆n6w50rPfKw :2007/11/16(金) 22:27:22 ID:hiHP9WpS
>>278の続きをアップします。
295絶望戦隊ノゾムンジャー 32:2007/11/16(金) 22:31:06 ID:hiHP9WpS

 今、四つん這いになった千里、あびる、愛に後ろから准、影郎、国也が覆い被さっている。
国也を除いて、そそり立つ肉棒が、ひくついて渇きを訴える割れ目に添えられ、今にも侵入しそうだ。
ノゾムンジャーの3人は最高の女の卑劣な計略に陥り、体が男を求めて疼いて仕方がなく、
抵抗する力が奪われたままである。

「さあ、坊やたち、犯っておしまい」

 最高の女が冷酷に命令した。
いざ、と男子が腰を進めようとしたとたん、遠くで爆発音が響き、急にアジト全体が激しく揺れた。
振動の余波で男たちがバランスを崩してベッドから転落し、頭と腰を床にしたたか打ち付けた。

「うぐううぅ……」

 3人ともそのまま動けない。空調も突然停まった。

「? どうしたのかしら?」

 女が腕輪を操作した。だが、何もデータが表示されない。

「もしや……」

 そこへ、壁がいきなり叩き壊され、艶やかなコスチウムに身を包んだ娘たちが飛び込んできた。

「みんな、大丈夫?」

 晴美の凛とした声が響いた。
そう、3人以外のノゾムンジャーが遂に望や千里たちの救出に駆けつけたのであった。

 ピンクハルミに変身した晴美、パープルナミに変身した奈美、グリーンカエレに変身したカエレの登場である。

「千里、千里! 大丈夫!?」
ピンクハルミが千里を抱き抱える。
「うう……晴美……」
千里は晴美の姿を目にし、安堵したように弱々しく微笑むと気を失った。
「私の晴美をこんなにするなんて、許せない!」
ピンクハルミが怒りに燃えて立ち上がった。

     ☆

「坊やたち、ついでにこの娘から犯しておやり」

 准は打ち所が悪かったのか伸びたままだが、他の二人が晴美に襲いかかった。

「むがああぁぁ」
「ほげええぇぇ」

 影郎と国也がピンクハルミに襲いかかる。だが所詮、怒りに燃えた晴美の敵ではなかった。

「ぬがのぉ!」

晴美の必殺明日加賀旋風脚が瞬く間に二人を叩きのめした。

     ☆
296絶望戦隊ノゾムンジャー33:2007/11/16(金) 22:36:23 ID:hiHP9WpS

「あびるちゃん、愛ちゃん!」
パープルナミが二人に声をかけた。
「な、奈美ちゃん」
「う、うう……」

女が望に命令した。
「ほら、早くあの娘を犯しなさい」
命令を受けた望が奈美に突進した。
「うがあああぁぁ」
「奈美ちゃん、危ない」
「え、え!?」

 心優しい奈美は、かなり悲惨な状況に陥っていた二人に気を取られていて、反応が一瞬遅れてしまった。

「うがあ!」
「きゃあっ!」

 奈美は床に押し倒され、脚を抱え込まれた。
 望がそのまま奈美の脚を折り畳んで抵抗を封じると、美しい乳房をコスチウムの上から激しく揉み始めた。

「あ! ちょっと……だめっ、いや……あん」

 まさかの激しくも的確なツボをおさえた揉み込みに奈美の力が抜け始めた頃。

「なにやってんのよっ!」

 望の後頭部に強烈なヒールキックを見事にめり込ませた者がいる。
カエレが変身したグリーンカエレが、長い足を生かした技を炸裂させたのだ。
望はそのまま昏倒した。

「奈美ちゃん、大丈夫だった? 気を付けなさいよ」
「カエレちゃん……ありがとう。もう大丈夫」

 カエレが奈美の手を取って優しく引き起こした。

 かくて、ノゾムンジャーに害を成してきた男性4人はすべて退治された。
いよいよ反撃の時である。

     ☆

「さぁ〜て、最高の女。もうこれまでよ」

 パープルナミ、ピンクハルミ、グリーンカエレが女に対峙した。
間合いを詰めつつ、三人が堂々と名乗りを上げ始めた。

「望の前の 悪党を」
「絶望させる ノゾムンジャー」
「おイタが過ぎたら 絶望よっ☆」
「さあ神妙に お絶望なさ〜い☆」

 最後で息と声がぴったり合った。
絶望戦隊ノゾムンジャー、会心の名乗りである。
297絶望戦隊ノゾムンジャー34:2007/11/16(金) 22:38:00 ID:hiHP9WpS

「くぅ……」

 女は歯ぎしりしながら密かに腕輪に触れた。
だが、何度触れても、隠し機能を含め一切何も動作しない。

「ムダよ。仲間がここのシステムををハックしてるから」

カエレが言い放った。

「……」

 カエレの言うとおりであった。
芽留の変身したホワイトメルが施設を統御しているコンピュータ用のウイルスを仕込み、
機能を麻痺させた上でハックしたのだった。

 そして、真夜が変身したブラウンマヨが爆薬で施設への侵入路を確保し、不都合なデータ・物証を破壊した上で、
最終的にこの施設を物理的に壊滅に追い込むべく、今も活動中なのであった。

「さあ、最高の女、覚悟!」

 三人が女ににじり寄った。
だが、女はしれっと言ってのけた。

「ふふふ、とりあえず望さんはお前たちに預けておくわ。
 どうせ望さんに選ばれるのは誰か一人だけだし、子種は貰ったし……
 今の内にせいぜい甘いえっちを楽しむのね」

 そのまま、三人の目の前から忽然と消失した。
全く痕跡を残さず、存在自体が元から無かったような消え方であった。

「あっ」
「ちくしょう、逃げられたか……」
「とりあえず、隊長と仲間の救出が出来たからよしとしましょう」
「こんなアジト、木っ端みじんにしちゃえ」

     ☆

 爆音が鳴り響き、壁や天井のあちこちに亀裂が入り、崩れ始めている中、
秘密の通路を辿って辛くも脱出した人影が二つあった。
最高の女と、小柄なショートヘアの少女である。

 明かりも点かず、闇夜のように暗い脱出路を楽々と通り抜けた二人はやがて、やはり夜の高台に出た。
轟音を上げて崩れ落ちる秘密基地を見下ろしながら、二人は静かに会話を交わした。

「気を落とす必要はありません。
 ダークサイドへの扉は開かれたのです。
 私たちの首領様が復活なさるその日まで、ゆっくり待ちましょう」
「……そうね。もうすぐだものね」
「ええ。待っていさえすれば、自然にこの世は闇が満ちてきます」
「その時こそ、我らが実権を握るのね」
「ええ」

 最高の女と、ショートヘアをX印のヘアピンで留めた少女のシルエットが、月夜に光った。
298絶望戦隊ノゾムンジャー35:2007/11/16(金) 22:47:40 ID:hiHP9WpS
     ☆     ☆

 ここは絶好調。
女の城であるのに、なぜか後ろ手に縛られた裸の男が四人、横一列に正座をしている。
うち三人は准、影郎、国也。
薬で洗脳されていたとは言え、ノゾムンジャーの隊員を拉致し、手込めにしようとした罪は重い。万死に値する。

 彼らを取り囲んでいるのはノゾムンジャーを初めとする絶好調の面々である。
三六協定で休んでいた可符香もいつの間にか輪に加わっている。
彼らに拉致され、すんでの所で救出された三人も、
智恵による綿密なデトックスプロシージャーを経て無事復帰し、この場にいる。
いずれも憤懣やるかたない様子だ。

 口火をきったのはあびるだった。

「あなたたち、えらいことしてくれたわねぇ」

 口調は物静かだが怒りの程度が半端でないことが容易に分かる。

「おかげで、あんな目に……あんな目にあわされるなんて。」

 千里も、額まで朱に染め、青筋を立てている。

「ううぅぅ……」

 愛は言葉にもならない様子で、目に涙を一杯に湛えて男たちを睨んでいる。
徐々に自分たちのしでかしたことが分かってきたのか、三人とも青ざめてウナダれている。
影郎の抜け毛も――すでにスキンヘッドなので眉毛だが――普段より激しい。
やがて、三人が一斉に額を床に擦り付けた。

「ごめんなさい」
「スミマセン」
「申し訳ありま」

 だが、絶好調の面々からすれば、とても許すことは出来ない。
さらに口々に言い募った。

「ごめんですんだら警察はいらないわ」
「男って、本当にだらしないんだから」
「久藤君があんなことするなんて、みそこないました。」
「とりあえず、尋問ね。どうしてあいつらの手伝いをする羽目になったのか、じっくりたっぷり聴きましょ」

 カエレが腕組みをしたままずいっと三人に迫ったその時である。

「あのぉ」

 日頃、絶好調では聞き慣れない声がおずおずと後ろから聞こえた。
見ると、丸井、三角、正方の茶道部トリオが揃っている。
絶好調の真新しいコスチュームを身につけていて、なかなか可愛く似合っている。



299絶望戦隊ノゾムンジャー36:2007/11/16(金) 22:49:30 ID:hiHP9WpS
彼女たちと接点のある千里が三人に尋ねた。

「あなたたち、なぜここにいるの?」

丸井がおずおずと答えた。

「はぃ……このたび絶好調に入隊することになりまして」
「入隊って……まさか、あんたたちも先せ、いや隊長と!」

 思わず千里の声が荒くなった。

「はぁ……」

 茶道部の下級生たちは三人とも真っ赤になって俯いた。

「隊長!」

 その場にいた絶好調の隊員全員が、残りの男性に刺すような眼差しを注いだ。
そう、4人目の男性は、この騒ぎの張本人である絶好調隊長の望であった。
バツの悪いことに、行きがかり上とは言え隊員の皆に内緒で三人娘に手を付けてしまったのだった。
発覚する前に少しでも皆の機嫌を和らげておこうと甘いものを買いに出かけた挙句、
かえって大顰蹙をかってしまったのが今回の事件の真相であった。
果たして、望は決まり悪そうにそっぽを向いた。
絶棒だけが正座している望の股間から元気に姿を現し、

「ボク彼女たちと知り合いなんだよー」

と、その存在を主張しているのが何とも滑稽であった。

「とりあえず、新入隊員の研修の一環として、尋問をさせてあげて」

 彼女たちに付き添っていた副隊長の智恵が言った。
内心どう思っているのかは、その表情からでは判断できない。

「はぁ……」
「副隊長がおっしゃるのでしたら」

 隊員が不承々々といった調子で頷く。
智恵が重ねて三人娘に命じた。

「じゃあ、あなたたち、手始めに久藤君を尋問してみなさい。
 逃げられないよう、尋問中はちゃあんと縛っておくのよ」
「はいっ! じゃあ、久藤君、こちらへどうぞ〜」

 かねてから憧れの的であった准を自分達の意のままに出来るとあって、三人娘は喜々として准を小部屋へ連行していった。
300絶望戦隊ノゾムンジャー37:2007/11/16(金) 22:51:05 ID:hiHP9WpS
     ☆

「なあ」
「うん?」

 四人の後姿を見つめながら、残された影郎と国也がひそひそ話をしている。

「あーいう可愛いコになら、責めら……いや、尋問されてもいいって思わないか」
「うーん……まあ、それもそうだな」
「あんたたちのご…尋問は私がするわよ、ジュル」
「へ?」

 今の気味悪い声には聞き覚えがある。

「ま、まさか……」

 おそるおそる声がした方を見やろうとした。
間違いであってくれ、と心の底から願いながら、恐る恐る声のする方を振り返ってみた。
だがやはり、そこにいたのはニタァリと薄気味悪い笑みを浮かべていることのんだった。

「いやだぁぁ!」
「助けてくれぇぇ!」
――どこまで節操がない下半身なんだよぉ、ったく!

 二人の背筋が凍りついた。
だが、その上からさらに冷水をぶっかけるような声が浴びせられる。

「ぐふふ……久しぶりの拷も……いや尋問だからぁ、たぁ〜っぷり搾り取ってやるんだからぁ」
「搾り取るって、いったい何をぉ!」
「何をどうするんだよおおぉぉぉ……」
「ぶふ。ぶふふ。元気がいいわねぇ。こりゃあ絞りがいがあるわ」
「おお、お前はカロリーが好物なんだろう」
「お前だろ、『好きな物はカロリー』ってどこかで言ってたのは!」
「うふふ。タンパク質もカロリーのうちよ」

 三流週刊誌のような台詞をしれっと吐いたことのんが二人の首に鉄の首輪をがっちりはめ、
顔を代わる代わるのぞき込んだ。

「ネットアイドルに拷問してもらえるんだから、光栄に思いなさ〜い」
「いやだああああああああぁぁ」
「お、お、お助けえええぇぇぇ」
「ほ〜ら、キリキリ歩けぇ〜〜……ぐふっ」

 恐怖に泣きわめく二人をことのんがぐいぐいと引きずっていった。
やがてその姿が奥の小部屋に消え、見えなくなった。
301絶望戦隊ノゾムンジャー38:2007/11/16(金) 22:53:24 ID:hiHP9WpS
     ☆

「さて……」

 今、隊長室には隊長である望と、望のために酷い目に遭った3人がいる。
全裸でおまけにアソコが勃ったままでははずかしいからと、望が懇願して、今彼は素肌にバスローブを纏っている。

「私達、隊長のせいで」
「ずいぶん恥ずかしい思いをしたんですけど。」
「そ、そうだったんですか……それはどうも」

 三人に囲まれ、望は目を逸らした。
が、逃げきれないと悟ったか、頭を下げた。

「ど、どうもすみませんでした」

 ここで、愛が目に涙を一杯に溜めて、

「もう……隊長がいなくなって心配したんですから……バカバカバカァ!」

と望の胸板をポカポカ殴り始めた。
ひとしきりそうした後、潤んだ目で望を見上げた。

「加賀さん……」

 自分の身を案じていてくれているのが分かり、その健気さに心打たれた望は愛を見つめ返すと肩に手を置いた。
このまま接吻を……という雰囲気だったのを、すんでの所で包帯が阻止した。
望の首に巻き付いたそれが、望を愛から引き剥がしたのだ。

「ああっ」
「隊長。この身に受けた辱めを……」
「隊長にもきっちり味わって貰います。」

 千里が茶筅で、あびるが自転車の空気入れで望を折檻しようとしたその矢先。

「ちょっと待って」

 扉が開き、穏やかだが有無を言わさない雰囲気の声を掛けてきた人物がいる。
もちろん、副隊長である智恵である。

「みんなの気持ちは分かるけど、先に隊長から事情聴取をしないといけないわ。
 あなたたちにも手伝ってほしいの。ね、お願い」

 智恵は三人を宥めすかすと、望に向き直った。

「さて、隊長」

 智恵は望の顔をまっすぐ見つめた。
目が怖いほど光っている。望が一番苦手とする状況だ。
智恵に見つめられると、その視線に逆らえなくなるのである。

「隊長がどういう経緯で相手アジトに連行され、どういう目にあったのか。相手の目的は何なのか。
 ご存知の範囲で結構ですから、全て報告していただけますか」
「はあ」
「ただし」
302絶望戦隊ノゾムンジャー39:2007/11/16(金) 22:55:23 ID:hiHP9WpS
 ここで智恵が付け加えた。

「隊長の軽はずみな行動が原因でこのコたち、複数の隊員に被害が出たのは明らかな事実です。
 よって、ただの尋問で終らせるわけにはいきません。ですから」

ここで目がまた怖いほど光った。

「今回、隊長救出にあたって辱めを受けた3人に尋問に協力してもらいます」
「はぁ……」

「では、隊長は服を脱いでください」
「えぇっ?」

 望は渋った。だが、

「隊長は敵の改造手術を受けている恐れがあります。
もしかしたら任意の衣服を身につけることで潜在的な変身スイッチが顕在化する可能性が皆無とは言えません。
さあ、早く」
「はあ……」

 それでも望が渋っていると、智恵は三人に素気なく命じた。

「三人で脱がせてあげて頂戴。
それから、隊長を尋問室に連行して、尋問の基本姿勢に整えてあげて」
「はいっ」
「え……ちょ、ちょっと! あのぉ」

 こうして望は素裸に剥かれたあげく、尋問室にしょっぴかれていった。

     ☆

 今、望は尋問室の真ん中で立っている。
全裸のまま、足を肩幅に開き、手を頭の後ろで組んだ状態である。
相変わらず、絶棒は屹立したままである。
教え子たちや憧れの智恵先生――ここでは副隊長――に尋常ならざる絶棒を晒しっ放しでいるのはさすがに恥ずかしかったが、
身を捩ったり、まして手で隠すのはとうてい許されそうにない。

 望の周りには千里、あびる、愛の三人が控えている。
正面には智恵が絶好調のコスチウムで立っている。
奥のデスクでは、霧がやはり白衣で望の発言を記録するべく控えている。

 智恵が口を開いた。

「それでは、これから隊長に対する簡易尋問を行います。
これから私がいくつか質問をしますから、それには全て答えること。
隊規により、沈黙は許されません。よろしいですね?」
「は、はい……」
「それから、答えの正当性を担保するため、隊長が答えている間、この隊員たち三名が隊長に肉体的な刺激を与えます」
――き、来たあああぁぁぁ……

 望は絶望的な気分になった。
303絶望戦隊ノゾムンジャー40:2007/11/16(金) 22:56:45 ID:hiHP9WpS
「刺激に負けず、堂々と答えを陳述できればよし。
でも、もし真剣味が足りず、途中で刺激に負けて放出してしまうようなことがあれば、直ちに懲罰に移りますから、
そのつもりで真剣に答えてくださいね。
よろしいですか」
「……」

 望が黙ったままでいると、智恵の目がすうっと細くなった。

「沈黙は許されないと言った筈ですよ。……懲罰の準」
「うは、はいっ! 真剣に答えますぅ!」
「よろしい。木津さん、小節さん、加賀さん。
あなた方は、持てる力を全て発揮して隊長を蕩かすような刺激を与えてください。
ただし、三対一だからハンディとして、口唇による刺激だけとします。よろしいですか」
「はいっ」
「尋問が終るまでに放出させたら、あなた方の尋問への貢献を認めて罪の減軽も考慮しましょう。
だから、しっかりね」
「はいっ!」

 絶望ガールズが勢いよく返事をした。
要するに、望が尋問に答えている間、教え子達三人がかりで望の体中や絶棒を舐め、吸い、
しゃぶり尽くされることを意味する。
しかも、刺激に負けて漏らしてしまったら、直ちに身の毛もよだつような拷問が待っているのだ。

――そ、そんなぁ!

 望は歯噛みする思いだったが、もちろん口にすることは出来ない。
そんな望の気持ちなど素知らぬ風で、智恵が尋問を始めた。

「では、隊長。敵のアジトに騙されて入り込んだことの顛末を教えてください」
「はい」

 こうして望が最初にケーキ屋のチラシを持って店に向かったこと、
店に入ってケーキを物色しているうちに目の前が回りだし、すぅっと気が遠くなった旨話しているうちに、
果たしてくだんの三人が望の素肌に舌先を這わせて来た。

――れろれろ。れろれろ。れろれろ……
 ――ちゅっ。ちゅっ、ちゅっ、ちゅううっ。ちゅっ……
――てろん……つううううう……てろん。つううう……

「なるほど。それで?」
「はい。く……き、気がつくとあの女が……くぁっ」
「どうしました? 報告を続けて下さい」

 智恵はあくまで報告の続きを求めてくる。
時折つかえながらも必死に報告をしようとする望。
だが、これから自分があの女性達にいたぶられ、あろうことか最高の女と改造手術という名の媾合をしたことを
彼女達の前に暴露することになるので、
ただでさえ口が湿りがちになるのは無理もない。
さらに、望の報告を邪魔すべく、3人娘が望好みの愛撫を仕掛けてくるのだ。
それも、自分が教え込んだ技に磨きをかけたものである。
304絶望戦隊ノゾムンジャー41:2007/11/16(金) 22:58:05 ID:hiHP9WpS
「は、はい。そして、団地住まいの夫人に私のせ…性感帯を探知さ…はぅん!……探知され……」

 千里が右の乳首をさかんに舌先で突つき、乳輪を一しきり舐め回すと口に含み、ちゅっちゅっと吸い上げる。
愛が脇の下に舌をちろちろと這わせてくる。
そして、ぴくぴくっとひくつく絶棒を舐めていたあびるがついに先を呑み込む。
絶棒の頭を溶けるような熱さが包み込む感覚に酔いしれていると、あびるちゅぱっちゅぱっと音を立てて吸いたててくる。

「むがぁ!……はぅ……」
「探知されてどうなったんですか?」

 智恵はあくまで報告の先を促す。
もちろん、ここで中座したら直ちに懲罰に移行する、という言外の含みを存分に持たせている。

「あ、あう……」

 何とか答えようとする間にも愛が背中に回り、背骨の上から下へすうっと舌先で撫で下っていく。
そして舌先が尻の割れ目のさらに奥を伺いつつあたりをちろちろと這う。
その刺激が腰の奥を通じて絶棒の先へ伝わり、
あびるがその部分にもぐもぐちゅっちゅっと情熱的に与えてくる刺激と溶け合って望の性感を高ぶらせていく。

「は、はひ……探知されまして、そこを敵の婦人方に刺激され……」
「どのように?」
「はぁ、青あざが出来るほどキツく吸い上げられました」
「なるほど……こんな風かしら?」

 ここで智恵がつかつかと望の正面に近づき中腰になると、望の左の乳首をいやというほど吸い上げた。

――ちゅうううぅっ!
「ひやあああああ!」

 望はたまらず悲鳴を上げた。
思わず精を漏らしそうになったが、両足の爪先を丸め、肛門を引き締めて奇跡的に耐えた。
元の位置に戻った智恵は相変わらず冷静に尋問を進めていく。

「どう?」
「うはは、はい。そんな感じでしたぁ!」
「そう……三人とも、今みたいな感じで続けてみて」
「はいっ!」

――あああ、勘弁して下さい〜〜!

 簡潔ながらも素晴らしいお手本を目の当たりにした三人が、はるかに勢いよく望を攻め始めた。
交代で絶棒を含み、その度に情熱的な吸引で望を喘がせる。

「で、『最高の女』とは?」
「はい、最初に私のアレを吸い出されたんですが、体内でその成分を分析したようなことを言っていました。
そして、先に性機能を改善する必要があるからといって、その……くぅ」
305絶望戦隊ノゾムンジャー42:2007/11/16(金) 22:59:23 ID:hiHP9WpS
「必要があるから?」
「その……改造手術をされました…」
「そう、やっぱりされてしまったのね……どういうふうに?」
「はい、それがそのぅ……」

 望は言いよどんだが、智恵の目が細くなったのを見て、ええいままよ、と先を続けた。

「外科手術は時代遅れだからと、遺伝子を組換えられ……」
「え、遺伝子をいじられたの? それはどのように?」
「はぁ……『最高の女』に貞操を奪われているうちに、自然と遺伝子手術が行われ」
「貞操って……つまり、あの女とえっちしてしまったのね!?」

 望の告白に耳を傾けていて一時弱まっていた三人の責めが急にきつくなった。

――れろれろ。てろんっ!
 ――ちゅううう! 
――ちゅっ、ちゅっ、ちゅううっ! ちゅっ、ちゅっ……
「ひゃああ!」
「どうなの?」
「はい、えっちしてしまいました。
でも、でも私から進んででは…くああぁ、もう、もう……性機能の一部がじゅ、じゅ、じゅう、
十倍に増幅されされされてええええ、うああああああああああああっ」
――ゆ、許せないっ!

 最後に絶棒を含んでいた千里は、嫉妬の念にかられ、ここぞとばかりに吸い上げた。
あびると愛も、望の両乳首をこれまでになくきつく吸い上げた。

――ちゅうううううううううううっっ!!
 ――ちゅうううううううううううっっ!!
――ちゅうううううううううううっっ!!
「はあああああああああああああっ!!」
――どくうっ! どくっ、どく、どく…………

 こうして、望はすべてを答え終わる前に、大量の白濁を千里の口内にしぶかせてしまった。

――ああ、終わった……もうダメだぁ……

 腰が骨の芯から溶け、恥ずかしい白汁となって千里の口内に注がれていく気がした。
自分の下半身が無くなってしまいそうな狂おしい快感を長く味わいながら、望は心の底から絶望した。
絶望は長く長く尾を引いた。

 がっくりうなだれた望から、智恵はその後の経緯を簡単に聴取した。

     ☆
306絶望戦隊ノゾムンジャー43:2007/11/16(金) 23:00:46 ID:hiHP9WpS
「すんすん……すんすん……」

 腰の痺れの余韻・全身を覆う倦怠感に浸りつつも、これからの事を思ってすすり泣いている望を横目で見ながら、
智恵は千里、あびる、愛に声をかけた。

「あなたたち、気はすんだ?」
「はい」
「…はい……」
「機会を与えていただき、ありがとうございました。」
「ん」

 短く頷いてから、智恵は霧の方を向いた。

「小森さん、記録はとれたかしら?」
「はい、全部できました。ちょっと中身をまとめてきます」
「よろしくね」

 智恵は霧と視線を合わせると目配せをした。
霧は無言で頷き、デヴァイスを手にすると、部屋を後にした。

――ガチャリ。

 まだすすり泣いている望の首に、鎖付きの銀の首輪がするっとはめられた。
鎖の先を握っているのはもちろん智恵である。

「隊長にももう少し深くお聞きしたいことがずいぶんあるんですが、その前に」

 ここで智恵が千里・あびる・愛の三人の方へ向き直った。
三人は反射的に身を固くした。
何を言われるのか、もう覚悟しているようだった。

「木津さん、小節さん、それに加賀さん」
「はい。」
「はい」
「……はい」
「隊長の尋問に協力してくれてありがとう。
でも、あなたたちは、隊長救出という任務に失敗しました。
それどころか、コスチウムや自身の細胞のサンプルまで敵に奪われ、結果としてノゾムンジャーの名を貶め、
絶好調の業務に深刻な影響を与えました」
「……」

 どれもこれも申し開きの出来ない失態である。
三人とも声もない。智恵の眼が鋭く光った。

「よって、隊規により、あなた方を『花吹雪の刑』に処します」

 三人はがくっと肩を落としたが、それでも隊規には絶対服従である。絞り出すように言った。

「謹んで」
「刑を」
「お受けいたします……」
「よろしい。尋問に協力してくれたことを考慮して、特殊懲罰房送りは勘弁してあげます」
「はい、ありがとうございます」
307絶望戦隊ノゾムンジャー44:2007/11/16(金) 23:02:12 ID:hiHP9WpS
 三人が力なく礼を述べた。
特殊懲罰房とそこで行われる類を見ない刑罰の実態は闇に包まれている。
だが、いくら過酷な「花吹雪の刑」だとは言え、刑実施の後放免されるのであれば、
懲罰房行きと比べ天国と地獄ほどの違いがあるのは間違いない。

「では、隊長は処罰の手伝いをしてもらいますから、一緒にいらしてください」

 智恵は重い足取りの四人を一般懲戒室に誘って行った。
もちろん、望の首輪から伸びている鎖の先は智恵が握っているのである。

     ☆

 一般懲戒室に入ってみると、既に懲戒担当当番として、晴美・奈美・麻菜美の三名が準備をしていた。
部屋の中には寝台が三台ある。
三人は望をちらっと見たが、そのまま準備を続けている。
元から裸であった望は、首輪につながれたまま、部屋の隅に待機している。
残りの三名も全裸のまま寝台に仰向けに横たわり、手足を広げるよう指示された。

「足をもっと大きく広げて。……そう、その位。それから、膝を立てて」

 智恵が細かく指示を加えていく。
寝台の腰の部分がせり上げられ、三人とも大きくM字開脚をした状態のまま四肢をしっかりと固定された。

「隊長……一人ずつ、下の毛を剃ってあげて下さい」
「えぇー?」
「処罰のためですから」
「はぁ」
「木津さんからお願いしますね」

 言葉付きはいつもの智恵のものだが、望には決して逆らえない響きを帯びていた。
望は、羞恥のあまり真っ赤になって泣きそうになっている千里の股間にしゃがみ込むと、
やや濃いめの陰毛を梳き上げ、おかなびっくり剃毛していった。
まず特製のヒートカッターで毛のほとんどを処理。
そして、ほぼ形が露わになった秘部にシェービングクリームを塗り込み、シェーバーで細心の注意を払いながら残りを剃っていくのだ。

――じょりじょり……じょりじょり……

 やがて、水で洗い流すと、輝くような無毛の陰部が姿を現した。

「ううう……。」

 千里はこらえきれず泣き出した。

「あああ、木津さん、すみません、すみま」

 詫びの言葉を述べている途中で、ぐいっと首の鎖が引かれた。
次の受刑者を剃毛するよう、智恵が催促したのだ。

「次は小節さんよ」
308絶望戦隊ノゾムンジャー45:2007/11/16(金) 23:03:27 ID:hiHP9WpS
 同様に、やや薄めのあびるの草むら、かなり薄めの愛の恥毛も同様に剃り落としていった。
いつもは沈着冷静なあびるも、想い人に自分の恥ずかしい部分の毛を剃られるという辱めに、さすがに目を潤ませている。
愛は剃毛される前からしゃくり上げている。

 三人とも完全に幼女のようなツルツルの状態にされた段階で、望は部屋の外へ追い出された。
一般懲戒室の戸は固く閉ざされているので、中を見ることは出来ず、わずかな音が漏れてくるばかりである。
かといって、逃げることも出来ない。
鎖の先を部屋の入り口の側にあるフックに掛けられているからである。
一般懲戒室に誰も入ってこないよう、そして望が逃げ出さないよう、可符香とマリアがしっかりガードしていた。

     ☆

 美しき犠牲者三人を処罰するべく、処罰担当当番が準備を始めた。
千里の担当が晴美、あびるの担当が奈美、愛の担当が麻菜美である。
当番の面々は、銀色に鈍く輝く双頭のマニピュレータを三人のツルツルの股間にあてがう。
そして、めいめいに言葉を掛けながらゆっくりと挿入していく。

「いつも私がヤられてばかりだから、たまには私が責めてあげるわね。
 千里、覚悟はいい?……小学生の頃に戻ったみたいで、カワイイわよ」
「うう……はうっ! ああぁ……。」
「一度女の子にこんなことしてみたかったんだ。あびるちゃん、ごめんね〜」
「ううう……くっ! んん……」
「不貞の愛の疼きとこの処罰とどちらがきついか、愛ちゃんで確かめてあげる」
「ひっ……ぃぁぁぁ……」

 マニピュレータを奥まで挿入し終わると、次に当番は受刑者の乳房を両方とも大きな吸盤状の装置でぴっちりと覆った。

「藤吉さん、日塔さん、大草さん、準備はできましたか?」
「はい、完了しました」
「完了でーす」
「終わりました」
「ん、ありがとう」

 そして、哀れな受刑者に向き直って刑の執行を宣言した。

「それでは、これより『花吹雪の刑』を行います。……スイッチ、オン!」

――ひゅるるるる……シュゴゴゴゴゴ……
 ――じゅりじゅりじゅりじゅり……

 智恵の号令に合わせて、装置が不気味な音を立て始めた。
マニピュレータや巨大吸盤がその性能を発揮し始めるにつれ、千里たちは思わず叫び声をあげていた。

「うなああああああああ!」
「いやああああああああん」
「あああ、すみませんすみません……ああああ」

 その悲痛な、それでいて艶っぽさも幾分含んでいる悲鳴はいつまでも続いた。
309絶望戦隊ノゾムンジャー46:2007/11/16(金) 23:04:40 ID:hiHP9WpS
     ☆

 一般処罰室の中から悲鳴が漏れてきた。
鎖で繋がれている望はいてもたってもいられなくなり、中へ入ろうとした。

「中はどうなってるんですか!」

 だが、可符香とマリアは素気なく入室を拒んだ。

「たとえ隊長と言えども、殿方の立ち入りはできません」
「大人しくそこにいてヨ」

 マリアが鎖をぐいっと引っ張った。望は思わずよろけた。

     ☆

 どのくらいたった時のことだろう。ふと見ると、鎖の先が留め具の先から外れているではないか。
マリアも可符香も室内の様子に気を取られていて、こちらに気を配っていない。
これはチャンスだ、とばかり、望がその場からそっと立ち去り掛けた。――10センチ、50センチ――1メートル。
二人はまだこちらに気づいていない。
ダッシュをしかけた途端。

――ぽよん!

