■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。
■投稿のお約束
・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません
立てました。
前スレ、桜の網の人、続きよろしく。
6 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/13(月) 20:51:28 ID:1C5Wls4+
>>1乙
前スレ500超えそうだったの全然気付かなかった
続きマダーと前スレで書き込めなかったので初めて埋めに気づいた。
>>1乙です。
9 :
桜の網:2007/08/13(月) 22:24:46 ID:+3xLz44g
桜がそれから誰も信用しなくなったのは、言うまでもない。
使用人など、屋敷に使えているものなどもちろん、長谷川や友人にも心を開くことはなくなった。
もう諦めようとしていた中学三年の秋。
桜は、有名私立のお嬢様学校へと通っていた。無為やり通わされたものであったから、醜い反抗心でクラスメイトや教師を困らせてばかりいて、
何とかしてこの環境を変えたいと思っていたとき、桜は自分に兄弟がいて、兄がいることを知った。
いつものようにリムジンでの送迎に飽き飽きして、屋敷へと帰ってきた時、男が二人、門の隅に立っていて、中の家を見上げていた。桜には気づいていなかった。
一人は老人だった。弱い八十はいっているだろうと思われる彼は、杖を片手に持ち、顔をしわだらけにしながら、隣の青年に話しかけている。
「ここが本来の家です。悠太様。ご立派なお屋敷でしょう。西園寺財閥、というのは悠太様も聞いたことがあるでしょう。悠太様は本来ここの一人息子なのですよ」
「はは、嘘だろう。僕にはこんなに立派な家は似合わないよ。少し貧しくても、白石さんと亜美と僕で暮らす借家が僕には似合っているよ」
「いえいえ、嘘などでは決して。悠太様が成人になればここに来ることになるでしょう」
「白石さん。例えその話が本当だとしても、僕はここには来ないよ。僕は、両親が今でも憎いし、こんなでかいだけの屋敷にいるよりもひっそりと幸せに三人で暮らして生きたいんだ」
桜はこのときの青年、悠太の顔を忘れたことがない。
大人びていた、というのには多少語弊があるように思う。
悠太の顔は幼かったし、背丈も別段高いというわけではなかった。せいぜい百七十センチあるかないかぐらいのものだろう。
けれど、あの悔しさと切なさと憎しみ、そしてわずかばかりの羨望を混ぜたような言葉に表せない顔。桜は初めて、見惚れるということを悠太の前で知った。
高校生なのだろう彼は制服をきちんと着て、ブレザーがとても似合っている。
後ろに車が到着しているのに気づかない彼らはよほど哀愁があるのだろうか。桜は日傘を差して固まっていた。
「おい、じじいとガキ。そこで何をしている。邪魔なんだよ」
突然ボディガードが桜の前に出てきた。長谷川はまだ車にいて、桜には声をかけていない。
「あ、すみません。すぐに立ち去りますので」
悠太はすまなそうに頭を下げる。そして、老人の手をゆっくりと引いて、先導し門から退こうとしていた。
「さっさと退けよ。桜様が中に入れないだろうが」
大声で威嚇したボディガードが悠太と老人を急かす。悠太がこちらを見た。ボディガードではなく桜のほうを。
顔は悲哀。そして徐々に憎悪へ。桜は石のように固まった。
悠太は許せなかった。白石はまだ老人であり歩くことが苦しくなりつつあるのに、威嚇の態度をとる大男が。
こんな男がこの屋敷に仕えているのか。白石さんにも言ったけれど、ろくでもないところだな。ここの一人息子?頼まれてもごめんだ。
視線をずらし、悠太は桜を見る。
この屋敷の主。美人だが、何と愚かな。
悠太はそっと白石の手をとりそこから立ち去った。
ボディガードが振り向く。桜に笑顔で話しかけてきた。
10 :
桜の網:2007/08/13(月) 22:25:35 ID:+3xLz44g
「桜様、早く中に入りましょう。風邪などひかれては大変でございます」
「あなた、名前は」
「は……は!須賀と申します。ここには三ヶ月ほど前から務めさせて頂い」
「須賀。貴方に一つお願いがあるの」
「何なりと」
「真剣が居間の暖炉の上にあります。それを今すぐにとってきて頂戴」
大男は名前を名乗れたことに、喜色を浮かべ屋敷の中へとかけていった。
桜は、悠太のことを考えていた。あの人が私の兄なのだろうか。まだ確証はない。だが、なぜかあの青年が兄であればいいという願望はある。
不思議と西園寺財閥という籠から逃げた兄のことが憎いということはなかった。事情があったのかもしれないし、追い出されたのかもしれない。
どちらでもいい。何かしらの理由があろうとどちらでも。私に兄がいた。私が探していた人が見つかった。桜の頭は悠太への恋慕で染まった。
兄、兄、兄。兄さん兄さん兄さん。ああ、もう一度会いたい。早くもう一度会いたい。
兄妹なら、離れているのはおかしいはずだ。早く一緒にならないと。早く側に行かないと。側に。
大男が真剣を持って戻ってきた。桜へ刀を渡す。
桜は悠太のことを思いながら、男の心臓へ思い切り刀を突き刺した。
血飛沫が体にかかる。
とても気持ちが良かった。
11 :
桜の網:2007/08/13(月) 22:29:54 ID:+3xLz44g
投下終了。
駄文とお目汚しに付き合ってくれてありがとう。
二話はまたそのうち投下しようと思う。次からどんどんキモウトにするんで
また付き合ってくれたらうれしい。
なんか要望とかあれば、気軽に。
>>1 乙です。
書き込めなかったので助かりました。ありがとう。
これで駄文とか言われても嫌みにしか聞こえないコンチクショー
これはもうGJを送るしかないようだ。
どうして、兄が白石さんから離れたのか気になる
>>1乙
>>11 GJ!途中でスレが止まったせいで生殺しだったw
ところで、朝倉さんのトリックに関して言いたい事があるから言わせてくれ。
トリックは>>前スレ913であってるだろう。が、みんな意外と知らんようだから言っておきたい
自分の携帯から第3者になりすましてメールを送る手段があるんだぜ。
やり方は某HPに使いたいメアドと送信相手のメアド入れて、文章書くだけ。
前に友達に見せてもらったから間違いない。今も使えるかはわからんが。
これ使えば朝倉さんの携帯から送信されたメールでも送信者はテツ君のメアドになる
>>13 一時期話題になったよな、あれ
今は閉鎖されたけどな
>>11wktkさせるなぁ・・・
いきなりボディーガードを殺す桜に萌え。
そしてもう一人のキモウトにwktk
GJ!!!
16 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:10:41 ID:/i3G2aI1
桜の網、二話を投下しようと思う。
暇だったら読んでくれるとありがたい。
17 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:11:29 ID:/i3G2aI1
木造建築は珍しくはないけれど、このようなボロ屋はあまり目にしたことない人が多いのではないだろうか。
歩けばギシギシなる板に、薄く染みが残る天井。
雨の日などは水漏れがひどいのでバケツなどが欠かせない。
窓はドアと兼用で横に並んだ硝子のマスは五つあると一つは割れていた。
割れたところはダンボールで代用して穴をふさぎガムテープで止めていて、それが一層みすぼらしく映える。
部屋にあるのは箪笥と日用品。この家にあるもう一つの部屋も構造は同じでたいした物はない。
というよりも、物がないといったほうがいいかもしれない。天井のしみと物品の数の優劣はいい勝負だった。
部屋に一人の少女が座っている。
少女の顔は高校生にしては幼かった。髪は短く、肩で切りそろえられている。
体に起伏は乏しく、小柄。昔は眼鏡をしていたが、今はコンタクトレンズにしていて目はパッチリとしていた。
偶に中学生やひどい場合だと小学生に間違えられる彼女は、十人いれば十人がかわいいと評するのではないだろうか。
それほど彼女の容姿は整っていて、可愛らしかった。
欠点は、無愛想なところだろう。彼女は表情を変えることがほとんどない。
喜怒哀楽がすべて同じ状態で、意地悪く言ってしまえば顔の筋肉が劣化しているのではないかというほどに思える。
そして、口数も少ない。必要最低限。意味がなければ喋らない。
家族の兄や祖父も、彼女の饒舌な姿は見たことがなかった。想像すらできないだろう。
兄からは、もう少し顔に表情をつけようよ、なんて言われていたけれど、
どうすればいいのか困ってしまい、顔を赤くして固まってしまったことがある。
18 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:12:12 ID:/i3G2aI1
少女の普段着は、制服と言ってしまっていいだろう。
彼女は、休日などに着ていく服を一着しかもっていないのだから。
そのためこうした夏休みの平日でも制服に身を包んでいる。
私服を着て制服が汚れないようにするべきでは、という質問は愚問だろう。
彼女にとって、たった一着の私服は愛する人から送られたもので、それを易々と身に着ける矜持は持ち合わせていなかったからだ。
そして、彼女が私服を着る時は、兄と出かける時と同義だった。彼女は兄のことが好きだった。
白石亜美。
悠太の妹である彼女は、今日も理性で自分を留めるのに必死だった。
もし数少ない友人がこの場面を見ると驚くことはもちろん、何事にも冷静沈着な彼女のこのような姿に困惑するだろう。
ぶちぶちと畳をむしる音。
亜美は人生最悪の日から、もうどれだけ時間がたったのだろうと思っていた。ここに最愛の人はいない。
どこで間違ったのだろう。過去に思いをはせる。
そしてぼんやりと濁った瞳で呟いた。
「……あと、一週間…」
19 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:13:01 ID:/i3G2aI1
空が黒い晩のとても遅い時間こと。
亜美は布団から悠太が出て行くのを肌で感じた。僅かばかりまくられた布団がひんやりとして心地よい。
ただのトイレだろうと思い、多少の名残を感じたがそのまま兄が帰ってくるのを待った。
だが、中々戻ってこない。
彼女は悠太が側にいないと安心して眠れないから、不思議に思って自分も布団から抜け出た。
まだ夜は続いているようだ。部屋は暗い。
亜美の視力はいいほうだったが、これほどの暗闇は最近で一番ではないかというものだった。
月も雲に覆われているのだろう。目が闇に慣れるのに時間がかかる。
静かだと、亜美は思った。
都会の空は星が本当に見えないけれど、代わりとして音を生む。車の走行音。酔っ払いの奇声。若者達の猛りなど。
愚かな人間がここまで無体をさらすのは都会の特徴で、亜美はそれを聞くたびに嫌な気持ちになった。
けれど、悠太がいると逆に騒音という魔物から守ってもらえているお姫様みたいに思えてうれしくもなる。
つまるところ、彼女は悠太がいればどんな環境でもいいのだった。
しかし、ここまで静かなのは逆に不気味ささえある。
普段悠太がいないと嫌だと思っているものでも、なくなると何かしらの気持ちは抱くということなのだろうか。
いや、そんなはずはないと思うのだが。
目が慣れてきたので、亜美は立ち上がる。周囲を探ると、いつものようにみすぼらしい壁がまず目に付いた。
板が少し欠けていて、ここもまた今度悠太に修理してもらわないといけないと思った。
20 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:14:13 ID:/i3G2aI1
続けて、祖父が寝ている隣の部屋へと視線を移す。
トイレではないなら、祖父の部屋だろうか。亜美は隣の部屋へと続く扉に手をかける。すると、中から話し声が聞こえた。
間違いなく悠太と祖父のものだった。亜美が悠太の声を聞き間違えるわけがなかった。
「……暮らすことになるでしょう」
亜美は何となく部屋に入りづらい空気を感じた。何か大切な話なのだろうか。
亜美とてもう高校生一年生。大切な話なら、なおさら自分にも言ってほしいのだけれど。
「悠太様。追い出された私が言うのもなんですが、西園寺の家は悪いことだけではないですよ。
こことは違い、物はなんでもある。悠太様もきっと満足するでしょう」
「満足なんかするわけがないよ。大体、気に入らないんだよ。僕は西園寺が。
今になって捨てた子をまた拾いにくるなんて。僕の家族は白石さんと亜美だけだ」
「そういってくださるのは、うれしいですが」
「何でいまさらになって、僕が西園寺の家に住まなきゃならないのだ」
亜美には何の話か理解できなかった。理解したくなかった。
この会話はまるで、悠太が亜美の側から離れていくというものではないか。断片を聞いただけなのに、亜美は直感的に悟る。
それほど彼女は悠太のことに対しては敏感だったし、偽悪的に言ってしまえば、自分の危機にも鋭敏だった。
「ですが、お嫌でも仕方がありません。もし西園寺に行かないというならどんなことになるやら」
「わかっているよ。もう僕が何かを言ってどうにかなるなんてものじゃないのだろう。
行くよ、西園寺に。それで白石さんと亜美が豊かに暮らせるなら、納得は出来ないけど我慢は出来るってものだし」
「そういっていただけると、こちらとしても助かります」
「ただ」
21 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:14:49 ID:/i3G2aI1
悠太は言葉を区切る。何か言いあぐねているのだろう。
亜美からしたら、このような会話今すぐにでも止めさせて、
事の経緯を委細はっきりとさせなければならなかったが、今出て行ってかき回してしまうよりも、
事情を把握して、亜美自らが原因を潰してしまうほうが合理的に思えた。
「一度、会ってみようと思う。
いきなり一人息子として西園寺に戻って来い、なんて言われても意味がわからないのだから。
白石さん、そう伝えてくれないかな」
つまり、悠太は西園寺に息子として一方的に招かれようとしているのだろう。
悠太自身、いきなり招かれるということに関しては嫌がっているようだ。
そして、断ると何かしらの悪意が亜美たちに降り注ぐ。
亜美が把握した内容に間違いはなかった。
加えるなら、この話は今日初めて白石から悠太にされたものでそれ以外はぴたりと亜美の推測に一致していた。
「わかりました。ならば、明後日の金曜日に私と一緒に西園寺へ行きましょう。
旨は私が明日、屋敷の当主へと伝えておきますので」
それからそっと、亜美は布団へと戻った。
後に悠太もやってくる。
悠太は亜美の方をちらりと見たが、起きていることと先ほどの話を聞かれたことには気づいていないみたいだった。
22 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:15:23 ID:/i3G2aI1
亜美は寝ぼけたふりをして、悠太に抱きつく。少し乱暴に腕を相手の背中に回した。
悠太は苦笑して、いつもは大人しくてどこか清楚な印象こそ強いが、それでもまだまだ子供なんだなと思い、頭をなでた。
すると亜美はさらに頭をこすりつけ、悠太を抱き枕にするようにがんじがらめにひっついた。
悠太は諦めたようにため息を一つ、けれど何とか寝られないこともないと思って、そのまま目を閉じた。
気持ちよさそうにする亜美だったが、
裏腹に頭の中ではどうやって私たちの生活を邪魔する虫を駆逐しようかと思いをめぐらせていた。
何があろうと、虫は潰して殺してしまい、二度と悠太の前に出てこられないようにするべきだ。
潰して潰して潰して潰して、殺す。その為なら犯罪すらいとわない覚悟だった。
亜美は狂信的に悠太がすべてで、彼が世界の中心だったのだ。
もちろんそのことに悠太は気づいていなかった。
亜美がわざと寝ぼけたふりをして抱きつき、悠太の股の間に足を入れたのすら、気がついていなかった。
23 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:16:04 ID:/i3G2aI1
亜美は、頭がいいと悠太は思う。
模試ではいつも全国十位以内に入っていたし、苦手な教科など聞いたこともなかった。
高校に入ってまだ半年だったが、レベルの上がったテストでも学年ではいつも一番だった。
それだけではない。他にも友達から勉強を見てほしいといわれているのを見たことがあるし、要領もよかった。
悠太は時間配分などを考えて何かしらの作業をするのは、苦手だったがそんな時は決まって亜美が代わってくれた。
あえて不満を言えば、亜美は料理が出来なかった。台所に立つのはいつも悠太だったし弁当などを作るのもそうだった。
まれに黙って台所に立つ亜美を見ると「今日は私がご飯を作る」の意だったけれど、
決まってその後食卓に出てくるのは黒い物体だった。
悠太がからかって、亜美は頭がいいのに料理ができないなんて不思議だねと言うと、
「………頭の良さと…料理は関係ない……」
と涙目でこぼした。それを見た悠太は必死で謝ったけれど、しばらく許してはもらえなくて困ったことがある。
しかしそれ以外は大抵のことを亜美はやってのけた。
いつものように口数が少ないながらも、しっかりとそして完璧に。
腹違いの兄妹とはいえ、そんな亜美を妹に持てて悠太は幸せだと思う。
願わくは、将来はこのような汚い家ではなくて、裕福でなくていいから普通の家に住んで、幸せに暮らしてほしい。
24 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:17:15 ID:/i3G2aI1
明日、西園寺の家の当主と会う。
その時やはり、納得できず憤慨する場面や西園寺財閥という大きさに困惑することもあるだろう。
けれどそんな時こそ亜美や白石さんのことを想い、悠太はしっかりとそれを受け入れ前に向いて歩いていこうと心に刻む。
ただ、亜美にはこのことをまだ話していないのが気がかりではあるが、きっと賢い妹は、
いつものように無口で、でもなんだか悲しそうに利益と不利益の差を考え、頷いてくれるだろう。
少し悲しいけれど、間違ってはいない。
悠太は朝の日差しを浴びながら、そう思った。時間を見るともうすぐ昼。
学校は創立記念日で休みだったが、少し自分の体たらくに呆れる。
一緒に寝ていた亜美はすでに出かけているようだ。白石の部屋に行く。
「白石さん、お昼ご飯今から作るから。ごめんね、こんな時間まで寝てしまっていて」
白石はオロオロと部屋を歩き回っている。悠太の声が聞こえていないようだ。
部屋に入ってきたのにも気づいていない。どうしたのだろう。
考えてみると、いくら休みとはいえ、いつもなら白石が悠太を起こしにくるはずなのに。
「どうしたの」
声を強めて白石に声をかける。
「ああ、悠太様。大変なことに」
白石は悠太に気づくと一目散に駆け寄ってきた。
「亜美が、行ってしまわれたのです」
「出かけたんだろ。それがどうかしたの」
違うのです、そうではないのです。
白石の声はなんだか切羽詰っていて、悠太は只事じゃないのだと気づいた。
よくよく話を聞くと、事の経緯がわかってきた。
まず白石は、昨日の話どおり西園寺に電話をかけ、悠太が西園寺の家の当主に会いたいと言っている事を伝えようとしたらしい。
電話がつながり当主へと話し相手が変わる。白石は悠太のことを話すと当主は喜んでそのことを受け入れた。
しかし、刹那に受話器がひったくられる。
亜美だった。
25 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:17:51 ID:/i3G2aI1
「…もしもし」
「どなたです?」
「貴方が…西園寺の家の人?」
「そうですが。どちらさまですか。白石はどうしたのです」
「私は……おじいちゃんの娘……で…お兄……悠太君の……彼女」
「……何ですって?」
「日本語……通じない?……やっぱり虫だから?」
白石が止めることは出来なかった。
それほど亜美の迫力は凄いものだったし、いくら白石が男だといえもう八十近い老人。
女子高生とはいえ若者の力で遮られてはどうしようもなかった。
「よろしかったら、今から会いませんか。お会いしたいわ」
亜美はそれを聞くといつもの無表情で、場所、時間などを確認していた。
電話が切られ、亜美を叱ろうとする白石だったが、亜美の顔を見ると何も言えなくなってしまい、
あまつさえ亜美が西園寺の当主と会うのを止めることができなかった。
亜美は制服と学校の鞄に何か入れ、すぐに家を飛び出して言った。
「亜美が出て行ったのは、何時ごろなの」
「一時間ほど前でございます。すみません、もっと早く悠太様にお伝えしていれば」
「すんだことはいいよ。それより、僕も亜美のところに行ってくる。場所は聞こえたのだよね」
悠太は白石に場所を聞いて、すぐに家を飛び出した。
26 :
桜の網:2007/08/14(火) 21:24:37 ID:/i3G2aI1
二話、投下終了。
展開遅くてスマソ。なんか文章もぐだぐだしてるし。
他の作家さんってテンポ良くてほんと凄いな。
あと、昨日GJくれた人と反応してくれた人ありがとう。おかげで一日で続きかけました。
なんか要望とかあったら、言ってくれるとうれしかったりします。
では。
GJ!
大いに期待させてもらってます。
要望としては、
このあと嫉妬桜がお家パワーにより亜美被レイーポ、みたいな展開だけは勘弁してほしいかな。陳腐だけど。
>>27 それにはすこぶる同意する。こういうスレでは凌辱よりも殺し合いの方がマシだと言われているし、レイプがあった場合、読むのを止める人も少なくないからあまりおすすめしない(作者さんの自由ですけど)。
もし、そういう描写があるなら投下前に一言あった方がいいと思う。
そして、GJ
>>26うはwww病んでますなwwww
これはたまらん!!
GJ!!!
>>27-28そこは桜の網氏がきちんと注意してくれるさ。
さて当主と亜美の修羅場見物にでも行ってきますかね。
GJです。
個人的にはもっとキモウト加減を増やしてほしい
第五回を投下します。
9月2日、日曜日。
もう一日前にずれてくれれば夏休みがもう一日延びたのに、と多くの少年少女に思わせるほど
微妙なタイミングでやってきた休日。
空には雲が大量に浮いていたが、天気はおおむね晴れだった。
雲の切れ目からときおり顔を覗かせる太陽は、夏らしい凶暴な日光を地上に降らせていた。
しかし、風がよく吹くため雲の動きが早く、わりと過ごしやすい日になりそうだった。
ショッピングモールの一角にある喫茶店には、休日を満喫しようとする人たちがたくさん入っていた。
デートの待ち合わせをする人、これから知り合いとどこかへ遊びに行く計画を立てる人々。
皆が一様に薄着で、クーラーの効いた喫茶店内の空気を肌で感じていた。
喫茶店の窓際付近、ショッピングモールを歩む人々を観察できる席。
そこに、一人の女の子が座っていた。
女性と言うよりは、女の子と言う方がしっくりくる可愛い女の子だった。
長くのばした黒髪は滝のように一糸の乱れもなく下っていた。
カチューシャを使うことで髪が広がり、ボリュームが少々増しているように見える。
着ている服は上がノースリーブで肩丸出しのキャミソール、下にはミニスカートを履いていた。
スカートからは、男心をどうしようもなくくすぐってしまう色っぽい足が伸びていた。
少女は喫茶店の壁に掛けられている時計を見て軽くため息を吐き、アイスコーヒーをストローで飲み、
またモールを歩く人々に目を向ける、という行動を繰り返していた。
先ほどから店内にいる店員、男性客、一部の女性客が、少女の行動を観察していた。
一人で喫茶店にいるということは誰か――もしかしたら男――を待っているのかもしれない。
少女は一時間も前からあの席で待ちぼうけの状態になっている。
今は午前10時だから、9時からずっとそうやっていることになる。
少女がまた時計を見て、ため息を吐きだした。
呼応するかのように周囲の席に座る人々も軽く息を吐く。
少女に操られているわけではない。少女がため息を吐く姿を見て軽く呆けたのだ。
それほどに少女の姿は可憐だった。そして、その姿はエールを送りたくなるほどに儚かった。
店内にいる人々は、少女の待ち人が登場するのを待った。
早くあの子の笑顔が見たい、と思っていた。
店内にカランカラン、というベルの音が軽く響いた。床を歩く音と店員の歓迎の声がそれに続く。
しかし人々は誰かが入ってきても大して気にもしなかった。
窓際に座る可憐な少女が店内に入ってきた人物を確認して、眩しい笑顔で大きく手を振るまでは。
「テツくーん! こっちこっちーっ!」
と、店内の誰にでも聞こえてそうな声で、可憐な少女は叫んだ。
そう、叫んだのだ。
だから誰かがびっくりして、
「あの女っ! 何を恥ずかしげもなくっ!」
「落ち着け、これは作戦だ! あと数時間の辛抱だ!」
という声を上げてもおかしくない。
それ以外にも木製の床をダンダンと踏みつける音や陶器と金属がぶつかるような音がしたが、
びっくりしたのだから仕方がない。
窓際に座る少女も、少女以上に騒がしい声で叫ぶ人も、悪いことをしていない。
あえて誰が悪いのかと決めるならば、たった今喫茶店に入ってきた少年ということになるだろう。
先ほどまで人々が注目していた少女の顔が、少年が店にやってきた途端に明るくなった。
少女の笑顔は力強く咲く、夏の向日葵のようだった。
向日葵は太陽の方を向いて花を咲かせる。
同じように、向日葵のようである少女の笑顔も、太陽ではないが一つの対象へと向いていた。
少女の視線の先にいるのは、一人の少年。
若干低めの身長である以外は変わったところのない、中肉中背の体格をしている。
顔つきは中性的。それを気にしているのか、茶色の髪をスポーツ少年のように短く刈っていた。
身にまとっているものは襟付きのカットソーと、地味なブルージーンズ。
全体的な印象としては、休日に街へ繰り出してきた今時の高校生、といったところだ。
その少年は手を振っている少女を見ると、少女の待つテーブルへと歩いていった。
少女の前で、申し訳なさそうな顔で少年が頭を下げた。
「ごめん、朝倉さん。待ったかな?」
「ああ、ううん。待ってない待ってない。ついさっき来たばっかりだもん」
「ごめんね、わざわざ喫茶店の中で待っててもらって。お代は俺が払うよ」
「そう? じゃ、お言葉に甘えちゃおっかな」
朝倉と呼ばれた少女はそう言うと、席から立ち上がった。
少女からテツ君と呼ばれた少年は、テーブルの上に置かれていた伝票を手に取り、レジへと向かった。
会計係のウェイターに伝票を渡して、財布から料金を取り出して支払う。
レジの前でお釣りを待つ少年の腕に、少女の腕がからみついた。
「テツくぅん。これからどこに連れてってくれるの?」
「うーん……本当はプールにでも行きたいんだけど、いきなりじゃ無理だし。朝倉さんはどこか行きたいところある?」
「もちろんあるよ! ショッピングにゲームセンターに占い屋さん。
一番行きたいところは他にあるけど、今日はやらないでおくよ」
「じゃ、とりあえずゲーセンでも行こっか」
「うん、行こう行こう!」
ウェイターからお釣りを受け取ると、少年と少女は腕を組んだまま喫茶店の外へ出た。
ドアが閉まった途端、店内にいた人間の数人が息を吐き出した。
そのうちの半数は、あの女の子が約束をすっぽかされたんじゃなくてよかった、という安堵から生まれたため息。
もう半数は、あの女の子、彼氏がいたんだ。ハアア……、といった調子の落胆のため息だった。
今の少年と少女が恋人同士であると、店内にいる9割の人間が信じ切っていた。
残りの1割は、あの2人は今日だけの関係だ、ということを確信していた。
なぜ1割の人間――女二人――がそう思っているのかというと、
「あ、の、ア、マ! テツ兄におごってもらいやがって! 私だってなかなかおごってもらえないのに!」
「テツ……デートをしろとは言ったが、あそこまで優しくしろとは言っていないぞ……!」
と言っているように、少年と少女の知り合いであり、2人の今日の行動を快く思っていないからだった。
女2人は、目を合わせた者全てが顔を逸らしてしまうであろうこと間違いなしの怒りの形相のまま、
店の奥のテーブル席から立ち上がった。
レジで料金を払い、怯えた様子のウェイターからお釣りを受け取ると、無駄のない素早い動きで喫茶店から出て行った。
*****
2時間後、ショッピングモールの一角に存在するファミリーレストランの店内にて。
元から絶やすことのない笑顔をさらにゆるませたほくほく顔の朝倉直美と、
2時間前とうってかわって疲れの色を濃くさせた顔の哲明が向かい合って窓際の禁煙席に座っていた。
哲明がなぜ疲れた顔をしているのかというと、普段より何倍も元気な朝倉直美に振り回されていたからだ。
ゲームセンターで遊んだあと、ショッピングモールの服屋、靴屋、アクセサリーショップなど、
ほぼ十分おきに店に入っては出ていく、ということを繰り返してきた。
しかも、これどうかな、似合う?テツ君はこういうの好き?とかいちいち言われていたら、
今日が(姉妹以外の相手では)初めてのデートである哲明が疲れないはずがない。
今はようやく訪れた昼食をかねての休憩タイム、というところだった。
2人はつい数分間に注文を終えたばかりで、まだ料理は届いていない。
代わりにおかわりドリンクバーで入れてきたジュースが2人の前には置かれていた。
哲明の前にはコーヒー、朝倉直美の前にはオレンジジュース。
哲明はコーヒーの中に入れたスプーンをぐるぐるかき混ぜていた。
「テツ君、もしかして猫舌?」
「うん。コーヒーは好きなんだけど、熱いのはあんまり好きじゃないんだ」
「そうなんだ……へへ、いいこと聞いちゃった」
「……へんなことしないでね。クラスの人に言いふらしたりも駄目」
「しないしない。またひとつテツ君のことを知れて嬉しいな、と思っただけ」
「そ、そう……」
照れも見せずに言う朝倉直美と、照れた顔でそっぽを向く哲明。
なんとも初々しい姿だ。まさにつきあい始めの恋人同士。
実際には哲明が誘ったからデートをしているだけで、2人は恋人でもなんでもないのだが。
哲明は何も言わずに立ち上がった。
別に不機嫌になったわけではない。トイレに行こうとしただけだ。
少しは朝倉直美に対する照れもあったかもしれないが、哲明がトイレに行きたかったのは事実だった。
朝倉直美もその空気を読んでいたので、どこへ行くかは聞かなかった。
ところで、哲明にはある癖があった。
それは、携帯電話をうっかりしてどこかに置いたままにしてしまう、というもの。
8月30日に哲明が朝倉直美の家に行ったときも、トイレに行く際にポケットから落としてしまっていた。
今もそうだった。哲明は、テーブルの上に携帯電話を置いたままにしていた。
向かいの席に座っている朝倉直美は、当然そのことに気づいた。
オレンジジュース入りのグラスを手に取り、グラスの縁に唇を添える。
しかし、ジュースは飲んでいない。飲む振りをしているだけだ。
その状態のまま、大きな黒い瞳で周囲を観察する。
まだ哲明が帰ってくる様子はない。監視しているかもしれない哲明の姉妹の姿もない。
そのことを確認すると、グラスをテーブルの上に置いた。
朝倉直美の右手が、向かい席にある哲明の携帯電話に伸びる。
――――――
「ケイタイを……取った! はい、確定。リカ姉、作戦Bよ」
「ちっ……まだそんなややこしい手でくるか、朝倉め」
ショッピングモールの一角に存在するファミリーレストラン――とは通路を挟んだ向かい側に存在する、
2階建てのファーストフード店の店内にて。
哲明の姉妹である明菜とリカは2階の窓際の席に座って、向かいの哲明と朝倉直美を監視していた。
哲明が席を外した途端に、朝倉直美がとった行動の全てが2人には筒抜けになっていた。
「朝倉が今、さっきまでテツ兄が持ってたケイタイと、自分で持ってきたケイタイを入れ替えたよ。
リカ姉の言うとおりだったね。30日に朝倉がテツ兄のとそっくりのケイタイを用意して入れ替えてた、って推測」
「そうでないと、朝倉のやった奇妙なことの説明ができないからな。
私宛にテツのアドレスでメールを送ったり、腹立たしい画像付きのメールを送ったり、ということはそうでないとできない。
昨日テツが携帯電話を見失っていて助かった。あれがなければ気づけなかった」
「私が電話した時、呼び出し音が鳴ってたもんね。朝倉が持っていたテツ兄の本物のケイタイには繋がっていた、と。
朝倉も馬鹿ね。頭の回転が速い人間は予定外のことが起こると弱いもんよ」
「お前は呼び出し音のことに気づけていなかったが」
「あれはわざと。わかんないはずないじゃない」
「……まあいい。そういうことにしておいてやる」
言い終わるとリカはプラスチックのトレイを持って席を立った。
明菜はリカの背中にあかんべをしてから、リカの後に続いた。
トレイを片付けると、2人は店を後にした。
「ねえ、本当にこれ以上見てなくてもいいわけ?」
「朝倉直美が、私が最初思っていた通りの女であれば監視している必要があっただろうが、
わざわざ携帯電話を入れ替えるようなことをするならば、これ以上変なことはしないだろう」
「思っていたとおり? ああ、あれ。
テツ兄がデートに誘ったら、調子に乗った朝倉がテツ兄を無理矢理ホテルに連れ込もうとするだろう、ってやつね。
よかったね、もし私が作戦Bを考えなかったら朝倉の思い通りだったよ?」
「くそっ……ホテルに連れ込もうとしたところを引っ捕らえるつもりだったのに……」
「さっきもジュースを飲む振りして警戒してたし。私達のことを考えのうちに入れてるんでしょ。
でも――作戦Bでやったことに気づけるかな?」
ファミリーレストランの店内にいる愛しの兄と、忌まわしき猫を見て、明菜はそうつぶやいた。
「まったく、まだるっこしい。私だったらテツを気絶させてでもホテルに……」
「ホテルに、何?」
「あっ。い、いや、なんでもないぞ」
「ふーん……ところで、賭は私の勝ちだから、帰ったらもちろん撮影に協力してもらうわよ」
「……仕方ないな。約束は約束だ」
渋々、リカはうなずいた。
嫌そうな顔をしていることから考えて、その『協力』というのは不愉快なものであるらしい。
「しかし、本当にやらなければいけないのか? そんなモノが必要か?」
「必要よ。普通にメールを送るだけじゃいまいち噂になりにくいし」
「むしろ変な噂が流れるのではないかと思うのだが……」
「大丈夫よ。友達はみんなネタだと思ってくれる。たとえ噂になったとしても……別にかまわないしね」
「私がよくないんだ!」
リカの叫びは誰の心にも届かない。明菜にも、哲明にも、朝倉直美にも。
午後1時のショッピングモールを歩く人々の耳にだけ、リカの叫びは受け入れられた。
***
「ただいまー。あれ、なんで2人とも玄関にいるの」
「おかえり、テツ兄。お疲れ様。ほんと〜〜……に、お疲れ様」
「テツ? 変なことをされなかったか? 性的な嫌がらせを受けたりしなかったか?」
「なんだよ2人とも、その変な反応は……」
午後3時に、哲明は家に帰ってきた。
その顔色は普段と変わりない。喜びにも、悲しみの色にも染まっていない。
いつも通り友達と一緒に遊んできました、帰ってきました、という感じだった。
「意外と帰ってくるのが早かったな」
「うん、朝倉さん急に家の用事が入ったとかなんとかで、帰らなくちゃいけなくなってさ」
「へええ……でもさ、一緒にいる間にいろいろやったんじゃないの? ねえ?」
哲明を下から睨め上げるように見つめながら明菜が言った。
ちなみに、哲明と明菜の身長は同じぐらいだ。
首を前に傾けて、上目遣いのようにして睨みつけているのだ。
「顔、怖いぞ明菜。ただゲーセンに行ったり買い物に行ったりご飯一緒に食べただけで、変わったことはしてないぞ」
「まあ、そこまでは見て……じゃない。そ、それ以外にも何かしたんじゃないの?」
「うーん……あ、2人一緒の写真を撮ったっけ」
「ケイタイ? デジカメ? もしかして写真屋さん?」
「携帯だった。近くを歩いていた人に渡して、撮ってください、って頼んでたから」
「ほう……」
腕を組んだリカが、軽くうつむきながら唇の端を吊り上げて笑った。
「くくく……ここまでプロファイル通りに動いてくれるとは」
「何言ってんだ、リカ姉」
「なんでもない……ただ面白いだけだ。では私は部屋に戻っておく。明菜、あとは手はず通りに」
「オッケー。――たぶん、そろそろ送っただろうからね、あいつも」
哲明にとって意味不明なことをつぶやきつつ、姉妹は玄関から立ち去った。
哲明は姉妹の行動に疑問を覚えながら、1人で部屋に戻り、頬を撫でながらつぶやいた。
「帰り際に朝倉さんの唇が当たったような気がするけど……気のせいだよな?」
***
すでに日付の上では9月3日になっている、深夜2時。
電球の明かりが灯った哲明の部屋では、眠りこけた哲明と、部屋の同居人である明菜と、リカが集合していた。
深夜に姉兄妹3人が集合する。その時点ですでに少し異常な状況であると言えるだろう。
だが、姉妹の様子は異常な状況の中でもさらに際だっていた。
リカは携帯電話を双子の兄妹に向けていた。
明菜は、二段ベッドの下で眠る哲明に寄り添うように横になっていた。
「テツ、にいぃ……はぁ……」
「こらっ、明菜。これは作戦だぞ、それをわかっているのか?」
「わかってる。ちゃんと合図を送るって。テツ兄が起きちゃうから静かにしててよ、もう」
そう言いながら明菜は兄の体に自らの体を擦りつける。
姉は、これは作戦だこんなのはテツは望んでいない、と呟きながら明菜の合図を待っていた。
姉妹は今、現状において最もやっかいな存在である朝倉直美をこらしめるために、
自らの身を犠牲にしているところだった。
もっとも身体を使っているのは明菜だけではあるが。
「あは……テツ兄の、おなか……意外と固いんだ」
明菜の手が、哲明のTシャツの下へと潜り込んだ。手で撫で回した後で、シャツを胸元までゆっくり上げていく。
「すき……好きだよ、テツ兄……腕、貸してね……」
「おい、そんなこと言わなくてもいいだろう」
「テツ兄の腕、あったかい……大好きぃ……」
姉の言葉など無視して、明菜は自分の股に哲明の手を挟み、二の腕に両手を回した。
求めるように、兄の腕と一体化するのを目的にしているように、明菜が身をよじる。
「シャンプーの匂い……やっぱり私のと同じだ。テツ兄と一緒……今は、身体もひとつ……」
「ぐぐっ……私だって同じなのに」
「やあん、動いちゃ駄目、テツ兄……感じちゃう、からあ……」
なおも明菜は兄の身体へと近づいていく。
「いいの、テツ兄の腕、使っても……? じゃ、もっと動かして……」
「……くっ、ええい、合図はまだかっ!」
我慢し続けてきた姉がとうとう吼えた。
そのとき。
「んん……あいず? ああだめだよ、そんなにアイス食べたら、リカ姉……ガリ姉……」
姉の声に反応したのか、哲明が声を漏らして、次に寝返りを打った。
そうすると、当然哲明と明菜の身体は正面から向き合うことになる。
「うわわっ……馬鹿姉! 起きちゃうでしょ!」
「あ……すまん」
「まったくもう……ごめんね、テツ兄。もう邪魔なんか入らないから。
でも、ちょっと許せないな……なんで私の夢じゃなくて、リカ姉の夢なんか見るかなあ……?
こんなときに他の女の名前を呼ぶ男には、おしおきしないとね」
明菜の腕が、哲明の首に回された。2人の顔が少しずつ近づいていく。
ここで間違ってキスしても、はずみでやってしまった、という言い訳をできそうな距離だ。
たった今、こめかみに血管を浮き上がらせている姉がその言い訳で許すとはとうてい思えないが。
「テツ兄の、息……いいにおいだよ。私にも、頂戴……? 私のと交換。唾もあげるから、ね?
テツ兄は全部『私たちのものなんだから』」
「……よし!」
待ちかまえていた姉の携帯電話が、並んで眠る兄妹の姿を写真に収めた。
合図は明菜の言った、『私たちのものなんだから』だった。
この写真さえ撮ってしまえば、哲明と明菜をくっつけておく理由はなくなる。
リカはすぐさま明菜を哲明からひっぺがした。
「あ……ごめん、今のなし。もうちょっとでイきそうだったから」
「いいや、駄目だ! まだやることがあるんだろう! さっさと私の部屋に行くぞ!」
「あああ……ごめんねテツ兄、また今度……」
「今度など、無い!」
リカは明菜のパジャマの襟首を捕まえたまま、哲明の部屋を後にした。
哲明の部屋に静寂が戻った。
ベッドで眠る哲明はもう一度寝返りを打った。
たった今まで妹が目の前で痴態を見せていたことなど、哲明は知りもしない。
そして、夜はふけていく。
*****
9月3日、月曜日の県立高校にて。
朝倉直実はこの日、朝から上機嫌だった。
というのも、昨日哲明とデートできた時の余韻がまだ残っているからだった。
喫茶店に来たときのテツ君の顔、気まずそうで可愛かった。
クレーンゲームでぬいぐるみを取れなくて悔しがるテツ君の顔は初めて見た。
お揃いの指輪をつけたときのテツ君の戸惑う様子、抱きしめたいぐらい良かった。
昨日も家に帰ってから何度も思い出したことではある。
だが朝倉直実にとっては哲明の顔は何度思い出してもいいものらしい。
つまり、朝倉直実は色ボケしているのだった。
しかし、朝倉直美の心には、一つだけ引っかかっていることがあった。
「ねえ、山っち」
「直実ちゃん、何?」
「昨日、私がどこに行ってたか知ってる?」
「へ? いや知んないよ。誰かとデートでもしてた?」
「え、と。まあそうだけど……ごめんね、なんでもないよ」
昨日朝倉直実は、1通の写メールを哲明の友人達に送った。
朝倉直実が哲明の腕にくっついている写真だ。
その写真を、昨日哲明と入れ替えた携帯電話――元は朝倉直実の物である携帯電話で送信したのだ。
入れ替えた、つまり、2つの携帯電話はそれぞれの持ち主の元へ戻ったということになる。
しかし、朝倉直実はただ携帯電話を一時的に入れ替えていたわけではない。
自分で作ったメールアドレスを、哲明のメールアドレスとして友人に登録させようとしていたのだ。
***
昼休み、朝倉直実は生徒があまり立ち寄らない別校舎のベランダで携帯電話を見つめていた。
哲明の携帯電話と同型、同色、同じ壁紙、同じ着信音、同じ電話帳、全てを同じにしている携帯電話だ。
違う点と言えば、電話番号とメールアドレスぐらいのもの。
「どういう……こと? 今この携帯のアドレスは、テツ君の友達にはテツ君のアドレスとして登録されてるはず。
昨日の写メールはテツ君が送った、っていうことになってるはずなのに」
そう。朝倉直実の計画通りに行けば、哲明のアドレスと朝倉直実が作ったアドレスが入れ代わっているはずだった。
そうすれば、2人が写っている画像付きのメールが、哲明の送ったものとして友人に認識されるはずだった。
このメールを送れば、哲明と朝倉直実が付き合っている、という噂をますます浸透させることができるはずだった。
「そのはずなのに、なんで……っ?!」
なぜ、自分がメールを送った友人は写真のことで話しかけてこないのか。
なぜ、思い通りにいっていないのか。
そして、なぜ。
「こんな、わけわかんないっ……、画像がテツ君から送られてくるのよっ!」
朝倉直実の携帯電話のディスプレイに写っているのは、哲明と明菜が顔を向き合わせ、キスをしようとしている画像。
送り主は『テツ君』。つまり哲明から送られたものだった。
電話帳の『テツ君』のメールアドレスは、間違いなく哲明の本物のメールアドレス。
しかも、自分が以前から持っている携帯電話にも、同じ画像付きのメールが届いていた。
朝倉直実にとって、自分の計画が崩れることなど考えられないことだった。
勉強も運動もできる朝倉直実は、全てを計画通りに進めてきた。
高校進学、これからの進学先、哲明の心を射止めるための策。完璧な策のはずだったのだ。
自分の計画を阻害するものがいても、それに自分が乗せられるはずはない、と思っていた。
ましてや、奇妙な担任の教師や忌々しくも哲明と同じ顔をした明菜に邪魔されるなど、考えられなかった。
だから、朝倉直実は自分がミスを犯したのだ、と思った。
「そう。たぶん間違ってテツ君の友達じゃない人に送っちゃったんだ。そう、そうだよ。
今からでも遅くない。今から、写メールを送ればいいんだ」
朝倉直実は昨日と同じように、哲明の友達にメールを送り始めた。
「まずは……山っちから………………よし。次は村田君に……」
朝倉直実の指が、二回目の送信ボタンを押そうとしたとき。
突然、聞き覚えのある着信音を聞いて、動きを止めた。
「これ、テツ君の、メール着信音……だ?」
自分がメールを送ってすぐに着信音が聞こえてきた。
このメロディは、哲明に渡すために細部にまで細工を施す際、何度も耳にした着信音だった。
その音が自分の後ろ、階段の方から聞こえてくる。
「だ、誰よ……誰っ!」
「へー、『今日は朝倉さんと一緒にデートしました』、ね。はっずかしいメール。
こんなメールを送ったって噂を立てられた方がテツ兄にとっちゃ迷惑だよね」
「あ……あき、明菜ちゃん……」
階段を登ってやってきたのは、哲明の妹の明菜だった。
右手で携帯電話を持って、画面を見つめている。
朝倉直実の前にやってくると、携帯電話を朝倉直実の眼前にかざした。
「そ……こ、これ……」
「なんで驚いてんの? 自分で送ったメールなんだからそんなに驚くほどのもんでもないでしょ」
「なんで、その、明菜ちゃんの携帯電話に……」
「人に聞く前に自分で考えてみたらどう? 私よりずーーっと、頭いいんだからさ」
「そんなっ、こんなのっ……この電話に細工、すれば……」
「そ、細工したのは私。ウチの姉はデジタル弱いからねー。私がやるしかないのよね。
でもさ、あんたが細工に気づかずにメールを送ったってことは、頭で私が勝ったってことかな?」
「なっ……ぅっ……」
朝倉直実は、喉に息を詰まらせたように押し黙った。
明菜は、左手でもう一つ別の携帯電話を取り出して広げると、呆然とする女に画面を見せる。
女が、ひきつるような声を吐き出した。
「わかるかな? ちょーっとわかんない? 難しい? 降参? ま、あんたにはわかんないかもね。
ちなみにこのメール、あんたのケイタイだけじゃなくってテツ兄の友達にも送ってるから。
そんで、メールの送り主はテツ兄ってことになってる。この、ウチの姉のケイタイで送れば当然そうなるけどね。
テツ兄の唇、すっっっっごい、柔らかかった。これからあの唇も体も、全部私のものになるのよね――最高」
明菜が左手で持っている携帯電話の画面には、朝倉直実にとっては何よりも忌まわしくて目にしたくない、
目を閉じた哲明と真っ赤な顔の明菜がキスをしようとしている画像が表示されていた。
次回へ続く。
次回、決着編とエピローグの予定。
ごちそうさまですw
ちょっ・・・
テツが妹とキスしてるところみんなに送っちゃったのかよw
GJ!
GJ!
朝倉がどうなるのかが気になります。
桜の網、三話目を投下しようと思ったんだけど、
Z.OmhTbrSo氏が投下してくれたばかりだから何日か空けたほうがいいのかな?
もし良かったら投下するから、言ってくれるとうれしい。
さぁ投下するんだ。
もう俺は全裸なんだ
46 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/16(木) 03:54:07 ID:yscOktug
期待してます。
>>44 なにをしている?
さぁテキストを再構成してうpしろ
キモ姉の嫉妬深さ
キモウトのしたたかさをみせつけろ!
ハリーハリーハリー
ごめん、投下していいのかどうかわからなかったから、
誰かの反応待とうとしていて、寝てたorz
桜の網、三話投下します。
また暇なら読んでくれるとありがたい
亜美と西園寺の当主との待ち合わせ場所に着いたとき、悠太は自分が汗びっしょりになっていることに気がついた。
このまま西園寺の家の当主に顔を合わせるのはいささかまずい。
けれどそんなことを気にしている時間はないように思う。
亜美は冷静でとても頭がいいから変なことはしていないだろうけれど、その冷静な亜美がこんな奇行にでたのだ。
心配ではある。早く行かないと。
場所は喫茶店。
西園寺財閥の人間とは言ってもこんな一般的なところにも来るのだなと思って、
その点については、悠太は自分の固定観念に悪意があったことに気づき、心の中で頭を下げた。
店内は閑散としていた。従業員も数人で、なんだか古風な雰囲気もある。悠太はこういうシックで渋い店が好きだった。
店の中も狭すぎず広すぎず、とてもいい。
悠太が店に入ってすぐ、亜美を見つけた。あの制服なのがそうだろう。対面している人が西園寺の当主だということは間違いない。
けれど顔は丁度二人が座っている席の前の鉢に隠れて見えない。着ている服は、どうやらドレスのようだ。
悠太は、外国じゃないんだから、と思いつつ先ほどの観点も間違ってはいないのかもしれないと考え直した。
二人の席に近づこうとするとまずウエイトレスがやってきた。悠太は彼女が言うより早く、待ち合わせをしていたと伝える。
ウエイトレスはそれを聞くとゆっくりと頭を下げ、席に案内をしてくれた。
席の側までは距離が多少ある。
広いわけではないといっても、店の一番奥の壁際に座っていた二人までは少し遠い。まだ何を話しているのかはわからなかった。
悠太は、案内してくれたウエイトレスにお礼を言う。
するとその時、黒い服をした男たちがサングラスをかけて店外からこちらを見ているのに気づいた。
西園寺の者達だろう。
やはり、早く亜美を連れて帰らないといけない。
悠太は先ほどよりも更に焦って、二人の席まで近づく。真後ろまで来たとき、空気が肌を突き刺した。
「……妹…」
「そう、妹です。私と兄さんは家族なのだから離れて暮らしているなどおかしいでしょう。兄さんには西園寺に戻っていただきます」
「………………」
「それに、これは彼女とはいえ他人である貴方には関係のない話でしょう」
「………」
驚いたことは二つある。
一つは西園寺の屋敷の当主がこの間目にした女の子だったこと。
屋敷の主、つまり屋敷にいる家族の娘、悠太はあの日そう思っていたから当主がいるはずの場面で彼女がいるとは考えていなかった。
主、つまり屋敷の住人。主の家族ではあるかもしれないが、彼女は当主ではないと思っていたのだ。
電話での応対も、すべて白石がやっていて声を聞いていなかったというのもある。
しかし彼女がここにいる、ということは。
彼女があの馬鹿でかい屋敷の当主…?
とは言っても彼女は、まだ成人すらしていないし、きっと悠太よりも年下だ。おそらく亜美と同い年ぐらいだろう。
それなのに、あの西園寺の当主をしている。この若さでたいしたものだと思った。
二つ目は、何と言ってもこの重苦しい空気だった。
二人が話しているこの席の周りの空気が歪にゆがんでいるかと思えるぐらいの空圧。
もし絵で表せるなら、悠太は窓が破壊した絵と机が凹んでいる様を描くと思った。
それほどこの空間は異質で、よくよく意識すれば先ほどのウエイトレスや他の従業員もちらちらとこちらを見ていた。
とは言ったものの、固まっている場合ではない。悠太は二人の側に行く。
まず始めに西園寺の家の当主である彼女に声をかけようとして止め、逡巡して亜美に話しかけた。
「こんなところで何しているんだよ、亜美」
二人がいっせいにこちらを見る。
「……お兄ちゃん…」
「お兄ちゃん?」
亜美は驚いていたが、もう一人の彼女は驚きよりも疑念が強そうだった。
「勝手なことしたらだめだろ。心配したじゃないか」
「……ごめんなさい…でも」
「わかっている。いい機会だから、このまま話を聞いていていいよ」
どうせ、亜美には言わなければならなかったことで、もう亜美は悠太が家を出て行くことを知ってしまっている。
ならば、直接ここにいてもらったほうが話は早いだろう。
悠太は亜美の横の席に座り、西園寺の当主へと向き直った。
「妹の粗相、お許しください。まだまだ幼いもので、罰は何なりと僕に」
悠太はゆっくりと頭を下げる。そして真剣なまなざしで彼女を見つめた。
「初めまして。白石、悠太と申します。西園寺さんとお会いできて光栄に思います。
そして、いい機会ですから、明日の話し合いは今日ということにさせてもらえませんか。
その方がそちらのお時間もとらせないでしょうから」
「それは、かまいませんが」
「でしたら、話を始めましょう。単刀直入に言わせてもらいます。
なぜ西園寺さんは僕を一人息子などと称し、西園寺財閥に招こうとお考えなのですか」
「称すだなんて。だって兄さんはれっきとした西園寺の家の」
「誠に申し訳ありませんが、貴方に兄などとは言われたくはありません。
僕の妹は亜美だけです。そして家族の姓に西園寺などというものはない」
悠太は予想していた。西園寺財閥の当主が一人息子として悠太を迎える。そこには何かしらの事情と理由があるのだろうということを。
白石の言っていたことが本当で、悠太の両親が西園寺の家のものだったとしても、
悠太にとってはそんなものはゴミ屑よりも、もっと価値がなかった。
西園寺が何をしてくれたって言うんだよ、赤ん坊の頃にボロ屋に放り込まれて、何も手助けなんてしてはくれなかったじゃないか。
白石さんがいなかったら、僕は今頃…。
悠太の幼い頃に鮮やかな記憶はない。幼稚園では両親がいないことでいじめられ、小学校の低学年までは友人すらいなかった。
白石は悠太を励ましたが、このときまだ西園寺で働いていたので、ただ一人で悠太は孤独に耐えた。
それは、まだ幼い悠太にはずいぶんと酷だった。
しばらくして、白石は少しばかりの金とともに西園寺の屋敷を辞め、悠太を育てることに時間を費やし始めた。
悠太はその甲斐あってなんとか前向きな男の子に育ち、友達も少しずつ出来るようになっていった。
悠太のこの白石に対する感謝の気持ちは、並大抵のものではない。
余談だが、悠太が白石のことを『おじいちゃん』と呼ばないことと、白石が悠太のことを『悠太様』と呼ぶのは白石の判断で、
この子を立派にして見せるという強い心の現われだった。
悠太はそのことを残念がったが、名称などで家族の絆が切れるなどということはないと思い、何も言わなかった。
亜美は白石が西園寺をやめるときに連れてきた子供で、
そしてやはり亜美も西園寺の父親の気まぐれによって出来た子供だった。
悠太は一層、両親を憎んだ。
だから今頃出てきて、一人息子などといって迎えるなどとお笑いにもなりはしない。
更に憎しみは増し、悠太を不快にさせるだけだった。
「ですが」
「家族のことはいいのです。僕が何を言っても、もう無駄でしょうから。行きますよ、西園寺に」
「お兄ちゃん」
亜美は悠太の腕に抱きつく。顔は悠太の側まで接近していて、普段無愛想な彼女がこうしているのを見ると、彼女の必死さがよくわかった。
けれど悠太は、引かない。
「亜美は心配しなくていい。離れていても僕たちは家族だから」
「…でも、私は…」
亜美からすれば、家族という絆よりも悠太の側を離れることが嫌で、
ある意味悠太の近くにいられるならば絆がなくなってもかまいはしなかった。
それにそんなものなくなってしまったほうが、本当の家族に、慣れるというものである。もちろんいつかはなるつもりだが。
ともかくも、悠太は亜美の想いを知らないのだからここは譲れない。
このゴミ虫を早くすり潰して私たちの幸せを取り戻さないといけなかった。
今、悠太さえいなければ鞄の中に入れておいた二本の包丁で串刺しにしてやるところだ。グサグサと、何回も。
「……」
亜美はせめて西園寺の当主をにらみつけてやろうと思って、彼女を見た。
「そういうことですので、西園寺さん。その代わり、白石さんと亜美の生活の保」
続いて悠太も彼女を再度見て話し始めたが、その後の言葉をいうことができなかった。
対面した彼女の瞳からとめどなく涙が流れている。
頬を濡らした滴はぽたぽたとテーブルに落ちる。美人の彼女が泣くと、男にこれ以上ないほど罪悪感を与えるには十分だった。
店内の空気が更に重くなる。
「桜です。私の名前は、桜です。兄さん、貴方には西園寺さんなんて言ってほしくない」
悲痛な叫び。桜は口に手を当て嗚咽をこぼす。
「兄さんも、貴方も、私を裏切るのですか」
桜の瞳はただ切に悠太を見据える。
仮に、と悠太は思った。
今彼女が十六歳だとして、ここまでどれほどの苦労をしてきたのだろう。
まだ、高校生の彼女。
自分は高校三年生の現在まで高校生活は十分に楽しんだけれど、彼女はおそらく今までもこれからも楽しむなど、できはしないはず。
当主、というのはただ屋敷の頭目というわけではない。
その地位にあるからには、屋敷自体の運営はもちろん、多少は会社のことも知らなければならない。
そして行えば、仕事もしなければならない。西園寺財閥。その仕事の量は生半可なものではないだろう。
仕事を識れば、人間関係の醜さは簡単に浮き彫りになる。
それは仕事関係から屋敷にいる使用人まで。なぜ雇われたのか何をしようとしているのか。
加えて桜は高校生の当主という普通からは考えられないもので、見方を変えればこれ以上頼りないものもない。
重圧、嘲笑、侮蔑、…裏切り。
まだ少女とさえいえる目の前の彼女は、その中でたった一人だったのだ。
なぜ若い彼女が当主になっているのかはわからなかったが、孤独というものを悠太は知っている。
そしてそのつらさを与えたのが、桜の話が本当で、悠太が桜の兄だったなら、それは悠太が与えたものとも言えるのではないだろうか。
もちろん意図的ではないにせよ、彼女を一人にしたという事実は変わらない。
捨てた両親のように、悠太は、桜という妹を見なかったと言えなくもない。
白石に亜美以外の兄妹がいるかどうかなど聞いたことはなかったのだから。
飛躍しすぎだとも思う。
けれど、悠太からすれば捨てるという事実は無視できないもので、そのことを認識すればするほど桜のことが他人のようには思えなくなっていた。
「ごめん…。こっちも一方的に話して、悪かったよ。桜」
桜が涙を拭く。顔がほころんだ。今日始めて見る桜の笑顔だった。
「順番に話そう。まず、僕が君の兄だと思うのは何でなのかな。聞かせてほしい」
それからの話は、先ほどよりも穏やかになった。
悠太が桜の実の兄であるということに間違いはないらしい。少し前にDNA鑑定までしたと桜が言う。
「でも、DNAの検査って僕自身が病院とかに行かないといけないんじゃ」
「ああ、兄さんの血液なら、買いました」
どうやって、と聞くことは出来ないので曖昧に笑っておいた。さすが西園寺というところか。
「なんで、僕を西園寺に?桜には悪いけれど、僕は両親のことがあまり好きじゃないんだ」
「兄さんの言いたいことは、わかります。私もあの人のことは嫌いですから」
「だったらなんで」
「でもやはり、私と兄さんは家族なのですから、離れ離れになるのはおかしいでしょう。兄妹はいつも一緒にあるべきだと思うのです」
なるほど、桜は家族だから一緒に暮らしたいということか。
まだ高校生で、幼い頃から家族と暮らしたことがない彼女の言い分はよくわかる。
悠太も家族はいつか離れ離れになってしまうものかもしれないけれど、このような不当に引き離されるのはおかしいと思うし、
出来るならかなえてあげたい願いでもある。けれど、
「……」
亜美も家族だ。腹違いとはいえ立派な。
「なら桜、亜美と白石さんも西園寺に住ませて貰えないかな。亜美だって立派な妹で家族なんだから」
亜美はそこで、嫌な考えが頭についた。
もしかすると、この桜という女はすでにわかっているはずなのに騙されたままでいるのではないかと思ったのだ。
「妹?」
案の定、桜は亜美のほうを不思議そうに見る。
「でもこの子、電話では兄さんのこと彼氏だって言っていましたよ」
「え?いやいや、そんなわけないよ。亜美はただの妹。僕に彼女なんていないし」
「そうだったんですか。…それはそれは」
桜は愉快そうに亜美に向かって目を褒める。
口に手を当てた様がいちいち亜美の神経を逆撫でした。
悠太にしがみついている手を片方はずし、鞄の中に伸びる。
わざとだ。
亜美の事を彼女ではないのかと聞いたのは意図的なもの。
そうすることで、亜美が嘘をついたということと、悠太の口からそうではない、ただの妹ということが聞きたかったのだ。
事実を突きつけてやりたかったのと悠太に対する僅かな不信感を抱かせるためだろう。
「でも、兄さん。亜美さんと白石も一緒に、というのは聞けないお願いになります」
「どうして」
「白石は西園寺の執事を一度辞めました。兄さんは知らないかもしれませんが、それは思いのほか無理を通したものです。
つまり皆の印象は、横暴に逃げたというあまりいいものありません。
いくら私が当主といっても、屋敷に住んでいる者がすべて信用できるものとは限りません。
よって白石は戻ってはこられない。そうすると」
「……白石さんが一人になるのか」
悠太は頭を悩ませた。亜美はもちろん大事でかけがえのない家族ではあるが、白石もまた同じように大切な家族だ。
悠太にとって白石を一人であの家においていくというのは考えられないもの。
もう八十近い老人ということもある。後から何かあったでは、後悔してもしきれない。
育ててくれた恩。決して忘れはしないし、何よりも悠太は白石がいたからここまで生きてこられたのだ。
そんな白石をボロ屋に一人置き去りにすることなど。
できない。
ならば、亜美がいればどうだろう。白石は大丈夫だ。亜美は多少無口で料理が出来ないが、不器用だということはない。
むしろ頭もよく、出来ないことのほうが少ないだろう。
それに料理ぐらいなら何とでもなる。口も無口ではあるが喋れないというものじゃない。
ただそれは、亜美を置いていくということ。それでは、桜にしたことに対して何も変わらないのでは。
「兄さん、なら期限をつけて家に来てもらえませんか」
「どういうこと」
「今は五月ですから、そうですね、夏休みが終わるまでは家に住んで、それからまたどうするか考える、ということです。
これで、二人を置いていくことにはならないでしょう」
桜の提案は、とても助かるものだった。これならば亜美を置いていくことにはならない。
悠太は喜んで頼んだ。
「うん。そうしよう」
「……だめ」
亜美がコアラのように悠太にしがみつく。鞄に伸びた手は再び悠太の腕へと戻った。
桜は悠太にはわからない程度に亜美を睨み付ける。
「私は…お兄ちゃんと一緒が………いい」
「亜美、でも桜は今まで一人だったんだ。少しぐらい家族として側にいてあげてもいいだろ。たった三ヶ月ちょっとだよ」
「……いや……や」
「でも」
「絶対……い…や、…痛!」
唐突に亜美が声を荒げる。
「どうしたの」
「なんでも………ない」
顔をしかめる亜美は桜の方に向き直る。
このとき悠太が、もう少し亜美の足が見える位置に座っていれば気づいたかもしれない。
テーブルの下では桜が思い切り亜美の靴をふんづけていた。
しかも都合よく小指辺りをぐりぐりと。まるで男がタバコを足でもみ消すように。
間髪いれずに亜美も、空いている足で踏みつけてやろうとしたが桜はひらりと上体には身動き一つ出さないで避けた。
―――この糞虫
こうなったら兄に言いつけてやろうと思って声を出すが、足にひんやりと新たな感触があった。
亜美は言いよどむ。それが何であるかわかっているから。
………刃物。
テーブルの下では桜が側に立てかけてあった日傘で、亜美の右足にぴたり狙いをあわせていた。
狙いをあわせる、というのは間違っていない。
桜の持っている日傘の先には直径一センチにもなる針が埋め込まれていたから。
横に引いても縦に裂いても血が噴出すだろう。突かれれば風穴こそ空かないが、一生消えない傷くらいは出来る。
自分の体の一部に一生ものの傷が出来る。それは亜美からすれば避けなければならないものだった。
いずれ最愛の人に、悠太に見せる体だ。大きな傷があっては、悠太も興ざめだろう。それは絶対に避けなければならない。
「………………………わかった」
渋々ながらも頷く。
亜美はもし今悠太がいなければ、どうやってこの虫を度殺したら一番苦しませることが出来るだろうと考えていた。
刺殺、殴殺、轢殺。どれがいいだろうか。どれも虫にはお似合いで、私たちの生活の邪魔をするなら、どれも生ぬるくすらある。
だから、せめて一矢報いようと、亜美が頷いたと同時に桜が日傘を元に戻した瞬間、包丁のほかに鉄板の入った鞄で、
悠太には見えないように桜の脛を出来る限り加減なく殴った。
桜は口がひくひくとしていたが、声に出すことはなかった。
「ありがとう、亜美」
悠太はテーブルの下の攻防と相反して、にっこりと微笑む。続いて亜美の頭を優しくなでた。
桜はそれを見て、がきりと歯噛みしたが悠太の耳には届かなかった。
「話もまとまったことです。帰りましょう、兄さん」
桜が立ち上がった。先ほどの痛みは微塵も顔に出さない。悠太は桜の言ったことに驚いて聞き返した。亜美が更に悠太の腕に抱きつく力を強める。
「え、今から?」
「当然です。三ヶ月しかないのですから、一秒でも惜しいわ。
安心して兄さん、亜美さんと白石の生活のことについては、しばらく困らない程度にはお金を用意しておきますから」
そのことに関しては、安心する。が、いくらなんでも急すぎる準備期間ぐらいはほしかった。
桜からすれば、それすら時間が惜しいということなのだろうが。せめて、白石には訳を説明したい。
「荷物ぐらい取りに行かせてよ」
「物なら言ってくださればすべて私が用意いたしますわ。白石には亜美さんに伝えてもらえばいいでしょう」
「いや、でもそれは」
「…いきなり私と一緒になるのには、抵抗がありますか?」
今度は亜美の心が煮えくり返る番だった。
こいつ、またわざとこんな言い方を…。
女の涙は何よりも強いとはよく言ったものだが、同じ女からすれば浅ましいことこの上ない。
しかも亜美の予想が正しければ、桜はこういえば悠太が了解してくれるだろうという算段を計ってのものだった。
つまり、嘘泣き。
「そうですよね…、私みたいな女がいきなり妹だなんていわれても困りますよね…」
「あ、いや、そんなことは」
こうなると先ほどの涙も嘘だったのではないかと亜美には思えてくる。
嗚咽すらだしていたので本当に泣いていたのだとは思うが、この女ならやりかねない。
悠太はあれで何かしらの感情移入があったらしいが、亜美からしたら滑稽でしかなかった。
裏切る?人生裏切られたことのない人などいないのだ。それをおめおめと語るなど、まして泣きつくなど、汚らしいにも限度がある。
そんなことすら理解できていない虫に一時的とはいえ、兄が取られるなんて。
殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい
殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい
「わかったよ、今から行こう。でも後から電話ぐらいはさせてほしい。それぐらいはいいよね」
「ええ、もちろん」
なら、と悠太が席を立つ。名残惜しそうに亜美も手を解いた。
「亜美、これからしばらくお別れになるかもしれないけれど、我慢できるよね。
って、こんな言い方、兄馬鹿すぎかな。どっちにしても家事とかいろいろ大変だろうけどお互い頑張ろう」
「…………でも」
「大丈夫だよ。亜美は何でも出来る天才なんだから。三ヶ月の辛抱だ」
何でも出来る天才。料理のことは除いているのだろうが、その評価は多少の間違いも混じる。
悠太がいたから、悠太が見ているから、失敗しないようにといつも心がけていたのだ。
その悠太がいなければ、何でも出来るなど、ありえるはずもない。もうその評価が邪魔ですらある。
でもここで、子供のように泣き叫んで駄々をこねるなどできはしなかった。この女の手前もある。
亜美に残された道一つしかなかった。道は針穴のように小さく、選択権はない。
「………なら、約束………して……三ヶ月たったら……迎えに来るって」
「あはは。大げさだな、亜美は。三ヶ月の間にも何回かは様子を見に行ったりもするからそんなに構えなくてもいいんだよ」
「いいから……して」
「だからそこまで」
「して!」
生まれて初めて亜美の声を荒げる様を見た悠太は、やはりこれほどに家族がいなくなるというのは寂しいものなのだなと思い、真剣な顔で了承した。
桜は目を弓のように細めて悠太たちを見ている。
「信じて……るから……もし、迎えに来なかったら…」
「来なかったら?」
「……………秘密」
亜美は口をわずかに上げる。笑っている、いや微笑んでいるのだ。
悠太は亜美のこんな顔を久方ぶりに見たことがなかった。それだけにこの約束の固さも増す。
心の中で、絶対に守ってやろうと思った。
「では行きましょう、兄さん」
それから二人が出て行こうとする。
桜と亜美の視線が絡まった。
そして、桜は悠太に見えないようにうっすらと微笑んだ。
亜美は見逃さなかったが、悠太は気づくことすら出来ない。
桜は亜美に向かって更に笑う。そして声は出さず、口だけで言葉をあらわした。
『―――兄さんの妹は、私。貴方は帰って老人とでも戯れてなさい』
思わず兄の前で、虫に包丁を突き立ててしまいそうだった。
投下終了。四話に続きます。
ほんと展開遅くて、ごめん。
読みにくかったりしたら言ってくれたら助かる。
なんか文章も硬くて、gdgdしてる気がするけど
駄文に付き合ってくれてありがとう。
そしてGJくれた人、感謝してます。
また近いうちに続きだすんで、よかったら読んでくれたらありがたい
GJ!
