【妖怪】人間以外の女の子とのお話12【幽霊】

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無しさん@ピンキー
幽霊妖怪天使に悪魔、ロボットだってエイリアンだって何でもOK!
オカルト・SF・ファンタジー、あらゆる世界の人間以外の女の子にハァハァなお話のスレです。
これまではオリジナルが多いですが、二次創作物も大歓迎!

<前スレ>
【妖怪】人間以外の女の子とのお話11【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1105867944/l50

<保管庫>
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/
 →「オリジナル・シチュエーションの部屋その5」へどうぞ。

過去スレなどは>>2-5参照
2名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 23:35:28 ID:4wBPFTWv
<過去スレ>

【妖怪】人間以外の女の子とのお話10【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1102854728/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話9【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1099739349/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話8【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1093106312/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話7【幽霊】
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1088018923/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話6【幽霊】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1084053620/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話5【幽霊】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1077123189/
【妖怪】人間以外の女の子とのお話4【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1072/10720/1072019032.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話3【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1065/10657/1065717338.html
【妖怪】人間以外の女の子とのお話U【幽霊】
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1047/10479/1047959652.html
人間じゃない娘のでてくる小説希望(即死)
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1046/10469/1046994321.html
3名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 23:44:05 ID:4wBPFTWv

<関連スレ>
かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その9】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1067243766/
【獣人】亜人の少年少女の絡み2【獣化】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098261474/
【亜人】人外の者達の絡み【異形】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098260654/
ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1078822739/
触手・怪物に犯されるSS 5匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110097458/
猫耳少女と召使いの物語4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1108911697/
魔法・超能力でエロ妄想 その2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1093667653/
魔女っ娘&魔法少女で萌エロ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1091865265/
4名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 23:45:02 ID:4wBPFTWv
以上ですわさ。
5名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 23:46:27 ID:q3yJWGID
>>1
乙カレー
6前スレ740:2005/04/06(水) 00:18:39 ID:PEgEsBJB
>>1
乙です。

新スレでいきなり前スレへのレスってのもアレだけど…
>前751-755
お褒めにあずかりdクスです。
角煮のモンスター娘スレも見てますが、同好の士ってのは居るもんですなあ。

>前755
いずれどちらかを書くつもりです。
‥‥これを描きながら厨臭い世界設定をいろいろ妄想してしまったので(w
7名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 11:48:36 ID:SCq1kF68
>>1
8名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 21:26:53 ID:2EIXKgq0
9名無しさん@ピンキー:2005/04/07(木) 00:21:03 ID:kgQ2+7CN
10名無しさん@ピンキー:2005/04/07(木) 00:49:46 ID:y7vW46bG
保守
11短いけど投下:2005/04/07(木) 01:19:43 ID:uCjPhhGp
「あっ・・・あっ・・・あつぅぃ・・・もっと頂戴・・おにいさん」
深夜のトイレに甘い声が木霊する。
このトイレには幽霊が出るという噂が立っていた。にも関わらず駆け込んだ青年が一人。
個室に入るや否や、彼は少女の幽霊に押し倒されてしまった。
彼女は手馴れた様子で青年の服を剥ぎ取り、跨り、自らの秘所に彼のモノを挿入した。

ttp://monster-girl.homelinux.net/up/No_0700.jpg

「はあっ・・・あん・・・どう・・?幽霊のナカは・・」
ゆっくりと円を描く様に腰を使いながら、少女の幽霊は尚も青年を責める。
少年は既に6回もの射精をしていた。
少女の膣は狭く、また、霊とは思えぬ程の暖かさだった。
質感は柔らかく、しかし透明な幽霊の少女は、
彼女の中に収まった彼のモノを見せ付けるかの如く、激しい腰使いをし出した。
「うっ・・ううっ!」
 ビュクッ!!ドクッ・・ドクッドクッ
「あっあっ・・!でてるぅ・・・おいしいよ・・・おにいさぁん・・。
 ・・・まだできるでしょう?」
少女は膣の動きで青年の精液を搾り出すと、再び緩やかに腰を振りはじめた。
久しぶりの彼女の食事はまだ、始まったばかりである。
12名無しさん@ピンキー :2005/04/07(木) 16:53:55 ID:xY9pDKqx
>11
GJ!トイレいってくる(;´Д`)ハァハァ
13名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 11:47:31 ID:oURF5TzZ
えらく存在感のある幽霊だなw
GJ!
14名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:04:21 ID:uq4Fk/uH
男の子=幽霊
女の子=人間もの投下します。
15名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:05:46 ID:uq4Fk/uH
アキラくんとの出会いは一週間前。
授業中のクラスのど真ん中に突然彼が現れたことから始った。
真昼間に現れた半透明の男の子に皆はパニック。
そんな中、ちょっぴり皆よりオカルトに興味があった私は
彼に話し掛けていた。

『明日から夏休み』

「君は誰?」
「アキラ」
「どうしてこんな所にいるの?」
「ずっと昔からココにいるよ」
幽霊と普通に会話をする私をみてかパニックも治まった。
その後アキラくんと友達になった割と能天気なクラスメイトたちは
アキラくんに何があったのか?
なぜ幽霊になったのか? 
なぜこの学校に残っているのか?
これらの謎を彼の断片的な記憶を頼りに解決していくことになった。
そしてこの一週間で見つけたアキラくんの過去。
あんなことがあったなんて思いもよらなかった。
思いもよらないと言えばこの事件をきっかけに幾つかのカップルが生まれたこともそうか。
柏木くんと楓さん、まひるくんと香澄さん、瑞穂さんと貴子さん、etc,etc…
まぁ、色々あったしね。
そんな風にカップル生み出したアキラくん本人は今日いなくなる。
そのことを考えると私は胸に黒いものが湧き出てくる。
謎なんて解けなければよかった。
そうすればまだアキラくんと一緒にいられるのに、なんて。
16名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:07:31 ID:uq4Fk/uH
私嫌な子だ。
そんな事を考えて夕暮れの教室で落ち込んでいた私はこちらに近づいてくる燐光に気づいた。
「アキラくん」
「や、千佳ちゃん」
「どうしたの」
私は無理やり明るい顔を作って彼に話し掛ける。
今日でお別れなら泣き顔なんて見せたくない。
「うん、もうすぐ会えなくなるな〜、って思ったらここに来てた」
「へー、そうなんだ」
「千佳ちゃんこそどうしたの」
「ああ、うん、私がクラス代表でアキラくんのお見送りをね」
「そっか、うん、嬉しいよ」
ああ、そんな笑顔をしないでほしい。
あんな事を考えていた子にそんな笑顔を。
「そんなに嬉しい」
「うん、千佳ちゃんだからね、最初に話し掛けてくれたのは」
「そうだね、もう一週間も前なんだね」
「うん、もう千佳ちゃんのおかっぱ見れないと思うと寂しいな」
「あははっ、私もアキラくんに会えなくなるのは……」
言いかけて声が詰まった。
動いてよ、アキラくんに怪しまれちゃう。
一生懸命口を動かそうとしても動かない。
嫌だった。
初めて好きになったのに。
17名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:09:33 ID:uq4Fk/uH
もう会えなくなるなんて嫌だった。
そう思った瞬間、口は勝手に動き出した。
「やだよ…」
「千佳ちゃん?」
「っ…私やだよ、アキラくんと会えないなんてやだ」
涙がボロボロ零れ出て声が震える。
気がついたら私はうっすらと光るアキラくんに抱きついていた。
「ひっく……私、アキラくんの事大好き、もう会えないなんて絶対にやだ。
 ……そう思ったら私ひどいこと考えてた、アキラくんの過去の事分からなければよかったって。
 ごめん、ごめんねアキラくん」
「千佳ちゃん」
肩に俯いていた私をアキラくんが静かな声で呼ぶ。
何を言われるのか、嫌われてしまったのかと思っておずおずと顔を上げた私に
アキラくんはキスをした。
目を見開き固まっていた私に顔を離したアキラくんは申し訳なさそうに言った。
「千佳ちゃん、僕も千佳ちゃんの事大好きだよ」
「あ、きら、くん」
「僕も離れたくないけど、そうもいかないから千佳ちゃんに告白したら
 千佳ちゃんによけいなことしちゃうかなと思って言えなかった」
「あきらくん」
「だから千佳ちゃんが僕のこと好きって言ってくれて嬉しかった」
「アキラくん」
「千佳ちゃん」
正直に言えば混乱していた。
18名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:10:39 ID:uq4Fk/uH
けどそれ以上にアキラくんが私のことを好きと言ってくれたことが嬉しくて私は目を閉じた。
「「ん…」」
うん、大丈夫、今度は大人の人がするみたいなキスが出来た。

「アキラくん」
「本当にいいの、千佳ちゃん」
既に月光が満ちた教室の中、私は一糸纏わぬ姿で床に寝そべる。
もう会えないなら、アキラくんがいた証が欲しかった。
「うん…………もらって」
「分かった」
覆い被さってくるアキラくんの体。
そしてさっきよりも深いキス。
「ん、んふ」
こんこんと私の歯がアキラくんの舌でノックされ、私はおずおずとそれを通す。
私のとアキラくんのが絡まったり、押し合ったり。
互いの唾液を交換して喉を鳴らして飲み干す。
歯茎をなぞられ奥歯を舐められる。
その度に私は目の奥にバチバチとした光を感じいやらしい気持ちになっていく。
「ん、んァ…ふっ…ンン……あぁ」
ひんやりとした感触を左胸に感じアキラ君に触られているんだなと頭の隅で考える。
手はゆっくりとしたさするだけの動きをしている。
真っ白になっている私の脳はもう少し大きい方がアキラくんも喜んでくれただろうか
とか普段なら顔が真っ赤になるようなことを平気で考え付く。
「ん、ふゅッ、ちゅ、あ、アキラくん」
19名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:11:41 ID:uq4Fk/uH
さすっていた手がしっかりと私の胸を揉みしだき始めたことで私は思わず唇を離してしまった。
そうしたら一瞬、唾液が細長くアキラ君と私を繋いでいるのが見えて
私は本当にえっちな事をしてるんだなと今更ながらに自覚した。
「千佳ちゃん、やっぱりやめ」
私の仕草を嫌悪から来るものからと感じたアキラくんは気遣わしげな顔でやめようと
言おうとしたらしいが私がキスをして黙らせた。
それでも目でいいのと聞いてきたのでやっぱり目でいいよと返した。
そんなやりとりの後、再びアキラくんの手が私の胸に伸びてきた。
アキラくんは両手で私のあまりない胸を持ち上げるような形で揉み上げる。
「ん、くすぐったい」
ぐにぐにと平たくした粘土を伸ばすような感じで形が変わる胸。
くすぐったかったのは最初だけでだんだんとじんじんするような感覚が生まれてきた。
「ん、ふぁ、あ、んん、はぁッ」
変な声が出るのが恥ずかしくて口を覆ったけどアキラくんが胸を舐めはじめたせいで
無駄な事になってしまった。
「ふァッ、ああっ、んぁ、ああん」
アキラくんは舌で私の胸を舐めたりちょっと大きくなった乳首をつっついたりして
私に変な声を出させるのが楽しくて仕方が無いらしい。
「ひゃッ、あぅ」
そんな風に胸に意識が行ってたせいか、股間をさらっと撫でられた瞬間、
一際高い声を出してしまった。
アキラくんはそんな私を見てもさっきみたいにやめようとせず
中指で私のをなぞったり、一指し指を浅く中に挿れてかき回したりする。
その度にする水音が恥ずかしくてアキラくんの顔を見れなくなるんだけど
それ以上にそれで感じる何かが大きくなってくる。
20名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:13:08 ID:uq4Fk/uH
「アッ、あぁっ、あぁんっ、ア、アキラくん、私、わたし、もう!」
頭の中がどんどん白くなっていくのが怖くてしがみついた私を見てアキラくんは
こくんと、頷くと股間の何かを弾いた。
「っぁああ―――――」

真っ白。
一瞬で何にも見えない白い世界に辿り付く。
そこから落ちてきた私はすごい運動をしたみたいに息を荒くした。
「はぁはぁはぁはぁ」
「千佳ちゃん」
「っ、はぁ、あ、あき、らくん」
アキラくんの真剣な表情。
私を守ってくれたあの時の顔。
今ならまだひきかせるって言ってる顔。
それに私はキスを一つかまして言ってやった。
「きて」
「分かった」
やっぱり真剣な顔で頷いたアキラくんは両膝に手をかけ外へ開いていく。
そして、そして、お、おちんちんに手を添えて私のアソコへと近づけていく。
今の今まで恥ずかしくて見てなかったけどアレが入るのかなと思ってしまう。
今更な葛藤をしてる私をよそにアキラくんは私のそこにたどり着いようだ。
股間の入り口に何かが当たってる感触がある。
「千佳ちゃん、いくよ」
「……うん」
21名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:14:33 ID:uq4Fk/uH
ズンって音がした気がした。
「はっ―――――」
いた、痛い、イタイイタイ、痛い、いたいいたいいたい。
なにコレ、なにっ。
頭を埋め尽くすのは苦痛の赤。
下半身が千切れたんじゃないかと思うかのような痛みが私を襲った。
「千佳ちゃん、大丈夫」
アキラくんの心配気な声。
涙でぼやけて見えないけどやっぱり顔も心配そうにしてるんだろうな、と思う。
けどそんな風に聞かれたらこう答えるしかない。
「ん、痛いけど…だいじょぶ」
「動かないほうがいいよね」
動かないでも痛いけどね。
けどそんな風に気遣ってくれるアキラくんが好き。
二人で裸で抱き合ったまま互いの体温に浸る。
しばらくそうしてる内に痛みの方は少し鈍くなってくれたような気がする。
そうすると現金なもので私はアキラくんと一つになったんだなと嬉しく思う。
「一つだね、私たち」
「そうだね」
ずっとこのままでも私は構わなかったけどアキラくんはそうもいかないだろうし。
「アキラくん……動いていいよ」
「えっ、けど」
「もう…時間ないんでしょ」
「……」
そう時間は有限だ。
「分かったよ、千佳ちゃん、けど…」
「けど…?」
「ちょっと乱暴になっちゃうかもしれない」
「……いいよ、忘れられないくらい乱暴にして」
22名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:15:35 ID:uq4Fk/uH
真夜中。
アキラくんと最後にHなことをして服を着込んだ私はぶーたれていた。
「けだもの」
「ご、ごめん」
アキラくんはホントに乱暴だった。
ダメって言ってるのに恥ずかしい形になったり、
お尻を揉んだり、三回もしたり。
そりゃ最後の方はちょっと気持ち良かったけどさ。
「はぁー」
「ち、千佳ちゃん」
うろたえるアキラくんなんてのを最後に見れたし、
ま、いっか。
「いいよ、乱暴にしていいって言ったのは私なんだし」
「あ、うん、ありがとう」
「………………」
「………………」
「時間そろそろ?」
「うん…そろそろかな」
「そっか」
「うん」
それっきり背中合わせに床に座り込んで会話をしなかった。
そして深夜二時。
「千佳ちゃん」
「っ、な、何」
23名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:17:04 ID:uq4Fk/uH
「ありがとう」
ふと背中の気配が消えた。
慌てて振り返ると、そこには窓を背にして、月光に体を透かせた、アキラくんが立っていた。
もう、さっき、私を抱いてくれた時のような。質感はない。
ぼやけていた、アキラくんの背後が、はっきりと見える。
「アキ、アキラ、くん…」
「千佳ちゃん、今日までありがとう、皆にもそう言ってくれるかな」
「う、っ、うん、言うよ、ちゃんと言う」
今にも消えそうなくせにアキラくんはいつも通り穏やかに語る。
私もそれに答えようと思うけど声がつっかえて目じりにどんどん涙がたまってく。
これが最後なのに。
ちゃんと、ちゃんと見ないと。
ぼやけた視界を拭ってアキラくんの顔を!
「あ、あ゛ぎらぐん」
酷い声だけど、辛うじて名前を呼んだ私に、アキラくんは微笑んだ。
「じゃあね、千佳ちゃん、大好きだよ」
そして、光がはじけ。
アキラくんは消えた。
後には何も残らず。
なるほど、正に消失というものだった。
「あぅ、あぁぁ、うう、うぁあああああああああああああああああああん
 何でよぉ、何で消えちゃうのよ、好きなのに、こんなに好きなのに、何で、何で消えちゃうのよぉぉぉ」
それを自覚した私は真夜中の学校で私は盛大に泣いた。
24名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:18:32 ID:uq4Fk/uH










アキラくんへ

どうも千佳です。
割と元気にやってます。
自殺なんてしないので、安心してください。
この手紙は、書いたら燃やします。
恥ずかしいし、そうしたら本当に届きそうな気がするので。
クラスの皆も、悲しがってました。
特に浩次とか俊介とか。
…あとは何を書こうかな。
うーん、特にないので、今日はここで終わります。
また書くと思うので、その気があったら、夢にでも立ってください。
それでは。

金釘千佳

PS
後悔なんてしてないし、私は幸せです。
25名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:20:25 ID:uq4Fk/uH
元ネタは前スレ562の人のレス。
夏のボーイ・ミーツ・ガールの最後はお別れと、
頑なに信仰してたりします。
次はエロを増やそう。
26名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 16:47:14 ID:CgNtvq/x
前スレで移民の街の話を書いてた者です。続き書いてきました。エロ描写を、との事で、お応えしようと
頑張ってみましたが不得意なため満足のいくものができませんでしたorz

ttp://monoganac2.sakura.ne.jp/src/milktea1869.zip.html
PASS=移民の街
27名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 23:38:46 ID:9bWzlh2n
>>15
なんか人外がどうとかというのとは別の萌え方だった。GJです。

>>26
良かった。やっぱり良いなぁ、こういう町。エロはあっさりだったけど、
この雰囲気と文体ならこれぐらいがちょうどいいと思う。ぐっじょぶ!
28名無しさん@ピンキー:2005/04/09(土) 21:11:06 ID:yPCYcl5d
一応、保守入れ
29名無しさん@ピンキー:2005/04/10(日) 03:43:25 ID:Ow9jMZ9J
>>26
つ【素敵】
30名無しさん@ピンキー :2005/04/10(日) 23:32:00 ID:PMN9As6u
30〜

これで即死はいけるかな?
31名無しさん@ピンキー:2005/04/11(月) 09:17:06 ID:L15Nqnmh
>>移民の街
いいなぁ…なんか異種間でほのぼのしてて( ´∀`)
32名無しさん@ピンキー:2005/04/13(水) 01:50:47 ID:Q9f05409
>>11が妖夢に見える・・・。
33名無しさん@ピンキー:2005/04/14(木) 08:37:42 ID:j3DC6V6y
保守
34スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:51:03 ID:YQYif7pR
俺は妖精学者(フェアリードクター)という職に就いている。
その事もあり、俺が住む屋敷には様々な「人ならざる者達」がやってくる。
そもそもこの屋敷には人間は俺一人。
来客はおろか、住人も皆人ではない者達ばかり。
そんな屋敷の管理を取り仕切っているのが、
屋敷に取り憑いているシルキーなのだが
言い方を変えると、彼女一人で屋敷の全てを取り仕切っている事になる。
真っ白なシルクで出来たメイド服に身を包みながら、彼女はよく働いてくれている。
だが、やはり一人ではどうしても全てに手が行き届かない事もある。
そんな時は俺も手を貸すのだが、それでも足りない時は応援を呼ぶ事もある。
今日、その応援が駆けつけてきた。
「えへへ、メイド服って一度着てみたかったんだよね」
アルケニーが仕立てたメイド服を着込んだ応援者が、
スカートの裾を持ち上げヒラヒラと振りながらはしゃいでいる。
その様子はとても愛らしく、見ている俺の顔がついつい緩んでしまう。
だが、緩めてばかりもいられない。
ヒラヒラと舞うスカートの下には、蛇の顔が六つ、
こちらをシューシューと威嚇しながら睨んでいるのだから。
駆けつけた応援者は、スキュラ。
上半身はとても愛らしい女性そのものなのだが、
下半身には蛇の頭が六つにタコの脚が十二本も生えている。
彼女が言うには、大まかな動作……歩くとか脚で物を掴むとか、
そのような動作は自分の意志で動かせるらしいのだが
時折、自分の意志とは無関係に蛇の頭が人を襲う事があるらしい。
昔に比べれば随分と制御出来るようになったらしいが
油断すると危ないらしい。
つまり、彼女が浮かれている今のような時こそ、俺は下半身に気を付けなければならないのだ。
シルキーのメイド服とは異なり、オーソドックスな黒のワンピースを貴重としたメイド服。
それを着込んだスキュラを、俺はずっと見ていたいのだが
シャーシャーと蛇の威嚇する呼吸音が俺を現実に引き戻してしまう。
35スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:51:34 ID:YQYif7pR
「で、今日は何をすればいいの?」
現実に引き戻したのは蛇だけではない。スキュラが今日のスケジュールを尋ねてきた。
「詳しくはシルキーに聞いて欲しいんだけど、窓ふきをお願いしたいようだよ」
屋敷には至る所に窓があり、ステンドグラスが飾られているところもある。
これを全て拭くのは、やはり一人では大変らしい。
そこで、スキュラである。
猫の手も借りたい時には、十二本も脚があればまさに十二分な働きをして貰えるだろう。
「シルキーは奥にいるから、彼女に指示を貰ってきて」
「かしこまりました、ご主人様」
突然の名称に、俺は驚いた。
ご主人様?
メイド服を着ているとはいえ、
これはあくまで「形から入りたい」という彼女の要望で着ているだけで
彼女は屋敷のメイドではなく、むろん俺は彼女のご主人様ではない。
「なんだよ、急に」
驚きから、じわじわと気恥ずかしさへとシフトしていく俺の感情。
可愛らしいメイドさんにご主人様と呼ばれる。それはある意味男の願望。
別に秋葉原の喫茶店に通うような事はしていなくとも、
やはり憧れるシチュエーションである事は間違いない。
我が屋敷にはメイドが一人いるが、
彼女は俺の事を主人と認めていないという理由で「ご主人様」とは呼んでくれない。
だから尚更、ご主人様と呼ばれた事が段々恥ずかしくなってきた。
「だって、今日は一日メイドだもん。だから、ゴ・シュ・ジ・ン・サ・マ」
形からはいる為にメイド服を着た彼女は、言葉も形から入りたいようだ。
「ま、まぁとにかく、よろしく頼むよ・・・」
冷静を装いながらも、顔の赤みはごまかせない。
そんな俺の様子をニコニコと微笑みながら眺めている臨時メイド。
なんだか、今日は心臓の稼働率が増す一日になりそうだ。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
36スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:52:53 ID:YQYif7pR
スキュラの十二本の脚を持ってしても、
やはり屋敷中の窓を全て磨くのはかなりの労力を必要とした。
全てが終わった頃には、もう日が暮れ始めていた。
こうなると、このまま臨時メイドを帰すわけにもいかず、俺は一泊する事を勧めた。
どうも初めから泊まっていく気だったようで、
スキュラは「今日一日メイドしています」と、夕飯の支度まで始めた。
俺は、気付くべきだった。
彼女の語った「今日一日」という言葉と、
そしてディナーに、ニンニクたっぷりのステーキに
キムチチャーハンという「スタミナ料理」が並んだこの時に。
俺は出された料理を全て綺麗に平らげ、
そして窓ふきの疲れか、すぐにベッドへと倒れ込んでしまった。
そして、夜がやってきた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
37スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:54:19 ID:YQYif7pR
うっすらと目が覚めた時は、まだ疲れからかけだるい感じが体につきまとっていた。
にもかかわらず、なにやら下半身が涼しい。
そして、ピチャピチャと何かを舐めるような水っぽい音と、
その音に反応するかのように伝わる、独特の痺れるような快楽。
「なっ……なにしてんだよ!」
慌てて部屋の明かりを付けてみれば、
信じられない光景ながら半ば予想通りの光景が映し出されていた。
布団をはだけ、俺の下半身を裸にしたスキュラが
メイド服を着たまま俺の「蛇」を愛らしい唇と下で舐めあげている。
「あは、起きた?」
俺の質問には答えず、にっこりと微笑む臨時メイド。
その間も、手で俺の蛇をゆっくりと上下に揺すり刺激を絶やさない。
「いや、だから何をしてるのかと……」
ナニをしているのは明らかなのだが、何故このような事をしているのかと再度尋ねた。
「言ったじゃない。今日は一日メイドするって」
答えになってないだろうと、俺は眉をしかめた。
俺が理解し切れていない事を読み取った彼女は、とんでもない事を口走った。
「夜伽ですよ。これもメイドの仕事でしょ?」
一般的なメイドはそこまでしない……はず。
少なくとも、俺の常識には無い。
常識にはないが、「憧れ」には含まれる。
そのシチュエーション・・・いや妄想が体を刺激したのか、
それともいまだ続いている「攻め」が功を奏したのか、
俺の蛇が一気に肥大していった。
「わっ、こんなに……ステキです、ご主人様」
彼女の言う「ご主人様」というフレーズに酔ったのか、
それとも再開された舌の猛攻の為なのか、
まだまだ行けるとばかりに、俺の蛇がずんずん大きくなろうとしている。
38スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:55:07 ID:YQYif7pR
袋の下、付け根から舌をべったりと貼り付け、そして舐めあげる。
頂点を通過した舌は、頂にある「蛇の口」に先をねじ入れるように押し込まれた。
その攻めに、俺は軽く声を上げてしまう。
その漏れた声が聞けて満足なのか、メイドは軽く笑みをこぼす。
舌を離し、今度は中腹に唇を当てる。
軽く噛むように挟み、そして舌先は蛇の腹をぺろぺろと往復する。
そして唇を離さず、そのまま下へとゆっくり移動していく。
かなりの手練れだ。
彼女が何処でこんなテクニックを身につけたのか興味あるが、それを聞く余裕など俺にはない。
このままでは、俺が終わってしまう。
「そろそろ、くわえても宜しいでしょうか、ご主人様」
俺の限界を感じ取ったのか、メイドの方から申し出があった。
あくまで、まず主人に伺いを立ててから事をなそうとするメイド。
寝込みを襲ったのは彼女の方からだが、
ここに来て「プレイ」のルールを明確にして楽しみたいようだ。
「ああ……」
俺はとても主人らしい風格など無く、切羽詰まりながら頷いた。
「かしこまりました」
待ちきれない俺を焦らすように、彼女はゆっくりと「蛇」をくわえていく。
完全にくわえ込まれたところで、俺の蛇が果てそうになる。
しかしそれをどうにか踏ん張り、少しでも長くメイドの奉仕を楽しむよう努力する。
が、やはりそう長くは持たない。
三擦り半とは言ったもので、三度の往復で俺はメイドの口内奥に白い「褒美」を放ってしまった。
一瞬驚いたメイドだが、くわえたまま上目遣いに俺を見つめながら、「ご褒美」をコクコクと飲み込んでいく。
39スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:56:14 ID:YQYif7pR
「……はぁ。ごちそうさまでした、ご主人様」
僅か、唇に残る白い褒美。そして嬉しそうに微笑むメイド。そしてご主人様という言葉。
たった今果てたばかりだというのに、
俺はまだ興奮冷めやらぬと血の巡りが早まっているのを感じていた。
それは当然、倒れようとしていた蛇の鎌首をもたげる事になる。
「まあ、ご主人様にはまだ満足して頂けなかったようで……申し訳ありません、私の不手際で」
普段気さくに話すスキュラが、
メイドという役割を演じる為か生真面目にそしてわざとらしく謝罪する。
「では、今度こそ満足して頂けるようがんばりますわ」
微笑むと言うよりは、何かを企んでいるような含み笑いを浮かべ、
彼女はベッドの上に立ち上がった。
すると同時に、彼女の脚が勢いよく俺に襲いかかってきた。
瞬く間に、まだ着たままだったパジャマの上着をはぎ取り、
そして全身をガッチリと締め付け、持ち上げた。
唯一あらわになっている「蛇」の部分を、メイドの胸元に当たるように引き寄せていく。
いつの間にか、メイドも胸をあらわにしていた。
形良く、そして大きめのバストが、俺の蛇を挟み込んだ。
「いかがですか?ご主人様」
既にメイドの唾液でベトベトになっていた蛇は、メイドの胸でよく滑った。
円滑に滑りながらも、ぐっと手で胸を押し挟んだ圧迫感も感じる。
「うっ……ああ……」
言葉になるような声を発する余裕など無い程に、気持ち良い。
40スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:56:49 ID:YQYif7pR
しごかれる蛇もそうだが、
なにより俺の全身を持ち上げているメイドの脚も快楽に一役買っている。
タコの吸盤が体に吸い付き、そしてほどよく締め付ける。
それだけではない。時折緩めたり締め上げたりを繰り返し、脚を全身にこすりつけていく。
その度に吸盤がぬめぬめと全身をはいずり、言いようのない快楽を与えてくる。
まるで、全身が蛇になりしごかれているようだ。
「あら、ご満足頂けませんか?」
充分満足している。だがそれを解っていながらメイドは自分の至らなさを嘆いた。
「では、このような「奉仕」はいかがでしょうか?」
不意に、ズニュッと体の中へ、下の穴からタコの脚が一本侵入してきた。
「くわっ、そこ、ちっ、がっあ!」
「ああ、ご満足頂けましたかご主人様」
よもやメイドに掘られるとは。などと感傷的になる暇などもちろん無い。
ゆっくりと、回しながら出し入れされる脚。
吸盤が突起物になり、入り口を何度も刺激する。
初めて体験する快楽に、俺は嫌悪感が急速に薄らいでいくのを感じていた。
むしろ、求めている。
「その顔……ああ、ご主人様のその恍惚としたお顔が……ああ、私の悦びでございます」
奉仕の悦びに酔いしれているメイドは、脚だけでなく胸での奉仕にも力が入ってきた。
「あっ、ああっ、いい、胸、気持ち……いい」
まるで膣に入れられているかのように、顔を紅潮させあえぎの声を漏らす。
胸で擦るクチュクチュという音。全身を締め付けるぬちゃぬちゃという音。
そして出し入れされるぐちゅぐちゅという音。
部屋全体が、様々な粘着性の音に包まれる。
41スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:58:29 ID:YQYif7pR
満身創痍。攻められるだけ攻められていると思っていたが、
まだまだ奉仕はしつくされてはいなかった。
蛇の口に、チロチロと何かが当たっている。
蛇だ。俺のではなくメイドの蛇が三匹、俺の蛇を長い舌で舐めてきた。
そして残りの三匹は、下の入り口付近を舐めている。
この期に及んで新たな快楽。もう、何をされているのかすらあやふやになってきた。
ただただ、全身をくまなく奉仕される悦びに打ち震えるだけ。
「ご主人様!ああ……嬉しい、ご主人様……私も……はぁ、ああ!ひぃやぁあん……」
いつ果てたのだろう。俺にはそれすらあやふやだった。
気が付いた時には、すぅっと心地よく快楽の波が引いていき、
静かにベッドに下ろされていた。
もうろうとする意識の中で、
俺からの「ご褒美」で胸と顔を汚されたメイドが映し出されていた。
満足げに微笑みながら、胸にこびりついたご褒美を指ですくい、
そして美味しそうに舐めている姿が見える。
可愛い。
彼女本来の美しさと、はだけたメイド服。そしてみだらな仕草。
全てが愛おしかった。
……などと考えた為なのか。それともディナーのスタミナ料理が効いているのか。
俺の蛇がまたまた鎌首をもたげた。
「まあ大変!まだご主人様にご満足頂けていないなんて。申し訳ございません。すぐにまたご奉仕を……」
まだ?また?
勘弁してくれと言う抗議の声が出る元気など無い。
なのに、体も気持ちも期待している。
メイドの奉仕は、「メイドが」満足するまで何度も続けられた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
42スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:59:22 ID:YQYif7pR
「夕べはお楽しみでしたか?」
屋敷本来のメイドが、朝食……いや、もう昼食という時間か。
料理をテーブルに並べながら尋ねてきた。
「見て解るだろ?」
目の下にクッキリと残る、黒いくま。まさに一目瞭然。
「ごめんね、大丈夫?」
まだメイド服を着ている臨時メイドが、心配そうに見つめている。
「いや、大丈夫……なんとかね」
昼食を取りながら、昨夜の「事情」を聞いた。
どうやら、窓ふきはスキュラとシルキーで企てた「口実」で、
メインは昨夜の奉仕だったようだ。
それも、奉仕とは呼べないだろうあれは。
ここからは同情するスキュラの身の上なのだが
彼女は魔女キルケーに下半身を蛇とタコに変えられた為に
生殖器……つまり最も快楽を感じる場所すら失っているそうなのだ。
そんな彼女は、それでも上半身の身体が求める快楽の本能をどうにか処理してきたようなのだが
その結果、胸と口内が異様な程敏感になり、
人が膣で感じる以上の快楽をそこで感じるようになったとか。
くわえて、時折暴走する下半身を沈める為に「攻め」をせざるを得ないとか。
つまり、彼女は「奉仕」という「過剰な攻め」でないと上下共に満足出来ない身体になったというのだが……
その為のシチュエーションとして、メイドは最適だと最近思うようになり
俺で試してみたと……そういう事らしい。
43スキュラの場合 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 00:59:56 ID:YQYif7pR
「なら、初めから言ってくれても……」
俺の抗議は当然の主張のはず。
「でも、教えたら「攻め」にならないじゃない」
などと、悪知恵の首謀者シルキーが口を挟んだ。
「あの……それで、宜しければ……」
申し訳なさそうにスキュラが尋ねたい事は、もう解っている。
「……毎日は無理だけど、そうだな……二週に一度くらいのペースならどうにかなるんじゃないかな」
俺の提案に、満面の笑みで喜ぶスキュラ。
正直、あれは……俺も癖になりそうな程気持ち良かった。
まだお尻が何かを挟んでいるような違和感を感じているままだが、
これも慣れていくだろう。
……そうやって俺は変態になっていくのかなぁと軽くへこむ。
「どうせなら、次はシチュエーションを変えたら?例えば看護婦とか」
またも横から口を挟むシルキーの言葉に、
俺はすぐさま白衣の天使に扮したスキュラを妄想した。
そして、あっさりと元気になる俺の蛇。
なるほど、暴走するのはスキュラの下半身だけでなく、俺の下半身も同様なのだと今気付いた。
44某880 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/16(土) 01:03:46 ID:YQYif7pR
二度目の投稿になります。

以前「エロあってのシチュエーションではなく、シチュエーションあってのエロ」
とご指摘頂きましたが
今回もそうなってます。申し訳ない。
エロ部分がまだ修行不足ですが、
ちょっとでも、どこかで「萌え」を感じてくれれば幸いです。
45名無しさん@ピンキー :2005/04/16(土) 01:23:39 ID:g6Ldxj2N
GJ!
スキュラたん(;´Д`)ハァハァ
46名無しさん@ピンキー:2005/04/16(土) 10:55:44 ID:X446xcIY
>>44
GJだよ作者氏! スキュラたんがすげえカワイイです。
貴サイトの流儀からすると一作しか読めないのが残念。 できたら続編キボン。 激しくキボン。
47前スレから:2005/04/16(土) 12:05:01 ID:SfuDXyNg
なんか昨日電撃文庫のコーナーで本探してたら
「さえない若者が(人間以外の女の子とか別世界の女の子とかが現れて)
いきなりモテモテになる」って感じな本が2つもあって
もしや電撃hpのはこういうのだらけなのかなと思いつつも
俺も「さえない若者(ry」を描きたいなぁと
48名無しさん@ピンキー:2005/04/16(土) 12:19:18 ID:nMGrSMZs
いや十分エロいと思いますよGJ!
49名無しさん@ピンキー:2005/04/16(土) 22:50:15 ID:m0sumhrG
掘られるくだりで、一瞬新しい世界に目覚めそうになった
ヤベェ
50名無しさん@ピンキー:2005/04/17(日) 00:19:53 ID:2N1Hp6mO
GJ!
男を襲うのってダーク方面に転がりがちだけどうまく
コミカルに描いてますねw
スキュラさんかわいすぎ。
51某880 ◆/Mgq/8agL6 :2005/04/17(日) 01:28:11 ID:Ow6rVNKS
良かった、ちゃんとエロかったらしいw

>46さん
とりあえずこのスレに投下する話だけに限定して言えば
別に一人一作とは考えていまんので
スキュラの話はまた機会あれば書きたいと思います。
が…話のシチュエーションより
エロのバリエーションをどうしようかなというところで悩んでいます。
スキュラの身体的特徴を使ってエロのバリエーションをごまかしている部分があるので
同じスキュラで違うエロがちゃんと書けるのかどうかが勝負かなと。
メイド服がナース服に替わっただけでやる事が同じだと面白くないですもんね

なんか全体的にかわいいとのことでホッとしています。
実は、一人称を「ボク」にしようかどうかで悩んだのですが
一人称を話さない事で回避しました。
性格設定を「犬のように人なつっこい」にしているので「ボク」もいいかなと思ったのですが
どうなんでしょうね?
52名無しさん@ピンキー:2005/04/17(日) 06:53:29 ID:Y79mqbpw
>>51さん
エッチのバリエーションは本当に苦労しますね……
話は出来ているけど、エッチをどうするかで筆が一週間も二週間も止まった挙げ句に、前に書いたようなエッチになったり……

それはそうと、お疲れ様です。
次も楽しみにしてます。
53名無しさん@ピンキー:2005/04/19(火) 23:13:01 ID:5xuIAPo4
保守がてら、誰かテーマキボン
54蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:28:50 ID:gTmDP1Pa
この街には正義がいる。
手首から糸を出し、ターザンのようにビルの間を飛び回る
スーパーパワーで悪いやつらをやっつける!彼女を見ると皆が叫ぶ。
「すごい!かっこいい!」
三歳から九十歳まで幅広い層のファンを持つ
黄色と黒の特殊タイツに身を包んだ正義の味方。
人呼んでスパイダーさん
マスクからはみ出た金色の髪と日本人離れしたそのプロポーションから外人さん、
それも相当な美人だと噂になっている彼女。
スパイダーさんは今日もこの街の平和を守るため戦う!
負けるなスパイダーさん!がんばれスパイダーさん!
55蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:30:02 ID:gTmDP1Pa
日付が変わる少し前。
今夜も悪いやつらをやっつけたスパイダーさん。
夜の街を飛び回り、人気のない路地裏へと入っていくと、
周囲をきょろきょろと見回してからマスクを脱いだ。
「ふぅ…」
まだ幼さを残した可愛らしい顔が現れる。
その時、スパイダーさんの薄紫色の瞳に近づいてくる男が映った。
「ふむ、やはりそうか…」
「!」
ぼぎゅっ!
「へぶわっ!」
ばたり……
その男を鉄球のように固めた糸で攻撃してしまうスパイダーさん。
力なく倒れた男にわたわたと駆け寄る。
「ご、ごめんなさい!だいじょ…ってわわわっ!!臓物をブチ撒けているぅ〜!」
しゃがみこんでどうしようかどうしようかと頭を抱えて悩みだす。
その目には涙が浮かんでいた。
「うう、正義の味方として生きてきたのに、こんな普通の人を殺してしまうなんて…」
そこで気付く。
「そうだ!この人が悪の組織の手のものだったら何も問題はないんです!」
スパイダーさんは先程自分が殺害した男をよく見てみる。
怪しげな黒スーツに、夜の街には似合わぬ胡散臭い丸サングラス。
「これは、悪の組織の方に違いありません!」
そう自分を納得させると、立ち上がり、男に背を向ける。
瞬間、死体が燃え上がる。
驚き振り向くスパイダーさん。
そこで彼女が見たものは、死体であったはずの男が立っている姿。
傷など全くない。
男は、人外の光を宿すスパイダーさんの瞳をサングラス越しに見ながら、こう言った。
「私の名は星見坂条一。世界最高の正義の味方である!」
56蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:32:20 ID:gTmDP1Pa
その日の午後三時ごろ、幽霊が出ると噂になっているビルの
三階にある胡散臭い事務所。
「ふふん…鬼魅島君、仕事中に寝るなんていけないなぁ」
古びたソファで横になって寝息を立てる鬼魅島に向かい星見坂が言う。
目の前で手をぱらぱらと振ってみるが何の反応もない。
星見坂は鬼魅島を起こさぬようゆっくりと彼女の上着の前をはだく。
「ふむ、いつ見ても小さいなぁ…」
言いながら、鬼魅島の全くと表現しても問題の無いほどに小さな胸を
つんつんと突き始める。
「ん…」
ぴくん、と鬼魅島の体が小さく反応する。
「てりゃそりゃ」
「んんっ…」
ピンク色をした頂も同じようにつんつん突いてみると鬼魅島の体が小さく震えた。
「ふふん…」
星見坂は得意げな笑みを浮かべながら、鬼魅島の胸にむしゃぶりつこうとする。
しかし、ギギギと音を立てて扉が開いたことで、星見坂は行動を止めた。
緋色で縦ロールな髪の知り合いが、入ってきた。
57蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:34:45 ID:gTmDP1Pa
「久しぶりだな星見坂条一」
朱色の小柄な少女は星見坂に近づき、声をかける。
「朧、何故お前がここにいるのだ?」
星見坂は少々驚いた顔で朧と呼んだ少女のほうに目をやる。
彼女は星見坂に血を飲まれた不死鳥だ。
「貴様を殺しに来たに決まっておろう。」
朧はその鋭い目で星見坂を睨み付ける。
「またそれか…いい加減あきらめたらどうだね?」
ぴくり、と朧の右眉が持ち上がる。
「貴様が我に何をしたのか、忘れたとは言わさぬぞ」
「気持ちよかっただろ?」
「黙れ!人を犯しておいてどの口でほざくか!?痴れ者めが!!」
「馬鹿、でかい声を出すな鬼魅島君が起きるだろ」
「むぅそれと何の関係がある…こんな時間に寝ているほうが悪い」
「黙れ。大声を立てるな焼き鳥娘。俺が怒られる」
朧はソファで眠る鬼魅島を見る。
「着衣が乱れているな…なるほど、貴様はまたこのようなふざけた真似をしていたのか…」
朧は星見坂を睨み付けると、何かを探すようにあたりを見回す。
「見つけたぞ…」
そう呟くと、窓際の事務机の上に鎮座する目覚まし時計を手に取る。
「まさかお前…やめろ!やめるんだ!!」
「散り際に微笑まぬ者は生まれ変われぬぞ」
朧は意味不明なことを言いながら時刻を調節し、目覚ましのスイッチを押した。
「それは朧じゃない…」
星見坂の言葉は、鳴り響いた音にかき消された。
58蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:35:55 ID:gTmDP1Pa
不愉快な音が室内に響き渡る。
「……」
鬼魅島が目を覚まし、服のボタンが全て外されていることと、
目の前に星見坂がいることに気付く。
「先生、これは、なんですか?」
「いや、あのね、鬼魅島君、最近暖かくなってきたじゃないか…」
「そうですね。」
「だから鬼魅島君が寝てしまうのもわかる」
「それは…私が悪いですね…」
心底申し訳なさそうに鬼魅島が謝ると、星見坂はここがチャンスだと一気に攻める。
「だからそんな悪い助手に正義の鉄槌を加えるべく仕方なしに」

ぽーい
がしゃーん
ぐしゃり

鬼魅島は無言で、星見坂を窓から投げ捨てた。
59蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:37:57 ID:gTmDP1Pa
夕焼けに紅く染まる駅前のベンチ。
「くそう…悪い妖怪なんてそう簡単に見つかるはずがないんだ…」
そこに腰掛け愚痴を言い続ける星見坂。
鬼魅島に窓から投げ捨てられた後、星見坂は彼女から
どうにかして生活費を稼いで来いと言われた。
仕事をしていなかったので財布の中身が大ピンチだったのだ。
「自業自得だ。大たわけめ」
そんな屑男の隣で朧が得意げな笑みを浮かべている。
「何故にお前がここにいるのだ?」
「仕方なかろう。貴様らに金がないとなると我も食事にありつけぬからな。
今日だけは手助けしてやろう。」
「お前また住み着く気か…」
「今度は貴様を殺すまで居続けてくれる。」
「なら永遠にいることになるな…」
朧は過去にも何度か同じ理由で星見坂の所に住み着いたことがある。
しかし、その度に星見坂を殺すのは不可能と知り、殺す方法を求め旅に出ていた。
「しかし、なぜこんなに仕事がないんだ…」
ここ数日、星見坂は仕事をサボっていたわけではない。
仕事がまったく無かったのだ。よって収入などあるはずがなく、
財布の中身が完全になくなるという非常事態が起こっていた。
60蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:41:06 ID:gTmDP1Pa
「通りで落ちる夕日が目に染みるわけだ…」
「何を言っているのだ貴様は……む?」
その時、朧が何かに気付いた。
人の姿をした何かが糸のようなものを出してビルの上を飛びまわっている。
「化け蜘蛛か…それもまだ幼い…人に姿を似せて何をしておるのか…」
「蜘蛛?なんだ、スパイダーさんじゃないか…あの娘は蜘蛛だったのか…」
スパイダーさんが逃走する車を壊して中の強盗を捕まえるのを見ながら、
星見坂は思い出した。
『この街の悪いやつらは人間、人外有象無象の区別なく
全て正義の味方、スパイダーさんがやっつけている』という話を。
突然、星見坂がガタリと音を立てて立ち上がる。
「おい朧、あの小娘が蜘蛛だというのは間違えないだろうな?」
「見くびるな小僧。我が見間違えると思うたか?」
「ふむ、なるほど…なら何をしても問題はないな…」
さらりととんでもないことを言いながら歩き出す星見坂。
「なんだそうか…つまりあいつさえいなくなれば何も問題はないわけだ…」
そうすれば自分のところに仕事が集まりガッポガッポだ。フハハハハハと笑い出す。
明らかに欠点だらけのこの理論を今の星見坂は完璧だと信じて疑わなかった。

「よく分からんが貴様は絶対に間違えているな。」
朧の冷静な一言も、最早星見坂には届いてはいなかった。
61蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:45:09 ID:gTmDP1Pa
日が沈み、月が昇る。
「ふふん、俺の時間の始まりだ」
誰に言うでもなく星見坂が呟く。
あれから色々と調べ、悪い奴らをやっつけたスパイダーさんが
どこに消えていくのかを突き止めた。
そこは人気のない路地裏。
朧は家に帰した。完璧だ。

すでに三時間はここに張り込んでいるが何も起こらない。
星見坂は情報を疑い始めていた。
「こんな所にホントに…む…来た」
星見坂が口に出すのと同時に小さな人影が夜空を舞い、華麗に着地した。
「ふむ、アレがスパイダーさん…」
星見坂は物陰からスパイダーさんの姿を見る。
「ふむ、確かに…」
噂どおり、いやそれ以上のスパイダーさんのナイスなボディを見て頷く。
スパイダーさんがマスクに手をかけると同時に、星見坂は動き出す。
「あの体型で可愛くないはずがあるであろうか?いや!ない!」
そう断言して近づいていく。
62蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:46:27 ID:gTmDP1Pa
「ふぅ…」
ため息とともにマスクを取ったスパイダーさん。
金髪のロングヘアーに白い肌。そして人外の輝きを持つ薄紫色の瞳。
その全てが星見坂の予想を外していない。
「ふむ、やはりそうか…」
そう自分の見立てに満足した瞬間。
びゅっ!と白い塊が星見坂の腹をぶち破った。
「へぶわっ!」
臓物がぶちまけられ、どさりと倒れこむ。
スパイダーさんが真っ青な顔をしてこちらに走ってくる。
(この小娘、まさかいきなり人を殺そうとするとは…)
死にながら呆れる星見坂を尻目に、スパイダーさんは頭を抱え何事か考え出す。
しばらくして、星見坂を悪の組織の人間だと言い出した。
(ふむ、意外…まさかこんな馬鹿であったとは…)
正義の味方というからには軍人のような厳しい性格の女性であろう
と考えていた星見坂は少し驚きながら、しかし
(これはとても遊びやすそうな相手だ…)
と心で笑いながら、体を生き返らせる。
突然燃え上がる死体に驚き振り向くスパイダーさんに向かい、
星見坂は作戦を開始する。
「私の名は星見坂条一。世界最高の正義の味方である!」
63蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:47:34 ID:gTmDP1Pa
「…嘘言わないでください」
スパイダーさんは星見坂の嘘をあっさりと見破った。
「嘘ではないぞ。その証拠に臓物をブチ撒けられても見ての通りピンピンしている」
「それは…そうですね…」
「それに君が化け蜘蛛だということもよーく知っている」
「えっ!どうして知っているですか!?」
「正義の味方だからさ…」
「はぇ〜すごいですねぇ…本当にあなたも正義の味方だったのですか…」
「うむ。超一流」
どこに信じる要素があったのかは定かではないが、
とにかくスパイダーさんは星見坂のことを信じた。
「世界最高というと、もしかして悪の組織を壊滅させたこともあったりしちゃうのですか?」
「まあ、二十ほどな…」
「うわぁ!すごいですよ〜!尊敬してしまいます!」
瞳を輝かせて星見坂に迫るスパイダーさん。
その無邪気な様子に星見坂は邪悪な笑みを浮かべた。
(ふふん、馬鹿な娘よ…後で何されるのかも知らずに…)
「わたしも星見坂さんのようなすごいヒーローになりたいです!」
「うむ。いい心がけだ…しかしだね…」
64蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:48:48 ID:gTmDP1Pa
星見坂はいきなりスパイダーさんの大きな胸を揉み始める。
「なんだね?このけしからん乳は!?」
「きゃっ!」
「こんなけしからん乳をしていると悪の道に堕ちてしまうぞ」
「そ、そうなんですか?」
「うむ。人間の体の中の道の物質によってそうなってしまうのだ」
こんな幼稚園児も騙せないような嘘でも、スパイダーさんは騙すことができる。
さすがだ!スパイダーさん!
「わ、わたしは、どうしたらいいんでしょうか!?」
「ふむ、仕方がない。悪の道に堕ちないように私が鍛えてあげよう」
「いいん、ですか!?」
無言でうなずく星見坂。その手はスパイダーさんのけしからん胸を揉み続けている。
「あ、ありがとうございます…ん…」
涙ながらに感謝するスパイダーさんを見て、再び邪悪な笑みを浮かべる星見坂。
月に照らされたその顔は悪魔のようであった。
65蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:52:22 ID:gTmDP1Pa
「こら、隠しちゃダメだ!」
「あっ…」
上半身裸にされ、恥ずかしさから手で胸を隠したスパイダーさんを星見坂が叱る。
「だって…おかしいですよ、なんでかわからないですけどわたし…この格好すごく、恥ずかしくて…」
「蜘蛛は普通は裸だ」
「でも…うう…」
顔を真っ赤にして声を絞り出しながらスパイダーさんは手を下げる。
まだ人間の姿になって日が浅いスパイダーさんでも恥ずかしいようだ。
「ふむ…やはりけしからん乳だ…」
星見坂はスパイダーさんの白い乳房に顔を近づけ、じっくりと観察する。
「ここをこんなに硬くして…実にけしからん」
春とはいえまだ冷たい夜の空気によって硬くなり、敏感になっているスパイダーさんの
乳首を星見坂は指でつまみ、こすり上げる。
「やぁあっ…」
ビクビクとスパイダーさんの体が震える。
「どうしたのかね?」
「なんでも…ないです…」
「ふむ…それではこれから君がどれだけ悪に堕ちやすいのかを調べてみよう…」
そう言いながら星見坂はポケットから筆を取り出した。
「声を出すな…」
スパイダーさんは真剣な顔つきで口に手を当て、コクコク頷いた。
66蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:53:46 ID:gTmDP1Pa
「そりゃ!」
情けない掛け声とともに星見坂はスパイダーさんの敏感な部分に触れないよう、
慎重に乳輪を筆の先でなぞる。
「……っ」
欲しいところに刺激が与えられない、むずがゆい愛撫を受け
スパイダーさんが物欲しそうな目で星見坂を見る。
「ふむ…」
その視線に気付き、星見坂は硬くなった乳首を筆の先で突いてみる。
「やっ…」
スパイダーさんは思わず声を漏らした。
「声出した?」
スパイダーさんはブンブンと首を横に振る。
「そう…」
星見坂は興味無さそうに応えると、再び筆遊びに没頭する。
しばらく胸全体に筆を這わせてから、筆を絵の具でも塗りたくるかのように使い、
けしからん乳首を弄り回す。
柔らかい毛が乱暴に敏感な部分を刺激していく。
「あっ、やああぁっ!」
スパイダーさんは耐え切れずに遂に声をあげてしまった。
「声出したね?」
真っ赤な顔でスパイダーさんはゆっくりとうなずく。

67蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:56:05 ID:gTmDP1Pa
「そ、それじゃぁ、わ、わたし簡単に悪に染まっちゃうんでしょうか?」
泣きそうな目をして問いかけてくるスパイダーさんを星見坂はまた騙す。
「ふむ、そのけしからん乳が悪いな…だが吸い取ってしまえば問題ない」
「え?」
不思議そうな顔をするスパイダーさんに抱きつくようにして
彼女の胸に顔を埋める星見坂。
「えっ?星見坂さん…なにを?」
星見坂は返事の変わりにスパイダーさんの胸に吸い付く。
「あうぅぅっ!」
星見坂はちうちうと音を立ててしゃぶりながら、硬くなった頂を舌ではじく。
そのたびにスパイダーさんの体が面白いように震えた。
「やぁぁ、ほしみさかさ…だめぇ…なめちゃ…あぁん…」
駄目と言われたからか星見坂は口を離した。
「それでは…こっちだな…」
言って、さっきまでとは逆側の胸を舐め始めた。
「きゃうっ!やぁあぁ…」
今度は飽きるまでしゃぶり続けた。
68蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 00:58:25 ID:gTmDP1Pa
星見坂が支えるのをやめると、スパイダーさんは
崩れるようになりながら、膝をついた。
「うむ、これでかなり悪に堕ちにくくなったぞ」
星見坂が満足そうな表情で適当なことを言い、さて次はどうしようかと思ったその時。
「ほしみさかさん…」
もじもじと助けを求めるような声でスパイダーさんが話しかける。
「おなかのおくのほうが…さっきから…あつくて…」
涙目になって訴えるその顔は、街のヒーローとは思えなかった。
星見坂がスパイダーさんの股間の辺りに目をやると、
そこは水でもブチ撒けたかのように大きな染みができていた。
「しまった!悪の細胞がそっちのほうに行ってしまった」
「ええっ!?」
「自分の言うと通りの格好になりたまえ!」
「は…はい…」
69蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 01:01:29 ID:gTmDP1Pa
「こ…これでいいんでか?」
「うむ。完璧」
スパイダーさんは下の特殊タイツを腿の真ん中辺りまで下ろし、
両手で膝裏を抱え、名も無きビルの壁面にもたれ掛かるようにして座っていた。
「でも…この格好、さっきのもですけど…なんでか分からないですけど、
すごく恥ずかしいです…それに、お尻が冷たくて…」
「悪に染まってしまってもいいのかね?」
楽しそうな響きを含んだ星見坂の声だが、スパイダーさんはそれには気付かない。
「我慢します…」
「そうそう…」
言いながら、星見坂はスパイダーさんの秘所に指を這わす。
「ん…」
誰も触れたことのないそこは、先ほどまでの胸弄りによってすでにこれ以上ないほどに濡れていた。
「むむ、やはりここもけしからんな…」
そんなことを言いながら、触れるか触れないか程度の軽い愛撫を繰り返す。
「ほしみさかさん…だめです…わたし…このままじゃ…悪者になっちゃいますぅ…」
じれったい刺激によって頭がおかしくなるということか、わけのわからない事を言い出すスパイダーさん。
星見坂は包皮をかむったままの彼女のクリトリスをくにくにと押しつぶす。
「あ、ああぁああ…」
「ふむ…」
星見坂は、クリトリスへの刺激を続けたまま、スパイダーさんの物欲しそうにひくひく動く秘所を舐める。
「あっ…あぅぅううぅっ!!」
大きく音を立てるようにして乱暴に舐める。
「ああっきちゃうぅ…なんかきちゃうよ…」
スパイダーさんに絶頂の兆しが見えてくる。
70蜘蛛の場合:2005/04/21(木) 01:05:42 ID:gTmDP1Pa
が、しかし
「へ…?ほし…さかさん…?」
星見坂は愛撫をやめスパイダーさんから離れた。
「ど…して…?」
「ん、今日はもう終わりだよ」
何かを求めるようなスパイダーさんの目を無視して
、どうでもいいことのように、星見坂は言った。
「あ…はい…」
「明日も同じころに来てあげよう…」
「あ…はい…わかりました…」
星見坂は振り向きもせずに、ビルの合間を抜けて、
大きな通りへと消えていった。
「なんか、あついよ…ここ…」
星見坂が消えるのを見送ってから…スパイダーさんは自らの秘所に指を伸ばした。


(ふふん、今頃はきっと一人で頑張ってるのだろう…明日は何しようかなぁ…)
通りを歩きながら屑男は、そんなけしからんことを考えていた。
(あの何も知らん娘…どうやって遊んでくれようか…)
すでに頭の中は、蜘蛛女をどうやって可愛がるかに染まっており、
当初の目的、蜘蛛女を邪魔して仕事を得る事などどこかに消えていた。
いや、もしかしたら蜘蛛女で遊ぶことこそが本来の目的なのかもしれない。



ともかく、こうしてスパイダーさんと星見坂の特訓の夜は始まった。
71前スレ733:2005/04/21(木) 01:11:29 ID:gTmDP1Pa
まだ性懲りもなく続かせてもらいます
世界とか主人公とかは前スレの狐の場合というヤツと同じなモノです
72名無しさん@ピンキー:2005/04/21(木) 11:27:53 ID:4UIY3QMr
GJです。以後はもうちょっと蜘蛛女の「人外」的特徴を出してもらえるとなお良し。
73名無しさん@ピンキー:2005/04/21(木) 13:11:34 ID:Z2+31/9w
ハァハァGJ。
どーでもいいことだけど、「〜の場合」というタイトルシリーズは某880さんと被っているので
ちょっと分かりにくいかな。
まあ、二人で話し合って折り合いつけてもらったらと思う。
74某880:2005/04/21(木) 20:15:57 ID:Td/yXE1g
ごめんなさい、俺の方が後発なのに微妙にタイトルかぶせてしまいましたね。
以後、俺の方がタイトル別な物に替えます。
>54さん、失礼しました。そしてGJです。
7571:2005/04/22(金) 02:31:43 ID:ty/44pFq
それじゃそっちの方向でお願いします>>74さん
76名無しさん@ピンキー:2005/04/22(金) 04:07:54 ID:H0W3nCPr
ビ〜ルの〜谷間の暗や〜みに〜♪
「スパイダーさん!」
キラリと〜光るエロい汁〜♪
「スパイダーさん!」
77名無しさん@ピンキー:2005/04/23(土) 01:21:56 ID:v5aqkYLr
人外で最初に思い出すのは「沙耶の唄」だな。
グロテスクなヒロインってのは衝撃だった。
78百鬼夜翔(他所から転載):2005/04/24(日) 23:22:09 ID:nHNHCxlB
魔女だとばれてしまったひかり。
クラス中から気味悪がられ無視され、友達もに見捨てられて、夕方一人とぼとぼと帰宅する。
帰宅途中にある、人気の無い雑木林の前の道を通るとき、茂みから数人の男子生徒が飛び出してひかりを取り押さえる。
素早く目と口をガムテープで塞いで、繁みの奥へ引きずり込み、手足も同じくガムテープで縛る。
暗黒の只中に放りこまれ、もはや助けも呼べない。
感じ取れるのは下卑た笑いと、ヤニ臭い吐息のみ。
「お前、魔女なんだってな(w」
「魔女って悪魔と契約したんだろ?(w」
「オレ達が退治してやるぜ(w」
「知ってるか? 魔女の身体には悪魔と契約した印があるんだぜ(w」
「え、ホントかよ?(w」
「じゃあ調べないとな(w」
79百鬼夜翔:2005/04/24(日) 23:23:57 ID:nHNHCxlB
ひかりの制服が乱暴に開かれ、ボタンが弾け飛ぶ。
ついこの間つけ始めたばかりのブラが、不良達の目に曝される。
スカートもファスナーを壊されて脱がされる。
お子様っぽい、プリントのついたパンツがあらわになる。
「ひょーっ、魔女って黒とかのもっと色っぽいパンティー履いてると思った(w」
「だまされんなよ(w 清純なふりしてるだけかもしれないぞ(w」
必死になって叫ぼうとするが、ガムテープは呻き声しか漏らさない。
不良達を振りほどこうとするが、逆にしっかり抑えられてしまう。
「やぁっぱりなぁ(w こいつ魔女の印を見られたくないんだ(w」
「さーて、どこにあるかなっと(w」
ようやく膨らみと呼べるようになった彼女の胸に、荒々しく手が掛かる。
一気にブラを毟り取られた。
僅かな二つの膨らみと、その両先端の朱色の突起があらわになる。
テープの奥の目が涙であふれ、ムダだとは思っても口から嗚咽を漏らし、現実を否定するために首を激しく左右に振ったた。
それが逆に人面のケダモノ達の嗜虐心を煽り立てる。
「ちっちぇえなー(w」
「まだガキだろ(w」
「なあ、魔女の印ってどんなんだよ?」
「どんなんかは良く分からないけど、針とかで刺されても痛くないし、血も出ないらしいぜ(w」
「よっしゃ、じゃあ確かめてやる」
胸に、生暖かく荒い息がかかり、すぐに湿ったもので左の先端をつままれた。
ビクリ、と身体が痙攣する。
ちゅうちゅうと、チューブ入りシャーベットを吸うような音をたてて吸われ、胸の先端から不快な感覚が広がる。
続いて、膨らみ全体にザラついて粘つく手で覆われ、指が食いこむほどもみしだかれる。
激しい苦痛とそれ以上の恥辱に、今までにも増して身体をくねらせ抵抗するが、かえってしっかりと抑えこまれる。
80百鬼夜翔:2005/04/24(日) 23:24:28 ID:nHNHCxlB
「おい、テメエばっかずりーぞ」
「じゃあ、こっちはやるよ(w」
右も汚された。
ひかりは、もはや何も考えられずに、死体のようにぐったりとした。
「おいおい、それじゃ検査にならないだろ?(w」
両胸から口が離された。
次の瞬間、右の先端に痺れが走った。
ひかりのがビクン、と大きくのけぞる。
「こうやるんだよ(w」
痺れはすぐに灼熱感にかわり、じんわりと痛みへと変わっていった。
何か針の様なもので、突起を左右に串刺にされたらしい。
苦痛で身体をよじるが、針は抜ける気配はない。
「あっれ〜、おっかしいなぁ(w じゃあ、こっちかな?」
のたうち回り、必死に逃れようとするひかりの頭が大きな手が抑えつけられ、耳元でささやかれた。
「おい、暴れると別の所まで刺しちまうぞ」
先ほどの痛みを思い出し、その恐怖で身体がすくんだ瞬間、左の先端も貫かれた。
ひかりは、前にも増してのたうち回る。
「あっれ〜、変だな(w ここじゃないのか?(w じゃあ、ここを調べてみようか(w」
ひかりは、転げまわっているうちにうつぶせになり、かえって針で刺された胸を地面で刺激してしまい、仰向けにひっくり返る。
81名無しさん@ピンキー:2005/04/24(日) 23:25:07 ID:nHNHCxlB
そのパンツが、ヘソのすぐ下で捕まれる。
苦痛よりも大きな恐怖と嫌悪感と絶望の予感が、ひかりの脳裏をかすめる。
必死に脚を閉じるが、下着は乱暴に引っ張られ、ひかりのまだ無毛の部分があらわになる。
「あーっ、まだ生えてないじゃん(w」
下卑た笑いが広がり、ひかりの心を無残に食い荒らしてゆく。
いくら脚を閉じても付け根の部分の密閉度はたかが知れている。
結構お気に入りだったそれは、徐々にひかりの両腿の間をずりさがっていく。
もう、下着は完全にその役目を放棄している。
再び、身体を押さえつけられると、不潔な手が、閉じた肉を捲ろうとする。
もう、生きていけない。
ひかりは虚ろにそう思った。
「ここかな?(w」
自分ですらあまり振れたことの無い部分に、鋭い痛みが走った。
「うーん、違うみたいだな(w」
針はその周辺をチクチクと嬲り続けた。
「ひょっとしたら、この奥かもよ(w」
「そうだな、じゃあ、この針で調べてみよっか(w」
足首を縛っていたテープが剥がされた。
これから何が起こるのかは、漠然と予想したが、もはや絶望に縛られ何をする気にもならなかった。
82百鬼夜翔:2005/04/24(日) 23:25:40 ID:nHNHCxlB
先ほどと同じ部分が、こんどは熱を持ったもので押し広げられる。
腰に、衝撃が走った。
痺れたまま、苦痛だけは感じていた。
もう、何も考えられない。
「あれ、ここも血が出てる(w じゃあこっちかな(w」
続いて、後部からも衝撃が走った。
痺れは徐々に、内臓を掻き回されるような不快感に変わっていく。
「ここも違うな(w」
不意に、頬から口にかけて引っ張られ、呼吸が楽になった。
やっとテープが剥がされた口からは、もはや意味不明のうめきしか出てこない。
「じゃあ、ここだな」
再び、息苦しくなる。
今度はテープではなく、熱く吐き気を催す味と臭気のものが喉の方まで来た。

そのままどのくらい時間がたっただろう。
気がつくと木々の間から、星空が見えていた。
ひかりは一人、雑木林の中に素裸で寝転んでいた。
夜風が身体に冷たい。
そんなものが気にならないくらい、身体中が痛い。
それ以上に心は絶望に蝕まれ痛めつけられていた。
何をする気にもなれなくて、そのまま土に還ろうとするかのように、ただ虚ろに横たわり続けた。

数日後、ひかりの母校から、4名の生徒がいなくなった。
1名はここ数日間の記憶を失い、東京の方へ転校する少女。
あとの3名の男子については、一切の消息が不明である。
83名無しさん@ピンキー:2005/04/24(日) 23:50:20 ID:EXiIwnjS
ハァハァ・・・エロかった・・・けど。
「(w」はどうかなーと思ってみたりする。
84名無しさん@ピンキー:2005/04/25(月) 16:55:54 ID:wIWX1Q9n
3名の男子>vipper
85名無しさん@ピンキー:2005/04/27(水) 19:09:31 ID:HBPRJl4j
廃れてるな
86名無しさん@ピンキー:2005/04/27(水) 21:59:19 ID:DiR1AxM2
クールビューティーな獣人姐さん(狼とか)に
「今度のGW、どっか遊びに行かない?」と誘ったら
「その週は発情期だ。自分のマンションにずっといる」と返されて(´・ω・`)ショボンヌ
「・・・だからコンドームをグロスで買って泊まりに来てくれ」と続けられて(*゚∀゚)=3 ムッハー

そんな夢を見た漏れは今年もGWなんかない・・・。
87名無しさん@ピンキー:2005/04/27(水) 22:09:06 ID:HCID6/U5
>86
いや、そこで
「…折角だから、これ、渡そうと思っていたのに…」
と、言って指輪を渡して
「…しょうがないな…絶対離すなよ」と、一週間頑張りまくって
ケコーン→デキちゃった&heart;コンボ成立と考える漏れは孕み教徒
88名無しさん@ピンキー:2005/04/28(木) 02:36:34 ID:h+qQ7i8j
>>86
いいな、それっ!?
89名無しさん@ピンキー:2005/04/29(金) 00:23:41 ID:v9mbYN98
>>86
非常に萌えたので構想を練ってみる。
つか、避妊具がいるということは「発情期=繁殖期」ではないってことなんだなw
90名無しさん@ピンキー:2005/04/29(金) 01:07:14 ID:rhJvlhT+
本来=だが文明の中で生きていく以上それを抑えていかなくてはならない
その辺の(人と比べ非常に野性的な)本能との葛藤があるからこそ萌えるんじゃないか
91妖魔夜行世界でオリジナル:2005/04/29(金) 01:23:54 ID:or3RqS28
「ん…」
真紀はスルスルと手馴れた仕草で、哲晴の学ランとワイシャツのボタンを外す。
無数の刺し傷のある肩がスルリとあらわになると、ギュッと抱きつき、アーンと口をあけてカプッと噛みつき、牙を突き立てる。
「っつ…」
すっかりお馴染みになったチクッとした痛みに、哲晴はちょっと眉をしかめる。
真紀はそのまま口を離さずに牙を引き抜き、ジワリとにじみ出る血を舐める。
柔らかな舌にチロチロとくすぐられて、哲晴の身体の芯にゾクゾクとした感じが呼び起こされる。
幸か不幸か、そのままグングンと高まりそうな感覚は、ときどきおこるズキッと傷口を舐める感触で押し下げられる。
と、今度は別の感覚に注意が行く。
「んくっ…、ちゅっ…、んくっ…」
牙の跡からにじみ出る血をペロペロと舐め、ベットリと唾で湿らせ、チュクチュクと啜り、ンクンクと飲み下す。そして時折、フッと息をついく。
その音が、なんか妙にイヤらしい。
耳から意識を引き剥がすと、今度は鼻に意識が行く。
サラッとしたセミロングの髪から立ち上る香が、フッと鼻をくすぐる。
鼻の次は肌だ。
スレンダーなはずなのに、服越しに押しつけられた真紀の身体は、妙にフニャフニャと柔らかい。
彼女のホワホワとしたぬくもりまで伝わってきて、そろそろ身体が我慢の限界に近づいてくる。
このままだと、反応してしまう、そんな微妙なタイミングで真紀はようやく口を離した。
92妖魔夜行世界でオリジナル:2005/04/29(金) 01:25:22 ID:or3RqS28
「ぷはぁっ…。ふう、ご馳走さま」
チョコンと牙ののぞく血色の唇、それを濡らす命の滴をチロリと舌で拭う。
そして紅玉の瞳の猫のような吊り目を細めて、ニッコリと微笑む。
「ん〜。やっぱ哲晴の血が一番甘い」
ジットリと唾液で濡れた肩口を、ハンカチでそっと拭いながらふと感想を漏らす。
「甘いのか? 普通しょっぱいと思うけど」
彼女の身体から意識を逸らそうとして、どうでも良い事を話題にしてみる。
「甘いよ。ボクがそう言うんだから、間違いない」
いつもの、『ポーの一族』の影響を受けた少年っぽい口調で、真紀は断言する。
「ふーん。やっぱ吸血鬼の味覚ってそうなんだ」
「違うよ。キミの血だから甘いんだよ」
真紀は即座に答えて、同じ背丈で哲晴を、至近距離からジッと見据える。
ドキリと哲晴の心臓が跳ね上がり、身体がカチンと硬直する。
心の中でくすぶっていた、さっきの残り火が、ボッと燃え上がる。
「試して、みる?」
そのまま、グイッと怪力で引っぱられ、いたずらっぽい笑みを浮かべた真紀の顔が、グッと視界一杯に広がる。
そして、唇にフワリと柔らかく、シットリと濡れた感触がした。
濡れた感触は、口の中に素早くそっと侵入して、じかに血の味を伝える。
永遠の様にしっかりと、一瞬のように儚い感触が唇に残る。
「ね。甘い、でしょ?」
吸血鬼のそれとは違う魅了の魔法を使って、彼女は微笑んだ。
93名無しさん@ピンキー:2005/04/29(金) 01:26:20 ID:or3RqS28
ごめんなさい。エロシーンなしです。
94名無しさん@ピンキー:2005/04/29(金) 11:33:57 ID:7Ph9mP0p
>>92
イイ(・∀・)!!
だが欲求不満だぞ! エロシーンもきぼん。萌えたので。
95名無しさん@ピンキー:2005/04/29(金) 23:36:10 ID:or3RqS28
萌えていただけて幸いです。
実は昔の妖魔夜行小説を書き直してたんだけど、どうも筆が進まないんで、とりあえず萌えそうなシーンだけ先に書いてみたんです。
ブランクも長いし、もともと露骨なエロシーンは未開拓な分野で苦手なので(参照78〜82)、結局中途半端なところで終ってしまいました。
ちなみに元ネタは、竹本いずみの作品の「お菓子よりキスの方が甘い」という台詞(火星の食品会社の甘味料開発担当の娘話)と、
吸血姫美夕の「お茶は苦いけど血は甘い」という台詞の合成です。
96名無しさん@ピンキー:2005/04/30(土) 01:06:02 ID:ShJF70mW
今日古本屋で「吸血鬼さんお静かに」という小説見つけました
男×男(非エロ)なのがちょっと残念でしたが>>922のような話を作る際に参考になりそうです