何か柔らかい物に当たった。

「あん……あら、隊長。どこ行くんですか」

 相変わらず怖いほど目を光らせた智恵がそこにいた。

「ひいっ!」
「隊長はこちらへどうぞ」

 こうして望は特殊処罰房に連行されていった。

     ☆

 奥にあるエレベーターに乗り込むと、音もなくエレベーターが下り始めた。
どれほど乗っていただろう。
望がすっかり不安になり、このまま永遠に着かないのではないかと感じ始めた頃、突然、智恵が服を脱ぎ始めた。

「ち、智恵先生……こんなところで始め」

 望の台詞が終わらない内に、突然真っ黒なブラジャーが望の目を覆った。

「ああっ」

 視界がすっかり闇に閉ざされさらなる不安に陥る望。
今まで智恵の豊かな美しい胸を覆っていた、ほのかに温かい布にときめきを覚える余裕はなかった。
不意にエレベーターが停まり、音もなくドアが開く気配がした。

――いったいここは地下何階でしょう?
310絶望戦隊ノゾムンジャー47:2007/11/16(金) 23:06:01 ID:hiHP9WpS
 望はふと気になったが、視界を黒いレース布で覆われてしまっているので表示を読みとることができない。
もたもたしているうちに、智恵に鎖を引っ張られた。

 二人がエレベーターから出ると、薄暗い白色蛍光灯に照らされ奥まで続いている廊下が左右に長く伸びている。
突き当たりがどこにあるのか見えない。
おまけに、壁にはドアなどの余計な物は何一つない。
ただ乳白色の床と壁が果てしなく続いている。
もちろん、望には何も見えない。

 やがて鎖が引かれた。
智恵が望を誘導し始めた。
哀れな罪人は、ただ素敵な御者に引かれるまま、よたよた歩くしかなかった。

     ☆

 どれほど歩いたことだろう。被せられた時と同様に突然覆いが取られた。

 一瞬、眩しさに望は目をつぶった。
そして徐々に開けていき、最初に目に入ったのは霧の愛らしい笑顔だった。

「糸色先生……あ、今は隊長でしたねっ」
「こ、小森さん! 一体、ここはど」
「ここが特殊処罰房よ」
「!」

 後ろから声がした。もちろん、智恵である。

「ち、智恵せ、いや副隊長……」

 二人が望の前に並んで立った。
二人とも、先ほどの白衣ではなく、黒のマントで全身を覆っている。

 霧は文書係として絶好調に詰めていたが、智恵直々に種々の「技術」を仕込まれ、
ついに智恵のアシスタントとして隊長矯正も担当することになったのだった。

「じゃあ、横になってもらえますか、隊長☆」

 望は気圧されたまま、素直に寝台に横になった。
もちろん全裸で勃起したままである。
部屋は寝台の他、調度らしいものが何一つない殺風景なものであった。

「じゃあ霧ちゃん、隊長を懲戒する前に、どんな改造をされたのか確認しましょう」
「はい、副隊長」

 二人は微笑み合うと、望の頭近くにすっと立った。
そして、望の見ている前ですうっとマントを下ろした。

「あっ」
311絶望戦隊ノゾムンジャー48:2007/11/16(金) 23:07:16 ID:hiHP9WpS
 思わず声が出た。
二人の白い肌はいつも通りだったが、腹部に禍々しいタトゥー――
糸色家の家紋である糸巻紋が赤く浮かび上がっていたのである。

「そ、それはいったい!?」
「安心して。シールだから」
「特殊懲罰房で刑を執行するとき、私たちはこのシールタトゥーを纏うことになっているの。
 絶好調の本分を忘れないために」

 望は背筋が凍る思いがした。 
が、すぐに霧に唇を奪われた。
霧の方から積極的に舌を絡めてきたので、望も応戦した。互いに舌先を突っつき合い、歯茎を触り合いしているうちに、だんだん甘美な霞が目の前をうっすらと覆い始めた。
どれほど唇を合わせていただろう。
つっと霧が口を離した。

「霧ちゃん、どうだった?」
「はい……いつも通り、甘いキスでした」
「あらあら。じゃあ、ここはどうかな?」

智恵が乳首を指でなぞり始めた。
霧もすぐに真似をして、もう片方をくにくにし始めた。

「あ……あぅんっ!」

望は堪えきれずに喘いだ。
だが二人は容赦せず、すぐに乳首を含んできた。
――ちうううううっ! れろれろれろ……
 ――ちうううううっ! れろれろれろ……
「ひあぅん!」

 ひとしきり乳首を攻めた後、智恵が呟いた。

「なるほど、胸もいつも通り敏感ね……こっちはどうかしら」

 屹立したままの絶棒に智恵が跨ってきた。

「ん……ん」

 智恵の素晴らしい内部に包み込まれるにつれて、望ははしたない声を抑えることが難しくなった。

「はああ……あぁん!」
「ん……最後まで入ったぁ……いつもよりちょっと大きめかな? 
それに、昨日まであれだけ出していたというのに、まだまだ固いわ……じゃあ動いてみるわね」
「あああ……ああ……」
312絶望戦隊ノゾムンジャー49:2007/11/16(金) 23:08:54 ID:hiHP9WpS
 智恵がゆらゆらと動き始めた。
絶棒の機能を計測するかのように、運動の無期や種類をあれこれ変えて試していた。
逆に望にとっては、いつもよりも多彩な技で翻弄される結果となった。

     ☆

「ち、智恵先生」

 望の声に切羽詰まった調子が交じってきた。

「もう、もう……」
「まだ我慢してって言いたいけど、私ももう」

 智恵が珍しく早めに達しそうな気配を見せた。

「隊長……ああ、いいっ! 素敵よ」
「智恵先生! うう、もう、お願いです」
「いいわ、一緒にイって。お願い」
「はい。も、もう……うぐあああああっ」
「はああ……ああああああああああんっ」
――どくうっ! どく、とぷ……

 こうして教員同士のペアは、いつになく早い絶頂を二人で迎えた。

     ☆

「はぁ、はぁ……報告書にあった、改造手術でペニスから媚薬をってのは本当みたい。
 若いコなら耐性がないから、ひとたまりもないわね。
 霧ちゃん、どうする? 試してみる?」
「えー、どうしよう……って、副隊長!」

 霧が目を見開いている。

「まだ大きいままです!」

 見ると、絶棒は智恵に絞られたというのに少しも萎まず、かえってその容積を増してひくついているではないか。

 望自身やノゾムンジャーたちの報告によれば、絶棒は昨日から幾度となく放出を繰り返しているはずである。それなのにこの威容を誇るのは並大抵のことではない。

「なるほど、これは確かに改造されちゃってるわね」

 智恵は心の底から納得した。
霧が絶棒を握ってきた。
「おまけに、まだ固いままです!」
「危険ね」
「危険ですね」

 二人は目を見合わせた。

 それは二人が魅力的だから、というおべっかを口にする間もなく、二人が望の股間にしゃがみ込んだ。
智恵がその特上のバストで絶棒を浅く挟み込むと、霧も反対側から同じように挟み、乳首同士を合わせた。
313絶望戦隊ノゾムンジャー50/E:2007/11/16(金) 23:10:23 ID:hiHP9WpS
「いくわよ」
「はい、副隊長」
 
 二人の息の合ったダブルパイズリが始まった。

「ああ……ちょっと休ませて……あうんっ!」

 望は発射直後の敏感な亀頭をマシュマロのように柔らかな胸で擦り上げられることで悶絶した。抵抗らしい抵抗もできないまま、そのまま抜かれる羽目になった。

「いやあああああああああああああああああっ!」

     ☆

「すんすん……すんすん……」

 またしてもすすり泣いている望の横から霧が寝そべってきた。そして望を自分の方に向けると、肩を手で抱きしめ、白く大きな胸を望の胸に密着させてきた。

「うふっ」

望を可愛らしく見つめて、まだ固い絶棒を太腿で挟み、微かにうりうりと刺激を与えてきた。

「ああ……ああ」

 年下の美少女に攻められていることでかえって興奮しているのか、望はついはしたない声を上げてしまった。
すると、智恵が背中から二人を抱きしめ、脚を絡めてきた。
むろんあの極上の胸が背中で押しつぶされる感触がしたのは言うまでもない。

 前後からの特上のサンドイッチ攻めを味わいながら、望はたまらず叫んだ。

「い、いつ罰は終わるんですかぁ!」

 二人は笑いながら言った。

「あら。罰だなんて」
「まだ始まってもいないんですよ、たーいちょ☆」


          ――[完]――
314 ◆n6w50rPfKw :2007/11/16(金) 23:12:03 ID:hiHP9WpS
思いの外長くなりました。以上です。
315名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 23:15:02 ID:iHyTuIpp
乙!
エロギャグは読んでて楽しい
316名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 00:06:05 ID:LJOqQWQN
>「私の晴美をこんなにするなんて、許せない!」
>ピンクハルミが怒りに燃えて立ち上がった。

誤字?
317名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 00:22:42 ID:a55kT7l1
>>314
うはw 脳味噌が落っこちるかと思ったww
アタマを、ぐわんぐわん振りながら読んでました。エロエロすぎw
引きずり込まれるw

自分、まだ半分も出来てません・・・短編なのにorz
318名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 01:02:38 ID:Ad9/Uykj
エロって難しいよなー
319名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 01:30:06 ID:pY97e2Sq
例え何ヵ月もかかっても、抜けるエロ長編大作一本を完成させるか…
自分にエロは無理と割り切って、甘酸っぱい青春短編に切り替えるか…
はたまた第三の選択でギャグを連発するか…


どう転んでも自分達はきっと満足できるので、>>317氏に期待
320 ◆n6w50rPfKw :2007/11/17(土) 07:32:09 ID:MQ/PsiSh
>>316
うわ、おっしゃる通りです。「私の千里」でないといけませんね。他にもアイタタな箇所がありますな……アイタタ……
321305:2007/11/17(土) 22:18:01 ID:a55kT7l1
お疲れ様です。305です。

えーと、芽留で短編作ってきました。
エロ無しになります。

では、よろしくお願いします。
322芽留:毒抜け少女に ご用心:2007/11/17(土) 22:19:03 ID:a55kT7l1

かぽ〜ん

「ふう。いいお湯でしたね。」
先生はひとり言を言いながら、タオルを首にかけ脱衣所の引き戸を開けた。
「たまには一人で温泉に浸かって、日頃の激務の疲れを癒すのも・・・・・・ ん?」
入り口に掛けてある「男湯」ののれんをくぐった所で、その前を通りがかった相手に気が付いた。

「おや、音無さんではありませんか?」

名前を呼ばれて気が付いたようで、芽留は立ち止まって振り返る。

「奇遇ですね。音無さんも旅行にいらしたのですか? ・・・まさか、また皆さんも?」
『また 覗きに来たのか ハゲ』
「人聞きの悪い事を言わないで下さい!」

慌てて抗議の声を上げる先生に、芽留はすました顔で再び携帯を打つ。

『たまには一人で 日頃の絶望授業の 疲れを癒しに来た』
「・・・真似しないで下さい。そんなに疲れる授業しましたか!?」

芽留は唇の端を上げて薄く笑うと、背中を向けながら携帯の画面を見せる。

『じゃな ハゲ ・・・覗いたらコロス』

先生はいささかムッとしたように眉を寄せた。
「しません! 子供の入浴を覗いて捕まるなんて末代までの恥ですからねぇ?」

「・・・・・・ぅ・・・!」
芽留はショックを受けた表情を浮かべ、短く呻くと浴衣の袖で顔を覆いながら駆け出し、女湯ののれんの向こう
へと消えた。

「・・・・・・あ! 音無さん!?」
ピシャリ! と引き戸の閉まる音が聞こえ、先生は溜め息をつく。

「ああ・・・ ちょっと言い方が悪かったですねぇ・・・・・・」
ぽつりとつぶやくと、一つ肩をすくめ、廊下を自分の部屋へと歩いていった。



「お食事のご用意をさせていただきまーす。」
先生が部屋で寝そべりながらくつろいでいると、戸の外から仲居さんの声がかけられ、部屋の中へと次々料理
が運び込まれて来た。
数人の仲居さんによって流れるように手早く料理が並べられて行き、あっという間に支度が整い、仲居さんたち
は戻って行く。
部屋の中に固形燃料の燃える微かな香りがし、季節の食材をふんだんに使われた料理が卓上を占めている。


先生は用意された食事を眺め、ふと何かに気が付いたように首をかしげた。
「・・・こんなに豪勢な食事でしたっけ? いや、それなら良いのですが・・・・・・ しかしこれは、どう見ても2人分以
上あるような。」
卓の中央に鎮座した活け造りの頭を指でつつき、さらに首を捻った。

からら・・・

遠慮がちに戸を開ける音に振り返ると、その隙間から顔半分で覗き込んだ少女と目が合った。

「音無さん? なぜ?」

先生がぽかんとした顔で尋ねると、芽留は一瞬 ビクッ としたが、そっと部屋に入り静かに戸を閉めた。
323芽留:毒抜け少女に ご用心:2007/11/17(土) 22:19:54 ID:a55kT7l1

「・・・あ・・・・・・の・・・」
うつむいて口をもごもごさせながら、芽留は携帯を打つ。

『さっきは 失礼な事言って ゴメンナサイ!』
画面を見せながら、ぺこり、と頭を下げた。

「・・・・・・あ・・・いえ・・・・・・  って! えええええええ!?」
先生は魚の頭をつついた姿勢で固まり、大声を上げてしまった。
鼻筋を汗が伝い、ずり落ちたメガネを慌てて戻す。

『お食事 ご一緒させて 下さい』
携帯を打ち直し、一度上げた頭を再び下げた。

先生はぎこちなく芽留と料理を見比べ、
「・・・これ・・・・・・音無さんが?」

呆けた表情で尋ねる先生に、芽留は下を向いたまま頷いた。


(何か・・・・・・何か、違和感があります・・・)
取り敢えず、二人で食事の席に着き、先生は芽留の様子を横目で見た。
芽留はなぜか正面には座らずに、卓の右隣にちょこんと座り、視線は下に向けてもじもじしている。
風呂から上がって間もないらしく、石鹸の香りが漂ってくる。

先生は芽留の様子を見て、脳裏に閃いた物があったのか、目を見開いて息を飲んだ。
「・・・まさか!? 毒が抜けてしまったのですか!? また、温泉の効果ですか!?」
突然大声を上げた先生に、芽留は飛び上がらんばかりに驚いたようだったが、呆然と自分を見つめる先生に気
が付き きょとん とした顔で小首をかしげた。

「・・・ああ!・・・・・・やはり・・・」

血の気の引いた顔で愕然としている先生をよそに、芽留は先生の前に両手を伸ばして熱燗のとっくりを手に取
り、そばにある猪口に傾ける。
「あ!? ・・・・・・っと!」
それに気が付いた先生は、慌てて芽留の手からとっくりを奪った。

「いや! お構いなく! 生徒にお酌をしてもらっては教師失格ですから!!」

そう告げて、手酌で猪口にお酒を注いだ。
芽留はちょっとびっくりしたように数回まばたきをしたが くすっ と小さく笑うと自分の箸を取り、活け造りをつつ
き始めた。

(いつもだと、『教師どころか 人間も失格してるじゃねーか ハゲ』とか、返って来ますよねぇ・・・)
ちびちびと手酌でやりながら、芽留を横目に、先生も料理に箸を伸ばす。

「・・・むう・・・・・・ この料理では毒は溜まりませんよねえ・・・・・・」
山菜やら茄子やらの煮びたしや、天ぷらを頬張る芽留を見ながら、ぽつりとそんな言葉が出た。
芽留は不思議そうな顔で先生を見たが、一旦、箸を置いて携帯を取り出す。

『すごく おいしいですね』
「・・・まったく普通の会話ですねぇ・・・・・・」

『?  私 奈美ちゃんじゃ ないですよ?』
「いえ、まあ、言葉のアヤってやつです。」

先生は肩をすくめると少し笑って くい と猪口を傾け中身を飲み干した。


324芽留:毒抜け少女に ご用心:2007/11/17(土) 22:20:35 ID:a55kT7l1

「ふう・・・・・・ ちょっと飲んじゃいましたかねぇ・・・・・・」
すでに膳は片付けられ、広くなった卓上に片肘を乗せて寄り掛かりながら、先生は赤い顔でつぶやいた。

芽留は先生の部屋の中を見まわして、部屋の隅にある、押し入れではない引き戸に気がつき首をかしげた。
先生はその様子を見て、少し笑いながら説明する。

「ああ、そこは内風呂ですよ。半露天の内風呂付きの部屋にしましてね。」

芽留は興味深そうに、少し引き戸を開けてみる。その向こうには簡単な脱衣所があり、さらに磨りガラスの戸で
仕切られているようだった。
その隙間から、わずかに外の冷気が漏れこんでくる。

先生はちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべ、覗きこんでいる芽留の背中に声をかけた。
「そうですね・・・・・・一緒に入りますか?」

芽留は弾かれたように振り向き――― 先生と目が合い ボッ! と、音が聞こえてきそうな勢いで顔を真っ赤
に染めた。
すぐに顔をそむけ、たたたっ・・・ と走り、裸足のまま部屋を飛び出していってしまった。
戸を閉める硬い音が響く。

「あ・・・・・・ 音無さん! 冗談ですよ・・・・・・」

ぴろりぱら―――

止めようとして立ち上がりかけた先生の携帯が鳴る。

『先生の エッチ!』

・・・先生は、送られてきたメールの内容を見て、思わず畳の上に突っ伏してしまった。




明かりは天井に掛けられたランプ型の照明だけだが、その薄暗さの中で一人入る露天風呂は、また格別の味
わいがある。
並んだ連子の間からは、冷たい空気と共にチラホラと星の瞬く様が見え、人の声すら聞こえてこないこの場所は
、まるで隠れ里に来ているような気分にさせた。

「ふうう・・・・・・ くつろぎますねぇ・・・」

先生は湯に漬けた両手で顔を拭い、気持ちよさそうに ほおっ と息を吐いた。

「しかし・・・ 音無さんを何とか毒入り状態に戻してあげなければなりませんね。・・・まあ、帰りに何処かファース
トフード店にでも寄れば、すぐ・・・・・・」

―――カラカラ

突然入り口の戸が開けられた音に、先生の言葉が中断させられた。

一瞬、それが誰だか分からなかったのは、頭に巻かれたタオルで、左右に垂れたいつもの尻尾髪を押さえられ
ていたせいだろう。しかし、片手にしっかり握った携帯で、すぐに相手が芽留であることに気が付いた。
アゴを落とさんばかりに口を開けて硬直したままの先生に、芽留はバスタオル一枚を体に巻き付けた姿で、恥
ずかしそうに視線をそらしたまま近寄る。

「・・・・・・音無さ・・・」
『お背中でも 流そうと 思って』
325芽留:毒抜け少女に ご用心:2007/11/17(土) 22:21:16 ID:a55kT7l1

まず携帯の画面、そして芽留の白くて細い腕。さらに、剥き出しの小さな肩と、順番に視界に飛び込んできた所
で先生は我に返り、ザブッ! と音を立てて体ごと後ろを向いた。

「い、いえ! 結構ですよ! 遠慮します! 」
『 でも 』
「本当に! 第一、こんな吹きさらしなトコで背中流したりしていたら風邪ひきますから!」

『・・・わかりました』
全力で断る先生の語気に押されたのか、確かに洗い場には適さない場所と時期だと理解したのか、少し間を置
いてから、芽留は静かに浴室から出ていった。

足音と部屋の戸が閉まる音を聞き届け、先生はようやく振りかえり、ほっと溜め息をついた。
そのまま天井を仰ぐと、少し眩暈を起こしたようにバランスを崩した。
「・・・あっ・・・と。・・・・・・ちょっと、長湯しすぎましたかね。」
先生は立ちあがると連子の前に顔を寄せる。
冷たいはずの空気がやけに心地よく火照った顔に当たって流れた。



浴衣を身に着け部屋に戻ると、すでに芽留の姿は無く、先生はぼんやりと天井を眺めながら座布団を枕代わり
に寝そべっていた。
少々湯当たり気味なのとアルコールの影響も手伝って、ついそのまま、うつらうつらとしていた。



寝床を用意しにきた仲居さんの声で目を覚まし、あくび交じりに手洗い場に行って戻ってくると、先生は用意され
た布団にもぐりこみ、うつぶせになってカバンへ手を伸ばして中から本を一冊取り出した。
しおり紐の挟んであるページを開き、紐を外した所で枕元に置いた携帯が振動した。

一瞬躊躇した先生だったが、しおりを挟みなおし携帯を手に取る。

『ゴメンナサイ  ここで 寝させて もらえないですか?』

メール文を見た先生は、思わず目を閉じ頭を抱えてしまった。

「・・・・・・『ここで』?」
その言葉に気が付き、先生は一言つぶやいて立ちあがると、部屋の入り口の鍵を開け、戸を開けてみる。

廊下には、枕を胸に抱いて芽留が佇んでいた。
先生の姿を見ると、ぺこりと頭を下げる。

「・・・どうしました?」
訪ねる先生に芽留は申し訳なさそうにうつむいて携帯を見せる。

『私の部屋に 何か お札みたいなの 見つけてしまって』
「あー・・・・・・・・ それはちょっと嫌ですねぇ・・・」

苦笑を浮かべた先生に、芽留はもう一度頭を下げた。

「じゃ、先生の部屋と交換しましょうか? ・・・私、そういうの慣れてますから。」
先生の言葉に芽留は青い顔で首を振った。

『もう 一人で寝るの 怖いです』

唇をギュッと結んで、泣きそうな顔で芽留は先生を見上げる。

『部屋の隅っことかを 貸して貰えるだけで いいですから』

先生は芽留の表情を見て慌てて首を振った。
326芽留:毒抜け少女に ご用心:2007/11/17(土) 22:22:19 ID:a55kT7l1
「いや、そんな! 先生が言いそうなセリフ、言わないで下さい。 ちょっとまあ・・・・・・私も末期とか言われては
いますが一応は健全な男性なのですよ? ここは教育者としてはですね―――いや、まあ、いいです。・・・さ、
冷えないうちにお入りなさい。」
芽留は、ほっとしたように口元をほころばせると、先生に促されておずおずと部屋に上がりこんだ。




(・・・何だか妙な事になっていますねえ。)
豆電球だけになった薄暗い部屋の中、隣に布団を並べて横になった芽留を見て、先生は困ったような顔で苦笑
を浮かべている。
「・・・音無さん。一応、言っておきますが―――」
先生に話しかけられ、芽留はこちらに顔を向けた。
「ええと・・・・・・ あまり男性の部屋に上がりこむなどの行為は慎んだほうがよろしいですよ。往々にして、好まし
くない結果となる事が多いのですから、気を付けて下さいね?」
真剣な顔で語る先生に、芽留はちょっと首を傾げながらも、うなずいてみせる。
「・・・はい。では、おやすみなさい。」


先生が口を閉じると、部屋の中は静まり返り、掛け時計の秒針を刻む音だけが小さく聞こえてくる。
芽留は再び背中を向けて布団に包まっているので、すでに寝付いたのかどうかは分からないが、物音も立てず
に静かに横になっている。

先生は短く溜め息をつくと、眼鏡を外し枕元に置く、 ―――と、その瞬間、先生の携帯が数回振動し、メールの
着信を知らせる。
思わず芽留の様子を見るが、そちらの方は背を向けたまま反応はない。
携帯を開ける。

『もう少し 近くでは 駄目ですか?』

メール文を見て、先生はカクリと首をうな垂れた。
しばらく間を置いて、困ったような表情を浮かべたまま返事を打った。

芽留は布団から起き上がると、ささっと自分の敷き布団を引き寄せ、先生の布団と隣り合わせにくっ付ける。
少しはにかみながら嬉しそうに先生に微笑むと、また布団に潜り込み目から上だけを出してこちらを見ている。
枕一つ分の距離に近づいた芽留に先生も微笑み返し、自分も仰向けに寝そべり目を閉じた。


静寂が部屋に訪れた。
先生は意識がだんだんとまどろみ、眠りの世界に溶け込みだしてゆくのを感じた。少しずつ、呼吸も規則正しい
寝息に替わりつつある。

ふと、そんな意識の片隅で微かに布擦れのような音が聞こえた気がした。
芽留が身じろぎでもしたのだろうと思い、気にせずにおこうとしたとき、自分の手のひらに何かが触れる感触が
あった。
意識が再びはっきりとし、先生はその手に触れたものにさわってみる。
(・・・冷たい・・・・・・手・・・?)
それは小さくて華奢な手のひらだった。
だれの物かは考えるまでも無く、先生は苦笑を浮かべるとその手をそっと握り締めてみる。

「・・・・・・冷えていますよ・・・手。」
チラリと横目で見ると、先生を見ていた芽留と目が合った。
芽留は嬉しそうな顔を浮かべ、先生の手を握り返す。
安心したようにそのまま目を閉じ、ややあってゆっくりと寝息を立て始める。
先生も芽留の寝息に誘われるように目を閉じ、やがて眠りについた。




327芽留:毒抜け少女に ご用心:2007/11/17(土) 22:23:08 ID:a55kT7l1

「・・・・・・・・・ん」
とくに何か物音でもしたわけではなく、先生は目を覚ました。
部屋の中は暗いままだった。闇に目が慣れるのを待って掛け時計の針を見る。
(・・・なんだ、まだ、真夜中ですか。・・・・・・え・・・・・・あれ・・・・・・!?)
先生は体の向きを変えようとしてそれに気がつく。

いつの間にかこちらの布団に潜り込んでいた芽留が、先生の腕を枕にしてぴったりと寄り添うように眠っていた
のだった。
熟睡しているのか起きる様子は無いが、先生はその体勢のまま固まってしまう。

何度も目を開け閉めしたり深呼吸をしたりしてようやく落ち着き、夢を見ている訳では無いことを認識する。
困った顔で芽留の寝顔を見て、少し浴衣が寝崩れて肩が出ている事に気がつき、芽留を起こさないように恐る
恐る乱れを直してやる。

(・・・まいりましたねえ。・・・・・・こんな事を、もし、音無さんの父上にでも知られたら・・・・・・・、埋められてしまい
ます。)

芽留の父の姿を思い出し、溜め息をつきそうになるが、ふと別の考えが頭をよぎる。

(もしかして・・・・・・周りに甘えられる相手が居ないのでしょうか・・・・・・)

その考えが聞こえた訳ではないだろうが、芽留がもぞりと少し動いた。
寝息を漏らす半開きの小さな口は、わずかに微笑み、幸せそうな表情を浮かべている。

先生は腕枕をした手で、芽留の頭をそっと撫でた。
「・・・・・・んー・・・・・・・・・」
小さく寝言のように呻き、再び寝息を立て始めた芽留の背中に優しく手を添え、自分も目を閉じた。










328芽留:毒抜け少女に ご用心:2007/11/17(土) 22:23:44 ID:a55kT7l1

朝。目を覚ました時にはすでに芽留の姿はなく、横には布団が畳んで置いてあった。

朝食を済ませ、いつもの服に着替えて帰り支度を済ませた先生は部屋を出る。
フロントに向かおうと廊下を歩いていくと、自分を待っていたのだろう、私服姿に戻ってカバンを下げた芽留が廊
下の端に立っていた。

先生の姿を見つけると、少し赤らめた顔で ぺこり と頭を下げ、横に並んで歩き出した。

「・・・ええと、音無さんも電車で?」
『はい』

てくてくと並んで歩く芽留に先生は尋ねた。

「では、一緒に帰りましょうか?」
『はい』
先生は、素早く携帯を差し出した芽留にちょっと肩をすくめた。


と、その時、
「ヤバイよ! あー ヤバイ! 入れ忘れていたよー!」
両手で大きな包みを抱え、こちらへ走ってくる従業員らしき姿が見えた。

「おや? たしかこの旅館のご主人・・・・・・」
荷物で前を良く見ていなかったのか、先生の声でそこに人が居る事に気がついて、旅館の主人は避けようとし
て足をもつれさせその場に転んでしまった。
持っていた荷物が散らばる。
先生はそれを拾おうと手を伸ばし、その手が止まった。

「・・・こ・・・れは! 温泉の素ですが・・・ ああ!? まさか!?」
大声を上げた先生に、主人の目が光り、瞬時にその黒目が収縮して白目が広がり大きく見開いた。

「偽装工作!?」
「知ったな!!」

「ひいいいいっ!!」

先生はとっさに芽留を小脇に抱えると、一目散に駆け出し、旅館を飛び出した。



「・・・と、とりあえず、追われてはいないようですね。」
駅への道の途中で先生は立ち止まり、芽留を下ろした。
肩で息をしながら額の汗を拭っていたが、何か思いついたのかその動きが途中で止まった。
ぎぎぎぃ・・・ と、首を芽留の方へ向ける。

「あれが、偽温泉ということは、―――音無さん。」
先生の言わんとしたことに気がついたのか、芽留の顔が青ざめ、頬に一すじ汗が伝う。

「あなた・・・・・・ 毒が抜けている訳じゃありませんね!?」
『 \(>□<;)/ ヤー!』

芽留は身を翻し、ダッシュで逃げ出した。
「こらー! 待ちなさい、音無さーん!!」

少々ヨタつきながら先生も走り出し、駅の方へと田舎道を駆けて行く芽留を追いかけていった。



329305:2007/11/17(土) 22:28:21 ID:a55kT7l1
おそまつでした。

・・・思ってませんよ。
奈美・芽留・真夜のネタで三すくみ状態だなんて(ry

と、自己突っ込みw


では、また。 礼。
330名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:04:53 ID:WlQyi9RR
>>329
めるめるが可愛すぎる…… (*´Д`)。
GJ!!
最近、芽留が萌えキャラとしか思えなくなってきた。
331名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:23:33 ID:CNrHBNr6
>>329
かなり良かったです。先生の反応が上手い。

読んでいてかなり悶えた。
332名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:32:24 ID:WiFh37lo
めるめるを抱き枕にしたいめる
333名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:38:13 ID:qHp0uXBF
なんてことだ・・・。
はじめてめるに萌えてしまった・・・。
334名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:41:37 ID:SQJS3bVR
まさかツンデレだったなんて!
これは良い
335名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 00:19:46 ID:W2on+g1n
何という傑作!
GJ!!
336名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 06:08:48 ID:Av6RLtFl
しかし温泉の元を見て土産とか個人用とかって思わないあたり先生は捻くれてるw
337名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 13:01:10 ID:dQ15NipL
「入れ忘れていたよー!」
なんて言われた直後に見たら、
土産用と考えるのはポジティブすぎ。
338430:2007/11/18(日) 16:50:10 ID:TSR8Czxk
わーーー、やっぱり週末はすごいですね。

>>314
さすが◆n6w50rPfKw さん!というような作品でした。
ギャグとエロのコラボがすごい…!
個人的に、木野と臼井君のその後が気になります…。
また次作を楽しみにお待ち申し上げております!!