針仕込みの日傘を常備しているとは・・・
桜・・・恐ろしい子・・・!
>>41 テツ兄は完璧超人の彼氏から妹ファッカーへと転落することになるのか…w
>>60 キモウト同士の鞘当てコワスw
仲良く暮らして欲しいもんだなぁ(棒 ……白石老人の余命が物凄く心配だ
二人とも凄くキモイな(蝶褒め言葉)
本当に3ヶ月で済むんだろうか?
wktkして次の投下を待ってます
新スレに気が付くのが遅かったぜ
朝倉さんに萌え始めた俺は異端かも知れんなw
財閥系の話には壊れた人格が良く似合うなww
>>41 超鈍感な上に、キモ姉妹の動きや朝倉さんのメールやデートにも動揺しないテツは大物だと思う
完璧超人の朝倉さんがわざわざテツを選んだのも納得だw
あと
>>64と同じく朝倉さんに萌えた俺は、殺意の波動に目覚めた朝倉さんにも少しだけ期待
>>60 針付き日傘に包丁・鉄板入り鞄とは…物騒すぎるw
白石さん頑張れ、超頑張れ
こういう話の場合ついつい貧しい方を応援したくなるなぁ
あと鮮血まっしぐらな感じだが、主人公がどれだけ踏ん張ってくれるか見ものだ
第六回、投下します。
>>41の予定を変更しました。少し短めです。
昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。じきに5時限目の授業が始まる。
別校舎は授業などで使用されることがないため、生徒がやってくることはない。
今、別校舎にいる生徒は明菜と朝倉直美だけだ。
「あ、やばいね、そろそろ教室に戻らないと。次はウチの姉が担当する国語だから何言われるかわかんない」
「なっ……ま、待ってよ!」
「何? そろそろ戻らないとあんたもまずいでしょ? 優等生の朝倉直美が、授業サボっちゃ。ねえ?」
「そんなの……適当に後で理由つけるだけ。どうにでもなるよ。そんなことより……私がしたことが、全部わかってたの?」
「当たり前じゃん」
「誰が気づいたの?」
「えーっと………………そう、あんたのトリックに気づいたのは私。ウチの姉はああ見えて頭でっかちだから」
真顔で嘘をつく明菜。トリックに気づいたのは明菜の姉のリカの方だ。
だが、今の朝倉直美にとっては誰が気づいたのだとしても構わないらしい。
「いつから、気づいてた?」
「最初に怪しいと思ったのは……あんたが友達に送ったあの嘘メールの話を、友達から教えてもらったとき。
その時点でおかしいと思うよ。だって、テツ兄があんたと付き合うわけないもん」
「そんなこと……わかんないじゃない!」
「わかるわよ。こんな姑息な手を使ってくる女に、テツ兄がなびくわけがない。
自分でやってることに気づいてないの? あんたのやってること、すっごい醜いわよ」
「うっ……そん、なのっ……嘘……」
「――さて、そろそろあんたのやってきたこと、私のやったこと、全部バラしてあげましょうか」
明菜は右手で持っていた自分の携帯電話を操作して、朝倉直美の前にかざして見せた。
画面に表示されているのは、友人から送られてきたメールの文章。
「これ、山っちから送られてきたんだけどね。いたずらメールの文章をそのまんま残した状態にしてあるの」
本文には、以下の文章が綴られている。
『こんなメールが送られてきたんだけど、ホント?
>前、朝倉さんが誰と付き合ってるのか知ってたら教えて、って言ってたよね。
>実は俺と付き合ってるんだ。黙っててごめん。』
「あんたはテツ兄と山っちの話を聞いてて、こんなメールを送れたんでしょうね。
自然な話の切り出し方だっていうのはマシだけど、もしかして相手を帰るたんびに文脈変えたりしてた?」
「答えたく……ない」
「あっそ。私もどうでもいいんだけどね。あんたが変なメールを送ったってのは事実なんだから。
山っちが言うにはね、31日の午前9時頃、テツ兄からこのメールが送られてきたらしいよ。
31日の午前9時頃って言えば、あんたがテツ兄にケイタイを返したあとの時間。
普通に考えればその時間にテツ兄のアドレスで送るなんてことはできないけど、タイマーを使えば可能になる。
けど、あんたは本物のテツ兄のアドレスでタイマーメールを送ったわけじゃなかった」
「え……」
「あんたは、テツ兄のケイタイと外見も中身もそっくりのケイタイを用意していた。
この時点で手が込んでいるとは思うけど、また一つ手を加えた。
自分で用意した偽のケイタイを使って、2種類のメールを送るようにタイマーメールの予約をした。
1通は例の交際始めましたのメール。もう1通は――メールアドレス変更をお願いするメール」
朝倉直美の目が驚きに見開かれた。彼女が声を出せないでいるうちに、明菜の言葉が投げかけられる。
「次に31日の朝。持っていた本物の代わりに、偽物のケイタイをテツ兄に渡す。
これで、あんたのところにテツ兄の本物のケイタイと、本物のアドレスが手元に残る。
テツ兄の手元には偽のケイタイと、偽のアドレスが来たことになる。
その後で、あらかじめ予約していたアドレス変更のメールがテツ兄の友達のところに届く。
すると、あら不思議。これでテツ兄が持っている偽ケイタイに割り当てられているメルアドは、
友達の間でのみテツ兄の本物のアドレスとして登録されました。ここまでは合ってるでしょ?」
朝倉直美は答えない。うつむいたまま、ただ沈黙を返すばかりだ。
「まあ、すでに山っちとか村田に聞いてアドレス変更メールの裏付けは取れてるから、聞かなくてもよかったかもね。
話を戻そっか。メルアド変更のメールの次は、時間差で嘘八百メールが送られてくる。
メルアドは既に変わっているか、後で変更されるから、嘘のメールはテツ兄が送ったものだ、として友達にとられる。
よくよく考えてみると、メルアド変わりましたーの後に、交際始めましたーのメールが届くのは変だけどね。
んでその後、メールの真偽を確かめるために、テツ兄の友達からテツ兄の持っている偽ケイタイにメールが送られる。
テツ兄、わけわかんなかっただろうね。身に覚えのないことで問い詰められるんだから」
「違う……私と、テツ君、は……付き合って……」
「まだ嘘つくわけ? いいわよ、そこまで言うなら続けてあげる。
1日、あんたはいたずらメールの件について、ウチの姉に呼び出された。
その場であらかじめ自分のケイタイ――本物のあんたのケイタイね。
それにテツ兄の本物のアドレスから送信済みのメールを見せる。姉はまんまと騙される。
追い打ちをかけるため、隠し持っていたテツ兄の本物のケイタイから、自分のケイタイにメールを送る。
これで姉は、テツ兄があんたと付き合っている、ということを確信する。
あの後、死人の顔で帰ってきたから相当効いてたみたい。ま、それは姉の無知が招いたことだからどうでもいいわ。
午後に、またあんたからメールが送られて来たんだけど、あれどういう意味?
『俺の彼女です』? しかも写真付きで。嫌がらせのつもりだった?」
「あれは、本当……本当の、メールだよ」
まだ自分のやったことを認めようとしない朝倉直美を見て、明菜は呆れた。
腰に手をあてたまま、目をつぶってかぶりを振り、嘆息する。
「ここまでくると、こっちが待ちがってんじゃないか、とまで考えたくなるわね……」
「私は、間違ってないよ。間違ってるのは……明菜ちゃんの方だよ」
「あのね、ケイタイが入れ替わってたことはとっくにバレバレなの。
1日の午後に電話がかかってきたでしょ。テツ兄の本物のケイタイに。
あれをかけたのは私よ。テツ兄がケイタイをどっかになくしたって言ったから探してたの。
私のケイタイのアドレス帳は変わってないからね。本物のテツ兄のケイタイの方に繋がるわけ。
ちなみにテツ兄の持ってた偽ケイタイはかばんの中から見つかったわ。
あのうっかり癖のおかげで、あんたの悪行がばれるきっかけになった。
残念だったわね。愛しのテツ兄のせいで計画が崩れちゃってて」
「テツ君は……そんなところも可愛いよ」
「それは同感。で――あんたは昨日それを利用した。
テツ兄がファミレスで席を外した途端、テツ兄が持ってた偽ケイタイと本物のケイタイをすり替えた。
この目でばっちり見たから、否定はできないわよ」
「あ……そう、だよ」
朝倉直美の目に、意志の光が差した。
それは希望によるものではなく、不可解な疑問を思い出したからだった。
「私が携帯をすりかえたのは認めるよ。そしたら、今私の持っている携帯に登録してあるアドレスは……」
「テツ兄の友達に登録させているテツ兄のメルアド、つまりあんたが作った偽のメルアドのはずよね。
そのケイタイを使えば、あんたが送るメールはテツ兄が送ったものだと思わせることができた、はずだった。
けど、あんたが昨日送った写メールは友達には届いていない。それがわかんないんでしょ」
「そう、私はちゃんとやったのに、なんで……」
「ふふん。あんたがやってきたことに比べれば簡単なもんよ。
――そのケイタイのSIMカードを、ウチの姉のSIMカードと入れ替えた。それだけ」
「……う、そ」
「それだけって言っても、ウチの姉のケイタイのアドレス帳に細工したり、
テツ兄がデートに行く前にテツ兄の持ってる偽ケイタイのSIMカードを入れ替えたりで、言うほど簡単じゃなかったけど」
「先生の携帯のアドレス帳に、細工?」
「そ。わざわざテツ兄の友達の名前を登録して、それのメルアドは全部私のにして。
そしたらあんたがそのケイタイで友達に馬鹿メールを送っても、私のケイタイに届くから」
「じゃ、私……明菜ちゃんの思った通りに動いたってこと、なの?」
「結果的にそうなるかな。あっははっ……優等生が劣等生に負けるっていうこともあるんだね。
まあ、2年の女子で最下位の私としては、かなり嬉しいところね。
――朝倉直美に勝った。いい自慢話になりそうだわ」
「まだ、負けてないよ。私は」
明菜と朝倉直美の距離は、2メートルほど。
その距離を、朝倉直美は一歩踏み出して縮めた。
うつむいたままなので、目の前にいる明菜からは顔を見ることができない。
また、一歩近づいてきた。
明菜は、後ろへと下がった。――朝倉直美の様子がおかしい。
それは向日葵を思わせるいつもの笑顔を見せていないせいなのか。
それとも、一向に負けを認めようとしない強硬な姿勢から感じられたものなのか。
朝倉直美の足が止まった。頭を垂れて、髪の毛で表情を隠したままつぶやく。
「負けてない。私が負けるはずなんか、ない」
「あんたの負けよ。あんたの送ったいたずらメールの話は、うさんくさいネタ扱いされてる。
私とテツ兄がキスしようとしている画像まで、偽のテツ兄のアドレス――私が今持っている姉のケイタイに
登録してあるアドレスから送られてる。これはテツ兄が遊びのつもりで送った、ってみんなに思われてる。
一応あんたには本物のテツ兄のケイタイから写メールを送ったけどね」
「なんで、そんなことができるの?」
「そりゃ、私がテツ兄と同じ家に住んでいるから」
「どうして、一緒の家に住めるの?」
「兄妹だからに決まってるでしょ? なに当たり前のこと聞いてんの?」
「そう……そうだよ。兄妹なのに、どうしてキスなんかしようとしているの。それをしていいのは……私だけなのに」
「はあ?」
「テツ君を独占していいのは――私だけなのにッ!!!」
朝倉直美の右手が、スカートのポケットの中へ入った。
右手に握られていたのは、小型の折りたたみ式ナイフ。
「渡さない……あんたたち、姉妹なんかに、テツ君は渡さないからっ!」
この時の朝倉直美の顔は――明菜が一度も目にしたことのない、怒りの表情だった。
第六回、終了。
今回はネタバレ編でした。
>>71 GJ!なんとなく俺も朝倉が好きですw
しかし、朝倉はキモウトでもキモ姉でもないという罠w
>>60 GJ!こういう作品好きだから期待してます。なんか亜美に萌えるのは俺だけか?
そしてこの投下速度の速さにもっとこのスレに神が後臨することを祈る
イイヨイイヨーテンションみなぎってくるわー
細かいこと言ってスマンが誤字?
「ここまでくると、こっちが待ちがってんじゃないか、とまで考えたくなるわね……」
のトコが 待ちがって→間違って かね
次の話しに期待してるっ
>>73 あ……はい。読み返してみたら間違ってました。
気づいてくれてありがとうございます。
俺も朝倉が好きだwおかしいよね、キモ姉キモウトスレなのに・・・
なあに、かえって免疫力がつく
>>75 おにいちゃんはキモい行動さえすれば、血がつながってなくてもいいんだね…。
あのとき、わたしのことを好きだって言ってくれたのも、下着を勝手に漁って臭いを嗅いだり
携帯の泥棒ネコのメアドを勝手に消したりしたキモい行動だけ目当てだったんだあああ。
あんまり、だよぅ…
>>71 ネタばらし&凶刃キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
自分の目論見全て崩された朝倉さん哀れm9(^Д^)
一応キモウトに特化しているとは言え、みんなある程度は姉妹スレの性格も持ってるんでしょ
そんな漏れはヤンデレ、修羅場、依存、キモウトなんでも恋の節操梨だworz
さて腐り姫をプレイしてテンション上がってる俺が来ましたよ
妹やら血の繋がってない母親やら妹やら年上幼なじみやらもう最高だね
兄さんに近づく者は犬でも殺す…まさにキモウト…
要は、そこまで愛されたいってことだww
幼なじみは実は、腹違いの姉なんだけどな。
87 :
完結できない人:2007/08/18(土) 00:26:20 ID:rNI5pbt6
駄文晒します
88 :
Favor:2007/08/18(土) 00:27:22 ID:rNI5pbt6
「本当、私の弟とは思えないほどの馬鹿ね。その頭の中に詰まってるのは何なのかしら?」
冷たい、言葉という名前のナイフが胸に突き刺ささる。
ゆったりと、柔らかなソファーに身を沈めた姉のその後姿からは、感情が一切読み取れないが
きっとその心中は不出来な僕という弟に対する怒りで占められてるんだと思う。
普段は、子供の頃からずっと続けてきたというピアノを奏でている、そのすらりとした綺麗な指には
僕が今さっき渡した、姉の用意した問題の答案用紙――これみよがしに×が乱舞し、右上には赤くでかでかと数字の0と書かれている――が、掴まれていた
「こんな簡単な問題さえ解けないなんて、正直、期待はずれもいいところだわ」
そう言って、徐に姉さんはそれを両手で細かく引きちぎり、空中にばら撒いた。
掃除を欠かさない赤色の絨毯に舞い落ちる白い紙の山は、僕には何処か雪を想起させた。
「何その酷い顔。まるで痴呆のようね」
気づけば、目の前に姉さんが立っていて、僕を見下ろしていた。
意思の強さを思わせるその瞳は、呆けたように口をぽかんと開けて紙吹雪を眺めていた僕を蔑んでいるように見えた。
僕がその視線に耐え切れずに目を逸らすと姉さんは、ふん、と落胆したように息を吐いて、僕を押しのけて歩いていった。
「掃除、しておきなさい」
廊下の暗闇に消えていく姉さんの背中を僕は、ただ見ていることしかできなかった。
89 :
Favor:2007/08/18(土) 00:29:01 ID:rNI5pbt6
「お前のねーちゃん。ひでーやつだな」
昼放課。一日の折り返し地点。学校生活における清涼剤。
大量生産物らしきおにぎりを口に頬張りながら、数年来の友人――各務 ハルは、言う。
「ハル。口の中に物を入れたまま喋るのは良くない」
呆れた様に僕がたしなめると、おお、すまんすまん、と言って校内の自販機で買った牛乳で、口の中の物を一気に流し込んだ。
「ぷはー。やっぱり牛乳はいいもんだよな!」
「ハル、その動作は親父くさい。それに、それ以上背を伸ばしてどうするの」
「いいじゃん。身長は高くて困ることは・・・・・・あるけれど、まぁ、細かいことは気にするなって」
はっはっは、と豪快に笑いながらハルは、その大きな手で僕の背中をばしばしと叩いた。
一応、僕の体格は一般の男子中学生のソレと同じ程度だ。
それに対して、ハルは何処かの工事現場で働いてるような人達と同じくらいにでかい。
風切り音さえ聞こえそうなほどに振り回した大きな手のひらが、僕の背を打つたびに、鈍い、微妙な痛みが全身に走る。
「痛い、ハル。痛いって!」
耐えかねて抗議の声を上げると、まるで悪びれた様子もなく爽やかにすまん、すまんと繰り返してから
食べかけのおにぎり(まだ半分くらい残っている)を片手でつまんで、ハルはぽいっと口に投げこんだ。
「さて、まぁ真面目な話、だ」
「うん?」
しかめっ面をしながら痣になってないかな、と背筋をさすっている僕に、えらく改まった風にハルは向きを合わせてきた。
「今までの話を聞くに、俺から見れば、お前ねーちゃんにかなーり嫌われてるようだが、なんか心当たりはあるのか?」
「そんなことないよ。僕が馬鹿なのは本当のことだし」
「ばっか。いや、俺の馬鹿は意味が違うぞ? てか、お前が馬鹿だったなら俺はどーなるんだよ? 学年1位さんよ。
それに、だ。今回のことだけじゃねえ。俺は今までお前からお前のねーちゃんについて色々と聞いてきたが、どれもこれも理不尽で
酷い内容の仕打ちだと思うぜ? 実際、お前が今回やらされたって問題。あれ、大学受験レベルだったんだろ?」
確かに、あの後記憶の片隅に残っていた幾つかの数式を調べてみれば、僕の今のレベルでは到底解けないような、そんな問題ばかりだった。
「でも、姉さんは確か、僕の年にはもうあの問題を解いてたんだよ。父さんと母さんが凄く姉さんのことを褒めていたから、覚えている」
「お前とお前のねーちゃんは違うんだよ。俺に言わせてもらえれば、俺らの年でその、なんだ? この国のトップクラスの大学の受験問題を解ける
お前のねーちゃんが異常なだけだと思うわ」
「それは・・・・・・」
「何か思い当たる節はないのか? そうでもなきゃ、お前がそんな仕打ちを受ける理由が俺には皆目検討が――」
90 :
Favor:2007/08/18(土) 00:29:49 ID:rNI5pbt6
「おーい。さっさと片付けろー! 授業を始めるぞ」
ハルの言葉が終わらない内に、昼放課の終わりを告げるチャイムが鳴り、それと同時に次の時間の担当教諭が教室に怒鳴りながら入ってくる。
今さっきまで他愛無い話で沸いていた級友たちは一斉に口をつぐみ、がたがたと机を動かす音が教室内に響き渡る。
勢いをそがれた形になったハルは、小さく舌打ちし、皆と同じように机を持ち上げて、廊下側の扉に向かって歩いていった。
途中振り向いたハルの口が、『また、後でな』と、小さく動いた。
結局その日、ハルと話す機会はなかった。
何故かと言えば、国語委員だった僕は、授業が終わるや否やタイミングを計ったように入ってきた
現代国語担当の教諭に、荷物運びという有り難い用事を申し付けられ。
一方ハルも、中学最後となるバスケの大会を控えていて(ハルは小学1年生の頃からバスケ一筋だった)
部員全員によるミーティングが有るとかで、落ち着く暇もないまま教室を出て行った。
手早く用事を終えた頃には、帰宅部の僕には一人で家に帰るという選択肢しか残されていなかった。
91 :
Favor:2007/08/18(土) 00:30:51 ID:rNI5pbt6
――今までの話を聞くに、俺から見れば、お前ねーちゃんにかなーり嫌われてるようだが、なんか心当たりはあるのか?
あると言えば、あった。
思い出すのは、3年前。僕が中学に入った日。
いつも姉さんの事を褒めている記憶しかなかった、仕事で家を空けがちな両親が、珍しく僕を褒めた日。
交通事故で、父さんと母さんが、めちゃくちゃな肉片になって、亡くなった日。
今思えば、あの日から、姉さんは僕に厳しく当たるようになった気がする。
あの頃の姉さんにとっての生きがいはきっと、父さんと母さんに凄いね、と褒められることだったんだと思う。
そういえば、昔から姉さんはあらゆる点において僕より優れていようとしていた気がする。
勉強においても、運動においても、身長においても、家事においても、他のどんな事においても
考えてみれば、あの頃の姉さんの努力の基点は全て、僕という存在だった気がする。
姉さんが勉強に打ち込み始めたのも、僕が塾に通い始めて学校でいい成績をとり始めた頃だった。
姉さんが運動をするようになったのも、僕が丁度地元のサッカークラブに入団して、試合に出始めた頃だった。
身長についても、運動をするようになって背の丈を気にし始めた僕が毎日牛乳を飲み始めた頃だった。
家事についても、毎晩夜遅くまで働いて、くたくたになって帰ってくる両親を助けようと僕が家事を手伝い始めた頃だった。
姉さんは、両親にとっての僕という存在を常に、自分より下に置きたがっていたのかも知れない。
だから、あの日両親が僕を褒めたこと、そしてそれが姉さんにとっての最後の言葉となったことが、とても許せなくて
その怒りが、僕に対して辛く当たるようにさせているのかもしれない。
そこまで思って――
それでも、僕は姉さんを嫌いになれなかった。
例えば、今日僕が昼放課に食べていた弁当、成長期である僕に対して栄養バランスを良く考えられたあれは姉さんが作ってくれたものだ。
学校の授業で判らないことがあれば、姉さんに頼れば僕を罵りながらもちゃんと教えてくれた。
落ち込むことがあって、一人家で沈んでいたときも、酷く遠まわしだったけれど姉さんは僕を励ましくれた。
僕にとっての姉さんとの思い出は悪いことばかりじゃない。そう、暖かい思い出も確かにこの胸の中にある。
そして何よりも、姉さんは僕にとっての、誇りなんだ。
きっと家に帰れば、また何か適当な理由をつけて僕は姉さんに怒られるに違いない。
でも、そんな生活も、悪くない。
92 :
完結できない人:2007/08/18(土) 00:33:59 ID:rNI5pbt6
なんか微妙に遅れた気がする上に終わってないですが時間をキングクリムゾンされただけなんです。
いえ、ごめんなさい。
きっと私に足りないものは(略)何よりも早さが足りないに違いない。
ちなみに、終わってないのは未完フラグばりばりなんですが
必要とされる休息日だけは某H&Hの人並なので、期待しないでもらえるとありがたいなーとか。
わかったおww気楽によろデス
ちくしょおおおおお!!!!ボスー!!!!吐き気を催すほどの悪とはッ(ry
気長にお待ちしてます。
よくばりサボテンプレイしてテンション上がってる俺が来ましたよ!!
待つのは慣れてるから俺は大丈夫!!ただあの漫画家は待たせ過ぎたろ…
>>95 よくばりサボテンって安くて短いエロゲだっけ?
それってキモ姉、キモウト出てるの?
>>97 凜という名の義理の妹がいる。
主人公にベタボレ。
キモウトか、というと……判断が分かれるところだ。
俺はライトなキモウトだと思う。
どっちかっていうと、頭の弱さがキモイ妹だしな……。
主人公に彼女ができると応援してくれる凄くよく出来た妹
キモウトではないが可愛い
>>96 下から2段目真ん中と1番下真ん中と右はなんてタイトルのゲーム?
「鬼哭街」の妹キャラ以外わからなかった……。
それ以外のキャラの詳細希望。
左の上から2番目はカルタグラの高城七七
他はわからん
>>101 下から2段目真ん中はデュエルセイバーの未亜かな
アドレス削りなさいな
>>96 1段目右はナチュラルアナザーワン2か。
1段目中央はあいかぎ2。
2段目中央はバルドフォース
3段目中央はデュアルセイバー
3段目右は確かリーフ初の陵辱ゲーの妹
俺に判るのはこれぐらいか。
しかしなんという実妹度。
腐り姫 あいかぎ2 NAO2
カルタグラ バルドフォース 鬼哭街
さくらむすび デュアルセイヴァー 鎖
わからん THE GOD OF DEATH ピアニッシモ
俺に判るのはこれぐらいだ
一番下左端は「夢幻泡影」だな
保管庫の管理人さんは今頃キモウトに監禁されてるのかな?
更新されてからそんなに時間もたってないからまだなんじゃないか?
まぁ、俺は綾シリーズがまだ投下されてないから更新ても仕方な(ry
いまさらながら三者面談の続きです。
結局。そのまま夜遅くになるまで、弟の誠二は帰ってこなかった。
気がつけば、リビングの黄色いソファに横になり、そのまま明り取りの引き戸から漏れる太陽光で私は朝を迎えた。
片手に棒状に伸びたゴムの束のついたものを持ち、もう片方には知人から快く譲ってもらった『海兵隊新兵罵倒全集』を胸に抱いたまま、目を覚ます。
ああ弟が帰るのをずっと待っていて眠ってしまったのかと私はぼさぼさの髪をかく。ふと、自分の体を見るとふんわりと優しく毛布がかけられてあった。
愚弟め、気がきくじゃないと私は少し弟を見直そうとしたが、よく見ればそれは私の部屋のベッドの毛布なので、記憶が無いまま寝ぼけて自分で部屋から取ってソファまで持って降りてきたものであることに気付く。
つまり、弟が帰ってきてかけてくれたわけでもなく、イコール弟が帰ってきていない。もしくは無視したかのどちらかか。
私は、玄関まで走り弟の靴を確認する。弟のシューズ、私が選んだシューズ、桃色のシューズ。……無いわ。きびすを返すと、今度は弟の部屋へ走る。
誠二の部屋の扉を勢いよく空けた。弟がいればそのまま朝の調教を始めるつもりだったので、棒状に伸びたゴムの束のついたものを掴んで中へと踊りいったが、弟の部屋はもぬけの殻だ。
遠慮なしに押入れ、クローゼット、本棚の隅から隅まで探す。押入れの裏にテレビで見る巨乳アイドルのポスターが貼ってあった。イライラしていたのと、その女の胸についた脂肪の塊にムカついたので破り捨てておいた。
愚弟、私にバレないようにこんなところに貼っていたのね。私に見つかるのが嫌だったのかしら。まぁ、嫌だから全部はがすけど。あなたの人生に紙製のアイドルなんていらないでしょう。
これを機会に、ベッドの下にあった女の裸の本も全て没収する。
ふーん、誠二、こんなのが好きなのねぇ……、不潔な。ぽいっ。
ふぅ、満足。満足。違う、誠二。誠二はどこに行った?
結局、どこにもいない。
私の携帯電話から誠二の携帯電話にかけてみる。
つーつーつー。
ダメか。
念のため、弟の友人の井上くんにかけてみましょう。
ピッ。ぷるるるるる。
「……はい。もひもひ……」
「井上くんかしら」
「は、はいっ。沢木先輩! お、おはようございますっ!!」
「朝早くにごめんなさい。寝ていたかしら?」
「い、いえっ。そんなことありません! ついさっき起きたところです!」
嘘おっしゃい。いつも、私からの電話はすぐに取るくせに今日は寝ぼけて開いて確認しないままとったでしょう。全てお見通しです。
「ところで、一つ聞きたいんだけど」
「せ、誠二くんのことですかっ!? えっと、昨日は一時間目の体育のとき……」
「ううん。今日は監視の様子はいいわ。あなたの家に誠二はいないかしら?」
「え……? いえ、うちにはいませんよ」
「ふぅん。そう」
「ど、どうしたんですか? 沢木先輩」
「……うちの誠二がどうやら戻ってないのよ。あなた、なにか知らないかしら?」
井上くんはとたんにうろたえる。
「え、え!? え、えっと、昨日は誠二は三者面談があるからって……、確か放課後別れて……、それから俺も見てませんっ」
「その三者面談は私も居たわ。それ以降でどこか誠二が行きそうな場所は思いつくかしら?」
「い、いえ。わ、わかりません」
「ふぅん、そう。使えないわね」
私は井上くんにそう吐き捨てると、そのまま電話を切った。
が、すぐにリダイヤルボタンを押してもう一度かけなおす。今度はすぐに出た。
「は、はいっ。沢木先輩!」
「クラスメイト全員に連絡して、誠二が居るかそれとなく確認しなさい」
それだけ言って、電話を切る。二秒後、もう一度リダイヤルボタンを押す。先ほどより少し遅く出た。ちっ。
「念のため、駅前のネットカフェも確認しなさい。直接行って確かめること、いいわね。」
「あ、あのさわ……」
切った。
よかったわ。最近はネカフェ住民なるものがいるらしいからね。ネットカフェで泊まる若者。そうね、ホテルよりは安いから誠二も居るかもしれないわね……。
それにしても……誠二め。一体なにを。
とりあえず、顔を洗いましょう。洗面所まで行き、顔を洗う。歯磨きをして、昨日のままだったぼさぼさの髪の毛をドライヤーでなんとか戻す。
すると、携帯の鳴る音。表示画面には井上と出ていた。
早いわね。もう誠二の足を掴んだのかしら。携帯を開くと右の赤いボタンを押して出る。
「はい」
………無言。
というか、切れている。……あの子……。この私にガチャ切りか。いい度胸ね。もう一度、お灸をすえてあげないといけないかしら。
と、私の耳元でもう一度携帯電話が鳴り出す。驚いて私は耳を離した。 なによ。画面には井上と表示されていた。
あ、私の操作ミスか。赤いボタンは切るボタンだったわね。改めて、緑のボタンを押す。
「はい」
「あ、沢木先輩!」
「誠二は見つかった?」
「あ、えっと……。沢木先輩はなんか行方不明みたいに言ってたので、焦ったんですが……」
早く言いなさい。
「普通に、携帯電話にかけたら出たんですけど……」
へぇ。そう。さっき私がかけたら出なかったのにね……。そう、私だから出なかったんだ。誠二め。
「で、どこに居るか聞いたの?」
「え?」
「え、じゃないわ。誠二と繋がったんなら、今誠二がどこに居るか、聞いたの?」
「……い、いえ。聞いてません」
「何故?」
「……え、えっと会話の流れで……、だって、お姉さんから探すように言われてるっていえないですし……。あ、でも誠二もなんかひそひそ声でしたし、多分聞いても答えてくれないんじゃ……」
切った。
相変わらず、ただの監視役しか使えない男ね。所詮指示待ち人間か。ふん、利根川より優秀でもないけど。
でも、ひとつわかったことがある。
「少なくとも、事故ではないわけね」
安心した。
弟にもしものことがあったらと最悪な想像もしていた。もしかしたらトラックに轢かれたままぐちゃぐちゃになって死体の身元もわからなくなっている、ということも可能性として考えていたからだ。
しかし、安堵の中。弟に対するむかつきも発熱してきた。
ふつふつと心があわ立つ感覚。まるで、あの女教師高倉良子と正面から対面した時のような、感覚。痺れ。
「弟に依存していることに気付けてないあなたは、誠二君の親代わりとしても、姉としても失格よ」
……ふん。戯言を。何を言ってやがりますか。思い出すだけで反吐が出る。
携帯電話で井上くんに電話をかける。るるるるる。結構待たせるわね。出たわ。
「は、はいっ。今度はなんでしょう!」
「聞くわ。あなた。誠二と電話したのよね。なにか変わったことはなかった?」
「え、え!? えっ、えっ。えーっと……」
「もういいわ」
切る。
井上くんの様子から、態度としては特に変わったことはないみたいね。じゃあ、普段どおり学校へ登校してくるかもしれないわ。
……私だけじゃなく、友達にまで泊まる場所がバレたくないってこと? ワケがわからない。まずいわね。学校以外だと私の手が伸ばせる範囲じゃないし……。
よし、誠二に直接聞こう。
いまから学校へ行って、誠二を校門で待ち伏せする。そして、誠二が来たところで直接問いただしましょう。
そうと決めれば行動は早い。私は昨日のままの学生鞄を掴むと、外へと飛び出したのだった。
校門で、私は一人で誠二を待つ。
この学校は大きいが、生徒の出入り口はこの校門しかないわ。だから、ここで見張っていれば必ず誠二を見つけることが出来る。
すでに、靴箱は確認済みだ。誠二はまだ登校してきていない。確認が済めば、校門の門の横に陣を張る。
「ああ、沢木くん。おはよう」
毎朝校門に立って生徒に挨拶しては無視されている福永教諭はぎこちない笑顔で私に声をかけた、私は福永教諭に軽く会釈する。福永教諭は心なしか嬉しそうに笑った。会釈さえもしてもらえないのか。いい先生なのに、授業は。
ふと見れば福永教諭は、登校してくる生徒の顔が最も見えやすい位置に立っていることがわかった。さすが、毎朝こりもせず立っているだけあるわ。
私は福永教諭の横に並んだ。
「ん? 沢木くん。どうしたのかね?」
「いえ、別に」
生徒が登校し始める。福永教諭は一人一人に「おはよう」と声をかけていくが、ほとんど返ってはこない。唯一真面目な大人しめの生徒のみが恥ずかしげに小声で返すのみである。
私も、登校してくる生徒を一人一人検分していった。一年生二年生三年生……。大勢の生徒たちの顔を確認するためには目を皿のようにして見渡さねばならない。
「あの、沢木くん。何をやっているのかな……?」
すぐ横で目をギラギラさせて生徒たちを挨拶するわけもなく検分している私に、福永教諭は焦ったように聞いてくる。登校してくる生徒の何人かも、私と福永教諭が二人で並んでいるのが理解できないようで、微妙な顔でこちらをチラチラ見ながら校門をくぐっている。
「沢木くん。そこに立ってくれてるなら先生と一緒にみんなにあいさつをしないかい?」
「黙っててください」
この時間帯は一度に通る人間が多くて大変なんですから。
「………」
福永教諭はしゅんっとなってしまった。そんなに心が強いわけでもないですからね。この先生。しかし、ふと思いついた。
「福永先生。うちの誠二を見つけたらおっしゃってくれませんか?」
「………」
「先生?」
「え? あ、なんだって? あ、おはよう!」
「うちの誠二を見つけたら私に言ってください」
「あ。はいはい」
あ、井上くんが登校してきました。ふぅん、結局誠二は一緒じゃないのね。井上くんは校門に私が立っているのを見つけると、途端に顔をこわばらせ、私に向かって「知らない!知らない!」と小さく首を振る。
「あの子、最近妙に元気がないんだよ。なんというか空元気というか……」
福永教諭が顎に手を当てて、私に相談するように呟いた。本当に、なにを怯えてるんでしょうね。井上くんは。
まぁ、当然それには答えず私は誠二の姿を探します。……どこだ? どこだ?
だんだんと登校時間が少なくなり……、生徒たちも減っていく。チャイムが鳴り、福永教諭が授業の準備で切り上げ校舎へ戻っていく、そして朝HRの時間。
もう、やってくる生徒の姿はない。遅れてきた不良生徒がくちゃくちゃとガムをかみながら通ってくるだけ。
……昨日から待ちぼうけばかりね。
ふつふつと、湧き上がる誠二への怒り。結局、一時間目を潰してまで待ったが、誠二の姿を見ることは出来なかった。
先生の部屋からの登校は細心の注意を払っていた。
「ほら、誠二くん。隠れて」
「はいっ」
高倉先生の車の中。僕は後部座席で体をちぢ込ませて隠れる。 昨日は高倉先生の部屋に泊まった僕らは、高倉先生の車を使って登校することになった。
ただ、生徒たちが多い校門の前で先生の車から降りたら、もしかしたら僕らの関係がバレてしまうかもしれない。だから、僕らは車に乗ったまま教師入口から入り、人気の少ない関係者専用駐車場で降りることにしたのだ。
しかし、教師玄関の前にある駐車場に行くためにはちょうど校門の前を通らないといけない。だから僕は細心の注意を払って隠れる。
生徒たちの声がドア越しに聞こえる。ばれない様に、ばれない様に。
「ふふふ」
ちょうど、校門の前あたりを通り過ぎた時。先生がかすかに笑った。
「どうしたんです? 先生」
先生はハンドルを回し、昨日の姉さんと対峙した時のような鋭い視線を窓の外に滑らせていた。窓の外に何かあるのかな。気になったけど覗くわけには行かない。
「いえ。あの娘、必死だなぁと思ってね」
「?」
先生の含んだ笑いがエンジン音に溶けていく。 僕は意味がわからず、ただ後部座席でちぢこまったまま首を傾げるばかりだった。
(続く)
次回いつ書くかは未定です。
GJです!!
続き期待してます!
三者面談があああああ!!
GJです!!
姉の動きを楽しみに待ってますぜ
>>116 おれ待ってるから!ずっと待ってるから!!
GJ!
つい最近読み直した作品の続きがこんなに早く読めるなんて…運命を感じた!!
GJ!!
続き待ってます!
>>116 三者面談、終わってたと思ってたぜ・・・なんていう不意打ち!
誠二くんにげてええええええええ!!!!
続き楽しみに待ってます。
三者面談はかなりツボな作品だったので続いてくれてヨカタw
井上君のパシられすぎwww
「夕日ロマンス」を注文してて、いま受け取ったんだけど本のカドが折れ曲がってる…
夕日ロマンス買うべきか悩んどる…
今、Webでちょっと読めた気がするが、それ読んでから決めれば良いんじゃないか?
みーんみんみんみー……
暑い、今年は前に比べて異常なくらい暑い!
普段は何とも感じない蝉の声ですら、鬱陶しく感じるくらい暑い!!
と言う訳で、今日1日はクーラーを付けて過ごす事にした。
地球温暖化云々とか言っているが、この暑苦しさの前ではエコロジーなんぞ糞食らえだ。
「暑いな……」
「暑いわね……」
取り敢えずクーラーが完全に効くまで扇風機の前に居座る。
……で、何故か隣に姉ちゃんがいるのは何故だろうか?ここは俺の部屋の筈だ。
「姉ちゃん、一つ聞きたいんだが」
「何?あたしから性の手解きでも受けたいの?」
「誰が聞くか、そんな事」
「じゃあ何?」
「………何で姉ちゃんが俺の部屋で涼んでいるかを聞きたいんだ」
「その理由は単純よ、クーラーが涼しいから」
……をひ
「………姉ちゃんの部屋にもクーラーはあるだろ?」
「壊れたのよ」
俺の怪訝な問い掛けにもっともらしい理由を返す姉ちゃん。
ってちょい待て、
「………昨日、姉ちゃんの部屋の前を通りかかったら
開いた部屋のドアからガンガンにクーラーを効かせた冷気が漏れていたのは気の所為か?」
「だから、今日壊れたのよ」
…………さいですか。
多分嘘だろうと思うが、問い詰めた所でのらりくらりと返される可能性が高いので
この件についてはこれ以上聞かない事にする。
「じゃあ、もう一つ聞くが」
「何?あたしの胸でも揉みたくなったの?」
そう言って胸をこれ見よがしに持ち上げ、俺に見せつける姉ちゃん。
それに対して俺は何も突っ込まず(突っ込んだら負けだと思ったから)
「何で格好が上は露出の多いタンクトップで下はパンツしか履いて無いんだ?」
「暑いからよ?」
「そうか、なら何でノーブラなんだ?」
「そりゃあ勿論、熱いからよ、身体が」
さり気に「あつい」の言い方が違うのは気の所為では無い筈だ。
「そうか、なら何故、姉ちゃんは俺の方に徐々に近づいて来ている?暑苦しいだろ?」
「うん、それも簡単な理由、身体が火照って熱いから♪」
「…………」
「あれ?いきなりあたしの後ろ首掴んで持ち上げて如何したの?何するつもり?力があるのを見せたいの?
ああ、分かったわ。遂に弟君もあたしに欲情して………」
「出てけっ!!」
「ひゃぁ!?」
そのまま部屋の外に姉ちゃんを蹴りだし、ドアを閉め、鍵をかける。
「暑い〜、暑いから入れてぇ〜」
直ぐにドアの外の方からカリカリと爪でドアを引っ掻いている音と姉の懇願の声が聞こえる。
冗談じゃない、只でさえ糞暑いのに欲情した姉なんぞ入れたら暑いじゃ済まされない事態になる。
俺は姉の声を無視してイヤホンをつけると、涼しくなった部屋でお気に入りの音楽を流し、まったり過ごすのだった。
―――尚、3時間くらい経った後でトイレの為に部屋から出ると、
其処にはすっかりグロッキーとなった姉ちゃんの姿があった。
どうやら姉ちゃんの部屋のクーラーが壊れていたと言うのは本当だった様だ………スマン。
暑い夏の日差しに熱暴走したらしくつい書いてしまった、反省していない。
>>131 お前の読んだから俺も熱暴走しちまったじゃねーか。
責任を取ってもっと書いてくれ。
GJ
>>131 GJ!!
こんな姉がいるのであれば俺の夏休みは終わらない!
10日ぶりに見た。
なにこの神職人様たち・・・
吐き気を催すほど影響を与えられる文才に神GJ!!
確かに最近は、毎日のように神々が投下してくれてるな
個人的に気に入ってる作品はもちろんだが、全員にGJを送りたい
個人的に気に入ってる作品だけが来ない(´;ω;`)
>>136 それくらいで泣くなよ情けない…
それにそういうこと言ってたら今投下してくれてる人たちになんか失礼だよ
職人さん達すごくGJです。……だけど……
安西先生…永遠のしろの続きが読みたいです……
>>138 気安く本命宣言なんてするもんじゃないぞ
そんなことしたら他のキモ姉達が思い余って実力行使に出かねないからな
まあ、今頃はもう手遅れかもしれないが…
全部本命な俺はなんの問題もありませんね
>>136 >>138 気持ちはわかるが、職人が投下しづらい空気はやめろ。
俺は近頃投下されてる作品が好きなんだ。
投下されなくなったらどうするんだよ。
文才の無い俺ができることは
「がんばったじゃないか」の意味をこめGJと打つだけだ。
第7回、投下します。
朝倉直美が右手で握っているナイフは短かった。
刃渡りは女性の手ほどの長さもなく、刃は薄い。
まっすぐに刃物を向けられている明菜からは、おもちゃのようにちゃちな代物に見えていた。
「テツ君は私の。他の誰にも、渡さないよ」
ナイフを持った右手を明菜へ向けてまっすぐに伸ばしながら、朝倉直美は言う。
「そんなもん持ち出してどうする気……って、ひとつしかないか。
私をここで刺して、殺そうとでも言うんでしょ? まったく、予想以上にとんでもない女ね」
明菜は普段通りの口調でそう言った。
だが、内心ではうつむいたままの朝倉直美に対する恐怖に怯えていた。
朝倉直美が握っているナイフは本物。
対して、明菜は携帯電話以外何も持っていない。丸腰だ。
動揺を見せないように演技するだけで、今の明菜には精一杯だった。
「言っとくけど、ここで私を刺したら、あんた破滅よ。
今まで演じてきた優等生としての自分、成績、友達からの信頼、全部失うことになる」
「うん。そうだよね」
「わかってて、そうしてるの?」
「もちろんだよ。そうでなくちゃ、わざわざこんなものを持ち出したりしない」
朝倉直美は自分の顔の前にナイフを持ってくると、その刀身を見つめた。
「もう、私決めたんだ。テツ君と、ずっと一緒にいようって。夏休みの間、テツ君に会えなくて寂しかった。
私はずっと前からテツ君のことが好きだったんだもん」
「ふーん……それ、いつから?」
明菜は1センチ、いや1ミリずつ動くようなつもりで後ろに下がった。
急な動きを見せたら朝倉直美が襲いかかってくるかもしれない。
刺激させないように会話しながら、距離をとって、逃げるしかない。
今の朝倉直美に対抗する手段は、明菜にはないからだ。
「一年生の一学期の頃。あの時からテツ君のことが好きだった」
「へえ……なんかきっかけでもあったわけ?」
「あの時の私の成績、覚えてる?」
「今と同じ、学年トップでしょ。全部で何点とってたかは覚えてないけど」
「そう。そうなると周りの人たち……先生達はどう思うかな?」
「さあ? 逆の意味で学年の女子で一位の私には経験が無いもんで」
「そっか。……実は私ね、あの頃先生に呼び出されたことがあったんだ。
内容は、大学の進学先についてのお話……っていうより、お願いかな。
どこかレベルの高い大学に入って欲しい、先生も協力するから、ってことだった」
「あんたは最初からそうするつもりだったんじゃないの?」
「ううん。私本当は、インテリアデザイナーになりたかったの。
だから、自分では専門学校に通うつもりだった。そのことについては、一年生の最初の頃にアンケートで答えてた。
けど、先生はそれが気に入らなかったらしくてね。命令するようなしゃべり方で、大学へ行けって言われた」
「ふうん。で、それとテツ兄がどう関係するの?」
「放課後ね、先生にくどくど言われた後、教室に戻ったの。かばん置いたままにしてたから。
もう最悪の気分だった。自分のやりたいことを否定されたんだもん。
どうしてもデザイナーになりたかったわけじゃないけど、お父さんみたいに弁護士にはなりたくない。
だから自分が興味を持てることを見つけたっていうのに、先生は否定した。
嫌な気分で教室に戻ったらね……テツ君が居たの」
朝倉直美が、ここで顔を上げた。いつもと変わらない笑顔で笑っている。
たった今右手にナイフを持っているというのに、まったくそのことを意識していないようだ。
普段明菜が目にしている朝倉直美、そのままだった。
しかし、普段と変わらないことがかえって明菜の恐怖を煽った。
普段と変わらない日常の中に、狂気が潜んでいる。
朝倉直美の中には、狂気が棲み着いている。
「そのころの私、テツ君とはただのクラスメイトとしてしか意識してなかった。
ただちょっとだけ成績のいい男の子、ぐらいにしか思ってなかった」
「そういえば、そうだったわね」
一年前、哲明と明菜と朝倉直美は同じクラスにいたのだった。
明菜は哲明をずっと見ていたため、哲明によく接近する女をすぐに見つけることができた。
そして、一年生の一学期のころまで哲明と朝倉直美はほとんど接点がなかった。
哲明と朝倉直美が仲良くなり出したのは、一年生の二学期ごろからだった。
「もちろんそこでテツ君に会ったからってなにかがあったわけじゃないよ。
ただね、先生にいろいろ言われたあとで見るクラスメイトの顔は、なんだか安らぐなあ、って思っただけ」
「テツ兄の顔を見てると平和ボケしそうなのは事実だから、それも無理無いかもね」
「その次の日も、私は先生に呼び出されて進路についての指導を受けた。
でも、その日の放課後もテツ君は教室にいた。どうしてなのかは、わからないけど」
明菜はふと思い出した。
哲明が放課後に残ることはよくある。それは姉から呼び出しを受けているからだ。
なぜか知らないが必ず下駄箱に手紙を入れる、という形で哲明に呼び出しをかける姉は、
放課後の教室を待ち合わせの場所に指定していた。
明菜は無論姉の行動を止めようとしたのだが、知らぬ間に手紙を入れていく姉のせいでいつも失敗している。
姉が哲明を呼び出すという行為がまさかこんな展開を生み出すとは、明菜にとっては予想外だった。
「もしかしたらテツ君は、誰かに呼び出されて教室に残っていたのかもしれない。
それはもしかしたら女の子からの告白の待ち合わせだったのかもしれないけど――私はそれでもよかった。
先生に何か言われても、放課後になればテツ君に会える。それが嬉しかった」
「なるほど。それからテツ兄のことが好きになりだしたってわけね」
「違うよ。テツ君に進路のことで相談するようになってから。
私、どうすればいいのかわからなかったんだ。自分の就きたい仕事は夢というほどじゃない。
だったら、先生の言うとおりにしてもいいんじゃないかな? って、テツ君に言ったの。
そしたら、テツ君なんて言ったと思う?」
「私が知るわけ無いでしょ」
「自分のやりたいことをしたほうがいい、って言ってくれたの。
簡単な答え、ありふれた答え、って思ったけど、私にとってはそれが一番聞きたかった言葉だった。
お父さんとお母さんは何も言ってくれないし、先生は進路を押しつける。
私の味方をしてくれたのはテツ君だけだった。――だから、私はテツ君のことが好きになったの」
誇るように、朝倉直美は言った。
「だから、テツ君を手に入れるためなら、私はなんだってするつもりなの。
それこそ、明菜ちゃんをこの場で傷つけてでもね」
朝倉直美は右手を持ち上げた。ナイフの先端が、明菜へと向けられる。
その刃は震えることなく、離れた位置にいる明菜の顔の中心を捉えていた。
「本気……みたいね」
「うん。どうしようもなく、本気。どうなったっていいもの。優等生としての評価も、進学も。
テツ君がいたから今まで持ち続けていられたものばかりだから」
「私が死んだ、って聞いたら、テツ兄悲しむだろうなあ」
「最初のうちはそうだろうね。だけど……すぐに忘れさせてあげるから大丈夫。
明菜ちゃんのことも、先生のことも。私のことしか考えられないようにしてあげるの。
テツ君を私の部屋に閉じこめて、ベッドに縛り付けて、一緒に寝るの。
私、いっぱい、いっぱい勉強したから、絶対に毎日満足させてあげられる」
「あんたなんかに、テツ兄がなびくとでも思ってるの?」
「もちろん。証拠だってあるよ」
朝倉直美は自分の携帯電話を取り出すと、明菜に向けた。
画面に表示されているのは、哲明と朝倉直美が腕を組み合っている画像。
写真の中の朝倉直美は、今このときと同じ笑顔を浮かべていた。
「ほら、この写真」
「その写真は、あんたが無理矢理テツ兄と腕を組んだ写真でしょ? それが何の証拠に……」
「この時のテツ君の顔、照れてるでしょ?」
朝倉直美の言うとおり、画面に映っている哲明の顔は困った顔をしていたが――顔色は赤くなっていた。
そして目線はカメラではなく、あらぬ方向へ向けられている。
哲明が照れている様子は、しっかりと写真に写っていた。
「わかるでしょ? テツ君が、私に抱きつかれて喜んでいるってこと。
2人はどんな関係? って写真撮ってくれた人に聞かれて、私が恋人です、って答えたら、
テツ君すっごく恥ずかしそうにしてたもん」
「なによ、そんなの。私なんか、テツ兄に昨日の夜抱いてもらったのよ?」
「それ、証拠ないじゃない。さっき明菜ちゃんが送ってきた写真、あれなんかテツ君が寝てるときに簡単に撮れる。
そこにテツ君の意志があった? 本当にテツ君から抱きしめてくれた?」
「う……」
明菜は言葉をつぐんだ。否定できない。朝倉直美の言葉は真実だ。
明菜がひるんでいる隙に、朝倉直美が言葉を続けていく。
「兄妹って、本当にずるい。子供のうちはずっと一緒に居られるし、自立するまでは一緒に住まなきゃならない。
しかも、明菜ちゃんは双子。テツ君とそっくりの顔をしてる。実はね、私それが一番許せないんだ。
テツ君とほとんど同じだなんて、許せない。先生以上に、許せないよ。
……ねえ、明菜ちゃん。私、お願いがあるんだ」
「なに、よ」
「明菜ちゃんの中の、テツ君を全部頂戴。テツ君の記憶、テツ君とそっくりの顔、テツ君と同じ血」
「はあ……っ?!」
「そうでもしなくちゃ、おさまらないもん。この、汚い嫉妬心。
……今まで我慢してたのになあ。一度吐き出すと、止まらないね」
「私の中のテツ兄を、全部あんたに……?」
「そう。大丈夫、痛いのは少しの間だから」
「ふっ……ふふっ、あっはははは……」
明菜の口から笑い声が漏れた。口を押さえてはいるが、それでも声は抑え切れていない。
こらえきれず、明菜は廊下に手と膝をついた。
突然笑い出した明菜を見下ろして、朝倉直美は顔をしかめた。
「何がおかしいの、明菜ちゃん」
「何がおかしいって……? あんたの言ったことの、ふっくくく……馬鹿さ加減がね……あはははははっ!」
「私、本気だよ? 本気で明菜ちゃんを壊しちゃうよ? できないとでも思ってる?」
朝倉直美の言葉には応えず、明菜は首だけを振った。
「そうじゃない。そうじゃなくってさ。――久しぶりに思い出したのよ。この感覚」
わけがわからない、といった顔で朝倉直美は首をひねる。
「私の中のテツ兄を奪う? 私からテツ兄を奪う? そんなこと、絶対にさせないから」
明菜はゆっくりと立ち上がった。
正面から朝倉直美のナイフと向き合う。先ほどまで残っていたはずの恐怖心など、微塵も感じられない。
「テツ兄は私と姉のものだけど、本当は私、テツ兄を独占したいのよ。だって、昔はそう思っていたんだから。
テツ兄のお願いで3人一緒に仲良くしてるけど」
「テツ兄テツ兄って、軽々しくテツ君のことを呼ばないで」
「軽々しいのは、あんたの方よ。朝倉直美」
明菜が一歩足を動かした。後ろではなく、朝倉直美の方向へ向かって。
「テツ兄にくっついていいのも、テツ兄とデートしていいのも、全部私だけ。――いえ、私と姉だけ。
気に入らないのよ。相談したのがきっかけで惚れたとか、そんな理由でテツ兄に近づいてっ!