と思ってた丁度そんなときに>>922が…萌えすぎて氏にそうです
9791:2005/04/30(土) 01:39:08 ID:VqxafK9m
>96
実は吸血鬼フェチなんで、結構いろいろ読んでたりします。
…たしかそれは読んだような、読みかけだったような…
98名無しさん@ピンキー:2005/04/30(土) 09:42:37 ID:f+SZxU9J
そろそろ猫の話の続きも読みたい脳
99名無しさん@ピンキー:2005/04/30(土) 19:06:12 ID:n+1ApNBG
猫の話の作者さんもだけど、少し前に書いててくれた作者さんたち今スレに来てくれてないね・・・
前スレが終掛けに俄に賑わって、誘導出来なかったし迷子になってるのかな?
100名無しさん@ピンキー:2005/05/01(日) 12:01:31 ID:HGlDnkWw
迷子だなんてそんな小さな子供じゃあるまいに……ねえ?
101名無しさん@ピンキー:2005/05/02(月) 02:38:09 ID:elEURj+F
ホントに中途半端な所までなら書けてますが、張りますか?
102名無しさん@ピンキー:2005/05/02(月) 18:36:21 ID:2t5HExyu
>101
北木多喜多来た!
男は読経!
カ・マーン!!
103101:2005/05/02(月) 22:55:27 ID:elEURj+F
>>102
失礼、改めて読んでみたら亜人少年少女スレ向きでした。
104名無しさん@ピンキー:2005/05/02(月) 22:57:35 ID:/H08vdpv
_| ̄|○
105名無しさん@ピンキー:2005/05/02(月) 23:07:05 ID:L723zoau
>>103
かまわん、やりたまえ
106>>105 では失礼して:2005/05/03(火) 00:27:20 ID:9UBQUOzd
むか〜し、むかし。
ある山の中に赤鬼が住んでいました。
黒い髪に赤い瞳。
ほとんど麓の村人と変わらない彼でしたが、
頭に生えた角が村人と彼の違いです。
心優しい赤鬼は、時折山の中に来る人間の子供と仲良くしたいと考えていましたが、
村人は鬼の彼を怖がり誰も山には来ません。
それでも赤鬼は、何時か誰かが来るかもしれないからと、
毎日毎日、お茶やお菓子の用意をします。
さて、そんな風に今日もお茶の用意をしていた赤鬼のところに、
谷に住んでいる青鬼が来ました。
白い髪に青い瞳。
そして額に生えた二本の角が彼女と赤鬼の違いです。
青鬼は来るなり、
「また無駄な準備をしてるの?」
と赤鬼を嘲笑いました。
幼馴染の彼女は正直者で、ナイーブな赤鬼は時折洞窟の隅で膝を抱えされます。
それでも、同族として海に遊びに連れていってくれたりします。
…彼女の白い肌に西洋油を塗れとか言われたりしましたが。
風邪の時は看病に来てくれて薬をくれました。
…間違えて媚薬をもってこられ、もんもんさせれましたが。
時折、泊まりこんで話し相手になってくれたりします。
…一緒に寝る?とからかわれたりしますが。
けれでも今日の赤鬼は違いました。
107名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 00:29:32 ID:9UBQUOzd
来る日も来る日も、来ない村人にお茶を用意していたのにイラついていたのか、
それとも、とうとう青鬼の暴言に腹を立てたのか。
ムスっとしていた赤鬼は、青鬼に掴みかかると両手首を掴み洞窟の岩肌に押し付けました。
「きゃっ、あか…」
「黙れ!」
「ぅ…」
「そんなこと、そんなこと、お前に関係ないだろ!
 これは僕が好きでやってるんだ!
 お前にとやかく言われる筋合いはない!」
「……そんなに…人間と話したいの?」
「ああ、少なくとも僕をバカにしてばっかの君よりもね!」
赤鬼は普段、話したことのないような長い話をしたせいで息を荒げ。
青鬼は俯いたまま何もしゃべりません。
そのまま10分ほどした後でしょうか。
赤鬼の頭が冷えて先ほど言ったことを後悔し始めた頃。
ぽつりと青鬼が呟きました。
「痛いから…離してよ」
赤鬼は慌てて青鬼の腕を離しました。
俯きながら腕をさする青鬼を、ちらっと見ながら赤鬼は頭の中がまとまりません。
謝るべきか、謝らないべきか。
かな〜り長く葛藤しましたが、謝ろうと顔を上げた瞬間、そこには青鬼の拳がありました。
「赤鬼のバカ―――――!!」
思いっきり、岩肌に叩きつけられた赤鬼は、意識が落ちる瞬間、
裾を翻して走っていく、青鬼のふとももが眩しく感じました。
108名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 00:31:23 ID:9UBQUOzd
鬼が目を覚ますと、既に辺りは暗く、夜になっていました。
今日はなんという日だろうと、落ちこんだ赤鬼ですが、
とりあえず外へ出て、晩御飯でも取ろうと洞窟から出ました。
すると、そこには月の光を浴びた青鬼がいました。
青鬼はこちらに背に向けているので、表情は分かりません。
しかし赤鬼には泣いているように見えました。
「青鬼、さっきはごめん…」
けど言うべきことは言わないと、と赤鬼は先ほどのことを謝りました。
「いいよ、わたしも悪かったし…」
青鬼が謝りました。
赤鬼も長いこと生きてますが、初めてのことです。
思わず目を白黒させた赤鬼にですが、青鬼が振り向いたとたん息を呑みました。
青鬼は泣いていました。
いつもいつも、赤鬼を泣かせていた青鬼がはらはらと泣いていました。
そして話しはじめました。
「わたし、赤鬼にとって、なんなのよっ!!
 ねぇ? 赤鬼にとって、わたしはなんなの
 ……。単なる、友達なの?」
「ねぇ、教えてよっ!! 赤鬼にとって、
 わたしはなんなの!? 赤鬼、赤鬼の方から、
 わたしにキスしてくれたことないじゃないっ!! 
 赤鬼の方から、わたしを抱き締めてくれたことないじゃないっ!!」
「わたし、赤鬼にいっぱい、アプローチしたのに……。
 それでも赤鬼は気づかなかった……。
 あの海でのことは、私の精一杯の勇気だったのに……」
109名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 00:32:46 ID:9UBQUOzd
「なのに、赤鬼は答えを出さなかった……。
 わたし、怖くなった。」
「もしかして、赤鬼は、わたしのことなんて、
 どうでもいいと思ってるんじゃないかって。
 わたしは、だから怖くなった。
 『好き』って一言を、赤鬼に言えなくなった。
 だって、拒絶されたら怖いからっ!!」

それは青鬼がずーっと心に秘めていたことでした。
そしてある意味赤鬼が秘めていたことでもありました。
だから。
「青鬼!」
「ぇ、あ、青鬼…ん」」
赤鬼は迷わず青鬼の口を塞ぎました。
110名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 00:34:54 ID:9UBQUOzd
以上ここまでです。
元ネタは『泣いた赤鬼』
キスとアプローチのいい訳し方ないかなと、思ってるうちに手が止まってました。
111名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 00:38:17 ID:K7TEtHnZ
あれ?
元ネタはwindじゃなくって?
112名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 01:30:39 ID:zWttgdsm
何か見覚えがあるように感じた
113名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 20:47:03 ID:YS6hNi4L
>>110
パロディネタを中心にすえるのなら原作ファンが「にやり」とするようなギミックを仕込むことをお勧めする。

たっぷり十五行はつかって問い詰めるとか。

114名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 01:46:03 ID:hNsKcDM/
すいません。
91〜92のシリーズで、エロなしなんですが、エロくないスレに移った方がよいでしょうか?
115名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 02:00:09 ID:P1Uy3a0D
>>114
話が繋がるならこっちの方が良いんじゃない?
こっちの話が歯抜けになるし、向こうのスレの人も急に抜けた歯を1個持ち込まれても話が繋がらないんじゃないかな?
下手に18禁の話に繋がる話を向こうに投稿して、18才未満の青少年がその話に興味を持って、関連するこっちの話まで読んじゃっても困るし・・・

一言、今回はエロ抜きとでも注釈しておけば読みたくない人はスルーすると思う。
116名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 02:18:24 ID:hNsKcDM/
ありがとうございます。
今後、18禁につながるかどうかは非常に微妙なんですが…
117名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 02:27:24 ID:hNsKcDM/
「ふう、暑い」
哲晴と一緒に図書館から出て、真紀は呟く。
夕暮れとはいえ、8月である。クーラーの効いた図書館から一歩外に出れば、ねっとりとした大気に包みこまれて、たちまちジットリと汗ばんでくる。
二人は今年、受験生である。だから夏休みとはいえ遊んでばかりいるわけにもいかず、図書館での自主学習をしてるわけだ。もっとも、デート兼でもあるわけだが。
「冷たいものでも飲むか?」
哲晴は、道端の自販機をヒョイと指差す。
最初の自販機は売切れだったので、次の自販機で哲晴は炭酸飲料、真紀はスポーツドリンクを買った。
「あっ、何これ」
ガタンと自販機から出てきた缶を手にして、真紀は叫んだ。
「これ、全然冷えてない。う〜。冷えてないジュースなんて…」
どうやら、自販機に補給したばかりのようだった。
「ほい。こっちは冷えてるよ」
愚痴る真紀を見て、哲晴はよく冷えた自分の缶と取り返る。
「あ、ありがと、哲晴。…うーん、でもボクは、どうせなら、もっと別のものが飲みたいな〜」
チラリと哲晴自身を見る。
「こら。今、冷えてないジュースも嫌って言ってたくせに、もっと暖かいものが飲みたいって言うのは、この口か? この口か?」
ムニュッと真紀の柔らかい頬をつまんだ。
「う…」
痛いところを突かれて、真紀は口篭もる。
118名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 02:28:02 ID:hNsKcDM/
「…そういえばお前、前に、血液パックはまずくて、直に飲む方が美味しいって言ってたよな」
哲晴は、ふとそう尋ねた。
「うん、そうだけど。よくそんなの覚えてるね」
「まあね。誰かさんの事だと、なんでかよく覚えるんだよね」
真紀の頬がサッと薔薇色に染まる。
「で、今日みたいな日に飲むとしたら、冷た〜い血液パックと、温かい生血、どっち選ぶ?」
「懐かしの、究極の選択か」
真紀は、考えながらプシュっと缶を開けて口をつけ、そこではっと気がつく。
「そんなの決まってるよ。今、ボクが飲める生血っていったら、哲晴のだけだろ? なら、答えるまでもないよ」
真紀は、満面の笑みを浮かべつつ、じっと哲晴の顔を覗きこむ。
「ボクにとっての一番は、いつもキミなんだから」
今度は、哲晴の顔がぽっと真赤になる番だった。
「あとねぇ。哲晴クン。キミが一つ忘れてることがあるよ」
真紀は、ニコニコと妙に脅迫的な笑顔を浮かべつつ続けた。
「ボク、前に言ったよね。血が滅多に飲めないから、血への渇きを押さえるために、血が欲しくなるもの、血の紛い物、血の色をした飲みものは、大っ嫌いだって」
哲晴が渡したのは、グレープソーダの缶だった。
「あ、ゴメン」
真紀はふっふっふと、気味の悪い笑みを浮かべた。
「てなわけで、口直しさせてよ。ね」
場所は丁度公園の前。時刻は丁度夕暮れ時。広めの公園の中に人気はなく、人目を避けるのに丁度良い。
真紀の瞳がスッと真紅に染まり、牙が口からちょこっと突き出し、爪がするりと伸びる。
抗議の声を上げようとした哲晴は、口を塞がれてそのままズルズルと公園の木立の中に引きずり込まれていった。
119名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 02:30:14 ID:hNsKcDM/
真紀に、樹の1本にドッと押しつけられて、哲晴は観念してシャツのボタンに手をかけてプチプチと外す。
と、その唇にフッとグレープソーダ味の柔らかいものが触れた。
不意打ちを受けた唇がカッと熱い。
哲晴の背中に腕が回され、しっかりと抱きしめられる。哲晴も彼女と一つになろうとするかのように、しっかりと抱き返す。
薄着越しに、真紀の身体のフワフワとした柔らかさが伝わってくる。
息を止めてたら窒息してしまうくらいの間、しっかりと塞いでから、真紀は哲晴の唇を開放した。
「ふぅ。ご馳走様」
真紀は、ペロリと血色の唇を舐めた。
哲晴は、自分がほっと漏らした安堵の溜め息に、微かに残念の色が混ざってる気がした。
「さて、口直しその1はいただいたので、次いくよ」
真紀は、まだ哲晴を開放してはいない。抱きしめたままだ。
「ちょ、ちょっと待て。口直しって、コレで終りじゃないのかよ」
その抗議は即座に却下される。
「何言ってるんだい。自分だってその気だったくせに」
ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべて、真紀は口直し第2弾のために今度は肩に口付けをした。
「じゃ、いっただっきま〜す」

<了>
120名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 02:32:05 ID:hNsKcDM/
えーと、この真紀と哲晴のカップルの話は、「放課後の吸血鬼」という名の本編があって、その後日譚とか外伝的なものなんです。
ところが、肝心の本編がまだ書きあがってない状態なので、とりあえず息抜きに書いた外伝の方を先に貼りつけました。
121名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 20:17:21 ID:61XHdERy
>>120
GJ!本編も楽しみに待ってます。

ふと疑問が。
血だけでなく、白濁の液体はどうなのdうわなにやめろあqwせdrftgyふじこlp;.
122名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 22:52:27 ID:nCbl9t24
この前買った「吸血鬼さんお静かに」もこんな雰囲気の小説だった。血液パックの血を飲んでたけど
生血を飲んでからはパックのはマズくて飲めないって言ったりしてるところとか
ただ…その…あっちは読んでから801だったことが判明してがっかりorz
吸血の描写は参考になった。今度書くときに活かせそうな気がする

参考までに表現一部抜粋。初めて生血を吸うところ

…尖った牙が、ツプリと肉に突き刺さる感触が分かった。痛くはないし不快でもないが、何となく
妙に気にかかる感触である。
スッと血を吸い上げる。
体の中から血液を抜かれる感じは、言葉に言い表せないゾクゾクとした快感があった。
(人物名)はその奇妙な快感を何とかやり過ごし、首筋に齧りついている(人物名)の方をチラリと見る。
一心不乱に吸い上げていた。
「どうだ?まずいか?」
(人物名)がそう聞くと、(人物名)はいったん口を離してうっとりと答える。
「ううん、すごく…美味しい。」

>>120
改めて、自分は吸血鬼の女の子が出る話には並みの人以上に萌えるものだと思った。超GJ!
123名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:41:28 ID:OkO/dwkX
このスレには初めて投稿します。
オーソドックスな座敷わらし? ネタで、いまいち人外ギミックがないのですが。
124名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:42:21 ID:OkO/dwkX
「ふぅ……」
僕は真夏の熱気のせいで滝のように流れ落ちる汗を拭って一息ついた。
目の前には古びた屋敷がある。
僕の住む町から電車で何時間もかかるほどの山奥。
僕の祖父が所有していたらしいこの屋敷こそが、今日の僕の目的地だった。
らしい、というのは僕はもちろん両親ですら、つい数日前までここの存在を知らなかったせいだ。
半年ほど前、突然倒れた祖父は辛うじてその時は命を繋ぎとめたものの
倒れてから1度も意識を取り戻すことなく、1週間前に息を引き取った。
その葬儀も終え、遺産に関して色々と処理をしている最中にこの場所に関する書類が出てきたのだ。
祖父は旅行好きで、特に定年で退職してからは頻繁に出かけていたのだが、どうやらその内の何割かはここに来ていたらしい。
そんなことがわかって、一体どんな場所なのか忙しい両親に代わり僕が様子を見にきたのだが、
「下手するとここで1晩明かさないといけないのか」
自然と溜め息が漏れてしまう。
長い間手入れがされていないらしく、今にも倒壊するのではないかと不安になるほどその屋敷は古びていた。
とはいえ1番近くの民家まででもかなりの距離があるここからでは、すでに夕日と言っても差し支えがないほど日が傾いている今から戻ってもいつ着けるかわからない。
下手をするとどころではなく、ここに泊まるのはほぼ確定事項だった。
「まあ落ち込んでてもしょうがないよな」
僕は気を取り直し、父から借りてきたデジカメで一応外から何枚か写真を撮ってから鍵もついていない引き戸に手をかけた。
125名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:43:01 ID:OkO/dwkX
「へぇ……」
埃臭い空気に満たされてはいるものの、中は思っていたよりも荒れてはいなかった。
これなら1晩くらいだったらそこまで苦痛でないかもしれない。
そんなことを考えながら、玄関に近い側から部屋を1つずつ調べていくと、不意に僕の耳は1つの音を捉えた。
トン……トン……と一定のリズムを刻む音。
あまりにも規則正しいリズムに、最初まだ生きている時計があるのではないかと思った。
ただ時計の音にしては違和感がある。
「なんだ……?」
どうやらその音は屋敷の奥の方から聞こえてくるらしい。
僕はその音に引かれるように、長い廊下を歩いていった。
長い廊下の突き当たりにある部屋。
その扉を開けた僕は思わず息を飲んだ。
人が生活するための家具の類はほとんどないがらんとした部屋。
あるのは部屋を半分に分断する木製の格子だった。
向こう側、1つだけある窓にも格子がはめられているのが見える。
その格子によって区切られた部屋の中に、1人の少女がいた。
それは狐か狸に化かされているのではと疑うほどの光景。
年の頃は十にも満たない程度だろうその少女は、一糸纏わぬ姿で鞠つきをしていた。
病的なまでに白い少女の裸身と長い黒髪、そして少女の手と床の間を往復する真紅の鞠。
さっきから聞こえてきた音はその鞠が床で弾む音だったのだと僕は知った。
126名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:43:39 ID:OkO/dwkX
「き、君……」
僕の声は自分でもわかるほど震えていた。
その声を聞いて初めて僕の存在に気付いたように、少女はこちらに顔を向ける。
ひどく整った顔立ちだった。
そこにはいかなる感情も浮かんでおらず、生気すら感じさせない。
人形のようなというのはこんな感じを言うのだろうか。
「……ゴロウ?」
少女の声は外見相応の高く澄んだ響きを持っていた。
「あ、僕は章吾って言って」
ゴロウ、という名前に僕は心当たりがあった。
「吾郎っていうのはたぶん僕の爺さんだと思うんだけど」
ここは祖父が所有する屋敷なのだから、そこにいる少女が祖父のことを知っていること自体に不思議はない。
問題なのはなぜこの少女がこの屋敷にいるのかだ。
「……ふぅん」
「あの、君はどうしてここに?」
この部屋の様子を見る限り閉じ込められているような印象を受ける。
あの祖父に限ってとは思うものの、少女が服を着ていないこともあって、ひどく嫌な想像が頭をよぎった。
「……ゴロウは?」
そんな僕の疑問に少女は答えず、逆に質問を返してくる。
「爺さんは死んだんだ。1週間前に」
どう答えるべきか迷った僕は、結局正直にありのままを伝えた。
状況がわからない以上、嘘をつくにしてもどう言えばいいのかなどわかるはずもない。
「……そう」
少女は喜んだようでもなければ哀しんだ様子もなかった。
127名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:45:39 ID:OkO/dwkX
不意に少女が壁の1点を指差した。
つられるようにそちらに視線を向けた僕は、そこに1本の鍵が掛けられていることに気付く。
そして部屋を分断する格子には小さな扉が付いていた。
「あ、す、すぐに出してあげるから」
僕は慌てて鍵を取ると扉に付いていた南京錠に差し込んだ。
鍵を回すと無骨な錠が手の中に落ち、その重さがまるで心に圧し掛かってくるような錯覚に感じてしまう。
「……?」
扉を開けたにもかかわらず、少女は出てこようとはしない。
もしかしたら僕のことが怖いんだろうか。
ここで少女が受けていた仕打ちが、もしも僕の想像通りならそれも無理はないだろう。
それならば僕は部屋から出た方がいいのかもしれないが、かといってこのまま放り出すわけにもいかない。
「……どうしたの?」
陰鬱な気持ちを胸の中に押し込め、僕はなるべく優しい声になるように心がけて尋ねた。
「……来て」
少女はやはり僕の質問には答えてくれなかった。
わけがわからないまま、言われた通りに扉をくぐると、少女は僕の目の前までやってくる。
その迷いのない足取りに、どうやら僕のことを怖がっているようではないことを見て取り僕は少しだけ安心した。
僕の胸の高さあたりから、じっとこちらを見上げてくる2つの瞳。
そこからは何も感情が読み取れない。
まるで底無し沼の水面を覗いているようだ。
もう用済みとばかりに部屋の隅に放り投げられた鞠が、トントントンと軽やかな音を立てた。
128名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:46:36 ID:OkO/dwkX
「……屈んで」
いつしか僕は少女の言葉に逆らえなくなっていた。
少女の澄んだ声が頭に直接染み込んできて、それがそのまま僕の意思を介在せずに全身へと指令として送られていくような感覚。
僕が頭の位置を下げていくと、それを迎えるように少女は背伸びをする。
次の瞬間、僕達の唇は触れ合っていた。
「……っ!?」
唇に当たる柔らかい感触に、まるで冷水をかけられたように僕は我に返った。
慌てて頭を上げようとしたけど、一瞬早く僕の首に回された少女の両腕によってそれは叶わない。
首の後ろに絡み付く腕から伝わる少女の高い体温。
目の前には瞳を閉じた少女の整った顔。
「んんぅ……」
混乱する僕の頭に拍車を掛けるように、腕よりもさらに熱い少女の舌が僕の口内へと滑り込んでくる。
僕は蛇のように縦横無尽に動きまわるその舌に成す術もなく蹂躙された。
狭い口内で2つの舌を散々絡め合った後、ようやく少女の舌が後退していく。
やっと解放されると思った。
けれど僕の体は自分でも信じられない行動を起こす。
下がっていく少女の舌を、意思に反して僕の舌が追いかけていくのだ。
まるで2人の舌が見えない糸で結び付けられているようだった。
少女の口内は熱く煮えたぎる糖蜜に満たされた壷を連想させる。
その中で2本の舌は数年振りに再会した恋人のようにもう1度熱く絡み合う。
加えて今度は柔らかい唇によって扱き上げられ、僕は理性がカンナで削り取られていくような感覚に囚われていた。
129名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:47:14 ID:OkO/dwkX
どれくらいの時間続けていたかは、もうわからなくなったいた。
ようやく解放された僕は呆然と少女の顔を見つめることしかできない。
「ふふ、気持ち良かった?」
初めて少女の顔に表情と呼べるものが浮かぶ。
それはどこまでも無邪気で、同時にどこまでも淫靡な笑み。
「こんなになってる」
答えられない僕にさらに少女は笑みを深くして、突然僕の股間に手を這わせた。
僕のそこはすでにズボンの中で痛いほど勃起し生地を盛り上げている。
不意打ちでそこを責められ、腰が抜けたように僕は床の上に座り込んでしまった。
「そんなに良かったんだ?」
今度は逆に少女が僕を見下ろす形になる。
さっきまではほとんど口を開かず、開いたとしてもせいぜい単語程度しか口にしなかったことが嘘のように饒舌になっていた。
表情の変化も含めれば本当に一瞬で別人に入れ替わってしまったかのようだ。
立ち上がることも出来ずただ見上げる僕の足の間に少女が滑り込んでくる。
その細い指先がズボンの前部にある金具にかかったとき、僕は思わず身を震わせていた。
それが恐怖によるものなのか、それとも期待からくるものなのかは自分でもわからない。
ただ少女がやろうとしている事を止めることもできず、僕はされるがままになっていた。
130名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:47:59 ID:OkO/dwkX
トランクスの下から姿を現した僕のペニスは、先端がすでに先走りの液で濡れていた。
太い血管の浮いた茎の部分に少女の指が絡む。
いかに少女の体温が高いとはいえ、さすがに大量の血液が流れ込んだそこほどではないらしく、冷やりとした感触に包み込まれて僕はそれだけで達しそうになった。
その波をギリギリで乗り越えたところを見計らったように、少女の手が上下に動き始める。
僕の見ている前で、透けるように白い少女の指が、浅黒い僕のペニスの上で踊っていた。
そのコントラストがどうしようもないほど卑猥で、それが体の中でも最も敏感な部分を擦られる刺激と合わさって興奮が一気に高まってくる。
今度は耐えられないと心の底から思った。
「で、でる……」
股間で爆発する射精感。
けれどペニスの先端からは白濁液が放出されることはなかった。
「あっ……くぅ……」
鋭い痛みが走る。
絡められた少女の指は包み込むように優しく触れているだけだ。
にもかかわらず、まるでペニスの先端に栓をされたかのように精液が逆流していくのがわかった。
「な、なんで……?」
「ダーメ。私が良いっていうまで出させてあげない」
悪戯っぽく少女が笑う。
「苦しい? でも最後は皆喜んでくれるんだから」
皆、という言葉が頭に引っかかった。
けれど、それも次の瞬間には新たな刺激に押し流されてしまう。
131名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:48:50 ID:OkO/dwkX
再びペニスに視線を落とした少女がそのまま頭を位置を下げて、先端をチロリと舐めたのだ。
それだけで僕のペニスはビクンビクンと跳ねまわる。
その反応に気を良くしたのか、少女は全体へと舌を這わせていった。
舌の先端を細く尖らせて尿道口をほじり、そのまま裏筋をなぞるように移動させていく。
根元まで行くと今度は舌全体を使って竿を舐め上げていった。
ぬめりを纏った軟体動物のような舌が忙しなく動きまわる一方で、指も休んではいない。
陰嚢をやわやわと揉んでいたかと思えば、唾液と先走り汁の混合物を指先に纏わせて張り出したエラの裏側をくすぐっていく。
そんな責めを受けている間、何度も僕の頭には絶頂感が押し寄せてきていた。
けれど何度それを経験しても、実際に射精することは出来ず、いつしか感じているのが苦痛なのか快感なのかもわからなくなっていく。
「もう限界? だらしないのね。まあいいわ、そろそろ出させてあげる」
朦朧とする意識の中で少女の声を聞いた。
その瞬間それまでペニスを縛り上げていた鎖が一瞬で解かれたようなイメージが頭を貫く。
それと同時に今まで以上の包み込むような快感が股間から生まれた。
白く霞む視界の中で少女が僕のペニスを口に含んでいるのが見える。
さっき舌で感じた少女の口内。
それが舌の時以上に鮮明に意識できる。
耐えることなど一瞬たりとも出来なかった。
今度こそペニスの中を精液が通過していくのがわかる。
1人でする時とは比べ物にならない快感が全身を掛け抜け、僕は夥しい量の白濁を少女の口へ吐き出していた。
何度もな何度も跳ね回る僕のペニス。
吸引のためにすぼめられた少女の頬と、ペニスの動きと連動するように上下する喉。
神経が過電流で焼き切れてしまうほどの衝撃の中で、僕の意識は薄れていった。
132名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:49:29 ID:OkO/dwkX
「ん……」
ゆっくりと目を開く。
僕が意識を取り戻した時、格子付きの窓の外はすっかり暗くなっていた。
頭の芯が痺れたようにぼうっとする。
耳を打つのはトン……トン……という規則正しい音。
その音に僕は慌てて飛び起きる。
少女は僕が部屋に入ってきた時のように鞠つきをしていた。
「き、君は……」
少女がちらりとこちらに視線を向ける。
行為の最中が嘘のように、再び少女の顔から感情が抜け落ちていた。
だからあれが僕の夢だったのではないかと一瞬思ってしまう。
けれど完全に萎えた状態で放り出されている僕のペニスが、あれが嘘ではなかったことを証明していた。
というか局部を晒したままで気絶していた姿は相当間抜けな気がして、一気に顔が熱くなる。
慌ててズボンの中にしまう僕を、少女は感情のこもらない視線でじっと見ていた。
「……また、するの?」
突然尋ねられて僕は思い切り首を横に振った。
あの快感に未練がないわけではないけど、あんなものを何度も経験していたら本当に気が狂ってしまいそうだ。
それに少女がどんな意図であんなことをしたのかもわからない。
「……そう」
僕の答えに、少女は僕への興味を完全になくしたように鞠つきを再開した。
133名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:50:09 ID:OkO/dwkX
「爺さん……吾郎とも、さっきみたいなことしたの?」
不意に少女が行為の最中『皆』と言っていたのを思い出し、僕は尋ねていた。
「……した」
鞠つきを続けながら少女がポツリと漏らした言葉に、僕は頭を金槌で殴られたような衝撃を受ける。
「ごめん……」
謝って許されることではないとわかっていても、謝らずにはいられなかった。
「……なぜ?」
少女は鞠つきを中断して、またこちらを向いていた。
「だって、君をこんなとこに閉じ込めて……」
「……ゴロウじゃない」
それは閉じ込めたのが爺さんじゃないということだろうか。
「だけど、その、さっきみたいなこと……」
「……1度だけ」
回数の問題じゃない、そう言おうとしたときだった。
「ゴロウがちょうど今のあなたくらいの時、初めてここに来たゴロウに私が勝手にしたの。ゴロウもそのために来たと思ったから。
だけどその後でゴロウは言った。もうやめてくれって。だからそれからはもうしてない。ゴロウは時々会いに来てくれたけどお話をするだけ」
行為の最中のように少女が突然饒舌になる。
口調こそ相変わらず淡々としたものだったけど、どこか印象が柔らかくなったように僕は感じた。
けれどその変化以上に僕の心に引っかかったことがある。
「爺さんが僕くらいのときって」
自分で繰り返してみて、改めてその言葉の不自然さを認識する。
そしてそれに引きずられるように僕はあることに気付いた。
1度気付いてしまえば今までどうしてそこに頭が回らなかったのが不思議で仕方ないほどのことだ。
134名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:50:48 ID:OkO/dwkX
爺さんは半年前に倒れて、そのまま1度も意識を取り戻すことなく他界した。
そして僕がここに来たとき、床には厚い埃が積もっていて、かなりの期間誰も入っていなかったことを証明していた。
もう1度部屋を見回す。
少女が1人で半年も生きるための食料はどこにもない。
それに下世話な話をすれば排泄物などの匂いもない。
この部屋はあまりにも生活感というものに欠けていた。
「君は、いったい誰なの……?」
「……知らない」
少女が嘘をついている様子はなかった。
といっても表情がかわらないので僕の思い込みに過ぎないのかもしれないけど。
「なら、いつから君はここにいるの?」
「……ずっと前」
「ずっと前って?」
「ずっと前はずっと前」
答えと言えないような答えに、僕は言葉に詰まってしまう。
僕が黙ってしまうと、静寂が部屋を支配する。
どう聞けば手がかりが得られるのか悩む僕に、不意に少女は何かに気付いたように沈黙を破った。
「私をここに連れてきた人は座敷わらしって呼んだ」
「座敷わらし?」
「私がいれば幸せになれるって」
座敷わらしのいる家は豊かになる。
確かそんな言い伝えがあった気がした。
だけど、いくらなんでもそんな存在がいるわけがないと思う。
そう思う一方で、ここで最低でも半年もの間放置されて普通の人間が生きていられるわけがないとも思う。
135名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:51:24 ID:OkO/dwkX
「でも私にはそんなことできないって言った。そしたらあの人は怒って、それならせめて俺を喜ばせてみろって、さっきみたいなことを教えてくれた」
少女の声は落ちついていて、そこからは一片の辛さも感じ取れない。
「何度もしてる内に、他の人達も来るようになって、あの人はやっぱりお前は富をもたらす座敷わらしだって」
その言葉が何を示しているかわからないほど僕も子どもじゃなかった。
「だけどゴロウが初めて来てからしばらくしたら、ここに来るのはゴロウだけになった。そのゴロウも来なくなって、次に来たのがあなた」
その言葉は僕にとってわずかな救いになった。
その言葉通りなら爺さんがそれを止めさせたということなのだろう。
だけど納得できない部分もある。
「ここを、出よう」
僕はそう提案した。
どんな存在であれ、こんなところで独りぼっちにしておくことが良いことだとは思えない。
「……無理」
けれど少女の言葉は簡潔でありながら、これ以上ないほどの否定だった。
「どうして!?」
「……出られない」
「だって鍵は……え!?」
僕の見ている前で少女の右手が胸の前に抱えた鞠に沈んでいった。
再び少女の右手が姿を現したとき、鞠の表面に穴が開いていたりすることはない。
それはつまり、あの格子は少女を物理的に拘束する力がないということを物語っていた。
そして改めて少女が人と異なる存在だと思い知らされる。
「何か方法が」
「ゴロウは私がここから出られるようになる方法を色々調べたって言ってたけど、結局見つけられなかった」
136名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:52:29 ID:OkO/dwkX
「なら僕が見つけるよ」
自然と僕はそう宣言していた。
それは同情かもしれない。
だけど僕にはもう少女を放っておくことなんて出来なくなっていた。
そんな僕を少女はじっと見つめてくる。
表情は変わっていないのに、どこかその視線には今までにない熱が込められているような気がした。
「……あなた、ゴロウと似てる。ゴロウも好きな人以外とあんなことしたら駄目って。私が、好きってわからないって言ったら、それを知るためにも外に出ようって」
「うん、爺さんの言う通りだと思う」
そこで僕はさっきも感じた事を改めて意識した。
少女は爺さんのことを話すときだけ、ほんの少しだけど雰囲気が和らいでいるような気がする。
それは本当に微妙な変化で、ともすれば見逃してしまいそうなものだ。
それでも確かにそれは存在していると僕は確信していた。
もしかすると爺さんは外に出るまでもなく『好き』を教えることが出来ていたのかもしれない。
「そうだ、君、名前は? 僕は……」
「さっき聞いた。ショーゴ」
「あ、覚えててくれたんだ。それで、君は?」
そんな事だけで少しだけ嬉しくなる。
「ゴロウはコユキって呼んでた」
そう答える少女の表情はやはりどこかほころんでいた。
コユキ――小雪か、確かに目の前の少女には似合っている。
「僕もそう呼んでいい?」
少女、小雪はコクリと頷く。
それが、僕と小雪の出会いだった。
137名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:56:21 ID:OkO/dwkX
これで終わりです。
138名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 00:58:15 ID:Z0rpOp7H
>>137
        ☆ チン
                            
        ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          ヽ ___\(\・∀・)< ツヅキマダー?
             \_/⊂ ⊂_)_ \___________
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
        |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
        |             |/
139名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 01:10:41 ID:7mRAWHVm
>136
GJ!
ただやはり、このスレ的には本番に人外の要素がないのは物足りない。
あと、二人のこれからも見たいので、続きをお願いします。
140123:2005/05/06(金) 13:30:05 ID:OkO/dwkX
>>139
書くだけ書いたは良いものの、普段行っているスレにはそぐわない内容だったので
どのスレに落とすのが適当かと色々迷ってこのスレに辿り着いたのですがやはり人外要素は必要ですね。

ちょっとしたおまけ程度のものですが後日談めいたものを投下します。
これまたエロなし人外要素なしなのですが。
141名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 13:33:01 ID:OkO/dwkX
あれから1ヶ月、僕は再び小雪のいる屋敷の前に立っていた。
あの日そのまま1晩を明かし家に帰った僕は、両親には古びた屋敷だけあって他には何もなかったと報告した。
さすがに人じゃない少女が閉じ込められていたなんて言えるはずもないし、その少女に何をされたかなんて口が裂けても喋れない。
両親は一応それで納得したらしく、この辺りは土地の価値と言ってもあってないようなものなので、基本的に放置する方向になったようだ。
その点に関しては僕は安心していた。
あの日のように引き戸を開けて屋敷の中に足を踏み入れると、やはり奥の部屋からは鞠をつく音が聞こえてくる。
基本的に1人でいる時はずっとしているらしいのだが、飽きるとかそういったことはないらしい。
その辺の感覚もやはり人とは異なるのだろうか。
そんなことを考えながら今回は一直線に小雪のいる部屋に向かった。

「やあ、久しぶり」
部屋に入って声をかけると小雪が鞠つきを止めてこちらを向いた。
「……ショーゴ」
できれば笑顔で迎えて欲しいと思うのだけど、表情に変化はない。
それが少し残念で、でもまあまだ仕方ないかなとも思う。
「今日は良いものを持ってきたんだ」
気を取りなおし僕が手に持っていた袋を掲げると、小雪の視線がそれに向けられる。
「……いらない」
次の瞬間、あっさり拒絶された。
まだ中身すら見せていないのに、だ。
正直これを買うのはかなり恥ずかしかった。
それでもこの先必要になると思ってレジの女性の視線にも耐えたというのに、あまりといえばあまりの仕打ちだった。
142名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 13:34:37 ID:OkO/dwkX
「いらないって……まだ中身を見せてもいないのに」
そんなわけだから、僕の声に非難するような色が混ざってしまったのも仕方ないと思う。
「……服」
小雪がポツリと漏らした言葉に僕は驚いた。
ズバリ的中したからだ。
もしかして小雪には透視能力でもあるのではないかと目を白黒させる僕。
「……ゴロウも持ってきた」
「そ、そうなんだ」
考える事は爺さんも一緒だったらしい。
まあ考えてみれば当然爺さんだってそうするよな。
「服着ると変な感じ。だからいらない」
今までずっと裸でいた小雪にしてみれば、服を着た状態はかなり違和感があるというのは頷ける話ではあった。
だけど、ここにいる間はまだしも、外に出るとなればずっと裸でいるわけにもいかないだろう。
もちろん爺さんが一生かけても見つからなかったものがそう簡単に見つかるはずもなく、まだ外に連れ出す方法の目処はたっていない。
それでも、いつかその日が来たときのことを考えれば今の内から慣れておいてほしかった。
だいたいここにいる間はまだしもとは言っても、僕だって目の前で裸でいられると落ち着かない部分はある。
幸いというか小雪の体は女性としては未成熟で、しかも本人が下手に照れたりしない分、僕もあまり意識しなくて済むのだけど
それでもやっぱり初めて会ったときにされたこととかもあるわけで全く気にならないわけでもない。
と、初めて会った時されたことと言えば。
「そういえばさ」
ごり押ししても小雪は頷かないだろうと思った僕は1度話を変えることにした。
143名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 13:36:32 ID:OkO/dwkX
「前会ったときに……そ、その、あれの最中だけ別人みたいになってたけど、あれって何だったのか聞いていい?」
「客の相手をする時に、そのままじゃ駄目だからって教えられた」
こともなげに小雪は説明してくれた。
客、という単語が僕の心を沈ませる。
「じゃあ演技ってこと?」
頷く小雪。
「他にもいくつかあって相手の希望に合わせてた。例えば……」
そこで突然小雪の表情が変わる。
恥ずかしげに目を伏せ、ご丁寧に頬を紅潮までさせ震える声で、
「わ、私は……これからしていただくことを想像しただけで、ここをこん……」
「わー、ちょっとちょっとちょっとー!」
小雪の指先が冗談にならない部分に向かっていることに気付いた僕は慌てて行為を中断させる。
小雪がそういった気配を見せないおかげで裸でも辛うじて意識しないで済むと考えていたばかりなのに、この話題は薮蛇にも程があった。
「お願いだからそういうことしないでってば。……あれ? 相手の希望にって、あの時僕、何も言ってないよね?」
「そういう時は私が勝手に決める。ショーゴみたいな人はあれが1番喜ぶ」
再び感情の欠落した顔に戻って小雪は言う。
口調にも抑揚がないせいで、かえってそれが絶対の真実であるような気にさせられて僕は言葉を失った。
よりにもよって僕が1番望んでいたのが、見た目だけなら半分くらいの歳の少女に一方的に責められることだなんて、そうそう受け入れられるわけがない。
「……気持ち良くなかった?」
じっと見上げられて、一瞬あの時の脳が焼けるような快感がフラッシュバックする。
僕は、駄目人間だった。
144名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 13:37:21 ID:OkO/dwkX
以上です。
145名無しさん@ピンキー:2005/05/06(金) 15:24:12 ID:2UNxWnCp
確かに物理的な人外分は少ないけど
雰囲気とかの見た目以外の人外分は十分に出てると思う
GJ!
146某880:2005/05/06(金) 23:07:29 ID:pQOc3VhD
宣伝書き込みをして良い物かどうか悩みましたが
お世話になっているので一応報告。
モーショボーの話を「かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ」スレに投下してきました。
こちらのスレでも良かったのかも知れませんが、
「人外要素」が全く無い話でしたので、あちらに投下してきました。
今後は人外要素の有無で投下するスレを分けようかなと思います。
147名無しさん@ピンキー:2005/05/07(土) 02:05:13 ID:dnvLJRkb
猫の話の続きを投稿いたしますです
148猫の話4:2005/05/07(土) 02:05:54 ID:dnvLJRkb
 ふにふに、ふにふにふに……
「……」
 うわぁ……柔らかい……
 鈴音さんの尻尾は、鈴音さんらしい上品な毛並みで、すごく触り心地が良い。
 もう一方の空いている手で、頭のネコ耳をモフモフと優しく撫でる。
「……ん」
 鈴音さん、ちょっと身を捩ったけど、僕の胸で大人しくしている。

 ふにふに、もふもふ……

 鈴音さんを抱きしめたまま、しばらく夢中になって、耳と尻尾の感触を楽しむ僕。
「……ぅぁ」
「鈴音さん?」
「……いえ……何でも……ないです……」
「そう……?」

 ふにふに、ふにふにふに……

 また、僕が鈴音さんの尻尾を触りだすと、
「……んぅ……はぁぁ……」
 艶めいた、熱を帯びた吐息が、僕の胸にかかる……。
「……」
 僕は鈴音さんの顔を覗きこんだ。
 鈴音さん、顔を見せないようにしてるけど……真っ赤だった。
 呼吸も荒い。
「……」
 僕は意識して尻尾を弄りだした。
149猫の話4:2005/05/07(土) 02:06:25 ID:dnvLJRkb
 ふにふに、むにむにむに……

「……ぁ……」
 ふるふると震えだす鈴音さんの身体。
 僕は不意打ち気味に、尻尾をちょっと強く握ってみた。
「ひあぁっ!?」
 尚も、尻尾を愛撫し続ける。
「やっ、あっ、だめ……やぁ……あ、あ……はぁっ、ふああぁぁっっ!!」
 身体を仰け反らせ、絶頂を迎える鈴音さん。
 僕は、鈴音さんが倒れないようにしっかりと抱きしめる。
「はあぁ……ふにゃぁぁ……」
 鈴音さんはビクビクと身体を震わせ、僕にしがみついてくる。
「鈴音さん……?」
 僕が鈴音さんの顔を覗き込むとすると、鈴音さんは顔を背けた。
 そして、小さな声で
「よ、陽一さま……も、もうこれ以上は……」
 鈴音さん、顔が真っ赤で、内腿をモジモジと擦り合わせてて、
 すごく、敏感になってるのが分かる……。
「……」
 にへら〜と、今の僕の顔はとてもとても邪まに笑ってると思う。
 僕は尻尾を掴んだまま、鈴音さんをベッドにゆっくりと押し倒した。
「あぅ」
 思ったとおり、鈴音さん全然力が入ってない。
「よ、陽一さまぁ……」
 泣きそうな瞳で僕を見つめる鈴音さんに、僕はかなり、その……ゾクゾクした。
「ん……」
「ん……んんっ!!」
 強引に唇を重ね、舌を口内に侵入させる。
 もちろん、尻尾を弄るのは止めずに。
150猫の話4:2005/05/07(土) 02:07:05 ID:dnvLJRkb
「ん……ふぅん……」
 僕は鈴音さんの口内を掻き回すように舌を動かした。
 クチュクチュと舌を絡め、僕たちの唾液が混じりあう。
 ただ、それだけの行為で、
「ん……んぁぁ……あ、ああああっっ!!」
 鈴音さんの身体が海老反りになって、ピクピクと震えた。
「イッちゃったんだ、鈴音さん」
「あ……は、ぁ……」
 鈴音さんは虚ろな目でぐったりと口を半開きにして、涎が零れている。
「よ……陽一さま……もう……」
 鈴音さんの弱弱しい哀願に、かえって僕の中で鈴音さんをイジメたい気持ちが大きくなってくる。
「ひゃぁんっ?!」
 僕は鈴音さんにもう一度キスをすると、ゆっくりと舌を鈴音さんの唇に這わす。
 零れた唾液を舐め取り、そのまま舌を首すじ、肩、鎖骨と、舌でネットリと舐め回していく。
 もちろん、尻尾の方の愛撫も疎かにはしてない。
 優しく擦ったり揉んだり、時折ちょっと強めに握ったり。
 そのたびに、鈴音さんの身体は小刻みに震える。
「鈴音さん、こここんなに弱いんだ」
 クニクニと尻尾を弄びながら、鈴音さんの大きく柔らかな胸に舌を這わす。
「あ、ああぅっ! だ、だめぇっ!!」
 一際強く鈴音さんの身体が震えた。
「……また、イッちゃったね、鈴音さん」
「あ……は、ああぁぁ……」
 クリクリと硬く尖った乳首を指と舌で転がしながら、鈴音さんを見上げる。
 僕は身体を起こすと、まだ身体を震わせている鈴音さんの足を大きく広げた。
「……うわ」
「……」
 鈴音さんの雪のような白い肌が、羞恥で赤く染まる。
 思ったとおり、鈴音さんの秘所はもう……
151猫の話4:2005/05/07(土) 02:07:59 ID:dnvLJRkb
「ビショビショだね、鈴音さん♪」
 意地悪げに言うと、鈴音さんの顔はますます真っ赤になる。
「陽一さま……お願いですから……ひあぁっ!?」
 僕が軽く秘部を弄っただけで、鈴音さんが大きく仰け反る。
「だ〜め♪」
 僕は鈴音さんに軽くキスをすると、鈴音さんを抱き上げうつ伏せにする。
「あぅ……」
「こっちの方が、いろいろと触りやすいから、ね」
「あ……やぁ……」
 鈴音さんの尻尾を軽く引っ張りながら、その豊かなお尻を持ち上げる。
「ひぅっ!!」
 足を広げると、鈴音さんの愛蜜がたっぷりと溢れ、太ももからシーツにまで垂れた。
「こんなに濡らしちゃって……いけないなぁ、鈴音さん」
「あ、あ……」
「いけない鈴音さんにオシオキしないと」
 もう、僕のモノはすっかりガチガチになってて、
 それをドロドロになってる鈴音さんの秘部に押し付ける。
「ひあぁぁっ!!」
「ん、あ……」
 鈴音さんの膣内に僕のは根元まであっさり飲み込まれた。
 それでいて、
「くぁ」
 熱く滑った柔肉が、グニュグニュと僕のに絡み付いてくる。
「すご……鈴音さんっ!」
 ゆっくりと動くと、グチュリグチュリと結合部から蜜が溢れ出す。
「ああっ! ふああぁっ!! 陽一さまっ、よういちさまぁっ!!」
 尻尾を擦りながら、少しずつピストン運動を速くしていく。
「あ、あ、はあぁっ!!」
 鈴音さんのあられもなく乱れる様に興奮しつつ、
 僕は尻尾を握り、一際強く突き込んだ。
152猫の話4:2005/05/07(土) 02:08:55 ID:dnvLJRkb
「あ、あああああああああああああああああああああああああっっっ!!」
 鈴音さんが身体を震わせ、絶頂を迎える。
 やがて……
「あ……ふああぁぁぁ……」
 ぐったりと倒れる鈴音さん。
 でも、僕は……
 グチュゥッ!!
「ひぁっ!?」
 絶頂を迎えたばかりの鈴音さんの身体が跳ねる。
「よ、陽一さま……」
「ダメだよ、鈴音さん。僕はまだイってないんだからね」
 グチュグチュと、鈴音さんの膣内を思うまま蹂躙していく。
「あ、やあぁっ、そ、そんな……陽一さま……あぅっ!!」
 僕は、鈴音さんのネコ耳を口で軽くハムハムしつつ、
「いつもいつも、鈴音さんにいじめらればかりだから、
 今日はたっぷりそのお返しをさせてもらうよ、鈴音さん♪」
「あ、あんっ、そ、そんな、ひぁっ! ……よういち、さまぁ……はあぁっ!!」
 鈴音さんの尻尾を弄びつつ、僕はさらに深く鈴音さんの中に突き入れるのだった。
153猫の話4:2005/05/07(土) 02:09:40 ID:dnvLJRkb
 ……………………
 あれから……結局鈴音さんを失神させちゃうまでシチャッてたんだけど……
「あのぉ〜……」
「……」
「鈴音、さん……?」
「……」
 鈴音さんが、涙目で僕を睨んでいる。
 ……拗ねてる鈴音さんも可愛いなぁ……ってそうじゃなくって。
「あのぉ……僕、身体が全然動かないんですけど……」
 やっぱりこれって……金縛り?
「……」
 鈴音さん、身動きできない僕を見つめ、なんとも妖しい微笑を浮かべた。
 さらに言うと、すでに耳も尻尾もない、いつもの鈴音さんなわけで。
 ようするに弱点なんて、もう無いわけで。
「あ、あの〜……僕、もう休みたいなぁ……」
 もう、打ち止めですし。
 それにほら、白々と日も出てきてますし。
「ね、だからその……鈴音、さん?」
「陽一さま……」
 鈴音さんが、愛しそうに僕の頬を撫でて、言った。
「……お礼って……十倍返しが基本なんですよね?」
「……」
 そんな事聞いたことないです、ていうか、無理です、死んじゃいますって!!
「す、鈴音さん……って、あうぅっ!!」
「ふふ……ふふふふふ……」
 鈴音さんが妖しくも優しい笑顔とともに、僕に襲い掛かってきました……。

 この日、僕は今までの人生上、ものすごく情けない理由で学校を休む羽目になっちゃいましたとさ。

「す、鈴音さん……もう、許して……」
「ふふふ……駄目です♪」
154書いた人:2005/05/07(土) 02:11:16 ID:dnvLJRkb
これにてその4はおしまい
次回はたぶんエロ無しなお話にしようかなぁ……
しっかしヤリすぎな二人ですな(ぉ
155名無しさん@ピンキー:2005/05/07(土) 07:48:54 ID:7UajXZQX
キ、キターーー
待ってました
156名無しさん@ピンキー:2005/05/07(土) 08:56:11 ID:OarwA3Pd
キター
ネコキター
157名無しさん@ピンキー:2005/05/07(土) 10:51:36 ID:GoCCKBBR
座敷わらしタンキター
鈴音さんキター

(*´д`*)ハァハァしまくりです
158名無しさん@ピンキー:2005/05/07(土) 14:22:42 ID:UCSSE05h
猫の話さん超待ってましたっ!。
 GJですっ!また次回楽しみにしてますねーっ
159放課後の吸血鬼1:2005/05/07(土) 23:10:31 ID:3v3maWXl
哲晴が忘れ物を取りに戻った夕暮れの教室に、彼女はいた。
彼が教室に入ってまず気付いたのが、血塗れで倒れているクラスメイトの長谷川浩子だった。ギョッとしてあとずさった彼が、ふと人の気配を感じてそちらを向くと、もう一方の戸の所に、彼女が立っていた。
哲晴は、はっと息を呑んだ。
スラリとした長身に、セーラー服の襟を超えて背中まで届く、黒曜石の髪。整った卵型の顔に、雪の肌。鼻筋の通った、鼻梁の小柄な高い鼻。
意思の強そうな真っ直ぐな眉の下の猫科の獣を思わせる吊りあがり気味の目には、キラキラと輝く紅玉の瞳。小さめの口には、つやつやとした林檎の唇。
僅かに開いたそこからは、ニュッと突き出た白銀の牙。胸元まで挙げられた手のほっそりとした指に、長く鋭い真珠色の爪。
はっとする程美しく、ぞっとする程恐ろしい。
あきらかに人ではないそれを、哲晴は叫ぶことすら忘れて、ただただ見つめていた。
白銀の牙をちょこんと覗かせた、血に濡れたような唇が、笑いの形になった。誘うように、淫らに。
そして瞳をらんらんと血色に輝かせ、彼女はゆっくりとこちらへ近づいてきた。
哲晴はジンと頭の芯が痺れたようになって、その美しく恐ろしい者が、コツリコツリと歩み寄るのを、ただただ見つめていた。
心臓が、胸に手を当てる必要もないくらいはっきりと時を刻む。
彼女は哲晴の真正面に立つと、無造作にスッと右手を伸ばした。
鋭い爪の生えた白魚のような指が、ゆるりと哲晴の首筋を撫で、肩に置かれる。
逃げたい。このまま大声で助けを呼び、走り出してしまいたい。
しかし、襲いくる恐怖の中に、ポツンと染みのような別の感情があるのを自覚していた。
それは期待。この少女の口付けを首筋に貰えるのではないか、そんな期待だ。
でもそれは、彼女の餌食になるという事だ。
吸血少女は微笑むようにスウッと目を細めると、哲晴の両肩に手を掛け、ぐっともたれかかる。
魔性の者と接しているのに、ゾゾッと哲晴の背中を走り抜けたのは戦慄ではない。劣情だ。
そのまま体重を掛けられて、ドシンと尻餅をついて床に大の字に倒れる。
160放課後の吸血鬼2:2005/05/07(土) 23:13:02 ID:3v3maWXl
「うわっ」
動く事も忘れて見入っている少年の上に、少女はふわりと覆い被さる。
少女の身体は、思った以上に柔らかい。
二人の身体がぴったりと重なった。互いのドクンドクンという鼓動を全身で感じ取れる程に。
彼女も、期待しているんだ。そう思うと、哲晴の心臓はドクドクとより一層速く強く打つ。
いつの間にか、学ランのカラーのホックとボタンが外されていた。
その剥き出しの首筋に、生暖かい少女の吐息がハァハァとかかる。
それはまるで、血を吸う食欲への喜びよりも、むしろ少年の首筋への口付けに対する欲情のように聞こえる。
「ひ、ひゃあああっ」
哲晴は、黒目がちの目を見開いて、甲高い叫び声を挙げた。
ヌルリと、少女の舌が哲晴の肩を這う。まるで、少年の肉体をしっかり味わうように、ゆっくり、ねっとりと首筋をしゃぶる。
少女の口付けを受け続け、哲晴は耳まで真赤にしてビクンと身体を硬くする。
首筋に全身の感覚をギュッと集めたように、彼女が彼を味わっているのだけが感じられる。
敏感になった首筋から、不意にフッと舌の感覚が失せたかと思うと、灼熱の牙に貫かれた。
初めての感覚に哲晴は「あっ」と切なげな声をあげる。
炎の様にカッと熱いそれは、不思議と痛みを伴わず、哲晴の身体にズブリズブリと沈みこんで行く。
口付けを受けたところから侵入した炎は、瞬く間にぐるりと全身に回り、全身の細胞を溶岩の様にドロドロと燃えたたせた。
ズルリ、とその溶岩が流れて行く。首筋の、彼女がぽってりと柔らかな唇で、そっと口付けをしているところへだ。
血が、熱が、命が、心が、急速に溶け、流れ、吸われて行く。いや、まるで自分から彼女の中へ、熱いものを流しこんでいるようだ。
熱いものが流れ込んだせいか、重なっている少女の身体も、カッと熱くなる。
彼女の口に、溶けた自分が注ぎ込まれる。
彼女の中に、自分が入りこむ。
彼女と、溶けた自分が入り混じる。
彼女のものに、自分がなる。
彼女と、一つになる。
「あっ、ああああああっ」
その叫びは恐怖でも苦痛でもない、その叫びは……歓喜。
161名無しさん@ピンキー:2005/05/08(日) 10:05:10 ID:2QRGEs4f
続く・・・のか!?個人的にはかなりツボです(*´Д`
162春の花:2005/05/08(日) 21:50:43 ID:oqf3bF9d
 ある春の日のことであった。
 アルバイトに出てきた洋大は、買出しに出る麦の荷物持ちを命じられた。
 ただの買出しではない。世間知らずの麦のための社会勉強を兼ねており、そのお目付け役として洋大が選ばれたというわけだ。もちろん、支配人のワヤンが二人の仲を考えての事である。
 うららかな陽射がさんさんと降り注ぎ、草木をエメラルドの様に輝かせていた。そんな中を、洋大と麦は、他愛もないお喋りをしながら、てくてくとホテルから街まで歩いて行く。
 ごく普通の町並みでも、麦には興味津々といった風情だ。麦は時折立ち止まっては、隣の洋大に目に映るものについてあれこれ尋ねる。
 あまりにも常識的な事も尋ねてくる麦に、洋大は改めて彼女が人間ではない事を認識していた。
 その途中、ふと麦は叢の中に花を見付けた。丈の低い草に、小さな青い花がぽつぽつと咲いていた。
「わぁ、ちっちゃくて可愛い花」
 麦の歓声を聞きながら、洋大はその女の子らしい仕草に思わず顔がほころぶ。
「ねえ、洋大。この花の名前って何て言うんですか?」
 例によって、麦が尋ねてきた。洋大の乏しい植物学の知識でも、この花ならわかる。
「ああ、それ。春に咲く花で、オオイヌノフグリっていうんだ」
「へえ、ヨウダイってやっぱり物知りなんですね」
 世間知らず故に、素直に感心する少女を見て、洋大は彼女もキラキラと輝いているように見えた。
 が、次の瞬間、彼女が続けた問に、洋大は凍りついた。
「大犬の……(首をかしげて)フグリってなんですか? 洋大」


百鬼夜翔のパロディです。
エロじゃなくて下ネタギャグですいません。
元ネタ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1038315570/29
163放課後の吸血鬼3:2005/05/08(日) 23:53:47 ID:oqf3bF9d
そこで目が覚めた。自室の布団の上だった。
暗い中、ジットリと汗ばんだ身体を起こして時計を確認すると、時刻は午前3時半。眠りについてからまだ30分しかたってない。
ぼんやりとした頭に、じんわりと記憶が蘇る。教室で異形の少女を見かけたのは確かだ。
しかし現実には、少女はさっと逃げ出し、自分も友人が待つ昇降口までダッシュで逃げ出していた。
その後、友人と共に教室に確認に行き、職員室に飛びこんで、救急車が来て、警察が呼ばれ、事情聴取を受け、帰宅できたのは夜の11時。
その間、哲晴はその幻想的な少女の目撃談を、誰にも語っていない。
吸血鬼の少女なんて、あまりにもあり得ないものだし、あっという間に消え去ったそれは、なんだか夢か幻のように思えたからだ。
幸いなことに長谷川は輸血を受けて一命を取りとめた。警察から帰る間際にそれを聞き、一同はほっと胸をなでおろした。
かなり疲れてたものの、その夜は布団に入ってもなかなか眠れず、ようやくウトウトと眠れたかと思うとこのありまさまだ。
哲晴は起きたついでに、惨めな気持ちで汚れたパンツを処理すると、再び床についた。
今度は朝まで無事に眠れた。
164放課後の吸血鬼4:2005/05/08(日) 23:54:48 ID:oqf3bF9d
翌日、学校中がその事件もの噂でもちきりだった。
朝TVのニュースで放映されたせいもあるし、朝一番の全校集会のせいもあるが、何より事件のあった2年3組の教室が、警察によって封鎖されているせいでもある。
マスコミには哲晴達のことは伏せられて、第一発見者は教師ということにされていたので、話題の中心になるのは避けられたが、それでも周囲はザワザワと騒がしい。
「やっぱ、アレが良くなかったんじゃねぇか? 昔の事件の話」
昼休みに学食へ向かう途中、昨日一緒だった柔道部風の坊主頭の巨漢、横口和也が切り出した。
「そんな非現実的な」
周りに聞いている人がいない事を確認してから、同じく昨日一緒だったチビで眼鏡の西根恭一が反論する。
「いくら何だって…。私が、昨日17年前の吸血殺人の新聞記事を持って来たのは、全くの偶然です。
 そもそもそんな事件の話をしたからって、実際に17年前と同じ場所で同じ事が起きるなんて、非現実的ですよ」
「わっかんねぇぜ」
と、横口。
「先週、公園で起きた吸血殺人の犯人が、ちょうどあの時に学校にいてよ。お前の話を聞いてて、マネしてみたとか…、…ありえねぇな」
横口が、わざわざ自分で自分にツッコミをいれたりするのは、哲晴がぼんやりしているからだ。
「どうしたんですか? 中沢君」
名前を呼ばれて、哲晴が我に返る。
「え、なんだっけ? …悪い、昨日眠れなくて、頭がぼーっとしてんだ」
「ま、あんな事があったんだから、しゃあねぇな」
横口がそうまとめると、3人は学食の行列にならんだ。
開いている席について、惣菜パンだの持参のおかずだのと一緒に掛蕎麦をすすると、学食の一角に人だかりがあるのに気付いた。
一人の背の高い女生徒を、何人かの女生徒が囲んでワイワイと談笑している。
取巻きでガヤガヤしてるのは、隣のクラスの女子だが、中心のサンドイッチを食べている娘は…
ドクン、と哲晴の心臓が警鐘を鳴らした。
“彼女”だった。
肌はやや薄い肌色。瞳も日本人らしい黒。爪も短く地肌のピンク色と、昨日見た人外の要素は全てなくなっていたが、あの顔立ち――高い鼻、吊り上がり気味の目、真っ直ぐな眉――や長髪は、紛れもなく彼女だ。
向こうも、じっと凝視する哲晴に気付いて、目が、合った。
165名無しさん@ピンキー:2005/05/09(月) 05:52:00 ID:+Gp6Ser4
(・∀・)ドキドキ
166放課後の吸血鬼5:2005/05/09(月) 23:58:43 ID:tsMtKeMi
「どうした? 中沢」
2杯目の掛蕎麦にとりかかるために顔を上げた横口が、ふと尋ねる。
じっと凍りついたままだった哲晴が、ようやく解凍された。彼女の方は、すでにサッと目をそらしていた。
「え、いや。そこの賑やかなの、見覚えがないな、と思って…」
「あー、確か、2組に転入生が来たって、聞きましたから、それではないでしょうか」
西根も、そちらを見てポツリと漏らす。
それを聞いて哲晴は、キョロキョロと周りを見まわして、近くにいた2組の生徒に話しかけた。
「なあなあ、野上。あそこにいるの、お前のクラスの女子だろ?」
「おう、そうだ。へぇ、やっぱお前も興味あるんだな。あの転校生に」
垂れ目の野上は、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
「名前は大日向真紀。誕生日は10月3日。血液型不明。前は岩手にいたけど、その前は東京だったらしいんで訛はなし。身長170cm以上、俺よりデカイな」
「女子の半分は、お前より背が高いだろ」
哲晴が突っ込む。
「そう言うなよ。あと、俺の見立てじゃAカップ。そこが残念だけど、まあナイチチってのもそれはそれでイイんだけどな。
 得意科目はなし。絵が趣味らしい。親が海外赴任とかで一人暮し。住んでるのは市内。
 背が高いんで女子にもてている。おかげで俺達男は近寄れなくて残念だけどな」
「あいかわらず、女に関する事だけはすげぇな」
今度は横口が突っ込む。
「あったり前だろ。女の子は俺の生き甲斐だぜ」
ガッツポーズまでしてそう言う割に、野上は誰とも付き合っているわけじゃない。いや、付き合えているわけじゃない。
「ひょっとしたら、転校生が犯人だったりするかもしれません」
突如、西根がポツリと呟く。哲晴が彼をまじまじと見る。
「え…それって、ホントに?」
「なーんてね。ほら、月曜夜にやってるじゃないですか、少女漫画原作の吸血鬼もののアニメが」
「んなモン見てんのは、おめぇくらいだっ」
横口が、パシッと西根の頭を張り、一同が笑う。が、哲晴は、笑えなかった。
167放課後の吸血鬼6:2005/05/09(月) 23:59:14 ID:tsMtKeMi
放課後、哲晴が当番の2階トイレの掃除を終え、4階にある臨時の教室へ向かおうとしているところだった。
他の掃除当番は、自分に割り当てられたところを適当に片付けて、さっさと帰ってしまっている。
昨日の事件の影響で部活動は全面中止となり、生徒は下校を促され、校内はガランとしている。と、2−2の教室から一人の女生徒が出てきた。
大日向真紀だった。向こうも、こちらに気付いた。
ゾクッと哲晴の背筋を駆け抜けたのは、戦慄か、或いは期待か。が、彼女は露骨に目を逸らし、クルッと向きを変え、反対方向へ歩み去った。
ふと、不吉な予感がして2−2の教室に入ってみた。
「お、何だ? 哲晴」
中では、野上がうーんと大きく伸びをしていた。
「お、そうそう。今、俺の方が一歩リードしたぜ」
垂れ目をニヤつかせて自慢する。
「さっきさ、俺が居眠りしてたら、早く帰った方がいいよ、とか言って起こしてくれたんだぜ。ま、これで俺の顔は覚えてもらえるな」
哲晴の顔色が、サッと変わった。
「そ、そうか、良かったな。ところで、身体は何ともないのか?」
「ハ?」
野上は、きょとんとした。
「いや、こんな所で居眠りするなんて、珍しいと思ってさ。なんか疲れでも溜まってるんじゃないかって思って」
「ん〜。いや、別になんともないよ」
「そ、そうか、そりゃ良かった」
哲晴は、曖昧な返事をして教室を後にした。それを怪訝そうな顔で見送る野上の首筋には、ポツリと二つの真新しい傷跡があった。
168放課後の吸血鬼7:2005/05/10(火) 00:15:42 ID:amSyr90/
生徒達が下校して、ガランとした廊下にいるのは、哲晴と大日向の二人のみ。
彼女は微笑みながらゆっくりと近寄ってきた。
「ねえ、見たんでしょ。あたしの正体を」
つややかな唇から流れたのは、学食で談笑してる時に聞いたのと同じ、よく通る声。
「う…、あ…、み、見てない。何も見てない」
アワアワと呂律の回らないまま、哲晴はブンブンと首を振る。
「うそ、ばっかり」
大日向は、艶然と微笑む。
「見ちゃったんなら、しょうがないわね」
夢で見たのと同じように、瞳をスウッと真紅に染め、口元からニュッと牙を覗かせ、スラッと爪を伸ばす。
哲晴は、今度は踵を返してダッと逃げ出した。が、バタバタと走る哲晴のすぐに背後に、タッタッという軽やかな足音が迫る。
背後からドンとタックルを受け、バタリとうつ伏せに押し倒された。背中の感触は、Aカップでも意外にフカフカしている。そして首筋から右の耳にかけて、彼女の吐息がさわさわとくすぐる。
「つーかまーえたっと」
耳元で、からかうような軽やかで甘い声がした。
「ん、もう。逃げないでよ」
拗ねたような口調とともに、白くたおやかな指がスウッ哲晴の顔の正面に回される。月光のようにキラリと冷たく輝く、メスの様に鋭い爪がツ…と頬を撫でる。
「ひっ…」
声に詰まる哲晴の耳に、フウッと甘く息が吐きかけられる。
「ねえ…、あたしのこと…、誰かに…、話した…?」
ゆっくり、しっかり、じわじわと染みこませるように囁く。
「しゃ、喋ってない。誰にも喋ってない」
キュッと搾り出すように答える。
「ほんとに…?」
静かに問い返す。
「ほ、本当だ。警察にも、家族にも、友達にも、誰にもしゃべってない」
「そう…。良かった」
彼女は彼の首筋を妖しくそっと撫で、そのままプチッとカラーのホックとボタンを外す。首筋に、フッと生温かい吐息がかかる。
「な、何を…」
振り向く彼の眼前に、サクランボのようなつやつやと輝く唇があった。
「だったら…」
それまでゆっくりと言葉を紡いでいた唇が、急に素早く囁く。
「一人で済むわね」
169放課後の吸血鬼8:2005/05/10(火) 00:16:27 ID:amSyr90/
「ひっ…」
背筋をゾクッと戦慄が駆け抜け、今まで温もりを感じていた背中が、サッと凍りつく。
「や、やめ…ろ」
哲晴の弱々しい抵抗の言葉は無視された。
今まで笑いの形を作っていた、目の前の小さめの口がカッと開き、キラリと冷たく輝く牙とチロリと蠢くピンクの舌、そしてその奥の底知れぬ奈落が見えた。
思わず顔を背けた哲晴の首筋に、ズン…と鈍い衝撃が走った。真紀の鋭い牙が、ズブリと食い込む。
「うぁっ…」
か細い悲鳴を上げた口が、白く細い手にピッタリと塞がれ、頭も動かせぬように、剛力を放つ腕でがっしりと押さえられる。
次第に哲晴の息を荒げるのは、恐怖か、喜びか。
鋭い牙が、輝く牙が、美しい牙が、皮膚を、肉を、血管を、突き、破り、穿ち、中まで、奥まで、深くまで、ズブリ、ズブリ、ズブリと食い込む。
グサリと突き立てられた真紀の白銀の牙が、肉体を、生命を、精神を削りとっていく。削られた命が、チュウチュウと吸われていく。
自分の17年の人生に、彼女の牙が深々と食い込み、途切れさせようとしている。
死ぬ、殺される、終ってしまう。人ではない、人ではない姿の、人ではない容姿の、人ではない美貌の彼女によって。
老衰でもなく、病でもなく、事故でもなく、彼女の牙が、彼女の口付けが哲晴に終焉をもたらす。
それは、とても、とても、とても……素晴らしい、死。
170名無しさん@ピンキー:2005/05/11(水) 00:59:41 ID:AAWm5o9X
死んじゃった――(;゜∀゜)――!!
171ほしをみるひと:2005/05/11(水) 15:56:00 ID:7u1r8lYV
携帯が圏外だったので、公衆電話の向かうことにした。
保健室は一階だったので(あたりまえだ、救急車を呼ぶことになったとき、移動距離が少なくて済む)昇降口まではたいした距離はない。
しかしまあ、それでも憂鬱だった。
後ろ手に締めたドアからは半狂乱な叫び声が漏れ聞こえ、足元はなぜか膝下までたっぷりと、濁った水が浸水しているのだから。
靴下もズボンも台無しだなこりゃ、とか現実逃避しても責められはすまい。
なぜなら雨なんて降っていないのだから。

保健室はいい。なんといってもフトンがある。眠いときは寝る、コレが健康にいい。
固い机と椅子で寝て目覚めたときの、関節がぺきぺき言う感触も悪くはないが、たまには柔らかい布団というのも悪くない。
で、
地震で目が覚めると、そこは廃墟デシタ。
場所が保健室なのは間違いないのだけれど、備え付けの棚は倒れ(耐震設備をおろそかにするからだ)ガラスは割れ、隣ではサボリ女生徒が半狂乱になっていたりしました。
「ヒデぇ夢。」
「アンタナニ言ってるのよ夢なワケないでしょつねったら痛かったのがわかんないのああもう男でショ何とかしなさいよケイタイ通じないしっ!」
いやなんというか、息継ぎぐらいしてくれ。
髪を振り乱してこっちの襟首を締め上げんばかりの勢いで詰め寄ってくる女生徒A(戸追手、とかいったかな?)の剣幕に押されてベッドから降りたところで、

ざぶん

ぐるりと足を浸した水の冷たさが、寝ぼけ気味だった頭を一息に覚まさせた。
良く見ると、包帯やバファリンその他の錠剤がぷかぷかと浮かび、正露丸のビンが濁った水に沈んでいたりした。
「なんで水が溢れてるのよ私帰れないじゃない雨も降ってないのにっていうか今日は靴下いいの履いてるんだから濡らしたくないのよぉ!」
わかった戸追手(?)、お前がテンパってるのはよっくわかったから。救急車か警察かレスキューか黄色いのを呼んできてやるから、
俺の頭をぐるぐるブン回すのはやめにしてくれ。
名前もうろ覚えなサボり仲間の狂態を見るに堪えなくなった俺は、こうして荒れた保健室を後にしたわけだ。
それはもう、疾風のように。
172ほしをみるひと:2005/05/11(水) 15:57:59 ID:7u1r8lYV
廊下はよりいっそう、ひんやりとした空気を強めていた。
ただ水が冷たいのとは違う、背筋が凍りつくような、得体の知れない「冷たさ」。
それを無理矢理追い払うように身震いして、携帯を取り出す。
戸追手(2−Bだったかな?)を疑うわけではないが、自分の携帯を一応掛けてみる・・・しっかり『圏外』反応なし。
溜め息ついでに窓の外を見ると、薄曇りの空と延々と続く水、水、ミズ。
こりゃ電話線ダイジョブかなあ?とか思いつつも電話へ向かう・・・他にすることないし、何もしないでいたら、俺も叫びだしそうだし。
ザバザバと波を蹴立てて廊下を歩く。なんというか、シュールだ。
放課後なせいか人気のない廊下に、一人波音を響かせる俺。
角を曲がると、そこはもう昇降口だった。

ウチの学校は一言で言うと「コ」の字型をしている。
字面のタテの棒の側に昇降口があり、さらにその右側に校門がある。
また、三本の棒に取り囲まれたスペースが校庭で、上の棒のさらに外側に別棟で体育館とプールがあり、渡り廊下で校舎とつながっている。
ちなみに保健室は下側の棒の一階だ。
二年間の学校生活でもう見飽きた感のある昇降口は・・・一言で言うと異界だった。
たかが水、されど水。
「酒は水より害はなし、疑うらくば洪水を見よ」とは、とんちで有名な一休さんの言だが、膨大な量の水はただそれだけで人を心細くさせる。
空元気とは思いつつも、口笛のひとつでも吹いて気を紛らわせたくなった。
息を吸い込み、口をすぼめたところで動きが止まる。

ざばり

湿った空気の中、水音が聞こえた。
173ほしをみるひと:2005/05/11(水) 15:58:43 ID:7u1r8lYV
当然、自分のものではない。
『日も落ちない平日の校舎なのに誰にも出会わない』という異常なシチュエーションに、うなじの毛が逆立つ程緊張していた俺は、
程なくして音源が15メートルほど先の下駄箱の陰である事を特定した。

声を掛けたかった。

相手もびっくりするだろうが、こっちだって心臓がバクバク言ってるんだ。なんというかもう、ぶっちゃけ怖くて。
一人で保健室を出たときは「うっとうしいのから逃れたい」とか思っていた。
でも、いまは後悔している。
ワケも分からず起こった異変の真っ只中で、見知った顔のどんなに心強いことか。
なにも助けてくれ、とか、建設的な意見を述べてくれ、なんて贅沢は言わない。
ただ、誰かがいてくれる
たったそれだけでも、人っていう奴は落ち着ける生物なんだということが、この五分で身に染みて分かっていた。
だというのに、

ざば、ざばり

どうして声を掛けられない。なぜ背中が薄ら寒くなるんだ?
なぜ、「ここから逃げ出したい」なんて思ってしまうんだ。
174ほしをみるひと:2005/05/11(水) 15:59:25 ID:7u1r8lYV
下駄箱の間から、長く伸びた影がはみ出してくる。
どうやらだいぶ大柄な奴らしい。頼りがいがありそうだ。

ざば、ざば

ゆっくりとした足取りは大物のような風格すら感じられる。少なくともビビってはいないようだ。
俺はさっきまでの怯えを気のせいだとして無理矢理飲み下し、声をかけようと口をあけた。
そこで動きが止まる。

魚が歩いていた。

身長約2メートル、
全身を青緑の鱗でおおい、首のない頭についた目は空ろで鈍い銀色、
半開きの口からは剣山とピラニアの合いの子のような歯がびっしりと覗いている。
その「肉を噛み裂くため」にあるゾロリとした歯並びを見ていると、自然と鳥肌が立ってきた。

着ぐるみ、だと思いたい。

でも、
鰓がしゅこしゅこ動いているのは電動モーターか何かだとしても、この鼻の曲がりそうな魚臭さはなんだろうか。
中の人はきっと慢性鼻炎に違いない。
(アレは捕食者、俺は獲物)
不意に浮かび上がってきたそんな言葉を必死に押し殺し、あえてなんでもないように考えてみる。

上下水管が破裂してなぜか圏外になった学校の中で着ぐるみを着た慢性鼻炎で半魚人コスプレ男と遭遇

凄いドッキリカメラだ。見なかったことにして逃げよう。噛まれたら大変だ。
「コスプレは噛まないのでは?」とか思ったがあえて無視。
アレはコスプレということにしておかないと気が狂いそうだ。
ゆうに合計300度はありそうな奴の視界に納まらないうちにこっそり逃げようとした俺だったが、
そのとき「あるもの」が視界に入ってしまった。
175ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:00:06 ID:7u1r8lYV
繰り返すが、俺は校舎の「コ」の字の下棒からココに来た。
したがって真っ直ぐ前を見ると上棒とタテ棒のつなぎ目の廊下が見える。
ついでに体育館への渡り廊下も見える。

そのスノコの上を、人が歩いていた。

女生徒だ。
見事に小麦色をした小柄な身体を、ウチのブレザー(黒の上下)に包んだショートカットのおんなの子。
黒のニーソックスはポイント高め。
背負ったリュックのベルト部分に指を引っ掛けつつ、余所見をしながらこっちにむかって歩いてくる。
・・・なんかたっぷり50メートルはあるのにずいぶん細かいところまで見えてしまうのは、俺がスケベだからではなく、ノルアドレナリンの働きだということにしておきたい。
怪獣一匹、餌はふたつ。
あの子と俺、サカナから見て美味しそうなのはどっち?