>>329
うう、305さんの書く芽留は何故こんなに可愛いのか…!
前回の久藤君話と合わせて完全にノックアウトです。
しかし、先生が毎度いい味出してるなぁ…。

改めましてこんにちは、430です。
こんな秋晴れの天気の下、干した掛け布団に包まれて
>>4‐の『旅立ちの時』の続きのようなものを書きました。
人としてだいぶダメになっている気がします。

相変わらず超捏造設定炸裂&キャラ崩壊なので要注意です。
それと、ほんの一部ですが、以前の自作SSの話が出てきます。
それほど影響はないと思いますが、「??」となった部分はスルー願います。
339卒業 1/15:2007/11/18(日) 16:51:15 ID:TSR8Czxk

旧制中学校を模して建てられた、温かみのある校舎。
大きな窓から、日の差し込む明るい教室。

ここで、彼らとともに、教え、学び、騒ぎ、そして笑って泣いた。

毎年、春になると満開の桜が花びらを散らせる通学路。
思えば、彼女と初めて出会ったのも、桜の季節だった。

臨海学校や夏祭り、修学旅行、初詣に豆まき、そして再び巡る春、
季節は、彼女の明るい笑顔と、教え子達の笑い声に満ちていた。

今振り返れば、宝石のように輝いて見える、愛しく大切な日々。

―――そして、明日。

彼らは、そして彼女は―――この学校を、卒業する―――。



*     *     *     *     *     *



帰りのホームルーム、望は出席簿を閉じると皆を見渡した。
「明日は、教室でホームルームの後、式に参列となります。
 皆さん、明日で最後ですから遅刻しないように。」

留年を繰り返し、永遠の17歳と言われていた2年へ組の生徒達も
いつのまにか3年に進級し、とうとう明日の卒業式を残すのみとなった。

2年から持ち上がりで担任を務めた望のホームルームも、あと1回。
こうやって教壇から彼らの顔を眺めるのも、明日で最後だった。

望は、しばらく黙って生徒達を見ていたが、やがて静かに口を開いた。
「…連絡事項は、以上です。」

340卒業 2/15:2007/11/18(日) 16:52:06 ID:TSR8Czxk
廊下を歩く望の後を、可符香が追いかけてきた。
「先生!」
密かに彼女と付き合い始めてからも、随分と年月が経っている。

「ああ、風浦さん。後で、宿直室に来ていただけますか?」
望は、廊下を通り過ぎる生徒達を気にしながら、可符香に笑いかけた。
「え…。」
「あなたに、お伝えしたいことがあるのです。」
望の言葉に、可符香は、心なしか表情をこわばらせて頷いた。




生徒達があらかた下校した後、宿直室に可符香がやってきた。
交は、あらかじめ倫の家に預けてある。

そういえば、と望はふと思い当たった。
いつの頃からか、可符香がやってくるときには、まといの姿を見かけなくなった。
まといの気持ちを思うと心が痛んだが、こればかりはどうしようもなかった。

「こちらにどうぞ。早咲きの桜が見えますよ。」
靴を脱いだ可符香に、縁側から手招きする。

望と並んで縁側に座った可符香の表情は固かった。
「どうしたんですか、怖い顔をして。」
「…。」
「可符香…?」
「今度は、何が理由ですか。」
「…は?」
「また、別れようって言うんでしょう?」

可符香は、固い表情のまま、前を向いて言った。
341卒業 3/15:2007/11/18(日) 16:52:52 ID:TSR8Czxk
「………私は、まだ、何も言ってないのですが…。」
「言わなくたって分かります。」
「…あのですね…。」
「いつだって、そうじゃないですか。」
くるりと、可符香は望の方を向いた。

「今までに、先生は、いったい何度私と別れようとしたと思うんですか。
 しかも、その理由はいっつも独りよがりで。
 どうせ、今回だって、卒業後は新しい別の人生を歩けとか言うんでしょう。
 先生のネガティブ思考には慣れましたけど、もう、いいかげんにしてください。」

一気にまくしたてて、なおも言い募ろうとする可符香に、
望は大きなため息をつくと、その腕をぐいっと引っ張った。
「!!」
そのまま、唇をふさぐ。
「んっ――!!」

抱きしめたまま、ゆっくりと舌を絡め、何度も吸い上げると、
やがて、可符香はぐったりと大人しくなった。

「…先生、ずるいです…。」
目を潤ませて、可符香が睨みあげる。
「あなたが、人の話を聞こうとしないからですよ。」
望は、再びため息混じりに言うと、がさごそと後ろから小さな箱を取り出した。

「え…?」
「私は、これを渡そうとしていたんです。なのに、あなたときたら…。」
「先生、これ…?」
「開けてみてください。」
望はにっこり微笑んだ。
342卒業 4/15:2007/11/18(日) 16:53:40 ID:TSR8Czxk
可符香は、震える手で箱を開けた。
中には、可愛らしいダイヤのついた指輪が収まっていた。

言葉をなくして箱の中の指輪を見ている可符香に、望は語りかけた。
「先生と、生徒でなくなったら、あなたに言いたいと思っていました…。
 ちょっとフライングになっちゃいましたが…。」
照れたように言うと、望は表情を引き締めた。

「可符香…私と、結婚していただけますか?」
可符香が弾かれたように顔を上げた。
「…!」

望は、可符香を見つめながら続けた。
「あなたは、いつも私に、世の中の明るい面を見せてくれた。…おかげで、
 私もいつの間にかあなたの目線で世界を見るようになっていました。」
可符香は、望の言葉に、目を潤ませるとうつむいた。
「可符香。私は、あなたと一緒なら、人生に絶望せずに生きていける。
 あなたと…ともに、幸せになりたいのです。」

下を向いたまま黙り込んでしまった可符香に、望は心配になった。
「…迷惑、だったでしょうか…?」
そっと尋ねる。

可符香は勢いよく首を振った。
そして、涙に濡れた目で望を見上げた。

「私、両親を亡くしてから、自分の家って呼べるような場所がなかったんです。
 先生と付き合うようになって、初めて、自分の居場所が見つけられた気がした。
 だから………先生。」
可符香は涙を拭くと、にっこりと微笑んだ。

「嬉しいです。私も、これからの人生を先生と一緒に過ごしたい。」
343卒業 5/15:2007/11/18(日) 16:54:33 ID:TSR8Czxk
望は、顔を輝かせると、次の瞬間、ほーーーっとその場にへたり込んだ。
「良かっ……た!」
「…先生?」
可符香が怪訝そうに望を覗き込む。
「いや、断られるかもしれないと思って、ものすごく緊張していたんですよ…。」

望の言葉に可符香が呆れたような声を上げた。
「そんな…私が断るわけないじゃないですか!」
「いや、そうは言ったって……私みたいな面倒な男と、なんて…。」
「あーもう、また、そういうことを言うんですね。」
ぼそぼそ呟く望に、可符香がため息をついた。

「でも…」と可符香は小さい声でつけたした。
「先生からプロポーズしてくれるなんて思わなかった…すごく嬉しいです。」
「…可符香…。」
望は、照れくさそうに指輪を取り上げた。
「私も、少しは、進歩したってことですかね。」
そう言いながら、可符香の左手の薬指にそっと指輪を嵌める。

可符香は、うっとりと指輪を見つめた。
「きれい、ですね…。」
望は、その可符香の上気したような横顔をじっと眺めていた。

―――指輪なんかより、あなたの方が、ずっときれいですよ…。
思わず手が伸びる。
「あ…。」
望は、振り向いた可符香の紅い唇に、そのまま深く口付けた。

「可符香…あなたを、一生愛し続けます。誓いますよ。」
「先生…。」

望は、可符香の背中に手を回すと、そっとその場に横たえた。
344卒業 6/15:2007/11/18(日) 16:55:29 ID:TSR8Czxk
宿直室の外では、2年へ組の生徒達が突っ立ったまま固まっていた。
皆、高校生活最後の日を担任と過ごそうと、手に手にお菓子や飲み物を持って
集まって来ていたのだ。

「ど、ど、どうする…?」
奈美が、ぎ、ぎ、ぎ、と音がしそうに顔を回すと、他の皆に尋ねた。
「…ったって、今、中に乱入するわけにはいかないでしょーよ。」
ドアに耳をへばりつけたまま、晴美が囁く。

ほぅ、と千里が吐息をついた。
「そっか…。先生、可符香さんと…。なんかちょっと悔しいけど…。
 …でも、きっちりしたみたいだから、許してやるか。」
晴れ晴れと顔を上げる千里の横で、霧が少し目を潤ませてうなずいた。
「先生、最初っから、彼女しか見てなかったもんね…。」

そこで、皆が、はっと後ろを振り向いた。
そこには、ひっそりと袴姿の少女が佇んでいた。
「まといちゃん…。」
まといは、ゆっくりと顔を上げると、小さく微笑んだ。
「…袴着るのも、今日で最後になっちゃったかな。」

その言葉に、皆、ほっとしたようにまといを取り囲んだ。
「でも、卒業式に袴なんてありがちだから、かえって良かったかもよ。」
「そうよ、これからは、洋服の似合う女になって先生を見返してやらなきゃ!」
軽口を交し合いながら、皆で宿直室を後にする。

校庭に出ると、奈美が提案した。
「ね、せっかくお菓子買ったんだし、校庭でピクニックでもしようか。」
「そうね、…この学校に来るのも、明日で最後だし。」
その千里の言葉に、皆、校舎を振り仰いだ。

「…楽しかったね、高校時代…。」
誰ともなく呟いた。
「うん…。明日は、いい式にしようね…。」
「そうだね……。でも、その前に!」
晴美が指を立て、皆を集めるとひそひそ話を始めた。
345卒業 7/15:2007/11/18(日) 16:56:15 ID:TSR8Czxk
一方、宿直室。

望は、外での会話に全く気がついていなかった。
目に映るのは可符香の姿だけ、聞こえるのは可符香の息遣いだけだった。

ゆっくりと可符香の服を脱がせていく。
何度も目にしたはずなのに、彼女が着るもの全てを取り払った瞬間は、
いつも息が止まるような気がした。

可符香は、上気したように頬をピンク色に染めて、望を見上げていた。
―――ああ、なんて…!

望は、この愛らしい少女が自分のものになったことが信じられなかった。
ふいに不安にかられ、その白い肌を強く吸ってあちこちに自分の証を残す。
そのたびに、可符香は小さく声を上げた。
その声さえ外に漏らすのが惜しい気がして、望は可符香の口を唇で塞いだ。

彼女の全てを飲み込むように舌を深く差し込み、ゆっくりと口内を味わう。
そうしながら、望は自分の執着心に内心驚いていた。
こんなにも、他人に執着したのは初めてだった。

夢中で可符香の舌をむさぼっていると、可符香が望の背中を叩いた。
慌てて口を離すと、可符香が咳き込んで荒い息をつく。
「せ、先生…。窒息、しちゃいます…。」

望は赤くなったが、涙目で見上げてくる可符香が愛しくて、再び口付けた。
そして、唇を合わせながら囁いた。
「もう、先生じゃありません…これからは、望、と呼んでください。」
346卒業 8/15:2007/11/18(日) 16:57:00 ID:TSR8Czxk
女性経験は決して少ない方ではない。
なのに、何故、彼女に対してはこうも歯止めがきかなくなってしまうのだろう。

望は、頭の片隅でそんなことを考えながら、可符香の胸に顔を埋めた。
ふくよかでやわらかいその感触は、いつも、望を感動させた。
指で、ふくらみを軽くつかむと、弾力のある手ごたえを感じる。

しばらく、その手ごたえを楽しみつつ、頂にある愛らしい紅い蕾に唇を寄せた。
―――まるで、砂糖菓子のようですね…。
そう思いつつ、菓子を味わうように蕾を舌で転がす。
「は…ぁ!」
その動きに、頭上で、可符香が喘いだ。

今度は、その喘ぎ声をもっと聞きたくなって、細かく蕾を舌で震わせ、歯を当てる。
「あ…っ、ん、あぁ!」
可符香の声が大きくなった。

可符香の感じるやり方は、分かっていた。
望は、舌で可符香の胸の先端を弾くと、次の瞬間、強く吸い上げた。
「ああああ!」
いつものように、可符香が背中をしならせて叫ぶ。

望は、息を切らせている可符香にそっと口付けると、愛してますよ、と囁いた。
可符香を愛しいと思う気持ちが、次から次へと溢れてきて止まらない。

以前には、感情の行き違いから、可符香に自分の欲望だけをぶつけたこともある。
絶望の余り、無理矢理に救いをこの華奢な体に求めたこともある。

思い出したくもない、数々の忌まわしい記憶。
二度とそんなことはしたくなかった。
これからは、どこまでも、彼女を愛し、慈しみたかった。
347卒業 9/15:2007/11/18(日) 16:57:52 ID:TSR8Czxk
可符香の下肢にそっと手を伸ばす。
そこは、すでに十分に潤っていた。

軽く表面に指を滑らすだけで、くちゅ、という水音が漏れる。
「すごい、胸を触っただけなのに、もうこんなになってますよ…。」
可符香の耳元で囁くと、可符香は真っ赤になって顔を背けた。

その姿に悪戯心が芽生え、望は可符香の耳にふっと息を吹きかけると、
軽く耳たぶを噛んだ。
可符香が驚いたようにビクンと跳ねる。

それをそっと押さえると、
「静かに…。」
囁いて、耳の穴に舌を差し込んだ。

「ひぁ…!」
可符香が目をぎゅっとつぶって首をすくめた。
慣れない刺激に、必死に耐えているようだ。
「可符香、可愛いですよ…。」
たんねんに舐められてすっかり湿った耳に、望は再び息を吹きかけた。
「は、あぁ…!」
可符香が、目をつぶったまま喘いだ。

「耳、気持ちいいですか…?」
望が問いかけると、可符香は真っ赤な顔をしたまま答えない。
「答えてくれないと、分からないですよ…。」
望は、再び可符香の耳に舌を差し込んだ。
「あぁっ…!」
可符香が目を開けて望を見上げた。
心なしか、目じりには涙が溜まっているようだ。
「き、きもち、いい、から、もう…!」

望は、可符香を見てにっこりと笑った。
「もう、何ですか?」
可符香は再び赤くなって横を向くと、涙目で呟いた。
「分かってるくせに…。なんで、先生、そんなにいじわるするんですか…?」
348卒業 10/15:2007/11/18(日) 16:58:37 ID:TSR8Czxk
「―――!」
―――ああ、あなたの方こそ、いつもそうやって、私の心臓を止めようとする…!

望は、可符香を思い切り抱きしめると囁いた。
「先生じゃないと言ったでしょう、望、です…。」

望は、可符香が望んだとおり、下肢に再び手を伸ばした。
そして、今度は、深く指を差し入れた。
「…ふ…ぁ…っ」
可符香が、満足そうな吐息をもらす。

望は、慎重に指を動して可符香が反応する場所を探り当てると、
ゆっくりとそこを上下にこすり上げた。
「い、いやっ!」
可符香が望の腕にしがみつく。
「嫌、なんですか…?」
望が笑いを含んだ声で、可符香に尋ねた。
その間も、指の動きは止めようとしない。
可符香は、震えたまま、無言で力いっぱい望にしがみついていた。

望は、体を下にずらした。
「やっ…!」
可符香が、それに気付いて体を引く。
「こら、逃げるんじゃありません。」
望は可符香の腰を捕らえ、引き寄せると、顔をそこに埋めた。

可符香の濡れて光るその場所に、そっと舌を差し入れる。
「あぁぁぁあっ。」
可符香の腰が跳ねた。
望は、そのまま、あふれ出る蜜を丹念に舐め取ると、ゆっくりと襞の感触を味わった。
「や、だ、だめ…せんせい…!」
可符香は、望の舌が動くたびに、つま先を痙攣させている。

「望、と言ったでしょうに…。」
望は、可符香の赤く膨らんだ突起を舌の先でこね回した。
「いや、あぁぁぁあ!」
可符香は、体をそらせるとそのままぐったりとなった。
349卒業 11/15:2007/11/18(日) 16:59:39 ID:TSR8Czxk
―――もう、いいでしょうかね…。
望自身も、そろそろ限界だった。
意識を飛ばしたままの可符香に囁きかけた。
「可符香…いいですか…?」

可符香がゆっくりと望を見上げた。
その、可符香の眼差しに、望はぞくりと背筋が震えるのを感じた。
愛らしい少女の瞳に宿る、淫蕩にふけった娼婦のような妖しい快楽の色。
―――そんな顔、私以外の男の前では、絶対に見せないでくださいね…。

望は、心の中でそう願いながら、可符香の中に己を埋めた。
「ふっ…うっ!」
溢れ出る暖かさに包まれる。
頭の芯が痺れるような快感に耐えながら、望はふと、
―――母親の胎内というのは、こんな状態なのかもしれない…。
と思った。

そうであれば自分は、可符香と交わるたびに、再び生まれ変わっているのだ。
そんなことを考えているうちに、余りの気持ちよさに何も考えられなくなってきた。

「くっ…!可符香…もう…。」
望のかすれ声に、息を切らせながら可符香が反応した。
「先生、私、も…!」

最後の瞬間、望は、脳裏に、可符香の胎内で丸くなる自分の姿を見たような気がした…。


2人で夢見心地のまま横たわり、気がつくと、あたりはすっかり暗くなっていた。
「明日は卒業式ですし、あなたも帰らなくては…送っていきますよ。」
望の声に、可符香は気だるげに体を起こすと、望を見た。

「明日で…本当に、最後なんですね。」
「…ええ。でも、あなたと私は、これからもずっと一緒です。」
「ん…。」
可符香は、かすかに頬を染めて頭を下げた。
「これからも、よろしくお願いします、せん……望、さん…。」
「はい、こちらこそ。」

2人は、顔を見合わせるとくすりと笑った。
350卒業 12/15:2007/11/18(日) 17:00:27 ID:TSR8Czxk
翌日。
最後の朝のホームルームへと向かった望は、教室に入ったとたんに
クラッカーの派手な音に包まれた。
「な、な、な…!?」

驚いて見回すと、教室は色とりどりのテープやリボンで飾られ、
黒板には チョークで Congratulations!! とカラフルに大書してある。
教壇には、ヴェールを頭にかぶせられ赤い顔をしている可符香がいた。
「か…、と、風浦さん?これは…?」

呆然としていると、後ろからつつかれた。
「先生、こういうことは、きっちり発表していただかないと。」
振り向くと、にっこり微笑む千里がいた。
焦って可符香を見ると、可符香が慌てて「私じゃない」というように首を振る。

「あのね、先生、んなものはバレバレなんですよ。」
「今まで、ばれてないと思っていた方がおかしい。」
晴美とあびるが口々に望に語りかけた。

なおも言葉を失っている望に、制服姿のまといが花束を持って歩み寄った。
「先生…。おめでとうを…心からのおめでとうを、言わせてください…。」
「常月さん…。」

まといのその言葉を皮切りに、クラスの生徒達が一斉に歓声を上げた。
再びクラッカーが鳴り響く。
准が、可符香に向かい、片目をつぶって親指を立てていた。

「先生、可符香ちゃん、おめでとう!」
「お幸せに…!」
望と可符香は、生徒達にもみくちゃにされた。
「誰が掃除するんだよ〜」と笑い声が起きる中、教室中に紙ふぶきが舞う。

望が可符香を見ると、赤い顔をしながらも、幸せそうに笑っていた。
「皆さん…。」
感動の余り言葉を詰まらせた望の代わりに、千里がパンパンと手を叩いた。
「さーて、そろそろ入場の時間よ!皆、講堂に向かって!」

その声に、皆、頭にクラッカーのかけらや紙ふぶきを乗せたまま、
がやがやと楽しそうに教室を出て行った。
351卒業 13/15:2007/11/18(日) 17:01:16 ID:TSR8Czxk
卒業式は、和やかに行なわれた。
涙ながらに卒業証書を受け取る者、皆に向かってガッツポーズをとる者。
望は、教え子達の晴れ姿に目を細めた。

やがて、卒業証書授与式も終わり、
ピアノの音に合わせて生徒たちが歌い始めた。

―――仰げば 尊し わが師の恩
     教えの 庭にも はやいくとせ――

望は、歌声が響く中、教え子達を一人ひとり眺めていった。

―――せーん、せ。
引きこもりだった少女。
一時ぐれたりもしたが、今では立派に卒業式に出席できるまでになった。

―――普通って言うなあ!
彼女は嫌がっていたけれど、普通でいると言うことは、ときには非常に困難だ。
彼女には、いつまでも、彼女の特徴である普通さを失わずにいて欲しい。

―――先生、きっちりしてください!
この子には随分苦労もさせられたけれど、彼女はいつも何事にも全力投球だった。
そんな彼女には、きっとその努力に報われる人生が待っていることだろう。

―――思えば いと疾し このとし月
         今こそ 別れめ いざさらば―――

必死にメールを打っている小柄な少女の姿に、望はくすりと笑った。
あの子は、きっと、歌う代わりに歌詞を一生懸命打っているに違いない。
その隣では、やはり小柄な色黒の少女がたどたどしい日本語で歌っている。
彼女の先行きはある意味一番心配だったが、あのバイタリティがあれば大丈夫だろう。

小柄な2人の向こうには、頭一つ大きい金髪の少女。
―――見たわね、訴えるよ!
最近は、多重人格の傾向もすっかりなりを潜めたようだ。
これからは、広い世界に羽ばたいて行って欲しい生徒の1人だった。

352卒業 14/15:2007/11/18(日) 17:02:07 ID:TSR8Czxk
―――朝ゆう なれにし まなびの窓
      ほたるのともし火 つむ白雪―――

しっぽ好きの少女と妖しげな漫画ばかり描いていた少女が並んで口を開けている。
2人とも、特殊な性癖を持ってはいるものの、気立てはよい子達だ。
そのまま世間になじんでいってくれるだろう。

言葉少ない放火少女も、加害妄想の引っ込み思案な少女も、そして
いつも影が薄かった少年も、今日ばかりは、皆、声を張り上げて歌っている。
苦労性の奥様も、今日は生徒の顔をして歌っていた。

彼らの横には、面倒見の良い、本好きの少年。
―――彼とは、これからも長い付き合いになるんでしょうね…。
准が倫と目を見交わし合っているのを、望は複雑な面持ちで眺めた。

ふと、望は後ろを振り向いた。
―――常月さん、いたんですか。
―――はい、ずっと。
これまでに、何度も繰り返されてきた会話。

しかし、もはや、いつもの定位置にその姿はなかった。
目を前に戻すと、生徒達の列の中、制服姿で歌っているまといの姿がある。

彼女には、辛い思いをさせてしまったかもしれない。
この次は、彼女の想いを受け止めてくれる人が、あらわれますように…。
望は心からまといの幸せを祈った。

そして。
望は、列の前方に目をやった。

―――命を粗末にしては、いけません!
人生を変えてくれた、最愛の人。

―――わするる まぞなき ゆくとし月―――

可符香は、こころなしか赤い目をしながら歌っていたが、
望の視線に気がつくと、にっこりとこちらを見て微笑んだ。
その左手の薬指には、望の贈った指輪が光っていた。
353卒業 15/15:2007/11/18(日) 17:02:53 ID:TSR8Czxk


―――今こそ 別れめ いざさらば―――


講堂の天井に、生徒達の歌声がゆっくりと消えていった。

―――今こそ、別れめ…。
―――ああ。本当に、これで皆さんとお別れなのですね――。
望は、ふいに涙がこぼれそうになり、天を仰いだ。

曲者ぞろいのクラスで、最初はどうなることかと思ったけれど、
彼らと過ごした日々は、なんと輝いていたことか。

絶望ばかりしていた自分を変えてくれたのは、可符香だけではない。
毎日を、彼らと全力でぶつかり合って過ごしていくうちに、
いつの間にか、こんなにも「教師」になっている自分がいた。

卒業生達が列になって退場していく。

―――人生の大切なものを教えてくれた皆さんに、心からの感謝を。
―――そして、これからの皆さんの未来に幸多からんことを…!


いつのまにか、式は終わっていた。


「先生――!」
講堂の外に出た望に、生徒達が皆、手を振りながら駆け寄ってくる。
そして、これから人生をともにしていく愛しい少女も―――。

望は、満面の笑みを浮かべると、両手を広げて教え子達を迎えた。


―――ありがとう、皆さん、そして、お元気で…!


歓声が響く校庭で、早咲きの桜が、春の風に花びらを散らせていた。

354430:2007/11/18(日) 17:04:19 ID:TSR8Czxk
お付き合いいただき、どうもありがとうございました。

何だか、すごく…最終回です…。
毎度毎度、原作クラッシャーな話しか書けなくて絶望した!!
まあ、こうなったら、ひとつ芸風ということでご容赦いただければ…orz
355名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 18:25:27 ID:k2mjCE/p
ついに完結ですか
おめでとうございます
356名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 20:44:37 ID:G860RPGp
乙です!
毎回楽しみにしてました。これで最後だと思うと読むのがなんだかこわかったですねw
原作崩壊は確かだけどあなたの作品は大好きなのでまた投下期待してます!
357名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 20:49:44 ID:5zZY32Sr
最終回乙でした。望と可符香のその後の話も読みたいです。
358名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 20:50:40 ID:3eOMzTHL
なんという最終回。
359名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 22:09:31 ID:LWXYCgwn
>>354
「旅立ちの時」で、なんとなく大詰めを終えたような感じを受けていましたが、ああ・・・・・・最終回とは。
「最北」から、読み返してしみじみしてしまいました・・・ 430氏ありがとう・・・!

  ・・・今、フッと浮かんだ言葉   「もうちょっとだけ つづくんじゃ」    ・・・あ! スルーして!w
360名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 01:04:00 ID:zspfkISB
知りたい、でも知るのを畏れる一つの物語の終焉、いつかは訪れる最終回。
いい最終回だった。という言葉はこのためにあるんですね。・゚・(ノд`)・゚・。

でも、終わりのように思えた物語は、巣立っていく生徒達のようにそれは始まり。
これから各々新しい物語を紡いでいくんですものね。
先生の次回作にも期待しちゃいます。
361名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 02:12:20 ID:V1fA/s1g
脳内でアニメーションが流れたよ
学園モノストーリー最終回の定番、卒業式が
絶望先生とマッチするとは思わなかった

お疲れ様でした
362名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 03:00:44 ID:uFQNcgKW
正直、タイトル見た後このまま読まないで寝ようかと思ったw
でも読んだよ、当然
感慨深さが止まらないんだぜ?
363名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 20:27:42 ID:LfBksHM9
ポジティブな発言をするのは品格ある女性らしい。ならば杏ちゃんは品格ある女性?
364真昼:2007/11/20(火) 16:27:12 ID:bxubYAxZ
芽留&カエレの小ネタを投下させていただきます。
エロ無し、どころか恋愛要素すらナッシング。
個人的にこの二人の絡みが好きなので、完全に自己満足でやらかしました。
7レスほど消費させていただきます。
365着信メロディ 1/11:2007/11/20(火) 16:28:35 ID:bxubYAxZ

◆ ◇ ◆ ◇

喉の奥に蓋をされたような圧迫感にも、もうすっかり慣れてしまった。
他人とのコミュニケーションは、手の中にある小さな機械さえあれば、なんとでもなる。
そもそも自分は馴れ合いなんて求めてない。
今のクラスは何かと腹の立つ奴ばかりで、つい何かとかまってしまうが。
とにかく、もう今更、この喉を声が通らない事なんて気にしていなかった。
―――気にしてなど、いないのだ。

◆ ◇ ◆ ◇

その日音無芽留は、普段訪れない屋上へ足を運んでいた。
時刻は昼休み。何かと騒がしくなる2のへの教室。
普段は奈美や、他の比較的マトモな生徒に交じって食事を取るのだが、
今日はなんとなく食欲がなく、騒がしい教室に居心地の悪さを感じでしまった。
自分が食事を取らないのを見れば、お節介な生徒は「どうしたの?」「気分が悪いの?」などと気にかけてくるだ

ろう。
千里に見つかれば「食事はキッチリ三食とりなさい!」などと難癖を付けられるかもしれない。
…どうして今のクラスは、こんなにもあらゆる意味で遠慮がないのだろう。
芽留は自分の事は棚に上げて溜息を吐く。
そんなのはうんざりだ。
そうして静かに教室を抜け出し、一人になるために選んだ場所が、屋上だった。
季節は冬真っ只中。こんな寒空の中にわざわざ出ていこうとする生徒は居ないはず。
冷たい風さえ我慢すれば、一人になるには絶好の場所―――の、はずだった。
「……?」
このドアを開ければ、低い雲の広がる寒空が見れるだろう。
だがメルはノブを掴もうとした手を、何かに戸惑うようにさ迷わせた。
―――ドアを隔てた向こうから、誰かの声がするのだ。
予想外の先客に、芽留はオロオロと弱り顔で後ずさる。
が、そんな弱々しいリアクションとは裏腹に、内心では思いっきり舌打ちしていた。
まさか自分以外に、この馬鹿みたいに寒い屋上を居場所とする人間がいるとは。
そのまま帰るのも癪なので、せめて自分の居場所を奪ったのがどんな奴なのかだけは確認しようと、
物音を立てないように気をつけながら、そっとドアに耳を押し当てた。
そこでようやく、さっきから聞こえる声が、何かの旋律を奏でている事に気付く。
風の隙間を縫うように、低く、時には声高に流れる、女性の歌声。
366着信メロディ 2/11:2007/11/20(火) 16:29:19 ID:bxubYAxZ

―――こうして耳を澄ませてようやく、その歌声の美しさに気付いた。

その歌に歌詞はなく、ただただ自由に喉を震わせ、伸び伸びと旋律を奏でている。
ドア越しであるにも関わらず、僅かに届く音だけで、芽留の心は大きく震えた。自然と目に涙すら浮かぶ。
背筋が慄く。切なく流れるゆっくりとしたメロディに、自然と惹き込まれていった。

―――気付けば歌は終わっていて、芽留はいつのまにか脱力したようにドアにもたれ掛っていた。

はっと我に返る。自分がだらしなく呆けていた事を恥じて、頬を赤くする芽留。
だが、恥じる気持ちと同時に、あの歌が誰のものか無性に気になった。
少なくとも自分のクラスに、あんな美声の持ち主などいない。
だがあれほどまで美しい声ならば、噂くらい立ちそうなものなのだが。
「………」
芽留はゆっくりと立ち上がり、ドアノブに手を掛けた。
―――あの歌をもう一度聴きたい。出来る事なら、ドア越しではなく、目の前で。
その一心で、思い切りドアを開いた。

―――真上に上った太陽が視界を白く閉ざす。

眩さに思わず目を閉じる。次に目を開いた時には、視界はクリアになっていた。
屋上の真ん中に立っていた人物は、驚いたように目を見開いて、芽留を見つめている。
「―――ッ!!?」
その人物が誰なのか一瞬で理解してしまって、芽留は愕然と掠れた息を吐いた。
冷たい風に靡く、日の光を受けて眩く光る金髪。見開かれた瞳は澄んだ若葉色。

「…ぬ…、盗み聞きとは良い度胸じゃない、訴えるわよッ!!」

木村カエレ。
芽留の中では、おそらくもっとも想定外の人物だった。
『…じょうだんだろ…ほるすたいん…』
「誰がホルスタインよ!」
グッタリと項垂れながらも、しっかりとメールは打っている。
カエレは受信したメール内容に憤慨しながら、ツカツカと芽留に歩み寄った。
『さっきのうた、おまえのか、ほんとに?』
「あーもう、そうよっ、悪い!?」
動揺のあまり漢字変換すら忘れてメールを打つ芽留に、カエレは半ばヤケになったように答えた。
頬が僅かに赤い。どうやら自分の歌を聞かれるのが恥ずかしいようだ。
367着信メロディ 3/11:2007/11/20(火) 16:30:04 ID:bxubYAxZ

「ったく……、こんな馬鹿みたいに寒いなか、わざわざ屋上に来る奴が居るなんて…」
『そりゃこっちの台詞だ。
 …お前、もしかしていっつもここで歌ってるのか』
「――いつもじゃないわ。気が向いたときだけ、たまによ」
答えながらそっぽを向くカエレ。相変わらず頬を赤くしたままで、
「あんたは? 何の用があってこんな所に来たのよ」
『何だっていいだろ、一人になりたかったんだよ』
芽留も気まずげに俯く。
まさか自分を戦慄すらさせた歌声の持ち主が、よりによってこの女とは。
あらゆる意味でショックだった。
『でもお前、文化祭の時の歌は酷いもんだったじゃないか』
そう、芽留はカエレの歌を以前聞いた事があった。
少なくともその時はこんなに美しい声などではなく、むしろ音痴代表の某漫画キャラも全裸で逃げ出しそうなレベルの歌声だった。
「あれは、最低限文化的な日本人のレベルを合わせてあげてただけよ」
『いや、あれはむしろ別の方向に文化的過ぎただろ』
「どういう意味よ!?」
怒鳴り返すカエレ。だが、意外な事に自覚があったのか、すぐに気まずげに視線を逸らした。
芽留はある一つの可能性にたどり着き、まさかと思いつつ聞いてみた。
『お前まさか……あん時、酷い歌って言われたのが悔しくて、練習したのか』
ギクリ。
僅かにカエレの両肩が震える。図星のようだ。
芽留はさらに驚愕して、目を見開いてカエレの赤い顔を見つめた。
パンツとおっぱいしか能が無いと思っていた女が、こんな風に影ながら努力していて、
しかも文化祭から数ヶ月でここまで上達したというのだ。驚きもする。
「何、なんか文句あんの!?」
『…………』
画面に並ぶ三点リーダ。
「わざわざ沈黙まで打たなくていい!」
―――次に携帯の画面に現れた言葉は、酷く刺々しかった。

『こんな寒いなか歌の練習とは、ご苦労なこった。そんなに下手って言われたのがこたえたのかよ。
 案外繊細なんだな、外人のクセに。
 まぁ多少歌がマシになったからって、結局おっぱいとパンツしか存在価値がないってのは変らないがな』
368着信メロディ 4/11:2007/11/20(火) 16:30:44 ID:bxubYAxZ

芽留の中に、もやもやと嫌な感情が渦巻き始めていた。
本心では、カエレの努力に感心している。
鼓膜を突き破らんばかりに震わせる歌声は、人の心を静かに震わせる歌声に化けた。
だが、普段あまりカエレと仲の良くない芽留である。素直にその努力を認めるのは癪だった。
それになにより――カエレの成し遂げた事は、自分には絶対に出来ない事だ。
それが本当は、悔しくて堪らないのである。
そんな芽留の内心を知ってか知らずか、カエレは鼻息荒く、残酷な言葉を返していた。
「っふん、まぁアンタのお得意のメールじゃあ、歌なんて披露できないでしょうからね。
嫉妬するのもわからなくはないけど、みっともないわよ?」
豊満な胸の前で腕を組み、心なしか上体を反らして、自信満々に言い放つカエレ。
その言葉があまりにも図星を突いていて、芽留は喉の奥で低く呻き声をあげた。
もちろん、カエレは芽留を深く傷付けようとして言ったわけではない。売り言葉に買い言葉、というやつだ。
だが、予想外に押し黙る芽留の様子に、訝しげな顔になる。
「何よ、図星?」
――沈黙。
今度は、携帯に三点リーダを打つ気力すらない。
いつも数々の暴言を発信している芽留が、携帯がその手にあるにも関わらず、無言でいる。
その様子を珍しく思うより前に、カエレは日頃のお返しとばかりに罵倒を浴びせかけた。
「あら、悔しいならお得意のメールで歌ってみてごらんなさいよ。
 出来ないの? …っふふん、そんな事でよくもまぁ失礼な口がきけたものね。
 さぁ歌って御覧なさいよ。それとも、おっぱいとパンツが存在価値の私より、自分が劣るって認めるの?」
次々浴びせられる言葉の刃。
それは、日頃芽留が他人にしている事となんら変わりない事だ。
だからといって、自分がその暴言に耐えられるかというと別の話である。
悔しさで視界が滲む。
さっきまで意識していなかった、喉の奥を塞ぐ圧迫感が、俄かに重くなってくる。
369着信メロディ 4/7:2007/11/20(火) 16:32:00 ID:bxubYAxZ

◆ ◇ ◆ ◇

――お前、変な声だな――

クラスメイトの何気ない一言。
ラジカセから流れる自分の声。
その声は自分の想像と違うもので、芽留はほんの少しだけ傷ついた。
それだけならば、いい。
それだけなら、多少無口になる程度ですんだはずだった。

数日後、芽留の声を指摘したクラスメイトが、消息不明になりさえしなければ。

犯人は判りきっていた。
あの男が自分を溺愛している事は判っていたが、まさかここまでするとは思わなかった。
芽留はもちろん父親を責めた。だが、だからといって失われた者が戻るわけではない。

その日から、芽留は声を出す事が恐ろしくなった。

また、誰かが自分の声を指摘したらどうしよう。
そうしてまた、その誰かが居なくなってしまったら、どうしよう。

芽留に罵倒されて父親も流石に堪えたのか、あれから多少自重するようにはなった。
けれどだからといって、一度植えつけられた恐怖が薄らぐわけではない。

気付けば、喉の奥に圧迫感があった。
声を出そうにも、醜く掠れた呻きしか出ない。
そうして芽留は喋れなくなった。
声を、出せなくなったのだ。

◆ ◇ ◆ ◇

「―――……ッッッあ”」
声を、出そうとした。
悔しさのあまり、無理と判りつつも、歌を歌おうと試みた。
だがやはり、喉から出たのは醜く潰れた酷い音。
咄嗟に喉を押さえる。このまま、掻き毟ってしまいたかった。
はっとして、カエレの反応を見る。
カエレはきょとんとした顔で、芽留を見下ろしていた。
その表情が、何故か自分を馬鹿にしているように見えて、芽留は深く俯いた。
「――……ぐ…――!」
惨めさに耐え切れなくなって、咄嗟に踵を返す芽留。
瞳に溜まった涙が、きつく閉じた瞼に押し出されて、宙を舞う。

「ストーップ!」

するんぱしっ!
走り去ろうとする芽留の細い腕を、カエレの手が強く掴んで引き止めた。
「タダ聞きとはいい度胸じゃない、訴えるわよ」
370着信メロディ 6/7:2007/11/20(火) 16:32:49 ID:bxubYAxZ