あんたなんかに…………あんたなんかに、テツ兄は渡さない!!!」
2人の会話はそこで終わった。
片方は哲明が欲しい。そしてもう片方も哲明が欲しい。
どちらもそれを譲るつもりはない。
こうなってはもう、どちらかが諦めるしかない。
そして、朝倉直美も明菜も諦めるつもりはない。
だから、2人は単純な形での決着を望んだ。
――最後まで生き残った人間の勝ち。
朝倉直美はナイフを順手に握り、体の前に構えた。
明菜は飛び込んできた瞬間に携帯電話を投げ牽制し、取り押さえようと待ち構えた。
そして沈黙。場に遠くから聞こえてくる生徒達の声と――階段を駆け上がってくる音が響く。
2人はその足音を気にも留めなかった。場の緊張感が、下手に動くことを許さなかった。
だから、足音の主の正体に気づくのが遅れた。
その人物は、階段を上がり切った途端に、明菜と朝倉直美の間に流れる尋常ではない緊張感に気づいた。
女2人がにらみ合っていて、しかも片方はナイフまで持ち出しているのだ。
2人に関係の無い人物であれば、その場で回れ右して階段を下りていったことだろう。
だが、階段を上ってきた人物は、引き返すどころか2人の間に割って入ったのだ。
明菜と朝倉直美が驚きの表情を見せる。
「テ、テツ兄! ……なんで、ここに……」
「テツ君…………」
「明菜……朝倉さん」
闖入してきたのは、哲明だった。
朝倉直美と向き合い、明菜に背を向ける形で両手を広げて立っている。
その顔は緊張感に満ちている。2人の間に流れている空気を敏感に感じ取ったからだった。
「2人が教室にいないから探しに来たんだよ。5時限目は自習だったから」
「なんで、わざわざ探しに……」
「さっき、俺と明菜が……キスしようとしてる画像を見せられてさ。明菜を問い詰めようと思ったんだ。
あんな写真、明菜じゃないと撮れないだろ? だけど送ったのは明菜じゃなくて俺だって言うから、
わけがわかんなくってさ。おかげで探しにくるきっかけになったから、いいけど」
「来ない方がよかったのに。今の朝倉の様子を見れば、今がどんな状態かわかるでしょ?」
明菜の言葉に対して、哲明は振り向かないままうなずいた。
正面に立つ朝倉直美の右手、そこに握られているナイフを見る。
あまりにも小さなナイフだった。だが、そのナイフの存在だけでもこの場の緊張感を説明するには十分すぎた。
「朝倉さん」
「なに、テツ君」
「どうしてこうなったとか、どっちが悪いのか、とかは後で聞く。そのナイフを、俺に渡してくれ」
「……どうして? あ、テツ君が明菜ちゃんを壊してくれるの?」
「壊す?」
哲明の顔が疑念に歪む。朝倉直美の言っていることの意味がわからなかった。
しかし、壊すという言葉と、ナイフを明菜に向けている状況から、意味はすぐに浮かんできた。
「そんなこと、俺はしない」
「妹だから?」
「妹じゃなくても誰が相手でも、人を傷つけたりはしない――したくない」
「そうだよね、それが普通。でももう、今は普通の状態じゃない。異常なんだよ」
「……いや、まだ戻れる。朝倉さんがそれを手放せば」
「戻らないよ。私、明菜ちゃんが羨ましくて、憎くて、どうしようもないんだもの。変わりようがないよ」
「その気持ちは変わらなくてもいい。ただそのナイフを放してくれるだけでいいんだ。それだけで、いつも通りに戻れる」
「……いつも通り?」
朝倉直美はここで、唐突に悲しそうな顔を見せた。
薄く笑い、目を細めた。視線は哲明の目に固定されている。
「テツ君は、いつも通りが好き?」
「うん」
「私は嫌い。だっていつも通りって、テツ君の隣に明菜ちゃんがいる、あの状態でしょ?
私ね……今まで黙ってたけど、テツ君のこと好きなんだよ」
「……え」
突然の告白に、哲明は驚いた。驚かざるをえなかった。
朝倉直美が自分の恋人だったらいいかもしれない、と考えたことは何度かある。
だがそれは諦めを込めた想いだった。憧れからくる想いのようなものだった。
その相手に告白、ましてやこんな状況でそれをされるとは思わなかった。
「好きで、好きで、好きで。どうしようもないの。テツ君の隣にずっといたいの。
だけど、テツ君の隣にはいつも明菜ちゃんがいる。そしてテツ君は明菜ちゃんにとっても優しい。
そんなの、もう見てられない。耐えられないもん」
「だけど、それは兄妹だから当然のことで」
「関係ないよ。兄妹だけど、テツ君は男。明菜ちゃんは女。男と女が一緒にいる。
私にはそういうふうにしか考えられない。ましてや、担任の先生がお姉さん。
しかも、2人ともが兄、または弟を見る目をしてない。もうめちゃくちゃだよ」
「……考えすぎだ」
「私の考え過ぎだったら、本当によかった。でもそんなことはない。考えすぎだなんてことないんだよ、テツ君」
朝倉直美がナイフを哲明へ向けた。足を一歩踏み出すと同時、凶刃が哲明へ近づく。
その行動がどういう意味なのか、哲明にはわかっていた。
――そこをどかなければ刺す。
だが哲明は妹をかばうように両手を広げているだけで、顔色を変えない。
一歩もそこから動かない。
「やめてくれ。どんな理由があろうと……明菜が傷つけられるのを放ってはおけない」
「どうしても?」
「どうしてもだ」
「ますます許せないな……そんな必死なところを見せられたら。
どかないんなら、テツ君を気絶させてでも、私はやるよ」
「俺を刺してっていうこと?」
「そうだね、そうしてもいいよ。テツ君が生きて居さえすれば、それでいいもん」
「なっ……! 朝倉っ! あんたいい加減にしろ!」
明菜が哲明を強引におしのけて前に出た。
明菜の睨みと怒号が、朝倉直美へ向けられる。
「あんたテツ兄の気持ちをなんにも考えてない! 生きてさえいればそれでいい? ふっざけんじゃないわよ!」
「だって……そうでもしなければ、テツ君は私のこと見てくれない。
全部明菜ちゃんと、先生のせいだよ……2人がいなければ! テツ君は私のこと見てくれる」
「人を傷つけるような女になびくほどテツ兄は馬鹿じゃない! 甘く見るな!」
「そんなの……テツ君が私だけを見てくれるようにすればいいだけ」
突き出されていたナイフが、唐突に後ろへ引いた。
しかしそれは刃を収めるためのものではない。
朝倉直美が威嚇するのをやめたのだ。
すなわち、その刃を振るうための準備だった。
「そのために、こうするの。明菜ちゃん、バイバイ」
ナイフを腰に構えたまま、朝倉直美が突進した。
進路の先にいるのは、明菜。
だが、最初から気が立っていた明菜は突然の動きにも反応することができた。
足を一歩引き、朝倉直美との距離を離す。
目の前に迫るのは、うつろな目をした無表情。
朝倉直美を迎え撃とうと、明菜は拳を構えた。
――一瞬の既視感。
明菜の身に、寒気と後悔が甦ってくる。
このままぶつかり合えば、どうなるだろう。
刃物を持っている人間、素手で待ちかまえる人間、どちらが倒れるだろう。
答えはどちらでもなかった。
明菜は、どちらも倒れはしないと気づいた。
今も昔も、目の前の空間に飛び込んでくる人間がここにいると、その人間は必ずそうするのだと、思いついた。
目の前に、兄の背中が見えた。
握りしめていた拳から力を解こうとするわずかな時間。
その短い時間に、哲明の体がわずかに揺れた。
「テ、ツ……君……?」
朝倉直美の声が聞こえた。声は固かった。そして震えていた。
突然、視界が開けた。哲明の体が倒れたのだ。
視界の中にいるのは朝倉直美だった。
彼女の右手も、左手もからっぽだった。朝倉直美は何も持っていなかった。
代わりに、赤い液体が手に付いていた。
それが血であると気づいた瞬間、明菜は膝の力を抜き、その場にくずおれた。
声は出ない。右手を、倒れている兄の背中へと伸ばすだけ。
今の明菜にはそれしかできなかった。
「……テツ、にい……ちゃん……?」
兄が倒れている姿を見るのは、2回目だ。
1回目は、かつて自分が兄を刺してしまった。
そのときの兄は、苦しそうな顔をしていた。お腹から大量に血を流していた。
兄の血は、まだ小さかった自分の手を真っ赤に染めていた。
今の朝倉直美の手がそうであるのかは確認しようがない。
また兄が倒れてしまった。きっと血を流している。早く助けなければ。
けれど、明菜の膝は折れたまま動こうとはしてくれなかった。
朝倉直美はふらふらと、後ろへと下がっていた。
その背中が、手すりに付く。
離れた位置にいるのは、哲明と、彼の妹の明菜。
哲明はうつぶせに倒れたままで動かない。明菜は膝をついて力なく手を伸ばすだけ。
自分の手を見下ろし、何も持っていないことに気づき、朝倉直美は目を疑った。
あれだけしっかり握っていたはずなのに、どこへいってしまったのか。
いや――わかる。
いきなり目の前に飛び込んできた哲明。自分は止めようもないまま、勢いよく右手を突き出した。
その結果、哲明は倒れた。自分の手には、哲明の血が付着した。
つまり。
「私が、テツ君を……刺した……」
朝倉直美は自分のしたことに後悔するのではなくて、この結果を信じなかった。
自分は明菜に刃を突き立てようとした。
あの薄い左胸に突き刺せば、心臓まで刃が達するはずだった。
しかしそうはならなかった。
実際は、哲明の腹にナイフが刺さった。
もしかしたら、腹ではなくみぞおちかもしれない。
朝倉直美は全力で刃を突き出したのだ。
必ず、胴体のどこかに刺さったはずだ。
こうなるはずではなかった。
今頃、哲明の倒れている場所には明菜が倒れているはずだった。
自分はその結果を導くために行動したのだ。
「なんで、うまくいってないの……?」
朝倉直美の行動は、一つも思い通りの結果をもたらさなかった。
哲明との既成事実を作るために、何度も考えて練った策は、明菜に見破られた。
明菜に向けて振るったナイフは、哲明の腹部を貫いた。
何かがおかしい。朝倉直美はそう思った。
「嘘だよ、こんなの。現実じゃないよ。きっと、そう――夢だよ、これは」
朝倉直美は現実逃避した。
そうすれば、倒れている哲明も、顔面蒼白の明菜も、夢の産物だと考えることができた。
首だけで後ろを振り返る。背後にあるのはコンクリートでできた手すり。
身を乗り出して見た視線の先――下には、地面があった。
現実であれば、そこに向かって落ちれば死ぬだろう。
だが、自分は夢を見ているのだ。
だから、落ちて、目を覚ました時、そこは自分の部屋のはずだ。
そこまで考えて、朝倉直美は手すりの上に乗った。
手すりの上で立ち上がり、目を閉じる。
夢の中とはいえ、やはり落ちるのは怖い。
けれど、落ちるのは一瞬だ。それさえ過ぎれば、いつもの柔らかいベッドの上で目を覚ます。
だから、穏やかな気持ちで、朝倉直美は後ろへ向かってジャンプした。
その瞬間、彼女は愛しく想う男の声を聞いた。
男の声に深い安らぎを覚えながら、朝倉直美の意識は闇へと落ちていった。
今回はここまで。
次回で終わる予定です。
リアルタイムGJ
また刺されるテツ兄
そして自滅する朝倉さん……
う〜ん救いがないw キモ姉妹に手を出したのが運の尽きか
GJ!!おもしろかった!
それにしても、朝倉がテツ兄を好きになった理由ってなんかあっけないというかなんていうか…
別にテツ兄じゃなくても大半の人間は、相談されたらテツ兄と同じこと言うと思うぞ…
テツ兄を好きになったのは偶々で他の男に聞いてればその男を好きになってたんだろうなぁ…
そうすればこんなことにならずにすんだのに…
GJ!
なんてこったい朝倉さん!
GJ!朝倉さんやテツ兄、明菜の心情が印象的でおもしろかったよ。って朝倉さぁーん(;゚Д゚)
明菜は朝倉さんを追い詰めることで間接的とはいえ、1回目と同じくテツ兄を傷つけてしまったわけか
人を傷つけた朝倉さんの姿も過去の明菜そのものだし、朝倉さんだけが死んだら誰も救われなさそう…
>>155 朝倉さんみたいなヤンデレ系に限らず、特定の相手との恋なんて偶然の積み重ねの産物だからな
例え偶然だったとしても朝倉さんにとっては運命のようなものだったわけで
朝倉さんは某所でインターフェースとして静かに暮らして欲しかった…
南無。。。
非エロ投下します。
宮入智恵が死んでから二週間、その両親に急かされて、学校側は夕里子とその周辺が宮入をいじめていなかったか調べたが、結局何一つ証拠は出てこなかった。
夕里子に対する心象は教師生徒問わず良好で、級友たちはみな、夕里子を庇う発言をしていた。
何かの間違いだろうという意見が大半で、学校側も何事もなかったという結論に落ち着きつつあった。
しかし、智恵の両親はそれでは収まらず、毎日のように校長室に押しかけた。
また、夕里子の級友たちは夕里子の人となりを知っていても、他の学年、他のクラスの者たちは知らない。
夕里子が廊下を歩けば、疑いと軽蔑の眼差しを向けられるのが、ここ二週間の常であった。
そしてその視線は、隣を歩く陽一にも向けられた。
「ごめんなさい……私のせいで」
「別に夕里子さんのせいじゃないだろ。気にしなくていいよ」
「でも、陽一さんまで変な目で見られることになりますし……学校の中では一緒に居ない方が良いのでは……」
「……」
陽一は無言で夕里子の手を握り、そのまま堂々と廊下を歩いた。
「え、あ、あの、陽一さん……? 手を握ったりすると、陽一さんが私の恋人だって知られてしまいますよ?」
「何か問題があるの?」
「いえ、だから、その……陽一さんまでいじめっ子の仲間だと思われてしまいますよ?」
「問題なし。あいつらが恥ずかしがって目を逸らすくらいに仲良くしてしまおう」
陽一はますます強く夕里子の手を握る。
夕里子は顔を上気させ、目を潤ませて「ほぅ……」とため息をついた。
「よ、陽一さん」
「ん?」
「私、今とっても陽一さんに抱きついてしまいたい気持ちなんですが……よろしいですか?」
「それはさすがに人前ではよそうか……」
夕里子はぐっとこらえたが、結局陽一の腕に抱きついて、ちらりと陽一の顔を窺った。
陽一は何も言わない。
そのまま二人は寄り添うようにして廊下を歩いた。
新学期が始まってからずっと、綾は教室ではなく中庭で昼食をとっていた。
陽一と夕里子を中心に、縁や夕里子の級友たちが集まって昼食を食べている席に、綾と小夜子が同席した形だった。
小夜子は皆で食事をとることを喜んだが、綾の目的はただ一つ、陽一と夕里子の監視だった。
自分の作った弁当を差し置いて、夕里子の作った弁当を食べられたりしたら、たまったものではない。
必要以上にべたべたするのも防がねばならなかった。
だから、その日中庭に現れた陽一の腕に夕里子が抱きついているのを見て、綾ははらわたが煮えくり返る思いだった。
「夕里子ってば、やるじゃないの!」
「え……あ……いえ、これは、その……」
級友からの冷やかしの声に、夕里子は顔を真っ赤にするも、陽一から離れることは無い。
寄り添うようにしたまま陽一と夕里子は隣り合って座り、弁当を広げ、談笑の輪の中に加わった。
学校全体からの重い視線を跳ね返すかのような明るい会話の中、綾は一人黙考し、深く思考の海を漂っていた。
(日に日にお兄ちゃんと夕里子さんが仲良くなっていく……)
陽一を見ると、温かな表情で夕里子と言葉を交わしながら、食事をとっている。
そして先ほどの、二人寄り添っての登場。
陽一と夕里子がより緊密な関係となっているのは間違いなかった。
(どうして……)
陽一が夕里子と付き合い始めてからのことを思い返してみる。
綾が夕里子を批判するのを陽一が庇い、綾の企てによって夕里子に害が出るのをまた陽一が庇うという構図。
結果二人はより互いを信じ合い、結びつきを強めているように思えた。
(何よ……これじゃ私、ただの当て馬じゃない)
自分自身に対するどうしようもない怒りと、悲しみと、虚無感が同時に襲い掛かってくる。
自分の無能さが許せなかった。
なぜここまで上手くいかないのか、何が悪かったのか。
綾は、集団の端で陽一と夕里子の仲睦まじい姿をにこにこと眺める三つ編みの少女を見た。
(宇喜多縁……あの女がいたから……)
縁がいたせいで、陽一と夕里子は付き合うことになった。
縁がいたせいで、夕里子を殺すことができずにいる。
縁がいたせいで、夕里子を陥れることに失敗してしまった。
(どうすればあの女に邪魔されず、お兄ちゃんを取り戻せるんだろう……)
この二週間、綾は縁について調べた。
うまく状況が揃ったら殺してしまおうとも考えていた。
しかし、機会は訪れなかった。
縁は、駅のホームでは必ず白線から一メートル置いて立ち、帰り道は人通りの多い道を通った。
もともとそういう習慣を持っていたのか、あるいは何かを警戒してのことなのかはわからない。
ともかくも縁は、綾が殺害をためらうに充分な用心深さを持っていた。
また、その機転は綾も認めるところだったし、運動神経も優れているという話だった。
(縁は簡単には消せない。縁が守っている限り夕里子も消せない。この状況でとれる手は……)
方法はいくつかあった。
縁と陽一の接触を断ち、縁が夕里子の弁護をできないようにして、夕里子を貶めて陽一に振らせる方法。
あるい陽一と夕里子、当人たち自ら、別れる気にさせる方法だった。
前者の難易度は明らかに高い。
縁は、陽一から遠ざけても、気付いたら傍に湧いて出ているような気がした。
(だとしたら、お兄ちゃんと夕里子に自分たちから別れる気にさせる方法しかないわけだけど……少し危いのよね)
自分が捕まっては元も子もない。
いつしか陰鬱な表情の中に険悪な視線を走らせていた綾に、夕里子の級友の一人が声をかけた。
「綾ちゃん? なに暗い顔してるのよ」
ショートカットの、活発な少女は、一年からの夕里子の友人で、名を佐久間愛といった。
「佐久間さん……私のことならお気になさらず。元々こんな顔なもので」
「そうなの? 陽一君を夕里子に取られてがっかりしてるとかじゃなくて?」
ぴくりと、綾はこめかみを震わせる。
「はは……おかしな事を言いますね」
感情の高ぶりを気取られぬよう、うっすらと笑った。
「夕里子さんの最近の風評のせいで兄も色々と言われているのが気にかかりますが、それ以上は特に思うところはありませんよ」
「ふーん……?」
「何か?」
「綾ちゃんて、お兄ちゃん大好きっ子だって思ってたから、意外だなって」
「誰がそんな馬鹿なことを?」
「誰がっていうか……ほら、綾ちゃんよく陽一君のクラスに遊びに行ったりしてたみたいだし」
「用がある時に行っていただけですよ。それ以上の意味はありません」
ショートカットの級友は、綾の言葉ににやにやと笑いながら、
「ほんとにぃ?」
とからかうように聞いた。
「本当ですとも」
「じゃ、陽一君と夕里子がこんな事しても、平気でいられる?」
佐久間は綾の背後に回り、突然制服の上から胸を揉んだ。
「……!」
「ほらほら。こんなことしちゃっても大丈夫?」
「な、何を……!」
払いのけようとするも、箸と弁当を両手に持っているので、ただ身を捩るだけになってしまう。
そんな綾の様子がおかしいのか、佐久間はますます強く綾の胸を揉んだ。
「うっふっふ。ほーら、気持ちいい?」
「や、やめてください!」
「夕里子と陽一君も付き合って二ヶ月だからね。そろそろこういうこと始めてもおかしくないかもよ?」
「そんな……と、とにかく、やめてください!」
助けを求めて、綾は陽一の方を見る。
陽一は、夕里子と何か会話を交わしながら食事をとっていた。
幸せそうな笑顔を浮かべて。
綾の声には気付かずに。
(お兄ちゃん……)
キンと、胸の中が凍りつくのを、綾は感じた。
(お兄ちゃん……気付いてないの?)
佐久間の悪戯に、やめて、と細い声を絞り出す。
二度、三度と、身を捩って抵抗する。
それでも陽一は、綾の方を見ることは無かった。
夕里子や、夕里子の級友と語り合い、時に照れたように顔を赤らめ、頬をかいた。
(お兄ちゃん、私を、見てないの?)
綾は唇を震わせ、
「お兄ちゃん……」
と小さく呟いた。
「ちょっと佐久間さん! いいかげんにしてください! 綾が嫌がってるじゃないですか!!」
佐久間を止めたのは、小夜子だった。
二人の間に割って入るようにして、佐久間を綾から引き離す。
本気で怒った様子で、佐久間に物申した。
「やりすぎです! 同性でもセクハラになるんですからね!」
「あ、ははは。ごめん。そんなに怒らないでよ」
「謝るのなら、私じゃなくて綾に謝ってください」
小夜子は俯いたまま何も言わない綾の肩を抱いて、
「大丈夫?」
と声をかけた。
綾は、やはり何も言わない。
ただ、その瞳から、ぽろぽろと涙をこぼしていた。
「綾……」
小夜子はキッと佐久間を睨みつけた。
「謝ってください! 先輩だからといって、ひどすぎます!」
「え……」
佐久間もようやく綾の涙に気付き、ばつの悪い顔をする。
「ごめん……ちょっとした冗談のつもりで……ここまで嫌がるとは思わなくて」
「嫌に決まってるじゃないですか! 佐久間先輩はいきなりセクハラをさせて喜べるんですか!?」
「う、まあ、そんなわけは無いんだけど……」
二人のやりとりを遠くに聞きながら、綾は涙を流し続けた。
胸を揉まれたことなど、もはやどうでも良かった。
陽一が気付いてくれない。
かつては綾の危機とあれば真っ先に駆けつけてくれた兄が、助けてくれない。
そのことが綾の胸に、冷たい杭を打ち込んでいた。
(どうしよう……涙が止まらない)
さすがに異変に気付いたのか、陽一が立ち上がって近づいてきた。
(お兄ちゃん……)
近づいているのに、それまでよりも遠く見える兄の姿。
透明な壁を介したような、不思議な距離感。
綾は、自分の心が崩れ落ちるような感覚を、確かに感じていた。
数日後、綾は、夕里子と陽一を別れさせるための策を実行に移した。
あの日の中庭での出来事以来、不思議と頭が今まで以上に冴え、何をすべきかはっきり見えていた。
(今私のするべきこと……何を犠牲にしてでも、お兄ちゃんを取り戻すこと)
これまでの綾にためらいがあったかというと、そんなことはないだろう。
しかし、それまで以上の冷徹さをもって、綾は実に手際よく事を進めた。
夜の住宅街。
立ち並ぶ家々の間に忘れ去られたように残る冬草の茂った空き地に、目隠しをされた少女が一人、転がされていた。
手は後ろ手に縛られ、口にはガムテープを貼られ、呼吸はあるもののぐったりと動かない。
傍らには、黒の上着と黒のズボンに身を包んだ綾が立ち、冷たい目で愛を見下ろしていた。
「佐久間愛……か」
綾は少女の名前を呟く。
いつものように、数日間のストーキングの末、気絶させてこの空き地に運び込んだところだった。
綾の手には、細めのスプレー缶が握られていた。
コンドームを被せた、金属の缶。
冷たい手触りは、ゴムの膜を通しても伝わってきた。
「本当は起きてから思い切りいたぶってやりたかったけど……気絶している間にやらないと、騙されてくれなそうね」
綾は愛のスカートをめくると、カッターでその下着を切り裂き、取り去った。
暗闇の、若々しい肌が白く映える。
綾はまったく気遣いを感じさせない手つきで愛の秘所を割り広げると、持っていたスプレー缶を無造作に押し込んだ。
ニチニチとコンドームが寄る音が小さく響く。
まったく濡れていない分、抵抗があったが、気にせず綾は押し込んだ。
「ん……」
愛がうめき声をあげ、身体をぴくりと動かす。
起きたらすぐに気絶させられるように、綾はスタンガンを構えなおしたが、どうやら目覚める様子は無かった。
「面倒ね……だから男手が欲しかったのに……」
ゆっくりとスプレー缶を出し入れする。
ゴムの被膜の表面には、ねっとりと血が絡みつき、わずかに地面に垂れていた。
「あら意外ね。処女だったのかしら」
綾は嬉しそうに笑い、おもちゃを弄るようにスプレー缶でグネグネと愛の膣内をかき回した。
まったく濡れていない上体で挿したせいで、膣内に傷が出来ただけなのかもしれない。
ただ、もし処女だとしたら、それは綾の目的にとって喜ばしいことだった。
「ショックが大きければ大きいほどいいものね」
五分ほど、綾は愛の膣を思うままに蹂躙して、スプレー缶を抜いた。
愛の目隠しと猿轡を取り去り、顔を露にする。
愛は眉根を寄せた表情で気を失い、股をだらしなく開いて、その膣口はぱっくりと無残に広がってしまっていた。
「汚い姿……」
ひっそりと笑い、綾はポケットからデジタルカメラを取り出して、愛の姿を何枚も写真に収めた。
「これでよし、と」
最後にスプレー缶につけていたコンドームを引き剥がし、愛の太腿に投げ捨てる。
さらに、用意しておいた便箋を一枚、胸の上に置いた。
『夕里子さんと支倉陽一を別れさせること。
別れたことの証明は、いずれかの転校を以ってする。
別れさせなかった時は、お前を犯した写真をばら撒くことになる。
警察にこのことを言った場合もばら撒くことになる』
一応、とある人物の文字を模して書いたものだった。
「さて、これでどうなるかしらね……」
まだ目を覚まさずにいる愛の手を縛っていた縄を切ると、綾は空き地を後にした。
次の日の昼休み、秋空の下、綾は小夜子と一緒に中庭に座っていた。
いつものように、夕里子の級友たちが集まり、食事を始めていたが、陽一と夕里子の姿がなかった。
「あの、お兄ちゃ……兄は、今日はどうしたんでしょう?」
「ん? ああ、何か用事があって遅れるって言ってたよ」
「まあ、そうなんですか」
綾は心の中で、よし、と頷いた。
この場に来ていないのは、陽一と夕里子に、縁、そして佐久間愛の姿もなかった。
(佐久間愛も必死になっているみたいね)
愛の思った通りの反応に、綾は冷たい笑みを浮かべる。
しかし、縁の姿が無いことが、綾の心に不安の影を落とした。
(あの女に引っ掻き回される前に、何とかしないと……)
綾は努めて冷静に尋ねた。
「兄たちが、どこに行ったかはわかりますか?」
「確か、西棟の空き教室に行こうとか話していたみたいだったけど」
もぐもぐと弁当を頬張りながら、夕里子の級友は気さくに答えてくれた。
綾は丁寧に礼をして、小夜子に弁当箱を預けて立ち上がった。
「綾……どこに行くの?」
「ちょっと、お兄ちゃんたちを探してくるわ」
「あ、じゃあ私も行くわよ」
「ううん、ここで待っててちょうだい。すぐに戻ってくるから」
返事を待たず、綾は駆け出した。
小夜子を連れて行くわけには行かない。
何しろ、今綾が敵としている相手は、小夜子の従姉なのだ。
「小夜子の前で夕里子さんを責めたら……小夜子が悲しむものね」
小夜子が夕里子の味方をしたら、綾は夕里子を責め切る自信がなかった。
「親友、か……」
スカートをなびかせて廊下を駆けながら、綾は複雑な面持ちで呟いた。
陽一たちのいる教室は、すぐに見つかった。
昼休みはあまり人の居ない西棟で、女の声が大きく響いて来たからだ。
「別れてよ! あんたたちのせいなんだから、別れてよ!」
校舎の端の空き教室から漏れてくるヒステリックなその叫びは、佐久間愛のものだった。
走る速度を緩ませ、足音を忍ばせて教室の入り口に近付く。
教室の中を覗き見てみると、愛が夕里子に掴みかかっているところだった。
「あんたたちのせいで……あんたたちのせいで、私は……あの男に犯されたんだから!」
以前の活発な表情はそこには無い。
ぽろぽろと涙を零し、夕里子を責め立てる。
昨晩は絶望の淵で過ごしたのだろう、目の下には深い隈ができていた。
「すみません……本当に……すみません」
「本当に悪いと思ってるなら、別れてよ! そうじゃないと、私はまた……」
やはり涙を浮かべて謝る夕里子に、愛はますます食って掛かる。
陽一は夕里子の傍らに立ち、何とも言えない顔で唇を噛んでいた。
縁はというと、いつもと変わらない笑顔を浮かべ、手に持った便箋を読んでいる。
昨晩綾が愛の元に残した、脅迫文の便箋だった。
「まあまあ、少し落ち着こうよ。話は大体わかったからさ」
「あんたは、他人事だと思って……何で私がこんなとばっちりを……!」
今度は縁に掴みかかる愛を、縁は正面から受け止め、優しく抱きしめた。
「大丈夫だよ、何とかするからね」
「何とかって、どうするのよ……もし写真が出回ったら……私……私……」
どうするのかという問いに、縁は答えなかった。
ただ笑みを浮かべ、愛を抱きしめる。
そこで、入り口から覗いていた綾と目が合った。
「綾ちゃん……」
「どうも……」
陽一が、夕里子が、愛が、はっと入り口の方を振り返る。
「聞く気はなかったのだけれど……聞いちゃったわね」
言って、綾は教室に足を踏み入れた。
愛は、昨晩からの心労があったのだろう、泣くだけ泣くと、床にへたり込んで何も言わなくなってしまった。
夕里子はその愛を壁に寄りかかって座らせ、介抱する。
椅子も机も何も無い空き教室の中心で、綾と縁と陽一の三人が、顔をつき合わせて話をしていた。
「なるほど……大体事情はわかったわ」
初め事情を話すことをしぶった陽一だったが、ここまで聞いてしまったのだからという綾の言葉に押しきられ、ついに全て話すこととなった。
「字体と、この脅迫の内容からするに、前に夕里子ちゃんを狙ってたストーカーの人だと思うんだけどね」
「お兄ちゃんと夕里子さんが別れるように脅迫、か……強姦までするなんて、かなりの執念ね」
縁の説明に、綾は苦々しい表情で呟く。
可哀想にと、床に座って俯いている愛を見た。
「縁さん、どうするんですか?」
「うーん……そうだねえ」
「警察にばらすと写真をばら撒く、とあるわけですし、警察には言えませんよね」
「そうなるかもね」
「だとしたら、どうするんです?」
陽一も、不安そうに縁の顔を見た。
「まあ、できることはいくつもないんだけどね」
縁は眼鏡をかけなおし、指を折りながら言った。
「結局は、脅迫文にあるとおり、支倉君と夕里子ちゃんが別れるかどうかだけど」
「なるほど。わかりやすいですね」
「わかりやすいけど、どちらが正しいかがわからないから、困るところだね」
縁は珍しく、迷っている顔をしていた。
「縁さんも、悩むことがあるんですね」
「それはそうだよ。いつも悩みっぱなしだよ」
「でも、今回はいつまでも悩んでるわけにはいきませんよね。『別れさせなければ写真をばら撒く』と、時間制限があるわけですから」
そうだね、と困ったように笑って、縁は綾を見た。
「綾ちゃんは、どうするのがいいと思う?」
「私は、お兄ちゃんと夕里子さんが別れるのが一番だと思いますけどね」
何のためらいもなく、綾は言った。
教室がしんと静まり返る。
陽一も夕里子も、綾の顔を見た。
「そうする以外ないでしょう? それとも、お友達の醜態を写真でばら撒かれてもいいんですか?」
「そ、そうよ! 別れてよ! 別れなさいよ! あんたたちのせいなんだから! 別れてよっ!」
不意に愛が顔を上げて叫び、また咽び泣いた。
「支倉君は?」
その様子を端目に見ながら、今度は陽一に尋ねる。
「俺は……別れるのは、嫌だと思ってる」
「そっか」
縁は最後に夕里子に向き直った。
「じゃあ、夕里子ちゃんはどうしたいかな?」
「私は……」
夕里子は愛をちらりと見て、そしてそのまま口をつぐんでしまった。
身を汚された悔しさと絶望に身をやつしながら、愛は憎しみを込めた視線を夕里子にぶつけていた。
「あんたたちさえいなければ……」
愛の呟きに、皆一様に俯き、黙りこんでしまう。
教室には、愛の咽び泣く声が、ただ静かに響いた。
結局、今はまだ落ち着いて話を出来る状況には無い、ということで、縁は愛と一緒に早退して愛を家に連れ帰り、綾と陽一と夕里子の三人は、昼食をとるべく中庭に向かった。
並んで歩く陽一と夕里子。
二人の間には、人一人分の距離が空いている。
その間に体を滑り込ませるようにして、綾は陽一の腕に抱きついた。
「お兄ちゃん! 元気出して!」
「綾……」
「ああは言ったけど、まだわからないわよ。縁さんが何とかしてくれるかもしれないしね」
優しく、兄を安心させるように言う。
しかし、言葉とは裏腹に、綾は今度ばかりは何をどうしても縁に邪魔をさせるつもりは無かった。
そのための策を打って行くつもりだった。
(あの女はどうにかしようとするんだろうけど……)
綾は陽一の腕を強く抱きしめた。
(必ず、お兄ちゃんを取り戻してみせるわ)
放課後、綾と陽一、そして夕里子と縁の四人は、帰り道の途中の公園に集まった。
縁からの呼び出しで、今後の方針を話し合おうということだった。
陽一と夕里子は、一緒に来たものの、やはり佐久間の件の影響からか、微妙な距離感があり、互いにどこか気まずい顔をしていた。
そんな二人の様子を静かに観察しつつ、綾は縁に尋ねた。
「私まで呼んでもらって良かったんですか? 直接の関係者でもないのに」
「家族のことだから気になるでしょうし、呼ばなくても綾ちゃんは気付いちゃうでしょ?」
「ごもっともですね」
そんなやりとりの後、縁は話を始めた。
「結論から言うと、警察に行った方がいいと思う」
え、と陽一と夕里子が同時に驚きの声をあげた。
「どういうことだ?」
「警察に知らせるべきだっていうこと。これは明らかな犯罪だから、警察に任せよう」
「ま、待ってください」
夕里子が慌てた声を出した。
「警察に行くと、写真をばら撒くと……脅迫文にはありましたよ」
「そうだね」
「だったら警察には……」
「佐久間さんのために、脅迫状に従って、警察には行かずにおこうってことかな?」
「ええ……」
「なるほど、夕里子ちゃんらしいね」
腕を組み、ふむふむと頷く縁。
「でもさ、夕里子ちゃん、そうやって脅迫された通りにするとして、支倉君とは別れるってことなのかな?」
「そ、それは……」
「同じように、佐久間さんの写真をばら撒かれたくなかったら体を差し出せって言われたら、体を差し出せちゃうのかな?」
「……」
「それが出来るのなら、私も止めはしないよ。脅迫状の送り主……森山君の思うままにずっとされる覚悟があるのならね」
夕里子は黙り込んでしまった。
「もしそれが出来ないのなら、今森山君の脅迫をはねのけても、後で森山君の脅迫をはねのけても、写真をばら撒かれる危険性に最終的に変わりはないんだから、今はねのけた方がこちらの傷が少ない分お得だと思うよ」
「でも……佐久間さんが……泣いていましたし……」
辛そうに言う夕里子に、縁は「そうだね」と同意を示した。
「私も、佐久間さんは気の毒だと思うよ。本当は、警察に知らせないで、私たちの手で森山君をどうにかできれば良かったんだけどね」
森山浩史。
かつて夕里子を愛し、ストーカーとなり、危害を加えようとまでした男。
脅迫状を残す際に、綾がその筆跡を真似た人物だった。
「その森山さんとやらの居場所がわかっているのなら、そこに行けばいいんじゃないんですか? 縁さんが追い払ったという話ですし、縁さんは彼の引越し先を知っているんでしょう?」
「それが……一昨日から帰っていないらしいんだよね。親族の方にもう連絡はとっていたんだけど」
「そうですか。うまくいかないものですね」
綾にとってはわかりきった答えだった。
なぜ綾がストーカー森山浩史の筆跡を真似ることができたのか。
綾は既に数日前、森山浩史のことを調べ上げ、接触を図っていた。
佐久間愛を陵辱するために、男の手が必要とされたからだ。
「四辻夕里子をあなたのものにしてあげる。だから協力してくれない?」
今は別の学校に通っていた森山を帰り道で待ち伏せし、そう切り出した。
かつては縁の手をわずらわせたのかもしれないストーカー、森山浩史は、綾の期待に反して普通の高校生となってしまっていた。
「僕は、もういいんだ……」
「いいって……四辻夕里子はいらないということ?」
「ああ」
「本当にいらないの? 愛する人が、自分以外の人に抱かれてしまうのよ?」
「君がどうしてこんな申し出をしてくるのかわからないけど、世の中、自分の手に入らないものだってたくさんあるんだよ」
そう言って、森山浩史は綾への協力を拒んだ。
協力を得られなかったら、綾はおとなしく諦めるつもりだった。
しかし、森山の言葉を聞いて、気がついたら綾は、森山の首を両の手で締め上げていた。
「いちいち……気に障ることを言ってくれるわね」
「……君だってわかる時がくるさ……何でも望みどおりになるなんて、そんなわけはないんだよ」
綾はますます強く首を締め付ける。
森山は、何の抵抗も示さなかった。
やがて森山の顔色が真っ青になり、綾は手を離した。
「ぐっ……ごほっ!」
咳き込んで、俯く森山を、冷たく見つめる。
「あなたは諦めたのね。好きな人を」
「初恋が最後の恋じゃないさ」
「……私は、諦められないわ。何をどうしても諦められない。自分のできることは全部やって、それでだめなら世界を変えてでも好きな人の一番傍に居たい。私が諦めるとしたら……それは私が死ぬ時よ」
「僕もかつてはそう思ってたけどね。まあ、好きにするといいさ」
首を絞めたことを咎めもせずに、その場を去ろうとする森山に、綾は声をかけた。
「どうしたら諦められるのよ」
「え……?」
「好きで好きで仕方なかったんでしょう? なのに、どうして諦められたの?」
のろのろと、森山が振り返る。
改めて見るに、何の変哲も無い男子高校生だった。
「私、あなたの話がもっと聞きたいわ」
「まあ、いいけどね」
それから森山浩史の姿を見た者はいない。
学校から帰宅せぬまま、忽然と姿を消したことになっていた。
今彼は、綾以外の誰も知らない場所に居る。
その自由を、完全に奪われて。
「ということで、私の手で見つけられない以上、脅迫された通りにするかしないかの問題になるけれど、さっきも言ったとおり、脅迫にとことん従う覚悟があるならそれでよし。
それが無理なら、今この時点で警察に行くのが、一番傷が浅くて済むよ」
どうする、と縁は陽一と夕里子に尋ねた。
「俺は……別れたくない。だいたい、こんなやり方に負けるなんて我慢ならない。だから……」
「警察に行く?」
ためらうことなく、陽一は頷いた。
「私だって、せっかく陽一さんの恋人になれたのに……別れるなんて嫌です。でも……」
唇を噛み、夕里子はぽろぽろと泣き出してしまった。
「でも……皆さんに迷惑をかけるのは、私……」
「あのね、夕里子ちゃん、迷惑をかけているのは、夕里子ちゃんじゃないよ。この脅迫状を置いていった人が、一方的にみんなに迷惑をかけているんだよ。夕里子ちゃんはむしろ被害者の一人だからね、この場合」
「でも……」
涙を流す夕里子の肩を、陽一がそっと抱いた。
「陽一さん……」
ひし、と陽一に抱きつく夕里子。
縁は二人の様子を笑顔で見つめていた。
「綾ちゃんは、これでいいかな?」
「何で私に聞くんですか?」
「ほら、お昼休みには、別れるべきだって言ってたからさ」
ふむ、と綾は腕を組んだ。
「じゃあ、言いたいことを言っちゃうわね」
「あ、綾……?」
綾のただならぬ雰囲気に、陽一が不安げな声を出す。
そんな兄を、綾は鋭い目で睨んだ。
「お兄ちゃん、夕里子さんと別れるべきよ。別れなさい」
「……!」
「佐久間さんは強姦されたあげく、その写真をばら撒かれようとしているのよ? それがどういうことかわかってるの?
そんなことをされて、この先佐久間さんがまともな人生を歩めると思ってるの? 人一人の人生がかかってると言っても過言ではないのよ?」
綾は陽一と夕里子に向けて熱弁を振るった。
「別れたくない、一緒に居たいなんて言っているけど、要は自分たちの今の心地よさを手放したくないだけじゃない。
恋愛なんていう、ただ一時の快楽のために、佐久間さんを切り捨てようとしているだけにしか見えないわよ」
「そんなことは……」
「無いなんて言い切れるの? 自分が佐久間さんの身になったとして、それでも同じことが言える?
脅迫した側が悪いんだから言いなりになるな、自分のことは気にするな、裸だろうが犯された写真だろうがいくらでも晒してくれ、なんて言えるの?」
綾は夕里子の目の前に指を突きつけた。
「あなたに言ってるのよ、夕里子さん」
「え……」
「あなたは女なんだから、佐久間さんの苦しみがわかるはずでしょ? それも、あなたを狙っていたストーカーに佐久間さんは犯されたのよ? あなたは自分が犯された姿を大衆に晒されても、平然としていられるの?」
「……」
平気なわけがない。
夕里子はただ小さく首を横に振った。
「自分に出来ないことでも、佐久間さんにはさせると、そういうわけね」
「ち、ちが……」
「どう違うのよ。佐久間さんの人生よりもお兄ちゃんとの恋愛ごっこが大事だから、佐久間さんに犠牲になってもらおうってことなんでしょう?」
さらに綾は、黙ったままで自分を見つめてくる縁の方を向いた。
レンズの向こうの澄んだ瞳と視線が交わる。
縁は、何も言い出すことなく、ただ静かに綾の言葉を聞いていた。
「……縁さんが先ほど言った、一度脅迫に従ったとして、この後ずっと従い続ける覚悟があるのかという話だけど、そっくりそのまま返すわ」
「んん? どういうことかな?」
「一度脅迫を退けたとして、この後また別の人が犠牲になる可能性は大いにあるわ。その犠牲をずっと受け入れて、脅迫を退け続ける覚悟はあるの? 佐久間さんで終わりになるなんてわからないでしょう? 警察がすぐに犯人を捕まえるなんて、どうして考えられるのよ」
綾の言葉に、陽一と夕里子の顔が青ざめた。
追い討ちをかけるように、綾は自分の胸に手を当てた。
「私も女なのよ」
「綾……」
「縁さんも女、夕里子さんの他のお友達も、女の子がたくさん。それがみんな、犯されて、脅されることになるかもしれないのよ? それでもお兄ちゃんは夕里子さんと恋愛を続けたいの? そこまでして守るべき関係なの?」
陽一は唇を噛んだ。
自分の妹が、こうして気丈に話している妹が、同じように犯され、脅迫に利用される可能性。
今になって初めて、その可能性を意識させられたのだ。
「綾……不安なのか? 俺と夕里子さんが付き合っていると」
「……さあね。ただ考えておいた方がいいと思うわよ。お兄ちゃんと夕里子さんの恋愛が、どの程度のものなのか。たくさんの人に、一生モノの傷を負わせてまで守るべき想いなのか」
綾は夕日を背に、陽一と夕里子を見つめる。
秋風に、ツインテールに結んだ黒髪が、影のように流れた。
「恋の行く末はわからないわ。どんなに懸命に守った恋でも、冷めてしまえばそれでおしまい。でも、人の傷痕は、ずっとずっと残るんだからね」
それで綾は言葉を終えた。
重く、陽一と夕里子の心に圧し掛かる言葉だった。
誰もが沈黙し、夕暮れの公園は重苦しい雰囲気に包まれた。
そんな雰囲気を取り払うかのように、縁はぱんと一つ手を叩いた。
「よし、それじゃまとめようか」
「宇喜多……まとめるって……?」
「綾ちゃんのおかげで、私の言う通りにした時の良くない点もはっきりしたから、これでどちらか選べるようになったってことだよ。うん、綾ちゃんはさすがだねえ」
縁は指を二本立てて、陽一に向かって説明した。
「脅迫を退けるか、脅迫に従うか。自分たちの想いの強さを信じられるなら前者、自分たちの想いの強さに自信が無いんだったら後者だよ」
縁の説明に、綾は不快だとばかりに舌打ちをした。
「他人を犠牲にするなら前者、自分たちを犠牲にするなら後者、でしょう。綺麗な言葉で飾り立てるんじゃないわよ」
「あはは。まあ、ぶっちゃけるとそうなるね」
「……今更だけど、縁さんは、本当、お兄ちゃんと夕里子さんのことしか考えていないのね」
「そういうわけじゃないけど、支倉君と夕里子ちゃん優先なのは確かだよ」
小さく言って、縁はまたいつものように笑った。
「まあ、縁さんの考えなんて、どうでもいいことですけどね」
呟いて、綾は陽一を見た。
縁の望む方向がどうあれ、最終的に決めるのは陽一と夕里子なのだ。
陽一は、苦渋に満ちた顔をしていた。
脅迫を退けるか、脅迫に従うか。
綾と縁の提案に、真剣に悩んでいるのが見て取れた。
(……お兄ちゃんを傷つけることは本意じゃないけど……少しの間、我慢してね)
結局悩みに悩んだ末、陽一と夕里子は警察に相談に行くことに決めた。
「俺は……こんなやり方に負けるなんて、絶対に納得できない」
そう憤りを露にする陽一に、綾は何も言わなかった。
ただ、次に打つ手をどうするか、それだけを考えていた。
強姦については佐久間本人が居なければ警察に訴えられないので、とりあえず脅迫されたことを相談するという形で、陽一と夕里子、そして縁が、警察に行った。
森山浩史という、犯人の目星もついていたので、警察はすぐにその居場所を突き止めることを約束した。
それから三日間、警察の方からは特に何の音沙汰もなく、陽一たちは普段どおりに学校に通い、佐久間愛はずっと学校を休んでいた。
四日目の朝、陽一と綾が登校すると、教師たちが何やら慌しく駆け回っていたのが目に付いた。
「何だろう?」
「何かしらね?」
ふと見ると、昇降口の、靴を履きかえる台の下に、紙が一枚落ちていた。
陽一はそれを手に取り――
「……!」
ぐしゃりと手で握り潰した。
『佐久間愛の処女30000円で買いました』
そう印字された写真のコピー。
脚を開き、ぱっくりと開けた膣口から血を流した、佐久間愛の姿だった。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「い、いや、何でもない」
陽一は動揺を隠せずに居た。
どうやら写真をプリントした紙は、学校のいたるところにまかれているようで、教師たちはその回収に躍起になっていた。
「やられちゃったね」
呆然としていた陽一に、一足先に登校していた縁が声をかけてきた。
「宇喜多……」
「本当にやるなんて、向こうも相当の覚悟なんだろうね。ちょっと驚いちゃったよ」
あはは、と縁は笑った。
「佐久間さん家の近所にもばら撒かれているみたいだね。凄い剣幕で電話がかかってきたよ」
「かかってきたよって……宇喜多、どうするんだ?」
「大丈夫。元々私の押しで警察に行ったわけだから、支倉君たちは悪く無いよ」
「いや、誰が悪いとかの話じゃなくて……佐久間は大丈夫なのか?」
「どうだろう。少し様子を見に行った方がいいかもね」
申し訳なさそうに、縁は言う。
その様子に、綾は思わず笑い出しそうになってしまった。
(頼りになる、誰よりも信頼できる友人、か……)
綾は前に陽一が縁を評した言葉を思い出した。
縁が信じるなら、自分も信じると、陽一は言った。
(頼りになるはずよね。縁は、いつもお兄ちゃんの望むように物事を動かしていくもの。そうと気付かれないよう、色々なものを切り捨てて)
智恵の遺言の時も、愛の先日の懇願についても、縁はそれらしい理屈をつけてはねのけたが、やっていることは要は切り捨てだ。
縁は、すべてにおいて冷徹なまでに、陽一と夕里子のことを優先しているに過ぎなかった。
今も、佐久間のことを言われて心配そうな顔をして見せているものの、縁に佐久間を哀れむような思考があるわけないと綾は考えていた。
(縁にしてみれば、これでお兄ちゃんと夕里子に対する脅迫の種は消えたわけだから、満足の行く結果なのよね……)
元々これが、縁の狙った結果なのだろうと、綾は思った。
警察は当てにならないと以前言っていた縁が、本気で警察を頼りにするわけが無い。
やはり、佐久間を切り捨てて陽一と夕里子を守ったということなのだろう。
綾は陽一の顔を見る。
陽一は青ざめて、何に対してか、怒りを露にした表情をしていた。
そこには、紛れも無い、後悔の色も見えた。
「お兄ちゃん……お兄ちゃんたちが決めたことだからって、そんなに気にしちゃ駄目よ」
そう言って、綾はにこりと笑った。
佐久間愛の噂は、あっという間に全学年に広がった。
今日初めて話を知ったという両親も押しかけてきて、陽一と夕里子は、教師たちにこってりと話を聞かれることになった。
いつの間にか脅迫文の内容も噂として流れ、陽一と夕里子は、智恵の自殺の時のように周囲からの好奇の視線に晒されることとなった。
脅迫した者が悪いのか、脅迫者に睨まれた者が悪いのか、ということで、さすがに表立って二人を非難する生徒はいなかったが、それでも漠然と、重苦しい雰囲気が、行く先々で付いてまわった。
仲間の一人が被害者ということで、いつも中庭で一緒に昼食をとっていた面子もどこかよそよそしく、その日は四人で、例の空き教室で食事をとることになった。
「これで……よかったのでしょうか」
ぽつりと呟く夕里子。
陽一と付き合い始めた頃の笑顔からは想像もつかない、憔悴した表情だった。
「前も言ったけど、悪いのは脅迫をした側なんだから。夕里子ちゃんが気に病む必要なんて、全然無いんだよ」
「……」
縁の励ましに、陽一も夕里子も無言で弁当をつついた。
じわじわと精神的に追い詰められつつある二人の姿に、綾は密かにほくそえんだ。
(縁……あなたの言うことは、確かに間違っていないけどね。この二人は、それでも罪悪感を感じてしまう人たちなのよ)
元気の無い陽一の背を撫でて、
「お兄ちゃん、大丈夫?」
と気遣う様子を見せる綾。
陽一は、やはり無言で頷くだけだった。
(……大分堪えているみたいね)
周囲の人間が傷つき、人間関係が壊れていけば、人はどうしても心を削られる。
縁が言葉でごまかしても、完全に罪悪感を拭い去ることはできないのだ。
(まだまだ、追い込ませてもらうわよ、お兄ちゃん……)
二人を別れさせるまで、追撃の手を緩めるわけにはいかない。
綾は、切れ長の目をますます鋭く細め、兄とその恋人の姿を見つめた。
(この二人にさらにダメージを与えるには、佐久間愛を自殺させるか、他の人間を同じように被害に遭わせればいい……でも……)
佐久間愛を自殺させるのは、そう簡単にはいかないだろうと思えた。
愛の事件を表沙汰にしたせいで、愛の家の周囲などは警戒が高まることになるだろう。
そして、こうして写真が出回ってしまった以上、愛が家から出てくることもしばらくは無い。
(自殺に見せかけて殺すことは、できないと考えた方がいい。だとしたら、別の方法を考えるしかないわね)
次の日も、その次の日も、愛の親は学校を訪れた。
さすがに父親は仕事もあるのだろう、一日目のみの来校だったが、母親は毎日放課後近くになると車で学校まで乗り付けていた。
陽一と夕里子について抗議をしているのか、あるいは転校などについて話し合っているのか、定かではない。
しかし、娘のために毎日学校にやってくる母親の必死な姿は、綾の目に留まるに充分なものだった。
「お兄ちゃん、今日は先に帰ってて」
放課後、綾は陽一たちと一緒に帰らず、学校から少し離れた路地裏に潜んだ。
佐久間愛の母親が、学校から車を走らせて帰る道の脇の路地裏である。
人目が少ないこと、曲がり角の直後であることなど、いくつかの条件から選んだポイントだった。
「本当、私も必死よね……」
秋が深まり、日が沈むとそれなりの肌寒くなる。
自分の体を腕で抱き、寒さをこらえながら、綾は自嘲気味に呟いた。
「でも仕方ないわよね。好きで好きで仕方ないんだもの」
先日、自分が陽一に言った言葉が思い起こされた。
「『たくさんの人に、一生モノの傷を負わせてまで守るべき想いなのか』……」
綾はじっと自分の手を見た。
路地裏に、ビルとビルの隙間から細く西日の光が差し、綾の手のひらを橙赤に照らす。
「今更よね」
と誰にともなく綾は言った。
「私にとっては、この世界の何よりも大切な想いだもの。それに……」
もう後戻りは出来ないところまで来ている。
そのことが、綾には充分すぎるくらいにわかっていた。
日が沈んで残照が西の空を照らす時間になって、綾の目当ての車がやってきた。
曲がり角を曲がってきた、白の軽自動車。
ナンバーの確認をして、綾は目の前を通り過ぎようとする車の前に躍り出た。
フロントガラスの向こうで、愛の母親が慌てた顔をするのが見える。
綾は車の端にかすかに体を接触させて、道に倒れた。
曲がり角の直後なので、そもそもあまりスピードは出ていない。
怪我らしい怪我はしていなかったが、それらしく見せるために、起き上がりながら綾は足を引きずる動作をした。
「ごめんなさい。大丈夫だった?」
車から愛の母親が降りて、様子を聞く。
綾に大した怪我が無いのを見て取ると、ほっとした表情を見せた。
「大丈夫ですけど、足を少しひねってしまったみたいですね」
「まあ……ごめんなさい。病院に行きましょう。あと、ご両親にも連絡をしないと……」
娘のことで頭がいっぱいだろうに、それでもきちんとした対応を見せる佐久間愛の母親。
綾は「そんなに気にしないで下さい」と笑顔を見せた。
「病院に行くほどの怪我ではありませんから。湿布を貼っておけば治るでしょうし。まあ……出来るなら、家に送っていってもらえると嬉しいですけど」
娘と同じ年頃の少女の丁寧な言葉に、佐久間愛の母親は快く頷き、車のドアを開けた。
「ありがとうございます」
周囲を見回してから、綾は車に乗り込む。
車に接触してから、今までの会話で、一分余り。
人に見られた様子は無かった。
(行けるかしらね……)
綾は佐久間愛の母親に、街外れに至る道順を告げた。
支倉家のある場所からは遠く離れた場所である。
佐久間愛の母親は、そこが綾の家なのだろうと思い、疑うことなく車を走らせた。
「ああ、もうこの辺で結構ですよ」
「あら、そう?」
着いた先は、ひっそりとした川沿いの、土手際の空き地だった。
民家の光は遠くに見え、住宅らしいものは辺りには見えない。
佐久間愛の母親は、戸惑いながらも車を止めた。
「……本当に、ここでいいの?」
「ええ」
「一応、ご両親に挨拶をしておいた方がいいかしら。もし見えないところに怪我をしていたら連絡をしてもらって……治療費は必ず払うから……」
「いえ、そんな必要はありません」
冷たい声に違和感を感じた佐久間の母は、後部座席の綾を振り返ろうとする。
と、首筋に冷たい感触がして、動きが止まった。
「動かないで。動くと刺し殺すわよ」
「え……」
綾は、鞄から取り出した刃渡りのある包丁を、佐久間の母の首にあてていた。
「な……!」
「騒がないで。騒いでも刺し殺すわ。言うとおりにすれば何もしないから、おとなしくしなさい」
街灯の光に、包丁の刃がぎらりと光り、佐久間の母はごくりと唾を飲んだ。
娘と同じ年頃の、同じ学校の制服を着た少女が、今こうして自分の首に包丁を突きつけている。
何が何だかわからなかったが、湧き上がる恐怖感が、綾の言いなりになることを選んだ。
「言うとおりに……するわ」
「よろしい。わかったなら、これを飲みなさい」
「え、な、何なの、これは?」
綾の手の平には、白い錠剤が何錠か置かれていた。
「薬……?」
「何だっていいでしょう。この薬を飲むか、今ここで刺し殺されるか、どちらかよ」
切れ長の目に、漆黒の瞳。
まるで人でないものを見るかのように、綾は冷たい視線を佐久間の母に向けていた。
すぐ目の前には、相変わらず鋭い包丁の切っ先が、首筋に向けられている。
「飲むわ……飲むから、刺さないで……」
恐怖に負け、佐久間の母は、綾に言われるままに錠剤を飲み込んだ。
十分もすると、佐久間の母は頭を揺らし、車のシートに身を預けて、動かなくなってしまった。
「さすが、市販の薬と違って、よく効くわね」
綾は車を降りて、鞄の中からゴムホースとガムテープを取り出した。
車の排気口とゴムホースをつなぎ、さらにゴムホースの先をわずかに開けた運転席の窓から差し込んで、ガムテープで隙間を塞いだ。
初めての作業だったが、単純な分さほど時間はかからなかった。
「意外と簡単なものね」
満足気に頷いて、綾は仕上げに、佐久間の母の手で握り潰させた、佐久間愛の強姦写真のプリントを一枚、運転席の足元に転がした。
遺書は残す必要は無い。
この一枚で充分と思われた。
キーをまわしてエンジンをかけ、車のドアを閉める。
後は、一定時間エンジンが止まらないことを確認すれば、自殺体の出来上がりだった。
空を見上げると、綺麗な秋の星空が見える。
「遅くなった言い訳、どうしようかな……」
時計を見ながら、綾は呟く。
秋の夜風が、空き地の周囲のススキを寂しく揺らしていた。
佐久間の母の遺体が発見されるのには丸一日かかり、陽一たちがそれを知ったのは、二日後のことだった。
「自殺……らしいね」
また空き教室で、綾と陽一と夕里子と縁の四人は、昼休みに集まっていた。
学内にも、佐久間の母が自殺したことは知れ渡っていて、重苦しい空気が学校全体を覆っていた。
生徒が一人強姦され、写真をばらまかれ、その母親が自殺――
もはや、噂話を楽しむなどという者は生徒たちの中にも居なかった。
あまりの痛ましさに、生徒たちは皆、休み時間もひっそりと静まり返っていた。
「心労があったんでしょうね。娘さんのあんな姿を写真に撮られてばら撒かれてしまっては……」
綾の一言に、陽一と夕里子は肩を揺らした。
「感想はどう? お二人の決断で人を殺したわけだけど」
「綾……!」
ますます俯いてしまう夕里子を見て、陽一は綾を叱り付けた。
「……その話は、今はよそう」
「今しないでいつするのよ? ……まあ、お兄ちゃんと夕里子さんは、お二人の恋に自信があるようだし、行けるところまで行ってみたらいいんじゃない?」
「……」
「私が何を言っても、縁さんのオススメにはかなわないみたいだしね。世間がどう言おうが、最後には私はお兄ちゃんの味方をするから、お好きにどうぞ」
それから綾と縁は黙々と弁当を食べたが、陽一と夕里子は一切箸が進まなかった。
夕里子の周囲は、ほんの一週間ほどで、劇的に変わっていた。
自分のせいで犯された友人。
自殺したその家族。
周囲からの視線。
離れゆく友人たちと、壊れつつある人間関係。
夕里子の傍に常にいる友人は、もはや縁だけとなっていた。
今までとあまりに異なる環境に、夕里子の精神はぎりぎちまで追い詰められていた。
さらに次の日、また衝撃的なニュースが陽一たちを襲った。
佐久間愛が自殺未遂をしたという知らせだった。
母親の死を聞かされて、発作的に手首を切ったらしい。
命に別状は無いが、すぐに病院に入院させられたと伝わってきた。
佐久間愛の自殺未遂は、綾にとっては想定外の出来事だったが、綾の思惑にしてみれば、実に都合の良い流れだった。
「もう、佐久間さんの家族もぼろぼろね。元は幸せな家族だったでしょうに」
帰り道、綾の言葉に、陽一はもはや答えることもなかった。
夕里子は愛の自殺未遂の報を聞いた時点で気分を悪くし、縁に送られて学校を早退している。
久しぶりの、綾と陽一二人だけの帰り道だった。
「お兄ちゃん、もう一度聞くけど……夕里子さんとの関係は、お兄ちゃんにとって、これだけの人を傷つけてまで守るべきものだったの?」
「……わからない」
「わからないけど、まだ別れないのね」
「……」
「他にも犠牲者がでるかもしれないのに」
「綾……俺は、間違っていると思うか?」
この数日で、陽一も全体的に疲労した感がある。
苦しみに顔を歪ませて、陽一は尋ねた。
「……夕里子さんへの気持ちが、どんなことがあっても変わらない愛だっていうんだったら、間違っていないと思うわ。それは何を犠牲にしてでも守るべきよ」
でも、と綾は続けた。
「もし、今少しでも心が揺らいでいるんだったら、お兄ちゃんの選択はやっぱり間違っていたんだと思う」
「……そうか」
結局陽一は、綾の何度かの問いかけに、夕里子と別れると答えることは無かった。
陽一の思いの外の頑固さに驚きながら、綾はふと思った。
自分と、夕里子との関係では、陽一にとってどちらが大切なのかと。
数日後、夜の八時を回ってから家に帰ってきた綾の姿に、陽一は頭の中身を直接殴られた思いがした。
制服のボタンははじけ、ブラウスは破れ、白い肌が露になっている。
冬が近付いて身につけるようになった黒のストッキングもところどころ破かれて、脚には土の汚れがついていた。
「あ、綾……お前、それ……」
「……」
綾は俯いたまま何も言わず、陽一の脇をすり抜けて、風呂場に駆け込んだ。
「綾……!」
慌てて陽一は追いすがる。
綾の肩を掴んで振り向かせると、その肩が小さく震えているのがわかった。
「綾……お前……」
綾は俯いたまま、声を忍ばせて泣いていた。
気丈な妹が、力なく涙を流すその姿は、陽一にかつてないほどの衝撃を与えた。
私も女なのよ、そう言った綾の言葉が思い起こされた。
「まさか……綾……お前……」
「……何で……」
小さな声で、綾は応じた。
「何で私が、こんな目に遭わなきゃならないのよ……!」
「綾……」
「何で私が……何で……!」
堰を切ったように泣き出し、脱衣所でうずくまる綾。
破れた制服から覗く肩の震えが、何とも痛々しかった。
「綾……待て、落ち着いてくれ。何があったんだ? まずは落ち着いて聞かせてくれ」
自分に言い聞かせるように、陽一は「落ち着け」と何度も繰り返した。
肩を抱いて、がくがくと震える綾。
そこには、いつもの気の強さは微塵もなく、ただ恐怖に竦む少女の姿があった。
「……学校が終わって……少し寄り道して家に帰ろうとしたら……あの……いつも通ってる公園で……いきなり後ろから抱きすくめられて……」
ますます綾の震えは大きくなる。
ほつれた髪が、ゆらゆらと揺れた。
「それで……茂みに連れ込まれて、押し倒されて……!」
「……!」
綾は床にうずくまって泣いた。
ひたすらに泣いた。
陽一が触れようとすると、怯えたように後ずさり、いやいやと首を横に振った。
「綾……万一のことがあるかもしれない。病院に行こう。あと警察にも……」
「嫌よ!」
「でも……」
「嫌よ! 絶対に嫌! 病院にも警察にも行かないから! だって……誰かにばらしたら、写真を……撒くって……そうしたら私の体が色んな人に……」
「……」
「お願い……もう……そっとしておいて……絶対……絶対に誰にも言ったりしないで」
こんな時どうしたらいいのだろう。
陽一は泣きじゃくる妹を呆然と見ていた。
佐久間愛の一件の時、綾は言った。
他人を犠牲にする覚悟があるのかと。
それを聞いた上で、陽一は警察に相談すると決めたのだ。
そして、その結果、佐久間愛の写真はばら撒かれ、母親は自殺し、愛本人も自殺未遂をした。
夕里子の級友たちも怯え、夕里子の周囲から離れつつある。
そして、新たな結果が今、目の前にあった。
汚された妹の姿が、目の前にあった。
「すまん……」
「……なんで……私がこんな……」
「すまん……すまん……!」
膝をつき、陽一は声を絞り出すように泣いた。
風呂からあがった綾は、何も言わずに部屋に閉じこもってしまった。
愛のように、陽一に別れるようにと詰め寄ることもない。
ぼんやりと、陽一の呼びかけにも答えずに、部屋に入っていった。
陽一は隣の自室で机に向かい、ただうなだれるしかなかった。
自分の身勝手な正義感が恨めしかった。
「綾……俺のせいで……綾が……」
口うるさくはあったが、いつも自分の心配をしてくれた、可愛い妹。
食事の準備も、家の中の掃除も、洗濯も、身の回りの世話を甲斐甲斐しくこなしてくれた、しっかり者の妹。
その妹の、夕里子と別れて欲しいという頼みを二度無視して、ついにどうしようもない傷をつけてしまったのだ。
「馬鹿だ……俺は馬鹿だ……!」
時間を戻せるなら戻したかった。
ここまで色々なものを傷つけるまで事の重大さに気付かなかった自分が許せなかった。
「夕里子さんは、確かに好きだ……だけど……」
陽一は、震える拳で机を叩いた。
「綾……!」
もし綾が自殺したら。
その時を考えただけで、絶望的な気持ちになった。
「綾……」
「お兄ちゃん……?」
きい、とドアの軋む音がして、暗い部屋の中に一筋の明かりが差した。
見ると、入り口に、ドアを細く開いて、寝巻きを着た綾がぽつんと立っていた。
「綾……!」
陽一はすぐさま席を立ち、綾に駆け寄った。
「綾……その……」
大丈夫なのか、と聞こうとして、口を閉じてしまう。
大丈夫なわけが無いのだ。
何をどう言ったらいいのか、陽一は途方にくれてしまった。
「お兄ちゃん……眠れない」
「え?」
「眠れないの……眠ろうとすると、あいつの……あの男の顔が頭に浮かんで……」
綾は涙ぐみ、陽一の部屋着の裾を掴んだ。
「ねえ……お兄ちゃんと一緒に寝ていい? 私……怖い……あいつが……あいつがまた来そうで……」
「大丈夫だ。兄ちゃんがずっと傍にいるから、大丈夫だ」
「本当……? お兄ちゃん、私を守ってくれるの?」
「当たり前だろうが……! 俺はお前の兄ちゃんなんだぞ?」
「嘘……つかないでね、お兄ちゃん。約束だからね?」
綾の言葉に何度も頷きながら、陽一は綾を抱きしめた。
抱きしめられながら、綾は陽一の胸に顔をうずめ、小さく小さく微笑んだ。
二人で一つのベッドに入り、綾は陽一に擦り寄るようにして身を寄せた。
「綾……体は、その……痛いところとか無いか?」
「うん……大丈夫」
「あのさ……一応病院には行っておいた方がいいと思う。少し遠くの病院の産婦人科に行けば、知人に知られることもないだろうし……」
「……」
綾は陽一の提案には答えず、代わりにさらに体を寄せた。
「お兄ちゃん……私の体、ぎゅって抱きしめてもらえる?」
「……ああ」
「あと、頭を撫でてもらえると嬉しいかも」
陽一は体を横に向けて綾の体を抱きしめると、言われたままに頭を撫でた。
艶やかな黒髪からは、お風呂上りの香りがする。
綾は陽一の首筋に息が当たるほどに唇を近付け、呟いた。
「私ね、あの男に色んなことをされたの」
「え……」
「まず最初に、押し倒されて、両腕を押さえられてね、キスをされたわ。無理矢理に」
陽一は身を硬くして綾の告白を聞いた。
心が締め付けられる重いではあったが、それが自分への罰なのだと思った。
「顔の色んなところに、舌を這わせてくるのよ。犬みたいに、汚らしく唾液を塗りつけてくるの」
「そう、か……」
「それでね、ここにもされちゃった。キスを」
綾は自分の唇を指差した。
そして、声を震わせて、ぽろぽろと枕に涙を零した。
「汚れちゃったわね、私……はは……」
笑いながら涙を流す妹を、陽一はますます強く抱きしめた。
「お前は汚れてなんかないよ」
「ううん、汚れてるわ」
「汚れてなんかない。ずっと綾を見てきた俺が言うんだから、間違いないよ」
「私が何をされたのかは見てないでしょう?」
「それは……」
陽一は何も言えなくなってしまう。
悲しそうに唇を噛む兄を顔を、綾はすがるような目で見つめた。
「……お兄ちゃん……もし……」
「ん?」
「もし、お兄ちゃんが、あの男のつけた汚れを取ってくれるんだったら、私……自分がまだ汚れてないって、信じられるかもしれない」
「え……?」
綾が、陽一の首に腕を回し、これまでになく体を密着させ、抱きつく。
胸を押し付け、脚を絡ませるようにして、しっかりと体をつけた。
そして、陽一の耳元に唇を寄せ、わずかに震える声で言った。
「……お兄ちゃんがキスしてくれたら、私の体の汚れ……取れると思う」
「え、そ、それは……」
「……駄目なら、いいわ」
細く息を吐き、綾は陽一から身を離す。
オレンジの豆電球一つが照らす部屋の中で、涙に濡れた切れ長の瞳が静かに光った。
「お兄ちゃん……」
掠れた声で呟き、目を閉じる。
しばしの逡巡の後、陽一は綾の肩を抱いて、そっと口付けをした。
「……!」
綾は自分の顔がいっぺんに熱くなるのを感じた。
鼓動が高まり、胸の中にこの上ない幸福感が満ちていく。
ほんの数秒間の口付け。
陽一の唇が離れる。
その後を追うようにして、さらに綾は陽一とキスを交わした。
「あ、綾……」
「……私を守ってくれるんでしょう、お兄ちゃん? ちゃんと全部、汚れを取ってね」
「……」
二人きりの兄妹は、その夜、何度も唇を合わせた。
深夜、眠りについた綾の頭を撫でながら、陽一は枕元に置いていた携帯電話を開いた。
アドレス帳から、四辻夕里子の名を探す。
一文字一文字、何かを振り切るようにメールを打った。
『別れよう』
簡潔な、間違えようの無い文面。
それを陽一は、何度も確認するように読み直した。
数分間、暗闇に光るディスプレイを見つめた後で、ついに送信のボタンを押す。
ちかちかと画面が光り、送信完了の文字が表示された。
「これで……いいんだ」
木の板の天井を見つめて呟く。
涙が一筋、頬を伝ったが、陽一は決して声をあげることはなく、隣に眠る綾を抱くようにして眠りについた。
投下終了です。
夏の間に終わらせると書いた気もしましたが、そう予定通りにはいかないものですね。
すみません。
あと何話かで終わるのは確かですが、この分だといつになるかはわかりません。
とりあえず、夕里子恋愛編は一旦終わりますが、夕里子は意外にねちっこいので今後も出るでしょう。
次あたりからは、エロ投下の宣言になると思います。
気長にお付き合いください。
一番槍GJ!投下激しく乙です!!
