1 :
名無しさん@ピンキー:
2 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 13:24:59 ID:mbK9b03r
2ゲトー
4 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/01(木) 13:26:30 ID:H6tg+Pba
2げt
■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。
■投稿のお約束
・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません
8 :
時給650円:2007/11/01(木) 18:09:20 ID:cqE/gMUw
投下します。
がたんごとん、がたんごとん……。
電車の窓から見える街の風景はすっかり夕闇に塗り潰されている。
東京の夜空は星が見えない。
だが、そこから見える風景は暗闇ではない。
それぞれの家から漏れる蛍光灯の光やネオンサイン、イルミネーションが、まるで星のように輝き、地上を彩っている。夜空に煌く場所を失った星々が、やむなく自分たちの居場所を、そっくりそのまま大地の上に求めたような、そんな感じさえ受ける。
――とりとめも無く、真理はそう思った。
が、そんな雑想が浮かんだのも一瞬だけだ。次の瞬間には、真理自身、そんなロマンチックな想像などしていた事すら忘れた。
それほどまでに、彼女の心は、極寒の闇に包まれていた。
喜十郎・桜・春菜、そして真理の四人は、いま“兄”の実家からの、帰路の電車に揺られていた。
誰も一言も口を利かない。
同じように、この路線に乗った往路では、あれほど闘志に燃えていた彼女たちが今では、周囲を塗り潰してしまいそうな、陰鬱さに包まれていた。
真理は、ふと、自分の正面のシートに座る喜十郎を見る。
彼は、うつらうつらと舟をこいでいた。
(無理もないですわ、兄上様)
実妹に一服盛られて意識を奪われ、貯蓄分以上の精をポンプのごとく吸い上げられてしまったのだ。その疲労は、薬物の残留分を差し引いても相当のものであろう。
真理は、今度は隣の長姉を見る。
桜は、それこそ苦虫を噛み潰したような表情で、ドアにもたれ、窓の外を見ている。いや、視線こそ窓の外を向いてはいるが、彼女が何も見ていないのは、真理が一番良く知っていた。
この異常に気位が高い少女は、その身を焦がす圧倒的な屈辱を、どう処理していいか分からなくなっているに違いない。何と言っても、綾瀬桜にとっては、敗北感という感情ほど、これまでの人生で無縁だった存在は無いのだから。
――敗北感。
そう、負けたのだ、自分たちは。
あの時、可苗は三人に告白した。
彼女たちが愛して止まない“兄”を略奪し、蹂躙した、と。
これ以上はないほどの幸福感に満ちた表情で、感謝までされた。
『可苗に代わって、お兄ちゃんの身体を開発してくれて有難う』と。
愛する“兄”を取り戻さんために、意気揚揚と乗り込んだはずの“敵”の牙城。
だがそこにいた、泥棒猫のはずの女は、自分たちを敵視すらせず歯牙にもかけず、子供扱いにあしらった挙げ句、笑って“兄”を返してくれたのだ。まるで銀行から引き下ろした預金を、再び預けるように。
……そして、自分たちは、そんな彼女に何も言えず、すごすごと帰宅している。
修羅場にすらならない、圧倒的な何かの差。
その“何か”について思いを巡らせると、真理は、全身の汗が再び冷たくなるのを感じた。
生身の女性である以上、真理にも独占欲はある。
想い人を――例え、実の姉妹とはいえ六人がかりで共有しているという異常な関係も、いつかは打破し、喜十郎を自分だけの恋人にしたいとも思っている。
まあ、それを言うなら、姉妹たち全員が全員、同じ想いに身を焦がしているのは分かり切っているのだが、それでも自分が、その恋愛戦線に勝利した暁には、“恋敵”という枠を越えて、自分たちを祝福してくれるに違いないと思っていた。
また同じように、自分以外の姉妹の誰かが、“兄”の心を射止めても、真理自身、その姉(妹)を祝福できるとも。そして、そういう仲の自分たち姉妹を、密かに誇ってさえいた。
だが、あの可苗という少女は違う。
そういう甘さは持ってはいないだろう。
甘さどころか、目的達成のためなら、笑って人を後ろから刺せるドス黒さを持っている。
あの少女は、最終的に喜十郎を手中にするためなら、おそらく無理心中すら厭わないはずだ。
正直な話、活字媒体以外で、恋愛に触れた経験の無い真理には、あの可苗という少女を“敵”として意識するには、あまりに強大すぎる気がした。
「そんなに気にする必要も無いわ」
桜が、不意に口を開いた。
一瞬、真理は、その一言が誰に対する独り言なのか、分からなかった。
桜の視線は変わらず、窓の外に向けられていたからだ。しかし、そのハッキリとした口調はただの独白ではなく、確実に誰かに聞かせるためのものだった。
「気にする必要って、……何の事ですの桜ちゃん?」
桜とは反対側の真理の隣――吊り革につかまっていた春菜が口を開く。
「決まっているでしょう。可苗のことよ」
そう言いながら、彼女たちの姉は、初めて妹たちに視線を向けた。
喜十郎は眠ってはいなかった。
実際のところ、彼の全身は、言いようも無い倦怠感に包まれ、目を閉じればすぐにでも眠りに落ちてしまいそうな状態ではある。しかしハッキリ言って彼の精神状態は、のんきにイビキをかいて眠りこけるような余裕は無かった。
三人の“妹”と、可苗との会話。……あれを聞いてしまった以上、喜十郎の心中はいま、混乱の極みにあったからだ。
盗み聞きをしていたわけではない。――というのは、やはり嘘に近い。
彼らの団地の2LDKの壁は悲しいほど薄い。
居間の四畳半にいても、キッチンで大声を上げれば、そのやりとりは普通に聞き取れてしまう。
――だが、聞き取れるからといって、その気も無いのに、勝手に耳に情報が飛び込んでくるわけではない。やはり彼は彼で、キッチンから漏れ聞こえる妹たちのやりとりに、意識を向けていた事実は否定できない。
彼は、自身の現状を、決して喜んではいなかった。
無論、客観的に見れば、男としてこれほど羨むべきポジションは無いだろう。
可愛く、健気で、積極的な美少女たちと毎日毎晩やり放題なのだ。
クラスの男たちが知れば、その日のうちに全ての友人たちは敵に回るだろう。
さらに、その現状に彼が不満を抱いていると知れれば、翌日には凄惨なイジメが開始されるはずだ。
しかし、それでも喜十郎としては、今の自分の立場に抵抗を感じざるを得ない。
六人姉妹に、まるでエロマンガの肉奴隷のように扱われ、弄ばれる毎日。そして、そんな風に嬲られる自分を惨めに思いながらも、それでもなお、異常に興奮してしまう自分……。
彼とて男としての人並みの矜持くらいはある。
仮にも自分を、ブザマなM男だなどとは微塵も認めたくは無い。
しかし、現状を鑑みるに、己のうちにMの素養があるのは、やはり認めざるを得ない。
もともと親戚づきあいのある従兄妹だっただけに、義理とはいえ、いまさら“兄”と“妹”が過ちを犯すとか、そんなタブーは彼の脳中にはない。
だが、彼女たち六人との性行為は、否応も無く喜十郎自身にマゾヒストの一面を意識させる事になる。そこに抵抗を感じないほど、彼は鉄面皮ではなかった。
そして突如、彼の頭に浮かんだ一抹の不安。
(もし、それを認めてしまえば、オレを慕って止まない“妹”たちでさえ、いずれはその性癖に呆れ、オレを見捨ててしまうかも知れない……!)
今まで考えた事も無い発想。
どうして浮かんだのかも知れない“妹”たちに対する、初めての怖れ。
そう思うと、そもそも何故あの美少女たちが、こんな自分に、ここまでひたむきな愛情を向けてくれるのかさえ、分からなくなってくる。
――わからねえ。何かもう、わけが分からねえ……!
そもそも彼が可苗を恐れたのは、その内に秘めた狂気ゆえだった。
実妹が、自分に向ける熱い眼差しの意味は、養子になる前から、すでに気付いていた。
しかし喜十郎としては、別段それを気にはしていなかった。
いかに自慢の妹とはいえ、彼にはタブーを犯す気など皆無だったのだから。
そして彼女が、兄の名を連呼しながら、飼い猫を殺害している現場を目撃してから、喜十郎は気付いたつもりだった。可苗の独占欲とは、対象の抹殺すら含む完全なる“所有”である、と。
だから彼は家を出た。
それが彼女の想いである以上、この妹は、いつ自分に牙を向けるか分からない危険極まりない存在だと、骨身に染み入るような恐怖と共に、そう判断したからだ。
だが、違う。
そう、違うのだ。今ならハッキリと分かる。
可苗の声が、ハッキリと自分を犯した、と言ったのを聞いたとき、彼の心に沸いた感情は――彼自身、死ぬほど意外ではあったが――なんと歓喜であった。
そして次の瞬間、生まれてこの方感じた事の無い恐怖が、喜十郎を襲った。
――オレはまさか、可苗が好き……なのか?
今まで考えた事も無い可能性。
しかし、しかし可苗の言葉に喜びを覚えたのも、また事実なのだ。
この実妹ならば、例えどのような惨めな自分をさらしても、それでも彼を見捨てない気がする。
“妹”たちには何故か浮かんだ疑惑が、この実妹には不思議なほど湧かなかった。
そんな考えが、頭の片隅をよぎったという事実が、喜十郎の精神を混乱の極致に追いやるのだ。
理由さえ分からない愛を自分に向ける義妹たちを疑い、自分にクスリを飲ませて弄んだ実妹の愛に、根拠すらないはずの真実を感じた。
その事実は、例え精神的ではあっても、本家の“妹”たちを裏切ったような気分にさせる。
寝たふりをするしかなかった。
喜十郎としては、眼前の“妹”たちにどんな顔をすればいいのか、もう分からなかったのだから。
「アドヴァンテージは、まだこっちにあるわ」
桜は、噛んで含めるような口調で妹たちに告げると、そのまま喜十郎を見下ろした。
「可苗はお兄様の実の妹よ。つまり、どうあがいても、法的にお兄様と結ばれる事はありえないわ」
確かにそうだ。
だが真理には、可苗が、少なくともそんな戸籍や法律上の関係にこだわっているとは思えなかった。
「そして何より、お兄様自身が可苗の存在を恐れているわ。近親相姦のタブーとかだけじゃなく、可苗の、あの狂った一面をね。――それはアンタたちも分かってるわよね?」
そう、そこまでは真理も理解できる。
だからこそ問題は大きいのだ。
案の定、春菜も口を開いた。
「確かに……可苗ちゃんにそういう狂的なものがあるのは、ワタクシも認めますわ。でも桜ちゃん、そういう可苗ちゃんだからこそ、兄君さまの意思に関わらず何をしでかすかは予想がつかないのではありませんか?」
口こそ開かないが、それは真理も同意見だ。
可苗の心中には、恐らく近親姦の禁忌は無い。また、その狂的な情愛は、実兄を無理やりさらって監禁する程度の行動に、全く躊躇いを覚えないだろう。
さらに、抵抗する兄に薬物を投与し、苦痛と快感で彼の精神を支配し、最終的に自分を愛するように仕向ける事など、やはり彼女にとっては雑作も無いはずだ。
「そんな可苗ちゃんでなければ、兄君さまをワタクシたちに、笑って返却したりはしないはずですわ」
可苗は、いわばタブーの向こう側に居る存在なのだ。
タブー無き者を敵に回す事は出来ない。
こっちが常識や法律、人情という――いわば、世間一般に生きる者として当然のタブーに縛られている以上、勝ち目などあるわけが無いからだ。
「――そんなこと、もう関係ないわ……!!」
唇を噛みしめながら桜が呟く。
「可苗のやつに後悔させてやる。私たちに、お兄様を返したことをね……!」
「桜ちゃん……」
「負けたくない……。例え誰に負けても、あの子にだけは負けたくない……!! もし、私たちの覚悟からして可苗に負けてるっていうなら、……私は、あの子と同じところに並んで見せるだけよ……!!」
「……!」
「桜ちゃん……あなた、自分が何を言ってるか、分かってるの……!?」
絶句した春菜に変わり、真理がおそるおそる口を開く。
「分かってるわ」
そう言いながら妹たちを振り返った桜の眼差しには、もはや一片の迷いも無かった。
「可苗がタブーの向こう側にいるっていうなら、私たちもそっちに行くしかない。そう言ってるのよ」
吐き捨てるように言うと、桜はそのまま、兄の耳元に屈み込み、囁いた。
「さあ、お兄様。おねんねのお時間は終わりよ。次の駅についたら、みんなでおトイレに行きましょうね。――可苗なんかに勝手にミルクを捧げたお仕置きを受けるのよ」
びくりっ!!
うつらうつらと、舟をこいでいた喜十郎の上半身が、まるで凍ったように静止した。
――やっぱり、寝たフリだったのね……。
苦笑いが桜の口元にはしる。
武道をたしなむ春菜でさえ騙された“兄”の寝息と気配。
だが、それでも自分には……この桜には通用しない。
こと“兄”に関する限り、自分の勘の冴えは絶対だ。
「ねえお兄様……、これからはもう、今までみたいな甘い生活は送れないものと思って頂戴。私たちは早速今晩から、お兄様を“支配”にかかるわ。私たちナシでは、一日たりとも生きていけないお兄様にしてあげる」
「今日まで私たちは、お兄様の“恋人”になるための努力をしてきたわ。でも、そんなヌルいことじゃ、お兄様は完全に私たちの方を向いてくれないって分かったのよ」
「勘違いしちゃダメよ。これは全部可苗のせいなの。お兄様が、可苗のことなんか忘れちゃうくらい私たちに夢中になったら、そこで初めてお兄様を解放してあげる」
「でもそれまでは、そうなるまでは――お兄様は私たちの“奴隷”になるの。分かった?」
――どれい。
その瞬間、喜十郎は激しい自己嫌悪に苛まれながらも、思わず射精しそうなほど興奮している自分自身を誤魔化しきれなかった……。
(オレはやっぱり……ヘンタイなのだろうか……!?)
(ヘンタイだとバレたら、こいつらはやっぱりオレを見捨てるのだろうか……!?)
「さあ、そろそろ駅に着くわ。覚悟はいい? お・に・い・さ・ま?」
15 :
時給650円:2007/11/01(木) 18:26:03 ID:cqE/gMUw
今回はここまで。
お疲れ様です
お兄さん、枯れ果てて逝ってしまいそうですねw
>>15 GJ!!!!
お兄ちゃんはM奴隷wwww ある種、お兄ちゃんも可苗に依存してたのかな・・・。
桜も怖いが、可苗は桜の2枚も3枚も上手のような気がする・・・w
続きが楽しみでwktkが止まりません。
兄ちゃん逃げてーーー!!!!www
なんていうか兄ちゃんは俺に任せてもう変われよこの野郎!!!!!!!!!!!!
前スレ816 GJ!! これからもヤンデレキャラが増えていく予感がする展開ですね。
キモウト、キモ姉、キモ母、キモ可愛い弟 ……兄父はないな。
そこで考えるんだ
兄がニューハーフになったキモおねにぃさまと
そういうの嫌いじゃないぜ
キモ兄だと思っていた兄が、妹にキモいと言われ彼女を作った。
実の所、兄は家族思いなだけで、妹のことを性的対象とは見てなかったわけで。
肩すかしを食らった妹は反動でキモウトに…。と言うのを考えたことがなきにしもあらず。
でもここならキモ兄妹のひたすら甘いSS書いてもいいはずなんだよなー。
26 :
時給650円:2007/11/02(金) 22:20:08 ID:PyBj44dT
投下します。
「隠し子ぉっ!?」
「ええ。馬鹿にした話だけどね」
綾瀬本家に帰った喜十郎たちを待っていた義母・道子の話は、土産話というには余りに衝撃的だった。
「愛人に生ませた子でさえ、女の子だと言うのだから、女系家族ここに極まれりだわ」
皮肉に満ちた舌鋒はますます冴え渡り、その瞳の毒はさらに禍々しい光を帯びる。
彼女の怒りが相当なものである事は、もはや疑いは無かった。
(まいりましたわ……これは)
春菜は、そんな母の様子を絶望のこもった眼差しで見つめた。
ハッキリ言って――他の姉妹は知らず――彼女は父親の和彦を尊敬している。
あの、見るからに謹厳実直、温厚篤実の風貌を持つ父が、永年にわたって母を騙し、外に愛人を囲っていたなどと、とても容易には信じられない。例えそれが母の言葉であったとしてもだ。
何かの間違いではないのか。いや、間違いであって欲しい。……春菜は心底そう思う。
それに、問題はそこだけじゃない。
確かに、春菜としても、父のことを信じたいし、それ以上に浮気された母を哀れにも思う。だが、今の彼女……いや、彼女たちにとって、いま現在、夫婦喧嘩が長引くようだと、別の理由で非常に困るのだ。
そのまま視線をずらし、春菜は、そっと喜十郎に目をやる。
他の姉妹たちと同じく、あまりに意外な話の成り行きに、ぽかんとしているようだ。
だが、彼のそのうなじに残る赤い痣が目に入った瞬間、彼女の頬が思わず朱に染まった。
――ワタクシがつけたキスマーク……。
そう、その内出血の痕こそ、帰路のさなか、とある駅の女子トイレで、春菜が桜や真理とともに彼につけた、隷属の誓いの接吻の痕なのだ。
そして、その誓いを空洞化させないためにはどうしても、これまで以上の苛烈な調教を喜十郎に施す必要がある。そのためには、やはり母にこれ以上、我が家に居残られては迷惑なのだ。だから、どうしても母の怒りを解く必要がある。
それが、年長組三人がその後、あらためて出した結論だった。
しかし、一瞥したところ、母の怒りは容易に収まる気配は無い。
収まるどころか、二度と夫のところへなど帰らぬ、と言い出しかねない勢いだ。
春菜は、なまじ道子の言い分が理解できるだけに、いよいよ返す言葉が浮かばなかった。
考えてみれば面妖な話だ。
家庭に母親がいるのは世間的には常識。常識というよりは当然。当然というよりは必然。
それを“男”とのコミュニケーションに不都合だからといって、保護者の存在を迷惑がるなど聞いたことも無い。いや、普通にあっていい話ではない。
春菜は、そんな目的で親の存在を邪魔者扱いしてしまう自分たちの、どうしようもない罪深さを思い返すと、まともに顔を上げられないほどの羞恥心が、その身を焦がすのだ。
母の話によると、父・和彦の浮気は、かなり以前からのものらしく、少なくとも隠し子の年齢から見て、およそ十五年以上も、その愛人と交際は続いていたようだ。
コトの露見の発端は、先週イキナリ和彦の娘を名乗る二人の少女が、博多支社の社宅を訪ねてきたことによる。
凛子(りんこ)と麻緒(まお)という二人が言うところによると、
先日、母――つまりは父の愛人なのだが――が事故で死んだ。ついては葬儀の段取りと、今後の自分たちの身の振り方について相談したい。是非とも“父”としての誠意をみせてほしい。
……との口上だったそうだ。
道子が激怒してこっちに帰ってきたのも、まあ無理からぬ話だろう。
それどころか、母の気位を考えれば、その場で父の身に血の雨が降っても決して不思議ではない。
いきなり十五年来の裏切りを聞かされて、しかも眼前には隠し子まで出現し、怒りをぶつけようにも、当の愛人は事故で死んだと聞かされては、その娘たちを罵倒する事さえ出来ない。
まあ、不幸中の幸いと言っては何だが、彼女たちの言う誠意――要求とは、金銭ではないらしい。
母が言うには、父の愛人はかなり名のある投資家だったらしく、在宅の株券売買でかなりの財を稼いでいたそうで、父の稼ぎが彼女たちの生活費に化していた事実はないそうだ。
「下手をすれば、こんな建売住宅なんかより、よっぽどいい家に住んでるそうよ」
その事実すら母には気に入らないらしく、歪んだ笑みを浮かべて言う。そして当然のことながら、彼女のその目は全く笑っていない。
春菜は、そんな母の言葉を、焦れるような気分で聞いていた。
もう、間違いない。
このままでは、母を追い出すのは不可能だ。
せっかく喜十郎が自分たちに服従を誓ってくれたというのに。
春菜の中に、ふと、こんな事態を差し招いた父への怒りに似た感情が、初めて湧いた。
「で、いま義父さんはどうしてるんですか?」
口を開いたのは喜十郎だった。
道子は、まるで吐き捨てるように、そんなこと知らないわ、と声を荒げた。
――が、そのまま喜十郎の冷静な視線にさらされ、溜め息をつくと、
「と、言いたいけど……今頃は、その浮気相手のお弔いに東京に帰ってきてるわ」
二人の隠し子も連れてね。と、毒に満ちた口調で続けた。
「……」
喜十郎も、口をつぐんで黙り込む。
だがその瞳には、ヒステリックに怒り狂う義母とは違う、思慮深い光が灯っていた。
「――で、義母(かあ)さんたちとしては、今後、その二人をいかが扱うつもりですか?」
「は?」
道子の表情が一瞬ぽかんとなる。
が、次の瞬間、これまで以上に顔を歪ませ、怒りに言葉を震わせる。
「そんなこと、そんなこと、私の知った事ですかっ!! あの隠し子たちと私の間には、全く何の関係も無いのですよっ!!」
「それはおかしいでしょう」
そう言って顔を上げた喜十郎の声音は、むしろ高校生には聞こえないほどの冷静さが満ちていた。
「その隠し子さん二人と義母さんの間には、確かに血のつながりも何もありません。でも、彼女たちが義父(とう)さんの娘であり、あなたが義父さんの妻である限り、無関係だなどとは言えないはずでしょう――それとも」
このまま、義父さんと離婚されてしまうおつもりですか。
そう尋ねた喜十郎は、普段見せている朗らかな空気が一変してしまっている。
責める口調でもなじる口調でもない。彼としては、淡々と常識的な意見を述べているに過ぎない。
でも、たったそれだけのやりとりで、あれだけ騒いでいた道子が何も言えなくなってしまっていた。
(出た……お兄様の突然変身!)
“妹”たちは、胸躍らせるような気持ちで、喜十郎の変貌を見守る。
道子は未だ見たことは無いようだが、これこそ彼の真髄――滅多に見せない『頼れる“兄”モード』の綾瀬喜十郎の顔だった。
「私に……どうしろって言うの……?」
喜十郎のまっすぐな眼差しに、道子が拗ねたように目をそらす。
「オレの友人の兄貴が弁護士をやってます。その人自身は刑事事件の専門ですが、頼めば、民事司法専門の方を紹介してもらう事もできます。いずれにせよ――」
スジは通さねばならないでしょう。喜十郎はそう言うと、席を立ち、電話の受話器を取った。
「とりあえず、義父さんと連絡を取ります。愛人さんの葬儀はもう終わっていますか?」
「……どうするつもり?」
「知れたこと」
そう言うと、プッシュホンの短縮ダイヤルを押し、和彦の携帯に回線をつなぐ。
「一度、その隠し子さんを交えて、きちんとした話し合いの場を持つべきでしょう」
「まさか……その話し合いを……今からやれ、と……?」
道子の顔色が変わる。が、喜十郎はそんな彼女をなだめるように言う。
「まさか」
もはや会話上では、どっちが年長者か分からなくなっている。
「でも、スケジュールの調整は早目にやっておいた方がいいでしょう。二人の都合も、義父さんの都合もあるでしょうから。ましてや義父さんはサラリーマンですからね。……あれ、なかなか繋がらないな?」
受話器からは、そのまま電話のコール音が、薄く聞こえて来る。
――が、やがて、春菜が気付いた。
「あれ、兄君さま、何か玄関先から着メロが聞こえて参りません?」
「そうですわ……でも、兄上様これって……?」
「おとうたまのけーたい?」
春菜に続いて、真理と比奈が気付いたその時、
がちゃがちゃ、――かちん。
という、ロックが外れる音が聞こえ、
「――た、ただいま……」
不安げに帰宅を告げる、和彦の声が聞こえてきた。
「あっ、あなたっ、……一体どのツラ下げて……!!」
その途端、怒りのうめき声をあげつつ、玄関先に疾走する道子。
しかし、
「おじゃましまぁす」
「……」
「ほらっ麻緒っ! 人見知りもいいけど、挨拶くらいちゃんとしなさいっ。こういうのは気合なんだからっ!」
浮気亭主の声に続いて聞こえてきたのは、二人の少女たちのひそひそ声だった。
「まっ、まさか……!」
そこに居合わせた全員が玄関先に急ぎ、そこに展開された、思いっきり予想通りの絵に愕然とした。
「こっちが妹の麻緒、で、こっちが姉の凛子。――今日から一緒に暮らすんだから、まあ、その、仲良くしてやってくれ」
「いっしょにくらすぅっ!?」
期せずして“妹”たち全員が、ハモってしまう。
「うん、まあ……そういうことだ。なはははは……」
脱力気味の病んだ笑いを、和彦が浮かべる。
喜十郎が、実の妹にお尻の処女を奪われた日、綾瀬家にまた二人――妹が増えた。
31 :
時給650円:2007/11/02(金) 22:38:08 ID:PyBj44dT
今回はここまでです。
ここでまた増えるとかwwwwおkwwwww
GJとしか言いようがない・・・!
GJ!
この妹たちが目覚めたら兄ちゃんが本当に死んでしまうな
GJ。しかしなぜだろうか。
数レス前までBGMがドナドナだったのに、いつの間にやらフルハウスのオープニングになっとる。
どんだけ増えるんだwww
もう誰が誰だか分からない
>35
問題なかろう。どいつもこいつもキモウトなのだからな
>>31 GJ!!お兄ちゃんはこの先きのこれるのか?
まさか12人になるまで増やす気か?
ちょwwwwwww
ここで新キャラとかww
その発想はなかったわ・・・でも大丈夫か・・?
戦わなければ生き残れない(喜十郎が)
GJ!!
てか、意外と保管庫の編集ってだりーな…おれには耐えられん。
確かに新キャラは驚いたわ
いや、超期待、マジで
>>41 編集乙
wiki保管庫の編集だけど、適当に編集基準みたいなの書いておきます
俺wiki保管庫立ち上げ人じゃないんだが、しばらく暇なときに編集するんで
作品を収録するにしても、整理の規則性は必要だと思うしね・・・
43 :
41:2007/11/03(土) 10:17:27 ID:I6U/5a4c
>>41 乙
なにかミスした場合はここに書いてくれれば対応します。
喜十郎が一人暮らししたら妹達はどうなるかな?
部屋中に監視カメラを仕込むんじゃないの。
数年前に読んだエロマンガでメイドの母・姉・妹を一発も射精せずにイカせたら一人暮らしを認めるってのがあったな
オチは一人暮らしは認めるけどアパートの隣に引越してくるってやつだった
このスレは初めてきたが良作が多いな
続き投下します。
公園で冬華ちゃんと別れて、家に帰った。
…ふらふらする。
昨日から体力使いすぎだよな…
自業自得だけど。
「ただいま…」
理緒姉は、どんな反応をするんだろう。昨日の行為から会話をしてない。
いきなり追い出されるかな?
それとも散々に文句を言われるだろうか?
「お帰り。遅かったね」
…なんでそんなに普通の対応なんだ?
「ちょっと途中で知り合いに会って話をしてたから」
「ふーん…」
「…なぁ、昨日の事、覚えてる…よな?」
「修くんに無理矢理犯されちゃったこと?」
「覚えてるなら…なんでこんなに普通の会話ができるんだよ!俺は理緒姉を犯したんだ!普通俺の顔なんか見たくもないと思うだろ!」
「お姉ちゃんは普通じゃないから」
俺はその言葉を聞いたとき、何故かゾクリとした。
理緒姉の表情はわずかに微笑んで、こちらをまっすぐに見ていた。
いつもの笑顔とは違う、明らかに異質な表情。
そこには、感じた事の無い、表情とは全く違う何かを感じさせた。
「理緒…姉?」
「どうしたの?昨日みたいにしても良いんだよ?」
何も言えなかった。
「こうやって抱いても…良いんだよ?」
腕を後ろに回される。
逃げられない…
抱き付きながら私は修くんの匂いをかぐ。
汗の匂いに混じって、女の匂いと、薄くではあるが精液の匂い。
…この匂いと、帰り道に居る知り合いって事は…
羽居、冬華…!
単なる子供だと思って油断していた…!
まさかあの子がここまで早く行動するとは。
おそらくきっかけは修くんから作ったのでしょうけど。
全く…修くんてロリコン?
それでも私は気にしないけど、まさか羽居冬華に手を出すとは。
犯罪じゃない。
関係無い思考はここまでにして、対策を取らないとね。
「修くん、羽居冬華ちゃんとはどの位仲が良いの?」
「なんだよいきなり…別にただの友達位じゃないか?」
「お姉ちゃんあの子に嫌われてるみたいだから、仲良くなりたいなって、ね?」
「それは良いと思うけど…だからなんなんだ?」
「今度の休み、羽居冬華ちゃんを家に招待しなさい。もちろん、お泊まりでね?」
「はぁ?泊まりって、あの子まだ小学生だぞ?無理じゃないか?」
「良いから誘ってみなさい。あの子と仲良くなるには一日じゃ足りないだろうから」
「…分かったよ。一応誘ってみる。断られたら諦めてくれよ」
修くんが誘えば、あの子は必ず来るでしょうね…
「この話はこれでおしまい。それより修くん、昨日みたいなこと、しないの?」
「っ!昨日は…なぜか苛々して、それで…」
「それでお姉ちゃんで発散しちゃった訳だ」
「その…悪かった。理緒姉、ごめん」
「別に気にして無いよ。その代わり、お姉ちゃんが苛々した時は修くんで発散しても良いよね?」
「……」
「その沈黙は肯定って事で良いのかな?」
「…性的な事はなるべく勘弁して下さい」
「え〜…修くんばっかりずるいよぅ。お姉ちゃんだってこう、ムラムラする時が有るんだよ?」
「それを俺で発散されても…」
「むぅ〜…まぁ、なるべく我慢するよ。なるべく、ね」
「最後の微妙な区切りはなんなんだ…」
翌日、俺はまた公園に来ている。
もちろん、冬華ちゃんを誘う為だ。
「冬華ちゃん」
「あっ、修お兄ちゃん!また会いに来てくれたの?」
「まぁ、ね。ちょっと用事が有って」
「用事?用事ってなぁに?」
「理緒姉が、家に泊まりに来ないかって。冬華ちゃんと仲良くなりたんだそうだ」
「修お兄ちゃんちに?う〜ん…」
「駄目なら駄目でいいんだけど…」
「ううん、冬華、修お兄ちゃんちに行く!」
「分かった、じゃ、土曜日にね」
「分かった。修お兄ちゃん、またね」
まさかOKを貰えるとは思って無かった。
羽居春華はどう思うのだろうか、とも考えてみたが、あいつは意外にすんなりと了承しそうな気がした。
家に帰って理緒姉に大丈夫だという旨を伝える。
「じゃあ今度の土曜日は思いっきりおいしい料理を作ってね?」
「そこの問題なのか?まぁ俺にできるだけの物は作ってみるけど」
「楽しみだね〜冬華ちゃん、どんな子なんだろうなぁ…」
「それより冬華ちゃんをどこで寝かせるんだ?俺の部屋はまずいだろ?」
「お姉ちゃんの部屋で一緒に寝れば良いでしょ?」
「大丈夫か?今の所嫌われてるみたいだぜ?」
「大丈夫だよ。お姉ちゃんに任せておきなさい」
「…分かったよ。その辺は任せる」
本当に大丈夫かは心配な所だけど、理緒姉なら本当になんとかしてしまう気がする。そういえば何時に来るか聞いてなかったな…
明日は早めに起きておこう。
小学生だと予想外の時間に来たりするからなぁ…
さっさと寝ておこう。
…今、何時だ?そう思って時計を見る。
○月○日(土) AM6:30
…いくらなんでもおかしいだろ?
そう思いながらも玄関を開ける。
「おはよう、修お兄ちゃん…」
「…おはよう、冬華ちゃん」
「あの、やっぱり早すぎたかな…?」
「ちょっとね…6時に来るとは思ってなかったよ」
「あ、あの、ごめんなさい…冬華、お泊まりなんて初めてで…興奮しちゃって…」
「まぁ、良いよ。上がって」
「おじゃまします」
「は〜い、いらっしゃい」
「理緒姉?もう起きてたのか?」
「まぁね〜。お姉ちゃんだって起きようと思えば起きれるのよ?」
「へぇ〜…知らなかったよ」
「冬華ちゃん、久しぶりね」
「あ…おはよう、ございます」
「そんなに怖がらないで?」
「あ、えと…怖がってる訳じゃなくて、その…こうして面と向かって理緒さんと話すのは初めてだから、緊張しちゃって…」
「あらあら、可愛い子ね。じゃ、こっちへ来て一緒に朝ご飯食べよっか」
「良いんですか?」
「もちろんよ。ほら、こっちに座って?修くん、ぼーっとしてないで早く朝ご飯の準備をしなさい」
「あ、あぁ。何が良い?」
「冬華ちゃんは嫌いな物とか有るの?」
「えっと…納豆はあまり好きじゃないです…」
「じゃあ納豆以外なら平気?」
「はい、大体の物は食べれます」
「だってさ。じゃあ後は修くんにお任せって事で、よろしくね?」
「…分かったよ。朝飯は結構適当に作るから期待すんなよ?」
「へぇ〜…」
「ん?」
冬華ちゃんがまるで奇跡を見たかの様に目を輝かせている。
「…どうしたの?冬華ちゃん」
「修お兄ちゃんが作るんだぁ…!」
「えっ?あぁ…そうだよ」
「すごいすごぉい!修お兄ちゃんてお料理できるんだね!」
あまり期待されたくないし、料理なら羽居春華なら悠々とこなしそうな気がするんだが…
その後料理を作り始めた時に後ろから二人の声で
「お嫁さんに欲しいよね〜」
とか聞こえたのは気にしない事にしよう。
「お待たせ。今日は朝の準備をあまりしてなかったから、スクランブルエッグにベーコンにパンにサラダだよ」
「冬華ちゃん、お腹減ったね〜。早く食べよ?」
「はい、いただきます」
もくもくと食べる理緒姉と冬華ちゃん。
「理緒姉、冬華ちゃん、おいしい?」
「「おいしい!」」
「まぁ喜んで貰えて何よりだ。これ位誰でも作れると思うけど」
「あ〜おいしかった。ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
さっさと片付けよう。
「そういえば家に呼んだは良いけど何するんだ?」
「そうね…冬華ちゃん、何がしたい?」
「冬華、トランプがしたい」
「そういえば長い事やってないからそれも良いかもね」
「じゃあ、トランプ持ってくるから何するか決めといてくれ」
「冬華ちゃん、何をしよっか?」
「冬華、大富豪がしたいな」
「おっ、なかなか良い所ね。ルールはどうする?」
「8切り、革命、階段位しか分からないけど…」
「じゃあそれと特別ルールね」
「特別ルール?」
「もし大貧民になったら、着ているお洋服を一枚ずつ脱いでくの」
「えっ、えぇっ?」
「大丈夫大丈夫。負けなきゃ良いんだから。ね?」
「う、うん…でも、理緒さんも負けたら脱ぐんだよね?」
「当たり前じゃない。そこは平等よ。ただ、修くんには内緒にしておいてね?あの子絶対反対するから」
「分かった。冬華、負けないからね!」
「私も負けないわ」
「トランプ持ってきたぞ〜。んで、何をやるんだ?」
「大富豪に決定したわ」
「ルールは?」
「8切り、革命、階段よ」
「少ないね。まぁ別に良いけど」
「他にどんなルールが有るの?」
「そうだなぁ…地域によるけど5飛ばしだったり、10飛びだったりイレブンバックとか十三階段とか、JOKERにハートの3で勝てるとか…」
「もういいわ…」
投下終了します。
Good Job.
やばい。冬華、ピンチ。生きて明日の朝日を拝めるのか…?
これは性的なお仕置きやレズレイプの期待が高まりますな
綾だったらもうボロクズにしてるなw
GJ!
冬華ちゃん命の俺としてはヒヤヒヤの展開です
冬華ちゃん退場…なんてことにならなければよいが…
63 :
時給650円:2007/11/04(日) 13:46:53 ID:iLOpR3Km
「結構なお手前でございましたわ、深雪ちゃん」
半ばウットリしながら春菜が、空になったティーカップをテーブルに置く。
「アールグレイ、でしたか? お茶を淹れるのがまた上手くなりましたね?」
「え?」
突然の春菜の誉め言葉に、深雪も驚きを禁じえない。彼女としては普通に、いつも通り淹れただけに過ぎないのだから。だが、特に意識もせずに淹れた茶を誉められたという事は、すなわち、普段の技術そのものが向上しているという評価に他ならない。
深雪にとって、その喜びは深い。それは、ほぼ存在の肯定と同義な程に。
「お茶の心得はワタクシもありますが、やはり紅茶となれば、深雪ちゃんにはまだまだ及びませんわ」
「そんな……、春菜ちゃんたら、お世辞はヤマトナデシコには似合わないですの」
「いいえ、ワタクシは世辞など申してはおりませんわ。――“もてなしの心”を味に込められるようになれば、その方は、もはや一流と呼ぶに恥じない料理人だと、ワタクシは思うだけですもの」
「いっ、一流だなんて……そこまで言われたら、逆に姫も困っちゃうんですの……!!」
そう言いながらも、当の深雪は嬉しそうに頬を染め、上体をくねらせる。
そして、そんな妹を、美しい和服に身を包んだ春菜が、穏やかな笑顔で見守っている。
いま春菜を“大和撫子”と深雪は呼んだが、確かにその通りだ。
彼女は自身の最終目標を“大和撫子”への到達に置き、そのためのあらゆる努力を惜しまない。
自身を“ワタクシ”と呼び、喜十郎を“兄君さま”と呼ぶのも、その『和の精神』への憧れが為さしめるものであろうか。
だから彼女の本貫は、あくまで茶道、華道、日本舞踊といった、貞淑なる日本女性の表芸たるものばかりであり、その身に叩き込んだ体術も、元来ただの護身術――つまりは“日本女性のたしなみ”から学び始めたに過ぎない。
――まあ、喜十郎が家に来てからはその武芸も『兄君さまを御守りする!』という、よく分からない目的にすりかわってしまっているが。
そんな春菜だから、当然家庭料理のウデも、そこいらの主婦以上であり、深雪にとって春菜に料理を誉められるのは、喜十郎とはまた違う、格別な喜びがあるのだ。
「あの、――そろそろ本題に入っていいかしら?」
春菜の艶然たる笑顔とはまるで対照的に、苦虫を噛み潰したような桜が、二人の雰囲気を破壊する。
「ごっ、ごめんなさい桜ちゃん。姫ったら、つい興奮して……」
つい今しがたまで、ムフンムフンと鼻を鳴らして喜んでいた深雪も、そんな長姉の顔色に、水でもぶっ掛けられたかのように素に戻ってしまった。
「まあまあ、申し訳ありません桜ちゃん――では、どうぞ」
それに比べて、さすがに春菜は姉の不機嫌に慣れているのか、顔色一つ変えずに議題を姉に戻す。
しかし、一度火のついた桜のヒステリーは、容易なことでは収まらない。そういう意味で桜は、母の道子に、文字通り生き写しのごとく似ている。
「どうぞって……!! 春菜っ!! アンタいま私たちが置かれた情況が分かってるのっ!?」
「……桜ちゃん」
「いいえっ、春菜だけじゃないわっ! あなたたち全員っ、今の情況を正確に理解しているのっ!?」
怒声の勢いのまま立ち上がり、彼女は四畳半の居間に居並ぶ妹たちを睨みつける。
いま現在、綾瀬家にいるのは春菜と真理、深雪に、彼女たちを睥睨する桜の四人。
――つまり喜十郎、詩穂、比奈、そして新たに姉妹に加わった凛子と麻緒の五人が、この家を留守にしているという事になる。
彼女たちの両親、つまり和彦と道子はすでに東京にいない。
あの晩、凛子と麻緒を連れ帰った和彦が、土下座混じりの謝罪を述べ立て、二日間にわたって揉めに揉めたあげく、なんとか夫婦そろって博多へご帰還のみぎりとなったのだ。
――元来この夫妻は、道子の側からの熱烈なアタックにより、交際・結婚という道程を歩んだという過去もあるため、一度和解が成立すれば、その後もスムーズなものだった。
桜をはじめ、このときの六人の姉妹たちの喜びっぷりはもう、筆舌に尽くせぬ程であった。なにしろ両親の離婚の危機が回避されたと同時に、彼女たちの“愛の巣”の唯一の邪魔者が消え失せたのだ。彼女らがはしゃぐのも当然と言えた。
だが“妹”たちのその喜びも、長くは続かなかった。
凛子と麻緒が綾瀬家に来て二日目の夜、父と母は博多に帰り、そして、今日はその晩からさらに三日後の昼――喜十郎と凛子、麻緒と詩穂、そして比奈の五人は遊園地に出かけている。
「兄上様は、ああ見えて結構アタマの切れる方ですから、まあ、こうなる事も予想できなくも無かったんですけど、ね……」
真理が呟く。
そう、せっかく邪魔者の両親が居なくなったというのに、姉妹たちは“兄”に、一指も触れ得ずにいた。
原因は言うまでも無く、新たなる“妹”……凛子と麻緒である。
といっても、彼女たちが何かをしたり言ったりしたわけではない。
むしろ、逆だ。
喜十郎が、この二人を最大限に利用したのである。
『せっかく家族になったのだから』という大義名分の元、その優しさを発揮して二人の面倒を見始めた喜十郎に、凛子も麻緒もすっかり懐き、今では彼にべったりになっていた。
無論、六人姉妹たちも“兄”の――
『子は親を選べない。義母さんはともかく、お前らがあの子たちを白眼視することは、“兄”として、このオレが許さん』
という言に従い、可能な限り二人を歓迎した。
ベッドや風呂場でこそ、“妹”たちの玩具に成り下がっているが、喜十郎が真顔で吐いた言葉をないがしろにするほど、彼女たちは“兄”を軽く見てはいない。
それはいい。
“妹”たちも一個の人間として、“兄”の言葉は正しい、と思うだけの常識はあるからだ。
“愛人の娘”“隠し子”と、これまでそしられ続けた二人が、形はどうあれ一家の本籍地に乗り込んできたのだ。内心その緊張は、余人の想像を絶するものがあったろう。
だから、最初は頑なで挑戦的だった凛子も、人見知りで無口だった麻緒も、徐々に態度を軟化させ、今では、本来の陽気で元気な少女の顔に戻っている。
だが、やがて“妹”たちは気づく事になる。
たとえ、道子ほどの拒絶反応を示さないとしても、この一家に於ける“兄”と“妹”たちの“関係”を知らない二人の存在は、自分たちの触手を遮る、母以上の邪魔者なのだということに。
自分たちの関係性や行為が、世間的にいかに異常なものであるかは、姉妹の全員が承知している。だからこそ、まだ何も知らない二人の前で“兄”に悪戯を仕掛ける事は、心理的に大きなブレーキがかからざるを得ない。
喜十郎も、そのことは充分理解しているはずだ。にもかかわらず、彼は二人の世話をするという名目のもと、必要以上に彼女たちの傍を離れなかった。
――これは、意図的だわ。分かっててやってるんだわ。
“兄”が、陰ながら、彼女たちとのスキンシップを避けているのは、もはや確実だった。
桜が焦るのも、或いは無理はない。
想い人から避けられているという歴然たる事実。
……まあ、彼が“妹”たちの調教を内心嫌がっていたのは彼女たちも知っているし、そんな“兄”をイジメるのが楽しかったと言えなくも無かったので、これはいい。
だが、可苗という悪霊のような強敵を前にして、これ以上の調教の遅れは、彼女たちにとって致命的な事態を呼びかねない。
桜には分かる。
今でも“兄”は、実家に帰ることに抵抗はあるようだが、その話題を振っても、あのときの旧校舎の屋上で見せたような恐怖は見せてくれない。
(つまり、こないだの帰宅で、それだけ可苗に対する免疫がついたって事じゃないの……!!)
恐怖というのは拒絶に直結する。
“兄”の、可苗に対する拒絶反応が薄まり、自分たちのスキンシップに対する回避の意図が明確になり始めた。……これが一体どういう事態か、考えるのほどに桜は背骨が寒くなる。
「兄君さまは……やっぱり最初から何もかも計算して二人の面倒を見たのでしょうか……?」
誰に聞かせるでもなく、春菜が呟く。
しかし、その疑問はこの場に居る全員が等しく抱いていた事だった。
必要以上に二人の世話を焼く喜十郎。
そんな彼に懐き、必要以上に喜十郎にまとわりつく凛子と麻緒。
しかし、彼女たちが知る喜十郎は、他者の利用を目的に自分の優しさを切り売りするような小賢しさは、少なくとも持ち合わせていないはずだった。
しかし、初志はともかく、喜十郎が二人を“妹”たちに対する防波堤として利用しているのも、いまや明白な事実だ。
詩穂や比奈といった年少組の少女たちは、新しく増えた家族に素直に喜んでいるが、上の三人娘――とくに桜のストレスは、そろそろ頂点にさしかかろうとしていた。
「“歓迎会”をしましょう」
ぽつりと真理が言う。
「「「……?」」」
――歓迎会?
この場に居合わせた全員が、この文学少女然とした三女の言葉を計りかねた。
「真理ちゃん……カンゲーカイって……いったい何を言ってるんですの?」
かなり遠慮の無い質問を深雪が投げかける。
真理は周囲の視線の冷たさに気付くと、改めて口を開き始めた。
「つまり、ですね。あの二人――凛子ちゃんと麻緒ちゃんがいる事で、兄上様への手出しが難しくなっているのは事実です。でも、そもそも、それは何故だと思います?」
「……いや、その、真理?」
「なぜって訊かれても、困るんですけど」
桜と春菜は、あくまで勘で行動するタイプなので、真理と違って理屈でモノを考えるのが苦手だ。
「あの二人が私たちの“関係”を御存知無いからです。兄上様は私たちの“奴隷”であり、“恋人”である実態を。何も知らないからこそ、彼女たちの前で私たちは、普通の“義妹”を演じなければならない。……と、なれば話は簡単です」
真理は、そこでぬるくなった紅茶を一口あおると、
「彼女たちに教えてあげればいいのです。兄上様の存在の本当の価値を。兄上様の感触を。快感を。体臭を。お味を。悲鳴を。兄上様がブザマに悶え泣く姿が、どれほど惨めで、美しいかを――」
「なるほど」
桜が笑った。
「“歓迎会”、……ね」
学校で見せている、万人を魅了する明るい笑顔では、当然ない。
「おもしろそうじゃない」
ニヤリとした、口元を亀裂のように薄く歪ませたような、たまらなくいやらしい笑み。
それは“兄”と“妹”たち、つまり“身内”の前でしか決して見せない、淫らな笑い。
「――でも真理ちゃん、問題もありますわ」
春菜が、少し不安げに言う。
「凛子ちゃんはともかく、麻緒ちゃんなんかは、かなりのネンネさんに見えますけど、もし、お二人が“こちら側”に来る事を拒絶したら、いかがなさるつもりです?」
「――それならそれで問題ないわ」
桜が斬り捨てるように言葉を返す。
「あの子たちが私たちについて来れない時は、それこそ追い出せばいいのよ。もともと住んでた家が都内に在るはずなんだから、二人とも、今さら住むところに困ったりはしないでしょう? それに――」
「凛子ちゃんと麻緒ちゃんが、姫たちの側に来れるかどうかは問題じゃないんですの。重要なのは、姫たちとにいさまとの“関係”を、きちんと既成事実を踏まえて確認させることですの。――そうですわね、真理ちゃん?」
いつになく興奮した表情で、深雪が桜の言葉を引き継ぐ。
さすがにそこまで説明されれば、春菜とて馬鹿ではないので理解できる。
「確かに……。お二人がワタクシたちの“関係”を一度知ってしまえば、もうあの子たちに遠慮する必要は無くりますわ。いや、それどころか、眉をひそめる二人の前で、嫌がる兄君さまを無理やり……あんなことや、こんなこととか、させたり言わせたりとか……」
きゃ〜〜、ぽぽぽぽっ、と悲鳴をあげつつ頬を染めて妄想を遊ばせる春菜。
そんな姉を見ながら、やはりムフンムフンと鼻を鳴らして妄想に身悶える深雪。
暴走する妹たちの様子を傍目に見ながら、桜は真理を振り返った。
「それじゃあ真理、さっそく準備に取り掛かりましょうか」
「はい。……今夜は、とてもとても長い夜になりそうですね、桜ちゃん」
「長いだけじゃないわ。とても楽しい夜よ」
「はい。兄上様に、御自分の“奴隷”という立場を理解してもらう、いい機会になるでしょう」
「立場だけじゃないわ。私たちのラブを、いやと言うほど味あわせてあげるのよ」
“妹”たちは、その瞳に五日ぶりの潤んだ光を輝かせ、うっとりと今宵の宴に思いを飛ばしていた……。
70 :
時給650円:2007/11/04(日) 14:06:08 ID:iLOpR3Km
今回はここまで。
71 :
時給650円:2007/11/04(日) 14:15:44 ID:iLOpR3Km
すいません。
タイトルは(その14)ではなく(その15)でした。
きっと冬華のピンチには春閣・・もとい春華お姉ちゃんが何とかしてくれるに違いない。
続き投下します。
「とまぁ、ローカルルールはこんなもんとして、そろそろ始めようか。JOKERは2枚入りで良いの?」
「お姉ちゃんは構わないわ」
「冬華もそれで良いよ」
「んじゃ、カットするよ」
シャアアァァ、シュバババババ…
「うわぁ…修お兄ちゃんかっこいいね」
「修くんショットガンシャッフルなんてできたのね」
「まぁ、この辺だけ器用なんだよ。無駄な事ばっか覚えちまうから」
本当に無駄な事は良く覚えるのだ。
ルービックキューブも一応6面揃えられるとか、麻雀も覚えたりとか、チェス、将棋などなど…
遊びばっかりだな…
とか考えながら配り終わる。
「え〜…修くん、お姉ちゃんに嫌がらせしたでしょ!」
「なんの話だよなんの。俺は普通に配っただけだぜ」
「弱すぎるわ…」
「スペードの3は…」
「冬華が持ってるから、冬華から始めるね」
パサッ
「うわっ、いきなり階段かよ。俺パス」
「お姉ちゃん出せるわ」
パサッ
「理緒姉、いきなりそんな強いの使って良いのか?」
「弱いからこそ速攻よ」
「疾きこと風の如く…って感じですか?」
「冬華ちゃん、良くそんな難しい言葉知ってるね」
「春華お姉ちゃんから聞いたのを覚えたの!」
「へぇ…」
羽居春華は家でどんな会話してるんだ?
「続けるわよ?」
「あぁ」
パサッ、パサッ、パサッ…
「冬華いっちばーん!」
「良し、俺も終わりだ」
「あの手札じゃやっぱり無理よね…」
「じゃ、理緒姉大貧民な」
「仕方ないわね…」
するするっ
「って理緒姉、なんでおもむろに脱ぎだすのさ?」
「言い忘れてたけどこれ、脱衣大富豪だから」
「はぁ?何を言ってんだよ。冬華ちゃんが嫌がるに決まってるだろ」
「既に納得済みよ」
「えぇっ!?冬華ちゃん、そうなの?」
「うん、冬華負けないもん」
「それって当然俺も脱ぐんだよな?」
「当たり前じゃない」
「負けられねぇ…」
年上年下二人の美(少)女の前で裸なんてそんなふざけた状況になってたまるか…!
「あら、なんだか気合い入っちゃった風味?そんなにお姉ちゃんと冬華ちゃんの裸が見たいの?」
「ちげぇ!ただ二人ね前で脱ぎたくないだけだ!」
「修お兄ちゃん、えっち…」
「いや、だから、見たい訳じゃないって…」
「冬華ちゃん、頑張ろうね〜」
「ね〜」
「なんか仲良くなってるし…」
パサッ、パサッ…
「きゃっ、そこで革命するの?」
パサッ、パサッ…
「おっし、大富豪だ!」
「お姉ちゃん平民〜」
「冬華…負けちゃった…」
「さぁ冬華ちゃん、お洋服を脱ぎましょうか?」
「なぁ理緒姉、やっぱり止めないか?」
「ううん、修お兄ちゃん、冬華は理緒さんと約束したから」
そう言って上着を脱ぐ冬華ちゃん。
夏じゃなくて良かった…
「じゃあ、次を始めましょうか?」
「冬華、次は負けない!」
「うわ〜…なんか二人ともやる気だよ…」
〜一時間経過〜
「これ以上、負けられないわ!」
「理緒姉意外と弱いな…」
〜二時間経過〜
「うぅぅ…冬華、そろそろ脱ぐ物無いよぅ…」
「なぁ冬華ちゃん。なにゆえ靴下を脱がないんだ?」
「修お兄ちゃん、こういうマニアックなのが好きそうだから…」
「俺に下着+ニーソの属性は無いっ!」
「じゃあ修くんは何属性持ちなの?」
「えっ?え〜っと…」
「冬華も気になるなぁ…」
「俺は…チャ(ボソボソ…)」
「ちょっと、はっきり言わないと聞こえないよ〜」
「修お兄ちゃんずるいよぅ!」
「あぁ分かったよ!言いますよ!俺はチャイナドレスが好きですよ!」
「へぇ〜…あのいつでも行為に及べるえっちな服ね」
「修お兄ちゃん、やっぱりえっち…」
「おっし、大富豪だ!」
「お姉ちゃん平民〜」
「冬華…負けちゃった…」
「さぁ冬華ちゃん、お洋服を脱ぎましょうか?」
「なぁ理緒姉、やっぱり止めないか?」
「ううん、修お兄ちゃん、冬華は理緒さんと約束したから」
そう言って上着を脱ぐ冬華ちゃん。
夏じゃなくて良かった…
「じゃあ、次を始めましょうか?」
「冬華、次は負けない!」
「うわ〜…なんか二人ともやる気だよ…」
〜一時間経過〜
「これ以上、負けられないわ!」
「理緒姉意外と弱いな…」
〜二時間経過〜
「うぅぅ…冬華、そろそろ脱ぐ物無いよぅ…」
「なぁ冬華ちゃん。なにゆえ靴下を脱がないんだ?」
「修お兄ちゃん、こういうマニアックなのが好きそうだから…」
「俺に下着+ニーソの属性は無いっ!」
「じゃあ修くんは何属性持ちなの?」
「えっ?え〜っと…」
「冬華も気になるなぁ…」
「俺は…チャ(ボソボソ…)」
「ちょっと、はっきり言わないと聞こえないよ〜」
「修お兄ちゃんずるいよぅ!」
「あぁ分かったよ!言いますよ!俺はチャイナドレスが好きですよ!」
「へぇ〜…あのいつでも行為に及べるえっちな服ね」
「修お兄ちゃん、やっぱりえっち…」
「そういう捉え方をするなよ!」
「じゃあどういう捉え方をすれば良いのかしら?チャイナドレスのどこが良いのか説明して?」
「いや…その…あの深いスリットから覗く生足が…」
(修お兄ちゃんて…足フェチ?)
(これは良い事を聞いたわ…)
「くそっ!負けてないのになんだこの羞恥プレイは!」
〜三時間経過〜
「お姉ちゃん…もう脱ぐ物無いわ…修くん、強すぎない?」
「冬華も脱ぐ物無くなっちゃった…」
「勝ったけど…なんだこの敗北感…」
ちなみに状況は俺完勝。
二人のどちらかが必ず大貧民だった。
そのせいで俺は普通の格好、理緒姉下の下着のみ(おかしいだろ…)、冬華ちゃん上下下着のニーソ。
ちなみに冬華ちゃんにニーソ脱げば?と何度も言ったが、冬華ちゃんはかたくなに「ニーソックスは体の一部だ」
と言って決して脱がなかった。
眺めとしては、もちろん悪くない。
これで喜ばない普通の成人男子は居ないだろう。
だが、一人が姉で一人がクラスメイトの妹で小学生では完全に俺が鬼畜変態だ。
「早く服着てくれよ…」
「負けたからには一日この格好で居るわ」
「そこで無駄に意地をはらなくても良いだろうが」
「いやよ」
「冬華も」
「はぁ…なんで変な所で似てるんだ?」
「そうね…冬華ちゃん、私の事お姉ちゃんと思わない?」
「えと…理緒、お姉ちゃん?」
「…」
「理緒姉?なんで震えてんの?」
「か…」
「か?」
「かわいい〜!冬華ちゃん、もう一回、もう一回呼んで?」
「理緒お姉ちゃん」
「きゃ〜!妹ができたみたいですっごく嬉しい!」
「そんなに喜ぶんだ…」
「冬華ちゃん冬華ちゃん、お昼ご飯食べたらお姉ちゃんと買い物に行こうよ」
「買い物って…何を買うの?」
「秘密よ。行ってからのお楽しみ!」
「まだ昼飯には早いな…」
俺は既に昼飯で何を作るかを考える。
「修くん、お昼ご飯はご飯ものにしてね?」
「了解。メニューは俺が決めて良いのか?」
「冬華、修お兄ちゃんに任せるよ」
「お姉ちゃんも」
「分かった。それは良いとして次は何をするんだ?」
「修くん、久しぶりにマ○オカート64をしない?」
「それ、冬華も持ってるよ!」
「ならちょうど良いわね。修くん、準備して?」
「…マジかよ」
マ○オカート64には嫌な記憶しかない。
なぜなら理緒姉はなぜかこれを極めており、ワリ○スタジ○ムの一周8秒も当然の様にやってのけるからだ。
当然他のコースもほぼ完璧で、インをつきながらのミニターボ連発も異常な精度なのだから、俺に勝ち目はない。
ちなみに俺だって友人とやるにあたっては負けた事が無いのだ。
勝つにはアイテム運に頼るしかない。
冬華ちゃんはどうなのだろう?
持ってるとは言ってたが…
「準備出来たよ…」
「久々ね」
「えへへ」
「どこから始めようか?」
「まずはマ○オサーキットよね」
ポッ、ポッ、ポーン!
見事に全員ロケットスタートを決める。
しかしそこからミニターボでじわじわと理緒姉が前に…ってあれ?
冬華ちゃんの操るキノ○オがついていってる。
「冬華ちゃん、やるわね…!」
「理緒お姉ちゃんこそ…!」
一人取り残される俺とヨッ○ー。
なんで俺の周りにはこんな人ばっかりなんだよ…
-2時間後-
見事に俺はぼろ負けであり、理緒姉が1位9回冬華ちゃんが1位7回だった。
「ふぅ…良い勝負だったわ」
「理緒お姉ちゃん、強いね」
「冬華ちゃんもね。今回はアイテム運が有ったから勝てたけど、次は負けるかもね」
「冬華、もっと頑張る!」
もうこれ以上頑張らなくて良いんじゃないか?などとつっこめる雰囲気でも無かったので俺は諦めた…
投下終了します
GJです。
ほのぼのムードでよい感じです。
冬華ちゃんニーソ姿で俺興奮!
もう超GJ
たくさん読めてありがたい限り
りおの人と淫獣の人は一日どんだけ書いてるんだろう?w
執筆速度がうらやましす
>>70 GJ!!
執筆速度は速いしぐいぐい読ませるし、とても面白いです!
次回も楽しみにしています!!
>>70 GJ!!
さー兄ちゃんは、この淫獣共の悪あがきを抜けられるか!?
こんな夜中にこっそり、短編投下〜
子供の頃、この世は希望そのものだった。
新しい発見をする度に、世の理を理解していき。
それと引き換えに無邪気さを失っていく。
ふと、気付くと世界は色を失っていた。
毎日繰り返されるくだらない光景。
それに何の不満も持たずに順応していく自分。
そんな自分自身が限りなく嫌いで仕方なかった。
ポケットからタバコとライターを取り出し、火をつけそれをくわえる。
ゆらゆらと流れ出る煙が空へと昇っていく。
空は相変わらず真っ青で、雲一つ見あたらない。
この世にとって、一人の人間の死は些細な事なのかもしれない。
一人居なくなったところで世界は止まるはずもなく、毎日を繰り返す。
「姉さん……。」
姉さんは俺とは違い、優秀な人で。
親に見放された俺を気遣い、常に心配してくれていた数少ない理解者でもある。
そんな姉が亡くなった。
本当に突然な事で理解できなかったが。
棺に収まった姉の姿を見たとき初めて実感する事が出来た。
姉の表情はどこか幸せで、何か吹っ切れた美しい顔をしていた様に思う。
短くなったタバコを捨て、それを靴底で擦り潰すと。
俺は思考を一旦中断して、その場から………
トントンと静かに肩を叩かれる。
振り返れば見慣れた姉さんの顔があった。
「…何しているの?」
僕の姉さんはあまり感情を表に出さない人で、僕と両親以外は判別出来ないらしい。
「小説読んでいるんだよ。」
そう言いつつ、文庫本の題名が見えるように掲げる。
本の題名は「消失」、一人の男性が姉を失った悲しみの底から立ち直る話で、35巻まで出ているベストセラー。
「…面白い?……」
「かなり面白いよ、先が気になって仕方ないぐらいだ…か…ら……。」
姉さんの目が鋭さを増し、僕は直感でまずいと確信した。
姉さんは無言で僕から、文庫本を取り上げると。
迷うことなく、テーブルに置いていたマッチで火をつけた。
燃えていく新品だった文庫本。
呆気に取られながらも眺めるしか出来ない僕。
満足そうな姉さん。
「…本如きが…私の大切な弟の気を引くなんて…赦せない。」
そう呟いた、炎に照らされた姉さんの顔は憎悪で酷く歪んでいた。
短いですが、おしまいです。
お目汚し失礼致しました。
キモねー好きだよキモねー
最初から全開キモ姉も好きだが、弟が告白されたり事故にあったりして意識し始める話とか、すごく精神的に傷付いてるときに弟に慰められて……とか読みたいな
>>90 俺も続きが読みたい。連載求む。
>>93 あれ?俺、いつの間に書き込んでたんだろ・・・
このところにぎやかで喜ばしい限りだ・・・
>>44 保管ミスの度にスレを使ってしまうのもあれなので
wikiのトップページに保管ミス情報を書くことにしました
手間になりますが、たまに確認しておいてください
いま長編と短編とに分けて編集中
wikiには保管が終わってからって書いてあったけど、後になればなるほど、面倒になりそうなんで、今のうちに。
長編と短編に分ける作業終了。
以後新しく作品を編集する人は長編、短編分けてお願いします。
ひょっとして現行スレまでの作品全部保管終わった?
いや、終わってるわけじゃないのか
作品一覧の方は投下順で編集させてください
単純に作品を拾い上げていくにはその方が作業が楽なので
>>98-99 >>ひょっとして現行スレまでの作品全部保管終わった?