振り返った芽留の両目に映ったカエレの表情は、怒っているようにも見える。
口にした言葉はいつも通りきついものだが、口調は、ほんの少しだけ柔らかかった。
まるで芽留を気遣うように。
だが当の芽留はそれに気付かない。また何か言われるのかと、涙目でカエレを見上げている。
「―――私の歌を無断で聞いたんだから、それなりの代価を払ってもらうわよ」
「……?」
現金でも払えというのだろうか。
だが、カエレの求めた代価は、芽留にとっては現金などよりよほど大きなものだった。

「アンタの歌も聞かせなさい。等価交換よ」

芽留はよりいっそう表情を歪ませた。なんて残酷な女なのかと、信じられない思いでカエレを見つめる。
カエレはずっと掴んでいた芽留の腕を話し、今度は彼女の細い両肩に手を置いた。
身長の低い芽留に視線を合わすように、少しだけ膝を折る。

「アンタがマトモに歌えるようになるまで、私がレッスンしてあげる」

――その声が、今までにない程優しかったので、
それが彼女の精一杯の気遣いなのだと、芽留はようやく気付く事ができた。

「もちろん、この私がレッスンしてあげるんだから、それに見合うだけの歌唱力は身につけてもらわないとね」
肩を流れる金髪をかき上げながら、胸を張って言うカエレ。
詳しい事は知らないが、芽留が自分の声に何かしらのコンプレックスを抱えて居る事くらいは、カエレにも理解できた。
そして自分の言葉が、予想以上に芽留を傷付けた事も。
プライドの高い、素直になれないカエレが、芽留に出来る精一杯の償い。
それは、彼女の声を取り戻す手伝いをする、というものだった。
もちろん、芽留が声を出せるようになったあかつきには、代価として彼女の歌を聞かせてもらう。
たとえ芽留が拒否しようと、カエレは是が非でも彼女の面倒を見ることに決めた。
「訴えられたくなかったら、大人しく私のレッスンを受ける事! わかった?」
371着信メロディ 7/7:2007/11/20(火) 16:34:28 ID:bxubYAxZ

「………」
芽留はカエレの瞳をじっと見つめたあと、やおら携帯を取り出し、メールを打つ。
少し時間が掛かっている。
長文なのかと思いながら、受信したメールを開くカエレ。


画面一杯に広がる三点リーダ。


「だから、沈黙までわざわざ打つなッ! 嫌がらせかっ!!」
怒鳴りながらも、一応画面をスクロールさせてみる。
延々と続くかと思われた三点リーダ。

スクロールが、終わる。
三点リーダの海に、ポツンと浮かぶ四つのひらがな。


『ありがと』


「………」
芽留を見ると、耳まで真っ赤になっている。
「――ふ、ふん」
予想外のしおらしさに、カエレもどうしていいか判らず、顔を赤くして視線をあらぬ方向に向けた。
と、まるでその沈黙を待っていたかのように、予鈴が鳴り出す。昼休みは終了のようだ。
カエレは一つ咳払いをして、芽留の目前に指を突きつけた。
「それじゃ明日から、この時間、昼食持ってここに待ち合わせ! 良いわね!」
それだけ言うと返事も待たずに、長い金髪をなびかせて駆け出すカエレ。
そのまま屋上を出て行く直前、振り返り、
「サボったら訴えるわよ!」
そういい残し、ドアの向こうへと姿を消した。


一人残された屋上で、芽留は乾いた涙の跡を拭い、空を仰いだ。
低い雲。冷たい風。うんざりとする冬の寒さ。

『悪く、ねぇな』

誰にともなくそう打って、芽留も屋上を後にした。


二人が美しいハーモニーを奏でられるようになるのは、まだ大分先の話である。




『――――さて、何を歌おうか――――』



372真昼:2007/11/20(火) 16:40:24 ID:bxubYAxZ
タイトル間違えすぎだろ…。
>>365,>>366,>>367,>>368の○/11は、○/7、
>>369,着信メロディ5/7 です。
いや、ほんと間違いすぎだ。ひでぇ…。
只でさえ読み難いもんを更に読み難くして申し訳ないです。
373名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 20:44:18 ID:01+RBEXL
おお、真昼さんお帰りなさい!!
真昼さんの文が大好きなので、戻ってきてくれて嬉しいです
思わずカエレに惚れてしまったのは内緒なんだぜ
374名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 21:06:00 ID:95vEAhSI
……………
……………
……………
。・゚・(ノд`)・゚・。

あの2人はきっかけさえあれば一番の親友にもなれるんですねぇ。
いつかカエレをめっるめっるにしてあげられるといいですね。
375名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 21:08:11 ID:f3GPX9EZ
いいもの読ましてもらったわ
376名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 22:20:29 ID:tWS1bJab
>>372
・・・何だろう。 ものすごく感想を書きたいのに何もまとまらない。
あっという間に引き込まれて読んだ。
灰色の屋上と、かすれた青空と、佇む芽留が浮かんで消えない。
まだ、もう少し自分の中で消化したい気持ちです。
何を言ってるのか自分でもよく分かってないですが、
とにかく、 
この話 大好き です。
377名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 23:17:06 ID:j3EfTv0P
430氏といい真昼氏といい……
このスレは綺麗に泣かせてくるSSが多いから涙腺が崩壊して困る(ノд`)

どっちもGJなんだぜ。
378名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 23:39:11 ID:j71livJc
エロなしも好きだ。(あっても好きだ)
着信メロディ というタイトルがいいな。

いい作品を読むと励みになります。      
                     ................自作、まだ完成度20%
379名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 13:26:40 ID:HlDlHOun
霧のパンツ姿がデフォになってる
一体何をした、絶望ww
380名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 15:24:49 ID:/M4plOME
カバー下から霧がいなくなりそうで怖い
そしてパンツキャラのお株を奪われたカエレの明日はどっちだ
381名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 17:00:13 ID:Sx7RNeHz
引きこもりってパンツでウロウロしてるんじゃないの?
382名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 21:33:10 ID:SfW9XcfP
宿直室の背景小ネタに、うすうすとかクリヤブルーとかが登場しませんようにw
383名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 23:49:20 ID:IEMNHVrP
パンツキャラが駄目ならブラ見せキャラになればいいじゃない。
384名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 01:20:07 ID:6369AhR+
>>381
ジャージ着てたよこの前は
385名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 07:25:27 ID:sH74ygPS
霧(他のキャラもだが)の萌えキャラ化はなんか嫌だなぁ・・・
原作がクールな絵柄と話だからこそ2次で萌えられるというか何と言うか

それにしても今回の千里は色っぽかった
ということで千里SS希望
386名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 08:42:27 ID:qbgMlKWT
霧って元々完全な萌えキャラでそれ以外に使い道ないだろ
パンツキャラになるのは予想外だったが
387名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 10:48:39 ID:Rve7xiB+
キャラに萌えればそのキャラは萌えキャラですよ
388名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 12:20:02 ID:sH74ygPS
まあそのとおりなんだが最近の水着とかパンツとか
さあ萌えろ喜べと言わんばかりの露出はなんだか萎えるなと・・・
そろそろスレ違いだなスマン消える
389名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 00:15:20 ID:xBSJAJDw
霧厨としては先生との会話が増えてきたのが嬉しい
390名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 01:04:13 ID:WGCgMBmx
俺も嬉しい。
「そう・・・かな」の表情がなんだか好きだったりする。
391名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:18:43 ID:cQk5czFC
『ぼくは勤労ができない』


「キャァァッ!」
ふいに起こった悲鳴に、思わず振り返ってしまった。
前方、僅に一メートル、拡がったスカートの下から、散らばった石榴の実が覗いていた。
「ちょっと先生!見たわね!訴えるわよ!」
脚が此方を向くのが見える。眼を上げると、木村カエレだった。
どうやら、彼女の下着を見てしまったらしい。
いつもの事とはいえ、ここまで間近に見たのは、来日初日を除けば無かっただろう。
「聴いているんですか!教師が生徒の下着を覗き見るなんて、恥ずかしいとは思わないんですか!」

「見たくて見た訳ではありません!そもそもいつもの事じゃありませんか!」
厄介さんとは関わらないに越したことはない、しかし、今はもう遅い。
兎に角、今は少しでも自分を正当化しないと。
黙殺などしたら、彼女なら本当に司法に訴えかねない。
「い・・・いつものことですって・・・」
「そうです!いつもです!いつも見せられてるものをわざわざ覗きませんし、反応もしません!」
「な・・・そ、そこは反応しろよ!なに男サボってるんだよ!」
「・・・え?」
予想外の返事が返ってきた。
「見られるのもムカつくけど、反応されないのも女として屈辱
392名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:22:03 ID:cQk5czFC

「男として、働く事を要求します!」
「じ・・・じゃあどうすればいいんですか!反応してもしなくても、結局訴えられるじゃないですか!」

「あら、先生は働かないんですか?それはよくありませんね・・・今日は勤労感謝の日ですよ?」
しかも、きっちりさんまで現れた。おまけに、他にも生徒達も集まってきている・・・
このままでは怠けてるのにかこつけて、きっちりさんに大人の玩具に感謝させられかねない・・・
しかしここで反応したりしたら、それこそ他の女子に殺される・・・
嗚呼・・・どうすれば・・・

「やだなぁカエレちゃん、千里ちゃん」
背後から声がした。振り向かなくとも、このポジティヴな発音を発するのは、彼女しかいない。
「カエレちゃんみたいな美人のパンツみて、怠けてる男の人なんていないわよぉ」
「じゃあ、この男はどうなのよ!」
指を指されてしまった。しかも、指先が心なしか低い位置を指している
「ご覧なさい!袴に張っているべきのテントが無いじゃない!」
眼線を下ろしてみる。確かに、腰から下の袴には、一切の隆起がない。
「これがサボってなくて、何だっていうのよ!」
「うーん、これは・・・」
嫌な予感がする。
彼女を止めても
393名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:26:50 ID:cQk5czFC

「あ、そうか!大丈夫、先生はやっぱり怠けてなんかいないわよ」
「じゃあ一体なんなのよ!」
「先生は――――働かないんじゃなくて、働けないのよ!」
「な・・・何を言い出すんですか一体!」
「だって先生、袋綴じにも反応できなかったし・・・」
「あれは私ではなく内容に問題があったでしょう!」
「いくらカエレちゃんでも、働けない人を働かすのは難しいわね」
「人の話を聞きなさい!」

「それはよく、ありませんね・・・働けないのなら。」
「たしかに、よくないわね・・・本当に働けないのなら」

「み・・・みなさん、何を言い出すんです?」
目の色が変わっている。しかも全員。
「それでは、今、確かめてみましょう。本当に働けないのかどうか。」
「え・・・」
「働けないのなら不労働は不問!働けるのに不労働なら、偽証罪で闇の法廷に訴えます!!」
「えええっ!?」


394名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:30:17 ID:cQk5czFC

「――では協議の結果、順番で確めることになりました。一人5分とします。」
きっちりさんが発言する。
彼女の他に、女子が5人。
「因みに、カエレちゃんと可符香さんは審判とします。」
つまり、女子4人に何かされるということか。
 めるめる
『先鋒はオレだ』
音無芽留が前に出る。逃げ出したいが、既に手足は縛り付けられている。這うようにしか動けない。
私は今、生徒達によって弄ばれようとしている。
兎に角、今するべき事は一つ、ただひたすら、快楽に耐えることだ。
『いくぜ下半身ニート』
携帯電話を握った幼いの手が、袴へと伸びてくる。思わず、目を閉じる。

・・・・・・ぶぅ〜ん、ぶぅ〜ん、
「・・・へ?」
袴の上から、微かな振動を感じる。目を開けると、携帯電話が振動していた。
「・・・こ、これだけ?」
男子たるもの、携帯電話やらゲームのコントローラやら祖父の電気あんまやらで、
思春期に一度は考えたであろうことだ。まさか、のっけがこれとは・・・
自分もそこまでは若くない。この程度ならば5分くらい、耐えられるだろう。
395名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:33:38 ID:cQk5czFC

『あめーんだよニート』
メール弁慶が画面上の文をみせる。しかし、振動は依然として続いている。
次の瞬間、懐から冷たい物が侵入してきた。それも私の胸元で振動し出す。
「わひゃっ!?に・・・二刀流!?」
つい、声を出してしまった。いけない、この程度で負けてどうする・・・
気を直し、メール弁慶を睨み付ける。
目があった。これが見合いでなくてよかった。
上目遣いに、頬を朱らめ、携帯電話を持つ両手を動かしている。
振動場所が鎖骨、胸骨、乳輪と、ゆっくりとではあるが移動する。
もう一方でも、内股、付け根、竿付近と這い回る。
それを動かす両手の主は、目が合うと慌てて反らし、間をおいてまたそっと見上げる。
もじもじ、ぶぅ〜んぶぅ〜ん・・・
たったこれだけなのに何故だろう、とても気恥ずかしい。
次第に、自分の頬にも血液が集まり出す。
血液たちは、やがて顔だけではなく下へと集まり出して・・・・・・

ピピーッ
「残念、時間切れです。」
『ちっ、しぶといなこの下半身介護』

振動が止み、我に返る。
あ・・・危なかった・・・
あと少し遅ければ、我を失う所だった。現に、血液の数パーセントは腰より下に集まり出している。
もっと気を引き締めねば・・・あと3人、耐えきらなくては!
396名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:37:09 ID:cQk5czFC

背中に、暖かいものが覆い被さった。
「次は私ですね、先生」
「い・・・いつからそこに?」
常月まといの声だ。彼女が、後ろから抱きついているのだろう。
「ええ、ずっと」
耳許で、囁くように返事が返される。彼女の吐く息が、耳にあたる。
「・・・せんせい」
囁きが近づき、背中で彼女が動くのがわかる。
肩胛骨に、二つの弾力を感じる。
暖かい弾力が背に被さるのが、、二枚の布を通してわかる。
「・・・ふぅっ、先生、これを、こうするね・・・」
首筋に冷たい指があてがわれる。指は、すぐに襟へとかけられる。
指が離れると、首から肩にかけてが冷えた外気に触れる。襟が下ろされているらしい。
背の弾力は相変わらずそこに存在し、間の繊維だけが下へと流れていく。
繊維が流れる度、その摩擦がむず痒い。
と、摩擦が途切れた。人の肌の感触が次に来る。
二つの弾力が、より強く、広く、暖かく押し付けられる。
「はあっ、せんせい、あったかい・・・」
耳許の吐息も強まる。
見えない分、どうしても背の弾力を想像してしまう。
「はぁ、想像して、せんせいにあたってる、わたしのこれを・・・」
また弾力が移動する。柔らかさの中に、二つの塊があることがわかった。
弾力が動くに伴って、徐々にその塊も擦れ、固くなっていく。
その姿を想像す・・・

ピピーッ
「はいそこまで」
ハッ・・・
またしても我を失いかけていた・・・
慌てて下を確認する。幸い、テントはまだ張られていない。今はまだ、だが。
397名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:41:14 ID:cQk5czFC

目を上げると、他の者の背から、異様なオーラが放たれていた。

「次、わたし」
引き籠り少女が前に出、常月まといが背中から離れる。
小森霧が、息が顔にかかるほど接近し、じっと私の眼を見詰めてくる。
不意に、視界が靄にくるまれた。いつの間にか、彼女が私の眼鏡をかけている。
「先生・・・目、あけないでよ・・・」
そう呟く少女の口から、舌が覗いた。真っ白な肌と相まって、それは艶かしく映える。
赤い舌が、接近してくる。靄に覆われた視界が赤い舌に支配されていく。
その尖端が眼球に触れそうになり、思わず目を瞑ってしまう。
吐息が顔を撫でる。瞼に、湿った暖かいものが触れる。
なめくじをを連想させるそれは暫し上瞼に留まり、それから下へと移動を開始する。
下瞼、頬を塗らしたなめくじが、唇に被さり、また動きを止める。
口に侵入するのか?そう身構えたが、なめくじは下への進軍を再開する。
首に達したとき、頬に冷たい物が触れた。目を閉じていて解らないが、私の眼鏡らしい。
なめくじが通った跡に、時折暖かい息がかかる。それを追うように冷たく固い眼鏡が触れる。
先程はだけられた肩を、鎖骨を、赤いなめくじが濡らしていく。
何故だか、目が開けられない。ただ、自分と少女の吐息だけが聞こえる。
腹や腕に、少女の髪がかかってくる。
なめくじが片側の乳輪を一周する。そこで一旦離れ、全体に覆い被さってくる。
竿に、血液が集まりだしたのがわかる。
働かないように意識を集中するが、かえっていけなかった。
なめくじが竿や袋をを這い回る姿を想像してしまう。
なめくじは今、臍に沿って動き、窪みを湿らせている。
いけない・・・こ・・・このままでは・・・
398名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:53:49 ID:cQk5czFC
ピピーッ
「はい、終了。しぶといですね先生。」
た、助かった。
「先生、本当に働かないんですね・・・引き籠りだって働くのに」
眼鏡を返し、残念そうな口調で小森霧が去っていく。

「さあ、最後は私です。」
木津千里が進み出る。目が座っている。
「気のせいか、前の3人で働こうとしてませんでしたか?」
「そ、そんなことはありませんよ、はは・・・」
正直、かなり危ない。心の中の偉大な同士様達が、労働の喜びを訴え出している。
あと一人・・・耐えて見せねば・・・闇の法廷で裁かれる
「みんなやり方がぬるいわ。働けないかどうか確かめるなら、きっちりやらないと。」
手にリップクリームが握られている。
「働けないのなら、これでも何ともないはずです。」
「い・・・いったい何を?」
「こうします」
抗う間もなく、袴が下ろされた。首をもたげかけた竿が露になる。
「キ、キャー!何をするんですか!ってか、最後の最後にそうきますか!?」
「問答無用。」
リップクリームが、繁みに、竿に、玉に、塗りたくられる。
しかも、メンソール入りだった。
「冷た!ち、ちょ・・・あ、熱う!痛っ!」
男の弱点が、冷たい焔で燃えたぎる。
血液が、この一点に集中する。今、私の男としての機能が働き始めてしまった。
399名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:59:38 ID:cQk5czFC

「やった・・・先生が、先生が立った!」
「ハ○ジみたいに言うなぁ!」
「あら、ちゃんと男として働けるじゃないですか。」
「決まりね、偽証罪で闇の法廷に訴えます。丁度縛られてるし。」
「いやぁぁぁっ」



「判決。有罪。」
目隠しをされ、つれてこられた法廷で即刻判決が言い渡された。
流石に股関の炎は、もう鎮まっている。またこれが正常に働くかどうかは疑問だが。
「被告人は不労働の偽証罪により、本日一日ムダ働きの刑に処す」
「ム・・・ムダ働き?」
「執行官、ここに」
仮面の、何処かで見たような執行官が数人入ってきた。
全員、手にリップクリームを握っている。
「被告人は今日一日、ずっと労働すること。休みなしで。」
「ええっ!?」
「温情として、執行官はクリームを塗る以外には何もしないから安心しなさい」
「そんな温情要りません!ホントにムダ働きじゃないですか!ってか、ホントに働けなくなるじゃないですか!」
「執行!」
ぬりぬりぬりぬり・・・
「熱ぅ!いやぁぁぁぁぁぁ・・・」


《『ぼくは勤労ができない』 完》
400名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 11:02:14 ID:cQk5czFC
以上です。

駄文を書き連ねて、皆様のお目を汚してしまいましたこと、お詫び申し上げます。
401名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 12:09:12 ID:zqBzm1v+
懐かしい雰囲気だな
402名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 17:45:31 ID:r0+3ftVi
エロパロ板の圧縮が近いって話が流れてるが、見たらスレ数800まであと4スレだった。
基準はよくわからんのだが、このスレは大丈夫だよな?
403名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 22:09:57 ID:iGfHj0tU
たかしとまといが付き合いだした頃を想像して書いてみました。はじめて書いたもので、なおかつ初投稿なので不手際があると思いまずが、どうかご容赦ください。
404名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 22:13:38 ID:iGfHj0tU
最初に声をかけたのはたかしのほうだった。ひとめぼれというのだろうか。
断られるかと思ったが、意外に返事はイエスだった。
いつものように絵文字のついたメール。いつもの時間にかかってくる電話。
彼女はとても従順で、声も仕草も、全てが愛くるしかった。
ある日、そんな彼女に「家に遊びにこないか」と誘ったのだった。
男の部屋にくる、それが何を指すか彼女にも伝わったのだろう、
少し赤面してから「…うん」とうなづくまとい。まといの手をとるたかし。
彼女はうつむいたまま、素直にたかしについてきた。
手をひかれるままについてきた。
405名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 22:15:50 ID:iGfHj0tU
まといは、はじめて経験する感覚に戸惑っていた。
正直、これが気持ちいいのかどうか彼女自身わからなくて、
ただただ、たかしが与える愛撫においついていくのが必死だった。
恥ずかしくて恥ずかしくて気がつけば何度も足を閉じよう閉じようとしていた。
ただ、自身が気がつかないうちにみるみる潤いが増してゆくのを感じていたのだった。
「えっと…も…いいかな…」
たかしにとってもはじめての経験で何をどうしていいのか頭の中が真っ白になっていた。
早く早く早く挿入しなければ、と軽くパニックを起こしていたのだ。
雑誌で覚たり友達から聞いた手順を必死に反芻していたが、身体がもたない。
今にも爆発しそうだった。
406名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 22:18:47 ID:iGfHj0tU
あれだけ練習したコンドームがうまく装着できない。
焦れば焦るほど手がすべり、うまい位置にかぶせられないのだ。
まといはまといで身の置き場がなかった。
間が持たず、「だいじょうぶ?」と思わず手を出してしまったのだ。
その温かでやわらかな指先が、たかし自身に触れた瞬間、耐えきれず爆発してしまった。
思い切り飛び散ってしまった白濁液はまといをも汚した。
はじめての行為とはいえ、愛しい彼女の前で粗相をしてしまい、バツが悪いたかしはうつむいたままだまってしまった。
それを知ってか知らずか、まといはたかしの出したその液を指に一掬いし、
「たかしの…にがい…ふふっ」
とはにかんでみせた。
その愛くるしい笑顔に、たかしは思わずまといを抱き寄せた。
「たかし…いたいよ」とほほえむまとい。
彼女の柔らかな髪の先が素肌をくすぐったが、その感触でますます愛しさがこみあげたのだった。

彼女を、まといを大切にしようと決めたのはこの時からだった。
そしてそれにまといも応えてくれた。
が、それが重すぎる愛に変わってゆくことをこのころのたかしは知る由もなかったのである。

おわり
407名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 22:19:46 ID:iGfHj0tU
以上です。読んでくださってありがとうございました。
408名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 01:07:17 ID:Bm/9IaI6
待て待て、ここからがいいところではないか。

続き希望
409名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 09:52:26 ID:4xydyd7F
勤労感謝の日に投下ご苦労様です。

というわけで、たかし以前の元カレ達のも・・・
410名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 11:25:19 ID:rwWnyPXi
まといが可愛い、これはもっと見たいですよ
また書いてくれたら嬉しい

>>400
GJ、多対一で襲われる先生っての個人的にすごい好きなんだよなあ
俺は本当は先生が好きなのかもしれない
411名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 11:28:37 ID:NCyZyWQ7
先生は受けでいいんじゃないかと

俺キモいな
412名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 21:47:04 ID:aQLOtipG
確かに、どうしても先生は受身っぽく書いてしまうなぁ。
おかげで先生が絡むと鬼畜シチュが思いつかない。
まぁ純愛エロの方が書いてて楽しいからいいんですが。

…ちょっと保管庫もぐって鬼畜モノ探してみるか…。
413名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 22:13:46 ID:zKDcX2PL BE:224234742-2BP(2375)
先生攻めといえばいつかの霧の小ネタがエロかった
あの人また書かないかな
414名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 22:25:10 ID:+GL769O8
あの爛れた空気がたまらんかった
特に一本目の方
欲を言えば、小森はタメ口にして欲しかったけど
415名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 23:15:41 ID:mXC08hRm
「それでは、これから補講を始めます」
教卓の前に立ち、元気よく声を出す書生姿の男は糸色望―2年へ組の学級担任である。
今この姿からはとても想像できないが、彼は超ネガティブシンキングな男なのだ!
「はーい」
望の声に唯一応じる女生徒、彼女の名は、風浦可符香。
彼女は望とは正反対、超ポジティブシンキングな女の子である!

そしてこの物語は、絶対に相容れない二人の禁断の恋を描く、学園ラブストーリーである。

「いきなり訳の分からない地の文ですね」
「良いんです、所詮パロディですから」


「さて、風浦さん。今回あなたには『性』についての補講を行うことになっていますね?」
「はい。ちゃんと教科書もありますよ!「男の子と女の子 体の秘密」です!」
可符香は満面の笑みで教科書(?)を鞄から取り出す。
表紙には情事を行う男女の姿が描かれている。
「残念ですがそれは作品が違います。…それに、この授業に教科書なんて必要ありません」
「どうしてですかー?」
可符香は頭に?マークを浮かべている。
「なぜなら!『性』の教育は、己の体を使って行うからです!」
「つまり、どういう事ですか?」
望はうーんと唸って、自らのバックからロープを取り出し、そのロープを使って可符香を縛り上げた。


「こういう事です」
「何ですかこれ?あ、そうか!囚人ごっこですね!」
「あなた、何のために補講に来たんですか?『性』の勉強のためでしょう!」
「やだなぁ、先生、そんな事ぐらい分かってますよ。今のはジョークです、ジョーク」
「はぁ、そうですか」

「さて、あなたにはまず私の絶棒を舐めてもらいましょうか」
望が袴を下ろしつつ言った。
姿を現した絶棒を前に、可符香が呟いた。
「…ほんとに絶望的ですね」
「言うなぁぁぁぁ!!!」

「さて、たぶん知っているとは思うのですが、男性の絶棒は、何か性的な快感を得る事によって巨大化します」
「ぼっき…ですね!67頁に載っています!」
「まだ見てたんですか!」

「っていうか、これはもう収拾がつかないので、ここら辺で切り上げましょうか」
「ええっ!?まだ何もしてませんよ?」
「大体作者がエロシーンは描けないので、エロパロ版に投稿する事自体が絶望的だったのですよ」

「という訳で、引き続き久米田康治エロパロ版をお楽しみください」
「お目汚し、失礼いたしました」
416名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 01:14:41 ID:1RYRq6vQ
絶望的だ!その意気やよし!
417名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 01:17:50 ID:sM0o5qAf
字書きは度胸。とりあえず投下してみるものさ
418名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 01:22:18 ID:70wkCjx4
うむ、とりあえず教科書のタイトルにエスカリボルグ吹いた。
419名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 01:25:59 ID:NPAq9mEz
小学生の頃授業サボって同級生の女のコとそんな感じの題名の本を読み漁ったな
それも保健室で
420名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 13:22:54 ID:hvnYnit+
結構経っちゃいましたが、つきものが落ちた千里が可愛かったので千里で1本書いてみました。
投下させてもらいます。
421不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:23:57 ID:hvnYnit+
「二番底は、きっと不思議の国。」
そう言い残して、千里は不細工なうさぎの後を追いかけた。
大きなリボンカチューシャとふりふりのエプロンワンピース。
まさにルイス・キャロルのアリスのような姿で、うさぎの穴へと落ちていった。
つい昨日のことだ、そのまま不思議の国にはたどり着けたのか、彼女は今日学校に来なかった。
たくましい彼女の事だから、おそらく大丈夫だろうとは思う。
不思議の国の王制を廃し、どの札も等しく富める共産主義国家樹立のために
革命軍のリーダーとして指揮を取っている頃かもしれない。
だけど千里も一人の少女、弱いときは弱いのだ。
さすがに望も少し心配になる。
家に帰れずに泣いていたり、事件に巻き込まれたり…逆に事件を起こしているかもしれない。
「昭和の事件史に、マッドチリパーティーとか追加されるのは御免ですよ…」
そう呟いた直後、ばたーんと押入れのふすまを吹き飛ばし、中から人影が転がり出てきた。
それは昨日と同じ姿をした千里、不思議の国から無事帰還したようだ。
「…おかえりなさい。」
「…ただいま、先生。」
突然の事態に驚くも、心配が杞憂に終わった事に望はホっとした。
422不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:25:01 ID:hvnYnit+
「紅茶の方が良かったですかね?」
「いえ、向こうで飲んできましたし。」
服装とはアンバランスに、緑茶をすする千里の姿を望はチェックする。
返り血は無し、服の乱れも無し、どうやら怪我もなさそうだ。
「どうでしたか不思議の国は?」
「なんだかこの格好してた間の事、よく思い出せないんですよね。おぼろげには覚えてはいるんですけど。」
「はぁ、なるほど。」
きつねの代わりに何かが憑いていたのかもしれない。
「それで、どうしてここの押入れから?」
「…不思議の国にふさわしくないから、ってクーリングオフされました…」
「ん…それは…まぁ無事に帰ってこれて何よりですよ。」
やはり革命でも起こそうとしたのだろうか、ストレートフラッシュを量産する千里の姿が思い浮かぶ。
クーリングオフされていなかったら、未来のアリスが迷い込むのはどんな国になっていたのか。
423不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:25:59 ID:hvnYnit+
「んー、しかしあなた…意外と似合いますね、その格好。」
望はついっと千里の元に近づき、まじまじとその姿を見つめる。
慣れない格好を見られて恥ずかしいのか、千里の頬が染まる。
「そ、そうですか?」
「ええ、とっても。」
貧相な胸がまたなんとも、とは埋められてしまうので言わないでおく。
恥ずかしそうに視線を逸らす千里が愛らしくて、望は彼女の細い体をきゅっと抱きしめた。
「ッ!こらっ、そういうのはきっちり籍を入れてからっていつも言って…」
「まあまあ、それはそれ、という事で。」
首筋にキスをしながら言う。
「またそんな風にごまかして…駄目って…んむっ…もぅ…」
反論を望の唇に塞がれ、千里はおとなしくなってしまった。
普段は望を振り回し続ける彼女だが、ひとたび行為に及べば二人の立場はこうも逆転する。
424不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:26:58 ID:hvnYnit+
「うん、そう持ち上げて…そうそう、そのままです。」
すっかり従順になってしまった千里は、言われるまま望の前でスカートをたくしあげる。
屈みこんだ望の瞳に、千里の純白の下着が映った。
「はぁ…なんでこんなこと…先生のバカ…」
「そんな事言いながらも、先生のわがままに付き合ってくれる木津さんが好きですよ。」
つっと下着に指を這わせ、千里の起伏を露にするように彼女のクレバスに下着を食い込ませていく。
「やぁ、シミになっちゃうぅ…」
「シミを作るのはあなたです、先生知りません。」
「またそんな事言って…」
下着越しに指で入り口をいじりながら、千里の様子に望はにやにやしている。
「ん?しかしこれは…」
気になることがあるのか千里の下着に手をかける。彼女の愛液が糸を引いた。
下着を下ろされ、望の前に広がった丘はつるつるになっていた。
425不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:27:58 ID:hvnYnit+
「どうしたんです、ここ?」
こりこりと指の腹で千里の小豆をいじくりながら尋ねる。
「うぅ、よく覚えてないんです…でもたぶん、私アリスになりきってたから。」
「なるほど。あなた形から入るタイプですもんね。」
不思議の国に迷い込む10歳の少女には相応しくない、という判断で剃られたという事なのだろう。
「ふふ、まあいいでしょうこういうのも。よく見えますし、舐めやすい。」
望は千里の股に顔を埋め、舌を彼女の中へ侵入させる。
「あぁ…もぅ…」
羞恥と自分の中を動き回る舌から送られる快感に千里はその身を震わせる。
「はぁ…あっ…んっ!」
わざと音を立てて望は千里を攻め立てる。
千里の足に力が入らなくなってきた、このまま立っているのにも限界が来そうだ。
「あっ、先生っ…先生っ!」
「ほお、面白そうな事やってるじゃない二人とも。」
不意に入り口の方からかけられた声の主は、千里の親友、藤吉晴美だった。
426不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:28:56 ID:hvnYnit+
「ひゃっ、ひゃるみ!?」
晴美の乱入に動転し、隠すようにばふっとスカートを望にかぶせる。
「こ、これはその…んぅ!」
とんでもない場面を見られ、うろたえる千里を晴美はニヤマリと眺めている。
「いい格好じゃない千里ー。それって、千里の趣味?先生の趣味?」
「ちがっ!あんっ…こ、これはぁあっ…なんでやめない!?」
晴美の乱入にもかかわらず、千里を舌で攻め続ける望に鋭いチョップが轟音とともに振り下ろされた。
ずん、と畳に沈んだ望が頭をさすりながら立ち上がる。
「…痛いですよ、何するんですか。」
「こっちのセリフです!晴美が見てるのに…」
「藤吉さんになら別にいいじゃないですか。」
「ですよねー。今さらでしょ、千里。」
「恥ずかしいものは恥ずかしい!」
「まあまあ落ち着いて。」
晴美の方を向いた千里を後ろから抱きしめて首筋にキスをする。
望はやっかいさんの扱いにずいぶん慣れてきたようだ。
よいしょ、と千里の軽い体を持ち上げ、自分にもたれさせるようにして一緒に畳に座る。
427不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:29:55 ID:hvnYnit+
「さ、藤吉さん。」
望が後ろから千里のふとももに手をかけて足を上げさせる。
下着が足首にかかったままなので開脚はさせられなかったが、千里のスカートの中が晴美から丸見えになった。
「さすが先生、話がわかりますね。」
「へっ?…あ、あなたたち埋められたいの!?」
「いいですよ、1回くらい。」
「先生、私の分もお願いします。」
「う…まあ1回も2回も同じようなものです、いいでしょう。」
「このバカどもはぁぁぁ…」
足首に残された下着を脱がせ、晴美は千里のスカートの中へと潜り込む。挨拶代わりにキスを一つ。
ぺろぺろと舌を差し入れて動き回らせると、うなぁぁと妙な嬌声が聞こえた。
望は望で、千里の薄い胸を服越しに揉みしだいて楽しんでいる。
「おお、つるつるだぁ…ふーん。」
やはり彼女も同じ事が気になるのか、スカートから顔を出して千里を見る。
「やるじゃない千里。見えないところまでなりきるなんて。」
「まあ見えてるんですけどね。」
「で、これはどっちの趣味?」
「とりあえず私は何も言ってませんよ。」
「ほお、千里がねえ…」
「だからちが…うなぁぁ…」
舌の代わりに今は晴美の指が千里の中で暴れていた。
428不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:30:59 ID:hvnYnit+
いつの間にやら千里は四つんばいにされて、あぐらをかいた望の腹に顔を埋めていた。
突き出された尻を掴んだ晴美がじゅるじゅると溢れる愛液をすすっている。
息を荒げる千里は、目を閉じて快感に身を震わせながら、しっかと望の服を掴んで離さない。
盛り上がりを見せる自身の下腹部のすぐ横であえぐ千里の顔が望にまた新たな欲望を喚起させた。
「あの…木津さん、お願いがあるんですけど。」
「っへ?は、はい。」
ぽおっとした表情をする千里の髪を撫でながら続ける。
「舐めて…もらえませんかね?」
「舐める、って先生の…ここ、ですかぁ…?」


