3 :
1:
前スレ749の続き
ちち・・・ちちちち・・・・
朝がやってきた、いつものように小鳥たちが僕をせかすように騒ぎ立てる。今日は香坂先生と精密検査に行く日だ。たしか9時に迎えに来るって言っていたからそろそろ準備しないといけない。
僕は眠い目を擦り未練を断ち切るようにベッドから這い出た。
洗面台へ向かい歯磨きをする。女になって4日目だが未だに目の前の美少女が自分だと信じられない。確かに自分の面影は残っているのだが17年慣れ親しんだ顔とはまるで違う顔には今だ 慣れる事は出来なかった。
「ちょっと真実、女の子なんだから髪ぐらいちゃんとしなさいよ。」
「・・・母さん・・・僕は男だよ。」
「それは判っているけど見た目は女の子でしょ。出掛けるんだから身だしなみぐらいちゃんとしなさいよ。」
「・・・判ったてば・・・でも僕は男だからね。」
母さんに促され髪を整える。櫛を通した髪はとても艶やかで心地良かった。だがそれは僕に女の体という現実を叩きつけた。
身支度を済ませ朝食を食べ終わる頃、家の前に車が停まった。多分先生だろう。僕は食器を片付け玄関へと向かった。
「おはようございます。それでは真実君をお預かりします。」
「はい、どうかよろしくお願いします。」
僕が助手席へ座ると車は病院へと向かった。
>6
車内では香坂先生が緊張する僕をほぐそうと明るい口調で話し掛けてきた。だが僕はそんな気分にはなれずただ空返事を返すだけだった。
「あの・・・もし、完全に女だったら・・・・男に戻れなかったら僕は・・・どうなるんでしょうか?」
突然の僕の問いかけに香坂先生は驚いた様子だった。だがすぐにいつもの表情に戻り優しげに言葉を返してくれた。
「うーん、どうなるかは私にも判らないわ。でもね、真実君は真実君だよ。それに真実君はたくさんの人の前で変化したから証人だっているじゃない。もし裁判になってもたくさんの人が応援してくれるはず・・・もちろん私もその1人よ。」
僕はそれ以上何も聞けなくなった。ただ心の中で感謝の言葉を呟いた。・・・・ありがとう・・・。
「久しぶり、高志の結婚式以来ね・・・・ふーんその娘が例の彼ね・・・どう見ても女の子じゃない」
病院に着くと香坂先生と同じぐらいの歳の女医さんが僕らを迎えてくれた。
「そうねほんと久しぶり、あっ、紹介しておくわ真実君、こっちが私の大学の同期だった五島蒔絵、今この病院で働いているの。ふざけた性格だけど腕が確かなのは私が保証するわ。」
「ひどい言われようね・・・でも、まあいいわ一美から聞いたときはたちの悪い冗談だと思ったけどよく考えたら一美いつもふざけたこと言っていたけど冗談なんか言ったことなかったよね。」
「そ、私は冗談なんか言わない、それに今私は先生なんだから生徒まで巻き込んでまで悪い冗談は言わないわ。じゃ、早速お願いね私も出来ることは手伝うから。」
僕は五島先生に連れられ診察室ではなく五島先生のオフィスで問診を受けた。土曜日の午前中ということで待合室はそれなりに混み合ってはいたが本来非番の五島先生の厚意で待たずに診察を受けることが出来た。
>7
「じゃあ、真実君、とりあえず血液サンプルを採るね。その後はCTスキャンと、レントゲンと・・終わったら問診をやります。じゃあ腕を出して。」
消毒のひんやりとした感覚が腕に伝わってくる。続いて注射針のちくりとした痛みが腕に伝わってきた。注射器のピストンが引かれに注射器のシリンダーに紅い血液が満たされていった。
「はい、おしまい。痛かった?」
「いえ、ぜんぜん次はどこへ行ったらいいですか。」
「じゃあ、私についてきて」
五島先生に連れられ、CTスキャン、レントゲンとこなしその後、問診が受けた。
そして1時間後僕は再び先生のオフィスに居た。五島先生は神妙な顔つきでカルテを眺め僕にその結果を伝えた。それは半ば覚悟はしていたものの僕を落胆させるには十分なものだった。
「完全に女の子ね・・・・君にとっては残念だけど生殖器も、骨格も完全に女のものね。元男とは信じられないくらいにね。」
今朝まですがりついていた僅かな希望も消えてしまった。男として過ごした17年間はいったいなんだったのだろう。僕は肩を落としただ泣くしかなかった。
泣き続ける僕の目の前にハンカチが差し出された。それは五島先生からのものだった。
「ほら、泣くな。まあ・・・そんな身体だけど・・・男でしょ。」
「で・・・でも・・・・」
弱気になっている僕に五島先生は強い口調で話を続けた
「甘ったれるな!君は生きているだけでも良いじゃない、病院という場所にはね命の瀬戸際で戦っている人もいるの、君の命に別状が無いことは私が保証します。だから・・・もう泣かないで。」
五島先生は今だ興奮状態の僕をなだめるようになおも優しく語り掛ける。
「君の血液サンプルを更に詳しく解析してみるから、それで何か手がかりがあったらすぐに連絡する。約束するわ。」
五島先生は僕の手を握り、最後には優しく僕の心を静めてくれた。それに答える言葉は僕の口からは出なかった。代わりに僕はただ静かに頷いた。
>8
「じゃあ蒔絵、頼んだわよ。」
「任せて!何かわかったらすぐに連絡するから」
すべての検査を終え病院から出るとき、僕の目は涙でまだ濡れていた。女であるということ が実証され僕の心は打ちのめされた。だが五島先生の言葉が僕を勇気付けてくれた。だから今は前向きに生きよう。香坂先生も言うとおり僕は僕なのだから。