「逃げろぉぉぉぉぉ!」
俺は大声で叫ぶと、後ろを向いて走り出した。
176ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:01:13 ID:7u1r8lYV
一体俺は何がしたかったのか?
馬鹿な事をした、その自覚はある。
無駄なことをした、それも分かってる。
だってそうだろう。(希望的観測として)ドッキリだったらいい笑いものだ「アンタビビリすぎ、かっこわる」とスタジオのコメンテイターのおねーさんに大爆笑されるだろうし、
本当にあの子を助けたいと思っているのならば、今すぐ半魚人に殴りかかるべきだろう。
ついでに叫んだことで確実にあいつの注意を引いたことは間違いない。
あと50メートル有るのなら、ふと前を見たあの子が自然に奴に気づいたかもしれない。
というか、気づくだろ普通。
でも。
気づいてからあの子がマトモな反応を示すまでに、どれぐらいの時間が掛かるだろうか?
「悲惨な幼児体験のせいで不感症(っぽい)奴」と陰で噂されている俺でさえ、たっぷり五秒は現実逃避してしまったんだ。
コイツはトラックにミンチにされた両親の死体よりヤバイ。
この半魚人は、ヒトならば見ただけですくみ上がっちまうぐらい、異様な気配を振り撒いている。
(ついでに、気絶しそうになりながらも、あまりの臭さに目が覚めてしまうぐらい魚臭い)
ただの女の子が、いきなりそんなものを見せられて、はたして「逃げる」ことを素直に実行できるだろうか?
また、「女の子が美味しく魚の餌にされている間に遠くまで逃げる」という選択肢は0.1秒で却下されていた。
どうやら俺は思ったよりおせっかいだったらしい。自分でも意外だ。
ただ、俺という奴はだからといって化け物退治に乗り出せるほど勇敢でもアホウでもなかった。
だから、このけったいな魚に追いかけられるところを見せれば、あの子も反射的に「逃げる」ことを思いつくだろう、と思ったのだ。
後は奴を振り切り、どこかに隠れればいい。
なんせミニチュアのゴジラみたいにのたのた歩いてる奴だ、きっと鈍いに違いない。
177ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:01:57 ID:7u1r8lYV
というわけで、、俺の取った「女の子に注意を呼びかけつつ必死に遁走する」という行為は、
決して場当たり的で無意味などっちつかずのパニックの産物ではなく、
生存本能と男の意地とを秤にかけた結果、合理的判断によって脳内多数決的に可決された、
女の子に覚悟を決める為のごく短い(だが貴重な)数秒を提供しつつ、自らの命を可能な限り守ろうとした、
自己犠牲精神と人道主義に溢れた、ついでにクレバーでスマートな行動だった、ということにしておいてほしい。

・・・どうせ無駄だったんだ。せめて美しい思い出として美化させてくれ
178ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:02:36 ID:7u1r8lYV
ザバァァァァッ!
一秒後、俺は踵を跳ね上げられて、水しぶきと同時につんのめった。
忘れていた。
ゴジラは水中を50ノットぐらいで泳げるのだ、ということを。
水深三十センチの水を「泳いだ」身長2メートルの半「魚」人は文字通り一瞬で俺を捕獲したわけだ。
まだ幸運だったのは、奴の手(前足?)はヒレであってカギ爪ではなかったことと、
ついでに引っかけられたのがズボンの裾だったので、身体に傷がつかなかったことだろう。
奴はゴジラではなかった。本物のゴジラには爪があるのだ。
いや、どっちも肉食ですが。

シャギャアアアアアッ

濁水の中で動けない俺に向かい、半魚人は大きく口を開けた。
一面に棘のような歯がびっしりと植わった口が、まるで地獄の入り口のようにぱっくりと開いて視界を埋め尽くした。
目をつぶってしまいたくとも、それすらも許されない圧倒的なまでの恐怖。
凍りついた心臓を、一息で噛み砕くような光景。
バネ仕掛けのおもちゃのように迫る口は一瞬で相対距離をゼロにし、今までとは比較にならないほどの腐った魚臭さが襲い掛かってきた。
ああ、喰われたな。
そう思った瞬間、「それ」はやってきた。
179ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:06:18 ID:7u1r8lYV
風が吹いていた。
その風は奴の背後から吹いていたというのに、前進を少しも助けようとはしなかった。
それはまるで、背後から投げかけられた絞首縄のように背後から奴を捕らえ、
此処ではない何処かへと引きずりこもうとしているかのようであった。

奴の歯が眼前3ミリのところでピタリと止まる。
吐き出される瘴気をもろに吸い込んでしまい、胸が悪くなった。
だが、奴の動きはそこで止まっていた。
必死に前進しては食いつこうとしているようなのだが、風はそれを許さなかった。

♪〜〜〜♪♪〜〜〜♪

気がつくと、笛の音が聞こえていた。
だがそれは一体如何なる楽器による、如何なるメロディなのだろうか。
フルートのようにも聞こえる「ソレ」は今までに聞いたこともないような、そして一瞬たりとも覚えていられないような、
不思議で狂った音律を奏で、俺の心を揺さぶっていた。
魚の口とは比べ物にならないほどの異質さ、飲み込まれるような存在感。
ずっと聞いていたいような、今すぐにでも耳を塞ぎたいような、
心をかき乱される音色だった。

♪〜〜〜♪♪〜〜〜♪
180ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:09:03 ID:7u1r8lYV
音にあわせ、不可解な風が吹く。
風に引かれ、半魚人が揺れ動く。
ゴジラと見まがう魚は、いまやプリンかババロアのようにプルプルと震えていた。
やがて、まるで力づくで引き抜かれる頭髪のようにごっそりと崩れ去ると、赤黒いジャムのようなモノになった。
灰色に濁った水は内側に大量の赤を受け入れ、その色をより濁ったものへと変えていく。
視界が開けた。
二メートルの魚がジャムになったおかげで、俺はとんでもないものを見てしまった。

ブラックホール
に似た何か

それは真っ黒な穴であり、直径は三メートルぐらいであり、例の風はそこから此処へと吹き込んでいた。
見る見るうちに魚だったジャムは赤黒い霧となり、穴へと吸い込まれていく。
絞首縄のような風は半魚人だったものを余さず捕らえ、穴へと運んでゆく。
赤黒く変色した水の中の肉片、血の一滴すらも水分子から選り分けているかのように吸い上げ、
「ここではないどこか」へと運び込んでいった。
後にはただ、何も無かったかのように、灰色の水がゆらゆらと揺れているだけだった。

♪〜〜〜♪♪〜〜〜♪

狂った笛の音が止むと、穴は消え、風も止んだ。
そこには銀色のフルートを咥えた黒衣で小麦色の少女がひとり、ぽつんと立っていた。
181ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:10:29 ID:7u1r8lYV
彼女はフルートをリュックにしまい、へたり込む俺のところへ歩いてくる。
何気ない歩みはどこまでも無造作で、あきれるほどに普通だった。
黒目がちの目はピタリと俺を見据えており、俺を目指していることは間違いない。
ざばざばと水をかきわけ、とうとう彼女は俺の目の前に来た。

喉がひりつく。
ヒトの形をしているというのに、彼女はさっきの半魚人より、俺から「遠い」。
トラックにミンチにされた両親の死体より「遠い」さっきの半魚人より、ずっとずっと「遠い」。
その「遠い」少女が今、俺の目の前にいる。
心臓がドクドクと早鐘を打ち、顎の先から冷や汗が滴った。
背筋が凍りつく。
ごくり、と喉が鳴る。
目が離せない。
仰向けにだらしなく足を投げ出し、後ろ手に上体を支えたまま、俺は瞬きすらできずに少女を見つめていた。
すっ、と彼女の右手があがる。
てのひらをこちらに向けていた。
「キミ、いつまでそうしているの」
小柄な外見に見合った、どちらかというと可愛らしい声だった。
それでも、俺は動けない。
ショートカットの黒髪の少女はふぅ、と小さくため息をつくと、
「このみず、トイレの水も混じって」
「うおわあぁぁあっ」
ザバアッ!
そのあんまりにも日常的な(かつ、無視できない)言葉に俺は思わず彼女の手を掴み、一息に立ち上がっていた。
182ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:11:14 ID:7u1r8lYV
「あ、よーやく立った」
そういって少女はにっこりと笑った。
「あ、あぁ、あ、あー」
なんといか、声も出ない。
化け物を越えたバケモノさんは、あまりにも普通の女の子だった。
「この水、あんまり浸からないほうがいいよ。キタナイし」
「あ、あぁ、そう、だよな」
ふつうの会話は、ふつうの精神状態を引っ張り出してくる。
「変な魚、さっきまでいたよな」
「うん、いたよ」
ようやく、舌が動いてくれた。
「俺、襲われてたよな」
「うん、襲われてたよ」
一つ一つ、確かめてゆく。
「夢じゃないよな」
「うん、夢じゃない」
まるで中一の英語の教科書のようなやり取りが、俺を急速に正気づかせてゆく。
「助けてくれた?」
「うん、助けたよ、そのつもり、だったんだけど・・・」
少女は急に不安そうな顔をした。
「怖かった?ごめんね」
申し訳なさそうに謝る少女に、
「怖かった。でも、助けてくれて、アリガトな」
俺はようやく笑いかけることができた。自然な笑み。

・・・ただ、誰かがいてくれる
たったそれだけでも、人っていう奴は落ち着ける生物なんだということが、この1分で身に染みて分かってきた。
183ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:11:55 ID:7u1r8lYV
すると少女はちょっとびっくりしたように俺を見つめ、
「怖いのに、そんなふうに笑えるの?」
と聞いてきた。
「怖いことは、怖い。でも、それは別として、礼ぐらい笑顔できちんとしたいじゃないか」
そう、俺の危機感は前座の半魚人ですでにいっぱいいっぱいで、とっくにオーバーフローもいいところなのだ。
怖いものは怖い。でも、あがいても無駄なものは無駄。
死にたくなくても10トントラックを受け止めることはできないし、両親に死なれて悲しくても時間は巻き戻らない。
そんなどうしようもないことよりも、今、やりたいことをやり遂げたい。
昼寝しかり、礼しかり。
・・・こんな性格だから「奇人変人」呼ばわりされるんだろうな、多分。

「ちょっと意外。普通は恐怖のあまりおかしくなって電信柱と世間話するところだよ」
あるいは髪の毛掻き毟りながら大絶叫するとか、そんなことを少女は言った。
「まあ、俺はこういう奴だから。ところで、君は誰?他に誰かいなかった?」
この子、名札をしていない。おまけに見覚えのない顔だ(女生徒の顔と名前に詳しいわけではないが)。
慎ましやかな胸元を凝視する俺を嫌そうに見返した彼女は、やがて名札というものの存在に思い当たったのか、バツの悪そうな顔で首を振った。
「うんとね、ボクはニセ学生だから、知らなくて当然だよ」
「・・・偽学生・・・」
「あるいは潜入工作員!」
えっへん、って、胸張るところですかそこは。
その突っ込みは次の一言で凍りついた。
「ついでに、人間じゃないから」
一瞬、あたりの空気が変わる。忘れていた冷気がぶり返し、背筋は再び冷や汗をかき始めた。
184ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:12:39 ID:7u1r8lYV
「ココでは今、ある儀式が行われている」
厳粛な顔と声色は、話の内容の突飛さを笑う隙を与えてくれなかった。
「完成したら、あんまり嬉しくない事になるだろうね」
ボクにとっても、ヒトにとっても。少女はそう付け足した。
「ボクはそれを止めに来た」
「正義の味方?」
思い返すと、あまりにもベタで頭の悪いやり取りだが、このときは大真面目だった。
いきなり魚の餌になりかけた身としては、安っぽくてもいいから正義のヒーロー(あるいは魔法少女?)というものがいて欲しかった。
無力な一学生を不思議な力で助けてくれる便利なオールマイティー(類型:未来から来たネコ型ロボット、あるいはクラスの一番後ろ、もしくは触手な魔法少女)
が、問題の一切を解決してくれる。そしてメデタシメデタシ。
そうであって欲しかった。
「違うよ。そんないいものじゃない」
現実は無常だった。
「でさ、ちょっと手をかして欲しいんだけど」
ついでに阿漕だった。
「だいじょうぶ、もしかすると死んじゃうぐらいの労働だから、全然平気」
さらに無茶苦茶だった。
「死にたくないってば!」
「なら、契約成立だね。よろしく〜」
やたらといい笑顔でトンでもないことをのたまってくれました。
「人の話を聞けェ!」
「聞いてるよ」
185ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:13:21 ID:7u1r8lYV
表情を消した少女は黒目がちな目でこちらをじっと見据え、諭すように語り掛ける。
「いい、このまま『儀式』が完遂されると、よくて日本沈没、悪くて世界の終焉がやってくる。
でもそれ以前に、キミきっと食べられちゃうだろうね。」
どこかから、しゃぎゃー、とか奇声が聞こえた気がする。
「あとさ、キミ、僕の話の真偽を判別できないよね。」
アタリマエだ。俺の人生経験に「半魚人に襲われる」なんて入っていない。
いわんやその半魚人を吸い込む黒い穴をや。
この子が大嘘をついていたとしても、それが嘘だと見抜く方法はないんだ。嗚呼、悲しき一般人。
「で、ほっといたら死ぬ。多分」
ここまではいい?と聞かれて、うなずかざるを得ない自分が悲しい。
「それをボクに協力するだけで『多分』を『もしかすると』まで減らせるなら、ずいぶんとトクすると思わない?」
にっこり。

これはあれだ、「拒否権は有りません」というやつですか。
自分から詐欺師(かも知れない奴)に身を投げ出せ、といいますか。

「・・・まずは警察に電話を掛けさせて欲しい・・・」
クーリングオフが効かないなら、せめて契約書ぐらいよく読ませて欲しいものだ。
186ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:14:02 ID:7u1r8lYV
「どう?つながった?」
「・・・ダメだ。」
少女は意外と素直に公衆電話までついてきた。
そのまま受話器を手渡してくれる。
だがやはり不通だった。完全に無音。10円もテレカも無反応、非常ボタンもダメ。
「これで『警察を呼ぶ』は無理だと分かってもらえたね」
「なら『このまま走って逃げる』というのは・・・」
昇降口の外は一面の水だった。だが、完全な無人だった。
半魚人は速い。だが、見つからなければ逃げ切れるかもしれない。
「実はあやしげなちからで『結界』が張られています。効果は通行禁止、ならびに警報。って言ったら・・・信じる?」

ぐ。

ソレはホントのコトですか?それともオオウソですか?
もし『真』だとしたら、生きて帰ってこれない。
『偽』だとしたら、無事生きて帰れる。

だが、一面に続く水は、はたして一体どこまで広がっているのか。
そう、校門の外にみえる町並みも、見渡す限り水没していたのだ。
加えてよく見ると、この町はなんだかおかしい。
人影が全く見えないのだ。助けを待つ人も、来てしかるべきな警察、消防も。
犬の吠え声ひとつしないというのはあまりにもおかしすぎる。
・・・隣家のクソ犬、夜になるとワンコラワンコラうるさいんだっつの。散歩ぐらい連れて行ってやれ飼い主。
187ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:15:07 ID:7u1r8lYV
さらに、彼女は今まで嘘をついていない(怪しげなセリフは山ほどあったが。たとえば世界の終焉とか)。
嘘をつくメリットが・・・あるのかどうだか確認してみよう。
「あのさ、俺に何させたいわけ?」
すると少女はあごにひとさし指を当てて「えーっとぉ」とか考え出した。
・・・考えてなかったのかよ。
「道案内とか?おとり・・・かなぁ?あと・・・・・・いろいろ」
「おとりって、死ぬだろそれは!」
「だいじょぶ!運がよければ助かるから!・・・きっと」
なんかもう、ぐでぐでだなぁ。
少女は一生懸命説得しているようなのだが、話せば話すほどボロが出る。そんな感じ。
話術としては三流未満だ。ダメダメすぎて・・・笑えるし泣けてくる。
「・・・」
「ホントだよ、ちゃんと精一杯助けるから!ひょっとするとムリかもしれないけど、でもウソじゃないから!」
そういう時は普通、うそでも誇大広告でも「絶対助ける」って言いませんか?
「・・・・・・ダメ、かな?」
答えは決まった。
しょぼくれた顔をしてこっちを上目遣いに見上げる少女に、微笑みながら右手を差し出す。
「いいよ、精一杯協力するから、なるべくなら助けてくれ」

これが三流の話術による最悪の欺術だとしたら、
それに引っかかった俺は、正真正銘本物の馬鹿者なのだろう。

―でも、なんというか、ほっとけなくなってしまったんだから仕方がないじゃないか。
この子がここまでして入れ込む理由は、正直全然皆目見当がつかない。
でも、「ここまで」しなければならない理由が、彼女にはあるということなんだろう。
だというのなら、
できる限りのことをしてあげたとしても、バチは当たらないんじゃないだろうか―

すると少女はきょとん、と俺の顔を見つめて、
「ありがとっ!」
と本当にうれしそうに笑いながら、差し出した手を両手でしっかりと握ってきた。
その手は本当に小さかったけど、とても暖かくて、そして柔らかかった。
188ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:16:09 ID:7u1r8lYV
少女は今、苦悩の表情で呻いていた。
それはまさに、「苦虫を噛み潰したかのような」という形容がヒトガタを取ったらまさにこういう形になるのではないか、
といわんばかりの苦悩っぷりであり、
それに右のコメカミに当てられた細いひとさし指と、
右ひじを支えるかのように掴んでいる左てのひら―腕組みと『考える人:作 ロダン』のアイノコのような思考ポーズ―と、
地の底から響いてくるような唸り声によるサポートがくわわり、人類史上未だかつてないほどの完璧さで、
少女の内面を外界へとアピールしていた。
「なあ、そんなに変なこと、俺聞いたかなあ」
下手人はおそるおそる自分の罪状を確認、可能なら否定しようとする。
「う゛〜〜〜〜ん゛」
返答は人の物とは思えないような唸り声。
「いやでも、みんなやってることだって!というか、普通聞くでしょこれ!というか協力するなら、聞くのが常識じゃん!」
「う゛う゛〜〜〜っ」
地底人ハウリングは鳴り止まない。というか、ますます強くなっていた。
というか、人を説得する際、「みんなやってる」「普通」「常識」や「あたりまえ」といった言葉をいきなり使うのは下策中の下策である。

「みんな」や「普通」といった抽象的で曖昧な表現には具体性は含まれておらず、「常識」や「あたりまえ」などといったコトバにいたっては、
時と場合と人によって千差万別に変化するものだからである。
また、こういった言葉の使用が好まれる用法は主に、相手に言葉尻を掴ませたくない、加えてノリと気分を掻き立てて勢いで相手を流してしまいたい場合、
ようするにキャッチセールスの勧誘などに多い。
あるいは、具体的なデータを準備できなかった間抜けが、苦し紛れに舌を動かしているかのどちらかである。
誠実に相手を説得するのならば、客観的に信頼できるデータを、相手の理解力に合わせて提示するのが、最低限の礼儀というものであろう。
もし、それを煙たく思うような相手であることが分かれば、改めて舌先三寸で丸め込むことにすればいい。
逆の手順は言語道断だが、この場合は「打ち解けてきた、あるいは気さくな人柄だ」といったイメージを相手に植えつけることができる。
閑話休題。
189ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:16:49 ID:7u1r8lYV
鳴り止まぬ鳴動をバックに少年はひとりごちた。
「名前聞くのって、そんなに悩むことかなあ・・・スリーサイズならともかく」
「う゛〜〜〜〜っ」

ぴたり
唐突に唸り声を収めると、少女はにっこりと笑った。
「ボクのなまえ、何がいいとおもう?」

ずぴし

「〜〜〜〜っ」
返答はでこピンだった。
「あのなお前、それはちょっとあんまりじゃないか。」
少年は半眼だった。
「呼び名ぐらい、初めに名乗るモンだろう?」
「『ボク』にはまだ名前がないんだよ。偽名を名乗っても、なぜかすぐバレちゃうし。ふしぎふしぎ」
「ばれると、なんかまずいのか?」
「・・・潜入工作員として、カッコつかないよぅ」
おでこを赤くして、なみだ目で弁解する少女。いや、もうすでにカッコついてないから、手遅れだから、と口ほど雄弁な目をした少年。
なんというか、登場シーンのシリアスムードのカケラすら残ってないぞ。
あの時とは180度逆のベクトルで、コイツは「遠い」と感じはじめた少年は、はぁっ、とため息をついた。
「だからさだからさ、ボクの名前、キミが付けてくれたら、うれしいな、なーんて」
そんな少年に、若干慌てながら、とりなすように言いすがる。
190ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:17:28 ID:7u1r8lYV
(『ボク』にはまだ名前がないんだよ)
少年は、その言葉を反芻していた。予想外なほど、ショックだった。
どうやらこの子は、本当に「遠い」存在らしい。
名前がない。それはすなわち、呼んでくれる相手がいないということだ。
ひとりぼっち、ということだ。
もしもこの『自称:潜入工作員 特記:人間じゃない』が、機械や昆虫のような奴だったら、ここまで衝撃は受けなかったに違いない。
ほほえんだり、はしゃいだりする情緒を持ち合わせている、自分と同じような「ヒト」だったからだ。
「遠い」存在であったとしても、
うれしい、と感じられる存在だということは、
さびしい、とも感じられる存在だということだ。
だれにも呼んでもらえない、ということは、
きっときっと、想像もつかない位、さびしいことなんだろう。
そう思った。
この「遠い」少女は、もっと近くの存在になって欲しい。そう感じた少年は、頭を回転させて、少女にふさわしい発音を探した。
191ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:18:13 ID:7u1r8lYV
「音色」
ぼそりとつぶやかれた言葉は、これまでの流れから若干浮いていた。
だから少女は聞き返した。
「え?なんか音するの?・・・あの『しゃげー』は音色なんて感じじゃないよ、奇声とか咆哮だよ」
「そうじゃなくてさ、お前の名前『音色』ってことで、どうかな?」
「え?」
両耳に手を当ててダンボにしながら、おどけたようにしゃべっていた少女は、ぴた、とその動きを止めた。
どこからともなく半魚人のものとおぼしき奇声が聞こえていたが、二人ともそれどころではなかった。
「イ、イヤその、初めてのときの笛の音があんまりにも印象的だったから!あと色黒いから!イタリア語でNEROだし黒って!」
「音色・・・NEIRO・・・ねいろ・・・」
あたふたする少年と、噛み締めるように繰り返す少女。
「でも安易過ぎたらゴメン。また考え直すから!」
「ボクの名前・・・他人につけてもらえた名前・・・音色・・・」
二人とも、互いの話を聞いてない。
「たとえばえーっと、そのぉ」
「これいい!すごくいい!気に入ったよっ」
くるくるとよくかわる少女の顔は、今までで一番いい笑顔を作っていた。
「ボクは音色!キミの名前は、なんていうのかなっ?」
192ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:18:52 ID:7u1r8lYV
予想というものは、時として裏切られるモノであり、時として人をたじろがせるモノである。
この時少年をたじろがせたものは、『鼻をかみたくて商店街の福引に挑んだら温泉旅行が当たった』的な大きすぎる配当である。
ぶっちゃけ笑顔に見とれてしまい、その後照れ臭くなった。
「なんというか、そんなにはしゃぐことか、自己紹介って」
だから、つっけんどんになってしまったのにはさしたる理由はない。
強いて言うなら、ボウヤだったからである。
「だって、ボク自己紹介するの初めてなんだもん。ね、それより、キミの名前教えてよ」
少女―音色―はそんな少年の青臭い葛藤などに気づきもしないぐらい浮かれていた。
「夏箕。楠木 夏箕だ。」
「夏箕・・・・・・うん、覚えた。よろしく、なつみっ」
はしゃいで再度夏箕の手を取り、ぶんぶんと大きくシェイクハンズする音色を見ながら、
夏箕はかつて「女みたいだ」とからかわれ続けて嫌いに思ってきた自分の名前を、少しだけ好きになれた気がした。
今はもういない両親に、今更ながら感謝したいと、少しだけ思っていた。

背筋を襲っていた冷感が綺麗さっぱり消えてなくなっていたことに夏箕が気付いたのは、ずいぶん後になってからだった。
193ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:19:47 ID:7u1r8lYV
「あ、そだ」
ぺいっと夏箕の手を放り出し、音色はリュックを下ろして―水に浸からないように注意しながら―中をごそごそやりだした。
「名前のお礼に〜」
ふんふーん、と鼻歌何ぞやりながら、牛乳瓶ほどの入れ物―というか牛乳瓶―を取り出し、ちょいちょい、とかがむように手招きし、
あ〜んして、といいつつビンのフタをきゅぽっと開け、
「ボクのとっておき、分けてあげるっ」
と、開いた口の中へと丸いものを放り込んだ。
194ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:20:42 ID:7u1r8lYV
甘い。
感想はその一言だった。
口の中でコロコロと転がる「ソレ」は、どうやら飴玉のようだった。
「あまい」
へへーん、と得意げに金色の飴玉のつまったビンをちゃらちゃら振る音色にそう告げる。
「はちみつ?」
「と、あといろいろ〜」
口の中でさらりと蕩けはじめる飴玉を転がしながら、俺はコイツとしばし会話を楽しむ。
しかし美味いなこの飴。
砂糖とは違う蜂蜜ならではの芳醇でコクのある甘みと口どけ、加えて舐めていると身体が温かくなってくるような気がする。
アルコールでも入っているのだろうか。
疲労や緊張がゆっくりと溶けていくようだ。
「そのまま聞いててね〜」
「ん〜」
なんかまったりしてきた。
「ボクの目的は、儀式の阻止。あと、なつみの生還」
「ん〜」
おまけでも忘れてないみたいだな、よしよし。って、俺おまけかい?
それでも気分がささくれ立たないのは飴玉によるリラックス効果のせいか。
「で、そのためにはまず、生存者を確保する必要があるの」
「ん〜」
コロコロ
「だからまず、夏見にしてもらいたい協力は、ボクを人のいそうなところに連れて行くコト!」
「ん〜、わかった〜」
コロコロ
「さっそく、案内いいかな?」
「わかった。・・・保健室だな、こっちだ」
口解けのいい飴玉は、惜しいことだがもう無くなってしまった。
俺は保健室においてきた戸追手のことを思い出し、音色を案内することにした。
先に立って彼女を案内する。ざばざばという水音がついてきたので、後ろは振り向かなかった。
195ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:21:21 ID:7u1r8lYV
・・・このときのやり取りに、どれほどの婉曲で深刻な意味が含まれていたのかに、楠木夏箕は気付いていない。
加えて背後の音色が口内で呟いていた「『釣魚』第一段階:完了。時間調整済み。スケジュールに問題なし。むしろ順調すぎ、要修正」
という呟きと、ゾッとするような怪しい微笑にも、気付くことはなかった。

「ねぇねぇ、なつみ〜?」
「なんだ?」
「手、繋いでいいかな?」
「・・・ほれ」
「わーい、ありがとっ。」
「わーい、って、コドモかおまいわっ」

足音と水音が角を曲がり、遠ざかっていった。
あとにはもう、シンと静まり返った水面だけが残されていた。

「ところでさ、ボクの名前、音色じゃイヤだ、って言ってたら、何にするつもりだったのカナ?」
「んー、花子とか、A子とか、イッパイアッテナとか?」
「・・・音色にしといて正解だったよ・・・ホントに・・・」
196ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:22:07 ID:7u1r8lYV
戸追手 似亜(2−C)は苛立っていた。
爪は噛まないようにしていた。もうそんな子供っぽいクセは抜けたはずだった。爪はお洒落のポイントなのだ。
それでも、気がつくとガジガジ噛んで居た。小学校4年生には、きっちりとやめたはずなのに。
身だしなみを整え、着飾ることの楽しみを覚えたからだ。自分が綺麗になるのは、良い。
鏡を見てキレイになった自分の姿を確認するたびに嬉しくなった。
髪を伸ばすことも、スタイルの向上のためにエアロビをすることも、パックをすることも爪や睫毛の手入れも、楽しかった。
失敗もした。それでも、『キレイになる』という目的と『キレイになっている』という達成感は、彼女に自信と、前向きな努力を習慣づけさせる原動力となっていたのだ。
そして気が付いたら、いわゆる美少女になっていた。
良い意味で噂になる快感というものも、おまけで付いてきた。
悪くない。そう思ったらもう、努力は苦痛ではなくなっていた。
自分を安売りはしない。援助交際などというのはマトモなやり方では自分の魅力を引き出せなかった「二級品」が、
なけなしのナニカを振り絞ってようやくひり出したマガイモノのエッセンスの、あきれるほどの安売りにすぎやしない。
マトモな恋愛もできない根暗や引きこもりや脳筋の成れの果て相手に、たかだた数万円で売り付けた「程度」と釣り合うほど、
私という人間の時間と形は安くはないのだ。
それが私という「ちょっと派手目で毛色の変わった優等生」の矜持である。
だというのに、
何故私は、今の私の原点でもある「整えられた爪」をこうしてダメにしているんだろう。

その理由が、本能的な恐怖であることが理解できないまま、
戸追手 似亜(2−C)はただひたすらに苛立っていた。
197ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:23:10 ID:7u1r8lYV
似亜と夏箕は入学以来の顔なじみである。
注目される快感を知っている似亜ではあるが、自己向上を第一とする彼女にとって、それは時としてストレスを感じさせるものでもあった。
要するに「うっとうしい」というヤツである。
そんな時彼女は、迷わず貧血になることにしている。
彼女が彼に出会ったのは、ある日フケこんだ保健室での、春の陽気に包まれた昼下がりの出来事だった。

あの日扉を開けた彼女が見つけたものは、
窓際のベッドの上にうつ伏せになって、一心に野良猫に猫じゃらしを振る男子学生の姿
だった。
こちらのことなど一切見向きもせず、小汚い野良猫を「ほれほれ」と挑発する姿は、なんというか奇妙だった。
美少女でありたい「日常モード」の彼女であったら、不愉快に思うなり彼の気を引くなりしただろう。
だがこの時は「お疲れモード」だったのだ。
何もしたくなく、何もしなくていい、というのは正直ほっとしていた。
198ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:26:24 ID:7u1r8lYV
見るとはなしに、彼と猫を見る。
大きく開いた校庭側のガラス戸の外、日当たりの良いコンクリートの上であくびをする猫と、
一心、あるいは無心に猫の気を引こうとする男子学生。
野良猫は良い具合に年老いているようで、お世辞にも可愛いとはいえない顔つきをしていた。
だが、あからさまな無関心を装いつつも、ネコジャラシにあわせて左右に振られる尻尾は何よりも雄弁だった。
猫がもししゃべれたなら「子猫でもあるまいし、そんなものに興味はない」とでも強がったところだろう。
なんだかおかしかった。
だいたい保健室前に猫が居る、という状況からしておかしい。
普通動物は強いにおいを嫌う。そしてココは薬臭い。
おそらく、縄張り争いに疲れた猫が、一時の避難場所として、競争相手の居ないところを選んだ、といったところなんだろう。
警戒することも、餌をねだることも、同族と戦うことも、
猫にとってはアタリマエの日常であり、そして否定など出来ようもない生命のあかしなのだろう。
それでも、時には疲れることもある。
そんな時ふと立ち寄った逃げ場所には妙なニンゲンがいて、もう忘れたはずの子供時代をさかんに掻き立てるように振舞っている。
それを、精一杯知らないフリをしながらも、じっと見つめてしまう。
似亜は猫に親近感を感じていた。
どっこいしょ、と空いたベッドに腰掛けたところで、何気なしに掛けられた、
「猫、好きなのか」
という問いに、
「ああ、小さいころは、ペットショップの店員になりたかったよ」
と答えていた。
それが、その日の唯一の会話だった。

静かで暖かな薬臭い一室。
自分と、ソイツと、猫。
誰一人目線を合わせないままに交わしたやり取りが、腐れ縁の始まりだった。
199ほしをみるひと:2005/05/11(水) 16:27:03 ID:7u1r8lYV
ちなみに恋愛感情は全く無い。

というか、美少女としては、仮にも男のが見ている前で味つき煮干をバリバリかじって野良猫の気を引いたりはしない、できない。
だから脳内的には「男」ではない。
もっというなら、保健室の外で会った事もない。噂にもなっていない。
ちなみに、眠れない夜のひとり遊びのイメージ喚起に使用したこともない。ちなみにもっとサドっぽい美形が愛用イメージだ。
戸追手 似亜が戸追手 似亜ではないときに出会う、お気に入りのCDの親戚のような存在に過ぎない。
むこうもそう思っているらしいことが、妙に嬉しかった。面倒でなくていい。

似亜にとっての夏箕とは、そんな相手だったからこそ、普段絶対に見せない甘えの裏返しのヒステリーを起こしたわけだが、
それが彼女の明暗を分けていた。
200なかがき 9-128:2005/05/11(水) 16:29:22 ID:7u1r8lYV
エロがなくてもうpっていいですか?
もう忘れられていそうですが、お久しぶりです。あるいははじめまして、9-128です。
新作投稿開始しました。ちなみに起承転結の起にあたります。
迷子になってたわけではないですが、イロイロ有っていままでばっくれてました。
エロなしはどうよ?って感じですが、自分を追い込む為にあえてうp。
それと今回『森精』よりエロ度は低めみたいです。
まあ、よろしければ暇つぶしにお付き合いくださいませ。

P.S.わかる人にはわかる系のネタを盛り込んでみましたが、わかんなくても問題ない・・・ハズ・・・

↓遅刻証明:バックレ中、こんなの書いてました。エロなしはこれでカンベンしてくだちぃ・・・
ttp://sslibrary.arings2.com/sslibrary/o/original300a.html
ゲリラりました。
201名無しさん@ピンキー:2005/05/11(水) 17:16:07 ID:d4Em+6Nn
ぐっじょぶ!そしてお帰りなさい。
202名無しさん@ピンキー:2005/05/11(水) 18:22:36 ID:+bFBVp7G
いやあ、ワクワクしてきます。ぜひ続きお願いします。
音色ちゃんは、てっきり名前じゃなくて顔がないと思ったんですけど。
203放課後の吸血鬼9:2005/05/11(水) 23:02:36 ID:+bFBVp7G
ガバリ、と哲晴は寝床から身を起こした。心臓が早鐘の様にドドドと打っている。息が嵐の様に荒い。
「ゆ…め…?」
思わず首筋に当てた手には、ベタッとした寝汗の感触。傷は、ない。ほっと息をついたものの、昼間の野上を思い出して、冷静な恐怖が襲ってきた。
「やっぱり、このままじゃいけないよな」
ポツリと呟いて、ギュッと拳を握った。

翌日、昼休みに学食で大日向を見かけなかった。パンを買いに来た野上に聞いてみると、弁当持参で教室で食べているらしい。
「やぁっぱ、お前も気になるんだな」
何か誤解した野上は、ニヤニヤしながら教室に戻っていった。
放課後、今日も部活動はなしで、校内放送で下校が促される。哲晴は、鞄持ってトイレ掃除に行っていた。そして気が引けたが、今日は手を抜いて掃除を早めに切り上げた。
放課後の校舎は、昨日と同じくガランとしている。
野上の情報によれば、大日向は岩手からの転校生だという。そして先々週まで、岩手では何件かの吸血殺人があった。という事は、やはり…
鞄を開けて、対吸血鬼用の道具を確認する。幸い、西根は一昨日に17年前の事件と一緒に、吸血鬼についての薀蓄を一通り語っており、それには対策も含まれていた。
登校途中にコンビニで買った、おろしニンニクのチューブ、近所の教会の布教活動でもらった、ロザリオと諸聖人の絵。
あとは、吸血鬼が強迫観念的に数えてしまうという豆に、吸血鬼を看破するための鏡。証拠写真を撮るための使い捨てカメラに、折り畳み式の果物ナイフ。
西根の話によると、伝承の人を襲う蘇った死者の他にも、猟奇殺人犯の中にも、好んで血を啜るものはいるという。その場合はナイフが役に立つだろう。彼女がどちらにせよ、まともに立ち向かえるとは思えない。後をつけて証拠を掴む他はない。
それらをポケットに忍ばせて、とりあえずそっと2組の戸を空けた。用心して覗いたものの、今日は野上もおらず、教室は無人だった。
良く考えてみれば、彼女がどこにいるのか、あてはない。靴箱を確認してみると、まだ校内にいる事はたしかだ。
204放課後の吸血鬼10:2005/05/11(水) 23:04:27 ID:+bFBVp7G
暫く校内をうろついていたが、見まわっていた教師に声をかけられて、今日は下校することにした。
そういえば、4階の仮教室に、横口と西根が掃除が終るのを待っていたはずだ。大日向と吸血鬼のことばかり考えていたせいか、今までスッポリと忘れていた。
急いで4階の教室に向かい、ガラリと戸を空けると、中から声をかけられた。
「あら、早かったじゃない」
教室の中には、女がいた。ぐったりとした西根を抱え、その首筋にうずめていた顔を上げて哲晴に声をかけたのだ。
いつものように、カラーのホックと第1ボタンを外している西根の首筋には、ポツリと真新しい傷があり、そこからはまだタラリと血が流れていた。
そして同じく、彼女の朱を引いたような口からも、タラリと一筋の血が胸の膨らみに垂れていた。
すぐ傍には、ぐでっと倒れている横口の姿。第2ボタンまで外され、校則違反のTシャツを覗かせた彼の首筋にも、同じくツッと血を流す真新しい傷。
「あらぁ? なんだぁ、あの娘じゃないのね」
と、その女は残念そうにそう呟く。
ニコッと妖しく微笑む切れ長の目、大人びた逆三角形の顔、前髪を左右に分けた富士額、床まで届く艶やかな長い髪。
西根の身体に半ば隠されていても、薄暗い教室ではくっきりと浮かび上がる白い裸身。惜しげもなくプルンとさらされた豊かな乳房と、その頂上の鮮やかな朱鷺色の突起。
キュッとくびれた腰と、形の良い臍。その下は、その下は…。
黄色と黒の縞模様に彩られたキチン質の巨大な塊、そこから幾本もの棒状のものがニュッと生えて身体を支えていた。
人のサイズの蜘蛛。悪夢の中から抜け出してきたようなそれが、彼女の半身だった。
予想外の展開に、声も出ずに呆然と立ち尽くす哲晴をじっと見据えた。
「ふふ、見られちゃったんなら、しょうがないわねぇ」
くすくすと楽しげに笑う。
「死んでちょうだい」
205名無しさん@ピンキー:2005/05/12(木) 11:46:23 ID:8Mh6RQJT
なにこの女郎蜘蛛

イイ(・∀・)!!
206名無しさん@ピンキー:2005/05/12(木) 13:48:00 ID:D1A54Z0E
妖魔・百鬼スレ立てたら職人さん来てくれるかなあ…


>>140
続きをキボンヌ
感情を殺してしまった女の子ってツボなのです
207名無しさん@ピンキー:2005/05/12(木) 19:28:46 ID:IWF2T38m
>>154
つかぬこと伺いますが・・・
とあるサイトに投稿されてたんですが同一人物ですか?
208名無しさん@ピンキー:2005/05/12(木) 21:16:49 ID:emLchJqK
>206
既存の人外系のスレで充分だと思うので、妖魔夜行・百鬼夜翔のスレを立てても多分寂れるだけ。
今時、あれで萌え・エロ妄想を抱ける人間は殆どいない。ラ板のスレが良い証拠だ。
実際、ときスーを懐かしむ香具師はいても、再現・代替ネタで盛り上がらせる気はないようだし。

ほとんど一人で頑張っているのが馬鹿みたいだ。
209書いた人:2005/05/12(木) 21:52:23 ID:7VaSd966
>>207
同じでございます
そろそろ自分のHPも復活できそうなので、猫の話はそこにのっけてこうかなぁ
と思っております
210名無しさん@ピンキー:2005/05/12(木) 23:28:28 ID:xNf5CTtx
>>209
まさか貴方があの人だなんて…
…まあ、某スレに投下していたのを掲載していたのを見たからな…

…とりあえずガンガってください
211名無しさん@ピンキー:2005/05/12(木) 23:46:24 ID:IWF2T38m
そ、そうだったんですか・・・
まぁこれ以上つっこまれると困るでしょうからこの話題はおわりで


がんばってください
212名無しさん@ピンキー:2005/05/13(金) 01:24:18 ID:efkt3yRu
>161様 >165様 >170様 >205様
ありがとうございます。
反響があるおかげで続けられます。
213放課後の吸血鬼11:2005/05/13(金) 01:29:49 ID:efkt3yRu
「う、うわぁぁぁぁぁっ」
引きつった顔で哲晴は叫んで、手にした鞄をブンと振り上げ、蜘蛛女に殴りかかった。
「西根を離せぇぇぇっ」
彼女は、ドサッと西根を放り出すと、振り下ろされた鞄を左腕でガシッと受けとめる。
教科書やノートが詰まった鞄は、それなりに重い代物のはずだったが、鉄色の鉤爪の生えた手は、難なくそれを受け止めていた。
「あらぁ、やるわねぇ、ボウヤ」
けらけらと嘲笑するような響き。本能的な危機を感じて、哲晴は両手で鞄を抱えて、サッと下がる。ナイフは教室に戻る時に、鞄に納めてしまった。
黄黒縞の足が、シャカシャカと素早く動く。その目立つ縞は警戒色。自らの危険性を誇示し、敵を寄せ付けないためのもの。それ程の危険を持つということ。
剥き出しの白い裸身がつうっと、滑るように近づき、その胸でプルンと双丘が揺れる。そしてスッと、たおやかな腕が上に伸ばされたかと思うと、クワッと漆黒の鉤爪の生えた指が伸ばされる。
ヒュッと風を切る音が聞こえ、ドッと鞄を持つ手に衝撃が走る。腕の動きは、霞んで見えなかった。
盾として構えていた革の鞄には、ザックリとした傷跡。改めて、ジワリと恐怖が広がる。
「あらぁ、巧く避けたわね。でも、次はそうはいかないわよぉ」
鼠を前にした猫の表情で、蜘蛛女はそう告げる。
このままクルリと回れ右をして逃げ出したかったが、西根と横口がどうなっているのか気になる。
いや、待て。逃げた方が、自分がこいつに追っかけられた方が、二人は却って安全か?
そう逡巡しつつ、距離をとって廊下にまで下がる。ニマッと、余裕というより淫らな笑みを浮かべつつ、カシャ、カシャ、とその異形も追ってくる。
214放課後の吸血鬼12:2005/05/13(金) 01:38:08 ID:efkt3yRu
よし。このまま引き離して、なんとか逃げ切れれば…、心の中でそう呟いて、哲晴はダッシュで廊下を逃げだした。
もうすぐ階段だ。追ってくる足音はしない。が、代わりに、ヒュッと空を切って何かがビシャリと背中に叩きつけられ、そのまま彼を押し倒した。
ドサッとうつ伏せに倒れた哲晴の、背中から床にかけてベッタリと貼りついているのは、ねばっとした白いもの。そう、相手は蜘蛛なのだった。
「はぁい。残念でした。追いかけっこは、お・わ・りっ」
事実上の死刑の宣告を、軽く言い放つ。
「だーいじょうぶよ。死ぬ前に、お姉ぇさんが、たぁっぷりと楽しませてあげるから」
どぎついピンクの台詞とともに、背後から、カシャ、カシャとゆっくりと蜘蛛の足が近づく音がする。さながら、死刑執行までの時を刻む秒針の様に。
見えないせいで、却ってその一歩ごとに、哲晴の中で恐怖と嫌悪がぐんぐんと膨れ上がる。
「待っててね、ボウヤ」
くすくすと、誘うような淫らな声。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。あんな化け物に、あんな魔物に、あんな怪物に殺されるなんて。
倒れた時に打った手や胸がジンと痛いから、これまでみたいな夢ではない。夢の中の痺れた頭と違って、覚醒時の脳は現実的だ。心の中を占めるのは、ただ恐怖。
と、傍の階段を駆け上ってくる、タッタッという軽やかな足音がした。そして長い髪をなびかせながら姿をあらわしたのは、真紅の瞳の少女だった。
215名無しさん@ピンキー:2005/05/13(金) 17:53:01 ID:dASbGddl
蜘蛛ねえさんエロッ!
食われてー。
216名無しさん@ピンキー:2005/05/13(金) 18:02:38 ID:mPQX3xyU
蜘蛛さん殺られちゃうんかな…もったいないっ。
しかし毎回生殺しな引きをありがとうです。
どうせなら今日はここまでとか書いてくれると
感想もすぐ書けるんですが…
217放課後の吸血鬼13:2005/05/13(金) 23:04:38 ID:efkt3yRu
真紀は、目撃者の少年をトンッと軽く跳び越し、女郎蜘蛛の前に立ちはだかった。
「あらぁ、随分と遅かったじゃなぁい。でもねぇ、せっかくなら、もうちょっと遅れなさいよぉ。殿方とのひと時を邪魔するなんて、野暮よぉ」
女郎蜘蛛は、からかうような口調でクネッとしなを作るが、真紀は無言のままキッと睨みつけて身構える。
ダンッと床を蹴り、黒髪の尾を引いて女郎蜘蛛に肉薄する。ヒュッと風を切って、白銀の鋭い爪の手刀で突きが繰り出される。女郎蜘蛛はそれをガッと腕で受け流す。
二撃、三撃と次々に繰り出されるそれを、彼女はくすっと余裕の笑みを浮かべつつ防ぎきる。真紀が一呼吸おき、攻撃が途切れると、今度は闇色の爪の生えた腕が振るわれる。
予想される軌道は真紀を捕らえない、ならば。タンッとステップを踏み脇に避けると、粘つく糸の塊がヒュッと真紀を掠めて飛んで行く。
「あら、勘が良いのね」
真紀は再び懐に飛びこみつつ、ブンッと白銀の残像を残して爪を振るう。女郎蜘蛛はシャシャと多足を動かし、滑るように下がる。と、その豊かな左の胸に、シュッと僅かに爪がかすめる。
左の膨らみの先端、朱色の突起のすぐ脇に、より鮮やかな赤がジワリと滲む。
「痛いわねぇ。自分に無いからって、僻まないでよっ」
そう彼女はからかいつつ、豊かな乳房を強調するように、左のそれを下から掬うように手を添え、親指で、ツツッと血を垂らす傷をそっと撫でる。
それからスッとその指を口元にやり、親指を濡らす血を同色の舌でペロリと舐める。続けて指の腹から漆黒の爪の先端まで、ツッと舌を這わせる、ひどく淫靡な仕草で。
その口に浮かぶのは、血に酔いしれる淫蕩な笑い。その瞳に映るのは、暗くメラメラと燃える復讐の炎。
が、真紀はそれに取り合わず、無言で突きを繰り出す。
「いっやあん。こっわぁい」
しかし彼女はそれ以上応戦せず、おどけた声を残し、クルッと向きを変えて教室に飛び込む。
続いて真紀が教室に飛び込むと、女郎蜘蛛は窓を潜り抜け、ピョンと外へ飛び出すところだった。真紀もダッと駆け出して、バンッと手をついて教卓を飛び越え、スタッと窓際に到達する。
半ば身を乗り出すようにガバッと窓の外を見下ろすと、中庭には既に女郎蜘蛛の姿はなかった。正面に見える、職員室などのある南棟の外壁にもその姿はない。
218放課後の吸血鬼14:2005/05/13(金) 23:05:36 ID:efkt3yRu
「逃がしたか…」
仕方なしに追跡を諦めて、ピシャッと窓を閉じる。
そこで真紀は、倒れている凸凹コンビに気付く。急いで口元に耳を近づけて息を確認する。幸いにも、昨日の野上と同じくすやすやと眠っているだけだ。
ほっと息を吐くと、次いで廊下で倒れている目撃者の少年へと向かった。

蜘蛛女を追ってダッと教室へ飛び込んだ大日向が、戻ってきた。首の動く範囲でなんとか振り向いて見える所まで、コツコツと歩み寄る。
紅玉の瞳、雪の肌、林檎色の唇、白銀の牙、真珠色の鋭く伸びた爪。救いの女神は夢で見たのと寸分たがわぬ、紛れもなく人外の容姿をしている。
驚きの連続で声も出ない哲晴の傍に屈むと、大日向はヒュッと爪を一閃させて糸を切り裂く。切り裂かれた糸は、見る間にポロポロと崩れ塵となって消え去り、哲晴を開放する。
すると、スウッと見る間に大日向の人外の要素が消えていく、まるで幻のように。瞳は黒に、頬は肌色に、唇は桜色に、牙は消え、爪は短くピンクに。そこにいるのは、学食で見たごく当たり前の少女だ。
「あ…、あれは…、一体…?」
なんとか回った舌で問いかける哲晴に、大日向は口にスッと人差し指を当てて、それを制する。
「早くこの場を離れよう。またあれが来たら危ないから。
 それから、あの二人なら大丈夫だよ。昨日の人と同じで、寝ているだけだから」
置き上がる哲晴に背中を向け、大日向は続けた。
「それから…、もし、何が起きてるのか知りたければ…、キミに、知る覚悟が…、これ以上深く関わる覚悟があるならだけど…」
彼女は、駅前のファミレスを指定して、そこで待つと告げて足早に立ち去った。
寝ている二人は、二三度ユサユサと揺すると目が覚めた。昨日の野上と一緒で、特に身体に変調を感じていないようだった。安堵して、哲晴は二人に下校を促した。
三人で校門を出たところで、横口が口を開く。
「今日はどうする? ゲーセンでも寄るか?」
「あ、悪い。今日、用事があったんだ」
それまで寡黙だった哲晴は、二人にそう告げて別方向に向かった。指定されたファミレスに行く為に。
219名無しさん@ピンキー:2005/05/13(金) 23:18:11 ID:efkt3yRu
本日はここまでです。
>215
萌えて頂けて幸いです。
>216
ご意見ありがとうございます。てなわけで今後は本日はここまでと書く事にします。
勿体無いとのお言葉、ありがとうございます。
まあ妖魔夜行なので最終的にはそうなるかもしれませんが(逃亡・復活可能な封印の可能性アリ)、今逃げたので、この女郎蜘蛛にはまだ活躍させます。

えーと、裏話になりますが。これは97年(たしか夏)に同人誌で発表した作品のリメイクです。
(当時SNEで募集した妖魔百物語の時に作った作品です)
当時の話では、ここで女郎蜘蛛が倒されて終りでしたが、その後の吸血姫美夕(作中で西根が言及しているアレ)を見て続きを考えたので、今回はそれを書く予定です。

えー。エロシーンがあっても露骨な描写はできないので、すみませんがエロでの描写は期待しないで下さい。m(_ _)m
せいぜい吸血シーンがあと幾つか(2〜3くらい?)ある程度だと思います。
あと、連休中に書き溜めた分も尽きてきたので、今後ペースが遅くなるかもしれませんが、長い目で見てくださるようお願いします。
220名無しさん@ピンキー:2005/05/14(土) 02:02:51 ID:bmvsKS33
>>219
あぶないあぶない、倒されるとこだったよ女郎蜘蛛さん…
でも普通に勝目なさそうだ、っがんば。
物語はいよいよ佳境といったところできっちり生殺しですが
のんびり待つことにします。どきどき。
221名無しさん@ピンキー:2005/05/14(土) 16:44:48 ID:97OmzX6V
蜘蛛たん助かった (つД`)・゚・
エロはなくても迫力あって良いなあ。
222名無しさん@ピンキー:2005/05/14(土) 17:22:51 ID:t0pSPPLt
露骨なエロはなしですか、、吸血シーンエロくしてね!!
223放課後の吸血鬼15:2005/05/15(日) 02:28:53 ID:g7bWviwK
そのファミレスは、学校からは駅を越えた側に位置する。駅のこちら側にも、ファーストフードや喫茶店があるので、生徒はそこまで来る事は滅多にない。
そろそろ日が沈みかける頃、哲晴はファミレスについた。夕食には時刻は早いせいで、まだ客はまばらだった。
大日向は、店の表通りから離れた奥の席、駐車場の見える窓際にいた。哲晴と目が合うと、大日向は小さく手を振った。その表情は硬い。
哲晴が無言のまま席につくと、彼女は先に頼んでいたサンドイッチとコーヒーを採っているところだった。
すぐにウェートレスが、水とメニューを持ってくる。
「ご注文がお決まりでしたら…」
「これと同じものを」
表情を固くしたまま、大日向がぶっきらぼうに伝えた。続けて哲晴に、おごるから、と付け加える。
大日向はコーヒーを啜りながら窓の外を眺め、哲晴はじっと黙ったままだった。やがてウェートレスコーヒーとサンドイッチを置いて下がってから、ようやく哲晴は口を開いた。
「一体…、アレは、何なんだ」
大日向は飲んでいたコーヒーカップを、コトリと置くと哲晴をじっと見つめた。
「ごめん。悪いけど、大きな声を出さないで欲しいな。折角、人に話を聞かれない場所を選んだ意味がなくなる」
押し殺した声で告げ、そして一息置いて続ける。
「妖怪、だよ」
「妖…怪?」
「お化け、バケモノ、あやかし…、そう呼ばれているものだよ」
「そんな…、まさか…。本当に…いるなんて」
彼女は、ザックリと傷のついた鞄を指差し一言。
「証拠」
鞄の傷を見ていると、さっきの恐怖がまざまざと蘇り、ゾッとしてくる。
「…それとも、自分の目で見た事を、信じられないかな?」
そう、続けた。哲晴はプルプルと首を振って否定する。
「でも、そうなると、大日向さんも…その…」
大日向は、サッと一瞬伏目がちになって答える。
「そう、ボクも…妖怪だよ。一昨日、見ただろ」
夢で見たのと違って、そう答える姿は寂しげだ。
「なんか、実感湧かないな。目の前のにいるのが、その…、妖怪だなんて」
哲晴の顔に浮かぶのは、疑問とも不信ともつかぬ曖昧な表情。
「そうか…。じゃあ…。…大声は出さないでよ」
224放課後の吸血鬼16:2005/05/15(日) 02:34:34 ID:g7bWviwK
大日向は、人が見てないかどうか、キョロリと周囲に目配せする。そして、姿を変えた。
猫を思わせる釣り目が、虎を思わせる凶悪さを持ち、瞳が血色に染まる。爪がスラリと伸び、角質から真珠の光沢を放つ骨質へと変化する。桜色の唇が血色に染まり、そこからちょこんと鋭い牙が覗く。
哲晴は、声も出ないまま、暫くの間ただただ見つめる。
「どう?」
じっと見つめられ続けるのが息苦しくて、沈黙を打ち破る為に、大日向は聞いた。
「ん、ああ…、綺麗だ」
「な、何を言い出すんだ。いきなり」
ポツリと漏れた哲晴の本音に、目を白黒させてそう返す大日向の頬は、ほんのりと薔薇色に染まっていた。
「ご、ごめん。でも、本当にそう思ったから」
哲晴もサッと頬を赤らめる。
コーヒーを一口すすって落ちつきを取り戻すと、彼女はスッと、テーブルの上に鋭い爪の生えた手をかざす。
「ね、見て」
影が、ない。すっかり日が陰り、鏡となった窓にも彼女の姿は映らなくなっていた。
「“あり得ないもの”だろ?」
そう言い終わると、スウッと窓の鏡に、寂しげな普通の少女が戻ってきた。
「鏡に映らないってことは、ひょっとして大日向さんは、その…吸血鬼、なのか」
「そう」
目を伏せて答え、それから哲晴の心を察してか、付け加える。
「あ、でも安心して。ボクは人間の血は吸わないよ」
まるでそれを証明するかのように、コーヒーを一口啜る。
「それから、ボクの事は“真紀”でいいよ。さん付けもいらない。できれば呼び捨てにしてよ」
そしてふと思い出したように尋ねた。
「そう言えば、キミの名前はまだ聞いてなかったよね。良かったら、教えてくれない?」
一瞬、名前を教えて良いものか迷ったが、そもそも面も素性も割れてることに気付いた。
「中沢哲晴。哲学の哲に晴れるで“哲晴”」
「ありがと」
微かに、真紀の表情が緩んだ気がした。
225名無しさん@ピンキー:2005/05/15(日) 02:44:15 ID:g7bWviwK
今夜はここまでです。日曜日にいくらかでも進めば良いんですが…

>220
女郎蜘蛛が人気ですか。意外でした。実は今まで名前も無いキャラだったんですけど…。
>221
アクションシーンとか苦手なんですが、そう言っていただければ幸いです。
>222
その点に関しましては前向きに善処したいと思います(玉虫色の回答)。

今後暫く会話シーン主体になってしまうと思いますが、どうかお付き合い下さいませ。

見返してみると、入れ忘れたシーン(本筋に関係無し)とか、文章の構成上省いたシーンとかがいろいろあったりしります。大抵はどうでもいいシーンなわけですが。
例:4の西根の「非現実的な」という台詞⇒
 「馬鹿も休み休み言って下さいよ。…そう、“休憩付き”で」その頭を横口が無言でひっぱたく。
226名無しさん@ピンキー:2005/05/15(日) 03:50:49 ID:sMUeRlzn
227227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:18:34 ID:OYUV905N
ttp://sslibrary.arings2.com/sslibrary/o/original67-16.html の続き。
今回もエロは薄めだったりします。あしからず。


「んぎゃあ、んぎゃあ……」
「……ん、幸乃ちゃん……」
――夜、幸乃の泣き声を耳にして、佳乃は目を覚ました。
泣きじゃくる幸乃の顔を見下ろしたかと思うと、優しく笑みを浮かべながら、そっと幸乃を抱き寄せる。
「ん……っ……ぐずっ……っ……」
「ん〜、幸乃ちゃ〜ん。どうしましたか〜?」
幸乃は、母親の腕に抱かれて安心したのかピタリと泣き止み、じっと母親である佳乃の顔を見ていた。
佳乃もまた、穏やかな笑みのままで、じっと幸乃を見つめ返す。
「よ、佳乃……」
「あ……き、絹代様。お目覚めになってしまいましたか」
と、不意に自分を呼ぶ声が聞こえた佳乃は、はっと顔をあげ、恐縮そうに声の主に話しかけた。
そこにはうつぶせで布団を被り、顔だけをこちらに向けた、寝ぼけ眼の絹代の姿があった。
「いや、そんなことは構わん。それより、幸乃はどうしたのだ? 何があったのだ?」
「え? べつに……いつもの夜泣きですよ」
「い、いつも? ということは佳乃もいつも、こんな時間に起きているのか?」
佳乃の答えに驚いたのか、絹代の寝ぼけ眼がぱっちりと開かれる。
228227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:19:38 ID:OYUV905N
「そう…ですね。赤子は泣くのが仕事ですから。それに、一緒にお昼寝もしていますし」
「だ、だからと言っても、ものには限度というものがあるだろう。毎日こうでは、体がもたぬぞ」
「でもないですよ。絹代様に、炊事洗濯を覚えていただくほうが、よほど骨が折れましたが?」
「あ……い、いや、そ、それは置いといて、だ……」
絹代の言葉に、にっこりと笑みを浮かべながら返事をする佳乃。
その途端、絹代はしどろもどろになりながら、視線をそらしはじめた。
「ふふっ。それにですね……この子のことで、手間が掛かれば掛かるほど、
ああ、われはこの子を育てているんだな、と実感することができるのですよ」
そんな絹代の仕草がおかしかったのか、佳乃はくすくす笑い声をあげたかと思うと、
腕の中の幸乃をじっと見つめながら言葉を続けた。
「ふうむ、そんなものなのかのう……」
「ええ。いつか絹代様も、子をなせば分かること、ですよ」
「子!? わらわがか!? まったく、何を言って……」
佳乃は顔をあげ、布団の中で頬杖をついてつぶやく絹代に向かって、微笑みを浮かべながら言った。
その言葉によほど驚いたのか、絹代は思わず布団から飛び起き、苦笑いを浮かべる。
「そう思われるのも、無理はありませんですね。でも間違いなく、その日はやってくるものですよ」
「そ、そうはいうが……」
「それに琢磨様の、幸乃ちゃんへの可愛がりようを、ご覧になられたでしょう?
われの子でさえ、あんなに可愛がっていただけるのです。
実の孫ができたときは、どんなにお喜びになられることでしょうか……」
「う、ううむ……」
苦笑いを浮かべる絹代に、佳乃はあくまで優しく語り掛けていた。
229227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:21:28 ID:OYUV905N

「さ、幸乃ちゃん。おねんねしましょうね〜」
やがて、腕の中の幸乃が、すうすうと寝息を立て始めたのを確認した佳乃は、
幸乃の耳元で優しくささやきながら、ゆっくりと布団に寝かせた。
「ふわ〜あ。……幸乃だけでなく、わらわたちも寝るとするか……」
布団の中ですやすや寝息を立てる幸乃を見て、絹代は大きなあくびをしながら佳乃に声を掛ける。
「そうですね、そうしま……!? ………こ、これ、は……絹代様……」
絹代の言葉に、佳乃も横になろうとして布団に手を掛けた次の瞬間、
佳乃は突然ビクンと体をすくませ、絹代に向かって不安げに声を掛ける。
「うむ……何だか、嫌な感じがする……。しかも、この感じは………」
いっぽうの絹代は、佳乃に声を掛けられる前に、すでに顔をしかめながら布団から抜け出していた。
「ええ、それにしても何故………き、絹代様?」
”嫌な感じ”がするほうから、ふたたび絹代のほうに向き直った佳乃は怪訝そうな声をあげた。
視線の先にいた絹代は、パジャマを脱ぎ捨てながら、山伏の服装に着替え始めていたのだ。
「こんな気分では、落ち着いて寝ることも出来ぬ。ちと見てくるわ」
「そうですか……では、われも」
凛とした表情で答える絹代を見て、佳乃もゆっくりと立ち上がり、寝巻きを脱ぎ始める。
230227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:22:12 ID:OYUV905N
「な、何を言う? 佳乃まで来なくとも、わらわひとりで大丈夫だぞ?」
今度は絹代が、思わず着替える手を止めながら、怪訝そうな表情と声を出していた。
「何をおっしゃるのですか。いくら信幸様と一緒になり、絹代様の元を離れたとは言え、
われが絹代様のお目付け役であることまでも、変わってしまったわけではありませぬ」
「………そうか、わかった。では急いで支度をするぞ」
じっと自分を見据えながら語る佳乃を見て、その顔と言葉に確固たる意志を感じ取った絹代は、
ふう、と軽くため息をつきながら、答えた。
「はっ。しかし、お二人は……」
「ほうっておけ。……というか、起きやしないだろう」
着替えに手を伸ばしながら、佳乃は返事をしていたが、ちらりと薫と琢磨に視線を送る。
その二人はと言えば、完全に酔いつぶれ、それぞれの布団の中で大鼾をかいていた。
絹代の言葉どおり、ちょっとやそっとで起きるような気配はまったくない。
「そ、そうですね。そっとしておきましょうか……」
――下手に酒が残っている薫を、無理に起こそうとしたりすると、世にも恐ろしい目に遭う――
かつて、身をもって体験したことがある佳乃は、顔を引きつらせながらそう答えていた。
231227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:22:51 ID:OYUV905N

「さってと。美由樹さ〜ん、この荷物、どこに置けばいいですかあ?」
「ん、そこに置いといてもらっていい? で、次はこっちの支度を手伝って欲しいんだけど」
美由樹に言われ、奥の倉庫からダンボール箱を抱えてきた夕那は、元気よく美由樹に声を掛ける。
破魔矢に赤いお守りを結び付けていた美由樹は、笑みを浮かべながら夕那に次の指示を出す。
「はあい、わっかりましたあ。……でも美由樹さん、何で今頃こんなことするんですかあ?
もっと前から支度していれば、徹夜することもないと思うんですけれどお」
指示を受けた夕那は、美由樹の隣にペタリと座り込み、破魔矢を手に取りながらつぶやく。
「ん……。他のことなら、去年のうちから準備していてもいいけれど、これだけは……ね」
「ああっ、そういえばそうですねえ。今日で年が変わったんですものねえ。よく分かりましたですう」
夕那の質問に、美由樹は気を悪くさせるでもなく、手を止めてお守りをじっと見つめながら答える。
その答えに納得したのか、夕那は何度もうんうんと大きく頷き、手を動かし始めた。

「は〜あ。それにしても昼間の花嫁さん、すっごい綺麗だったですねえ」
しばらくの間、二人で黙々と作業を続けていたが、不意に夕那が手を止め、天井を見上げてつぶやく。
「ん、そうだね。でも夕那ちゃんだって、いつかは……」
「そ、そんな……夕那、結婚なんて……」
美由樹の言葉に、たちまち顔を赤らめる夕那。だがその顔は、心なしか微笑んでいる。
「ん? 去年の正月に、彼氏と一緒に初詣に来ていたじゃない。ね?」
「え……あ……み、見ていた、のですか?」
追い討ちを掛けるように、美由樹は夕那の顔を覗き込むようにして、言葉を続ける。
それだけで、夕那の顔はゆでだこのように真っ赤になっていた。
「ん〜? まあ、そんなとこかな? ………ところで夕那ちゃん、私ちょっと席外すけど、続きお願いね」
「はあ〜い、わっかりましたあ」
美由樹は、夕那の質問に曖昧に返事をしたかと思うと、おもむろに立ちあがり、部屋をあとにした。
232227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:23:29 ID:OYUV905N

「……さて。どうやら参拝客、ってわけでもなさそうですけれど、何かご用かしらね?」
社務所を出た美由樹は、やや眉をしかめながら言った。美由樹の厳しい視線の先には人影がある。
表情は――闇に紛れて見えない。だが美由樹は、自分が話しかけている相手は人間では無い、
ということをその気配から、感じ取っていた。
「…………………」
人影は無言のまま、美由樹のほうへと足を一歩踏み出した。
月明かりに映し出されたその姿に、思わず美由樹は息を飲み込んでしまった。
映し出された影は――見た目、夕那と同じくらいの年恰好の少女だった。
だがその顔には、生気というものがまるで感じられなかった。
それくらいでは、別に驚くことではない。そういう”モノ”を見るのは昔から慣れていた。
美由樹が驚いたのは、少女がその左手に何者かの襟首を掴み、引きずっていたことだった。
「! ………γνχναευτγι!」
ただならぬ気配を感じ取った美由樹は、顔色を変えながら、後ろに一歩跳び退ったかと思うと、
指先を目まぐるしく動かしながら、何事か唱えはじめた。
その途端、少女の背後の木の枝がざわざわとうごめき、少女の体へと絡みついていく。
木の枝がまるで意志を持ってわが身に絡みつくという、常識では考えられない展開にも関わらず、
少女は相変わらず無表情のまま抵抗する様子も見せずに、ただ絡みつく枝を見つめていた。
「……ふう。悪いけど、沙羅様が戻られるまで、そうしていてもらいます。おとなしくしててください」
やがて木の枝によって、がんじがらめになった少女を見つめ、美由樹はつぶやいた。
――葬るだけなら簡単なんだけれど、それじゃあ私が沙羅様に怒られてしまうし、ね……。
「で、あなた。大丈夫ですか?」
「…………………」
そう思いながら、美由樹は少女が掴んでいた人影を助け起こそうと歩み寄った。
倒れている人影――こちらは見た目、自分と同じくらいの年恰好の若い女性だった――は、
美由樹の呼びかけにも、返事をするどころかピクリとも動こうとしない。
「……まったく。仕方ない、ですね」
軽くため息をついた美由樹は女に肩を貸し、社務所へ戻ろうとした。
と、その時――
233227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:24:09 ID:OYUV905N

「! なっ!?」
不意に背筋に悪寒を感じた美由樹は、思わず背後を振り返った。
目の前に、木の枝に絡めとったはずの少女が、右腕を振り上げているのが見えた。

ガツッ

「ぐあっ!?」
かと思った次の瞬間、鈍い音ともに頭に激痛が走り、思わず口から悲鳴がこぼれた。
少女が右手に石を握り締め、殴りかかってきたのだ。美由樹は頭を押さえ、その場に蹲った。
蹲った美由樹の顔面に、少女の足蹴りが届き、たまらず美由樹は地面に倒れこんだ。
「…………………」
「ぐっ! ぐは……が………あっ…」
少女は倒れこんだ美由樹の上に馬乗りになったかと思うと、左手で美由樹の首を絞めながら、
石を握り締めた右腕を何度も振り下ろした――美由樹の顔面目掛けて。
美由樹は息苦しさのあまり、必死に自分の首を絞めている、少女の左手を掴みあげるが、
顔面を殴られ続けているため、まったく力がこもっていない。
それどころか、美由樹が抵抗するのが気に入らないのか、少女の左手にさらに力が加わった。
「くえ……っ……」

――何故、私の呪縛を振り解いた?
―――何故、振り解かれたことに、気がつかなかった?
――――いったい、この娘は何者なのだ?