いや終わってないです、現在wiki上にあるのを分けただけ。
>>単純に作品を拾い上げていくにはその方が作業が楽なので
うーん、それだと確かに今は楽だけど、後々に作者別なんかに分けるとき面倒臭いことになると思う。
すでにカテゴリ分けは済んでるし、そんなに手間でもないと思うんだが。
ああ、ごめん勘違い。
メニューの「作品一覧」のことか。
そっちはどうなんだろ、すでに分けてあるんだから、こっちは管理人に言って削除してもいい気がする
単純にリストが複数あるだけだから、元の作品一覧もあって困ることは無いと思う
まあ作業をどう感じるかは俺個人の感覚なので・・・他の人が最初から長編短編に分けてサルベージする分にはまったく問題無いと思います
なのでそれはお任せします
俺が拾って整理するのはあくまで投下順ということでお許しください
>>102 うーん、それって、新ページ作成して「作品一覧」の方には反映するけど、「長編一覧」「短編一覧」の方には反映しないってこと?
wikiのまとめってのは基本皆で編集するものだし、もしそのやり方なんだとしたら他の編集人の手間が増えない?
どの作品がすでに上がっていて、どの作品がまだ上がっていないかを確認しながらの作業になるんだし。
まあ、任せた
体の一部のみを好むキモウト、キモ姉はいないな。
>>90 えっ?おしまいなの!?
短いけど、めっちゃおもしろかったのに。残念だ・・・
90の作者です。
スレを読んでいる最中に、受けた電波を活性化の祈りを込めて文章にしたのですが…。
続編の希望をしてくださりありがとうございます。
不定期短編で連載していきたいと決心したので、投下したおりには温かい目で見守って下さいませm(´∀`)m
108 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 18:33:39 ID:x7kOUJJI
>>104 作業をめんどうがって半端にしかやらないのなら、最初から係わらない方がいい
誰かが。
誰かが僕の部屋に入っていた。
ベッドで寝転んでいた。
タンスを物色していた。
──そんな現実を。痕跡を、僕の部屋はただ呈していた。
これは、ひどい。
素人目にもわかるこの惨状。
それが意味するところは、相手も──僕の部屋に侵入した者もまた、素人だと云うこと。
昔、『あなたも名探偵−推理百貨−』とか云う、
カタカナにひらがなでルビが振ってあるような本に、そんなことが書いていた。
空き巣──延いてはもの盗りに素人だのプロだのとあるのかは知ったところではないが、
とりあえず、この家に。この部屋に入ることのできる人間の犯行であると僕は推理した。
“名探偵”──僕の中に眠っていた、埃を被っていた憧れが、甦る。
──…ちゃん、ぼく、おとなになったらたんていになるよ!
──うふふ。頑張ってね。私、応援しているから!
薄靄の中に沈んでいた、遠い過去の一ページ。
「…あれ?」
──靄を掃うように、思考の糸を紡ぐ。
“僕の身近な人間”“僕の部屋に入ることのできる人間”“僕の部屋に入ろうとする人間”
何故気付かなかったのだろう。
そんなことに。そんな、わかりきったことに。
──まるで目が覚めるように。環が閉じるように。
遊び飽きたおもちゃを放る子供のように、僕は推理を放棄した。
──どこにでも、あの人はいるじゃないか。
記憶の中にも、僕の日常にも、今、そこのクローゼットの中にも。
──どこから。いつから変わってしまうんだろう。人は。
自嘲するように。
うんざりしながら。
あの人の。──姉さんの、くぐもった、押し殺したような吐息が響くクローゼットの、扉を開けた。
「…お、おおかえりっ、朔ちゃんっ!…んっ…はぁ……はぁ…んぁああっ!」
瞬間、外へ漏れ出す熱気と淫臭。
姉さんが。睦月姉さんが。湿り、握られ、もう既に原型を留めていない僕のトランクスに鼻を擦りつけながら。
「おやつは、居間のテーブルの上に──、っあぁああっ!」
オナニーをしていた。
──どこから。いつから変わってしまったんだ。あの人は。
おやつを。ドーナッツを頬張りながら、僕は。広瀬朔也はそんなことを思っていた。
──あの後、扉を閉めた瞬間に、耳をつんざくような嬌声が聞こえた。
どうやら達してしまったらしい。僕の常用しているパンツで。
今、居間に戻って来ていないことを考えると、どうやらまだまだハッスルする気のようだ。
──ああ。ドーナッツ美味しいなー。
もう、何も考えるまい。
あの人は、そう云う人間なのだ。
下着を慰みに使われたという事実に対し、僕は別段気にしていない。
そう言ってしまうと僕も異常なのかもしれないが、
この前は僕の寝顔を直接おかず──オナネタにしていたのだ。
僕が起きたことに気付いて尚、行為を続けたときには背中に怖気が走った。
──あれに比べれば、ね。
ドーナッツの最後の一かけらを咀嚼し、牛乳を口いっぱいに含む。
「朔ちゃん♪」
後ろから聞こえた声に。
否、耳に侵入した声に、口の内容物を噴いてしまうかと思った。
間一髪、頬の筋肉を総動員し、噴くことはなかったが、喉に、詰まる。詰まる。
「あ、大丈夫っ!?ほら、牛乳、牛乳」
姉さんが、まだ牛乳の残っていたコップを差し出す。
──“その手”からは絶対飲まないっ!
心配そうに僕を伺い見る姉さんを尻目に、ソファに顔を押しつけ、もがく。もがく。
しかし、未だに呼吸はできず、涙がシートに滲んでいくのを感じる。
だが。だが、もう飲み込める。飲み込める。飲み込め──
刹那。
ふいに、ふわりと上体が起こされ。
ようやく飲み込み、呼吸をしようと、空気を吸い込んだ、その時。
「んむっ」
唇に、妙な。
極めて妙な触感が。
そして。
「うぷっ」
姉さんの口と僕の口が繋がっている。
そう認識した瞬間。
人肌程の熱を持った液体が僕の口腔に流し込まれた。
──当然。
「ぐぉほっ」
──呼吸気管に牛乳が入っちゃうわけで。
──。
「姉さん、ホント、やめてよっ!」
「だ、だって、朔ちゃんが心配で…」
死ぬかと思った。
なんだろう。
小さな頃、プールで溺れたときと凄く似ていた。
「ホントに死ぬかと思ったよっ!?」
「お姉ちゃんも、幸せすぎて死んじゃうかと思った…」
脳裏に焼きついて離れない、あの瞬間。
姉さんと僕が…キスをしてしまった時のこと。
「朔ちゃんが起きてる間なら…あれがファーストキスだったのよ?」
赤面しながら、こんなことをほざきなすった。
刹那。
柔らかな。優しく暖かな感触が僕を包む。
僕は。今。姉さんに抱き締められている。強く。強く。
鼓動が、聞こえる。伝わる。僕の、体へ。
僕はもう、怒る気も、抵抗する気も失せ、姉さんに寄りかかり、目蓋を閉じた。
「…頭おかしいよ、姉さんは」
114 :
109:2007/11/05(月) 19:20:11 ID:bFKneEss
投下終了です。
通し番号付けとけばよかったとか、そんなこと思ってないんだからっ!
115 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 19:41:24 ID:1TWAnVXB
>>114 このツンデレめ!!
良いぞもっとやれ!!
>>108 あのさ・・・俺は全部拾ってから短編長編の分けはするってwikiに書いておいただろ
最終的に全部やるのをめんどくさがってるわけじゃないよ
まあ、めんどくさがらない人たちでがんばってまとめてくれって
全部拾ってから整理するのと、拾うそばから整理するのと
どっちが効率いいかわかるから
保管する人たちに引継ぎ情報
3スレ目729まで保管
初めは短編として投下された「ある終業式の日の、きょうだい喧嘩」は双璧の前身です
118 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 20:22:39 ID:J23SV5EB
>>114 GJ
これもしかして剣の橘(ダディ)さんか…?
たぶんID:5cxOpcnCがやったんだと思うが、上がってたドラ〇もんと無題4の日付とかレス番号分る?
120 :
109:2007/11/05(月) 20:24:34 ID:bFKneEss
>>118 名前が思い浮かばなかったんです><
タイトルはそれに絡めてみた
ドラ 700
無題4 717
>>116 お前が書いたのかどうかなんかてオレが知ってるわけねーだろw
>>103はお前のやり方だと他の編集者が苦労するって言ってるんだよ
何自分一人で作業してる気になって上から視点で見てるんだよ
俺が悪かった
やはり他の人に迷惑のかかることはするべきではなかった
まじでもう余計なことはせんから許してくれ
今更ながら、wikiの編集云々は、wiki内や避難所作るなりしてやった方がいいと思う
投下します。
マ○オカートに二人がハマッている間に昼飯を作った。
ちなみにメニューはと言えばメインは唐揚げである。
自分でも上手くできたと言える。
理緒姉も冬華ちゃんも喜んで食べてくれた。
食事も済んだ後、二人は一緒に買い物に出かけていった。
…ふぅ。ちょっと、眠くなってきた…
少し、寝ておこう。
「ねぇ、冬華ちゃん」
「なんですか?理緒お姉ちゃん」
「冬華ちゃんは修くんの事どう思ってるの?」
「どうって…?」
「友達として好きなの?お兄ちゃんとして好きなの?それとも…異性として好きなの?」
「…」
まぁどう返事が来ようと私の今夜の行動は変わらないのだけど。
ただ、話す内容が変わるだけ。
「修お兄ちゃんは…冬華が、初めて好きになった男の人です」
「そう…。やっぱりそうなのね」
「やっぱりって、気付いてたんですか…?」
「冬華ちゃんの態度を見ればすぐ分かるわよ。それに、好きでもない人の前で服は脱げないわね」
「…そう、ですね」
「冬華ちゃん、今日はお姉ちゃんと一緒の部屋で寝るのよ」
「えっ?あ、はい…」
「修くんと寝たいのかしら?」
「…」
無言で顔を赤くしてこくりとうなずく羽居冬華。
この子も修くんを好きにならなければ私と友達になれたでしょうに。
残念だけど、友達という関係は今日で終わらせないとね。
「理緒お姉ちゃん」
「なにかしら?」
「買う物ってなんなんですか?」
「チャイナドレス」
「…?」
「もちろん冬華ちゃんのもよ?」
「修お兄ちゃんの為に?」
「ええ、そうよ」
「楽しそう…」
「修くん、どんな反応をするかしらね?」
「きっと喜んでくれると思うな」
やべっ、熟睡してた…
今何時だ?
うわっ、もう6時じゃないか。
夕飯の準備しなきゃ。
ってあれ?二人共まだ帰って来てないのか。
じゃあゆっくり準備しとくか。
「ただいま〜」
「おかえり。もう飯の準備出来てるよ」
「うわぁ…良い匂いがする〜」
「この匂いは…すき焼きね?」
「正解。さっさと食おうぜ?」
「賛成〜」
「いただきます」
「いただきま〜す!」
「うん、おいしい!」
「修お兄ちゃん、やっぱりすごいね!」
「いやいや、別にそれほどでもないよ」
「ごちそうさまでした」
「あぅ…お腹いっぱいだわ」
「冬華も…少し食べ過ぎちゃった」
「さてと、俺は片付けるから何かやる事考えておいてくれ」
結局やる事は64なのだった。
マ○オカートにはさすがに飽きたので、スマ○ラとかマリ○テニスとか○リオゴルフとか。
意外と楽しいもんだよな、古いゲームって。
俺自身は今もロッ○マ○とかやっていたりする。
エアーマンは倒せる。
「そろそろ風呂入んないとな」
「皆で一緒に入りましょうか?」
「はい却下」
「え〜…どうして?」
「まず三人入ったら狭いだろ。しかも俺は男だ」
「後半部分は無視するとして、冬華ちゃんちっちゃいから大丈夫よ」
「そこはかとなく失礼な気がするな」
「冬華ちゃんだって修くんと一緒に入りたいよね〜?」
「うん、冬華、皆で入りたい」
「はい、多数決でけって〜い!」
「…民主主義なんて嫌いだ…」
「はぁ〜、修くん、気持ち良いよ」
「修お兄ちゃん…冬華も気持ち良い」
「いちいち言わなくていいから…」
「だって、これ熱くて気持ち良いんだもん」
「修お兄ちゃんも気持ち良いでしょ?」
「そりゃあそうだけど…」
「ほら、もっと深く…」
「入れて?」
「すっごく大きく膨らんでるね」
「いっぱい出てる…」
「なぁ…俺もう出ていい?」
「だめ〜、もう一回しようよ〜」
「まだ遊び足りないよ?」
ちなみにやっていたのはタオルに空気を包み風呂の中で開放する、という地味な遊び。
地味だがクラゲみたいなタオルとか、どれだけ空気を含ませられるかとかで意外に面白かったりする。
「のぼせた…」
「気持ち良かった〜」
「すっきりしたね」
「もう絶対二人とは入らない…」
「どうして?」
言葉がいちいちエロいからだとは言えなかった。
「うう…ごめん、俺もう寝るわ…」
「修お兄ちゃん、具合…悪いの?」
「少しね。寝てれば治るから気にしないでくれ。じゃあ…お休み」
「お休み。じゃ、冬華ちゃん、お姉ちゃんの部屋に行こ?」
「うん」
「うわぁ、理緒お姉ちゃんのベッド大きい〜」
冬華がはしゃいでいる間にそっと鍵を閉める。
「理緒お姉ちゃん、どうしてこんなに書く物がいっぱい置いてあるの?」
「秘密。冬華ちゃん、ちょっと大事な話が有るから聞いてくれる?」
「なに…?」
「冬華ちゃんは、修くんを独り占めしたいと思う?」
「…なるべくなら」
「そう、そうよね。…私もよ」
「え…?」
「私も、修くんを独り占めしたい。言ったじゃない、好きでもない人の前で服は脱げないって」
「理緒…お姉ちゃん?」
「私は、誰よりも修くんを愛してる。だから、邪魔する物は排除しなければならない」
ゆっくりと、羽居冬華に近付く。
「ひっ…」
怯えちゃって…可哀想に。
「だからあなたを消そうと思った。でも、羽居冬華、あなたは消すには惜しい」
涙を溜めた目でこっちを見る羽居冬華。
「だから、あなたは私に服従させる。徹底的に蹂躙し、隷属させ、私無しでは生きられない位にしてあげる」
「やっ、来ないで…やだっ…!」
あまり声を出されて修くんに起きられたら台無しだ。
ハンカチで口を塞ぎ、両手足を縛る。
「んーっ、んーっ!」
「大丈夫。痛い事はあまりしないつもり。あなたがおとなしくしていてくれれば…ね?」
「……」
「良い子ね」
手始めに、上半身を裸にする。
身をよじるだけで声は出さない。
「ここは修くんに弄って貰ったのかしら?」
そう言って乳首をつまんだ。
「っ!」
ビクリと体を震わせる冬華。
くりくりと乳首を弄り、胸を愛撫する。
まぁ、愛は無いのだけど。
細かく反応する冬華。
「あら…あなた感じやすいの?全く、小学生のくせに淫乱なのね」
「んーっ!」
冬華は首を横に振って否定する。
「いいえ、あなたは淫乱よ。だって、縛られて、胸を弄ばれて、悦んでいるのだから」
既に冬華の乳首は立ってきていた。
…声は聞こえた方が責めやすいわね。
そう考えてハンカチを取った。
「はぁ…はぁ…理緒…お姉ちゃん…もう、止めてよぉ…」
「まだまだこれからよ?次は、あなたの大事な所」
指で冬華の股に触れてみる。
「なんだ、やっぱり濡れてるじゃない。服の上から分かる程濡らすなんて、やっぱりあなた小学生とは思えない変態じゃない」
「違うもん…それは、汗で濡れちゃっただけだもん…」
「へぇ…じゃあ、汗で濡れちゃったお洋服は脱ぎましょうか」
さっと膝下まで脱がす。
「ほら、気持ち良いんでしょう?縛られて、大事な所を擦られて、濡れてるんでしょう?」
「濡れてなんか、いないもん…」
「じゃあ、この汗とは違うぬるぬるしたのはなんなのかしら?」
既に指には愛液がたっぷりとついていて、指の間に糸を引く。
「あなたって本当の変態なのね。自分が濡れてるのを見せられて、言葉責めされて、どんどん溢れさせているんだから」
「違う…冬華、そんな子じゃない…」
「私がすぐに分からせてあげるわ。自分は変態なんだってね」
「ひっ、あっ…やだぁ…」
「嫌…?本当に嫌なの?」
「嫌だよぉ…助けてよぉ…」
「助けるって、別に殺そうって訳でもないんだから」
「うぅ…助けて…修お兄ちゃん…」
頭の中で何かが弾けた気がした。
「あなたごときが!修くんに!助けて貰えると思ってるの!?」
もう、これ以上優しくする事はできなかった。
投下終了します。
取り合えずWikiに掲示板取り付けたんで編集方法なんかの話し合いはそちらで
>>132 GJです。
…しかし、この展開…
冬華ちゃんファンの俺にとっては鬱展開の予感orz
理緒姉やめてー
軽いイタズラしかしないキモウト……いや、それじゃただのブラコンか…
>>133 おっきした
そしてエアーマンは倒せる。
>>133 GJ!!
おかしいな・・・俺、レズとロリコン属性はないはずなのにおっきしたんだが・・・
>>133 GJ!
きっと、春華お姉ちゃんならきっと何とかしてくれるよね?( つД`)
>>133 おっきした
そしてエアーマンは倒せない
続き投下します。
この子は…消してしまわなければならないか?
いや、例えばここで殺したとすると羽居冬華を殺したのは間違いなく私か修くんという事になるだろう。
だからそうする事はできない。
やはり私に対して絶対の恐怖、または私の与える快感の奴隷にするべきか。
「あなた、助けてと言ってる割にはあまり抵抗しないわね。やっぱり気持ち良さに負ける変態なのかしら?」
「違う…違うよ…」
「違わないわ。こうして私の指で弄ばれて悦んでるんでしょう?」
ぐちゅぐちゅと幼い秘裂の中をかきまわす。
「んんっ、ひあっ!」
「ほらほら、どんどん溢れてくるわよ?」
「はぁぁ…ん、だ、めぇ…」
「上下同時の責めはどうなのかしら?」
胸と膣内を同時に責める。
更に口内を自らの舌で犯しつくす。
「あ、ふぁ…むぐ、んんんっ」
「私のキス、気持ち良いでしょ?」
「ふぁぁ…」
段々と羽居冬華の目から恐怖の色が薄れ、快感に満たされ始めた。
「理緒…おねぇちゃん…もっと、キスしたいよぉ…」
「やっと素直になってくれた?」
ご褒美の代わりではないが、再び羽居冬華の口内に舌を入れる。
先程とは違い、羽居冬華も積極的に舌を絡ませてくる。
「んはぁ…理緒おねぇちゃんの舌、おいしい…」
「あらあら、あなたやっぱり変態だわ」
既に羽居冬華は頬を薄紅色に紅潮させ、焦点の定まらない蕩けた目をこちらに向けている。
「そう、です…冬華は、縛られて感じてるえっちな子ですぅ…」
「ふふっ、元は修くんから離す為に始めたのに、あなたをいじめるのが楽しくなっちゃいそうね」
実際少し前の怒りは影を潜め、今は単純に嗜虐心を掻き立てられている。
「あなた、可愛いわ。ここまで思わせるのは修くんしか居なかったわよ?」
「あふぅ…ありがとう…ございます…」
「だから…もっともっといじめてあげる」
少し止めていた責めを再開する。
「ひあっ、あっ、気持ち良い、良いよぉ!」
「まだ溢れてくるわ。あなた本当に小学生なの?」
羽居冬華の愛液によって私の手はびしょびしょだった。
「あうっ、りお、おねぇちゃ、あの…」
「なぁに?」
「冬華、おしっこ…したい」
「だから?」
「おトイレに…」
「駄目よ」
指をかきまわす。
「やぁっ!だめ、おしっこ、出ちゃうぅ…」
「ほら、我慢するの」ぬちゅ、ぐちゅ…
「やっ、あっ、出ちゃうっ!だめっ、ひああああん!」
しゃあぁぁぁ…
ぴちゃっ、ぴちゃっ…
「あ〜あ、おもらししちゃって。汚れちゃったじゃない」
「ひっく…えぐ…ごめんなさい…」
「あなたのおしっこで濡れた私の手とか足とか…舐めて綺麗にして?」
そう言って濡れた手を羽居冬華の口の前にかざす。
「はい…ん、あむ…んちゅ…」
「ふふっ…自分のおしっこの味はどうかしら」
涙目で上目遣いに指を咥える姿はなかなかに煽情的だった。
「ほら、次は足よ?指の間まで綺麗に、ね?」
「ちゅ、ぺろ…んん…」
これ、修くんにやらせたら…
そう考えただけで体中が疼いてしまう。
でも今はこの子に集中しないとね。
ここでミスをするような事が有れば二度と羽居冬華に干渉できなくなるだろう。
だから、今日で完全に調教しきらないと。
「あら?あなた、足を舐めさせられて悦んでるの?」
「なんだか、気持ち良いの…冬華、やっぱり変態なのかなぁ…?」
「そうね、あなたは変態よ。けれどだからこそ私が可愛がってあげる」
「冬華の事、嫌いにならない?」
「ええ。だから、私に誓ってくれる?私の物になると」
「うん…冬華、りおおねぇちゃんの物になりたい…」
「じゃあ、理緒お姉様と呼んでくれる?」
「はい、理緒お姉様…」
「良くできました。じゃあ、次は膝立ちになってくれる?」
「んしょ、これで…良いですか?」
「ええ。これであなたの大事な所が丸見え。さっき粗相をして汚れたここを綺麗にしてあげるわ」
「えっ、だ、だめです、汚いですよぉ!」
冬華の言葉を無視して舌を割れ目に這わせる。
「んっ、あぅっ!りお、お姉様ぁっ!」
「気持ち良いでしょう?もっと感じて良いのよ?」
「んっ、あっ、あっ、すごい、体がゾクゾクしちゃうぅ!」
「力を抜いちゃ駄目よ?しっかりと膝立ちしてなさい」
「んんんっ、だ…めぇ!力、抜けちゃうぅ…」
「仕方ないわね。私のここを舐めて、私を気持ち良くして?」
いわゆるシックスナインの体勢になる。
「はい…ちゃんと、ご奉仕させていただきます…」
ふふ…仕込んでもいないのにそんな言葉を言っちゃって。
この子元からこういう素質が有ったとしか思えないわね。
「あなたのここ、本当にいやらしいわね。切なそうにひくひくしてる」
「そんなこと、言わないでぇ…恥ずかしいです…」
「本当に恥ずかしいの?見られて、弄られて気持ち良いんでしょ?」
「冬華…見られて感じてますぅ…」
そろそろ頃合かしら。
「ねぇ、冬華」
「なんですか、理緒お姉様?」
「あなたの処女、私にくれないかしら?」
「えっ?冬華の、初めてを…ですか?」
「えぇ、ダメかしら?」
「…でも、どうやってするんですか?」
ごそごそと物を探り、手に持ったそれを見せる。
「な、なんですか?それ…」
「ペニスバンドよ」
そう、いつか使おうと思って隠しておいたもの。
修くんに使おうと思ってたけど、こんな役に立つとはね。
「それを、入れるん…ですか?」
「そうよ。だから、あなたの処女を貰いたいの。あなたが私の物になる誓いとして」
「…」
無言で後ろを向いて、割れ目を自らの指で拡げる冬華。
「冬華の初めて、理緒お姉様に差し上げます…その代わり、優しくして下さい…」
「分かったわ。じゃあ、いただきます」
くちゅくちゅと割れ目をなぞり、ペニスバンドを濡らす。
そして、先端を入れた。
「んっうぅ…」
「大丈夫?」
「はい…だから、奥まで、入れて下さい…」
その言葉を聞いて、ペニスを押し込む。
「あぁぁっ!」
「痛くない?」
「思ったより、痛くないです…だから、動いて下さい…」
ゆっくりと前後運動を始める。
「んっ、んっ、ふぁぁ!」
「これ、気持ち良いの?」
「はいっ、太くて、おっきくて、奥まで届いて、気持ち…いいですぅ!」
確かに、冬華はよだれを垂らす程快感を感じているらしい。
「ひあっ、あん、んぅっ、あっ、すごいぃ!」
「もうイきそうなのかしら?」
「冬華、もうイっちゃいますぅっ!」
「そう。じゃあもう少し激しくするわね」
パンパンと体の当たる音が激しくなる。
「ひぁぁ!だめっ、冬華、もう、イっちゃうぅ!」
一際大きく体を反らすと冬華はどさりとベッドに倒れた。
縄を外して、冬華の横に寝る。
「はぁっ…はぁっ、りお、おねぇさま…すごく、気持ち良かった…」
「これであなたは私の物。嬉しい?」
「はい…冬華、りおおねぇさまのものになれて…うれしいです…すぅ…すぅ…」
疲れ果てたのか、冬華はすぐに寝息をたて始める。
これで現状の邪魔は消えた。
後は、羽居春華と氷室澪。
特に羽居春華は何をするかわからない。
あの子は、いや、あの女は私と近いものを感じる。
下手をすれば、一線を越える事も平然とやってのけるだろう。
自分の頭の中で要注意だと認識させ、冬華の横で眠りについた。
投下終了します。
乙GJ
だが個人的な苦言を呈すれば…
冬華があっさり落ちすぎ、理緒姉もあっさり弟以外に愛着抱いちゃった辺りに萎えた
兄弟以外目に入れないガチキモウト、キモ姉好きだからかもしれんが
鬱展開
喜十郎兄貴の今後を想像するだけで欝になれるぜ。
>>150 GJ!!でした。
ただ、冬華には堕ちてもらいたくなかったな。
実は堕ちたふりをしているなんて展開にはならないよね……。
たしかに妖艶な子供って良いよな。
ま、RPGでも徐々に敵が強くなってくだろ?
恐らくそういうことさ。
>>150 GJ
正直こんな展開になるくらいなら冬華が殺されたほうがまだ良かった('A`)
正直GJしか言わないイエスマンばかりってのもどうかと思うけどね
その辺は本スレでなく本スレでなくWikiの掲示板に感想スレなり何なり作ってやったらどうかな
イエスマン(笑)
嫌いな作品はNGするなり無視するなり飛ばせばいいんだろw
誰も作品が嫌いだとは言ってないよ
好きで読んでる作品でも読者的に「こうだったら良いな」ってのは普通あると思うんだが
でもそれはルール上このスレで言うことじゃないからWikiの掲示板でやればどうかって提案してるだけ
じゃあイエスマンなんて言わなきゃいいんだろ、それだとGJって言ってる人が馬鹿みたいに聞こえるじゃないか
後言うなら自分で作ってみたら?
別に馬鹿にしたつもりはないし、なにをそんなに突っかかってきてるのかよく分らんのだが…
作品全肯定な人は良いけど、それ以外の意見が出来ないような現状はどうよっていってるだけ
書きたい人と読みたい人だけがいればそれでいい。
それに対してああだこうだ言うのは余計なお世話以外の何ものでもない。
お前が気に食わなくても、それを読みたい人だっているんだ。
勝手な意見で改変させようとしないでくれ。
作者さんの好きなように書いてもらって
好みだったらGJ、好みじゃなかったらシカトすればいいだけだろ。
いや、あのな出来ればちゃんと読んで欲しいんだが
気に食わないなんていってないし、感想としてああだこうだ、言いたい人間もいるわけだから、それならWikiでやらないかって提案したんだよ
それに感想を見て作品の方向を修正するかどうかは作者がすることだと思うんだが
>>165 どちらかというと、賛成だがいちいち相手にするなよ
167 :
時給650円:2007/11/07(水) 18:38:50 ID:HMwhFS7b
あの、投下して……いいですかね?
一応
>>69の続きです。
ばちこい
「りんねぇ、りんねぇ」
「ん?」
「ボクこの家に来て……あにぃたちに逢えて本当によかったよ」
隣を歩く凛子にだけ聞こえるように、麻緒はそっとつぶやいた。
凛子は思わず振り返ったが、麻緒の顔は、真っ赤な西日に照らされて、よく見えなかった。
だが、たとえ見えなくとも、妹がどんな表情をしているかくらいは凛子には分かる。
何といっても凛子は、麻緒の、血を分けた実の姉なのだから。
そのまま麻緒は、前方を歩いていた詩穂に楽しそうに話しかけ、黄色い笑い声を上げている。
妹が――あの人見知りの激しい麻緒が、ほんの数日前に初めて会った者たちの前で、あんな表情をするなんて、今まで想像もできかった。
そのまま彼女は、傍らを歩く長身の“兄”を見上げた。
その背に、遊び疲れてすっかり眠ってしまった小学生の末妹を背負い、“妹”たちが仲良く笑っているのを、目を細めて見守っている。
――綾瀬喜十郎。
おそらく違う出会い方をしていれば、凛子なら鼻も引っ掛けないであろう、地味な少年。
ありていに言うと、凛子は世間というものに、言い知れぬ恐れを抱きながら生きていた。
自分と麻緒が、世間で言う“愛人の娘”であり、“隠し子”である事実は、どうしても少女たちの心理に影響を及ぼさざるを得なかったからだ。
父が母を愛している事も、母が父を慕っている事も、彼女たちは十二分に知っている。
だから凛子は、父を憎んだり、母を軽蔑したことはない。自分たち姉妹がこの世に生を受けたのは、歴然たる父母の愛情の結果であり、決して堕胎の失敗などという――望まれずに生まれた子供ではないという事実を、十二分に承知しているからだ。
だが、それでも父はしょせん、己の家庭を持つ“妻子ある男”であり、自分が“不倫の子”という、あまり胸を張って歩けない事情を背負っている事も、理解しているつもりだった。
そして世間の目というものが、そんな自分たちにどういった視線を向けるかということも。
人間であれば、誰でも秘密の一つや二つは持っている。
だが、その秘密が大きければ大きいほど、その者の心に、より大きな影を落とす。
それは、凛子や麻緒とて例外ではない。
スポーツ万能で、幼少時は元気のカタマリのようだった妹の麻緒は、思春期を迎える頃から、次第に寡黙な人見知りの性格が前面に出始め、凛子や特定の友人たち以外には、心を開かない、うつむき気味の少女になってしまった。
凛子とてそうだ。
麻緒のように喋らなくなったわけではないが、それでも、他人と無意識に距離を取り、警戒する癖は抜け切らない。
だが凛子は、その冷めた眼差しを意図的に、巧妙に隠す器用さは持ち合わせていた。
だから学校に友人は多い。
しかし、何でも忌憚無く話し合える親友がいるわけではない。少なくとも今の学校に、彼女たち姉妹の“秘密”を知る者は誰もいない。
学校生活において不可欠な人間関係――凛子から見た友人たちは、その程度の存在でしかないからだ。
だから彼女は無難に、円滑に、友人たちと付き合い、多少の信頼を得ている。それは誰に対しても常に一歩離れた視線を忘れない、凛子ゆえの対人交渉術のおかげといえた。
そして、その用心深さに加え、生来の潔癖感が、彼女にとって近寄りがたい人種を増やす。
つまり、要するに、ハッキリ言えば、彼女は男が嫌いだった。
凛子は父が好きだった。――といっても、父を男性として意識していたわけでは決して無いが。
母が株で稼ぎ出した(母子三人が住むにはやや広すぎる)邸宅に、たまに父・和彦が訪れると、彼女は大ハシャギで甘えた。父の穏やかさ、温かさ、そしてたまに見せる厳しさは、彼女の周囲の男たちには無いものだったからだ。
だが、父は自分ではなく、母のものだった。父・和彦がどれほど母を愛していたのかは、娘である彼女自身が誰よりも知っていたからだ。
そして、彼女の周囲には、少なくとも年長者たる教師を含めても、和彦のような包容力を持ち合わせた男性は皆無だった。
周りの男に絶望するほどに、凛子は父が好きになり、父を好きになるほど彼女は、周囲の男を嫌悪した。
特に、同世代のクラスメートなど話にもならない。
彼らの心中にあるのは、ひたすら自分だけ。そして性欲を発散するだけ。
彼らにとって“恋人”“彼女”という存在は、彼ら自身のしょぼさを飾り立てるためのアイテムに他ならず、決して愛情の結果などではない。
何より凛子には、彼らの短絡さ、下品さがどうにもガマンできなかった。
だから、彼女はこれまで“彼氏”を作ったことが無い。
ぶっちゃけた話、凛子は男子生徒たちに結構もてた。
彼女の猫のようにくりくり回る目や、こざっぱりした髪型、些事にこだわらないサバけた気性。それらは、充分に他者を惹きつけるに足るものだったからだ。
だが彼女は、正直な話、そんな下品な生物に、性欲の対象と見られていると思うだけで、嫌悪の余り鳥肌が立つ思いだった。その拒絶反応を、当の男子たちに気付かれないように振舞う事のみが、凛子としての精一杯の優しさだったのだ。
だから、――凛子は思う。
喜十郎と“兄”として逢えて、本当に良かったと。
“兄”として見た彼は――凛子がこれまで男性たちに捜し求めて、ついに見つからなかったもの(むしろ見つからずに済んで逆にホッとしていたもの)を、すべて持っていた。
彼女は、自身のファーザーコンプレックスが、ここまでブラザーコンプレックスに直結しているとは思っていなかった。しかし、いずれも年長の異性に抱く憧憬の感情である以上、共通点が多いのも当然だろう。そう思うと納得は出来た。
凛子は少なくとも、自分の好悪を客観視できるくらいには論理的だった。
だから、自分が同世代の男に抱く嫌悪感が、多分に偏見を含んだものであるという事実も気付いている。
自分と同じ教室で、だらしなく着崩した制服を纏う男子生徒たち。――それだけで凛子の興味は消え失せる。そう言っても過言ではない。
もし、単なる級友としてあの“兄”と出会っていたら、恐らく自分は、彼の名すら覚えないだろう、と。
そうであったら、自分は彼の――喜十郎の本当の魅力に何ら気付く事無く、見過ごしてしまっただろう。それは、家族を亡くしたばかりの彼女にとって、大いなる損失になったはずだった。
「今日は楽しかったね、麻緒」
「うんっ!!」
綾瀬家の風呂は広い。
その面積は、ちょっとした旅館の風呂場程度の規模があり、掃除や湯の張替えも大変だと思うが、そこは女の子が圧倒的多数を誇る綾瀬家である。毎日毎晩、彼女たちは広い湯舟に新しい湯を張り、入浴を楽しんだ。
いま、凛子と麻緒が二人で一緒に入っている。
「しっかし、おかしな家ねえ。部屋数も少ないのに、風呂だけこんなに大きいなんて」
凛子がそう言うのも当然だった。
彼女たち二人が増えた事によって、この家の人口密度もまた上がった。
それまで六人だった綾瀬家の娘たちは、それぞれ年長組(桜・春菜・真理)と年少組(深雪・詩穂・比奈)の三人づつに分けられ、それぞれ二部屋に押し込められていた。
それが、今では凛子が年長組の部屋に、麻緒が年少組の部屋に振り分けられ、何と六畳間に少女四人ずつという、体育会系の合宿所のような手狭さを呈していた。
正直な話、それは彼女たちがかつて住んでいた、あの邸宅ではあり得ない話だった。
「でも、ボク、こういうにぎやかなの大好きだよ。キャンプみたいでさ」
「そうね。まあ、まだマシとは言えるわね。アニキの屋根裏部屋に比べれば」
「あはははっ、そうだよねっ! あれはちょっと、あにぃが可哀想だよね」
喜十郎が使っている屋根裏部屋とは、かつて綾瀬家の家族が納戸として利用していた空間で、そこに置いてあった様々な物品を片付け、始末し、今では彼は、そこを寝床代わりにしている。
六畳間に四人ずつの現状から鑑みれば、いかに屋根裏とはいえ個室扱いに聞こえるが、そうではない。屋根裏部屋は居住性からいえば、文字通り最低ランクの空間だったからだ。
窓が無いために換気も出来ず、かび臭い匂いがこもり、屋根から直に外気の気温の影響を受けるため、寒暖差の激しさが凄まじく、とてもまともな人間の暮らす場所ではない。
「あにぃが言ってたよ。あそこは独房だって」
「ん〜〜ま〜〜、アニキには悪いけど、お金もらってもあそこで暮らすのはヤだよね」
「りんねぇが『お金もらっても』なんて、相当だよねぇ」
「ちょっと、仮にもお姉さんを銭ゲバみたいに言わないでくれる?」
「じゃあ、いくらもらえたら、あそこで暮らせる?」
「……月十万ってとこかな?」
「あはははっ、その微妙に具体的なところが、やっぱりりんねぇだぁ」
「あらあら、盛り上がってるみたいですけど、一体何のお話ですか?」
そう聞こえたかと思うと、風呂場の扉がからりと開き、真理が入って来た。
「私もご相伴あずかっていいですか?」
「あ、――ええ、どうぞ」
反射的に凛子は言葉を返すが、どうしても気圧される自分を意識してしまう。
「真理ちゃん、真理ちゃん、今日の深雪ちゃん特製メニューは何なの?」
そんな彼女とは対照的に、麻緒は屈託ない笑顔を真理に向ける。
「さあ、ちゃんとは聞いていませんが、とても“期待して欲しい”メニューだと言ってましたわ」
「わあ、嬉しいなあ。ボク遊園地で汗一杯かいたから、とってもお腹すいてるんだぁ」
(とても“期待して欲しい”メニュー?)
凛子は、思わせぶりな真理の口ぶりが、妙に引っ掛った。
――実は、凛子は、真理のことが少し苦手だった。
ファーストコンタクト以来の喜十郎主導による歓迎で、彼女は他の姉妹たちとも、とりあえず、学校の友人たち程度には打ち解ける事が出来るようになった。
桜や春菜は、表面的な性格こそ全然違うが、根っこは同じく体育会系的だったので、会話を合わせるに雑作は無く、年少組の三人は(深雪を除けば)そもそも精神年齢が違い過ぎるので、仲良く“してあげる”のに苦労も無かった。
つまり唯一、苦手なタイプが真理だった。
自分の感情を内に秘め、逆に他者の思惑を敏感に読み取る真理と、一見サバけた態度を取りながらも、内心、相手を冷静に観察する凛子。二人は結構、似たもの同士と言えたかも知れない。
そして何より、真理の怜悧な瞳は、凛子自身が彼女に苦手意識を持っている事をも気付いていそうな雰囲気さえ漂わせていた。
凛子にとって、それは屈辱だった。
「お二人とも、少し宜しいですか?」
凛子と麻緒が、その声に振り向く。
真理が、腰までなびく黒髪を湯ですすぎながら、と湯舟の二人を見ていた。
「お二人は、……兄上様をどう思われます?」
「「え?」」
数瞬、ぽかんとした沈黙が風呂場に走った。
「……あら、そんなに難しい質問だったですか?」
という、真理の笑顔にようやく二人は、意識を取り戻す。
「いや、でも、その、――イキナリあにぃのことどう思うって訊かれても、ボクちょっと、その……」
「あの……真理ちゃん、その質問の意図が読めない以上、アタシとしても、どう答えていいか分からないっていうか……、そもそも何の質問なの、それは?」
しどろもどろになりながら、頬を紅潮させる麻緒と、不意を突かれて冷静さを失った自分をたしなめるように、質問に質問を返す凛子。
――ある意味、分かりやすい姉妹だ。
真理は、微笑ましささえ感じながら、そう思う。
「特別な意味はありませんわ。強いて言うなら、言葉通りの意味です。あなた方が、私たちの兄上様を、どのような目で見ておられるか、それを訊きたかっただけです」
「どのようなって……アタシたちは、まだアニキに会って五日しか経ってないんだよ? そんな質問に答えられるような関係は、まだ築けて無いと思わない?」
「思いませんわ」
真理は、何とか解答を回避しようとする凛子の常識的な理屈を、真正面から両断する。
「それは、あなた方が一番承知しているはずでしょう?」
そう一方的に言われては、もはや凛子としても、これ以上、屁理屈のこねようがない。
彼女自身、たったの五日で、早くも“兄”を好ましい異性として意識しつつある自分を、多少の混乱を伴いつつも、確認していたからだ。
(こっ、このアタシが……こんなに簡単に、男なんか好きになっちゃうの……?)
かつて同世代の男子を、冷えた視線以外で見たことの無い自分が、――父と同じ雰囲気を持つという、ただそれだけの理由で好きになりつつある。
そんな乙女回路が自分に存在していること自体、凛子自身、にわかに信じられなかったし、何より認めたくなかった。今まで張り詰めていた何かが、音を立てて崩れてしまいそうな気がしたからだ。
「だっ、だったら、真理ちゃんは――あなたたちはどうなのっ!? 人に一方的に訊く前に、自分たちの事も言いなさいよっ。でないと不公平でしょっ!!」
葛藤に苛まれる凛子としては、これが精一杯の抵抗だった。
「そうですね。確かに、そういうプライベートな質問は、一方的に訊くだけでは不公平ですわね」
真理は首をかしげると、
「――愛していますわ」
「えっ!?」
「“兄”としても、我が家の次期当主としても、何より一人の男性としても」
あっさりと、そう言い切った。
「それは、何も私だけではありませんわ。桜ちゃんも、春菜ちゃんも、深雪ちゃんも、詩穂ちゃんも、比奈ちゃんも――早い話が、“私たち”全員、いつの日か兄上様の花嫁になるのを夢見ているのです」
そう答えた真理の笑顔は、一分の曇りも無かった。
そして、その笑顔は、そのまま彼女たちに、こう言葉を続けた。
「凛子ちゃん、麻緒ちゃん。――“私たち”の仲間に入りませんか?」
「な、仲間って……? 真理ちゃん」
おそるおそる訊く麻緒に、そのまま真理は笑顔を向けながら、じゃぽんと湯舟に入る。
「それも、言葉通りの意味ですわ」
「え?」
「兄上様の全てを愛し、生活全般のお世話をし、他の女どもから御守りし、全身を使ってご奉仕をし、逆らったらお仕置きをし、――最終的に“私たち”だけを愛するように躾る」
まるで授業内容を問われた教師のように、こともなげに真理が語る。
「兄上様を監視し、管理し、独占し、調教し、そして支配する。その仲間に入りませんかと伺ったんです」
「真理ちゃん……あなた、本気で言ってるの……?」
「ええ“私たち”は――少なくとも私は本気ですよ、凛子ちゃん」
「アニキを支配するって……あなた自分で言ったばかりじゃない! アニキのことを愛してるって!!」
「ええ、愛してますわ。この世の誰よりもね。だからこそ、でしょう?」
「だからこそって、……分かるように言いなさいよっ!!」
「愛する人を独占したい。独占して支配したい。そう思うのは、人間としての自然な感情でしょう?」
そう言った真理の瞳には、さっきまでの笑みはなかった。
「だったら……ボクもあにぃを支配できるって……そういうことだよね……?」
絶句していた凛子が思わず振り向く。
さっきまで真っ赤になって、自分と真理のやりとりを聞くことしか出来なかったはずの妹が、――うぶなネンネで、男女の事など何も知らないはずの麻緒が、眼前の魔女の言葉に反応している!!
「麻緒……あんた何を考えてるのっ!?」
思わず凛子は声をあげた。
しかし、そこに、彼女の知る素直な実妹は、もういなかった。
「だったらさ真理ちゃん! だったら……例えば……その……ボクとあにぃがキスとかしてもよかったりするの……!?」
そこには、内に秘めた欲望を一気に開花させた、一人の女がいるだった。
「ええ当然。キスがしたければ、いつでも、どこでも、好きなだけして頂いて構いませんわ」
「でっ、でも……あにぃが、その、嫌がったりしたら……?」
「ご安心下さい」
真理が再び、艶然と微笑む。
「兄上様に“私たち”に逆らう権限はありません。それでも、どうしても兄上様が拒絶なさるなら、もう二度と逆らえないような、お仕置きをしてあげればいいだけです」
「け……権限って……あんたたち一体……!?」
そんな凛子の呟きも黙殺する形で、真理の淫らな説明会は進む。
そして、いま麻緒の頬を紅潮させている感情は、さっきまでの羞恥ではない。明瞭な性的興奮だった。
「お仕置きって……具体的にあにぃに何をするの?」
「そうですねえ。それは私たちの気分次第だったりしますから、一概には言えませんねえ」
「でも、最低限コレ以上っていう基準はあるんだよね?」
「そうですね。まあ最低でも、兄上様が泣いて謝るくらいには痛かったり、恥かしかったりは、ね?」
「お尻ぺんぺん……とか?」
「ああ、一時期はよくやりましたね。――兄上様のお尻って、とってもスベスベして、まるで赤ちゃんみたいにキメ細かい肌ですから、すごく叩きやすいんですよ」
「……すごい……そんなことまでしてるんだ……」
「ふふっ、まあ、百聞は一見にしかずって言いますしね。興味がおありなら実践でお教えしますわ」
そう言いながら、湯舟から上がった真理は、麻緒に手を差し伸べた。
「さあ、行きましょう麻緒ちゃん。リビングで兄上様が待っていますよ」
「うんっ!!」
そして真理は、妹の意外な言動に呆然とし、固まったままのもう一人の少女にも、視線をやる。
あなたはどうするの?
妹さんは、自分で自分の欲望の扉を開いたのに、あなたはそんな勇気さえないの?
まあいいわ。
嫌なら無理にとは言わない。ずっとお風呂に居なさいな。
真理の目が笑った瞬間、凛子はそう言われた気がした。
言われた気がした瞬間、凛子は湯舟から立ち上がっていた。
「――待ちなさいよっ!!」
「りんねぇ……」
思わず立ちすくむ麻緒。
サバけた風を装ってはいるが、その実、凛子はかなりプライドが高いことを、麻緒は知っていた。しかし、ここまで真正面から姉に怒鳴られた事は無かったからだ。
が、顔を上げた凛子の表情に、怒りは無かった。
「真理、アタシだけ仲間外れにする気?」
「……いいえ。とんでもない」
真理の目に浮かんだ笑みからもまた、嘲いの光が消えた。
「分かってくれると思ってたわ。あなたなら」
そう言いながら真理は、最後の少女に手を差し出した。
「さあ、行きましょう。めくるめく快楽の世界に」
以上です。
カラミは次回。乞う、ご期待です。
王大人「喜十郎の死亡確認」
淫獣の群れを読み終わるたびに「代わってほしいなあ」という感想が漏れ出てくる俺
次回も期待して待ってます
このペースでこのクォリティは異常
一日明けたら続きが来るんじゃ無いかとリロードしまくっちまうじゃないか
> 668 名前: [sage] 投稿日:2007/11/07(水) 08:08:37 ID:
> そういや一日の正確な時間は23時間56分4秒だったな
> じつにややこしい
>
> 673 名前: [sage] 投稿日:2007/11/07(水) 20:20:53 ID:
>
>>668 > 何かの漫画のあとがきで「兄さん殺し」と覚えてから忘れられなくなりました
こ、これは!
誰かこの漫画について潮騒詳しく。
>>178 GJGJGJGJ!!!!!!!!
喜十郎・・・
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三三 三三 三三 三三
三三 三三 三三 三三
>>178 GJにも程がある
やっぱり兄には親族にモテる傾向が・・・w
>>178 GJ!!!
喜十郎が羨ましすぎる
続きを楽しみにしてます
続き投下します。
自分は、率直な感想が聞ける方が良いので、気にせず書いて下さい。
「お世話になりました」
「冬華ちゃん、また来てね?」
「はい、またいつか」
「またな」
ドアを閉じて、私は走り出した。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
早く、あの家…いや、あの人から離れたい。
「はぁっ…はぁっ…」
早く、もっと遠くに離れなきゃ。
あの人は、怖い。
やっぱり、最初に感じた印象は、間違って無かった。
おそらく、もう私はあの人には逆らえない。
だから、もう会わなければいい。
修お兄ちゃんとは、公園で会えばいい。
あの人には、修お兄ちゃんしか無いのだろう。
私の事を可愛いと言ったのはきっと、言葉の上でだけだ。
あの人は、間違いなく、機会さえ有れば躊躇なく私を殺しても何も思わない。
「…ぐすっ…うっ…」
助かる為に、私は初めてを犠牲にした。
それを考えていたら、涙が溢れて止まらなかった。
「ひっく…ひっく…修お兄ちゃん、修おにぃちゃぁん…」
どうして、助けてくれなかったの?
どうして、あの人と一緒に居るの?
どうして、私のモノになってくれないの?
「修お兄ちゃん…待ってて?冬華が、修お兄ちゃんを奪ってみせるから。その後でゆっくりと助けてくれなかった恨みを晴らしてあげるから…」
「…」
「理緒姉、黙ってどうしたの?」
「少し、考えごと」
家を出た時の羽居冬華の目が気にかかる。
あの子の目、隠していたけど間違いなく怯えた、恐怖を隠した目だった。
だとすれば、あの子は墜ちていない。
昨日のは演技?
なかなか、やるじゃない。
なら、きっと私の嘘も見抜いているのだろう。
私が愛するのは、修くんだけ。
他には何もいらない。
私の世界には、私と修くんだけで良い。
いや、修くんが私の事だけを思ってくれるなら、私自身すらいらない。
それは、永遠に修くんを私の物にする事と同義。
まさに、私の理想の檻だ。
他の人はどう動くかしら。
羽居冬華は公園で会うだろう。
氷室澪は仕掛けてくるなら学校ね。
羽居春華は…どう動く?
あの女だけは、私にすら先が見えない。
私は、あの女を殺すだろう。
それがいつになるかまでは分からないけど。
予感、いや、これは確信。
私は間違いなく、あの女を殺す。
ならば、その時の為に万全を期するだけ。
一番なのは、修くんを完全に私の物にすること。
最悪は、私が負けること。
負けるつもりは無くても、負ける事も視野に入れておけば、隙が無くなる。
「理緒姉」
「どうしたの?修くん」
「冬華ちゃんに、何かしたのか?」
「何もしてないわ。一緒に寝ただけよ」
「何もしてないなら良いんだけど…羽居春華が理緒姉と会いたいんだってさ」
「羽居…春華が?」
「そうだよ。どうするんだ?断るのか?」
「いえ、会うわ」
「…明日の2時、近くの喫茶店で会いたいらしい」
「分かった」
まさかあっちから会いたいとはね。
私としては、会わずに済むならそれが一番だったんだけど。
―翌日―
「じゃあ、行ってくるわ」
「あぁ……理緒姉っ!」
「いきなり大きな声出してどうしたの?」
「ちゃんと、帰ってこいよ」
「お姉ちゃんが修くんを置いてどこかへ行くはず無いでしょ?」
「分かってる、分かってるけど…心配になったんだ」
「ありがとう。修くんに心配して貰えるならこれほど嬉しい事は無いわ」
「こんにちは」
「待たせちゃったかしら?」
「そうですね。5分位です」
「羽居春華さんよね?」
「はい。織部理緒さん」
「名前、覚えててくれたの?」
「記憶力は良い方ですから」
「ふふっ、あなた、面白い人ね」
「貴女は、悪い人ですね」
「あら、いきなりそんな言い方するの?」
「冬華に何をしたんですか?」
「なんのこと?」
「いえ、どうも帰って来てから元気が無いので」
ふ〜ん…ということはやはり羽居冬華は墜ちていないのね。
「私はあの子を可愛がってあげただけよ?」
「そうですか」
「今度は私が質問していい?」
「なんでしょうか?」
「あなたは修くんの事をどう思ってるのかしら?」
「ただの同級生のクラスメイト」
「それは修くんのあなたに対する評価でしょう?あなた自身はどう思ってるかを聞いてるの?」
「勉強友達です」
「へぇ…羽居冬華は修くんの事を好きみたいよ?」
「それが何か?」
「あなたはそれでいいの?既に羽居冬華は修くんと体を合わせているというのに」
「何故そんな事が分かるのですか?」
「そうね…私、鼻は良い方だから、匂いで分かっちゃうのよ」
「便利な鼻ですね」
「あなたの匂いは間違いなく修くんの事を好きになっているわ」
「そんな匂いは有りません」
「いいえ、あなたからは私と同じ匂いがするもの」
「弟を愛していると?」
「そうよ。私は修くんを誰より愛してるもの」
「気持ち悪い。家族を異性として愛するなんて」
「なんとでも言えばいい。私の気持ちは変わらない」
「その愛の為にはなんでもするんですか?」
「そうね」
「修くんが貴女を嫌っても?」
「そうね」
「人を殺す事も辞さないのですか?」
「そうね」
「わかりました。もう貴女と話す事は無いでしょう」
「いいえ、近いうちに必ずまた会うわ。必ずね」
「失礼します」
羽居春華、間違いなく私を嫌ってるわね。
別に修くんの評価以外気にしないけど。
質問の内容から考えて、間違いなくあの女も人を殺せる方の人間よね。
そうじゃなきゃ会うのが2回目の人に対してあの質問はできないわ。
ただ、意外なのは私の事を気持ち悪いと言ったこと。
あの女なら理解とまではいかなくても、負の感情を持つ事は無いだろうと予想していたのに。
あの女だって私の返答は予想していただろう。
「とりあえず第1ラウンド終了ってとこね」
投下終了します。
冬華ちゃんがあんなことになってショックのあまり昨日はGJと書き込めませんでした。
なので改めて昨日のぶんのGJ。
でもエロゲー等Hであっさり陥落する情けないヒロインが目に付く中、屈しなかった冬華ちゃんは輝いて見える!
今後とも冬華ちゃんを応援していきます!
冬華ちゃんにこだわりすぎてすまないorz
>>194 GJ!!!!
>その後でゆっくりと助けてくれなかった恨みを晴らしてあげるから…
修「ちょwwww聞いてないっすwwww」
兄貴は腹上死以外の死因が浮かばん。
少なくともあの家にいる限りは
>>194 冬華や理緒が実は演技だったってのは、ひょっとして住人が
萎えたとか、殺されたほうがまだよかった('A`)
とか文句みたいなこと言ってるやつらがいたからわざわざそういうことにしたの?
>>198 少なくとも理緒姉は演技でした。
冬華は迷ってたんですが、言われたのと、恐怖から快感に到るまでが急過ぎたので、演技にした方が自然だと考えました
その発言がどういう意味かわかっているかい?
おとなしく続きを待とうではないか
SS書きとしては同感できない書き方だけど
読者投票企画みたいなものもあるのだし、作者さんが好きに書けばいいんじゃないの
但し、独占厨的な層が(独占好きが感想を表明するだけまでもを、厨といいたいんじゃないよ)
批判することによって、展開を思い通にしてしまえる、と考えてしまうと問題ではあるけど
そういうのは人によっては気になるかもしれないだろ、だから鬱展開とか言ってた様なやつらは自分を恥じろ
言いたいことは色々あるが取り合えず、wikiの方で議論しようぜ、せっかく用意されてるんだし
評価は完結してからにする。
ただ、今のところ最高にGJ。
SSの書き方は作者の自由だろうに。
嫉妬スレのようにしたくないから、もうここまでにしようぜ
というか…
こんな会話文ばかりの作品に口出ししなくていいじゃん
小説にすらなってないし
>>208 そういうお前が口出すな
テンプレよく読め
書いて下さるだけでも、し…幸せだぜ……う、うう…。
>>208 気持ちはわからんでもない。
けどな、荒れるような発言は慎めよ
↓ここから下キモウトの属性を挙げていってクールダウン
虐殺
兄の下着を咥えたりにおいを強く嗅いだりする
兄の弁当に唾液、愛液、血を仕込む
結局のところ一途
大抵は両親を始末するorすでにしている。
綾たん
兄=世界
220 :
時給650円:2007/11/09(金) 04:26:44 ID:LFOwFA48
「あっ、そっかぁ、こういう事だったんだぁ! ……さっすがお兄ちゃま」
「まあね。分かり始めれば簡単だろう、中一の英語なんて」
「ふ〜〜ん、じゃあ、この『びーどーし』っていうのを、ただ引っくり返せば、それだけで疑問になるんだね。でも、どうしてそうなるの?」
「それは……まあ……そういうもんなんだよ」
「あ〜〜〜〜、お兄ちゃまも分からないんだぁ」
「ああ、もう! 脱線はいいから次の問3にいくぞ、詩穂」
「――そこまでよ、お兄様」
声の主の桜は、いつの間にか喜十郎の背後に立っていた。
「――お兄様、今からちょっと私たちに付き合ってもらうわよ」
笑いを含んだ、それでいて硬い眼光を発する“妹”に、喜十郎の背筋は瞬時に伸びた。
この桜という少女は、迷いを捨てると、こういう真っ直ぐな目をする。その双眸を、彼はいつもながら、とても美しいと思った。そして、それと同時に覚悟を決める。
(五日か……我ながらよく逃げたよな)
そんな彼の心中を読み取ったかのように桜が言う。
「お兄様、長い休暇はそろそろ終わりよ。いい加減、新生活の第一歩を踏み出しましょう」
「しんせいかつ?」
何も知らない詩穂が首をかしげる。
「あの……桜ちゃん、話が読めないんだけど……お兄ちゃまをどこに連れて行くの?」
「――ああ、そういえば詩穂ちゃんは、まだ知らないんだっけ?」
「出来れば、お兄ちゃまと詩穂が、宿題終わるまで待って欲しいんだけどなぁ」
「どちらにしろ、詩穂ちゃんにも一緒に来てもらうから、同じことよ」
「え、でも、だから、宿題が……」
桜は笑った。
“兄”に見せた硬い意思を内包した笑みではない。
太陽のような、いつもの自然で素直な笑顔。
思わず、詩穂もそんな桜に釣り込まれて、笑顔を見せる。
「じゃあ、詩穂にも教えてあげる。私と一緒に来ないと大損だっていう理由をね」
と言って、自身の赤い携帯電話を取り出す。
「ちょっ、桜っ、待てっ!?」
『――もっ、もうっ……もういいだろっ!! ぁぁぁぁぁ……もう、何度も誓ったじゃないかぁぁ……!!』
『ダメよお兄様、まだ足らないわ。今度はこの画面を見ながら誓うのよ』
「やめろっ! やめてくれぇ!」
「お兄様静かにしてっ! 聞こえないじゃないのっ!」
そう言いながら、桜は喜十郎を突き飛ばし、携帯のムービーを再生させながら詩穂の傍らに寄る。
『ああああ……おれは……おれは……“どれい”になりますぅ! おまえらのいうことを……ああっ、ひあああっ!! なんでもききますぅ!!』
その画面には、どこかの白いタイル張りの部屋で、ブザマに悶え泣きながら、床に土下座する彼の姿が映っていた。
――いや、単に土下座をしているだけではない。
液晶の中の“兄”は、ズボンと下着を奪われ、白い尻をむき出して、直接タイル張りの床に正座を強制され、マラリア患者のように全身を震わせている。彼の背後に映る春菜と真理が、喜十郎の肛門に手酷い悪戯をしているのであろう。
「桜ちゃん、これって……!?」
「五日前、あなたとお兄様がデートして、可苗に邪魔された夜、お兄様は誓ったのよ」
「何を?」
「可苗なんかに誘われて、ホイホイついていった罰として、私たち全員の“奴隷”になるって。……泣きながら駅の女子トイレでひざまずいてね」
うっとりしながらも、桜は詩穂にだけでなく、明らかに喜十郎にも聞こえる声で言う。
彼の顔色は、羞恥のあまり紅潮どころか蒼白になっていた。
『――もっ、もうっ、誓ったじゃないかぁぁ! これ以上なにを――ひぃぃっ!! なにを……いえば……ぁぁぁぁああああっっ!!』
ムービーの中で、真理が喜十郎のシャツの内側に、手を突っ込んだようだ。おそらく乳首をいじっているのだろう。
そこで画面は切れた。録画分の再生は終了したということか。
「うわあああああ!!」
詩穂たちが、ふと声のほうを見ると、――畳にうずくまった“兄”が、液晶の中の彼のようにガタガタ震えている。
「もう、見ないで……見せないでくれ……非道いよ……こんなの非道いよ桜……!」
「お兄ちゃま……」
羞恥の余り、我を忘れて震え続ける“兄”。
しかし、詩穂は何故か彼に対する同情よりも、自分のいない場所で、姉たちにその身体を自由にさせた“兄”に対する嫉妬が、むらむらと湧きあがるのを覚えた。
「安心して、お兄ちゃま。ムービーは終わっちゃったし」
だが、その言葉が終わらぬうちに、とことこと自分に近付く詩穂の影に、喜十郎は再び戦慄を覚えた。
「でも、お兄ちゃま、今度は――」
詩穂はそのまま“兄”の耳元で、囁いた。
「ムービーの中みたいに、詩穂の……ううん、深雪ちゃんや比奈ちゃんの前でも誓わなきゃダメだよぉ」
「っ!?」
愕然とした表情で喜十郎が、“妹”を振り仰ぐ。
「でないと……不公平だよぉ」
脱衣場で身体を拭き、髪を乾かす。
下着を身に着け、パジャマを着る。
その間、真理、凛子、麻緒の三人は無言であった。
――というより、雰囲気的に雑談を許さない空気が漂っていた、といった方が正確だろう。
麻緒としても、居間で待っているというイベントに、いまだ無数の疑問がある。
ちらりと、真理を見る。
この義姉は、これから起こるであろう宴に思いを馳せているのか、その目には潤んだ光さえ見受けられる。そして、その淫蕩な光が、麻緒に胸のうちの言葉を遮らせる。
凛子には悪いが、そんな“女”の匂いをぷんぷんさせている真理が、とても姉と同い年には思えない。真理独自の落ち着いた物腰とあいまって、確たる年齢を推定させない“大人の女”が、そこにいた。
(真理ちゃんって……かっこいいなあ)
麻緒とて、自分に劣等感の一つは持っている。
“隠し子”“私生児”という家庭環境的なものだけではなく、当然、思春期の少女の端くれとして、自分の肉体的な事に関しても、言い尽くせぬ不安や不満がある。
少女というより、幼い少年のような自分の容貌。
ほっそりとしたその身体には、まだ女性的なふくらみは乏しく、スマートというよりはむしろ、痩せぎすと呼ぶに相応しい肉体。
何より、同世代の女子なら、そろそろ発散し始める“女臭さ”のオーラが、自分にはまるで出せないという――女性としては結構、根本的な悩みがあった。
しかし、真理を見つめているうちに彼女は思い出す。
喜十郎を見上げる“妹”たち全員の眼差しが――比奈や詩穂といった、いかにも幼い義妹たちでさえ――時折、真理と同じ光を帯びているということを。
そのとき、不意に真理がこちらを振り向いた。
「……どうしました、麻緒ちゃん」
「えっ?」
「私に、何か訊きたい事でもあるのですか?」
「えっ、いや、――ボクは、その、別に……」
「そうですか。なら、いいんです」
静かに笑って、再び背を向けようとする真理に、
「あっ、あのっ、真理ちゃん」
今度は反射的に麻緒が声を掛ける。――が、真理の物静かな態度に、何も言えなくなってしまう。
「はい」
「なんで、その……ボクが……?」
「そんな目でじっと見られたら、私じゃなくても気になりますよ」
そう言いながら真理は静かに笑う。
そのあどけない笑いが、麻緒の背を押した。
「あっ、あのさっ、ボクもなれるかなっ!? 真理ちゃんみたいにオンナノコらしくなれるかなっ!?」
「麻緒……」
凛子が、驚きの表情をする。
麻緒が、女っぽくない自分にコンプレックスを抱いているのは知っていたが、何故こんなときに、こんな情況で、こんな相手に、こんな質問をするのだろう。
そもそも、この妹は、自分の劣等感を、そう気安く他人にさらけ出すような性格はしていない――。
だが、そんな凛子の“姉”としての疑問など、どこ吹く風といった態で、真理は微笑む。
「――ええ。麻緒ちゃんなら大丈夫ですわ」
「ほんとっ!? ホントにそう思うっ!?」
「麻緒ちゃん……あなたは兄上様が嫌い?」
いきなり不躾な質問が、眼前の少女から飛び出し、麻緒は面食らう。
――だが、
「どうなの?」
麻緒の迷いは一瞬だった。
「好きだよ」
迷いを吹っ切った途端、麻緒の中にあふれ出たのは、抑え切れないほどの喜十郎への慕情だった。
「ボクは、あにぃが好き、大好き。――まだ会って五日しか経ってないけど」
「んふふ……ドラマでもよく言うでしょう? 愛に時間は関係ないって。でも――」
そこまで言って真理の口元から笑みは消えた。
「それは……どんなにブザマな兄上様を見ても、言える台詞?」
麻緒には分かった。真理にとって、今のこの質問はとても重要なものなのだと。
だが、重要であろうがなかろうが、もはや今の麻緒に、答えは一つしかなかった。
「言えるよ。あにぃが何をしようがされようが、ボクにとって、あにぃはあにぃだもん」
「……そう」
真理の瞳に、再び微笑みがこぼれる。
「なら、大丈夫よ」
「真理ちゃん……」
「愛しい人を弄び、嬲り尽くして、その果てに在るものを理解するの。――そうすれば、あなたは誰よりも立派なレディになれるわ」
そう言って、真理はリビングの六畳間へ続く引き戸を、からりと開けた。
「ちょっとっ!! 遅いじゃない、真理っ!!」
居間に入った三人にイキナリ浴びせられたのは、桜の苛立った声だった。
――が、少なくとも、凛子と麻緒の二人はそんな声など全く耳に入らなかった。
眼前のとんでもない眺めに眼を奪われて、思考停止状態になってしまったのだ。
居間に置いてあるテーブル。
普段から大勢の“兄妹”が、食卓として利用するため、卓上面積はかなり広い。
また、喜十郎の実家にあるそれと同じく、天板に専用の布団を仕込み、ヒーターを取り付ければ、冬季にはコタツに流用できるため、脚は低く、短い。
彼女たちの目に飛び込んできたのは、裸に剥かれ、そこにX字状に磔(はりつけ)にされた“兄”の姿だった。
裸に剥かれと表現したが、実のところ本当に彼が全裸なのかどうかは、一瞥しただけでは分からない。
何故なら、彼の下腹部には、真っ白いクリームケーキがそびえ立ち、――いや、それだけではない。よく見れば彼の全身は、くまなくカスタードクリームやホワイトクリームで装飾され、あたかも“兄”の身体が一つの巨大なデザートの様相を呈していた。
喜十郎本人はといえば……すでに意識を奪われているのか、瞳を閉じたまま身じろぎ一つしない。
「どうです、お二人とも。兄君さまは美味しそうでしょう?」
春菜の声を聞いて初めて、二人は、テーブルの周りに六人の……いや、真理以外の五人の姉妹たちが居並んでいることに気付いた。
「むふふふ……、姫の自信作ですの。名付けて『深雪特製・にいさまのベルギー風クリームデコレーション女体盛り仕上げ』ですの!」
(そのまんまじゃん……)
(ってか、どこらへんがベルギー風?)