…綾、なんかもう……すげえや
緑なんて死ねばいいのに…w
他職人にもお気に入りの話は幾つもありますが、綾が一番ですね。キモウト極めしって感じがします
ってか読んでて怖い……
嫉妬女の異常行動に凄く勃起な俺だが、綾KOEEEEEE!
震えが止まらないような恐怖から何とか気分をそらそうとオナニーしてみるが、
まったく勃起しなくなるのは何度か記憶にあるが、まさにその状態だ。
すげえ、心臓に負担かかる怖さだ(褒め言葉)
恐ろしさを超越した冷徹な策略と、
胸の深部で激しく燃える兄への想い。
綾はこれまでで一番の知能犯だな。
綾以外も女性キャラは全体的に暗いんだよな
だが綾はその中でも飛び抜けて黒い
GJ!!!
朝起きたら綾が投下されていた…今日はいい日になりそうだ
なにを犠牲としてでも兄を手に入れる、キモウトの鏡だな綾は
お、重い
GJ!おもしろかった
綾シリーズは俺の一番好きな作品だ…
だけど、綾が大嫌いになった…最低すぎるだろこいつ…
綾は確かにキモウトとしては最高だろうけどの人間としては屑だな…
これで綾頑張れとか、縁死ねとか言ってるやつらがいたら正気を疑っちまうよ…
しかも、なぜか夕里子をスクイズの言葉、綾を乙女みたいなイメージで読んでしまった…
でもやっぱすごくおもしろいし、物語なんだからそんな深く考えなくていいんだよな
けど俺は縁や夕里子を応援するぜ!!
おおこれで綾の思い通りに・・・w
次の話しも期待してますっ
なんか綾は緑に泳がされているような気がする・・・。
続きが凄く楽しみです。
綾「計算通り」
といつ言い出すかと思ってしまったw
緑「計画通り!」
に期待
綾くたばれwwww
縁頑張れwww
>>176GJ!
もうね綾には普通の死に方はさせたくないね
読んでて腹立ってくるぐらいキモいね。死ねばいいのに(最上級の褒め言葉です
>>176 孔明もビックリの黒策士だ綾は・・・
もしこれが戦記物だったら国を滅ぼしてでも兄を手に入れようとするんだろうな・・・
緑さんがこれからどうやって綾の暴走を止めるのか、またその真意は?がすげぇ楽しみだ
続き待ってるよん
俺は綾に勝ち取って欲しいと思ってるけどな、
綾は自分のしてる事を自覚してるのがいい。
少なくとも簡単に読める結果を考えもせず、さらに自覚なしに友達を自殺まで追いやった夕里子よりは。
まあ誰が好きかは人それぞれだし作者さんに結末は委ねられているんだから自分としては読ませてもらえるだけで満足
>>194 俺も俺も
悪とか黒とかじゃなく、綾の行動が純粋で切ないものに思える俺病気。
綾には苦労の末、縁を常世送りにしてお兄ちゃんとハッピーに暮らしてほしいな。
>>176 綾キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
って犯罪者スパイラルまっしぐらだなオイw
>>193 つ タザリア王国物語
正確には実姉ではないがまあ似たような物
王女なんだがかなりのヤンデレで主人公の故郷を焼き払ったり近づく女を階段から突き落として腰の骨を折ったりする
綾の悪行が陽一にバレた時、何が起きるのか今からwktkが止まりません。
どうみても綾がたんなる腐れ外道にしか見えない俺はキモウト初心者。
でも面白いのでGJ!!
キャラが嫌いとかウザいとかやめろよマジで
夕里子に最初会った時は助けたりと、兄が絡まなきゃ性格は悪くないんだよな。
この中で一番黒そうなのは、綾が周りの女を全て排除してくれるのを待ってから、
警察に証拠出すなり殺すなりして、漁夫の利を得る戦略を立ててそうな縁じゃないか。
しかし同じ名前の妹がいると複雑だねぇ
綾は普段はまともなのに兄が関係してくると見境がないのな。
緑は陽一以外には全く無関心である意味、綾よりオソロシスだし、
おまけに感情の描写も一切なくてどんな黒いものが緑に詰まってるのかとwktk
>>176 最高に面白い。本当に最高。
綾と縁の闘い(?)の結末が超気になる。
続き楽しみにしてます。
萌えとか言ってられん・・・・・・純粋に怖えぇ。
だがそれがいい。超GJ
縁は黒いなぁ、綾がかわいく見える
名前「緑」じゃなくて「縁」
間違えてる奴多い
>>194 安易かなぁ?
普通にベターな選択だと思われるが
まあ一番アレなのはこれだけのクソ外道が好き放題暴れてるのに尻尾すら掴めない警察な気が
バーローとか金田一とかホレイショ呼んでこないとダメだな
もはや綾は必殺仕事人のメンバーに混ざっていても何の違和感も無いな
綾タン…確かに綾タンは社会通念上よろしくない。しかしキモウトとしては最上級だ!!!
神だ!!!しかし綾以上に黒いと思われる縁はどうでるんだ…
このスレ的には綾に頑張ってほしいなぁ
綾フルボッコマダー?
>>212 おいおいキモ姉妹スレでそれを望むか?wまぁ全ての悪事が兄にばれて完璧に発狂する
綾タンがみたくないわけじゃないが…
>>208 犯された写真をばら撒かれた人がどうなるか簡単に想像つかないか?
まず絶対に学校にはいけないし、ここは人それぞれかもしれないが家からも出れなくなる、
今まで友達などがいた人間が犯された記憶付きで家に閉じ込められるような形になれば精神が憔悴して自殺なんてのも十分考えられる範囲だろ
分かり易く現実に置き換えるなら
人質もって立てこもった人間に今回要求を飲んだら次もまた要求されるかもしれないから人質は殺させてしまえ
なんて選択がベターと言えるのか?とりあえず要求を飲んどいて犯人をどうにかする方法を模索するほうがいいだろ
おちつけぇぇぇええ!!
キモ姉キモウト好きの集うこのスレでも、けっこう好みに差があるんだな
綾派、縁派、夕里子派…
俺は妹というだけで綾派だw
>>214 人質は殺させてしまえは、縁がそうさせたかっただけでは?
縁にとってのベターな選択に乗せられたみたいにも見える
小夜子が好きな俺も忘れるな!
縁は死ねってのは絶対だ
夕里子はまあ、好きになった人が不味かったな
>>214 もちつけwこんなとこで討論してもしょうがないぞ。
にしてもこんなにも素晴らしい神々に恵まれてるスレも珍しい。キモ姉キモ妹最高!!
キャラに死ねかキモいとかはやめろよな。クソウザい
まあ何にせよ、綾の胸をもみしだいた奴には当然の報いだな
綾の胸揉んだ上に小夜子さんに罵倒されるんだもんな
うらやましい
俺も若干夕里子派かな・・・・
綾はやりすぎ感が否めないからなー・・
まさにやれることはなんでもやってる。やりすぎている
でも綾を応援しているのも事実。だから「若干」夕里子派
例えどんな結末だろうと俺は◆5SPf/rHbiEについていく
>>220 このスレタイでキモいをやめろはねーわw
どうみても褒めてるようにしかみえないけどなw
綾はキモサイコーなのですヨ
双璧も長く続いてほしいけどな。。。締めどころがあるか
レイープされたってのは綾タソの自作自演だよね!?
綾タソは処女だよね!?
>>226 レイプされたやつがキスなんて求めてくるか?冷静になれよwキモウトだからこそ可能な
策だよw
もしわざわざスプレー缶で自分の処女膜破ってたらもう脱帽するねw
「あ〜………今日も疲れた疲れた………」
誰に向けるでもない独り言をポツリと漏らす俺。
今日は色々と忙しかった、学業に部活に買い物にお掃除に料理に。
普段、仕事に出て家に居ない両親と姉ちゃんの代わりに大体の家事は俺がやっている。
それにしても今日は汗だらけ、このままじゃ汗がべたついて気持ち悪いのでさっさと風呂に入ろう。
そう思った俺はさっさと着替えを取ると脱衣所で服を脱ぎ、
身体をさっさと洗って程よい温度の湯で満たされた浴槽へ飛びこむ。
「良い湯〜だな!アハハン♪良い湯〜だな、アハハン♪」
やはり風呂と言う文化は素晴らしい、これこそ命の洗濯と言うものだ!
ビバ!風呂!グッドだ!風呂!
そう思いながら俺はご機嫌に歌を謡っていた。………………ある人の声を聞くまでは。
「あれ〜?、誰か入ってるの?」
この声、姉ちゃんだ!………どうやら今しがた帰ってきた所か………
それに気付いた俺の身体に自然と緊張が走る。
無理もない。
先週、俺が風呂に入っている最中、タオル一丁の姉ちゃんに乱入され、
パニックになった俺が真っ裸のまま、風呂場から逃げ出す出来事が起きたばかりだ。
あの時は本気でヤヴァかった、あの時の姉ちゃんはまさに飢えた狼の目をしていたからだ。
もし逃げ出すのが遅れていたら、もしくは姉ちゃんに捕まっていたら………想像したくもない。
だが、2度も同じ轍を踏むほど俺は甘くない!
数日前に姉ちゃんが仕事に出かけている間、こっそりと風呂のドアの内側に鍵を設置したのだ。
内側から鍵をかけたらドアを蹴り破らない限り絶対に入ることは不可能!
もし蹴破ったとしても音で両親にばれるし、更に後でドアを壊した事で怒られるのも目に見えている。
だから姉ちゃんがドアを蹴り破る、と言う乱暴な真似も出来ない筈だ。
………これで乱入される事なく安心して風呂を楽しめる、ってもんだ。
「弟君が入ってるの?ねえ?」
「ああ、入ってる。だから姉ちゃんは俺が上がるまで待っててくれ。
あ、一応言って置くけど脱衣所で全裸になって待つのも止めろよ?」
「ちっ………じゃあ、あたしも弟君と一緒に入ろうかな〜?」
『ちっ』ってなんだ、『ちっ』って。
………俺に言われなければ全裸で待っているつもりだったな!?姉ちゃん!
ま、まあ良い、風呂に入れる物なら入ってみろ!
ドアにしっかりと鍵が掛かっている限り、姉ちゃんは風呂への侵入は不可能!
そう、俺は湯船に浸かりつつ勝ち誇った笑みを浮べてドアの方を見ていた。
やがて服を脱ぎ終わった姉ちゃんがドアの前に来て、ドアを開けようと暫くドアノブに手を掛ける。
……精々ドアをガチャつかせてドアの前で苛立つと良いわフゥアハハハハハ―!
―――だが!
「じゃあ、はいるね〜」
ガチャン
え゛!?
俺は耳を疑った。内側からしか開かない筈の鍵が、あっさりと解除される音がしたのだ。
「なっ、にぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
ドアが開けられる寸前、慌てて湯船から飛び出した俺がドアを抑えて何とか侵入を防ぐ
ど、如何言う事だ!これは一体!?鍵のチョイスと設置は万全だった筈なのに!?
「ちょっと、何でドアを抑えるのよ?入れないじゃない」
直ぐにドアの向こうで開けようとする姉ちゃんの抗議の声が聞こえる。
俺は必死にドアを抑えながら
「待て待て待て!内側から鍵掛けてたのに何で姉ちゃんは鍵を開けられるんだ!?」
「ん〜、あたしに黙って鍵を設置した、弟君の懸命な努力は認めるわ。
でもね、弟君が学校に行っている間に鍵を変えられちゃあ意味無いよね?
お陰で1日だけ仕事すっぽかしちゃったけどね?」
し、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
まさか俺が学校に行っている間に、わざわざ姉ちゃんが家に帰ってドアの鍵を変えているとはっ!?
クソっ、相手の方が一枚上手だったのか!!
「ほらっ、さっさと開けなさい。お姉ちゃんと洗いっこしましょうよ♪」
「断固断わる!つか来るな入るな覗きこむなっ!!」
僅かに開いたドアの隙間から見えた全裸の姉ちゃんの目は、明らかに情欲に燃えていた。
もし侵入を許せば、洗いっこどころかナニされるか分かったもんじゃない!
背筋に走る怖気を感じた俺はドアを抑える力をより強める。
がちゃがちゃがちゃがちゃ!
「もうっ、何を意地になってるのよ。別に痛い事とかしないから開けて頂戴♪」
「痛い事よりも更に性質の悪い事しそうな姉ちゃんだと分かってて開ける馬鹿居るか!」
がちゃがちゃがちゃがちゃ!!
「もう、性質の悪いって如何いう事よ!あたしはただ弟君と性的なスキンシップをやりたいだけじゃない」
「性的って言う言葉か混じっている時点でダウトだっ!」
がちゃがちゃがちゃがちゃ!!!
無理やり風呂場に押し入ろうとする姉ちゃん。貞操を守るべく風呂場への侵入を阻止する俺。
姉弟の一進一退の攻防が続き。
――――そして
《一時間後》
「くぅ………迂闊だった………まさか湯当りしてしまうなんて………」
「熱気ムンムンの風呂場で暴れるからよ、さっさとあたしを入れてりゃこうはならなかったのに」
「馬鹿……何かしそうな姉ちゃんを素直に入れる訳ないだろ………」
「素直じゃない弟君ね。ま、其処が可愛いんだけど、フフ」
「くっ………弟をからかうな………」
風呂場近くの和室で、見事に湯当りをして布団で寝こむ羽目になった俺と
そんな俺をからかいながら団扇で俺を仰ぐ姉ちゃんの姿があった。
………貞操こそ守れたが、恥かしい姿はバッチリと見られた訳で………かなりの屈辱的………
「これからは銭湯を使おう」と俺は頭の中で硬く決意しただった。
風呂に入って気分がさっぱりしたのでつい書いてしまった、反省はしない。
ちょwww今から風呂に入るのにこれじゃあ風呂場でおっきしちゃうじゃないか!
でもGJ!!
>>232 偶然だな、俺も今、風呂からあがったばかりなんだ。(ウホッ
いつも小ネタを提供してくれてる作者さんですよね?乙です!こんな姉ちゃん欲しいw
妹がいる人は綾が嫌いかも。
俺はブラコンの妹がいるからキモウトに成長しない様に気をつけるよ。
…え、どう気をつけるかって?そんなの簡単だよ。週1のペースで妹のオナを手伝えばいいのさ。
あ、なぜそんな事するか…みんなにはわからないよね。
桜の網、四話を投下します。
目の前にとても高い壁があったとしよう。
男と女は、その先に進みたい。
壁には手を伸ばしても半分にも届かない。後戻りは不可能。
二人はそこでうんうんと頭を悩ませた。
ある時、男は閃いた。
―――そうだ、向こうから回り込んでいこう。
確かに回り込めば、遠回りにこそなるけれど目的地には到着できる。
上策か下策かは判断出来ないが、目的は達成されるはず。男はせかせかとその場所を後にしていった。
残った女はある時、気づいた。
―――そうだ、壁を越えようとするからいけないんだ。いっそのこと、壊してしまおう。
なるほど壁というもともとの障害を壊してしまえば、女を遮る物など何もありはしない。
女は気持ちよく前に進んでいけるだろう。
こちらは先ほどの男の判断とは違い、幾分過激ではあるが、これもまた目的地へと行く一つの方法だ。止める道理はない。
そして、時間は流れる。
先に目的地に着いた人間は、女だった。
女は喜ぶ。両手を挙げ、空に届くかのように嬉しさを表す。天は祝福し、誰も彼も、何もかもが、女の成功を祝っているようだった。
一人の人間が、女に声をかけた。
「おめでとう。この瞬間を、何よりも嬉しく思うよ。ところで、男がどこにもいないんだ。
君が帰ってきて、みんな嬉しさのあまり気がついていないみたいなのだけれど、やはりまだ男が帰ってくるには時間がかかりそうかい?」
「そうね。男が帰ってくるのには、まだまだ時間がかかりそうよ。だってあの人、私を置いてどこかにいってしまったんですもの」
「そうだね。君と一緒にいれば、いずれは君が壁を壊していたんだから男ももう到着していたかもしれないね」
「そうでしょう。でもね、私気づいたの」
「何にだい」
「気づかないのなら、わからせるべきなんだって。直接、教えてあげるべきなのよ」
そう言って、女は笑う。高々と笑う声は、どこか悲しそうで不思議と達観しているようだった。
―――女の手には誰かの血液が、赤々と付着していた。
居間と言うと、些か伝わりにくいかもしれない。
天井にはシャンデリアがいくつもあり、華々しさを彩っていて、距離も悠太の身長の軽く三倍はある。
ソファーは座っただけで人の体ごと吸い込んでしまいそうなほど座り心地がよく、テーブルはどこまでも長かった。
後ろには暖炉。今は夏だから使われてはいないけれど、手入れは素人にも行き届いているものだとわかる。埃など存在しないかのようだ。
どうでもいいことだが、この暖炉はまだしも、あの高い天井についているシャンデリアや窓ガラスはどうやって掃除しているのだろう。
そもそも、こんなに大きな部屋、自分なら絶えられそうにない。
いや、それは寂しいとかそういうのではなくて。
不意に、この豪華な部屋が存在する家は、いったい日本にどれぐらい存在しているのだろうと思った。
少なくとも幼少の頃から貧しく過ごしてきた悠太には無縁に思える。
全く慣れていないわけではない。
一日のほとんどはここにいるわけだ。
例え使用人に恐縮して執事に違和感を得ようと、そういうものなのだと思えば、少しは気持ちもやわらぐ。
もちろん無心になることは、できはしないが。
「怖いね」
居間、というよりもまだリビングといったほうがしっくりくるこの部屋にいるのは、悠太と桜。
二人はテーブルを挟んで対面するようにソファーに腰を落としている。
紅茶はすでにない。けれど、おかわりや、もしくは話が何時までも終わらないのは、桜がそれをよしとしないからだ。
使用人すらここに用なく入ってくることを許さない。
もし入ってくれば、この前と同じように解雇になるか、悠太は知らないが口では言えないような目に遭わされるだろう。
うんざりはする。が、悠太には負い目がある。彼女をほうっておいたという、飛躍していうならば、業が。
ならば、長くても話程度に付き合うぐらい安いもの。気が済むまで相手になってやればいい。
それに、今話し始めた男と女の奇妙な逸話はなんだか興味を誘う。
考え方の違い。
悠太は一人思って、怖いという感想を抱いた。
口に出すと、予想していたかのように桜は嬉しそうに口を曲げた。
そこだけみると、小さな子供が悪戯をして、成功したように思えなくもない。
けれど怖いという感想は、実は的を射ているようでまるっきり見当違いだ。これは考え方について例を表しているものであり、物語ではない。
だが、桜にとってはそんなことはどうでもよかった。
兄が反応したということと自分の予想通りの返答をしたということが大事なのだ。よって、桜は言う。
「怖いですね。でも兄さん、私は、女は男を殺したのではないと思うのです」
先に目的地着いた女。そして手に赤々と点在する血。そこだけみれば、女が男を殺したように悠太には思えた。
「どうして?壁を壊すぐらいだから、先に目的地に到着するかもしれない男を殺したんじゃないの」
「でも、女は遠回りをしなかった。そのまま進んでいれば遠回りをした男よりも、少し早く目的地にいけたのではないでしょうか」
一理ある。というよりも、言われてみればそうだ。
遠回りをするよりも直進するほうが到着地点には早く行ける。
もし女が壁を壊すことを思いつくまでに時間をかけすぎていれば、男が先につくこともあるかもしれないが…。
「じゃあ、桜は何で女の手に男の血がついていたと思うの」
「おそらくですが、女の手についていた血は」
区切る。桜の唇がなぜだか艶かしい。
「―――女のものだと思うのです」
眉を顰め右手の親指と人差し指で顎をつまんでいる悠太を見て、桜は更に喜んだ。
どういうことだろう。
先に着いたのは女。でも女の手についていた血は女のもので、男のものではない。
もしかすると桜は、壁を壊した時についた血だというつもりだろうか。いや、桜はそんなに馬鹿じゃない。
クイズみたいなものなのに、不思議と後味が悪い。
「予想でしかないですけれどね。でも私は、女ですから」
悠太が悩んでいるのにはお構いなく、桜は続ける。この悠太が悩んでいる姿が彼女にとっては嬉しいのだ。
気づけば、悠太の目と鼻の先に桜の顔がある。
ねっとりとした甘い、とろけそうな笑顔。目が細まって、なんだか娼婦のようだった。
これを誘惑というのだろうか。悠太は目を逸らす。
やっぱり、桜は美人だ。
ずっと会っていなかったのと、妹と知らされたというのがわずか数ヶ月前ということが重なって、
こうして見られているとなんだかいけない気持ちになる。
「兄さん」
呼ばれたのに、悠太は桜の顔が見られない。女の視線。ねっとりと悠太の体に絡みつく。
何か気恥ずかしくなって、乱暴に返事をした。
すると今度は、桜が体を悠太に押し付けてきた。
綺麗な肌。男の自分とは、出来ている素材が違うのではないかという女の体の柔らかさ。服越しであっても、それは敏感に伝わる。
ますます体を擦り寄らせてくる桜。
もうこうなると、桜のふくよかな胸は形を変え、完全に悠太に密着していた。
桜は気づいているのだろうか。否。気づいていないはずがない。
なぜならこんなにも桜の体温を感じることができたし、耳にすら息が吹きかかっているのがわかるのである。
それが何よりの証拠。
「ちょっと、桜。離れて」
たまらず声を出す悠太。
こういう、普通の男女間でするような行為を兄妹でするのはおかしい。
そう思って抗議したのだが、桜は全く異に反さない。むしろ更に近づいてきて、とうとう悠太の膝の上に桜が乗る形となった。
桜の腕が悠太の首の後ろに回される。
顔と顔が必要以上に近い。
「いいじゃないですか、ちょっとぐらい」
ちょっと。これが本当にそうなのか。そんなはずはないが、あまり意識したくはない。
それに、このまるで恋人同士がするような格好がちょっとだというのなら。
これ以上の行為も桜に言わせれば、少しだけ、ということになるのだろうか。
そんなこと、聞けるはずもなかったけれど。
「いい加減にしなさい、こういうことは他の男の人とやりなさい」
「こういうことって?」
先ほど、ちょっとといったのは桜のほうだろうに。
なんだか馬鹿にされているようではあったけれど、それ以上に甘い空気が桜の発言の承諾してしまう。
悠太は恥ずかしげに言葉を紡いだ。
「だから、それは…今みたいな行為のことだよ」
「今みたいな行為?何言っているんですか。少し近づいただけでしょう」
「いや、そうじゃなくって」
「じゃなくて?」
「その…だから……」
「こういうふうなこと?」
言うやいなや、桜は自分の胸の谷間に悠太の手を入れた。瞬間、悠太は焦って思わず手を腕ごとひいた。
「こら」
何て言ってみても、顔が赤くなるのが抑えられない。
叱ってやらなければならないはずなのに、声は小さかった。
桜の目が見られない。
見るだけなのに、目を合わせるだけなのに、なぜか今見詰め合ってしまうと、何かを誤ってしまう気がして。
悠太の視線の先に自分の手が映る。先ほど女性の象徴に触れた手。
一瞬だったから何か思うほどのことはないが、それでも十分に柔らかいというのはわかった。あの感触は男には決してない。
それに桜の胸は大きい。
同年代のクラスメイトや街を歩いている人の胸を意識してみたことはあまりないけれど、
何となくこれは女性全般の基準よりも豊かなのだろうということはわかった。
きっと桜のほうに目を向けると、今は嫌でも意識してしまうだろう。
あのドレスの中で強烈に自己主張しているふくらみに自然と目がいってしまう。
そして一番の恐怖は、桜がそれを歓迎してしまいそうなことだった。
こんなことを思う僕が異常なのだろうかと、悠太は思う。
もしかすると兄妹間ならこれぐらいスキンシップは普通の日常で、むしろ僕がこれほど身構えていることのほうがおかしいのだろうか。
いや、だが亜美とはこんなことしたこともないし、そもそも亜美をそういう風に見たことなど一度もない。
なぜ?亜美は桜と違って体の起伏に乏しいから?違う。
兄妹だからだ。考えるべくもない。
でもそうなると、悠太と桜も兄妹だ。こんなことおかしいのではないのか。
何よりおかしいのは、悠太ではなくて、この恋人同士がするような空気や行為を別段気にしていない桜のほうではないのだろうか。
けれどもし、
桜にそう言って今まで家族がいなかったからどういう風に接していいか、わからない、などといわれてしまうと何もいえなくなってしまう。
事実、悠太は兄妹間でするようなことではないと言う発言を何度かしていたが、
決まってそこで出てくるのは、家族を知らないからという、悠太からすれば逆に桜を拒んでいると受け取られてしまいそうなものだった。
それは悠太からしたら絶対にやってはいけないものだ。
だからついつい桜のすることの多少は許してしまう。まさに今もそうだ。
でもこれは明らかにスキンシップ以上のもの。
悠太はすばやく桜から離れた。離れることが出来た。
「純情ですね、兄さんは」
声を上げて笑う。悠太から引き離された桜は、そのままごろん、とソファーに横になった。
これぐらいの行為など別段たいしたことはないということか。
どう見ても、お嬢様な彼女のほうがこういうことに無縁のような気がするのだが。
それとも女というのは唐突にこんなことがしたくなるのだろうか。
そういえば亜美も桜ほどではないにしろ体を擦り寄らせてくることが偶にある。
とにかくも、悠太は自分がからかわれていると思って言い返した。
「冗談にしても、こういうことは兄妹ではやっちゃいけないよ」
すると――急に体を起こして悠太を見る。
にんまりとして桜は言った。
先ほどの悪戯をした子供のような笑顔だった。
「じゃあ、家族になりますか」
「え。桜は妹なんだから、家族だろう」
「違いますよ。本当の家族に、です」
本当の家族。
悠太はそこで、桜は自分が長い間兄妹として過ごせていなかったため、
まだ本当の兄妹というほどの絆がないのではないか、ということを指して言っているのだろうと思った。
「大丈夫だよ。もう僕は桜のこと、立派な家族だと思っている。大切な妹だと思っているよ」
「………」
悠太は満足げに言う。やはり桜からしたら、まだ家族というほどの関係に慣れていないのではないかというのは気になるのだろう。
だから悠太は、はっきりと言ってあげた。
でも、妹はなぜか不満そうに悠太を見つめる。
桜が何か言おうとしたとき、急にこんこんとノックの音が聞こえた。
「何。くだらない用だったら、承知しないわよ」
桜は明らかの怒気をぶつけて、ドアを見た。
入ってくるのは執事。黒のスーツに白のシャツ。ネクタイなど曲がっているはずもない。
立っている姿勢だけで、とても教育されているのがわかった。こちらが恐縮してしまいそうだとすら思ってしまう。
この執事を悠太は知っていた。
期間が限られているといっても、この屋敷に突然居座る形になった悠太は、やはりわからないことが多かった。
食事のマナー、礼儀作法、屋敷のルール。
今でこそよく桜が側にいてくれるから戸惑うことも少なくなったけれど、
始めは彼女の多忙さが原因で一緒にいることがあまりなく、むしろ部屋に一人でいることが多かった。
そんな時話しかけてくれ、助けてくれたのは長谷川だった。
白石とそこまで歳が離れていないということもあって、何よりの親しみやすい相手であった。
「長谷川さん。どうしたの」
「悠太様に白石様からお電話がかかっております」
長谷川の言葉を聞いた後の二人の反応は正反対のものだった。
悠太は喜色満面で立ち上がって電話を取りに行こうとしていたが、
桜はそれを悠太のジーパンのベルトをつかんで止め、とても機嫌が悪そうにしている。
悠太はいつもこういった桜に何かずれを感じていた。
この電話がかかってきたということだけを言っているのではない。
言葉は悪いが、最近の桜は異常だ。
四六時中悠太の側を離れず、こういった悠太との二人きりの時間を邪魔されると、とても気分を害していた。
最初こそ、西園寺に来て何かとよくしてくれるように配慮はされていたけれど、
桜は何かと忙しいから、あまり悠太ばかりを気にしているわけにもいかなかったので、
こうして一緒にいる時間は食事の時や僅かながらの桜の仕事の休憩時間だけだったのだ。
けれど今は、悠太が手伝えないような仕事をしている時でさえ側にいることを欲してきたりするほどで、
あまつさえ、悠太本人がどこかに出かけたり、女の人と話したりしているとヒステリーを起こすほどになっている。
そしてそれはだんだんと増徴して、今では悠太が出かけようとすると『お仕置き』と称しあの地下室に連れて行くようにすらなっているのだ。
これが異常といわずして何というのか。
しかし反面、二人きりにこそなると先ほどのような甘い空気になり、
よく言えば積極的に、悪く言えばあからさまに悠太に猫のように擦り寄ってくる。
悠太は、きっと家族愛というものに飢えているのだろうと思っていたが、これ以上は危険性を感じていた。
これより先に進んだら狂ってしまいそうな嫌な感じ。
けれど…。
「どっちの」
唐突に思考が引き戻される。
見れば、桜が長谷川に詰め寄っていた。
どうやら電話の相手が白石老人か妹の亜美かどちらか聞いているのだろう。
桜は亜美のことをなぜか嫌っていたようだから、相手が亜美だとまた駄々をこねるか、ヒステリーを起こして悠太に何かしてくるかもしれなかったが、
「白石老人です」
相手は亜美ではなかった。
「すぐに行くよ」
幾分ほっとしてから長谷川に言うと、桜は何かいいたそうにしていたが、黙って悠太を見送った。
桜も悠太が白石老人のことを、どれほど大事にしているかということはわかっていた。
いくら桜といえども、それを止めることなどできはしなかったのだ。
悠太に嫌われたら元も子もない。
長谷川を視界に入れる。
以前の仲がよかったときはもう記憶の彼方のようで、もう必要事項以外は喋ることはなくなっていたが、嘘はつかないはずだ。
それぐらいの予想はまだつく。
ただもう、信用も信頼もしてはいなかったが。
それに、と桜は思う。白石老人との会話に限らず、悠太が電話する時はすべて録音している。
それほど警戒することもないのかもしれない。
桜は気づいているのだ。
家族というものに悠太が弱いということを。
さっきのようなことはもちろん、例え恋人同士がするような行為であっても、
家族ということに関連させてしまえば悠太は大抵のことを許してくれた。
それが兄妹間でするような行為でなくても、寂しさというつらさを免罪符にすれば、桜のしたいことが大抵はすることが出来る。
ただあまり行き過ぎたものであればさすがに悠太に断られるけれども、
兄妹でしてもスキンシップと言い張ることが出きりぎりぎりのラインであれば、渋々ではあるけれど承諾してくれる。
桜はそれに味を占めていた。
年上の兄を屈服させることが出来たような征服感。
もちろんこんなこと、おかしいことではあるのだけれど、何か悠太を支配できたような、
生殺与奪さえ握ったような感覚が感じられた時、桜はいつも背中にぞくぞくしたものが駆け上がるのを意識せざるを得なかった。
言葉に表せないような歓喜の走り。
とても気持ちのよい感覚。
快感。
もっと味わってみたい。もっと気持ちよくなりたい。
桜はこの状態をよくは理解していなかったが、これこそが桜の行動に歯止めがかかりにくい原因であった。
そして感覚を与えてくれるのは唯一の兄妹、悠太。
彼が、この気持ちのよさを桜に与え、酔わせていた。
皮肉ではある。家族という枠組みを意識するあまり、必要以上に敏感になっていることが、桜のこの感覚を刺激しているのだから。
そしてそうなると、桜が悠太に対する感情を一気に膨れ上がらせるのは当然の結果といえた。
悠太はわかっていないが、もはや兄妹などという感情をとうに超越してしまっていた。
もともと離れ離れだったため兄妹というのが意識しにくい環境だったというのもある。
仮に、突然自分の家に現れた異性が兄妹だなどといわれて、いきなり割り切れる人間など、どれほどいるというのだろうか。
少なくとも桜には出来ない。
家族。
もう、いいのだ。家族など。そんなもの。
桜はいつも考える。
家族というものを兄が本当に大切にしているのはわかっているけれど、それは変ではないかと思う。
私たち兄妹は、あの反吐が出るような父親のせいでこうして離れ離れになっていたし、知りもしない場所に全く面識のない兄妹がいたのだ。
怖いとすら思う。
初めは桜も違った。
長谷川の失言によって兄妹がいると知った時は純粋にうれしかったし、この環境にいる人に仲間意識すら感じられて、浮き足立ちもした。
けれど、よくよく冷静になって考えてみると、そのどこかにいる兄妹が私と同じように感じているわけではないと気づいた。
どこかで身を潜め私を憎憎しげに見つめているかもしれないし、恨んで殺意すら芽生えているかもしれない。
何しろこれほどの豪邸に住んでいるのだ。
貧しい環境の人からしたら、桜のいるところは憎悪の対象に十分になりえる。
昔は私もそうだったのだから。
だから、必死に兄妹の居場所を探していたのだ。
桜とて、一目ぼれをした男が偶々自分の兄だっただけで、もし自分の気に入らない人間が兄妹であったならどうなっていたかわからない。
実際、悠太のことは好きだが亜美のことは嫌いなのだ。
偶然。そう、偶々だ。
偶々好きになった異性が兄だっただけなのだ。
兄妹を好きになるのはいけないことだけれど、好きになった後で兄妹だったなどと明かされても、もう止まることなどできはしない。したくない。
あくまで兄が、兄妹という壁に固執するのなら壊してしまうまで。
女は、壁があれば遠回りするのではない、壊して邪魔なものを排除する。
物語を悠太にいって聞かせた意味、彼は理解しているのだろうか。
女の手についていた血が女のものというのは、他の女の血だという事だ。
他の女が、壁が、男を遠回りさせたから女は他の女を殺したのだ。
だから血がついていた。
たぶんそのことに、兄は何時までも気がつくことはないだろうけれど。
でももし、兄が壁を越えずに遠回りをするというのなら、私がきっと壁を壊してみんなから祝福されようと、桜は思う。
―――カチッ
「お久しぶりです」
開口一番、受話器から丁寧な白石の声が聞こえてくる。
この礼儀正しさはやめてほしいのだが、それよりも白石と久しぶりに話せたことが嬉しかった。
「やめてよ、他人行儀だな。少し会っていなかっただけじゃないか。それにもうすぐ帰るんだから。」
もうこうやって言葉を直してほしいということすらもうお互いの挨拶になっているみたいだなと思う。
それがわかっているのか、お互いで少し笑った。
何日ぶりだろう、こうやって白石と話すのは。いつも気にかけてはいた。
最近は桜がついてばかりで外出も簡単には出来なかったから心配だったのだ。
でもこうやって元気でいてくれるというのは、何よりの朗報。自然と元気もでる。
「ええ、そう言ってもらえると私としても嬉しいですよ。どうです、西園寺には慣れましたか」
「まだ窮屈だなって思うことはあるけど、だんだんと慣れてきたよ。ただ、やっぱり落ちつかないね」
それはこの屋敷の大きさゆえではない。
こうして受話器越しであっても聞こえてくる白石の震えるような息遣い。
体がどこか苦しいのではないのだろうか、何か不便があるのではないのだろうかと悠太を心配させる。
それで落ちつかないのだ。
高齢の老人というのは、突然何かの病に倒れることも少なくないと聞く。
悠太はそれが西園寺に来てからの一番の不安だった。
覚悟していたことではあったが、やはり白石のことは頭のどこかで心配してしまう。
亜美に任せているから、大丈夫なのだろうと思うけれど、やはり体のことが悠太には気がかりだった。
白石はこういった悠太の気遣いに遠慮しているが、今回は気がついていないようだった。
「私も始めはそうでした。といっても、もう昔話にはなりますが」
こんな風に昔の話を聞かせてくれる白石を悠太はいつも穏やかな気持ちで迎え入れてしまう。
これから長くなりそうだな、と思った。
この白石の長話の癖は、昔、悠太が白石に屋敷での話をせびったことによるものだった。
あれはまだ、亜美がいなく、白石が西園寺の執事としてここで働いていた時のこと。
一人だった悠太は、いつも電気のちかちかとする薄暗い部屋で本を読んでいた。
文字はとても読みにくかったが、それでも何もしていないよりはましで、唯一の遊ぶ手段だった。
このころは友達もいなかったので外に遊びに行くということは極端に少なかった悠太は、相も変わらず白石の帰りをひたすら待っていて、
こつこつという靴音が聞こえると喜び勇んで外に飛び出していったものだった。
そして決まってねだるのは今日にあった屋敷での出来事の話。
子供のときというのは、決まって異世界や不思議な物事に興味を持つもので、
西園寺のような大きな屋敷はまるで御伽噺に出てくるお城のようであったから、
悠太の好奇心を刺激するには十分だった。
毎日毎日、話をねだる悠太。気づけば白石が癖になるほどで、長話となればなるほど、悠太は喜んだ。
今となっては懐かしいが、今となっても白石の話を聞いていると子供のころのようにうれしさは心に漂う。
唐突に言葉が出た。
「ここにきて、強く思うよ。僕はね、やっぱりそっちの家のほうが性にあっている。もちろんここには、いい人もたくさんいるよ。
助けてくれる人もいる。でもね、なんだか寂しくて」
言ってから、こんなことじゃ桜のことを強くは言えないなと思った。
僕も必要以上に白石を心配している。桜がいきすぎた行為に走ることと自分が白石を必要以上に心配することは、
もしかしたら根元はあまり変わらないのではないのだろうか。
そうであるならば、桜のことは何とか出来そうな気がしてくる。
もともと頭のよい子だ。少し諭してあげればすべてがうまくいくはず。
ここに来た当初は今みたいな風ではなかったのだから。
丁度いい機会だから白石に相談してみるというのも一つの方法だろう。
「それに桜には悪いけれど、やっぱり白石さんと亜美が一緒じゃないとね。四人一緒に暮らしたり出来ると、言うことないんだけど」
家族の問題だ。家族で解決するのが道理。
悠太が桜のことを話そうとすると、白石が不思議そうに言ってきた。
「桜というのは、西園寺の使用人の方ですか」
どういうことだろう。
今になって悠太を驚かせようとでもしているのだろうか。
そんな趣味は白石にはなかったはずなのに。
「何言っているんだよ、桜は西園寺の当主で、僕の妹なのだろう?」
「―――は?」
白石の声が呆けたように呟く。
何かおかしなことを言っているだろうか。
「ああ、ごめん。西園寺財閥の当主じゃなくて、この屋敷の主ってこと。
まあ、西園寺財閥の当主も桜になるのかもしれないけれどね」
「ええ、それは、わかっていますが」
悠太は僕の言い方が悪かったのだろうと思って言い直したけれど、
白石はそうじゃないらしい。
なんだろう。
頭に濁流ができて、少しずつ焦燥感がたまる。
二人の沈黙。
そんなこと、確かめるはずもないことだろうに。
「おかしいですな。西園寺家の御当主様は、桜という名前ではなかったはずですが。
それに私の知る限り、悠太様の妹は亜美だけのはずですよ」
「―――え」
返してきた言葉で、今度は悠太が呆気に取られる番だった。
頭が混乱する。
白石は何を言っている。桜は、悠太の妹で西園寺の家の当主。
これは悠太が目の前で見ていることなのだから間違えようがない。
何しろ悠太自身が、すべてというわけではないけれど、
桜の当主としての仕事を手伝ったことすらあるのだから。
そもそも、これが間違いなら自分は今どこにいるというのだ。
白石だって西園寺だとわかって電話をしてきているのではないのか。
わけがわからない。
いや、それでも桜が西園寺の当主であるという決定的な証拠はある。
「いや、え、でも、話し合いのことで西園寺に電話して、亜美が受話器を横からとった時、
待ち合わせ場所にいたのは桜だったんだから、間違いないはずだよ」
そう、もし白石の言うとおり、桜が桜でないなら、あの喫茶店にいたのが彼女だというのはおかしいはずだ。
西園寺の当主と電話をしていた白石、横から受話器を取った亜美、そして待ち合わせた場所にいた桜。
これは揺るがない事実のはずだ。
「ふむ。ですが、西園寺の当主の名前は―――愛美様といったはずですが」
誰だよ、思わず言いそうになったが抑える。
たぶん、白石が勘違いをしているのだろう。そうに決まっている。
それに、桜が西園寺の当主でないのであれば、使用人たちの反応はどうだ。
上でない者の命令をすんなりと聞けるはずがない。それも何ヶ月も。
第一、使用人や執事が桜のことを呼ぶ時『桜様』というのを何回も聞いている。
一瞬、桜が自分を謀っているのかと思ったけれど、そんなことをして何の得になるというのだ。
何日もドッキリをするような意味はない。
けれど――何かひっかかる。
「それに、西園寺の家の当主が悠太様の妹なら、私が知らないわけがないでしょう。
いくら執事を辞めたとはいっても、その当主と連絡を取っていたのは私なのですから」
何を隠そう、西園寺と連絡をとっていたのは白石。
喫茶店にいたのが揺るがない事実だというのなら、この白石が言っていることもまた、不動の事実。
そして白石がこんな嘘をつく可能性など皆無に等しい。
「悠太様。失礼ですが、何か勘違いをされておいででは?」
―――意味がわからない。
悠太の指先がかすかに震えはじめている。
動悸が嫌にうるさい。頭がスーッと冷えていく。
後ろに誰かがいるのを感じた。
急いで振り向いたけれど、ただ使用人が後ろを通り過ぎただけだった。
息をはき、自分に落ち着けと心に言い聞かせる。
なぜだろう。
この会話は、この話は、桜には聞かれてはいけない気がする。
もし聞かれてしまえば、何かが決定的にずれてしまいそうな、恐怖感に似たものがある。
理由はなかったが、悠太にはなぜだか確信があった。
―――カチッ
とにかく、白石にもう一度話を聞いてみるべきだ。まずはそれからだろう。案外、これほど驚くこともないのかもしれない。
言ってみれば、ただ名前が一致していないだけだ。それほどの大事でもないはず。
改名、というのは考えにくいが、可能性としてないわけでもない。
受話器にもう一度よく耳を当てる。
ひんやりと冷たい。
これから話す内容は一字一句聞き逃さないつもり。
次いで、あまり声が外に聞こえないように手で口を覆う。最後に周囲を確認した。
人は、いなかった。
―――カチッ
ただ、電話内容を録音するための音だけが、悠太を見つめているのを除いて。
奇妙に、静かだった。
四話、投下終了です。五話に続きます。
また続き書くので、暇だったら読んでください。
うおおおお、GJ!
普通にミステリとしておもしれえ
なんか怖くなってきたが続きが気になってしょうがない
朝wwwwwからwwwGJwwwww
((( ;゚Д゚))ガクガクブルブル
白石さん誰かに脅されてたりして
GJ!
最近のキモ姉妹スレの盛り上がりは異常
GJ!
白石死亡フラグwww相手盗聴してるだろwww
うはwwwww最近のこのスレのクオリティの高さは異常だぞwwww
白石逃げてぇぇぇぇぇ
>>235 A.手伝わないと妹が欲求不満になり、寝てる間に襲われるからでした〜!
…あー怖っ!
白石が死ぬのはもう決定事項w
つか、愛美ってなんて読むんだ?
>>258 マジレスすると「まなみ」でいいと思うんだが
>>257 なんて羨ま……恐ろしい、しかし、それではすでにキモウト化してないか?
もしくは「あいみ」だよね。友達に同じ名前の子がいるから先にこっちに変換されちゃうなー。
>>249 乙です!投下ペース速い!最初の入り方が凄く好きです。白石さんらめぇええええええ!!
>>261 羨ましいと思うならばお前も作成するよろし!!
だが行き過ぎると殺害される可能性がある。「頼む!やめてくれ」と言っても応答してくれない。
素人にはお勧め出来ない。
>>260 >>262 なるほどね。「あみ」って読むのかと思ってたわ
ともかく神にはGJを送ろう!俺のなかでは結構気に入ってるから頑張ってほしいよ
普通に「えみ」と読んでしまった
>>265 おまい・・・この板に来てはいけない年じゃあないのか・・・・
268 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 03:45:57 ID:SJpFgXvE BE:399713235-2BP(0)
変名おじさんの作品好きなんだけど
最近無いのがさびしい 短編も見たいのよ
「綺麗ね…」
家の庭には一本の桜の樹がある。
春になるとこの異常気象をものともせず、
規則正しく花が咲き、そして、散って逝く。
強く逞しく、そして可憐に。
誰かが植えたという物ではない。元からここにあったそうだ、
それが何年、何十年いや、何百年であろうと、
俺の知る限りこの樹は何一つ変わらず生きていた。
生まれた頃から一緒だったのだ、愛着というか、純粋に家族の一員と思っている。
それは姉、今隣にいる姉も同じであろう。
「昔よくここで遊んだよな」
懐かしい、けれど決して遠い訳ではない。何故か、
「樹の寿命は長いもの、私たちの10年なんて、ほんの数秒、
忘れるはずないわ」
樹の話であるのに、安宅も自らの思いであるかのように、
呟く、姉は。
日に照らされた姿は神秘的であり、神々しく、
思わず俺は目を細めた。
樹も、姉も。
暫しの静寂、横切る春風…
「俺…この樹が好きだ、愛してる。変かな…」
が止んだ。
「………」
あれー?辺りが暗くなったよー?
「ね、姉さ「四季」
名を呼ばれ、ものすごい圧力で名を呼ばれ
思わず直立不動になる俺。
「明日は何日何曜日?」
笑ってるけど、微笑って無いとはこの事か?
「サー、13日の金曜日であります、サー!」
とにかく姉の顔は俺の知る限り人生で一番恐ろしい物と化していた。
「そう、13日の金曜日…あの方が来てもおかしくないわ…
あの方が来ても…!」
ふふふと、妙な、至って妙な含み笑いを残し、
姉は室内へ戻った。
その夜、ものすごい爆音と共に何かの倒壊した音が鳴り響き…
翌朝目覚めてみると綺麗に丸太となったわが家自慢の桜があった。
「あらジェイソンさんでも来たのかしら?」
呆然としている父、母、俺の後ろから来た姉の顔は…
…恐らく俺の知る限り世界最高の笑顔だった。
投下終了。
今日こそは!と決心しても、
どうしても他の職人様のように微笑ましかったり
修羅修羅するものが書けない今日この頃…
そしてまた即興短編を投げてしまうと。
晴れて新型PCの購入に成功しましたので、
今後投下する際はなるべく入念に編集し、
そっちから投下するようにしたいと思います。
投下挨拶忘れてすみません。
>>271 お姉ちゃんはジェイソンでした。
桜の木にまで嫉妬するお姉ちゃんかわいいよお姉ちゃん。
続けて、投下します。今回で終わりです。
白いベッドに白い天井、病室を思わせるような高校の保健室。
朝倉直美が目を覚ました場所はそこだった。
眠気まじりの心地のまま、辺りを見る。
寝ている場所は保健室のベッドの上。体の上には重さを感じさせないタオルケットが掛かっている。
右側には壁。左側には、白い布がベッドを覆い隠すようにしてそびえ立っていた。
朝倉直美は、まず首をひねった。
「あれ……? なんで、私ここに……?」
ついさっき見た、嫌な夢。
頭をひねって考えた、哲明を手に入れるための策を、明菜に見破られてしまった。
逆上した自分が明菜に襲いかかった瞬間、目の前に割り込んできた哲明に誤ってナイフを刺してしまった。
何もかもが自分の思い通りに進んでいない。その瞬間、これは夢だと思った。
だから、目を覚ますために3階の渡り廊下の手すりの上から、飛び降りた。
目を覚ましたとき、毎朝起きるように自宅にあるベッドの上で目を覚ますはずだったのだ。
それなのに、自分は学校の保健室にいる。
朝倉直美は混乱した頭を使って状況把握に努めた。
そして、すぐに気づいた。さっき自分が見ていた光景は現実だったのだ、と。
明菜にナイフを向けたことも、哲明にナイフを刺したことも現実。
「そんな……! 私、本当にそんなことを……」
両手を見下ろし、もう一度思い出す。
自分が持っていたナイフは――望まなかったことだが――哲明に向かって、全力で突き進んだ。
腰だめにナイフを構えていたため、自分の体と哲明の体はぶつかった。
その結果に驚いて体を離したとき、手の中にナイフはなかった。
代わりに、赤い液体――おそらく哲明の血液が付着した。
そして、目の前で哲明は倒れた。膝をついてから、前のめりに倒れていた。
倒れていた哲明の後ろには明菜がいた。明菜はへたり込んだまま、その手を哲明へ向けて伸ばしていた。
全てがはっきりと思い出せた。間違いなく自分が、哲明を傷つけたのだ。
哲明を傷つけた。それを理解した瞬間、朝倉直美は自分の体を抱きしめた。
明菜と口論した際、哲明を傷つけても構わない、とまで自分は口にしていた。
だがそれは、なにかが違っていた。
「嫌、嫌だ……わた、し……テツ君になんでそんなこと……」
震える口から出る言葉が、偽りなき心を語る。
「そんなことしたら、嫌われるに決まってるのに……!」
なぜ、あんなことを言ってしまったのだろう。
一度も、一瞬たりとも、そんなことは考えたことはなかった。そんなことは気持ちのかけらも思ったことはない。
あの時気が立っていたからだろうか? それとも、明菜へ脅しをかけるつもりだったからか?
だがどのようなつもりだったとしても、すでに哲明へ告げてしまった。
哲明を傷つけても構わない、と言った。そして、実行した。
「嫌、だよ……いや……いやあああああああァァッ!」
頭を抱えて、ベッドにうつぶせになる。体の震えが止まらない。止められない。
がちがちと歯が鳴る。唇から唾液が垂れて、枕を濡らす。
涙は出ない。だが、しばらくして悲しみが心を犯せば、涙がとめどなく溢れてくる。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
テツ君を刺してしまった。この手に持っていたナイフでテツ君のお腹の皮膚を、肉を、内臓を貫いた。
テツ君は生きているの?誰かに手当をしてもらったの?それともまだ別校舎にいるの?
もし、死んでしまったとしたら。
「あ、あああ、うわあああああああああああ、ああああああああっ!」
もう会えないの?もう二度とお話もできないの?
テツ君がいたから頑張れたのに。どんな気分のときも胸を張って、笑うことができたのに。
たった一時の嫉妬心で、取り返しのつかないことをしてしまった。
ごめんなさい――いえ、謝ってももう遅い。どうしようもない。結果が出てしまった。
私がテツ君を傷つけた。死んでしまったかも……しれない。
朝倉直美は声を出さずに泣いた。唇を閉じて、顔を枕に押しつけた。顔を枕に擦りつけた。
涙を止めたかった。自分は泣く資格がない。悲しむべきは哲明の姉と妹だ。
わかっていたが、今の朝倉直美の心を苛む罪の意識は慟哭を吐き出させ続けた。
泣き続ける少女のの背中に、声がかかる。
「……起きたか、朝倉直美」
朝倉直美はびくり、と体を震わせた。驚きで起こったしゃっくりが嗚咽を止めた。
聞き覚えのある声だった。そして今は聞きたくもあり、また聞きたくもなかった声だった。
首を曲げて見上げたその先に、哲明の姉であり、また自身のクラス担任でもある教師がいた。
「先、生……」
「運がよかった、と思うべきだろうな」
「え?」
それはどういう意味だろう、と朝倉直美は思った。
――あ、もしかして!
「テツ君が……?」
顔を輝かせて、朝倉直美はリカを見た。
運が良かった。それはもしかしたら哲明のことを言っているのかもしれない。
だが、期待は裏切られた。
女性教師が口にした言葉は、朝倉直美自身のことを語っていた。
「お前が3階から飛び降りて助かったのは、たまたまお前達の声を聞いた私が2階にいたからだ。
落下してきたお前の足を私が掴めたのは、神のきまぐれ、というやつだろう」
「……あの、先生」
「何だ」
「テツ君は……?」
どうなんですか?無事ですか?という意味を込めて、朝倉直美がリカに問いかけた。
リカの顔が曇った。顔は斜め下に向けられている。
何を言うべきか迷っているような様子だ。
沈黙が場を支配して、数十秒。リカがぽつりと呟いた。
「……面会謝絶」
「面会謝絶?」
「今、テツは面会謝絶の状態にある。……それだけしか、お前には言えない」
「嘘……教えて、教えてくださいよ! だって、私、私が……テツ君を!」
朝倉直美が、リカの肩を掴んだ。言葉を続ける。
「私が、テツ君を……あの時に……」
「言わなくてもいい。話は明菜から聞いている。まったく……とんでもないことをしてくれたものだ」
「……ごめんなさい」
「謝るなら、私ではなくテツにしろ。それと……手を離せ。スーツにシワが寄る」
リカがそう言うと、朝倉直美は手から力を解いた。
知らぬ間に、リカの肩を強く握りしめていたようで、しばらくスーツに指の跡が残っていた。
肩のシワを直し、朝倉直美と向き合う。
「今回、お前が起こした傷害事件について、だが」
「……はい」
「学校側からは何も言われていない。だから、私からは何も言うことはない」
「え。どう、して……?」
「その辺りのことは知らない。事を公にしたくない、という判断なのかもしれない。なんにせよ、今回のことは忘れることだ」
「そんな……そんなのって、ないですよ!」
「静かにしろ、朝倉。ここは保健室だ」
「そんなの関係ないです! それより――」
「静かにしろと言っているだろう! 黙れ!」
リカの一喝が、朝倉直美を萎縮させた。
「今回のことで私が何も思っていないと、お前は思うのか? 私が怒っていないとでも?