屹立する望の絶棒を、千里はおっかなびっくり指でそっと触れる。
望の表情をうかがいながらゆっくりと舌を先端に這わせる。
そのまま口を近づけて絶棒を口に含んだ。と、そこで固まってしまう。
思考が停止してしまったのか、魚のような目で肉棒を咥えて動かない千里はシュールでもあり
一部の人間には愛しくもある、例えばその様子を楽しげに見つめる晴美などに。
429不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:32:01 ID:hvnYnit+
「あの、気持ちいいんですけど…それだけじゃ…」
「うぅ、どうすれば…?」
自分に向けられた4つの期待の目に応えられなかったのが情けないのか千里は涙目だ。
「もしかして千里って先生のフェラするの初めて?」
「ええ。」
なでなでと千里の頭を撫でながら望は答えた。
「へー、意外。私なんて初めてのときから先生の舐めさせられてたのに。」
「あなたは自分から言ってきたんじゃないですか…」
「そうでしたっけ?まあ、そういうことなら私が教えてあげるよ、千里。」
晴美も千里の横に並んで寝転んだ。
「んぅ、こう?」
「うん、そうそう歯は立てないように…それで…」
望の目の前で晴美の人差し指をそれと見立てて、千里にレクチャーが行われている。
「生殺しじゃないですかぁ!」
下半身を丸出しのまま待たされている望が叫んだ。
「まあまあ、もうちょっとですよ。そうそう、千里。」
今度は本物の絶棒を掴んで、晴美は盛り上がった部分の裏側に舌先を沿わせた。
430不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:32:57 ID:hvnYnit+
「ココ。先生ココ好きだから。」
「えっと…こ、ふぉう?」
晴美に促され、千里もちろちろとその舌を伸ばした。
千里がちらりと望の方を見た。なるほど確かに気持ち良さそうだ、実にだらしのない顔をしていた。
二つの舌が絶棒を中心にして絡み合っている。
担任する二人の可愛い女生徒にこんなにも愛されて良いのだろうか。
とりあえず社会的には良くないだろうが、望はたまらなく幸せだった。
「こんなに良い生徒に恵まれて先生幸せです。」
二人の少女の頬を撫でながら言う。
「…」
千里は照れているのか、押し黙っている。
「変態教師。」
笑顔でそう告げる晴美に、望は返す言葉もなかった。
431不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:34:01 ID:hvnYnit+
「ほら、千里。」
「うん、失礼します。」
かぷぅ ちゅっちゅちゅ
不安そうに望を愛する千里と、その様子を愛おしそうに眺める2人。
「うっ、上手ですよ木津さん。気持ちいい…」
すりすりと千里の頬を撫でながら笑顔を向ける望。
望が感じてくれていると判り、千里もつい顔がほころんだ。
晴美から学んだことを実践し望に快感を与えていく。
やはり指とは太さも形も違うので少々戸惑ったが、効果はきちんと出ているようだった。
じゅぷじゅぷと音を立てる口の中で、千里の舌が望を探る。
(ココ…かな?先生…)
先ほど晴美に教わった、「先生の好きなところ」を探り当て舌を掻くように擦り付けた。
「ん、木津さん…!」
千里の口の中に広がる望の快感の証、そしてもたらされた達成感に千里も嬉しそうだ。
「おぉ、よくできたね千里。教えた甲斐あったなー、んっ。」
「あ、む。」
晴美は千里の口の中に舌を入れて、その中に残る望の精液を舌ですくい舐めまわす。
432不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:35:00 ID:hvnYnit+
「んぅー。」
こくっと、二人の少女が舌を絡ませ、望の精液を味わい飲んでいる。
口づけをしたまま晴美は千里を引き倒し、千里が晴美の上にのしかかる形になった。
その状態で、晴美は手を千里のスカートに持っていきめくり上げる。
望の目の前に千里のヒップと濡れそぼった秘所が開かれる。
「先生、さっきのお返しです。」
「はは、ありがとうございます。それじゃ…」
「あっ…んぅぅっ…!」
ずん、と千里の中へと望が侵入していく。
千里のきっちりと分けられた真ん中分けがはらはらと乱れた。
「ふふふ、じゃあ私はこっちを。」
晴美が千里の背中に手を回しファスナーを下げた。
「この服脱がすの、ちょっともったいない気もするけどねえ。」
そう言いながら千里をはだけさせ、小ぶりな胸を露にする。
「こっちも捨てがたいからね…ちゅっ…」
「あっ…ああっん…」
「千里は相変わらず感じやすいなあ。」
かぷっ こりこり
千里の敏感な胸の先端が晴美によって転がされる。
433不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:36:03 ID:hvnYnit+
「うぅっ…せ…んせい…もう…」
「私もです…一緒にいきましょう。」
「はい…あ、あっ…あぁ!」
「うくっ!」
二人は共に絶頂を迎え、望からどくどくと放たれた熱さが千里に更なる悦びを与える。
千里の中に収まりきらぬ望の精液はボタボタとこぼれ、晴美のふとももを汚していった。


「あっ、あっ、あっ…んぅっ。」
疲れ切って寝転がったままの千里の横で、晴美が座した望に抱かれている。
晴美が望の上に座り込むようにして、深く繋がった二人は熱狂的に唇を重ねあう。
スカート以外の衣服は既に脱ぎ捨てられ、晴美のその豊満な体が惜しげもなく望の前に披露されている。
「んっ…それにしても、先生と千里にコスプレえっちの趣味があったなんてね。」
「だから、ちがぅぅ…」
「うん、まあ色々あったんですよ。でも、なかなかいいものですね、こういうのも。」
434不思議の国の千里ちゃん:2007/11/25(日) 13:36:56 ID:hvnYnit+
「あはは、ハマッちゃましたか?それでしたら、私色々持ってますよ。」
「ほう。」
「何か要望あります?逆に男子生徒と女教師とか。」
「ちょっと惹かれますね…」
「書生と下宿先のお嬢さんとか。」
「結構惹かれますね…」
「千里はー?どういうのが好み?」
「だからちがうって…」


後日
「こらー糸色くん!ふざけてないで、きっちりしなさい!」
「おおっと、おっかねえなあ委員長は。」
「…やっぱりノリノリじゃないの、千里…」
小学生に扮した二人の小芝居を眺めながら晴美は呆れ顔でそう言った。
435名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 13:38:08 ID:hvnYnit+
以上です。
最近千里が可愛くて仕方ないのです。
436名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 14:43:44 ID:y+r+5E/U
これはいい作品。
千里ファンではないけど、最近可愛くて仕方ないのはよくわかる。
437名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 19:31:59 ID:/MTqoLqd
水を挿すようで悪いが、千里スキーに最近などの千里の魅力を一言
438名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 19:50:38 ID:eOJQIMn0
GJ
ありそうでなかった組み合わせだ
439名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 23:59:53 ID:1RYRq6vQ
キャラスレで思いついた単発ネタです。

時は21世紀末 
全ての尾を持つ動物は一人の人物によって狩られ絶滅、正確には尻尾無し動物に変異していました。
AD.2456年 
その家に伝わる秘宝コレクションを尻尾の研究に愛を注ぐ天才少女の秘法により再生。
多くの動物達にしっぽのある生活が返ってきたのです。

しかし、その少女自身もクローン技術によって生まれ変わった存在だったのです。
そして彼女こそ絶滅の張本人。
歴史はくり返す…

のちにこの物語はノアの箱舟として多くの生物を救う事になるのですが、それはまた、別の 話。
440名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 02:38:20 ID:ONFOzpQH
>>437
いろんな面を見せてくれる所、けして安定しないところ、不安定なきっちりさんが好き
441名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 17:20:31 ID:9TnZ6z5A
何か本当に「絶望の器」って小説つくってる人いたわ。
442名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 18:01:14 ID:xVyXUfKo
>>441
待て、それは「はてな」にあるやつか?
443名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 18:04:57 ID:9TnZ6z5A
ん、そう。
444名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 18:12:42 ID:xVyXUfKo
>>443
書いたの私です。
完成してから投下しようと思っていたのだが...


完成率は現在30% 
445名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 18:20:49 ID:9TnZ6z5A
そうだったんですか。執筆頑張って下さいね。
…後、それならついでに一言。
「智恵」先生ですよ。
446名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 18:24:20 ID:xVyXUfKo
>>445
その通りでした。かなり絶望的な間違いを起こすところだった。
ありがとうございます。
447絶望の器:2007/11/26(月) 21:43:05 ID:xVyXUfKo
http://d.hatena.ne.jp/zetsubounoutsuwa/19910009
せっかくなので、一. だけ投下しておきます。未完成ですし、筆が遅いのであまり期待しないでくだい。


絶望の器


彼等は心を傷つけることなしに、心に触れることができない。
                  
                          一近代人
4481-1:2007/11/26(月) 21:47:31 ID:xVyXUfKo
 春──卯月。風浦可符香の心は希望に満ちあふれていた。
 新学期の初日、可符香には何か楽しいことが起こる予感があった。
その予想通りに、通学路の途中にある桜並木は満開だった。
可符香は暖かい風に吹かれた花びらの中をゆっくりと歩いていた。
とても幸せな気分だった。
人生は希望で満ちあふれていると、そんなありふれたことを考えていた。
 そして首つり死体に出会った。
 
 桜並木の終わりに、その死体はゆっくりと揺れていた。死んでいた。
 黒い学生服は背を向けていた。けれどその首から伸びる縄は、はっきりと見えていた。
可符香はそれを見た瞬間、頭の中が混乱して自分の目の前にあるモノが何なのか分からずに、
けれど本能が嫌なものだと悟って、尻餅をついた。
顔が見えないのが幸いだったのか、それとも不幸だったのか。
よく分からないことを不快な匂いがする中で考えていた。
 桜の花びらは絶え間なく降り注いでいた。
目の前を通過するそれを見て、可符香は少し落ち着いた。
自分の目の前で何が起きたのか、正確に理解した。
そして目の前の人間に対して怒りが沸いてきた。
なんで死んでしまったのかと。なんでそんなに命を粗末にできるのだろうかと。
そう思ってしまったら思考は止まらなかった。
正さねばならなかった。
彼を叱ってやらなければという思いが可符香の内に溢れた。
そして立ち上がろうとした瞬間、

「首つり死体ですね」

 桜吹雪の中に立つ、和服の男に可符香は出会った。
4491-2:2007/11/26(月) 21:50:08 ID:xVyXUfKo
春──卯月。糸色望の心は憂鬱だった。
春は希望の季節と人は言う。
けれど季節によって望の心は変わらなかった。
それでは自分の心は動かなかった。望は家を出た。
新学期の初日であったので、事務処理の時間を考えて早めに出かけた。
外の天気は良く、暖かい風が吹いていた。
気分はいっこうに晴れなかった。
しばらく歩くと道の途中に見事な桜並木があった。
以前通った時は蕾だった花は、今は満開であった。
桃色のその花は、昔から多くの者に幸せを与えてきたのだろうと思った。
望は素直に美しいと思った。

そして首つり死体と少女に出会った。

最初、少し前方に何かが揺れているのに望は気が付いた。
たいした考えもなく近づきなら、あれは首つりだという考えに至った。
ではすぐ側にいるセーラー服の少女は何なのだろうか。
少女を驚かさないように足音を忍ばせながら少女の横に立つと、嫌な匂いが鼻をついた。
そっと右手を見ると、少女の顔は目まぐるしく変化しているようであった。
困っているような、怒っているような、よく分からない表情が一瞬見えた。
「首つり死体ですね」
望は何も考えずに言った。
「えっ?」
「首つり死体ですね」
「えっ、ええ。そうですね」
「大丈夫ですか、手を貸しましょう」
「あっ、はい。すみません」
「あやまる必要はありませんよ...よっと」
少女はバランスを崩して望にぶつかった。
「あっ、ごめんなさい」
「いえ、大丈夫です」
望はあらためて少女の顔を見た。
その表情と唇、そして目。交差した髪留めが目を惹いた。
4501-3:2007/11/26(月) 21:52:42 ID:xVyXUfKo
「通報はしましたか」
「えっ」
「警察に通報です」
「いえ、まだです。そう、彼を叱ってあげなきゃ」
少女は望の手を離し、少しだけ離れた。
「.........叱る、ですか」
「はい。命を粗末にしては駄目だと」
少女は望の目を真っ直ぐに見ていた。真剣であった。
望はその時自分が理解しえない者に出会ったという思いと、それでいて少しの心地よさを感じた。
少女は汚物も異臭も気にせず、首つり死体の正面に近づいて、彼女が先ほど言ったように何かを語りかけていた。
聞こえてくる言葉はなぜか断片で、遠い世界に見えた。
それと同時に、彼女は自分に対して何かを責めているように感じた。
しばらくして少女は死体から離れた。
「もういいのですか」
「はい。言いたいことはもう言いましたから」
「そうですか。では、もうお行きなさい。後は私が後始末をします」
「通報ですか」
「通報です。あなたは学校があるでしょう」
「別に学校は遅れても大丈夫ですけど」
「...本当のことを言うと、女の子にいつまでも死体の側に居てほしくないのです」
「やさしいんですね。では、お言葉に甘えて」
望が頷くと、少女は軽く頭を下げて行ってしまった。少女の歩く先に桜の花が咲いていた。
どれくらい少女の行った先を見ていたのだろうか。
望はゆっくりと携帯電話を袴から取り出した。
そして110番をかけるのは初めてだと気が付いた。
「事件ですか、事故ですか」
簡潔で落ち着いた声が聞こえてきた。
自殺は事件だろうか、それとも事故なのだろうか。
少し迷ったが、そのまま言うことにした。
「首つりです。誰かが自殺したのを見つけました」
「場所はどこでしょうか」
これはかなり迷った。望はまだこのあたりの地理を覚えてはいなかった。
ここがどこなのか客観的に言い表せなかった。だから仕方なくこう言った。
「桜のきれいな所です」








一.了
451名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 21:59:18 ID:xVyXUfKo
以上です。  
極めて個人的な解釈ですので、申し訳ない。


http://www.nicovideo.jp/watch/sm1265344 (ニコニコ)
ちなみにこの動画を見て書きたくなった。
452名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 22:12:54 ID:OnNztlpg
>>451
非常にGJなんだがニコに直リン貼るのはダメじゃまいか
しかも真昼さんのMADww
453名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 22:15:09 ID:nGMJmLmt
スタダwwww
こんなんあったのか
454名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 22:19:07 ID:xVyXUfKo
>>452
直はまずいのか。すまん。以後気をつける。
455名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 22:58:34 ID:/0cSSNEc
これは凄い作品だな。
続きを早く読みたいけど、じっくりと腰を据えて書き上げてほしくもあり。ダブルバインド。
456名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 01:14:13 ID:/iAOQ+Qy
>>451
ホント凄い。
雰囲気のある文章がたまらんです。
首を長くして続きをお待ち申し上げております。
457名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 16:42:33 ID:DLA+QLqw
ちょっスタダwwww
個人的にスタダ子は世界とか千里とかそっち系のイメージがあるなぁ
458真昼:2007/11/27(火) 17:22:54 ID:2k/ohrWb
何か晒されてる上に凄いSS降臨してて絶望した!恐縮でござります。続編楽しみにしてます。
…MADの方は歌詞に合わせたらあんなんなっちゃったんだよぅ本当は幸せな話の方が(作るぶんには)好きなんだよぅ…
というわけでエロも盛り上がりもないただのバカップル小ネタを投下させていただきます。

真昼が雪と午後の紅茶後の話ですが、普通に望×可符香前提ってだけなんで、知らなくても読める感じです。
7レスほど消費させていただきます。クリスマスが近いとの事で、そんな感じのネタです。
459雪のように白く 1/7:2007/11/27(火) 17:24:41 ID:2k/ohrWb

◆ ◇ ◆ ◇

掌で形を失くした結晶は、暖かな雫となって、肌を濡らす。
それを、愛おしく想った。

◆ ◇ ◆ ◇

吐く息は白く染まり、吸い込む空気は身体を内から凍らせるように冷たい。
望は身震いして、マフラーを口元まで上げ、首を竦めた。
街はすっかり冬の装いに染まり、気の早い事にクリスマスムードを漂わせている。
店先を飾るイルミネーション。電力の無駄遣いだと、望は内心で毒づいた。
道を行く人々――特にカップルは、心なしか浮かれているように思える。
通り過ぎざまに、カップルの会話が耳を掠めた。
「イブはどうする?どっか出かけようか」
女の問いに、男は間を置かずに答える。
「そうだなぁ、やっぱお前の家で、二人で過ごしたいな〜」
「もぉやだっ、絶対やらしい事考えてるでしょっ!」
女はまんざらでもないようで、不満を口にしながらもその声は弾んでいた。
(……あなた達のような人が、私のような不幸な人間を作るんですよ……)
通り過ぎていくカップルに、望は心の中で恨みがましく呟いた。
世間がクリスマスに浮かれるほど、望の心は深く沈んでいく。
「…っふん」
そんな自らの絶望を振り切るように、足を速める。
早々に買物を済ませて宿直室に帰り、こたつに潜り込む事にしよう。
小森から預かった、夕食の材料を記したメモを懐から取り出す。
どうやら今夜は鍋のようだ。望の足は更に速まる。早く帰って、三人で鍋を囲みたい。
 
っどん。

「あ」
「おっと、すみませ……ん?」
メモに視線を落としていた所為か、前方からの人の接近に気付かなかった。
真正面からぶつかった人物に咄嗟に謝ろうとするが、すぐにそれが見知った顔だという事に気付く。
ぶつかった少年は、体勢を立て直しながら望の顔を見上げて、少し驚いたように瞬きをする。
手には、分厚い本を携えていた。
「久藤くん……大丈夫ですか?」
「先生。すみません、こちらこそ」
ベージュのコートにすっぽりと身体を包んだ久藤は、微笑を湛えて頭を下げた。
「……また、本を読みながら歩いてたんですか?」
「さすがに人ごみの中で読むのは、やめようって思ってたんですけど」
「我慢出来なかった、と」
「はい。さっき、そこの書店で買ったんです。
 新刊なんですよ。読み終わったら、先生にも貸してあげます」
「それはありがたいですが、それは家に帰るまで鞄にでもしまっておきなさい」
「そうですね。そうします」
素直に本を、肩から提げた大きめの鞄にしまい込む久藤。
460雪のように白く 2/7:2007/11/27(火) 17:26:12 ID:2k/ohrWb

「先生はお買物ですか?」
「えぇ、夕飯の買出しを頼まれまして。
 ……本当は、この時期はなるたけ出歩きたくないのですが」
「どうしてです?」
望はそっと、店先で輝くイルミネーションに視線を移した。
その様子を見て、久藤はクスリと可笑しそうに笑う。
「笑わないで下さいよ、人の真剣な悩みを」
「だって、可笑しいですよ、先生」
半眼で睨むも、彼は臆した様子もなく笑みを深める。
「だって先生は、今年は浮かれる側の人なんじゃないんですか?」
「……え?」
キョトンと目を丸くする望に、久藤は言葉を重ねる。
「少なくとも、カップルをジト目で睨む側の人間じゃないって事ですよ」
「み、見てたんですか?」
「いいえ。ただ、想像はつきますから」
すっかり行動を読まれている。
「さ、さすがですね……」
よろり、とたじろく。やはり彼は心が読めるのかと、冷や汗が額を流れた。
「先生は、クリスマスはどうするんですか?」
「え? えぇ、ああ……そ、そうですね」
久藤の問いにしどろもどろになりながらも、咳払いしてどうにか心を落ち着かせるよう努める。
「多分、なんだかんだで生徒達と騒ぐ事になりそうです。
 クリスマス会、今年もやるんでしょう?」
「あぁ…、そういえば、木津さんが張り切ってスケジュール組んでましたね」
休み時間、何やら机に向って時間表らしきものを書いていた彼女を思い出して、久藤は少し思案顔になった。
「まぁ、それはそれで楽しそうですけど……」
「…? 何か、思う所でも?」
彼らしからぬハッキリとしない物言いに、望は少し首を傾げる。
「僕としては、先生には、クリスマスは恋人と二人で浮かれていて欲しいです」
ニコリ、と微笑む久藤。
その言葉に、望は自分の顔に血が上るのを自覚せざるを得なかった。
「よ、よよよ余計なお世話ですッ!」

『浮かれる側の人なんじゃないですか?』

ようやく先ほどの彼の言葉の意味を理解した。
――確かに今の望には、聖夜を二人でムーディに過ごす相手が、居るには居る。
けれど恋人が居るからといって、自分は世間のカップルみたいに浮かれたりしない。
あまつさえ浮かれた勢いで、色々いたしたりも絶対にしない。しないったらしない。
「照れない照れない。先生だって、本当は杏ちゃんと二人で恋人らしい事がしたいって、思ってるんでしょう?」
「お、思ってない事はないですが…うぅん…」
望の脳裏に、先ほど通り過ぎたカップルの様子が浮かぶ。
あんな風に、臆面も無く周囲に幸せバカップルオーラを撒き散らしたい、とまでは思わない。
けれどせめて、二人で居る時くらいはあんな風に、恋人を照れさせてみたいものだ。
461雪のように白く 3/7:2007/11/27(火) 17:27:36 ID:2k/ohrWb
普段の二人といえば、良い雰囲気になる事なんて本当にざらで、大概可符香にからかわれているだけだった。
「――正直に、言いますと」
「言いますと?」
いつの間にか望の唇からは、本音が零れ落ちていた。
「ちょっとあの娘を、可愛らしく照れさせたり出来たら良いなぁ、とか……思っちゃってます」
その本音は、いたく久藤のお気に召すものだったようで、彼は上機嫌に微笑んだ。
「随分と、ささやかな望みなんですね」
「そう言いますがね、久藤君。
 あの娘を照れさせるなんて、常人には不可能なんじゃないかと思いますよ」
飄々と、いつも望の思考の遥か上を行く行動で、自分を惑わせる可符香。
そんな彼女が、どうすれば可愛らしくモジモジと照れてくれるというのか。
「確かに常人には不可能ですね」
「でしょう?」
ふはぁ、と溜息を吐く望とは対照的に、
「でも、先生になら案外簡単な事だと思いますよ」
久藤はあっさりとした口調で言った。その言葉に、望は反射的に頭を振る。
「む、無理ですよそんな、簡単になんて」
初めて身体を重ねた夜すら、照れる素振りを見せなかった可符香だ。
「うーん……まぁ、先生はそれで良いと思いますけどね」
グッタリと項垂れる望の様子を微笑ましく思いながら、思わせぶりな言葉を呟く久藤。
望は突然ハッと顔を上げて、名案だとばかりに弾んだ口調で言った。
「そうだっ、プレゼントなんてどうでしょうか」
「プレゼント?」
「そうです―――クリスマス当日は、どうせ生徒皆で騒ぐ事になるでしょう。
 だから、一足早いクリスマスプレゼントを彼女に贈るんです。
 どうです? 不意打ちにはなりませんか、これ」
わくっ、と両の拳を胸の前で握って久藤に同意を求める望。
「あぁ、良いですね―――不意打ちになるかはともかくとして」
その望み通りに久藤は同意した。後半の言葉は、胸を弾ませる望に聞こえないよう、小声で呟く。
「……ですが」
だが、すぐに望の表情は沈んでしまった。どよんど、と背に影を背負いながら、
「……普通のプレゼントなんかじゃ、駄目ですよねぇ……。
 彼女を照れさせる程のプレゼントなんて、私なんかじゃ思いつきません……」
自らの恋人の事だというのに……と、望の心は深く沈んでいく。
「照れる、とかは置いておいて、彼女の喜びそうなものとかは?」
「―――それすら思いつきません」
フォローの為に言った久藤の一言は、どうやらトドメの一撃だったようである。
望はズルズルとその場にしゃがみ込み、頭を抱えた。通行人の視線もお構いなしだ。
「絶望した…っ、自分の恋人へのプレゼントもろくに決められない、甲斐性なしの自分に絶望したぁ…っ!」
462雪のように白く 4/7:2007/11/27(火) 17:29:00 ID:2k/ohrWb


「やだなぁ、先生は甲斐性なしなんかじゃないですよぉ」


その悲鳴に答えるように、軽やかな少女の声が、望の頭上から降ってきた。
聞き覚えがありすぎる声に、ぐぁばッ、と顔を上げる望。
そこには予想通り、髪留めを付けた彼の恋人が、冬の装いで立っていた。
淡い桃色のセーターを羽織った可符香は、気さくに手を上げて久藤に挨拶している。
「「やぁ」」
ポン、と掌を打ち合う二人。それを横目に、望は立ち上がった。
「か、可符香さん…!? いつからそこに…ッ」
「『あなた達のような人が、私のような不幸な人間を作るんですよ』
 って、先生が毒づいてたあたりから、です」
「それ最初からじゃないですかッ!?
 いや、そもそもその台詞、口に出してないんですけどッ!!」
「まぁまぁ、細かい事は良いじゃないですか」
「細かくねえぇッ!」
「先生、口調が」
そっと久藤に指摘されて、望は慌てたように咳払いをした。
「先生、いっそこの際だから、可符香ちゃんと一緒に買っちゃったらどうですか?」
「はい?」
「プレゼント、ですよ」
呆けたように聞き返す望に、久藤はぴっと人差し指を立てて言った。
「全部バレちゃってるんですから、今更隠すより、本人に欲しい物を聞いたほうが良いと思います」
「そ、そうですね……」
もう彼女を照れさせる、という目的は果たせそうにない。
けれど、少し早いクリスマスプレゼントを二人で選ぶ、というのは悪い案ではない。
望は少し考えてから頷いた。可符香はそんな二人の様子を、ニコニコと笑いながら見つめている。
「そうと決まれば、僕は退散した方が良さそうですね」
「私は、准君が居てくれてもかまわないよ?」
「そうですよ。遠慮なんていりません」
気を利かせてその場を去ろうとする久藤を引き止める可符香。望も、心から同意して頷いた。
けれど彼は笑顔で首を振り、
「実は、今日はこれからお呼ばれしているんです。
 最近よく図書室に来てくれる娘で、今日は夕飯をご一緒する事になってまして」
「あぁ、それは……引き止めて悪かったですね」
「それなら早く行ってあげないと。その娘、きっと首を長くして待ってるよ」
「うん。それじゃ、さようなら。二人とも」
そういう事ならば仕方ないと、二人は手を振り去っていく久藤の後姿を見送った。
463雪のように白く 5/7:2007/11/27(火) 17:30:32 ID:2k/ohrWb

「さて、と」
その姿が見えなくなると、可符香はパッと勢い良く顔を上げて、望の瞳を真っ直ぐに見た。
「今日は何でも買ってくれるんですよねっ!」
邪気の無い笑顔で、さり気に恐ろしい事を言われる。
だが否定するわけにもいかず、望は微妙に引き攣った笑顔で頷いた。
「ま、まぁ……常識の範囲内の物であれば」
「先生、私コレが欲しいです、コレ!」
「―――って、言った傍から非常識なモノを欲しがらないで下さい!」
可符香は店先に飾られていた、ある商品を指差して瞳を輝かせる。
その指先にあるものを見て、望は堪らず悲鳴を上げた。

―――宇宙人コスプレセット。

そう書かれたパーティグッズを、可符香は物欲しそうに見つめていた。
銀色の全身タイツと、妙な触覚の生えたヘアバンドが同封されている。
そもそもこのグッズの製作者は宇宙人と遭遇した事があるのかと、小一時間問い詰めたい気持ちになる。
「私、クリスマスはこれを着た先生と、ムーディな一夜を過ごしたいです」


――相応の値段のするホテルの一室。
頬を桃色に染めて、可符香は愛しい男の胸に顔を寄せる。
その身体を抱きとめる―――全身銀色タイツの、頭から触覚を生やした男。

甘い声で囁く殺し文句は、
「――貴女と、交信したい――」


「アリです!」
「ねーよッ!!」
ビシィ!と両の親指をおっ立てる可符香に、即座に突っ込んでおいた。

―――それからも、二人はいくつかの店を梯子した。
可符香が欲しがるものは悉く非常識な物ばかりで、四店目を出た時には、望の疲労は限界をむかえていた。
「お願いです……後生ですからマトモな物を欲しがって下さい…」
「先生、わりと瀕死ですか?」
「死体一歩手前ですッ、死んだらどーする!」
恋人とのプレゼント選びによる過労死。あまりにも絶望的な死因である。
「仕方ないですねぇ。では、お疲れの先生に一服入れさせてあげます」
可符香はそう言うと、望の返事も待たずに駆け出した。
咄嗟に呼び止めようとするも、彼女の向かう先が、すぐそこにある自販機だと判って、ホッと息を吐く。
可符香が飲み物を買っている間、望は何の気なしに、近くの百円ショップの看板を見つめた。
その店先には、ちょっとしたアクセサリーが置いてある。
百円とはいえ、望の目には十分お洒落に使えそうな代物ばかりに見える。
ふと、一つの髪留めが目に留まる。キラリと白く光ったそれが、何故だか妙に気になった。
チラリと可符香の方を見る。何を買おうか迷っているようで、まだ時間が掛かりそうだった。
464雪のように白く 6/7:2007/11/27(火) 17:33:23 ID:2k/ohrWb
それを確認してから、望は自分の目を惹いた髪留めまで寄っていく。
雪の結晶をあしらった髪留めは、凝った細工とまでは言えないが、とても百円とは思えない美しさがあった。
手に取って、これを付けた恋人の姿を想像してみる。とても、愛らしかった。
(ですが、百円ですからね……)
値段で物の価値を決める程愚かではないが、さすがに恋人のクリスマスプレゼントとしては粗末だろう。
少し名残惜しい思いで、望は元の場所にそれを戻そうとした。
「何見てるんですか?」
だが、背後から掛かった声に、思わずその手が止まる。
何故かどぎまぎしながら振り返ると、両手にホット飲料を持った可符香が立っていた。
「あ、いえ、何でも――」
「わぁっ」
望の返事を遮った可符香の声は、軽やかに弾んでいた。
その目には、彼の手の中にある髪留めが映っている。
「先生、案外良いセンスしてるじゃないですか」
「一言余計です。ですが、これ……」
たった百円ですよ―――そう言おうとするも、
隣に並び、嬉しそうに同じ髪留めを手に取る可符香の姿に、二の句が告げなくなる。
「決めましたっ、これが良いです」
「……本当に、これで良いんですか?」
「駄目ですか?」
―――そんな物欲しそうな目で小首を傾げないで欲しい。
慌てて赤く染まる頬を着物の裾で隠しつつ、「いいえ」と首を振った。
「貴女さえ良ければ」
「やったっ、えへへ」


―――髪留めを買った後、望は自分の買物がまだだった事に気が付いた。
可符香の買ってきたホット飲料を急いで飲み干し、二人は手早く夕飯の買物を済ませた。
そうして今、二人はゆっくりとした足取りで、帰り道を歩いている。
本当なら急ぎ足で帰らなければならないのだろう。
けれど、こうして二人で歩く時間を、まだ深く噛み締めていたかった。
買物は頑張って急いで済ませたのだから、帰り道くらいはゆっくりさせて欲しい。
心の中で小森と交に謝りつつ、二人の足が速まる事はなかった。
 
今、可符香の髪には雪の結晶が煌めいている。
(……こんなに喜んでもらえるなんて、思いませんでした……)
ニコニコと上機嫌に、さっきから笑みを絶やさない可符香。
そんな彼女の様子を嬉しく思いつつも、その程度のもので満足してもらう事に、申し訳なさを覚えてしまう。
465雪のように白く 7/7:2007/11/27(火) 17:36:38 ID:2k/ohrWb

商店街を抜け、民家の立ち並ぶ道へ出ると、夕食の香りが各々の家から漂ってきた。
ポツポツと、街灯に灯りが灯り始める。
「えへへ」
彼女が歩くたび、揺れる髪留めがキラキラと輝く。
――それと同じ光が、いつの間にか頭上から降ってきていた。
「あ、雪だ」
どうりで寒いはずだと、可符香は白い気を吐きながら空を見上げる。
その横顔を、望はしばらくじっと見つめていた。
それに気付いて、キョトンと望を見返す可符香。
「何ですか?」
「い、いいえ別に。――寒くはないですか?」
まさか見惚れていたとも言えず、慌てて言い繕う。
「平気です。むしろ今は暖かいくらいです」
贈られたのは雪の結晶だというのに、こんなにも心が温かいのも不思議な話だ。
可符香はそっと髪留めを撫でた。