「ありがとうございました。」
そう五島先生に礼を言い僕は病院を後にした。
「ふう、ちょうどお昼ね。ねえ真実君、お昼でも食べていかない?おごるわよ。」
きゅるるるる・・・・・
僕が言わずとも身体が先に返事をした。僕たちは繁華街近くの駐車場に車を止め食事を採ることにした。
「あったあった、ここよ『錨屋』」
「あの?先生、ここ・・・居酒屋じゃないですか?」
「うん、居酒屋だけどランチもやっているのよ。それですごくおいしいのよ」
そう言うと2人で暖簾をくぐり店内へ入っていくと混み合った店内で意外な人物を発見した。
「西沢・・・・?」
「え!・・・・真実?」
お互い不意の出会いに言葉を失った。
・・・・ To be continued
>6-9
朝日の詩投下します。
>1
スレ立て乙です。私も良い作品が書けるようにがんばりますのでよろしくお願いします。
スレが進んだので、コテ化してみました。
ついでに書いた物体のほうにも、「月光」と仮題をつけてみたり。
>>1
スレ立て乙です。
愕然とする和泉に、レイは無言で新聞を差し出した。日付は13日前…つまり、巻き込まれた翌日。
「はは…こりゃぁ…納得するしかないわな…」
震える声で呟く。記事を見るまでもなかった。一面に載っている写真…それを見ただけで解る。歩きなれた裏道だ。自分が歩いていたあたりがクレーターと化しているのだ。無理も無い。
その間に、レイが散らばったカップの破片と紅茶を片付けてゆく。
「すまないな、悲観的事実ばかりで…。だが、君が自分自身でこれからを考えてゆく為には必要な事だろう」
「…ああ…そう…だな…」
「ともかく、落ち着くまではゆっくりしていてくれ。この部屋は自由に使ってくれて構わない。部屋から出ないでくれ、とは言わないが…無駄に広いのでな。迷うと少々手間だ」
「ん…ありがとう」
泣き笑いのような表情で、和泉が頷く。
「…君は、強いな。こんな常軌を逸した状況でもさほど取り乱さず、礼も言える…そうそうできる事ではあるまい?」
「んー…まぁ…元々自分を第三者的に見る癖があったから…そのせい、かも」
「そうか。…一応伝えておくが、今の君の存在は当然、表沙汰には出来ない。その辺りは考慮してもらえると助かる」
「ああ…解った…」
では、と言い置いてレイは部屋を出て行った。残された和泉はベッドに横になり、
「俺は…もう死んでる、か…」
呟くと、じわじわと実感がこみ上げてきた。『自分』はここにこうして生きている。が、その『自分』の居場所はもう既に無い。会いたい人にも…会えない。
「…やめよ。シャワーでも浴びよう…」
鬱々とした考えばかりが浮かんで来た頭を振り、和泉は気分転換の為にバスルームを探し始めた。
どうやら部屋に備え付けてあるらしく、バスルームはすぐに見つかった。どうやら、ホテルの一室のような作りらしい。着替えは無かったが、少し前に着た服なのでさほど問題は無いだろう。
そう思い、和泉はシャワーを浴びる事に決めた。
「…そーいえば…下着、着けてなかったんだな…」
脱ぎながら呟く。とはいえ、ショーツはともかくブラジャーを着けるには抵抗があるが。
ふと見た洗面所の鏡には、まだ16,7の美少女の姿。薄く頬をそめたその表情には、ナルシストの気の無い和泉も思わず見入ってしまったほどだ。
「…何をやってるんだか…」
肩をすくめると、視点を観察へと傾けて変化した点を列挙してゆく。まず、背が10センチくらい小さくなった。今は165センチくらいだろうか。当然筋肉も付いていない。決して大柄やマッチョではなかった以前と比べても、随分小柄に見える。
ほっそりとしていた指や手足はあまり変わらないが、肌の色が全体的に白くなったせいか、やけに目立つような気がする。
胸は可もなく不可もなく。CからDくらいだろうか。あまり見ているとヘンな気分になってきそうなので止めた。尻…ヒップも同様。
(とても、元の身体のクローンとは思えないよな…でも、実際に違和感無いし…)
それは、この新しい身体を脳が受け入れているということなのだろうか。憂鬱ではあるが、事態に際しては自分でも驚くほど冷静だった。
鏡に向かって苦笑し、浴室に入る。微かに汗臭い身体を流す為、シャワーのコックを捻る。お湯の温度は高めに設定。頭から浴びると、重く凝り固まった鬱思考が流されていくようだ。
「あー…生き返る…」
呟いて、髪・身体を洗ってゆく。スポンジもタオルも無かったので、手にボディソープをつけて泡立て、撫でる様に。髪、腕、足、背中と順番に洗い、胸に触れたとき唐突にそれはやってきた。
「んっ…ふっ…」
乳房部分はまだ平気だったが、乳首に触れたときに和泉は思わず吐息を漏らした。何とも知れない、数時間前に自分のモノを確かめた際、裂け目に触れたときと同じ強烈な感覚。
モットサワリタイ。ナデマワシタイ。
モウサワルナ。ワスレロ。
二つの思考が同時に和泉の頭に浮かんだ。触りたい…男として?女として?自問してかぶりを振る。
「…ええい!」
パン、と両頬を叩いて気を取り直す。
(しっかりしろ…俺は男だ。俺は男、俺は男…)
自分に言い聞かせ、その感覚と欲求をやりすごす。しばらくじっとしていると、むずむずとした感覚はどこかに消えていく。ほっと安堵の溜息をついて、和泉は身体を洗う作業を再開した。