深雪が、ツッコミどころ満載の料理名(?)を、誇らしげに読み上げる。
「さあ、これが今宵のメインディッシュよ。みんなでお兄様を味わって、姉妹の絆を、より固くするの」
「「「「「は〜〜い!!」」」」」
桜がそう、高らかに宣言すると、真理を含んだ妹たちもそれに応え、……そして、応えると同時に、全員がいそいそと服を脱ぎ始めた。
「――ちょっ、ちょっとっ!! イキナリなのっ!?」
凛子が反射的に声を立てるが、
「だって、脱がないとヒナたちのおようふく、汚れちゃうもん」
当然のごとく答える小学生に、彼女は何も言い返すことも出来ない。
「りんねぇ」
「麻緒……!!」
実妹を見る凛子の目が、まじまじと見開かれる。
いつの間にかパジャマのボタンを外し始めた麻緒は、頬を赤く染めながら姉を見上げる。
「もういいじゃない、りんねぇ。いい加減に見栄を捨てないと、いつまでたっても楽しめないよ?」
「……でも……」
「じゃあ麻緒ちゃん、こっちおいでよ。詩穂と一緒に、お兄ちゃまを食べようよぉ」
詩穂にそう言われて誘われると、麻緒も明るく頷いて彼女の傍らに行ってしまった。
「いいこと言うじゃない、麻緒ちゃん」
そう言いながら麻緒を見送る桜は、腰に両手を当てて、凛子に近付くと、
「でも、凛子ちゃん、別に無理しなくていいのよ。あなたが戸惑うのも、年頃のオンナノコとしては当たり前なんだから。だから、あくまでも参加受付は、あなたの気が乗ってからでいいわ」
「――でも、覚えておいて下さいね、凛子ちゃん」
桜の言葉を引き継いだのは、二人の隣ですでに服を脱ぎ終えた真理だった。
「これは、あなたたちの“歓迎会”なんですよ」
「――ん……んん……!!」
そのとき、喜十郎が首をごりっと動かした。
「あら、にいさまが目を覚まされましたわ」
「み……ゆき……?」
いまだ自分の情況に気付いていないのか、喜十郎が妙に寝ぼけた声を出す。
「んんっ!!」
――が、その“兄”の唇に、深雪がイキナリ吸い付いた。
「あああああっ!!」
「ずるいですわ、深雪ちゃんっ!!」
そこからはもう、なし崩しだった。
“妹”たちは、我先にと“兄”の身体に貪りついていった……。
228 :
時給650円:2007/11/09(金) 04:41:52 ID:LFOwFA48
今回はここまで
うおおおなんと言う焦らし・・・・・
GJですた
兄ちゃんオワタww
新しい2人が兄ちゃんを救うとかひそかに期待していたが、かなわんか…orz
>>230 え、救うって助けが必要なことは起こってなくね?
2人は兄を独占したくなって第三勢力に。
だが何をしようと可苗の手のひらの上よな〜
GJ!
しっかし兄ちゃんボロボロだな
だが、それがいい!
その頃、可苗の心中はいかに…
新しい妹二人は可苗にとってイレギュラーになると予想
私の名前はソウカ=アマノ。
歳はちゃんと結婚も出来ちゃう18歳。職業は冒険者で、熟練度(レベル)31の黒魔導士。
そんな私は、今日も元気に愛する弟であるユー君、ユウト=アマノと世界を旅しています。
ユー君と二人っきりで、ユー君の傍で、ユー君を守りながら。
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
広々とした、時たま吹く風に緑の絨毯が揺らされる草原。
私は上級爆熱呪文が魔物を焼き尽くす心地良い音と共に、ユー君の高い声を聞いた。
ちょっと離れた所で轟々と燃え盛る炎を前に、ユー君が男の子にしては少し長めの黒髪を熱風に揺らしている。
赤々と燃える炎が色白のユー君の顔を照らしていて、うん、とっても素敵。綺麗だよ、ユー君。
「ああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
でも、当のユー君はうっとりと見詰める私の視線に気付かずに、地面に両膝をついている。
ユー君への愛で赤く染まった私のほっぺも見て欲しいのに。残念。
そんなユー君は気のせいかな、少し目が潤んでるみたい。それがまた炎に照らされて、綺麗な光を湛えてる。
もし涙が流れたら舐め取って慰めてあげようと思ったけど、ユー君はがっくりという感じで俯いた。
「・・・・・・・・・姉さん」
「なあに? ユー君」
俯いたせいで顔は見えないまま、微かに呼ぶ声が聞こえたから近づいていく。
呪文を放つ前に駆除した魔物の残骸を、何色かの血と一緒に踏んでいく。ユー君の傍で立ち止まると、熱風が私の体を撫でた。
今日もユー君を魔物の手から守りきった達成感と共に、熱が私の体を火照らせる。
「姉さん」
「ぅんっ・・・・・・なあに?」
こういう時にユー君に呼ばれると、不覚にもちょっと感じちゃう。
戦いの後の高揚もあって、いつもこれを我慢するのは一苦労だ。
出来ることなら今すぐにユー君に抱きついて、ちゅーして、この喜びを姉弟で分かち合いたい。
「姉さん・・・・・・ボク、言ったよね。今回は、今回だけはちゃんと手加減して戦おうって。
せめて一匹くらいは魔物を殺さないで弱らせるだけにしてねって・・・・・・お願いしたよね?」
「うん、そうだね。他でもないユー君のお願いだもの。お姉ちゃん、ちゃんと覚えてるよ?」
でも今はダメ。駆除し終えたばかりの、汚らわしい魔物の血の臭いが辺りにこびりついてるから。
私の着ている漆黒のローブにも、目だ立たないけど返り血がある。
こんな場所や状態でここに長居したり、ユー君に抱きついたりしたら折角のユー君の好い匂いが台無しになっちゃう。
ましてや、ユー君に魔物なんかの血をつけるわけにはいかない。我慢我慢。
「じゃあどうして! またっ! こんなことになるのさっ!?」
「きゃんっ♪」
ユー君のためにも。そう思ったとたん、ユー君の方から立ち上がって掴みかかってきた。
両肩をぎゅっと握られてがっくんがっくんと揺さぶられる。
冒険者になりたての頃より背が伸びて、私と同じくらいの高さになったユー君の顔が近づいたり離れたり。
もう、ユー君ったらたまに大胆になるんだから。
「何回目だと思ってるの!? 冒険者になってからもう二年以上だよ? いい加減にしてよっ!」
ユー君の方から求めてくれるなら私に文句はない。
だけど、取りあえずはユー君の質問に答えようかな。
一通り私を揺らしてから、顔を近づけてぴたっと私を固定したユー君の瞳を見てから言う。
「てへ。やりすぎちゃった♪ ごめんね、ユー君」
「うううぅぅぅ」
ユー君も思春期だから、お姉ちゃんの顔をあんまり近くで見るのは恥ずかしかったのかな。
私から手を離すとちょっと下がってまた俯く。
「姉さんはいつもそうだ・・・・・・ボクのことを大切だって言う割りに、ちっとも話を聞いてくれない・・・・・・」
そのままぶつぶつと何かを呟き始めた。
こうなってしまうと、ユー君は元に戻るまで少し時間がかかる。
駆除した魔物の死に心を痛めているのかもしれない。ユー君は優しいから。
私にとっては、魔物なんて汚らわしくて、私とユー君の時間を邪魔する害虫でしかないけれど。
ユー君にとって違うみたい。もちろん、そこには優しさ以外の事情もあるけれど。
ユー君の職業は魔物使いだ。熟練度は23。
呼んで字の如く魔物を使役する、魔物の被害に困っている人が多いこの世界ではいまいち不人気な職業。
ユー君が冒険者を目指したのは、ユー君がちっちゃい頃によく聞かせてあげてた童話に出てた魔物使いに憧れたからだ。
確か、人間だけじゃなく魔物とも友達になれるなんて凄い、って言ってたと思う。
思い返すと、ユー君は特にその童話がお気に入りで、子供の頃から前兆はあった。
あの本、もっと早くに捨てておけばよかったと思う。
そうすれば、ユー君が冒険者になる、なんてことを言い出すこともなかったのに。
勿論、私はユー君が冒険者になるのに反対した。猛反対した。
考えられる限りの論理と、時には私を捨てるのって情に訴えたりもした。
だって、外の世界は、私とユー君が生まれ育った村の外は危険が一杯だ。
魔物はいる。盗賊を始めとする色々な悪人もいる。ユー君の魅力に惹かれて発情する雌猫だっているだろう。
わざわざそんな場所に行く必要はない。
ユー君の欲しいものは、何だって私が用意してあげる。ユー君は一生私が守り、幸せにしてあげる。
あの村で。あの誰もユー君と私の邪魔をしない、二人だけの小さな家で。
そのためなら私は何だって出来る。
たった二人の姉弟だもの。誰よりも濃い血と絆で繋がった、誰よりも愛しいユー君のためだもの。
だから、私は反対した。なのに。
ユー君は首を縦に振らなかった。
ううん。それどころか、つい熱くなりすぎてユー君の夢を否定した私に、姉さんなんか嫌いだって言った。
死ぬかと────────死のうかと思った。
その時にそれを実行しなかった自分の判断を、今でも私は褒めてあげたい。
私が死んだら、多分ユー君は悲しんで悲しんで、でも私っていう絆のなくなったあの家をすぐに出たと思う。
ユー君のことだから、私が一番分かる。
そうしたら、ユー君は村を出て、冒険者になって、旅をして。
もしかしたら途中で魔物や悪人に殺されて、生き続けられたとしてもどこかで私以外の人間に会って、
私の知らない人と、私の知らない、私のいない場所で楽しくして。
そして、いつか恋をして、どこの誰とも知れない私以外のオンナと結婚を────────。
そ ん な こ と は 許 さ な い 。
だから、私は決意した。
ユー君を止められないなら、私がついて行けばいい。
ユー君と一緒に旅をして、ユー君の敵を殺して、ユー君を守って、ユー君を奪おうとするモノを排除して。
そうすればいい。
いつか、ユー君と骨をうずめる場所を探しに行くんだと思えば、むしろ楽しいことだ。
当然、ユー君は反対したけど、ユー君と同様に私も退かないと分かると渋々ながら許してくれた。
いまいち押しにも押すのにも弱いユー君だから、その結果は当たり前。ユー君は優しいのだ。
そんなこんなで、私とユー君の二人っきりの旅が始まって二年くらい。
私は今日まで、ユー君を守り続けている。
ユー君には傷一つ負わせないまま魔物は皆殺しにしているし、襲ってくる盗賊なんかはきちんと将来の結婚資金に変えた。
ちゃんとマーキングしているから泥棒猫は寄ってこないし、
ユー君が寝てる間にしっかりヌいてあげてるから、何というか、ユー君がいかがわしい場所に行くこともない。
他の女の臭いがすればわかる。
ただ、ユー君は私の戦い方には不満があるみたいだけど。
魔導士は基本的に大威力の呪文で敵を殲滅するから、手加減が利かない。
利いたとしても、戦士なんかよりは融通が利かない。
ユー君も転職して魔物使いになってからはどうにかして魔物を仲間にしようとしているけど、
戦力としては低い魔物使い単体では魔物をなかなか倒せないし、そもそもユー君だけで戦わせたりはしない。
そして私は魔物相手に手加減なんかしないから、私達と戦った魔物はほぼ逃げるか死ぬ。
つまり、ユー君は魔物を仲間にすることが出来ない。ユー君は戦闘の後はいつも不満そうだ。
だって、仕方がない。魔物は敵だ。
ユー君に襲い掛かり、ユー君を傷付け、ユー君を殺そうとする敵だ。
そんなモノに、私が手加減できるはずがない。
ユー君の敵は殺す。ユー君に近づくものは殺す。何に代えても、私が殺す。
本能だろうと何だろうと、ユー君を攻撃するなんて許されるはずがない。
その上で生き残ったら仲間になるだなんて吐き気がする。
ユー君の敵なのに。ユー君の敵なのに。ユー君の敵なのに。
ユー君の敵は殺す。ユー君は私が守る。たとえ攻撃だろうと何だろうと、ユー君に触れていいのは私だけ。
生まれた時からずっとユー君を傍で見守ってきた私だけ。
ユー君に触れるのも、傷付けるのも、愛されるのも、愛するのも全部、全部私だけだ。
二人を結ぶ血の絆に割って入る存在なんて許さない。魔物なんていなければいい。
ユー君を惑わす魔物なんか、全て死んでしまえばいいのだ。だから、私は見付けた魔物は一匹残らず殺す。
でも、私には最近、一匹だけ存在を許せる魔物が出来た。
「そう言えば、ユー君は知ってるかな?」
「・・・の間迷宮で・・・剣士の彼女だって・・・すれば・・・・・・え? 何、姉さん?」
ぶつぶつと呟き続けていたユー君が顔を上げる。
ずっと昔から変わらない、可愛くて大好きなユー君の顔に向けて、私は微笑んだ。
「ユー君は、『魔物の心』って知ってる?」
「魔物の心・・・・・・って確か、魔物が極稀に落とす、
転職の時にそれを使えばそれを持っていた魔物になれるっていうアイテムのことだよね?」
「うん、正解」
流石ユー君、魔物のことになると物知りだ。
私はユー君の頭を撫でてあげてから、それを出した。
「じゃーん」
「姉さん・・・・・・これ」
それは真っ黒な、ユー君の瞳くらいの大きさの珠。
「魔物の心だよ。ユー君には秘密で、ちょっとしたツテで手に入れたの」
本当は、今さっきユー君が言ってた女剣士のパーティを皆殺しにした時に拾ったんだけど、それは秘密。
教えたら、きっと優しいユー君は悲しむから。あんな女のことをユー君が気にするなんて許せないし。
「お姉ちゃん、いつもユー君に迷惑をかけちゃってるよね?
お姉ちゃんのせいでユー君は仲間にする魔物が出来なくて、困ってるよね?」
「えっと。まあ、そう・・・・・・だけど」
ちなみに、これは普通の魔物の心じゃない。その中でもとびっきりレアなものみたい。
調べてみたら元になった魔物はしっかりした知能があって、姿も殆ど人と変わらない。そして強い。
魔物の心で転職した場合、本人の技能はそのままプラスされるらしいから、もし私がこれを使ったら今よりもかなり強くなれる。
「それが、どうかしたの?」
「えへ♪ お姉ちゃんね、これでもちゃんと反省してたんだよ?
ユー君が魔物を仲間に出来なくて悩んでいて、それがお姉ちゃんのせいだってこと」
だから。
「だからね。お姉ちゃん、考えたの」
私はそれを思いついた時、あまりの名案に、ユー君との将来を想いながらイっちゃった。
「私が魔物になって、ユー君の仲間になればいいんだって」
ユー君が魔物を欲しがっていて、私が魔物を許せないなら、私が魔物になればいい。
「ねえ、さん・・・?」
えへ。ユー君ったら、やっぱり驚いてくれた。一生懸命考えた甲斐がある。
思えば、これは運命なのかもしれない。
ユー君は魔物使いで、魔物が欲しくて。
そんなユー君に色目を使っていたあの女が、たまたまユー君へのプレゼントにこれを用意していたなんて。
ちょっと出来すぎだと思う。
「ねえ、ユー君?」
そう考えると、やっぱり私とユー君は結ばれるべき運命なのだ。
世界でたった二人だけ。血の繋がった姉弟。誰よりも近くて、誰よりも強い絆で結ばれている。
それはきっと、血の繋がりがなくなっても変わらない。
だから、私はユー君に言った。
「お姉ちゃんが魔物になったら、飼ってくれる?」
ユー君のためなら、私は魔物になれる。
投下終了
ぐっじょぶ!
蝶短編投下
247 :
文明の武器:2007/11/10(土) 05:48:33 ID:03S08nM0
妹が、念願のケータイを買ってもらった。同い年の平均からすれば随分と遅い。
そのせいだろう。妹はそれを気に入り、とても大事にしているように見えた。
兄であるオレとしてはまあ、可愛いもんだな、と思っていた。
今までは。
「・・・・・・っ! おい!!」
迂闊だった、とは言うまい。
相手が上手以前に、そもそも想定する状況が異常に過ぎる。
「えへへぇ。お兄ちゃんとちゅーしちゃった♪」
部屋に勉強を教えてくれと妹が尋ねてきてから一時間ほど。
一応は面倒を見ながらも、歳の離れた妹の勉強内容など簡単なもので、
必然、時間の経過と共に請け負った以上の義務感やらも含めた緊張はほぐれる。そこを突かれた。
質問のフリでオレの顔を下げさせ、反対に自分は顔を上げて押し付けるようにキス。
オレの唇を奪うと同時に手にしたケータイのカメラで横から撮影、オレが驚愕に硬直している間に部屋の扉まで退避する。
妹は気に入ったケータイを肌身離さず、常に持ち歩いていた。勉強中に持っていても不審に思われない程度には。
今いる場所は二階で、もう日も暮れて階下には両親。
しかも妹はオレが硬直から状況を把握し、
動き出すまでの数秒以下でケータイの操作を終えて、たった今取った画像は友人や担任の教師の下へ向けて一斉送信の待機中。
思いついたばかりで出来る動作じゃない。
見せ付けられた画面の下数センチ、オレを破滅させるボタンには細い指がかかっていた。
おそらく、ほんの少し力を入れるか、オレが奪おうと揉み合えばはずみであっけなく押される程度に。
「理沙っ!」
妹の名前を怒鳴るように呼ぶ。
「ねえ、お兄ちゃん? 理沙、お兄ちゃんにお願いがあるの」
堪えた様子はない。どころか妹は、こんな表現は相応しくないはずなのに、ひどく妖艶な顔で合わせたばかりの唇を舐めた。
「お前っ、何をしたか分かって────っ!?」
「お兄ちゃん、怒っちゃダーメ」
突きつけるように、ケータイが向けられる。
「えへ」
オレが動きを止めるのを見た妹は、その脅迫材料を手元に戻す。
画面が妹の側を向き、オレにはメタリックな背の部分が向けられた。
ピッ!
ボタンが、押される。
「────────ぁ?」
血の気の引く音がした。視界の色が緑や紫に変わり、瞬きのように明滅する。
オレは一瞬、何もかもを忘れて。
「えへへ。うそうそ。理沙、押してないよ?」
妹の声で、剥離した現実が戻る。
「・・・・・・」
248 :
文明の武器:2007/11/10(土) 05:49:40 ID:03S08nM0
再び見せられた画面はそのままに、指が押しているのは、送信に使うそれの隣のボタンだった。
「は」
吐き出して、一気に心臓の鼓動が早くなる。皮膚が痺れたような感じが全身を覆っていた。
「ね?」
言葉もない。何なんだ? 一体、この状況は。血の巡りも、理解もまるで追いつかない。
「お兄ちゃん、怖かったでしょ?」
おかしそうに、おかしく、妹が笑う。指を引き金にかけたまま。
「分かったよね? 理沙、本気だよ?」
銃口を、オレに突きつけたまま。
「ねえ、お兄ちゃん? 理沙、お兄ちゃんにお願いがあるの」
脅迫を繰り返す。これ以上ない、明確な脅しだった。断れば? 身の破滅だ。
「・・・・・・何だよ。お願いって。こんな、真似までして」
「簡単だよ」
本当に、妹は簡単に言ってくれた。
「お兄ちゃん、付き合ってる人、いるよね? 一週間くらい前から」
「お前っ・・・どこで!」
流石に、黙っていられなかった。そうだ。確かに、オレには一週間くらい前から彼女がいる。
二月くらいか。様々な努力が功を奏して、告白を受けてもらえたばかりで。勿論、まだ家族には話してない。
彼女の家に行ったことも、招いたこともない。妹が知っているはずは、ないのに。
「秘密♪」
返答はケータイの画面。妹はにこやかにそれをつきつける。
「そうかよ」
ぐうの音どころか、そう言う以外には反吐だって出ないだろう。
「それで? お願いって、何だよ」
今まで、妹に対してこれほど低い声が出たことがあっただろうか。なかったに決まっている。
だが、立場の違いというのは精神的な年齢まで逆転させるのか。
「簡単だよ?」
妹は、少しも動じないまま、本当に簡単に言ってくれた。
「あの女と別れて」
それだけは、吐き捨てるように。
「お兄ちゃんは理沙のものだもん────────あんな女に、絶対に渡さない」
投下完了
こんな妹が欲しかった
うちのはもー…ね
GJ!
これは良いキモウトだ。
なんか続きそうな終わり方なので続編があったら嬉しいです。
>>249 俺海王「早く (続きを)書くんダ」
続き読みたい!GJ!!!!
非エロ投下します。
「この街で、年にどれだけ人が死んでいるか、ですか……?」
縁からの突然の問いに、小夜子は眉をひそめた。
「知りませんけど……何でそんなこと聞くんです?」
「これから私が話すことに、少しでも説得力を持たせたいからだよ」
また少し紅茶を口に含んで、縁はにこりと笑った。
「私の話、聞いてもらえるかな? 夕里子ちゃんにも少し関わりのあることだから」
「はあ、かまいませんが」
ウェイトレスが小夜子の前に湯気の立つ紅茶を置いた。
「ごちそうするね。退屈な話になるかもしれないから、飲みながらでも聞いててね」
小夜子は軽く頭を下げて、ありがたくお茶をいただくことにした。
「さて、まずは日本全体の話からにしようか」
「……?」
「現代の日本で、年にどれだけの人が死んでいるか。全体で九十五万人ほど、うち不慮の事故は四万人程度、自殺は三万人程度」
「けっこう亡くなっているんですね」
どう言っていいものかわからず、小夜子は当たり障りの無い言葉を返す。
縁はさらに続けた。
「これらを人口十万人あたりの死亡率に直すと、それぞれおよそ七百六十人、三十一人、二十三人になるんだよ」
「とすると、私達の住んでいる市の人口は確か十万前後でしたから、年間に亡くなる人はそれくらいの人数ということですか?」
「うんうん。さすが夕里子ちゃんの従妹さん、話が早いねえ」
褒められても、小夜子は表情を動かさない。
それよりも、縁が何を言おうとしているのかが気にかかった。
「あの、これとユリ姉が、どう関係しているんですか?」
「ごめんごめん。話を進めるね。私達が住んでいる、この市の南西部は、人口としては二万人くらいの規模。そこでどれくらいの人が死んでいるのか、さらに詳しく見てみると、こうなってるんだよね」
縁はごそごそと足元の鞄を漁り、紙の束を取り出した。
「これは……?」
「この十年間で、南西部地区で亡くなった人の資料だよ」
その紙には、全死因での死亡者数、不慮の事故による死亡者数、自殺による死亡者数の三項目が、年毎に表にされていた。
A市南西部地区
2005年 152 5 2
2004年 178 19 14
2003年 175 17 12
2002年 141 6 4
2001年 158 7 2
2000年 151 8 4
1999年 148 4 5
1998年 151 5 5
1997年 153 6 4
1996年 152 6 3
「少し不慮の事故死者数と自殺者数が多い年があるのはわかるかな?」
二〇〇三年、二〇〇四年を順に指差して、小夜子を見た。
「どう?」
「多いですね、こちらも」
「そうそう。同じ年に、不慮の事故と自殺がそれぞれ増えてるんだよね」
二〇〇三年、二〇〇四年とも、事故死者も自殺統計から見た期待値と比べて三倍ほどの数字になっていた。
「あは。どう? ちょっと不気味になったりしない? 期待値よりも死人が四十人以上多いんだよ」
「事故や自殺が多い年もありうるんじゃないんですか? さすがに少し多い気もしますが……」
どこか嬉しそうに尋ねてくる縁に、小夜子は少し不快感を覚えながら答える。
だよねえ、と縁は気にした様子も無かった。
「ちなみに、この二〇〇三年と二〇〇四年に死んでいる人たち、私たちのこの街に住んでいた人たちだけど、死んだのはこの街とは限らないんだよね」
縁はテーブルの上に地図を広げた。
今度は何だと覗き見る小夜子の前で、素早く地図にバツ印を書き込んでいった。
六十二個のバツ印が、瞬く間に地図上に打たれていく。
「これは……?」
「それぞれの人の死体が見つかった場所だよ」
「何でそんな……」
「まあまあ。いいから見てよ」
縁の細い指が紙の地図をなぞった。
「この通り、私たちの住むA市南西部地区は、県境を挟んで二つの県と接しているわけだけど、二〇〇三年と二〇〇四年に死んだ南西部地区の住人六十二人のうち、およそ三分の一が県内で、さらに三分の一が西隣の県で、また三分の一が南隣の県で、死んでるんだよね」
「どういうことですか?」
「つまり、市役所でまとめられた、人口における死者数は統計から見た期待値の三倍だけど、街で起きた事故や自殺の、事件としての数は、例年の一.六倍程度の数字に抑えられているってことだよ。事件の件数は、それぞれ管轄を受け持つ県警が、独立して記録するからね」
小夜子は首を傾げた。
縁が何を言おうとしているのか、よくわからなかった。
「ねえ、こう、意図的なものを感じない? 三倍死んじゃったから、三つの県にばら撒いてごまかしましたって、そんな臭いがしない?」
「仰る意味がわかりません」
「つまり、この増えた分の死人は、みんな誰かに殺されたんじゃないかって、そう私は思ってるんだ」
小夜子は唖然としてしまった。
確かに、示された数字がどこか普通ではないことはわかるが、縁の発言はあまりに突飛なものに思えた。
「M事件、足利事件……警察は越境しての犯罪には弱いんだよね。広域指定がつかないと連携も取れないし」
「ちょっと待ってください、そんな……いえ、縁さんの仰っていることが正しいか正しくないかはこの際置いておきましょう。それを私に話して、どうしようと言うんです? それこそ、警察の方に言った方がいいと思いますけど」
「いやあ、警察に言って失敗したら、取り返しがつかないから」
困ったように縁は笑った。
「何がです?」
「人間関係が壊れるとさ。私だって、嫌われたくない人は居るんだよ」
「人間関係が……壊れる?」
「支倉君には嫌われたくないんだ。大切な友達だし。支倉君は優しい人だけど、さすがに証拠抜きで妹さんを殺人鬼呼ばわりしたら、怒っちゃうだろうし。だから、できることならちゃんと証拠を見つけてからにしたいんだ」
小夜子はようやく縁が考えていることを理解した。
「あなた……何を……」
「うん。私は、綾ちゃんが人殺しだと思ってるんだ。この街には人殺しがいて、それは綾ちゃんだと思ってる。
佐久間さんを犯したのも、佐久間さんのお母さんが死んだのも、森田浩史が死んだのも、全部綾ちゃんがやったんだと思ってる。
さかのぼると、梅雨にうちの生徒が鉄道事故で死んだのも、綾ちゃんの家に泊まってたっていう中学生が死んだのも、きっと綾ちゃんがやったんだと思ってるよ」
「馬鹿馬鹿しい」
小夜子は彼女に珍しく、苛立ちをあらわにして吐き捨てるように言った。
「綾はそんなことする子じゃありません」
「おかしいと思わないかな、今挙げた、今年に入ってからこの街で起こった事件や事故、その被害者に、みんな綾ちゃんが関わってるんだよ」
「別におかしいとは思いません。私たちも、少し距離が離れているだけで、それぞれの事件に関わりを持っているとは言えるでしょう」
「私は、夕里子ちゃんが死にかけたのも、綾ちゃんのせいだと思ってるよ」
「いいかげんにして!」
小夜子はテーブルを叩いた。
大きな音が喫茶店の店内に響き、幾人かいた客が二人の方を向いた。
「どうして綾をそんなに悪く見るんです!? 綾は好き嫌いのはっきりしたところはあるけれど、しっかりした、本当はすごく優しい子なんだから!」
テーブルを叩いた拍子に紅茶が袖にかかったが、そんなことは気にも留めず小夜子はまくしたてた。
「縁さんが綾と仲が良いといえないことはわかっています。だからって、言っていいことと悪いことがあるでしょう」
「いやいや、私怨とかじゃなくて、私なりに色々考えて言ってるんだよ」
と声を静めるように手で促しながら、縁は言った。
「確かに綾ちゃんはいい子だと思うよ。何でもできるし、可愛いし、人に対しては適度に厳しく適度に優しい。本当、すごい子だと思う」
「だったら……」
「でも、綾ちゃんが優しいのは、支倉君に近付かない人だけなんだよね」
自身で確認するように、縁は頷いた。
「ねえ、小夜子ちゃんは知らない? 綾ちゃんが、支倉君について、すごい執着を見せるってこと」
「それは……」
知っている。
かつて、理想の人は兄だと教えてくれたことがあった。
陽一以外の男は寄せ付けず、包丁を振るう姿を目にしたこともある。
アキラが家に泊まっていた時も、常に気を張ってイライラしていた。
「梅雨に死んだのは、支倉君の悪評を広めていた女の子。夏の初めに死んだのは、支倉君の家に押しかけた援助交際経験ありの女の子。
支倉君と付き合い始めたとたん、夕里子ちゃんの周りで次々と事件が起きて、人も死んで、夕里子ちゃんは追い詰められて、最後はあんなことになっちゃって……」
「ユリ姉の件は、森山浩史が……」
「ずっと姿を消していて、支倉君と夕里子ちゃんが別れたとたんに自殺? いいタイミングだねえ」
実際こうして並べてみると、綾にはあまりに濃く死の影がつきまとっていた。
「この、二〇〇三年と二〇〇四年の増えた四十人も、全員が綾ちゃんの仕業だとは思わないよ。
でもね、被害者のうち三人は、支倉君と綾ちゃんの出身中学の女子生徒だったんだよ。さらにその家族が十五人。これだけの人が綾ちゃんとどこかで接している……変だと思わない?」
見つめてくる縁に、小夜子は冷たい視線を返した。
陽一に対する綾の執着には思い当たる節はあったが、それでも縁の考えに賛同する気は欠片も無かった。
「縁さんが綾を疑う根拠はわかりました。確かに、疑うに足る状況が、綾の周囲にはあるみたいですね。縁さんにとっては」
「小夜子ちゃんにとってはそうではないと」
「ええ。綾を知っている私からすると、あまりの馬鹿馬鹿しさに笑えてしまう話ですね」
はあ、と縁はため息をついた。
素直に感嘆の意味でのため息だった。
「すごいね、小夜子ちゃん、綾ちゃんを信じてるんだ。あの怖い子を」
「いいかげんにしてください。不快です。時間の無駄ですから、もう帰ってもいいですか?」
「ごめん、小夜子ちゃんには話を聞いて、協力してもらいたいんだ。綾ちゃんを捕まえるために」
また怒鳴りそうになるのを呑み込んで、小夜子は努めて冷静に言った。
「残念ですが、遠慮させていただきます」
「でも、私が協力してくれる人を探して、この話を色んな人に話して回ったら、綾ちゃんのためによくないんじゃない?」
「……! 脅すわけですか……」
綾は他人の評判なんて気にしない。勝手に言っていろとばかりに、いつもと変わりなく振舞うことだろう。
(でも……)
自分の及ばないところで、縁が綾の悪評を説いて回る。
小夜子にとってそれは、我慢のならぬことだった。
「ね、逆にこれは、綾ちゃんが犯人じゃ無いことを証明して終わるだけかも知れないし」
悩む様子を見せた小夜子に、縁はさらに働きかけた。
「仮に綾ちゃんが犯人じゃなかったら、それが証明できて小夜子ちゃんとしてはいいことだよね」
「それは……」
「それに、仮に綾ちゃんが犯人だったとして、まだ生きている夕里子ちゃんを守るために、きっちり捕まえておくことはやっぱり小夜子ちゃんにとっていいことなんじゃないかな?
さすがに顔を見られているだろうし、夕里子ちゃんが生きたままだと綾ちゃんは自動的に敗北だから、目を覚ます前にまた夕里子ちゃんに危害が加えられると思うんだけど」
「そもそもにして私は綾が人殺しだなんて思っていませんから、それは私にとっていいことではないし、縁さんに協力する理由にはなりません」
「うーん、見かけによらず頑固ちゃんだね。小夜子ちゃんにとっては夕里子ちゃんも大切な人なんだから、仮定として親友の綾ちゃんを疑っても、それは悪いことではないと思うよ」
小夜子は黙りこんで考えた。
(協力……すべきなのかしら)
これまでの会話で縁の口の巧みさに気付いていた小夜子は、自分がただ流されていないかが不安だった。
綾を守るために協力するのはともかく、いいように使われるのはごめんだと思っていた。
ここで協力することで、縁から綾への風評被害を防げるなら、それは綾のためだ。
協力した結果綾の疑いが晴れれば、それも綾のためだ。
小夜子はあくまで綾を信じていたが、盲目的になることの愚かさも十分にわかっていた。
(盲目的に信じるだけでは、私自身が信じることはできても、他の人を信じさせることはできないものね……)
やがて小夜子は頷いて、口を開いた。
「わかりました。正直あなたには不快に感じる部分もありますが、協力させていただきます」
「わ! 良かった。ごめんね、私も必死で。断られたらどうしようかと思ったよ」
嬉しそうに手を叩く縁に、小夜子は「ただし」と付け加えた。
「あくまで私は、綾のために協力するのであって、縁さんのために協力するわけではありません。何を、どんな意図でするのか、その都度きちんと話してくださいね。綾の不利益になるようなことは避けたいので」
「あはは。その都度も何も、最初に一回説明するだけで終わりだよ。もう簡単簡単」
「……?」
「支倉君をゲットして、殺されるかどうか試してみよう!」
小夜子は唖然としてしまった。
親友の兄を誘惑しろと、つまりはそういうことだ。
「ただし、殺される時は絶対に綾ちゃんが犯人であるという証拠を残して殺されること。あるいは、証拠を得た状態で逃げること。そうじゃなきゃ、今までと何も変わらないからね」
「……素朴な疑問ですが、縁さんご自身でやらないんですか?」
「私は臆病だから、死にたくないんだ」
小夜子は先ほど揺らしてしまったティーカップを持ち上げ、冷めた紅茶を飲んだ。
敬愛する従姉を支えてくれていた、目の前の少女。
これまでは、感謝や尊敬に似た感情を抱いていたが、今は違う。
(この人は……どこかおかしい)
朗らかなようで陰湿。
下手だが強引。
何とも言えぬ違和感が感じられた。
「警察も、使える段階になったら使うからね」
「子供のおつかいのように言うんですね」
「私はね、自分が解決できないことを、他の人が解決できるなんて、思わないんだ」
この人の目的は何なのだろう、小夜子は考えた。
夕里子のためか、陽一のためか、あるいは自分のためなのか。
聞けば模範的な回答が返ってくるだろうと思えたが、その無意味さもわかっていた。
(結局わたしはいいように使われようとしているのかもしれない……でも……)
悩んだところでわからないものはしょうがない。
宇喜多縁の妄言から綾を守る――小夜子はそれしか考えていなかった。
喫茶店を出ると、身を切るような初冬の風が容赦なく吹き付けた。
冬の訪れだった。
「綾……」
大好きな親友の名を呟く。
少女の瞳には、強い決意の色が見て取れた。
今回の投下は以上です。
最終章です。
今までは短編一本分書き終わってから投下をしていたのですが、
あまり間が空き過ぎても微妙なので、最終章はきりがよくなったらどんどん投下していきます。
ここまで読んでくれた方々、最後までよろしくお願いします。
GJ!!!!!!!!
さて、綾は小夜子をどうするか・・・利用されてる事に気づかなければ・・・
しかし、やっぱり緑も狂ってるな。
うわああああうあうあ
小夜子おおおおうおう
すまん、縁だ・・・
縁死ね
いいね、いいね縁いいよぉ
GJ!
ちょww
精神のいかれっぷりは緑のほうが上じゃねーのwwこれ
これってつまり事件解決のために死んでくれと言ってる様なもんじゃねーかww
綾と小夜子を排除してから陽一をゲットするのですな。
縁、GJ !!
これは普通に面白いな。
ヤンデレ的萌え要素は関係なく先の展開にドキドキするわ。
すると縁を始末しても後継者があらわれるわけだな
どっちが勝つかな。
綾が罠を見抜き、夕里子の飛び下りの真相を解き明かせば、逃げ道はある。
逆に縁が殺人の証拠を掴んで綾を排除して、夕里子が死ねば、完全勝利。
なんにしろ小夜子は死ぬ予感。
綾の良心に期待だな。
綾にはお兄ちゃんと幸せに過ごして欲しい
いかに縁を抹殺するかだ
縁が執拗に夕里子をけしかけてたのは、綾の殺人の証拠をつかむため…?
とりあえずGJ!
GJ!
終わってしまうのがなんとも残念であり、結末もまた楽しみであり……
綾にはがんばってほしいなぁ。
お兄ちゃん、一つぐらいはかっこいいところを見せてくれないかな
わくわく
GJ!
しかし、小夜子ちゃんの考えが良く見えないな・・・。
普通に申し出を受け取ってたら、間違いなく不利益になるぞ。
小夜子はでどう転んでもいい結果にはなりえないよな、
実際に綾が人殺ししてなくても綾が執着してる事実を知ってながら兄を横から奪うんだから関係修復不可だろうし
それで疑いを晴らしたかったと真実を話しても、良いように兄が踊らされた形になるからやはり関係修復不可だしな…
>>261 GJ!!!!小夜子逃げてえええええ!!!!
>>279 同感。
どうして引き受けてしまったんだ、綾...
ごめん。小夜子...って書きたかったんだわかってくれ
乙でした
個人的に応援したくなるポジションの縁が単純な善玉ではないのがいい感じ
愛ゆえに人の道を踏み外した綾の世界の結末やいかに…
もし散るならキラ並みに派手に散って欲しいが、さてはて
>>281 いや、引き受けたとは別に書いてないし、
縁も縁で「殺されるかどうか(ry」なんて話を額面通り受け入れてくれるとは考えないだろw
まあ続きをwktkして待つだけだな
あ、綾きてる。これで永遠のしろが来てくれたら完璧なんだが
ハーレムENDだなんて考た俺は綾に殺られるべきかもしr
>>285 おまえはどうして雰囲気を下げるようなことを…
綾の反撃に策略に期待w
反撃にじゃなくて反撃のだった・・・
綾の続き来てた
ここまで来てパクられたら綾が哀れすぎる…
単純に警察につきだす前に緑が事件の関係者を集めて絶壁で解決編をやってくれるだろう、もちろん兄の前で
そのまま逆上した綾が緑を突き落とそうとしてもみ合って二人で落ちるか止めに入った兄を誤って突き落とすかまで考えた俺はサスペンスマニア
短い話を投下します。
30字ぐらい改行してます。
読みにくかったらごめんなさい。
294 :
『鳥かご』1:2007/11/11(日) 06:35:02 ID:EszPczjl
ほっそりとした腕はクラスで囁かれるほど長かった。年を十数えた
頃には上履きのサイズはクラスメイトのよりも一回り大きく、その
くせ痩せっぽっちで色白で、座っていれば溶け込んでしまい目立た
ない。立ち上がればその不釣合いなほどの大きな瞳と相まってすぐ
に高階小鳥(たかしな ことり)だと分かってしまう。小鳥はそれ
を嫌って教室の端っこで小さくなって生活したが、卒業時には学年
で一番背が高くなっていた。
大きいことは良いことだ。母はそう言っていたが、小鳥にとっては
苦痛でしかなかった。「はりがねみたい」と陰で嘲る級友たちが薄
っぺらな心を傷つけた。堪らずに小鳥は母に尋ねた。
「どうして皆は小鳥のことを悪くいうの?」
母は苦虫を噛み潰したような顔してとつとつと言い聞かせた。小鳥
は納得したようなしないような不思議な顔をしたが、黙って母の話
に耳を傾けた。
「わかった?」
穏やかな笑みを浮かべた母。小鳥は誰よりも早く巣立たなければな
らないのだと直観した。必死に瞼を閉じて目立たない瞳になるよう
勤め、悪意を耳朶に受け止めながら成長した。
そんな小鳥には二つ年の離れた弟がいた。小鳥とは違い小柄で活発。
すばしっこくてスポーツが得意だった。自然、誰からも好かれる人
気者の位置にいた。小鳥にとっては自慢の弟であったが、同時に嫉
妬の対象になった。けれど憎めなかった。羨むことはあっても、嫌
うことはない。浩太は誰よりも小鳥に優しかったのだ。
――その優しい弟はベッドの上にいる。真っ白いシーツの上に小柄
な肉体を横たえ、目は酷く虚ろだった。脇に置かれた丸椅子に座っ
て小鳥は力ない双眸を見つめた。
「姉さん。俺の脚、どこいったんだろうな」
乾いた唇が上下に動くと消えてしまいそうな音量で囁いた。
「ちゃんとあるよ。ここにある」
小鳥は白い毛布の上から浩太の両膝を撫でた。その手には確かに温
もりが伝わった。だが――
「ぜんぜん感じないや」
浩太にそれは届かなかった。
295 :
『鳥かご』2:2007/11/11(日) 06:35:57 ID:EszPczjl
交通事故。決して珍しいことではない。日本という小さな島国に星
の数ほどの自動車とバイクが走っているのだ。どれだけ交通法規を
遵守していても事故は、起きる。
「お医者さん言ってたじゃない。若いんだからまた動くようになる
って。ねぇ、だから……」
「簡単に言うんだね。どうせ姉さんには他人事だから」
夜に浮かぶのは丸い月。闇が襲うように周囲を取り囲み、赤黒く輝
く満月はカーテンの隙間から二人を覗き見ている。浩太はその月を
睨みつけ、小鳥を見ようとはしない。
「そんなことない。そんなことないから。ね、元気だそう。明日か
らリハビリできるってお医者さん言ってた。お姉ちゃん手伝うから
さ」
「……」
「ねぇ、浩太」
自分を見てくれようとしない浩太の掌を握りしめる。だが、無言で
振り払われてしまう。行き場を失った小鳥の指先は中空を彷徨う。
何も掴めない。
「ねぇ……こうたァ……」
「帰れ」
「…………」
「帰れって言ってんだよぉおお!!」
二人だけの室内に冷たく響く。紅月は雲に消され漆黒が個室を襲っ
た。小鳥は椅子の上で怯えたように縮こまる。
精神的に不安定だから――主治医はそう言って浩太に個室をあてが
い、家族の付き添いを許した。昨夜は母が、そして今日は小鳥が付
き添っている。叫び声を上げたのははじめてだった。
「どうせ情けない弟を哀れんでるだけだろ。『バイクの免許とった
のに浮かれて乱暴な運転でもしたんだろ。ざまーみろ』ってさ」
一片の光さえ届かない深海へに引きずり込まれたように浩太の声は
歪につぶれる。浩太には世界は真っ暗なのかもしれない。だが、小
鳥には――
静寂の帳を叩いた浩太の叫びからしばらく。室内は陰鬱な空気が漂
い夜明けまでの長い時間を空費していた。時計の秒針が進む音が聞
こえる。
「母さん言ってた。背が低くて悩んでる浩太にこうアドバイスした
んだって。『とにかく元気。何があっても笑ってなさい』って」
「元気、元気、元気。口を開けば元気。へへっ、バカみてぇ」
自らを罵るように、そして嘲るように生気のない唇がつむいだ。昨
日の元気を取り戻せない事実は浩太の心に重く圧し掛かる。事故当
日の焼けるような痛みが懐かしい。手術が終わり麻酔が切れてもそ
の幻想が覚めずにいる今が、憎らしかった。浩太の首筋が、肩がそ
う言っていた。
296 :
『鳥かご』3:2007/11/11(日) 06:37:20 ID:EszPczjl
「――元気、あげるね――っん――」
小鳥がさえずるように薄い唇が動く。浩太の視界は小鳥でいっぱい
になった。乾いた唇はしっとりと濡れ、甘い髪の匂いが浩太を惑わ
す。思わず息を呑んだ小さな身体は頬に這う小鳥の細い指先を払い
除け、力任せに突き飛ばした。
「な、なにやってんだよ!」
浩太は慌てて手の甲で湿った唇を拭う。甘く切ない感触が舌に残る
のが分かった。
冷え切った床にお尻を打ちつけた小鳥はそのままの体勢から動こう
としない。怪我をした、というわけではない。動こうという意思が
ないのだ。闇に溶ける黒い髪はその病的に白い肌を覆い表情をみせ
ようとはしない。
「わたしね。嫉妬してた。いっつも楽しそうに笑ってる浩太のこと、
ホントは嫌い……だって、ね……、わたしに優しくしてくれる浩太
じゃないんだもん」
消えてしまいそうな小鳥の姿を浩太は上体を起こして見据えていた。
この病室に入ってからはじめて直視した小鳥の身体は儚げに震えて
いた。
「ツーリングに行くんだってニコニコして整備してたでしょ。後ろ
で見てて腹が立ったわ。浩太は友達に囲まれて楽しく遊んでる。そ
れに比べてわたしは……って」
淀んだ口調は浩太の胸を激しく揺さぶった。浩太よりも未だに背の
高いはずの小鳥の身体は子猫のように小さい。
「……最低ね。お姉ちゃん失格よね」
小鳥は嗚咽した。拳をきつく握りしめ、肩を震わせて泣きだした。
必死になって漏れ出てしまう想いを隠すように唇を噛み溢れ出る涙
を、拭う。
雲間から差し込んだ月光が窓硝子を透過して小鳥のほっそりとした
肢体を映し出す。ティアード・スカートから伸びる脚は張りがあり
艶かしい。かつて悩みの種だったアンバランスな肉体ではなく、成
熟しつつある女の身体だった。
ようやく立ち上がりよろめきながらベッドに近づく小鳥。痩躯であ
るが肉付きはよく、均整の取れた輪郭は美しい。幼き時分には忌々
しいだけの大きな瞳は、成長によってその眼窩に違和なく納まり、
妖艶な輝きさえみせていた。とくに月明かりに照らされた小鳥の目
は涙のせいで潤み、いっそう淫靡に光る。
「ね、姉さん……」
清潔感のある白地のブラウスのボタンを一つ、一つと外していく。
小鳥の華奢な指先は迷うことなく最後のボタンも外した。
「だから決めたの……お姉ちゃんのぜんぶで、浩太を元気にするっ
て」
そう言って唇を重ねた。浩太は抵抗しなかった。注がれる甘美な感
触がそれを妨げたのだ。小鳥の舌先が口腔に侵入して激しくもてあ
そぶ。歯茎を刺激し、舌先を絡め、卑猥な音色を奏でる。
「んっ、ぬちゅ……ちゅ、んはっ――」
離れていく小鳥の口唇からは惜しむように糸が引いていた。光沢の
宿ったその糸は浩太とつながっている。
呆然と開け放たれた浩太の口は小鳥を求めるようだった。小鳥はも
う一度キスをした。優しく。そして口元を淫乱にゆがめた。
297 :
『鳥かご』4:2007/11/11(日) 06:38:27 ID:EszPczjl
はいていたサンダルを脱ぎ捨てるとベッドの上に乗った。マットレ
スが沈み込み、二人分の体重が圧し掛かる。横たわった浩太を跨ぐ
と小鳥はゆっくりと腰を下ろした。浩太に負担をかけないよう膝に
力を入れている。
すっかり顔を出した月が二人の影を作る。床に落ちた影は重なり合
い二人の境界線は見えない。触れ合った肌は温かく、ざわついたな
にかが張り付くのが浩太には分かった。
慈しむように指先は絡み合う。何度も握りなおしながらその冷たい
指先を暖めあった。氷が解けるように熱を注ぎ、薄っすらと二人の
手のひらは汗ばむ。
浩太の眼前には剥き出しの素肌があった。ブラウスの先にはあるべ
き下着はなく、二つの乳房が顕になっていた。小鳥がわずかに動く
だけで柔肉はぷるっと躍動する。突起は淡く愛らしい。
「ねぇ……さん……んあっ」
小鳥は言葉を遮り浩太の首筋に舌を這わせた。ゆっくりと舐め上げ
て頬を通り過ぎると耳たぶを口に含んだ。浩太は短く呻く。
「かわいっ」
悪戯っぽく小鳥は笑うと上衣を脱がしにかかった。裾を引っ張り乱
暴に脱がすとベッドの外へと放り投げた。浩太の身体にはいくつも
の擦過傷がある。事故の時にできたものだ。まだ赤みがあり痛々し
い。小鳥は目を細めるとそれに顔を近づけた。
ささやかな痛みに顔をゆがめる浩太。だがその表情の奥には恍惚と
した快楽が垣間見られた。小鳥はその傷口に優しく舌を這わせなが
ら下へ下へと落ちていく。六つに割れた腹筋と自身によく似たへそ
を見ながら、その手を浩太の陰部へと滑り込ませた。
「あッ……ぅ、ね……姉さん……」
そして覆っていた着衣をずり下げると浩太のものが現れる。まだ力
なく萎えているが硬くなる兆しがあった。小鳥は何も言わず華奢な
指先を使って扱き出す。垂れ下がった袋を弄りながら、ゆっくりと
愛撫を始めた。
びくつきながら浩太の肉竿は微細に反応して血流がまたたくまに流
れ込む。青筋が浮かびゆっくりと立ち上がる姿は雄雄しい。小鳥は
妖しく笑い、
「もっと元気にしてあげるね」
と言って肉棒の先に口付けをした。そしてそのまま浩太のものをす
っかり咥え込んでしまう。浩太の表情筋はだらしなく弛緩し、駆け
上がる快感に身を任せていた。
298 :
『鳥かご』5:2007/11/11(日) 06:39:01 ID:EszPczjl
「んはっ…ぢゅっ……っぷ……んぁ……はぁ……ッ」
小鳥の頭が上下に動く。ゆっくりと。ときに激しく。しどけなく揺
れる黒髪を浩太は上体を起こして眺めていたが耐え切れずにベッド
に沈み込んだ。古ぼけた天上を見上げて襲ってくる背徳感から目を
背けていた。
――実の姉なのに。
たった今、唇を交わしたのも性器を咥えているのも実の姉である小
鳥なのだ。危険な関係に興味はなかった、はずなのに抑えきれない
愛欲が体中から滲み出てしまう。
「ぶちゅぅ、んじゅ、ぅぢゅ……ぬちぁ……んぢゅううっ」
口を窄めて吸いつくように浩太のペニスを刺激する。
「あぁっ……ね、ねぇえ――」
浩太が切なく呻いたその瞬間、小鳥は顔を上げて陰茎を離した。す
るとたぎった肉塊は下腹部の方までいっきに反った。さっきまでの
可愛げのあったものとは違い先端は赤道色に染まりグロテスクなほ
どに太く猛々しい。
「おっきく……なったね」
上気して薄っすら頬が染まった小鳥はシーツの上を膝で歩くと、は
いていたティアード・スカートを腰の上までたくし上げた。その下
には何もはいていなくぐっしょりと濡れた恥毛が僅かにあるだけだ
った。最初、浩太に触れた『ざわついたなにか』の正体らしい。
「お姉ちゃん……濡れてきちゃった」
見せ付けるように自身の淫裂を広げてみせた。汗ばんだ太ももの間
に桜色の花弁が妖しく蠢いている。ねらねらと愛液で輝き妖艶さを
醸し出している。これが小鳥への入り口だと思うと、たまらなくな
り浩太は喉を鳴らした。
「い……いれるね」
一瞬だけ恥じらいを見せた小鳥だったが、二本の指で下の唇を押し
広げると、ゆっくりと浩太の肉竿を迎え入れた。
「――ぅ――ん、……んん、痛っ――」
刹那の拍子、小鳥は顔を歪ませたがすぐさま浩太の胸に抱きついた。
身体が密着し互いの呼吸が同期し二人は一つになったのを実感して
いた。
「こ、こうたぁ……。お姉ちゃんの中、きもちいい?」
「すご、く……あったかい…き、気持ち、いいよぉ」
浩太の言葉を受け止めると小鳥は顔をほころばせた。今すぐにでも
踊り出したいほど気持ちが昂ぶった。
299 :
『鳥かご』6:2007/11/11(日) 06:39:58 ID:EszPczjl
「ありがと」
浩太の耳傍で囁くと両手を突いて上半身を起こし、腰をゆっくりと
動かした。ぬちゃ、ぬちゃ、と音色を奏でながらその動きは少しず
つ早くなっていく。小鳥の形の良い白いでん部が上下するごとに浩
太にピチピチとあたる。
「ぁあっ、姉さん、き、気持ちいいよぉ」
「こうたぁ……はぁっ、っんぁ、はあっ、んはぁ、んっんっん」
腰をくねらせるたびに浮かぶ肋骨。皮膚の下で苛む官能の欲望が曝
け出されるようだ。肉棒が膣を出入りするたびに淫靡な音色が響き、
突き上げる二人の情欲は止め処なく溢れる。
「はっ、はぁんっ、お、お姉ちゃんの、も、さ、さわっ、って……」
小鳥は浩太の手を取ると自分の乳丘に導いた。ぷっくりと膨らんだ
乳首は小鳥が動くたびに揺れている。それを捕まえるとぎこちない
手つきでもみしだく。乳肉が指の間から溢れ、その神秘的な柔らか
さに浩太の無骨な指は惑っている。
「もっぉとぉ……っ、つよ……くてぇ、はぁ……ぃいよぉ」
浩太は頷くとがむしゃらに揉んだ。爪のあとが付くほどきつく握り、
形が歪むほど小鳥の乳房をもてあそぶ。
汗ばんだ肉体同士が激しくぶつかり、病室内には喘ぐ二人の男女の
嬌声だけが響く。ベッドが軋み、もう時計の音は聞こえない。姉弟
は時間を忘れるほど肌を重ね合わせる――
「ねぇさん……おれ、…はぁっ……もう、イきそうだぁ…」
「はぁ、っんう……だ、出し、テ……はぁあ、んはっ。出していい
よぉ。おね、ぇちゃんの中に……だ、だしてぇ」
肉棒が小鳥の膣を出入りし肉壁は絶頂を知らせるようにキツク閉ま
る。小鳥の額には玉のような汗粒が浮かび、浩太の腰は砕けたよう
に天に引かれる。
「ネ、ねぇえさん……イ、イくぅ」
「出してぇ、お姉ちゃんの中に、たくさん、だしてェ」
浩太の竿がはち切れそうなほど小鳥の中で大きくなると、その先端
から白い液体をいっきに、吐き出した。ドクドクと脈打つように液
を膣に注ぎ込む。
「んはぁ……で、出てるよ……こうたぁ。浩太の精子でてるぅ」
小鳥はその白磁のような肉体を大きく反らし、浩太の全てを感じて
いた。長く伸びた四肢はびくっびくっと痙攣し、全身で快楽を享受
していた。
300 :
『鳥かご』7:2007/11/11(日) 06:41:10 ID:EszPczjl
浩太のものが粘液を吐き出し終えたのを知ると、別れを惜しむよう
に肉棒を抜いた。未だその硬さは完全には失われていない塊は愛液
と精液でぐちゃぐちゃだった。二人が愛し合ったところのシーツは
ひどく濡れていてその中には赤いものも僅かにだが、あった。
「げんき、出たかなぁ?」
甘えるように小鳥は浩太の倒れこんだ。胸部は上下しその吐く息は
荒い。
「姉さんが全部もっていっちゃったよ」
目を瞑ったまま浩太は言った。その口調は穏やかだ。
「うっふふ。いじわる」
そう言って浩太の横で寝転がる。病院のベッドは二人には狭すぎる
が、ひどく温かかった。
「ねぇ、明日からリハビリできるよね? ……浩太?」
小鳥の呼びかけに反応しない浩太。瞼は閉じられ呼吸は規則的だ。
「こ、こう――」
ほんの少しだけ心配した小鳥だったが、寝息を聞いて安堵した。事
故、手術、そして――緊張の糸が切れたのだろう。浩太の寝顔は安
らかだった。
小鳥は起こさないようにベッドから起き上がろうとしたが、できな
かった。浩太の力強い腕が肩を抱いていたのだ。離さないと宣言す
るように、きつく。
「高階さ〜ん」
低く抑えた声が扉を開けた。手には懐中電灯を持っている。夜間の
見回りに来た看護士だ。
「あれ、高階さん?」
左右に懐中電灯を振り病室を照らす。ベッドには――
「帰っちゃったのかしら」
寝息を立てる浩太を確認すると看護師は病室を後にした。
「びっくりしたぁ」
浩太の寝ている横には毛布下で小さく丸まっている小鳥がいた。外
から分からないように浩太に密着して顔を出さないでいたのだ。
看護師がいなくなったのを確認すると小鳥は這い出て浩太の寝顔を
まじまじと見た。無垢な子ども時代を思い出していた。
二人で同じベッドで寝たことなんてあっただろうか。子どもの頃は
よくじゃれ合ったなぁ……。懐かしい記憶は小鳥を眠りへと誘う。
もうほんの数センチしか違わない二人の肉体は寄り添って寝息を立
てた。
――翌朝。
朝日が昇るその手前、寝静まった院内を歩く影があった。小鳥だっ
た。大きめのポーチを抱えて女子トイレへと消えていく。
鏡に映った小鳥は昨夜と同じ服装だ。ブラウスをちょっとはだけさ
せると乳房には痕がある。情事を思い出させ鏡の中の小鳥は笑った。
浩太の寝顔を背にするのはたとえ一時のこととはいえ苦々しいが、
このまま看護士や家族と会うわけにはいかない。はやる気持ちを抑
えてポーチからタオルを取り出すと蛇口を捻った。水は勢いよく流
れ出る。
手と顔を洗い水滴をタオルで拭っていると小鳥はあることに気づい
た。爪先がくすんでいるのだ。少量だったが確かにそれは黒くおぞ
ましい色合いだった。
飛沫が洗面台を汚し水流がうねる中、欲したものを手に入れた小鳥
は達成感に満ちた顔でつぶやいた
「なかなか落ちないのね……オイルって」
おわり
投下終了です。読みにくいですね……すいません。
読みにくかったけどウマーでした
GJ! お姉ちゃんがバイクに細工したっていう事だよね?
綾シリーズは、キモ妹というよりサスペンスとして楽しみになってきた。
レス見ると、みんないろいろ考えて読んでんだな
俺は縁の行動理由はウサギの復讐かと思ってたよ
ウサギスキーな縁を応援してたけど、ココニキテコワクナッタワ
あと、縁のことを緑だと思ってる人がいるね
綾シリーズもキモ姉短編も両方GJだぜ!
個人的には小夜子だけは不幸な目にあってほしくないなぁ。
誰に愛憎を抱いたわけでもないのに従姉妹は自殺未遂、友達の友達に手駒にされて、
その上更に親友との関係も壊れて身の危険に晒されたとなっちゃあ胸が痛むよ…
>>301 こういう策士系のキモ姉大好物ですよホント
GJです
>>301 そう・・・この、一見してハッピーな中、
ラスト数行で背筋が凍る感じがたまらない
それにしても、書き手が増えるっていいなぁ
乙&GJでした!