まるで、絞められるニワトリのような悲鳴を漏らしながら、様々な疑問が美由樹の頭をよぎる。
だがそんな疑問も、薄れる意識とともに、頭の中から消え去っていった――
234227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:24:46 ID:OYUV905N

「…………………」
やがて美由樹は少女から手を離し、そのままぐったりと動かなくなった。
殴られ続けた顔の左半分は無残に潰れ、傷口から真っ赤な血が止めどもなくあふれ続けている。
苦しそうに開いた口からは舌が伸び、息をしているかどうかすらも疑わしかった。
少女は、美由樹が抵抗しなくなったのを確認すると、
とどめとばかりに右腕をひと際大きく振り上げ、顔面めがけて振り下ろした。

――が、美由樹の顔面に石が当たるか当たらないかというところで、その手がピタリと止まった。

わずかの間、石を振り下ろした姿勢で固まっていた少女はおもむろに、
べっとりと血で真っ赤に染まった石を放り出し、美由樹の袴をめくりあげた。
下着は着けてはいないようで、ヘアを剃り落とした跡が青々とした恥丘が姿を現した。

膝立ちになりながら、自らのスカートをたくしあげる少女。薄いレースのパンティの隙間からは、
女性には付いていないはずの部分が顔を覗かせていた。――それも二本も。
ひとつひとつが、成人男性のサイズよりもひと回り大きなそれらは、
先端から透明な汁をしとどに溢れさせ、地面に向かって糸を引いている。

「…………………」
少女は美由樹の両足を広げさせながら、その間へと潜り込んだ。
そのまま、自らのいきり立ったペニスを、美由樹の割れ目と菊門にあてがう。
意識を取り戻したのか、一瞬、美由樹がピクリと体を震わせた。
「あぐ! あ……あ、あ、ああ……っ……!」
かと思った次の瞬間、少女はひと息に美由樹の中へと二本のペニスを沈み込ませた。
悲鳴とともに、美由樹の上半身が弓なりに仰け反った。
235227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:25:26 ID:OYUV905N
「…………………」
「ぎ……い、痛……い……い、い……っ……」
少女は相変わらず無言のまま、腰をゆっくりと前後に動かし始めた。
腰の動きとともにペニスが出入りするたびに、美由樹の口からは息を詰まらせたような声が漏れる。
「…………………」
美由樹の声に委細かまうことなく、少女は美由樹の羽織に手をかけ、胸元を広げた。
やはり下着は着けていなかったが、代わりにさらしが幾重にも巻かれている。

ビッ ビリッ ビリッ

少女はさらしに手をかけ、力任せに引きちぎった。
同時に戒めを解かれた、美由樹のやや小ぶりだが形のいい胸が姿を現す。
「あ! あっ……い……い……」
少女が腰を美由樹に叩きつけたまま、力いっぱい美由樹の胸を揉みしだく。
荒々しい少女の責めに、美由樹はただ、くぐもった悲鳴を漏らすのみだった。


「痛! い、いた! ………っ! や…や……め…」
美由樹が上半身を仰け反らしながら悲鳴をあげた。少女が突然、美由樹の乳首に爪を立てたのだ。
震える手で、少女の手首を必死に掴みあげるが、少女は意に介さずに美由樹の胸を責め続ける。
「! ぐううっ! がっ! はっ!」
少女は腰の動きをさらに早めた。愛撫もされず、いきなりペニスを突き立てられた、
美由樹の秘所と菊門からは、鮮血が滲み出ている。
が、皮肉なことに、その血が潤滑液となって、少女の腰の動きをスムーズなものにさせていた。
「いっ! っ! あっ!」
深夜の神社において、ただぐちゅぐちゅという湿った音と、美由樹の悲鳴だけが響いていた。
236227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:26:31 ID:OYUV905N

「美由樹さ〜ん、終わりましたけど、次は……み、美由樹さんっ!?」
そのとき、社務所の出入り口からひょっこり顔を出した夕那が、明るく声をかけてきた。
が、ただならぬ状況を目の当たりにして、その声を張り上げた。
「…………………見つけた…………………」
夕那の声を耳にした少女は、ピタリと動きを止めたかと思うとゆっくりと顔をあげ、口を開く。
「え? ……な、な………」
呆然と立ち尽くす夕那をよそに、少女は組み伏せていた美由樹から離れ、ゆっくりと立ち上がった。
ギクシャクと、機械仕掛けの人形のように、ぎこちない足取りで夕那の元へと歩き出す。
その手が夕那の肩に掛かりそうになった瞬間――

ドカッ

そんな音が響いたと同時に、少女は吹き飛んでいた。その代わり、少女が立っていた場所には――
「ふうむ。どうやら来てみて正解、だったようだのう」
山伏姿の少女――絹代が首を傾けながら立ち尽くしていた。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、は、はい……。え? あ、あなたは昼間の……?」
同時に、夕那の肩を抱き、心配そうに声を掛けてくる人影がいた。
夕那は声の主を見て、戸惑い気味に声をあげる。
人影の正体は――昼間、この神社で結婚式を挙げた花嫁である、佳乃だった。
「佳乃」
「は、はい」
絹代が、夕那たちに背を向けたまま、佳乃に声を掛ける。
「こやつはわらわが何とかする。その間に、彼女たちを介抱してやれ」
「え? で、でも……」
「佳乃」
「あ……は、はい。くれぐれもお気をつけて」
「うむ、分かっておる」
絹代の指示に戸惑っていた佳乃だが、今度は向き直って名前を呼ばれ、畏まりながら答えていた。
237227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:27:07 ID:OYUV905N

佳乃は、絹代のほうをちらちらと見ながら、美由樹と女を助け起こそうとする。が、
「え? …………こ、これって……」
女の肌に触れた佳乃は、顔を真っ青にさせた。女の体は、完全に冷え切っていたのだ。
この季節、地面に横たわっていたら、体温が下がるのは止むを得ないことだろう。
だがそういう事情を考慮したとしても、女の体は冷たすぎたのだ。
佳乃は念のため、と女の脈をとってみたが予想通り、脈は動いていなかった。
――死んでしまっているのか。可哀想だけど、仕方ないですね――
ため息とともに、軽く首を振った佳乃は気を取り直して、美由樹を助け起こすため、抱き起こした。
「さ、あなたも肩を貸して」
「あ。はい。………? こ、この人………?」
突然の展開についていけず、ぼうっと立ち尽くす夕那だが、佳乃に声を掛けられ、はっと我に返った。
が、美由樹の隣で倒れている、女の顔を見て戸惑い気味に声をあげた。
女の顔に、見覚えがあったのだ――去年の正月に、彼女たちの前に現れた死神に。
「ど、どうしたのですか?」
「あ、い、いえ。な、なんでもありません……」
美由樹に肩を貸しながら、佳乃が怪訝そうな顔で夕那に問いかける。
――信じてもらえるはずがない――そう思った夕那は、軽く首を振りながら、美由樹に肩を貸した。
「おっと。おぬしをこの先、通すわけにはいかぬ」
社務所へ向かおうとする、佳乃たちに顔を向ける少女に向かって、絹代は不適に笑いかけた――
238227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:27:49 ID:OYUV905N

「すみません、水と綺麗なタオルを何枚か持ってきていただけますか? あと、薬箱はどこに?」
「あ、は、はい。確か、そこの戸棚の一番上の引き戸の中に。ゆ……私は、水を汲んできます」
社務所の中の部屋に入った佳乃は、そっと美由樹を畳に寝かせながら、夕那に問いかけた。
夕那は部屋の隅の戸棚を指差し、部屋から飛び出していった。
「お願いします。………しょ、っと」
佳乃は、駆け出した夕那に向かって、軽くお辞儀をしてから押入れを開け、布団を取り出した。

「お、お待たせしましたっ! お水ですう」
「あ、ありがとう。それで彼女の両肩を、押さえててもらえますか?」
佳乃が布団を敷き終え、美由樹を横に寝かせてから、戸棚の中の薬箱を取り出したとき、
タオルと洗面器を抱えた夕那が戻ってきた。
夕那からタオルを受け取った佳乃は、洗面器にタオルを浸しながら、夕那に言った。
「え? お、押さえる……?」
「はい、こうやって……しっかりと、押さえててくださいね」
佳乃は美由樹の上に馬乗りになりながら、小首を傾げる夕那の手をとり、美由樹の肩へと添えた。
「い……痛っ!」
「う……うわっ……」
佳乃は洗面器に浸したタオルを取り出し、軽く絞ったかと思うと、迷うことなく美由樹の顔へと押し当てた。
途端に叫び声をあげながら身悶えする美由樹と、顔を背けてうめき声をあげる夕那。
「す、すみません。でも我慢していただけないと、傷口が化膿してしまいますので」
苦渋に顔を歪めながら、佳乃はタオルで美由樹の顔を拭い続けた――
239227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:28:40 ID:OYUV905N

「………ふう。これで、とりあえずの処置は終わりました。あとはすぐに病院へ行かれたほうが……」
「あ……い、いえ。それには及びません。わざわざ、ありがとうございました。
……でも、どうしてこちらに?」
「え? あ……な、何となく悪い予感がしたので……」
美由樹の顔に包帯を巻き終え、安堵のため息をつく佳乃に、美由樹が礼を言いながら問いかけてきた。
実は自分は天狗である――こんなことが言えるはずがないと判断した佳乃は、曖昧に答える。
「予感、ですかあ。二人とも山伏さんみたいな格好してますけど、そんな力、持ってるんですかあ?」
「えっと、そ、それは……まあ、その……。と、ところで、あなた方を襲った彼女は何者なのですか?」
その曖昧な答えに、さらに突っ込みを入れる夕那。
佳乃はしどろもどろになりながら、話を逸らそうと、必死に話題を切り替えた。
「……心当たり、ですか……それは……何ともいえないですね……」
「……あ、あの人、夕那を見て『見つけた』って言ってました。
言ってましたけど……あの人が誰なのか、全然心当たりがないです……」
佳乃の質問に、揃って首を振る美由樹と夕那。
「そうですか……。で、これは非常に申し上げにくいのですが……あなたと一緒に倒れていた方は、
すでに冷たくなっていましたので、あの場に置き去りに……」
二人の答えに軽く頷いた佳乃は、歯切れ悪そうに口を開いた。
「えっ!?」
その言葉に、真っ先に反応したのは夕那だった。
「……どうしましたか? 先ほども彼女の顔を見て、何か思うところがおありだったようですが、
もしかして彼女とお知り合いだったりしたのですか?」
「……い、いえ……な、なんでもないです……。し、知ってる人に似てたから、つい……」
夕那の声に佳乃が顔色を変えたが、夕那は視線を落とし再び首を横に振った。
「なるほど……。お二人は、しばらく安静になさっててください。
われは、絹代さ……残してきた連れが心配ですので」
「い、いえ……だ、大丈夫です……。わ、私たちもご一緒に……」
佳乃はすっくと立ち上がり、二人にそう言い残しながら部屋を後にしようとしたが、
美由樹は夕那の肩を借りながら、ゆっくりと立ち上がり、歩き始めた――
240227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:29:26 ID:OYUV905N

「き、絹代様!」
「おお、佳乃か。彼女たちは、無事――だったようだな」
社務所から飛び出した佳乃は、こちらに背を向けて立ち尽くす絹代に声を掛けた。
佳乃の声にゆっくりと振り返り、佳乃の後ろにいる美由樹と夕那の姿を見て、返事をする絹代。
「は、はい……。でも、もう一人の方はすでに……き、絹代様っ!? う、後ろっ!」
絹代の問いに佳乃は答えようとするが、絹代の後ろで地面に大の字になっていた少女が、
ムクリと起き上がったのを目にして、警告の声をあげる。
「うむ……見てのとおりだ。この娘、倒しても倒してもこのとおり、起き上がってくるからキリがないのだ」
だが絹代は後ろも見ずに、歩き出してきた少女の顎に後ろ蹴りを見舞いながら、
うんざりしたように肩をすくめる。
「……ただ、自分の意思があるようには見えませんですし、いったい何者なのでしょうか?」
「ふうむ。さっぱり分からぬが、いつまでもこうして――!?」
それでも佳乃は、油断無く身構えた姿勢で少女を見据えながら、誰に言うとも無くつぶやいた。
両手を広げて首を傾げる絹代だが、不意に目の前の少女が発していた気配とは、
比べ物にならないほどの気配を感じとり、ビクリと全身をこわばらせたかと思うと、
顔色を変えて気配の感じたほう――すなわち鳥居のほうに顔を向けた。
「おや? まだ終わっていないと思ったら……」
鳥居から、こちらに向かって悠然と歩いてくる、若い男の姿が見える。
その男は、自らの頭を軽くかきあげながら、さも意外そうな声をあげた。
「な、何者だ!?」
絹代が男に声を掛ける。その声は完全にかすれていた。
悠然とした仕草とは裏腹に、男から感じ取れる気配の大きさに呑まれているのだ。
241227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:30:06 ID:OYUV905N
「ああ、なるほど。君たちが邪魔をしていたのか……」
「邪魔だと? す、するとあの娘は、お前が操っていたと申すのか!?」
腕組みしたまま軽く絹代を一瞥し、ため息をつく男。
絹代は思わず、地面に倒れている少女を指差しながら、問いかけていた。
「まあ、そういうことになるのかな?」
「こ、こんな娘を操ってまで……お前の目的は、いったい何なのだ?」
首を軽く左右に揺らしながら、悪びれる様子もなく答える男に、絹代は再度問いかけた。
「……知って、どうするというのかね? 素直に言うことを聞いてくれるのかな?」
「いいから答えてもらいましょうか。返答しだいによっては……」
男は苦笑いを浮かべ、両手を大きく広げながら、やや小ばかにした口調で絹代に返事をした。
絹代からの返事は無く、代わりに佳乃がずい、と一歩前に踏み出し、男を睨みつける。
「よ、佳乃!」
思わぬ佳乃の行動に、絹代は佳乃の腕を取りながら叫んだ。
――この男の気配は尋常ではない。今こそ悠然と構えてはいるが、男がその気になれば、
自分と佳乃の二人では、とても敵わないだろう。それが分からぬ佳乃ではなかろうに……――
絹代は緊張しきった表情で、佳乃と男の顔を見比べていた。
「う〜ん。まったく、勇ましいことだね。……まあいいか。君たちは、死後の世界を信じるかい?」
「は?」
「な、何を……」
男からの返事は唐突な言葉だった。唐突すぎて、思わず佳乃と絹代の目が丸くなる。
だがその言葉に、二人の背後にいた夕那がビクリと身をすくめていた。
しかし、男のほうに目を向けていた二人は、夕那のそんな様子には気がつかない。
「まあ、どちらでもいいか。実は死後の世界、いわゆるあの世、という場所は本当にあるのだよ」
「…………」
ふたたび腕を組み、ゆっくりと腰を下ろす男。と、その腰が空中でピタリと止まり、足を組んだ。
その格好はまるで、見えない椅子に腰掛けているようだった。
絹代と佳乃はお互いの顔を見合わせ、油断無く身構えながら、男の話に耳を傾けていた。
242227 ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:30:40 ID:OYUV905N
「人間に限らず、動物の類は死んでしまうと肉体を離れて精神だけの存在、
霊魂というものになって、あの世に行くことになるのだけれども、何事にも例外はある。
――親よりも先に死んでしまった霊魂というのは、あの世には行けないのだよ」
そこで一旦言葉を切り、軽くため息をつく男。その視線が一瞬だけ夕那のほうへと向かった。
男と目が合った途端、夕那はまるで、心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚え、
自分でも意識していないのに、足がガクガク震えだした。
「そこは賽の河原といって、この世とあの世との境目にある、とても寒くて暗いところで、
しかも意地の悪い連中が、様々な嫌がらせをしてくるんだ。
……死んだ親が、同じ霊魂になって迎えに来てくれるまで、ね」
軽く足を組みなおし、大げさに両手を広げ、ゆっくりと首を振った。
口調こそは嘆いているように見えるが、どこか芝居じみたその仕草に、絹代たちは眉をしかめる。
「だがしかし、子どもの命を奪った相手が、他ならぬ親だった場合はどうなると思うかな?
答えは……子どもの魂は、賽の河原から出ることが出来ないのさ。……永遠にね」
「で? それと彼女を傷つけたのには、何の関係があるというのですか?」
右手を自らの顔の前にかざし、握りこぶしを固める男に対し、佳乃が話は終わったとばかりに、
男を睨みつけたまま、背後の美由樹を指し示しながら問いかけた。
「………君たち、ここまで言っても、まだ分からないのかい?
わたしは、そんな救われない霊魂たちを、救おうとしているだよ。
――そう、母親に殺され幽霊となってしまった、哀れな星崎由奈くんの霊魂も、ね」
「え……? か、彼女が……」
「「幽霊?」」
男は絹代たちを見据えながら、見えない椅子から立ち上がるように、ゆっくりと腰をあげた。
思いもよらなかった男の言葉に、思わず絹代と佳乃は振り返った。
そこには真っ青な顔で、全身をガクガク震わせながら美由樹に支えられ、
かろうじて立っているだけの夕那がいた――
243つぶやきマボ ◆MABOUp7up. :2005/05/15(日) 16:33:29 ID:OYUV905N
>227-242
……で、続きます。多分あとちょっとですので、長い目で見てください。
244名無しさん@ピンキー:2005/05/15(日) 16:42:39 ID:VTBsirME
Gj!
245名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 00:08:11 ID:sRsHgNcB
・・・良くこれだけのキャラクターを管理できるよなあ。
そこだけでも賞賛に値する。

そして、もちろん作品自体も素晴らしい。
246放課後の吸血鬼17:2005/05/16(月) 00:37:25 ID:ThhROTPH
「哲晴クン。キミ達を襲ったのは、女郎蜘蛛。人の生血をすする、蜘蛛の妖怪さ。一昨日女の子を襲ったのも、先週の殺人事件も、こいつの仕業だよ。
 ボクはアイツを倒す為に来た、いわば正義の味方さ」
「…なんで、吸血鬼が人間を守ったりするんだ」
哲晴は疑問をぶつけた。“吸血鬼”と呼ばれた瞬間、真紀はスッと目を伏せた。
「好きだから、じゃダメかな?」
哲晴が、えっという顔をした。真紀も、自分が言葉足らずなのに気付き、スッと頬を染めつつ憮然として付け加える。
「人間が、だよ」
「え、あ、そうか」
ポッと赤面する哲晴のその口調に、やや残念そうな気配が感じられる。
「だから、人間を守りたいと思うし、人間を傷つけるような妖怪は、許せない」
しばしの沈黙の後、哲晴は疑問の表情を浮かべた。
「…それを、そのまま信用しろって言うのか?」
真紀の緩んだ表情が、スッと硬くなる。
「ボクが、信用できないかな? さっき、キミを助けたでしょ?」
「信用するも何も…、僕は…、君を…」
しばし口篭もってから、一気に吐き出す。
「知らなさ過ぎる」
臭過ぎる台詞を言ってしまって、頬がカッと熱くなるのを感じた。真紀の頬も朱に染まり、また表情が微かに緩む。
真紀はズッとコーヒーを一口飲んで、気を取り直した。
247放課後の吸血鬼18:2005/05/16(月) 00:44:15 ID:ThhROTPH
「じゃあ…、そうだね。キミは妖怪が実在するなんて、知らなかっただろ?」
「あ…、うん」
「それはね、妖怪が、自分達の存在そのものを隠しているからだよ」
そう言えば、あの蜘蛛女も、口封じのようなことを言っていた。
真紀はふっと目を逸らす。
「『人種差別も解消できない人類が、妖怪と仲良く共存なんて出来ない』これが妖怪の、一般的な見解だよ。だから、ボクら妖怪が平穏に暮らす為には、自分の正体どころか妖怪の存在そのものを隠さなきゃならない」
真紀は哲晴と目を合わせた。
「キミみたいに、口の固い例外を除いてね」
一呼吸置き、視線をコーヒーカップに落とす。
「だから、あの女郎蜘蛛みたいに騒ぎを起こして、警察沙汰にするような奴は、妖怪社会では、ほって置けない。なんらかの忠告や処罰がなされる。そして今回は、ボクがその担当になった」
再び、視線を上げた。
「こういう訳なら、どうかな?」
「…そういう訳なら、納得できるけど。だったら、僕は何をすればいい」
「別に、何もしなくていいよ。例え警察に『犯人は蜘蛛女です』なんて言っても、信じてもらえないだろ? それに妖怪は普通、写真にも写らないから証拠も作りにくい。かと言って立ち向かうには…」
ちらりと、ザックリと傷のついた鞄を見る。
「どの道、キミにはどうする事もできないと思うよ。だから黙っているだけでいい。2・3日中には片がつくはずだから」
何も出来ない。その言葉は暗雲のように哲晴の心を翳らせる。
248放課後の吸血鬼19:2005/05/16(月) 00:44:48 ID:ThhROTPH
「じゃあ、何で僕にこんな事を話したんだ」
哲晴は声を荒げる。もっとも、周囲に聞こえないような小声ではあったが。真紀は、手にしたコーヒーカップに目を落とす。
「愚痴…かな? 正体を隠して人気者の転校生を演じるのって、意外とつらいから。…ほら、ボクって元々はこんなしゃべり方だけど、できるだけ違和感がないように、学校じゃふつうの喋り方してるし。
 だから、こうして時々、つい本当の事を、全部喋っちゃうんだ。信用できる相手に…」
再び、哲晴をジッと正面から見つめた。
「もし、今日知った事がどうしても嫌なら、重荷なら…、記憶を消す事も、できるよ」
記憶を消す? そんな事をしたら、あの紅玉の瞳に雪の肌、林檎の唇に白銀の牙の記憶も…。そしてそれは、今後の彼女との繋がりも、スッパリと切られる事にもなる。
「…いや、それはいい」
おそらくは理由を善意か何かと勘違いして、真紀はニコッと微笑んだ。
「ありがと。さ、早く食べちゃってよ。コーヒー、冷めちゃうよ」
哲晴は沈黙のまま、サンドイッチを片付けた。
「じゃ、そろそろボクは行くから」
暫く後、先に食べ終わった真紀は立ちあがり、伝票に手を伸ばす。
「お勘定は、口止め料という事で」
と、哲晴がサッと手を伸ばして先にそれを取った。
「いや。僕も、友達も助けてもらったんだし、僕が払うよ」
「え、でも。ここに誘ったのはボクだし…」
「だったら、せめて何か協力させてくれ。その…、知ってて何もできないのは、辛いんだ」
君の力になりたい、という言葉は、恥ずかしくて、ぐっと飲みこんでしまった。
「ふうん、だったら…。そうだ、一つ協力してもらおうか」
真紀は何かを思いついて、ニッと微笑んだ。
249放課後の吸血鬼20:2005/05/16(月) 00:45:39 ID:ThhROTPH
二人がそろってファミレスを出ると、すでに釣瓶落としの日はとっぷりと暮れていた。
先に立ってファミレスを出てから、真紀は両手で鞄を持ち、舞うようなステップでクルリと振り向く。制服のスカートが軽やかにフワリと舞う。
「さっきの事だけど、ボクはこの街の地理に明るくないから、いろいろ教えて欲しいんだ」
何かの役に立てる、つまり繋がりが持てる。曇っていた哲晴の表情が、パッと明るくなる。
真紀が最初にきいたのは、ペットショップの場所だった。哲晴は近くにあるその場所を教え、今日は定休日である事も告げた。
「じゃあ、あとは明日、昼休みに南棟の屋上で」
哲晴とファミレスの前で別れてから、真紀は一人呟く。
「ふふっ、晴れと日向か…」
ファミレスに入ったときと異なり、その足取りはスキップのように軽やかだ。
そのままヒョイと人気の無い路地に入り、ケータイを取り出す。登録してある番号にかけると、すぐに相手が出る。
「あ、真紀です。…うん。うまくいったよ。…はい。心配かけてごめん。じゃあ詳しい事は今夜に。…はい。じゃあまた」
250名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 00:49:27 ID:ThhROTPH
今夜はここまでです。

昼間、吸血鬼萌えを補給する為に、藤子F不二夫の「流血鬼」を読みました。
吸血鬼萌えは、もともと持っていたものですが、ここまで大きくなったのは、子供の頃に読んだこれの影響が大きいです。
いやあ、ラスト寸前の主人公の少年と、吸血鬼化した幼なじみの少女のやりとりは萌えますなぁ。
あ、だから吸血鬼が少女で攻めで、人間が少年で受けなのか。

<次回予告>
人の知らぬ闇で、群れ集う妖(あやかし)達。
交わされる想いと、秘められた想い。
それぞれの想いが交錯する中、巻き込まれた少年は…
次回、「放課後の吸血鬼」

…ゴメン、各話のタイトルなかったよ。orz 取りあえず、起承転結の転て事で。(起と承の区別もはっきりしてないけど)
251名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 00:57:10 ID:dZjAKsCj
青春っぽい会話に萌え。
んでもって>>250
>次回、「放課後の吸血鬼」
に吹いた(w
252名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 06:02:32 ID:1nt3YxW+
>MABOUp7up.さん
お久しぶり。
お元気そうでなによりです。
25311-740:2005/05/16(月) 20:06:50 ID:oYwfYTzk
前スレの終盤に蛇女SSを書いた者です。
「放課後の吸血鬼」の女郎蜘蛛さんに激しく萌えたので、
自分なりに蜘蛛女SSを書いてみました(無論、「放課後〜」とは無関係です)。
以下に投下します。
254ささがにの糸(1):2005/05/16(月) 20:08:21 ID:oYwfYTzk
 バシャッ!!
「うわっ! ‥‥ばかやろー、ちゃんと見て運転しろ!!」
 男の怒号にはもちろん何の反応も見せず、車が去っていく。
「くっそー‥‥泥だらけ‥‥」
 気合いを入れて着ていたらしい二流ブランド物スーツには泥水がはね、盛大に汚れていた。
「ハァ。ついてねぇー‥‥」
 その通り。彼、すなわち大森秋人(おおもり あきと)にとって今日はろくでもない一日だった。
起き抜けに素足でゴキブリを踏んづけ、電車が遅れて遅刻し、まとまるはずの商談がご破算になって
上司に絞られ、学生時代から付き合っていた恋人に振られ、だめ押しに泥はね。
憂さ晴らしに風俗にでも行こうかとも思っていたが、泥だらけになってしまってはそれもかなわないだろう。
(まるで誰かの陰謀じゃないか)
 いかにも駄目な大衆らしい独り言をいう。もちろん、ただの下っ端会社員を罠に掛けたところで
何にも搾り取れないことは彼自身も分かっていたが。
 頭の悪い陰謀論はさておくとして、冷静に考えると実際、困った事態だった。これでは
タクシーにも乗れない。駅は遠い。バスは――最終が出たところ。半端な地方都市にありがちな、
まさしく困った事態といえよう。
「 ク リ ー ニ ン グ 代 を 出 せ ー !!」
 住宅街の迷惑も顧みず、とりあえず鬱憤晴らしのためだけに叫んでみる。
心に季節外れの秋風が吹いた。

「お困り‥‥ですか?」
「うわっ!」
 突如、彼の後ろから女の声が。
「あの、クリーニング代が、とか言っておられたので‥‥。あら、ステキなスーツが台無しですね」
 その女はOL風といった様相だった。ダークグレーのスーツと機能的なバッグを身にまとい、
背中まであるストレートの髪は今時珍しいほどの「緑の黒髪」。暗がりのせいで顔は
はっきりしないが、控えめに見ても標準以上の容貌を感じさせる。
255ささがにの糸(2):2005/05/16(月) 20:10:56 ID:oYwfYTzk
「あ、こ、こりゃどうも。‥‥ええ、さっき泥はねをくらいまして。振り向きもしないで
行っちゃったんですよ最近のドライバーはマナーがなってないですねハハハ」
 滑稽なほどにあわてながら、秋人は情けない事情を開陳した。見知らぬ美人を前にすると
緊張のせいで饒舌になるのが彼の常だ。
「あの‥‥よろしければ、うちへ来られますか? そんな汚れではお宅へ帰るのも大変でしょう?」
「え‥‥」
 なんだなんだ、どういうことだ。女性が男を家へ誘うなんて不用心にも程が‥‥ああそうか、
家族もいるのかな。お父さんのスーツを貸してくれるとか。
 それに、暗くてよくは見えないけど、かなりの美人と見た。
上手く行けば‥‥いやいや、親切心に下心を持っちゃだめだ。
「あ、いや、ならお言葉に甘えて‥‥」
 下心を持っちゃだめもなにも、秋人の口から出た言葉は下心にしっかり裏打ちされたものだった。
「分かりました。私の家、この近くなんです」
 一瞬の逡巡に気付いてか、くすりと笑うと彼女は歩き始めた。繊細な黒髪が夜風に舞い、
女の香りを放つ。
 とりとめもない会話をぎこちなく交わしていたが、男の視線は豊かな髪、くびれた腰、
白い脚に釘付けになっている。彼女の方はそれを知ってか知らずか、ときおり髪をかき上げ、
横目で視線を向けながら話に付き合っていた。ときおり自らの魅力と男の心を知り尽くしているような
笑みを見せることがあったが、秋人がそれに気付く瞬間には、それまでの清潔感溢れる微笑を浮かべる。
と、彼はちょっとしたことに気が付いた。
「あ、ちょっとまって。背中に‥‥よいしょ」
 秋人は女の背中に小さな蜘蛛を見つけ、それをつまんで捨てる。
「蜘蛛がついてたんですよ、こんな小さな奴ですけど」
「あら、ありがとうございます。蜘蛛、ですか。
――わが背子(せこ)が 来べき宵なり ささがにの 蜘蛛のふるまひ かねてしるしも――
ふふっ、この和歌、ご存じですか?」
256ささがにの糸(3):2005/05/16(月) 20:11:55 ID:oYwfYTzk
 突然、流れるように和歌を口ずさむ。あまりの唐突さに面食らわずにいられない。
「ささがに、ええとつまり蜘蛛は恋人が来るのを教えてくれる、っていう言い伝えが昔はあったんですよ。
不思議な虫だ、ってことなんでしょうね」
 そう言ってまた笑顔を見せる。高校時代、古文の成績が「2」だった秋人は思わずうつむいてしまった。

 * * * * * *

「こんなところにマンションなんてあったのか‥‥」
「最近できたんですよ。‥‥どうぞ」
 彼女は駐車場側出入り口の鍵を開けると、泥水まみれの青年を中に招いた。
階段を上がる足音がこつこつと響く。通路に並ぶ家々からは明かりもなく、不思議なほどに静かだ。
「ここです‥‥ちょっと待ってくださいね」
(‥‥部屋に明かりがついてないぞ。ということは‥‥)
 ということは、一人暮らしだ。好意を受けながらも邪な期待に胸がふくらむのは男の性だろうか。
「はい、どうぞ。狭いですけど」
「ど、どうも‥‥おじゃまします」
 女性らしいこぎれいな部屋は秋人のあまり知らない世界だが、どうも生活感に欠ける
印象があった。きれい好きな若い女性の部屋、というのはこんなものなのだろうか。
「替えの服を出しときますから、シャワーでもしますか?」
「‥‥いいんですか?」
 秋人がお人好しでスケベなのは仕方がないとはいえ、それでもさすがにうますぎる展開には
警戒してしまう。
「ええ、お気遣いなく」
 微笑む彼女の唇に、邪悪な何かが秘められているように感じたのは勘ぐりのしすぎだったろうか。
257ささがにの糸(4):2005/05/16(月) 20:13:29 ID:oYwfYTzk

 シャワーを終えると、脱衣場にはぱりっとしたスーツが用意されていた。不思議にサイズも
ぴったりだ。彼女の父親や恋人が住んでいる様子もなく、そもそも生活感を感じさせない住まいに
男物のスーツがあり、しかも自分のためにあつらえたかのように着心地が良い。ここに至っても
不審を抱かなければただのバカだが、かといっていかなる「陰謀」が企てられているのか、
それを合理的に説明することは秋人でなくともできそうにない。
「どうですか、サイズは合います?」
 彼女も着替えたと見え、ラフな格好になっている。V字に切れ込んだ襟元から、
スーツ姿では分からなかった見事な谷間が視線を誘う。
「あ、ええ、ぴったり‥‥それより‥‥」
「どうしてうちに男物のスーツがあるんだ、ってことですか?」
「‥‥」
「教えてあげますけど‥‥ちょっと耳を貸してくださいね」
 彼女の綺麗な顔が近付き、香しい髪が鼻孔をくすぐり、しなやかな腕が首に絡み付き、
豊かな胸が押しつけられ‥‥
 ガリッ!
「うわっ!!」
 首筋に突如起きた激痛に、秋人は女を突き飛ばした。
「あん‥‥抵抗するの‥‥? おかげでちゃんと噛めなかったわ」
彼女の顔つきが清楚なそれから狂暴さを帯びたものへと変わりゆき、その声もまたドロリとした
艶を帯び始めていた。反射的に首筋に手をやると、指先にべったりと赤いぬめり。
「あ、あんた、いったい何を‥‥!」
「んふふ‥‥巣に掛かった以上は教えてあげるわ‥‥あたしの本当の姿を‥‥」
 低くそう言ってぞんざいに服を脱ぎ捨てると、彼女の身体に変化が起きた。
下半身が大きくふくれあがり、左右の脚がつながり、伸び、玉のように膨らみ、
節くれ立った細い棒が蠢き‥‥。

 蜘蛛だった。
 上半身は妖しく美しい女の姿を保ったまま、その下半身は、ひくひくと蠕動する蜘蛛の
それになりかわっていた。
258ささがにの糸(5):2005/05/16(月) 20:15:18 ID:oYwfYTzk
「ひっ‥‥!! ば、化け物!! 来るな、うわああっ!!」
 床にへたり込み、後ずさりをしながら何とか距離を保とうと逃げ始める秋人。蜘蛛女は
それを見ながら、指先で紅い唇をなぞった。
「ふふふ‥‥一気に食べちゃうのはもったいないから、少しだけ遊びましょ。五つ数えるあいだ、
待ってあげる。んっふふふ‥‥準備はいい? じゃあ‥‥ひとーつ‥‥ふたぁつ‥‥ふふ‥‥」
 怪物がわざとゆっくりと数え始めると同時に、秋人は死にものぐるいで逃げ出した。
靴も履かずに、ただひたすらに逃げることだけを考えて。何度も転びそうになりながら
ドアへと殺到し、通路へ飛び出し――瞬間、彼は怪物の一言を思い知った。
『巣に掛かった以上は教えてあげるわ』――飛び出した先に通路はなかった。代わりに、
マンションとは似ても似つかない、廃ビルの荒涼とした風景があった。
「うああああぁぁ!!」
 それでも走った。意味をなさない悲鳴を上げながら、下への階段を探し、
つんのめりながら駆け下り、一階へ。

「‥‥よぉっつ‥‥いつつ! はぁい、もういいかしらぁ?」
 ねちりと粘液質の笑みを浮かべると、彼女はひとり楽しげに舌なめずりをした。八本の脚を
音もなく滑らせ、開け放たれたドアをくぐると、今度はその脚のうち前の二本をクイクイと動かし、
見えない何かに触れるような仕草をする。
「くふふ‥‥一階ね。あはは、出口が閉まってるから慌てているのねぇ‥‥かわいいわぁ」
 そして影のように走った。

「くそっ! 開け、開いてくれ!!」
 一階出口は無情にもシャッターで閉ざされていた。半狂乱になった秋人は何度も体当たりを
繰り返すが、その程度の衝撃で破れる様子はない。
「他に出口‥‥窓、窓は!?」
259ささがにの糸(6):2005/05/16(月) 20:17:57 ID:oYwfYTzk
 窓はしかし、すべて木で打ち付けられていた。が、鍵の掛かった防犯シャッターよりは
与しやすいかも知れない。手近にあったパイプ椅子で殴りつけ、死にものぐるいで板を叩き壊す。
ガラスの破片が飛び散り顔や身体は傷だらけになるが、そんなことに構うことなく
ひたすらに椅子を振るう。
バキッ、ベキッ――バキィッ!!
「やった!!」
渾身の一撃で板は外れ、脱出口が開かれ、身を乗り出し――
「ひっ! な、なんだこれ!?」
その窓の向こうには網があった。何もないと思っていた空間には、ほとんど見えない糸が
隙間無く張り巡らされていた。引き破ろうとしても破れない。突き破ることもかなわない。

 カサッ。
「!」
 血走った目で振り返る。
 暗闇には何も見えないが、圧倒的な存在感は「それ」が近くにいることを知らせている。
足下には歪んだパイプ椅子が、見えない糸でふさがれた窓からの月光に照らされていた。
秋人は最小限の動きでそれを手にし、身構えた。勝算があってではない。そうしなければ
正気を保てなかったからだ。

 カサッ。
 今度は別方向に。秋人の首は反射的にそちらを向く。人間の反射速度はこれほどか、
と思わせるほどの正確さで。だが、そこにも何も見えなかった。
(どこだ、化け物‥‥)
「こ・こ・よ」
 蠱惑的に響いた声に驚くこともできないまま、彼は床に叩きつけられた。
260ささがにの糸(7):2005/05/16(月) 20:21:08 ID:oYwfYTzk

ガシャァン‥‥
パイプ椅子がどこかに落ちる音。
「あ、あ‥‥! た、助け――ぎぃっ‥‥!」
 這いつくばり、逃げ出そうと虫のようにもがく。しかし、鋭く尖った脚がそれを許さなかった。
首を無理にねじ曲げて振り向くと、黒い鉄杭のような脚が背中を押さえつけていた。
そしてその向こうにはざわめく脚と不気味にふくれあがった腹。
「うっふふふ‥‥捕まえた。もう逃げられない、もう助からない。
安心して、あたしから逃げられた男はいないのよ。さぁ、食べてあげるわね‥‥」
 睦言を紡ぐかのように甘い声で死を囁きながら、蜘蛛女は節のある足を四本、
器用に操って秋人の身体を持ち上げた。そしてその体を人間のままの両腕で抱きしめ、
牙の覗く唇で男の唇をふさぐ。蒼白い月光に照らされたその様は、
例えようもなくロマンチックだったろう――女の上半身だけ見ていれば、
男の顔が恐怖に引きつっていなければ。
 抵抗しようともがこうにも、脚の一本で尾部をさすったかと思うと、ひとまとめにした両手首の周りを
その脚でくるくると回し、それきり腕は動かなくなってしまった。糸で絡められてしまったのだろう。
それに気付く頃には足も同じ運命をたどっていた。
「そんなに怖がらなくてもいいわ‥‥たぁっぷり楽しませてあげるから」
 鋭い足先が襟元に引っかかった瞬間、秋人は目を固く閉じた。同時に、服は股下まで
一気に引き裂かれた。蜘蛛女は秋人の身体を舐めるように見つめると、その視線がある一点で留まる。
「ふぅん、ずいぶん立派ねぇ。並の男よりかなり大きいんじゃない?」
 股間のしおれた逸物に目を細め、
「‥‥でも萎えてちゃ楽しめないわね。うふふ、すぐにカタくしてあげる」
 彼女は男の身体を降ろすと、脚先でその裏筋をカリリとなぞる。肛門の手前から亀頭の先まで、
軽くひっかくように。秋人の身体はそれに合わせてびくりと震えた。蜘蛛の体に対する生理的な嫌悪、
昔話のような化け物に喰われるという恐怖、そういった感情だけでは説明できない反応。
その反応に唇をにぃっと歪めると、蜘蛛女は自らの胸を淫らに揉みしだきながら、
爪先での行為を繰り返した。そのたびに秋人の身体はびくっと震え、その性器は確実に
大きさを増してゆく。
261ささがにの糸(8):2005/05/16(月) 20:25:23 ID:oYwfYTzk
「ふふふふふ‥‥。化け物に嬲られて勃たせるの? 浅ましいわねぇ。でもそれがオトコ、よね。
大丈夫よ、限界まで感じさせてあげるから‥‥」
 十分に勃起したことを確認し一対の脚で巧みにしごき上げながら、さもバカにしたような口調で
挑発する。天を突くようにいきり立った肉の棒を自在に這い回り、ますます快楽と屈辱を誘う
その刺激は、硬く無機質な外皮によるものとは思えないほど繊細だった。
思わず苦悶でも悲鳴でもない声を上げそうになる。
「そんなに必死に目を閉じて、声も我慢して‥‥それで耐えてるつもり?
のどまで喘ぎ声が出かかっておきながら、腰をビクビクさせて我慢汁垂れ流しながら、
それで感じてないつもりなの?」
 豊かで美しい乳房を胸板にこすりつけながら、妖女は甘く、淫らに、だが冷たくクスクスと笑った。
「やめろ、もうやめてくれ、ひと思いに殺してくれ!」
 固く視界を閉ざしたまま、秋人は何とかして人間としての尊厳を保とうとした。
だが怪物の返答は非情なものだった。
「っくくく‥‥何を言ってるのかしらぁ? この程度で『殺してくれ』?
あっはははは、分かってない、全然分かってないわねぇ。シゴいただけでそんなセリフが
出てくるんだったら、あたしの膣(なか)は耐えられないわよぉ?
ふふふふ、そんなに気持ちいいんだったら、もぉっと感じさせてあげる。おいで、あたしの中へ‥‥」
耳元でねっとりと囁く声に、秋人は事態がますます悪化したことを悟った。
(‥‥化け物の「中」? 冗談じゃない、なんでこんな蜘蛛の化け物と‥‥!)
 しかしそんな内心とは関わりなく、蜘蛛女がその言葉を実行に移すつもりであることは
雰囲気からありありと察せられた。硬質の爪ではなく、人間と同じ形の指先が男根を捉え、
今度は自分の身体が宙に持ち上げられるのを知った。そしてそのまま硬い脚で抱き寄せられると、
不意に亀頭に熱く湿った感触を感じた。
「ひぃっ! やめてくれぇっ!!」
262ささがにの糸(9):2005/05/16(月) 20:27:30 ID:oYwfYTzk
 それが何であるかは視覚に頼るまでもなく分かっている。蜘蛛女の「中」への入り口なのだろう。
節足動物とほ乳類が組み合わさったグロテスクな化け物の、性器。そこへ自分が飲み込まれようと
している。だが、相変わらず手も足も動かず、芋虫のように身体をよじることさえままならない。
「やめ――!」
――ぢゅぐっ。
「ひぎっ‥‥ぐああああ!!」

 湿った音と共に、廃ビルに男の悲鳴が響く。全裸の男が蜘蛛の怪物に抱きしめられ、
その太く硬い肉質の棒は女の半身と蜘蛛の半身との境界近くにある肉の裂け目に突き刺さっている。
その手は頭上で固められ、その口は舌を突き出し、その目は虚空を見つめ、その身体は
ビクビクと痙攣していた。
「んあっ‥‥あぁん‥‥。ふふ‥‥イったの? 早いわ‥‥でもそれでいいのよ。
たくさんイって、あなたの命、全部注ぎ込んで‥‥ほらぁっ!」
 女の腕と蜘蛛の脚でその腰を密着させる。瞬間、秋人の身体はまたしても硬直し、
今度は繋がっている部分から白い粘液が滴り落ちた。
「かはっ‥‥ひぃ‥‥」
「ああ‥‥あはぁ‥‥。イイわ、あなた。人間にしてはすごく立派よ‥‥あたしまで感じそう‥‥。
くふふ‥‥このまま喰い殺すのはもったいないかしら‥‥?」
 上気した化生の美貌が口にした言葉は秋人に期待を持たせて良いはずのものだったが、
彼はそれに気付かなかった。いや、その声さえ認識できなかった。蜘蛛女の膣が与える刺激は、
彼女の言葉通り、いや、それを遥かに超える快楽を秋人に叩き込んでくる。
その性器は形こそ人間と同じだったが、機能は全く異なっていた。人間のそれは命をはぐくむために
あるが、妖女のそれは命を奪うためにあった。激烈な快楽と引き替えに、生を引きずり出し、
根こそぎ搾り取るために。そこへ、熱く、キツく、甘く、休むことなく呑み込まれてゆく。
ペニスも、精液も、意識も、生命も。
263ささがにの糸(10):2005/05/16(月) 20:28:58 ID:oYwfYTzk
 ――ぢゅぶっ、ぐぢゅっ、ぬちゅっ。
 蜘蛛の脚が男の腰を抱え込むたびに淫猥な音が響き、そのたびに悲鳴と嬌声が上がる。
吸い尽くせなかった白濁液はそれぞれの身体をつたい、コンクリートの床に水たまりを作ってゆく。

「あ、あ、うあ‥‥!」
どくっ、どくっ‥‥。
「んうっ! はぁ、はぁ‥‥。あ‥‥ん、さすがに苦しい?」
 何度目かの律動の後、搾り取る力を緩めて優しげな声で問いかけるが、青年はぜいぜいと
荒い息をするばかり。射精の量も少なくなり、その見事と言いうる剛直もやや疲れ始めているようだ。
「‥‥やっぱり人間は人間、か。しかたないわ、少し力を貸してあげる。
そのかわり‥‥ふふふふ‥‥楽しませてよ。あなたの力の限界で、狂おしく悶えながら
あたしを楽しませて‥‥!」
 耳に舌を差し込みながらそう言うと、やおら唇を首筋にあてがい――その鋭い牙を深々と突き立てた。
「ぎゃあっ! あ、あ、あ、ぐあああぁッ!!!」
 苦悶の絶叫。目を血走らせ、青筋を立て、ガクガクと震えながら。
だがそのけたたましい悲鳴には頓着せず、蜘蛛女は首筋にかみついたまま動かない。そのうちに痙攣も
弱くなり、悲鳴は小さくなり、ついには止まる。同時に牙も引き抜かれた。傷口から赤黒い血と
透明の液がとろりと流れ出る。
「あ、あ、‥‥」
「どう? 気分は。あたしの毒はすぐに効いてくるわ‥‥そうすればあたしともっとたくさん楽しめる。
快感は倍増するし、持久力もちゃんと付く。そう、突いて突いて突きまくって、
あたしを悶えさせることもできる。
かわりに、あなたはあなたじゃ無くなってしまうかも知れないけど、ね。
ま、死ぬよりいいでしょ?‥‥んふふ‥‥」
――ドクン。
「!?」
突如、秋人は自分の鼓動をはっきりと聞いた。
264ささがにの糸(11):2005/05/16(月) 20:33:16 ID:oYwfYTzk
――ドクン。
「うっ‥‥く‥‥ああ、っぐぅああっ!?」
「――っ! あ、あ、効いてきたの‥‥ねぇ‥‥んくっ!
い、いいわ、さっきとは比べものにならない‥‥!」
 秋人が叫び声を上げると同時に、妖女はその腕を強く絡ませた。鋭く冷たかった瞳は熱く潤み、
その身体が小刻みに震える。
――じゅぶぅっ。
 青年を抱える脚がその腰を押しつける。途端に上がる二つの悲鳴。
「ぐがあぁぁっ!!!」
「んあああっ!!」
 だが、一方は限界を超えた快楽による苦悶の咆哮、もう一方は快楽に酔いしれる甘美な悲鳴だ。
「いいわ、ステキ‥‥っ! ああ、もうたまらない!
あなた、が、自分でっ‥‥動い‥‥てよぉ‥‥っ!!」
 言葉を詰まらせながらそう言うと、彼女は秋人の腕と脚を戒めていた糸を鋭い爪先で解き放った。
「うあ、ああっ!!」
 バランスを崩しそうになった秋人は女の身体を抱きしめた。
香しい髪が汗でまとわりつく見事な乳房を胸板で押しつぶし、人間のものと変わらない上体を抱擁した。
もはや恐怖はなかった。嫌悪もなかった。あるのは快楽だけ。
妖しく美しい蜘蛛の怪物を抱きしめ、貫き、共に咆哮した。

 じゅぶっ、ずぷっ、ぐじゅっ。
 粘液の音はさらに大きくなり、二人の足下の水たまりは見る間に広がってゆく。
もはや蜘蛛の脚は男の身体を支えることも難しくなり、その先までもぴくぴくと震えていた。
「くはっ! ああっ、いい、すごい‥‥っ!! 突いてぇ、も、もっとぉっ!!
んぐっう、くあ‥‥ぅ、ああああっ!!!」
「ぐあっ、あ、あぁっ、くはっ、うああっ!!」
 当初の挑発的な責めとはまるで違う、快楽に溺れる妖女の求めに応じて秋人はがむしゃらに
腰を動かす。全身を走り抜ける快感の奔流は普段の絶頂感など比ぶべくもないほどだ。しかし
刺激に脳髄が痺れながらも、達する気配はまだ遠い。いよいよ強く蜘蛛女を抱きしめ、
全力で腰を叩きつける。その動きはもはや人間のものなどではなかった。
265ささがにの糸(12):2005/05/16(月) 20:35:08 ID:oYwfYTzk
「ああああああああっっ!! だめ、もうだめっ!!
イく、あた‥‥し、もうっ――あ、あ、‥‥あああ――――ッ!!!!!」
「グガアァァァアアアッ!!!!!」
 狂おしい絶叫、野獣のような咆哮。次の瞬間に大量の白い粘液が、
怪物の秘裂からゴボッ、と吹き出すようにあふれ出た。
「――かはっ‥‥あ、あ、あふぅ‥‥っ。
ち、力を貸してあげたとは言っても‥‥ああぅ‥‥ここまで‥‥とは‥‥ね‥‥。燃えたわ‥‥」
 快楽に耐えきれず意識を失い、ぐったりと体重を預けてくる男を軽く抱きながら、蜘蛛女は甘く囁いた。
「吸い尽くして終わり、って思ってたけど‥‥思わぬ拾いものだわぁ、これは」
 そう言ってくすくすと笑う。それは淫靡で、妖艶で――だが、不思議なまでに無邪気な笑みだった。

 * * * * * *

「ん‥‥ああ‥‥朝か‥‥」
 大森秋人はいつもの部屋で目を覚ました。昨日はろくでもない一日だったが、
それを引きずっていては仕事にならない。昨日のことは昨日のこと。
「‥‥どうやって帰ったんだっけ‥‥まぁいいか」
 どういうわけか帰り道の記憶がない。仕事の後、デートに行って、振られて、
‥‥それから後が分からない。分からないと言うことは、たぶん痛飲したのだろう。
 そのわりに二日酔いの気配もないのが、不思議といえば不思議だ。
「おっと、ぼやぼやしてるとまた遅刻だ」
 ごく軽い朝食を取り、髭を剃り――鏡を見て、違和感に気付いた。
「あれ? なんだこれ」
首筋に二つの腫れがある。虫にでも刺されたのだろうか。
「まるで吸血鬼にでもやられたみたいだな。ま、痒くもないからイイか」
266ささがにの糸(13):2005/05/16(月) 20:36:21 ID:oYwfYTzk

 * * * * * *

一ヶ月後。白糸商事、営業二課。
「おい君、大森君は最近どうしたんだ? 以前とずいぶん様子が変わったようだが」
管理職であろうか、白髪交じりの男性が若い社員に問いかけた。
「そうなんですよ。なんでも『彼女に振られた』とか言ってた日くらいから、だんだん‥‥。
付き合いは悪くなったし、なんか取っつきにくくなった、っていうか――。
それに、会社帰りは変に元気なんですよ。まるで恋人に会いに行くような足取りで‥‥」

そう、夜ともなれば彼は恋人の元へ急ぐ。今宵もささがにの糸にひかれて。


(終)
267名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 20:42:09 ID:ThhROTPH
>ささがにの糸
ええい畜生。リアルタイムで読んじまったよ。
まったく、読まなきゃ良かったよ。
こんなイイもの読まされたら、影響されちまうじゃないか。
しかも、タイトルが教養を感じさせて良い。
自分がタイトルを凝れないのが非常に悔しい。
ええい畜生め! Good Job!
268名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 22:01:46 ID:xM5U5F2E
蜘蛛キタ―――(・∀・)――――!!
読み終わってあんぐり口が開きっぱなしの自分に気づいたw GJ!!
269名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 22:33:18 ID:DeC4WiVB
神。内面まできっちり化物な所が素晴らしい。
270名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 23:38:44 ID:UsHh1pRc
蜘蛛ステキー。
できれば続きなどリクエストしてみたい
271名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 00:37:50 ID:sJ4Hvji3
うまいなぁ
272放課後の吸血鬼21:2005/05/17(火) 01:18:13 ID:CYhqxtwG
その夜7時。真紀の住んでいる、市内の安アパート1階の一室。
ピンポーンと、呼び鈴が鳴った。
「こんちゃーす。魅っ子ちゃんでーすっ」
聞きなれた能天気な声と口調に、青いシャツとジーパン姿の真紀は、はーいと返事をしてドアを開ける。
「ようこそ。魅子先輩」
真紀が出迎えると、そこにはブレザーを着た、中学生くらいのショートカットで、レンズの大きめの眼鏡をかけた少女がいた。
「おっ久しぶりー。真っ紀ちゃん」
彼女は子供っぽい丸っこい目をニッと細めてそう言いうと、真紀にピョンと飛びつき、唇にチュッと軽くキスをした。
もしこれで真紀が長髪でなかったら、頭一つ分の身長差と、真紀のスレンダーな身体と服装のせいで、男女のカップルに見えてしまう。
「あーっ。何やってんですか。魅子先輩」
部屋の中からの咎める声の主は、真紀のそれとは多少違うセーラー服の少女。座っていると畳に届くその髪は、スックと立ちあがると腰をも超える長さだ。
やや垂れ気味の微笑んだような目を、この時ばかりはカッと見開いて不満げな表情だ。
「あ、美姫ちゃん先に来てたんだ〜。あ、お邪魔します」
後ろ手にバタンとドアを閉めると、スポッとスニーカーを脱ぎ、奥へと入る。
「別に、そんな目くじら立てなくてもいーじゃない。ほんの軽い挨拶なんだから。今、わたひが通っているとこじゃ、ジョーシキよ」
「それは…、魅子先輩の学校だったら、そうかもしれないですけど・・・。ここは女子校じゃないし、第一、真紀先輩に失礼ですよ」
美姫が微笑みのまま、眉間にちょっとシワを寄せる。
「ん、もぉー。美姫ちゃんたら。あいっかわらず、お固いんだからー。べっつにかまわいなよねー、真紀ちゃん」
魅子はきゃらきゃらと笑う。毎度のこととはいえ、そのハイなテンションには押されてしまう。
273放課後の吸血鬼22:2005/05/17(火) 01:20:33 ID:CYhqxtwG
「う、うん。別にボクは構わないけど・・・。前に、そんな感じのとこに、いた事があるから・・・」
実は、キスどころじゃない事もしてたりするのだが、それはまた別の話。
「ほら、真紀ちゃんもこう言ってるし。あっ、それとも、ひょっとして美姫ちゃんたら・・・」
そう言って、魅子は眼鏡をクイッと直すと、にやにやと意味ありげに笑って、真紀と美姫を交互に見た。
「ち、ちょっと、何言ってんですか。別にあたしは・・・」
「わかった、わかった、じゃー、返してあげるから」
そう言って、魅子は今度は美姫にヒョイと近寄り、背伸びをすると目を瞑りツッと唇を軽く尖らした。
「結構です。いい加減にしてください。魅子先輩」
凍りついたように笑顔のままの美姫に、グイっと押し返されて、魅子はム〜と、不満げに口を尖らせる。
「あっ、ひょっとして、まだだったの…。だーいじょうぶ。痛くしないから。お姉さんが、優しく教えてあ・げ・る」
と、突然、美姫の腰まで伸ばしたきれいな黒髪がするっと伸び、まるで生きているみたいに魅子にグルリと絡み付いた。
「いま、読んだんですか? 心・・・」
美姫は精一杯低い声を出して、魅子の目をじっと見詰めた。しかし、頭半分程の身長差があり、相手を拘束している立場なのにもかかわらず、泣き笑いの顔では迫力がない。
「えーっ、しっつれいねー。大事な美姫ちゃん相手に、いきなりそんなことしないよー。
 大体、まだの娘って態度で分かるよ。そ・れ・に、今自白してくれたし〜」
ニヤニヤと、してやったりの表情を浮かべた魅子。美姫は顔を真っ赤にして、ガクッとうなだれる。
「ま〜ったく、あんまり固過ぎると、彼氏に嫌われちゃうぞ」
美姫は、ついに笑顔を止め、ぷいとそっぽを向く。
「別に、あんなの彼氏じゃありません。ただの見境のない女好きですっ」
魅子は、振り解いた黒髪をちょいと掴んでみせる。
「そーね。たしかに女好きね。でも、“これ”でも構わないなんてのは、一本芯の通った女好きよ。で、実際はど・う・な・の?」
「そ、それは…」
ニコニコと暴力的な笑顔で迫られ、美姫はモゴモゴと口篭もる。
274名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 01:25:39 ID:CYhqxtwG
本日はここまでです。

>251
萌えて頂けて幸いです。
ちなみに「『信用するも何も…、僕は…、君を…』『知らなさ過ぎる』」は某OVAからのパクリだったりします。

>253
こんないい作品のヒントとなれて幸いです。
改めて思うのですが、この板の方々はレベル高いですね。正直、こういう文章・キャラ・纏まりも良いSSを見ると自信なくします。

取り敢えず、新キャラ2名追加です。種類とか詳しい能力とかはまた後ほど。
275名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 17:55:20 ID:sLdql0FP
怪物共はみんな死ねばいいんですよ(^ω^)
27611-740:2005/05/17(火) 18:39:14 ID:XvLgsFng
蜘蛛SS書いた奴です。
>>267-271
thx!
自分の趣味で突っ走ったのに、萌えてもらえたのは望外です。
タイトルも一応ひねってみたり。…「蜘蛛の糸」じゃ芥川龍之介だし(w

>>274
マジであの女郎蜘蛛さんがなかったら書けませんでした。
続き期待してます。
277名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 18:57:46 ID:MWJNLKUS
たとえ、いつの時代でも、どんな時代でも……
人外でも、性欲をもてあます。
278名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 23:48:37 ID:RKFW/CnP
今日、保管庫で「ひでぼんの書」読んだ。
もともとエロ小説自体あまり好みじゃないが、神話ファンとして楽しめた。
そしてホロリとさせるラストも良かった。
分量的にも質的にも充分本として出版できるのではと思った。
279放課後の吸血鬼23:2005/05/18(水) 00:40:22 ID:iLruZpcH
「えっと、お取り込み中だけど、いいかな?」
カチャカチャとカップとお皿と、ケーキの箱を載せたお盆を持って来た真紀が、美姫に助け舟を出す。
「あ、ゴメンね、美姫ちゃん。ちょっち、はしゃぎ過ぎちゃった」
魅子は、あれをちょっとと表現する。そして真紀の意図に気付いて、それ以上の追求を止める。
「魅子先輩。あんまり美姫ちゃんを、いじめないでよ。先輩と違って繊細なんだから」
「はぁ〜い。愛する真紀ちゃんが、そういうならぁ」
わざとらしく、クネッとしなを作る。生憎と、真紀並のペッタンとした胸で色気はないが。
「ありがとうございます。真紀先輩」
美姫は微かに頬を赤らめたぽーっとした様子で、助けてくれたナイトに礼を言った。
「美姫ちゃん。許してやってね。魅子先輩も、悪気があるわけじゃないんだから」
「はい、わかってます」
あんなにはしゃぐのは、あたしの笑顔と同じですから、と心のなかで付け加える。
「あ、そうそう」
魅子は思い出したように、トテトテと玄関脇に置いてあったファーストフードの袋を取りに行く。
「ケーキもいいけどさ。美姫ちゃん、学校から直行してきたなら、夕ご飯まだでしょ? 今からだと帰りは遅くなるんだから、ここで食べちゃおうよ」
そう言って、袋の中から人数分のハンバーガーセットを取り出すと、卓袱台に並べた。
ファーストフードとコンビニのサラダの夕食後、ケーキを出してお茶にする。飲み物は、美姫と魅子は紅茶――ちなみに、ティーサーバー使用――で、紅茶の嫌いな真紀はホットミルクである。
「しっかし、真紀ちゃん、物もち良いわね〜」
ふと気付いて、魅子が真紀のホットミルクの入ったマグカップを見る。
そこには、大分かすれてはいるものの、暴走族の格好とロングスカートのセーラー服の直立する二匹の猫の写真がプリントされていた。
「まあね。身軽なように、物は持たない事にしてるから、その分ある物は大事に使うんだよ」
それに、初めて買ってもらった物だし。魅子を見ながら、そう真紀は心の中で付け加えた。
そして、作戦会議が始まった。
280放課後の吸血鬼24:2005/05/18(水) 00:50:23 ID:iLruZpcH
「じゃ、まずは、今回参加できそうな人から」
魅子はリストを取り出して二人の前に置くと、美姫の後ろに回ってその長い髪にサッサッとブラシをかけ始める。そして手元から目を離さずに、リストにある妖怪の名前とその予定をスラスラと挙げる。
続いて、真紀が地図を広げて、ペンで調査済みの地域にキュッとマーキングする。
魅子は地図を見つつ、手を休めずに慣れた様子で美姫の髪を好き勝手にいじる。鴉の濡羽色の髪は、三つ編みにされたり、リボンで束ねられたりと、次々にその姿を変える。
美姫の方もなれた様子で、静かに微笑んで大人しくされるがままでいる。そして一つの髪型が完成するたびに、魅子は、どう?と手鏡で美姫自身に見せる。
「相変らず、何にもしないのね、この髪」
真紀の説明が終ってから、魅子はそうコメントする。
「縛ったりすると、動かしづらいですから」
ニコッとした表情を崩さず、美姫はそう答える。
「ん、もう。せぇっかくの、射干玉のように漆黒で、黒曜石みたいに艶やかで、絹の様にしなやかで、鋼のように強靭な、ステキな髪なのに、もったいないよ」
「さらっと、妙な表現混ぜないで下さい」
固まったような微笑が、ピクリと僅かに崩れる。
「ほ〜ら、怒ったなら怒ったで、さっきみたいに表情を変える。美姫ちゃんはもう、充分に髪を抑えられるんだから、ね」
魅子が解き終わった髪は、さっきと違ってピクリとも動かない。それに気付いてあ、と小さく声を出した美姫に、魅子はギュッと抱きついて耳元で囁く。
「我慢もいいけど、あたし達といるときくらい、無理は禁物だゾ、と」
「あ…、はい」
美姫は今度は惰性ではなく、自分の意思でニコッと笑った。
そして真紀が今日の報告を始めた。
281名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 01:05:06 ID:iLruZpcH
今回はここまでです。
>276
そういっていただけると光栄です。
自分の作品が、人様に何らかの感銘を与えられるというのは、創作者としての喜びであります。

しばらくエロっポイシーンも吸血シーンもなしだと思いますがご容赦を。
さて、この名前の似た三人娘の性格とか、どんな関係とかが伝われば良いんですが…。

今日、過去スレとか保管庫とかを一部ですが見ました(詳細>278)。
スゴイですよね、文章も、ストーリーも、もちろんエロも。
やっぱり創作の場は、いろいろと学ぶものがあって良いです。

自分でも予想以上に長くなって参りました。
それでも予定したストーリー内なので、つまりは最初っから文章量を読み違えていたわけで…
はたして終りまで気力が持つか、あるいはペースを維持できるか、非常に不安ではありますがなんとか頑張ります。
あ〜。年取ると愚痴が多くなっていかん。
282名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 11:52:48 ID:Pwufc3cJ
>>278
同人ゲームとして出るらしいのでぐぐってみれ
283名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 17:51:41 ID:HKSFoTiH
>>278>>282
死ね信者
284名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 18:24:22 ID:+mb6bREG
また湧いてきた…('A`)
285名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 18:27:24 ID:g1qLS5nC
まだいたんだこのキチガイ
286名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 19:17:10 ID:8VCjoYL5
基地外警報!!基地外警報!!
287名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 20:59:54 ID:t1tPhTwf
もはやどっちもどっち。
妖の話をするなら魑魅魍魎が沸くのは仕方ないか。
288名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 21:09:11 ID:Kixe8Nwe
実際の所、荒らしの計画は成功したように見えるな。というかモロに荒らしの思惑通り。
ひでぼんのひの字が出さえすれば、荒らしと住民の両方から叩かれるんだからな。
289名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 21:24:28 ID:sTXHTXhM
>287
ここはガープススレじゃないんだがな。
290名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 21:43:45 ID:h+HOTfzS
心配しなくてもこのスレには二度と投稿されないと思うが…
291名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 22:22:44 ID:ja7j75dK
俺はむしろ荒らしが暴れた所為で興味を持ち、ファンになったクチだ。
良い作品を教えてくれて、ありがとう荒らし。
292名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 23:12:40 ID:QCb24gjC
常連さん再臨とか、新規さん登場とか、例の荒らしとか

…にぎやかになってきたねえ。
多種多様は長所だと思ふよ。
293名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 23:25:05 ID:sTXHTXhM
>282
情報ありがとう。
294放課後の吸血鬼25:2005/05/19(木) 00:01:08 ID:sTXHTXhM
二人の前で、校内の見取り図と、関係者の似顔絵をさらさらと描いてみせる。
似顔絵なので、大分真紀の主観が混じっており、横口は実際よりもゴリラっぽく、西根はガリっと痩せ、野上はニヘラッと好色っぽい笑みで、被害者の長谷川は貧血っぽく描かれていた。
そして、中肉中背で小動物を思わせる黒目がちな目以外は平凡な容姿、そう説明された哲晴は、妙に格好良くかかれてたりする。
「電話の報告で、正体がばれたって聞いた時はヒヤヒヤしたけど、“うまく”いって良かったじゃない」
哲晴の似顔絵を見た魅子が、真紀に視線を移して、意味ありげにニヤニヤする。その意図に気付き、真紀はプイッと視線をそらして誤魔化す。美姫だけはそれに気付いてない。
その後は雑談に流れ、8時半を回ってからお開きになった。
駅に向かう途中、住宅街の道で、魅子はあっと小さく声を上げた。
「ごめん。忘れ物。先に駅に行ってて、すぐに追いつくから」
「またですか〜。しょっちゅうですね。じゃ鞄、預かりますよ」
「ありがと、じゃ、お願いね」
そう言いつつ、魅子は真紀のアパートへ、タタッと走り出す。
「あれ、先輩どうしたの?」
戻ってきた魅子に、カップを洗っていた真紀は尋ねる。
「たしか“まだ”でしょ? 大丈夫。美姫ちゃんは、先に駅に向かわせたから」
声を落としてそう答える。
「いえ、大丈夫です。折角ですけど、当てがありますから」
真紀は、わざわざ丁寧語でそう答える。
「そう? ならいいけど。絶っ対、遠慮しちゃだめよ。あたしにとっては、大した事無いんだから」
そう言いつつ、魅子はドアを空けて出ようとする。
「あ、それからね〜、明日の放課後、例の彼に会わせてくんない? だってさ、協力してもらうんなら、一回挨拶くらいは、挨拶したいし〜」
急に崩れた口調で真紀に頼む。真紀は承諾した。
「いいけど、…変な事言わないでよ。彼、真面目なんだから」
詳細を決めてからも、もう1度真紀は釘をさす。
「だ〜いじょ〜ぶ、だいじょーぶ。心配しないで」
ニカッと笑顔でそう言い残して、魅子はダッシュで駅まで向かった。
295放課後の吸血鬼26:2005/05/19(木) 00:04:14 ID:sTXHTXhM
駅の手前、繁華街で美姫に追いつき、鞄を受けとる。
「先輩、何忘れたんですか?」
息を整えている魅子に、美姫は尋ねた。
「明日の事。例の目撃者の彼に、会わせて欲しいって頼んできたの」
「何でですか? 前に、あんまり顔とか知られない方がいいって、言ってませんでしたか?」
「美姫ちゃんも見たでしょ? あの似顔絵、やたらとカッコ良かったの。あれはね、真紀ちゃんが好意を持ってる証拠よ」
「え、じゃあ。先輩は、その人のこと…」
「間違い無く、ね。美姫ちゃんも経験あるでしょ。あたし達は、正体を知った上で受け入れてくれる人には、弱いって。
だから、好意的に解釈している可能性が高いわね。つまり、口が固いから大丈夫って評価もね」
美姫はその口調に、いつものキャピキャピとした雰囲気がないのに気付いた。
魅子の懸念するように、実際に美姫も、悪の妖怪から助けた相手から、迫害という形で恩を仇で返された事がある。例え、元々が親友でも、だ。
魅子は続ける。
「だから、直接会って確かめる。もし、信用できない、口の軽い人だったら…、記憶を消させてもらうわ。無理矢理にでも、ね」
きっぱりと言いきる。
「先輩、怖いですね」
美姫の声に、ちょっと怯えが混ざる。
「あぁったりまえよ〜。だ〜い好きな真紀ちゃんを守る為だも〜ん。な〜んだってするわよ」
慌てて軽い口調で誤魔化して、もちろんあなたを守る為にもね、という台詞は飲みこむ。少し喋り過ぎた。
「真紀ちゃんを好きなら、協力してよね。美姫ちゃん」
大好きな真紀先輩のため、そう言われると弱い。美姫はそれに同意した。
296放課後の吸血鬼27:2005/05/19(木) 00:16:50 ID:aVkk20G9
自分の巣に辿りつき、アミは振り返って後を確認する。結界が効いてるので、あの人間に媚びる小娘の追跡はない。
巣に辿りついて安心したのか、ぐでっとした疲労を感じ、ふぅっと一息吐く。
左胸の傷がじわりと痛む。プルンと突き出た形の良い乳房を、ぐっと少し持ち上げ確認する。ただのかすり傷だ。明日までには、すっかり治るだろう。
とりあえず出血が鬱陶しいので、ペタッと糸の塊を貼って止血する。
他人の目がないので、ふっと素に戻ってぼそりと昏く呟く。
「あの小娘…。殺してやる…」
水平に広がった巣網の上を器用に歩き、中央の糸を編んだ布状の部分、自分で台(うてな)と名づけたその場所にゴロリと寝そべる。細かな糸を編んで作られたそこは、フワリと身体を受けとめる。
夕暮れ時で、空は自分の気持ちを反映したような血色に染まっている。
ええい、憎い。そう心の中で呟く。岩手で付けられた傷がようやく塞がったというのに、また余分な血を流させられた。しかも自慢の大きな胸に。
「あの貧乳小娘、今度あったら胸を抉ってやる…」
知らず知らずのうちに、凶悪になっていく表情に気付き、シワを気にして元の表情に戻す。
疲れを取るために暫くゴロゴロしていると、眠気が出てきて、うとうととし始める。
今まで自分は巧くやってきた。
巣には、妖怪すら欺く結界を張る事ができるから、棲み家を知られる事は無い。
相手を眠らせる能力を持ち、牙には傷を麻痺させる毒を持つ。生存に必要な血液は少量で、健康な人間なら貧血も起こさない量。だから食事で気付かれる事も無い。
まれに、気が向いた時に人間を巣に連れ込み、血や精液を搾り取ることがある。しかし、搾り取った後は口封じに殺して、死体は見つかり難い山中などに捨てるから、獲物の口から漏れる事はない。
そして定期的に別の街に移動して棲み家を換えるから、死体を見つけられた時は、すでに遠く離れた土地にいる。もともと他の妖怪と殆ど交流を持たないから、人間に媚びる連中に気付かれる事はまず無い。
たまにそいつらに気付かれる事はあるが、結界のおかげで逃げ切る事ができるし、二・三街を移動すれば、もう追跡はしてこない。
だから、今まで比較的平穏に暮らしてきた。あの小娘に会うまでは。
あれは、たまたま岩手の高校に住みついた時だった。
297名無しさん@ピンキー:2005/05/19(木) 00:33:14 ID:aVkk20G9
今夜はこれまでです。
明日の夜は書けるかどうかわかりません。
あと、予定を変更して近々吸血シーンを入れる事にしました。
もともとさらっと流すつもりだったシーンを、細かい描写始めたら乗って止まらなくなった…
どうも、これが予定より長引く原因のようです。
また追加キャラの予定もあるし、まだまだ先は長いです。今月中に終るかな…?