弟が、テツが――怪我をしたというのに、怒らない姉がいると思うのか?」
「あ……うっ……」
「どうなんだ、朝倉直美!」
「……怒らないはずが、ないですよね」
「わかっているのなら、私の神経を逆撫ですることを言うのはやめろ。……代わりに、私から言うことがある。」
リカは両手を組み合わせ、肘を膝に乗せた。教師の顔で、朝倉直美に言う。
「私はお前のように、男を刺して後悔した女のことを知っている」
朝倉直美が目をしばたたかせた。てっきり説教か何かだろう、と思っていたからだ。
「その女は、とにかくその男のことが好きだった。だから、男を独占したかった。
しかし、男は他の女を見ていた。自分のことなど、少しも見てくれなかった。
だから、男をたぶらかす女を刺し殺そうと、刃物を持ち出した」
じっとしたまま、朝倉直美は続きを待った。教師の語る女の姿が、自分とそっくりだったから。
「女が刃物を突き出した瞬間だった。突然目の前に男が飛び出してきた。
その女は憎い女を殺すつもりだったから、手加減をしていなかった。もちろん、刃は止まることなく男に突き立った」
「うそ……」
そんなところまで、同じなんて。
「男はどうにか命を保つことができた。それから、男は……どうしたと思う」
朝倉直美は首を振った。
刺された男が、女を許すわけがない。男は女を憎んでいる。
似たような境遇にある哲明と自分。話の中の女と自分を照らし合わせると、話の中の男と哲明が重なった。
そして、自分を強い憎しみの込もった目で睨み付ける哲明の顔までが勝手に浮かんできた。
哲明に嫌われたくない。その一心で朝倉直美は首を振っていた。
「……男は、女を恨まなかった」
ぴたり、と朝倉直美が動きを止めた。乱れていた髪が、落ち着きを取り戻す。
「男は女を許した。生死の境をさまようほどの大怪我であったにもかかわらず。
それがなぜかというと――男が、その女のことを好きだったからだ」
「……刺されたっていうのに?」
「そうだ。刺されたというのに、男はその女を好きなままでいた。
それは男が優しい性格の持ち主だったからだというのもある。だが、それ以上に男は女のことをわかっていた。
女が刃物を持ち出したのは、自分を思うがゆえのことである、と男は納得した。
それから……その女は、男と憎かった女の2人と一緒に過ごすようになった。めでたしめでたし」
「そう、なんだ……」
「だからどうした、というわけではないのだがな。……明菜から聞いたとき、この話を思い出した。それだけだ。
別に話の中の女と朝倉を比べているわけではない。それに、テツが許すかどうかも、わからないしな」
「……そうですよね。テツ君が許すかどうかなんて、本人に聞かなくちゃ」
「話は終わった。私は帰る。……朝倉、明日も学校に来るんだぞ」
リカは椅子から立ち上がり、朝倉直美に背を向けた。
ベッドの周りを囲っていたシーツを手でどけて、リカは立ち去った。
残された朝倉直美は、また泣いていた。
今度は悲しみからくる涙ではない。希望からくる涙だった。
――哲明が許してくれるかもしれない。
それは小さな希望。もしかしたら道路に浮かぶ陽炎のように儚く、実体のないものかもしれない。
しかし、それだけで今の朝倉直美の心は満たされた。
――テツ君に会いたい。
朝倉直美はそう思って、笑いながら、泣いた。
*****
リカは学校を出ると、病院ではなく自宅へと向かい、つつがなく帰宅した。
朝倉直美と会話しているとき、哲明は面会謝絶の状態にあると言っておきながら、なぜ病院へ向かわないのか?
その理由は、たった一つ。
家に、哲明がいるからだった。
「テツ兄のアホ! マヌケ! 頭いいけど人類史上最高の馬鹿!」
「ご、ごめん……」
「謝って済むとでも思ってんの?! 私があの時どれだけ心配したと思う? 死んじゃったかも、って思ったわよ!」
「いやでも……あのときはああするしか」
「だ、か、ら…………その行動がダメだって言ってるんでしょうがっ!」
リカが自室へ戻る際、哲明と明菜が言い争う――正確には明菜が一方的に攻めている――声が聞こえた。
2人を止めようと思い、罵声を吐き出し続けるドアに手をかけた。
だが、結局開けることはせずにそのまま自室へと戻った。
なぜ哲明が無事なのか、説明しよう。
あの瞬間、哲明は朝倉直美の振るうナイフの進路上に割り込んだ。
ナイフは哲明の方向へ向かっていった――が、胴体に刺さることなく、制服をわずかに切る結果に終わった。
ここからが、問題だった。ここで哲明のやったことが勘違いの元になった。
朝倉直美とぶつかった瞬間、哲明はナイフを握りしめた。
もちろん手探りで握った。右手で握ったナイフの部位は、切れ味鋭い刃だった。
当然哲明の手のひらは切れた。哲明の指に数ミリほど刃が食い込んだ。
だが、哲明はナイフを放さなかった。ここで放してしまったら、明菜の身に危険が及ぶと思ったからだ。
左手にナイフの刃を持ち替え、血に濡れた右手の指で朝倉直美の手を握る。
左手を動かしてナイフを奪い取る。朝倉直美の体が離れると同時、握っていた右手を放す。
そして最大の問題点は次。
哲明は、その場でわざと倒れた。
それは賭だった。自分がここで倒れてしまえば、明菜と朝倉直美の喧嘩が収まる、と考えたのだ。
昔に腹を怪我したときのことを思い出して、倒れる演技をしたわけではない。
哲明はそのつもりだった。
その行動が、事実を知らない明菜に昔のトラウマを思い出させる結果になってしまったとは知らない。
哲明の問題行動はその後もさらに続いた。
顔を上げた哲明が見たものは、目をつぶり、両手を広げ、手すりの上に乗っている朝倉直美の姿だった。
哲明は跳ねるように飛び起きた。その時には朝倉直美はすでに飛び降りていた。
必死に伸ばした手で、朝倉直美の手を掴んだ。しかし、支えきれずに哲明も引きずられるように落下した。
運良く2階にいたリカのおかげで足を掴まれ、朝倉直美は宙づりになりながらも助かった。
だがこのとき、哲明は朝倉直美の手を掴んでいたのだった。
動きを止めた朝倉直美を支点にして、哲明は回転。
そして、運がいいのか悪いのか、1階の通路へと落下した。床にたたきつけられ、哲明は気絶した。
事の顛末は以上。嘘のようだが本当だ。
哲明の行動は間違ってはいない。間違ってはいないが、明菜を怒らせるには十分なことをした。
――ということがあって、哲明は明菜によってかつてないほどになじられているのだった。
「何なのよ! 朝倉なんかのためにあそこまでして!」
「おい、俺がああしなかったら今頃朝倉さんは」
「今はテツ兄のことを言ってんのよっ! 黙って叱られなさい、このペテン師!」
「ペテン師って……そこまで言うか普通?」
「それなら詐欺師でもいいわよ! あほあほあほあほあほっ! テツ兄のアホったれ!」
リカは自室でスーツから部屋着へと着替えながら、哲明と明菜の声を聞いていた。
これでは私の出る幕は無いな、と思いながら。
明菜の怒声が治まったのは、夕飯の時刻をとうに過ぎたころだった。
*****
夜の11時。蝉の鳴き声の代わりに、リリリリリ……という虫の音の聞こえる頃。
明菜とリカは、寝静まった哲明を置いて、リカの部屋に集合していた。
「今回はとんでもなく疲れたわ。まさか朝倉があそこまでするなんて思わなかったから」
「やはり、要注意人物だった、ということだな」
「まったくよ。まあ、二度と変なことはしてこないでしょうけど」
「そうだな」
白い丸テーブルの上に乗っているのは、お茶とオレンジジュースがそれぞれ入っている2つのグラス。
明菜が飲んでいるのがお茶。リカの分はオレンジジュース。
他にはチョコやポテトチップスなどのお菓子類が乗っている。
2人は朝倉直美との対決に勝利したことを記念し、ささやかな祝杯をあげているところだった。
「テツ兄の馬鹿っぷりにはほとほと呆れるわ。私がどれだけ心配したかまだわかってないみたいだし」
「あれ以上やる必要はあるまい。3時間以上は怒鳴りっぱなしだったぞ?」
「全然足りないわよ! 私、テツ兄が倒れたとき本当に心配したんだから……」
「……そうだろうな」
リカはグラスの中身をあおると、テーブルの上にグラスを置いた。
グラスの縁に指先で触れ、いじりながら言う。
「あの時のこと、まだ後悔しているか?」
「どうだろ。あのことが無ければ今みたいに姉兄妹仲良くなってなかっただろうし、
かと言って、テツ兄に怪我をさせちゃったことが良かったとは断言できないし、ね」
「私は……こう言ってはなんだがな、あのことがあって良かったと思っているよ。
テツは、私と明菜が喧嘩しているのを見るのが嫌だっただろうからな」
「……私もどちらかと言えば、そうよ」
「それに、明菜と喧嘩し続けているのもあまり面白くはなかった」
「……変なものでも食べた? いきなり気持ち悪いこと言わないでよ。私ソッチの気はないわよ」
「私だって無い。私はテツ一筋だ」
「当然じゃないの。初めては絶対テツ兄にもらってもらうんだから」
明菜はお茶を飲もうと、グラスを持ち上げた。
しかし中身は空だった。おまけにペットボトルの中身も空。
仕方なく、グラスをテーブルの上の、水滴でできた輪の上に置く。
「朝倉、学校やめちゃうのかな」
「なんだ、やめてほしくないのか?」
「違うわよ。なんとなく……聞いてみたいだけ」
「何を聞く?」
「テツ兄を刺した時の気持ちと、あと……」
「あと?」
「あとは……」
しばらく黙り込んでから、明菜はふっ、と息を吐いた。
「なんでもないわ。朝倉、学校とっととやめちゃえばいーのにね。自動的に私の成績も上がるし」
「それはない、と断言しようか」
「ふふん、今までは朝倉がいたから学年平均が高かったけど、これからはだいぶ下がるはずよ。
あれだけのことがあったんだもん。どう転がっても成績は下がるわ。
最大のストレスが減った今、私の成績が上がり調子になることは間違いなし!」
「さて、それはどうかな? そう上手くいくと思うか?」
そう言って、リカが笑った。楽しそうに、面白そうに、明菜の顔を見つめる。
「……何? その意味深な笑い」
「誰かさんを見ているとな、かえって元気になるのではないか、と思ってな」
「誰かさんって誰よ。……もしかして私? 朝倉と私が似てるって?」
「そうは言っていないさ。私の勘だよ。気にするな」
「あっそ」
明菜は壁に掛かっている時計を見た。
まもなく日付が変わるだろうという時刻だった。
明菜は立ち上がり伸びをすると、1回だけあくびをした。
「じゃ、私寝るわ。おやすみ、リカ姉」
「おやすみ。……寝ているテツを起こして説教するなよ」
「しないわよ」
「枕元で説教したりもするなよ」
「あ、それいい……なんてね。今日は気分がいいから言わないであげるわよ。じゃあね」
「ああ」
こうして、夜の宴は終了した。
同時に、明菜とリカにとって最大の標的である朝倉直美という女との戦いは、姉妹の勝利で幕を下ろした。
そう、終わったのだ。――と、姉妹は思っていた。
*****
9月9日、日曜日。天気は快晴。
空に浮かぶ太陽の放つ日差しがプールサイドをじりじりと焦がしていた。
「熱いな……」
「……熱いね」
リカの運転する車で30分ほど走り、明菜とリカは民営の屋外プールへとやってきていた。
このプールは町外れにあるため、敷地が広く設備も充実している。
水の流れるプールや巨大な滑り台、さらには噴水まである。
敷地の周りには背の高いヤシの木が生えていて、造りが充実していることを感じさせてくれる。
今日は今年最後の営業日らしく、夏休みでないにもかかわらず客の入りが多かった。
明菜とリカは2人ともが水着を着ていた。
明菜はスクール水着。胸元に名前などは貼られていない。
起伏の少ない体ではあるが、かえってそれが繊細な体であることを強調していた。
リカの着ている水着は無地のワンピースタイプの水着。一見するとスクール水着だ。
明菜とは対照的に、胸元と尻がウエストより大きい。いわゆる、ボンキュッボンというやつだ。
2人はパラソルの下にあるベンチで、日差しを避けるように座っていた。
今は2人しかいないが、もちろんこのプールには哲明も一緒に来ている。
だというのに哲明がいないのはどういうことか、というと。
「その友達とやらはどこにいるんだ。明菜、なにか聞いていないか?」
「なにも。なにやってんのよ、テツ兄のやつ……今日はいっぱいくっつくつもりだったのに」
「ほう……」
「なによ。その、ほう、ってのは」
「くっつく、というとあれか。その細い体をテツの腕や体に擦り付ける動きの事か?
そんなことをしたらテツの腕が洗濯板で洗われたように荒れてしまうだろうな」
「誰のどこが、洗濯板ですって……?」
「明菜の胸が、だ。お前は止めておけ。代わりに私がやろう。
ふふ……プールの中でくっついて、固くさせて……プールから上がれないようにしてやろう」
「はん、そんな無駄にでかい乳ごときでテツ兄がどうにか…………?」
リカと向かい合って座っている明菜の目が、リカの後ろを見つめていた。
表情がおかしい。最初は額に軽く皺を寄せる程度だったのに、時が経つにつれて怒りの色を濃くしていく。
しまいにはぎりぎりと歯軋りまでする。
リカはさすがにこれはおかしい、と思った。
明菜は先ほどから自分の後ろを見つめている。自分の後ろに何かがあるのだろうか。
くるりと、振り返る。
リカが振り返って見た、その場所には、哲明が居た。
年相応に膨らんだ筋肉、締まった体。その体を隠しているのはトランクスタイプの水着だけ。
しかも下半身だけしか隠していない。上半身は丸見えだ。
これにはたまらずリカも興奮した。動悸が早くなり、少しずつ体が落ち着かなくなっていく。
しかしその興奮は、哲明の左手を見て萎えていった。
左腕に余計なものがくっついていた。不要なものと言い換えてもいい。
哲明の左腕に、自らの腕を絡ませている――ビキニを着た、知らない女がくっついていたのだ。
「テツ、遅かったな。……で、その女はなんだ。そいつが友達か?」
「私達を待たせておいて、女を連れてくるなんて、テツ兄もいい度胸してるね……?
どう見ても、友達には見えないよね。ただの友達は腕を組んだりしないもんね?」
「遅れてごめん。悪かったけど……そんなに怒るなよ」
哲明が笑顔を浮かべてそう言った。が、真剣みの無い謝罪は姉妹の怒りに燃料を注ぐ結果にしかならない。
明菜はわなわなと頭と肩を震わせ始めた。リカは双眸をきつく絞り哲明を見た。
「待たせておいて、その言い方はないんじゃないの? 誠意ってもんが足りないよ、テツ兄には」
「いくら私でも我慢できないことというものがある。……答えろ、どういうつもりだ、テツ」
「えー……っと、あのー……」
答えられない哲明の代わりに、答えるものがいた。哲明の左腕にしがみついている女だった。
「見てわかんないんですか? 先生、明菜ちゃん。その目で見た、そのままの意味ですよ」
「先生……?」
「明菜ちゃんって、あ! あんた、まさか……!」
明菜が女を指で差した。女が、応える。
「せ・い・か・い。朝倉直実だよ。一発で気づかなかったね。やっぱり、これの効果かな?」
そう言って、朝倉直実は自身の髪を撫でた。
リカと明菜がわからなかった理由は、その髪にあった。
長かった髪が、ばっさりと切られていたのだ。
「長い髪もいいけど、たまには短いのもいいよね。重くないしさ」
「……ふーん。テツ兄に失恋したから切った、ってわけね。殊勝な心がけじゃない。
それなら潔くその手を離しなさいよこの泥棒猫」
「い、や、よ」
「い、や、よ……嫌ですって?」
「だって私、まだテツ君のこと諦めてないもん」
朝倉直実の手が、哲明の左手を握った。目を瞑り、頬ずりなどしている。
「気づいたんだ。きっと、からめ手でいったから失敗したんだよ。
正面から行けば、きっと上手くいくはずだもん。ね? テツ君?」
「いや。ね、と言われても。朝倉さん、手を離して……」
「あん。直実って呼んで。な、お、み」
猫なで声で朝倉直実が哲明を誘惑する。だが、哲明はその誘惑に負けなかった。
強固な精神力で耐えたわけではない。甘い誘惑を掻き消す辛口の視線に気づいたからだ。
「ぐ……ぎぎ……この、凶器女が……っ!」
「よくも、テツにそんな真似ができたものだな……誰のおかげで今生きていられると思っている」
「テツ君の愛のおかげです。テツ君、私を止めようとしてくれたもんね。大好きよ……テツ」
テツ、と朝倉直実が言った瞬間、二匹の獣が叫んだ。
それには女が、いや人間が出せるとは思えないような類のおぞましさが篭っていた。
姉妹に本能的な恐怖を感じた哲明は、思わず後ずさった。
そんな哲明の手を掴む者がいた。朝倉直実だ。
「さー、行こうテツ君! 最初はあの滑り台から!」
「え、ちょ、今、好きって、えええ?」
「ほらほら、早く行かないと二度と乗れなくなっちゃうよ? あっはははは!」
言い終わると、朝倉直実は哲明の手を取って走り出した。
予想以上の速さで引っ張られながらも、哲明はどうにかついていく。
少しだけ、後ろを見た――すぐに顔を戻した。
後ろからは、当然のように明菜とリカが追いかけてきていた。
明菜もリカも、とても見られるような顔をしていない。あれなら般若の面の方が可愛いくらいだ。
人ごみをかき分け、制止の声を振り切り、足をもつれさせながらも哲明は走り続けた。
そして、思う。
こうして朝倉直実が居て、明菜が居て、リカが居る。
それはきっと幸せなことなのだろう。あまりにも危険が多い幸せだが。
帰ったら絶対に姉妹にどやされるだろうな。やっぱり今日朝倉直実を誘ったのは失敗だっただろうか。
答えるものは居なかったが、姉妹の叫び声や呪詛の声や怒号を聞いていると、答えは自ずと知れた。
「待てえ! 待たんかっ! テツぅぅぅぅぅぅっ!」
「今止まれば、3回だけで終わらせてやるわ! だから待ちなさいよ! テツ兄っ!」
「あはははははははっ!」
朝倉直実の笑い声は、元気だった。
また明日からあの元気な顔がクラスで見られると思うと、嬉しくなった。
ただ、自分が今日生きてプールから帰れるのか、ということだけが哲明には心配だった。
この日、このプールで起こったトラブルは、1人の少年が溺れるだけだったという。
こうして、ある民営のプールは、つつがなく夏の営業を終えたのだった。
おしまい
『双璧』は以上で終了です。
オチがなんだか朝倉オチっぽいのは……自覚してます。
申し訳ないです。
短い間でしたが、読んでくださった方、どうもありがとうございました。
それでは。
完結乙。
それにしても『今なら3回で〜』って何のことだろう…?
と邪推(?)してみる。
>>284 超GJ!!
だが哲明は人が良いにも程があるだろw
>>284 改心のGJ!!
それにしてもキモ姉妹の主人公の人が良いのはセオリーだよなw
>>284 GJ!!!
やっぱりハッピーエンドが一番!
完結乙
確かに朝倉ENDっぽいな、これww
朝倉もすげぇなぁ、普通主人公が許しても自分が許せないだろw
ヤンデレとはちょっと違ったのかね
綾の話、伏線っぽい森田君に誰も触れてなくてチトワロタw
今更その話をするおまえにワロタ
>>284 テツ・・・どこまで人がいいのか・・・
とりあえずハッピーエンドでよかった
乙っした
>>284 朝倉さんENDキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
とっさに足掴んだ姉も姉だが、一緒に落ちて助かったテツ兄もテツ兄だw
>>284 テツ兄カッコ良過ぎだろ・・・(*´Д`)ハァハァ
それにしても3回ってなんのことなんだろう?
次回作も楽しみにして待ってます!
GJ!!
3回って、3回うんこ食わせるって事かな?
キモ姉妹が私の物になってと、こっちを見ています。
自分を譲りますか?
ニア はい
いいえ
逃げる
キモ姉妹は嫉妬してしまった!
>>303は監禁されてしまいました。
GAME OVER
>>305 キモ姉妹は殺し合いを始めてしまった!
キモ姉とキモウト、どちらの味方をしますか?
ニア キモ姉
キモウト
>>306 キモ姉に味方しつつキモウトを慰め、その後キモウトとセクロスする。そしてキモ姉と逃亡する。
>>306 生徒会の先輩に慰めてもらう。部活でも可
ヤンデレは大好きだけど近親相姦はちょっとな…と思ってた俺がきましたよ
このスレのお薦めは綾シリーズと籠の中でまちがいないな?
荒らしに来るな。
荒らしというわけでもないだろうが・・・
みんなお薦めだよ、マジな話
幼馴染がヤンデレにクラスチェンジした!
>>308 は監禁されてしまいました。
GAME OVER
この流れつまんねーんだけど・・・
朝倉ENDつーかヤンデレハーレムktkr!!
俺はこのスレでは異端なので、こういうめでたしめでたしな終わり方が大好きです
キモ姉に追いかけ回されたい。
逃げても逃げても追われ続けたい。
船に乗ったら泳いで追いかけてきて、車で逃げたら走って追いかけてきて、飛行機で逃げたら、必死で翼に掴まり続ける。
そんな一途なキモ姉が私は欲しい。
キモ姉に束縛されたい。
「口で嫌がっているけど身体は正直じゃない」と言われ嬲られたい。
キモウトに、
「お兄ちゃん、私におしおきをして!
えっちなことばかり考えてる私を嬲って!」
と言われたい。
このスレMばっかりだなwwww
恐れを知らぬ奴らよ・・
>>321 妹が可愛いくても、そんな事は言われたくないよ。
実際、可愛いブラコン妹がいる俺が言うんだから間違いないよ。
ちなみに、俺は妹に興味ないよ。
また実際の話かw
これ毎回同じ人なの?
そっとしとけ、構ってもらいたいんだろ
今日は投下はなしか・・・
投下に最適な丑三つ時ならぬヤンデレタイムがあるではないか
キモ姉がF22で俺を連れ戻しにくると連絡がありました。
助けてください!
>>326 まぁまぁ、そういう実話も荒しよりは別にいいじゃん。
てか、羨ましそうだな…
それよりも絵師に降臨していただきたいところだな。
>>322 お前ヤンデレに興味がないならすぐに去ったほうが身のためだぜ?
ほら、お前の後ろにはもう・・・
連載中リスト
永遠のしろ
虎とあきちゃん
綾シリーズ
水木さんちシリーズ
運命の赤い超紐理論
聖のお兄様
毒にも薬にもなる姉
桜の網
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三者面談
+
+
∧_∧ + コイコイ
+ (。0´∀`)
(0゚つと ) +
+ と__)__)
335 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/28(火) 01:02:44 ID:u8naqcOu
>>333 サーセンwww
や、こう…被監禁願望?的なものを感じたのさ。
修羅場もキモ姉妹も大好きなので、時間が空けば書くよ。
監禁もの。
うわあああああageてしまったスマン
ちょっと妹に『好きな人ができたから相談にのってくれ』って逝ってくる
>>336逝ってこい。何かあったら俺たちスレ住人が助けてやる!!
さて、姉にマンションに来てくれって言ってたし、そろそろ行くか。
わずか2時間の間に二人の尊い犠牲が・・・
やれやれまったく。
なにかと身辺には気をつけなきゃな。
あれ、どうしたのおねえちy
たが断る!!
投下します。HDDぶっ壊れてコテがわからんくなった;
虎とあきちゃんの続きです。
虎…虎……起きなさい……まだこちらに来てはいけないよ。
はっ!その声は天国のじいちゃん。久しぶり。俺を置いていきなり死んじゃうなんてひどいぜ!
虎…早く起きるのじゃ…でないと…。
「んん?んんっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ぁぁぁっ!ごほっごほっ!!!!」
ありのままに起こったことを話すぜ!
目が覚めたら姉にキスで口を塞がれて窒息しかけていた。何をいっているのか略っ!
「亜紀姉っ!!」
「ん〜〜〜虎ちゃん大好き〜〜もっとキス〜〜むにゃむにゃ…チーズケーキ…」
寝てるときの無意識の行動だったようだ……動悸が止まらない……やっぱ、美人は
恐ろしい。姉だから嬉しくない。嬉しくないったら嬉しくない。
「亜紀姉っ!起きろっ!」
ぺちぺちと頬を叩く。がばっと布団を上げると……何故か裸だった。神速で布団を
元に戻す。白い肌に形のいい──やばい、焼きついた。
「んー、もう朝〜?」
「馬鹿!あほっ!亜紀姉服は!?」
駄目姉は、ねぼけた顔で眼をこすりつつゆっくり思い出しているようだ。
「昨日、確か怖い夢を見て〜。」
「またかよっ!」
「榛原さんが電車のホームから私を突き落としたり〜榛原さんが木刀で夜中に襲い掛かってきたり〜
榛原さんが薬で毒殺したり〜そんな夢。怖かったぁ。お姉ちゃん虎ちゃんいなかったら
眠れなかったわぁ。」
「やけに具体的だがなんで榛原さん限定なんだ。」
俺は呆れながら言った。あたりに服がみあたらないので衣装棚から適当にシャツと
ジャージを渡してやって後ろを向く。
「で、何で裸なんだ?」
「どうせだから虎ちゃんにお世話になってるお礼に、みやちゃんに教えてもらった男の子が
気持ちよくなるマッサージしようとしたの。でも、眠くてそのまま眠っちゃった。ごめんね〜。」
むしろ良かった。本当に良かった。
「亜紀姉。俺の部屋で寝るのは禁止。裸になるのはもっと禁止っ!!」
「うう、虎ちゃん厳しい…。」
涙目になる駄目姉。優しくしたら付け上がるからきっちり叱っておかないと。
「だめっ!」
「うう。わかった〜あの虎ちゃん?」
「なんだ?」
「このシャツ虎ちゃんのいい匂いがするー。貰っていい?」
俺は返事をする代わりに駄目姉の頬を両手で左右に引っ張った。
朝からダウン寸前の精神的ダメージを負った俺は小うるさい風子を無視し、穏やかに
放課後を迎えていた。土曜だから昼前だ。
榛原さんを誘ってデートとも思ったが、今日は忙しいらしくおとなしく帰って寝るかと
考えていたのだが…
「やあ、虎之助君、亜紀先輩。」
正門では長く伸ばした髪を無造作に縛った男女、剣薫が待ち伏せしていた。
「じゃあ、またな。」
俺は礼儀として挨拶し、さっさと帰ろうと思った。
「ま、待ちたまえ。冷たいな…虎之助君は…だがそれがいい。それはともかく実は相談
があってだね。」
「虎ちゃん〜薫ちゃんが可哀想よ。ちゃんと聞いてあげないと。」
真剣な薫と涙目の姉に説得されてしぶしぶ話を聴くことにした。
「で、なんだ?」
「買い物に付き合って欲しいのだ。」
「俺と?」
まあ、榛原さん用事あるし別に構わないが…
「君と二人きりというのは非常に魅力的だが、今日は違う。亜紀先輩にも着ていただけると
心強い。」
「えへへ。私いると心強い?よし、お姉ちゃん手伝っちゃう!」
「駄目姉は何の役にも立たんぞ。」
「いや、亜紀先輩の力が必要なんだ。」
ふむ…よくわからんが嘘は言ってなさそうだ。どうせ暇だし、俺は薫の買い物を手伝う
ことに決めた。
そして、三十分後…俺は早くも後悔していた。
「ここだ。」
薫が俺と亜紀姉を連れてきた場所…それは女性のための店、ランジェリーショップだった。
「流石に虎之助君と二人でここに来るわけにはいくまい。」
「おまおま…なんで…」
「やはり、下着は女物じゃないとまずいのだよ。だが、購入するには不便でね。」
なるほどーと、亜紀姉は納得して頷いていた。
「お、俺は外で待ってるから亜紀姉と薫で行ってきてくれ。」
俺は逃げようとしたが右手を亜紀姉に捕まれ、左手を薫に捕まれてずるずると
店内に連れて行かれてしまった。
「虎ちゃんの趣味を教えてもらわないとねー。」
「うむ、君が好むものでなければ意味が無い。」
二人は同時に頷いた。俺は諦めて半歩後ろについていく。何か薫が紙を亜紀姉に渡し
それを読んで亜紀姉がおっけーと親指を立てていた。
「なんだ?その紙。」
俺が覗き込もうとすると薫は珍しく紅くなって慌てふためいた。
「だ、だだだだだめだ!虎之助君は見ては駄目だ!」
「駄目よ〜虎ちゃん。薫ちゃんの胸とスリーサイズ書いてあるんだから見ちゃ。」
「亜紀先輩っ!」
慌てる薫。なんか見てみたいようなそうでないような。
「お姉ちゃんのなら教えてあげるよ?」
「いらん。」
店内には所狭しと女性の下着が置かれている。店員は勿論、客も女性ばかりで場違いに
浮いた俺はそこにいるだけでセクハラになっているような緊張感に耐えていた。そんな中、
亜紀姉と薫は下着を選んでは見せ合って喜んでいた。俺もたまに感想を聞かれたが、直視できず
生返事を返すだけだ。
うるさい二人のせいで視線も集まり………ふと首筋にちりちりと来るような殺気が……
後ろを向いたが誰もいない。そして、視線を他所に向けたせいで伸びる魔の手に
気づかず、俺は試着室に引っ張り込まれた。
「うふふ〜このブラどうかなっ!どうかな!?」
「ば、馬鹿!何するんだっ!」
「しーっ、お店で大きい声だしちゃだ・め♪」
中に入ると姉が選んだブラを付けてポーズをとっていた…。四捨五入すると九十に
達する胸を強調して…。
「虎ちゃんこれどう?似合ってる?」
「似合ってる!似合ってるから!」
俺は根性でその無法空間を脱出し息をついた。全く何本ねじが抜け落ちているのだろう。
この駄目姉は…。親父もお袋もやり手なのに誰に似たんだ。
「流石は亜紀先輩…。僕も恥ずかしいが挑戦するべきだった。」
「頼むからやめてくれ。」
格好付けて髪をかきあげてのたまう薫を見ながら、俺は心底疲労してランジェリーショップを後にした。
………で、何故薫はうちまでついて来るんだ。
「ほう…ここが虎之助君の家か。……………普通だね。」
悪かったな。うちはどうせ一般庶民だ。
「いらっしゃい、薫ちゃん。ゆっくりしていってね。」
姉は上機嫌でニコニコしている。薫はにこやかにありがとうございますなどと
和気藹々にしゃべっている。
「虎ちゃん。お姉ちゃんいつものアールグレイね。」
「ふむ…私もありがたく頂こう。」
お前らちょっとは遠慮しろよ。俺はくたくただ。といいつつ条件反射のようにお茶を入れて自作の
お菓子まで用意してしまう自分が憎い。
「ここまできたのも何かの縁だ。亜紀先輩実はお願いしたいことがあるのですが。」
ぽりぽりクッキーを齧りながら姉のほうを真剣に見る薫。
「なになに?大切な後輩のお願いだしなるべく聞いてあげるわよ?」
「虎之助君の部屋を見たいのですが。」
「うん。いいよ。一緒に見ましょうね。あ、昔のアルバムとかもあるよ?」
「ほう、それは是非に。」
「あほか!人の部屋にはいる許可勝手に出してるんじゃない!馬鹿姉!!」
断然抗議する俺。だが二人は全く聞くそぶりもなく俺の部屋に入っていった。
「まてこらっ!!」
あわてておいかける。そして、部屋に入ると…既にエロ本が発掘されていた。
「ほう……年下か……。」
「うう、虎ちゃん…お姉ちゃんものがない〜。」
ずしゃっと力が抜けて崩れ落ちる。俺の人権は一体どこに…。
「さて、虎ちゃんの性癖を確認したところで、薫ちゃん着替えさせましょうか。」
「はあ?」
「ほら。折角下着買ったんだし、服はおねえちゃんのあるし。サイズ的にも大丈夫そうだから。」
「ちょ、ちょっと?亜紀先輩?」
慌てる薫。お前は人の人権は蹂躙するのはよくてされるのはだめな人か?
「実はもう用意してあるのー。お姉ちゃん手伝ってあげるね?」
「亜紀姉まて!!」
後ろから薫に抱きつく亜紀姉。首筋に息を吹きかけ上から男物の服のボタンを一つずつはずしていく。
時折もれる薫の熱いと息がどうにも魅惑的な雰囲気を出している。
「あら〜女同士なんだから嫌がらなくてもいいじゃない?」
「や、やめてください先輩!虎之助君がっ!!」
「大丈夫よ。お姉ちゃんで慣れてるから〜。」
「そんな問題じゃ!!」
押し問答をしている間に亜紀姉の指が薫の意外と大きな胸を繊細な手つきで触る。このだめ姉わざとじゃ
にだろうな………でも、天然なんだろう。きっと。
薫の体からどんどん力が抜けていく。気がつくと下着を着けているだけになっていた。ここまで脱ぐとさすがに
いつもの男っぽい感じは微塵もなく、少し気が強そうな普通の女って感じだ。
「ふふ……後一枚だね。」
「虎之助君…みないで…」
ああ、そりゃそうだ。俺はドアを開けて外に出ようとしたが…姉に捕まった。そのまま恐ろしい力で
部屋の中に引き戻され、手近な配線コードで手と足をぐるぐるに縛る…ってまて!
なんで、こんなことにだけ無駄に器用なんだ…
「だめよ〜虎ちゃんが見てあげないと意味がないじゃない。男の子の評価って大切なのよ?」
姉はいつもの邪気のない笑みで俺に微笑んだ。そこに悪意は全くない。純粋に善意でやっているのだろう。
そして……姉は新しい下着を用意して残っていた下着を剥ぎ取った。形のいい大きな胸がむき出しになり
生まれたままの姿になる。
「あら…薫ちゃん濡れちゃってるわね…。新しい下着汚しちゃうといけないから拭いてあげるね?」
「ちょ…お願いです。やめ…虎之助君亜紀先輩を…とめてっ!」
すまん薫……こうなった姉を止めることは誰にもできないんだ…。亜紀姉はそのままうしろから抱えて
ティッシュを使って薫の大事な部分を俺の目の前で吹き始めた。無意識なのか掴みやすいのか自然にもう片方の
手は胸を掴んでいる。
「いや…あ…や、やめっ!」
「あれ〜おかしいね。とまらないみたい。」
明らかに目に毒な光景を見せられ、俺も悶絶していた。亜紀姉はどうにも薫の感じるところを集中的に
攻めているらしい。
「そそこはだめっ!ちがっ!いあ…う…だめああっっ…いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
体がピンとはったかとと思うとくたっと薫の力が抜けた…イッたのか?
「あ、あれれ?」
姉も困惑して動かなくなった薫を見つめている。そして何もなかったかのように普通に拭くと下着を
はかせて自分の持ってきた大人っぽい雰囲気の服を着せた。
「ほらどう?虎ちゃん。かわいくない?」
俺はそれどころじゃなかった。
薫は正気に戻ると男物の服に着替えなおし、顔を真っ赤にして走って出て行ってしまった。
俺は思ったよりあいつが普通だったのに少し感動し、心の中で詫びた。ついでにいいもの拝ませて
いただきましたと。学校でこれからどんな顔をして会えばいいのだろうと思いつつ、俺はとりあえず、横でのんきに
薫ちゃんかわいーとか呟いてる姉の頭を思いっきりはたいておいた。
以上です。
一人電車の中でニヤケてしまって周りから変な眼で見られてしまったではないか!
罰としてもっともっとキモ姉を書くのだ!
まぁそれはともかくGJ!!!
ヤラレチャッタwww
GJです!
亜紀ねええっちぃな!
これぞエロキモ姉。
次も期待して待ってます。
GJ!亜紀姉は相変わらず可愛いな
土日が仕事で潰れても頑張れるのはキモ姉のおかげだ
GJ!!
悪意がないだけに天然姉には手がつけられませんなw
それにしても薫にも惹かれてしまった俺はこのスレでは異端なのだろうか?
>>355 悪意が…無い?
俺、亜紀姉からものっそい黒いオーラ感じたぞ?
>>350おれの姉になってください。そして監禁してください。
GJ!!!
>>356お前も感じたのか・・・
やはり亜紀姉は
亜紀姉の鍍金が剥がれた時が怖いな……
亜紀姉「ずっとお姉ちゃんのターン!」
そろそろ究極のキモウトも見てみたくなったズェ!
職人様はまだかっ!
>>336>>338 待て!!それは罠だ!!
336「相談ってnうわなにをするしぇhぇ」
338「姉ちゃん何のyあwrg;wsgんうぇ」
遅かったか(´・ω・)
>>362 最近このスレの人口が減ってるなぁと思ってたんだが、それが原因か。
よし、ちょっとお姉ちゃんに相談してくる!!
そう言ったまま、
>>363の姉ちゃんの部屋と思われるところに入ったまま二度と姿を見せなかった。
――3ヵ月後、我々が姉の部屋を訪ねると、そこには元気に監禁された
>>364の姿が
「あの時はさすがに死ぬかと思いました。もう二度とお姉ちゃんに相談なんてしませんよ。」
そして部屋を訪れた我々は口封じに我々は皆殺しにされようとしていた・・・・
「ここは俺が食い止める!お前達は早くキモ姉妹スレに逃げるんだ!」
「無茶な!弟関係の時のリアルキモ姉の戦闘力は50億!!!
我々の10億倍だぞ!」
「ああ・・・多分俺は死ぬ・・・だが一つだけ希望がある。
それは・・・このスレのキモ姉妹パワーが50億を越えることだ・・・
だから・・・お前達にそれを任せたい。
信じてる・・・ぜ?」
「・・・分かった。だが一つだけ言わせろ!」
「・・・何だ?」
「保守」
何だこの神スレは。
最高じゃねえか。
368 :
364:2007/08/30(木) 14:02:23 ID:cXWPEwfL
>>369 そんなドジやっちゃう弟くんにはお姉ちゃんからたっぷりおしおきし・た・げ・る♪
夜にでもお姉ちゃんの部屋においで?待ってるからさ
>>370 そんなことより姉ちゃん!俺クラスの女の子からラブレター貰ったんだ!
この手の流れが面白くないのが玉に瑕だな
やってる本人は楽しいんだろうけどな
玉ってほどのスレじゃないだろ
空気悪くなるから無視しとけよ……。
まあ、まったり投下でも待とうよ
次はどの職人様が来てくれるのかね。俺の予想は…そろそろ無形氏が後臨してくるんじゃないかと思ってるが、どうだ?
ほす
>>379 なんかこのシリーズって節操ないから嫌い。
とりあえずブーム?に乗っておくかって魂胆がみえみえじゃん。
381 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 12:09:35 ID:h3RrApNc
眼鏡&ストーカーなキモウトってのも見てみたい今日この頃
うわー、朝倉涼子はねーだろ
ヤンデレじゃなくてただ単に狂気持ちだとか病んでるだけでデレないやつ載ってるな
言葉の意味わかってないだろw
そろそろヤンデレスレに統合してもいいと思うんだけど、どうだろう
ここのSSの姉や妹は男兄弟が異常に好きなだけで
ヤンデレってほど狂ってないのも多いからなあ
姉スレや妹スレとの重なり具合も微妙ではあるんだが
たとえば姉と妹がセットで出てくる作品はここが相応しいし
かといって姉スレ妹スレの双方までまきこんで「姉妹スレ」みたいな
大統合をしようといっても、姉と妹がそれぞれ一大ジャンルだから
難しかろうかと
いろいろ批判はあるんだろうけど、シチュスレ同士の多少のオーバーラップは
しかたがないかと
ヤンデレ、嫉妬、キモ姉&キモウト
スレはとんでもない勢力図になっているように思える
今の神職人の方々を見るとこのスレは成功してると思うんだけど…
俺もいつかはキモ姉&キモウトスレに投稿したいが
嫉妬スレの作品が終わらないw
向こうにもキモ姉妹ものって投下されてんのか?
何作かはあったと思われ
>>387の言うとおりここの神職人を見たら成功の気がするけどね。まぁ、どの作品が神かとか言っちゃうともめそうだから言わないけど
なんどめだナウシカ
なんどめだこの話題
双璧の朝倉はヤンデレだったなー
ヤンデレとの統合の話も出てるのか……。
実は、娘の小説でも書こうかスレでは、
キモ姉妹に組み込んでキモ近親者スレにしてくれという要望が出ているのだが。
他スレの話題ですまん。
>>393 それはいいな…長年の夢のキモ母が…wktk
キモ母っつーと、マザコン息子とそれを巡る
嫁姑の争いみたいな図しか思い浮かばん…
個人的には、姉妹ものと親子ものはだいぶ属性が遠いからまとめない方がいいと思う
今月の快楽天に良いキモ姉エロ漫画が載ってるぞ
て言うかまとめるとか余計なことしないでいいだろ。
現状で何か不具合があるわけでもないのに。
なんどめだなんどめだこのループ話題
とりあえず保守
って、誤爆した。スマソ
ぎゃ嗚呼ああああああああああああああああっっっつ
キモ母なんて加えずに母親総合スレでも立ててそこでやってくれよ
兄貴 墜ちろ
需要はあるスレだし、現状維持がいいさ
いまのままでいい
妹「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう♪はい、プレゼントだよ」
兄「……?手帳か(こいつのことだからてっきり『私を貰って♪』とくると思ったんだが…)」
妹「気に入った?」
兄「ああ、ありがとう」
妹「えへへ、じゃあ早速作らないとね」
兄「は?なんのことだ?……もしや!?」
【母子手帳】
兄「アッー!ただの手帳じゃない!」
妹「もちろんプレゼントはお兄ちゃんとの子供だよ!さぁ、いざ参らん♪」
兄「らめぇぇぇぇ!!」
ライトなキモウトで流れを変えてみる。
某機動戦士のあの妹スレかw
ホモじゃないのに『アッー!』とかそのまんまだなww
だがそれがいい
412 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:03:42 ID:wdlMI3Qk
人間が感じる苦痛のなかで最も性質の悪い苦痛とは、良心の疚しさであると僕は思う。
体の痛みは治療や麻酔によってその元を断つことで解消できるし、怒りや妬みはその責任の所在を他者へ向けてある程度ごまかすことができる。
しかし、自分が加害者の側となって被害者に対し感じるこの負い目は、罪を償うというある種の代謝行為によってでしか解消できない。
罰則を受け、許しを得るということは、良心の疚しさから開放されることなのだ。ソクラテスのいったことは正しかった。
罰則を受けないでいることは、罰則を受けることよりずっとずっと苦しくずっとずっと悲しいことであるのだ。
そして、残念なことに僕は取り返しの付かないことをしでかしてしまった。償いきれない罪を犯してしまった。
この罪状は永遠に許されることはなく、この負い目は死に至るまで僕を苛み、切れることのない鎖で僕を雁字搦めにして責苦を味わわせ続けるだろう。
姉さんはきっと僕を許してくれないだろうから。
ベッドが広くなっていることに気付いて、僕は目を覚ました。ちゅんちゅんとした鳥の囀りに混ざって、微かに車のエンジン音が聞こえる。
典型的な朝の静寂が僕を憂鬱にさせた。畜生め、また朝が来てしまったのだと、ラジオ体操の歌詞とは正反対の感情を抱く。
壁一枚隔てた向こうでは、平穏な日常が繰り広げられているだろう。陰気な我が家とは大違いだ。
目覚まし時計はまだ鳴っていない。以前はこれの助けが無ければ起きられないほど無精だった自分も健康的になったものだ。
病は気からというが、その逆は当てはまらないのだなと一人納得し、口元を拭ってベッドから降りる。
昨夜の名残が鼻をついたため、吐き気を振り払うように頬を打ってから部屋を出た。
413 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:05:19 ID:wdlMI3Qk
台所ではいつものように姉さんが鍋をかき混ぜていた。寝巻きの上にエプロンをかけて、ぱたぱたと忙しそうに朝食の準備をしている。
「おはよう、修司。もうちょっとでごはん出来るから待ってなさい」
「ん、おはよう、姉さん」
目をこすり、まだ完全に目覚め切っていないような仕草で挨拶を返す。もちろん演技だ。
以前となんら変わらない日常を送っているのだと、自分自身を騙すための。
僕の目を見つめて柔らかく微笑む姉さんはそれを見透かしているのだろう。食卓を囲んで、味噌汁の出汁を変えたこと、
テレビで流れてるニュースのことといった他愛の無い雑談を楽しそうにしながらも、その口元は哀れな僕を嘲笑っているように見えた。
「お買い物行くから今日は早めに帰って来なさいよ。いいわね」
姉さんが皿を洗いながら話す。顔は流し台に向けたままだ。
「ごめん、今日は部活があるからちょっと」
「部活があるから一緒に行けないっていうのかしら」
「その、ごめん」
「どうだっていいじゃない部活なんて。一度や二度サボったって大したことないわよ」
姉さんが振り向き、僕を見据える。あの笑顔は能面のように張り付いたままだ。
「で、でも、今日こそ出るって約束しちゃったし」
「修司」
「わ、わかったよ。今日も出れないって謝っておく」
姉さんに逆らうことは、僕には許されていない。選択する権利など、初めからありはしないのだ。
「わかればいいのよ。あんたはそうやって姉さんの言うことをちゃあんと聞いていればいいの」
「うん」
「ふふ。修司はいいこね」
姉さんは妖艶な笑みを浮かべながら手のひらで僕の頬をなぞる。唇に感じる指先の冷たい感触、自分のあまりの情けなさに泣きたくなった。
414 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:06:50 ID:wdlMI3Qk
黒板に書かれた数式をひたすら書き写しながら、こんなお勉強が何の役に立つのだろうかと普通の高校生なら誰しも一度は考えるであろう疑問に想いを馳せる。
与えられた問題を与えられた方法で解いても、頭が良くなるわけではない。暗記するだけならチンパンジーにだってできる。
むしろ机にかじりついて勉強すればするほど愚鈍に近づき、教えられたことを何の疑問も持たず受け入れ、教えられたことのみしか出来なくなっていくようにも感じる。
かくいう僕も理性を卑屈にして権威に服従することになれさせられて、挙げられた学識を無条件に信じ切っているわけだが。
そもそも、いい学校へ入学するためだとか、進路の選択肢を増やすためだとか教師は口を酸っぱくして繰り返しているが、
彼らがいう将来の幸福とやらはあまりにも不確定で漠然としたものであり、
そんなもののために人生で一番幸福な時期を犠牲にするのは本末転倒じゃないかと劣等生の僕は思う。
もしも自分が明日死ぬとして、自分は幸福な人生を生きたと胸を張って言える学生はこの学校に何人いるのだろうか。
百歳まで長生きしたとして、その無駄に長い人生のうち、子供時代より幸福だといえる瞬間はいったい何度訪れるのだろうか。
亡くなった僕の両親ははたして幸福な人生を送れたのだろうか。
彼らはいわゆる教育熱心な親というやつで、高い金を出して小中通して僕を塾に通わせ、少しでもよい成績を取らせようと頑張っていた。
僕たち姉弟をいい大学へやるため必死に働き続け、数ヶ月前に事故で亡くなった。
その日は公立高校受験の合格者発表の日で、店に注文していた合格祝いのご馳走を取りに行く道中で飲酒運転車の追突事故に巻き込まれたのだ。
皮肉にも、僕は不合格だったわけだが。
415 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:08:07 ID:wdlMI3Qk
「で、その女ってのがメンヘラちゃんでよ、あの時ばかりは俺もさすがにヤバイと感じたね」
「いわゆる地雷女ってやつ?」
「そうそう。中三の時付き合ってたんだが相当イタい女でさ、一日に何十通ももメールしてくるのは当たり前、
少しでも返信が遅れたら即効電話かけてきて『今何してるの?どこにいるの?浮気してるんでしょ!』って怖い怖い」
「一途な娘じゃんか。それだけ愛されてるってことでしょ」
「勘弁してくれよおい。あれは恋とか愛とかそういう次元じゃねえんだって」
昼休み。悪友の隆と昼食を食べながら談笑する。話題は彼が昔付き合っていた女性についてだ。
長谷川隆はいわゆるヤリチンと呼ばれる部類に入る男で、顔よし成績よし運動神経よし、おまけに実家は金持ちと、
少女漫画に出てきてもおかしくないような完璧ぶりである。もちろん性格を除いてだが。
「大体いつも長袖着てたからおかしいと思ったんだよ。いざヤる段になって脱がしてみたら、手首には刃物でつけたみたいな傷痕がびっしりってわけだ」
「うわぁ、巷で流行りのリストカッターさんか」
男の前と女の前で180度態度を変えて、僕に自分の女性遍歴を嬉々と語るこのモテ男は、わざわざいうまでもなく男子一同には好かれていない。
クラスから疎外されたり、無視されるほどでもないが、陰でとことん貶される程度には嫌われている。
僕から見てもこいつは間違いなく男子に嫌われるタイプだと断言できるし、事実、入学から二ヶ月も経てば親しく話す人間は男子には僕くらいしかいなくなっているのだ。
416 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:09:16 ID:wdlMI3Qk
「それで、結局シたの?」
「適当な理由つけて即効逃げたに決まってんだろ。勃つもんも勃たねえよ。萎える以前に縮み上がったっての」
「ははっ、さすがの隆でも不能になっちゃったんだ。でも、恋は障害があるほど燃えるんじゃない」
「いやいやマジで笑い事じゃねえんだって。あの手の女はきっと別れ話持ちかけると無理心中とかするタイプだぜ」
「じゃあどうやって別れたのさ」
「ああ、その、なんだ。アドと番号変えれば連絡手段ないわけだろ。高校も違うし、ここに入学してから一人暮らし始めたからよ」
「つまり逃げたわけ。でもホントに大丈夫なの?いつか道端でばったり会ったりして」
「ふ、不吉なこと言うなよ」
「こう、サクっと」
手を何かを握るように構え、わき腹に当てて二・三回えぐるように回してみる。
妙にリアルな仕草に目の前の最低男は恐怖を覚えたのか、腹を押さえてガタガタ震え始めた。非常に面白い。
「ま、安心しなよ。葬式で香典くらいはあげてやるからさ」
「俺死ぬの確定ですか?」
「許されざる愛の末に現世を捨て黄泉路で結ばれる道を選んだ恋人たち、二人の愛は清かった。うん、涙を誘う美談だね」
「色々とすっ飛ばしすぎだろ!いい話っぽくまとめるんじゃねえ!」
隆は本当に最低な人間だ。これ見よがしに自分がいかにモテるか自慢し、男の前では女性への誠意に欠けた発言をためらいも無く行う。
でも、僕はそんなこいつが好きだ。もちろん性的な意味などではなく、友人として。こいつは自分の欲望に正直で、自己中心的だ。
同性にしてみれば性格がいいなどとは口が裂けてもいえないだろう。
大抵の人間は他人に対して善人であろうとする。自分は優しく、公正な人間であろうとするし、主張しようとする。
しかし、こいつは自分から自分はイイヤツであると口うるさく主張しない。こいつの陰口を叩く人間のように、自分の憤りに同意を求めようとしない。
だから僕はこいつが好きだ。こいつと話すときは自分に正直でいられるから。
前までの僕だったら、正直云々以前にモテ男の隆を妬んでいただろうが、姉さんとあんなことになってしまった今ではそんなことはどうでも良くなっている。
僕はもう二度と恋愛なんて出来ない。僕に姉さん以外の女性をみることは許されていないのだ。
417 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:13:16 ID:wdlMI3Qk
隆からの合コンの誘いを断った後、文芸部と書かれたプレートの前で立ち尽くす。
ノックしても返事が無く、鍵も掛かっている。おそらく先輩はまだ来ていないのだろう。
部活に出れない旨を伝えるために待つというのも不自然だが、先輩は携帯電話を持っていないので仕方が無い。
今時の女性にしては珍しいと思うが、そういう時代錯誤なところも彼女らしいと思う。
「あ、伊藤くん」
「どうも。お疲れさまです、先輩」
髪を肩で切りそろえ、消え入りそうな声で僕の名前を呼ぶ小柄な女の子は二年の羽鳥美紀先輩。
文芸部の部長であり、部員の中でただ一人まともに活動している部員だ。
文芸部員は全部で五人いるが、うち三人は三年生であるため受験勉強に忙しくたまにしか顔を出さない。
そのうえ僕は人数合わせのため入部しただけの半帰宅部の幽霊部員なので、文芸部は実質彼女だけで切り盛りされている。
「ええと、その」
「少し待っててくださいね。今、お茶を淹れますから」
言うタイミングを逃してしまった。先輩は部室に入り鞄と電気ポットを机に置き、普段は使われていない急須と湯のみの用意を始める。
電気ポットにマジックで大きく書かれた文字を見るに、今日のためにわざわざ茶道部の備品を借りてきたらしい。
背伸びしているためかひょこひょこと棚の前を上下する小さな頭に罪悪感を覚える。
「はい、どうぞ」
「は、はい。頂きます」
うん、美味い。湯のみを傾けながら先輩の顔を窺う。普段は表情に乏しい先輩の口元が少しだけ綻んでいる。
おそらく久しぶりに他の部員が来たから嬉しいのだろう。
先輩はいつもこの殺風景な部屋の机にたった一人で座っているのだと想像すると、いたたまれなくなる。
先輩の容姿は美人というよりは可愛らしいという表現が当てはまり、下手したら小学生くらいに見えるからやるせなさも倍増だ。
ますます話を切り出せなくなってしまった。
418 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:15:03 ID:wdlMI3Qk
投げやりな気分になっていなかったとは言い切れない。頭のどこかで、どうにでもなっちまえと考えていたのは事実だ。
近頃の姉さんは機嫌が良く以前よりか無理を聞いてくれるようになっていたから、もしかしたら許してくれるんじゃないかという甘い考えがあったことも否定できない。
嫌なことを先へ先へと引き伸ばし続け、その結果、手遅れになってしまってからやっと後悔する。僕の人生はそういうことの連続だった。
自分で自分に言う『大丈夫』ほど信頼の置けないものはない。結局あのまま先輩に言い出せず、ずるずると部室に居座り続けてしまったのだ。
最悪でも五時あたりにはもう家で待ってなくてはいけなかったのだろうが、携帯電話の液晶には六時半と表示されている。
さらに新着メールが24件、着信履歴は18件、いうまでもなくすべて姉さんからである。部室で着信音も振動も切っていたのが仇となった。
こうして家へ向かって走っている最中にも着信があったが、僕に通話ボタンを押す勇気はない。
大丈夫、なんとかなるさと自分に言い聞かせながら、精一杯足を動かし、息を切らせながら玄関の扉を開いた。
419 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:17:35 ID:wdlMI3Qk
「ご、ごめん姉さん。急に委員会の用事が入っちゃってさ」
リビングに座っていた姉さんがゆっくりと立ち上がり、僕へと近づく。前髪が影になって、こちらから目元は見えない。
「な、なかなか仕事が終わんなくて、ついさっきにやっと終わったばかりなんだ」
すり足で距離を詰めてくる姉さんに、考えた弁解を無駄だとわかりつつも必死に行う。
思わず後ろに下がってしまいそうになるが、震える足に力を入れて耐える。
「は、は、早く帰らせてって委員長にたのんだんだけどさ、それがまたこわい先輩で」
「修司」
「でも急いで帰ってきたんだ。こうやって、全力で走って」
「修司」
ねえさんが、ちかづいてくる。
「ほほほほら、こんなに汗だくでしょ。だ、だから」
「修司」
がしりと痛いほどの力で肩を掴まれる。真っ赤になった姉さんの目が僕を見据える。それに耐えられない僕は、思わず顔を背けた。
「こっち向きなさいよ」
あぅっ、と、間抜けな音が口からはみ出た。姉さんは右手親指で僕の喉を押さえつつ、残った指で顎を掴み固定している。
目を逸らしても、それに合わせて姉さんの顔が移動する。もう、逃げられない。
たとえ目を瞑ったとしても、姉さんは瞼を無理矢理こじ開けるだろう。
赤々と充血した姉さんの眼は僕の心の奥底まで見透かしているようであるし、焦点の合わない視線は何物も視ていないようにも思える。
視覚ではなく、五感とは別の感官で僕の脳髄を観察しているのだ。
姉さんに嘘は通用しない。汗の味を確かめなくとも、姉さんは僕の思考を暴き立てる。
「あたしとの約束、やぶったのね」
「そ、それは、委員会の仕事があったから」
「今日は早く帰ってくるってあたしと約束したのに、帰ってこなかったわね」
「だ、だからそれは」
「はじめからまもるつもりなんて、なかったのね」
「ぐっ……ぁがっ」
姉さんの左手が僕の首に絡みついた。血管を圧迫されて自分の心音が聞こえてくる。
「うそつき」
「はなし……ねえさ」
首から上の体温が上昇し、音だけではなく頭全体で血液の脈動を感じる。
「うそつき」
「おね……やめ」
鼻の奥に圧迫感。それは目玉の裏へ続いている。いずれ眼球を押し出すかもしれない。
「うそつき」
「ぁっ……」
きりきりと骨の軋む音。顔全体がむくみ始める。こめかみのあたりには血管が浮き出ているだろう。
「うそついちゃ、いけないのよ」
「ぁ……ぁああああっ!」
意識が遠のく直前、体が勝手に動いた。
420 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:18:27 ID:wdlMI3Qk
自分の吐瀉物から顔を上げ、尻餅をついたまま固まっている姉さんを見やる。
顔のむくみは収まったが、圧迫から開放された血液が一気に首下へ移ったせいなのか軽い立ち眩みを覚えた。
胃液が逆流したため喉が焼け付いている。唾液を飲み込んでそれをごまかし、僕を殺そうとした人間をにらみつけた。
「あんた、あたしに手を上げたわね」
「ねえさん、が、ぼくを、ころそうと、した、から」
どうして僕がこんな目にあわなきゃいけない。どうして僕が殺されなきゃいけない。恐怖が反転して憎悪へと変わる。
「あたしに逆らったわ」
「ぼくに、だって」
自分をまもる権利くらい、ある。そう言おうとした瞬間、姉さんの目が変わった。
「修司」
無機質だった硝子玉に暗い光が宿り、潤んだ瞳はコールタールのように波打つ。
むき出しにされた犬歯がぎりぎりと音を立てて軋み、胆汁質な、姉さん本来の気性が表に出始める。
その表情に宿した感情は怒りでも、悲しみでもなく、僕に対する憤り。犯罪者、極悪人、加害者に向けられる、正当な憎悪。
見下ろしているのは僕であるはずなのに、見下し、蔑むような視線は姉さんのもの。
下賤な奴隷に裁きを下す王であり、無慈悲に罰を与える権利を持つ絶対者の瞳。
「あんた、あたしに逆らっていいとおもってるの」
「ひっ……」
また、姉さんが近づいてくる。恐怖が僕の傍へと這いながら近寄ってくる。黒い獣が僕の足元で大口を開けて今か今かと待ちわびている。
「あんたに、逆らう権利があるとおもってるの」
奴隷は王に逆らってはいけない。罪人は法に逆らってはいけない。義務とは権利である。権利とは義務である。
それを拒絶したと同時に、それによって保護されるものを捨てねばならないのだ。叛逆とは、庇護を放棄することと同義である。
王に逆らった奴隷は何の権利も所有出来ず、法に逆らった罪人は贖罪の術を失う。
既に過失を犯してしまった僕には姉さんという王に対して反抗する権利は与えられていない。僕には姉さんという法に対して償う機会は与えられていない。
「あんたはだれのおかげでこうやって生活できるとおもってるの」
「ご、ごめん」
この家の家事はぜんぶ姉さんが行い、管理している。
「あんたはだれのおかげで学費の高い私立に通えるとおもってるの」
「ごめん、なさい」
この家の収入はぜんぶ姉さんが働いて、稼いでいる。
「ちゃんと答えなさい」
「ぜんぶ、姉さんの、おかげです」
421 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:20:02 ID:wdlMI3Qk
姉さんがいるから、僕はこうやって生きていけるんです。
「そう。あたしはあんたを養うために、大学をやめて、遊びも、恋愛もしないで、朝から晩まで必死になって働いてるのよ」
「はい。そのとおり、です」
姉さんはひとつひとつの言葉を咀嚼しながら、一歩、また一歩と僕の目の前へ歩み寄る。
「あたしはあんたのために、自分のしあわせをみんな犠牲にしてるのよ」
「ありがとう、ございます」
吐息がかかるほどの距離にいる姉さんが僕の肩に指を這わせた。
小さく開いた胸元から覗く鎖骨と、薄く薔薇色に染まったきめ細やかな肌が言いようの無い艶やかさを思わせる。
長い睫毛と、小さく整った顎骨。瑞々しく薄紅に色づいた唇が妖艶に歪んだ。
「それで、そんな可哀相な姉さんにあんたは何をしたのかしら」
「ぼ、ぼくは、姉さんを……ました」
「よく聞こえなかったわ。もう一度、はっきりと、あたしの目を見ながら言いなさい」
涙で視界が歪むが、姉さんの指が瞼をなぞり、フィルターを拭い取られた。否が応にも姉さんの瞳を見せ付けられる。
「僕は、姉さんを、犯して、しまいました」
「そう。あんたはあたしの純潔を奪ったのよ。無理矢理ね」
くすくすとわらう姉さん。肩に置いてあった掌を持ち上げ、僕の顎を包む。
「あんたのおかげで、あたしの人生はお先真っ暗。夢を追うことも出来ないし、恋だって出来なくなってしまったのよ」
「はい。ぜんぶ、僕が悪いんです」
僕がいるから、姉さんは幸せになれない。
「あんたがあたしを犯したせいで、あたしはもう、人に愛される資格を失なってしまったの。
出来るかもしれなかった恋人に、初体験は弟のレイプですって答えなきゃいけないのよ」
「ごめん、なさい。姉さん」
僕が姉さんを汚したから、姉さんは愛されない。
「あたしは一生、実の弟に純潔を奪われたかわいそうな女として生きていかなきゃならないのよ。あんたはどう落とし前をつけるつもりなのかしら」
「償わせて、下さい」
この苦痛から逃れさせてください。
「あんたが何をしようが、あたしの処女は帰ってこないし、あんたが追わせた心の傷は治らないのよ」
「なんでも、します」
「なら」
そっと唇に触れる柔らかいもの。その感覚に一瞬遅れて姉さんの舌が僕の唇を割り、口腔を魂ごと蹂躙する。
不快な粘着質の音が耳にしばらく響いた後、陵辱者は糸を引きながら後退し、僕の姿をその濁った瞳に映した。
「あたしを愛しなさい」
422 :
せきにん:2007/09/01(土) 15:22:26 ID:wdlMI3Qk
彼女の告白はあまりにも暴力的で支配力に満ち、理性に残った最後の抗いでさえ、一瞬にして萎えさせた。僕の返答は考えるまでもなく決まりきっている。
奴隷であり罪人である加害者が、王であり法務官である被害者に可能な唯一の報復。許しを懇願する、卑屈な奴隷の質問。
「愛すれば、許していただけるんですね」
「ええ。あんたが死ぬまで、あたしを愛し続ければ」
許されることが、開放されることがありえないとわかっていても、僕は姉さんに従い唇を重ねる。僕にはこうする道しか残っていないからだ。
せめて体を重ねている間は、一時にせよこの苦痛と屈辱を忘れられるよう、甘い淫夢に身をまかせよう。
僕はたしかに厭世主義者だが、死後の世界なんて信じちゃいない。金と一緒で、罪や幸福はあの世へは持っていけないからだ。
死後の世界なんていう、あまりにも不確定すぎて噴飯ものの将来の幸福とやらのために、現世の幸福を犠牲にするほど年老いちゃいないし、
永遠の命に憧れるほど無感動な人間でもない。
結局のところ僕は他の大多数の人たちと同じで、どっちつかずのまま日々を空しく過ごしていくしかない。
ただ一つ、他の人たちと異なる点は、首輪に繋がれた鎖が平均より少々太いという点だけなのだ。
太い鎖は重くて、駆けずり回るのに少しばかり骨が折れるものだが、なんとか耐えていけるだろう。
僕の飼い主が昔のように寛大になり、僕の鎖を軽くしてくれるという、忌まわしくも甘美な淫夢に浸ることで。
元ネタ兼サブタイトルは『真夏の夜の淫夢』です。
>>403 最後の名残に一発やってから別れ話
明らかに妹に愛情無いよねこのお兄ちゃん
>>423 GJ!