―――その手に、そっと望の手が重なる。

少し驚いて望の顔を見上げる可符香。
「あぁ、やっぱり。随分冷たいですね」
望はやおら可符香の手を、自らの胸に引き寄せた。
片手が買物袋で塞がっていなければ、きっと両手で彼女の手を包み込んでいただろう。

―――望はただ、彼女の手があまりに白く、寒そうだったからそうしたに過ぎない。
だがその行為は、可符香の不意をつくには十分だった。

「…………」
可符香の頬に赤みが差す。望の掌は、自分のそれより随分暖かだった。
その様子に気付いた望は、少し驚いたように、
「もしかして…、照れてます?」
そう聞いた。可符香は否定も肯定もせず、少しぼんやりとした表情で、手を掴まれたままでいる。

雪のようだ、と、そう思った。

ふわふわと掴みどころの無い白い粒。
一度人肌に触れると、瞬く間にその温度に染まり、溶けていく。
望の体温が可符香の冷たい掌に伝わり、二人の温度は徐々に近づいていく。

「……クリスマスは」
無言の時を打ち破ったのは、可符香の方だった。
「クリスマスは、皆でいっぱい騒ぎましょうねっ」
そう言った可符香の頬は、まだ少しだけ赤かった。
掴まれた手を引き戻すと、フワリと身を翻す。
数歩望の先を行くと、彼女は一瞬だけ振り返り、

「―――えへへ」

言葉に困ったように微笑んで、それきり、振り返らずに走り去っていった。
それが彼女なりの照れ隠しだとわかって、望は満足気に笑みを深めた。
「何だ……こんな事でいいんですか」
まだ彼女の体温が残る掌を握り締めて、白い粒の降る空を見上げる。

彼女に贈った結晶の降る空は、とても美しかった。

その夜に振った雪は、一晩を掛けて街を白く染め上げた。
たくさんの粒が寄り添いあって、降り積もる。
その様は、愛しさにも似ていた。
466真昼:2007/11/27(火) 17:39:31 ID:2k/ohrWb
終わりです。ひたすらイチャこいてるだけの文で申し訳ない。
467真昼:2007/11/27(火) 17:58:23 ID:2k/ohrWb
>>465
どうりで寒いはずだと、可符香は白い気を吐きながら空を見上げる。×
どうりで寒いはずだと、可符香は白い息を吐きながら空を見上げる。○

気を吐いてどうする。自分で読み返して全力で吹いてしまったじゃないか馬鹿…。
468絶望の器:2007/11/27(火) 18:00:40 ID:vW85YgNN
>>458
直リンク、申し訳ありませんでした。

今回の私のssは真昼氏の動画を見て、創作意欲が湧きました。
以前から絶望先生の原作があったならこんな感じかな、
と想像していたのですが、形にはなりませんでした。
そんな折に氏の動画を見てこれだ!!と思い書いてみました。
ものを書くのは初めてですが、頑張ってみます。

現在はてなダイアリーを利用してssを書いています。
一応、1章から8章までは完成しています。(長くなったので投下はしない予定)
ここ ttp://d.hatena.ne.jp/zetsubounoutsuwa/19910009
前の日へ で次の章に進みます。
執筆速度は非常に遅いので、気長に待っていただければ幸いです。
469絶望の器:2007/11/27(火) 18:04:22 ID:vW85YgNN
間違った。こっちです。さっきのは九章のでした
ttp://d.hatena.ne.jp/zetsubounoutsuwa/
470名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 18:50:33 ID:eYJr6KfI
>>467
想像図はこんな感じか

                                     _,,-─‐‐,┐,,,,            __ /
                                    /─=   | |  ゙'''ヽ、    ,-─''"/
                                  / / ̄| |  |└-,,,,  ヽ-、,,‐''"  /  //
                                  / /,,-,'''''''' ) ノノ"_'''   '"/  ,, ,,-"、.  / /
                                 ./ //  |l  "  /,,,,\  /  ,//,,/''''、ヽ‐"ノ
                                ヽ.l/  / _   / /-‐、 ゙、 |  /,.-/  ゙、 ./"
                    /"'/  __  ,‐  _,,,ヽl・/-'''"   , l、-、 ヽ.゙、 ノノ ./    | |
  ,,,-─‐,-            ヽノ-、ヽ‐/  ヽニ  /l -、  ̄      /  ゙'''''ヽ | .|    |    | ヽ,,,,,,,-=
;;;;;;;;;;;;ヽ、 ヽ-─_-、       / | ノ |_  ヽ       L‐''_\    //  / 」 l ノ   |     |  ,.‐''"
;;;;;;;;;;;;;;;;;\ __ ,\、;;;;;;;;,,,,,,,  ノレ'"  ヽ、ヽ--、.    ヽニニ、ヽ、  |/   ヽノ /    |     | /
    '''''‐-ヽ''''\ ヽ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|/'''''ヽ、ヽ、;;;;;;;;ヽ--、\ヽ  |    (  /─- 、. |     | |
           \へ\             | ヽ  、   ゙''ヾ、 .|    "、 ̄""'''-、'''|     | |
            ヽ|  ヽ\ ‐-、        |   |  ヽ、   |||  |     \--,,,,,,,,,-\    ヽ\
           )     l\  ゙"ヽ、     /ヽ-、ヽ ヽl_   | ||. |      |   ,,/"ヽ、    ヽ\
        ,,-''/      \ヽ   \、   /    ヽ| └ヽ、,,,,,| || ヽ     / / ,,,,,-‐\
     ,,‐'''" /          \  ヽ、       l|    \l| | |     / / _ "''''ノ\
    /ヽ /             ヽ _ヽヽ _____|\__ ノ |      |/-'''"  ゙"'''"   \、
   (  ノ ゝ      ,,,,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ\;;;;--─,-∧ \--」 ,|  |   / /           \ヽ,,,,,,
      | |  ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;-‐'''''''''//   \、  /"  ヽl"''"> ,|  /  / /             ヽ、、
   ,,,,,,,,,| |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;‐''''''    /ゝ     \二/      ヽ| ,,,-‐  .| /              ヽ、゙'''
,,,,;;;;;;;;;;;;;;/ ヽ;;;;;;;;;;;;;-‐'''"      //       、          ゙''''''、   l/                \
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\ \          ヽヽ,,      \ヽ           ゙"""                  ヽ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'''''\ ヽ-,,,,,,,,,,,ノ |,,__,,ノ‐" |,,   ,,   ノ ノ
''''''"      \   ,-─-、-‐'ヽ   ─/  -‐'''"
           ゙'''ヽ\     ヽ    レ
              ̄       ゙'''''''"
471名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 19:29:11 ID:6grFp9rT
まあカフカだし気くらい出せてもおかしくは無い
472名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 19:30:24 ID:W4Zf9Ms8
>>466
超GJ!イチャこらいいじゃないか

可符香かわいいよ可符香
糸色かわいいよ糸色
473名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 21:13:23 ID:vW85YgNN
カップルの破壊力ってのは、本当に、こう.....いいな
474名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 21:28:34 ID:dzzhRjVj

『たくさんの粒が寄り添いあって、降り積もる。
その様は、愛しさにも似ていた。』

・・・この二行に惚れた。
なぜ、真昼さんはこんな表現が出てくるのか・・・
私には素敵過ぎる・・・
475名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 02:03:15 ID:QThzlhQT
>>466
わー、真昼さんの文章、本当に大好きだ…!
SSもMADも神過ぎ(スレチなのでこっそり。ババロアも拝見しました!)。
そして、原作の雰囲気を壊さずにこの2人をラブラブさせられる力量に脱帽です。
読んでて幸せになりましたv

>>468
これで処女作とは…恐ろしき才能。
全体を覆うどこか虚無的な雰囲気、ホントたまらなく大好きです。
投下なしでしたら、更新お知らせとかあると個人的に嬉しいかもです。

ああ、相変わらず感想なげーな…。
476:2007/11/28(水) 19:07:44 ID:0Cm2mVeQ
>>475
最初は投下しようと思ったのですが、如何せん長すぎるのでやめました。
更新のお知らせはしようと思います。

感想は長いと嬉しいですよ。
477名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 03:12:52 ID:lgivppGK
今週の大草さんの不倫SSを誰かに安価してみる
478名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 03:20:01 ID:twdyre9k
ここは楓もので一つ
479名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 03:24:54 ID:lKeUuYid
じゃあ智恵先生の高校時代のエピソード希望。
カウンセラーを目指すきっかけになった出来事とか。
480名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 12:09:05 ID:IogUioGk
更新のお知らせか。 恩着せがましい・・・
481名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 22:23:27 ID:r7qUtKbh
そして、ツンデレへと進化していくのである・・・
482名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 01:33:22 ID:DtKWk43n
以前一旧さんやヤンデレのSSを投下した者ですがツンデレラに刺激され私は日本書記のパロディを投下させていただきます
なんか献上語と敬語が交じったり名前がカタカナひらがなが交じってますがそこは文化レベルの違いって事で許して下さい
483絶望日本書記 壱/十壱:2007/11/30(金) 01:35:07 ID:DtKWk43n
鬱くしい国、にっぽん。その始まりはいかなる物だったのでしょうか?


初め何もなかった世界に最初生まれたのが天緒中主尊と可美葦牙彦舅尊と国常立尊でいらっしゃいますが文化レベルが高すぎて出番がありません、

その後も七代の神々が生まれましたがやはり文化レベルが高すぎて出番がありません。


そして最後に何処か
神として軸がぶれてらっしゃる夫婦、
イザナギとイザナミがお生まれになりました。


神々はやがてそのぶれが世界をも変えるだろうと思い国生み命じしたのです。
「ふうしかし矛で海をかきまぜて出来たのがこの小島のみです
どうしたら国を生めるんですかね?」

イザナギは悩みましたが良い案が浮かばずヤケになりました。


「ええい!地上にはまだ何も生まれてませんし
もう逸脱して裸になります!!」
イザナギは服を乱暴に脱ぎ捨てましたが、
入水自殺しようとしても止める人がいないし
国も生めないため、
第三選択肢として裸のまま天御柱の廻りを歩く事にしました。

すると向こうからイライラしている裸の女神イザナミが現れたのです、
484絶望日本書記 弐/十壱:2007/11/30(金) 01:38:05 ID:DtKWk43n
「あ、イザナギ。」


「そうですが貴女まで裸ですか!?
貴女も国が生めず絶望していたのですか!?」


するとイザナミは眉毛を吊り上げ真ん中わけされた黒髪をふりかざしながら口を開きました。


「違います!私の体よく見たら足りない部分があって凄くイライラするんです。」

「あぁ確かに胸はもっと欲しいですね、」

「あーーーッ!もうそっちじゃありません!!!ここですよ、ここ!!」

イザナミは突然足を開くと勝負の割れ目とも形容出来る箇所に指をつっこみ押し開いてイザナギに見せ付けました。

「うら若き女神がおっぴろげないで下さい!
絶望した!恥じらいなく自分の足りない箇所を見せる女神に絶望した!!」
しかし否定しながらも逆にイザナギの余分な箇所は益々邪魔な大きさに膨張してきたではありませんか
「イザナギ!貴方のその余分な箇所を私の足りない箇所に入れてきっちり補って下さい!!
そうすればきちんと国が産める気がします!」

「ちょ!そんな事言われてもいきなりそんな!」
「きちんとしてください!!」
そう言うなりイザナミは強引にイザナギを押し倒しました。
485絶望日本書記 参/十壱:2007/11/30(金) 01:40:57 ID:DtKWk43n
「うわーーーッ!」

ドサッ

「わあイザナギの余分な部分、
まるで天御柱の様に太くて硬くてそそり立ってます、
私も天空の様に突き刺して下さい。」


そう言うとイザナミは倒れたイザナギに跨がり余分な部分を足りない部分にグププと補ったのです。
「ああ!イザナミの足りない箇所は前戯してないのにぬるぬるしてますよ!?」
「どうやって補おうかとさっき散々一人でいじったからです、
それにしてもあぁ!
イザナギの天御柱は本物より逞しいです!!」


自分の足りない部分が始めて補われる悦楽に歓喜しイザナミはイザナギの上を昇り下りし続けます。
「あぁイザナギもう駄目、高天原までイっちゃうーーーッ!!!!!!!!」
「あーーーッ!!!」


イザナミの足りない部分はビクンビクンとまさに神速にて痙攣しイザナギの余分な部分から御子の素を絞り取っていきました。
「こ・・これで国を身篭ったでしょうか?
良い土地が生まれたら良いですね・・・・・」
486絶望日本書記 四/十壱:2007/11/30(金) 01:43:56 ID:DtKWk43n
イザナギの子種は見事に受精し次第にイザナミの腹は大きくなっていきました、
そして十月十日目にとうとう陣痛が起こったのです。
「うう〜ん!う〜ん!」


「イザナミ頑張って下さい!
私たちの第一子です!」

イザナミが産みの苦しみに悶える中、
男の自分はせめて我が子を受け取ろうとまさしく
足の間の「勝負の分かれ目」にまわりました。

「おっ頭が出てきましたよ、もう一息です。」


「ううう〜ん!!」


とうとう彼等夫婦の第一子が産み落とされイザナギは赤ん坊を抱き抱えました、
その子が最初に発した産声は・・


「ポッチャリタイプで〜す」

「・・・・これはフォトショップで相当加工しないといけない子ですね・・」
「産んだ私が言うのもなんですが、川に流しましょう。」

こうして蛭子は川に流されてしまわれたのです、その後産まれた淡州もやはりフォトショップで加工しないと崇拝されない様な子でした。
487絶望日本書記 五/十壱:2007/11/30(金) 01:48:10 ID:DtKWk43n
「イザナミ、貴女は最初に声をかけてくれたり、上に乗ってくれたり、
陣痛に耐え二回も産んでくれました。
なので今度は私にまかせて下さい。」


「・・は、はい。」


イザナギのいつになく凛々しい思いやりにここまでリードしていたイザナミは少し顔を赤らめました、
そして再び二人は天御柱で出会う事にしたのです。

「おぉなんて美しくきちんとしてる女神なんでしょう!」

「そんな、私を美しくきちんとしてるだなんて・・ふふふ。」


イザナギはそっとイザナミに接吻なさりゆっくり寝かせていきました、
そしてイザナミの二回も頑張った足りない部分を舌で愛おしんでいきます。
「あぁ・・そこを舌で・・補う・・だなんて・・。」
「ここは勝負が分かれる場所ですからね、禊ぎをしなくては。チュバチュバ」
充分に潤われた事を確認すると既にそびえたった自分の天御柱を小宇宙たる彼女の中に。

「あぁ!!イザナギの・・御柱が・・私の宇宙を・・かき回してる!!」

「今は私にまかせて下さい、かわいいですよイザナミ。」

イザナミは足りない部分を補われてるとゆうよりこの男神に愛されてるとゆう実感に歓喜の涙を流しながら何度も果てられたのです。
488絶望日本書記 六/十壱:2007/11/30(金) 01:51:27 ID:DtKWk43n
再び十月十日がたちました、
以前は一方的な交わりをしただけありフォトショップで加工しないといけない子が産まれました、
「しかし今度は本当に二つの気持ちが交わった事もありきちんとした日本の島々が産まれましたよ。イザナミよくやりました!!」

その後も風の神、穀物の神、山の神、河の神、木の神、土の神と続々と自然の神々が産まれていきました。

「でも、自然の神々が産まれたのに火の神はまだじゃないですか、
きっちり産まなきゃ。」

「そうですよね火は必要です。」

二人は火の神を産むため再び交わり、
十月十日がたちました。

「うぅう〜ん!!私もう駄目えぇ〜!」

「今まで何回も産んできたじゃないですか、
貴女なら産めますよ!」

陣痛の苦痛に悶えるのはいつもと同じですが真ん中わけされた髪はいつも以上に乱れ分かれ目を失っていました。


「あっ!頭が出てきましたよ、アツッ!!」


火の神だけあり頭が出ると同時にイザナミの体は炎に包まれました


「ひいぃぃい!!焼け死ぬううぅ!!!!!!!!」
「これは証拠過多です!こんな目付きが悪くて熱い火の神を産んで焼け死ぬはずありません!!」
489絶望日本書記 七/十壱:2007/11/30(金) 01:54:48 ID:DtKWk43n
「証拠過多も何も私燃えてるじゃないですか!!!ああぁああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
「ひぃ!ちょっと産まれて早々母親に放火するのはやめなさい!!えいっ!」
イザナギは十拳剣にてカグツチを葬りそこからも神々が産まれましたが
時既に遅くイザナミは焼け死んでしまいました。
無残にも黒焦げとなったイザナギを産めて葬ると突然の悲しみにうちひしがれる他ありません。


「絶望した・・愛する妻に先立たれる不幸に絶望した・・・・」


こうなったら自分も後を追って死のうとしましたが死ねません、

「よし、こうなったら生きたままイザナミのいる黄泉の国に行きます!
死者の国なんて恐いですけど・・・・・」

そうしてイザナギは他の神から聞き知った死者の国に繋がる洞窟を見つけました、

「流石に黄泉に繋がるだけあって暗いしじめじめして恐いです、」


イザナギは流石に怖じけづきました、
しかし明かりを持っている事を思いだしました。

「イザナミを焼き殺したカグツチの残り火を頼りに黄泉のイザナミに会いにいくとは随分皮肉ですね」
こうしてイザナギは洞窟を照らしながら進んでいきました。
490絶望日本書記 八/十壱:2007/11/30(金) 01:57:47 ID:DtKWk43n
「イザ・・ナギ?」


暗闇を進むイザナギの耳に突如強張りがありながらも懐かしく愛おしい声が響きました。


「おぉその声はイザナミ!やはり黄泉にいましたか声はすれど姿はありませんが?」


少し間を置きイザナミは再会した夫に語りかけました、
「・・それよりわざわざ黄泉にまで来てくれてお腹もすいたでしょう?
料理作ってたから食べてって。」


「貴女が手料理ですか?なんでしょうか楽しみだです。」
几帳面過ぎる故に細かい事を気にしてかえって料理を作れなかった妻が一体何を作るのか、
しかし再会と急展開に胸踊らせるイザナギの耳に聞いた事もない音が・・
ぐにゅっぐにゅっ


「切れない!切れないよお!」
「一体何を切ってるんですか!?」

「くっ、包丁が切れ過ぎて危なかったからデチューンしたがデチューンしすぎて切れない!
やっぱりデチューンは駄目!全力でやらないと!!」
怯え戸惑うイザナギを気にせずイザナミは何かを切る事を辞めて今度は何かをぐつぐつ煮始めたのです。
「鍋料理?ですか?」


「あ・・・・『砂糖と塩』と間違えて『佐藤年男』入れちゃった。」


「入れるなあああーーーッ!!!!」
491絶望日本書記 九/十壱:2007/11/30(金) 02:00:04 ID:DtKWk43n
「てへっ♪」

有り得ないドジをやったとゆうのにイザナミは全く悪びれる様子はありません
「せっかく作ったんだから、きっちり食べてくれるわよね?」

「そんなのまっぴら御免で〜すーーーッ!!!!!」
慌てふためきイザナギは松明を手放してしまいました、
しかしその松明が転がって行った先は幸か不幸かイザナミの足元に。

「ひいぃぃ!?イザナミその姿は!!!???」

「見たな!知ったな!黄泉で私はこうゆう風貌である事を!!!!」


イザナミのややキツさがありながらもあどけなかった姿の面影は微塵もありません。
瞳は輝きを失い海に住む魚様に冷たくなり、
いつも強く主張していた口には刀の様に鋭く細長い歯が不気味に並んでいますし
天御柱の様にまっすぐだった髪は膨れ上がり世の果ての闇に恐怖とともに同化していました。


「この姿を見られたからには・・・・・埋める!!」
「嫌でーーーす!!
絶望した!愛する妻を猟奇へと変える黄泉の国に絶望した!!」

イザナギは来る前の死にたがりをすっかり忘れ、死者の国には不釣り合いな生きたいオーラを出しながら一目散に逃げ出しました。
492絶望日本書記 十/十壱:2007/11/30(金) 02:03:04 ID:DtKWk43n
「うなああああああ!!!待てえぇーーーッ!!!」
「待ちませ〜ん!!!」


鋤を手に憤努するイザナミの姿に母親の面影はもはやなく、
完全に黄泉の死神と化していました。
必死にふり切ろうと走っているとようやく出口の明かりが見えてきました、
すると入った時はあまり気にも止めなかった桃の木があるではないですか。
「ようしこの桃で、えいっ!!」
イザナギはたわわに実った桃をもぎ取り背後に迫る死そのものに投げつけました、

「こんな物を私に投げつけるだなんて・・・・・・あっ!左右対象。」

イザナミが桃の綺麗なシンメトリーにうっとりしているスキにイザナギは黄泉の入口に大きな岩でなんとか蓋をしめ閉じ込める事に成功しました。

「イザナミ、私と貴女は住む世界が違い過ぎます。
もう離婚しましょう!!」

「な ん で す っ て !?死が二人を引き裂いてもずっと夫婦とおもってたのに・・・・・そんな事言うならそっちの国の人達を毎年千人殺してこっちに送ってやる!!」
なんと恐ろしい宣言、
彼女は身も心も死の国の住人になってしまったと言うのでしょうか?
493絶望日本書記 十壱/十壱:2007/11/30(金) 02:05:40 ID:DtKWk43n

「イザナミ・・・・・」

でももしかしたら彼女は一人ぼっちで暗い暗い黄泉に放り出されて寂しかったのではないか?

いやそうに違いない、
死の国なんて恐ろしい処にやってきて耐え切れるはずはないし
もう地上には戻れない。
だから自身も恐ろしい存在となる他なかったのではないか?
そう思い語りかけました。
「イザナギ、貴女の心がそれで晴れるとゆうなら一向にかまいません、
でも貴女が千人殺すたびに私は千五百の母屋を作り千五百人の命を産みます。
この国は私達二人で産んだ子どもです、
私は地上から、貴女は地下からこの子を一緒に守り育てていこうではありませんか。」


何回も上に乗って励み、何回も痛みに耐えたのに報われず心が折れそうになっていた自分を気遣ってくれたあの時と同じ凛々しさで語ったその言葉、
イザナミは岩越しにコクンと頷きました。


愛する夫と、

愛する我が子に。
494名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 02:09:24 ID:DtKWk43n
え〜とまたヤンデレの話になってしまいすいません
エログロはこの国産み編だけのつもりですが

皆さんがよろしかったら天岩戸編や八俣大蛇編や因幡の白うさぎ編もやらせてもらえないでしょうか?
495名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 02:10:56 ID:Hl9k6o26
対称ですね

今週居ない千里?分を補充できました
496名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 02:12:02 ID:Hl9k6o26
おっとageてしまった
497名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 04:02:01 ID:rOD1WsJ8
前から思っていたのだが「いう」を「ゆう」と書くのは何かポリシーでも?
498名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 06:13:59 ID:1eYS9tKR
>>494
断る
499名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 06:20:14 ID:QcPz+Njx
とりあえず天岩戸編のエッチな踊りに期待してる
500名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 07:08:04 ID:adUJeHKD
もうこういう著作権無視の無法はやめようよ・・・
501名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 08:05:07 ID:7wxEdeRA
パロってことでスルーしてくれ・・・
502名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 08:05:55 ID:DtKWk43n
>>497以前は答えそこねたんですが方言がつい出てしまうのです
503名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 08:07:04 ID:MlGvBbRf
日本書「記」じゃなくて日本書「紀」でしょ!
「日本書紀」は一発変換できるのに、どうして間違えるのよ!
あー、もうイライラする!

って、千里ちゃんが言ってました。
何はともあれ乙。
504名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 15:33:25 ID:vRoaDmQM
>>494
お願いします、これは他の話も千里がヒロインになるんでしょうか?
505名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 17:34:11 ID:2kBKEMeT
天照は霧だろ常考
506名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 20:28:49 ID:IDp2xmMB
元の話よく知らないから凄い電波w
何はともあれ乙
507名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 23:00:00 ID:3Ex6rp0v
日本書紀は元ネタからカオスだから、意外と絶望先生と合う

乙です
508430:2007/12/01(土) 00:17:24 ID:uhDjJRe9
>>494
この題材で絶望パロって、すご過ぎです。
敢えて古事記でなく日本書紀にチャレンジされているところがまた…。
続編、全く配役が想像できないところが却って楽しみですね。

こんばんは、430です。
もう12月なんですね…1日が(自分だけ)48時間あればいいのにorz
というわけで、ささくれた心で書いた季節ネタを1本。…仕事しろ。

えーと、私のも一応、パロ話ではあるのですが、
こちらの方はエロもなければカップリングもない、
原作なぞったまんま(…かなぁ?)のお話なので、
お暇な方以外はスルー推奨で…。
509絶望的クリスマス・キャロル 1/10:2007/12/01(土) 00:18:31 ID:uhDjJRe9
巷ではクリスマスのイルミネーションが煌き、
ジングルベルが鳴り響くこの季節。

ここ、天界では神々が難しい顔をして額を寄せ集めていた。

髭の神様がため息をついた。
「本当に、あの男は何とかならんものかの。
 この間は早々に天使ちゃん達を使ってお帰りいただいたが、
 余りしょっちゅう来られては、天国の沽券にかかわるんじゃ。」
神様の向かいで、仏様が渋い顔で首を振った。
「わしも以前、あの男には我慢の臨界点を超えたことがあるが…。
 いっそのこと、あの世に送ってしまっても良いのではないか。」
すると、その隣で三途の川の渡し守の婆がしわくちゃの口元をすぼめた。
「いや、それが、思い切って向こう岸に渡しちゃろうと思うと、
 あやつ、笑ってごまかして逃げよるんじゃよ。
死ぬなら死ぬ、生きるなら生きるではっきりしてもらわんとの。」

仏様が顎を掻きながら言った。
「どうすればよいか…3日以内に10人の女性と交わらんと死ぬぞ、
と脅してみるか?」
「…保管庫を読みながら言うな。それではマルパクではないか。
 大体、あんな大作書けるものか。
 そうだのう、やはりこの季節からすると…あれではないか?」
神様の提案に、渡し守の婆が顔をしかめた。
「あれか…西洋の話は好かんが…この際、仕方ないかの。」
「まあ、できる限りのことはやってみようではないか。」

3人は、顔を見合わせて頷いた。





510絶望的クリスマス・キャロル 2/10:2007/12/01(土) 00:20:22 ID:uhDjJRe9
<<朝だ・・・起きたり起きなかったり・・・って!ダメだぞ!起きろー!>>

携帯から流れる大音量の声に、望は飛び起きた。
「な、な、なんですか!?」
慌てて眼鏡をかけて辺りを見回すと、まだ窓の外は暗い。
首をめぐらせると、望の枕元に、携帯を掲げて持っている芽留が座っていた。

「音無さん…一体何の嫌がらせですか!?」
芽留は望の抗議を軽く無視すると、再び携帯の液晶を光らせた。
『うるせー。神様から伝言だ。
 これから3人の幽霊がテメーにあるものを見せに来る。
 この先、心安らかな人生を送りたかったら心して見るんだな。以上。』

「…はぁ?」
とっとと携帯をしまって帰ろうとする芽留に、望は惚けた声を上げた。
「神様とか、幽霊とか…何の話ですか?」
『テメーの生き様が、天界にメーワク及ぼしてんだよ、このハゲ!
 いつも中途半端にゼツボーしてるんじゃねー!』
振り向かないままに毒舌をメールで送ると、芽留はそのまま姿を消した。

「…訳が分かりません…。
 絶望した!安眠を妨害された上に意味もなく罵られて絶望した!!」
「…お兄様…さっそくお定まりのセリフですか…。」
叫ぶ望の後ろから、声がかかった。

望が振り向くと、そこには白い着物を纏った倫の姿があった。
「倫…?どうしてここに…お前も私の安眠を妨害するのですか!?」
「お兄様。」
倫は怖い顔をして望を見た。
「音無さんの話をきちんとお読みになりました?
 私は、お兄様を絶望から解き放つために天界から遣わされた第1の使者。
 過去の幽霊です。」

「…何を、言って…。」
望の言葉が終わる前に、目の前の光景が一変した。
511絶望的クリスマス・キャロル 3/10:2007/12/01(土) 00:21:32 ID:uhDjJRe9
古い風情のある日本家屋。
障子からは明るい光が漏れ、2つの人影が映っている。

「ここは…私達の実家じゃないですか。でも何だか雰囲気が違う…。」
辺りを見回して呟く望を見ながら、倫が無言ですっと障子を開いた。
望は息を飲んだ。
「…!?お父様とお母様…?…若い!!」

そこにいたのは、望の両親だった。
しかし、望の記憶にある2人よりも随分若い…30代そこそこに見える。
2人には、全く望達が見えていないようだった。

「メリークリスマス、妙。」
「メリークリスマス、あなた。」
2人は微笑み合いながらグラスを合わせた。
「子供達は、もう寝たのか?」
「ええ、3人ともクリスマスパーティではしゃぎすぎて疲れてしまったみたい。」
「そうか…今年もパーティに参加できなくてすまなかったな。」
「いいえ、お忙しい中、こちらに帰ってきてくれるだけで嬉しいですわ。」
「いつも留守にしてしまって…寂しくはないか?」
大の問いに妙は首を振った。
「大切なお仕事だって分かってますもの…それに、私には子供達がいます。」
「…本当に、皆、いい子達に育っているな…私達の宝だ。」
妙は、その言葉に大を見上げた。
「あなた…。私、クリスマスプレゼントをおねだりしてもいいかしら。」
「ん?何だね?」
「私、もう1人、子供が欲しい…私と、あなたの宝物を。」

「も、もしや、これは…。」
2人の会話を聞いていた望の背を、冷たい汗が伝わった。
倫はにっこりと頷いた。
「そのとおり、お兄様がこの世に形作られたときの場面ですわ。」
「―――!!絶望した!!両親のラブシーンなんて気恥ずかしいものを見せられ、
 あまつさえそれが自分の製造現場なんて、絶望以外の何物でもない!!!」
倫はため息をついた。
「そう言われると思いました。
 …でもね、お兄様。お2人の会話、聞いてらした?」
「…は?」
512絶望的クリスマス・キャロル 4/10:2007/12/01(土) 00:22:27 ID:uhDjJRe9
「は?じゃありません。お兄様、いつもおっしゃっていたじゃないですか。
 自分は、両親がクリスマスに浮かれてできた子供だ、って。
 でも、今のお父様とお母様のお言葉、聞いてらしたでしょう?
 …お2人は、本当に、心からお兄様を望まれていたのですわ。」
「…。」

望と倫の前の場面が切り替わった。
辺りに赤ん坊の泣き声が鳴り響く。

「妙…よくやった!」
「あなた…見て、元気な男の子。」
妙の腕の中の赤ん坊を覗き込む2人の顔は、喜びに溢れていた。
「ねえ、あなた…私、この子を、望、と名づけたいと思いますの。」
「望…良い名だな…この子は、私達の望みを受けて生まれたんだものな。」

「…名前をつける前に、自分達の苗字を考えて欲しかったですけどね…。」
望は呟いたが、その声音には先ほどのようなとげとげしさはなかった。
自分では気がつかなかったが、望は柔らかい表情で目の前の光景を見ていた。
倫は、そっと望を覗き込むと、小さく微笑んだ。

目の前の光景は、再び変わり、望の子供時代を目まぐるしく映し出していった。
そこには常に、家族の暖かい笑顔が溢れていた。

―――そういえば、この頃は、絶望という言葉さえ知りませんでしたね…。

眺めているうちに、目の前の光景はだんだんと薄れていき、
いつの間にか、望と倫は元の宿直室の部屋に戻っていた。

倫と望は向かい合って座っていた。
倫が、望の目をひたと見つめた。
「お兄様…お兄様は、この世に望まれて生まれてきたのです。
 それだけは忘れないで下さい。
 お父様とお母様の思いを、無にすることのないよう…。」

そう言うと、倫は望の前から掻き消えた。

望は、黙ったままぼんやりと、今まで倫が座っていた空間を見つめていた。
513絶望的クリスマス・キャロル 5/10:2007/12/01(土) 00:24:19 ID:uhDjJRe9
「さーて、次は私の番ですよ、先生。第2の使者、現在の幽霊でーす。」
明るい声に望は振り向いた。
そこには、奈美が白いワンピースを着て立っていた。

「…。」
「どうしたんですか、先生?そんな不思議そうな顔して。」
「いえ、人並みなあなたがこんな大役を仰せつかるなんて、
 神様の判断基準というのは分からないものだ、と思いまして。」
「人並み言うな!!それに、馬鹿にするなぁああ!!」
奈美は両手を振り上げて怒鳴った。
「もうっ、いいから、先生こっち来て見てくださいよ。」
奈美が振り上げた両手を下ろすと、
目の前に、望のクラスの生徒達がどこかの家で、
クリスマスパーティの準備をしている光景が現れた。

「先生、今年も来てくれないのかなぁ。」
千里がツリーに飾りをつけながら、ため息をついた。
「ねぇ。何をするにも、先生がいないと何かピリッと来ないよね。」
晴美が隣で相槌を打つ。

「ほら、先生、こんなに生徒達に慕われてるんですよ。」
嬉しそうに望を振り返る奈美に、望はため息をついた。
「…なんですか、そのリアクションは。」
「余りにもインパクトがなさ過ぎて。…本当に悲しいまでに普通ですね。」
「普通ってゆーなあ!」
奈美は顔を真っ赤にして怒ると
「違うんです!私が本当に見せたかったのは、あっちです!!」
と部屋の一角を指差した。