この作品をリメイクするきっかけは、正月にレンタルで借りた真月譚月姫です。
第4話の吸血シーンに萌え、ラストで切なさが爆発して、昔の作品を引っ張り出しました。
前にカノンのアニメに萌えた時は、某スレ繁栄の原動力となりましたが、さて今回は…
298名無しさん@ピンキー:2005/05/19(木) 11:46:25 ID:oFk77Sdw
最近になってこのスレを覗くようになったんだけどなんというか…作品が深いね。
職人様のレベルも高くてすごく良い。

>>297
真月譚は評価が結構アレだったりするので原作のプレイをおすすめしますよ〜
299名無しさん@ピンキー:2005/05/19(木) 17:29:37 ID:uk+L74//
>>297
GJ。妖魔・百鬼と買いそろえていた漏れにゃひっじょーに嬉しい作品ス
ぇろい吸血シーンを待っていまス
300放課後の吸血鬼28:2005/05/20(金) 00:54:37 ID:oy29NCxf
その日は何となく遠出するのも面倒なので、近場で食事を済ませようとした。
校内の要所要所に予め張ってあった糸は、糸電話の要領で人の気配を知らせてくる。静かな校舎の中で、ザワザワと人の声がする場所を探り当て、のそりと移動を始めた。
ピタッと校舎の外壁に張りつき、窓からそっと教室を覗き込む。中にいるのはブレザー姿の少女。おあつらえむきに一人だ。本来なら若い男の方が好みなのだが、若い娘の生血というのも悪くはない。
相手の姿を視認すると、即座に眠りの妖術をかける。眠ったのを確認して、鍵のかかってない窓をガラリと開け、教室の中に一歩踏みこむ。
机に突っ伏している少女に近づき、その小柄な身体をヒョイと持ち上げると、首をガクリと垂れ、白い喉を露わにする。獲物は自分に振りかかるおぞましい運命も知らず、すやすやと眠っている。
若く、健康で、しかも生娘の匂い、じつに美味そうだ。口の中にジワリと唾が湧いてくる。
背後から抱え、少女のポニーテールをすっと脇にずらして、白く眩しいうなじを露わにする。そして襟首をちょいと広げ、普段は服で隠れやすい部分を露出させる。
ペロリと長めの舌を伸ばし、その首筋にツツッと卑猥に舌を這わせる。若い娘の滑らかな肌は、トロリと甘い。少女はくすぐったさに、んっと小さく声を出す。
このまま頚動脈をガブッと噛み破り、思う存分その命を啜りたい。そんな衝動をこらえて、首筋のやや後、鏡で見ても気付かれにくいその部分に、カプッと口付けをする。
そして張りのある肌に、唾液で濡れた小さな牙をツプッと突き立てる。唾液に混じる微量の麻痺成分で、苦痛はなく、呪縛の眠りは解けない。
トロリ、と甘い少女のエキスが流れ出る。それを舌の上で転がして味わう。男と違って美酒のような濃厚さはなく、さらりとした軽い甘さ。そのまま唾液とともにコクリ、と嚥下する。
生き返る。少女の命が、カラカラの全身の細胞にじわじわと染みこんでくるようだ。もっと味わう前に、一端口を離す。
小さな真紅の泉からは、命の雫がポッと小さな珠となって湧き出し、タラリと流れ出す。その紅の筋をツッと舌でなぞる。首筋をねっとりと舐められ、獲物は再び、うっと微かな呻き声を上げる。
301名無しさん@ピンキー:2005/05/20(金) 00:55:42 ID:oy29NCxf
本日はここまでです。
区切りが良い所までと思ったら、1レスには長く2レスには短くなってしまったので途中までです。
>298
漫画板やアニメ板で耳にタコが出来る程聞かされましたが、現在ゲームは入手困難なんですが…
>299
ありがとうございます。
とりあえずラ板のスレにあるURLから解放区へ行けば、萌えネタは多数有りますが。

疲れだか何だか、いまいちテンションが盛りあがらないです。
ああ、なんかBLとかバトルとかホラーとか会話シーンに走りたい…
そう思う自分がいる…
とりあえず、しばらくはペースが落ちると思います。
302名無しさん@ピンキー:2005/05/20(金) 01:53:44 ID:Q5y06xbt
>>301
同人のオリジナルは確かに入手困難ですが、もう普通の商業パッケージでシリーズセット販売されてますよ。
…公式HPぐらい見ましょう。
303名無しさん@ピンキー:2005/05/20(金) 07:46:39 ID:oy29NCxf
>302
おう、サンキュ
304名無しさん@ピンキー:2005/05/20(金) 20:06:14 ID:T+5RHJRn
>>302
ちょっとまて。
何時出たんだ、そんなもん。
305某880:2005/05/20(金) 23:38:14 ID:dddYkYcV
「放課後の〜」が連載中の流れでなんですが、
一本書き上がりましたけど…投下しちゃって良いのかな?
雰囲気が真逆だし、流れもあるでしょうから
「放課後の〜」の連載が終わるまで待った方が良いですかね?
306名無しさん@ピンキー:2005/05/20(金) 23:49:43 ID:8rZ6u9N9
やは、モーショボーの方ですね。
どうぞどうぞ、「放課後の〜」は現在プチ休載中なので、却って大歓迎です。
ちなみに、順調に進んでも今月一杯はかかりそうですので、どうぞお先に。
307某880:2005/05/21(土) 00:04:31 ID:S35pOVmW
では、お言葉に甘えて投下させて貰います。
リクエストがありましたので、スキュラの話2話目です。
308某880 愛されるという事〜スキュラ2〜:2005/05/21(土) 00:06:27 ID:S35pOVmW
イギリスから持ち込まれた洋館と、日本家屋が連なった、変な屋敷。
俺と俺の友人達が住むこの屋敷は、そんな変わった特徴を持っている。
そして尚かつ、広い。
洋館と共にやってきた家付き妖精シルキーが、家事の一切を取り仕切っているが、
彼女一人で、この広い屋敷を手入れするのはかなり辛い。
その為、時折応援者を呼び手伝って貰っていた。
その一人が、スキュラだった。
彼女はわざわざメイド服まで新調して貰い、張り切ってシルキーを手伝った。
俺の事を「ご主人様」などと呼びメイドになりきって。
それほどまでに張り切ったのには訳があった。
ご褒美として、俺に「ご奉仕させてほしい」という条件を交わしている。
まあ、「ご奉仕」という名の「攻め」なのだが、彼女の場合。
おかげで、すっかり俺の身体は「変態プレイ」に慣れてしまった。
前と後ろの同時攻撃で極限の快楽を得るのは、癖になって怖いくらいだ。
それだけならまだしも、俺と彼女の変態プレイはもう一つの方向性も秘めている。
コスプレだ。
そもそものスタート地点が「メイド」。
メイドになりきっての行為は、いたく気に入ったようで
衣装担当のアルケニーも様々な衣装を作るので、余計に彼女の「プレイ」に火がつく。
メイドの次は看護婦だった。その次がウエイトレス。
そして婦警,チャイナドレス,セーラー服等と色々続いて
前回は体操着……ああ、彼女の身体特徴上、ブルマが無かったのは残念だったが……いやいやいや、そうではなく……
ともかく、昼間のメイド服はデフォルトになっているが、夜の衣装は毎回替わっている。
そしてシチュエーションも呼び名も変わる。
おかげで、癖になりつつも毎回新鮮なので……良くも悪くも、「変態」に磨きが掛かってしまっている。
309某880 愛されるという事〜スキュラ2〜:2005/05/21(土) 00:07:39 ID:S35pOVmW
そして今日、スキュラとの約束の日。
彼女は昼間から、メイド服ではない「コスプレ」をしていた。
「いかがですか? 旦那様」
彼女は三つ指突いて深々とお辞儀をした後に、俺に尋ねてきた。
十二本の脚と六頭の蛇を上手に折り曲げ、正座しているように腰を落としている彼女を、
俺はなんと感想を述べて良いものか悩みながら見つめていた。
「えーっと・・・もしかして、今日は日本家屋の方を掃除するからその格好なの?」
コスプレをいたく好んでいる彼女は、形から入りたがる。
そもそもメイド姿も、形から入る彼女だからこ着たがった服。
そんな彼女だから、「日本家屋でメイド姿」というのに違和感を感じたのだろう。
確かに、畳の部屋とメイドは似合わない。
今彼女が着ている服は、まさに畳の部屋に似合う格好だ。
「うん。これが「ジャパニーズ・メイド」だっておじいちゃんが」
おじいちゃんとは、うちの屋敷に住まう猫又のジジイの事。
まぁ確かに、日本風のメイドと言えばこれ……なのか?
少なくとも、あのジジイが入らぬ入れ知恵したのは間違いない事実のようだ。
入らぬ入れ知恵か……まあ、「入らぬ」事も無いか……
「旦那様、お気に召しませんか?」
旦那様、というのもジジイの入れ知恵か。
余計なことを……と思いつつ、どこかで心中にて感涙している俺もいる。
「いや、よく似合ってるよ」
言葉に嘘はない。
ギリシャ生まれの彼女は、人で言えばギリシャ人。
日本人の格好が似合う顔立ちではないはずなのだが……
むしろ、その思いこみというギャップが、より彼女を際立たせている。
金髪を束ね日本の櫛を通しアップにしているのも、高いポイントの一つ。
個人的見解だが、「うなじの美しさ」は日本人独特の美的感覚だと思っている。
その美を見事に際立たせているのが本当に素晴らしい。
そして衣装。本来は下半身まで着物の裾が伸びているのだが、
アルケニーのアレンジで、見事上半身だけで衣装の美しさを表現している。
310某880 愛されるという事〜スキュラ2〜:2005/05/21(土) 00:09:06 ID:S35pOVmW
「いや、正直……これだけ割烹着(かっぽうぎ)が似合うとは思っていなかったよ」
割烹着をジャパニーズ・メイドスタイルとしたジジイに、俺はやはり感謝すべきなのだろう。
「ホント? えへへ、嬉しいなぁ」
屈託のない照れた笑顔。
割烹着という、どこか古めかしい日本の文化と、ギリシャの少女が浮かべる笑顔。
ミスマッチと思われたこの組み合わせが、ここまで俺の鼓動を高鳴らせることになるとは!
いやはや、奥が深いなコスプレは。
「それじゃ、張り切ってここのお掃除しちゃうね。それから今日は……ね、旦那様」
片手にハタキを持ち、何本かの脚で器用にホウキやバケツ,雑巾を持ちながら、
割烹着のメイドは広い日本家屋の清掃に取りかかった。
夜を待ちわびながら。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
311某880 愛されるという事〜スキュラ2〜:2005/05/21(土) 00:10:30 ID:S35pOVmW
十二畳の部屋に二組の布団を並べて敷き、俺は彼女を迎えた。
「旦那様……私のような端た女(はしため)にご奉仕させて頂いて、宜しいのでしょうか?」
端た女とは、古い言い方で下女……つまり召使いの女性のこと。
ベッドではなく布団でとリクエストしたところもそうだが
彼女の「成り切り」は徹底している。
言葉遣いも言葉そのものもこだわってくる。よもや端た女なんて言葉まで覚えてくるとは。
「うむ……日頃そなたはよく働いてくれておる。その褒美じゃ。とくと味わうが良い」
彼女に合わせ、俺もそれなりに演技はするが……ぎこちない。
自分の言葉に照れながら、俺は浴衣の帯をほどき前を全開にする。
露わになった俺の「ご本堂」に、彼女は三つ指立て深々とお辞儀をした。
……そんな風習は日本にないが、
これが彼女なりに想像した「ジャパニーズメイドの正しい奉仕」なのだろうか。
顔を上げた彼女は、愛おしそうに両手でまず俺のご本堂を下から軽く持ち上げた。
細い指が触れるだけで、次を期待する本堂がピクリと脈打つ。
指はゆっくりと大事そうに本堂を掴まえ、固定させる。
そこへ、彼女は自ら口を近づけさせた。
312某880 愛されるという事〜スキュラ2〜:2005/05/21(土) 00:11:05 ID:S35pOVmW
「旦那様のお慰め、頂戴致します」
やはり何処かおかしな日本語だが、気分は出ている。
下から俺を見上げる彼女は微笑み、そしてゆっくりと口内へとご本堂を導いた。
ねっとりとした感触が、「くびれ」の周囲を包む。
そして先端を、舌で包むようになめ回していく。
まずは舌の上で先端を、飴を転がすように舐め、
かと思えばいつの間にか、舌の裏側で先端を上から擦るように撫でる。
俺はもちろん、口内が敏感に発達した彼女もこれだけで高揚し軽くいってしまいそうになる。
だがこんなに早く一回目を終えるわけにはいかない。
震えそうな、それでいてねっとりと甘い快楽を楽しみながら、俺は堪えていた。
堪えながら、俺は懸命に奉仕する彼女が愛おしくなり、
結い上げられた髪をゆっくりと撫でていた。
それに気付いた彼女は、俺の本堂をくわえたまま微笑んだ。
その微笑みだけで、頂点に行きそうだ。
それを察したのか、彼女はゆっくりご本堂を口と指で上下にしごき始めた。
滑らかに、しかし絡みつくような唇と舌。
一往復毎に様々な快楽が本堂を襲う。
それは彼女も同様なようで、段々と我慢しきれなくなった彼女の口と指は速さを増していく。
「ん……そろそろ……」
俺の言葉を聞き、チラリと見上げる彼女。そしてまた速まる動き。
舌よりもねっとりとした液体が、彼女の喉奥へと注ぎ込まれていく。
手を放し、ご本堂をぐっと喉へと押し込む彼女。
先が喉に当たり、絞り出されていくご褒美。
「んっ……んっ……はぁ。甘露でございます、旦那様」
甘露とはまた古い表現だな。しかしこれほどの褒め言葉もそう無い。
褒美を全て飲み干した彼女は、紅潮した顔で微笑み、瞳をとろんと潤ませている。
その様子を見るだけで、俺のご本堂はメキメキといきり立ってしまう。
これで終わらない。本堂は次を要求していた。
313某880 愛されるという事〜スキュラ2〜:2005/05/21(土) 00:11:50 ID:S35pOVmW
「あは、旦那様……嬉しゅうございます」
チュッ、と本堂に口づけし、彼女は俺の後ろに回り込んだ。
何をするつもりだろうか? ここからは新しいパターンのようで、予測が付かない。
いつの間にか、彼女の脚が器用に、俺のはだけた浴衣を脱がせようと掴んでいた。
俺はそれに素直に従い、浴衣を脱ぎ全裸になった。
彼女もどうやら、割烹着を脱ぎほぼ全裸の姿になっている様子。
「では旦那様、失礼致します」
手を回し、彼女は後ろから抱きつくように迫った。
抱きつくとはいえ、彼女は先ほど同様しゃがんでいる。
手は俺の本堂を握り、そして顔は……俺の尻の間近にまで迫っていた。
息が、肛門に当たっている。それがなんだかむずがゆい。
「旦那様……頂きます」
ペロリと、彼女の舌が俺の肛門を舐める。
一瞬、俺の身体はビクッと反応した。
「えへへ……」
よほど嬉しかったのか、演技を忘れた彼女が屈託のない笑い声を上げた。
後ろから本堂をしごき始めた彼女は、俺の肛門に口づけし、そして再び肛門をなめ回した。
彼女のおかげですっかり肛門を「開発」された俺は、それだけで随分と快楽を得ている。
しかし、これだけで彼女の奉仕は終わらない。
ぐっと顔を尻に押し当て、舌を肛門の中へと押し入れてきた。
一瞬、俺はぐっと肛門を閉じてしまったが、すぐに力を緩め、彼女の舌を迎え入れる。
「ん……んちゅ、くちゅっ……美味しい、旦那様のお尻、美味しいです……ちゅっ、くちゅ……」
力を緩めているとはいえ、舌を完全に肛門の中へと侵入させるのは難しい。
だがそれでも押し入れようとする舌は、同時に肛門の周りもぴちゃぴちゃとなめ回していった。
更に手で本堂をしごかれている。
いつの間にか、彼女の「蛇」が一匹前に回り込み、
チロチロと舌を伸ばし本堂の先端、尿道に押し入れようとなめ回している。
更に他の蛇が、俺の乳首や他至る所をなめ回している。
こそばゆい感触が、徐々に快楽へと変わっていく。
314某880 愛されるという事〜スキュラ2〜:2005/05/21(土) 00:12:48 ID:S35pOVmW
「まだまだ、これからです旦那様」
旦那様、という名称は変わらないが、すっかり口調は普段通りに戻っている。
演技を忘れる程、彼女も興奮しているのが判る。
顔を尻から離し、手も本堂を放す。
心地よい快楽が途切れたことに、俺は妙な切なさと不安を感じた。
だかその切なさと不安は、するりと俺の前に移動し見せてくれた彼女の笑顔で綺麗に消し飛んだ。
そして、さらなる快楽が俺を襲う。
目の前で、二本の脚が彼女の胸を中心とした上半身を、まるで縛るようにぐるりと取り巻いた。
と同時に、俺の身体も彼女の脚によって縛られていく。
「全身で感じて、旦那様ぁ」
両手で自らの胸を激しく揉みながら、息を弾ませている。
俺と彼女を縛る脚は、ただ身体をぐっと締め付けているだけではない。
ぬめぬめと、動き出してきた。
彼女の脚はタコの脚とほぼ同じ。つまり吸盤が付いている。
その吸盤が身体にまるで接吻するように食いつき、そしてぬめりと剥がれ、ちょっとずれたところで又吸い付く。
身体中を接吻されるような快感。これがたまらなく気持ちいい。
315某880 愛されるという事〜スキュラ2〜:2005/05/21(土) 00:13:38 ID:S35pOVmW
「旦那様、旦那様ぁ!」
そしてこの快楽は、彼女も感じている。
二人は、同じ快楽を共有している。
俺は彼女の自慰行為を見ながら、彼女と同じ快楽を味わい、
そして俺自身しか味わえない本堂からの快楽も追加されていく。
そう、本堂への奉仕も忘れられていない。
こちらは脚の先端、細いところで巻き付けられていおり、やはり全身同様にぬめった脚の奉仕を受けていた。
「はぁ、ああ! これで……あん! 旦那様……と、同じ、んっ! 一つに、なれた……ああん! はぁ、んん!」
生殖器のない彼女は、俺と「一つになる」事が出来ない。
それは、彼女にとってどうしようもない、しかし耐え難い苦悩になっている。
それを少しでも払拭するために考えたのが、この方法なのだろう。
いじらしいではないか。ここまで愛される俺は、本当に幸せだ。
肉体だけではない、心からの快楽に俺は酔いしれ、乱れる愛すべき彼女を俺は見つめ続けた。
「あふ、旦那様ぁ」
そんな俺に彼女は近づき、唇同士での接吻をねだる。
俺はその求めに応じ、少し首を前に伸ばし俺から彼女の唇に吸い付いた。
彼女の脚のように、俺の舌が彼女の舌に絡みつき、ここでも一つになろうと懸命になっている。
「んちゅ、んん……ちゅっ……ああ、旦那様ぁ……好き、大好き……ん……」
直接的な告白が、これほど心に響き熱くさせるなんて。
俺も何か言い返さなければ。だが、その余裕が俺になかった。
「ごめ……そろそろ……」
俺の言葉を聞き、彼女は唇を離した。
そして素早く屈み込み、本堂の前に顔を近づけた。
その直後、放たれる俺の「答え」。
結い上げられた髪に、手と脚で揉まれ続けた胸に、そして幸せそうな彼女の顔に、
白い「甘露」が降り注がれた。
「あは……旦那様、嬉しい……」
胸や顔に付いた甘露を指ですくい、嬉しそうになれる彼女。
つられて、俺も満面の笑みを彼女に向けた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
316某880 愛されるという事〜スキュラ2〜:2005/05/21(土) 00:13:58 ID:S35pOVmW
「浮かない顔してるわね。昨日はそんなに疲れた?」
紅茶とスコーンを俺の前に置きながら、シルキーが尋ねてきた。
「いや、疲れたは疲れだけど、それは全然気にならないんだけどな……」
彼女の「奉仕」に身体が慣れてきていることからか、徐々に疲れが翌日に残らなくなっている。
残るのは、快楽と幸福の思い出だけ。
ただ、俺は昨日の「言葉」が心に引っ掛かったままになっていた。
好き……か。その言葉の意味を、どう受け取るべきか。
彼女が好いてくれるように、俺も間違いなく、彼女が好きだ。
ただ、それを額面通りに受け取り、「仲」を深めてしまって良いのか……。
あれだけ激しく愛し合っているが、俺は……「ああいった行為」を彼女以外ともしている。
そして、そんな「他の女性達」も、同様に愛おしい。
二股とか三股とか、そんなレベルではない。
無節操にも程がある。自分でも思うのだが、
だからこそ、「好き」というストレートな言葉をどう受け止めるべきかに悩むのだ。
「なに……そんな事?」
俺の悩みを聞いたシルキーが、くだらないと一蹴した。
「そんなってなぁ……」
塵程でも、俺にだって良心はある。それを「そんな事」とは何事か。
「人間のモラルを私達に持ち込んでもね。特に彼女の出身地、ギリシャの連中を考えてご覧なさい。神からしてやりまくりよ?」
……また身も蓋もない例えを。
言われてみれば確かに、人間のモラルを彼女達に当てはめるのはむしろ迷惑でしかないか。
「ただね、一人一人を真剣に愛してあげて。それだけで充分だから」
滅多に見せない、シルキーの優しい笑顔。俺はメイド長の言葉に、心が軽くなっていくのを感じていた。
「あーそれと……体力は付けときなさい。回数増えるから大変よぉ」
普段から見せている、シルキーのイタズラっぽい笑顔。俺はメイド長の言葉に、気が重くなっていくのを感じていた。
そらそーだ。一人で多数を愛し愛される事の幸せは、それ相応のリスクも背負う。
「……とりあえず、食事面でのサポートよろしく」
真剣にダイエットとトレーニングのメニューを考えないと。
愛するって、大変なんだな。
ちょっとずれた事を考えながら、俺はしかし昨夜のスキュラが見せてくれた笑顔を思い起こし
気持ちに答える努力はすべきだなと真剣に誓った。
317某880:2005/05/21(土) 00:19:30 ID:S35pOVmW
以上です。
ちょっと短かったかな。

とりあえず、一言だけ言わせてください

メイド服だけじゃない、割烹着だって萌えるんだ!

そんな事無い? 割烹着はお気に召しません?
ああ、判ってくれとは言わないが、そんなに俺が悪いのか?
そんなギザギザハートを作品の前半に込めてみましたw

あと、以前指摘されていた「主人公が理由もなくモテている」事も
最後でかるく触れていますけど
まあ、スルーしてやってくださいw
いちゃいちゃ甘々が好きな私は、理不尽でもそういう設定にしたがるので、ご容赦下さい。
318名無しさん@ピンキー:2005/05/21(土) 00:25:50 ID:CWUEBAuM
リアルタイムキタ―(゚∀゚)―!
割烹着と人外さんへの深い愛、しかと受け取った!
GJ!
319名無しさん@ピンキー:2005/05/21(土) 00:47:47 ID:7QPuQm0D
>302
月箱のことであれば、そちらも入手困難かと。
そうでなければ、
・・・そんなん公式にデテタッケ?
320名無しさん@ピンキー:2005/05/21(土) 00:51:18 ID:FoJTmaoA
前に指摘したこと、ほんのちょっとでも気にしてもらえたようで嬉しいです。
個人的には大物になれると信じてますんで、てきとーにがんばってください。

…間違えた。こう書こうとしたんだった。
よ、妖精学者が、妖しい性の学者になりかけとる…っ!!
そしてあえて金髪に割烹着……わかります、わかりますとも。
さらにタコ足ロール……わかります、わかりますとも。
俺の本堂も燃えたぎってるぜっ。
321名無しさん@ピンキー:2005/05/21(土) 04:25:03 ID:WRLYkkDp
…うなじが美しさが映えるギリシャ系の美少女ですか…イイっすよっ!
ところでチョット疑問が

>>生殖器のない彼女は、俺と「一つになる」事が出来ない。

不快に思う方がいるのかもしれませんが、「小」や「大」を出す所を流用すれば…
犬やら蛇の部分に分かれて存在してるのかもしれませんが(w

322名無しさん@ピンキー:2005/05/21(土) 22:12:36 ID:ZAOBcfmE
良い意味でお馬鹿なのがイイ!
実際、スキュラがメイドで夜な夜なコスプレなんてマトモじゃねー(w
GJ!できれば別コスも希望。
323名無しさん@ピンキー:2005/05/21(土) 23:09:56 ID:Ij0sO9zH
禿同
324名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 01:45:36 ID:jK3KUXxP
『混沌女王〜妖獣の島〜(仮)』
…平坂島…千曳山…憧れの女…
…イザナミ…蛭子神…忌巫女…
…地震…噴火…幼なじみ…
…古事記異聞…黄泉洞…謎の少女…
絶海の孤島を訪れた青年の前で、伝説と怪奇が交錯する。
そして現れる妖獣達! はたして青年の運命は?

執筆…未定。

ギャルゲーを意識した作品。
ネタがあるのは本当だけど、まだ書ける程は纏まってない。
次回作ですらないと思う。
「放課後の吸血鬼」に詰まったので、ちょいと書いた落書です。
325某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:07:03 ID:FPfq+7nN
妖精や妖怪,悪魔といった、人ではない者達との橋渡し。それが俺の仕事。
だが、俺とは対極に位置する仕事をする者達もいる。
退魔師やヴァンパイアハンターなど、
人間にとって脅威となる者達を取り払う、そんな仕事をする者達。
俺は仲間達との共存を望んでいる為、彼らと反目する事もあるが、
基本的には協力関係を築いている。
何故ならば、人間だけを見ても善人悪人がいるように
妖精などにも善悪がある。
むろん善悪の価値観は人間を基準にしている為、
仲間達にまで当てはまらないのだが
悪意から生まれし者達は、本人に自覚が無くても悪として処断せざるを得ない。
主に「悪霊」のような、人間発祥の悪意に満ちた者達は、
専門の者達によって祓われるのが普通だ。
ただ時たま、その専門の方に強力を依頼される事もある。
今回の仕事は、その「強力の依頼」という形で請け負った。
「ああ、来たか。すまないな、わざわざ」
巫女服を着た、精悍な女性。今回の依頼者だ。
彼女は退魔師を生業にしている巫女で、専門は悪霊。
俺の立場と考えを理解してくれる大変ありがたい方で、
「霊」が「悪」であるかどうかを見極めてから滅し
「悪」で無いなら何らかの形で成就成仏するように霊に協力してくれる
そんな強く優しい女性だ。
ただ、そんな彼女でも霊の願いを聞き入れられない時がある。
主にそれは、彼女の力だけでは為し得ないような願い。
今回彼女が遭遇した霊も、彼女の力ではどうしようもない願いを抱いた霊なのだという。
そこで彼女は、俺と、そしてもう一人協力者を呼んだ。
326某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:07:54 ID:FPfq+7nN
「やっほー、元気してた? この前送ったメール届いてるかな?」
俺と共に来たもう一人の協力者。文車妖妃だ。
「すまない。メールは届いているが、携帯の操作はまだ不慣れでな」
「あー、いいよいいよ。たいしたことじゃないし」
巫女と文車妖妃。奇妙な組み合わせだが、これでも彼女達は俗に言う「メル友」なのだと言う。
もっとも、文車妖妃は誰とでもアドレス交換をしたがり、誰とでもメル友になりたがる
そんな「メール」から生まれた妖怪故に、一方的に押しつけられた「メル友」なのだろうが。
「いや、慣れる為にもメールは返したかったのだがな……まだ早く打てんのだ。
このところ、依頼も携帯メールで、という案件も珍しくなくなっておるし、
携帯の一つも上手く使えるようにならんとな」
巫女という職業に、若い頃は幻想を一杯抱いていた俺としては
モバイルを巧みに使いこなす巫女、というのはいまいちピンと来ないのだが。
まあ、時代と共に我々の仕事も変わってくるという事なのか。
「ところで、今回の相談というのは?」
あらかじめ大筋は聞いていたが、俺は改めて依頼の内容を確認しようとした。
事前には、「電脳霊」の成就に協力して欲しいと聞いていたが……。
「あっ、ああ……ちょっと私では叶えてやれぬ事でな……」
普段は凛とした態度を滅多に崩さない巫女さんが、頬を赤らめうつむいた。
なんだ? この反応は。
あまりにも珍しい反応に、俺は戸惑ってしまった。
「いや、それほど構える事では……いやいや、キチンと「して」やって欲しいんだが……あー、私は何を言っているのだ……」
なんだ? なんだ?
こんなに慌てる巫女さんは始めてた。顔もますます真っ赤になっていく。
一体、なんなんだ? どんな霊が相手なんだ? 何をしろって言うんだ?
「とっ……ともかく、本人に会わせよう。詳しくは本人から聞いてくれ」
知識はあっても戦闘能力のない俺に頼むのだから、命に関わるような危険はないと思うのだが……
巫女さんの慌てように不安ばかりを募らせ、俺達は彼女の案内に従い神社に入っていった。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
327某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:08:41 ID:FPfq+7nN
案内された先には、一人の少女がいた。
少女……だよな?
「彼女……ですか?」
俺の問いに、巫女さんは黙って頷いた。
霊には違いないようだが、幽霊のそれとは明らかに違う。
全身が半透明の水色。人の形をどうにか留めているが、今にもずるりと崩れてしまいそう。
有り体に言えば、冷蔵庫で中途半端に固まったゼリー。
固体とも液体とも言い難い不安定さで人の形を形成している。
ゼリー状の彼女は俺達の来訪に気付くと、にっこりと微笑んだ。
「彼女は掲示板の書き込みより生まれた電脳霊……君達で言う「文車妖妃」らしい」
俺は妖精学者として彼女達を「文車妖妃」と呼ぶが、
巫女さんなどは電子文書という電脳世界から生まれた霊という事で「電脳霊」と呼んでいる。
今俺の横にいる、いかにも女子高生ですといった風体の彼女も、文車妖妃。
二人はあまりにも違いすぎるが、巫女さんの言う事に間違いはない。
文車妖妃は、届けられる事の無かった恋文や書物から生まれる九十九神の一種。
だが最近は、ネットワークの充実化が進行した為
メールや掲示板の書き込みから文車妖妃が生まれるケースが増えている。
女子高生風の文車妖妃は、他愛もない女子高生のメールなどから生まれ、
そしてこのゼリー状の文車妖妃は掲示板の書き込みから生まれた文車妖妃。
生まれは違うが、同じ文車妖妃で間違いはない。
「なるほど、間違いなさそうですね。しかし……何故このような姿で?」
文車妖妃は、生まれ出たメールや掲示板の内容に大きく影響を受ける。
女子高生のメールからは、まさに女子高生の文車妖妃が、
悪意を持った荒らし書き込みやウイルスメールからは悪霊となった文車妖妃が、
それぞれ生まれてくる。
となると、ゼリー状の文車妖妃はどんな書き込みの影響を受けて生まれたというのだ?
328某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:09:13 ID:FPfq+7nN
「うむ……そこなんだがな」
ここで又、巫女さんが顔を赤らめた。
一応俺も専門家だが、現状からは全く状況を把握出来ない。
「ここ……ここから生まれたの……」
ゼリー状の文車妖妃が、俺にノートパソコンをこちらに画面を向け差し出した。
画面には、大きな壷が映し出されており
中央には大きな字で「2ちゃんねる」と書かれていた。
ここか。文車妖妃が生まれる場所としては、これほど説得力の高い掲示板もそう他にはないだろう。
この「2ちゃんねる」は、匿名による書き込みで大いに賑わう巨大な掲示板であり
真偽はともかく様々な書き込みが連日連夜行われている。
匿名である事から、悪意的な書き込みも非常に多く
そのような書き込みから「悪霊」が生まれやすい。
がしかし、このゼリー少女は悪霊ではなさそうだ。
では、どんな書き込みから生まれたのだ?
「あのね……ここ……」
一度俺の手に渡したノートパソコンを、俺の手に乗せたまま
ゼリー少女がずるりと手を伸ばし操作を始める。
沢山羅列している中から、彼女は「エロパロ」という項目を選びクリックする。
エロパロ?
エロ?
……何となく、読めてきた。
329某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:10:45 ID:FPfq+7nN
彼女が選択したスレッドには、様々な女性……
主に「人間ではない」女性との交わりを熱望する書き込みが多数残されている。
その中には、「スライム娘」との性交を妄想した書き込みが幾つもある。
なるほど……これで全て理解した。
彼女がどこから生まれ、どうして巫女さんでは彼女の力になれず、あそこまで赤面したのかを。
「えーっと……そういう事?」
俺はスライム娘と巫女さんにそれぞれ視線を移した。
二人とも、黙って頷き俺の考えが正しい事を示した。
彼女が生まれた場所が判れば、自ずと彼女が成就している事も判る。
つまり、書き込みの通り。性交を望んでいるのだ。
「あー……まあ、それは判ったけど……なんで彼女まで?」
俺は親指で、もう一人の文車妖妃……女子高生の文車妖妃を指差し尋ねた。
「そなただけでも良かったのだが、書き込みの内容にちょっと不安があってな……」
今度は巫女さんが、ぎこちない手つきで掲示板の過去ログを探している。
ようやく見つけたログには、これから「こと」をする俺にとってはシャレですまない内容が記されている。
「最終的に、この「すらいむ娘」に取り込まれる事を望む者もいてな。
そなたがこの子と、その……して、だな……
大丈夫なのかどうか、第三者として確認して欲しかったのだ」
なるほど。確かに、そこの判断は巫女さんや本人達より、第三者に下して貰った方が安全だ。
生まれは違うが、同族。それなりに正しい判断が彼女には出来るだろう。
「んー、どうだろうねぇ?」
ニヤニヤしながら答える、今時のガキ。こいつ、楽しんでやがるな……。
「大丈夫でしょ? みんながみんな望んでいる所から生まれてたら超ヤバかったけど、そうじゃないし」
軽い物言いに多少不安はあるが、とりあえず問題はなさそうだ。
「それにほら、「妖性」学者なんだし」
……なんか微妙にニュアンスを変えてないか? 「聞く」だけでは判断出来ないが……。
330某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:11:20 ID:FPfq+7nN
「とりあえず、私から見る分には問題ないと思うよ」
とりあえず、という所に多少不安はあるが、怖がってばかりもいられない。
「そっか……ならまぁ、「妖精」学者として、勤めを果たしますよ」
意味としては「やります!」という健全な青年の主張になるわけで
そう考えると、ちょっと女性の前では恥ずかしい発言だな。
「そうか……なら、後は頼む」
それは受け取る側も同じで、終始頬を赤らめている巫女さんは俺と目を合わせられないでいる。
それでもどうにか俺の方を向き一礼して、用のない方の文車妖妃を連れて部屋を出ようとした。
「ああ……私らは別室で待機しているが、この部屋は「何時間」使っても構わないから。
彼女が「満足するまで」よろしく頼む」
再び一礼し、戸を閉めた巫女さん。
何時間? 満足するまで?
長期戦覚悟ですか?
色々覚悟はしているが、こう、不安要素が細々と残っている。
一つ一つは小さいが、累積すると、臆病にさせるだけには充分な量になってしまう。
「……ね……」
未だにノートパソコンを持っていた手に、ひやりとした感触。
一瞬、俺は驚きビクリとノートパソコンを落としそうになった。
その反応に、スライム娘も驚き手を引っ込めてしまう。
「あ、ああ、ごめん。ちょっと驚いただけだから」
俺はノートパソコンを置き、彼女に謝罪した。
この子は悪くないのに。何をビクついている。
俺はこの子の願いを成就させる為に来たんだ。不安ばかり気にして、相手を不安にさせてどうする。
男として最低だろう。女性を不安がらせるのは
331某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:12:12 ID:FPfq+7nN
「ごめんね……じゃあ、その……しようか」
場の空気もあり、なかなか気の利いた言葉が浮かばなかった。
ちょっと、ストレートすぎる言葉だな。俺はそう思ったのだが、
思いの外、彼女はこのストレートな言葉に強く反応し満面の笑みを浮かべた。
……ああそうか。彼女は「そういう願望」から生まれたんだったっけ。なるほどね。
俺は急いで衣類を脱ぎ始めた。上着のボタンに手をかけ、シャツを脱ぐ。
そしてベルトに手をかけたところで、彼女が屈んだ姿勢で俺のズボンに手をかけている事に気付いた。
どうやら、もう待てないらしい。
俺がずるりとパンツごとズボンを下ろしたその刹那、
彼女は両手で俺の肉棒を掴んできた。
ひやりと冷たく、それでいてぬめりとした感触としてのなま暖かさ。
このミスマッチが、肉体的な興奮を一気に呼び覚ます。
「あったかい……」
初めて見るだろう、男の逸物。にも関わらず、慣れた手つきで俺の肉棒をしごき始めた。
強くもなく、弱くもなく、弾力とぬめりある半ゼリー状の手が、
まさにジャストフィットして刺激を与えてくる。
その刺激に、少しずつ大きくなる肉棒だが、
手の圧力はその膨張に合わせるかのように自動調整される。
不意に、彼女がこちらを見上げ笑顔を見せた。
と同時に、手に変化が。
部分部分で小さな「突起」が加わったような、
全体的に均一だった圧力に強弱が加わり、それが前後する。
なんだろう、ローションをたっぷり染みこませた、ビーズ入りの自慰道具
使った事が無いのでなんとも言えないが、表現するならこんな所だろうか?
しかもよく見ると、手は一切動いていない。
にも関わらず、激しく擦られてるような感覚。
今までに感じた事のない快楽に、身体は激しく興奮している。
……のだが、何故か心は冷静だった。
それを敏感に感じたのだろうか、彼女は不安げに俺を見上げている。
332某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:13:05 ID:FPfq+7nN
「あの……口で、してくれるかな」
手こきが飽きた、という訳ではない。
何処か冷めてしまっている原因が、何となく判りかけてきた。
それを確かめる為に、俺はリクエストを出した。
彼女はこくりと黙って頷き、大きく口を開き俺の肉棒をくわえた。
感触は、手でして貰っていた時とさして変わらない。
だが、僅かに俺自身は興奮し始めているのに自分で気付いた。
「顔を、動かして貰えるかな」
懸命に動かされる頭。それでも感触的には変わらない。
しかし、心に感じる快楽は相当高まっている。
やはりそうだ。俺は確信した。
手でして貰っている時は、全く動かさなかった為に
何処か「全自動オナニーマシーン」のような気がしてしまっていた。
彼女にして貰っている、という感覚がなかった。
だが今こうして、普通の女性と同じように動いて貰うだけで
興奮度が変わっている。
視覚効果は大切な要素、という事か。
「気持ちいいよ、とっても」
俺は激しく動く彼女の頭、ほとんど区別はないが髪に相当する部分に手を置き、軽く撫でた。
見上げる彼女の目は、笑っていた。
俺が本当に感じているのを、手の感触と肉棒の膨張で察したのだろう。
「くっ……そろそろ……」
こうなると、もう限界も近い。
長引かせようと視覚効果を遮断する為目を閉じても、
もはやまぶたの裏にまで焼き付いた、健気な彼女の姿は消えやしない。
「んっ!」
俺はぐっと手に力を込め、彼女の頭を自分の股間に押しつけた。
ドクドクと流れ出る、俺の白いゼリー。
彼女の中の様子まで、半透明の身体からよく見える。
白いゼリーはクッキリと彼女の中に見えていたが、それは次第に分散され、やがて消えていった。
完全に、彼女の中で消化された。
なんだかそう考えると、心に興奮が又燃え上がる。
333某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:13:37 ID:FPfq+7nN
「まだ、おっきい……」
手で軽くいじりながら、彼女が嬉しそうに微笑んでいる。
そんな彼女が、たまらなく愛おしい。
「ねて」
言葉短く、彼女は俺に指示を出す。俺は言われた通り、その場に寝そべった。
仰向けに寝た俺の足首を、彼女が握っている。
「じっと、しててね」
何が始まるのだろうか?
そんな事を考える間もなく、彼女は行動を起こしてきた。
足首を掴んでいた手をのばし、、そのままスライドさせ、膝,太股,腰へと動かす。
そしてその手に合わせるように、身体を重ねるように足下からずりずりとこすりつけてきた。
冷たくぬめりある感触が、足下からはい上がってくる。
とうとう、俺の目の前には彼女の顔。完全に身体を重ねている。
「んっ……」
軽めのキス。そして彼女はまたずりずりと今度は足下へと身体をこすりつけながら戻っていく。
それを、何度も繰り返す。
まるで全身を肉棒に見立てた手コキ。
ぬめりある彼女の体は密着度が非常に高く、
全身が性感帯になったかのような錯覚を起こさせる程。
「ねぇ……その、そろそろ……」
非常に気持ち良いのだが、気持ち良いからこそ、我慢が出来なくなってきた。
男の俺からせがむのは、正直みっともないかなとも思ったが
そんなプライドなどどうでも良くなる程に、俺は彼女を求めている。
そんな俺の言葉に、彼女は満面の笑みで返答した。
334某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:14:40 ID:FPfq+7nN
身体を完全に重ね、彼女は少し腰を浮かせる。
片手で俺の肉棒を掴み、位置を固定させ、そして腰を落とした。
「くっ」
それだけで、いきそうになるのを俺はぐっと堪えた。
「いいよ……なんどでも、いって……」
我慢している俺に囁かれる、甘い誘惑。
そして激しく動かされる腰。無意識にその動きに合わせカクカクと動き出す俺の腰。
「くっ、ダメか……」
たまらず、俺は彼女の中に二度目のゼリーを注ぎ込んだ。
しかしそれでも、彼女は動きを止めようとしない。
335某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:15:11 ID:FPfq+7nN
「まだ……もっと……」
貪欲な彼女は、まだ一度も頂点に達していない。だが、興奮はドンドン高まっている様子。
「キス……キス……」
了解も得ず、彼女は両腕を俺の頭の後ろに入れ、そして俺の頭を引き寄せるようにして自身の唇を俺の唇に押し当ててきた。
ぬるりと、彼女の舌が俺の口内に侵入する。
その舌は長く長く伸び、喉の奥まで刺激してくる。
気道の確保はしてくれているのか、苦しくはない。
下半身の快楽と相まって、喉の奥から痺れるような快楽が全身に行き渡る。
「んん、んん!」
口を離すことなく、何事か呻くスライム娘。
彼女にも、とうとう頂点が見えてきたようだ。
「ん、んん、ん、ん、んん!」
ぐっと、俺の頭を抱く腕に力が入る。
と同時に、ゼリーの挿入三度目。
ふるふると全身を振るわせながら、しばらくキスをしたままじっとしている彼女。
ようやく落ち着いたのか、そっと俺の頭を置き、唇を離した。
「とても良かったよ」
陳腐な言葉だが、ストレートな表現の方が彼女を喜ばせるようだ。
「でも……まだダメ。もっとほしい……」
一瞬、くらっと来た。
いや、これだけの快楽を味あわせて貰える俺は幸せ者だが
正直、連チャンはキツイ。
とはいえ……満足するまで何時間でも。彼女の為に尽くすのが、俺の「仕事」だ。
仕事か? そう表現するのは彼女に悪い気がする。
「おいで」
今度は俺から彼女を招き、ぐっと抱きしめた。
一時とはいえ、俺は全力で彼女を愛さなければ。
それを彼女が望んでいるのなら。
……愛するのも命がけだな。それも悪くないと、今度は俺から唇を求めた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
336某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:15:35 ID:FPfq+7nN
「四時間ちょっと? これならちょっとしたエロDVD一本分?」
煎餅をくわえながら、待機していた文車妖妃が俺に話しかけてきた。
「どーいう表現しとるんじゃお前は」
まったく、耳年増め。
「して……彼女は成就出来たのか?」
結果を尋ねてきた巫女さんに、俺は黙って頷いて答えた。
「そうか……ご苦労だったな」
ご苦労か……確かに体力的には立っているだけで辛いくらい消耗したが、
苦労は、していない。むしろ彼女に感謝したいくらいだ。
「茶を入れよう。しばし座って待っててくれ」
俺の労をねぎらう為、巫女さんはお茶を入れる為に台所へと向かった。
「ねぇ……彼女、幸せそうだった?」
文車妖妃が、唐突に尋ねてきた。心配そうに瞳を僅かに潤ませながら。
「……笑顔で逝ったよ」
「そっか……」
満面の笑みを浮かべたまま、急にどろりと溶け始めたスライム娘。
液体となった彼女は、そのまま畳に、大気に、そして……俺に、
溶け込むようにして消えていった。
あの最後に見せた笑顔は、幸せ以外の何物でもなかったと、俺はそう信じたい。
男達の欲望から生まれた、文車妖妃。
彼女の「幸せ」に対する価値観に、色々と思う事もある。
しかし最終的に、彼女自身が幸せを感じていたのなら、それでいい。そう思う。
337某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:16:09 ID:FPfq+7nN
「……なぁ」
「ん?」
聞くべき事じゃないかもしれない。だが、俺の口から出た言葉を俺は止められなかった。
「お前は……幸せか?」
女子高生のメールから生まれた文車妖妃。
彼女の幸せは、何処にあるのだろうか?
「メル友もリア友も沢山いて、学園生活超楽しんでるよ。これを幸せっていうなら、幸せかな」
明確な答えにはなっていない。だが、こんなものだろう。
人間の女子高生が感じる幸せ。それが彼女にとっても幸せになるはず。
そんな彼女が、成就する日は来るのだろうか?
……やめた。考えるべき事じゃないな。
「待たせたな。薬草を煎じた茶だ。疲れもすぐに回復しよう」
独特の臭いを放つそのお茶は、見た目も正直美味しそうには見えない。
だが巫女さんが言う通り、疲れを取るには最高級のお茶なのは間違いない。
俺はそのお茶を、ありがたく頂いた。
まったりとした空気が、室内に漂う。俺もようやっと、落ち着いてきた。
338某880 成就〜文車妖妃?スライム娘?〜:2005/05/22(日) 02:16:47 ID:FPfq+7nN
そんな時、巫女さんの携帯が鳴り出した。
「もしもし、私だ……ふむ……ふむ……そうか……」
どうやら、仕事の話らしい。
「それで、特徴は……は? なんだそれは?」
ん? なにやら様子がおかしい。
「ふむ……いや、ちょうど二人とも来ているのでな……うむ、尋ねておく」
なにやら、また俺達に用事がありそうだ。
話し終えた巫女さんは、早々に口火を切った。
「また電脳霊のようなのだが……その霊、変な事を口走るようでな」
変な事? 狂気系の悪霊だろうか?
「なんでも……「うは」「うぇ」「てらわろす」など口走り、終始高笑いを続けているようだが……心当たりはあるか?」
てらわろす? 何かの呪文か? 少なくとも日本語ではないようだが……。
俺には心当たりが無いが、どうやら文車妖妃にはあるようだ。
「そいつ、間違いなく悪霊ですよ。気にしないで祓っちゃって大丈夫」
苦笑いを浮かべて、文車妖妃は断言した。
「そうか。では、私はすぐに出かけるが、そなた達はゆっくりくつろいでいかれよ。では」
早々に、支度を調える為に居間を出て行く巫女さん。
「ホント、色々よね私達も……」
煎餅に手を伸ばしながら、呟く彼女。
「……成就出来ただけ、あの子は幸せだったよ……」
呟いた言葉を、俺達は聞かなかったかのようにしばしくつろいだ。
339某880:2005/05/22(日) 02:24:33 ID:FPfq+7nN
以上です。

なお、この物語はフィクションです。
実在する掲示板,スレッドとは一切関係ありませんのでご了解下さいw

あと、この話を書く上で、ここの過去ログなどは一切見ていません。
以前にスライム娘の話を書かれた方がいたとしても、一切関係ありません。
これは本当にご容赦下さい。
ただ半角二次元の「モンスター娘」スレに過去上げられていた
スライム娘のマンガはイメージの参考にしました。
この場を借りて、マンガを制作された方にお礼申し上げます。

いや…スライム娘難しかった。文で表現するのはちょっとキツイ。
それでもどうにか、伝わったでしょうか?
今回は今までの中で一番不安だ。
ついでに、別スレに投下したのも含めると三日連続三話投下も無茶したなぁと反省。
340名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 02:30:26 ID:jK3KUXxP
GJ!
想いを果たして消滅してしまうのがなんとも物悲しい。
欲を言えば、スライム少女とのやりとりの場面がもっとあれば感情移入が大きくなると思うのですが。
341某880:2005/05/22(日) 02:31:50 ID:FPfq+7nN
>320さん
>よ、妖精学者が、妖しい性の学者になりかけとる…っ!!
今回の話で、ネタに使わせて頂きましたw

>321さん
私のスキュラ設定では
彼女は排泄行為を行わない=大や小の穴もない、という設定にしています。
これは、そもそもスキュラが人からモンスターになってしまったアルケニーやメドューサと違い
ニンフ(精霊)からモンスターになった娘だからです。
ニンフは排泄行為をしませんから、スキュラも排泄行為を必要としません。
食事はまぁ……しますし
そもそもニンフに性行為への欲望があるのかとか、そういった話になりますが
そこは深く考えない事にするのが、賢い大人とエロい大人かなとw

>322さん
萌えとエロだけを追求したら、お馬鹿になりましたw
別コスは考えてみます。
コスより、プレイ内容に悩みそうですがorz
342名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 02:37:32 ID:jK3KUXxP
>そもそもニンフに性行為への欲望があるのかとか、
ゼウスの愛人にもニンフはいたはずでは?
>妖性学者
笑った。というか反映が早いです。執筆速度すごいですね。

さて、「妖女に食われるエロティシズム」の続きを書かなければ…
343某880:2005/05/22(日) 02:50:56 ID:FPfq+7nN
>ゼウスの愛人にもニンフはいたはずでは?
そうでしたね。何も焦って言い訳書かなくても良かったのに俺orz

執筆速度はどうなんでしょう?
テンションによって早かったり遅かったりなので、何とも言えません。
たまたま、ここ数日はエロ方向の執筆テンションが高かっただけかも。

>さて、「妖女に食われるエロティシズム」の続きを書かなければ…
頑張ってください。読者としてお待ちしております。
344名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 03:19:14 ID:3ahlN6FS
うはwwwwwwwwwテラ萌えたwwwwwwwwwwwwwwっうぇぅぇ
vipネタもテラワロスwwwwwwwwwwwww
345名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 04:38:40 ID:AZjwq0AW
>>339
……笑って逝ったんならいいかな。
しかしまあ、slime-girl.homeli(略)もmonster-girl.homelin(略)も
俺の目の前にある玄箱んなかにはいってんのに
なんでこの部屋で誕生しねぇんだよ!!とか思った(笑
今度は是非ここで生まれてください。
生んでしまうような行動を取った責任は命懸けて愛で返すしかねぇし。
たかが4時間で満足するような弱い子だとは思ってませんよっ。
ああ、フィクションだった、あぶないあぶない。

しかしまさか妖性学者まで使ってもらえるとは思いもよらず。
スライムさんて絵でも文でも伝わりにくいというやっかいものですが
がんがんに伝わってまいりました。いいものをありがとうございます。
まあ、身体のどこでも同じというのが原因でプレイの幅が狭くなってますけど
これは僕のスライム娘啓蒙がまだまだぜんぜん足りないせいですね。
絶対スライム娘さんをねこみみの域まで到達させて
みんながみんな望んでるとこから誕生させてやっからなっ。
…ああ、フィクションだった、あぶないあぶない。
346名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 10:56:56 ID:qfkUhQ+g
>wwwwwwwwwテラワロスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
これって高笑いだったんだ・・・
347蜘蛛の場合:2005/05/22(日) 11:18:05 ID:yUl+Dhhy
>>70の続き

スパイダーさんと出会ってからちょうど一週間が過ぎた日の草木も眠る丑三つ時、ソファ
からむくりと起き上がった星見坂は物音を立てぬよう慎重に慎重を重ね
て、外に出た。
「うむぅ、やはりダメだな」
ゴキゴキと首が鳴る。とてもじゃないが睡眠に適しているとは言えない安物のソファで寝
ているためであろう。
寝なれたベッドは一週間前から自分を殺すために住み着いた朧に奪われてしまった。
「むぐぅ…あの焼き鳥娘め…今に見ていろ…」
ぶつぶつと文句を言いながらお楽しみの待つ場所へと進む星見坂。
そんな星見坂を電柱の上から見据える影が一つ。
「あの馬鹿は…一体何をしているのだ…」
朧であった。
彼女が星見坂の家に住み着いてから今日までの一週間、星見坂は毎晩この時間になると
外出していた。
星見坂が何をしているのか、少しばかり興味を持ったこの不死の鳥は今夜その謎を解明
すべく夜の街に現れた。
「………別にどうでもいいことだが…」
それに大体の見当もついている、誰に言うでもなく呟くと朧は尾行を開始すべく、
音もなく飛んでいった。
348蜘蛛の場合:2005/05/22(日) 11:24:00 ID:yUl+Dhhy
「ふむ、少し早くないかね」
「なにを言ってるんですか?星見坂さんが遅いんですよー」
一週間前に星見坂出会った時とは異なる場所、深夜は誰も寄り付かない公園のベンチで、
スパイダーさんは待ちくたびれたように頬を膨らませていた。みんなの憧れのマスクはすでに
外していた。
「星見坂さん約束した時間に来たことただの一度もないじゃないですか…いくらすごい正義の
味方でもそれはろくでなしですよ」
七日も連続で遅刻して来られたのではいくら正義のスパイダーさんでも頭に来るのか言葉に
棘がある。
「むぅ、こちらに来たまえ!」
それが癇に障ったのか、星見坂が強い口調で命じた。
「ほ、星見坂さん?」
「早く来たまえ」
いつもと違う星見坂の態度に、不安を覚えながらもスパイダーさんが近づいていく。
「あの…」
スパイダーさんがおずおずと何か言おうとしたその瞬間、
「むぅ、やはりけしからん乳だ」
うがーっと星見坂は彼女の大きな胸を隠す特殊タイツを破り捨てた。
349蜘蛛の場合:2005/05/22(日) 11:26:22 ID:yUl+Dhhy
「きゃっ!」
スパイダーさんが短い悲鳴を上げるが星見坂は意に返さず彼女の大きな胸を揉み始める。
「もう、するならちゃんと言ってくださいよぉ」
「ふんだ今日はちょうど厳しくしないと悪に堕ちてしまう日なんだからこれ位でちょうどいいんだ」
「そ、そうなのですか!?」
一週間前と同じに星見坂の適当な嘘に騙されるスパイダーさん。
しかし何も変わっていないような彼女にも、以前とは大きく違う点があった。
「……星見坂さん」
「なんだね?」
前からでは面白くないと後ろに回りこみながら、星見坂が返す。
「……んっ…」
絶え間なく続く胸への愛撫に邪魔されながらも言葉を続ける。
「今夜も、お願いします…」
甘ったるい声での、懇願の言葉を聞き、星見坂はにやりと笑い答えた。
「うむ、任せたまえ」
星見坂はスパイダーさんを膝に乗せるような形で、ベンチに腰掛けてからはっきりと力強く答えた。
スパイダーさんの一週間前とは大きく異なる点。
それが何であるのかは何かを欲しがるとように輝く薄紫色の瞳が語っていた。
350蜘蛛の場合:2005/05/22(日) 11:32:46 ID:yUl+Dhhy
星見坂はスパイダーさんの胸をしばらくの間弄り続けた。
「ほーれほーれおっぱい同士でキスしてるぞー」
「あぅ…は、恥ずかしいですよぉ…」
左右の乳首同士を寄せられて、スパイダーさんが恥ずかしさから顔を隠す。
「隠しちゃ駄目だっていつも言ってるだろー」
「えっ、ふぁっあぁあああぁぁあぁっ!!ダメぇ、ダメです!」
星見坂は「けしからん」と注意するとすっかり硬くなっている両のピンク色の頂をこすり
合わせた。
「ひっ、やああっ!だめぇ、ホントにダメです、おっぱいが、馬鹿になっちゃいますよ…」
「君はもう馬鹿だから大丈夫だ」
「そんな、ひどっ、ふああぁっ!」
スパイダーさんの抗議の声を遮るかのように大馬鹿者はさらに激しく彼女の胸をこすり
合わせる。
「ああっ、だめですだめ、やっ、ああああぁぁぁっ!!」
スパイダーさんが達したのを確認すると、満足したのか星見坂は彼女の胸から手を離す。
(むふふふ、もう胸だけでイケるようになった……処女の癖にすばら…いやけしからん……)
などと星見坂が考えていると、膝の上でぐったりとしていたスパイダーさんが星見坂のほうを向いてくる。
351蜘蛛の場合:2005/05/22(日) 11:35:57 ID:yUl+Dhhy
「星見坂さん……そろそろお薬を…」
「うむ、そうだそうだ忘れるところだった」
「もう、何ぼうっとしてるんですか…」
「ああ…いや…その、あれだ…誰か見てるような気がしてだね…」
まさかいつ処女を奪うのかを考えていたなどとは口が裂けても言うわけにも行かず、また
適当な嘘でごまかす。
「うむ…気のせいだったみたいだ…じゃあ始めようか…」
「はいっ」
スパイダーさんは元気よく返事をすると、星見坂の前の地面に腰を下ろし、星見坂のファ
スナーを下げた。
"薬"というのは言うまでもなく精液のことであった。
「もう硬くなってますね……それじゃいきますよー」
現れた星見坂の先を指先で撫でてから、スパイダーさんが口を近づける。
「……いや、待ちたまえ」
が、星見坂がスパイダーさんの頭を持ってそれを止めた。
「どうしたんですか?」
不思議そうな顔でスパイダーさんが訪ねて来る。
「うむ……」
どうしてこんな大事なことを忘れていたんだろう、と彼女に聞こえぬよう呟いてから、
星見坂は何をするのか説明した。
352蜘蛛の場合:2005/05/22(日) 11:38:26 ID:yUl+Dhhy
「こ、こうですか?」
「ほほ、いいぞいいぞ」
スパイダーさんはその大きな胸で星見坂のものを挟み込んでいた。
「じゃ…始めますよ…」
「おう、がんばりたまえ」
スパイダーさんは星見坂に言われたとおり、唾液を潤滑油代わりに垂らすと胸を上下に動かしだした。
むにゅむにゅと大きな乳房が淫らに形を変えながら動く。
「ど、どうですか?」
「うむ、いいぞいいぞ」
上目遣いで訊いてきたスパイダーさんに満足気に答える星見坂。その顔はとても幸せそうであった。
「ん、ん…」
胸での奉仕を続けているうちにスパイダーさんも興奮し始めていた。
目の前にはこの一週間毎日奉仕してきた星見坂のペニス。
スパイダーさんは無意識のうちに、ちろりとそれに舌を這わせた。
「おわわっ」
「あっ…ごめんなさい………」
星見坂の体がびくりと跳ねたのを悪くとったのか、スパイダーさんが誤る。
「いや、いい…続けてくれ…」
「あ…はい…」
言われるがままにスパイダーさんは奉仕を再開する。
「んっ…ちゅぷっ、」
「うむ、いいぞいいぞ」
星見坂の言葉に励まされるかのように、スパイダーさんの奉仕が激しさを増していく。
「むちゅっ、うちゅぅ…んん…星見坂さん…これで…いいんですか…?」
「ああ、もう最高だ、君は最高だ」
「うふふ…それじゃ、がんばっちゃいますよ」
スパイダーさんは上下の運動に加え、乳首を星見坂の亀頭にこすり付けてきた。
「ふふ…いっぱい出してくださいね」
「ううわ、喋ったらもう…」
星見坂は腰をビクビクと震わせながら果てた。
353蜘蛛の場合:2005/05/22(日) 11:50:00 ID:yUl+Dhhy
「んん…こんなに…」
スパイダーさんは顔を汚した精液を指ですくい、舐めとった。
「うむ…こっちもお願いできるかね?」
「はい…」
スパイダーさんは星見坂の一物を口に含み、綺麗にしてあげた。


星見坂とスパイダーさんのいるベンチの向かい側の茂みに隠れて、朧は二人が
乳繰り合っているのをずっと見ていた。
「あの大馬鹿者め…こんな事だろうと思ってたが…その通りだとは…」
覗きながらぶつぶつと文句を言う。
しかし二人の情事を見て興奮したのかその頬はかすかに上気していて、目には涙が浮かんでいた。
「あの馬鹿め…殺してやる…絶対に、殺してやる…」
口では文句を言っているが、その手は黒いロングスカートの中の秘所へと伸びていた。
「許さない…許さない…」
口では何を言っていても、秘所をまさぐる手は止まる気配がない。
「んっ…殺してやる…絶対に殺してやる…」
くちゅくちゅと淫らな音が小さく響く。情けなくて涙が出てくる。
切なさと、悔しさ、それと快楽が混じりあう中で彼女は自慰に没頭していく。だから気付かなかった。
「くうっ…なんでだ…うう…」
後ろで、今の彼女の五倍ほどもある大きさの蜘蛛が自分を狙っていたことに…

354書いた奴:2005/05/22(日) 12:06:59 ID:yUl+Dhhy
亀のようにのろのろと書いていたら
前回の投下から一月は経っていたことに気付いたわけで…
ゴールデンな連休中には終わらせるつもりだったのにもうすぐ六月…
小学生が通知表を持ってくるまでには終わらせるはず…
355名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 17:19:15 ID:P1ULfYbh
「殺してやる・・」と呟きながら自慰なんて、こんなにエロいシチュエーションがあるとは思いもしなかったよ。

エロエロエロ過ぎ。当社比三百倍。GJ。
356名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 18:17:44 ID:Eo2YBmlE
織るモノ絡みでで書いてみる。
エロくもなし

「パタパタ」

ふと、夜中に目が覚めた。
まだ五感は夢の中であるが、目が覚めてしまったという ぼんやりとした意識はある。
今日は遅くまで寝ていたので、眠りが浅かったのだろうか。
何とか意識を手放し 寝なおそうとするも、ひねくれた体は覚醒をすでに決定事項としたらしい。
真っ黒な視界がだんだんと薄い光を捉えると伴に
機能を取り戻した聴覚が この部屋の日常には無い音を伝えてきた。

音は一定のリズム手絶え間なく 「パタパタ、パタパタ」と、どこからか聞こえてくる。
遮光カーテンから漏れる薄い光を頼りに 目だけで音を追ってみるも
どこから聞こえてくるのやら、さっぱり発生源がつかめない。
気にせずに寝よう。
再び目を閉じる。
「パタパタ、パタパタ、パタパタ」
明日は平日である。
無駄な足掻きと知りつつも 寝ようとしている自分にとって、これは害でしかない。
どこから鳴っている物なのか 確認して止めるべきだろうか。
しかし、行動を起こすという事は 完全に目を覚ますという事だ。
薄く目を開けた。
あいまいな視界の中に電灯の紐がある 少し体を起こせば届く距離だ。
「パタパタ、パタパタ、パタパタ」
音が止む気配はない。
357名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 18:18:07 ID:Eo2YBmlE

・・・クソっ。 そう、うぶやきながら身を起こした時だった。
「きゃっ」と、確かに小さな悲鳴が聞こえた。
あわてて電灯を点け 辺りを見回すが、いつもの部屋があるだけである。
先ほどから続いていた音は止んでいた。
悲鳴を上げた主もいない。
すぐ側で聞こえたのは確かである。
女性の声だったように思うのだが、何が発したのだろうか。

水でも飲んで気を落ち付けようと
ひとまず腰を下ろし、ようやく状況に気づいた。
寝る前につけたはずのトランクスは足首ずり下がって
股間の毛がヘソの辺りまで、びっちりと編みこまれ
すでにそれは毛ではなくて 布の状態にまでなっている。
「女の仕業には間違いないわな・・・」
そう、つぶやいて
これは剃るべきか解くべきかと頭を悩ませる。
朝までには何とかなるだろうか?

久々に書きましたがエロはやはり難しい
皆様の安眠を祈りいたします。
358名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 19:20:09 ID:qfkUhQ+g
短いながらもGJ!!
3599-128:2005/05/22(日) 20:02:53 ID:GzK/IDAn
>>343
神と呼んでいいデスカ?