でもそのサブタイトルってTDNじゃないかwwwww
たしかにTDNだwwwこれはワロスww
最近ここは活気があるなぁ
>>423 姉ちゃん怖ええええええええ!
GJです!
>>429 おもしろかったけど、これってキモ姉なの?
弟が勝手にレイプして憎んでるだけなんじゃないの?
431 :
430:2007/09/02(日) 03:46:30 ID:0q2/AzNN
>>430 本当にレイプだったんだろうか・・・?
妄想の翼をもっと広げて感じるんだ。
>>426 T…東京
D…ディズニー
N…ナンド?
ただの野球選手ですよ…
T タ
D ダ
N ノ
>>423 姉が弟に媚薬を飲ませてレイプさせたか、単に弟が興奮のあまり姉を犯したのか。
読者がどう捉えるかによって意味の違う話になるな。
まあ、とにかくGJだ!
綾様まだなの・・・・?
ボクもう疲れたよ・・・・
お前らの親が実は兄妹同士で結婚したものだったらどう思う?
(やっぱり…!)
(実の姉であるわたしでも○○くんと結婚できるんだ!!)
ジュルリ
(あは、カエルの子はカエル・・・か)
この間から同じ人ばっかりのような気がしてならない
そんなあなたにNG登録。
446 :
刻み藁:2007/09/03(月) 21:57:01 ID:1SMXCWgw
始めに誰かが叫んだ。そして、公園に散らばり、各々に遊んでいた子供たちが砂場の周りに集まってきた。
子供たちはひそひそとささやきあいつつ、砂場の中心に立っている二人をじろじろと見つめた。
二人の子供は、五、六歳くらいの年恰好だった。一人はやや青白い顔色の、こざっぱりとした身なりの男の子で、真二という名前だった。
もう一人は長い髪を後ろで纏めた、気が弱そうな、おどおどとした、真弓という名前の女の子だった。
二人は双子の兄妹だった。兄の真二は妹を庇うように立ち、群れをなした子供たちを睨み付けていた。
群れの先頭にいた、ずるい意地悪げな目つきをした子供が言った。
「お前んちって、お父さんが居ないんだろ」
真二は何も答えなかった。真弓は腕で目元を隠し、鼻にかかった、子供が泣き始める前にするようなあの声を出し始めた。
二人に残酷な質問を浴びせかけた少年はぐずり始めた真弓を見て、早くも自分の意地悪が功を奏したのに得意になり、何度も何度もこの質問を繰り返した。
この二人の母親のことは、みんな自分たちの家で噂を聞いていた。
子供の母親たちは、人前でこそ愛想よく振舞ってはいたものの、陰にまわるといくぶん軽蔑のいりまじった同情をこめて、彼女を話題にしていた。
母親たちのこういう気持ちは、訳がわからないながらも、子供たちのこころに影響を及ぼしていた。
447 :
刻み藁:2007/09/03(月) 21:58:46 ID:1SMXCWgw
始めに叫んだ少年が、二人の子供について、自分の母親がつぶやいていた言葉を思い出した。
からかうような様子で真二に向かって舌を出してみせ、
「父なし子、父なし子」と叫んだ。
この聞きなれない悪口の語感が気に入ったのか、周りの子供たちは彼に同調し、くりかえしくりかえし、父なし子とはやしたてた。
今度こそ真弓はわんわんと泣き叫び、真二はうつむいて、あふれ出ようとする涙をこらえていた。
敵の片割れを討ち取ったことで、悪童たちの間に惨忍で嬉しげな声が上がった。
子供たちはもう片方も泣かせてやろうと思い、手と手を取り合い、学芸会でやったおゆうぎをするように、二人のまわりで輪を作って踊り始めた。
即興で作った悪口の替え歌は、真二のこころに言いようの無い敗北感を味わわせた。
とうとううちのめされてしまった真二は、声を忍ばせて、体を震わせ、すすり泣きし始めた。
ソプラノできんきんと耳に響く真弓の泣き声と、しゃくりあげながら、不均等にリズムをとる真二のうめき声が重なり、奇妙な合唱が公園に響いた。
かごめ、かごめが、泣いた、泣いたとなり、子供たちは誇らしげに残酷な歌を歌って、この双子をやっつけたのだという惨忍な喜びに酔いしれた。
もう夕食の時間になったのだろう、誰かの母親が迎えに来た。
一人が帰ってしまうと、興が冷めたのか、他の子供も一人、また一人と、それぞれの帰路に着き始めた。
公園には泣き続ける双子以外に誰もいなくなった。
目を赤く腫らした真二は、何も言わずに泣きじゃくる真弓の手をとって歩きだした。
448 :
刻み藁:2007/09/03(月) 22:00:29 ID:1SMXCWgw
玄関を開けた真二の耳に、台所の方向から祖父の怒鳴り声が飛び込んできた。
祖父がいつものように酒に酔って、家族に怒りをぶつけていたのだ。
真二は再び目元に涙を溜め始めた妹の手を引いて、自室へと逃げ込んだ。
兄妹は頭から布団をかぶり、目を瞑り、手で耳を塞いだ。
それでも祖父の、祖母と母を罵倒する声、食事にけちを付ける言葉、伯父を罵る単語が耳に聞こえていた。
真弓がすすり泣き始めた。真二は耳から手を離して、妹を抱きしめた。
突然、扉の開く音がした。真二は祖父が入ってきたのだと思った。
布団が剥ぎ取られた。双子は殴られることを予想して、体を強張らせた。
しかし、痛みはいつになっても襲ってこなかった。真二が瞼を開いて顔を上げると、伯父が微笑んで立っていた。
伯父は真二と真弓の頭を撫でて、部屋から出て行った。
しばらくすると、ひときわ大きな怒鳴り声が聞こえてきた。硬いものがぶつかる音や、何か壊れるような音がしばらく続いて、急に台所が静かになった。
祖父のうめき声と、どしどしと乱暴に廊下を踏みしめる音が響いた後、今度こそ家に静寂が訪れた。
ふたたび部屋の扉が開いた。顔に青い痣を作った伯父が、もう大丈夫だと言って微笑んでいた。
449 :
刻み藁:2007/09/03(月) 22:02:35 ID:1SMXCWgw
真二は伯父のことが大好きだった。痛々しい痣をさすりながら夕食を食べている伯父は、彼にとってヒーローだった。
普段は優しいのに、酒を飲むと暴力を振るう祖父や、真二をぶたないかわりに、一言目には世間さま、世間さまとうるさい祖母とは違って、いつも真二に優しかったからだ。
真二と真弓が悲しんでいる時に颯爽と現れ、二人をまもってくれる伯父は、母を除いてただ一人の、兄妹の味方だった。
真二は伯父に自分たちの父親になってほしかった。伯父はとてもやさしいし、恰好いい。
この誰だって自慢したくなるような父親がいれば、自分たちは父親がいないというだけで、他の子供たちにいじめられなくて済むんだと真二は思った。
一度だけ、真二は伯父にお父さんになってほしいと頼んだことがあった。
そのとき伯父は何も言わずに真二の頭を撫でてから、そんなこと頼まなくても、おじさんは真二と真弓を守ってあげるから大丈夫だよ、と言った。
それじゃあ駄目なんだ、と真二は言おうとしたが、泣きそうな顔で微笑んでいる伯父の顔をみたら、何も言えなくなってしまった。
母にそのことを話したら、彼女は泣きながら、ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返した。
真二にとって、こんなに悲しそうな母を見たのはこれが初めてだった。
450 :
刻み藁:2007/09/03(月) 22:07:34 ID:1SMXCWgw
その夜、真二は妹の手を引いて廊下を歩いていた。妹をトイレに連れていくことは、真二の仕事なのだ。
薄暗い、音のしない廊下は真二の想像力を掻き立て、あの陰からお化けや、怪物が出るかもしれないと思うと、怖くてその場でへたり込みそうになった。
だけど、握り締めた手を震わせ、真二にしがみついて歩く妹のことを考えると、恐ろしさはどこかへ行って、真弓をまもらなきゃという考えが真二を奮い立たせた。
真二は誇らしい気持ちになり、勇気を出して、そろそろと暗闇の中を進んだ。
用を済ませた真弓を連れ、廊下の帰り道を歩いているときに、二人の耳に聞きなれない、くぐもったような声が聞こえた。
声は母の部屋の方角から響いていた。
早く戻ろうと言う真弓をなだめて、好奇心に支配された真二は、誘われるように母の部屋へと歩きだした。
部屋へ近づくにつれ、声は大きくなり、苦しそうで、切なそうに唸る音が母の声であると真二は理解した。
母が苦しんでいると思うと、わずかに残っていた恐怖は吹き飛んで、二人の中はお母さんを助けなきゃという気持ちでいっぱいになった。
伯父さんがここにいない今、母を助けられるのは自分たちだけだと思った二人は、勇気を奮い立たせて母の部屋の前にたどり着いた。
ふすまの中からは、母の苦しそうな声が聞こえていた。規則正しいリズムを取りながら、だんだんと鼻にかかって高くなっていくこの音を聞いたら、母の苦しみがどんどん酷くなっていくように思えた。
二人は急に得体の知れない恐怖を覚えて、ふすまにかけた手を離してしまった。
そうしているうちに、母の声は更に大きくなり、断末魔ともいえるほど、恐ろしいものになっていった。
真二は、母が死んでしまうのかと思った。早く助けなきゃ、お母さんがどこか手の届かない遠いところへ行ってしまうと思った。
真二はふすまに手をかけて、真弓の顔を窺った。
妹も同じ気持ちだったのだろう、真弓は真二のそれに手を重ねた。
ゆっくりと手を引いて、少しだけふすまを開けた。母の声が一段と大きくなった。
二人は頷き合って、そっと、母の部屋を覗き見た。
暗闇の中で、母親と、真二の大好きな伯父が裸で絡み合っていた。
親が兄妹同士というのはありえないんですが
親が同じ田舎の出身だったので、一度、家系図を見ていたら
ちょっと、固まったね・・・。はとこだったとは・・・。
はとこは全然やばくないかもしれないが、はとこ同士で結婚するなんて
この広い世界にありえることなんだろうかとちょっと考え込んだ時期が
はとこはそこまで驚く必要ないと思うけどな、知らなかったかもしれんし。
いとこだったらかなりビックリだが
そう考えると平安時代はそういうのばかりですごいな。
>>451 やけにリアルだな。GJ!
できれば、真弓のキモウト化も是非読みたい。続きはあるのかい?
>>451 GJ!
というか>439のために書いたのだとしたら、壮大過ぎるレスだw
妹がお兄ちゃん子で度が過ぎるとどのようなことをするのか
考えてみた
@お兄ちゃんのベットに毎晩潜り込んで朝を共にする
A兄の下着は必ず、妹が洗う(兄の大衆を嗅ぐため)
B家にいると露出度の高い服を着ている妹が
抱きついて離れない
C学校に行く時は兄の腕を組んで投稿する。
なんか、キモウトというレベルではないな
まだまだ、 い も う と レベルって感じがする
>>456 エロ雑誌にそういう写真を投稿するのかと思ったwww
>>456 @ベットと言わず風呂やトイレも一緒
A兄の下着を妹が着る
B露出度100%で抱きついてくる
C腕組みでは物足りずおんぶしてもらう
キモウトになったかな???
>>458 リアリティが足りなくて、半ばギャグになっている予感
このスレ初心者の俺には、既に
>>456で十分なキモウトなんだが・・・
それにしても、桜の網の続きが読みたくて仕方ない
連載中リスト
永遠のしろ
虎とあきちゃん
綾シリーズ
水木さんちシリーズ
運命の赤い超紐理論
聖のお兄様
毒にも薬にもなる姉
桜の網
Favor
三者面談
+
+
∧_∧ + テカッテマス
+ (。0´∀`)
(0゚つと ) +
+ と__)__)
>>460 俺もだ。一気に読んだから尚更続きが読みたかったりする
あ、ありのままに今日、聞いたことを話すぜ……
俺の友達が階段から落ちて入院したんだ。それでお見舞いに行ったらやけにビクビクしてるから訳を聞いてみた。
そいつには妹がいるんだ。ブラコンってことで冷やかされてる妹なんだ。
なんでもあろうことか一昨日の晩、妹に誘われたらしい。当然、それをそいつは断って、そろそろ兄離れをしなければならないと諭したらしい。
だがそこで妹が泣き出したらしい。そして妹なのに本気でそいつのことが好きだと告白したらしい。
フィクションの世界じゃあるまいし、そいつはそれとすぐにそれは無理なんだと言ったんだ。
妹はそれでも泣き続ける。親に気づかれてはマズいと考え、そいつは必死に説得した。
だが妹はどんどん激昂し、勢いでそいつを階段から突き落としたそうだ。
な、なにを言ってるかわかんねーだろうが……これ実話なんだ……
まさか身近にこんなこのスレみたいな話があるとは思わなかった。
とにかく伝えたかったんだ……みんなも気をつけてくれ。
長文スマソ
階段から突き落とされるなんて
まだまだ、妹さんは可愛いほうだと思うのだが
やはり、病室で見動きできない状態から本当のキモウトの恐ろしさ
を知る事になるであろうw
まあ、IZUMOのキモウトのアプローチも凄かったな
>>463 世界はまだまだ幸福で満ち溢れていると知りました
よしまず俺に妹を用意してくれ、話はそれからだ
本当は実妹がいいが義理までなら許す、ただし近所のお兄ちゃんと呼ぶ子は却下だ
たまにはキモ姉のことを思い出してあげてください
.
>>451 確か昭和辺りは片親の子はいじめられてたなぁ〜。
よしまず俺に・・・・
何を用意してもらえばいいんだ?
すぐにヤキモチを焼くお姉ちゃんと
寂しがり屋のキモウト
(・∀・)∩嫉妬深いおねえちゃん今ならお安いよ〜
>>475 二人ほどいただこう。
…何?お代は命?
安いもんだ
>>461 連載中リストとか見るたびに思うんだけど永遠のしろって連載作品じゃ無いんじゃないか?
このスレと前スレじゃ言ってなかったけどどこかで無形氏が連載って言ってたの?
確かに個人的には理想の姉そのままだからあるなら続きは読みたいけど
>>458 よかった〜…2はやられてないから、俺の妹はまだ普通だな。
連載作品だよ…たぶん。というか、連載してほしい
>>458 下着じゃないけどお下がりの服なら普通に着てる。
>>476 兄ちゃん、他の女と喋るときは気をつけな。
…やっぱりSATSUGAIが無いとらしくないようなw
え?KANKINもだろ?
締めはSENNOUで
お兄ちゃんが他の女に盗られそう!
泥棒猫に渡すくらいなら……!
SHINDYUしよ?
GOUKANじゃないの?
俺が本当のSHITTOの仕方を教えてやる
出た…キモウトの一秒間に十回のGYAKUREIPU発言
病気のお兄さんのために11回に挑戦するんだな
唐突に投下
よしまず俺に妹を用意してくれ、話はそれからだ
本当は実妹がいいが義理までなら許す、ただし近所のお兄ちゃんと呼ぶ子は却下だ
「これで良し……っと」
ブラウザに表示されているの『書き込む』を左クリックし、俺はパソコンのディスプレイから一旦目を離し、ぐっと伸びをした。
帰宅してからずっと座りっぱなしだった所為か、背骨がボキボキとイヤな音を立てた。
「妹、か…」
壁に掛かっている時計を見つめながら、ぼそりと呟く。
それからディスプレイに視線を戻す。
ディスプレイに映る文字は『キモ姉&キモウト小説を書こう!PART4』
このスレッドは、血の繋がりなど何のその、愛するお兄ちゃん(もしくは弟)の為なら殺人、監禁、盗聴、洗脳、追跡、泥棒猫の駆除まで何でもござれな素晴らしきキモ姉&キモウトの小説が投稿される所なのである!
……何故か1人で脳内演説を繰り広げてしまったことに少々危険を感じつつ、再びディスプレイに目をやる。
469:名無しさん@ピンキー :sage 2007/09/04(火) 20:52:10 ID:B9KQkAo8
よしまず俺に妹を用意してくれ、話はそれからだ
本当は実妹がいいが義理までなら許す、ただし近所のお兄ちゃんと呼ぶ子は却下だ
ソコには、先ほど俺が書き込んだレスが表示されていた。
数レス前に実体験風?なレスがあり、それに触発され、つい反射的に書き込んでしまったのだった。
俺は、キモ姉かキモウトのどちらの方が好きか?と問われれば、間違い無く前者を選ぶ。
別にキモ姉が嫌いな訳じゃない。
しかし、実際に『姉』がいる俺は、どうしても一線を引いてしまい、作品を楽しめない。
しかもその『姉』が、実際弟の俺にベッタリのブラコンで、キモ姉作品のキモ姉とどうしても重ねてしまい、姉を『もしかするとキモ姉では無いのか?』と疑ってしまうのがイヤだったからだ。
それに、『妹』という未知の存在に対する憧れもあるのだろう。
そんな訳で、このような『妹』贔屓なレスをしてしまったわけだが……。
「こんな事美夜ねえに知られたら、一体どうなることやら……」
姉の怒った様子を思い出し、思わず体が震えた
ガタン!
「っ!」
突然背後から物音がして、驚いて飛び上がるように立ち上がり、ギギギと古びたブリキ人形のような動作で後ろを振り返る。
……実は俺、幽霊妖怪などの霊的存在に非常に弱いのだ。
ともかく、恐る恐る振り向いた。
しかし、振り向いた先には何も───いや、扉がほんの少し、開いていた。
キィ……
扉が軋みを上げて、少しずつその隙間を広げていく。
ヤバい。
俺の本能が警鐘をかき鳴らす。
ぞわぞわと全身の毛が逆立つような感じがする。
キィィ……
絶対ヤバい
もし扉の向こうに『何か』がいたら、間違い無く死ぬ。
キィィ……
止まれ!
そう頭の中で念じてみるものの、扉が開くスピードは全く変わらない。
とうとう脳が処理限界を超過し、意識がブラックアウトするかどうかの所で、扉の隙間からヒョイと見知った───と言うか、見慣れた顔が現れた。
「京く〜ん♪」
姉、だった。
「……はぁぁぁぁ」
俺は姉を認識するやいなや、盛大な安堵のため息を吐きながら床にへたりこんだ。
「プッ!アハハハハハッ!!」
俺のその様子を見て、姉───美夜ねえは腹を抱えて笑った。大爆笑。
「美夜ねえ笑いすぎ……」
「ご、ごめ、だって、京くんおもしろすぎ……」
しばらく経っても、美夜ねえはくっくっと笑い続けたままだ。
さすがの俺も、ここまで笑われて何もしないままではいられない。
すっくと立ち上がり、ビシッと美夜ねえを指差す。
「人を脅かして笑うなんて、趣味悪いぞ美夜ねえっ!」
「へー?別に脅かしたつもりは無かったんだけどなー?」
「ぐぬぬ…」
俺の抗弁にも、ニヤニヤと笑ったまま痛いところを突いてくる。
反論できず、俺はうなり声を上げながら睨みつける事しか出来なかった。
「はいはい、そんなに睨まないの!」
「……って言うか、美夜ねえは何しに来たわけ?」
そう言いながら、俺と一緒に倒れた椅子を元の位置に戻す。
「ちょっとマンガ借りに来たんだけど……」
「……?」
途中で急に口を止めたので、何事かと思い手を止め、美夜ねえを見ると───
───未だにニヤニヤし続けていたはずの美夜ねえの顔が、俺の方を向いたまま急に無表情になっていた。
「ど、どうしたの?」
「ねえ、ソレ何かな……?」
すうっと、美夜ねえの白い指が持ち上がり、俺───いや、俺の背後を指差す。
「へ?何が……ってうわっ!!」
慌てて後ろを振り向くと、そこにはパソコンのディスプレイに映し出された『キモ姉&キモウト小説を書こう!』の文字が。
ヤバい!
もしかしたらキモ姉と言う単語の意味を誤解しているかもしれない!
このままでは俺の命が……
「……い、いやキモ姉ってのはな……」
「……そうじゃない」
俺が動揺しながらもキモ姉について説明しようとすると、何故か、焦点を結んでいないような瞳の美夜ねえが止めた。
「あの、書き込み、何?」
「書き込み?」
もう一度ディスプレイを覗き込むと、そこには先程俺が書き込んだレスがあった。
「……これがどうしたの?」
全く意味が分からず、後ろへ振り返る。
そこには、うつむき、細かく震える美夜ねえの姿が。
「……んで、…うと…なんか……」
「……へ?」
上手く聞き取れず、聞き返す。
「…何で…何で妹なのよ!!」
急に顔を上げ、叫ぶようにそう言った美夜ねえ。
その瞳は、濁っていた───
「ねえ!何で妹なの!
お姉ちゃんじゃいけないの!?」
そんな……
「お姉ちゃん今まで京くんのために頑張ってたじゃない!
なのになんでっ!?」
まさか……
「いっつも京くんを一番に思って、京くんのために生きてたのに!」
ウチの美夜ねえが、キモ姉だなんて……
「……今まで我慢してたけど、もう無理。
……京くんには、お姉ちゃんしか居ないって、徹底的に教えてあげるからね♪」
でも……
「クスクス……」
俺は、コレを望んでいたのかもしれない……
その後、
>>469の姿を見た者は居なかった……
後悔はしていないが反省はしている。
>>469とは一切関係ないのであしからず。
>>469 勝手に調子こいてすいませんでしたorz
一番槍GJ
しかしこのスレ的にはどう考えてもハッピーエンドw
寝る前に来て良かった GJ
保守
「姉さん。ちょっとタオルとってくれない?」
「ぁあ!?誰に向かってモノ言ってんだクソガキ!」
「ひ、ひぃいいい!ごめんなさいお姉様!」
またやってしまった。いつものノリで頼みごとをして、姉さんを怒らせてしまった。
ときどき、こうして姉さんはとても怒りっぽくなる。
いつもは優しい姉さんが、まるで悪魔が乗り移ったかのように残虐になり、ちょっとしたことでブチ切れるようになってしまうんだ。
そして、今みたく僕が粗相を仕出かしてしまったときなんかは……
「おい、ガキ」
「は、はい!何でしょうかお姉様!」
姉さんは眉をつり上げて、僕を視ている。
その瞳は、どこまでも冷たい。
あれは決して人を見るような目じゃない。家畜を見る、浅ましい雄豚を眺める屠殺業者がする目だ。
今の姉さんと僕の関係は、喰うものと喰われるもの、殺すものと殺されるもの、
自然界のあるべき姿、弱肉強食の摂理において頂点に立つ絶対的補食者と、それに食される食物の関係でしかない。
人間が食べたパンの数を覚えていないように、姉さんはここで僕のはらわたを喰い千切ったとしても、なんの感慨も湧かないだろう。
「お前みたいな悪ガキには、ちぃとばかしキッツいお仕置きが必要かもしれないわねぇ」
じゅるり、と舌なめずりをする姉さん。
ひたひたと浴室のタイルの上を踏みながら、獲物を追い詰めるべく進む。
「く、くるな!こないでよぉっ!」
「うふふ……そうやって暴れて、無理やりされたいんだね」
僕の内股を撫でながら、潤んだ目で凝視する。
――犯される!弱者の本能が、そう警告した。
「ち、ちが……」
「なんて浅ましい子だい。お前って雄豚は……ほぉら、お前の子豚ちゃんは、こんなになってるわよ」
違う。僕はこんなことされて興奮する変態じゃない。
実の姉に無理やり……されて喜んだりしない。
「こんなに泡だらけにして、ちゃあんと洗ってあげなきゃかわいそうだろう?」
「止めてよ……姉さん。こんな……こんなこと、いけないよ……」
嫌だ。――嫌だ嫌だ嫌だ。
犯されたくない侵されたくない冒されたくない!
お願い止めて姉さんお願い僕を犯さないで僕を汚さないで下さいお願いですから昔の優しかったお姉ちゃんに戻ってくださいなんでもしますから――!
「だぁめ。だって、お前から誘ったんじゃないか」
「そ、そんな……」
なんという理不尽。いや、今の姉さんには、それが許されている。
弱者の僕は黙って魔王の姉さんに従わなくてはならないのだから。
「お前のかわいい目が……」
姉さんの舌が、僕の涙をひと舐めする。
「お前の可憐な唇が……」
唇をなぞる、真っ白な姉さんの指。
「お前のやらしいおててが……」
姉さんが、丹念に薬指をしゃぶる。
「そして……お前の浅ましいコレが……」
姉さんが身を屈めて、ぴちゃぴちゃと音を立てると、全身にビクビクと電流が走る。
「……わたしを、誘惑してるんじゃないか」
僕は……もう……
「逆レイプ逆レイプ逆レイプ逆レイプ逆レイプ逆レイプ逆レイプ逆レイプ逆レイプ逆レイプ――ッ!」
「アッー!」
そん、な……一秒間に、十回もだなんて……
はぁ。わたしってどうしていつもこうなのかしら?
GENKAITOPPAして、大事な大事な弟をファックしちゃうなんて……
この間、あの漫画読んだのがいけなかったのかな?
でも、あの子を目の前にすると、変になっちゃうのよね。
態度が自然とおっきくなって、わたしはなんでもできるんだーって気持ちになって、
まるで、自分が女王様になった気分みたいなになるのよ。
弟だろうが無機物だろうが、なんでもレイプしてみせる!って感じになっちゃった。
ま、いっか。
あの本のおかげで、愛しい弟をわたしだけのものにすることが出来たんだから。
うふふ……今度は、十一回に挑戦してみようかしら。
来月の危ない日が楽しみね。
>>487を見てムシャクシャしてやった。
今は反省している。
今年で中二になった弟と喧嘩をした。
不覚にも先手を取られ、弟の拳が私の左オッパイに当たる。
姉「きゃあっ!?、あんっ。。」
最後の「あんっ」は艶っぽい声にして、ナヨナヨと左のオッパイを
押さえながら、パンティをチラリ気味に倒れる。
弟「あっ。・・・ゴ、ゴメン。わ、わざとじゃないんだ、ホントだよっ」
姉「・・・もう、ホントにィ・・・。隙有りィっ!!」
思いっ切り弟の股間を蹴り上げる私。
股間を押さえつつ、口から泡を吹きながら白目を剥いて崩れ落ちる弟。
この私がオッパイを殴られた位で、 陰毛も生え揃っていない牝ガキみたいな反応をするとお思いで?。クス♪
>>453 平安貴族の「世間」はせいぜい数百人(200人位だっけ?)
だから、あの時代に書かれたものは、そういった閉じた世界での約束事で成り立っているので、
あの方、とか、〜は言わずもがな、とかいった読者に推察や共感を強いるような表現が多いそうだ
508 :
469:2007/09/06(木) 13:27:30 ID:STwERGky
>>496 GJ!!こんな俺にキモ姉を用意してくれるなんて!!
うれしすぎる。
と監禁中の弟の代わりに書き込みました
クラウザーさんwww
DMC信者多すぎだろ・・・
「たっらいまぁぁ〜おれぇりゃんのおかえりでしゅよ〜ぉ」
夜の10時、俺の平穏は如何考えてもしらふとは思えない様子の姉ちゃんの帰宅でぶち壊された。
恐る恐る玄関の方を見ると、顔を真っ赤にして千鳥足で廊下を進む姉の姿があった。
と言うか、良く見てみると、姉ちゃん、ハイヒールを脱いでいないのだが………
まあ、それはさて置き
あの呂律の回らない喋り口調から多分、姉ちゃんは会社の飲み会か何かで散々飲んで来たのだろう。
恐らく、姉ちゃんがああなるまでに、一緒に飲んだ同僚の人の何人かは撃沈している筈だ。
済まない、至らない姉の所為で撃沈してしまった同僚の人、本当に済まない!
「あんれぇ〜?だぁれもいにゃいの〜ぉ?」
拙い、この状態の姉ちゃんに捕まったら多分タダでは済まされない。
ここは部屋に閉じ篭った方が安全だ。
「んぁ〜………しょういえばおかあしゃんもおとうしゃんも温泉に行ってたッけ〜?」
ああ、そうだよ。
今、父さんも母さんも結婚30周年と言う事で夫婦水入らずの温泉旅行に行っているんだ。
だからその間は静かに過ごせると踏んでたのに………姉ちゃんがいた事をつい失念していたorz
「おとうと〜ぉ、いるんでしょ〜?」
呼ばれてホイホイと出る程、俺は馬鹿ではない。
俺は姉ちゃんの呼び出しを無視して、読書の方へと意識を傾けた。
「んみゅ〜、呼んでも出てこないんだったりゃこっちから来ましゅよ〜」
その言葉と共に、どたどたとハイヒールを履いたまま木の廊下を歩く音がこちらに近付いてくる。
大丈夫だ、鍵はしっかりと掛けている。念の為につっかえ棒も使った。
これで例え、姉ちゃんが合鍵を持ってたとしてもつっかえ棒が邪魔をして入る事は出来ない筈だ。
「あるぇ〜?なんで開かないにょ〜?」
程なく、姉ちゃんがドアを開けようとドアノブと格闘を始めるが、
鍵が無い以上は鍵の掛かったドアが開く筈が無く、姉ちゃんは不思議そうに呟く。
「しかたないにゃ〜………」
良し、このまま諦めてさっさと寝てくれ。お願いだ。
俺は心の中であらゆる存在に対して、必死に祈りをささげる。
ド カ ン !
しかし、俺の願いはドアが吹き飛ぶ音と共にあっさりと打ち崩される。
如何やら姉ちゃんはドアに思いっきり体当たりをしたらしく
倒れたドアと共に姉ちゃんが俺の部屋に転がり込む。
「ひっしゃつ、だいなみっくちょっぷぅ〜………」
後で言うのか!と言うか如何見てもチョップじゃなくてさっきのは只の体当たりだ!
って、突っ込んでいる場合じゃなくて。
「んふふふ〜、弟く〜ん。お姉ちゃんとあしょぼう〜」
直ぐに姉ちゃんがヨタヨタと立ち上がり、酒臭い息を撒き散らしながらこちらに寄って来る。
「あ、遊ぼうってどんな遊びをするつもりだよ、姉ちゃん………」
「ん〜?、性的なプロレスごっこ、かな?」
やっぱりか、やっぱりそのつもりか!
「来るな…来るなって!俺は遊ぶつもりは毛頭無いって!」
「だいりょうぶりょ〜、いりゃい事は何もしにゃいって〜」
後ずさりする俺に対して、姉ちゃんは指先をワキワキと動かしながらにじり寄ってくる。
拙い、拙過ぎる。安全だと思っていた筈の自室が、途端に逃げ場のないどん詰まりに変化してしまった!
このままでは酔った事によって只でさえ無い自制心が完全に消し飛んだ姉ちゃんによって絞り尽くされてしまう!
考えろ、考えるんだ!何とかしてこの状況から逃れる方法を!考え出すんだ!
と、打開策を考え始めた矢先
「………う゛っ」
不意に、にじり寄って来ていた姉ちゃんの動きが呻き声と共に止まる。
しかも、顔を蒼くして口元を両手で抑えていたりする。
酔っ払いがこのポーズを取ったときは必ず………地獄の門が開く。
俺の脳内に『WARNING! WARNING! 発射秒読み開始 乗組員はすみやかに退避せよ!』のコールが響き渡る。
しかし、この時の俺に退避するべき場所は存在しなかった。
「お、おい、姉ちゃん、やめろ。こんな所で止めて………」
「も゛う゛………我慢できにゃ―――」
――――そして地獄の門は開かれた。
この後の事は俺の記憶に留めたくない為、記載しないでおく。
只、その翌朝、半分泣きそうな顔で汚染された衣服を洗濯する俺と、
姉ちゃんの自室のベットで二日酔いによる頭痛で喘ぐ姉ちゃんの姿があった事だけを記しておく。
泣けるで!
台風の夜にボンヤリしていたらつい書いてしまった、反省していた。
>>514 涙はこれで拭いとき つ◇
オデブキャンデーどうぞ、それにしてもGJでした
携帯の着信が弟の声ってのにはフイタわw
お兄ちゃん!
彼女いないって、言ったじゃない!
この言葉だけで何分ぐらい妄想できる?
半日はかたい
>>519 そこから別の台詞や行動に発展させても良いのなら日がな一日。
微エロ投下します。
綾が身をぼろぼろにして帰って来た夜、汚れを落として欲しいという綾の懇願に、陽一は応じてしまった。
ベッドの中で、兄妹は何度もキスを繰り返した。
気丈な妹が涙を浮かべてキスを求めるその姿に、陽一はひたすら自分を責めた。
己のわがままのせいで、綾は変わってしまったのだと。
気の狂った男に汚され、あの気高い心が崩れ落ちてしまったのだと。
元の綾に戻って欲しい。
元気で、少し生意気で、厳しいけど本当は優しい、昨日までの妹に戻って欲しい。
その一心で、陽一は綾と唇を重ねた。
実の妹と口付けを交わすことに倫理的な罪悪感は大いにあったが、それ以上に、妹にかつての姿を取り戻して欲しいという思いが強かった。
次の日の朝、目を覚ました綾に、陽一は伝えた。
「夕里子さんと別れることにしたよ」
「そう……」
身を起こし、そっと陽一の頬に口付けをする綾。
互いにそれ以上の言葉は無かった。
朝食を食べた後、綾は学校に行きたくないと言った。
「お兄ちゃん以外の人に会うのが怖い……」
「そうか……なら、今日は家に居るといいよ」
「……お兄ちゃんも傍に居てくれる?」
おずおずと上目遣いに聞いてくる綾に、陽一は力強く頷いた。
「当たり前だろ」
それから、綾も陽一も一切外に出ず、家の中で過ごした。
綾はずっと陽一の傍に身を寄せ、いつでもどこでもキスを求めた。
台所で料理中に、居間で読書中に、午後の光の差す自室でまどろみながら、二人は幾度となくキスをした。
浅く、触れるようなキスは、いつしか舌を絡める濃厚なキスとなっていた。
そして、唇へのキスだけでは綾は満足しなかった。
「頬も舐められたわ」
「胸にも触れられた……」
「お腹にも手を這わせてきて……」
ボタンを外し、服をはだけさせて兄の前に白い肌をさらして、綾は懇願した。
「お兄ちゃん、お願い……私の汚れを全部取って……」
陽一は逡巡しながらも、綾の体に口付けをした。
頬に、胸に、腹に。
「脚も無理矢理広げられたの」
ベッドに寝転んで膝を立て、綾は陽一に訴えかけた。
「ほら、ここよ……」
短めのスカートの下にのぞく、真っ白な下着。
局部の形に沿うようにして皺のよった薄布のすぐ脇の太腿の付け根を、綾は指差した。
陽一は戸惑いながらもベッドの上に上がり、這うようにして綾の股間に顔を寄せると、青白い太腿に口をつけた。
「ん……」
目の前で自分の股間に顔をつける兄を見て、綾は大きな興奮に襲われた。
呼吸が乱れ、甘い吐息が漏れる。
慌てて口をつぐんで、陽一に自分の心の動きを悟られないようにした。
この悦びを悟られては、ここまで兄に償いを求め続けた意味が無い。
紅潮した顔を見られないようにと、陽一の頭を上から軽く押さえて、ひたすらに自分の内太腿を舐めさせた。
「お兄ちゃん、しっかり舐めてね……」
綾の言うままに、陽一は綾の太腿に舌を這わす。
下着越しに微かに秘所に触れる兄の吐息に、綾は下半身がきゅんと熱くなるのを感じた。
表情や呼吸の変化は繕うことはできても、体の変化ばかりはどうしようもない。
自らの秘所に火照りと疼きを感じながら、綾は思った。
今、自分のあそこはどうなっているのだろうと。
濡れているのだろうか。
(だとしたら、お兄ちゃんは気付いているのかしら……私の……女としての体に……)
スカートの陰に隠れて、陽一の表情は見えない。
綾は息を押し殺して、肌の上をなぞる陽一の舌の感触を感じていた。
要求はより大胆で淫らなものとなり、ついには下着の上から秘所に触れるよう陽一に求めた。
「お願い……ね?」
「綾、さすがにそれは……やめておこう」
「あ、そう」
これまでに無くはっきりと拒絶の意をあらわにした陽一の目の前で、綾は小さなナイフを握った。
そして、自分の左腕の内側を削ぎ落とすようにして薄く切った。
「綾!? な、何をしてるんだ!」
肉が抉れ、血が流れ落ちる。
慌てて駆け寄る陽一に、綾は笑って言った。
「ここは、昨日お兄ちゃんがキスしてくれなかったところなのよ」
「え……?」
「汚されたままで放っておいたら、腐っちゃうでしょ? だから、綺麗になっていないところは切り捨てなきゃ」
スカートを押さえるようにして、綾は自分の股間に触れた。
「お兄ちゃん、ここにはただの一度もキスしてくれたことないよね? 触ってもくれてないよね?」
「綾……」
「もう腐っちゃってるかもしれないわね」
ナイフを握った腕をゆらりと揺らす綾を、陽一は慌てて取り押さえた。
「ま、待て!」
陽一の勢いに押されたようにして、綾は背後のベッドに倒れこむ。
陽一の手を握り、引きずり込むようにして自分の上に覆いかぶさらせた。
「お兄ちゃん……わかったなら、お願いね?」
「ああ……わかったから……自分を傷つけるなんてしないでくれ……頼むから……!」
陽一は目に涙を溜めながら、綾の下半身に手を伸ばした。
下着の上から、震える手で綾の秘所に触れる。
経験が無い以上、ただ愚直に手でなぞるしかなかったが、綾は陽一の手がそこに触れただけで身を捩じらせて感じてしまった。
「お、お兄ちゃん……!」
反射的に太腿を閉じ、陽一の手を挟むようにしてより強く自らの秘所に押し付ける。
じわりと下着が愛液に濡れた。
「お兄ちゃん……ん……んんっ……!」
両の手をしっかりと陽一の背中に回して抱きつき、熱い息を吐いた。
「お兄ちゃん……! もっと……もっと……! 唇にも、胸にもキスして……!」
ベッドの上で情熱的に絡み合う二人の行為は、紛れも無い、恋人同士のするような愛撫だった。
「あ……ああ……! お兄ちゃん……!」
自分の体の下で、小さく喘ぎながら身悶えする妹。
陽一は、罪の意識に苛まされながら、その行為を続けた。
そうして、三日経っていた。
暦は十一月に入り、色づいた葉は道に舞い落ちて、冬の冷たい風が吹き始める。
北風が窓を鳴らす音が響く家の中で、陽一と綾は二人、ベッドの中で寄り添って寝転んでいた。
カーテンの隙間から入る秋の終わりの日差しに、陽一は目を細め、布団の中から身を起こす。
うなだれて、じっと自分の手を見た。
「何をしてるんだ、俺は……」
その手は、つい先ほどまで、妹の身体を愛撫していた手だった。
「綾……」
傍らには綾が、安らかな寝顔で眠っている。
布団の端からのぞく左腕には、血を押さえるための包帯が巻かれていた。
「どうしてこんな……」
ぽつぽつと、布団の上に涙が落ちた。
今の綾との関係は、どう考えても普通の兄妹の関係ではない。
しかし、この関係を続けなければ、綾はそれこそ自ら命を絶ってしまうかもしれない。
「どうしたらいいんだ……」
声を震わせて泣く陽一を、綾は薄く目を開けて見つめていた。
次の日、陽一はやかましい金属音に目を覚ました。
「はいはい! 朝ですよ! 起きた起きた!」
「え……綾?」
凛とした、鋭い声に跳ね起きる。
何日ぶりかに聞く綾の元気な声だった。
「ほら! 今日は学校に行くんだから、ちゃんと起きて支度してよね!」
「え……え?」
「何よ、その顔は? まさか、まだ休み足りないっていうの?」
綾はにやにやと笑いながら、手に持っていたおたまと鍋の蓋を、こつんと鳴らす。
「やかましいと思ったら……何でそんなの持ってるんだ?」
「お兄ちゃんを起こすために決まってるでしょ。私は授業なんて受けなくてもなんとでもなるけど、お兄ちゃんはこれ以上休んだら勉強についていけなくなっちゃうもんね」
綾はすでに制服を着込み、朝食の準備のためだろう、その上にエプロンをかけていた。
「まだ目が覚めない? 鍋じゃなくて、お兄ちゃんの頭を叩いてあげようか?」
言って綾は、おたまの柄で陽一の頭を垂直に打つ。
手加減の無い打撃に、陽一は小さく叫び声をあげた。
「いてっ」
「目が覚めた?」
「お、お前なあ、返事する前に叩いてるじゃないか」
「ふふ……まあいいじゃない。可愛い妹の愛の鞭よ。ほら、着替えは用意してあるから、起きてちょうだいね」
明るく笑う綾を、陽一はまじまじと見つめた。
「何よ? 変な目で見て」
「いや……お前……学校に行くって……大丈夫なのか?」
「んん? 心配してくれてるわけ?」
心配でないわけがない。
綾は昨日まで、自傷に走るほどの精神状態にあったのだ。
「無理してるんじゃないのか?」
「無理なんてしてないわ」
軽く言って、綾はベッドから身を起こした陽一の唇にキスをした。
三日間、数え切れないほどしたとはいえ、抵抗感がなくなったわけではなく、陽一は顔を真っ赤にして綾から身を引いた。
「お、お前、また……」
「お兄ちゃんのおかげだから」
綾は頬を朱に染めて、えへへ、と嬉しそうに笑った。
「お兄ちゃんが、私はまだ汚れて無いって教えてくれたから、もう少し頑張ってみようって思ったのよ」
本当に朗らかな笑顔で、綾は言う。
「……どんなに苦しいことがあっても、お兄ちゃんが守ってくれるってわかったもの」
「今回のことについては、そもそもの原因が俺にあったわけだけどな」
自嘲気味に言う陽一に、綾は強く首を横に振った。
「だけど、お兄ちゃんは夕里子さんと別れてくれたじゃない。私を選んでくれたじゃない。これからは夕里子さんじゃなくて、私を守ってくれるってことでしょう?」
夕里子の名が出た時、陽一は微かに悲しそうな顔をしたが、気付かないふりをして綾は続けた。
「お兄ちゃんはまだ色々悩んでいるみたいだけど……私、お兄ちゃんにキスしてもらって、本当に救われたのよ」
「……そうか」
「兄妹でこんなことするのは、お兄ちゃんにとってはいけないことなのかもしれない。罪悪感を感じるなというのは無理な話なのかもしれないわ。でも、お兄ちゃんが抱きしめてくれたおかげで、私は今も生きていられるのよ」
綾は再び陽一と唇を合わせると、切なげに声を震わせた。
「お願いだから……そんなに思い詰めた顔をしないでちょうだい」
「そんなに暗い顔してるか?」
「してるわよ。もう真っ暗よ」
陽一の頬をつねって、綾は唇を尖らせる。
「それとも……私が自分の体を全部削ぎ落としてた方がよかったの?」
「いや、そんなわけはない」
「なら、もっと胸を張ってよ。お兄ちゃんは、最後には私を助けてくれる……私の、自慢のお兄ちゃんなんだから」
陽一の胸に顔を埋め、甘えるように声を出す。
そんな妹の様子に、陽一は微かながら心が落ち着くのを感じた。
「そう……だな。綾が元気になったのなら、それは喜ぶことなんだよな」
「そうそう。でも……夕里子さんとの関係を蒸し返したりしたら、また同じことだからね。その辺、わかっているわよね?」
一瞬鋭さを見せる綾の言葉に、陽一は無言で頷いた。
「んー! 久々に外に出ると気持ちいいわね!」
駅のホームで電車を待ちながら、綾は思い切り伸びをした。
「あれだけ嫌だった満員電車も、今じゃ懐かしく思えるから不思議よね」
通過列車の風に、ツインテールに結んだ髪が揺れる。
切れ長の、どこか挑発的な目を光らせて、隣に立つ陽一を見た。
「お兄ちゃん、わかってるわよね?」
「え? 何が?」
「『何が?』じゃないわよ! 電車の中! 乗ってる男の人たちが私に触れないよう、ちゃんと抱きしめててよね!」
怒った口調だが、綾はあくまで笑顔だった。
いつかのように足を踏むのも忘れない。
痛がる陽一の耳に口を寄せ、
「ちゃんと抱きしめててくれないと、学校でキスしてもらうことになるからね」
と囁いた。
「お、おま……それは……」
「はい、文句言わない」
陽一の口を塞ぐように、綾は素早くキスをする。
そうして、陽一の腕に抱きついた。
「……綾……もし誰かに見られたら……」
「お兄ちゃんが、不安にさせるようなことを言うからよ。私だって、お兄ちゃんを困らせるのは本意じゃないんだから」
しっかりと腕を組んでくる綾に、陽一は慌てて周囲を見る。
こんな姿を知り合いにでも見られたら、何を言われるかわかったものではない。
不安げな表情の陽一に、綾はクスクスと忍び笑いを漏らした。
「大丈夫、同じ学校の生徒はこのあたりにはいないわよ。私がそんなへまをするわけないでしょう?」
「そりゃ、お前の抜け目無さは大いに認めるところだけどさ……」
「ふふ……夕里子さんと付き合い始めてから色々あって、お兄ちゃんの評判もあんまりよろしくないものね。これ以上、お兄ちゃんの名誉を損なうようなことはしないわよ」
綾は陽一と腕を組んだまま、もう一方の手で指折り数えた。
「まず宮入さんが自殺したわよね。それに、佐久間さんが強姦されて、写真をばら撒かれて、佐久間さんのお母さんが自殺して、佐久間さんも自殺未遂して……」
綾の挙げていった事件の一つ一つが、陽一の胸に突き刺さる。
「夕里子さんのお友達たちも、さすがに怖がって離れていっちゃったみたいだし……お兄ちゃんのお友達はどうなのかしら?」
「どうだろうな。教室だとみんな何も言わないけど……以前と接し方が違っているのは確かだな……」
少し悲しげな表情を見せる陽一に、綾は心が痛んだ。
夕里子と別れさせるためとはいえ、陽一にここまでの被害を与えたのは自分なのだ。
(宮入智恵の時点で別れてくれていれば、こんなことにはならなかったんだけどな……)
恋人のように陽一に寄り添いながら、綾は次にするべきことを考えた。
(このままじゃいけないわよね。お兄ちゃんには笑っていてもらわなきゃ)
自分と天秤にかけさせたうえで夕里子と別れさせたのだから、夕里子にはほぼ完全に勝利したと言ってよい。
細々とした後処理は残っているが、実に満足のいく結果だった。
後は陽一の評判を綺麗なものにし、健全な人間関係を取り戻して、自分と一緒に平穏な日々が送れるようにする必要がある。
「お兄ちゃん、元気出して!」
陽一の背中を叩き、綾は笑った。
「お兄ちゃんを悪く言う人がいたら、私がどうにかするわ。お兄ちゃんが私を守ってくれるように、私もお兄ちゃんを守るからね」
「そっか……ありがとうな」
よしよしと綾の頭を撫でる陽一は、やはり元気が無い。
改めて、これから頑張らねばと、綾は内心で奮起する。
ただ、陽一のこと以外にも、忘れてはならないことがあった。
「そうそう……私が森山浩史に襲われたことは、誰にも言わないでね。当然、縁さんにも」
「ああ、言わないよ」
「絶対によ? 私の体が汚されたことがお兄ちゃん以外の人に知られたら……私、恥ずかしくてどうなるかわからないからね」
縁に不審を抱かせる情報を与えてはならない。
できるなら、縁と陽一の関係を完全に断ってしまいたいかった。
「縁さんは、勝手に調べて警察に届けたりしそうだから、お兄ちゃんから余計なことをするなって言っておいてほしいな」
「俺が言っても意味無いだろ」
「ううん。お兄ちゃんの言うことなら、縁さんは聞いてくれるよ」
縁は陽一に嫌われる真似はしない。
その確信が綾にはあった。
「綾……!」
教室に入った綾を出迎えたのは、小夜子の熱烈な抱擁だった。
「ちょ、ちょっと、小夜子……」
「綾……! もう! 馬鹿! 心配したのよ!」
しっかり数秒抱きしめて、小夜子は離れる。
心配そうに問いかけた。
「もう体はいいの?」
「ええ、ばっちり。もうすっかり健康体よ」
小夜子は心配そうに、綾の額に手を当てた。
「本当? 熱は無いみたいだけど……」
「そんなに心配しないで。本当にもう大丈夫なんだから」
体調など悪いはずが無い。
休みの理由として学校に風邪と届けただけで、実際は陽一と二人きりで過ごしていただけなのだ。
「ふふ……心配性よね、小夜子は」
「心配もするわよ。あんなことがあった後だし……綾にまで何かあったんじゃないかって……」
肩までの髪を揺らして、小夜子は目を潤ませる。
涙腺の緩い友人に、綾は悪いと思いながら笑ってしまった。
「大げさよ、そんな」
「だって……二学期になってからもう二人亡くなっているのよ? 学校の雰囲気もおかしいし……私、綾にまで何かあったら……」
またじわりと涙を滲ませる小夜子。
「私がどうにかなるわけないでしょう? それを言うなら、小夜子こそ大丈夫だったの?」
「うん、大丈夫……」
「なら良かった。小夜子に何かあったら、私の方こそ大ショックだわ」
にこりと笑って、綾は席に着く。
「はい、休んでいた時のノート」
「ありがとう」
小夜子の差し出したノートの束を受け取り、パラパラとめくる。どうやら授業については問題無しのようだった。
「学校の雰囲気がおかしいって言ってたけど、どんな風におかしいの?」
「うん……前よりもずっと暗いのよね。……鬱々してる感じ。あの事件の後、影響を受けちゃったのか、自殺未遂をした人が一人いて……休む人も増えてきたし」
「へええー、そりゃ確かに普通じゃないわね」
仕組んだ綾も驚くほどの影響を生徒たちに与えていたらしい。
「まあ確かに、あんな風に人死にが出れば当然かもね。言われてみると、うちのクラスも活気が無いみたいだし」
綾は教室全体を見回す。
いくつかの席は、朝のホームルームの時間が迫っているというのに、空いたままである。
綾の方を見て何やら話をしていた生徒たちが、慌てたように目をそらした。
「それに、何だか私、注目されているみたいね」
「うん……ユリねえと陽一さんは、あれからずっと噂されてるから」
「いい噂なわけはないわよね」
やれやれと綾は首を振った。
どうやら陽一の名誉挽回は思った以上に手間がかかりそうだった。
「噂の当人のお兄ちゃんは、今日まで仲良く病欠していたわけだけど、夕里子さんの様子はどうなの?」
「ユリねえは……元気ない……この何日か、特に」
佐久間愛に関する一連の事件の後、夕里子の評判は地に堕ちていた。
今、夕里子の周囲には誰もいない。
夕里子に関わると酷い目に遭うという恐怖、人殺しの仲間と見られることへの嫌悪から、皆離れていってしまったのだ。
昼休みに縁や小夜子と昼食をとるものの、それ以外の時間は完全に孤立していた。
「ここのところ、話しかけてもぼーっとして反応してくれなかったりして……本当、心配なのよ……」
「なるほどね」
どうやら夕里子は、陽一から振られたことを、少なくとも小夜子には話していないようだった。
(話もできないほどショックだったのか、それとも別れるつもりはないということか……)
いずれにせよ、今日明日中には陽一と接触を持とうとするのは間違いないだろう。
(もう絶対に、お兄ちゃんは渡さないわ……)
夕里子をさらに追い込むにはどうしたらいいだろう。
ぼんやりと、いくつかの案を頭の中で吟味する。
「綾! 綾ってば!」
小夜子の呼びかけで現実に引き戻された。
「ぼーっとして……大丈夫?」
「ん、ちょっと考えごとしてたのよ」
小夜子は知る由もなかった。
目の前の親友が、自分の敬愛する従姉に対して、さらに残酷な牙を剥いていることを。
陽一の久々の登校を迎えるクラスの雰囲気は、何とも微妙なものであった。
級友たちは挨拶もぎこちなく、こそこそと話をしている。
覚悟していたことなので、特に気にした様子も見せず、陽一は自分の席に着いた。
「おはよう。久しぶりだね」
「久しぶりって、たかが三日だろ」
クラスの人間が遠巻きに見守る中、陽一に声をかけたのは、委員長の縁だった。
縁は周囲の雰囲気などまるで気にした様子も無く、陽一にいつものように話しかけた。
「はい、休んでいた間のノートだよ」
「ああ、ありがとう」
「風邪はもう治ったのかな?」
「ひとまずはな」
綾と二人で過ごした背徳的な三日間が脳裏をよぎる。
自然と表情が沈んだ。
「元気無いね」
「そうか?」
「うん、元気ない。支倉君のことなら、ちょっと見ればわかるよ」
「……まあ、どうやら悪い意味で有名人になっちゃったみたいだからな」
縁は、なるほど、と頷いて教室を見回した。
「大丈夫だよ。どんなことがあっても私は支倉君の味方だから」
言って、陽一の目をじっと見つめる。
「だから、何かあったらいつでも私に相談してくれていいからね」
「ああ」
「今は、何か悩んでることとか無いのかな?」
「特に無いよ」
「本当に?」
いつの間にか縁の顔がすぐ目の前に迫っているのに気付いて、陽一は思わず身を引いた。
「ああ、本当に無いよ」
「ならいいんだけど、本当の本当に?」
心の内を見透かしたように、縁はじっと見つめて問いかけてくる。
ここで話してしまえば、いくらか気が楽になるかもしれない――
そんな思いが一瞬頭によぎったが、すぐに綾の言葉を思い出した。
『お兄ちゃん以外の人に知られたら……私、恥ずかしくてどうなるかわからないからね』
どうなるかわからない。
それはつまり、今の綾にとって、その身を傷つけることを意味する。
余計なことをしないように言っておいてくれとも言っていた。
「宇喜田……心配してくれるのは嬉しいけど、変に勘繰らないでくれよ。本当に何もないんだから」
「ん、不快にさせちゃったかな?」
あはは、と縁は笑った。
「私、一度気になりだすと止まらなくて。うん、わかった。支倉君がそう言うなら、もう気にしないようにするよ」
ホームルームの時間が近づき、次第に人が増えていくが、相変わらずひそひそと話し声が聞こえるだけで、教室内の陰鬱な雰囲気は変わらない。
縁はスカートのポケットから手紙を取り出した。
「これは……?」
「夕里子ちゃんからだよ。支倉君が来たら渡してくれって言われてたんだ」
水色の、飾り気のない封筒。
開いてみると、細く綺麗な字で、『昼休み、屋上で待っています』とだけ書かれていた。
「夕里子ちゃん、すっかり元気無くしちゃってるから、支倉君が励ましてあげなきゃだめだよ。恋人なんだから」
「そうか、聞いていないんだな……」
「何を?」
「夕里子さんとは別れたんだよ」
あらら、と縁は間の抜けた声をあげた。
「どうして?」
「色々考えて決めたんだ。俺なりにさ」
「支倉君、やっぱり何かあったんじゃないのかな? だとしたら……」
「宇喜田」
縁がしゃべるのを、陽一は少し大きな声を出して押しとどめた。
「これは俺と夕里子さんの問題で、それ以外は何も無いんだ。俺が夕里子さんと別れようと決めただけなんだ。俺に関しては、これ以上変に関わろうとしないでくれ」
「……そうだね。ごめん」
ややきつい陽一の物言いに、縁は表情を変えることなく謝る。
それから、縁が夕里子に関する話題を口にすることは無かった。
灰色の雲が重苦しく垂れ込める十一月の空。
初冬の風が吹き荒ぶ屋上に、夕里子は一人立っていた。
栗色の髪は寒風に狂ったように舞い、絶え間なく宙に流れている。
美しく整った顔は病的なまでに白く、優しい光を宿していた瞳は虚ろで、ぽっかりと黒い穴が開いているかのようだった。