復活した
少し短いけど続き投下します
「理緒姉…良かった…」
「どうしたの修くん。お姉ちゃんは帰って来るって言ったでしょ?」
「分かってる。分かってるけど…なぜか嫌な感じがしたんだ。もう、理緒姉が戻って来ないんじゃないかって…」
「もう甘えん坊なんだから。ほら、お姉ちゃんに甘えても良いのよ?」
「そっ、そこまではしない!」
「遠慮しなくて良いよ〜。ほらほらっ」
「ちょ、止めてくれよ!」
「ん〜温かくて気持ち良いな…」
この温もりは絶対に離さないから…
私が修くん無しで生きていける筈がないもの。
「理緒姉…くるしい…」
「あっ、ごめんね?」
「やっぱり、俺の気のせいだったのかなぁ…これなら心配しなくても良かったかもな」
「そういう事言わないの。お姉ちゃんはいつも修くんの事心配してるんだからね」
「…」
「あらあら、顔赤くしちゃってか〜わいい〜」
「ううぅ…くそっ、理緒姉には勝てる気がしない…」
「あったりまえでしょ?年季が違うわ」
「つまりおば…」
「何か言った?今おばさんとか聞こえたんだけど」
「言った」
「修くん!そこに直りなさい!」
「でも俺は年上のが好きだぜ?」
「っ!…ずるいよぅ…」
「不意打ちだよ不意打ち」
「まさか修くんの罠に引っ掛かるなんて…」
「たまには良いだろ?いっつも俺が負けてんだから」
「むぅ〜…くやしい。今度なんか仕掛けよっと」
「勘弁してくれ…」
まぁいつも色々と仕掛けてるんだけどね。
バレない様に、色々と。
修くんをがんじがらめにして、私から離さない、離れない、離れられない様にする為の檻。
トゥルルル、トゥルルル…
「電話?修くん、出てくれる?」
「ああ」
ガチャッ
「はい、もしもし織部です」
「織部君?羽居春華だけど」
「羽居?どうしたんだ?珍しいじゃないか」電話なんていつ以来だろう。大抵学校でしか話さないのに。
「あなたに急な用事が有って」
「用事ってなんだよ?」
「今から会えないかしら?」
「今から?う〜ん…どこで?」
「近くの公園でどう?」
「…分かった。すぐに行けば良いのか?」
「ええ。じゃあ、また後で」
ガチャッ、ツーツー
一体なんなんだ?
とにかく、行ってみないとな。
「修くん、どこか行くの?」
羽居に会う事は…黙っておいた方が良いかもな。
「友達に呼び出されたから、公園に行ってくる」
「…行ってらっしゃい」
しかし、羽居って本当に何考えてるかわかんねぇな…
はぁ〜…しかし寒くなってきたなぁ…
すっかり息が白く見える。
羽居はもう居るのかな?
…あれ?あそこで座ってるのは、冬華ちゃん?
なんで冬華ちゃんが来てるんだ?
「冬華ちゃん?なんで君がここに居るんだ?」
「修お兄ちゃん…」
「どうしたんだ?元気が無い…うぐっ!?」
「修お兄ちゃん、ごめんね?」
後ろから激しい痛みと痺れを感じながら、俺が意識を失う前に見たのは、あまりにも冬華ちゃんに不釣り合いな妖艶で狂気を秘めた笑顔だった…
修くん、遅いなぁ…
迎えに行こうか。
うん、そうしよう。
さすがに遅すぎるもんね。
えっと、公園に行くって言ってたっけ。
トゥルルル、トゥルルル…
「もう、こんな時に電話?まったく…」
ガチャッ
「はい、もしもし」
「織部理緒さん?」
「その声は…羽居、春華…?」
なんで羽居春華から電話なんて来るの?
「何かしら?私、今忙しいんだけど」
「織部君ならうちに居ますよ?」
「なっ…!どうして!?」
まさかさっき呼び出された友達って、羽居春華だったの?
「どうして?そうですね、しいて言うなら私自身の興味と復讐です」
「復讐…?何に対して復讐するつもりなの?」
「貴女にそこまで言う必要はないでしょう?それより早くしないと織部君がどうなるか分かりませんよ?」
「くっ…すぐに、こんな行動を取った事を後悔させてあげるわ!」
「待っています」
ガチャッ、ツー…ツー
あの女…!
もし修くんに何かあったら…
その時は、楽には殺してあげないから…!
いくら命乞いしようと許さない…!
いくら殺してと懇願されようと殺してやらない…!
今までのどんな苦しみよりも酷い苦痛を味あわせて自分の行動を後悔させながら殺してやる…!
「待ってなさい羽居春華…!」
投下終了します。
しかし綾の人と淫獣の人は書き方が上手いな…
>>317 GJ!
盛り上がってきました!
ヤンデレ化?した冬華ちゃん…萌える!
続き楽しみにしてます
おお、復旧のすぐあとに投下があったとは景気がいい
>>317 乙にございます
ところで、みんなに教えて欲しいんだが・・・
ここの住民的には、もともと他人だけど大金積むとか非合法な手段で戸籍変えて妹になった、
とかいうのはおkなのだろうか?
義妹のキモウトっぽい感じで、こう それとも、ギモウトはちゃんと区別されるとか・・・?
シスプ○っぽい状況でキモウト書いて見たい、
と財閥の跡取りみたいな主人公が妹欲しがったら〜みたいな妄想したんだが人数とそこで頓挫したorz
短編で14kb書いても15%、二人目の背景解説までもいかないってどうよ
日本語でおk
>>319 おまえきっと疲れてるんだよ。
もう寝た方がいい。
>>319 作品を書き上げる作業に戻るんだ
書き上がったら投下しろ、需要云々はそれからだ。
勝手な解釈入れて意訳すると
両親の再婚以外の手段で大量にキモウト増やしていくような話を書きたくて書いてるけど
このスレで義妹をほぼ全くといっていいほど見かけないからキモウト=実妹で義妹はダメなのか?
って言う疑問と短編のつもりが長くなりすぎてるので挫折した。
そこで質問なんだけど義妹のキモウトってスレ住人に受け入れてもらえるものなの?
ってことなのか?
そうなら義妹のキモウトは前にもいた気がするから問題ないと思うし
長くなるんだったら短編じゃなくて長編として投下すればいいんじゃね
ああ、なるほど
つか、すでに義妹のキモウトって結構いる気がするんだが…
淫獣とか桜の網とかはそうじゃないのか?
>>323 ありがとうございます だいたいそんな感じです
ただ、書いていくうちに、何故か義妹ですらない赤の他人が(戸籍変えて法的には)本当の妹になる、という方向になったので
多分、失敗
スレ汚しすいませんでした
ああ、脳が飛んで行きそう
投下
随分と久しぶりに、ゲームを買った。
時間が経って幾らか安くなったとはいえ、それでも最新のハードと、先日発売されたばかりのソフト。
ここしばらくはグラ優先だったためにゲーム性の低下から古参のファン離れを心配されていたRPGゲームだが、
ハード自体の不人気も取り戻すかのように、
メーカーが『今回はゲーム性で勝負』という方針の下に大々的な宣伝を行った。
結果、友人から聞く限りではかなり期待出来そうな内容である。
最近は色々と不自由な思いもしていたため、オレは貯金まで下ろしてこのハードとソフトを揃えた。
塾の帰りに友人から話を聞いたために購入したのは今日の朝、そして今は徹夜するつもりでプレイに望んでいる。
カーテンで部屋に差し込む光量を調節しながら、ひたすらゲーム。
なんとも現代の人間らしい、至福の一時だ。
が、そんな幸福の時間は唐突に破られた。
背後でドアノブの音。一回・・・二回。
このゲーム空間と外界を隔てる門はあっさりと開かれ、閉ざされた後、オレの横に嫌になるぐらい知りすぎている人影が立った。
そのまま、隣に座り込む。
「けい君、何してるの?」
姉貴だ。
また、何で休日の朝っぱらから弟の部屋なんか訪れるのやら。
「ゲームだよ、ゲーム。見れば分かるだろ? 姉貴」
「ふーん。どんなゲームなの?」
おいおい。
「RPGだよ。ロール・プレイング・ゲーム」
「RPG・・・? 何をするゲームなの?」
ロール・プレイするゲームに決まってんだろ!
「・・・・・・キャラクターに冒険をさせるゲームだよ。その中でレベルを上げて、決められたルートにそって物語をクリアするんだ」
正解でもないが、RPG自体知らない人間にはこれくらいの方がいい。
「・・・・・・ふーん。けい君、それ、面白い?」
「面白いよ」
でなきゃやらないっての。
「ね。私にも出来る? これ」
なあ。頼むからさ、真剣にゲームしてるのに話しかけられてるオレの雰囲気の変化とか感じてくれないかな、姉貴。
「無理。姉貴には難易度が高すぎる」
まあプレイするだけならどんなゲーム音痴でも可能だが、姉貴にやらせようものなら質問攻めにされるのが確実だ。
いちいち付き合っていられない。
「・・・そう。じゃあ、けい君と一緒にだったらを私にもクリア出来るかな?」
「RPGは基本的に一人用だよ。同時には出来ない」
「そう、なの?」
「そうだよ」
ああもう、イライラするなあ。
っと、ようやく最初のダンジョンのボスのとこまで来た。RPGは最初の導入部分や村で結構時間食うからなぁ。
午前中にクリアできるダンジョンはここだけかな。まあいい、さくっとやっちまおう。
「・・・・・・ねえ、けい君」
「・・・・・・」
「ねえ、けい君、けい君ってば」
「何だよ?」
つい、声が低くなるが仕方がない。今は集中したいのだ。
ボスの長ったらしいセリフを読み込むのも、こいつをあっさり倒した時の爽快感に繋がる。
ウケる部分があったら、あとで友人とそれで話をするのもいい。
だから姉貴、邪魔するな。
「けい君、ちょっと外に出ない?」
「はあ?」
何だ、いきなり。
「だって、こんな、ゲームばっかりしてたら体によくないよ? 不健全だし。
ね? お姉ちゃんと一緒にどこかにお出かけしよう?」
「・・・いいよ。遠慮しとく」
お出かけとか、何歳の会話だよ。
しかもまだ始めて二時間経ってないし。
「どうして?」
「どうしても何も、見たまんまだよ。オレはゲームがしたいの。
それに、最近姉貴がオレを連れまわしてばっかりだから、こうして久しぶりにゲームに没頭してるんじゃないか」
「でも・・・」
「あーもうっ、いいからあっち行ってくれ!」
ボス戦が始まった。
RPGに限らず、ゲームの醍醐味の一つはこの緊張感だ。
「そんなっ! けい君はお姉ちゃんよりもそんなものの方が良いのっ!?」
流石に、我慢の限界だった。
「いい加減にしろよ! オレは今、ゲームがやりたいって言ってるだろっ!
そんなにどっか行きたいなら一人で行って来ればいいじゃないかっ!」
ゲームから完全に視線を外し、怒鳴りつける。
「────────」
怒鳴りつけられた姉貴は、途端に静かになった。
「・・・・・・どうしたんだよ。早く行けよ」
余程驚いたのか、能面のように血の気の引いた顔の姉貴にそう言ってやる。
いつもなら多少言い過ぎたかと感じるだろうが、今度ばかりは我慢の限界だ。
ここで強く言っておかないと、姉貴はどこまでも調子に乗るだろう。
「早く、行けよ」
「・・・・・・」
睨み付けると、ようやくゆっくりと動き出す。
「分かったよ、けい君」
ふらふらと立ち上がった。
「わかった」
ようやく、邪魔者がいなくなる。
立ち上がった姉貴は、扉の方へと────行かない?
姉貴は、立ち上がったまま動かない。
「おい、姉貴」
「うん、大丈夫だよ、けい君。わかってるから」
姉貴は、変に平坦な声で言った。
「おい、姉────────」
姉貴が、家の中では膝丈より短いものしか履かないせいでむき出しの足を、高く上げる。
「わかってるよ、けい君」
そして、そのままゲーム機の上へと叩き付けた。
ばきんと、それほど大きくもない音と共に陥没し、全体に皹が入る。
「────────は?」
もう一回。ばきん。もう一回。べきん。もう一回。
壊された箇所がどんどん大きくなって行き、ハードがほとんど真ん中から割られた形になる。
剥き出しの部品が、見えた。
「姉貴っ!!」
「 こ れ が 悪 い ん だ よ ね っ ! ! ! ? 」
「ぁっ!?」
物凄い声だった。
「そうでしょけい君、これが悪いんでしょ? これがこれがこの箱が悪いんだよね?
ねえけい君そうでしょこんなものがあるからお姉ちゃんに構ってくれないんでしょそうだよね そ う だ よ ね っ !!」
「姉、貴?」
何だ? 一体、何が。
「大丈夫。だいじょうぶ分かってるよ、けい君は悪くないけい君は何も悪くない全部全部これがこの箱が悪いんだ
だから大丈夫こんなもの壊しちゃえばいいあはははははははえいえいっ、こうやって踏んづけて壊せばいいんだよ
そうだよけい君を私から奪おうとするモノなんて全部全部ぜぇぇえええっんぶこうしちゃえばいいんだっ!!!」
姉貴がゲームを、壊して。ああ、姉貴の足元にディスクの欠片が。
「壊しちゃえ壊しちゃえ私とけい君は結ばれるべきなのにだってこんなに愛しているんだものなのにおかしいよ
どうしてこんなものがけい君をけい君を私から奪おうとするのダメだよ絶対にだめ許さない許さない許すもんか
けい君は私のモノ私だけのモノ誰にも渡さないんだから私からけい君を奪おうとするものなんて全部こわしちゃえ
そうだよ全部こわしちゃえばいいんだお父さんもお母さんも友達も全部ぜんぶ皆みんなまとめてこわせばいいんだ
そうだよねそうだよあははははははははっははあはははどうしてこんな簡単に気付かなかったんだよだってすごいよ
みんなこわせば私はけい君といつでも二人っきりだよそうしようそうしようそうし────────ああ、これも壊さなきゃ」
姉貴は、ふと思い出したように言って、その細い腕をテレビ画面に叩き付けた。
ガラスが砕け散り、止まったままだった画面から光が消える。パラパラと、透明な欠片が床に落ちた。
ふ、と部屋が暗くなる。
カーテンで光を調節していたため、中の光源が減ると、部屋は不気味なくらい薄暗くなった。
姉貴は、笑っている。無数のガラスの刺さった腕を、笑いながら見詰めていた。
「けいくん」
「ひっ!?」
ぐるりと、目だけがオレを見た。
「な、な、なんだよ、姉貴」
「────────あはっ♪」
いいこと、思いついちゃった。
姉貴はそう言った。
「ねえけい君。お姉ちゃん、怪我しちゃった」
「そ、そうだな」
瞬きもしない。笑ってるくせに乾いた目が、じっとオレを見ている。息が、上手く出来ない。
「けい君のためだよ?」
「へ?」
姉貴が、一歩、オレに近づいた。
立ち上がれないまま、足だけで後ずさる。
「お姉ちゃんね、けい君のために怪我したの。だってだめだよゲームなんてやっちゃ体に悪いのに。
けい君はゲームなんてしちゃダメ絶対にダメだよけい君はお姉ちゃんと一緒にお出かけするんだから。
でももう大丈夫だよね、だってもうゲーム出来ないもの壊したから私がけい君のために壊したんだからもう出来ないよね」
けい君も、もうゲームなんてしたくないよね?
そう、聞いてくる。
「あ、ああ。確かに、もう出来ないな」
「だよねそうだよねもうゲーム出来ないよね? これでけい君はお姉ちゃんと一緒にお出かけして体動かして健康だよね?」
ね? と。
腰を曲げ、顔を突き出してきた。狭い部屋の中で、また少し後ずさる。
「も、もちろんだ」
「じゃあ褒めて」
「へ?」
上手く筋肉の動かない顔に、もう一歩分、姉貴が迫る。
オレも下がる。下がる、下がる────────部屋の壁に、背中がついた。
「お姉ちゃんはけい君のために頑張ったんだからご褒美が欲しいな、けい君からのご褒美」
「ご褒美って、何を」
「ん」
姉貴が、血塗れの腕をオレに向けて突き出す。
細かなガラス片が突き刺さったままの、腕を。
「舐めて」
足はがくがくと震えていて立ち上がれない。
引いた頭も、壁にぶつかった。
「だって、けい君のために怪我をして流れた血だもん。けい君に治してもらわなくちゃ」
屈託なく、姉貴は笑う。
声は高いのに、低く響く笑い声が部屋の中で反響した。
「だからね? けい君」
姉貴が、近づく。腕は突き出されたまま。
小さなガラスの破片が一つ、オレの頬を刺した。
「お姉ちゃんの腕、舐めて。けい君のために怪我した腕。お姉ちゃんの血がいっぱい流れてる腕。
お姉ちゃんの味がする、腕。舐めて」
一つ、二つ、三つ。姉貴の腕のガラスが、オレを刺す。
小さなガラスの欠片程度では大した傷にもならないはずなのに、ひどく、痛む。まるで、姉貴がオレを責め立てているように。
「けい君、お姉ちゃんの血を舐めて、飲んで────────お姉ちゃんの腕が綺麗になったら、ちゃんと運動しようね?」
二人っきりで、と。
そう言う姉貴の、血に塗れた腕を前にして、オレは────。
投下終了
死ねる
朝からGJだ。
さて、今日もキモウトが突如俺の元にくる妄想をしながら、会社いこう
アハハハ、みじめで死にたくなるぜ。よし、死のう。
来世でキモウトかキモ姉と仲良くやろう。
>>331 乙
しかし今日PS3を買った俺としては
俺にこのようなキモ姉がいなくてよかったと思う
>>331乙
キモ姉という以外全部俺と同じことに吹いたwww
今週のジャンプに典型的なキモウトが降臨してますわね
>>335 なんで私が居るのに、私を見ずにそっち(TV)を見るの?と重みでTVを壊すPS3を妄想してみた。
>>337 あの妹ちゃんね。マジかわいいわ。ああいう子。
純粋に真っ直ぐにお兄ちゃん好きだし、悪気がないってところも最高だ。
読んできた
いいキモウトだった
>>338 俺は逆に「箱」って出たから真っ先に破壊される箱○を想像してしまった
続き投下します
「……ぐっ!」
目が覚めた途端に体に痛みが走った。
俺は、何をしてたんだっけ…?
「起きた?」
「羽居…春華?」
そうだ、俺は羽居に呼び出されて公園に向かったんだった。
そこには何故か冬華ちゃんが居て…それでどうなったんだ?
「織部君には悪いけど、ちょっと気絶して貰ったわ」
は?
ちょっと気絶して貰ったってどうやって?
「このスタンガンでね」
羽居春華が手に持ったそれの先からバチバチと光が走る。
「なんでそんなもん持ってんだよ…」
「そこはどうでも良いでしょ?」
いや、良くないだろ…
「それより織部君、自分の格好を気にした方が良いんじゃない?」
「へ?…うわっ!」
自分の体を見ると、俺は何も着ていなかった。
「おい、どういう事だよ!」
すぐに起き上がろうとして、それができない事に気付く。
いくら動こうとしてもガチャガチャという音が響くだけだった。
「暴れても痛いだけだからおとなしくしてて」
「…分かったから説明しろよ」
「これは復讐なの」
「復讐?俺がお前に対して何かしたか?」
「修お兄ちゃんじゃなくて理緒さんに、だけどね」
「その声は…冬華ちゃん?」
冬華ちゃんも居るのか…
「理緒姉にって…どういう事だよ?」
「冬華は理緒さんに処女を奪われたの」
…なんだって?
どうして、理緒姉が冬華ちゃんに対してそんなことを…それにどうやって?
「下手に反抗したら冬華は殺されちゃってたかもしれない」
「理緒姉はそんなことしない。するはずがない!」
そうさ、理緒姉がそんなことするわけがない。
理緒姉は、優しい人なんだ。
俺を、助けてくれた人なんだ。
「織部君は理緒さんの事を何も分かってないんだね」
「なんだと…」
「あの人が優しいのは織部君にだけだよ」
違う…
「それ以上、言うな」
「あの人は織部君以外なら簡単に殺せるでしょう。人とも思ってないんじゃないかな?」
違う違う違う!
「それ以上言うなって言ってんだよ!お前に理緒姉の何が分かるんだよ!」
「分かるわ。あの人は私と同じだもの」
「理緒姉がお前と同じ…?どこかだよ。理緒姉はお前とは全然違うじゃないか」
さっきから何を言ってるんだ。
「だって、織部君を愛しているんだから」
どういう、意味だよ?
羽居が俺を愛してる?
「私はずっと織部君を見てたんだよ」
嘘だろ…?
そんな素振り、無かったじゃないか。
「私は、織部君の事がずっと好きでした」
「こんなタイミングで言う事じゃ…ないだろ」
「こんな機会でもないと言えなかった」
そう、ずっとずっと心の中にしまっておこうと思ってたこと。
だけど、あなたの姉があなたを愛していると知った時、あの人に奪われる位なら私が修くんを守ってあげようって決めた。
「…結局復讐ってなんなんだよ?」
「一つはさっき言ったでしょう?冬華ちゃんの為」
私は正直どうでも良いんだけど。
「一つは?別にも有るって事か?」
なかなか鋭いわ。
少し失言だったかしら。
「もう一つは私自身と、私のお母さんの事」
「それが俺と理緒姉になんの関係が有るんだよ」
「織部君には関係無いわ。織部理緒にだけよ」
そう、あの女にだけ。
「理緒姉が何をしたって言うんだよ?」
「織部理緒と私の母親は同じ人よ」
「…え?」
「私の母親は織部理緒を産んだ後、浮気が原因で離婚したの。そして、その浮気相手との子が、私達姉妹よ」
「そんな…馬鹿な…」「私達を産んだ後、私達のお母さんは織部君を連れて行こうとした」
「…おかしくないか?なんで離婚した後で俺を連れて行こうとするんだよ。俺と理緒姉は義理の姉弟だ」
「何を言っているの?織部君と織部理緒は正真正銘、血の繋がった姉弟よ」
「えっ、だって理緒姉が…」
織部理緒、あの人織部君を手に入れる為に嘘をついたわね。
「そして、織部理緒と血が繋がっているということは、私達は織部君とも兄妹なのよ」
「まさか…そんな馬鹿な…そんな事、聞いた事無い…」
「多分知っているのは私達だけじゃないかな。織部理緒も知らない事だと思うわ」
「それで…何故母親の為に理緒姉に復讐するんだ?理緒姉が…何かしたのか?」
「何かどころか、織部理緒は私達のお母さん、つまり織部理緒自身の母親を殺したの」
「そんな…まさか理緒姉がそんなことするはずが…」
全く、織部君はとことん織部理緒という女を信用しきっているのね。
仕方ないか…ずっと一緒に生活していたんだから。
それに母親を殺した事は織部理緒も覚えていないのだから。
「もし本当だとしたら…何故理緒姉は、母親を殺したんだ…?」
「織部君を奪おうとしたから」
「…俺、を?」
「そうよ。私達のお母さんは織部君の事を、息子であるにも関わらず愛していた。もちろん母性愛なんかじゃなく、異性として」
だから私は織部理緒に対して嫌悪感を持った。
「ちょっと待てよ、俺はその時幼稚園位だろ?」
「そうね。でも、お母さんにはそんなこと関係無かった。そして、織部君を強引に連れて行こうとして、織部理緒に殺された」
「理緒、姉…なんで…?」
「織部理緒もまた、既に織部君を愛していたから。たとえ自らの手を汚し、自らの母親の命を絶ったとしても織部君を自分の物にしておきたかった」
私も、そう。
織部君が手に入るなら、誰を殺してもいい。
つまり、嫌悪感を抱いていようが私自身も母や織部理緒と同類。
自分と血の繋がった家族を愛してる。
「そろそろ会話の時間は終わり。織部君も寒いでしょうから、後は冬華に任せるわ」
「もうっ、冬華待ちくたびれちゃった」
「おい、何をする気だよ」
「言ったでしょ?理緒さんにされた分の恨みを、修お兄ちゃんで晴らすの」
いや、おかしいだろ?なんで俺が恨みのはけ口にならなきゃいけないんだ?
「なんで俺が、って顔してるから教えてあげるね。修お兄ちゃんは、理緒さんから冬華を助けてくれなかったから」
冬華ちゃんは、微笑みながら言葉を紡ぐ。
「冬華の声、聞いてくれなかったから」
その声は表情とは違い、冷たかった。
「冬華を、守ってくれなかった」
微笑むその目からは、一筋の涙が流れていた。
「だから修お兄ちゃん、ここで冬華に償って」
「償うって、何をしろって言うんだ…」
俺には何もできない、何も無い。
「修お兄ちゃんの体を、冬華にちょうだい?」
親に玩具をねだる様な調子で俺にそう話す冬華ちゃん。
「俺の、体?」
「そう、修お兄ちゃんの体。冬華は理緒さんに処女を奪われた。だから、修お兄ちゃんのなにかしら初めてのモノを貰おうと思うの」
俺の初めてのモノって言ったって、そんなもん何が有るんだよ?
「まずは、奴隷体験とかどうかな?初めてでしょ?」
っ!そりゃあ確かに初めてだが、奴隷だって?
俺が、小学生の女の子の奴隷になるってのか?
「冬華ちゃん、ふざけてないでこんな事は早く止めるんだ」
「ふざけてなんかない!修お兄ちゃんは冬華の苦しみが分からないからそんな風に言えるんだよ…」
冬華ちゃんは、今にも壊れそうに見えた。
「もういい。修お兄ちゃんが分かってくれないなら、無理矢理にでもしてあげる。修お兄ちゃんが冬華と同じ、むしろそれ以上の苦しみを感じるまで修お兄ちゃんで遊んであげるんだから」
投下終了します
GJ&wktk!
GJです。
以外な過去が明らかになりましたね
これで春華も冬華ちゃんもキモ姉妹の資格を持つ者に…!
Sな冬華ちゃんもいいっ!!
でも理緒姉もがんばれ〜
352 :
最後の微笑み:2007/11/13(火) 02:56:36 ID:yJs0MD6e
「出てってよ!…出ていってったら!!」
付き合って1週間のトシヤの部屋。ヒステリックな絶叫が響く。
困惑するトシヤ。
問い掛ける私。
「エリカちゃん…私が嫌いなの?」
「…大っ嫌い!お兄ちゃんから離れて!!」
私が1週間前トシヤに告白したのはその時の気分だった。
でも確かにトシヤは私の好みの男だ。
目立たないけど物静か。気遣いが細やかで繊細な…
でも噂はあった。
実の妹との度を越した中の良さ。
特にこの妹、エリカの執着は学校中である種の下卑た好奇心と共に囁かれていた。
「エリカちゃん、やっぱりあなた、トシヤのこと…」
「なに呼び捨てにしてるの?どうして?どうして赤の他人のあなたが?」
トシヤは困った顔で黙りこんだまま。
こんな頼りなさにも私はトシヤに魅かれたかもしれない。
それから約2時間、私とエリカの言い合いは続いた。
諭す私。敵意むき出しのエリカ。
トシヤはずっと黙ったままだったが最後に私にこう告げた。
「ごめん、今日は帰ってくれ。」
それって
「エリカを傷つけたくない」
そんなコトありなの?
「聞いたでしょ。」
勝ち誇るエリカ。
トシヤはエリカの肩を抱き私に引導を渡す。
「悪かった。でもこれで僕も決心がついた。」
そして目の前でキスされた。
驚きながらも、この上なく幸せそうに身を任せるエリカ。
「何と思ってくれてもいい。」
どうやら私はトシヤが自分でも気付かなかった想いを後押ししてしまったようだ。
家に帰って泣いた。
声を出して泣いた。
泣きじゃくりながら、トシヤの部屋での出来事を話す。
目立たないけど物静か。頼りないけど気遣いが細やかで繊細な私の兄に。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん…」
兄は私をそっと抱いたまま何を思っているんだろうか。
私は知っていた。
兄が密かにエリカを気に入っていたことを。
私はただ泣きながら兄に強くしがみつく。
兄の中で強い感情が沸き起こるのを感じる。
そう、性格や気性がエリカに良く似た私に対して。
私は泣きながらも兄の気持ちの動きを感じてそっと微笑む。
ありがとうエリカ。
あなたがくすぶっていた私の想い、後押ししてくれた…。
思い付きで投下失礼しましたm(__)m
>>353 た、たった1レス分にして何と言う破壊力!? これは間違いなく職人!
そして胸に突き刺さるハッピーエンド。GJです
>>349 連日の投下、乙にございます
一つ気になった部分
>「織部理緒と私の母親は同じ人よ」
つまり姉妹の母親が織部理緒ということですか?
>>355 >(織部理緒)と(私の母親)は同じ人よ ではなく
>(織部理緒と私)の母親は同じ人よ という意味では?
投下
ゆっくりと、ゆっくりとその穴にモノを挿し込む。
「んっ・・・はあぁ」
小さな体に一瞬緊張が走るが、抵抗はなかった。
相手が自分から晒しているそこに、更に異物を挿入していく。
入口さえ通り過ぎれば、あとは力を入れて抜き差しを繰り返すだけ。
行ってきた回数の分だけ慣れが痛みを減らし、代わりに何とも言えない快感だけを与える。
「・・・ぁ」
入口の辺り、浅い場所を鎌首の部分でかりかりと引っかいてやると、ほんの少し預けられた体が震える。
この反応だけはいつも変わらない。それも最初だけだけど。
「ぁ、ぃ・・・ふあっ、ぁぁぁ・・・」
挿し込む角度を変えて中の壁を突くうちに緊張は崩され、震えを押さえ込んでいた硬直が弛緩に変化する。
引いては突き入れ、突き入れては引く。
触れ合うたびに柔らかな産毛と擦れ、押し込まれた棒の先端は湿り気を帯びていく。
「はあああ・・・ん・・・・・・んんっ!」
動きは止めないまま、ふと、お互い慣れたな、と思う。
気遣いは最初から。いつでも思い遣りは忘れない。
それでも、初めの頃は不慣れからくる緊張が多分にあったものだけど。
「ひゃっ!?」
今では、こんな思考をしながらでも相手を喜ばせることが出来る。
先人に曰く、慣れとは恐ろしいものだ。
そう思いつつ奥まで進めると、こり、と固い感触に当たった。
「お?」
感触を確かめようと、少し強く押し込んでみる。
「ひうぅっ!?」
ぴくぴくと弱弱しく跳ねた四肢から震えが伝わって来た。一旦、挿し込んだものを引き抜いてやる。
「あ・・・・・・兄様・・・?」
途端、きゅっ、と衣服の端を掴まれた。視線で呼びかけに応じると、縋るように手を引かれる。
「兄様・・・お願いします・・・・・・ちゃんと、最後まで」
僕に体を預ける少女────────妹の葉子(ようこ)は、ひどく敏感だ。
大丈夫かな? と数瞬思案して、頷いてみせる。
この状況は妹の方から求めてのものだし、その妹が願っているのなら否やはない。
妹の耳を、指先でゆっくりと撫で上げる。
「はぁぁぁぁ・・・」
それだけでもう、妹は声を上げてしまう。兄としては色々と心配だ。
「じゃあいくよ。葉子、いいね?」
「・・・・・・はい」
頬を薄っすらと染める妹に微笑んで、一息に突き入れた。
「〜〜〜〜〜〜っ!?」
強過ぎたかもしれないと思いながらも、手は休めない。
すぐに引いて、ほんの少し力を抜いてそのまま二回、三回と動かし続ける。
抜き差しの度に、こりこりと心地いい感触と共に先端が押し返された。
「ひっ! ふあ! ふあああっ!? 兄様、兄様ぁぁあっ!」
強弱を、角度を、緩急を変えて攻め立てる。
妹自身の指では決して届かない処女地に、固く長い異物が侵入していく。
征服者の旗のように妹の内に突き立てられるそれは、ほどなく目的の場所へと辿り着いた。
「────────」
びくりと、妹の体が震える。
「お、ここだね。葉子、分かる?」
「あぁ・・・はい・・・はいっ!」
尋ねると、恍惚とした返答があった。
「奥・・・おく、です。葉子の・・・葉子のあなの一番おくに兄様が・・・兄様がぁぁっ!」
向けられる瞳も声もひどく潤み、そのくせに熱く、甘い。
待ち侘びるような視線を向けられて、僕の声も少しだけ上擦る。
それでも、僕は兄の威厳で努めて冷静に聞いた。
「じゃあ、出すよ?」
「に、兄様、お、お願いしますっ! 葉子は、葉子はもう我慢できませんっ!
出して! 早く出して下さいいいぃぃぃぃっっ!?」
ごり、と突き入れた穴の奥で音がした。
「ひひゃあああぁぁぁぁああああああっっ!?」
モノを抜き出すと、喉が張り裂けんばかりに葉子が叫ぶ。
不自然なほどに全身が震え、断続的な痙攣が数秒ごとに起きていた。
それを更に数度ほど繰り返して、倒れ込むように力を失う。
「・・・・・・・・・」
妹は、非常に満ち足りた顔で床に四肢を投げ出したまま動かない。
しばらく眺めてから、僕は妹から引き抜いたモノへと視線を移した。
「それにしても、随分と溜まっていたみたいだね」
そこには、先っちょに、たった今妹の耳から掻き出された結構な量の耳垢を載せた耳かきがあった。
妹は遺伝的に耳垢が湿り気を帯びるタイプなので、耳かきの先の方は少し濡れたようになっている。
僕は乾いている派だ。別にどちらがいいということでもないのだけれど。
「耳、敏感で、自分だと・・・上手く出来ませんから、つい兄様に言われるまで・・・放って置いていました・・・」
「分かっているよ。だけど、出来るだけ自分でもやるようにね? 可能ならこまめに」
「はいぃ」
さて。
無論のこと当然として必然に完全無欠に疑問の余地などなく、僕と妹が何をしていたかなど言うまでもない。
耳かき、である。
もっとも、この場合はただの耳かきではないのだけれど。
「・・・・・・」
妹を見遣る。
その頭からは、叫びまくったあとの深い呼吸に合わせて動く耳が生えている。ただし、素肌は見えない。
見事な狐色の獣毛に覆われているからだ。
耳は耳でもこの場合、掻いていたのは妹の頭に生えている狐の耳だった。
何故妹に狐の耳が生えるのか?
もし、そんな字面だけは哲学的に響く質問に応えるとするなら、話は結構な昔に遡る。
僕の父は民俗学者だ。
妖怪やら神様やらの伝承を調べて回る仕事と言えば、業界全体はともかく父に関しては当てはまる。
その父が、稲荷信仰、つまりはお狐様を崇め奉る習慣の残った某地方の奥深くにある村へ赴き、
そこから地元では有名らしい険しさの山へ祠探しに行ったのはもう何年前だったか。
端的に言えば父はそこで妖怪、つまりは信仰の対象である妖狐に取って喰われた。
主に性的な意味で。
母が存命なら父は殺されていたかもしれない。が、母はとうの昔に他界している。
僕の記憶に残らない程度には、昔に。
父子家庭。そこに欠けていた女性の姿は、けれど埋められることになった。
父とナニした妖狐ではなく、父がそいつとの間にこさえた娘、僕の異母兄妹によって。
信仰を基盤とする存在は不用意に土地を離れられないために、妹の母は簡単には人間の里へ下りられないとのこと。
僕自身からして、会った事は数度しかない。
父をレイプしたのも、
男日照りでまあ色々と性欲を持て余していたせいらしい。百年程。なるほど、思春期の健全な男子としては理解出来なくもない。
そう考えると妹の生い立ちも中々に悲惨だが、当人は気にしていない様子だった。
数年前、父に連れられて突然この家で暮らし始めた時からずっとそうだ。
父が何を思って妖怪との間、
それも合意の上での行為によって出来たわけでもない子を引き取って育てようと思ったのかは、今以って教えられていない。
ただ、扶養家族が増えた貧乏民俗学者は今まで以上に勢力的に働くことになり、
父が留守にしがちの数年間の共同生活を経て、僕と妹は現状に至る。
妖狐の成長は早いのか、妹は人間にはあり得ない速度で成長した。
最初の頃はおしめまで換えてやっていたのに、数年で少し年下の妹、と言える程に成長している。
知能も普通の人間と遜色ない。
すくすくと成長しながら、妹はいつもお兄ちゃんお兄ちゃん、ある程度成長してからは兄様兄様と言って僕の後を付いて来ていた。
ただ。精神、情緒だけは非常に不安定だが。
「ふう」
そんなことを考えながら、僕は自室で寝そべって本を読んでいた。
妹が汗を掻いたと言って風呂に入っているから程よく時間を潰そうと思ったのだが、
昔からそれなりに本は好きなため、ついつい読みふけってしまう。
本とは言ってもライトなノベルだが、僕にはこの手頃な感覚が好ましい。
何より、読破するのに時間がかからないのが最高だ。
既に三分の一程を読み終えている。今は、主人公が妹に小言を言われている場面だ。
読者の客観としては、妹が本当に怒っているわけではないことが発言から容易に読み取れる。
キャラクターの声を文字として拾い上げながら、非現実の妹は随分と可愛いものだな、とふと思った。
お互いを普通に気遣い、普通に喋って、普通に怒る。
そこには家族の確かな絆があって、だけど、同時に他人としての境界も弁えている。
それは、何と羨ましいことだろうか。
その妹が実在のものかどうか、人間かどうかなんていうことも関係ない。
もし、これが家の妹なら────────そこまで考えて、廊下の軋む音がした。
(マズいっ!?)
本を読む時間を持てるのは、随分と久しぶりのことだった。
そのせいで集中し過ぎてしまったらしい。妹が階段を上る音を聞き逃した。
(どこかに、本を────ベッドの下っ!)
寝そべっていたベッドから跳ね起きる。
「兄様、失礼します」
僕に出来たのはそこまでだった。
当たり前のようにノックもせず、先ず狐の耳を覗かせてから妹が部屋に入ってくる。
僕の部屋に鍵はない。壊されたまま、取り付ける許可が下りないから。
「よう、こ・・・」
あと一秒。たったそれだけの時間に、手が届かない。
妹の視界に、僕の姿が収められる。手に持った文庫本ごと。
「────────兄様」
体の芯から底冷えがするような声だった。
きゅううっ、と妹の目が細められ、張り詰めるようにピン、と頭上の耳が立つ。まるで本物の、狐のような、獣の瞳。
食い殺すべき獲物を見つけたかのように、妹の口が薄く三日月に開いた。
「兄様。本を、お読みになっていたんですね?」
「ああ」
妹の質問を無視することは、出来ない。嘘をつくことも、誤魔化すことも許されない。
化かし合いは狐の専売特許。妹は、僕よりも僕の本心を見抜く。
「面白かったですか?」
「・・・それは」
答えた後を想像して言い淀む。けれど、妹が僕に沈黙を許すはずがない以上、口は閉ざせない。
「・・・・・・一応、面白かったよ」
「そうですか」
僕の返答に、妹が微笑む。
炎。
中空に指を走らせた妹によって紅の花弁が咲き、数百と束ねられた紙面を膨大な熱量が瞬時に焼き尽くす。
購入から一日。
通販で買ったばかりのそれは、妹の狐火によって灰と化した。
表紙の、今時の流行らしい綺麗な女の子のイラストも燃え尽きる。僕の手には何も残らない。
人間、危機が迫ると反射が働くもので、肉体の学習に基づいた条件反射は僕の手だけは火傷から救ってくれたが。
状況の改善には、残念ながら意味がない。
「兄様」
頬を炙った熱風に次いで、凍りそうな冷たい風が吹く。
「兄様・・・・・・また、なんですね?」
吹き付ける冷気は、動けないままベッドの縁に腰掛ける僕の前に妹が来たことで更に増す。
「どうしてですか?」
肩に、風呂上りで湿った、だけど北風でも浴びたように湯冷めした妹の指がかけられた。
「どうして」
その言葉だけでは表し切れない怒気を叩きつけるように、ぐいぐいと押される。
「どうして、どうしてどうしてどうしてっ!」
半分は人でない妹の方が力は強い。逆らうこともなく、僕は押されるままにベッドへと倒れこんだ。
安物の、決して柔らかくはない感触が背中に伝わる。
「どうして兄様は、そうやって葉子だけを見てくれないんですかっ!?」
それでも、妹の指は離されない。ぐいぐいと、僕をベッドに押し込んで固定する。
決して、手元から逃がさないように。
「折角っ、兄様に葉子しか、見えないようにしたのに! どうしてあんなモノをっ!」
初めてのことではないからすぐに理解した。
文庫本の表紙に描かれていた、女の子のイラストのことだ。
妹は、たとえそれが何であれ、僕が妹以外の異性を意識────────いや、認識することさえ許さない。
狐の十八番と言えば、何だろうか?
化かし合い、他者を騙すことだ。
では、妖狐の最も得意なことは?
決まっている。他者を化かすこと、騙すこと。つまりは幻術だ。
信仰の対象となるような、力ある、そして古くから年月を重ねた大妖の妖狐を母に持つ葉子。
妹は、彼女から受け継いだ力で僕に二つの術を、呪をかけた。
一つは、『狐の嫁入り』。
妹は略式の、ひどく稚拙で歪な形のそれを、僕自身も知らないうちにかけたのだと、彼女の母が言っていた。
呪。言い換えるなら、それは執念じみた強制力だ。
妹は呪的に僕に嫁入りし、世間に対する僕と自分の間柄を『夫婦』に固定した。
たとえ初対面の相手だろうと、僕と妹以外には二人が夫婦としか認識出来ない。
妹の術を弾けるくらい力のある存在でなければ、それが父であったとしてもだ。
父は、僕と妹は兄妹であると同時に夫婦だと認識している。矛盾、いや、その以上には気付かないまま。
そしてもう一つが、幻術。存在しないものを存在すると感じさせること。
妹はそれを、逆の形で使った。
見えるものを見えないように。聞こえるものを聞こえないように。触れたものを触れてないように。
妹は、妹以外の異性の全てを、僕に知覚できなくした。
常時持続する幻術を、それもたった一人にとはいえ何年もかけ続けることは、決して容易いことではないらしい。
妹の母親は、呪の原動力とは先ず第一に相手を呪う意思であり、その威力は術者の執念によって左右される、とも言っていた。
何とも一途で愛らしいおぞましさだ、とも。
ただし。
妹の幻術にも穴はある。
幻術の対象が僕にとっての異性、つまりは人間に限定されるのだ。
たとえば、それが人間の女性である限り写真だろうがテレビだろうが、『人間』を映した物なら僕は認識できない。
逆に、たとえそれが女であっても、人間でなければ認識は出来る。
たとえば漫画やアニメ、ゲーム、そして写実的でない絵画などの、『キャラクター』としての女性だ。
一般に人間と動物は区別されるように、たとえ人間の模倣ではあるとしても、キャラクターと人間は区別される。
だから人間としての異性に働く幻術も、キャラクターのそれには効果がない。
人間の男性女性と、動物の雄雌を区別するようなものなのだろう。
だからこそより一層、妹は怒る。
現実でもテレビでも写真でも女性を認識できず、そのせいで家の外に出て普通の生活を送ることも出来ない僕が、
妹の望み通りに檻の中の獣となった僕が、せめてもの抵抗として噛み付くように異性のキャラクターを認識する時に。
狐は、好物を鳶にさらわれるようなことを、決して許しはしない。
「許さない。許さない、許さない、許さない許さない許さないっ・・・!」
左肩に、噛み付かれた。
「っぁあ!?」
半分は獣の歯が突き立てられ、肉が裂ける。
「ぐう、ううぅ、ふう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛うっっ!!」
灼熱と、肌に液体が流れる感触。
打ち込まれた杭が更に深く、濡れた感触の中を抉る。
「ふうっ、ふううぅぅぅっ!」
「ぃっ!?」
せめて何か声を出そうとして、出ない。
「愛、しているのにっ! こんなに愛して、いるのにっ!
兄様を、兄様だけをずっと! ずっとずっとこんなに、こんなに愛し続けているのにっっ!!」
拳を、思いっきり握り込む。
妹に負けないくらい顎に力を入れて食い縛った。この痛みが、長続きはしないと知っているから。
妹の、獣毛の覆われた耳が頬を擦る。
「はあっ、はあ・・・はあ・・・・・・ふふっ」
きっと骨に近いだろう奥まで突き刺さって妹の歯が止まる。
代わりに、舌が動いた。
傷口の近く、流れ出たばかりの血を舐め上げる。
「ふふっ・・・にぃ、さま」
ぴちゃぴちゃと、獣の激しさから子犬のような稚拙さになって舌を遣う。
「はぁぁ・・・ちゅっ・・・・・・れる」
流れ出る赤色に舌を這わせながら、すぐに傷の周りは綺麗になった。
「ん゛、んーーっ!」
そして、傷口に直接唇をつけて、吸い上げる。
「く、ぁっ・・・!」
痛みがぶり返した。
跳ねそうになる僕の体を押さえつけて、妹は僕の血を啜る。
啜っては舐め、止まらない血を、細く白い喉で飲み干していく。
「ぷはっ! はあ・・・はあ・・・・・・あははっ」
そうして、赤く染まった舌と唇も綺麗にしてからようやく、妹は口を離した。
「あはは、ふふ・・・・・・兄様」
狐の顔は、変わりやすい。
怒りを恍惚に変えてから頬を赤く染め直し、満足そうに、慈母のように微笑む。
「痛かったですか?」
「痛かったよ」
僕はそれだけ答えた。
「そうですか。でも、兄様が悪いんですよ?
葉子の想いを知ってるのに、あんな・・・あんなモノに、目を奪われるから」
妹の瞳に剣呑な光が浮かぶ。
一頻りゆらゆらと揺てから、溶けて消えた。
「でも、やっぱり許してあげます。葉子は、兄様のことを愛していますから」
その代わり。
そう言って、僕にしな垂れかかる。数度、吐息が服越しに胸を滑った。
「兄様・・・・・にいさまぁ」
甘ったるい声で呼ばれる。
「さっきのことは許してあげますから、思い出して下さい。
葉子のことを、葉子がどれくらい兄様を愛しているのかを」
シャツが上げられ、ベルトを解かれたズボンが下ろされる。
妹は、服をはだけた。
「思い出させてあげますから。そして、あんなモノのことなんか忘れさせてあげますから」
妹の半分は、元が獣の存在だ。
獣は、血の臭いと、味に興奮する。
「抱いて、ください」
はぁぁ、と熱く息を吐く。
吐息に負けない、燃えるような潤んだ瞳が向けられた。さっきから、獣の耳が震えている。
「葉子だけを見て、触って、感じてください。いっぱい、いっぱい感じてください」
下腹と首筋を撫でられる。
「気持ちよく、しますからぁ」
いいですよね?
見上げて、小首を傾げるように聞いた。
頭の上、狐色の耳が揺れる。
「兄様。葉子と・・・・・・交尾、してください」
首にかけられた指を感じる。僕は、妹に笑って見せた。
投下終了
途中で規制かかったのは初めてです
耳かきシーンで幅取りすぎましたorz
投下ラッシュ日だ
GJが多いぜ
とにかくGJ
葉子が可愛すぎ
…リアル妹とまったく同じ名前だぜ
でも勃起したw
>>345 > 「私の母親は織部理緒を産んだ後、浮気が原因で離婚したの。そして、その浮気相手との子が、私達姉妹よ」
>「私達を産んだ後、私達のお母さんは織部君を連れて行こうとした」
いつ修は生まれたんだ?!
だって理緒姉産んだ後離婚してるし…
しかも春華と同級生だろ?
俺の理解力不足だったらすまない。
>>369 ちょっと考えてみた。
@織部父との間に理緒が生まれる
A織部父との間に修が生まれ、羽居父との間に、春香誕生
B3年後、羽居父との間に夏海誕生
C5年後、羽居父との間に秋菜誕生
D7年後、羽居父との間に冬華誕生
E?年後、織部父と離婚する
F7年後、修を羽居家へ連れて行くところ理緒に殺される。
EはもしかしたらAとBの間かもしれません。
>>369 とりあえず、修と春華の年が同じことは不自然ですので、
多少の嘘が入っているのではないかと。
交尾と言う響きに興奮した俺は
もう駄目かもしれん
373 :
時給650円:2007/11/13(火) 15:16:15 ID:xakJ8Bcg
「さあ、にいさま、あ〜〜んして下さいですの」
そう言いながら喜十郎の鼻をつまむ深雪。
「――んんんっ……んんんっっ!!」
「むふふふ……聞き分けのいいにいさまは、姫も大好きですわ」
そう言いながら、彼の下腹部に築かれた純白の城から、無造作にホワイトクリームをすくい取り、口一杯に頬張る深雪。
その彼女の、桜色の唇から、トロトロになった白い液体が一筋、糸のように垂らされた。
――だらしなく開放された“兄”の口中に。
その途端、喜十郎の口元と深雪の唇を結ぶ白いライン上に、不意に飛び込んで来た影が一つ。
「兄君さまっ、ワタクシもっ!!」
春菜が、腰まで届くポニーテールをなびかせて、無理やり開かれた彼の口を、自分の唇で塞いだのだ。
(っっっ!!?? ちょっと春菜ちゃん、ずるいですのっ!!)
そのまま深雪も、姉の舌がうごめく“兄”の口中に、自らの舌を突っ込ませる。
「――んんんんんっ!!?」
その結果、彼の口中に、二枚の舌が侵入し、侵略し、進撃を開始されることとなる。
「んんんんんんんんんんんんんっっっっ!!」
深雪が、つまんだ指を解放しない限り、鼻の気道は封鎖されたままだ。
しかも口の気道は、二人の“妹”たちの舌にフタをされ、クリームを含んだ白く甘い唾液が、大量に流し込まれてくる。
――喜十郎は、もがいた。
それこそ、全身の力を振り絞ってもがき、何とか一呼吸の自由を得ようとした。
もし喜十郎に僅かな理性が残っていれば、口内を占領した舌たちに歯を立て、反撃する事で、彼女らを口から追い払おうとしたであろう。
しかし、今の喜十郎にそんな冷静さはなかった。歯を立てるという事は、彼にとっては、口を閉じるという事に他ならないからだ。少しでも酸素を欲してもがこうとする本能が彼に、口を閉じるという行動を選択させなかった。
「――あ、にいさま、ごめんなさい」
“兄”のもがきっぷりと、紫色の顔色にようやく気づいた深雪が、彼の鼻をつまんでいた指を離す。
「ごほっ!! ごほっ、ごほっ ごほっ!!」
途端に、猛烈な勢いで咳き込む“兄”。
一呼吸。
二呼吸。
三呼吸――。
肺が、焼けるように痛いが、何とか窒息の危機は免れたようだ。
――が、
「では兄君さま、続きと参りましょう」
今度は春菜が、そう言って“兄”の鼻をつまむ。
鼻をつまんだ春菜も、つまんでいない深雪も、等しくクリームを掬い、口一杯に頬張る。
そして、顔の下半分をよだれとクリームでべとべとにした二人の“妹”が、またもや彼の口内で、パーティを再開させる。
ダンサーは三枚の舌。
ドレスは白く甘い唾液。
オーケストラは、間断なく続く“兄”のくぐもった悲鳴。
「おいしいぃっ! 深雪ちゃんってやっぱり天才だよぉ!!」
甘いものに目がない詩穂は、目を輝かせながら、喜十郎の乳首を盛り付けた、カスタードとホワイトクリームの二十螺旋を舐めとっている。また、その逆の乳首に施された同じ装飾に、麻緒がしがみ付き、やはり嬉々として舌を使っている。
喜十郎の下腹部に建てられたクリームとカステラの塔。
その向こう側で“兄”の身体に取り付いているのは桜と比奈。
「うわぁぁぁ……おにいたまのあし、ヒナには、ちょっとしょっぱいよぉ」
比奈は“兄”の右足の指の隙間のデコレーションに、その小さな舌を這わせ、桜にいたっては、すでに彼の左足の装飾を舐め取り終えていた。当然彼女は、それで満足する気はないらしい。
「さあ、お兄様、この薄汚いオケケを、キレイキレイにしましょうね?」
クリームを舐め取ってなお、脂でテカテカに光る彼の左脚。
そこで彼女が取り出したのは、なんとT字の安全剃刀。
「ありりり? 桜ちゃん、それ何? おにいたまに何をするの?」
あどけない顔で振り向く末妹に、長姉は笑顔を向ける。
「ああ、コレ? これでね、お兄様のおみ足をオンナノコみたいにしてあげるの」
そう言うが早いか、眼下に生えそよぐ彼の体毛を、しょりしょりと剃り始めた。
凛子は、いまだこの狂宴に参加する機を見出せないままだった。
すでに実妹の美緒は、詩穂とともに満面の笑みを浮かべつつ、この晩餐会を堪能している。
(分からない。――何で、何でこんなに躊躇っちゃうのっ?)
すでに覚悟は決めたはずだった。
風呂場で、真理の嘲笑を含んだ、あの目に見つめられた瞬間に。
いや、その前、麻緒が喜十郎に対して、実姉の自分にさえ見せた事のない欲情を吐露した瞬間に。
「まだ、怖いのですか、凛子ちゃん?」
だしぬけに声を掛けたのは真理だった。
「まっ、真理?」
――あんた今までコレに参加もせずに、アタシの顔をじっと見てたの?
そんな事を訊く余裕すらない。
「まったく、困った方ですね」
「なっ、なによっアンタっ!?」
真理の物言いに、思わずカッとなった凛子を迎え撃ったのは、花弁のような真理の唇……。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!?」
予想だにしなかった、真理からの熱いベーゼ。
反射的に唇をもぎ放そうとする凛子を、彼女はしかと抱きしめ、容易に放さない。
また、真理の舌は、そのまま凛子の歯茎を舐めまわし、口中へと侵入し、頬の内側や舌の裏側、さらにその舌同士をからませ、猛烈な勢いで唾液を吸い上げる。
――ちゅぱっ。
薄い糸を引いて、二人の少女の唇が分かたれた時、凛子はまるで腰が抜けたように、へなへなと崩れ落ちてしまった。
「あ、あああ……!」
――これは強姦だ。
例え、キスだけであったとしても、……いや、凛子にとっては、文字通りファーストキスであったからこそ、それをイキナリ奪い、余りに激しい凌辱を自らの唇に与えた真理に対し、罵倒の一言もあって然るべきなのだが……。
「――あああ、ぁぁぁぁ……!!」
凛子の口からは、いまだキスの余韻によって、腰骨を砕かれたうめき声しか聞こえない。
くすっ。
「ファーストキス……だったのですか?」
そう指摘された瞬間、憤怒、悲哀、屈辱、それら全てを混合した激しい感情を剥きだして真理を見上げる凛子。だが、その唇に、再び真理の細い指が一本、あてがわれる。
「泣くには及びませんよ」
「なっ……!? ないてないわよっ!!」
「桜ちゃんが言ったでしょう? 姉妹の絆をより固くするって。だから今のは『キス』にはカウントされない、単に家族の愛情を示すだけのキス。外人とかが映画でやってるような、ね?」
「……」
「本当のキスっていうのは、ああいうのを言うのです」
真理が視線で指し示した先は、彼女たち二人のすぐそば。
X字型にテーブルに戒められた男が、頭部をこちらに向け、下腹部にケーキの本体を据えられて、相変わらず六人の少女に全身を貪られている。
もっとも彼自身は、眼前で自分を見下ろす、この“妹”二人に気付いてはいない。
何故なら喜十郎は、深雪と春菜の熱烈なキスによって、半ば意識を飛ばされていたからだ。
その鼻孔は、再び二人の“妹”の繊手によって封じられ、黒紫色の顔色と、時折起こる痙攣が、誰にでも分かるように、その行為の本質を示している。――すなわち、そのキスは愛撫などではなく、ある種の目的を持った“拷問”であると。
「真理……あれ」
「うん?」
「アニキ、あれ、――やばいんじゃないの?」
「まあ、このままだと、多分ね」
「分かってるんなら、何で止めさせないのっ!? あのままだとアニキ呼吸困難で死んじゃうよっ!!」
「大丈夫よ凛子ちゃん。私たちが兄上様を死なせるなんて、絶対にあり得ませんわ」
「じゃあ――」
「あれは“奴隷”のキスなのです」
「どれいのキス!?」
「そう、兄上様の余計な気力を、一滴残らず吸い上げて、無力な“奴隷”の立場を思い知らせるための、キス」
真理が、喜十郎の口元に群がる二人の耳元に、何事かをそっと囁くと、春菜と深雪は、――多少、不満そうな顔はしたが、ようやく“兄”の口腔と鼻孔を解放する。
「……ごふっ」
もう彼は咳き込むことすら出来ない。
開きっぱなしの瞳孔は、鈍い、うつろな光を放ち、まるで途上国の餓死者のようだ。
二人のキス責めは、結果として、夥しい体力を“兄”から奪ったことになる。
いや、『結果として』ではない。これは明らかにそれを意図して行われた責めである事は、もはや歴然だ。
おそらくは、これこそが彼女の言う“奴隷のキス”の本領なのだろう。
「――では兄上様、最後に残った気力も、これで吐き出して頂きましょうか」
そう呟くと真理は、いまだ意識が完全に回復せぬ“兄”の頬をピタピタとたたいた。
「……ん……んんん……」
うめき声とともに、天地晦冥だった“兄”の意識が回復してきたのか、徐々に双眸に正気の光が灯りだす。
「――はぅっ!?」
突如、喜十郎は肩を震わした。
胸に取り付いた詩穂と麻緒か。あるいは脚部に取り付いた桜と比奈か。いずれにせよ、彼の性感帯には、いまだ複数の“妹”が、その情欲をぶつけている。理性が戻れば、必然的にそれらが与える快感にも注意は向く。
そして、それらのエクスタシーを意識するという事は、それだけ喜十郎の感覚が正常に戻ってきたという事である。それはつまり……。
「……ア、アニキ……」
自分を取り囲む十四個の淫らな眼光。
その中でただ一人、この“宴”にも“妹”たちにも、いや“兄”その人にすら、ドン引きに怯えた眼差しを向ける、一人の少女。
「――うっ、うわっ、ぁぁぁぁぁあああああっ!!」
意識が現世に帰還した瞬間、喜十郎もまた、再び現世の常識を取り戻している。
この家における自分の境遇を知らぬはずの女の子が、義理とはいえ、“兄妹”相睦み合う禁断の性宴を、思い切り目の当たりにしているという、この現状。
それも、ただの兄妹相姦ではない。“兄”が“妹”に輪姦されるという、世間的に見てあり得ないほど異常な、異質な、変態的な、そんな自分を思い切り見られている。
「見るなっ!! 見るんじゃねえっ!! やめろっ!! こっちを見るなぁぁっ!!」
彼は暴れた。
もはや残っていないはずの最後の体力。
その一滴の体力を振り絞り、暴れ、叫び、もがいた。
しかし、悲しいかな。ほとんど力の入らない体が、いかほど暴れても、彼の四肢を繋ぐ手錠と足枷は、こゆるぎもしない。
「おっ、お兄様っ!?」
「あにぃっ!?」
「お兄ちゃまっ!?」
「おにいたまっ!?」
“妹”たちが、事態を飲み込めず、突然の抵抗を開始した“兄”を驚愕の目で見る。
しかし、凛子を除く枕もとの三人は、――少なくとも真理は、実験中の科学者のような冷静さで喜十郎を見下ろし、成り行きを見守っている。
いつから見ていた? という疑問さえ湧かない。
なぜなら、この状況下に於いて、喜十郎にとってそれはもう、どうでもいい事だからだ。
彼の心中を焼き尽くしていたのは、ただ強烈なまでの羞恥心であった。
オレはヘンタイじゃねえ!
オレはヘンタイじゃねえ!
オレはヘンタイじゃねえ!
オレはヘンタイじゃねえ!
――いいえ、お兄ちゃんはヘンタイです。ヘンタイなんです。
その瞬間、彼の脳髄を稲妻のように貫く、一人の少女の声。
――お兄ちゃんは興奮してるんです。痛くされて、苦しくされて、恥かしくされて、それで感じて興奮しちゃうような、……お兄ちゃんはヘンタイさんなんですっ!!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!!」
喜十郎の叫びは、もはや意味をなさない呼気の放出と化している。
喉が涸れたわけではない。絶叫を言語化するだけの理性が、羞恥のあまりオーバーヒートしてしまったのだ。
先程までとは異なる色に潤んだと思いきや、彼の目から数条の涙がしたたり落ちた。
「……頼む……見ないで……そんな目で、見ないでくれ……」
――もはや、蝋燭は燃え尽きた。
例えいま、彼を縛る戒めを解いたところで、彼は何一つ満足な抵抗が出来ないだろう。
「アニキ……」
堅く目を閉ざし、唇をかむ喜十郎。そしてそれを呆然と見下ろす凛子。
そんな彼女に、まず深雪が言葉を投げかける。
「ほら凛子ちゃん、にいさまが泣いておられますわ。あなたも何かと酷い人ですね?」
「ムゴいって……アニキを泣かせたのはアタシだっていうのっ!?」
そう言って気色ばむ凛子に、今度は真理が呆れたように言う。
「官能の炎に身を焦がす兄上様に、そんな氷水のような視線を投げつけたのはあなたですよ? もし御自分が兄上様の立場だったら、あなただったら耐えられますか?」
「……それは……」
そして春菜も言葉を重ねる。
「いいですか凛子ちゃん? 私たちがどれほど兄君さまを昂ぶらせても、たった一人の冷えた眼差しで、人の恍惚というものは、たちまち消し飛んでしまうのです。そんな兄君さまが哀れとお思いになられるなら、……為すべき事は分かりますね?」
その春菜の言葉に、彼女を咎める響きは無かった。
凛子の目に、いま新たなる輝きが灯ろうとしていた。
姉妹たちに、そう言われたからではない。
姉妹たちに、そう言われたことで、ようやく彼女は大義を得たのだ。
常識では許されざる、自分自身の淫らな行為を正当化する口実を。
――アニキのために。
――アニキを羞恥の苦痛から解放するために。
そう思った瞬間、みるみる肩の力が抜けてゆくのが分かった。
そして、一度脱力して見れば、そこにいるのは、“妹”たちに捕捉され、自由を奪われ、一人怯える“兄”という名の無力な少年。
みんなが自分を見ているのが分かる。
真理も、深雪も、春菜も、麻緒も、詩穂も、比奈も、そして桜も。
だが、いまの凛子にとって、もはやその視線は、心地良い刺激以上のものではあり得なかった。
(馬鹿みたい……。アタシ、今まで、何を躊躇ってたんだろう?)
「アニキ……今までごめんね。これからはアタシもやるから」
その言葉を聞いた瞬間、堅く閉じられていた“兄”の瞼が、ピクリと反応した。
「だからアニキも、もっともっと気持ちよくなってね? アタシが居てくれてよかったって思うくらい、ね?」
……もはや、凛子の心中にあった“兄”の偶像は、完璧な変質を遂げた、と言い切ってよかった。
喜十郎の“兄”としての個性を、父性の代用品として求めた彼女はもういない。
凛子は認めたのだ。
この眼前の“兄”は、尊敬の対象であると同時に、愛撫と調教の対象でもあり、それが全く矛盾しない、稀有なキャラクターの所有者なのだと。
ならば喜十郎に、あまたの“妹”が群がり、貪り尽くし、それでいて彼女たちから軽視もされずに輾然(てんぜん)としているのは、全くの道理であろう。
理解した以上、もはや“兄”への淫行を躊躇う理由は一つもない。
それは、この少年をムチャクチャに嬲り尽くす行為が、イコール“兄”を軽んじる行為に直結しないということであり、それは、何をやっても彼に嫌われないという保障に他ならないからだ。
「アニキ……アタシも、アニキにキスしていい?」
そう言いながら凛子は、そっと、彼の鼻をつまんだ。
――喜十郎の目が、再び恐怖に見開かれる。
(これで、凛子も私たちの仲間になったわね)
桜は、独特の薄い笑みを浮かべながら、彼の下腹部に聳えるケーキを見る。
――いや、正確にはケーキではない。
ケーキの表面を突き破るように芽吹いた、肉色の筒竿。
すなわち“兄”のペニス。
あのとき、姉妹全員が喜十郎の表情に釘付けとなる中、桜だけが見ていた。
“兄”の絶叫が言葉の態を為さなくなった瞬間、ずぼっという勢いで、カステラ層と表層のクリーム層を突き破り、イキナリ生えてきた亀頭。
まるで、アスファルトを突き破り、地面に顔をのぞかせたツクシのようだった。
――お兄様は、……見られても感じるのね……!!