混乱=パニックの語源がパンであるように、
色情狂=ニンフェットの語源がニンフです。
ニンフ=えろえろっ娘は間違っていないと思います。

ついでにおせっかいながらギリシア神話を良く知らない方に解説しますと,
スキュラは、
海神グラウコスが一目ぼれしたニンフの少女であり、彼女にハァハァしたグラっちは
(某あかりやだよもん星人バリになかなか思いに気付いてもらえない)幼馴染の魔女キルケに
「惚れ薬を作ってクレ!」と依頼。ところがキルケはグラウコスにラブだったため嫉妬に狂い
惚れ薬と偽って怪物変身薬を作り、キルケの下半身を怪物へと変えてしまった。
というかわいそうなおにゃのこです。
ついでに、キルケとグラウコスがくっついた、という記述はどうやら存在しないようです。合掌。

で、古代ギリシアでは少年愛が大流行していました(ソクラテスもヤッてました)。きっとアナルセックスも習慣としてあったことでしょう。
ついでに繁殖という本能からはみ出した愛情は「むしろ純愛」とみなされ、肯定されていました。

これを踏まえて想像するに、
スキュラを「愛されない存在」に作り変えたかった
(きっとサディスティック妖子みたいな性格だったに違いない)キルケは、「純愛用」であるあにゃるを
放置したとは考えにくいです。
そういう風に見てみると、氏の言う「穴が無い」設定って、実は相当説得力あるのでは無いでしょうか。

・・・長々とだべってしまいましたが、一言に要約すると

GJ!ハァハァしますた。

となります。どうかこれからもラブとえろすを振り撒いてください。
360名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 20:58:44 ID:jK3KUXxP
>359
GJ、そこまで知識を纏め上げるとは素晴らしい。
自分も知ってる知識が大半ですが、そこまで理論を纏め上げる事はできませんでした。
361放課後の吸血鬼29:2005/05/23(月) 00:27:35 ID:W8BumdlL
濃厚な甘い血の香に興奮して、ピチャピチャと夢中で血を啜っていると、ガラリと戸が開いた。
「ごめん、ごめん。遅くなっちった」
ショートカットの女生徒が一人、タタッと勢い良く入って来た。
アミと目が合う。一瞬、時間が凍りつく。無理もない、友人が後から蜘蛛女にギュッと抱き付かれて、チュウチュウと首筋から血を吸われているのだ。
「きゃああぁぁ…」
一呼吸置いてから叫び声を上げる口は、アミがヒュッと投じた粘つく糸で塞がれた。続いて、逃げ出さぬようにその足も、手も。あっというまにそこには恐怖に震える少女が、芋虫の様にゴロリと転がっていた。
どうやら吸血に夢中になって、人払いの結界が緩んだらしい。あるいは元から掛けそこなったか。声を聞きつけられたら厄介なので、改めて結界を張りなおす。
と、食事中の獲物がピクッと動く。
「ん…、え…? 何? え…」
今の叫び声で目を覚ましたらしい。ふと振り向いて口を朱に染めたアミと目が合う。悲鳴をあげようとしたその口も、すぐにペタリと塞がれる。続いて手足も。
「あぁらら。あなた達、運が悪いわねぇ」
恐怖に震える少女達を見下ろしながら、アミはくすくすと笑う。
少女達はもぞもぞと身をくねらせ、必死で逃れようとする。が、アミは二人をヒョイと引っ掴み、足元にドサッと放り出す。うっと、僅かに苦痛のうめき声を漏らす。
「ん、もう。逃げないでよね。お嬢ちゃんたち」
後から来たショートカットの方を糸で床に貼りつけ、血に濡れた唇をニィッと歪める。
362放課後の吸血鬼30:2005/05/23(月) 00:28:18 ID:W8BumdlL
まずは、さっきの続き。束縛されたまま、バタバタともがくポニーテールの少女を、軽々と持ち上げる。今度は恐怖を感じさせるために、正面からだ。
わざわざ目の前でカッと口を開き、普段は唇に隠てしまう小さめの牙をよく見えるようにする。
震える獲物の目が大きく見開かれ、逆に瞳孔がキュッと小さくなる。その眼の端に涙の玉が浮かぶ。
それを見てくすりと笑い、ひとまず食事を中断する。ペロリと舌を伸ばして、滴るその雫を舐める。頬を這うヌメリとした舌の感触に、ビクリと震える。
「ふふっ、あなた。美味しそうね」
そう、耳元で囁いてから、恐怖に震える首筋にガブリと牙を立てる。麻痺毒も分泌せずに、わざわざ新しい傷をつける。んうっとくぐもった呻き声をあげ、苦痛でその身体がビクンとのけぞる。
再び口腔に命の味が広がる。新たな傷に牙を突き立てたまま、流れ出る血をじゅるりと啜る。怯えてフルフルと震える様は、吸血欲をそそる最高の調味料だ。
一通り生血を堪能してから、恐怖で息を荒くしたポニーテールの少女をどさりと放り出す。そして、もう一人のご馳走の身に、これから起る事がしっかりと見える様に、ベタリと糸で床に留める。
次は、ショートカットの少女の方だ。
こちらの獲物は、友達が目の前で生血を啜られるのを見て、すっかり怯えきっている。じつに美味しそう。
少女の倒れている様は、巣に囚われた蝶のよう。アミが近づくと、仰向けに倒れている少女は涙を浮かべた目をぎゅっと瞑り、顔をそらす。
しばし思案し、今度は趣向を変えて楽しむことにする。
363名無しさん@ピンキー:2005/05/23(月) 00:31:49 ID:W8BumdlL
今夜はここまでです。
なんとか連載を再開できました。

自分でも早く続きを書きたいですが、なかなか先に進めません。
早く、アレを登場させたりとか、あんなシーンとか、こんな場面とか、こんな台詞とかを書きたい。
そうは思っても途中をすっ飛ばすわけにもいかず、それを書くと筆がノッたり推敲に手間取ったり、とにかく遅々として進みません。
364某880:2005/05/23(月) 08:18:18 ID:W1CayLiw
>340さん
>欲を言えば、スライム少女とのやりとりの場面がもっとあれば感情移入が大きくなると思うのですが。
そうですね、ちょっとエロに気を取られすぎました。

>345さん
本当にフィクションかどうか判りませんよ? やってみない事にはw

>359さん
>神と呼んでいいデスカ?
ダメですw
やー、その名詞は新参者には早すぎますって

>そういう風に見てみると、氏の言う「穴が無い」設定って、実は相当説得力あるのでは無いでしょうか。
Ω ΩΩ<ナ、ナンダッテー!!
筆者も気付かぬ深い設定を掘り起こすとは流石ですw
これは個人的な見解ですが
人外さんと愛し合う=エロ=穴に突っ込む
という方程式的な状況に、自分なりのアンティテーゼを示したかったというのもあるんですよね。
穴に入れなくったって愛せるんだぞ、と

「ほしをみるひと」の続きもお待ちしてます
365名無しさん@ピンキー:2005/05/23(月) 16:41:31 ID:sEtD8wVu
できれば早めに毎日セクースしないとしんじゃうロリサキュバスの話でも書くお^ω^
366名無しさん@ピンキー:2005/05/23(月) 19:59:38 ID:wnwF6Q8T
>>361
アミたんの吸血行為は本人が楽しそうでいいなあw

>>364
アンチテーゼとかいわれるとちょっとショボーン
…俺はそれしか書けないよウワァァンヽ(`Д´)ノ
だってここエロパロだし、別にいいじゃないかと言ってみるテスト。
あ、作品に文句は全然無いので。一応補足。

>>365
待ってる。
367名無しさん@ピンキー:2005/05/23(月) 21:14:35 ID:30VzfVEM
>365
 できれば早めに「毎日セクースしないとしんじゃうロリサキュバスの話」でも書くお^ω^
なんだろうが、最初は
 「できれば早めに毎日セクース」しないとしんじゃうロリサキュバスの話でも書くお^ω^
と読み間違えたよ。
368放課後の吸血鬼31:2005/05/24(火) 00:34:47 ID:n9Rfc3CD
アミはニヤニヤと笑いながら少女の上に屈みむ。そしてその膨らんだ胸に、ポフッと軽く手を乗せる。羞恥心と恐れから、獲物はビクリと身体を震わせ、思わずぱちっと目を開く。
ニイッと淫らな笑みを浮かべる蜘蛛女と至近距離から見詰め合うことで、恐怖の表情は一層強まり、絶望のそれへと変わる。
「ふふっ、あなたも美味しそうね。と・く・に、ここなんかっ」
そう言うが早いか、ブレザーの襟元に手をかけ、一気にバッと引く。ボタンがブチブチッと弾け飛び、薄いブルーのブラジャーに覆われた、自分よりは幾分か小さい膨らみ露わになる。
アミはその胸元にグッと顔を近づける。ダランと下を向いた豊かな胸が、少女の下腹部に当たり、グッと圧迫する。
糸で塞がれた口からは、ううっというくぐもった声が続く。懇願の様だが、それは言葉にならない。
震える細い肩から肩紐をグイッとずらすと、半ば露わになるプヨプヨと柔らかそうな膨らみ。そこをよく味わう為に、ゆっくりと舌でペロリ、ペロリと撫でる。恐怖と羞恥心から、少女はギクッと身体を固くする。
奥に紅の美酒を隠す肌は、ねっとりと甘い。我慢しきれずに、餅でも頬張るように、ガブリと噛みつく。
小さいが鋭い牙に柔肌を貫かれ、衝撃で少女はビクッと仰け反る。しかしアミの束縛の糸と剛腕は、少女を捕らえたまま、決して緩む事はない。
蜜の様に甘い生娘の命の液体が、舌にトロリと触れる。
美味しい。
興奮し、その柔肉に、さらにズブリと牙を突き立てる。苦痛と恐怖から、呻き声は一層強く激しくなり、恐怖に見開かれた眼からは、涙が泉のようにあふれ出る。牙を通じて、恐怖で速まった命の音がドクドクと伝わる。
369放課後の吸血鬼32:2005/05/24(火) 00:35:29 ID:n9Rfc3CD
マシュマロのように柔らかな胸丘に、グサリと牙を突き立てたまま、アミはグイッと首を引く。まるで、そのまま噛み千切ろうとするかのように。
美しき獲物の呻き声が一際大きくなり、ビクンとより大きな震えが走る。そして、それきり動かなくなった。天井を向く虚ろな瞳は、もはや何も映さず、ただ涙を流すのみ。
開いた傷口は、こんこんと涌き出る真紅の泉と化す。
アミは母乳でも飲むかのように、乳房から命の源を啜ってゆく。しばしその男とは異なる淡麗な血を、心行くまで堪能してから、ようやく朱に染まった口を離す。
「ふふっ、ご・ち・そ・う・さ・ま」
アミは呆けた少女に、キスでもするかのように顔を近づけて、そう嘲う。そして血に塗れた口から、真紅の舌をぬらりと伸ばして、涙に濡れた頬に一筋の朱を塗る。
さて、今日はもう巣に引き上げる事にしよう。なにしろ、お土産が二つも手に入ったのだから。
たまには女同士というのもいいし、かなり激しく遊んでも、今日明日はたっぷりと楽しめるだろう。
それに、二人もいれば趣向を凝らした楽しみ方ができる。例えば、片方だけ助けるという約束で殺し合わせるとか。
或いは、一人を目の前でなぶり殺しにして、その血を塗りたくった滑る身体で、もう一人と絡みあうのも面白い。
または、一方に、もう一方の血を堪能させてやるとか。
サディスティックな笑みをニヤッと浮かべて、いろいろと楽しい空想をする。
少しばかり噛み過ぎたショートカットの方からは、折角の血がポタポタと漏れている。ペタッと糸で漏れ口を塞ぎ、二人とも糸でグルグルと巻きなおす。そして両手に一つずつぶら下げる。
と、廊下からタッタッと足音が聞こえる。お土産は三つになりそうだ。
370名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 00:47:24 ID:n9Rfc3CD
今夜はここまでです。

>366
ありがとうございます。
SとMは表裏一体と申します。故に血を吸われる快楽を知る者は、血を吸う快楽も知るわけです。
371名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 20:22:46 ID:6Xmjq3wv
ここってレズ物の投下はOKでしたっけ?
まだ書き上がってませんけど一応確認だけ
372放課後の吸血鬼33:2005/05/24(火) 20:45:13 ID:WAa5jWsw
三人目は、戸口で一端止まらずにダッと勢いよく飛びこんで来る。予想外の動きに、右手の獲物を放り出すののが遅れ、糸を放つタイミングを逸する。
飛びこんできたのは、お仲間――つまりは妖怪――だった。
獲物達と同じ制服を着、血の気のない白い肌をし、血色の瞳と鋭い牙と爪を持つスレンダーな小娘。恐らくは吸血鬼の類だろう。
「あら、何だ。お仲間…」
唐突に、小娘はタンッと床を蹴って鋭い爪で突いてくる。左手に獲物をぶら下げていた為、動作が遅れた。ズドッという衝撃とともに、爪は左肩に深々と刺さった。
「痛っ。何すんのよ」
ドサッと獲物を取り落とし、アミはギロリと睨みつけて、ササッと二三歩下がって距離を取る。
「…大人しく去れば、この場は見逃してやる」
真っ直ぐの眉の下、炎色の瞳でキッと睨みつけながら、小娘は言い放つ。どうやら、人間に尻尾を振る連中のようだ。
ならば狩りの現場を見られた以上、敵対は免れない。しかも、この手の輩は徒党――一般にネットワークと呼ばれる互助組織――を組む事が多い。仲間を呼ばれる前に、さっさと始末するべきだ。
開いている右腕でヒュッと糸を放つ。が、タッと華麗なステップでかわす。そのまま再び矢の様に真っ直ぐ突っ込んでくる。
獲物を手放して身軽になったものの、左肩にぱっくりと開いた傷は意外に深く、腕が巧く動かせない。
受け損なって、ブスリと右肩も刺された。これでは右腕も巧く動くまい。ならば…
アミはひらりと跳躍して、開いた窓まで後退した。走って追うには机が邪魔だ。案の定、小娘はそこに残ってこちらを睨みつけている。
373放課後の吸血鬼34:2005/05/24(火) 20:45:38 ID:WAa5jWsw
「憶えてなさい、この小娘っ」
そう言い残して窓から飛び出し、垂直の外壁をシャカシャカと走る。振り向くと、もう追跡はない。
やがて巣に戻り、アミはひとまず傷ついた身体を休めた。
ここしばらく、あまり派手な動きはなかったから、狙われる憶えはない。そして昨今は、人間に化けて暮らす妖怪の方が多い。だから、あれは恐らくそういった妖怪の一人で、たまたまあの学校の生徒だったのだろう。
妖怪同士は、運命的な奇妙な引力を持つ。偶然という形で、たまたま出会ってしまうのだ。或いは無意識に妖気とでもいうものを感知して、引かれるのか。
巣に張るのと違って、狩りの最中の結界は妖怪には効きにくい。だから多分小娘は、二人目の獲物の悲鳴を聞きつけて来たのだろう。或いは、吸血鬼らしく血の香につられてか。
ならば仲間を呼び、巣の位置を探り当て、襲撃をかけるまでにはまだ時間がある。早くても襲撃は明日、しかも人目につかぬように夜中になるに違いない。今日の明方に移動すれば大丈夫だろう。
しかし、その夜の内に小娘は手勢を率いて襲撃してきた。糸の振動で敵襲に気付いたものの、おかげで巣を畳み“食いカス”を片付ける間もなく、慌てて逃げ出すはめになった。
もし“連中”の手引きがなければ、じきに追いつかれて殺されていただろう。
374名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 21:02:29 ID:95unWphv
本日はここまでです。
…まだ先は長い…
375名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 21:29:06 ID:I36bfUQo
>>371
ダメという話はなかったと思うのでおkなんじゃないかな。

>>374
吸血シーンがかなりエロエロでイイ。
てか、蜘蛛さん戦闘力自体は低いのね(つД`)
376名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 22:59:58 ID:qAvfuS8q
油断したからそうなっただけだろ、
蜘蛛姉ぇ生きてて良かった(つд`)
377名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:04:26 ID:KQjXQeri
どれだけ仲良くなっても
怪物は所詮怪物だって、偉い人が言ってた
やっぱおもすれーwwwwwwwwww( ^ω^)wwwwwwwwwwwwww
378名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:18:17 ID:KQjXQeri
子供を平気で捨てる親が人を救えるの?m9(^Д^)プギャー
神様は本当に神様になっちゃったのかな?m9(^Д^)プゲラプオス
379374:2005/05/25(水) 00:09:05 ID:lxJ3NQ4l
>375
ありがとうございます。残り吸血シーンはあと…3回くらいあります。
一応設定上はアミの方が強いはずなんですが…
戦闘力というよりも、不意打ちされたのと、士気の違いですぐに撤退してしまうのが原因かと。
兎しか相手にしたことのない熊が、肉食獣相手に戦ってきた猟犬と出会って、戸惑っている感じではないかと。

>376
回想シーンなので死ぬ事はありませんが、心配していただきありがとうございます。

ちなみに昔作ったデータ
アミ 体力:30 敏捷:17 刺:3D+1 切:5D+3 よけ:7 受け:12 防護点:7
真紀 体力:15 敏捷:16 刺:1D+2 切:2D+2 よけ:7 受け:12 防護点:7
え〜。1D+2じゃ最大でも1点しか抜けませんね…。
左腕を使用不能にしたのは、クリティカルしてダメージ3倍とか、全力攻撃でダメージ+2とか、そう脳内補完して下さい…(笑)。
380名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 01:11:02 ID:+ZruQLVi
細かすぎて正直ちょっと引いた
381名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 01:32:11 ID:akuVLBRn
そうか?
382名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 02:02:46 ID:a042ChOh
ガープスだとそのデータ、4分の1にも満たないと思うw
そこまで作るの大変だけど。
383374:2005/05/25(水) 02:15:19 ID:lxJ3NQ4l
元々データはきっちり作ってあったけど、今回の小説でいろいろと変更したところもあるので、変わらない部分とか、ネタバレにならない範囲で発表しました。
384名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 04:14:20 ID:lXA9knEC
>>383
そんなことよりガープスが通じる人間ばかりじゃないことを理解するべきかと。
あなたの小説を読みたいだけの人にとってはノイズでしかないからね、それを嫌がる人もいるかも知れないさ。
385名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 10:40:24 ID:LPpi13P5
自分は作者じゃないけど

そんな小ネタぐらいに目くじらたてなくてもいいじゃないかよ。
嫌なら1スレぐらいなんだからスルーしてもバチはあたらんよ。
時々わいてくるが、自分の知らない話題がでるととたんに不機嫌になる奴のほうがよっぽど不愉快だな
逆にあなたが知ってても他に知らない人がいるネタもたくさんあるはず。


>あなたの小説を読みたいだけの人にとってはノイズでしかないからね
この言いぐさはどうかと思う。
小説だけを読みたければそこだけ読めばいいし
保管庫に行けばちゃんとまとめてある。

作者さんたちは小説書くマシーンじゃないんだよ


386名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 13:17:26 ID:akuVLBRn
よーしパパ昔作ったドラゴンハーフのキャラのデータを紹介しちゃうぞー
387名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 18:05:49 ID:rI0R9saA
勘弁
388名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 20:29:54 ID:L3BdG+RV
すげー痛々しいプロフィールがぎっしり書き込まれたりしてるのか?
389374:2005/05/25(水) 20:44:43 ID:HvuVByxx
>384
了解。
知らない・理解できないネタで盛りあがられても、疎外感を感じるだけだろうからね。
荒れる元になるかもしれんので、ガープスネタはやめにするよ。
390名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 20:46:28 ID:a042ChOh
>>383
んー、後で「癖」とか見たいな。
蜘蛛のひと「残忍」とかありそうw
391名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 20:46:56 ID:a042ChOh
あ、ごめん。
392某880:2005/05/26(木) 00:11:33 ID:mx3XtYOU
一応事前に警告
今回はレズ物です
393某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:14:02 ID:mx3XtYOU
ハッキリ言えば、私は欲求不満だ。
生活に置いては、これと言った不満はない。
いや、むしろ日本に来てからの私生活は充実しきっている。
行動制限はされているが、日の光を堂々と受けられ
洋館に自分の部屋を持ち、沢山の友人が出来た。
そして好きな手芸を方々から頼られるのも、
自分で吐き出す糸では足りなくなる程忙しいが、充実している。
今では「デザイナー」なんていう仕事に就いている。
まあもっとも、こちらの仕事に関して、私は直接人間と交渉出来ないので
若干現実味が欠けているのだが
私がデザインした制服を着た娘達が
……中身はもちろん人間ではないのだが……
時折遊びに来るのを見ると、その都度心温まる思いだ。
これだけ生きるという事を満喫していながら、
いやむしろ、これだけ充実しているからだろうか
私は欲求不満に陥っている。
どんな欲求か。それは、その……
まあ、有り体に「欲求不満」と聞いて思い当たるのは一つくらいだろう。
まさか「お腹でも空いているのか」など思う者もおるまい。
「……はぁ」
深い溜息。どうやら今日も作業がはかどりそうにない。
日本語では「殿様商売」などと言うそうだが
私は仕事に利益を求めないが、代わりに納期を定めない。
その為作業を長期的に止めても、誰からも文句は言われないしさせない。
とは言え……ここ最近、作業の手を止めてばかりだ。
「参ったわねぇ……」
頭をわしゃわしゃと掻きむしりながら、私は又大きく溜息。
ギリシャにいた頃は、こんなに「求める」事はなかったのになぁ
ぼーっと天井を軽く見上げ、そしてまぶたを閉じる。頭をがくりと落として、また溜息。
どうしてしまったのだろうか。自分で自分が判らない。
394某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:14:37 ID:mx3XtYOU
「……するか」
ここ最近は日課にすらなってしまっている行為。
あまり褒められる行為ではないが、今の自分は「これ」をしないと落ち着かない。
私は作業台を片づけ、念入りに「角」を綺麗にふきんで拭く。
角の丸い作業台。私がわざわざ「角が丸い」を優先して選んだ作業台。
「よっ……」
私は上半身を持ち上げ、綺麗にした作業台の角に、腹部と足の付け根の間を軽く乗せた。
「んっ」
まだ何の準備も出来ていない、私の……敏感な部分。
あえて「蜘蛛」らしく言うなら……生殖器。
私は、元は人間だった。
それを機織りもろくに出来ないくせに威張り散らす愚かな女神に、
下半身を蜘蛛にさせられてしまった。
その為、上半身は人間の頃と変わらないのだが、腰より下はだいぶ変わった。
まず、脚が六本に増えた。
蜘蛛の脚は八本なのだが、私には腕もあるので差し引いて六本なのだろう。
そして、排泄する箇所が変わった。
私の生殖器は、かなり「奥」へと、手も届かない程奥へと移動している。
蜘蛛なら問題のない場所。でも私は半分人間。この位置には問題がある。
蜘蛛はしないが人はする行為……それが安易に出来なくなってしまった。
395某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:15:21 ID:mx3XtYOU
「んっ……」
弧を描くように、ゆっくりと、しかし小さく、私は腰を動かした。
軽く角に押し当てるように。
私はこのようにして、手が届かないハンデを克服している。
「はぁ……んっ」
たまに反対方向へ回したり、あるいは前後に揺すってみたり、
色々と動きに変化を付けながら、私は次第に腰の動きへ没頭していく。
自分でも気付かぬうちに、両手は己の両胸をまさぐっている。
「……いいわ、脱いじゃえ」
服の上からではまどろっこしい。私は上着も下着も、脱ぎ捨てた。
もちろん、その間も腰の動きは止めない。
「あっ、そこ……」
小さな突起物。興奮する事で僅かに大きくなるその部分を、私は角で刺激を与える。
「いいよ、ん……もっと……」
まるで誰かに、ねだるような独り言。
私の脳内では、その「誰か」が鮮明なイメージになって浮かび上がろうとしていた。
「お願い、もっと……あっ!」
腰の動きも激しくなり、胸を掴む手にもかなりの力が加わっている。
396某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:15:59 ID:mx3XtYOU
欲しい。
本当は、こんな暖かみのない作業台の角なんかではない、熱い熱い、「あいつ」のが……。
「あっ、ダメ! こんなので、いっちゃう! でも、でも……あん、ふあっ、もう!」
作業台が揺れる。私の腰も、激しく揺れる。
まぶたを閉じ、私は自分の手も作業台の角も、全てがまぶたの裏に浮かび上がった「あの男」からの感触だと、自分に言い聞かせる。
欲しい。
欲しいのに。
快楽からなのか、それとも寂しさか。私はうっすらと瞳を濡らしている自分に気付いた。
「いくっ、いっちゃう! いっちゃうの!」
私は、「あいつ」の名を叫びながら頂点に達する……つもりだった。
「アルケニーさぁ〜ん。頼んでた衣装出来ました?」
ノックも無しに、部屋の扉が開かれた。
視線が合う。
行きかかり火照った身体は、急速に冷めていく。
そして今までとは意味の異なる火照り……羞恥によって全身がゆであがるほどに熱くなる。
「あっ……」
ドアノブを握ったまま、視線の先にいる娘は固まっている。
私もしばらく、身動きが取れなかった。
裸になり、両手で胸を鷲掴み、秘所を作業台の角に押し当てたまま。
やっと動かせたのは、唇から。
私はまず、悲鳴を上げていた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
397某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:16:31 ID:mx3XtYOU
「いや、まさかね、あははは」
まったく、笑い事じゃないわよ。
私は脱ぎ捨てた服を再び着ると、訪問者を正座させた。
正座と言っても、彼女……スキュラも私同様、下半身に人間の脚はついていない。
脚は私よりも多い十二本。おまけに蛇の頭が六つも付いている。
故に正座と言うよりは姿勢を低くさせたと言うべきなのか。
「前にも言ったけど、作業は急かさない。そういう約束でしょ?」
彼女は、自分が頼んだ「衣装」が出来上がったかどうか、その状況を確認しに来ていた。
普段なら、もう出来上がっても良い頃。しかし全くと言っていい程に彼女の衣装制作は進んでいない。
それほど長い期間、私の手は止まったままなのだ。
「ゴメンね。なんだか待ちきれなくって」
ぺろっと舌を出す姿からは、反省の姿勢は伺えない。しかし特に怒鳴り散らすつもりはない。
共にギリシャから日本に来た友人の性格を良く知っているから。
「仕方ない、今度は原点に返ってこの服で「やろう」かな」
彼女は今着ている「衣装」を両手の指で軽くつまみ上げながら言った。
今彼女が着ている服はメイド服。ここ最近彼女の「普段着」になりつつある、私の作品。
初めに彼女からメイド服を頼まれた時には驚いた。
注文された服そのものもだが、それをねだる理由について驚かされた。
そして、羨ましかった。
彼女は私と違い、下半身を複数の脚と蛇にされた事で、生殖器を失っている。
その為、私以上に「欲求」が貯まりやすく、また自己処理が出来ない。
そうして鬱積が貯まると、元々制御の難しかった下半身のコントロールがより難しくなり危険だ。
そこで、私が住み彼女が働いている館、つまり今いるこの館の主に、
「性欲処理」を彼女はお願いしている。
これは彼女が人間世界で生きていくには重要な事。
そこまで判っていながら、
私は楽しげにその「性欲処理」の約束日を待ちわびる彼女がとても羨ましかった。
398某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:17:05 ID:mx3XtYOU
「なんだか、浮かない顔してるね。大丈夫?」
顔には出さないようにしていたつもりだが、
どこかで羨ましく眺めているのが判ってしまうのだろうか。
いや……妬んでいるのかもしれない。
恥ずべき事だ。私は自分の欲求不満から友人を妬むなんて。
「あの……やっぱり、まだ怒ってる?」
まあ、怒っているというか……落ち着かないのは事実だ。
なにぶん、私は「自己処理」を完了間近で止められてしまっているのだから。
「怒ってはないけどね……」
そんな不安定な気持ちが、曖昧な返事となって表れてしまった。
これでは、「まだ怒ってる」と思われても仕方ないかもしれない。
「……とにかく、衣装はもう少し待って。ちょっと今、スランプなのよ……」
ますます、誤解されそうな発言。
違うのよと取り繕う事も出来るだろうが、どうも、私はそういう事が苦手だ。
気が強い分、優しくなる事に不器用。
こんな自分の性格を理解しながら、それを直せない自分に又苛つく。
つくづく、損で嫌な性格だ。
スキュラが眉をひそめて困った顔をしている。ああ、そんなつもりはないのに……。
彼女はとても明るく、そして人なつっこい。
それだけに、困った顔をされると
こちらがよほど悪い事をしたように感じてしまい、いたたまれなくなる。
こんな時、気の利いた一言で誤解を解ければいいのに、その一言が思いつかない。
399某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:17:40 ID:mx3XtYOU
「……衣装、出来るだけ早くできるよう「作業に」戻るから……」
どうして良いか判らず、私は止まっていた仕事に逃げる事しか思いつかなかった。
クルリと背を向け、私は作業台へ向かおうとした。
「そっか!」
パン、と手を叩き、スキュラが突然声を上げた。
驚いた私は振り返った。そこには、満面の笑みで私を見るスキュラがいた。
「お手伝いしてあげるよ。ちょっと待っててね!」
言うが早いか、彼女はそそくさと部屋を出て行ってしまった。
手伝う? まぁ確かに、人手が増えれば作業もはかどるのは間違いないが
糸の生成から始まる私の服作りは、どれも専門的な知識と技術を要する。
何も知らず何も出来ないスキュラに手伝える行程はあまり無い。
まあそれでも……彼女の「お詫び」という気が済むのなら、
糸車でも回して貰うのも良いかもしれない。
この時の私は、そう思っていた。
他に「手伝う事」があるとは思っても見なかったから。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
400某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:18:15 ID:mx3XtYOU
戻ってきた彼女は、着替えを済ませて来た。
ファミリーレストランのウェイトレスの格好に。
「何故その衣装に?」
手作業するに不適切とは言わないが、適切でもなく、着替えてくる理由が見あたらない。
白と桃色が良く映え、フリルだけでなくヘッドドレスまだ付いたその衣装は
メイド服の色違いと言われてもおかしくないデザイン。
違いは、胸を強調したようなデザインになっている事と
「すきゅら」と書かれたハート形のネームプレートがあるくらいか。
ウエイトレスとしての作業に適したデザインと言うよりは、
客の目を惹く為のデザインと言った方が良いだろう。
つまりそれだけ、手作業とはかけ離れた衣装なはず。
「アルケニーさんなら、「ご主人様」とか「旦那様」より、「お客様」って呼んだ方が良いかなぁって思って」
何の話?
その「ご主人様」とかは、あいつと「やる時」の……
え? もしかして……
「さあお客様、お洋服をお脱ぎ下さいませ」
必要以上に「お」を入れた、ちょっとおかしな丁寧語で、
ウエイトレスの「設定」でスキュラが私に脱ぐよう迫ってきた。
「ちょっ、ちょっと、もしかして……「手伝う」って、こっち?」
「はい。お客様の「作業」をお手伝いさせて頂きます」
作業って、「こっちの作業」じゃないわよぉ!
どうやら彼女は、私の「作業」を「仕事」ではなく
直前までしていた……彼女が目撃した私の「自慰」という「作業」の事だと勘違いしたらしい。
「待って、ちょっと、別にわた……しぃっ!」
「あら、こちらの準備は完全にお済みではありませんでしたね」
長い彼女の脚が一本、いつの間にか私の秘所にまで伸びていた。
ぬめりけのある彼女の脚がそこを軽く撫でるだけで、
私は全身に軽い電気が走ったかのような「快楽」を感じた。
中断されてからそれなりに時間が経っていた為、ある程度乾いてしまってはいたが
完全にいけなかっただけに、敏感さは残ったままだったよう。
401某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:18:48 ID:mx3XtYOU
「いかがですか? お客様」
作業台の角とは違い、柔らかく、しかし力のこもった彼女の脚が、
的確に私の性器をなで回していく。
久しく感じる事の出来なかった、温もりある悦楽。
私はその悦楽に、あっさりと飲み込まれた。
「んっ、はあ……あんっ! いいわ……ん、いいわ……よ」
既に息も荒く、秘所より伝わる悦楽に神経を集中させられている。
いつの間にか服を脱がされている事にすら気付かぬ程に。
「あは、お客様……とっても気持ちよさそうな顔……」
うっとりと、スキュラが私の顔を眺めている。
性器を失った彼女は、人より精神的な快楽を得やすくなっている。
彼女にとってこういった性的奉仕は、まさに快楽そのもの。
「スキュラぁ……ねぇ、スキュラぁ」
舌なめずりをしながら、私は別の刺激を求めた。
「かしこまりました、お客様」
注文は、彼女の唇。ウエイトレスは早速注文の品を届けに来た。
「んっ……ちゅっ、くちゅ……はぁ、んっ……ふあ、ん……」
唇を押し付け合いながら、互いの舌を絡ませる。
じゃれあうと言うよりは、統合しようとする程に、二枚の舌はねっとりと絡みついている。
ぴちゃぴちゃと、唇と舌が音を立てる。その音も、耳からの快楽になっていくよう。
私は上と下の唇から与えられる快楽に酔いしれながら、
さらなる快楽を求め自分の胸を下から持ち上げるように鷲掴みにしていた。
402某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:19:50 ID:mx3XtYOU
その胸に、新たな刺激。
いつの間にか胸を露わにしていたウエイトレスが、私と同じように自分の胸を掴み、
胸の先端を私の胸の先端にこすりつけてきた。
「あん、乳首いい……」
元々、スキュラの衣装は私が実用的よりは奉仕用にデザインした物。
衣装を脱ぐことなく胸を出せるようにしていたのだが
胸だけを露出したウエイトレスの格好が、これほど素敵に見えるとは思ってもいなかった。
怪しく美しいウエイトレスは、ふくよかな胸を押しつけたり軽く擦らせたりと変化を付け
互いの胸から伝わる快楽を楽しんでいる。
「あっ! そこ……あん! もっと、舐めて……」
秘所は脚だけでなく、蛇の頭も参戦してきた。
充血し突起した、最も敏感な部分を中心に、チロチロと蛇が私の秘所を舐めている。
脚先は秘所の中へと、まるで男根のように突き入れられ、激しく出し入れが繰り返されている。
脚に付いた吸盤が男根の「かり」のように、動くたびに中を刺激していく。
ビリビリと、激しい快楽が下から上へと突き抜ける。
他の蛇は、私とウエイトレスの胸を横から舐めている。これもまた心地良い。
403某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:20:22 ID:mx3XtYOU
「もっと、もっと感じてくださいませお客様……ん、くちゅ、あはぁ……んっ」
紅潮した顔。ウエイトレスの興奮も頂点に達しそうな勢い。
「んっ!」
不意に、ぐっと引き寄せられる。
残ったウエイトレスの脚が私を抱きしめている。
私も腕をウエイトレスの背中に回し、力を込める。
押しつぶされた胸。圧迫され少し息苦しいが、それすらも快楽に感じている。
もう言葉は入らない。
唇と舌がピチャピチャと、私の秘所と蛇の舌がクチュクチュと
エロティックなメロディーを奏で、私達の脳を悦楽で満たしていく。
もう、快楽の二文字しか感じない。全身がそれだけを求め感じている。
「んっ、はふっ、んっ……ん! ふぁっ、も、もう……いく……で、出ちゃう!」
「いって、いって下さいませお客……さま、んっ! 私も、いく、いきま、あはっ!」
跳ねる。二人の全身が、大きな快楽の波にのまれ跳ねる。
男が精子をまき散らすように、私はお尻から大量の糸をまき散らし、
久しぶりの頂点へと達していた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
404某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:20:53 ID:mx3XtYOU
「なんだか……ゴメンね」
私は久しぶりに、素直な謝罪を口にした。
「え? 何がですか?」
謝られる理由が思い当たらない彼女は聞き返したが、私はそれに答えなかった。
「はぁ……おかげでスッキリしたわ」
晴れやかな気持ちで、私は語りかけた。彼女は満面の笑みで返す。
「ちょっとご無沙汰だったからねぇ……これで「仕事の方の」作業も進めそうだわ」
滞っていた仕事も、やっと進められそうだ。
待たせてしまっている彼女の為にも、また頑張って仕上げなければ。
今頼まれている衣装は……エプロンドレス。
普段着と化しているスキュラのメイド服。その二着目というところだが
使い方は色々。エプロンだけを着て「裸エプロン」も出来る。
その時は「あなた」なんて呼びながら楽しむのだろうか?
その様子をふと思い浮かべて……私はまた、軽く嫉妬してしまうのを無理矢理押さえ込んだ。
「アルケニーさんも、して貰えばいいのに」
私の心を見透かしたのか、スキュラが突然言い出した。
「しっ、して貰えばって……誰に、何を……」
あっさりと動揺を始めた私に、スキュラは笑顔で諭すよう語りかけてきた。
「あの人なら、頼まれて嫌とはいわないと思うよ?」
そうだろう。あの男なら喜んで相手をしてくれると思う。
だが……それが言えないから私は苦労し苦悩している。
私は普段、あの男の服を作る時だけ、
「寸法を測り直す」事を名目に相手をして貰っている。
素直に、抱いて欲しいとは、言えない。
私はあの男を意識すればする程、言えなくなっている。
そんな自分の性格が……本当に嫌だ。
「そうだ! これからは、アルケニーさんも私の相手をしてよ。
その分、私の代わりにアルケニーさんがあの人に相手してもらうといいよ」
唐突な提案に、私は戸惑った。
405某880 行為と好意〜スキュラ×アルケニー〜:2005/05/26(木) 00:21:30 ID:mx3XtYOU
「えっ、いや、でも……」
正直、これほどありがたい提案はない。
あいつともそうだが、スキュラにも相手をして貰えるなら、これほど嬉しい事はないから。
私達には、同性同士での「行為」にあまり抵抗はない。
人間のモラルがない……というのもあるが
そもそも「異教徒」の唱えるモラルに耳を貸す気はない。
故に、スキュラの提案は抱きしめたくなる程嬉しいのだが……。
「気を使わなくても良いわよ。私なら大丈夫だから……」
強がりもほどほどにしなさいよ。私は心中で自分に激怒した。
そんな私を、スキュラはただにっこりと微笑み見つめる。
「あは、相変わらずだよねぇ〜」
見透かされている。
私が彼女の性格を良く知っていると同時に、彼女も私の性格を良く知っている。
思えば、彼女が部屋に訪れた時から察していたのだろう。
「作業」も勘違いしていたわけではなく、そう思わせる「気遣い」なのだ。
「……人づてにお願いするのも格好悪いわよ。私から……言うから」
何時でも、背中を押してくれたのは彼女だった。
気が強く素直でない私の手を、いつも引っ張ってくれたのは彼女だ。
「……ありがとう」
頬に軽くキス。二人して照れ笑い。
自分の性格は嫌いだが、そんな私を嫌わず付き合ってくれる彼女が、私は大好きだ。
406名無しさん@ピンキー:2005/05/26(木) 00:29:06 ID:w0rjRRua
初めてリアルタイムで見たーーーーー!!!
強がる蜘蛛タンハアハア
それを見透かして絡むスキュラタンハアハア
この調子だと漏れ近いうちにリアルで萌え死ぬかも
407某880:2005/05/26(木) 00:29:37 ID:mx3XtYOU
以上です。

今回は、>359=9-128さんが書かれた
「古代ギリシアでは少年愛が大流行していました」というのを見て
「ならレズ物もあり?」と、今回の話を思いつきました。
レズ物自体書くのが初めてでしたので、ちょっと悩みましたが
ハァハァして頂ければ幸い。

>366さん
ショボーンさせてしまって申し訳ありません。
自分は逆に、アンティテーゼだのなんだのと、
「エロ以外」の要素を自分なりに入れていかないと書けないんですよ。
ちょっと自分語りが過ぎましたね。反省してます。
408名無しさん@ピンキー:2005/05/26(木) 00:41:01 ID:F6o77kMM
なんか凄いのキタ━
素直になれないアルケニーさんがもう凄ぇ萌えるんですが

GJ
409名無しさん@ピンキー:2005/05/26(木) 23:57:42 ID:pXex134d
具体的にどんな有様なのか想像するとなかなか凄まじい物があるw
GJ!
410ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:32:44 ID:uVtgazf7
ベッド周りの薄緑色のカーテンを締め切り、膝を抱えたままで待つ。
現状を認識したくなかった。あたり一面水浸しでなにをしたら良いのかわからない、そんなのは厭だった。
だから閉じこもって待つことにした。警察なり救助なり送り出した腐れ縁なりを。
目を閉じたまま、全身を耳にして、待つ。
水音が、ほら、近づいてくる。
よくよく考えてみたら、アイツはそう、悪くない男といえるかもしれない。
こちらに向かって、近づいてくる。
目の前でへたり込まれるなんて言語道断だが、逆切れして暴れ回るような奴はもっとゴメンだ。
ガラリとドアを開けて、ざばり、ざばり、と。
その点アイツは一緒に居て気安いし、こんなときでも冷静だった。
そのまま待つ。「わり、遅くなった」とか、そういう言葉を。
そうしてくれら、その、もっとこう、「そういう関係」を目指してみるのもいいかもしれない。
たとえ時間がかかっても、前向きに走り続けるのは、嫌いじゃない。

耳が痛くなるほどの、無音。

「ねえ・・・アンタなんでしょう。何とか言いなさいよ・・・」
とうとう、こちらから声をかけてしまった。計画変更だ。
411ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:33:24 ID:uVtgazf7
「いつまで黙ってるの?もう、趣味悪いわよ」
怯えと強がりの混じった、オンナノコ独特の声色。男なら反応せずには居られない(はず)。
「・・・怒鳴ったりして、当り散らしたりしてゴメンなさい」
不安が混じり、しおらしさが増えてゆく。保護欲をそそるはずだ(多分)。
「もう!いいかげんにしてよ!そろそろ怒るわよ!」
膨れ上がる不安は、背筋の寒くなるような得体の知れない恐怖と混じり、怒りという形で吹き出した。
「それになんだか臭いし!一体どうしたって言うのよ!」
シャッ
カーテンレールの音高く、似亜はヒキコモリを中断した。

魚が立っていた。

どこを見ているとも付かない白濁した眼球、のしかかってくるような膨大な体積と鱗、人間にはありえない水掻きと尻尾、そして鼻の曲がるような悪臭!
悪夢のような異形に似亜の思考はいったん止まり、次の瞬間猛烈な悲鳴の形で吹き出そうとしていた。
「ひっ・・・ぃやぁぁああふぐうぅっ」
だが、それすらも許されなかった。鞭のように伸びてきた半魚人の手が顔に絡み付いてきたのだ。
鼻と口をべったりと被う、水掻きのついた手。湿っぽく、ヌルヌルする、生臭い物体。
「んーっ、んんーっ」
恐怖と嫌悪が爆発的に膨れ上がる。それは似亜の正気を奪うのには十分すぎた。
(タスケテ・・・)
ベッドの上で魚に半ばのしかかられながら涙と共にこぼした呟き。ただそれだけを名残としながら、似亜の意識は闇へと堕ちていった。
412ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:33:58 ID:uVtgazf7
気絶した少女を無造作に担ぎ、半魚人はのそのそと保健室を後にする。開け放した扉から水音が遠ざかるのと入れ違いになるかのように、
別の足音が近づいてきた。

「ここに一人女がいる・・・ハズ」
「夏箕の恋人?やるぅ」
「そんなんじゃない、ただの腐れ縁。ヒス起こすは頭ぶん回すわ人使い荒いわ、ロクなモンじゃないよ。・・・嫌いじゃないけどね」
「・・・ふぅん」
413ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:35:47 ID:uVtgazf7
ぎりっ
思ったよりも大きな音がした。
無人の保健室に入った時、「トイレにでも行ったんだな」と思った。
待っていればふらっと似亜が戻ってきて「何してたのよ遅いじゃないのて言うかその子誰よ隅に置けないじゃないのくききー」とか言って、
また頭をぶん回してくるものだと思いたかった。
だから音色が乱れたベッドを調べるのもできれば止めたかった。だってトイレに行っただけなのだから。待っていればひょっこり帰ってくるはずだから。
「なつみ」と声をかけながら差し出された、シーツをなぞっていた指を確かめたくなかった。

信じられないぐらい大きな鱗が、薄明かりの中で輝いていた

ぎりりっ
歯軋りの音は、思っていたよりも不快で強い音だった。
そう、現実は幻想よりも確かだったのだ。
414ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:36:19 ID:uVtgazf7
「ちょっとなつみ!ドコに行くの?」
「手を離してくれ」
「ダメだよっ、目が据わってるよっあぶないよっ」
身を翻して出口へ向かう夏箕に音色が後ろからしがみつく。両手をしっかりと夏箕の胴に回し、抱きつくようにしてひきとめる。
ぎゅっと力の入った腕とからだがなんともいじらしい。柔らかな感触と少女の体臭が夏箕を包んだ。
だが、夏箕はそんなことには一切頓着せず、音色を引き剥がしに掛かる。
「俺はアイツに『なんとかしろ』って頼まれてるんだよ」
「むりだよっ、殺されちゃうよっ、なつみボクに助けられたとき何にもできなかったの忘れたの?」
引き剥がされまいとする少女の必死の問いにしばし動きを止め、
「世話になったな」
「ヒトのはなしを聞いてよぉ〜」
ぎゅうぎゅう
力比べが再び開始される。
「サカナより鈍くて弱くて何にも知らないなつみに出来ることなんてないよっ」
「やってみないとわからない」
「ぐたいてきにどうするのさ〜」
「なんとかする」
「ちっともぐたいてきじゃない!」
「どうにかする」
「いいから落ち着いてよぅ」
「俺は正気だ」
「落ち着けって言ってるの!」
ばしゃばしゃと飛沫を跳ね上げ、揉みあうう二人。体格的には夏箕が勝っているようだが、音色もしっかりとしがみついて離れない。
「落ち着いてるさ。俺は勝手に行く、音色は儀式をとめる。契約は解消ってことで、文句ないだろ」
「・・・なつみ、ボクをあてにしてるんじゃないの?」
「なんでそんなことができるんだ?」
415ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:36:54 ID:uVtgazf7
硬直する音色に夏箕は本気で不思議そうに続ける。
「音色は『儀式を止めに来た』んだろ?俺を助けたのはあくまでついででさ。
わかってる、俺にだって恥ってモノはある。『俺は弱いんだから強いお前が助けてくれるのは当然だろう』なんて身勝手な理由で、
音色の『やらなきゃいけないこと』を邪魔したりはしないから。だから安心してくれ」
助けて欲しいのはまぎれもない事実。でも、わがままな理不尽は恥。するのも、されるのも嫌だ。
良くも悪くも楠木夏箕は一人で居ることに慣れすぎていた。
「おまえから搾取なんてしないよ。いのちの恩人に対してそんなかっこ悪いことできるか」
音色の手をするりと振りほどく。浮かべた笑みは、どこか殉教者の透明さを持っていた。
「音色俺より強いから、一人でも大丈夫だろ」
じゃ、ありがとな。と歩き出す夏箕。音色はひとり、うつむいて身を震わせていた。
きゅっと握り締められたこぶしが、ぶるぶると力強く握り締められる。
「なつみの・・・なつみの・・・」
ざばざばと遠ざかる足音に向かい「それ」が解き放たれた。
「夏箕のバカァ―――ッ!!」

ひゅごう、という音と共に背後から猛烈な風が吹き付けてきて、それと同時に背中に固まりが勢い良くぶつかってきて、
足が地面から離れて、みるみるうちに身体が高みへと持ち上げられて、長いのか短いのかわからない一瞬が過ぎた後、

とん

地に足が着いた音で、俺は正気に戻った。
416ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:37:29 ID:uVtgazf7
地に足が着いた音?気が付くと足元に水がない。あたりを見回すと、やっぱり薄暗い校舎の中で、階段のそばだった。
「・・・南校舎二階?」
保健室に居たはずなのに、一瞬で移動している。ふと風を感じて、踊り場の明かり取り窓を見た。

窓ガラスが割れている。

いや、「われている」というのは正しくないかもしれない。より正確には「ガラス切りでも使ったかのようにきれいにくり抜かれている」
というべきだろうか。直感的に、自分はそこから入ってきたのが理解できた。
高速移動時、物体の強度は速度に比例して高まる。空手家がビール瓶を手刀で切ったりできるのはそのためだ。達人は拳でビンの側面を削いだりもできるらしい。
しかし、羽目殺しで分厚い明かり取り窓のガラスを、ああもきれいにくり抜くとは、一体何がどれぐらいの速度でぶつかったのだろうか。
驚きから醒めたとき、初めて背後から漂う「冷気」に気が付いた。それとヒュウゥゥ・・・と低く響くナニカが吹き出す音にも。
「・・・夏箕・・・」
聞き慣れ始めたはずの声は、別物のように無機的だった。

音色は宙に浮いていた。床から離れたつま先はすっと下を向いている。そこからニーソックス、スカート、ブレザー、胸の前で組まれた腕へと
視線を移していったときに、とうとう「それ」が視界に入った。



片翼だけで音色の身長と同じぐらいありそうな大きな羽は、
まるで夜のように漆黒で、蝙蝠の皮膜のように滑らかで、金属のよう艶やかだった。
その翼をはためかせる事なく、彼女はふわふわと宙に浮いている。
よく見ると、スカートの後ろ側がはたはたと翻っていた。どうやら背中側に何かを噴射する機構があるらしい。さっきから聞こえる音はそのせいか。
そこまで考えたときに、冷気が一段と強まった。ゾクリ、と身体が震える。
417ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:38:35 ID:uVtgazf7
「夏箕、君は少し大切なことを忘れてしまったようだから、こういう手段をとらせてもらったよ」
こちらを見据える視線はまるでプラスチックのようだった。
語る言葉も、また、固い。
「重ねて言うが、君は無力な一般人に過ぎない。身の程をわきまえることだ」
大上段から切って捨てるような言葉。
正しいのはわかるが、反発心が湧き出すのを止められなかった。
「だからほっとけっていったんだろう、足を引っ張るつもりは無いって!」
「・・・君は本当に律儀な奴だな」
「自分がやられていやなことはしない。基本だろ」
「そして、視野狭窄で直情だ」
「なっ」
再び切って捨てるような断言。一瞬の空白を突いて音色は言葉を継ぎ足す。
「馴れ合わず、馴れ合わせない。無力な一般人には見上げた心意気だが、君の行動には矛盾がある。
思い出してみろ、何故君は一人で僕と出会ったんだ?
これは『ヒス起こすは頭ぶん回すわ人使い荒いわ』からの予測なのだが、君は、君の追いたい相手に、すでに迷惑を掛けられているのではないかな?
正直、君が命を賭けるには、いささか不足気味な相手だと思うのだが」
淡々と語られる言葉は、やはり理性的だった。
だから聞き分けのない頭は強く反発した。
「不足かどうかは俺が決める、アイツは俺のダチで、俺が助けたいから助けるんだ。パッと出のお前が理屈だけで人を測るなッ」
大上段の一刀を、鼻白むほどの語気で薙ぎ払う。
理性と感情に基づく「取り付く島のない態度」がぶつかり合った。
だというのに、プラスチックはうっすらと微笑んだ。
「まず第一に、君は自分の価値というものを正確に把握していない。
この学校は現在、不謹慎な言い方をするならば『ゲーム板』なのだよ。僕と敵・・・まだ見ぬ儀式執行者の戦う、ね」
418ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:46:34 ID:uVtgazf7
そこで気付いてしまった。
プラスチックからスティールへと硬度を増した声は容赦なく突き刺さる。
「戦いにおいて勝敗を決定付けるものは実は戦力ではない。互いの打ち筋、属性、目的といったモノを知ること、そう情報だよ。
君は僕を知ってしまっている。敵から見たら垂涎のポイントアイテムだろうね。
・・・ああ、拷問なんて回りくどいことはしないさ。頭を引き千切り、脳髄を掻き出し、情報を吸い出すぐらい、『僕達』には朝飯前だ」
自身のウィークポイントを平然とさらすプレイヤーはいない。真剣勝負ならなおさらだ。
畜生、何が「音色の『やらなきゃいけないこと』を邪魔したりはしない」だ。俺の普通は戦場の愚行、音色の足枷になってるじゃないか。
うなだれる俺を見て、音色は笑みを深くした。
そして、ふよふよと近づいてくる。
「第二に、君の論法が僕にも適用できる、という事だ。
確認しよう『馴れ合わず、馴れ合わせない。だが、当事者の意思は何よりも優先される』
・・・つまりはそういうことだよ」
ばしゅっ、と噴音が止み、音色はたんっと舞い降りた。しゅるしゅると翼が小さな背中に吸い込まれてゆく。
「なつみは、そのコに死んで欲しくないんだよね。だから無茶なことしようとしてる。
おんなじようにね、ボクもなつみに死んで欲しくないんだよ。
真剣なのはわかるけどさ、もっと広い目で見て欲しいよ」
鉄声は解けて柔らかくなった。
なのに、より一層深く心に食い込む。
目頭が熱くなり、視界がぼやけた。
それを誤魔化すように、目を閉じて深呼吸する。今の今まで身体ががちがちに強張っていたのが感じられた。
419ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:47:13 ID:uVtgazf7
「音色・・・」
「いても立っても居られないのはわかったから、さ、ちょっと落ち着いて、できること考えよう。
やりたいことだけじゃなく、やんなきゃいけないこととか、あと、いちばんうまく行くやりかたとかも、ね」
ぽんぽん、と小さな手が髪を叩くのがわかる。慰めるような、優しい手つき。
だというのに感触がプルプルと震えているのは、もしや身長差のせいだろうか。
背伸びをするぐらいなら、浮いたままでいればよかったのに。
「わり・・・俺、どうかしてた・・・」
「立て続けにイロイロあったからね。
座ろうか、そこ、階段だし」
自分よりはるかにちびっこい女の子に手をひかれて歩く。みじめではある、だが、それにも増して嬉しかった。
420ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:47:47 ID:uVtgazf7
足元の水をかき分け掻き分け歩き続けるのは、実は結構堪えていたようだ。座ると同時に足が熱を持って痺れだした。
ため息を吐いてヤレヤレと首を振ったところで、目の前に白い円筒がにゅっと突き出される。
「はい、どうぞ」
高原3.6牛乳と書かれたビンは、よく冷えていた。
「あぁ、ありがと。しかしいろんなものが出てくるよな」
「そなえあれば憂いなし、ってね。あんパンとクリームパン、どっちがいい?」
リュックから出したビニール袋をがさがさいわせながら、音色はにっこり笑った。
フタをはずし、ぐっと一気に牛乳をあおると、乾いた喉を心地良く滑り降りる。
そこでついでに空腹感が刺激され、ビニールを破っては、もらったパンにかぶりついた。
つぶあんだった。程よい甘みが口の中に広がる。
こういうのを、人心地がつく、というのがろうか。もぐもぐやっているうちにしだいに気分が落ち着いてきた。
左半身が、あたたかい。
音色は俺にぴったりと寄り添っていた。
膝の上に食べかけのパンを置いて、両手で持った牛乳瓶をんくんくあおる様は、びっくりするほどあどけない。
高めの体温が、触れ合った肩を通して伝わってくる。それがなんだかくすぐったい。
なぜか鼓動が早くなるのを感じながら、そんな音色を眺める。
彼女が、ふと、こちらを向いた。
「おいしーね、牛乳」
「ああ、そだな。ちょっと何か食べるだけでも、落ち着くもんなんだな」
えへーっと微笑む音色に笑い返しながらも、内心ざわつくものがあった。
421ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:48:21 ID:uVtgazf7
無力である事とは、こんなにも悔しいことなのだろうか。我知らずビンを握る手に力が入る。
助けられ、たしなめられ、慰められる。全部「してもらう」事ばっかりだ。
何も超能力を発揮して音色のピンチを颯爽と救えたら、とか高望みはしない。
でも、「あせったら深呼吸」とか「疲れたら休憩」「微笑みかけてリラックスしてもらう」なんて、何も特別なことじゃないはず。
なのに、そんな当たり前のことすらも一人ではできない。
惨めだった。音色の手助けをしたいのに、負担にしかなっていない自分がたまらなく嫌だった。
不感症返上だな。その陰口は良い意味ではないことぐらいわかっていた。だが、それは冷静さというものと表裏一体だと思っていた。
なのにこのザマだ。
頭に血が上れば暴走、落ち着いたら自虐。全く持って度し難いよ自分。
拳を握り締める。筋肉の震えは音色にも伝わってしまいそうだ。それでも止められない。
その時、
「ねえなつみ、もしかして、はやとちりしてない?」
隣の音色が声をかけてきた。
422ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:48:54 ID:uVtgazf7
「キミ今さ、『こんな役立たずの俺を助けてくれたくーるでびゅーてぃーな音色ちゃんの足手まといになんてなりたくない』ってヘコんでるでしょ」
「クールかどうかはおいとくとして、まあ、そうだ」
「あのさ、親切心だけで人助けするほど、ボク暇じゃないの」
すっと目を細めながら、音色は言葉を紡ぐ。少しだけ、浮いていたときの雰囲気に近い。
「そもそもキミを助けたのだって、助けたいと思ったからだけじゃない。ボクの計画に必要だったからだよ。さもなきゃ無視してたもん。
利益と意思がそろったから、ボクはなつみを助けたの。
何して欲しいのか今はわからないだろうし、やってもらうことだって夏箕だけにできることでもない。
でも、それはボクに絶対必要なことで、できれば、夏箕にしてもらうのがいいと思ってる。
いずれきっちりはたらいてもらうから、今は出番を待っててよ」
という、ある意味エゴイズムむき出しな言葉がこのときは嬉しかった。
「なあ、俺はなにをしたらいいんだ。はっきり教えてくれ、どうやって、お前の役に立てば良い?」
真剣な目をして、音色をじっと見つめる。するとなぜかプイっとあさっての方を向いてしまい、
「そ、その時がくれば、わかるよ、うん、絶対、イヤでも」
「だから、それを今教えて欲しいんだ」
「ああああのね、黙ってるのも、さ、作戦の一環なの。だっだから、この話はこれでおしまい!ね!」
どもりながらわかったようなわからないような説明をする。横顔が赤かった。そのまま心持ちこちらに体重をかけて、
「おねがい、いまは聞かないで・・・」
そう、小さな声で付け加えた。
卑怯だ。説明にも何にもなっていない。
なっていないのに、そんなしおらしい態度を取られたら、追求できないじゃないか。あと、寄りかかるのも反則だ。
やわらかな重みを支えるように、こちらも音色に身をもたせかける。
「わかった。今は聞かない。・・・さんきゅ、音色」
「・・・お礼を言うのはボクの方だよ」
「でも、さんきゅ」
「・・・うん」
互いの身体を支えあいながら、そのまま黙って残りの食事を終わらせた。
具体性も明言もない、もしかしたら互いの解釈の仕方すらずれているのかもしれないやり取り。それでも何かがしっかり通じ合ったことだけは間違いない。
その確信だけは、揺るがなかった。
423ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:49:52 ID:uVtgazf7
「で、これからどうする?」
休憩がおわり、立ち上がって何気ないそぶりで方針を確認する。浮付いたりヘコんだりして随分かかったが、ようやく「俺らしく」話せるようになれた。
「んっとねぇ、残りの生存者を確認したいねー。空振りを避ける方針で」
音色も「音色らしく」応じる。おゆるい口調で、これまた何気なく語る。
その態度から、状況を察することにした。
―これがいわゆる「対戦ゲーム」なのだとしたら、こちらの打った最初の一手は、相手に妨害されてしまったことになる。
詳しいことはわからないが、ポイントフラッグはおそらく人間(どう使うのかはさっぱりわからないが)。
だが、ポイント差はつけられたとしても、まだ負けてしまったわけではない、はず。
「空振りを避ける」という事は、手堅く守りながら戦況を把握し、逆転のチャンスを狙うということか。
で、一階を水没させたこと、魚の形をしていたことから考えると、敵はおそらく水に近いところから制圧する、と思われる。だとすると―
「二階から上へ向かう形で捜索するんだな」
「せいかい♪うん、きちんと『着いて』きてるね。えらいえらい」
そう言って音色はすたすた歩き出した。その後に続く。

大事な何かを切り捨ててしまったのは間違いない。でも、もっと大事にしたいものができたんだから仕方が無い。
選択はあくまで自分の意思で。かすかな罪悪感は、その決意で埋めるした
424ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:50:27 ID:uVtgazf7
「なんだろーね、これ?」
「氷?じゃ、ないよなあ」
二人は南校舎(下棒)連結校舎(縦棒)北校舎(上棒)と「コ」の字の二階部分を探索し終わる。夏箕が廊下に残って周囲を見張り、音色が教室を一部屋一部屋、教卓の下から掃除ロッカーの中までチェックする。
だが、人も魚も見当たらなかった。
そのまま北校舎の端の階段で三階に登った時、階段が途切れていた。
校舎は四階建てである。南北校舎の端の小階段二つと、連結校舎の大階段、共に十段、踊り場、十段という構成になっている。
三階と四階を繋ぐ階段の、踊り場の半分と上の十段を、不透明で灰色なガラス状の物体が塞いでいた。
直線で構成された多面体であるそれは、音色がおそるおそる叩いた所コツコツと硬い音がした。内側に空洞があるような響きは無い。
「不純物の多い水晶、みたいだね」
「水晶?」
うなずく音色の顔色は優れない。
「氷だったらまだわかるんだけど、水晶って珪素だよ、水とは関係ない。ということは」
「魚がやったんじゃない、ってことか」
再度うなずく。音色は両手と額を水晶に押し付けて目を閉じると、そのままじっと動かなくなった。
そのまま待つこと一分弱、難しい顔で音色は目を開いた。
「『ボクたち』の気配は感じないよ。コレを作ったのは人間みたい、なかなかやるね」
「にんげん?」
「いわゆる超能力者っていうやつ。バリケードのつもりだろうね」
「じゃあ、味方かな?」
断言しないあたり、夏箕もわかっているようだ。
「正直、微妙」
「人間じゃないから?」
「人間じゃないから」
魚が魔物なら音色だってしっかり人外だ。まとめて敵視されてもおかしくは無い。
425ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:51:07 ID:uVtgazf7
「話せばわかる、かなあ?『敵の敵は味方』って言って説得する」
「問答無用で襲われるかも」
「いや、大丈夫だろ。話し合いに行くのは俺だし」
「なつみ?」
ぎょっとしたように音色は顔を上げる。
「俺っていわゆる『普通の人』なわけだろ。ただの人を保護してくれたいい人外さんです、って感じで説得してみる」
「でも、バケモノに魅入られたか、とか言われて殺されちゃうかも・・・」
平然とした夏箕と比べ、音色の顔色はひたすらに優れない。
その顔色が、夏箕に確信を抱かせた。
「音色、ほんとはもう、わかってんだろ」
「でも、でもっ」
―何も「四階の誰か」と絶対に接触しなければいけない、と決められているわけではない。上にいるのが「儀式執行者」では無いことがわかっている以上、
無視するという選択肢も当然あるのだ。だが、それは戦術的には下策となる。
もしも二者がすでに同盟関係にあった場合(まあ、バリケードを作っているわけだから確率は低いが)挟み撃ちにされるのは目に見えているし、
そうで無い場合でも儀式執行者との戦闘中に乱入され、「魔物は殲滅」と漁夫の利を狙われる可能性もある。
また、こちらと一時的にでも同盟を結んでくれる相手ならば、勝利の確立を少しでも高くすることができる。
要するに、ここで四階の誰かと接触し、旗印を確認しておくことが音色には必須なのだ、というのが夏箕の読みである―
「確かにそれってボクには必要なことだよ、でも、でもさ、ボクがしんじゃったとしても、敵がいなくなればなつみはたすかるわけなんだから無理に危険なことしなむぎゅっ」
鼻をつままれた。親指と人差し指で、こう、むぎゅっと。
426ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:51:39 ID:uVtgazf7
「お前もわかんないやつだなぁ」
「むぐーむぐー」
そのまま腕を左右に振る夏箕。いい様に振り回される音色。
「俺はもうお前に協力するって決めたの。だからお前の負けは俺の負け」
「はふひ(なつみ)・・・」
「俺が四階の確認に行くことはお前の損にならない。これは間違いないよな」
「・・・うん」
「なら行かせてくれ。ちっとぐらい、かっこつけさせてくれよ」
「はな、はなひて〜(鼻、離して)」
指の下から現われた鼻は、真っ赤になっていた。それを擦りながら、音色は搾り出すようにしてようやく答えた。
「・・・わかった、説得、お願いするね」
「ああ、任せとけって」
「でも、ボクもついてく。なつみ盗られちゃったらほんとに最悪の事態になっちゃうから、それだけは避けないと」
そういって音色はぎゅっと夏箕に抱きついた。そのままぐすぐすとぐずり出す。
「ゴメン、ゴメンね・・・」
「なに言ってるんだよ。いいんだよ、ちょっとぐらい手助けさせろよ」
「ゴメンよぅ」
「だ〜から、謝んなくってもいいって」
さっきのお返しのようにぽんぽんと頭を撫でる夏箕。それでも泣き止まない音色。「時間がもったいないから、このまま行って」とか言われて「いやハズいだろそれは」と切り返すも、
音色はくっついて離れない。仕方が無いのでそのまま抱き寄せるようにして歩き出す夏箕。
交渉に行くのなら、進入禁止の結界をこじ開けるより、正面からお邪魔するべきである。というか、開けられる(かもしれない)ヒトがこの有様ではどうしようもできない。
427ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:52:17 ID:uVtgazf7
ようやく、ちょっとだけでも恩を返せるかもしれない。そう思うと楠木夏箕は少しだけ、自分に誇らしさを抱くことができた。
・・・たとえ人外でも、心配性で泣き虫なお前を、俺が守ってやる。だから、そんなに泣かないでくれよ。
気恥ずかしさもあった、でも、その思いは少年に力を与えている。それだけで夏箕には十分だった。
だから、音色の自責の理由を深く追求する気にはならなかった。

校舎を半周して中央階段に向かう間に、音色はようやく顔を上げた。駄々っ子のような振る舞いを恥じたのか、照れた様にわらう。それでも、しっかりと夏箕の左腕を抱きかかえて離そうとはしなかった。
夏箕は精一杯耳を澄まし、気を張り詰めて階下から魚が上がって来やしないかと警戒する。それでも伝わってくるのは、傍らの少女のぬくもりばかりだった。
こんなときに俺は一体なにやってるんだ、でも音色あったかいよなあ、イヤだからそれどころじゃないって以下繰り返しを心の中で延々と繰り返してきた夏箕は、会談を行う階段に来た、というしょうも無い駄洒落を思い浮かべ、その際の失笑をきっかけに意識を切り替えた。
「ほら音色、ここから上に上がれそうだから、な」
「うん、なつみ、気をつけて」
「イヤだから、ちょ〜っと腕組むの、やめにしない?」
「ダメ!この体勢がいちばん安全なの!いざとなったら飛んで逃げるのに!」
音色は一切妥協しない。あきらめたように階段を上り、踊り場に着く。目を凝らしてみても水晶のバリケードは無い。そのまま視線を四階に向けると、
「で、いちゃつくのはもう気が済んだのか?」
あきれた様子でこちらを見下ろす長身の女がいた。
428ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:53:15 ID:uVtgazf7
学校指定の上履き、白い膝下丈のソックス、長めのスカート、制服のブレザー、そして豊かに盛り上がった胸・・・

ちら

ふと傍らを見やる。密着しているからはっきりとわかる。嫌が上でもわかる。ひとこと、ペタい。
「どこ見てるのカナ、ナ・ツ・ミ・ク・ン」
音色の声と笑顔が剣呑な色合いを帯びる。例の「冷気」とは別の薄ら寒い空気が漂いだした。
瞬間、吸い込む空気に細かいガラス片でも混じっているかのように喉がぴりぴりと痛んだ。
「いやその、そう、名札名札!例の超能力者が知ってる顔なら説得しやすいと思って!」
「ちら、ってなに?」
しどろもどろの言い訳にも耳をかさない。
「いやその、そういえばお前と出会った時も名札確認したなあって思って!」
「ちら、ってなに?」
まさに取り付く島も無い。
「だからほら、その・・・」
「何?」
「ゴメンナサイ」
ようやくけりがついたようだ。もっとも、音色はふくれっ面のままだったが。
「で、漫才はもういいのか」
長い黒髪を自然に背中へと流した階上の女は、やや疲れたように二人を見下ろした。
どうやら話を聞いてくれる気になったようだ。ここからが正念場と、夏箕は気を入れる。
「向こうの階段に結界を張った人と話がしたい、取り次いでくれ」
「内容は?」
「魚とそのボスを絞める為に手を組みたい」
「・・・詳しい話を聞かせてもらおうか、上がって来い」
女はそういうと身を翻した。まずは手ごたえあり、といったところだろうか。
429ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:53:57 ID:uVtgazf7
「やったぞ音色、『ちょっとした冗談で雰囲気を和ませよう大作戦』成功だっ」
「さ・く・せ・ん?」
「だから、こっちは得体の知れないバケモノじゃなくって、泣きもすれば笑いもする感情豊かな人間と変わらない生物だってアピールしたんだよ。胸を使って」
「・・・すっごく気にしてたのに・・・ボクだって好きでこんなちっちゃな胸してるんじゃないのに・・・」
「へ?」
「『手間の都合だ、いーからはよ行け』とか言われて追っ払われるみたいに派遣されて、すっごく気にしてたのに・・・」
雲行きが怪しくなってきた。
「アノー、ネイロサン、モシカシテ、オレニ合ワセテクレタンジャナクッテ・・・マジ?」
「気にしてたのに気にしてたのに」
「ま、まあ、些細なことだ、そんなこと気にするなよ」
「些細?そんなこと!?」
声のトーンが一気に跳ね上がる。
「どうした?来ないのか?」
「御免、五分待ってくれ!」
「気にしてたのに気にしてたのに気にしてたのに」
「いやその、有効な手段だと思ったんだよ。コンプレックスが有るっていかにも人間っぽいじゃん」
あわてて階上に声をかけ、必死に音色をなだめる夏箕。
430ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:55:03 ID:uVtgazf7
「そりゃあボク背も低いし胸ちっちゃいし気にしてたのに(絶対失敗できないからなりふり構わずなんでも
やろうって必死に考えて)あげくのはてに牛乳だいすきってな振る舞いまでしちゃったからまるではやくお
っきくなりたい子供みたいで恥ずかしいなって気にしてたのに(音色と半魚人は違うんだってアピールする
にはどうしたら良いか精一杯考えたんだけど)あの後でちょっと後悔したんだけどでも牛乳飲むのはじめて
で気にしてたのに与えられた知識から予測していたのよりもっとずっと実際の体験は刺激的って言うか気に
してたのに(その結果音色の気持ちを踏みにじっちゃったのは考えが足りなかったって反省してる)口の中
一杯に広がる味と風味と喉越しがしゃべりすぎて疲れた喉に気持ちよかったんだもん気にしてたのに(俺は
命だけじゃなくて心とか気持ちとかそういうところも助けてくれた音色が好きになったんだけど)疲れるっ
てめんどくさくて嫌だなってはじめは思ってたけどいっしょにゴハン食べておいしいねって言える人が傍に
いてくれるなら悪くないって思ったけどその人にお前なんてどうでもいいよ的な扱いされたら嬉しくないに
決まってるよって気にしてたのに(好きな子傷つけちゃいけないよなほんとゴメンよ)今なんていったの」
431ほしをみるひと:2005/05/27(金) 08:55:44 ID:uVtgazf7
「ほんとゴメン」
(聞きたいのはそこじゃないのに!・・・でも恥ずかしくて聞き返せないよぅ)
お互い相手の話を聞かずに延々と自分の気持ちを語り続ける二人。結論はわりと近いところに落ち着いたはずなのに、肝心なところは何を言っているのか聞き取れなかったようだ。
その間夏箕は何度も謝りながら、頭を撫で(子ども扱いするな、的な目付きをされた)、肩を叩き(それだけ?とそっぽをむかれた)、
ええいそれならばと思い切って抱き寄せ(ちょっと機嫌を直し始めた)、そのまましばらく抱きしめたりと獅子奮迅の活躍を、音色が落ち着くまで繰り返したのだった。
「もういいよ。悪気は無いってわかったから、許すよ・・・ボクも大人気なかったし、契約で付き合ってるわけだしね」
ため息を吐きつつあきらめたように首を振る音色。意地を張るのがバカらしくなったようだ。
そんなあきらめたような態度は次の一瞬でぶった切られることになる。
「でもこういうのも、可愛いと思うぞ」
赤面。そのままそっと夏箕の手を握り、小さな声で呟く。
「知らなかったな。ボクってけっこう嫉妬深かったんだ・・・」
納得したように微笑む音色。だが、次の一瞬暗い影が顔をよぎり、俯いた後、どこか無理したように笑った。
「いこ。あのひとまってるよ」
そのまま手を引いて、夏箕の前に立って歩き出す。
今の顔を見られないように。
432なかがき 9-128:2005/05/27(金) 08:57:05 ID:uVtgazf7
まだエロシーンに手が届いて無いよ。足しかないジオングだよこれじゃあTT
あと、欝っぽい展開になりそう。

>>某880氏
 アルケニーさん再臨。「素直じゃない」系のひと大好きです。ツンデレラ!ツンデレラ〜!
あと「すきゅら」と名札がひらがなだったのがなぜかひどくツボでした。
氏の作品は読んでてほのぼのとできるのがうれしいところ。ゆっくりお茶とか飲みながら楽しんでます。

あと、例によって薀蓄ですが、
紀元前(ぐらいのころ、正確な年代はゴメンナサイ)地中海の「レスボス島」では、同性(特に女性同士)での結婚がばりばり合法だったので、「レズビアン」の語源になりました。
つまりレズ行為も、古代ギリシアではしっかり有りました、とゆーことで。
433名無しさん@ピンキー:2005/05/27(金) 13:57:55 ID:selzDFga
>432
何を言うか
古代エジプトには801ファン鼻血もののネタがあるぞ
詳しくは爆笑エジプト神話でググレ

…ああっ、石を投げないで!w
434名無しさん@ピンキー:2005/05/27(金) 23:16:52 ID:+7cKOXry
>>354
日本語勉強して出直して来い
435名無しさん@ピンキー:2005/05/28(土) 00:11:20 ID:b+WRl2Tl
>>354のは、きっとここに役に立つためのネタ振りじゃない?w
436名無しさん@ピンキー:2005/05/28(土) 00:14:38 ID:iGgLvgBa
未だに「誰かを叩かないとスレに参加できない人」がいるのは残念な限り
437432:2005/05/28(土) 07:49:32 ID:lVnO8aqL
>>433

…せいえきレタス?