奈美の指差す先にいたのは、膝を抱えてうずくまっている甥っ子だった。
「交…?」

うずくまる交に、千里が声をかけた。
「交君、一緒にツリーの飾り付け、しない?」
その誘いに、交はふい、と顔を背けた。
「…クリスマスなんて、大嫌いだ。」

「どうしたのよ、交君。」
女生徒達が、わらわらと交の周りに集まってきた。
514絶望的クリスマス・キャロル 6/10:2007/12/01(土) 00:25:29 ID:uhDjJRe9
「だって、クリスマスが近くなると、叔父さん機嫌が悪くなるんだもの。」
交は下を向いてぼそぼそと呟いた。

「…。」
黙って目の前の光景を見ている望を、奈美は非難の目で振り返った。
「子供にとって、クリスマスは1年で一番楽しい季節のはずなのに、
 交君は、先生のせいで、クリスマスはいつも嫌な思い出ばかり!」
「だって!それを言ったら、私の元に交がいること自体、
 そもそも縁兄さんがいけないんじゃないですか!!」
不満そうに叫ぶ望の言葉に、奈美は悲しそうな顔をした。

「…先生、そんなこと言うんですか…がっかりです。」
奈美は、寂しげな声で呟いた。
「誰の責任とかじゃないじゃないですか…目の前に、先生が
 救うことができる子供がいるのに…先生は、目をつぶるんですか。」
「そ、そんな、いくら年末だからって、
 赤い羽根の共同募金みたいなこと言わないで下さい!」

居心地が悪くなって、望は再び目の前の光景に顔を戻した。
―――ずきん。
ふいに、交の表情の暗さが、望の胸をついた。
その表情は、子供の表情ではなかった。
世を拗ねた大人のような―――まるで自分のミニチュアのような。

「…交君、このまま、絶望まみれの人生を送らなきゃいけないんですか?」
奈美の声が後ろから追いかぶさる。
望は、ふと先ほど見た自分の子供時代を思い出した。
今は絶望ばかりしているが、自分の子供時代は楽しかった。
―――交は、それさえも与えられていないのか…。

奈美は、しばらく望の表情を観察していたようであったが、やがて、
「…どうやら、先生、分かってくれたみたいですね。」
と肩をすくめた。
「…人並みなあなたに、そんな洞察力があるんですか?」
望の答えに、奈美は顔を赤くして口を開いたが、望を見て口を閉じた。
そして、突然、輝くような笑顔を浮かべた。
「…分かりますよ。だって、私も、先生のこと大好きですから。」

そう言うと、望の答えをまたず、奈美は虚空に姿を消した。
515絶望的クリスマス・キャロル 7/10:2007/12/01(土) 00:26:26 ID:uhDjJRe9
最後の奈美の笑顔が余りにも印象的で、望は呆けたように突っ立っていた。
何だか顔が熱いような気がして、頬に手をやる。
「…なんだ、日塔さん、意表をつくようなこともできるんじゃないですか…。」
頬を押さえながら呟く望に、後ろから声がかかった。

「やだなぁ、世の中に意表をつくことなんかあるわけないじゃないですか。
 全ては必然の結果ですよ。」
「…やはり、最後はあなただろうと思ってましたよ、風浦さん。」
望はため息をつきながら振り返った。
そこには、白い天使のような姿をし、笑みを浮かべた可符香が立っていた。
「それなら話は早いですね。さあ、未来へと飛び立ちましょう!」
可符香が腕を優雅に振ると、辺りが真っ暗になった。

「カウシテ」「コノ物語ノ主人公ハ死ンダ」

空から、誰のものとも知れない声が響く。
そして、ふいに2人の目の前に、どこかの式場が現れた。

「…ここは?」
「先生のお葬式ですよ。」
白と黒で埋められた場内には、静かな読経の声とすすり泣きが満ちていた。
「ほほう、なかなかいい式じゃないですか。」
望は、きれいに飾られた祭壇を眺めながら、満足そうに目を細めた。
可符香は、そんな望を横目で見やると不可思議な笑みを浮かべた。
「まだまだ、ここからが本番です。」

急に、式場でざわめきが起こった。
「大変、まといちゃんが首を吊りました!!」
外から駆け込んできた生徒が、慌てたように告げた。
「え…!?」
絶句した望の目の前で、霧がロープを取り出した。
「抜け駆けなんて、ひどいよ!私も、先生のところに行く!」
そういうと、ロープを式場の梁にかけ、えい、とばかりにぶら下がった。

「な、何やってるんですか、小森さん!」
望は霧に駆け寄ったが、その手は、霧の体をすり抜けてしまった。
「何故、誰も止めないのです!?」
望の叫びは、当然のことながら式場の誰にも届かない。
516絶望的クリスマス・キャロル 8/10:2007/12/01(土) 00:27:18 ID:uhDjJRe9
「ごめんなさい、先生が自殺しちゃったのは私のせいなんです!」
愛が突然立ち上がると、泣きながら式場から走り去った。
間もなく外から、ブレーキを踏む音と嫌な衝撃音が聞こえてきた。

「…。」
真夜が涙目で、爆弾のスイッチらしきものを押した。
爆音が響き、真夜は周囲の生徒達ともども吹き飛ばされていった。

「なん…何なんですか、これは一体!?」
言葉を失っている望の背後から、可符香が明るい声をかけた。
「やだなぁ。先生は、皆に悲しまれて死にたかったんでしょう?
 先生の望みどおりじゃないですか。
 30倍どころか100倍、1億兆倍も悲しまれてますよぉ。」
望は、目を見開いて可符香を振り返った。

そこに、涙でしゃがれた声が聞こえてきた。
「いつの世にもこの子に望みがあるようにと、願いを込めて名づけたのに…。
 こんな形で我が子に先立たれて、この先、夢も希望もありません。」
親族席で、望の両親が立ち上がると、怪しげな錠剤を口に放り込んだ。
「そんな…いやだ!」
望の叫びも虚しく、両親は重なり合って崩れ折れた。

可符香は、青ざめた望を見ながら、楽しくて仕方ないというように
腕を一振りすると、新たな場面を映し出した。
「ほら!見てください、先生!これは必然です!!
 先生の絶望の先には、こういう結末が待ってるんですよ!!」

既に式場は阿鼻叫喚の坩堝と化していた。
そんな中、千里が血の涙を流しながら立ち上がった。
その手にはスコップが握られている。
「絶望よ!先生のいないこの世なんて、存在する価値はない!!」
千里はスコップを振り上げた。

悲鳴と怒号。
望の目の前に、言葉に尽くせない凄惨な光景が広がっていった。
517絶望的クリスマス・キャロル 9/10:2007/12/01(土) 00:28:11 ID:uhDjJRe9
望は顔を覆った。
「やめて…もうやめてくださーい!」
「どうして?
 素晴らしいじゃないですか!先生のおっしゃるとおり、
 世の中には希望なんてない、あるのは絶望だけなんです!
 箱の底に残ったのは、希望じゃなくて絶望だったんですよ!!」

可符香の明るい笑い声が、望の頭の中いっぱいに響き渡る。
「私が悪かったです!もう、もう絶望なんかしないから、
 お願いですから、やめてください―――!!」




望は、叫びながら飛び起きた。
「あ…?」
朝日がさんさんと部屋に差し込んでいる。

「今のは…夢…?」
呟きながら、ふと枕元に目をやった望の表情が強張った。
そこには、小さな髪留めが落ちていた。

「何やってるんだよ、叔父さん。」
望は、その声に振り向いた。
交が仏頂面をしながら望を見ていた。
「いくらクリスマスが嫌いだからって、悲鳴上げながら起きるなよ。」
「…交。」

甥っ子の姿に、望の脳裏に奈美が見せた光景が蘇った。
同時に、倫や可符香が見せた光景も…。

望は、壁の日めくりに目をやった。
今日は12月24日―――千里の家でクリスマスパーティが開かれる日だ。

―――まだ、間に合う…ということでしょうか。
518絶望的クリスマス・キャロル 10/10:2007/12/01(土) 00:29:02 ID:uhDjJRe9
望は、再び交を見た。
「交…後で、一緒に木津さんの家のパーティに行きませんか?」

交は目を瞬いた。
「…。叔父さん、何かヘンなもんでも食べたのか?」
「いいえ、ちょっとした心境の変化です。」
望は明るくそう答えると、布団から出た。

窓を開けて天気を確かめると、交を振り返る。
「今日は良い天気ですからね。
 もしかして夜にはサンタクロースも現れるかもしれません。」
交が大きく目を見開き、次の瞬間顔を輝かせた。
「ホントか!?」
「ええ、きっと、この部屋にも来てくれますよ。」

―――後で、交が欲しがっていたあのプラモを買っておきましょう。
望はそっと微笑んだ。

望は、再び窓から外を見やり、3人の幽霊達のことを思い浮かべた。
やり方は三人三様であったが、皆、望に大切なことを伝えようと
必死だったことが、今なら分かる。

―――誰からも愛されていない人間なんていない。
誰も愛することのできない人間も、いない。

そうやって、人は、常に誰かとの絆を築きながら生きていく。
自分の人生は、決して自分1人だけのものではない―――。

―――少し、うっとうしいですけどね。

望は、小さく笑うと、辺りを見回した。
見慣れたはずの風景が、いつもよりまぶしく見えるのは気のせいだろうか。

どこか遠くから、ジングルベルの歌が聞こえてくる。
望は、空を見上げて目を閉じると、小さい声で呟いた。


この世に生まれ、そして生きてゆく全ての人に―――メリークリスマス。
519430:2007/12/01(土) 00:30:30 ID:uhDjJRe9
えー、お付き合いいただきましてありがとうございました。
電波な可符香が書けて楽しかったです。

では、また埋め小ネタの時期になったら、お邪魔しに来ます…。
って、もう、すぐにそうなりそうだけど。
520名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 00:47:54 ID:FydDRgwL
>>519
ふふふ・・・・・・丁度ケーキを予約した日に、430氏ssがリアルタイムだなんて。
それもこんなに良いものを。だんだん加速して読ませて、最後、穏やかな流れになる話はとても好きです。

何だか懐かしい(ry  ずいぶん前な気がしますが、まだ三ヶ月ちょいなんですねぇ・・・   よし、私も、書き上げ・・・るぞw
521名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 08:21:37 ID:1J2TxJzJ
>519
感動した!(古
522名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 22:24:58 ID:iXFEQ+Ko
いい話だった。12月にふさわしい。
523名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 22:38:33 ID:tOUd+ve+
>>519
流石430氏!
俺にはできないような綺麗なエンディングを平然と書き上げてみせる!
そこにしびれる!あこがれるぅ!

会社で過ごすであろうクリスマスのエネルギーにさせていただきます。

>>520
430氏のネタに使ってもらえるとは光栄の極みw
三ヶ月も充電しているといい加減過充電で妄想が暴発しそうです。
つーわけで、今週末にでも久々に投下しようかなぁと思います。
524名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 22:53:30 ID:XhGc5gg1
最高!
やっぱり430氏以外はイラネ。
525名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 23:17:17 ID:egUWZ+7s
まあそう言うな。偏りがあった方が面白い。
526名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 23:51:34 ID:HQm2E0ww
>>525
ほっとけ、いつもの荒らしだ
527305:2007/12/02(日) 02:00:07 ID:mRiOS/p2
>>523
色々・・・色々・・・語りたいのは押さえて・・・おかえりなさい・・・
私も、クリスマスは会社w ケーキ持ちこむ予定w


えーと、お疲れ様です。

こんな夜中に失礼してw 投下させて頂きます。
一応、奈美+芽留主役で、エロ無し+捏造設定+ちょっと長め(12レス程かと)です。
なのでスルー推奨でお願いいたします。

では、よろしくです。
528変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:02:31 ID:mRiOS/p2

後ろ姿は親子ほども身長差がある少女が二人。そろって柳眉を逆立てた表情で、不機嫌さを隠そ
うともせずに通路の真ん中を並んで歩いていた。

『何だあの店員! 子供扱いしやがって! 責任者出て来い!』
「ホントムカツク! 何で私がお母さん扱いなの!?」

それぞれ怒りの向く方向は違うが、お互いに不満の言葉をつらねてゆく。
―――もっとも、小柄な少女の方は携帯の画面に文字を打ち出しつづけていたので、背の高い少
女の方が一人で喋っているように見えるが。

「どこをどう見たらそんな年に見えるかな!? ねえ芽留ちゃん?」
芽留は勢いよく訪ねられて、背の高い方の少女―――奈美を横目で見上げる。
藍色のタートルにクリーム色のジャケット。下はジャケットと同色のショートパンツと足には黒
のストッキング。首に掛けたロングのパールネックレス。

『どこをどう見ても 授業参観スタイルだ ブス』
そう打った画面を見せて芽留はニヤリと笑ってみせる。
奈美は口を半開きにして、虚ろな表情で少しよろめいた。

「・・・ちょっと大人っぽくしたつもりだったのに。」
『フケて見えてんなら 成功じゃねーか』
「成功って言うのかな!? それ!?」
怒りが何処かに飛んでしまったのか肩を落として歩く奈美の隣。
奈美を消沈させて機嫌が直ったようで、嬉しそうに携帯をいじりながら歩く芽留は、赤いAライ
ンのコートをすっぽりとはおり、首元にはゆるめたマフラーが巻き下げられている。
コートの裾は足首に届く所まで来ており、袖は辛うじて手の甲から先が出ているだけだった。
やがて二人は駅ビルを繋ぐ連絡路にさしかかりガラス張りの天井を見上げた芽留が足を止めた。
『雨 止んだな』
つられて足を止めた奈美もガラス越しに見える空を仰ぐ。
「ホントだ。・・・あー、ゆうべ降っていた雪が、朝は雨になっていたのはショックだったよね
ー。」
少し眩しそうに、遠い太陽の姿を見ながら奈美は答えた。
『・・・コドモ』
「何で! ・・・・・・でも、雨上がりの空って気持ちいいよね。何かこう、いい事が起こりそ
うな気がしない?」
芽留は肩をすくめ、奈美の顔をチラリと見た。

『まあ 雨よりはマシ だな ・・・普通は』
「普通って言うな!」

―――いつもの私の叫びに彼女は肩をすくめてみせる。
雲の隙間から光の柱となって街の遠くへと落ちる日差しと、重なるようにしておぼろげな姿を現
わす虹の切れ端。灰色の雲が少しずつ散り、明るく照らし出されてゆく街の姿。
私は、楽しい何かが起こりそうな予感を抱きながら、彼女と二人佇み、しばらく眺めていました―――



「芽留ちゃんどうする? このあと。」
エレベーターホールに入った所で足を止め、奈美は傍らの芽留を見て尋ねる。
『もう用事はねーからな 帰ろーぜ』
奈美の脇から手を伸ばし下りのスイッチに触れる。
ポン と軽い電子音が響いた。
「だねー。じゃ、さ。帰りがけに学校寄って行かない? 私、来週から交くん当番だしさ。・・・あと、
先生の様子も見ておかないと。」
芽留は小さく肩をすくめて首を縦に振った。
『生徒に これだけ心配かける先公も大概だな』
「まあ、それが先生だしね。」
奈美はクスリと笑って見せる。
529変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:04:24 ID:mRiOS/p2
再び電子音が鳴り、到着したエレベーターのドアが開いた。

「・・・え。」
「ああっ!? 普通に偶然ですか、これは!?」
「いきなりイヤミかあ!!」
エレベーターの中には男性が二人。
その袴姿の相手に向かって奈美は怒鳴り返す。
『もう脊椎反射で出るんだな 普通に』
「芽留ちゃんまで!?」
ショックを受けた表情で肩を落とす奈美に、先生は しれっ とした顔でそっぽを向いてしまった。
ふと、もう一人の男性がクスクスと声を抑えて笑っている事に気がつく。
「あれ!? お兄さんじゃないですか。」
「や。ひさしぶり。」
奈美の声に眼鏡の位置を直しながら、命は笑いかける。
『よお 死ねる医者』
携帯の画面を見せた芽留に苦笑を浮かべて、命はその携帯を軽く押し戻した。
「もうネットでは流さないでくれるかい? 困った患者さんばかりが押しかけて来て大変だったから。」
そのやりとりに奈美はひきつった笑いを浮かべた。
「あー・・・えっと! 先生達も買い物?」
話題を変えるように、そっぽを向いたままの先生に話しかける。
「いえまあ、買い物ではなくてですね・・・・・・」
「今日、上で医療機器の展示みたいな事をやっていてね。ああ、延命治療のね。―――望が連れ
て行ってくれと言うもので・・・・・」
言いよどんだ先生の代わりに命が答え、先生は再び顔をそむけてしまう。
命の言葉を聞いて奈美の顔が少し意地悪そうな笑みを浮かべてほころんだ。片手を口元に当てて
横目で先生の顔を眺めながら、わざと鼻を鳴らすような笑い声を上げた。
「なぁーんだぁ。先生、死ぬ気ないんだー。せっかくいつも、私達が様子を見に行ってあげてい
るのに、損しちゃったなー。」
てっきり反論してくるかと思いきや、先生は目をそらしたままでボソリとつぶやいた。
「また、恩着せ様が始まりましたか・・・」
「何か言いましたよね!? 聞こえよがしに!」
奈美は口に当てていた手を外し、眉間に皺を寄せて先生の顔を覗きこむ。
先生は奈美の視線を避けるように首を振って目をそらす。
「・・・おーい。エレベーター閉めるよ。」
「あ! ごめんなさい!」
命に声をかけられ、奈美は慌ててドアから離れて中に入る。すでに壁にもたれて待っていた芽留
が小さく溜め息をついた。
『みっともねー女だな コドモか』
「うう・・・」
奈美は気まずそうにうつむいてしまう。
エレベーターのドアが閉まり、下の階に向けて動き出した。今は自分達しか乗っていないが、ホ
ールにいた他の客達には丸聞こえだっただろう。
「普通に変な人ですね。」
「だから普通って言うなあ!」
先生は涼しげな顔をしたまま奈美に背を向けている。奈美はぶすっと口を尖らせた表情でその背
中を見ていた。
エレベーターのくぐもった作動音の中、四人は揃って無言で階数表示を眺めている。命は背を奥
の壁に預けて、困ったような顔で微笑みながら目の前で前後に並んだ二人をしばらく見ていた。
「・・・ああ、そうだ望。私はちょっと行く所があるから。生徒さんを送って電車で帰ってくれ
るかな?」
「はあ? まあ、方向は一緒ですし構いませんが。」
命の言葉に、首だけを捻って先生は返事をした。
『しょーがねーな 送ってやるぜ 坊っちゃん』
「いや、それ逆でしょう!?」
奈美はクスリと笑うと命の方へと向き直る。
「お兄さん忙しいんですね・・・ ちょっと、みんなでお茶でも、って思ったけど。ほら、丁度そんな時間だし。」
「・・・誰にたかるつもりだったんですか?」
『そら 決まってるだろが』
奈美と芽留は揃って先生の方へと顔を向ける。
それを見て命は苦笑を浮かべて頬を掻いてみせた。
530変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:06:18 ID:mRiOS/p2
「・・・まあ、たまにはいいかもね。」
「あ、じゃあ行こうよ! スウィーツ!」
「兄さん・・・言っている事が違いませんか?」
振り向いた先生に命は軽く肩をすくめて見せる。
ポン
電子音が鳴り響きエレベーターのドアが開いた。
乗り待ちのお客は居ない。先生はホールへと足を踏み出し芽留もそれに続いた。
奈美は―――足を踏み出そうとした所を左肩に命の手が置かれた事に気がつき、思わず動きを止
めてしまった。
「・・・・・・え?」
戸惑っている奈美の右手に背中から命の右手が添えられた。命はその手を持ち上げ、エレベータ
ーの「閉」ボタンの前まで誘導するように動かした。
「・・・お兄さん?」
奈美の呼びかけに返事は無く、代わりに頭の上あたりからやや低めのトーンで命の声が囁かれる。
「追いかけてきて―――欲しい? ・・・欲しくない?」
柔らかく耳に届いた命の声が、瞬時にして両耳から全身へと流れるように広がりゆき、奈美の動
きを凍りつかせた。
急速に狭まった視界の中、少しずつ離れてゆく先生の背中と、やや遅れて続く芽留の姿が映っている。
二人とも背後の様子には何も気がついていないまま徐々に距離が広がって行く。
―――トクン
自分の心臓が大きく波打つのが聞こえたようだった。
「・・・・・・先生。」
奈美の口からぽつりとその言葉がこぼれた。
聞こえるような大きさの声ではないだろうが、何かを感じたのか、それとも二人が後ろに居ない
事に気がついたのか、先生は軽く振り返る。
奈美と先生の視線が絡んだ。不思議そうな表情が浮かび、その口がわずかに開いて何事か声を発
した様子がわかる。
何と言ったのかは奈美には聞こえなかった。
気がつくと、奈美は右手の人差し指を立て、その指は「閉」ボタンの上に触れていた。
響く電子音。そして扉は固く閉じられる。
「・・・あ・・・あれ!? えっええ!?」
すかさず命に押されたB2のボタンが点灯し、エレベーターは降下を始めた。
奈美は呆然と行き先のランプと、閉まった扉を交互に見つめる。その肩を命の手が軽く叩いた。
「じゃ、行こうか。」
「・・・・・・い・・・行くって?」
振り返って尋ねる奈美に、命は澄ました顔で小首をかしげてみせる。
「ん? ―――お茶だよ。」


   □ □ □ □


(―――先生)
ふと呼ばれたような気がして振り向いた。
後ろを歩いているはずの奈美と命の姿は無く、思わず先生は足を止めて二人を視界の中から探そ
うとする。
すぐに探している相手は見つかった。
エレベーターの中。なぜか降りずに残っている二人の姿。こちらを見つめる奈美の視線を正面か
ら受け止める姿になった。
「兄さん・・・何を・・・?」
視線の先、奈美の顔とその後ろに並ぶ命の姿。命はこちらに笑いかけ、軽く数回手の平を振って
見せる。気のせいでなければ、命に導かれるようにドアを閉めた奈美は訴えかけるような目で見
ているようだった。
階数を表示するランプが、階を下って行く。
『なんだ あいつらはどこいった?』
目の前に差し出されたディスプレイの文字に、先生はようやく我にかえる。

「あ―――、ええと、まあ。私にもよく分かっていないので、説明するとなると・・・・・・」
『分かるように言え ハゲ』
531変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:07:40 ID:mRiOS/p2

「・・・まあ、連れ去られたように見えましたねぇ・・・。兄さんに。」
芽留の携帯を打つ手が一瞬止まる。
『誰がだ!?』
先生は悩むように腕を組み、首を捻ってみせた。
「・・・日塔さんが・・・ですかね・・・?」
その言葉に硬直する芽留。―――先生は難しい顔をして唸っている。

無言になった二人をよそに、階数の表示はB2で止まった。


   □ □ □ □


「さて―――少し走ろうか。」
「あー、ちょっとまっ・・・!?」
何か言いたげな奈美の手をひいて、命は小走りで自分の車まで誘導する。
走りながら取り出した鍵でロックを外し、助手席のドアを開けた。
「はい、どうぞ乗って。・・・頭、打たないようにね。」
「えーと・・・その・・・・・・」
背中を ぽん と押され、奈美は戸惑いながらも助手席に乗り込んだ。
そのまま運転席へと回り込む命を何となく見ていると、
ガツッ
「あ痛ッ!?」
座りなおそうとして、バックミラーの角に頭をぶつけてしまう。
「奈美さん? 大丈夫かい?」
「あ、うん。ちょっとぶつけただけだし・・・」
ぶつけた場所を手のひらで ぽんぽん と軽く叩いてみせる奈美を見て、命は口元に笑みを浮か
べた。
エンジンがかけられ、二人の乗った車は停車位置を離れて通路に滑り出す。
シートの横から後部座席の方を覗き込むと、ちょうど正面に位置するエレベーターが離れてゆく
様子が見えた。そして、奈美の目はボックスが降下してくる事を教える表示ランプを捉える。
表示はこの階で止まりドアが開く。
開いたドアをくぐって降りてくる先生と芽留の姿が見えた。
「ね! お兄さん?! 先生たち来たよー!?」
離れて行く二人の姿を捉えて離さないまま、奈美は運転席に声をかける。
命はチラリと奈美に視線を送り、
「―――あっと、忘れる所だったね。」
その言葉に、奈美はホッとしたように笑みを浮かべて振り返った。
「あーもうー びっくりしたじゃないで――――」
「シートベルトしなきゃ。・・・ね? 奈美さん。」
命にベルト口を示され、奈美は慌ててベルトを引っ張り出し―――

「違うー! まってまって・・・・・・」
「ちょっと高速使うからねー。ベルトは? つけたかい?」
「ええ? どこまで・・・ って、あの、ちょっとぉ!?」
混乱し、後部と運転席とに忙しく視線を変えながら、奈美はもたもたとシートベルトをつけている。
命は口元に微笑をうかべるとハンドルを切る。
―――地上へ続くスローブを上がりきった車は車道へと入って行った。


   □ □ □ □


「あっと・・・! いけない。圏外ですねここ。」
先生は自分の携帯を取り出し、命のアドレスを開いた所で渋い顔をしてみせた。
『どっちみち運転中だろ?』
「ああ・・・たしかに・・・」
先生は大きく溜め息をつき、再びエレベーターに乗り込む。
532変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:08:56 ID:mRiOS/p2
芽留もそれに続いた。取り敢えずドアを閉め1Fのボタンを押す。・・・低い作動音が響き、エ
レベーターが動き出した。
先生の目の前に、そっと携帯のモニターが差し出される。
『ひょっとして 放っといても いいんじゃねーか?』
先生の表情が曇る。
「・・・そう言うわけにはいきませんよ。」
『オマエのアニキ そんなにアブナイ奴なのか?』
芽留の問いに先生は苦笑を浮かべて首を横に振った。
「いえ、そんな事はありませんが・・・ しかし、前から日塔さんに興味がありそうな感じでし
たから・・・ちょっと。」
芽留の瞳が少し不機嫌そうに細められた。先生には顔が見えないように足元に視線を落としたま
ま携帯を打つ。
『それが 何かマズイのかよ』
「いえ・・・・・・日塔さんはまだ未成年ですし・・・」
苦い顔をして首を振って見せる先生に、芽留はうつむいたまま大きく息を吸い込んだ。

『立場ばかり 気にしてんじゃねーよ タコ!』
『アニキを信用してねーのか? ついでに普通も?』
『どうせ 取り越し苦労で 終わるんだろーよ!』

ポン と電子音が響き、ドアが開いた。
芽留の勢いに少々呆気にとられた様子の先生と二人並んでホールへと進む。
『・・・まあ 心配なんだろーから あいつにメールしとくぜ』
小首をかしげて自分を見上げた芽留に、先生は半ば諦めたように短く笑ってみせた。
「では・・・お願いしますからね。音無さん。」
その言葉に芽留の肩からフッと力が抜け、照れ隠しのように顔をそむけてしまった。
先生に背を向けたまま何事か考えているようだったが、やがて携帯のボタンを打ち始める。
メールの着信音がして、先生は自分の携帯を開いて見た。

『じゃ ちょっと ヅラ貸せよ』
「・・・! 私はヅラではありませんから!!」

思わず肩を怒らせて叫ぶ先生。周囲を行き交う人達が何事かと注目する中、芽留は他人の振りを
装いながらメールを打ち続けニヤリと笑う。

『間違えた  ツラ 貸せよ』

先生がメールを読んでいるうちに、芽留はてくてくと玄関口の方へと歩いていってしまう。
「・・・まあ、ワザとなのは分かり切っていますけどねぇ。」
先生は周囲の視線に気まずそうに咳払いを一つ落とすと、ちょっと大げさな動作で髪を一度掻き
あげてから芽留の後を足早に追って行った。


   □ □ □ □


眼下に見える桟橋の先には釣り人が一人糸を垂れている。
紅く染まった遠くの空を渡ってゆくのはウミネコだろう。猫の声にも似たその泣き声は緩やかな
風に乗って奈美の耳まで運ばれてくる。
水平線に触れかけた太陽の光は優しく波間を照らし、見渡す海は一面が金色に染まりゆっくりと
揺らいでいるようだった。

「寒くないかな?」
レストハウスの方からかけられた声に振り向き、奈美は笑顔で頷いてみせる。
「うん! 意外と寒くないです。かえって気持ちいいくらい。」
「今日は風もあまり無いからね。・・・はい。」
命は湯気を立てているサーモマグを奈美に手渡し、テラスの手すりにもたれている奈美の隣に並
んだ。
自分が手にしているマグに軽く息を吹きかけると、沸きあがった白い空気が風下へと流れ、奈美
の目の前をかすめる。
533変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:10:37 ID:mRiOS/p2
「いただきまーす。あー、ココアの匂い・・・美味しそう。」
「熱いから気をつけて。」
奈美は命のように一息吹きかけて、甘い香りの漂うマグを口に運んだ。
一口含み、美味しそうに顔を綻ばせると、――ほうっ、と白い息を吐き出した。

微かに聞こえるウミネコの声に耳を傾けながら、二人はしばらく言葉を交わす事もなく熱い飲み
物を楽しんでいるようだった。

「あの・・・ お兄さん?」
「ん?」
「なんで連れ出したんですか? その・・・ちょっとひとさらい・・・ってゆうか・・・・・・
拉致? みたいに。」
命は口元にマグを運んだまま、少し目を細めて笑ったようだった。
「たまには・・・ こんなのも良いかな、と思ってね。」
「・・・まあ、先生達もあまり心配していないみたいですし・・・・・・いいですけど・・・」
奈美は携帯を取り出し、先ほど芽留から届いたメールを呼び出した。

『じゃあ オレは ハゲに二人分たかる』

少し苦笑を浮かべて、携帯をしまう。
「・・・それで、奈美さん。」
「はい?」
「その後 ―――どう? 望とは進展したかな?」
ぶはっ と盛大に奈美はむせ返る。
「なんですかぁいきなり!? ・・・ええ!? でも、ど、ど、ど・・・・・・」
命は語尾をどもり続ける奈美に少し首をかしげて考えたようだった。
「ああ・・・ 『どうして知ってるの』って事?」
「あ・・・う・・・!」
口を開けたまま言葉が出ずに顔を真っ赤にしている奈美に命は微笑んでみせる。
「ああゴメン。・・・以前話した時に、そうじゃないかな? って思っただけ。」
「カマかけですかぁ!?」
「うん、まあ。」
ちょっと人の悪そうな笑みを浮かべた命に、奈美は手すりに突っ伏して両腕で顔を覆い隠す。
「・・・お兄さん、意地悪い。」
奈美は腕の中に顔をうずめたまま、くぐもった声でぼそりとつぶやいた。
命は何も答えずに、微笑んだままカップの中身を一口含んだ。
「あの・・・・・・どうせ恥掻きついでに聞いていいかなぁ・・・?」
「ん?」
奈美は少し頭を上げ、腕の上に顔を半分見せた。
「先生って・・・ その、いわゆる、彼女・・・とか、居るのかな?」
顔は命に向けたまま、しかし視線は合わせずに奈美は問い掛けた。
命はその言葉に少し眉を上げて驚いたような表情をみせる。一瞬考えて口を開き、
「―――いるよ。・・・・・・って言ったら、どうする? 諦めてしまうのかい?」
奈美の目が驚きで見開かれ、顔を上げて呆然とした表情で命を見つめ・・・一拍置いて顔を伏せ
てしまい、力無く手すりの上に顎を乗せて水平線を見つめている。

「・・・わからない。そんなの。」
やや投げやりな声で奈美はポツリとつぶやいた。
「そうだね・・・わからないよね・・・」
ココアを口に運び、コクリと一口飲み干す。
奈美の口から、白い溜め息が漏れた。
「さっきのエレベーター・・・ お兄さんも意地悪だったけど、私も悪い事考えていましたよ。」
苦笑交じりの奈美の表情に、命は一つ肩をすくめてみせる。
「追いかけてきて欲しいなぁ―――って・・・・・・  血相変えてさ・・・」
その自分の言葉を自嘲するような笑みを浮かべ、奈美は片手で頬杖をつく。
「・・・普通にいやらしい奴ですよね私・・・・・・ あ! 自分で普通って言ってるし!?」
口を丸く開けたまま眉間に皺を寄せる奈美に、今度は命が苦笑を浮かべる。
「やっぱり、『普通』って言われると嫌なんだ?」
奈美は少し考えているようだった。
534変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:12:31 ID:mRiOS/p2

「・・・うん。面白くはないかも。・・・特に先生に言われると。」
「望にかい? ・・・じゃ、もし、望だけが君に言わなくなったら―――どうかな?」
「先生だけが?」
その問いに奈美はきょとんとした表情を浮かべた。
しばし無言で空を仰ぐ。

「それならまあ・・・・・・ 我慢できないほどじゃないかも。・・・言われたい訳じゃないけど。」
「そうなんだ。なぜ、望だけだろう?」
「―――それこそ教えて欲しいくらいですが。」
口を尖らせる奈美に、命は笑って自分のマグを傾けた。
「そうだね・・・・・・ 他の友達には言わないんだよね? じゃ、君にだけ言うのかな?」
奈美はクラスメイトの顔を思い出し、一つ呻いた。
無意識にサーモマグを揺らして回転する中身を見つめながらボソリと言葉を吐き出す。
「―――私が、平凡だからだな・・・ 特徴が無いっていうか・・・ でも、それは皆が個性的
すぎるからだし!」
空いている手で少し風で乱れた髪を押さえる。カップの揺れがだんだん大きくなってきた。
「そりゃ、私は、千里ちゃんや霧ちゃんみたいに美人じゃないし、芽留ちゃんみたいに可愛くな
いし! あびるちゃんやカエレちゃんみたいにスタイル良くないし、まといちゃんみたいな色気
も足りないし!」
奈美は一度そこで言葉を切って、手の動きを止めた。
「・・・可符香ちゃんみたいに女の子らしい・・・ 愛らしさもないから、さ。だから・・・!」
奈美は両手でカップを抱えて回るココアの動きを止めた。
湯気の隙間、褐色の水面に自分の顔がぼやけて映りこんでいた。
「・・・うん。」
軽く相槌を打った命に促されるように、奈美は深く溜め息をついて言葉を続ける。
「そうか・・・ 私、特別扱いされたいんだな。先生にだけ、特別・・・・・・」
褐色の面に映る自分の顔が揺れたように見え、奈美は残りの液体を一気に口に含んだ。
まだ熱いココアが喉を通り過ぎ胸の内側が焼けるように熱を帯びる。
奈美は顔をしかめると、空になったカップを両手で抱えて手すりに置いた。
「自分を特別に見て欲しいんだな、私は。・・・・・・なんだ、全然成長してないって事かぁ・・
・・・・・」
肩を落とす奈美を、命は静かに一つ頷き、黙って見ている。
「そういや、『私を見て!』って言わんばかりの事、何度もやっちゃっていた・・・  先生に
は、恩着せだのホワイトライだの言われてスルーされてたけど。」
「らしいね。」
苦笑いを浮かべ肩を落とした奈美に笑いかけ、命は体の向きを変え、水平線の方を向いた。
日はもう半分ほど沈み、やや空気も冷えてきている感じだった。