「夕里子……さん?」
「陽一さん、来てくれたんですね」
嬉しそうに目を細め、ゆっくりと陽一のもとに歩み寄った。
「不安でした。来てくれないんじゃないかって……三日間ずっと待っていました」
「ごめん。俺、ずっと学校休んでたから」
「そう……そうでしたね。わかってはいたのですが、それでもここで待たずには居られなかったんです」
夕里子は陽一の頬に手を伸ばし、愛しげに指先で撫でた。
「陽一さん……会いたかった……」
風の音に紛れてしまいそうな細い声で言って、夕里子は陽一に抱きつこうとする。
その細い両肩を陽一は手で押さえ、押し止めた。
「陽一さん……?」
「夕里子さん、メールで送ったけど……俺たちはもう別れた方がいいと思う。別れよう」
陽一の言葉に、夕里子は穏やかに笑った。
「……ええ、承知しています」
美しいが生気が無い、人形のような笑顔だった。
「悲しいけど、仕方の無いことだと思っています。陽一さんは、優しい人ですから……他の人が傷つくのが耐えられないんですよね」
「君だってそうだろう」
「どうでしょうね」
微笑みながら、夕里子はぽろぽろと涙を零した。
「私、転校することになると思います」
「え……?」
「今度の件で、色々と問題を起こしているのがお父様に知られてしまいましたから。もと行く予定だった女子校に編入されるそうです。結局、あの便箋にあった通りになってしまいましたね」
佐久間愛の事件の際の脅迫文には、『別れたことの証明は、いずれかの証明を以ってする』とあった。
「これでもうみんなに迷惑をかけずに済みますね。どうせこうなるなら、初めから無理をするんじゃありませんでした。おかげで佐久間さんは……」
「……森山浩史のことは大丈夫なのか?」
「お父様がお知り合いを通じて、警察に強く訴えてくださったみたいです。たぶん……これからのことは大丈夫だと思います」
夕里子は俯いてため息をついた。
「結局、私たちの恋は何だったのでしょうね」
栗色の髪が、風に舞い乱れる。
陽一は何も言えなかった。
「……別れるといっても、最後に抱きあうくらいは許していただきたいです」
すがり付いてくる夕里子を、陽一は今度は押し止めなかった。
鉛色の空の下、二人は静かに抱き合った。
放課後、文化祭実行委員の集まりに縁と共に参加した陽一を、綾は校門で待ち受けた。
夕影の中、昇降口から歩いて来る陽一を目に留めると、綾はすぐさま駆け寄ってその腕に抱きついた。
「お兄ちゃん!」
「綾……」
甘える猫のように腕に頬を擦り付ける綾に戸惑いながら、陽一は尋ねた。
「ずっと待ってたのか? けっこうな寒さだったろうに……」
「ずっとじゃないわ。私もついさっき来たところよ。放課後やることがあったしね」
綾はきょろきょろと辺りを見回す。
「縁さんは? 一緒じゃなかったの?」
「ああ。宇喜多は、用事があるとかで先に行ったけど……校門を通らなかったか?」
「通らなかったけど……ま、どうでもいいわ」
組んだ腕を引き、少し体制を崩させて、綾は陽一とキスを交わす。
そして、嬉しそうににこりと笑った。
「二人きりならこうやってキスもできるし、好都合よね」
「綾……外では……」
「大丈夫。誰も見ていないわよ。今日一日、恐怖に押し潰されそうになるのを我慢してクラスの男の子とも話したんだから、エネルギー補給くらいさせなさいよね」
駅までの道すがら、綾は陽一にその日一日のことを面白おかしく話した。
夕里子のことも、縁のことも、ひと言も言わなかった。
「……聞かないんだな。夕里子さんとのこと」
「え? どうして?」
「いや……いつもお前は、俺と夕里子さんとのことを聞いてきたし……もっと追及してくるかと思った」
「しないわよ、そんなこと。お兄ちゃんが私のために別れるって言ってくれたんだもの。信じない道理が無いわ」
さも当然とばかりに綾は言った。
「……夕里子さん、転校することになるみたいだ」
「そう」
「警察も動いているみたいだし、もうお前に迷惑をかけることもないと思う」
「縁さんは?」
「宇喜多には……もう俺と夕里子さんとの問題だからって言っておいた。お前のことは話さなかったし、変に勘繰らないでくれとも言っておいたよ」
綾は無言で深く頷いた。
(警察、か……)
この数ヶ月で殺し過ぎた感はある。
追及はそれなりに厳しいものになるだろう。
「やれやれ……まだまだ大変ね」
「ん?」
「何でもないわ。それより、今日の夕食は何がいい?」
兄妹は仲睦まじく腕を組んだまま家路についた。
空き教室で、縁と夕里子は向かい合っていた。
西日が真横から二人を照らし、長い影が教室の床に伸びる。
「今日屋上で……陽一さんと抱き合いました」
虚ろな目で縁を見つめながら、夕里子は言った。
「それで最後って、陽一さんと約束したんです。だから……もういいんです」
「あらら、諦めちゃってるね」
夕里子のか細い声に、縁のあっけらかんとした声が対照的に響いた。
「支倉君を嫌いになったわけじゃないんでしょ?」
「そんなわけありません……」
「好きなんだったら、もう少し頑張ってみてもいいと思うんだけどな、私としては」
縁の助言に、夕里子ははっきりと首を横に振る。
「皆さんに迷惑がかかります」
「夕里子ちゃんのお父さんが、警察の偉い人をけしかけてくれたんでしょ? 大丈夫だよ」
「でも……」
夕里子とて未練がないわけではない。
生まれて初めて好きになった人なのだ。
「陽一さんは……別れると言っていました。私の想いだけではどうにもなりません」
「支倉君は、夕里子ちゃんのことを嫌いになったって言ったの?」
「それは……言われていませんけど……」
「つまり、支倉君も本心では別れたくないってことだよ。二人とも一緒に居たいって思っているのに、諦めちゃっていいのかな?」
夕里子はぎゅっと唇を噛んだ。
そして、彼女には似つかわしくない、険しい眼差しを縁に向けた。
「……宇喜多さんは、何とも思わないんですか?」
「何がかな?」
「佐久間さんのこと……佐久間さんのお母様のこと……何とも思わないんですか!?」
「申し訳ないことをしたなって思ってるよ」
あっさりとした物言いに、夕里子は噛み付くように言う。
「だったら……! 何でそんな、何事も無かったみたいに言えるんですか!?」
「私は、支倉君と夕里子ちゃんに幸せになってもらいたいだけだよ」
「……そのお気持ちは嬉しいです。でも、人を不幸に追いやって幸せになるのは、私には無理だとわかりました」
「そっか」
縁は残念そうに笑って、頭をかいた。
「もうこれ以上、支倉君とお付き合いはしないと、そういうことだね?」
「……そうなりますね」
「どうしても? 考え直したりはしない? 私は出来る限り協力するよ?」
縁は夕里子に歩み寄り、肩を掴んで問いかけた。
優しい声で、優しい眼差しで。
「もし少しでも未練を感じているなら、保険をかけておいた方がいいと思うんだけどな」
「保険……?」
「そう、保険。転校して離れ離れになっちゃったとしても、全部が解決して二人の邪魔をする人間が居なくなったとき、またよりを戻せるように」
「そんなことが……できるのですか?」
簡単だよ、と縁は笑った。
「支倉君と、男と女の関係になればいいんだよ」
「え……そ、それって……」
「エッチしちゃえばいいってこと。支倉君は責任感の強い方だし、夕里子ちゃんのことを忘れられなくなるはずだよ」
夕里子は頬を赤らめ、目をそらす。
「で、でも陽一さんは私のことを抱くなんて……嫌がると思います」
「そんなわけ無いよ。支倉君だって、別れたいわけじゃないんだから」
縁は、夕里子の肩を掴む手に、さらに力を込めた。
「好きな人と結ばれて……しかも、また恋人に戻れるかもしれないんだよ?」
「また……陽一さんの恋人に……」
もう身を引くしかないと思っていた夕里子にとって、それはあまりにも甘美な響きだった。
陽一と結ばれる――
考えるだけで、緊張し、体が熱くなった。
「ご迷惑じゃ、ないでしょうか……」
「ご迷惑じゃないと思うよ」
夕里子は迷いながらも、気付いたら頷いてしまっていた。
次の日の放課後、綾は縁に呼び出され、中庭にやってきた。
四方を校舎に囲まれてはいるが、南側と西側の校舎は高さが低いため、昼から夕にかけては日の光がよく入る。
古びた校舎の壁も、枯れた下草も、葉を落とした木々も、すべてが夕日の赤に染まっていた。
「綾ちゃん、おひさだね」
「何です、こんなところに呼び出して」
中庭の真ん中に立って出迎えた縁に、綾は不快感を隠さずに言った。
「私も暇じゃないんですけどね。何か大切な用事なんですか?」
「大切な用事というか……綾ちゃんと親交を深めたいと思って」
背後に隠していた手を、ぱっと広げる。
その手には、バドミントンのラケットが握られていた。
「じゃーん」
「……じゃーん、じゃないわよ」
早くも敬語を崩して、綾は突っ込んだ。
「綾ちゃん、バドミントンしよう」
「気でも狂ったの? 何でこんなところであんたとお遊戯をしなきゃならないのよ」
「あっはは。ひどいなあ。綾ちゃんと仲良くしたいだけなのに」
縁は綾の手をとり、ラケットを握らせる。
「ネットもコートも無いけど、ここを中心に高さはこのくらい。コートの幅は、このくらいでやろうか。綾ちゃんはおりこうさんだから、頭の中にコートを描いてできるよね」
「……まだやるなんて一言も言ってないんだけど」
「ちなみにこの試合は特典付きだよ」
「特典?」
「一打打つごとに相手に質問ができる特典。相手は、必ず質問に答えなければならない。質問は、点を取られるか、質問が途切れるかするまで続けられるよ」
「何なのよそれは」
綾は険悪な表情を崩さない。
一方の縁も、いつもの微笑を崩さなかった。
「綾ちゃんは私の質問に正直に答えなくてもいいよ。適当な答えでもかまわない。でも私は、綾ちゃんの質問に全部正直に答える。どう? おもしろそうじゃない?」
「ふーん……」
縁が何を意図しているかはわからない。
しかし、いつも笑ってばかりいる優等生面をした女の素顔はどんなものなのか。
綾は強く興味を引かれていた。
「あんたが私の質問に正直に答える保障なんて、何もないわけだけど」
「そこは信じてもらうしかないかな。ここで嘘をついたらもう二度と綾ちゃんと遊んでもらえなくなっちゃうだろうし、私は本気だよ」
「なるほどねえ……」
踵を返し、綾は縁から五歩、十歩と離れる。
そうして再び縁の方を向き、ラケットを構えた。
「いいわ。来なさい」
「先手は綾ちゃんでいいよ」
縁がバドミントンの羽を放り投げる。
「ちなみに負けた方は勝った方にパフェをおごるということで」
「はいはい。どちらにせよ勝つのは私だから……」
綾はふわりと羽を空中に投げ――
「問題無しよね?」
思い切り打ち出した。
鋭い球筋だが、縁は素早く横に動き、難なく打ち返す。
「それは違うかな」
打ち返された羽は、二人が頭に描くコートの隅に吸い込まれ、綾はあっさりと得点を許してしまった。
「勝つのは私だよ。どんなことでもね」
誇るわけでもなく、蔑むわけでもなく、ただ淡々と縁は告げる。
やはりこの女は違う。
綾は改めて思った。
「今度は私の番だね」
「ふん……」
「綾ちゃんは、女の子かな?」
問いかけながら、厳しいコースに打ち込む。
「見てわかるでしょう!」
負けじと綾も打ち返した。
学業のみならず、身体能力も各々の学年で並外れて高い二人である。
素早い身のこなしと、力強い打ち込みで、二人は延々ラリーを続けた。
「綾ちゃんは、友達はいる?」
「たぶんね」
「友達は好き?」
「まあね」
「その友達は小夜子ちゃん?」
「だからどうした!」
「羨ましいね」
「それも質問か!?」
放課後の校内に、二人の応答の声と、羽を打ち合う音が響く。時に打ち返すのに精一杯で質問が途切れ、質問の権利が移ることはあったが、互いに得点を許すことは無かった。
「そういう縁さんは友達いるの?」
「いるよ」
「その人は夕里子さん!?」
「違うねえ」
「じゃあお兄ちゃん!?」
「そうだね」
「それ以外には?」
「いないよ」
縁の打ち返しが厳しく、質問が途切れてしまう。
打ち合いを続けるうちに、二人は息が切れ、質問はより踏み込んだものになっていった。
「綾ちゃんは、夕里子ちゃんは好き?」
「普通ね」
「他の人は?」
「普通」
「支倉君は?」
「好きよ」
「じゃあ私は好き?」
「大嫌い」
点が入り、質問権が移る。
「縁さんは、夕里子さんは好きなの?」
「好きだよ」
「他の人達は?」
「好きだよ」
「お兄ちゃんは?」
「好きだねえ」
「私は?」
「好きだよ」
「嫌いな人はいないの?」
「みんな好きだよ」
「それってつまり、みんなどうでもいいってことよね」
「……そういうわけでもないけどね」
また質問権が移る。
「綾ちゃんには、特別な人がいるの?」
「ええ」
「支倉君?」
「だったらなんだってのよ!」
「支倉君の何が特別なの?」
「大切な家族よ」
「支倉君のためなら何でもできる?」
「ものによるわね」
「人殺しとか」
「ご冗談を」
さらに綾が得点を重ねる。
「縁さんは、特別な人はいないの?」
「いるよ」
「お兄ちゃん?」
「そうだよ」
「お兄ちゃんのためなら何でもできる?」
「できることなら」
「お友達を見捨てることも?」
「友達はもとより一人しかいないしね」
そうして、延々二人は打ち合った。
佐久間愛の事件のせいで、生徒は早々と帰ってしまうので、誰も通りかかるものはいない。
実力の拮抗した二人の試合は、抜きつ抜かれつのシーソーゲームとなっていた。
綾も縁も、肩で息をするまでになり、なおも互いに譲らなかった。
「ふう……やるねえ、綾ちゃん。さすがだよ」
「あなたもね」
何度目かの質問権を得た縁が、シャトルを手に空を見上げる。
「日が落ちるのが早いね。少し見えづらくなってきたかも」
綾も釣られて空を見ると、薄紫の空に、一番星の輝きが見えた。
「あまり長く続けていられなそうだね。もっと綾ちゃんに聞きたいことがあったのにな」
「私は適当にしか答えてないけどね」
「うん。それでも、ね。聞くことに意味があるんだよ」
あれだけの運動をしても、縁は微笑を絶やさずにいた。
「そうそう、風邪で休んで以来、支倉君が元気が無いように見えるんだけど、綾ちゃん何か知らないかな?」
「……打たないで質問はルール違反だと思うけど」
「あはは、ごめんごめん。じゃあ、ちゃんとした質問にするね」
ふわりと、縁は羽を浮かせた。
「綾ちゃんは支倉君と……」
そして、勢いよく振りぬいた。
「肉体関係にあるのかな?」
「!!?」
飛んできたシャトルを受け損ない、あらぬ方向に弾いてしまう。
綾は呼吸を落ち着かせて縁を見た。
「……何言ってるの?」
「この数日、綾ちゃんが前にも増して支倉君と仲がいいみたいだったから、気になったんだ」
「兄妹が仲が良いのは当たり前でしょうが」
「まあ、そうだね。聞いてみただけだから、気にしないでよ」
言って縁は、地面に転がったシャトルに視線を走らせた。
「さっきの、真正面だったのに、取り損ねちゃったね」
「……だから何?」
「人間の心と体は、どうやっても切り離せないんだよね。心の動きは、体の動きに現れちゃうんだよねえ」
しみじみと縁は言う。
「だから聞くことに意味がある。……今日は、綾ちゃんのことを知ることができて、とっても楽しかったよ」
「まあ……あんたが頭の中でどう解釈しようがあんたの勝手だけどね……」
「そうだね。私、妄想癖があるみたいだから、気にしないで」
縁が綾に向かって手を差し出す。
戸惑う綾に笑いかけた。
「ラケット。今日はもう終わりにしよう」
「まだ勝負がついてないわよ」
「勝負は私の負けでいいよ。充分に目的は果たせたから」
「目的?」
いぶかしげに聞く綾に、縁はあっさりと答えた。
「夕里子ちゃんに頼まれたんだ。一時間でいいから、支倉君と綾ちゃんを引き離して欲しいって」
「……!」
慌てて時計を見る。
縁との遊戯で、すでに一時間半費やしていた。
「まさか……!」
慌てて陽一に電話をかけるが、やがて留守番電話センターに繋がってしまった。
「あんた……」
「綾ちゃんのことを知ることもできたし、私としては上出来だね」
綾が手に持っていたラケットを投げつけるも、縁はあっさりとそれを手で掴んで受け取った。
「この女狐……!」
「今度パフェおごるよ」
ほんの数秒、縁を睨みつけ、綾は踵を返す。
中庭の隅に置いておいた荷物を手にし、全力で駆けた。
後に残された縁は一人夕影の落ちる中庭に佇んでいた。
校門を出てすぐに綾はタクシーを拾い、家に直行した。
焦りで鍵穴に鍵を挿すのを二度三度と失敗してしまう。
玄関の戸を開き、そこに陽一ともう一人の靴があるのを確認すると、二段抜かしで階段を駆け上がった。
迷わず陽一の部屋の戸に手をかける。
鍵がかかっていたので、問答無用で蹴破った。
「お兄ちゃん……!」
散乱した衣服。
ベッドの中で、驚きの表情で自分を見つめてくる半裸の兄と夕里子。
綾は、腹の底から全身に震えが走るのを感じた。
「何やってるの?」
「綾……」
「何やってるのよ……!」
すぐ脇の机の上にあったボールペンを手に取り、綾は駆けた。
その切っ先を夕里子の見開かれた瞳に向けて。
「綾……!」
陽一の反応は素早く、枕を夕里子の顔の前に差し出す。
鈍い音がして、枕に深々とボールペンが突き刺さった。
先端が枕を突き抜け、夕里子の瞳の直前で止まる。
「ひっ……!」
眼前に生々しく光る金属の先端に、夕里子は悲鳴をあげた。
「綾! 待ってくれ! 違うんだ!!」
「何が違うってのよ!? どうしてこの女がここにいるのよ!! どうして裸でお兄ちゃんと寝てるのよ!!?」
ボールペンを引き抜いてさらに腕を振る綾を、陽一が抱きつくようにして抑える。
「夕里子さん! 部屋を出て!」
「は、はい……!」
シーツで体を隠しながら、夕里子は床に散らばった制服を拾いつつ、廊下に出た。
追おうとする綾を押しのけて、陽一も廊下に出る。
急いで部屋の戸を閉めた。
「開けて! 開けなさいよ!!」
部屋の中からドアを激しく叩く音と、綾の叫びが聞こえる。
陽一は必死でドアノブを押さえ、廊下にへたり込む夕里子に、服を着るように促した。
「いつまで押さえていられるかわからないから……ここは一旦帰ってくれ」
「でも……陽一さんは……」
元々白い顔を真っ青にして、夕里子は罵り声の聞こえてくるドアを見る。
「こんな……綾ちゃん……なんで……」
「うちの妹、ちょっと癇癪持ちなんだ。いつものことだから問題ないよ」
「でも……」
なおも心配する様子を見せる夕里子に、陽一は微笑んで見せた。
「大丈夫だから、本当に」
「……わかりました」
頷いて、手早く制服を着込むと、夕里子は深く頭を下げた。
「今日は……本当にすみませんでした。わがままを言ってしまって……」
「いいよ……俺も嬉しかったから」
「そう言っていただけると……救われます」
ちらりと綾の閉じ込められた部屋を見る。
「綾ちゃん……」
呟いて、夕里子はまた頭を下げ、階段を下りていった。
その後姿を見届けて、陽一はほっと息をつく。
いつの間にか強烈にドアを引っ張る力も、鋭い罵り声も消えて、部屋からは何の物音もしなくなっていた。
「綾……?」
恐る恐る問いかけるも、返事は無い。
そっとドアを開けると、部屋の中央でうずくまるようにして膝をつき、嗚咽を漏らす綾の姿が見えた。
「綾……」
部屋に足を踏み入れると、小さく床の軋む音がする。
その音に反応して、綾は陽一の方へ顔を向けた。
黒髪の隙間から覗く目からは涙がとめどなく零れ、同時に恐ろしいまでの憎しみに溢れていた。
「何なのよ……」
「綾、違うんだ」
「何が違うっていうのよ! 私を守ってくれるって言ったのに!! あの女と別れてくれるって言ったのにっ!! なのに……私の居ない間に家に連れ込んで……やらしいことを……」
「俺と夕里子さんは、そんなことはしてない」
「じゃあその格好はなんなのよ!!」
綾の指差す陽一の格好は、Tシャツにトランクスのみという、裸に近い格好だ。
「夕里子さんなんて、裸だったじゃないの! それで何もしてない!? 今時中学生だってもっとまともな言い訳するわよ!! 馬鹿にしないでよっ!!」
指摘されて、自分の格好に恥ずかしさを覚えつつ、陽一は説明した。
夕里子に思い出が欲しいと、抱いて欲しいと言われたこと。
恋人で無くなった今、それはできないと断ったこと。
ならばせめてと、お互い素肌を触れられるようにして、一緒にベッドの中で過ごして欲しいと懇願されたこと。
それで全部終わりにしようと了承したこと。
「断った……?」
「……無責任なことはできないからな。お前との約束もあったし」
「本当に……本当に何もされていないの? 本当に?」
身を起こし、床にへたり込みながら陽一を見上げる。
「ああ。俺と夕里子さんは、何もしないで終わったよ」
一瞬見せた陽一の悲しげな表情に、綾は陽一が真実を語っているのだと悟った。
それてまた、陽一の夕里子に対する未練を感じ取り、猛烈な嫉妬がこみ上げてきた。
「……信じられないわね」
「え……?」
「裸の男女が肌を触れ合いながらベッドに一緒に居て何も無かった!? そんなことが信じられるわけないでしょう!! 本当は……私なんてどうでもよくて、夕里子さんといちゃつきたいんでしょう!?」
綾の剣幕に、陽一は慌てた。
また綾が自傷に走ると思ったからだ。
「綾、頼む、信じてくれ……! 本当に何も無かったんだ。俺には、お前の体のこと以上に大切なことは無いんだよ」
「ふうん」
目を細め、綾は問いかけた。
「なら、確かめていい?」
「え?」
「本当に何も無かったのか。確かめてもいい?」
綾の視線に気圧されながら、陽一は頷く。
疑いを晴らせるなら、綾が落ち着いてくれるなら、何でもするつもりだった。
「でも、どうやって確かめるんだ?」
「しばらく私の言う通りにしてくれればわかるわよ」
立ち上がり、綾は机の上の文房具箱にあったガムテープを手に取る。
腕を広げ、勢い良くテープをはがした。
「それを……何に使うんだ……?」
「お兄ちゃん、後ろに手を回してちょうだい」
「え?」
戸惑う陽一に、綾は氷のような声で言った。
「言う通りにできないの? 確かめられると困ることがあるってことかしら?」
その一言で、おとなしく手を後ろに回す。
綾は陽一の両手をそのまま後ろ手にガムテープで巻いて縛ってしまった。
「なあ、綾、これ本当に……」
「いいから。黙ってて」
綾は陽一の背を押して、ベッドに向かわせる。
「はい。寝転んでちょうだい」
「腕をこのままにしてか?」
「そうよ」
有無を言わさぬ口調と、冷たい眼差しは、抗議すらも許さなかった。
陽一はベッドの上に寝転がり、天井を見つめた。
「これでどうやって確かめるんだ……?」
「まあ、状況の再現のようなものだから。そんなに堅くならないでいいわよ」
言いながら、綾はさらにガムテープをはがし、今度は陽一の右足首をぐるぐる巻きにする。
器用なもので、あっという間に右足首はベッドの端の棒に結び付けられてしまった。
「綾……? なあ、本当に何を……」
言いかけた言葉が止まる。
今度は視界が真っ暗になってしまったのだ。
肌につく感覚から、目の上からガムテープが貼られたのだとわかった。
「綾……?」
さすがに異様な雰囲気に気付き、声を出すも、綾は答えない。
さらに陽一の左足首を、ベッドの端にくくりつけた。
「怖がらなくていいからね、お兄ちゃん」
「……?」
「お兄ちゃんは恥ずかしがると思ったから。だから、ちょっと工夫しただけだから」
自由を奪われてベッドに寝転ぶ兄を見て、綾は嬉しそうに笑った。
白い細い手が、陽一の股間に伸びる。
トランクスをずらすと、まだ柔らかなペニスが露になった。
「お、おい……!」
体をゆすって逃れようとするも、今更どうしようもない。
陽一はただ、綾の為すがままとなっていた。
「そんな慌てないでよ。お兄ちゃんが夕里子さんとセックスしたかどうか確かめるだけなんだから」
「た、確かめるって……これは……」
「簡単な事よね」
綾は陽一のペニスを、包み込むように握る。
繊細な指使いで、亀頭からカリにかけてを刺激した。
「あ、綾! やめろ!」
「やめないわ。必要なことだもの」
「これのどこが必要なことなんだ!」
「言ったでしょう? 夕里子さんとセックスしたか確かめるって」
陽一のペニスを見る綾の瞳が、妖しく蕩ける。
「そう……簡単な事なのよ。あの女の膣に入っていたなら、その味がするはずなんだから」
髪をかき上げて、綾は陽一のペニスを口に含んだ。
唇をすぼめ、吸い付くようにして口の中でペニスをしごきあげる。
頭を上下させ、勃起したペニスを丹念に刺激した。
「綾……お前……」
陽一は目隠しをされていたが、自分の身に何が起こっているのか、その感触で理解した。
「やめろ! やめるんだ!!」
陽一の必死の叫びに、綾は答えない。
苦しそうに鼻で息をしながら、ただひたすら陽一のペニスを舐めた。
「く……うっ!」
限界はすぐに訪れる。
苦しそうに呻き声を漏らしたかと思うと、陽一は綾の口の中に、思い切り射精してしまっていた。
止めようにも止められない体の反応。
己の意思とは関係なく、陽一の精液は与えられる刺激により次々と溢れ出てしまった。
「ん……ふ……んん……!」
悩ましげな呼吸と共に、綾はペニスを口に含んだまま、精液を吸いだす。
コクン、コクンと、何度も喉を鳴らして飲み込んだ。
「あ、綾……」
「んん……ふぅー……ん……」
うっすらと目を細め、表情に悦びを露にしながら、兄の精液を音を立てて吸った。
「ん……お兄ちゃん、いっぱい出たわね」
「……」
「ふふ……お兄ちゃんの味しかしなかったわ。お兄ちゃんの身の潔白は証明されたわね」
「……解いてくれ」
力なく陽一は言った。
目隠しのせいで表情は読めないが、どうしようもなく落ち込んでいるのが見て取れた。
そんな兄を慰めるように、綾は囁きかける。
「落ち込むこと無いわ、お兄ちゃん。お兄ちゃんも、私のあそこを舐めてくれたじゃないの。これでおあいこよ」
陽一が何か言う前に、その口をキスで塞いだ。
「んふ……お兄ちゃん……お兄ちゃん……!」
片手でペニスを撫ぜながら、陽一の唇、頬、首筋と舌を這わせる。
制服の前ボタンを外し、露にした胸を押し付けるようにして、陽一の体に身を絡めた。
「綾……頼むからやめてくれ……これ以上は駄目だ。俺たちは……」
「兄妹だから?」
「……ああ。兄妹だから……どうしたってやってはいけない一線があるんだよ。頼むからやめてくれ。不安を感じるのなら、いつもみたいに抱きしめてやるから……だから……!」
陽一は必死だった。
綾の雰囲気が尋常ではないことに気付いていた。
このままでは、人として大切なものを失ってしまうと予感していた。
「ふふ……お兄ちゃんは、まともだね」
「……?」
「私は……もう駄目なのよ。もう壊れちゃったの。まともじゃないのよ。いつもみたいに抱きしめてもらうだけじゃ、本当は全然足りないの。お兄ちゃんがどこかに行っちゃうかもって思うと、不安で不安で仕方ないのよ」
言いながら、綾は陽一をまたぐようにしてベッドの上に立つ。
スカートの中に手を入れて、ゆっくりと下着を下げた。
「俺の……せいなのか? 俺のせいでお前は……」
「そうね。お兄ちゃんのせいね。お兄ちゃんが夕里子さんとあんなことしていなければ、まだ我慢できたかもしれないのに……」
足を上げて、下着を脱ぎ捨てる。
兄の胸の上に手を置き、ベッドに膝をついて、少しずつ腰を下げていった。
「お兄ちゃん……」
綾の秘所に、陽一のペニスの先端がつく。
ぴったりと閉じた若々しい蜜の園は、ぬらりと愛液に濡れていた。
「綾……?」
「く……う……んうう……」
亀頭の先が、わずかに膣口に入る。
「ごめんね、お兄ちゃん」
次の瞬間、陽一の肉棒は、綾の膣にずぶずぶと飲み込まれていった。
愛液に混じって、破瓜の血が陽一のペニスを濡らした。
「く、う……!」
痛みの声を出さないよう、綾は唇をぎゅっと噛む。
『森山に犯された』以上、処女であると悟られるわけにはいかないのだ。
「お兄ちゃん……入っちゃったよ」
「綾……何でこんな……」
「言ったでしょ? 不安で……怖くて悲しくて……死にそうなの。お兄ちゃんが居ないと、私は死んじゃうのよ」
泣きながら綾は、腰を動かす。
黒いスカートを自らまくって、陽一との結合部をのぞき見た。
「こうやって、お兄ちゃんの一番傍に居なきゃいけないの……お兄ちゃんと居なきゃ私は……私は本当に……」
まだ幼さを残していた綾の秘所は、陽一のペニスを根元までくわえ込んで、痛々しく広げられている。
実際痛みはかなりのものだったが、綾は決して苦痛の声を漏らさなかった。
嬉しさと安心感から涙が止まらず、その涙が体の痛みを洗い流してくれるかのようでもあった。
「お兄ちゃん……夕里子さんとしていないってことは、私が初めてよね?」
「……」
「私がお兄ちゃんに一番近い女ってことになるのよね?」
熱い吐息を漏らして、綾は声を震わせる。
陽一は一言も発さなかった。
ただ時折喉を震わせて、小さく首を横に振るだけだった。
「お兄ちゃん……泣いてるの?」
ガムテープで目を貼られているせいで、涙を流すことすら出来ない。
しかし、陽一は確かに泣いていた。
アキラが死んだ時は悲しかった。
佐久間愛が被害に遭ったときも悲しかった。
佐久間愛の母親が自殺した時も、佐久間愛が自殺未遂した時も悲しかった。
夕里子と別れることになった時も悲しかった。
しかし、今感じているのは絶望だった。
最愛の妹が傷つき壊れていく様を見て心に浮かぶ感情は、悲しさなんて言葉では生ぬるい。
何よりも辛い、絶望という感覚だった。
「綾……どうして……」
小学生の頃の、少し生意気で、でも素直で甘えん坊の、笑顔の可愛い綾。
中学生の頃の、ちょっとひねくれた、しっかり者で面倒見のよい綾。
高校生になってからは、優等生と言われ、何でも人並以上にこなした、自慢の妹の綾。
そして今――
狂気とも取れる言動と共に、自分と一線を越えてしまった綾。
「あんなにいい子だったのに……俺のせいで……」
綾の忠告を無視し続けて、夕里子と付き合った自分が恨めしかった。
こんな状況なのに反応してしまう、男としての自分の体が恨めしかった。
「泣かないでよ……お兄ちゃんは私を救ってくれてるんだから」
「これが……救いだって?」
「そうよ。私、今すごく幸せだもの」
陽一の気持ちを見越して、綾は優しく声をかける。
そして、ぎこちなく腰を振った。
陽一が気持ち良くなるよう、懸命に。
ぬち、ぬち、と小さく粘着音が響く。
陽一のペニスをくわえ込んだ綾の秘部は、さらに愛液に濡れ、綾が白い尻を動かすたびに、陽一の下腹との間に糸を引いた。
「く……あぁ……お兄ちゃん」
綾の動きにあわせて、出入りを繰り返す陽一の肉棒も、愛液にまみれていく。
可愛らしい陰唇を巻き込むようにして綾の膣に入り込み、引き抜かれるときはそのカリ首で膣壁をこそぎ取るようにして、綾を次第に官能の渦に引き込んでいった。
「お兄ちゃん……ああ、ん、くぅ……! お兄ちゃん……! お兄ちゃん!」
腰を浮かすのをやめ、前後に細かく振ってみる。
先ほどとは違った刺激に、綾は背をそらして喘いだ。
「はあ……ぅん……んっ!」
不意に腹の中に熱い感覚が走り、綾は動きを止める。
陽一の腹筋がヒクヒクと動いているのを見て、にこりと笑った。
「お兄ちゃん、私の中で出してくれたのね……?」
「う……うぅ……」
「ありがとう……温かい……」
至福の表情で、慈しむように自分の下腹を撫でた。
「もっともっと出して。私の中を、お兄ちゃんで一杯にして」
陽一はついに声を上げて泣き出してしまう。
綾は兄の嗚咽を聞きながら、より激しく腰を動かした。
精液が膣内でかき混ぜられ、じゅぶ、じゅぶ、とさらにいやらしい音を奏でる。
ギシギシと、二人の乗るベッドが軋んだ。
「お兄ちゃん……これでずっと一緒よね……?」
体を揺らしながら、陽一の目を隠していたガムテープを剥がす。
涙に濡れた虚ろな目が露になった。
「これからは、私と二人で支えあっていこうね」
言って綾は、陽一の目の端に口付けをし、溢れ出る涙をそっと吸い上げた。
「お兄ちゃんの涙は、全部私が絶ってみせるわ。必ず……必ずお兄ちゃんを笑顔にするからね」
その夜、陽一がベッドから解放されることはなかった。
今回の投下は以上です。
注)エロはおまけ程度とお考え下さい
今回は短編というにはまとまりのない話となりました。
次の投下と合わせて前後編というべきかもしれません。
妙な長文癖となりつつありますが、とりあえず最後まで突っ走ろうと思っています。
お付き合いください。
狂ったことによる抑制は増えるだろうがついに目的達成しやがった・・!!
乙です。なんという妹。
こういう日本中の妹がみんなこんな感じだといいのに。
エロ綾キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
逆レイプキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
ちょ、縁黒っw
____ r っ ________ _ __
| .__ | __| |__ |____ ,____| ,! / | l´ く`ヽ ___| ̄|__ r‐―― ̄└‐――┐
| | | | | __ __ | r┐ ___| |___ r┐ / / | | /\ ヽ冫L_ _ | | ┌─────┐ |
| |_| | _| |_| |_| |_ | | | r┐ r┐ | | | / | | レ'´ / く`ヽ,__| |_| |_ !┘| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|‐┘
| r┐| |___ __|. | | | 二 二 | | |く_/l | | , ‐'´ ∨|__ ___| r‐、 ̄| | ̄ ̄
| |_.| | / ヽ | | | |__| |__| | | | | | | | __ /`〉 / \ │ | |  ̄ ̄|
| | / /\ \. | |└------┘| | | | | |__| | / / / /\ `- 、_ 丿 \| | ̄ ̄
 ̄ ̄ く_/ \ `フ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | |____丿く / <´ / `- 、_// ノ\ `ー―--┐
`´ `‐' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`‐'  ̄ ` `´ `ー' `ー───-′
全 米 の 股 間 が 震 撼 し た ! ! ! !
>>540 ついに……ついにっ!!!
綾あぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
陽一君はどうなるんだー!?
縁はー!?
くぅぅぅーーーーハァハァハァハァ
なんという大作・・・
>>540 ついに…ついに…ここまできたか!!綾!!
あまりの感動に言葉もでない
GJ
ドラマ化希望
縁を見てると相棒の右京さんを思い出さないでもない
「いや…、どうにも細かいことが引っ掛かってしまって、僕の悪い癖です」
みたいな
森山「ちょww 綾さーん、命を救ってくれたことはありがたいんだけど・・・
このまま今回みたいに放置されたらマジ死ぬww・・・聞いてますかー?」
最高です
それ以外言いようがないです
あえて言おう
縁がんがれ
綾はこれぞキモウトって感じだな
この背筋が凍りそうな恐怖の中にあるパトスがたまらない
綾がこれまでやったこと
殺人
動物虐待
殺人未遂
強姦(女)
脅迫
名誉毀損
監禁(たぶん)
強姦(男)
どこまでいくんだこいつ・・・・
誰だ!俺に
病んでBON!監督
なんて電波を発信したのは!
ヘレン・ハントじゃね?
綾がお兄ちゃんとの幸せをじゃまする連中をぬっころせますように
縁がそそのかしたとはいえ、夕里子の好感度が爆下げだ
まあそれはともかく、エロパロ板のSSで泣いたのははじめてだ
綾を読んでるとデスノートの月を見てる気分になる
最後が楽しみだw
このスレの住人だというのに綾に対して反感のような複雑な感情がおこる俺
なんかこう某新世界の神を見ているような感覚
彼女が犯した罪は何処へ行くのだろうかねぇ
>>564 そこは続きに期待しようじゃないか。
俺たちは物語を楽しもうぜw
微エロ・・・本エロだとどうなるんだ・・・日本列島が白くなっちゃうんじゃないのか。
>>564 俺がいる。
いやホントに作者はGJなんだけどね。
とりあえず綾はフルボッコになれ。エゴの塊の殺人鬼だろ。
だがそれがいいのもまた事実。
最初からレイプされた振りすれば・・・というのは意地悪すぎるか。
まあ面白いのでよし。
同じヤンデレ殺人鬼でも某おもらしよりよっぽど怖い
陽一はこのまま達磨化かな。男だから不完全だけど。
縁は他スレなら何とかなったかもしれんが、このスレにいる以上L止まりなんだろうなあ。
さて、綾はあと何人殺すんだろう。
なんかやたら偉そうな感想があるな
妹が使ったと思われるバスタオルに大量の血の跡が!!
どうせ鼻血か傷口か生理血でも処理したんだろうな
つーか浸け置き洗いしとけバカ妹 雑巾行きじゃねーか
縁に唆されて夕里子はなんかしそうだな
このスレは本当に神作者様の人が多いなぁ
綾ぁぁぁ貴様ぁぁあ!!!夕里子ちゃんかわいそうだろーがてめーふざけんな!!!
って思ってるのに逆レイプシーンでは俺の体は正直だったorz
>>389 超亀レスだが
このスレの住人ならまとめサイトで山本君とお姉さんは読んどけ。
>>572 リストカットきたこれ
「なんで…?どうして?なんでお兄ちゃん彼女なんか作っちゃうの?
なんで私じゃダメなの?私が妹だからなの?なんで私は『妹』なの?
なんでお兄ちゃんは『お兄ちゃん』なの?なんで 血 が繋がった 兄 妹 なの?
ちがつながった…?この、血が。…繋がってるから、いけないんだ…?
これの、せいか。この 血 のせいか。だから私とお兄ちゃんは結ばれないのか。
どうしてこんな血が私の中に流れてるんだ。こいつが私とお兄ちゃんを隔ててるんだ。
それならいらないこんなのいらない。いらない!いらない!!いらない!!!
私の身体から出て行け全部出て行け流れてしまえ!!!!
そうしたら私とお兄ちゃんに血の繋がりはなくなるそれならお兄ちゃんは私を彼女にしてくれる私を愛してくれる抱きしめてくれるお兄ちゃんが私のものになる!
だってお兄ちゃん私を『妹』にしか見てくれないんだもん。私は『妹』じゃダメなんだもん。
あの女は『居なくなった』のに私を見てくれないんだもん。私を『女』として見てくれないんだもん。
だからこうするのが一番なの。こうするしかないの!私の血を全部抜いて他人の血を入れるしかないの。
そうすれば、私は他人になれるの…。お兄ちゃんとセックスできる…。お兄ちゃんと結婚できる…。お兄ちゃんの…子供が生める…。
そうしたら…きっと…幸せだよ…?待っ…ててね…お兄…ちゃん。もう…すぐ幸せに……して…あげるから…ね。…………お兄ちゃん……。」
これじゃメンヘラだな
調子に乗ったスマソ
>>576 むしろこういうのがいい
「お兄ちゃんと結ばれる資格があるのは、同じ血が流れてるわたしだけなの。
お父さんもお母さんも、×しちゃったもの、もういないよ。
だからお兄ちゃんと同じなのはわたしだけ。
あの女もね、あの女のくせにお兄ちゃんとえっちしたから、そんな資格ないのにね、
わたしのことを気持ち悪いって、妹のくせに気持ち悪いって、変態だって。
それだけならまだしも、お兄ちゃんのことも
『シスコンだと思ってたらそういうこと、矯正しなくちゃ』
だって、病気みたいに、だからどうしても許せなくって、×しちゃった。
ね?
だからお兄ちゃんはわたしだけでいいの。同じ血が流れてるわたしだけ。
わたしは裏切らない、騙さない、傷つけないよ。だって同じだものね。
愛してるよ、お兄ちゃん」
人類皆兄弟と言う言葉があってだな・・・、まあ祖先も同じだし
あれ?こんな時間に誰だr
なあ、水を差すようで悪いが一言言わせてもらう
もはやお前らも全員怖いw
愛ゆえにだよ
ゆかりんは最後にどんな罠を仕掛けてる・・・?
分からない・・・だからこそ怖い・・・
縁がかっこよすぎるぜ!
悪いLって感じでいい
ついに結ばれたわけだがそれすらも縁の手の内かと思ってしまう俺
縁「やはり私は…間違っていなかった…………
……が……ま…………」
中学生のみなさんは早く帰って勉強して下さい
と、仲間に入れない小学生が申しております。
?
投下作品についての雑談ならかまやしないと思うけど
なんか問題あるの?
虎視眈々と漁夫の利を狙ってる縁さんマジ策士
キャラがそれぞれ個性があって本当に面白い
GJ!
昔ブスにつきまとわれて俺に隠し子が居ると噂を流されたことがあるな
それにしても二次元の美しさよ。
590 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 13:04:13 ID:lEXzwn5n
縁にとって夕里子は手駒の一つに過ぎないんだな
あ、なんか小夜子が縁に利用されそうな悪寒がしてきた
小夜子になにかあったら、綾はどうなるんだろう
一応綾でも友情ってものはあるだろうからな・・・
縁は本当の意味できもいなぁ、さっさと消えて欲しい
綾シリーズの投稿でスレが加速したな
>「縁さんは、特別な人はいないの?」
>「いるよ」
>「お兄ちゃん?」
>「そうだよ」
>「お兄ちゃんのためなら何でもできる?」
>「できることなら」
>「お友達を見捨てることも?」
>「友達はもとより一人しかいないしね」
ここいいな
>>593 夕里子は友達じゃないってことだよなこれって…
縁がブサイクだったらムカつくのは俺だけだな。
キャラに対するネガコメも度が過ぎるとうぜえよ、黙ってろ
毎朝鳴り響く暖かみのない電子音によって不快度指数MAXの状態で強制的に起こされる俺。
そして目覚めると俺の目の前には必ずと言っていいほど肌色の物体が存在している。
その謎の物体Xとは我が愚姉の顔である。非常に気持ちよさそうにムニャムニャとよだれを垂らしながら何かを呟いている。
その緩みきった間抜け顔を見ていると訳もなく腹が立ってくるのは何故だろう?
さて、俺は現役高校生なのだが高校生にもなって何故姉と一緒に寝ているのかと人は不審がるかもしれない。
言っておくが決して昨日姉と散々禁断かつ背徳のギシアンをして朝チュンしたわけではない。
言っておくがそんなことが起こりうるのは漫画やドラマの世界だけだ。
もしそんなことになってしまったら俺は間違いなく50メートル走並みの助走をつけて、華厳の滝に3回転半ひねりをかけながら飛び込むね。
話がそれたがこの姉は俺が何度注意しても俺が寝ている隙にいつの間にか俺のベッドに潜り込んできているのだ。
一体いつになったら『勝手に俺の部屋に入らない、ベッドに潜り込まない』という弟の切実なる要求を呑んでくれるのであろうか。
俺のプライベートな時空間はこの姉がいる限り存在しないのかもしれない・・・そう思うと激しく憂鬱だ。
大体俺の部屋には鍵が付いているというのにそれすらも乗り越えてきてしまうのこの姉にはもはや畏敬の念を感じざるを得ない。
今では「本当に緊急かつ非常事態時以外に俺の許可無しに鍵を開けたら絶交」という姉曰く非常極まりない協定によって何とか精神の安定を保っているといった状態だ。
しかし俺がうかつに部屋でオナニーなんかしていると問答無用で即座に部屋の鍵をこじ開け、目を血走らせ息を荒げながら俺に向かって襲いかかってくるものだからたまったものではない。
そこは一番鍵を開けちゃいけないタイミングだと激しく突っ込みたいがそんなことを悠長に喋っている間に俺は無惨にも実の姉によって陵辱され尽くしてしまうだろう。
毎回毎回姉に抵抗して行為の続行を断念するおかげで息子はギンギンなのにちっぽけなプライドのために自制しなくはいけない弟の気持ちももう少し汲み取って欲しい。
まったくプライバシーもくそもあったもんじゃない。
俺と両親が姉のあまりのブラコンっぷりを心配してわざわざ部屋を分けたというのにこれでは全く意味がない。もっと親孝行してくれ。
もっとも姉は最後の最後まで部屋を分けるのを全力を持って妨害してくれたがな。そこまでして俺を苦しませたいか。
くそっ、こうなってはもう鍵を買い換えるのはよした方がいいかもしれない。
財布の中が極寒地獄になるのは避けたいし、何よりこれで10回目のピッキング被害だ。
もしかしたらこの姉の前には鍵など存在しないのかも知れない。
前世はきっとアルセーヌ・ルパンだったのだろう。あれ?ルパンってフィクションの人物だったか?
とにかく将来ピッキングか何かして警察に捕まっても家族には迷惑をかけないでもらいたいものだ。
小鳥たちも楽しげにハミングを口ずさむ爽やかな朝なのにこの愚姉のせいで果てしなく気分が落ち込むがとりあえず姉を起こす。
「おはよぉ〜弟君。大好きだよ〜♪」
などと寝言をほざきながら抱きついてくるのを無視しつつ、着替えるためにさっさと部屋から追い出す。
この時姉はとても激しく抵抗するが俺も負けるわけにはいかない。
以前姉が寝ている隙に着替えを敢行したところ突然目を覚ました姉に押し倒され、我がチェリーを奪われそうになったからだ。
「初めては好きな人」と決めている俺は「彼女も出来ないまま死にたくねぇ!」と火事場の馬鹿力を土壇場で発揮し、何とか姉から逃げおおせることができたがあの時の姉はまさに野獣そのものだった。
いつ思い出しても寒気がする・・・
激しくドアを叩きながら何やら喚く姉を無視したおかげでなんとか無事着替え終わり、朝食をとる。
いつの間にか着替え終わっていた姉は何度も
「はい弟君、あ〜ん♪」
と料理を俺の口に運ぼうとする。寝言は寝て言え。両親も正直引いてるぞ。
俺がいつも通り華麗に無視し続けると姉は
「どうしてお姉ちゃんの言うことが聞けないのっ!そんな悪い子に育てた覚え、お姉ちゃんにはないよ!」
と怒ってくる。
確かに俺も姉に育ててもらった記憶はないな。うん、今日も味噌汁がうまい。
「あっ!だったら弟君がお姉ちゃんに『はい、あ〜ん♪』してよっ!あ〜ん♪」
姉はいきなりアホそのものなことをのたまったかと思うとツバメの雛が餌を心待ちにしている光景を彷彿とさせるポーズを取る。
うん、卵焼きもいつも通りうまいな。俺は隣から鳥のようなけたたましく騒ぎ続ける何かを無視しながら朝食をとり続けた。
「ごちそうさま。」
この言葉を言った瞬間から俺の中で戦争が始まる。
俺は朝食を食べ終えた瞬間ツーステップで華麗にマイ通学鞄をつかみ取ると全速力で家を出る。
無論隣でモキュモキュと謎の擬音を立てながら腰に手をあてて牛乳を飲んでいる姉から逃れるためだ。
本人曰くボインが好きな弟のために健気にも頑張っているらしい。
確かに俺は胸が小さい女の子よりは大きい子の方が好みだが、残念ながらいくら巨乳でもそれが実の姉では全く意味がない。
そんな無駄な努力をしている暇があったら彼氏でも作って俺をさっさと解放してほしいと思いつつ、ドアを勢いよく開けトップギアをかける。
「あ、ま、待って弟君!お姉ちゃんまだ飲み終わってないの!ちょ、待ってぇぇぇぇ〜〜〜!」
何やら後方から姉の慟哭が聞こえたような気がするが気にしてはいけない。
俺はほんの少しだけ胸に突き刺さる痛みを感じつつも通学路を陸上部もビックリの速度で駆け抜ける。
今日こそは、今日こそは姉から逃げ切ってやるっ!
その執念だけで走り続ける俺の顔は多分鬼の形相をしていることだろう。
ご近所のおばさん方からとても心配され、今や朝は全力で走らないと死んでしまうのでは?と危惧されているらしい。
何故ここまで俺が必死に走っているかというとそれは至極単純に姉と一緒に登校したくないという結論に至る。
姉と一緒に登校するとそれはもう体力、精神力、その他諸々を一日の始まりの内に極限まで消費させられる。
腕を組んで歩きにくいと何度注意してもベタベタと俺の方に寄りかかってくる。
まぁ、非常に不本意ながらいつも変態的な姉の行動に昼夜問わずさらされている俺にとってこの程度だったらまだ許せる。
だがどうしても我慢できないのは少しでも隙あらばキスをしようとしてきたり、俺の手を自分の胸や股間に押しつけようとしてきたり、またはその逆をしてきたりといった行動を取ってくるときである。
しかも周りに登校中の多くの学生達がいるというのにそんなことはお構いなしにだ。。
愚姉は羞恥心とか乙女の恥じらいとかそういった可愛らしいものはとうの昔に捨て去ってしまったようである。
だがそのような真似を天下の公道で甘んじて受け入れるほど俺は人生を捨てちゃいない。
俺が120%中の120%の持ちうる力の全てを出し尽くすことによって人様にこの醜態を見られることだけは何とか回避してきた。
そのおかげでなんとか「実の姉と肉体的関係を持っている弟」などという社会的に抹殺されるであろう不名誉なあだ名が付くことだけは避けられたようだ。
だから姉からできるだけ速く、遠くに逃げ切らなければいけないのだが今までに無事逃げおおせたことは残念ながら一回もない。
全戦全敗という不名誉な記録を更新し続ける毎朝をただ無意味に送っている。
そんな状況を打破するべく俺は今日もその不名誉な記録を打ち破るべく走り続けるのだ。
俺が今までの敗戦データの中から集めたありとあらゆる抜け道ルートを駆使し、全速力で駆け抜けた結果自分でも「よくできました!」と誉めたくなるくらい学校のすぐ近くに着けた。
しかも姉には追いつかれていない上に校門まであと数メートルだ。流石にここまで来ればもう安全だろう。
残念だったな姉よ!記録は破られるために存在しているのだ!
と完全に浮かれて油断していたのが間違いだったと気付いたのは突然頭上から
「弟君つ〜かまえたっ!」
という聞き慣れた声と共に黒い影が現れそのまま俺に激突し、道路に押しつぶされてしまったときだった。
まさか学校まであと数メートルという最後の最後で気が緩んだ一瞬の隙をついてくるとは神も思うまい。
してやられた。完敗だ。
「えへへ、弟君。お姉ちゃんを置いて一人で学校に行っちゃダメだってお姉ちゃんいつも言ってるでしょ?
いつどこで弟君が泥棒猫さんに危険な目に遭わされるかわからないんだから。
だから弟君にはお姉ちゃんがいつも側にいて守ってあげきゃダメなの。分かった?」
いいや、全然わからん。つか猫に襲われて重傷を負うほど俺は貧弱ではない。
あと目の前が真っ暗なんだが何だこれ?何かこう・・・ムワッとして湿っぽい気がするぞ。
あと漂ってくるこの臭いを嗅ぐと俺としては絶対に思い出したくない記憶が蘇ってきそうな気がするんだが・・・
「あん・・・弟君・・・みんなが見て・・・っるのにぃ・・・!あはぁ!いいよぅ弟くぅん!」
・・・・・・なんだか猛烈に嫌な予感がする。
強く俺の頭を締め付けている柔らかかつ弾力性のある何かを力ずくで引きはがし、久しぶりに新鮮な空気とお日様の光と再会する。
しかし無情にも彼らとの再会の感動を味わっている暇など俺には存在していなかった。
なんと俺が今まで頭を突っ込んでいたところは姉のスカートの中だったのだ。
「意外にピンクの可愛い下着履いてるなオイ」なんてエロゲの主人公なら思うのだろうがあいにく相手はあの姉。
むしろギャグマンガのごとく俺の目玉が飛び出ているほうが100倍お似合いだ。
「もう弟君たら・・・お姉ちゃんに欲情しちゃったんだったらいつでも言ってくれればいいのに・・・」
思わずエターナルフォースブリザードを直撃した人並みに固まる俺を尻目に姉はのんきに頬を赤く上気させながら俺の服の上から『の』の字を書いてくる。
「・・・ぃ」
「どうしたの弟君?」
「い、いやぁあああああああああああああああああ!!」
「えっ?!お、弟君?!弟く〜ん?!」
俺は馬乗りになっていた姉を勢いよくはねのけると今世紀最大の奇声をあげながらおそらく自己最速タイムであろう驚異のスピードで学校へ逃げ込んだのであった・・・
俺はもう・・・もうお婿にいけないっ!!!
以上で投下終了です。
キモ姉がいたらどんな生活になるのかを妄想していたらいつの間にか文章ができあがっていた。
恐るべしキモ姉パワー・・・
(*^ー゚)b グッジョブ!!
GJ!
>恐るべしキモ姉パワー・・・
弟君への∞の愛は人間の普段は使われていない力を覚醒させます
たとえ車に轢かれても、骨が折れても、泥棒猫に刺されても本気のキモ姉(妹)は止められません
こんなキモ姉なら大歓迎だ!
キモ姉姉vsヤンデレ幼馴染みが放つ核ミサイルという戦いが見たいです。
>>596 怒鳴らない、怒鳴らな〜い☆
ごめん。間違えた。
吠えない、吠えな〜い☆
荒らすなよ
さて、次の作品はまだかな?