しかしなんつーか、いやーんな会話だなw
438名無しさん@ピンキー:2005/05/28(土) 16:20:54 ID:/lejQ762
>>436
叩かれて当然の内容だからじゃないのか?
439名無しさん@ピンキー:2005/05/28(土) 19:36:10 ID:UWjGtjfa
イヤならスルーしる。
440名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 00:06:56 ID:Trl5+rpi
>>438
本当にお前が21歳並の社会性を身につけているならば、
そんな台詞は思っても口には出さなかっただろうな。

はっきり言うと、空気嫁。
441名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 00:14:16 ID:if6dSHU7
空気のように影が薄い、背後霊の嫁さん
442名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 12:21:39 ID:GQLCoHqz
>>某880氏
ヴィーヴルたんはまだでしょうか(´・ω・`)
443227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:15:23 ID:IRVnqG4d
>242の続き


「何だ、二人とも知らなかったのかい。まあ、それなら仕方ないか。
由奈くん……随分探したんだよ。さあ、こちらへ来たまえ……」
「……ゆ、夕那……は…」
ぽかんと口を開けたままの絹代と佳乃を見て、男は呆れたようにつぶやきながら、
夕那に向かって手を差し伸べる。その夕那は虚ろな目で、口元をパクパク動かしていた。
「ふ、ふざけないで。夕那ちゃんは……」
「幽霊だろう? そして君は、それを承知で由奈くんをこの世に留めていた、と。
……やれやれ、罪深いことだね。神に仕える巫女が、摂理に逆らう手助けとは、ね」
そのとき、夕那を支えていた美由樹が、キッと男を見据えながら抗議の声をあげたが、
男は平然とした顔で受け流し、軽く顔を横に向けて、ため息を漏らす。
「か、勝手なこと……い、痛っ!」
そんな男に向かって、美由樹は再び叫び声をあげるが傷口に響いたのか、
こめかみに手を当てながら、顔をうつむかせた。
「まったく………由奈くん。君はいつまでも、こんな場所にいるべきじゃないんだ。さあ……」
「いる……べき、場所……」
男は美由樹を一瞥したかと思うと、ふたたび夕那に向かって、悠然と語りかける。
反射的に顔をあげ、つぶやき声をあげる夕那。その目は依然として虚ろなままだ。
「そう、わたしが連れて行ってあげるよ。君が本当に、いるべき場所へ……」
「ゆ、夕那ちゃん!?」
夕那の独り言ともつぶやきとも言える言葉に、男は笑みを浮かべ、一歩足を踏み出した。
男の言葉に操られるかのように、夕那が美由樹から離れ、フラフラと足を歩き始めたそのとき――
444227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:16:23 ID:IRVnqG4d

「……ま、待て……」
「え、ええっ!?」
不意に、地面に倒れていた若い女が、蚊の鳴くような声とともに、夕那の足首を掴んだ。
その光景を見て、心臓が飛び上がらんばかりに驚いたのは、佳乃だった。
――な…なぜ彼女が!? た、確かに死んでいたはずなのに……!?――
「おや? まだ意識が残っていたのかい? まったく、丈夫なことだね」
「ああ、おかげさまで、ね。……ゆ、由奈、奴の言うことに、耳を貸すことなど、ないよ……。
あんたは……いや、あんたたちは、お互いを必要としている相手がいるん……だろ?」
「お互いを……必要?」
佳乃の驚きをよそに、男は呆れたように肩をすくめ、女に向かって声をかける。
女は男のほうを見もせずに軽く返事をし、夕那に向かって語りかけていた。
夕那の足がピタリと止まり、足首を掴んでいる女を、虚ろな目で見つめながらつぶやく。
「あ、ああ……。そ、それに……奴の本当の目的は、救われない魂の救済、なんかじゃあない。
魂を我が身に取り込むことによって、自分の力としているだけなのさ……そうだろう?」
445227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:16:54 ID:IRVnqG4d
「まあ、半分は合っているかな」
夕那が自分のほうを見ているのに気づいた女は、軽く笑みを浮かべたかと思うと、
視線を男に向けて、言葉を続けた。男は女の視線を軽く受け流し、悪びれる様子もなく、あっさりと頷く。
「私と一体になり、永遠の存在となる。それこそが魂の救済なのだよ。間違ってはいないだろう?」
「ほ……ほざけ。罪も無い連中の魂を取り込み続けて、生き続ける化け物、が……」
大きく両手を広げ、訥々と語る男に向かって、女は吐き捨てるようにつぶやき、唾を吐いた。
「化け物……か。その化け物の力によって、かろうじてこの世にとどまっているに過ぎない君が、
由奈くんを連れてきて欲しいという、わたしの頼みごとを果たせなかった上に、そんな口を利くとはね。
さすがに、そんな態度をとられて鷹揚に笑ってられるほど、わたしは寛大ではないのだよ?」
距離が離れていたため、実際に女の唾が男に掛かることはなかった。
男は口元にこそ笑みを浮かべていたが、段々低くなる声が、彼の今の不機嫌さを醸し出している。
そして、男が喋り終わるとほぼ同時に、男が現れてから微動だにしていなかった少女が動き出した。
いつの間にか手にしていた巨大な鎌を、地面に倒れている女へと振り下ろそうとして――
446227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:17:25 ID:IRVnqG4d

「ぐ、ぐああっ!」
ザクリという、肉が裂ける音とともに悲鳴が響き渡った。悲鳴の主は――佳乃だった。

美由樹は、呆然と立ち尽くす夕那を、じっと見つめていた。
絹代は、油断無く男を見据え、構えていた。
佳乃は、死んでいると思っていた女が口を開いたことに驚き、混乱しながらも女を見ていた。
ゆえに佳乃だけが、女を襲おうとしていた少女の姿が見えていた。
そして、佳乃は女を庇おうと、少女と女の間に割り込んだのだ。

「よ、佳乃っ!?」
「佳乃さんっ!?」
一瞬遅れて、悲鳴がしたほうを振り向いた絹代と美由樹は、
その場にゆっくりと崩れ落ちる佳乃を目にして、思わず叫び声をあげていた。
「佳乃さん!? しっかり、しっかりして!」
「き、貴様っ! よ、よくも佳乃をっ!」
「ん? 何を勘違いしているのだね? わたしは彼女を狙ったのだぞ?
君のお仲間が勝手にその前に、立ちはだかってきたのではないのかな?」
美由樹が佳乃を揺り動かし、懸命に声を掛けるが、佳乃はピクリとも動かない。
絹代はふたたび男のほうに向き直り、男をキッと睨みつけた。
だが男は、絹代の怒りのこもった視線を、肩をすくめながらあっさりと受け流し、ため息をつく。
「ふ……ふざけるなあっ!」
その言葉を耳にしたとき、絹代は文字通り、顔を真っ赤にさせながら、男に向かって飛びかかっていた。
絹代の拳が、男の顔面を捉えようとした次の瞬間――
447227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:17:57 ID:IRVnqG4d

「ぐ……っ、くう…は、離せえ……っ」
「ふうむ……。遅い、遅いよ、君……。まあ人間にしては、素早いかなと思うけれどね」
男はあっさりと、絹代の手首を捻り上げていた。
痛みに顔をしかめる絹代に、くちづけするほどに顔を近づけながら男はささやいた。
「わ……わらわは人間などではないわっ! …は、離さぬ、かっ!」
「ほほう、そうなのかい? それは……興味深いかもしれないね……」
男の手から逃れようともがきながら、絹代は男に向かって叫んだ。
絹代の言葉に、男は多少驚いた表情を見せ、空いている手をゆっくりと絹代の胸元へと潜り込ませた。
「なっ!? な…なに、を!?」
「何だ……人間じゃないとは言っても、こちらは見た目相応な大きさ、だねえ」
胸元をまさぐられる感触に、思わず声を上ずらせ、身悶えさせてしまう絹代。
男は手のひらで、絹代の胸全体を撫で回しながら、大げさにため息をつく。
「よ、余計な、お世、話じゃ……っ、あ……っ」
絹代はぱっと顔をあげながら男を睨みつけるが、声が途中で上ずってしまう。
男が人差し指を立てて、胸の頂を軽く擦りあげたのだ。
「うく……っ、…く…」
「さて。君ともっとお楽しみ、と行きたいところだが生憎と、
先ほども言ったとおり、わたしは由奈くんに用があるのでね」
絹代は、男がもたらす微妙な刺激に必死に耐えていたが、不意に男が絹代から手を離し、
さも残念そうな表情を見せながら、夕那のほうへと顔を向けた。
「ゆ、夕那ちゃん……」
「由奈……」
出血が止まらず意識を失ったままの、佳乃の傷口を必死に押さえつけながら、
膝枕をしていた美由樹と、地面に倒れ伏したままの女が、不安げな表情で夕那に声をかける。
「彼女たちに惑わされてはいけないよ、由奈くん。さあ……」
男は美由樹と女には目もくれずに、夕那に優しく声をかけた。
「………夕那は……夕那は…敏則さんと、離れたくない、です……」
だが夕那はゆっくりと顔をあげ、じっと男を見据えながら、はっきりとした口調で男の誘いを拒んだ。
いつの間にか、その目には生気が戻り、大粒の涙がポロポロと零れ落ちている。
448227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:18:27 ID:IRVnqG4d

「ふう……仕方がない、か」
「ん、そういうことですね。さっさと諦めて、ここから……」
自分を拒む夕那を見て、男はゆっくりと首を振り、ため息をついた。
そんな男に、美由樹は声を掛けようとしたが、その言葉が途中で止まった。
男から感じられる気配が、急に悪寒と殺意を感じるものに変わったからだ。
「それでは力ずくでも、一緒に来てもらうとしようか」
男の言葉とともに少女の体が、まるで熱したロウのように溶け出して、地を這うひとつの塊となった。
塊は物凄い速さで、男に向かって動き始めたかと思うと、いきなり巨大な手の形へと変化した。
立ち尽くす夕那を背後から、そのまま握り込もうとしているかのように――
「夕那ちゃんっ!」
――だめだ、今から動いても間に合わない!――
間に合わないとは知りつつも、美由樹は叫ばずにはいられなかった。

次の瞬間、塊はふたたび地面を伝う形に戻ったかと思うと、あっという間に男の体にまとわりつき、
背中に蝙蝠のような翼の生えた、タキシードのような服へと変化していった。
「夕那……ちゃん…っ……」
さっきまで夕那が立っていた場所には、誰もいなかった。
信じられない事実に、がっくりとうなだれる美由樹。
「…………何の真似かな、これは?」
「……え?」
だが男は、感情のこもってない声で、とある一点を見つめながら、首を傾げている。
美由樹は男が見つめているほうへと、視線を向けた。
「ふん、残念だったな。そうそう、お前の思い通りにさせてなるものか」
視線の先には、夕那を抱きしめたまま、男に向かって憎まれ口を叩く、絹代の姿があった。
449227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:18:59 ID:IRVnqG4d

「……ふう。まったく……そこまでわたしを怒らせるとは……。………覚悟したまえ」
「なっ!? ぐ……ぐう…うっ……」
男は右手をかざした姿勢で、呆れたようにゆっくりと首を振ったかと思うと、
ぱっと顔をあげ、殺意のこもった声を絹代に叩きつけた。
それとほぼ同時に、かざしていた男の右腕が触手のようにしなり、絹代の咽喉元へと絡みついた。
不意に首を絞められ、息苦しさにくぐもった悲鳴を漏らす絹代。
「散々わたしをコケにしてくれた礼だ。たっぷりと苦しみたまえ」
「く……かは…あ…っ……」
男は絹代の首を絞めたまま、ゆっくりと絹代を宙へと持ち上げた。
絹代は男の手を掴み、ばたばたと足を動かして必死に抵抗するが、男の手はびくともしなかった。
「や、やめて! もう離して! 夕那は、夕那はもう、どうなってもいいですからっ!」
「だ……だめ、だ………そ、そん…な……ぐっ! ぐはっ! がはあっ!」
そのとき夕那が泣きながら、男に向かって懇願し始めた。
夕那の考えを押しとどめようと、絹代が口を開いたが、途中で悲鳴へと変わってしまう。
男が絹代の首を絞める力を増し、さらにそのまま地面へと叩きつけたのだ。
「君は黙っていたまえ。何度も言うが、わたしは由奈くんに用があるのだから…………ん?」
そう絹代に向かって吐き捨てた男だったが、背後に何者かの気配を感じ取り、ゆっくりと振り返る。
男の目に、鳥居からこちらに向かって、ゆっくりと歩いてくる人影が映っていた――
450227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:19:30 ID:IRVnqG4d

月明かりに映し出された人影の正体は――絹代の父である、琢磨だった。
「儂の娘をいたぶるのは、そこまでにしていただこうか」
「ほおう、彼女は君の娘さんですか? ちょうど、親の顔が見たいと思っていたところなのですよ。
まったく、かなりのお転婆に育てられたようですね……」
琢磨は歩きながら、男に向かってゆっくりと声をかける。
絹代から手を離し、触手を元の腕に戻しながら、男は呆れ顔で琢磨に話しかけた。
「げ…げほ、げほっ……ち、父上! 佳乃が…佳乃が……」
ようやく解放された絹代が咳き込みながら、琢磨に向かって佳乃を指差した。
佳乃は依然として美由樹に膝枕をされたまま、微動だにしていない。
「うむ……薫がこの場におれば、薬を持っているのだが……」
「な、か、薫は? 薫は来ていないのか!?」
琢磨のつぶやきに、絹代は目を真ん丸に見開いて叫んでいた。
てっきり薫も、この場に駆けつけたものだと思っていたからだ。
「う、うむ……。絹代もわかっておろう、酒が入った薫を無理に起こすと、どういうことになるか……」
「そ…それは……そうだが……」
絹代の抗議の声に、琢磨は顔を歪め、歯切れ悪そうに答える。
『どういうことになるか』は絹代自身もよくわかっていたため、不承不承ながらも頷いていた。
451227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:20:01 ID:IRVnqG4d

「君たち……今の状況を忘れていませんか? こうして平静に話しているように見えますが、
わたしは今、君たちに邪魔をされていることで、実はかなり気が立っているのですよ?」
絹代と琢磨のやりとりが終わったところで、男がゆっくりと口を開いた。
腕組みをして、片足を何度も足踏みさせている仕草は、確かにいかにも不機嫌そうだ。
「気が立っている………?」
「な、なんですか?」
だが、見る見るうちに顔が真っ赤に染まっていく琢磨に、
じろりと睨みつけられると、男は思わず声を上ずらせてしまった。
さらに、琢磨から感じるあまりの迫力の前に、足踏みさえも止まっている。
「それは儂の台詞だ。我が村の者を傷つけてくれたのだ。この礼は、存分にさせてもらうぞ」
「ほほう。……少しは、やりそうですね。………礼をさせていただくのは、こちらのほうですよ」
ボキボキと右手を鳴らしながら、琢磨は男に向かって言い放ち、錫杖を構える。
気を取り直した男もまた、背中から巨大な鎌を取り出し、油断無く身構えていた。
「絹代、この者は儂が相手をする。佳乃たちの介抱は任せたぞ」
「は、はっ。父上もお気をつけて」
背を向けたまま、琢磨は絹代に声をかける。
まるで、さっきのわらわと佳乃みたいだなと思いつつ、絹代は琢磨の言葉に頷いていた――
452227 ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:21:08 ID:IRVnqG4d

「佳乃! しっかりしろ、佳乃!」
社務所の布団に寝かせた佳乃に、絹代が懸命に声をかける。
だが、佳乃は目を覚ますどころか、ピクリとも動かない。
「お、落ち着いてください。……えっと……」
「わらわの名は絹代じゃ! これが落ち着いていられるかっ!」
思わず夕那が絹代に声を掛けるが、絹代は夕那に食って掛かっていった。
「き、絹代さん。お気持ちはよくわかるのですが、今は傷の手当てをしなければ……」
「あ……う、うむ……すまなかった」
そんな絹代をたしなめるように、美由樹がそっと絹代の肩を叩きながら諭す。
絹代は一瞬目を剥いて、抗議しようと口を尖らせかけたが、
美由樹の言うことがもっともなので、おとなしく頷き、夕那に向かって非礼を詫びた。
「では……よい…しょ。……う、うわ…っ」
「うっ……」
佳乃の傍らに座った美由樹はおもむろに、真っ赤に染まった佳乃の服をはだけさせた。
肩口から臍の辺りまで、袈裟懸けに斬られた傷は思いのほか深く、豊かな乳房は真っ二つに裂け、
心臓にまで達しているのか、傷口からは脈動とともに、血がドクドクと噴き出していた。
美由樹の背中越しに、傷口を目にした夕那はあまりの痛々しさに、うめき声とともに顔を背けてしまう。
「ん………仕方ない……ですね。夕那ちゃん、針と糸を持ってきて!」
「は、はいっ」
傷口に手を突っ込み、手探りで心臓が破れかけているのを確認した美由樹は、
顔をしかめながら、顔を真っ青にさせている夕那に向かって、叫んでいた――
453つぶやきマボ ◆MABOUp7up. :2005/05/29(日) 15:22:26 ID:IRVnqG4d
>443-452で続きますです、はい。
454名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 19:43:58 ID:NZHCtzOv
乙彼さまー
455名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 21:26:19 ID:FHI0bf3Z
流れをぶった切ってすみません。
昔、ラ板の妖魔夜行・百鬼夜翔スレで「ときめき♥スーリエルージュ」(通称「ときスー」)いうネタがはやり、大いに賑わったものでした。
このまま忘れ去られるのも不憫だと思い、またネタとしてこのスレの繁栄のお役に立てばと思い、その倉庫をここに紹介させていただきます。
妖怪図鑑:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1038312695/-100
隠れ里観光案内:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1038317313/-100
妖怪ショートショート劇場:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1038315570/-100
妖怪掲示板:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1039105564/-100
456名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:11:34 ID:WjAu6Hen
>>453
早く怪物共を皆殺しにしてくれ
子供が殺される鬱展開がいい
457名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:12:14 ID:WjAu6Hen
アンカーミス
>>453→>>453
458名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:15:54 ID:WjAu6Hen
怪物は所詮怪物なんだよな
いくら人間と結ばれようが何しようが、化け物でしかない
みんな死ねば万事解決だな
459横綱:2005/05/30(月) 00:16:44 ID:Pw4cgaLa

それでも私は正直寂しい感情はなくならなかった。理想と現実のジレンマに立っていたのだ。つまりたしかに理想としては梢ちゃんの幸せを願いたい、
しかし現実は私の今までの生きがいだった梢ちゃんが誰かのもとに渡ってしまうという虚無感があった。
でも私にはどうすることもできない・・・一番の理想は梢ちゃんが私を選んでくれることなのだから・・・そんな夢物語はもう見ないことにきめたのだから・・・
そんなことを思って廊下を歩いてると梢ちゃんの部屋の前に着いた。
「昔はよく梢ちゃんの部屋で遊んだっけ・・・」
私は一人でそんなことをぼやきながら昔の過去の思い出に更けていた。あのころはすべてが楽しかった。
梢ちゃんがいればそれ以外何もいらないとさえ思った。
梢ちゃんが私のすべてだった・・・いまだってそうなのに・・・うう
私の目には自然と涙がこみ上げていた。とめようにもとめられない。こんなとこ他の誰かに見られたくない。
そう判断したときには私は梢ちゃんの部屋の中に入っていた。
「・・・・・・ほんと久しぶりです・・・梢ちゃんの部屋・・・」
その部屋は梢ちゃんのにおい、ぬくもり、言葉では表現できないようなものがたくさん感じられた。
しかしこの部屋にはあるべきものがなかった。それは私が以前梢ちゃんにプレゼントしたぬいぐるみ。梢ちゃんは宝物にしてくれるといってくれた。
だからそれ以来ずっとこの部屋には置いてあったのだ。しかしそれが今はない。

なぜ?どうして?宝物じゃなかったんですか?

460名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:20:49 ID:WjAu6Hen
リアルタイム支援age
461名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:24:40 ID:OeKLpNlz
>WjAu6Hen
つまんねー事わめいてないで、いつものようにひでぼんに妬み粘着してろや。
462名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:27:11 ID:WjAu6Hen
>>461
(゚Д゚)ハァ?お前も黙れよ
糞作品の糞信者
463名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:28:04 ID:MMG3/gS/
ホントに同一人物だったのかw
464名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:31:34 ID:OeKLpNlz
うわ、適当に言ってみたら本当に当たったよw
465名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:34:51 ID:jqn952cR
>>464
確かめる手段にしても>>461はやりすぎだぞ。お前さんもいつも出てくるこいつにエサを与えるだけで同罪。次からスルーしろよ。

俺もな
466名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:38:59 ID:WjAu6Hen
このスレの話の作者って、鬱展開とか好きなんだろ?
もっと殺せよ
どうせ化け物しか出てこないんだからさ
最後に言ってたじゃん、魔道士様もさぁ、「怪物」ってな
子供も愛せない奴はマジで死んでいいよ
467某880:2005/05/30(月) 00:44:50 ID:2oxXsHt+
>442さん
サイトの方へ拍手で「ヴィーヴルたんハァハァ」とコメントしてくれた方かな?
検討してみますが、只今人外さんと全く関係ない虹を書いているところなので
それが落ち着いてから…になるかと。
申し訳ないけど、二週間くらい待ってて下さい。
ただ投下するにも、人外要素の無いエロシーンになりそうなので
ここではなく別のスレになるかも?それは投下する時に考えます。

>432=9-128さん
ほしをみるひと、待ってました。続きが気になります
嫉妬する音色たんかわいい

>433
コー/エーがというよりはシ/ブ/サ/ワ/コ/ウがこんな本を出していたのに驚き
ギリシャや北欧のもあるみたいですね。早速入手してみたいと思います。

思いの外アルケニーが好評で良かった。
初のレズ物なので心配でしたが、おおむね好評のようでホッとしております。
468名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 00:51:42 ID:WjAu6Hen
マジでさ、何も起こらない話とか作れる奴は居ないのかね?
絶対何か事件やら暴力やら秘密やら陰謀やらあるよな
このスレの話って
そうで無いように見せかけたりとか
例えるならまほらばみたいに所々に鬱入れるよな
469名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 01:33:10 ID:ePR0OibA
賢い人、平和を望む人は即座にNG追加しましょう。
470名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 11:30:33 ID:7Cu4G2/o
性なる夜に聖なるファック
471名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 12:38:59 ID:F+qplPWS
志村ー!逆、逆!!
472名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 13:05:36 ID:mWvk4MFq
>MABOUp7up氏
GJ!
男s出てこないし。

>ID:Wjなんたら
ここはお前の痰壺じゃないんだ
トイレにでも吐いてろ
473名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 21:47:42 ID:4QI8lHR6
困った事にあいつのレスは削除ガイドラインには抵触してないのな

まあ軽くスルーすんべ
474名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 22:48:39 ID:XpBwZ0LV
まー相手にするだけ無駄だからとりあえずIDをNGワードに追加しとけ
そうすれば何を喚いてもこっちは何も見ずにすむようになるから
475名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 16:49:43 ID:/FgBQx2P
ストライク!
ノー!ストライっ!?
ヤーストライク!
ガッデム!
あッ、尻にバット挿さないで……
476名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 18:41:09 ID:9o+UxwCK
どこの誤爆だw
477名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 20:08:54 ID:zVurRufv
ワロスw
478名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 23:48:03 ID:eNfyReOY
卓ゲー板のクトゥルフスレに面白い報告があったので紹介。

532 :517:2005/05/31(火) 22:40:24 ID:???
あー、とりあえず世界観は「ひでぼんの書」とほとんど同じで、
なぜかプレイヤーキャラ達が住んでる町に萌え擬人化した邪神が生息している。
ストーリーとしてはなぜか町中の角度からティンダロスの猟犬(もちろん美少女)が大量出現して、
人々に甘えまくって大混乱。それをなんとかするために、町のあちこちに潜む邪神(美女や美少女ばかり)を探して、
色々な(エロエロな)手段で交渉して力を貸してもらい、何とか猟犬達を召還していた魔術師を退散させてめでたしめでたし……
ルールはあまり変えず、SAN値は「理性」に変更(あまり変わらない)。邪神のお色気や萌えな仕草を目撃したり、
こちらから邪神と交渉するため色々な(エロエロな)アプローチを試みるとチェック。ゼロになると邪神にルパンダイブしてしまう。
他にも「精力」という値もあり、これは直接的なエロに使(以下省略)。
こうして書くと馬鹿以外の何者でもないけど、プレイ自体はなかなか緊張感があって盛り上がった。
「ほら、早くシュブ=ニグラス様の肩を揉んでやれよ! 御呼ばれだぞ!!」
「馬鹿、罠に決まってるだろ! 風呂上りのうなじなんて見たら俺の「理性」が無くなっちまうよ!」
「くそっ、イタクァ様の性癖は何だ!?」
「ハァハァしてる信者の日記帳を探せ!」
「この日記帳によるとアナルらしいぞ!」
プレイヤーの隠れた性癖が垣間見れたりして違う意味で面白い。
しかし、今回のプレイが盛り上がった大きな理由の1つに、
萌えエロ化邪神様の役を女性のサブマスがやってくれたのも大きいわけで……

;y=ー( ゚д゚)   カチャ
;y=ー( ゚Д゚)・∵. ターン
479名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 03:12:08 ID:3rNGtTn2
>>478
面白いがスレ違い気味だな
480名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 05:54:35 ID:KP0ESA+K
>>478
スレに対する適切さが怪しい場合、該当レスへのリンクを貼るだけで良いと思いますよ。
481名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 16:17:42 ID:cWHWi8jr
>>478
クトゥルフ卓上総合 13の恐怖
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1112316561/l50

卓ゲー板なんてはじめて行ったよ
ぜひともリプレイをまとめて読めるようにして欲しい…
482名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 19:54:31 ID:9+Ud2NK/
>>478
えーっと

















死ね
483名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 21:07:30 ID:NpIMQAAS
>481
「〜/l50」はやめてくれ。
「〜/532」にしないと当該レスが見つからない。
そんな奴に「困ったちゃんスレ」での捜索を命じる。
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1117281805/l50
484名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 21:19:11 ID:9+Ud2NK/
邪神は化け物
485名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 21:44:30 ID:ldapPVom
だが、それがいい
486名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 22:00:52 ID:9+Ud2NK/
…子供を愛せないような人間はもっと醜い化け物だと…

そうは思わないか?
487名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 22:31:27 ID:ciYOUMs+
思おうが思うまいがスレ違いなのでスルー
488名無しさん@ピンキー:2005/06/02(木) 23:21:36 ID:F0DJHJVG
以前この板にあったモリガンネタのスレが見当たらない
今日近所の図書館のトイレで思い付いたネタを投下したかったのに・・・
489名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 13:15:18 ID:48HdNcoe
>478の誘導先はこっちかね

卓上ゲームエロパロ総合スレ5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1115484657/l50

萌え魔王とかデザイナーズチャイルドとかそれなりに良いネタもあったり。
490名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 21:15:34 ID:emL8IbHU
>489
ナイス誘導

でも、人が吸い上げられそう。のーもあ過疎化ー!
491名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 22:02:22 ID:ZJ315DDD
創作物内で人を殺そうがなにしようが全く問題ない。空想と現実は別物だ。
それを空想であると割りきらずに現実と混同させる奴の方こそ危ない存在だとはおもわんかね?
492名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 23:38:19 ID:RBuGrx/+
>>491
蒸し返すなヴォケ
お前も死ねよ
493名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 23:40:25 ID:BV8FhSoa
思おうが思うまいがスレ違いなのでスルー
494名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 23:42:16 ID:RBuGrx/+
>>493
スマン
495名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 00:04:17 ID:LIbKDleW
これってアレの続きじゃねぇか?
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1117281805/565
496名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 00:09:31 ID:JJjwbwRS
>>495
落ちてるみたいだけど…何が書いてあったの?
497名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 00:16:15 ID:LIbKDleW
お?
日付変わったら落ちちまったよ。orz
498名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 16:37:53 ID:Fo0mHxhN
アレってなんだよ気になるじゃねーか俺だけに教えてくれよ、なーに心配すんな誰にも言わねえようひひひ
499名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 16:43:33 ID:P0t95ezU
|・∀・)<ヒヒヒヒヒ
500名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 16:46:39 ID:SrWtEzSb
うへへ。
501名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 23:50:18 ID:dduXmB0x
そんな事より、ラ板の百鬼スレへGO!
502名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 00:22:25 ID:W4HIi2mO
ここは職人さんは凄いのばっかりなのに住人の雰囲気がなんだか殺伐としてるな。
幽霊でも妖怪でももっとマターリ汁
503名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 01:15:43 ID:a6n3sud2
>住人の雰囲気
ただ一人のせいだよ。
504227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 04:21:15 ID:E0jM6Apu
>452の続き。

「な! ぐ、ぐはあっ!」
「どうした? 威勢がいいのは口だけなのか?」
「……くっ」
錫杖で腹を突かれてうずくまる男に、琢磨が余裕の表情で話しかける。
肩膝をつき、琢磨を見上げる男には、すでに紳士ぶる余裕は消え去っていた。

男と琢磨の戦いは、ほぼ一方的だった。
琢磨は男の攻撃を、まるで読んでいるかのように、あっさりとかわし、
男が攻撃から防御へと転じる、ほんのわずかな隙を突いて、的確に攻撃を当てていた。

「もう終わりか? ならば、こちらから参るぞ」
「え? な、ぐ、ぐがあっ!」
終始受けに回っていた琢磨が、錫杖を放り投げるとともに、初めて攻めに回った。
男が顔をあげた次の瞬間、琢磨の膝蹴りが男の顔面に炸裂していた。
「くっ……こ、このっ! ぐうっ!」
男は仰け反りながらも、琢磨に向かって鎌を横殴りに払う。
だが琢磨は男の稚拙な攻撃を、まるでお辞儀をするように、
上半身を折り曲げてかわしながら、その勢いで男の顔面に蹴りを見舞っていた。
505227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 04:21:58 ID:E0jM6Apu

「ぐぶ……っ、!………」
今度は琢磨の肘が男の鳩尾へと突き刺さり、思わず男はうずくまる。
うずくまって下がった顎に、琢磨の下から突き上げる拳が見事に直撃し、
男はたまらず、地面へ大の字に倒れこんでしまった。
「……うっ! ……ぐ、ぐえ……っ…」
「……く、っ……………。い、今は貸しにしておきます! 覚えていなさい!」
と、琢磨が不意に、苦しそうに口元を押さえながら、その場にうずくまった。
その隙に、男はふらつきながらも琢磨から離れ、捨て台詞を言い残し、
背中の羽を頼りなく羽ばたかせて、この場から逃げ出していた。


「ぐ……ぐげえ……っ。………ふう……不覚だったわ。まさか、ここまで効くとはな」
境内で盛大に嘔吐した琢磨は、軽く口元を拭いながら、夜空を見上げてつぶやいた。
昼間は佳乃の夫である、信幸の母に勧められた酒を、まさに浴びるほど呑んでいたのだ。
夜になり、ぱっちりと目が覚めたことで、酔いも醒めたと思っていたのだが、
男相手にひと暴れしたことで、ふたたび酔いが回ってしまったのだ。
「それよりも……今は佳乃、だ……」
男をみすみす、逃がしてしまったことも気がかりではあるのだが、
それ以上に今は、身動きひとつしていなかった、佳乃の身が心配だった。
琢磨は錫杖に寄りかかりながら、佳乃が運び込まれた社務所へと歩き始めた。
506227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 04:22:33 ID:E0jM6Apu

「ん、これで……とりあえずは、血は止まりました。……あとは、ちゃんと病院へ行って……」
額の汗を拭いながら、疲れきった表情の美由樹がつぶやく。
佳乃の破れかけた心臓と傷口を、裁縫用の針と糸で無理矢理、縫い合わせたのだ。
ひとつ間違えると、逆に傷口を広げかねない、まさに文字通り、神経をすり減らすような作業だった。
「佳乃……」
心配そうに、佳乃の手を握り締める絹代。
だが佳乃は、主人の声にも何ひとつ反応しようとはしなかった。
「……ど、どうじゃ、佳乃の容態は?」
「ち、父上! ……父上こそ、ふらついているようだが大丈夫なのか? あ、あ奴はどうしたのだ?」
と、そこに琢磨が姿を現した。
絹代は足取りもおぼつかない様子の琢磨を目にして、不安げな表情で琢磨に問いかける。
「う、うむ……儂は大丈夫だ……。彼奴には隙を突かれて、うまく逃げられおった」
心配する我が娘に、まさか『昼の酒が原因でふらついていて、挙句に逃げられた』などとは言えず、
さりとて嘘を言うわけにもいかず、肝心な理由を隠して、曖昧に返事をする琢磨。
「そ、そう……ですか。逃げられ……ましたか」
その言葉に、佳乃がここに運び込まれてからは、ひとことも発しようとしなかった女が、
つぶやきとともに、落胆のため息を漏らす。
「う……す、すまなかった。彼奴を逃がしたのは、完全に儂の不覚だったわ」
「い、いえ。あなたを責めているわけではありません。ただ……」
女の落胆振りが、あまりにも大きかったので、思わず琢磨は深々と頭を下げていた。
そんな琢磨に、女は慌てて首を振りながら、顔をあげるように声をかけ、遠い目を見せる。
「そ、そうか……。しかし、いったい何がどうなっておるのだ? 彼奴は何者だったのだ?」
「それは、その……」
女の言葉に顔をあげた琢磨は、顎鬚をさすりながら、誰に言うとも無くつぶやいた。
美由樹は簡単に、今夜起こったことを琢磨に説明し始めた――
507227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:14:45 ID:E0jM6Apu

「く……っ」
月明かりの下、弱々しい足取りで歩く男。鳩尾にズキリと痛みが走り、思わず立ち止まった。

――何者だったのだ、あの男は? あと少しで、由奈の魂が手に入ったというのに、
まさかあんな邪魔が入るとは………。まあ、親に殺された子どもの魂なんて、幾らでも手に入る。
そのうちのひとつに過ぎない由奈の魂に、そこまでこだわることもあるまい――

気を取り直した男は痛みをこらえ、ふたたび歩き始めた。
「ん?」
「…………………」
だが、その歩みがほんの2,3歩で止まってしまう。前方に、無言で立ち尽くす人影が見えたからだ。

――やれやれ、どうやら……さっきの連中のお仲間、だろうな。服装からしても――

人影は――琢磨たちと同じように、山伏の格好をした女だった。
軽くうつむき加減な上に、まるで漆黒の闇を切り取ったような、
黒くて長い髪が顔の半分を覆っているために、その表情を窺い知ることはできない。
男は心の中で軽くため息をつき、ゆっくりと首を振りながら、冷静に女を観察し始めた。

――しかし、男の出鱈目な強さに比べ、この女はそうでもなさそう、か。
せいぜい、あの男の娘と同じようなものだろう。ならば、慌てることもない。
それにさっきの場所は、妙な力に邪魔をされて、すべての力を引き出すことが出来なかった。
だが、ここなら大丈夫だ。負ける要素など、微塵もあるはずがない――
508227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:15:18 ID:E0jM6Apu

「どうされたのですか? こんな時間に、女性の一人歩きは危険ですよ?」
「…………………」
目の前の女性を、琢磨よりも格下と判断した男は、気を取り直して慇懃な口調で話しかけた。
だが、女からの返事は無く、相変わらず表情を読むことも出来ない。

――ううむ……まったく返事がないとは意外な反応、というべきか……。
よく見ると、腰に刀のようなものを差しているようだが……それが彼女の余裕の理由、か。
まあ、これだけの距離があれば、彼女が何かしてきたとしても、簡単にかわせるだろう。
……っと、あまりもたもたしていると、さっきの男が追いかけてくるかもしれないな。
やはりここは、さっさとこの女を始末して、この場から立ち去るのが正解か……――

「まったく……。人の忠告は聞くべき、ですよ? φσν&οχ ιμθθμ!」
皮肉な笑みを浮かべながら、男は地面に向かって手を突き、何事か唱えた。
男の目論見どおりならば、これで女は異次元に引きずり込まれる――はずだった。
「な、何っ!?」
「遅いですよ、あなた……。まあ人間よりは、素早さそうですけどね」
だが次の瞬間、男は何者かの気配を背後に感じとり、思わず振り返った。
いつの間に移動したのか、そこにはたった今まで前方にいたはずの女が立っている。
かと思った直後、女の腕が腰から肩へと動き、つられて銀色の糸が走った――ように男の目に映った。
同時に、男の背中に生えていた翼が、ボトリと音を立てて地面に落ちた。

女は、あっという間に男の背後まで移動したかと思うと、手にしていた刀で背後から切りつけたのだ。
「ぐ、ぐぎゃあああっ!! あ…ああ……あ……」
遅れて背中を激痛が襲い、男は思わず叫び声をあげてしまう。
女の太刀筋は、寸分たがわず男の背を斬り裂いていたのだが、何故か斬られた場所からは、
血が一滴も溢れることなく、代わりに何やら黒い霧のようなものがあふれ出し、
月明かりを受けてキラキラ輝きながら、宙を舞っていた。
509227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:15:49 ID:E0jM6Apu

「随分あっけないものですね。これくらいで……ん?」
もがき続ける男を、女は拍子抜けした表情で見下ろしていたが、その目が前方へと注がれる。
さっきまで、自分が立っていた場所から、真っ赤な腕のような、触手のようなものが何本も現れ、
物凄い速さで、こちらに向かってきていたのだ。
「くは…あ、あっ……し、しまっ! う、うわあああっっ!!」
触手の一本が、地面を転がる男に絡みついたかと思うと、次々と男へと絡みついていった。
「た、助け……な、あがっ!?」
「フン、人を巻き込もうとしておいて、調子が良すぎるんですよ」
男はよろめきながらも上半身を起こし、必死に目の前の女へと救いの手を求めた。
だが女はその手を払いのけ、容赦なく男の顎に蹴りを見舞ったかと思うと、
わが身にも迫り来る触手から逃れるように、軽やかに宙へと舞い上がった。

舞い上がって――そのまま、地面に降りては来なかった。
女の背中から、やはり髪の毛と同じく、漆黒の闇を思わせる、
見事に真っ黒い鳥の翼が生え、バタバタと羽ばたいていたのだ。
「た、たす、たすけ……い、いや……いやだあああっっ!」
男は仰向けになり、何本もの触手に巻き込まれながら、必死に宙を舞う女に向かって叫び続ける。
だが女は、男が触手に巻き込まれ、そのまま地面に引きずり込まれていても、
眉ひとつ動かすことなく、ただじっと男を見つめていた。
510227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:16:19 ID:E0jM6Apu

「さて、と……」
やがて、触手と男が地面へと沈み込み、完全に姿が見えなくなったとき、女は地面に降り立った。
「ふむ……」
肩ひざをつき、男と触手が消えた辺りを手で探りながら、鼻を鳴らす。

――私が目を覚ましたとき、部屋には琢磨ちゃんも絹代ちゃんも、佳乃もいなかった。
おそらくは、こいつの気配を感じ取って、こちらに向かったのだろう。
……と、思うのだが、だとすると琢磨ちゃんたちと、こいつの間に何があったのだろうか。
絹代ちゃんや佳乃はともかくとして、琢磨ちゃんならこんな程度の相手に遅れをとるはずが無い――

「まあ、行ってみればわかること……か」
女はゆっくりと立ち上がり、男が歩いてきた方向を見やったかと思うと、
背中の羽根を羽ばたかせ、ふたたび宙へと舞い上がった――
511227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:16:50 ID:E0jM6Apu

社務所では、未だに意識が戻らない佳乃を皆で囲んでいた。
お互い、言葉が言葉にならず、微妙な沈黙が場を支配している。

バンッ

が、そんな沈黙を打ち破るかのように、襖が勢いよく開かれた。
そこには、琢磨や絹代たちと同じく、山伏の服装をした薫が立っている。
「あ、か、薫!」
「よ……佳乃っ!? ど、どうしたというのですか!? 佳乃!」
薫は、驚きの声をあげる絹代には目もくれず、布団に横になっている佳乃の枕元へと駆け寄った。
「す、すみません………わ、私をかばったばかりに……」
「佳乃っ、目を覚ましなさい! あなたにもしものことがあったら、
残された信幸様や幸乃ちゃんは、どうなると思ってるの!?」
女がうつむきながら、ぼそぼそつぶやくが、薫は女の声にも耳を貸さず、
今度は佳乃の肩を激しく揺さぶって、目を覚まさせようとする。
「か、薫! お、落ち着け!」
「琢磨ちゃんっ! あなたがついていながら!」
さすがに慌てた様子で、絹代が薫を背後から羽交い絞めにして、押さえ込もうとする。
だが薫は、背中に絹代をぶら下げたまま、今度は琢磨のほうに振り返り、食って掛かった。
「す、すまぬ……不覚であった……」
薫の言葉に目を伏せ、ただポツリとつぶやく琢磨。
512227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:17:45 ID:E0jM6Apu

実際のところ、琢磨が駆けつけたときには、既に佳乃は深手を負っていたのだが、
それを口にしたところで、自分を「ちゃん」呼ばわりする状態の薫が、
素直に納得するとは思えなかったので、あえて何も言わなかった。

「………まったく。で、佳乃はやはり、黒ずくめの男にやられたのですか?」
「く、黒ずくめの男? あ、あなた、彼に遭ったのですか?」
黙り込む琢磨を見て、佳乃に向き直った薫は、そっと佳乃の頬を撫でながら、ため息をつく。
薫の言葉を聞きとがめた、佳乃にかばってもらった女がはっと顔をあげ、思わず薫に聞きなおす。
「ええ。何だか、自分で仕掛けた罠に、勝手に嵌まってたみたいですけれど」
女をちらりと横目で見ながら、薫は吐き捨てるように答える。
「え? わ……罠? ………も、もしかして、突然足元の地面から、手が生えてくる……?」
「ええ。よくご存知ですね」
「あ、あなた……あ、あれをかわされた、のですか?」
「そんなことはどうでもいいです。それよりも今は佳乃です。佳乃は大丈夫なのですか?」
いかにも興味が無い、という風に答える薫に、女は尚も問いかけてくる。
さすがに機嫌が悪くなってきたのか、薫は半ば強引に女との会話を打ち切り、美由樹に問いかけた。
「は、はい……。一応、血止めはしましたが……わたしたちでは、これ以上は……」
だが美由樹は、顔をうつむかせたまま、ゆっくりと首を振るしかなかった。
513227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:18:19 ID:E0jM6Apu

「ふ〜う、ただいま〜。……随分賑やかみたいですが、どうしたのですか〜?」
と、突然のんびりとした声とともに、琵琶を抱えた和服姿の女性が、ひょっこりと廊下から顔を出した。
多少、酒が入っているのか、その頬はほんのりと赤く染まっている。
そんな彼女の姿を見て、その場にいた夕那以外の全員が、それぞれに叫び声をあげる。

「さ、沙羅様っ!」
美由樹は、社の主が戻ってきたという安堵感からか、泣き出しそうな表情で。
「え!? べ、弁天様っ!?」
女は一年前に、夕那の魂を奪おうとしたときに邪魔をされた弁天と、
思わぬところで再会したことで、複雑そうな表情で。
「弁天様!?」
絹代は女の叫び声を耳にして、目の前の女性が弁天であるという事実に、心底驚いた表情で。
「な……なんと……」
「ま、まさか……」
琢磨と薫は、この神社に漂っている、どことなく安心できる気配の源を目の当たりにして、
どこか納得したような、その一方で神である弁天が実在することが、信じられないという表情で。

「あ。夕那ちゃん、あれから彼氏と、仲良く元気にしてますか〜?」
「え? あ、は、はい……」
ただ一人、ひと言も発せずにぽかんと口を開ける夕那に、沙羅は小首を傾げながら話しかけた。
が、夕那はなんと言っていいのかわからず、しどろもどろに返事をするのがやっとだった。

「うふふっ、それは何よりです……あら? あなた方は、確かお昼に……」
「さ、沙羅様! その花嫁さんがっ……!」
夕那の返事に、にっこりと微笑んだ沙羅は、フラフラした足取りで部屋に入り込もうとして、
琢磨や絹代たちがいることに、ようやく気がつき、軽く会釈をする。
美由樹は、今にも泣き出しそうな表情で、横になっている佳乃を指差しながら叫んでいた――
514227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:18:50 ID:E0jM6Apu

「まあ、そういうことだったのですか……わかりました。彼女はわたくしが、なんとかいたしましょう」
「沙羅様……」
美由樹から事情を聞いた沙羅は、自らの胸に手を当てながら、にっこりと微笑む。
「お、お願いいたします、弁天様……」
「お願いなんて、とんでもない。せっかくここで、結婚式を挙げた方なのですから。
その翌日に、花嫁さんにもしものことがあったとなったら、わたくしの沽券に関わりましてよ」
深々と土下座する薫に、沙羅は鷹揚に答えたかと思うと、軽くおどけながらウィンクしてみせた。
515227レズ気味注意 ◆W/KpcIbe5Y :2005/06/05(日) 05:25:22 ID:sfRSSoFc

「さて……と。まあ、綺麗な肌……」
部屋から全員を追い出し、佳乃と二人きりになった沙羅は、そっと佳乃の服をはだけた。
糸で縫われた傷跡が痛々しいものの、透き通るような白い肌が露わになる。
「……ん。ちゅっ……」
佳乃の傷口に、沙羅は軽くくちづけをする。だがそれでも、佳乃はピクリとも反応しない。
「んふ……っ、ん……んっ……」
さらに舌を伸ばし、傷口に沿ってゆっくりと這わせ始める沙羅。
興奮しているのか、沙羅の息遣いが少しずつ荒くなっていく。
「……っ、れろ……っ、ん、ごくっ……」
傷口を塞いでいた糸に手を伸ばし、思い切り引っ張った。
張力が限界に達した糸が、プチリと音を立てて千切れたかと思うと、傷口から再び血が流れ始める。
沙羅は迷うことなく、傷口に舌を這わせて血を舐めすくい、そのまま咽喉を鳴らして飲み下していった。

「うん……んふ、っ……んんっ…」
しばしの間、沙羅は佳乃の傷口に舌を這わせ続けていたが、不思議なことが起こり始めていた。
傷口から、絶え間なく溢れ出ていた血液の量が、少しずつ減っているのだ。
それどころか傷口の境目も、段々目立たなくなっている。
「……っ。……んふ、んっ」
やがて、血液が流れなくなったと同時に、佳乃の肌からは傷口すらも無くなっていた。
「……っと。少し、やりすぎましたかしら?」
佳乃の胸の頂を見つめながら、沙羅は困ったような顔を見せ、ポツリとつぶやく。
本人が意識を失っているのにも関わらず、そこだけはピンと天を向いてその存在を主張していたのだ。
「でも、ま……少しだけ、なら……っ、んっ……」
悪戯心が芽生えた沙羅は、軽く舌なめずりをしたかと思うと、そっと佳乃の胸に吸いついた。
吸いついたまま、舌先を胸の頂に絡ませて、口の中で動かしてみると、
コロコロとした心地よい感触が、沙羅の舌に届く。
「っ、……っ、んっ、んふ…っ…ん……っ、んんっ……」
さらにくちびるをすぼませ、軽く吸い上げてみた。すると沙羅の口の中に、ほのかな甘みが走る。
最初は軽い悪戯のつもりだったのだが、咽喉を潤す液体のあまりの美味しさに、
思わず沙羅はすべてを忘れ、しばしの間、佳乃の胸に夢中になっていた――
516227レズ気味注意 ◆W/KpcIbe5Y :2005/06/05(日) 05:25:59 ID:sfRSSoFc

「……っ。ん、っ……」
突然、すべてを思い出したかのように、沙羅はぱっと顔をあげ、佳乃の胸から離れた。

―-いけない、いけない。このままじゃ――

心の中で舌打ちをした沙羅は、気を取り直して自らの着物をはだけた。
同時に沙羅の豊かな胸が、まるで縛めを解かれたかのように、プルプル震えながら姿を現した。
「あは……あ、ああっ……」
沙羅がゆっくりとした仕草で、佳乃の上に圧し掛かると、お互いの胸が押しつけ合わされ、
その圧力に耐え切れずに、二人の胸が潰れ、左右に押し広げられる。
思わぬ刺激だったのか、沙羅が上半身をピクリと震わせ、口から艶めかしい吐息を漏らす。
「……はあ、あっ、あんっ……んっ、ん……っ、っ……」
再び理性が飛びかけた沙羅だったが、両手を佳乃の頬にやさしく沿えながら、
そのままくちびるを奪ったかと思うと、まるで人工呼吸をするかのように、呼気を佳乃の中へと送り込む。
「っ、んふ……っ、んん…っ…ん、んっ……」
呼気を送り続けたまま、沙羅がゆっくりと前後に体を動かし始めた。
お互いの胸の頂が擦りあわされ、感じる刺激に沙羅の呼気が乱れそうになる。
517227レズ気味注意 ◆W/KpcIbe5Y :2005/06/05(日) 05:26:31 ID:sfRSSoFc

「…っ、んふっ。……ん、んんっ、んんんっ……」
沙羅は佳乃の太ももを、自らの両足で挟み込むようにして、体の動きを早めた。
下腹部から伝わる刺激に、目の前でチカチカと火花を散らされたような錯覚を覚えてしまう。
すでに沙羅の下腹部は、しとどに濡れそぼっているようで、沙羅の腰が往復されるたびに、
佳乃の太ももが少しずつぬめりを増し、にちゃにちゃと妖しい音を立てる。

「んっ! んんっ! んっ、んーっ!」
沙羅が右手をそっと、自らの下腹部へと添える。
たったそれだけのことなのに、沙羅は全身を突っ張らせながら、激しく悶える。
さらに左手で佳乃の下着を脱がし、下腹部へと手を添えようとして――その手がピタリと止まった。

――そ、そうでした。こ、この方は、すでに操を捧げたお相手が、いらっしゃったのでした――

「……で、でも……は、あ、ああっ、あああっ!」
一瞬、未練がましい表情を見せた沙羅は、佳乃からそっとくちびるを離し、
艶めかしく喘ぎ声を漏らしながら、自らの秘部へと指を潜り込ませ、激しく抽送し始めた。
「んっ、ああっ、イク、イッちゃう、イッちゃううーっ!」
やがて沙羅は全身を仰け反らせ、絶頂へと達したかと思うと、そのまま佳乃の胸へと顔を埋めていった。
518227レズ気味注意 ◆W/KpcIbe5Y :2005/06/05(日) 05:27:34 ID:sfRSSoFc

「……はあ、はあ、はあ、はあ……」
肩で大きく息をさせながら、沙羅はゆっくりと体を起こし、佳乃をそっと見下ろす。

――ふう、少しばかり……調子に乗りすぎて、しまいましたですわね……――

佳乃は、意識こそ回復してはいなかったが、あんなに大きかった傷跡はすっかり消え失せ、
今はただ、静かに眠っているように見える。

「ごめんなさい……。きっとこれは、お酒のせい……いいえ、それはただの言い訳……」
沙羅は侘びの言葉を述べながら、佳乃の髪を軽くたくしあげる。
確かに正月ということで、七福神仲間から勧められた、酒を多少は口にしていた。
だからと言って、それをすべての原因にするわけにはいかない。
「そう……久々に体が疼いたのは、本当のことですからね……」
はだけた佳乃の服を直しながら、沙羅はポツリとつぶやく。
胸元を閉じ合わせようとして、ピタリと手を止め、佳乃の胸をじっと見つめた。
ふたたび、胸の鼓動が早くなるのがわかる。

「……っと。これ以上こんなことをしていたら、あなたにも、
あなたの旦那様にも、娘さんにもお母様にも、怒られてしまいますわね……」
ペロリと舌を出しながら、沙羅はそっと佳乃の胸元を閉じ合わせた。
519227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:28:06 ID:sfRSSoFc

「あっ、さ、沙羅様っ!」
「ふ〜う。お、お待たせしました。あとは一日安静にしていれば、大丈夫でしょう……」
襖が開き、隣の部屋で佳乃を癒していた沙羅が、深呼吸をしながら入ってきた。
美由樹が顔を上げ、不安そうに声をあげる。
そんな美由樹をやさしく見つめた沙羅は、自らの額の汗を拭い、
大きく息を吐きながら、つぶやくように言った。
「べ………弁天様…な、何とお礼を申せばいいのか……」
「そ、そんな……。礼を言わねばならないのは、むしろこちらのほうです。
美由樹さんと夕那ちゃんの危機に、わざわざ駆けつけてくださったのですから」
沙羅の言葉に感極まったのか、薫が大粒の涙をぽろぽろ流しながら、ふたたび土下座をしてきた。
多少慌てた様子で、沙羅は手をパタパタ振りながら、薫に向かって頭を下げる。
「い、いやいや。弁天様に頭を下げていただくなどとは……」
今度は琢磨が、すっかり恐縮した様子で深々と頭を下げてきた。
「あ、あのう……頭を下げあうのはいいのだが、佳乃の場所に行っても構わないかのう……」
「え? あ、そ、そうですね。それがいいと思います、ええ」
頭を下げあっている沙羅や琢磨に、絹代がおずおずと声をかける。
沙羅がぱっと顔をあげ、ぎこちない笑みを浮かべながら、しどろもどろに答えていた。
520227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:29:53 ID:sfRSSoFc

「本当によろしいのですか? もう少し、横になられていたほうが……」
「大丈夫ですよ。佳乃だって、そうやわな体ではないですから。
……それに、目が覚めて母親がいないと、幸乃ちゃんが心配しますでしょう?」
「ああ、それもそうですね……。では、お気をつけて……」
夜明け前、家に帰るという琢磨たちに、沙羅が心配そうに小首を傾げながら、声をかけた。
だが、薫は背におぶった佳乃をちらりと見て、沙羅に向かって問いかけるように答える。
それで何かを納得したように、沙羅はにっこりと微笑みながら、軽く頭をさげた。
「ほ、本当に、ありがとうございました!」
「なあに、行きがかり上のことだ。気にするでない。
それに……まだまだわらわも、修行が足りないとわかったしな」
「そ、そうなんですかあ。山伏の修行、頑張ってくださいねえ」
夕那が絹代に向かって深々と礼をするが、絹代はけろりとした顔で返事をしたかと思うと、
軽く顔をしかめ、拳を握り締める。そんな絹代に夕那は一瞬、目を丸くさせたが、
すぐににぱっと微笑み、絹代の拳を両手で握り締め、ブンブンと手を振った。
「ん、ま、まあな。……おぬしも元気で、な」
「はあい。夕那は、いつでも元気ですよお」
あまりにも、あっけらかんとした夕那の態度に、今度は絹代が目を丸くさせる。
夕那は絹代から手を離し、ピシリと敬礼をしながら、満面の笑みで絹代に返事をしていた――
521227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:30:23 ID:sfRSSoFc

「さて、と。お次は美由樹さんの番、ですね」
「え? わ、私はよろしいです! 沙羅様の御手を煩わせるなんて……!」
琢磨たちと別れ、部屋に戻った沙羅は、美由樹のほうを見ながら、ゆっくりと声をかける。
その言葉に、美由樹は慌てふためき、思わず後づさってしまう。
「何を言っているのですか。顔は女の命なんですから、いつも綺麗にしておかないと、ね?」
だが沙羅は、包帯に覆われた美由樹の頬に手を添え、慈愛に満ちた表情でささやく。
「さ、沙羅様……」
「大丈夫ですよ。今日は怪我を治すだけ、ですから」
それでも、どこか不安げな表情を見せる美由樹に、沙羅はウィンクしながら微笑みを浮かべた。
「……そんなわけで、すぐに戻りますから、お二人さんはお茶でも飲んで、ゆっくりしていてくださいな」
「え、あ……」
「は…はい……」
微笑みを浮かべたまま、夕那と女のほうを振り向く沙羅。
沙羅に話しかけられた二人は、揃ってあっけにとられた表情で、口をパクパクさせながら、
部屋から立ち去る沙羅と美由樹の後ろ姿を見送っていた。
「えっと。………お茶、飲みます?」
「い、いや、遠慮しとくわ……」
残された夕那は、本当に女に茶を勧めようとしたが、女はゆっくりと首を横に振っていた。
522227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:30:55 ID:sfRSSoFc

「ふ〜うっ。さすがに少し、疲れました。申し訳ないですが、これで休ませていただきますね」
待つことしばし、美由樹とともに戻ってきた沙羅は、
さすがに疲労困憊しきった表情で、首を左右に揺らしながら言った。
「は、はい。ごゆっくり、お休みくださいませ。さ、夕那ちゃん。急がないと、夜が明けちゃいますよ」
「あ、はあい」
先ほどの佳乃のように、傷跡がすっかり癒えている美由樹は、
沙羅にぺこりと頭を下げたかと思うと、腕まくりをしながら夕那に声をかけた。
夕那もまた、美由樹と同じように腕まくりをしながら返事をする。
「それじゃ、私はこれで」
「ちょ、ちょっと待った。あなた、これからどこへ行くと言うのですか?」
二人のやりとりを、穏やかな表情で見ていた女は、ゆっくりと立ち上がり、
部屋を後にしようとするが、沙羅が小首を傾げながら問いかけた。
「私は……死ぬことも生きることも出来ない、半端な存在ですから……」
「ううん。じゃあ、ここで暮らせばいいんじゃないですか?」
「え? そ、それ、は……」
523227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:31:28 ID:sfRSSoFc

顔をうつむかせ、ぽそぽそとつぶやく女に、沙羅はあっさりと答える。
沙羅の言葉に、女は思わずぱっと顔をあげ、戸惑い気味に返事をしていた。
「大丈夫ですよ。貞晴……おっと、ここの宮司には、ちゃんと言い聞かせときますから」
小首を傾げたまま、おどけて口元に人差し指を添えながら、沙羅はウィンクをする。
「お、お忘れですか? 私は去年……」
「ああ、すっかり忘れちゃいました」
女は顔をあげ、泣き出しそうな顔で沙羅に向かって声をかけようとするが、
沙羅は女の言葉を遮るように、あっさりと言った。
「過去がどうこう、なんて気にしてはいけません。大事なのはこれから、なのですから、ね?」
「で、でも……」
「大丈夫ですよお。夕那も巫女初心者ですし、初心者同士、頑張りましょうねえ」
優しく諭すように、女へと語り掛ける沙羅だが、それでも女はちらちらと、夕那を横目で見ながら口ごもる。
だが夕那は、女に向かってにぱっと微笑みを浮かべ、女に向かって右手を差し出していた。
「あ、あ……ありが…と……」
女は夕那が差し出した右手に、すがりつくようにしがみつきながら、声を詰まらせていた――
524227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:32:21 ID:sfRSSoFc

「ん? こ、ここ……は?」
「あ、よ、佳乃……大丈夫か?」
目を覚ました佳乃は、今の状況が飲み込めずに、怪訝そうな声を漏らす。
と、そんな佳乃に、絹代が心配そうに声をかけてきた。
「はい、われは大丈夫で……か、薫姉っ!?」
主人の呼びかけに答えながら、辺りを見渡した佳乃は、
自分が薫に背負われていることに、ようやく気がつき、驚きの声をあげる。
「ん、元気そうだね。よかった……」
薫は佳乃のほうを振り向き、優しく声をかけた。
その顔は、佳乃が今まで目にしたことがないくらい、優しく穏やかな表情だった。
「お、降ります! 薫姉!」
「ま、たまにはいいじゃないの。懐かしいよ、まるで昔に戻ったみたいで」
佳乃は慌てて、薫の背から降りようとするが、薫は穏やかな笑みのまま肩をすくめ、遠い目をする。
「薫姉……」
佳乃もまた、薫の背に負われていたことを思い出したのか、遠い目でつぶやく。
「でも、大きくなったものだね。やっぱり、赤ん坊の頃とは勝手が違うか」
「当たり前だろう薫。佳乃はもう、れっきとした母親なのだぞ」
よいしょ、とおぶっていた佳乃を背負いなおしながら、薫は苦笑いを浮かべた。
そんな薫に、呆れかえったように、絹代が声をかける。
525227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:32:55 ID:sfRSSoFc

「そうですね……。素敵な殿方と巡り会って恋をして、子どもができて母親になって……。
背中におぶっていた頃には、思いも寄らなかったのに、ね……」
「か、薫姉……」
絹代の言葉に薫は頷き、明るくなりかけている空を見上げてつぶやく。
薫のつぶやきに、佳乃の胸の鼓動が高まり、目頭がじわりと熱くなっていた。
「そ、それにしてもだ、佳乃よ」
「は、はい」
と、今までひと言も発しなかった琢磨が、遠慮がちに声をかけてくる。
佳乃は琢磨の問いかけに、涙交じりの声で返事をした。
「仲がいいのは結構なこと、なのだがな……その、何というか……。
来客中くらいは、慎んだほうがいいと思うのだが……」
「き……聞こえていた、のですか?」
琢磨の言葉に、佳乃の胸の鼓動がふたたび高まり、全身がかあっと熱くなる。
「ええ。襖一枚でしたから、筒抜けでしたよ。まったく、お熱いことで……。
この分だと、幸乃に弟か妹が出来るのもすぐ、なのかな?」
「幸乃に弟? どういうことなのだ、薫?」
顔を背ける琢磨に代わって、薫が悪戯っぽい笑みを浮かべ、佳乃のほうへと振り返った。
薫の言葉を聞きとがめた絹代が、怪訝そうな顔をしながら、薫へと問いかける。
526227 ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:33:40 ID:sfRSSoFc

「あ、その……お、降ります! 薫姉っ!」
「ふふっ……。それにしても、あの子守唄、ちゃんと覚えていたんだね」
佳乃は慌てて、さっきとは違う勢いで、薫の背から降りようとする。
だが薫は、佳乃を下ろそうという気はまったく無く、嬉しそうに佳乃に向かって話しかける。
「え……あ、こ、子守唄……」
「う、うむ。儂も薫も、あの歌声に誘われて、ぐっすり眠ってしまったぞ、うむ」
薫の言葉に、佳乃の動きが一瞬、ピタリと止まった。琢磨が視線を逸らしたまま、相槌をうつ。
そう、佳乃の子守唄で眠りについていたのは、幸乃だけでは無かったのだ。
「で、あれから本当に、ひと晩寝ずに頑張ったの? お若いね、お二人さん」
だが薫は、そんな佳乃に追い討ちをかけるように、ふたたび悪戯っぽく微笑む。
「い……あ、その……」
――あの日は信幸様も眠ってしまったから、続きは出来ませんでした!――
と叫ぼうとしたが、さすがに墓穴を掘ることになるので、咽喉まで出かかった言葉を飲み込む佳乃。
「なあ佳乃。幸乃に弟とは、どういう意味なのだ?」
「その、えっと……か、薫姉っ!」
薫から返事が無い絹代は、業を煮やして佳乃へ直接問いかけた。
佳乃はしどろもどろになりながら、薫に向かって叫びながら思った。

――もしかしたら、お義母さまにも、いつも聞こえてらしたのかしら……?――
527つぶやきマボ ◆MABOUp7up. :2005/06/05(日) 05:36:45 ID:E0jM6Apu
>504-526
で、もう少し続いたりしますです〜。
528名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 12:51:36 ID:1hStJ067
>527
どもども、乙です。
529名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 23:35:14 ID:PostdOyO
>>495よりもっと詳しい所ハケーン
ttp://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1117108202/l50
530名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 17:10:28 ID:cLFlQvYU
要するに「放きゅ」の人はバックレこいたって事?

まあ、無理ないか。「エロ書きません」言ってたから、ここは居辛かったのかも。
言動の節々に痛いところはあったがいい腕してる人だった。
転居届も書かずに消えるのは続きを期待して待ってた人をおもっくそナイガシロにしたって事は忘れないようにして、な。
新天地で頑張ってクレイ。
531名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 18:46:58 ID:GkDwbgGJ
   ,,-"゛ ̄ ̄ ゛"、
  /_        \__
  i| ./ /─ノ ii─i  )|
  i|ノ  レへ/_ノ |ヘレノノノ   萌えトンキーがチャーハン作るよ!
  )  ||;;ii|   |;i| ||人
 彡ノノ人""┌, ""人ミ
   ,ゝ⌒ゝ._-_,.イ⌒ノ
   ゝ,(⌒)∧/_,フ _    。・゚・⌒)
   人__ノ゚  ゚人_(_ノノ)━ヽニニフ))
 ( ̄ 入 ~~~ノ\
  フ/ \~~~   \
  └i         ノ
   人      人
 /( ノ〜〜⌒\ )\
(_/        \_)
532名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 20:11:50 ID:q3Row6El
よかったね
また一人いらない子が消えて
533名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 20:43:58 ID:6l+RtCGf
>530
>言動の節々に痛いところはあった
イタイ香具師がいなくなってよかったじゃんか。
534名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 20:45:43 ID:92rwzptp
>>530
悪意を持って見てるから、そんな解釈しかできんのだよ。

投稿日とか、よく見てから書き込みなさい。
535名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 20:51:17 ID:q3Row6El
>>534
信者による擁護乙
別に作者の一人や二人死んでもいいんじゃね?
536名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 23:37:56 ID:seoIPQhY
本日のあの人→ ID:q3Row6El
537名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 00:42:16 ID:MetXRoOL
最近、書き手が誰も来ないけど、皆他のスレに移ってしまったのかな・・・。
538名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 11:24:36 ID:JmxyMo/U
SS職人が常に人外っ娘のネタを持ち、書く時間や気力があるとは限らない。
そのうちそれらが揃うだろうから、それまで気長に待とうや。
単なるネタ不足なら、>455から見られる「スウィート一族」なんて素でエロくていいんだけどな。
あと、最近のこのスレの雰囲気もあれだけどな。
特定の雑談ネタ禁止だとか、死ねだとか、イタイ香具師とか。
でも一番問題なのは「ガープスネタはやめにするよ」と言って、ガープス妖魔夜行のSSそのものをやめた389だったりしてな(w
539名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 13:46:24 ID:D+8220//
とゆーか、最後に投下されたのが2日前だってのに、それをスルーして
“最近書き手が来ない”と言うのもどうかと思うが。
540名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 20:52:36 ID:KggzXg6Q
>>538
>あと、最近のこのスレの雰囲気もあれだけどな。
実際は一人が頑張ってるだけだがな。…荒らしに負けないスレ作りには何が必要なんだろうな。

>でも一番問題なのは「ガープスネタはやめにするよ」と言って、ガープス妖魔夜行のSSそのものをやめた389だったりしてな(w
それは言えてる。漏れはあれがガープスネタとは知らなかったが、純粋に話を楽しめたからな。
541名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 22:00:21 ID:lRTlsN5k
>530
>言動の節々に痛いところはあった
 痛いってんなら、いなくなってせいせいしただろ?文句を言わないように。

>転居届も書かずに消える
 勝手に変なルールつけるなよ。そんなに続きを見たければググれ。あの板が
出てくるぞ(多分)。

>期待して待ってた人をおもっくそナイガシロにした
 プロですら未完も珍しくないのに、別にトーシロのSSなんていつ中断する
かわかんねーだろ。もともと未完になるかもしれないんだから中断に文句を言
うのはおかど違い。だいたい385が言うようにこちとら小説を書くマシーンじゃ
ねぇんだよ。書くも書かないもこちらの自由だろ?

 そもそも、384の「小説以外の雑談はノイズだから読みたくない」って権利を
尊重して「読みたくないネタを書かない」ことにしてやったんだ。かわりにこ
っちの権利も一つ認めるのが筋ってもんだろ?だからこっちは「よけいなイチ
ャモンつけるスレには書きたくない」って権利を行使して「書きたくないスレ
には書かない」ことにしただけじゃんか。お互い一つずつ権利を行使しただけ
なのに、何で文句言うのかワケワカランね(プ

 あと384は「角を矯めて牛を殺す」という言葉を心に刻み給え(w
542名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 22:30:21 ID:lyJGztY3
本人面して書いたら本物に迷惑じゃないかなあ
543名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 22:35:32 ID:295gQPJu
>>384も「そういう人がいるかもしれない」と書いているだけなんだが。
あと2ちゃんねるは角を矯められた程度で死ぬ牛は生きていけないというのが基本なんだから打たれ弱い職人は来ないほうが文字通り身のため。
544名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 22:40:32 ID:ohKqXmp0
いい感じに荒れているな
よかったなお前ら
このまま作者どもを追い出してやろうぜ
作者どもは死んだら神になるんだ
545名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 22:48:01 ID:waFD6Ds/
本日のNGワード ID:ohKqXmp0
546名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 22:48:28 ID:RnWVEhF9
本日のあの人→ ID:ohKqXmp0
547名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 23:24:23 ID:ohKqXmp0
質問だ
お前らは鬱展開って好きか?嫌いか?
ここの作者どもは鬱展開が好きで仕方が無いみたいだがな
よく人が死ぬし
548名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 23:54:59 ID:i71FS4v5
ハードSな俺は無問題
549名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 23:59:35 ID:KCsub1mA
テメェみてぇなトーシロにゃ判らんだろーがな。
物語ラストの感動を得るためにゃ障害の克服ってのが必須なのよ。
つまりは空腹は最良のソースであるってわけよ。
甘やかされて育ったテメェみてえな物体の痴脳にゃ理解できないだろーがな。
人死には簡単に不幸や危機を演出できる。
ふぅむ、言われてみればちと安易に頼りすぎるて馬鹿一になってるかもな。
550名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 00:02:40 ID:295gQPJu
>>540
どんなネタふりであろうと、このように荒らしにレスをする住民が消えない限り荒らしもまた不滅ということだね。
551名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 01:21:12 ID:OpsmUi0g
>530
>「エロ書きません」言ってたから、ここは居辛かったのかも。
これってエロじゃないのか?
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1108567887/n44-49
552名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 01:35:04 ID:vEw0wMGq
本日のNGワード ID:OpsmUi0g
553530:2005/06/08(水) 14:41:17 ID:ACFpmRYa
>>541
なんていうのかなあ、続きを期待していた人=>530(というか俺)だなんて一言も書いていないでしょ。

真っ先に連想すべきは真っ先に「ツボだ」って書いた>>161とかドキドキしてた>>165みたいなファンの人とか、
名作「ささがにの糸」を書いた>>254さんとかでしょうが。
それらの人になにかいう事はないんですか?って意味。
全然別の人から呈された苦言で、そういう人も何もなかったみたいに切り捨ててどっかいっちゃって平然としてられるんですかい?
それって最大級にイタイ人格だぞ。
転居届けという言い方がマズかったかもしれんが、これはルールというよりマナーでないかい?人としての。

確かに俺は「放きゅ」を「エロくないからいなくてイイや」と否定したし、>384も(部分的かもしれないが)そうかもしれない。でも、そうじゃない人もいっぱいいるんだってこと。
目先の一握りに目を奪われてそういう人をないがしろにするのかよ、って言いたいの。
一人の書き込みはイコールスレの総意じゃないってことわかってるのかね。不特定多数による匿名の書き込みによって成り立つ2ちゃねという場所での振舞い方がわかってないよアンタ。

ここは世間のしがらみとは無縁の場所で、上司や取引先に下げたくもない頭を下げなければいけない、みたいな礼儀は忘れて無礼講でいいと思う。でも、謙虚さってそういうモノとは別のレベルで存在するものじゃないの?
アンタからはそういうのが全然感じられないんだよ。ガキみたいに「俺を理解しろ受け入れろ」って言ってるだけ。
ま、アンタみたいな偽者に長々話してもしょうがないか。

それと、プロ作家の打ち切りは「採算が合わない」って理由で編集側から言い渡される方が多いぞ。作家だって出せるものなら出したいんだよ。そうしないと、メシが食えないだろw

俺ばっかしゃべって「黙ってろ」いうのもフェアじゃないな。言いたいことがあったらもう一レス分語れ。ないならいいけど。それでこの話題は終わりにしよう。
誠意ある対応を望む。
554名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 17:31:59 ID:XEzqkPMD
>>553
人外万歳まで読んだ
555名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 18:25:08 ID:JW9DCCAn
>>554
お前付き合いいいな。
俺なんか序盤の「お兄ちゃんの子供が欲しい」までしか読んでないぞ
556名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 18:31:17 ID:G8O2v0s6
>>555
そこまで読んだだけでもたいしたもんだ
俺なんか「今夜はお兄ちゃんと寝たいの」で挫折したよ
557名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 19:31:32 ID:X/IQHBVi
>554-556
軽くあしらってるつもりらしいが、お前らのほうが>553よりずっとウザい。
558名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 19:41:48 ID:JW9DCCAn
>>557
あふんうふんまで読んだけど途中で飽きた
559名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 19:59:52 ID:VGxnHjU5
煽りには早い反応だこと
560名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 20:11:23 ID:JW9DCCAn
遊んでほしそうだったから(・∀・)
561名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 20:50:24 ID:EYiLMjag
お嬢ちゃん、こっちでおじちゃんと一緒に遊ばないかい?
562名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 20:51:47 ID:FM0Aput/
>>553
( ゚Д゚)ポカーン
あまりの自分勝手さにいちいち反論を書く気にもなれないな。
お前の2chじゃないんだ

「不特定多数による匿名の書き込みによって成り立」ってるんだから
無言でスレからいなくなるのもその人の勝手だぜ。
563名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 21:37:33 ID:aWtP4pfU
>>550
「荒らしにレスをするのもまた荒らし」とはよく言うが、
ここまで来ると彼らも本物の荒らしじゃないかって思えてくる。







これで実は全部一人の自作自演だったりしたらマジで脱帽もの。
564名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 21:54:12 ID:DXpGkXeC
いい感じだな!お前ら!
勝手に荒れてくれて正直楽だぞww
565名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 22:04:18 ID:jKlF7TkY
本日のあの人→ ID:DXpGkXeC

「あの人」とその他の荒れてる人々との差は
「意見は合わなくとも、曲がりなりにも会話ができる」という点だろうなw
566名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 22:07:25 ID:DXpGkXeC
>「意見は合わなくとも、曲がりなりにも会話ができる」という点だろうなw

荒れてる事には変わりないと思うが
567名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 22:09:44 ID:U1WFtuXd
わ! なになに!?? 荒れてるの!? 荒れてるの!!???





もっと激しく荒れなさいよもまいら!!!!!!1!11!!!ヽ(`Д´)ノ
568名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 22:15:02 ID:m0Ys+YJK
>「放課後の吸血鬼」の人
「いなくなった」とは言っても、転居先は>455で紹介されて板だし(というか、
そもそも古巣に帰っただけ)、ラ板の百鬼スレに紹介してるし、そのうち誰かが
気付くだろうって楽観してたのかもな(実際に>529みたいなのが報告してる)。

しかし、このスレに何も書きこまずにこのスレを荒らす>389、なんと恐ろしい奴よ(w
569名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 22:57:07 ID:JGr7jvEn
ついに自分を荒らしと認めたか負け犬w
570名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 23:07:06 ID:6nO8EOr2
>>563
2chに住み着く妖怪だと思えば別段。
ただ職人氏のSS投下の邪魔だけしなければね。
571名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 23:07:31 ID:Ec6QcoMu
待てよ。ひょっとしたら>529こそ別人のふりをした香具師本人なのかもしれん。
一応は「転居した」という事と「転居先」を告知してるわけだし。理由として
考えられるのは、バックレたのを恥じたので本人として出られぬからとか。

いや、香具師のそもそもの目的はこのスレを荒らす事ではないかとも思える。
つまり、最初からバックレる予定だったのではないか?
痛い香具師を演じて人格に対する反感を募らせつつ、それなりのレベルの作品を
提示してそれを中和する。然る後に、何の連絡もせずに作品をなくせば、残るの
は人格に対する反感のみ。しかも反動でそれが何倍にも増幅される。その結果と
して、何もしないでこのスレをグダグダに荒らす。今頃香具師はROMってほく
そえんでいるに違いない。
572名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 23:10:07 ID:DXpGkXeC
俺が言うのもなんだけど…お前らも相当病んでるぞ
じゃ、俺は退散するか…
573名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 23:47:02 ID:vEw0wMGq
NGワードに追加、ID:Ec6QcoMu

あと10分だけどw
574某880:2005/06/09(木) 00:52:47 ID:V/7MPuNC
ちょっと宣伝書き込みになってしまって申し訳ないですが
一応こちらで頂いたリクエストでしたので、報告を。

「かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ」スレにヴィーヴルの話を投下してきました。
宜しかったら読んでやって下さい。

>433さん
「爆/笑/エ/ジ/プ/ト/神/話」購入してきました。
ついでに、他にもあったこの本のシリーズも何冊か。
何故かインドとケルトが絶版になってて手に入らないのが悔しい。
801ネタ満載なのは良いんですが、このスレ的には使えませんねw

>227 ◆MABOUp7up. さん
GJ
操は守られた…の?w
今後誰と誰がどのようにハァハァになるのか、予断を許さない感じが良いですね
続き期待してお待ちしております。
575名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 22:14:28 ID:EPEqDuWb
>574
>801ネタ満載なのは良いんですが
ほう、兄さんイケるクチかい?ならこんなのはどうだい?
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1114970955/-100
576名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 23:48:58 ID:EPEqDuWb
ここまで荒れたら、もう放きゅの人は戻ってこれないだろうね。

で、ネタを持ってきたんだけど、誰かこの辺をきちんとしたSSにできませんかね?