「あいつはね・・・・・・ いつか君の言っていたように、臆病なんだよ。昔から。」
小さく笑ってカップを口に運ぶ。
「まあよく言えば、気が優しいんだろうけどね。だから正面からくる言葉は避けてしまうんだ。
小理屈を言い出したり憎まれ口を言ったり・・・・・・ それでかえって相手を怒らせる事もあ
るけど。」
奈美はクスリと笑う。
「・・・でもそれで、相手も自分も、逃げ場が無くなるような状況を作らないようにね。してい
るんだろう。大事な相手なら余計にね。」
「大事な相手・・・自分の生徒ですもんね・・・」
奈美はそう言って、ふう、と大きく息を吐き出した。
「・・・それって後ろ向きだなぁ。」
「あいつなりの表現なんだろう。君が可愛いんだろうさ。」
さらりとした命の言葉に、奈美は思わずカップを落としそうになる。
「・・・・・・お兄さんまで私をからかう!?」
「いや、本当に。」
命は笑って、奈美の手から空になったマグを取る。
少し小首をかしげてみせ、
「まあ、私がそう思っただけ、だけどね。本心はあいつにしか分からない事だから。」
命は奈美の目線にマグを持ち上げた。
535変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:13:47 ID:mRiOS/p2
「・・・おかわり、どう? ・・・三種のベリーパイも一緒に。」
「・・・ください。」
真面目な表情で言葉を交わし、二人は揃って小さく笑った。


   □ □ □ □


『オマエの一歩は オレの二歩なんだ』
『だから オレが早足になるか オマエがゆっくり歩くか どちらかなんだ』
『大抵オマエが オレに合わせるだろ』
『だから 他の奴らの倍は 長く 一緒に歩けるんだぞ』


「さっきからずっと何を打ってみえるのですか?」
ちょっと興味をひかれた様子で尋ねてくる先生に、芽留はもともと見えないように打っていた携
帯を隠すような仕草をみせる。
素早く文章を打ちなおし、画面を向けた。

『プライベートを 覗き見 するんじゃねーよ ハゲ』
「ああ、すみません・・・ とは言っても覗いてはいませんが?」

先生は少し納得がいかない顔を浮かべたが、すぐに元の表情に戻り、無言で歩みを進めてゆく。
遠くから遮断機の警鐘が聞こえ始め、線路が震える音が近づいてくる。
やがて土手の上を列車が通って行く。
その窓ガラスから外へと落とされた明かりは、フェンスを通して二人の足元を照らし、互いの顔
に網目模様の影を映し出し通りすぎていった。
再び、街灯の明かりだけが二人の歩く道に落ちている。

「・・・しかし、地下街を歩き回ってクレープを食べただけでしたが・・・何も買わなくて良か
ったのですか?」
『別に 買い物 したかったワケじゃねーよ』
「はあ・・・とすると、何をしに・・・?」
『・・・・・・買い物だ』
『さっきから 細かい事ばかり ウゼーぞ!』

困惑して眉を寄せる先生に芽留は少し苛ついたように強く携帯のボタンを押す。
先生は一つ肩をすくめると、少し冷えてきたのか羽織っている外套の襟元の隙間を直した。
しばしお互いに口を開かず、ゆっくりと歩みを進めていた。
芽留は携帯の画面を眺め、チラチラと先生の顔を見上げながら躊躇していたが、やがて意を決し
たように先生の前に携帯を差し出す。

『おい ハゲ 正直に答えねーとコロス』
「・・・えっ? わ、私が何かしましたかっ?」

動揺した様子で足を止めた先生の正面に立ち、芽留はさらに携帯を突きつける。

『いるんだろ?  ・・・想ってる相手は』
先生は苦い表情を浮かべて頭を掻いた。
「・・・聞いてどうするんです?」
『だったら何で 普通に ちゃんとしてやらねーんだよ? 』
しばし瞑目し先生は口を開いた。
「・・・・・・いつかはきちんと断らなくては、とは思いますよ。・・・でもね・・・言えない
んですよねえ ―――あっ? 鼻で笑いますか?」
苦笑を浮かべて小首をかしげている芽留に、先生は短く溜め息をついた。
「そりゃあ、私だって日塔さんは好きですよ?」
芽留の表情が、苦笑のまま凍り付く。
「・・・でも、それは、愛とか恋とは違うものでしょう。」
『その言葉は 結構 傷つくぞ』
顔をそらして芽留は再び歩き出し、先生もその横に並ぶ。
536変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:15:17 ID:mRiOS/p2

『じゃ 嫌われようとか思ってんのか? いつもヒドイ事してるだろ』
「・・・まあ、半分くらいは、そうです。」
『あとの半分は何だよ?』
先生は何も答えない。しかし、考え込んでいる様子は無く、ただ黙って歩き続けていた。
その視線はどこも見ていないように感じられる。

芽留はわざと大きな溜め息をついてみせた。
『かえって期待させちまうだろーが! 普通に図々しい女に!』

先生は、夜空を仰ぎ大きく息を吸い込んだ。
吐き出した息は白い塊でその姿を見せ、あっという間に冷えた空気の中へと霧散してゆく。
「気持ちを―――受け止めきれる自信が無いのですよ。・・・私は。」
芽留は先生の顔を見上げた。
夜空を眺めるその顔にほんの一瞬、とても苦しそうな表情が浮かんだように見えた。
『じゃあ もし 本気で攻められたら どうするんだよ?』
「・・・逃げてしまうでしょうね。私は。」
『逃げ道なんか なかったら!?』
「・・・・・・・・・・・・」
『逃げ道なんて用意できるような 気の利いた女じゃねーぞ!』
先生は目を閉じて頭を振った。
「―――わかりません。」
芽留はつい興奮している自分に気がつき、慌てて目をそらした。
そのまま誤魔化すように少し歩みを速めて、先生の数歩先を歩く。

沈黙が訪れた。
通り過ぎる電車の立てる音がやけに重く大きく響く。

「・・・私なんかの何処がいいのでしょうかね。」
ぽつりと呟いた先生の言葉に、芽留の足が一瞬止まる。
腕だけ差し出して、画面を先生に見せた
『わかってたら 苦労はしねーよ バカか ハゲ! シネ!』
「そ、そうですか・・・」
先生は気まずそうに頬を掻いている。
芽留は前を向いたまま、少し歩みを緩めてその隣についた。

「―――音無さんは、友達思いですね・・・ ちょっと以外です―――と、失言でしたね! す
みません。」
冗談めかした先生の言葉だったが、芽留は胸の中が締め付けられるような痛みと、眩暈にも似た
感覚に襲われ思わず両手で胸を抱え込む。
じくじくと疼くような痛みを感じ、不規則になって行く自分の呼吸に苦しそうに顔をしかめうつむく。
「音無さん? どうしました?」
芽留の様子に気がついた先生に、画面も見ずに打った文字をつき付けた。
『なんでもねーよ』
「・・・苦しそうに見えましたが・・・ 大丈夫ですか?」
芽留は答えない。何事も無かったように前を向いて足を進める。
怪訝そうな顔のままだったが、先生も並んで続く。

芽留は横目でチラリと隣の様子を伺う。
目線の位置にあるのは先生の腰あたり。視界に入るのは歩みと共に揺れる外套に包まれた腕。
手を伸ばせばすぐ届く場所。
芽留は視線は前に向けたままそっと腕を伸ばす。
柔らかい手の平に触れた。長く揃った指を芽留の小さな手がそっと握り締める。
冷えた芽留の手に先生の温もりが広がる。
「―――! 音無・・・さん!?」
動揺の声を上げた先生に構わず、その手を掴んだまま外套のポケットへ納める。
柔らかな生地に包まれた中でさらに強く握り締めた。
『このポケット オレのだろ?』
「あ・・・・その・・・・」
537変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:16:28 ID:mRiOS/p2
持ち替えた左手で見せる携帯の画面に、先生は言葉に詰まる。
芽留は素早く携帯を戻し何やら操作すると、空いている先生の片手にグイと押しつける。
手渡されたその携帯に目をやった。
フォントを最大にした時刻表示。そして、壁紙は文字が一行だけ。

『 五分だけ くれ 』

芽留は外に出ている左手で先生の腕を包むように抱え込み、そっと顔を寄せた。
赤らめた頬を隠す様に押し付け、目を閉じ、自分の体温を分け与えるように体を寄せる。
人通りの無い線路沿いの小道。寄りそう二人の姿は別れを惜しむ恋人のように見えた。


   □ □ □ □


「いいのかい、ここで?」
「うん! 交くん迎えに行くし、そんな遅い時間でもないし、大丈夫ですって!」
車を降り運転席の窓側にまわって、奈美は命に頭を下げていた。
「ちょっとびっくりだったけど、今日は・・・ありがとう。お兄さん。」
「・・・そろそろ『お兄さん』は、ちょっと変えないかな?」
奈美は悪戯を思い付いた子供のような笑みを浮かべ、
「じゃあ・・・絶命先生!」
「くっつけて言うな!」
思わず叫んでしまった命に、奈美は吹き出した。
「ごめんなさい! ・・・やー、唯一のからかいポイントだからつい。」
「まあ、慣れているけどね。」
「ほんとー?」
命は困った表情で少し肩をすくめてみせるが、ちょっと表情を改めて口を開く。
「・・・君は、まあ思いつめるタイプじゃ無いと思うけど・・・・・・ 一人で考え込んだりし
ないようにね。潰れていってしまうから。」
「潰れる・・・って?」
「・・・大事な気持ちが――― ね?」
奈美は少しはにかむような笑みを見せてうなずいた。
「・・・うん。大丈夫ですよ。・・・なんたって、家に篭る事が出来なくて不登校に失敗してる
実績が私には・・・・・・ あ、ちょっと関係ないか?」
命は顔をそむけ、少し吹き出すように笑ってしまう。
奈美もつられて微笑んだ。
「じゃ、命先生! ありがと! またねー!」
命は軽く手を振ってみせ、車を発進させる。
奈美はそのテールランプの光が完全に見えなくなるまで、その場に佇み見送っていた。


   □ □ □ □


「奈美ねーちゃん!」
校門をくぐろうとしたところで呼び止められ、奈美は立ち止まる。
足音を立てて交が駆け寄ってきていた。
遠くから走ってきたのか、肩で息をしながら奈美の前に屈みこむ。
「交くん? どこかに出かけていたの?」
「・・・ちょっと、おじさんを、迎えに行こうと、しただけ・・・」
「あー 先生まだ帰ってないんだ?」
奈美の言葉に交は首を振ってみせる。
「見つけたんだけど・・・・・・いいよ! ほっといて。 今日、奈美ねーちゃん家だろ?」
「は? え、置いて来たの?」
「いいってば! 行こうぜ!」
交は奈美のジャケットの端を握り、強引に引っ張って歩き出す。
「ちょ、ちょっと交くん?」
つんのめりながらも、何とか転ばずに、奈美は小走りで進む交に引きずられるように校門を後にした。
538変わらないもの、変わってゆくもの:2007/12/02(日) 02:17:37 ID:mRiOS/p2


「・・・何よー? いつもは渋々みたいな顔でついて来てるのに。」
「うるせーな、いいだろ別に。」
やや不機嫌な声で、交は返事を返す。
奈美に手をひかれながら、いまは落ち付いていつも通りの速さで歩いていた。
「・・・奈美ねーちゃんは、悩みとかなさそうだよな。」
「なんだぁ! いきなり何を言うかな?!」
眉間に皺を寄せて怒る奈美に、交は、ぷいと横を向いてしまった。
「だっていつも明るいじゃねーか。悩みなんてなさそうに。」
「あのねぇ、私にだって人並みの悩みくらい・・・・・・!」
奈美の声がそこで凍り付いたように途切れた。
寒いはずの時期なのに頬に汗が一筋流れたように見える。
「そっか。普通にあるんだな。」
「普通て言うなあ! ・・・って、交くんにまで言われるか私!?」
思わずしゃがみこんでしまった奈美の肩を、交がポンと叩く。
「早く行こうぜ。今日、カレー作ってくれるって言ってたよな?」
「・・・はいはい。・・・ほんとにもう。何か先生に似てきたなー・・・」
奈美は諦めたような笑いを浮かべ、肩をすくめた。

「カレー、辛口にしてよ。」
「へ? 交くん甘口がいいんじゃ・・・」
「辛口がいい。」
「まあ・・・いいけど。辛いよ?」
「知ってるよ。」
二人の会話は、そのままカレー談義へと移って行き、寒風が強くなってきた道を並んで歩いて行った。


   □ □ □ □


芽留はひったくるようにして取った携帯を見つめていた。

困惑している先生を残し何も言わずに走り去り、先生の姿が見えない所まで来てようやく一息い
れた所だった。
芽留は自分の胸に手を当ててみる。
まだ激しく打ち付ける鼓動が伝わってくる。それが、全力疾走した理由だけでは無い事を自身で
感じ芽留は苦笑を浮かべる。
『まんざら 悪いものじゃねーな』
すこし心地よさげな顔で、その文字を打った。

そのまま携帯をいじりアドレス帳を呼び出す。
奈美のアドレスを出した。名前欄に[普通女]と書いてある。
少し震える指でボタンを押し、芽留は名前欄を書き替えた。
[日塔]と入力し、決定キーを押そうとして一瞬指がぶれる。
「・・・ぅ・・・・・・!」
意を決したように一つ呻き、キーを押しこんだ。

短く溜め息をつき、芽留は空を見上げた。
一面黒い雲に覆われ、月明かりさえ落ちる隙間もないような夜空は、今にも泣き出しそうにどん
よりとした姿を漂わせている。
『泣きたいのはこっちだぜ』
夜空に毒づくように画面に文字を入れた。

雪でも降りそうな寒い夜。
それでも、空は落ちてくる事もなく、ただ暗く重い幕となり広がり続けているように見えた。



539305:2007/12/02(日) 02:24:33 ID:mRiOS/p2
おそまつでした。

長々と、読みにくい文・・・失礼しました。
読んで下さったかた、ありがとうございます。

スレの容量、食い潰しかけた・・・かな?
430氏の小ネタを圧迫してなければいいのですが・・・

では、また。失礼します。
540名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 09:35:09 ID:CfpPOW3l
じゃあさっそく。
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part12【改蔵】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1196555513/

>>539長編乙!相変わらず芽留がいいな
541430:2007/12/02(日) 19:03:04 ID:cIfGAfZQ
おお、やはり週末で埋まりましたか。

>>539
305さんGJです!命兄さん大好きなのでこういう話は堪りません。
そして、芽留と奈美と先生の関係がすごくいい…切ない(ノ´Д`)・゚・
何か余計なこと書いたために、お気を使わせてしまってすいませんでした。

>>540
素早いスレ立て乙です!ありがとうございます!

えーと、そうしましたら埋め小ネタを投下させていただきます。
命兄さんと看護師のお話…以前書いたSSとつながっているよないないよな。
あ、エロなしです。
542糸 色命の消沈 1/4:2007/12/02(日) 19:03:57 ID:cIfGAfZQ
その日、望は、可符香と都内のレストランで食事をしていた。

と、奥の方で何やら女性のわめき声とともに、バシャッという水音がした。
驚いて顔を上げた望達の横を、憤怒の表情をした女が通り過ぎて行く。
望と可符香は顔を見合わせると、女性のいたテーブルの方向を振り返った。
すると、望の目に映ったのは、自分とよく似た顔の青年。
「命兄さん…。」
命が、むすっとした顔で、髪からしたたる水をナプキンで拭いていた。

「いったい、どうしたんですか、兄さん。」
食事もそこそこに、望達は命と共にレストランを出た。
命は、まだハンカチでシャツを押さえている。
「ワインじゃなくて助かったな…あの女、それくらいの良識はあったらしい。」
ぶつぶつ言っている兄に、望はあきれた目を向けた。
「何をやって、食事の最中に水浴びをする羽目になったんですか。」
命は、望の目を見ずに答えた。
「別に…単に、会うのは今日で終わりだって話をしただけなんだがな。」

望は眉をひそめた。
命は、自分なんかよりも余程女性の扱いに長けている。
不用意に、そんな女性を逆上をさせるような発言をするとは、らしくない。
先ほどから、命が自分と目を合わせようとしないことも気になった。

と、可符香が望をつんつんとつついた。
「先生、今日は私、先に帰らせてもらいますね。」
「え…、あ…じゃあ、送りますよ。」
可符香は笑った。
「やだなぁ、まだ宵の口じゃないですか、1人で大丈夫ですよ。それに…。」
と、命の方をちらりと見て、望に頷いた。
望は、じっと可符香の顔を見ると、頷き返した。
「…そうですか、そうしたら、今日は申し訳ないですが…。」

命が顔を上げて望を見た。
「な…。お前達、食事もまだ途中だろ?」
望は命の肩に手を回した。
「いいんですよ。たまには、兄弟でゆっくり飲みましょうよ、兄さん。」
そういうと、可符香に小さく手を上げて謝った。
可符香はにこっと笑って手を振ると、「じゃ。」と夜の雑踏に消えていった。
543糸 色命の消沈 2/4:2007/12/02(日) 19:04:36 ID:cIfGAfZQ
「…お前、男として、あんな状態で彼女を一人で帰しちゃダメだろう。」
命は、ずっと不機嫌そうにウィスキーをロックで飲んでいた。
結局、望は、ほとんど拉致するようにして命をバーに連れてきたのである。
「女性に頭から水をぶっかけられた人の言葉とは思えませんね。」
望は水割りのグラスを口にして笑った。
命は、むっと眉を寄せた。

2人は、しばらく黙って酒を飲んでいた。
命が、手の中のグラスを覗いて、カラカラと氷を回した。
「バーボンよりも、スコッチの方が好きなんだがな…。」
「文句を言いながら、よく飲みますね。」
「お前のボトルだからな。」
「飲み尽くしちゃったら、兄さんが新しいボトル入れてくださいね。」
望は、そういいながら兄のグラスに酒を注ぎ足した。
もう少し、酔わせた方がいいと判断したのだ。

すっかり命の目尻が赤く染まった頃、望は切り出した。
「命兄さん…いったい何があったんですか?」
「…。」
命は答えない。
命の手のグラスの中で、氷が、カランと音を立てた。
「女性をあんなに怒らせるなんて…兄さんらしくないですよ。」
命は、グラスに残っていた酒を一気にあおると、ふぅ、と息をついた。

「…彼女が…。」
「彼女?」
「うちの看護師がね…。」
ああ、と望は心の中で、糸色医院の看護師の元気な笑顔を思い浮かべた。
「実家に、帰るかもしれない…。」
「……それは、また。」
望は、唐突な会話の流れに戸惑いながら答えた。

「先日、彼女のご両親が、うちの医院に来てね…。
 実家も、医者だったんだな…彼女を、返して欲しいって言って来た。」
「返して欲しいって…物じゃあるまいし。」
「まあ、そうだけどな…親としては、自分の医院で娘が看護師やってくれれば
 それ以上の喜びはないだろうからな。」
こんな流行らない医院で腐らせるよりはな、と命は自嘲気味に呟いた。
544糸 色命の消沈 3/4:2007/12/02(日) 19:05:28 ID:cIfGAfZQ
「で、それが、どうやったら…。」
さっきの女性に対する態度につながるんだ、と問いかけようとして、
望はふと口をつぐみ、兄を見た。

命は、自分で自分のグラスに酒を注ぐと、それを目の前に掲げた。
その横顔は今にも泣き出しそうで、望は兄のそんな姿を見たのは初めてだった。

「命兄さん、あなた、もしかして…。」
「…でも、困るんだよな、彼女がいなくなると。」
命は、酒を飲みながら、望の言葉を聞いていないかのように呟いた。
「薬の置き場所だって私は知らないし、机を片付けてくれる人も必要だし…。」
「……そういう、問題なんですか?」
望は、静かに尋ねた。

命は、再びグラスを眺めて黙り込んだ。
望はそっとため息をついた。

―――この人は……あれだけ何でもできるくせに、
   なんで、こう、肝心なところで不器用なんでしょうね…。

「、ミルク、ティー、が…。」
「え、なんです?」
命の小さな呟きに、望は顔を向けた。
しかし、命は、すでにカウンターに突っ伏し、寝息を立てていた。
「まったく…手のかかる兄ですね…。」

―――この分だと、今日のことは覚えてないかもしれませんね…。
望は苦笑すると、会計のためにカウンターの中に声をかけた。


翌日。
命の様子が気になって、望は学校の帰りに糸色医院に立ち寄った。
彼を出迎えたのは、受付にいた、件の看護師の明るい笑顔。
「あら、こんにちは!珍しいですね!」
望は、彼女の顔を見て、一瞬ためらったが、尋ねることにした。
「…実家に帰られるかもしれない、とお聞きしましたが…。」
545糸 色命の消沈 4/4:2007/12/02(日) 19:06:42 ID:cIfGAfZQ
看護師は赤い顔をして手を口に当てた。
「やだ、弟さんにまで話が行ってるんですか。帰りませんよ、実家になんか。」
「…え?」
望は、驚いた顔で看護師を見た。

「うちは、私以外にも姉も妹も看護師やってるんですから、
 わざわざ私が帰る必要なんかないんです。
 うちの親の言うことなんか、うっちゃっておいてくださいって、
 今朝、命先生にも言ったところなんですよ。」
看護師はころころと笑った。

だいたい、と腕組みをして看護師が続ける。
「私がいなかったら、命先生、薬の置き場所1つ分からないだろうし、
 それに、いつも飲んでるミルクティーだって…。」
望は、顔を上げた。
昨日、兄が沈没する前に呟いた言葉。

看護師は、望の問いかけるような視線に、はっとしたような顔をすると、
次の瞬間、真っ赤になった。
「み、命先生だったら診療室ですよ!今なら患者さんいませんから!」
いつもいないんじゃないか、という突っ込みは胸の中にしまって、
望は首を振った。
「いや、いいです、ちょっと近くまで来たから立ち寄っただけなので。」
「そ、そうですか…。」

そのとき、診療室から、地獄の底から響くような声が聞こえてきた。
「…お〜〜い…。すまないが、氷の替えを持ってきてくれ〜…。」
「はーい。」
看護師は元気に返事をすると、望に向かって顔をしかめた。
「命先生、今日、ひどい二日酔いなんですよ。全く何やってるんだか。」
ぷりぷりと給湯コーナーに向かう看護師の後姿を見ながら、望は微笑んだ。
そして、そっと糸色医院の扉を押して医院を後にすると、心の中で呟いた。

―――大丈夫、これからは多分、兄さんが二日酔いになることはありませんよ…。

「もう、先生ったら、もう少し医者としての自覚を持ってくださいね!!」
望の背後では、だらしない院長を叱る看護師の、明るい声が響いていた。
546430:2007/12/02(日) 19:11:08 ID:cIfGAfZQ
えーお付き合いいただきどうもありがとうございました。
原作見ると、先生→命兄さんの口調はタメ語なんですかね…?
でも、タメ語にすると、先生って分からなくなるのでorz

そして、先ほど書き損ねましたが、
>>523
なんと!!!
おおおおおお久しぶりです…ネタに使ってしまってすいません!!
新作投下、禊して着替えて、正座待機しております!!!
547埋め小ネタ『毛布サイコー』:2007/12/03(月) 18:29:17 ID:wdwUqhSx
「あれ?先生、どうしたの?」

霧がいつも通り夕食を作りに宿直室へ入ると、
望は夏だというのに寒そうに震えていた。

「ああ、小森さん。実はエアコンが壊れてしまって強しか入らなくなったんですよ」
「そういえばちょっと寒いね」

後ろ手で扉を閉める霧。

「ちょっとどころじゃありませんよ!この寒さでよく…」

ぴたり、と停止する望。

(待てよ…)
「…?」

そして疑問符を浮かべつつも食事を作るために台所へ向かう霧の体を凝視した。

(毛布…ハッ!)
「それです!」

いきなり立ち上がり、人差し指で霧の体をビシッと指差す。

「…?」

驚いて立ち止まり振り返る霧。

「小森さんのように毛布を被って体温を調整すればいいんですよ!」





「あの…先生?」
「どうしました?」
「…どうして私の毛布に…?」

霧と望は同じ毛布の中で体を密着させていた。

「まあまあ、いいじゃないですか。このほうが温かいですし」
「…そういう問題?」
「なんなら、もっと温かくなりますか?」
「え?ちょっ…」

「ん…はあっ…やぁん」
548埋め小ネタ『押入れサイコー』:2007/12/03(月) 18:32:16 ID:wdwUqhSx
「じゃあ、今お客様用のお布団敷くね。」
「家のですけどね」

押入れで冬眠したい、という望に布団を敷く霧。

「さて、では冬眠しますか」

ぱたり、と押入れの扉を閉ざす。

「む…意外と狭いですね…」
「そうだね…」
「少しくっつきますか」
「え…?」
「ふむ…まだ狭いですねぇ…もう少しくっつきますか」
「せ、先生…?」
「一つになったほうが楽でしょうか」
「え?ちょっ…」

「ん…はあっ…やぁん」






エロシーン?
ご想像にお任せします
549名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 21:10:26 ID:P4szRLvg
>>548
そこはかとなくエローww

えーと、埋め小ネタ投下します。
なんちゃってスリラーwな感じです。
では、スルー推奨でお願いします。
550埋め小ネタ:2007/12/03(月) 21:11:40 ID:P4szRLvg
激しくドアを叩く音が続けざまに聞こえる。
それはもはや、叩くなどという生易しい物ではなく、はっきりとした破壊の意思を持つ激しい音
だった。
小屋の中にあった、ありったけのテーブルやイスで押さえ込んではいるが、木製のドアその物が
破られれば、それもさしたる意味は無くなるだろう。

二人は懐中電灯の照らす薄明かりの中、焦りの表情を顔に張り付かせ脱出口を探していた。

「木津さん! 窓はどうですか!?」
先生の問いに窓を調べていた千里は首を振った。
「駄目! ちょっと位置が高いし、人がくぐれない事も無いけど・・・・・・・・手間取ったら
危ないです!」

戸棚を空けて中を調べていた先生は、手当たり次第に中の物を引っ張り出しながら小さく唸った

中から出てくる物といえば、錆び付いた工具や、ラジオ、黄ばんだ書類や、細かい雑貨など、ほ
とんどガラクタとしか言えない代物ばかりで、武器になりそうな物すら見つからない。

先生はもう一度室内を見回し、状況を確認する。

「・・・窓から出るのは危険。・・・出口はドアが一つのみ。・・・武器になる物は無し。・・
・助けを呼ぶあても手段も無い。・・・・・・ドアもそう長くは持たない。」
自身を落ち着かせるように唱える言葉に、千里が口を開いた。
「逃げるには・・・そのドアを通るしかなさそうですね。」
「それはそうですが、向こう側には・・・・・・」
先生は乾いた声で答え、ドアを見る。
まだ破られてはいないものの、容赦の無い破壊音を聞く限りそれも時間の問題だろう。

「・・・こうしたら、どう?」
千里は幾分震える声で言い、散らばったガラクタを見ていた。


ドアの中心に亀裂が入り―――それをきっかけに、文字通り風穴が開きドアの木材は砕かれて行
く。
その向こうから小柄な影がゆっくりと部屋に足を踏み入れてきた。
手に握るバットでバリケードを払いのけながら、鋭いその双眸が部屋の隅で寄り添う二人を捕ら
えた。
そして、先生の手に握る細いワイヤーに気が付き、訝しげに目を細める。
手が開かれ、ワイヤーが滑るように中に舞い、次の瞬間、重い音と共に真夜の頭頂部に衝撃が走
った。
金属音と工具などを散らばしながら、工具箱は真夜の足元に落ちる。
噴き出した赤い物が額を伝い、その顔に幾本もの筋となり流れ落ち―――真夜は、二人の姿を赤
く染まった視界に捉えたまま、ゆっくりとうつ伏せに倒れこんだ。

「・・・いまのうちですね。」
真夜が動かなくなった事を確かめ、先生は千里の手を引いてバリケードの残骸に、埋もれるよう
に横たわったその体を乗り越えて外に出る。


551埋め小ネタ:2007/12/03(月) 21:13:43 ID:P4szRLvg

空はようやく白みががっていた。
ひんやりと湿った空気と、少し霧ががったダムの湖面を横目に二人は車に乗り込んだ。

「先生、全然寝てないでしょう? 運転できますか?」
千里の問いに先生は苦笑を浮かべた。
「・・・そうですが、とにかく安全な場所まで行き着くまでですから。・・・・・・じゃ、行き
ますよ。」
エンジンがかかり、ヘッドライトが伸び、前方の薄闇を払い出す。
低い唸りとともに、テールランプの赤い光が遠ざかっていった。



ダムの側面を走る細い道を、車は慎重に下っていた。
千里はようやく緊張が解けたのか、うつらうつらと始めており、先生は少し笑うとエアコンのス
イッチを入れようと手を伸ばし―――

ゴッ!

車の天井が鈍く軋みを上げた。
「・・・な、何!?」
その音で千里も飛び起き、先生はゴクリと喉を鳴らし、かすれた声を出す。
「・・・・・・まさか・・・・・?」

ゴン! ガッ! ドッ!

続けざまに上から聞こえるその音で、不安は確信に変わる。
「・・・せ・・・先生・・・・・・うしろ・・・・・!」
千里の声に先生はバックミラーを覗き込み、息を飲む。
後部座席の窓から、血だらけの顔のままの真夜が、逆さに覗き込んでいた。
その手に持つバットのグリップが窓に叩きつけられ窓は軋んだ音を立てた。

「木津さん・・・・・・シートベルトを外してください。」
口もきけずに硬直している千里に、先生はそっとささやいた。



何度も叩かれた窓は遂に砕け、真夜は上半身から車内に入り込んでくる。
「いきますよ!!」
目の前のカーブに向かい、ハンドルも切らずに直進すると先生はドアを開け、千里の腕を掴んで
外へと飛び出した。
地面に転がった二人が最後に見たものは、ガードレールを突き破り、湖面に向かい落ちてゆく車
の中で、その目を見開きこちらを見ている血だらけの少女の姿だった。

激しい水音―――そして沈黙。

「・・・木津さん? 怪我は?」
「大丈夫。擦り傷くらいです・・・・・」
少し足をぎこちなく引きずりながら、千里は先生に微笑んだ。
「あまり大丈夫ではないですね・・・」
先生はそう言って、千里の腕を取ると半ば強引に背負い込んだ。
「・・・だ、大丈夫です。歩けますよ。」
「こちらのほうが早いですから。」
先生はそれだけ言うと、千里をおぶって歩き出した。
552埋め小ネタ:2007/12/03(月) 21:14:15 ID:P4szRLvg

先生の背中におぶわれながら、千里はチラリと後ろを振り返る。
壊れたガードレール以外は何も見えない。
千里の唇が細く開いた。
唇の両端を引き上げ、三日月を思わせる笑みが浮かぶ。
喉の奥から、「ククッ」と低い声が漏れた。
「木津さん? 何か言いましたか?」
「いえ、なにも。」
すました声で返事が返ってきた。
2人の姿は遠ざかって行き、やがて曲がりくねった道の先に消えてゆく。



しばし後、日が完全に山裾から顔を出した頃。
大きく裂けたガードレールの下、崖の向こうから伸びた手が裂けたガード板の端を掴んだ。
手繰り寄せるように腕を縮め、自身の体を持ち上げて、真夜は雑草の生えた地面の上へと這い上
がる。
大きく息をつき、口にくわえたままだったバットが転がった。

呼吸を整えもせず、真夜はバットを手に取り杖代わりに立ち上がると、2人の去っていった道先
を睨むような視線で見据える。

ややおぼつかない足取りで一歩を踏み出し、よろめく体を引きずるようにして歩いてゆく。
そしてその姿は、濃くなり始めた霧の中へと消えていった。
553名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 21:14:48 ID:P4szRLvg
おそまつでした。
554名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 21:51:00 ID:Z6FuD+4l
背中の千理ちゃんが真夜だった、そんな結末も予想してみた霧立ち上る冬の夜更け。
555名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 01:07:24 ID:79sYOneg
実は、真っ当なのは千里ではなく真夜の方だった
とか?

しかし命兄さん連チャンで活躍してるな
エロ無しのシリアスな話が続くのも読むのも、たまには良いものだな、と
556名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 01:47:47 ID:azkhMoim
憑かれた心に巣食うきっちり妖怪から望を救うため、
千里の道をも越えて往く魔物ハンター真夜健気(ノд`)
557名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 16:51:11 ID:Xr6cWvSz
あと2キロバイトか。埋め埋め埋め埋め埋めまくって〜。
558名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 18:19:14 ID:1ylPWcs7
埋め
559名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 19:29:00 ID:kgsn19M/
千里め
560名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 19:38:56 ID:5Jny87Lk
すず様かわいいよすず様
561名無しさん@ピンキー
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