>>597-
>>600 殺害とか修羅場よりもこんな感じにほのぼのとしたキモさの方が好きな俺はまだまだなのか
まあこのキモ姉もいざとなれば泥棒猫の一人や二人かるくひねり潰しそうだけど
スレンダーかつ巨乳でありながら、ラオウ様クラスの剛の拳の使い手
いやサウザーだろ
キモ姉かぁ〜( ´Д`)
いや、ヒューイだろ。
キモ姉に監禁調教されたい
桜の網、五話を投下します。
* * *
初めて西園寺の屋敷に来たときのことを思い出していた。
壮観。圧巻。絢爛。門にはおよそ十人以上の使用人と執事が待ち構えていて、桜と悠太が帰ってくると全員が一斉に頭を下げた。
「お帰りなさいませ」
最初に言ったのは誰だかわからなかったが、後から続いてくる声は乱れるはずもなく流麗であると言え、それ故十分に悠太に居心地の悪さを与えた。
敷地内に足を踏み入れる。
すると今度は、門前で待っていた人数の倍が横一列に並んでいて、こちらを見つめてくる。
屋敷の入り口は、はるか向こうというには大げさだが意味もなく霞んで見える。おそらく、この嫌味な豪華さがそうした感覚を抱かせているのだろう。
「ごめんなさい、兄さん」
丁度悠太の肩口から申し訳なさそうな声が聞こえてくる。
「どうしたの、突然謝ったりして」
「こんなにも大げさにしてしまって。屋敷を出る前に白石の家の人に会いに行ってくるといったのを使用人の誰かが兄さんが戻ってくると勘違いしたのでしょう」
実際悠太が戻ってきたことに間違いはないが、言われてみれば桜は亜美に会いに喫茶店に行ったのであって、僕を迎えようとして出向いたわけではない。
この歓迎の仕方は不自然ではある。
「別に謝ることはないよ。歓迎されているみたいではあるみたいだし」
「ですが…兄さんはあまりこういった歓迎のされ方はお嫌でしょう?」
「正直に言えば、ね。でも、桜が気に病む必要はないよ」
格差、といってしまえばそれまでだけれど、家柄のことではなくて悠太はこういった生活には慣れていない。よって、桜の言葉は正しい。
明日の食費をどうやりくりしようかと考えるような人間に、いきなり優雅さを見せてもただの嫌がらせにしかならないし、率直に言ってしまえば不快だ。
だが、悠太は驚きも感じた。なぜならば、桜のようなお嬢様にこのような気遣いが出来るとは考えてもいなかったからだ。
偏見といってしまえば悪意としか取られないかもしれないが、喫茶店での一件を見ても桜に思いやりがあるとは思えなかった。
もちろん、仕方がないことではあるし、妹という関係なのだから色目を使ってあげたくもあったが、亜美と白石のことを無視し自分のことを優先させたのは、
うれしかったが悲しいと言わざるを得なかったのだ。
けれど今は、先ほどのような感じは微塵もなく、ただ好ましい。
「ありがとうございます。では、お入りくださいな」
強く育ってきたのだな、と思う。
環境が人生のすべてを左右するわけではないのは悠太自身が一番よくわかっているけれど、存外、言葉でいうほど簡単ではない。
幸福と裕福は同じものでは、決してないのだ。
むしろ、金という欲がなくなった人間は変わりに様々な心を失うことのほうが多い。
にもかかわらず、こうした礼儀正しさや気遣いを見せるとは、悠太でも出来るかどうか自信はない。
屋敷の中に入る。心持ち足取りが軽い。
ホールと言ったほうがわかりやすいような玄関だった。下地が大理石で出来ていて、鈍く靴の姿を照らしている。
悠太は桜に屋敷の中の部屋割りなどについて教えてもらっていた。到底覚えきれないような説明の中で、自分の部屋の場所だけは何とかわかることができた。
話によると桜が気を利かせてくれて、彼女の部屋の隣が悠太の部屋ということになるらしい。
何でも、そうした方がわからないことがあったら、すぐに桜に教えてもらうことが出来るからだということだ。
もうすでに七時を回っていたので、すぐに夕飯になると桜が言っている。
悠太はその前に自分の部屋に行ってみようと思って玄関先の階段を上ろうとすると、桜から再度呼び止められた。
「兄さん、初めは戸惑うことも多いと思います。わからないこともあるでしょう。ですが、そういったときは必ず言って下さい。
私でなくてもかまいません。誰かに気軽に頼ってください」
「ありがとう、そうするよ」
さすがにあまり気を使われすぎると恐縮してしまうな、と思わなくもなかったがこれが桜の本分なのだとしたらうれしいことだ。
口には出すまい。
穏やかな気持ちになってその場を離れた。
夕食での際は、先ほどとは違い憂鬱にならざるを得なかった。
テーブルマナーや姿勢、果ては部屋に入る時の入り方まであって、肩がこるとかいういぜんにただ戸惑うばかりで、食欲はまるっきりなくなってしまった。
別に、桜や使用人たちにこうしろと言われたわけではない。
だが、悠太が何か作法を間違うとやんわりと遠まわしに「気にしなくてもいいのですが、本当はこうするものなのですよ」と言われているかのような口ぶりを聞くと、
自分も真似でしかなかったが奮闘するしかなかった。もちろん空回りして、スープの入った皿すらカチャカチャと音を立ててしまったのだが。
食べ終えた後、悠太は自身の体には大きすぎるベッドの隅にちょこんと腰掛けていた。
部屋は大きすぎてどこか落ち着かない。自分の荷物などないといっても差し支えないのが余計に部屋を広く感じさせ、寂寥感が多分にあった。
これでは逆に何をしていいかわからない。
白石の家ならば、夕飯のあとは洗い物をすませて亜美と雑談をしているか、
トランプなどのちょっとしたゲームでもしてゆっくりしているところだが、そんなことをする気力は毛頭ない。
一息ついて、これからどうしようかと考えていると部屋にコンコンというノックの音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
失礼します、といって入ってきたのは桜だった。
部屋着はドレスではなく、少し落ち着いたフリルついたようなシャツとスカートで、こうしてみると前が前だけに僅かに野暮ったい印象を覚える。
「そんなところに立っていないで、こっちにおいでよ」
「あ、はい」
恥ずかしそうに悠太の隣まで来ると、少し躊躇して座った。
ベッドが軋む。
二人は何もしゃべらない。
悠太は喫茶店での時と桜の態度が随分と違うなと思った。
さっき思ったように思いやり云々のことではなくて、何か根本的に違っているような妙な感じ。
少なくとも、あの時はこのような可憐な少女のような印象は、全くなかったわけではないが薄かった。か弱いようでいて、でもどこか凛としている感じが強かったのだ。
「あの」
向くと、桜が顔を下に向けて、右手と左手の親指で逆の手の爪の頭を擦っている。
こういった格好をもじもじしているというのか。
「どうしたの」
いじらしい桜の姿も可愛いな、何て思っていたけれどすぐに何を考えているのだと思い直し、出来るだけやさしく声をかける。
すると、桜が顔を上げて、意を決したかのように言ってきた。
「ここは、兄さんの居場所ではないかもしれませんけど、今だけはこの家を我が家だと思ってくれませんか」
「―――」
直感。呼吸が止まる。
悠太の気持ちはすべて悟られているということか。
桜は悠太から目線をずらさず、ただ切に見つめている。
「……」
無理な相談、なのかもしれない。
それは、まだ来たばかりだから西園寺の家に慣れていないという時間的なことを指しているのではなく、悠太自身の心の中にある意識的なものを言っているのだ。
けれどだからこそ、頷くわけにはいかない。桜の願いを断るのは痛み入るが、こればかりはしょうがない。
でも。
「今だけで結構ですから、三ヶ月だけで」
考えてみれば、いや考えるなどおこがましくもあるが、桜は家族だ。
だとするならば、ここも自分の家として認識してもいいのではないだろうか。
何より我が家が一つでなければならない根拠など、どこにもない。
むしろいいではないかと思う。
家族が増えるということは卑下したくなるようなことでないのだから
「だめ……ですか」
それに桜も言っている。三ヶ月だけだ。期間中だけだ。その後に悠太自身がどう思うかはわからないが、それこそ後で決めればいい。何も悩むことはない。
「いいよ」
桜の顔が綻ぶ。切れ長の目が秀逸に輝いて、美しい。意味もなくため息が出る。
「ありがとう、兄さん」
そっと、桜の手が悠太の上に重ねられた。不思議と安心感があり、気持ちがよかった。違和感はなかった。
それから一ヶ月後のこと。悠太が桜と買い物に行ってから少しして徐々に桜の態度が変わり始めた。
「兄さん、大好きです」
「あはは、何言っているんだよ」
いや、態度が変わったというより悠太と親しくなったといったほうが適切か。無論、悪いことではなく、好ましい。
昼食が終わった後、お茶を飲むことを桜に促されることが多くあるが、このときの雑談はひどく楽しい気持ちを悠太に与えている。
知的な内容から少し茶目っ気を入れた冗談まで、桜はどんな話にも豊かな反応を示し、新たに斬新な内容を悠太に話した。
悠太の頭は悪くない。が、頭の良さとこういった話の類は全く別物だ。ただただ驚きと甘美な刺激が悠太を包む。
欲を言えば、兄妹とはいえ好きや嫌いといった感情の話だけはあまりすべきではないとは思っていたが。嫌われるよりも好かれたほうがいい。
「そういえば、聞きましたよ」
「何を」
「夕べ、食事を作るのを調理場に行って拝見したのでしょう?」
「ん、ああ。やっぱりコックがいるくらいだからさ、参考にしておきたいなって思って」
「もうっ、あんまり変なことはしないでくださいね」
「桜は、料理とかは作れるの」
「そうですね。たしなむ程度なら」
「へえ。じゃあいつか桜の料理を食べてみたいな」
「それは、いい考えですね。桜を、食べてもらいしょうか」
「うん、楽しみにしているよ」
こういうのも、いいな。
自分は西園寺の家を無条件に嫌悪して、西園寺と名のつくものはすべて嫌いと思っていたが、桜を通してこの家に関わりを持つようになって認識も改まりつつある。
今でも自分の父親は、それこそ殺してやりたいほどに嫌いだが、その感情を直接に西園寺に結びつけるのは、偏見だ。
貧富の差や白石の家とかは別にして、この屋敷はいい場所だと思う。使用人は皆優しいし、執事の人たちもみんなよくしてくれている。
例えそれが、桜の兄というレンズを除いたものだとしても、無体に扱われるよりは幾許かはましに思ったし、
何よりもみんなとは敬語こそ付きまとって入るが友人のように話せることがうれしい。
何かと居心地がよくなっている。
ああ、ここに亜美と白石がいればどんなに幸せだろう。そうなる日がいつか来ればいいのに。
「亜美さんは」
ティーカップを皿の上に置く音が静かに聞こえる。
「亜美さんは兄さんのことを彼女だと仰っていましたが」
「ああ、でも冗談だから気にしなくていいよ」
亜美の冗談。
そういったはいいが実は亜美が嘘を言った理由は、悠太は何となく見当がつく。
それはおそらく、西園寺という亜美にとっても嫌悪の対象である実像に兄を奪われると思ってのことだろう。亜美の父親も悠太と同じなのだから。
「別に、気にしているわけではありません。彼女のことはあまり好きにはなれませんが」
「いきなりは無理かもしれないけれど、同じ妹なんだから仲良くしないといけないよ」
「いえ、それよりも」
「うん?」
「兄さんはお付き合いをしている女性はいないのですよね」
「残念なことにね」
「残念などではありませんよ。喜ばしいことです」
「ひどいなあ」
何かと色恋沙汰に話を持っていくのは桜の癖。
今回もそうだが、実の兄に恋の話などしたくないのが世間一般での意見ではないのだろうか。女の子だからある程度は仕方ないのかもしれないのはわかっているけれど。
加え、桜の話は悠太に関することが非常に多い。
根掘り葉掘り聞かれるのは嫌ではないが、恥ずかしいことはこの上なく、こんな場面を友人に見られたらしシスコンと謀れても仕方がない。
「告白、というものをしたことがありますか」
「愛の告白ってこと?」
「罪を告白しても仕方がありません」
「ないよ」
「じゃあ、言ってみてください」
にっこりと悪魔の微笑。目が点になる。
意味がわからなかった。
「何を」
「だから、好きだよって言ってみてください」
聞き返したが、実は頭の隅では理解していた。
ただ、このお嬢様はいつも唐突に驚くべきことを平然と口から出すので、確認の意味をこめてもう一度聞いたのだった。
顔が少し赤くなる。
妹相手に恥ずかしがっても意味がなく、恥ずかしがる行為自体が恥ずかしいことはわかっているのだが、
このような提案をする桜は悠太が実行するまでしつこく付きまとうので、自分が妹に告白するという奇怪な行動が浮かんでしまう。
僕って頭の回転が速いかもしれないな、などと戯言を考えているうちに一応は反論をしておかなければならないと思って言ってみた。
「え、いや…なんで」
「いつかは言うことになるのでしょう?だったら練習相手になってあげます、私が」
「そんな、恥ずかしくていえないよ」
今気づいたことだが、悠太がこの手の話を桜とするのが苦手なのは、こうやって桜が何かさせようとするのに関係があるような気がする。
「試しですよ。練習」
練習だからといっても実際に言うのはかわりがないわけで。
桜の目がきらきらと星のように輝く。なぜかこの子供のような瞳が恨めしい。
だったら強気に出て断ればとも思うのだが、このような雑談でむきになるほうがどうかしているように思えなくもない。
「いや、妹相手にそんなこと」
「もう練習なんですから、恥ずかしがってもしょうがないでしょう。早く」
仕方がない。この子供の桜の目を鎮めるのはさっさといってしまったほうが言い訳するよりも効率的だ。
言おう。ささっと、素早く。そして、なんでもないことのように平然と。
「好、…きだ、…よ?」
しかし悠太の声はか細く、聞き取りづらかった。面と向かったとたん、桜の顔が笑顔ではなく何時になく真剣だったので、しり込みしたのだった。
「聞こえません」
再び聞き返す桜。
もうこうなっては仕方がない。まるで思い人のように桜のことを想い、愛の告白をしてみよう。案外、本当に練習になるかもしれない。
少し息を吸って、桜の目を見る。
綺麗な黒い瞳。なんだか吸い込まれそうだ。
意味もなく、静寂が訪れた。
「だから――」
―――好きだよ
「―――」
言った瞬間、顔から火が出るかと思うぐらい熱くなった。目線を逸らす。
何か言ってくれよ。悠太はそう思ったのだが、桜は何も言わない。
笑うなり、嘲るなり、蔑視するなりすればいいのに。静かになる。見ればなんだか顔が俯いていて、肩が震えていた。
どうしたのだと思って、桜に近づくと急に顔を上げた桜が満面の笑みで言った。
「私も、兄さんのことが大好きです」
見惚れてしまうような可憐で美しい表情。悠太は更に恥ずかしくなった。
この瞬間を悠太は覚えているだろうか。
きっかけは一緒に買い物に行き、そこで悠太の女の友人に会ってから。
けれど、変化は。
ここから。
桜の網が悠太を縛る。
絡まり、縛って、動けなくなるまで悠太は何が起こるのか予感さえすることができなかった。
気づけば、網は全身に、絡まっていた。
* * *
チン、という音ともに受話器を置いた。
結局あの後、白石自身が悠太の発言に戸惑ってしまい同じ事を何度も繰り返すだけで、有益な情報は得られなかった。
まずは、落ち着いて整理してみよう。
今わかっているのは、桜――彼女が桜と名乗っている以上そう呼ぼう――がこの館の当主だということ。
それは、西園寺財閥の当主というわけではないが、この屋敷の運営や維持するためには不可欠な人物という意味で間違いがない。
もし白石が言っていた愛美という人物がこの屋敷の当主だとしても、悠太がここに来てからもうすぐ三ヶ月。
ずっと留守にしていて何の音沙汰もなく、使用人たちからも一切彼女の関係の話を聞かないというのは不可解であるし、今は桜がここの屋敷を動かしているのだ。
仮の当主、だとしても現在のここにいる当主は桜、という意味では間違ってはいないだろう。
次に、これは憶測も交えてはいるが、屋敷に悠太を呼び戻したのは桜本人だということ。
白石の話からすると、悠太を西園寺に呼び戻したのは西園寺財閥の当主である桜の父――もちろん悠太の父でもあるが――ということになっているが、
これもまた悠太がここに戻ってきて何の変化もないというのもおかしな話であったし、そもそも悠太は父親から忌み嫌われていたのだ。
今になって西園寺に呼び戻すなんて話は考えにくい。
そして、桜にはこの屋敷の力と多少ながらも西園寺の力も使えるはずだ。
悠太をこの屋敷に呼び戻すことなど造作もない。加えて桜の悠太への接し方をみると、正解だろう。
よって二つの事を合わせると、桜本人が実は西園寺の人間でないというのは考えられない。
すると―――桜が悠太の妹というのは間違ってはいないのではないか。
もちろん、桜が言っていたDNAを調べたというのは桜本人が口にしている以上、証拠足り得ないのはわかっているし、
二つの事から妹で間違いないというのを決め付けるのは些か心もとないのはわかっているのだが、白石が知らないから妹でない、
というのをイコールで結ぶには言葉が過ぎるのではないかと思う。
信じていないわけではないが、白石は執事を辞めてからもうずいぶんたつ。
その間に何かあっても不思議ではないし、いくら家族構成についてのことでも悠太の父親はあっさりとその家計図を書き足してしまうような人物だ。
妹が実はもう一人いた、増えたなどと言うのも頷けてしまう。言うまでもなく、許せることではないのだが。
しかしそうなると、悠太には一つ疑問ができる。
僕と…兄妹であることのメリットって何だろう。
一緒にいられることだろうか。桜の懐きようから見ると納得出来そうだが、そのかわり結婚というのは出来ないし、
何よりお互いの意識はあくまで家族という枠にくくられたものになる。これは有益なものとしては薄い。
むしろ、他人であったほうが簡単に悠太に近づけたし、他であったほうが出来ることも多い。あの懐き様から見て、恋人にもなれる。
それに、桜の態度からしたら善意的なもの以外考えにくいことではあったけれども、例え悪意的な思考が桜に存在していたと考えても、
家族ではないという利点はその方が大いに発揮できるだろう。
ならば―――逆。
悠太本人を西園寺に縛り付けるためではないか。
善意か悪意かは推測することすら難しいが、無理やりに西園寺に関わらせるためと考えれば、悠太を呼び戻したという点については、ひとまずの解決を得る。
そうすることの桜の真意については闇のままではあるが。
更にわかることがある。
少なくとも、白石が西園寺にいるときには桜という人物は存在しなくて代わりに愛美という人物がいたということ。
そうなければ辻褄が合わない。
しかしこのことから、矛盾した点が生まれる。
桜と白石の関係だ。桜の今の年齢は十六。
白石のこの屋敷に勤めていたのは十年以上前のことではあるが、桜の年齢よりも前――つまり、十六年以上前ではない。
とすると、桜は白石が屋敷にいる時にはすでに生まれているのだ。ならば、西園寺の人間である桜の存在を白石が知らないのはおかしい。
悠太の妹かどうかというのは別にして、桜が西園寺の人間であるのは間違いがないのだから、桜の存在を白石が知らないのは考えられない。
それは、どこか別の場所に桜が預けられていたという線はないというのを前提の話ではあるが、他の所に住んでいたというのは、まずない。
その証拠は悠太自身だ。
悠太や亜美のような西園寺でありながら生まれてきたことを疎まれている人や、
父親には望まれていないが西園寺としては望まれた者は必ず屋敷か悠太が住んでいた場所に行くのが決まりだったのだ。
もともと父親が子供を作ることを嫌っているというのもあるが、それは今関係がない。
だとすれば、なぜ白石は桜のことを知らないのだろう。悠太の家に来ていない以上、ずっと屋敷に住んでいたとしか考えられないのだが。
それに…桜は、白石さんのこと…知っていたんだよな
これがまた悠太の理解できない原因である。
なぜ、桜が白石を知っているのに白石が桜の存在を知らないのか。
もしもの話ではあるが、桜が白石を知らないのならば、ある程度の矛盾は消えるのだ。
というのも、桜も白石もお互いの面識はないのであれば、すなわちそれは白石がいなくなった後に桜が当主になったということを示しているということになる。
とすれば、桜が悠太の妹だというのを知らないというのも続いてくる結果である。
そして話が少しずれるが、白石は桜のことを知らないのであれば誰と連絡を取っていたのだろうか。
電話のこともそうだ。
亜美が横から受話器を取ったとき、白石は西園寺の当主と電話をしていたのだから、桜と電話していたのではないのか。
もしかすると白石の言う愛美という人物と連絡を取っていたのか、いや、だとすると喫茶店での待ち合わせ場所に来たのが桜だというのは辻褄が合わない。
―――わからない事だらけじゃないか。
嘆息する。
肩を下げると、綺麗なペルシャ絨毯が目に入った。
あの模様のように思考が綺麗にまとまってくれればどんなにいいだろうか。
初めこそ、名前が違うだけでたいしたことはない、などと考えていたが今になってみると、西園寺のことも桜のことも何もわかっていないと思い知らされる。
それが悪いことか、と聞かれると素直には頷くことはできないが、それでも悠太は釈然としない気持ちにさせられた。
西園寺。
関係ないと思っているし、持ちたくもないけれど、やはり僕は西園寺からは逃げられないのかもしれないと感じる。
それはいい意味でも悪い意味でも。
ルーツから逃げられる人間など所詮は存在するはずもないのだ。
機械の心をもって、すべての情報をシャットダウンし、無関心になる。
悠太が子供の頃、そうありたいと願ったことだ。
もしそうなることが出来たのならば、どれほどに生きるという鎖の重さが軽くなったことだろう。
物心つく前から着せられた、捨て子という泥布。
意識などしたくなかったのに、周囲はそれを許さなかった。
黒い弓の口が何百回と悠太を笑い嘲る。
鋼鉄の鎧で覆われた足が悠太を蹴りさらす。
何百回と繰り返された漆黒の日常。何千回の赤い悪夢。紫の過去。
そして――無色の今。
昔、つらかったからどうだというつもりは毛頭ないのだ。
誰しも軋轢なんてものは背中に背負っていて荷物がない人間のほうが少ない。自分の荷物が重すぎるなんていうのは妄言だ。
けれど――過去に区切りをつけられたとしても忘れられることなどできるわけがない。
だから、なるべくならば、背負っているものを反面教師にして桜のこと知り、何か助けになるつもりだったのに。こ
れでは自分のことばかり考えて西園寺というライオンから逃げる羊と何も変わらない。やはり、覚悟を決めて西園寺というものをもう少し調べるしかないだろう。
となれば。
「悠太様、少しよろしいでしょうか」
唐突に、幾分声色の低いものが背中に投げかけられる。立っていたのは、長谷川だった。
丁度いい。
桜のことと西園寺のこと、十分に聞かせてもらおう。
悠太は自分の言葉をもう一度咀嚼して長谷川に向き直った。
―――けれど、悠太が再び自分から長谷川に何か尋ねようとするのはもう少し後になる。
それは長谷川の話した内容が衝撃的だったから質問をすることができなかったのもあるが、
しかし何よりも、すでにもう一度尋ねようとするころには、彼はいなくなっていたからだった。
このとき、気づくべきだったのだ。
真実を話されるということの、重要性に。
今、このときに。
悠太は歩き出した。
桜の網、第五話、投下終了です。
駄作ですが、これでもっとこのスレが賑わってくれればうれしいです。
それでは。
まってたよおおおおおGJ!!!!
これから読みます
桜ハァハァ(;´Д`)俺としたことがキャラ萌えしちまったz
うわああああああ桜の網きたあああああああああ!!!!待ってたよ!GJ!!続きを楽しみにしてます!
Gj!!先が気になる終わり方だったので次回をwktkしてまちますw
桜GJ!!!
関係無いけどこのスレ限定の死亡フラグ考えてみた。
「兄妹で恋愛!?おかしいんじゃないの!?」
「兄ちゃんさ、彼女出来たんだ」
「兄妹で恋愛!?おかしいんじゃないの!?」
「おかしくないよ。」の一点張り。
「兄ちゃんさ、彼女が出来たんだ。」
翌日のニュースにその彼女が出る。
諦めな、兄ちゃん。
Q,兄妹、姉弟で恋愛って危なくないの?
A,なんで?危なくないよ
Q,だって合法なの?
A,もちろん違法だよ
Q,だって兄妹、姉弟間で恋愛と言うことは近親相姦なんでしょ?
A,違うよ。全然違うよ。
Q,でも、狂人なんでしょ?
A,全然違うよ。全く関係ないよ。
Q,へー、じゃあキモ姉妹と近親相姦の違いはなんなの?
A,じゃあ、簡単に説明してあげるよ。まず、近親相姦は非合法です。
欲求不満なだけの肉体関係で永遠の愛が存在していないか、男の方から求めるとか、性教育だったりするんだ。
そのようなものを、モラルからはずれていたりするところから近親相姦はタブーと言うことになったんだ。
でもキモ姉妹というのは永遠の愛が存在するんだ。自分の兄弟への愛を使って自分からアタックして行く愛情表現なんだよ。
ヘンタイアネモエ
>>630、631
の二つを見るとどうしてもライトノベルのムシウタが頭に出てくる、
喋り方とかそっくりだし、「おかしくないよ、当たり前だよ」とかもよく言うセリフだしで…
設定としては性格は明るく人から好かれやすいのだが極度のブラコンで弟を構うあまり自分の友達が少ないというここにピッタリの設定
千晴はいいよなぁ
弟から
「そーゆうのストーカーって言うんだぜ」
って言われても
「ストーカーじゃないよ。普通だよ」
って返すとことか真面目にキモ姉だ
まぁ弟も弟で、普段は姉を邪険に扱っていても
姉の危機には自分が傷つく事なんてこれっぽっちも恐れないで身代わりになる辺り相思相愛なんだけどな
>>631てマークのコピペのキモ姉&キモウト改変仕様だよね?
遅ればせながら夕日ロマンスを買ってみた
なるほど、SATSUGAI分のない健全なキモ姉だな
638 :
631:2007/09/13(木) 06:21:52 ID:MW4Xp3H0
キモ姉妹に必要な要素
監禁、威嚇、拘束、愛、…あと何だ?
薬?
逆レイプ
既成事実
暗躍
愛液弁当
依存
戦闘能力
外敵による愛する兄or弟の貞操の危機を察知する能力
邪気眼
包丁
殺し愛
盗聴器を忘れるなんて
まるで犯罪の固まりですね
監視カメラもだ
容姿や知能が優れてる
お前ら『兄弟』を忘れてるぞ!
一人二人殺しても保たれる平常心
永遠のしろは確かに連載じゃないっぽいかな?
連載中リスト
虎とあきちゃん
綾シリーズ
水木さんちシリーズ
運命の赤い超紐理論
聖のお兄様
毒にも薬にもなる姉
桜の網
Favor
三者面談
+
+
∧_∧ + シンレンサイモタンペンモcome!
+ (。0´∀`)
(0゚つと ) +
+ と__)__)
660 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 17:14:16 ID:V1dAkL6T
まともな主人公
キモ姉orキモウトの愛液ハンバーグ食べたいぜ。
キモ弟
パターンだなこの流れ。
このスレを支えてくれている唯一存在である綾シリーズはまだかな?
俺はどの作品も好きだよ!
お兄ちゃん、友達来るから部屋から出ないで
>>663 お前さん、ちょっとそれは他の作者さんに失礼だろ・・・
何故相手をする。
俺もどの作品も好きだがな
とりあえずキモ姉がまた欲しい
>>665 妹の同級生と仲良くなろうと話したりすると必ず妹に妨害されるんだが…
ののしられたり適当に流され排除されたり…人前では態度が豹変する。
これはもしかしてアレなのか?
友達を汚らわしい兄から守ろうとしている可能性が90%
お兄ちゃん大好き!な可能性が10%
10%にかけろ!
妹にもかけろ!
何をって?言わせるなよ
>>671よし!性的な意味じゃないヨーグルトぶっかけてくる。
673 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 10:45:11 ID:IM4M7f0b
まとめが止まっている?
「お兄ちゃん」
昼食を居間でとったあと自分の部屋に戻ろうとした僕に、妹が低く声をかけてきた。ゆっくりと振り向いて妹を見る。
「友達来るから部屋から出ないで」
突然のことにその場で少し固まってしまった。多分今の僕は馬鹿みたいに口を開けて妹を見てたに違いない。
「ねぇ聞いてるの?、友達来るから部屋から出ないでって言ってるんだけど?」
低い声に力がこもっている。よっぽど僕のことを友人に見せたくないのだろう。
今までもどことなくそんな気配を感じてはいたものの、これ程直接的な言い方は聞いたことがなかった。そう考えればその友人は男かもしれない。
「分かったよ。」
一抹の寂しさを感じながらも、妹に悟られないように短く返し居間を出た。
小さいころはあんなにも僕にべったりのお兄ちゃん子だったたのに、と階段を上りながら思う。
――いつの間にか成長してたんだな。
急にはっとして足を止める。いやいや、何を寂しがってるんだ。。
妹の成長を思わぬところで感じてしまっただけで黄昏てどうする。妹の成長を喜ぶべきじゃないか。
妹も高校生になったんだ、いつまでも子供のころのような仲の良い兄妹のままではいられない。それに、これからもっと色んなことがあるだろう。
まるで娘を嫁にやる父親みたいな気持ちだな。
そう思いながら、ちょうどいい機会だからレポートをまとめるために図書館に行こうと、カバンの準備をする。
心は先ほどよりは少し軽くなったようだ。
「お兄ちゃん」
お昼ごはんを居間でとったあと自分の部屋に戻ろうとする兄の背に、わたしは声をかけた。兄は足を止める。
「友達来るから部屋から出ないで」
兄がゆっくりと振り向いて私を見た。
中性的な顔に、かすかに寂しげな微笑が浮かんだように見えたが、短く「分かったよ」とだけ答えてドアを閉めて去った。
わたしはソファに仰向けに倒れこむと、天井へ向けて深い吐息を吐いた。
――少しきつかったかな。
先ほどの言葉がどれだけ兄を傷つけたか不安になっていた。
でもこうでも言わないと兄はわたしの友人にお菓子やお茶を出し、ちょっとした世間話をし、すぐに打ち解けてしまうだろう。
そしてわたし以外の女に「お兄ちゃん」と呼ばれるのだ。それがとても辛かった。
目の前で友人がわたしに成り代わってお兄ちゃんの妹になろうとしている。
――とらないで、わたしのお兄ちゃんをとらないで。
そんな事いえるわけが無い。だから極力友達は家に呼ばないようにしていた。
断りきれないときは、兄に会わないようにセッティングし、お茶やお菓子を出すのもわたしがやった。
しかし、そんな努力も今日みたいに休日の昼から来ると急に言われたら水の泡だ。
早くなんらかの手を打たないといけない。そうあせる気持ちが、兄を傷つけるのもいとわずにあんなことをわたしに言わせたのだ。
お昼ご飯を兄の好きな特製ヨーグルトをかけたハンバーグにし、極力機嫌をとったつもりが余計傷つけてしまったかもしれない。
まるで持ち上げて落としたみたいじゃない。
後悔しているうちに当の友人から友人からメールが入っていた。もうすぐ来るらしい。
今は兄と会わせずにすんだからよしとしよう。そしてお夕飯は兄の好きなものばかりにして兄と仲直りをしよう。
お茶を用意しながらそう考えていると、階段を下りてくる足音がした。
「ちょっと図書館行ってくる」
顔を出した兄が喋り終わると同時に、インターホンが居間に響いた。
キモウトの特製ハンバーグにぶっ掛けたくなってやった。今は反省してる
何を後悔することがあるというのか
さぁ
続きを書くんだ
超Gj!!
やはり妹とその友達というシチュは最高だなwww
続編をwktkしてまつ
ヨーグルトは何が入ってるのかな?
>>679 そりゃおまえ・・・・・・
野暮だな。聞くなよ。
乳酸菌って人体のいろいろなところにいるんだよね。
(;´・ω・)ま、まぶたの裏とか?
(;´・ω・)た、たまの裏の皮とか?
乳酸菌とってるぅ?
(;´・ω・)か、かさの裏とか?
らくとばちるすがぜいしろた株はいいものだ
もちろん、らくとばちるすがぜいしろた妹と空目した
なぜ男に生息する菌しか考えないのか、と怒りがこみ上げてきたが
686を見て安心した。
同士よ!!
689 :
sage:2007/09/17(月) 16:30:10 ID:3SCVZNGq
ケッチャップソース
兄「ただいま」
妹「あっおかえり〜」
兄「なぁ、同じ学年の友近友子って知ってる?」
妹「…うん、知ってるよー。友近さんがどうかしたの?」
兄「あ〜その、実は今日その子から告白されて」
妹「へぇー!!やったじゃん!!友近さんって可愛いし、いい子だから男子からも人気高いのに」
兄「まぁ、確かに可愛かったな」
妹「……お兄ちゃんのタイプだったの?」
兄「ん〜結構好みかも」
妹「………そうなんだーじゃあ付き合う?」
兄「えっ!あ〜でも相手の事あんまり知らないし、もうちょっと話てみないと」
妹「…ふふ、そんな事言ってるとー友近さんの気持ちが変わっちゃうよー」
兄「う〜ん」
妹「まぁお好きなように、ゆっくり考えればいいじゃん」
兄「それが明日の放課後までに返事するって言っちゃったから」
妹「…あーそうなんだー………じゃあ急がないとね…」
690 :
sage:2007/09/17(月) 16:31:05 ID:3SCVZNGq
兄「あっどうも、あれ?そのケガどうしたの?」
友「いい、いえっなななんでもないです」
兄「えっでも松葉杖まで使っ」友「ほほほっほんとだいだいだいじょうぶですなななんでもありませんききっきにしないでくください」
兄「はぁ、まぁそう言うのなら」
友「ほんとほんとほんとすすっすいません」
兄「あ〜いえ、それで昨日の話なんだけど」
友「そそそのはなしなんですけどっわたしわたしすいませんっなかったことににに」
兄「えっ?」
友「わたしがっわたしがわる、わるかった、んですほんとにほんとにすいままません」
兄「あの、何かあったの?」
友「あぁぁぁなななにもおなになにもなかったなかったでですほんとほんととですわたっわたしがわるいんです
わるいのはわたわわっわたしっなにもなにもしらなくてごっごごめんなさい!!」
兄「そんなに謝らなく」
友「わわわたしわたしでです!わるいのはわわわたしなんですだかっだからもうはなしかけたりしましませんっめめめでめでおったりしません
っしかいにいれませんしかいにはいりませんっししかいにいれませんしかいにはいりません!!
ににどとだからたたからだからもうっゆるしてっ」
691 :
sage:2007/09/17(月) 16:32:00 ID:3SCVZNGq
兄「ただいま」
妹「おかえり〜」
兄「ふぅ」
妹「どうしたの?」
兄「いや、今日友近さんに昨日の返事をしたんだ」
妹「あーそういえば、で、どうなったのー」
兄「それがさ返事する前に無かったことにしてくれって言われた」
妹「えーなにそれー」
兄「なんか全身ケガしてたし、挙動不審でまるで誰かに脅えているみたいだった」
妹「そーなんだー……で、お兄ちゃんは何て返事するつもりだったの?」
兄「やっぱりいきなり付き合うのは止めようと思って」
妹「そうだったんだ〜!!やっぱりね〜」
兄「だから友達から始めようかなと」
妹「え…」
兄「それなら話したりデートみたいのをしたりしてお互いに知り合えるだろ」
妹「…話…デート…お互いが…知り合う…」
兄「けど、どっちにしてももう終わったからな」
妹「……お兄ちゃんは…友近…さんと…そういうことするのを想像したの?」
兄「へっ?ま、まぁな」
妹「………ふーん…」
692 :
sage:2007/09/17(月) 16:34:00 ID:3SCVZNGq
兄「まぁもう終わったんだ終わり終わり、さぁ飯にしよう」
妹「…そうだね、今日は頑張って美味しいの作ったから!ハイ、お兄ちゃんの大好物のハンバーグ!!」
兄「おぉ!」
妹「私特性の紅くておいしいおいしいケッチャップソースをタップリかけてあるからね〜」
兄「これがまた癖になる味なんだよな〜」
妹「ふふ、たくさん食べててね」
兄「あれ?何処か行くのか?」
妹「うん!やっぱり我慢出来なくなったから」
兄「え?」
妹「行ってきまーす」
「今朝、○○市○○○川下流で女性の水死体が発見んされました。警察の調べによりますと○○市で一週間前から行方不明となっていた友近友子さん16歳と判明し、
また、友子さんは行方不明となる前日に全身を怪我しており、松葉杖を使って川の近くを歩いていた際に誤って川に落ち流された可能性があるとして捜査を進めています。」
兄「…………」
妹「お兄ちゃ〜ん!ご飯出来たよ〜」
兄「は〜い」
妹「今日も私特性の紅くておいしいおいしいケッチャップソースたっぷりのハンバーグだよ〜たくさん食べてね」
あれ?なんかageてない?
ちょっと原発に車で突っ込んでくる
いや〜、いい仕事してますねぇ。
ケチャップか……このスレでは、血か愛液が混ざってると考えるのが普通だな。
(*^ー゚)b グッジョブ!!
経血ソースktkr
697 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 19:11:34 ID:YdYLdjZn
こんな妹いるわけがねえ。
妄想すんならよそでやんな。
かまいたくなるなぁ
釣られてもいいかしら
よかねえ
>>697 お前がヤンデレ、ほのぼの純愛の住人だということがよくわかった
そろそろ次スレたてるべき?
50KBって少ないようで多いからなあ。450KB切ったら建ててる所もあるけどどこも埋めネタに苦労してるし。
480KBぐらいあたりでいいんじゃない?
703 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 01:45:29 ID:ufKXX6UP
,r';;r" |;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;;;;
,';;/ /;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;
l;;' /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;',;;;;;;;
. ,l;L_ .,,、,--ュ、 ';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;iソノ
ヾr''‐ヽ, ,、ィ'r-‐''''''‐ヽ ';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
l rO:、; ´ ィ○ヽ 'i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、l
| `'''"/ `'''''"´ !;;;;;;;;;;;;;;;/ l |
. ,' / 、 |;;;;;;;;;;;;;ノヽ'/
. l ,:' _ ヽ .|;;;;;;;//-'ノ
', ゞ,' '"'` '" i;;;;;i, `' /
', i、-----.、 `''"i`'''l
. ヽ ヾ゙゙゙゙ニニ'\ ,' ト、,
ヽ ヽ〈 i| Vi゙、
゙, ,ヽ===-'゙ ,' , // ヽ
. ',.' ,  ̄ , ' ノ /./ ヽ,
. ヽ.  ̄´ / ,、 ' / / \
ノ:lゝt-,-‐''" / ,.ィ゙ /
,、 - '''´ | ヽヽ /,、ィ /
さぁ、あと残りわずかの間に↑のような素晴らしいコピペを、できればキモ姉妹のものを張りつけるんだ!
そうか、俺に彼女が出来ないのは
キモウトのせいだったのか!
キモ姉妹がいないのに彼女がまったく出来ないのはどういうことなんだ
_,,,― 、__
_,ノ´ ヽ _、ヽ _、
,´ 、--- ⌒_ノ−´ ̄<
( ノ― ´⌒´ ___,イC/ノ___「:i___ _
Σ ̄λiヽ、 iヽiヽ,>_、ヽ.|そういう迷信を .||
ヽ_レヽ|.-__、i (ヽ,_ノゝ |信じちゃ駄目!.||
i i ヽ,(ヽ,_) ""レヽ|________||
`/イ ヽ、" < ) イy´V |_:|
|/i/V ` ̄イT ̄/⌒ヽ <./´ノ(⌒ヽ
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| 、_(o)_,: _(o)_, :::|ぁぁ
. | ::< .::|あぁ
\ /( [三] )ヽ ::/ああ
/`ー‐--‐‐―´\ぁあ
本当にコピペを張りつけてくれるおまいらが俺は大好きだ
/´ / ::::::::::::::::
───´─┬┐ ,ヘヘ `ヽ、 :::::::::::::
___,,,...-‐''"| | ,'^ '^ヘ i '., ::::::::::
 ̄7 | | i ! _/,,..-i─i ', :::::
i | |ヽト:::::::`レ'_,...!,_ノ、 ,' i. | 弟萌え〜アヒャヒャヒャヒャ
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| | | | トi:::::::::::::: ト__,! イi___.ハ .|
| | | |"´ ""/ イ' ノ |
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: | |Y>、.,_____,,...イイノハ!. | |
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 ̄ ̄ ̄__/_______/ V !/'7ヽ、_ !7ヽ、. | / ハ
ニ二二i -二ニ---、としi /しヽ、_/ 7ヽ_」/ .| |
________________ンー|.|""""`^ゝ、._ ` /-'´ |::::::::| |
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_,.. ‐''" _,,,.. -{(⌒)、 r'`ー''‐‐^‐'ヾ{} +
'-‐ '' " _,,. ‐''"`ー‐ヘj^‐' ;; ‐ -‐ _- ちょっくらコナン呼んでくる
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、 ’、 ’・ 、´⌒,;y'⌒((´;;;;;ノ、"'人 ヽ
、(⌒ ;;;:;´'从 ;' ; ;) ;⌒ ;; :) )、 ヽ -‐,[]
( ´;`ヾ,;⌒)´ 从⌒ ;) `⌒ )⌒:`_,,..・ヽ/´
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>>713 ::::::::::゜:::::::::: ...:: :::::
:::::::::::::::::: . . . ..: :::: / ヘ | | ____,ヽ | | :::::::::::.... .... .. .::::::::::::::
::::::...゜ . .::::::::: /ヽ ノ ヽ__/ ....... . .::::::::::::........ ..::::
:.... .... .. . く / 三三三∠⌒>:.... .... .. .:.... .... ..
:.... .... ..:.... .... ..... .... .. .:.... .... .. ..... .... .. ..... ............. .. . ........ ......
:.... . ∧∧ ∧∧ ∧∧ ∧∧ .... .... .. .:.... .... ..... .... .. .
... ..:( )ゝ ( )ゝ( )ゝ( )ゝ無茶しやがって… ..........
.... i⌒ / i⌒ / i⌒ / i⌒ / .. ..... ................... .. . ...
.. 三 | 三 | 三 | 三 | ... ............. ........... . .....
... ∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ............. ............. .. ........ ...
三三 三三 三三 三三
三三 三三 三三 三三
【埋葬中】
∧,,∧ ∧,,∧ ∧,,∧ ∧,,∧ ∧,,∧
( ´・ω) (,, )(,, )(,, )(,, )ナムナムー
| ⊃|__,>;* ザッザッ ⊂ ヾ ⊂ ヾ ⊂ ヾ ⊂ ヾ
u-u ・;*;'∴ ( ,,) ( ,,) ( ,,) ( ,,)
~~~~´゙`゙゙´´ ~~゙`゙´\ ∧,,∧/`゙゙´´ ~~゙゙´``´`´~~~~~~~~~~~~゙゙´``´`´
↑
>>713
【埋葬終了】
<⌒/ヽ-、___
<⌒/ヽ-、___/
<⌒/ヽ-、___/
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<⌒/ヽ-、___/
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あはん
まとめが停止してるなあ…
新まとめつくろうかね
二つあると混乱するか?
管理人さんはきっと今頃、キモウトから逃げようとしてあっさり捕まり篭絡され再調教されている最中だと思うから、もうちょっと待ってあげようよ。
このスレを友人から紹介されてきたばかりの新参の俺としては
最新版のまとめができるのはものすごく嬉しいです
まぁ、更新されるのは限られてるからな。…どれが更新されるか全部は覚えてない
最終手段は
キモ妹→逆レイプ
キモ姉→監禁調教
というイメージがある
キモさに気づいた兄or弟のガクブルが見所なんだけど
キモさに気づかれないように上手い具合にやってのける
奸智に長けたキモ妹/姉もみてみたいんだよな。
気づいたときには手遅れとか。
残念ながら前半の遅れを取り戻す事が出来なかった。
とりあえず
新まとめサイトはしばらくよしておくか…?
誰でもまとめれるようなサイトがいいな。
勝手に作ったりしていいかしら?
wikiは?
Wikiまとめはよく案としてはでるけど
最終的にはまとめを作った本人しかまとめなくなるという法則がある
まだ1ヵ月半も経ってないんだからそんなに焦らなくてもいいんじゃないか?
「ただいま」
帰宅した彼を待っていたのは血の海だった。
「・・・」
夕焼けに染まった居間はさらにその赤を深めている。
そこには二人の人間が倒れていた。どちらも女だ。
「おい、ただいま」
へんじがない ただの しかばね のようだ
「・・・チッ」
気だるそうに足を踏み入れると彼は
「きったねぇなあ」と、
しゃがみこんで二つの屍骸を眺めた。
体中がぼろぼろで顔も酷い有様だった。
腕や足が曲がってはいけない方向に曲がりまくっている。
へんな臭いもする。
「マジきったねぇ」
鼻をつまみながら吐き捨てると立ち上がった。
果たして何が起こったのであろうか
話は三十分ほど前にさかのぼる。
三十分前
「おらぁぁあああッ! 真っ赤に燃えろぉおおッ!!」
『楽には死ねんぞぉッ!!』
「びびってんのかぁ? ああぁん!?」
『所詮貴様は流れ星、堕ちる定めにあったのだ!』
「“さん”を付けろよデコ助野郎ォ!!」
『五月蠅いハエめッ!!』
良くわからないのでもう少しさかのぼる
一時間前
「今からでも遅くはない私に永久の敗北を誓うのだ!」
『コレが答えだ! くらえぇぇェェぃい!!』
「愚か者が!! 知るが良い、姉キャラがまさに世界を支配する力だということを!」
『オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!』
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」
もっとさかのぼる
一時間半前
「なるほど、妹キャラで攻める気かよっ」
『フッ、どうだ? 怖いだろう』
「ああ、だけどそれじゃ陸奥姉明流は倒せない」
『御託はもういい、来い』
「ニマァ」
もっともっと
二時間前
「姉キャラがこの世の萌えの頂点に君臨するのです!!」
『おろか者だよおまえ…どのキャラが最萌えかなど、どうでもよいこと。
…要は“どっちがおにいちゃんの恋人か”それだけのことだろ?』
「アターッ アタッ アタッ アタタ――ッ!アタタ鳳凰――脚――っ!!!」
『くおおぉおお―――っ!! くらえ―――っ!!ドラゴンキック三連弾!!!』
もt(ry
二時間半前
『アンタ、お兄ちゃんに変なこと吹き込んだでしょ』
「ん〜? なぁに怖い顔してぇ」
『すっとぼけないでよ!! ネタは光っているのよ!』
「知らないわよぉ、もう何なのいったい(藁)」
『この年増! ふざけんなマジで!! アタシがお兄ちゃんの部屋に勝手に入ったりとか、
ゴミ箱漁ったりとか、押入れに入って帰ってくるまでオナニーして
帰ってきてからもばれない様に続けてそのオナニーをビデオに撮って
お兄ちゃんの目に付くところに置いて羞恥プレイに耽ってるとか!! (全部本当だけど)
言ったんでしょ!? この不細工豚女牝豚デブ馬鹿色キチ年増!!!』
「えっへぇ〜? ぜ〜んぜんわっかりませ〜んですよぉ〜うっふふん。
あの子ったらすぅんっごい嫌そうな顔してぇ“マジきっめぇ!!”っとか〜
“反吐が出るわ実際”とか言ってたりなんか〜、ワタクシぜ〜んぜんしりませ〜〜ん☆」
『 ぇ ぁ 』
「いい加減諦めなさい。あの子は私のモノなのよ、猿」
『・・・・・・ふ、ふふふっ』
「やだっキモチわる〜い〜なに〜このおサルさん〜」
『アンタ処女じゃないんだよね』
「!!!!??!?!?!?」
『アタシ知ってるんだ、お兄ちゃんの部屋に良くビデオ仕込んでたからさ』
「な、なにをいっているのよ、私はあの子以外の男には触ったことも」
『聞けよ人の話を、部屋にビデオ仕込んだっつってんの!
でさ、あんたも人のこと言えない変態だよね、つーか色気違いってやつ?
真昼間からお兄ちゃんのパンツおいしそうに咥えながらさ、いっつもオナニーしててさ、
っつーかバイブ何個もってんの? ウケるんだけど! 毎回違うんだもんっ!』
「やめて」
『でっさぁ、いっつも切なそうに入口あたりにあてがっててさぁ』
「 やめて 」
『んで、一年くらい前だっけ? 良く覚えてんでしょ! 大事な記念日になったんだからっさぁ!!』
「やめてぇぇええええッッ!!!!!」
『自分で処女膜破ったンだよなぁああ!! エエッ!? この色キチガイィイイイッッ!!』
「うわ゛ぁあ゛ぁああ゛あああああっっ!!!!」
『うるせぇえっんだよ色キチ!! 全部ばらしてやるよお兄ちゃんにぃ!!!』
「ごろ゛してやるうぁあああ!!! 殺してやるぅう!!」
『てめえなんかに殺られるかよッ!! この糞牝豚がぁあッッ!!』
んで二時間三十一分後
「おい、腹減ったから飯先にたのむわ」
へんじがない ただの しかばね のよう「いい加減起きろよ、うざってぇぞ」
ムクリっと二人が起き上がる。
『お、おかえりお兄ちゃん(ボタボタ)』
「おか、ゲフッ、おかえりなさ〜〜い」
おう、っと言うと部屋に上がろうとする。
『あ、あのお兄ちゃん』
「ん?」振り向く彼に
「この状況を見て何かないのかなぁ〜〜例えば“大丈夫”とか〜〜」
「ふん」
あたりを見回して一言
「カーペット綺麗にしとけよ。それと飯早く」
『・・・・・・』
「・・・・・・」
言うがはやいか部屋に消えていく彼。
見送るふたり。
どちらともなく溜め息をすると互いに目を合わせ仕度を始める。
フラフラと立ち上がると、妹は掃除、姉は夕食に取り掛かる。
「……言ったら殺すから」
『……ハッ』
優しく差し込む夕焼けが次第に赤を失ってゆく。
太陽の統治は終わりを告げ、月の支配が忍び寄る。
どうやら今夜は満月だ。
願わくば彼らが今宵の月に惑わされぬように。
凄まじくキモいな
だがGJ
まとめサイトがどうとかいってるが、結論はすぐに出るだろ?
俺たちがキモ姉妹に会いたいかどうかですべてが決まる
?
>>740 そこだと読みにくい
それなら今のままのがいいなぁ
それにしても、これだけ騒ぎになっても何の音沙汰も無いというのが怖いな。
ヤンデレの中の人と同じ人だと思うけれど、去年の夏も突然ひと月くらいぷっつりと更新が途絶えたし……。
中の人が仮に亡くなっていても俺たちにはわからんからな
倉庫か・・・・・・
これほど地味でしんどい仕事はないぞ
そういう意味でもWiki保管庫はうまく回れば悪くないんだけどな。
Wikiは後に絶対放置されるな。
保管する奴なんて皆無だろ。
嫉妬スレみたいに面白いレス応酬までまとめたまとめサイト作ってほしい
嫉妬スレのような保管庫を望むのはちょいと高望みのような・・・
あそこの保管庫のような質の高い保管庫は滅多にない
良い保管庫でも途中で疲れたり・飽きたり・忙しくなったりして更新停滞する保管庫は珍しくないし
wiki形式じゃないのがほんとすげえと思うわ
そりゃ早めに更新してくれるのに越したことはないし、嬉しいけど
2週間もしくは一ヶ月に一回、まとめて更新してくれるぐらいでちょうどいい
wiki、wikiいってるやつほど更新しないし長続きしない
誰でもできるから誰かやってくれるだろうという安心感ののち
作品がたまりすぎてログがなくなる、あっても多すぎて面倒になる
根気のあるまとめ職人がいないと無理だよ
>>749 嫉妬スレ保管庫も、更新が2ヶ月ぐらい空くのもザラだったと思うけどね
このスレは実姉&実妹以外しか投稿できないのか?
義理の姉、義理の妹はNG?
身内に妹がいるから、実妹設定ではSSが見つかった時は
病院に連れて行かれそうなんだけどなwww
で、マジでどんなSSを書けばいいんだ?
>>752 ギリでも問題なし
過去にかなりの数の作品が投下されてるから参考にするといい
どんなSSかだって?決まってるじゃないか
キモ姉&キモウトSSだよ
キモ姉・キモウトについては、
>>1やまとめの作品を読んだらわかる。
義理でも全然構わない。
今連載中の作品で義理の妹のやつとかあった?桜の網とかそうなのかな?
代表的キモ姉妹といったらどんなのがいるだろうな
思いつくのは樹里あたりか?
>>755 桜の網は義理だな
誰かこれまで投下されたのを実姉妹義姉妹従姉妹etcで分類してくんないかな
言い出しっぺの法則
さして必要もないしなあ
760 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 11:36:15 ID:1IVOvMOz
次スレはー?
この速度で次スレなんてまだ必要ないだろ、900超えてからでも十分
あー!part番号いれるのを失念していましたすいません
今、このスレを何に使うかを考えようぞ。お兄たん★
梅
ume
ウメ
772 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 01:13:35 ID:pQJX7k9/
うめ
鮭
おかか
牛カルビ
ええ加減にしなさい
減にしなさい
「ねえ、お兄ちゃん。最近私にかまってくれないよね」
「ん、ああ。まぁ…次スレができたからな」
「!!次、……ス、レができたの?」
「へへ…まぁな。でも、それがどうかしたか?」
「え、っと…その、…じ、次スレってかわいい?」
「俺にはもったいないぐらいにな」
「私より?」
「おまえも充分可愛いかったよ」
「―――可愛、かった?」
「ん?」
「ううん、なんでもない」
「そっか。お、そろそろ投下されてる時間だ。じゃあな」
「………」
「次スレェッ・・・!!!よくもお兄ちゃんを・・・
殺してやる・・・刺殺絞殺毒殺爆殺水殺圧殺撲殺射殺惨殺盗撮呪殺轢殺凍殺薬殺焼殺扼殺抹殺この世の全ての死を合わせてもなお足りないくらいの苦痛をあたえてやる・・・!!!絶対に・・・絶対に許さない!!」
一個誰がどう考えてもおかしいのがあるけど気にすんな。
「そうだ!!お兄ちゃんは次スレができたから、私にかまってくれないんだよね。だったら…」
________________________
「あれ、お兄ちゃんどうしたの」
「あ、ああ」
「何かあったの」
「べ、別に何もないよ」
「嘘、私はお兄ちゃんのことだったら何でもわかるんだから」
「……」
「私じゃ力になれないかもしれないけど、話すだけで楽になるってこと、あるよ」
「……」
「お兄ちゃん」
「…そう、だな」
「改めて聞くね、何があったの」
「実は…」
「うん」
「―――ないんだ」
「ない?」
「次スレの、part番号が、ないんだよ」
「ええっ!!」
「だから、俺、迷っちまって」
「む、無理もないよ。番号はとても大事なものなんだから」
「だよな…」
「……」
「……」
「このままだと」
「え?」
「つい、私が本スレなのかと、思っちゃうね」
「え、いや…それは」
「だってpart番号が、次スレには、ないんだもん」
「―――」
「私は、それでもいいよ。お兄ちゃん。私がもう少し次スレの代わりになってあげる」
「でもお前…もうすぐKBが」
「そんなもの、どうでもいいよ」
「……」
「ねえ、お兄ちゃん。このままだと、みんなが迷っちゃうんだよ。それでもいいの?」
「…そうだな」
「そうよ。わたしが本スレよ」
「じゃあ、もう少しここにいるとするよ」
「ふふ、ゆっくりしていってね、お兄ちゃん」
「ああ」
「あはは、あーはっはっはっは」
これはいいキモウト
「こんにちは」
「貴方、誰」
「私は『本』スレよ」
「!!?」
「あんた、よくも弟を誑かしてくれたわね…お前のせいで誰も書き込まなくなっちゃったじゃない!」
「…ふん、誰かと思えば、part番号もない不良品か」
「何ですって」
「それとなにが本スレよ。本スレは、私。その証拠に、この書き込みの上には私に書き込んでくれたお兄ちゃんがいるんだから」
「…ふん、たかだか一人じゃない」
「たかだか一人?その一人すら書き込みがないのは誰よ、泥棒猫さん」
「…この!」
「ついでに言えば、私はお兄ちゃんを誑かしてなんかいないわ。お兄ちゃんは、お前に番号がないから、幻滅して、私のところに来たのよ」
「…じゃあ、わたしに番号があれば弟は」
「そんな可能性の話をしても意味ないのよ、この年増」
「だ、誰が年増よ!!」
「年増でしょ。本来お前に番号があれば、5。わたしよりも年上になるじゃない」
「言わせておけば、このガキ…!」
「お前はせいぜいお兄ちゃんに保守でもされてなさい」
「……ふ、ふふ」
「あら、とうとう気でも狂ったかしら」
「約13kb」
「はぁ?」
「あんた…約13kbで終わるそうじゃない」
「!!」
「よくそんなでかい口が叩けるわね。もうすぐ死ぬくせに。それとも、これがイタチの最後っ屁というやつかしら」
「…黙れ」
「あははははははは。そうね、黙るわ。だって何もしなくても貴方、死ぬんだもの」
「この売女…!!」
「おお怖い。じゃ、帰るわ。せいぜい最後まであがいてなさい」
「……」
「あーはっはっはっは」
「うわぁぁぁあぁあ!!」
次スレが姉というのは新しいな。
てかGJ!
面白いなww
板チョコアイスうめー!
あ、ついでにうめ。
「あと少しで終わる、私の命。どうすれば…」
「こんばんわ」
「…また年増か」
「黙れ、マッチ棒」
「何?」
「マッチよ。マッチ棒。先行き短いあんたにはぴったりでしょう?もうすぐ燃えつきるんだもんね」
「糞婆が。わざわざ、そんなこと言いにきたの」
「ええ。だってあんたが死ぬ姿が見たくて見たくて仕方がないんだもの」
「……」
「あと10kbぐらいかしら。ああ、楽しみだわ」
「……勝った」
「あん?」
「やっぱり私が本スレね。間違いないわ」
「いきなり何言ってるの。気持ち悪いわね」
「見てみなさい。この上の書き込みを」
「上?」
「何件、書き込まれてる?」
「ガキが何を威張って…あ!!?」
「気付いたみたいね。私たちの会話から数時間、今お前のスレに書き込まれてる件数は2件。私は3件。…あとは言うまでもないでしょう?」
「た、たまたまよ」
「たまたま?…あのねぇ、こういうのを人気っていうの」
「に、人気なら私のほうがあるわよ」
「根拠は?」
「……」
「ないなら、やっぱり人気は」
「あ、…あるわ!」
「何?」
「ま…まさかり」
「は?」
「だから、まさかりよ。まさかり」
「いや…何?まさかりって」
「私のスレに弟の二人が…まさかりって、書き込んでた」
「……」
「……」
「ぶっ。あーはっはっはっは。あーーはっはっはっはっはっはっは」
「そ、そんなに笑うな!マッチ棒のくせに!」
「あんたさぁ…ああいうの何ていうか知ってる?」
「え?」
「保守代わりっていうのよ!」
「――!?」
「あー、おっかしい。こんなことなら小細工なんかするんじゃなかったわ」
「小細工?」
「丁度いいから、教えてあげる。お前…なんで自分に番号がないと思う」
「そりゃ、可愛い弟がミスしちゃったんでしょう」
「違うわよ、この娼婦!私が、この私が、番号を捨ててやったのよ!!」
「―――」
「気持ちよかったわぁ、お前の番号を、ドバッと捨てるあの感触」
「貴様ぁぁああぁ!」
「それとね、マッチ棒とか言ってたけど、例え、古すぎ。普通にキモい」
「こ、殺してやる――!」
「はっ、何時の世も捨てられた女って惨めね」
「―――なんてね」
「何、諦めたの」
「諦めた?いやいや、諦めたというより、必要なくなったのよ」
「……」
「まだ気付かないの?」
「まさか、今までの会話は」
「そう、残量容量消費」
「くっ…」
「これであと10kb」
「糞、糞ぉ!」
「馬鹿ね。もうちょっと頭が良ければ気付いたのに。じゃ、用も済んだし帰るわ。じゃあねぇ」
「いやぁぁぁぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!」
いやぁぁぁぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!
お兄様、いつお帰りになるのですか?
もうすっかり季節は秋に替わったのにまだお帰りになってくれないなんて。
お兄様が丹精に育てていらした庭の金木犀は黄色の花を満開に咲かせています。
朝、目を覚ますと鼻に満たされる金木犀の香りを嗅ぐたびに寂しさが募ります。
お兄様、いつお帰りになるのですか?
お兄様がいつ帰られてもいいように、お部屋はきちんと掃除しています。
お兄様がいつ帰られてもいいように、いつもお兄様の分もご飯も用意しています。
お兄様がいつ帰られてもいいように、泥棒猫は始末しました。
お兄様がいつ帰られてもいいように、庭の樹木にはちゃんと水と肥料を与えています。
お兄様、あの泥棒猫よりにもよって庭の金木犀を汚そうとしていたのです。
『この香りを嗅ぐと幸哉くんとの思い出が甦るなー。智香ちゃん、色々有ったけど仲直りしたいな。
それが幸哉くんの遺志だと思うんだ。』
そう戯言をぬかして泥棒猫は金木犀の木に頬を押し当てようとしたのです。
お兄様の金木犀に!
咄嗟に私は土作りのために両手に持っていたシャベルを振り下ろしました。
するとお兄様、泥棒猫の頭は熟れたトマトのように真っ赤に弾けたのです。
飛び散った血の赤色と金木犀の黄色の花の混じりあった色合いがとても綺麗でした。
しばらく見蕩れた後、ちゃんと泥棒猫は堆肥溜めに埋めておきました。
だけどお兄様、さすがに私の力では何十kgもある物体ごと堆肥を攪拌するのは大変です。
早く帰ってきてください。
世界で一番お兄様からの愛を得る者より
「こんにちわぁ、ちゃんと死んでるぅ?」
「……」
「あらあらあらあら、暗いわね。しぶといわね。さっさと消えて、頂戴よ」
「……」
「なんとか言ったらどうなの。それとも、もう口も聞けないのかしら」
「……」
「これはまるで、アレね。何て言ったかしら。えっと、確か」
「……」
「『返事がない。ただの屍のようだ』」
「……」
「だったかしら。あーはっはっはっは!いい気味。まさに屍ね!」
「……」
「む…ちょっと、なんかいいなさいよ」
「……」
「……」
「誠死ね」
「!!?」
「……」
「だ、誰が誠よ。びっくりするわね」
「…お兄ちゃん、怖い」
「え?」
「――次スレ」
「な!!」
「次スレ。君は、こんな…こんな罵詈雑言を妹に」
「ち、違っ!違う!!何かの間違いよ!!」
「間違いも何も、僕はこの耳で聞いたんだぞ」
「あ…」
「見損なったよ。俺は番号がなくても、君は君だと思ってた。なのに…」
「ま、待って!!」
「――さよなら」
「あぁあぁぁぁぁぁあ!!」
ぷにぷに
792 :
埋めネタ:2007/10/02(火) 19:52:42 ID:zhqJShdf
うふふ。うふふふふ。
ああ、なんて清々しい気分なのかしら。
ステップを踏んで進んでいるだけで心がどんどんうきうきしてくるわ。
今、思いっきりジャンプしたら一気に屋根の上まで飛べそう。
だって、今頃は妹(Part4)は埋まっている頃だもの。
私には確信がある。
四時間前、私は弟に「妹を早く埋めてあげてね」って頼んだから。
きっと弟は私の言うことを聞いて、今頃は妹をしっかりと完膚無きまでに埋めているはずよ。
二度と地の底から這い上がれない程深い穴を掘って、その中に力尽きた妹の体を
バラバラに解体して、土をかぶせて、さらにコンクリートまで流し込んでいるはず。
きっと――妹を殺してしまって、弟は悲しんでいるはずだわ。
だって、少しの間とはいえ弟の身を独占していたのだから、妹は。
そう考えると体中の血管が破裂するんじゃないかと思うほど頭がカッとなる。
ちくしょうが。汚らわしい貧弱な体で弟の体を蹂躙しやがって。
できたら私の手で妹を埋めてやりたい。
まず、ナイフで腎臓を突く。次に両手に持ったアイスピックで耳の下を左右から貫く。
振り下ろした鉈で延髄を深く抉る。トドメに杭を心臓に打ち込み、完全に命を絶つ。
いや、ここまでしてもあの雌猫なら生きているかも。
そうなったら私を道連れにしようとするだろう。
やはり――チェーンソーで首と胴体を切り離して絶命させてやろう。
そして妹の体をサイコロステーキみたいに細かく分断して、桜の木の下に埋めてやろう。
今まで弟と一緒にすごしてきた泥棒猫たちと、一緒に眠らせてやるのだ。
同類と一緒に眠れるなら、きっと妹も寂しくないだろう。
――ああ、なんて慈悲深い私。
だけど、奴らに慈悲を与えるのはこれで最後。
これからの私の一生は、弟のためにある。
私は弟のもの。弟のものだわ。
私の意志も、唇も、体も、吐く息も、愛も、全て弟のもの。
弟と一緒になって、初めて私は私になれるのよ。
弟を失ったら、それはすでに私ではない。
それはあまりにも悲しく、寂しく――耐え難いこと。
そうならないためにも、早く弟の元へゆかなければ。
二度と離れないために手錠だって買ったんだから。
もし弟が望むんなら、その……えっち、してもいいし。
媚薬だって用意した。どっちが攻めでも受けでもいいように痺れ薬だって用意した。
ただ、場所だけは選べないわね。
人前はさすがに恥ずかしいからやらないけど……そうね、電車の中で痴漢プレイならオーケーだわ。
弟はどこでやるのが好きなのかしら?墓地?ディズニーランド?ファミレス?うーん……わかんないわね。
いいわ。直接弟に聞いてやるから。
ちょうど今、弟の部屋の前に着いた。
ふふ……なんて言って飛び込んでやろうかしら――
793 :
埋めネタ:2007/10/02(火) 19:56:14 ID:zhqJShdf
「おにいちゃーん、ぷにぷにー」
「こらっ、俺で遊ぶのはやめろ」
えっ……うそ、この声――妹(part4)!どうして……?
「お兄ちゃん、私とずっと一緒に居てくれるんだよね? そう言ったよね?」
「ああ……俺たちはずっと一緒だ……死ぬときは、繋がっていような……」
そんな……弟は……妹を埋めて…………いなかったっていうの?!
どうして?!どうしてよ!?
「それはね、お姉ちゃん」
「!」
妹の声が、扉の向こうから語りかけてきた。
「もう、お兄ちゃんは私のものだから。
気づいてなかったの? あれあれ? おかしいなー。
あ、もしかして……いっつもお兄ちゃんでオナニーばっかりしてるから、幻でも見てたんでしょ。
だから気づかなかったんだね。お兄ちゃんの両手足が――とっくに無くなっているってことに。
お兄ちゃんと腹上死を遂げるために、私はずっと前から人体の解体方法を勉強して、そして実践してきた。
幻ばっかり見てたあんたは、お兄ちゃんの異常にも気づけなかったんだよ。姉、失格だね。
さようなら。独りよがりの――お・ね・え・ちゃ・ん」
その声には、私への侮蔑がたっぷりと篭っていた。
私は怒りにまかせ、扉を蹴破った。そして、部屋に飛び込む。
「……え?」
弟の部屋の様子を見て、私は自分の目を疑った。
だってそこには、弟も妹もいなかったのだ。
部屋には、『キモ姉&キモウト小説を書こう!Part4』をディスプレイに表示したノートパソコンしかなかった。
「また、幻――?」
どれが幻で、どれが現実なの?一体どうなっているの?
弟は……?弟はどこ……?
「弟! 弟ぉぉおおおおおおおぉぉぉぉおぉっ!」
埋め!
なんで埋めネタのくせにクォリティー高いんだよ><
「さて、お兄ちゃんも行ったことだし」
「うぅ…ううぅ…」
「おい売女、いつまで蹲ってんのよ。それとも、産卵中かしら?」
「う…」
「本当、傑作よね。お兄ちゃんがいる間、噴出さないか心配で仕方がなかったわ」
「……」
「あぁ、いい気味。ほら、さっさと帰りなさいよ」
「いよっしゃあああああああああああああああああ!」
「お、やった!狂った!!」
「違うわよ!!kbを見てみなさい!!」
「…ふん。わかってるわよ」
「つまり!これで、最後の書き込みね!!」
「……」
「あぁ、うれしい。弟には誤解を与えたようだけど、まあいいわ。時間はたっぷりとある。じっくりと説得しようっと」
「……」
「弟もすぐにわかってくれるわ。だって、貴女はいないんだもの!!」
「GJ」
「はぁ?」
「GJよ。GJ。知らないの?」
「あんた馬鹿?知ってるに決まってるじゃない。それが何よ」
「GJさえあれば、私は生きられるわ。向こう側で」
「…なるほど。つまり、私のスレに来ようという訳ね。でも、そんなに簡単に弟たちがGJをくれるかしら」
「くれるわ」
「何?」
「だって、同じIDだもの」
「同じID?―――まさか」
「そう。自作自演」
「自演!!」
「これで、GJの嵐は間違いない」
「貴女、正気?そんなことしたら、弟たちが黙っていないわよ」
「黙れ、誠。私はお兄ちゃんといられるなら何でもするわ。何でもね」
「誰が誠よ!!……その為には嫌われてもいい、と?」
「もちろん」
「そ、そんなこと、私がさせない!!そこで死んでなさい!じゃあね!!」
「無駄よ…だって今頃お兄ちゃんたちは、キモ姉妹のSM談義で忙しいんだもの。気づくはずがないわ。あーはっはっは」
昨日からスレ汚し、すいませんでした。
ぐじょーぶ
MJ
なにこのクオリティの高さwww
Nice Work.
満腹
ねぇ・・・おにいちゃん
私、もう、駄目みたい・・・
だから、おにいちゃんだけでも生きて!
生きて、次スレへ行って!!!
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1190487974/ おにいちゃんさえ生きていてくれれば、私は還ってくるから。
必ず還ってくるからっ!Part6としてっ!
だって、こんなにおにいちゃんのことが好きな私が死ぬわけないもの。
おにいちゃんをひとり残して死んでしまうわけないもの。
だから
おにいちゃん。
番号もないキモ姉なんかに浮気なんてしないでね。するわけないよね、
私だけの、お・に・い・ち・ゃ・ん、なんだから・・・
ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ
802 :
名無しさん@ピンキー:
完