【人魚】
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1039105564/n16
 及び
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1038312695/n131

【メイドロボ】
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1038312695/n70

【洋大×麦】
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1038315570/n27
577名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 00:56:43 ID:Snp5ep3s
>576
人のネタで書けって、そのネタを書いた人にも
職人さんにも、失礼じゃないか?
ここで出て来た話ならまた別だろうけど
578名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 01:08:06 ID:OwNgjU5X
>>577
メイドロボは私の書いた奴ですw
579名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 01:16:00 ID:mfROgszL
すると、人の出したネタで作品作る(放課後の吸血鬼の女郎蜘蛛⇒ささがにの糸)なんて失礼極まりないな。
このスレで出たならOKで、他のスレなら無条件で却下ってのは正直どうよ?
580名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 01:30:04 ID:mfROgszL
放課後の吸血鬼もそこで出たネタが元みたいだよ。
黄昏学園
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1038317313/n19-20
魅子と美姫
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1039105564/n52-58
真理華?
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1038312695/n148
>577の理屈で言うなら、放きゅの人は失礼極まりない香具師ってことだ。
581名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 01:40:00 ID:OwNgjU5X
まとめ厨として活動してたあの頃、懐かしいw
58211-740:2005/06/10(金) 01:45:03 ID:WC2T+Is4
>>579
んー…「放きゅ」のアミさんに影響(よーえんな半蜘蛛・半女)は受けたけど、
キャラも世界も一応別なつもりだったんだけど…。(>>253参照)
放きゅが終わってしまったことは残念だけど、作者氏をとやかくいう気はないです。

最近は古事記の豊玉姫をなんとか人外エロにできないかと頑張ってるけど、
いまいちうまくいかない…orz
583名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 01:50:42 ID:mfROgszL
>581
え、ラ板・卓ゲー板の百鬼スレで活躍した御本人?うっわ〜。なっつかしいなぁ〜。
たまにネタがあってもだれもあっちに転載しないんだもん、てっきりもういないんだと思ってたよ。
そーいや、ときスーが潰れてからもう2年なんだよな。
584名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 01:56:17 ID:mfROgszL
2ちゃんで書き込みの時に著作権の放棄みたいな文章でてくるから、あくまでネタとして利用するくらい良さそうに思うよ。
本人がちゃんと作品を書くとか明言してるなら別かもしれないけど。
あと、あれはダメ、これもダメ、ばっかりじゃSS書く人を締め出すばかりだと思う。
585名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 07:58:04 ID:Snp5ep3s
別に放きゅの人とかをとやかく言うつもりはない
なんか、職人さんにあれこれ言いたいこと言うくせに
あれ書けこれ書けって注文ばかり多いなと思っただけ
本人たちがいいならそれでいい
586名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 21:07:25 ID:BnMKKUFk
>581
お久し振りです。その節はお世話になりました。
あのメイドロボのネタってまとめ厨さんご本人だったとは存じませんでした。
ときスーの中でも萌え且つ泣きでいい話ですね。
ちなみに【人魚】と【洋大×麦】は私のネタです。
ちゃんとしたSSにするんでしたら御自由にどうぞ。
587某880 新しい遊び〜ピクシー〜:2005/06/10(金) 22:55:33 ID:1S7X4qJt
なんか、面白い事無いかな。
私は屋敷をぶらぶらと飛び回りながら、面白そうな事を探している。
でも、みんな忙しそう。
シルキーはヴィーヴルに掃除の仕方を教えるのに忙しいって言うし
アルケニーは遅れ気味の裁縫を済ませるのに忙しいっていうし
レプラホーン達はトンカン靴を作るのに忙しいし
猫又のジイさんは暇そうだけど、いっつもぼーっとしててつまんないし。
そしてこういう日に限って、誰も遊びに来ない。
「むー、つまんないよー」
ぷーっと頬を膨らませ、私はふらふらと飛び回る。
「こうなったら、最終手段!」
私はここの「主」の部屋へと向かった。
普段はおしゃべりに付き合ってくれるのに、
夜は「色々あるから」と言って構ってくれない。
確かによくわかんないけど、いっつも夜に「色々」やってるみたい。
でも今日は誰も来てないしみんな忙しそうだから、たぶん一人だ。
なら、おしゃべりに付き合ってくれるかも。
私は「ピクシーの入室禁止」と書かれた紙の貼ってあるドアを開け、部屋に入

った。
588某880 新しい遊び〜ピクシー〜:2005/06/10(金) 22:56:04 ID:1S7X4qJt
「……むー、なんだよー」
寝てる。まだそんなに夜遅くないのに。
そういえば、今日昼にストラスが来て、なんか「薬」を置いていったっけ。
「じようきょうそう」とかなんとかに効く薬だって言ってた。
それを飲んで寝ちゃったのかな?
「おもしろくなーい。おーきーろー」
耳元で叫んでも、布団を剥いでも、でっぱった腹を蹴飛ばしても、起きやしな

い。
つまんない。ぜんっぜんつまんない!
「およ?なんだあれ」
ふて腐れる私の目に映ったのは、なんか「パンツ」が大きく膨らんでる変な光

景。
なんだろう?
寝てるのにパンツの中に何を隠してるんだ? 私は好奇心で、パンツを剥いでみ

た。
「おお〜! なんだこれー!」
中から、私の身長よりちょっと小さいくらいの「棒」が飛び出してきた。
天井に向かってまっすぐ立つその棒は、どうやら彼の身体から生えているみた

い。
「こんなのあったっけ?」
これが「男」の大切な物らしいのは、なんとなく知っている。
けど、こんなに大きかった?
いつも見てるけど……これだけ大きければ、剥いだパンツみたいに服の上から

でも解ると思う。
589某880 新しい遊び〜ピクシー〜:2005/06/10(金) 22:56:34 ID:1S7X4qJt
「なんなんだろう?」
私は何となく、突いてみた。
ビクッ
棒が、なんか動いた。
「……面白いかも!」
私はエイエイと、軽くサンドバックを叩くみたいに突いてみた。
叩く度に、棒がピクピクと反応する。
「面白い!」
私は夢中になって、何度も突いた。
突くたびに反応し、気付けば少しずつ大きくなっているような気がする。
こんなおもちゃを持ってるなんて! 教えてくれないのはずるい!
「……あっ、そうか。みんな夜に「これ」で遊んでたんだなぁ」
私は思い出した。夜になるとこの部屋にスキュラやアルケニーがやってきて
「これ」を手でいじったり舐めたり口に入れたりして「遊んでた」のを見た事

がある。
いつも夜はこの部屋に入るなって言われてるけど
入るなと言われて入らないのは面白くないから、何度かこっそり入った事があ

る。
部屋ではなんか、二人が裸になって、カッパ達がよくやる「相撲」みたいなこ

として遊んでたけど
なんか見ててもよく解らないから、すぐに出てっちゃったんだ。
だけど、あれは「これ」で遊んでたんだな。
なんだ、もっと早く気付けば良かった。
よし。折角だから、今度は私が「遊ばせて」貰おう。
良い事に、薬のせいかぐっすり寝てて起きる気配はないから、怒られる事もな

さそうだし。
でも、どうやって遊ぶんだろう?
590名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 22:56:44 ID:OwNgjU5X
あの頃はIDが無かったから、一人でアホな程ネタを書き込みまくってたなあ。
優しい死神とかスウィート一族とかミニスカサンタとかw

あの掲示板にまとめたネタって、小説に使うなり、セッションに使うなりご自由にってスタンスだったし、
好きな様にSSのネタにしても構わないと思うけど。
少なくとも自分は、そのネタを使って、誰かSSを書いてくれないかって期待してた。
591某880 新しい遊び〜ピクシー〜:2005/06/10(金) 22:57:06 ID:1S7X4qJt
「ん〜……やっぱり、手でいじって舐めて口に入れればいいのかな?」
私の身体では、口に入れるのは無理みたい。だけど「いじって舐める」は出来

るかも。
私は色んな所を手で触ってみた。
触るたびに、ピクッと動くのが面白い。
「お、ここなんか凄く反応が良い」
私は触りまくる中で、反応が良い場所を見つけた。
一番先っちょの、穴が空いている部分と、
キノコの笠みたいに、くびれたところ。
「よーし、同時攻撃だ、くらえぇ!」
私は手で笠のくぼみをいじり、舌で先っちょの穴を舐めた。
凄い! 今までの中で一番ピクピクが激しい!
私は夢中になって身体を棒に押しつけ、手と舌を動かし続けた。
動きが激しくなってきて、更にさっきまでよりまた棒が大きくなったような気

がする。
「んっ……なんか、変な気分……」
私は何かに取り憑かれたように、この遊びに夢中になっているのに気付いた。
手でいじるだけだったのに、腕全体を使って抱きつくように擦り初め
舌だけで舐めていたのに、顔をくっつけるように夢中になって穴の中に舌を入

れ始めている。
そして胸とか脚とか、身体を棒に密着させて、私は上下に身体を動かし始めて

いる。
592某880 新しい遊び〜ピクシー〜:2005/06/10(金) 22:58:23 ID:1S7X4qJt
「あっ、んっ、なんか……いい。よく、わかんないけど……なんか、いい」
私はこの遊びに、かなり興奮している。
楽しいとか面白いとか、なんかそういうのとは違う興奮。
身体が燃えちゃうんじゃないかってくらいに、熱くなってるのが解る。
「あ、あ、いい、なんか……きもち、いい!」
気持ちいい? これが、気持ちいいって事?
そういえば、二人で遊んでいる時のスキュラやアルケニーもそんな事言ってた


そっか、みんなこの「気持ちいい」事を私に内緒でやってたんだな!
こんな事、こんな気持ちいい事、なんで黙ってたんだよ!
私は棒に抱きつき、激しく上下に動いて身体をこすりつけた。
特に脚……股間のあたりがこすりつけてて一番「気持ちいい」。
「きもちいい、きもちいい! いい、いい!」
夢中だった。息を荒げながら、ビクビクと脈打つ棒に、私は必至にしがみつい

ている。
593某880 新しい遊び〜ピクシー〜:2005/06/10(金) 22:59:14 ID:1S7X4qJt
そして、突然「それ」は起こった。
「きゃっ!」
先っちょの穴から、白い「液」がドピュドピュ飛び出してきた。
「やー、ベトベトー」
その液は、私の身体に降りかかり、全身ずぶぬれにされてしまった。
「……う、なんか苦いよこれぇ」
ちょっと舐めてみたら、苦かった。あまり美味しくない。
でも……なんか「癖になる味」がする。
特にこの臭い。栗の花によく似た臭いが、私の頭をクラクラにさせる。
「……まだ起きないよね。じゃ、もう一回……」
私は全身ずぶぬれのまま、へたり倒れた「棒」を抱きかかえた。
ちょっと身体をこすりつけると、すぐにムクムクと大きくなる。
身体が濡れているせいで、動かすのも滑りが良い。
「あは、いい、面白い……気持ちいい……」
私は新しく覚えた遊びを、無我夢中になって繰り返した。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
594某880 新しい遊び〜ピクシー〜:2005/06/10(金) 22:59:45 ID:1S7X4qJt
「まだ疲れはとれませんか?」
朝。ヴィーヴルが朝食を並べながら彼女の「ご主人様」に尋ねている。
「んー……ストラスの奴、持ってくる薬を間違えたのかなぁ……」
なんでも、昨日飲んだ薬は「せいりょくかいふく」が主な成分だけど
その効果が「効き過ぎた」とか、そんな事を話している。
「まったく、「夢精」するなんてもぉ……洗う方の事も考えてよね」
シルキーがなんか怒っている。
もしかして……昨日「遊び」終えた後、そのままにしちゃったからバレたのかな?
でも、なんか怒られてるのは私じゃなくて、ここで一番偉いはずの彼。
つまり……バレてはいないみたい。
「もう一度、ストラスと処方を検討してみようかな」
ということは、またぐっすり眠って起きない、遊べるチャンスがあるって事!
楽しみ、すっごい楽しみ!
私は今から、新しく覚えた遊びを又したくて、うずうずしていた。
595某880:2005/06/10(金) 23:09:56 ID:1S7X4qJt
以上です。今回のは短めにさらっと。

すみません、コピペに失敗して改行が変になってしまったorz
メモ帳で「右端で折り返す」にチェックしたままコピペするとこーなっちゃうのよね…
大変失礼しました。

一応捕捉。
当方の「ピクシーの大きさ」設定ですが
作中にもある通り、「アレの最大級よりもちょっと大きい」くらいなので
身長は20cmくらい。手乗りにしてはちょっと大きいかな?
肩に乗せるのにはちょうど良い大きさかな、くらいです。
あと、ピクシーの性欲については……いちいち考えないのがエロい大人の正しい生き方かとw

>575さん
>ほう、兄さんイケるクチかい?
いけないクチですよ。つーか、そういう意味じゃないYo!
ネタとして「だけ」なら801は楽しめますけどね

そろそろ、日本妖怪系とか書きたいなぁ。
596名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 23:13:08 ID:OwNgjU5X
>>595
割り込んでしまって申し訳ないです。
597名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 23:18:51 ID:pFTMpsFK
>>595
リアルタイム投下を初めて見た。そんなことはともかくGJ!
性欲を自覚できてないっのがイイ!!(・∀・)
598某880:2005/06/10(金) 23:22:18 ID:1S7X4qJt
もう一つ捕捉忘れた。

作中に名前だけ出る「ストラス」ですが
薬草学と星占術に長けた堕天使の王子で、
まんまフクロウが王冠を頭に乗せた姿をしています。
作中設定では、主人公の薬草学の師匠でもある、という事になっています。

>596さん
いえ、お気になさらずに。

>597さん
自覚したらしたで、一悶着ありそうで面白そうですがw
でもこの方が、ピクシーらしいかなと思ってます

自分の場合世界観を作っちゃってるので
今回話題になっているようなネタを使えないのは残念。
妖魔も百鬼も、ルールと小説そろえてるのにw
でもネタフリは歓迎。書けるかどうかは別にしてw
599名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 00:02:46 ID:vrG7sPSd
ピクシーに無理やりモノをねじ込む拡張エロを切に希望
600名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 00:18:19 ID:dD9vGr7y
裂けちゃうよ。エロじゃなくてグロになっちゃうよ
601名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 00:25:57 ID:vrG7sPSd
そこはファンタジーで。
まあピクシーのサイズなら指を入れるだけでも十分ひぎぃ!な気はするが・・・
602名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 00:27:58 ID:fpTYS5++
>ピクシー
避けなくても、身体の形が完全に変わっちゃうからグロだね。
氏賀Y太の「肉色の水」で、マッドサイエンティストに軟体動物にされた女の子が、ガスボンベ突っ込まれるシーンあったけど、あんな感じだね。
603放課後の吸血鬼:2005/06/11(土) 00:34:38 ID:fpTYS5++
えーと、「放課後の吸血鬼」ですが、このスレの連載の続きはここにあります。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2029/1108567887/n42-52
以下は、さらにその続きです。
604放課後の吸血鬼:2005/06/11(土) 00:35:35 ID:fpTYS5++
翌日の昼休み。屋上で待っていても哲晴は来なかった。
不信に思った真紀が4階の仮教室に行ってみると、横口に昼休みまではいたいわれた。
行き違いかとも思って真紀が再び屋上に戻ると、中沢と書かれた上履きの片方と血文字が残っていた。
「夕刻5時、ここで待つ」
そこにはそうで書かれていた。

5時少し前に、夕暮れの屋上に再び真紀はあらわれた。
夕日をバックにして女郎蜘蛛が待っていた。
アミは糸で縛られ眠らされた哲晴をその腕で抱きしめている。
「あーら、早かったわね。やっぱり大事な彼氏だもんね」
哲晴の首筋には、アミの噛みあとがある。
「あ、そうそう。あなたの彼氏、とっても美味しかったわよ」
真紀は、アミを睨む。
「返して欲しければ、ついて来なさい」
アミの背後には、空間の亀裂があった。
真紀はそれが何か知っていた。
真紀達の組織、暁学園と対立する組織黄昏学園。
あれは黄昏時にのみ学校の中に現れる、黄昏学園への通路だ。
アミは哲晴を抱えたままその中へ飛びこむ。
真紀もそれに続く。
その背後で通路は閉じた。
605放課後の吸血鬼:2005/06/11(土) 00:36:19 ID:fpTYS5++
黄昏学園は、亜空間に存在する木造校舎だ。
真紀は、哲晴を抱えたまま失踪するアミを追いかけた。
アミの足は速く、なかなか追いつけない。
アミが教室の一つに飛びこむ。
真紀もそこへ飛びこむ。
ポロン。ポロン。
そこには、自動演奏しているグランドピアノがあった。
一瞬気を取られている隙に、アミは教室を飛び出した。
ガラガラ、ピシャッ。
追いかけようとすると、ドアが閉まる。
「ここは私の教室です。特別授業が終るまでは出られませんよ」
そういう声がピアノからした。
グランドピアノが、四足の獣のように動き出した。
ピアノ獣はその巨体で突進してくる。
真紀は本来の姿を現して、それを回避する。
ポロン。ポロン。ポロロン。
ピアノ獣は催眠効果音楽を放った。
真紀の足が痺れて、動きが鈍った。
そこへピアノ獣が体当たりをかます。
真紀は吸血鬼の体力で、なんとかそれを受けとめる。
ピアノ獣はそのまま真紀を壁際まで押す。
すると、こんどはピアノの弦が弾けて真紀を撃つ。
ピシャッ。ピシャッ。
真紀の皮膚が裂け、血が流れるが、致命傷にはほど遠い。
606放課後の吸血鬼:2005/06/11(土) 00:36:34 ID:fpTYS5++
ピアノの上に、血塗れの女性の上半身が浮かび上がる。
このピアノの正体である、鮮血のピアノ弾きと呼ばれる妖怪だ。
「以外と頑張りますね。でも、いずれはこのまま力尽きてしまいますよ」
真紀は何か呟く。
「はい。なんでしょうか」
血塗れ女が顔を寄せて聞き取ろうとする。
真紀は首を伸ばして、ピアノ弾きの頬を伝う血を舐める。
「血を飲ませてくれっていったんだよっ!」
真紀はそう叫ぶと意識を集中した。
気を高めて眉間の前に集中して、それを叩きつける。
ドンッ
真紀の必殺技、気弾である。
血を飲まないと発動できないが、効果は絶大である。
バシュッ
ピアノ弾きは粉々に砕けて滅んだ。
ピアノ獣もただのピアノに戻り、真紀はそれを押し返した。
真紀は追跡を開始した。
廊下では、哲晴を抱えていないアミが待っていた。
「あら、早かったのね。じゃあ、次に行きましょうか」
真紀は逃げるアミを追いかける。
アミはそのまま校舎を飛び出てプールへと向かう。
黄昏学園の校舎の外は、山に囲まれた永遠の黄昏時である。
真紀がプールサイドに辿りついた時、そこにはアミの他に人影があった。
待って板のはゴムボールを抱えた首の無い少女。
「は〜い。久し振りね。真紀」
首無しの真理華だった。
「やっぱり、こんなのじゃ、首の代わりにならないよね」
真理華は鞠を空っぽの首に上に乗せて言う。
「だから、首をちょうだい。あなたの首を」
真理華は、手に半透明の刃を創り出して放った。
607放課後の吸血鬼:2005/06/11(土) 00:37:12 ID:fpTYS5++
ガンッ、ガンッ
刃は空中で弾かれた。
「やっほ〜。第7騎兵隊、参上っ」
「真紀先輩。助けに来ました」
魅子と美姫だった。
校庭を見れば、他の暁学園のメンバー達と黄昏学園のメンバー達が戦いを繰り広げている。
「ごめん。ここへの入口を開くのに、手間取って遅くなっちゃった」
「ここは、あたし達にまかせて、屋上にいる哲晴君を助けに行ってください」
「二人ともありがとう」
アミは壁を走って屋上に先周りしている。
真紀もそれを追って走り出した。
「さあ、二対一よ」
「大人しく降参すれば、命は助けてあげます」
真理華は鼻で笑った。鼻はないけど。
「一人だと思うの?ここはプールよ」
ザバァーッ
水面が盛り上がって、長髪でスク水の女半魚人が飛び出した。
「ナイス、タイミング。美奈萌ちゃん」
「真理華ちゃんは、あたしが助ける」
608放課後の吸血鬼:2005/06/11(土) 00:37:26 ID:fpTYS5++
美奈萌は、鋭い爪と牙を生やしている。
美姫も正体を現す。
美姫の黒々とした髪が緑色になり、肌も薄緑に変わる。
魅子も和服姿に変わる。
「木霊は、あたしにまかせて。美奈萌ちゃんは座敷童を」
真理華は、木霊の美姫に刃を投じた。
美奈萌は、魅子に襲いかかる。
美姫は、真理華の刃を葉手裏剣で相殺した。
魅子は、ポルターガイストでプールサイドの敷石を美奈萌に投げつける。

黄昏学園屋上。
木造校舎は屋根のはずなのに、そこだけコンクリの屋上になっている。
本来の住人の、飛び降り自殺した生徒の亡霊は、現在校庭で乱戦の最中だ。
哲晴は、垂直に張られた蜘蛛の巣に大の字に捕らえられている。
「さあ、決着をつけましょう」
アミは哲晴の前に立ってそう言い放った。
真紀は苦戦を強いられた。
互いに傷を与える回数は同じだが、真紀の方が傷は深い。
腕力はアミのほうが遥かに上なので、一撃の重さが違うのだ。
「ふふっ、いいザマね」
アミは真紀を嘲う。
真紀は、肩で息をして大分苦しそうだ。
「さーて、そろそろとどめと行きますか」
アミは、爪の生えた手を振りかざした。
そこから放たれたのは粘着の糸だった。
真紀は、身動きできなくなる。
609放課後の吸血鬼:2005/06/11(土) 00:37:43 ID:fpTYS5++
振り解こうと真紀は暴れるが、糸は緩まない。
「さて、さんざんやってくれた、お返しをしなくちゃね」
アミは、真紀に近づきその首筋に噛みついた。
ゴクリ。ゴクリ。
アミが真紀の血をどんどん飲んでいく。
「あはは。吸血鬼の血ってのも、美味しいわね」
アミが一息ついて、口を離した瞬間だった。
真紀がいきなり、バリッと糸を破りアミに抱きついた。
そして、真紀はアミの首筋にできた傷に口をつけた。
アミは慌てて真紀を引き剥がし、真紀に倍する力でその身体を抑えつけ睨みつける。
しかし真紀は、既に血を一口飲み終わった後だった。
バシュッ
真紀は不適な笑みを浮かべて、至近距離で睨むアミの顔をふっとばした。
アミを片付けると、真紀は巣に捕らえられている哲晴を開放した。
「ありがとう、真紀」
囚われていた王子様は、貧血気味なので真紀の腕に倒れる。
「えーと。できれば“お礼”したいんだけど…。大分吸われてふらふらでさ…。
 ごめん。また今度にしてくれないかな…」
「もう、そんな心配しなくてもいいよ」
真紀は、そのまま哲晴を抱き止める。
「これからもずっと一緒なんだから、チャンスはいくらでもあるよ。
 で、代わりに、まずはこれからもらうよ」
そう言って、真紀は真紅の唇で哲晴の口を塞いだ。
610放課後の吸血鬼:2005/06/11(土) 00:38:12 ID:fpTYS5++
校庭の戦い終った。
黄昏学園の者は校舎に立て篭もり、結界を張って篭城の構えをした。
暁学園側は、それを追撃するまでの戦力は残っていない。
プールサイドでは、緑の少女と和服の少女が倒れ、荒い息をしていた。
他に人影はない。
「美姫ちゃん。大丈夫?」
「はい。なんとか。敵が、火の妖怪だったら、危なかった、ですけど。
 それより、真紀先輩は…」
「今、妖気で探ったら、無事だったよ。蜘蛛女は、いないから、真紀ちゃんの、勝ちね」
「そう、良かった」
「さーて、誰か空飛べる人に、屋上に行くように言わないとね」
呼吸を整えて、魅子は起き上がった。
もっとも、屋上に迎えに行った妖怪は、すぐに引き返してきた。
曰く、今割って入るのは、野暮だ、と。
611名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 00:41:32 ID:fpTYS5++
ごめんなさい。嘘です。偽物です。事実無根の妄想です。
これは、放きゅの続きを勝手に書いたものです。
お目汚し大変失礼しました。
612名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 01:02:34 ID:lOScVZW9
>>601
普通に「ひぎぃ」で通じるものなのか?w
…俺は通じてしまったが…。

>>611
板の性質上別に否定される事ではないかもしれないが、
最初に>>611の内容を書けよ…
613名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 01:10:19 ID:Xs3WpzuT
まあ、メル欄にもこっそりと書いてあるわけだが
614名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 04:29:10 ID:LA1BVFTB
>613
気付かなかったよウワァァン ヽ(`Д´)ノ
615名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 08:27:39 ID:DF3lFZBp
そろそろ、次スレかな?
何KBで落ちるんだっけ?
616名無しさん@ピンキー:2005/06/11(土) 10:01:53 ID:vrG7sPSd
512kb
まだもうちょい頑張れるかな?
617名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 01:36:21 ID:B27vT9qQ
まとめサイトに勝手に続編が収録されちゃってるよ(w
618某880:2005/06/12(日) 01:47:59 ID:9g6TfB/K
事前注意
今回の話には、軽めですが「ひぎぃ」が含まれています。
苦手な方はご注意を
新しい服を彼女に渡す時、相談から持ちかけられた私は、正直彼女の話を信じられないでいた。
彼女は、「こんな事」とは無縁だと思っていたから。
「あの……話がよく解らないんだけど……」
混乱した私は、思わず尋ね返してしまった。
「だから、アルケニーが夜「あいつ」とやってる「遊び」を、私にも教えて欲しいの」
彼女は「遊び」と言っているが……彼女が言っているのは、間違いなく「あのこと」だろう……。
「遊びって、あれは服を作る為に彼の寸法を測っているだけで……」
むろん、それは建前。これでごまかせるなんて思ってはいない。
お互いが裸になって行う寸法の計測なんて……
しかし、相手が彼女、ピクシーならごまかせるかもと少なからず思ったのも間違いない。
「そうじゃなくて、その後。なんか色々遊んでるじゃん」
よく考えれば、私が寸法計測と称して彼と夜を共にしているその現場を、ピクシーが目撃していた事自体が問題だろう。
まさか見られているとは思わなかった。
いや……この館の住人や来客は一癖も二癖もある者達ばかり。
どこかで見られていても不思議ではないが……
そう考えると、私は急速に顔が火照ってくるのを自覚し思わず頬に手を当ててしまう。
「……どうしたの?」
私が顔を真っ赤にしている理由が判らず、彼女は私の顔をのぞき込み尋ねてきた。
「なっ、なんでもないわ」
務めて冷静を装うが、もはや手遅れ。
ただ彼女は私のあわてふためく様にさして興味がないのが救いではあるけれど。
「あ、あの「遊び」は、その……おっ、お互いの気持ちを確かめ合う、大切な儀式なのよ」
間違いではない。嘘は付いていない。
素直でない私が、唯一素直に彼を求められる、大切な時間なのは間違いないから。
「んー、なんかそういう難しい事じゃなくてさー」
眉を寄せ、頬を指でかきながら、ピクシーは単刀直入に切り出した。
「気持ちいい事してるんでしょ? それを教えてよ」
目眩がした。例えて言うなら、自分の娘に初めて性の衝動を告白された、そんな衝撃。
人間ではない、妖精のピクシーには大人とか子供とかの区別はない。
とはいえ、私は子供のようなピクシーにどう性教育すべきか、悩む。
もはやこんな事で悩まされる事があるなんて、誰が思うだろうか?
「あの……さ。まず、どうしてそんな事を知りたがるのか、そこから教えてくれる?」
そう、そこが肝心だ。
ピクシーが男女の情事に興味を持つようになったきっかけが。
私はピクシーから、昨晩彼に行った「遊び」……というか、「いたずら」というか、
彼女が男性器に興味を持ちつつ「自慰」も覚えてしまった経緯を聞いた。
なんというか……例えて言うなら、
自分の娘が自慰行為をしている部屋に入ってしまった時の母親、そんな心境。
ああ、例えにもなっていない気がする。私はかなり混乱しているようだ。
実は、私はもう一つ疑問があった。何故私に訊くのか?と。
これは話の経緯を聞いて解った。
彼女にしてみれば誰でも良かったのだが、
たまたま、彼女が私から自分の服を受け取るのが「昨夜」から最も近い時間であり
彼女が目撃した「彼の遊び相手」の中で一番先に出会ったのが私だった、ということだろう。
本来なら一番顔を合わせている彼に尋ねるのが早いのだろうが、
昨夜の事があって、彼に尋ねるのは流石のピクシーでも躊躇われたのだろう。
「……判ったわ。ちょっと待ってね」
私は覚悟を決めた。
好奇心旺盛な彼女の事だ。私が教えるのを渋れば、他の誰かに尋ねるだろう。
そして納得するまで様々な人に尋ね回る。
そうなると、私と彼の情事も言いふらされる事も考えられる。
それは絶対に阻止しなければ!
とりあえず私は、ソーイングセットから縫い針を二本と待ち針を一本とりだした。
色々と説明しようにも、私の身体は彼女と違いすぎるので
直接教えるしかないわけで……。
「まず、あなたの言う「遊び」だけどね……」
私は「性交」について、真面目に教えるかどうか悩んだ。
本来は繁殖の為に行う動物的な本能だとか、愛し合う男女の営みなのだとか
そのようなこと、彼女が理解できるとは思えない。
仮にある程度理解できるとしても、それはそれで問題がある。
ではなぜ、彼は数多の女性と性交するのか、と問われた場合。
むろんそれ相応の答えはある……と思いたい……が、やはり彼女を納得させるのはかなり難しいだろう。
そもそも、「自慰」に自覚がない。
となれば、「要点」だけを教えるべきだろう。
……本当にそれで良いのか自信ないが、とりあえずそれで納得させるしかない。
「究極に「気持ちいい」事をする、エッチな事なのよ」
エッチとかスケベとか、これは理解している。
何故ならば、彼女にしてみれば彼を罵る為の言葉として最適だから。
「あはは、なるほど。あいつそーとーにエッチだもんねぇ」
納得してくれた。納得された彼には申し訳ない気もするが。
「だから、やったりやられたりして良い相手と、良くない相手がいるの。判る?
あなただって、昨夜にやったような事を猫又やレプラコーン達やカッパ達にやってみたい?」
引き合いに出した彼らには申し訳ないが、
これも「正しい……かもしれない性教育」の為と勘弁願いたい。
「うーん……うん、なんとなく判る」
よしよし。ここまでは順調だ。
「それで、男はあの「棒」をいじられるのが気持ちいいの。
そして女は、「ここ」をいじられると気持ち良くなるの」
私は手に持った縫い針の先……むろん糸を通す側の先で、彼女の股間を軽く突いた。
「え、そうなの? そうだったかなぁ……」
自覚がないだけに、何が自分を気持ち良くさせていたのかがいまいち理解できていないよう。
「……試しに服を脱いでみて」
さて、本当に良いのだろうか。私はまだ罪悪感に似た戸惑いを感じているが
全ての事を丸く収める方法としてはこれが一番だと自分に言い聞かせ、
私は彼女に「自慰の仕方」を教える事にした。
「脱いだよー」
彼女は本来の姿をさらけ出す。
彼女の服を作るのでよく判るのだが、全てが成人女性の1/8サイズ。
バランスは申し分なく、特に腰回りのプロポーションは素敵だ。
ただ、胸が小振りなのが欠点なくらいだが、見る人が見れば「萌え」……なのだろうか?
「彼の「棒」に身体をこすりつけた時に気持ち良かったでしょ?
それはね、「ここ」がこすれるから気持ち良かったの」
どうして無意識に身体をこすりつけるなんて事を始めたのか、という説明は省いた。
ここは報せない方がよいような気がした。
大切なのは、「彼の棒」をイタズラしなくてもこの「遊び」は出来る、という事を教えるべきかと。
彼女の為に、そしてこれ以上彼が「夢精」をしない為にも。
私は女性器の突起部を縫い針で指し示し、気持ちの良い部分を教える。
「試しに、自分の指でいじってご覧なさいな?」
言われるままに、彼女は自分の突起をそっと触ってみる。
「あっ! なんか、ビクって来た!」
なんか楽しそうだなぁ……私も初めてってこんな感じだったっけ?
いえ、たぶん違うわね。
私は初々しい……と言うべきか迷うが、彼女の反応にちょっとだけ戸惑った。
「続けていじってみて。段々気持ち良くなってくるから」
素直に彼女は私の言葉に従い、指で時に弾くように、時に撫でるように、色々といじり回している。
「ん……ホントだ、なんか……変な気分……これ、こんな感じだった……」
無垢な少女に悪い事を教える堕天使。
今の私はそんな役回りのような気がする。
正確には、無垢な妖精に自慰を教える元人間の怪物か……あまり変わりないような気もしてきた。
「気持ちいいでしょ? もっといじってごらんなさい」
あ、ちょっと「お姉様」キャラ入ってるかな、私。
……ああ、どこかでこの状況を私は客観的に考えたいのだ。現実逃避と言っていい。
そうでないと、罪悪感が又沸々と湧いてきそうだから。
「いい、気持ちいい……」
これで、「気持ちいい」のメカニズムは覚えてくれたと思う。
ただ、これで終われないような気はしていた。
そして、それは的中する。
「でもなんか、物足りない……あの時は、もっと気持ち良かったよぉ……」
そうなのだ。あの時は彼の棒をイタズラするという行為あっての自慰。
その行為自体に無意識ではあるが興奮させられていた彼女は
ただ自分のものをいじるだけではあの時以上の快楽は得られない。
色々と納得させ、彼の棒の事を忘れさせるには、あの時以上の快楽を教える必要がある。
「だったら、片手で「ここ」もいじってみて」
私は縫い針で乳首を軽く突く。
言われた通り、彼女は片手で乳首を、片手で陰核をいじり悦に入っている。
私は空いたもう片方の乳首を、縫い針でまさぐっている。
「なんか、もっと気持ち良くなってきた……ねえ、私今すごいエッチなの?」
「ええ、凄くエッチよ」
そして私も。
私自身も興奮し始めているのが判る。判ってはいるが、今は彼女の事だけに集中しなければ。
「あ、なんか、お漏らし、しちゃってる……指が、指が、でも、とまんないよぉ」
恥ずかしさからか、彼女は泣きそうな顔をこちらに向けている。
しかしそれでも、指の動きは止まらない。
思っていた以上に、彼女は快楽に貪欲だ。
一言で言えば……淫乱。
もしかして、私はとんでもない事をしているのだろうか……。
「それはね、気持ち良くなると出てくる「蜜」なの。
濡れているせいで、余計いじりやすくて気持ちいいでしょ?」
でも、もう後には引けない。
「うん、ホントだ……いい、気持ちいい……」
こうなったら、「いく」ところまでいくしかない。
「指をね、その「蜜」が出てくる「穴」に入れてみて」
ぐちゅ、ぐちゅ。小さいが淫らな音が聞こえてくる。
「凄い! いい! 気持ちいいよ……あん、いい、んはぁ!」
夢中になって指を出し入れするピクシー。
初めてなのに、こんなに感じるなんて……。ピクシーとはそういう種族だっただろうか?
疑問には思ったが、目の前の現実を見る限りそうなのだろうと納得するしかない。
「でも、まだ足りない……足りないよぉ」
え?!
流石に驚いた。足りないとは何が?
答えは……本当に想像通りなのだろうか?
「……ちょっと指をどけてみて」
私は自分の想像が正しいかどうかの自信より、
本当にやってしまって良いのか、そこに躊躇った。
でも、ここまで彼女を淫らにしたのは私。責任は取らなくては。
私は待ち針の頭。玉飾りを一度口に含み、
そしてその玉飾りをピクシーが一生懸命指を入れていた穴へと近づけた。
「入れるわよ」
間違いなく処女の彼女には、少し大きい気もする。
しかし、適度な大きさの物が他にない。
私は意を決し、ずぶりと玉飾りを差し入れた。
「ああ! これ、いい! 気持ちいい!」
歓喜の声を上げるピクシー。これが入るなんて……しかも楽々と、気持ちよさそうに。
玉飾りの直径は4ミリ程。
ピクシーのサイズを人間に当てはめれば、32ミリ。
平均的な大きさなんて私には判らないけれど、「大きい方」だと……思う。
「あ、あ、もっと、動かして、ね、ね、もっと、あっ、んっ!」
私は彼女の言葉とは裏腹に、慎重に動かした。
彼女は処女。間違って彼女の「膜」を破ったりしたら大変だ。
私は指先で待ち針をくるくると半回転の往復を繰り返している。
「や、もっと、奥まで! もっと、あっ、ねぇ!」
もはや教わらなくても、彼女の本能が「自慰」を過激にしていく。
彼女はおそらく無意識に、腰を激しく動かし始めた。
そんなに激しくされると、危ない!
玉飾りは彼女の中を激しく前後にうごめいている。
にもかかわらず、私の指には「膜」の感触が伝わってこない。
もしかして、彼女達には「膜」が初めから無い?
出血も見られない事から、どうやらその説は正しい様子。
私はホッとしながら、ならばと彼女のリクエストに応えるよう
腰の動きに合わせながら前後に動かした。
「いい! 気持ち、いい! で、でも、でもぉ」
でも? ちょっと、もしかして……
「もっと、もっと、太いの、が、いい、もっと、太いのぉ!」
嘘でしょ?!
いくら膜が無いとはいえ、初めての自慰でこんな……
もう、こうなったらトコトンよ。私は身近にある物で、適当な物はないか見渡した。
あった! でも、これはちょっと大きすぎるかも……
「早く! ねぇ、早く!」
息を荒げ求めるピクシー。
迷ってる暇はなさそう。私は意を決して「それ」の頭に細い糸を巻き、傷つかないように準備を済ませる。
そして私は待ち針を抜き、糸を巻いた「鉛筆」を差し入れた。
「ひぎぃ!」
苦しそうなうめき声。やはり大きすぎたか?
鉛筆の直径は約7ミリ。これを人間サイズに置き換えると……56ミリ。やはりこれは大きすぎる!
「い……か……い、いい、これ……うごかし……て」
仰天した。古くさい言葉だが、これ以外に当てはまる言葉を私は知らない。
初めてなのに、こんなものを?
苦しそうだが、確かにピクシーは気持ちよさそうだ。
私はゆっくりと、少しずつ鉛筆を入れていく。
「い、いい……こんな……きもち……いい……の……あっ……はあっ!」
流石にこの太さでは激しく出し入れは出来ないが、
しかしそれでも、スムーズに動く。
ピクシーの息が荒い。気付けば、私の息も荒い。
もう限界だろう。彼女も私も。
「い……く! いく……いく、よ……」
興奮して力が入りすぎないように気を付けるのも、かなり厳しい。
私はまるで……いや、実際にピクシーを犯している。
その興奮、抑えが効かなくなってくる。
「い、いい、くっ……あっ、いく、はぁ! い……い、いく、いく!」
小さな身体をビクビクと震わせている。彼女が頂点に達したのが、見て取れる。
私はすぐに鉛筆を抜いた。彼女も私も、息絶え絶えに荒い呼吸をしばらく繰り返した。
「すごい……こんなに気持ちーことがあるんだね……」
レクチャーは終了した。
これで……良かったのだろうか? どうにも腑に落ちない。
私がしてきた事もそうだが、ピクシーのこの様子、ちょっと異常だ。
「ねぇ……もう一回、やってよ」
覚え立ての快楽に、歯止めがきくはずがない。
当然と言えば当然の要求が、彼女から成された。
「……いいけど、ちょっと待って」
我慢出来ない。彼女の姿を見て、私も歯止めがきかなくなる。
私は作業台を片づけ、「角」を綺麗に布巾で拭く。
そして掌に彼女を乗せ、もう片方の手には先ほどの鉛筆。
「さ、始めるわよ」
私は作業台の角に自分の淫口をあてがい、そしてピクシーの淫口に鉛筆をあてがった。
「「ああっ!」」
二人のあえぎが、私の部屋に木霊した。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
「いや、そう怒るな」
ふらふらの私がリビングに向かうと、そこには館の主と彼の薬草学の師匠……ストラスがいた。
「……どうしたの?」
色々と疲れた様子を出来る限り悟られないように、
憤慨している彼と、謝ってはいるが真剣みの足りない堕天使の王子に尋ねた。
「いやさ、こいつ薬の調合間違えたと思ったら、間違えたんじゃなくて「イタズラ」してやがってよ」
薬?
そういえば、彼は昨夜ストラスの薬を飲んで「精力回復」の為にすぐに寝込んで……
ピクシーにイタズラされたのにも気付かないで、「夢精」したと落ち込んでいたんだっけ。
「ふん。堕天使を信用する方が悪い。
まずその薬が確かな物か、自分で確かめようとせずなんとするか」
堕天使の言い分は全て正しい……とは言えないが、
薬草学を学ぶ身として確かめなかったのは失態だと思っているのだろう。
彼は堕天使の開き直りに、反論はしなかった。
「……で、どんな「イタズラ」だったの?」
なんとなく、私は展開が読めていた。
「性欲誘発剤だ。飲用すると、男性自身は影響ないが、「精液」に効果が現れてな。その精液を飲用すると女性側に効果が現れる」
あっ、やっぱり。そういう「オチ」なのね?
「てっきり薬を欲したのは、昨晩「やる」つもりでいると思ったのだがな。いや、実に惜しい」
「ったく。ま、結局被害が出なくて良かったけどよぉ」
いやぁ、被害はたっぷり出てるわよ。
今作業台の上で疲れ果ててすやすや寝ている、小さな恋人に。
「あの……さ、「もし」それを女性が飲用した時の効果って……すごいの?」
ピクシーの、あの乱れよう。判ってはいるが聞きたい好奇心を抑えられなかった。
「もちろん!」
堕天使は自信満々に胸を張り羽を広げ語る。
「一度「興奮」すると体力無くなるまで効果が持続し、痛みですら全て快楽に変換されよがり狂うぞ!」
「とんでもねぇもの飲ますなよ……」
ストラスの話によると、効果は一時的で「依存性」はないとのこと。
ならば……ひとまず安心して良い……のかな?
「なんだ……美しき蜘蛛の姫君。そなたも欲しいのか?」
「なっ、ばっ、バカ言わないでよ!」
数時間後、こっそり堕天使から薬の事を詳しく聞き出し分けて貰ったのは、
堕天使と私だけの秘密になっている。
いや、これはピクシーの事が心配だから
ちゃんと薬剤師に相談しておきたかっただけで……
近々、「浴衣の為に寸法を測る」事になっている。
気付かれぬよう、夕飯に薬を混ぜるにはどうすればよいか。
私はその事を一人悩み続けていた。
630某880:2005/06/12(日) 02:10:27 ID:9g6TfB/K
以上です。

とりあえず、>599さんのリクエストに応えるつもりで書きましたが…
ごめん、これが限界orz
まず、俺自身この手のに慣れていない(書くのはもちろん、読むのも)ので
どう表現して良いのかかなり手間取ったのと
あまり凄くなりすぎて、>600さんなどがおっしゃるように
「グロ」になるのは避けたかっのが原因かな。
このスレ的にはそっちを望む人も多いと思うのですが
自分の世界観だと、そっちは似合わないので
そのせめぎ合いがね…中途半端な物で終わってしまったかとorz

とりあえず、捕捉
作中にもありますが
ピクシーの大きさは「成人女性の1/8」として計算しています。
全開の時にも捕捉で書きましたが、彼女の身長は約20センチ
成人女性の身長を約160センチとすると、ピッタリ1/8という計算です。
で、成人男性の「最高膨張時のアレ」の平均が、長さ13センチ,直径は約2〜4センチ
コンドームの商品を調べたら、直径3.5センチがLサイズになっていたので
直径4ミリの玉飾りは処女のピクシーには3.2センチに相当するから大きめ
直径7ミリの鉛筆は5.6センチに相当するから、「ひぎぃ」になる
と、計算しました。
5.6センチって、指3本より大きいから…そうとうデカイ事になるよね?
ちょっと、俺がこの手の事を知らなすぎるので、おかしな点があるかもしれませんが
そこは「ファンタジー」って事で許して下さいw
631名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 02:15:56 ID:mKTn3VPj
とりあえず乙!
俺もピクシーでSSかいたことあるけど
難しかった・・ 
632名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 02:16:36 ID:ZEA+fr/v
グロは望んでいないのでGJ
そしてエロかったのでもう一つGJ
しかし僅か二日でここまで書いてくるなんて、凄いね・・・
633名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 05:23:22 ID:rIj9qYyr
今回メインのピクシーもさることながら
もう、アルケニーさんが可愛すぎてしかたないんですが
(;´Д`)ハァハァ
634名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 07:48:00 ID:YntoowIh
アルケニーってなんだっけ?アルケニモンしか思い打線
635名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 12:41:30 ID:g2qvz3MQ
>630
ぐっじょぶでありました。真っ昼間からハァハァさせていただきました。

>634
アルケニー・アラクネともいう蜘蛛の怪物。

昔々、あるところに見事な機織と刺繍が得意な、アラクネという女性がおりました。
アラクネは常日頃、「私の刺繍の腕は世界一ぃ! 女神アテナにも負けないわよ〜!」などと言っておりました。
そんな彼女の元へ、ある老婆がやってきて「女神の悪口は言わないほうがいい。謝ったほうがいい」と諭しました。
ところがアラクネは、「だって、本当のことだもん。なんなら、勝負してみせてもいいし〜」と答えました。
すると老婆の体から煙が立ちこめ、煙が晴れるとそこには若くて綺麗な女性が立っていました。
その女性はアラクネに向かって言いました。
「ほっほっほ。そこまで言うなら、勝負してあげましょう。人間の分際で、身の程を知りなさい」
そう、老婆の正体は、女神アテナその人(神?)だったのです。

周りの人は、女神の正体に恐れおののきますが、アラクネは動じません。
そんなわけで、二人の機織競争が始まりましたとさ。

その結果……
「どっちも見事だけど、アラクネちゃんのほうが上手いねえ」「そうだねえ」「アラクネさんの勝ち、かなあ」
そんな意見が大半を占めました。内心は、アラクネの機を目にした女神アテナもそう思ってたようです。
『こ……これはマズイ。機織の女神である、私の立場と言うものが……そ、そうだっ!』
と、完全に逆恨みモード全開のアテナは、アラクネに向かって怪しい魔法の粉を振りかけました。
するとどうしたことでしょう。アラクネは、巨大な蜘蛛の化け物となってしまったのです。
「ふ〜んだっ! そんなに機を織るのが好きならば、ずっと織っていればいいでしょ!」
半ば逆ギレ状態のアテナは、蜘蛛になったアラクネに向かってそう言い放ち、その場から逃げるように立ち去りました。

教訓:女神アテナはキ○ガイなので、張り合ってはいけません。張り合うと、化け物にされてしまいます。
   似たような被害者に、メデューサさんがいます。
636名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 12:51:28 ID:B27vT9qQ
織物の図柄のテーマもアレだったらしいよ。
 アテナ:神に服従する人間たちの姿
 アルケニー:性に奔放な神々の姿
637名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 12:56:02 ID:QDYrnCU0
>635-636
ギリシャの神様はたいがいDQNですww
(トップがロリお嬢様スキーのヒヒオヤジだもんな〜w)
某笛には被害者が一杯居ますwww
てか、トロイ戦争も遠因女神達の下らない争いだしな〜〜www
638名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 12:57:19 ID:QDYrnCU0
>637
訂正:ギリシャの→大概の
639名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 13:10:32 ID:tLgHg0Lt
>>630
ひぎぃ乙!
599だけど、マジで話にしてくれるとは思って中田。ちょっと感動。
期待以上というよりむしろ最高。
ありがとう。そしてGJ!
640名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 13:13:35 ID:tMBkaoee
>>634
ググってみよう。
・・・って言いたいけど、出てくるのは知っている前提の物ばかりですね。

蜘蛛女って覚えておけば良いんじゃないかな?
出典はギリシャ神話、機織りの腕をアテナに嫉妬されたんだか、自分の腕を自慢し過ぎてお仕置きされたんだがで蜘蛛女に変えられた女性だったはず(うろ覚えで御免なさい)。

有名所だとFF4なんかに雑魚として出てたと思う。
641640:2005/06/12(日) 13:17:14 ID:tMBkaoee
遅かった。
しかも、全然役にたたないし・・・
これはあげる前には、再度読み込もうという教訓ですね。
見なかったことにして流してください。
642名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 13:19:20 ID:B27vT9qQ
>アラクネ
アシュトンのアレの語源かな。共通は蜘蛛って事だけだけど。
643名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 13:58:58 ID:B27vT9qQ
ネタ投下

気位が高い魔物の女(貴族とかそんな感じ)
人間の少年と関わり、次第に彼にひかれていく。
やがて二人は結ばれる。
なんかの事件で、彼女が人間に対して殺戮に走ろうとする。
(少年を傷つけられたとか、少年をその幼なじみに奪われそうになったとかまあいろいろ)
彼が諌め止めようとする。
身体を張って止めようとした彼に、彼女は致命傷を追わせてしまう。
「お前に人殺しをさせたくなかった」
そう言って息耐える少年。
彼女は殺戮を止め、少年の亡骸を抱えて悲しみにくれてその場を去る。


魔物の女が死んでしまった人間の恋人に
「だから、だから人間なんて嫌なのよ。
 弱くて、脆くて、あっという間に死んじゃうのに…」
滂沱。


川越市喜多院の境内禁鈴をネタに、僧×蛇(龍)女で。
644名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 14:13:04 ID:tLgHg0Lt
泣きゲー?
645名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 22:17:54 ID:DJDEYppV
そろそろ次スレだな
646某880:2005/06/13(月) 00:04:46 ID:9g6TfB/K
次スレ行く前に、あれこれ

とりあえず、楽しんで貰えたようで良かった。
人外娘たんだと、どうしてもSM風な展開になりやすいんだが
(ロールミーったりチュウチュウされたりも含めて)
拡張系はまったく頭になかったので、新鮮でした。

>635-636
付け足すと、アテナの逆ギレ原因が
636さんが書かれてる図柄が原因(神への冒涜イクナイ!)という説の他に
アルケニー(アラクネ)が負けて、自殺してしまったのを
アテナが哀れんで、蜘蛛の姿で蘇らせた、という説もありますね。
ま、絶対逆ギレ説だと思うけどw

なんかアルケニー人気ですね。
累計3回登場してますが、主人公とのエッチよりレズってる方が多いな彼女w

別スレ含めて4連続投下しましたが、またしばらくこっちへの投下は休止になるかな
ネタためて、来月に又投下に来ます。
647名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:37:29 ID:sCijvRFy
哀れんで「蜘蛛」として蘇らせた・・・って、凄く微妙な哀れみ方だな。
人間としては、生き返らせはしてあげない所が凄くケチ臭い。
648名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:49:31 ID:2eKtXQdz
ちょっと捕捉
「哀れんで蜘蛛」なのは
大好きな機織りを一生やっていけるように、という配慮…という事になってます。
蜘蛛の巣が、まるで機織りのように見事な模様なのは
元が機織り娘だから、という事になっているようです。
そうやって、美談にしてごまかそうというのがあの神々のやり口かとw

このスレ的にはちょっとそれるけど
ゼウスだけでエロゲー作れそうな気がする。
40人近くやってるからなぁ、あのオッサン
しかもそのほとんどに子をはらませてるし
649名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 00:57:39 ID:gILsbHXK
え〜。ゼウス神を弁護すれば。
本来別々の神・神話体系の各都市国家が、ギリシャとして纏まる為に神話を統合したわけで。
その為に様々な神や英雄は主神となったゼウスの子孫ということにされたわけでして。
でもって、そのため血縁の混乱とか出てたりする。

ゼウスの化けた白牛×フェニキアの王女エウロパ⇒ミノス王
これから考えるに、ミノタウロスは別にミノス王の実の息子でも構わないわけなんだが…
650名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 07:35:05 ID:vkOkhhUc
いやゼウスが天使にイタズラをするっつーエロゲあるしw
651名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 09:08:46 ID:anhgpU1/
ロリ親父は「王女」しか襲わないからな「女王」じゃなくて
しかもたいてい変身した獣のまましてるし

あとヘラ(ロリ親父の妻)は毎年生まれ変わるんだが
体丸ごと生まれ変わるのでそのたびに「新品」になり
ロリ親父はそれがうれしいのか
最初にするときは手間隙かけてムード満点でするとか
652名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 17:00:34 ID:ER9eSKfz
究極の節操なし。それが神様クオリティ
653名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 19:57:16 ID:2eKtXQdz
>649
英雄はどうしても「神の子」になるから、統合するとそうなるんだよね。
でもそれを差し引いてもゼウスは節操なしな気がする
ゼウスに限らないけどね。アフロディ−テとかも凄いし

ミノタウロスの出生は、獣姦好きにはたまらないからなあw

>650
あるのかw
しかし、天使なんだ。ギリシャっぽくはないのかな?
654名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 21:11:29 ID:1OMfi5YU
天使じゃなくニンフならいくらでもいるよなあ。
とにかく手出しすぎw
655名無しさん@ピンキー:2005/06/13(月) 21:49:11 ID:yZZG8LEy
>>590
懐かしき哉、懐かしき哉、懐かしき哉。
我は雑談の藪に「東京ハルマゲドン」の火で焼畑を行い、
我が内なるウェンディゴの作りたる「スウィート三姉妹」の種を撒き、
万人が持ちたる萌えの土塊に「ときスー」というemethを刻み、
燃え上がる炎に薪をくべ、萌え上がる緑に肥をやった。
されど炎には水を挿され、緑には塩を撒かれ、
今や不満と苦情の砂礫による、茫漠たる荒野が残るのみ。
探求者よ来れ、遺跡を掘り、埋もれし財宝を見つけよ。
眠りたる種を拾い、撒き、育てる者にその総ての富を与えん。
656名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 00:40:10 ID:3Ge4mAJD
>>653
『ANGELIUM ときめきLOVEGOD』
詳しくはttp://www.getchu.com/soft.phtml?id=17203参照
657653:2005/06/14(火) 00:57:06 ID:VeFejT/s
>656
サンクス
名前だけって感じなのか。残念。
もっとこう、ギリシャ風に
アルケニーたんとかスキュラたんとかメデューサたんとかハルピュイアたんとかと
ときめきLOVEできるゲームは無いものか…
自分で書くしかないかw
658名無しさん@ピンキー:2005/06/14(火) 01:39:06 ID:i/R+5eBA
・・・普通に名前だけ知ってた。まさかそんな内容だったなんて
659名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 03:04:34 ID:hcpImLLJ
キリスト教も、昔は神様はデウスって呼んでたらしいし、天使でも問題ないだろう。
660名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 03:49:34 ID:++9QRw7b
背中に羽の生えたいわゆる天使ってキリスト教出典じゃないんじゃなかったっけかー。
661名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 06:48:07 ID:cRnHkcRO
天使はふたなり
662名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 06:59:52 ID:+OHeElLK
姿形はヴァーナスの息子のキューピッドの方が先だろうね。
神様じゃないけど、つくりものの翼で飛ぶイカロス(だっけ?)なんかも姿は多分、それだろうし人間の形じゃないけど飛ぶなら既存の生き物に翼を付ければ良いって考えはペガサスなんかも一緒。
宗教の中心地も同じローマだし、ギリシャ神話に影響されたんだろうね。
663名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 07:05:06 ID:yUUNJoQ3
デウスはラテン語でなかったっけか?だから昔も今も関係ないよあんまり。強いて言うならカトリック系かなあ。
「でうす・えくす・まきな」とか言う単語聞いたことあったらソレのでうすと一緒ね。
あと、天使=羽根つきお姉さん的なイメージはギリシアのニケーがモデルだったハズ。660さんせーかーい。

まあ、存在しないものを好き勝手論ずるわけだからどんな解釈もありでいいんでない?
神話スレかクイズスレみたいだ。
664名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 11:53:21 ID:TwPSPokx
神話・民俗学板とかより、こうやってエロネタから発展した神話談議の方が(ある意味では)はるかに健全だな。
必死になる香具師が少ないからだろうけど。
665名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 19:41:00 ID:4H6NHG52
>>663
『機械仕掛けの神』の意で演劇の言葉らしい>Deus ex machina
個人的には昔読んだとあるラノベを思い出す
666名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 20:00:50 ID:luzOhS12
>機械仕掛けの神
機械仕掛けのゴンドラに載って下りてくる神様(の役の人)。
その万能の力を振るい、何でもかんでも解決し、物語に終止符を打つ。
667名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 20:01:20 ID:ydgg3tFZ
ぱらいそいくだ
ぜずさまぜずさま
668名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 22:53:07 ID:qz1FdiOf
どっかで機械仕掛けの神ってのは
「山田くーん、全員の座布団全部もってけ」と同じ意味、というネタがあったよ。
669名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 23:33:34 ID:FsSof0Cd
所詮はただの怪物だがな
役立たずの
670名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 23:39:36 ID:o6vB8tPY
>>668
「ボッシュート」まで読んだ
671名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 01:08:38 ID:ag4sF2wU
>>668
それは何かが違うと思うんだがなあ…

>>667
わしだけいけね…
672名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 01:34:55 ID:OrhlcOUY
諸星大二郎スレに帰れ。
ヒトニグサとプレイってのもアリか?
常世からの女とのプレイってのもアリか?
井戸の底のククリ姫とのプレイってのもアリか?
温室の巨大ホムンクルスとのプレイってのもアリか?
673名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 02:29:45 ID:YRIUPqxX
ありあり
674名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 02:46:02 ID:OrhlcOUY
次スレ
【妖怪】人間以外の女の子とのお話13【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1118943787/l50
675放課後の吸血鬼35:2005/06/17(金) 02:47:03 ID:OrhlcOUY
“連中”の代理人が接触してきたのは、アミが何とか隣町に逃げて、“食事”をしている最中だった。腹いせに獲物の頚動脈を噛み破り、思う存分その血を堪能していると、不意に傍らに出現し声をかけてきたのだ。
連中はこの場からの脱出と、隠れ家の提供を申し出てきた。条件は連中のネットワークに所属する事。
なぜか? と問うアミに対して、連中の代理人は勢力拡大と、あの小娘とは元々敵対していた事を告げた。
このまま人にへつらう者どもから逃げ切れるとも思えなかったし、条件も悪くないと思ったので、アミはその話に乗ることにした。一つの条件を提案して。
連中のネットワークに所属するにあたって、アミが追加した条件とは、復讐。元々敵対しているならば、アミの復讐に手を貸してもいいだろう、そう提案しそれは受諾された。
連中の一人が持つ、俗に門と呼ばれる異空間通路を通る能力によって、アミは岩手から東京までをほぼ瞬時に移動できた。これで包囲網は突破できたし、この距離なら追跡もないだろう。
最初のうちは新たな巣を張り、何日間か気付かれぬように大人しい食事を繰り返して傷を癒す。その間に、連中が耳寄りな情報を持ってきた。
そして復讐の為に、小娘をおびき寄せることにした。自分の流儀に反したが、獲物の血を吸ってそのまま殺し、死体をその場に放置した。案の定、小娘は嗅ぎつけてやって来た。
早速、“歓迎”してやった。
夕暮れ時に、小娘が通う学校で女生徒を眠らせる。そして人払いの結界の中から呼びかけて、小娘をおびき寄せた。
駆けつけて来たものの、小娘は人質を取られて何も出来ずにいた。アミはニタリと笑みを浮かべつつ、小娘の目の前で女生徒の首筋から食事をし、さらに爪で獲物を切り裂いて派手に血飛沫を撒き散らしてやった。
小娘が怒りと恐怖で呆然と立ち尽くす様は、今のアミにとって最高の快楽だった。
さらに挑発するため、学校を狩猟場として食事を繰り返した。狩猟場としての学校は、夜に人が居ないのが難点だが、若く元気な男が多い利点がある。
しかし今日、狩りを人間に目撃され、あまつさえ小娘のせいで始末し損なった。全く忌々しい。“派手”に狩りでもしないと、気が済まない。
676放課後の吸血鬼36:2005/06/17(金) 02:47:53 ID:OrhlcOUY
ポーンとゴム毬が弾む音がして、はっと現実に引き戻される。
目を開けると既に日はとっぷりと沈み、西の山の向こうを微かに血色に染めるのみ。代わりに世界を支配するのは闇。東の空からは真円に足りぬ月がサッと冷たい光を投げかけている。約束の刻限のようだ。
台からムクリと起き上がり、人の姿をとることにする。月に照らされた巨大な蜘蛛の影がギュウッと縮まる。
蜘蛛の腹部が、人の腰部の位置にあるその胸部にスウッと収納され、縊れた腰の下は白く膨らんだお尻に変わる。
それに伴って左右三本ずつの足が溶ける様に一つに合わさり、縞模様の外骨格から白くふっくらとした肉付きの内骨格のそれに変わる。
アミの姿にすでに蜘蛛の面影はまったくなく、どこから見ても人間の、しかも美しい女のそれだ。
瞬時に糸を編んで即席の着物を作ると、サッとそれを身に着ける。浴衣に似たそれは、赤地に手毬等の和ものの絵柄の派手な着物だ。
再びポム、ポムとゴム毬が弾む音がする。
音のした方向をひょいと見ると、巣を支える糸の一端の傍に、闇の中からスウッと小柄な人影が浮かび上がる。
「今晩は」
幼い声でそう声をかけたのは、赤いスカートに白いブラウス、ピンクの可愛い運動靴の少女。年の頃は十歳程か。
その顔は、黒々とした闇に溶け込んで見えない。否、闇を見通すアミの目には、そこはポッカリと空いているのが解る。
続いて、パシャッと水音がして、少女の後にもう少し大きな人影が現れる。
背中まで届く長い髪から、ポタポタと水を滴らせる、紺色のスクール水着の少女。うつむき加減の顔には、無気力な半開きの瞼とぼんやりとした虚無色の瞳。軽く閉じられた口には、何の感情も浮かべない。
膨らんだ胸に張り付いたゼッケンの文字は、美奈萌と読み取れる。
裸足のまま、ペタペタと首無し少女に歩み寄り、その背後にピタッとくっつき軽く腕を回して抱きつく。首無し少女は背中がベタッと濡れるのにもかかわらず、そのままだ。
「“黄昏学園”より、首無しの真理華と、プールの美奈萌(みなも)、ご協力の為に参上いたしました」
真理華はどこからか幼い声を出して慇懃にそう名乗り、ぺこりと一礼した。
677放課後の吸血鬼37:2005/06/17(金) 02:48:48 ID:OrhlcOUY
黄昏時の薄暗い校舎を、一人さまよう。一体、いつからさまよってるのか時間の感覚が曖昧だ。
喉が、渇く。でも、欲しいのは、水ではない。ここは校舎だ。水道なら、そこらにある。
欲しいのは、命。生命に満ちた、真紅の液体。今、自分が渇望していいるのは、血だ。
ようやく獲物が、いた。紺色の制服の少女。牙を露わにしつつ、口をニイッと歪め、ササッと素早く駆け寄る。
「え、何…?」
獲物がこちらに気付いた。ギクッと身体が凍りつき、眼が大きく見開かれ、はっと息を呑む。
暗がりの中から、バケモノが鋭い牙を剥き出し、爪を振りかざして真っ直ぐに向かってくるならば、無理もなかろう。
「きゃあぁぁぁっ」
すぐに我に返り、くるぶしまで届きそうな長いスカートをバサリと翻して、バタバタと逃げ出す。
遅い。
すぐに追いつき、その小柄な背中にドンッと飛びつく。ほっそりとした少女の身体は、その勢いに耐えられず、そのままドサリと倒れる。
「きゃっ。痛っ」
背後からのしかかり、抑えつける。
「えっ、嫌ぁっ」
うつ伏せのままビクリと怯えた顔で振り向き、悲鳴を出す。少々うるさいが、そんなものはどうでもいい。血の飢えを満たす事が先だ。
セーラー服を脱がすのももどかしく、爪で一気にビリッと引き裂く。白いうなじに続く華奢な肩が露わになる。じつに美味しそう。
「きゃあぁぁぁぁっ」
羞恥心から、獲物がフルフルと恐怖に震える。
「や、やめてぇっ」
噛みつくのに邪魔なブラの肩紐をチョイとずらし、思いっきりガブッと噛みつく。
「な、何を…、ぎゃあぁぁぁぁっ」
断末魔の草食動物のように絶叫をあげ、苦痛でビクンと仰け反る。そんな事はお構いなしに、口腔にあふれ出る生血をジュルジュルと啜る。
なんと甘いのだろう。
牙をブスリと突き立てるたび、ズブリと深く刺すたび、命の蜜はトロリとあふれ出る。
それは口腔をたっぷりと満たし、舌をじりじりと焼くような美味を味わわせる。
そしてゴクリと嚥下すると、ビロードの滑らかさでするりと喉を滑り下り、からからに渇いた身体の隅々までにじっくりと染み入る。
ああ、美味い。本当に生き返るようだ。
しばらく本能の赴くまま、はだけた肩からダラダラとあふれ出る彼女の血をジュルリ、ジュルリと啜り、ゴクゴクと嚥下する。
678名無しさん@ピンキー:2005/06/17(金) 03:43:23 ID:sYSbxLVt
もしかして本物の帰還かな?
続きを頑張って欲しい。
679放課後の吸血鬼38:2005/06/17(金) 11:48:01 ID:OrhlcOUY
「ぎっ。あっ。痛っ。やめ、てっ、お願い、やめてよぉぉぉっ」
新たに牙を突き立てるたびに、少女はビクッと震え、涙ながらに必死に懇願するが、そんなものは耳に入らない。
やがて、怪力で抑えつけなければならなかった、じたばたともがく少女の肢体は、血とともに生気を吸われ、次第に力を失ってゆく。
「あ…、うぁ…、た、助け…、お、お願…」
身体がぐったりと抵抗する力を失うと、叫び声も弱々しくなってくる。
ようやく、喉がひりつくような渇きが治まった。
本能的な食欲が去ると、代わりに感情的な血液欲がむくむくと頭をもたげる。潤えば癒せる本能とは違い、新鮮な血液は血液欲の炎をめらめらとより一層激しく燃え立たせる。
もっと、欲しい。紅く、新鮮な、血が。
ならば…、心臓だ。
鮮血に塗れた少女の肩から口を離し、ふうと一息つく。少女の口も言葉を紡ぐのを止め、ひっひっと引きつったような呼吸を繰り返すのみ。
ぐったりとしたその身体を、ゴロリと仰向けにする。
「ひっ。や、何…。やめ…」
力が抜けてピクリとも動けない獲物は、恐怖に擦れた声を漏らす。そんな事より血だ。血だ。血だ。血。血。血血血血チチチチチチ……
興奮で眼をぎらつかせ、その胸元にガバリと覆い被さる。襟元に手をかけ、荒々しくバリッと引き裂く。一薙ぎで、セーラー服も下着もズタズタに引き裂かれ、胸が露わになる。
「ひぃっ」
もう、声も助けへの求めや懇願から、ただの呟きに変わる。
カップがずれて、頂のくっきりと目立つ苺色の蕾を露わにした、左の胸。その色は、肌よりも血色に近い。血を欲して、思わずカプッと口付けをする。
「いっ、ああっ。パパぁ。ママぁ」
ツプッと牙を突き立てると、獲物が弱々しく何か悲鳴をあげるが、そんな事はどうでもいい。残念ながら、あまり血はでない。何度か牙をつき立ててチュウチュウと吸うが、さっきの方が血を良く吸えた。
こんなところではダメだ。やはり心臓だ。
そこから口を離すと、膨らみの頂きから麓まで、その色が溶けて流れたかのようなツッと一筋の紅線。
上体を起こして、じっと少女を見下ろす。向こうも、恐怖にカッと見開かれ、涙でぐしょぐしょに濡れた目でこちらを見上げる。その血色の頂きを持つ胸の膨らみは、恐怖で荒げた息でハアハアと大きく上下している。
680放課後の吸血鬼39:2005/06/17(金) 11:48:36 ID:OrhlcOUY
その動きに興奮して、こちらの息もつられてハァハァと荒くなり、頬がカッと上気するのがわかる。
鋭い爪をシャッと伸ばし、双丘の谷間にそっと当てる。
「う…あ…、い…や…」
美しき獲物は、擦れた声でゆっくりといやいやと首を振る。
そして勢い良くズバッと走らせる。爪がザクッと肉を裂き、ガッと肋骨の上を滑る手応えが伝わる。
「ああっ」
少女がビクリと震え、一声叫ぶとクリルと白目を剥く。
心臓まで引き裂くのは、無理だった。たが、真紅の泉は燃え盛る興奮を一時的に静めてくれた。しかしそれは同時に、冷静な血液欲をより強める。
真紅に染まった爪をペロリと舌でなぞると、胸の谷間に顔をうずめる。
胸の谷間に湧くルビーの泉に口を付け、その甘露をピチャピチャと舐める。獲物は苦痛でうっと僅かに呻く。
流れ出る血潮をペロペロと激しく舐め、傷口に直に口をつけてチュルチュルと啜り、口を満たす美酒をひたすらゴクゴクと飲みこむ。
口付けをした少女の胸から、ドクドクと鼓動が伝わる。恐怖で速まった心臓の音、獲物の中に満ちた真紅の霊液の流れる音だ。つられて自分の鼓動もドキドキと早まる。
だめだ、こんなのでは満足できない。
喉を潤すだけではだめなのだ。
もっと血を見たい、もっと血を嗅ぎたい、もっと血を触りたい、もっと血を味わいたい、もっと血を飲みたい。もっと血を、もっと血を、血を、血を、血。血。血血血血チチチチチチ……
顔を上げると、息でヒクヒクと震える、少女の白く細い喉が目に入った。
そうだ、頚動脈だ。そこなら、満足できるだろう。
鮮血への期待から、ペロリと舌なめずりする。
胸からスウッと滑らせる様に顔を動かし、震える少女の細く白い美しい喉を間近で眺める。じわり、と血塗れの口に新たな唾が湧いてくる。ここなら、ここならきっと…。
血の喜びに瞳をキラキラと輝かせ、紅に染まった顔の下半分をニイッと笑いの形にする。
牙を剥き出し、クワッと大きく口を開くと、その端からよだれがツツッと垂れる。そして、ガブッと喉に食いつく。
681放課後の吸血鬼40
口に、牙に、少女の鼓動がドクドクと伝わる。
グッと皮膚の弾力が、歯ごたえとして伝わる。ギリッと顎に力を込めると、ググッと歯ごたえが強くなる。突如、プツッと弾力が失せ、同時に今までに無かった甘味が、どっと口に流れ込む。
少女の身体が断末魔にビクリと震え、喉から声にならない叫びが漏れる。
心臓の刻む生命のリズム合わせて、ビュッビュッと勢い良く飛び出る、動脈の血だ。
その甘美な液体を口一杯に含み、一気にゴクリと飲み下す。ドクンと心臓が歓喜に震え、再度血液欲が変質する。本能から感情への変化に続き、より冷静に、理性的に、淫靡に。
もっと、もっと血を楽しみたい。
ぼうぼうと燃え上がっていた衝動は、急速に鎮火して行くが、逆にその思いの総量は一向に減らず、今度は冷静に思考する欲求が、水を得た草木のように血によってすくすくと育っていく。
ぷはっと口を離し、まずは血を、流れる、新鮮な、美しい血を眺めることにする。
紅い。ルビーのように、熟した果実のように、燃え盛る炎の様に、紅い。美しく、鮮やかな、綺麗な赤。それが、ピュッ、ピュッとリズム良く吹き出て、周囲を朱に染めていく。
大きく息を吸う。空気が紅く染まって見える程、ねっとりと濃厚な血の香が鼻腔に満ちる。いかなる香木も香水も及びつかぬ、甘美な命そのものの香。それを我が物とするために、胸一杯に吸い込む。
そして流れ出る血を手で掬い、そのヌルリとした温かい手ざわりを楽しむ。手だけでは満足できない。
パサリと服を脱ぎ捨て、全裸になる。
掬った血を、まずはペタリと頬に、続いてヌルッと首筋に、はだけた胸に、腹に、太腿に、陰部に、ベットリと塗りつけ、ヌルヌルと擦りつける。
それはいかなる技巧に優れた愛撫より、肌を薔薇色に上気させ、燃えあがらせる。
紅く、甘く、濃く、熱い溶けた命は、身体を紅く、甘く、濃く、熱くトロンと酔い痴れさせる。
自慰をするように、愛撫をするように、それをぬるぬると全身に塗りたくり、擦り込む。そして紅に染まった両手を、ベロベロとはしたなく舐める。知らず知らず、ハアハアと息が荒くなる。
手では、だめだ。手では、とても足りはしない。ならば…。