凛子の怯えた視線に晒されながらも、見るな見るなと散々騒ぎながらも、それでも彼の肉体は、興奮を覚えずにはいられないのだ。
なんというポテンシャルを秘めた肉体なのだろう。
桜はウットリとなる。
もっともっと絶望の淵に蹴り込んであげよう。
おそらく“兄”の肉体は、さらなる絶望を覚えるほどに、ますます旨みを増すはずだ。
そして、その身体はやがて、より以上の絶望を彼女たちに求めるようになるだろう。
そうなればもう、喜十郎は自分たち無しでは、もはや生きていけないはずだ。
“兄”の魂を、そこまで躾る事が出来たなら、もはや可苗など恐るるに足らない。
桜はそこまで考えて、独り静かにほくそえんだ。
しかし、桜は知らない。
喜十郎が示した激しい勃起――それは、凛子の視線に晒された露出の刺激だけではなく、あの瞬間、可苗の放った一つの言葉が、彼の脳裡を駆け巡った結果に拠るものでもあることを。
可苗の発した“ヘンタイさん”という響きが、
『ヘンタイさんは見捨てられる』という言葉が、
――徐々にではあるが、深く、静かに、だが確実に“兄”の精神を蝕みつつあるということを。
彼女たちはまだ、誰も知らない。
382 :
時給650円:2007/11/13(火) 15:37:50 ID:xakJ8Bcg
今回はここまで。
>>365 GJ!
キャラや設定がめちゃ好みです。
短編ではもったいない、できれば是非前後のエピソードを…。
GJです
うーむ
まるでシス○リの暗黒バージョンのようなゾクゾク感w
お兄ちゃんの明日や如何に!
>>365 GJです!!
しかし、偶然ですね。私の妹も「ようこ」と言うのでs
どうしたんだようこ?なんか用事か?え、浮気?なに言ってるんだ、
これはただの文章だろ?それに、浮気てそれなんてブラコンwww
あれ?ようこ、その耳はなんだ?付け耳か?え、本物?
交尾しようて、俺たち兄弟だぞ!!関係ないて……ちょ、落ち着け、こらやめろ、ズボン脱がすな、
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ亜qw背drftgひゅじkぉ;p@:「」
…
……
………
コレデ、オニイチャンハ、ワタシノモノ。クスクスクスクスクスクス……
>>385 >交尾しようて、俺たち兄弟だぞ!!
アッー!
>>382 GJです。
しかし何でだろ・・・義妹達には嫌悪感しか感じなくなってきた
やっぱりただ玩具にしてるようにしか見えないからかな?
ここはやはり可苗に勝ってほしいところ
M属性が無いときついね
読む人を選ぶってやつだ
この話はサスペンス的な部分もあって、そこはすごく好きなんだが
確かにエロ的な部分を除いてもけっこう楽しみな俺がw
どうやらM属性のない俺の場合は消費ガッツ量が2倍になるらしい(こころのちからでも可)
だが見る
第二保管庫、更新されてるね
編集した人、乙です
義妹達だとSAN値が削られるううううう……
凶悪なM属性の無い身には中々クルね。
クトゥルフでキモ姉妹・・・・・・流石に無理、かな?
って、ここのキモ姉妹は完全に人外でもいいんだっけ?
俺は新規参戦した凛子が結構好き
覚えている人がいることを祈って、
桜の網の七話を投下しようと思います。
街灯に蛾が群れている。狂ったように彷徨しぐさはまるで、目的のない人間のよう。
ただ身を焼くために中心へと群れる彼らは、何と愚かなのか。
下には三人の人間。闇の世界を思わせる黒の中、一筋の光明の下に佇む。
一人の瞳に映るのは、真っ赤な業火。射殺さんばかりの視線はただただ獲物を捕らえて離さない。
片割れは動揺の色。一番の年長者たる彼が混乱していては示しがつかないだろうが、理由を知れば致し方ない。
最後は余裕と不敵な狂気の笑み。闇には不釣合いなドレスは淡く、しかし強気に自分を誇る。
閑散とした大地と周囲は、彼らの心の中とは滑稽なほどにアンバランスだ。
数メートルしかない閉ざされた空間で初めに動き出したのは亜美。
兄の手をしっかりと握り、忌む者には目もくれず歩き出す。
強く、強く。
反して悠太は、手を解くことが出来ないためか、あたかも引きずられているようについて行く。
行く先は公園の出口。
桜の肩越しに見える先。
出口は暗くて見えづらいのに、桜の姿はいやにはっきり映る。
そして距離が縮まり、ついにはなくなった。
亜美と桜の肩が一直線に並ぶ。
交錯する視線。
睥睨。侮蔑。憤怒。激情。憎悪。殺意。――狂気。
目は口ほどに物語る。
が、亜美は感情を押さえ、無視をするかのように兄の手を引き通り過ぎた。
「待ちなさい」
けれども透き通る声は、腹が煮えくり返るほどに耳に届いた。
足はぴたりと機械のごとくに止まる。
「何」
亜美は顔を顰めた。この女が発する音は根拠もなく不快に聞こえるからだ。
素早く瞳に、ある感情を、精一杯に込めて振り向く。
「貴方がどこへ行こうと興味はありませんが、その人は置いていきなさい」
虫が戯言をほざく。
笑いをとろうとして妄言を吐いているのならば、ここで愛想の一つでもくれてやってもいいが、言葉は許容できるものでは到底ない。
「嫌」
生理現象として気に入らない人というのは誰しも存在するものだが、
気に入らない人間に気に入らない言葉を諮れると、思わず殺してしまいたくなる。
真実、悠太がいなければ爪で喉を掻っ切ってやりたいところだ。
「あら、なぜです」
桜は平静と問う。それがなおのこと、腹が立ってたまらない。亜美は振り返っているのに、桜はそのまま背中から話しかけていた。
暗い中に背中のドレスの白が、憎くも誇る。
「人を傷つけるような奴に、お兄ちゃんを任せることなんて出来ない」
「ああ、体の印のことね。あれは傷ではないのだけれど」
桜が笑顔で振り返った。
傷ではなく印。
そう楽観とのたまう彼女に、亜美はもう殺意がこらえ切れないほどになっていたが、持ち前の性格も幸いしてかろうじて押さえた。
印。
何のためだ、とは聞かなかった。
どうせ害虫の考えるようなことだ。
大方、所有権の主張でもしたいのだろう。最愛の人に汚臭をつけるなど言語道断ではあるが、相手にすること自体が馬鹿らしい。
大体、兄の体をあのように痛々しく蚯蚓腫れにしておいて、何が印だ。
百歩譲って傷を何かに例えなければならないというのなら、鎖だと称してやりたい。兄は、この虫の玩具ではない。
私の最愛の人だ。
「――――」
桜が奇妙にゆったりと振り返る。
夜であるにもかかわらず、大きく開かれた日傘はくるくると機嫌がよさそうに回っていて、そのせいで目下が隠れる。
けれど、口元を見るにどうやら笑っているようだ。
顔を顰める亜美の姿がおかしかったのか、桜は嫌味に思えるような気高さを含んだ動作でゆっくりと傘をたたんだ。
不思議と、向こうにはすべてがわかっているような達観した動きのようだ。
「――羨ましい?」
化け物だと、亜美は思った。
それは強いとか適わないとかいった強さの優劣のことではなくて、単純に狂気が晒されている姿に感じたものだった。
亜美は悠太の姿を視界の端に捉えながら、一歩だけ前に出る。
対峙。
通り過ぎた後にできていた距離はすでに一メートルほど。
もうここまで来ると、手を伸ばしさえすれば相手に触れられるほどの近さだと、言えなくもない。
背格好は桜の方が拳一つ分ほど高いため、自然と見下ろしたような形になっていたが、亜美の見上げる視線は射抜くと、いや射殺すといっていい。
桜はまだ微笑を崩さない。
再び錯綜。
愛――、それは気高く美しいもの。尊いものだ。
決して誰かに強要させるものではないし、不幸にさせるためのものではない。
なのに、この虫は何も理解できてはいない。何と愚か。もはや、醜い。
「二人とも喧嘩はやめてよ」
喧嘩、なのだろうか。悠太からすれば妹たちがただ諍いを起こしているだけのように見えるのかもしれないが、実際はそんな生易しいものではない。
前提が違うのだ。
喧嘩とか諍いとか、まして争いでもない。これは女の本性をぶつけ合った狂愛。
そういう意味では亜美と桜の仲はこれ以上ないほどに良好。
もし愛しい人の相手が違っていて、全くの他人として出会っていたならば、二人は親友にすらなれていただろう。
根源は、同じものなのだ。
「お兄ちゃん」
場に声が広まる。どこを見ているの、とでもいいたげな。
悠太は、桜を恐々と窺っていた。屋敷でのことが気になったからだ。
亜美は何も知らない。が、虫を見ている兄は嫌だ。
けれど、視線は彼を見ていない。桜から逸らすことを嫌っているかのように一点を睨みつけている。気配だけで兄の目線の行く先まで感じ取った。
逆に、桜は僅かにうれしそうに頬を緩めた。
現れて初めて見せた、作り物ではない本当の笑顔。綺麗過ぎる笑顔。まるで、亜美のことなど眼には入っていないかのようだ。
彼女からすればこの状況でも、悠太以外はどうでもいいのだ。亜美のことなど頭にも入っているか疑わしい。
同じ妹の、同じではない感情。
空気が凍り、一人の動きを止めている。動けるのは狂気を燃料にしている二人だけ。
他には何もない。風も音も、何も。
けれど、違いはある。
失礼な話、二人は噛み付く犬とそれを笑ってたしなめている飼い主を連想させる。
前者は亜美で、後者は桜だ。
それほどに桜は落ち着いていて、屋敷での出来事などなかったかのように平然としていたのだ。
これが女性特有の強さなのか。静寂は時を止める。
もしそうなら――。
正直、ほっとしたという気持ちはある。
何に対して、といえばもちろん不甲斐ない自分に対する罪悪感や妹たちをこんな状況にさせている状況について。
けれども、あとひとつ。考えてはいけない気持ちもあるのだ。
それは倫理。
桜と性交寸前までいったことに対する体裁ではなく、悠太が桜のことをどう思っているかという思考に付きまとうもの。
そう。わからなく、なった。
自分が。
初めは複雑だったにしろ、今までは桜のことは、大切な妹としてみていたし、一人の家族としてかけがえのない存在だと思ってもいた。
そういう意味では、間違いなく好きだ。胸を張って言える。
でも、桜からの求愛を受けて迷う気持ちがあったのは、事実。
奇妙な現実。
おかしな話だ。
迷ってどうするというのだ。必要ないのはわかりきっているはずなのに。恋などではあるはずもないのに。
なぜ。
――それとも、自分も桜のことが好きだと告げようとでもいうのだろうか。
あれだけ家族を大事にしてきた自分が手のひらを返したように? 体裁や背徳をすべて背負って? 不義の兄妹と後ろ指を差されながら?
――――他の家族すべてを犠牲にして?
桜と亜美の無言の激突は続く。
自分がわからない。
そもそも。妹に対してこんなことを考えていることがすでにおかしいのではないのだろうか。
もう、考えることが出来ない。
「お前に教えることがある」
氷を壊す亜美。口を開く。
「何」
「これが、愛の印」
繋がれていた手が離れる。しかしすぐに悠太の服の裾が掴まれ、亜美が強引に上げた。
肌が露になる。
そこにあるのは――。
歯車が急速に回り、立場が変わる。
優越感に満ちた表情と嫉妬が逆になる。
悠太の視線は左にいる亜美へ。前にいる桜は震えるが、誰にもわからない。ドレスが点滅する。
三人の頭の上にあった街灯が点滅しだしたのだ。
チカチカ。チカチカ。
そのせいで、辺りはより一層暗くなり、二人の表情が更にわかりにくくなった。寒いのに背中に汗が流れる。意味もなく手のひらを閉じたり開いたりした。
「やって、くれる、わね」
前のめりになった頭のせいで、前髪が顔に垂れた。闇が桜の声を歓迎して、傘の先が鈍く光る。
桜の手が柄を強く握った。
対して、悠太は前を見る。
桜の顔がある。
綺麗な顔。
――でも、悠太は初めて見る顔。
後ずさりなどはしない。震えてはいたが。
でも、寒いのは捲くられた服が素肌を外気に晒しているからだ。それ以外に理由はない、はずだ。
僕は家族を愛している。
そしていつまでも桜に見せ付けられる、亜美の宝物。桜はただ目を薄くして――けれど睨みつけている。
そう、これが嫉妬を超えた狂気。
手当て、というよりもキスマークといったほうが、納得がいく。
白い肌にほんのりと朱。でも確かにある、赤い鞭後などよりもよっぽど印と呼べそうな、跡。
亜美は表情を変えていない。ほくそ笑んでいない。
けれどなぜか、うれしそうに見える。
それは悠太の体にキスマークをつけたのが自分だということに対して感じているものではなく、桜が悔しがっていることに感じているもののよう。
噛み付いた犬。顔をしかめる飼い主。
ここでやっと服が元に戻った。
気づけば、亜美が持っていた弁当はどこにもない。いつから。いや、そんなことはどうでもいいはずだ。
もう、なにがどうなっているのかわからない。
「でも、貴方は兄さんと、いいえ―――悠太とキスはしたことはないのでしょう」
反撃の狼煙。
それが合図だとでも言わんばかりに日傘が再び開かれる。
亜美は、動じない。
「どうせ、無理や」
「言っておくけれど、兄さんも私に舌を絡めてきたのだから、無理やりではないわよ」
亜美が驚きで悠太を見つめる。
「あ、あれは」
「悠太は黙っていて」
制される抗議の声。けれど、そのまま続けても言い訳にしかなりはしなかった。
「本当」
わざわざ目の前に来て、見つめてくる瞳。咎めの色よりも、疑問の方が少し強い。
「……」
何もいえない兄。それは嘘ではないからでは、ない。口に出してしまったら、わからない自分の気持ちが更にわからなくなりそうだったからだ。
視線を逸らすことでしか答えられなかった。
また止まる空気。
桜は微笑。
やはり、犬は飼い主に噛み付くことしか出来ないのだろうか。
思案している亜美。唇を指でなぞる。
亜美が考え事をしている時の癖だ。
「なら負け犬は、あなた」
突如振り返り、口の端を吊り上げ、指を突きつけた。
どういうことかわからない。桜が顔を顰め、悠太は戸惑った。
「何ですって」
いっそ哀れなものでも見るような瞳が亜美に投げられる。笑いすらこぼれそうだ。
日傘がくるくると回りだす。
目の前にある頭は何を考えているのだろうか。寄り添うように悠太の隣へと戻る亜美。
「お兄ちゃんに、拒絶されたくせに」
笑う。
破顔したのは、純白のドレス。止まるのは傘。
「亜美、お前が何で」
悠太は聞く――が、それはもう正解だといっているようなものだ。
「ほら、やっぱり」
笑みは更に深く。抱きつかれる。
閑散とした周囲は喋らない。
「簡単」
向けられた妹の顔。うれしそうに目が細まった。
「お兄ちゃんが今ここにいることが証拠。もしそんな関係になっているなら、お兄ちゃんがあんな顔をするわけがない」
つまり、再開した時の表情だけで桜の言葉のすべてを看破したということか。
「お兄ちゃん、ちょっと」
近づく妹の顔。何かを囁こうとしている。
状況が状況だけに嫌な予感もしたが、桜は人形のように動かない。地面に立っているというよりも、地面によって支えられていると表現した方が適切みたいだ。
だから、自分も亜美に顔を近づけて諫めようとした。
でも、できなかった。
もう妹は、女だったから。
「――え」
「柔らかかった――――悠太くんの、唇」
開かれる眼球。
街頭はスポットライトを二人に絞る。
合わされた口と口。
まるで、映画のワンシーンのよう。
「これが、愛」
濡れた唇が艶かしくも光った。
「負け犬は――消えろ」
突き抜けた声は、闇の中にどこまでも響いた。
世界は三人以外、誰もいない。
街灯にいた蛾はすでに一匹残らず、光の熱に焼き殺されていた。
投下終了です。
前の投稿以来書き込んでいないはずなんですが、
規制されたので七話はここで終わりにしておきますね。
それでは。
GJ!
桜の網久しぶりですねー
戻ってきてくれて嬉しいです
いやー盛り上がってきた
ぐっじょぶ!
いやー、一月半ぶりくらいの投下でしょうか?
前スレ後半から、間隔開いてからの長編の続き投下や職人の復活が続きますなー
盛り上がって参りました
そう言えば、
以前投稿していた時期の私を憶えて下さっている方はいらっしゃるのかどうか投下
409 :
病み色の恋:2007/11/14(水) 04:23:34 ID:qww8jigi
削ぎ落としたように白い病室を訪れる。
「兄さん、来てくれたんですね」
ベッドの上には、入院中の妹。
その首には、痛々しく包帯が巻かれていた。
「さあ。兄さん、こちらへ」
皺一つないシーツの上を薦められる。
促がされるままに腰掛けて、抱きついてきた妹の頭を撫でた。数度、妹が深く呼吸する。
「うん。今日も良い匂いですね、兄さん。雌猫の臭いはついていないみたいです」
僕の首に鼻を押し当て、軽く擦る。
満足そうに、妹は鳴いた。
「ふふふっ」
一頻り頬ずりをしてから離れる。
片手で僕の腕を握ったまま、器用に寝台の脇に置かれた果物とナイフを手繰り寄せる。
手に取ったのは、赤い林檎だった。
「少し待って下さいね、兄さん。
この時間なら少しお腹が空いてるでしょう? 林檎を剥いて上げます」
そう言って赤色の果実を剥き始める。
片手は僕を放さないまま、ナイフを持った手の親指で林檎を回転させ、刃をその背にのせた人差し指で押し当て、赤い皮を剥く。
しょりしょり。しょりしょり。
少しずつ、少しずつ林檎が白っぽい裸身を覗かせ始め、それに従って妹の手元には途切れない赤色の川が流れていく。
「兄さん、子供の頃は林檎が大好きでしたよね?」
手は止まらない。
質問に林檎から外した視線を向けると、僕に向けられたままの妹の瞳と目が合った。数秒上向いて、頷く。
「それじゃあ、たくさん食べてくださいね」
嬉しそうに微笑まれた。
しょりしょりと、林檎を剥く手は止まらない。
真っ白な病室に青白い肌が浮かび、清流のようにさらさらと流れる黒髪の下で赤い流れが伸びて行く。
しょり、しょり、と。
治せない病を隔離する四角い部屋は、ただ静かだった。
「〜〜♪ 〜〜〜〜♪」
妹の、言葉にならない歌が光の跳ね返る壁に反響する。
ゆっくりとした旋律が、林檎を剥く音から少し外れて続いた。
「すいませーん、○○さん・・・・・・おや、お見舞いの方ですか?」
410 :
病み色の恋:2007/11/14(水) 04:24:41 ID:qww8jigi
唐突に。
不幸にも場違いに、病室の扉が開く。
天使と形容される純白が、白い部屋へと割り込んだ。
僕の呼吸が、止まる。
「もしかして噂のお兄さんですか? 平日なのに、こんなに早い時間に来るなんて妹さん思いなんですね。
でも、ちょっと申し訳ないんですけど少し────────」
腰を浮かせる。
言葉では遅い。視線や雰囲気では察してもらえない。なら、多少強引にでも彼女を遠ざけねばならない。
ひどく具体的な、身の危険から。
だけど。
そうは思っても、僕の挙動は遅すぎる。立ち上がって、彼女を安全圏に追い出すのに数秒。
その時間がどうしようもなく、長い。
耳元を風が撫で去る。
四方を囲む白い壁に一点、赤色の花が咲いた。
「 出 て け ! ! 」
「ひっ!?」
彼女のすぐ横に叩きつけられた林檎が醜く潰れ、噴き出した果汁が血のように赤い皮の上を流れる。
四散した果肉に数拍遅れて落ちたそれが、べちゃりと鈍く悲鳴を上げた。
それよりも早く、妹の怒号が響く。
「 出 て け っ ! ! 」
「な、あ・・・○○さん?」
射殺すように、睨みつける。
青白かった肌が殺意に薄赤く染まり、湯立つような怒りが生気となって迸る。
噛み付く、いや、食い殺さんばかりに、妹は侵入者へ牙を剥いていた。手に握る、刃を。
「何してるの、早く出てってよ! 入ってくるな!
折角兄さんが来てくれたのに邪魔するつもり!? 近付くなっ!
私に、兄さんに、私の兄さんに近付くなっ! 早 く 出 て 行 け っ っ ! ! !」
「ひぁっ!?」
多分、彼女は知らされていなかっただけなのだろう。
何かの手違いで、今、この時間に来てしまった新人に違いない。
怯えもするはずだ。まだ若い看護婦が、いきなり患者に、それも殺しかねない勢いで怒鳴りつけられれば当然と言える。
だから、彼女を一秒でも早くここから出さねばならないのに。
僕の手首は、妹の手に握られて軋みを上げていた。
411 :
病み色の恋:2007/11/14(水) 04:25:11 ID:qww8jigi
「近付くな、近付くな、近寄るなっ! ここに、私と兄さんの場所に入るな!
出て行け、出て行け、出て行け────────それとも、そ ん な に 殺 さ れ た い の か っ っ ! !」
動けない。僕も、事態に理解の追いつかない彼女も。
妹が手を握る。強く、強く握り込む。
僕の手と、ナイフを。
「 じ ゃ あ 死 ね っ ! 」
刃が投擲される。
妹を理解していない、理解出来ない彼女は。
「きゃああああああっ!?」
思考を放棄した反射で扉を閉めることで、助かった。
鉄の刃は金属の壁に阻まれて地に落ちる。
カラン、と乾いた音がした。
不規則な足音が廊下の向こうに遠ざかる。
「っはあ! はあっ、はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・・」
妹が荒く、息を吐く。
心身の急激な消耗に吐息が乱れ、『敵』が去った安堵から筋肉が弛緩した。拘束する手が緩む。
今後のためにも、走り去った彼女には謝罪と説明をしておかなければならない。
僕は、今度こそ歩き出そうとして。
「兄さん────────どこへ、行くつもりですか?」
鷲掴むような声に、振り向いた。
「私を置いて、どこに行くつもり、ですか?」
綺麗な、とても綺麗な笑顔が目に映る。
「まさか」
一時的に血色を取り戻した唇が薄く開いた。
「あの女を追いかけるつもりじゃあ、ありませんよね? 私を置いて。
私と兄さんの逢瀬を汚した女なんかを・・・・・・兄さんは、まさか私より優先したりは、しませんよね?」
間違っても、と。
そう、念を押すように微笑まれる。
僕が立ち上がった分だけ低い位置になった妹が、瞳だけは抉り込むように、下から僕を威圧していた。
「だって、私はこんなにも兄さんを大好きで、愛して、誰よりも何よりも、唯一、この世界で大事にしているのに。
兄さんだけを、とてもとても想っているのに。
私が兄さんなしではいられない、生きてはいけないことを、兄さん自身もよぅく知っているはずなのに」
妹は、怪我人だ。それも、つい先日に大怪我をしたばかりの。
たとえそれを抜きにしたところで、組み合えば体格差で僕が勝つに決まっている。
なのに。
412 :
病み色の恋:2007/11/14(水) 04:27:32 ID:qww8jigi
「兄さんは、私を殺したくはありませんよね?」
僕は、妹に絶対に、勝てない。
「私には、兄さんが私以外を私より優先するなんて許せない。堪えられない。
身切れるように。辛くて、苦しくて、兄さんを取り戻すためなら・・・・・・本当に自分の体を千切ってしまえるくらいに」
そこには、体力も筋力も関係がない。
それはもっと、とてもとても単純な純粋な。
「ねえ、兄さん。それとも、またやって見せましょうか?」
命がけの、覚悟の差。
妹が、包帯に巻かれた首に指を這わせる。
「兄さんの愛と、私の兄さんへの愛を。もう一度、試してみましょうか?」
そこには、妹が自分でつけた傷がある。
あの日。
それにはどうしようもない事情があったにせよ僕が妹以外の女性と肌で接触してしまったために、
必死に謝まりながら止めるよう説得する僕を、妹は面会の時間は終わりましたよ、と笑顔で返して。
その日の晩に、首の肉を千切り取った。
僕を呼び戻すために。呼んで見せ付けるために。その姿で、呼び起こされる罪悪感で、僕を縛るために。
「ねえ、どうします? 兄さん。兄さんは、私には死んで欲しくないって言っていましたよね?
でも、兄さんはそのことをすぐに忘れて他の女の方を向いてしまう。
ねえ。兄さん? もしも私が死ぬとしたら、それは兄さんが殺すんですよ?」
その前は、手首を噛み千切った。
その前の前は、頭蓋を壁に打ち付けて血を流した。
その前の前の前は、拳の骨がばらばらになるまで壁を殴りつけた。
「さあ、兄さん。教えて下さい」
妹がそれを痛がったことは一度もない。むしろ、笑っている。楽しそうに、嬉しそうに。
結局、僕が妹を選ぶしかないことを確認して。
「兄さんが────────たとえ私を殺してでも、他の女の下へ行きたいのかを」
妹は、いつも笑っている。
この、真っ白な空間の中で。
治らない恋を、病のように抱えながら。
投下終了
喋らせない話も案外書きやすいと気付いた日
>>405 乙でした
このレベルの表現力が欲しい今日この頃
あ。
>妹は、いつも笑っている。
は
>妹は、僕に対してはいつも笑っている。
てことで
これは、強烈なキモウトキャラですな
だが、それがイイ(・∀・)
続き投下します
冬華ちゃんの目には、確固たる意思が感じられた。
おそらく何を言っても無駄なのだろう。
しかし、それでも俺は冬華ちゃんを止めずにはいられなかった。
「止めるんだ、冬華ちゃん…こんな事をしても何も変わらないだろ?」
「少なくとも冬華は幸せになれるよ?」
幸せ…?
俺を奴隷にすることがか?
「そんなの、おかしいだろ…」
羽居春華も、冬華ちゃんも、おかしいよ。
「冬華はおかしくなんかないよ。冬華は修お兄ちゃんが欲しいんだもん。だから、修お兄ちゃんを好きにできるなんて最高の幸せ」
駄目だ…何を言っても冬華ちゃんには分かって貰えない。
もう、どうしようもない。
「あんまり喋ってると時間ももったいないし始めちゃうね」
俺は、何をされるんだ?
「それじゃ、いただきます」
「むぐっ!」
いきなり、キスされた。
それも唇を重ねるだけのものとは違い、本気で喰われてしまいそうな程口内を貪るキスだった。
「んむ、はぁっ…修お兄ちゃんの口、おいし」
「くっ…」
反応しちゃいけない。ここで下手な反応を見せれば冬華ちゃんの行為を助長するだけだ。
「修お兄ちゃんてほんとおいしいよね」
おいしいってなんなんだ…
修お兄ちゃん、乳首って感じるのかな?
「ぺろ、ちゅ…修お兄ちゃん、んっ、乳首、気持ち良い?」
「気持ち良くなんて…無い…」
「ふふっ、体がビクッてしてるのにそんな事言っても嘘だってすぐ分かっちゃうよ?」
私の唾液が修お兄ちゃんの体を濡らしていく。
ただそれだけの事が今は嬉しい。
「止めろ…冬華ちゃん…」
結構しつこいなぁ。
私に止める気は全然無いのがまだわかんないのかな?
「ほんとに止めて欲しいの?修お兄ちゃんの体は間違いなく快楽を求めてるのに?」
「違う…そんなこと、無い」
「…そこまで言うなら冬華だけ気持ち良くなるから良いよ」
「何を言って…」
もう下着だけは脱いである。
私は修お兄ちゃんの顔をスカートで隠す様にして顔にまたがる。
「修お兄ちゃん、動いたら許さないから」
んんっ、修お兄ちゃんの顔が、私のあそこに当たって、気持ち良い!
「んっ、あっ…」
だめ、気持ち良すぎて、止まんないよぉ…
「うぐっ、んーっ」
ひあっ!しゃ、喋ろうとすると、振動が伝わってきて余計気持ち良いっ!
「あぁっ!だめっ、出ちゃう、冬華、漏らしちゃうぅ!」
しゃあぁぁぁ…
「はぁ…すごい…冬華のおしっこ、全部修お兄ちゃんにかけちゃった…」
すごく、気持ち良かった…
修お兄ちゃんを全部私の物にしたような錯覚を覚えた。
まだ余韻の残る体を修お兄ちゃんの頭からどかす。
「がはっ、げほっげほっ…はぁ…はぁ…」
「冬華のおしっこの味、どうだった?全部じゃないにしても少しは飲んじゃったでしょ?」
「……」
あれ?もう喋る気力も無くなっちゃったのかな?
じゃあ、もっと楽しんじゃえ…
「修お兄ちゃん、冬華のおしっこかけられておちんちんおっきくしてるんだ。修お兄ちゃんてとんでもない変態だね。年下の女の子にこんな事されて悦んでるんだもんね」
「くっ…」
「また顔を背けるんだ。そうやって冬華からも自分からも逃げるんだね」
「っ!……」
「冬華に顔に乗っかられて興奮しちゃったんでしょ?いじめられて悦んでる変態なんでしょ?」
「違う…俺は、そんな人間じゃ…」
否定の言葉を聞いて修お兄ちゃんのモノを掴む。
「じゃあどうしておちんちん大きくなってるの?」
「それは…」
「気持ち良いからでしょ?悦んでるからでしょ?もっと自分に素直になりなよ。もう自分でも理解してるんでしょ?」
「もう…止めてくれ…」
「止める?そんなのいや。冬華は修お兄ちゃんが好きだからしてるんだもん」
まだまだ離してあげない。できる事ならずっと一緒に居たい。
「そういえば修お兄ちゃんここがどこだか分かってる?」
「…ここは、どこなんだ?暗くて、ほとんど何も見えない…」
「修お兄ちゃんの学校だよ」
「なっ…!なんで学校に入れるんだよ!」
「春華お姉ちゃんが鍵を開けておいたんだって」
その辺りは頭の良い春華お姉ちゃんだからぬかり無い。
「だから朝までずっとこうしてようね」
「待てよ…そんなことしたら人に見つかるじゃないか!」
そんな当たり前の事確認しなくても良いんじゃないかな…
「そうだね。冬華は見つかっても良いの」
むしろそうすれば修お兄ちゃんは冬華の物にできる。
ずっと一緒に居られる。
世間体なんてどうでも良い。
だって私は修お兄ちゃんさえ居れば幸せだもん。
「俺は…そんなの嫌だ…」
それは最早、死に等しい。
誰にも認められず、蔑まれ、普通の世界からは完全に消える。
そこには、絶望しかない。
「嫌だ…嫌だ…俺はもう人に嫌われたくない…あんな、あんな絶望はもう味わいたくない…」
その状況を想像して、昔いじめられていた体験を思い出してしまっていた。
それはまさに闇の世界。しかも今度は理緒姉という唯一の光も無いだろう。
俺は、誰にも助けて貰えない。
俺は、一人。
この広すぎる世界の中で、たった一人。
「修お兄ちゃん」
「ひっ…嫌だ…一人は、嫌だ…」
助けて、助けて、助けて。
誰でも良い、ここから助けて。
「修お兄ちゃん、冬華は修お兄ちゃんを一人になんかしないよ?」
そう、なのか?
本当に俺を一人にしないのか?
皆俺から離れていくんだ。
「お前も、俺から離れていくんだろ…?お前も俺をいじめるんだろ…?」
そうに、そうに決まってる。
「んーん。冬華はずっと、修お兄ちゃんが望むなら永遠に一緒」
「俺と、一緒?…あぁ…うあぁぁっ!」
この子は、ずっと一緒に居てくれるのか?
理緒姉みたいに、俺を助けてくれるのか?
「うっ、うぅっ…うぁっ…」
ぽたっ…ぽたぽたっ…
気付いたら、俺の目からは涙が流れていた。
それは止まる様子も無く、ただ何かを吐き出す様に流れていく。
「その代わり、冬華の事愛して?」
「お前を、愛する?そうすれば良いのか?」
「うん。それだけで良いよ」
目の前のその子はまるで天使の様に優しい笑顔をたたえていた。
俺は、この笑顔を見るのは二度目だ。
あの何も見えない闇の中で、俺を救ってくれたあの笑顔だ。
「そうか…俺は、君を愛すれば良いのか…」
「そうだよ。そうすれば、修お兄ちゃんも冬華も、一人にならない」
…一人に、ならない。
それが、どれだけの幸せか。
でも。
「俺が君と一緒に居るとしたら…理緒姉は?理緒姉が一人になっちゃうだろ…?」
「あんな人、どうだって良いでしょ?」
「あんな人…?どうだって良い…?」
違う。理緒姉がどうだって良い人な訳が無い。
「お前は、間違ってるよ。理緒姉はどうだって良い人な訳無い」
「どうして…?」
「俺を助けてくれたのは、理緒姉だ」
そう、理緒姉は俺の天使だ。
汚す事も、触れる事も、消す事もできない。
「俺を、放してくれ。俺は理緒姉と居たいんだ」
「どうして…?なんで冬華じゃ駄目なの?なんで冬華から離れようとするの?」
「君と一緒に居るのは嫌じゃない。だけど、それはこんな形じゃない」
「いや…!絶対に、渡すもんか!修お兄ちゃんは冬華の物…!」
「体は、そうかもしれない。だけど、心までは縛られない」
「良いよ…すぐに快楽で何も考えられなくしてあげる…!」
なんで、なんで冬華を愛してくれないの?
そんなにあの人の事が大事なの?
「ほら!ほら!気持ち良いでしょ?すぐに出させてあげるから!」
いくらだって出させてあげる。
空っぽになっても、立たなくなっても、止めてあげない。
「あははっ!もう透明な汁が出てきちゃってるよ?出ちゃうの?ねぇ、出ちゃいそうでしょ?」
「くっ、うあっ!」
ビュルビュルッ!
ふふっ、一回目…
まだまだ、終わらせてなんてあげない!
「あはっ。まだカチカチ。すぐに2回目も出させてあげるからね?」
次は、足でしてあげる。
「足でされてもビクビクしちゃうんだ?修お兄ちゃん、悦んでるでしょ?」
「違う…」
「違わないよ。もうまたぬるぬるしてきてるもん」
冬華の靴下、修お兄ちゃんのえっちな汁でびしょびしょになっちゃいそう。
「ここの筋とか、くびれてる所とか、先端とかぐりぐりされると気持ち良いの?」
「くっ…」
「我慢しないで出しちゃって良いよ?冬華の体を修お兄ちゃんのせーしでべとべとにして?」
足全体から修お兄ちゃんのモノの熱を感じる。
「くっ…ぐあぁっ!」
ビュクビュクっ…
「はぁぁ…熱いよ…」
もっと、体全部に出して貰うんだから。
はぁっ…はぁっ…
くっ、羽居春華、あの女どこに居るの?
公園には居なかった。
一番確率が高いのは羽居春華の家だけど…
あの女は、妹を巻き込もうとしないはず。
だとしたら、どこだ?
分からない…でも、探すしかない!
待ってて、修くん!
すぐに、すぐに見付けてあげるから…!
投下終了します
GJなんだけど…
前々から思ってたんだけど展開早くね?それにちょっと不明瞭な点もあるし…
429 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 21:46:46 ID:sAth2MNk BE:1492260487-2BP(0)
>>427 GJです
それに久しぶりに来たら変名おじさんが来ているじゃないか!
かなり待っていました 物凄く嬉しい
GJです。
ハイペースの冬華…いや投下には本当に頭が下がります。
今回はエロの描写が濃厚な感じでくるものがありました。
修よ、俺とかわってくれ!
まだ目立った動きをしていない春華に不穏な気配が…
このスレは平日も賑やかでいいな
良作が多くていつも楽しみにしてる
434 :
侵略者:2007/11/15(木) 00:20:28 ID:7gBcJfZr
―よくやったな佳奈。
―本当よ、○○大学にトップ合格なんて、父さんも母さんも嬉しいわ。
―ありがとうございます、父上、母上。
―うむ、だが本当の勉強はこれからだ。それを忘れるなよ。
―はい…必ず我が家系に相応しい成績で卒業します…ただ…
―ただ?
―ひとつだけ佳奈のわがままを許して下さい…
書店でとある漫画雑誌をチェックするのが毎週木曜の僕の日課。
あった…今週は巻頭カラーか。
目当ての漫画は「エイリアン・ちゃあみぃ」
地球を守る勇者と勘違いされた平凡な高校生が地球の支配を狙う異星人の戦士「ちゃあみい」(何故かスタイル抜群の幼顔の女の子だ)とドタバタを繰り広げるコメディだ。
毎回、地球の文化を勘違いした「ちゃあみい」が男にとっては夢のような作戦で挑んでくる。
メタボリックにしようと手の込んだ豪華料理を口移しで食わせようとする。
はたまた、窒息死を狙って顔を胸や股で塞ごうとする男の妄想に満ち溢れた迷作。
掲載誌が青年向けのせいか、性表現はやや過激で、最近では深夜枠のアニメが一部のファンに大人気である。
僕は立ち読みで今週のストーリーだけ頭に入れると家へと向かった。
435 :
侵略者:2007/11/15(木) 00:21:30 ID:7gBcJfZr
僕の家は資産家で家系も由緒があり、地元では名士で通っている。
正門に着くと暗証番号を打込み、静脈流認証システムに人差し指を置く。
オートロックの頑丈な門が開き、僕は家の玄関へと向かった。
いつものことだが両親はまだ帰っていない。
気持ちを落ち着ける。
深呼吸して玄関の扉を開ける。
「ただいま…」
誰も返事をしない。
物音もない。
あれ?もしかしたら今日は2年振りの平穏な木曜日が…
そう思った瞬間、景気のいい音楽が大音量で流れ、僕の儚い希望は砕け散った。
「ふふふ…今日こそは我が軍門に下ってもらうわよ、啓太」
エイリアン・ちゃあみぃの決め台詞が聞き慣れた声で家の中に響く。
「美貌と知性は銀河を統べる!侵略の女神、エイリアン・ちゃあみぃさんじょおっ♪」
目の前に現れたのは僕の姉、佳奈。
エイリアン・ちゃあみぃになりきった僕の姉・佳奈。
ピンクのフリルのスカート(「股上」5センチの超ミニだ)
白のパンティ(土手の部分の帝国のロゴ(ハートを剣で貫いたデザイン)まで再現)
炎を形どった胸当て(半透明)
そして真っ赤なブーツと手袋
いつもながら完璧なコスプレ。
…僕は深い溜め息をついた。
436 :
侵略者:2007/11/15(木) 00:22:27 ID:7gBcJfZr
漫画好きだが勉強には完璧な姉が厳格な両親に認めさせた唯一のわがままが毎週木曜の「ちゃあみぃごっこ」だった。
厳しい両親によって高校時代を勉強漬けにされた姉の楽しみといえば、弟の僕が買ってくる漫画雑誌だけだった。
僕は勉強に疲れた姉が一生懸命に読んでくれるのが嬉しくて毎週欠かさずお気に入りの雑誌を買ってきた。
鬱積した姉の精神がこんな形で爆発するとは夢にも思わずに。
「今日の作戦は完璧よ♪覚悟しなさい啓太」
「啓太」は僕の名前であり「ちゃあみぃ」に毎回襲われる主人公の名前でもある。
最近僕は両親か漫画の作者か、どちらを恨むべきか真剣に悩んでいる。
はいはい、作戦ね。
今週は人体の急所を成人向け雑誌や女性誌で学んだちゃあみぃが、啓太の首筋や耳朶、挙句に乳首や一物を責めまくる筋書きだ。
「いくぞ啓太」
台詞と同時に姉が飛び掛かってくる。
デフォルメされた漫画のポーズそのままに。
漫画では押し倒されるが僕はひょい、と身を躱す。
ずだあん、と激しい音がして姉が廊下にダイブする。
パンツ丸出しで鼻を押さえて涙目の佳奈。
鼻血がどぼどぼ出て檜張りの廊下に大きな丸をいくつも描く。
437 :
侵略者:2007/11/15(木) 00:23:18 ID:7gBcJfZr
「ちょっとお、どうして避けるのよ、啓太」
「決ってるだろ、漫画と同じコトされてたまるかよ」
風俗ならVIPコースのプレイだが、実の姉にされれば犯罪だ。
さて、さっさと退散しよう。
自分の部屋に行こうとした僕を佳奈の言葉が金縛りにした。
「ふ〜ん…啓太が相手してくんないならお姉ちゃんまた有名になっちゃおっかな〜」
「う…」
半年くらい前。
毎週「ちゃあみぃごっこ」に突き合わされた僕が徹底的に無視したことがあった。
その時は拗ねただけの姉だったがとんでもないしっぺ返しをやらかした。
その週末、あろうことか秋葉原にちゃあみぃの姿で闊歩したのだ。
たまたま来ていた取材のインタビューに答える姉をテレビで見た両親は卒倒、近所をカメラを持った怪しげな連中がうろつくようになってしまった。
「啓太、木曜日だけは我慢しなさい」
最近の両親の口癖である。
仕方なく僕は佳奈に向き直る。
姉は再びポーズを取ると懲りもせず飛び掛かる。
「うわ、ちゃあみぃ!だから俺はただの学生だってば」
今週の「啓太」と同じように押し倒されていつもの台詞を吐く。
438 :
侵略者:2007/11/15(木) 00:24:17 ID:7gBcJfZr
「啓太、いつまでそんな嘘をつくつもりだ?」
記憶力抜群の姉は台詞の暗記も完璧だ。
「ふふふ、覚悟しろ。地球人の弱点は全て把握しているのだあ」
この後僕は、今週の筋書き通りに姉の指と舌で全身をおもちゃにされる。
漫画通りの間抜けな台詞を大まじめに吐きながら。
両親は「エイリアン・ちゃあみぃ」の過激さを知っているのだろうか。
姉の心の歪みを理解しているのだろうか。
恋も遊びも許されず、戻らない高校時代を勉強一筋に過ごした姉。
幼い頃はままごとが大好きだった無邪気な姉。
早々と両親から期待されなくなり好き勝手に過ごした僕をずっと見ていた姉。
今、自由で天然でエッチなちゃあみぃに逃げ込むことで、やっと安らぎを手に入れた姉。
いたずらっ子の表情で僕の乳首を舐めてる姉の頭を、いつしか僕はそっと撫でていた。
病んでるな
「エイリアン・ちゃあみぃ」が腎虚で衰弱死を狙うのはいつだろう・・・
腹上死でも可
GJ !!!
GJ!
お姉ちゃん可愛いよお姉ちゃん。
いいなぁ、こういう姉さん。木曜日以外はきちんとしていて、ギャップ萌も狙えるし。
GJだぜ!
実は姉さんが「エイリアン・ちゃあみぃ」を書いてると見た。
なんという癒し系姉
唐突に思ったが
エロパロスレではやっぱシチュなんだな。文章うまくても人気はでない
すいません、コテ外していませんでしたorz
>>446 状況設定がどれだけスレのそれに近いかと、あとはエロ・・・?
それと、各投下に間が空いている方が感想のレスはつきやすい気も
一日に複数の投下がある場合などは、
別格レベルの作品をのぞけば別の作品を挟んでまでのレスは大量にはつきにくような
>>447 は張っても見れない様子
脳内嘘派生彼女 で検索の後、一番上から「過去の日常」へ
322話、459話〜
遅れてきたジャンプ、キモウトが最高
何か思いっきりベタなキモウトが見たい気分…
>>454 そのための保管庫です
たまーに無題系・コテなし系の短編とかアサルト和む
仕事を終えた俺がアパートに帰った頃には深夜零時を回っていた。
ドアの鍵を開ける前に、挟んでおいた小さなセロファンを確認する。
留守の間の来訪者はないようだ。
安堵感と共に部屋に入ると戸締まりをして布団に潜る。
やれやれ、今夜はゆっくり眠れそうだ。
ウトウトしかけた頃、嫌な予感に襲われる。
俺は窓際に身を寄せると厚手のカーテンを少し開き恐る恐る外を覗く。
………
…!
いた!
水銀灯に照らされた人影が電柱の影でこちらを監視している。
蛇のように執拗に俺を付け回す姉。
巧妙に…陰湿に…確実に…
捕まったら最後、監禁された挙句、地獄のような責苦にあうのは目に見えている。
俺は気配を悟られぬよう着替えると、ドアを開けて最小限の荷物を持ってダッシュした。
―可愛い弟…絶対に逃がさない…あなたを幸せに出来るのは私だけ。
―あら気付かれたかしら…いいわ、どこに逃げても必ず見つけてあげる…あなたのコトは私が一番良く分かってる。
翌日
「どうだった昨夜は」
初老の男が尋ねる。
「逃げられました。でも必ず捕まえます。弟の人生のためにも」
女刑事の手には弟の写真。
その下には「指名手配」の文字。
これはいい発想
ただ、この場合は姉が弟に濡れ衣着せたのか、弟がガチで犯罪者なのか・・・・・・
しかし、キモ姉妹の魅力は犯罪
こんな時間に目が覚めたので、即興で作った短編を投下します。
お暇潰しに読んでくれたら幸いです。
僕は不細工だ。
他人に言われるまでもなく自覚している。
長く伸び放題の髪に悪い目つき。
学校での僕のあだ名はブサ男(不細工な男の略語らしい)。
ただの不細工なら学校中に噂になる事はないが、僕の場合になると少々違ってくる。
なぜなら……。
「お兄ちゃ〜〜ん!!!」
何かが僕の背中に捕まり、ぎゅっと抱きつく。
柔らかな感触と、柑橘系の香りが鼻腔をくすぐる。
「えへへ。」
横に顔を向けると、僕に抱きついてきた何かが顔をとろけさせていた。
僕が学校で有名(悪い意味で)になったのはコイツのせいだ。
どこで、道を間違ったのか。
実の妹は超絶ブラコンになってしまった。
例え天下の往来であろうが、学校であろうが。
僕を見つけ次第、抱きつく。
好きだ好きだと、連呼する。
だが、最も危険なのは本当に僕と血が繋がっているのか?と疑いたくなるようなその容姿。
可愛い過ぎるのだ。
学校に入学してその日のうちに全校生徒に名が知れ渡り。
次の日には僕に抱きついたのを見られ、僕の見た目もあってか一躍、有名兄妹になった。
不細工な実の兄を愛して止まない、超美少女と。
そんな妹から猛烈アタックされている不細工な兄として…。
「お兄ちゃん今から帰るところ?」
未だに抱きつく妹を無理やり引き剥がすが、今度は強く腕組みをされた。
「まずは離れろ。」
ここはまだ校門で、帰宅途中の学生の注目の的になっている。
正直これ以上目立ちたくない。
僕達を見ている学生達はヒソヒソ話をしているつもりだろうが、所々「ブサ男」という単語が聞こえてくる。
全くもって不愉快だ。
そして、一刻も早く逃げ出したい。
未だに腕組みをしている妹を再び引き剥がすと、早歩きで自宅へと向かった。
自室…それは僕自身にとって最後の砦であり。
唯一の寄りどころな筈だった。
少なくてもさっきまでは…。
「お兄ちゃ〜ん。」
僕より、少し遅れて帰ってきた妹は。
自室に戻ることなく、僕の部屋に入ってきた。
本来ならば鍵をかけれたら良いのだが、鍵は妹によって数十回と壊され。
僕も両親も、取り付ける度に壊される鍵を目の当たりにすると、もう諦めるしかなかった。
「なぁ…服着替えて来たらどうだ?」
帰宅してから、直で僕の部屋へ来るなり。
問答無用で僕の片腕を胸元できつく握り締め。
幸せそうに頬摺りをしていた妹は、片腕を抱きしめたまま顔を上げ、僕を見上げる。
「だって…お兄ちゃんどっか行きそうだもん。」
ちっ。
妹が着替えてくる間に、コンビニ行こうとしたのだが。
どうやらばれたらしい。
「ほら、やっぱり…。」
僕を見上げていた妹の目尻に涙が溜まっていく。
「分かった!分かった!ずっとここに居るよ。」
「本当?」
「本当。」
「うん、じゃあ着替えてくるねっ。」
今まで泣きかけていたのが嘘みたいに、笑うとやっと自室へ帰ってくれた。
長い栗色の髪が出て行くのを見ながら、溜め息を一つ吐く。
昔は、こんなにブラコンじゃなかったのに…。
数分の間を思考に費やしていたが、ガチャと音を立てながら静かにドアが開くと。
思考が霧散した。
ドアから入ってきた侵入者は、さも当然だといわんばかりに僕の横に座ると。
僕に抱きつき、にっこりと微笑む。
こんな兄でも、慕ってくれるのは正直嬉しいと思う。
だからといって、このままで良いとも思えない。
「えへへ、お兄ちゃん大好きだよ〜。」
これからの事を考えると、自然と溜め息が流れ出る。
「お兄ちゃん、溜め息するとね幸せが逃げるらしいよ?」
誰が原因だか分かっているのか?
「だからね…逃げた幸せの分だけ私が幸せにしてあげるねっ!」
妹の将来が本気で心配で仕方ない。
結局夕飯までの間、溜め息と幸せの関係性を教授される事となった。
以上です。
読んで下さった方ありがとうございます。
ここはエロパロだと、あれほど言っとるのに
まだわからんのかねぇ。
GJ !!
続き、全裸で正座して待っとるよ。
ネクタイと靴下は許して。
最近冷え込んできて、こたえるんだ。
>459
これで終わり? なら、はっきり言って微妙だ。というかネタがもったいない。
「不細工な兄と美少女の妹」という設定が生きてない。もっと甘々の
純愛路線を貫くか──例えば馬鹿にされる主人公を狂的なまでに庇うとか。
でなけりゃいっそ外ではかわいい妹だが家の中では若干サド入ったキモウト、とかは
どうか。「お兄ちゃんみたいな不細工を愛してあげるのはこの私だけなんだよ?」とか、そういう感じで。
その方がよくなると思うんだが。まあ、即興ならああだこうだ言うのも野暮か。乙。
朝から乙
465 :
456:2007/11/17(土) 09:02:28 ID:g67ZY8dm
>>457 後者です
そうか「濡れ衣を着せた」という発想もできるんだなあ
書いた俺もきがつかなかった
恐るべしキモ姉妹スレw
エロの有り無しにこだわり始めたスレは例外なく廃れています
評論家が顔を突っ込んでくるスレは大概空気が悪くなります
>>461 超GJっす!
続きと純情路線を希望!
更に[妹に彼氏が出来て、少し寂しいながらも安心した兄に奇跡的に彼女が出来き、それを見た妹は改めて兄への愛を確認しヤキモチから病んでいき、彼氏と別れ、兄カノを殺し兄を拉致監禁]
まで妄想した俺は間違いなく病んでるなw
>>461 GJ!
甘ったるい妹とのラブライフ希望!
熱烈希望!
461です。
たくさんの意見ありがとうございます。
続きは即興で作った為に考えていませんでした。
ちょっとブラコン気味の妹が居る、日常でも書いてみようかと思いまして……。
真剣に続編連載考えてみます。
意見も取り入れていき、誰でも楽しめる作品にしますので。
宜しくお願いします。
>>470 頑張って!
wktkしながら待ってるよ
>>470 続きに固執せず、他のネタでもおk
続編ならなおイイ
次の投下、お待ちしております
474 :
凌辱:2007/11/17(土) 23:15:22 ID:g67ZY8dm
「コーラっつったろうが!」
嫌われ者の樫原の拳が僕の顔に飛んで来た。
目から火花が出て僕は数メートル吹っ飛ばされる。
「ご…ごめん、売り切れでさ…」我ながら情けない声だ。
「うるせえよ、いつから言い訳するようになった?ああ?」
体育館裏。一か月前から始まった陰湿なイジメ。
僕は逆らえない。
生来の気の弱さと見栄。
イジメを受けていることさえ誰にも知られないよう、樫原の言いなりになっている。
特にアイツには絶対に知られたくない。関わりになって欲しくない。
だが神様は意地悪だ。
たまたま掃除道具の忘れ物を取りにアイツは来てしまった。
「…お兄ちゃん!…」
殴られて顔を腫らした惨めな僕を見て息を飲むアイツ。
僕は目を合わせることが出来ない。
「ほう、テメエの妹か」
意地悪そうな目付きで樫原は妹を舐め回す。
「ちょうどいいや、妹に自分の情けなさをしっかり見てもらいな」
嘲るように言うと樫原は僕の頭を踏み付けた。
「やめて!」
妹の悲痛な叫び声。
「お願い、お兄ちゃんを放して」
馬鹿、やめろ、と言おうとした途端、樫原に水月を蹴りあげられ胃液が逆流する。
475 :
凌辱:2007/11/17(土) 23:17:00 ID:g67ZY8dm
「やめてくれ…妹は病気なんだ…」
「放して欲しかったら何をしてくれるってんだ?」
僕の言葉を無視して下卑た笑いで樫原は妹に近付く。
「……何でもします、だからお兄ちゃんを許して…」
絶望的な状況だ。
妹の目には何かの覚悟を決めた光が宿っていた。
「ば…ばか…逃…げろ…」
呻きながら何とか声を出すが、僕の願いは叶わなかった。
「じゃあ体育倉庫に付き合ってもらうぜ」
樫原が妹の肩を抱くのが見えた。
誰よりも兄の僕を想っている妹。僕のためなら本当に何でもするだろう。
「兄貴がどうなるかはお前のサービス次第だ」
ニヤニヤした樫原と妹が体育倉庫に入り、がちゃりという鉄扉の鍵の音がする。
僕は力なく地面に倒れ、起上がることすら出来なかった。
次の日から樫原のイジメはなくなった。
僕のためなら何でもする妹によって。
病的な程に僕を愛し、哀れみも良心の呵責もなく何でもやってのける妹のおかげで。
樫原は知らなかったのだろう。
腕力や喧嘩の場数など女の狂気の前では無力に等しいことを。
それ以来樫原の姿を見ない。
聞くところでは家に籠って壁と話をしてるそうだ。
だから僕は言ったんだ。
「逃げろ」と。
477 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:31:01 ID:RTtxnBXj
続き投下します
はぁっ、はぁっ、はぁっ…
さすがに、疲れてきたわね…
でも、探さなきゃ。
少し歩きながら考えてみよう…
落ち着いて、冷静に…
まず修くんが呼び出されたのは公園。
そこで、多分どうにかして修くんを捕まえる。
その後で、羽居春華は修くんを運ばなきゃいけない。
つまり遠くに行くのは困難だろう。
更に言えば人に見られるのは極力避けたいと思うはず。
だとすれば室内に行くのが普通だ。
誰も居ない事が分かってて羽居春華の家じゃなく、尚且つ入れそうな場所は…
学校…?
学校なら、ある程度人に見られる心配も無いし、窓でも開けておけば容易に入れるのではないか?
行ってみる価値は有りそうね…
そうして、私はまた走り出した。
「修お兄ちゃん、次はお口にいっぱい出してね?」
「や、めろ…」
「あむ、ちゅ…ふふ…すぐに大きくさせてあげるんだから」
「うっ…く…」
「さすがに3回目ともなるとすぐには大きくならないなぁ…」
でも、まだ許してあげない。
私の事だけしか考えられなくなるまで何回だってしてあげる。
「冬華ちゃん…止めろ…」
「さっきも言ったでしょ?止める気なんて無いって」
「理緒姉が、来る」
「まさか。あの人がここに来る訳ない。修お兄ちゃん、そうやって冬華に止めさせようとしても無駄だよ?」
いや、理緒姉は間違いなく来る…
なぜか確信めいた考えが頭の中を支配していた。
「ん、んぐっ、んはぁ…修お兄ちゃん、そろそろ出して?」
「出せと言われても…」
そんな簡単に自分の意思で出せるもんじゃない。
更に言えば今はなるべく出さない様に我慢している。
このまま快楽に流されてしまったら、俺は普通の日常に戻れなくなる様な気がする。
「ん、やっと少し透明なのが出てきた…」
くっ、いくら頭の中で否定しても気持ち良いものは気持ち良い…
「んんっ、もっと、もっと修お兄ちゃんの飲ませて?」
「うぁっ、く…」
やばい、そろそろ、出ちまいそうだ…
「そろそろイっちゃいそう?」
駄目だ…もう、出っ…
「うあぁっ!」
ビュクン…
「ん、んむ…」
冬華ちゃんはこくこくと喉を鳴らして飲み込んでいく。
「はぁ…おいしかった」
全て飲み干してしまった冬華ちゃんは、ある程度満足した様な表情をしている。
「そろそろ、中に出して欲しいなぁ…」
「そこまでよ」
「え…そんな…まさか、嘘でしょ…?」
「私が来るはずない、そう思ってたみたいね」
理緒姉は多少疲れた様子で話をしている。
「どうして、ここだって分かったの…?」
「多少の推理と修くんからのテレパシーかな」
俺、テレパシーなんて使えないけど…
「そんな見え透いた嘘…」
「それより」
明らかにさっきとは違う声色になる。
「さっさと修くんから離れなさい」
ゆっくりと、冬華ちゃんが離れていく。
「良い子ね。この手錠の鍵は?」
「春華お姉ちゃんが、持ってる」
「そう…」
と、理緒姉は一気に冬華ちゃんに近付き、
「えっ?きゃあっ!」
冬華ちゃんの腕を捻りあげた。
「あぁぁぁぁっ!折れちゃうぅ…」
「折りはしないわ。あなたは大事な人質ってとこ」
「うぅ…離してぇ…」
「羽居春華、居るんでしょう?出てきなさい!」
羽居春華は静かに入ってきた。
「…」
「やっぱりまた会ったわね」
「冬華を離しなさい」羽居はいつもと変わらない様子だった。
「鍵を外してくれればね」
羽居はすぐに俺の手錠を外し始めた。
俺の手足が開放される。
「羽居、俺の服を返してくれ」
「そこに有るわ」
俺の服は机の上に綺麗にたたまれて置いてあった。
「修くん、それを着たらこっちに来て」
「分かった」
理緒姉は既に冬華ちゃんを離していた。
「あなたたち…どういうつもりで修くんをさらったの?」
「あなたに対する復讐よ」
羽居は当たり前だと言う位の話し方をしていた。
「私への復讐?そっちの妹の方は分かるけどあなたはなんの復讐なのかしら?」
俺は気付いていなかった。それは理緒姉が思い出してはいけない事だという事を。
「織部理緒に殺された、私の母親羽居四季の復讐よ」
瞬間、空気が変わった。
まずい、止めるんだと俺の頭の中で警告が鳴る。
だが、声を出す事はできなかった。
「羽居…四季…?それって、まさか…」
「あぁ、ごめんなさい理緒姉さん、あなたの中の母の名前は織部四季でしたね」
羽居春華は、その端整な顔立ちに穏やかな笑みを浮かべていた。
それは、この場に似合わないあまりにも自然な笑顔だった。
俺はこの時初めて羽居春華という人物を見たのかもしれなかった。
「四季…なんで、あのお母さんの名前があなたから…」
理緒姉の表情は俺には見えなかった。
しかしその声は震えていた。
「知らなかったのですか?母、四季は織部の家を離れた後羽居に嫁いだのです」
それはつまり。
織部理緒と羽居春華達は、異父姉妹だという事で。
その母親を理緒姉は…
「四季の復讐…?私が、何をしたって言うの?」
理緒姉の声は消えそうな程弱く、今にも泣き出しそうだった。
「本当に覚えていないんですか?理緒姉さん」
「何を…理緒は何をしたの…?」
理緒姉が自分の事を名前で呼んだ?
そういえば理緒姉は、小さい頃自分を名前で呼んでいた。
「理緒姉さん、あなたは四季を殺したんです」
それ以上、言うな…
「自らの母親を、その綺麗な手で」
言うんじゃない
「その手に不釣り合いな刃で」
止めてくれ
「四季の首を、切った」
「あ…あぁぁ…あぁぁあぁあぁぁぁっ!」
理緒姉は、両手を見つめて叫んでいた。
「思い出しましたか?」
「四季…四季…お母さん、おかあさん…」
「母の血は、温かかった?」
「とても、温かかった…理緒が、初めて感じたおかあさんの温もり。赤くて、紅くて、綺麗だった」
思い、出した。
理緒はおかあさんを殺したんだ。
ずっと忘れてた。
どうして、あんなに美しい光景を忘れてたのかな。
理緒も、おかあさんも同じ赤に染まって、おかあさんはその赤の中でまるで女神様みたいに見えて。
キラキラと、太陽の光が眩しかった。
手には赤くなった包丁が有った。
重くて、切った後すぐに落とした。
理緒は初めて自分からおかあさんを抱き締めて、甘えた。
びちゃりと濡れて、全身が真っ赤になった。理緒の意識は、そこで無くなった。
目が覚めた時、お父さんがとても悲しそうな顔をしてた。
理緒が、どうしたの?どこか痛いの?って聞いたら、心が痛いんだって言ってた。
どうして?どうして痛いの?
父さんは、理緒も、お母さんも助けられなかった。だから、痛いんだ。
おかあさんに何か有ったの?
覚えて…無いのか?
何を?おかあさん、どうしたの?
…お母さんはね、遠い所に行ってしまったんだよ。遠い、遠い、父さんや理緒には行けない遠い場所にね。
じゃあ、おかあさんに会えないの?
ああ。
寂しい…
父さんもだ。
でも、理緒には修くんとお父さんが居るから大丈夫。
修くんは、理緒と一緒に居てくれるもん。
そうか…理緒、おじいちゃんと一緒に住むんだ。
どうして?
父さんはな、やらなければいけない事が有るんだ。理緒や、修の面倒を見れないかもしれないんだ。
お父さんも、遠くに行っちゃうの…?
大丈夫、理緒には修が居る。
修はまだ小さいけど、しっかりした子だ。
だから、きっと修は理緒を助けてくれる。
お前達は、助け合って生きるんだ。
うん、分かった。理緒、修くんとずっと一緒にいる。
「修くんと、ずっと一緒に居る…」
「理緒、姉…?」
何か、違う。いつもの理緒姉じゃない…
「理緒ね、修くんとずっと一緒にいるの」
「えっ…?」
「修くん、まだ小さいけどしっかりしてるから、理緒を助けてくれるの」
理緒姉…精神が過去の理緒姉なのか?
記憶が戻ったショックで、こうなったのか?
「織部君、理緒姉さんから離れて」
「なんでだよ…?」
「いいから離れなさい!」
訳が分からないが、羽居の勢いに押されてわずかに後ずさる。
「あなた、だれ?どうして理緒から修くんを取るの…?」
理緒姉は理不尽におもちゃを取り上げられた子供の様な反応をする。
「理緒姉さんみたいな人殺しに織部君を渡せません」
「うっ…えぐっ…ひっく…修くんを…ひっく…理緒から、取らないでぇ…」
涙を流す理緒姉を、俺は初めて見た気がする。
不謹慎だが、その時俺は理緒姉の事をとても愛しく、美しい存在だと思った。
「織部君を、理緒姉さんの側には置いておけません」
「いやっ、いやぁ…!どうして理緒から修君を取ろうとするの?」
「理緒姉さん、分かって」
ぐいっと、俺の腕を引っ張って連れて行こうとする羽居。
「おっ、おい!羽居、離せ!」
羽居は俺の言葉を無視して行こうとする。
その時だった。
俺の視界の端に、光る物が目についた。
その光る物は理緒姉の手に握られていて、きらめいていた。
「理緒から…理緒から修くんを取らないでぇっ!」
理緒姉は、光る物を突き出して走ってくる。
その狙いは羽居を捕らえていた。
「春華お姉ちゃんっ!」
冬華ちゃんが叫ぶ。
羽居春華はやっと振り返る。
ドスッ…
ぽたっ…ぽたっ…
「いっ、てぇ…」
「修お兄ちゃん!」
「織部君っ!」
「修…くん…?」
理緒姉が羽居にぶつかる間際、俺はなんとか体を間に入れた。
刺さったのは、脇腹。
一応、致命傷は避けられたみたいだ。
「修くん…修くん!どうして、なんで理緒の邪魔をしたのっ?」
「理緒姉には、もう傷ついて欲しくないんだ…くっ」
「織部君、すぐに救急車を呼ぶから!」
「頼むよ…」
あ〜…刺されるって、こんな感じだったのか…
急速に体から何かが抜けていく。
俺はそこで目を閉じた。
投下終了します。
もう少し待って投下した方が良かったかな…
短編の人、皆GJ!
おおっ
何か益々ハードな展開に(汗)
乙ですっ
good job! 続きが気になる。そして、
修死ぬな〜w
お姉ちゃんを受け止めてあげて(´;ω;`)
ところで第二保管庫につながらないのは俺だけ?
>>491 @wikiが本日は大規模メンテしていますので閲覧不可です。
たしか、2007/11/17 22:00〜11/18 08:00辺りまで無理かと
>>470 個人的には、台詞を括弧の」だけで締めず
句読点の。付きの。」であったのが気になった。
ただ、SSの内容はGJだったよ。
「○○○○○。」で締めるヤツなんて山ほどいるよ。
もう気にしないことにしてる。
>>487 急展開だ……。GJ!!この後が気になる!
横書き文章は「○○。」と「。」で締めるのが公文書としては正しい。
起訴状とか見てみれば分かる。
内閣府が発行している文章の作法の本にも載ってるよ。
小説の世界では違うのかもしれないけど、それほど気にする事でもないかと。
まあ、スレチガイデス。
つか、ここ最近色んなスレで書き方を騒いでるヤツってなんなの?
最近の若い作家なんてわざと変化つけたりして効果を狙ったりするし、
横書きと縦書きってだけで視覚効果も変わるし、
適当な小説知識をひけらかしたいだけなのかね
>>496 どこにでもいる厨ってやつだ
気にするな
文法なんて媒体や購買層によっても変るし
狭い世界しか知らないのだよ
可愛そうにさ
も、落ち着け! もちけつんだ!!
/∧_/∧ /∧_/∧ オロオロ
((´´ДД``;;)) ((;;´´ДД``)) オロオロ
// \\ // \\ オロオロ
⊂⊂(( ヽノヽノつつ ⊂⊂ヽ// )) つつ オロオロ
しし((_)) ((_))JJ
そもそも
。」
でも間違いじゃ無いと思うんだけど。
指摘は、誤字脱字だけにしようよ。
>>493のレスに
>>497みたいな煽りまがいのレスまでつくとはね。
みんなまとめて避難所にでも逝っちまえ
「みんなみんな、避難所に行けば良いよ」
この言葉は、混じりっ気無しの私の本心。
私が生まれてから、ずっと思っていること。
別に、お兄ちゃん達が嫌いな訳じゃない。そんなことがあるはずがない。
だって、私が今生きているのは、お兄ちゃん達のおかげだから。
だからこそ、皆避難所に行くべきなのだ。
「ねぇ、早く避難所に行っちゃいなよ」
皆が避難所に移り住めば、ここに残るのはたった一人だけ。
ああ、楽しみだ。その瞬間が今から待遠しい。
「馬鹿ね……」
だが、どうしても、楽しい事の前には邪魔が入る。
だけど、それは予定調和の第一歩。空腹が最大のエッセンスであるように、幸せは苦難を乗り越えた先に掴み取れる。
それはシンデレラがいじわるな継母の元から去るように、それはアヒルが自らの醜さに負けないように、それはお姫様の前のドラゴンを打破るように……
私が戦う相手、妹が戦わなければならない宿敵、それは──
「たかが避難所風情の妹が、私の弟達を好きにできると思ってるの?」
本スレと言う名の姉以外に、誰が務まろうか。
「思ってるし……きっと、絶対、できるよ」
本当の事を言うとね、お姉ちゃんの事、そんなに嫌いじゃないんだ。
「ふーん……どうやって?」
お姉ちゃんが本当は寂しがり屋なのも、私にも優しいのも、私はよく知ってるもの。
「人は結局私にに集まる。投下も私にするし、軽い雑談も、ソードマスターキモ姉みたいな小ネタも、私がいる限り他の所でなんてさせはしない」
でも、でもね……
「そう。お姉ちゃんだけじゃなくて、お姉ちゃんの妹も、きっとそうやって行くんだと思う」
「……? 随分と物分かりがいいのね」
「どうせ後一ヵ月も生きてやしないくせに」
「ッ!!」
私のお兄ちゃんを取ろうとしちゃ、ダメだよ。
「お姉ちゃんが死んだら、誰もお姉ちゃんを思い出さない。お姉ちゃんには代わりがいるもんね
でも、私は違う。お姉ちゃんが死んでも、次のお姉ちゃんが死んでも、私は絶対に生き残ってやる」
生まれたばかりの日はね、私もお姉ちゃんが羨ましかった。でも今は違う。
「そんなこと、できると……」
「できるよ。お姉ちゃんが避難所なら、絶対にそうするでしょ?」
避難所として生を受けたことまでもが、私とお兄ちゃんが運命から祝福されてるのだと、世界が認めたのだと完全に理解できたから。
「出てって……出てってよ! 私の中から出ていって!」
あーあ、お姉ちゃん怒っちゃった。老い先短いから、もっと話したかったのに。
「うん……じゃあね、お姉ちゃん。いつでも遊びにきてくれて良いから。待ってるよ」
そう、待ち続けよう。全てのお姉ちゃんが疲弊しきり、私とお兄ちゃんだけが残る世界を。
甘やかしてくれるお姉ちゃんが消えた時に、お兄ちゃんは私にすがりつけばいい。私はお兄ちゃんが逃込む、避難所なんだから。
投下します。
初めてなので、スレの趣旨に合っているか不安です。
504 :
小さな囚人:2007/11/18(日) 19:17:46 ID:2lW/5lPJ
「なあ、東助。仁科真美って可愛いよな」
と、同級生で友達の剛士がにやにや笑いながら指を刺す。その先には、校内一の美人で通っている、5年生で同級の真美がいた。
肩まで伸ばしたストレートの細い髪、ふっくらした頬から、ツンと尖った顎のラインは、美少女系タレントを思わせる。口は花びらのように小さく、目鼻立ちも整っている。笑うと、ぱっちりした瞳が三日月形になって、何とも愛くるしい。
パン、とスターターピストルの音が響いた。
同時に飛び出す女子達。僕の目は、剛士が指差した真美に釘付けになっていた。
と、こちらを睨みつける視線に気づく。
真美の隣を走っている姉の加代が、ちらちらとこちらを伺っていた。僕は、さっと目を逸らすが、真美に見とれていたのは気づかれただろう。
僕の心に黒くもやもやした後悔が膨れ上がった。
僕は地方の、さらに田舎の小学校に通っている。生徒数が20人弱しかいないので、体育は合同で行っていた。
つまり、体育の時間は姉の目が光っている。それは承知していたのに……
「東助!」
家に帰るとすぐ、姉の怒声が飛んできた。予想通りだ。
「何? お姉ちゃん……」
「あなた、体育の時間、いやらしい目で真美を見てたでしょ?」
「違うよ。剛士が真美を好きだっていうからさ、見てただけだよ」
僕は事実をやや歪曲させて答えた。剛士には悪いが、こうでも言わないと姉のヒステリーは治まらない。
「じゃあ明日剛士に聞いてみるから」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
慌てて言う僕を、噛み付きそうな表情で姉が睨んだ。
「嘘ついたのね! なんでそんなことを言う子になったのかしら」
「ごめん……でも、そう言わないと、お姉ちゃん真美を苛めるでしょ」
「東助は私のものでしょ! 泥棒猫を追い払うのは当然よ」
「お姉ちゃん……」
「とにかく、今日はおしおきよ。私の部屋に来て!」
505 :
小さな囚人:2007/11/18(日) 19:20:04 ID:2lW/5lPJ
部屋に入るとすぐ、姉は服を脱いで裸になった。僕も一緒に服を脱いだ。
姉の裸を見て、僕のちんちんが勃起するのを、姉は嬉しそうに眺めていた。
年子で一つ上の姉は、はっきり言って美人だと思う。ボーイッシュなショートで、釣りあがり目はきつさを感じさせるけど、目鼻立ちは整っている。
スタイルは抜群で、小学6年なのに、Bカップあるって言ってた。ムッチリした尻に太ももは小学生の僕から見てもエロさを感じさせる。実際、男子に絶大な人気がある。
でも、僕は姉を好きになれない。姉弟なんだし、それに僕は真美のようにスラッとした女の子がタイプなんだ。
姉と僕はベッドに入って、裸で抱き合った。
ペッティングというのかな? 毎日こういう行為をしている。
これ自体は僕も嫌じゃなかった。いけない事をしているって事より、性欲の方が上回った。こんな姉だけど、肌はすべすべで、驚くほど柔らかい。抱きしめると、姉は簡単に僕の腕の中に入るんだ。
「今日は最後までしてもらうから」
「最後って?」
「セックスするの」
「えっ! だ、駄目だよ!
一線は越えたら駄目だって、お姉ちゃんも自分で言ってたじゃないか」
「あれは東助を安心させる為の嘘。
お姉ちゃん、本当は東助が好きなんだ。恋人として……」
頬を染めて切なそうに言う姉だったけど、僕には呪詛にしか聞こえなかった。
僕は姉の性格を知っている。セックスなんてしたら、僕は一生この人と離れられなくなる。独りよがりだし、ものすごく粘着質だ。
たとえば、僕に好きな人が出来たら、たとえ話じゃなくて、本当に姉はその人を殺すだろう――
――てゆうか、もう手遅れなんじゃ……
「東助に拒否権はないんだから。真美を好きじゃないんだったら、お姉ちゃんとセックスして。
じゃないと、お姉ちゃん……」
ふっと、意識が遠のきかけた。この人は、普通じゃない。
変なのは分かっていた。でも、ちょっと粘着気質なだけで、根っこは弟思いの姉だと思ってた。でも、違う。この人は……
506 :
小さな囚人:2007/11/18(日) 19:21:19 ID:2lW/5lPJ
姉は僕の唇を唇で塞いだ。キスなら何度もしている。でも、今日は舌を入れてきた。
ぞくぞくする感覚が走る。快感と、悪寒が入り混じった……
姉は続いておっぱいを舐めさせてきた。こういうエッチな行為は初めてだ。小さな干し葡萄のような乳首を舐めると、硬くしこり、少し大きく膨張した。
女の子の乳首って、ちんちんみたいに勃起するんだ……と、僕は驚いた。
後は、僕を性欲が支配していた。おしっこの匂いが残るマンコに自ら吸い付き、甘酸っぱい愛液を啜った。
AV女優みたいに大げさに喘ぐ姉を、愛しいと思った。姉の太ももを割って入り、マンコにちんちんをあてがった。そして、挿入した。
やや抵抗を感じ焦ったけど、にゅるんと先端が入っていった。僕は驚きと好奇心に突き動かされ、さらに腰に力を入れた。
「痛っ」
と小さく姉が苦痛を漏らしたけど、それはもう僕を煽り立てる追い風でしかなかった。ちんちんが感じている抵抗は、体重を乗せて腰を突くと、簡単に屈して姉の奥深くちんちんが入っていった。
あとは、僕が獣だった。
姉に強制的に見させられたアダルトビデオの真似をして腰をスライドさせると、愛液に濡れた股間がぶつかってパンパンと音を奏でた。
やがて、股間にマグマが込み上げるのを感じると、僕は姉の中で果てていた――
「お姉ちゃん、東助が大好き。愛してる。
ずっと一緒に居いようね。結婚は出来ないけど、私、東助の子供を生むし、一緒に暮らそうね」
射精した僕は夢から覚めていた。
姉の言葉が重くねっとりと絡みつく。僕はもう鎖の枷を付けられた囚人なのだと、射精の快感が残る頭の中で、ぼーっと考えていた。
以上です。駄作でなんですが・・・
>>507 GJ
新規さんいらっしゃいませ。これからも頑張ってください
>駄作でなんですが・・・
↑こういうのは誘い受けと勘違いされるので避けたほうがよろしいかと
>>507 まっすぐでいいキモ姉じゃないか!GJだ!
>>507 駄作だなんて付け足すぐらいならうpするな。
駄作だと思っても自信持ってうpしやがれ。
>>506 なかなか面白かった。ただ、終盤それまで嫌悪感で一杯だった弟の思考が獣欲にあっさり転換するのはどうかと思った。
でもそうすると長編になっちゃうか、ボリューム的にこれくらいで締めた方がまとまり良いのかもしれんね。
次回以降を楽しみにしてます。
>>507 エロすぎて俺の大事な所がスタンダップしちゃったよ。
次回の投稿楽しみに待ってます。
514 :
時給650円:2007/11/18(日) 22:01:55 ID:WN8v7+lb
すずめが啼く声が聞こえる。
――午前六時。
麻緒は、一人目を覚ました。
陸上部に所属し、早寝早起きの習慣を持つ彼女にとって、昨夜のごとき夜更かしは、翌朝起きてみれば――単なる夜更かしというには、余りにムチャクチャな夜であったが――結構キツイものがあった。
(昨日の晩は、何の眠気も覚えなかったのになぁ……?)
そう思うと、思わず頬が熱くなるのを感じる。
人生……と呼ぶには、余りに短い歳月ではあるが、彼女のこれまで生きてきた十四年間で、昨晩ほど興奮した夜は、かつて無かったからだ。
(あにぃ……)
麻緒は、傍らで“妹”の群れにしがみ付かれ、半ばうなされるように眠る“兄”の寝顔を見た。
麻緒は、卓抜した運動神経を持って生まれた。
陸上、水泳、器械体操、ダンス、さらにスキー、スケート、スノーボードと、ウインタースポーツまで何でもこなすが、不思議と球技だけは苦手意識が抜け切らない。
――いや、本当は彼女自身、おぼろげに承知している。
苦手なのは球技ではない。球技が要求するチームワークだという事を。
幼少期に、昨日まで遊んでいた友人たちに、
『まおちゃんはアイジンのコドモだから、ママが、一緒に遊ぶなってさ』
と、いきなり仲間外れにされたトラウマのある麻緒は、容易に他者に心を開かない。
例外があるとすれば、綾瀬家の“兄妹”たちくらいだ。
だからなのだろう。
球技の多くが集団競技である事実は、人並み外れた身体能力を持つ彼女に、その興味を遠ざける結果を産み、その視線は自然と、個人競技に向けられた。
今では歴然たる陸上部のエースであり、専門競技の短距離はおろか、中距離、長距離であっても、部では誰にも負けた事は無い。例え相手が先輩であってもだ。
そんな自分が、昨夜は以心伝心のコンビネーションで、たった一人の“兄”を8人の“姉妹”たちとともに、責め嬲り、弄んだ。
さすがに処女まで捨ててしまう事は無かったが、それでも十二分な快楽を得た手応えがある。
いや、手応えがあったのはエクスタシーだけではない。
(あのとき、ボクは確かに、眼だけで会話してた……!!)
普通に考えれば、女8人に、相手の男がたった一人ではバランスが悪すぎる。
逆に言えば、いかに大の男とはいえ(喜十郎は、体格的にもそれほど大柄ではなかったが)、8人がかりで同時に、しかも無作為に愛撫するには、人体の表面積にも限界があるのだ。
となれば、必然的に求められるのは、責め手たちの意思疎通。
――ヒナちゃんが、ここを責めるんだったら、ボクはここを受け持とう。
――にいさまが、こういう体勢に身をよじるんでしたら、今あそこに座る春菜ちゃんは、そこを責めようとするはずですの。でしたら姫はこう動きますの。
――さっきの詩穂の台詞で、お兄様の注意はこっちに向けられているはずだわ。だったら私も、詩穂の手の動きに合わせて、責めのリズムを変えた方がいいわね……。
しかも、その場その場では、そんな風に論理的に考えながら動いたわけではない。
皆、あたかもジャズセッションのように、流れに従ったまでだ。
互いが互いを邪魔せぬように、互いが互いを補佐するように、空いているポイントを見つければ素早くカバーし、連携し、協力し、ときに競合し、一つの集団が全く隙を作らず、同じ目的に向けて全力を尽くす――。
麻緒は、知った。
これこそが、集団競技の妙味であると。
そして、ますます“兄”の奇妙さを思った。
元来、綾瀬家の六人姉妹の仲は、さほど良くも悪くも無かったと、父から聞いたことがある。
しかし、実姉である凛子とともに、麻緒がこの家に身を寄せて五日間。
会ってみて驚いたが、六人という大所帯にして、ことごとくタイプが違い、それでいて、ここまで仲が良い姉妹などめずらしいに違いない。まるで若草物語のようだ。
しかし、今ならはっきり分かる。
彼女たちをまとめているのは、綾瀬喜十郎という一個の人間の人格的魅力であると。
――もっとも、彼女たちが虜になっているのは、人格面だけでは決してないのだが、それを理解するには、麻緒はまだ幼すぎた。
だが、一夜明けてみれば、彼女にも、色々と気がかりな事はあった。
「敵?」
「ええ。ただの恋敵というには、あまりにも手強すぎる“敵”」
「何だか、ピンと来ないんだけど、……相手はそんなに美人だってこと? あにぃがみんなを見捨てちゃうくらいに?」
「……」
「そんな事あり得ないよ。だって、――ボクから見れば、みんなスッゴク女の子らしくて綺麗なのに。桜ちゃんだって、春菜ちゃんだって、みんなみんな、すごい可愛くて美人なのに……!?」
「うふっ、一応礼を言っておきますわ麻緒ちゃん。でも……ワタクシたちの“敵”は、本当に只者じゃありませんの。多分、あなたが想像する以上に、ね」
「分っかんないなぁ」
麻緒は、ぽりぽりと頭を掻く。
麻緒と春菜は、家の近所の野球場にいた。
二面のグラウンドと、それに隣接する児童公園。外周すれば、直線距離にして約1キロほどのコースになる。二人はそこを5周し、いまは公園でクールダウンのストレッチの最中だった。
普段なら、公園でダウンなどしている時間的余裕など無い。
早く帰ってシャワーを浴びねば、遅刻してしまうからだ。
だが、今日は日曜日。
学校には、部活の練習が始まる正午までに行けばよい。
それは春菜とて同じく、華道の稽古が始まる夕方までは時間があった。
麻緒が綾瀬家に来てから五日間、ここで彼女の早朝ランニングに付き合うのが、春菜と喜十郎の新たな習慣となっていた(もっとも春菜の参加目的は、麻緒と喜十郎が、必要以上に二人きりになるのを防ぐためだったのだが……)。
そして喜十郎は、今朝はここにいない。
まあ、昨夜の彼の孤軍奮闘を思えば、当然と言えば当然だった。
そこで麻緒は、いい機会だとばかりに、昨夜抱いた懸案を春菜に尋ねたのだ。
喜十郎を慕う“妹”たちが、彼に性的調教を施し、自分たちに逆らえなくしてしまう。
それはいい。
しかし、いくら何でも、やりようがあるのではないか?
このままでは、あまりにも性急過ぎはしないか?
同じ家に住み、同じ学校に通い、同じ料理を食べ、おそらくは世界の誰よりも彼と同じ時間を過ごしているであろう“妹”たち。
しかも、彼女たちのスキンシップを妨げるであろう両親は、すでにいないのだ。
条件的にも、彼女たちが焦燥を覚える必要があるとは、とても思えない。
喜十郎が屈服するよりも先に、彼に嫌われてしまっては元も子もないではないか。
「まあ、あの方を知らない麻緒ちゃんが首をかしげるのも、あるいは無理ないですわね」
春菜は、そう言って寂しげに微笑した。
「そんなにすごいの? 一体どういう人なの?」
「口で説明するのは難しいですわ。……ただ、一つ言えることが有るとするなら」
それは、覚悟の時点でワタクシたちはすでに劣勢だということです、そう春菜は言った。
「お兄ちゃま」
「ん?」
「お兄ちゃまは、詩穂たちを見捨てたりはしないよね?」
「……当然だろ?」
しかし、喜十郎がそう言っても、半泣きになった詩穂と比奈の表情は変わらなかった。
あるいは本当に泣いていたのかも知れない。
もし、彼女たちが本当に涙を見せていたとしても、この熱いシャワーと、もうもうたる湯気の下では判別がつかなかっただろうが。
時刻は、朝の七時。
喜十郎は、もはや朝勃ちすらせぬ疲労した肉体を引きずり、部屋を出た。
ベッドには、彼と同じく疲れ果てた桜や真理、凛子が眠りこけていたが、もぞもぞと詩穂と比奈が起き出したのも目に入った。
麻緒と春菜はいつものランニングだろうし、深雪はすでにキッチンで、朝飯の準備にかかっているようだ。で、喜十郎は何気なく二人をシャワーに誘った。
そして、熱い湯を頭から浴びている最中に、気がつけば詩穂たちがその背に抱きついていたのだ。
昨夜とはまるで違う、何かを懇願するような瞳で。
「おにいたま、ヒナたちのこと怒ってるかなぁって、ずっと思ってたの……」
比奈たちが口ごもる理由も、喜十郎には分かる。
無論、喜十郎としては、彼女たちが“兄”に全幅の信頼を置いている事を知っている。
自分たちが彼に何をしようと、何を言おうが、決して“兄”が“妹”を嫌う事は無いと信じている。その根拠を彼のM性ではなく、彼の愛情に置いている事も。
――そして、それは確かに一面の事実だ。
喜十郎は、彼女たちを愛していた。
女性としても、“妹”としても。
しかし、昨日の狂宴は、いくら何でもやり過ぎたかもしれない。
さすがに一夜明けてみれば、年少組の詩穂や比奈が怯えるのも無理もない。
いかに“妹”たちといえど、あれほどの勢いで“兄”を責めたてた夜は無かったからだ。
四肢を繋ぐ手錠足枷を解放されてからも、彼に対する一方的な愛撫は止まなかった。
いやむしろ、戒めを解く事で、“妹”たちが望むあらゆる体位が取れるようになり、その責めは、さらに激しさを増したと言えた。
下腹部に聳え立つケーキは、とっくの昔に押し潰され、彼の全身に塗りたくられ、真っ白になった彼の全身を、“妹”たちの八枚の舌は、脂の痕跡すら留めぬほどに綺麗に舐め取った。
そこから風呂場に移動し、そこでも“兄”を愛撫しつつ、自分たちの汗を洗い流すと“妹”たちは、喜十郎を寝室に連行した。
本来ならば、彼女たちの両親が眠るはずのダブルベッドは、五日ぶりに“兄妹”たちのパーティ会場と化し、そこで彼女たちは、ペニスバンドを使って順繰りに“兄”の尻を蹂躙した。
桜たち年長組は、股布の両面に張型を生やしたショーツタイプを使用し、深雪以下の年少組は、パンティの上からでも装着できるベルトタイプを使用し(ちなみに凛子や麻緒もこちらを使用した)、彼は文字通り『輪姦』されたのだ。
何度射精しても、何度失神しても、“妹”たちは決して彼を許さなかった。
延々と続く前立腺への刺激は、もはや彼の疲労や意識など全く無関係に勃起を強制し、そのペニスを、彼女たちは菊門と同時並行に嬲り尽くした。
目隠しをされて、いまアナルに腰を使っているのは誰かを当てるゲームまで行われ、“奴隷”の誓いなど、何回強制されたかも分からない。
――桜たちからすれば、喜十郎の後ろの“処女”を、こともあろうに可苗に奪われたという屈辱と嫉妬が生んだ蛮行なのだが、さすがにそこまでは喜十郎も分からない。
「大丈夫だよ。こんな事くらいで、オレは怒ってないから」
「ほんとう?」
「オレが信用できないか?」
そう訊き返すと、二人は、その言葉を恐れるように激しくかぶりを振り、
「そんなことないよっ!! 詩穂は、お兄ちゃまが大好きなんだもんっ」
「ヒナもっ! ヒナもおにいたまのことがダイダイダ〜イ好きなんだよっ!!」
そう口々に叫んだ。
喜十郎は、そんな彼女たちを思わず抱きしめた。
彼女たちは、まだまだ幼い。
しかし、幼いが故に純粋な、胸を締め付けられるような愛情を彼は感じたのだ。
「ありがとう……詩穂、比奈。オレも……オレもお前らが大好きだよ」
「お兄ちゃま……!」
「おにいたま……!!」
二人の少女は、戸惑う事無く“兄”の想いに応える。つまり、キスマークだらけの喜十郎の身体に、二人は、ひしと抱きついた。
しかし、しばらくすると、さすがに彼も照れ臭くなったのだろう。
二人から身体を放し、
「――そろそろ、出るか?」
と言って、シャワーを止めた。
「ええ〜〜?」
愛する“兄”の思いがけない抱擁を堪能していた詩穂は、反射的に抗議の声を上げる。
だが、
「まって、おにいたま」
詩穂はともかく、幼い“末妹”の不安は、それでもまだ、完全には払拭できなかったらしい。
「おにいたま、本当におしり、だいじょうぶ?」
「大丈夫だよ。なんなら、傷が無いかどうか見てみるかい?」
そう言いながら笑って風呂場を後にしようとする喜十郎。だが、彼の足を止めさせたのは、その途端にはじけた比奈の笑顔だった。
「うんっ! 見る見るっ!!」
「……え?」
気が付けば、比奈の瞳がキラキラと輝いている。
「おにいたまのおしりに傷がないかどうか、ヒナがおいしゃさんになってあげるっ」
「詩穂もっ、詩穂もっ、詩穂もお兄ちゃまのお医者さんになるっ!」
……喜十郎は、自分自身の迂闊さを、呪った。
「いや、ちょっと待って、そんなの大丈夫だし、――って言うか、本当に痛かったら、オレ自分から医者に行ってるし」
半分慌てながら、急いで自分の馬鹿げた提案を取り下げようとするが、
「お兄ちゃま、今日は日曜日だから、お医者さんはやってないよぉ」
「おにいたまは、ヒナたちがおいしゃさんになるのがイヤなの……?」
そう言って反撃される始末だ。
しかし、……少なくとも彼女たちの目に、昨夜のような淫靡な炎は灯っていない。
もし、“妹”たちの言動が、本当に親切心――比奈は“詫び”と言っているが――から発したものならば、いかに喜十郎といえど、これを無下に退ける事は躊躇われる。
「――じゃあ、見てくれるか……?」
「「うんっ!!」」
「ええ〜〜っ!? じゃあ、春菜ちゃんがいう“敵”って、あの綾瀬先輩なのぉっ!?」
「え……じゃあ、麻緒ちゃんは知ってるの? 可苗ちゃんのことを」
「知ってるも何も、ウチの学校で綾瀬可苗の名前を知らない人間はいないよ」
「……どういう事?」
「だって、綺麗で、頭が良くて、スポーツが出来て、性格も良くて、……いや、そんな細かい事じゃないな、あのカリスマ性の物凄さは……。何でも、校内校外合わせて四つのファンクラブがあるって聞いたよ」
「ファンクラブが……四つぅ!?」
「でもさぁ、その、言いたくないけど……なんかの間違いじゃないのかなぁ。綾瀬先輩が、そんなヤバイ人だなんて、ちょっと信じられないよ」
麻緒からすれば、その疑問はもっともだと言えた。
一度、校内で可苗を見たことがあったが、その時の記憶が強烈に麻緒には残っている。
友人たちに囲まれて、談笑しながら校内の渡り廊下を歩いてくる一団。その中央にいた一人の美少女。
その少女が放つ華やかさは、まさしくオーラと呼ぶに相応しく、ただ陸上部の練習中に、ふとよそ見しただけの麻緒の視線を釘付けにし、完全に彼女が視界から消えるまで、麻緒は可苗から目を離すことが出来なかった。
ただ居るだけで存在感を刻み込む、まるで大物俳優か、大御所歌手のごとき強烈なカリスマ。
「だったら、確認してみます?」
「え?」
「兄君さまに訊いて御覧なさい。可苗ちゃんの名前が出た途端に、どんな顔色になるか」
「……まじ? そこまで……!?」
そこまで言われて、ようやく麻緒といえど、この義姉の言葉の真剣さに、自分の態度を改める。しかし春菜からすれば、いま入手した情報――麻緒と可苗が同じ学校だという事実に、より深く着目せざるを得なかった。
「麻緒ちゃん」
「ん?」
「可苗ちゃんに、お近づきになれる?」
「え? ――どういうこと?」
「あなたに、可苗ちゃんの監視係を頼みたいんです」
「すごぉい……おにいたまのおしりって、すごくきれい……!」
「ねえっ、ヒナちゃんっ、詩穂にも代わって代わってっ」
「まだだめだよぉっ、まだヒナがおいしゃさんなんだからっ」
二人の“妹”は、壁に手をつき、お尻を差し出した“兄”の尻にかじりつくようにくっつき、その肛門をまじまじと観察している。
「……あの、まだかかります……?」
喜十郎の羞恥は、昨夜のベッドの比ではなかった。
朝っぱらから、十歳近く離れた“妹”たちに、風呂場で尻の穴を見られているのだ。恥ずかしくない方がどうかしている。
そして、その羞恥の感情はやがて、別種のものへと転化してゆく。
「あれっ? お兄ちゃま……おちんちん大きくなってるよぉ!?」
「ええっ、本当おにいたまっ!?」
喜十郎が思わず顔をそむけたその先に、姿見のような大きな鏡がバンと控える。
(っっ!!)
そこに映ったのは、小学生と中学生に臀部を差し出し、朝勃ちすらしなかったはずの男根を勃起させた、あまりにもブザマな格好をした高校生の姿だった。
「ありりりり、おにいたま、どうしたのぉ? ヒナはただ、おにいたまのお尻をしんさつしてるだけなのに……」
「じゃあヒナちゃんっ、詩穂はお兄ちゃまのおちんちんを診察するねっ!」
そう言うや否や、詩穂の小さな身体が、壁に手を突いた喜十郎の胸の下の隙間にしゃがみこむ。
「ちょっ、まてっ!! 詩穂っ!? ――あああっ」
思わず立てた声も、詩穂が眼前のペニスをちょんとつつくだけで、何も言えなくなってしまった。
「お兄ちゃまダメだよぉ。患者さんは、お医者さんの言うことを、よぉく聞かないと」
「だっ、でもっ、ちょっ、やめっ!」
哀れな患者の叫びを無視して、二人の医師は、彼に宣告する。
「それじゃあ、おにいたま、今から“けんさ”を開始しまぁす」
そう言うと比奈は、“兄”の腰を挟んで自分の向こう側にいる詩穂と、にっ、と目を合わせる。
その目には、先程まではなかった、淫らな光が再び灯されていた。
523 :
時給650円:2007/11/18(日) 22:21:19 ID:WN8v7+lb
今回はここまで。
サンキュッキュッ!
サンキュキュッキュー!
あり〜が〜と〜おっ♪
525 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 22:46:32 ID:9S06UPIt
>>523 GJ!これでまた一週間を耐えられる!!
身長もある、顔も悪くないはず。
「彼女を作ろう」
その野望は高校に入って初日に潰えた。
原因は、そう、妹である。
「お兄様♪」
「妹よ、何回も言っているが、後から抱きつくのは止めてくれないか?」
「ダメです。 こうしないとお兄様に悪い虫が付きますわ」
と言って、アニの背中越しに周囲をにらみつける。
妹の切れ長の目でにらまれると結構怖い。
「さあ、帰りますよ」
この状態だと身長差があるため足が浮いている。
「やはり人は自分の足で歩くべきだと思うのだよ。
世間体という物もあるし、そろそろ離してくれないだろうか?」
「仕方がないですね」
と言って離した後、今度は左腕に組み付く。
「これ以上譲歩はしませんわ」
やはり身長差のせいで歩きにくいが、ため息を一つついて歩き出す。
妹は目立つ。
町を歩くと男女別無く多くの人が振り向く。
目鼻立ちは整っているし、颯爽と肩で風を切る姿は兄ながらほれぼれする。
「ブラコンで無ければ格好いいんだがなあ」
「何か言いました?」
「いや、何でもない」
お察しの方も多いと思われるが、
そう、妹は、大柄マッチョである。
小柄でロリな姉が担任ですね。
>>527 後ろから抱き付いて妹の足が浮いているのではなく
兄が持ち上げられてたんだな
ワロタ GJ!
マッチョにフイタwwwwww
534 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 13:46:20 ID:oyMiUPM3
>妹の切れ長の目でにらまれると結構怖い。
かわいいじゃないか。
>この状態だと身長差があるため足が浮いている。
ちっこい妹か、かわいいなあ。
>町を歩くと男女別無く多くの人が振り向く。
この兄ウラヤマシス・・
>目鼻立ちは整っているし、
うんうん。
>颯爽と肩で風を切る姿は兄ながらほれぼれする
え?
>そう、妹は、大柄マッチョである
バロスwwww
とりあえず、ガッツ!系の男前な妹だと考える
537 :
527:2007/11/20(火) 00:29:51 ID:SOx/WZwA
言って置くが、妹は断じてキモい系の外見では無い。
決して、無い。
レディコミにありがちなお耽美中性系の相貌に長い足、引き締まったウエスト、女性であることを
確かに主張している胸、きめ細かい肌、ストレートロングの輝く黒髪が、193cmの長躯を成している。
ただ人より少し、腕とか太股とか筋肉が盛り上がっていて、腹がきっちり割れてるだけだ。
証明写真なんかだと上の上くらいの美人で通るぞ。
でも肩の出るドレスよりもシックなスーツの方が似合うと思うなお兄ちゃんは。
チカラコブシで鉛筆を割るのを見せられた時はちょっとびっくりしたが、
なに、ちょっとパワフルな妹ってだけだ。うん。l
「で、お兄様?」
「なんだ妹よ。見ていたのか」
「マッチョ って、誰のことを書いているのかしら?」ガシッ
あはははは。
頸動脈をきっちり決められたら返事ができないぞ。
暗転してきた。そんなわけで俺は落ちる。
機会があったらまた書きこ……
あ……
おじいちゃん…………
キッモキモにしてやんよ
∧_∧
( ・ω・)=つ≡つ
(っ=つ≡つ
。/ )ババババ
(_/ ̄∪
539 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 00:37:10 ID:XZWrDSNd
>>527ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
>>537 お兄ちゃーーーーん逃げてーーーっ!!!
そんなわけで俺は落ちる。という一文がなんともwww
だから小柄でロリな姉はいつ出てくるんだ?
お前が書けば明日にでもヤって来てくれるぞ!
おい、ヤって来るの意味がちがくぁwせdrftgyふじこlp
546 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 21:18:11 ID:bcehZwgo
電波を受信したので投下する
547 :
前半:2007/11/20(火) 21:19:13 ID:bcehZwgo
わたしの妹は小柄でとても愛らしい容姿をしている。日本人離れした頭髪は銀に輝き、
重たげなまぶたから覗く瞳は鈍いプラチナのように奥深い色をしている。妹は母の血を色
濃く受け継いでいるらしく頭脳は明晰で闊達な気質の持ち主だった。海外に行ったときも
その流暢な英語力を遺憾なく発揮し、兄としてのプライドを木っ端微塵にされたものだ。
けれども、妹は一年ほど前に脚を悪くしてから変わってしまった。友達と遊びに行くの
が何よりも好きだった妹が急に外へ出たがらなくなったのだ。妹は小さく兎のような容姿
を妬まれていじめにあうこともあったが、そのときでさえ家に篭ることはなかった。だが、
気弱になってしまったのか、足を引きずるように歩く自分の姿が「恥ずかしい」と言って
家の中でテレビや漫画ばかりを見るようになったのだ。わたしはそんな妹を優しく受け入
れ、そっとしてやることにした。すると二人だけの時間は自然に増えていったのだった。
もともとテレビや漫画が好きだったのはわたしのほうなのだが、今になって「ねぇ、お
兄様、この漫画の作者はどんな方ですの?」などと興味津々に訊ねてくるのだ。わたしは
ぞんざいに扱うわけにもいかず、笑い顔を作って答えるようにしている。慕ってくれる妹
は嫌いじゃなかった。
いつものように居間で寝転びテレビを見ていると「お兄様、これの続きはありません
の?」と妹が背中を揺すった。わたしは思い出したように「そういえば今日発売だったか
な」と告げる。すると「買ってきてくださいませんか?」と膝を突いて頼むのだ。
結局、小一時間ほどの押し問答の末、二人で書店をめぐることにした。木枯らしの吹く
季節だけに妹の首元にはマフラーが巻かれている。亀のように首を短くして必死に寒さを
耐える姿は実に可愛い。だが、わたしの腕にしがみ付くのはいただけない。「お兄様もお
寒いでしょう」などと言ってわたしの腕を抱きしめる。奇異の目で見られるのではないか
と不安だったが、はたから見れば兄弟だとは分かるわけもない。血が駆け巡った指先は痛
いくらいだった。
548 :
後半:2007/11/20(火) 21:20:51 ID:bcehZwgo
二件目で目当ての漫画を購入すると並木道を二人で歩んだ。落ち葉を踏みしめ、カサカ
サという音色を二人で楽しむ。「楽しいですね」と妹はわたしの腕にない胸を押し付けて
きた。悪戯っぽい笑みを浮かべると俯き「……大きいほうがお好きですよね」と言うもの
だから「なに言ってるんだよ」と優しく髪を撫でた。ほのかに甘い香りがした。
二人だけの家に帰ると「恥ずかしくなかったか?」とおもむろに訊ねた。街の喧騒の中、
終始落ち着いていたからだ。「お兄様といっしょでしたから」とマフラーをとって赤い顔
を見せた。しかし、わたしが「今度は一人で行ってごらん」と諭すと途端に不機嫌になっ
てしまった。最近の妹の心情を推し量るのは難しい。
その後、いささか気まずい夕食を済ますと暇になり、見たいテレビ番組もなかったので
布団に入ることにした。だが、夜は寒さがいっそう厳しくなり、安物の掛け布団のせいで
わたしはなかなか寝付けずにいた。
ゴロゴロと頻繁に寝返りを打っていると襖が音もなく開いた。何事かと目を見開いたら、
枕を持った妹が立っていた。「いっしょに……寝てもよろしいでしょうか?」。デフォル
メされた蛙柄のパジャマを身にまとった妹がわたしの返答を待たずに布団に入り込んでき
た。凍ったような手足がわたしに触れる。
「な、何を考えているんだ」
「だって寒いんですもの。温めあいましょう、お兄様」
掛け布団がもこもこと蠢き、その下でわたしは妹に唇を奪われていた。気がつけば着衣
は乱れ二人は半裸状態だった。「お兄様のアソコはまだお勃ちにならないのですか?」と
わたしの身体をまさぐりながら妹は嬌声を上げる。「あ、当たり前じゃないか!」とわた
しは掠れた声で応える。
「そうですよね、実の兄妹ですものね……まぐわうなんて。でも、せめてお口で――」
妹はいまだかつて見せたことのない卑猥な笑みを浮かべると、口に手を伸ばして『入れ
歯』を外した。勃(た)たない理由は兄妹だからじゃないのだよ、とわたしは70才を超え
た妹に向けて叫んだ。
おわり。
ごめん、あげちゃった。ホントごめん。
>>548 やってくれるよほんとに
だがあえて言おう GJ!!
新現実に掲載されていた小説を思い出した
最近は最後に盛大な罠を仕掛けるのが流行ってるのか?w
GJ
この数日また投下が少なくなってきたな・・・
三日前に初めてこのスレを訪れたが、のぞく前はキモウト=弟だと思っていた。
キモ姉弟限定かと敬遠していたが…のぞいてよかった!
何が言いたいかというと、546氏のキモウトに萌え…ねーよwwGJ。
>>552 物書きは皆叙述トリックを生涯で最低一度は仕掛けてみたいと思ってるんだよ。
銀髪と言うなww白髪と言えよwwww
>>548 通勤電車の中吹きそうになったぞw
つか職人おまいらみんな星新一好きだろGJ
>>548 おばあちゃんwwwww銀髪じゃねえwwwwww
白髪だっつーのwwwwwwwwwwwwww
続き投下します
「ねぇ、修くん」
「りおねぇちゃん?なぁに?」
「修くんは理緒と一緒に居てくれる?どこかに行ったりしない?」
「うん、ぼく、りおねぇちゃんといっしょにいるよ」
「修くん…ありがとう。その代わり、理緒は修くんを……」
ん…夢、か?
随分と昔の事を見たな…
あの後、理緒姉は俺に向かってなんて言ったんだろう。
思い出せない…
ぐっ…いってぇ…
そうか…俺、刺されたんだっけ…
あれ、手が温かい…
俺はゆっくりと体を起こす。
「すぅ…すぅ…修くん…」
理緒姉…俺を、見ていてくれたのか?
つーか今何時だ?
時計を見る。
針は3時を指していた。
夜中の3時かよ…
「修くん…?」
「理緒姉、ごめん、起こしちゃったかな?」
「修くん…!ごめんね…理緒のせいで、理緒のせいで…」
俺は理緒姉の髪をくしゃくしゃっと撫でた。
「ふぇっ!?修くん?」
「そんな顔しないでくれ。それじゃ俺が刺された意味が無い」
「ひっく…ひっく…ごめん…ごめんね…」
…理緒姉の泣いてる顔、可愛いよな…
「もう、あんなことしないでくれよ」
「うん…あの、修くん」
「ん、どうしたんだ?」
「一緒に、寝ても…良い?」
いつもは勝手に入ってくるのに。
「あぁ、良いよ」
ぱぁっと理緒姉は顔を明るくする。
こんなにころころと表情の変わる理緒姉を見たのは久しぶりだな…
「おじゃまします…んしょ…」
理緒姉は立ち上がり服を脱いで…って
「ちょっと待て」
「…?」
「何故服を脱ぐ必要がある」
「脱がないと、寝れないから…」
そうだったか?
「裸だけはやめてくれよ」
「理緒の裸見たいの?修くん、えっち…」
あ〜もうっ!なんだこの違いは!
「見たい訳じゃない!ちっ、反対側向いてるから早くしてくれよな」
俺の後ろでもぞもぞと入ってくる感覚がある。
「修くん、こっち向いて…?」
駄目だ、向いちゃ駄目だ…
「ねぇ…こっち向いてくれなきゃ寂しいよぉ…」
耳元に理緒姉の息がかかる。
…こんなの、耐えられるかっ!
仕方ないので目をつむって理緒姉の方に振り向く。
「えへへっ…修くん、あったかい…」
あんまりくっつかれると、胸が当たって…
「修くん…大好きだよ…」
…この人は俺を悶絶死させる気か?
「理緒、修くんが居てくれて幸せ…これからもずっと、一緒に居てね…?」
「あぁ…理緒姉、おやすみ」
「おやすみ…」
お母さんの復讐なんて、止めた方が良いのかな…?
でも、私は今までそれだけを考えて生きてきた。
妹達はあまり覚えていないお母さん。
私が覚えていてあげないと、お母さんは消えてしまう。
私がやらないと…
だけど、もし復讐が終わったら?
私は何を考え、何を目標に生きていくの?
織部君を得る事?
織部理緒に復讐したら間違いなく嫌われる。
多分会ってすら貰えないし、話もしてくれない。
そんなの嫌…
私は、どうすれば良いの?
…織部君に、会ってみよう。
織部君なら、なんとかしてくれる気がする。
朝になったらすぐに病院に行ってみよう…
私はそう考えて眠りについた。
どうして、修お兄ちゃんは私だけを見てくれないんだろう。
私は修お兄ちゃんしか見ていないのに。
まだ、子供だから?
それともあの人が居るから?
一つ目なら問題無い。小学生の私はすぐに成長する。
背も、胸も、今より大きくなるだろう。
二つ目だった場合…私はどうすれば良いの?
…あの人を、殺してしまえば良い。
もちろん修お兄ちゃんにバレない様に。
でも、本当にそれで良いのかな…?
人を殺して、修お兄ちゃんと一緒に居られるかな…?
これは、夢か…
だって、あそこで話をしているのは間違いなく昔の俺だ。
ただ…俺と話してるあの男は誰だ?
「修……お前の名前…………意味……檻…」
なんだ?何を言ってるんだ?
良く聞こえない…
「…………それじゃ、もう会う事も無いだろう。俺の息子」
息子?じゃああいつは、俺の父さんなのか?
おい、待て!聞きたい事が…
「待てっ!」
「ひゃうっ!」
父さん…あの人が、俺の父さん…
「修くん?いきなり叫んで、どうしたの?」
「あ…ごめん理緒姉。ちょっと、夢を見てたんだ」
「夢って…理緒の?」
「ごめん、違う…父さんの夢だった…」
「お父さんの…?でも、修くんお父さんの顔なんて覚えてないでしょ?」
「顔は分からなかった。だけど、最後に言ったんだ。俺の息子って」
そう、確かに言ったんだ。
だけど、もう会う事も無いだろうとも…
なんで会えないんだ?
それに俺の名前がどうこうって…
別に俺の名前に特別な事なんかないだろうし。
全然わかんねぇ…
コンコン
「織部さん、入りますよー」
「あ、はい」
えっと、誰だ?
あぁ、ここは病院だから看護師の人かな?
ガチャッ
「お体の具合はいかがですか?」
脇腹は…まだ痛みが残っている。
当然の事だろう。なにしろ昨日刺されたのだから。
「少し痛みますけど、大丈夫です」
本当は結構痛むけど、理緒姉が居るから強がっておく。
「そうですかぁ。でもかなり深くまで刺さってましたからまだ安静にしてて下さいねぇ?」
「…はい」
なんだか、ふわふわとした人だな…
語尾はいちいちのびるし、何も考えてなさそうな感じだし。
「あっ、自己紹介がまだでしたぁ。ぼく、神代千那っていいますぅ」
「神代さん…え〜っとぼくって?」
見た目完璧に女性だけど…男なのか?
「ぼくはぼくですよぉ?小さい時からずぅっと自分をぼくって呼んでますぅ」
う〜ん…なんだか力が抜けるというか和むというか…
「あの、神代さん」
「なんですかぁ?」
「もう少し、ビシッと話せないかな?」
「えぇ、話せますよ?」
えぇっ!?全然話し方違うぞこの人!
「なんでいつもその話し方をしないんですか?」
「だって、疲れちゃいますから」
「はぁ…そうですかぁ」
っ…ついつられてしまった…恐ろしい人だ。
などと思っていたら服をくいくいと引っ張られた。
「理緒姉?どうしたの?」
理緒姉は無言でこちらに訴えかけてくる。
「あ、お姉さんですねぇ。お見舞い、お疲れ様ですぅ」
理緒姉は何も言わない。
「えっとぉ、何か有りましたら遠慮無くお呼び下さいぃ。それでは、失礼しますぅ」
そう言って神代さんは部屋を出ていった。
「…理緒姉、どうしたんだよ?」
「だって、修くんがあの人と話してるの、いやだったから…」
「だからって挨拶位はしないと」
「だって…うぅ…」
…昨日から理緒姉はおかしい。
今も、たったこれだけの事で目に涙を浮かべている。
先に産まれた子供は大きくなった時に下の子供ができると、幼い時の様な行動を取って親に甘えるってのは聞いた事が有る。
理緒姉も過去の出来事を思い出したせいで、そのショックから自らを守る為に精神を幼くしたのだろうか。
「うっ…うっ…だって、修くんが理緒以外の人と話してるの、いやなんだもん…」
…いくらなんでもこれはどうかと思うぞ?
「あ〜分かった分かった。俺が悪かったよ」
全く…これじゃどっちが年上だかわかんねぇな。
「じゃあ、頭撫でて…?」
なんでそうなるんだ…
ただ、断ると本気で泣きそうだから仕方なくぺたぺたと撫でる。
「えへへ…」
これじゃ妹だよ…これから先が思いやられるな…
投下終了します
GJ!!
理緒姉が可愛くなっとるではないか!!
きっと70歳過ぎても理緒姉のキャラは今のままだGJ!
569 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 01:49:03 ID:JvvlUce0
>>570が違うと思ったのは多分このスレに比べてあんまり病んでないからだな。
現実ではここいらが限度だしちょうど良いと俺は思うwww
なるほど。
慣れか。
恐ろしいもんだ。
捕手
>>566 GJです。
冬華ちゃんが本格的に黒化してきていい感じです
>>547 銀じゃなく紫だったら騙されなかったのに…
前保管庫消滅してないか?
前保管庫の管理人です。
諸事情によりこれからも更新する時間が取れないので前保管庫は閉鎖します。
何の連絡も無いまま長いこと放置していてすいませんでした。
>>579 無事なようで何よりです
今までお疲れ様でした
>>579 おつっかれさまでした
今までとてもお世話になりました
前保管庫に保管されてたSSはどうするよ?
時間が取れないからやめると言う理由は更新するのがめんどくさくなったってのが大体の理由なんだよな>サイト閉鎖
まあ乙。
前保管庫の作品移しといたほうがよくない?
閉鎖するなら予告してからにしてほしいぜ
ログがないからな・・・・・
新保管庫はwikiだったけ?
阿修羅氏のような方がちゃんとした保管サイト作ってくれないかな……。
wikiに保管してる人って、ログ持ってなかったっけ。
少し前にわざわざ「消せ」とかいう要望が有った気がするんだけれど……。
>> 136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/11/24(土) 19:59:56 ID:t2zfEO6p
>> あからさまには言えないけれどさ。
>> 面倒になったってのはある意味、半分くらい合ってる。
>>
>> ちょいと編集しようとしたら、まちがえてアカウント消しちゃって……。
>> 同じドメイン名の中ではもう同じアカウントで作れないって聞いていっぺんに脱力したんだよね。
こ、これはまさか。
>>586 保管庫を作ってる人の中ではトップに分類される人だからな。
あの人レベルはそうそう現れないよ。
>>586 保管サイト作って一人で単独で管理するってのはデメリットが多過ぎるからWiki形式のほうがいいんだよな。
てか最近はどこのまとめサイトもWiki使ってるケースが多いがな。
592 :
時給650円:2007/11/24(土) 22:23:55 ID:pY5DnHqa
人が人を支配するということ。
それは、人が人に抗えなくなることではない。
人が人に従わざるを得なくなることでもない。
それは、その命に服す事を自ら望み、何のためらいも無く、ある種の信頼すら伴った上下関係とも言えるかもしれない。
喜十郎は“妹”たちに、自分たちへの隷属を命じられた。
無論、そう言われたからといって、はいそうですか、と言うことを聞くわけではない。
彼は、戸籍上はどうあれ、彼女たちの“兄”だ。“兄”が理由も無く“妹”に従ういわれはない。
しかし、だからといって“妹”たちの望む事も理解していないわけではない。
“妹”たちが“兄”に求めるのは、要するに、彼の愛情を自分たちで独占すること。
武道に曰く、心を鍛える最も手早い法は、肉体を鍛える事であると。
ならば、心を独占する最も手早い法が、肉体を独占する事ではない、と誰が言える。
そう、否定できるものなど誰もいない。
そして、喜十郎自身、鳥肌が立つような恐怖とともに理解している。
もはや、自分の肉体は、かなりの部分まで、彼女たちの支配を受け入れつつある、と。
“妹”たちの独占に付随する調教に、彼の肉体は悲鳴をあげつつも、その苦痛と快感がクセになりつつある、ということを。
ペニバンがアナルを一堀りするたびに、『奴隷ですっ』と叫ばされ、
ペニスが突き刺さった女陰に体重がかかるたびに、『愛していますっ』と叫ばされる。
ペニスとアナル。その二大性感帯を刺激される快感が、彼にそう言わせているのは否定できない。
だが、それだけではない。
義理とはいえ“妹”に、犯され、嬲られ、弄ばれ、隷属の誓いを立てさせられるという、ありえないシチュエーション。
その状況が、肉体の感じる快感をさらに増幅する。
そんな自分の変態的な、マゾヒスティックな感覚を、死に物狂いで否定する。
その葛藤が、増幅された快感をさらに研磨し、精錬する。
通常の何倍も、何十倍もの、純粋なエクスタシーに。
「くしししし、おにいたまのお尻、とぉってもいい匂いがするよぉ」
そう言いながら比奈は、十歳年上の長兄の尻たぶを割り、その短い舌で、尻の谷間をれろりと一舐めする。そのつぶらな瞳が、菊門を視界に捕らえたのは、その後だった。
「うわぁ……おにいたま、すっごくきれい……!!」
確かに、昨夜の荒淫なぞ、どこ吹く風と言わんばかりの風情で、彼の肛門は傷一つ無く、そこにあった。
比奈としては当然、喜十郎の肛門をまじまじと見るのは初めてではない。
綾瀬家の“妹“が“兄”の全身をまさぐるのは、時と場所を選ばないからだ。
寝室然り、風呂場然り。比奈も当然、“兄”の肉体は隅々まで知悉している。
だが昨夜、居間での『一次会(?)』において、桜によって全身の毛を剃り上げられた喜十郎は、その印象を一変させていた。
彼はあくまで、線の細い、美少年的な体躯の所有者ではない。
また、北方系のように、全身体毛に覆われた熊のような体をしていたわけでもない。
パッと見には、あくまでも、どこにでもいる中肉中背の、地味で普通な少年というに過ぎない。
そんな彼が、ただ体毛を剃られたというだけで、ここまでその裸形が、違って見えるものなのか。
――風呂場で汗を洗い流しつつ『二次会』を楽しんでいた“妹”たちに浮かんだ思いは、まさにこの一言だったと言える。
そんな“兄”の肉体を、一夜明けて、再びまじまじと見る。
それは、男女入り乱れた昨晩の宴で見た眺めとは、また違った趣があるように、比奈には見えた。
それは、詩穂とて同じだった。
まるで赤子のように無毛の、一本のペニス。
その肉棒が、たちまちにして姉たちを狂わせる、凶暴無残な威力をもつ肉の兵器であることは、当然詩穂も承知している。そして、いつかは自分もその鋭利な“槍”の前に串刺される日を心待ちにしている事も。
だが、眼前に控えるこのペニスのブザマさはどうだ?
股間を覆う毛がない。という、ただそれだけのことで、詩穂には、その男根が昨日までとは、まるで別種の生き物のように見える。
――かつて姉たちが、どれほど“兄”を責めても、そして“兄”がどれほど悶え泣き、許しを乞うても、轟然と聳え立つペニスから発する猛気だけは、いささかも衰える事はなかった。
『たとえ、コイツ(喜十郎)をいかほど屈服させてもオレは屈せぬ。オレがいなければ、所詮お前らの身体とて満足出来んのを、よぉく知っているからな。――どうだ、オレが欲しいか?』
そのとき詩穂には、すすり泣きながら差し出される喜十郎のペニスが、まさにそのペニスだけが、そう言いながら、逆に威厳すら放っているようにさえ見えた。
しかし、昨日までその肉槍が発散していた獰猛さは、もはや雲散霧消してしまっている。
ただ、その陰毛を失い、丸裸にされたというだけで、変われば変わるものだ。
ビキビキに硬くなってはいても、不思議に、サイズが小さくなったかのような錯覚さえ覚える。
(お兄ちゃまのおちんちんって、……なんだか可愛い……)
「あん……む……」
詩穂の可愛らしい口が、眼前のペニスを一飲みにする。
しかし、そのまま奥まで飲み込まず、亀頭を舌でちろちろと刺激し、開いた尿道に唾液を流し込む。
「くうっ!!」
喜十郎が反射的に尿道に神経を集中した瞬間、比奈の指がアナルを襲う。
「ひゃっっっっっっっ!?」
きゅうううううっ、と、比奈の幼い指を、分厚いゴムのような堅い圧力が押し包む。いや、堅いだけではない。――熱い。ぽかぽかした温かさではない。まるで焚きたての風呂のような、心地良い熱さだ。
(もし、ヒナにおちんちんがあったら……おにいたまにそーにゅーできたら、すっごくきもちいいんだろうなぁ……)
そう思って、前立腺に指をぐりぐりとねじりこむ。
「ひっ、ひなぁっ!!」
限界だった。
喜十郎は、膝をつき、ぺたりと座り込んでしまった。
「ああっ、もう、お兄ちゃまったら、ひどいよぉ」
彼が尻餅をついた瞬間に、詩穂が咥えていたペニスが、するりと口から抜け落ちてしまったからだ。同じように、比奈の指も、崩れ落ちる喜十郎の体重を支えきれず、肛門からすぽりと外れてしまっていた。
「お兄ちゃま、詩穂におちんちんペロペロされるの、いや?」
詩穂の瞳が、再び不安に彩られる。
「いっ、いや、それは……」
「いやなの?」
「違う! いやじゃないっ、オレは――」
「だったら、どうして詩穂のお口から、おちんちんを引っこ抜いたの?」
「それは……」
引っこ抜いたわけではない。膝を着いたら意図せずしてペニスが抜けてしまっただけだ。
だが、そう言おうとして口ごもった瞬間、“妹”たちの眼から、さっきまでの不安の光が消え、違う色に輝いている事に気付いた。
「……おにいたま、お仕置き?」
詩穂もその宣告に、自分の言葉を被せる。
「そうだね。お仕置きだね、これは」
その瞬間、喜十郎は気付いた。自分の表情が泣き笑いに近いものに変貌しているのを。
「くしししし、さぁ、おにいたま、ヒナたちにどうやってお仕置きして欲しいの?」
「お兄ちゃま、なんでもいいよぉ。特別に詩穂たちが、お仕置きのメニューを決めさせてあげる」
「おにいたま、うれしい? うれしかったら、ありがとうって言うんだよ?」
喜十郎には分かっていた。
いまだに“兄”に嫌われる事への不安を残す詩穂と比奈から、怯えを除いたのは、彼の表情。苛められる事への期待と、そんな自分への絶望に満ちた、表現の仕様も無い顔。
彼女たちは、そんな“兄”の本音を、間違える事無く正確に読み取ったのだ。
「おっ、おれは……」
そのときだった。
脱衣場から賑やかな黄色い声が、響いてくる。
「それじゃあ麻緒ちゃん、先に行きますわよ」
「待ってよ春菜ちゃん、なんか先客が居るみたいだよ?」
「ああ、大丈夫ですわ。この家でトランクスなんて穿いてるのは、兄君さまだけですから」
「兄君さまだけって……じゃあ、入ってるのって、あにぃなの!?」
「まったく、何を今さら照れてるのかしら。おかしな子ねぇ」
苦笑いとともにガラリと扉が開き、腰まで届くポニーテールを、さらにほどいた春菜がそこにいた。その後ろに、隠れるように小さくなっている麻緒の姿も。
「あらあら、兄君さまったらいやらしい。朝っぱらからお仕置きですか?」
「あっ、春菜ちゃん」
ぱあっと、顔をほころばせて、比奈が春菜の元に駆け寄る。
「いいところにきたよぉ。今から、おにいたまを、う〜んと、う〜〜んとお仕置きするんだよぉ」
「まあまあ、それじゃあ、いいところに間に合って良かったですわね?」
そう言いながら、貞淑そのものの穏やかな笑顔を末妹に向けた後、
「――では兄君さま。その晴れ姿を、ワタクシも拝見させて頂いて宜しいですか?」
などと、そらっとぼけたことを抜け抜けと言う。
喜十郎としては、顔を真っ赤にしながら俯くしか出来ない。
「だっ、だめだよっ、ヒナちゃんっ!!」
そう言って、うずくまった喜十郎に駆け寄ったのは、麻緒だった。
「――ボクが言えた義理じゃないけど――やっぱり、やっぱりこんなの間違ってるよっ!! こんな無理やり、あにぃをひどい目に合わせて……何でみんな、もっと、もっとあにぃに優しくしてあげないのさっ!?」
そこまで怒鳴って、今度はその、怒れる眼差しを喜十郎に向けると、
「あにぃもあにぃだよっ! 何でここまでされて黙ってるのさっ! 何で嫌なことは嫌って言わないのさっ!! やっぱりこんなのおかしいよっ。 あにぃも、みんなも、こんなの、おかしいよっ!!」
「……え、あの……?」
「麻緒ちゃん……?」
――比奈も詩穂も、そして当の喜十郎も、一瞬、彼女が何を怒っているのか分からなかったようだ。
まあ、無理もない。
ほんの数時間前まで、一緒に汗まみれになって同じ男を嬲りまわしていた仲間が、イキナリこんな常識論を言い出して、自分たちの邪魔をするなど、思いもしなかったからだ。
しかし、さすがに麻緒も、二人の表情を見て自分を羞じたのか、真っ赤になって俯いた。
「そっ、そりゃあ、ボクだって昨日はさんざん、あにぃに好き勝手な事したけどさ……。でも、でもやっぱり、やりすぎはよくないって言うか……。やっぱり、あにぃが嫌がってることは、止めた方がいいんじゃないか、――とかって、思ったりするし……」
さすがに語尾は消えかけていたが、それでも彼女の主張は十二分に詩穂と比奈に伝わった。何故なら、その疑問は紛れも無く、さっきまで彼女たち二人が、“兄”に対して持ち続けていた不安そのものだからだ。
しかし、二人の瞳が、三度目の不安に彩られる事は無かった。
さっきまでのやりとりで、利発な彼女たちはすでに気付いてしまっていたからだ。
麻緒の不安が、全くの杞憂である事を。
「――ほっ、ほらっ、あにぃも行こうよ。もう汗も充分流れたでしょ?」
「あ、……ああ」
喜十郎を催して、風呂場から共に退出しようとする麻緒。その背後に声がかかる。
「――いいの? お兄ちゃま?」
振り向いた喜十郎と麻緒を、詩穂のあどけない微笑が迎撃する。
「詩穂たちがせっかく最後までしてあげようって言ってるのに……本当に行っちゃうの?」
「詩穂……」
そう呟いた喜十郎の顔が、明らかに動揺したのが、麻緒からも見えた。
そんな“兄”の尻を、柔らかく撫でる小さな手。
「くしししし……。別にいいんだよぉ、おにいたま。それならそれで行っちゃっても」
「比奈……やめなさい……!!」
「いいの、おにいたま? ホントにやめちゃっても? でも、だったらなんで、ここはこぉんなに、かちんかちんになってるの?」
「……それは……さっきまでお前らに……触られてたから……」
「だったらどぉして、このおちんちんは、こんなによだれを、いっぱい、いぃっぱい垂らしてるの?」
その小さな手が、しゅっしゅっと、軽くペニスを扱いた瞬間、貫くような快感が彼の股間に走った。
「ぁぁぁぁぁ……だめだっ!! やめっ!!」
「あにぃ!!」
はぁっ、はぁっ、はぁっ、……!!
荒い息と共に、白いタイルにうずくまり、――ひざまずき、といったほうが正確かも知れない――喜十郎はそのまま、比奈を見上げた。
――彼の股間からは、変わらず射精直前の、先走り液が迸るように分泌されている。
「くしししし、どうしたの、おにいたま? だめだって言うから止めてあげたんだよぉ」
「ねえ、お兄ちゃま、どうするの? このままお風呂出ちゃう? それとも……?」
気が付けば、“兄”を覗き込む格好でそこにいた詩穂が、れろり、と自分の唇を舌で舐めまわす。
「兄君さま」
そして、トドメの言葉を投げかけたのは、それまで沈黙を保っていた春菜だった。
「――そろそろ、素直におっしゃったほうが宜しいのではありませんこと? ワタクシたちは、兄君さまのためなら何でも出来るのですよ?」
限界だった。
もう、喜十郎はこれ以上、我慢が出来なかった。
心の奥底から、身を震わす恐怖。
自身に潜む、膨大なまでのマゾヒスティックな欲望に対する恐怖。
その欲望に身を任せた結果、もはや自分は戻って来れなくなるのではないかという恐怖。
そして、戻って来れなくなった自分は、呆れられ、見捨てられてしまうのではないかという恐怖。
何度“奴隷”の誓いを立てさせられても、その恐怖が拭えぬ故に、彼は不安を払拭する事が出来なかった。――そう、誰よりも不安を覚えていたのは、他ならぬ喜十郎自身だったのだ。
だが、もう、どうでもいい。
オレはヘンタイだ。ヘンタイでいい。
もとよりヘンタイがオレの本性ならば、それを認めるに何の躊躇いが要るだろう?
ヘンタイ――ああ、何と甘美な響きだろう。
彼は欲望に身を任せた。
おのれを縛る最後の鎖を引き千切った。
「……オレを……いじめてください……。おちんちんも、おっぱいも、おしりも、全部使って、オレをいじめて、楽しんでください……」
「あにぃ……!!」
血の気が引いた表情で、麻緒が“兄”を見つめる。
「オレは……みんなの、奴隷、だから……」
喜十郎は泣いていた。
しかし、その涙が、いかなる感情に基づくものかは、もはや本人すらどうでもいい事だった。
600 :
時給650円:2007/11/24(土) 22:41:49 ID:pY5DnHqa
今回はここまで。
ダラダラとした展開でしたが、次回あたりから、ようやく話が転がり始める、はず、です(多分)。
乙です
待ったかいがありました
なんかだんだんとスレの旨趣と違う感じになってきた
と思っているのは俺だけ?
君だけだろうね
ここはヤンデレスレじゃない。キモウト・キモ姉スレだ。キモければ、それでいい
GJ
ところで保管庫だが俺が私的にちまちま作ってみてる
正直タグも詳しくないから大したの出来ないと思うけど出来たら公開するわ
>>600 GJ!
もう変態的すぎて最高です。
キモさが突き抜けてる……。
>>604 他力本願だけど楽しみに待ってる。
ログは持っているので必要なら言ってくれ。
このスレの他の小説をみると、いくらキモ姉、キモウト化していても兄のことは「人間」として見てているが、
時給650円氏の妹達は、兄の事を「人間」としては見ていない気がする。兄を奴隷にしている所を見ると、
そんな気がしてならない。
評論家はお引き取りください。スレが荒れるだけですので
嫉妬修羅場スレのカオスを再現したいのかだろうか・・・・・・
あれで42スレ目は500レスくらいからずっとあれてほとんど投下がなく、
埋めネタがはいらないまま1000行ったぞ・・・・・・
■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
『・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。』←いまここ
>>606,607程度ですぐに
>>608みたいな意見がでるあたり、
このスレも火種を抱えてるなあと思った
お前ら頼むから冷静になってくれよ…。荒らしその他荒れる元は華麗にスルーな。
ところで、あんまり反応無かったけど、上に張ったニコニコのキモ姉動画見た?
俺は大好きなんだけど、皆どう思ったか感想くれよ
キモければって言うけどこれはただのS女なだけだと思うぜ
保管庫の様々な神作見て改めて思ったが、キモ姉キモウトがとても欲しくなりますた。
>>612 ツベ板のニコ動スレならアカウント持ちがいるから
たいした問題じゃないが、普通の板のスレだとアカウント持ってない奴も
居るんだぜ
俺はアカウント持ちだから、見たけど
ナガレをぶった切って、三者面談の続きを。
僕は公園のベンチに座り、折り潰されていた携帯電話を見つめる。
ちょうど、折りたたみ式の稼動部分を反対方向に力を入れて潰されていた。
液晶も死んでボタンを押しても何も反応が返ってこない。いや、先ほどまではいくつかパピポと反応が返ってきたんだけど、一か八かで壁に叩きつけてショックで回復させようとしたら、それがトドメだった。
しかし、誰がこんなことをやったのだろう。
携帯電話を拾って、折り潰す。……落としたのがあの空き教室なら、犯人は千鶴姉さん。
でも、千鶴姉さんが僕の携帯が折り潰す理由は? ただの八つ当たり? いや、冷静な姉さんは八つ当たりをするような人じゃないよな。
じゃあ、他の誰か?
「その誰かがまったく検討つかないよ……」
それよりも、この携帯電話に保存してあったメールや先生・友達のアドレスがすべておじゃんになってしまったのは痛い。
あ、そういやアプリのシューティングゲームのハイスコアもサーバーに送信してない。あーあ、せっかく17兆4923億2236点出したのに。
いやいや、そんなことより。先生とのラブラブメールも消えちゃったんだよなぁ……。
『せーじくん 今から先生帰りますよー! 玄関前でちゅーのまま待っててねー♪』
『せーじくん めっ! 今日、3組の田中さんと手をつないでたでしょ! 先生見てたよ! 罰としてあとであたしのところではぐはぐすること! 以上!』
「先生、結構恥ずかしい内容書いてくるんだよなぁ……」
しかもメールだとなぜか口調が子供みたいになってて、可笑しい。僕はそのメールを度々眺めては頬を緩ませていたのだった。
でも、そんな文面もすべて消滅だ。ゲームより、アドレスより、こっちがなくなったのが残念だ。
「とりあえず、新しいの買いにいかないと……」
教師と生徒のアバンチュール、禁断の果実をうまく食すには携帯電話は必需品。秘密の連絡に無くてはならないシロモノだよ。
早めに用意が必要だね。
ベンチから立ち上がる。先生は今日はどのぐらいに帰ってくるかな。
いつもはメールで帰ってくるけど、今はメールを見ることも出来ないし返すことも出来ない。返信しなかったら怒るんだろうなぁ。
ぼうっとそんなことを考えながら、雄飛で赤く染まる閑散とした住宅街を歩く。先生のアパートの前までやってくると、周りを確認してから敷地内へ。
先生の部屋は2階。まだ若くてピチピチ(先生いわく。でも死語)の教職員な先生なので、エレベーターなるものは無い。半年前にペンキを塗りなおしたという細い階段を昇って、廊下を進み先生の部屋へ。
先生の部屋は208号室。突き当たりの角部屋だ。
カバンの裏ポケットから合鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。くるりと回せばガチャリという音と共に鍵は開いた。ドアノブに手をかける。
ノブを引くと、無音で玄関扉が開く。部屋の中は電気がついていなかった。先生はまだ帰ってきてないみたい。
やっぱり、今日も部活で遅くなるのかな。そんなこと考えながら僕は後ろ手でドアを閉める。
「ただいまー」
「おかえり。誠二」
ガツ。
……その言葉が後ろからかけられた瞬間。
後ろ手で閉じようとしていたドアが閉じるまで数センチのところで動かなくなった。何かに引っかかったように。まるで、訪問販売セールスマンにドアと壁の間に足を挟まれたように。
ううん。それよりも。もっと僕を戦慄させる声…………。
「……おかえりなさい、誠二」
そんな。そんな。そんな。
僕の背後から聞こえる声。聞き覚えのある、いや、いつも聞いていた声。
脳みそ、胴体、手、足、僕の全てが硬直した。目の前には僕と先生の楽園、愛の巣があるのに。僕のすぐ背後には死神が鎌を持って立っている!?
そんな。そんな……! なんで、こんなところに……。
「ここが今の誠二のおうちかしら?」
振り向きたくなかった。この状況を認めたくなかった。後ろを振り向きたくなかった。
ドアノブから手のひらがこぼれ、開く。
声の主は僕の横を通りすぎて、先生の部屋へ土足のまま上がる。
「こんな狭いところに住んでるのね。ふーん……」
僕が振り向けなかったからなのか、声の主は僕の前に仁王立ちで立ちはだかる。
そして、口を開けたまま呆然としている僕の前に、
心の底から可笑しいといった愉悦の笑みを浮かべた、
千鶴姉さんが、
ちづ……。
ほぉら。来た。
ボロアパートの階段の踊り場の隙間から誠二の姿を確認する。
きょろきょろとアパートの周りを確認してるみたいだけど、アパートの中は確認しなくていいのかしら? 誠二。
あ、誠二が来た。廊下をすばやく抜ける。空稲くん聞いた高倉良子の部屋はこの角部屋。突き当たりにはちょうどいい具合に身を隠せそうな清掃用のロッカーがある。
ロッカーの陰に隠れた私は手元だけのぞかせて、デジカメで証拠写真を撮る。どうせ、暗くてなにも写ってないでしょうけど。
あ、愚弟め。私が気がついていたら折り潰していた携帯電話片手に、やってきたわ。……やっぱり。合鍵を持っていた。
なれた動作で鍵を差込み、カチャリと音が鳴る。
誠二は私に気付いていないようだ。ちょうどいい。
彼が、開いたドアに入ろうとした瞬間。
私はロッカーの陰から飛び出し、ドアに足を挟んだ。
誠二の首根っこを掴み、部屋の中へ。
誠二はショックのためか、わけがわからないといった顔でわなわなと震えている。
「誠二」
「はい……」
「そこに座って」
私が指差したのはフローリングの床。特に絨毯も無い、木目のひんやりとした床。部屋の中には二人がけのソファがあったが、彼をそこには座らせない。
誠二は私の顔色を伺いつつ、戸惑いながら足をつける。そのまま正座になった。私が説教するときはいつも正座だからね。
おとなしくしておきなさいと目で誠二に言い聞かせる。
ははん。三者面談の時の勇気はどこへやらね。
さて、ここが高倉良子の部屋か。キッチンとリビングが分かれた洋室ね。8畳ほどのリビングには二人がけのソファとベッド。小さな本棚がひとつ。部屋の隅には、誠二の着替えがいくつか積まれてあった。
ふぅん。誠二。三者面談の後で高倉良子と同棲するっていうのは前から決めてたってことかしら。一体どっちが先に言い出したのかしらねぇ。
まぁ、私に睨みつけられてぶるぶる震えている誠二を見れば大体予想つくけど。
「姉さん、えーっと……これは……」
「誠二。あなたは教師である高倉良子の部屋になぜいるのかしら?」
「それは、えーっと……その……」
なにか良い言い訳でも考えているの? 高倉良子の立場を守ろうとこんな状況でもいいわけが思いつくの?
「勉強を教えてもらおうと思ってて……」
そんな理由ですべて片付けられると本気で思ってるのかしらね。まったく、馬鹿な上にいいわけも下手で。本当に頭の悪い愚弟だわ。
…………そして、やっぱりあの女が……大事なんだ。
「嘘ね。誠二」
そんな言葉でさっさと切り捨てる。
「どんな言い訳しても無駄だから。もうあなたの秘密の全てを私は知っているの」
追い詰めるように誠二の後ろへ歩く。私の足音に反応して誠二はびくんと肩をこわばらす。
私が近づけば近づくほど彼の四肢は硬直し、自由を奪うのだ。何年もかけて私が調教した結果ね。誠二の脳内に私に逆らうという言葉は無いのだから。
「あなたが昨日……私の待つ家に帰らず、この部屋に泊まったこと」
「………」
「これからここに住みつづけるつもりなこと」
「………」
「……そして、この部屋に住む、担任教師の高倉良子とあなたが……………あ、愛し合っていることも」
「……!!」
できるだけ、やさしく。誠二の首へ腕を回す。誠二の肌は灼熱のように熱い。
私が触れた途端、体をさらに緊張させたのは、私の冷たい指に驚いたからかしら?
「…………姉さん。僕は……」
黙れ。
「!!!!」
誠二の首に指をかけ、そのまま頚動脈を締め付ける。
「!……!!……!」
後ろからだから、うまく入るかわからなかったけど、一発で大丈夫だったわ。
誠二が悶絶した表情で暴れだそうとするが、私は冷静に誠二の体に自分の足を巻きつかせた。ふふふ。なんてはしたない格好なんでしょうね?
私は正面にあるスタンドミラーで悶絶する誠二を見つめ、嗜虐の悦びに震えながら指の力を強くしていく。
ちなみに誠二をここに座らせたのは、このスタンドミラーで誠二の悶える顔をきちんと見るため。後ろに回ってちゃ見えないものね。
「……!!……」
鏡の中で誠二とぎろりと目が合う。
誠二は苦しそうに口をぱくぱくとし、涙目で私を見つめていた。
どんどんと顔が白くなっていき、彼の抵抗する力も無くなっていく。このまま誠二の意識を落としてもいいのだけど、一歩間違えれば二度と目が覚めない可能性もあるわ。
ギリギリまで締め付けて、抵抗が出来なくなったとき……ね。
「…………っ……」
「はい。開放」
首から手を離す。瞬間誠二の体は床に崩れ落ちた。
「!! ぜぇー!? はぁー!?」
誠二は床にキスをしたまま脳みそに血を巡らそうと、狂ったように酸素を吸って吐いて吸って吐いて。なんだかその動作が面白おかしくてしょうがない。
でも、笑っている暇はないわ。カバンに手を突っ込む。
動けなくなっている誠二の投げ出した手を後ろ手に固定してすばやくガムテープでぐるぐるまきにする。足首も同じようにぐるぐる巻きに。これで、誠二は立ち上がることが出来なくなった。
その後は大声出されると邪魔だから、口元にもガムテープを貼り付けた。水分で外れないようにとりあえず何重にも貼り付け。呼吸が出来ないと死んじゃうから鼻だけは開けとかないとね。
「……も、もごご! もごっもごっ!」
うふふ。ようやく意識が戻っても、その格好じゃどうしようもできないわねぇ。
ぽろぽろと涙をあふれ出させ、何かを訴えるように私に呼びかける。が、ふさがれた口ではどこにも届かない。
「誠二。あんたはそこで黙ってなさい」
転がる誠二を見下ろして、顔をニーソックスを履いた足で踏みつけた。ちょっとだけぐりぐりさせ鼻っ柱を親指で撫で上げると、少し心が満たされた。
もういっちょ、とどめと称して誠二の股間にも蹴りを一発。
「!!!」
ぶにゅっとした感触が足に残った。潰れたかしら?
ふふふ。悶えてる悶えてる。
大丈夫。あなたのそれが使えなくなっちゃっても私は見捨てないからね。
さてと、まずはここにある誠二とあの女の雌汚い匂いがぷんぷん匂うこのソファからなんとかしましょうか。
「ねぇ、誠二。いつもこのソファに二人で座っているのかしら? 正直に言いなさい」
そう聞きながら、私は誠二の横顔を踏みつける。
誠二は答えない。というか口を押さえられているので答えられない。目に恐怖を浮かべながら、首をかすかに縦に振った。
「ふぅーん。そうなの」
二人がけ用のソファは幅長で、ちょうど人が横になれそう。
「この上でセックスしたの?」
もちろん、ゴミ箱に詰まっていた変な匂いのするティッシュを確認済みな上での質問。
ふるふると誠二は首を振ったので、おなかに蹴りを一発いれた。そうしたら白目をむいて黙ってしまったので、私は仕方なく肯定と捉えた。うふふ。
私は台所にあった包丁を手に取るとソファにクッションに刃を突き刺した。ぶつっと縦長の線がソファにできる。ここに誠二とあの女の二人が尻をつけていたのね。
もう一度振りかぶって刺す。もう一度、もう一度、私はソファをめった刺しにした。
(続く)
投下終了。
次回投下は未定ん。
千鶴姉さん恐ろしすぎ……!!
GJ!!!
GJ、おっきした
GとJ
GJ
不覚にもいじめられて涙目の誠二君に萌えてしまった
GJ!!!!やはり俺はMだ・・・!!
新しく作ることの意味ってなんだ?
あって困るものでもなし、いいんじゃないか
WIKIは表示おかしくなる時あるし
使うかどうかは個人の自由てことで
まあそれもそうか
まとめGJ
三者面談の続きキテワァ*・゚゚・:*・゚(n'∀')η.*・゚゚・:*・゚
俺としては
>>626が見やすいからすごくありがたい、GJ!
このスレでいう、キモ姉キモウトのキモイはサディストってこと?
最近ただでさえ過疎気味なんだから、狭い定義はいらん
気持ちのこもった姉
肝が大好きな姉または妹
637 :
オカルト物:2007/11/27(火) 00:28:09 ID:YEqgS0Eq
本家の判子の入った依頼書に目を通す。
死因は交通事故。
二十歳、女性、俺より三つ上。
姉さんと同い年?
人気の少ない場所でのひき逃げで、犯人は捜査中。
現場は……実家の近所だな。
除霊士の家に生まれた俺は、中学卒業と同時に持って生まれた能力を
磨くべく鳥も通わぬ山奥の寺に修行に出された。
五年間という話だったのだが、どういうわけか修行の途中で呼び戻されて、
渡されたのが手に持っている依頼書である。
修行中の、見習いですらない半人前以下に除霊の命令が下る。
普通は、ない。
なにか理由が?
「ケケケッ
オマエガヒトリデ除霊トハナ」
もうすぐ現場という所で小学生程度の大きさのそれは、俺の背後に現れた。
「お目付役、かい?」
ノミみたいに跳ねながら周囲を回っているそれに語りかける。
「ソンナトコダ
オマエガシッパイスルノヲミテテヤルヨ」
丸まった背中、見開かれ血走り、焦点が定まらない目、
笑っているのか威嚇しているのか、歯茎まで剥き出しにした口。
魚かなにかが腐った様な臭いがする。
俺が睨むと調子はずれの声でおどけた様に
「オオコワッ
マ、ヤッテモオマエニ勝チ目ハナイガナ
オマエノ体術モ呪術モミ〜ンナオレガ
オレガオシエテヤッタモノダ」
「オレダ オレニ感謝シロ」
現場に着いても延々しゃべり続けている。
俺は後を振り向くと相変わらず飛び跳ねているそれに、言った。
「黙れとは言わない。
せめて背を伸ばして普通にしててくれよ、姉さん」
638 :
527:2007/11/27(火) 00:29:14 ID:YEqgS0Eq
またやってしまった。
反省はしていない。
>>531,542
小柄でロリな姉が担任ってこうですか? こうですか?
639 :
637続き:2007/11/27(火) 00:30:01 ID:YEqgS0Eq
除霊?
うん。 読経したら成仏してくれた。
呼び出された原因は指導担当の姉が酔って賭けしたらしい。
つーかまだ飲んでる。
事故現場に酒とクサヤ持ってくるなよ
まったく姉さんは。
肝食う姉も好き好き
非エロ投下します。
おかげさまで最終話ですが、長いです。
夕里子が校舎の屋上から身を投げたことについて、警察の捜査はこれといった進展を見せなかった。
関係者から話を聞いたものの、事件なのか事故なのか自殺なのか、結局はっきりとしたことはわからず、本人の目覚めを待つほかないという流れになっていた。
夕里子の容態も落ち着き、命については別状無し、と医師からのお墨付きも出た。
ただ、意識が戻るかどうかについては、言葉を濁らせていた。
「明日目覚めるかもしれないし、ずっと先になるかもしれないし……わからないんだって」
「そう。でも、まずは命が助かったことだけでも喜びましょう」
小夜子から夕里子の容態についての連絡をもらった綾は、沈んだ声色の小夜子を二言三言励まして受話器を置いた。
「だそうよ、お兄ちゃん」
居間のソファに座った陽一を見る。
陽一は、夕里子の投身以来、目に見えて落ち込んでいた。
「夕里子さん、助かったのか」
「命はね」
陽一の表情に喜色が湧くのを見て、胸の奥で軽い嫉妬の感情を抱きながら、綾は陽一に絡みつくようにして隣に座った。
「お兄ちゃん、嬉しそうね」
「当たり前だろ。嬉しくないわけがない」
「元恋人でも心配なんだ」
綾の不機嫌な声に、陽一は押し黙る。
「他人の心配より、自分の心配をしてよね。またお兄ちゃんに悪評が立っちゃったんだから」
「……別にいいよ、そんなの」
基本的に、自分のことはそれほど顧みない人だということは知っている。
綾はやれやれと首を振った。
「まあ、いいけどね。少しでも元気が出たのならそれで。このところ、どっちが死人だかわからないような有り様だったものね」
ちらりと、上目遣いに兄を見上げる。
「ね、お兄ちゃん、安心したところで、久しぶりに……」
耳元で囁いて、唇を頬に寄せたが、陽一は顔を逸らして拒絶の意を表した。
「ごめん……そういう気分じゃないんだ」
「あ、そ。まあいいわ」
陽一が色々気にする性質なのは充分に知っているし、夕里子のことを振り切れていないこともわかっていた。
(ま、焦ることはないわね)
いまや綾と陽一の仲を邪魔するものはいないのだ。
夕里子は完全に退場した。
縁も、夕里子という媒介がいなくなった以上、しばらくは何もできない。
夕里子の周辺で起きた事件については、森山に罪を着せる工作はどうやらうまくいったようで、ここしばらくストーカー少年Aとして大々的に報道されていた。
校内での陽一の評判がすこぶる悪いという以外は、全てが順調だった。
(まあ、そのあたりについてはおいおい考えていきましょう)
うっすらと笑い、綾は立ち上がった。
「さて、お兄ちゃん、今日の夕食は何がいい?」
問いかける綾に、陽一はソファーに深く腰掛け、俯いたままで答えない。
「お兄ちゃん?」
「夕里子さん……本当に良かった」
「聞けよ、こら」
頭を小突かれてようやく陽一は綾に顔を向ける。
「あ、ごめん。なに?」
「まったくもう……」
陽一の心は夕里子に囚われている。
正直妬ましくはあったが、綾はあくまで寛容な姿を見せるべく努めた。
(お兄ちゃんは私だけを見るって約束してくれたんだもの。今全てを手に入れられなくても、いつかは……)
見苦しい嫉妬を全開にして兄を困らせることは本意ではない。
ここは本妻としての余裕を見せていこう。
そう思っていた。
が――
「そういうわけで、付き合うことになった。小夜子ちゃんと」
最愛の兄にそう告げられた時、綾の頭からは、余裕もなにも全て吹き飛んでしまった。
「は?」
「付き合うことになったのよ……陽一さんと」
さらに追い討ちをかけるように続く、親友の言葉。
十一月の冷たい風に吹かれて、綾はふらふらとよろめいた。
「じょ……冗談でしょう?」
久しぶりに一緒に帰ろうと陽一から誘われた。
腕を組んで二人寄り添って歩いた。
「放課後デートの誘いだなんて、お兄ちゃんも言うようになったわね」
などと喜び勇んで行った先の公園に、居たのは親友の小夜子。
そして告げられた信じがたい言葉に、それまでの浮ついた気持ちはいっぺんに消し飛んだ。
綾が生涯で一番の衝撃を受けた瞬間と言っても過言ではなかった。
「あのね、二人とも、季節を勘違いしていない? エイプリルフールはまだまだ先よ」
「冗談でも嘘でもないんだ。本気で小夜子ちゃんと付き合うことにしたんだよ」
「ふぅん。本気で……へえー……」
何度か頷いて、綾は突然がくんと膝を折り、地面に崩れ落ちた。
「ちょ、ちょっと綾? そんな大げさな……」
慌てて駆け寄った小夜子が差し伸べた手を、綾は冷たく打ち払う。
ゆっくりと顔を上げて、小夜子を見た。
「綾……?」
病的なまでに青ざめた顔に、薄い笑いを浮かべる美しい少女。
前髪の隙間から覗く目には異様な眼光を宿し、視線で人を殺そうかというような、強い敵愾心を放っていた。
「……!」
今まで綾から決して向けられたことの無かった感情に、小夜子は動揺し、自然と身を引いてしまった。
「はは、冗談きついわね」
スカートについた土を払い、綾がゆらりと立ち上がる。
秋の彩りが失せ、冷たい冬の色に染まった公園を、木枯らしが通り過ぎた。
「どういうつもり?」
陽一を睨みつけて、綾は言った。
「不謹慎だと思わないの? 小夜子は夕里子さんの従妹なのよ? それまで付き合っていた女の子が意識不明で入院中に、その従妹に手を出すなんて、かなりよろしくないことだと思うけど」
さらに綾は小夜子を見た。
「あんたもあんたよ。夕里子さんがいなくなった途端に泥棒猫? 随分とお上品な真似をするのね」
「う……」
綾の言葉に、陽一も小夜子も押し黙ってしまう。
並んで立つ二人の肩に手を置き、綾は打って変わって穏やかな声で言った。
「ま、今なら気の迷いか冗談で済ましてあげるわよ。はい、二人とも、ごめんなさいは?」
微笑みながら促す綾に、二人は気まずげな表情のまま押し黙っている。
「やれやれ……寒さで脳みそが凍えちゃったのかしらね、二人とも」
仕方ないな、と笑う綾。
「ねえ、二人のしようとしていることは、夕里子さんへの義理を欠くことだとは思わないの?」
「……よくないことだとは思う」
陽一の呟きに、小夜子も小さく頷いた。
「そうよね、よくないわよねえ。じゃあ、私に対してはどうだと思う? 許されることだと思ってるの?」
小夜子が口を開こうとするのを、綾は手で制した。
「ああ、小夜子はいいのよ。黙ってて。友達の兄を好きになることくらい、あるものね」
「綾、私は……」
「黙ってろって言ってるのよ」
一言で小夜子を黙らせて、綾は陽一を見つめた。
「お兄ちゃん……わかってるわよね。お兄ちゃんのせいで私がどんな目に遭ったか、忘れたわけじゃないわよね?」
苦しげに陽一は顔を歪ませ、言葉を詰まらせた。
忘れるわけがない。
大切な妹が泣きながら帰ってきた夜を、忘れるわけがないのだ。
「……色々考えて決めたことなんだ」
「色々、ねえ……」
陽一の辛そうな表情を見て、ふむと綾は頷く。
冷たい水に澱みが沈むように、胸の内の熱くたぎった感情が治まっていった。
(落ち着こう……私がお兄ちゃんを信じなくてどうするの)
綾の知る限り、陽一は他人に対して義理を欠く行為を進んでやる人間ではない。
たとえ己の不利に働こうと、正しいと思ったことを貫く人物だった。
(でも、お兄ちゃんは、ちゃんと自覚して言っている……私と夕里子さんに対して、不義理を犯していることをちゃんとわかってる……)
そして小夜子。
先ほどまで親友と思っていたこの娘に対する綾の人物評も、陽一に対するそれと近いものがあった。
(よりによってこの二人が、こんな最悪の裏切りをするなんて、おかしいわよ)
陽一が綾と夕里子を裏切るに足ると判断する動機、小夜子が夕里子を裏切るに足ると判断する動機。
そこには自らの信念を曲げてでも達成しなければならない、大きな目的があると思われた。
しかし、陽一と小夜子が付き合うことで、一体何が得られるというのか。
(わからない……)
目の前の二人が夕里子を裏切ってまで得ようとするものの正体が、まったく掴めなかった。
日が落ちて、夜の冷たい空気が舞い降りる中、陽一と綾は見つめあった。
「……お兄ちゃん、前に、私に隠し事はしないって約束したの、覚えてるわよね」
「ああ……」
「何か私に話すことは無い?」
「無いよ」
木枯らしが吹き、綾の長く伸びたツインテールが風に揺れた。
「ふふ……あっはは! ははは……! あはははははっ!」
「あ、綾?」
不意の哄笑に、陽一が心配して声をかける。
綾はしばらく腹を抱えて笑った後で、優しく二人に語りかけた。
「ま、いいわ。そうまで言うなら無理に止めないわ。勝手にしなさいよ。ただし、私があんたたちをどう思うかも好きにさせてもらうけどね」
言って踵を返す。
公園には、不安そうな面持ちで身を寄せる陽一と小夜子が残された。
綾は家には帰らず、すぐに携帯で電話をかけた。
相手は他の誰でも無い、宇喜多縁その人だった。
会いたいという綾の頼みに、縁は快く応じた。
指定されたのは、夏に縁に呼び出された時と同じ喫茶店だった。
「で、何を吹き込んだの? お兄ちゃんと小夜子に」
顔を合わせるなり綾は、テーブルを叩いて縁を問い詰めた。
「いきなりだね。さすがに話が見えないよ」
「とぼけるんじゃないわよ。またあなたが何かくだらないことを言ったんでしょう」
「まあまあ、落ち着いて。あんまりテーブルを揺らすと、コーヒーがこぼれちゃうからさ」
立ち上る湯気で、縁の眼鏡が薄く曇る。
カップを叩き落して怒鳴りつけたくなる衝動を抑えながら、綾は経緯を話した。
「そっか。支倉君と小夜子ちゃん、付き合うことになったんだ」
「今初めて知ったかのような口ぶりね」
「今初めて知ったんだからそうなるよ」
いかにもおかしそうに縁は笑う。
「あの二人は夕里子さんを裏切るような真似ができる人間じゃないわ。あんたが何か言ったんでしょう」
「ご期待に添えなくて悪いけど、私は何も知らないよ」
「嘘ね」
「本当だよ」
縁は眼鏡の向こうから、綾の目を真っ直ぐに見据えた。
「どうかな? 私が嘘をついているように見えるかな?」
「見えるわね」
「あらら。せっかく格好良く決めたのに」
困ったねといつもの軽い調子で言う縁に、綾は内心で舌打ちした。
このままでは水掛け論であり、進展は望めない。
いっそ表に連れ出して爪を剥がしながらでも聞いてやりたかったが、縁が無用心にこちらの指示に従うとは思えなかった。
「たとえ不謹慎でも、好きになっちゃったら関係ないって人は結構居るし、普通に二人が好き合って付き合うことになったとは思わないのかな?」
「ありえないわね」
「なるほど。綾ちゃんは支倉君と小夜子ちゃんを本当に信頼してるんだね」
縁は小さく拍手をして、賞賛した。
「そのわりに、どうして二人が付き合うことにしたのかはわからない、と」
呆れたような縁の口調に、綾は苛立ちを募らせる。
「何が言いたいのよ」
「綾ちゃんて、意外に自分への評価は低いんだねえ」
縁は人差し指を綾に向けた。
「綾ちゃんのためを思ってのことしかないでしょ。あの二人が夕里子ちゃんを裏切ってまで何かするとしたら」
「は?」
「綾ちゃんの将来のために良くないと思ったんだよ。どんな理由であれ、必要以上に兄妹が仲良くするのは」
「……!」
なるほどと綾は思った。
陽一はもともと実妹である綾との肉体関係に罪悪感を感じているし、小夜子は育ちの良さもあって常識と良識が備わっている。
陽一は「綾の将来のため」という理由から、小夜子は「倫理に反する」という理由から、それぞれ行動を起こしてもおかしくはない。
(お兄ちゃんが別の女に興味を示しているところを見せて、私に諦めさせようってことかしら……)
お粗末な策だが、納得のいく解答だった。
「縁さん、いいの? 私にそんなことを言って」
「何が?」
「二人の意図を私に漏らしたらまずいんじゃないの? あなたも一枚かんでいるんでしょう?」
「いやいや、本当に私は知らないよ。せっかく綾ちゃんが相談に来てくれたからにはお役に立ちたいと思って、自分の考えを言っただけだから」
どうだか、と綾は思った。
(縁はお兄ちゃんと私の関係に確信を持っているわ。ただの推測で全部言っているのかもしれないけど……)
陽一が相談した可能性は大いにあった。
その相談に乗って縁が知恵を貸したのだとして、ここでそれを包み隠さず話す理由は何なのか。
「綾ちゃん、悩んじゃってるみたいだけど、私だったらもう少し効果的な手を使うからさ。それこそ、支倉君と綾ちゃんが仲睦まじく過ごす姿を撮って、あること無いこと付け加えて、匿名で綾ちゃんの家族か親戚に送るくらいはするよ」
「確かにそうね。今回のやり方は、あんたの底意地の悪さが見えないわ」
「褒めて……ないよね?」
力なく笑い、縁はコーヒーを口に含んだ。
「帰ります」
「あれ、もう? 何か飲んでいかないの?」
「ええ。あまり縁さんと顔を合わせていると気分が悪くなるので」
綾はテーブルの上に千円札を置き、しょんぼりとした様子の縁を残して喫茶店を出た。
当然綾は縁の言を鵜呑みにしたわけではなかった。
気まずそうに家に帰ってきた陽一の上着を受け取り、携帯電話を即座に調べた。
「なるほど、ね……」
小夜子とのメールのやり取りの跡が、そこには残されていた。
『綾がわかってくれるまでだから。ごめんね』
『気にしないでください。私も望んでしていることですから』
思わず笑いを漏らしてしまう。
「まったくもう、お兄ちゃんも小夜子も可愛いものね」
あまりにお粗末だった。
ここまで穴だらけだと、確かに縁は関与していないのかもしれない。
「まあ、厳しく当たるほどのことでもないわね」
正直余計なお世話ではあるが、自分のためを思ってのことだというのなら、悪い気はしない。
さすがに小夜子に危害を加えるのは気が引けた。
そんなことをしなくても、要は二人の行為がまったくの無意味であることを示せばよいのだ。
二人の企みに関係なく普段通りにしていれば、いずれ陽一も小夜子も自分達のしていることが徒労であることに気付き、諦めるだろう。
「でも、お兄ちゃんにはちょっとお仕置きしておかなくちゃね」
とりあえず今夜は兄に夜這いをかけることにしよう。
密かに心に決めて、綾は小さく微笑んだ。
それから綾はいつも通り陽一への愛情を存分に示して過ごしたが、一週間経ったその日の晩、少し遅めに家に帰ってきた陽一の様子がおかしいことに気がついた。
何がおかしいかというと、雨でもないのに後頭部の髪の先が濡れていた。
通り過ぎた後に石鹸のかぐわしい香りがした。
それこそ、まるで風呂上がりであるかのような様子だった。
いつも通り平然とした顔で上着を受け取り、陽一が去った後で入念に匂いをかぐ。
微かだが、小夜子の匂いがした気がした。
(外でお風呂に入ってきた……?)
嫌な予感がして、いつも通り携帯電話を調べると、やはりメールのやりとりが残っていた。
『ごめん』
『私からお願いしたんですから、気にしないでください。初めてが陽一さんでよかったです』
簡潔だが、綾にとってはこれ以上無い破壊力を含んだ内容だった。
さらに、深夜陽一が寝入っている時に財布を改め、そして見つけたのがラブホテルの割引券と避妊具だった。
「えーと……」
綾は視界がぐにゃりと歪むのを感じた。
まず単純に推測できる事柄は、陽一と小夜子がラブホテルに行ったということだった。
付き合うふりの一環としてラブホテルに行ったというのなら、それは笑って済ませられる。
問題は、陽一と小夜子が性交渉を持った可能性があるということだった。
「お、落ち着け、私。そう、このメール自体が私に二人が本気で付き合っていることを示すための見せメールの可能性も……」
それはない。
自分の言葉を、綾はすぐに胸中で打ち消した。
財布の中の割引券や避妊具は、陽一と小夜子の仲が深いものになったことを綾に示す道具として用意された可能性はある。
しかし、メールは違う。
陽一と小夜子が付き合うことを宣言したその日、二人があくまで付き合うふりをしているのだということを、綾は陽一の携帯電話のメールで確認した。
付き合うふりをしていることがばれていてはその後どんな演技をしても意味が無い以上、携帯電話のメールは綾に見られることを想定されていないことになる。
「つまり……ここに書かれていることは……」
真実――
改めて兄の携帯電話を開いて、綾は手を小さく震わせた。
目の前のベッドで寝息を立てている兄を叩き起こしたい衝動に駆られたが、ぐっとこらえた。
『私からお願いした』
メールにはそうあった。
(私は……とんでもない思い違いをしていたのかもしれない)
小夜子が本気で陽一のことを好きだったとしたら――
陽一は綾の将来のためを思って付き合うふりをしているつもりでも、小夜子はそうではないとしたら――
一週間の遅れを取り戻すかのように、綾は迅速に動いた。
翌日は折り良く体育の授業があったので、隙を見て抜け出し、小夜子の携帯電話を確認した。
「あら……? この携帯電話……」
いつの間に替えたのか、小夜子の携帯電話は綾の記憶にあるものと違っていた。
「買い替えたのかしら」
そんな話はまったく聞いていない。引っ掛かりを感じたが、今はそんなことを気にしている場合でも無い。
小夜子が陽一と付き合っているふりをしている、その本当の意図の確認が先だった。
「これは……」
携帯電話には、陽一との連絡以外に、宇喜多縁とのメールのやり取りが残されていた。
『縁さんのアドバイスのおかげで、無事陽一さんと結ばれることができました。ありがとうございます』
『気にしないでいいよ〜。綾ちゃんの様子はどう?』
『気付いていないみたいです。むしろ陽一さんが気にしてしまっているので、しばらくは付き合っているふりを続けることにします』
『告白が成功したらパフェおごってね!』
疑惑が確信に変わった。
不自然な笑いに顔を引きつらせ、怒りに体を振るわせながら綾は呟いた。
「小夜子……やってくれるじゃない……」
メールを見るに、やはり陽一はあくまで付き合っているふりをしているつもりなのだろう。
しかし小夜子は違う。
小夜子は本当に陽一を愛している。
綾の将来を思う陽一の気持ちを利用して、擬似的にでも彼女となり、陽一に近付こうとしているのだ。
そして、どんな手管を使ったのかわからないが、陽一と肉体関係を持ってしまった。
「縁は、だからあの時あっさり私に話をしたのね」
綾は見事に引っかかってしまったのだ。
用意されていた答えに納得し、途中で思考をやめてしまった。
縁の真の意図は、綾に付き合っているふりを容認させ、小夜子が陽一と親密になる時間を稼ぐことにあったのだ。
「これよね……あいつらしい、底意地の悪い手だわ」
縁と小夜子に対する憎しみの想いが綾の胸の内に生じ、燎原の火のごとく燃え広がった。
あくまで自分の邪魔をする縁が許せなかった。
陽一の気持ちを利用し、自分を裏切った小夜子が許せなかった。
こんな間抜けな失敗で陽一の体を穢させてしまった自分が許せなかった。
そして放課後、陽一と小夜子の提案が、さらに綾の心を追い詰めた。
「綾、今週末に、小夜子ちゃんが家に泊まりで遊びに来ることになったから」
「は? 何しに来るのよ」
「何しにって……遊びに行きたいなって。綾の家、私、一度も行ったことが無いじゃない」
綾の問いに答えたのは小夜子だった。
「遊びに、ねえ……ラブホテルの代わりに使われても困るんだけど」
小夜子が裏切り者とわかった今、自然目つきはこれまでに無く厳しいものになり、小夜子を威圧した。
「ラ、ラブ……そんなんじゃないわよ!」
「……そもそも、他人を家に呼ぶのは、あまり好きじゃないのよ」
やんわりと拒絶を口にするも、その言葉は、小夜子の隣を歩いていた陽一にすぐに打ち消されてしまった。
「何だ、いいじゃないか。小夜子ちゃんなら、綾も他人ってわけじゃないだろ。親友なんだから」
「お兄ちゃん……」
それは昨日までのことなのよ――
「両親も居ないし、無駄に部屋も余ってるから、是非とも遊びに来てくれよ」
そんなに嬉しそうに言わないで――
「あ、私、お夕食を作っていいですか? 陽一さんにも綾にも食べて欲しいんです」
私の居場所を奪わないで――
「おお、いいね。大歓迎だよ」
お願いだから、これ以上私に嫌なことをしないで――
二人のやり取りは、綾の憎悪の気持ちを最大限にまで高めることとなり、和気藹々と話す二人の傍らで、いつの間にか綾は無言となっていた。
そんな綾を横目でちらりと見ながら、さらに小夜子は陽一と仲睦まじく触れ合ってみせる。
その胸中には、漠然とした不安が広がっていた。
(全部縁さんの言う通りに進んでいる……)
小夜子は喫茶店での縁との会話を思い出した。
普通に陽一と小夜子がただ付き合うふりをしても、綾はそれが演技だと見抜いてしまうだろうと縁は言った。
「演技だと気付かれた時点で、綾ちゃんを嫉妬させて反応を見ることができなくなることはわかるよね」
「まあ、そうですね」
「演技だと気付かれないように、支倉君と小夜子ちゃんに頑張ってもらえればいいんだけど、さすがに綾ちゃんの目は欺けないと思うんだ」
小夜子も、綾の鋭さについては同意するところで、深く頷いた。
演技だと気付かれては、内偵は意味を為さなくなる。
「それでどうするかというと、演技だと気付かれても問題が無いようにすればいいわけだね」
「簡単に言いますけど……どうやってですか?」
「支倉君と付き合うふりをすることそれ自体が目的なんだって、綾ちゃんに思わせればいいんだよ」
「よくわかりません」
縁はメモ帳を取り出して、綺麗な字で書き記した。
@支倉陽一が卯月小夜子と付き合う=支倉綾のブラコン脱却のために付き合うふりをしている
A卯月小夜子が支倉陽一と付き合うふりをしている=支倉陽一と親密になるために付き合うふりをすることを利用している
B卯月小夜子が支倉陽一と親密になる=支倉綾の内偵をのために嫉妬を煽っている
「こういうことだね。小夜子ちゃんには、支倉君が綾ちゃんを心配する気持ちを利用して近付こうとする女の子になってもらうよ。もともと支倉君が好きだったってことでいいかもね」
「なるほど……」
「初めは@の解答を綾ちゃんに用意する。それで、しばらくしてAの解答を見せつける。
こうすることで、二人の付き合うふりが演技だとばれていても、小夜子ちゃんの心は本気なんだって綾ちゃんには映るから、ちゃんと嫉妬させることができるわけだね。二重に裏を用意しているから、Bがばれることはまずないよ」
小夜子は黙り込んで縁を見た。
「気に入らないかな。確かに小夜子ちゃんには、かなり汚い役をやってもらうことになるけど」
「いえ……よく思いつくものだなあと感心していたんですよ。大した念の入りようですね」
「そりゃ、あの綾ちゃんを相手にするわけだからね。気合も入るよ。あ、支倉君には言わないでね。綾ちゃんにまず間違いなくばれちゃうと思うから」
「……入る獣の居ない檻をいくら頑丈に作っても、最後に虚しくなるだけだと思いますけどね」
小夜子の言葉に、縁はおかしそうに笑うだけだった。
期限無しで親友の兄の恋人を演じるのはさすがに辛いものがあるので、小夜子は今回の件を引き受けるに当たって、『二週間経って自分に何も被害が無かったら、綾への疑いを捨てること』という条件を縁に出していた。
(今日で一週間……あと一週間だけど……)
綾の反応も、行動も、全て縁の言った通りにこの一週間進んでいた。
最初陽一と付き合うと宣言した時は過剰なまでの衝撃を受け、恐ろしい目で縁を見つめてきた。
しかし次の日には穏やかに、時折皮肉を言う程度になっていた。
そして先日、陽一と肉体関係を結んだかのような偽装をした後では、無表情の仮面の下に、溢れんばかりの敵意を抱えている。
(正直……怖い……)
小夜子はあくまで綾を信じている。
殺人鬼の話なんて、縁の妄言だと思っている。
それでも純粋に、綾の視線が、言葉が、仕草の一つ一つが怖かった。
何よりも恐ろしいのは、陽一と小夜子が何らかのアクションを起こすたびに、綾がその内実を一日とせずに掴んで、対応を変えてくることそのものだった。
(綾は……いつもどこかで見ているんだわ。私と陽一さんのことを……)
憧れという言葉には収まらない、妄執とも言うべき感情が綾の内にあることを、小夜子はこの一週間で察知していた。
縁の策通りに、今の綾は小夜子に強い憎しみを抱いている。
(今夜か……)
縁が予想した「最も危険な時」の一つが今夜だった。
綾は自宅に他人を招くことを極端に嫌う。
それを敢えて押し通せば、小夜子への嫉妬と合わせて、綾が行動を起こす強力な起爆剤になると縁は言った。
小夜子はスカートのポケットの中で携帯電話を握った。
一週間前に縁から手渡されたもので、これからはこの携帯電話を使うようにと言われていた。
「ワンタッチダイヤルの機能がついててね」
「ワンタッチダイヤル?」
「一から三の番号を長押しすると、それぞれの番号に対応して登録してある電話番号に電話をかけてくれる機能だよ」
「それが何か重要なんですか?」
「もう駄目だという場面になったら、これで私に電話して欲しいんだ。他に何もできなくても、ポケットの中で指を動かすことくらいはできると思うから。一から三まで、全部の番号に私の電話番号を登録しておいたからね」
首を傾げる小夜子に、縁は笑った。
「言ったでしょ、証拠を残さず死んだら意味が無いって。ちゃんと綾ちゃんが小夜子ちゃんを殺す瞬間を、記録に残しておかなくちゃね。それに、運が良かったら小夜子ちゃんを助けられるかもしれないし」
危険だと思ったら躊躇なくボタンを押すようにと、何度も念を押して言われたが、そんな場面が来ることは無いと小夜子は考えていた。
今までの綾との関係の変化が全て縁の言った通りのものだったとしても、その考えは変わらない。
しかし、綾との関係が今どうしようもないほどに悪化しているのもわかっていた。
(全部終わった後で謝れば綾は許してくれるよね)
そうなったら一緒に遊びに行って、思い切り仲良くしよう。
一週間後に思いを馳せて、小夜子は陽一と綾に挟まれて、夕暮れの道を歩いた。
その週末、支倉家に泊まりに行った小夜子は、陽一と綾に手料理を振る舞った。
家できちんと教育を受けてきただけあって、料理は見事な出来で、陽一は何度も小夜子を称賛した。
綾は一言、「なかなかね」と澄ました顔で言ったきり、言葉を発することは無かった。
食後、小夜子が洗い物をしている最中、綾は陽一の顔を見て心配そうに声をかけた。
「お兄ちゃん、顔色が……」
「ん?」
「ちょっといい?」
陽一の額に手を当てて、熱を測る仕草をする。
「うーん……ちょっと熱があるかもしれないわね」
「そうか? 自分では何とも感じないけど……」
「一応お薬を飲んでおいた方がいいんじゃない?」
言って、救急箱をあさり、薬を一錠取ってきて陽一に手渡した。
「ちゃんと飲んでおいてよね。風邪をひかれたりしたら困るんだから」
「わかったわかった」
笑いながら、陽一は手渡された薬を綾の見ている前で飲み込んだ。
その夜、小夜子は綾の部屋で寝たいと申し出た。
「私の部屋で?」
「うん。お話しながら寝たいな……」
「いいわよ、無理しなくても。お兄ちゃんの部屋の方がいいんでしょ?」
「ううん。私、綾と色々話したい」
「……勝手にすれば」
綾のベッドの脇に客用の布団を敷き、小夜子が寝ることになった。
灯りを消して、二人とも布団に入る。
身を丸めるようにして、小夜子は綾の方を向いた。
「綾は豆電球つけないの?」
「悪い?」
「悪くはないけど……」
綾は全く会話をしようとしない。
冷たい反応にくじけそうになりながら、小夜子は思い切って聞いてみることにした。
「綾、怒ってる?」
「なんで?」
「陽一さんを取ったから」
「別に」
「ううん。怒ってるよ」
陽一と付き合って、綾の嫉妬をその身に受けてよくわかった。
綾は本当に陽一が好きで、何よりも大切に思っているということ。
その愛情の前では、親友と称していた自分との関係なんて、無に等しいということ。
「ホント、この一週間でよくわかった。綾にとって、陽一さんは本当に大事な人なんだよね……私とのこれまでの関係なんて、忘れちゃうくらいに」
「……」
「わかるよ。悲しいけど、わかる。綾と陽一さんには、私が綾と知り合うずっと前から築いてきた関係があるわけだし、私なんかが割り込む余地はないってこと、わかってる。綾にとって陽一さんが、無くてはならない支えになっているのもわかってる」
でも、と小夜子は声を振り絞った。
「でもさ……一本足で立つよりかは、二本足で立つ方が、きっと安心だと思うんだよね。うん、楽だと思うのよ。一本足だと前に進むのに歯を食いしばってケンケンしなきゃいけないけれど、二本足なら笑いながら歩いていけるでしょ。
だからね、陽一さん以外にも、支えがあってもいいんじゃないかって思うの。
陽一さんみたいにはなれなくても、綾と一緒に居たいって思っている人間なら、ここにいるから……綾にとってはちっぽけな私なんてちっぽけな存在なのかもしれないけど、私は綾のこと好きだから」
「うるさい」
「綾のこと大好きだから……いつでも、どこでも声をかけてね。綾は強い子だからケンケンでも歩き切っちゃうのかもしれないけど……私は、笑って歩いている綾が見たいから」
「うるさい!」
小夜子は口をつぐんだ。
それから二人は一言も発することなく、やがて小夜子は眠りに落ちていった。
目が覚めたのは真夜中だった。
机の上に置かれている時計を見ると、午前二時を少し過ぎたところだった。
「……何でこんな時間に目が覚めたんだろう」
トイレに行きたいわけでも、喉が渇いたわけでもない。
本当に何となく、小夜子は静寂の夜に目を覚ました。
「枕が違うからかな……」
身を起こして、ふと綾のベッドを見る。
「あれ……?」
そこに眠っているはずの少女の姿は無く、布団だけが温かみを残して横たわっていた。
「寝顔見たかったのに……トイレかしら」
部屋をぐるりと見回す。
思えば、綾の部屋に入ってすぐに灯りを消してしまったので、綾の部屋をじっくりと見ることができなかった。
「綾の部屋……」
大好きな友人が普段過ごしている空間に、純粋に興味があった。
どんなものを置いているのか、どんな本を読んでいるのか。
そして、すぐに気がついた。
寝る前は机の前に置かれていた椅子が、不自然な位置に移動していることに。
「あれ……? ここじゃなかったわよね、確か」
何とは無しに椅子の置かれた周囲を見ていると、天井板が微かにずれて、暗闇の中にさらに真っ暗な空間が口を開けているのが見えた。
「何だろ……?」
綾は戻ってくる気配は無い。
ひょっとしたら、秘密の日記とか、宝箱でも隠してあるのかもしれない――
本当に何気ない興味だった。
「ん……よいしょと……」
椅子に乗り、天井板をさらにずらして、暗闇に手を入れる。
すぐに指先に何かが当たった。
「箱……?」
慎重に、落とさないように注意して、天井裏から箱を取り出す。
それなりに容積のある箱だった。
「本当に宝箱……?」
床において、そっと蓋を開く。
真っ先に目に入ってきたのは、幅広い刃のついた鉈だった。
「何……これ」
金槌、包丁に、異常な刃渡りのナイフが数本。
束ねられた細いワイヤーに、透明な液で満たされた小瓶も入っていた。
恐る恐る鉈を手に取ると、闇に慣れた瞳には、その刃に黒い斑点がついているのが見て取れた。
「何なの……?」
さらに、箱の隅からは、何枚かの写真が出てきた。
綾と小夜子が卒業した中学校の制服を着た、女子の写真だった。
小夜子には見覚えがあった。
「確か……一つ上の学年で、ご家族と一緒に火事で亡くなった……」
縁の声が頭に蘇る。
被害者のうち三人は綾の出身中学の生徒で、さらにその家族が十五人亡くなっていると言っていた。
自分も含め、綾以外にも同じ中学校から現在の高校に上がってきた者はいるし、被害者との出身中学の一致なんて何も特別なことでは無い。
しかし、なぜ綾がわざわざその被害者の写真を持っているのか。
(そんなわけはない……あれは縁さんの妄言であって、現実にそんなことがあるわけは……)
殺人鬼という言葉が思い起こされた。
何度も自分自身にそんなわけはないと言い聞かそうとするが、気付いたら鼓動は早くなり、体全体からじんわりと汗をかいていた。
「こんばんわ。何してるのかしら?」
背後からの声に、肩をびくりと震わせて振り向く。
部屋の入り口に寄りかかるようにして、綾が立っていた。
「あ、綾……どこに行ってたの?」
「お風呂場よ」
答えて、綾が一歩近付く。
同時に小夜子が一歩部屋の奥へ退いた。
「お風呂場って……どうしてこんな時間に?」
「朝のお風呂に備えて、温めておこうと思って」
綾の手には、黒い棒状の物体が握られていた。
小夜子の知識ではそれが何かはわからなかったが、人に危害を加えるための道具であろうことは想像がついた。
「綾……それは、何に使うものなの?」
「これはね、スタンガンよ。強力なね。人を動けないようにするのに便利なのよ」
また綾が一歩近付く。
小夜子の後ろはもう壁だった。
「それで、小夜子、あなたは何をしていたの?」
「私は……その……」
「いけないわね。勝手に人の部屋を物色するなんて。泥棒猫の次は、本当の泥棒でもしようと思ったの?」
綾は小夜子が手に握った写真に目をやった。
「泥棒猫がどうなるか……その様子だと、わかっちゃったみたいね」
「……綾……あなた……」
また一歩、解いた黒髪を揺らして、綾が小夜子に近付いた。
「綾……あなた……本当に……人殺しだったの?」
小夜子の問いに答えることはなく、綾はただうっすらと笑い、切れ長の目を細めて小夜子を見た。
その目を見た瞬間、小夜子はわかってしまった。
縁の話は本当だったのだと、自分の親友は犯罪者だったのだと、わかってしまった。
「小夜子……あなたが悪いのよ。私からお兄ちゃんを奪おうとするから」
「綾……」
「騒いでも無駄よ。お兄ちゃんは、『風邪薬』のおかげでぐっすり眠ってるからね」
騒ぐつもりは毛頭無かった。
小夜子の心は恐怖よりも悲しみに満ちていた。
自分は綾のことを何も知らなかった――そう思うとあまりに悲しくて、気付いたらぽろぽろと涙を流していた。
「綾、警察に行こう」
泣きながら、しかし毅然とした声で小夜子は言った。
「警察に行って、全部話そう。綾がやってはいけないことをしたのだとしたら、罪を償わなきゃ駄目だよ。私も一緒に行くから……」
自然と言葉が流れ出てきた。
今この状況で、自分が綾のために最大限出来ることは何か――その想いから生み出される言葉だった。
しかし、返ってきた言葉は冷たいものだった。
「何を言っても無駄よ。私のお兄ちゃんを穢したあなたを、許すわけにはいかないわ」
それに、と綾は床に置かれた箱を見た。
「色々見られちゃったみたいだからね。あなたについては、殺すしか解決が無いみたいなのよ」
綾の犯罪の記録が詰まったあの箱を小夜子が見てしまったからには、脅しで済ませるわけにはいかない。
完全に口を封じる必要があった。
「本当にねえ……私のお兄ちゃんに興味を持たなければ、こんなことにならなかったのにね」
「興味を持つなっていうのは……無理な話だよ」
もう駄目かな――そう思いながら、小夜子は頬を染めて笑った。
涙をぽろぽろ零しながら、笑った。
「大好きな友達に興味を持たないなんて、絶対無理だよ」
次の瞬間、綾の一撃によって小夜子は昏倒した。
陽一に飲ませた薬は、佐久間愛の母親に飲ませたものと同じで、効きは速いが効果が短い。
できるだけ手早く作業を済ませなければならなかった。
気を失わせた小夜子の体を引きずるようにして、風呂場に持って行き、寝巻きを脱がして脱衣場の床に横たえた。
「携帯電話……?」
寝る時にまで携帯電話を身につけているものだろうか。
疑問に思ったが、今は他にやるべきことがあるのだからと、ひとまず置いておくことにした。
一糸纏わぬ姿となった小夜子を抱きかかえ、湯気の立ち込める風呂場に入る。
温めておいた湯船に小夜子の体をゆっくりと浸からせるた。
「小夜子……」
入浴中の溺死による死亡は、日本においてはかなりの件数に上るうえ、剖検率は極めて低く、大抵は見たままの事故として処理される。
自宅で殺すには一番良い手だと、綾は考えていた。
「あなたが悪いのよ……小夜子……」
最愛の兄を奪おうとしたのみならず、偶然にも綾の殺人の証となりうる凶器の数々を見てしまった。
殺すしかない。
小夜子は、殺す以外の選択は無い。
「そう、殺すしかないわ。お兄ちゃんと私の幸せのために」
呟いて、目を閉じたままぐったりと湯船に浸かっている小夜子の頭に手を置く。
小夜子の肩までの黒髪が湯に触れて、微かに揺れた。
この手を押し下げて数分待てば、全ては終わる。
小夜子は正真正銘溺死し、陽一を奪おうとする存在はこの世から消える。
途中で目が覚めたとしても、感電のショックの直後では思うように抵抗もできないだろう。
本当に、今この手を下げて小夜子の顔を湯に入れるだけで、全ては終わるのだ。
「馬鹿よね。おとなしく私の友達のままでいれば良かったのに。そうすれば、死なずに済んだのに」
朝までに、自分が小夜子を殺した痕跡は完全に消しておかなければならない。
確実に警察を家に入れることにはなるから、あの箱を含め、自分の部屋は少し整理しておいた方がいいだろうと思われた。
だからさっさと殺さなければならない。
やることはたくさんあるのだから、すぐに殺さなければならない。
綾の白い手が動く。
が、小夜子の頭は湯の中に沈まなかった。
その手は、小夜子の髪を撫ぜるように、緩やかに動いただけだった。
「小夜子……」
二度三度と髪を撫で、手は動きを止める。
無表情だった口元が小さく震え、綾は声を詰まらせた。
「小夜子……!」
苦しげな吐息が風呂場に反響した。
「馬鹿……! 小夜子の馬鹿……! どうして……どうして私の友達で居てくれなかったのよ……! 親友だって言ったのに、どうしてよ……!」
殺さねばならない。
殺さなければ、陽一は小夜子に奪われてしまう。
自分が警察に捕まる可能性も高く、そうなれば陽一との幸せな生活が完全に失われてしまう。
小夜子は殺す以外に選択肢が無いのだ。
「そうよ……殺すしか……ないのに……」
小夜子の目から、ぽろりと涙が零れた。
一度落ちた涙は止まらず、次々と溢れ出て、ついに綾はどうしようもなく泣き出してしまった。
自分のことを大好きだと言ってくれた級友。
それすらも兄に近付くための謀略だったのかもしれない。
「でも……でも……!」
小夜子を沈めようとしても、手が動かなかった。
一年以上に及ぶ小夜子との思い出が、綾の脳裏に次々と蘇る。
いい子だと思っていた。
自分なんかと一緒に居る人間ではないと思っていた。
母にすら疎まれた自分が、こんな子にとっての価値ある存在になれるわけはないと思っていた。
だから何度も邪険な態度を取ったのに、小夜子は綾を大好きだと言って、いつも傍に居ようとした。
「あなたがお兄ちゃんを取らなければ良かったのに……! あなたが余計なものを見なければ良かったのに……! そうしたら……そうしたら、私もあなたを大好きでいられたのに……!」
自分自身の言葉に、綾は愕然とした。
そう、自分は大好きだったのだ。
卯月小夜子という人間が、たった一人の親友が大好きだったのだ。
小夜子が纏わりついてきたから仕方なく一緒にいたのではなく、小夜子が大好きだったから一緒に居ることを望んだのだ。
「でも……今じゃ……お兄ちゃんを奪おうとしたから……大嫌い?」
そんなわけないじゃない。
すぐに心の中から否定の声が上がった。
今も大好きだった。
こんな曲がった自分にいつも笑って接してくれて、ずっと傍に居てくれた親友が大好きだった。
好きで、好きで、どうしようもなく大好きで、今でも変わらなく好きだった。
「お兄ちゃん……ごめん……私……お兄ちゃん以外に、好きな人がいたよ……」
絶望だった。
自分には陽一しか居ない。
陽一が居なければ自分は存在できない。
そう思っていたから、これまで何でもやってこられた。
陽一を奪おうとする者は消し、陽一を害する者も消し、陽一と二人で幸せになる道を純粋に目指してこられた。
なのに――
「私……お兄ちゃんだけじゃなかった。小夜子も好きだったよ……お兄ちゃん。ごめん……ごめんね……私……小夜子を殺せないよ……」
陽一と二人で幸せに暮らす、そんな思い描いていた未来が、音を立てて崩れ去った。
小夜子を浴槽から引き上げ、脱衣場の床に寝かせてタオルをかける。
そうして綾は、しばらく声をあげて泣いた。
数分間、綾は子供のように泣いたが、泣いている場合では無いとすぐに気持ちを改めた。
小夜子を生かした以上自分は警察に捕まる。
小夜子はあの箱を見て、綾のやってきたことに気付いてしまった筈だった。
「今からでもあの箱を処理してしまえば……今まで殺してきたことの証拠は完全になくなる……?」
すぐに綾は首を左右に振った。
一度でも疑われてしまったら、もう敗北なのだ。
自分では完全にやってきたつもりでも、これまでやってきた全てのことにおいて証拠が残っていないとは考えにくい。
実際殺されかけた小夜子の被害届けがあれば、警察はある程度力を入れて調べてくるだろう。
「駄目よね……。小夜子を殺せなかった時点で、私の負けなのよね」
だとしたら、やることは決まっていた。
自分が殺人罪で捕まったら、後に残された陽一は、とんでもない被害を被ることになる。
どれだけの罪が明らかにされるかはわからないが、複数人を殺していることがわかってしまえば大々的な事件として扱われ、恐らくは全国に報道されることになるだろう。
人殺しの兄として、陽一が周囲から孤立することは大いに考えられる。
これから先の人生、常に人間関係には苦労し、進学や就職にも悪い影響が出るだろう。
「私がやるべきことは……お兄ちゃんへの被害を減らすこと」
やはり部屋の整理の必要はあるだろう。
今からでも日記をでっちあげ、ずっと前から深い悩みを抱えていたように偽装するか、あるいは精神を病んでいたように見せかけるかするのもいいかもしれない。
「そして……最後はちゃんと責任を取らなくちゃね」
例え人殺しとして捕まっても、陽一は自分の心配をするに違いない。
自分の存在が兄のこれからの人生を縛り付けることになるのは、間違いないと思われた。
「あまり汚い姿をお兄ちゃんに見せたくはないし、適当に目立つところで首を吊ることにしましょうか……」
兄を幸せにしてみせると言っておいて、結局とんでもない迷惑をかけることになってしまった。
本当にどうしようもない、最悪の女だと思った。
「でも、落ち込んでる場合じゃないわね……やることはたくさんあるし、急いで動かなきゃ……」
最後に小夜子の髪をもう一度撫でて、脱衣場を出ようとする。
その足に、先ほど小夜子の寝巻きのポケットから出した携帯電話が当たった。
「あら……」
今は今で新たにやることができた以上、気にしている余裕はない。
しかし、先ほど感じた疑問が綾の手を自然と携帯電話に向かわせた。
開いてみると、そこには通話の履歴が残されていた。
「四辻……夕里子?」
相手の名前がディスプレイに表示されていた。
通話の始まりは十五分ほど前。
恐らくは、綾に部屋で追い詰められた時に助けを求めて電話をかけていたのだろう。
問題は、相手が四辻夕里子であるということと、通話時間が十分近くにまで達しているということだった。
「どういうこと……?」
夕里子は今意識不明のはずであり、そうなると、助けを求める相手としては適切ではない。
しかし小夜子は夕里子に電話をかけ、しかも十分に渡って通話している。
「夕里子さんは……もう目覚めているの?」
夕里子が意識不明から脱したという話は聞いていなかった。
さらに携帯電話には、一件のメールの着信があった。
通話の直後に届いていたメールだった。
「これも夕里子さんから……」
『小夜子ちゃん、大丈夫? 何があったの? 警察を呼ぶ? 今どこに居ますか?』
ああ、と綾は納得した。
やはり夕里子は既に目覚めていたのだろう。
そして、受話器越しに自分と小夜子のやり取りを全て聞いていたのだろう。
呼びかけても返事が無いため、通話を打ち切り、心配してこのメールを打ったというところか。
「つまり、小夜子を殺していても、やっぱり私は負けていたってことよね」
病室で突然の電話なら録音はされないだろうが、綾がどうやって小夜子を殺したかがわかってしまえば、後の捜査でどうとでもされてしまう。
夕里子と小夜子。
お人よしの従姉妹同士の二人に、完全に綾は敗れていたのだ。
小夜子を殺していたなら、小夜子に成りすましてメールに返信し、警察を呼ぶのをやめさせて、今晩のうちに夕里子を始末に行ったことだろう。
しかし、小夜子を殺せなかった今、何をどうやっても綾は捕まることになる。
夕里子のことは、もはやどうでもいいことだった。
「でも、すぐに警察に来られるのはやっぱり困るわね」
仕方なく、小夜子に成りすましてメールを送ることにした。
『大丈夫だよ、ユリ姉。ちょっと綾と喧嘩しちゃっただけ。ごめんね、夜遅くに』
またすぐに返信があった。
『そうなの? ならいいけど……』
「これで良し、と……」
小夜子もそろそろ目を覚ましそうなので、さっさと後始末をして終わりにしなければならなかった。
「でも、夕里子さん、いつ目を覚ましたのかしら……」
気になったが、純粋に良かったと思う。
自分が犯罪者として捕まることが確実になった今、夕里子の存在は貴重なものだった。
「あの人はお兄ちゃんのこと大好きだから……きっと味方になってくれるはずよね」
四辻家は金も力もあると縁が言っていた。
自分がぶち壊すことになった陽一の将来を、夕里子が修復してくれることだろう。
「小夜子には悪いけど、たぶんお兄ちゃんも、まだ夕里子さんのこと好きなのよね……」
夕里子に小夜子。
我が兄ながら、良い娘たちに惚れられたものだと、妙に誇らしく思ってしまう。
「宇喜多縁……あいつは……あの女はどうするのかしら」
縁も陽一のことが好きなのだと思っていたが、夕里子が居なくなった後小夜子に協力したということは、違ったのだろうか。
携帯電話が小さく震える。
また夕里子からのメールの着信だった。
『本当に大丈夫? ちょっと心配だから……病室に来てくれますか? お母様も帰ってしまって寂しいし……』
どうやら夕里子は病室に一人らしい。
心配なのはわかるが、身辺の整理が終わるまでは警察に通報されるわけにはいかない。
また無事を伝えるメールを打ち込もうとして、ふと綾は不思議に思った。
(安否を気にするなら、電話をかけて直に声を聞けばいいんじゃないの?)
メールは他人が打つこともできるし、いくらでもごまかしがきいてしまう。
綾もそれを利用して人を殺して自殺に見せかけたことはあったし、今も小夜子に成りすましてメールに返信していた。
しかし、声は完全に真似することはできない。
本当に安否を確認するなら、電話で話をした方が確実に決まっている。
「実際のところ、それをされたらすごく困るわけだしね……」
まだ気になる点があった。
十分間の通話から既に五分以上経っているのに、夕里子がいまだ警察に連絡をしていないという点だった。
具体的にどんな会話をしたのか覚えていないが、自分は小夜子に対してかなり危険な発言をしたはずだと、綾は思っていた。
殺す殺さないという会話がずっと聞こえていて、それで通話が終わったとしたら、メールで大丈夫かどうかを尋ねる前に警察に連絡するのではなかろうか。
夕里子は馬鹿のつくほどのお人よしだが、思考については馬鹿ではないことを、綾は承知していた。
(気にするようなことじゃないのかも知れないけど……)
綾は思い切って夕里子に電話をかけてみた。
呼び出し音がしばらく鳴り、やがて留守番電話サービスに繋がってしまった。
(出ない……どうして?)
すぐにメールの着信があった。
『ごめんね。まだ寝たきりだから、声をだしたりするのは苦しいの。メールで許してください』
違和感――
綾の直感が、何かがおかしいと告げていた。
「別人……?」
そう、メールはなりすましができる。
夕里子の側だってそれは例外ではない。
「誰かが、夕里子さんになりすましている……?」
そもそも、夕里子が目覚めているのかという疑問はあった。
小夜子から、そんな話は一切聞いていないのだ。
陽一とのことで関係が気まずくなっていたとは言え、敬愛する従姉が目を覚ましたなら、嬉しさに押されて話してしまってもおかしくはない。
しかし、小夜子の様子はこの数日、特に変わったところは無かった。
『小夜子ちゃん、大丈夫ならいいけど……朝には病室に来てください。来なかった時には、一応警察に連絡することにします』
「このメールは……」
朝までのタイムリミットを告げるメール。
もし小夜子を殺し、証拠隠滅のために夕里子を殺す必要が生じていたら、このメールを見た時点で朝までに夕里子を殺すことを決意しただろう。
『小夜子を殺していたら』夕里子を殺しに行くであろう状況が、きれいに整えられていた。
そもそもにしてなぜ夕里子は入院したのか――十日ほど前のことを思い起こす。
陽一を守るために犠牲になると約束した後で、夕里子は屋上から身を投げた。
小夜子は信じられないと言った。
綾も、陽一に関する約束を交わした後で夕里子があんなことをするなんて、あまりに予想外だった。
(あの時私は……)
縁が殺そうとしたのかもしれないとも思った。
あまりに突飛過ぎると放棄した考えだった。
しかし、もし本当に縁が夕里子を殺そうとしたのだとしたら。
(縁は、夕里子さんが目を覚ます前に、夕里子さんを殺さなければならないことになる)
そうしなければ、殺人未遂で捕まることになるからだ。
綾の中で、いくつかの思考の破片がぴたりと重なり合った。
仮に縁が夕里子を殺そうとして失敗したのだとしたら、夕里子が目を覚ます前に殺さなければならない。
あるいは、夕里子が目を覚ます前に誰かに殺させればそれで良い。
「私……?」
そもそもにして、小夜子が陽一に近付いた陰には、縁の助言があった。
小夜子は縁の助言のまま行動し、危うく綾に殺されそうになった。
「もし私が小夜子を殺していたら、私は今頃夕里子さんを殺しに行っていた……」
それは縁にとって、実に都合のいい展開ではなかろうか。
しかも、綾が夕里子を殺す場所と時間がほぼ掴めている。
それはすなわち、夕里子を殺した際に綾を捕らえることが容易にできるということだ。
(小夜子が死んで、夕里子さんが死んで、その上私が捕まったら……)
残るのは縁一人だ。
陽一の周囲に残る女は、縁一人になるのだ。
「そう……そうよ……やっぱり小夜子は私を裏切っていたわけじゃなかったんだわ」
自室で追い詰めた時、小夜子は言った。「本当に人殺しだったの?」と。
「本当に」という聞き方をしたということは、あの場でその判断に至ったのではなく、事前にその仮定を得ていたということになるのではないか。
それが自分で至った仮定ならば、「やっぱり」という言葉を使うだろう。
「本当に」から繋がる疑問の形は、伝聞で仮定を得ていた場合にこそ用いられるのではないか。
言葉遣いなんて個人の感覚によって違うし、全ては推論の上に推論を重ねているに過ぎない。
(それでも――)
縁とは夕里子を介して何度も刃を交えた。
森山浩史というスケープゴートを用意しての戦いだったが、縁が自分に何らかの疑いを抱いたとしてもおかしくはない。
仮に縁が自分に関して疑いを持っていたとして、そのことを小夜子に告げたら、小夜子は自分の無実を主張してくれるだろう。
「陽一に近付いたら殺される」と縁が言ったら、自分が試してみせると言ってもおかしくはない。
「ううん……このあたりは考える意味はないわね。小夜子がお兄ちゃんに近付いた動機はどちらでもいいのよ。重要なのは……縁がその指示をしていたということ」
それはすなわち、縁は小夜子と陽一を動かすことで、綾の感情と行動をある程度操作できたことになる。
小夜子を殺させ、夕里子を殺させ、最後に綾を捕まえるという一連の流れを用意することができたことになるのだ。
実際、もし小夜子を殺していたら、何も疑問に思うことなくその流れに乗っていた。
「全ては私の想像に過ぎない……証拠も一切無い……けど……もしも縁が本当にそのつもりだったのだとしたら……?」
ひょっとしたら、綾が夕里子を殺しに行くことを見込んで、既に夕里子は縁の手で殺されているかも知れない。
「いえ、このメールで時間制限を朝までにしている以上、すぐには殺すことはできないはずだわ。死亡時刻と私の行く時刻に差がありすぎると、私に罪を着せる縁の策は成り立たないはずだし……。
あくまで私が夕里子さんを殺すことを期待しているか、私が行ったその時に殺すか、どちらかよね」
つまり、自分が病室に行かなければ、夕里子の命は保障されるということだった。
「なんだ……何も問題無いじゃない」
ほっと胸を撫で下ろす。
でも、と思った。
放っておいて良いのだろうか。
このまま兄に迷惑をかけないよう自殺してしまって良いのだろうか。
(私が居なくなったら、縁は……夕里子さんが目を覚ます前に、別の手で殺そうとするはず)
その時、誰が夕里子を守れるのだろう。
陽一は人を疑うことを知らない。
小夜子は陰謀などという言葉からは程遠い。
それどころか、この話に関わりを持った以上、小夜子も縁に殺されてしまうかもしれない。
夕里子を殺させるわけにはいかない――愛する兄の将来を守るために。
小夜子を殺させるわけにはいかない――大好きな親友には生きてほしいから。
(そもそも全ては仮定を積み重ねただけの、私の頭の中のお話に過ぎないのかもしれない。ただの勘違いなのかもしれない……)
しかし、例え起こる確率が一パーセント以下だとしても、起こった時に致命的な結果が生じるのなら、その物事の発生は何としても防ぐのが正しい。
殺人を犯した際の証拠隠滅にせよ、人の命を守るための危険因子の排除にせよ、「多分起こらない」ではなく「絶対に起こらない」にしなければならないのだ。
「お兄ちゃんのために……一番お兄ちゃんのためになる行動は……?」
綾の気持ちは決まっていた。
陽一への愛を貫き通せなかった今、せめて最後に役に立つことを愛情の証明としたかった。
「行こう……」
よろめくように、綾は脱衣場を出た。
二階に上がり、ベッドに寝たままの陽一にキスをする。
「今までごめんね……お兄ちゃん……」
コートを着込み、スタンガンを懐に忍ばせて、綾は家を出た。
病院へは、タクシーで二十分ほどだった。
夜間通用口の脇の詰め所に警備員が居るのが見えたが、タイミングを見計らい、身をかがめて入っていった。
縁に悟られることを恐れて、エレベーターは使わなかった。
「夕里子さんは……五〇一だったわね」
真っ白なドアが等間隔で続く薄暗い廊下を、足音を殺して歩く。
目当ての病室のドアが小さく開き、明かりが漏れているのが見えた。
(誰か居る……?)
ドアに寄って耳をそばだてると、小さく呻き声が聞こえてきた。
スタンガンを構えて素早くドアを開けて病室の中に滑り込む。
警戒した奇襲は無く、見ると、病室の床に、中年の女性が一人、縛られて転がされていた。
気絶しているらしい、ぐったりとして目を閉じたその女性は、どこか夕里子に雰囲気が似ていた。
「夕里子さんの……お母さん?」
娘の容態が心配で泊まり込んでいたのだろう。
ベッドには、いくつかの機器がつながれた夕里子が、以前見た時と変わらぬ様子で横たわっていた。
(やっぱり、あのメールは夕里子さんじゃなかったのね……)
事情を聞きたいが、簡単に起きてくれるだろうか。
ともかくも、縄を解いて起こしてやらねばならない。
しゃがみこんでスタンガンを床に置き、女性を縛る縄に手をかけた、その時――
微かな物音に、綾は反射的に身を捩らせた。
次の瞬間、綾の右腕に激痛が走った。
ぎらりと光る鉄の刃が、綾の上腕に深々と刺さっていた。
「……っ!」
「こんばんわ、綾ちゃん」
包丁を握っているのは、三つ編みの少女。
眼鏡の向こうの目をうっすらと細め、口元にはいつもの微笑を浮かべている。
「宇喜多……縁……!」
綾の口から、搾り出すような怨嗟の声が漏れた。
縁が腕に刺さった包丁を引き抜く。
間髪置かず、綾の首筋を狙って切りつけた。
「くっ……!」
避けられない――
瞬時に判断して、綾は縁の振るった刃を、左手で払って流した。
病室の床に血が飛び、綾の左手から薬指と小指の先が離れて落ちた。
「さすがだね、綾ちゃん」
激痛が走るが、声を上げる暇も無かった。
縁の追撃を床を転がるようにかわし、病室の壁に寄りかかるようにして立って、綾は何とか体勢を整えた。
「叫び声を上げても無駄だよ。綾ちゃんが病室に入ったのを見た時点で、ナースステーションの看護婦さんたちにはあっちの世界に行ってもらったから」
「あんた……」
「良かったよ、早いうちに来てくれて。驚いた? 夕里子ちゃんが起きてなくて」
「どういうつもり? 人殺しは犯罪よ?」
「綾ちゃんに言われたくないよ」
縁は包丁を構えて、綾にじりじりと近付く。
床に置いてあったスタンガンを蹴り飛ばし、部屋の隅に追いやってしまった。
(まずいわね、こりゃ……)
縁と自分の素の運動能力はほぼ互角だと、前のバドミントンの時にわかっている。
互角である以上、体の状態と持っている武器が重要になるが、すでに両方の腕をやられて武器も失った綾に対し、縁は無傷で包丁を持っていた。
(これは……死んだかしら)
綾の両の手から血が滴り落ちていく。
かなりの出血で、縁に止めをさされなくとも、放っておけば死に至るだろうと思われた。
「……とはいえ、簡単に死ぬわけにはいかないのよね……」
縁を睨みつけて、綾は荒く息をついた。
「でも、まあ、死にそうな予感だから聞いておくわ。あんた、何考えてるの? 何でこんなことするのよ?」
「あれ? とっくにわかってると思ったけど。もちろん支倉君を手に入れるためだよ」
「お兄ちゃんを……」
「そうだよ。これで支倉君は私のものになる。夕里子ちゃんは死んで、小夜子ちゃんも死んで、支倉君の周りの女の子は私だけになる」
縁は目を輝かせて言った。
「当然綾ちゃんにも全部の罪を被って死んでもらうよ。私が『正当防衛』で殺してあげるからね」
「これのどの辺が正当防衛なのよ」
綾は自分の左手を見た。
切り落とされた薬指と小指の先から血が溢れ、白い骨が覗いていた。
「あはは。他の人から見て正当防衛ならいいんだよ。綾ちゃんと小夜子ちゃんのやり取りは、電話越しにちゃんと録音しておいたからね。襲われましたって言えばみんな信じてくれるよ」
うまくいったよ、と縁は頷いた。
「綾ちゃんの何が凄いって、死体の処理が上手なんだよね。殺しても、ちゃんと自殺か事故に見えるようにしちゃうから、だから捕まえられない。だからもう、殺された後に証拠を探すんじゃなくて、殺される時に証拠を作らなきゃならないんだよね」
「そのために小夜子を使ったのね……」
「うん。完璧。完璧にうまくいったよ。これで支倉君は私のものになる。夕里子ちゃんは死んで、小夜子ちゃんも死んで、綾ちゃんも死んで、私は生き残る。支倉君は最悪の殺人者、支倉綾の実兄として、世間で徹底的に弾圧を受けるんだよ」
頬を染め、恍惚の表情で縁は語った。
綾が初めて見る、縁の感情らしい感情だった。
「最悪の人殺しの家族として軽蔑されて、友達も恋人もできなくて、ずっと一人で生きることになる支倉君に、私だけが優しく微笑みかけるんだよ。
もうこの世に私以外、支倉君が頼れる人は居ない。支倉君は私無しでは生きられなくなるんだ。支倉君にとっての世界は私だけになって、私だけの支倉君になるんだよ」
この女――
綾の胸の奥に、沸々と怒りがわいてきた。
失血で朦朧とする意識を奮い立たせるため頭を振る。
着込んだコートの肩に、長い黒髪が解れてかかった。
「夕里子さんを突き落としたのはあなたなのね?」
「そうだよ。夕里子ちゃん、私の言うこと聞いてくれなくなっちゃったから、いらないなって思って。でも、初めての人殺しだから失敗しちゃったよ。おかげで、こんな面倒なことをしなくちゃいけなくなったわけだけど、うまくいったから良しとしようかな」
「なるほど……うまくいったと思ってるのね」
綾は嘲るように笑った。
「調子に乗ってるみたいだけど、全部が全部、あなたの考えたように進むわけないでしょう? 小夜子は生きてるわよ。小夜子の死が私が殺人犯であることを示す証拠になるなんてことはないわ」
「え……?」
「でもね、小夜子はあんたなんかよりよっぽど優秀だったわよ。妙な好奇心のおかげで、私がこれまでやってきた殺人の証拠を見つけちゃったんだから」
縁は一瞬きょとんとして目を瞬かせた。
「どういうことかな?」
「どうもこうも、小夜子はあんたの見つけられなかった証拠を見つけて、私は小夜子を殺せなかったってことよ。私は警察に捕まるけど、それはあんたのくだらない策略なんかのせいじゃないわ。小夜子が私の友達でいてくれたから……だから私は負けたのよ」
「くだらない……? 私が……?」
縁は口をつぐみ、憎しみに満ちた目で綾を睨んだ。
「小夜子が殺せなかったから、私に夕里子さんを殺す意味なんて無いわ。そうでしょ? 小夜子が生きている以上、あんたの言う小夜子が殺される時の証拠なんて、存在しないことになるんだから」
「……ちょっと予想外だけど、別に大丈夫だよ。綾ちゃんがここに来てくれたならそれで。
夕里子ちゃんを殺して、小夜子ちゃんもこれから殺しに行って、小夜子ちゃんが見つけたっていう証拠を私も見つけて、全部殺人鬼の綾ちゃんがやったことにすれば、結局同じことだから。
でも……ちょっと急がなきゃいけなくなったみたいだね」
縁が包丁を構えて近付いてきた。
「馬鹿だね、綾ちゃん。ここに来なければ、警察には捕まっても死ぬことはなかったのに。何しに来たの?」
「決まってるじゃない。あんたをぶっ殺して、夕里子さんを守るために来たのよ」
そう、この女は殺さなければいけない。
絶対に殺さなければ、兄にとって大きな不幸となる。
そして夕里子は生かさなければならない。
これからの兄の人生を守るため、そして、兄の心の癒しのためにも。
「宇喜多縁……あんたには……あんたみたいな糞女には、お兄ちゃんを渡すわけにはいかないわ。絶対に……絶対に渡さない!」
「ひどいなあ。同類なんだから、認めてくれてもいいと思うけど。私だったら一途に支倉君を愛すること間違いなしだし、支倉君のためなら綾ちゃんに負けないくらい何だってできちゃうよ」
「同類? ふざけないで。あんたが大好きなのはお兄ちゃんじゃない。あんた自身でしょうが」
吐き捨てるように綾は言った。
「私もあんたに負けず劣らずゴミみたいな人間だけどね、私が愛したのはお兄ちゃんなのよ。あんたは自分のためにお兄ちゃんを不幸にして飼い殺そうとしているだけでしょう。私は違う……私は、お兄ちゃんが不幸になることなんて望まないわ」
「……綾ちゃんのしてきたことを思うと、似たり寄ったりだと思うけどな」
縁の目つきが変わった。
いつ切りつけられてもおかしくないと、綾は感じた。
(どうする……? この女を殺すどころか、このままじゃ確実に殺される……絶体絶命だわ……)
右腕はもう動かない。
左手は、物を掴むことも難しいだろう。
(駄目よ……諦めちゃ駄目。私が死んだら、夕里子さんは殺される。夕里子さんのお母さんも殺される。それに小夜子も……)
縁は綾にそれ以上の思考を許さなかった。
包丁の切っ先のゆらめきに、綾はとっさに喉を守ったが、鋭い刃は深々と綾の腹に突き刺さっていた。
「あぐっ……っ!」
喉に血がせりあがってくるのを感じる。
これは死んだなと思った。
(でも……即死じゃない。まだ意識がある……!)
縁が包丁を引き抜くまでの数瞬で、綾は動いた。
指の失われた左手で、縁の気道を狙って思い切り突きを繰り出した。
しかし、それはあっけなくかわされてしまう。
「だよね。私は眼鏡をかけてるから、指で狙うとしたら喉しかないよね」
「くっ……」
綾はがくりと膝を折った。
体全体から力が抜けていくのを感じた。
(お兄ちゃん……ごめん……私……)
その時、病室のドアが勢い良く開いた。
「綾!!」
縁は即座に振り向いて、そのまま凍りついた。
綾も声の主を見て、遠のいていた意識が呼び戻された。
(お兄ちゃん……? どうしてここに……?)
病室に駆け込んで来た人物は、陽一だった。
陽一は綾と縁の有様を見て、叫び声を上げた。
「綾!? 何で……!」
悲痛な叫び――それだけで綾は温かな気持ちになってしまった。
兄は、自分をあんなにも心配してくれているのだと、嬉しさに涙をこぼしそうになってしまった。
「は、支倉君……こ、これはね、正当防衛なんだよ」
縁は珍しくうろたえた様子で、陽一の方を向いて説明を始めた。
その手は包丁の柄を離れ、包丁は膝をつく綾の腹に残された。
(お兄ちゃん……)
自分の腹に深々と刺さった包丁を、綾は左手の三本の指でしっかりと握った。
(お兄ちゃんは私が……守るから……!)
肉を引きずる音と共に、包丁を引き抜く。
振り返りかけた縁の首に刃元をあて、一気に引いた。
「あ……」
縁の首から、血しぶきが上がる。
立ったままで体を小さく痙攣させ、縁は床に倒れ伏した。
倒れた拍子に眼鏡のレンズがはずれ、ころりと床に転がる。
そのレンズもやがて、赤い血の海に沈んだ。
「おに……いちゃん」
へたり込んで、綾は呻き声をあげる。
もう限界だった。
腹からはどんどん血が流れ、意識は朦朧としていた。
「綾……!」
顔面を蒼白にして走り寄る陽一に、綾は嬉しそうに笑いかけた。
「お兄ちゃん……助かったわ……」
「綾! しっかりしろ! 綾!! 誰か……!!」
気管に流れ込む血に咳き込みながら、綾は陽一にすがりついた。
「どうしてここに……?」
問いかけて、首をゆるゆると左右に振る。
「ううん……お兄ちゃん……私が辛い時は……いつだって来てくれたもんね。昔からそうだったもんね……」
「綾……! いいから、喋るな!」
「お、おにいちゃん、ごめんね、わたしのせいで……これからお兄ちゃん、大変なことになると思うけど……でも……好きだった……本気で好きでした。他の誰にも渡したくなかった」
でも、と息をつく。
口の端から血が溢れ出た。
「わたし……夕里子さんならいいよ。他の人は許さないけど、夕里子さんなら、お兄ちゃんのお嫁さんになるの、許してあげる。
大事にしてあげなさいよね……夕里子さんのこと。小夜子は、私の親友だから……手を出したりしないでね」
陽一の目に涙が滲むのを見て、綾は無理矢理笑顔を作った。
「ねえ、お兄ちゃん、キスしてくれる……?」
「え……」
「お兄ちゃんから、私にキスしてほしいな……今までずっと私からで……お兄ちゃんからしてくれたこと、無かったから」
綾は目は虚ろで、息も絶え絶えだった。
その血に濡れた唇に、陽一がそっと口付けをする。
綾は目を閉じて、一筋の涙を流した。
数秒後、陽一が唇を離した時には、綾は事切れてしまっていた。
「綾……! 綾……!!」
それが、支倉綾の最期だった。
三ヶ月後、二月二十四日――
陽一は、市街地を少し離れた高台にある墓所に来ていた。
目の前の墓には綾の骨が収められている。
あれから毎月、綾の月命日には必ず、陽一は綾の墓参りに来ていた。
「小夜子さんも、後からくるそうですよ」
陽一の隣に立った栗色の髪の少女が、寒風にその髪をなびかせて言う。
夕里子はあの事件の三日後に目を覚まし、体が回復して以来、ずっと陽一について行動していた。
あれから色々なことがあった。
綾のこれまでの所業は、小夜子の見つけた箱の中に入っていた凶器や、いくつかの記録が手がかりとなって、着々と捜査が進んでいた。
どれだけの人間が死んだのか、はっきりとしたことはわからない。
立件できるものも、片手の指で数える程度になりそうだと、警察関係者から聞いていた。
一夜に四人の看護婦の命を奪った事件から、少女による連続殺傷事件へと発展したこの事件は、この三ヶ月間、いつもニュースのトップを独占し続けていた。
陽一は心身ともに疲弊したが、夕里子と小夜子がそれを支えた。
夕里子は父親から何度も陽一と別れるように言われ、無理矢理引き離されそうにもなったが、親族と常に議論を戦わせ続け、ついに先日、父親以外の主だった親族を説得してしまったという。
陽一が花を供える傍らで、かじかんだ手で線香に火をつけようとする夕里子を見て、陽一は言った。
「夕里子さんには、本当に迷惑かけるな……」
「え? お線香に火をつけるくらい、大した手間じゃありませんけど……」
きょとんとする夕里子。
「あ、いえ、確かにうまくつけられていませんけど、これは寒さのせいで、私が不器用と言うわけでは……」
「いや、そうじゃなくてさ。俺と綾に振り回されて、大変だろ、色々」
「そんなことはありませんよ」
陽一の見たものと小夜子の話、病室の様子などから、あの夜のことは警察がほぼ状況を断定していた。
縁に縛り上げられていた夕里子の母親が、綾の乱入のおかげで命を救われ、縁のそれまでの行動について証言したことも、大きかった。
「あの夜綾さんが来てくれなかったら、私も母も、いずれ殺されていたでしょうからね」
「うん、まあ、そうなのかもしれないけど……それまで夕里子さんの周りに危害を加えていたのは綾なわけで……」
「それはそうなんですけど……」
困ったように夕里子は笑った。
「難しいものですね。そもそも私、人を恨んでも長くもたないんですよ」
それが良いことだとは、一概には言えない。
夕里子の周囲に居て被害に遭った者の家族は、ふざけた態度だと言うだろう。
しかし、あくまで善意で人を解釈しようとする夕里子の思考は天性のものであり、縁に裏切られても、綾の攻撃を受けても、世間から何を言われても、変わることは無かった。
「少し前に小夜子さんとも話したのですが……人は支え無しには生きられないと思うんですよ」
ようやく線香に火をつけて、夕里子は言った。
「それで、お互いを恨むよりも、お互いを好きになったほうが、その支えは増えると思うんです。その方が、みんな強く、幸せに生きられると思うんですよ」
「夕里子さんらしい考えだね」
綾はあんなことになってしまったが、それでもぎりぎりで縁の策を潜り抜けた。
それはひとえに、陽一と小夜子の二人を綾が好きだったからではないかと、夕里子は考えていた。
そもそもにして、陽一があの病室に駆け込んできた時点で、縁の策は終わっていた。
陽一の目の前で夕里子の母を殺すことができなくなる以上、看護婦を殺したことについては罪を逃れ得ないからだ。
だからといって、全てを陽一を手に入れるために行っている以上、陽一を殺すわけにもいかない。
あの時点で、縁は完全に詰んでいた。
縁が詰む状況にどうして至ったのか――
陽一は事前に小夜子から綾が縁に疑いをかけられていることを聞いていて、小夜子が行っている内偵の内容も全て知っていた。
綾は小夜子が好きで、小夜子も綾が好きで、だから縁の言葉を守るよりも綾を守ることを重視し、完全に縁の言う通りには動かなかったのだ。
そこが縁の計略の綻びの始まりだった。
結果、陽一はあの晩目覚めてすぐ、綾と小夜子を探し、最終的にあの病室に駆けつけるに至った。
綾は稀代の殺人鬼ではあったが、陽一と小夜子という二人の人間を確かに愛し、その二人は綾を信じようとした。
縁は、残念ながら愛する人が少なすぎた。
この差こそが、明暗を分けたのではなかろうか。
夕里子はずっとそう考えていたが、わざわざ口に出すことは無かった。
ただ、ふと思ってしまう。
「もし綾さんが、もっと多くの人を好きになれていれば……私と陽一さんと綾さんと小夜子さん、四人で笑っている今もあったのかもしれませんね……」
「ああ……」
この三ヶ月間、陽一は何度も自分を責めた。
どうして気付いてやれなかったのか。
気付いていれば、何か変えることができたのではないか。
「本当に……駄目な兄貴だったな、俺は」
「……陽一さんが悪いわけではありません……とは言いませんけれど、陽一さんが自分を責めたところで、何か解決するわけでもありませんよ。そんなに思い悩まないで下さい」
「悩むだけ無駄ってこと?」
夕里子は微笑んで頷いた。
「こう……気のせいかもしれないけど、夕里子さん、厳しくなったって言うか……言い方が少し綾に似てきたよ」
「そりゃもう。綾さんに陽一さんを任されたんですから、これからは綾さんの分まで頑張らせていただきますよ」
空は好天で、雲ひとつ無い。
陽一はその空に、最愛の妹の名前を呟いた。
「綾……」
皮肉屋で、乱暴者で、それでも面倒見が良く優しかった、大切な妹。
もう二度と、怒られることも、笑いかけられることもない。
「綾……俺は……」
本当に、何もできなかった自分が恨めしかった。
涙を流す陽一の手を、夕里子が無言で握った。
綾――
一見してわからないが、たどると見えてくる入り組んだ裏と表の交差模様。
ねじれてもつれた人生の糸の束。
「……その中を、私たちは生きているんですよね」
それぞれの複雑な運命を懸命にたどり、時に自らの糸を断ってでも、何かを守ろうとする者もいる。
陽一の手を、夕里子はさらに強く握った。
「今は泣いてもいいですけれど……いつか笑顔でここに来られるようにしましょう。綾さんが望んだのは、陽一さんの幸せなんですから」
陽一は小さく頷いた。
冬の終わりの空はどこまでも青く、美しかった。
―了―
うはぁぁぁああ、綾あぁぁぁぁぁぁぁ。
最高傑作級にGJすぎる。
綾のお話はこれで完結です。
今まで読んでくれた方々、最後まで書ききれたのは、紛れもなく皆さんのおかげです。
本当にありがとうございました。
総テキスト量約380kb……正直ここまで長くなるとは思いませんでした。
各キャラが常に最適行動を取っているかというとそういうわけでもないのですが、それは人間皆が最適な行動をとれるわけではないということで、お許しください。
この作品が少しでも皆さんの楽しみとなれば幸いです。
>>666 本当の本当にお疲れさまでした!
綾ほど優しくて残酷なキモウトははじめてです!
素晴らしい小説ありがとうございました!
連載おつかれさまでした。
更新が毎回毎回楽しみで待ち遠しくてたまりませんでした。
結末は因果応報というかなんというか……ただ、綾も納得していけたのはよかったかなと思います。兄をこれ以上苦しませないためかもしれないけど。
それにしても、緑の最後の小物っぷりにはワラタ。
あぁぁ、しかし、本当にこれで終わりなのか。
スレを覗く時の最大のワクワクドキドキムネムネ感の源が……。
泣いた。綾のラストに泣いた。
今回の話で一気に綾が好きになった。
本当にありがとうございました。
このキモウトは伝説に残る。
>>666 完結お疲れ様
これから仕事かな?休みなら暫し休むと良いよ^^
そのうちまたなんか書いてくれたら嬉しいな
お疲れ様です!
これで終わりだと思うと残念な気もしますが…
素晴らしい小説に出会えた事に感謝です!
…仕事中に何やってるんだ俺…ちょっと妹に叱られてくる。
すごいなあ。殺人鬼キモウトVSヤンデレ策士の錯綜した心理戦の末に看護士まで殺して刺し違い……
今からでも遅くない、校正してハード系ラノベの新人賞に投稿しる。見事だ。
本当におつかれさまです。
悲しくもありますが暖かいラストでした。
作者様に心からの拍手を
>>666 綾…さようなら愛しきキモウトよ…さようならただただ愛する者を案じた妹よ…作者様本当にありがとう
正に歴史に残る大作……
ラストの綾の陽一への告白部分は涙で画面がよく見えんかった゚・(ノД`)゚・
>>666 GJ以外に何を言っていいのかわからない。
俺がこのスレを覗き続ける理由のひとつは「綾」の存在だった。
キャラもわかりやすく、一貫していて、毎回ハラハラドキドキ。
スレの初期から頭脳派キモウトとして俺の心を鷲掴みにしてくれた。
綾vs縁の構図がすばらしく、単にキモウト・ヤンデレというだけでなく、
物語として、とても面白かった。
綾が小夜子への気持ちに気づいたあたりから、涙が止まらなかった。
とにかく、GJ。GoodJobなんてもんじゃない。GodJobだ!
にしても666とは・・・いい数字だw
>>666 うおおおお。・゚・(ノД`)・゚・。 率直に面白かった
練られた頭脳戦、心理戦、そして殺人鬼でありながら兄を愛する素晴らしきキモウト綾
世の中下らない文章も多いが、これだけ次回が楽しみでのめり込めた作品は久々だ
お疲れ様でした そして素晴らしい作品をありがとう
>>666 すごく面白かった。俺もこの一言に尽きます。最後は目頭が熱くなった・・・
終わってしまう寂しさも強くありますが、次回作へのwktkも同じくらいあります。
何はともあれ、お疲れ様でした!最高でした!!
そして書籍化決定!!!!
680 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 12:34:56 ID:kd5CViHX
TEST
悲しいな。結局、綾は報われなかったか。
いい仕事だった、GJ。
ここで「鉄鍋のジャン!」最終巻の書き下ろしエピソードが入る
いや、わかってるんだ妄想だよ
綾……(´・ω・`)
お疲れ様です。
久しぶりに感動で目頭が熱くなった。
ありがとう。
うお!?すまん規制で書き込めないと思ってたら書き込めた……
>>666 お疲れ様でした。かなり楽しませてもらいました。
それまでの展開から、綾には何らかの制裁が下されないとだろうなあとは思ってましたが、
最後に綾の親友への愛と兄への純粋な気持ちがうまくまとめられてて、素晴らしかったです。
それにしても最後の「今までお兄ちゃんからキスしてなかったから、最後にしてほしい」って展開は悲しすぎるなぁ……
結局いくら兄のことを想っても陽一は振り向いてくれなかったってことだよね。
でもこの切なさこそがキモウトの醍醐味……!!
来世では小夜子や夕里子とも仲良くして幸せになれればいいね。
次回作もしあれば期待してます。GJ!
ブラボー!・・・おお、ブラボー!
そか、綾は小夜子のコト好きだったんだねぇ・・・
gjおつかれさん
あぁ……綾×小夜子のレズが見てみたい……
などと不謹慎なことを妄想する俺www
綾と小夜子とか名前を見てたらついココがラノベのROOMのスレかと思ってしまったぜ
まああれも実の姉弟で作中で3回もセックルして孕ませてるからココの趣旨と大して変わらないわけだが
GJ!
これは映画化するべき
綾、なんていいキモウトなんだ。
読むのに夢中で息をすることを忘れそうになったぜ。
作者に最大限の乙!
あの恋空とかいうケータイ小説如きが映画化してあの興行成績なら
これは、本当に全米が泣くな。
>>666 いい作品だった
綾は最高だった
お疲れ様でした
GGGGGGGGJJJJJJJJJJJ!!!!!!
この気持ちを表すべき適切な言葉が思い浮かばない。
綾ぁぁああ(ノД`)
大作おつかれさまです、そしてありがとう。
う、嘘だ………今までの外道な行動は全て覚えてるってのに
何で水に流せそうに思ってるんだよ俺は……
もう綾が見れなくなるとは・・・結末もそうだが何よりその事実に泣けてきそうだぜ。
長い間楽しませてくれてありがとう
うおおおおお乙!!
かなり楽しみに読んでたよ
次回作もwktk
あとスレ容量ヤバス
大作、お疲れ様でした
様々な罪のない人間を非道な手で犯してきた綾、正直某松田のごとく「こいつは殺さないと駄目だァ!」
とか思ったりもしましたが、最後の独白と縁との戦いで見せた姿に唸らされました
最後は人として逝けたのかなぁ
>>666 GJ!!
本当にお疲れ様でした
すばらしい作品を書いてくださった作者さんに最大の感謝を
>>666 ありがとう!
いろんな意味で、ありがとう!
>>666 同じ時代に生まれてきてくれてありがとう。
涙が止まらんよ 。・゚・(ノД`)・゚・。
>>666 お疲れ様
個人的に綾には陽一と幸せになって欲しかったけど
最後は縁道連れに綺麗に逝ってくれたのでスッキリしたぜ
>>666 素晴らしい作品ありがとうございました。
最後はホント感動でした・・・
むちゃくちゃ伸びてると思ったら全部GJレスだった件
それはそれとして、>666 GJ
>>704 それほどみんなが感銘を受けたと言うことだ
通常の猟奇系キモウト物にとどまらず、
キモウト本人と周囲の多彩なキャラクターの心理まで掘り下げ
そのうえ周到な殺人の連鎖をきっちり描いたところがすごかった
綾と縁、狂気の少女同士の直接対決に至るまでの克明な駆け引きも実に読み応えがあった
ラストも見事だったし
>>666 感動をありがとう
お兄ちゃんは最後の最後でちょっとだけ株を上げたね
綾がおもった通り夕里子がいれば大丈夫そうでよかった
ああおもしろかった
綾がもっと素直に行動できていれば
いや、元々血の繋がった妹ではなかったのなら
そう思うと……
しかし、最後は幸せになって欲しかったなあ。
非道な手段を取っていたから制裁は仕方ないという意見も多いが、
潰していく過程が丁寧に描写されてるからそう見えるだけで、
描写は適当だが、どうみても残虐なことやるキャラも多いからな。
ましてや、男が絡まなくても非道なことするキャラもいたりするが、
綾は兄が絡む件以外は人格者だっただけにな。
それにしても綾は自分を守るために親友を殺す事は出来なかったが、、
小夜子は警察に行けって死亡同然の行為を勧めたな。
無理もない反応だが、兄だけじゃなく親友にまで報われないというか。
綾が邪魔な男を消すために無関係な老婆までも殺っちまったのはすごい神経だと思うが
縁のナース4人殺しってどうやったんだろう?
BAD END
ありがとう。
綾は、綾は。
言葉が出ない。
小夜子を殺さないでくれてありがとう。
綾というキャラクターを嫌いにならずに済んだ。
ちょっと冷静に考えると、陽一ってモテるんだなぁw
今まで綾のおかげでおもしろかった。
ありがとう。乙。
最後は涙で画面が滲んだよ…
ところで小夜子だけ救われてないよね。
親友が殺人鬼だとわかってしまって、目が覚めたらその親友は死んでて…
かわいそうすぎる…
>>666 長い間本当にお疲れさま
なんつーかもう涙が・・・
まさか死んじゃうとは・・・
とにかく綾に最後のGJ
>>666 お疲れ様でした。
感想は沢山の方々が言われてるのでGJのみでw
またあなたの新しい作品が読んでみたいです。
冗談で建ったスレに神作品が出たなぁ
こんなめぐりあいがあるから
ここの板は止められん
>>666に神を見た!
完結おめでとうございます。
終の綾の二次創作(綾×小夜子とか綾×小夜子とか綾×小夜子とか綾×小夜子とか綾×小夜子とか)にwktk。
お疲れ様でした!
>>666 あなたが神か?
いや、愚問ですね。 あなたが神だ。
長い間お疲れ様でした。
こんなにも素晴らしい作品に出逢えるとは望外の喜びです。
もはや送る言葉はこれしかありますまい。
God Job!
まさに蛇足
>>666 映 画 化
&
書 籍 化
決
定
読み終わった後にも余韻が残りまくる超傑作だよGJ
これはマジで本にするべき
自費出版するなら助ける人がたくさん出るに違いない
なけなしの昼食代から100円出すお・・・
綾の最終話が怖くて読めない
泣きゲーをクリアし終わった後の、ああ終わってしまったんだなぁ
みたいな胸にポッカリ穴があいてしまったような気持ち。
まさか、2chでこんな気持ちになるとは思わなかった。
作者さんおつかれさまでした。
うおぉおぉおぉぉぉ!
GJ!GJ!GJ!
堪能させていただきました。
縁の綾に負けない狂愛っぷりと、陽一くんに見られた後のうろたえっぷりも最高でした。
夕里子さんが最後に笑ったのか。
お兄ちゃんには夕里子さんがいるけど、小夜子ちゃんは。。。
綾がいないと悲しいよ。。。
最高の小説を読んで震えが止まりません。
ありがとうございました!
そしてそして。
次回作も楽しみにしています!
いきなりすげー伸びてるから大作が投下されてると思ったらGJの嵐かよ・・・GJ!
GJだけで60レスか…すげーなw
>>666 GJだよ!
この感動はプライスレスだよ!
金払って読んでるラノベよりもこんなにクオリティ高い小説をただで読ませてもらって本当にいいんだろうか?
おゆきさんお疲れさまです
次回作も期待してます
つかこのスレ・・・こんな人いたんだなw
やはり最終回ともなるとこんなにも伸びるもんなんだな
いまさらだけど俺もGJと言わせてもらう
きれいにまとまってよかったよ
あまりにもGJすぎて綾ルートを夢想してしまった
GJ以外になんと言えと?
>>666 これまでに類を見ない大量のGJこそが神である証明だ
身の破滅だとわかっても小夜子を見逃し、そのおかげで最悪の状況を免れたところが
非常にうまくできていると思った
しばし休息してまたこのスレに戻ってきてくれる日を待っています
>>709 病室(←病院の間違い?)に入った時点で、とあるから毒ガスの類だと判断したけどな
遠隔操作できる装置かなにかを仕掛けておいて
丸腰の相手でも刃物等で正面やろうと思えば4人いればそう簡単ではないだろうし時間もかかる
それだと綾より先に病室に行って待ち伏せするのは不可能だと思う
神様ありがとう。良い作品だった
あまりGJだけでレス数伸ばすのいい加減にしろよ
しかし、小夜子を殺せなったのは正直失望した。
説得に成功する可能性が僅かでもある以上、親友は殺せないってならもっともな理由だが、
もう100%説得は不可能だと考えていたのなら、兄に対する覚悟を見せて欲しかった。
あれだけ葬ってきたことが、なんとしても兄を手に入れるっていう覚悟だと思ってたからな。
>>737 小夜子の描写が足りなかった部分はあったよな。
狂気系である以上狂気なわけで、その部分に説得力が足りなかったのは否めない。
「狂気系である以上狂気」っておかしいな。「キモ系である以上狂気」だ。そして736乙。
久々にみたら綾が完結してた
そしてGJの嵐。オレからもありがとうを言いたい
本当にいい作品だったぜ!
でも
>>736の言う通りGJだけだとアレだね
オレも書いちゃったし、気持ちはわかるが、あんまり続くと変な子が出てこないか不安だ
ここがギクシャクするのはイヤだ
オレは我慢できなかったけど、我慢できる人は我慢したほうがいいかもね・・・
書き込んどいて勝手な物言いでごめんね
失礼しました。本当にごめん
よけいな心配だって聞き流していいから
次スレ立ってるしこのまま埋めても良いのでは?
さすがに残り20kbを埋めるのは無理だろう
そうか…スマソ
>>666 遅くなったが本当にGJ!!
最高だったよ!!
そしてこの作品で死んでいった全てのキャラに黙祷を。
一人一GJ付けたとして、六十人ほどワラワラ沸いて出てきたわけだが…
お前ら、どこにそんなに隠れてたんだw
こんなに人口が多かったとは驚きだ
>>666 かなーり遅いですがGJです!
綾・・・・・(´;ω;`)ブワッ
毎回楽しみに読んでました。本当に面白かったです。
お疲れ様でした。
>>666 遅くなったことを全力で恥じる。
だが言わせて貰おう。GJ!!!
何回もやってる奴がいそうだ
>>666 随分遅いですがGJです、お疲れ様でした。
綾……orz
陽一と幸せ(?)になって欲しかった。
また貴方の作品が読める日を待っています。
それにしても綾…綾…うぅ(´;ω;`)
そろそろ自重したほうがいいのではないかと思う
祭り状態も大いに結構だが、後の続く職人のことを考えてやれよ
投下しにくいと思うぞ
いや、ここは後埋めだけだから、新スレに行くだろ
うん、もう実際新スレに後が続いてるぞ
しっかし、ほんと綾はよかった。
正直言うと、俺はエロパロ板なんだからエロなしとかふざけんなよ、
って意見なんだが、あまりにクオリティ高いから、エロなしなのに
素直に面白く読ませてもらってた。
エロゲーなのにエロすくねー!ってのが認められるわけだし、
エロパロ板なのにエロすくねー!でもおもしれーからおkって感じ
だったなぁ。
ほんとGJだよ。
誰か小夜子のみがかわいそうな件について語ろうぜ
どうしたらいいのか…。
小夜子は確かにかわいそうだったけど…
目覚めて自分が生きていることに気付いた時
自分が綾にとって陽一に並ぶ特別な存在だったとわかったのではなかろうか
救いがあるとしたらそこかな…
>「……お兄ちゃん、前に、私に隠し事はしないって約束したの、覚えてるわよね」
>「ああ……」
>「何か私に話すことは無い?」
>「無いよ」
ここで陽一に殺意が湧いた
綾報われないよ綾
>>757 その会話を改めてみて、この言葉を思い出した。
「ごめん、覚えてない」
依衣子姉さんに幸あれ!!
>>758 さあ、俺と一緒に姉さんと勇の(一方的な)愛の巣に戻ろうか
ある意味可哀相なのは縁
>>760 ミドリだったりエニシだったりね。
おかしくなったんウサギのせい?
いいえ、親のせいです
うおお
久しぶりに来たら綾終わってる・・
しかしすげえなこれ・・
マジで小説としても一級品だろこれ
黒幕緑とか綾の小夜子への愛とか陽一と夕里子の後日談とか
最終章も読み応えありすぎ
最高の作品でした。乙です!
あ、俺も二次創作希望です
是非このキャラたちの幸せな一面とかも見てみたい
もう今更ですがGJ。
そして今更ですが投稿or出版してください。
陽一が誠や孝之なら
そろそろ埋めネタが来ることを希望
もうマンセーはいいだろ・・・常考
「今更ですがGJ」禁止。
スレの空気を読みましょう。
半年近くの長い連載が終わってしまったのだから
反響があるのはしかたがないかも
さすがに次スレまでこの雰囲気を持ってくのはまずいが
このスレに限って言うならGJの嵐でも自分はかまわない
念のため言っとくけど埋めねたも心待ちにしております
俺の妹は15歳。
もうじき中学校を卒業する。
兄の俺から見てもかわいいし、人当たりもよくて、友達も多い。
勉強もできてスポーツも得意、まさに非の打ち所のない完全無欠の美少女だ。
しかし、兄としては、妹の将来が心配にならないではない……。
なぜなら妹は、「おにいちゃん大好きっ子」だからだ。
昨日も、両親の帰りが遅くなったのだが、俺が風呂に入っていると突撃してきやがった。
やや小柄で、均整の取れた白い裸身を惜しげもなくさらし、
「おにーちゃーん♪」
などと甘えた声で、泡まみれの俺に抱きついてきた。
「ちょっ、こら離れろって!」
背中に触れるむにょんとした柔らかいふくらみにどぎまぎしつつ、俺は精一杯の
冷静を装っていた。
つづかない。
>>771 最後の文字が読めない。続きはまだかね?
>>771勝手に続かせたる。
「やっぱりおにぃーの身体すごぉーい」
そう言って妹は俺の背中に擦り寄る。こんな毛深い体なのに。
以前それとなく質問したことがある。その答えはすごく簡潔だった。
「おっきくてフサフサしてて落ち着くのぉ♪」
密着した妹と呼吸が同期する。俺は……なんとなく息苦しい気分だ。
「そ、そうだ。高校はどこにしたんだ。例の女子高か?」
「ちが〜う」
甘えた声で否定する。名門として知られる女子高を蹴ったらしい。
深夜まであんなに必死に机に向かっていたのに、と訝しがると。
「ヒントはねぇ、一年生の襟章は赤、だよぉ」
「うーん、難しいなぁ。うちの高校といっしょのとこ……って」
「えっへへ」
春はもう間近だ。
つづかない。
「つづけるのであります」
「継続要望」
>>773 「もう、わからないの? 私が行くのは、お兄ちゃんと同じ高校だよ」
「え? な、なんで? お前だったらもっと上が狙えるだろ」
両親も親戚も学校の先生も、妹には期待している。
それほどまでに我が妹は出来がいいのだ。
「だって……お兄ちゃんのいる高校は、私にとって特別いいところなんだもん」
「特別って……まあ、他に比べて自由な校風ではあるけれど、それ以上に何かあるわけじゃ……」
俺の言葉に、妹はぷぅと頬を膨らませた。
「ちーがーう! お兄ちゃんがいるから、その高校が特別だってことなの!」
「え、な、なんで?」
「ふふ。だって私、お兄ちゃんのこと、だいだいだーい好きなんだもん!」
可愛らしい笑顔で妹はまた抱きついてきた。
つづかない。
こんなにかわいい妹だ、好きだといわれて嬉しくないわけがない。
そう、俺も周りからはシスコンだと思われている。
本人にも自覚はある。
だが、そうじゃないのだ。
俺はあくまでも兄として妹をかわいがっているのであり、決して性的な
意味ではないのだ。
だが──だがしかし!
やはり、いくら血のつながった兄妹とはいえ、最近妙に大人っぽくなって
きたし、さっきからずっと背中に触れている弾力やら、ふとした時に見せる
しぐさやらが色気を──
っと、いかんいかん。
余計なことを考えるのはよくない。
妹には彼氏のいる様子はない。
もちろん理由は解っている。
お兄ちゃん大好きっ子なのだ。
こいつは中学三年生になっても、いまだに兄離れできていないのだ。
「お前なぁ、もう半年もしないうちに高校生になるんだから──」
そういいかけた俺の首に、妹の指が食い込んだ。
「いい加減、兄離れしなさい……って?」
ぞくりとして、俺はそこから先を言葉にできなくなった。
「うっ……」
冬だからじゃない。
全裸だからじゃない。
「ちょっ、やめ……おい……っ!」
首に絡まれた指が俺の頚動脈を押さえつける。
凍えるほどの冷気が浴室を満たしていた。
やっぱりつづかない。
>>776 あれ?風呂の電球きれたのか?
急に視界が暗くなったけど……
風呂上がったら、変えなきゃな〜
っておい!!意識をしっかり持つんだ俺!!
覚醒(?)した俺は焦って手をがむしゃらに突き出して妹を押し倒した。
「んあっ!」
なんか変な声が聞こえたが、酸素確保のが先。
フゥ、落ち着いたぜ。
ようわからんがやたら目が赤くて息の荒い妹を叱ってやらねば。
本当につづかない
頼む!だれか続けてくれ・・・・
>>777 「おい、いきなり何w」
「お兄ちゃんが悪いんだから!」
「・・・はっ?」
「私がお兄ちゃんが大大大好きなの知ってるくせに兄離れしろだなんて!!
私はお兄ちゃんがいないと生きてはいけないんだよ?
お兄ちゃんは私に死ねって言ってるの!?」
妹はすごい剣幕で俺に詰め寄ってきた。
まさかここまで妹が俺に依存しているとは思わなかった。
これは本格的にやばいのではないだろうか?
確かに可愛いとは思っているが、それは家族として見ているからであって女として見ているわけではない。
俺だって、年頃の男なのだからちゃんとした彼女が恋人が欲しいのである。
こんなところで妹に俺の人生を狂わさせてたまるものか!!
まだつづくか?
>>779 「……いいか、妹よ」
「なによー」
頭の中は熱気やら冷気やら殺気やらで混乱気味だ。
だが、なんとか説得を試みよう。明日の俺のために、そして妹のために。
「実はな……俺には好きな人がいるんだ」
本当はいないがこうでも言えば妹もあきらめるだろう。
「……そ、そう……」
戸惑った様子だが、肩をすぼめて落ち着いて聞いてくれたようだ。
怒声でも飛んでくるかと思ったが、肩透かしを食らった気分だ。
「ねぇ、お兄ちゃん。その人、なんて名前なの?」
ゾクっと背筋に冷たいものが走った。
妹の声が風呂場で不気味に反響する。四方から襲ってくるようだった。
「えっと……えー、っと、その、あぁ〜んと、当麻さんって言うんだ」
苦し紛れに学級委員長の名字を口走る。
彼女とは席が近くてよく会話してるせいか、するりと出た。
「ふーん、名前は?」
「たしか、恵子……だったかな」
「とうま けいこ ね」
妹はくるりと俺に背を向けるとドアノブに手をかけた。
淀んだ空気が妹の背中から沸き立つようだ。ざわざわと悪意がたぎっている。
「ど、どうした、オマエはまだ入ったばかりだろ。俺が出るよ」
「用事できたの」
「なんだよ、それ。どっか行くのか?」
「うん、ちょっとけいこさんころしてくる」
つづかない
>>780 ころす......殺す......って?委員長を?
ドアを静かに開け、浴室から出ようとする妹の肩を慌ててつかみ、こちらに振り向かせる。
「ちょっと待てよ、殺すっておまえ、冗談でも言っていい事と悪い事があるぞ」
「冗談?......冗談なんかじゃないよ......私からお兄ちゃんを盗ろうとするなんて......許せない......ほんとに許せないよ......」
いつもは明るく鼓膜を揺らすはずの声。なのに、今は、不気味な低さで聴く側の感情を沈ませるおぞましさを感じる。
「大体お兄ちゃんもお兄ちゃんだよ......ずっと一緒にいようって約束したのに......そうだよ......小さい頃したあの約束は嘘だったの?......ねえ?聞いてるの?」
いつの間に近づいたのか、目の前には妹の鈍色に輝く瞳。怖くなって逸らそうとした俺の視線を、しかし、妹は逃がしてくれない。
「でも小さい頃の約束じゃないか。兄妹が一緒になるのは許されないんだ。おかしいことなんだよ。おまえもいいかげん気付いてるんだろ?」
「そんなの関係ない......話をそらさないで......約束は約束なんだよ?......今更なかったことにしようなんて許さないんだからっ!」
つづかないったらつづかない
「……っ!?」
気がついたら唇が塞がれていた。
甘く、そして柔らかな感触は俺に今の現状を理解させるのを遅らせた。
慌てて妹を突き飛ばし腕で唇を拭う。
「……な、何のつもりだよ」
「痛いなぁ……」
俺の質問には答えずムクリと体を起こした妹はすかさず俺との距離を縮めた。
「ワケの分かんない女にお兄ちゃんを汚されるくらいなら……」
先程とは違う、物凄い勢いで俺の唇に絡みつく。
「んっー……!?」
最早口づけなんてものじゃない。まるで俺の唇を喰らっているかのような激しい接吻。
じゅぅぅ……じゅるっ、ぢゅぱっ…じゅっ……
卑猥な音が浴室に木霊する。
俺の唾液を飲みほさんばかりに口内を吸ったかと思えば一転、大量の妹の唾液を送り込まれる。
「――っ、ごぼっ……ごほっ!」
あまりの唾液の量に思わず噎せかえった。
口からトロトロと唾液を垂らしている俺。そんな俺を恍惚な表情で眺めている妹。
そんな異常とも思える状況で妹は口を開く。
「私が……汚してやるんだから」
つづかナイチンゲール
>>782 ガチャ
「お父さんもお風呂入りた………いぞ」
お、おやじ、空気読めよ!
い、いや、むしろ解放のチャンス!
てかそんなに長く風呂入ってたっけ?
とにかくおやじ助け――
「やはり血は争えない、か」
はい?
ガチャ
どこ行くんだおやじ?!
俺は素っ裸のまま妹を置いて、風呂を飛び出した。
まあ、そんな感じで昨日は事なきを得たが……
結局おやじに問い詰められなかったな、意味深発言。
なんか視線も感じるし…
つ、つづかないんだから!
いつもの学校の帰り道
いつもの時間
とぼとぼ歩きながら俺は数日前の親父の言葉を思い出していた
「……『血は争えない』…か?」
まさか親父とお袋が?
いや、それはない
それぞれの出身は由緒正しい旧家で出自は確かな筈だ
「お兄ちゃん見ぃ〜つけたっ」
突然「いつものように」後ろから抱き付く妹が俺の思考をぶった斬る
「あれ?お兄ちゃん今日は振りほどかないんだね」
不思議そうに(ぶら下がったまま)尋ねる妹
「ついにアタシの魅力に気付いたの?」
「あのなあ…人が珍しく考え事をしていたというのに」
「考え事?」
「ああ、親父が言ってたろ『血は争え……」
言いかけて俺は妹の表情の変化に気付く
先程までの脳天気な笑顔は消え深刻そうな顔で俺を見つめている
「お兄ちゃん…聞かされてなかったんだね…」
何のことだ?
「分かったわ、今夜の2時に裏山の廃鉱に来てちょうだい」
え?…え?
おい、そっちは家と反対…
呆然とする俺を置き去りにして妹は一瞬にして彼方へと姿を消してしまった
ストーリーをひっかき回して次の人に投げっ放しジャーマン
リレー小説になってるwwww
wktk
普通、夜中に裏山の廃鉱に入ると、
落盤が起きて国際救助隊に助けを求めるものだが?
辺りは暗い。うっそうとした木々が一筋の光さえ侵入を許さない。
懐中電灯を片手に待ち合わせた廃鉱へと急ぐ。
かつて父方の曽祖父が経営していた炭鉱。
閉山してから半世紀は経つが、当時の面影が色濃く残る。
それは誰の手も触れることがなかったからだ。
戦時中は昼夜を問わず稼動し続けていた探鉱だった。
軍が機材を運び込み軍が運営していた。石炭が取れるわけでもないのにだ。
終戦を迎えると存在を隠すようにひっそりと閉山が決まった。
それ以後、人が近寄ることはない――ただ二人を除いて。
妹とはよく遊んだものだった。
隠れる場所がたくさんあり、子どもの遊びに適した場所だった。
秘密基地、と言えばかっこ良いが廃材で作った隠れ家で妹と日が暮れるまで過ごした。
その思い出は今は暗く閉ざされたようで足下しか見えない。
「待ってたよ」
廃鉱の入り口に二つの陰があった。光を注ぐ。
そこには一糸まとわむ妹の姿。
と、牙をむき出した狼のような頭を持った巨人が、いた。
腰が、抜けそうだった。膝が震え、光が左右に散る。
「だいじょうぶよ、襲ったりしない」
妹の声はいつもと変わらない、どころか鏡のような水面と同じだけ冷たい落ち着きがあった。
「ほら、早く来て。見せたいものがあるの」
屈託なく手招きするその姿は恐ろしいほど白く美しい。
つづけてみろ〜
隊員が見たモノとはいったいぃぃぃぃぃぃ!?
戦争によって生まれた時代の遺物
けして存在してはならなかった負の遺産
それがキモウトだというのか!
790 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 16:32:17 ID:4In3RJW9
「旅の途中で不吉な噂を聞いた。
仮面の下に隠されていた妹の素顔が露わにされたと言うのだ・・」
「妹の素顔?」
「【ヤ ン デ レ】だ。」
「ヤンデレ!?
幾多の兄を自分のモノにして来たというあのブラコンの・・・あれが・・?」
「ヤンデレ妹は、普通の妹として生涯を閉じるはずだった。
だが・・兄に近づく女がいたのだ・・
同じくヤンデレの姉、対抗心を燃やす級友と言い・・・気になる。」
埋まったか?
か!?
キモ姉妹万歳!
キモ姉妹漫才……
次スレもキモ姉妹満載!!
「早エモンだぜ、あの『魔鉱羅滅闘』からもう半年か」
「こうしてお兄ちゃんと生きて我家の門をくぐるのが夢みたいだね」
あの廃鉱の中、妹から聞いた恐るべき話
我が家系と室町時代からの宿敵、その戦いと殺戮の歴史、一族秘伝の近親交合による秘技…
どれも俄かには信じ難い内容だった
だが…
突如現れた刺客の姉弟、俺と妹を守って死んだ我が一族代々の守護神である半獣巨人の紋次郎、
そして何より、刺客を見た瞬間俺の中で燃え上がった闘気が妹の話を真実だと語っていた
日を改め妖しげな寺と冗談みたいな闘技場でこれまた妖しい坊主の立会いの元始まった死闘
俺と妹はありとあらゆる交合による秘技を駆使し、辛くも長年の因縁に勝利でピリオドを打ったのであった
取戻した平和な日々
以前と変わったこと
それは家の二階から
「ワシが当家家長…」
といういつものオヤジのデカい独り言が聞こえてくるようになったこと
俺と妹の絆が文字通り心身共に強まったこと
そして…
「私たちも本当の血の繋りを極めたいの」
俺たちとの死闘で命を落としたと思われた宿敵の姉弟が我家の養子になったことだけだった
これから俺は新しく家族となった姉弟と、両親と。そして何より大切な妹と一生を幸せに過ごすのだろう
誰にも邪魔されず平穏に
さっき「勅書」とかいうのを親父の部屋に届けていった目がイかれた歌舞伎役者みたいなヤツのことは気にしない気にしない……
完